◇失意の青年、再起の就職
「高齢者の方に『ありがとう』と言ってもらえる瞬間が、介護の仕事にやりがいを感じる時です」
海田町の老人ホームで働く介護福祉士、松田陽嗣さん(24)=安芸区矢野東2。かつて、
父の死から介護の仕事への意欲を失い、自宅に引きこもった時期もあったが、乗り越えてきた。
中学時代に社会の授業で「高齢化社会」を学び、「一役担える人間になりたい」と志した。
05年に福祉の専門学校を卒業、坂町の病院に就職。だが、その年の5月、肝機能不全で
植物状態になっていた画家の父(当時49歳)が亡くなった。
医師から「意識が戻る可能性はない」と言われた。松田さんは「もう絵を描くこともできないなら、
楽にさせてあげたい」と延命治療を拒んだ。
父が亡くなった後、「自分が父親を殺した」という自責の念に駆られるようになり、勤務中も患者との
やり取りなどに集中できなくなった。「今の自分は十分な介護をすることができず、人の命を預かる
資格はない」。こう思いこみ、同年8月、退職した。
それからは何をする気にもなれなかった。叔母に「何でもいいから仕事したら」と言われ、
同年10月から食料品店で商品整理のパートに就いた。
だが、「夢だった介護職に戻りたい」との思いは消えなかった。そのためのきっかけになればと、
06年9月、三原市大和町和木にある若者自立塾「みどり塾」に入った。施設内はすべて個室で、
入塾者向けのプログラムとして職業体験やマナーなどの学習講座、地域でのボランティア活動などが
組まれている。
松田さんは3カ月間、自分と同じように親を亡くすなどして家に引きこもりになっていた、10〜40代の
男女9人と滞在。近くの作業所に通う知的障害者たちと、ブドウ園やシイタケ栽培などに従事した。
深刻な障害を抱えながらまじめに働く知的障害者たちの姿に勇気付けられ、自分の悩みが小さく
思えた。塾の職員も自分の話に真剣に耳を傾けてくれる。地域の人たちも気持ちよくあいさつをしてくれた。
「大きな障害を持っている人だって、仲間たちと一緒に楽しく生きていけることができる。自分も
やっていけるはずだ」。職員に頼み、入塾の翌月から近くの介護施設での職業訓練にも参加。
プログラム修了後、塾を通じて東広島市の老人ホームへ就職し、08年9月から
現在の老人ホームで勤務している。
「自立塾がなかったら、1人で悩み続けているだけで、今の自分はなかったと思う。今は、
働ける喜びでいっぱいです」。目を輝かせながら語った。「今の自分に、父は喜んで
くれるだろうな」【黒岩揺光】
◇データ
県雇用人材確保課によると、県内に15〜34歳で就労や家事、通学をしていない人は
約1万人(07年度)。若者自立塾は、ニートの就労支援の一環として厚生労働省が05年度に
始めた事業で、現在、全国の約30団体が委託を受けて活動。働くことに不安を抱える若者らが
3カ月間、衣食住を共にし、職業訓練を受ける。中国地方では「みどり塾」が唯一の施設。
社会福祉法人「みどりの町」が05年9月に開設、これまでに約80人の入塾者を立ち直らせてきた。
毎日新聞 2009年1月8日 地方版
▼ソース
http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20090108ddlk34040660000c.html ご依頼あり
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