――彼を知り、己を知れば百戦危からず……
旧世紀の、兵法の古典
『 孫 氏 』の記述である。
――宇宙世紀
紫煙と人息いれで咽返る、その狭い一室では
男達がある賭けに出ようとしていた。
【ジャブロー攻略作戦】
地球方面軍司令官ガルマ大佐が
WBとの戦闘により玉砕し
その混乱に乗じた連邦軍のオデッサ作戦で
手痛い敗北を喫したジオン軍は
大きく連邦側に傾いた戦局を覆す
乾坤一擲の反攻作戦を計画中であった。
一時的に統制を失った
此処、地球・南米方面ジオン軍も
漸く、当初の混乱から立ち直り
ジャングルの奥地に未だ引き篭もる
地球連邦軍との膠着状態に
終止符を打つべく、歩哨の一兵卒に到る迄
全ての部門と人間が昼夜を問わず
働いていた・・・・・・
――とある人達を除いて・・・・・・
狭い一室に篭る男達・・・・・・
((正確には、狭い一室に追い遣られた男達であったが))
彼らの仕事上の肩書きは作戦課であった。
正式名称は『第4作戦課・MMR班』である。
MMR班を形容する時、この様な逸話を
思い浮かべる人も多いではないだろうか?
ジオン軍広しと言えども一目置かれ
冷酷無慈悲で名の通る
シーマ艦隊・海兵隊員の荒くれ共もが
口を揃えてこう言った・・・・・・
MMR班に配属されるぐらいなら、死んだ方がマシ――と
男達の肩書きは作戦課であるが
実の所・・・・・・名ばかりで、仕事をしているのかどうか
当の本人達でさえ疑問符が付くそんな部門であったが
兎に角、全ての軍人に恐れられていた。
――そして、今夜もまたその狭い一室からは
野太い男達の叫び声が、ジャングルの奥地に向かって
延々と木霊するのであった・・・・・・
「な、なんだってーーーーーー!!!!」