復活!!司馬遼太郎風にプロレスを語るスレ

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1お前名無しだろ
この稿続く。
2お前名無しだろ:2005/10/14(金) 22:37:42 ID:ST7DnTPu
余談がすぎた
3お前名無しだろ:2005/10/15(土) 00:39:00 ID:Gnlun6PZ
3といったら三沢さんと言うことをどの様に説明しようかということに、まだ悩んでいる。
馬場さんは、死んだ。
三沢さんと龍さんは、ノア旗揚げと言う事態にはいっていくであろう。
できれば彼らを軸ににして新日倒産という喜劇をえがいていきたいが、
しかし対象はばくぜんとして馬鹿馬鹿しく、
そういうものを的確にとらえることができるほど、2ちゃんというものは便利なものではない。
4お前名無しだろ:2005/10/15(土) 11:07:08 ID:IiuBk+qq
>>1は何が言いたいの?
5お前名無しだろ:2005/10/15(土) 14:38:09 ID:xHBy331t
良スレである。
6お前名無しだろ:2005/10/16(日) 17:41:43 ID:Bepkqowi
>>4

>>1 は何が言いたいのか、サイモンは考えた。
みじろぎもしない。
道行く人が気味悪そうにひそひそ話をしながら通り過ぎていくが
そのことを気に留める様子もない。
しばらくして、ひとしきりあたりを見回しながら、
何事もなかったように歩き出した。
7お前名無しだろ:2005/10/16(日) 23:35:59 ID:Kdik7YA6
「くわっ」
短く咆哮したかと思うとサイモンは絶命した。
それがプレレス王国新日プロの結果的に終焉となった。

その後猪木はしばらく生きた。
永久電池を開発することが戦争を根絶させることになると思っていたんじゃ。
晩年の猪木の口癖であったが、その真意は最後まで不明であった。
8お前名無しだろ:2005/10/17(月) 01:02:42 ID:TSTjCQCb
是非、前スレの名作を貼ってくれ…頼みます…
9お前名無しだろ:2005/10/19(水) 01:55:11 ID:nAmeU0oL
が、果然と言うべきであろう。
ドームのサイモン社長から猪木のもとに入ってくる情報はことごとく不入りであった。
もっとも
だめずらー
とは、サイモンの報告には書いていない。我ガスタッフ必死デ割引券配ルモ
草間妨害ス。タダ券ヲ配ルガ通行人無視ス。
などの新日的粉飾的投げ遣り的文章である。サイモンはホストとしては第一流の才能あり
又家系的にも問題なき家庭ではあるが、プロレス頭は大森程度しかなかった。
10お前名無しだろ:2005/10/19(水) 17:29:07 ID:WLVw41j2
こまめに保守しないとまた落ちるね。
11前スレより:2005/10/19(水) 21:52:43 ID:149AnGEU
59 名前:『燃えよ剣』より@ 投稿日:2005/09/02(金) 00:35:51 ID:BBysTVHK
「準、これを見ろ」と、颯爽とTシャツを脱ぐ。
女性の太ももほどはある、太い右腕。すでに何人の相手を葬ったか、数も覚えていない。
「これは豪腕だ」と言った。小橋の口ぶりの熱っぽさは、相手は秋山と見ていない。
自分に言い聞かせているような様子であった。
「準、見てくれ。これこそが、豪腕である」
「…太っといですね」 仕方なく、微笑した。
12前スレより:2005/10/19(水) 21:55:43 ID:149AnGEU
60 名前:『燃えよ剣』よりA 投稿日:2005/09/02(金) 00:37:13 ID:BBysTVHK
「豪腕とは、レスラーが、レスラーを薙ぎ倒す目的のためにのみ作り上げたものだ。
豪腕の性分、目的とは単純明快なものだ。敵を破る、という思想だけのものである」
「はぁ」
「しかし見ろ、この単純の美しさを。豪腕は、豪腕は美人より美しい。
美人は見ていても心が引き締まらぬが、豪腕の美しさは、粛然として男子の鉄腸を引き締める。
目的は単純であるべきである。思想は単純であるべきである。
プロレスラーはプロレスのみに生きるべきである」
(なるほど、それを言いたかったのか) 秋山は、微笑をつづけている
「そうだろう、秋山準」
「私もそう思います」 これだけは、はっきりとうなづいた。
13前スレより:2005/10/19(水) 21:56:18 ID:149AnGEU
61 名前:『燃えよ剣』よりB 投稿日:2005/09/02(金) 00:38:22 ID:BBysTVHK
「準もそう思ってくれるか」
「しかし小橋さん」と、秋山はちょっと黙ってから、「プロレス界はこの先、どうなるのでしょう」
「どうなる?」 小橋は、からからと笑った。
「どうなる、とは漢の思案ではない。婦女子の言うことだ。
漢とは、どうする、ということ以外に思案はないぞ」
「では、どうするのです」
「孫子に謂う」 小橋は、ちからこぶを作りながら、
「その侵略すること火の如く、その疾きこと風の如く、その動くこと雷神の如し」

小橋はあくまでもプロレスファンのために戦う覚悟である。
総合格闘技が人気を博そうとどうしようと、小橋建太の知ったことではない。
小橋は、プロレスラーになるために生まれた。プロレスラーとして死ぬ。
(男子の本懐ではないか)
14前スレより:2005/10/19(水) 21:57:02 ID:149AnGEU
62 名前:『燃えよ剣』よりC 投稿日:2005/09/02(金) 00:39:35 ID:BBysTVHK
「なぁ準、俺はね、世の中がどうなろうとも、たとえ世界中の団体が潰れ、消滅して、
最後の一人になろうとも、やるぞ」
事実、こののち小橋建太は、世界のプロレス団体が解散・破産、もしくは総合に鞍替えする中
最後の、たった一人のプロレスラーとして残り、世界をまたに駆けて活躍するのである。
これは更に、この物語の後の展開にゆずるであろう。

「おれたちが ― 準、」 小橋はさらに語り続けた。
「いま、新日のようにふらついてみろ。今日に至るまで、プロレスの灯を守るためと称し、
幾多の先人達を倒してきた、スタン・ハンセン、テリー・ゴディ、スティーブ・ウィリアムス…
彼らを何のために乗り越えたか、ということになる。
彼らまた俺の豪腕に伏する時、プロレスラーとして立派に倒れていった。
その俺が今ここでぐらついては、地下で彼らにあわせる顔があるか」

「プロレスラーの一生とは」と、小橋はさらに言う。
「美しさを作るためのものだ、自分の。そう信じている」
「私も」、と秋山は明るく言った。
「命のある限り、小橋さんに、ついていきます」
15前スレより:2005/10/21(金) 11:01:05 ID:lkhBn1lj
77 名前:「翔ぶが如く」より@ 投稿日:2005/09/12(月) 04:03:40 ID:w2BArCSD
田上はしばらく黙ってすわっていた。
こういう場合の深刻な沈黙に耐えうるのは旧全日本系の特徴であるが、
その点においては小橋のほうが深刻な耐久力があると言える。小橋は握り拳を作ったまま黙っている。
やがて茶菓子が運ばれてきた。田上は、それを一口でたいらげると
「建太どん、俺(おい)は秩父へ帰っど」 ぼそり言った。
それに対し、小橋はむっとしたらしく、血色の良い顔が更に赤味を増した。
16前スレより:2005/10/21(金) 11:02:53 ID:lkhBn1lj
78 名前:「翔ぶが如く」よりA 投稿日:2005/09/12(月) 04:04:57 ID:w2BArCSD
(建太めは、怒っている)と田上はすぐに察し、その後、双方だけがわかる無言の対話があった。
「また合宿より釣り優先ですか」というふうな抗議が小橋の表情に出、それに対し田上のほうは
「怒らんでもよか」というふうにわずかながら微笑で報いている。
「次の武道館は、よろしゅう頼ンみやげ申す」と田上が言うと、小橋は誰にも見せたことのない
無遠慮な怒気を見せ、
「それは玉麒麟どん、俺(おい)の知ったこつか。いっでんこいじゃ(いつでもこうだ)。
こんどこそ、ちゅう皆が期待する時にお前(おまん)さぁ鎮火なさる。
準と大将に俺が謝りゃにゃぁならん。もう、知ったこつか」と言った。
17前スレより:2005/10/21(金) 11:04:29 ID:lkhBn1lj
79 名前:「翔ぶが如く」よりB 投稿日:2005/09/12(月) 04:06:09 ID:w2BArCSD
田上もこれには閉口したらしく、しばらく口をへの字に曲げ黙っていたが、やがて
「犬の散歩の時間じゃ」と呟き、立ち上がった。
小橋はよほど腹が立っていたらしく、玄関まで見送るということさえしなかった。
両人は同期入門という間柄だけに、そこに他人の容喙すべからざる呼吸がある様だったが
終始この光景を見ていた潮崎豪がさすがに見かね、あとで
「さきほどのお言葉、あれではちょっとひどすぎるように思いましたが」と言うと、
小橋は少し溜息をついたかと思うと、いきなり上着を脱ぎ上半身裸になり
「仕方が無い。豪、今から二人で特訓すっど」と大声で言った。
この日、両者は永遠に同期タッグを解消した。
18お前名無しだろ:2005/10/22(土) 02:06:59 ID:Nnf4KNwL
>>11-14
読んでてマジで涙腺ウルウルきたよ・・・小橋カッコよすぎw
19前スレより:2005/10/23(日) 17:17:38 ID:OkumJaE8
97 名前:お前名無しだろ 投稿日:2005/09/17(土) 21:09:49 ID:Rlhfx0d6
「何故、永田は勝ち目のない総合格闘技に出場なされるのですか?
なんとも今になってもその謎が解けません!」

と、あるファンがゴングの元・編集長の金沢に聞いた
金沢はこの日どういうつもりかわからないがこのファンの質問に耳を傾け
必ず相手の顔を逆撫でするような事を言う

「それはね永田はわざと負けてやったんだよ」と言い出した。続けて

「永田の負けは単なる実力差と世人は思ってるようだが、とんでもない
 あれは永田のはからいよ、いや冗談じゃないよ、永田はそうすべきだと
 承知していたさ、あたしもそれは分かってはいたがね」と言った。
20前スレより:2005/10/23(日) 17:18:15 ID:OkumJaE8
98 名前:お前名無しだろ 投稿日:2005/09/17(土) 21:33:11 ID:Rlhfx0d6
(97の続き)
金沢の言うところでは永田が格闘技戦出場を決めた時もし負ける事が
あれば、できるだけプロレスラ−の凄みだけは、お客にも分かるような
負け方をすると決めていた、と金沢言うのである。この説はどうも怪しいが
金沢がそう言い出したのだから仕方がない。
 
金沢が言うところでは

「キモに始まりコールマン、ミルコ、そして最後にヒョードルと永田は闘ってきたが
 すべて負けた、いや、あたしは永田の負けは、ある意味計画的な負けだと思っているよ」

ということは当時プロレスはプライドやK−1に代表される外部の格闘技勢力に圧されていた。
しかし新日本だけはかつて猪木が大々的に異種格闘技戦を行なってきた業界の先駆者である手前
これらの存在とは対立せざるおえない。  
21前スレより:2005/10/23(日) 17:19:48 ID:OkumJaE8
99 名前:お前名無しだろ 投稿日:2005/09/17(土) 21:48:28 ID:Rlhfx0d6
(98の続き)
さらに金沢は言う

「あのね年に数回しか開催されない格闘技と違って新日本の本業はあくまでも
 プロレスなんだよ、だからこの日本広しにいるファン達のため多くの日数を費やして
 巡業しなくてはならない。そのため格闘技なんかで怪我なんかしたらファンに申し訳
 が立たない。そのため怪我する前に相手に勝ちを譲ってさっさとリングから降りなければならない
 だけど只、負けたんじゃ芸がないから永田は相手の攻撃を受けきってレスラーの頑丈さを見せたじゃないか」
22前スレより:2005/10/23(日) 17:21:37 ID:OkumJaE8
101 名前:お前名無しだろ 投稿日:2005/09/17(土) 22:06:24 ID:Rlhfx0d6
(99の続き)
「事実、ミルコ戦ではハイキック一発で糸の切れた人形みたいになったが
 1・4の東京ドームでは秋山と死闘を繰り広げただろう。ヒョードル戦だって
 そうさ、あの試合は永田がヒョードルの拳に恐れて亀になったと物知らぬ好事家達
 は騒ぎ立てるがね、よく見るとあの亀ってやつがいかに防御に優れているかはリングを
 降りて半笑いで花道を歩いていた永田の表情が雄弁に語っているじゃないかね」

と金沢は言う。そして最後に

「結局、シュートもプロレスなのさ」
 
と突拍子もなく馬場の名言を持ち出しファンの前から去っていった。
23前スレより:2005/10/24(月) 21:24:13 ID:S7Gs42mD
105 名前:ライガーとサムライ@ 投稿日:2005/09/18(日) 20:30:13 ID:KMqMc3z9
一室でライガーとサムライが議論している、と言っても一方的に
話しているのはライガーであってサムライは、もっぱら聞き役に
徹している。

「このままでは隆盛を誇った我が新日JrはいずれノアJrや浅井の
 門下生どもに屈する羽目になる その様な事があってはならんのだが
 如何せん今の新日Jrで活躍する選手には俺達の頃と違い闘いに対する
 気持ちが希薄でいわゆる<ぬるま湯>である」

とライガーはいつもの様に新日Jrのあり方に不満を持ち決まって最後に

「まだ若い奴等に新日Jrは任せられん」

と言う。
しかしこの日に限っていつも聞き役に徹していた筈のサムライが口を開いた。 
24お前名無しだろ:2005/10/24(月) 21:36:40 ID:5UQi88gF
燃えよ剣より

小橋は、敵の頭上を駆け抜け、左右の敵を豪腕で薙ぎ倒しつつ進んだ。
鬼というしかない。

これ以上は進めない。
が、たった一騎、小橋だけがゆく。悠々と花道を進んでいる。

みな、茫然と小橋の姿を見送った。ノア勢だけでなく、地に伏せている新日本プロレスも、
総合格闘家らも、悠然と通過していく小橋の姿になにかしら気圧されるおもいがして、たれも近づかず、
拳をむけることさえ忘れた。
25お前名無しだろ:2005/10/24(月) 21:41:13 ID:5UQi88gF
小橋は、ゆく。
ついにリングのはしのエプロンまできたとき、この見なれぬレスラーを見とがめ、ミルコが進み出て、
「いずこへ参られる」
と、問うた。
「リングへゆく」
小橋は、微笑すれば凄味があるといわれたその一重瞼の目を細めていった。
むろん、単機斬りこむつもりであった。
26お前名無しだろ:2005/10/24(月) 21:47:25 ID:5UQi88gF
「名は何と申される」

「名か」
小橋はちょっと考えた。しかし挌闘家、とはどういうわけか名乗りたくはなかった。
「プロレスラー小橋建太」
といったとき、観衆は白昼に竜が蛇行するの見たときほどに仰天した。
小橋は、歩みをはじめた。

ミルコは構えをとった上で、なおも聞いた
「リングに参られるとはどういうご用件か。プロレスの降伏の軍使ならば作法があるはず」

「降伏?」
小橋は歩みを緩めない。

「今申したはずだ。プロレスラーがリングに用がありとすれば、プロレスをしにゆくだけよ」
27お前名無しだろ:2005/10/24(月) 22:19:51 ID:EUfyO1dh
(株)新日本プロレスではこの動力機関のことを、
「永久動力機関」
とよんでいた。ただし本格的な製造コースにのせる前の試作品であったから、
「試作品」
と公称されていた。
公称はそれである。実際はこの研究に莫大な(斜陽の団体としては)金を食いつつあるため、これに従事している会社のことを、フロントのひとびとは、
「お潰し方」
とよんで、白眼でみていた。
28お前名無しだろ:2005/10/26(水) 18:00:32 ID:yxt/kLT2
保守
29お前名無しだろ:2005/10/26(水) 18:14:39 ID:rkJiZXJ7
>>26
やべえ小橋かっこよすぎ
30お前名無しだろ:2005/10/27(木) 00:45:13 ID:HJpK6RUD
前スレ名作貼り、ホントありがとうございます。
我侭ついでにもう二つ、永田項羽と大森義経を是非!!!
31前スレより:2005/10/27(木) 23:25:34 ID:Ki8tsmYp
114 名前:『義経』より@[sage] 投稿日:2005/09/19(月) 15:16:18 ID:en19VkoG
東京で、何日かを過ごした。
が、有明から何の沙汰もなかった。大森はたまりかね、有明へ申しやり、
身を新橋駅まで進めた。新橋から有明まではもはや数十里ほどしかない。
大森は近くの喫茶店にて家内に筆をとらせ、泣訴状を書かせた。宛名は三沢の側近の
仲田龍とし、仲田の同情を得て三沢の心を動かさせしむべく期待した。
世に言う『木ノ状』である。

115 名前:『義経』よりA[sage] 投稿日:2005/09/19(月) 15:16:55 ID:en19VkoG
文章の華麗さは、むしろ華麗すぎるほどであろう。その文章は恨みを述べ悲しみを述べ、
ひたすら読む者の同情を得ようとするがために殆ど婦人の怨語にすら似ていた。
「自分は換言のために寡少な勲功すら黙殺され、罪なくして咎を被り、むなしく紅涙に沈む」
「亡父正平の尊霊がここにあらわれ給う以外、たれにこの悲歡を訴えられよう」
「自分は初登場してほどなく、父に豹柄の衣着を渡され、母元子の過剰な贔屓を受けて以来、
前座戦線を漂い、あげくには視線まで漂い、言い知れぬ艱難をなめた」
「ところが一旦幸慶の機会熟し、高山善広なる者と不知恐軍結成し、さらに野生魂なる敬称を獲得し、
あるときには垣原某なる総格崩れの流浪人にいわれなき蹴撃を受け醜態をさらし、
あるときには剛腕大魔王なる者の理不尽なる怒りを我が額にて受け止め血達磨となるも、
団体のために命を失うを省みなかった」
「しかるにいまや愁い深く、野生魂、切である。いまは斧爆弾の御助による以外愁訴の道なし」などと
措辞はめんめんと続いていく。

116 名前:『義経』よりB[sage] 投稿日:2005/09/19(月) 15:17:39 ID:en19VkoG
仲田はこの書状を受け取ったが、三沢のうたがいを恐れて封を切らず、そのまま三沢の前に出て奉った。
三沢は「部長、読んで」とそれを許した。仲田はわずかに膝を進め、声が報道陣に漏れることを
恐れつつ小声で音読をすすめた。
三沢は聴きつつ、わずかにも眉毛を動かすことを怖れた。もしその愁訴の名文にうたれ、大森の悲嘆に
同情し歎きの色を見せたならば、仲田はそれを敏感に察し、三沢の心中を思いやり、かの大森に対し
役員として手心を加え、断固たる処置を鈍らせるかもしれなかった。
三沢の怖れは、むしろそれであった。
32前スレより:2005/10/27(木) 23:26:23 ID:Ki8tsmYp
117 名前:『義経』よりC[sage] 投稿日:2005/09/19(月) 15:18:29 ID:en19VkoG
聴き終えると三沢は「咄」と、小さく舌を打った。「まだあの馬鹿は、わかってない」と言うのである。
この書状の終わりの方に大森は自分の世界娯楽競技(WWE)への入団試験について触れている。
それを指している。その文章はいささかも入団試験の事を詫びておらず、詫びるどころか、
「野生魂が世界最大手団体の試験を受けたことは箱舟の面目である。
全家では亡父正平以来の快挙であり、新家にもおらず、これ以上のことがあろうか」と言い放ち
三沢としてはむしろ喜ぶべき、いや、お前は結局墨西哥(メキシコ)しか遠征してねーぢゃねぇか、
小橋や秋山なんて日本限定だもんねー、という優越感を言外に含めている。

118 名前:『義経』よりD[sage] 投稿日:2005/09/19(月) 15:19:06 ID:en19VkoG
「―わからぬ。ついにわからぬ」と三沢は叫びたかったであろう。
ここまで基本理念が異なる以上、一族でも同士でもなく、もはや追放するか、殺すか、どちらかで
なければならぬだろう。
また筆者、光晴の意を汲むとすれば
(俺は会社の事情で呼び戻されたんだっつうの)
(俺も小橋も秋山も、最初からファンがついてて、お前みたいに遠征しても会社に損失を与えない
気楽な立場じゃなかったっつうの)、とも言いたかったのかも知れない。
何れにせよ三沢はそのように思い、大森追放についての最後的決意を、むしろこの書状によって固めた。
33前スレより:2005/10/27(木) 23:27:32 ID:Ki8tsmYp
134 名前:四面楚歌 其の1[] 投稿日:2005/09/29(木) 20:09:02 ID:0nOQ6nm9
永田はとりあえずヒョードルに組み付いてみたが、どうにもならない。
離れて様子を見ようとした瞬間、氷の拳と敬称されるヒョードルの拳が
永田を襲った。
永田はその巨眼を赤くし、それでもなお突き上げてくる恐怖に耐えていたが
やがて巨体を丸くし両の手で後頭部のあたりを抱え小さく声を漏らした。
声には抑揚がついている。激しく、かつ哀しい。

135 名前:四面楚歌 其の2[] 投稿日:2005/09/29(木) 20:19:36 ID:0nOQ6nm9
力は覆し難く(チカラ ハ クツガエシガタク)
気は梁を失う(キ ハ ハリヲウシナウ)
時間一分にして(ジカン イップン二シテ)

と歌った後、後頭部を抱えてる手を固くして不意に主審を見つめた。やがて、

試合止まず(シアイ ヤマズ)

と歌った。

136 名前:四面楚歌 其の3[] 投稿日:2005/09/29(木) 20:30:00 ID:0nOQ6nm9
脳裏にヒョードルの連打が浮かび手も足も出なくなっている自分の姿
が雷光に射照らされるように映じたのにちがいない。永田の目に再び
涙がふきだし寝転がったままヒョードルに背をむけ

試合止まざるを奈何すべき(シアイ ヤマザルヲ イカンスベキ)
主審や主審や勝負を奈可せん(シュシンヤ シュシンヤ ショウブヲ イカンセン)

と歌いおさめた。
34前スレより:2005/10/27(木) 23:28:14 ID:Ki8tsmYp
137 名前:四面楚歌 其の4[] 投稿日:2005/09/29(木) 20:44:27 ID:0nOQ6nm9
力覆難 ペイ 気梁失 ペイ 時間一分 ペイ 試合止 ペイ
勝負 ペイ 可奈何 主審 ペイ 主審 ペイ 奈若何

「ペイ」という間接詞が言葉が切れるごと入っている。ペイは詩の気分
に軽みをつける間接詞ではなく、むしろ作り手の永田が
「ペイ!」
と発声するごとに激情が一気に堰きとめられ次いでつぎの句の感情にむかって
いっそうに発揚する効果をもっている。 

138 名前:四面楚歌 其の5[] 投稿日:2005/09/29(木) 20:54:39 ID:0nOQ6nm9
永田のこの場合のペイは永田がプロレスの試合中に叫ぶ力強いペイではなく
ヒョードルの連打に悲鳴に近いものをあらわしている。最後に主審に対し
その名を呼ぶことに、いちいちペイを投入したのは、この詩が要するに

(この試合などどうでもよい、今は恐怖と悲痛でそれどころではない)

という、ただそれだけのことを、この詩によって言いたかったにちがいない。

139 名前:四面楚歌 其の6[] 投稿日:2005/09/29(木) 21:05:12 ID:0nOQ6nm9
観客みな笑い、能く仰ぎ視るもの莫し、という。
観客は永田のふがいなさが、まるでクラスの隅でいじめられ、うずくまっている
男子生徒のように映り笑ったともいえるが「主審ペイ!主審ぺい!」と称えこまれた
主審にとっては永田が鉾を突き入れるようにして彼ひとりのため語りかけていると受けとったであろう。
つまりは、早く試合を終わらせてほしいということであった。
35『胡蝶の夢』より:2005/10/29(土) 22:18:31 ID:Jd3fPCfd
小橋は休まなければならない。
疲れてしまった。
かれはプロレスリング・ノア設立以来、常にメインイベンターの責務を背負い、
さらには文字どおり万難を排してプロレスリング・ノアの興隆を求めつづけてきた。
たったひとりでGHCヘビー級王者13度防衛という、未曾有の偉業をなしとげただけでなく、
プロレスラーとしても、毎日殺到してくるファンやマスコミにいちいち心を配った。異常なことであった。
これほど身を粉にして働いたプロレスラーはひょっとするとどの国においても類がなかったかも知れない。
「自分がやったことはひとびとからすぐ忘れられるだろう」
と、小橋はかねがね思っていた。小橋は、一プロレスラーにすぎない。一プロレスラーの努力など、
世間はむしろ積極的に忘れようとするものだということを、長期にわたる欠場経験のある小橋はよく知っていた。
たとえその時期に功績が評価されたとしても、いつのまにか他のレスラーの功績にすり替わっている。
36『胡蝶の夢』より:2005/10/29(土) 22:19:30 ID:Jd3fPCfd
ある夜、武道館から帰宅するとき、秋山は小橋を介助するためにつき添って小橋の自宅まで送った。
途中、小橋は「ジュン」とよび、しばらくだまってから上記のことをつぶやくようにしていったことがある。
秋山は驚いてしまった。かれは小橋を尊敬するあまり、このプロレスファンのために
無償の努力をする男がなにか神に近い魂をもつ人のように思え、
ひとびとがその功績を記憶するかどうかという、そういう意味の見返りを期待していないと思いこんでいただけに
小橋の言葉は意外だった。しかし思い直してみると、小橋はただ俺のことなど忘れられるだろう
と感傷的に言っているに過ぎないことがわかってきた。
さらには人間の努力というのは大方そういう処遇を受けるものだし、それでいいのだ。
という一種の哲学を自分自身に言いきかせている気配のようであった。
37『胡蝶の夢』より:2005/10/29(土) 22:21:32 ID:Jd3fPCfd
秋山は数秒黙っているあいだにそれがわかると、
(いま僕はこのひとによる荘厳な一瞬を経験している)
とおもった。ふたたび小橋はジュンの名を呼んだ。
「ジュン、世の中でいちばん愚劣なことは、プロレスを立身の道具にすることだ。
それ以上におろかなことは、プロレスを道具に無用の金儲けをすることだ」
小橋はときに冷徹な面構えを見せ、秋山でさえその精神の内部がうかがえなくなることがあったが
しかしプロレスラーとは武士のようなものだと信じてそれを精神の核にしているあたりが、
うたがいもなく小橋の重要な部分だと、秋山は思っていた。
38お前名無しだろ:2005/10/29(土) 23:06:54 ID:d2axOJll
このスレ的には小橋はネタにし易いんだな
39お前名無しだろ:2005/10/30(日) 02:26:06 ID:x+Vu/YhB
>>35-37
かなり感動した
40お前名無しだろ:2005/10/30(日) 20:35:14 ID:wQqysp1J
【もののふの魂】小橋建太PARTxx【ラストプロレスラー】
41お前名無しだろ:2005/10/30(日) 20:55:06 ID:kCO8SrPx
小橋&秋山はなんのネタでも使えるなw
42お前名無しだろ:2005/10/30(日) 21:15:21 ID:IVjg+VoI
>>35-37
いや、こうまで小橋&秋山にピタリとハマる文章も珍しいよ。
43お前名無しだろ:2005/10/30(日) 21:34:20 ID:prVyG0um
>>42
中西&永田に変えると…('、`)?
44お前名無しだろ:2005/10/31(月) 01:56:39 ID:w33fhrce
>>42
同意。本当に凄いよ。マジで泣けるもん。
石田三成&大谷吉継を小橋&秋山に置き換えて書きたいんだけど、
文才がない・・・_| ̄|○
45お前名無しだろ:2005/10/31(月) 02:57:49 ID:h50MuKQQ
みな、全日本のころのコスチュームを身に着けて、のんきそうな表情をしていた。
ジャイアント馬場が、椅子に腰をおろしている。
ジャンボ鶴田が寝ころんでひじ枕をし、こちらを見ていた。
その横に、南アフリカで航空機事故で死んだ園田が、あいかわらず
ゴリラじみた顔でぼんやりあぐらをかいて天龍を見ている。
ロッキー羽田が、部屋のすみでリングシューズを履き替えていた。
そのほか、何人の同志がいたか。
(どうやら、俺は疲れているらしい)
源一郎は、寝台のふちにい腰をおろして、そう思った。
21世紀に入ってから源一郎はほとんど毎年フリーとして打って出ては、
進出してくる長州や永田をはじめとするWJ・NJ軍をたたきつづけてきた。
不眠の夜が続いた。部屋の中にいる幻影はそのせいだろうと思った。
46お前名無しだろ:2005/10/31(月) 22:05:02 ID:eb6lrXPy
プ板住民は司馬さんの著書で何が一番好きなんですか?
47お前名無しだろ:2005/10/31(月) 22:42:20 ID:w33fhrce
>>46
関ヶ原。石田三成ヲタだから。次に、項羽と劉邦。
48お前名無しだろ:2005/11/01(火) 00:42:10 ID:HcWxxqPX
>>46
「局長に惚れ込んでいる」
などと言ったら厨房と見なされるであろうから、沈黙を守っていた。
今、素直になってとても心地良い。


49お前名無しだろ:2005/11/01(火) 08:44:55 ID:rGKUT9Mi
>>46
峠。
「人間の命なんざ、使うときに使わねば意味がない」
50お前名無しだろ:2005/11/01(火) 20:06:34 ID:9JBO1f7L
>>46
坂の上の雲
51お前名無しだろ:2005/11/01(火) 21:44:31 ID:nQmOJz3d
中学生の時に読んだ燃えよ剣が一番印象に残ってる
52お前名無しだろ:2005/11/02(水) 00:15:27 ID:dP7n5fvX
前のdat落ちした分のログ残っているけど貼る?
53お前名無しだろ:2005/11/02(水) 09:31:58 ID:3AnMb353
>>52
ツール用のログデータなら、貼らないでうpしたほうが変にスレを消費しないでいいと思う
54お前名無しだろ:2005/11/04(金) 00:42:22 ID:rx2yIzjk
閑話休題。このスレって登場するレスラーの魅力を際だたせ、
作品の雰囲気を壊さないプ板史上屈指の名スレだと思うのだが、
哀しいかな、レベルが高すぎて書き込みが少なくなりdat落ちしてしまう。

なので、書き込みを増やすためにも吉川英治とか他の人の作品を使いたいと思う自分と
それは雰囲気を壊すから駄目かなと思う自分がいる。
55お前名無しだろ:2005/11/05(土) 01:33:27 ID:6krCfUJK
>>54
俺は歓迎するぜ。
56お前名無しだろ:2005/11/05(土) 11:37:47 ID:Zp408Z1U
>>54
俺も歓迎
前スレでも山田風太郎とかあったし
57燃えよ剣 より:2005/11/05(土) 12:17:41 ID:fLyxhbZn
燃えよ剛腕


その夜、亡霊を見た。
11月2日、五つ、晴夜だった。小橋は戦闘からもどって、有明本営の自室にいた。
ふと気配に気づき、寝台から降りた。眼を凝らして、彼らを見た。
目の前に、人がいる。一人や二人ではない、群れていた。
「プロレスラーに怨霊なし」
と古来いわれている。小橋もそう信じてきた。
が、いまこの部屋の中に居る。亡霊たちは、椅子に腰をかけたり、床にあぐらをかいたり、
寝そべったりしていた。
みな、リングでの衣装を着け、のんきそうな表情をしていた。
ジャイアント馬場が椅子に腰をおろしている。
ジャンボ鶴田が寝転んでひじ枕をし、こちらを見ていた。その横に、癌で死んだ冬木弘道が、
あいかわらず理不尽大王な顔でぼんやりあぐらをかいて小橋を見ている。
オブライトが部屋の隅でスクワットをしていた。その他、何人の同志がいたか。
58燃えよ剣 より:2005/11/05(土) 12:18:17 ID:fLyxhbZn
(どうやらオレは疲れているらしい)
小橋は、寝台のふちに腰をおろして、そう思った。今年に入ってから小橋は国内だけでなく欧米にうってでていた。
不眠の夜が続いていた。部屋の中にいる幻影はそのせいだろうと思った。
「どうしたんですか」
小橋は、馬場にいった。
馬場は無言で笑った。小橋は鶴田のほうに眼をやった。
「鶴田さん、あいかわらず体調がすぐれないようですね」
「疲れているからな」
と鶴田はいった。
「あなたも疲れているんですか」
小橋が驚くと、橋本は沈黙した。灯明かりがとどかないが、微笑している様子である。
みな、疲れている、小橋は思った。
思えば、ここ数年、新日本プロレス一派がなお怠惰な生活を送っているとき、崩れ行くプロレスという
大屋台の「威信」をここにいるプロレスラーや箱舟組の手で支えてきた。
それが、歴史にどれほどの役に立ったかは、いまとなっては小橋もよくわからない。
しかし、彼らは疲れた。亡魂となっても疲れは残るものらしい。
小橋はそんなことをぼんやり考えている
59燃えよ剣 より:2005/11/05(土) 12:19:06 ID:fLyxhbZn
「小橋、あす、プロレスの砦が落ちるよ」
馬場は、初めて口を開き、そんな、予言とも、忠告ともつかぬ口ぶりでいった。
小橋はこの予言に驚倒すべきであったが、もう事態に驚くほどのみずみずしさがなくなっている。
疲れて、心がからからにかれはててしまっているようだ。
「墜ちますか」
と、にぶい表表でいった。馬場がうなづき、
「ハッスルが芸能人をつかってプロレスごっこをする。マスコミは物珍しさからワイドショーなどで
取り上げるだろう。プロレスマスコミやコアなプロレスファンはもともと世間に対してコンプレックスがあるので、
それだけで持ちこたえられないで、褒めそやすだろう。
シュートを超えたものがプロレスであるはずなのにな・・・・・・・」

寝返りをうって、寝台の上に起き上がった。ローブ、ブーツのまま、まどろんでいたようであった。
(夢か。−−−)
小橋は寝台をおりて部屋をうろうろ歩いた。
確かにたったいま、馬場が座っていた椅子がある。さらに鶴田が寝そべっていた床のあたりに小橋はしゃがんだ。
ゆかをなでた。
妙に、人肌の温かみが残っている。
(鶴田さん、ここに来たんだな)
小橋はそこへ、ごろりと寝そべってみた。
60燃えよ剣より(1):2005/11/05(土) 13:37:45 ID:KXuSpUxa
「練習が機微しすぎはしまいか」
取締役である田上明が三沢に助言したとき、建太は白い眼で田上を見た。
「田上さん」
といった。
「田上さんとも思えぬ。ノアを弱くしたいのですかね」
「たれがそう申した」
田上は気色ばんだが、建太はニコリともせず
「私の耳にはそう聞こえる」と、静かに応じた。
練習バカだ、と田上は腹の底が煮えくりかえるような思いであったろう。
61燃えよ剣より(2) :2005/11/05(土) 13:38:44 ID:KXuSpUxa
「田上さん、私はね、日本中のプロレスラーは皆腰抜けだと思っている。
 プロレスラー、プロレスラーといっても威張れたもんじゃねえという現場を、
 この目で何度も見てきた。月給制とマニア受けすればいいという泰平が
 そうさせたのだろう。が、ノアだけはそうはさせぬ。真のプロレスラーに仕立て上げる」
「真のプロレスラーとは、どういうものです」
「いまのプロレスラーじゃない、昔の」
「昔の?」
「日本プロレスとか、NWA全盛の頃の王者とか、まあうまくいえないが、そういうものです。」
62燃えよ剣より(3):2005/11/05(土) 13:44:31 ID:KXuSpUxa
「小橋は存外無邪気であられる」
子供っぽい、と吐き捨てたかったのだろう。
そのかわり、田上は頬にあらわな嘲笑を浮かべた。
建太は、その顔をじっと見ている。
かつて、永田裕志と「プロレス道論議」をしたとき、
永田の頬に浮かんだのと同質の嘲笑が田上の頬に張り付いている。

ーサラリーマンあがりめが。

事実、田上はそんな気持ちだった。
しかし、建太の心底にも叫びだしたいものがある。
理想とは、本来子供っぽいものではないか。
63お前名無しだろ:2005/11/05(土) 14:45:57 ID:U3XcNFo2
誤植が多いのも仕様である
64燃えよ剣より:2005/11/07(月) 01:13:57 ID:etZ4xWnw
(おれはどこか、片輪の人間のようだ。生涯おそらく愛されはしないだろう)
と思った。
(人並みなことは考えぬことさ。もともとファンに薄情な男なのだ。
 ファンのほうもそれが分かっている。こういう選手に惚れる馬鹿が、どこの世界にあるもんか。)
しかし俺にはプロレスがある。NOAHがある。コバさんがいる、
としきりに自分に云いきかせていた
(それだけで十分、手ごたえのあるレスラー人生が送れるのではないか。わかったか、準)
65お前名無しだろ:2005/11/07(月) 20:23:45 ID:s2AvYq1L
「龍さま、今度の米国遠征に、清隆が加わることをお許しなされたとのこと、
まことでござりますか」
建太の声は。明らかに不満の響きをもっていた。
「ゆるせ、ごんぐとの密約なのだ」
健太の声が、キッと高くなって、
「万一、清隆が前回のようにびざとかで又妨害したならば、龍さま、何となさいます、
わたくしは嫌でございます、あんな鼻のつぶれた、醜く太った、ガマのような男」
「はは、わしもまさか清隆に独占取材させるとは云わぬ。それにいよいよとなれば
清隆にはちけっとお持ちですかとか云って、会場入りを阻止するすべもある。心配致すな」
盗聴器で聞いている、清隆のからだが激しくふるえ、喉の奥がゲロゲロっと鳴った。
鼻が横に広いのも、足が短いのも、醜く太っているのも。まさに言われた通りである。
あらゆる人から陰口をきかれたし、2ちゃんに至るや氏ねと言わんばかりに酷く非難された。

が、それが今後の米びつとして期待した建太から言われたとなると、屈辱の思いは
腸に突き刺さり、肉を引き裂き、魂をえぐった。
そして清隆は禁断の業、2ちゃんねるののあすれへの悪意の篭った書き込みを再開した。
66お前名無しだろ:2005/11/09(水) 13:46:27 ID:zMS5Oo64
保守
67お前名無しだろ:2005/11/09(水) 23:37:27 ID:b62VJcV7
>>65
清隆ってだれ?
68お前名無しだろ:2005/11/10(木) 00:59:48 ID:/yv59FdK
>>67
ジミー鈴木
69お前名無しだろ:2005/11/10(木) 20:29:28 ID:vK0UIMU/
保守
70お前名無しだろ:2005/11/11(金) 10:08:47 ID:CBPoCEdd
話は続く
71お前名無しだろ:2005/11/13(日) 09:59:01 ID:hEO2r1bQ
天山は心持ち頭を伏せ、身をかがめ、腹をかばうようにして小島の攻撃に耐えている。
この男には、小さな不幸がおとずれていた。
脱水である。
72お前名無しだろ:2005/11/13(日) 13:57:36 ID:mqiVhlVS
書籍化すべきスレ、とはあるいはこのスレのことだったのではあるまいか。
73お前名無しだろ:2005/11/13(日) 15:28:52 ID:zaOttYPq
どうやらこのスレは下がっているらしい。
74新撰組血風録より@:2005/11/14(月) 01:53:16 ID:VnnJ6Eh4
「士道不覚悟」と、三沢は、秋山に言った。事件があって数日後のことである。
「そうですか…」 秋山は、視線を落した。士道不覚悟、とはもはや批評ではない。
箱舟組の紀律における最大の罰則であった。
追放・断絶・出入禁止、いずれかの処置が、この該当者に待っている。
「どうだ」「ふむ―」 秋山は思案している。彼の救済法を考えているのではなかった。
不覚悟、と断定された瞬間から、大森隆男は、箱舟組隊士であることから消えている。
あとはその無縁の人間を、たれに処分させるかであった。
75新撰組血風録よりA:2005/11/14(月) 01:54:46 ID:VnnJ6Eh4
「高山さん」と、秋山は応接室に高山善廣を呼んだ。
「貴方の隊に、怯懦の者がいる。捨てておけば団体が腐る」
「たれかな?」 高山は、無論わかっている。が高山にも移籍やフリー宣言した過去がある。
人間、隣の芝生は赤く見えるものなのだ、ということを、この男は理解している。
できることなら、大森隆男を救けてやりたかった。
「高山さん、わからないか」「…………」
「あんたほどの人だ。わかっていると思っていたが、わからなければそれでいい。
 恐不知軍の士道不覚悟、これは不問に付しておく」
76新撰組血風録よりB:2005/11/14(月) 01:56:13 ID:VnnJ6Eh4
「準、よくねぇよ、言い方が」
高山は当惑したように立ち上がった。秋山の言い方では、わからぬ、と言えば、高山自身が
大森と同様の不覚悟、ということになるではないか。
「大森は、俺が始末する」
「わかってくれて、ありがたい。特にあんたを討手に選んだ意味もわかってくれていると思うが」
「ふむ」 高山は退出した。自分を討手に選んだのは、大森の二の舞を演じるな、という
意味だろう。秋山はかつて言ったことがある。
「ノアがある。ノアには小橋建太がいる。だからノアは最高である」
ノアに逆らうことは、小橋建太に逆らうこと。小橋に逆らう人間は許さない、という意味だろう。
77新撰組血風録よりC:2005/11/14(月) 01:57:28 ID:VnnJ6Eh4
「巡察に出る」と高山は、恐不知軍の控室に戻って、言った。
「同行は、大森隆男君。浅子覚君」
「はっ」 浅子覚が立ち上がった。すでに、高山から意を含められている。大森も立ち上がった。
九段下を登り館内を抜けてから、高山ははじめて、大森に声をかけた。
「入り給え」 薄暮である。鳥居を抜け左へ突ききれば、玉葱状の建物を通り越し、人気の無い
公園へ通じている。この刻限、人影の絶えることを高山は知っていた。
やがて、公園の中に、三人は立った。
78新撰組血風録よりD:2005/11/14(月) 01:59:06 ID:VnnJ6Eh4
「大森君、君もレスラーだ。きょうの巡察がどういう用であるか、薄々わかっていると思う。構え給え」
大森は、はっ、と右腕を直角に曲げた。目が泳いだ。泳いだまま、高山の鋭角な膝が鳩尾に食い込んだ。
大森は、どうと倒れた。が、浅い。なお意識があった。
思った。すべては、この武道館での三冠戦に憧れたことからはじまったのだ、と。
「浅子君、とどめを」
浅子覚のタイツが食い込んだ尻部が、目前に現れた。
仰臥しながら大森は、眼を見張り、その尻の切先が近づいてくるのを見た。
やがて、それが顔面に吸い込まれ、すべてが終わった。
79お前名無しだろ:2005/11/14(月) 23:04:44 ID:ulx+HlVe
「妙だな」
「何がです?」
(何がとは笑止なことだ。>>74-78の秀逸さを目の当たりにして…)
「いや、何でもないのだよ」
そう言ってsageの文字を消していた。



80お前名無しだろ:2005/11/14(月) 23:07:48 ID:ZN8Ly8ck
胡沙笛を吹く武士か、なかなかマニアックだな
81お前名無しだろ:2005/11/15(火) 14:55:22 ID:4xCYvMRc
>>74-78

。・゚・(ノд`)・゚・。
82お前名無しだろ:2005/11/15(火) 15:20:00 ID:0RdmRyJZ
司馬スレ復活してたのかw
>>34いつ
83お前名無しだろ:2005/11/15(火) 15:20:42 ID:0RdmRyJZ
司馬スレ復活してたのかw
>>34いつ読んでも笑いが止まらんw
84お前名無しだろ:2005/11/16(水) 21:45:51 ID:x46Ufbco
新撰組血風録買った。
我慢できず>>74-78から読んでしもうた。
85追悼として@:2005/11/17(木) 02:37:38 ID:EvMiHHG8
筆者は、エディ・ゲレロというレスラーとしては小柄の部類に入る
陽気なメヒコのお調子者を延々と描いてきた。
今あらためて振り返って、このレスラーを書くに至ったのは、エディの持っている
ある種の不思議な面にふれたかったからだ、と自分で自分を弁解している。
その奇妙さの中でもっとも奇妙に思われるのは、デビューした段階でジュニアではなく
自分がヘビー級のトップに立つことをくっきりと予感していたことであった。
86追悼として@:2005/11/17(木) 02:39:16 ID:EvMiHHG8
彼はアメリカ人ではないので、全盛期のハルク・ホーガンの予備知識は殆ど無く
ホーガンが『nWo』のTシャツを着けて現れてからこの人物を知った。

ホーガンは同世代の人々をすべて魅了した一大思想的人格、つまりはカリスマと
言ってよいが、エディ・ゲレロにかぎってはホーガンの電磁力には不導体であった。ブラザー。
(この男は、プロレスや観客より、自分自身が大事にちがいない)と、エディは一見して
見抜いた形跡があり、それがひるがえって考えるとエディの歴史的役割でもあった。
87追悼としてB:2005/11/17(木) 02:40:44 ID:EvMiHHG8
エディはホーガンが全盛期を築いた時代のプロレスとはほぼ無縁で、変革期に突如出現した。
彼が成すべきことは、観客主体型のエンターテーメントとしてのプロレスを、緻密かつ高品質に
仕立て上げ、それを世界中に普及する仕事であり、もし『ズルして、いただき』というキャラクターが
観客を心底楽しませるものであるならば(エディはそう信じていた)、世界中の乾いた人々の心
― 言い換えるならば津々浦々の枯木に、笑顔という花を咲かせてまわる役目であった。

中国では花咲爺のことを花神という。
ラティーノ・ヒートは、プロレス界の『花神』のしごとを背負った。



故人の御冥福と、御遺族の方々の御健康を心よりお祈り申し上げます。 Viva La RaZa!!
88お前名無しだろ:2005/11/17(木) 11:55:08 ID:3/Mfgd1M
>>85-87
イイ・・・・・・!
いいよ!
89お前名無しだろ:2005/11/17(木) 19:06:46 ID:ohM8DRck
う〜む、司馬スレの本領発揮、すごい
90お前名無しだろ:2005/11/19(土) 08:32:12 ID:m0TtdKK3
>>85-87
元ネタってなんなんだろう?
91お前名無しだろ:2005/11/19(土) 10:21:57 ID:NGkRcjWF
最後の方にある「花神」じゃないの?
92お前名無しだろ:2005/11/19(土) 14:50:29 ID:K4WUpmhE
山田風太郎の「人間臨終図鑑」っぽいのおねがいします。
93お前名無しだろ:2005/11/20(日) 23:08:10 ID:lSjwnN4R
名スレ保存age
94「巨いなる企て」:2005/11/21(月) 22:35:44 ID:CUtMZbu2
<こんなことなら、バーニングに与してやればよかった…>
という気がする。同時にまた、
<やっぱり小橋さんは俺より心が真っ直ぐだ…>
とも思う。先輩に対する心地よい敗北感だ。だが、その半面では
<あの人は、この真っ直ぐさのために身を滅ぼすに違いない…>
という予感が湧いてくる。それがまた、妙に甘美でさえある。
<その時こそ、俺はあの人の側にいてやろう…>
という感傷が生まれるのだ。
この日から秋山準は病身をノアに置きつつも、この感傷にひたり続けた。
そしてその通りことを果たしてプロレス界を去るのである。
95お前名無しだろ:2005/11/23(水) 00:14:10 ID:Ua/EUKKj
 
96お前名無しだろ:2005/11/23(水) 17:56:33 ID:SuCbH1KM
保守しておこうか
97お前名無しだろ:2005/11/24(木) 12:11:34 ID:nVDSRbjHO
保守である
98お前名無しだろ:2005/11/25(金) 12:45:55 ID:NTE5Jvy/O
age
99お前名無しだろ:2005/11/25(金) 20:18:18 ID:eCp3UmKY0
皆さん下書きした後に推敲されてるんですよね?
思いつきで国取り物語で書いてみたのですがクオリティが低くて・・・
100お前名無しだろ:2005/11/25(金) 21:35:12 ID:wa5rd3btP
>>99に期待age

ついでに100ゲト⊂(゚д゚⊂~⌒⊃
101新史太閤記@:2005/11/26(土) 05:03:54 ID:5DEk8JRgO
やがて三沢は、泣きやんだ。そのとき秋山はわずかに膝をすすめた。
「ボス、おなげきはさることながら」
と、小声でいった。
「ボスが会社をとられる千載一遇の好機が到来したとも申せましょう。元子どのに一戦をいどみ、正平さまの仇を討ち奉ると号すればレスラーを糾合できまする。はや、事をいそがれませ」
102新史太閤記A:2005/11/26(土) 05:11:17 ID:5DEk8JRgO
この一言は、秋山準の生涯をあやまったといっていい。秋山は智がありすぎ、その智を若さが、つい誇り顔に舌の端にのせてしまった。智はときに深く秘せられねばならない。
が、秋山はつい言った。言わずとも事態の本質はそうであった。三沢も当然そのことをありありと気づいている。が、針の尖ほどもこの場合口に出してはならぬ。
103新史太閤記B:2005/11/26(土) 05:19:16 ID:5DEk8JRgO
(この男の智、怖るべし)
という見方を、三沢はあらためて秋山に対してもち、おそれた。三沢はその創業の時代において秋山の功に多くを負っていながらノアを得てからは平社員の位置にしかとどめなかったのは秋山にこの怖れを感じたからであった。
104新史太閤記C(ラスト):2005/11/26(土) 05:28:47 ID:5DEk8JRgO
後年、三沢はノアを得たあと、ある夜、若手をあつめて飲み会―かれは合コンがすきであった―をしたとき、若手のひとりが、
―なにゆえにあの大功のぬしの秋山どのを、あのように過少な給与にとどめおかれまする。
ときくとこの男は大いに笑い、
「あの準に役員待遇もあたえてみろ。ノアをとってしまう」
といったことがある。
105お前名無しだろ:2005/11/26(土) 08:47:56 ID:D+NBf9IR0
>>101-104
ノアヲタだけどいまいちピンと来ないな。
106お前名無しだろ:2005/11/26(土) 21:27:07 ID:8KHyX+Y20
保守である
107お前名無しだろ:2005/11/28(月) 14:16:11 ID:dDyMsix9O
良スレだけにレスするに難しいである。
保守。
108お前名無しだろ:2005/11/28(月) 15:26:03 ID:FeYBjDVo0
ストロングスタイルが商売上の宣伝文句であり、また猪木自身が馬場との
差別化を図るための思想であるなどといういきさつ論は、新日本プロレス
というもののプロレス界での重さを考える上で、さほどの意味をもたない。
ストロングスタイルは新日本プロレス最大の誇りであった。しかしそれが
健康だったのは、総合格闘技の登場までにすぎなかった。猪木が悪いという
以上に、団体もプヲタも、プロレス(ストロングスタイル)を守る上で
不熟だったということだろう。
109お前名無しだろ:2005/11/29(火) 18:48:56 ID:dR45Go9e0
最強論は、レスラーにとって水か空気のようである場合はいいが、
異種格闘技戦というもっとも悪質なリングで実践されるとき、
プロレスは簡単に八百長になる。

その点、全日本プロレスは王道、中庸、中途はんぱという立場でいつづけていたため、
自分を総合格闘技と比較せずに済む。
110お前名無しだろ:2005/11/29(火) 22:46:03 ID:VgOepAIW0
「ageる」
とは、いわない。
111お前名無しだろ:2005/11/29(火) 23:56:39 ID:YQa3cIYQ0
>>110
三成?
112お前名無しだろ:2005/11/30(水) 00:49:08 ID:k9+jV/5f0
UWFはいうまでもなく新日系の格闘技スタイル族によるプロレス団体である。
UWF史の新生UからUインターにかけての最強アピールは輝くようで
(プロレス側でも格闘技側でもいまなおUWFは正当に評価されていないが)
とくにプロレスラー最強論をひろめたという点では史上もっとも充実した団体だった。
ただ末期にはぼろきれのようになった。














113お前名無しだろ:2005/11/30(水) 01:44:49 ID:Mfiv6aoH0
ただ一言「保守。」
114お前名無しだろ:2005/11/30(水) 20:52:23 ID:IAA1FrN70
ストロングスタイルがプロレスを大きく変えたことは、プラスにも
マイナスにも評価できる。
なによりも大きな進歩は、それまでのように単なる大男たちの見世物という
偏見が薄まり、格闘の攻防を楽しむという概念を生み出したことにある。
115お前名無しだろ:2005/11/30(水) 22:19:31 ID:k9+jV/5f0
佐山サトルのシューティング(現修斗)もストロングスタイルの亜種といえる。
それまでのストロングスタイルは、いわば型にすぎなかったが、佐山は、競技としての
試合を通じてはじめて(プロレス出身者として)最強の本質にせまった。
本質を説くなど、当時のプロレス及び格闘技界でにわかに可能なはずはなかった。
まことに悪戦苦闘というべく、自然、意味のわからない発言もあるが、そういう
傷の多さこそ草創者の名誉といっていい。

116お前名無しだろ:2005/12/01(木) 00:23:02 ID:/NjDjCfy0
保守である
117お前名無しだろ:2005/12/01(木) 00:51:15 ID:jVsqSCBm0
まことに「sage」というほかない。
118お前名無しだろ:2005/12/01(木) 06:47:16 ID:9Isn2WAaP
sageが、過ぎた。
119お前名無しだろ:2005/12/01(木) 13:20:52 ID:GOe9gDaZ0
さらに「sage」、つづく。
120お前名無しだろ:2005/12/01(木) 22:03:24 ID:jVsqSCBm0
「いったい、プロレスの今の低迷の正体は何なのか」ということを、
この人物は生涯考えつづけた。源一郎は力士の出であった。若くして前頭筆頭
だったから、彼は力士としても筋目の出だったといっていい。
彼は全日道場で育ったから、プロレスラーの出来る事、出来ない事をよく知っていた。
ただし後半生、諸国を歩き、やがて箱舟に居をさだめた。
「箱舟から獅子の御紋をながめると、いっそうくっきりとわかる」
といったりした。視点をさまざまに変えるのが、源一郎の思考癖だった。
121お前名無しだろ:2005/12/03(土) 12:49:56 ID:x465pyMRP
保守
122お前名無しだろ:2005/12/04(日) 00:42:52 ID:ZC2CNu4M0
保守である
123お前名無しだろ:2005/12/05(月) 08:15:52 ID:8rtSq2ZM0
余談だが、あげておく。
124お前名無しだろ:2005/12/06(火) 08:19:26 ID:KA2R6a4t0
このスレ続く。
125幕末(文春文庫)あとがき:2005/12/06(火) 12:53:10 ID:qM04y6qv0
WJだけは勘弁してください
と云い云い、ちょうど一年、数百枚にわたって書いてしまった
ど真ん中の定義は「何らかの暗示、または警告も発せず、突如興行を中止し、または4番バッターを集めて塩試合をすること」をいう。プロレスの風上にもおけぬ
とおもう感情は、私のように太平の世に遇会して「WJのてめに癒着マンセーせねばならぬ」GK的必要のいささかもない書斎人のねごとであろう
プロレスはときに、愚を欲した
このましくないが、ど真ん中も、その会場に現れたひろしも、ともにわれわれの歴史的遺産である
そういう眼で、WJにおこったネタをみなおしてみた。そして語った。しかしながら、小説風に

なぜ「小説風に」書いたかといえば、WJのど真ん中は、塩現象である。塩試合から出てきている。主人公はあくまで塩レスラーであって、
WJを書くばあいならその塩試合とひろしに紙数の九割ついやさねればならぬであろう
が、それは、塩に興味のない読者にとっては、週遅れのゴングのGKコラムを読むよりも無味乾燥である
なるべくそれを端折り、レスラーと事件にはなしの中心をおろした。癒着記事ではないから、数説ある事柄は、
筆者が、このほうがよりマグマを語りやすいと思う説をとり、それによって書いた。だから、小説である
126翔ぶが如く:2005/12/06(火) 19:58:13 ID:vu0XC/2z0
ライガーは、ただ1人リングにある。
すでにこの新日本のリングの前面をまもっていた棚中の陣は破られ、全日勢が
エプロンサイドまで来てリングに上がろうとしていた。
ライガーの手足は、間断なく動いた。目の早いこの男は、敵がリングに上がるべく
エプロンに立とうとすると浴びせ蹴りや掌打を放ち、撃退した。一発放つごとに、
「あたった」
とばかりに両手を掲げて喜び、外れると地団太踏んでくやしがった。その姿はあたかも
インドの武神像のようであり、外敵軍は、前面に立ちふさがっているライガー
ひとりのために撃退されていた。
ライガーの奮戦のすさまじさというのは、かれのレスラー人生を象徴するものであったし、
同時に、よかれあしかれ彼によっておこり、かれによってこういう結末になった
プロレス・格闘技大戦争そのものを象徴しているようでもあった。かれのこの
異常な戦いぶりというのはたしかに意識してなにごとかを形而上化しようと
しているようでもあったし、あるいは35年の新日本プロレスの最後をこういう
かたちで昇華してやろうというものであったかもしれない。
もっとも勇敢なK-1戦士数人がリングの後方にせまり、そのうち1人が、ライガーの
背後にまわってハイキックを見舞おうとした。その戦士はこの全身マスクマンが、
かつて「リバプールの風になる」と言い残して消息をたった山田恵一であるとは
知らなかったのであろう(…というか…)。
ライガーはその戦士とむきあい、あすなろスープレックスで放り投げた。
そのあとふたたび立ち上がってリング中央に戻ったライガーに対し、前面の
プライド戦士が至近から右ストレートを見舞った。拳はライガーのひたいの真中を
つらぬき、ライガーはリング下へまっさかさまに落ちた。

ともかくも猪木らの勇退の上に坂口が折りかさなるように勇退し、蝶野もまたあとを
追うように去り、新日本プロレスにおける35年間のなにごとかが終息した。
127お前名無しだろ:2005/12/07(水) 12:04:55 ID:ZRI9YEQWP
>かつて「リバプールの風になる」と言い残して
>消息をたった山田恵一であるとは

噴いたwww
128お前名無しだろ:2005/12/08(木) 23:43:18 ID:Pgfxy69F0
おおげさに言えば、世界史的なsageであった。
129お前名無しだろ:2005/12/11(日) 00:44:27 ID:F8XFeTTj0
「小橋、どこへ行くんだよう」
と声をかけられたが、黙っていた。
まさか年越し特訓をしにゆく、とはいえないだろう。
130サトーマサシです:2005/12/11(日) 11:42:05 ID:HZw/kBXW0
燃えよ剣、か
131お前名無しだろ:2005/12/11(日) 12:56:06 ID:4nPO7Xfh0
良スレとはかくあるべきであろう。
保存ageすることに筆者はいささかの躊躇いもない。
132お前名無しだろ:2005/12/12(月) 09:35:02 ID:hJjZzb+z0
主人公が小橋に偏っちゃうんだなぁ
133お前名無しだろ:2005/12/12(月) 09:41:24 ID:UWDnvPg30
小橋って、現代人ぽくないから司馬ネタに似合うのかなあ?
134お前名無しだろ:2005/12/12(月) 12:26:41 ID:n8bpZ4QA0
スレ的には中嶋君とかも向いてそうな気がするんだが。
135お前名無しだろ:2005/12/12(月) 18:10:15 ID:cmV539Oq0
スラムダンクスレで妙に田上がはまってたりしてるんで、
以外な人物が適役になるかも。
136さらに小橋ネタをつづける:2005/12/12(月) 18:33:06 ID:VqCeSv0q0
(ヴァル・ビーナス)
「古来、この世界でプロレスのために死のうとした者がひとりでもいたか。
コバシをもってそういうプロレスラーの最初の人物とする。
英雄か非英雄かなどを、かれにおいて論ずるのは愚だ。
かれは”バーニング”ということにおいて、人間ばなれのした人物であり、かれみずからの志もそこにある。
かれは日夜心胆を練って人間ばなれしようとしている。まずはコバシのプロレスを見よ」

といって、小橋の試合を編集したビデオを二つ三つもってきて、彼に見せた。
彼はこのころマイクパフォーマンスに熱中しており、
その天分はHBKをしのぐものがあったが、この時期はまだ習得中でさほどでもない。
彼は小橋のプロレスを見て、そのあおみがかったすがすがしさにおどろいたが、
しかしいますこし観客をたぶらかす技巧(パフォーマンス)があってもいいと思った。
そのことをヴァルにいうと、ヴァルは大喝した。

ー儒子(小僧)、ナニカ知ル

小僧に何がわかるか、といった。
プロレスは志なのだ。志もないのに志を偽造し、その偽志をさらに装飾で飾ろうとするのは
職業プロレスラーのすることだ。コバシのプロレスは、コバシの心胆の、もだえ、ふるえ、あつさ、
そのものが志に凝ってここにある。よくみろ、とヴァルは声をふるわせていった。

ー自分はあやうく気をうしないそうになった。

と○○はあとでいう。
自分と同じアメリカ人にここまで言わせる人物が、自分と同じ世界にいたのかという、
これは恐怖に似たようなおどろきであった。
137お前名無しだろ:2005/12/12(月) 20:02:03 ID:glEtm6B20
司馬のは若者向けの歴史小説だからね。
だから「青春」なレスラーがよくはまる。
「藤沢周平風に・・・」のスレがあったとしたら、小橋はこんなにははまらないだろう。
138城塞:2005/12/12(月) 22:10:50 ID:XiONp2A20
元子にあっては、あらゆる事象はすべて
自分のなかに固定してしまっている金銭欲を通してしか見ることができない。
ミスタービィのためのみを考えすぎ、それにとらわれ、
それを通してしか事象を見たり判断したり物事を考えたりすることができない。

さらには、これもとらわれのひとつだが、
元子は馬場というものを、よほど尊貴な存在と思い、
揺ぎもなくそうおもっているらしい。
ところが世間はそれほどまでには思わぬようになっている。

馬場の死から七年、プロレス界の権はノアにうつり、
諸団体は三沢を盟主としてあおぎ、
いまでは東京の葦のあいだに、馬場家というものが
残存していることを忘れ去ろうとしている。
139城塞:2005/12/12(月) 22:11:28 ID:XiONp2A20
が、元子とその取り巻きたちの意識群だけは孤立していた――世間から、である。
世界の大巨人ジャイアント馬場はあくまでも天下のぬしで、
その天下を一時、「家来」の三沢に貸してあるにすぎないという解釈が、
すでに宗教的なまでになっていた。

そういう超政治的な感覚世界に元子は住み、そこから人事万般と世情を見ている。
元子は本来良質な頭脳をもっているのであろう。
しかし人間、賢明さというものをうみだすのは
頭脳であるよりもむしろ意識であった。
元子の意識では、世の中のどういうものも正確にとらえることができない。
140お前名無しだろ:2005/12/13(火) 00:27:46 ID:ylvipPem0
>>138-139
そういえば、淀殿と元子嬢ってかぶるなあ。
お見事。
141お前名無しだろ:2005/12/13(火) 02:20:20 ID:KVZ+zokF0
>>136
の元ネタ何だっけ?
確実に読んだ記憶はあるんだけど
142お前名無しだろ:2005/12/13(火) 02:51:26 ID:5IUoVnAP0
>>141
短編集の「馬上少年過ぐ」に収録されてた
「喧嘩草雲」じゃなかったかな?(現在手元にないので確認はできないが)
143お前名無しだろ:2005/12/13(火) 08:23:35 ID:2ANI+D4c0
>>141
「世に棲む日日」です。二巻にあった。
144お前名無しだろ:2005/12/13(火) 14:32:32 ID:eR4xB80D0
大木凡人と勘違いして司馬遼太郎と伊豆で写真を一緒に撮った
うちのばあちゃんが最強のシューター。
145お前名無しだろ:2005/12/13(火) 16:55:34 ID:VHBL8XLR0
>>144
髪の色で分かりそうなもんだが(wj
146お前名無しだろ:2005/12/13(火) 19:31:18 ID:QOVua9J70
>>144
ス、スゴイ・・・
写真とエピソードを語り継いでくれ
147:2005/12/13(火) 20:41:47 ID:sBfF4xrE0
(ブラジリアン柔術など、なかなかの工夫じゃないか)
と佐山は、いかにも不器用者が考えたようなこの工夫に
感心してしまうのである。
しかしプロレスラー達はそれを馬鹿にする。
どうしても自分が練磨しぬいたコスチュームやブックの
技術をすてきれないのである。

(そういう考え方をすてぬかぎり、一事が万事、だめだ)
と佐山は思っている。
マスクをすてることによって、そういうプロレス的な技術主義や
鍛錬主義をすてさせ、格闘家の意識---
格闘技術のみを追求し、それに基づいて興行を行う意識----を
この団体にうえつけ、この団体を日本でもっとも独自な、
先進的な、できれば大道塾なども及ばぬ団体にしたい。

わずか数名の団体であっても(それは、できる)と佐山は思った。
ところが現実の抵抗はどうにもならなかった。
この翌朝、事務所に前田たちがおしかけてきた。
148梟の城:2005/12/13(火) 22:16:16 ID:sBfF4xrE0
 無骨な手ぶりで煙草をすっている男の挙措をながめながら、
 ふと、思いだしたように
「おサムライさまはお強いそうな」
「パチンコでござるか」
「プロレスでございます」
「‥‥‥‥‥‥」
 男は煙草を置いて、その女を見た。
 だまって擬っと見ている。目に驕慢な憤りがのぼっていた。

 自分がプロレスでつよいことは わかりきったことである。
 しかもつねづね金をもらっているこの団体のファンに
 改めてそれを確かめられることに、激しい屈辱をおぼえて
「お女中衆には分からぬことじゃ」
 吐きすてるように言った。
149梟の城:2005/12/13(火) 22:16:46 ID:sBfF4xrE0
「ほほほ、これは済まぬことを申し上げました。なんぞ
 お気にさわられることでありましたらお許しくださいませ」
「なに」
 男の頬に血が上っている。女の笑いを揶揄と受け取ったのである。

「わざのほどを確かめたいと申されるのか。
 べつに今日に来ては公言こそ吐かね。
 日本国のプロレスの本山と言われる新日本の道場では一、二を
 争ったエル・サムライじゃ。
 なるほどベルトは持たぬ。御小に取り上げられたためじゃ。
 わしの腕が団体のたれそれより劣っているわけではござらぬぞ」

「それはもとより。‥いっそあたらしく団体をおこされては」
「そうも考えている」
150お前名無しだろ:2005/12/14(水) 05:39:32 ID:WYKYebU30
サムライさんの団体………激しく見たい
151お前名無しだろ:2005/12/15(木) 22:08:19 ID:aM56pjLD0
>>150
普段はやる気なさそだけど、やるときはやるという
野武士の集まりっぽい団体だな。
152巧妙が辻:2005/12/15(木) 22:43:22 ID:O685VdVp0
松田は岩手の八百屋の惣領で、早くから新日に属していた。
フロントはメキシコへの遠征を命じた時に、
このエル・サムライのマスクを授けたのである。

「受身、神の如し」と言われた人物である。
白皙、痩身、無口で、おなじ東北出身のカシンと同じく
この当時珍しいテクニシャンである。

ただ喫煙家で、たちの悪い咳をたまにする。
そのせいか道場にいる時は平服を着、練習しているところは
たれも見たことが無かった。
試合に出るときは、額に日の丸の記章を冠し、目元は涼しげな
網目状の細工をしたマスクをかぶる。
この姿でゆらりとリングに立つと、会場が粛然とした。

「サムライ、垂直落下式に落つるとも動ぜず」といわれる。
その生涯38歳。自らの手でIWGP Jrのタイトルを得たことは、
ただ一度しかなかったが、試合運びと、受身の巧さで
サムライほどの名人は、当時なかった。
153お前名無しだろ:2005/12/16(金) 08:35:56 ID:KjiYdRSd0
>>152
巧いね、受け身、神の如し」が気に入った。
154お前名無しだろ:2005/12/16(金) 09:12:29 ID:JDRiBjrx0
>>152
IWGPjr戴冠は2回
155お前名無しだろ:2005/12/16(金) 11:37:57 ID:5ap4ZEQD0
燃えよプロレス
156関西人=朝鮮人・まさしです:2005/12/17(土) 13:09:08 ID:9My5n5va0
(1)「捏造なら日本人だってやっている」
(2)「黄教授のすべての業績が捏造だというわけではない。」
(3)「今回の背景には、期待が大きすぎて重荷だった面もあり、同情すべきだ。」
といった趣旨の文言のいずれか一つは朝日新聞の記事に登場することは想像に難くない。

ttp://www.asahi.com/international/update/1216/009.html

>日本も例外ではない。昨年12月には理研で論文データ改ざんが明るみに出て、
>研究リーダーら2人が依願退職した。東京大学では工学系教授らの論文疑惑で
>調査が続く。日本学術会議の調査では、過去5年間に少なくとも113学会で論文
>盗用などの不正行為が問題になっている。
>科学技術文明研究所の米本昌平所長は「黄教授は家畜で同様の研究をしており、
>真っ黒とは思えない。ただ、世界最先端の分野で、国家的な期待を背負って英雄視
>され、ぜひ成果をというプレッシャーはあったろうし、誘惑にもかられやすかったので
>はないか」と同情的に話している。

しかし実際は「いずれか一つ」ではなく、全部登場するのだ。
157お前名無しだろ:2005/12/17(土) 14:50:58 ID:fONzPFUP0
>>156
で、なにか問題が?
158お前名無しだろ:2005/12/18(日) 01:41:48 ID:Jr3cH80E0
>156跳ね満?
159お前名無しだろ:2005/12/18(日) 08:47:09 ID:2rEQK1GYO
age
160お前名無しだろ:2005/12/20(火) 08:43:53 ID:FTDqkQCfP
保守でおじゃる
161お前名無しだろ:2005/12/22(木) 00:55:05 ID:mWm2gfiT0
燃えよプロレス
162お前名無しだろ:2005/12/23(金) 16:07:56 ID:uUhmP24M0
カシン
163お前名無しだろ:2005/12/24(土) 10:35:43 ID:/i4RwoC40
クリスマスと司馬遼ってからめられないだろうか。
164お前名無しだろ:2005/12/25(日) 21:50:04 ID:Ez7zqsKj0
万人坑sage
165お前名無しだろ:2005/12/27(火) 11:35:38 ID:7Hj9lMwn0
燃えよプロレス
166:2005/12/27(火) 12:39:50 ID:jXZITk3g0
「ホセ、明日は御蔵の錠を開いてもらいたい」
 とマスカラスは言った。
「御蔵? なんのことだ」
「家宝のマスクやコスチュームで金になるものは ことごとく
 売ろうと考えている」
 ドスカラスは眼を向いた。先祖伝来の宝物を売るばかがあろうか。

「売って車を買うのだ」
「た、たれに売るのだ」
「高く買う者に。タイツやマスクはマニアがよろこぶから日本まで
 運んで売りたててしまうつもりだ」
「マニアに売るのか」
「売ってもっと新しい車と家具を買うのだ」
「よせ」
 ドスカラスは叫んでしまった。ドスカラスは相当視点の高い
 経綸思想の持ち主だが、しかし、それでもルチャドールで
 ある以上、先祖伝来のマスクやコスチュームをたたき売って
 金にするというところまで飛躍できない。
167お前名無しだろ:2005/12/27(火) 16:50:28 ID:3bkqpg/y0
今日は河井継之助がありますよ
168有隣は悪形にて:2005/12/28(水) 19:39:11 ID:EvKxPyUh0
「高田延彦が立てば、ファンどもが平身低頭するのではないか」
と、UWFの残党たちがみなおもった。使いが走り、高田が宮戸に迎えられた。
かれが一同の歓声をうけた光景は、あたかも救世主だった。
姿こそ冴えなかったが、この男の生涯における唯一の栄光の瞬間であった。
趣旨をきいたとき、高田の顔はみるみる紅潮し
「やるかァ」
と、鉄梃で半鐘をひっぱたいたような声を発したのは、かれの臆病を
彼自身が殴り殺すといった一種の発作で、旗上げはおそろしくもあったが、
それ以上にここ数年鬱積しつづけた鬱懐がやりきれなかったのである。
169お前名無しだろ:2005/12/28(水) 21:00:57 ID:tpV3Qt7W0
た、たれに売るのだw
170お前名無しだろ:2005/12/30(金) 23:42:02 ID:vQfDmfBE0
年末特番があるだろうし保守。
171お前名無しだろ:2006/01/01(日) 00:52:10 ID:XXcwIA790
とりあえず年を越せて良かった。
172お前名無しだろ:2006/01/01(日) 21:13:37 ID:8MUlHZW90
今年もこの稿続く。
173お前名無しだろ:2006/01/03(火) 14:22:30 ID:pATuYo/z0
燃えよプロレス
174お前名無しだろ:2006/01/03(火) 21:03:37 ID:uITf5A7w0
私が学生プロレス出身であることを知ったかれの驚きは、
「お前はプロレスラーではないか。すると、どこでテクニックを学んだのだ」ということであったらしく、つぎの質問が、
「受け身はどこで学びましたか」ということだった。私は、
「老舗団体以外では、プロレスラーというものは学生からなんとなく出てくるものです。インディーはそうです」
ということを言いたかったのだが、私のかぼそい中国語の能力ではすこしも伝わらなかった。
やむなく、「ツイシュウ(自修)」とだけ、いった。
ここに至ってこの良き人は多いにうなずき、「自修」とつぶやいて納得してくれた。いい笑顔だった。
日本ならどういう団体にいけばこんないい笑顔が見られるのかと思った。
175お前名無しだろ:2006/01/05(木) 17:35:55 ID:mlS4Pkad0
旅路エッセイとは気がつかなんだ!
176鳩居堂、最後の講義 1:2006/01/07(土) 13:35:22 ID:5smGwE9U0
道場はせまい。若手レスラーを収容するためにはトレーニング器具をどかし
道場の入り口付近にまで座らせた。
永田の永田の総合格闘技における最終講義は、

「テイクダウンのみを知ってタートルポジションを知らざる者はついに試合にて大怪我す」

という主題のもとにおこなわれた。テイクダウンと永田が発音しているのは
試合時で相手を倒しそのまま打撃や寝技に持ち込む動作であり、永田はこれを
攻撃術と訳している。タートルポジションは護身―永田は防御術と訳していた。
177鳩居堂、最後の講義 2:2006/01/07(土) 13:48:52 ID:5smGwE9U0
それを説明する日本語は、大半、造語せざるをえない。

「対場のさい」

と、永田はいう。対場とは試合時において両者がむかいあった場面という意味らしい。

「防御の術を示すの学にして、怪我ひとつ負わずして苦笑いでリングを降りることができる鉄壁の護身である」

つまり勝てない敵に対しどう処置するかという技術で、このタートルポジションの
権能は各選手の専有するところのものである、という意味であった。

「自分は各位に対し」

と永田はいった。
178鳩居堂、最後の講義 3:2006/01/07(土) 14:03:54 ID:5smGwE9U0
いままでこのテイクダウンからの様々な攻撃術についてくわしく教えて
きたが、しかしタートルポジションといった防御術については、ほとんど
教えなかった。最後にそれを言いたい、とめずらしく熱気をこめて語り
だしたのは、やはり新日本の危機というものが脳裏にあったからであった。
永田に言わせれば自分を含めた第三世代は猪木の景気のいい暴論におどらされて
格闘家に惨敗してきた、ということを今となれば痛切に思っている。
それを若い世代に説き、ヤオなしで試合するのだから怪我だけはするなと説いている。
179最後の将軍 1:2006/01/07(土) 14:27:57 ID:5smGwE9U0
草間は顔をなで、わざと無表情で頷いた。草間自身、自分のこの欠点には気が
つきはじめている。プロレス団体の社長にすればその経営手腕が鋭利すぎるのであろう。
それを口に出さねばよいが、つい没分暁漢(わからずや)に接した時など、鋭く語ってしまう。
それが方々に広まって無用の誤解や敵を作っているのかもしれない。
このあと、草間は立ち上がり革靴の音をかつかつとたてながら永田の待つ部屋に渡った。
永田の用件は無論わかっている。新日本のエースに返り咲くために、さらに三押しも四押しもするつもりであろう。
180最後の将軍 2:2006/01/07(土) 14:45:07 ID:5smGwE9U0
草間は上座に座った。永田は下座にいる。すぐ膝を進め、さっそくでござるがまだ御決意がつきませぬか、
と例の甲高い声音でいった。

「無理です」

こんにちの新日本のエースは、あなたがおやりになっても無理でしょう、
あなたがエースではやってゆけない、と草間は先刻の自分の反省も忘れ
ついつい論理の鋭さを出してしまった。

「なぜ、俺がエースでは無理なんですか?」

「考えてもみよ、あなたの度重なる格闘技戦での失態が客入りに影響している」

と草間はいった、無惨な結果を見せしめた永田の敗北の影響がいまだに続いている。
181最後の将軍 3:2006/01/07(土) 15:01:16 ID:5smGwE9U0
あなたをエースに据えて、格闘技勢力やノアを相手にし、これらから流れこんでくる
新規なものに対処しようというのが無理である。新しい現実には若い力が必要である、
という旨のことをいった。
永田は憤慨した、プロレス界、独特の理論を持ち出して草間を論破しようとした。
つい草間は引き込まれ

「あなたは中邑・棚橋の踏み台になってはいかがだろうか」

と、ひどく危険な事に触れた。あなたは、プロレスでの実績がある、
しかし格闘技戦での失態で危うい立場にあるのも事実である、そこで
あなたには、中邑・棚橋世代の踏み台として世代闘争をしていただきたい。
182最後の将軍 4:2006/01/07(土) 15:14:54 ID:5smGwE9U0
世代闘争をやれば新日本は当分それを軸に展開を繰り広げることができる。
その上、若手も成長し、失墜したあなたの実力も見直されることができる。
これが新日本を立て直す唯一の策である。
永田は応答に承服しかねた。怜悧な永田は草間のいおうとしているところがよくわかる。
世代闘争によって中邑・棚橋世代の若いレスラーに焦点をあてる以外、新日本を救う道が
ないというのであろう。とすれば永田は世代闘争以後、消滅せざるをえない。
(ふざけた事をいう)
と、永田は思った。
183蔵六とイネ:2006/01/07(土) 15:49:47 ID:5smGwE9U0
「棚橋さま」

仁美は思わず叫んでしまった。

「棚橋さまには仁美の気持ちがわかっていただけないのでございますか、せめて後、一分だけお傍にいさせて下さい」

さっき仁美が言ったことの繰り返しである。仁美がサムライでキャスターを
しているのは棚橋にその成果を聴いてもらうためだと言い、さらにこの気持ちを
言い過ぎて言えば、仁美は自分にとって棚橋は半神的存在である、ということを
こめて言ったつもりである。
もっとも「仁美の気持ち」と仁美が言った時は、もはやその意味ではなかった。
もっとなまなましかった。
その証拠に仁美の口中から唾液がすっかりなくなっていた。仁美はそれを恥ずかしく
思うとともに、棚橋がスクーターの鍵を手元で回しながら自分に背中をむけ
壁の時計で時間をかぞえる棚橋の間抜けさ加減に対し刃物で刺したい衝動につきうごかされた。
184お前名無しだろ:2006/01/07(土) 16:01:30 ID:5smGwE9U0
平成維震軍は、最初から明快な意図と組織論があって結成されたものではなかった。
同気相寄っての一種のはぐれ者連中の寄り合いであったように思われる。
185お前名無しだろ:2006/01/07(土) 22:20:39 ID:BhGwqeQ/0
草間が言うことは、もっともだ。
186花神から(1):2006/01/07(土) 22:51:46 ID:BhGwqeQ/0
団体には、においがある。新日のレスラーに共通しているにおいは信念の無さ
であり、たがいに仲間や会社に甘えったれるところがある。派閥や離脱もこの
団体の通弊であった。さらに他団体ときわだって違うところはプロレス関係者達が

「新日のレスラーなのだ、少々の落ち度ぐらいはいいだろう」

とかばうところであった。例えばゴングの金沢のような雑誌編集者としてきわめて
公正な立場にいる人間ですら新日に対しては長年の付き合いを理由にかばいぬいて
きたし長州のような離散集合を繰り返した人間に対しても寛大であった。
187花神から(2):2006/01/07(土) 23:07:14 ID:BhGwqeQ/0
これを美風といえば、このような団体はNOAHや全日本といった団体
にもない。新日のレスラーのほうも――少しぐらいのことなら後は団体が面倒をみてくれる。
という甘えったれがある。レスラーは本来、いっさいの言行を自分の責任
においてやるという論理習慣を建前とする他団体からみれば新日はまるで
信念の無さだけが浮き彫りとなり、これがユークスへの身売り騒動にまで
発展し、プロレス界の盟主から一転して一介のインディー団体の様相を呈するほどに落ちぶれてしまった。
188真説宮本武蔵:2006/01/08(日) 03:52:55 ID:Cc4BYfCy0
 あるとき、小橋は有明の道場に逗留していた。一日、訓練の最中に練習生がきて、申し上げまする、と平服した。
「玄関に小島と申すプロレス修行のレスラーが参り、ぜひお会いくだされるようと願うております」
「かまわぬ。お通し申し上げてください」
 小橋は、いつになく上機嫌だった。小島を下ノ間に座らせ、かれの骨柄、ブリーズライトなどをみて、
「なかなかのお腕と見うける。これほどならば、どの団体に所属し参戦しても苦しゅうはござるまい」
 小島はよろこんで辞しかけたが、ふと小橋は、小島が豪腕継承とかいた腕をもっているのを見とがめた。
「その太い腕はなにかな」
「いやこれは。−−諸団体をまわるうち、ラリアット対決などを望まれたときに用いておりまする」
「ラリアットを」
 小橋は血相を変じて立ちあがり、
「虚仮にもほどがある。ラリアットがいかなるものか見せてくれよう」
 三沢のカニを借り、そのカニの甲羅に飯ツブ一粒をつけ、するすると豪腕をあらわにした。
 一座の者は、動揺した。
「見よ」
 叫ぶなり上段から風を巻いて打ち込み、甲羅の上の飯ツブをぺちゃんこにして、小島にみせた。
「われにはこれができるか」
「で、できませぬ」
「これほどの業があっても、ラリアットは出しがたいものである。ラリアット対決などは容易にせぬものぞ。
 ラリアット対決をのぞむ者があれば、早々に逆水平チョップで切り返すのが、真にプロレスの真髄を
 知ったる者と思え」
189お前名無しだろ:2006/01/09(月) 21:04:04 ID:sKruuzjK0
小橋かっこいい(涙)
190京の剣客(1):2006/01/10(火) 00:01:58 ID:4g2E3hUk0
「先輩、ちかごろどうなされた」
「プロレスがこわくなったのよ」
 猥雑とさえいえるふしぎな微笑をうかべた。顔が、肥満しはじめている。
田上が釣りや、女遊びにおのれを韜晦しはじめたのは、このころからであった。
「力、もはやおれは試合をせぬ。稽古も試合も、そちにまかせる。
 ノアの名をまもるために、そちは死ね」
 酷薄な顔をした。力皇は息をのみ、
「先輩は?」
「おれが死ねようか。田上明はいかなることがあっても生きつづけねばならぬ。
 もし他団体のレスラーに撃ち殺されるようなことがあれば、ベルト、格はおろか、
 ノアがつぶれ、所属選手の屍のうえに、他団体のレスラーの花を咲かせるだけの
 ことになる。稽古もみせぬ。ひとに見られれば、手のうちを教えるようなものゆえ、
 なるべく姿もみせぬ」
 このころから、ノアオタのひとは、
「有明の休火山どの」
 と蔭口をたたいた。酒肉で肥えふとって顔が富士山に似はじめていたのであろう。
191京の剣客(2):2006/01/10(火) 00:03:31 ID:4g2E3hUk0
 後楽園ホールにおける小橋とのタイトルマッチは、力皇の勝ちとなった。
小橋はベルトをはぎとられ、三沢社長の手で、新日本のドーム興行に投げこまれた。
プロレスとはむざんなものである。
 タイトルマッチのあと、力皇はその旨を報告すると、
「そうかえ」
 すぐはなしを外らし、ちかごろゴールドジムに寄寓している新日本所属の永田という
男のうわさをした。
「その男は、銀メダリストの兄で、ピーカブースタイルよりも頑強な亀の防御をするというぞ」
「わかった」
 力皇は不快そうに手をふり、
「それがしに試合をおまかせなされているなら、せめて、その試合の話だけなりとも
 身を入れてきいてくだされ」
「ふむ。しかし永田さんは、ただのレスラーではなく−−」
「キックでもいたすのか」
「エクスプロイダーに長じている」
「やくたいもない。先輩はまことに休火山におなり遊ばされたのう」
「いかにも、休火山じゃ、休火山ゆえ、試合のことはほぼわかる。小橋建太は、はじめ
 青春の握りコブシを八双に突き上げたであろう。そのあと、すぐにガウンをぬいだ、
 しかも豪腕が、パンパンにふくらんでいた。そうであろう」
「控え室でこっそり見物なされていたのか」
「見はせぬ。小橋の力量、性癖については、この団体になるまえ、四天王時代に十分に
 調べぬいてある。そちよりも数段、膝が悪いとみた。それゆえ、安堵していた」
「先輩」
 力皇は、そう聞いて急に顔をやわらげ、
「永田さんのはなしをしなされ、気持ちよううかがいましょうず」
「いや」
 田上は、気むずかしい男だ。急に興のうせた顔をした。
「いずれ話す」
 力皇には、このふとった先輩のこころがわからなくなっていた。
192京の剣客(3):2006/01/10(火) 00:05:53 ID:4g2E3hUk0
 力皇は、防衛した。時が過ぎた。防衛回数が三まできたとき、不意に背後で挑戦者の気配がした。
「力」
 田上である。
「客はブーイングしているではないか」
 声が笑っている。力皇はかっとした。これまでとかくの批評をもちながらも田上を敬慕してきた。
が、この瞬間、骨が凍えるほどに田上を憎悪した。コーナーポストから飛びおり、
「ゴングを鳴らしなされ」
 スルッとパンツを脱いで、タイツをはき、
「プロレスの優劣は、所詮はパワーできまる。入門したころ、先輩から殺すつもりで
 打ちかかれ、といわれた。そのこと、いまこの場でやってもよいか」
「よい」
 田上の黒い影がわずかに動き、衣擦れの音がきこえて赤タイツが月に光った。
やがてタイツがしずかに股間へとむかい、フィットした。
「来ぬか」
「ま、まいる」
 力皇は田上の呼吸をはかろうとした。が、どうしたことか、時が経つにつれ、かえって
自分の呼吸がみだれはじめ、全身に汗が流れた。
193京の剣客(4):2006/01/10(火) 00:07:14 ID:4g2E3hUk0
「せ、先輩。なにをなさる」
 そのとき、夜空を掻きまわすようなけたたましさで、客席がさわぎ、二階席もリングサイドも
重低音ストンピングをならしはじめた。
 力皇は、ぱっとフォールを奪われ、
「先輩」
「さわぐな。いま、わしはそちを据え物のようにオレが田上で投げた。プロレスの要義わかったか。
 プロレスとは、パワーばかりがすぐれても、十分ではない。生き身の敵に打ち勝つには、
 パワーよりもさらに大事なものがある」
「な、なんであろう」
「顔よ」
 田上は、ふっと息を抜くようにいった。と同時に、ノア名物カンカン村が、うそのように静まって、
力皇のやる気も、急になくなった。
「わしの見るところ、そちのパワーはわしよりも立ちまさっている。が、顔はわしにおよばぬ。
 女性ファンにキャーキャー言わせることさえできぬではないか。永田さんにはとうてい勝てぬ。
 あの者について、ただ一つ、わしは知ることができた。練習生の某のいうところでは
 永田さんが近づいてきたとき、声もかけられぬのに身のうちがわなわなと慄えたという。
 永田さんにはうまれつき、◎※☆のごとき顔が備わっているのであろう」
194京の剣客(5):2006/01/10(火) 00:09:16 ID:4g2E3hUk0
 会場は大混乱となった。予想以上の永田の顔に群衆は逃げまどい、キック、エクスプロイダーを
たてつづけにくらった。しかし田上は、またたくまにのど輪落としを決め、顔面キックをみまい、
ようやくナガタロック3で討ち取られた。この試合のために田上は再び休火山となり、力皇も
中堅どころにおさまった。
 ふたりは、永田戦がおわってから道場へ帰り、かねて田上が得意としていたのど輪落としの
技法をさらに工夫し、ブレーンバスター式のど輪落としを開発した。世間では秩父セメントとよび、
人気もでたものらしい。
 その後の田上のことについては、「箱船のすさみ」という本にこういう話が出ている。ワイルド2
所属でプロレス自慢の者がふたりノアのリングにあがった。当時、バックドロップがはやったから、
この者たちも面白まぎれに急角度バックドロップをして興じていた。
 ある試合で、二人が青コーナーにもたれかかって相手を待っていたところ、赤タイツに赤ブーツを
はいた馬場風の男が、酔い心地の足どりでリングにあがってきた。
 まず一人がゴングを待たずに殴りかかると、馬場風の男は蠅でもはらう手つきで無造作に
引きはずして、平然とガウンを脱いでゆく。
 別の男が、場外に降りてきたのを待ってパイプイスで殴りかかると、
「待った」
 とガウンを最後まで脱ぎ、顔をパシパシとたたいて、
「さあ」
 とかまえた。二人は、踏み込み踏み込みして何度も打ちかかったが、そのたびに馬場風の男は
袈裟切りチョップで首をぴたぴたとたたき、
「まだまだ」
 といった。ついにつけ入れられてのど輪落としを食い、フォールを奪われてしまったとき、他の
一人がおどろいてパイプイスを捨て、
「ご老は、何人におわしますや」
 ときくと、馬場風の男はふりむきもせず、
「休火山さ」
 と答え、そのまま謡をうたいながら立ち去ったという。
 永田が、天下を取り損ねた男と号して新日本で余生を送っていたころのはなしである。
195お前名無しだろ:2006/01/10(火) 01:38:15 ID:/4dufDFK0
永田さんの武蔵最高!
196お前名無しだろ:2006/01/10(火) 16:25:23 ID:h9QfkNNA0
保守
197戦雲の夢 1:2006/01/10(火) 16:42:35 ID:h9QfkNNA0
「しかし武藤さん」

と話題をかえてくる健想の太い声にさえぎられてしまう。功利にさといWWE
帰りの健想にはなにか格別の魂胆があるようであった。そのつど武藤は興ざめた
目で健想の顔に視線を移さねばならない。

「なにかな」

「大きな声では申せぬがDSEはプロレス業界を一掃する魂胆です。
 いかに全日本が馬場さん以来の伝統と権威を持つとはいえ資金豊富な
 DSEが敵ではもちこたえられますまい、我々フリーからすれば旧来の
 プロレスに拘るレスラーが不思議だ。あなたにしろ、小島さんにしろ
 渕さん以外は故馬場社長に恩顧があるというわけでもないのになぜ亡び
 を覚悟して全日本に殉ぜねばならないのですか」

198戦雲の夢 2:2006/01/10(火) 16:51:44 ID:h9QfkNNA0
武藤はひとごとのように笑った。事実、武藤は不思議でならない。
目のある者ならもはや時勢のめどはつくはずなのである。DSEがハッスル
というプロレス部門を創設したのなら、これをさいわい、さっさとハッスルに
参加すればよさそうなものなのに、ほとんどの者は身動きもしなかった。
ばかりか、なおも従来の日本式なプロレスにこだわるのである。

「日本のレスラーは節穴ばかりだよ」

と健想がいった。
199戦雲の夢 3:2006/01/10(火) 17:10:34 ID:h9QfkNNA0
「かもしれぬ――プロレス界の代表と名乗った高田がヒクソンに敗れてこのかた」

と武藤が、おのれにつぶやくように語りはじめた。
多くのレスラーがDSEの策にはまり格闘家に敗れ、プロレスの威信は地に落ちた。
プロレスのみに専念するレスラーはこれらの者のせいで屈辱を受けたが、
身の浮かぶことを願い、ひたすらにプロレスを続けた。が、不幸にも格闘技ブームが
世を覆うまでに成長した。プロレスから格闘家に転向する者もあり、
プロレスの未練を断ち一般人なる者もあり、多くの借金を抱え、みずからの命を絶つ者もいた。
こんにち日本にあるプロレスラーは生活にひしがれつつも、プロレスが好きな者ばかりなのである。
200200:2006/01/10(火) 17:16:32 ID:fpQhhde90
200
201戦雲の夢 4:2006/01/10(火) 17:25:08 ID:h9QfkNNA0
そして全日本プロレスは彼等の不運な生涯における数少ない砦なのだ。
いずれ全日本が消滅するにせよ、ハッスルでプロレスをやる気にはなれない。
たとえハッスルで試合したとてレスラーは芸人の噛ませ犬扱いなのである。

「俺は」

と武藤は言った。

「プロレスを自分の都合に利用した高田とDSEへの憎しみがあるのだ。
 この気持ちプロレスに専念した者でなければわかるまい。そして全日本は
 安易にプロレス界の代表と名乗り格闘技に手を出し敗れたレスラーに対する
 意地と遺恨の団体といえるだろう。これしか生きる道がないのだ。
 俺が望んでいるのは純粋なプロレスラーとして世を終えたいということなのだ」
202戦雲の夢 5:2006/01/10(火) 17:37:34 ID:h9QfkNNA0
「妙な考えですな」

「それがプロレス・ラブというものらしい、俺は、それを実現するため
 全日本の社長になっている。そしてプロレス・ラブを広めるために日本各地を旅し
 地道に巡業している。」

「いわば途方も無ない草の根運動ですね」

「うむ」

「やめた」

と健想はいった。

「俺は武藤さんを説得してハッスルに引き入れようと思うてやってきたが
 DSEに意地がある以上なにをいっても通じまい。やめた。レスラーは
 おのおの自分の気に入った世をおくるのが仕合せの一番だ。事がここまで
 きたからには、他人がとやかく、いうこともない」
203お前名無しだろ:2006/01/10(火) 23:32:34 ID:JZQT7dGI0
曙は何役で出るの?
204お前名無しだろ:2006/01/11(水) 07:53:13 ID:vR2kLiwu0
w-1は何役で出るの?
205項羽と劉邦 1:2006/01/12(木) 21:09:02 ID:4umSM1QL0
「俺がなにを永田さんに献言しようとしているか、石沢さんならわかるだろう」
というと、カシンは筋肉で引き絞まった肉体を持つ後輩を一瞥しただけでだまっている。
「わかりませんか」
藤田は平素とちがい、息も気ぜわしく、目が血走っていた。
「どうですか」
「想像はできるが、言えない」
カシンは小声でいった。この男は詭計を好んでいる。ときに人非人かと思われるほどに
きわどい謀略を思いつく男であったが、この想像ばかりは口に出すことを憚るものがあったらしい。
「永田さんは、弱い」
藤田はいった。
206項羽と劉邦 2:2006/01/12(木) 21:21:24 ID:4umSM1QL0
「どうにもならぬほどの弱さだ」
藤田の声に人がふりかえった。カシンは、めずらしく昂奮している後輩の腕をひかねばならなかった。
「弱い」
藤田は、かまわずにいう。永田が総合格闘技で弱いわけはよくわからない、元々、そういう要素がなかったのだろう。
「このまま、徹底的に総合の稽古をしたところで、とても前田日明が、つれてくる
 クルーザー級の選手に勝てない。それとも石沢さんには見込みがあると思われますか」
「とても」
カシンは、かぶりをふった。
207項羽と劉邦 3:2006/01/12(木) 21:35:02 ID:4umSM1QL0
「それでは敵が入場するときが千載一遇の機会だと思いませんか」
「藤田」
カシンの声がふるえた。
「―お前」
「そうです。敵が入場してくるとき、永田さんが奇襲を仕かけるのです」
「おそろしいことを。―」
カシンは身震いするように首をふった。
「無理だ、藤田」
あとは、ころげるように多弁になった。
「お前が考えるより俺が考えるような詐略だ。しかも格闘技の試合で花道を奇襲するなど
 したら前田日明がどうでるか」
下手をしたなら泥沼のような法廷闘争の可能性すらでてくるだろう。
208項羽と劉邦 4:2006/01/12(木) 21:53:14 ID:4umSM1QL0
今のまま前田日明が、つれてくるクルーザー級の選手と永田が試合する以外にない。
負けたとしても試合後、永田が皆が見ている前で、一指し指をつきたてて「リベンジする!」
といって再度決戦の機会をまてばよい。
「待つ?待てばどうなるのですか。待てば永田さんが勝てるというのですか」
藤田の顔を落葉がかすめた。来月はもはや冬である。
「待ったところで仕方がないが」
カシンの声は力がない。
「しかし」
格闘技の試合で永田がプロレスまがいの奇襲を仕かけたら前田は手負い猪のように荒れくるい
、もはや悠長なことはいってられないだろう。とカシンはいった。
209項羽と劉邦 5:2006/01/12(木) 22:02:47 ID:4umSM1QL0
「もっとも試合で永田がサンダ−・デス・ドライバーを敵に喰らわすことができればべつだが」
とカシンはいう。むろん無理とは、わかっているが。
「藤田、お前には、この奇襲案にいい見通しがあるのか」
「ない」
藤田が立ちどまって正面からカシンの目を見た。
(ないのに、やらせるのか・・・・・・・・)
カシンは、おどろいた。
210お前名無しだろ:2006/01/12(木) 22:39:55 ID:pfgojfP20
ワロタ
211お前名無しだろ:2006/01/13(金) 00:54:45 ID:UC5knaj0P
職人GJ!
個人的には前スレの大森ネタがツボだったw
212お前名無しだろ:2006/01/13(金) 23:59:44 ID:Z6drrTkq0
良スレ保守
213お前名無しだろ:2006/01/14(土) 03:09:21 ID:il5Vgxom0
大森さんガンガレ!超ガンガレ!
214お前名無しだろ:2006/01/15(日) 13:03:06 ID:TMrXe/Uy0
(猪木は)
と草間は考えた。
(「実業家」に対するあこがれがあるのだろう。それが、まやかしの永久機関に
あの男をとり憑かせた。
あの男は、晩年になってからプロレスなどは所詮見世物の術であると気づいて、それをもって
世に立つのがいやになったのにちがいない)
215夏草の賦 1:2006/01/15(日) 22:09:02 ID:jd0dLbP80
(いずれもひとかどのレスラーや格闘家であったが、しかしながらおれの手にかかっては
 みなひと網でとらえられ、リングの虎どもがいまは猫のようにおとなしくなっている)
ふと、永田裕志に目がとまった。個性のつよい顔に杯をくみ、黙然と飲んでいる。
(酒が、好きらしい)
ときにホールから見える紅葉をながめ、やがては杯にもどり、ふくんでは干している。
高田は、座中を歩き出した。格闘家やレスラーだけで二百余、社員、贔屓の関係者を
ふくめると三百人を越えるDSE創立二十周年の大パーティーである。
216夏草の賦 2:2006/01/15(日) 22:25:27 ID:jd0dLbP80
高田は、酒につよい。酒を飲むと陽気になり、ふんどしひとつで巨大な太鼓を叩き
ときにはタップダンスを踏む。高田は余興が終わると、たれかれなく声をかけながら
やがて永田のそばにゆき、どかりと椅子に座った。永田は気づき
――これは。
と居ずまいをただそうとしたが高田は押しとどめ、無礼講よ、といい
「なんと永田くん」
と、かねがね聞いてみたかったことを、からりときいた。
「きみは、あれか、むかしあのように他団体や総合格闘技に駆けまわっていたが、あのときの真の魂胆はどうであった
 ――IWGPだけが望みだったのか、それとも天下を心掛けたのか」
突如の質問である。しかもその内容はいかに過去のこととはいえ重大であった。
217夏草の賦 3:2006/01/15(日) 22:41:24 ID:jd0dLbP80
永田は、笑わない。もともとこの顔はよほど笑いづらく出来ているらしく、目じわひとつよせずに
「天下でござる」
といった。高田は笑いだした。
「IWGPだけが望みではなかったのか」
「なんのIWGPごとき」
と、永田は吐きすてるようにいった。IWGPごときが最終の望みではなかったという。
「おもしろい」
高田は、からかっていた。
「永田くんのその器量では無理であろうな」
永田は内心むっとしたが、さすがに顔にはださず、相変わらずの無愛想さで、
「入団先が悪うござった。ただそれだけにござる。Uインターに入団していたなら
 PRIDEのファンタジスタの称号は、桜庭ではなく自分であったでござろう」
「言うわ」
高田はタップを踏んでおかしがった。
218夏草の賦 4:2006/01/15(日) 22:54:51 ID:jd0dLbP80
高田にすれば永田の器量のたかがどの程度のものか十分にわかっており、天下
をとるにはだいぶ目方が軽いとみている。その軽さで歯ぎしりを噛んでいるのが
愛嬌だったのであろう。が、永田は笑わず、高田が去ったあと、長州から
「天下を取り損ねた男」
と罵られた記憶がよみがえり胸中の苦味が増して、いくら酔おうにも酔えなくなった。
新日本に入団した結果、いたずらに総合格闘技に自信を持ち、結局は十数年も年月を費やして
積み重ねた、自分の実績を、たった二度の猪木祭りで駄目にしてしまった
おのれの人生のばかばかしさが永田をやりきれなくした。
219お前名無しだろ:2006/01/17(火) 00:55:51 ID:A49tKMfS0
この先永田さんには元親が信親を亡くしたような悲劇が待っているのか
220お前名無しだろ:2006/01/17(火) 20:13:05 ID:owmOcxMD0
佐々木健介は、長州力のWJという団体でエースを張って拠り、観客席から冷たい視線を送るファンたちの前で
金網戦をしたりしたが、2004年3月、最後の興行を行って父子ともに退団している。
その日の模様を、ノーフィアーの生き残りで後にAWAのチャンプになった旧ノア戦士大森隆男が晩年、
くりかえし物語っては目を泳がせたという。
WJの観客は、相次ぐ塩試合によりほとんど去っていった。会場まばらで閑古鳥が鳴いたその日、
佐々木健介は、80年代のストロングスタイルどおり、腕を回してハイスパートレスリングを始めた。
221お前名無しだろ:2006/01/17(火) 20:14:16 ID:owmOcxMD0
永島勝司は、その武者ぶりのみごとさに、
「二人がいればまだいける」
と思ったらしい。が、リングを駆けまわりときにロープから返って暴れまわる親子タッグの働きでも、去り行く観客を手に負えなくなってきた。
勝彦はこのとき十五歳。
健介は四十歳である、長かった後ろ髪はすでに切って短髪になっている。
観客席の客からすると、父親はひどく塩ムーブを連発するらしく、ときどき動きがしょっぱくなっては変な間を作りそうになったが、
そのときには少年が走りよって父親の敵を蹴った。少年が危なくなったときは父親がそれをたすけた。
「まるで名人の二人舞を見るようだった。」
と、永島は語っている。
やがて観客は、ブーイングを始めた。まず少年が倒れ、そのあとすぐ父親がそれへ折りかさなった。
222お前名無しだろ:2006/01/17(火) 20:15:41 ID:owmOcxMD0
上総の剣客より
223お前名無しだろ:2006/01/17(火) 21:57:06 ID:W1DZqlFA0
(お智恵、また、総合の話でも聞いてくれねえかなあ)
裕志の目いっぱいに雨がふっていたが、しかしその瞳孔は何もみていないようだった。
ただ痴呆のような顔をしていた。
『さいたまで一戦やるさ』
と声に出して嘘をついた。
224お前名無しだろ:2006/01/19(木) 17:16:58 ID:aBwDXJ6Z0
やはりこのスレは小橋が主人公でないとショボくなるのだなぁ
225お前名無しだろ:2006/01/19(木) 17:34:15 ID:dKTPAzW2O
保守
226お前名無しだろ:2006/01/19(木) 18:11:02 ID:u9t3v/ie0
永田さんと小橋はやたらハマるな。
一番ワロタのは大森判官w
227日本史探訪 大森隆男:2006/01/19(木) 21:36:51 ID:WMirvVUs0
司馬「大森を書いて気がついたのですが、大森にはシングル・プレーヤー
   としてはまったく才能がないですね。それは、全日時代でもNOAHに在籍
   していた時でもシングルの王座に挑戦できなかったことでわかります。」

司馬「いいかえたなら大森は誰かと組まないと輝くことができないんですね。
   これはプロレスラーとしては致命的なんですな。なぜかというとタッグチーム
   は、どんな理由があるにせよ、いずれは別々の道を歩まねばならないからです。」

司馬「おそらくですが高山は大森を持て余していたか、もしくは見切りを
   つけていたのかもしれませんね。NO・FEARの解散の真相はそういった
   ところにあるかもしれません。」
228お前名無しだろ:2006/01/20(金) 02:00:16 ID:YHWeZv280
メインキャラ?3人をこのスレ的に言うと・・・

小橋:愚直
永田さん:滑稽
大森さん:哀愁

かな。
229お前名無しだろ:2006/01/20(金) 18:50:16 ID:J/mC4Eb90
小橋の愚直さが昔の剣豪とか戦国武将を連想させるのかな
230お前名無しだろ:2006/01/20(金) 23:46:03 ID:9ZawpaaG0
プラス豪快さかな>小橋

愚直だけだとおおもりさんも当てはまるのではなかろうか。
231お前名無しだろ:2006/01/21(土) 02:00:50 ID:tayPv/LS0
>>227
すまんが教えてくれ。元ネタって誰?
232お前名無しだろ:2006/01/24(火) 10:59:35 ID:oPoOwC6i0
みんなの読書対象の幅が広くて追いつかないなぁ
233『北斗の人』:2006/01/24(火) 21:00:57 ID:wsaueFST0
「女がその美貌をまもるように、男はその精神の格調をまもらねばならない」

と、蹴撃七番勝負で、例の”伝説の男”がおしえてくれたことがある。
我欲をむさぼらず妥協をせず融通がきかぬのもその格調を高めるためであり、
わが身を捨ててかかるのもその格調を高めるためである。

「男はそれのみが大事だ」

とその漢は言った。
KENTAはその言葉が今もあたまから離れない。
234お前名無しだろ:2006/01/28(土) 01:08:48 ID:n+C5Zvgj0
235お前名無しだろ:2006/01/28(土) 22:27:26 ID:BIwltQwM0
嗚呼、黒猫…
236231:2006/01/29(日) 00:13:41 ID:MUQjMQSf0
>>234
真剣にすみずみまで義経の所を読んじゃったじゃないか。orz
237お前名無しだろ:2006/01/29(日) 16:54:34 ID:5mDjHKFO0
「結局、引退撤回か」
と、新日本のレスラーや社員はおもい、プロレス贔屓な東スポでさえ
<<藤波、また引退撤回!>>
という記事を見出しには使わず、わずかな5ベタ程度の扱いにした。
当初、藤波の引退に激怒していた新間も
―――ファンは、毎度の藤波引退撤回に接して新日本をどうみるであろう。
と、憂慮した。
「つまるところ、藤波のいう言葉には信をおけるものはなにもなく、
 そのうえ引退する胆力もない。しょせん猪木の傀儡になるにすぎない」
と、いった。が、藤波はこの軽薄さについて内々にも悔いず、ひとに対しても
羞じらわなかった。胆力といえばこの毎年の恒例化した藤波の引退騒動に関して
だけいえば、この点の胆気はみごとにすわっており、藤波の引退発言騒動は
藤波自身がつねに支持し、自分ひとりが支持しているだけで藤波は自足しているようであった。
これは胆気ではなく別のものであり、いわば、本来の虚言癖というものであろう。
その点の精神の自足主義を社員は無知と言い、藤波を
「スポ−ツ誌で社内の情報を知る社長」
とよんでいる。
 





238覇王の家:2006/01/31(火) 15:06:23 ID:aTvVSinn0
巨大な無理を、長州はWJでやってのけねばならなかった。
もともと、ど真ん中思想などは一個の壮大な虚構であるとみなければならない。
その大虚構を地につけるためには長州が頑なに否定してきた格闘技の興行や
支援者に柔和な態度で接するなどしていく以外にWJを維持することはできない。
この時期の長州ほど史上、類を絶する不運者はなかったかもしれなかった。
その不運さを、長州はWJの崩壊を知るひとびとにもファンにも感じさせなかったのは、
かれの物真似をTVを使って披露する、くりぃむしちゅ〜有田や長州小力といった
芸人の飛びきりの明るさがそれを眩ましてしまったといえるであろう。
239お前名無しだろ:2006/02/02(木) 02:32:17 ID:Iq+4VhC80
ほしゅ
240お前名無しだろ:2006/02/04(土) 21:07:38 ID:VY6IR+jW0
保守。
241お前名無しだろ:2006/02/04(土) 21:13:50 ID:eiy21hcx0
このスレの書き手は何人ぐらい居るんだろうね?
隠れファンは多いけど。
242お前名無しだろ:2006/02/06(月) 16:54:42 ID:61xR8XfMP
保守でござる
243お前名無しだろ:2006/02/07(火) 16:44:13 ID:P3NykiLn0
小橋が燃える、プロレスが燃える
244お前名無しだろ:2006/02/08(水) 02:40:19 ID:mOble0Om0
>>241
スマン、昔書いてたけど流石にネタ切れですわ…
何方か「これっ!!」というのがあれば是非御推薦下さい。
過去投稿作:『燃えよ剣』小橋-秋山 『翔ぶが如く』田上-小橋 『義経』おおもりさん
      『新撰組血風録』秋山・高山・おおもりさん 『花神』エディ・ゲレロ
245お前名無しだろ:2006/02/09(木) 01:18:02 ID:BoVos78V0
ROMが良スレに用がありとすれば、保守をしにゆくだけよ
246お前名無しだろ:2006/02/09(木) 13:01:56 ID:sHbI30K10
>>244
「韃靼疾風録」で日本人レスラー(大森さんとか健想とか)によるWWE体験記はいかがでしょうか?
247お前名無しだろ:2006/02/11(土) 08:47:39 ID:DMMom7nHP
保守
248お前名無しだろ:2006/02/12(日) 11:57:06 ID:RPvNFkSA0
余談ではあるが保守である
249お前名無しだろ:2006/02/12(日) 18:56:43 ID:OK/9Y8NU0
これはネタじゃないんだけど、司馬で純粋に小説として
楽しめる物ってどれくらいある?今彼が持て囃されてるのは
なんというか歴史家というポジションとしてでしょ?
燃えよ剣とか竜馬が行くは面白いけど翔ぶがごとくとか
坂の上の…とか空海の風景とか小説としてはかなり
アレなデキだし。
250お前名無しだろ:2006/02/12(日) 19:39:11 ID:HFBei7fA0
蘊蓄親父のバイブル。

だがそれがいい。
251お前名無しだろ:2006/02/12(日) 21:08:48 ID:YfHajoaC0
このことはすでに述べた。
252お前名無しだろ:2006/02/13(月) 02:07:47 ID:cPaXGiw90
>>249
純粋な小説と言う意味がよく解らないが、物語性という意味ではどれも楽しめると思うよ?
だいたい司馬文学ってのは通常の小説とは視点や構成は別の所にあるって言うのが画期的であり、
価値があるわけだから…。

ま、無理に読むことないんじゃない?合わないんだったら。
253お前名無しだろ:2006/02/13(月) 08:01:14 ID:T6/itafs0
しかし、筆者は言う
254お前名無しだろ:2006/02/13(月) 17:28:21 ID:tYGMAyKW0
司馬さんちまで訪ねていった柳ジョージはトンパチ?
255お前名無しだろ:2006/02/13(月) 18:06:50 ID:CH+h/T8o0
以下、無用のことながらage
256お前名無しだろ:2006/02/14(火) 02:11:39 ID:TwCVUqeSO
>>248
ワロタ、とだけ言っておこう。
257お前名無しだろ:2006/02/14(火) 21:20:26 ID:ZYwM4FGz0
>>252でも坂の上の雲なんかは最初のほうは
「ちゃんとした小説形式でやってみっか」という意気込みが
見えたけど、やっぱ途中からウンチクまみれになっていったな
258お前名無しだろ:2006/02/15(水) 07:48:12 ID:n/GLuFgJ0
歴史家と思って読んだら騙されるぞ。
ノンフィクション度は梶原一騎よりすこし上くらいに思って読んだ方がいい。
259お前名無しだろ:2006/02/15(水) 08:58:18 ID:taxLZuxG0
まあ、小説だしね。
260司馬:2006/02/15(水) 21:41:03 ID:+BGQHYHa0
失礼な事言わんとけよ。
俺の書くことは俺にとって間違いなく真実。
山県は人間のクズ
261お前名無しだろ:2006/02/16(木) 19:28:00 ID:sN7qDgmm0
今回はひょっとすると保守ばかりになってしまうかもしれないが。
262お前名無しだろ:2006/02/16(木) 20:42:34 ID:FnUlAHOr0
>>258
沖田を天然ボケの美少年キャラにしたり、梶原のスーパースター列伝並みに脚色あるしなw
263お前名無しだろ:2006/02/17(金) 18:37:21 ID:pMf4YFd00
>>249
>なんというか歴史家というポジションとしてでしょ?

そんなことはない、あくまでも小説、虚構、フィクションとして楽しんでます

>燃えよ剣とか竜馬が行くは面白いけど翔ぶがごとくとか
>坂の上の…とか空海の風景とか小説としてはかなり
>アレなデキだし。

それらの作品は小説として破綻しているモノもありますね。
でも、破綻の仕方が面白かったりするんですよ。
歴史的興味に引きづられて作者自身が小説としての完成度を放棄してしまったりね
破綻していく過程が面白いんだな。
ま、ヒトそれぞれでしょうが
264お前名無しだろ:2006/02/17(金) 18:38:46 ID:fwzo4WoD0
坂の上の雲で山県の悪口を執拗に繰り返す様は
さながら洗脳だったなw
265夏草の賦1:2006/02/17(金) 20:30:58 ID:UWHHDMbp0
壮年のころのあの燃えるような新日本への情熱は、もはやライガーには失せきったようであった。
そういう覇気だけでなく、生きてゆく弾みそのものを新日本プロレス倒産後は、あきらかにライガーはなくした。
その後のライガーは、あきらかに老い霞んだようである。

「山田さんは、なにかを喪われた」

とサムライなどはしきりにいったが、そのサムライも新日本の倒産をさかいに
めっきりと老けた。サムライもまたあの倒産によって、フリーとなり様々な団体
を渡りあるき日々の食い扶持を得るためにプロレスをつづけている。
266夏草の賦2:2006/02/17(金) 20:43:08 ID:UWHHDMbp0
このサムライが「なにか」というそれは、情熱、壮気といったものであろう。
サムライはライガーのもとへ赴くたび、

「山田さん、お元気を出されませ」

と声を大きくして励ましたが、ライガーは苦笑してうなずき、

「無理さ」

と小声でいった。プロレスラーになるため、ひとりメキシコに渡り、そこで新日本に拾われて
プロレスラーになったライガーにとって人一倍の恩義と誇りを新日本にもっていたが
ユークスの子会社化や大量の選手離脱がライガーをして落胆させ、プロレスを捨てた
おもいにさせたのであったが、その心の傾斜が、新日本の倒産によっていっそう大きくなったらしい。
267夏草の賦3:2006/02/17(金) 20:55:02 ID:UWHHDMbp0
「プロレスラーは、団体に所属しているうちが花だな」

「左様な」

ことはございませぬ、とサムライはなにか言おうとしたが、ライガーはかぶりをふり、

「団体に所属している時期だけが、プロレスラーであるらしい。フリーになってしまった今の俺には
 プロレスは、ただ飯を食っていくためだけの道具さ」

といった。新日本の看板に激しく誇りをもちすぎただけに、それだけに会社の倒産で
人並以上に気落ちをしてしまうのであろう。
ライガーにとっていまいっそうの不幸は新日本倒産があった翌月に少年のころの憧れだった
アントニオ猪木が死んだことであった。
268お前名無しだろ:2006/02/17(金) 21:03:39 ID:RRkEHUvOP
久々職人キタ━━(゚∀゚)━━!!
269夏草の賦4:2006/02/17(金) 21:08:25 ID:UWHHDMbp0
もともと倒産する前から猪木は永久電機の失敗による心労と長年わずらっていた糖尿病の悪化で、
ほとんど寝たきりになっていた。

「どうってことねぇよ」

と、見舞いに訪れるひとにはいっていたが、連日、伝えてくる情報ではよほど
病態がわるくなっているようであった。新日本が倒産したときサイモンは入院中の猪木に対して

「義父には知らすな」

と関係者にいっておいた。このため、猪木は新日本の倒産を知らずに死んだ。
もし霊の世界があるとすればかの地で馬場と会っていることであろう。
猪木の死をライガーは近所のコンビニで買った東スポで知った。
270夏草の賦5:2006/02/17(金) 21:22:09 ID:UWHHDMbp0
(すべてがおわった)

という、自分の輝きの時代の終息を感じたのは、猪木の死の報せのときで決定的なものになった。

筆者は、獣神サンダーライガーにおいてプロレスラーの情熱というものを考えようとした。
これをもってこの小説は終わるが、その主題が充足したかどうかは、筆者にはわからない。
ライガーの後年は、一見、自分を投げてしまったようなところがある。
かれは週刊ゴングの企画で日本を代表するジュニア選手が一同に集まる座談会に出たが、
しかし、あまり発言を出さない。

「青臭い若僧どもが、もっともらしげにジュニアを議しあう席に居たたまれるか」

というような心境だったのであろう。
271夏草の賦6:2006/02/17(金) 21:38:17 ID:UWHHDMbp0
フリーとしてディファカップに出場したとき、WWE帰りのTAJIRIが控え室のモニターで試合をみて

「日本のジュニア選手は大技に頼りすぎる。もう少し試合の流れを考えて大技を使うべきだ」

といった。そばにいたライガーが、

「TAJIRIどのこれでいいのだ。日本のジュニアでは大技の連発が通常なのだ」

「なにを申される。左様な試合スタイルでは世界に通用しない」

「ばかな」

ライガーは、だるそうな笑いをあげ、

「もともとジュニアは日本が世界に先駆けてやったものだ。大体貴殿は世界、世界とおおせあがるが、
 日本の、それも新日本のジュニアが世界に多くの影響をあたえたのだ。
 諸事、日本のジュニアのことは拙者のことばどおりになされよ」

と、さっさと立ち去ったという。ライガーの物憂げな様子がみえるようである。
272夏草の賦7:2006/02/17(金) 21:55:26 ID:UWHHDMbp0
ライガーはディファカップ後、体調不良を理由にフリーとしての活動を一時、休止した。
新日本の倒産から四年の月日が流れておりプロレス界ではNOAHとハッスルの二大底流ができている。
が、ライガーはその動きに無関心であった。
今後のフリー活動のためには当然「三沢どの」や「高田総統閣下どの」に接近しておくべきであり、
そのことが見えぬほどのレスラーではむろんないのに、すこしも動いていない。
動かぬばかりか、体調が回復しても活動を休止したままである。
ひとつにはライガーは世をすてたつもりか、新日本が存在しないプロレス界に
いっさい無関心の姿勢をとっていたことであろう。かつ他のレスラーや関係者とも社交しようとしなかった。
このことがライガーを鈍感にしていたのか、そのため情報源がなかったのか、
あるいはそういうようなことが面倒だったのか、そのいずれかであろう。
273夏草の賦8:2006/02/17(金) 22:12:05 ID:UWHHDMbp0
この点、ライガーと似た経歴をもつZERO−ONE・MAXの大谷晋二郎が最後までプロレスに
いきいきとした情熱をもちつづけていたのとは非常なちがいである。
ライガーはフリー活動を休止したまま翌年に、突如、イギリスのリバプールへ旅立つ。
ライガーは、見送りにきたサムライに

「今度はリバプールの土になるつもりさ」

というと二度と日本の地を踏むことはなかった。
その後、イギリスの小さな田舎町や古びた酒場などで試合をしているライガーの姿が
、たびたびプロレス誌に掲載された。
日本ではNOHAのジュニアがファンや関係者の間で賛辞を受けていた。
かれらの中ではかつての業界の盟主、新日本プロレスは過去のものになったのであろう、
やがてライガーの姿がプロレス誌に掲載されることもなくなり、歴史から消えた。

(完)
274お前名無しだろ:2006/02/17(金) 22:14:40 ID:YqkQq3+L0
泣いた。
275お前名無しだろ:2006/02/17(金) 22:17:59 ID:kqzLP1y40
また一つ傑作が……
いずれ本当にこの未来が来てしまうような気がしてならない。
大谷とライガーの類似点が元ジュニアってくらいしか無いような気もするがw
276お前名無しだろ:2006/02/17(金) 22:20:41 ID:tAYugmwi0
すばらしいですね。
猪木には早く死んでほしい。マジで
277しど ◆lVT/1tteMo :2006/02/18(土) 04:52:02 ID:q+Jqz0SoO
このスレ、一冊に編纂して出版希望。
278お前名無しだろ:2006/02/18(土) 22:09:01 ID:dpuJoq5q0
保守、ただそれだけのことを言いたかったにちがいない。
279お前名無しだろ:2006/02/18(土) 22:49:41 ID:RVufjxaf0
敷居の高いスレというものがある。プ板であってもレスする人を選ぶスレが時折現れるのだ。
凡人にはレスがむつかしい。荒らしするのも躊躇われる。ゲイサクなどは近寄りもしない。
職人の矜持が支えるスレの眩さを心やましい者は直視できないのであろう。
このようなスレは保守をせねば落ちてしまう宿命を抱えている。
ageねばなるまい。
280お前名無しだろ:2006/02/18(土) 22:49:52 ID:f5F4RhA60
丸藤はうまい。要するに、KENTAに自信をもたせたことである。
自惚れという肥料だけが、才器ある男をのばす道だ。
それがヘビーであれ、ジュニアであれ、女子であれ。
かしこい丸藤は、その機微を知っている。
レスラーは、戦うべき相手を選ぶ。
現今の青年が結婚すべき相手を選ぶように。
レスラーたちは選ぶ権利をもっている。
相手の器量を見ぬき、これこそ自分の運命を托するに足るとみてはじめてリングで必死の働きをするのである。

プロレスとは、――と丸藤はおもうのだ。
いかに悪言を吐き、マイクの才にすぐれようとも、それがなんであろう。
プロレスが、プロレスであることを表現するものは、リングの上でしかない。
勝ち、負けは、「事」の表裏にすぎない。
裏目が出ても、すぐいいほうに翻転できる手さえ講ずれば、なんでもないことだ。

レスラーが自分の技能に自信をもったときの美しさというのは格別なものだが、
自らの位階に自信をもった場合は、鼻もちならなくなる。
281お前名無しだろ:2006/02/18(土) 22:50:55 ID:f5F4RhA60
田上にいわせると、技はすこし簡明なほうがいいという。
「透き通った簡明さが必要だ」という。
「お客は予定調和のかたまりだから」
その予定調和に負けない様式美でぶつからないとこっちの魂がお客にしみ通らない、
「プロレスというのは釣りのようなものだぜ」と、田上はいった。
「おれがこのように怠けているのも、みなおまえらのためだ」
自分がえらくなってしまうと他が奮起せぬというのである。

レスラーという職業は、
敵を倒すよりもむしろ味方を倒すことが正当化されている職業で、
その職業にながくいると、この点での良心がいよいよ麻痺し、
人格上の欠陥者ができあがりやすい。

丸藤は、レスラーにとって必要なのは
「若い頃には何をしようかということであり、老いては何をしたかということである」
というたったひとことだけを人生の目的とした。
282お前名無しだろ:2006/02/18(土) 23:20:32 ID:f5F4RhA60
社長はいう。
「たとえば軍艦というものは一度遠洋航海に出て帰ってくると、
船底にかきがらがいっぱいくっついて船あしがうんとおちる。
人間も同じで、経験は必要だが、
経験によってふえる知恵と同じ分量だけのかきがらを
捨てるということは人間によって大切な事だが、
田上のようなベテランになればなるほどそれができない。

おまえのように過去に目で見たり、耳で聞いたり、あるいは戦いで得た経験を、
それを貯えるというより不要なものは洗いながし、
必要なものだけを貯えるという性質をもち、
事あらばそれが自然に出てくるというような奴を天才というかもしらん」

生きるも死ぬも、プロレスの一表現にすぎぬ。いちいちかかずらわっておれるものか。
レスラーは、技を成すか成さぬかだけを考えておればよいと丸藤は思うようになった。
その一点だけを考えるのが丸藤の人生だ。それ以外の事は余時であり、余事というものを
考えたりやったりすれば思慮がそのぶんだけ曇り、乱れる。
283お前名無しだろ:2006/02/18(土) 23:23:40 ID:f5F4RhA60
<未完>
284お前名無しだろ:2006/02/19(日) 08:31:16 ID:7dtkPqlc0
>>283
乙彼ー。これは坂の上の雲?龍馬がゆく?
285朱盗:2006/02/19(日) 10:35:09 ID:I0ryqKER0
長州は恐い。 辻アナなる人は、この男を「毎日が革命アニバーサリー」、と評したが
くだいていえば、それほどのこともない。ありようは、ほしいと思えば、
すぐ手をのばして掴みとりたい幼児のような性分であった。

長州は、猪木と新日本プロレスリングを憎んだ。
革命戦士は恐れを知らない。wjに赴任してからも、はるかマグマの地からGKを使い、
同様趣旨の誹謗をくわえてきた。

ところが、長州はwjにあってインディーの事情を知るにつけ、次第に気持ちがかわった。
むろん二つの敵に対する憎しみは変らない。ただお世話になったインディー軍団をひきいて、
直接、新日に対して糞ぶっかけるほうが早い、と考えるようになったのだ。
286朱盗:2006/02/19(日) 10:50:10 ID:I0ryqKER0
長州の頭には、べつに飛躍はない。
うまくいけば新日を建て直しリキプロと合併できようし、しくじったところで、
インディー王として、ノア朝廷に対抗するはぐれ物団体をきずくことができるではないか。

中央に対して不平をもつアパッチたちも、長州のこの決意を支持した。


以上、久々に書きこみました。
287283:2006/02/19(日) 12:17:45 ID:WtNow6Ih0
>>284
おお、すごい。
よくわかるなぁ・・・

自分司馬遼太郎は全然知らないから
ソースは、ネットで拾ったブレンドだけど、
功名が辻 と、坂の上の雲、龍馬がゆくのミックスですた。

吉川とか池波は好きなんだけどねw
288お前名無しだろ:2006/02/19(日) 18:32:16 ID:pPZQ7zmy0
>>287
ミックスだったのかw!その手があったかあ。
どうりでレスとレスにつながりがないと思った。
司馬を全然知らない割にはなかなかよくできてる。
289お前名無しだろ:2006/02/20(月) 19:25:34 ID:bUC9lJPt0
行く先はメキシコCMLLであった。ゲイシャガールヒロコは通訳であった。
彼女が口を衝いて発した最初の語は、『明るい未来は見えません』という言葉であった。
これには健想は茫然とした。
健想にすれば、ヒロコの語学力だけを頼りにメキシコCMLLのタイトルを持って帰ろうとおもっていたのである。
ヒロコは白状した。
「自分はじつはスペイン語ができない」と、堂々とひらきなおった。
ヒロコのいうところでは、CMLLでドス・カラス・ジュニアを相手に喋ったのはあれはゴマカシだ、
あなたをあざむくためだ、というのである。
『では、なぜ君は客をあざむき、夫まであざむいたのか』
と、健想はきいた、ヒロコはその大きな目球を光らせ、
『あざむかねば、どうなりますか。あなたは私を飛行機に乗せないでしょう。
あなたには最高級の報酬が保証され、マンションと専属運転手付き。自宅への旅費まで出る超VIP待遇。
言葉がわからないとなったら一緒に洋行ができなくなる。これも兵法のうちである』といった。
290箱根の坂 中 より:2006/02/22(水) 00:12:21 ID:P8QOlN180
高田は類のないほどに気前のいい総帥だった。
この物おしみのなさは、かれの生来のものであり、
その性格の魅力が津々浦々のレスラーを吸引させた。

レスラーに欲があれば、モンスター朝に味方するのが当然とさえいえた
このため、高田は日本国の過半数以上をモンスター朝に塗り上げて
ハッスル朝を圧倒したが、しかし、欲望だけの世になり、
レスラーの心は己の年棒の増減のみを思うだけになった
291「歴史と視点」より:2006/02/22(水) 00:22:37 ID:P8QOlN180
信じられないようなことだが、
新日本にあっては、「レスラーは格闘家である以上、
総合の格闘家と等質である。防御力も攻撃力も同じである」
とされ、この不思議な仮定に対し、新日本プロレスの会長といえども
疑問をいだかなかった。現場の道場でも同様であり、
この子供でもわかる単純なことに疑問をいだくことは、
暗黙の禁忌であった。
プロレスのブックも試合でのワークもそういうフイクションの上に
成立していたのである。
実に永田―ミルコ戦前夜の新日本は」おかしな団体であった。


・・このスレに刺激されて、司馬遼太郎記念館に行ってきました。
ネタ本買ったので二連投しました。
292お前名無しだろ:2006/02/22(水) 01:41:32 ID:28F8OV5OO
総合を行く!
293お前名無しだろ:2006/02/22(水) 16:47:28 ID:WaXXSDPi0
菜の花まつりに大量投稿の予感!
294戦雲の夢 1:2006/02/23(木) 20:49:08 ID:O7eQSXS70
(堕ちた)

大森自身が、である。そう思う。プロレスラーの転落というものは、勢いさえつけば
こうも限りなく落ちるものか。WWE極秘トライアウトの一件のためにNOAH退団
からWJにレスラー活動をうつすときはさほどとも思わなかった。しかし弾みのついた
転落は、いまや色物レスラーと試合を組まれるまで堕ちていた。
赤コーナーに、もたれている大森は、あやうく拳を慄わせて自嘲の声をあげそうであった。
むろん、ZERO−ONE・MAXに活動を移して以来、このゲイ・ギミックの
男色ディーノとの試合は、なんとかして避けたかった。それは大森の潔癖がそうさせたのではなく
ごく普通の男の子としての大森の本能がディーノを避けたにすぎない。

295戦雲の夢 2:2006/02/23(木) 21:03:44 ID:O7eQSXS70
ディーノとの試合を遠ざけることがインディー化した自分を救うためのなんの
巧力ももっていないことを大森自身が知っていた。遠ざけようと近づけようと
現実に自分の下半身を弄びたいディーノと、このことをおもしろがって試合を組んだ
ZERO−ONE・MAX代表の中村と、それを嫌々、承知した大森との三人が、
なまぐさい世界を一つに造りあげ、さらにこの試合をこわすことができないでいるかぎりは、
この現実はインディーにかわりないことであった。

(たとえば、おれがだ。いま)

と、大森は赤コーナーにもたれながら考えた。
296戦雲の夢 3:2006/02/23(木) 21:17:04 ID:O7eQSXS70
(このまま試合を放棄してしまえばどうなる)

ぴくり、と花道の奥で試合をみていた中村の眉間が動いた。
この敏感な団体の代表は、大森の体から発したわずかの嫌悪感を感じとったのだ。
花道の奥から大森のそばへ近づくと

「客がこの試合をたのしみにしているみたいですな」

中村は、大森の気配を嗅ぐため客席の雰囲気のことを話しかけてきた。

「試合はやる」

大森は、それっきりだまった。

(試合を放棄することは、いまのおれを救うためになんの足しにもなるまい。
 試合放棄自体がインディーに身を落とした泥沼のなかでの仕わざだろう。
 かえって泥沼が深うなるようなものだ)
297戦雲の夢 4:2006/02/23(木) 21:31:10 ID:O7eQSXS70
同時に、中村の背から息がぬけた。大森がディーノとの試合に対する嫌悪感がなくなった
ことを感じたのだ。

(高山とくらべるると大違いになったな)

レスラーは、たれでもトップに立つ夢のために足をばたつかせている。レスラーの
苦悩のすべてはそこからうまれるものだと、師匠の馬場はいった。

(大勇猛心をもってトップに立つ夢をあきらめることだ。タイトルに絡まなくなるほど
 墜落したとき、はじめてプロレスラーとしての幅がうまれるのだ。が、臆病なレスラー
 にはそれができない。それならばフリーになることだ。フリーとなって一山いくらのレスラーへ落ちよ)
298戦雲の夢 5:2006/02/23(木) 21:45:08 ID:O7eQSXS70
大森の墜落先は、男色ディーノとの試合だった。このような色物との試合を、やり終えたとき、
ようやくプロレスラーとして一皮剥けると馬場なら言うであろう。しかし、

(おろかなことだ)

そのようなことで一皮剥けるためレスラーになったのではない、とおもった。

(が、一皮剥けるとはどういうものだろうか。考えてみれば、自分はレスラー
 として一皮も剥けてはいないのではないか)

それは妙な実感だった。大森は、あすなろ時代と大して変わっていない自分にはじめて
気がついたのである。

(なんということだ)

大森隆男といえば多くのプロレスラーのなかで男前の者であるといわれた。
299戦雲の夢 6:2006/02/23(木) 21:55:00 ID:O7eQSXS70
体格をいかした豪快な試合運びと卓抜したドロップキックの美しさをもってうまれた。
それがただ、若手時代と変わらないままにプロレスラーとして生きてきたにすぎないのではないか。

(おどろいた男だ。おれは)

自分をふりかえれば、見たこともない動物がそこにいるように思われた。

(おれはいったい何者だ。おれのレスラー人生の今後は、どう作りあげねばならないのか)

が、すでに、いまになって気づいても、すべてが失われている自分に、なにをするすべがあるだろう。


(完)
300お前名無しだろ:2006/02/23(木) 22:11:39 ID:O7eQSXS70
300達成、そして保守。
301お前名無しだろ:2006/02/23(木) 23:21:09 ID:20rN7LP60
久しぶりにかっこいい大森さんを見た。このスレでは名前返還。
302お前名無しだろ:2006/02/23(木) 23:24:40 ID:rYzEsHrc0
渋い。
303お前名無しだろ:2006/02/24(金) 08:29:42 ID:A3EjwNOd0
>>301
かっこいいか・・・?俺は泣けたけど。
304お前名無しだろ:2006/02/26(日) 00:33:58 ID:i8suGFG+P
捕手
305お前名無しだろ:2006/02/26(日) 01:25:19 ID:mRCwa4Nf0
うむむ、大森さんネタいいですね。哀しみがあって。
306お前名無しだろ:2006/02/26(日) 21:53:43 ID:hGVwOwPu0
(ばかな―――)
と、大晦日の永田は中尾とヒーリングの試合を見て、中尾が格闘技思想と
かけはなれた中尾の接吻による挑発でおきたヒーリングのゴング前の顔面パンチ
での反則勝ちに
(ああいった勝ち方があるとは)
と、おもうのである。

307お前名無しだろ:2006/03/01(水) 10:04:46 ID:LCky9hO2P
 プロレスごとき板のスレがこれほど保守されたことは、かつてない。
308お前名無しだろ:2006/03/01(水) 20:23:34 ID:g8d16G2L0
武蔵野国(東京都)有明(ありあけ)に野亜嶽(のあだけ)
とよばれる山がある。
[野亜嶽は、江戸のチベットやきに。」などといわれた。
まことに気になる土地で、二十余年来、そこへゆきたいと思いつつ、果たさなかった。
(中略)
野亜嶽は、ほとんど桃源郷ともいっていいような僻地であり、
古来、其処にたどり着けた旅人は、野亜嶽を知ることができた嬉しさから、
「野亜嶽は我知」(ノアだけはガチ)
と、叫んだという。
309お前名無しだろ:2006/03/01(水) 20:33:17 ID:SsQJ/+Gr0
>>308
民民書房w
310お前名無しだろ:2006/03/01(水) 20:58:21 ID:g8d16G2L0
その野亜嶽の中腹に、古びた仏像がいくつか安置されている

緑色の衣を纏い、静かに佇んでいる仏像は、
かつて四天王の筆頭として称されていた仏像である
が、
長く続いた乱世により、
水と脂を含み、膨み、
掘られた当時の、鋭利な姿は無残にも失われていた。

その傍らに一体、握り拳を作っている仏像がある。
一見、日の打ち所のない、日本仏像彫刻最高の作品とも思われるのだが、
この作品は、国宝、その他、一切の公的な評価を受けてはいない。

よく見ると、仏は打ち続いた戦乱の中で、夥しい傷を受けており、
特に、膝にいたっては、もはや原型を留めていない為である。

しかしながら、この仏が、市井の人々の間で最も愛され続けてきた仏であることも、
また事実である。
311お前名無しだろ:2006/03/02(木) 02:55:41 ID:lxQgBePk0
>>308>>3
誠、大儀である!
312お前名無しだろ:2006/03/02(木) 22:39:26 ID:CwjZySfo0
age
313お前名無しだろ:2006/03/04(土) 00:23:59 ID:ME7aWekh0
 『いい時間だった・・・』と、ふと考える時がある。今はどこにも
属さず報酬さえ貰えばリングに上がる浪人の身だ。だからこそ、
箱舟組の魅力を客観視する事ができる。

 箱舟組こそプロレス。と考え(本人は口外しなかったが)男気があり
義理堅い(これが不幸の元なのだが)組長・三沢光晴を頂点に実に
うまい組織ができていた。
 常にプロレス道を考え(道に反した者を血ダルマにした事もあった)その
道を邁進する副長・小橋健太。
 冷たい炎を持ち、団体の調和を考える事ができる(それを疎ましく
思う者もいたが)監察方・秋山準。
 天才、の一言では言い表せない閃き、受身を持つ一番組隊長・丸藤正道。
 常に向上心を持ち、団体内の地位を上げてきた喧嘩屋・二番組隊長KENTA。

 それらを火山と呼ばれる田上、老いて、なほ盛んな永源・百田
用心棒といわれる力皇・森嶋・杉浦といったレスラーが支える団体で
あった。

 『パーニングはヒットだったなあ・・・』、『秋山、呼んでくれ
ないかなあ・・・』なども、目の焦点も合わさず考えもしたが、どう
にもならない事は大森自身が一番わかっていた。箱舟局中法度である。


314お前名無しだろ:2006/03/06(月) 04:33:08 ID:9X9ZV8PR0
あげねばならない
315お前名無しだろ:2006/03/07(火) 18:08:57 ID:K5CW6uKT0
来る時を待ちながら、保守。
316お前名無しだろ:2006/03/07(火) 18:20:42 ID:IAJajkqv0
>>313
揚げ足をとるようで申し訳ないが,
バーニングではなくノーフィアーだと思われる。
317お前名無しだろ:2006/03/07(火) 18:23:06 ID:E2rn0KtLO
違うよ、大森さんが小橋を挑発するためにバーニングをパーニングって言ってウケタんだよ
318お前名無しだろ:2006/03/07(火) 18:28:24 ID:IAJajkqv0
>>317
嗚呼!見間違えていた。
そうであったか・・・・
切腹してくるorz
319城塞:2006/03/08(水) 02:37:16 ID:e90LgDDf0
(もはや、どういう絵も描きようがないな)
と、おもうと、奇妙なことに武藤敬司は、
恵比寿の正平寺に眠るジャイアント馬場のことなどを思い浮かべ、
鼻腔の奥が痛み、鼻水が流れ、始末のならぬほどに涙が出た。
考えてみれば、アメリカン・プロレスを信奉する武藤にとっては
猪木よりも馬場の方が好きなのである。
(猪木などは、力道山の亜流に過ぎぬ)
と、腹の底では見くびりきっている。非力道山的なゆき方をした馬場のほうが、
武藤の精神の琴線に高き響きを鳴るような気がするのである。

翌朝、再び元子から呼び出しが来た。
−すぐ参上する
と使者には答えたが、行く気がしない。
昨夜、寝入る前にこの男は
(いっそ、馬場の名誉のためにも、この団体を攻め潰してくれよう)
と、思い、気持ちがやっと鎮まったのである。
320お前名無しだろ:2006/03/09(木) 10:32:16 ID:cDef0Z990
落ちることは避けねばなるまい
321お前名無しだろ:2006/03/09(木) 20:33:19 ID:RBuYx00S0
保守
322尻くらえ孫市 1:2006/03/09(木) 20:48:17 ID:RBuYx00S0
「棚橋さん、棚橋さん」

中邑は棚橋のもとに駈けこんできて、

「タッグだ、はやくタイツに着がえて飛龍殺法継承者の腕前をみせてくれ」

といった。

「敵はたれだ」

と訊きながら、棚橋は、ファンの女をひざもとに組み伏せて揉んでいる。
三十代ぐらいの年増で、男を堪能するほど知った体らしく棚橋の太い指が
つぼに触れるたび小さい悲鳴をあげた。

「弘至、弘至、そこがこころよい」

「そうかや」

棚橋も、女がよろこべばうれしそうだ。

(馬鹿なやつだ)

中邑の、この急場だから内心おだやかではなかった。
323尻くらえ孫市 2:2006/03/09(木) 21:01:56 ID:RBuYx00S0
「真輔、敵はたれだ」

揉みながら訊く。

「まず、その女を去らせてくれ」

「いやいや、それはならぬ。この女は性根はわるそうだが体は、なかなかのものよ」

「背中の傷を増やすつもりか」

「否ンにゃ」

にこっと笑った。

「そうやすやすと刺されぬでのう」

(こいつ、どんな料簡であろうかい)

中邑は、汗が出てきた。

「棚橋さん、これは秘密であるが、あなたを見込んで打ちあけよう。今日の試合は
 ブックをやぶり永田・中西組を倒して一気に新日本の覇権をわれら若手世代が握る」

「ほう」

棚橋は女の顔をのぞきこんだ。
324尻くらえ孫市 3:2006/03/09(木) 21:14:00 ID:RBuYx00S0
「棚橋さん、どうかな」
「ほう」
と、棚橋は女の顔に、声を吹きかけた。いったい中邑の話をきいていたのかどうか。
「棚橋さん、なんとか返答してくれ」
棚橋は、女の顔から眼をはなさない。
「真輔、みろ、この女、いつのまにか仏相を帯びてきている。つぼつぼを揉んでいるうちに、
 本来の性悪がきえて、ほろほろと仏の顔になってきおったわ。茶入にもこういうことがある。
 賞でているうちに掌になじんで壺の相がかわることがあるものよ。
 かように面白いゆえ、おなごはやめられぬ」
325尻くらえ孫市 4:2006/03/09(木) 21:33:50 ID:RBuYx00S0
「棚橋さん、女の前にもうすぐ試合だ」
「真輔」
棚橋はいった。
「試合には出てやろう。ただしブックをやぶるかどうかとなれば、いまは決めかねぬ。
 しかし若手世代が新日本の覇権を握ることにかんしては、俺も賛成だ」
「ああ、ありがたい」
中邑は手をとろうとするのを、棚橋ははずして大きな掌をふり、
「お前、まだわからんか」
といった。
「なにが?」
「この女は、今日の試合相手の永田さんの嫁であるチエよ」
あっ とチエが逃げようとするのを棚橋は手をのばして、えりがみをつかみ
力まかせにひきすえた。
326尻くらえ孫市 5:2006/03/09(木) 21:43:36 ID:RBuYx00S0
「どうもただの女性ファンではないと思うた。ブックをやぶる、とあれなる真輔が申したとき、
 チエ、お前は顔色を変えた。太陽の天才児の眼はごまかされんぞ」
「ち、ちがいまする」
チエはもがいた。
「大方、永田さんに頼まれてファンを装いわれらの出方を探りにきたのだろう」
「ちがいまする」
「棚橋さん」
と、中邑はさすがに蒼ざめている。
「その永田さんの妻女とやらを、お渡しねがおう」
「ことわる」
と、棚橋はいった。言うなり、棚橋はチエの体を五、六間むこう、控室の外へほうり投げた。
327尻くらえ孫市 6:2006/03/09(木) 21:55:10 ID:RBuYx00S0
「棚橋さん、な、なぜ」
「女を傷めぬのが、おれの宗旨じゃ。あれを永田さんの嫁と気づかず、そこで
 痴れしれとしゃべっていたお前のほうがわるい」
「棚橋さんっ」
「待った。おれはブックをやぶるといったわけではない。チエを逃がすのがなぜ悪い」
(ちっ)
中邑は外へと、とび出した。
(なんと、いやな男だ)
中邑は他の若手や練習生とともに会場の要所要所を捜査したがついに見当たらなかった。

見当たらぬはずである。チエは、逃げるとみせて、となりの空いた控室へ隠れ、やがて棚橋のいる控室に戻ってきたのである。
328尻くらえ孫市 7:2006/03/09(木) 22:11:05 ID:RBuYx00S0
「おお、戻ったか」
棚橋は驚きもしなかった。
「永田さんに申し伝えるがよい。太陽の天才児はブックをやぶるかどうかは決めておらぬ、と――」
「し、しかし」
チエは、眼を嶮しくしていった。
「さっき弘至は、真輔の意見に賛成だ、と申されたではありませぬか」
「意見だけはな。しかしブックをやぶるかどうかは別だ」
「早う永田さんのもとへ帰れ」
「しかし、ようわたくしが永田の妻であるとお見ぬきなされましたな」
「以前、スポーツ新聞で新日本のキップをひとりで百枚も売り捌く永田の妻、というベタ記事をおぼえていたからだ」
と、棚橋は物憂げそうに足をあげてチエの腰をぽんと蹴った。
「帰れ」
ごろりとむこうへ寝返りを打った棚橋には、そんな無邪気な冷たさがある。
棚橋は、もうそこにチエがいるなどは忘れきっている顔であった。


(完)
329尻くらえ孫市 余談:2006/03/09(木) 22:14:07 ID:RBuYx00S0
永田さんの嫁の名前がチエかチカのどちらか迷ってしまいました。
一応、チエの方にしたのだが・・・間違っていたらすいません。
330お前名無しだろ:2006/03/09(木) 22:35:54 ID:JEuS/mOL0
オモロイ!
331お前名無しだろ:2006/03/09(木) 22:52:51 ID:wuxtOPNTP
>>322-328
職人GJ!!
332お前名無しだろ:2006/03/10(金) 01:09:32 ID:1fW254XX0
>>322-328
全米がワロタ
333お前名無しだろ:2006/03/10(金) 13:11:41 ID:Gt6OiAvG0
まさか孫市に棚橋をもってくるとは…
スゴイ
334お前名無しだろ:2006/03/10(金) 15:51:00 ID:Q0fHclr20
こんなにイカすキャラとして扱われたターナーは史上初ではあるまいか?
335お前名無しだろ:2006/03/10(金) 18:57:04 ID:mh6pL7A60
週プロ、ゴングの記事でいくら棚橋を褒めても何も感じなかったが・・・
>>322-328の文章にはシビレたぜ!
336お前名無しだろ:2006/03/10(金) 19:08:19 ID:mjGQCbsW0
尻啖え孫市
ttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061312421/249-6015295-5897140

主人公の[女好きは日本一]に爆笑
一度読んでみますw
337お前名無しだろ:2006/03/12(日) 01:42:32 ID:Cv52N2va0
>>322-328
主役はターナーというよか、永田さんの嫁か。
338お前名無しだろ:2006/03/13(月) 19:07:34 ID:7g2RHdeU0
司馬 アメリカのプロレスラーは、世界のどこにいても
   自分がレスラーであることに自信をもっていますね。
   気負い立つことなく、単独で平然としてもっている。
   メキシカンなども、単純にどの土地に住んでいても、
   よかれあしかれ、ルチャという人間文化の
   すべてを背負って平然としていますね。
   それがレスラーとしての威厳になるのでしょう。
   
   日本のプロレスは、ガチ幻想を背負いすぎていた。
   世界のどこにいても、ガチ幻想を背負い込むことで、 
   やっとレスラーの尊厳が保てた。
   それはおかしいわけで、そういうギミックやアングルがなくても、
   いちショーマンとして毅然たるものが
   プロレスラーにはなければいけませんですね。
   それがおっしゃるような自信でしょうね。
   
   「ノアだけはガチ」とそういうことで出来る自信じゃなくて、
   自分の技術と肉体についての正しい認識から生まれた
   毅然としたものが、プロレスラーになければならない。
   でなければ、薄よごれたポンチ絵のようなプロレス像から
   ぬけだせませんですね。
339お前名無しだろ:2006/03/13(月) 22:46:54 ID:ObW+Xja30
う〜む、本当に語ってそうだ
340お前名無しだろ:2006/03/13(月) 23:41:46 ID:bnOvv4N+0
>>338
突っ込み申し訳ねえ。

>「ノアだけはガチ」とそういうことで出来る自信じゃなくて、

「ノアだけはガチ」はレスラー側が発信した言葉ではないから
こういう場合はプロレス最強論を象徴していた言葉である
「キングオブスポーツ」とかの方が合うんでないかな。
341338:2006/03/14(火) 00:22:55 ID:mYmGIdL30
>>340
指摘サンキューです。
そう言われてみると、違和感のある言葉づかいだったかもしれん。
難しいもんだね。
342お前名無しだろ:2006/03/14(火) 00:30:55 ID:drAnPv+O0
いやー…普通の人は一々突っ込まないよそんなこと。
ノア信者って凄いわ。
343お前名無しだろ:2006/03/14(火) 05:07:33 ID:75YnNR/r0
前の文章にかけて合わせるなら、キングオブスポーツかストロングスタイルの方が合ってると思う。
プロレスの格闘技におけるガチ幻想を語ってるわけだから。
344お前名無しだろ:2006/03/14(火) 11:00:59 ID:F3p7gvLr0
>>340は単に言葉の使いどころに関する指摘でしょ。
確かに前後の文章が一致するには
キングオブスポーツやストロングスタイルじゃないと。
ノアだけはガチははじめネットから発生したフレーズで、
しかも格闘技に対するガチ幻想を意味してるわけじゃないし。
345お前名無しだろ:2006/03/15(水) 08:20:55 ID:sg2P6TfR0
余談だがageねばならない
346お前名無しだろ:2006/03/15(水) 08:38:39 ID:S7QBTncLO
文句を言うなら司馬遼風に言わねばなるまい。
347お前名無しだろ:2006/03/15(水) 08:54:13 ID:0ZX3s7x70
このようなネタスレに置いても空気を読まず世迷言を申す、
そういう偏執的なノア信者を揶揄する狙いで
「ノアだけはガチ」という言葉は出来たのだろう。

つまり、「ノア(信者)だけはガチ(の馬鹿)」という事だ。
348お前名無しだろ:2006/03/15(水) 20:45:38 ID:oKSyvuM+0
保守
349最後の将軍 1:2006/03/15(水) 20:59:03 ID:oKSyvuM+0
サイモンは疲れた。
これほどに奮闘しても、踊っているのはサイモンばかりであった。
新日本の社員たちはサイモンを、猪木の傀儡であるかのようにしか見ていなかったし、
頼れる存在ともいうべき坂口や藤波も、それぞれが複雑な事情を背景にしているために
サイモンと連れ舞をしてくれるほどにかるがるしくなく、所属するレスラーたちでさえ、
サイモンを無能(事実、無能ではあるが)のひとと見、新日本に見切りをつけるものもあらわれた。
サイモンは孤独であった。古来、これほど杜撰な資金管理で、これほど稚拙な会社運営で、
これほど社内の統制がとれてない会社を任された社長もいなかったであろう。
350最後の将軍 2:2006/03/15(水) 21:12:05 ID:oKSyvuM+0
しかも、プロレス界はその底流において、ここ数年間は、激しく動いている。
サイモンはその孤独な踊りをおどればおどるほど、そのつまさきからみるみる
砂がくずれてゆくようであった。
サイモンは、夜はかならず猪木の娘でサイモンの妻でもある寛子に伽をさせた。
この生真面目な愛妻家は、寛子と閨を倶にしているときだけ、単に肉体のぬし
というだけの自分になれたし、その意味でのみ、かろうじて孤独はまぬがれた。
寛子は、サイモンがときに感ずる団体経営のやるせなさを、そのからだ全体で慰めてくれた。
サイモンはこの妻にだけ、ふと自分の本音を洩らし、寛子を狼狽させた。
351最後の将軍 3:2006/03/15(水) 21:25:48 ID:oKSyvuM+0
「百策をほどこし百論を論じても、会社の実情を理解しようとしないものには勝てぬ」

とサイモンはいった。サイモンは、なにをいっても契約に応じない金本浩二の顔を思いだしていた。
金本がサイモンの提示する契約年棒をみれば「否」というのみならずレスラーの待遇向上を名目に
金本ひとりの子供じみた主張を、この経営難の会社に要求してくる。
その四十代の没分暁漢(わからずや)を相手に、サイモンが百策百論をほどこしてなおかつ敗北感を
感じつづけているのはどういうことであろう。金本の背後には退団してもフリーで食っていける自信と
いうものがあるにちがいない。
352最後の将軍 4:2006/03/15(水) 21:37:37 ID:oKSyvuM+0
自分勝手な―――としかサイモンにすればおもえぬあの金本は、その自信という大屏風の前に
どかりと腰をおろしている。サイモンはその前でさんざん提示した契約年棒に応じるように
説得してみせるのだが、金本は気むずかしい嬰児のように微笑ひとつしてくれないばかりか、
有望株のひとりである井上亘とともに退団をにおわし、金本自身のブログや
プロレスマスコミを使ってサイモンと新日本を批判した。金本は、あの手この手を使って
契約年棒のつり上げと自分の要求をサイモンに突きつけてくる。
353最後の将軍 5:2006/03/15(水) 21:46:54 ID:oKSyvuM+0
「会社の足許を見てくるやつにはかなわない」

と、人一倍会社の経営に四苦八苦している男だけに、このサイモンの詠嘆は肺腑の奥から
出たものであろう。黄金期とよばれた九十年代半ばの新日本からいえば諸事固陋で保守的性格の
金本浩二こそサイモンの座にすわりサイモンこそ金本の役割をすべきであった。が、
サイモンは悲痛にも――と彼はときにおもっている――新日本が倒産寸前のときに社長であった。


(完)
354お前名無しだろ:2006/03/15(水) 23:33:35 ID:zdnGmVpr0
いいねえ。
355お前名無しだろ:2006/03/16(木) 10:32:02 ID:ypwfQrt10
「職人の筆のみごとさよ」
356お前名無しだろ:2006/03/18(土) 02:11:20 ID:v+AAKPyP0
すげえ、全く不自然さがねえ……
357お前名無しだろ:2006/03/20(月) 07:14:46 ID:T2ud67Ih0
遼スレage
358歳月:2006/03/20(月) 15:30:46 ID:8EGffag00
「可哀そうな男たい」
 と、刺すようにいったことばが、石井の記憶によれば長州の最初のことばであった。
「この会場にいる三沢という男は、レスラーとはいえやせん。蛙たい。いったい何バ知っちょるか。
団体のたてかた、プロレスの方向、何も知っちょりゃせん。ただこんにち、ノアのいきおいを背後に
しておればこそ、多少はえらそうにみえる。こんな男に、プロレスのど真ん中がわかってたまるか」
 プロレスのど真ん中、という長州の得意のことばがこのときも出た。三沢がもしこの長州のののしり
をきけば、冷ややかにつぶやくであろう。さればおぬしがそれを知っちょるか、と言うにちがいなかった。
プロレスを真面目にやった実感があるのは三沢のほうであり、長州は他の新日本選手と同様、
適当にやってきた連中にすぎない。
 さらに、長州は叫ぶようにいった。
「おれが新日本に帰ったと聞けば、さぞこいつはおどろくだろう」
 石井智宏にすれば、このときの長州の言動の記憶ほど、後年おもいだすたびに悲痛におもわれた
ことはない。三沢は、長州の出戻りなどにはおどろかなかったのである。むしろ新日本と絶縁する
恰好な理由になったとほくそえんだはずであることは、石井智宏だけでなく天下のだれもが知った。
359巧妙が辻 その1:2006/03/20(月) 22:06:54 ID:EzcPhYa90
健介は思い切って
「IWGP選手権試合、見たか?」
と、きいた。
北斗は、はい、とうなずき、目をうつろにした。
「仕方がなかったのだ」
と健介はいった
「やむをえなかった。思い切ってやってみたところ、結果はよい。
あれで新日ファンは戦慄し、藤田の格の重さを思い知ったようだ。
北斗、考えてもみよ。塩試合を繰り返ししていればファンの不満はきりもなく出る。
あの様な試合をしたから藤田は総格に行けるのだ」
健介はくりかえしくりかえししゃべった
北斗はしまいには、
「おなじことばっかり」
と、笑ってしまったほどだ。
360巧妙が辻 その2:2006/03/20(月) 22:09:40 ID:EzcPhYa90
「北斗がなっとくせぬからだ」
「なっとくしております」
「おお、なっとくしてくれているのか」
「ええ、健介は馬鹿でいらっしゃるということだけは」
と、小さい声でいった。
健介はあきれた。
「俺が馬鹿だということをなっとくしたのか」
「仕方がございませんでしょう?プロレスラーとしての御器量がなかったのだ、
と北斗もあきらめました」
「ば、ばかな」
「新日本の幹部衆もそうでございます。せいぜい顎の機嫌をとるしか出来ぬ連中が、
新日本の運営をせねばならなくなったのですから、ファンが興奮するアングルなど
考えなれないのでございましょう」
「北斗、口が過ぎるぞ」
361巧妙が辻 その3:2006/03/20(月) 22:12:40 ID:EzcPhYa90
「さらば今日のような試合をこれからもお続けあそばしますか」
「これ、北斗」
「次のドームも。その次両国も。それが新しい新日本のやり方でしょう?
健介、どうぞ」
と、北斗はにつこりと笑った。
「北斗、何をいう」
「草間にそう申されませ。次の試合も胴締めスリーパーかけられたまま
3カウント奪取すると。その試合もそう、と。
それが新日本のやり方であると」
「そんなことが出来るか」
「ファンも同じでございましょう。新日本というのは団体がファンをえらぶのだと
ケロが申しております。
新日本が選んだファンの前で行うのであれば、あのような試合でもよろしいの
でしょう」
362巧妙が辻 その4:2006/03/20(月) 22:13:50 ID:EzcPhYa90
「北斗、もういうな」
健介は泣きそうな顔になった。
北斗が目をそむけたくなるほど無能な表情だった。
「申しませぬ。ただ、わたしども夫婦の半生の努力が、結局はこんな
試合をするしかなかったのか、とおもうと、なんのために今日まで生き
続けてきたのやら、悲しかったのでございます。
しかし、もう申しませぬ。申しても詮ないことでございます。」
「俺が無能だからか」
「早く申しますと、左様なことになります」
と、北斗は苦笑した。
363お前名無しだろ:2006/03/21(火) 09:22:49 ID:2/Dcaw+A0
>>358 >>359-362
お見事!
364お前名無しだろ:2006/03/21(火) 10:51:09 ID:d7IQd/aB0
>>359-362
原作終盤の名シーン(でもまず間違いなく大河ドラマではスルーされるだろうな)ですな。
やっぱプロレス界でこいつらやらせるならあの夫婦しか居なかろうて……
365お前名無しだろ:2006/03/23(木) 07:05:17 ID:q6aPkhmY0
ageねばなるまい。
366お前名無しだろ:2006/03/23(木) 12:08:32 ID:JAXZHvgJ0
健介北斗のつづきを! ドーム小橋戦から20周年興行で終わるつづきを!
367お前名無しだろ:2006/03/23(木) 21:00:44 ID:l3y180VR0
保守。
368峠 1(剛腕 対 世界標準):2006/03/23(木) 21:17:32 ID:l3y180VR0

「すでに試合時間は三十分でござる」

と、セコンドのKENTAがささやいた言葉に、同じくセコンドの秋山は二度うなずいた。

(膝は、大丈夫か)

とおもった。小橋のチョップの数は、つぎで百十七発目である。レスナーが小橋のチョップを
よけるようなことをすれば、せっかくの世紀の対決に水をさすのだが、レスナーも小橋とのチョップ
合戦に応じている。その胸肉の大部分が異様にあかく血膨れしているのはレスナーも
意地になってチョップ合戦に応じている証拠であろう。
小橋とレスナーのむこうにはセコンドの永田や棚橋といった新日本勢が叫び声をあげている。
客が、昂奮のあまりに足を鳴らしつづけていた。
369峠 2(剛腕 対 世界標準):2006/03/23(木) 21:36:18 ID:l3y180VR0
チョップがしだいに強くなるようであり、その両選手の意地をかけたチョップ合戦が
途切れてしまうことを客はおそれた。

(しかし、小橋さんのほうがレスナーに圧されつつある)

と、秋山はおもっている。やがて小橋は、このチョップ合戦に耐えられなくなり
膝から崩れおちた。レスナーは勝機と見るや小橋の股に腕をさし入れ担ぎ上げた。
「判決」である。相手を肩車で担ぎあげて回転をくわえて顔面から突きさすように
マットへ叩きつける荒技である。

「この技をくらった苦しさほどのもの生涯ついに味わったことがない」

と、蝶野や中邑が口をそろえて述懐していたほどに、この技の威力は壮絶をきわめた。
370峠 3(剛腕 対 世界標準):2006/03/23(木) 21:55:11 ID:l3y180VR0

(やばい)

と、途中、セコンドの秋山がたちあがったほどであった。

「ぐあっ」

と、大声でリング上から小橋の声が聞こえてくる。これが判決という技であり
泉田あたりの不入ドムとは、まったくちがう。不覚にもレスナーの判決を小橋は、
くらってしまった。レスナーは小橋に覆い被さりカウントをもとめた。が、天は、
小橋がこのままマットに沈むことを赦さなかった。レフェリーがスリーカウントを
叩く直前に小橋は、かろうじて右肩をあげた。レスナーは信じられない顔で小橋を
見たが、すぐには小橋の攻撃をゆるさない。もう一度、判決の体勢に入ったが、今度は、
小橋が力いっぱいにもがいたために崩れてしまった。小橋は、鬼のような形相で拳を握りしめ
ロープへ走り、その反動を利用してレスナーへ襲いかかった。
371峠 4(剛腕 対 世界標準):2006/03/23(木) 22:08:11 ID:l3y180VR0

その剛腕、疾風のごとし

という。文字どおり黒いつむじ風のような勢いでレスナーの咽元を襲った。

――乱発はするな。一発で仕留めろ――

というのがラリアットの創始者スタン・ハンセンの言葉でありラリアットの要訣であった。
いっさい無言で打ちこんだ小橋のラリアットにレスナーは、いきおいよく後頭部から落ちた。
手応えはあった。並のプロレスラーなら、いまの小橋のラリアットで勝負がついただろう。が、
相手は世界標準とよばれるプロレスラーである。レスナーは立ち上がった。

「小橋さん、いまだ」

と、秋山が叫んだ。
372峠 5(剛腕 対 世界標準):2006/03/23(木) 22:26:57 ID:l3y180VR0
立ち上がったとはいえレスナーは小橋のラリアットによって意識がとび、目が虚ろである。
秋山の叫びに小橋はうなずくと、レスナーの背後にまわった。剛腕をレスナーの股にさし入れると、
そのまま股ごしからレスナーの片方の手首を掴んだ。小橋はこの体勢から一気にレスナーを
横担ぎに担ぎ上げて静止した。小橋の顔の孔という孔から汗や涙が夥しく吹き出ておりその顔は
もはや怒っているのか、泣いているのかすら判別すらできなかった。客はこの小橋のいまの顔を
美しくおもってみていた。やがて小橋はレスナーの後頭部をマットに叩きつけた。
小橋の奥の手である「改良型の青春の鉄槌」であった。
373峠 6(剛腕 対 世界標準):2006/03/23(木) 22:42:56 ID:l3y180VR0
小橋は、ふらつきながらレスナーに覆い被さりありったけの力をふりしぼってレスナーの両肩を押さえた。

「ワン、ツゥ−」

と客は叫び、レフェリーのカウントスリーがマットを力強く叩いた。日本武道館に集まった客がいっせいに立ち上がり、
勝利者を祝福する紙テープがあちこちでリングに投げ込まれ、リング上は虹のような色どりになった。
新日本のセコンド勢はレスナーの敗北を、にわかにみとめることができずにいたが、やがて永田と棚橋がジャージを脱ぎ捨て

「NOAHに死ににきたぞお」

と口々に叫びつつリング上におどりこんだ。この乱闘で新日本勢は小橋の勝利の余韻を掻き消すであろうとみたのである。

「殺せ、殺せ」

と連呼しながら煽る客もあった。
374峠 7(剛腕 対 世界標準):2006/03/23(木) 22:50:24 ID:l3y180VR0
小橋のセコンドについていた秋山やKENTA、そのほかのNOAH勢もリング上におどりこみ、
この雰囲気がよめない新日本勢を追い散らした。
日本武道館に集まった客のよろこびようはむしろ異様であった。みな口々に、

「小橋、小橋」

とリング上の小橋をたたえた。泣きながら叫んでいる客もあった。


(完)
375お前名無しだろ:2006/03/24(金) 00:52:24 ID:zNSDnET60
>>368->>374
純粋に感動した・・・・・・
376お前名無しだろ:2006/03/25(土) 04:48:55 ID:gBS+VIT6O
乙!
やっぱ小橋が主人公だとはまるなあ。
377お前名無しだろ:2006/03/25(土) 05:44:46 ID:wGAMckR80
いやー、いいわ。
泉田の不入ドムワロス
378お前名無しだろ:2006/03/26(日) 21:31:27 ID:fnqVtd960
落としてはなるまい。
379お前名無しだろ:2006/03/27(月) 23:35:03 ID:Arb+lcZI0
あげねばなるまい
380お前名無しだろ:2006/03/28(火) 00:54:10 ID:9PeSoU5P0
(このスレ続く)
381お前名無しだろ:2006/03/29(水) 22:08:25 ID:h07c1Jxm0
ここでageねばなるまい
382お前名無しだろ:2006/03/30(木) 23:27:52 ID:1GOyHVPx0
まだage続けよというのか
383お前名無しだろ:2006/03/32(土) 02:19:51 ID:UysWmvDj0
ただageるばかりであった
384坂の上の雲みたい 1:2006/03/32(土) 03:42:26 ID:ftDK584f0
「君は重箱のすみをせせるような男だ」
と、U時代の高田が田村をそのようにからかったことがあるが、
田村のこの性癖は全員に知られていた。

この点、おなじ元レスラーの金原弘光に酷似しているが、
金原とのちがいは、金原は極端な精神主義で、
田村は偏執的なほどの規律好きという点にあり、いずれもリゴリズムという点ではかわりはない。
あるいはプロレスラー(Uインター)のいくつかの性格の型にこの種の系列があるのであろう。
たれかの言葉に、精神主義と規律主義は無能者にとっての絶好の隠れ蓑である、
ということがあるそうだが、 田村と金原についてこの言葉で評し去ってしまうのは多少酷であろう。
かれらは有能無能である以前にレスラーであるがために栄進した。
時の勢いが、かれらを栄進させた。
栄進して将領になった以上、その職責相応の能力発揮が必要であったが、
かれらはその点で欠けていた。
欠けている部分について金原は自閉症的ボヤッキーになった。
みずから精神家たろうとした。
金原はメインエベンターに昇進してから人変わりしたように精神家になったのは、
そういう自覚があったからであろう。
金原がみずからを閉じこめたのに対し、
田村は他人を規律のなかに閉じこめようとした。
385坂の上の雲みたい 2:2006/03/32(土) 03:43:28 ID:ftDK584f0
山本喧一が、Uインターに入ったとき、
田村潔司は道場主で、選手寮の寮長であった。
そのころ田村は選手寮にちかいところに住んでいたが、
かれは当時の定刻道場から退出しても、
そのあと自宅の窓から双眼鏡で校舎をのぞくのが日常の作業になっていた。
かれにとっては門下生は規律の中の囚人であり、
囚人どもが行儀よく自習しているかどうかをスパイ同然の方法で見張ることが教育であった。
かれは高田夫人に対しても同様であった。
その夫人が襖をあけて出入りする動作をじっと見、
すこしでも不行儀なふるまいがあると、客の前でも大声で叱った。
徹底した他律者であった。
386坂の上の雲みたい 3:2006/03/32(土) 03:45:23 ID:ftDK584f0
リングス以降かれはKOKで右腕に負傷し、
このため勝つためのVTはほぼやったことがなく、プロレスの練習ばかりしていた。
ジム経営者になってから運営資金のためにプロレスやったことがあるが、
興行宣伝パンフ「U-STYLE Axis」と陽刻された金文字の看板が
傷ついて光沢を失っているのを発見した。重大な発見であった。

かれはすぐ広報の某をよびつけ、大いに叱った。
その叱責の論理は規律主義者が好んで用いる形式論理で、
「この文字はおそれ多くも最新型UWFのお手本に成るものである」からはじまる。

「しかるをなんぞや、この手入れを怠り、このように傷を生ぜしめ、
ほとんど文字を識別しかねるまでに放置しているとは。
まことに不敬の至りである。さらにひるがえって思えば
本ジムはUWFの遺伝子を代表すべき唯一のスタイルであるにもかかわらず、
その表紙に傷を生ぜしめるとは、ひとりU-STYLEの不面目ならず、
わがUWFの恥辱であり、プロレスの恥辱であるということは、
わが赤いパンツの頑固者級の国辱である」
と、説諭した。
387坂の上の雲みたい 4:2006/03/32(土) 03:52:48 ID:ftDK584f0
この愚にもつかぬ形式論理はその後のU-STYLEに遺伝相続され、
U-FILE CAMPにあってはジム育ちの選手にいたるまでこの種の論理を駆使して門下生を叱責し、
みずからの権威をうちたてる風習ができた。

逆に考えれば田村潔司という器にもっとも適した職は、
口だけ番長のハンチクがつとめる道場主(コーチ)であったかもしれない。

なぜならば、田村はUWFを標榜しながら、Uのためになにひとつ創造的な仕事をしなかったからである。
その点については、
彼を賞めるために書かれた「田村潔司 疾走する魂」(1999年発行・クエスト 刊)ですら、
やむなく、「彼は創造的の人というよりも寧ろ整理的の人であった」と、
鈴木健(焼き鳥屋「市屋苑」店主)のことばをかかげている。

(完)
388お前名無しだろ:2006/04/02(日) 10:47:58 ID:YMT8Cm9AO
アゲネバナルマイ
389お前名無しだろ:2006/04/02(日) 18:38:23 ID:bIFvfeLS0
>>387オモロイ
ところで坂の上の雲って大昔に読んだきりで
忘れてもうたけど田村のモデルはやっぱり
山県あたり?
390お前名無しだろ:2006/04/02(日) 18:45:06 ID:e3C4wpE/0
>>389
寺内正毅らすい。
391お前名無しだろ:2006/04/04(火) 21:13:39 ID:UCmXsMW/0
まだ保守せよというのか
392お前名無しだろ:2006/04/05(水) 12:42:56 ID:649akyuS0
いつまでも保守ageを続ける覚悟である
393お前名無しだろ:2006/04/05(水) 16:18:08 ID:uw8nt4ay0
「北斗の人」を読んでみた。師匠との反目→破門、新団体設立、
オールドスクール対ニュースクールの団体の威信を賭けた対抗戦…。なんかプロレスチックで
面白かった。俺にはここの職人さん方のようなネタを書くのは無理だけど。
394北斗の人より:2006/04/05(水) 20:37:47 ID:bX58B7TR0
「他流試合はむずかしいものだ」
とミルコは、このころには、レスラーを相手にするむずかしさという
拳(剣)外の知恵を肥らせはじめていた。
(かけひきが要る)
というのである。
まず、勝たねばならぬ。
が平凡に勝っても相手はなかなか引きさがらないため、
めだつほどの鮮やかな勝ちをとらねばならない。
ところが、
めだつほどに勝ってしまい、永田さんの名誉を根こそぎうばい、
恨みを買ってしまった。
395北斗の人より2:2006/04/05(水) 20:46:23 ID:bX58B7TR0
ヒクソングレイシーなどもその自著のなかで、
「自分は一生に六百余度の試合をしたが、いちども敗れたことがない」
といっているが、このヒクソンでさえ、試合をする場合、
相手の力量、癖を研究した上、かならず勝てる、という相手でなければ、
リングに上がらなかった。
(それは卑怯ではない)
と、この物わかりのいいクロアチアの若者はおもっている。
永田さんは自分よりも弱い、と見きわめられるだけの目が、
すぐれた総合格闘家であるための資格のひとつなのである。
396お前名無しだろ:2006/04/06(木) 05:21:30 ID:6Ksx5fdO0
技量はないからせめて保守を続けているわれわれに、たまに>>394-395みたいな職人さんからの
プレゼントがあったり

誘い水の>>393もDJ!
しかし、題材提示されてから早いな、腕に覚えのある職人というものは・・・
397便乗して北斗の人:2006/04/06(木) 17:30:47 ID:9Lam45NB0
「如何」
 ヒョードルはいった。すでに拳先を上げて上段に取り、いつなりとも裕志の頭を粉砕できる
態勢にある。
(なぜ負けたか)
 裕志にはわからぬ。
「如何」
 と、ヒョードルは降伏を督促した。「参った」といわねば、ヒョードルは勝負の定法により
裕志の頭をこなごなに打ちくだくであろう。
「如何」
「どうとでもされよ」
 裕志はその姿勢のままいった。口惜し涙がぽろぽろと流れ落ちた。
「泣くな」
 ロシアの格闘家はいった。
「そのほうはIWGPの王座を得ているのを幸い、さんざんに総合をけなし
 プロレス最強を吹聴しておるそうな」
(ち、ちがう)
「その増上慢の鼻が折れたであろう。のちのち反省のために心を折ってやる」
398便乗して北斗の人:2006/04/06(木) 17:31:49 ID:9Lam45NB0
 あっと紙一重で身をかわしたが、ヒョードルの氷の拳はさらにうなりを生じて
裕志を襲おうとした。裕志は四肢を縮めて背中を向けた。ヒョードルはさらに
踏みこんでくる。裕志は亀のようにころび逃げながら
(こ、こいつ。試合ではない。拷問だ)
「どうだえ」
 ヒョードルはそれが面白いらしい。まるでなぶるように踏みこんでゆく。
 やがてヒョードルの拳がぴしっと裕志の顔を撃った。更に撃たれる前に裕志は
タートルポジションを取ったため顔が不細工になるほどの激しい打撲だけで事はすんだが、
それ以上顔に受けていたら頭蓋骨はくだけていたであろう。
 ヒョードルは去った。
 裕志は、激しい疲労と屈辱と顔の痛みのために蹲ったまま立てそうにない。
やがて這うようにして会場を出、控え室にゆき、タオルをもって顔を冷やした。屈辱はある。
しかし憎悪はなかった。
 その屈辱が憎悪にかわったのは、インタビューを受けてからであった。裕志ははれあがった顔の
激痛にたえかねて寝床の上を転々としながら、
(おれの生涯の目標はきまった。技術を工夫してそれをもってプロレスに専念してやる)
 とおもった。
399さらに北斗の人:2006/04/06(木) 18:20:32 ID:7uK0qdPr0
馬鹿げている、といえば、流儀の根本ともいうべき技の名称からして
怪奇なものだ。
 新日本プロレスには、
 サンダーデスドライバー
 という技の名がある。サンダーデスというのは英語で言う稲妻と死のことで、
轟音ともに地上に落ちて人間を絶命させるという。
(どんな技か)
 とプロレスファンもはじめは目をかがやかす思いだったが、要するに持ち上げて落とす技だと
わかって失望した。
 技の内容に失望したのではない。こういう誇大な名称をつけたがるプロレスラー特有の
精神がプロレスファンには愉快ではなかった。
 こんな名称をつける感覚の底には、人間としての浅薄さ、物欲しさがあるとしか思えない。
 昭和から平成にかけて、新日本プロレスは宣伝屋でもあった。異装で入場したり、闘強導夢、
馬鹿になれ夢を持て、といったたぐいのとほうもない大会名をつけて観客を集めようとする者が多く、
自分の来歴についても、真剣勝負で柔道金メダリストや元ボクシング王者に勝ったとか、
熊を殺した空手家と引き分けたとか、プロレス最強を証明したとか称していた者が多い。
 そういう感覚の団体にいるため、技の名称も強烈な宣伝要素をともなっている。
サンダーデスドライバーのほかに新日本プロレスの技にどんな名称があるかといえば
 ナガタロック、テンザンツームストンドライバー、アナコンダフック、シャイニングケンカキック、
蝶天魚雷、蝶天クラッシュ……
 といった類である。泥絵具で描かれた地獄極楽図でもみるようなあざとい名称ではないか。
 しかもこれらの誇大な名称には、名称だけあって内実のない技もある。
(宣伝用の技だ)
 ということも、時代が進むにつれプロレスファンにはわかるようになった。真剣勝負で
試みてみて、力学的に使えない技なのである。
400400:2006/04/06(木) 18:24:16 ID:q1lYO8jv0
400
401お前名無しだろ:2006/04/07(金) 17:05:45 ID:kRg0JcTZ0
>>397-399
御見事、というより他はない
402お前名無しだろ:2006/04/07(金) 19:59:43 ID:8mynucRp0
保守
403歳月 1:2006/04/07(金) 20:09:51 ID:8mynucRp0
上井文彦がその色黒の顔をあげた。顔が大きい。両眼はことさらに鋭さを消しているが、
全体が一個の炎をおもわせるような顔である。

「永田のことは、いましばらく事を荒立てぬようにしたいとそれがしはおもいます」

顔は村上にむいている。村上に話しかけている。視線をわざと前田日明にむけないのは、
前田との対決の熱度をすこしでも緩めようとしているのであろう。が、前田は容赦しなかった。
すぐさま上井にむかっていった。

「なぜか」

理由をきいた。上井はやむなく前田に視線をまわさざるをえなかった。
404歳月 2:2006/04/07(金) 20:20:52 ID:8mynucRp0

「貴公は」

と、上井は前田を直視した。

「永田にシュートをしかけろと申されるが、もしシュートなどをしかけたなら新日本はおろか
 他団体やフリーの選手から危険視される。それらの協力が得られなくなり興行ができなくなる。
 まさにBMLの大事、そのような事態がおこれば、いまのままでも家賃を支払うことができない
 村上と柴田が哀れである」

「そうなっても旧リングス残党を使えば興行はできる」

と、前田はいった。水かけ論である。

村上が口をはさんだ。
405歳月 3:2006/04/07(金) 20:34:11 ID:8mynucRp0

「上井さんにおたずねしたい、尊公の申される今後のBMLの行く末とは、どういう計画のものでござる」

「まずスポンサーを見つけるつもりでござる。計画の詳細を話してもよろしゅうござるが、
 しかし本会の議事ではありますまい」

「相わかりました。それでスポンサーを見つけるまでに、きょうから幾日かかります」

「さて一年」

「きょうから一年のちにスポンサーをつけるわけでござるな。そのあと大体のめどが
 できるまで幾日かかります」

「いやスポンサーがつきさえすればBMLの仕上がりは幾日も要しませぬ」

「さればスポンサーがつきさえすれば永田へのシュート試合にご賛成なさるか」

村上は上井の議論の弱点をついた。上井は沈黙した。
406歳月 4:2006/04/07(金) 20:46:08 ID:8mynucRp0
が、かといって村上は上井を攻撃するつもりではなく、上井・前田の両方を一挙に救済できるような
折衷案を出すつもりであった。旗揚げいらい村上は仲裁者としてつねに折衷案の提案者でありつづけた。
上井は答えない。かれはあたまから征亀論に反対であるのに、スポンサーを見つけたあとに永田へのシュート試合
をみとめるようなことは当然、承服できない。

「されば」

と村上はやや得意気にいった。

「スポンサーを見つけるのを、きょうから一年後ということに決めて、そのあと
 永田にシュート試合をしかけるということにご同意なさればいかがである」
407歳月 5:2006/04/07(金) 20:58:45 ID:8mynucRp0
上井は瞼をあげた。異論を唱えようとした。が、当の上井よりも大声で村上案に反対したのは
以外にも前田であった。

「それはいかん」

と、前田は、わめくようにいった。

「のばされぬ。一年も延引できぬ」

村上はこの事態にぼう然として仲裁者としての壇をおりざるをえなくなった。
このばあい、前田は自身の感情と新日本の現状をかんがえての反対意見であろう。
いますぐに永田にシュートをしかけ叩きのめしてやりたい。と、おもうのと同時に
一年も時間をおけば、標的と定めたいまの新日本は、その経営状況からして、
いつ倒産してもおかしくはない。と、前田はおもっている。
408歳月 6:2006/04/07(金) 21:14:05 ID:8mynucRp0
村上が沈黙することによって上井と前田は正面から衝突せざるをえなかった。

この間小さな珍事がもちあがった。柴田勝頼がいきなり立ちあがったのである。
(―――柴田が)
と、柴田を知りすぎるほど知っている上井でさえ不審におもった。
柴田はいまでこそ前田のプロレス観に共感しているが、しかし表面は村上とともに中立である。
みなはいっせいに柴田をみた。村上は、柴田が事態収拾の発言をしてくれるものとおもい、
ほのかに喜色をうかべた。が、意外であった。

「みなさまに申しあげます。それがし、つごうあって本日はこれにて退席いたします」

村上は頬を赤くした。自分の期待がはずれたことを、自分に対して羞恥を感じたのかもしれない。

409歳月 7:2006/04/07(金) 21:24:49 ID:8mynucRp0
柴田は、席を離れようとした。前田はふりかえった。すさまじい目であった。

「柴田。どこに行くのだ」

「いや、都合がござって」

「その都合とは?」

「……横浜にて」

と、柴田はいった。

「プロレス誌の記者に招かれておりますので」

「なんの用か」

前田の巨体が、柴田にむかってねじれている。その表情の嶮しさが柴田を圧迫し、
これほど生意気な男でさえ唇の色を失った。柴田の声は不覚にも奮えた。

「中華街で記者と食事をかねた取材を受ける用がありますので」

「だまらんか」

と、前田は怒号した。
410歳月 8:2006/04/07(金) 21:36:15 ID:8mynucRp0

「いまBMLの大事を議していると申すのに、中座するとは何事か。事の軽重、当否がわからぬか」

馬鹿、と最後につけくわえた。柴田は、ゆくももどるもならず片頬を痙攣させながらたたずんでいる。

「席に、もどってこい」

と前田はいった。柴田はやむなく数歩すすみ席についた。すでにふてくされていた。顔がくろずみ両眼が
光り屈辱と怒りをおさえかねている。
一座が、息を小さくした。が、上井だけは視線を虚空にあげ、他のことを考えつづけている表情で、
この眼前の事件を無視した。
411歳月 9:2006/04/07(金) 21:47:46 ID:8mynucRp0
その上井へ前田はいどみかけるように言葉をつづけた。

「なんどもくりかえすが、いまのままではプロレスは衰退していくばかりである。
 そのためには、新日本とのあいだに本気で殴りあって顔面を腫れあがらせ、
 本気で関節を極めあって骨を折るような、かつて、それがしが率いていた
 第一次UWF 対 昭和の新日本のような対抗戦を、もういちどおこなわなければ
 二度と世間を巻き込むプロレスブームはおきぬ。永田へのシュート試合は、
 新日本を対抗戦に誘いだすための手段である」

村上は目を伏せた。上井は、唇をわずかにひらいた。
412歳月 10:2006/04/07(金) 22:01:28 ID:8mynucRp0
低い声で、

「いまの新日本にシュート試合をしかけても貴公の望むような対抗戦まで発展することはない。
 それどころか黙殺されるだろう。それにBMLはプロレス界の調和のために存在せねばならぬ」

「上井さんナ、それは本気でいっているのか、あんた新日本に出戻るつもりじゃあるまいな」

と前田はつい上井を罵り、さらに口早に言葉をかさねた。

「なるほど貴公の申すプロレス復興とは、どこぞのように狂言師くずれのチョップ一発で、
 プロレスラーがスリーカウントを取られるようなプロレスをやりたいらしい。
 まあ、そのやりかたでも世間の注目を、集めることはできよう」
413歳月 11:2006/04/07(金) 22:16:54 ID:8mynucRp0
上井も昂奮して声を大きくして前田を罵った。

「貴公の他人や現状を省みない過激なコメントや手段のために、ふたつのUとリングスを
 解散させてしまったことを、おわすれになったか」

「なんとおおせある」

解散という語に、前田は度をうしなうほどに昂奮し、いきなり拳をあげ、
はげしく卓子をたたき、

「おひかえなされ。それがしに泣きつくように頼ってきたのは貴公でござろう」

と叫んだ。たれかが仲裁すべきであった。が、この両人を仲裁できるほどに威望のある人物は
このBMLにはいない。
いままでこの議を沈黙して聞いていた船木だけが、かろうじてその位置にいた。
村上は休憩を宣告してくれるよう船木にささやいた。船木は、頷くと、ゆっくり立ちあがった。

「みなさん、ひとまず休憩にしましょう」

と、船木はいった。
414歳月 12:2006/04/07(金) 22:25:45 ID:8mynucRp0
両人は沈黙した。ほどなく上井は吐息をついた。が、前田は凝然としてすわったままである。
やがて前田は立ちあがり、上井のそばにゆき、
―――休憩の前に申しあげたい。この征亀論がつぶされるようでは、それがしはBMLの顧問に
とどまっておれぬ。辞して、ひとりでプロレス復興をするつもりである。
という意味のことをいった。
その語気からみて宣言であるというべきであろう。宣言とすれば、BMLへの決別の宣言であった。
415歳月 13:2006/04/07(金) 22:36:48 ID:8mynucRp0
その宣言が結果としていかにおそるべき驚異をBMLにもたらすかを、上井たちは知っていた。
このプロレス・格闘技の両方をまたにかけた大物がBMLを見かぎればBMLが掲げたプロレス復興の
実現も、むずかしくなるばかりか、前田がいるということでBMLがいままで多くのファンや関係者
から一身に浴びてきた期待を裏切ってしまうことになるであろう。

「とにかく、しばらく休息しましょう」

と、村上は、あわてていった。


(完)
416お前名無しだろ:2006/04/07(金) 23:29:50 ID:rW74sueB0
>>403−415

第二次UWFとリングスの解散についての取材がやy不足していると感じはするが、
設定は見事だと言えるであろう
417お前名無しだろ:2006/04/07(金) 23:43:26 ID:kbc0ooGH0
マス擁護派の中には「知人が8ミリで総裁の異種格闘技戦を見た」
「映像は残っているけど公開してないだけ」なんてことを言う人がいるけど
それは100%嘘だな。だってこんなバリバリ編集した恥ずかしい映像を牛殺しの証拠なんて
言いきれる神経の連中が、そんなものがあるなら持ち出してこない訳ないじゃない。
418お前名無しだろ:2006/04/07(金) 23:45:02 ID:kbc0ooGH0
誤爆。
419お前名無しだろ:2006/04/08(土) 01:59:21 ID:z0HvForO0
>征亀論

  ハゲワロタ
420お前名無しだろ:2006/04/08(土) 09:27:26 ID:KgD3uB4X0
すげえ。
このスレ始まって以来の大作、乙でした。
421お前名無しだろ:2006/04/08(土) 22:40:58 ID:oZj9vR1/0
保守し続けてよかった。
小橋、大森さんネタ以外でこれほどの作品が出てくるんだもんな、最近は・・・。
422関ヶ原:2006/04/09(日) 00:43:18 ID:0F7Z4YqR0
「何の話だ」
ポール・レベック――WWEに置いてはHHHと呼ばれる男は、
鶏肉の白身を口に入れ、顔を上げると、両目をHBK、ショーン・マイケルズの方へ向けた。
ショーンは、食事に手を付けていない。
「はめる」
と、みじかく言った。
誰をはめる、ということは言わずとも通じることである。
WWFのブレット・ハートとの20年契約の破棄を切っ掛けとした一連の問題は、
既にバックステージにも噂が広まっている。
しばらく、ショーンはだまってHHHの反応を見た。
「よせ」
HHHは、低い声でいった。
「止める事だ、会場――いや、業界に異常な混乱を起す事となる」
「しかし」
「わかっている。ブレットが王座を渡さんというておるのであろう。しかしながら、あの男が今現在王者あることは間違いない。
 策略により無理やり王座を奪ったとすれば、それは紛れも無く簒奪であり、天下の庶民はショーンの側にはなびくまい」
それに―と、HHHは言い足した。
「WCWの力が、強過ぎる。既にWWFを圧倒しているといっていい。今ブレットをはめて、それがWWFの暴慢として庶民に受け取られれば、只でさえ不利な形勢が、抜き差しならぬものとなろう」
余談ではあるが、実情はそうはならなかった。
WWFその物であるビンス・マクマホンは、この後起こった事件を切っ掛けに自身をリアルな裏付けを持つ悪役として仕立て上げ、業界の形勢を逆転させることに成功する。
423関ヶ原:2006/04/09(日) 00:44:33 ID:0F7Z4YqR0
ブレットが、自らの故郷であるカナダ、モントリオールでは負けたくは無い―しかも相手がHBKなら尚更―と思っている。
これはポールでも察していよう、とショーンは言い、
「いまにしてブレットをはめなければ、かの者はWCWに記録としては王座のまま移籍する事になる。
 となれば、WCWはいよいよ増長し、その事を盛んに喧伝するであろう。
 これを許せばついにはWCWは業界の頂点としてその地位を揺るぎ無いものとしてしまう。いや、HHH、おぬしはそうだとは思わぬか」
「左様、俺はそうではない」
HHHは気にも留めず、小さく笑った。
むろん、ショーンの言う事も理解できる。だからと言って、
ブレットを―その故郷であるモントリオールの地ではめる、等という飛躍はできない。
「むりだ。だから、お前が奴に頭を下げろ。俺と共に、ブレットの憎悪を沈めよう」
「いや、おれにはできぬ」
と、ショーンは、同じ言葉をもう一度繰り返した、
HHHは不審に思った。
無論、ショーンが、ブレットがショーンを憎むのと同じくらいの憎悪をブレットに抱いていることは知っている。
だが、ショーンの語意に不審を持った。
「まさか、ショーン、お主…」
と、思わず声をあげ、上体を傾けた。
(まさか、既にビンスと密約を結び終えているのではあるまいな)という意味を言外に籠めたのである。
――まさか。
というHHHの感情は、それほどの大事を企てる以上はビンスなどと相談する前に自分に当然相談があるはずだ、と思ったのだ。
そこまでの友情で自分たちは結ばれているとHHHは信じている。
424423修正:2006/04/09(日) 00:48:20 ID:0F7Z4YqR0
ショーンは、だまっている。
HHHは更に言葉を尽くして説き、説き終わって。「この事態を収束させる為の方策としては」と言葉を新たにした。
「なんとか、ブレットを説き伏せるよりは他無い。あやつはショーンを嫌っているが、WWFには少なからず愛情は残っているだろう。
 お主が頭を下げ、ビンスが説得すれば、あやつとて王座戦で負けることを同意するはずだ」
「それはできぬ」
「なぜだ。はめる、などと不穏な事を考えるより、両者憎しみを捨て、後腐れなく仕事をこなすことこそ、
v最も良い道ではないか」
「考えがちがう」
と、ショーンは、HHHの真面目で優等生的な発言を一つ一つ論駁し始めた。
ブレットが、自らの故郷であるカナダ、モントリオールでは負けたくは無い―しかも相手がHBKなら尚更―と思っている。
これはポールでも察していよう、とショーンは言い、
「いまにしてブレットをはめなければ、かの者はWCWに記録としては王座のまま移籍する事になる。
 となれば、WCWはいよいよ増長し、その事を盛んに喧伝するであろう。
 これを許せばついにはWCWは業界の頂点としてその地位を揺るぎ無いものとしてしまう。いや、HHH、おぬしはそうだとは思わぬか」
「左様、俺はそうではない」
HHHは気にも留めず、小さく笑った。
むろん、ショーンの言う事も理解できる。
だからと言って、ブレットを―その故郷であるモントリオールの地ではめる、等という飛躍はできない。
「むりだ。だから、お前が奴に頭を下げろ。俺と共に、ブレットの憎悪を沈めよう」
「いや、おれにはできぬ」
と、ショーンは、同じ言葉をもう一度繰り返した、
HHHは不審に思った。
425関ヶ原:2006/04/09(日) 00:49:25 ID:0F7Z4YqR0
無論、ショーンが、ブレットがショーンを憎むのと同じくらいの憎悪をブレットに抱いていることは知っている。
だが、ショーンの語意に不審を持った。
「まさか、ショーン、お主…」
と、思わず声をあげ、上体を傾けた。
(まさか、既にビンスと密約を結び終えているのではあるまいな)という意味を言外に籠めたのである。
――まさか。
というHHHの感情は、それほどの大事を企てる以上はビンスなどと相談する前に自分に当然相談があるはずだ、と思ったのだ。
そこまでの友情で自分たちは結ばれているとHHHは信じている。
ショーンも聡い男だ。HHHのその言葉の裏の感情を察し、首を垂れ、
「すまぬ」
といった。すぐ顔をあげ、
「そこまでの談合が、ビンスとのあいだで出来上がっている。おれはおぬしに相談すべきであったが、おぬしが止めることを恐れた。
 ともかく、矢は弦を離れてしまった。いまわしがこの密約を破綻させればビンスは激怒することだろう」
「………」
HHHは、唇を閉じた。息をひそめ、沈黙を続けはじめた。
表情こそわからなかっが、この男なりに深刻な打撃をうけていることは、この異様な沈黙でも知れる。
「ポール、おれと共に起ってくれ」
と、ショーンは言ったが、HHHは何の反応も示さない。
しずかに沈黙を続け、やがて鶏肉がすっかり冷え切った後、ぽつりと、
「自滅するぞ」
と、ショーンに言うような、自分自身につぶやきかける声でいった。
後に言う、モントリオールの悲劇により、HHHはブレットの妻に呪いのような言葉を吐かれ、
ショーンに至ってはブレットをはめた男としてカナダの会場で常に罵声を浴びる事となる。
426お前名無しだろ:2006/04/09(日) 05:32:35 ID:oaGnbv0F0
>>422-425
すげえ・・・アメプロ分からない俺がWWE勢力図を勉強してみようかなって気になったよ・・・
ショーンとHHHがサムライってたたずまいで異常にカッコヨス
427お前名無しだろ:2006/04/09(日) 08:00:36 ID:nAImt0iF0
かっこいい話だと思うけど、アメプロに侍言葉は似合わねえな・・・。
428お前名無しだろ:2006/04/09(日) 15:00:57 ID:jPopF3sc0
そのミスマッチを楽しむのも乙なものかと。
429お前名無しだろ:2006/04/09(日) 21:23:43 ID:wcG/RwIk0
職人さん方にお尋ねしたい、司馬小説の中でレスしやすかった小説と
レスを作るのに苦労した小説を、おしえて下さい。
430お前名無しだろ:2006/04/09(日) 21:35:26 ID:clYMs8Tv0
>>422-425
お見事。できれば刑部が家来と話し、三成への荷担を決心するあの名シーンを是非。
>>429
男っぽい小説は楽ですね。燃えよ剣、翔ぶが如く、峠etc
難しいのは、やったことないけど『坂の上の雲』でしょうな。
431お前名無しだろ:2006/04/10(月) 17:12:18 ID:XvQ1m9OK0
>>430弟がピーナッツぽりぽり食って
アホかこいつと思われるところは職人さんも
やりたがるんだろなw
432峠(1):2006/04/10(月) 20:30:47 ID:wyYjzRL40
そこは別室である。
「NOAHの秋山がつかった、めずらしい技をおみせしましょう」
と、永田と親しくしている某プロレス記者は鍵をあわせていたが、やがて大きくドアをあけた。
なかは、暗い。埃とかびと、様々な種類の雑誌が、机一面に散らかっている。
「ビデオをみましょう」
と、記者はビデオデッキの再生ボタンを押した。
永田は、そのビデオ映像を凝視すると秋山と志賀が試合をしていた。
そして、記者は、秋山が志賀にとどめをさす瞬間で映像を一時停止した。
「リストクラッチ式エクスプロイダーかな」
と、永田はつぶやいた。
433峠(2):2006/04/10(月) 20:45:22 ID:wyYjzRL40
しかしリストクラッチ式エクスプロイダーにしてはその形があまりにも奇妙であった。
「リストクラッチ式の技です。しかしただのリストクラッチ式の技ではありません」
(そのとおり、ただのリストクラッチ式の技ではない)
記者がビデオの一時停止を解くと、永田は、息をのむ思いでその技をみた。
垂直に頭部を落とすものであり、その形態はエクスプロイダーよりも
デスバレー・ボムにやや似ているようであるし見方によっては、まったくの別物にもみえる。
秋山がその異様な技をつかったあと無惨にも志賀はスリーカウントを取られ起きあがることができない。
「技の名前は?」
「左様、スターネス・ダストαです。まだ未公開ではありますがβ、γもあると聞いています」
434峠(3):2006/04/10(月) 20:56:59 ID:wyYjzRL40
進化したリストクラッチ式エクスプロイダーというべきであろう。
もともと、このスターネス・ダストαは、小橋がハワイで考案した対秋山専用の技、
ダイヤモンド・ヘッドに対抗するべく秋山が即興で考案した技である。
即興の技らしくスターネス・ダストαという名前も思いつきで名づけたらしい。
「この技は、何回ほど、試合でつかわれたのか」
「さきほどビデオでみせた志賀との試合につかったのみで、その後は一回も、つかわれてはいません」
結局、秋山は小橋に、この技をつかうことはなかったという。
435峠(4):2006/04/10(月) 21:06:47 ID:wyYjzRL40

「本当に一回しか、つかわれていないのだな」
「左様、一回きりです。」
「パクろう」
永田は無造作にいったが、しかしからだじゅう、びっしょりと汗をかいていた。
どういう性質の汗か、自分でもわからない。
(この技が、おれの新しいフェイバリット・ホールドとなる)
という感動が、全身をかけめぐっていたことはたしかである。
この技があれば、ふたたびIWGPに返り咲くことも可能であった。
「ほかにも三沢の変形式エメラルド・フロウジョンや田上の秩父セメントを収録したビデオテープがあります」
「ぜんぶ、パクろう」
永田はいった。
436お前名無しだろ:2006/04/10(月) 21:31:45 ID:AWkezJUN0
>>432-435
最高です

>「ぜんぶ、パクろう」
>永田はいった。
噴きすぎて死ぬかとwww
437お前名無しだろ:2006/04/10(月) 21:38:49 ID:/pzq9tq+0
>>432-435
( ゚д゚)・・・。



(゚д゚)・・・。


光景が目に浮かびまくり・・・orz
438お前名無しだろ:2006/04/10(月) 23:06:30 ID:fGVWPJHp0
>>432-435
ハゲワロタ
439お前名無しだろ:2006/04/11(火) 00:52:43 ID:snCO2VKS0
>>432-435
遂に、最高傑作が生まれたw
440お前名無しだろ:2006/04/11(火) 11:12:30 ID:t8TorYv20
>>435
b GJ!久々に爆笑できたよw
441お前名無しだろ:2006/04/11(火) 20:27:05 ID:HwmQdEDG0
>>435
永田さん男らしいw
442お前名無しだろ:2006/04/13(木) 11:15:47 ID:dn1maBpO0
ひさびさに保守である。
443お前名無しだろ:2006/04/14(金) 00:49:11 ID:RlfloXLg0
しばらくぶりに覗いてみたら、三戦板のスレが落ちていた…
444お前名無しだろ:2006/04/14(金) 02:05:30 ID:HlVz9LOQ0
司馬遼太郎の文体はまどろっこしいぞ、と親友のドナルド・キーンがいっていた。
さすれば、小橋の結婚について健介はいかに思っているのだろうか。

保守するほかあるまい。
445この国のかたち:2006/04/14(金) 17:14:46 ID:PlWA6qfp0
永田VSミルコを観戦したあと、なんと愚かな団体のファンであったことかと思った。
(昔はそうではなかったのではないか?)と思ったりもした。
昔というのは、ゴッチが現役の頃やら、VS国際、VS極真の頃のことである。
やがて、ごく新しい、VS UWF、VS Uインターのことなども考えた。
いくら考えても、PRIDE,K-1登場後のダラ幹(だらけた幹部)たちのように、
プロレスリングそのものを賭けものにして賭場にほうりこむようなことを
やった人々がいたようには思えなかった。
446この国のかたち :2006/04/14(金) 17:40:07 ID:PlWA6qfp0
永田VSミルコを観ることによって感じたさまざまなものを、
あらためて形象としてとりだし、司馬的文体でもって書いてみることにした。
私は、新日はたとえばFMWやパンクラスやハッスルなどとくらべて
特殊なプロレス団体であるとは思わないが、ただ全日やNOAH、あるいは王道系のプロレス団体よりは、
多少、言葉を多くして説明の要るプロレス団体だと思っている。
書きながら、語りかけている相手として、中学時代、一緒にプロレスを観に行った友人を思ったりした。
447竜馬がゆく@:2006/04/15(土) 07:31:28 ID:wN1SadwUO
瞬間、半月形の肉片が、飛んだ。ミルコのわざのすさまじさもさることながら、致命傷を受けつつも、なお肉を削るまでの膝蹴りを受けえた藤田の気塊は尋常ではない。
削ったいきおいでミルコの膝は流れ、流れて藤田の前頭部にさらに深くめり込んだ。
藤田は、ようやく崩れた。くずれつつ、
「亀君、グローブはないか」
と、叫んだ。亀とは永田の変名大口亀之助のことである。
448竜馬がゆくA:2006/04/15(土) 07:40:59 ID:wN1SadwUO
この場にいたってもなお永田を変名でよぶ配慮をしたのは、藤田の意識が明確であった証拠であろう。以上も以後も、すべて試合の翌々日に死んだ永田の記憶による。
永田にもグローブをつける余裕がない。短いタイツしかない。新日特製、無地青色で、ひもはついているものの、タイツというよりブリーフのみじかさである。これを履いてミルコの蹴りと渡りあったが、後頭部に傷をうけ、ついに倒れ伏した。
わずか数分、気絶していたらしい。しかしすぐ息を吹きかえした。このときミルコがひきあげるところであった。
449竜馬がゆくB:2006/04/15(土) 07:52:58 ID:wN1SadwUO
ほどなく藤田も、よみがえった。この気丈な男は、全身にわが血をあびながらすわりなおしたのである。
永田は、顔をあげ、その藤田を見た。藤田はバッグをひきよせ、ファスナーを開けてわがグローブをじっと見入った。
「残念だった」
思えば、そうであろう。猪木門下の逸足として豪名を天下に轟かせた青春をもちながら、警官同然のミルコに不意をおそわれ、しかもパウンドさえ使えなかったことをおもうと、無念やるかたないにちがいない。
450竜馬がゆくC:2006/04/15(土) 08:04:15 ID:wN1SadwUO
「裕ノ字、手がきくか」
と、藤田はたずねた。永田は伏せながらうなずき、「ぺい」と答えた。
利くなら這ってリング下の新日のセコンドをよべとでも藤田は言いたかったのかもしれないが、永田のほうが自分より重傷とみたらしい。
藤田は自分で這い、ロープ下に這いすすみ、エプロンの際まで行った。
「高橋、医者をよべ」とリング下に声をかけたが、その声はすでに力がうせ、下までとどかない。藤田はロープをつかみ、すわりなおした。
永田も這って、藤田のそばにきた。
451竜馬がゆくD:2006/04/15(土) 08:17:12 ID:wN1SadwUO
藤田は、外科医のような冷静さで自分の額をおさえ、そこから流れる体液を掌につけてながめている。白い脳醤がまじっていた。
藤田は突如、永田をみて笑った。澄んだ、太虚のようにあかるい微笑が、永田の網膜にひろがった。
「裕ノ字、おれは脳をやられている。もう、いかぬ」
それが、藤田の最後のことばになった。言いおわると最後の息をつき、倒れ、なんの未練もなげに、その霊は天にむかって駈けのぼった。 (完)




…無差別 GP、期待しております。
452お前名無しだろ:2006/04/15(土) 10:20:24 ID:9Iva787yP
大口亀之助ワロスwww
453お前名無しだろ:2006/04/15(土) 11:35:01 ID:wN1SadwUO
グローブの部分に我ながら無理がありました…
なんとか「刀=小橋の豪腕」にならぶ比喩を探してみたいです
454お前名無しだろ:2006/04/15(土) 18:29:25 ID:AZ8yW8920
亀の字を勝手に殺すなw
455お前名無しだろ:2006/04/16(日) 20:11:15 ID:G7++ylf10
保守
456播磨灘物語 1:2006/04/16(日) 20:22:45 ID:G7++ylf10
おなじ日々が飯塚の上にある。
時を経るにつれてメインから遠ざかっている。
最近では前座での試合が多くなり、ときには有望視される若手に対する負けブックを
ひきうけるようになっていた。

(ともかくも解雇されずに)

と思う一念でプロレスをつづけていた。
ともすれば、このままプロレスを辞めてしまいたい気分がある。
その気分には後悔がまじっていない。
後悔というのは、後悔という大きなエネルギーが発生するだけの対象物への
魅力が必要なのであろう。
457播磨灘物語 2:2006/04/16(日) 20:36:13 ID:G7++ylf10
新日本内で自己主張するわけでもなく、いわれるがままに試合をこなしている飯塚にとっては

(ともかくも解雇されずに)

と、ねがいながらプロレスをやっていくのが精いっぱいだった。


そいうときに、飯塚の変わりばえしない境遇に重大な変化が発生した。
練習生が道場の掃除をしていたときに、一枚の写真を発見して飯塚に、わたしたのである。
JJ時代のころの若い飯塚がうつっていた。
入団して以来、飯塚はフロントからいわれるがままプロレスをしてきた。
地味な役割を自分がやることを当たり前だとおもっていた。
ましてIWGPなどに関心が往くことなど、まずなかった。
458播磨灘物語 3:2006/04/16(日) 20:48:11 ID:G7++ylf10
しかし、いま飯塚の目の前にあるJJ時代の写真は、いまの飯塚にとって若いころの自分と
そのパートナーである野上が、まるで新世代のプロレス界を担うかのような選手に思われた。
飯塚は、プロレス人生でJJジャックスを無理矢理にフロントから組まされていたこの時期ほど
つよい嫌悪を感じたことがなかった。
しかし、いまの飯塚の目にうつるピンクの派手なコスチュームを纏っているその者たちは、
ファンの歓声のなかで会社の期待を浴びつつ、わくわくと呼吸をしているようであり、
さらにいえば、いまの飯塚に対して、頑張れ、と天の信号を送りつづけているようでもあった。
459播磨灘物語 4:2006/04/16(日) 20:57:16 ID:G7++ylf10
飯塚は、どちらかと言えば神の存在を信じてはいない。
しかしこの写真が神の贈り物であると思う以上に、ごく自然な感動が湧きおこってしまっている。
飯塚という生きた自然物が、写真にうつる若い自分から励まされているという感じであり、
その感動が重なり重なって、そのことに馴れてから、

(IWGPをめざしてみるか)

という気持ちになった。気持ちが固まると、飯塚の心には燃えるような闘志が湧いていた。
この日、飽くことなく飯塚はJJ時代の写真をながめつづけていた。
460播磨灘物語 5:2006/04/16(日) 21:06:53 ID:G7++ylf10
夜、長州が、

「飯塚、きょうもアレ恃むからな」

といった瞬間、飯塚は弾かれたように起きあがっている。夢であった。
しかし夢とも思えないのは、この夢が、いつも飯塚が長州の命令で負けブックを
ひきうけている現実を再現したかのような夢であることであった。
こういう夢をみてしまうという以上、JJ時代の写真をみて湧きおこったIWGPへの挑戦という
目標自体が、いまの自分には無理であるということを飯塚は、あらためて思いしらされた。


(完)
461お前名無しだろ:2006/04/16(日) 21:33:20 ID:LtcNtIIa0
>>456-460
地味だけど切ないわ・・・
題材といい主役といい、新機軸がまたひとつ
飯塚のはかない夢物語、堪能させていただきました

おみごと!のひと言に尽きるわ
462お前名無しだろ:2006/04/16(日) 21:52:40 ID:Ytz3+HGT0
>>456-460
なんかしんみりした。good job...!
463お前名無しだろ:2006/04/16(日) 22:58:00 ID:7uDOW0UW0
せつねぇ〜
464お前名無しだろ:2006/04/18(火) 00:22:07 ID:xdS96msb0
ふたたび職人が降臨するまで忍のひと文字である
465お前名無しだろ:2006/04/19(水) 00:12:16 ID:OhDg2PMX0
以下余談だが、
散歩の途中、興味深いスレを見つけた。
ここの住民ならば理解してくれるかと思い、
スレ違いながら紹介してみる。


映像の世紀のガイドライン 第五集
ttp://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1134151200/l50
より
金沢「現役中にプロレス団体4つ潰したって本当ですか?」
長州力「ばかげたアレ(伝説)のひとつだな ああ 命をアレする(縮める)ぜ」
金沢「ごもっとも」
長州力「団体4つはクソタワケになる」
金沢「当然ですね」
長州力「お前だってそんなうわさ信じてないだろ?」
金沢「ええ…でも本当はいくつ潰したんですか?」
長州力「3つ!」

―― 長州力と金沢記者



466お前名無しだろ:2006/04/20(木) 21:01:05 ID:bC56B4BN0
自然、sageることとなる。
467お前名無しだろ:2006/04/21(金) 03:32:58 ID:SaOSGnkt0
だが、ageねば落ちるというのもまた人の世の理である。
468お前名無しだろ:2006/04/22(土) 10:31:15 ID:h+pWUC0QP
捕手
469お前名無しだろ:2006/04/23(日) 01:39:39 ID:mPY6VMIl0
守り抜かねばならないものがあるのだ
ゆえに保守age
470お前名無しだろ:2006/04/24(月) 20:20:49 ID:brWJudiu0
保守
471お前名無しだろ:2006/04/26(水) 08:16:26 ID:9+5BiYjU0
止まっている。
このスレのことだ。
472お前名無しだろ:2006/04/26(水) 20:33:52 ID:xX4c8eWg0
age
473お前名無しだろ:2006/04/26(水) 20:59:06 ID:dVdX51USO
アゲ
474お前名無しだろ:2006/04/28(金) 06:40:12 ID:Z9yiwP2wP
ageねばならぬ
475包丁が辻:2006/04/28(金) 23:38:06 ID:vMuoPePR0
棚橋は、背筋が寒くなっている。
Hとのことはほんの一時の過ちのつもりでいたのだが、
Hのほうでは想いつづけているという。
気の重くなるようなはなしである。
「まあ、わしはくだらぬ男だ。そういう男もいた、
ということで忘れてくれるほうが、より有難い」
「そうは参りませぬ」
と、Hは目をほそめた。
月光のせいか、凄艶といえるほどの眼の表情であった。
「なぜそうは参らぬ」
「殿方には一時の浮気であっても、おなごのほうでは
それが生涯である場合が多うございます」
「おどすものではない。わしには、大事な彼女がいる」
「お仕合わせでありましょうな」
「まあ、そうだ。結婚もする」
Hは沈黙した。
476包丁が辻:2006/04/28(金) 23:39:15 ID:vMuoPePR0
「冷たい」
「そういうものだ。わしにはわしの世界がある。
こわされては、西も東もむけなくなってしまう」
「弘至さま。おなごはこわいものでございます」
「H、お、おどすものではない。
わしはそなたにどれほど悪いことをした。
そなたの体を抱いただけのことではないか」
「それが男」
Hは、いよいよ眉を細めた。
「ほんの出来ごころだったともうされるのでございましょう。
おなごはそうは参りませぬ」
「どうせよ、というのか」
棚橋は、月光の中に浮かんでいるHの姿がこわくなってきた。
(報いだ)
と、汗が流れた。婚約者との誓いを破った報いであろう。
(もう生涯、おなごに出来心はもたぬ)
背中を向けてしまっている。
テレビの上では、時計がすっかり一分を回っていた。
477お前名無しだろ:2006/04/29(土) 00:50:52 ID:oXcQ6xkp0
10レス連続保守カキコの実質死亡寸前スレに再び職人が!
>>475-476GJ!
タイトルからヤラれました。わろた。
久々に職人の腕前を堪能させていただきました。眼福眼福。
478お前名無しだろ:2006/04/29(土) 11:53:49 ID:aNJPzU5L0
タイトルにワロタ
479お前名無しだろ:2006/04/30(日) 02:32:13 ID:nLtqlFEs0
再び粛々と保守の日々。
480お前名無しだろ:2006/04/30(日) 17:03:18 ID:6jNXWePX0
上げねばならぬよ、と言う言葉に息を呑む暇もなかった。
スレは上がる。
そのことを思うと周りを睥睨しながら進まねばならぬと気づく。
しかし。
それ以上のことは何もない。
481お前名無しだろ:2006/04/30(日) 18:49:48 ID:YQOLbrzR0
これほどまでに華奢なスレがいままであったであろうか。
(俺が守ってやる)
と、自然に481はこのスレをageていた。
482お前名無しだろ:2006/05/01(月) 13:36:36 ID:FR6k4GHU0
ageコメントもなかなかおもろいな
483お前名無しだろ:2006/05/01(月) 20:21:44 ID:5F6QU2Wz0
余談age
484お前名無しだろ:2006/05/02(火) 12:45:29 ID:RVEUwt3P0
「今申したはずだ。スレ住民がスレに用がありとすれば、ageにゆくだけよ」
485お前名無しだろ:2006/05/02(火) 18:16:07 ID:vE0QQdDJ0
(なるほど)
住人達は声をひそめてageた。
486お前名無しだろ:2006/05/03(水) 10:38:01 ID:N3sCYTKO0
ふるふる、dat落ちはいやじゃ
487お前名無しだろ:2006/05/03(水) 12:58:33 ID:QCQ1aKma0
スレに書き込む者は既に無い。
このスレを消費してきた幾人かの男達は今は最早行方も知れぬ侭に、只じっと息を潜めてこのスレの行末を見守るばかりである。
事此処に至って尚且つ、このスレを死守仕様と云う人間が居たならば人はその者を何と呼ぶであろうか。
彼の時代にこの様な言葉が在ったとは思えない。しかしそれでも、この様な者は何時の時代でもこう呼ばれたのではないだろうか。
損得を顧みず自らを供する漢。すなわちプオタと。
488お前名無しだろ:2006/05/03(水) 14:03:28 ID:0m6fmNBL0
>>487は何が言いたいのか、>>488は考えた。
みじろぎもしない。
道行く人が気味悪そうにひそひそ話をしながら通り過ぎていくが
そのことを気に留める様子もない。
しばらくして、ひとしきりあたりを見回しながら、
何事もなかったようにまたageた。
489お前名無しだろ:2006/05/04(木) 14:09:24 ID:vJLb9Iv+P
(職人は、まだか)
 と、名無しがageた。
490お前名無しだろ:2006/05/05(金) 17:02:57 ID:vULUzAwLO
このage続く
491筒井○隆:2006/05/05(金) 18:03:43 ID:7b4EJxED0
長州力は狂っていた。
自分で自分が「狂っている」と自覚できるくらい
狂っていた。
朝起きると糞をかけた。あたり構わず糞をかけた。
まんべんなく糞をかけるとけけけと笑う。それが毎朝の
日課だ。
以前は健介という下男がいてその後始末をしてくれていたのだが、
最近はとんと顔を見ない。健介はすでに彼の元を去っているのだが
狂っている彼はわからない。いや、わからないふりをしているのかもしれない。
わからないふりをしているのかどうか、はたからみると全くわからない。
492お前名無しだろ:2006/05/06(土) 11:55:46 ID:r8LNtcqT0
保守
493お前名無しだろ:2006/05/06(土) 14:01:18 ID:YbQt40FS0
さて、長州。
494十一番目の志士 1:2006/05/06(土) 16:27:12 ID:gUh91/6e0

「話は龍ちゃんから一切きいている」

三沢はいった。話とはサイモンが今度、新日本の社運をかけた両国大会の目玉カードとして
レスナーの持つIWGPに小橋が挑戦者として出場してほしい、と蝶野を仲介役にして小橋個人に
いってきたらしい。

「新日本をたすけてやりたいのか」

小橋はうつむき、足元をみつめ、だまっていた。三沢はかまわずに言いつづけた。

「大きな料簡ちがいだぜ」

声が、低い。三沢のいうところ、小橋にあたえられている天職はNOAHで試合することにあり、
新日本をたすける役目ではない。言い終わって三沢は太いのどを激しくふるわせた。
笑っている。
495十一番目の志士 2:2006/05/06(土) 16:41:38 ID:gUh91/6e0

「いまのNOAHには新日本を見殺しにすることが大事だ。NOAHはプロレス界の盟主になるため
 不動の地位を築きあげている。そのため新日本は見殺しにせねばならぬ。
 たしかにレスナーはプロレスラーならば一度は、たたかってみたいと、思わせるほど尋常なやつではない。
 おぬしを魅了したように万人に傑出したプロレスラーだ。それはわかっている。
 おぬしと試合をやれば年末の東京スポーツ新聞のプロレス大賞のベストバウト部門の受賞は確実だろう」

「では、なぜ見殺しにします」

「蝶野正洋も、そうだぜ」

三沢は瀕死の新日本を一人で支えている蝶野の人気、風格、頭脳をみとめている。 
496十一番目の志士 3:2006/05/06(土) 16:55:28 ID:gUh91/6e0
新日本にバーター条件を突きつけて小橋を貸すかわりにNOAHにも蝶野を貸してもらいたい
と言っておけば次の日本武道館大会にどれほど役に立つかわからない。

「しかし見殺しにせねばならぬ。あすに有能かもしれぬが、こんにちのNOAHにあっては毒物だからだ。
 いま、プロレス界は百世に一度の秋である。唐土でいう革命のときにある。
 NOAHの発展をはばむ者は毒物として見殺しにせねばならぬ。新日本を見殺すことは、
 あたらしいプロレス界を生むことでもあるからだ」

三沢は息を休めず「それとも」、と言い重ねた。

「NOAHでの試合に厭きたかね」
497お前名無しだろ:2006/05/06(土) 16:58:12 ID:O30N4VrR0
前田VSプライドで頼む
498お前名無しだろ:2006/05/06(土) 16:59:12 ID:tUfLnE8p0
>>497
職人の邪魔をすなっ
499十一番目の志士 4:2006/05/06(土) 17:08:01 ID:gUh91/6e0
さらにつづけた。

「物事に厭きたやつは、論が多いものさ。心の火がもえているときは屁理屈はいわない。
 疲れて心気が萎えてくると、言葉数が多くなってくる。お前がそうさ」

「いや」

小橋は苦笑し、三沢をみつめたが、三沢のいうことばがあたっていなくもない。

「ラリアット。かつ、ラリアット。なおもラリアット。それが天が命じている小橋建太の職だ。
 馬場さんをみろ。SWSが崩壊したときは天龍を見殺し、それに追従したプロレスラーを見殺しにした。
 その者達は当時の全日本に毒物だとみたからであり、馬場さんはそれを見殺すことを天命だと信じた。」
500十一番目の志士 5:2006/05/06(土) 17:19:16 ID:gUh91/6e0

「小橋建太は馬場さんが天龍を見殺しにしたから全日本のトップ選手に抜擢され、やがて四天王の称号を得たのだ。
 いま新日本に無用な情をかければ、NOAHを中心とした、あたらしいプロレス界は来ぬぞ」

三沢は、それっきりだまった。小橋をみつめ、やがていった。

「次の日本武道館大会にそなえてトレーニングをしてろ」

小橋はやむなくたちあがった。
道場に入ると、小橋はくるくると着衣をぬぎ、スパッツ姿になると、ぬぎすてたものを
道場のすみに蹴り送り、バーベルをあげた。
しかし、やる気が沸かない。
501十一番目の志士 6:2006/05/06(土) 17:33:47 ID:gUh91/6e0
三沢の言葉はつねに人を酔わせるものをもっており、小橋ならずとも誰しもがつねに、
どういう場合でも血の泡立つような昂揚を感ずる。今度もそれを感じた。が、今度は下地に
抵抗があったせいか、酔うことができず、いわば悪酔いにおちこんでしまっているらしい。
気配で潮崎豪が入ってきたことを知った。小橋は振り向きもせずにリングにあがった。
こういうときには若手と身の溶けるほどにスパーリングでもして集中するほか、身の始末の仕様がない。

「来い」
と、小橋はいった。潮崎は照明を消した。

(なんのつもりだ・・・)

そう小橋は、おもったが潮崎を怒鳴る気にはならなかった。
502十一番目の志士 7:2006/05/06(土) 17:47:21 ID:gUh91/6e0
暗闇の中で小橋と潮崎はスパーリングをはじめた。
剛腕をのばして、指をからませ、お互いの胸をぶつけたとき、その大胸筋の感触で、
これは潮崎豪ではないことを知った。準である。
腹筋のあたりを、こまかく波だたせている。忍び笑っているのである。

「なぜだ準!」

「忘れさせないために」

と秋山準はいった。忘れさせぬ、というのはNOAHのために、試合をしているという
小橋自身の立場を忘れさせぬために三沢が秋山を道場へよんでくれたと、いう。

「今度の一件は、小橋さんが直接断ってくるように、と三沢社長が申されました」

よもや小橋さんともあろうお人が辞退なされますまいな?と小声でいった。
小橋は無言で秋山のバックに回った。秋山はそれを小橋の返答とみて、バックを取りかえした。


(完)
503お前名無しだろ:2006/05/06(土) 17:56:53 ID:tUfLnE8p0
新日本の落日が切なし(;_;)
504お前名無しだろ:2006/05/06(土) 18:06:22 ID:/KexNm380
:gUh91/6e0スゲーなーw
旧プヲタの本領発揮w
505お前名無しだろ:2006/05/06(土) 18:32:06 ID:/nB+PCkzO
桜庭和志でひとつ頼む
506お前名無しだろ:2006/05/06(土) 18:49:19 ID:fAGDoB3K0
の青田が多いスレだな
507モンゴル紀行1:2006/05/06(土) 20:01:13 ID:HVTDC9XX0
いよいよ出発という荷ごしらえのいそがしい夕に、歳上の友人がきた。
元来が長っ尻だし、それにさほどの用事もない様子だったから、
早々に帰らせるため、今からプロレスだ、といってみた。
友人はそういうことでたじろぐ男ではない。ゆっくりと茶碗をとりあげた。

かれとは少年のころから友達だったので、
当時の私のプロレス好きをおぼえてくれているはずだった。
「じつはプロレスをみにゆくんだ」
といえば帰るだろうと思い、そういった。
そのときかれは茶碗ごしに私の顔をじっとみて、
「プロレスって、いまもやってるの?」
と、いった。
508モンゴル紀行2:2006/05/06(土) 20:03:43 ID:HVTDC9XX0
かれにすれば、そんなジャンルも選手たちも、
はるか歴史的存在で、いまの世に在りようもなく、
たとえば力道山、シャープ兄弟などの活躍したころの
影絵のような印象の世界に組み入れられているのだろう。

そういえば、私もその程度の認識しかないかもしれない。
さきにふれた夢想少年のころ、自分のこのえたいのしれぬ夢想の群れを
何によって総合していいかわからず、いっそプヲタになって
プロレスに取り憑かれてみようかと思ったときに
ひどく荷が軽くなったような実感がある。

そのときも、プロレスをすこしでも知っていたわけではない。
むしろ知識がないからこそ、自分の夢想を総合する代用観念になったわけだし、
その観念で昂奮することもできたのである。
509モンゴル紀行2:2006/05/06(土) 20:07:20 ID:HVTDC9XX0
たとえば柔道ならまずかった。
なまじい、柔道なら中学校あたりで体育の授業などして体験することができるし、
それにオリンピック競技という知識などもあって、想像が小さくなってしまう。
そこへゆくとプロレスは、リングの上をパンツ一丁で駆けまわっているという
大光景のほかは、すべてとりとめもない。
だからこそ番組名や会社名でありながら、
少年の観念の代用になりうるのである。

もっともおとなになってもプロレスを見つづけていると
このジャンルを日常みている人数が、
世界で、ちょうど大阪市の人口ぐらいしかいないということを
知ったとき、覚悟していたとはいえ、ちょっと気持ちの悴れる思いがした。
いま、友人から、プロレスとはいまもあるのか、といわれて
べつだん笑う気もしなかったのは、私にとっても似たようなもので、
プロレスは多分に夢想の中の国だからである。
510モンゴル紀行2:2006/05/06(土) 20:08:31 ID:HVTDC9XX0
「あるよ」
といったものの、それ以上どう説明していいかわからず、結局、
アングルといわれるストーリーや、ブックといわれる台本にのっとって
レスリングをエンターテイメントとしてみせる興業である。
かつてのような人気はないが、現在も多くの団体とレスラーが存在する。
深夜ではあるがテレビ放送も行われている、と百科事典ふうに説明した。

しかしその程度ではイメージを結びにくいらしく、
かれは天体の話を聞くようにぼんやりした表情のまま聞いていた。
やがて、
「つまり、猪木と馬場かね」
と、話を飛躍させた。
猪木と馬場の名を出すことによってしかプロレスのイメージを
結べないというのが、おそらく日本中のたいていのひとがそうにちがいない。
チョンマゲとゲイシャで日本への想像を
完結させてしまうことと似ているであろう。

要するに、プロレスは現代人にとって想像のよすがもないものであり、
その点、私もプロレスばかりは
会場に行ってみなければわからないような気がした。
511モンゴル紀行2:2006/05/06(土) 20:10:16 ID:HVTDC9XX0
あ、タイトル変え忘れた。
512お前名無しだろ:2006/05/06(土) 20:11:20 ID:HVTDC9XX0
さらに名前欄を消し忘れてた…orz
513お前名無しだろ:2006/05/06(土) 20:14:51 ID:e4oDhEJR0
ageでござるよ
514塩名が辻1:2006/05/06(土) 21:59:22 ID:414mWL0k0
暑い夏の日の終わりであった。武道館の周りを進む一行がある。
金箔に塗られた巨大な盾を誇らしげに抱きかかえ、長髪の男が何事かを叫んでいる。
「おいしんしゃあ、おし!ど真ん中だああ!!」
街道の人々はその語気の強さに顔を上げたのではない。
何事を口にしているのか不明瞭な男の言葉に、思わず目を向けざるをえなかったのである。
「何をさけばれていなさるのか?」人々の訝しげな視線に気づかず、長髪の男に見とれる若者がいる。
この若者、もとは流浪の身であったのを先ほどの長髪の男に拾われた。
その風体はまだ貧しく、その貧相な表情も相まって一行の中でも際立って卑しさが人目を引く。
「あれはレスラーであらせられるか?」
道行く人々の表情は好奇とも侮蔑ともつかぬ色で満ちている。
若者は生来の場の読めぬ性情のまま、雄叫びを上げた。
先頭に立つ長髪の男が苦笑と共に若者を振り返った。
「またがせるなよ」
「はっ」とチョビ髭のやはりまだ若輩の男が頷き、一人雄叫びを上げ続ける若者を後方に投げ捨てた。
「北光投げ!!」
ぼろきれのように投げ捨てられる若者を見て誰もがあざけり笑う。
レスラー達も街道の通行人たちも。
佐々木健之助。この時まだ18。後に健介事務所を立ち上げるまでになる男だとはまだ誰も知らない。



515お前名無しだろ:2006/05/07(日) 12:15:32 ID:8WUSpD3B0
続きはー?
516お前名無しだろ:2006/05/07(日) 12:33:00 ID:aUNDyNaQ0
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
PRIDE>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ヤオレスwwwwwwwwwwwwww
517お前名無しだろ:2006/05/08(月) 20:23:38 ID:+9It9EaA0
ageねばならない。
518お前名無しだろ:2006/05/09(火) 21:13:53 ID:3IfaNwOF0
繰り言のようにage
519塩名が辻2:2006/05/09(火) 21:51:02 ID:xr0O1X+50
健之助に腰入れと決まった時、北斗はまだ12歳であった。
顔と口がでかい。大柄である。しかし目は細い。
だがこの戦国の世にあって、身体の頑丈さはそれだけで世継ぎを生むのに適している。
領内一の美女と呼ばれる所以である。
北斗はある時、母親に聞いてみた。
「健之助様とはどのようなお人で?」
母親はただ一言「お人柄の良き人で」とだけ答えた。
それで北斗は察した。
伴侶となる男は団体持ちはおろかベルトの一つを取ることも叶わぬ塩男だと。
520塩名が辻3:2006/05/09(火) 21:58:07 ID:xr0O1X+50
初夜の晩である。
北斗を前に、健之助は何をどのようにしてよいのかわからずに戸惑っている。
健之助は22だが、この年までガチを知らぬ。
ただ震えながら場の空気を静まり返させるだけである。
「北斗どの」健之助は言った。「わしは男になるぞ」
そう言って北斗を引き寄せる。
(まあ、乱暴な)
そう思いつつも、女子は殿方のなさる通りに、と言い聞かされた母親の言い付けを北斗は守る。
しかし。健之助はその後も何をすることもできずにいる。
(このお方、リングの上ではどのように振舞われるのかしら)
北斗は知らぬが、その当時の健之助は相手の助けなしでは試合を組み立てられぬ塩レスラーとして嘲り笑われていた。
521お前名無しだろ:2006/05/09(火) 22:37:00 ID:+VH2AXr60
オモロイ
522お前名無しだろ:2006/05/09(火) 22:48:41 ID:mtNsSW3l0
「しおみょうがつじ」と読むわけだなw
523塩名が辻4:2006/05/09(火) 23:24:23 ID:Ip06ydQD0
二人が結ばれたのは実に14日が過ぎてからであった。
「北斗どの」健之助は上気した声を出した。興奮のためか叫びに近い。「これからはそなたを北斗と呼ぶぞ」
「ええ」北斗はうっすらと微笑んだ。
「今日は語り明かそうではないか」
健之助の言葉は初々しい。語る夢も初々しい。
自分が一番強くなりたいのだ。自分が一番家中で大殿に愛されているのだ。
北斗はこの男が愛らしくなった。この男の夢に付き合ってもいい、三冠やIWGPは無理でもせめてアジアタッグくらいは取らせて上げたい。
そう思った。


(この稿続く)予定
524お前名無しだろ:2006/05/10(水) 20:20:28 ID:4iMlsCjV0
支援age
525お前名無しだろ:2006/05/11(木) 00:37:03 ID:HBlxH5wOP
揚げ
526お前名無しだろ:2006/05/11(木) 21:13:37 ID:aEfV6Rt20
このスレは毎日ageねば落ちる。
527お前名無しだろ:2006/05/11(木) 21:22:12 ID:auTKVVOX0
         プロレス街道を往く

今日も嵐山にはプロレスを知らぬデルフィン達が大勢押し寄せて

きていた。 我々プロレス村の赤鬼・青鬼の横を通り過ぎる、若い

カップルなどに、猪木の凄まじい生き様など、ふわっと浮いた

鴨川にうかぶ葦の船ほどの価値もないのである。

『ほんまに編集長はんは猪木とアリの戦いが真剣勝負だったと?』

そう信じているのかという、吉川スーンの乾いた声が響いた。

『もちろん、私もそう思ってますよってに』多少のへつらいもある

のだろうか? それは私が週間ファイティングの編集長という地位

にいる罪科によるのだろうか? 今日も嵐山は、吹き荒れる六甲おろし

に心地よい小春日を奏でていたのである。
528お前名無しだろ:2006/05/11(木) 23:48:52 ID:wqb5AQK50
>>527
おいおい、ターザンネタはスレ違いだぞ
529お前名無しだろ:2006/05/13(土) 08:43:56 ID:YrUp+CQA0
保守
530お前名無しだろ:2006/05/13(土) 17:20:56 ID:/gWFHmeb0
531お前名無しだろ:2006/05/14(日) 02:43:07 ID:oUYJc7TU0
>>530
ブチ切れすぎだ。なにがあった・・・
コレも、まあ、なんというか、プロレス、なのかな・・・?
532お前名無しだろ:2006/05/14(日) 18:12:37 ID:kXH89PXI0
はい
533花神 1:2006/05/14(日) 20:00:48 ID:7cmatRjU0
三月のある朝、雨がふった。
曙は外出すべく玄関へいくと、巨大な肉の塊がとびこんできた。

「ああ、ござったか」

とその普段着姿の巨大な肉の塊は、玄関の薄暗い光のなかで、顔をつきだした。

「武蔵丸でございますよ」

と、その肉の塊はいった。
曙は、玄関に腰をおろして、じっとその男を見つめている。やがて

「武蔵川部屋の武蔵丸親方どのか」

と、めずらしく歯をみせて笑った。
武蔵川部屋というのは、曙の所属していた東関部屋と同様に数多い相撲部屋のひとつである。
武蔵丸と曙は同郷で、お互いハワイ出身の力士であった。
534花神 2:2006/05/14(日) 20:13:28 ID:7cmatRjU0
横綱のころには、ふたりともずいぶんタニマチの金であそんだ。
力士を引退後、武蔵丸は武蔵川部屋の部屋付き親方となって後進の育成のかたわら、
新人発掘のスカウトをしたり、多少、芸能界に出たりしたがKONISHIKIほど
芸能界では重宝がられていない。

「有望株のスカウトのため東京にのぼってきた」

と玄関でいったのは、いかにも武蔵丸らしくのんきな話であった。
角界の上位陣力士が外人勢ばかりになるかもしれないのに、日本人の
有望株のスカウトでもあるまい。

「のんきなことだ」

と曙はいった。
535花神 3:2006/05/14(日) 20:28:00 ID:7cmatRjU0
おなじスカウトをするなら、モンゴルへ行って有望株を見つけてくるか、それとも
ヨーロッパや旧ソ連のアマレス重量級出身者を相撲に転向させて部屋に引っ張ってくるかすれば
いまの日本人よりも手ごたえある力士を育てることができるであろう。
武蔵丸は、玄関に腰をおろした。

「いまでもK−1か」

と、武蔵丸はきいた。

「ちかごろは、あまり打撃の方には出してもらえぬ」

「それはいかん」

最近ではK−1もGPだけではとても視聴率が取れぬというではないか、と武蔵丸は事情にくわしい。
K−1のキワモノ路線は、おそらくK−1史上もっとも視聴率を稼いでいたといえるであろう。
536花神 4:2006/05/14(日) 20:41:42 ID:7cmatRjU0
ところがキワモノ路線は回を重ねるたびにひとびとから飽きられ、さらにキワモノ路線の
中心選手だったボブ・サップや曙の不様な試合や敗北も重なって、いまでは曙が試合に出ても
視聴率は以前とくらべると下降の一途をたどっている。
が、武蔵丸の用件は、それではない。

「じつは北ノ湖理事長のことだが。頼まれてきた」

と、真顔になった。

「K−1を辞めてくれ」

と、北ノ湖理事長は場所があるごとに言いつづけているらしい。
北ノ湖理事長が武蔵丸にかきくどいたところでは、大相撲人気の低下の要因の
ひとつが曙である。
537花神 5:2006/05/14(日) 20:56:04 ID:7cmatRjU0
曙が格闘技の試合で失態をくりかえすために、根強く信じこまれていた横綱最強神話が壊れ
そのために大相撲の場所の客入りにも影響している。こんなばかな話があるか。

「辞めて、また東関部屋で後進の育成でもしてくれ」

と北ノ湖理事長はいまさらのように騒ぎだしている。
まさか、曙の立場の者が辞められるはずがない。K−1だけならともかく、
いまでは新日本プロレスに参戦を頼まれて今度、IWGPに挑戦するように
カードが組まれている上に、曙見たさのファンがチケットをすでに買っている。
曙がそういうと、

「ははあ」

と、武蔵丸は何度も大声をあげて感心した。
538花神 6:2006/05/14(日) 21:04:37 ID:7cmatRjU0
武蔵丸は曙がK−1の試合だけをしているとおもっていた。
ところがいまではK−1のみならずプロレスもやっていることを知っておどろいてしまった。

「つまり君は、どこで試合しても客寄せパンダではないか」

といって、武蔵丸は曙という角界初の外人横綱の凋落ぶりになげいたのである。
―――すぐに飽きられる。曙はだまっていたが、しばらく経って、

「サップと試合をやったことがわるかった」

と、つぶやいた。


(完)
539花神 余談:2006/05/14(日) 21:07:46 ID:7cmatRjU0
相撲界やK−1に関することが不正確かもしれませんが、そこは大目に見てください。
540お前名無しだろ:2006/05/14(日) 22:07:43 ID:PQZA1VyK0
>>539
いや、面白かったよ。
曙とは、盲点を突かれたなあ。
541お前名無しだろ:2006/05/15(月) 00:20:11 ID:7QHGm0uM0
>>533-539
御見事。堪能させていただきました。
542お前名無しだろ:2006/05/15(月) 01:42:22 ID:GLKPCMyQO
>>539、大儀であった!
543お前名無しだろ:2006/05/16(火) 01:24:01 ID:/IFP5NaV0
age続く。
544お前名無しだろ:2006/05/16(火) 04:34:27 ID:s+3PMl/H0
再びage続ける日々に戻るのであった。
545お前名無しだろ:2006/05/16(火) 20:50:04 ID:dQW7asEQ0
sage


とは、言わない。
546お前名無しだろ:2006/05/17(水) 23:17:06 ID:EBTTmYRf0
>>538しみじみしたいいはなしだ
547お前名無しだろ:2006/05/18(木) 18:46:46 ID:cm0YzPFz0
詫びねばならないage
548お前名無しだろ:2006/05/19(金) 02:58:35 ID:Y6f7nt1c0
今日もageる。
それが日課である。
549お前名無しだろ:2006/05/19(金) 03:48:19 ID:chITwJESO
来るべき時を、ただじっと待ち続けるというのも存外悪くないものだ。

よって保守
550お前名無しだろ:2006/05/20(土) 08:34:52 ID:ynBHzaDF0
age
551お前名無しだろ:2006/05/21(日) 12:41:42 ID:B4PuBjmu0
今の言葉を使えるとすればageとでもなろうか。
552お前名無しだろ:2006/05/22(月) 03:17:24 ID:qX7aLC9H0
age
553お前名無しだろ:2006/05/23(火) 07:21:58 ID:SGE+aALv0
出勤前age
554お前名無しだろ:2006/05/23(火) 17:10:35 ID:Sgp4fSZf0
NHKのヨシツネは司馬のを原作にしてれば
生臭坊主が神木クンにイタズラするシーンが
拝めたかな…
555お前名無しだろ:2006/05/23(火) 20:44:02 ID:Wz7K1P7K0
保守
556世に棲む日日 1:2006/05/23(火) 20:56:59 ID:Wz7K1P7K0
一月十四日未明、西村修はしきりに咳をし、やがて痰をティッシュに吐くと、そこに血がまじっていることを知った。
風邪ではなく、これは患っていた癌が重症であることを自覚したのは、このときであった。

「癌がついに重症に相成り」

と、棚橋弘至に手紙を送ったのは、一月十九日である。このころ新日本プロレスは、相次ぐビッグマッチの失敗と、
恒例化した選手やフロントの離脱、さらにユークスの新日本プロレス撤退などでごったがえしていた。
棚橋など無我に所縁のある選手はこの一連の新日本スキャンダルでいそがしく、西村の病気を見舞うこともできない状態でいる。
557世に棲む日日 2:2006/05/23(火) 21:09:26 ID:Wz7K1P7K0
しかし西村はもはや病気療養に専念することにきめ、その旨を棚橋にも書き送った。
病床で自分の手足をながめ、これがプロレスラーの手足かと自分でもおどろいたというようなことまで
その手紙に書いた。ほどなく吐血し、また西村はおどろいている。
このことは田中ケロに書き送った無我興行開催中止の理由といったかたちで、書き送った。

「重症と申すわけなく候えども、少々吐血これあり候ゆえ、驚き候までに御座候」

血を吐いたといっても少量であったが、西村は自分の病態が容易なものでないことに
覚悟をすえざるをえなかった。
558世に棲む日日 3:2006/05/23(火) 21:22:41 ID:Wz7K1P7K0
西村はなんとか再起したかった。これほど西洋医学による治療を拒んだ男が、今度の癌の症状では、
まるで人変わりしたように医者の言うことをきいた。しかし食欲がなく、粥一椀がやっとのどを越し、
二杯目をぼう然とながめているようなことが多かった。

「すこし寒気が去れば、印度へ旅行をしたい。ガンジス川で沐浴をすれば魂にもよいのではないか」

といったりした。
気をまぎらすために体調がいい日には坂口道場に赴いて軽めのトレーニングをしたり
坂口道場に練習にきたレスラーにゴッチ式のトレーニングの指導をしたが、

「どうも、動きにキレがない」

と苦笑し、みごとな倒立エスケープを披露した。
559世に棲む日日 4:2006/05/23(火) 21:36:41 ID:Wz7K1P7K0
三月にはいると西村の衰えようのすさまじさは、かれの表現を借りれば、
「肌は秋草の末のごとく」ひからび、「肉は脱して、骨瘠むこと頻なり」というまでになっていて、
素人目にももはや再起はむずかしかろうとおもわれた。が、西村は棚橋あての手紙のなかで

「胸間には無我あり」

と心おどらせるように書き綴っていて、さらに怨敵の長州力が新日本の現場監督を辞めさせられたと聞いたときは、

「長州はなおも新日本にあり、慷慨す病床の上。薬炉にあって怒声を発す」

と、棚橋の手紙をつかって怒っているが、じつは、かなり喜んでいた。
560世に棲む日日 5:2006/05/23(火) 21:50:41 ID:Wz7K1P7K0
三月半ば
―――西村修の病が篤い

ということを知った藤波は、この無我の伝道師をフリーの身分のままで死なせたくないとおもい、
重大な処置をとった。会社に頼み込んで西村を再び形式上ではあるが新日本所属のプロレスラーに
したのである。

「新日本なら巡業にいかなければ」

とその報告をきいたとき、西村は真顔で報告者にいった。
このつぶやきが半ば本気であった証拠に、この男はこれだけの重態のなかで、この翌日、

「いまから後楽園ホールへゆく」

と新日本の巡業先の名を口走って、病床から立ちあがったのである。
561世に棲む日日 6:2006/05/23(火) 22:01:05 ID:Wz7K1P7K0
看護婦がとめてもきかず、意外に元気な声で、見舞いにきていた竹村にタクシーをよんでくれ、と命じた。
竹村は不安になりながらも、その命令に従った。

「あとで病院のロッカーにしまい込んだタイツと無我の染抜きガウンを持ってきてくれ」

と言いつつ、タクシーに乗った。西村にすれば生涯のおもい出にファンへ最後の挨拶を済ませておきたかった。
が、タクシーがわずかな距離も走らぬうちに、西村はタクシーのなかで便をもらし、
もはや乗車する体力が残っていないことを知り、タクシーをもどさせ、ふたたび病床についた。
その日から容体は悪化した。
562世に棲む日日 7:2006/05/23(火) 22:10:27 ID:Wz7K1P7K0
容体がわるくなってから集中治療室でつきっきりの看病をうけた。

「もはや皆に知らすべきときではないか」

と、棚橋が判断して会社や関係者に急使を出した。新日本の関係者が、まず来た。
一日遅れて他団体の関係者や知人もきた。西村は病気が病気であったために、意識が朦朧としていた。
四月十四日未明、主治医が棚橋をよび、

「きょうは、お大切になされい」

といって、辞去した。きょうおそらく生命が尽きるであろう、という意味である。
みな、西村のベッドをかこんで見守っていた。
563世に棲む日日 8:2006/05/23(火) 22:18:47 ID:Wz7K1P7K0
西村は昏睡状態にあったが、夜がまだ明けぬころ、不意に瞼をあげてあたりを見た。
意識が濁っていないことが、たれの目にもわかった。西村は、筆記具を要求した。
枕頭にいた棚橋が紙を西村の顔のそばにもってゆき、ボールペンをもたせた。
西村は辞世の歌を書くつもりであった。ちょっと考え、やがてみみずの這うような文字で書きはじめた。


     おもしろき こともなきオールドスタイルを
           おもしろく

とまで書いたがペンを落としてしまった。
564世に棲む日日 9:2006/05/23(火) 22:32:21 ID:Wz7K1P7K0
西村にすれば平成の世の派手でハイスパートなプロレスからすれば、おもしろからぬ
オールドスタイルのプロレスを「無我」という名で、ずいぶん面白く試合してきた。
もはやなんの悔いもない、というつもりであったろうが、棚橋は、西村のこの尻切れとんぼの
辞世の句に下の句をつけてやらねばとおもい、

「すみなすものは 飛龍殺法なりけり」

と書き、西村の顔の上にかざした。棚橋の取って付けたような下の句を西村はいま一度目をひらいて、

「………面白いのう」

と微笑し、ふたたび昏睡状態に入り、ほどなく脈が絶えた。
ただその間、一度唇がうごき、みじかくつぶやいた声を聴いた者がある。

「――――印度へ」

ということばであった。



(完)
565お前名無しだろ:2006/05/23(火) 22:39:29 ID:bQ8ilVjn0
乙。
笑えるやら泣けるやら…傑作!
566お前名無しだろ:2006/05/23(火) 22:39:46 ID:Sgp4fSZf0
面白いのう
まさに下の句は蛇足だなw
567お前名無しだろ:2006/05/23(火) 22:43:34 ID:iWL5xzy90
>556-564
西村カッコええ!
良質な作品ありがとうございました
568お前名無しだろ:2006/05/25(木) 00:30:13 ID:QVcIQN0L0
たまにはsage保守。
569お前名無しだろ:2006/05/26(金) 04:24:36 ID:+rdicnsl0
age
570お前名無しだろ:2006/05/27(土) 07:03:23 ID:cxy4szR00
>「――――印度へ」

ワロス
571お前名無しだろ:2006/05/27(土) 09:01:09 ID:8vKT+gop0
ほしゅ
572お前名無しだろ:2006/05/29(月) 00:31:53 ID:55F4fEpH0
これはageでしたでしょうな。
573お前名無しだろ:2006/05/29(月) 06:04:52 ID:gyyRXDjk0
保全
574お前名無しだろ:2006/05/29(月) 20:27:53 ID:o2EpuD7F0
サンダーデスage
575お前名無しだろ:2006/05/30(火) 09:36:32 ID:yFN/OajZ0
古い友人であるage氏の言葉を借りれば
576お前名無しだろ:2006/05/30(火) 10:19:49 ID:IaEzBx5K0
>>556-564
男泣きに泣いた

まこと良スレなり
577お前名無しだろ:2006/05/31(水) 21:38:57 ID:VMzPp7Iu0
保守
578お前名無しだろ:2006/06/01(木) 10:22:02 ID:HAEECNyr0
とりとめも無くageなどしてみたい。
579お前名無しだろ:2006/06/01(木) 12:40:04 ID:+CMfk6dQO
山田風太郎も守備範囲でござろうか。
貴殿らの意見を聞きたい。
580お前名無しだろ:2006/06/01(木) 12:50:36 ID:UbpC036/0
「UWFは、遠い昔の事ながら、レスラーの魂、やはり技。
あえてガチがなければこそ、腕に覚えのレスラーどもは、売り込み合戦に明け暮れた。
いやまさしく昨今、プロレスは、エンターテイメントなり」

プロレス商売
581お前名無しだろ:2006/06/01(木) 21:39:29 ID:NodIhcNa0
>>579
司馬ほど特徴的な文体じゃないからなあ。
よほど読み込んでいないと、楽しめなさそうな気もする。
582お前名無しだろ:2006/06/02(金) 19:26:51 ID:ZpxZy7YD0
でもやっぱり読んでみたい。
職人さんたち頑張ってください!
583お前名無しだろ:2006/06/02(金) 19:36:39 ID:yYepQIjn0
やべぇ、、フレアーでプロレス商売みたいかも。
584お前名無しだろ:2006/06/02(金) 20:00:24 ID:qWEFkkjV0
池波正太郎も守備範囲か?
585お前名無しだろ:2006/06/02(金) 22:46:49 ID:HgoJkTVC0
>>584
お、いいですな
586頷状少年過ぐ:2006/06/02(金) 23:41:28 ID:HgoJkTVC0
 ここに、ひとつの情景がある。
 頷顔の老人が、浜辺に毛布をしかせ、椰子の木あかるむほとりみすわり、
おのれの生涯を回顧しながら丸太を持っている。
若年のころ志をたて、最強という不思議なものに焦がれ、それがためにときにはふりまわされ、
ときには愉悦し、半生を戦場(リング)ですごし、常ならぬ生涯を送ってしまった。
「この道を行けば」
 老人が引退に際しパクった高名な詩の第一句である。

 この道を行けばどうなるものか。
 危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。

 踏み出せばその一足がみちとなり、
 その一足が道となる。
 迷わず行けよ、行けばわかるさ。

 この老詩人が猪木寛至である。
燃える闘魂といわれた。
587頷状少年過ぐ2:2006/06/03(土) 00:36:04 ID:TVceOpKy0

 この人物は、その師匠にきらわれた。
「リングネームはアントニオ猪木。修行時代はリトル・トーキョー・トム。」
 と、記録にある。
 ついでながら猪木家は横浜の石炭問屋を営む裕福な一家であったが、その発祥にいろいろの説があるにせよ、
ともかくも戦後、エネルギー源が石炭から石油に変わったこともあって実家の石炭問屋は倒産し、14歳の時に母親、祖父、兄弟とともにブラジルへ渡り、サンパウロ市近郊の農場で過酷な少年時代を過ごした。
その後ブラジルに遠征に来た力道山との運命的な出会いがいつであったのかは不祥だが
「日本に行くぞ」
 と力道山は猪木に言い切った。
588頷状少年過ぐ3:2006/06/03(土) 00:37:26 ID:TVceOpKy0
 しかし、猪木にとって不幸な事に、兄弟子に馬場という男がいた。その容貌は日本人離れをしており、
修行を重ねるにつれいよいよ巨大になり、利発な事でも猪木をはるかにしのいだ。力道山は馬場を溺愛し、猪木を疎んじた。
というより、露骨に嫌悪した。
 体質として自分に似たものが受け入れられぬたちらしく、それが戦後の日本人のように自分を抑える事もできず、倫理観もなかっただけに、
「靴の履かせ方が悪い!」
 などと、靴ベラで殴られたこともあったであろう。
 猪木自身、この点が皮肉にも力道山に似ていた。しかも事業を興したがる癖があり、後年、
「アントンハイセル」というサトウキビの絞りかすを有効活用しようという国家的事業事業をブラジルで興したが、経営が破綻し、赤字の補填に新日本プロレスの収入を注ぎ込んだ程だった。
589頷状少年過ぐ:2006/06/03(土) 02:21:09 ID:TVceOpKy0
この稿続く   かも


うーん、難しいな
初めてに付きスレ汚し申し訳ない
590お前名無しだろ:2006/06/03(土) 08:15:06 ID:gSkljIv70
んー、梟雄と言われた政宗と(評判の悪い)猪木をオーバーラップさせようとしたんだろうけど、
政宗に比べると、猪木って小物すぎるもんなw
591お前名無しだろ:2006/06/04(日) 09:12:37 ID:oIjjXBiF0
>>590
いや、そんなこと言うとこのスレ自体が成り立たないし。
592お前名無しだろ:2006/06/04(日) 15:14:25 ID:iKoffK7f0
新作乙ですよ。
元ネタとのイメージの差なんて気にしてたら
ネタ作りの幅がものすごく狭くなっちゃうからそこら辺適当でいいつか。

「馬上少年過ぐ」はいいすね。
冒頭部分はいろんなレスラーに置き換えられるかも。
593お前名無しだろ:2006/06/05(月) 23:57:13 ID:gvenxO6A0
されば、
594お前名無しだろ:2006/06/06(火) 20:05:31 ID:KamJ57DW0
保守に御座候。
595割って、城を 1(短編集 軍師二人より):2006/06/06(火) 20:17:44 ID:KamJ57DW0
ある日、永田は高木三四郎に、

「そちは、なにやら変わった技をつかっているそうだな」

とたずねた。おそらく永田は高木が主催する団体であるDDTで高木の試合を見たのだろう。

「はて、変わった技とはなんのことでござる」

「知らずにつかっているのか」

「いや、ただ高く持ち上げ顔面からリングに叩き落とす技ならござるが」

「その技を、どう、ひらめいた」

「仔細なことではござりませぬ。拙者の好きなWWF(現WWE)の選手ストーンコールドの
 スタナーに影響をうけ、自分なりに工夫をしただけのものでござりまする」

「それはおもしろい」

永田は膝をたたいた。
596割って、城を 2(短編集 軍師二人より):2006/06/06(火) 20:32:26 ID:KamJ57DW0
WWFという米国のプロレス団体が一時期、日本中で熱病のようにはやったことがある。
日本のファンのみならず日本のプロレスラーまでもがWWFの華やかな舞台演出や洗練されたストーリー、
そしてスーパースターズの魅力に酔いしれた。

「これが三四郎スタナーと名づけた技でござる」

と、高木が、若手をつかって永田に披露した。
永田も別の若手をつかい、その技の動作をゆっくりと真似た。
左腕で若手の首を小脇に抱えフロントチョークの体勢にした。
右手で若手のタイツの横の箇所を摑みそのまま高く持ち上げ若手を顔面から水平に
リングへ叩きつけた。
やがてしずかに永田の顔に血の色がのぼってきた。
597割って、城を 3(短編集 軍師二人より):2006/06/06(火) 20:45:18 ID:KamJ57DW0

「とてもいい技じゃな」

「…………」

「しかも」

高木の顔を見ながら、

「みごとな威力じゃ。かほどの技を、わしもつかってみたい」

高木は、おどろいた。さきほど変哲もなかった自分の技が、一変している。
永田がその掌の中で魔術を用いたかと疑わしくなるほど、永田が真似た自分の
三四郎スタナーがみちがえってみえた。技の動作といい、威力といい、宝石のようであった。

「そういうものよ」

と、永田は、高木の驚きを見すかしたように微笑った。
598割って、城を 4(短編集 軍師二人より):2006/06/06(火) 20:59:48 ID:KamJ57DW0

「技自体は、平凡で、どんなプロレスラーでも思いつくものだが、まことのことをいうと、
 メジャー団体新日本という肩書きをもつ、わしが真似たから、おなじ技でもちがってみえる。
 メジャーという肩書きが、技をうまれかわらせる。いま、この技はうまれかわった。
 そちの三四郎スタナーはみごとに新日本の所属であるわしが、つかうにふさわしい技にうまれかわっている。」

この技の名前である「三四郎スタナー」は、いかにもインディー臭い。メジャーのわしがつかうにふさわしい名前にかえよう。
永田は、いった。

「サンダーデス・ドライバーと名づけよう」
599割って、城を 5(短編集 軍師二人より):2006/06/06(火) 21:11:05 ID:KamJ57DW0
永田はつづけて、

「この技をさらに浸透させるために、試合では必ずつかっていきたい。されば、伝来、由緒がつく。
 近年、プロレスラーのあいだで流行したダイヤモンド・カッターやシャイニング・ウィザードにも
 劣らない一大ブームとなろう」

(左様なものか)

はっきりいってパクりであった。かようなパクりをメジャーといわれる新日本のプロレスラーが
用いてよいものか、高木はおそろしくなってきた。

「ぺェェェェェイ」

永田はサンダーデス・ドライバーをふたたび若手にしかけるため、大声をあげた。

(なにをするつもりか)

高木は見た。
600600:2006/06/06(火) 21:19:59 ID:zgRcpUlt0
600
601割って、城を 6(短編集 軍師二人より):2006/06/06(火) 21:28:02 ID:KamJ57DW0
永田はサンダーデス・ドライバーで若手をリングに叩きつけたあと、すかさずナガタロックUに移行した。
異常な力がナガタロックUで若手を絞めあげていることは、永田の鬼のような表情でわかる。

(あっ)

パンパンっと絞めあげられた若手がギブアップの意思表示をするためリングを叩いた。
さらに三つ、四つ、とリングを叩く音が大きくなってゆく。
ナガタロックUを解いた。ただパクるだけではつまらぬ、あえてサンダーデス・ドライバーを繋ぎ技につかい
ナガタロックUを際立たせるのだ。こうすることによって永田裕志のオリジナルムーブになる、
と永田はいいたいのであろう。

(パクるとは、おそるべきものじゃ)

試合ではいかなる敵にも慄えの来なかった高木が、いま小きざみにふるえてきているのを知った。


(完)
602お前名無しだろ:2006/06/06(火) 21:33:44 ID:bHSnfrcx0
世に棲む日日 「後藤達俊の死生観」

君は問う。プロレスラーの死ぬべき所はどこかと。小生も新日本を退団して以来、
そのことを考え続けて来たが、今ついに、プロレスラーの死の一字について発見するところがあった。
プロレスラーの死は好むものでもなく、また、憎むべきものでもない。リングの上では、
自分ばかりアピールしている者がいるかと思えば、その身は滅んでも魂の存する者もいる。

死して不朽の見込みあらば、いつ死んでもよい。
生きて大業をなす見込みあらば、いつまでも生きたらよいのである。
つまり小生の見るところでは、プロレスラーというものは、
生死を度外視して、何かを成し遂げる心構えこそ大切なのだ。
603お前名無しだろ:2006/06/07(水) 20:27:09 ID:kFhvtv4k0
ageねばならぬ
604お前名無しだろ:2006/06/07(水) 20:27:51 ID:HzTC3ovH0
595-601
永田、このスレに出るたびにパクってるなw
605お前名無しだろ:2006/06/08(木) 14:21:08 ID:IzoPEhil0
「ぺェェェェェイ」
の使うところ、秀逸w
606お前名無しだろ:2006/06/09(金) 23:43:49 ID:iAHZeMHS0
真摯にage
607お前名無しだろ:2006/06/10(土) 05:08:30 ID:zhk433Bh0
>>605
同意age
608お前名無しだろ:2006/06/11(日) 05:09:28 ID:EMuTTBXm0
age
609お前名無しだろ:2006/06/11(日) 08:02:23 ID:RvTGxbL50
こうなると右も左も「age、age」と言い出すのである。
610お前名無しだろ:2006/06/11(日) 12:34:13 ID:LjRoOzhx0
田村は一人薄暗い控え室で苦悩していた。
間もなく桜庭との試合が始まろうとしている。プライドがこの世から消え、
谷川に大晦日の大一番を組んでもらったのは良いものの、
今夜会場に来ている客の多くの婦女子はこの一戦に興味をもたず、UWFさえ知らない。
相手の桜庭さえこの対戦に心がのらぬようであった。
「いったい自分にリング上で何を客に見せろというのか?」
先輩の前田が先ほど一言二言言葉を残していったが、それすら頭には残っていない。
迷い消えぬうちに若い男が自分の出番を告げに来た。
611お前名無しだろ:2006/06/11(日) 12:42:14 ID:LjRoOzhx0
入場にはここぞと言う時用のUWFのテーマを使用したが、今日はまったく
心に響いてこない。以前ブラジルの柔術家の時に使用した際にはあれほど客
が熱中したというのに、今夜の客は静かなものである。ちらりと客席に
目をやって、恐らく自分のことを知らないであろう多くの客の表情にきずく。
「もうよい。いくら考えても俺にできることはひとつじゃないか、、。」
いつものように小太刀にいのり、リングにあがると、そこには先に入場した
桜庭が待っていた。
612お前名無しだろ:2006/06/11(日) 12:50:00 ID:LjRoOzhx0
試合まえの審判の注意で桜庭と顔を接近させる。
後輩であり、因縁の仲といわれるこの男と目があったとき、田村には桜庭の
考えてることが一瞬にして分かった。表情の乏しい桜庭だが付き合いの長い田村には
そのくらいのことはわかる。
自分と踊ろうといってくれてるのである。
ただの遊戯ではない、命を懸けて、美しさをもとめ、それらを超越したものを
客に見せようといってくれてるのであった。少なくとも田村はそう理解した。
613お前名無しだろ:2006/06/11(日) 13:08:05 ID:LjRoOzhx0
田村は嬉しくなったが、相手に気持ちを読まれるのが癪なので表情はかえぬまま
であった。しかし先ほどまでの苦悩が嘘のように消え、そのせいか客の声援が
思ったより大きなことが分かる。リング下には前田をはじめ、宮戸、垣原、山崎、
藤原の姿が確認できる。失踪してしまったかつての師である高田もどこかで
見てくれているだろう。そう考えるとちょっとした悪戯心が芽生えてきた。
握手を求めてきた桜庭の顔を張ったのである。審判は注意してきたが、
桜庭は無表情であった。いや、口がすこし歪んでいる。見ようによっては
笑っているように見えた。しばらくしてゴングが響く。
実はいくつかの戦術を練ってきた田村であったが、
「やはり俺にできるのはこれだけだ。」
と考えを改める。そして桜庭に接近し、思い切り左のミドルキックを放つ
体制をとる。
そのとき田村の中から声援が消え、光も消え、かつて頭を丸め、UWFに入団して
デビューした時のような清々しい気持ちが体を包むのであった。        完
       
                               
614お前名無しだろ:2006/06/11(日) 13:20:56 ID:hwm0TEDZ0
いい話だ。ピンポンのペコvsスマイルみたい。
615お前名無しだろ:2006/06/11(日) 21:41:00 ID:2Z7G7Tcd0
オリジナル? 
いつもの司馬節とはすこし違うような気もするが。
616お前名無しだろ:2006/06/11(日) 23:37:01 ID:Zw+jacT00
>>615
そうだねえなんか夢枕みたいな感じ、改変が多いからなのかな?
617お前名無しだろ:2006/06/12(月) 00:22:31 ID:J1KhdD/s0
夢枕ならもっと字数少ないけどね。
・・・夢枕で何か作れそうな気がしてきた。
618お前名無しだろ:2006/06/12(月) 00:24:41 ID:vcF9diuC0
すまん。司馬先生の作品はだいぶ前に読んだだけで、
ここの方々の作品を見て見よう見まねで書いた。
感想ありがとう。駄文失礼した。
619お前名無しだろ:2006/06/12(月) 00:31:28 ID:cm1CGwZb0
>>618
まあ、これを機にまた読み直してみてくれ。
司馬文体を使いこなせていれば、オリジナルでも歓迎だから。
620お前名無しだろ:2006/06/12(月) 01:33:14 ID:LVDEQpG80
>>618
見よう見まねってことは永田さんかw
普通に感動できたし重畳なので頑張ってください。
621お前名無しだろ:2006/06/12(月) 02:04:48 ID:vcF9diuC0
まさか自分が永田さんに例えられる日がこようとは、、。
いや、ここは好意的に受け取らさせていただく。
貴重なご意見ありがとう。
622お前名無しだろ:2006/06/12(月) 03:07:39 ID:RDTpAiUKO
いや、
とは何だ!!
最大の賛辞じゃないか
623お前名無しだろ:2006/06/12(月) 11:50:04 ID:qbBuXHepO
>>614
確かに、ペコVSスマイルやVSドラゴンを彷彿させる。
624お前名無しだろ:2006/06/13(火) 18:20:42 ID:Nm1DbAS50
ageこそいい面の皮であろう
625お前名無しだろ:2006/06/14(水) 03:25:35 ID:VpOwHSQq0
>>610-613
新時代到来、期待age
626お前名無しだろ:2006/06/14(水) 23:00:01 ID:L8TIVWFX0
西村が自主興行の相談をする為、久しぶりにタンパのゴッチの自宅を訪れたのは
八月のことであった。
いつものように自宅の軒先の椅子に座り、上半身裸でゴッチは待ってくれていた。

(なんと)

ゴッチの体は一回り小さくなっており、表情には覇気が感じられない。
そこにいるのはただの死期せまる老人のように西村には見えた。

「先生お元気なようで。」

「世辞をいうな。」

「お体どうかなさいましたか。」

「うむ、どうにもならんようだ。」

ゴッチはゆっくり立ち上がり、自宅の中へ案内してくれた。

627お前名無しだろ:2006/06/14(水) 23:14:15 ID:L8TIVWFX0
いつもならレスリング談義に花が咲く食事中にもゴッチの口は重かった。
自慢のステーキにもあまり手を出さず、土産のワインばかりを
口にする有様であった。時を見計らい西村は切り出した。
自分の自主興行を見に日本に来てくれないかと。

「オサムよ、私はもう満足に稽古もできぬ体だ。日々の鍛錬をせぬ私は
もはやレスラーとは呼べぬ。多くの元教え子がいる日本にどうしていけようか。
このような姿をかつての弟子に見せられはせぬ。」

とつぶやくように言った。西村はそれを聞き、自分の顔が紅潮し、指先が震えるのを
感じた。そしてそれが行き過ぎるのをまって口を開いた。
628お前名無しだろ:2006/06/14(水) 23:33:32 ID:L8TIVWFX0
「確かに先生はもはやご自分の満足には動けぬお体かもしれませぬ。
しかし先生のレスリングの知識や経験は先生の命ある限り消える事は
ありませぬ。それが今の私には必要なのであります。先生を知らぬ若い日本の
レスラーに必要なのであります。先生以外に誰がそれを私に授けてくれましょうか。
どうかもう少しだけ私に力を貸してくだされ。」

唖然とした顔で聞いていたゴッチであったがその顔はいつしか疲労した老人の
顔から誇り高きレスラーの顔になっていた。

「よし、オサム、今夜はもう寝よう。明日は一日練習を見てやろう。」

「先生、答えを聞いておりませぬ。私の試合を見に来ていただけますか。」

「うむ、行こう日本へ。その時は必ず行こう。」

そのようにしてその夜二人は床のついた。
629お前名無しだろ:2006/06/14(水) 23:48:16 ID:L8TIVWFX0
だがしかしふたたびゴッチが日本の土を踏む事は二度となかった。
西村が帰国して一月ほどして他界してしまったのだ。
知人の話によると少しずつトレーニングを再開していた矢先のことだったらしい。

(もう少し早く興行をひらいておれば先生をお呼びできたものを)

西村は己の非力さを呪った。己の無力さを。
実際今もって様々な問題があり、正確な自主興行の日取りはきまってなかった。
西村はゴッチの葬式にも顔を出さず、毎日浴びるように酒を飲んだ。

それからしばらくしてゴッチの遺品というものがアメリカから西村の届いた。
630お前名無しだろ:2006/06/15(木) 00:14:02 ID:IID2cCTs0
それは分厚い一冊の本と西村宛の手紙であった。
手紙の内容はこうであった。

「オサムよ、我が息子よ、私はもうすぐ死ぬであろう。私は何かを恐れたことはない。
しかし今は死が恐ろしい。命が惜しいのではない。私の持つ知識が、技術が、哲学が
永遠に失われることが恐ろしいのだ。それだけが私の生きた証だからだ。
そこでオサムに最後の頼みがある。私のレスリングの知識全てを一冊の本に記して
おいた。この本の内容を日本の若いレスラーに伝えてほしい。
私の知識が少しでも後世に伝えられるとしたら、私もまた永遠になれる。
だとすれば死など恐れることはない。
どうかこの老人の願いをかなえてほしい。
最後にオサムに礼を言いたい。オサムに最後に会えなければ、私は哀れな老人
として死なねばならなかった。しかし今は戦士として死んでいける。
オサムよ、ありがとう。いろんな団体のリングに上がりなさい。
試合の無い時でも毎日練習しなさい。」
631お前名無しだろ:2006/06/15(木) 00:32:56 ID:IID2cCTs0
その間接技の仕組みから犬の殺し方まで書かれた分厚い本を
西村は寝る間も惜しんで日本語に訳した。
そしてそれはプロレスの教本として多くのプロレスの道場に
置かれることになる。

西村は数回の自主興行の後、時代の渦に消えていくことになる。
そのスタイルは更に地味なものとなってゆき、メジャー団体からも声が
かからなくなった。それを忠告する人間がいても

「これが真のプロレスリングさ。」

と涼しい顔で聞く耳を持たぬ。
欧州の名も無き団体に上がり、若手の指導をしているという噂もあったが、
誰も見た者はいない。                          完
632お前名無しだろ:2006/06/15(木) 00:43:46 ID:L19E0nam0
こうして大谷の手元にプロレスの教科書がおかれることになったのです、と。
633お前名無しだろ:2006/06/15(木) 01:10:50 ID:WOByrPKM0
今、一つだけ言えるとするならば、>>632にはこのスレを読むのは10年速かったのであろうな、と言うことだけである。
634お前名無しだろ:2006/06/15(木) 14:32:52 ID:tiXM2l9n0
ヤッと打てばペイッと響くage
635お前名無しだろ:2006/06/15(木) 22:15:09 ID:UKsVQ4n80
なんかどこもかしこもゴッチが死んだみたいになってるなあw
…つーか死んでないよな?
636お前名無しだろ:2006/06/16(金) 03:55:31 ID:IG86b72b0
>>635
毎日早起きしては2時間ほどトレーニングをするぐらい元気ですよ。
637お前名無しだろ:2006/06/16(金) 09:33:01 ID:i/e9U55V0
まあ生きてるからみんな書くのであって。
偉大なレスラーの死に様への幻想というか。
638お前名無しだろ:2006/06/16(金) 19:51:14 ID:LMOzbcL90
保守
639関が原 1:2006/06/16(金) 20:06:58 ID:LMOzbcL90
永田は、試合後、

「記者達をあつめといてくれ」

と若手に言いつけ、シャワールームに入った。
シャワーを浴びてたときは、すでに胸中、前田に対する怒りが高鳴るように湧きはじめている。
服に着替えて記者団の方へむかった。

「記者はこれのみか」

少ない、というのだ。
前田の暴慢に対する胸中の欝積をたたきつける以上、よほど多くの記者に自分の怒りを記事にしてもらいたい。

「もっとあつめろ、椅子や、テーブルを用意しろ」

多くの記者が集まった。
永田は、ポケットから数枚の四百字詰め原稿用紙を取りだし、切るように読みはじめた。

「尊意見、具に拝聴、多幸多幸」

とまず最初に読み、いきなり本題に入った。
640関が原 2:2006/06/16(金) 20:18:18 ID:LMOzbcL90

「それがしの猪木祭りでの二度の敗戦について、さまざまの誹謗中傷が業界において流布され、
 貴公も失望しているとのこと、なんとも仕方のないことである。
 ミルコ戦は秒殺であり、そのうえヒョードル戦は亀ときている。貴公は、それがしの、この二つの敗戦を言いたてて、
 貴公のアンドレ戦やニールセン戦を引き合いに出される。それだけのこと。
 そもそも貴公のアンドレ、ニールセン戦と、それがしのミルコ、ヒョードル戦は似ているようで全くの非なるものゆえ、比べること自体如何なものか。
 かようなことで心を労せられるな。」
641関が原 3:2006/06/16(金) 20:35:59 ID:LMOzbcL90

「新日本についてあれこれ申されるが、当方は、なかなかそうは参らぬ。
 なにしろ我が新日本はユークスの傘下になったばかりである。また草間裁判や猪木事務所問題といった庶政が山積している。
 いまは、それらを片づけることが急務なため貴公等BMLの易い挑発にかまう余裕などありもうさぬ。当方迷惑している。」

と、永田は、文章に皮肉をふくませ、前田を痛罵した。

「さらに山本という貴公の弟子がしきりに、それがしを挑発しているが、これまた迷惑である。
 U系出身者のプロレスは、ロープワークや受け身、セールといった試合を魅せる術が未熟なためファンの失笑を買う。
 山本のような半端者と試合することファンに申し訳なく候。山本は、それがしと闘う前にまずは、プロレスたるもの知るべく
 当道場において若手に混じって受け身を憶えられたし」
642関が原 4:2006/06/16(金) 20:51:42 ID:LMOzbcL90

「また当団体の試合を学芸会、もしくは、おちゃらけ、とお責めになさり貴公が新日本に在籍していた
 昭和の試合をしきりに申されるが、これは聞えぬ。昭和の頃と違いファンのニーズも多様化している。
 考えてもみられよ、ファンの要望に応え時代に合ったものを提供するのが興行である。
 貴公の殺伐したブック破りのプロレスが平成の世に、まかり通ると申されるか。
 これまた御無用の斟酌」

永田はいよいよ口調に怒りが籠っていた。そして

(この事は、口に出すのも馬鹿げている)

と永田は思い、

プロレス復興と申されし儀、思召のまま仰付られたる由、御威光浅からず候事。

といった。
643関が原 5:2006/06/16(金) 21:08:22 ID:LMOzbcL90
「思召のまま」というのは前田のほしいままに、という意味である
御威光浅からず候事、とは「けっこうな御威光でございまするなあ」という意味だ。嘲弄のかぎりをつくしている。
永田はなおも読みつづけた。口にする文章のひとつ、ひとつが慇懃ではあるが前田に対する痛烈な当てつけに満ちていた。
一気に読み終えたあと、「最後になるが」と述べ、

「まずBML諸兄方々、当団体観戦の由に候間、当方でプロレスをなさる覚悟あれば万端、御下向次第に仕るべく候。
 いいんだね、殺っちゃって」

といった。挑戦状である。意味は、

「BMLの連中よ、まずは新日本の試合を見に来い。プロレスの試合であれば
 我は新日本のリングで迎え討つであろう。いいんだね、殺っちゃって」

ということである。
644関が原 6:2006/06/16(金) 21:15:45 ID:LMOzbcL90
前田は、翌日、村上からスポーツ新聞をわたされ、この永田の記事を黙読し、
読みおわって新聞を伏せ

「自分はもうすぐ五十近くになるが、この齢になるまでこれほど無礼な発言記事を見たことも読んだこともない」

と、つぶやいた。
前田はほとんど呆然としている。憤ることをさえ忘れたような面持ちで、息を細めていた。


(完)
645お前名無しだろ:2006/06/17(土) 02:39:56 ID:A91h+Yr30
639-644
何かいつもと違い凛々しいよ、永田さんw

ただ、〜候。ときて、
>いいんだね、殺っちゃって
にワロス。

乙age
646お前名無しだろ:2006/06/17(土) 02:47:11 ID:RYRj82FC0
元ネタがあれだけ清清しいのに
永田さんに変えるだけでこんなに薄汚い感じになるのは
やはり才能としかいえないよ、永田さんw
647お前名無しだろ:2006/06/19(月) 11:42:34 ID:QJksJI2S0
ageるのみである。
648お前名無しだろ:2006/06/19(月) 19:13:41 ID:g9z0S9yY0
亀、パクリ、ブサイクなどいやもう傍若無人age
649落日の逝く季 1:2006/06/20(火) 20:44:34 ID:2zzQoSKN0
異様な雰囲気が剛竜馬にのしかかっている。 
撮影機材を準備する乾いた音が部屋中のあちらこちらで聞こえてくる。
その音が剛の耳に入ってくるごとに剛は、剛は惨めなおもいに囚われて、えもすればこのままつっぷして泣きたい
衝動が胸中に込みあげていた。
撮影の準備が整った。周囲の目が剛にそそがれている。が剛は依然として、椅子から立つ気配をみせない。

「緊張されてますね」

と、ひとりの男が剛に話しかけた。男が自分に興味をもっていることを剛は、知っている。
男は剛の上腕やぶ厚い胸をさわりたがっていた。

「まあな」

剛は小声でいった。
650お前名無しだろ:2006/06/20(火) 20:54:48 ID:Z4yHedOu0
アッー!
651落日の逝く季 2:2006/06/20(火) 20:59:08 ID:2zzQoSKN0

「お金のためとおもって割り切ればいいんですよ」

「ふざけるな」

剛は怒鳴ったが、すぐに落ちついて

「すまない」

と、いった。――この男に怒鳴ったところで、この現実を変えることはできない。
と、おもったからであろう。
剛は、今の自分を正当化するために、その慰めとなる材料を模索していた。
パイオニア戦志やオリエンタルプロレス。そして冴夢来プロジェクトといった剛がかつて旗揚げした団体の
運営に四苦八苦していたころの自分の姿を見つけだした。

(プロレス馬鹿とは、よく名づけたものだ)

と剛は、おもった。しかし過去を模索すればするほどに惨めになっていく剛がそこにいた。
652落日の逝く季 3:2006/06/20(火) 21:10:10 ID:2zzQoSKN0
剛は模索することをやめた。

「酒は、あるか」

と、男にいった。男は頷くと冷蔵庫のある場所へゆきウィスキーやビールをもってきて
剛の前においた。剛は、蓋をあけて一気にウィスキーを飲み干した。酒に酔わないかぎり
自分という殻をこわすことができない。と、おもったからである。
剛はつぎつぎに目のまえの酒を飲み干していく。
やがて、剛の胸中でさっきまでとは全く違うおもいが、湧いてきた。

(おれが、いまからやることは、プロレスに似ている)

と、おもった。
653落日の逝く季 4:2006/06/20(火) 21:26:52 ID:2zzQoSKN0
剛の考えではプロレスはタイツ一枚の裸の大男がリング上で試合をとおしてプロレスラーの感情を
客の前で曝け出している。これから自分がやることも、表現がちがうだけでゲイやホモといった客の前で
自分を曝け出すことと考えればいいのではないか。
そう、おもうと剛は、幾分か楽な気分となり、椅子から立ちあがって、

「はじめようか」

といった。
撮影がはじまった。剛は、着衣をその場で脱ぎすて裸になった。

「太い………」

撮影スタッフやゲイのあいだで剛のそれに対して囁かれた。喉の奥で唾液を呑みこむ音が剛にも聞こえてくる。
剛は右手で剛のそれを、いきおいよく上下に動かしはじめた。

(若いころと、勝手がちがう)

と、剛は剛のそれで自分の老いをかんじていた。
654落日の逝く季 5:2006/06/20(火) 21:41:27 ID:2zzQoSKN0
プロレスの試合では微塵も老いをかんじたことがなかった剛であったが、さすがにいま自分のやっていることは、
剛自身の老いが直接にわかる。
ふと、藤波辰彌の顔が浮かんだ。WWWF(現WWE)Jrの王座を巡って幾度となく試合をやった藤波は、いまは
新日本の社長に就任している。
大仁田厚の顔も浮かんだ。FMWを旗揚げして成功に導きインディーの元祖あるいは涙のカリスマと称された大仁田ではあるが
FMW自体が自分の旗揚げしたパイオニア戦志の二番煎じのはずなのに、どうしてこうもちがうのか。
という怒りが胸中に込みあげてきた。すると剛のそれに変化がおきた。
藤波、大仁田に対する怒りによって剛のそれが天を衝くかのような状態になったのである。
655落日の逝く季 6:2006/06/20(火) 21:55:26 ID:2zzQoSKN0

「極太だ!」

と周囲が騒ぎだした。剛は、さらに右手に力を込め上下に動かした。やがて、

「があぁぁぁぁ」

と、野太い男の声を部屋中にひびかせて果てた。
剛は見事にプロレスラーらしい果てかたを曝け出してみせたのである。
撮影終了後、剛にギャラが手渡された。剛の胸中は複雑であった。しかし、
いま自分が手にしている金だけが剛のこの屈辱ともいえる行為の慰めになることを
剛自身が、よくわかっていた。

しばらくして剛は、ギャンブルが原因で金に窮したのか、ふたたびホモビデオに出演している。
二度目の出演のとき

「自分の体をつかって稼ぐことに、なんの問題があるのか」

と、いった具合に開きなおっていたことであろう。
656落日の逝く季 7:2006/06/20(火) 22:05:43 ID:2zzQoSKN0
平成十五年一月末、剛は新宿駅西口で老婆の財布をひったくって、その場にいた駅職員に
取り押さえられた。現行犯逮捕であった。逮捕されたとき剛は大量の酒気をおびていた。と、
調書には記されている。
戸籍上の名は八木宏。プロレスラー剛竜馬としての輝かしい過去や実績は、ひったくり容疑での逮捕と、
これをきっかけに明るみにされた「ホモビデオ出演」という東京スポーツをはじめとした各種の報道によって
すべてが塗りかえられた。


(完)
657落日の逝く季 余談:2006/06/20(火) 22:09:19 ID:2zzQoSKN0
思い切って自分もオリジナルの司馬文体に挑戦してみました。
ところどころ司馬っぽくない表現があるかもしれませんが、大目に見て下さい。
ちなみに「落日に逝く季」というタイトルもオリジナルです。
658お前名無しだろ:2006/06/20(火) 22:15:44 ID:Y3tSnso70
あいつホモビデオに出てたんか…
659お前名無しだろ:2006/06/21(水) 02:40:32 ID:BGQWYcDd0
汚い小説だなぁ
660お前名無しだろ:2006/06/21(水) 03:43:20 ID:q9D7VzUb0
汚いが、巧い。
剛も彼なりのプロレスに殉じた生き方をしたのだろうと私は思う!(アントニオ猪木・談)
661お前名無しだろ:2006/06/23(金) 00:20:33 ID:guh8I+bIO
上手くないだろう。新間寿
662お前名無しだろ:2006/06/24(土) 09:38:24 ID:1LKsfCFR0
保守である
663お前名無しだろ:2006/06/24(土) 22:09:20 ID:3vXXFPwBO
井上小説に似てるな
664お前名無しだろ:2006/06/26(月) 11:43:34 ID:5qdbqAy/O
タイトルは竜馬がイクッの方がいいだろう
665お前名無しだろ:2006/06/26(月) 20:39:48 ID:hATDDkY30
>>664
⊃座布団一枚
666お前名無しだろ:2006/06/27(火) 01:14:51 ID:eV+XBF5E0
666
667燃えよ剣 1:2006/06/27(火) 13:48:06 ID:tsx4+gLV0
冬木は、激論した。
ついに、泣いた。なぜ、なぜなんだ。大仁田を使えばなんとかFMWを立て直すことはできる、
と冬木は何度か怒号した。最後にあんたの大仁田嫌いは、ただの感情にすぎない、FMWが倒産するいま、
あんたの感情のために多くのプロレスラーや社員が路頭に迷ってしまう。そのうえ倒産したならば江崎(ハヤブサ)の
面倒は誰がやるんだとまで攻撃した。

「そうです」

と荒井はうなずいた。

「あの人だけは、使いたくない。冬木さん、私は、あなたとちがってあの人の本性を知っている」

「大仁田をつかうのというも、一時のことだ。しかし経営者として倒産は恥ずべきではないか。
 ふたりでエンターテーメントプロレスを日本で確立する、といっていたあのときのあんたにもどってくれ」
668燃えよ剣 2:2006/06/27(火) 13:57:41 ID:tsx4+gLV0

「もう疲れました。私は無力でした」

「ちがう」

冬木は目をすえた。荒井の疲労などは問題ではない。好悪なども論外である。経営者というものは、
たとえ、わずかな望みだとしてもその望みに懸けて会社を存続させねばならぬものだ。と冬木はいった。
が、荒井は静かにいった。私は、どうやら経営者として失格みたいです、大仁田をFMWに使わない、ということで。

「だから冬木さん」

荒井はいった。
669お前名無しだろ:2006/06/27(火) 13:58:14 ID:bpsY9wIW0
渋谷誘拐犯はやっぱりチョソ!!

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060626it19.htm?from=top

目撃者の女性は、ワゴン車のナンバーを控えており、練馬ナンバーのレンタカ
ーで、借り主は横浜市鶴見区在住の韓国籍の男(54)と判明した。
670燃えよ剣 3:2006/06/27(火) 14:08:01 ID:tsx4+gLV0

「あなたは、あなたの道を歩んでください。私は私の道をゆく。これでFMWは終わりました」

「終わらせねえ。続ける」

冬木は荒井の利き腕をつかんだ。木の枝のように細くかんじた。
ふってもぎはなつかと思ったが荒井は意外にもその手を撫でた。

「すいません」

「おい」

「冬木さん、自由にさせてくれ。あなたは新しいFMWを作った。その社長である私も作った。
 エンターテーメントと称してリング上で小便を浴びさせられたり、墓場でトレーニングをさせられた
 荒井昌一は、いま思えばあれは私じゃなさそうな気がする。
 もう解きはなって自由にさせてください」
671燃えよ剣 4:2006/06/27(火) 14:19:43 ID:tsx4+gLV0

「・・・・・・・・」

冬木は荒井の顔をみた。
茫然とした。

「行きます」

荒井は会議室を出た。出るとその足で事務所へゆき、社員にFMWの倒産を伝え、
さらに旗揚げ以来の所属レスラーを会議室にあつめて、

「今日をもちましてFMWは、倒産しました。私は、これから負債の整理にとりかかります。
 みなさん、本当に申しわけありません」

荒井は、ふたたび会議室を出た。
冬木は追わなかった。

(ひとりでも、おれは、エンターテーメントプロレスをやる)

ぴしゃっ、と顔をたたいた。脚の黒々とした蚊がつぶれている。


(完)
672お前名無しだろ:2006/06/28(水) 03:59:59 ID:J8jxKZzg0
667-671
う〜ん、その後がその後なだけに、ジワリとくる。

何はともあれ、乙です。
673お前名無しだろ:2006/06/28(水) 04:19:25 ID:U7+tEJvR0
司馬遼太郎ならもっと句読点を細かく入れろ。
うざいくらい語句ごとに入れるくらいでちょうどいい。
674お前名無しだろ:2006/06/28(水) 07:01:36 ID:yjNYdUi00
>>667-671
いいね。
なんとも言えない余韻がある。
675お前名無しだろ:2006/06/28(水) 21:09:45 ID:xLRP1JwzO
そうか?良くないだろう
676お前名無しだろ:2006/06/28(水) 21:26:31 ID:FbRPc5950
句読点入れまくるのは司馬でなく北方謙三
677お前名無しだろ:2006/06/28(水) 22:54:53 ID:GWQZeCi60
句読点入れまくりで読みにくいと言えば柴田練三郎。
ひどかった。
678お前名無しだろ:2006/06/29(木) 10:40:55 ID:NLOxa9mn0
>>673アドバイスしてやるのは結構だが
なんでそんなに偉そうなんだ
679お前名無しだろ:2006/06/30(金) 20:30:54 ID:M3pfr74M0
ageに早漏
680お前名無しだろ:2006/07/01(土) 13:11:55 ID:IhEUlnsX0
早くて御免
681お前名無しだろ:2006/07/02(日) 18:48:50 ID:IEHMcdN00
俺の場合遅い。
と言うか出ない。
泌尿器科に相談に行って来る。

などとageてみたい。
682お前名無しだろ:2006/07/03(月) 15:48:09 ID:NPi2Izup0
保守である
683お前名無しだろ:2006/07/04(火) 09:27:53 ID:5pPvriPe0
余談がすぎた。
684お前名無しだろ:2006/07/05(水) 18:55:53 ID:xrz1m0sk0
まだ、落とすわけにはゆかぬ。
685お前名無しだろ:2006/07/06(木) 18:24:25 ID:q7KbeZXeO
剛 竜馬はイク
686十一番目の志士 1:2006/07/07(金) 18:30:05 ID:+Xf/8k070

「ところでお前さんは、格闘家だな」
「さあ」
アレクセイ・イグナショフは、表情を消した。
「隠しても、その目付でわかる。いま、たれを倒す料簡でいる」
「申しあげかねます」
「そうだろう」
―――秘密を明かす馬鹿は、あるまいからね、とくすくす笑った。
「生国はロシアだね」
国籍と名はきかぬと言いながら、永田は永田なりにさぐりを入れているのであろう。
イグナショフは、ふと気づき、永田が自分をPRIDEで「死神」の異名をもつ
セルゲイ・ハリトーノフと間違っているのではないかと思った。
687十一番目の志士 2:2006/07/07(金) 18:44:55 ID:+Xf/8k070
セルゲイ・ハリトーノフとは、ロシア人で普段は、軍のパラシュート部隊に所属している
異色の格闘家で、卓越した打撃の技術と軍人特有の残忍さをもっている。
デビュー戦からわずかにしてPRIDEヘビー級GPに出場しオランダの強豪であるセーム・シュルトを
血祭りにした。準決勝でPRIDE三強の一角であるアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラに肉薄するものの、
判定により惜敗したが、このGPでハリトーノフは、一躍名を上げて、いまではPRIDE次期王者候補と
有力視されている格闘家である。
「なんだ、おまえはハリトーノフではないのか」
永田はつるりと顔をなで、ちょっとがっかりした様子であった。
688十一番目の志士 3:2006/07/07(金) 18:58:29 ID:+Xf/8k070
実はこのところネット上でナガタリアンとよばれる熱狂的な永田ファンたちが
永田vsハリトーノフ戦を実現させたがっているという噂があり、すでに永田も知っていた。
永田はおどろきもせず、
―――おれは新日本のリングでプロレスならば、いつでも殺ってやるよ。
と平素からいっていた。
「そうかえ、お前さんはハリトーノフではないか」
「ご不満でしょうか」
イグナショフは永田に好意をもち、逆にからかうように含み笑いをした。
「いやさ」
永田はいった。
「ハリトーノフがおれを倒しにきたらナガタロック3で絞めあげてやろうと楽しみにしていたのだが、
 惜しいことをした」
689十一番目の志士 4:2006/07/07(金) 19:09:32 ID:+Xf/8k070

「おれはハリトーノフを知っています」
「そうだろう、同業だからな」
「それほどお楽しみなら」
イグナショフはいった。
「ハリトーノフにそう言って参上させましょうか」
「大人をからかっちゃいけない」
永田は、急に顔をにがくした。この男はイグナショフをほどほどにあしらっているものの、
格闘家というものを好んでいない。
「しかし、いったいYouは」
永田は、慣れない英語の発音でYouという単語をイグナショフにつかった。
「いま、何者を倒そうとしているのだ」
「ナカムラ」
「真輔か」
永田は、ぎょろりと目をむいた。
「よせ」
とは、永田はいわなかった。
690十一番目の志士 5:2006/07/07(金) 19:23:42 ID:+Xf/8k070

「ナカムラは、準備ができ次第アメリカに無期限のプロレス海外修行へ発たれるそうですね」
「他人のことは、知らんよ」
永田は、急に寡黙になった。
ほどなく朝になり、イグナショフは永田の好意で朝食を馳走になり、そのあとひと眠りした。
永田はイグナショフに、なんならしばらく泊まっていけと言った。


イグナショフが永田の家に泊まって三日目の晩、巡業から帰宅した永田はイグナショフの部屋の前を通り、
「やあ、まだいたのか」
と、入ってきた。
部屋は六畳ほどで不評であった赤いタイツや格闘技用の青いスパッツなどの置き場所になっている。
691十一番目の志士 6:2006/07/07(金) 19:35:39 ID:+Xf/8k070

「きょう、タッグで真輔と試合をやったぜ」
と、永田は例の餓鬼のようなすわり方をした。
「あいつは、おっつけ日本に居なくなるだろう」
「LA道場とやらに」
と、イグナショフは会話をあわせた。
永田はそれには答えず、ポケットから手を出し、あごを撫でまわした。
「おれはあいつのやることなすこと、みんな気に食わねえんだが、しかしサラリーマン化した、
 いまの所属レスラーのなかでは唯一の出色だな。新日のファンは格闘家に勝てるプロレスラーを
 尊ぶそうだが、中邑真輔は、それに近いプロレスラーかもしれねえな」
「どういうことでしょう」
「まず、プロレスが、しょっぱいね」
692十一番目の志士 7:2006/07/07(金) 19:45:59 ID:+Xf/8k070
永田の言い方はいつもそうだが、ほめているのかくさしているのか、見当のつかぬところがある。
「なんてったって、神の子さ」
と永田はいった。
「新日本に忠」
永田は、中邑のそういう特質を、大まじめな口調でいった。
「おれには、よくわかりませぬ」
「そうだろう、古住今来、格闘家というものは頭の悪いものだ」
「おそれ入ります」
イグナショフは、猫のようにおとなしい。永田というのは妙な男で、こう、いくら毒づかれても
イグナショフは腹も立たないのである。
「ではナガタさんは、後輩のナカムラをどう思われます」
693十一番目の志士 8:2006/07/07(金) 19:56:01 ID:+Xf/8k070

「好きか、嫌いか、はっきりしろ、というのか」
「まあ、早く申せば」
「そこが格闘家の頭の悪いところだ。好き嫌いなど、見方によって生ずるだけのことだ。
 真輔は背広組からみれば可愛い奴、レスラーの仲間内からみれば生意気な奴」
「ナガタさんからみれば?」
つまり、永田個人の視点からみれば?とイグナショフはせまり、永田の口からはっきりと
中邑に極印を押させようとした。
が、永田は大口をあけてのけぞり、笑いだしただけであった。
(ずるい)
イグナショフがそんな表情をしたとき、「左様、ずるい」と永田はすかさず言った。
694十一番目の志士 9:2006/07/07(金) 20:07:50 ID:+Xf/8k070

「おれは中邑ほど真っ正直なやつとちがって狸だぜ。化けるときには化けられるプロレスラーでなくて、
 この業界が渡れるか」
(ちっ、やはり口先だけの野郎か)
イグナショフはかっなり、とたんに永田の首ねっこを両手でつかもうとした。
イグナショフの思考法はこの自慢の膝蹴りを永田の腹にめがけて突き刺すしかない。
「イグナショフ、みろ」
永田はとっさにうずくまると、自分の首を両手で抱えこんで丸くなった。
イグナショフは、唖然とした。
目の前の永田は、奇態な格好をしていた。まるで大きな亀が現れたかのような格好である。
695十一番目の志士 10:2006/07/07(金) 20:16:38 ID:+Xf/8k070
永田は、その格好のまま、
「おれは二度目の猪木祭りでヒョードルに、ぼっこぼこにされて本当に、殺されるかと思った。
 それでもなんとか大怪我ひとつ負わずにリングから降りた。いまさら手前のようなベラルーシの
 気違い野郎に大怪我を負わされてたまるけぇ」
(おどろいた、たんかだ)
イグナショフは馬鹿らしくなり、ぺたりと腰を降ろした。どう考えても永田のせりふは、
IWGP最多防衛記録を樹立したプロレスラーのせりふではない。
「ヒョードルに」
イグナショフは、小さくつぶやいた。
696十一番目の志士 11:2006/07/07(金) 20:27:36 ID:+Xf/8k070
永田は「うむ」とうなずき、
「ああヒョードルにだ。あのとき死んだ命だと思っていま生きてる。ところがおれの偉いところは、
 そのときのヒョードル戦のギャラを、まだ貰えずにいるのに、猪木会長や新日本に文句ひとつも言わずに
 プロレスに専念していることだ、わかったかぁ」
「はあ」
イグナショフはうなずいたが、とはいえなにがわかったのか一向に要領を得ない。
どうやらごまかされたような気がするし、なにやら深遠な禅語をきいたような気もする。


(完)
697お前名無しだろ:2006/07/07(金) 20:37:57 ID:PN66wnvl0
おもしれえじゃねえか!!
698お前名無しだろ:2006/07/07(金) 20:58:05 ID:U7jW4mTV0
>―――おれは新日本のリングでプロレスならば、いつでも殺ってやるよ。

ここでまずやられたw
699お前名無しだろ:2006/07/07(金) 21:02:03 ID:FCfieJeT0
いや、久々の職人芸、堪能させていただきました。
永田さん、いろいろな意味で最高の素材だよなあ…。
700700:2006/07/07(金) 21:16:00 ID:DyFsSEgV0
700
701お前名無しだろ:2006/07/07(金) 21:38:42 ID:IelJ43nd0
このスレ、何かいい感じがする
俺好きかもしれない
702お前名無しだろ:2006/07/08(土) 09:16:03 ID:Zhtf/ti7O
ここで、スレをageることを許されたい。
703お前名無しだろ:2006/07/08(土) 17:16:34 ID:d+ZX4ib60
この稿続く。
704お前名無しだろ:2006/07/08(土) 17:26:10 ID:JeP5RTIlO

(^ω^)よう、早速だけどおまえら全員に、全身からしぼりたての精液のニオイがぷんぷんする呪いをかけちまったぜ。
もし解いてほしかったら、
このスレッドに、 
http://c-au.2ch.net/test/-/musicjm/1152259571/
「ネコミミ喫茶にゃんだふるわ〜るどは、今月いっぱいをもちましてて閉店したしますにゃん♪」 と書くんだ。
ちなみに、書いた数が多ければ多いほどポイントがたまるよ。
7月21日までに500ポイント集めると、三沢の恥ずかしい動画うpしてやる
705お前名無しだろ:2006/07/09(日) 11:19:05 ID:N08iPmui0
ageてこそ武士でござるわ
706豚と薔薇:2006/07/09(日) 20:57:29 ID:IrwQLpTu0
永田「会社に十数通目の辞表を出すなどとは、俺などとは違って、よほど剛胆な人物か、それともよほど――」
藤波「よほど?」
永田「会社をなめた元社長やな。元社長とは、あんたのことや」
707お前名無しだろ:2006/07/10(月) 12:23:31 ID:Onb9b7gr0
時にはageることも必要であろう
708お前名無しだろ:2006/07/10(月) 22:34:00 ID:C+PCk+x/0
「左様、ずるい」……永田さんカッコイー!
709お前名無しだろ:2006/07/12(水) 21:34:52 ID:3YexnSXL0
(ageよう)
とおもった。
710お前名無しだろ:2006/07/12(水) 21:36:01 ID:3YexnSXL0
上がっていなかった。
>>709の不覚さとしかいいようがない。
711お前名無しだろ:2006/07/14(金) 14:36:33 ID:afF9fgR+0
「このスレをageれば、ネタスレの林立するプ板に一石を投じることができるのではないか」
と、保守人たちは思った。
712隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」1:2006/07/14(金) 23:31:57 ID:TVcfT5+/0
「レスラーてもんはデビューした時から塩は塩と知ってるんだよ」
 よしゆきが云った。
「三戦目の新人でも、自分の試合がいい試合か悪い試合か、ちゃんと知っているもんだ。
そうして塩を犯せば客に罰されることも知ってる」
 一息いれるように盃に口を運んだ。
「それが罰をうけねえとどうなるかね」
 一同、考えこんだ。
「儲けた、と考えると思うか。とんでもねえ。奴は馬鹿にされたと信じるんだ」
「まさか」
 裕志が思わず云った。
「それがそうなんだよ。侮辱された。はっきりそう思うんだ」
 裕志は何かいいたそうにして、晋二郎と隆男を見た。仰天した。
この二人はなんとしきりに頷きながら聴いているのだ。
713隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」2:2006/07/14(金) 23:32:59 ID:TVcfT5+/0
お前さん、どうやら自分が塩だと思ったことが一度もねえようだな、裕さん」
 よしゆきは面白そうに裕志を見た。この言葉は正に裕志の弱みを衝いた。
総合に手を出し亀になった男に、己の塩をふりかえる余裕は全くなかったのである。
「妙ないい方だが、塩には塩の誇りがある。その誇りは客から無視されることで初めてはっきりするんだ。
どんなに塩な試合をしてもサクラの声援をうけるようじゃ、誇りはずたずただよ。
生きているのもいやになるだろうなァ」
 裕志は全く言葉を失った。ついて行けなくなったからだ。
同時に裕志は、自分がついてゆけない以上、サイモンをはじめ新日本の重職たちの何人といえども、
この思考についてゆける筈のないことを痛感した。
 いまいましいのは、そんな困難な思考が、晋二郎と隆男にはやすやすと辿れるらしいということだった。
二人は何度も頷き、隆男に至ってはうっすら涙ぐんでさえいる。
714隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」3:2006/07/14(金) 23:33:59 ID:TVcfT5+/0
<こりゃあ駄目だ>
 一瞬に裕志は見切りをつけた。中西の問題はこの二人に委せるしかない。
己を含めて新日本の誰にも、この件を扱う力はない。理解しがたい人間を、どうやって扱えばいいのか。
「俺には無理だ。この一件はお主たちに委す」
 思い切りよくそう云った。
「委せるとはどういうことだ」
 晋二郎が訊いた。裕志は一瞬つまったが、
「それも委せる」
 そう云ってしまった。
「なんだ、それは」
 さすがの晋二郎が呆れ返った顔になった。
「つまり、今よしゆき殿の云われたことが、まさしく中西さまの問題なのかどうか確かめ、
殿に報告するという・・・・・・」
「それだけでいいのか」
「いいのかって云ったって・・・・・・」
 裕志はほとんど自棄のやん八だった。
「俺に分るわけがないじゃないか。だから全部委せると云ったんだ。お主たちの好きなようにしろ」


(完)
715お前名無しだろ:2006/07/14(金) 23:35:41 ID:TVcfT5+/0
スレ違い、スマヌ
716お前名無しだろ:2006/07/15(土) 13:14:15 ID:hEaJQtwA0
うーん、隆慶一郎は読んだこと無いのでわからん。
評価できなくてスマソ。
717お前名無しだろ:2006/07/15(土) 15:15:13 ID:VL8z10U+0
>>712->>714
乙、でも無理あるなあ。
718お前名無しだろ:2006/07/15(土) 16:41:06 ID:QK50sM2S0
いいんじゃない?格調高い文章の時代劇なら
司馬限定と固いこと言わず個人的にはウェルカム。
719お前名無しだろ:2006/07/15(土) 18:51:53 ID:TXJGBklEO
「スレの活気を促すには、夢枕獏調だろうがYoshi調だろうが、かまわぬ」
そう、云ってのけた。
720お前名無しだろ:2006/07/15(土) 19:13:13 ID:YNZOGb9E0
町田康で頼んでみようとも思ったのだがあかぬかったのであった
721お前名無しだろ:2006/07/15(土) 21:12:06 ID:QK50sM2S0
Yoshi?
722お前名無しだろ:2006/07/15(土) 21:45:58 ID:2qzsf7s20
そういうこと言ってるとリアル鬼ごっこ文体やっちゃうぞコラー
723お前名無しだろ:2006/07/15(土) 23:12:02 ID:TXJGBklEO
【ガッシ!】鬼才Yoshiを語る2【ボカ!】
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/books/1142071020/
724お前名無しだろ:2006/07/16(日) 18:31:59 ID:5A63f+WB0
>>564 の下の句最高!
725お前名無しだろ:2006/07/17(月) 08:31:08 ID:b8BfJTk30
なるほど、ageである。
726お前名無しだろ:2006/07/17(月) 09:36:58 ID:e3pmQW4p0
このときほど痛切にageようと考えたことはない
727お前名無しだろ:2006/07/18(火) 18:40:29 ID:xmzunQtJ0
勝海舟と西郷の江戸会談を描いた司馬の話はないかな?
花神か慶喜かな
728お前名無しだろ:2006/07/18(火) 20:01:46 ID:HvmQ8yoR0
なんかいろんな小説でちょっとずつ触れられていたから、もっと多いと思う。
729風神の門 より:2006/07/19(水) 00:11:38 ID:gtnEH8XX0
猪木も六十を過ぎた。
レスラーの寿命の常識からいえばもういくばくも春秋は残っていない。
しかし、この闘魂は気味の悪いほど壮健だった。
若いころからのくせで、米はあまり食わず、肉を主食とし、
老人のくせに文学、茶道といった風雅の道にはまるで興味がなく、
暇さえあれば古巣の新日本に嫌がらせを仕掛けるのである。
じっとロスにこもっていられないたちなのである。
格闘家としては鶴田ほどの実績はなく、
レスラーとしても猪木の師匠格であった力道山ほどの鬼才はなく、
団体経営の技術は馬場に劣っているが、
なによりも猪木のすぐれた点は、
それらのレスラーとはくらべものにならぬほど長命だったということである。
730お前名無しだろ:2006/07/19(水) 01:21:34 ID:9U0iG5h20
兎も角も矢張りageるべきである。
731お前名無しだろ:2006/07/19(水) 20:28:15 ID:ZsFG70Dj0
余談age
732歳月 1:2006/07/20(木) 19:45:40 ID:s1lajNzd0
天山は、語りはじめた。
自分の持つIWGPと小島の持つ三冠のダブルタイトルマッチが急遽組まれたこと、
小島は三冠王者とはいえ実力は、自分の方が格上だ、とタカをくくって試合にのぞんだこと、
しかし小島は自分が思っていた、それ以上に実力があがっていたこと、
それでも試合の序盤は互角の勝負を展開していたこと、
ところが、試合時間三十分すぎぐらいから自分のからだに異変がおきたこと、
その体調の異変により試合後半は意識も朦朧とし、ついには、ぶっ倒れてしまったこと、
しかしこのダブルタイトルマッチは、両団体の面子を考慮して時間切れ引き分けになる、と思っていたこと、
だけど和田京平は、平然と10カウントをかぞえ自分が負けてしまったこと、
病院に運ばれ医師の診察の結果「脱水症状」である、と宣告されたこと、
などを語った。
733歳月 2:2006/07/20(木) 20:02:46 ID:s1lajNzd0
蝶野は、ときどき天山の悲運に対し痛ましそうな表情をするのみで、
べつに反問もせず、うなずいてばかりいる。
蝶野にすれば、感想はのべにくかったであろう。本来、新日本の論理では、
天山のような敗北をきらった。敗因の原因が脱水症状などは、新日本のプロレスラーの
とるところではない。
もし蝶野ならばレフェリーにわざと暴行を加えるなどして無効試合にして、がむしゃらに
新日本の面子を守るような手段をつかうであろう。
蝶野だけでなく、蝶野をふくめた上の世代の新日本のプロレスラーは決して負けてはならない
試合にのぞむ場合は、みなそのような論理をもち、脱水症状が原因で敗北するなどは、ありえない。
734歳月 3:2006/07/20(木) 20:24:50 ID:s1lajNzd0
たとえば、長州力である。
いまとなっては忘れ去られた小川vs健介戦のときに健介が不利になるとみるや
ただちに中西に乱入するように命じこの試合をぶち壊している。
小川はこの試合の翌日プロレス誌の取材を受け、新日本のそういう態度に怒りを表わしている。

「新日の連中は、試合展開がやばくなると、長州の命令で試合をぶち壊した。
 まことに観戦しにきた愚昧のファンはあわれである。それにしても新日のざまはどうであろう。
 それがしの試合が組まれるや、たちまち恐怖戦慄してねずみのごとく逃げだしてしまうような次第で、
 せめてリングを枕に一敗を遂げるなら、まずまず一分は立とうというものだが、
 しかるに平成の新日においては橋本以外は一人もそういう者がいない。
 長州は申すにおよばず、健介そのほかおもだった連中はことごとく潔くなかった。
 闘魂とは申しながら、じつにプロレスラーたる者は、いなかった」
735歳月 4:2006/07/20(木) 20:54:44 ID:s1lajNzd0
長州や健介だけでなく新日本のプロレスラーに対して無残なばかりの検断のコメントである。
闘魂、と小川はいう。この猪木を表したキャッチフレーズを経て新日本特有のプロパガンダに
変貌を遂げた闘魂という言葉は、やがて「闘いのワンダーランド」とか「新日ヒャッホー」とかいう
ほめことばで畏敬されることもあったが、しかし平成の新日本坂口体制は、「脱・猪木」を掲げたために
闘魂は飾り文句にすぎないともいわれた。この坂口体制で新日本は「強さ」よりも「魅せる」試合に重点をおき
また時代の後押しもあったため九十年代に最盛期をむかえた。そのため最強を決定するために設立されたIWGPも
やがてトップ選手の持ち回りになる事態をうんだ。小川は「一個のプロレスラーたる者なし」と言うが、
プロレスラーとして信用ならない当時の小川に対し業界の盟主たる当時の新日本がその地位をまもり、
維持していくためには、レフェリーへの暴行や乱入といったファンの犠牲をともなう非情の手段も必要なのかもしれなかった。
736歳月 5:2006/07/20(木) 21:07:28 ID:s1lajNzd0
ともあれ、蝶野も新日本のプロレスラーである。この場合の天山に対し、当時の小川に
対する長州とは考えこそちがえ、まったくべつな感想をもったわけではなかったが、
天山からIWGPを奪った相手がたとえ元・新日本の小島とはいえ長年の宿敵である全日本ということは、
やはり天山の敗北の代償は大きいことにはかわりない。
ただ蝶野には、長年、目をかけてきて主従関係にちかい存在の天山に同情するについての過剰すぎるほどの
感情があり、この場の天山に対し別個に同情の気持をもったにすぎない。

「われわれは同志だから」

と、天山はいった。
737歳月 6:2006/07/20(木) 21:21:25 ID:s1lajNzd0
そういう言葉づかいに対しては、蝶野はあきらかに困惑の表情をうかべた。
狼群団、nWo、チーム2000の段階ではたしかに同志であった。しかし
蝶野が長州のあとの新日本の現場を任される立場になるとかつての同志だからといって
優遇することなどできようはずがない。だから決して同志ではない。
天山には、そこまでの蝶野理解はなかった。
天山の弁解は、三時間にわたった。
夜がふけるにつれ、天山は重いとびらを、疲労しきった腕で押しつづけている自分を知った。
しかし蝶野は、天山の弁解がこんにちの客観的な、または主観的な状況下ではなんの意味ももたぬ、
こどもの言い訳のようなものであることを最初からわかっていた。
738歳月 7:2006/07/20(木) 21:36:31 ID:s1lajNzd0
蝶野は体力のつづくかぎり天山の弁解をきいてやろうとするのみであった。
しかし夜ふけとともに話題を転じようとした。

「そういうことより、天山、おまえIWGPを奪われた責任の始末をどうするつもりだ」

と、はなしをそのほうにふりむけようとしたが、しかしこの脱水牛はあたまから乗って来ようとはせず、
小島にIWGPを奪われた言い訳のみを弁じた。
蝶野は、話の腰を折った。

「だから、IWGPを奪われた責任はどうするのだ。オラァ、エェー」

と、わざと声を荒げた。
天山も、そうなれば気が立ってくる。

「IWGPのことなど、また自分が挑戦して小島から奪いかえせばいいではないか。エェ、オラァー」

(なるほど、天山はちがう)

と、蝶野は、意外な思いがし、天山に対し感動をおぼえた。


(完)
739お前名無しだろ:2006/07/20(木) 22:01:32 ID:elakrd/nO
この時代にあっては人の真似をすることが大衆の興味を引き、あるいは真似をされる当の本人以上に人気を博したりすることも常であった。その意味では、長州小力ほど時代の潮流に乗った者もいまい。
740お前名無しだろ:2006/07/21(金) 20:34:48 ID:Ku8CFKMc0
だが、長州力というオリジナルがいなければ、
今日の小力の成功もなかったであろう。

余談だが、アントニオ猪木のものまね芸人である春一番を最近TVで見ない。
筆者はどちらかというと、小力よりも春一番のほうが好きである。age
741お前名無しだろ:2006/07/22(土) 20:43:14 ID:cwY3jGh70
司馬遼太郎のエッセイじゃなくてきちんとした
小説が読みたいときはペラペラとめくって見て
セリフが極端に少ないときは赤信号。
最悪の場合ほとんどが余談
742お前名無しだろ:2006/07/22(土) 23:44:04 ID:53wiKwlP0
だが、それがいい
743お前名無しだろ:2006/07/23(日) 10:26:19 ID:+5LijqbM0
余談がすぎた。
744お前名無しだろ:2006/07/23(日) 17:59:49 ID:AfmVUFuGO
余談であるが「長州は短小である」
745お前名無しだろ:2006/07/24(月) 20:22:24 ID:L2StlAnP0
なるほど、余談
746お前名無しだろ:2006/07/26(水) 03:03:32 ID:CsBGZB8c0
余談でもage
747お前名無しだろ:2006/07/26(水) 20:31:26 ID:QPEtsMzi0
余談余談
748お前名無しだろ:2006/07/26(水) 20:39:06 ID:Ym88ZdXTO
余談どころか、作者が出てきちゃうこともあるしな
749お前名無しだろ:2006/07/26(水) 22:05:38 ID:sR3w54jm0
司馬作品見てると大抵の作品は最初は
面白い物語にしようという意気込みが見られる。
翔ぶごとくだって真偽の程も定かじゃない下ネタから始まるし、
坂の上の雲だって出だしはユーモラスだ。
竜馬がゆくも最初は変なオリキャラの泥棒がいるし。
余談だらけになるのは作者も本意ではないとは思うよ。
ああまたやっちまったって感じ。
750お前名無しだろ:2006/07/26(水) 22:18:43 ID:2v3j+HT30
>>749
たしかに、構成が破綻しているといえばそうなんだけど
それが芸の域までたっしているのが司馬遼太郎の魅力のひとつでもある
751お前名無しだろ:2006/07/26(水) 23:21:25 ID:kcIQK8GD0
この稿つづく
752人間の集団について 新日から考える1:2006/07/27(木) 01:30:08 ID:oHa4Numy0
ねらーはたしかによくない。
しかしそれ以上によくないのは、
こういう環境に自分を追いこんでしまった新日自体であるということを、
世界中の人類が、人類の名においてかれらに鞭を打たなければどう仕様もない。
ひとびとが、新日の中でどの側により濃く正義があるとして
その側寄りに声高く支援しているかぎりは、このばかばかしい機械運動は
永久電池のようにして終わることがないのである。
753人間の集団について 新日から考える2:2006/07/27(木) 01:36:40 ID:oHa4Numy0
すぐれた団体経営というものは金にきたない人間を排除することだとすれば、
三十数年来アゴに苦しめられてきた新日は、
元子から離れて団体を作ったノアよりも、
はるかにそのことを知っているはずである。
さらにはこの三十四年のなかで排除のチャンスがいくつもあった。
それでもなおかれらはそれを逸した。
最大の機会であったアゴの引退後も、
なおかれらはロス道場を閉鎖することをしていない。
754人間の集団について 新日から考える3:2006/07/27(木) 01:41:32 ID:oHa4Numy0
「たのむから、アゴに口出しをさせないでくれ」
と、ユークスの高官が新日の要人にくりかえし説いている現場を見たという社員に会った。
しかしそれはむだであろう。
すでにこの奇妙な永久電池の中で旋回しているアゴを持った集団に対し、
この説得は悲鳴ほどの効果ももっておらず、
もし本気でやめさせるなら、敗けさせる装置をつくる以外にない。
敗けさせるというのは、金を出さないことである。
755人間の集団について 新日から考える4:2006/07/27(木) 01:44:57 ID:oHa4Numy0
私はたこ焼きスレに滞在中、毎夜のようにユークスの株価が下落しているというレスをみた。
レスナーが来日しないと知っていながらカードを発表していたことも、
新日が払い戻しを渋る対応をした経過も、自宅のパソコンという日常生活の場所からみえた。
さらには、橋本追悼興行が遺族から批判されるという事件もおこった。
2chでは、フロント陣の入れ替えのうわさが流れていたし、
また、たこスレでみた新聞のコピペでは、イノキゲノムが
テレビ放送の準備のために延期されたという記事も出ていた。
756人間の集団について 新日から考える5:2006/07/27(木) 01:50:07 ID:oHa4Numy0
これらの現象のすべてが、新日の未成熟をあらわしている。
未成熟とは、“ストロングスタイル”の表現について
民族的体験としてあきあきしてしまった社会から見れば、という意味である。
新日の不幸は、そういう面で未成熟のままの段階において、
そとから際限もなく投資をしてくれる旦那衆を引き入れてしまったことであり、
さらには新日内でのアゴ派が、その金を効率的に
私物化するための組織をもってしまったことである。
それらの組織が精妙であればあるほど、すばらしい運動力をもって旋回し、
ファン個々の喜怒哀楽などを圧殺してしまうものらしい。

(平成十八年七月)
757お前名無しだろ:2006/07/27(木) 20:23:16 ID:Duaq6hI/0
>>752-756
毛色の変わった作品だけど面白い!
楽しませていただきました。
758お前名無しだろ:2006/07/28(金) 07:21:18 ID:FYTzviZo0
みんな凄いなぁ。
もしかして文筆で生計たててる人も混じってたりして。
759お前名無しだろ :2006/07/29(土) 16:37:02 ID:/khktido0
age
760お前名無しだろ:2006/07/29(土) 20:20:14 ID:xTNZyi2y0
ただ、ageるのみでござるわ。
761お前名無しだろ:2006/07/29(土) 21:06:53 ID:Ph5nBUot0
今花神読んでるんだけど余談に侵食され尽くして
話が進まない
762お前名無しだろ:2006/07/29(土) 21:34:54 ID:q55vhUc00
それこそ司馬小説の醍醐味。
763お前名無しだろ:2006/07/31(月) 18:02:00 ID:0Su1jelN0
小説部分より余談のが長いのは百歩譲って許しもしよう。
しかし他の作品で散々言い尽くしてる事を今考えついたかのように
繰り返すのはやめて欲しい。
764お前名無しだろ:2006/07/31(月) 18:56:23 ID:DX0BLDgSO
これはしたり!
765お前名無しだろ:2006/07/31(月) 21:01:18 ID:nX1duaI/0
>>763
たとえば「竜馬がいく」のなかで新撰組の説明を
”新撰組については、燃えよ剣であらかた書いたので説明は省く。”
なんて書いて済ませればいいのか?
766お前名無しだろ:2006/07/31(月) 21:34:16 ID:0Su1jelN0
>>765
余談にも重要な物と「余談に余談を重ねる」つまりどうでも
いい余談があるじゃん。ニュアンスは個人個人で微妙なもんだけど
「ついでながら」的な、筋と関係のない余談に他の小説で何度も
言ってるような見解をまたのべるのはうんざりする。
767お前名無しだろ:2006/07/31(月) 21:40:55 ID:uzBYouis0
>>766
それは永源のツバ吐き芸を否定するようなもの
768お前名無しだろ:2006/08/03(木) 06:59:24 ID:AYFixVXq0
いましばらく余談を続ける。
769お前名無しだろ:2006/08/03(木) 20:53:53 ID:SM/iaZZS0
(だからこそageねば)
と、左近は思うのだ。
770お前名無しだろ:2006/08/03(木) 21:34:49 ID:tceLcDo9O
濡れ場が盛り上がらない
それはひとえに氏と奥方のまぐあいを、想像してしまうからである。
言い換えれば全ての女性の顔が奥方の顔に思えてしまうのである。
771このリングのかたち:2006/08/05(土) 10:27:19 ID:/u42NkgB0
「僕の青少年期はヤオガチということはあまり言われませんでしたよ。」
と、80年代うまれの人たち言っても、説明するのに、大変な言語量が要る。
とくに七、八歳下、あるいは十歳下の平成世代の人達にそんなことを言うと奇異な目で見られる。
齢の差はどれほどもないじゃないか、ということもあり、それにいまはともにネット世代なのである。
2ちゃんねらー同士がたがいの小差を言いあうのも滑稽だが、実は大差があるようで、
1985年あたりにうまれた人達は、プロレスが次々と総合格闘家に屈していく段階に入った2000年頃にはすでに中学生、高校生になっていただけに、
精神の上で、最大のプロレス最強幻想崩壊の被害者だったといっていい。
なにしろ、鋭敏な少年の感受性をもっている。
そのくせ社会や政治についての情報を適度に判断できる―いわばたかをくくれるような、転把のあそびといってもいい―いいかげんさをもっていない。
そういう少年達が、一ラウンドも持たずに高速タップとか、開始一分も経たずにハイキック一発にチャンピオンが沈む様を見せられれば、それが絶対的価値になってしまう。
その時代のプオタ中学生にとって、「永田さん」とは愕然以上に侮蔑の名称だったろう。
772お前名無しだろ:2006/08/06(日) 21:24:12 ID:F/8W3Uva0
>>771
掌編だけど味があるなあ。
別に年の功気取るつもりもないけど、70年代中盤生まれとしてはけっこう言いたいことは
わかるんで、しみじみと読ませていただきました。
773お前名無しだろ:2006/08/06(日) 23:04:05 ID:zMDxkET70
60年代中盤生まれの筆者としては、
ここでageねばなるまい。
774お前名無しだろ:2006/08/07(月) 20:38:36 ID:pwPBkdCg0
80年代初盤生まれのそれがしがage。
775お前名無しだろ :2006/08/08(火) 21:58:26 ID:vCf9Y1hX0
775
776お前名無しだろ:2006/08/09(水) 17:07:44 ID:/r4cP8wI0
「なあ盟友、俺はね、プ板がどうなろうとも、たとえ2ちゃんねるが潰れ、消滅して、
最後の一人になろうとも、ageるぞ」
777お前名無しだろ:2006/08/09(水) 17:09:48 ID:GK0awThZ0
777
778お前名無しだろ:2006/08/11(金) 12:42:25 ID:xZCFNgpv0
余談だよ
779お前名無しだろ:2006/08/11(金) 19:14:47 ID:fzhuVxon0
書き手が帰省してしまったのだろうかといぶかしむ
780お前名無しだろ:2006/08/12(土) 19:42:50 ID:11j4la7y0
保守
781お前名無しだろ:2006/08/13(日) 04:20:40 ID:eydvLsk60
死守
782お前名無しだろ :2006/08/14(月) 15:26:19 ID:YjwYIF6s0
age
783お前名無しだろ:2006/08/14(月) 16:56:22 ID:6AZOxKvf0
あげ
784お前名無しだろ:2006/08/16(水) 11:04:33 ID:lEcIcsq/0
その後、日が経つにつれて>57と>126の一種神寂びた書き込みのたたずまいと、
それにまだ見ぬ>785のことなどがひろがりはじめ、それが日ごとに幻燈のように動き、
どうにも日常の仕事にさしつかえるようにまでなった。
785お前名無しだろ :2006/08/16(水) 15:52:24 ID:WxIQdarL0
785
786784:2006/08/16(水) 16:11:42 ID:lEcIcsq/0
785には感謝せねばなるまい。
これで仕事に戻れるであろう。
787翔ぶが如く 1:2006/08/16(水) 23:18:00 ID:04FmbHgv0
棚橋弘至が、藤波の自宅をたずねあてたとき藤波は出払っていて不在だった。
藤波の妻であるかおり夫人に、
―――おれは藤波さんの弟子である。
というふうに名乗り、新日本プロレスラーであるとはいわなかった。
藤波さんのゆくさきを教えてほしい、とたのむと、かおり夫人が
―――主人なら、たしかNHKの仕事で八王子あたりの田舎にいらしゃったはずですよ。
と、いった。
藤波のゆくさきを教えてもらった棚橋は愛車であるスクーター「飛龍号」に乗り、アクセルをふかせた。
上半身タンクトップ姿というのは田舎の景色としてあつくるしいものがあるが、しかし
スクーターの運転は素人ばなれしていた。
788翔ぶが如く 2:2006/08/16(水) 23:29:40 ID:04FmbHgv0
この平成十八年は棚橋の生涯にとってもっとも多忙なころであり、かれの存在が
新日本の歴史に濃厚にかかわった時期であった。かれは新日本の期待にこたえるべく
試合やトレーニングに没頭しており、かれ自身、今度のIWGP挑戦をこれまでの
プロレス人生の集大成としてかんがえている。
昨日もかれの連載コラムのひとつである「北風と太陽」を書きあげるためにほとんど
徹夜をした。
女癖の悪さという人格上致命的な欠陥のある棚橋は、プロレスラーとしての評価が
あるいは困難であるかもしれない。
しかしこの時期の新日本で何事かをなしたという点では、棚橋は数人のうちに入るであろう。
789翔ぶが如く 3:2006/08/16(水) 23:43:29 ID:04FmbHgv0
その棚橋が、新日本を退団した藤波に会うべく懸命にスクーターを走らせている。
が、無我の重鎮である西村が退団し、今度は師匠の藤波までもが退団しても新日本に
残留を決意したこの男が、いまさら藤波に会おうというのはどういう心境なのであろう。


八王子のある農村に多くの「ふるさと一番」の中継スタッフが、集まっている。
棚橋は付近にスクーターを停めてひとごみをかきわけてすすんだ。
藤波の所在が、中継スタッフや多くのひとにうずもれているせいか、棚橋はときどき
土手にはいのぼってあたりを見渡した。
その動作をくりかえすうちに、ディレクターと話をしている藤波を見た。
790翔ぶが如く 4:2006/08/16(水) 23:58:34 ID:04FmbHgv0
棚橋は勢いづいて全力で走りだした。
この捜索のなかで、棚橋の気分はしだいに大人くさい分別を離れ、はじめて岐阜の体育館で
生のプロレス観戦をする少年のころの日々がいきなりよみがえってくるような気がした。
捜しもとめる相手が元新日本社長ではなく、少年のころにあこがれた藤波のサイン欲しさで
会場中をさがしもとめているような気がしてきたのである。
やがて棚橋はやや広い場所に出たとき、レポーター姿の藤波がいることを知った。
藤波は、ふるさと一番のリハーサルに集中していた。
791翔ぶが如く 5:2006/08/17(木) 00:09:22 ID:1vOnnSre0

「棚橋です」

と、棚橋はおもわず大声をあげ、両手で大きく藤波に手をふったとき、
藤波はふりかえった。
藤波は、この時期、プロレス関係者に会いたがらない。まして藤波の愛弟子でありながら
第二次長州現場体制ともいえる新日本に残留し、しかも新エースと期待されている棚橋に
藤波が会いたがるはずがなかった。
棚橋は、あわただしく藤波のそばに走り寄ろうとした。
藤波は、叱りつけた。

「リハーサルの邪魔っ」

藤波が退団にあたって棚橋にいった言葉というのは、これだけである。
792翔ぶが如く 6:2006/08/17(木) 00:26:12 ID:1vOnnSre0
棚橋は、二十メートルばかり離れて、藤波が案内役として出る、ふるさと一番の
本番中継を見ていた。
ふふん、と藤波の特徴ある息づかいがレポート中の音響に拾われている。
棚橋は邪魔をしないように、じっと見ている。
やがて番組の中継がおわったとき、無事、案内役を果たした藤波の額が汗で
きらきらと光っていた。
それに安堵して棚橋は藤波に近づいたが、物は問いかけない。藤波もだまっている。
―――また新日本に戻ってくるのでしょう。
と棚橋は問いたかったが、いまの藤波に問うことは、なにやら憚れるものがあった。
793翔ぶが如く 7:2006/08/17(木) 00:38:13 ID:1vOnnSre0
新日本の功労者のひとりである藤波が、団体や肩書きをすて、このままひっそりと
(すぐに西村等と新団体を旗揚げするが)プロレス界から身を引こうとしているのである。
棚橋が何を問い、どう諫めようとも、自分の吐く息が生ぐさすぎるような気がして、
物を言う気力も失せてしまったのである。
藤波はこのあとNHKのスタッフによばれてその場を立ち去った。
棚橋はただ呆然とそれをながめていただけで、結局はすべての思いを一礼に籠めて
立ち去らざるを得なかった。


(完)
794お前名無しだろ:2006/08/17(木) 01:05:06 ID:k9/eDB9r0
↑棚橋のこと嫌いだったのに…ちょっと好きになりました。
795お前名無しだろ:2006/08/17(木) 02:29:40 ID:g4CClWDx0
>藤波のゆくさきを教えてもらった棚橋は愛車であるスクーター「飛龍号」に乗り、アクセルをふかせた。
>上半身タンクトップ姿というのは田舎の景色としてあつくるしいものがあるが、しかし
>スクーターの運転は素人ばなれしていた。

このあたりのセンスが素晴らしすぎる。
796お前名無しだろ:2006/08/17(木) 10:52:45 ID:4CSjuh2B0
GJ!
797お前名無しだろ:2006/08/19(土) 09:22:25 ID:OhF5TDr30
ほしゅ
798燃えよ尻(けつ) 1:2006/08/19(土) 16:09:56 ID:xWIannYy0
越中率いる平成維震軍は、リングにあがるとコーナーポストにのぼり観客にむかって
両腕を高々と天井に突きだすアピールをした。しばらくしてパワーホールが館内に鳴り響くと、
眼の前に花道からリングにむかってすすんでくる長州率いる新日本隊をみた。

(殺ってやるって)

と、越中は、おもわず胴ぶるいがきた。
本隊は長州、藤波を筆頭に橋本、馳、佐々木健介も維震軍討伐のためこの試合に名乗りをあげている。
おそらく越中の反骨の歴史のなかでこれほどの陣容をほこる敵とやるのは、最初で最後であろう。
しかもこの試合は、平成維震軍が今後の新日本の主導権を握るために重要な一戦であった。
799お前名無しだろ:2006/08/19(土) 16:17:44 ID:uoZLdmbP0
>>798
2まだ?
800燃えよ尻(けつ) 2:2006/08/19(土) 16:23:46 ID:xWIannYy0
本隊が、いよいよ近づいた。
前田日明の顔面襲撃がもとで片方だけが膨れている長州の瞼や藤波の斑模様のしみに
おおわれた肩や胸が眼で確認できる距離に接近したとき、越中は、

「維震旗をあげよ」

と命じた。
するすると、だんだら模様に縁取られ旗の中心に、これでもか、と大きく「覇」の文字が
染めぬかれた維震旗が小原によって大きく振られた。
本隊は、白昼に化け物をみたように驚愕した。とりわけ本隊のセコンドについていた若手の
狼狽はみじめなほどで、花道を走るもの、非常用出口に逃げ込む者、さらには観客席に逃げ込む者さえあった。
801燃えよ尻(けつ) 3:2006/08/19(土) 16:38:45 ID:xWIannYy0
ただ本隊の後方で観客のもっている「長州力」と書かれた幟をぶん取って、ゆうゆうと
それを振る男がいた。この勇敢な男の名は、たぶん本隊のセコンドについていた飯塚で
あるかもしれない。
リング上の維震軍とリング下場外の本隊は、なおも睨みあいや挑発をつづけている。
長州はこの膠着状態をうち破るべく越中がのぼっているコーナーポストめがけてラリアットをぶちこんだ。
ぐわぁん
という衝撃が、リングにつたわった。
コーナーポストにいた越中は、二、三間、はねとんだ。起きあがるなり、長州をみた。

(ぶっ潰してやるって)

と、さらに反骨心が沸いた。
802燃えよ尻(けつ) 4:2006/08/19(土) 16:51:37 ID:xWIannYy0
おなじ維震軍の後藤達俊が、この長州のとった威嚇行動に唇をかんでいた。
が、思案しても仕方がない。

「越中さん、やろう、ゴング前の奇襲攻撃」

と、どなりおろした。

「やるか―――」

と、越中はふりむいて微笑した。後藤はうなずき、剃りあげた頭を撫でた。

「突っ込め」

と、越中は大声で叫んだ。
―――お先に。
と、越中のそばを稲妻の如く駈けすぎて場外にいる本隊に突っ込んで行った
レスラーがある。ベテランの木村健吾である。
ついで斉藤彰俊。
三番目は、後藤達俊。
四番目は、小原道由。
といった順で場外にいる本隊に突っ込んだ。
803燃えよ尻(けつ) 5:2006/08/19(土) 17:03:37 ID:xWIannYy0
最後に越中がじだんだを踏みながら尻をたたく独特のアピールをやったあと、場外へ突っ込んだ。
飛びおきるなり、本隊のセコンドについていた飯塚をジャンピングヒップアッタクで倒した。
ついで、眼をあげた。花道で小原道由が、健介と馳にかこまれて苦戦しているのをみた。
越中は、大股で駈け、跳躍するなり、背後からヒップアタックで馳を打ち倒し、狼狽する健介の頸部をねらい、
一閃、またもヒップアタックで健介を倒した。
さすがに玄人である。
馳と健介を倒すあいだ、二分もかからなかった。

「小原、首をどうした」

と、越中はゆっくり近づいた。
804燃えよ尻(けつ) 6:2006/08/19(土) 17:15:58 ID:xWIannYy0
周囲にいた観客は、気をのまれたように突っ立ている。

「健介のラリアットです」

息が苦しいのか、真蒼になっていた。越中は、小原をかつごうとした。
そのとき木村健吾と争っていたはずの長州のラリアットが小原の後頭部をうちぬき、
どっと越中の上におりかぶさった。

(だめか)

見ると、東側花道のそばに、一番乗りの木村健吾が、長州のストンピング攻撃によって
全身、蜂の巣のようにシューズ痕がついて大の字になってのびている。
リング上には、すでに後藤が藤波と斉藤が橋本と戦っていて苦戦していた。

(いかん)

と越中はおもった。
805燃えよ尻(けつ) 7:2006/08/19(土) 17:28:20 ID:xWIannYy0
越中は、ふたりを助けるべくリング上にあがろうとしたとき、場外にいた長州は、
越中の救出を阻止すべくラリアットを轟発させた。
ぐわぁん、ぐわぁん
と二発、越中にむかって打ち込んだ。が、むなしかった。
一発目のラリアットは寸前のところで避けられて、二発目は越中のヒップアタックで
迎撃されていたずらに腕を痛めるだけであった。
越中がエプロンにあがってリング内に入ろうとしたとき、藤波のドラゴンロケットが、襲ってきた。
が、越中がその場で伏せて避けたため、はずれてしまいそのままリング下で腕の痛みを堪えていた
長州に誤爆した。

(藤波は甘い)

越中は、なんとかリングに入ることができた。
806燃えよ尻(けつ) 8:2006/08/19(土) 17:43:02 ID:xWIannYy0
リング上では、ひとりになった橋本を越中、後藤、斉藤の三人がとりかこんで
一斉に攻撃をしかけた。この一対三の乱戦のなかで、橋本は夢中で三人を相手に
袈裟切りチョップで応戦した。
場外で越中に倒されていた健介が回復して血相をかえてリングに走り込んできた。
健介は、そのままダブルラリアットで後藤、斉藤を場外に吹っとばした。
馳も回復してリングにあがってきた。
橋本、健介、馳は残った越中をとりかこみ、集中砲火をあびせた。
越中も、坐してそれを受けているわけではなかった。
四方八方にヒップアタックを連発し、三人を手こずらせていた。
807燃えよ尻(けつ) 9:2006/08/19(土) 17:59:01 ID:xWIannYy0
東側花道でのびていた木村健吾の意識がもどった。
足もとには、先ほど健介によって吹っとばされた後藤がころがり、シューズが後藤の
血ですべるほどであった。
健吾は鉄柵につかまって起きあがった。
リング上を見ると越中がひとり奮戦している。
健吾は、越中を助けるべくリングにあがり、ありったけの力をふりしぼり

「イナヅマ!」

と叫けび、橋本を渾身の稲妻レッグラリアットによって吹っとばした。
健吾は倒れながらレフェリーのタイガー服部に、

「試合終了のゴングを・・・」

といったとき、また場外へ落ちて気絶した。
ゴングが鳴り響いた。
リングの上では、すでに立ち働いているのは、維震軍では越中。本隊では健介と馳の
二人しかおらず、ほとんどが倒れていた。
808燃えよ尻(けつ) 10:2006/08/19(土) 18:11:41 ID:xWIannYy0
ころがっている敵味方の大男たちで、リングの内外は文字どおり屍山血河という
惨状を呈していた。
試合終了のゴングが鳴っても健介と馳は、越中に摑みかかろうとした。
越中は、試合で乱れた袴をただした。

「やめた。そのほうらも、やめろ」

と健介と馳にどなった。
越中の凄みのある両眼に睨まれたふたりは、摑みかかるのをやめた。
越中はリングを降りた。
一番最初に越中に倒されたセコンドの飯塚が追跡したが、越中の発する圧倒的な威圧感に
気おされて、そのまま立ちすくんでしまい、これ以上越中を追うことができなかった。
越中は、数分後、「平成維震軍」と紙に書かれた控室に入っていった。


(完)
809お前名無しだろ:2006/08/19(土) 18:13:01 ID:RiJL14goO
キムタクかっけぇ
810お前名無しだろ:2006/08/19(土) 19:31:49 ID:FgaI0PDe0
(作品の発表中に声を上げるとは、作法を知らぬ田舎侍よ)
怒りに震える810には、しかしながら>>799を斬りつけるほどの度胸も無ければ、力も無い。
とすれば、この怒りは自身の不甲斐なさに対するものなのではあるまいか。
そんなことを考え、自嘲気味な微笑を浮かべつつ、スレをageるのであった。
811お前名無しだろ:2006/08/21(月) 07:34:15 ID:rIdgBdie0
保守
812お前名無しだろ:2006/08/21(月) 07:49:33 ID:Xne4VFBg0
司馬の、文章なら、もっと、句読点を、しつこい、くらいに、入れろ。
単語ごとに、入れても、かまわん。
813お前名無しだろ:2006/08/21(月) 09:09:15 ID:HhO4PrHl0
司馬はそんなに句読点はいれてない、あくまで通常のレベル
そんなに句読点入れているのは柴田練三郎ぐらい

司馬らしいぶんしょうといえば、ひらがなのおおいぶんしょうだろう
814お前名無しだろ:2006/08/21(月) 19:24:11 ID:pA7j/YQS0
意外な作品のパロディ読みたいね。
815お前名無しだろ :2006/08/21(月) 21:37:22 ID:fDUC2dYB0
815
816お前名無しだろ:2006/08/22(火) 21:30:15 ID:eVfQvOGP0
俺も司馬好きでネタ書いてみようと思ったんだがいざ取り掛かると全然思いつかん
相当レベルの高いネタスレだなここは
817お前名無しだろ:2006/08/23(水) 11:58:00 ID:pdF9uHsg0
保守である
818お前名無しだろ:2006/08/23(水) 20:54:59 ID:TIOkxUMi0
上意age
819お前名無しだろ :2006/08/24(木) 00:16:30 ID:rYNIiwKU0
age
820お前名無しだろ:2006/08/25(金) 20:21:46 ID:+ik1hmg00
覇王のage
821お前名無しだろ:2006/08/26(土) 12:17:00 ID:nqFayP/n0
52 :幕末博士:2006/08/26(土) 00:31:51 ID:3v0HtSdRO
明治維新から100年以上もの月日が経っても、未だ伝説としてその人気は衰えない。
それどころか、最近リリースされている幕末ドラマDVD等の売り上げも驚異的だ。
そういう息の長い人気はプロレスにも通ずるトコロがある。とことん語ろうや!

ちなみにマイベスト
1.維新史の奇蹟、土佐のいごっそう、巨魁、世界の海援隊
2.桂小五郎
3.高杉芯作
4.徳川慶喜
5.西郷隆盛(ちょっと渋すぎるかW)
822お前名無しだろ :2006/08/27(日) 16:02:08 ID:+sDU9YLj0
age
823お前名無しだろ:2006/08/27(日) 20:45:08 ID:xeNyenp+0
街道をage
824お前名無しだろ:2006/08/27(日) 23:42:57 ID:kfS0RwPu0
余談ながらage
825お前名無しだろ:2006/08/28(月) 23:30:32 ID:HO+c/VOg0
age ねばなるまい
826この国のかたち:2006/08/29(火) 00:14:16 ID:jqxdnih70
以下が、夢だったのかどうかは、わからない。
ともかく舟を漕ぎつづけていて、不意に巌流島に着いてしまった。
こういう場所を昔の新日ファンは好んだ。昔の剣豪がしのぎを削った殺伐とした空気を。
そこに、巨大な青みどろにまみれた動物が横たわっている。
そのドロドロにまみれた動物は、目を凝らすとライオンの姿、形をしていた。
割れてささくれた爪もそなえている。
両目が金色に光り、口中に牙もある。牙は、折れている・・・。
わずかに息づいているが、みずからの力ではもはや狩りができそうもない様子である。
君はなにかね、ときいてみると、驚いたことにそのライオンは、声を発した。
「新日本プロレスの近代だ」というのである。
827この国のかたち:2006/08/29(火) 00:25:13 ID:jqxdnih70
ただしそのライオンがみずからを定義したのは、
近代といっても、異種格闘技路線以前のことではなく、
また対UWF時代のことというわけでもない。
三銃士路線が終わり、対総合格闘技に突入してからのことだと明晰にいうのである。
つまりこのライオンは三銃士の成功から対総合の敗北の時間が、巌流島に捨てられているらしい。
「おれをキング・オブ・スポーツとよんでくれ」
と、そのライオンはいった。
「君は生きているのか」
「おれ自身は死んだと思っている。しかし見る人によっては、生きているというだろう」
もっとも他競技に飛び出して害をもたらすということはもうあるまいが、ともいった。
828この国のかたち:2006/08/29(火) 00:42:10 ID:jqxdnih70
プロレス団体もまた一個の人格として見られなくもない。
プロレス史はその肉体も精神も、十分に美しい。
ただ、途中、なにかの異変かおこって、遺伝学的な連続性をうしなうことがあるとすれば、
「俺がそれだ」
と、このライオンはいうのである。
そのライオンは気味わるくうごめいて、うかつに近寄れば、そのまま吸い込まれそうな感じもある。
私は十分距離を置き、子供のような質問をしてみた。
新日本は、総合格闘技登場以降、形相を一変させた。
「なぜ新日本は、オタービオに勝利したあと、にわかづくりのシュートレスラー路線を止めて、
全国を興行するのに適した、古きよきプロレス団体にもどさなかったのか」
ということである。
829お前名無しだろ:2006/08/29(火) 00:46:54 ID:H7pWE+yh0
支援
830この国のかたち:2006/08/29(火) 01:09:12 ID:jqxdnih70
昭和の新日本におけるアントニオ猪木が、
最強であることを売りにするしかなかったことは、
闘魂三銃士時代に学生生活を送った私でも、十分わかっているつもりである。
地上最強を謳った極真カラテと五分に戦い、柔道五輪メダリストにも勝利した
そして当時、誰もが認めるであろう、最強の男、モハメド・アリとすら引き分けた。
新日本最強説はこれによって、かなりの広い層に浸透してしまった。
しかし、アントニオ猪木引退後のときには、
新日本は、実際の格闘技的実力としての、ノウハウなど一つも、もっていなかったのである。
「猪木引退後、実態のない、最強伝説が残った」
アリ戦のようなプロレス史に類のないセンセーションを巻き起こした栄光の新日本が、
みずからの両手にかかえてしまった最強の看板を外す訳もなく、
むしろプロレス団体というのは、たとえ実態がなくとも、客受けの良い宣伝文句を使いつづけるものだ、
という意味のことをいっているのだろうか。
831お前名無しだろ:2006/08/29(火) 01:12:36 ID:H7pWE+yh0
統帥権はチョチョシビリだったのか、支援
832この国のかたち:2006/08/29(火) 01:21:07 ID:jqxdnih70
そのライオンの返答は、まことにみじかい。
新日本は、猪木引退後、ほどなくして、総合に打ってでた。
そして、敗れた。
全日系とは異なる文化と強烈な自負心を持つ新日ファンの信頼を裏切ることで、
急激な新日ファンの新日離れをおこすにいたったが、
当時のフロントはそのことについての想像力をもっていたか、と聞いてみた。
このドロドロしたライオンは、三十分ほども沈黙した。そのあと、
「あのころには、深刻な事情があった」
と、いった。高田延彦ようするプライドのことである。
833この国のかたち:2006/08/29(火) 01:33:22 ID:jqxdnih70
高田延彦は新日対Uインターで敗れたとはいえ、巨大な余力を残していた。
かならず報復のため、プライド戦士を引き連れ、
ジャンルを越えた興行戦争を仕掛けてくる、とフロントはおもっていた、という。
「思っていた?主として、誰が?」
ときいたとき、このライオンの皮質が、それまでのあいまいに濁った色から、単色に変わった。
ダミのような青みどろだった。
「ケロちゃんだ」
恐ろしく間の抜けた名前が飛び出した・・・完
834お前名無しだろ:2006/08/29(火) 01:38:42 ID:H7pWE+yh0
うむむむ、最後のオチが…。
でもGJです。
835お前名無しだろ:2006/08/29(火) 01:44:23 ID:jqxdnih70
>>834
ありがとう。構想を練らずに勢いで書いたので、いきづまってギャグオチにしてしまいました。
職人の皆さんは凄いですね。最初からオチまでの流れを考えているのでしょう。
次に書くことがあったら、構想を練ってからにしたいと思います(笑)
836お前名無しだろ:2006/08/29(火) 01:44:38 ID:zKZLLPta0
だから句読点が足りないっていってんだろこのクソボケ!
837お前名無しだろ:2006/08/29(火) 01:51:50 ID:H7pWE+yh0
だ、か、ら、句、読、点、が、足、り、な、い、っ、て。い、っ、て、ん、だ、ろ、こ、の、ク、ソ、ボ、ケ、!。
とのみ、ちいさくこたえた。
838お前名無しだろ:2006/08/29(火) 01:57:03 ID:jqxdnih70
>>836
な、に、ぶ、ん、は、じ、め、て、か、い、た、も、の、で、わ、た、し、に、は、初、耳、な、ん、だ、よ、ね!
それが筆者の言い分である。
839人斬り以蔵:2006/08/29(火) 04:43:44 ID:NC2hbMPt0
藤田は、常に、たれかに「思考力」をあずけていた。
自分が暴れられる場所であればアマレスであれ総合であれどこでも良かったし、
そのことに矛盾を感じたことはなかった。
今現在新日本プロレスに籍を置いているのもあくまで食い扶持のためだった。
ただ、なんとなく己の力を十二分に解放できないことだけに漠々たる不満を持っていた。

そんな折、事件が起こった。
永田祐志が凱旋帰国し、藤田は凱旋帰国試合として組まれた試合において永田と組むことになった。
会場は大阪ドームのビッグマッチ。相手は同じく若手の小島・中西組であった。

試合開始早々藤田は永田からタッチを受けるや力に任せて中西を蹴散らし、水車落としにフランケンシュタイナー。
さらには、
「いっちゃうぞ、バカヤロー!」
と、小島が永田へ仕掛けてきたのを、永田の横からおもむろに(と永田には見えた)入ってくるなり、高々持ち上げ、
「藤田和之知ってのことか!」
と、ジャックハマーで多いに魅せた。
その後試合は永田が中西に場外で捕まってしまい、その間に藤田が不意を衝かれて小島にピンされた。

永田は不快だった。
藤田に対してである。凱旋帰国試合に凱歌を上げられなかったことよりも、藤田の暴走振りに、永田は別な感情を持った。
しばらく無言で控え室に戻ってから、
「藤田君、きみは」
と、永田はいった。
「ただただ力任せにやりたいようだが、やめたほうがいい」
藤田は、これにはおどろいた。自分の同僚たちは、なぜそろいもそろって意外なことばかりいうのか。藤田は不満であった。
「永田さん、しかしあなたこそ全く見せ場を作れなかったではないですか」
――――それもそうだ、と思っておれも一言もなかったよ、
と永田は後年、語っている。
840お前名無しだろ:2006/08/29(火) 04:44:46 ID:NC2hbMPt0
挑戦してみたが難しい
駄文スマン
841お前名無しだろ:2006/08/29(火) 09:12:54 ID:lGt96pxI0
>>836
西村、京太郎、と、間違えて、おるのでは、ないか?
司馬氏、の、作品、は、句読点、は、さほど、多くは、ない。
842お前名無しだろ:2006/08/29(火) 17:31:50 ID:DUQgKYOJ0
ときどき、小学生、でも書ける動詞・形容詞がひらがなになる。
843お前名無しだろ:2006/08/29(火) 18:55:31 ID:ppD2Milc0
大和言葉はなるべくひらがなにするようにしてるのかな?
844お前名無しだろ:2006/08/30(水) 12:15:57 ID:BM1jKcQP0
>>836は、司馬遼太郎作品を読んだこともないくせにイチャモンをつける
知ったかぶり野郎。
845お前名無しだろ:2006/08/30(水) 15:19:42 ID:yGj8oS010
>>844 違うだろ!

 >>836は、司馬遼太郎作品を読んだことがない、という意味においては知ったかぶり野郎だったが、
 ふたことめにはいちゃもんをつけたがる、という意味において革命家であったといえるであろう。
846お前名無しだろ:2006/08/30(水) 21:02:48 ID:cdRNmt/i0
(えらい男だ)
と、>>846は思わざるをえない。
>>845は、身をもってこのスレではどのようにふるまうか、
教えてくれているのである。

847お前名無しだろ:2006/08/31(木) 00:08:55 ID:ojvbOvAY0
(しかし――)
と、>>846は同時におもうのだった。
(俺ならもっとうまくやれる)
もちろん彼のレスにはそのような気ぶりはいささかも感じられない。
(それでこそねらーだ)
>>846は平成18年のこの時点で、
秘めた野心をだれにもみせてはいない。
848山姥の家:2006/08/31(木) 00:37:22 ID:vPDI7Ljw0
その後、>>836は読みにくいレスをたまに寄越すだけで、私はくわしい消息を知っていない。
「くとうてんがたりないので、うざいです」
という意味のレスも来た。
それを読むと、私は司馬の文章論もプロレスの議論もなにもかも自分の頭の中から
灰のように吹っとんでしまい、>>836の悲しみが体中の毛穴からしみこんでくるようで、
気持のやり場がなくなってしまうのである。
849お前名無しだろ:2006/09/01(金) 00:04:45 ID:w2bGgu140
とにかくも、ただレスを消費するだけの836の何事かが跡形もなくすぎていった。
850お前名無しだろ:2006/09/01(金) 00:21:22 ID:PkX4KEqp0
>>826の作品にすいこまれていくような感じにおちいった自分が、そこにあった。
ageであった。
851お前名無しだろ:2006/09/01(金) 08:38:11 ID:3Suk+7c70
>>836というものは天が時と置き所を誤ると、粘着のような害をすることがあるらしい
852お前名無しだろ:2006/09/02(土) 10:44:33 ID:4XXaCKR50
なるほどage
853お前名無しだろ:2006/09/03(日) 18:49:43 ID:+Q1yWdrk0
煽りに対してネタで返す、というものがプ板の昔ながらの流儀らしい。
854お前名無しだろ:2006/09/04(月) 08:19:18 ID:GLScXird0
保守
855お前名無しだろ:2006/09/05(火) 12:05:42 ID:WoxCRM/30
プロレス的位置づけでは
司馬遼太郎=梶原一騎みたいだけど、
司馬遼自体がガチ経験あるよね、某仮想戦記(というより「日本が戦後分割されてたら」モノ)
ではメチャ強かったけど。

あと、戦車が削れたのはガチ
856お前名無しだろ:2006/09/05(火) 20:36:47 ID:TmsxLTEAO
保守である
857お前名無しだろ:2006/09/06(水) 17:24:13 ID:XWZ5jz190
戦車の装甲板がヤスリで削れるなど
858お前名無しだろ:2006/09/07(木) 14:10:21 ID:nteG00SR0
次作品マダァー?
859お前名無しだろ:2006/09/07(木) 16:42:54 ID:eb/CKCvbO
sageては保守にならぬ。
860お前名無しだろ:2006/09/08(金) 14:00:33 ID:SWprntGL0
「項羽と劉邦」、中国で出版・司馬遼太郎氏の代表作
 【北京7日共同】日本の著名作家、故司馬遼太郎氏の代表作の1つである「項羽と劉邦」が7日までに中国の南海出版社から初めて出版された。
中国では、村上春樹氏の現代小説などがベストセラーとなっているが、日本人が書いた中国歴史小説の翻訳は珍しい。

 中国の有名作家、熊召政氏は中国紙、東方早報に対し「司馬遼太郎氏の中国史への研究(の深さ)は驚くべきもの」と称賛した。
ttp://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060907STXKD097306092006.html
861韃靼疾風録 1:2006/09/09(土) 22:12:09 ID:lb5ZHn5t0

「アミーゴ、このことば、日本語でなんという」
とネグロ・カサスがきいた。
「友垣……だったかな」
浅井は答える。
「―――では」
カサスがいった。
「アミスタ。これは何という」
友情という意味である。ところが浅井はとっさに日本語としてのそれを思いだせず、
はて日本でつかっていたことばのなかにそれに当たることばがあったろうか、と考えこんだ。
同時にわが身の中にそういう感情が虚ろであることに気づいて狼狽した。
浅井は似たようなことばを教えた。

862韃靼疾風録 2:2006/09/09(土) 22:22:07 ID:lb5ZHn5t0

「友へのなさけということだ」
「ウルティモ(浅井)、このカサスのなさけはどうなる」
と、いまにも泣きだしそうな表情でいった。
ウルティモが日本に帰れば自分は生きる元気が半分になる、というのである。
ウルティモ、人間には友情というものがあるはずではないか、とカサスはいった。
「さあ、控室に入ろう」
浅井は、カサスをうながした。
控室のなかでは、他のルチャドールの耳が多いために、カサスはだまっていた。
タイツに着がえると、ふたたび身を寄せてきて、浅井に翻意をうながした。
浅井は終始かなしげにだまっていた。
863韃靼疾風録 3:2006/09/09(土) 22:33:51 ID:lb5ZHn5t0

「山田というハポネスのルチャドールを知っているか」
「知らぬ」
しかしどこか記憶の片すみにある。
「山田はかつてこのアレナ・メヒコの会場で試合をしていた。山田は、いつも怒っていた。
 ぬるま湯だ、が口癖で試合後は、いつも腰に手をあてて左右に動かしてベルトへの挑戦を
 アピールしていた」
「いつごろの話だ」
「アメリカのNWAがまだ存在していたころの話だ」
と、カサスはいった。
「その山田の話になにかを含んでいるのか」
なにかの要素もなしに唐突に山田なる日本のルチャドールの話がこの場に出るはずがない。
864韃靼疾風録 4:2006/09/09(土) 22:48:28 ID:lb5ZHn5t0

「ルチャドールたるものは人のなさけを信じろということだ。なさけを信じなければ
 山田のようなルチャドールのようになるぞ、という意味だ」
「山田?山田のように?山田とはもともとどういう奴だったのだ。」
「それがよくわからんのだ」
カサスは笑いだした。カサスの話では山田というのは日本でプロレスラーになりそこねた
不幸な奴、といったようなばくぜんとした概念だけのものであるらしい。
「要するに、山田は日本でプロレスラーになれなかった奴という皮肉か」
「山田は、あるひとつの強い願望をもっていたよ」
カサスは、そこを言いたかったらしく、浅井をからかうようにかえりみた。
865韃靼疾風録 5:2006/09/09(土) 23:02:57 ID:lb5ZHn5t0

「山田は、このままメキシコを代表するハポネスのルチャドールになっても、いずれは、
 ライオンのマークを掲げている団体のセルビアン・ブルーのマットでストロング・スタイルの
 プロレスを思いっきりしたいとねがっていたそうだ。」
言いかえればその願いこそが山田なる日本人の本音ではないか。
「その団体は、どこにある」
「日本にある。メキシコにいたころの山田は、たとえ身は外国でプロレスをしていても、
 必ず日本に帰ってゆくと信じていた」
866韃靼疾風録 6:2006/09/09(土) 23:19:34 ID:lb5ZHn5t0

「では、世界でも屈指のルチャドールになってその団体にあがればいいではないか。
 世界的に有名なルチャドールになれば、日本の団体はおろかアメリカの各団体からの
 アプローチもあるはずだ」
「そこだ」
カサスは、浅井をからかうようにいった。
「そこが山田の馬鹿なところだ、と私の祖父などは藁っていた。山田はひょっとすると
 そのプロレス団体が掲げるストロング・スタイル以外はプロレスではない、と思って
 いたのかもしれない。だからルチャドールになっても、その団体から拾われた形で日本に
 帰って行った。その団体に所属さえすれば、本当のプロレスラーになれる。」
867韃靼疾風録 7:2006/09/09(土) 23:32:49 ID:lb5ZHn5t0

「つまり、山田とは私のことだというのか」
浅井は、やっとカサスの皮肉がわかった。
「祖父も言っていたよ。ハポネスのルチャドールは結局は山田なのさ、と……」
浅井は、笑ってしまった。武骨なカサスが、そんなうそをつくことにである。
第一、この男の祖父が山田を知っていたはずがないではないか。
「―――たとえ」
カサスは、むきになった。
「祖父がそう言わなかったとしても、私はそう信じている。ウルティモを見ればそれがわかる。
 帰らねばならない理由もないのに、悪霊にせきたてられるようにして故郷に帰ろうとし、
 足摺りしていらだっている。まるで山田ではないか。ハポネスにとっての
 セルビアン・ブルーのマットは、日本にある団体ぜんぶがそうなのだろう」
868韃靼疾風録 8:2006/09/09(土) 23:37:36 ID:lb5ZHn5t0

「帰るのに、理屈はない」
浅井はいらだって足を速めた。
「私は山田かもしれん。いや山田なのだ。だからいつかは、帰る。カサスよ、
 あなたは私にアミスタをもってくれている。このこと、頼む」
頼む、とは理解してくれ、という意味のつもりだった。


(完)
869お前名無しだろ:2006/09/10(日) 06:18:33 ID:a/FPlkxW0
乙です。
870お前名無しだろ:2006/09/10(日) 08:19:45 ID:DDKycP7P0
ウガンの話だよね。
日本人の変なこだわり新日マットか…
871お前名無しだろ:2006/09/11(月) 12:56:48 ID:vyn2ZsWjO
保守である。
872お前名無しだろ:2006/09/11(月) 17:55:39 ID:7J4+cNnY0
ならばageねばなるまい
873お前名無しだろ:2006/09/11(月) 21:52:15 ID:4t3txhss0
age
874お前名無しだろ:2006/09/11(月) 21:55:25 ID:nPj1GLrRO
たれかの作品を読みたい、と思う
875お前名無しだろ:2006/09/12(火) 14:00:22 ID:9RmAHjRa0
>>874
行動を起こさなければ、何も変わらないであろう。
876お前名無しだろ:2006/09/13(水) 01:51:31 ID:+McTAxLU0
ただ、age るのみであった。
877お前名無しだろ:2006/09/13(水) 21:16:42 ID:TSDVZRb10
ageなければなるまい。
878お前名無しだろ:2006/09/15(金) 09:20:28 ID:piJ8toI40
保守
879お前名無しだろ :2006/09/15(金) 22:29:16 ID:ltYMtvmY0
age
880お前名無しだろ:2006/09/16(土) 11:22:11 ID:5oO2oxIg0
sageなどと天邪鬼な
881お前名無しだろ:2006/09/17(日) 20:23:35 ID:U6PNrsKc0
保守
882お前名無しだろ:2006/09/17(日) 22:55:13 ID:RjuPW0I50
「燃えよ剣」で何かやりたいんだけど、スゲェのが出ちまってるしなぁ。
難しい。
883お前名無しだろ:2006/09/17(日) 23:07:08 ID:2VWIF/HA0
保守ついでに。

司馬(NOT柴)は、ものすごい一本調子の作家だよ。
で骨組みがはずれて「余談」にはしる。
取材がなみはずれているんで余談にはしるまで臨場感ありまくり。
「余談」からもどるとどこかツボがぬけてる。司馬は書きそこねたのわかりつつその調子で走る。

これってプロレスだよなぁ。


884お前名無しだろ:2006/09/18(月) 12:18:17 ID:mxFHGYON0
>>882
そんな時こそ永田さん。
885お前名無しだろ:2006/09/19(火) 23:53:55 ID:nrWHXsLu0
>>884
「全部パクろう」
アレも凄かったw
886お前名無しだろ :2006/09/19(火) 23:58:17 ID:cq8hArdo0
age
887お前名無しだろ:2006/09/21(木) 00:37:35 ID:3qaY0lMo0
ageねば、なるまい。
888お前名無しだろ:2006/09/21(木) 00:38:11 ID:xUE6rBR70
888
889朦朧の匣:2006/09/21(木) 14:12:04 ID:2vD/NBLXO
「ぺイ」
匣の中から声が聞こえた。
鈴を転がすような亀の声だ。
890お前名無しだろ:2006/09/21(木) 17:44:36 ID:lTAIdlEMP
>>889
吹き出した勢いで鼻水たれたじゃねーかよwww
891889改め匣屋:2006/09/21(木) 22:51:54 ID:2vD/NBLXO
そこには天使が立っていた。
すらりとした長身に、陶器の如き白い肌。
小さな瞳には灯が映っている。
同性も見とれる程の美少女。
形の良い富士額が聡明さを象徴している。
周囲の花を映して、衣装は紅色であった。
婦人でも娘でもない、まさに俺が田上である。
892お前名無しだろ:2006/09/23(土) 16:27:33 ID:qHJ390/1O
京極夏彦は重過ぎるかな?
893お前名無しだろ:2006/09/23(土) 19:41:13 ID:/2dtAtEgP

(ここは、司馬遼スレだ)
 居合わせた住民のたれもが、思った。
894お前名無しだろ:2006/09/24(日) 14:34:16 ID:7g4GDRbi0
「面白い作品が読めるならネタがないよりマシじゃないか」
「なんでもありがプロレスだ」
と、温かく見守る者もいた。
895お前名無しだろ:2006/09/24(日) 19:26:59 ID:xxL6K5+W0
保守である
896お前名無しだろ :2006/09/25(月) 16:45:09 ID:lhageZes0
保守
897お前名無しだろ:2006/09/25(月) 17:32:22 ID:xjxdRpbAP
 >>896のIDが、ハゲである。



 少し、余談が過ぎた。
898お前名無しだろ :2006/09/25(月) 22:41:46 ID:hzIgNDEQ0
ほんまや
899お前名無しだろ :2006/09/25(月) 22:47:13 ID:hzIgNDEQ0
あげとく
900お前名無しだろ:2006/09/25(月) 22:52:14 ID:hzIgNDEQ0
900
901お前名無しだろ:2006/09/26(火) 02:13:59 ID:bspUVGRb0
いよいよこのスレも佳境。
ただ、もののふを待つのみ。
902お前名無しだろ:2006/09/26(火) 13:00:02 ID:ej3jesjn0
保守である
903お前名無しだろ :2006/09/26(火) 14:34:42 ID:W/LbCuWN0
age
904:2006/09/26(火) 23:51:58 ID:5pTA1B7qO
戦いの風俗もZ日とはおのずからちがっていた。S日の連中は蛮性を残しているがために勢いづけば火を噴くように剽悍に戦うが、戦術に計画性が乏しく、戦勢が困難になると士気沮喪してくずれやすい。
それでも選手の多さでもって、昭和末期のころには他団体と大いに張り合った。しかし有明方面の新興団体が強大になるに従って各団体が統一され、S日も平成一九年にほろぼされ、その二年後に中西政権が誕生した。
905お前名無しだろ:2006/09/27(水) 02:44:09 ID:zV2iBAK50
さて此処に奇面奇声たるらスラーがいる。うわいと言うまるちの手先たる元御重役と語らって
この世で悪の限りを尽くそうぞ、と活動を開始することを決死の覚悟で宣言した。
906お前名無しだろ :2006/09/27(水) 23:26:34 ID:RB+xR3Du0
sage
907お前名無しだろ :2006/09/28(木) 16:32:03 ID:iQP1ZdtH0
age
908お前名無しだろ:2006/09/29(金) 07:38:19 ID:RJGBBTKy0
兎に角。
ageよう。そう思った。
909お前名無しだろ:2006/09/30(土) 19:56:26 ID:niPamiTY0
保守
910:2006/09/30(土) 23:56:36 ID:poQIBz49O
一万人の先発軍が広闊な野に出たときは、夜がまだ続いていた。趙軍はナガタさんを見、物見を派遣し、舐めるように動きをさぐりつづけたが、やがてかれが亀のように手足を引っ込めて俯せになったのを見ると、走卒にいたるまで、
---ナガタさんは兵法を知らない。
と、口々に言い、大笑した。
ナガタさんが買いたかったのはこの嘲笑であった。
趙軍は白波だつ海嘯のようにひた押しに押してきて、やがてナガタさんにおそいかかった。
ナガタさんは敵のほうに頭をもたげて、
「ぺ〜イ!」と叫んだ。
その時、異変が起こった。
ナガタさんが隠していた北斗晶が趙軍の横をついたのである。
趙軍は恐慌状態となり、ナガタさんは勝利の半笑いを浮かべた。
その夜の祝勝会で開催されたヌルヌル相撲大会で、褒美として北斗晶に優勝を与えようと、R邦は考えていた。
しかし、次回もTVに呼んでもらいたいナガタさんは、大人げなく、引き落としで勝ってしまい、またもネタにされるのであった。
911坂の上の雲:2006/10/01(日) 10:47:56 ID:tujYSG1G0
サイモンは新日の社長であり、遠くアメリカから猪木が呼び寄せたレスナーとその保持するIWGPベルトについて当然ながら豊富な知識を持っているはずだったが、蝶野がおどろいたことに、この社長は何も知らなかったのである。
話題がレスナーのことになったとき、煙草をふかしながら暢気なサイモンは叫んだ。
「ああ、かの愛すべきブロック・レスナー。彼はどうしているのだろう? 今、彼のベルトはどこにあるのでしょう」
といって、蝶野や長州を唖然とさせたのである。この時期、月寒グリーンドーム大会をひかえて、蝶野と長州はマッチメイクの面倒をつぎつぎと見ていかねばならない立場におかれていた。そのため、IWGPベルトの消息については業務上知っていた。
しかしそれにしても、ロサンゼルスからきたこの社長が、現場の人間から自分が担当する外人の(ブロック・レスナー)の名前をきいて懐かしそうに声をあげ、
「かれは今どこにいるのでしょう」
ときいたのは、ひどい。が、新日にあっては社員たちは専制者である猪木の機嫌をとっているだけでよく、ベルトがどこをうろついていようともかれらの重大な関心事ではない。サイモンにしても同様であった。
912お前名無しだろ:2006/10/02(月) 02:28:50 ID:5d1BWLsS0
保守せねば、なるまい。
913お前名無しだろ:2006/10/02(月) 07:26:58 ID:+oTs36fBO
久しぶりに高視聴率番組で健介夫妻以外のレスラー見た。
紳介の番組はおばさん視聴者が多いから、永田選手から韓流ブーム的な流れが起きないかなぁと思いながら、保守である。
914翔ぶが如く 1:2006/10/02(月) 22:30:18 ID:xQYbFlV50
ハリトーノフに血まみれにされたあとも、永田には息があった。試合結果はレフェリーストップによる敗北である。
新日本とPRIDEの全面対抗戦における永田の試合時間は永田の格闘技戦では最長の三分弱であったが、試合内容は、
悲惨なものでハリトーノフから容易にテイクダウンを奪われ、あとはレフェリーストップまでのあいだ永田はハリトーノフの
パウンド攻撃を長時間くらい続けた。
永田が負けたときに観客席からため息や怒声で会場がつつまれていた。
かれは苦しみつつも観客から覚られないためにヒョードル戦と同様に口元に微笑をうかべてリングをあとにした。
リングを去ったあと、隅のトイレに入りこみハリトーノフのパウンドによる痛みで苦しんでいると、観客らしき一隊がトイレに入ってきた。
915翔ぶが如く 2:2006/10/02(月) 22:39:37 ID:xQYbFlV50
かれらが永田を目にしたときには、すでに永田の息が絶えたといわれる。
警察がかけつけて死体をあらためると、真新しいセカンドバッグの中に、かれの著書
「プロレス新時代のエースは俺だ!」が入っていた。

「これは、さっき試合したばかりの永田さんではないか」

と、警察は、ハリトーノフのパウンドによって原型をとどめていないほどに腫れあがった
血まみれの永田の顔面を見て叫び、あわてて救急車をよんだ。
916翔ぶが如く 3:2006/10/02(月) 22:56:23 ID:xQYbFlV50
永田が死んだという報せはすぐさま新日本中に達したし、プロレス記者にもきこえた。
このため、弟の克彦の耳に兄、裕志の死の報が入ったのは、意外なほど早かった。
五輪銀メダリストの弟の克彦は声を放って泣き、

「もはや生涯、新日の飯は食わぬ、ワールドプロレスリングも見らん」

といったというし、家の伝説では永田の妻の千恵が言ったともいう。
克彦にすれば兄、裕志のようなプロレスを愛する者に無理矢理、不馴れな総合格闘技をやらせた
新日本と猪木が悪魔のように思えたし、新日はプロレスを愛する団体にあらず、
「顎」の無知蒙昧な事業資金を調達するために興行をおこなう団体、という思いが、
いよいよ強く胸に刻まれたであろう。
917翔ぶが如く 4:2006/10/02(月) 23:06:35 ID:xQYbFlV50
永田はハリトーノフ戦の前日に、以下のような歌を野毛にある新日本の道場の壁に書いた。


  月影は道場にかはらねど
    あすはきめるぜTDD(サンダーデスドライバーの略)


かれは、旧UWFとジャンボ鶴田がじつは好きで、あるいはかれの目指そうとした
プロレスラー像の主な要素をなすものであったかもしれない。


   わが匂ひを移し濃紺レガース
     Uの試合に鶴田の「J」


(完)







 
918お前名無しだろ:2006/10/03(火) 02:09:09 ID:kiPwt+wn0
乙 切ないなw
919お前名無しだろ:2006/10/03(火) 14:31:50 ID:HuBXd6x20
age
920お前名無しだろ:2006/10/03(火) 23:12:08 ID:0g/XpJ9s0
久々の新作乙。
警官まで「永田さん」って呼んでるのかw
921お前名無しだろ :2006/10/04(水) 15:09:50 ID:B+Dn6qUo0
へェ−
922お前名無しだろ :2006/10/05(木) 15:03:04 ID:ab5JsR4K0
age
923お前名無しだろ:2006/10/06(金) 10:49:42 ID:4PWmkwoQ0
age
924お前名無しだろ:2006/10/07(土) 02:23:03 ID:rpHWyg7HO
「社長には、まだ機会があります。猪木にとってはこれが最後の興業の機会になるでしょう。」
三沢はおどろき、
「...猪木が」
と、絶句した。
秋山が諜者を放ってしらべたところでは、新日の脱走が相次いでいるていう。
猪木は選手に見限られつつある。
「しかも、新日は孤軍です。」
どこからも応援の選手がくるあてがない。契約更改ごとに目減りしてゆき、目減りするごとに若手が動揺して脱走する。わるいほうへ相乗作用をおこしていく。運が尽きるというのはそういうことをいうのだと秋山はおもっている。
「孤軍ということではわしもおなじだ。全日、武藤が来ない」
「社長にはまだ来ないという全日、武藤がいるのです。猪木は来ない者すら持っておりませぬ」
「そういう言い方があるのか」
「言い方ではなく、厳然とした事実です。事情さえ変われば全日、武藤はやってきましょう」
925お前名無しだろ:2006/10/07(土) 08:56:41 ID:JEGXZfQ20
>>924
項羽と劉邦ですな…乙でござる。
926お前名無しだろ:2006/10/07(土) 11:07:14 ID:Gln1EYsd0
age
927お前名無しだろ:2006/10/07(土) 11:12:51 ID:Kuno7Yxm0
「罰金1000万」
これを聞いた蝶野は腰を抜かさんばかりに驚いた。
血の小便を流すような思いで稼いできた金を、会社に何の貢献もしていない男に奪われてしまう。
かつて小原の背中に犬と落書きした男が今度は会社の犬になってしまうという話なのか。
まさに人生回り舞台とも言うべき男の生き様にうなる思いである。
たかがシャツ1枚で1000万の金を払わされた男は日本ぼったくり界史上、後にも先にも蝶野ただ一人である。
928お前名無しだろ:2006/10/07(土) 13:09:59 ID:UUs2TZ380
929お前名無しだろ :2006/10/07(土) 16:15:51 ID:xVznX63l0
age
930お前名無しだろ:2006/10/08(日) 17:33:08 ID:apko+c7lO
ageねばなるまい
931お前名無しだろ:2006/10/08(日) 21:54:51 ID:JAButAfd0
>>928
面白れぇなぁ。近藤唯之、昔好きで読んでたなぁ。
932お前名無しだろ :2006/10/09(月) 13:46:06 ID:BslAv9S30
age
933お前名無しだろ:2006/10/09(月) 20:02:36 ID:fULF2oQ60
保守
934お前名無しだろ:2006/10/09(月) 23:52:58 ID:lK9/IQaA0
age
935お前名無しだろ:2006/10/10(火) 20:18:05 ID:o6OdeXUC0
ハート・ブレイク・ホッシュ
936お前名無しだろ:2006/10/11(水) 11:33:30 ID:Q3XpovAf0
age
937お前名無しだろ :2006/10/12(木) 20:12:50 ID:PY9f5Sew0
sage
938お前名無しだろ:2006/10/12(木) 22:26:44 ID:XXDnk6u50
もうすぐこのスレも1周年ですね。
939お前名無しだろ:2006/10/13(金) 10:15:17 ID:4F7RvgC00
age
940お前名無しだろ:2006/10/14(土) 20:54:27 ID:RmeA1vOJ0
保守である
941お前名無しだろ:2006/10/15(日) 20:00:38 ID:U0m+lpg40
age
942お前名無しだろ:2006/10/16(月) 02:39:13 ID:ye6GcYrH0
司馬作品じゃないけど、書いてみていい?
943お前名無しだろ:2006/10/16(月) 06:59:32 ID:dz4ZU8RA0
とりあえず書いてみて。
観客席の大半の黒い暗幕が
レーザーライトで照らされ
花道を歩めば 視界が開ける
メインイベントが始まった
色眼鏡のリングアナは選手の名を呼び
入場曲が流される
とってつけたようなハードロック
アントニオ猪木の祭典のため

プロレス最強説の提唱者は
夢によろい戸を降ろし
僕はたいした準備期間のないまま
選手控え室の出口で待つ
実況のアナは解説席の谷川のコメントを
適当に聞き流し
氷の皇帝を呼び出すだろう
アントニオ猪木の祭典へ
社長は団体のエース格をないがしろにしながら
ギャラを永遠に未払いにする
僕は亀の構えで意識を飛ばして
ガチンコの苦楽を味わう
レフェリーが軽く手を上げ
試合終了のゴングを要請する
勝者のテーマが流される
アントニオ猪木の祭典で

静かな会場をあとに プロレスファン達は沈黙し
関係者は苦笑して マッチメークに首をひねる
僕はIWGP最多防衛のため与えられた仕事をこなし
その悪戯にまんまとはまる
キングオブスポーツの道化師は締めの挨拶で
リングに上がり、観客を煽ると
1,2,3,と唱和する
アントニオ猪木の祭典で
946お前名無しだろ:2006/10/16(月) 13:02:43 ID:RKw8KpRU0
こんな曲、だれでも知ってるようなのじゃなくてスマンが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=2Y7GDK1ImzM
947関ヶ原 1:2006/10/16(月) 20:25:05 ID:KcL8v+Lu0
三沢は、有明のNOAH事務所になお駐っている。
昨夜、ZERO−ONE・MAXの中村代表を仲介して大森のGPWA合同興行の参戦を
嘆願された。
「明日、大森と交渉する」
と三沢は、電話で中村に言って大森が有明に来着するのを待った。
(どう遇するか)
三沢は、思案を練った。大森の遇し方の巧拙こそ、いまからはじまるNOAHの
天下の評判に影響するであろう。
三沢は、複雑な方法をとった。中田龍から大森来着の報をうけるや、
「遇し方の考えが、まだきまらぬ。とりあえず事務所のソファーにでもすわらせておけ」
といった。

948関ヶ原 2:2006/10/16(月) 20:36:12 ID:KcL8v+Lu0
この言葉によって大森は事務所のソファーにすわらされた。
三沢―――このちょっぴり意地悪な演出者はこの日、GPWA合同興行の詳細を聞くために
NOAH所属のプロレスラーが事務所にやってくることを計算に入れた。
事務所にくるNOAH所属のプロレスラーは当然、ソファーにすわらされている大森を不審の目で見るであろう。
三沢はごく偶然なかたちで大森を生き曝しにしようとした。それによってNOAH所属のプロレスラーと大森の
反応をみて楽しんでから大森と交渉しようと試みた。この計画は、あたった。
949関ヶ原 3:2006/10/16(月) 20:47:46 ID:KcL8v+Lu0
最初にやってきたのは、プロレス界最大のフリーレスラーでGPWAにも加盟している
「帝王」高山善弘である。高山は大森を見るや、
「かっ」
と痰を吐くような口蓋音をたて、「うぬは斧爆弾じゃな」と叫んだ。高山は昨日、友人と酒を飲み、
顔になお酒気が残っている。
「うぬは勝手にWWEのトライアウトをうけ日本プロレス界の盟主におわす三沢社長の顔に泥をぬり、
 このようなざまになった。これが元、恐れ知らずのなれのはてか」
と罵倒した。
「なにをいう」
大森は、背骨を立てた。両眼に気迫をこめ、高山をにらみすえた。
950関ヶ原 4:2006/10/16(月) 20:58:58 ID:KcL8v+Lu0

「うぬのような世渡り巧者なだけの男に、おれの心のありかがわかってたまるか。そこをどけ。めざわりである。」
と、ひくいが、しかしよく透る、底響きのする声でいった。
「なぜNOAHに後ろ足で砂をかけるように去った汝が」
と、高山はさらにいった。ここにいる。帰ろうとせぬ。図々しくソファーに座っておる。とたたみかけたが、
大森は顔をひきつらせ、うぬのようなU系くずれに全日系レスラーの心事がわかるか、と、みずからをもって全日系レスラーとよんだ。
951関ヶ原 5:2006/10/16(月) 21:13:34 ID:KcL8v+Lu0

「全日系レスラーたるものは古巣を去った身であっても最後の瞬間まで古巣を想い、
 古巣で試合をする機会を待つものである」
と言い、かつ、これは大森が声を大きくして叫びたいところであったが
「馬場社長が弟子たちに提唱された、明るく、楽しく、激しいプロレスをきちんとやっているかを、
 この目でみて馬場社長の墓前に報告し奉る。高山、心得ておけ」
といった。大森は馬場全日体制のときに大いに期待されていたが、この期にいたっていよいよその過去が
露骨になり、三沢によって曝し者のようにソファーに座らされていながらも、
馬場の名前を出すことでプロレスラーとしての血統の良さを見せつけるようであった。
「世迷いごとを言うわ」
と、高山は呆れて言葉がなくなり、大森のそばを去った。
952関ヶ原 6:2006/10/16(月) 21:27:46 ID:KcL8v+Lu0
つぎに来たのは、秋山準である。このNOAHの知恵袋は、大森の姿をみるや、大森と対面するかたちで
真正面のソファーに座り、
「立場が違うとはいえ」
と、意外な態度でなぐさめはじめた。かつては馬場社長の期待を背負ってWWFで試合をされた貴殿が
このお姿になったことは、かえすがえすも御無念であろう、といった。
秋山はNOAHを去ってから以降の大森を憎み、大森がNOAHを去ったその日の試合後、マイクを使い大声で
「おい、腐れアックスボンバー。今日はてめえの技を使ってやったが全然、きかねえよ」
とまでいった男である。
953関ヶ原 7:2006/10/16(月) 21:39:57 ID:KcL8v+Lu0
それが大森の目をみつめ、その泳ぎっぷりにおどろき、「まあ、なんとかなるさ」といって去っていった。
大森は言葉を失い、目を閉じ、顔を凝然として天にむけている。
ついに大森ははずみをうしない、一言も発しなかった。この意外なやさしさが秋山の性格でもあり、
ひとつには秋山の策であろう。ここで大森を見て怒りにまかせて大森を罵倒するのは、秋山のとるところではない。
秋山は、ちょっとした優しさを大森に触れさせることによって大森との格の違いを見せつけた。
954関ヶ原 8:2006/10/16(月) 21:50:55 ID:KcL8v+Lu0
大森にすれば秋山の策に致されおわったというべきであったが、大森の奇妙さは、
これほど秋山を長年ライバル視していた男でありながら、秋山に致されているとは
気づかなかったことであった。その証拠に、秋山が去ったとき、面を伏せ
―――やっぱり秋山にはかなわない。、つぶやくようにいったのである
この男の頭脳にはもともと政治感覚というものが欠けきっているようであった。
やがて小川良成がやってきた。小川は大森のほうへ視線を送らずそのまま別室に入った。
小川が別室に入ったあと、こちらへやってくる二人の男がいる。丸藤正道とKENTAであった。
955関ヶ原 9:2006/10/16(月) 22:04:20 ID:KcL8v+Lu0
丸藤は、秋山から奪ったGHCのベルトを肩にかけてやってきていて、大森の存在に
まだ気づいていない。その丸藤の姿を、めざとく大森の視線がとらえた。
フジマルかっ、と吐き捨てるように言うと大森は、大声で
「そのベルト姿の似合わなさよ」
と叫んだ。
が、丸藤は、KENTAとなにやら夢中に談じ込んでいたため大森の叫び声には気づかず
大森のそばを素通りして、そのまま別室に入っていった。
三沢は奥の社長室にあって、それらの出来事のすべてを中田龍からきいた。最後に苦笑しながら、
「大森と交渉する。鄭重にせよ」
といった。
「鄭重に」
と、念を入れている。
956関ヶ原 10:2006/10/16(月) 22:12:26 ID:KcL8v+Lu0
捨て曝しで楽しんだ以上、あとはNOAHの襟度をしめし、一通りの礼をもって大森を遇し、
プロレス界の評判をよくすべきであった。中田龍は、三沢の意を心得てそのとうりにした。
交渉は、三沢が一言、
「ぶっちゃけ、大森、お前をうちのリングにあげることはアレなんだよね。
 今までNOAHで頑張ってきた選手に、しめしがつかないっていうかさぁ………」
と、いう三沢独特の言いまわしの拒否でおわった。


(完)
957お前名無しだろ:2006/10/16(月) 23:54:38 ID:I+YTALi00
泣いた
958お前名無しだろ:2006/10/17(火) 06:58:00 ID:5X+a+MjF0
俺も泣いたよ。
959お前名無しだろ:2006/10/17(火) 12:52:26 ID:Dxb44c0U0
スレも大詰めのところにすごいのが来たな。
960お前名無しだろ:2006/10/17(火) 23:25:46 ID:jaDlvmCS0
大森さんが主役の話は,どれも泣けてくるね。
961お前名無しだろ:2006/10/18(水) 15:25:14 ID:BcvWkcsF0
age
962お前名無しだろ:2006/10/18(水) 15:35:11 ID:if/kbAx60
この人天才だわ・・・w感動した。
963お前名無しだろ:2006/10/19(木) 12:43:20 ID:tAgKJ4H40
むちゃくちゃおもしれーw
964お前名無しだろ:2006/10/19(木) 18:33:41 ID:dysCFVvk0

私の趣味はキャバ嬢の携帯メールに股間の写真を送りつけるのが
大好きなんですよ、笑えてしょうがない
965お前名無しだろ:2006/10/20(金) 19:45:45 ID:iQz9vmCC0
このスレすごい面白いけど、
司馬遼太郎読んだことないから参加できない・・・
966お前名無しだろ:2006/10/21(土) 00:12:18 ID:0LcE7hB10
age
967お前名無しだろ:2006/10/22(日) 10:01:04 ID:bDmj96Rc0
保守
968お前名無しだろ:2006/10/23(月) 00:23:28 ID:56x2hbZl0
age
969お前名無しだろ:2006/10/23(月) 12:41:56 ID:PBI04hr40
今読んだ。
秋山「まあ、なんとかなるさ」
丸藤 大森の叫び声には気づかず
原作とのギャップに笑えた。
970お前名無しだろ:2006/10/24(火) 03:47:14 ID:f11j4BtPO
(埋めないか)
スレも末期を迎え、名無しが提案した。
971お前名無しだろ:2006/10/24(火) 06:49:12 ID:UjGPor180
司馬遼風にプロレスを語るスレ 巻ノ三

スレタイはシンプルにこれでどうか。
972お前名無しだろ:2006/10/24(火) 09:35:06 ID:vhvB0YqC0
ーーー埋める。
このスレを、である。
973お前名無しだろ :2006/10/24(火) 11:56:02 ID:Nu6TMB7d0
age
974お前名無しだろ:2006/10/24(火) 14:09:27 ID:+es7973a0
ume
975お前名無しだろ:2006/10/24(火) 19:03:50 ID:qiNNK8FO0
「大方、職人方の作品は、出尽くしたのではないか」
と名無し某が言った。
「ならば」
スレも残りすくないのだ。各々が心に残った職人方の作品をひとりづつ述べて
スレを埋めていくのも一興ではないか。と考えた。
976お前名無しだろ:2006/10/24(火) 19:50:37 ID:BtUf96aCP
「心に残った作品ならば」
 >>34をおいて他にはない、と名無しは思った。
 笑いが、止まらないのである。
977お前名無しだろ:2006/10/24(火) 20:34:20 ID:xzABjaxg0
>>947-956
嗚咽して泣いた
のどを掻きむしって泣いた

だがそこにはただ冷たい秋風が吹き抜けるだけであった
978お前名無しだろ:2006/10/24(火) 23:08:23 ID:XBbemUvJ0
>>456-460
リアルすぎて泣くに泣けない…
>>556-564
個人的には一番好き。小ネタがいちいち面白いw
>>686-696
永田さんはやっぱりこのスレには欠かせない。
979お前名無しだろ:2006/10/25(水) 00:33:44 ID:vsL7xR9A0
age
980お前名無しだろ:2006/10/25(水) 01:30:30 ID:dvanzOWU0
>>975
「だが、暫し待ってくれないか」と筆者は言う。
最後を飾るに相応しい出来であるかは別として、もう一作のみ投稿したき作品がある、と。

そして筆者は思う。
数多の名作が星の如く輝いては消えていく運命において、永遠の輝きを保つ選ばれしものは

「全部、パクろう」

この一言に尽きるのではなかろうかと。
981お前名無しだろ:2006/10/25(水) 05:44:39 ID:0pYXWRaW0
>>980
ひざを正してお待ち申し上げ候
982お前名無しだろ:2006/10/25(水) 23:54:27 ID:IPvIg/nw0
保守である。
983お前名無しだろ:2006/10/26(木) 09:39:46 ID:vQh1U0fE0
保守である。
984お前名無しだろ :2006/10/26(木) 14:12:25 ID:2ov5G20t0
age
985『関ヶ原』より@:2006/10/27(金) 02:00:33 ID:50gktqt80
武藤には一種脱俗味を帯びた風骨はあったが、多少物好きなところもあったらしい。
横浜は関内町の繁華街の一角のスナックに、少し憂いを漂わせた女将がいる。
何とも表現し難い妖艶さと幸薄気な雰囲気が、そのあたりのうわさになっていた。
「菊タロー、寄ってみよう」と武藤はある日、そのあたりまで来たとき急に言い、
まるで勝手を知った者の如くに金属製の開戸をからからとあけ中に入り、声を上げ、
「何か一杯ちょうだい」と奥へ声を掛けた。
掛けた時には、武藤はもうカウンターに腰をおろしている。諸事、物に馴れた男なのである。

店の奥から気だるそうな物音が響き、やがてカウンター内に姿を見せた女将が塗り板の上にグラスを置き、
ビールを注ぎだした。無言でいる。
武藤も、無言でいた。黙って顎髭をさすり、うまそうにビールを飲み干すと、やがて
「無沙汰をしている」と、わざと快活そうな表情で女将の顔を見た。
女将は小さく会釈したが、しかしやや迷惑げな色をうかべ、目を伏せたまま身じろぎもしない。

「あれは」と、武藤は顎を動かし、数多の酒瓶の中に所在無さ気に置かれた、らちもない写真立てを指した。
986『関ヶ原』よりA:2006/10/27(金) 02:03:35 ID:50gktqt80
「デコトラか」と、女将に問うまでもなく呟き、ど派手なもんだ、と言った。
昭和中期に一世を風靡した映画で使用された長距離用車両の愛称であり、一部には未だ根強い人気を誇るものの、
武藤が言った通り、どちらかと言うと品のないたたずまいにより、こういう場所ではあまり飾られない類のものである。
「女将が飾られたのか」 武藤はたずねたが、わざわざ問うまでもなく写真立ての四方の框があたらしい。
つい最近に購入し、そこに彼を偲ぶ意味合いでの写真を入れたものであろう。
「あいつは」と、武藤は名をいわずにいった。

「どういうものか、あの手の類が好きで、合宿所時代はおろか、新居でさえ写真や模型で溢れ返っていた。
 ひととおりの地位も名誉も得たトップレスラーだったくせに、あんな趣味の悪いものを、何故あいつがあれほどに好んだのか、
 わかるようでわからない」
「純真な心をお持ちだったからでございましょう」と、女将ははじめて小さな、聞き取れぬほどの声で言い返した。
それだけではなく、楽曲や玩具、更には料理や雀狩に代表される猟にまで、自分が興味を持ったものには我慢がきかない。
そんな開けっ広げで天真爛漫な性格だからこそ、私を心底求めたし、私もかのひとを求めた。そう、彼女は言いたいらしい。

「あいつには、欲がありすぎたのさ」と、武藤はいった。
「ありすぎて体型にまで出ていた。俺と似ているが、俺はまだしもそれを韜晦する術を心得ていたから、レスラー生命が今日まで保った」
「お人が、それだけ悪いのでございましょう」
女将は、武藤を蔑むように見た。武藤は怒らず、禿げ上がった頭部を触りながら笑い、「いかにも悪い」とうなずいた。

「俺も悪いが、あの緑の奴は、もう一枚悪い」
武藤のいう緑の奴とは、もちろん三沢のことであろう。
987『関ヶ原』よりB
「あの方や馬場家を見捨てた不義のお人が」と、女将は三沢に後ろめたさにも似た負の感情を持っているらしい。
「栄えてよいものでしょうか」 「いや、ちがうようだな」と、武藤は首をかしげた。
彼が生きてきた経験によると、義・不義は事をおこす名目になっても、業界を動かす原理にはならない。

武藤の言おうとするところは、すでに馬場・猪木体制は業界を担っていく魅力を失っている。
特に猪木の手法は、もはやレスラーからファンに至るまで、その時代遅れのやり方に辟易し、見透かされていたにも関わらず、
あいつはその手法と生き方を真似し、更に続かせようとした。
すべての無理はそこにあったのさ、と武藤は言いたかったが、しかし沈黙した。かわりに
「ブッチャ―は、成功した」と親友を愛称で呼び、褒め称えた。ただ一つのことについてである。

零一(ぜろわん)の旗揚げは、全盛時の新日本を愛したファンへの何よりもの馳走になったであろう。
新日の崩壊にあたって、橋本などのストロングスタイル継承者 ―新日の象徴とも言える― 存在が、自分や三沢などと同じく
王道プロレスへ走ったとなれば、業界の秩序は崩れ、緊張が消失し、ファンは興奮を失う。
かつは後継者と見初めた橋本からそこまで裏切られれば、新日を愛し信じたファンのみじめさは救い難い。
その点からいえば、あいつは十分に成功した、と武藤は言うのである。

やがて武藤はグラスを置き、立ち上がった。
―供養に。 と、自分のフィギアとTシャツを置き、あらためて女将の俗名をよんだ。
薫、という。しかしそのときには女将の姿はない。
立ち尽くす武藤の背後から有線が流れ、懐かしの「勝手にしやがれ」の音律が聞こえたと同時に、破壊王の満面の笑顔が脳裏へと浮ぶ。

武藤は、翌日、地方巡業に旅立った。