機動戦士Zガンダム0085 毒ガスの撒かれた地で・・・

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303通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 01:15:54 ID:???
「一気にそこまでいくか?」
 最初に答えたのは仏頂面のダイヨーだった。
「俺は14地区のことは知らんが、単なるミスってこたあないか?」
「いえ、それはないでしょうねえ。ソラーの話では反連邦組織の分子を居住させてたってことでしたよね?」
「ええ、ナカドのグループが裏を取ってあるっす」
「なら確定でしょうねえ。ティターンズはこの30番地を本気で牛耳ろうとし始めたことに間違いはないでしょう」
「コロニー行政区のほうの動きは?」
 ミリルが思い出したように尋ねる。
「いえ、今んとこは情報は入ってないっす」
「そう…」
 ミリルは腕を組み、床面に視線を落としてなにかを考え始める。ダスタンを始めとするメンバーは、リー
ダーの判断をじっと待った。
 しばらくして、ミリルが視線を上げる。
「ダイヨーにソラー、明日の早朝にクラウザー商会に走って情報収集。マイダは悪いけど明日一杯はホム・
ペーデの同志たちと連絡を取り合って頂戴。昨日の今日で店を閉めるわけにはいかないから、あたしと
イーザは普通に店をやるわ」
 と、ミリルはそこで区切ってダスタンのほうに視線を向ける。
「ダスタン。あんたの処遇はあんたが決めな。家族を救うため、ティターンズに投降するもよし。このまま
残ってあたしらについてくるもよし。どっちにしたって誰も咎めないよ。ただし、出て行く場合はあたしたちの
ことは一切他言無用。投降先も違うサイドのコロニーからってことにしてもらうけどね」
 ダスタンは黙っていた。最愛の娘と両親のことは当然気にかかる。今すぐにでも救いに行ってやりたい。
 だが、自分たちの身の危険を顧みず、自分の身柄を引き受けてくれてきたコロニー解放同盟のことも見
捨ててはおけない。
 決断のときだった。
「私は…、私はここに残ってお手伝いします。皆さんの迷惑でなければ…」
 自分が軽々しく出て行かないことで家族の身柄は大丈夫だと思うことにして、ダスタンはそう決断した。
304通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 03:28:41 ID:???











305通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 07:49:22 ID:???
>>304
ではとりあえずマス開けは無しで。

明け方のクラウザー商会は騒然としていた。
入港する積荷や乗客はおろか、出航するすべての艦艇での臨検さえティターンズによって行われていたからだ。
「ったく、冗談じゃねえっての」
クラウザー商会の長男ディルバは、夜が明け始めた早々にやってきたソラーとダイヨーに対して愚痴を吐いた。
「ウチだって真っ当な商売もやってんだぜ。それがティターンズの連中の検査が終わらにゃ積荷の移動すら
できないってんじゃ、新鮮さがウリの生鮮品は大ダメージだぜ」
「親父さんはそれで動いてるんすか?」
社長室にティンパがいないのが気になったソラーが尋ねる。
「ああ、八方手を尽くしてやめてもらえるよう走り回ってるよ」
「ティターンズがスパイ狩りを始めたとみていいんだな?」
相変わらずの仏頂面でダイヨー。
ディルバは首を縦に振る。
「間違いねえな。連中、今度は本気だぜ。このままじゃおさまらねえ気がするな」
うんざりといった表情でディルバは言った。
306通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 07:50:34 ID:???
一方こちらは作戦室。こちらでも早朝から近隣の各組織の寄り合いが持たれていた。
ただし、ティターンズの目があることを配慮して、名目上は同業者の今後の対策という触れ込みにしてある。
「では、自由連合のみなさんはこれ以上ティターンズの横暴が続くようなら武力闘争も辞さない、というわけ
ですね?」
マイダが沈痛な面持ちで、見事な体躯の血気盛んそうな青年に尋ねる。
「ああ、ここまできたら黙っちゃおけねえ!」
そのホム・ペーデで最大派閥のスペースノイドの自由連合のリーダは、鼻息も荒く言い放つ。
「しかし、それこそ連中の思う壺じゃないのか?」
しかし、その横手から別の会派のリーダーが口を挟む。
「奴らは俺たちが動き出すのを誘ってるのかもしれん」
その向かいの年配のリーダーも同調する意見を述べる。
「しかし連中は今まで以上にコロニーのみんなを痛めつけている。黙って見過ごすわけにはいかねえだろ?」
「しかし、私は時期早尚過ぎると思いますが」
マイダは自由連合のリーダーを諌めるように言う。
「まだコロニー管理省は具体的な声明を出していませんし、商業区、居住区の反応を待ったほうが得策だと
思いますがねえ」
「そうだな。血気にはやって自滅するのだけは避けたいところだ」
年配のリーダーも同意見のようだ。
そんなまともな意見を披露させられては、若い自由連合のリーダーも渋々ながらも同調するしかない。
「分かったよ。いくら俺でも連携をとらなきゃどうにもできないってことは分かる。あんたらの協力がないまま
独走はしねえ」
「それはよかった。んじゃ、皆さんくれぐれも自重するということで、解散としましょうか」
最後にマイダがにっこり笑うと、会合はここでお開きとなった。
各派のリーダーが全員出て行った後、マイダは作戦室の鍵を閉めると、珍しく疲れたようにふっと息を吐く。
すると、それを待っていたかのように作戦室の扉を叩く音が聞こえ、マイダが鍵を開けるとミリルとダスタンが
入ってきた。
「どうやら、暴発だけは防げたようだね」
帰っていくリーダーたちの顔色を伺っていたのか、ミリルは満足そうに言った。
「勘弁してくださいよ。こういう交渉事は本来リーダーの役目ですよ」
「へへっ、でもあんたのほうが上手いからさ。ま、適材適所ってやつだよ」
「横着リーダー」
「ダスタン、なんか言った?」
「いえ、別に」
「まあいいさ。この時期に派手な動きを連中に見せるのは良くないからね。んじゃ、今度は自治会に渡りをつけて、
そっちの対応も頼むよ」
「仕方ないですね。了解です」
「ダスタンはマイダの補佐、しっかりやっとくれよ」
「分かりました」
「それじゃあたしはそろそろ店を開けるから、後はよろしくー」
ミリルはそう言うと、手のひらをひらひらと振りながら作戦室を後にした。
「まったく、人使いが荒いんですから」
「ハハ、ですね」
愚痴るマイダにダスタンは愛想笑いを浮かべるしかなかった。
307通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 08:20:40 ID:???





308通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 11:07:38 ID:???
6 :ノーブランドさん :2006/06/22(木) 00:19:38
☆★☆ゴミスレ☆★☆

機動戦姫ガンダムP(プリンセス) part2
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/x3/1142071587/

☆★☆機動戦姫ガンダムPrincess第三章☆★☆
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/x3/1146867833/

機動戦士Zガンダム0085 毒ガスの撒かれた地で・・・ →とくにこのスレ 作者がVIP馬鹿にしてる
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/x3/1144074591/

荒らしてくださいお願いします




http://life7.2ch.net/test/read.cgi/fashion/1150900412/6
309通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 16:26:35 ID:???
俺は読んでるよ
310通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 20:05:40 ID:???
こっから先のダスタン話は本筋の進展待ちです。勝手に最後まで進められないし。
311通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 20:44:48 ID:???
>>310
気にせず書いたら?もうあれずっと来てないし
312通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 06:57:52 ID:???
>>311
それは先方に失礼でしょう。
313通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 18:51:21 ID:???
帰ってこいよ
314作者:2006/06/30(金) 23:13:27 ID:00tdyDYI
>>310さん、御参加ありがうございます。面白かったですよ。
さらに熟読してこちらの考えてる設定とかと整合性の合うように調整していきます。
遠慮はせずに、「2スレで十三話完結」という規模さえ考慮に入れていただければ
結構です。

これを機に少しでも良スレになればいいと思ってるんですが・・・・・・・
SS参加者・設定アイディアは随時募集中です。時代が「UC0085の7月」という事だけ
考慮してくれればホントに何でもOK。
自分は就職活動は終わったんですが、お金が無くて毎日バイトやっていて、
家に帰ったらもう寝るだけという生活。ガンダムなんて全然見てません。
正直0083〜Z時代の設定とかかなり忘れてるかも・・・なので、その時間を生かし
ちょっと勉強してから続き書きますね。
やっぱ、やるからには中途半端なものにはしたくないと思ってるので。
315作者:2006/06/30(金) 23:28:12 ID:00tdyDYI
余談。
先日法律相談所に電話したところ、「(著作権保有団体が)そういうのを
いちいち気にしてたらキリがない」「ただし、商業物(同人誌など)として
売り出すと問題になるかも(?)」・・・・・・・・・
みたいなことを言われました。うろ覚え。

自分としては、ガンダムPrincessも0085も単なる2Chの創作小説で終わらせる
つもりはないと思っています。ていうか、ここまでやっといてそれは
勿体無い。
絵の上手い人など協力者をまとめサイトで募り、同人誌という形で何とか
市場に露出する。そういう形になると思いますけど。
著作権の問題に関しては、それが発生しそうになる前の段階でこちらが
サンライズやバンダイに企画の持込みをするという事で対処します。
もしそこで拒絶されればそれら作品は商業的価値無しと判断されたわけで、
市場で売っても彼らの利益を損ねないわけですからね。

逆に「やったもん勝ち」というか、もしバンダイやサンライズが口出しして
きたらこっちのもんだ、しめたもんだとも思ってます。
ネットでこうしてジクジクやるより最大の宣伝になるわけですからね。
裁判沙汰になったら勝ち負け以前に弁護士雇うカネないけどw
まぁとにかく、俺は「女の子が主人公」にしても「30バンチの真相」にしても、
これまでガンダムシリーズで掘り下げられていない→新たな需要が見込める
ポイントを常に狙っているわけです。
だから、あわよくばもっと上のフィールドに伸し上がろうって野心くらいはあるんですよ。
まぁ、でも気にせず気楽に参加してください。一緒に夢を見ようじゃありませんか。



あ、あと一応言っときますけど「妄想」だからね、単に。
具体的プランとか予算とか何も考えてないw
316通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 03:15:15 ID:???
>著作権の問題に関しては、それが発生しそうになる前の段階でこちらが
>サンライズやバンダイに企画の持込みをするという事で対処します。
>もしそこで拒絶されればそれら作品は商業的価値無しと判断されたわけで、
>市場で売っても彼らの利益を損ねないわけですからね。

ジェリド以下のあほうだな

すべての同人は基本おなさけで黙認放置されてるということを自覚しなさい。
それとすでに不特定多数に向け発表されてる状態のものをとりあうわけないないでしょ
317通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 20:59:43 ID:???
>>314
こちらこそよろしくお願いします。
318通常の名無しさんの3倍:2006/07/06(木) 22:23:25 ID:???
と、まぁ>>316さんのような方が釣られてくれるわけですw
わかりましたね、皆さん?
「どんなに嫌いな番組でもチャンネルを合わせた時点で視聴率を上げている」んですよ。

>>317
いえいえ。職人さんは自分でスレ立てたりしない気まぐれな人が多いと思ってるので
あえてご挨拶はしない方がいいかと思ったんですが・・・・・・御丁寧にどうも。
319作者の時間稼ぎ@:2006/07/06(木) 22:46:53 ID:???
今作のカギとなるキーワードでありガンダムシリーズの謎の一つである「ティターンズ」。
宇宙世紀80年代中盤を駆け抜けた彼らについて、今一度復習してみましょう。

ティターンズは、アニメ『機動戦士Ζガンダム』に登場する架空の組織。地球連邦軍内部の特殊部隊で、
ジオン軍残党の掃討を名目上の目的としている。エゥーゴとは対立関係にある。

設立の経緯
宇宙世紀0083年に勃発したデラーズ・フリートの反乱(デラーズ紛争)は、
地球連邦政府にジオン残党に対する脅威を植えつけた。そこで、ジャミトフ・ハイマンの提唱により、
地球連邦軍の中にジオン残党狩りを目的とした精鋭特殊部隊「ティターンズ」が設立された。
名称の由来はギリシャ神話からで、「大地の子ら」という意味である。地球出身者のみで構成されている事からこの組織名が付けられたようだ。


構成
最高司令官はジャミトフであるが、軍事的な指揮は総司令官のバスク・オムが
執る。ティターンズの構成員のほとんどは地球出身者(アースノイド)であるが、
ごく稀にスペースコロニー出身の者もいた。全員が正規の連邦軍人より1階級上の
待遇を受けられる等の特典を有する。そのためか、エリート意識が強く横柄な人間も目立つ。

ジャミトフを筆頭に、スペースノイドに対して強い差別意識をもっており弾圧を加えるが、
ジオン軍の残党狩りという目的を掲げているため、連邦内ではティターンズの活動を支持する者が
多かった。

ティターンズの組織として行った行為は、残虐なものがあるが、その構成員のほとんどは30バンチ事件などを知らず、
エリート部隊であるとだけ認識していたものがほとんどであることは、挙げておくべきだろう。
320作者の時間稼ぎ@:2006/07/06(木) 23:07:53 ID:???
主要戦略拠点
グリプス
サイド7宙域のグリーン・ノアは、かつてV作戦におけるガンダム等のモビルスーツを
極秘裏に開発していたコロニーで、アムロ・レイやフラウ・ボゥ、ハヤト・コバヤシといった
ホワイトベース隊のメンバーの出身地でもある。
シャア・アズナブル少佐(当時)麾下の偵察部隊とV作戦用の一連の兵器を受領に
来たホワイトベース入港が重なり、交戦状態に陥ったため1バンチコロニーは
中破したが、戦後に修復されてグリーン・ノア1(グリーン・オアシス)の名称で
通常の居住区画として、主に軍関係者や軍属が居住した。
そして復興時にサイド3より密閉型コロニー2機を移動させ、そのコロニーを繋ぎ
合わせるという荒技を用いて2バンチコロニー=グリーン・ノア2を造り上げた。
こちらには主に造兵工廠および軍事拠点が存在する。バスクは、グリーン・ノア2を
グリプスという愛称で呼ぶことを好み、それが普及したと考えられる。
なお戦後の復興事業は一年戦争当時ですら1バンチが建造途中だった事もあってか大きく遅れていた様で、
エゥーゴの潜入作戦が行われた当時でも2バンチまでしか建造されていなかった。
グリプス戦役中盤、ティターンズはグリーン・ノア2を分離し、コロニーレーザー(グリプス2)として改装。
ゼダンの門
ジオン軍の宇宙要塞ア・バオア・クーを改装。
キリマンジャロ
ジャブローに替わる地球上の戦略拠点。山全体を要塞化した。

盛衰
ティターンズは、地球連邦軍内部で勢力を徐々に拡大し、一時はその全権を掌握するまでに至った。
しかし、グリプス戦役の中盤、エゥーゴのクワトロ・バジーナが、ティターンズの横暴を告発する演説を
ダカールで行って以後は、アースノイドの支持をも失っていく。さらに、地球圏に帰還したアクシズを交え、

コロニーレーザーを巡る三つ巴の戦いに発展。組織の主要人物が全員死亡し、ティターンズは崩壊する。
戦後、元ティターンズの兵士は暗部を隠すため或いは擦り付けるために裁判に掛けられ不当な処罰を連邦から受けている
(これはティターンズ発足の契機となったデラーズ紛争において、ジャミトフの思惑に反する行動を取ったアルビオン隊の
指揮官エイパー・シナプスとその部下コウ・ウラキが受けた仕打ちと全く同じであり、歴史の皮肉といえるだろう)。
それどころか戦後は地球連邦の正規軍であった事すら認められていないらしく、第二次ネオ・ジオン抗争期には
シャアやアムロ、ブライトから反地球連邦運動呼ばわりされていた。 また、残存した戦力の一部は、ネオ・ジオンに吸収されていった。


321作者の時間稼ぎB:2006/07/06(木) 23:28:50 ID:???
続いて、ここまで出た中でまともに取り合うに値するレスのみをピックアップし
スレ全体の総意としての設定や作品の立ち位置について再整理してみよう。

>>6
AOZとの関連性は大事だ。正直、アレが30バンチ事件の内幕まで描かなかったことは
ホッとしている。あっちが健やか青春物(?)なら、こっちは閃ハサ色のエグい
サスペンスを目指す。ティターンズという組織の中でも舞台が違えば作品カラーも
異なってくるはずだ。

8 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 00:08:03 ID:???
最後の最後に何のインパクトも無いセリフ言うのな


9 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 00:11:25 ID:???
タイトルがまんまコロ落ちじゃん
もう少しオリジナリティ出せよ


10 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 00:13:03 ID:???
とりあえず、ガリシア・オムとロストフ・ハイマンは改名・設定変更だな。安直過ぎる。
>>3のネーミングセンスも種なみ。

これ、もう三ヶ月前なんだよな・・・・・・・・つい最近の事みたく感じる。

322通常の名無しさんの3倍:2006/07/07(金) 01:22:24 ID:???
ダスタン話を再読しまたモチベが少し上がった。ちょっと書いてみよう。
323通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 06:13:42 ID:???
>>318

すまんジェリドなんて例えじゃ足りなかったわ
ロザミィ以上に異常だなおまえ

チャンネルは点いていれば目に入るものだし
それは統計上のこと
テキスト情報だけのスレなんぞは、見ないで読み飛ばし可能

それとな
クッキーの内容ちゃんと読んでるか?
ここの文章が無断転載されようが、人に使われようが
書き込んだ時点で著作権をお前自身が放棄してるんだよ、とんま。
324作者:2006/07/09(日) 00:19:13 ID:???
>>323
まぁそう熱くなるな。これ以上、俺の術中にはまることもあるまい。
325第四話「木屑録」:2006/07/09(日) 01:51:37 ID:2UmhmKhz
宇宙世紀88年2月2日。エゥーゴはメールシュトローム作戦を成功させ、コロニーレーザー
を手に入れることが出来た。しかし、Zガンダムのパイロット・カミーユ・ビダンは
アクシズの将ハマーン・カーンを殺せるチャンスを逸したと落胆していた。
それを宥(なだ)めるシャア・アズナブルは深く濃いサングラスの奥で、
レディア・クライズの事を考えていた。


彼が30バンチから生還し、アポリー・ロベルトらと共にこのアーガマで自分と共に
戦っていてくれたらと思うと・・・・・・・・・・・
もしや、今でも彼はどこかで生きて・・・・・・・いや、甘い期待などよそう。
彼を安易に戦地へ送り込んでしまったのは自分自身なのだから。
彼はカミーユ・ビダンより一回り成熟した大人の戦士として、ジャブローではなく
グリプスへの攻撃を主張する私を擁護しウォン氏を退けていてくれたかもしれぬ。
もし神などというものがいるとしたら、レディアは私には過ぎた才能だと断じて
奪い取り、代わりにカミーユを授けたのだろう。
なるほど、優秀すぎる部下よりは上司を修正してくるような駄々っ子の方が今の
鬱屈した私には適材だ。結局、私も人のことは言えぬ、アムロと同じ穴の狢(むじな)か。


彼がアクシズにいたのは非常に短い期間であった。マハラジャ提督など期待をかけていた
一部の人間しかその存在を知らなかったのだが、あの日、ルマと彼を誘ってから、
・・・・・・・・・まさか、赤い悪魔と言われるほどに成長するとは思わなかったのだ。
彼の驚異的な力が無ければゼナ様とミネバを乗せたコムサイは我々の陽動を見破った
連邦軍に撃沈されていたかもしれないのだ。
否応無く、アクシズでは彼を若手の期待のホープとして育てざるを得なくなった。
何を隠そう、ハマーンがそれなりにニュータイプの素養を見せ始めるまでは私は
彼の育成を最重要視していたのだ。
それを、「実戦こそ最も効率のいい訓練」と考え、代わりにハマーンの育成を重視する
方向に切り替えた我々の判断が・・・・・・・致命的分岐点だったのだ。
326第四話「木屑録」:2006/07/09(日) 02:11:20 ID:2UmhmKhz
「シャア大佐は赤い彗星、敵味方関係無く畏怖と尊敬を集めるお方です。
そしていずれはこの地球圏の未来を左右できる人材。
だから、私は赤い悪魔を名乗ります。クライズ家を逃げ出した私めのような
鬼子は悪魔で十分でしょう?」
そう、クライズ家はかつてカーン家と権力の座を争った因縁があるのだ。
ハマーンにはレディアが持てなかったもの・・・・・・・・そう、「姉」がいた。
彼女がドズル・ザビの妾であったことが、結果的には自ら嫌悪しつつも
ハマーンを権力の座に近づけた。
そして、公には知られていないことだが、これによってレディアは事実上
アクシズの権力中枢から追われる形となったのだ。
似ているのだ。かつての私、シャア・アズナブル・・・・・・いやキャスバル・レム・ダイクンに。

敵味方関係なく尊敬を集める存在?いや、それは違う。
本当の私はもっと嫉妬深く、薄汚く、執念深いただの鬼子なのだ。
そうだろう、アルテイシア。
私を知る人間は私の中に潜むおぞましい膿を知っている。
憧れとは、純粋だ。無知とは、純粋と同義語だ。
彼はそれを内に秘めたままで散っていって、幸せだったのかもしれない。
それも自分にとって都合のいい考え方だ。
彼が30バンチで奮闘していた頃、私は既にクワトロ・バジーナという人間に
なっていた。それは、アクシズという現実からの逃避だった。
何故、あの30バンチへ自らティターンズと戦いに向かわなかったか。

エゥーゴの組織構築に忙しかったから?そうではないだろう。
アクシズと、エゥーゴの中の旧ジオン系が、両者結託することによって
連邦軍内の一組織から逸脱してしまうのが怖かったから?
それで30バンチのティターンズを倒しても精神に「しこり」が残るから?
結局、自分自身はいつも傷つかないところにいたがるのだ。
それではいけないのだ。
カミーユが全ての痛みを飲み込んで、最後の最後まで突破しようとしている
ように、私自身も刃の森に猪突しなければいけない時が来る。
カミーユ・・・・・!お前はレディアのようになってはならんのだ!
業は全て私が背負う。
327第四話「木屑録」:2006/07/09(日) 02:57:31 ID:2UmhmKhz
UC0085.7.17 AM18:00 スペースコロニーサイド1・30バンチ

一昨日の戦いで見事、ジオン残党をティターンズ基地から退けられたことに
バスク・オム大佐はご満悦であった。彼は中尉以下の士官達全員に休暇を与えたのだ。
ガリシアも今日は、羽を伸ばすべくロストフと共にホム・ペーデに向かう。
ホム・ペーデは歓楽街、もちろんティターン1である。
ティターンズ専用地で民間人の立ち入りが制限されているティターン2とは違い、
ティターンズの人間は嫌われている。
立ち話でも、自分達の素性が割れないように努めなければ。

「久しぶりだな、こういうの・・・・・・・・」
1.5車線くらいの道路の脇に、様々な色と目的のネオンが煌々と光る。
少数民族の出身地を示唆する小粋な居酒屋、怪しげな大人のおもちゃやビデオの
店、女性のサービスを売り物にする店、そしてこの辺りではスーツ姿の男性の
姿もネオン同様に煌びやかだ。といっても仕事帰りの中年男性がキャバクラに
備えておめかしをしているわけではない。
女性専用クラブへの客引きをしている若い男性達である。
「当たり前だけど、コロニーにもあるんだな、こういうの」
ガリシアの言葉にロストフが返す。
「アムステルダムはこれよりもっと凄いのかい?」
「ん、どうかな・・・・・・凄いかな。何せ、あっちは色んな人種が居たからな。
慣れてはいたけれど、ユダヤ人は嫌いだった」

ロストフはほとんど表情を変えようとはしなかった。と、ふと狭い路地で壁に
ある一枚の張り紙に目が止まる。そもそも、もう少し広い通りの方がいい居酒屋が
あるだろうに、どうしてこんな方に来てしまったのか?
小さな居酒屋には、そこでしか聞けないマニアックでマイナーな音楽を流していたり
場末独特の喧騒がある。コンビニやファミレスとは違う、独自の味付けも楽しめる。
が、その反面予算制約から質の低い、衛生環境の悪い食卓や食材に見舞われる事も
しばしば。明日からは通常勤務なのに、食中毒にでもなったら事だ。
大体、そこらの路地の隅でトランプや怪しげな袋の売買をやっている連中の顔色は
明らかに堅気のそれではない。半世紀以上の歴史を持つコロニーサイドともなると、
やはりこういう連中がいるのか・・・と、できれば早く逃げ出したいロストフであった。
328第四話「木屑録」:2006/07/09(日) 03:18:54 ID:2UmhmKhz
ロストフが、何故か目で左を差した。そこまで警戒するか・・・
「そこの店へ入ろう。店の中で絡むわけにも行くまい」
店の看板は「ニシオギクボ」と書かれていた。何の呪文だろう?
予想通り店内は常連客と思しきオヤジ達が酒のにおいと煙草の紫煙を
撒き散らし、カウンター越しに店員と世間話をしていた。
こういう店には看板娘と言って、一人くらい可愛い女の子、それも偏屈な
店長オヤジの娘さんがいるものなのだが、そう都合のいい現実があるわけなく
店長らしき白髪のオヤジと数人のバイトと思われる我々と同年代くらいの
青年がガミガミ言われながら働いており、もう一人はオバサンだった。
なかなか繁盛しており、店員を呼んでも全く声が通らない。
ラジオがティターンズの強制捜査開始を伝えると、中年オヤジ達の表情が変わる。

「だいたいあのバスクとかってハゲ野郎は何様なんだよ」
「目の前に現れたら一撃でブチのめしてやるぜ」
「サイド1を舐めるなってんだ」
「おうよ、俺らは連邦のクソ共に従順な、他のサイドの軟弱なスペースノイドども
とは格が違うんだ」
「俺らは80年、80年以上の歴史があるんだ」
「重力に脳味噌を押さえつけられてるアホ共、かかってこいってんだ!」
「毒ガスなんて撒けるモンなら撒いてみろ。そんなんでサイド1魂は消せやしねぇ」
「この店にティターンズの野郎が来たら速攻でブン殴る。いいな?」

二人は声も出なかった。ただでさえこの私服、そこらのオヤジ共より小ざっぱり
しすぎている。怪しまれないだろうか?
「やれやれ、あたしも確かにティターンズは嫌いだけど、喧嘩は外でやってくんな」
というオバサン、下品な中年どもに嫌気が差している二組くらいのカップル。
それ、今のうちだとオバサンを呼んで料理を注文する。
「えーと、このテンプラってのは何ですか」
「あー・・・・Fried、Fried food」
「あ、揚げ物ね。じゃあポテトと唐揚げ。あと生ビール。ロストフは?」
「俺は揚げ物はちょっとな・・・・・・・・・じゃsashimiを、ハマチお願いします。
ドリンクは、こっちも生ビールで」
「かしこまりました」
329第四話「木屑録」:2006/07/09(日) 03:36:09 ID:2UmhmKhz
ガリシアは、興味深そうにロストフに尋ねた。
「sashimiって何だよ」
「・・・・・・・・・なんだ、お前気がつかなかったのか?ここは日本料理店だ」
「えっ!?何故わかったの」
「何故も何も、店員がみんな日系じゃないか。チャイニーズやコリアンとも
人種的には同じ黄色だが、微妙に違うんだよ。メニュー表を見ればわかるし。
あと、sashimiってのは生の魚肉だよ」
「生?焼いてないってこと?」
ガリシアは不思議そうだ。

「アムステルダムにだって一つくらいは日本料理店が合ったろうに。
・・・・・・・まぁ一説には中国から日本に伝わったという話もあるらしいがな。
ほら、日本は島国だろ?新鮮な魚が取れるのさ。内陸国では輸入する前に質が
落ちるからな・・・・・・確かに日本、東アジア以外では生肉の料理は比較的
珍しいからそういう反応もするか」
ガリシアはさすがに目を落として、ちょっとたしなめられたような気分になった。
「・・・・・・なんでそんな事くわしく知ってんの?」
「別に。モビルスーツと書類を上手くさばけるだけの人間にはなりたくない、
それだけさ」

sashimiを一個もらったガリシアだが、非常に不味かった。
緑色の、マスタードとも似ている奇妙な香辛料をsoy sauceと混ぜて
つけたのだが、舌が曲がるくらいの辛さだ。よくJapはこんな不味いものを
食えるものだ、と苛立っていると今度はロストフは白米の中にネバついた
妙な豆の固まりとsoy sauceを入れてかき混ぜ美味しそうに食べている。 
後で聞いてみると、はぁ、それが世に言うfermented soybeansてやつですか。
今度は一口もらおうなどという気にはなれなかった。
なるほどジャミトフ閣下は日本食がお好きなようで、いい家に生まれたもんだ、よかったね。
330第四話「木屑録」:2006/07/09(日) 03:48:16 ID:2UmhmKhz
と、慣れない日本食に舌鼓を打てないままにしていると、反対側のカウンター席
から発した嬌声でwasabiの苦しみも吹き飛んでしまった。
「てめぇ、もう一度言ってみろいぅやぁ!!!!!!!!!!」
「うるせぇ、アースノイドは地球にはいつくばってな!!!!!!」
「モンシア中尉!?」
間違いない、ベルナルド・モンシア中尉その人だ。
蹴っ飛ばされた焼酎、生ビール、ウォッカ、バーボンの数を見れば真っ赤に
染まった秋の紅葉のような顔色も納得である。しかし、喧嘩はまずい。

「中尉、逃げましょう!」
「あっ、バカ・・・・・・・・・・!!!」
ガリシアは迂闊であった。民間人のフリとして止めるか警察を呼ぶかはたまた
冷たくも逃げ去るか。そうすれば、自分達がティターンズだとバレなかったものを。
すぐに察した客達は、ガラの悪い中年親父たちだけではなく若いカップルまでも
「ティターンズは出てけ!」「この店が汚れる!」とあらゆる食器や靴などを
投げつけてくる。
完全に油を注いでしまったようであった。

「やめいっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ブシャッ!!!!!!!!!
全員の動きが止まった。
それもそのはずであろう。カウンターの1スペースに鋭く畏怖すら感じさせる
刺身包丁が突き立てられたのだから。
頭にタオルを巻いた固太りの白髪オヤジは、左右を見回しながらゆっくり
それを引き抜くと、
「俺ぁ確かに、正直言えばバスクのタコオヤジは嫌いだね。しかし、
カネを払ってる以上ティターンズだろうがジオンだろうがウチの大事な客だ。
言いたいことはそれだけだ」
その一言で、全員が着席し事態は静まった。
331第四話「木屑録」:2006/07/09(日) 03:50:08 ID:2UmhmKhz
今日はここまで。ワールドカップ見なきゃ
332通常の名無しさんの3倍:2006/07/09(日) 06:56:05 ID:???
特定の個人の占有スレってことで削除依頼出しとくわ
いい加減にしろよ
333通常の名無しさんの3倍:2006/07/09(日) 09:49:42 ID:???
>>332
いっそ旧シャアに陣取ってるSSスレ全部頼むわw

「占有」だとか大上段な事並べてないで、内容が自分の好みに合わないと素直に言えば良い。
ここの小説も前から読みづらいとは思ってたが
結局はどれも同じSSスレ、信者が付くかそういう粘着が付くかの違いだけなんだよな。
334通常の名無しさんの3倍:2006/07/09(日) 10:27:51 ID:???
ちなみに『西荻窪』には漏れの行きつけの店がある
335通常の名無しさんの3倍:2006/07/10(月) 00:43:49 ID:???
>>36:1 :2006/04/05(水) 01:52:30 ID:??? [sage]
>では、そろそろ真剣に応対しましょう。>>27さんの言うとおり私はガンダムPrincess
>を書いてる者と同一人物ですが、あちらは最近過疎っててほとんど1レスも返って
>こないうちに一話分書き終えられることが多いのでそれに慣れてしまったのです。

>>35
>心配すんな。ガンダムPrincessはもう三十話、二ヶ月以上もやってんだぜ?
>二作掛け持ちは辛いがやってみせるさ。

三ヶ月経って、まだ四話か?
肯定的なレスは自作自演、
否定的なレスには罵倒を浴びせる、
そろそろ止めれば?
キモプリ2スレもついでに止めれば?
336作者:2006/07/12(水) 18:52:38 ID:???
337通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 19:01:05 ID:UmvGS00L
338作者:2006/07/12(水) 19:03:02 ID:???
339通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 20:58:14 ID:???
機動戦士Zガンダム0085 焼そばと寿司と山葵のぶち撒かれた地で・・・
340通常の名無しさんの3倍:2006/07/17(月) 15:05:04 ID:???
保守
341作者:2006/07/18(火) 23:11:56 ID:Xi5JiJIt
ブレーキをかけてやったはずなのにまだ懲りない荒らし君が湧いてきたので
少し連絡事項を伝えておきます。

・このスレッドに書き込むときは気休めですがIDを必ず出してください。
>>317さんも同様ですが、まぁ馬鹿を気にしない柔軟な神経をお持ちなら
 構いません。しかし、このスレに粘着している彼(自演認定厨)の常套句は、最初の頃から
 お読みになっていれば承知のはずですよね?自分の身は自分で守りましょう。
・ageたくないのなら保守妥当時期まで何も書き込まず落とすこと。
・わざとらしい褒め方は極力やめてください。いずれ荒らしとみなします。
 「面白い」「読んでるよ」じゃなくて、そのちゃんとした理由を。
 >>339のような「さりげない」スタンスでやりましょう。
・金曜日の夜には多分続きが書けるはずです。ここじゃないかも・・・・

以上。

あ、あと>>317さんへ、今後も参加を予定されているのならいずれペンネームを
名乗ってください。readiox同様まとめサイトに名を残したいので。
342作者:2006/07/18(火) 23:23:24 ID:Xi5JiJIt
そういえば、最初の頃は「面白いです」だけじゃなんか皮肉屋の煽りだと
疑って、いちいち理由を聞いていたっけ・・・・・あの頃はガンダムの事しか
考えない生活だったからなぁ。
343通常の名無しさんの3倍:2006/07/22(土) 00:11:06 ID:???
>>341
了解です。考えときます。
344通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 05:19:21 ID:???
…これは、俺の夢だ。見て直ぐに解る。俺は眠っている。そうだ、夢だ。…いや、過去の記憶だ。

 『よくもお兄ちゃんを…! 覚えてなさい! いつか必ず…殺してやるから! ティターンズの犬! 』
 『俺は犬では無いぞ、お嬢ちゃん? ヤザン・ゲーブル中尉だ。敵の名前ぐらい、キチンと覚えて置け! 』

 0085、サイド1、30バンチ。当時既にティターンズに入っていた俺はガス注入には参加をしなかったが、胸糞の悪い
作戦だった。コロニー内で決起した暴徒に『無力化ガス』を注入する名目で、かなりの部隊が動いていた。俺はと言えば、
その効果確認を命じられ、2人の部下と共にハイザックで潜入していたのだ。潜入する際、味方が運んでいたボンベを
視認した。表示用の塗装を剥がされてはいたが、その形状は俺の頭の中に叩き込まれていた物と同じだった。『G−3』。
 
 『…鎮圧だと? …これでは唯の虐殺だろうが! ダンケル! ラムサス! …解って居るな? 俺達は軍人だ! 』
 『ハイ! ヤザン隊長! 急ぎましょう! 通信を傍受したら、ガスの注入準備は終わったそうです! 』
 『速やかに民間人を逃がす! 了解しましたよ! ゲリラの巻き添えにはしたく有りませんからね! 』 

 あの当時のティターンズ…少なくとも、30バンチが始まる前のティターンズ主流派には、真っ当な理念が有った。
スペースノイドとて連邦市民であり、最小限の犠牲で済ます。それを忘れては居なかった。…この事件で、強硬派が
実権を握ってしまった時から…ティターンズの理念は地に堕ちたに等しかった。…規格外れの俺が言うのも、難だが。

 『ベイトの奴に連絡しろ! 港の一部を空けて置けってな! マスコミに漏れるのを恐れて、目撃者と為った民間人を
 奴等は皆殺しにする筈だ! G−3を撒く奴等に軍人の良識など期待するなと言って置け! 俺は少しでも多くを…』
 『隊長! 何を…』
 『コロニーに穴を空けて、ガスを逃がすんだよラムサス! ダンケル! お前はベイト達と共に港を抑えろ! 行け! 』 

 俺はハイザックの全武装をコロニーの『窓』に向けて発射した。…コロニー公社が緊急警報を流すのを期待しての事だ。
期待通り『窓』は割れ、一切合財を外の『宇宙』に吸い出される『穴』が出来上がる。…これで少しは時間が稼げる筈だ。
 俺の目の前のモニターに、少女が流れて行くのが見える。14歳位の、髪の長い娘だ。俺はマニピュレータで娘を捕まえ、
保護する。…今にして思えば、ただの気まぐれだったのかどうか、解らない。どの道、あの世の贖罪など期待しては居ない。
 俺は軍人だからだ。人を飽きる程、殺して来た。沢山、殺した。1人の罪の無い人間を救ったからと言って…許しなど期待
はしない。俺に出来る事は…少しでも『無駄な』犠牲を少なくする事だけだった。…殺しに慣れている奴の方が、巧くやれる。

 『…頭を打ってはいない様だな…。運の良い娘だ…」

 被っているベレー帽と巻き上がるチェックのロングスカートを必死に押さえていた御蔭だろう。丁度ジュードーの『受身』の
体勢でハイザックのマニピュレータに『ぶつかった』のが功を奏した。俺は止せばいいのにハッチを開き、怯える少女を抱え
コックピットに連れ込み、リニアシートに座りハッチを閉じる。…俺が、救ってしまったのだ。毒喰わば皿までの心境だ。

 『なんて事すんのよ! ティターンズ! コロニーに穴を開けるなんて…! 』
 『お前の名前は! お前の家族が危ない! 今、このコロニーにガスが注入されているんだ! 黙って補助シートに座れ! 』
 『!! …ルー・ルカ…』

 気の強そうな目付きで俺に突っかかって来た娘は、俺の剣幕に押され、黙った。…当然だ。俺は子供だろうが餓鬼だろうが
女だろうが、スペースノイドだろうがアースノイドだろうが容赦はしない。そいつらは俺と同じ人間で、赤い血が流れているからだ。
 
 『隊長…! アレを…! 』
 『糞…! 間に合わなかったか…! 』

 …それは悪夢だった。元気そうに歩いていた子供達が、喉を掻き毟り、首から血を流して倒れて行く。ベンチで愛を語らって
いただろう若い男女が、嘔吐を繰り返し、白目を剥いてのたうち回る。生物と云う生物の命が、俺の目前で風前の灯火の如く、
揺らめき、そして消えて行く。…全天周囲モニターは残酷だ。その全てを映し出す。補助シートに座った少女は、肩を震わせ、
泣いていた。静かに…すすり泣くでも無く、ただ、涙を流して…。それを俺は、美しいと思った。怒りからの涙と、悟ったが故に。
345通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 05:20:15 ID:???

 『…そん…な…』

 少女が、やっと言葉を発した。遙か眼下に見える、のたうち、痙攣する少年に見覚えが有るのだろう。
口に手を当て、信じられない、と言った蒼白な顔をしている。…元より大理石の如く白い肌をしているのだが。

 『知り合いか? …済まんがもう、手遅れだ…』
 『助けて! お兄ちゃんを…助けて! 』

 俺は懇願する少女に首を左右に振った。Gガス散布下の大気中だ。ノーマルスーツを着用している俺は
ともかく、この少女は酸素マスクすら持っては居ないのだ。少量のガスに、皮膚が触れるだけで死に至る。
Gガスが旧世紀のVXガスよりも更に凶悪な性質を持っている事を教導団時代に俺は、叩き込まれていた。

 『…俺に出来る事は、早く楽にしてやる事しか無いんだよ…』

 俺はハイザックにビームサーベルを握らせた。俺のハイザックは、マシンガン装備だ。ジェネレーターの
出力の関係上、ビームライフルとの併用は当時は不可能だった。…近接武器が強力な方が、俺の性に合う。
 俺はスティックを操り、ゆっくりとビームサーベルを少年に近づける。俺の意図する行為に気付いた少女が
俺の右腕に縋って必死にスティックから引き剥がそうとする。…俺は、無言で少女を振りほどき、全天周囲
モニターを構成する壁面に叩き付けた。そして迷わず、苦しむ少年をビームサーベルで炭化させ、塵にした。
 少女はその一瞬の光景を…細大漏らさず目にしていた。少女の秀麗な顔は、怒りに歪んでも…綺麗だった。

 『よくもお兄ちゃんを…! 覚えてなさい! いつか必ず…殺してやるから! ティターンズの犬! 』
 『俺は犬では無いぞ、お嬢ちゃん? ヤザン・ゲーブル中尉だ。敵の名前ぐらい、キチンと覚えて置け! 』
 
 俺は敢えて、少女に名乗った。これから少女は、天涯孤独の身と為るだろう。支えと為る物が必要となる。
当時の俺が家族を殺された恨みを晴らすために軍に入り、生き残る術を身に付けた様に、この少女にも…
怒りを向ける対象が必要な筈なのだ。…だが、この少女、ルー・ルカはガスを散布したティターンズ兵の顔を
知らない。ティターンズは少女の華奢で優美な細い腕で倒せる程…情け無い軍事組織では無いのだ。

 『俺がティターンズに入ったのはなぁ! ジオンが俺の家族を皆殺しにしたからだ! 借りを返しただけだ! 』
 『…だからって…だからって…! 何で…何でなのヨォッ! 』

 俺を憎む事で、生きる支えが出来るのならば、俺は喜んで憎まれよう。それが俺に出来る、精一杯の事だ。
俺を殺そうとする目的のためならば、どんなに辛い事でも耐えられる。そしてその経験は…お前の血肉と為り、
生き延びる力と為るのだ。少女は泣きながら俺に縋り付き、拳を、膝蹴りを、打撃を…俺の身体に浴びせ続けた。

 『離れろ! この反応は…敵か! 』
 『エゥーゴが…! 来てくれた…! アンタもこれまでね! ヤザン・ゲーブル! 』

 俺は補助シート目掛けて少女を振り払った。ポスン、と少女は呆気無くシートに落ちる。俺は少女に向かって
歯を剥いて、憎憎しげに哂ってやる。…悪役を演じるのも、悪くは無い気分だ。道化を演じるのも、久し振りだった。
346通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 05:21:02 ID:???

 『06の高機動型が3機…? 情報は本当だったのか…おい! 交戦の意志は当方には無い! 住民の… 
  30バンチ市民の生き残りを…民間人を保護した! スペースノイドの大義を標榜する団体に任せたい! 』
 『た、隊長…?! それは利敵行為そのものです! 』
 『ラムサス! お前も港に向かえ! これは命令だ! いいな! 』
 『…了解! ヤザン隊長、ご無事で! 』
 
 俺は掟破りの、接触を試みる。…俺一人ならば何の問題も無いが、民間人を乗せている。むしろこいつ等に
保護して貰った方が、少女にとって幸せだろうと判断したのがその理由だった。少女は信じられない、と云った
顔で俺を見つめていた。…それはそうだろう。とても『俺はティターンズだ』、と見栄を切った男の台詞では無い。
 ビームサーベルを収納し、マシンガンまで置いて見せた俺のハイザックに…高機動型06は発砲を開始した。

 『…う、嘘…! 何で撃つわけ?! 』
 『フン! 信用せんのは当たり前と言う事か! ティターンズは貴様等よりもまともな軍事組織なのだがな! 』
 『二重の意味で困るのだよ! 30バンチは墓標と為らねばならんのだ! ティターンズは飽くまで虐殺者で
 居て貰わねばならん! 我等スペースノイドの大義のためならば、多少の民間人如きの犠牲は止むを得…』

 コイツは本物の『ジオンの亡霊』だ。デラーズ紛争を引き起こしたテロリストどもの正統後継者だ。それならば
生かして置く必要は…これっぽっちも存在しない。俺は置いたマシンガンのストックをハイザックの足で踏んで
起こし、マニピュレーターに装備させ、正面の06に向けて発砲する。命中確認! …この、アマチュアがぁ! 

 『…子供のお前にも解り易く解説してやろう! お前は頭の悪いこいつ等にとっては、かなり邪魔な存在なのさ!
 お前がティターンズの俺に助けられた事実もそうなんだが、エゥーゴが実は事前にGガス攻撃を察知していて、
 それを看過していたと言う事実を知ってしまったからなぁ! しかし馬鹿な奴等だな! 高度な政治と云う物を、
 全く、理解して居ない! 』

 左右同時に掛かってきた06を、俺は右腕に装備させたマシンガンと、左腕に装備して、即座に発動させたビーム
サーベルを交差させ、仕留める。…何処かで見ているだろう、エゥーゴのプロパガンダ部隊は、歯噛みしている事
だろう。何せ、今のは、映像栄えがするMS戦闘だからな! …俺の今の戦闘は『魅せるため』の教導団の技術だ。

 『どういう…こと? 』
 『ン…、お前みたいな綺麗な娘に、涙ながらにマスコミの前で『ティターンズの非道』を語らせれば、即、俺達は
 外道認定をされる。…俺はこの民間人にも累を及ぼした、大量殺戮行為を許せん。だからお前を譲ろうとしたの
 だが…奴等は千載一遇の好機を逃がしたって寸法だ。…自分の高価値が理解できたか? ルー・ルカ? 』
 『…顔に似合わず…アンタって頭良いのね? 』
 『…ティターンズは一応、エリート軍人の集団だ。最も、軍人思考しかやれん連中がこんな事をしてくれたがな?』 

 これからどうするの? と云う顔で少女が俺を見る。…俺の解説は少女の好奇心を刺激したらしい。…先程まで、
哀しみと怒りを抱いていたのが嘘の様だ。…ん? 背後にもう一機か! フン! 偵察型風情が俺に敵うモノ…!?

 『…隊長! ヤザン隊長! お見事でした! でも…俺はそんなに力不足ですか? 』
 『命令違反だな、ラムサス・ハサ? …港はどうなっている? 押さえたか? 』
 『アル・ギザが後20分で入港するそうです! ヤザン隊長には『障害排除』を願いたい、との事です! 』
 『障害排除って…? ティターンズがティターンズを敵にするのッ?! 』
 『大人の世界は複雑なんだよ、お嬢ちゃん! 舌噛むなよ! 』

 無茶な事を言うものだ、あの艦長も…。最も、一度死んだ事に為っているだろうから、怖い者など何も無いに違いない。
さらにこれを引き起こした『脳味噌筋肉野郎』のバスク派には恨み百倍の口だからな! やって見せるさ! 味方殺しをな!
347通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 05:23:46 ID:???

 その後俺達は、港に着いた『アル・ギザ』とともに脱出し、艦長の伝手で少女を『ラビアンローズ』に預ける事にした。
脱出の際、少女を乗せて派手に暴れた俺は、どうやら少女の進路を決定する事に寄与したらしいと風の噂に聞いた。

 『きっとアンタより腕のイイMSパイロットに為って、必ず殺しに来るから! ティターンズのヤザン・ゲーブル! 』
 『期待しないで待ってるぞ? お嬢ちゃん? 最も腕試しの途中で、俺以外の誰かに堕とされるかもしれんがな?』
 『アンタがそれまで生きてるって、保証も無いけどね! …ぁりがとぅ…』
 『はん? 何か言ったか? じゃあな! 頑張れよ、エゥーゴのルー・ルカ! 』

 『ラビアンローズ』で別れてから、不幸なのかツイているだけなのか…それから一度も少女とは遭遇しては居ない。
しかし何故俺は久し振りに、『夢』を見ているのだろうか? 何時も、何も見えなかった筈なのに…。疲れて、いるのか?
348通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 20:33:56 ID:Y9Kd964Z
なにげにヤザンいいなw
349作者:2006/07/28(金) 01:09:52 ID:???
ありゃ、荒れてるかと思ったら静かだな。あいつアク禁食らったのか?

まぁそれは置いといて、重大発表です。
突然ですがこのスレ、やめることになりました。おさらばです。
もちろん、「機動戦士Zガンダム0085 毒ガスの撒かれた地で・・・」はまだまだ
終わりません。
言うまでもないことでしょうが、ここではない別の場所に活動拠点を移すという
ことになります。各自、様々なルートで目的地に辿り着いてください。

こんなに荒らされながらも協力してくださったごく僅かな皆さん、突然に勝手な
発表で本当にすいません。が、個人的に今年は非常に多忙でこれ以上掲示板という
媒体で続けていくのは精神的にも時間的にも無理という結論に達しました。
>>343 >>344->>348さん、貴方達は(同一人物かもしれんけど)私のような若輩と
違って2chに留めておくには惜しい実力者だと思います。
いや、そんな遠まわしな表現せずとも、本当に凄いものを作ってやろう!という
気持ちがあれば、どうかこれからもよろしくお願いします。
SS書きとして名を売りたくないとお思いでしょうが、大丈夫です。そこは私のほうで
何とかしますので。何も言わないでおくと、ここで書き続けられてしまいますからね。
それだとあまりにも失礼ですから。
では、次なる戦いの場でまた会いましょう。

最後に、こういうスレになってしまったのは自分の力不足もあるのですが、4月頃から
忙しくなってとても二作掛け持ちなんてできる状況じゃないのに見切り発進して
しまった自分のミスでした。すいませんでした。

350通常の名無しさんの3倍:2006/07/28(金) 23:45:14 ID:kvI1oLpK
一応乙と言っておくか
351通常の名無しさんの3倍:2006/07/29(土) 00:21:04 ID:???
楽しみにROMってた者ですが、ヒントくれないと困ります。
352通常の名無しさんの3倍
乙もなにも、ただウザかったw
あとはスレあぼーんを待つのみw