1 :
通常の名無しさんの3倍:
さあ、語ろう
2
さぁて、これからタップリとデミトリーを開発してやるぜ。
4 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 00:34:06 ID:77O2YLrt
_ ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!いっぱい!おっぱいぱい!
⊂彡
日誌と聞いてなんとなく
かゆい
うま
記念に記帳して帰りますね。
例のアレ、一体どのような展開になるんでしょう?
そろそろあの二人を連邦に引き渡してしまえばよろしいかと……。
どういう展開にするんだろうね。
このままデミ=シャアってことにして、ヘタレクワトロの理由付けにするとか
でもデミたん出っ歯だからな…
けっこう人多いなw
隣接age
矯正
誰もいないのですか?
あげ
725 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/03/22(水) 01:35:36 ID:???
>シャアがバーを始めたらしいよ
>デミちゃんもいってみたら?
シャアがバーテンダーって言う設定も良いかもしれません。
あのスレは連携が上手く取れて凄い!
素晴らしい。
よしコッチも負けずに連携だ
まずは、しりとりだ
ザクレロ
↓
ロラン
↓
orz
このスレの住人は酷いなw
ゆっくり行かせて下さいm(^−^)mね
落ちが無いのはどうも・・・・・。
笑いが無いのはどうも・・・・・。
一日中考えて、
一週間考えて、
やっと捻り出したネタを
一気に数行書き上げる。
これぞドミ&デミの生き様よぉ!
こんなもんでどおっすか?
初期の、ただただ作者様のレスだけが綴られスレ自体も深く潜行し、
「こんなモンの更新を楽しみに待ってるの漏れぐらいだろうな」
なんて思ってた頃がナツカシス
初期の、ただただ自分の作品だけが綴られスレ自体も深く潜行し、
「こんなモンの更新を楽しみに待ってるの誰もいないだろうな」
なんて思ってた頃がナツカシス
保守ついでに一言
>>19のスレでは実はまだデミたんが出てきてないんだ
きっと職人さんたちや住人たちがドミトリー(仏)氏の降臨を期待してあえて出さないようにしてるんだと思う
ネタ投下の気分転換にちょっとだけでも他スレに出張してみては?
宣伝行為だと思われると申し訳ないのでまたROMに戻りますノシ
>>28 えっと、>19のスレの住人なんだけど(デミたんのスレのほうが見てるのは古いけどね)、
デミたんスレと例のスレの住人はかぶってるようでかぶってないみたい。
デミたんスレのネタはあんまり出しすぎない方がいいかも。
わかる人にはわかる、程度で。
このスレのネタとか出さずにただデミたんが来店すればいいだけジャマイカン?
ま、そらそうだ
あーらヨット学生服
たしかに例のスレには呑みに行ってない希ガス、とにかく皆さん!
静か〜にデミたんの登場を待チルダさぁ〜ん!
33 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 19:23:51 ID:KdMLt9IQ
ドミトリーって本当にフランス人?ロシア人にこの名前多いんだけど。
ってageてみる。
ジオン人だろ
35 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 23:08:41 ID:qm2rdrxN
カキカキきゅっきゅ。
今日の日誌つけときました。^
ドミトリーさん、たまにはこのスレ来て下さい!この軟弱者!
と、言ってみたゴメンネ、ドミトリーさんm(__)m
数少ないご愛読者の皆さん、たまにはこのスレ来て下さい!この軟弱者!
と、言いっぱなしにしてみた。
来ました
ありがとうございます(*^0^*)
212 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 17:29:36 ID:???
子供たちが面白半分に殺虫剤を持って虫を殺して遊んでいた。
ガガンボを見て巨大吸血蚊だと思い込んでいたらしく目の敵にしていた。
「落ちろ蚊トンボ!落ちろ蚊トンボ!!」
と、叫びながら殺虫剤を噴射しているところを、
シロッコさんが身を挺してその蚊柱を守って
その場で子供たちに、
「これはね、ガガンボといって人の血を吸わない昆虫なんだよ」
と、教え諭してその場を去ってゆきました。
もちろん、その後気分が悪くなったシロッコさんは、
子供たちからは見えない小屋の物陰でそっと吐いていました。
「子供たちの無邪気さを奪ってはいけない。これでいいんだ。・・・」
と、薄れ行く意識の中でつぶやいていました。
これが私が目撃した「カトンボ事件」の一部始終です。
ドミトリー(仏)40歳 独身 会社経営
というレスを見た
シロッコスレで
750 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 06:27:22 ID:???
ブルさんは登場済みじゃまいか?
居ないはずのシャリア・ブルが居る。双子かな?しかもニュータイプ
わかった! きっとブルツー・・・・・うわなにおするchしlskl;k
「キュンという感じ!きっと白いモビルスーツのパイロットが来たのだ!ブルブルブルブル〜(お風呂中)」
白髪のシャリア・ブルツーって面白いかも。
どうせ、黒歴史以上に変なベクトルを進みつつある訳だし、
旧シャア板を追放されるまで、勝手にやりますか?ねっ(*^^*)
通称はオヒョイ-Uでしょうね。
ドミトリーさん、新作まだか〜いな?
お、落ちてる…!!
引かれたんだよ
重力にな
ドミたんがアムロに撃墜されて… ・゚・(ノД`)・゚・
こっちで続きやってもらえないかな…
dat落ちって……、もう続きが読めないのか?
ごめんね。
仕事が忙しくて・・・。
保守しておいてもらえば良かったね。
ドミトリー、落ち込むなよ…。こっちで続けないか。
くそっ、しょうがねえな!
ってわけでもないですが、過去ログサイトでも作ります?
53 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/25(火) 00:16:52 ID:5nPfBce8
ザクレロにも大気圏を突破する能力は無かったか…
>>41 全裸で登場?>ブルツー
>>53 乙。前スレ落ちちゃったからログから読み直したんだが波乱万丈だな。
上司や職場の愚痴から連邦潜入まで一気に読んだよ。デミトリー面白いわ。
56 :
52:2006/04/27(木) 10:22:05 ID:???
おう、載せろ載せろ。
58 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/30(日) 18:55:17 ID:ugQ0O1Lt
ほしゅ
モビルアーマーのテストパイロットとして、デミとブルって正反対だな
二代目シャアのその後って、話が想像できないな。突飛すぎて。
最近、落ちるスピードが速いですね。
たった一週間黙考している間に落とされているとは、
つらいものがアリマス。
シャアをさっさと放り出しておけば1000までいけたのかも。
やはりシャアは疫病神でアリマス。
保守
保守
ブル2ですか・・こっちの板で外伝書きますか?本編にからめて
・・・・・・って、本編はまだ宴会ですねw
ドレンがさん留守中の、キャメル艦隊で起きた珍騒動なんていかがでしょう
本編が優先じゃぞ ま、ええんでねーの
機体age
67 :
偽ドミトリー(露):2006/05/30(火) 20:02:31 ID:qIJ2OJNy
デミトリーの開発日誌 シャリアブル外伝
第1話 北極星の男
軽巡洋艦キャメルのブリッジは灯りを落として静かだ。ドレン提督は会談と称して宴会に出かけ、士官の多くが随行しているからだ。
パトロール任務は継続している。しかし、前線から遠く離れたこの宙域で連邦も味方の遭難機も有りはしない。
この、キャメル艦長はパトロールに向いた男だ。パトロールに配属されて喜ぶ臆病者も、残念がる蛮勇者も、どちらもパトロールに不向き。
その点、堅実に職務をこなすパトロール向きな艦長にとって、ドレン提督は最も適切な上司といえよう。
静かだ・・・・キャメル艦長は相変わらずコンソールを眺めている。
そういえば、ドレン提督が任官してきた時、みんなドキドキものだった。
中央の布告で艦隊に提督ポストが新設され、なんか左遷された文官が来るらしいのだ。皆、最悪の人事を想像して恐怖した。
ところが、ふたを開けてみれば、ソロモン要塞のドレンさんではないか。一安心だ。
実際、ドレン提督はよくやっている。実直に任務をこなすだけでなく、官僚相手に一歩も引かない交渉だってやる。
艦隊は・・・・・・すべて順調・・・・・
センサーが北極星方向に異変を捉えたが、誰も気づかなかった・・・・・
うちのギコナビさんからなぜなのか書き込めなくなったとです。
69 :
偽ドミトリー(露):2006/06/01(木) 12:12:30 ID:TVukeYYx
30分は何もなく過ぎた。唐突に第一種警戒警報が艦内に鳴り響き、赤ランプが明滅する。乗員が持ち場に殺到する。
「何事だ?!」キャメル艦長
オペレーター「天頂方向に高速移動体発見、モビルスーツですっ!敵味方識別無し!」
航法下士官「ランデブー軌道、出ました。1分後に邂逅軌道です。回避不能」
「敵か?・・・・やられた・・・・」手落ちはなかったはずだ。しかし、今は次の行動だ。
オペ「ザクの搭乗完了、いつでも出れます・・・・・・・艦長?」
艦長「・・・! よし、艦と平行軌道をとれ、指示があるまで発砲は控えろ、出撃!」
オペ「僚艦との連絡取れました。到着は4分後・・・・・あ! 正体不明機から電信ですっ、艦長!第一種機密電文!艦長席に送ります!」
キャメル艦長は安堵のため息を漏らした。どうやら敵ではないようだ。忌々しい・・・
しかし、第一種機密電文だと?窓際から艦長席に漂って戻り、副長に目配せする。これは艦長しか見る権限がない。
オペレーターは構わずに報告を続けている。「モビルスーツ三機、画像でます・・・機種適合無し・・・・・えと、一機はヅダです、試作機の」
ヅダを先頭に2機のゲルググマリネーがエスコートしている。新型なので登録が無いのは当然だ。
接近するにしたがって画像が鮮明になってくると、コンピューターが所属マークをスキャンする。
「後方の2機は海兵隊LM所属、ヅダは・・・・あれれ?」
不鮮明な画像だが、ヅダのエンブレムは明らかにジオンではない。
オペレーターは、画像検索にエラーが出たのを見ると、検索SQLを手早くチェックする。
試しに古いテーブルまで検索を広げると・・・出た!「ヅダの所属、サイド2コロニー公社木星ヘリウム船団です。」
艦長席で暗号電文の解答が終わった・・・・・・ふむ本物だ・・・・!!!!
公王府勅命 機密文書扱いだとぉ? 本文は・・海兵隊コードの2重暗号か・・・
『VIP輸送 シャリア・ブル』 なんだ?これは?
>>68 なんかギコナビスレのファイルを入れるらしいよ
71 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/01(木) 15:41:07 ID:GYA8ZXQF
今日ぼくは死んできます・・・。byデミトリー
偽ドミトリーです。 (そういや、ロマノフ王朝の前にもそんなのが・・)
変な外伝を始めてみましたが、いかがでしょう?
ドレンさんが留守のキャメル艦隊で起きた事件ですから、本編とは無関係ながらも同じ時系列です。
(長考、ご容赦をw)
ドミトリー(仏)さんを見習って、細かい描写をできるだけ入れたいですね。本編ってイメージのおもちゃ箱状態w
でも、キャメル艦長とか、名無しキャラをどうやって俺ガンに料理するか、難しいですね〜
俺ガンな名前をどんどん入れたほうがいいんでしょうか?あるいは逆か? 悩みますね
デミトリ本編で深く語られなかった(語らんでいいw)、シャリアブルの日常や交友関係、あと『名セリフ』! 書きたいですね
ヘマへのツッコミやご要望、遠慮なく戴ければ幸いです。 それでは次回あたり、シャリアブル再?登場です
>>72 素直にソフトウェア板のギコナビスレにいってらっさい
PCカテゴリ→ソフトウェア板
ありがとうございます。
探ってみます。
やってみるさ!!
ダメでした
78 :
偽ドミトリー(露):2006/06/10(土) 19:48:15 ID:yNTPWpx8
うーむ・・・・キャメル艦隊の人たちって、全員が名無しさんなんだよね。
困った。ストーリー書いてて、名無しばかりだと嫌だし、俺ガン全開も嫌だし・・・
よーし♪ 名無しばっかりの理由もネタにしようっと♪ でも、どうしましょうね?
Zなんかに登場する人物も・・・・・使えないわな。
いずれキャメル艦隊は全滅だもんね。
そろそろ落としますか?
気が抜けた・・・・
極限まで張り詰めた艦内の空気は、アンノウンが敵でないと判って、ただただ安堵するだけだった。用のない乗員が寝床に帰ってゆく。
ブリッジの数少ない士官たちも、厄介な残務に追われつつも、陰でほっと一息つくのを隠せない。
一人だけ忙しいのが、本国士官学校あがりの副官君だ。
レッドゾーン全開でエンジン出力100%まで、たったの2分。砲塔が少ないムサイ級軽巡としても、このタイムは完璧以上な整備の賜物だ。
だが困ったことに、無理な起動でメインエンジンが過熱しており、こいつをヘリウムで冷却するのに15時間はかかる。
しかも、やたらに冷やしては貴重な冷却剤が消耗するし、熱いガスを宇宙に放出しながら直線飛行したら、遠方の連邦軍に赤外捕捉されてしまう。
軽巡洋艦キャメルは、モビルスーツとのランデブー軌道に乗って僚艦と合流中。
この宙域に連邦軍は居ないはずだが、要人を受け渡す以上、『これ以上の』油断はできない。
排ガスをランダムな方向に散らすため、惰性で進む艦の姿勢を、副官君が神経質にぐるぐる回すので、揺れるたびに寝床の兵員から文句が出るのは仕方ない。
キャメル艦長もブリッジで後悔していた。『うっぷ! さっきのカレーと胃液が・・』
3機のモビルスーツは通信のあと、姿勢を180度回転。今は猛烈なプラズマを吹いて減速中だ。キャメルからもはっきり見える。
念のために出したボイド特務少尉のザクと、すれ違い際にレーザー通信を交わし、ランデブーポイントを確認したから、少尉の任務は終了した。
『スターライトか!』少尉が憎々しげに呟く。
スターライト。簡単な外付け電灯だ。しかし、背景の星と同じ波長をで光れば、モビルスーツの光学識別は極めて困難となる。
偵察中のムサイが欺かれたのは、ムサイの蛇行を先読みして、常に北極星を背景に蛇行して接近したから。
推進器のプラズマ炎を隠す”幌”(ほろ)を背中に付けているのも、ゲリラ慣れしたエキスパートの有り様。
幌付きのモビルスーツは中世日本の騎士みたいだ。本来なら伝令を目立たせるための幌だが、これは黒くて目立たない。
3機は−4Gで急減速しており、今やパイロットは猛烈な重力に耐えているだろう。
故障もちのザクに追従は無理とあきらめ、反転して緩やかな減速に入ったザクのコクピットで、少尉は物思いにふけっていた。
『こいつら何者なんだろう?』
キャメルのブリッジは人の出入りが忙しい。仮眠中の士官もさっきの警報でたたき起こされ、そのまま当直に入っているからだ。
艦長は副官たちから進捗を聞いて席に戻ると、固いシートの上でブーツを緩めて一息ついていた。
『密勅、どうしよう』 うわ、ハモった?!
はっと見上げると、艦長の肩にポンと手を置いて、シャリアブル大尉が天地逆に浮かんでいた。
キャメル艦長「ぅわ!、居るなら居ると言え! ?・・・言ぇ? いやいや、いつからそこに居ました?」
シャリアブル「たった今。えーと、シャリアブル・・・・ほらやっぱり僕のだ♪」艦長席の背もたれを掴んでグルっと端末に向き合う。
艦長「こ、こら、見ちゃいかん。」慌てて手をかざすが意味ない
ブル「でも、僕のでしょ?関係ないじゃん」
艦長「うーむ、確かに、そうですが・・・・」 まぁいいか、この疫病神VIPを厄介払いだ。」
ブル「艦長さん、最後の方、声になってるよ♪」浮かんだまま笑ってる
艦長「!!??!!」
咳き込む艦長を見かねて、オペレーター補が手許のお茶を持ってきてくれた。
パックをひったくる様にして飲み、ようやく人心地つく。やれやれ
ブリッジで液体飲料は厳禁。無重力で水滴が飛ぶと機器の隙間に入って大変だから。これはゼリー茶。
キャメル艦長「ふぅ・・・・あ、どうもね、鳥頭君」
オペレーター補「えー、艦長までそう言いますか。これ、お下げしてよろしいですね。」
艦長「ああ、お願いするよ。ありがとう補佐。 ところで大尉、お迎えのモビルスーツがデッキに来ます。荷物をまとめておいて下さい。」
ああ、これで厄介払いが(ぱぁ〜!)・・・いや、声に出さないよう注意しようw
『胃に来てるな・・・・』
会議(シャアのザンジバルで宴会)のため不在のドレン提督が、本国から何を言われたかは知らない。
でも、シャリアブル大尉の乗艦を押し付けられた方は、ひたすらストレスが溜まる。
砲塔が少ないとはいえ、(ジオンには珍しく)慢性的に定員オーバーのキャメルには、空きの士官個室など無い。
まさか兵員用に増設した蚕棚(簡易ベッド)で寝かせる訳にもゆかず、ドレン提督の部屋(旧艦長室)にお願いする訳にもゆかず、
結局、狭い艦長室(旧副長室)で、シャリアブル大尉と同居になってしまったのだ。落ち着けない・・・
しかも、大尉ってのがこう、スキンシップ過剰なのだ。人でも物でも、やたらめったら触りたがる。付いたあだなが”お触り大王”
整備員「メカニックは指で触ってなんぼだ!宇宙服着て作業ができるか!」
通信士「あれってセクハラの一種ですか?」「エッチなことはしないよね」
パイロット「男に触るのは何だろな、変態なのかな?」
医務官「軍機ですのでコメントは控えさせて頂きます」
調理士「よく手伝ってくれるよ」
主計官「VIPが乗ると補給が優先されるので助かります」
下士官「あれ位、堂々としてれば文句なしだな」「俺がやったら委員長に殴られたがな・・」
デッキ員「いろんな事、勉強してるよな」
補給員「むしろ俺たちのスキンシップが足りないのかも知れんな」「ストレスだろ?生野菜と魚、増やしてやるよ」
操舵手「早く結婚すべきだ」
看護兵「重傷患者に接する場合でも大尉と同じですよ。怪我の治りが違いますから・・・あ、ノーコメントです」
信号兵「あれ絶対セクハラ!」「男の人にも触るよね」「まさか♪」
清掃員「器用だね」
スマソ、関係なかったなw
「8分15秒後にモビルスーツが着艦予定。指揮官機と護衛2機、本艦への乗艦を要請しています。」オペレーター補が伝える。
キャメル艦長「謹んで乗艦を歓迎すると返信!」
木星船団のモビルスーツがシャリアブルを収容してどこへ行くのか、それは自分らの知ったことではない。
淡々と任務を終了し、このみっともない警報履歴を全て消せば完了だ。疲れた、でも、これで楽になる・・
完了だ・・楽になれる・・・って、おい! シャリアブルがオペレーター席で何か話してる!
オペレーター補「へー、こんな削除コードがあるんですか。裏コードですね」
シャリアブル「そうだよトリ頭ちゃん。イベントログは消去させないための規格だから、艦長さんの権限でも消えないんだよ。」
オペレーター補「えー?大尉まで変なあだ名使うんですかー、参ったな。あ、本当に削除応答が来ました!」
こらこら、あいつオペレーター席で肩越しに何やってるんだ?つーかほら、おでこ触ってる!
宙を漂ってきたキャメル艦長が、二人の間にどすんと割り込む。
キャメル艦長「大尉殿っ、削除コードが入用ですかねっ?」
シャリアブル「うわぁいっ♪全削除するんで、こっちにアクセス権いただけません?」
艦長「・・・・・・・承認!」←声紋認識
ブリッジのマイクは共用されているので、そのまま艦長席のコンソールから、オペレーター席に画面が移る。
ブル「出た出た。それでね、いい機会だから憶えておこうね。これが公王府勅命最高機密電文、デギン爺ちゃんのお手紙。受信者でスーパーユーザーすると」
オペ補その2「あれ?こっちも画面が出ましたわ。何ですかこれ?艦隊所属表に王冠マークが。」
ブル「これがフリートコードなんだよ。ほら、艦隊最上位のキャメルから、2隻のコンピューターに超root権限で入れるだろ?」
オペ補「わ〜本当!上位ログまで削除できるんだ。でも大尉、これって違法じゃないですか?」
艦長「・・・違法ではない。超軍規措置の適用だ。 ちょっと大尉、子供を厄介ごとに巻き込むな。今はただでさえ・・・」
ブル「REDOログも忘れずに消すんだよん♪ 艦長、大丈夫だって♪この娘たちに必要なのは、艦長が一番判ってるよね?」
キャメル艦長は黙っている。そうする間に削除終了。ビープと同時に画面がフラッシュして、普段のコンソールに戻る。
これでキャメル艦隊全艦からは、シャリアブル大尉や3機のモビルスーツに関する情報も、記録も、監査履歴すら消えた。けん責も始末書も無い!
晴れやかな笑顔でシャリアブルが宣う。「さぁ!デッキへ来客を出迎えに行こうじゃないか♪」
指揮の引継ぎを忙しい副官君に行い、キャメル艦長はシャリアブル大尉を追ってデッキに向かう。一人にすると何やるかわからん!
しかし・・・来客だと?不安だ。
デッキの連中が慌しく受け入れ準備しているが、手入れと訓練の行き届いた艦らしく、無駄というものが無い。
「大尉おつかれさん〜、」「ハイドロポンプ、直ってます」「ヅダってんですかぃ?ここでエンジン開けます?」「熱バイパス頼むー」
手を振って合図しながら、出迎組は退避ブースへ入る。
「キッカケ来まーす! 5、 4、 3、 2、 !、 ワッチ!!」
正確無比なタイミングで、ヅダが進入軌道に入り、デッキの奥から直線視野2`に入る。見えた!
灰色の指揮官用ヅダは、まるで中世の騎士みたいだ。とくに長距離アンテナのこいつは、額が大きい。
護衛のゲルググMも幌と長距離用プロペラントを装着しており、大柄なスカートを付けた機体がさらに大きく見える。
左は通常色だが、右の機体は茶/紫のスペシャルカラーで、指揮官機のようだ。さすがVIPの護衛。
しかしこのカラーリング、宇宙空間では輪郭が崩れるせいか、通常色のモスグリーンよりも小さく見えて得だ。
慣性飛行に入ったグリーンのゲルググMが「ぷしっ!」とプロペラントを放棄。
刹那!先行していたヅダが神速で蹴りを入れた。
コクピットに衝撃がもろに入ったか、失神しかけて我に返り、機体をきりもみから立て直す。
『もったいない!!拾ってこい!』 民生用の港湾無線16chの大音量が宇宙に流れた。
海兵隊の指揮官機は、目もくれず護衛に徹している。見なかったことにしてるな。
そうする間に、ヅダが着艦デッキに音も無く一点着地し、ゲルググMがそれに続く。
見事な着艦。真空堰体壕から飛び出したメカニックたちが、拍手で出迎えた。
ワイヤーでMSが手早く固定され、プロペラントを拾っているゲルググに軌道変更が伝えられると、艦が急旋回する。
激しい横Gが襲うが、同じベクトルで飛び続けるのは宇宙艦にとって自殺行為なのだ。
加速が収まってデッキに空気が半分入ると、メカニック達がモビルスーツのハッチを開く。どちらかと言うと儀礼みたいなものだ。
ヅダから漂い出てきたのは10年も前の民間用ノーマルスーツを着た男だ。ザクが珍しいのか、漂いながら眺めている。
ゲルググMの指揮官は手馴れた感じで、デッキの床に磁力ブーツで貼付く。速い。
軍艦はいつどんな加速や衝撃があるか判らない。民間人と鍛えぬいた海兵隊では、習性からして違うようだ。
キャメル艦長と主だった下士官が、退避ブースの前で整列している。
目配せされて降りてきた男は、並んでみるとかなり長身で痩せぎすだ。無重力育ちだろう。
海兵隊士官は背こそ低いが、線の細い、それでいて鍛え上げた身体が、ノーマルスーツ越しに見てとてる。
儀式ばった敬礼のあと、ヘルメットを外して長髪をかき寄せるまで、女とは誰も気づかなかったほど。あ、香水。
下士官らは気付いていないが、海兵隊と艦長は敬礼の隠し作法で、互いの身元を確認しあっていた。
「シーマ・ガラハウ海兵特務であります。こちらが旧コロニー公社エネルギー庁主事、第二木星ヘリウム・・・」
言いかけるのを制して、男がヘルメットをシーマに渡す。
「ありがとう、お嬢さん。 キャメル艦長ですね?肩書きはともかく、シャリア・ブルと申します。」
『 え゛?』
みんな、悪い冗談かと思った。瓜二つなのだ、シャリアブル大尉とシャリアブル氏が!
『大尉?』
『双子?』
『まさか、大王のイタズラ?』
『いや、やりかねん』
よく見てみよう。シャリアブル氏は大尉より背が少し高いし、口許に小さな小さな傷がある。
『大尉、どこに行った?』
『熱バイパス交差』
『見てくる?』
『静かになさい』
ひそひそと騒がしい出迎えだが、語らず動ぜぬ礼節と品格は別人だ。かっちり固めた、典型的なジオン貴族。
それにしても、同じ髪型は止めてほしい。
『どっちが影武者?』
『しっ!偉い人に失礼なこと言うんじゃないぞ。』
『いや、どっちが偉いのか、わからん』
『下らない整備で出迎えに来ない大尉が悪い』
『何?船員を馬鹿にするか?』
『ぁ、気圧戻ったー』
『ドレンさんが留守じゃ、艦長大変だな』
『大尉、どこ行ったんだろうね』
『お前ら黙ってろ』
不意にドアのランプが明滅し、減圧を待ちかねていたシャリアブル大尉が、デッキに飛び出してきた。
「おにいちゃーん!!」
ふぅ・・長文が続いてスマソ。お久しぶりの偽ドミトリー(露)です。
キャメル艦隊の全員が名無し。これは厳しい条件ですね。予想外に苦戦です;
こうなったら100%俺ガンでいこうと、腹をくくりましたw
故障したザクでスクランブル発進したボイド少尉、英語のvoid(空っぽの意)です。やっぱり名無しですねw
まったくの名無しばかりでは困るので、少しは名前を入れてみましたが、全員、適当な名前でよろ。
オペレータ補が二人いて、一人のニックネームが鳥頭(とりあたま)。
正規の通信士はドレンと同行しているので、半人前が二人でブリッジに詰めています。鳥は三歩歩いたら忘れるから鳥頭(ばか)。
ビジュアル的にどんなキャラクターにするか、まったく考えていません。髪型に特徴あったほうがいいかな。
ビジュアルといえば、ヅダのスペシャルバージョンもデザインが・・・
幌(ほろ)で噴射炎を隠すのは、簡単なCGで当たりを取りましたから、機能的には問題ありません。
ただ、胸に取り付けたスターライトのデザインが難しい。
簡単な野戦用ライトですが、波長を合わせるためには冷却機能が必要でしょうから、腰から冷却パイプの延長が必須。
HGUCのヅダを組んでみて、立体物でデザイン見ないと駄目ですね。
長距離通信用のアンテナなんかも、あり合わせにケンプファーを流用とか?
それにしても、UPして読み直してみると駄文ですね〜
偽ドミトリー(露)はシリアスなつもりが、「おにいちゃーん!!」の台詞のためにぶち壊し;
長考して気合を入れなおしてきます。ヘマ発見など、教えていただければ幸いです。
続きあげ
DELLノートが故障しまして修理に出しております。
またネタに詰まってしまいました。
謹んでお詫び申し上げます。
追伸
>>40の一部分はうそです。
PCの修理、大変ですね。拙者、秋葉原で500円のPCを買い申した。
(仏)の本編、そろそろドレンさんが帰ったみたいなので、キャメル艦隊の変な人たちのお話♪です
・・・・相変わらず堕長文でスマソ
オレガンは修羅の道と見切ったり! 暴走、ヘマにはご容赦を
ブル2「おにいちゃーん!!」
笑顔のシャリアブル大尉が、デッキのお兄ちゃんへ駆け寄る。0.7秒
ゲルググの足元を固定してあるロープの端に”偶然に”足を引っ掛ける。0.2秒
「会いたかったよ〜お兄ちゃ〜ん!!」涙ながらに”お兄ちゃん”に抱きつく。2.7秒
ぷにぷに、あれ?お兄ちゃん、船団暮らしで柔らかくなった?
さわさわ、いやいや、しっかり鍛えてるよね
なでなで、背も低いねぇ
ふんふん、香水?
あれー?髪の毛長いや♪ 〜2.0秒
(ニュータイプの音w)
あっ!強い神経電位っ
筋肉が反応し始めたね?
へぇ・・シーマ君ってのかぁ。実戦慣れ・・え・・えぇ?
ひざ蹴りとは、女の子のする事じゃないなぁ
やべっ!兄貴の横が来る! 回し蹴り→踵落しはシーマちゃんを避けてるのか・・膝ガード。背中の回転で左軸足を叩き置いて、掌底でひざ蹴りを打ち殺し、合気で掴みを解く。右ブーツの蹴りで後ろに下がる。半歩右スライド。
兄貴の連続技が4手、シーマちゃんが3手見える
この隙間に立てば当らないぽ♪ もう一手あるのにな。詰めの甘い兄貴だなぁ・・・
〜1.8秒。
二方向からの連続攻撃を、瞬時に回避してのけた速度は、人間のそれではない。
ニュータイプは、やっぱり化け物だ。
ハァハァ・・ゼィゼィ・・・・
ブル2「お兄ちゃん、ここ減圧中なんだから、無茶すると体壊すってば」
ブル「お前に・・言われたく・・ない!・・・ゼェゼェ シーマ君、すまん・・・」
さすがにシーマは鍛えてるせいか、疲れたそぶりも見ずにシャリアブルを抱え起こす。
ブーツの磁石がもつれる足で、ふらふらとキャメル艦長の方へ歩み寄り、
ブル「ブラン・・弟がご迷惑をおかけしておりますようで・・・何とお詫びすれば善いのか。」
艦長「お察しいたします。何なりとご用命ください。」
ブル「忝(かたじけな)い。ドレン提督がお戻りになるまでの、滞在許可を希望します。」
艦長「喜んでご命令に従います。提督。」
さて・・・シャリアブル提督が常識人なのには感動さえ覚えるが、大尉の方は厄介払いし損ねたようだ。
でもどうしよう。ドレン提督の部屋は空かないし、士官個室は満室だし。
そうだ、真面目な副官君に大尉と同居してもらおう。くくく、それが序列ってものだな。←悪
うゎキャメル艦長、さっきの荒っぽい操艦で吐きそうになったのを、逆恨みしてるよ。
艦長「シャリアブル提督、いささか手狭ではありますが、私の艦長個室をお使いください。」
ブル「いや、いいよ。自分らの寝床なら持ってきた。」 へ?
ヅダのハッチ下にある袋にもぐりこむと、硬くパックした小袋を取り出す。
真空簡易寝袋。ノーマルスーツのままで寝れる、頑丈な寝袋みたいなものだ。
艦長「あの・・・」
ブル「構わんでいいよ。それに軍艦は狭くて性に合わんのだ。」
困った艦長は、もっと常識人のシーマに助けを求めるが、どこにも姿が見えない・・・
あ、こっちはもう、減圧ハッチの壁面フックに寝袋を固定している真っ最中だ。
前言撤回。こいつら全員、変!
何もかも、どーでもいいような気がして、キャメル艦長はブリッジに戻った。
案の定、真面目な副官君がドレン提督の空き部屋を使ってくれと懇願してくるが、笑って無視する。
なんだか、後ろ暗い快感があるなぁ。
(大丈夫、部屋は要らないよ。シャリアブル提督とガラハウ殿はデッキで寝泊りだから♪)
艦長「そういえばもう一人の海兵隊員はどうなった?」
オペ補その3「ボイド少尉と合流して、収容完了しました。こちらには来ないそうです」
艦長「わかった。ところで、ファー補佐はいないのか?」
オペ補その3「トリちゃんは交代しました。呼び出しますか?」
艦長「あ、そんな時間か、いや、いいんだ。 副長!・・だから、気にしなくっていいから。仮眠だ。4時間後に戻る」
そういえば弟だっけか、シャリアブル大尉ってのは・・ブル?ブランだっけか?・・・まぁいいや、寝よう・・・・
オペ補その3「副長さーん!ドレン提督、帰ってきますって定時連絡でーす」
真面目な副長「承知。僚艦に確認。ブル提督に連絡艇の着艦スペースを空けてもらえ。艦長は寝てるからメールだけ。」
その3「はーい、確認とれました。ゲルググ動かしてくれるそうで、OKだそうです。」
副長君「海兵隊ってのは動きが早いな。よし、進路予定通り。全周への警戒を怠るな。」
ぷしーっと、ドアが開いてブル大尉(弟:シャリア・ブラン:ブル2)の方が入ってくる。
ブル2「兄貴から伝言。シーマ君たちが護衛に出るから、ハッチを開けてくれってさ。」
副官君「え?いや、悪いですよ。護衛のリックドムなら付いていますから。」
言いかけて気になった。さっきの自分たちも、まんまと騙されたわけで・・
副官君「・・・やっぱりお願いできます?」
この優柔不断さが艦長になれない原因だな
空気を抜いて真空になったデッキのハッチが開き、ゲルググが爪先で床を蹴って漂い出して、しばし。
急に艦と垂直方向へ噴射して急発進する。ランダム加速もきっちり入れ、母艦位置を悟られない気配りも欠かさない。
作業用ザクをコムサイから出してきたボイド少尉も、感心して見ていた。
ボイド少尉「お前ら見たかぁ?これが海兵隊の模範戦技だ。お前らの発進がどうトロいか、よーくわかっただろう!?」
大勢『はーい教官!』
間延びした応答を聞いて、少尉は頭がくらくらしてきた。こいつらが実戦で生き延びられるように鍛えろってか?
ボイド『まぁいい・・提督がお帰りになるまでに、予定の訓練を終えよう。 そこ!宙を漂うな!艦が加速したら宇宙でミイラだぞ!!」
宇宙で生きられる兵か。現実を無視した理想だな・・・ふと目をやると、真空のデッキの壁に、膨れ上がった寝袋がすぴすぴ寝てる木星野郎が一名。
そうか・・・こーいう奴等も居るか
ドレン提督は頭が痛かった。二日酔いでw
シャアの野郎が捕まってたのは愉快だったが、ザンジバルの宴会で気分良く飲みすぎた。
キャメル艦隊は赤いザンジバル級が占位している、この宙域を一方の焦点とした長楕円航路を周回している。
だから二日もすれば戻ってくるので心配ないのだが、そのまま宴会が続いたのは誤算だった。主賓はさっさと帰るべきだな。
全くもって楽しい奴らだが、うちの連中も同類なのが心配だ。連絡艇の窓から、千鳥足で蛇行する護衛のリックドムが見える。
おぃ衝突しないだろうな?それでも文句を言わないのは、連れてきた古参将兵らがエースぞろいだから。彼らは完全に信頼できる。
あっちのパイロットたちも羽目を外して馬鹿やってたが、姿が消えたのでトイレで吐いてるかと思ったら、ジムで激しく汗を流してアルコールを飛ばしていた。徽章からしてモビルアーマーのテストパイロット達だろうか。
あーいう奴ら、うちの艦隊にも欲しいもんだ。
それにしても・・・はぁ・・・・うちの艦隊、使えねー新兵が多すぎるよ。こっちは心情的に頭が痛い。
そういえば、さっきの通信に出てたファー通信士補佐、ボイドは変な呼び名で揃えてたっけw
鳥頭(とりあたま)は、鶏は三歩歩くと憶えた事を忘れる、という諺から付いたあだ名。物忘れの天才。天然ぼけ。
半人前ながらも、ムサイの通信オペレーターを輪番で務めるのは、もちろん親のコネ。
両親のファー夫妻は共和派ながらも有力な国会議員であり、一人娘を最前線勤務に押し込むことなど、造作も無かったのだ。
逆だろ? いや、そうではない。
国民はともかく、政治家はジオンの劣勢を知っている。
近いうちに国民皆兵と学徒動員が避けられないと知って、子供の安全を切望するのは親心だ。不正だが。
兵員が使い捨てにされる戦場も、兵役を逃れたと糾弾される後方も、指導者の子供たちには安全ではない。
キャメル艦隊は、ジオンの親たちが求める、安全な場所、のひとつなのだ。
指導者の従軍を潔しとするジオンでは、最前線勤務を志願する勇敢な兵士を優遇する慣例がある。あくまでも慣例だ。
現役将官の推薦状と希望先の許可があればよく、競争率が絶望的な男子はともかく、女子の最前線希望はまず通った。
かくして『絶対安全』『最前線』の、ソロモン駐留艦隊は多量の女学生を受け入れる羽目になったのである。
なぜソロモンなのか?
まず、ゼナ・ザビの威光。急造されたソロモン要塞は鉄火場で、子供を育てる環境とは言いがたかった。
ゼナ様がドズル中将に苦言をいい、中将が嬉々として、教育に悪い風俗店を一掃してしまわれたのだ。結婚して性格変わったよ・・
ついでに食料も良くなった。本国から毎日、輸送艦でミルクその他の生鮮食品が届くようになり、屋台街のソロモンサラダは名物に。
今や、食い物のソロモン、命の洗濯はア・バオアクーと、兵士たちは使い分けて期待するようになってる。
で、絶対安全で模範的な環境となったソロモンなら、大事な箱入り娘でも安心して送り出せるというわけ。しかも、書類上は最前線。
要塞勤務の肉体労働は女子には無理なので、もっと安全なパトロール艦隊が女学生の行き場になるのは、自然な成り行きだろう。
パトロール艦隊とはいっても、人気不人気はある。
トップはコンスコン艦隊。競争率ダントツ!
艦長が中年の既婚者で、絶っ対、娘に手を出したりしない! これが最低の条件だからだ。
奥さんがしっかりと亭主をコントロールしていること、そして、自身も国防婦人会の幹部であることが望ましい・・
この点、文官上がりのドレン提督は2位タイといったところ。ベタベタな愛妻家なのは、ジオン閨閥で知らぬ者はいないだろう。
でも、最近ドレン提督は思っている。人気の元は、このでっぷり太った腹なのではないだろうか・・・・・鬱だ。
そうはいっても、使えねー女学生を受け入れるメリットはある。
補給の優遇はもちろんだし、安全な範囲で手柄をまわしてくれる恩恵は計り知れない。
キャメル艦隊も定員オーバーで手狭なので、周辺宙域で活動する新型艦への異動を、ドレン提督が提案したこともある。
最新型のザンジバルなら居住環境も、万が一の生残性も高いですよ・・・と、遠まわしに言ったつもりだったが、
「お願いです!一粒種の跡取り娘なんです。どうか後生に・・」←涙声、倒れる音
「娘を傷物にする気か!!」←絶叫
「うちはデギン公王派なんでね。キャスパル君には肩入れできないな」←意味不明
「待遇に不満があるなら言い給え」←いえ結構ですと電話を切ったが、あとで大量の補給が来た
「ドズル閣下に直訴するぞ!」←10分後、本当にドズル閣下に怒られた
「だったら貴官があいつの副官に行くかね?」←いえすみません出来心でしたもうしません許してください
どうだろ。シャアってどんだけ評判が悪かったん?ドレン提督の懊悩は深い。
キャメルからの通信では、最新型の海兵隊モビルスーツが出迎えに来るそうだ。シャリアブル大尉の関係者のようだが、要領を得ない。
まぁいい。どうせ秘密の多い人だし、無線では話せないとオペレーターが気を配ったのだろう。
ドレン提督「ん?新人にしては気か効くな?ボイド教官殿も頑張ってる。そうは思わないかね?」
パール通信士「どうでしょうね?半人前を二人揃えても、一人前にはなりませんからね。副長の入れ知恵でしょう。」
ドレン「はっはっはっ、君はいつも厳しいね。僕は君を誉めているんだよ。」
パール「光栄です。しかし、新人を3人で輪番するしかないのは厳しいですね。」
ドレン「ボイド君がモビルスーツ訓練に重点を置いているからね。お客さんに万一が有ってはいろいろ困る。」
パール「まったくです。うちにエースが多いのは幸運でした。」
ドレン「そうだな、エース達にも意見を聞いてみよう。無線、開けるかね?」
パール「この空域なら問題ありません。お待ちください・・・ベアジャック、ミント聞こえるか?」
ミント「はい、感度良好。ちょうど良かった、こちらからは発信でけへんかったんやわ。」
パール「何事だ?」
ミント「いや、そのまま普通に話してちょ。誰かに追跡されてる。」
ドレン「詳しく報告してくれ!」
ミント「いや、だから普通に話してってば。暗号化しても声の量は読まれてるんですぜ。歌でも歌いましょうや、マイヤヒ〜♪」
酔っ払いの歌が宇宙に流れる。盗聴する奴がいたら気の毒だ。
落着いたドレンが緊張を押し隠して問いかける。ミントは目配せで方向を告げる。オリオン座方向か!
パール「ブラッドリー、今後は無線封止だ。ミント、マドセンとウォーリーの各隊は事態を認識しているか?」
マドセン「ばっちり聞いてまさ」
ウォーリー「酒がたりねぇなぁ、うぇっへっへっ」
・・・・大丈夫だ、聞いた俺が馬鹿だった。
オリオン星雲の赤い光ををバックにして、シーマ隊のゲルググマリネー2機は静止していた。
シーマ「気付かれたかな?」
海兵隊「まさか、この距離で」
シーマ「いや、あのリックドム、手巧れだよ。酔っ払いみたいな蛇行だったろ?うちらを警戒してる」
海兵隊「そういえば変ですねぇ、仕掛けてみますか?」
シーマ「あははは、あれは私達が護衛する船なんだよ。沈めてどうする?」
海兵隊「いえ、攻撃ではなくて、ECMで紳士的なご挨拶を♪」
シーマ「お前もいっぱしのLM(リリーマーレン)隊員になってきたね。名前は何だったっけ?」
海兵隊「アチャールで通っています。」
シーマ「よしアチャール、だがECMは無しだ。偽装を解いて紳士的に挨拶する。この宙域は変だ。気を締めて行くよ!!」
同時に猛加速したゲルググが連絡艇めがけて殺到する。
6機のリックドム隊がさっと展開して防御陣形を組む。
シーマ「ほーら、やっぱりバレてた♪ でもね・・」
圧倒的な加速度でフォーメーションの隙間を突くと、2機のゲルググはガンカメラに連絡艇を写して離脱してしまった。
おもむろに通信。海兵隊の優先コードにパール通信士は口をつぐむしかなかった。
不意にアチャール機がビームライフルを発射し、デブリを破壊する。
アチャール「シーマ様、やっぱりありました。連邦の偵察ブイですぜ」
ドレン提督「キャメル艦隊のドレンだ。不埒な護衛というのは君らのようだな。あれは遅延偵察ブイか?」
シーマ「シーマ・ガラハウ海兵特務です。提督の仰るとおりの偵察ブイです。この宙域には連邦軍が侵入していると思われますが。」
ドレン「わかった。リックドム4機を君らにつける。掃討をお願いする。ミント、ウォーリー、海兵隊の指揮下に入れ。」
シーマ「提督の護衛には必要ないのですか?」
ドレン「要らん。そっちを優先してくれ」
シーマ『へぇ? 叩き上げとは聞いていたが、面白い男だね・・』「アチャール!ドム隊の指揮を任せた!私は直衛に加わる!」
シーマは直援2機のリックドムを追い越し、連絡艇の前衛に入った。速い!
ボイド教官『お前ら全員、星のクズだ!!』 教官殿は相変わらず忙しい。従僕のトッド少年はもっと忙しい。
女学生どもの訓練成績は・・急激に、上がっている・・・今までが悪すぎたんだ!
ボイド「おいエロガキ!レコードに飛びとチビはあるか?」
トッド少年「はい、ガツンが飛び、どさんこがチビです。 他はそろってダメダメですねっ!」
ボイド「どさんこがチビって、見たとおりだなっ」
トッド「頭ふたつ小さいですよね!さっきもミルク飲んでましたよっ」
ボイド「あれはしごいてもダメだ。先ずは無重力に慣らさないとな!飛びはガツンだっけか、あいつにゃ特別メニューだ!」
トッド「はははは、気の毒だなぁっ。どさんことキップを艦に戻らせる間、全員にしごきBメニュー!ガツンが仕切り」
ボイド「いや、やっぱガツンに送らせよう。あいつ無理してっぞ。一緒に休ませないと倒れる。」
トッド「承知しました。」ピッ『ガツン、どさんこ!キャメルに戻って4_ワイヤー700mを2本取って来い!』
・・・
キップ「あの鬼教官とエロガキ、絶対、逆切れしてるゎぁ・・」
まぬけ「はぁはぁ・・・そんな・・事、言うもんじゃありませんことよ・・・・」
キップ「まぬちゃん、いいから。もうっ喋らない! はいっ息を吸って〜」
トッド『そこ二人!6・2角のデブリにフラッグを置いて来い!急げ!』 二人『はい!』
キップ「あんのエロガキャ〜!てめーが教官殿になった気かよ。」
まぬけ「悪口は・・慎みなさいな・・・」
キップ「あんもー、まぬちゃん安静に、どうどうっ・・・・って、馬か?」
まぬけ「ありがとう、もう大丈夫よ。・・・しばらくは漂ってられるわね」
キップ「そだね、疲れたーっ!」
目標のデブリまで、ノーマルスーツで漂う間はちょっと楽ができる。
キップ「・・・・あはははっ」
まぬけ「何?私の顔を見て」
キップ「あーごめんごめん、だってまぬちゃん、馬みたいにすると落着くんだもん」
まぬけ「もうっキップさんたら!馬ならどさんこちゃんでしょ。どさんこちゃんはそんな事、言いませんよ」
キップ「そうだよねーどさんこちゃん、本物の馬を持ってるんだよねーいいなー」
まぬけ「馬なんて近衛隊でも動物園でも見られるでしょうに?」
キップ「分んないかなー、あたしは自分だけの馬がほしいの♪こう、緑の草原でさぁ〜・・・」
空想モード 暫くお待ちください
キップ「澄み渡る空がさぁ・・・」
まだ終わってません もう暫くお待ちを
キップ「風を切って進む・・・」
まぬけ「キップさん?」
キップ「草の香りが・・」
まぬけ「キップさん!!」
キップ「はっ?!」
まぬけ「目標のデブリ、すぐそこですよ。減速しましょう。」
キップ「いけねいけね!ごめんね、ちょっと減速キツイよ。3・2・1・うぐぅっ」←太字でw
逆噴射してデブリに着地し、持ってきたフラッグを立てる。少し自転してるので蹴飛ばして止める。最近、慣れてきたなぁ・・
あとは教官の指示で旗を畳むだけ。磁石で日陰に腰掛けて、一面の星空を眺める。『きれい・・・』
キップ「あれ?流れ星みつけた!」
まぬけ「こんな所で?」
キップ「そういえば・・・あ!リックドムだ!2機・・・3機・・・連絡艇! ドレン提督がお帰りだ!おーい♪」
まぬけ「これっ、はしたない。そんなに手なんか振るもんじゃありませんっ」
ボイド『演習各員敬礼!提督が戻られた。』
思ったよりも早くドレン提督が帰還したため、出迎えに参加できずに失礼こいたが、まぁ、見てはくれたでしょう。仕事はしたぞ。
トッド「訓練はCメニューで中断しましょう。提督が帰還して30分後に、我々も帰還します」
ボイド「ここはお前に任せるっ。どさんこ達に連絡を忘れるなよっ」
さぁ、忙しくなるぞ・・・
何事も無く、ドレン提督はキャメルに帰還した。例によって士官達が勢ぞろいして、デッキに出迎える。
発見された偵察ブイは計4個。破壊せずに残してきた。
何で?
こういうのでも破壊すれば撃墜1になるのだ。女学生どもに射撃訓練も兼ねて破壊させ、パトロール艦隊にて撃墜1という戦歴を付ける。
馬鹿馬鹿しいけど、こういう配慮が大事なのだ。
たまに遠方の偵察衛星とか発見し、手が回らないときは、艦がお互いに譲り合うのがルール。
退官前に撃墜数を水増しして、恩給増やしてあげるとか、どこの軍隊でもやってるでしょ?
シャリアブル兄弟を改めて紹介されたときは、思わず顔をしかめた。
どうも、自分の知らないところで工作されると、理性とは別のところで不愉快なのだ。
シーマも紹介される。今度は堅苦しい儀礼は抜き。キャメル艦長が身元を確認しているからだ。
引継ぎ事項の多いこと!丸一日費やし、きちんと整頓された自室に戻ってきたドレン提督は、奥さんの写真を眺めて、どすんとベッドに寝こけた。
『戦争が終わったら、艦を降りるからな・・』
えー、反省も進歩もなく、また長文やっちまいました、偽ドミトリー(露)です。
ドレン提督が宴会から戻ってそうなので、急遽、ドレン提督がキャメルに戻るまでのエピソードになりました。
全然、まとまっていませんよねw
全員名無しのキャメル艦隊ですから、どーせなら女の子いっぱい出そうという、D級萌えゲーの発想です。最低ですなw
でも、正史では名も残さずに死んでいってしまう、普通の?人たちの人生とか夢とか。キャラクターに語らせたいですね。
(ブル2が俺を出せ!と、漏れの頭の中で文句言ってますwさすがニュータイプですね)
酔っ払いのリックドムが接触事故を起こす話とか、変なストーリーを入れる予定だったのですが、
シーマたちを出したほうが簡単なので、手抜きしましたえへへ。
でも、連邦の偵察ブイを発見するくだりが、ちょっと唐突ですよね。手抜きのせいです。
次回、この偵察ブイをめぐってちょっとしたトラブルが続きます。
セクハラ大王と化した(嘘)シャリアブル大尉も顔を出しますよ。(たぶん)
101 :
ドミトリー(仏):2006/06/28(水) 01:24:18 ID:sEnpmAwK
時間潰させてもらいました。
ありがとうございます。
150になりましたら、また来ます。
シャリアブル大尉がカラリオのCF出演に期待。
102 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/10(月) 19:43:15 ID:nXHvj4m6
落としますか?
お待たせしました、俺ガン一直線の偽ドミトリー(露)です。
いや面目ない。
変なシーンばっかり書いていたら、脈絡が無さすぎて、文章にまとめるだけで時間食っちまいました。
それでは再開です。 紅茶ポットは見ていた (嘘
「食べさせて貰ってる分、働け!」 兄者の一言は絶対だ。
「働くぐらいなら、喰わぬゎ!!」 弟者の暴言も究極だが、、
・・・・・ニュータイプに小一時間も問い詰められたら、そりゃ拷問だなw
弟者は今日から強制労働に。 つーか、いつまで居座る気だろうね、シャリアブル兄弟。
そういう事情で、ブル2(弟者)は偵察ブイの探索に出るのに、アチャールのゲルググに便乗。
ボイド教官はリックドムを訓練生に2機だけ回してもらい、自身の作業用ザクとあわせた4機は演習宙域へ出発した。
女学生どもは数珠繋ぎになって牽引されてゆく。
ボイド教官『もうすぐ敵性宙域に入る!センサーの変動に全周警戒しろ。最初に見つけた奴に星ひとつやるぞ!』
遅延通報型の偵察ブイなのは、とっくに確認済。危険は無い。簡単な相手で『実戦』を経験させるのも大事なことだ。
ただ、注意しないといけないのは、希にブービートラップが仕掛けられている場合があること。
護衛隊を拝み倒してリックドムを借りてきたのは、万が一を慮ってだ。
『発見!』 ん?二つ重なったぞ?どっちが早い?
「え・・と、どさんこの方が早いですね。偵察、星ひとつです」トッド少年
ボイド「よーし、いーじゃねーか♪」ピッ『おし!どさんこに星ひとつ!他の奴ら、居眠りかぁ?』
発見?した連邦軍偵察ブイは、デブリにセンサーを埋め込んだ、簡単なものだった。
艦影を撮影すると、時間を空けてレーザー通信するわけだ。もちろん攻撃されたら即時。
真っ黒なスプレーで光学系を殺し、トッド少年が作ったアミダくじで、リックドムを割り当てる。残りは破片を避けて岩陰に避難。
ピジョン『射撃いきまーす!』バスっ!!!
激しく見当外れな所を、ビームバズの弾が飛んでいく
ボイド『このアホ!カス!この距離で外すか? わっ、電波出してるぞ、お前らジオンの恥さらしだ! 次!さっさと仕留めろ!』
さっちゃん『次・・撃ちますっ』
ボイド『ピジョンと同じ間違いをするなよ!ザクと違ってライフリングの反動が無いからな!』
さっちゃん『 あ゛』 図星かよ・・・
今度は狙い通りに命中する。当然だなw
・・・・・
破片が通過したのを確認して、皆が岩塊から頭をのぞかせると、もう作業用ザクとゲルググマリネーが残骸を漁っていた。
アチャール『映像は殺したが、きっちり通報されちゃったな♪次からはECM使おか?』
ボイド『言うな・・・ここまで使えねぇ奴等とは我ながら・・』
ブル2『ザクに慣れてるんだからしょうがないよ。あ!そこ左!通信ボックスじゃない?』
アチャール『ひゅー、運がいいね、原形とどめてるよ。トラップならプロに任せな!』
最初から空気の入れてないコクピットハッチが軽快に開き、アチャールがブラックボックスに取り付く。
『命懸けのトラップ確認とは、有難くて涙が出るねw』『贅沢いうな。ニュータイプをサポートに使ってだぞ?』『僕、何もしてないよ♪』
・・・・・・っと終わった。トラップ無し!(つーか、めったに有るもんじゃない)
作業用ザクのバケットに格納して、次の偵察ブイへ移動する。
ボイド『偵察ブイは何個みつかった?』
アチャール『私が2個、シャーリアさんが4個みつけたから、残り9個だね。』
ボイド『とほほ・・・こりゃ寝る暇ないな。ちょっとごめんよ』ピッ『お前ら!さっさと次の宙域へ移動するぞ!遅れるな!!』
”実戦 ”の報告をブル兄から受けたドレン提督は渋い顔をしていた。
デブリに偽装した偵察ブイは、軌道から逆算して、わずか4日前に散布されたらしい。
しかも宙域図からは、散布艦がソロモン方面を目指していたことが読み取れる。
最近、連邦の鉄砲玉がソロモン宙域に侵入してくる事件が増えてる。いわゆるソロモン特急。
もちろん、一隻も逃さずに仕留めているのだが、今度のように、こそこそやられると鬱陶しい。しかも散布艦は未発見のままだ。
ボイド少尉の報告では、一個だけ発信されてしまったらしい。この宙域は長らく戦闘が無かったため、ミノフスキー粒子濃度が薄い。
まず間違いなく、我々がブイを始末したことが、連邦の散布艦に感付かれてしまっただろう。反撃してくるか、逃亡するか・・
「パール君、ソロモンのドズル中将へレーザー通信を開いてくれ」
『ソロモン要塞守備隊のパウロ准将です。なんだ、ドレンじゃないか、どーした?』
『お久しぶりです准将殿、先日の件、有難うございます』
『なーに、礼なら奥方に言ってくれ。私は規定通りにやってるだけだ。ところで君がレーザー通信とは急用なんだろ?』
『ええ、ドズル閣下に伝達したいことが・・・』
『なんだね?うん、こっちの音量は下げたよ』イヤホンを付ける
『恐縮です、またソロモン特急です。4日前にアステロイド52にいたのを見逃していました。』
『君は真面目だなぁ。胸を張って敵影発見といえば功績じゃないか。そうか、追跡中なんだね?』
『はい、偵察ブイの発見と破壊を第一に任務続行中です。いくつか通信ボックスも回収しました。目下解析中です』
『でかした! よし、うちの大将にはこっちから用件を伝えておくから、10分後にかけ直せ。いいか?』
『よろしくお願いいたします』
ふう・・ 10分後、再びレーザー通信を開くと、ドズル中将のところに転送された。
ドズル中将「いない、いないーーー」 ミネバ様「きゃっきゃっ♪」
ドレン提督『閣下、ドレンであります』
ドズル『おー、ドレンか♪話は聞いたぞ。よくやった。』「ばぁーー!!」「きゃっきゃっ♪」
ドレン『いえ、敵は未発見のままです。』
ドズル『俺も、パウロやスネブも、貴様を高く買ってるんだぞ。必要なものはパウロに言え。これでいいな?』
「高いたかーい!」「あなた、危ない!」「↑うきゃきゃ↓」
通信終了。事務的には何の不都合も無い(それどころか白紙委任!)。だが、何か間違ってる気がする。
成り行き上、海兵隊の件を話せなかったが、あれは公王の勅命なのだから、本来、ドズル閣下に話すべき事ではない。まぁ、良かったのか・・
ドレン提督の、でっかい腹の虫がうずく。何か、嫌ーな予感がするのだ。
一日の”実戦 ”を終えた女学生どもがキャメルに戻ってきた。
ぶっ続け13時間の船外活動で、全員がヘロヘロ。元気良く怒鳴ってるのは教官殿だけだ。
ボイド教官『以上、解散!』
この一言を待ちかねていたように、萎れかけていた連中がシャワールームへ駆け込んでいく。
ファノン看護士「ご苦労さん。怪我人は出なかったね。良かった。」
ボイド「危なっかしい連中だよ。運が良かった。これからブルの弟と一緒に提督へ報告だ。今からモニタールームお願いできるかな?」
「うん、それが僕の仕事だからね。1時間で戻れるかい?」
「わからん。なるたけ早く戻る」
「あんたも、体、壊さないようにね。はい、のど飴。」
「ありがと。後で舐めるよ!」
ファノン看護士は廊下を歩きながら、廊下を駆けてゆく少女らと挨拶を交わしてゆく。うん、元気でよろしい。
看護士は軍医ではなく、軍属として参加しているため、自前のグリーン白衣が目立つ。軍艦には似合ってないな。
さて、ボイド少尉の個室だ。鍵は無い。元々モニタールームなのを使っているからだ。
部屋の電気を点け、IDカードと生体認識で端末を起動すると、卓上に4個あるモニターが艦内の映像を代わる代わる映し出す。
ファノン「さてと、われらが姫君はご機嫌麗しゅうしておられるかな?」
画面を選んでゆくと、いたいた♪食堂か。どさんこちゃんがヘルメットを抱えてニコニコしてるのをズームする。
まぬけ「どさんこちゃんが敵偵察ブイの第一発見ですわよね。キルマークの星は一番大きく書きましょうよ。」
ガツン「あーオレ、ヘロヘロで星無しだー。訓練気張りすぎたよ。しまたー」
ぴよこ「さあ、どさんこちゃん、貸して貸して、マスキングテープ使うと綺麗に仕上がるのよ」
ファノン「ふむ・・・なでなで♪とは、可愛がられているじゃないか・・手柄の配分は難しいもんだが、こっちが介入せずに済んだな。」
ボイド「順調か?ファノン」
「うん。早かったね。もういいの?」
「ああ、ニュータイプってやつの威力を見せ付けられたよ。あれは・・困るな。」
シャリアブル兄はなぜか現場の詳細を見たように知ってて、提督らに詳細な報告を行った後だったのだ。休めと言われても気味が悪い。
「ジオン・ダイクンの理想じゃないか。ね? でも、将来、トラブルの元になるだろうな。ニュータイプって。」
「ファノン、お前さんは軍属だったな。コロニー独立の大儀に殉じる職業軍人たる、俺達は違うさ。進歩を恐れたりはしない。」
「難しいね。ところで、他の子たちの人間関係、手分けして解析してくれないか?音声認識8割しか取れてないけど。」
「了ー解。あーあ、また喧嘩だ、注視レベル2、ボキャブラリ該当14 これだけか、問題ないが観ておくか。」
「・・・・・」
「・・・・・」
黙々と艦内監視映像のチェックをする二人。これも仕事だろうけど、或る意味ストーカーだわよね。」 ←?
「え?」「ボイド君、何か言った?」
「だから、あんたら犯罪者すれすれだと言ってるのよ。まったくもう」
ボイド「わ?!委員長!どこから入った?」
委員長「どこからも何も、鍵なんて無いじゃない。差し入れ持ってきたけど邪魔だったかしら。職務熱心な教導隊出張教官殿?」
ボ「うぉーい。おやつだ!ちょっと待ってね、これで確認・・・終了! 委員長たん、今日もメガネが似合ってるよ♪」
ファ「うー、こっちはもうちょっとかかる〜。待っててクレー」
委「エロガ・・じゃなくてトッド君はお仕事?」
ボ「うんにゃ、報告が早く済んだからさっさと非番。今頃、爆睡してる筈。」
委「あら、じゃぁ、このクッキーは私たちでいただきましょう。ファノンさん、先にいただいてますよ?」
ファ「や!終わったー。クッキー!!」椅子を蹴っ飛ばして、文字通り飛んできた。
電子機器のある部屋で液体飲料はご法度なのだが、徹夜明けの午後?の紅茶とクッキーは見逃しだろうw
無重力で紅茶を出すのはちょっと難しい。茶葉が飛ばないようにメッシュに入れ、熱水弁から沸騰水をポットに取る。これが大変。
スプリングの加減を調整し、茶葉が熱湯に押さえ込まれてゆく強さを整える。5分に二回、ポットを回転させるのがおいしく出す秘訣。
バルボアの白磁ティーカップにシルクのカバーをかけ、隙間から香り立つ紅茶を注ぎ入れる。絹ごしに啜る紅茶の香りは至福の・・・
委員長「ところで、やたら熱心に仕事してるようだけど、うまく管理できてるの?」
ボイド「まっかせっなさーい」
「怪しいわねぇ。まさか女の子たちのロッカールーム覗いてるんじゃないでしょうね?」
「ゲフッ、ないない!そりゃ仕事だから・・でも音声と会話記録だけだぞ。映像は見てない!ファノン!本当だよな!」
「え?僕に振るんですか?そりゃ無いですよー。」
「・・・ふぅ・・・まぁいいわ。信じてあげる。でもね・・・・
やましい所があったら、あんたらの恩給、ゼロ査定するわよ。退官した後、
ロリ・オタ はともかく、プ ー は 嫌 で し ょ ?
二人『はいいやですすごくいやです』ガクガクブルブル・・・
ファノン看護士「ふぅ・・・」
ボイド少尉「やれやれ、行ったか・・・」
あー寿命が縮む。癒しに来たのか、脅しに来たんだか。
「委員長、いやトミナガ中佐、あの人に逆らったら・・・・」
「言うな。キャメル艦隊全員、例外なく年金なしの老後が待っている・・・」
キャメル艦隊で最高位なのは、主計業務に限定ではあるが、リン・トミナガ主計中佐 子供に混じって若く見える36歳 独身
もちろん、作戦指揮はドレン提督の職権だが、艦隊の金と物資と食料を一手に握る、トミナガ中佐こそが影の支配者。
ショートヘアーに細ぶちメガネ。しかも似合ってる。メガネの似合ってない、シムス中尉とはいい対称だ。
ファノン「委員長って名前、ボイドが勝手に付けただろ?怒ってるかもよ?」
ボイド「だって、本当に委員長だもん!」
騒がしい女学生どもを追っかけ回して面倒を見てるので、こりゃ中学校の学級委員長だね♪ byボイド
でも、本人はこのあだ名を気にしていない。本当に委員長だから(爆
正確には、サイドV/Mバンチ群 徴兵委員長 中佐どころか、とんでもない要職を兼務していたりする。
「うーむ、ボイド君の言うとおり、委員長殿だよなぁ。なんでキャメル艦隊なんかに来たんだろ?」
「そりゃお前と同じだろ。お目付け役。」
「違うよ。自分で志願してきたって言ってたぜ。」
「嘘だー、本国のMバンチ一帯の徴兵委員長様が、簡単に異動できるかよ。」
「いやね、最近は戦死者が増えてるじゃない。遺族回りとかで燃え尽きちゃう管理職、多いよ。本当。」
「あの委員長がそんなタマじゃねーだろ?女学生どもの面倒見じゃねーの?上の誰かが気を利かせてさ。」
「そーかねぇ。まぁ何にせよ、音信不通の偵察艦隊なら、遺族の顔とか見ずに気楽だわな。」
「やっぱりバカンスだよ、バカンス。お茶も持ってきてるしさ♪」
「そうか、バカンスね♪ それで納得いった。これで委員長に男でもいれば最高っすね!いないけど。あははははっ」
委員長「あんたら、軍隊辞めて長〜いバカンス取りたいの?」
二人『 ヒィィッ?! 』
パカっ!←忘れ物のポットで殴る音
プンスカ! まったく、度し難い馬鹿もいたもんだわ・・・・あたしゃ子守に命張ってるの!!何がバカンスなもんですかっての!
そういえば誰にも話さないが、昔(連邦時代)、恋人が暴動鎮圧に出動して戦死し、それ以来、恋愛はしていないらしい。
『・・・・・バカンスね・・・・・・この任務、ある意味、そうかも知れない・・・』 もう一発殴る音→ごっ
ども! 駄文御免の偽ドミトリー(露)です
PCが壊れたのでネットカフェから書いています。
100%Pureオレガン! なので、最近、変なキャラを増やしています。説明っぽくてスマそ。
文章を見直してると、一週間ぐらい簡単に過ぎてしまいますね。催促多謝
富永中佐もオレガンです。シムスたんみたいな眼鏡っ娘を出したいという、不純な動機で書いたのですが、自己主張が強いですね。暴力士官だw
(ハッ?! 実はシムスたんも隊では暴力女なのでは・・・・まさか、いやそんなはず・・・)
フラナガン博士「私も殴られました」
↑こら!勝手なオレガンをでっち上げるな!
いかん、支離滅裂だ。
えー次回あたりから、医務室で延々と会話が続きます。野郎ばかりで色気もありゃしない。
アニメーションにはできませんね。激しく不毛・・・・
111ゲトc
医務室、それは兵員、最後の憩いの場・・・看護婦なんかいないけどね。
顔面を腫らしたボイド少尉が、ファノン看護士に湿布を貼ってもらっていた。
ボイド少尉「あんの、暴力女め・・イテテ、そこ痛い」
ファノン看護士「ぼくのせいじゃないよ。たぶん・・・」
「しっかし、何でオレだけ二発も殴られるんだ?不公平だ!」
「え?ボク?いやですよ、看護士が重傷なんて悪い冗談。はい!これで大丈夫。前よりは痛くないよね?」
「痛いのは相変わらずだが、これでバイザー被れば目立たないな。」
「鎮痛剤なしってのはお勧めできないけどね。そのぶん腫れは一日で引くよ。それまで女の子たちには特別休憩だね♪」
「いや、6時間たったら寝起きを叩き起こして通常訓練だ。爆睡癖が付くと困る。」
「逆にあんたが、ちゃんと眠る習慣つけてくれないと、過労で倒れるよ。これは職務で言ってる。守って貰うよ。」
「わかった。エロガキに手抜きメニュー作らせて、全員さっさと戻らせるよ。俺は立ったまま寝てる。これでいいだろ?」
ピンポーン♪
チャド衛生兵「ファノンさん、交代に来たよ。ありゃ鬼教官殿、事故でもあったの?」
ファノン「チャドさん、これ、笑えるでしょ?これ、委員長たんに紅茶のポットで殴られたの」
チャ「なんだそりゃ、さては中佐殿に惚れた?」
ボ「激しく誤解だ・・イテテ・・」
チャ「鎮痛剤打った?えぇ、無し?眠くなるから?今から任務なのか。」
ファ「チャドさん、ボイドさんにちゃんと寝るように説得してくれません?このひと、戦闘薬のんででも仕事しちゃうよ。」
チャ「あーこりゃ肝臓に負担が出てるよ。今の不摂生が半年続いたら艦から降ろすよ、いや、マジで。」
ボ「二人ともすまんな・・だが、今は好きにさせてくれ。 この戦争も・・・もう半年は続かないだろ・・・」
ファ「あんたの仕事は、『戦後』のためにあるんだろ。死んだら・・・えっと・・泣くぞ!」
ボ「わかってらい。『今』やる仕事だ、行ってくる!」
ファノン「ボイド君、かなり無理してるな。」
チャド「軍人は皆そうさ。もっとも、民間人でも艦が沈めば一蓮托生だね♪」
「笑えないなぁ・・・あははははっ」
「とりあえず笑っとくのは有益だね。そういえば、霞・・・『どさんこ』ちゃんだっけか?よく笑うようになったね。」
「ええ・・あんな事の後ですからね。よく回復してくれました。」
「ボイド君を褒めると過労で倒れるから言わないが、教官殿は良くやってるよ。あの変なニックネーム以外はな。」
「まぁ、不便でしょうけど、あれがPTSD患者の心理的安定には効果的なんですよ」
「ふむ、臨床心理学者としての意見だね。でも、これは殊に政治的な問題でもある。これは軍人として、私の意見だ。」
「軍人が政治を語る世になっちゃ、お終いだよね。」
「まぁ言うなや。ぶっちゃけ、ザビ家の一員を艦隊に引き受ける。しかも隠して。これが政治でなくて何なのだ?」
「ぼく、わかんな〜い・・・姫君のお目付け役が言っても説得力ありませんかね?」
「わははっ、ないない!」
「あはは・・・ジオンの閥族政治に首を突っ込んだら、命が幾つあっても足りませんよ・・」
「有益な警告と受け取っておこう。確かにその通りだ。我々はドレン提督の判断を信じよう。」
「ありがとうございます。徴兵委員長殿や教官殿の、前向きな具申あってのご決断でした。」
「そういや、この艦にはもっと厄介な人がいたっけ」
ピンポーン♪
ファノン「はい、どなた? あ、噂をすれば影 今、開けます♪」
チャド「誰?」
ブル2「ふぁい、私でふ。」ほっぺの腫れあがったシャリアブル大尉が立っていた。
チャド「・・・・ぷっ・・・・・・、わかった、委員長に遭って紅茶のポットで殴られたんだね。湿布を出してあげよう。」
ブル2「なんで分かるの?あんはもニュータイプ?」
ファノン「それじゃ私はこれで♪」
チャド「あぁ、お休みなさい。 ところでブル大尉、懲りないセクハラ大王だね?」
ブル2「いやね、あのポットに凄い殺気がこもってるんでね、ついでに持ち主に触ったら・・・いてて、」
「だひゃひゃはやはっは!!」←ツボに嵌ったみたい
「ボイドたんも殴られたん?」
「あんたより多い。二発♪」
「それでか。2発目殴る間に、やたら物思いに耽ってるんだよな。昔、悲しい失恋したんだね」
「あんたの能力ってすごいな。そこまで読み取れるのかい・・・・おっと、忘れるとこだった。さっきの通信でこれ来てたよ。」
診察カバンからA4の紙束を取り出す。
「紙?もったいない。」
「お兄さんに似てきたね? あ、古臭いだろうが、こういうのはイメージにしておいた方が理解しやすいからな。俺が♪」
「ぶーぶー!!・・・・・でもよくわかった。ブラウ・ブロとエルメスの基本設計が片付いたんだね!」
「そんな事まで書いてあったっけ?」
「シムスたんが嬉しそうに書いてるからさ♪」
ワープロ打ちの手紙を嬉しそうに見ているブル2。なんで分かるんだろ?
「とにかく、湿布貼ったら重力区画で寝てろや。鎮痛剤は無しだからな。節約じゃて。」
「非道ぇ医者だ。要らねぇ血液検査ばっかするくせに。」
「はい、軟膏塗るよ。口、動かさない。 第一、あんたの検査結果、常人と何の違いも無かったよ。無意味なデータに対価は無いぞ。」
「ちぇ」
「職務上、ちょっと気になった点はあるがな。」
「ほ?」
「運動不足」
「よせやい、さっきもボイドたんと働いてきたんだい。」
「湿布貼るから動かない!・・・はい♪これでいいよ。もう剥がれない。」
「じゃぁL-2区画で寝てくるわ。」
「起きたら運動だぞ!!初号機が仕上がるまでに、その無駄な体重を絞るんだ。」
・・・・・
ブラウ・ブロか。分離合体モビルアーマー。まるでこの兄弟みたいだなぁ。
忙中、閑あり いや、逆か
チャド衛生兵はヒマだった。あれからもう3時間も、誰も来なかったからだ。
脱脂綿のアルコールかき混ぜたり、ピンセットの先をキムワイプで磨いたりしたが、片付いた医務室でやることって少ない。
ピンポーン♪
チャド衛生兵「はいはい♪重傷者かな?死人かな?」
トッド少年「失礼します!ボイド教官がお怪我なされたと聞いて・・・」
「ああ君か。教官殿は湿布貼って訓練準備に出かけたよ」
「わかりました。モビルスーツデッキですね?ありがとうございます!」
「ちょっと待ちねぇ、えと、エロガキ君だったね」
「はい!エロガキです!」
「・・・・・・」←笑いの秘孔を突いたらしい
無重力中で笑うのは、結構しんどい。
下手に笑い転げると、肺にいの内容物や唾液を吸い込んで、激しくむせる。
死亡例もある。と、衛生兵の教習で習った。本当だね。
チャド「なぁ、ボイド君はちと、働きすぎだと思わないか?」
トッド「我々は指揮官に従うまでです」
「ははは、ボイド君は良い後継者を育ててるな・・・・・しかし、だ。君の上官が倒れて、訓練が不十分になったらどうする?」
「それは・・・」
「部下というものは、適当に上司を休ませるのも仕事だぞ。例えばこう、仕事を遅らせるとか。」
「命令違反はできません!」
「言い方が悪かったな。そうだな、君が訓練メニューを提出するのが30分遅れたら訓練はどうなる?」
「30分+15分程度の遅れが出ます。隊全体の損失です」
「君は優秀な子だね。だがよ?それでボイド殿には45分の仮眠時間ができる。これは貴重だと思わないかね?」
「それは・・」
「いいかい、忠誠を尽くすというのは、時には君が悪者になってでも、守るべき人を助けてあげるということなんだよ。」
「私が・・教官殿を守るのですか?」
「そ−うだよ。飲み込みの早い子だ。その通りだよ。君が、護るんだ。」
「・・・・・」
「あははは、深く考え込まんでよろしい。とりあえず君が今やるべきは・・・寝ちまうことだ♪」
「訓練メニューの作成があるんですが・・・」
「あと、3時間で訓練だっけか?ボイド君が起こしに来るまで寝てりゃいいんだよ。彼もそのつもりだろーし。休め休め。」
そのままトッド少年を部屋の外に押し出す。
「ありがとうございます!これより休憩に入ります!」
あーやれやれ、騒がしいのがやっと消えたよ・・・・それにしても艦隊の医者ってのは忙しいなぁw
さて、こんどはオートクレーブの内釜でも磨くか。
うふふふ・・・医務室で男ばかりの世間話の連続シーン・・・・どうだ、むさいだろうw
読者の不快感を煽りまくる、偽ドミトリ(露)です。
商業ベースじゃ、こんなシーン、即座にボツですから、この男ばっかりシーン、2chで楽しんで言ってください(殺!)
え?シリアスにするんじゃなかったかって?お任せあれ
・・・・・・・ムサイの通路に漂う黒い影・・・・・・少女の悲鳴がこだまする・・・・
次回 機動戦士ガンダム外伝デミトリの開発日誌外伝シャリアブル外伝その他大勢外伝(あー疲れた;)
『 恐 怖 の 艦 (ふね) 』 闇に血が流れる・・・
ご期待ください 100%外しますからw
鬼教官に叩き起こされて、全員がモビルスーツデッキに集合したのは、きっかり3時間後のことだった。
その日は珍しく、エロガキこと従僕のトッド少年が簡易な訓練を指揮し、鬼教官は腕を組んで立っているだけの変な訓練。
まぬけ「眠いわ・・・」
ガツン「寝てなかったのか?」
ヘルメットを接触させれば、真空中でも声が伝わる。無線でないから私語がしやすい。
『そこ二人!くっちゃべってないで標的を探せ!』トッド少年が無線で怒鳴ってきたw
不思議と、サボってるのは真空中でも伝わるもんだね。
標的をレーザーマーカーで追尾し、他の連中がザクで追いかける。単純だ。今度は標的をロストしないように気をつけよう。
ガツン「追尾はオレに任せな。何でまた寝なかったの?」
まぬけ「みんなで、どさんこちゃんのヘルメットにキルマーク(星)描いてたのよ。こんな時に訓練なんて、考えもしなかったわ。」
「それで寝れなかったのか、つくづく運の無い奴っちゃな。いや、オレだけ先に寝ちゃって悪かったよ。」
「ううん、いいの。ガツンちゃんこそあれでしょ、呼び止めちゃってごめんね。体調、大丈夫?」
「ちょびっとでも寝れりゃ大丈夫。でも、あのエロガキ!よくもオレ様を叩き起こしやがって!」
「ガツンちゃん、標的、標的、外れてる。」
「おぉっといけねぇ 教官気取りのエロガキが難癖つけてくるぜ・・・・・・あれ?」
『よし!これにて訓錬終了。キャメルに帰還する!』←トッド少年
結局、一時間足らずの訓練に、ボイド教官の怒鳴り声は一度も響かなかった。
変だなと思いつつ、それより帰って寝れるのが嬉しい。もっとも、眠気なんか吹っ飛んでしまったが。
トッド少年がボイド教官にボードを渡し、ボイド教官が名前を呼上げる。雑用の割り当てだ。
エロガキィの陰謀か!!その回の訓練成績が悪い者を明らかに狙い撃ちしてる。寝てなかった連中が勢ぞろいとなった。
ボイド「全員、指示があるまで休養!用を言いつけた奴らは1時間の休憩後、分担へ向かえ。以上解散!」
どさんこ「まぬちゃん、ぴよちゃん、ごめんね・・・」
まぬけ「いいのよ。悪いのはあのエロガキだわ!」
ぴよこ「どさんこちゃん、気にしなくていいのよ。ちょっと寝たから大丈夫・・・・ぐぅ・・・・」
特に射撃成績が劣悪だった寝ぼけチーム(?)に割り当てられた仕事は、ファノン看護士の仕事を手伝うこと。
細かいことはファノン看護士に聞け!と言われて、モニター室(ボイド教官の個室でもある)に来たものの、ファノンが来ていない。
まぬけ「んもう!何を手伝えって言うのよっ。ちょっと待っていてくださらない?ファノン看護士を探してきますわ。」
ぴよこ「あっ、ドア開きますよ。中に・・・・居ませんね。入って待ちましょう。」
おじゃましーまーす・・・3人がぞろぞろ部屋にはいってくる。灯りはどこだろ?あ、ここだ。
モニター室はボイドの私室も兼ねているので、ベッドや冷蔵庫が部屋の隅に転がっている。寝ないで仕事してるのだろうか、殺風景この上ない。
ぴよこ「あれ?ベッド・・そういえばモニタールームって、教官の部屋も兼ねてるんでしたよね。いやだわ、男の人の部屋なんて。」
まぬけ「ぴよちゃん、いいのよ。あの鬼教官なんか人間扱いしなくて。」
ぴよこ「そうよね、あーーーー疲れたーーーーー」 しわくちゃのシーツが漂ってる上に飛びこむ
ごちっ!
二人『ファノン看護士?!』
ぴよこが後頭部、ファノンさんが顔面を押さえて、空中を悶えている。激しく痛そうだw
どさんこ「ファノンさん!居たんですか?」
ファノン「いてて・・仕事の前にひと寝入りしとこうと思ったが、こりゃ天罰だな。」
ぴよこ「いったーい、なんでこんな所に寝てるのよぅ」
まぬけ「これ、ぴよちゃん!ファノン看護士に謝りなさいってば。」
どさんこ「ファノン看護士、ごめんなさい・・」
ぴよこ「あ、いや、ぶつかったのはあたしで・・・その・・・ごめんなさい!!」
ファノン「いや、気にしなくていいよ、うん、大丈夫、うんうん。」やっぱり痛そうだ。
ボイド教官から話はついているようで、3人には艦内監視モニターのチェックが言い渡された。
昨日まで、ボイドと手の空いた士官(ほとんどファノン)がやってた仕事だが、急に女学生を動員したのはなぜだろう?紅茶ポットだけが知っている。
軍艦にプライバシーは無いという前提があるから、ムサイ級にはトイレや更衣室にも監視カメラはある。
そうはいっても女性兵士の増えた昨今では、戦闘時に解除しない限り、こういった場所のカメラは機能停止させてある。
士官個室の中にも、ベッド脇の壁面の通信コンソールに一体型カメラがある。これも普段は停止しているが、手動やリモートでONになる。
(ちなみに、トイレ個室内(男女共用)のカメラは手動でOFFにできるが、これはLEDが消えているだけのことで、本当に消えているかどうかは謎だ)
モニタールームのデフォルトでは、こういった場所は白画面になっていて、確認ボタンを押すと映像が出るように規制が入っている。
ボイドたちが仕事するときは、この辺の規制は全部解除している。(やっぱり覗いてた?)
この辺、ファノンとしては監視対象の女学生に全部見せるわけにはゆかず、音声認識とかは説明していない。
・・・・・・・
「というわけだ。何か質問はない? よし、それじゃ二人がモニター監視、一人が艦内巡回。ジャンケンで決める?」
『最初はグー、じゃーんけーん ぽーん!』
どさんこが艦内巡回に廻る事になった。大きな懐中電灯を渡されて、ドアが閉まると通路に一人っきりになる。心細いよぉ・・・
「どさんこちゃん、P-2通路を移動中・・・あ、後ろ見てる。おーい♪ちゃんとみてるよーぃ」
「ぴよちゃん、向こうには聞こえていませんことよ。」
「あ、そうか。うーん♪あたし、昨日の怪談とか、ほら、怖いの苦手だからさぁ・・・どさんこちゃん、あはは、走っちゃ危ないってば♪」
ムサイは無重力で運用される艦なため、床面を歩くよりは壁面の移動スティックに掴まるように出来ている。
それでも床が水平なのは、建造地がジオンだけでなく、グラナダなどの月面都市にもある都合による。
建造中はエレベーターが設置されているが、無重力中では撤去されて、真四角なエレベーターシャフト跡には、壁面パネルが貼られてる。
「どさんこちゃん、R-0シャフトを移動中・・」
「何でしょう、変な向きで掴まってません?」カメラから見ると横に伸びて移動してる。
「どさんこちゃん、地球育ちでしょ?シャフトの方向は『上』なのね。律儀だわ。」
「そうだったわね。極東地方のホッカイド島だとか言ってましたわね。たしか、あそこは・・・」
ファノン「二人とも、問題ないかね?」
音も無く二人の後ろに立ってた、ファノン看護士が笑顔で問いかける。え?いえ、問題ありません。
ふたりとも居ずまいを正して、他の箇所の監視も手早く再開する。遊んでちゃいけないゎw
ファノンも狡猾だ。うまく話題を逸らしてしまった。
『ふむ、この娘たちなら任せてもいいな。』
眼をやると、二人が泡食って艦内チェックをこなしている。どさんこちゃん、迷子になってるけど気づいてない。
うむ、地味にピンチではないか?
『まぬちゃん・・・ぴよちゃん・・・・怖いよぅ・・・・・・』
ムサイ艦内の通路の暗がりに、どさんこちゃんが漂っていた。
たまに整備と行き違うこともあったが、さっきから誰も通りかからない。
このキャメルが定員オーバーで激しく手狭とはいっても、それは厳重にシールドされた居住スペースについてのこと。定常運行中のエンジンブロックや倉庫周辺には誰も居ない。
エンジンブロックや倉庫が与圧ブロックになっているのが、比較的新しいムサイの特徴といえるかもしれない。チベには無い。
酸素があることは火災や錆の原因となるが、メンテナンスの迅速さは際立つ。だから船員のメンテが期待できるなら、酸素があるに越したことは無い。
この酸素対策もあって、ムサイの艦内通路は石膏ボードの壁面パネルで覆われていて、出っ張りが無いから乗員の評判がいいのだが、同じ光景をぐるぐる廻ってると方向感覚が失せてくる。
『え・・・と、この先がL-1ブロックだよね?ぐすっ、迷子になっちゃった?』
あーいかん、どさんこちゃん泣きべそモードに入ってる。監視の二人は・・・・・大慌てで他の場所をチェック中。だめだこりゃ
やっぱり迷子だwここはL-1区画じゃなくてL-2の方。
かび臭く、人気の無い資材倉庫の暗闇は、ここが目的の場所じゃないことを如実に示している。
『えーん、迷子になっちゃったよー。ぴよちゃーん!まぬちゃーん!』エンジン近くではミノフスキー粒子が濃くて無線も届かない。
あぁそうだ・・・・たしかこんな箱の中からお化けが・・・・・
もそっ
「キャーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
ブル2「うわっ、何だなんだ?」灯りを突ける
「キャーーーー!!!!!キャーーー!!!!!!!キャーーーー!!!!!」
ブル2「あ、びっくりした! なんだ訓練組の女の子か」
「キャーーーーキャーーーーきゃーーーーーーきゃーーーーー!!!!」
ブル2「あの・・・・・」
「きゃぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
なんか小っちゃい女の子が、パニくって宙をぐるぐる回転してる。面白いから見ていよう・・・・いや、面倒だから止めるか・・
「おーい、止めるぞ!」まずガッシと抱きとめる。刹那、パニくった思考の奔流が流れ込んでくる。
「きゃーーー!きゃーーー!」
「きゃーーー!きゃーーー!」 ←ブル2
「きゃーーーー!」
「きゃーーーー!」 ←ブル2
「?」
「きゃーー!!!きゃーーー!・・?・・」・・・すげー恥ずかしい・・・・・穴があったら入りたい・・・・・ はっ!?
モニタールームでファノンだけが笑い転げそうになるのを我慢していた。見たよw
全くもって災難だ。なんで子供に昼寝の邪魔をされにゃならんのだ。 あ!エルメスの図面、どっかに飛んじゃった!
「うわっ大変だ、どさんこちゃんも探して探して!A4のこんな紙だよ。うゎ、どこにいった?」
「はっ、はい!探します!! えーと・・・・」
L-2ブロックはエンジンシャフトに連結して回転しているため、ごく弱い遠心力がある。紙が散らばると、コンテナの間に入って分からなくなるのだ。
「えらいこっちゃ、あれ失くすとシムスたん、泣くぞ;」
「あ!ありました!この紙ですか?」
「え♪ あれ?違う。 ひぃふぅみぃ・・・あ、もう一枚なくなってる!」
「ご、ごめんなさい!探します!!」
「あー、いいよいいよ。君は良い子だねー♪」なでなで
ブル2のやつ、探すのが面倒だからって他人の記憶を読むのはやめようね。でも見つかった。入り口方向だったか・・・・よっしゃ!
エルメスの論理設計図(最高機密)をフォルダに戻すと、ようやく人心地ついた・・・・・わけでもないようだ。何か激しい苦痛に耐えている。
でも、面の厚さはジオンいちぃ! 瞬時に普段の笑顔に戻る。
この面の皮を突破できるのは紅茶ポットぐらいのものだな。湿布はどこかへ飛んでいってしまったようだが。
『こんな子が修羅場を生き延びてきたんだな・・・・それにしても連邦とは酷いことを・・・・・・』
ニュータイプの超感受性というのは、時に厄介なものだ。記憶と感情の奔流に耐えながら、ブル2は思っていた。知らず、泣いていた。
ドレン提督の個室は広い。そして実に整頓されている。
贅沢なバオバブの一枚板で作った机の上には、奥さんの写真が載っている。子供はいない。
軍艦というのは結構、揺れるもので、磁石の入っていない木の机は、載せた物が転がって漂って始末におえない。
しかし、留守がちなドレン提督が戻るたび、壁の額ぶち(ジオンの横顔が入った72年国債やデギンの肖像画)が真っ直ぐに直されてるのも、艦内清掃スタッフが勝手に整頓しているからだ。
珍しくシャリアブル提督(兄者)がドレン提督にお呼ばれしているが、この部屋に入れるのは本来、ごく限られた士官だけのはずだ。
清掃員が個室のキーを持っているのは、どうも奥さんの差し金らしい。家には個室の鍵を送ってある。だから何も言わないのだ。
ドレン提督「狭苦しい軍艦で、ご不便おかけしておりますな。ま、一杯どうぞ。」
シャリアブル提督「これは、頂きます。・・・・・贅沢なものですねぇ・・・」
二人して梅酒のビンをがぽんっと空ける。ドレンの奥さんの実家から送ってきた物だ。庭の梅から毎年、実を獲って漬け込むんだそうだ。
季節感が希薄な宇宙暮らしで、果物というのは最高のご馳走。
そもそもジオンは移民対策で閉鎖型コロニーとなっており、人口過密で住宅事情は悪い。庭に木を植えるなんて、金持ちの道楽。
しかも、梅の実のなる温帯季節感と梅雨を再現したようなバンチは、それこそ超・高級住宅街だ。中尉の俸給じゃ無理っぽい。
ドレンが出世コースを棒に振ってまで、文官から武官に転進したのも、この裕福な妻の実家があればこそだ。結果としてドズル閣下の腹心に納まったのだから、この冒険は有意義だったといえよう。
(転職をためらう下級官僚ってのは、そりゃ腐るもんですよ・・・)
シャリアブルは弟のブル2とちがって貴族らしい生活はしてこなかった。風貌、立ち振る舞い、人格、すべて生来のものだ。生粋の貴族といえよう。
ドレンとシャリアブルは良く似ている。
ジオン貴族社会の辺縁に暮らし、しかしそれに呑まれない、生まれつきの度量。
努力して才能を認めさせてきた自負。
兄弟のいない環境(ブル兄弟は子供の頃に離散していた)
未婚、という大きな違いはあるが、大切な者が、愛妻か双子の弟か、という違いにすぎない。良くも悪くも縛られている。
そして子供がない。
本国に帰還するたび、子作りに励む婿殿なのだが、こればっかりは天の配剤。うまくいっていない。
そうするうちに革命と戦争が始まってしまい、いつ果てるとも知れぬ前線勤務(?)となってしまった。
ドズル閣下の子煩悩を苦々しく思いつつも、あんな家庭に憧れる自分があるのも確かだ。
一杯の酒を酌み交わすことが、万の言よりも有益な場合がある。ドレンはそれが上手い。
(あの腹は飲みすぎとストレスと運動不足だ)
そうはいいながら、やっぱり言葉で伝達しないといけない用事もある。酒を入れたのは、言い出しにくい事だったからだ。
ドレン「提督、わが艦隊の基軸に占位していた、えと、シャアのザンジバルが急にグラナダ方面へ出航しました。予定されていた、モビルアーマー受渡しの目処は立たない状況です。」
ブル「そうですか、戦は生き物、ままならぬものですね。」
「ソロモンからの通報では、モビルスーツ13機以上を伴う連邦艦隊と遭遇・交戦とのことです。この宙(そら)に侵入した連邦軍の一部と思われますが、戦力規模は未確定です。」
「ここは戦場になる・・・・後方へ下がれ・・・ということですね。」
「はい。我々が提督をお護りすべきなのですが、このキャメル艦隊はザンジバルの抜けた宙域に占位せねばなりません。正式な命令はまだですが、最悪、ここを死守することになります。」
「わかりました。では、たった一つ、無理を聞いてはいただけないでしょうか・・・」
シャリアブルがドレンに耳うちする。ドレンの顔が驚きにゆがむ。
ドレン「まさか・・・・そのようなことが・・・・・」
ブル「忘れてくださいませんか。」
ドレン「忘れましょう。私、忘れるのは得意でしてな、はは・・・」
シャリアブルは安堵した・・目的は半ばしか達せられなかったが、フラナガン機関での進展は予想以上だ。きっと有益な結論が得られるだろう。
ともかく、あとは弟を伴って本国に密入国するだけだ。シーマらが万端、整えてくれる。
どんなに困難でも、方針と目処さえ立てば、あとは気楽なものだ。
弟に指示を伝えるため、ソファーに深々と座って心の回路を啓き繋ぐ・・・・・・・・反応無し。こいつ、寝てるな#
・・・・・・
『きゃーーー!きゃーーー!』
うわ!びっくりしたぁ!!! 脈絡も無く、他人の感情が流れ込んでくる。
弟め、また誰かに接触して記憶を読んだな。まったく慎みの無いやつだ。 ・・・おや?
油断していた。弟を経由して、怒涛のような思念の奔流が流れ込んでくる。抵抗できない。流される・・・
いったい、どういう精神的質量なんだ!!
そして・・・・・苦痛・・・・・・・・・いったい、これは何だ?! ここはどこだ?!
何事?上体を痙攣させるブルを、ドレンが慣れない手つきでソファーにもたせかけ、瞳孔をチェックする。異常なし。
脳に損傷がなくても、動かしたら危険だと応急看護で習ったな。
壁のコンソールから医務室を呼び出すと、モニタールームのファノン看護士に転送された。
緊張の面持ちで、症状と今とった処置を説明したのだが、ファノン看護士は分かっている様子で、そのまま放置していいという。
念のためにチャド看護兵が提督室に向かうので、入れ替わりにエンジンブロックのL-2倉庫へ来てくれという。そこで落ち合うのだそうだ。
いったい、何を考えているのか、さっぱり理解できない。
いや、はっきり判る。悪い予感だ。
駄文を開き直って久しい、オレガン一途な偽ドミトリー(露)です
ちゃんとホラーになってるでしょ。え?なってない?w
こんなオレガン書いてみたかったんですよー
壁面が石膏パネルだとか、グレナダで建造したときの手順とか、額縁だとか、奥さんの実家の梅酒とか・・
本編にも外伝にも、全く!関係ない駄文を延々と書ける・・・これが幸せってやつですなw
ドミトリーの本編でシャアの赤いザンジバル級がグラナダへ向かいましたね。
ソロモン艦隊に所属するキャメル艦隊は、その穴を埋める形で軌道変更しています。
本編の進展にもよりますが、増援の艦が来るかもしれませんね。
ドレンの奥さん、登場することはあるのでしょうか?個人的には声だけの人ですw
個人的にはコンスコンあたり、お話させてみたい人ですね。あっちも女学生の巣窟ですし。
これのネタソースはガンダムエースの読切ですから、正史じゃありません。でも私的には大好きなエピソードです。ちょっと悲しくてね・・
次回あたり、宿命に導かれし猛者達がL-2倉庫に終結します。今度はハードアクションだ! (嘘
そういえば最近、偽ドミしか書いていないなぁ・・と気にしてる偽ドミトリ(露)です。
最初から謝っておきませう。ハードアクション?嘘ですw
えぇ、気弱になってます。梅雨ですし。
それではドミトリ外伝の外伝、再開しましょうw
艦付きのチャド衛生兵がやってきた。痙攣しているシャリアブルを慣れた手つきでソファーに寝かすと、あとはいいと言う。
チャド「提督、気にすることはありません。ニュータイプではちょくちょく有ることです。ファノン達は倉庫でしたね?」
ああ、わかった・・・・行くか・・・・
胸から梅酒の香りがこみ上げてくる。しまった、こりゃ匂いが目立つな。手ぶらとはいかんか・・
薩摩焼の徳利に入った梅焼酎と、機密文書を綴じたバインダーを抱えると、チャド衛生兵に目配せして部屋を出る。
なんか、信楽焼きの狸そっくり
・・・・・
ファノンが何を話したいのか知らんが、酒の席という建前なら、何とでもごまかしが利く。
第一、艦内通信で話せない内容ってシャリアブル提督の異変と関係あるのか?
廊下をすれちがう整備員たちが、ちゃっと敬礼してゆく。この辺、こなれた艦だ。徳利を抱えて手があれなので、目で挨拶してすれ違う。
『しまった、コンテナに隠してくるんだった。あとでクルー全員に一杯おごらないとな・・・・』律儀な酒好きだw ドレン提督が乗員に愛される訳だね
エンジンブロックへの長ーい廊下は、壁面グリップの加速減速がきついので、徳利をしかと抱えていく。
「・・・・・」「・・・・・・!!」
廊下の向こうから、なにやら言い争ってる声が聞こえる。
角を曲がると、口論してるボイド少尉とトミナガ中佐に出くわした。
「ほう?おふたりさん、仲がよろしいようで・・・」
「まぁ、皮肉ですか?提督。」階級が上なのでタメ口
「提督も呼ばれたんでありますか?おぉ、これは!」酒しか見てない
こいつらが能天気な分、オレに苦労が増えるんだ・・・・ん? 「ボイド君、提督も、って君らもL倉庫に呼ばれたのか?」
「はい。シャリアブル大尉から呼び出しがありまして・・・・」
「シャリアブル提督の方はご一緒ではないのですか?」
「ああ、なんか調子が悪いようでね。部屋で休んでいるよ。まぁいい。一緒に行くついでだ。ボイド君、こいつを持ってはくれないか。重くてかなわん。」
「喜んでお持ちします♪お?梅ですね!」 ボイドは徳利を抱えて、ひしっと離さない
良いクルーを持ったと思う・・・・こいつらといると、先の事を悩まずに済む・・・・・普段から面倒起こしすぎだ!!
L-1倉庫 1A与圧ブロック 酸素有 火気厳禁 最大0.2G↓
ペンキで大書きされた、貨物扉の脇にあるドアを開けると、一面のコンテナが目に入る。
ボイド「ん?どさんこじゃないか。こんな所でどうした?」
ブル2「ああ、いいの。ファノンたんにOK取れてるから。ほら、どさんこちゃん、敬礼はいいってば。」
ドレン「おい後がつかえてるぞ。おや?カスミ・・・えっと」
「どさんこ」←委員長
「・・そう、どさんこちゃんだったね。うん、ボイド教官は良い生徒をお持ちだな。あ、いいよ。敬礼、止め。」
ボイド君がいつの間にか教官殿の顔に変わっている。手に持った薩摩焼の徳利さえ無ければ、似合ってるんだけどな・・
うむ困った。どさんこちゃんを帰すにも、ボイド君も呼ばれてるみたいだし・・・
それにしても、床一面に広げられた、大量のプリントアウトは何だ?
倉庫だからA0幅のロールペーパーで印字できるにしても、設計資料だろか?この量は半端じゃなさ過ぎる。コスト削減を何だと思ってるのだ! ←そこかよ!
思いを見透かしたようにブル2が設計図を引っ張り寄せる。
「いやね、エルメスの設計プラン、どさんこちゃんと見てたんだよね。細かいところ、僕らだと気が付かなくてさ♪」
「おい(小声で)NTMAは最高機密のはずだ。うちの乗員は特別とはいえ、子供に見せる奴がいるか!」
「えへへ・・・年とると頭が固くなって困るなぁ・・・あははは」
「笑い事じゃない。」
ボイド「ブル大尉、この書面、ヤバイんじゃありませんか?」
ブル2「いいのいいの。むしろ委員長たんと一緒に目を通しておいてくれ。ここの全員に関係することだ。」「おい!」←ドレン
どさんこちゃんがオロオロしてる。
ブル2「あ、ごめんごめん。どさんこちゃんは気にしなくていいんだよ。君も関係者なんだから、ね♪ドレン提督?」
『?!』
そうか、見つけたのか?シャリアブル!
状況を把握しておくのも指揮官の務めだ。ロールペーパーに沿って歩きながら、エルメスの開発状況を読み進んでゆく。
前よりも格段に進捗しているようで、詳細項目が二桁増えている。本国の開発チームが入ってるな?
開発方針が二転三転し、その度に進捗が遅れていたと聞くが、そうではないようだ。むしろ・・・・・
ブル2「そう、むしろ計画本体が周到に隠されてきたというべきだな。」
急に割り込まれるとびっくりする。ブル2はお構いなしに続ける。
「前にお見せした図面は内部メカニックだけで、このように装甲はありませんでしたよね?あと、フレームも旧版から全面更新されてます。」
紙をまたいで旧版の透視図を眺めると、まるで脳と脊髄のような形だったのがわかる。
「新バージョンでは、強化フレームの導入とサイコミュの小型化により、乗員の生存を第一に考えた装甲の強化が可能になりました。」
ロール紙の30メートルほど先からボイドが問いかける
「ブル大尉、この超光速によるフィードバック演算って、こんなもの、いつの間に実用化されたんですか?」
「実用化なんかされてないっwニュータイプで補うのさっ」
「えーー? じゃぁこれ使えないわけ?」
「そうだよ。」
「えー?!」
ドレン「どういうことか、説明してくれないか、ブル大尉。」
ふむ・・・
ブル2「どさんこちゃーん!、ちょっとここに立ってくれないかな? ああ、紙の上に立っていいから・・・・うんうん。
モビルアーマーを始めとして、戦場における最重要要素は火力の集中です。3次元的な配置、時間、人的/物的諸要因・・・・
これらを統合的に運用する中心がエルメスとブラウブロを中核とした統合システムであり、艦隊運用に革命をもたらすものなのです。
通常、衛星軌道上の敵に対する時間差は、1光秒にも達します。光速に依存するレーダーでさえこれですから、ミノフスキー環境下では有視界戦闘しかできませんでした。
これをニュータイプの異能を用いて超空間探索を行うという野心的なプランが、初期のゲルドルバ計画でした。これは兄が詳しいので詳細は省きますが。これを見てください。
限定的とはいえ超空間通信の恩恵はミクロな演算装置にも及びます。光速を超えた入出力と高度な非論理フィードバックが可能だからです。
エルメスを脳、ブラウブロを脊髄として配置してみましょう。身長数十万キロの『人間』が、サイコミュによって仮想的に実現するのです。これに『腕』や『爪』も加わり、
仮想的なサイコミュが、このように実体ある軍事力として機能するのです。」
やにわにロール紙を掴むと、どさんこちゃんの立っている間際を掠めて放り投げる。さっきまでの優しげな顔つきではない。
「ひっ!」
ジオン艦隊の統合運用を記した、長い紙が転がり伸びてゆく。次も、また次も!
少女が立ち竦むエルメスを中心に、艦隊近代化、MSA統合運用、異化人材計画、コロニー戦力化、地球管理、ゲルドルバ・・・
ジオン全軍の統合運用プランが放つ狂気を体現して、放射状に伸びてゆく白い紙、紙、紙。カバラの生命の樹。
生命の樹の邪神は、既にジオン国家という肉体を得て蠢動していたのだ。その中心に立つ者もまた、贄(にえ)。
ブル2「これがジオン・・・・我々がジオンなのです・・・・・・・」
不意に背後のドアが開き、ファノン看護士に肩をかりたシャリアブル提督が入ってきた。
ブル「ジオンか・・・・・弟よ、お前は物事を表面から捕らえすぎだ・・・・人間の・・・・うっ」
ブル2「お兄ちゃん、大丈夫?いいよ、無理しなくて。」
ファノン「提督っ、腰を下ろしてください。 どさんこちゃんっ」ひと跳びで駈け寄る。
「・・・・・・・・・あっ・・・・・・う・・・・・・・うわぁーーーーーーーん!!!!」
よしよし、怖かったんだね。ぎゅっと抱きしめる。緊張の糸が切れたのだろうか、ずっと泣き続ける。ブル2め!我が姫君によくも!!
ようやく泣き止んだ。よし・・
どさんこちゃんを委員長に預ける。肩越しに抱かかえられていると安心するようだ。
ブル2の方を振り返ったファノン看護士、いつもの柔和な笑顔で、それでいて本業の殺し屋の眼を隠そうともしない。
「ブル大尉、あなたや軍が何を意図しているか、それはこの際、関係ありません。私はこの艦の看護士。障害を排除するのが職務です。」
「怖いね・・・僕も軍にべったりな立場じゃないから・・・君みたいなの好きだよ」 じりっと間合いが動く
「へぇ?大尉なのに?」
「民間から招聘を受けると自動的に大尉なのさ。」
「どこでも役人ってのは杓子定規だね」
「そういう君だってジオンだろ? 喰えない奴だな」
「ジオンだっていろいろさ。 さ、始めようか♪」
『 ち ょ っ と 待 っ た !! 』
シャリアブル(兄者)の怒声が響き渡る。(声だけでもないが・・)
ブル「お前たち、また喧嘩か!何回言ったらわかるんだ。」
見当外れな事を言う。らしくない・・・・・・・・は?! そうか、霞の手前、事を荒立てるのは得策じゃないってか。くそ、オレの立場ねーな。
ドレン提督「そうだぞお前ら。少しは大人になれ!なんだったらトイレ掃除でもやるか?」
『!』
ファノン「看護士が掃除って、いざと言う時に不衛生だなぁ・・・破傷風うつるよ? ブルたん頼む!」
ブル2「えーー?僕だけ? 居候を差別してない?」
委員長「あんたら、揃って馬鹿だゎ・・・・」
・・・・・
何人かは気付いていたが、さっきまでドアの陰に佇んでいた殺気が消えている。どうも、この艦は易しくないようだ・・
ドレン提督「シャリアブル大尉、ちょっとブリッジまでよろしいか?提督、お加減が宜しければ後ほど。」
聞きたいことは山ほどあるし、大尉を連れ帰った方が無難だろう。二人は先にブリッジへ帰っていった。
シャリアブル提督とファノンの二人は、倉庫一面の機密文書wを片付けるため、20メートルも先で何かやってる。
提督が読みながらシュレッダーに入れてるから、戻ってくるまでに暫くかかるだろう。
おぉっと!ドレン提督の梅焼酎があるじゃないか!!
「委員長たん、いける口?」
「ちょっと、コップぐらい使いなさい! ほら、7-8BのGコンテナに行けば地上用雑貨があるでしょ。」
「えー出すの面倒くさいー」
「あなた、よく教官殿が務まるわね。ズボラよ。」
・・隣の無重力倉庫・・
「うへー、蓋なしコップなんか有るよ。地上反攻なんか、上は真面目に考えてるのかねぇ?」
「はいはい、使っても文句言う人はいないわよね。」
「地上用メイド服もあるって噂だが・・・」
「何探してるの!戻るわよ!」
とくとく・・・とくとく・・・・とくとくとく・・・・ 弱くても重力があるのはありがたい あれ?3つ?
「さー今日は無礼講だ、一杯いっとけ。」
「ちょっと、子供に何勧めてるのよ! どさんこちゃんには梅の実あげる。あーん♪」 ぱくっ♪
「おれがこいつの歳にゃ、一升瓶空けてたぞ」
「いいこと、こんな大人に成っちゃいけませんよ」「はーい♪」
「なんか人間失格だなw あれ?コップは?」
「あたしが飲みました。何か? 梅も一緒に食べましょうねー♪」 ぱくっ♪×2
「げ・・・ウワバミ・・・・いいかっ、ブル提督やファノンの分もあるんだからなっ」
「判ってますっ!ちゃんと残しときますっ」 とくとく・・・
「え?俺たちのおかわりは?つーか何でジョッキ? ちょっと待った、それ戻せ!」
「いやです」
不意に後ろから穏やかな声がした。「今日はお騒がせして済みませんでしたね。」
あ!シャリアブル提督。ロール紙を処分して、ここまで戻ってきたんだ。
「どさんこちゃん、だね。弟に悪気は無いんだよ。でも、あいつは力に呑まれて迷惑ばかり・・・本当にすまん。」
「え・・あの・・・提督?お気になさらないでください。ブル大尉もいい人ですから・・分かるんです。」
「そうか、分かるのか・・・・・・・君も同じなんだな。
ザビ家の、いや、ジオンの宿業、それが君の人生になる。私たち兄弟も似たようなものだった。
でもね、君はいい子だ。周りの人たちがきっと助けてくれる。私も弟も、ドレン提督も、ファノン先生も、ボイド教官も・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
えと?こちらの方、 『 奥 さ ん ? 』 」
次の瞬間、頑丈な薩摩焼の徳利で殴り飛ばされて、シャリアブル提督の意識は銀河に吹っ飛んだ。自業自得だろう・・・
VIPのニュータイプを殴り倒したでは洒落にならん。
地上用雑貨のミネラルウォーターをヤカンに入れて、慣れた手つきでボイドが鼻から注ぎ込む。
「がふっ?!」 荒っぽいが効果覿面、天の川の河原でお花畑を彷徨ってたシャリアブルが、現実に引き戻されてきた。
ファノンが手早くシャリアブル提督を介抱して、額の汗を拭うと、もう安静にしていれば大丈夫だ。
「戦闘能力が確認されているニュータイプを二人も殴り倒すなんて!なんて非常識なんだ。委員長、あんたもニュータイプ?」
「確認されてる・・・・ってことは確認されていないニュータイプもいるのか?」ボイドが割り込む
「正直、わからない。本人にもわからないそうだ。 おっと、 提督! 聞こえますか、提督?」
まだ意識が朦朧としているようだ。
「委員長が悪いんだぞ。そうだ、酒のせいということにしてだな・・・・いひひ♪」
シャリアブルの胸ポケットに梅の種を押し込む。
「眼が覚めても、酔っ払ってたことにして、知らん振り決め込めば宜しいのではないかね?委員長くん・・」
委員長「どういう頭の造りしてるの?第一、そんなもの持ってたの?」
「へへん!拾えるものは何でも拾え。捨てるものは躊躇せず。俺が先代教官から教わった通りさ。」
ファノン「いくら意識が無いからって、無茶やると怒られますよ。やれやれ、たいした怪我じゃないから、私は診察室の準備してきますんで、ボイド君、提督を診察室までお願いするよ。」
「えー?なんで俺が。この凶暴女が担いでくればいいじゃん・・・・・え?何?・・・・・あ゛」
しまった・・・どさんこちゃんが、梅の実食べただけで酔っ払って寝てる。いかん、起きろーーーー・・・だめだ
委員長「だから言ったでしょ!子供にお酒なんか飲ますなって。」
ボイド「梅の実食べさせたのはお前だろ?これ、梅酒じゃなくて焼酎漬けだぞ。」
委員長「ここまで弱いとは・・・」
ボイド「お前が言うな! つーか、どうするんだよ!」
ファノン「だから、提督はボイド君が担いで来てねって言ってるんだよ。委員長、どさんこちゃんをよろしくね。」
つーわけで・・・・・
エンジンブロックから艦橋への長ーい廊下を、子供と提督を負ぶった士官二人が歩いていた。
「かー!この欠陥戦艦!たった二人で質量オーバーだと?!」
廊下の移動グリップは過大な重量を感知すると自動停止するように出来ている。ボイドが提督を背負うだけで駄目だ。
「これを設計した時には、負傷者が出る事態なんて、考えもしなかったんでしょうね。」
どうも、グラナダにあるヤシマ重工の製品には、地球でもジオンでも苦情が多い。重力に対するセンスが違うのだろう。
嫌なことに、艦が緩やかな減速フェーズに入ったため、この廊下はずっと上り坂になってるのだ。体感的に。
応援を呼ぶのも間抜けなので、二人して登りきるしかない。
・・・・・
だんだん寡黙になってくる。
「・・・・・」
ぷっ、どさんこちゃん寝言いってる♪
「いい夢見てるのかな? どうだい委員長、提督を背負うの、そろそろ交代しようや。」
「いやよ。ボイドさんは提督を背負いなさいってば。」
「えー?ケチー!減るもんじゃないだろ。」
「あなた、言葉の使い方間違ってるわよ。昇進しないのはそのせいね。」
「俺は現場が気に入ってるの。ドレン提督と同じ。」
「あら、ドレン提督はデスクワークも並外れてやってるわよ。怠け者さんのエースとは違いますっ。」
「そりゃ俺、撃墜数ではエースだけど、怠け者でエースを取る方法は習わなかったなぁw」
「士官学校でエース5人養成してもエースじゃなかった? 暗星のボイドさんならダブルエースよ。」
「よせやい♪ いや・・・・それは無いな。俺が教導で教えたエースは4人どまりだ。これ以上は増えん。」
「うちの娘らは・・・・無理ね。本国かソロモンに戻ってもう一人鍛えてくれば?ついでに休暇も取って。」
「よせやい、ファノンやチャドと同じこと言うなぁ。戦争が終わる方が早いさ。」
「う・・うーーん・・・」
「あら、どさんこちゃん起きちゃったの?いいのよ、そのままになさい。」
「いーなーーー」
「ぷっ、いい歳して何いってるの?代わってあげませんからね♪」
不意に艦全体が振動し、加速方向が変わる。
今まで上り坂だった廊下が、ちょっと急な下り坂に変わった。
「しまった、今まで待てばよかった・・・」
「ちょっと急ね。あ、どさんこちゃん降りるの?ちょっと待ってね。」
しかたない。提督を3人で押さえて、グリップを掴みながら下ることにしよう。艦がいつランダム加速するかわからないからだ。
やっとのことで廊下の端まで来た。退避ブースのマットに提督を腰掛けさせて、やれやれと人心地つく。
壁のコンソールからファノンを呼び出し、応援の人数を要請した。しばらくして来るから、休んでろとのこと。
「提督っ、おかげんは如何ですかっ」
弱々しく手を振る。あ、腰のベルトがきつかったか?
変だな?木星船団の提督がこんなに虚弱でいいのか?(いや、この身体は鍛えた人間のものだ)
宇宙暮らしが長いと体悪くする・・・・まさかそれは無いだろ ボイドが勝手に推量するまもなく
「提督さん、お茶飲めますか?」←どさんこちゃん
「・・・ぁ・・・・」(ありがとう)か?
パックの緑茶を手に握らせて、ストローを口元にそっとあてがう。ゆっくり、実に美味そうに飲んでいる。
「よかった、一時はどうなることかと」←お前が原因だろ!!
5分と経たないうちに提督の容態は良くなってきた。もうシートに座っていられる。
がたん!
「教官!」「提督殿、おかげん大丈夫ですかっ」 慌しい二人がドアを開けて駆け込んでくる。
「ぴよこ!まぬけ!お前ら騒がしいぞ・・」まで言いかけて笑いがこみ上げてきた。こいつら、担架を担いで廊下を突っ走ってきたのかw
雷が落ちるかと思って首をすくめている二人だが、教官殿は笑っているばかりで何も言わない。朝から変だなぁ・・・
「提督、もう少しお休みになりますか?よろしければ担架で送らせますが。」←委員長
「・・・いや、こいつは病気でも・・・怪我でもない・・・時々あるんだ。(にやりと笑う)
君らもご苦労・・ありがとう。エリザベス・ヤシマ君にアルル・ガルーチ君・・よく知ってるよ。
あぁ、もう少しじっとしてれば元に戻る。ご苦労のついでだ。ひとつ、おじさんの世間話につきあってはくれんか?」
シャリアブルは滔々と昔話を始めた。それはジオンの国の物語だった・・・
毎回、オレガン長文が酷くなる偽ドミトリー(露)です。
あんまり変なネタで引っ張ると、本編が気にしちゃいますよね。
え?無視してるから大丈夫?よかったよかった
どさんこ=霞・ザビちゃんの物語になってきちゃいましたね。
やっぱりニュータイプ? ならばシャリアブル兄弟は主役交代でしょうか?
次回からシャリアブル(兄)の長ったらしい思い出話が続く予定です。
製作スケジュールにに困ったときの総集編ですなw
実はもう文章は書きあがっています。ハイパー長文です。反省の色なしです。
こいつをもちっと短くしようと悪戦苦闘中ですわぃ。
出来上がりつつある文章は、高濃度、真っ黒オレガン汁ですね。健康に悪いw
というわけで、次回デミトリ外伝の外伝 ジオンの国の物語 が始まります。
まずはシャリアブル4歳のときから始まりますが、ショタの要素はありません。あしからず
前半は革命前のジオンをくどくど
後半は木星時代の体験談をたらたら・・・・ あ、後半でザクレロのエピソード予定しています。それでは!
135 :
○ミトリー(○):2006/07/29(土) 01:50:25 ID:loh5X2xm
いやーよくそんなに文章が書けるものだと感心しています。
私の文間のペース(空白が多い、しかも内容が薄い)なら軽く500くらいに達していそうで驚きでアリマス。
ちなみに私のショタの経験は3人です。
本編でザクレロの戦闘が終わりましたね。大戦果じゃないですか
これで設定ハズレなしに書けます・・・うふふふふ
おっと、なんだかスレを占領してて申し訳ない、偽ドミトリ(露)です
本文の大枠は出来てるのに、なんで書かないのかって?
それは、今夜はズダのプラモを作るのに忙しいからなんじゃ!(爆
簡単なCGモデルでっちあげて、幌とかのオプションを考えてみたりしたんだけど、
やっぱり手に持たないと実感出ませんね。ぎゅーん!ずどどどどど 小学生かYO!
木星船団がズダを装備していたという俺ガン、今ひとつパンチが弱いので、シャリアブルの長話のなかでエピソード挿れてみます。
(そして文章が長くなる・・・・)
ザクレロの戦闘イメージ、なんだか面白そうですね。打つべし!打つべし!
ジオンの国の物語
さて、どのあたりから話そうか?
おじさんが子供の頃、サイド3はまだ、建設が終わっていなかったんだ。
あの頃は今と違って連邦と同じ開放型コロニーでね。Mバンチ(今は高級住宅サイド)があるあたりに住んでいたんだよ。
ジオンが革命を起こす前だったから、それは貧しいコロニーでね。
そんななかで、おじさんのお父さんはコロニー建設に携わっていて、わりと裕福だったんだ。
でもね、お父さんはそれを潔しとはしなかったんだよ。
連邦がコロニーから莫大な富を奪い、貧しい人が増えるほどお金が儲かるなんて、誇り高きシャーリア家のすることじゃないってね。
そうそう、シャーリアは戦士の家でね。曾お祖父さんは飛行機のパイロットだったし、そのまた曾お祖父さんは竜騎兵隊長だったよ。
だから曲がったことは大嫌いでね、それでジオン・ズム・ダイクンと友達になったんだ。
ジオン・ダイクンには何回か会ったことがある。最初は4歳のときだったか。屋敷にあるモスクで開いたお茶会に呼ばれてきていてね。
あはは、お父さんはその頃から連邦の殺し屋に狙われていてね、僕ら兄弟は外を出歩くことも出来ずに、屋敷の中で暮らしてたんだ。
それでダイ兄ちゃんがやってくると、僕ら兄弟は先を争って膝の上に飛び乗って、お話をせがんだものさ。
売れない革命家のダイ兄ちゃんが旅した素敵な世界のこと、見たことの無い宇宙のこと・・・足元が宇宙だってのにね。
お父さんや乳母たちにも見分けが付かないほど、私と弟はそっくりな双子だったんだが、ダイ兄ちゃんの膝だけは競り負けたことが無い。
うふふ。あの頃から違いが出始めたのかな。
遠い世界での冒険を語るジオン・ダイクンを見上げると、その目は決まって、どこか遠い処を見据えていたものさ。
母さんは僕ら双子を生んでまもなく、息を引き取ったと聞いている。父さんは写真を残さなかったが、綺麗な人だったそうだ・・
そんな家族が生き別れになったのは、あのトロムサモナ疑獄が始まって程なくだった。
父さんは連邦からお尋ね者にされ、私を連れて地球圏中を逃げ回ったよ。弟は知人の家に預けられて生き別れになった。
苦労したよ。ネズミのように逃げ回る生活を8年も続けたんだからね。
これが僕にとっての学校だったのさ。でもね、辛いのは確かだが、世界中を流れ歩く生活は発見に満ち溢れていたよ。屋敷にいた反動かね。
父さんを助けてくれる、あらゆる国あらゆる階層の人に匿ってもらい、流れ者の顔も貴族の礼法も自然に覚えたものさ。
警察にホテルを囲まれて、正装して堂々と玄関から歩いて逃げたこともあったよw
苦労顔のお父さんが荷物持ちのボーイに化けてねw、私が『大儀・・』って顔で警護にチップを弾んでやったら、パトエレカで港に先導までしてくれたさ。
地球ではコーヒー豆の農場で働いたこともあったし、コロニーの貧民窟に隠れたりもした。
全大陸・全コロニー制覇のお尋ね者なんて、僕らぐらいだったと思うよ。
そんな逃亡の毎日も終わる日が来た。父さんの罪状すべてに時効が訪れたんだ。
今までありがとうと僕を涙目で抱きしめ、支援してくれた仲間とともに、ちょっと裁判所へ行ってくると出かけたのが最期だった。
確かに裁判所は手続きをしてくれたようだ。でも、父さんはそれっきり帰ってこなかった。一緒に裁判所へ行った仲間も。
僕は、たった一人になった。
吹っ切れたよ・・
貧乏には慣れていたし、父さんの仲間が支援してくれたので、奨学金で食いつないでいくのに苦労はなかった。僕は天才だったしね。でも、勉強しても味気なかった。
ハイスクールから飛び級でハプサント大学(後のジオン大)に入り、生活費を稼ぐために2年休学し、次の年の編入試験のとき、偶然にも弟に出会ったんだ。
ふふふ、あいつ出来が悪くてね。あれで落第してれば私たちは二度と出会わなかったと思うよ。
でも、心の中であいつの声がしたんだ。不思議だろ?
試験が終わってみてびっくり。シャリア・ブルと、シャリア・ブランが僅差で1・2トップさ。
同じ専攻だから教室で顔をあわせて二度びっくり。自分と瓜二つなんだから。
もっとも、あの頃のあいつは、長髪を信長にしてたから、風合いはちょっと違うね。貴族の養子のボンクラ息子を演ったたさ。
しかも素行不良は筋金入りでね、どういう育ち方をしたらああなるのか、こっちから聞きたいよ。
あいつ、悪事を働くときには決まって私の名前を騙るんだ。
いつぞやなんか、見知らぬ女の子に別れ話を切り出され、延々と恨み辛みを聞かされた挙句、いきなりビンタ。で、泣きながら走って行っちゃった。ひどいよ。
今になって思えば、あいつが私の名前をルーズに使う癖がついたのも、逃亡中だった私を護るためだったんだな。でも学生時代からのあれは、絶っ対に確信犯だ!
こうして多体量子論研究室に、天才と鈍才のセットが誕生したわけだ。あいつが弟だって言われても納得いかなかったね。
ところがね、一緒にやってると、どうも奇妙なことに、あいつ勉強してないのに、理不尽に博識なんだよ。
私も弟が隠している何かに興味を持ってね、いや、多体量子論の実例がそこに有るんじゃないかとね。
そんな中、僕ら兄弟に関心を持ったのが、非常任の助教授だったフラナガン博士だったんだ。当時の最異端科学者だね。
非常任ってのは待遇悪くてね、研究やらせてもらう代わりに、学生どもの面倒を見なきゃいけないんだ。
それで弟の試験結果を集計したときに、これはカンニングじゃないかと疑ったんだよ。ま、妥当だよね。
テストは満点で私と同じ回答として、奇妙なのは小論文。文脈こそ違え、意図する内容の中心は完全に一致したんだ。
カンニングではない。しかし、この奇妙な一致は何か?彼も私と同じ分野の研究者だったから、俄然、興味を持った。
うふふふ、弟もいないし種を明かすと、やっぱりカンニングなんだ。私の心を読み取って、答案用紙に書いていただけなんだよ。
あいつは自分なりにニュータイプの能力を開花させていたらしい。私が逃亡生活で鍛えられたのとは別の方向にね。
フラナガンは理論上の予言でしかなかったニュータイプを研究すべく、私たちに協力を申し入れた。もちろん快諾したさ。そして私とフラナガンは同志となったんだ。
研究は実に充実していたよ。原子炉遮蔽の厄介な副産物とされたミノフスキー粒子の存在が、空間の量子場に影響を与え、生物のマクロな脳活動にも影響を与えている。
しかも、それがプランク距離内における時空の因果律崩壊を、マクロな距離で再現している・・・いや、ちょっと判りにくかったかな?
そうだな、君たちのような宇宙空間で育った子らには、時として特別な力が宿るんだ。それをニュータイプと呼んだんだよ。
遺伝も、生活も関係ない。宇宙にある、ただそれだけが条件だ。
問題はニュータイプ能力の発現確率がとても低く、しかも、発現した能力は多様すぎて正確な調査ができなかった事なんだ。
ミノフスキー粒子濃度を変えた環境で、神経細胞を培養したり大腸菌増やしたりマウスを飼育したり、港湾労働者の健康調査に便乗したりもしたな、いろいろ試みたが決定打は無かった。
とにかく、出現確率が軽素粒子なみに小さいのだから、大規模な調査あるのみ。しかし研究資金が下りない。
なぜかというと、フラナガンは連邦政府に目を付けられ始めたんだ。
そりゃそうだよね。ただでさえコロニー問題の悪化で反連邦感情がいや増すジオンで、宇宙空間生活者の超常特異性を研究するなんて、テロリスト扱いさ。
実際、フラナガンは革命家として頭角を現しつつあったジオン・ダイクンの友人でもあり、連邦の杞憂は現実だったんだけどね。
ジオン・ダイクンは宇宙移民の人種的優越を主張し、連邦に搾取されてきた宇宙貧民から絶大な支持を得ていた。
いまでこそコロニーに住むのが当然だが、あの頃はひどかった・・・
港湾ブロックの無重力エリアには、貨物コンテナの内側にビニールシートを貼っただけの、簡易住宅が密集するスラムができていた。
酸素税が払えなければ、子供だってノーマルスーツひとつで宇宙に放り出される、そんな時代があったんだよ。
みんな臭くてねぇ・・・ははは、逃亡中はそれでも潜り込まなきゃ連邦に捕まるから、僕も臭いを付けて貧民に成りすましたものさ。
警察に呼び止められて、顔を見せろ!と言われたら、ヘルメットを脱ぐんだよ。もう臭くって!顔も見ないで放免されたよ。
ああ、みんな貧しくてね、腹空かして背ばかり伸びて、僅かな重力で骨折するくらいでね。これが天に選ばれし宇宙移民様の姿だったもんさ。
このインキンはあの時代からだな(ぽりぽり)
そう、それでジオン・ダイクンはコロニー独立の大義を裏打ちする、ニュータイプという存在をフラナガンから聞き、矢も盾もたまらず駆けつけたんだよ。
今のジオン大学のコーネル講堂のある場所に、小さな運動用具倉庫があってね、そこが秘密会談の舞台になったんだ。
フラナガンが収集した信頼できるデータと、目の前に座っているニュータイプの存在がある。
弟の近接発現型ニュータイプ能力によって、戦国時代の日本刀から使用者の剣筋を再現する実験映像は、出席者の度肝を抜いたものさ。
私は遠隔発動型能力による超長距離通信の可能性を解説したんだが、その真価を見抜いたのはジオン・ダイクンではなく、同席した実務家のデギン氏、今のデギン公王だったんだ。
当日、デギン氏が会合に参加できたのは、あの不真面目な弟が会合をすっぽかして、椅子が余ったからなんだな。歴史ってのはわからんものだよ。
ジオン・ダイクンは狂喜して研究への支援を申し出、同時に自身の革命運動をも本格化させていった。あの会合からジオン革命は始まったんだよ。
我々の研究は半ば公然のものとなり、護衛に囲まれながら大規模な研究が続いたものだ。
あえて聞かなかったが、ジオン・ダイクンは小さい頃の私らを憶えていなかったようだな。あの頃、数多く通ったパトロンの家の一つでしかなかったんだろう。ま、それだけのことだ。
やっと ジオンの国の物語 をリリース開始です。怠け者の偽ドミトリー(露)です。
昨夜はHGUCヅダを堪能しました;
素晴らしいキットを素組みして思ったことですが、ヅダの経験値をベースに創られたMSはギャンだけではない!
○○ッ○の○ッ○ー○とか!
その辺、木星のエピソードが膨らんだので、後半は書き直し中、もう少しお待ちください。(誰も待ってないかw)
連邦による迫害をもう少し書く予定だったのですが、文章圧縮のために思い切ってカットしてみたところ、
僕は、たった一人になった。
うざったい長文だったのが、逆に最後の一行が生きていい感じになったので、よしとします。(ちょっと不自然な編集でごめんね)
シャリアブルの実家がイスラム教徒なのは俺ガンです。屋敷内にモスクなんて、途上国の超金持ちですね。わりと裕福?なめとんのか?!
もっとも、モスクでお茶会なんて厳粛なところじゃやりません。トルコやインドのように、大らかな宗派なのでしょう。
正史に宇宙世紀の宗教が出てこないのは困ったことですが、商業的には無理からぬことですね。
商売じゃないのでネタバレすると、モデルは某有名テロリストです。危なくて書けませんw
もっとも、シャリアブルは怒りを鬱屈させる間もなしに、冒険の旅に巻き込まれてゆき、テロリストになる時間的余裕はありませんでした。
次回、ヘリウム船団 ジオンの思惑が動き出します
やっぱり、もう少し続けますw
実務家のデギン氏は、独立の困難を熟知していたよ。本当に良く出来た人だ。
ジオン・ダイクンの声望を頼って多くの宇宙難民がサイド3に流れ着き、その頃にはサイド3はジオンと呼ばれ始めていたんだが、この難民を住まわせるバンチが不足していたんだ。
ひどい話だが、命からがらジオンに逃げてきても、無重力スラムしか無くってね。それでも難民は押し寄せてきた。
これは有名な話だよね。ジオンが閉鎖型コロニーへの改造を命じた話。あれは事実さ。でも、デギン氏は陰で猛反対したんだよ。
ジオン崇拝者の間にあって、デギン氏だけがエネルギー危機の恐ろしさを熟知していたんだ。エネルギーが枯渇すれば、コロニーは滅びる。連邦もそれを狙っていたんだ。
木星にヘリウム船団を派遣して、ジオンのエネルギー危機を未然に予防する。これがジオン独立を前にした、最大の試練だったんだが・・
ジオン達が建造したヘリウム採掘船は、他のコロニーに籍だけ置いたり小惑星で密造したり、とにかく寄せ集めでね。
比較的ましだったのはベルガミノで建造された船だけで、これも競売の日取りを延期し続けて押収を逃れている状態だったんだ。
好意的なサイドで建造された船も艤装が済んでいない状態で、連邦に出航を差し止められていた。これでは話にならない。
第一、金も尽きかけていたんだ。
ジオンの決断は、当時の私でもとんでもないと驚いたよ。
未完成のヘリウム船団を出航させ、艤装は木星への航海中に自力で済ますというんだ。
誰もが驚いて反対したが、これ以上の妙案は無かった。
だが、足も遅く、武装もないヘリウム船団は、連邦艦隊の標的になりに行く様なものだった。
しかも、船団は工場プラントや資材を満載しており、この構成で一隻が欠けただけでも船団が機能不全に陥るのが目に見えていた。
勝利条件は、一隻の欠損もなく43隻の船団を合流させ、連邦軍の追跡を振り切るという、およそ不可能に近いものだったんだ。
0073の日食が歴史の転換点だったよ。
月の影に入ったコロニーの造船所からは、闇にまぎれて封印を破った船が続々と出港し、予め決められた軌道へ向かっていった。
いくつかの造船所では船を守る為に戦闘があり、尊い犠牲も出た。
捕縛した船の解放を命令し、しかし、法を曲げることは出来ないと自決した、立派な連邦軍人も。後に美談となったね。
サイド6に浮かぶベルガミノ社のドックでは、日食と同時に臨時入札が行われ、入札者デギン氏のみ、総額1kで船団が即時引き渡された。
連邦軍の反応は早かったよ。組織の内情はスパイを通じて筒抜けだったし、我々が動くのは予期されていたからね。
ただちに連邦艦隊が追撃にかかり、行方をくらました船団は一網打尽になるかと思われていた。だが、歴史はそうならなかったよね?
船団が集結していると連邦は思い込んだが、我々は船団を分散させていたんだ。
連邦は我々が集合軌道を決めているか、無線やレーザーで連絡を取り合うと決めてかかり、間違ったシミュレートに固執してサラミス級新鋭艦の俊速を無駄にしていたようだ。
私の存在を知らなかったんだな。いや、無視していたのか。
船団にいる私には弟を介して、連邦艦隊の詳細情報が刻々と伝わってきた。
我々は船団の軌道変更を3点に絞り込み、全ての船が連邦艦隊の哨戒網を回避していることを確認していった。
軌道変更のたびに連絡艇で船を移り、デコイを散布し、3回目の軌道変更で月のスイングバイ軌道に乗ったとき、43隻のヘリウム船団全てが同じベクトルに乗った。
連邦軍は見当はずれの宙域を哨戒中で、追いついてこれる艦は一隻も無かった。我々が勝ったのだ。
船団が地球圏を離脱したことによって、ジオン独立における最大の障害であった、エネルギー危機は回避された。
独立は夢物語ではなく、現実の投資対象となったんだよ。
ヘリウム船団に先立つ0072年にジオン革命政府は初の戦時国債を発行していたのだが・・・・ドレン提督の部屋に飾ってあるあれだよ。
この国債は4年後の償還、固定金利100%というものだったが、償還条件にジオン独立が達成されていたら、という条件付だったんだね。
ある意味、寄付の要素が強い国債だ。
それでもジオン・ダイクンは4年以内に革命を成功させ、必ず返済すると叫んでいたらしい。それで自分の横顔を債権に描かせたんだそうだ。後にも先にも、彼の肖像はこれだけだ。
ヘリウム船団の成功により、コロニー独立が俄然、現実味を帯びてくると、このジオン国債はとんでもない値で取引されるようになったんだ。
紙切れ同然だった底値の400倍という記録的な高騰。どう考えてもおかしいよね。
実は、革命初期からジオンを支援していたと主張したい、日和見な投資家が競って買い漁ったからなんだよ。
ま、そうではあるが、ジオン革命政府は大いにこれを喧伝して投資を集めたみたいだね。
0076年の償還日の時点では独立を宣言してはいなかったが、新装なったジオン臨時政府は0072年国債の償還を発表し、金融機関にアニりんのポスターまで配ったんだが、誰も換金に来なかったとさ。
そりゃ、換金しても元本の100%しか金利がつかないが、市場で売ればとんでもない高値だったんだからね。
私の方は金星でのスイングバイで船団を加速させてからは、ヘリウム採掘プラントの製造に奔走していました。
なんせ、有り合わせの資材やプラントを積んで来ただけですから、足りないものを一から造らないといけない。
レーザー溶鉱炉まで積んで行き、鉄質アステロイドを片っ端から拾って溶かしましたよ。ネジ一本が貴重品でした。
救いは船員たちの熟練と士気です。デブリのない惑星空間では、無重力スラムのように外で寝ていました。与圧船室なんてほとんど無かったんですよ。
重機の不足には泣かされましたね。船団は常に加速か減速をしているため、工場プラントは重力加速に耐えねばなりません。
ところが、コロニーで調達した無重力仕様のプラントは、実によく故障するんです。改修を繰り返すうち、ほとんど原形をとどめなくなりましたよ。
人力で作業しても酸素の消費が増えるだけですから、ジオンとのレーザー通信が再開してからは、モビルポッドの設計図面を送ってもらって、船内で一から組み立てました。
パーツが足りないので、船の部品まで共食いしたんですよ!
こいつが役に立ったの何の!
プラント建設が効率化したおかげで、工場設備が拡充でき、共食いで使えなくなっていた与圧デッキに部品、やがて空気が戻ると、すし詰めになって歓声を上げたもんです。ヘルメットを取るとみんな、臭いのなんの!
みんなで歌を歌うのが、あんなに楽しいなんて、木星行きを経験した者にしかわかりませんよ。
こいつはあまり言いたくないんですが、モビルポッドの活躍に沸きかえった船団では、更に機動性の高いモビルスーツの要望が高まっていたんです。
もちろんレーザー通信で本国に要求しました。船団の隠匿のため、通信は避けていたのですが最重要としてね。公式には通信封止でしたから。
あまりに応答が無いので弟に直接呼びかけて、資料を探してもらったのですが、どうもこの頃から、悪名高い大粛清が始まっていたのです。本国の非協力はその影響でした。
我々が出航した翌月に、デギン氏の長男のサスロ君が不可解な事故死を遂げ、それを境に各派閥が群雄割拠の内部抗争をはじめてしまったのです。
驚いたことに、サスロ君暗殺の犯人が、他ならぬこの私だと疑われているというのです。
サスロ君は実に快活で聡明な青年で、理想を夢見がちなジオンと側近たちの中にあって、実務を司るデギン氏の支えでした。
ですから船団準備に忙殺された私たちへの支援には、サスロ君が奔走してくれていたのです。
シャリアブルがサスロ・ザビ暗殺の黒幕で、木星に逃亡する周到な準備の後に、手下に暗殺を実行させた・・・・ひどいもんです。
伝聞で語っては恐縮なのですが、デギン氏は私の無実を擁護しなかったそうです。
どう転んでも木星に向かう私の身に危害は及びませんし、内ゲバにはガス抜きが必要だと理解していたのでしょう。真犯人に手を下せなかったデギン氏の心中、察せられるものがあります。
この事件から半年後、今度はジオン氏が暗殺者に狙われ、九死に一生を得ましたが、しかし、2年にわたる療養生活の末、ジオンの後継者としてデギン氏を指名し、この世を去りました。歴史の通りですね。
こうして本国の政情が混迷する中、モビルスーツの調達は困難を極め、自前で開発するにも必要な設計情報が足りない私たちは、まったく窮していたのですよ。
ジオン国内でも、ヘリウム船団に依存しない太陽電池の増設が進んでいました。これが船団の発言力を落としていたようです。
これはデギン公王の英断だと思っています。ヘリウム船団に万が一が有った場合、代替が利かないでは戦略的な意味を持ちませんからね。
あるいは、私への誹謗を放置したのは、私にジオンの生命線を独占させたくない、派閥間の思惑もあったのでしょう。
こうする間にも船団は減速フェーズに入り、採掘プラントの完成に向けた追い込みに入っていました。
同時に激しい外交戦が始まったのです。
木星には既に、連邦に所属する各コロニー公社のヘリウム採掘プラントが稼動していました。
これらには多数の職員が常駐しており、各々が軽武装していました。木星におけるヘリウム採掘は、木星軌道上を周回する彼らとの協同なしには不可能だったのです。
もちろん連邦軍は、これらプラントや常駐船団に対して、武装強化とジオン船団攻撃を命じていました。
私が外交を面白いと思ったのは、ジオン船団を含む全ての船団が、実は木星における一個の独立国を成しているという現実でした。
外地の船団にとって、電波の先の連邦やジオンの対立は現実ではなく、目先の自分たちの安全と利益こそが現実だったのです。
もちろん、私たちの船団も連邦船団への攻撃を重ねて命ぜられていました。白ばっくれましたよ。皆と同じです。
モビルスーツを獲得して安全を確保したい木星船団と、独立戦争の準備と派閥抗争に狂奔するジオン本国の関係は、表向きの蜜月とは裏腹に、急激にに冷却してゆきました。
今や、敵はジオン内部の派閥抗争だったのです。
お待たせしました(誰も待ってない?)偽ドミトリ(露)です
シャリアブルが語る、ジオンの国の物語、後編です。
ここは開発日記の外伝なのに、ザクレロたん、ようやくの登場です。
ま、オレガンなので、裏設定ということで読み飛ばしてくれい(ふふふ、今度の長文は桁違いだぜぇw)
それでは後編、スタートです
木星に駐留する船団やプラントには共通した気風があります。独立自尊と助け合い、そしてむき出しの利己心ですね。
基本的に物資が乏しい物々交換の世界です。デギン氏の助言をいれて、商社トレーダーだったガルーチ財務局長をクルーに加えて行ったのは正解でした。
直ちに商品市場を設置し、船団相互の物流網まで整備しました。彼の働きは木星全体にとっても、大きな利益でした。
逆に船団間の緊張関係が伝染して、ジオンのヘリウム船団内の派閥抗争に発展しかけたこともあります。
私の対応は厳罰の告知と中央集権の徹底でした。その上で当事者を諭して処罰しませんでした。あえて理不尽な事をして見せたんです。
この事件、滞在経験の長いルウム船団のリカード船長の助言なしには、解決できなかったでしょう。
もちろん報酬は支払いました。我々のモビルポッドの設計情報です。有益な情報は財貨に等しい。私は極地でそれを学びましたね。
優秀なジオン式モビルポッドは、瞬く間に木星中に広まりましたよ。
皆が渇望しているのは、何よりもモビルスーツです。しかし本国は設計を送ってきません。
これを打開するために、私は弟を説得して軍に入らせることにしたのです。少々説得には手間取りましたが、日夜説得して、最終的には弟も納得してくれましたよ。
実はザクが欲しかったのですが、革命政府上層部の派閥抗争にからんで、ジオニックとツィマッドの受注競争が激化するなか、モビルスーツの設計情報は政争の具でした。
しかもこの頃にはザビ家の独裁が固まり、弟もデギン氏に簡単に会える状況ではなくなっていたのです。
デギン氏をはじめ、ジオン政府にとって、ヘリウム船団へのモビルスーツ提供は気の進まない話だったようです。
木星船団の半独立は連邦にとっても頭痛の種で、我々もそれに倣うと思われていたためです。
実際、各コロニーの情報が交換されている気配があり、ジオンの命運をかけた新兵器であるザクの設計を渡せば、開戦前に連邦の手に渡る可能性も危惧されていました。
閣議の決定は一致して、『提供要請には応ぜず』でした。都合の悪いときだけ閣議を開くのは、ジオン公国の悪癖ですね。
そんな中、孤立無援の弟に手を貸してくれたのが、ワーグナー海兵隊総監でした。
政府の構想する、短期決戦による独立講和という実現不可能な甘い見通しではなく、ジオン敗北のダメージを最小限にとどめ、大規模ゲリラによる反連邦通商破壊を戦力の基幹に置くべしとの過激論者です。
実はワーグナー総監を弟に接触させたのが他ならぬデギン氏だと、後で知りました。彼もジオン敗北の可能性を理解していたのです。
コロニー主席に就任して以来、デギン氏は側近の壁に囲まれてしまい、サスロ君の地位を継いだギレン君が政務を取り仕切るようになると、自然、政府の意思決定から外れるようになってきました。
ギレン君は自信が無いのでしょうね。無駄を省くことで能力を証明しようと躍起なように見えます。
困ったことに、ギレン君のやり方では、デギン氏はジオンとの約束を果たせないのです。それは、純粋に無駄なもの、先住民族隔離コロニーでした。
ジオンの先住民族隔離コロニーは、ジオンの理想と約束であり、早世したサスロ君の形見でもあり、ギレン君には無駄であっても、デギン氏には譲れぬものでした。
彗星軌道を巡る閉鎖型コロニーの維持には、莫大なヘリウムが必要ですが、戦時準備のジオンではヘリウムも太陽電池も足りません。
それが分かっているデギン氏は、ギレン君に言い出せずにいたのです。あるいは、拒絶されるのが怖かったのかもしれません。
ジオンとの約束を秘密裏に守るべく、今度はデギン氏のほうから弟に接触してきたんです。
海兵隊のワーグナー総監は根っからの人殺しでね。
ジオンが理想を説き、デギン氏が実務を担当したように、ワーグナー氏は暗殺を担当したんですよ。内緒ですよ、あはは、公然の秘密か。
連邦軍人がジオンのために船を解放し、責任を取って自殺した美談。あれもワーグナー家の仕業ですからね。念のために。
あの殺人鬼で古武者の総督と面会するにあたって、弟は遊園地のティーカップを指定したそうです。まったく、ふざけている!
しかも出会い頭にデコピン一発!さすがに軍人になれば言動に規律が入るかと思っていましたが、あの弟には何を言っても無駄です。
あーそう、ワーグナー提督と一言も会話せずに別れた弟ですが、用件は完全に把握してきました。接触型NTの本領ですね。
木星でデギン氏の提案を応諾した私は、本国への通信で『デコピンの件、承知』とだけ打電した。
謎の電文とともにワーグナー総督から報告を受けたデギン氏は、笑い転げたそうだ。
その席で弟のニュータイプ能力についてデギン氏から明かされ、総督もようやく納得したんだそうだが。まぁ、弟の言うことだから話半分だけどね。
以降、ヘリウム船団と本国の非公式折衝は海兵隊が窓口となり、密会して怪しまれないよう、弟はフラナガン研究所員という形で、元の鞘に戻ったんだ。
フラナガン研究所を警護してるキシリア機関っていう、あのお嬢ちゃんの兵隊を、これは弟を通じて見たんだが、あれは素人だね。
諜報のための殺人ごっこと、『殺しの為の殺し』『殺人芸術』では比べ物にならない。ま、理解できない方が正常だな。
キシリアお嬢ちゃんもギレン君も、根が優しすぎて、土台無理なんだよ。
デギンお父さんの代わりに兄弟たちを守っていた、サスロ君が殺され、あの子達に人生を選択する余地は無かったんだろうね。
サスロ君が生きていた頃、デギン氏の隠れ家でキシリアちゃんに会ったことがあるよ。
小枝みたいな細っそい女の子でね。ソファーに足組んで腰掛けて、精一杯おとなぶっていたもんさ。可愛かったよ。
赤新月(ジオンにはムスリムが多い)の看護婦さんになって、お父さんたちを助けたいって。
ギレン君は人見知りする子でね。私は嫌われてたのかな?ドアの影にいて、ぜんぜん顔を見せないんだよ。
ドズル君やガルマ坊やに会うことは無かったな。いつ行っても、弟の子守と自分の筋トレを兼ねて、重力区画に出かけていたからね。
骨の発育に良いカルシウムクッキーとか、二人のおやつを置いていくのが毎回のことだったよ。こいつは喜ばれてたらしいw
ああ、ガルマ君、お気の毒なことだったね。
サスロ君が死んで今度はガルマ君。デギン氏も老けたよ・・・人が変わってしまわれた。お会いしない方が親切かもしれないな。
フラナガン博士はさすがにもう若くなくて、それでもニュータイプの研究に全精力を傾けていますから、会いに行くのが楽しみです。
弟と接触する平仄を合わせるために、海兵隊が主体になってモビルアーマーの開発研究をやるというんだから、大掛かりなものですよ。
おかげで、モビルアーマー研究は上層部の派閥抗争に害されること無く、実に自由奔放にやれましたね。
これに木星で開発された様々なモビルアーマー技術がミックスされ、名にし負うジオン技術廠が消化不良を起こした程だ。実りある成果だったと思うよ。
そうそう、開発コードでもザクレロとかいったかな?両腕に、こーんな鎌をつけたやつ。
ジオン側の開発担当が聞いたら怒るかもしれないけど、あれってリングの氷を採取してた、木星名物のザクレロ型モビルポッドそのままなんだよ。あははは
木星軌道には水が乏しくてね・・いや、ガニメデとかには無尽蔵にあるんだが、コストを考えると小惑星を拾って回ったほうが早い。
木星リングのアステロイドは氷質なんだけど、砂や硬い岩も多くてね。鎌で切り分ける必要があるんだ。
砂混じりの氷は、後ろのドラムで細かく砕いて、ざうっと遠心分別し、加熱して水と炭酸を分離する。メタンが少ない方が簡単でいい。
大小のザクレロが寄ってたかって岩も溶かすよ。機首のレーザー溶鉱炉で、赤熱したニッケルが無重力で球になったら暫く放置するんだ。
表面が固まったのを見計らって中身をポンプで吸い出すと、宇宙船用の丸い燃料タンクが出来る。簡単だろ?
鍛造じゃないから高圧ガスの長期保存は無理だけど、集めた水とか保管するのに重宝したよ。モビルポッドの水集めは日課だったな。
あんまり便利なんで、本国にザクレロの設計を送信したのだが、誤解されちゃったんだよ。使いようによってはモビルアーマーだね、あははははっ。
ヘリウム船団は艤装もせずに出たと言ったよね。実はタンクも全部は作っていなかったんだ。
木星に着いたらみんなに呆れられてねぇ。 お前ら、何しに来た?ってねw
気のいい奴らだよ。手持ちのチタンが溜まると、木星中のザクレロを総動員してチタン合金製ヘリウムタンクを作ってくれたよ。
チタンの巨大球を作る手順までは同じで、これで鍛造して強度を出す。
赤熱した金属は電波的に黒体で、薄くても電波が通らないから、有線したザクレロ2機にタイタンパーを装着して、まだ赤いチタン殻の中と外から同時に叩くんだよ。
これに使える高品位チタン砂はなぜか氷の中に多く混じってて、ジオン船団はひたすら水汲みに精を出していたわけだ。
ヘリウムタンク完成後、こっそり協力してくれた木星のみんな(全員)を呼んでパーティーをやったら、そりゃ喜ばれたさ。
ジオンは水ばかり集めると不思議がられていたけど、ここで正体露見。食糧プラントでセラピーフィッシュ(テラピア)の養殖をやってたんだよ。
食糧すら自給自足という、とんでもない船団だったね。連邦の連中も、豆もやしやサラダの種(ひまわり)ぐらいは持参してたけど、生きた魚までは持ってこなかった。
これが大うけ。地球で漁師やってたパステトの機関長なんか、生の魚をきざんでブッシュソースで食べちゃう。いや、慣れるとこれが美味いんだから驚きだ。
木星への航海中に収穫したぶどうも、到着後にはヌーボーとなり、連邦標準時をカウントダウンして乱痴気騒ぎしたものさ。
逆にジオンのクルー、連邦の保存食たべて感動してたよ。こりゃ人間の食べ物だってw
艤装や部品の製造まで船の上で行ったジオンの船団は、これまでの船団とは桁違いの、膨大なプラントが搭載されていた。
好評だった食糧工場をはじめ、これらプラント全てを船から降ろし、木星軌道を周回する衛星とするのが、実に難事業だったんだ。
我々の任務は1dでも多く、ヘリウムを持ち帰ることで、余分な荷物は無用。だが、船体構造に乗ったプラントの分離はモビルポッドを使っても難作業だった。
ここへ来て、やっと弟からモビルスーツの設計が送られてきた。それがヅダなんだよ。
汎用パーツが使えない、爆発事故、コストが倍近い、軍用オンリー、燃料が特殊・・・などなど、ヅダの前評判は悪かった。
それでも、直ちに工場プラントをフル稼働させて、木星における第一号機を生産したさ。
我々はヅダの生産と改良に心血を注ぎ、工場プラントを稼動させたままで船体から分離に成功した。モビルスーツの効果は絶大だった。
使ってみて理解できる。ヅダは木星で必要な機能を全て備えていた。高出力の推進器を備えたコンパクトで器用な、それでいて高トルクに耐えるフレーム、これだ。
ジオン船団はヘリウム採取を活発に行うのと並行して、プラントの分離とヘリウムタンクの設置に明け暮れた。
そうそう、木星のヘリウム採掘プラントっていうと、井戸のような設備を想像する人が多いよね?
現物はこう、直径20メートル長さ数百キロ超える、吸引パイプを斜め下に引っ張った人工衛星なんだよ。ジオンは4機、持って行った。
これが楕円軌道で十分に加速して、木星の表層大気を掠めるんだ。
木星に成層圏はなく、大気は常に嵐だから、濃密な大気を採取するために軌道を低くとれば、それだけリスクは増す。
嵐の合間を縫って、いかに低い軌道を維持するか。これが採掘プラントの腕前なんだ。
しかも各プラントは長さ数百キロのパイプを引きずっており、衝突しないための軌道確保が大変に難しい。
みんな殺気立ってるから、弱気になると割り込まれちゃうんだよw地球の漁師に似て、この辺は胆力と交渉だったな。
0078年のゾーリンゲン遭難事件も、パイプ衝突が事の起こりだった。
一方のジルガは軌道離脱して事なきを得たが、パイプに重大な損傷を受けたゾーリンゲンは、強重力下でパイプを修理する必要が出た。
電送系統が切れてしまい、パイプを切断して軌道離脱することが出来なかったからだ。
厄介なことに、その軌道は嵐の中を突っ切るのがわかっていた。遭難は時間の問題とされ、全船団に救助が要請された。
私はヅダによるプラント組立作業を中断して、直ちに現場へ急行した。木星の昼側に出るまでの間に、刻一刻と絶望的な状況が伝わってきた。
ゾーリンゲンのクルーが生還するためには、作業員が嵐の中、パイプを伝って下に降り、損傷箇所を修理するほかなかった。
2名が決死でパイプを下り、損傷箇所にたどり着いたとき、既に嵐は猛威を振るっていた。
損傷箇所より下の制御バルブが動作しないため、木星大気を吸いだす煙突として機能するパイプは、低い瀑音を轟かせて膨大なヘリウムとメタンを吐き出す。
気圧の低下で瞬時に固化したメタンは、嵐の中を白い煙のように降り注いだ。
この時点では嵐に助けられていたといっていい。猛烈な突風が着氷を妨げていたからだ。だが、嵐の静電気で伝送ケーブルにノイズが入って通信が途絶していた。
嵐が収まるにつれ、上がってくる画像はややクリアになったが、そこに映ったのは絶望的な状況となっていた。
パイプ破断部にメタンの氷が付着しはじめ、修理箇所はこの下だったのだ。
移動用ゴンドラは半ば着氷に埋もれ、強い重力と着氷で、二人も辛うじて身動きするのがせいぜいだった。
積荷を捨てたプラント本体も、氷の重さで落下が加速しており、二人と貴重なパイプを見捨てて爆破するしか方法が無かったが、その爆薬が起爆しなかった。
弱まりはしたものの、電送ノイズが不正信号と誤認されたのだ。何度やっても駄目だった。
全員の死と、何よりも貴重なプラント喪失が迫っていた。
昼側の遭難地点で作業班と合流する二時間の間に、ジオン船団からは刻々と情報が伝えられてきた。
救助が絶望的なのはそれだが、私を狼狽させたのは、遭難第一報から5分もしないうちにヘリウムの取引価格が高騰し始めた事だった。
事故でゾーリンゲンが失われ、サイド1のヘリウム採掘が半減することを見越して、生まれたばかりの市場は敏感すぎる反応を示したのだ。
十分に成熟していない新興市場は、突発的な事柄に反応して激しい値動きをする。これが投機資金を呼び寄せる。
だが、現物資産に乏しい新興木星市場では、このような投機資金の大規模介入は、市場そのものを殺しかねない非常事態だった。
ガルーチ局長が青い顔で、ヘリウム買付け用の非常資金の許可を求めてきた。手遅れになる。今しかないと。
今しかない。それは正しい。船団資金の無制限運用権限を与え、そしてジオン船団としての基本方針を伝えた。
ガルーチ君は青を通り越して紫色の顔をしていたよw
逆張り。ジオン船団の持つ全てのヘリウムを売りポジションに乗せ、二ヶ月先物も逆に張った。そのレバレッジ、実に30倍!
賭けに敗れれば全ての資産を失い、ジオン本国も独立の希望を喪失する。
ジオンはその総力を挙げてヘリウム価格高騰に抵抗し、市場を守る賭けに出た。
我々が逃げればヘリウム市況は暴騰し、機能喪失した市場は見捨てられ、各コロニーによるヘリウム採掘の囲い込みが復活してしまう。
しかし、既に市場の責任者として中立の立場にあるガルーチ君は反対した。生まれたばかりの資本市場を不正介入で殺すことは出来ないとね。
実はその通り、不正だったんだ。売却した資産に担保設定したレバレッジは不可能だが、売りポジションに乗っているだけでは大丈夫だ。
これは実質的な詐欺なんだが、後発で在庫の乏しいジオンのヘリウム船団に選択肢は無かった。不正か死か、二者択一だ。
ジオンの財務責任者でもあるガルーチ君の苦悩は、見ていて気の毒なほどだったよ。
しかし彼は、ジオンがヘリウムを売却し、市場の安定化のためにリスクを負うと、直ちに声明を発表した。この辺がガルーチ流だ。
驚いたことに二つの船団がこれに賛同を発表し、備蓄放出を行うと宣言してくれたんだ。ガルーチ君の公正な市場運営が評価されていたんだな。
それでもヘリウム現物価格の高騰は、すこし和らいだだけで価格は上昇し続けていた。あとは時間と資金の勝負だった。
ゾーリンゲンを救助することなくして、ジオン独立は無い。
これだけ船団乗員に伝えると、私はヅダと無人のザクレロを木星大気に突入させた。
希薄な大気を突き抜けて降下したのがしばし。たちまちに嵐と摩擦熱に翻弄される。
揺れるザクレロにしがみついて降下するも、濃密な大気の中は昼でも漆黒の闇で、計器どおりに要救助者を発見できるかどうかわからない。
この降下を逃せばおしまいだ。見落とすわけにはゆかない。
しかし上空との通信もできず、帯電した大気の中でジャイロセンサーが動作しているかどうかも、信じるしかなかった。
ファイバーで有線したザクレロからは、これ以上の降下は帰還不能と繰り返しエラーが出ていた。
上等!ヅダはザクレロと離れ、木星大気の中で下へ向かってブースター加速する。初めての経験だ。闇が恐ろしく深い。
不意にファイバーが曲げを検出した。あった!データより400m東をパイプが動いていた。
モノアイの赤外線センサーで損傷箇所をサーチする。生存者がいた!
周巡する間は無い。着氷に埋もれたゴンドラを強引にもぎ取ると、スラスター全開で上昇。
重加速に耐えながら、意識を有線されたザクレロに集中する。パイプ損傷箇所が・・・・見える!
自由落下からフル加速に移行した大型ザクレロの鎌は、パイプ損傷箇所を切り裂き、機体が激突四散してパイプは完全に切れた。
1Gでは考えられない速さでパイプが落下して消えてゆくのを尻目に、あばよザクレロと、有線ケーブルを切って、ヅダは両肩のブースターを回すと全力上昇していった。
ほどなく、ゾーリンゲンが上昇軌道に乗ったと、救助成功に沸き立つジオン船団から通信が入ったが、私は重力加速に耐えるだけで精一杯だった。
周囲が明るくなり、やがて嵐を抜けて太陽と木星の地平が見えても、自分らが助かったんだと実感できなかったよ。
軌道上にはサイド1の連絡船をはじめ、各船団の出迎えが集まっていたが、くくく、私は未だ木星に吸い込まれるような気がして、そのまま上昇しちまったのさ。ヅダの有り余る機動力の宣伝にはなったが・・
情けないだろ?重力井戸の怖さってのは、やってみた者にしかわからんよ。分かる必要もないけどね。
両肩のブースターが燃料切れで停止し、ようやく我に返ったら船団のはるか上さ。慌ててゴンドラの二人を確認したら、中指おっ立ててバカ笑いしてやがる。この、頑丈なだけが取柄の腐れ船乗りが!
ゆっくり上昇してくる船団とのランデブー軌道に乗りながら、ようやく市場のことが気になる。
通信を入れても誰も出ない。おかしいとおもってザグレブの船長に通信を入れたら、ごつい元軍艦乗りが恵比須顔でにやけている。
提督おめでとうございます。でも、みんなで驚かすつもりだから、知らない振りしててね、だと・・・ふざけている。
聞いて驚いた。手持ちのヘリウムを担保にした先物取引で、先物価格は遭難を見越した高騰が一転、救助成功の報を受けて暴落したのだ。これを買い漁った。
これだけで2ヶ月先にジオンが安値で受け取れるヘリウム総量は船団の積載量を超えていた。数年分の労働が、10分足らずで稼ぎ出されたのだ。
ゾーリンゲン乗員をサイド1船団へ渡した後、連絡線でジオン船団へ戻ると、やはり皆で笑いを押し殺してる。
ガルーチ君だけが相変わらず深刻な顔をしているが、ちらっとウインクしてきたので、意を察して芝居に付き合うことにする。えー?大儲けだってぇ?!
やましいところのあったヘリウム現物は、引渡しの前に少々高値で反対取引をして、無かったことにしてもらった。相手もわかってるし、ガルーチ君の交渉の賜物だ。
過剰な先物ヘリウムを捨て値で売却する、反対売買の大盤振る舞いのあと、ジオン船団は猛烈なスケジュールで帰国準備に入った。
二ヵ月後のヘリウム引渡しまでに、タンクを設置する。そのためには船体に乗っているプラントを全て外す必要があった。
往路のプラント損傷に懲りて、木星の潮汐力による破損は極力避けるべく、いくつかの軌道を検討したのですが、たちまちに紛糾しました。
分離したプラントを結合した新衛星の周回軌道を、ガニメデ近傍にするか、高軌道か、あるいは採掘プラントに近い極低楕円軌道とするか。
ジオン側はガニメデ軌道もしくはガニメデを周回する2次衛星軌道を主張したが、各コロニー船団は、自分たちに有利な軌道を主張してね。
結局、恒久的な施設として利用するためには、4大衛星の重力に干渉されない高軌道が適するとして、こっちに変更された。
さきに整備されていた商品先物市場のおかげで、稼働率に大きな余裕のある工場プラント群は、各船団が共有して利用できる体制が既に出来あがっていたから、こんな決定が出来たんだね。
うふふ、公式な命令では、敵に生産設備が奪取されそうになったら設備を廃棄せよ、ってことだったから、廃棄したんだ。廃棄ね。
木星の新たな衛星として、メッサーラと名付けられたプラント衛星の命名式で、ジオン船団はこの所有権放棄を宣言。
ジークジオン! 連邦万歳! 祝杯があげられ、お祭り気分だったよ。ここまでは予想通りさ。どうせ捨てていくプラントだったしね。
併せて、工場設備の安全保障を共有すべく、ジオンが独占していたヅダを各船団に無償配布すると宣言。
お祭り気分は吹っ飛んだ。
ジオンは本気で木星に肩入れする気だ。これは単なる大盤振る舞いではなく、木星の自治を促す外交上の起爆剤だと悟ったんだ。
皆の関心はただ一点、この決定がジオン本国のどのレベルから発したかどうかだった。それによって今後の対応は180°変わる。
痛いほどの視線を浴びながら言ったよ。公式には捨てたことになってるので、新衛星の天体コード申請は無用にお願いしたい。モビルスーツも拾い物だよってねw
なんだ、シャリアブルの独断か!ってね。会場が揺れるほどの爆笑さ。緊張の糸が途切れたんだな。
歴史上、無償援助ほど恐ろしいものは無いからね。いや、無償援助ほど強力な外交ツールも無い、か。
既に半独立を為している各船団にとって、ジオン本国からの援助を受け入れることは、間接的に連邦政府に反旗を翻したに等しい。
連邦がGMなどのモビルスーツを提供しなかったのは、技術開発の遅れもあるが、連邦軍の介入を恐れた各船団が、付帯条件について厳しすぎる条件を付け、連邦官僚の厚い壁に阻まれていたのが原因のようだ。
あのタイミングでジオンがモビルスーツ供与を表明できたのは、外交上の成功だったよ。
モビルスーツを供与したのはシャリアブル提督の独断で、衛星だってジオン船団がどのみち放棄してゆく設備を再利用しただけ、と言ってしまえば、誰からの借りでもない。
交渉の場では決して言わなかったが、これは実は亡きジオン・ダイクンの意向でもあったんだよ。あらゆる手段で木星の連邦系船団とは友好を保て、とね。
あはは、まさかプラントや最新兵器までタダでくれてやるとは、白紙委任してくれたジオン・ダイクンも考えもしなかっただろうな。
うん、でもね、もし、あの場でジオン・ズム・ダイクンの名を出したらどうなっていただろう。譲渡交渉は決裂していたと思うよ。
亡きジオン・ダイクンには悪いが、名誉回復は戦争が終わってからにしてもらおう。そうだな、息子さんにでも・・・・いや、政争で命を落とされたのか・・・
(いいえ、ザンジバルの倉庫に監禁されていますw)
ヅダと設計情報が渡された各船団は、狂喜してモビルスーツを試作したよ。同じプラントでね。
隣接・共用するラインで同じモビルスーツを製造するんだもん、お互いがいい刺激になるよ。
OEM生産ということで本国にはばかり、木星を意味するJ型から勝手に始まったヅダの改良は、
・鍛鉄チタニウムによる軽量化
・主スラスター出力強化(併せて重金属推進剤の低減)
・脚部スラスターにも改良土星エンジン搭載
・可変ブースター(両肩スライド機構にマウント)
・作業用増設アーム(オプション、別に大鎌の装備あり)
・磁気コーティング
・副座式の耐Gコクピット
・OSとFBFSのニュータイプ対応と、指揮管制/通信の拡充
・ヅダ袋(づだぶくろ:鉱石採集装置)
・ヅダ幌(づだぼろ:デブリ対策を兼ねた遮光装置)
・外部燃料タンク
私のL型には、こういった改良が加えられた。現地開発された連邦系技術がいっぱい含まれているね。
出発した時点でU型まであったから、今頃はZでも足りなくなってるだろう。メッサーラのAあたりからナンバーを仕切りなおしだなw
大出力の推進装置は木星での活動にぴったりで、強重力下でのプラント落下事故でも、ヅダなら乗員を救助して帰還できた。
木星全体でこの2年間、死者が一人も出ていないのはモビルスーツの貢献なんだよ。
船団の状況は万全だった。しかし、退き戦は難しいものと相場が決まっている。
タンク製造とヘリウム注入が同時進行、プラント衛星の軌道投入準備など、現場以上に指揮者が酷使される日々だった。
ガルーチ君はあれ以来、ジオンと木星を二足の草鞋で勤めるのは御免だと、船団を辞して新たに木星財務局を設置したよ。他にも多くの市場要員が木星に移籍した。
ヘリウム採掘プラントは船団とは独立してフル稼働していたし、食糧系プラント担当者は代替がいないので、ジオン籍のまま木星に残ってもらった。
ここまでやっても、ジオン船団が帰還する際、木星における微妙な共生関係が途切れないという保障はどこにも無かった。
利益供与しておけば、ジオン船団が予定よりも早く帰還するという情報を隠蔽してくれるだろう。友を信じるしかない。
様々なヅダやザクレロが見送る中、巨大な質量を持余し気味のヘリウム船団は、予定よりも早くに地球への帰途についたんだ。
サイド3がジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んだのは、その翌月だった。
今更ながらにぞっとしたよ。
木星の友を疑う気は無いが、もし、出航が遅れていたら、我々はどうなっていたのか・・・ふ、友人失格ですね・・・
デギン氏、いや公王陛下の要求は苛烈なものでしたよ。
ルウム前で南極条約による保護もありませんから、ヘリウム船団が地球圏に帰ったら、直ちに迎撃されるのが分かっていました。
ジオン政府は開戦直後の停戦交渉で、ヘリウム船団の保護を最重要課題として要求する。だから、交渉を有利に進めるためにも、あくまで強気に帰って来いというのです。
デギン公王が短期決戦の困難を想定しているのは、言葉の外に明らかだった。
そして、ヘリウム船団の帰還先を、地球から遠く離れた先住民族隔離コロニーに定め、極秘裏に海兵隊が警護する計画が決まったのです。
先住民族隔離コロニーはジオン・ダイクンが理想を掲げて作り上げた奇跡だ。
ギアナ高地やアマゾン低地の原住民など、連邦軍に追放された民を宇宙に移住させるのは、掛け値なしの正義だった。
産業的に無価値とされた彼らを、ジオンは地球と宇宙の王者であるとみなし、窮乏する財政の中、閉鎖バンチに熱帯雨林を造成したんだ。
変だろ?土壌が酸素を消費するからって樹木に高い税金を課し、虫をコロニーに入れないジオンがだよ?
そう、自然と切り離されたジオンに、いつの日か鳥の飛ぶ国をもたらそう・・・そのための『Seed:種』だったんだよ。
隠密裏に彗星軌道を周回し、地球と離れた先住民族隔離コロニーには、連邦軍の監視は向いていなかった。
ここにヘリウム船団が帰還するのは、船団の安全確保の面が大だったが、実はデギン公王の約束があった。
革命政府時代、デギン氏はジオンが主張した先住民族隔離コロニーに猛反対した。財政的に窮乏していたからだ。
現実と理想に折り合いをつける。これは簡単なことではない。デギン氏は親友のジオンと決別する覚悟さえしたという。
この難事業を実現したのは、デギン氏の右腕だったサスロ君だった。
あの子は凡庸な好青年でね。しかし、芯は強かった。ジオンの理想を完全に理解し、その上で実務家として狡猾に振舞った。
いったいどういう金で動いたのか知らないが、連邦にもジオン政府にさえ気取られず、廃棄バンチを改修して原住民に提供したんだ。
あるいは、その金がサスロ君の命を奪ったのかもしれない・・
デギン公王にとって、あれは亡きジオンやサスロ君との約束の地なんだ。
開戦からほどなく、ジオンはルウムで連邦に大勝し、南極条約の締結によってヘリウム船団の安全は確保された。
決死の覚悟を固めていた船団クルーは、ニュースを聞いて躍り上がったよ。
木星の連中からも祝福の通信が入った。故郷を失った者が多くいたにも関わらず、我々の安否を気遣ってくれたんだよ。
プラント居残り組の連中には羨ましがられたっけ。今度の便では絶対にニワトリを連れて来い! なんて言われちゃったよ。
故郷へ帰れる。こんな嬉しいことはない・・・
しかし、一抹の不安もあった。木星の連邦系船団に軍がアクセスし、どうもジオン船団の軌道を探っている様子だというのだ。
木星の友を疑ったことを、これほど恥じたことは無い・・・・我々は軌道を変更し、ある決断をした。
囮としてユピター号を先行させる。
南極条約を連邦が守るかどうか、そんなの実地に見なければわかりませんよね。実際、連邦の条約破りはお家芸でしたから。
それこそ、条約を破棄して無防備なヘリウム船団を全滅させた時点で、ジオンの敗北は決定するのです。
最も大型で船足の遅いユピターを船団から外し、強引なスイングバイ減速で地球をかすめれば、連邦軍に攻撃の意志があるか判ります。
攻撃されれば乗員の命はありません。ですから私と少数のクルーが搭乗するにとどめました。
金星でスイングバイする船団本体と別れ、我々は強引に地球へ軌道変更したのです。
連邦が我々の行動を予期していたかどうか、甚だ疑問ですよ。
宇宙船の軌道というものは予測しやすいものですから、軍隊の官僚ってのは予測パターンを見て安心しちゃうのでしょうか。あるいは学習能力が無いのか。
まさかユピターが地球に直接突っ込んできて、空気抵抗で強引に減速してくるなんて思わなかったのでしょう。
巨大な船体の過熱崩壊を食い止めるために、貴重な液化ヘリウムを放出し、ユピターは巨大な彗星のように輝きながら、真昼のアフリカ上空を突っ切りました。
地球によるスイングバイ減速と同時の大気減速は成功し、連邦軍のいない北極星方向の深宇宙にユピターはきりもみ状態で放り出されました。この先にコロニーがあるのです。
船体の回転を安定させると、地球に頭を向けた姿勢に整えて幌を広げ、今度は遠慮なくエンジン全開です。
壊れたって構いません。燃費も無視してレッドゾーンです。過熱すれば反応させずに液体ヘリウムを冷却と推進剤に使えばいいのですから、もうむちゃくちゃです。
コロニーに先行していた海兵隊のザンジバル乗員からは、まるで太陽が二つ出来たような光だったと聞きました。
一連の減速だけで、ヘリウムの半分を使ってエンジンも焼き潰してしまいました。もう二度とご免ですね。
焼け焦げ、タンクの半分を放棄した、巨大なボロ船がコロニーの小さな宇宙港に接舷するのを、海兵隊の全員が登舷礼で出迎えてくれました。
残ったヘリウムだけで、このコロニー500年分。彗星軌道で175年を3周するだけの備蓄ができたことになります。
こうしてデギン公王の約束は果たされたんです。
コロニーの総責任者も海兵隊と一緒に外で出迎えてくれていましたよ。
ところが会って話をするにも、呼出回線が無くて名前すら分からないのです。変だなぁと思っていた矢先、向こうから呼出が来ました。
登舷礼の時は宇宙服を着ていたのでどんな人か分からなかったのだが、意外、シーマ君も顔を知らなかった。海兵隊はコロニーに立ち入り禁止なのだという。
ガラス窓越しに面会したコロニー総責任者は、シーマ君と同い年ぐらいの女性だった。免疫の無い原住民に、病原菌を持ち込まないための措置なのだという。
ありがたいことに、木星船団の我々は長期隔離されて病原菌の保因が無いので、コロニー内部に案内してくれるそうだ。
ありがたくないことに、コロニーでマラリア等に感染しないためと、総合予防薬を渡された。
静脈注射して三日間、外部の海兵隊員などと接触しないようにと申し渡される。
なるほど、海兵隊の連中が真空中でしか我々と会わない理由がわかった。地球各地で転戦する彼らは、あらゆる風土病を経験しているからね。
三日後、熱の下がった我々乗員はコロニーを訪問した。
総責任者も外部の者と接触するのは久しぶりだとはしゃいでいる。ガラス越しと性格変わってるなw
軍の奨学金で文化人類学を専攻し、士官学校に戻って古文書を漁っていたら、研究室の閉鎖で飛ばされたのだという。こりゃ天職だ。
厳重に閉鎖されたエアロックをくぐると、暴力的な暑さが襲ってきた。摂氏32℃湿度75% 熱帯雨林の雨季、時刻は正午、快晴
農業プラントに慣れた目にも、熱帯雨林の植生は激しく刺激的です。動植物の多様性が3桁違うのですから当然でしょう。
このコロニーだけで3万種類の植物と、2万種類の小動物が維持されており、民族集団も24、言語が16、人口8400人ぐらい。
土も水も、空気さえもが濃密な生命を主張していました。実際、予防薬なしでこの空気を吸ったら、たちまち風土病に感染したでしょうね。
海兵隊が立ち入り禁止なのが分かる気がしました。軍服脱いで森に駆け込んでしまいそうです。実際、そういう事件があったとか。
スコールを避けて木陰に逃げ込んだ時、どうしてもマラリアの件が解せないので聞いてみたら、意外な答えでした。
マラリア保因者を除いてコロニーから疾病を無くす事は容易だ、しかし、人の死を司る、自然の要素を除いてしまったら、コロニー社会は維持できないというのだ。
ジオン・ダイクンはサイド3から自然を分離し、同時にここへ自然を再生した。彼の理想は奈辺にあるのだろう?だが、分かる気がした。
私は現実的にものを考える癖がある。自分がヘリウムを運んできた意義は、目の前の事象のどこにあるのだろうか?
少なくとも175年経ってみないと、ジオン・ダイクンの残した謎は解けないのだろうね。
ところで今、足りなのは作業用のザクだという。本国が非協力的で・・・
なんだ、どこでも同じ事情なんだなw
これで私の航海は終わったんだよ。
海兵隊のシーマ君のご厄介になって、フラナガン機関を訪ねてみるつもりだ。
なんせ、私はここに存在しないことになっているのだからね。
私も年老いたのか、死期が近いのか・・・誰かに話しておきたくなってね。長話につき合わせて悪かったな。すまん。
その場に居た誰もが当惑していた。
シャリアブル提督が語った、その多くはジオン公国の絶対機密に類するものばかりだ。
知ってしまった者の命運を左右するような、地雷のように危険な情報が山ほどある。
しかも、たまたま同席した女学生どもでさえ、本国の人脈の中では濃密な関係者に等しい。
ザビ家の縁戚、本国徴兵委員長、ジオニック=ヤシマの跡取り娘、ガルーチ局長の娘 最悪だ・・・
シャリアブルは知ってて喋ったのだろうか、確かに名前を知ってた。なら意図は?
重苦しい沈黙が場を支配する。
あ!一人だけ昇進と無関係な教官殿が口を開いた
「長げぇ・・」
その一言で十分だった。あーあほらし。さっさと帰るか。
「提督、もう歩けますね?お前ら忘れ物ないな?」
「あら、こんな時間だわ」
「あのー提督さん?私、今は私アルル・カーギルなんです。母と父が離婚してガルーチ姓じゃなくなったんです。
でも、お話を聞けてよかったです。今は通信途絶ですけど、母は待ってるって、機会があったら父に伝えてくださいませんか。」
「そうか・・・ガルーチ君は仕事の虫だったからね。こればっかりはニュータイプでも分らなかったなぁ・・」
「うふふっニュータイプも万能なわけじゃないんですね。」
「そうだとも、君もいずれわかる・・」
「うぉーい!お前ら、早く来ないと置いてくぞ。リフト出しますから提督もどうぞこちらへ。」
「あんたら、担架乗せなくていいわよ。そこに固定して、一緒に乗りなさいな」
「・・・・・・」「・・・・」「・・・・・・・!」
・・・・・
ジオンの国の物語 終
激しく駄文を書き連ねました。ええ、この期に及んで反省などしませんとも!偽ドミトリ(露)です。
本編ザクレロ開発日誌のあくまでも外伝として、あくまでジョークですと断っておいて、
真っ黒なオレガン汁を垂れ流してみました。いかがでしょ?
一年戦争よりもはるかに昔から、シャリアブル少年の目を通してジオンの始まりを描いてみたつもりです。
旧来のオレガン設定では、この時代がすっぽり抜けていたんで、こういう機会に超正統派オレガンをやってみたわけです。
あくまでもデミトリの外伝の外伝ですからね、権威ある正史ではありませんよw
もうひとつ、木星船団がジオンにとって何を意味したのか、その辺も掘り下げたかったのですが、ザクレロの出てこないストーリーはカットしました。あしからず。
メッサーラ衛星というのは私のオレガンで、ここで生産されたヅダの改良型が、勝手にメッサーラと呼ばれ、後から来たシロッコに引き継がれる。
こんなオレガンを書きたいがために、迷惑な長文を書いたんですよ。反省はしないからな!w
ダブルゼータに単発で出た、先住民隔離居住コロニー(ジオンの隠れコロニー)も、正史としてきっちり書きたかったのですが、別の機会ですね。
サスロ・ザビが死んだ原因を、勝手にこれと結びつけましたが、これはシャリアブルが関与していないので謎のままです。
(まさか、ドレンの嫁さんが黒幕? なわけねーだろw)
キシリアたんの子供時代をちょっと出したのは、本編でドミたんが入院中だから。え?関係ないか。
パパ思いで看護婦さん志望の女の子♪ 萌えるじゃありませんか。
赤新月ってのは赤十字のイスラム圏マークです。ジオンのイメージはドイツと移民社会です。トルコ系ムスリムがドイツでも増えていますから、今や違和感ありませんね。
こうして書いていくと、ジオン・ダイクンって人物の残していった意図が気になります。
本当に謎の人物です。デギン氏の苦労がすごかったでしょう。
デギン氏の苦労を書く代わりに、木星の先物市場を描いてみました。ジオンの経済も正史には無いので、誰かが書かなきゃいかんものです。
(そのために壁の国債とか伏線張ったわけ。でも無関係・・)
ところで、ザクレロが木星で開発された経緯、もう少し書きたかったですね。
既にあるものとしてザクレロを登場させましたから、初期の開発者とか勝手にオレガンしてみたいですね。本編じゃ無理か・・
ブラウ・ブロの有線サイコミュが、タンクを鍛造するためのタイタンパー(もしくはパイルガン)だったなんて、オレガンにしても許せませんよね。うわはははっ
ヅダが木星に降下するときにザクレロを伴う必要は無かったのですが、有線サイコミュを別の形で書いてみたかったので。
さて、一通りオレガンを吐き出してみると、今度は何を書きましょうね?
頭の中でボイド少尉と委員長が痴話喧嘩してますから、ま、こいつらを観察してればネタにゃ困りませんw
それでは、駄文・長文、この辺で筆を置きましょう。
感想、これ入れろなど、ございましたら遠慮なくお叱りを・・・
ボソッ ジオンが死んだのは0068年