「…さて、武器の準備をしないとな。このままだと兵隊相手にまともに戦えないし」
そういうと越中は担いでいたランドリーバッグを床に置き、中から水鉄砲を取り出した。
「西村、例の物は?」
「はい、このポリタンクに…」
「よーし、じゃあそれをこの中に入れて…っと」
越中はポリタンクの中身――――ガソリンを水鉄砲の中に流し込んだ。
それを西村に手渡すと、もう一つの水鉄砲にも同じ事をした。
そして残ったガソリンを密閉容器に小分けして、西村に半分手渡した。
「中身が空になったらこれを補充してくれ」
「はい」
「本当は…天山の水鉄砲が使えれば良かったんだけどな」
越中は少し申し訳なさそうな顔をしてそう言った。
「仕方ないですよ。アレじゃあ何も出来ないですし。
お守り代わりに…この作戦が成功するように、お守りにします」
西村はそう言うとニッコリ微笑んだ。
「そうか…じゃ、そろそろ行くか。
お前はその水鉄砲で兵士を狙ってくれ。そこに俺がこれで…」
越中はそう言うと、デイパックの中から連射式の打ち上げ花火を取り出した。
「…はい。でも、上手くいくといいんですが」
「何言ってんだ、上手くいかせるんだって!」
「…そうですね。成功させましょう!」
「ああ。カシンの足手まといにならないようにしなきゃな」
越中と西村は頷きあうと、それぞれの武器を手にエスカレーターへと向かっていった。
階下のエスカレーターの奥から、カッカッカッカッ……と渇いた足音が聞こえる。
どうやら兵士は下の階にいるようだ。
(狙うなら…まず顔。視界を潰して、胴体を狙おう)
西村は水鉄砲を構えた。そして越中は花火とライターを手にした。
足音がだんだんとエスカレーターの方に近づいてくる。
カッカッカッカッ……カツンッ!
エスカレーターの踊り場につま先が乗った音が、攻撃の合図だった。
西村は狙い通りに兵士の顔に水鉄砲でガソリンをぶちまけた。
「うあっ!目っ…目が…」
突然視界を奪われた兵士は、その場で身をよじった。
そこへ追い討ちをかけるように西村がガソリンを浴びせていく。
その隙に越中は花火に火をつけた。導火線が音を立てて燃えていく。
「よし、西村どけっ」
越中は西村を押しのけると、花火の先を兵士に向けた。
ヒューン、ヒューン、ヒューン…
小さな火の玉は、次々に兵士の身体目掛けて飛んでいき、当たると同時に炎上した。
ガソリンをよく含んだ軍服を着た兵士は、あっという間に火だるまになった。
「うぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
(…断末魔の叫びというのは、こういうのを言うんだな)
西村は目を逸らし、燃え上がる兵士の叫び声を耳にしながら、ボンヤリと思った。
身を守る為、信念を貫く為とはいえ、関係のない人間に手をかけた事には代わりはない。
人殺し――――人として、最も避けたかった行為である。
西村は耳を塞いだ。そして身をよじった。目の前の事実を避けるかのように。
越中はそんな西村を見てため息をついた。
そして炎の塊の方を向き、頭を下げた。
(申し訳ない…本当に、すまない…)
彼にも家族がいるはずだ。自分と同じように、大事な人や物があるはずだ。
涙がこみ上げてくる。
それが悲しみの涙なのか、無念の涙なのか、後悔の涙なのか…越中にはわからなかった。
ガーンッッッッ!「ウッ…」ドサッ…
越中達の背後で一瞬の内に音が聞こえてきた。
西村が顔を上げ、越中が振り向くと、床に倒れた兵士の姿が見えた。
越中達が気付かぬ内に、最後の一人である兵士が背後に回っていたのだ。
「…泣いてる場合じゃないでしょう」
倒れた兵士の右奥から冷めた声が越中達に投げかけられた。
声の主は、カシンだった。
呆然と見つめる越中達を尻目にカシンは兵士の元に歩み寄ると、再び弾丸を撃ち込んだ。
まだ軽く息をしていた兵士の呼吸が、これで完全に止まった。
「こんな事ぐらいでいちいち泣いていたら何も出来やしない。
…割り切った方がいいですよ、いい加減。
今だって俺が来なかったら、アンタ達は殺られてた。
…仲間以外は全部敵だ。そう思わないと、いつまでたっても…
このゲームを終わらせる事は出来ない。非情かもしれないけど、仕方がない」
カシンは越中達の方を向き、そう言い放った。
「俺は、俺の邪魔をする奴は誰であろうと殺りますから。
一般人の兵士だろうが関係ない。俺の知ったこっちゃない」
カシンは冷たいオーラを放ちつつ、そう言葉を続けた。
このゲーム最強にして最凶のプレーヤーを初めて目の当たりにした越中は
その全てに圧倒され、完全に言葉を失っていた。
…先程自分を見て笑っていた、真剣な眼差しで訴えてきたカシンとは、全くの別人だ。
(…だからコイツは生き残れたんだ。運や実力だけじゃない。
気構えからしてもう…俺達とは段違いなんだ、コイツは…)
越中はそう思った。
カシンは銃をポケットにしまい、兵士の武器を取り上げると
「…西村さん、大丈夫ですか?」
と、たった今までの冷たい声と打って変わった温かみのある声で、西村に問い掛けた。
西村はずっと呆然としたままだった。しかし
「大丈夫だ…。俺は…受け入れる。この現実を。運命として…受け入れる」
小さいながらも力のこもった声で、西村はそう答えた。
「取り戻さなきゃいけない。自分の大事な物を取り戻さなきゃいけないから…」
仲間達の死を無駄には出来ないから。西村は強く、深く意を新たに決した。
「越中さんは…平気ですか?」
カシンは越中に目線を移し、問い掛けた。
「ああ…お前の言う通りかもしれない。割り切らないといけないんだ。
悪夢のようだけど…仕方ないんだな。これは現実なんだ。
自分の信念を貫く為には、何かを傷付け、壊しても仕方ないんだな…。
それが人を殺す事であっても…俺達はやらなきゃいけないんだ…。
わかっていた筈なのに、いざ目の前にすると…動揺しちまうな、やっぱり」
越中は俯きながらそう言うと、顔を上げてカシンを見つめた。
「お前がそういう…人を殺るの、初めて見た。俺には…出来ない、そこまで。
だから…仲間にして良かったって、ちょっと安心していたりするんだ。
敵には回したくないって、お前みたいな奴は」
そう言って越中は苦笑した。
カシンは越中のあまりに素直な言葉を聞いて、少し笑ってしまった。
「そりゃそうだ。俺だって俺みたいなのがいたら戦いたくないですよ。
もう…大丈夫ですね?二人が及び腰じゃあ俺の命も危ないから」
カシンがそう問い掛けると、越中達は静かに、深く頷いた。
「…さて。そろそろ次の行動に移りましょうか。そろそろ佐山も気が付く筈だし。
先手打っていかないと、あのオッサンは一筋縄じゃいかないだろうから」
そう言うとカシンはジュラルミンケースを開けた。
そして中からパネルモニターを取り出し、それを西村に手渡した。
「さっき階段で殺った兵士が持ってました。高性能レーダーです。
俺には必要ないし…西村さん、持ってて下さい」
そう言うとカシンはレーダーの電源を入れ、西村に自分が知る範囲内での使い方を説明した。
「うわ…これって居場所どころか誰なのかも全部バレちゃうんだ」
西村は驚きの声を上げた。
「そうなんですよ。だから俺、目の前でコレ使われた時はもう終わったと思った。
なのに佐山は…『石澤君に今、手を出す気はない』とかぬかしやがって…」
苛立ちを思い出したのか、カシンは怒りのこもった声でそう吐き捨てた。
「俺は石澤じゃない、カシンだ!それに後回しって、どういう事だ!?
その場で戦えよ!ああ、もう…頭にくる、ホントに…俺を舐めてるのか!?
今戦って、俺を後回しにした事を後悔させてやる!」
「…は?何があったんだ?」
西村は訳がわからないといった風にカシンに問い掛けた。
「あのオッサン、俺がいるの知ってて後回しにしたんですよ!
最後に取っておいて、俺をなぶり殺しにしたいんじゃないですか?
猪木さんに気に入られてる奴は、全部気に食わないんですよ、アイツは!
あ、西村さんもきっと後回しだ。ビンタの事で妬まれてるはずだし。
だから越中さん、一番気を付けないと…最初に狙われますよ、きっと!
あの変態デブオヤジ…見てろよ!俺がこの手で倒してやるから!」
と、カシンは一気にまくし立てた。
「は…はあ…」
西村はその勢いに圧倒されて、返答に困っていた。
(何か…微妙に怒るポイントがズレてる気がするんだけど…)
西村はそう思った。
カシンの場合、論点がズレるのは今に始まった事ではないから気にする事はないのだが。
(この非常下で…なんとまあ呑気というか…度胸あるというか…)
…ま、それだけ平常心でいる証拠かもしれないって事だな)
と、越中もいつも通りのズレっぷりを見せるカシンに呆れつつ、安堵を感じていた。
「まあ、お前の怒りはわかったから。早く行かないとマズイんだろう?
その怒りは本人にぶつけろって。さあ行くぞ」
越中は一人怒りに震えるカシンの方をポンポンと叩き、そう促した。
ここまで。
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
そして、スレ立てお疲れ様です。
新スレおめでとう!!!!!コノヤロウ!!!
女王様!ありがとね!続けくれて!頑張ってください。
それと一言
おねすちぃ ◆/6B53nOc さん。遠慮なく参加しろよ。
いじけてるんなんてらしくないぜ!俺は前からマルチエンディングを唱えた派なので
君は君で話を続けてくれ!
女王様!いいだろ!おねすちぃ ◆/6B53nOc さんの復活。
いやならいやと言ってくれ。今は貴方しかいないので!
でも俺はあいつは結構いい奴だと思っているよ。
復活を期待したい!ダーーーー!!!!
スレ立て&新作、乙です。
外野の訳のわからん奴の声は放っておいてがんがってください。
新スレいめでとう
ネット繋いで、新作アップされてると、
その日は1日小確幸。
作家さん(1+α人)いつもありがとう。
保全。
新スレ早々dat逝っちゃったらシャレにならないしな(藁
保全のペースってどのくらいでいいんかねsage
乱立祭り時以外は1日1レスくらいで多分大丈夫保全。
ほぜんほぜん
ほぜん
かなり下がったな、とりあえず保全
この時間なので一度age
〜結局おねすちぃさんのサムライ編をなしにするとして〜
サムライ復活自体が必要ないと思う。
完成を急ぐのなら、サムライを復活させるだなんてその障害にしかならない。
しかも今のJrマニアさんにさらに重荷を背負わせてまで復活させる理由があるだろうか?
完結を一ヶ月以上遅らせてまでサムライを復活させたいのならまた別だろうけれど。
保全。
サムライに関しては、みなさんのご意見を聞いてから考えます。
Jrマニア氏の書く「復活サムライ」も見てみたい気がするって。。。
でも、大変そうなのでガタガタ言わないです。
Jrマニア氏が一番シックリする形で行けばいいんじゃないでしょうか。
30 :
930:02/03/23 00:21 ID:???
職人は好きなようにオナニーしる!
もうあんたのなら、どんなのでもついてく
保全
サムライ復活はどうだろう…? 今のメンバー見ると
・正義派:西村、カシン、越中 ・冷酷派:馳、AKIRA ・基地外派:アソトソ&ディクレてな感じだから
バランス取れてるから、無理矢理突っ込まなくてもいい気がしますが。
ただ、この妙にバランス取れた現状が物語を進展させない足枷になってる面も多分にあるので
復活なら場面を大きく変える位のインパクトが欲しいなぁ…あっ、霞ヶ関突入とかはNGで(w
hhoozzeenn
hozen
葡繕
圃喘
柴咲コウage
後楽園ホール突入なら萌え
畝漸
ホゼン
舗然
最後は両国も可
HoZeN
hOzEn
HozeN
いつでもホ是ン
hOZEn
[2日目午後6時50分:デパート本館1F]
…ガーンッ……
遠く微かに聞こえる銃声。その音を聞き、佐山はチッと舌打ちをした。
「…俺は『探せ』とは言ったが『撃て』とは言ってないぞ。まったく…使えない奴らだ」
そう呟きながら佐山は立ち上がり、音の聞こえた方…階段へと歩を進めた。
その途中、エスカレーターの横を過ぎようとした時に
「うぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
…今度は絶叫が、エスカレーターの上の方から聞こえてきた。
「…越中の声じゃない…どういう事だ!?」
佐山はエスカレーターの乗り口に回り込み、上階の方を見た。
だが、何も見えなかった。
レーダーは兵士が持って行ってしまった為、状況が掴めない。
そしてまた銃声が―――今度は2発。少し間を置いて聞こえてきた。
佐山はジッと耳を澄ませた。しかし、それを最後に戦闘音が聞こえてくる事はなかった。
音がしなくなったという事は、戦いが終わった証…
だが、佐山の持つトランシーバーに入るはずの兵士からの連絡はないままだ。
「越中が1人で3人を倒したのか!?奴にそんな能力があるとは到底思えんが…」
焦りの色を隠せない佐山はトランシーバーに向かって叫んだ。
「―――何があった!誰か応えろ!」
[2日目午後6時50分:デパート本館5F]
『―――何があった!誰か応えろ!』
微かに聞こえる誰かの声。
越中達がそれを耳にしたのは、階下へ移動する為に階段へ向かおうとした時だった。
「…何だ?今の声は」
越中はそう言うと、訝しげに振り向いた。
「トランシーバー…みたいですね。あの兵士の」
西村は先程カシンが倒した兵士の方に目をやり、そう答えた。
『誰もいないのか!?おいっ!!』
床に臥す兵士の腰にあるトランシーバーが、再び叫び声をあげた。
「…佐山だ」
カシンはそう呟くと足早に兵士に歩み寄り、そのトランシーバーを手に取った。
「カシン、何をする気…」
西村がそう問いかけるのを無視して、カシンはトランシーバーに向かって言葉を吐いた。
「…おい、デブ。悪いがアンタの子飼いは全部殺らせてもらった」
『…誰だっ!?お前は』
冷たく言い放つカシンに、佐山が動揺した声を返す。
「誰だっていいだろ。今からそっちに行ってやるから大人しくそこで待ってろ、クソデブが!」
『お前…石澤か?石澤だな!?何でそこにいるんだ!!』
今、ここにいる筈のないもう1人の自分の名を連呼する佐山の声に、カシンは口元を歪めた。
「ここにいちゃ悪いか?それとな…俺は石澤じゃない。ケンドー・カシンだ!」
カシンは殺気立った、押し殺した声でそう言うと、
トランシーバーを越中に手渡し、階段に向かって歩き始めた。
「カシ…」
越中はカシンに声をかけようとしたが、再び殺気を宿したカシンの姿にまた圧倒され、
途中で言葉に詰まってしまった。
「…行くしかないみたいですね」
ため息混じりに西村が呟いた。
そして2人は「これからどうなるのか?」という不安に駆られつつ、カシンの後を追って歩き出した。
ここまで。
54 :
お前名無しだろ:02/04/10 15:28 ID:AN6+Zw3I
保全age
>>49-52 乙カレー様です。
……やっぱり時間の経過っちゅうのは恐ろしいですね。
今カシンがここで戦っているのが何か不思議に見えてしまう……
むしろ佐山に狙われてるのが越中じゃなくて渕だったらサイコーなんだが(w
「渕のアニキ!今、助けに行きます!」とか悪ノリするカシンとか(爆
56 :
mi:02/04/10 23:41 ID:???
お久しぶりです。「大谷@パチンコ屋」書いた者です。
Jrマニアさん、お疲れさまです。無理のない程度に頑張ってください。
陰ながら応援しております。
hogen
このスレ始まってから長いもんなぁsage
これだけ佐山が重要な役やってるからこそ思うんだけど
これで仮に小林邦昭が出演してたらどうなってたんだろう?
上手く書けばたまらなく面白い状況になってたこと請け合い。
>>55 今日武道館で、カシンがチャンピオンになったのをボケーッと眺めながら
「ああ、私の中ではまだ新日なんだよ、アンタは…」って思いました(w
>>56 ありがとうです。頑張ります…マイペースで。
>>58 長くなっちゃってスマンカッタ。
>>59 …そこまで思いつきませんでした。スマソ。
みなさん、いつもhozenありがとう。
61 :
お前名無しだろ:02/04/14 21:29 ID:D0kZ7XcI
hozenn
jr.mania gannbatene
早めの保全
nozen
保全しとこ
hozenn
66 :
保全です:02/04/19 06:24 ID:???
保全
ムダな保全でスレを使うのはアレなので、1日1保全でいかがでしょう?という矛盾したsage
ほぜんだよ
保全
下がり過ぎなので上げてみましょうか
保全とか言ってみる
120mm滑空砲?
_δ_
/ ⊥ \
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‖∧ ∧¶ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ゚Д゚)/ < おう、2ち
/ / \ 組み合わせは下のトーナ。
〈 ( \
∫ヽ__)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
U U
| ̄ ̄ ̄ ̄|
\__人__/
揚げ
78 :
:02/04/29 14:39 ID:???
田代砲
hozem
hczen
SAGE
やばいよ、落ちる手前
↑からちょうど24時間