【ジオン】バジリスク【忍法帖】

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64通常の名無しさんの3倍:2005/08/18(木) 16:16:47 ID:???
>>63の続き

 その顔を見る者に、凶悪な印象を与える
白目がちな眼(まなこ)は、再び殺戮の
喜びを味わえる事に興奮して血走っていた。
65通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 16:40:08 ID:???
>>64の続き

 この男――野斬は先の大戦の折りに
その残忍な戦いぶりから、敵からだけでは無く
味方からも恐れられていた。戦の際には
何かと重宝する有能な戦士ではあったのだが
如何(いかん)せん自尊心が強すぎて
上官の命令を無視するなどと云うのは
この男にとって、至極(しごく)当たり前の事と
なっていた。

66通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 16:58:34 ID:???
>>65の続き

 そして、事件が起きる。
とある作戦行動の最中(さなか)で、この男の上官が
不可解な事故死を遂げる。
死んだ上官というのは、実際のところ
この男並か、それ以上に軍の内外での評判が
あまり芳(かんば)しくない人物であったが
その後ろ盾が、たまたま軍の
上層部に近い所為もあって、この事故は
徹底的に調査された。

67通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 17:13:11 ID:???
>>66の続き

 そして、もともと素行の良くない野斬が
上官殺しの嫌疑(けんぎ)をかけられるのは
無理からぬ事であった。
寧(むし)ろ、この男に言わせれば
「上官殺し?丁度いい箔(はく)がついたもんだ。」
と、嘯(うそぶ)く有様であった。
必死の調査にもかかわらず、事件は迷宮入りとなる。
そして時を経ずに大戦は終わりを迎える。
68通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 17:40:00 ID:???
>>67の続き

 大戦は終わった。さまざまな矛盾を
かかえたままではあったが。
和平の為の約定が結ばれ、幾年にも及ぶ
血で血を洗う戦いに、終止符をつけた。
そして、その時代に生きた人々は
己の犯した罪と向き合わなければならなかった。


69通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 17:55:00 ID:???
>>68の続き

 何時、いかなる時代であろうと
戦時というものは、敵味方ともども
人間の醜さや欲望が如実(にょじつ)に
現れる。
今回の大戦はその人的、物質的被害の大きさも
特筆すべき事ではあるが、それよりも人々の
心を深く痛めつけたのは、その残虐性であった。
ここでそれらについて、くだくだしく説明はしないが
結局のところ――誰もが傷ついていた。
そして、その贖罪(しょくざい)のため方便を
人々は探し始める。
70通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 18:12:48 ID:???
>>69の続き

 贖罪には生贄(いけにえ)が必要である。
罪を贖(あがな)う為に格好な生贄が
軍にも必要であった。
そして――野斬はエリート部隊を追われ
四郎の所に身を寄せる羽目となる。
それは自尊心の強い野斬にとって単なる
厄介物払いという処置では無かった。
「いつか必ず復讐してやる!」
濡れ衣を被せられた男は、その日から
深く胸に『復讐』の二文字を
刻み込んだ。
71通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 18:24:58 ID:???
>>70の続き

 卍谷を目指す旋風(つむじかぜ)が速度を増した時
不意に原野の向こうから声がしてきた
「おおおーーーい!!」
野斬はその声の主に向かって応える
「よお!死神ぃい!!」
死神と呼ばれた声の主も旋風となって
やって来た。
「野斬よ……その呼び名は止めよと何度……」
仏頂面(ぶっちょうづら)をした
三陀巣(サンダース)が側までやって来た。
72通常の名無しさんの3倍:2005/08/22(月) 18:28:29 ID:???
>>71訂正

誤 三陀巣(サンダース)
正 三陀守(サンダース)
73通常の名無しさんの3倍:2005/08/25(木) 15:47:28 ID:???
 朧月(おぼろづき)の夜、二つの旋風が
夏草を吹き飛ばしながら原野を進む。
野斬から事の次第を聞かされた
三陀守(サンダース)は暫(しば)し
沈黙していたが、直ぐに眼の色を変えた。
「くくく……死神の本領を発揮かもな?三陀守?」
野斬はからかうように言い放つ。
「くどいぞ?上官殺しよ?」
三陀守も負けてはいない。
この二つの旋風は、卍谷の忍びの間でも
何かと口に上り、死神と悪魔(あくま)
どちらが強いか?などと噂の種になっていた。
((野斬は卍谷ではそんなあだ名がつけられていた。))
通り名というのは往々にして
それが一人歩きをし、実像とはかけ離れた
おどろおどろしい物になりがちではあるが
この二つの旋風に冠された通り名は
まさに的を得ていたものであった。
74通常の名無しさんの3倍:2005/08/26(金) 13:51:46 ID:???
>>74の続き

 何故、三陀守が死神という
二つ名を冠せられたか?それは
彼の趣味?も一役買っている。
彼の一族は元を辿れば、陰陽博士の
一派に属していた。その血筋が
そうさせるのか、彼は幼少の頃より
占術に興味を示し、やがてその才能を開花させる。
75通常の名無しさんの3倍:2005/08/26(金) 14:07:19 ID:???
>>75の続き

 彼の占術で尤も恐ろしく、且つ当たるという
札付きのものは『寿命』に関する事であった。
その独特な風貌で一言
「貴公、そのままでは死ぬぞ?」
と――凄まれると、いかに百戦練磨の兵(つわもの)と
云えども、まるで幽鬼の如く青ざめてしまう。
そして、その名声は遠く都にまでも届いていたと云う。
忍にしては有るまじき事ではあったが――
占術に関して一流には違い無いが
真に彼を『死神』たらしめんとするのは
彼のその悪運の強さにもある。
76通常の名無しさんの3倍:2005/08/26(金) 14:32:39 ID:???
>>75の続き

 彼が所属する部隊と云う部隊は大戦中
悉(ことごと)く壊滅状態になった。
彼を除く構成員全てが、『戦死』あるいは
『再起不能、戦闘不能』に陥るのに
彼だけが――たった一人、かすり傷一つ負わずに
生還する。それも一度や二度ではない。
軍の上層部も、本人でさえも最早
思い出す事が出来ない程の場数を数えていた。
大戦中、彼を迎え入れる羽目となった
運の悪い?部隊の指揮官やその構成員達は
そのジンクスを噂で聞き及んでいただけに
激戦の戦場をただ一人生き抜いてきたという
彼の悪運の強さに畏敬の念を込めて
『死神』と何時(いつ)しか語るようになっていった。

77通常の名無しさんの3倍:2005/08/26(金) 14:53:41 ID:???
>>76の続き

 二つの旋風の声を押し殺した会話は続く
「俺はこのままとって返す。巻物の事は頼んだ。」
野斬は殺気を込めた声で言う。
「何故?白津鼓(シロッコ)の事か?」
三陀守は巻物を懐に仕舞いながら聞く。
「うむ。御前試合とは言え
俺の術、『儀野俯覧(ギャプラン)』を
苦もなく破りやがった。このまま捨て置けん。
それにまさか俺が、とって返し奴を討つなどと
考えぬだろう?スキがあると観た。」
確かに尤もな事だ。頷(うなず)きながら
「あの凧(たこ)の術を見られてしまったのは
確かに捨て置けぬな、しかも破るとは……うむ
良かろう、巻物の件確かに承(うけたまわ)った!」
三陀守は応えた。そして彼も野斬に
気がかりに思っていた事を口にする。



 
78通常の名無しさんの3倍:2005/08/27(土) 13:16:15 ID:???
>>77の続き

 虫の音が暫し、止まる
三陀守は卦(け)の結果を口にする
元より、そういった類のものは
はなから信じようとはしない野斬では
あったが、只ならぬ三陀守の表情に
不吉な予感を覚える。そして――
「四郎様の事は俺に任せろ。」
と、短く言い放つた。
79通常の名無しさんの3倍:2005/08/27(土) 13:33:59 ID:???
>>77

誤 卦(け)の結果
正 卦(け)のあらまし
       ・・・・
80通常の名無しさんの3倍:2005/08/27(土) 14:01:05 ID:???
>>78の続き

 野獣のような男、野斬までもが
敬意を示す四郎とはどんな人物なのか?
ここで少々、解説をしておきたい。
彼――即(すなわ)ち四郎は
個人的な戦闘能力のみ取り上げると
するならば恐らく、卍谷の忍達の中では
中の下、もしくは下の部類に属するであろう。
だが、奇妙な事に四郎の指揮下に入った
忍達は遺漏(いろう)なく、個々が
知らずに秘めている潜在的な能力を
己自身が驚愕する程に発揮し、どんな困難な作戦でも
易々(やすやす)とこなしてしまう――
そんな不思議な力と魅力が四郎には
備(そな)わっていた。

81通常の名無しさんの3倍:2005/08/29(月) 16:23:39 ID:???
>>80の続き

 己をエリートと称して、ふんぞり返る事はあまり好まない
野斬ではあったが、それでも最果てのお荷物部隊と称されていた
四郎の旗下に転属を命じられた時は流石に、いきどおりを感じた。
しかし、四郎とその配下の者たちと接していくうちに
何時しか当初のわだかまりや、いきどおりといった
負の感情は氷がじわじわと溶け出していく様に、野斬の中から
消えていった。そして、敬意まで示すようになったのは
『零八小隊異聞録 浦島四郎』にも記述されている事だが
四郎が己を犠牲にして、仲間を助けたという事にある。
尤も、その発端は『愛』の為などという非常に青臭いものでは
あったのだが、それでもこの男、野斬にとっては
感涙するものがあったようだ。

82通常の名無しさんの3倍:2005/08/29(月) 16:45:55 ID:???
>>81の続き

 亜腐沙羅巣(アプサラス)の爆発の際、大量の放射線と
汚染物質にさらされた四郎の肉体は実際年齢よりも老化がすすみ
やがては死に至る奇病を患う。この奇病により通常の人間の時間軸とは
異なる世界で生きる事となった四郎はやがて、全ての現象が遅く感じるという
特殊能力?を身につける事となる。この事は個人的な戦闘能力が
特筆するべきでもない四郎にとってはかえって有利に働く事となる。
((敵方の実力者、白津鼓(シロッコ)から巻物を気取られぬうちに
すり替える事が出来たのもこの能力のおかげである。))
そんな四郎の特殊能力を卍谷の者は誰も知らない。
ただ一人、四郎の思い人、藍奈(アイナ)を除いて。
その事を知らぬ故に皆、四郎の底知れぬ力に驚き、感銘を受けていた。
野斬もその中の一人である。
83通常の名無しさんの3倍:2005/09/01(木) 14:38:03 ID:???
>>82の続き

 原野にひときわ強い風が来る。野分(のわき)が近づいている様だ。
野斬は頃良しと見て、素早く印を結ぶ。すると彼の衣が見る見るうちに延び
まるでムササビのような皮膜を形成した。これが彼の言うところの
儀野俯覧(ギャプラン)の術であろうか?皮膜に風をはためかせ、そして
「鋭(えい)ッ!!」と短く叫びながら跳躍した。
黒緑色の大きな凧が今、三陀守の見上げる空を滑空していた。
84通常の名無しさんの3倍:2005/09/01(木) 15:02:52 ID:???
>>83の続き

 二つの旋風はそこで別れた。一つは風雲告げる天空へ
そして、もう一つは虫の音が鳴り響く野に
黒緑色の大きな凧が、野分の力を得てあっという間に闇に消えるのを見届けた
三陀守は再び、地を這う風となってもと来た場所に引き返そうとした。
一刻も早くこの凶報を卍谷へ――!!
そう思った矢先、藪の中からくぐもった声が三陀守にかけられた。
「その巻物、卍谷にやるわけにはいかぬ。」
その声の主の姿を見て三陀守は愕然とした。
「赤い彗星の死夜亜(シャア)……!!いつの間に!!」
三陀守は忍の、通常の三倍の速度で移動する術を持つという敵について
思い出していた。

85通常の名無しさんの3倍:2005/09/02(金) 13:50:16 ID:???
>>84の続き

 赤い彗星……過去に何度、その敵の二つ名を聞いた事があったか!
何度、その男に殺されかけた事があったか!三陀守はゴクリと咽喉を鳴らし
肉迫しつつある敵が己のどんな秘術をもってしても、撃退できない事を一瞬で悟った。
死神は今度こそ死を覚悟する。
やがて、乾いた咽喉からやっとの事で声を搾り出す。
「あの、瑠鵜霧(ルウム)での船戦(ふないくさ)の際、敵方の船を五艘(そう)も
飛び越え、兜首を獲ったと云うのはまことの事か?」
三陀守はじりり、じりりと後退しながら言い放つ。
「ふっ……それは違うな。」
影は一瞬にして藪から姿を消した。そして旋風が飛び退くよりも早く懐に入る。
電光石火――!!影が手にした斧が煌めく。
そして、三陀守の両腕を膾(なます)を切るが如く、断ち落とした。
男の絶叫が闇夜に響き、鮮血が野を染める。
野分に蓬髪(ほうはつ)を靡(なび)かせながら
影――死夜亜(シャア)は不敵な笑みをたたえながら答えた。
「五艘ではない……八艘だ。死神よ?」
86通常の名無しさんの3倍:2005/09/05(月) 20:27:56 ID:???
甲賀忍法帖以外のネタはないの?
87通常の名無しさんの3倍:2005/09/06(火) 13:53:25 ID:???
88通常の名無しさんの3倍:2005/09/08(木) 13:03:25 ID:???
>>85の続き

 噴出す血潮の勢いを見て三陀守は観念した。
傷を塞ごうにも、両の腕(かいな)を失った今では叶わぬ事である。
「印を結ばれると厄介だからな、貴様の魔神(マシン)の術は暗器の多さに利があると聞く。」
死夜亜は痛みに耐えかね、その場に立ち竦む死神に言い放つ。
(死夜亜……噂どおりの恐ろしい男よ。長大砲(ながおおづつ)の術で逃げようとしたが
全て見通しか……。)
ともすれば意識をそのまま無くしそうな痛みに三陀守は歯軋りしする事しか
出来ないでいた。
「聞かせてもらおうか……連邦の忍びどもの術とやらを……!!」
死夜亜は懐から野狸守(ノリス)が運んできた巻物を取り出すと
不敵な笑みを死神に贈る。
一際(ひときわ)、強い風が吹き付けて来た。

89世界経済共同体党広報:2005/09/10(土) 00:49:33 ID:???
東京1区候補者、又吉光雄に投票しない東京1区の有権者らは、腹を切って死ぬべきだ。
また、彼らはただ死んで終わるものではない。
世界経済共同体党唯一神又吉光雄イエスキリストが地獄の火の中に投げ込む者達だ。
比例区で世界経済共同体党に投票しない有権者らも同様だ。
理由は他人を殺すなら自分が死ぬべきだからだ。
詳しい理由は選挙公報等で熟知すべし。

与謝野馨・海江田万里・堀江泰信らは、腹を切って死ぬべきだ。
また、彼らはただ死んで終わるものではない。
世界経済共同体党代表唯一神又吉光雄イエスキリストが地獄の火の中に投げ込む者達だ。
彼らの支持者も同様だ。
理由は他人を殺すなら自分が死ぬべきだからだ。
詳しい理由は選挙公報等で熟知すべし。

首相小泉純一郎は衆議院総選挙後、世界経済共同体党代表唯一神又吉光雄イエスキリストに首相の座を明け渡すべきだ。
そう出来なければ、小泉純一郎は腹を切って死ぬべきだ。
のみならず、世界経済共同体党代表唯一神又吉光雄イエスキリストは彼を地獄の火の中に投げ込むものである。
理由は他人を殺すなら自分が死ぬべきだからだ。
世界経済共同体党代表唯一神又吉光雄イエスキリストに投票しない有権者も同様である。
詳しい理由は選挙公報等で熟知すべし。
90通常の名無しさんの3倍:2005/09/13(火) 16:44:08 ID:???
>>88の続き

 蛇に睨まれた蛙とはこの事を言うのだろうか?膝の震えが止まらぬのは、大量の出血の所為ではない事を
三陀守(サンダース)は判り過ぎるほど判っていた。死夜亜(シャア)が舌で指を湿らせ、件(くだん)の
巻物を開いた時、紫の唇の端から見えた赤い舌が、まるで人を丸ごと飲み干す大蛇(おろち)の舌に見えた。
「素直に応えれば、楽にしてやる。この意味が判るな?死神よ……」
91通常の名無しさんの3倍:2005/09/16(金) 13:58:09 ID:???
>>90の続き

 後に、血を分けた実の妹に『鬼子』と言わしめた男の恐ろしい拷問が
風すさぶる野で行われていようとしていた頃、棘(いばら)の隠れ里の
慈恩(ジオン)の館では卍谷からの珍客を交えて、酒肴(しゅこう)が
催(もよお)されていた。
「いやー・・・本当に死ぬかと思いましたよ。」
生傷が痛々しく残る龍法聖(リュウホウセイ)が包帯に巻かれた額を
撫でながら笑う。この男、羅羅亜(ララア)が調合した薬によってようやく
息を吹き返したのであった。そして、息を吹き返したと思ったら
病み上がり?の身体なのに、ものすごい勢いで目の前に出された食膳を
全て平らげ、棘(いばら)の隠れ里始まって以来の大食いの記録を残した。
皆が、その食欲に少々呆れ果てていた時、たまりかねて
「龍よ?その情けない腹をなんとかした方が良いぞ?ここまで運ぶのに
本当に骨がおれたわ・・・」
亜夢露(アムロ)は杯をあおりながら毒づいた。隣に座る羅羅亜(ララア)が
コロコロと笑う。先ほど、お披露目された亜夢露の手土産のからくり人形も
龍をからかうように床を転がる。
「め、面目ない・・・情けない体で・・・」
龍は蚊の鳴くような声で呟くと、ドッと笑いがおきた。
92通常の名無しさんの3倍:2005/09/18(日) 17:03:57 ID:???
よくわからんが・・・保守っとく・・・
93通常の名無しさんの3倍:2005/09/21(水) 14:14:57 ID:???
>>92d
>>91の続き

 仇敵だった者同士が、ひょんな事から意気投合し、積年の恨みなどと
いった感情も忘却するという瞬間とはこのような事を言うのだろうか?
荊の隠れ里の人々は長年、親の仇のように聞かされていた卍谷の客達が
存外に親しみやすく、優しい心持の者だった事に驚き、必要以上に
警戒していた事を少々、馬鹿馬鹿しく思えたのだろう。
他愛のない酒の席でのやりとりでも笑い声が起きていた。
さらに彼らの緊張の糸を解す理由に、後々の長役の羅羅亜と
かつて仇であった卍谷の後継者、亜夢露との祝言が近い所為でもあったのだが。
94通常の名無しさんの3倍:2005/09/21(水) 14:36:51 ID:???
>>93の続き

 しかし、そんな明るい宴の席で似つかわしくない感情を燻らせる男がいた。
幕部(マクベ)である。注がれた杯を舐めながら心の奥底でほくそえんでいた。
((ククク・・・・順調だ・・・・))
例によって向かい側の席に座していた毒女、資慰真(シーマ)に目配せすると
杯を干す。今宵の酒はいくら飲もうと酔う気がしなかった。
「亜夢露様?手前味噌ですが、里の田舎踊りなどをご覧になさりませ・・・・」
資慰真はやおら立ち上がるといつの間にか現れた奏者達の奏でる音に合わせて
腕をくねらせ始めた。
♪舞ぁ日〜〜舞ぁハァ〜〜舞ぁハッハ〜〜〜♪
資慰真の妖艶な瞳に、獲物の姿が映し出される。
何処からか、宴の席に迷い込んできた一匹の蛾が燭台の炎の中に飛び込んでいった。
95通常の名無しさんの3倍:2005/09/21(水) 15:40:23 ID:???
ブライト「おう 親父にもぶたれたことのない頬が熱うなってきたではないか」
96通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 23:07:33 ID:???
スレの流れをぶったぎってすまなんだが
Y十Mをガンキャラでやったら如何なるものか?
97通常の名無しさんの3倍:2005/09/25(日) 11:48:13 ID:???
age
98通常の名無しさんの3倍:2005/09/25(日) 12:29:43 ID:CeoT/DwV
よし、待ち望んだ100ぅ!
100じゃあ
99通常の名無しさんの3倍:2005/09/26(月) 04:48:02 ID:4WNzJWrm
バジリスクよりキュベレイスレにすりゃよかったのに
100通常の名無しさんの3倍:2005/09/26(月) 04:48:58 ID:4WNzJWrm
ひゃくぅっ!
101通常の名無しさんの3倍:2005/09/26(月) 14:37:59 ID:???
>>95
ワロタw
102通常の名無しさんの3倍:2005/10/02(日) 17:22:51 ID:???
>>96
検索してみました。これは面白そう。トン
>>94の続き

 軽やかな笛の音に合わせて、資慰真(シーマ)は腰をくねらす。其処かしこで
やんやの喝采が巻き起こる。
♪舞ぁWHO〜〜舞ぁHER〜〜舞ぁハッハ〜〜〜♪
この田舎踊り?の調べは、それを聞く人々を熱狂させる何かがあるのだろうか?
宴の盛り上がりは最高調に達する。
ここで少々、誤算が生じはじめる。密かに練り上げた、暗殺計画そのものに。
一体、何故?その疑問の答えの一つに今、まさにここで喝采を浴びている妖艶な踊り手の
心情の変化が原因にあった。
この里に流れ着いて以来かもしれない。否、物心ついた時からだろうか?
驚く程の暖かい声援と喝采を浴びた資慰真(シーマ)は少々、たじろぎに似た感情を覚え始めた。
それは、長年の宿敵を目前にしての緊張から来るものも、当然あるだろう。
((馬鹿なッ!この私が柄にも無く……))
無心なろうと必死で腕をくねらせる。しかし、彼女が落ち着こうと努力すればするほど
妙な気持ちの高ぶりが、抑えきれずにいた。そして、ついに――彼女の脳裏には
封印していた筈の、忌まわしい記憶の断片が甦って来た。

103通常の名無しさんの3倍:2005/10/02(日) 17:46:33 ID:???
>>102の続き

 それは、資慰真(シーマ)がまだ幼少だった頃にやって来た。切支丹(キリシタン)の弾圧である。
弱小国家であった最戸参にとって、異国の宗教が領民達を改宗させ、洗脳し、やがては国そのものを
乗っ取るという侵略行為に敏感だったのは、弱小が為に避けられない事だったのかもしれない。
異国との貿易で財を成した資慰真の父親は切支丹であった。その運命の日は、朝から冷たい雨が降っていた。
屋敷の扉を乱暴に叩く音が、幼い資慰真の眼を開けさせた。
104通常の名無しさんの3倍:2005/10/02(日) 18:10:55 ID:???
>>103の続き

 資慰真は優しかった父の胸を槍で貫いた。絶えがたい苦痛から解放する為に止めを刺したのだ。
「良くやった。娘……これでお前は助かった。」
役人達はたった今、親を殺した子供から槍をもぎ取ると、処刑場から去って行った。
野次馬達が罵声を浴びせる。その罵声の相手はなんと、まだ放心状態の資慰真に対してだった。
これも役人達の差し金だろうか?時代は乱世だった。人々の心もまた荒み切っていた。
資慰真はその日、破瓜した。まだ8歳であった。





 
105通常の名無しさんの3倍:2005/10/06(木) 16:45:52 ID:???
>>104の続き

 資慰真は今、幕部の前で叱責を受けていた。宴は既にお開きになっていた。
とある現象に同じく女性で勘が鋭く、尚、機転の利く羅羅亜(ララァ)が
下卑びた踊りの最中に、突然襲った下腹部の痛みに蹲(うずくま)る資慰真を
助け、入れ替わりに羅羅亜、自らその踊りを踊ったのだ。それも極、自然の流れで
これらの事に気が付いたのは恐らく、その場に居合わせた中でも数名であろう。
下卑びた踊りの最中に資慰真の秘術で獲物を仕留める算段であったが、彼女の性的な
肉体生理現象がそれを不可能した。
「何をしていたのだッ!!これだから女子と言う奴は……」
幕部は怒りながらも、先程目にした羅羅亜が踊る艶やかな姿が頭から抜けきれずにいた。
(やはり、手渡すのは口惜しいッ!!)
むくむくと男の本能が湧きあがってきた。
106通常の名無しさんの3倍:2005/10/16(日) 16:17:30 ID:???
>>105の続き

 幕部は血走った目を、ひれ伏す資慰真に向ける。
「奴は今、どうしている?」
粘着気質の男が、怒りを堪えて問い掛けてきた。
「先ほど、湯殿(ゆどの)に行ったようです……。」
資慰真は疼痛(とうつう)に耐えながら答えた。
「良しッ!奴は俺が仕留める。お前はあの豚を狩れッ!……今度はしくじるなよ?」
資慰真はひれ伏したまま、口元を歪めた。そして吐き気をこらえながら答えた。
「……はい。」
この時、資慰真は己に染み付いた下忍(げにん)根性を恨んだ。
流れ者の資慰真にとって、同じような境遇?を経ても、上忍(じょうにん)の地位にあり
尚且つ顔役の務めをもこなす幕部に頭が上がらないのだ。
更に資慰真は幕部に個人的な恩義がある。
「……あの壷を用意してくれ。」
幕部にその命令を発せられた資慰真は、自分がとある業者に騙されて
壷の売り子にまで身を落した頃のことを、痛みとともに思い出した。





107通常の名無しさんの3倍:2005/10/16(日) 16:52:58 ID:???
>>106の続き

 それはまだ資慰真が十代の頃である。両親の処刑を経て、村八分となった資慰真が
生きてゆくために選んだ仕事……と、言うより選ばざるを得なかった仕事は
街道の宿で旅人等を相手にする飯盛女であった。身持ちのあまり良くない資慰真を受け入れる
宿屋はやはり、あまり健全なものではなかった。そんな環境のもとでは、親の愛情を
自らの手で強制的とは言え、断ち切った少女がやさぐれるのは無理の無い事であった。
宿屋で働き始めて幾日も経ずに、資慰真は文字通り宿で『壷を売る仕事』に手を染める。
何の感傷もなかった。それは、その行為の代価が三日もあれば消えてしまうもので
あったからでは無い。明日という日に抱く夢や希望が資慰真には無かった。
少女の瞳はどこまでも濁っていた。
やがて……ただれた日々を送るうちに資慰真の体は病に侵され始める。
108通常の名無しさんの3倍:2005/10/24(月) 17:29:45 ID:???
>>107の続き

 年端のゆかぬうちに操(みさお)を失い、体を切り売りしながら生きてきた所為か
資慰真は月のものが来るたびに激痛に苛(さいな)まれた。
あまりの酷い痛みに耐え切れず、飯盛女の仕事を休む事もしばしばだった。
幸い、彼女の雇い主は理解のある男であった。金の卵を産み出す鶏を潰す愚は犯さなかった。
しかし、幇間(ほうかん)上がりのその男は、資慰真が休んだ分だけ上前をはねる事を
決して忘れなかった。ある意味、生殺しであった。
そして……資慰真にとって忘れえぬ日がついにやって来た。




109通常の名無しさんの3倍:2005/10/24(月) 18:14:05 ID:???
>>108の続き

その日は朝から気分がすぐれなかった。予定日よりも遅れている所為もあった。
自堕落な行為を繰り返してきた資慰真にとって、父親の知れない赤子を孕んでしまうという
結果は避け得れない事であった。積もり積もった上前が支払えない為に、月ものの日の最中だというのに
雇い主の男(男と言っても老人であるが)と寝た事さえもある。それも、もう何度も。
熱で火照る体に毒づきながらも、資慰真は働いた。もともと器用な部類に入る女である。
仕事などは片手間で済ませてしまうのが普通であった。
しかし、その日は違った。簡単な作業にも手違いを犯し、雇い主を苛出せた。
雇い主が苛立つのも無理は無い。なぜならその日に限って珍しく宿に
この界隈でも一、ニを争う材木商のご隠居がお忍びで泊まりに来ていたから。
人手の足りない宿では突然の珍客のもてなしに右往左往していた。
体調のすぐれない時、普段なら暇を請う資慰真であったが、流石にこの日は気が引けた。
それは単に、ご隠居に出す料理を先ほど焦がした所為ばかりでは無い。
一応、義務感を感じていた。それは、今の彼女に残された僅かばかりに自尊心と
言っていいだろう。

110通常の名無しさんの3倍:2005/10/25(火) 03:34:21 ID:???
111通常の名無しさんの3倍:2005/10/27(木) 16:53:32 ID:???
>>109の続き

 「ほそかわ・ガラハウの娘?」
資慰真の酌を受けながら材木商の隠居は目を細めた。
すっかり禿げ上がった頭の奥で記憶を辿り始める。
暫しの沈黙の後、目を大きく見開いて資慰真の手を強く握りしめると
「おお……まさかこんな所でお会い出来るとはッ!?
神に……嫌、御仏(みほとけ)に感謝しますッ!!」
宴席ですっかり干からびたと思われていた老人の大声に
芸子達が奏でる囃子(はやし)が止まる。
その代わりに、感極まった老人の啜(すす)り泣く声が辺りの空気を湿っぽくさせる。
そんな老人の胸に、握られた手を押し抱かれた資慰真は状況がつかめないまま
呆気にとられていた。只、時折(ときおり)、手の甲に落ちてくる老人の涙が
不思議と暖かいものに感じられた。



112通常の名無しさんの3倍:2005/10/29(土) 15:52:03 ID:???
>>111の続き

 資慰真は後悔していた。こんな苦しみと悲しみを味わうのなら最初から老人と会わなければ良かったと。
ほんのつかの間とは云え、暖かい家庭と優しい夫を得た事が彼女の喪失感を一際、険しいものにした。
あの日、資慰真の父親と旧知の仲であった老人は雇い主から資慰真を解放する。身請けという形ではあったが
明日の見えない仕事と人生から文字通り彼女を救ったのだ。しかも、元、遊女と言っても良い資慰真を
我が子の二度目の嫁として暖かく家に迎え入れた。妻に先立たれたことのある夫は哀しい過去を持つ資慰真を
優しく労わってくれた。愛が……満ち溢れていた。
113通常の名無しさんの3倍
>>112の続き

 荒みきった資慰真の心と体を癒す愛はやがて彼女の良心を咎め始める。
以前、出産のおりに妻と子を亡くした事のある夫は資慰真に焦らなくても良いと
宥(なだ)めたが、その優しさと労わりの声が反って彼女の心を苦しめた。
宿で働いてた頃、自分の手で堕胎した事もある資慰真はこの時、初めて神に
否、御仏(みほとけ)の慈悲に縋(すが)ろうとした。
だが結局、資慰真は神にも仏にも裏切られる事になる。彼女は見捨てられたのだった。
また……今日も如何わしい業者や霊能者達が列をなして店に訪ねて来る。
彼等は、今度こそ間違いないものを持ってきたと口々に言う。
これら霊験あらたかな壷を買えば子供が授かると実(まこと)しやかにまくし立て始めた。
材木の先物取引で財を成した老人と夫は、当初は歯牙にもかけなかったが、彼等の巧妙な
誘導と罠に洗脳されつつあった。優しかった夫はやがて資慰真に手を上げるようになり
彼女の魂の恩人である老人には認知症の兆しが現れていた。資慰真は騙された。
愛が満ち溢れていた一家に破滅への秒読みが始まっていた。