■中印貿易拡大へインフラ整備
中国で青海省ゴルムドからチベット(西蔵)自治区のラサ(拉薩)まで今月1日に開通した
「青蔵鉄道」を、さらにインドとブータンに近い国境地帯まで延伸する計画が検討されてい
ることが明らかになった。6日にはチベットとインドのシッキム州が接しているナトゥラ(乃堆
拉)峠の貿易ルートも44年ぶりに再開されている。中国は国境地帯のインフラ整備を進め
ることで、主にインドとの経済関係の拡大を図る狙いがありそうだ。(河崎真澄)
≪自由貿易区に≫
華僑向け通信社の中国新聞社がチベット自治区政府関係者の話として伝えたところよると、
青蔵鉄道の支線として建設が検討されているのは、東西に伸びる2路線。ラサから東に向
かってインドのアッサム州に近いニャンティ(林芝)に至る約350キロと、西に向かってシガ
ツェ(日喀則)を経由し、さらに南に向かってシッキム州の国境に近いドモ(亜東)に至る
約500キロの計画だ。
2016年までの建設をめざし、建設費用は数百億元とされている。この計画はジェトロ上海
センターも、国家発展改革委員会交通運輸司の情報として確認している。
インド側はアッサム州もシッキム州も鉄道が敷設されており、中国は将来的に、インドとの鉄
道連結も模索する考えと伝えられるが、国境地帯は海抜4000メートルを超える険しい山岳
で、技術的に接続が可能かどうかは明らかになっていない。
ただ、ジェトロ上海センターによると、中国はシッキム州に近いドモを西南部最大の自由貿易
区とし、関税免除などの措置を設けることで中印国境貿易の最前線にする方針も打ち出して
いる。
≪国境地帯を開放≫
ドモやナトゥラ峠などは、かつてシルクロードの一部だった。中印紛争が本格化した1962年
以降、軍事管制区となっていた国境地帯を開放することで、開発から取り残された形のチベ
ット経済の浮上を図り、中国によるチベット支配体制を強化するとともに、政治的な対立にピ
リオドを打ったインドとの経済関係を深める狙いがある。
中印貿易は05年に前年比37%増の187億ドルで、今年は200億ドルに達する見通し。
昨年4月にインドを訪問した温家宝首相は、シン首相との間で国境線画定と同時に国境地帯
の経済貿易区の設置で合意。さらに10年までに両国間の貿易額を300億ドルに拡大する見
通しを明らかにしていた。鉄道路線の延伸やナトゥラ峠の貿易ルート再開などもあり、実際に
は、10年に貿易額が500億ドルまで拡大するとの楽観的な見方もある。
大陸国家の中国は、安全保障上の観点から外洋に通じる新たなルート開拓に乗り出しており、
チベット経由でインドに通じ、インド洋に出る今回の計画もその一環と考えられる。
このほかにもミャンマー国境を通る石油パイプラインをインド洋まで敷設する計画や、北朝鮮や
ロシアとの国境地帯を経済開発することで日本海に抜ける新ルートの整備計画なども相次ぎ
明らかになっている。
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200607200005a.nwc