◇裁判員裁判:あす県内初開廷 強制わいせつ致傷、被害者保護課題に /茨城
市民が参加する裁判員裁判が県内で初めて、25日から2日間の日程で水戸地裁で開かれる。
審理されるのは強制わいせつ致傷事件。性犯罪事件を裁判員裁判で扱うことを巡っては、
被害者の個人情報が裁判員や傍聴者に伝わる2次被害を懸念する声もあり、被
害者のプライバシー保護が課題になる。【原田啓之】
審理されるのは東京都足立区、元会社員、倉持謙被告(45)。起訴状によると、
08年11月夜、つくば市の路上で10代女性の体を触り、路上に突き飛ばして
手首に軽傷を負わせたとして、強制わいせつ致傷罪に問われている。
弁護側は公判前整理手続きで事実関係を争わない姿勢を示しており、
公判では起訴内容を認め、量刑が争点となる見通しだ。
水戸地裁は、被害者保護の観点から、公判で被害者名や住所を公開しないと決定。
裁判員を選ぶ選任手続きでは、候補者には事件詳細を伝えず、メモをとったり、
内容を口外しないよう要請する。また、被害者は出廷せず、検察側が被害者の
供述調書を提出するにとどめる予定だ。
このほかの具体的措置について水戸地裁は「公判前に明らかにできない」としているが、
被害者の特定につながる情報や生々しい被害状況に関する内容は非公開になる可能性が高い。
性犯罪を審理した他県の裁判員裁判では、検察側が被害の詳細な経緯は読み上げずに
裁判員にメモで渡して黙読する形にしたり、証拠写真を傍聴席モニターには映さずに
裁判員の手元モニターに限定するなどの対応が取られた。
日程は、25日午前10時、裁判員選任手続き
▽同午後1時半、冒頭陳述
▽26日午前10時、論告求刑
▽同午後2時半ごろ、判決の予定。
◇仙台地裁での強姦致傷公判、年齢や身分は公表
性犯罪に関する裁判員裁判は、どのように審理されているのか。
20日に仙台地裁で行われた強姦致傷事件の判決公判を取材した。
10代の女性に性的暴行を加えたとして起訴されたトラック運転手の被告(39)に、
懲役9年10月の実刑判決が下った瞬間。裁判長が「真剣に考えてください」と語りかけると、
両脇に並んだ6人の裁判員は、被告の顔を真剣な表情で見つめた。
被害者保護のため、法曹3者は法廷で被害者の名前と住所を読み上げず、
犯行現場は「宮城県黒川郡」にとどめた。被害者の写真を写し出す際は
傍聴者用の大型モニターを消し、裁判員だけが手元モニターで確認した。
しかし、被害者の年齢や身分、けがの部位は公表。弁護人は「わかる人には
被害者が誰だかわかってしまう」と首をかしげる。また、この公判では起訴内容は
争われなかったが「犯行場所が争点になった場合には、
具体的に言及する必要がある」と指摘した。
一方、裁判員には被害者の実名や住所が記載された起訴状が配られた。裁判員には
守秘義務が課せられるが、取材に応じた男性裁判員は「守れない人も出てくる。
性犯罪を裁判員裁判でやるべきではない」と話した。
裁判員6人の男女比も議論になった。この公判では男性4人、女性2人だったが、判決後の会見で
裁判員の感想は、「男女比は3対3がいい」(男性裁判員)、「男性が多かったが関係ない。
十分議論できた」(女性裁判員)と意見が分かれた。また、この女性裁判員は
「自分が被害にあったらと想像した。男性より厳しい感情を持った」と話し、
感情のコントロールに苦悩した様子を語った。
ソース(毎日新聞)
http://mainichi.jp/area/ibaraki/news/20091124ddlk08040048000c.html