体形や習性の違いなどから2つの系統がいるのではないかといわれていた琵琶湖のコイを、
東大海洋研究所の馬渕浩司研究員らがDNAで比較したところ、一方の細身のコイは、
世界のコイの類縁関係の中でも非常に特異な存在であることが判明した。
古代型ともいえるタイプで今後、新種として扱われる可能性もあるという。
琵琶湖で確認されたこのコイは、種の保全上からも重要度がきわめて高い。(論説委員 長辻象平)
琵琶湖には全国各地で多く見られる一般的な体形のコイと、
背中と腹部の間が狭くて全体に細長いコイがいる。
相違は、体形だけでなく、すみ場所や習性にもおよんでいる。
細身のコイは、普通のコイより深い場所にいて人目に触れにくい。そのうえ、警戒心が強いので釣りにくく、
釣り針にかかったときは激しく抵抗するという。
こうした違いを気に留めていた神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏主任研究員らは、
馬渕研究員に分析を提案した。
馬渕研究員が2系統のコイの細胞中のミトコンドリアDNAを分析したところ、
遺伝的性質を支配する塩基配列に約3%の違いが見られた。
共同研究者の東大海洋研究所の西田睦教授によると「3%の相違はかなり大きい。
亜種というよりは、別の種として考える方がふさわしいこともある」と話している。
別種となれば、これまで研究されていなかった細身の系統が新種となるわけだ。
馬渕研究員は今後、2系統のコイの体の形態的な特徴の差や食性の相違などを詳しく調べる。
新種として記載するための詰めの作業も瀬能主任研究員を中心に進められることになりそうだ。
コイが自然に分布している地域は東ヨーロッパから東アジアに至る範囲だが、その起源に関しては、
化石の研究などから中央アジア説と東アジア説がある。
今回のDNA分析の結果、ヨーロッパ産や中国産、
日本の一般的なコイがひとつのグループにまとめられるのに対し、
琵琶湖にいる細身のコイは全く別の系統として位置づけられた。
琵琶湖の細身のコイに種分化の枝分かれが起きた年代は、200万年前までさかのぼる可能性があるという。
馬渕研究員によると、細身のコイの入手は難しかったが、
コイヘルペスの流行で死んだ個体が大量に浮かんだため、研究が一気に進んだ。
同ウイルスに対して一般のコイより弱く、この点も差があることを示す他の研究者の報告もあるという。
コイは研究しつくされていると考えられていたのだが、
今回の発見で「最も重要な存在が見落とされていたことがわかった」と西田教授は驚きながら話している。
琵琶湖には一般的なコイが放流されているので、
交雑によって固有種の細身のコイが消滅するのを防ぐためにも新たな対策が必要だ。
また、馬渕研究員らの最近の調査で、琵琶湖の細身のコイと同じコイが、
高知県の四万十川などでも見つかり始めた。
明治になって外国産の飼育ゴイが移入・放流されるまで、
細身のコイは日本国内に原産種として広く生息していた可能性もあるという。
淡水魚の王とされるコイの新種につながる発見が持つ生物学上の意味は大きい。
ソース:産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/morning/15iti002.htm 依頼:
http://live14.2ch.net/test/read.cgi/wildplus/1150033775/32