警視庁公安部外事3課などの内部資料とされる国際テロ関係の情報が流出した事件で、
ファイル交換ソフトを通じた流出の2日前、ネット上で文書などを保存できるウェブサイトに
同じ資料が掲載されたうえ、掲載先を知らせる電子メールがイラク、中国の両在日大使館や
警察官など計18カ所に送られていたことが捜査関係者への取材でわかった。流出直後には、
警察幹部やイスラム研究者らに、同じ文書を添付したメールが送られていた。
メール送付先には、警視庁の捜査協力者も含まれ、広範囲の関係者に送られていることから、
ある警察幹部は「文書を拡散させようとの強い意志と警察組織への悪意を感じる」と指摘。
警視庁は、内部事情に詳しい者がかかわった疑いが強いとみて、流出経路を調べている。
捜査関係者によると、昨年10月26日早朝、「オンラインストレージサービス」と呼ばれる、
文書などを保存・閲覧できるサイトに、流出情報と同じ114件の文書が入った圧縮ファイルが
掲載された。
約2時間半後、このサイトの存在を知らせるメールがイラク大使館に送られた。その約30分後には、
警視庁外事3課の経験があり警察庁に出向中の警部の私用アドレスや中国大使館、イスラム関連
団体関係者など17カ所に一斉にメールが送信された。警察官はこの1人だけという。
大手通信会社のフリーメールで、他の受信者のアドレスが表示されない「BCC」(ブラインド・カーボン・
コピー)が使われ、送信者のアドレスには安藤隆春警察庁長官の名前が使われていた。メールの件名は、
公安警察とイスラム社会の対決を意味するようなもので、「秘密資料」との記載もあったという。
2日後の同月28日夜になり、ファイル交換ソフト・ウィニーのネットワーク上に文書が公開され、
ネット上で急速に広まった。
この直後の同日深夜、イスラム研究の日本人学者らに、同じ文書が添付されたメールが送られた。
翌29日未明には、埼玉県警幹部のキャリア警察官にも同様のメールが送信された。いずれも送信者名は
「ヤマダイチロウ」で、添付文書の題名は、大使館などに送られたメールの件名と同じだったという。
メールを受け取った警察官らは迷惑メールを疑ったことなどから、サイトに接続していなかった。
このため、警視庁が流出に気づいたのは、外部から指摘を受けた29日夜になってからだった。
http://www.asahi.com/national/update/0102/TKY201101020193.html