S・R-センゴク・ロワイヤル- Part2

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1しばった勝家
時は弘治三年(1557年)、日本中が新たなる時代を求めて、
戦に戦を繰り返した時代・戦国時代である。
しかし、後奈良天皇崩御の直後、正親町天皇が践祚した直後であった。
戦国の名だたる武将達100名は、ある島に集められ、天皇から地獄のゲームの開始を告げられた。

「この島で殺し合いをせよ」

人を殺すのが日常ともいえるこの時代の武将達ですら、このゲームは異色と感じるが、
有無を言わさずゲームに参加させられた武将たちは、困惑しながらも様々に行動を始める。
殺す者、殺される者。
騙す者、騙される者。
知己を探す者、獲物を探す者。
愛する者、憎む者。
信じる者、諦める者。

絶望と血の島で起こる、永遠の地獄と一瞬の安息の物語。

前スレ
http://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1084954147/l50

雑談用スレ(再利用)
http://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1102142615/l50

ログ保管ページ
http://kannakamui.hp.infoseek.co.jp/
2しばった勝家:05/02/01 23:27:38
〜ルール〜
これは参加リレー式小説です。
一人で暴走しないで下さい。
荒らしは放置。
sage進行。
雑談は雑談スレで。
武器は原作と同じ様な設定とし、その使用法がわかる解説書つきとします。
外交関係の認識は1555年あたりとします。(武将も大体そのあたりの者を選定)
武将の年齢は・・・あまり考えないで下さい。

なお、参加する武将は中央付近に集中させ、密度を高くしました。
地方の方々、申し訳ありません。
3しばった勝家:05/02/01 23:31:04
参加者達の現在の状況
01赤尾清綱   26岡部元信×  51佐久間信盛  76林秀貞 ×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政○  77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行○  53宍戸隆家   78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家   79北条氏照
05安居景健   30小山田信茂× 55下間頼照×  80北条氏政○
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉   81北条氏康×
07浅井久政   32柿崎景家×  57上条政繁   82北条綱成○
08朝倉義景×  33桂元澄    58鈴木重秀○  83細川藤孝 ○
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀   60滝川一益○  85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×  86前田利家○
12甘粕景持   37北条高広   62武田信繁   87真柄直隆
13尼子晴久○  38吉川元春×  63武田晴信○  88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞   64竹中重治×  89松田憲秀
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×   91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如○    67鳥居元忠   92三好長慶○
18石川数正○  43高坂昌信○  68内藤昌豊   93三好政勝×
19磯野員昌○  44香宗我部親泰 69長尾景虎○  94村上義清
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景   95毛利隆元○
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○  96毛利元就○
22岩成友通×  47斎藤道三   72丹羽長秀○  97森可成 ×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉○  98山中幸盛○
24遠藤直経○  49斎藤義龍   74蜂須賀正勝  99六角義賢○
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房   100和田惟政○


×印:死亡確認者 38名
○印:生存確認者 34名
無印:未登場者  28名
4しばった勝家:05/02/01 23:32:17
個人
【27番 織田信長 5-B民家で休息中】『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『和泉守兼定』
【73番 羽柴秀吉 コルトパイソン、備前長船】
【80番 北条氏政 『南部十四年式(弾切れ)』『コブラ』『クナイ(10本)』『鍋(頭に装備)』 3-A付近を移動中】
【28番 織田信行 3-B廃墟 】コルト・パイソン(残弾少数)ミネベア 9mm機関拳銃(残弾少数)
【18番 石川数正 不明】催涙スプレー、他一種
【11番 足利義輝 九字の破邪刀】4-D森。
【36番 河尻秀隆 妖刀村正(村正によって精神を支配されています)】3-G地点
【42番 顕如 FFV M2カール・グスタフ(望遠レンズ附属、残弾1発一時使用不能)】3-I海に逃亡
【99番 六角義賢 滋藤の弓 矢×12隻】2-F湾岸
【89番 松田憲秀 『スタンガン』】5-Cで待機
【98番 山中幸盛 『六角棒』『ナイフ』】4-E地点
【43番 高坂昌信 エクストリーマ・ラティオ】3-C荒野から移動
【48番 斎藤朝信 モップ型暗器】3-C荒野から移動
【82番 北条綱成  『ヌンチャク』『木太刀』】1-I崖付近
【60番 滝川一益 『十手』】 2-D畑より出発
【100番 和田惟政 『不明』】2-D畑より出発
【52番 佐々成政 武器不明】 4-D森林入り口地点
【65番長曽我部元親 鎌・ショットガン持ち2-Bを去ろうとして天皇から放送あり。1−Eへ向います。】
5しばった勝家:05/02/01 23:33:05
パーティ
【63番 武田晴信 コルトM16A2】&【69番 長尾景虎 片鎌槍】3-A付近を移動中
【72番 丹羽長秀 Mk2破片手榴弾×2 矢×10本】 &【86番 前田利家 ショットガンSPAS12】(両者ともにB-4地点からD-4地点に移動予定)
【06番 浅井長政 FN5-7 4-G付近】& 【71 番長坂長閑(ノドカ) 無銘・匕首】接吻を交わしています
【96番 毛利元就 弓矢4本・アサルトライフル(残弾少量)・ボーガン5本・十文字槍(軽い打撲。命に別状はありません)】&【46番 小早川隆景 『グロック17C』(右腕骨折により体調最悪、意識は少し回復中)】両者とも現在地4-D森林出口付近、負傷の為進行遅延。
【13番 尼子晴久・鎖鎌】&【95番 毛利隆元・手裏剣8個】3-G森林出口付近
【90番 松永久秀 青酸カリ(小瓶に入ってます)】 &【92番 三好長慶 弓・矢(10本)】合流後5-H地点に向ってます。
【19番 磯野員昌 呉広】&【24番 遠藤直経 マクアフティル】&【09番 朝比奈泰朝 青龍偃月刀】目的、浅井家臣、今川父子との接触
【58番 鈴木重秀 USSRドラグノフ 食料(少量)】&【29番 飯富昌景 武器不明  】 共に3-Fから出発

未回収アイテム

【15番 荒木村重 『毒饅頭』は5-B民家に放置】

4-C湖、河口付近で爆発あり。
周辺にもし人物が居たならば、なんらかの被害を受けているかもしれません。

3-B廃墟内にて腐臭と氏真の大声に気付いた武将が居る可能性あり。

妖刀も3-G地点の森の中にあるので、見つけた人間は拾う可能性があります。
6しばった勝家:05/02/01 23:34:18
正親町天皇・・・・・今回の狂気ともいえる余興の主催者。最後まで生き残った者に、天下を約束する。実は剣術の天才?
06番浅井長政・・・・父・久政と義兄・信長を助けようとしている。ノドカと接吻を交わしている。
09番朝比奈泰朝・・・直経・員昌が気に入り行動を共にする。
11番足利義輝・・・・九字の破邪刀で大悪を斬ることを決意。
13番尼子晴久・・・・尼子の宿敵である毛利家の長男・隆元と意気投合。以来、隆元と行動を共にする。
18番石川数正・・・・仲間と思わせ安堵させた元康を、催涙スプレーで襲った男。
19番磯野員昌・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・直経と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
24番遠藤直経・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・員昌と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
27番織田信長・・・・天皇に魅せられた男。自分の方が天皇より優れていることを証明するため、殺し合いには積極的に参加。孤高のジェノサイダー。
28番織田信行・・・・兄・信長の理解者であった政秀に助けられ、何かが変わった?
29番飯富昌景・・・・武田家屈指の強さを誇る男。重秀の考えに賛同し、晴信捜しを手伝わさせる。晴信を心から尊敬している。
36番河尻秀隆・・・・妖刀村正により、精神を支配された殺戮マシーン。
42番顕如・・・・・・余興に乗り、殺し合いに積極的に参加した破戒僧。もはや仏を超えた戦いぶりを見せる。
43番高坂昌信・・・・似たような境遇の朝信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、晴信を捜しに行く。
46番小早川隆景・・・父・元就と合流。幸盛の六角棒により右手を負傷するも、元就の重荷になるまいと、それを告げぬ強い意志を持つ。
48番斎藤朝信・・・・似たような境遇の昌信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、景虎を捜しに行く。
52番佐々成政・・・・尊敬する信長の力になるべく捜索を決意する。
58番鈴木重秀・・・・鉄砲傭兵集団、雑賀衆頭領で鉄砲の名手。人や権力に縛られるのを嫌う気ままな自由人。天皇殺害を心に決め、昌景と行動を共にする。
60番滝川一益・・・・忍びの心得を持つ男。十手片手に信長の下に馳せ参じる決意をする。
7しばった勝家:05/02/01 23:35:14
63番武田晴信・・・・武田信玄の名で知られる名将。ひょんなことから、景虎と行動を共にする。まだ余興に参加する意思は無い?
65番長曽我部元親・・・弱き者に牙を向く器量無しを嫌悪する、姫若子と呼ばれた男。今のところ目的不明。
69番長尾景虎・・・・上杉謙信の名で知られる名将。ひょんなことから、晴信と行動を共にする。相当な実力者。
71番長坂長閑・・・・ノドカ。実は歩き巫女なる女忍びで、親方・晴信を探しているところを浅井長政と会う。長政との関係に期待大。
72番丹羽長秀・・・・優れた知略の持ち主。相棒の利家に振り回されながらも、幾多もの危険を回避している。
73番羽柴秀吉・・・・『人たらし』の仮面を被り、平然と仲間を殺した男。勝家に殺意を持っている。
80番北条氏政・・・・臆病者。しかし、父・氏康の死をきっかけに、生まれ変わることを決意。まだ実力のほどは解らない。
82番北条綱成・・・・自慢のマッスルボディを愚弄されると切れる危ないオッサン。
86番前田利家・・・・『むむむ』が口癖の男。相棒の長秀にいつも怒られている。
88番松平元康・・・・妊娠線が浮かぶほど太った男。数正に襲われ逃げ出すも、崖から落ちて瀕死の重傷を負う。廃墟で療養中?。
89番松田憲秀・・・・氏政では心もとないと、スタンガン片手に謀反を企てる?
90番松永久秀・・・・主君・長慶を操り自分の利にしようと企む。今のところ目立つ動きは無い。
92番三好長慶・・・・久秀を信じているが、実は久秀に踊らされている?
95番毛利隆元・・・・心の優しい男。晴久と意気投合し、以来、隆元と行動を共にする。忠次の銃撃により右肩を負傷。
96番毛利元就・・・・息子・隆景と合流。子には優しいが、誠久を嬲り殺すような残忍な一面も持つ。
98番山中幸盛・・・・義に篤く、主家想いの忠臣。誠久の無念を晴らすため、打倒毛利を決意する。
99番六角義賢・・・・自慢の大軍を蹴散らし、自軍の兵すら尊敬の眼差しを送る長政に、敵意を持つ。
100番和田惟政・・・忍びの心得を持つ男。滝川一益の弟弟子。主君義輝との合流を目指す。
8しばった勝家:05/02/01 23:36:59
   |    A   .|    B   .|   C  |    D   .|   E   .|   F   .|  G   |    H   .|   I    .|
______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|
   |
 1 |              _,,,,,   ,,,,,,,    _,,,,,-'''"" ̄'Z,,,,_,,          北
   |  /'''''"''''"\,,._.,,-''"""  "''"   ""''"" 林 林X    i,          .↑      /'''''"''''"\
______.|  i,崖            家家家    林 林    i        西←┼→東   i     崖,,ゝ
   |  'i,,    林 林   林        林 林 林    'I,,,,,        .↓    /    崖/
 2 |   ''I,,,   林林林  林  畑畑畑           "''I          南   ,,/     崖i
   |    'I,   林    林    畑畑畑            \,,,   ,,,,,   /       ヽ,,
______.|    /             畑畑畑畑              \/,  \/         /
   |   /'         V            森森森森森                家家  "''ヽ,,,
 3 |   i    廃 廃             森森森森森森森森        田田田  家家家   "'i,
   |   |廃 廃     荒 荒     林林林林林林林林林森森     U 田田          i"
______.|   i川川川川   荒荒       林林林林林林林林林林林林              ,,,,,,_/  
9しばった勝家:05/02/01 23:37:44
   |   ヽ    川川川川川川   林林林林林林林林林林林林林         浜浜,,/
 4 |    i 草草草草     川湖 森森森森森森森森森森森森         浜浜/'
   |    '-, 草森森森草草       森森高高高高高高高高森森     浜,/''"
______.|      'i, 草草森森森森草草   森山森山森山森山森山森山    浜,/'
   |      ,i'  草草草草草草      山山森山山森山山森山山森    'i,
 5 |     /  家     沼     T   山山山山山山山山山      "'i,,
   |    'i   家              山山山山山山山山山山山        \
   |   / ,,,,,,,,,,,,,,,               山山山山山高山山山山山    W     "'ヽz
      \,,,/    \,,,/\,,,,/ヽ,,,,,,,,,,,/ヽ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,ノヽ_,,,,.,ノ\/\,,,,,,,ノ\,,._.,,-''"""ヽ,,,,,,r

廃:廃墟 荒:荒地 川:河川 湖:湖(透明度が高く飲むことができる) T〜X:それぞれのスタート位置
森:森 草:草原 沼:沼(にごっているため飲むことはできない) 林:林 崖:崖 山:山 高:高地
家:民家(簡単な医療道具や食料有り) 浜:砂浜 田:水田 畑:畑  
10修正版:05/02/01 23:54:16
参加者達の現在の状況
01赤尾清綱    26岡部元信×  51佐久間信盛   76林秀貞 ×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政○   77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行○  53宍戸隆家○  78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家     79北条氏照
05安居景健    30小山田信茂× 55下間頼照×   80北条氏政○
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉     81北条氏康×
07浅井久政    32柿崎景家×  57上条政繁   82北条綱成○
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○   83細川藤孝○
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀    60滝川一益○   85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×   86前田利家○
12甘粕景持    37北条高広    62武田信繁    87真柄直隆
13尼子晴久○  38吉川元春×  63武田晴信○   88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞    64竹中重治×   89松田憲秀
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×   91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如○     67鳥居元忠    92三好長慶○
18石川数正○  43高坂昌信○  68内藤昌豊    93三好政勝×
19磯野員昌○  44香宗我部親泰 69長尾景虎○   94村上義清
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景    95毛利隆元○
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○   96毛利元就○
22岩成友通×  47斎藤道三    72丹羽長秀○   97森可成×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉○   98山中幸盛○
24遠藤直経×  49斎藤義龍    74蜂須賀正勝   99六角義賢○
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房    100和田惟政○


×印:死亡確認者 41名
○印:生存確認者 36名
無印:未登場者  23名
11修正版:05/02/02 00:03:20
一応、性格にこれも追加しときます。
【83番・細川藤孝】…仕草が美しい、風流を知る剣の達人。天皇の真意を求めようとする。
【53番・宍戸隆家】…なにやらわけもわからず綱成に拉致された可哀想な人。現時点で目的は不明。

>>194
ガンガレ!
12無名武将@お腹せっぷく:05/02/02 00:04:58
誤爆しました。

パーティ追加
【82番北条綱成・ヌンチャク】 &【53番宍戸隆家・ブーメラン】(これから1−Eへ行く予定)
13無名武将@お腹せっぷく:05/02/02 12:33:55
>>1
乙カレー。
14妖刀と破邪刀 1/3:05/02/02 15:08:33
森の向こうから聞こえるこの島で初めて斬った16番井伊直親を彷彿とさせる異常な笑い声に11番足利義輝は足を速めた。

「これ以上、人を殺させたくない」
先程の放送で、天皇から死亡したと発表された弟・義秋の顔が、涙の涸れた目に浮かぶ。
仏門に入れられてから、あまりあった事はなかったが、義輝を慕っておぼつかない足で稽古について来ていた子どもの頃の義秋の顔と思い出は今でも鮮明に思い出せた。
将軍家の威光を取り戻さんと脇目もふらずに頑張っていた義輝を義秋はいつもその横にちょこんと座って見ていたのだ。
―思えば、稽古に疲れた時、義秋が持ってきた水がどれだけ救いだった事か・・・。
別れの時など、あれほど駄々をこねて、寺には行きたくないと喚いていた義秋が、義輝に言われると何も言わずに寺に行ったのだ。
あの時の悲しそうな、それでいて、自分の運命を受け入れ、兄に迷惑をかけまいと頑なに自分の感情を隠そうとしていた義秋の顔を、義輝は一時も忘れた事はなかった。
「義秋・・・何故だ・・・」
力なく呟く。
この島に着てから、あの一番初めの教室で、天皇の狂気にばかりとらわれ、今の今まで弟の事を忘れていたのだ。
せめて、少しでも思い出していたのなら、すぐにでも助けに行っただろう、自分の命を張ってでも義秋の命を救っただろう。
―悔やんでも悔やみきれないとはこのことだ
15妖刀と破邪刀 2/3:05/02/02 15:10:24
森の終わりが見え、奇声を発する者を見つけると、義輝は感傷を断ち切った。
義秋の命を無駄にしない為にも、この大悪の島を止めなければならないのだ。
「そこの者、何をしておる!?」
片手で握った刀を相手に向けて叫ぶ。
義輝の叫びに一動作遅れるように振り向いた者・67番鳥居元忠の手にはこの世の物とは思われぬほど美しく、しかし妖しく人を惹きつける光を放つ一振りの刀が握られていた。
「面妖な・・・」
義輝は少しではあるが、その刀から漂ってくる鉄臭い―血の臭いを嗅ぎ取った。
心なしか、刀身も赤く見える。しかし、義輝が考え込む前に、目の前の狂人は異常なまでの奇声で大声をあげた。
「アア・・・アヒ!!ソレハ!」
義輝が考えをやめ、元忠を見やると、どうやら義輝の刀に驚いているらしい。
「ナゼ、コンナトコロニ」
だが、彼が疑問を投げかける前に、元忠は思わせぶりな台詞を吐き、走り去る。
16妖刀と破邪刀 3/3:05/02/02 15:15:08
「一体どう言う事だ・・・」
義輝はよく解らない事態に考え込んで、状況を整理するつもりであった。しかし、次の瞬間、彼の体自身が不可解な事に走り始めたのである。
この事に慌てた義輝が足をもつれさせた。が、義輝が転ぶ事はなかった。
見ると、破邪刀自身が、義輝を妖刀を持つ元忠のほうへと導いていたのだ。
「そういう事か。見たとおり、あれは大悪か」
一瞬でこの刀の意思を察知した義輝はもつれた足を素早く立て直し、全速力で、元忠の後を追い始めた。
不思議と、足は軽くなり異常な速さで逃げる元忠を見失わずに追う事が出来た。
「大悪は全て、斬る!」
妖刀に心をとらわれた人間と、破邪刀の意思を体現する人間と―
チェイスはまだ始まったばかりであった。

【11番 足利義輝 九字の破邪刀】3-G森出口付近で、67番と遭遇、チェイス開始。
【67番 鳥居元忠 妖刀村正、AMC オートマグ】3-G森出口付近から森の中へ逃走。
17支配者 1/3:05/02/02 16:18:10
依然精神を支配されたままの鳥居元忠は奇声を上げながら走り続けていた。
なにかを喜ぶような笑い声にも、なにかに脅える叫び声にも聞こえる、そんな奇妙な声だった。
ただ、右手に握り締められたその刀は、とても美しく、そして紅かった。

甲高い奇声を発しながら走り続ける元忠の視線の中に、一人の男が映った。
「フフフフフフ!!チガホシイ!!!チガホシイィィィ!!!」
狂ったように笑いながら、時折ブツブツ小声で呟きながら、元忠はその男に斬りかかった。
しかし、その男、織田信長は微動だにしない。
そんな信長を恰好の餌食だと思い、より一層甲高く大声で笑い声をあげる元忠。
右手を大きく振りかぶり、信長の脳天から振り下ろす
18支配者 2/3:05/02/02 16:19:03
しかし、腕を上げたまま何故か振り下ろせない。刀を振るえないのだ。
いつの間にか、信長は信じられぬ速さで自らの和泉守兼定を用い、元忠の刀の軌道を止めていたのである。
あまりの出来事にまごまごする元忠。手足は振るえ、今にも逃げ出しそうなくらい恐怖を感じていた。
そう、それは妖刀のせいではなく、元忠自身の感じている恐怖なのである。信長のあまりに凄まじい一撃によって妖刀を手放してしまい、忌まわしき支配から解放されたが、今度は恐怖という支配者に精神を侵略され、言葉すら発することが出来ないで居た。
そんなことなどおかまいなしに、信長は目の前に居た人物を、いとも簡単に真っ二つにした。
「フフ・・・・、くだらぬものよ」」
紅く染まった村正を見て、微かな笑みを浮かべながら村正を無造作に蹴り飛ばし、振り返ることなくその場を後にした。
足利義輝は、少し前に出会った妖刀の持ち主が既にこの世の人間では無いことを、未だ知らないでいた。
19支配者 3/3:05/02/02 16:20:11
【27番 織田信長 3-Gを進行中】『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『和泉守兼定』

【67番 鳥居元忠】 死亡

なお、村正は信長により鳥居元忠の死体より少々離れたところに放置されています。

201:05/02/02 16:43:38
尼子晴久と毛利隆元は安堵していた。
永きに亘って視線の先に居た殺戮マシーンが居なくなり、手間取りながらも目的の食料を得ることができたからである。
同時に、人と遭遇する可能性の高さという点で、危険地帯とも言える食料配布地域から立ち去ることができたということも二人の安心材料の一つであった。
苦労を共にし、見事目的を達成できた二人の足取りは軽い。
先ほどまで息を殺して潜んでいたところよりだいぶ離れたところで、二人は腰を下ろした。
晴久「ふぅ・・・・、長かったのぅ・・・」
晴久は深いため息をついた。疲れや安心などの色々な感情の混じった複雑なため息であった。
隆元「安心したら、腹が減ってしまいましたね」
苦笑しながら言う隆元に、晴久も笑みを浮かべ賛同する。
二人はようやく夢にまで見た食事にありついた。たかが食事一つとることすら困難なのがこの島での生活なのだ。
そのうえ、久方ぶりにとる食事を味わっている余裕などない。いつ何時なにが起こるか、なにに巻き込まれるかわからない事態なのだ。
二人は早急に食事を終えると、一つの場に留まるのは危険と判断し、その場を後にすべく歩き出した。
212:05/02/02 16:44:44
歩き出して数分後、晴久はなにか一瞬、視線を遮るような一筋の眩しい閃光を感じた。
晴久「?」
隆元「いかがなさいました?」
晴久「うむ、今なにか眩しいものを感じたのじゃが、いや・・、気のせいじゃ。すまんすまん」
隆元「さようでございますか。実は私も先ほど下のほうから光が反射するなにかを感じました。これも気のせいでしょうか」
晴久「うーむ・・・、お主もか・・・。おかしいのぅ・・・」
二人が感じたそれは、決して気のせいではなかった。
昼なお暗き森林に在って、僅かに射す光に輝くものなどそうあるものではない。
まるでそれ自身が意思を持つかのように、そしてまだ見ぬ持ち主に自身の存在を知らせるかのように輝いていた。
晴久「おお!これは・・!!」
隆元「さっきの男が持っていた刀とよく似ていますね」
晴久「うむ・・・、となると、さっきの男はどこに行ってしもうたんだろうか・・・。それともそれとは別の物であろうか・・・」
隆元「私もあまり刀に詳しい方ではございませんので・・、申し訳ありまあせん」
晴久「気にするでない。ともかく、これでようやくまともな武器が持てそうじゃな。はぁ〜・・・・、手馴れぬ鎖鎌など、扱いづろうてたまらんかったわい」
隆元「ははは。それではこちらは、晴久様がお持ち下さい」
隆元は、その見事なまでに美しい一振りの刀を手に取ろうとした。
その少し離れた場所に、さっきまで人であった鳥居元忠が半分になって無造作に転がっていることなど、二人は知らない。
223:05/02/02 16:45:48
3-F地点を後にして数刻、鈴木重秀と飯富昌景は気ままに歩いていた。
晴信捜索という漠然とした目的はあるものの、この広い島全体を見渡す手段は無く、虱潰しに足で探すしか手段はないのだ。
元々気楽な自由人気質の重秀に、なにを説法しても馬耳東風だと、とうに理解していた昌景も、あての無い捜索に無闇に力を注ぐことをせず、気ままな重秀に付き合う形となったのだ。
そして、気ままであるものの、警戒心を緩めず常に事態に対応できるよう感覚を研いでいる重秀の内なる姿にも昌景は気付いていた。
重秀も、そんな自分を理解する昌景の器量の大きさに、一目置かずにいられないでいた。
重秀「お、遠くに誰か居るぞ」
稀代の狙撃者である重秀の驚異的な視力がなにかを見つけたようだ。
昌景「む、そうか。私には見えぬ。知る者の顔か?」
重秀「いや、知らないな。・・・う〜ん・・・、こっちに向かって来ているみたいだ」
昌景「うむ・・・・、出来れば無駄な殺生はしたくない」
昌景は未だ自らの武器を一度も使用していない。それほど命のやりとりに対する思いは強いのだろう。
重秀「あいつ・・・・、相当できるな・・・」
遠く離れた相手の様子を探り探りに口にする。
絶えず木々から離れず太い木を選んで背にして歩き、両手はいつでも武器を構えれる位置にあった。見事なほど隙の窺えぬ男だ。
重秀も、事態に備え、男に向けUSSRドラグノフを構えた。
昌景「待て!」
銃を相手に向ける重秀を制す昌景の声。
昌景「戦意の有無がわからぬ以上、無闇に相手を刺激するべきではない」
重秀「う〜む・・・、しかしなぁ・・・・」
昌景「私の時と同じように考えるべきではない。戦意の無い相手でも、こちらから仕掛ければ相手も打って出て強襲を受けることも予測されるぞ」
昌景に言い負かされてしまった重秀は、やむなくUSSRドラグノフを下ろした。
234:05/02/02 16:49:17
重秀「じゃあ、どうすりゃいいんだ?そろそろアンタの目にもヤツの姿が見える頃だろ?」
昌景「幾分急ぎ足のように見えるな。それでいて、全く隙が無い。相当な手練であるな」
重秀「だろ?強い奴が相手なら、先に優位な戦況に立っておいたほうが得策じゃないか?なにか考えがあるのか?」
昌景「堂々と名を名乗り、話合いを持ちかける」
重秀「おいおい、それが方法かい?」
昌景「そうだ!」
重秀「随分きっぱり言うじゃねぇか」
昌景「お主が言うように、あの者は恐らく強いのであろう。だがな、真に強き者であるなら、その者の精神の鍛錬もされているはずだ。いかに余興の中に在っても、決して心乱されようものか!
堂々と名乗り出ればよい。話しの通ずる相手ならそれでよし、万一有無を言わさず襲ってきたならば、その時に討てばよい」
重秀「むむ・・・、すまねぇ。アンタの言うとおりだな。よし、アンタのその・・・、なんだ、話し合いってやつでいこうじゃねぇか」
二人がそうこう話している間に、男も二人の存在に気付いたのだった。男は、戦闘態勢にこそ入っていないが、いつでも戦闘のとれるよう警戒を怠らずにいた。
その様子を見て、昌景がすかさず声をかける。
昌景「驚かせて申し訳ない。私は武田家家臣、飯富昌景と申す者。こちらは風来坊の鈴木重秀でござる。我々に戦いの意思はござらん。」
説得を試みる昌景。
重秀「へっへっへ。いきなり遭遇した相手に警戒するのも無理ねぇさ、無理に警戒を解けとは言わんよ。」
重秀はあくまでマイペースだ。二人の言葉に男も口を開く。
245:05/02/02 16:50:24
男「失礼した。お主達の目を見れば、口から出る言葉の真偽のほどなどすぐに判ろうものだ。手前、尼子家臣山中幸盛である」
昌景「尼子家臣とな・・・」
昌景の表情が変わる。昌景は、先の天皇による放送で、尼子誠久の死を耳にしたことをはっきりと覚えている。背負う家紋こそ違えど、主君に仕えるという身は同じである。
昌景は、幸盛の無念さが痛いほどよくわかるのだ。
昌景「心中お察し申し上げる」
昌景は、幸盛の前に深々と頭を垂れた。そんなことをしても、なにも成らないことなど昌景自身も当然わかっていた。しかし、理屈より感情がそうさせてしまったのか、自然とそうなってしまったのであった。
幸盛「昌景殿・・・・」
この狂った余興で、初対面の男に対し、ここまでの礼儀扱いを受けるなどと誰が思うだろうか。幸盛は昌景の行動に驚いた。
重秀「(・・・・はっはっは・・・、俺は・・・しめっぽいのは苦手だなぁ・・・・)」
幸盛「昌景殿、そして重秀殿、感謝申し上げる。手前、誠久様を失うて目的を失いかけていたところであった。しかし、現当主晴久様をお守りすることこそ、家臣たる手前の役目にてござる。ここでお主達のような者に会えたこと、手前忘れぬぞ。」
一礼して、足早にその場を後にしようとする幸盛。
重秀「お・・・おいおい、もう行っちゃうのか?」
幸盛「なにやら先ほどから胸騒ぎがするのだ。あまり良くない予感だ。すまぬ、あまりゆっくりしていられそうにない。これにて御免」
第六感、というものがあるとすれば、恐らくそれだろう。理屈でなく感覚と本能が直接嫌な予感を囁いていたのだ。
幸盛は感覚に従い、走り去っていった。
256:05/02/02 16:51:20
昌景「どう思う?」
問いかける昌景。
重秀「まずいな・・・」
苦しそうに言う重秀。
昌景「うむ。恐らく幸盛殿が相当な猛者であることに間違いはない。しかし、見たところ、得物に不安があろう」
重秀「相手の得物如何では苦戦を強いられるだろうな・・・」
二人とも考えていることは同じだった。
昌景「私にはもう、幸盛殿の姿は見えぬ」
重秀「すまん。俺の目でも、見えないみたいだ・・・・」

幸盛は走った。本能に導かれるままに。予感の先にある場所へ辿り着くべく、一心不乱に走り続けた。

そのとき聞き覚えのある声が聞こえた。


悲鳴だ。


苦痛に苦しむような声だ。


幸盛は思わず口に出して叫んでいた。


「晴久様!!!!!!!!!」
267:05/02/02 16:52:51
幸盛の眼前には、憎き毛利家の長男、毛利隆元が我が主君尼子晴久をメッタ斬りにしている光景があった。最早晴久は虫の息だ。
幸盛の記憶の中の隆元は、温厚な性格で剣術も不得手であったが、最早そんなことなどどうでもよかった。
「おのれぇぇぇぇえええ!!!!毛利めぇぇぇ!!!!!」
全身の血が沸騰してしまうくらい怒り狂った幸盛は、六角棒を片手に隆元に襲い掛かってゆく。
しかし隆元の手には、美しい見事な大刀が握られていた。
「フヘヘヘハハハハヒャヒャヒャヒャ!!!!チヲクレェェ!チヲクレモットモットオ!!!!」
最早それは、隆元ではなかった。精神、人格、全てを村正に乗っ取られた殺戮マシーンである。
幸盛は優れた猛将だが、冷静さを失った上に相手は目の前に立ちはだかる巨大な狂刀、更にこちらは六角棒とナイフ。
明らかに分が悪い。
頭上に振りかざされた狂牙が襲ってくるのをなんとか回避し、ナイフで応戦する。
状況は明らかに劣勢だった。
無理もない。今まで戦い続きだった体は悲鳴をあげ、疲労はピークに達していたのだ。更には、初日に拳を交えた吉川元春にもらったレバーへの一撃も、幸盛の動きを鈍らせていた。
何度も襲い来る凶牙に、ついにはナイフも破壊され、六角棒などあとかたも無くなっている。
幸盛はこの島で初めて死を意識した。
正気を失ったとは言え、目の前には主君晴久を斬り刻んだ憎き毛利家長男隆元、最も憎い生き物に追い込まれているのである。幸盛は死の恐怖よりも、溢れ出すあまりに大きな悔しさの感情を抑えきれなかった。
幸盛「(この世で最も憎む相手に殺されるのか!!!)」
考えただけでも血が燃え滾る。しかし反撃する術は無い。降りかかる凶撃を凌ぐ武器もない。最早状況は絶望的。
「ウワアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
幸盛は悔しさが止まらなかった。感情が止まりきらず、思わず声に漏れてしまった。
「ヘハハハハヒャヒャヒャヒャヒャアガガガガアァァァァ!!!!!!!!」
人間ではない、動物でもない、なにかのバケモノのような声を上げながら、隆元だったその生き物は恐るべき妖刀村正を幸盛に向かって振り下ろそうとした。
278:05/02/02 16:55:20
そのときだった。


突然物凄い衝撃が隆元の手を襲った。


隆元「ギャアアアアアアアッァァァアァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
村正は隆元の手から大きくはじかれ、衝撃で隆元は大きく仰け反っている。
そして、恐ろしい程の速さで隆元の後ろに回りこみ、羽交い絞めにして動きを制す人物が居た。
幸盛は未だ状況を把握できていない。
遠くでは、一人の男が幸盛を見て、親指を立てながら微笑んでいる。
幸盛「何故・・・、」
そう呟くのが精一杯だった。
遠くの男「ふぅ〜・・・、間に合ったか」
そう言いながら遠くの男、鈴木重秀は幸盛の元に寄ってくる。
羽交い絞めしている男は飯富昌景だ。
昌景「あの後、あまりに切羽詰った顔をしていた幸盛殿が気になってな。後を追ったのだ。見失って、辿り着くのに時間がかかってしまったが」
重秀「戦闘音でなんとか辿り着いたよ」
幸盛は、ようやく事の顛末を理解した。
あの、凶撃の瞬間、重秀の狙撃によって見事、刀の柄の部分に命中し、村正がはじかれた瞬間を逃さず昌景が隆元を制したのだった。
289:05/02/02 16:57:32
そして、村正を手からはじいた隆元は、ようやくその呪縛から解放されていた。
隆元「は!!私はなにを・・・?」
その言葉ではっと我に返る幸盛。
幸盛「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
死の淵から脱出する直前まで抱いていた、溢れんばかりの悔しさが、幸盛の全身にここぞとばかりに蘇ってきた。
昌景「ま、待て!!様子がおかしい!!」
昌景の制止も耳には入らない。
渾身の力を込めて隆元を殴る幸盛。もちろん隆元の手にしていたものが村正で、それによって操られていたことなど知る由もない。
そして、殴ることで悔しさの感情を晴らし、気の昂ぶりが収まり、冷静さを取り戻した頃、
幸盛「晴久様!!」
幸盛は傍らで息も絶え絶えになっていた晴久の側へ駆け寄った。
幸盛「晴久様!!!しっかりなさいませ!!」
晴久は、薄っすら目を開け幸盛を見つめた。
幸盛「晴久様!!!」
晴久は既に声の出せる生命力も残っていない。
幸盛「晴久様ぁぁーーー!!!!!」
幸盛の叫び声も空しく晴久の意識は段々遠のいてゆく・・・・。
晴久は、最期の力を振り絞って幸盛になにかを伝えようとしている。
しかし声が出ない。幸盛は、なんとかそのわずかな口の動きだけでも、と思い、涙ながらに命消え行く主君の顔を見つめ続ける。
2910:05/02/02 16:58:32






(い・・・・)






(き・・・・)








(・・・・・・・・・・・・・・・・ろ)



晴久は、幸盛に抱かれて息を引き取った。
昌景「幸盛殿・・・・」
昌景と重秀は、その場に立ち尽くすことしかできなかった。
傍らでは、一撃の下、撲殺された隆元と、それをバケモノに変えていた村正が転がっていた。
3011:05/02/02 17:01:52
幸盛「昌景殿、重秀殿、色々すまなかった。お二人には、いくら感謝しても足りんくらいだ」
昌景「とんでもござらん。こう言っては失礼やも知れぬが、お主だけでもご無事でよかった」
幸盛「晴久様は、私に生きろとおっしゃった。また、目的を失ってしまったが、無論死ぬつもりなどない。お二人に救っていただいた命だ。粗末にはせん」
重秀「俺達がもう少し早く辿り着いてれば、その、晴久様ってのも救えたのかもな。すまねぇ」
幸盛「私が着いたときに、晴久様は既に重傷であった。お主達が気に病むことではない。お心遣い感謝いたす」
昌景「本当に一人で行かれるのか?」
幸盛「うむ。今回のことで自分の弱さを痛感いたした。お二人の足を引っ張るわけにはいかぬ」
重秀「この馬鹿げた余興ってのを考え出した張本人を葬ることで、アンタんとこの殿様の敵討ちにもなると思うんだがなぁ・・・」
幸盛「今は自分自身のことを一人で考えてみたいのだ。何らかの答えが出たとき、お二人のお力添えになれるのであれば是非ともそうさせていただきたい」
昌景「うむ。心得た。丸腰では心許ない。私の得物を持ってゆかれよ」
昌景は、そう言いながら自分のカバンをなにやらゴソゴソし始めた。
幸盛「そ・・、それではお主が丸腰になってしまうではないか。それはできぬ」
カバンから何かを出して、昌景は語った。
昌景「これは二刀流用の二本刀だ。そもそも二本で役割を果たすものだから一本のみでは頼りないだろうが、何も無いよりはましだろう」
そう言って一本の刀を幸盛に差し出す。苦笑を浮かべ、困惑する幸盛に
重秀「もらっておけって。それがあればアンタだって随分戦えるはずじゃないか?」
幸盛「うむむ・・・・、しかし・・・」
昌景「うむ。それでは再会した暁に、返してもらおう。それでよいかな?」
幸盛「・・・・・・・・・・・・かたじけない。感謝の言葉も無い」
重秀「ついでだ。こいつも全部持っていきな」
少ない食料を指差して重秀は言った。
幸盛「重秀殿!!これ以上私を困らせるな!」
重秀「はっはっは!アンタさっきから腹の虫が鳴きっぱなしだぜ」
3112:05/02/02 17:03:27
幸盛「・・・・うう・・・実は、食料は入手したんだが、誠久様がお亡くなりになったときにその場に置いてきてしまったらしいのだ・・・・。面目ない・・・」
重秀「・・・おう。俺は、誰にも仕えたことが無いんだが、辛いんだろうな・・・、主君の死っていうのは・・・。気にするな。全部持ってってくれ」
幸盛「すまぬ、重秀殿。手前の弱さとしっかり向き合って、今よりもっと強くなって帰って参る。そのときは必ずお二人の力になることを誓おう」
昌景「うむ。達者でな」
重秀「待ってるぜ」
幸盛「それではこれで、御免!!」
敬礼して去ってゆく幸盛。その背中を見送りつつ重秀が口を開いた。
重秀「なぁアンタ」
昌景「なんだ?」
重秀「さっき、様子がおかしかったが、なにか知ってるのか?」
昌景「・・・・・・・勘付いていたのか」
昌景は、動かなくなった隆元を見てなにかを思っているようだ。
昌景「この世のどこかに、あまりの美しさに、手にしたら思わず人を斬りたくなってしまう刀があるらしい。一説によると、刀自身、意思を持ち、持つ者の心を支配してしまう・・・とまで言われているのだ」
重秀「げ・・・、それがまさか・・・」
昌景「真偽の程はわからぬが、こんな狂った余興が存在するぐらいだ。そのような刀があってもおかしくない」
重秀「幸盛は知ってたんだろうか・・・・」
昌景「いや・・・、恐らく奴が持っていたのがそれだとは夢にも思うまい。それに、今は知らないままのほうがよい。幸盛殿ほどの心正しき者が、事の真実を知ったら、恐らく罪悪感に苛まれるに違いない」

隆元と晴久が行動を共にし、既に二人の間に友情が芽生えていたことなど、三人には、知る術もなかった・・・・。なにもかも、またしても妖刀村正の生んだ悲劇である・・・・。

やがて幸盛の姿が、重秀の視力でも捉えきれないほど離れてしまったそのとき、重秀は一発の空砲を空に向けて撃った。
再会を誓った友に向けて、励ましを込めての一発だった。
それを背中で聞いていた幸盛は、拳をより一層硬く握り、熱く・・・、熱くこみ上げるものを噛み締めながら、強く歩みを踏み出すのだった。
「重秀殿・・・、昌景殿・・・、ありがとう・・・・」
【13番尼子晴久 】
【95番毛利隆元 】 共に死亡

【58番 鈴木重秀 USSRドラグノフ 】
【29番 飯富昌景 粗末な刀  】 共に3-G

【98番 山中幸盛 粗末な刀 食料(少量)】 3-Gから出発

妖刀村正は3-G付近、隆元の死体の側に放置されています。
33(断迷):05/02/02 19:10:51
「殺しあうことが余興だと申すあの天皇は悪・・。私は腐った心を持つ者を許してはおけない」
それが元親の信念であった。
(その悪を斬るために私は生き残る!)
そう強く思ってはいるが元親には迷いが捨てきれずにいた。天皇からの放送を聞き、死亡者の名前を聞くたびに「弱い者」がターゲットにされているだけかもしれないと思ってしまったのである。
中にはただ弱かっただけで本来なら死ぬべきでない者たちがいたかもしれない。そう考えると元親はやりきれない気持ちで一杯になった。だが、どう悔やんでも元に戻るわけでもない。
いつ自分も殺されるか解らない今、甘さは必要ないのかとも思う。色々な思い、考えが元親の中で葛藤となっていた。しばらく悩んでいた元親であったが、ようやくなにかしらの答えを見つけたらしくフッと笑った。
「たとえ、不利になっても私は卑怯な真似だけはしたくない。・・それが私の信念であり、誇りではないか・・?」
自分はまだ生きている。この命が尽きるまでは私は信念を持ち強く生きよう・・
元親は自分の中で迷いがなくなったことを確信した。

【65番 長曽我部元親・1−Eへ向ってます。】
信念として卑怯な手は使わず、不利は顧みず戦いをしようと考えている。飛び道具のない相手には絶対にショットガンなどの飛び道具は使用しない。
しかし、人の本性を探るのは好きらしい。
34550 ◆9rH0eHARI. :05/02/02 19:16:04
最近読み手の感想が辛口になってきてない?馬路に怖いよ〜
35無名武将@お腹せっぷく:05/02/02 19:45:36
>>17-19>>20-32は無効です。
詳細は雑談スレにて。
36不幸の始まり ◆XoNjNH489g :05/02/02 22:01:39
36番 大崎義直は一人で歩いていた。
突然始まったこのゲーム。
なぜ、自分は参加しなければならないのか。どうしてこんな事になったのか。
自分は何て不幸なんだ、と思うしかなかった。
「そういえば、武器が支給されたんだっけな」
ガサゴソ・・・・
「ん?なんだこれ」
丸いものがそこにはあった。
説明書を読むと、
「なになに、これは相手の位置が分かる探知機です。半径500M以内の敵の位置が番号で表示されます。
 なお、番号は表の通りです。」
このとき義直は油断していた。
武器に夢中になりすぎて、全く下を見ていなかったのだ。
あ、痛・・・
石に躓いて転んだ拍子に探知機を放してしまった。
「探知機が転がっていく。あっ」
転がっていった探知機は石にぶつかり壊れてしまった。
「いたたた・・・武器が動かない。なんで?
 表だけ持っていても何の役にも立たないよ」

不幸を呼ぶ男・大崎義直
彼の不幸はまだまだ続く・・・
現在地点「4−B」
37剣の舞1/2:05/02/02 22:18:44
ブンッ!
双頭の斧が弧を描いて木の幹にめり込む。
「はぁッ!」
再び斧は弧を描き反対側の幹に叩き込まれる。
何本かの樹を切り倒し、己の足で踏み固めた広場に74番蜂須賀正勝はいた。
この奇妙奇天烈な形をした武器―オーク・ダブル・アックスを自在に扱う為には幾多の戦場を駆け抜けてきた彼をもってしても、それだけの鍛錬を必要とした。

「まぁ、これならどうにかなるか?」
ようやく鍛錬を終え、使い勝手を確かめた正勝はそう呟いて背後に向き直る。
「待たせたな、別に背後から襲っても良かったのではないか?」
「それじゃあ俺がつまらねぇ―俺はアンタのような猛者と正面から闘りてえのよ。」
いつからそこにいたのか、無造作に林を掻き分けて正勝に負けず劣らずの大柄な男が姿を現す。
「俺は真柄直隆ってんだ、あんたは?」
喋りながら84番真柄直隆は何気ない調子で間を詰める、一見無防備なようでまるで隙の無い見事な足運びで。
「蜂須賀だ、できればこの糞みたいな島を抜ける為に協力して貰いたいのだがな。」
可能性はないに等しいと、男の気から感じつつも正勝は提案をしてみる。
「俺に勝ったら考えてやるよ・・・生きてりゃな。」
不敵に男は笑って、獲物の刀―長曾禰虎徹を静かに正面に構えなおした
「その言葉、忘れるなよ。」
一歩、正勝が歩を進める、そこは既に互いにとって必殺の間合いであった。
38剣の舞2/2:05/02/02 22:20:14
直隆が、得物の軽さから先手を取り、正面から打ちかかる。
正勝はそれを斧の刃で受けて、脇へずらし、反対の刃で胴を狙う。
とっさに直隆は斧の柄の中心を蹴って間合いを離す。
正勝は姿勢が崩れているうちに、直隆の肩口を狙った渾身の一撃を振り下ろす。
直隆は地面を転がって間合いを更に離す。体制を立て直しざま、虎徹を手の内で滑らし、握りなおす。

だが、次の瞬間、大太刀の間合いの外からの足を狙った薙ぎ払いが直隆を襲う。
直隆も力任せにもう一度後に転がってかわす。

「楽しい、楽しいなぁ蜂須賀ぁッ!」
劣勢であるにも関わらず、直隆の声は上気していた。
そう、彼にはこれこそが至高の楽しみであり、昂奮の境地なのだ。
「ああ、だが、次はかわせんぞ!」
大音声を上げた正勝の三度目の攻撃も、紙一重でかわした直隆が反撃に移る。
反撃の時を待っていたかのように、楽しげに、そして嬉しげに虎徹が踊る、受けようとした斧は一瞬間に合わず胸の上を浅く薙ぐ。
肉を切るには至らなかったが、ばっさりと切られた正勝の服からその切れ味が解る。
正勝もひやりとしたが、即座に斧を振り上げ、次の攻撃に掛かった。

二人の間合いは長曾禰虎徹の間合い、そこから三歩踏み込めば双頭の斧の間合い、一歩下がれば振り回される斧の間合い。
二人の勝負はまだ続く。

【74番 蜂須賀正勝:オーク・ダブル・アックス】3-F森で交戦中
【87番 真柄直隆:長曾禰虎徹】3-F森で交戦中
3936:05/02/02 22:27:19
スマン前スレ>>215の奴でやってしまった。
浅井久政に変更は無理かな?
40無名武将@お腹せっぷく:05/02/02 22:35:06
おkだと思われ。
41無名武将@お腹せっぷく:05/02/02 22:38:05
>>38
六行目「大太刀」→「虎徹」スマソ。
42無名武将@お腹せっぷく:05/02/02 23:04:38
修正。
>>36 36番 大崎義直→ 07番 浅井久政
43愚策 1/10:05/02/03 01:32:58
73番・羽柴秀吉は、表面では優しい笑みを浮かべつつも
心の奥底で同行者-51番・佐久間信盛-、そして
-54番・柴田勝家-その2人を呪っていた。
秀吉(クソッ・・・・・よりによってこの2人が同行しているとは・・・・)
事の顛末は、時間を少々遡っての事である。

秀吉「チィ・・・・・勝家はまだ死んでおらんのか・・・・・忌々しいッ!」
森の中で一人毒づきながら、秀吉はそう吐き捨てた。
二日目正午の天皇の放送でも、柴田勝家の名は呼ばれなかった。
いや、むしろ彼の葬りたい織田家臣の名は一人も呼ばれていない。
―――確かに、残る織田家臣は勝家を筆頭として
佐久間信盛、丹羽長秀、佐々成政、前田利家など剛や智の者が揃っている。
そうそうたやすく葬られるような男達ではない。・・・・特に勝家は。
秀吉「誰かがドンパチやって勝手に死んでくれりゃあ万々歳だがな・・・・・む?」
秀吉が他力本願な言葉を口にしたその時、見覚えのある男が目に映った。
51番・佐久間信盛である。銃を構え、辺りを見回しているようだ。
秀吉(ほお・・・・・・佐久間の死に損ないか・・・・・)
・・・・別に秀吉とて全ての織田家臣を殺したいわけではない。
まず、蜂須賀政勝は友である。自分が不利にならなければ殺しはしない。
丹羽長秀、前田利家なども彼に対して侮蔑の目で見ることはなかったし
別段その2人を殺しても秀吉に利はない。
むしろ共にいて、人数が減った時に殺したほうが最終的に利になる。
逆に柴田勝家、佐々成政などは秀吉が最も憎む人間でもある。
44愚策 2/10:05/02/03 01:33:40
特に勝家などにはきつく当たられた。己を憎んでいるのかと言うほどに。
『組むことなどありえない。殺してさえ飽き足らない。じわじわと嬲り殺してやる』
そのための道具もしっかり、彼の手に握られている。
では、佐久間信盛は?
無論、殺すことに変わりはない。その5人以外は皆同じことだ。
秀吉「可成も殺した、恒興も・・・・・お前も地獄に・・・・!・・・・・!?」
秀吉が信盛に対し銃を向けた直後、秀吉は仰天した。
もう一人、こちらに向け銃を構えた人影が目に入ったからだ。
その男こそ、秀吉が最も憎む【54番・柴田勝家】であった。
ここで信盛を撃てば、すぐに勝家に撃ち殺されるのは目に見えている。
信盛ごときを殺し、最も憎む勝家にこちらが殺されたのでは意味がない。
瞬間そう考えた秀吉は、すぐに銃をおろし、顔に笑みを浮かべた。
信盛「猿!貴様、なぜわしに銃を向けた!?」
秀吉「いやぁ〜、ここに来る途中でも色々あったもんでしてね、はい。
    そのことで肝が縮んだとでもいいましょうか、佐久間様だと気づかず
    つい、これを・・・・・あっ、驚かせてホントにホントに・・・・・」
『ごまかすしかない』瞬時に秀吉はそう悟った。
勝家はまだこちらに銃を向けている。完全に信用していないのだろうか。
秀吉は心の中で何度も呪いの言葉を吐きながら、笑みを浮かべ弁解した。
秀吉「ところで!わし一人ではちと不安があるもので・・・・。
    出来れば勝家様や佐久間様達とともに連れて行っていただけないかと・・・」
共に居た方が、殺すチャンスもある。
それにこの状況でそう言わない方が不自然だ。
45愚策 3/10:05/02/03 01:34:44
今は辛酸も舐めようとも、後に必ず屈服させてやる。
そう考えた秀吉は、佐久間に向かい『共に行動しよう』と言う旨を伝えた。
信盛「・・・・・・勝家殿・・・・・どうなさるかね?」
信盛が訝しげに勝家に言う。勝家はまだ銃を向けている。
―――しばらくした後、勝家が口を開いた。
勝家「好きにするが良い」
信盛「とのことだ。喜ぶがいい、猿。ただし、お前が先頭を歩くのだ」
その言葉を聞いたとき、秀吉は後悔の念で倒れそうになった。
一番前を歩いては、勝家も信盛も殺すことは出来ない。
不意をつき片方は殺せるかもしれないが
その後もう片方に蜂の巣にされるのは目に見えている。
いや、それどころか何も知らぬままに、何者かに撃ち殺されるかもしれない。
こちらのほうが深刻だ。
信盛「・・・・・どうした、猿?」
秀吉「あ、いや・・・・・・は、はは、ではわしが先頭に立ちましょう・・・・」
『止むを得ん』。秀吉に浮かんできた言葉はそれであった。
もはや人数も減ってきている。そうそう不意に撃たれることもないであろう。
それよりなにより、ここで信盛を撃ち殺し勝家に殺されるよりましだ。
『共に行かん』とも言い出せば、勝家は怪しみあの銃を撃つかもしれない。
もともと勝家とてわしを疎ましく思っている。その可能性がないとはいえない。
秀吉にとっても苦肉の策であったのである。
この時点で、天は秀吉に微笑まなかった事を気づければよかったのだが。
46愚策 4/10:05/02/03 01:36:08
秀吉「クソッ・・・・・」
勝家「何か言ったか?猿」
秀吉「あ、いやいや、独り言ですよって」
後ろから、銃を持ち運ぶ金属音と共に勝家の声が聞こえる。
秀吉の武器『備前長船』も信盛に没収された。
秀吉が所持している武器は『コルト・パイソン』のみである。
後ろからの金属音と相まって『いつ撃たれてしまうのか』という緊張感は
心の中で増幅していき、秀吉は今にも狂いそうになっていた。
いや、むしろ勝家や信盛もそれを狙っていたのかもしれない。
織田家臣であれ、発狂した人間を撃ったという己への言い訳が欲しいのかもしれない。
そう考えると、秀吉の緊張感はさらに増していく。
常人なら狂ってもおかしくないほどであった。
いや、狂わないほうがおかしいと言うべきなのであろうか。
そんな中、信盛が急に声を発した。
信盛「・・・・・・誰か・・・・・そこに誰かいるな」
言われた方向を秀吉が見ると、確かに人影が見える。
撃ってこないところを見ると銃を持っていないのかもしれないが
とはいえ、秀吉に安心出来得るはずはなかった。
勝家「そこの・・・・・・何者か?」
人影は木陰から姿を現す。銃は持っていない。槍を持っているようだ。
馬場「それがし、武田家の馬場信房と申す者・・・貴公らは?」
勝家「ほう・・・・貴公が世に名高き馬場殿か。お目にかかれて光栄だ。
    それがしは織田家の柴田勝家と申す」
47愚策 5/10:05/02/03 01:37:18
馬場「ほう、柴田殿・・・・・噂は聞いている。織田家中筆頭の勇将とな」
秀吉は少し安堵する。
信盛と勝家が無言で背後にいる緊張感よりは
銃を持っていない者が現れ、わずかにでも場が緩むほうがよい。
そう思ったのだ。
馬場「やや解せぬな・・・・・お主らが気づいた時、なぜこの信房を撃たなかった?」
勝家「敵か味方か見極めるまでは、無益な殺生はせぬ」
嘘をつけ!
お前はこのわしを銃で狙っていたじゃないか!!
わしが銃をおろすのがわずかにでも遅ければ、きっとお前は撃っていたのだろう!?
秀吉は心の中で、何度も何度もそう毒を吐く。
馬場「それがしはお屋形様を探しているところだが・・・・お主らは?」
勝家「同じく」
馬場「相容れぬかね?」
勝家「武田家と手を組むことなど無し」
馬場「それは残念だ・・・・・無念だが、それがしの運命も決まったと見える」
この時の秀吉には、正直この馬場という男が救いの神に思えていた。
そうだ。
あんたがこの三人の中に加わってくれ。
そうすれば、わしが理不尽に撃たれることは無い。きっと無い。
・・・・別段そんな保証はどこにもないのだが
溺れる者はなんとやら、というものであろうか。
だが、秀吉の思惑とは別に、勝家は『手を組む気は無い』と言う。
48愚策 6/10:05/02/03 01:39:03
後の馬場の運命はもう決まっている。銃で撃たれあの世行きだ。
秀吉は、保証などどこにもない『救いの神を救う』ため
思いつきざまに勝家に言っていた。
秀吉「し、しかし勝家様!馬場信房殿と言えば武田家きっての猛将!
    ここで殺してしまうのはあまりに・・・・・」
信盛「阿呆か?猿。だからこそ、この場で殺してしまったほうが良いではないか」
秀吉「しかし、しかし、抵抗無き者を撃ったとあっては勝家様の誇りが・・・・!」
勝家「・・・・・・」
秀吉は、『勝家の誇り』という武士の名誉を持ち出す。
同調したのか、信盛もこう言い出した。
信盛「ふむ・・・・猿の言うことにも一理ありますな。
    銃を持っているならともかく抵抗無き者を撃ったとあっては武士の名折れ」
勝家「・・・・・では・・・・どうすればよいと申す?」
勝家もその言葉に同調する。しめた、とばかりに秀吉はこう言った。
秀吉「・・・・織田家きっての猛将、柴田様と馬場殿の一対一の果たし合いなどは・・・・」
勝家「ふむ・・・・それも面白いかもしれん。
    世に聞く馬場殿の力、技。興味が無いといえば嘘になる」
己の力に絶大な自信を持っている勝家は、秀吉の言葉を受け入れた。
多少は己の力に自信を持っているのだろうが、黙っていても殺される馬場は
その果たし合いを受け入れた。
馬場から見れば正々堂々、悪く言えば馬鹿な行いに見えるであろう。
だが、強迫観念に追い詰められた秀吉にとっては己の命を救う最良の方法なのだ。
49愚策 7/10:05/02/03 01:41:05
そして、勝家と馬場の果たし合いが始まる。
秀吉と信盛は2人から離れ、木陰にてそれを見守る形となった。
これは秀吉にとってまたとないチャンスである。
勝家の動きが止まった瞬間、勝家を己の銃で撃てばよいのだ。
コルト・パイソンは大きな威力を持つ。多少の距離があっても絶命は間違いない。
だが直後、『勝家を撃つ』事は不可能である、と言うことを秀吉は認識させられた。
信盛が、己の銃を秀吉の頭に突きつけているのだ。
秀吉(馬鹿な――――馬鹿な!これでは勝家を撃ったとしてもコイツに―――)
・・・・・誰かを憎む、疎んじると言うことは、その人間は己を憎み、疎んじるという事だ。
佐久間信盛と言う男、愚鈍ではない。
秀吉が己を疎んじていることなど、百も承知であった。
この機会に己が殺されると言う可能性を考え、信盛は秀吉に銃を向けていたのだ。
信盛「大人しく勝負を見守ることだ。変な気は起こすな」
秀吉「は・・・・はっは・・・・わしを信用していないとでも?」
信盛「人当たりのよい長秀や利家ならともかく、このわしはお前を信用などせぬ。
    大人しくしていれば撃ちはせぬ」
嘘だ!!
信盛は、勝負が終わればわしを撃つつもりだ!!
実際に信盛がどう考えているかはわからないが、秀吉は瞬時にそう感じ取った。

だが、事態は秀吉の最悪の想像を免れたようだ。
勝家の持っている武器は、先ほど秀吉から没収した『備前長船』。刀である。
対する馬場が持っているのは、幾重にも鉄で重ねられた『鉄槍』である。
50愚策 8/10:05/02/03 01:41:52
刀と槍の戦いは、射程の観点からやや槍が優勢となる。
その点で、勝家が馬場に押されているのである。
信盛「むう・・・・・勝家殿が押されるとは・・・・あの馬場という男、侮れぬな」
やや注意を秀吉からそらし、信盛が言う。
秀吉はその瞬間考える。
『そうだ。信盛(コイツ)を先に殺せばいいんだ』、と。
信盛を殺せば、銃声で勝家もうろたえるであろう。
その隙を狙い、馬場は勝家を討つ。間違いない!
そう考えた時の秀吉の行動は素早かった。
まず信盛に『勝家を救出するべき』という旨の言葉を吐いたのである。
その言葉に信盛は気を取られ、視線を完全に勝家に向けた。
その瞬間、秀吉は己に向けられた銃口を片腕で弾き飛ばし
己の銃を信盛の頭に向けた。
信盛「さ―――」
言葉が終わる前に信盛の頭は吹き飛んだ。
秀吉は信盛の屍骸を蹴飛ばし向きかえり、勝家達の方を向きかえる。
秀吉の予想では、気を取られた勝家が馬場に討ち取られているはずであった。

だが、事態はここで思わぬ方向へ進む。
討ち取られるはずの勝家が、こちらに向かい走ってくるのだ。
・・・・・・なぜだ?
一体どうしてなんだ?
わしの考えは完璧だったはずだ。
51愚策 9/10:05/02/03 01:42:44
勝家(おまえ)は馬場に討ち取られていなければおかしいはずだろう?
勝家「猿ッ!!貴様ァァァァァァァァッ!!」
秀吉「なぜじゃああああああああああああああァッ!?」
秀吉は我を忘れ絶叫した。
とにかく銃を勝家に向かい撃たなければ。討たなければ!!
そう秀吉が我に返ったときには、勝家はすぐ近くにまで来ていた。
秀吉「うわあああああアアアアアああアアアアアああッ!!!」
パニックを起こした秀吉は、とっさに銃の引き金を引く。だが・・・・・。
 カ チ ッ 
秀吉(・・・・・・・・え?)
銃弾が出て、勝家を粉みじんにするはずの銃は、無機質な機械音を立てた。
直後秀吉は勝家の斬撃を受け、真っ二つになり地に伏せた。

勝家「・・・・家中のお見苦しき点を見せた事を詫びよう。
   そして、背後を見せたそれがしを斬らずにくれたことにも礼を言う」
馬場「申すな。家中の毒というのはどこにでもあるものよ。武田にもな」
強いて秀吉の誤算を挙げるとするのなら、馬場信房という男が真の武士であった事であろう。
勝家が秀吉を追って背中を見せたとき、背後を斬るのは卑怯と思ったゆえ
馬場は勝家を斬らずにいたのだ。
勝家「・・・・・・弾切れ・・・・というものか・・・・・・・・・・?」
勝家は秀吉の屍骸が握り締めていたコルトパイソンを拾い、そう呟いた。
馬場「・・・・その男は天に見捨てられただけの事。それで、果たし合いの続きを始めるかね?」
勝家「・・・・いや、申し訳ないが、これ以上は戦えぬ」
52愚策 10/10:05/02/03 01:45:13
勝家自身、確かに秀吉を疎んじ、危険視していたが、その才能にも一目置いていた。
この男は、いずれ誰もが想像できぬほど大きく、大きくなるだろう、と。
己が秀吉に銃を向けた時にも、撃つ気などは毛頭無かった。
ただある程度脅しをかければ、おかしな考えなど起こさぬであろう。そう思ったがゆえであった。
その己の策が、完全に裏目に出てしまった事に勝家はこれ以上ないほどに悔いていた。
勝家「――――申し訳ないが、出来れば早くこの場から去って頂きたい。
   もはや馬場殿の命を取ろうなどとは思わぬ―――」
馬場「頂点には人知れぬ心もある。貴殿の心中、お察しする」
勝家「礼を言う」

馬場信房が去った後も、勝家はただその場に佇んでいた。
勝家「・・・・・勝家の・・・・なんと嘲笑える愚策なことか。
   冥府で勝家を嘲笑え・・・・・許せ信盛よ・・・・・許せ猿よ・・・・許せ・・・・・許せ・・・・」
勝家は泣いた。ただ、泣いた。

【51番・佐久間信盛 死亡】
【73番・羽柴秀吉 死亡】(武器のコルトパイソン[弾切れ]は4-F森地点に放置)

【54番・柴田勝家 サブマシンガンMP5 備前長船 ハンドガンGLOCK26】(4-F地点)
【75番・馬場信房 鉄槍】(4-F地点から移動、現在地不明)
53流れ流れて 1/2:05/02/03 11:14:05
13番尼子晴久と95番毛利隆元は森を歩きながら、安堵していた。
永きに渡って視線の先に居た殺戮マシーンが誰かに終われるように逃げてゆき、手間取りながらも目的の食料を得ることができたからである。
同時に、人と遭遇する可能性の高さという点で、危険地帯とも言える食料配布地域から立ち去ることができたということも二人の安心材料の一つであった。
苦労を共にし、見事目的を達成できた二人の足取りは軽い。
先ほどまで息を殺して潜んでいたところよりだいぶ離れたところで、二人は腰を下ろした。
「ふぅ・・・・、長かったのぅ・・・」
晴久は深いため息をついた。疲れや安心などの色々な感情の混じった複雑なため息であった。
「安心したら、腹が減ってしまいましたね」
苦笑しながら言う隆元に、晴久も笑みを浮かべ賛同する。
二人はようやく夢にまで見た食事にありついた。たかが食事一つとることすら困難なのがこの島での生活なのだ。
そのうえ、久方ぶりにとる食事を味わっている余裕などない。いつ何時なにが起こるか、なにに巻き込まれるかわからない事態なのだ。
二人は早急に食事を終えると、一つの場に留まるのは危険と判断し、その場を後にすべく歩き出した。

歩き出して数分後、晴久はなにか一瞬、何かが流れる音を感じた。
「?」
晴久が疑問符を浮かべた顔をすると、隆元も何かを気にしていたのがすぐに反応する。
「いかがなさいました?」
「うむ、今なにか水が流れる音を聞いたのじゃが、いや・・、気のせいじゃ。すまんすまん」
この島に着てからというものの、幻覚などは見ていないが、それでも耳鳴りや視界がぼやけたりする事がある。幻聴を聞いてもおかしくは無い。だが
「さようでございますか。実は私も先ほど谷のほうから水のせせらぎが聞こえました。これも気のせいでしょうか」
隆元の言葉は良くも悪くも晴久と同意見だったのだ。
「うーむ・・・、お主もか・・・。おかしいのぅ・・・」
二人が感じたそれは、決して気のせいではなかった。
54流れ流れて 2/2:05/02/03 11:15:42
昼なお暗く、静かと思えて、実は様々な音のする森林に在って、小さな水の音に気がつくものなどいない。
しかし、その小川のせせらぎは確かに二人の耳に届き、そして二人はここに辿り着いたのだ。
「おお!これは・・!!」
「小川ですね、これで水の心配は要りませんよ!」
「うむ・・・これで糧食さえあればここで自活する事もできように」
希望に満ちた隆元の声に、晴久は残念そうな声で答える。
「あ、見てください、下流に何か流れてますよ!」
隆元が、流れに揉まれているバッグを指差した。
「おお、何か糧食が入っているやもしれんな」
晴久も応じて声が明るくなる。

少したって、二人は裾やら、袖やらを派手に濡らしながらも、どうにかそのバッグを岸まで持ってきていた。
「色々と入っていますね」
隆元が、バッグを開けて中を検分する。
「おお、糧食も入っておる。天のお恵みじゃ!」
「しかし、何故、この袋はそこが破れているのでしょう?」
「谷川で切れたというのならそんな傷にはならんしな。・・・ま、いいだろう、どちらにせよ我らは幸運じゃ。」
「そうですね、糧食の他にこんな物が入っていましたよ」
言って、隆元はポリの密閉袋に入った切手大に区切られた黒い紙を取り出して、晴久に見せる。
「なんじゃ、これは?」
「恐らく兵糧丸の類いでしょう。切り目が入っています。」
言って、隆元はその黒い紙数枚分を口に含んだ。

【13番 尼子晴久 鎖鎌、IMI ウズィ(酒井の武器)】
【95番 毛利隆元 手裏剣】共に武器は錆びたりしないよう、装備せず、岸に放置。
55危機一髪1/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/03 14:25:42
正午の放送を聴いた晴信は我が耳を疑った。七つ違いの弟、信廉の死を発表していたからだった。
「なんと・・・信廉が死んだか!?」
晴信には信廉が死んだとは信じたくなかった。信廉は兄弟の中でもことのほか可愛く、常に影武者として側においていた。
容貌は晴信によく似ていたが、性格は温厚でとくに武勇に秀でていたわけでもなかった。
しかし、信廉には画才があった。彼の描く絵は素晴らしい出来で、素人の晴信さえ驚嘆するほどの出来映えだった。
「・・・あれは絵が好きな男であったわ・・・いつも懐に絵筆を入れていての、書きたいものがあれば時、所を構わず筆を振るっておったわ」
傍らにいる景虎に聞かせるでもなく、晴信は信廉との思い出を語りだした。
「絵だけを描いて暮らしたいと、そんなことばかり言っておった・・・」
景虎は慰めの言葉などはかけない。ただ黙って聞いてやる。
「悪いことをしたな・・・。武士などにしておくのではなかった。もっと早くに、画家として一流を建てさせてやればよかった・・・」
「そんなことはないぞ。弟殿も一人の男。それがお主の下で影として生きることを決めたのだ。例えこのようなつまらぬ場所で死んでも、武士として誇り高く散ることに、なんの未練があるものか」
落ち込む晴信に、景虎が初めて声を掛けてやる。
「・・・そうだな。あれも立派に戦って死んだんだ。悔いはないだろう」
「しかし、これで小生らが成すべきことは決まったな」
「ああ、腹は決まった。終わらせてやろう、このくだらん余興を」
「ふふ、ようやくいつものお主に戻っ―――!?」
56危機一髪2/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/03 14:26:45
景虎の言葉が言い終らないうちに、辺りは激しい光に包まれた。それは光などと生易しいものではなく、まさに閃光だった。
何が起きたのか、晴信も景虎もまったく解らない。
二人はとっさに地に転がり伏せた。頭を腕で覆い、膝を丸めて体を折り曲げているという、完全に無防備な状態だった。
言葉も発せられず、体を動かすことも出来ない。それどころか頭が働かない。ただ本能のままに防御体勢を取っているだけで、頭の中は真っ白だった。
「――法主様の邪魔になる者は、殺しておかねばならん」
下間頼廉は静かに姿を現す。手には先程投げたのと同じ『スタングレネード』が握られている。
「心配しなくてもよい。死ねば極楽に逝けるだろうよ」
まだ丸くなったままの二人には、頼廉の言葉は届かない。
頼廉は落ちていた片鎌槍を拾い上げると、柄の部分で二人を交互に殴りつけ始めた。
「うぐぅ・・・ぐは・・・」
二人は必死に耐える。
徐々に頭が冴え始め、状況を理解しだすが、まだ体が思うようには動かないのか反撃するまでにはいたらない。
次第に二人の背の部分の衣服が破れ、血が滲み出してくる。
「ハァハァ・・・これぐらいでいいか。・・・では冥土で仏に宜しく伝えておいてくれ」
散々に二人を痛めつけると、頼廉は片鎌槍を頭上で旋回させ、穂先を景虎目掛けて振り下ろす。
しかし頼廉には一つ、誤算があった。晴信のコルトM16A2を見逃していたことだった。
晴信は銃を体で隠し、頼廉の目に触れないようにしていた。もっとも、これも本能のままにやったことで、当の晴信でさえ何故銃を抱くようにしていたのかは解っていない。
幸いに草深い場所で、頼廉に気付かれることもなく、隠し持っていることが出来た。
晴信はまだいうことを利かない体に喝を入れ、景虎が片鎌槍の餌食になる前に、銃を頼廉に向けた。
57危機一髪3/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/03 14:27:42
「フゥフゥ・・・槍を・・・槍を下ろせ・・・」
喘ぎながらも晴信は頼廉に銃を向けている。それを見た景虎も、ゆっくりと体を起こす。
「クソ・・・小生としたことが、ぬかったわ」
「大丈夫か、景虎?お互い手酷くやられたのう」
「うむ、なんと無事のようだ。それよりお主、鉄砲があるなら最初から出せばいいだろう」
「仕方無かろう。わしも動けなかったのだ。――おい、その方、黙ってつっ立っていないで早う、槍を捨てよ」
頼廉はまだ槍を捨てない。完全に立場が逆転したにも関わらず、その目は勝負を諦めたものではなかった。
「おい、何がおかしい?早く小生の槍を返していただこうか」
「フフ、拙僧はな、死など恐れぬのよ。死ねば極楽、退けば無限地獄と云ってな。撃ちたければ撃てばいい」
「ほう、死兵か、お主。ならば望みどおり極楽に送って進ぜよう――」
晴信は引き金を引いた。しかし銃はカチッカチッと鳴るだけで、弾を発射しない。
それもそのはず、この銃を初めて使う晴信は、安全装置を解除するのを忘れてしまっていた。
「どうした早く撃て!奴は槍を持っているんだ!撃たねばこっちがやられるぞ!」
そう云われても、安全装置を外さないで弾が出るはずが無い。
「クソ!壊れておるようだ。使い物にならん!」
「フハハハハ!これも仏の御心よ。どうやら死ぬのは貴様らのようじゃな」
再び槍を構えた頼廉が、哄笑する。
「・・・これまでか・・・」
二人は死を覚悟したが、槍で突かれることは無かった。
次の瞬間には頼廉が火達磨になって、地を転げまわっていたからだった。
58危機一髪4/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/03 14:28:49
「お館様がご無事でなによりでした」
まだブスブスと燻っている頼廉の焼死体から少し離れた場所で、内藤昌豊は晴信の無事を喜んだ。
この昌豊が二人の危機を救ってくれた。
昌豊がお館・晴信を捜していると、急に前方が眩い光に包まれた。
離れた場所だったので、スタングレネードの効果こそ無かったが、十分遠めにも分かるほどの光だった。
慎重に近づいてみると、片鎌槍で滅多打ちにされる晴信の姿があった。
昌豊は慌てて懐から懐中火縄の入った容器を取り出すと、火縄をプっと吹いて支給された『火炎瓶』に火を点けた。
それを持って頼廉の後ろから近づくと、槍で晴信を串刺しにしようとしてる頼廉に投げつけた。
火炎瓶は見事、頼廉の背中に命中した。炎が見る間に頼廉を覆っていく。
頼廉は泣き叫びながら地面を転がっている。
やがて頼廉が燃え尽きたのを見届けて、人の肉が焼けた悪臭から逃れるようにこの場所へ移動してきた。
「昌豊が来ておらなんだら、今頃わしは信廉の元に参っておったわ」
「・・・信廉様のことは残念で仕方ありません。この昌豊が信廉様のご無念、きっと晴らしてみせましょう」
「いやいや、それには及ばぬ。信廉は武士として死んだのだ。無念などあろうはずがない」
晴信は景虎のいった言葉を、そのまま昌豊に告げる。景虎は苦笑しているようだった。
「そうでございますか・・・。――ところで先程から気になっているのですが、なにゆえお館様が長尾景虎殿と一緒におられるのですか?」
「うむ、それはの、この余興を止めるためよ」
「余興をですか・・・?」
59危機一髪5/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/03 14:30:48
「そうだ。小生と晴信殿は一時休戦し、当面の敵を正親町天皇として同盟を組んだ」
昌豊の問いに、景虎が答える。
「なんと・・・?武田と長尾が同盟を・・・」
「どうだ昌豊、お主も我らと共に、狂った天皇を止めてみんか?」
「拙者に否やはございません。お館様のなさることなら昌豊、地獄へでも斬りこんで参りましょう」
「よう言うたわ。それでこそ天下に名高い、武田の臣よ」
景虎が横から誉める。昌豊も誉められるのは嬉しいようだ。ニッコリと景虎に笑いかけた。
「ここにいても仕方ない。まずは同士を募り、天皇の遊びを阻止してやろう」
晴信は二人を促し、どこぞへと同士を求めに向かった。

【56番 下間頼廉 死亡 スタングレネードは燃え尽きました】
【63番 武田晴信 コルトM16A2】&【69番 長尾景虎 片鎌槍】&【68番 内藤昌豊 火炎瓶×4】2-Dから移動
なお、晴信・景色は背中を負傷。
晴信・景虎を中心に、反正親町天皇の一大勢力が築かれつつあります
60 ◆IVgdXngJC6 :05/02/03 14:38:15
01赤尾清綱   26岡部元信×  51佐久間信盛× 76林秀貞× 
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政○  77久武親直× 
03秋山信友×  28織田信行○  53宍戸隆家○  78平手政秀× 
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家○  79北条氏照 
05安居景健   30小山田信茂× 55下間頼照×  80北条氏政○ 
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉×  81北条氏康× 
07浅井久政○  32柿崎景家×  57上条政繁   82北条綱成○ 
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○  83細川藤孝○ 
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長× 
10足利義秋×  35蒲生賢秀   60滝川一益○  85本多正信× 
11足利義輝○  36川尻秀隆×  61武田信廉×  86前田利家○ 
12甘粕景持   37北条高広   62武田信繁   87真柄直隆○
13尼子晴久○  38吉川元春×  63武田晴信○  88松平元康× 
14尼子誠久×  39吉良親貞   64竹中重治×  89松田憲秀○ 
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○ 
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×  91三雲成持× 
17池田恒興×  42顕如○    67鳥居元忠   92三好長慶○ 
18石川数正○  43高坂昌信○  68内藤昌豊○  93三好政勝× 
19磯野員昌○  44香宗我部親泰 69長尾景虎○  94村上義清
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景   95毛利隆元○ 
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○  96毛利元就○ 
22岩成友通×  47斎藤道三   72丹羽長秀○  97森可成× 
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉×  98山中幸盛○ 
24遠藤直経○  49斎藤義龍   74蜂須賀正勝○ 99六角義賢○ 
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房○  100和田惟政○

×印:死亡確認者 44名
○印:生存確認者 41名
無印:未登場者  15名 
私とノドカは二人とも顔を赤らめ、お互いから目をそらせて、黙って歩いていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
気まずい事にノドカは朝から一向に言葉を発しない。
私もこの雰囲気の中で何を話せばいいかわからず、話し掛けられない。
結果として、このような状況になってしまったわけだ。
ノドカの顔が赤らんでいるのは、日が傾いてきている事以上に朝のあの事があるせいであろう。

あのあと私達は、一瞬の心の迷いとは言え、あんな行為に至ってしまった事に赤面を隠せないでいたのだ。
密着していた体を離し、同時に咳をして、俯いた様は傍目から見れば、滑稽だった事だろう。
それほどまでに私達は不器用だった。
全く、私は自分自身の心さえ理解できないらしい。


あれから時間が経ち、私もノドカもようやく平静を取り戻した頃だった。
お互い腹だけは正直だったらしく、昼頃、私がおもむろに食糧の干飯をかじると、彼女もそれに習ったように渡しておいた干飯をかじった。
気まずいながらも、畑で野菜を失敬したり、その近くにあった家で、使えそうなものをカバンに詰めると、彼女も同じ様に行動した。
でも、それだけだった。
歩いている間も、お互い相手をを見つめているのだが、相手がそれに気付くとすぐに目をそらす。
そんな事が朝から何度となくあった。

暑さも大分引いてきた頃、私達は湖に着いた。
私が水を汲んでいる間、ノドカは少し離れたところで、空を見上げるふりをしながら、こちらを見ていた。
私は慌てて、目をそらし、水汲みに没頭する。
そして、その行為に没頭しすぎて、周囲に気を配るのを忘れていた。
「見つけたぞ!糞餓鬼!」
後ろから聞こえる濁声でやっと、作業から意識を戻し、振り向いた。
視線の先には、弓を手に、袈裟を着、頭巾を頭からかぶった男がこちらに駆けてきている。
そして長政とその男の真ん中にはまだ状況が理解できていないノドカが、突然襲ってきた男の方を見て呆然としていた。
「ノドカ、早くこっちに!」
今まで黙っていた分、半ば熱狂的にノドカの名を呼ぶ。
ノドカもその声に反応を示して、長政の下へと一目散に駆けてきた。
しかし、追う男も体躯のわりに尋常では無い速さで距離を詰めてきている。
おまけに走りながら弓に矢を番えつつある。相当な手錬であろう。
このままではそいつに背後を見せているノドカが危ない。
即座にに判断した私は、今までノドカの前では絶対に使うまいとホルダーに仕舞ったままだったFN 5-7を取り出す。
そして、男が矢を放つのとほぼ同時に引き金を引き絞った。
―頼む、当たってくれ―

幸か不幸か、相手の矢は、ノドカには当たらず、代わりに私の肩の肉を掠めて彼方へと消えた。。
そして、男も左肩に私の銃による銃創を負っていた。
「ノドカ、無事か!?」
私の隣まで逃げてきたノドカに安否を聞く。
「長政様!貴方こそ!」
ノドカは襲われかけたという不安や恐怖は無いのか、私の心配をした。
「気にするな。それよりも後に下がってなさい。」
「でも・・・」
「大丈夫だ。私はノドカに死なれては困るんだ」
ノドカの顔が今までの昂奮とは違った紅に染まっていくのがわかった。
そして、今度は顔を上げて
「はいっ、私、死にませんから、だから長政様も―」
満面の笑みを浮かべて、ノドカがさろうとした時だった。
「長政様、危ない!」
直感的に何が起こっているのか判断した私は、視認していたのでは遅いとばかりに、音の方向とは別の方向にノドカを抱えて跳ぶ。
瞬間、さっきまで私達が居た場所に連続して二本の矢が突き立った。

ノドカをもう一度送り出してから、振り返る。
「恥を知れ、貴様!」
今まで溜まっていた怒号を放つ。
後ろを向いて女子どもを逃がしている者に矢を番える行為、それはどれだけ兵の道にもとっている事かは、どんな葉武士でも知っている。
しかし、
「恥を知るのは貴様だ、賢政!!」
男は長政以上の大声を上げて威嚇した。
―賢政・・・だと?何故知っている。知っていたとしても、今や、六角家臣すら私の事は長政と呼んでいるはず・・・。まさか!」
「お前は!?」
「よもや、忘れたとは言わさんぞ!見ろ!」
言って男は矢を持ったまま器用に頭巾を脱いで捨てた。

その下から出てきたのは世にもおぞましい顔であった。
しかし、長政は以上に変わってしまったその顔と声に聞き覚えがあった。
「義賢公、それは・・・!?」
「『それは?』だと!よくもぬけぬけと!」
長政が驚きに顔の血の気が引いていっているのに対し、その男―99番六角義賢の顔は青筋を立てて今にも血管がちぎれそうなほどであった。
「お前のせいだ!」
義賢は今までの怒号とは少し異質な哀しみをふくんだ大声を上げた。
しかし、本当に思いあたる節の無い私はただ、黙ってそれを聞いているしかなかった。
「お前のせいで、民にまで失笑を買い、頭の毛という毛は抜け、顔の半分は歪み、味覚を失った、わかるか糞餓鬼!?」
涙と唾らしき物を撒き散らしながらの義賢の叫びは、私の心を見えない矢で射った
「唇は爛れ、この通り鼻汁も止まらん!わかるか!?」
心に射られた矢はぐりぐりと傷口を広げるように蠢く。
しかし、私はそれ以上に、護らなければいけないものがあった。
「義賢公、敵味方で臣従お察しすると言う事はできないが――すまない」
「こぉの糞餓鬼がぁ!!」
義賢は雄叫びを上げ、弓を番えなおした。―もう交わす言葉は無かった。

息をつかせぬ矢の三連射から戦いは始まった。
全ての矢が、避ける長政の足があった場所に突き刺さる。
体勢を立て直して、二発連続で牽制射撃をする。
放たれた弾丸は、射撃を避けようともしない義賢の腿に一発当たった。
しかし、それ以上の反撃―二回づつ、四本の矢の連射が私を襲う。
三本は紙一重で避けたが、一本はかわしきれず、手で払う。
―肝が冷える。どんな戦場でもこんな事は無かったのに。

一瞬の隙を突かれ、不意に義賢公は視点をずらして、遠矢を射った。
まずい!そっちにはノドカが!!
矢の行方を追って、後ろを見ると、かなりの距離があったはずのノドカの足元に矢は立った。
そして、ノドカがさらに逃げた事に安堵しつつ、私は振り向いた。
「ひっ!」
義賢が驚いたのも無理は無い、今の私はそれこそ「鬼のような形相」をしていると思う。
ノドカの前では見せなかったが、開放せざるを得まい。
「義賢あぁ!」
叫んで私の意識はプツンと切れた。
義賢は、長政の今までとは明らかに違う雰囲気にすくんでいた。
肌からも感じられる怒気はかつての義賢の比ではない。
カタカタとゆれた手から、力が抜けて長政の下腹部を射抜く。
しかし、長政は動かない。異常に思った義賢が長政に近付こうとした瞬間だった。
義賢の視界から、長政の姿が消えた。
そして、首から下の肉体の感覚が無くなり、自身の紅い血が見えて、義賢は悟った。
こんなバケモノに関わるべきではなかった。と―


意識が戻った時には、もう日も暮れかけ、夕焼けよりも紅い血を流す、喉笛が砕かれた死体と、その血で染まる自身の手がはじめて見えた物だった。
常人ならこの光景に卒倒し、あるいはショック死してしまうだろう。
だが私は開放された自身の行いに、恐怖しつつも平静を保っていた。
―またやってしまったのか。
それが私の素直な感慨だった。

しかし、ふと私はあることを思い出し、電撃が走ったように、体中が震えた。
「ノドカ?」
辺りを見回してみても、私の探している人の姿は無い。
護るべき人がいなくなったことに、私は慌てて駆け出した。
「ノドカ、無事でいてくれ―」


【99番 六角義賢 死亡】得物のブーメランと滋藤の弓(使用可能矢/6隻)は放置。
【06番 浅井長政 FN 5-7】4-C湖岸。ノドカを捜索。
【71番 長坂長閑 無銘・匕首】行方不明
「父上がいなくなったからといっても、この殺し合いは終わらないんだ・・。ここで泣いていたって何も解決はしない・・」
氏政は父・氏康の遺体を埋葬してから、しばらくはそこから動けないでいた。氏康を亡くした悲しみは大きい。
だが、自分は父を犠牲としてまで助かった。
真実は子供が殺されそうなのを見かねて、父親が庇い死んでしまったのであるが氏政には、父親は自分のせいで死んだのだという自責の念が強かった。
「父上が下さった命・・無駄にはすまい・・」
(生きなくては!)という思いが氏政の背を押すように、氏政の足を動かした。

それから氏政は食糧配給を得ながら、次の配給場所である1ーEへ移動していた。運が良くあれから氏政は敵とは遭遇せずに移動できていた。
だが、油断は出来ない。氏政は人が変わったかのような面持で先に進むのであった。
「父上、私は北条の主としてこの戦いに挑みます!!みていてくだされ!!」

【80番 北条氏政 南部十四年式(弾切れ)・コブラ・クナイ10本・頭に鍋装備】
1ーE付近にいる人と遭遇する可能性あり
67無名武将@お腹せっぷく:05/02/03 19:58:01
       _  -―- 、,へ -‐‐/\ 、   __
       |「  ̄`ヽ、/ _.. `- ´-― `<´ |              
        |   ┌‐/          \ !二ニ..ヽ,    |
       l   |./ / !  l ,   l  、   ヽ\  l __ノ
         t /.l  l. メ、 / l   l  l.!  l ∨  ,'  ヽ  レッツ  
        ,>、ヽl.  レ_,.ム_ ハ  /! / |_ノ|   ! /    )  ageで
       //〃|.  |〃f「!:!` |/ ,レ-<.! ! イ.l '   /     ございます!!!
       ,'〈/// .|  .l └'┘    |f;_}〉ノ__ノレ   <
      ! 〈/  !  | !. ``` 、_'_  ≡`/ ト、     `ヽ
       |/|    |  l t    {`  /   /  .ト、〉       |/  ̄ ヽ
      ! .レ、__,ヽ、| ,\  `-‐'  , イ l.  ト、\
       /´二_ヽ`ー'7`_ ー__l´  | !  | `'       ,. -/
       / /,. - ― - 、7 ハヽ`ー- 、|  |   _,. -‐ ´ /
      ,'/   ,. -‐- 、 \ ゝ-)  ,.!>-‐ " /_,. - '´
    /´/ ○ /     ヽ ヽ__,. ‐' /  _,. -‐'"  
    ム ,'    {       } l   _,. '‐ ' ‐-`、
-= ニ二.!     ゝ、   ノ  !-‐'  ̄`' ー -┘\
  _ ... l         ̄    l        i     ヽ
68狂戦士・地上に立つ:05/02/03 23:00:27
クククククク・・・・・
傍から見れば、壊れているかと思える人物がそこにはいた。
その名は斎藤義龍。
「俺は何て幸運なんだ。これで父の仇が討てるぞ」
父とは土岐頼芸。仇とは斎藤道三のことである。

昔、土岐頼芸は美濃を治めていた。
その家臣が道三である。
道三は主君・頼芸から絶世の美女で頼芸の妻妾・深芳野をさげ与えられた。
このとき、すでに深芳野のお腹には義龍が宿っていたのである。
その後、道三は頼芸を美濃から追い出し、美濃を治める事となった。
道三は反乱分子を抑えるために、頼芸の子・義龍を次期当主とすることで場を治めた。
その事から、義龍は道三を憎むようになった。

幸いにも、武器は銃であり仇を撃つ正義の武器としては申し分ない。
その時、人影が見えた。
「クククク・・・道三。道三だな。ワガチチノカタキ トラセテモラウ・・・」
その言葉を聞いた長尾政景は逃げ出した。
(あいつ、狂っている。目が充血していて、口から涎が出ている)
「違う。俺は道三ではない。俺は長尾だ」
逃げる人影を追いかける義龍
「チチノカタキ・・・カクゴ・・・ドウサン・・・」
島中に響き渡る一発の銃声がした。
そこには、狂戦士と人間だった物があった。
「チガウ・・・コイツチガウ・・・ドウサン・・・・ドコダ・・・」




【70 長尾政景 死亡】武器は逃走中に紛失
【49 斎藤義龍 武器M1ガランド】4−B  
69 ◆IVgdXngJC6 :05/02/04 00:09:02
織田信長はずっと人の気配を感じていた。
気配は、別段襲ってって来るわけでもなく、つかず離れず付いてくる。
信長はわざと隙を作るように、木陰に座り込んだ。
デザートイーグル.50AEのマガジンを抜き、残段数を確認する。残りは6発。
ベレッタM1919の方は、まだ7発残っていた。
続いて和泉守兼定を鞘から抜き、刀身を懐紙で拭う。
荒砥石で寝た刃をあわせると、指先で刃をなぞり、ざらつきを確認してからもう一度懐紙で拭う。
刀を鞘に戻すと、腰に縛り付けた竹筒から残り少なくなった飲み水を口に含み、目釘に吹きかける。
これでいつ襲われてもいいよう、準備は整った。
気配は距離を置いて、こちらの様子を窺っているようだった。
「下手な隠れ方はよせ」
しばらく待ったが、出てきそうな気配はしない。
信長は無造作に右手に持った、デザートイーグル.50AEを気配のする方へ向ける。
ハンドキャノンの異名を持つこの銃は、凄まじい咆哮をあげて弾を吐き出した。
銃も凄いが、2`を超える銃を片手で撃つ信長も異常だった。
この怪物のような男の放つ、化け物銃の弾は、メキメキと音を立てて樹にめり込み、崩れ倒した。
崩れた樹の向こうに、人が一人立っていた。
「信行・・・お前だったのか・・・」

【27番 織田信長 デザートイーグル.50AE ベレッタM1919 和泉守兼定】
【28番 織田信行 コルト・パイソン(残弾少数)ミネベア 9mm機関拳銃(残弾少数) 】
共に4-C草原で対峙

70始めに言葉ありき 1/3:05/02/04 23:22:12
3-F地点を後にして数刻、鈴木重秀と飯富昌景は気ままに歩いていた。
晴信捜索という漠然とした目的はあるものの、この広い島全体を見渡す手段は無く、虱潰しに足で探すしか手段はないのだ。
元々気楽な自由人気質の重秀に、なにを説法しても馬耳東風だと、とうに理解していた昌景も、あての無い捜索に無闇に力を注ぐことをせず、なし崩し的に重秀に付き合う形となったのだ。
そして、気ままであるものの、警戒心を緩めず常に事態に対応できるよう感覚を研いでいる重秀の内なる姿にも昌景は気付いていた。
重秀も、そんな自分を理解する昌景の器量の大きさに、一目置かずにいられないでいた。

「お、遠くに誰か居るぞ」
この島でも有数の鉄砲の名手である重秀の驚異的な視力がなにかを見つけたようだ。
昌景もそちらを見るが、生い茂る木立ばかりで、他には何も見えない。
「む、そうか。私には見えぬ。知る者の顔か?」
「いや、知らないな。・・・う〜ん・・・、こっちに向かって来ているみたいだ」
「そうか・・・・、出来れば無駄な殺生はしたくないが」
昌景は未だ自らの武器を一度も使用していない。それほど命のやりとりに対する思いは強いのだろう。
「あいつ・・・・、相当できるな・・・」
遠く離れた相手の様子を探り探りに口にする。
絶えず木々から離れず太い木を選んで背にして歩き、両手はいつでも武器を構えれる位置にあった。見事なほど隙の窺えぬ男だ。
重秀も不測の事態に備え、男に向けUSSRドラグノフを構えた。
「待て!」
その光景を見た昌景の怒声が銃を相手に向ける重秀を制した。
「戦意の有無がわからぬ以上、無闇に相手を刺激するべきではない。私の時はあれで済んだが、戦意の無い相手でも、こちらが仕掛けるそぶりを見せれば、相手もその気になることもある。」
命のやり取りの前に、まず始めに言葉ありきだ。と昌景は付け足した。
71始めに言葉ありき 2/3:05/02/04 23:26:15
「じゃあ、どうすりゃいいんだ?そろそろアンタの目にもヤツの姿が見える頃だろ?」
昌景に手厳しく窘められた重秀は、とりあえずUSSRドラグノフを下ろした手で大分近づいてきた男の方を指差す。
「幾分急ぎ足のように見えるな。それでいて、全く隙が無い。相当な手練であるな」
重秀が指を指す少し前から気付いていたのか、そっちの方をちらりと見ただけで、簡単な感想を重秀に告げる。
「だろ?強い奴が相手なら、先に優位な戦況に立っておいたほうが得策じゃないか?なにか考えがあるのか?」
「堂々と名を名乗り、話合いを持ちかける」
「おいおい、それが方法かい?」
昌景のさも当然といった口調に対して、重秀は食って掛かる。しかし、
「そうだ!」
昌景も負けてはいない。先程よりも毅然とした態度で重秀に言い返す。
「お主が言うように、あの者は恐らく強いのであろう。だがな、真に強き者であるなら、その者の精神の鍛錬もされているはずだ。いかに余興の中に在っても、決して心乱されようものか!」
己の生き様を語り、一息ついて、今度は落ち着いた言葉で昌景は続きを話し始めた。
「始めは堂々と名乗り出ればよい。話しの通ずる相手ならそれでよし、万一有無を言わさず襲ってきたならば、その時に討てばよい」
昌景は己が考えを重秀に洗いざらい話し、しばらく二人は口を閉じた。

「むむ・・・、すまねぇ。アンタの言うとおりだな。よし、アンタのその・・・、なんだ、話し合いってやつでいこうじゃねぇか」
戦場ではこんな戯言を言っていては命がいくつあっても足りはしないぞ、という言葉を抑えて、重秀は彼の武士としての心を尊重した。

二人がそうこう話している間に、男も二人の存在に気付いた。男は、戦闘態勢にこそ入っていないが、いつでも戦闘のとれるよう警戒を怠らずにいた。
その様子に気付いて、昌景がすかさず声をかける。
「驚かせて申し訳ない。私は武田家家臣、飯富昌景と申す者。こちらは風来坊の鈴木重秀でござる。我々に戦いの意思はござらん。」
大声だが、決して荒げられてはいない声で、説得を試みる昌景。
「へっへっへ。いきなり遭遇した相手に警戒するのも無理ねぇさ、無理に警戒を解けとは言わんよ。」
重秀はあくまでマイペースだ。二人の言葉に男も口を開いた。
72始めに言葉ありき 3/3:05/02/04 23:28:53
「失礼した。お主達の目を見れば、口から出る言葉の真偽のほどなどすぐに判ろうものだ。手前は尼子家臣・山中幸盛である」
「尼子家臣とな・・・」
昌景の表情が変わる。昌景は、先の天皇による放送で、尼子誠久の死を耳にしたことをはっきりと覚えている。背負う家紋こそ違えど、主君に仕えるという身は同じである。
昌景は、幸盛の無念さが痛いほどよくわかるのだ。
「心中お察し申し上げる」
昌景は、幸盛の前に深々と頭を垂れた。そんなことをしても、なにも成らないことなど昌景自身も当然わかっていた。しかし、理屈より感情がそうさせてしまったのか、自然とそうなってしまったのであった。
「昌景殿・・・・」
この狂った余興で、初対面の男にここまで礼を尽くされるなどと誰が思うだろうか。幸盛は昌景の行動に驚いた。
「(・・・・はっはっは・・・、俺は・・・しめっぽいのは苦手だなぁ・・・・)」
重秀も場の空気を読んで、敢えて口には出さなかった。
「昌景殿、そして重秀殿、感謝申し上げる。手前、誠久様を失うて目的を失いかけていたところであった。しかし、現当主晴久様をお守りすることこそ、家臣たる手前の役目にてござる。ここでお主達のような者に会えたこと、手前忘れぬぞ。」
言って、幸盛は昌景達にくるりと背を向ける。
「お・・・おいおい、もう行っちゃうのか?」
重秀が、驚いて声をかけた。
「なにやら先ほどから胸騒ぎがするのだ。あまり良くない予感だ。すまぬ、あまりゆるりとはしていられそうにない。これにて御免」
第六感、というものがあるとすれば、恐らくそれだろう。理屈でなく感覚と本能が直接嫌な予感を囁いていたのだ。
幸盛はこの不思議な感覚に従い、昌景達にもう一度礼すると、森の奥へと走り去っていった。

【58番 鈴木重秀 USSR ドラグノフ】
【29番 飯富昌景 粗末な刀×2】
【98番 山中幸盛 六角棒、ナイフ】
73無名武将@お腹せっぷく:05/02/04 23:42:34
>>72
修正
【29番 飯富昌景 粗末な刀×2】→【29番 飯富昌景 武器不明】
74無名武将@お腹せっぷく:05/02/04 23:44:34
>>72
この時点では、飯富昌景の武器は不明でした。
お詫びして、訂正します。
75生きるための戦い:05/02/05 16:03:15
目的地へと差し掛かった長曽我部元親は一人の男と遭遇していた。北条氏政である。
「あまりにも敵が居らんので逆に不安もあったが・・御主に遭って少し落ち着いたわ・・。
私は長曽我部元親、御主は?」
「私は北条氏政・・」
敵と遭ったと理解しながらも、落ち着き払う元親に氏政は内心動揺していた。
(怖いと思わないのか・・この御仁は・・)
今までの氏政ならこの場を逃げ出していたかもしれない。だが、父の死により決意した今の氏政には逃げるつもりは微塵もない。
生き残る為にはいずれ倒さねばならない敵、それならばここで・・と氏政は思った。
元親も同様である。相手が悪でないにせよ自分が生き残る為には殺しあうことも致し方ない、そう決心している。
元親は氏政の武器を見て微笑んだ。
「どうやら、御主には鎌でもショットガンでも挑めるらしい。」
氏政は驚いた。(この男は殺し合いにもかかわらず相手の武器に合わせようとされているのか?)
(今までの敵は平気で卑怯な手段も使ってきたが、こやつは違う・・。)
氏政は嬉しかった。こんなくだらない殺し合いの中でも『自分』というものを失っていない元親に喜びを感じた。
「では、氏政まいる!」
二人の戦いが始まった。氏政は弾切れしている南部十四式を投げ捨て、クナイを投げた。
その行動により元親は、相手の銃は使えないのだろうと判断した。クナイを避け、自分もショットガンを放り鎌を構えた。
「いくらクナイが飛び道具だとしても、ショットガンとでは比べようもないからな・・」
氏政はもクナイをしまい、短刀であるコブラを持つ。
「私は、ここで死ぬわけにはいかない・・父のためにも私には生きなくてはならない理由がある!」
氏政の攻撃を鎌で応戦しながら元親も叫んだ。
「御主だけではない!私とて父の代わりに御家の主となったのだ!死ぬわけにはいかぬ!!」
二人の必死な思いはそれぞれの強さとなる。
76生きるための戦い追加:05/02/05 16:06:51
氏政・元親1−E入り口付近で戦い中。現在は鎌とコブラの接近戦
二人以外がこの場所に来ている可能性もあり。(横槍突かれる可能性もあり)
77暴走・独走の地黄八幡:05/02/05 16:34:48
訳も解らず宍戸隆家は北条綱成に連れられ進んでいた。
(なんでこんなことになったのだったか・・?ああ・・桂の死から始まって・・)
気がつけば筋肉のオッサンに手を繋がれている。隆家は涙した。
(死ぬのが嫌でこの人の筋肉を褒めたが・・まさか生きることがこんなに苦しいなんて・・)
だからといって綱成を怒らせる気にもなれない。桂元澄の殺され方は、人間技を越えていた。
あんな風に死ぬのは嫌だと思っている。が、きっと生きている間はこの暑苦しい手からは逃れられないだろう・・。
隆家はただ涙するしかなかった。
(元就様にただただ仕えていたあの頃が懐かしい・・戦はあったが今よりは平和だった・・)
そんな隆家の気持ちに気づく様子もない綱成は、晴れ晴れとした爽やかな顔で一言発した。
「キミとこうして歩くのはワシにとって大切な時間だ!いや〜良い友が出来た!!」
(歩いてたの?!某はアンタの歩きのスピードについていけず小走りだよ!!しかも友?誰と誰が!?)
いろいろ突っ込みたかったが、隆家には恐ろしすぎてそれが出来なかった。
(もはや、自分にはこのオッサンの暴走は止められない・・)
隆家にはそれだけ確信が持てた。

【82番北条綱成 木太刀・ヌンチャク】
【53番宍戸隆家 ブーメラン】
現在1−Dまで来ている。目的地1-Eまでもうすぐ到着予定

78不倶戴天 1/5:05/02/05 17:34:33
ハァハァハァハァ・・・。
荒い息の音と少しも止まる事の無い足音が普段静かな森に響く。
あれほど高かった日が赤みを帯びてきていても、11番足利義輝と67番鳥居元忠のチェイスは終わっていなかった。
義輝は破邪刀の加護があり、元忠は妖刀に体のリミッターを外されているとは言え、肉体的な限界に近付きつつあった。

ほどなくして、元忠は少し開けた場所で立ち止まり、振り返った。
元忠の体の限界を悟った妖刀・村正が、宿主を護る為、そして宿怨を晴らすためにそうさせたのであった。
元忠は下忠が止まったにもかかわらず、走りこんでくる義輝に斬りかかる。しかし、
「イヤァァァァッ!」
元忠の読みに反して、義輝は立ち止まることなく、紙一重で斬撃を交わすと、勢いを殺さず元忠に突進する。
一瞬、二人の影は重なり、入ってくる速度以上の速さで、一方の影が抜けていく。

「初手は相打ちか・・・」
ようやく動きを止めた義輝は、上がった息を物ともしないように小さく呟く。
遅れて、彼の服が裂け、めくれたその隙間から、血が流れる腕が覗く。
同じ様に、視線の先にいる元忠の左のわき腹から一瞬噴き出た血が、着物を紅く染める。
「マタ・・・カ」
「ああ、こうして貴様を封じる為にまみゆるのは久方ぶりだ」
義輝の口を通して、破邪の刀は妖刀に語りかける。義輝ももはや、そのことには驚きはしなかった。

「貴様ハ、キライダ、誉メラレシ存在ヨ」
徐々に片言の言葉は意味のある言葉として、義輝の耳にも理解できるようになる。
どうやら、この破邪刀とあの妖刀は相当な因縁があるようだ。
「ああ、私もだ。呪われし存在よ」
―事情はよくわからないが、大悪を斬る為に、それを助長する物は斬らねばな
言って、義輝は、自分の頭の中に出来た、もう一つの思考と同調する。
「コノ世カラ」「この世から」
申し合わせたように二つの声が重なる。

「消エロ!」「消えよ!」
79不倶戴天 2/5:05/02/05 17:35:20
その声を合図に、戦いは再開した。
妖刀を持つ元忠が先手を取り、いきなりの大振りな、しかし隙が見えないほどの速度で薙ぐ。
義輝は、それを受けながら、後にとび、衝撃を受け流す。さもないと、刀が折れてしまうほどの重い斬撃だった。
―元は名のある武士であろう、これほどの力と速さ、そうおらん。
後ろに飛んだ事により間合いが離れた義輝は、空中で体制を立て直し、着地と同時に斬りかかる。
こちらは、軽い攻撃ながらも、反撃の隙を与えず、相手の防御や回避の隙を狙う。
長期戦になれば刀が折れかねないが、必殺を期すためであった。
―一度でもあの攻撃を食らえば即、死に繋がろう
義輝も最初の一撃でそれを悟っていた。

何度、義輝の刀が振り下ろされた時であろうか、
最初の一撃以外、攻勢に転じる事の出来なかった元忠は、事もあろうに片手で義輝の攻撃を受けた。
―何と!しかし、片手では次の攻撃に対応できまい、この勝負もらった!
義輝が勝利を確信した時であった。
元忠のもう一方の手に握られたAMCオートマグが義輝を狙っているのが、義輝に見えた瞬間、銃口から火が吹いた。

とっさに刀で防御し、至近距離で撃たれたにもかかわらず、幸いにして、義輝はダメージを受けなかった。
しかし、その代償として、破邪の刀は刃こぼれし、耐久力が半減した。これではいつ折れてもおかしくは無い。
そして、元忠の反撃が始まった。
80不倶戴天 3/5:05/02/05 17:36:13
猫が得物の鼠をいたぶるかのように、元忠はわざと大技は繰り出さず、先程までの義輝同様の軽い斬撃で、避け続けるしかない義輝の体力を奪ってゆく。
闇雲に、滅茶苦茶に降られているように見えるその斬撃にはそのような意図があった。
「ソレソレ、後ガナイゾ」
普段なら簡単に斬りかえしているであろう型もへったくれもないその斬撃を義輝は避け続けなければいけなかった。
何故なら、もし、その攻撃が外れたり、受けられたりすれば、間合いを詰められた状態での攻撃は刀で受けねばならず、そうすれば刃こぼれしたこの破邪の刀が折れるのは目に見えていたからだ。
それ故、義輝は踏み込めないでいた。しかし、彼もただ避け続けているわけではなかった。

間もなく、義輝は大木の横で、後退するのをやめ、刀を正眼に構えた。
「何ノ真似ダ?ココデ雌雄ヲ決スルツモリカ?」
元忠には勝算があった。
どう斬りかかられようと、受けきる自信はあったし、よしんば受け切れなかったところで、次の反撃で確実に仕留められる事は解りきっていたからだ。
―義輝モコノママ逃ゲテイテモ駄目ダト悟ッタノカ?
実はこの先には、断崖絶壁というほどではないが、傾斜の急な坂があり、元忠はそこに義輝を追い詰めるつもりであった。。
そうすれば、その坂の存在に気付くにしろ、気付かないにしろ、その時に逃げ場のない斬撃を繰り出せば、避けようとする彼は谷底に転落して気絶なり、死亡するだろう。
その上で誰にも邪魔される事無く破邪の刀を処分しようと考えていたのだ。

しかし、こんな所で、反撃の構えを見せられるとは思っていなかった元忠は考えた。
ここで、逃げる方向を変えられたり、可能性は低いとは言えこの様な使い勝手のいい体を傷つけられたくはない。
―大振リデ脅シヲカケ、モウ一度逃ゲルヨウ仕向ケルカ
考えは決まった。こうして考えていても義輝は迂闊に動けないようだったし、まず成功するだろう。
元忠の頭の中で勝利の方程式は揺るぎようのない物となった。
81不倶戴天 4/5:05/02/05 17:37:11
元忠が一瞬で刀を振り上げ、唐竹割りに義輝のいる方へ打ち下ろす。
しかし、元忠の頭上で「めき・・・」と肉をたつ音でも、空を切る音でもない音がして、刀はそれ以上動かなかった。
元忠が刀を見上げると、横に傾いた幹かと見間違うほど一際太い枝の半ばほどに刀は食い込んで止まっていた。
「お前の負けだ」
言って、義輝は破邪刀で元忠の体を横一文字に切り裂いた。

皮一枚で胸から上の部分と下の部分が繋がっているといっていい元忠の体はそれでもなお刀を放そうとはしなかった。
「正直、望みの薄い賭けであったが、目の前に勝利を浮かべたお前に、罠など見えるはずがなかったか・・・」
義輝は後を向いたまま語った。刀が抜けるまで、斬撃を受けることは無いと思ってだ。
しかし、
「危ない!」
遠くから響いた声で義輝は思い出したように振り向いた。視線の先には器用に片手で刀を掴みながらもう一方の手でAMCオートマグを構える元忠がいた。
耳を劈くような爆発音が二階連続で響く。
義輝にその弾があたることはなかったが、義輝の背後の木に穴があき、その威力を義輝に見せ付ける。
迂闊には飛び込めず、背を見せれば打ち抜かれる。この至近距離で連続した銃撃を避け続ける事など無理。
―義輝は策を封じられ、動けなくなった。
「動ケマイ?木ノ裏ニ隠レヨウト、木ゴト穴ヲアケラレルシ、剣デ受ケレバ今度コソ折レルシナァ」
血を吐きながらも元忠ははっきりと発音できた。
―確かに、勝利を浮かべたものに、罠は見えなかったか・・・
82不倶戴天 5/5:05/02/05 17:38:02
義輝の目に諦めの色が浮かんだのを見届けて、元忠は引き金を引き絞ろうとした。
しかし、
「・・・?動カヌ、何故ダ!」
オートジャムの異名を持つその銃は3発目の薬莢を排出し切れずにジャムを起こしていたのだ。
そんな事など知る由も無い元忠が、何度力を込めて引き金を引こうとしても、『オートジャム』はアクションを起こさなかった。。
元忠の顔から勝利の色が消える。
「コンナ所デェェェ!」
元忠の無念の叫びが響く中、義輝は機を逃さず、元忠の上半身を一刀両断にした。

【67番 鳥居元忠 死亡】
【11番 足利義輝 九字の破邪刀(刃こぼれ)】
83戦慄の時1:05/02/05 20:34:43
今川義元の爆弾により飛ばされてしまった元就は、木の幹で身体に軽い打撲を負いながらも命に別状はなかった。
(急いで隆景のところへ戻らねば・・)
と、元就は足を急がせた。
一方の隆景には何が起きたのか解かってなく、突然姿の消えた父元就を必死で探していた。
(先ほどの爆音・・敵がいた?そういえば・・悲鳴にも似た笑い声が聞こえた気がする・・)
隆景はまだはっきりとしない意識の中で今の状況を整理しようとしていた。
(敵が居たとすれば・・父上は?まさか・・あの爆発に巻き込まれたのではあるまいな・・)
不安が隆景によぎる。
(兄元春を失い、今度は父を失ったら・・?)
そう思うと絶望感が襲ってくる。周囲を見渡すが爆風で巻き起こった砂煙で視界を遮られる。
二人の目指した湖はすぐ近く。ただ、少し移動する場所が平地であるためにすぐに出てはいけなかった。
元就と共に居たときでさえ、用心していた。今の状態の隆景が一人で出て行くことは自殺行為であろう。
頭の良い隆景はそのことを心得ているため、容易に移動しようとはせず、その場で待機していた。
ここで動いて元就とはぐれてもいけない。そう考える隆景は心の奥底で元就の無事を信じているのであった。

元就は隆景のところへ行こうとしていたが、少し離れた場所で聞こえる声に動きを止め耳を澄ませていた。
誰かが争っているようだ。元就は騒ぐ心を何とか落ち着けようとした。
(また敵じゃろうか・・?)
84戦慄の時2:05/02/05 20:36:12
しかも相手は自分たちの目指していた場所にいるようである。湖岸で声がし、突然銃声が聞こえる。
(殺し合いが始まったのか!?)
元就に戦慄が走った。ここに来たのは争いをしたくてではない。ただ、息子を休ませたくて来たのだ。
(巻き込まれるわけにもいかん・・今は隆景のところへ行き、奴らが去るまで待つしかないな・・)
それからの元就は速かった。すぐさま隆景のところへ向うと、隆景を連れて草地へ身を低くし潜める。
隆景は元就が何故焦っているのか、見当もつかなかったが無事であったことにホッと胸を撫で下ろした。

元就は湖のほうに意識を集中させていた。どうやら2対1、しかも2人のほうは若そうな男女のようである。
砂煙が大分おさまり視界も開けてきたため、元就は目を凝らして様子を探っていた。
その若い男は女を逃がそうとしているようである。一方の敵は弓で攻め立てているらしい。
矢が女のほうへ放たれ、刺さりはしなかったようだが男はその行為に激怒している。
元就は、一瞬迷った。
(女を庇おうとしているあの男は悪意がにかもしれん。たすけるべきか・・?)
しかし、容易に行動は出来ない。おのれ等に危険が降りかかる可能性もある。
迷っていた元就は次の瞬間自分の目を疑った。気がつけば、矢を射ていたものを若い男が殺している。
その光景はまるで鬼神か阿修羅の如き・・・
元就は暫らく動けなかった。
85戦慄の時3:05/02/05 20:36:59
どれくらい時が過ぎたのか解からないくらい長く感じられた。
その若い男は我に返ったらしくすでに走り去ってしまった女の姿を探している。
元就はその男が去るまで出られないと感じた。
(わしが・・これほど怖いと感じたことがあったろうか・・?)
震えが止まらなかった。隆景は元就の様子を見て首を傾げた。
(一体どうしたのだろうか・・?敵が居るのか・・こんなに怯える父上は初めて見た・・)
ぼんやりしながらも隆景は思考を止めなかった。

【46番小早川隆景・96番毛利元就 警戒し動けず。】
4−Cで浅井長政が去るのをジッと待っています。
86憲秀の野望1/2 ◆IVgdXngJC6 :05/02/06 02:16:57
「オイ!起きろ、オイ!」
松田憲秀は急に声を掛けられて飛び起きた。
どうやら憲秀はあのまま、三雲成持の死体の側で眠りこけてしまったらしい。
「ハッ!?」
ビックリして飛び上がる。手が無意識に、懐に収めたスタンガンを探る。
「落ち着け!俺だ、氏照だ!」
「・・・おぉ、氏照殿であったか!これは失礼致した」
声を掛けてきたのは、氏康の次男・北条氏照その人だった。
「無用心にもほどがあるぞ、憲秀。こんな時に、こんな所で居眠りとは、いつ襲われても文句は云えんぞ」
「いやはや面目ない。昨日一日、緊張の中で歩き回っていたので、どうやらその疲れが出たようです」
憲秀は大きな伸びをして、少しおどけたふりをする。
「見つけたのが俺じゃなかったら、今頃お前は死んでるぞ」
「まったくその通りですな。かたじけない」
ニコニコと笑いながら氏照の相手をするが、内心は別のことを考えていた。
「(氏照か・・・。氏政よりはマシな男だが・・・)」
「・・・オイ、聞いているのか憲秀?」
「は?なんでしたっけ?」
「だから、父上が亡くなられた今、俺達だけでなんとか生き延びなくちゃならないなって、言ってるんだよ!」
「あ〜ぁ、そうですな。我らできり抜けていかねばなりませんなぁ」
他人ごとのように話す憲秀に、氏照はムッとしたような顔をする。
「そんな悠長に構えてる場合か!一刻も早く、兄上と叔父御を見つけなきゃならんのだぞ!シャキっとしろ、シャキっと!」
一門衆の氏照は遠慮することなく憲秀を怒鳴りつける。
「(この野郎、いっそ殺してくれようか!)」
87憲秀の野望2/2 ◆IVgdXngJC6 :05/02/06 02:18:00
憲秀はこの同い年の氏照が、昔から苦手だった。
氏照は氏政と違い、覇気があり、思ったことをずけずけと云う。
何事も遠まわしに、できるだけ自分の考えていることを人に悟らせないようにする憲秀とは対極にあった。
そんな氏照が目の前に現れただけでも吐き気がするのに、よりによって自分を怒鳴りつけている。
憲秀にとって、これは屈辱だった。
「まぁまぁ、大声を出すと敵に気付かれるかもしれませんぞ」
憲秀は怒る氏照を優しくなだめるが、額には青筋が浮き出ている。
「(やはりこいつも殺すか・・・。家督は下の弟二人のうちから決めればよい。そうすれば、裏からわしが操り・・・フッフッフ、北条はわしのものよ)」
「う、うむ。そうだな、敵に気付かれては困る。では、兄上と叔父御を探しにでも行くとするか」
「はいはい、では参りましょうかの」
「フン、調子のいい奴めが」

【89番 松田憲秀 『スタンガン』】5-Cより移動
【79番 北条氏照 『武器は不明』】5-Cより移動
氏照の目的は、北条の生き残りと合流すること
憲秀の目的は、氏政・氏照兄弟の殺害
88無名武将@お腹せっぷく:05/02/06 10:48:24
01赤尾清綱    26岡部元信×  51佐久間信盛×   76林秀貞 ×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政○   77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行○  53宍戸隆家○  78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家○     79北条氏照○
05安居景健    30小山田信茂× 55下間頼照×   80北条氏政○
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉     81北条氏康×
07浅井久政○   32柿崎景家×  57上条政繁   82北条綱成○
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○   83細川藤孝○
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀    60滝川一益○   85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×   86前田利家○
12甘粕景持    37北条高広    62武田信繁    87真柄直隆○
13尼子晴久○  38吉川元春×  63武田晴信○   88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞    64竹中重治×   89松田憲秀○
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×   91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如○     67鳥居元忠×   92三好長慶○
18石川数正○  43高坂昌信○  68内藤昌豊    93三好政勝×
19磯野員昌○  44香宗我部親泰 69長尾景虎○   94村上義清
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景×    95毛利隆元○
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○   96毛利元就○
22岩成友通×  47斎藤道三    72丹羽長秀○   97森可成×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉×   98山中幸盛○
24遠藤直経×  49斎藤義龍○    74蜂須賀正勝○   99六角義賢×
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房○    100和田惟政○

×印:死亡確認者 46名
○印:生存確認者 42名
無印:未登場者  11名
89無名武将@お腹せっぷく:05/02/06 11:06:15
【18番 石川数正 不明】催涙スプレー、他一種
【11番 足利義輝 九字の破邪刀】4-D森。
【42番 顕如 FFV M2カール・グスタフ(望遠レンズ附属、残弾1発一時使用不能)】3-I海に逃亡
【98番 山中幸盛 『六角棒』『ナイフ』】4-E地点
【43番 高坂昌信 エクストリーマ・ラティオ】3-C荒野から移動
【48番 斎藤朝信 モップ型暗器】3-C荒野から移動
【82番 北条綱成  『ヌンチャク』『木太刀』】1-I崖付近
【60番 滝川一益 『十手』】 2-D畑より出発
【100番 和田惟政 『不明』】2-D畑より出発
【52番 佐々成政 武器不明】 4-D森林入り口地点
【54番・柴田勝家 サブマシンガンMP5 備前長船 ハンドガンGLOCK26】(4-F地点)
【75番・馬場信房 鉄槍】(4-F地点から移動、現在地不明)

交戦中
【74番 蜂須賀正勝:オーク・ダブル・アックス】VS【87番 真柄直隆:長曾禰虎徹】3-F森で交戦中
【27番 織田信長 5-B民家で休息中】『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『和泉守兼定』26番織田信行と対峙
【28番 織田信行 3-B廃墟 】コルト・パイソン、ミネベア9mm機関拳銃(両方残弾少数) 27番織田信長と対峙
【80番 北条氏政 『南部十四年式(弾切れ)』『コブラ』『クナイ(10本)』『鍋(頭に装備)』】65番長曽我部元親と対峙
【65番長曽我部元親 鎌、ショットガン】80番北条氏政と対峙
90無名武将@お腹せっぷく:05/02/06 11:12:16
パーティ
【63番 武田晴信 コルトM16A2】&【69番 長尾景虎 片鎌槍】&【68番 内藤昌豊 火炎瓶×4】2-Dから移動 なお、晴信・景色は背中を負傷。
【72番 丹羽長秀 Mk2破片手榴弾×2 矢×10本】 &【86番 前田利家 ショットガンSPAS12】(両者ともにB-4地点からD-4地点に移動予定)
【06番 浅井長政 FN5-7 4-G付近】& 【71 番長坂長閑(ノドカ) 無銘・匕首】4-C地点で見失う。
【96番 毛利元就 弓矢4本・アサルトライフル(残弾少量)・ボーガン5本・十文字槍(軽い打撲。命に別状はなし)】&【46番 小早川隆景 『グロック17C』(右腕骨折・体調最悪、意識は少し回復中)】負傷の為進行遅延。4-Cで浅井長政をやり過ごす。
【13番 尼子晴久・鎖鎌】&【95番 毛利隆元・手裏剣8個】3-G森林出口付近
【90番 松永久秀 青酸カリ(小瓶に入ってます)】 &【92番 三好長慶 弓・矢(10本)】合流後5-H地点に向ってます。
【19番 磯野員昌 呉広】&【24番 遠藤直経 マクアフティル】&【09番 朝比奈泰朝 青龍偃月刀】目的、浅井家臣、今川父子との接触
【58番 鈴木重秀 USSRドラグノフ 食料(少量)】&【29番 飯富昌景 武器不明  】 共に3-Fから出発。98番山中幸盛と会う。
【89番 松田憲秀 『スタンガン』】&【79番 北条氏照 『武器は不明』】5-Cより移動

未回収アイテム

【15番 荒木村重 『毒饅頭』は5-B民家に放置】

4-C湖、河口付近で爆発あり。周辺にもし人物が居たならば、なんらかの被害を受けているかもしれません。
3-B廃墟内にて腐臭と氏真の大声に気付いた武将が居る可能性あり。
妖刀も3-G地点の森の中にあるので、見つけた人間は拾う可能性があります。
91無名武将@お腹せっぷく:05/02/06 11:19:22
未回収アイテム(差し替え)
15番荒木村重の武器『毒饅頭』5-B民家
34番金森長近の武器(不明)位置不明
41番熊谷信直の武器(不明)4-G林出口付近
36番河尻秀隆の武器(不明)4-G林出口付近
20番今川氏真の武器(不明)3-A廃工場内

差し替え必要武器
34番金森長近の武器(不明)
55番下間頼照の武器(名称不明)
16番井伊直親の武器(名称不明)
64番竹中重治の武器スナイパーライフル(銃種不明)
02番赤穴盛清の武器アサルトライフル(銃種不明)
41番熊谷信直の武器(不明)
36番河尻秀隆の武器(不明・放置)
85番本多正信と07番浅井久政の武器ナビコン、探知機(同種)
92番三好長慶と97番森可成の武器(同種・弓種不明)
40番久能宗能の武器ボーガン(弓種不明・・・微妙)
50番酒井忠次の武器IMIウズィ(本スレで変更されていましたので変更しました)
77番久武親直と45番後藤賢豊の武器闘乱武(編集では紅と蒼に分けましたが…)
21番今川吉本の武器(名称不明)
20番今川氏真の武器(不明)
59番大道寺政繁の武器ショットガン(銃種不明)
83番細川藤孝の武器太刀(刀種微妙・・・)
33番桂元澄と22番岩成友通の武器木刀、木太刀(同種)
53番宍戸隆家と61番武田信廉の武器ブーメラン(同種)
92無名武将@お腹せっぷく:05/02/06 11:29:45
正親町天皇・・・・・今回の狂気ともいえる余興の主催者。最後まで生き残った者に、天下を約束する。実は剣術の天才?
06番浅井長政・・・・父・久政と義兄・信長を助けようとしている。99番六角義賢の襲撃でノドカと離れ離れになる。
09番朝比奈泰朝・・・直経・員昌が気に入り行動を共にする。
11番足利義輝・・・・九字の破邪刀で大悪を斬ることを決意。妖刀を持つ、67番鳥居元忠を誰かの助けで斬る。
13番尼子晴久・・・・尼子の宿敵である毛利家の長男・隆元と意気投合。以来、隆元と行動を共にする。河で何かを発見
18番石川数正・・・・仲間と思わせ安堵させた元康を、催涙スプレーで襲った男。
19番磯野員昌・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・直経と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
24番遠藤直経・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・員昌と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
27番織田信長・・・・天皇に魅せられた男。自分の方が天皇より優れていることを証明するため、殺し合いには積極的に参加。孤高のジェノサイダー。信行と対峙
28番織田信行・・・・兄・信長の理解者であった政秀に助けられ、何かが変わった? 信長と対峙
29番飯富昌景・・・・武田家屈指の強さを誇る男。重秀の考えに賛同し、晴信捜しを手伝わさせる。晴信を心から尊敬している。
42番顕如・・・・・・余興に乗り、殺し合いに積極的に参加した破戒僧。もはや仏を超えた戦いぶりを見せる。
43番高坂昌信・・・・似たような境遇の朝信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、晴信を捜しに行く。
46番小早川隆景・・・父・元就と合流。幸盛の六角棒により右手を負傷するも、元就の重荷になるまいと、それを告げぬ強い意志を持つ。
48番斎藤朝信・・・・似たような境遇の昌信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、景虎を捜しに行く。
49番斎藤義龍・・・・父道三を偽者だとして、敵討ちに萌える。
93無名武将@お腹せっぷく:05/02/06 11:40:29
52番佐々成政・・・・尊敬する信長の力になるべく捜索を決意する。
53番宍戸隆家・・・・なにやらわけもわからず綱成に拉致された可哀想な人。現時点で目的は不明。
54番柴田勝家・・・・馬場との決闘中、仲間割れで羽柴秀吉と佐久間信盛を失う。
58番鈴木重秀・・・・鉄砲傭兵集団、雑賀衆頭領で鉄砲の名手。人や権力に縛られるのを嫌う気ままな自由人。天皇殺害を心に決め、昌景と行動を共にする。
60番滝川一益・・・・忍びの心得を持つ男。十手片手に信長の下に馳せ参じる決意をする。
63番武田晴信・・・・武田信玄の名で知られる名将。ひょんなことから、景虎と行動を共にする。下間頼廉に襲われたところを内藤昌豊に助けられる。
65番長曽我部元親・・・弱き者に牙を向く器量無しを嫌悪する、姫若子と呼ばれた男。現在、北条氏政と対峙。
68番内藤昌豊・・・・晴信らを襲っていた下間頼廉を倒し、行動を共にする。
69番長尾景虎・・・・上杉謙信の名で知られる名将。ひょんなことから、晴信と行動を共にする。相当な実力者。
71番長坂長閑・・・・ノドカ。実は歩き巫女なる女忍びで、親方・晴信を探しているところを浅井長政と会う。長政との関係に期待大。
72番丹羽長秀・・・・優れた知略の持ち主。相棒の利家に振り回されながらも、幾多もの危険を回避している。
75番馬場信房・・・・柴田勝家と互角の決闘をした武将。晴信の元に馳せ参じる予定。
94無名武将@お腹せっぷく:05/02/06 11:41:10
79番北条氏照・・・・父の死を悼み、兄と合流を目指す中、松田憲秀と出会う。
80番北条氏政・・・・臆病者。しかし、父・氏康の死をきっかけに、生まれ変わることを決意。まだ実力のほどは解らない。長曽我部元親と対峙
82番北条綱成・・・・自慢のマッスルボディを愚弄されると切れる危ないオッサン。
86番前田利家・・・・『むむむ』が口癖の男。相棒の長秀にいつも怒られている。
89番松田憲秀・・・・氏政・氏照では心もとないと、スタンガン片手に謀反を企てる?氏照と行動を共にする。
90番松永久秀・・・・主君・長慶を操り自分の利にしようと企む。今のところ目立つ動きは無い。
92番三好長慶・・・・久秀を信じているが、実は久秀に踊らされている?
95番毛利隆元・・・・心の優しい男。晴久と意気投合し、以来、隆元と行動を共にする。忠次の銃撃により右肩を負傷。小川で何かを拾う。
96番毛利元就・・・・息子・隆景と合流。子には優しいが、誠久を嬲り殺すような残忍な一面も持つ。浅井長政の豹変を見て恐怖・進行停滞。
98番山中幸盛・・・・義に篤く、主家想いの忠臣。誠久の無念を晴らすため、打倒毛利を決意する。
100番和田惟政・・・忍びの心得を持つ男。滝川一益の弟弟子。主君義輝との合流を目指す。
95二日目・日没の放送:05/02/06 16:40:48
・・・ガガッ、涼しくなってきたのう、二日目の日没じゃ。皆調子が出てきたようで朕は嬉しいぞよ。
しかし、もっとじゃ、もっと愉快にさせよ。
では、食糧配布位置を言い渡す。
1-E五番トラック到着地、3-H民家前、5-E絶壁の前。計三箇所じゃ。

続いて死亡者を発表する。
59番大道寺政繁、66番土橋景鏡、36番河尻秀隆、33番桂元澄、51番佐久間信盛、73番羽柴秀吉、56番下間頼廉、99番六角義賢、70番長尾政景、67番鳥居元忠
以上11名。延べ46人ようやく半数に手が届くといった所か・・・。

そうそう、前の放送で、褒美を取らすといったな。
では、朕からの褒美じゃ、皆の者よく聞け。
近頃、朕に刃を向けようとしている不届きなものが居るらしい。
頭は63番武田晴信と67番長尾景虎らしいが、そこで皆に伝える。
この二人を殺せ。一人でも殺せば朕から褒美を取らして遣わす。
よいな?クハハハッハッハ。
・・・ブツッ
96埋毒 1/5:05/02/06 20:05:29
日没の天皇の放送が響く。
37番・北条高広は二日目日の出に入手した食料を食しながら、3-B廃墟内でその放送を聞いていた。
高広「ウチのお屋形様がねえ・・・・まあ、そう思ってもしかたがねーかもなぁ・・・・」
ここでいう『ウチのお屋形様』とは、長尾景虎の事。そして北条高広は長尾家臣である。
――放送の内容から推測すると、どうやら景虎は天皇を殺害し、逃亡を試みているらしい。
そう推測した高広は、天皇に歯向かう事を試みる景虎に対し、一人で嘲笑した。
高広「フッ・・・・・・ハッハッハッハ・・・・・・随分とマヌケなことを考えるもんじゃん・・・・。
   晴信と組んだところでどうにかなるものでもねーだろっつーのによ・・・・」
既に散った本庄と同じように、北条高広自身もあまり景虎を好いてはいない。
実行には移さぬものの、謀反を試みようかと思ったことも幾度かある。
高広「長尾家臣団がアンタに従うと思ってるのか?馬鹿な軍神様だ。
   アンタに従おうと思ってる長尾家臣は・・・・きっともういねえよ・・・・一人もな」
誰に言うでもなくそう言葉を残すと、高広は己の武器『イサカM37フェザーライト』を担ぎ
廃墟の奥へと向かった。
この廃墟の奥から腐臭が漂ってきていたからだ。
『誰か死んだのか?ならば、ソイツの武器もそこに置いてあるかもな』
そう軽く思った高広が廃墟の奥に歩き出すのは至極当然の事であった。

高広「ン?先客か・・・・・?」
腐臭の元に辿り着いたとき、見覚えのある男-12番・甘粕景持-がいたからである。
高広(・・・・・・さて・・・・・見知った姿だが、どうしたものかな・・・・・)
高広が思案していると、景持もこちらに気づいたようだ。高広に向かい手招きをしている。
高広「・・・・・・こっちに来い、っつーことか・・・・・?」
97埋毒 2/5:05/02/06 20:07:47
景持の側には腐臭の元である死体が転がっている。それも二つ。
あまりこの状況で、景持に近づきたい者はいない。たとえ、同じ家中のものであっても。
景持「・・・・・俺が殺したと思っているのか?残念だがそれは違う。こいつらは勝手に死んでいただけさ」
高広の不安を読み取ったのか、景持が両手を上げそう言う。
高広「・・・・・お前の武器は?それで殺したんじゃあねーのか?」
景持「俺の?ははは。生憎だが、俺の武器で人を殺すことなど出来そうもないんだよ」
そういうと、景持は己のバッグの中から『トランシーバー』を取り出した。
高広「・・・・・それは?」
景持「さあな・・・・・詳しいことはわからないが、片方を持っている者ともう片方の・・・・」
高広「ああ、わかったわかった。難しい話は勘弁しろ。お前を信用してやんよ」
そう言うと、高広は銃を下ろし、景持の方に向かった。直後、側にある二つの死体を見つめる。
高広「で・・・・・?この死体は?」
景持「俺が知るか」
その二つの死体は『松平元康』と『今川氏真』の2人であるのだが、この2人の顛末を景持も高広も知るはずがない。
誰かに殺されたのだろうと考えるだけである。
景持「だが、殺した奴もマヌケだな。こいつの武器を忘れていくとはな」
そう言い、景持は氏真のバッグを開け、中から『ジッポ』を取り出した。
景持はそれと共に取り出した説明書を読む。それと同時に、高広がジッポを覗き込む。
高広「・・・・・なんだ?随分と小せぇ武器だな・・・・・」
景持「・・・・・・これは明らかにハズレだな・・・・・」
景持はそう呟くと、ジッポを付けてみせた。シュボッ、という音と共にジッポは火を灯した。
高広「ハァ?・・・・・それで終わりか?」
景持「これで終わりだ。日常生活にはとてもよく使えそうだな」
98埋毒 3/5:05/02/06 20:08:53
高広「クソがッ!!期待させやがってボンクラがよッ!!」
そう怒声を飛ばすと、高広は氏真の死体を遠くにまで蹴り飛ばした。
高広「・・・・・フン・・・・死んだ奴は反撃して来ねぇからいいよな。
   で、どうするんだ景持?いつまでもここにいるつもりかよ?」
そう言われた景持は、廃墟の窓から外を見てニヤリと笑った。
景持「もう日没・・・・そして夜か・・・・・この『ジッポ』というものが使えるかも知れぬな・・・・」
高広「何言ってんだ?そんなものが使えるわけないだろう」
高広がそういうと、景持は不敵な笑みを浮かべこう諭した。
景持「お前にも協力してもらう」

しばらくするうちに、景持の待っていた時間が訪れる。夜が来たのだ。
景持「そうか・・・・来たか・・・・・一人?ああ・・・・丁度いい、大丈夫だ・・・・わかった」
周りに高広はいない。
景持は己の武器『トランシーバー』を耳から離さず窓から廃墟の外を覗き込んだ。
景持「まだこちらからは見えないが・・・そうか、近いか。わかった。準備に移る」
そういい残すと、景持はトランシーバーを耳から離し、ジッポに火を点け、窓の縁に置いた。

廃墟に近づいていた男-05番・安居景健-は、ジッポの火を注意深く見つめていた。
景健「あの火は一体・・・・・?油断は出来ぬな・・・・・」
持っていた銃-アサルトライフル・AK47-を火に向けて構える。
暗い夜中でただ不気味に燃える火は、景健の目を向けるのに十分すぎるほどであった。
景健「あそこに誰かいるのか・・・・あれは、この種子島と同じようなものか・・・・・?」
ふと、景健の心に不安が訪れる。
99埋毒 4/5:05/02/06 20:10:29
だが、その不安を打ち消すように景健は『朝倉義景』の事を思い出した。
義景殿も死んだ。光秀も。あの放送のとき、受けた衝撃は今でも忘れられない。
もはや朝倉家に連なる者は皆死んだ。
あとは私だけだ。
そう思うたびに、『私だけは生き延びてやる!』そう、気力がわいてくる。
景健「義景殿・・・・私だけとなろうとも、必ず生き残り名門朝倉家を・・・・・・む!?」
そこまで言い、景健は驚愕と共に言葉を止めた。
先ほどまで灯っていた火が、急に消えたのだ。かと思えば、また点きだす。
別に攻撃を仕掛けてくるでもなく、ただ怪しげな光は点灯と消滅を繰り返す。
景健「・・・・躊躇っていても仕方がない・・・・あるいはまだ撃てぬのかも知れぬ。ならばこちらから!」
そう叫びながら、景健は火の灯っているところに何発も銃を撃ち込んだ。
後ろから近づく者に気づかなかったのも、この不気味な火のためであろう。
景健「何を企んでいるかは知らぬ!だがこの景健そうたやすく命は奪われぬぞ!」
高広「よう、ボンクラ」
景健「え?」
背後に忍び寄っていた高広は、持っていた銃で景健が振り向くより早く景健の頭を破壊した。
頭をなくした景健が完全に地に横たわると、高広は屍骸を見下しながら大笑いした。
高広「ハハハッ!たやすく命奪っちゃったよバーカッ!!ボンクラッ!ハハハハハッ!!」

高広「景持。うまく行ったぜ。このボンクラの銃も回収した。これは後でお前に渡すぜ」
景持『よくやった。ははは。思ったよりも上手くいったな』
高広は景健の武器を回収しながら、トランシーバーに向かって話しかけた。
高広「それで景持。これからどうするつもりだ?」
景持『さあな・・・・・まあ、お屋形様でも探すか?』
100埋毒 5/5:05/02/06 20:11:30
高広「その事なんだが、オレの話、ちょっと聞いてくれるか?ハッハッハ・・・・」
トランシーバーを片手に、高広は笑いながら言う。
高広「さっきの放送、覚えてるか?・・・・バカ違う、死んだ奴じゃねえよ。ああ、それだ。
   ・・・・お屋形様と晴信がミカドを狙うって話だ。
   重要なのはそこじゃないけどな。その後・・・・殺した者には褒美をやるってところだぜ。
   ・・・・ん?ああ、その通りだよ。俺は晴信とお屋形様を殺そうと思ってる。
   ・・・・ははは、そんなに驚くな。いいか、よく聞け。多分ミカドの褒美ってのはこの島からの脱出だと思うぜ。
   ・・・いや、推測だよ。しかしそれ以外に考えられないだろ?そこで、だ。お前にも協力してもらいたい。
   ・・・・何言ってんだ。良く考えろ。@全員殺すAミカドを殺すB晴信とお屋形様を殺す。どれが一番楽だと思う?
   ・・・・ああ、そうだ。三番だろ?・・・・・まだ考えてるのか?仕方ないな。
   じゃあ、お前が晴信を殺れ。俺がお屋形様、いや景虎を殺す・・・・ああ・・・こちらこそありがとよ」
高広が悪魔の計画を話し出す。直後、トランシーバーを離し、こう呟いた。
高広「誰だってこんな所から逃げてーよな・・・楽な道があるなら誰だってそっちを選ぶさ・・・・」
直後、景健の死体を蹴り飛ばした高広は、景虎に対しての憎悪、殺意を隠さずに高笑いした。
高広「はははははッ!!ざまあねえやなあ、軍神!てめえの敵は味方だよ!ハッハッハッハッハァ――ッ!!」

【05番・安居景健 死亡】

【37番・北条高広 ショットガン・イサカM37フェザーライト、トランシーバー(片方)】
【12番・甘粕景持 トランシーバー(片方)、ジッポ、アサルトライフル・AK47】
101修正:05/02/06 20:18:49
【12番・甘粕景持 トランシーバー(片方)、ジッポ、アサルトライフル・AK47】

【12番・甘粕景持 トランシーバー(片方)、ジッポ、アサルトライフル・AK74】

お詫びして、訂正します。
102逆恨み ◆IVgdXngJC6 :05/02/06 23:06:56
「きんにっくきんにっく〜♪俺のきんにっく〜日本一〜♪」
「ハァ・・・。ご機嫌ですね、綱成殿」
「お!?分かるかね。いやぁ、タンパクを取ることは筋肉にとって、とても重要なんだよ。だからね、これから食料配布場所に行くと思ったらウキウキしてきたんだよ」
「・・・そうなんですか・・・。でもですね、先程の知らせで別の場所で配布が始まっ――」
「きんにっくきんにっく〜♪フフフ〜ン♪」
「(人の話聞けよ、筋肉馬鹿が!)」
そうこうしている内に、二人は当初の目的地である1-Eに辿りついた。
既にそこには食料は無く、閑散とした林が広がっているだけだった。
どうやら天皇の手の者が、きれいに始末をした後だったらしい。
「・・・これは一体どういうことだ?タンパク質が・・・筋肉の源が無いではないか!?」
「・・・ですから天皇の知らせで、配布場所が変わっ――」
「おのれ、正親町帝めッ!この地黄八幡を騙しおったな!!」
「だから、そうじゃなくて――」
「おおぉぉぉーーー!!!筋肉の怨み、必ず晴らしてくれるわ!!!!」
「ハァ・・・。もういやだ・・・」

【82番北条綱成 『木太刀』『ヌンチャク』】
【53番宍戸隆家 『ブーメラン(訂正予定)』】両者1-E

綱成は天皇に逆恨みしています
103修正:05/02/06 23:52:17
>>101
もう一度、修正します。なんども申し訳ありません。

【37番・北条高広 『ショットガン・イサカM37フェザーライト』『モトローラ トランシーバ T5900』】
【12番・甘粕景持 『モトローラ トランシーバ T5900』『ジッポ』『アサルトライフル・AK74』】(共に3-B廃墟付近)
(天皇の褒美を島からの脱出と考え、景虎&晴信を殺す事を目的とする)
104Campfire 1/3:05/02/07 20:10:10
刃こぼれがしても、なお美しい破邪の刀に、べっとりとつく元忠の血を懐紙で拭き取りおえて、義輝はやっと口を開いた。
「そこの者達、敵か味方かは知らぬが、礼を言う」
義輝の堂々とした声に、初日の義輝を思い出したのか、安心した助言者達は藪の中から姿を現した。
一人は右腕に鎖帷子を着て、いかにも武人という風だが、その中から武士としての品性を感じとれる男。
もう一人はかなり傾いた風体ながらも、傲慢とか、尊大と言った感じが感じられない飄々とした男。
「アンタは?」
馴れ馴れしく、傾いた男の方が尋ねてくる。姿に似合った風な口調がそれらしい。
「人に名を尋ねる時はこちらから名乗るのが礼儀だろう、重秀」
もう一人の武人風の男がたしなめると、その重秀と呼ばれた男はばつの悪そうな顔をして俯く。
「良い、余は足利義輝、その方らは?」
二人がそうこうしているうちに、義輝は先に名を名乗った。
その名を聞いて、予想はしていたが、二人は驚く。しかし、その表情は微妙に違っていた。
「貴殿がが、十三代将軍の・・・」
「誰かと思えば能無し将軍か・・・」
正反対の感想が同時に二人の声から漏れる。
慌てて義輝に暴言を吐いた男をもう一人が謝らせようとした。が、
「良いのだ、確かに私は将軍とは名ばかりのただの一人の人間だ。」
義輝は自嘲気味に自分への批判を肯定した。
「・・・ですか、将軍様は度量が大きく、助かりました。あっと、申し遅れもうした私は武田の家臣、飯富昌景と申す者、こいつは」
昌景が重秀を哨戒しようとした矢先、重秀は昌景の言葉を遮って怒声を上げた。
「名乗る名など無い!こんな奴に教える名など持ち合わせておらん」
ぶっきらぼうに怒鳴る。そのまま重秀は続けた。
105Campfire 2/3:05/02/07 20:11:19
「俺はな、無能な癖に良い御身分になっている奴が大嫌いなんだ、昌景お前にも言ったろう?」
話を振られた昌景はどういって良いかわからず、ただ二人の顔を見ている。
―戦の駆け引きならわかるが、この様な事の駆け引きはわからぬ。重秀のいう事もわからんでもないし・・・
内心でそう呟く。しかし、昌景が結論を出す前に、義輝が先に口を開いた。
「確かに、余は将軍足りえん。それはおぬしの言う通りだ。だがな、少なくとも余は救えるものは救っていこうと思って、この剣を握っているのだ、それを理解して欲しい」
良いながら素直に、軽く頭を垂れたのは、義昭を死なせてしまった忸怩からであった。
以前の彼ならば、多かれ少なかれ反論していたであろう。
重秀も義輝の真摯な態度に毒を抜かれたように沈黙した。
昌景もこの流れを見て、義輝に感心し、重秀を目で促した。
「偏見で物を言ってすまん。・・・鈴木重秀だ。」
剣呑な雰囲気はその一言で取り払われた。

しばらくして、雲も出てきて当たりは暗くなり、義輝達三人は火を炊いていた。
夜の森の中で離れ離れになるのは危険だし、夜露で体が冷めないように炊く火は敵をおびき寄せる材料としては十分な事もある。
しかし、それ以上に三人が意気投合したからというのが、一番の理由であった。
三人は火を囲むようにして、話をしていた。
「そんな、薬が・・・なんとも言い難い」
「けったくそ悪ぃ」
義輝から薬の話を聞いて、二人はそう感想を漏らした。
「結局、その者の名前もわからなんだし、腕は川に薬の入った袋ごと捨てた。弔ってやりかった。」
義輝はこの島ではじめて人を切ったことを思い出して、悔恨の情を顔に浮かべた。そんな義輝を
「気に病むことはありません、そのもののことを心に留める義輝様の心がその者への慰めとなりましょう」
昌景が慰め、
「そうだ、憎むならこんな馬鹿らしい事を考えた天皇を恨めってんだ」
重秀が場の空気を和らげた。
106Campfire 3/3:05/02/07 20:13:13
・・・・・。
「しかし、気になるな、その男。」
今度は昌景らの話を聞いた義輝が感慨深げにつぶやく。
「幸盛がですか?」
昌景がそう名前を出していうと、重秀も思い出したように、
「そうそう、確か幸盛を探してたら、見失ってたまたまあの場面に居合わせてしまったんだ」
と言って、立ち上がり、辺りを見回し始めた。
「まぁ待て、この夜闇の中、やたらめったらに探しても意味がない、また夜が明けてから、探そう」
言いながら、昌景は火に枯れ木を放り込む。
ぱちと木が熱さで割れる音とともに火の粉が舞い上がった。
そして火の粉が湿った風に燻り消えるか否かの瞬間だった。

ズダダダダダダダダダ・・・
森の奥で、射撃音が轟き、同時に悲鳴とも断末魔とも取れる声が上がる。
「何だ!」
明らかに異常な状況に三人はそろって立ち上がる。
「向こうの方か!?」
音の方向を確認して、昌景が指を指す。二人もそちらのほうに目をやった。
三人は素早くバッグを肩から下げると、焚き火の中の一際長い棒を持った昌景を先頭に森の中を疾走し始めた。

【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(刃こぼれ)』】
【29番 飯富昌景 武器不明】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾希少)』】3-E付近で銃声を聞き急行
107上条の奇妙な冒険 1/9:05/02/09 03:31:38
4-D地点の森中、利家は己の武器『SPAS12』を構え、ある人物に照準を絞っていた。
もう既に日は落ちて辺りは真っ暗だ。これほど暗ければ、簡単に人など見つけられないはずである。
だが、随分離れているにも関わらず、利家の視界の中には明らかにおかしな動きをしている人物がいる。
利家「・・・・・なんだ・・・・アレは?」
利家がそう呟くのも無理は無い。その人物の動きが明らかにおかしいのだ。
なにやら動きを『ビシィッ!』と決めたかと思うと『クネクネェ〜』とした動きをする。
ポーズを決めている・・・・とでも言えばいいのだろうか。それもかなり角度的に厳しく。
利家(・・・・やれやれ。またああ言った手合いか・・・・)
そう思いながら、利家は刀を持った男(柿崎景家)や今川義元の事を思い出した。
なぜだか、自分達が遭遇するのはいつも気の触れた、狂った者達ばかりだ。
主君である信長や、勝家、成政達と会えるのは一体いつになるのか。
そう考えると利家はため息をつき、また銃を構えながら、その怪しげな人物に近づいた。

利家「おい、お前。そこのお前。さっきから一体何がやりたいんだ?」
まだ相手の武器や戦意の程はわからないため、利家は木の陰に隠れ、威圧的にそう話しかけた。
だが、銃で狙いをつけられているにも関わらず、その人物-57番・上条政繁-は
おかしな動きをやめようとしない。さすがに利家も少し苛立ち、やや声を荒げた。
利家「おい!お前人の話を聞いてるのか!?何がやりたいんだ、と聞いてるんだよ!」
その怒声はさすがに耳に入ったのか、上条は動きをピタリと止めた。
そして、ゆっくりと手を上に上げ、目を利家に向ける。あくまで、大胆不敵な笑みを浮かべながら。
利家(手には・・・・何も持っていない、か・・・・どうやら武器は種子島の類ではないようだな・・・・)
自分が優位な事を感じたのか、利家が口を開こうとする。だがその刹那、上条が素早く口を開く。
上条「ヘイッ!!次にお前は『お前は誰だ』と言うッ!!」
利家「お前は誰だ?・・・・・ハッ!?」
108上条の奇妙な冒険 2/9:05/02/09 03:33:24
利家はつい持っていたショットガンを撃ちそうになった。
己の思っていたことをそっくりそのまま言い当てられたのだ。
驚く利家に対し、上条はさらに言葉を続ける。
上条「ヘイあんたッ!あんたはクセェーッ!!
   あんたから『コイツ何者だ?』って思ってそうな臭いがプンプンするぜッ!!
   そんな臭い振りまくんで自己紹介してやるがよォーッ!」
利家はつい持っていたショットガンで撃ちたくなった。
戦意が無い者に対し銃で撃とうとは思っていなかったが、コイツを撃っても武士の誇りに傷はつかないような気がした。
そんな利家の思惑を知ってか知らずか、上条は言葉を途切れさずにまくしたてた。
上条「おれぁ上条政繁!一緒に行動してた仲間とはぐれちまったのさこのトンチキがッ!
   銃を構えつつも撃たない甘ちゃんのアンタが好きだから一つお願いするぜッ!!」
利家「じゃあ撃っていいか?」
暫く沈黙が続く。
上条「・・・・・いや・・・・すまん・・・・・調子に乗りすぎた・・・・仲間とはぐれてヤケになってたんだ・・・」
急に上条の態度がしおらしくなる。それを見て、利家は急に上条が哀れになった。
ここで自分が上条を撃ち殺したら、コイツの人生惨め過ぎる。悲し過ぎる。阿呆過ぎる。
そう思った利家はため息をつき、銃を構えつつも上条にいくつか問いかけた。
利家「上条・・・・と言ったな。お前はどこの家の者だ?」
上条「長尾家の一門衆だ。もう一人、長尾家の・・・正確には違うが・・・まあ、その人間と行動していたんだ。
   ところが、この夜の闇ではぐれちまってなあ・・・・・あんたは?」
利家「前田利家。織田家の人間だ。お前の武器は?」
上条「使い物にならねえよ・・・・種子島でもなきゃあ、刀や槍でもねー。書物・・・ってとこか」
利家「・・・・失礼だが聞いていいか?お前今までどうやって生きてきたんだ?」
109上条の奇妙な冒険 3/9:05/02/09 03:34:32
上条「仲間に助けられてな。もっとも今まで誰一人殺しちゃいないがね・・・・」
利家と上条は質疑応答を繰り返す。ふと言葉が途切れた時、上条が急にこんなことを言い出した。
上条「・・・・なあ・・・・申し訳ないんだが、ここは見逃しちゃくれないか?」
その言葉で、利家はふと我に返る。そして、また銃を構えなおした。
利家「・・・・悪いが・・・・長尾家の人間を見逃すわけにはいかないな。
   お前も生きたいかも知れないが、それは俺だってそうだ。誰だってそうだ。
   寝首をかかれる可能性のある人間を、生かしておくわけにはいかない」
そんなことを言いながら、利家はふと思った。
利家(・・・・いったい、自分はなぜこんな所にいるのだろう)
何度も思った疑問だ。答えは出ない事も知っている。
ずっと答えも出ぬまま、いずれ己の力ではどうしようもない強い者に会い、きっと自分も死ぬのだろう。
義元の顔や、あの美しい刀を持った男の顔を思い出すと吐き気がする。
あんな顔では絶対に死にたくない。せめて倒れるにしても後悔を残さず、笑って死にたい。
今までは殺さなければ殺されていた。ただ、今回の場合はどうなのだろうか?
ここで敵意の無い者を殺し、俺は笑って死ねるか?それとも、悔いを残して死ぬのか?
―――その葛藤が言葉と化して、利家の口から出た。
利家「・・・・どうなんだ?ここで生き延びて、お前はどうする?武器が無ければ死ぬだけだろう?」
利家の抱えていた葛藤が、なぜそんな言葉になったのかは利家しか知らない。
だが、確かにその問いはこの狂気の真意でもあるのだろう。この島にいる大半の人間は
『殺さなければ殺される。だから生き抜くために、寝首をかかれる前に殺す』
そう思うのだろう。役に立たない武器を与えられた上条は、ここで生き延びても誰かにきっと殺される。
上条「ははは・・・・そうだな・・・・・俺は生き延びるという『結果』だけを求めてはいない。
   その『結果』だけを求めていたら人は近道をしたがるものだ・・・・・」
だが銃を向けられている上条は、笑いながらそう答えた。
110上条の奇妙な冒険 4/9:05/02/09 03:35:54
上条「我らがお屋形様が、帝を暗殺しようという知らせを聞いた。あんたもだろう?」
利家「・・・・ああ」
上条「生き延び、殺すことだけを考えていれば、心も次第にくすんでいく。
   俺は大切なのは『真実に向かう意志』だと思っている。
   お屋形様に出会い『帝の真意を問いただす』という真実に向かおうとする意志さえあれば
   たとえこの上条が死んだとしても、同じ意志を持つ誰かは『真実』に辿り着けると思うだろう?
   向かっているわけだからな・・・・・違うかい?」
利家「・・・・・・それは全部その書物に書いてあったことか?」
いつの間にか書物を取り出し言葉を引用していた上条に、利家は問いかける。
上条「ばれたか。その通り。だが、今の言葉に嘘偽りは無い」
上条は笑いながら答えた。この道化にも似た男に、つい利家も笑いを漏らす。
―――直後、利家は構えていたショットガンを下に向けた。
利家「俺の・・・いや、俺達の目的は『主君や家中の者に会う』事だ。
   その邪魔をする奴や、あるいは織田家の敵となる奴なら殺す。
   ・・・・まあもっとも、今までは殺すも何も散々危ない目を見てきたんだが・・・・。
   ・・・ああ、いや、つまり、長尾家の奴を生かしておく道理はないんだが・・・・・構わんさ、行け」
上条「・・・・マジで!?」
『ビシィィッ!』と妙なポーズを決めている上条に、すでに戦意は無い。
利家もそのことは十分にわかっていた。
利家「嘘は言わん。お前みたいな阿呆を放っておいても、俺達が不利になるとは思わん。
   甲斐の虎と越後の龍が本当に帝を殺すつもりなら、織田家にも損はないだろうしな・・・・・」
上条「おッ!こりゃツイてるぜッ!このタマナシヘナチンがッ!!」
利家「・・・・やっぱり撃っていいか?・・・・そんな事よりお前、仲間とはぐれたんだろう?
   こんなところでそんなポーズなんか決めていていいのか?」
111上条の奇妙な冒険 5/9:05/02/09 03:36:59
上条「おー!っとぅ!こりゃいけねえ!上条政繁はクールに去るぜッ!じゃあな、あばよッ!」
利家「ああ・・・・・あ、そうだ!おい!ちょっと待・・・・!」
ふと思い出した事を聞こうとした利家の言葉も聞かず、上条はクールに去って行った。
夜の闇のせいもあるのだろうが、もう姿は見えない。
利家「・・・・・・足の速い奴だ・・・・・そもそも、さっさと探しに行けばいいのに・・・・」
少し苦笑しながら、利家はショットガンを担ぎ、また今来た道を戻りだした。
ふと、先ほど上条に聞こうとした疑問を思い出し、後ろを振り返り、呟く。
利家「長尾家だが、長尾家ではない人物とは・・・・一体どういう事だ?客将のことか?」

利家は上条と離れた後、自分の相棒、丹羽長秀が待つ森の中へと戻っていた。
長秀「お、戻ってきたか。随分遅かったな。で、どうだった?」
利家「しかじかかくかく・・・・・といったところだ」
長秀は利家から一部始終を聞くと、長秀は少し考えたあと、こう言った。
長秀「わかる気がする・・・甲斐の虎と越後の龍が帝を倒そう、と言う事はな。
   えてして、人を惹きつける人間は人の思い通りになることを嫌うものだ。
   だが・・・・・いかに日ノ本に名高き龍虎と言えど、私は帝に勝てるとは思わないな・・・・・」
利家「・・・・・なぜだ?甲斐の虎と越後の龍だぞ?敵う者などいないと思うんだが・・・・」
やや想像外のことを言われたのか、利家は疑問をぶつける。だが、あくまで冷静に長秀は言葉を返した。
長秀「普通はな。だが、帝に挑むために使う武器は何だ?きっと南蛮武器だろう?
   その南蛮武器は帝の用意したものだ。軽くこんな物を我々に渡せるんだぞ?」
確かに、利家の武器や長秀の武器、いやこの島の百人全員の武器は帝が用意したものだ。
これだけのものを渡せるのだから、帝もこれより強力な武器を持っているかもしれない。
支給された武器でさえ想像を超えているのに、それより強力な武器と言ったら・・・・?
ふと、利家が珍しく考え込む。そして一言呟いた。
112上条の奇妙な冒険 6/9:05/02/09 03:38:00
利家「・・・・・ならば我々も帝を倒すために、龍虎と共に立ち上がるか?
   どの道死ぬのであれば、巻き込まれたもの同士で殺し合うより、帝を・・・・」
長秀「・・・・馬鹿な事を考えるな。大勢が決まるまで、私達は生き延びることだけ考えればいい」
利家の言葉を、長秀が遮った。そしてすぐにまた喋り出す。
長秀「それに『我々』と言ったが、私は甲斐の虎や越後の龍と行動はともには出来ない。
   私が仕えるのは織田家、信長様のみだ。それ以外の人間を主君と思う気は無い。
   まずないと思うが・・・信長様が帝の味方をするなら、私もきっとそうする」
利家「そうか・・・・・そうだな・・・・」
長秀「いや、お前は違う」
やむを得ず賛同した利家に対し、長秀はなおも言葉を続ける。
利家への激励か、あるいは自嘲の念か、長秀は喋り続けた。
長秀「お前は十分すぎるほど意志が強い人間だ。
   刀を持った男の時の事だ。腰が引けた私に対し、お前は銃を持ち鬼を撃ち抜いた。
   さっきの話だってそうだ。お前は『後悔せず、笑って死にたい』と言ったらしいな。
   私はそんな事考えもしなかった。ただ漠然と『死にたくない』と思っていただけだ」
利家「さっきから何が言いたいんだ?お前らしくないな。筋道立ててわかりやすく話せ」
回りくどい長秀の言葉に、利家が口を挟む。
すると長秀は軽く息を吐き、また利家を見て話し出した。
長秀「・・・・これから先、この戦・・・とは言えないか・・・・がどうなるかはわからん。
   ひょっとしたら信長様に出会った時、私達は苦渋の選択肢を突きつけられるかもしれん。
   私は弱い。統率者が欲しいんだ・・・・そして私にとっての理想の統率者が信長様なんだ。
   だから例えその道の先が絶望や地獄でも、信長様にきっと従う事だろう。
   だが・・・さっきも言ったが、お前は違う。お前は意志の強い人間だ。
   決して後悔しない、自分の意志が選ぶ道を進め。必要とあれば私を殺してでもな。
   悔いて死ぬためでなく・・・お前が望む、『笑って死ぬため』にな」
113上条の奇妙な冒険 7/9:05/02/09 03:39:24
利家「笑って、か・・・・・・・・」
利家は少し考え込み・・・・・しばらくして、口を開いた。
利家「・・・・・なんでそんなことを言い出した?」
長秀「さあな・・・・甲斐の虎と越後の龍の・・・・・・いや、ただ弱気になっていただけかもしれん。
   その上条という男の意志うんぬんの話に影響されたのかもしれないしな・・・・」
長秀が自嘲気味にそう言うと、それを受け利家は急に笑い出した。
利家「ははは。織田家の名物、米五郎左はこの俺を後悔の中で死なせるつもりか?」
長秀「・・・・なぜだ?・・・・・お前人の話を聞いてなかったのか?」
利家「聞いていたさ。最後のところしか参考にはしないがな。
   感想としては『お前は必要以上に暗く考えすぎだ』ってところかな?
   だいたい、『必要とあれば』でお前を殺して、後に俺が笑って死ねると思うか?」
長秀「・・・・・」
利家「織田家の人間は、きっともう誰も死にはしないさ。今生きている全員で必ず生きて帰る。
   悔いて死にもしない。笑って死にもしない。
   俺もお前も親父殿も成政も、そして信長様も信行様も、全員この島から笑って尾張へ帰る!」
・・・・荒唐無稽すぎる。長秀の思った感想はまさにそれであった。
だがしかし、それと同時に『この能天気振りには救われる』そうも思っていた。
利家とて戦っていないわけではない。十分すぎるほどこの狂気の過酷さはわかっているはずだ。
それでもこう言える利家の意志に、長秀の不安は吹き飛ばされていた。
利家「考えてもみろ。お前の知略と意志で、俺達は今川義元を倒したんだぞ。
   そんなお前が『己は弱い』などと言っていれば、義元に殺された織田家の兵への侮辱だろう?
   ・・・心配ないさ、お前も十分過ぎるほど強い。それ以上に、俺や親父殿や信長様も強いんだ。
   それだけ織田家の人間は強い・・・・全員でできない事など、きっとない!」
114上条の奇妙な冒険 8/9:05/02/09 03:40:29
長秀「そうだな・・・・・笑ってこの島から出よう・・・・必ず!」
長秀はその言い、笑った。
方法はきっと何も無い。あまりにも甘い考えであることもわかっている。
だがそう思う事により、心によぎる不安や絶望を吹き飛ばす事は出来る。
ただただ、笑って生き延びてやる。この島に唾を吐いて別れを告げてやる。その時は全員一緒だ。
その意志で心は希望を持った。
長秀「ははは・・・・・ところで、山菜はどうした?最初はそれを聞いたんだぞ」
利家「え?」
・・・・そうだった。俺は山にあるかもしれない山菜を探していたんだ。
そこで上条に会ってしまい、山菜の事を忘れて戻ってきたんだ。
利家の頭の中でそんな言葉が流れた。
長秀「・・・・忘れてたな。まあ、恐らく無いと思うが・・・・」
利家「むむむ・・・・お前は次に『何がむむむだ』と言うつもりだろう!」
長秀「・・・・いいから少し黙れ」

義清「ん・・・・・上条殿?今まで一体どこに・・・・・」
上条「おおッ!ついに会う事が出来たぜッ!義清兄ィッ!」
義清「・・・・・上条殿。与えられた武器を見てから妙に気分が高揚しているようですが・・・・」
利家と離れた後、森の中をさまよっていた上条はやっとはぐれた仲間-94番・村上義清-と合流した。
上条が今までのいきさつを話すと、初老である義清の顔がややほころんだ。
義清「そうか・・・・ふむ、織田家の人間も捨てた者ではないのかも知れませんな・・・・・」
上条「で、どうするんだい?兄貴。勿論お屋形様達と合流だろォ?」
その言葉を聞いたとき、ほころんでいた義清の顔が急に険しくなる。
115上条の奇妙な冒険 9/9:05/02/09 03:41:29
その顔の変化に、おどけていた上条も少し背筋が寒くなり、おかしなポーズを止めた。
義清「・・・・わしにはまだ信じられませぬがな・・・・景虎殿と憎き武田晴信が手を組むなど・・・・」
長尾家であって長尾家ではない男・・・・それはこの村上義清であった。
真田幸隆に居城を追われた後、長尾家に客将として存在していたのである。
上条「・・・・・それで・・・・義清。どうする?俺の意見としては、お屋形様と・・・・」
義清「それには異存はありませぬ、が・・・・・晴信めがうかつな事をしでかせば」
発した言葉を斬るように、義清が持っていた槍を振るった。瞬間、旋風が巻き起こる。
上条には、辺りの木がなぎ倒されたかのような感覚を受ける。
上条政繁とて武勇の知れた武士である。にも関わらず、槍の一振りで威圧されてしまっていたのだ。
義清「・・・・・この義清、黙って見てはおりませぬ」
持っていた己の武器、天下の名槍『日本号』を構え、義清はそう呟いた。

【72番 丹羽長秀『Mk2破片手榴弾×2』『矢×9本』】&
【86番 前田利家『ショットガンSPAS12』】(両者ともにD-4森)
(他の織田家中の者を探しています)

【57番 上条政繁『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻』】&
【94番 村上義清『槍・日本号』】(両者ともにD-4森)
(武田晴信&長尾景虎を探しています。義清は晴信を少し恨んでいます)
116 ◆IVgdXngJC6 :05/02/09 14:28:29
01赤尾清綱   26岡部元信×  51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政○  77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行○  53宍戸隆家○  78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家○  79北条氏照○
05安居景健×  30小山田信茂× 55下間頼照×  80北条氏政○
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉×  81北条氏康×
07浅井久政○  32柿崎景家×  57上条政繁○  82北条綱成○
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○  83細川藤孝○
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀   60滝川一益○  85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×  86前田利家○
12甘粕景持○  37北条高広○  62武田信繁   87真柄直隆○
13尼子晴久○  38吉川元春×  63武田晴信○  88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞   64竹中重治×  89松田憲秀○
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×  91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如○    67鳥居元忠×  92三好長慶○
18石川数正○  43高坂昌信○  68内藤昌豊○  93三好政勝×
19磯野員昌○  44香宗我部親泰 69長尾景虎○  94村上義清○
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景×  95毛利隆元○
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○  96毛利元就○
22岩成友通×  47斎藤道三   72丹羽長秀○  97森可成×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉×  98山中幸盛○
24遠藤直経×  49斎藤義龍○  74蜂須賀正勝○ 99六角義賢×
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房○  100和田惟政○

×印:死亡確認者 49名
○印:生存確認者 45名
無印:未登場者  6名
117 ◆IVgdXngJC6 :05/02/09 14:29:44
【18番 石川数正 『催涙スプレー』『武器不明』】現在地不明
【42番 顕如 『FFV M2カール・グスタフ(望遠レンズ附属、残弾1発一時使用不能)』】3-I海に逃亡
【98番 山中幸盛 『六角棒』『ダマスカスナイフ』】3-F地点から移動
【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】3-C荒野から移動
【48番 斎藤朝信 『モップ型暗器』】3-C荒野から移動
【60番 滝川一益 『十手』】 2-D畑より出発
【100番 和田惟政 『不明』】2-D畑より出発
【52番 佐々成政 『武器不明』】4-D森林入り口地点
【54番・柴田勝家 『マテバ 2006M(残弾6発)』『備前長船』『GLOCK26』】4-F地点
【75番・馬場信房 『鉄槍』】4-F地点から移動、現在地不明
【06番 浅井長政 『FN5-7(残弾?)』】4-C湖岸
【71 番長坂長閑(ノドカ) 『無銘・匕首』】現在地不明

交戦中
【74番 蜂須賀正勝 『オーク・ダブル・アックス』】VS【87番 真柄直隆 『長曾禰虎徹』】3-F森で交戦中
【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『和泉守兼定』】VS 【28番 織田信行 『コルト アナコンダ (残弾1発)』『ミネベア9mm機関拳銃(残弾5発)』 】4−B森で交戦
【80番 北条氏政 『南部十四年式(弾切れ)』『コブラナイフ』『苦無(10本)』『鍋(頭に装備)』】VS【65番長曽我部元親 『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾5発)』】80番北条氏政と対峙
118 ◆IVgdXngJC6 :05/02/09 14:32:00
パーティ
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾30発)』】&【69番 長尾景虎 『片鎌槍』】&【68番 内藤昌豊 『火炎瓶(4本)』】2-Dから移動 なお、晴信・景色は背中を負傷。
【72番 丹羽長秀 『Mk2破片手榴弾(2個)』 『矢(10本)』】 &【86番 前田利家 『SPAS12(残弾?)』】両者ともにD-4森 (他の織田家中の者を探しています)
【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『USSR AK47 カラシニコフ(残弾少量)』『ボーガン(5本)』『十文字槍』 (軽い打撲。命に別状はなし)】&【46番 小早川隆景 『グロック17C(残弾17+1発)』(右腕骨折・体調最悪、意識は少し回復)】
負傷の為進行遅延。4-Cで浅井長政をやり過ごす
【13番 尼子晴久 『鎖鎌』】&【95番 毛利隆元 『手裏剣(8個)』】4-B辺り?で何かを拾う
【90番 松永久秀 『青酸カリ(小瓶に入ってます)』】 &【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢・10本)』】合流後5-H地点に向ってます。
【19番 磯野員昌 『呉広』】&【24番 遠藤直経 『マクアフティル』】&【09番 朝比奈泰朝 『青龍偃月刀』】目的、浅井家臣との接触。今川親子が死んで、泰朝の目的不明
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ』 食料(少量)】&【29番 飯富昌景 『武器不明』】&【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(刃こぼれ)』】 3-E付近で銃声を聞き急行
【89番 松田憲秀 『スタンガン』】&【79番 北条氏照 『武器は不明』】5-Cより移動
【82番 北条綱成 『ヌンチャク』『木太刀』】【53番宍戸隆家 『キャット・オブ・ナインテイル』】両者1-E
【37番 北条高広 『ショットガン・イサカM37フェザーライト』『モトローラ トランシーバ T5900』】&【12番・甘粕景持 『モトローラ トランシーバ T5900』『ジッポ』『アサルトライフル・AK74』】共に3-B廃墟付近
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻』】& 【94番 村上義清『槍・日本号』】両者ともにD-4森 (武田晴信&長尾景虎を探しています。義清は晴信を少し恨んでいます)

未回収アイテム

【15番 荒木村重 『毒饅頭』は5-B民家に放置】
119 ◆IVgdXngJC6 :05/02/09 14:33:16
正親町天皇・・・・・今回の狂気ともいえる余興の主催者。最後まで生き残った者に、天下を約束する。実は剣術の天才?
06番浅井長政・・・・父・久政と義兄・信長を助けようとしている。99番六角義賢の襲撃でノドカと離れ離れになる。
09番朝比奈泰朝・・・直経・員昌が気に入り行動を共にする。
11番足利義輝・・・・九字の破邪刀で大悪を斬ることを決意。妖刀を持つ、67番鳥居元忠を誰かの助けで斬る。
12番甘粕景持・・・・高広に誘われ晴信・高広の殺害計画に加担。
13番尼子晴久・・・・尼子の宿敵である毛利家の長男・隆元と意気投合。以来、隆元と行動を共にする。河で何かを発見
18番石川数正・・・・仲間と思わせ安堵させた元康を、催涙スプレーで襲った男。
19番磯野員昌・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・直経と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
24番遠藤直経・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・員昌と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
27番織田信長・・・・天皇に魅せられた男。自分の方が天皇より優れていることを証明するため、殺し合いには積極的に参加。孤高のジェノサイダー。
28番織田信行・・・・兄・信長の理解者であった政秀に助けられ、何かが変わった?
29番飯富昌景・・・・武田家屈指の強さを誇る男。重秀の考えに賛同し、晴信捜しを手伝わさせる。晴信を心から尊敬している。
37番北条高広・・・・帝の褒美が島からの脱出と考え、景持を誘い晴信・景虎の殺害を企む。
42番顕如・・・・・・余興に乗り、殺し合いに積極的に参加した破戒僧。もはや仏を超えた戦いぶりを見せる。
43番高坂昌信・・・・似たような境遇の朝信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、晴信を捜しに行く。
46番小早川隆景・・・父・元就と合流。幸盛の六角棒により右手を負傷するも、元就の重荷になるまいと、それを告げぬ強い意志を持つ。
48番斎藤朝信・・・・似たような境遇の昌信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、景虎を捜しに行く。
120 ◆IVgdXngJC6 :05/02/09 14:34:51
49番斎藤義龍・・・・父道三を偽者だとして、敵討ちに萌える。
52番佐々成政・・・・尊敬する信長の力になるべく捜索を決意する。
53番宍戸隆家・・・・なにやらわけもわからず綱成に拉致された可哀想な人。現時点で目的は不明。
54番柴田勝家・・・・馬場との決闘中、仲間割れで羽柴秀吉と佐久間信盛を失う。
57番上条政繁・・・・ジョースター家の一人。景虎との合流を目的とし、義清と行動を共にする。
58番鈴木重秀・・・・鉄砲傭兵集団、雑賀衆頭領で鉄砲の名手。人や権力に縛られるのを嫌う気ままな自由人。天皇殺害を心に決め、昌景と行動を共にする。
60番滝川一益・・・・忍びの心得を持つ男。十手片手に信長の下に馳せ参じる決意をする。
63番武田晴信・・・・武田信玄の名で知られる名将。ひょんなことから、景虎と行動を共にする。下間頼廉に襲われたところを内藤昌豊に助けられる。
65番長曽我部元親・・弱き者に牙を向く器量無しを嫌悪する、姫若子と呼ばれた男。現在、北条氏政と対峙。
68番内藤昌豊・・・・晴信らを襲っていた下間頼廉を倒し、行動を共にする。
69番長尾景虎・・・・上杉謙信の名で知られる名将。ひょんなことから、晴信と行動を共にする。相当な実力者。
71番長坂長閑・・・・ノドカ。実は歩き巫女なる女忍びで、親方・晴信を探しているところを浅井長政と会う。長政との関係に期待大。
72番丹羽長秀・・・・優れた知略の持ち主。相棒の利家に振り回されながらも、幾多もの危険を回避している。
121 ◆IVgdXngJC6 :05/02/09 14:36:02
75番馬場信房・・・・柴田勝家と互角の決闘をした武将。晴信の元に馳せ参じる予定。
79番北条氏照・・・・父の死を悼み、兄と合流を目指す中、松田憲秀と出会う。
80番北条氏政・・・・臆病者。しかし、父・氏康の死をきっかけに、生まれ変わることを決意。まだ実力のほどは解らない。長曽我部元親と対峙
82番北条綱成・・・・自慢のマッスルボディを愚弄されると切れる危ないオッサン。愛すべき地黄八幡。
86番前田利家・・・・『むむむ』が口癖の男。相棒の長秀にいつも怒られている。 槍の又左の異名はいずこに。
89番松田憲秀・・・・氏政・氏照では心もとないと、スタンガン片手に謀反を企てる?氏照と行動を共にする。
90番松永久秀・・・・主君・長慶を操り自分の利にしようと企む。今のところ目立つ動きは無い。
92番三好長慶・・・・久秀を信じているが、実は久秀に踊らされている?
94番村上義清・・・・景虎との合流を目的とするが、晴信に不信感を抱いている。
95番毛利隆元・・・・心の優しい男。晴久と意気投合し、以来、隆元と行動を共にする。忠次の銃撃により右肩を負傷。小川で何かを拾う。
96番毛利元就・・・・息子・隆景と合流。子には優しいが、誠久を嬲り殺すような残忍な一面も持つ。浅井長政の豹変を見て恐怖・進行停滞。
98番山中幸盛・・・・義に篤く、主家想いの忠臣。誠久の無念を晴らすため、打倒毛利を決意する。
100番和田惟政・・・忍びの心得を持つ男。滝川一益の弟弟子。主君義輝との合流を目指す。
信長と信行は、一間ほどの距離を置いて対峙していた。
既に二度目の黄昏の色が辺りに垂れ込めている。
「よく生きていたな、信行」
「兄上も、ご無事なようで何より」
別段、お互いに再会を喜び合うでもなく、短い挨拶を済ませる。
「・・・実は、平手がボクを庇って死にました・・・」
「・・・そうか。爺がお前を・・・」
一瞬、信長の目が悲しみに染まる。しかし、それもほんの一瞬のことで、すぐにいつもの氷のような冷たい目に戻る。
「(こんな目をするなんて・・・一体兄上になにがあったんだ!?)」
しばしの沈黙の後、信行が唐突に切り出した。
「兄上は人を殺しましたか?」
「・・・・・・」
「・・・やはり」
信長の表情から、既に人を殺したのが窺える。それも一人や二人ではないのだろう。
あの氷のように冷たい目が、何も云わなくてもすべてを物語っているようだった。
信行には予想できたことだ。あの兄なら天下がどうとかではなく、純粋に殺し合い参加するのではないかと、ここで遭うまでにずっと考えていた。
「兄上・・・決して自分を見失わないでください。余興に乗っては、帝の思う壺です」
「・・・・・・」
なにも語ろうとしない信長に、信行は一方的に喋り続ける。
「虫のいい話かもしれませんが、今は過去の遺恨にこだわらずに、織田家の総力を結集して事に当たらなければと思います。兄上の考えをお聞かせ願いたい」
「・・・・・・」
「なぜ黙っていられるのですか!?そんなにボクのことが気に食わないのですかッ!?
・・・・・・分かりました、兄上に協力してもらおうとしたボクが馬鹿でした。・・・もう行きます」
そのまま行こうとする信行に、信長が声を掛ける。
「信行、俺は一人でいい。誰の力も借りるつもりは無い」
「・・・兄上らしいな。いいですよ、分かりました。ただボクは行かせてもらいます。恥ずかしいけど、ボクは一人じゃ生きられないから・・・」
勝家・長秀を捜すのを断られた信行は、身を翻して元来た道を引き返していく。
「(断られはしたものの、兄上に遭えてよかったな。勝家や長秀と合流できてから、改めて兄上を迎えに行こう。兄上ならそれまで生き延びているだろう。
・・・それにしても兄上は何を考えているのだろうか。以前はもう少し穏やかな顔をしていたのに・・・)」
信行が無事でいたのはここまでだった。
次の瞬間には、自分の体から血が噴き出しているのを見ていた。
首を刎ねられ、飛んだ頭が自分の体を見ていたのだった。
首のあった部分から、まるで噴水のように噴き出す血を綺麗だと思った。
「(綺麗だなぁ。・・・・・・アレ?・・・・・・おかしいな。・・・・・・あれは・・・・・・ボクの・・・・・・から・・・・・・だ)」
転がった信行の頭を踏みつけながら、信長は信行の血で濡れた相州五郎入道正宗をペロリと舐め、死んだ信行を諭すように呟いた。
「つまらん御託はいい。敵と逢えば、殺るか殺られるか、それだけのことだ・・・」
信行の衣服で残りの血を拭うと、信長はがっかりした顔になる。
「弟の血を吸っても、我が渇きは癒えぬか・・・。やはり奴を殺すしかないようだな」
この光景を、ずっと見ていた者がいる。
52番・佐々成政だった。
成政は、信長と信行が対峙している時に二人を発見した。
しかし、声を掛けれなかった。信長の周りに漂う、異様な空気のためだった。
歴戦の勇士の成政にはそれが殺気だと気付いていたが、お坊ちゃん育ちの信行には見抜けなかった。
成政が二人の前に現れるかどうか思案していると、信長が信行の首を刎ねてしまった。
成政には訳が分からず、ただただ呆然と見守るしか手は無かった。
「(実の弟の首を平然と刎ねるとは・・・。とにかく、この事は親父殿に相談せねばなるまい・・・)」
成政は信長に気付かれないよう、細心の注意をしながら勝家を捜しにその場を後にした。

【28番 織田信行  死亡】『コルト・アナコンダ(残弾1発)』『ミネベア 9mm機関拳銃(残弾5発)』は4-B森に放置
【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『相州五郎入道正宗』】4-B森
【52番 佐々成政 『武器不明』】4-B森(信長の異変を知らせるべく、勝家との合流を目的とする)
125驟雨 1/3:05/02/09 20:27:11
「ノドカーーー!」
あれだけ赤々と燃えていた日も海の彼方に沈み、逆に東の空から湧いてきた冷たい驟雨が、弾丸のような勢いで降りそそぐ中、私は喉も裂けよと声を上げる。
雨は腹からじくじくと溢れ出る血痕を取りさらってくれたが、逆に体温を静かに、けれど確実に奪っていった。
それに、ただでさえ漆黒の闇がたちこめる中、止め処なく降りしきる雨は視界をぼやかし、轟く雨音は私の必死の叫び声を、無情にもかき消している。

美しい水を湛えた湖を何周か廻り、この大雨でみなもが波立つ川に沿って歩き、人がいなくなった廃屋を見てまわった。
「ノドカ!」
暗闇に動きがあったように見えて、振り返る。
しかし、暗闇から出てきたのは何度も点滅する焔の光と、同じ方向から飛んで来る何発もの弾丸だった。
「くっ」
慌てて、廃屋の影に転がり込むようにして隠れる。
浅ましく、儚い期待だったが、それを裏切られた怒りは、私の足をその場に留めるのには十分だった
一瞬、腹に深々と刺さった矢からの鈍痛で廻りの景色がぼやけた。
126驟雨 2/3:05/02/09 20:29:00
そして、その一瞬だった。
さっきの銃撃とは違う方向から男が出てきて、私の前に立ちはだかる。
おそらく、片膝をついて、ぐったりとする私を見て弾丸を受けたと判断したのだろう、霞む目にも隙だらけだと解った。
男は、峰の中程まで刃がきらめき、鞘にも美しい装飾が施された刀を構えもせずに、ただ右手に持っていた。
そして、私がまだ荒い息をしている事がわかると、驚いて刀を振り上げる。
しかし、それが私の体を一刀両断にする瞬間を悠長に待っている私ではない、全身の筋肉をバネのようにして相手に飛びつき組み伏せる。
そのまま、馬乗りになって、しかし、そこで私の行動は止まった。
「やめよう、私はこんなことをしている暇などないのだ」
想像はしていたが私の言葉を聞いた男は訝しげな顔をした。
「私は殺めなくても良い人は殺めたくは無い、去れ。」
振り上げた拳を戻して、そう言うと、男は一瞬考え込んで、変なくらいに素直に
「・・・わかりました」
と答え、刀は預けますと付け加えた。

私はその男に組み伏せた手を離し、立ち上がった。男も遅れて立ち上がる。
「私は浅井長政という者だ。御主、名前は?」
濡れた裾を絞っている男に尋ねる。
男ははっとして、裾を絞っていた手を離し、頭をあげて、こちらに向きなおる。
「おっとすみません、こちは石川数正と申します。先程の無礼を許していただき、かたじけない」
少し軽い気もするが慇懃に数正と名乗った男は謝辞を述べた。
そして、一息おいて目をちらちらとそらす数正の肩に手をかけて話し掛けた。
「ああ、この島で心が荒むのもわからぬでもない、だが、生きよ、そして帰れお前にも、帰りを待つものがいるだろう?」
そうやって諭すようにいいながらも、そうやって、待っていてくれる人―市が、父が、仲間が、そしてノドカが無事に帰った光景を想像できない、私自身に憫笑する。
しかし、そんな事で考え込む私を尻目に、その男はいとも簡単に
「はい、このご恩は忘れません。」
と、答えた。私はのどの奥につっかえる何かを押しとどめて、話を終えた。
127驟雨 3/3:05/02/09 20:30:22
―時間がない。
心の言葉に急かされるように数正に背を向け、また夜闇に沈む道なき道を歩き出した時だった。
背後でかちゃりと無骨な鉄の音がして、続いて雨音にまぎれて、隠しきれていない足音がした。

一瞬で状況を悟った私は、預かった刀を鞘から抜き放ちつつ、素早く振り返った。
そして、体よりも早く、目を向けた先には大体予想していた通りの光景が広がっていた。
廃工場の影に転がっていた廃材と思われる鉄パイプを振り上げた数正がすぐそこまで走ってきている。
悲哀感が半分、怒りが半分。私の心が複雑な気持ちを孕む。
目の前にいる男は今にも、錆が所々に目立つその鉄パイプを振り下ろさんとしている。
私は意図的に複雑な気持ちを取っ払い、目を閉じる。
そして、体が回りきったのと同時に、その回転運動の余力で旋回するように手に持った刀を薙いだ。
その切っ先は、驚くほど軽く、まるで豆腐を糸で斬るかのように肉を斬り、骨を断った。
目は閉じたままであるし、刀を握る手には全く、そのような感覚はなかったが、全身の肌が不思議とそれを感じとった。
回転運動が止まり、再び廃工場に背を向けた時の光景が目の前に広がった。
その直後、草むらに何かがどさりと崩れ落ちる音がしたが、私は振り返らずに、ただ一言「すまない」と言い残すと、その場から走り去った。

しばらく走り続けて、息が上がる中、また彼女の名をやけに激しく、戦慄くように叫んだのは、心の中に溜まった無用な雑念を払う為だったのかもしれない。

【18番 石川和正 死亡】『催涙スプレー』は放置。
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】3-B廃屋から北へ
128無名武将@お腹せっぷく:05/02/09 21:58:40
訂正
【18番 石川和正 死亡】

【18番 石川数正 死亡】
「(こいつらを見逃せば、信長様に難が及ぶやもしれぬと、追って来たはいいが、まさか武田に長尾のような大物とは。・・・さて、どうしたものかな)」
滝川一益は1-E五番トラック到着地側の林にある、欅の巨木の枝から下にいる三人の行動を眺めている。
その格好は昼間、惟政と逢ったときとは違い、全身黒装束に覆われている。
これは普段着ている着物の裏地に縫い付けていたもので、引っくり返せばいいように出来ていた。
昼間に着ていては目立ってしまうが、夜ならばその効果を最大に発揮する代物だった。
一益の追跡は数刻前から続いているが、一向に三人にバレる気配はない。
甲賀出身として、絶対にバレない自信もそれだけの技能も、一益は持ち合わせていた。
下の三人は、まさか一益が頭の上で話を聞いているとは、少しも思わなかった。
「聞いたか?小生らがお尋ね者だそうだ」
「お主とわしのどちらか一人を殺せば褒美を取らせる、か・・・。随分と安く見られたものだな」
それぞれ食料を回収しながら、先程の放送の内容について話している。。
辺りには他に人影は無く(といっても頭上に一人いるが)、無造作に食料の入ったダンボールが置かれているだけだった。
「まあ放っておいたとて、問題はあるまい。帝に牙を剥く小生らを、襲う者はおらぬだろうからの」
「しかし、楽観はできませぬぞ。お館様も景虎殿も、手傷を負われております。もし褒美に目が眩んだ者に、不意をつかれでもしたら・・・」
「昌豊殿、心配してくれるのはありがたいがの、それこそ安く見てもらっては困る。小生には――」
「毘沙門天の加護がある、だろ?」
景虎に最後まで云わせず、晴信があとを続けた。
「・・・なんにしても気に食わん。早めに帝との決着をつけねばならんな」
「(成る程、こいつらの目的は天皇への反逆か・・・。それでも、こいつらを生かしておけば信長様が危ういことに変わりはない。
しかし、十手だけで三人を相手にするのはチト厳しいな。一人づつならばあるいは・・・)」
下ではようやく、それぞれが食料を腰の糧袋に収め終わり、移動を始める。
「(クソッ、此処では駄目か!?)」
一益の願いが通じたのか、昌豊が晴信に向かって云った。
「お館様、ちょっと小便に行ってくるので、さきに行っててください」
「いや、ここで待っていよう。何が起こるか解らぬからな」
「心配には及びません。すぐ済みますから、どうぞお先に」
そう晴信の申し出を断ると、昌豊は一益のいる欅の巨木の幹に小便をし始めた。
「(しめた!こいつ一人なら造作もなく殺れる!)」
一益は、巨木の上をスルスルと移動して、昌豊のすぐ真上に来ていた。
十手を握り、頭を下にする逆さづりの状態で時を計る。
「あの年で妻帯もせず、妾一人置かない景虎の前で、小便などできるかよ。お館様も景虎など放っておけばよいものを・・・」
独り言を云っている昌豊の頭上に、一益が体ごと降ってきた。
十手は見事に昌豊の頭頂部から顎まで貫いていた。昌豊は声を上げるまもなく、ほぼ即死した。
一益は死体を漁り、火炎瓶を見つけると、腰の糧袋と共に奪う。そして落ち葉や枯れ木を乗せて死体を隠した。
しかし、一益に予期せぬことが起きた。先に行ったはずの晴信が引き返してきて、自分に向けて発砲してきたことだ。
火炎瓶を手に入れたとはいえ、U.S.M16A2とでは火力に差がありすぎた。
不利を悟った一益は、一目散にその場を逃げ出す。その一益の耳朶を、晴信が放った銃弾が掠めていく。
さすがに忍の心得がある一益は、なんとか闇に紛れて晴信をやり過ごすことができたが、耳からの出血が酷かった。
撃たれた右耳は無残に吹き飛び、なにも聞こえなくなっていた。
それでも一益は二人の暗殺を諦めない。晴信がいないのを確認すると、傷の手当てもろくにしないまま、元の欅の大木へと引き返していった。
「景虎、ちょっと待ってくれ。やはり昌豊を一人にするのは危険だ。引き返して、三人揃ってから移動するとしよう」
「うむ、ではそうしよう」
「あの馬鹿者め。自分で楽観するなと云っておきながら、一人でいては説得力がないではないか」
「小生に云われても困る。お主が行かせなければよかったものを」
二人は配布場所まで戻って来たが、昌豊の姿が見えない。用を足すだけには遅すぎた。
「気をつけろ。血の臭いがする」
「分かっている。そっちこそ油断するなよ」
それぞれ自分の得物を手に、別々の方角へ様子を探りに行く。
ほぼ間違いなく昌豊が死んでいると、晴信は覚悟していた。
戦場往来のつわものには、もしかしたらなどという気休めはない。ただそこにある現実だけを直視する。
その現実とは、昌豊が消えて、辺りに血の臭いが漂っているということだった。
「ム!?あれは・・・」
闇の中で、黒い影が蠢いているのを晴信は見逃さなかった。
景虎ではない。昌豊は死んでいる。となると・・・。
晴信は躊躇わずに引き金をしぼった。
説明書をよく読み、銃の扱いにはもう問題なかった。安全装置をかけたままで、弾が出ないなんて失敗は二度としないつもりだった。
フルオートからセミオートに切り替えてあるU.S.M16A2は、一度に3発の銃弾を発射した。が、いずれも手ごたえはない。
気配で黒い影が逃げ出すのが分かった。
すかさず影に向かって、もう一度発砲する。今度は手ごたえがあった。しかし、致命傷とは云えそうもなかった。
晴信は影が消えていった方に走っていった。
「こっちに来たはずなんだが・・・」
散々捜してみたが、結局、見つけ出すことは出来なかった。
「クソ!見失ったか・・・。ところで此処は一体何処なんだ・・・?」
タタタン!
乾いた銃声が、静かな林に広がる。晴信が一益に向かって撃ったものだった。
「あれは銃声!?晴信、今行くぞ!」
雲一つない夜とはいえ、三日月の光は十分に林の中までは届いてこない。
暗闇の中で木の根に足を取られながらも、景虎は銃声のした方へ懸命に走った。
やがて、例の欅の巨木に出た。煙硝と血の臭いが鼻につく。
「此処の場所で間違いないようだが・・・」
闇に目を凝らすが、晴信も昌豊も見当たらない。
景虎は警戒しながら周辺の様子を探る。まだ晴信が発砲した相手が辺りに潜んでいる可能性があった。
ふと、あるものに気付く。落ち葉や枯れ木が山と積まれていた。
近寄ってみると、そこから血の臭いが濃く漂ってくる。
片鎌槍の石突で落ち葉や枯れ木を除くと、中から変わり果てた昌豊が姿を現す。
「昌豊殿・・・。逝かれたか・・・」
景虎は目を瞑り、静かに手を合わせた。
一益はこれを狙っていた。
一度は晴信に追われたが、舞い戻って来て、再び欅の巨木の上で機会が来るのを待っていた。
U.S.M16A2を持つ晴信は強敵だが、片鎌槍を持つ景虎ならば万一に仕損じても勝てる手立てはある。一益はそう考えていた。
火炎瓶を頭上から投げることも考えたが、火を点けては奇襲にならない。ただ仕損じたときにすぐ投げられるよう、木の裏の根元に懐中火縄と一緒に置いてある。
一益は景虎が手を合わせるのを上から見ると、昌豊の時同様に体ごと十手を景虎の頭に叩き込もうと飛び降りた。
「(長尾景虎、殺った!)」
しかし一益の体は空を切る。
落下してきた一益を、景虎は半歩後ろに下がるだけで、かわしてしまった。
頭から落ちる一益は、地面に着く直前に体をひねって足から着地すると、大きく後ろに飛び下がり、景虎との距離を取る。
「草か。あまり上手な隠れ方とは云えんな。お主の血が、小生の肩に滴り落ちていたわ」
景虎はいち早く、一益の存在に気付いていた。気付いていながらも、敢えて隙を見せて一益を誘い出していた。
「(こいつ・・・只者じゃない)」
「小生は長尾景虎。帝の言っていた者だ。お主、褒美に釣られた者か?」
「褒美など関係ない。主君の邪魔になると思ったからお前の命を頂こうと思ったまでよ」
この間、一益は懸命にこの場からの離脱を試みてはいるが、その全てを景虎によって阻まれた。
阻まれたといっても、景虎はただ槍を脇に携えているだけだった。それが十分に一益の行動を制限している。
「ほう、主君のためか。お主の主君とは誰であろうかの?」
「忍が主の名を云うわけがないだろう。聞くだけ無駄だ」
「フフ、まあよいわ。それに帝のためではなく、主君のために小生を狙うとはいい心掛けだ。遠慮はいらん、掛かって来い」
一益は死を覚悟した。得物の差がありすぎた。
仕損じた時の保険に取っておいた火炎瓶は、景虎の後ろのさらに裏に隠している。とてもじゃないが、景虎の攻撃をかわして取りに行く自信は無かった。
しかし、一か八かに賭けてみる価値はあった。このままこうしていれば、じきに晴信が戻ってくるかもしれない。
そうなってからでは手遅れである。一益は晴信に追われたまま姿を消せばよかったと、後悔しながら腹を決めた。
「望むところだ、いくぞ!」
一益は物凄い勢いで、景虎に向かって走り出す。
「(景虎の最初の一撃さえ凌ぎきればいける。重い槍では、二撃目への動作が遅れるはず!)」
ブゥン!!
鋭い一撃がきた。が、忍の訓練を積んだ一益には避けられないほどでもなかった。
「(勝った!)」
一益は槍をすんででかわすと、大きく跳躍して欅の樹を目指す。
ここでまた晴信の時同様、一益の予期せぬ事が、今度は二つ同時に起きた。
一つ目は、一益自身の体に起きた。
欅に向かって走っているのに、上手く走れない。
晴信に撃たれた耳が、三半規管まで傷つけていたようだった。
二つ目は、景虎の腕力だった。
異常な速さで二撃目を繰り出してきた。
槍は、フラフラと心許ない走りを見せる一益の胴を薙いだ。そのままの勢いで欅の巨木の幹に食い込む。
一益の体はその幹の下で真っ二つになっていた。
「なかなか見所のある男だったが、相手が悪かったな。小生には毘沙門天の加護があるのでな。・・・さて、晴信の奴は何処に行ったのやら・・・」
【68番 内藤昌豊 死亡】
【60番 滝川一益 死亡】
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾24発)』】現在地不明
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(4本)』『十手』】1-E
なお、晴信・景虎は背中を負傷。
晴信は迷子。
139無名武将@お腹せっぷく:05/02/10 19:04:04
島の西側に雨が振ってきました。
雨はこのまま、東側にも降る予定です。
140生きろ 1/7:05/02/10 22:34:39
ズダダダダダダ・・・
いよいよ降ってきた雨が木々の葉や枝にぶつかる音とは明らかに異質な音は幸盛の耳にも届いていた。
彼は翌日に備えて寝る準備をしていたのだが、居ても立ってもいられずに無我夢中で森の中を駆け出したのだ。
走る、走る、走る。
何度か、不規則に浮き出ている大木の根や、濡れてぬかるんだ泥に足を取られて派手に転ぶ。
兄が幸盛のためにあつらえてくれた一張羅の服は泥だらけになり、兄に申し訳ないという気持ちもあったが、それは頭の片隅に少しあるに過ぎない。
口の中に広がる赤い液体の鉄っぽい味の事に至っては頭の片隅にすらない。
ただ、夜の静けさを取り戻した森に響く、この不気味な音を追う事だけが頭を占めていた。

幸盛の強健な足と研ぎ澄まされた耳はその場所を見つけるのにうってつけだった。本人が望む望まないに関わらず。
数えきれないほどの空薬莢と硝煙独特の鼻を突くような匂い。
雨水でできた物とは明らかに違う、赤くどろっとした水たまり。
その中心にいる、孔をいくつも穿たれた彼の主君と、獣のようにその肉に喰らいついている怨敵・毛利隆元。
彼が一番予想したくなかった光景が、目の前には現実離れした夢のような、けれど幾多の戦場に出た彼には明らかに真実と解ってしまう、そんな光景だった。
―コノ島ハ狂ッテイル
そして、幸盛もまたその狂った光景を目の前にして「狂い」の歯車に突き動かされた。
141生きろ 2/7:05/02/10 22:36:22
幸盛には相手の武器は鉄砲のような物だとしかわからない。それにその鉄砲に十分対抗できるだけの飛び道具は持ち合わせていない。
けれど、そんな事はどうでも良かった。
狂いに身を任せた幸盛は先程まで盛に響き渡っていた銃声よりも大きく、雄叫びを上げた。
「おのれぇぇぇぇえええ!!!」
ただ一言の言葉だが、その言葉は今の幸盛の心情を表すのには十分すぎた。
全身の血が沸騰し、行き場を無くした熱が幸盛を激しく突き動かす。
幸盛は六角棒を片手に握り締め隆元に襲い掛かってゆく。
今にも晴久の喉に暗いつかんとしていた隆元が、獣じみた素早さで幸盛の動きに反応してそちらをむく。
その手には、幸盛との圧倒的に戦力の差―IMIウズィが握られていた。
「フヘヘヘハハハハヒャヒャヒャヒャ!!!」
気を違えたかのような笑い声を上げるそれは、以前の隆元ではなかった。
長い笑い声を上げる口からは涎がたれ、白目を剥き、体の所々がピクピクと痙攣するように震えている。


話は数時間前にさかのぼる。
川に流れていた思いがけぬ拾得物に晴久と隆元は狂喜乱舞していた。
そして、隆元が兵糧丸の類いと言って口に含んだ黒い紙の事も、それを含んだ後、隆元が妙に陽気になり口が軽くなった事もそれほど気にとめないで居た。
晴久が隆元の様子がおかしいと思い始めたのは、隆元が吐き気や体の不調を訴えたからであった。
「隆元殿、やはりあれは食い物ではなかったのでは?」
思っていたことを素直に晴久は口に出す。
「いヤ、そんな事は無イと思いまスが・・・」
もう、言葉の端々にろれつが回りきっていないのが、晴久にもわかった。
「隆元殿、もう今日は休もう、明日の食糧も水もある」
晴久は隆元との協力の日々の間に、生きる術を身につけたのか、初めてそのような提案を持ちかけた。
「そウですな。」
と隆元も同意する。しかし、晴久は念のために、
「隆元殿、あれはとりあえずやめて置いたほうがよい、命に関わるやも知れぬ」
と釘を刺しておく。
「晴久殿の言う通りですな、やめておきましょう」
隆元の間を置かない言葉に晴久は安心して、床の準備をした。と言ってもこの島で作れる床などたかが知れている。
しばらく後に出来た草っ葉の布団に、デイバッグを枕に二人は眠りについた。
142生きろ 3/7:05/02/10 22:38:04
しかし、夜中にガサガサという物音がして晴久は目を覚ました。
―敵襲か?
晴久は体制を動かさぬようにして、目だけを凝らして辺りを見る。
程なく、隆元が居ない事に気がついた。
―ああ、小便か
晴久は胸を撫で下ろして、再び瞼を閉じようとした。
しかし、睡魔が晴久の体を支配するよりも早く、晴久はある異常に気がついた。
―待て、小便に何故袋まで持っていく?
少し心配になった晴久は静かに腰を上げ、忍び足で辺りを見回る。そして、茂みの裏に隠れていた隆元はすぐ見つかった。
しかし、晴久が目にした光景は異常だった。
隆元が居る事に安堵した晴久が、隆元を脅かさないようにわざと足音を立てているのにそれに気付く事もなく、隆元は何かに一心不乱になっているのだ。
晴久はなにか、感付く物があって急いで隆元に駆け寄る。
―やはり・・・
案の定、隆元は後生大事そうに持っていたあの紙を嘗めて、あらぬ方向に視線をやっていた。
晴久が衝動的にそれを奪い取る。
「隆元殿!これは一体何事か!」
しかりつける様に怒鳴る晴久には以前の、一人ではおどおどとしてしまうようなひ弱さはなく、ただその背後に漠然とした強さ―威厳があった。
逆に隆元は遊んでいた玩具を取り上げられた子どものように、晴久の手に、その手を伸ばす。
「隆元殿、いかがなされたのだ!気をしっかり持たれよ」
明らかに様子がおかしい隆元を晴久は一喝する。
しかし、それも効果がなかった。ますます激しく隆元は晴久にしがみつくようにしてその紙を取り返そうとする。
隆元がうめき声のような声をあげた次の瞬間、ぱあんと高い音が響いた。
晴久が平手で、隆元の頬を打ったのだ。
ここに着て、初めて隆元は動きを見せた。晴久から素早く離れると、寝床の方向へ駆け出していったのだ。
―隆元殿は熱か何かで気を違えておる、そちらはまずい!
そう思いながら、追っていった晴久が寝床を見渡せる位置にきた時だった。
枕元に置いてあったIMIウズィが発する轟音が森中に響いた。
143生きろ 4/7:05/02/10 22:40:21
幸盛は優れた武士で、猛将であり、弓や火縄銃を定石通り撃ってくるのなら避けることも出来ただろうが、相手は銃の規格も狙いも色々な意味で出鱈目だ。
頭に上った血をおしとどめて、素早く木の裏に隠れるが、明らかに分が悪い。
無理もない。今まで戦い続きだった体は悲鳴をあげ、疲労はピークに達していたのだ。更には、初日に拳を交えた吉川元春にもらったレバーへの一撃も、幸盛の動きを鈍らせていた。
避けることに専念することが精一杯だった。
しかし、それでも運悪く、ぬかるんだ地面にとらわれた足に銃弾を受け、手に持っていた六角棒にも弾が当たり、半ばで折れてしまった。
六角棒の威力は半減どころか、もう使い物にならないし、たった今ホルダーから抜いたダマスカスナイフもあの銃に突っ込むには無謀すぎる。
幸盛はこの島で初めて死を意識した。
正気を失っているとは言え、目の前の、主君晴久を死に追いやった憎き仇敵・毛利隆元、その最も憎い人間に追い込まれているのである。幸盛は死の恐怖よりも、溢れ出すあまりに大きな悔しさの感情を抑えきれなかった。
―この世で最も憎む相手に殺されるのか!!!
考えただけでもおぞましい。だが反撃する術は皆無。弾切れを狙おうにも足がこの状態では最早状況は絶望的であった。
そして、その隆元が幸盛の前に姿を現して、邪魔者を見つけた事に、にたりと狂った笑みを浮かべる。
「ウワアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
幸盛は悔しさが止まらなかった。感情が御しきれず、声として体外に奔流した。
「ヘハハハハヒャヒャヒャヒャヒャアガガガガアァァァァ!!!!!!!!」
その声に応じるように隆元だった者の口から、人間でもない、動物でもない、なにかのバケモノのような声が上がる
そしてその隆元だった者は晴久の体を穿ったその銃の引き金にかける人差し指に力を込めた。
144生きろ 5/7:05/02/10 22:41:59
そのときだった。突然物凄い衝撃が隆元の手を襲った。
「ギャアアアアアアアッァァァアァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
幸盛を脅かしていたIMIウズィは隆元の手から弾きとび、隆元はありえない方向に捻じ曲がった人差し指を掲げて叫び声を上げる。
直後に横の茂みから出てきた男が、水際立った動きで隆元の後ろに回りこみ、彼を羽交い絞めにして動きを制す。
いきなりのどんでん返しの展開に、幸盛は未だ状況を把握できていない。
遠くでは、まだ煙の上がる狙撃銃を手にしたまたもう一人の男が幸盛の方を見て、親指を立てながら微笑んでいる。
「何故だ・・・?」
幸盛は誰にでもなく、その疑問の言葉を口にするのが精一杯だった。

「ふぅ・・・、間に合ったか」
そう言いながら遠くに居た男―鈴木重秀は幸盛達の元に寄ってくる。
幸盛は今までは雨と暗闇で見えなかったその顔を認識して、ようやく助かったのだと安堵した。
落ち着いてよく見ると、隆元を羽交い絞めしている男は飯富昌景であった。
「あの後、あまりに切羽詰った顔をしていた幸盛殿が気になってな。銃声を聞いてまさかと思ったのだ」
幸盛と目が合った昌景が少し誇らしげに語る。勿論その間にも丸太のように太い腕はぎりぎりと隆元を締め上げている。
その言葉で幸盛は事の次第を何もかもを悟った。

そして、落ち着いたように見えた幸盛であったが、昌景が隆元を解放すると、再び怒りが込み上げてきた。
その時の幸盛の目には震えて、体をかきむしる隆元しか映っていなかった。
間をおかず幸盛は足の痛みなど忘れたように隆元に飛び掛る。
「お、おい、幸盛殿」
幸盛の早業に一瞬遅れて口を開いた昌景の静止も、拳を振り上げる幸盛には届いていなかった。
怒りと狂いに身を任せて、ただ拳を振るい続けた。
幸盛のものとも隆元の者とも知れない血が飛び散って泥水に混ざっていく。
その拳が当たる度に打ち震えていた隆元の頭もいつしか、隆元の拳が右に左に繰り出されるのに従うままになった。
145生きろ 6/7:05/02/10 22:43:03
それでもまだ振り上げられた拳が手首のあたりで止められる。―昌景だった。
「よせ、もう死んでいる、それより・・・」
幸盛は昌景の言葉に思い出したように、晴久の元に駆けた。
―そう遠くは離れていないはず。その思いで自分の体の一部でなくなったように動かぬ足を動かした。
晴久はすぐに見つかった。傍に重秀が居て、介抱しているところを見ると幸いまだ息はあるようだ。
急いで駆け寄り、負傷した方の足を折り曲げて肩膝立ちになって晴久に話し掛ける。

「晴久様!お気を確かに!」
晴久は、薄っすら目を開け、自身の、雨で冷たくなった体を揺すり、必死に呼びかける幸盛を見つめた。
だが晴久には既に声の出せる生命力も残っていない。
「晴久様ぁぁーーー!!!!!」
幸盛の叫び声も空しく晴久の意識は段々遠のいてゆく・・・・。

霧が掛かったような晴久の脳裏には尊敬する祖父経久や、その弟で度々晴久を諌めた久幸、そして何かと衝突はしたが尼子の栄光に共に尽力した叔父国久が立っていた。
―御爺様、晴久はこの島で何か大切なものを学んだ気がします。
―うむ。死ぬ間際ではあったが、お主に亡き顕久の面影を感じたぞ
―ただ、お迎えはまだ・・・。最後に尼子無二の忠臣に言い残した事があるのです。
―うむ。
146生きろ 7/7:05/02/10 22:44:12
霞む三人の影を振り払って、晴久は最期の力を振り絞り幸盛になにかを伝えようとする。
しかし声が出ない。幸盛は、なんとかそのわずかな口の動きだけでも、と思い、涙ながらに命消え行く主君の顔を見つめ続けた。
そして、三つ。たった三つの口の動きを残して、晴久は逝った。
「生きろ」と。

【95番 毛利隆元 死亡】
【18番 尼子晴久 死亡】
147あばら家1/3 ◆IVgdXngJC6 :05/02/11 01:02:55
「臭えな。何の臭いだこれは」
氏照は悪臭に顔をしかめながら、憲秀を振り返る。
憲秀は氏照の遥か後方で、息を切らせながら後に続いている。
「とろとろ歩くな!顔を上げろ!そんなことでへたばっていたら、確実に死ぬぞ、お前」
堪らず氏照が叱咤する。出遭ってからはずっとこんな調子が続いている。
いい加減、憲秀も露骨に嫌な顔をするようになってきた。
「(口うるさいやつめ。時が来ればお前など、八つ裂きにしてくれるわ!)」
幸い、濃い闇でその表情は隠れているが、恐らく陽の下で見れば、今の憲秀の顔は、さぞ醜悪な面をしているのであろう。
「おい憲秀、早くこっちに来てみろ。どうやらこのあばら家で、誰かが死んでいるらしい」
憲秀の思惑など関係無しに、氏照は顎をしゃくって憲秀を呼びつける。
「(誰が死んでいようが、わしには関係ないわ!このド阿呆めが!)」
そうは思いつつも、憲秀は氏照に逆らうことができない。
昔からの癖というのもあるが、何よりも氏照の得物が何かも解っていないのだから、下手な真似は出来なかった。
「ほぅ、死んでいるとは一体誰でしょうな」
「そんなこと、俺が知るわけないだろう。しかし、兄上や叔父御の可能性もある。とにかく調べてみるぞ」
氏照は得物も持たずに、ずかずかとその掘っ立て小屋のようなあばら家に足を踏み入れていく。
豪胆といえば豪胆だが、無法ともいえなくもない。
「(こいつ正気か!?何の警戒もせずに入るとは・・・)」
「何度も云わせるな!早く来い、憲秀!」
あばら家の中から氏照の怒声が響いてくる。仕方無しに憲秀も足を踏み
148あばら家2/3 ◆IVgdXngJC6 :05/02/11 01:03:56
中はひんやりと冷たい空気をしていた。異臭が酷い。死体が腐りだしているのだろう。
土間の真ん中に、氏照が立っていた。
「氏照殿、死体は何処じゃ?」
氏照には板の間に転がる、荒木村重の成れの果てが見えているが、憲秀にはそれが見えない。
「お前の目は節穴か?目の前にあるだろうが」
云われて目を凝らすと、確かにそこに死体が転がっていた。
「う〜む、この男には見覚えがござらんな。・・・さぁ、身内かどうかの確認も取れたことだし、こんな所は出るとましょう」
「いや、今夜は此処に泊まる」
「(阿呆か!?こんな臭い所で眠れるわけないだろうが!)」
「憲秀手伝え。死体を片付けるぞ」
「本気でしょうか?こんな場所に――」
「いいから黙って足を持て!」
無理やり死体の足を持たされると、そのまま外へ運び出す。
死体を草叢に放り投げてあばら家に戻る。
あばら家に戻ると、氏照が火打石を使い、慣れた手つきで囲炉裏に火を点ずる。
憲秀は、こんな所で火を焚いていては人目に付くと、ハラハラしたが氏照は一向に意に介さない。
火が点くと、部屋の片隅に饅頭が落ちているのに憲秀は気付いた。
「(饅頭か、旨そうだな。・・・ハッ!待てよ、こんな所にある饅頭がまともな物のわけがない。
大方、毒でも入っているのだろ。これを上手く使えば誰かを殺すのも容易いことだ)」
憲秀は氏照から見えないように、後ろ手で饅頭の入った袋を拾うと、何食わぬ顔で囲炉裏にあたった。
149あばら家3/3 ◆IVgdXngJC6 :05/02/11 01:05:57
「氏政様や綱成殿が無事だといいですね」
憲秀は心にもないことを、ぬけぬけと云う。
「兄上よりも、叔父御が心配だ。あの人は何をしでかすか予想がつかん」
これには憲秀も成る程と頷いてしまう。
氏照とは違った意味で、綱成のことも苦手としていたからだ。
「あの方が死ぬようなことはない。その点だけが安心ですな」
全くだと氏照が返す。
「・・・さて、明日も早い。もう休むとしよう。憲秀、火を絶やすなよ」

【89番 松田憲秀 『スタンガン』『毒饅頭』】&【79番 北条氏照 『武器は不明』】5-B民家で就寝
150真夜中の断定 1/6:05/02/11 12:01:41
―――時間は、少々逆行する。

高広「チッ、雨で湿気ったか・・・・。これじゃあ、この銃は使えねえな」
構えていた『イサカM37・フェザーライト』を愚痴と共に抱え、北条高広が呟く。
直後、持っていた『モトローラ トランシーバ T5900』から廃墟の中にいる甘粕景持の声が聞こえた。
景持『高広。聞こえているか、高広?』
高広「なんだよ・・・・」
景持『お前、なぜあの男を撃たなかった?』
そう聞き、高広は少し考えた。
『あの男』が『どの男』の事かどちらを差すのかわからなかったからだ。
高広「あの男ってのは・・・・・『どれ』の事だ?
    『叫んで走っていった男(浅井長政)』か?それとも
    『オレから隠れられてると思ってノンキこいてた男(石川数正)』の事か?それとも・・・・」
景持『[叫んで走っていった男(浅井長政)]の事だ。もう一人は俺からは見えていない。
    銃が雨で湿気る前に、お前がもっと近づいていれば殺れたはずだろう?』

―事の詳細は以下のとおりである。
『安居景健』を撃ち殺した高広は、どこからか現れた次のエモノ(石川数正)に狙いをつけていた。
しかし数正の武器が銃ではなく刀である事に気づくと、高広は狙撃するのをやめたのである。
高広、景持の狙いは『武田晴信と長尾景虎の殺害』である。
だが、それは何も近接攻撃に持ち込もうという事ではない。
長尾景虎の武力は配下である高広にも十分すぎるほどわかっていた。
刀や槍で至近距離の戦いを挑もうものなら、瞬殺される事は間違いない。
刀を得ても、『晴信・景虎』の殺害には、さほどの意味は無い。
それよりは、銃弾を温存しておいたほうがまだマシだ。
151真夜中の断定 2/6:05/02/11 12:02:41
―そう高広が考えていた時、もう一人『浅井長政』が現れたのだ。
確かに長政は銃を持っている。銃を得るのならば殺した方がいい。だが――

高広「お前、手負いの獣に対して向かっていった事はあるか?」
高広は、トランシーバーの向こうの景持に話しかける。
景持『そんな危険なマネが出来るか。で?何が言いたいんだ?』
高広「別に」
浅井長政が傷を負っていた事は、高広からも確認できた。
だが・・・いや、だからと言うべきかも知れないが、高広は浅井長政に何か鬼気迫る物を感じたのである。
それに対して、高広は『恐怖』にも似た感情を覚えたのである。
・・・・だが、ここで景持に対して『怖かったから近づけなかった』などと言えるだろうか?
武士の面目は勿論の事だが、景持はいまだに『晴信と景虎の暗殺』に躊躇いを感じている。
晴信に対してはともかく、景虎と面と向かえば、あるいは景虎側に寝返るかもしれない。
ここで扇動者である自分に不安や不信感を抱かせてはいけない。
そう考えた高広は、とっさに答えをはぐらかしたのであった。
高広「それより、今日はお客さんが多いな。これで何人だ?」
景持『撃ち殺した男が一人、俺から見えてない男が二人・・・・三人だな』
高広「じゃあ四人目だ。ちょっと待ってろ」
トランシーバーに向かいそういうと、高広はそれをしまい近くにいた男に対し言葉を向けた。
高広「待たせたな。しかし、なんでここまで近くに来るかね。怖くねーのか?」
近くにいた男-39番・吉良親貞-は、それに対しこう答えた。
親貞「別に」
152真夜中の断定 3/6:05/02/11 12:03:55
親貞「君・・・・随分と目が利くようだね。この雨の中、三人もその目で捉えるとはね」
高広「別に」
親貞「・・・・さっき話しかけていたものも、与えられた武器かい?
    見たところ、遠くにいる仲間と話したり出来るようだね」
高広「別に」
親貞「・・・・・・君たちの目的はなんだい?全員殺し、天下を得ることかい?それとも他に・・・・」
高広「・・・・・別に」
親貞の問いに対し、高広は全ての問いをはぐらかす。それも当然だ。
知らぬ人間に対して、己の目的や素性は多くは語らないほうがいい。
殺してしまうのが一番いいかもしれないが、今は高広の銃は使えない。
だがそれに対し、親貞は少々苛立ちを覚えたのか、わずかに声を大にして答えた。
親貞「・・・・・僕から答えたほうがいいかな?僕は・・・・」
高広「誰もてめーの事なんか聞いちゃあいねーよ。ホントかウソかも断定できねーしな」
親貞「なるほど。それもそうだね」
驟雨の中、親貞はハハハと笑う。そして、向きかえり、またこう言った。
親貞「でも言っておこうか。僕は長曽我部家の吉良親貞。君は?」
高広「さあな。織田か長尾か武田か朝倉のどれかの家臣の名無しの権兵衛だよ。で?
    てめーは撃ち殺されたくてわざわざオレの前まで来たのか?」
親貞「君の銃は使えないだろう?」
高広「なんでそんなこと断定できる?」
親貞「使えていたら、とっくに僕を殺しているだろう?」
高広「・・・・・・」
高広はしばらく黙った。確かにそのとおりだ。しかしなぜ眼前に出てくるのだろうか?
見たところ親貞の武器も銃器類ではない。となると、刀剣、槍の類か?
それで銃が使えない自分を殺そうと言うのか?
153真夜中の断定 4/6:05/02/11 12:05:42
高広「で?じゃあ、わざわざオレの前まで来た理由を聞かせてもらおうか?」
親貞「そうだなあ・・・・・まあ、強いて言うなら『君と手を組みたい』かな?」
高広「ハァ?」
親貞「僕は一日目の夜からこの廃墟にいた。幸いな事に二日目日の出の食料配布地点も近かったし
    誰かが来た時には隠れ、場をやり過ごした。
    この場に来た人間は、誰一人僕を探し出せなかった。
    意外と人間は面白いものだね。室内に隠れれば、そこが安全地帯だと思ってしまうんだ。
    その場所に、最初から誰かがいたなんて誰も思いはしない・・・・・」
いきなり親貞はそんなことを話し出す。無論それが真か偽かはわからない。
高広「・・・・答えになってねーだろ。なんでそれでオレ達と組みたがるんだ?」
疑わしげに切り出した高広に対し、親貞はまたハハハと笑い答えた。
親貞「僕の命は長くない。間違いなくそれがわかるんだ」
高広「・・・・なぜ断定できる?」
親貞「自分の体だから?・・・・ハハハ、信用していないね。
    実は最初に帝に言われたんだよ。『最後まで生き残れば、病を取り除いてやる』と。
    だが・・・・・まあ、そんな事はどうでもよくなったんだ」
高広「どうでもよくなった・・・・だと?」
親貞「さっきの放送では『晴信と景虎』が帝を殺そうとしてるらしいじゃないか。
    冗談キツイよ。この余興が終われば、僕が生き延びる可能性がなくなってしまう。
    でも、この二人を殺せば褒美がもらえると聞いた。きっとそれで僕の病は取り除ける。
    ・・・・僕の願いは一点だけだ。『晴信か景虎を殺す』。君もそうだろう?さっき叫んでいたからね」
高広「・・・・・・ホントに聞いてやがったのか」
一応、高広と親貞の目的は一致した。だが手を組むか?というとそうはいえない。
154真夜中の断定 5/6:05/02/11 12:06:26
親貞が言っている言葉が、真か偽かもわからない。
それに晴信、景虎は二人。だが、こちらは親貞を含めると、高広、景持と三人になってしまう。
そう高広が考えた時、親貞が意図を読んだかのようにこう語りだした。
親貞「さっきも言ったけど・・・・組みたいのは君だけだ。もう一人なんて知らない」
それの言葉の真意を掴んだ高広は不敵な笑いを浮かた。
そして、トランシーバーの電源が入っていない事を確かめると、こう答えた。
高広「そうだな・・・・・『家中の絆』なんてカビ臭い物よりは、利害が一致した奴と組みたいもんだ」

景持「おお、遅かったな。何をやっていた?」
廃墟に戻った高広と思わしき人物に、景持が声をかけた。
だが、高広はそれには答えず、辺りを見回した。
高広「おい、随分暗いな・・・・・明かりはないのか?」
景持「ああ・・・・いや、ちょっと待ってろ。この火(ジッポ)が使えるかもしれん」
そう言いジッポに火をつけた景持は、暗闇の中の人物に火をかざし高広であることを確認する。
『見知らぬ人物ではないか?』と不安だった景持は、それについ安堵してしまった。
高広「おい、さっきの男(安居景健)の銃はどこにおいてある?」
景持「ここだが・・・・なぜだ?」
高広「オレの銃は雨で湿気っちまった。これじゃ敵がいても撃てねーよ。
    オレが見張りしてやるから、その銃を貸せって言ってんだよ」
景持「相変わらず口が悪い奴だ・・・・ほら、持って行け」
景持は己の銃を高広に渡す。その銃の使い方をある程度確認した高広は、景持に向かいこう言った。
高広「お前は、晴信や景虎を撃つ事に対して不安はあるか?」
景持「晴信はともかく・・・・・お屋形様を俺が撃てるかどうかは・・・・わからんな。
    いざとなれば・・・・・たぶん撃つしかないだろうが・・・・」
155真夜中の断定 6/6:05/02/11 12:07:44
高広「じゃあ用無しだ」
ドン、と銃声が鳴り響いた。

高広「『たぶん撃つ』じゃあねーだろ?『間違いなく、喜んで撃つ』だろ?まあもう遅せーけどな」
親貞「ハハハ・・・・やるね。それはあんたと同じ家中の人間じゃないのかい?」
高広「知らねーよ。こんなボンクラなんてな」
親貞「気に入った。さすが僕が見込んだだけある」
廃墟の中で二人の人間が笑う様は、いきさつを知らない人間は明るく見えるのかもしれない。
・・・側に転がる、撃ち抜かれた死体を見なければ。
景持の死体から、『ジッポ』『トランシーバー』を探り出した親貞はふと呟いた。
親貞「実は、僕にも同じ家中の者がいる・・・・・兄だけどね」
高広「・・・・・それで?会ったらどうする?」
なんとなく高広の予想している答えが読めた親貞は、こう答えた。
親貞「昔から、『姫若子』と呼ばれてる弱い兄貴は嫌いだったんだ。間違いなく、喜んで撃つさ」

【12番・甘粕景持 死亡】

【37番・北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾22発・一時使用不可』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】&
【39番・吉良親貞 『武器不明』『ジッポ』『モトローラ トランシーバ T5900』】(共に3-B廃墟付近)
(目的・晴信&景虎暗殺に変わり無し)
156最初の刺客 ◆XoNjNH489g :05/02/11 12:47:27
(ぐぅ〜)
はぁ・・・今まで何度自分の腹を聞いたのか。
どうして自分だけ、ひもじい思いをしなければならないのか。
「もしかして、自分を恐れている主催者が自分にだけ細工をしている?
 そうだ・・・そうに違いない。何せ、自分は近江の鷲と呼ばれている男だからな。」
近江の鷲―勿論、そう呼ばれているわけではない。
     久政が自己満足のために、勝手に付けた名だから・・・
一息ついて呟いた
「早く、長政が駆けつけてきて、父上!共に行きましょう!とならないかな。
 長政は自分に似て、勇猛果敢で知略に溢れるからな。」
この男は情けない。
自分の力ではなく息子を頼ろうとし、自分を勇猛果敢で知略が溢れると勘違い。
ここまで来ると、救いようがない。

その時である。久政の耳に「ガサッ・・」と言う音が聞こえた。
(誰か来たのか?)
「ガサッ・・ガサガサッ」段々と音が大きくなってくる。
(こっちに来るな、こっちに来るなよ、こっちに来ないでください)
心の中でこう呟く久政。
しかし、天は彼に味方をするはずなどなかった。
(音が止まった。助かったのか?)
隅でうずくまっていた久政が顔をそっと上げてみた。
「ひぃぃぃぃ、巨人がいる!!!????」
久政が見たもの・・・・それは
「ニャ〜」
猫だった。そうとも気づかず、久政は混乱し、そこに巨人がいると思っている。


そして、久政VS巨人(普通の猫)の仁義なき戦いが始まるのであった・・・
【07番 浅井久政 『S&W M36チーフススペシャル』】1-I崖の下の海食洞にて猫とバトル開始!?
157無名武将@お腹せっぷく:05/02/11 15:59:04
>>155
申し訳ありませんが、訂正します。
【37番・北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾22発・一時使用不可』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】

【37番・北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾2発・一時使用不可)』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】
158who am i?1:05/02/11 17:03:39
するのでした。天皇に逆恨みを持つ綱成に呆れつつも隆家はハッと気がついた。少し離れてはいるが同じ場所に居る者、しかも二人。
(戦っているようだが・・)
隆家の眼に入ったのは長曽我部元親と北条氏政である。
(どうして、殺し合いをしているのにあの人たちは嬉しそうなんだろうか・・)
隆家は不思議に思った。一緒に居る綱成もようやく気がついたらしく、
「おお!戦いか!?筋肉か?」
と、意味不明に近い言葉を発した。隆家は危険に頭を突っ込みたくはなかったためその場を立ち去ろうと思っていたが、それに反して綱成は嬉しそうに鼻歌を歌いながら二人に近づいていく。
(オッサン!どこへ行く!!)
隆家は焦った。どうもあの筋肉オヤジは危険という言葉を知らないようだ。
いや、言葉は知ってても持ち合わせてないのか、普通の行動をとってくれない。
(元就様、私は何故ここに居るのでしょうか!?)
今にも泣きたくなってくる隆家の心に気づかず綱成は、戦いをしている二人の間に進んでいった。手には木太刀が握られている。
綱成の眼がキランッと光り(というか、隆家にはそう思えた)元親と氏政の武器をはじいてしまった。
(相手刃物だよね・・?なんではじき返すの?)
隆家は混乱していた。突然現れ、横槍を入れられた元親・氏政も混乱した。
「誰だ・・こやつ・・」
「綱成おじさん!?」

159who am i?2:05/02/11 17:06:05
首を傾げる元親と、どうやら知り合いの氏政の言葉が響いた。綱成も氏政に言われて気がついたらしい。
「なんだ、お前・・えっと・・氏綱公の息子の息子じゃないか!」
「氏政。解かりにくい言い方しないでくれよ・・」
「そうだ!氏政だ。で・・?筋肉か?」
「はぁ?筋肉はアンタでしょ、私は違うよ。でもどうしてここに居るの?」
そう訊ねられ綱成は突然涙した。
「天皇に騙されたのだ!ワシのプロテインが・・お前らも騙されたのだろう?許せんだろう!?あの天皇め!」
「・・そういえば、食糧の給付場所が変わったらしいな。放送があった・・でも1−Eも・・」
「待ってよ、長曽我部殿!普通さー命のやり取りしてた中でそんなの気づく?私は気づかなかったよ?そんな余裕ないよ〜」
「常に周囲に気を配って戦っている。だが、この方が近づいたのは気がつかなかった・・」
三人のやり取りに隆家は余計に混乱した。
(プロテインって何だよ?鼻歌歌ってたのにどうして気がつかないんだよ?誰か・・普通に戻して)
「ところで、あの人誰?おじさんの知り合い?」
「あぁ、あ奴はワシの筋肉美学同好会の仲間だ。名前は・・・????」
(なにそれ!?そんな同好会聞いたことないし、私も一員なの?って、名前知られてない〜!?)
隆家は少しはなれた所で一人涙するのでした。

160who am i?1訂正:05/02/11 17:08:29
1行目の「するのでした」は2行目の最後のやつが飛んでいってしまったらしいのでない事にしてください。
161who am i?3:05/02/11 17:18:40
【80番北条 氏政『南部十四式(弾切れ)』『クナイ9本』『コブラナイフ』『頭に鍋』】
【65番長曽我部 元親『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾5発)』】
【82番北条 綱成『ヌンチャク』『木太刀』】
【53番穴戸 隆家『キャット・オブ・ナインテイル』】
四人共に1−Eにいる
「傷を見せろ、久秀」
そう云って、長慶は久秀の皮袴を腿まで捲り上げた。
「ッ痛ぅ!」
見たところ、足の傷は出血量のわりには浅いようだった。血も止まりかけている。これなら命を落とすこともないだろう。
しかし、このままでは傷口から菌が入り、それが元で命を落とすことにもなりかねない。
久秀にそのことを説明すると、長慶は鏃をたくみに使い、腿に刺さった木片を抉り出す。
激痛が久秀の全身に走る。咥えていろと云われた木の棒も、あまりの痛さに噛み砕いてしまう。
木片を除くと、長慶は己の手拭いを引き裂き、貴重な飲み水で綺麗に洗った傷口に手早く巻きつける。
「焼酎でもあればいいんだが、今はこれが精一杯だ。すまんがこれで堪えてくれ」
「殿にこのような事をさせてしまって、申し訳ござらん」
「いや、よいよい。今は久秀だけが頼りだ。このような事はなんでもない。・・・それより、あの者は何処の家中だったのかの?」
長慶は先刻にあった出来事を思い返していた。
一日中、島を徘徊していた二人は、半刻ほど前に初めて敵と遭遇していた。
前夜に無事に夜を明かすことが出来た5-Hへ向かう途中、5-F山中で不意に襲われたのだった。
敵は山肌に伏せていて、久秀らが知らずに通り抜けようとしたのを『焙烙玉』で出迎えた。
相手は恐怖のためか、こちらの位置を確認もせず、やたらめったらに焙烙玉を投げてくる。
爆発があるやいなや、二人は咄嗟に離れる。同時に爆発に巻き込まれないための配慮だった。
たまたま久秀が逃げた場所に、運悪く焙烙玉の一つが転がってきた。
弾けるように飛び退くが、時既に遅く、久秀の前で吹き飛んだ。
直撃は免れたものの、左足に吹き飛んできた木片が無数に刺さってしまった。
「久秀!大丈夫か!」
離れた所から心配した長慶の声が飛んでくる。
久秀は痛みを堪えながら長慶に叫んだ。
「拙者は大事ござらん。拙者が囮になるゆえ、殿はなんとか奴を射殺してくだされ!」
爆発の感覚を計り、久秀が飛び出して行く。
長慶の方は得たりと手近な樹に這い登り、枝から敵影を捜している。
「こっちだ馬鹿者!ワシを誰と心得る、天下に知られた松永久秀じゃ!討てるものなら討ってみい!!」
久秀の挑発に、岩陰に隠れていた敵が顔を出す。01番赤尾清綱だったが、今は誰であろうと関係ない。
清綱は火口に点火してある焙烙玉を、久秀に向かって投げつけた。
「(クソ!ワシは爆死などとつまらん死に方をするのか!?)」
自分の五体が粉微塵に消し飛ぶのを想像する。その恐さで体が硬直し、思わず目を瞑ってしまう。
しかし焙烙玉は、久秀の方には飛んでこなかった。てんで見当違いの方で爆発する。
長慶だった。長慶が清綱の持つ焙烙玉を射抜いていた。
すかさず第二矢を放つ。その矢は正確に清綱の首に吸い込まれる。
長慶の手は止まらず、第三、第四の矢を放つ。その全てが清綱の体に刺さり、清綱は絶命した。
「久秀、大丈夫か!怪我はないか!」
清綱が息絶えたのを確認すると、長慶は急いで久秀に駆け寄る。
「馬鹿が!傷ついた体で無茶をしおって!」
「殿が無事ならそれで結構でござる。(こいつにはまだ使い道がある。こんな所で死なせるわけにはいかんわ)」
「それ、肩を貸せ。此処は危険だ。何処か安全な場所に移動するぞ!」
安全な場所など、この島にはないと思いながら久秀は長慶に運ばれて行った。
そして今、それを思い出していた長慶が久秀に問いかけていた。
「分かりませぬな。ただ一つ云えるのは、最早信じられるのはお互い、二人だけのようだということだけですな」
「うむ。久秀、頼りにしているからな」
「(ククク、体を張ったおかげでこいつはもう俺を信じている。これでワシの思うままじゃわい)」
「さぁ、行きましょう殿。まずはねぐらを探さなくては・・・・」

【01番 赤尾清綱 死亡】『焙烙玉』は使い切りました。
【90番 松永久秀 『青酸カリ(小瓶に入ってます)』】 &【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢・6本)』】
久秀負傷。左足を引ずづることになります。
当面の目的は休息できる、安全な場所の確保
166馬場信房は砕けない 1/7:05/02/12 14:49:29
上条「ヤローッ!てめー待てコラァッ!!
    いきなり撃ってくるたぁてめーは主君にどーゆーしつけされてんだコラァーッ!!」
明けかけた闇の中、森林を三人の男がそれぞれ距離を置いて必死に走っている。
先頭の男は手に銃と思わしき物を、二番目の若い男は支給されたままのバッグを。
そして一番後ろの初老の男は、現在の単位で2m以上ある槍を抱えて走っている。
蒲生「こいつは・・・・厄介なやつらに関わっちまったわい・・・・・ええい、しつこいわッ!」
先頭の男はそう呟くと急に振り返り、後を走る二人の男に銃を向ける。
上条「うおッ!?」
義清「上条殿!横に飛びなされ!」
言うが早いか、後ろの二人の男は横に飛んだ。直後、先頭の男の銃から火が放たれる。
タタタタタと軽い音がして、先ほどまで後ろの二人の立っていた場所を銃弾が貫いた。
蒲生「ちぃッ・・・・さっきも狙った場所に、これぐらいうまく当たってくれればのう・・・・」
そう言い残すと、先頭の男-35番・蒲生賢秀-はまた振り返り、走っていった。
上条「てめー逃がすかコラァッ!!」
銃弾がもう飛んでこない事を確認すると、後ろの二人の男も、もう姿の見えなくなった蒲生の後を追う。
だが、二人の男はしばらく走った先にあった、眼下に広がる崖を見て愕然とした。
上条「・・・・・こいつぁヘビーにグレートだぜ・・・・・あいつこの崖飛び降りていったのかァ〜?」
地点にして4-E地点、高地から森林地帯に移り変わる場所である。
義清「崖はいくつか段になっている・・・・・うまく足がかりを掴めれば飛べぬ距離ではありますまいが・・・・。
    命はともかく、骨の一、二本は覚悟せねばなりませぬな・・・・まだ追いますかな?」
そう呟く初老の男(村上義清)の言葉に、若い男(上条政繁)は『やめておこう』というポーズを取る。
上条「冗談じゃあねーぜ・・・・お屋形様に会うっつー目的があるのに、こんな場所で命は懸けられねー」
義清「と、考えると・・・・先ほどの男はもはや目的を喪失して
    我らを皆殺しにするつもりなのかも知れませぬ」
167馬場信房は砕けない 2/7:05/02/12 14:50:55
―――わずかに離れた場所に、視点は移る。
柴田勝家が、主君や家中の者を探しに行こうとしていたその時、見覚えのある男が勝家の目に入った。
勝家「む」
馬場「む」
勝家「・・・・・・馬場殿か。一体いかがなされた?お主は、武田晴信殿に会うつもりだったのでは?」
馬場「いや、無論仰るとおりだが・・・・」
勝家「・・・・・・・・迷ったのかね?」
馬場「・・・・・・武士にあるまじき失態・・・・・そのとおりだ。まさかまたお主と会うとは・・・・」
勝家「お気にめさるな。その程度の事、失態とは言えぬ。・・・・失態とは・・・・」
言いながら、勝家は先ほどの秀吉、信盛を失った事を思い出し、また黙った。
勝家(・・・・・力で抑えたゆえの、猿の暴走・・・・抑えられぬは我が失態・・・・・事が終われば腹を召すしか・・・・)
勝家は何を考えているのか、少しは予測がついた馬場は、勝家に対しこう切り出した。
馬場「・・・・・お主は、事が終われば腹を切るつもりかね?」
勝家「・・・・・・・うむ。我が失態の責任は取らねばならぬ」
馬場「それは困るな。お主が腹を切れば、この馬場の槍に敵う者は世に皆無となってしまうではないか」
勝家「・・・・・フ・・・・・・フッハッハ・・・・ほざきよるわ」
勝家は笑った。勝家が腹を切り果てれば、馬場は『槍天下一』を名乗ろうと言うのである。
勝家「それなら、今、また決着をつけるかね?」
馬場「いや、某はお屋形様を探す・・・・その決着を果たす時はこの余興を生き延びた時でよい。
    つまり勝家殿。お主がこの島で果てれば、その時はこの馬場が天下一を名乗ろうぞ」
勝家「それはお主もな。某に怖気づいて、決して志半ばで死す事の無いようにな」
言葉を掛け合った後、お互いは荷物を持ちまた別々の道へ進もうとする。
別れ際に、馬場が勝家に向けてこういった。
168馬場信房は砕けない 3/7:05/02/12 14:51:54
馬場「今回は、某の命を奪おうとはせぬのか?」
勝家「今さらお主の命など・・・・!?」
『取るつもりは無い』と言おうとした勝家の目に、銃を構えた男が目に入った。
勝家「伏せよ馬場殿!!」
だが勝家が叫び馬場が伏せるより早く、タタタタと軽い音を立てた銃弾は馬場の身体を貫いた。
馬場「がッ!」

蒲生「一人殺した・・・・殺しましたぞ、義賢様ッ!!待っていてくだされ、もう一人もッ!」
己の持っていた武器-サブマシンガン・ステンガン-で馬場を撃ちぬいたことを確認した蒲生は
崖から飛び降りた時に骨折した足の痛みも忘れ、今は無き己の君主『六角義賢』の名を叫んだ。
君主を失った今、彼は全ての人間を殺し己が生き残り、六角家を再興しようと思っていたのである。
彼は馬場信房を殺した後、勝家も殺し、先ほどの二人の男(上条と義清)も殺す気でいた。
だが、この時点で彼の気に入らない事が一つある。
それは撃ち抜いたはずの男(馬場信房)が銃弾を受けても倒れず、仁王立ちしている事であった。
蒲生「まだ死んでないのか・・・・・忌々しい奴だなッ!」
苛立ちの言葉を吐きながら、蒲生は銃の引き金を引く。だが、弾は出なかった。
蒲生(弾切れか・・・・そういえばさっきの連中相手に随分撃ったからな)
そう思った彼は木に隠れ、すぐさまマガジンの交換を行った。
この島に来てから、マガジンの交換は何度も練習した。その動きによどみは無い。
凄まじい速さで銃弾を補充し、木の陰からまた現れた時、蒲生は景色に違和感を感じた。
先ほどはただ仁王立ちしていた馬場が、今度は槍を構えていたのである。
馬場「・・・・貴様・・・・ごときの・・・・」
蒲生(まさか・・・・・銃で撃ちぬいたんだぞ!?)
蒲生は馬場に対して恐怖を感じた。直後、既に死に体の馬場が最後に叫ぶ。
169馬場信房は砕けない 4/7:05/02/12 14:53:33
馬場「貴様ごときの天命でこの馬場信房が砕けるかァァァァァァッ!!」
馬場が、持っていた武器の『鉄槍』を投げようとする姿勢をとる。
蒲生(こっちに・・・・・こっちに投げようってのか!?まさか・・・・そんな身体で出来るわけが無いッ!
    は・・・・早く撃てッ!撃て、賢秀ッ!!)
恐怖で銃を撃つ事を忘れていた蒲生より、馬場が槍を投げるのが早さで勝った。
だが・・・・死に体の馬場が投げた槍が蒲生に届くはずも無く、槍は地に落ち、馬場も地に伏せた。
蒲生「フ・・・・・ハハハッ!!驚かせやがっ・・・・・・・!?」
倒れた馬場の後ろから銃を構えた男が、安堵した蒲生の視界に入った。
勝家「馬場殿。貴殿の無念、某が果たす」
言葉が終わると同時に、勝家が放った銃弾は蒲生の左腕を撃ち抜いた。
蒲生「うッ!ウがッ!!」
蒲生の左腕に凄まじい痛みが走る。
だが、それでも蒲生は痛みをこらえ、来た道を必死に走って逃げた。
蒲生が逃げて完全に見えなくなった事を確認すると、勝家は急ぎ馬場の傍らに向かった。
勝家「馬場殿!無事か!!」
無事に見えない事は、無論勝家も知っている。だが、とっさに出てきた言葉はそれだったのである。
馬場「・・・・・晴信様・・・・この島で己の・・・」
馬場も己の命が長くない事は悟っている。だからこそ伝えたい事のみをただ言ったのである。
だが・・・・全てを伝える前に、馬場は事切れた。
馬場が息を引き取った後に、勝家は蒲生の逃げていった方向を確認し、こう言った。
勝家「・・・・・・貴殿の最後、必ず晴信殿に伝えよう。『馬場信房は真の武士であった』と。そして――」
勝家は、信房が最後に投げた槍を拾い、こう言った。
勝家「貴殿の最後の行動は、某が受け継ごう!」
170馬場信房は砕けない 5/7:05/02/12 14:54:43
勝家から必死に逃げていた蒲生は、先ほど自分が飛び降りた崖を背にして動きを止めていた。
どの方向から襲われてもいいように、しっかりと銃を構えながら。
蒲生「どこから来る・・・・・クソッ!右か・・・・左か!正面か!!」
右、左、そして正面に対して銃を構える。だが、次の変化は彼の予想だにしなかった方向から現れた。
上条「震えるぞハートッ!!」
蒲生「な・・・・なんだッ!?」
崖の上から声が聞こえてくる。蒲生はすぐに上を見るが、視界の中には人は見えない。
上条「燃え尽きるほどヒートッ!!」
蒲生「さ・・・・さっきの連中か!クソッ!クソッ!!やつらも飛び降りるつもりか!!」
そう考えた蒲生は、すぐさま銃を上に向けた。もはや足や腕に走る痛みなど気にしていられない。
蒲生「来てみろ・・・・来てみろ!こうなれば一人でも多く道連れにしてやるッ!!」
蒲生が覚悟を決めた時、またも上空から叫び声が聞こえてきた。
上条「刻むぜッ!!(長尾家の)家紋のビートッ!!」
蒲生「何が長尾家だ・・・・・死んでしまえば同じだろうがッ!!」
一人の人が飛び降りて来ると覚悟していた蒲生に対し、あまりにも想像をかけ離れた物が落ちてきた。
―――十数冊の、書物である。
蒲生「うわッ!!うわあああああああああッ!!!」
・・・・落ち着いてみれば、蒲生も書物である事はわかっただろう。
だが、恐怖、痛み、といったものが、彼から『落ち着き』というものを既に奪っていたのである。
蒲生は、次から次へ落ちてくる書物に向けて銃弾を放った。
書物の雨はなかなか止まない。蒲生も書物が降ってくる限り、必死で銃を撃ち続けた。
そして、弾が切れるころ、上から降ってくる書物の雨も終わったのである。
蒲生「フゥーッ!ハァーッ!フゥー・・・・・!?うわあああああああああッ!!」
一息をつき、正面を向けた蒲生の目に、槍を投げんとする勝家が目に入った。
171馬場信房は砕けない 6/7:05/02/12 14:55:49
蒲生も必死で銃口を勝家に向け引き金を引くが、カチッカチッといった無慈悲な機械音が響くだけであった。
勝家「・・・・・ルオオオオオオオオオオオオッ!!!」
渾身の叫びとともに放った槍は、引き金を引き続ける蒲生の頭を完全に破壊した。

上条「あーあーあー、まったく銃弾でズタボロだぜ・・・・・これ、まだ読めるかなァ〜」
書物を拾いに、回って降りてきた上条がため息とともに呟く。
向こうでは、義清と勝家がしばし話し合っていた。
義清「・・・・・織田家の者には、上条殿を救っていただいた恩がある。ここで貴殿を倒す事は出来ぬ」
勝家「ありがたい・・・・・某も、今しばらくは戦う気など起きなかったところだ」
義清「しかし・・・・・織田と長尾が協力して戦うと言うのも、これもまた時とは面白きもの・・・」
勝家「織田と長尾、ではない・・・・織田と武田と長尾よ・・・・・」
義清「武田・・・・?武田がはたして、一体何を・・・・・」
訝しげに聞く義清に対し、勝家は何も答えようとしない。そこに上条が口を挟んだ。
上条「おッ!あんた織田家の人間かい!そいつぁ奇遇だ!
   実はさっき俺も織田家の人間と会ったぜ!あっちのほうさこのトンチキがッ!!」
勝家「なにやら語尾が少々・・・・・いや、感謝する。では、失礼いたす」
上条が指を差した方向に、勝家は向かう。勝家の姿が見えなくなると、義清は上条に向けこう言った。
義清「・・・・・何も教える事は無かったのでは?」
上条「まあ、そんな事はいーじゃあねーか。んな事よりよォー、早くお屋形様を探さねーとなぁー」
書物を全て拾った上条と義清は、また勝家とは逆の方向に歩いていった。
172馬場信房は砕けない 7/7:05/02/12 14:57:58
先ほどの場所に戻り、馬場の遺体を埋葬していた勝家は空を仰ぐ。
―太陽が昇り始めた。それを見て、朝が来た事を勝家は確認する。
勝家「・・・・・・馬場殿。形は違えど、貴殿の天命必ずこの柴田勝家が受け継ごう」
墓標とした『鉄槍』に向かい、勝家はそう語りかけた。

【75番・馬場信房 死亡】
【35番・蒲生賢秀 死亡】

【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』】&
【94番 村上義清 『槍・日本号』】両者ともに4-E森地点から移動
(武田晴信&長尾景虎を探しています。義清は晴信を少し恨んでいます)

【54番・柴田勝家 『マテバ 2006M(残弾5発)』 『備前長船』 『H&K MP3(残弾15発)』】4-Eから4-Dに移動予定
(他の織田家中の者を探しています)
173血塗れの再会 1/8:05/02/12 23:43:36
なんて長い夜だろう。未だかつてこんなに長く、暗く、冷たい夜は経験した事がない。
たった一日前、ノドカと共に過ごした夜はあんなにも早く過ぎていたというのに。
まったく、この島の狂気は時間の感覚まで人の心を狂わせ、蝕んでいくのか。
今や本当に世界は、急激に冷えたしめった空気に私が吐く白く荒い息が消えていく様子や、雨粒の一つ一つが落ちていく様子が目で追えるほどだ。
本当に私の中で世界は止まってしまったのだろうか?

あれから数刻たったか、それとも一日たったか、今ではもう良く解らないが、今までずっと、もういい加減諦めをつければいいものを、私はまだ叫び続けていた。
雨にさらされ続けた体はもう、服と共に完全に濡れ鼠だ。きっとこの分では明日あたりにでも熱を出して、そして、待つべきものが待っているだろう。
チアノーゼを起こし、紫がかっている唇で自嘲めいたため息を漏らす。
第一、何故自分は走って、叫び続けているのだろう。
彼女と別れたときにそれは解っていたはずだ。この島で別れれば後はどうなるかという事が。―そう、頭ではわかっていたのだ。
それを仮定に仮定を、幸運に幸運をうまい具合に繋ぎ合わせて、自分に都合の良い未来を映していた心が今のこんな事態に私を、いや、二人を追いやったのだ。

陰鬱な想像が頭の中をぐるぐると駆け巡り、私はそいつの足が視界に入るまで、前に立った男の存在に気付かなかった。
「・・・誰だ?」
いつしか走りから、早歩きになっていた足を留めて、簡単に問う。
手は悴んで感覚も無いが、一応腰につけてあるホルダーの中の5-7を軽く握る。
男は、どうも少し腰が引けている。しかし、目は真剣そのもので、その紺碧の瞳の奥にどこか決意という物を窺わせた。
「武田が家臣、高坂昌信。それ以上進むというのであれば、攻撃も辞しません」
言ってその昌信という男は、その言葉の表明のように、真っ直ぐな小刀を抜いて、暗闇に光らせる。
昌信の言葉を契機に、ノドカの捜索を諦めて、父なり、家臣達を探す事もできたし、ある種それを望んでいた気持ちもあった。しかし、
「悪いが、譲れない。人を探さなくてはならんのだ」
私の口は初めからそういうことを決められていたかのように、雨音が響く中、透き通った声でその言葉を朗々と紡いだ。
174血塗れの再会 2/8:05/02/12 23:44:25
「・・・そうですか、残念です」
昌信は少し驚いたような顔をしながら、本当に残念そうな顔をして、そして、初めの気張ったあの顔に戻った。
彼が驚いた顔をするのはわからないでもない。なんなら有無を言わさず攻撃しても良いのだし、その場を立ち去るのも良いのだ。
しかし、私はこの場からは立ち去らず、さらに攻撃もしない。ただ前に進むと明言している。
「いざ、」
そんな私の真摯な対応に触発されたのか、気張った顔のままではあったが、昌信は一礼をする。
そして、その小刀を逆手に持ち直して、雨の中を駆け出してくる。
私も、彼の態度に応じて、刹那的な考えだとは思いながら、5-7に掛けていた手を離し、先刻預かったあの刀を握りなおす。

刀対小刀では間合いの視点から、よほど力量に差がない限り、刀のほうが有利に事が進む。
だが私の場合は、腹の矢傷、残りの体力、感覚のない手。
色々な要素が刀の間合いが持つイニシアチブを打ち消し、この勝負の行方を解らなくしていた。
―恐らく、お互い無事では済むまい。されど、大傷を付けられようと、たとえ殺されようと、私のやるべき事に変わりは無い。ただ前を見据えるのみだ。

刀に手を掛けてからの刹那の考えに終止符を打ち、刀を握る手に力を入れる。
美しい鞘から、さらに美しく、気品まで漂う白刃が覗く。
同時に暗闇を切り裂いて、一直線に向かってくる小刀が私の間合いに触れた。
私と昌信の殺気を孕んだ視線が交差し、お互い、無言の怒号を上げる。
昌信の小刀が私の体を刺し貫くのが早いか、この白人が鞘から抜け切り、昌信の体を立つのが早いか。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!」
・・・頭の中に考えられた事象の何よりも早く、森の奥から響いた少女の必死の叫びが私達二人の全ての動きを止める。
―この声は!!
「「ノドカ!」」
私と昌信は同時に叫んで振り向く、その視線の先には私がひねもす、ずっと探し続けていた白い顔が森の奥から出てきて、涙を浮かべていた。
そして、その顔を見たことに安堵した私は、限界を遥かに凌駕した運動を行った反動か、そのまま森のほうへ一歩踏み出した足がふらりと崩れて、そのまま倒れ込んだ。
175血塗れの再会 3/8:05/02/12 23:45:46
―もう何がなんだかわからない。
まだ空が晴れていて明るかった夕方に長政様から言われて、頑張って頑張って遠くへ逃げた。あの私に弓を射ってきた人はとても怖かった
そして、川のほとりまで逃げてきた時だろうか、私は源五郎君―今は高坂昌信っていう武将になって、御館様の手足として仕えてる。その人に出会った。
「ノドカ!こんな所にいたのか!」
一人ぼっちで怖がっていた私はその聞き覚えのある声にひどく安心した。
でも、安心したのも束の間、昔から私のことになると妙に過保護になる源五郎君は私が事情を説明する間もなく、
「ここは、危ないから来なさい」
と、促して、腕を引っ張っていった。
―長政様心配してるだろうな。ごめんなさい。
歩いている間に話そうかと思ったけど、結構今までの事―つまりこの一日ちょっと、何をやっていたか質問攻めにされたので、言っている暇がなかった。
そうしてしばらく歩いて、日が暮れた頃にこの森に入ってきた訳だけど、今度は雨が降ってきそうだったから、雨宿りの出来そうな大きな木を探す事になった。
幸い、お誂え向きの木はすぐ見つかったけど、それからご飯を食べたら、すぐに寝るように言われた。
―本当、過保護よね。長政様のことをすぐにでも言いたいのに
私はそう思いながらも、源五郎君の好意に甘える事にした。
もう日が沈んだ上、暗雲が垂れ込めて着ていたので暗く、人探しをするには遅すぎたことがあったからだ。
長政様はきっと生きている。でも、この雨の中、この暗闇の中・・・でも、まさか・・・

私の不安を煽るように、降り付ける雨はますます激しくなり、風も吹いてきた。
源五郎君が、雨が掛からないようにと、私の上の枝に敷き詰めた枝や葉の間からも雫がぽたぽたと落ちて来る。
―眠れない、心も、体も
私がそう思ったとき、おりしも、隣にいた源五郎君がおもむろに立ち上がって、森の出口のほうへと歩いていった。
袋からナイフを出している様子も見えたし、まずただ事ではない。
後で叱られるのは怖かったけど、私も立ち上がって、こっそりと後をつけていった。
176血塗れの再会 4/8:05/02/12 23:47:00
そして、見てしまった現状がこれだ。
何で、何で長政様と源五郎君が刀をお互いに突き立てようとしてるの?
何で二人とも、そんな怖い顔をしてるの?
何で二人とも、そんなに悲壮な覚悟を秘めた瞳をしてるの?

―何で二人とも、殺しあってるの?
その思いが、私を無我夢中で叫ばせていた。

私の叫びの後、願いが神様に通じたのか二人の動きはぴたりと止まった。
でも、そのまま振り向いた二人のうち、一人―長政様がばたりと倒れる。私は慌てて駆け寄った。
源五郎君が何を言うべきか唖然としている間に、長政様の額に触れる。
「・・・すごい熱」
紫色の唇や全体的に青い肌の色とは裏腹に、長政様の額は火に投げ込んだ石のように熱かった。
「源五郎君、手伝って。早く!」
反射的に助けを求める。複雑な表情をしていた源五郎君も私の顔と長政様の顔を見比べて、頷いた。
「わかった、どうすればいい?」
177血塗れの再会 5/8:05/02/12 23:48:16
森の出口まで行った時にはわからなかったけど、人一人を運んでその道を帰ってみると、そこはとんでもない悪路だった。
私達が寝ていた所まで長政様を運び込むのに、私も源五郎君も何回転びかけたか解らない。
私達によって静かに横たえられた長政様の体はぐったりとしていた。
服もびしょびしょに濡れて、その体にじっとりと張り付いている。
―まずは服を脱がさないと
ちょっと気後れする所もあったが、私は思い切って長政様の服を開けた。筋肉がふんだんについた逞しい胸板のゆれ方から長政様の呼吸は酷く弱弱しいものだとわかった。
そして、続いてそのままその服を脱がそうとして気付く。
一目でわかるほどの出血が彼のお腹から滲み出していた。
服についた長政の血はこの大雨で滲んで、服の模様か、泥汚れかと思ったから、傷を見つけるのが遅れた。
しかもかなりえぐれているその傷口からは一部分矢尻のようなものが見える。
―長政様、あの後!
夕方に別れた時のことが思い出される。
あれだけ離れた所にいた私を射ってくるんだから、この矢も相当な力で・・・。
ともあれ、まずは長政様の内から彼の生を蝕んでいく、死の矢尻を取り除かないと。
そう思ったときだった。

ターン。ターン。
近くから鉄砲の音が連続して聞こえた。私も一瞬音の方向に目をやる。
当然、目に見える範囲には誰もいない。
だが私の後で手持ち無沙汰そうにしていた源五郎君は、その音に一瞬身構えると、そのままそっちに走っていく。
「ノドカ、そこを絶対に離れるな!」
言って、振り向きながら私のほうに人差し指を指して強調する。
「でも、長政様は?」
源五郎君が林の奥に走って行ってしまわないうちに、すぐ聞き返す。
「ノドカの気持ちと、その長政という男を信じる」
そういうと、そのまま森の奥にいってしまった。
178血塗れの再会 6/8:05/02/12 23:49:45
気を取り直して、森の奥から、長政様の方に視線を戻す。
気のせいか、さっきよりも長政様の息が弱くなっている気がする。
―早く、早くしないと長政様が
決心して、自身のデイバッグから匕首を取り出して、鞘から抜く。きらりと鈍色の刃が雨露に濡れて光った。
そして、目を閉じて、長政様の傷口に匕首を突き立てた。直後にびくりと長政様の体が跳ねる。
「長政様、痛いかもしれないけど、頑張ってください。私も頑張りますから」
言って、さらに深く刃を食い込ませる。今度は、軽くうぅと、うめき声が漏れた。
矢が食い込んでいる所をさらに新しい異物である匕首の刃が食い込んで、その中をまさぐるんだから当然だけど、その声で私の手は一瞬止まった。

そして、もう一人の私が私自身に問い掛ける
―あなたは絶対この人が助けられると思ってるの?
「それは、わからない」
私は自信なく答える

―さらなる苦痛を与えてるだけじゃない?
「そうかもしれない」
私は否定できない。

―じゃあ、いっそのこと楽にしてあげたら、その刃で?そのほうが―
「違う!」
でも、私はそのおぞましいもう一人の自分自身の言葉に対して言い返す。
「見くびらないで、私はたとえこの身を賭してでもこの人を助けるの。例えそれが無茶でも、それがこの人に苦痛を与えてるとしても、それがこの人を死に至らしめたとしても。」
長い私の言葉が終わって、もう一人の私がまた、その言葉に冷笑を浮かべて、批判を口にしようとする。
でも、私はその批判を押しとどめるように、口に出して宣言した
「その時は同じ無茶を、痛みを、死を。私はこの人と分かち合う!」
179血塗れの再会 7/8:05/02/12 23:51:07
・・・我ながら、すごい事を言った物だ。
今まで匕首の柄尻を抑えていた手で唇に触れて、今殺気口に出した言葉が夢出ないことを確かめる。
余韻で少し開いてる。
私はそれだけ確かめると首を振って、自分自身を勇気付け、再び匕首に力を込めた。

―何処?何処?何処なの?
処置を行う前よりも酷い出血が私の焦燥感を昂ぶらせる。
その時、刃の先に堅い感触がする。―あった!
急いで匕首を抜き、指を血で濡れる傷口に差し入れて、それをつまみだした。
「取れた!」
長い間長政様の中にあって血を吸い続けた矢尻はいま、この手の中にある。
「えい、こんな物!」
言って、遠くの木にぶつけるように投げ捨てる。矢尻はからんと小さな音を立ててその根元に転がった。

一つ大仕事が終わったが、まだ全てが終わったわけではない。まだまだやる事は残っている。
まず、飲み水のボトルの蓋を開けて、傷口を簡単に消毒する。染みる事は無いのか体は跳ねないが、相変わらず、熱はあるし息は脆弱だ。
続いて、昼間に長政様と行った民家で貰って来た薬のビンを開ける。中には飲み薬が入っているようだが・・・。
「このままじゃ長政様飲めないよね・・・」
傷口は腹だ。袋に入ってたものを応用して固定してあるが、無闇に起こしては傷口が開いてしまう。かといって寝た体制のまま飲ませることも出来ない。下手をすると陸の上で溺れさせる事になりかねない。
今日何度目かの決断をして、少しだけ、長政様を抱き起こして、えーいとばかりに目をキッと閉じて、その薬を半分ほど口に含む。そしてそのままそれを長政様の口までもっていって、ゆっくりゆっくり飲ませる。
静かに、喉が震えて、薬を飲んでくれている様子がわかった。
同じ様に、二回目も口移しで、投薬した。
―・・・1回も、2回も、3回も一緒・・・
殺気の強い宣言とはうって変わって、よそよそした様子でもう一人の自分に言い訳する。
彼女はそんな私を見て苦い笑いを浮かべているような気がした。
180血塗れの再会 8/8:05/02/12 23:52:25
最後に残ったのは長政様のこの冷たい体温。どうにかしないと、命にかかわりかねない。
かといって、かの枝につるした彼の服は、濡れているので当然使い物にならない。
ここに火や、火をつけられるものはないし、あったとしても、もう湿気ってしまっているだろう。
幸い、雨はもう止んで来ているし、明日になれば火もつけられるだろう。
「本当に今日は決断の多い日よね」
誰になく、ため息をつくようにひとりごちる。
そして、私はまだ目を覚まさない長政様に抱きついて、寝る事にした。
本当に、今日は長い夜になりそうだ。

【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】疲労困憊。負傷。回復傾向。
【71番 長坂長閑 『無銘・匕首』】2-B森林。
【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】2-B林付近を哨戒。
1811/2 ◆IVgdXngJC6 :05/02/13 02:24:33
降りしきる雨をついて、成政は東へと駆ける。
成政は未だに先程の光景が信じられないでいた。
よもや信長が弟の首を切り落とすとは、夢にも思っていなかった。
しかし事実、それは起きてしまっている。
(かくなる上は、親父殿の裁量に頼るほかなし)
と、思い決め、勝家を捜しているのだが、何処をどう捜していいのか見当もつかない。
とりあえず信長と距離を取る意味も含めて、東へと足を向けているが、暗夜である。そう簡単には見つからない。
加えて先刻から降る雨も災いして、一向に勝家捜しははかどらなかった。
「早く・・・、早く親父殿にお伝えせねば・・・。信長様のあの様子は只事ではない・・・」
気持ちが焦れば焦るほど、畑の泥濘に足を取られてしまう。
成政は気付いていないが、実はもう一つの影が走っている。
一間先も見えない雨の中では、その影を視認するのは困難だったが、成政と同じ速度で並走していた。。
影は徐々に成政に近づいていき、気付いたときにはピタリと背後にくっ付いていた。
「ぬ!?何奴!」
1822/2 ◆IVgdXngJC6 :05/02/13 02:25:38
手にしていた『スラッパー』で振り向き様に相手を殴りつける。
ガツンと、確実な手ごたえがあったが、相手が倒れるようなことはない。
渾身の力を込めて顔面に叩きつけたのに、ビクともしなかった。
「クククク・・・、利かぬ、利かぬぞ道三。ナニモキカヌワ・・・」
六尺をゆうに越す偉丈夫が、殴られた顎を撫でつつ立っていた。
「道三だと!?・・・そうか、お前は斎藤義龍だな?」
暗くてハキッリと顔は見えないが、これだけの巨漢は他の参加者にはいなかったと、開始当初の記憶を辿る。
「チチノカタキダ・・・死ネ・・・道三・・・」
「ま、待て!人違いだ、道三では――」
スプリングフィールド M1の銃口を成政の胸に押し付けると、成政の言葉には耳を傾けずに引き金を引いた。
至近距離から撃たれた成政はひとたまりもなく、背に拳だいの風穴を開けて仰向けに倒れた。
「お、親父殿・・・。信長様を・・・頼み・・・ま・・・・・・」
「イヒヒヒヒ、チチノカタキ・・・道三ヲ殺シタ・・・」
不気味な笑いをしながらコト切れて横たわる成政の顔を覗き込む。
「違ウ・・・コイツハチガウ・・・道三ジャナイ・・・ドウサンドコダ・・・」

【52番 佐々成政 脂肪】
【49番 斎藤義龍 『スプリングフィールド M1(残弾6発)』『スラッパー』】4-C畑(誰彼構わず、道三と勘違いして無差別に襲ってきます)
183「550 ◆9rH0eHARI. :05/02/13 22:35:04
(まるで長い間戦っているようだ・・・・。)
長曽我部元親と北条氏政はそう感じながら武器を振るっていた。
死にたくないという思いと父の後を継いだという責任が二人に圧し掛かっていた。
(父上・・・)
氏政の脳裏に焼きついた父氏康の最期。決して忘れられない・・いや、忘れてはならないことなのだ。
(父上があの時庇ってくれたからこそ私は今も生きているのだ!!このような所で死んでたまるか!!)
氏政の瞳に宿った小さな執念の光に元親は気がついた。それと同時に氏政のコブラに重みが増した。
(!?これは・・)
氏政の攻撃を鎌で受け止めはしたが、腕に痺れが走った。元親も負けじと鎌を持ち直し、体制を直す。

「全くもって腹ただしいことだ!!あの天皇め!!許さんぞーっ!!」
突然上がった怒声に元親は驚いた。氏政も辺りを見渡す。
少しはなれたところに人影を見つけた。どうやらその人影はこちらへ歩いてくるようだ。
「あ・・綱成殿?」
氏政の言葉に近づいてきた男、綱成は足を止めた。突然沈黙が流れたかと思うと、綱成の眼から滝のように涙が溢れ流れる。
「ここで仲間の御主と出会えるとは!!これは運命だ!!筋肉のお導きだー!!!」
「うわっ・・!!やめてくださいよ!!抱きつくな〜!!」
「感激の再会・・なのか?・・とりあえず、戦いはここまでだ」
元親は氏政たちに一瞥をくれると、その場を立ち去った。
(・・仲間・・か。私にも同じ家の者がいるはずだが・・どこにいるのやら・・)
(・・会ったところで殺し合いになるかもしれぬ・・あのように喜んでくれる者が私には居るのであろうか?)
険しい表情で元親は空を見上げた。





184550 ◆9rH0eHARI. :05/02/13 22:42:31
【82番北条綱成『ヌンチャク・木太刀』】
【53番穴戸隆家『キャット・オブ・ナインテイル』】
【80番北条氏政『南部十四式(弾切れ)・クナイ9本・短刀コブラ・頭に鍋】
三人は1−Eにいる
【65番長曽我部元親『鎌・ウィンチェスターM1897(残弾5発)】
元親は目的地不明で歩いている。
185筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :05/02/14 14:42:17
01赤尾清綱×  26岡部元信×  51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政○  77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行×  53宍戸隆家○  78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家○  79北条氏照○
05安居景健×  30小山田信茂× 55下間頼照×  80北条氏政○
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉×  81北条氏康×
07浅井久政○  32柿崎景家×  57上条政繁○  82北条綱成○
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○  83細川藤孝○
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀×  60滝川一益×  85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×  86前田利家○
12甘粕景持×  37北条高広○  62武田信繁   87真柄直隆○
13尼子晴久×  38吉川元春×  63武田晴信○  88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞   64竹中重治×  89松田憲秀○
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×  91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如○    67鳥居元忠×  92三好長慶○
18石川数正×  43高坂昌信○  68内藤昌豊×  93三好政勝×
19磯野員昌○  44香宗我部親泰 69長尾景虎○  94村上義清○
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景×  95毛利隆元×
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○  96毛利元就○
22岩成友通×  47斎藤道三   72丹羽長秀○  97森可成×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉×  98山中幸盛○
24遠藤直経×  49斎藤義龍○  74蜂須賀正勝○ 99六角義賢×
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房×  100和田惟政○

×印:死亡確認者 60名
○印:生存確認者 37名
無印:未登場者  3名
186筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :05/02/14 14:43:37
【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『相州五郎入道正宗』】4-B森
【42番 顕如 『FFV M2カール・グスタフ(望遠レンズ附属、残弾1発一時使用不能)』】3-I海に逃亡
【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】2-B林付近を哨戒。
【48番 斎藤朝信 『モップ型暗器』】3-C荒野から移動
【100番 和田惟政 『不明』】2-D畑より出発
【54番 柴田勝家 『マテバ 2006M(残弾5発)』『備前長船』『H&K MP3(残弾15発)』】4-Eから4-Dに移動予定(他の織田家中の者を探しています)
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】3-B廃屋から北へ
【71番 長坂長閑(ノドカ) 『無銘・匕首』】現在地不明
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾24発)』】現在地不明
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(4本)』『十手』】1-E
【98番 山中幸盛 『ダマスカスナイフ』】現在昌景らと一緒?(現在地や装備がが本編に記載されていないため確認できず)
【07番 浅井久政 『S&W M36チーフススペシャル』】1-I崖の下の海食洞にて猫とバトル開始!?
【49番 斎藤義龍 『スプリングフィールド M1(残弾6発)』『スラッパー』】4-C畑(誰彼構わず、道三と勘違いして無差別に襲ってきます)

交戦中
【74番 蜂須賀正勝 『オーク・ダブル・アックス』】VS【87番 真柄直隆 『長曾禰虎徹』】3-F森で交戦中
187筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :05/02/14 14:47:17
パーティ
【72番 丹羽長秀 『Mk2破片手榴弾(2個)』 『矢(10本)』】 &【86番 前田利家 『SPAS12(残弾?)』】両者ともにD-4森 (他の織田家中の者を探しています)
【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『USSR AK47 カラシニコフ(残弾少量)』『ボーガン(5本)』『十文字槍』 (軽い打撲。命に別状はなし)】&
【46番 小早川隆景 『グロック17C(残弾17+1発)』(右腕骨折・体調最悪、意識は少し回復)】 負傷の為進行遅延。4-Cで浅井長政をやり過ごす
【19番 磯野員昌 『呉広』】&【24番 遠藤直経 『マクアフティル』】&【09番 朝比奈泰朝 『青龍偃月刀』】目的、浅井家臣との接触。今川親子が死んで、泰朝の目的不明
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ』 食料(少量)】&【29番 飯富昌景 『武器不明』】&
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(刃こぼれ)』】幸盛と一緒?(現在地や装備が本編に記載されていないため確認できず)
【89番 松田憲秀 『スタンガン』】&【79番 北条氏照 『武器は不明』】5-Cより移動
【37番 北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾2発・一時使用不可)』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】&
【39番 吉良親貞 『武器不明』『ジッポ』『モトローラ トランシーバ T5900』】(共に3-B廃墟付近)
【89番 松田憲秀 『スタンガン』『毒饅頭』】&【79番 北条氏照 『武器は不明』】5-B民家で就寝
【90番 松永久秀 『青酸カリ(小瓶に入ってます)』】 &
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢・6本)』】 (久秀負傷。左足を引ずづることになります。)当面の目的は休息できる、安全な場所の確保
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』】&
【94番 村上義清 『槍・日本号』】両者ともに4-E森地点から移動(武田晴信&長尾景虎を探しています。義清は晴信を少し恨んでいます)
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】(疲労困憊。負傷。回復傾向。)&【71番 長坂長閑 『無銘・匕首』】2-B森林。
【82番 北条綱成 『ヌンチャク・木太刀』】&【53番 穴戸隆家 『キャット・オブ・ナインテイル』】&
【80番 北条氏政 『南部十四式(弾切れ)・クナイ9本・短刀コブラ・頭に鍋】3-E
188筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :05/02/14 14:48:02
正親町天皇・・・・・今回の狂気ともいえる余興の主催者。最後まで生き残った者に、天下を約束する。実は剣術の天才?
06番浅井長政・・・・父・久政と義兄・信長を助けようとしている。99番六角義賢の襲撃でノドカと離れ離れになる。
07番浅井久政・・・・影の主役の呼び声が高い人物。ダークホース的な存在。
09番朝比奈泰朝・・・直経・員昌が気に入り行動を共にする。
11番足利義輝・・・・九字の破邪刀で大悪を斬ることを決意。妖刀を持つ、67番鳥居元忠を誰かの助けで斬る。
19番磯野員昌・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・直経と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
24番遠藤直経・・・・浅井家関係の人間との接触するのが目的。同じ浅井家臣・員昌と、突然現れた泰朝と行動を共にする。
27番織田信長・・・・天皇に魅せられた男。自分の方が天皇より優れていることを証明するため、殺し合いには積極的に参加。孤高のジェノサイダー。
29番飯富昌景・・・・武田家屈指の強さを誇る男。重秀の考えに賛同し、晴信捜しを手伝わさせる。晴信を心から尊敬している。
37番北条高広・・・・帝の褒美が島からの脱出と考え、景持を誘い晴信・景虎の殺害を企む。
42番顕如・・・・・・余興に乗り、殺し合いに積極的に参加した破戒僧。もはや仏を超えた戦いぶりを見せる。
43番高坂昌信・・・・似たような境遇の朝信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、晴信を捜しに行く。
46番小早川隆景・・・父・元就と合流。幸盛の六角棒により右手を負傷するも、元就の重荷になるまいと、それを告げぬ強い意志を持つ。
48番斎藤朝信・・・・似たような境遇の昌信と友情が生まれる。善光寺での再開を誓い、景虎を捜しに行く。
189筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :05/02/14 14:48:44
49番斎藤義龍・・・・父道三を偽者だとして、敵討ちに萌える。
53番宍戸隆家・・・・なにやらわけもわからず綱成に拉致された可哀想な人。現時点で目的は不明。
54番柴田勝家・・・・馬場との決闘中、仲間割れで羽柴秀吉と佐久間信盛を失う。
57番上条政繁・・・・ジョースター家の一人。景虎との合流を目的とし、義清と行動を共にする。
58番鈴木重秀・・・・鉄砲傭兵集団、雑賀衆頭領で鉄砲の名手。人や権力に縛られるのを嫌う気ままな自由人。天皇殺害を心に決め、昌景と行動を共にする。
63番武田晴信・・・・武田信玄の名で知られる名将。ひょんなことから、景虎と行動を共にする。下間頼廉に襲われたところを内藤昌豊に助けられる。
65番長曽我部元親・・弱き者に牙を向く器量無しを嫌悪する、姫若子と呼ばれた男。現在、北条氏政と対峙。
69番長尾景虎・・・・上杉謙信の名で知られる名将。ひょんなことから、晴信と行動を共にする。相当な実力者。
71番長坂長閑・・・・ノドカ。実は歩き巫女なる女忍びで、親方・晴信を探しているところを浅井長政と会う。長政との関係に期待大。
72番丹羽長秀・・・・優れた知略の持ち主。相棒の利家に振り回されながらも、幾多もの危険を回避している。
190筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :05/02/14 14:49:25
75番馬場信房・・・・柴田勝家と互角の決闘をした武将。晴信の元に馳せ参じる予定。
79番北条氏照・・・・父の死を悼み、兄と合流を目指す中、松田憲秀と出会う。
80番北条氏政・・・・臆病者。しかし、父・氏康の死をきっかけに、生まれ変わることを決意。まだ実力のほどは解らない。長曽我部元親と対峙
82番北条綱成・・・・自慢のマッスルボディを愚弄されると切れる危ないオッサン。愛すべき地黄八幡。
86番前田利家・・・・『むむむ』が口癖の男。相棒の長秀にいつも怒られている。 槍の又左の異名はいずこに。
89番松田憲秀・・・・氏政・氏照では心もとないと、スタンガン片手に謀反を企てる?氏照と行動を共にする。
90番松永久秀・・・・主君・長慶を操り自分の利にしようと企む。今のところ目立つ動きは無い。
92番三好長慶・・・・久秀を信じているが、実は久秀に踊らされている?
94番村上義清・・・・景虎との合流を目的とするが、晴信に不信感を抱いている。
96番毛利元就・・・・息子・隆景と合流。子には優しいが、誠久を嬲り殺すような残忍な一面も持つ。浅井長政の豹変を見て恐怖・進行停滞。
98番山中幸盛・・・・義に篤く、主家想いの忠臣。誠久の無念を晴らすため、打倒毛利を決意する。
100番和田惟政・・・忍びの心得を持つ男。滝川一益の弟弟子。主君義輝との合流を目指す。
191初戦1/4:05/02/14 16:07:30
「信廉が死に、兄上はお尋ね者。明日こそは出会わねば」
一向に弱まらない雨風を浴びながら、歩を進める男が一人
男の名は62番・武田信繁。晴信の弟に当りここ二日まったく動きを見せていない
自問自答を繰り返しながら、彼はふと考えていた
思えばこの島に着てからずっと兄を探していた。しかし彼は未だ島で誰にも出会ってさえいない
「こんなものじゃ敵に出会った途端に撃ち殺されて終いだ。刀でも落ちてないのか・・・」
彼の手にはフォークが二本。このハズレ武器ではいくら信繁でも勝負にならない
極力人と出会わぬよう慎重になりすぎたのが原因だった
―このままではいずれ死ぬ。誰かを殺さねば生き残れない
そんな事はとうに分かっている。それでも心と体は違う結論を出した
「人は・・・斬れない。無為に人を殺すなど俺には出来ない!」
 
ダーン!!
次の瞬間頬を銃弾が掠めたのに気づき、慌てて物影に隠れる
その痛みは彼の考えを打ち消し、現実へ強引に誘った
片目で銃弾の飛んできた方を睨みながら、臨戦態勢を取る
遥か遠くから現れた男は銃を投げ捨て、鬼の形相でこちらを睨み返す
「ただでは・・・済みそうにないな・・・・」
192初戦2/4:05/02/14 16:09:45
二人の男は徐々に間合いを詰め、互いの顔を確認できる所で立ち止まる
「私は武田信繁。帝が言っていた武田晴信の実弟だ。何故私を狙うのか?」
「ほう・・・ならばお前を殺して晴信の頸も頂こう。そしてこの島を脱出する・・・」
「!!兄上か景虎の頸を捧げればこの島を出れるのか!?それは本当か!?」
「それは定かではない。しかし邪魔者を消して損は無いだろう?」
その言葉に信繁は衝撃を受けた。ひとつは兄が多くの参加者に狙われている点
もうひとつは上手くいけばこの島を脱出できるという点だった
(あの放送の内容から考えるに、兄上は景虎と一緒にいるはず。ならそれと合流して二人で景虎の頸を取る!!)
もちろん相手の話に証拠などない。しかし信じたかった。
―嘘でもいい、とにかく兄を救いたい。そしてあわよくばこの戦いを終わらせる
それが信繁の決意であった
「・・・さて、お喋りもここまで。晴信戦への肩慣らしだ。いくぞ!!」
「いいだろう。では我が典厩信繁、参る!!!」
193初戦3/4:05/02/14 16:12:24
彼は勢いよく駆け出し、相手へフォークを突き立てる
(あの構え・・・戦い慣れしている。だが一撃でも当たれば・・・)
しかし両手のフォークで突いても斬ってもリーチの短さが災いしまともに当たらない
逆に、顕如の素早い動きから繰り出される拳に信繁の体力は奪われ続けた
必死でガードしていた腕の感覚はなくなり、体中アザだらけで意識も朦朧とする
「ハハハハハハハ!!どうしたもう終わりか!!ハハハハハハハ!!」
―自分は何故殺されかけているんだろうか?ふと考えていた
―経験の差か?相手が悪かったのか?武器に恵まれなかったからか?
いや、全て違う
―負けぬと思えば負けたとしても心まで負ける事はない
誰かが言っていた言葉。たしか小さい頃聞かされた気がした
その言葉を思うたび恐怖心は薄れ、不思議と痛みを感じなくなった
「ウォォォォォォォ!!!」
信繁は雄たけびをあげ、相手へと向かっていく
それに驚きつつも、それを迎え撃つ顕如
だが彼とて人間。ここにおいて最大の失態を犯す
「あ、足が動か・・・や・・・やめろーーー!!」
雨でぬかるんだ土に足を取られた。その一瞬が生死を分けた
グチャ!
194初戦4/4:05/02/14 16:13:44
信繁のフォークは顕如の頭を貫き、即死だった
そのまま泥の中に倒れ動かなくなった
「・・・強かった。だが色々な事を学んだ。感謝する」
軽く手を合わせ、彼を土に埋めもう一度手を合わす
そして傷だらけの体を引きづり、また晴信を探しに歩き出す
信繁の遅いスタートとなった

【42番 顕如 死亡】
【62番 武田信繁 武器なし】 3-H家へ向かう(全身にケガ、休養が必要)
195久政伝○1/2 ◆XoNjNH489g :05/02/14 18:43:44
未だに隅でうずくまっている久政。体は小刻みに震え、今にも倒れそうだ。
(なんで・・・巨人がここにいるんだ。どうして俺ばかりこんな不運な目に・・・
 でも、命乞いをすれば命ばかりは助けてくれるだろう。今までもそうやって助かったから)
「どうか命だけはご勘弁を。貴方の言う事は何でも聞きますので。
 お願いです。お願いします。どうか命だけは・・・」
しかし、向こうから返事は返ってこない。
(もしかして、どこかに行ったのか?)
わずかな希望を胸に抱きながら、もう一度命乞いをした。
「どうか命だけはご勘弁を・・・」
すると、向こうから返事が返ってきた。
「にゃ〜」
普通に聞くと、猫の鳴き声である。
しかし、それを聞いているのは久政である。
久政にはこう聞こえた。
「いや〜」
(えっ・・・嫌だ・・・と言う事は俺はここで死ぬのか?死にたくない
 しにたきゅわい・・・しぬちゃきゅにゃい)
哀れ久政―死への恐怖と、頬をつたわる涙と、絶望から日本語すら喋る事がままならなくなった。
「どびゅか、いのぢだぎゃわ・・・いのじゅぎゃけは・・・」
196久政伝○2/2 ◆XoNjNH489g :05/02/14 18:46:43
その時、久政は自分の頬を舐められていることに気が付いた。
(どういうこと?まさか、舐め殺し?)
そこで、誰が自分を舐めているのか気になって、そーっと顔を上げてみた。
「やっぱり巨・・・ね・・・ね・・・ネズミ?」
猫は間違えられた事に腹が立ち、久政の腕に噛み付いた。
「ゴメンゴメン、猫だね。」
「にゃ〜」
「それにしても、猫だったのか・・・猫に怯えていたなんて事は長政や家臣の皆に知られてはまずい。
 私の威厳がなくなってしまうからな。そうだ!一人じゃ寂しいから、この猫と一緒にいよう。」
久政の情けなさが皆に知られなかったのは、不幸中の幸いと言えよう。
そして、仲間を求めていた久政が、最初に出会えた仲間が猫だったのは久政の運命なのかもしれない。

「そうだ。名前を付けよう。何がいいかな・・・久政天皇は?」
がぶっ・・・
「痛いな〜わかったよ。嫌なんだろ。では何にしようかな?」

猫に命乞いをする男。浅井久政  これが彼の伝説の幕開けとは・・・まだ誰も知らない
【07番 浅井久政 『S&W M36チーフススペシャル』】1-I次回、久政ついに動く!!その理由とは?
                                      
197三日目・日の出の放送:05/02/14 19:08:47
皆の者、三日目の朝である。この島にも慣れたであろう?日に日に血の匂いが、濃くなってきて朕は嬉しいぞ。
ん?ああ、そういえば、雨が降っておったのう、皆の調子がいい褒美として、まず、この雨について教えてやろう。
安心せよ、この雨は朕も予期しては居らなんだが通り雨である。間もなく晴れ間も見えるであろう。
しかし、この雨でしばらく霧が出るところもあるようだな。心得よ。

次に食糧の配布場所だが、先の雨で手違いが起こってな。今回の配布場所は二箇所じゃ。
3-D森の前、2-F海に張り出した記念碑。以上じゃ。
まぁ、この手違いでこの島に流血の戦いが促進されると思えば良いものじゃな。

最後に死亡者を伝える。死んだ順番だ。
05番安居景健、28番織田信行、18番石川数正、68番内藤昌豊、60番滝川一益、95番毛利隆元、18番尼子晴久、12番甘粕景持、01番赤尾清綱、75番馬場信房、35番蒲生賢秀、52番佐々成政、以上12名。
二日目の合計で、37人になる訳か・・・調子が良いぞ。
総生存者数も42人といよいよ半数を切った。

・・・そうそう、前の褒美はまだ討たれておらんようじゃぞ?早く討たぬか!
・・・ブツッ
198蝮 1/5:05/02/14 23:08:25
森の奥での決闘が終わってから何時間たっただろうか。
正勝と直隆の二人は自分たちの汗が混じった所に一方は伏し、一方は仰向けになっていた。
辺りには彼らの汗だけではなく、夜中に降りしきった雨と、赤くどろりとした液体が散乱している。
その液体は彼ら二人の体からそれぞれ流れ出ていた物だった。
泥にまみれてなお鮮やかな赤色は、雫を留めている若草と鮮やかな色のコントラストを描いていた。
辺りには霧か雨による湿った空気の匂いに、鉄臭い匂いがまじる。
そんな中、ただ一人立ち尽くしている男が居た。
男は身こそ小柄だが、その小さな服の下には無駄な脂肪がなく、引き締まった筋肉が見え隠れする。
顎鬚はないが鯰のような髭を唇の上から生やしているのが特徴的である。
顔にいくつかしわは出来ているが、引き締まった顔立ちは実際の年齢よりうんと若く見えることだろう。今風に言うなれば、ナイスミドルであった。
手には 『オウル・パイク』と呼ばれる、柄に比べて、通常よりも非常に穂先の比率が大きい槍―日本で言うなれば大身槍の一種であろうか、それを握っていた。
その穂先からは、地面に溜まっている物と同じ血がまだ滴り落ちている。
正勝と直隆の二人はこの男に殺されたのであった。
199蝮 2/5:05/02/14 23:09:47
時をさかのぼる事数刻。
正勝と直隆は昼に出会ってから、休み休み、日が暮れても決闘を続けていた。
そして彼らは肉体の限界を超えて、戦闘した結果、試合のつもりが、段々本気になってきて、攻撃に必死に成り、防御と回避に気が回っていかなくなったのだ。
熱くなりすぎた彼らに待っているものはただ一つだった。
その一つの結果が、同時に互いにもたらされた事は幸運だったのかもしれない。
夜空に暗い雲が掛かり始めた頃、正勝が全力で凪いだ斧が直隆の左足を切断し、直後に直隆の刀が正勝の肩を切り裂いたのだ。
正勝は直隆の足を切ったときの低い姿勢のまま、うつ伏せに倒れ、直隆は足を切られた衝撃で刀を握ったまま、仰向けに吹き飛ばされた。
正勝は右肩付近を鎖骨ごとばっさりと立たれ、動脈出血。
直隆は左足をもがれ、出血多量の上、助けがないともう立てそうもない。
二人の勝負は相打ちだった。倒れた二人もそう理解したらしく、頭に溜まった血が抜けていったせいか、急に頭が冷静に戻った。
本来ならこれだけの傷、出血、そして痛みはショック死さえ引き起こしかねないが、アドレナリンが激しく分泌された彼らの感覚はほとんど麻痺し、そのような事態には至らなかった。
傷口を押さえて、少しでも出血を抑制した彼らは荒い息でありながらも、静かに話を始めた。
「あんた、強えな。」
「お前もな、あの剣閃はきるのが辛かったぜ、ついつい熱くなっちまった」
二人とも目をあわさずに話す。正勝は斬られていない方の腕で、横倒しに体を起こし、そのままごろりと仰向けになった。
「俺もさ。朝倉家中でも有名な俺に勝てた事、自慢していいぞ」
直隆はさも自慢げに言う。しかしその口調に覇気はなかった。むしろ、虚しい響きさえ感じられた。
「ふふ、勝てたかどうかなどこの際関係あるまい?」
自虐的な言葉を吐く直隆を、正勝が上手く慰める。
少し考えて、直隆は目を閉じた。
「だな。しかし、俺もあんたと戦った事を自慢したいんだが、俺あんたの事あんまり知らねぇわ」
もう一度薄っすらと目を開けて、横目で正勝を見やる。
己の血と負けず劣らずの量の血が正勝からも流れ出ていた。
「右に同じく。朝倉家最強も俺の耳には届いた事がない。」
苦笑っぽく正勝は返す。
200蝮 3/5:05/02/14 23:11:08
「俺は、朝倉の侍大将よ。普段は大太刀振るって、加賀の坊主や狂信者どもをばっさばっさ薙ぎ倒してる。」
自慢っぽい自己紹介を直隆は始めた。
「加賀征討では今は亡くなった朝倉教景殿が指揮をとっていたと聞くが?」
やはり、自分の知識とあわない話に正勝は首をかしげる。
正勝も宿場に勢力を構える独立的な土豪。周辺大名の勢力の変化に機敏に対応する為に、宿場に来る客からは絶えず情報を聞きだしている。
その為、正勝は近隣の大名の情報に詳しかった。
しかし、その正勝の言葉に反駁して言った。
「ああ、大将は宗滴の爺さんよ。行ったろ?俺は侍大将。」
「つまり、前線に立って、雑兵と一緒に戦う?」
皮肉ったように正勝は言った。
「ま、否定はしねぇ。俺の大太刀捌きは本場の近江の奴にも負けねぇよ」
そう直隆は締めくくった。

「ああ、大太刀武者には色々と辛酸を嘗めさせられた。」
直隆の締めくくりの言葉に反応した正勝が語る。
「どう言う事だ?・・・ついでにあんたの事も教えてくれよ。」
「つまり、俺は美濃と尾張の間にある宿場の棟梁よ。で、今は斎藤に属している。」
「ああ、斎藤か」
こういうことには疎い直隆も何度か耳にした事はある。直隆は言葉を続けた。
「蝮の道三に頭下げてるわけか?で、近江の六角と闘ってると?」
今度は直隆が皮肉った。しかし、
「いいや、六角は浅井が押さえている。大太刀武者と言う表現が悪かったな」
と、意味深な言葉で正勝は皮肉を否定した。
「と、いうと?」
もちろん、直隆もその言葉に食いつく。
「つまり、あれだ、伊吹の野盗よ」
「なるほど。しかし、何故?」
「ああ、今、斎藤家でも代替わりのごたごたがあってな、国境辺りにまでは夜警兵を出す余裕がないのだ。今や、息子の義龍が圧倒的に優勢だというのに・・老いてボケたかな?」
正勝は持ち前の知識で、直隆にもわかりやすいように言った。
「ああ、蝮もいよいよ隠居って、が―――」
201蝮 4/5:05/02/14 23:12:44
笑っていた直隆が突然口から、血を吹き目を見開いた。
正勝が異常事態に感づき、首だけを起こして、直隆を見やると、彼の左胸辺りから、大きな刃が突き出ていた。
―駄目だ、即死だろう。しかし、一体誰が?
正勝はお迎えが来たと思って、さして死ぬ事に恐れはなかったが、その後ろから出てきた人間を見て、顔の色を変えた。
「蝮殿・・・!」
辛うじて、直隆の後ろから出てきた男の名を正勝の口が紡ぐ。
その様子を見はからったように刃が引き抜かれ、その大身の槍の全貌が顕わになる。
同時に吹き出た血は蜂須賀の目に焼きついた。
「ボケていて悪かったな、蜂須賀の。」
鉄のように重い声が、あたりに響く。
怖い者なしと自負していた正勝が怯えるもの、それがこの男のこの顔であった。
笑っていれば、商人とも、坊主ともわからない顔が、一度真剣になると、何人も犯し難い、そんな風貌になるのだ。
加えて、今、この重い声もさることながら、大身の槍の鈍い色をした槍身に張り付く赤い鮮血。それは正勝を逃げ腰にするには十分だった。
もう一度、片手で転がるようにして、匍匐で逃げる。肩の傷口に泥水が沁みたが構っていられない。
彼とて逃げ切れるとは思っていなかったが、しかし、そのような行動をとらざるを得なかったのだ。
そしてその様子はまるで、蝮に狙われた蛙のようであった。
「生憎だが、義龍におめおめとくれてやれるほど安い命ではないのだ。」
そう声が響いた後、必死に逃げる蛙の心臓に、非情な蝮の牙が突き立てられた
202蝮 5/5:05/02/14 23:14:14
話は朝に戻る。
突然立った道三は離れた茂みに向かって口を開いた。
「朝だ。そろそろ起きろ。」
そっけない言葉だったが、茂みの中の者はしゃんと立った。
「おはようございます。」
彼は元気よく挨拶する。
近くに死体があるにも関わらず、この二人は全くそれを意識している感じがない。いわば普通に会話をしているのだ。
それは、普通こそが異常と思われる情景だった。
「行くぞ、このあたりにもう用はない。血の匂いをかぎつけて奴も来る」
まだ、少し寝ぼけ眼の若者―いや子どもに道三は厳しく言う。
しかし、それを苦とした風もなく、その子どもは道三についていった。

後には、蝮の牙の跡が生々しく残る、うち捨てられた2つの死体と、霧にまぎれる血の匂いだけが残っていた。

【74番 蜂須賀正勝 死亡】
【87番 真柄直隆 死亡】
【47番 斎藤道三 『オウル・パイク』『長曾禰虎徹』】『オーク・ダブル・アックス』は放置
【44番 香宗我部親泰 『武器不明』】共に3-F森から出発
203十面埋伏1/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/16 16:42:46
「(父上の様子が何かおかしい・・・)」
隆景が元就の異変に気付いたのは、放送で隆元の死を聞いてからだった。
長政を見たときも以上は感じられたが、すぐにいつもの元就に戻ったこともありそれ以上心配はしていなかったのだが、明らかに今の元就はおかしかった。
眼が血走り、いつもの冷静さを欠いていた。
「父上、隆元兄上のことは残念でありますが、今はお体を休めてください」
隆景がそう気遣ったのだが、
「黙れ!息子を二人も失った気持ちがお前なぞに分かるのか!控えておれ!」
と、逆に怒鳴られてしまった。
かと思うと、しばらくして、
「隆景、わしの可愛い隆景よ、怒鳴ってしまってすまなんだ。・・・もう、わしにはお前しかおらんのだ。決して、わしより先に死ぬことは許さんぞ」
と、目に涙を溢れさせて頭を撫でてくる。
「(父上は気をふれられた)」
隆景は必死に穴を掘る元就を見て、もう一度そう思った。
元就はずっと穴を掘り続けている。矢を使ったり、十文字槍を使ったりして巧みに掘る。
もう胸の高さまで掘り進めていた。
204十面埋伏2/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/16 16:43:45
「こんなものでよいじゃろう」
自分の掘った穴に満足したのか、泥にまみれた十文字槍に体を預けながら上に這い上がってくる。
「父上、これは何の真似でしょうか?」
元就が発狂したと思っている隆景は、心配そうに尋ねた。
「なに、お前を守るための細工をな」
「守るための細工・・・、ですか?」
「左様、最早お前を守るためには、他の参加者を殺さねばならんようじゃ。これは十面埋伏という戦術の一つでな、お前もよう覚えよておくがよい」
そう云うと、ここは危ないからと、隆景を林の中に隠してしまった。
元就自身は、自ら掘った穴の中に潜り込んでいる。
雨は止んでいたが霧が垂れ込め、視界は非常に悪かった。
「元春、隆元・・・お前らを死なせたのはわしの手落ちじゃ。せめて・・・せめて隆影だけはわしの手で守り抜くぞ」
穴の中に座り込んで、すでに死んでしまった二人の息子に、隆景を見守ってくれと頼んだ。
パシャッパシャッと、水を含んだ地を歩む音が聞こえてくる。
「来たか・・・。まずは貴様の命を貰い受けるか」
USSR AK47の焦点を、霧の向こうに合わせて呟いた。
205十面埋伏3/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/16 16:44:27
狙撃銃ではないが、穴に隠れて十分近づいたところで発砲すれば、弾は敵を撃ち抜くことだろう。
たとえ弾が当たらなくても、突然撃たれれば相手は混乱するはずである。そこを槍で襲うもよし、弓で襲うもよしと思い定めている。
視界が悪いために耳をすませて、敵の接近を待つ。足音はすぐ近くまで迫っていた。
視認するまでには至らないが、勘を頼りに引き金をしぼる。
「殺ったか!?」
煙硝の臭いが充満する穴の中から外の様子を窺う。何も聞こえないが、念のためにもうしばらく様子をみる。
「どうやら殺ったようじゃな。どれ、顔を拝ませてもらうかの」
這い上がろうと、穴の縁に手を掛けた時だった。
「ご挨拶だな、老人」
背後から感情を押し殺したような声が掛かった。
元就は動けないでいる。首筋に冷たい物を押し付けられているからだった。恐らく銃の類であろうことは元就も知っている。
「穴に潜るとは、まるで土竜だな」
背後の声がククッと笑った。
「なにゆえ俺を狙った?」
「・・・・・・」
元就が喋らないでいると、
「身を守るためか?」
と問うてくる。
206十面埋伏4/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/16 16:45:53
「・・・それもある。息子を守るためと、わし自身が生き残るため・・・。それもあるが一番は・・・」
「なんだ、はっきり云わねば殺す」
「・・・わしは殺しが好きなのかもしれぬ・・・」
「ほう、土竜は殺しが好きか」
今度は楽しそうに笑うと、首に当てた銃を下ろした。
「人を殺して生きるはいばらの道ぞ。あえて修羅を往くか?」
「・・・修羅とは知っていても仕方のないことだ」
「ふむ、土竜が修羅と化すか・・・。面白い、俺に鉄砲を向けたのも許そう。そのかわり、見事、鬼となりて俺の前に来い」
「・・・何故殺さぬ。生かしておくと、御身に差障りがあろうに」
「俺にはまだ足りない。まだ奴には勝てん。ならば鬼を喰ろうてその力を戴くまでよ」
そう云うと、声はそれきり聞こえなくなった。
「・・・助かったのか・・・?」
額に浮いた脂汗を拭うと、自分が惨めなくらいに震えているのに元就は気付いた。
「わしも老いたのかもしれんな・・・。だが・・・」
「父上ー!父上ー!!」
遠くで隆景の声が聞こえる。銃声を聞いて、いてもたってもいられなくなったのだろう。
「だが、しかしまだ死ねぬ。わしには守るものがあるのだから・・・。そのためには修羅にでもなってくれるわ」
心配顔で走り寄る隆景を見て、元就はもう一度死んだ二人の息子に祈った
207十面埋伏5/5 ◆IVgdXngJC6 :05/02/16 16:46:39
【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『相州五郎入道正宗』】3-C(3-D森前に向かっている)
【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『USSR AK47 カラシニコフ(残弾8発)』『ボーガン(5本)』『十文字槍』 (軽い打撲。命に別状はなし)】&
【46番 小早川隆景 『グロック17C(残弾17+1発)』(右腕骨折・体調、意識は回復)】 3-Cで十面埋伏
208祝砲 1/3:05/02/16 20:42:21
悪夢のような夜が明けて、また2回目の朝が来た。
幸盛達は遠くで響く、自分たちの行為の結果を皆に知らせる放送が終わってからお互い、目を合わせた。
「昌景殿、重秀殿、色々すまなかった。お二方には、いくら感謝しても足りんくらいだ」
幸盛の何か悟ったような澄んだ目が閉じられて、静かに、深く頭が下げられた。
仰々しいまでの幸盛の態度に2人は少してれた様子である。
「とんでもござらん。こう言っては失礼やも知れぬが、お主だけでもご無事でよかった」
少し、幸盛の目に曇りが掛かる。しかし、すぐに彼は元の目に戻った。
「晴久様は、私に生きろとおっしゃった。また、目的を失ってしまったが、無論死ぬつもりなどない。お二人に救っていただいた命だ。粗末にはせん」
「俺達がもう少し早く辿り着いてれば、その、晴久様ってのも救えたのかもな。すまねぇ」
重秀が、がらにもなくしゅんとした様子になる。
「私が着いたときに、晴久様は既に重傷であった。お二方が気に病むことではない。お心遣い感謝いたす」
幸盛も重秀もまだ暗い気分から抜けきれず、言葉の一言一言がどこかぎこちない。
「すまん、途中で銃声があってな。後で合流した仲間がその場に残ったのだが・・・」
昌景もまた、森に残ったもう一人の仲間の事を心配し、それが顔に表れていた。

やがて、三人は森を抜け出し、見晴らしの良い丘に出た。
昨日までの暗い雲は時と共に、風に流されたのか、東の海を赤く染めている陽の光が三人を照らす。
昨日の暗い夜を象徴する黒い雲が、今朝の希望に満ちた明るい太陽にかき消された。
ふと3人の頭に浮かんだインスピレーションは、彼らの顔を明るくした。
209祝砲 2/3:05/02/16 20:43:36
「本当に一人で行かれるのか?」
昌景が少し心配げに幸盛に聞く。
「うむ。今回のことで自分の弱さを痛感いたした。お二人の足を引っ張るわけにはいかぬ」
「この馬鹿げた余興ってのを考え出した張本人を葬ることで、アンタんとこの殿様の敵討ちにもなると思うんだがなぁ・・・」
重秀も心底残念そうに、苦い顔をする。
「今は自分自身のことを一人で考えてみたいのだ。何らかの答えが出たとき、お二人のお力添えになれるのであれば是非ともそうさせていただきたい」
幸盛もそんな二人の思いを汲んだのか、望みを含ませた言葉ではぐらかす。
「うむ。心得た。・・・しかしその小刀だけでは心許なかろう。私の得物を持ってゆかれよ」
昌景は、そう言いながら自分のカバンをなにやらゴソゴソし始めた。
「あいや、しかしそれではお主が丸腰になってしまうではないか。それはできぬ」
幸盛は慌てて、昌景の申し出を断る。
しかし、そんな幸盛に目もくれず、カバンから何かを出して昌景は語った。
「これは二刀流用の刀らしい。そもそも二本で役割を果たすものだから一本のみでは頼りないだろうが、何も無いよりはましだろう」
そう言って取り出した刀は針金のような細身の剣と、それより少しばかり太いが、やはりかなり細い剣だった。
そのうち比較的太い方の一振りを幸盛に差し出す。苦笑を浮かべて困惑する幸盛に
「もらっておけって。それがあればアンタだって随分戦えるはずじゃないか?」
重秀は幸盛の肩をたたきながら、それを励ました。
「うむむ・・・、しかし・・・」
しかし、それでも幸盛の態度はいまいち煮え切らない。
「うむ。それでは再会した暁に、返してもらおう。それでよいかな?」
見かねた昌景が、幸盛の納得しそうな条件で説得する。
彼とて、この視まで一度別れた者が早々出合うはずがないとわかっている。
「・・・・・・かたじけない。感謝の言葉も無い」
幸盛もその事はわかっていたが、ここまでのお膳立てを断るのは失礼と、やっと申し出を了承した。
210祝砲 3/3:05/02/16 20:44:44
「ついでだ。こいつも全部持っていきな」
その場の空気にあてられたのか、重秀も少ない食料をカバンの中から取り出した。
「重秀殿!!これ以上私を困らせるな!」
その申し出には少しばかり怒気を孕んだ、遠慮の言葉が帰って来た。
しかし、重秀は持ち前の豪放磊落さでそれを一笑すると、
「はっはっは!アンタさっきから腹の虫が鳴きっぱなしだぜ」
と、幸盛の腹を指差した。
「・・・うう・・・実は、食料は入手したんだが、誠久様がお亡くなりになったときにその場に置いてきてしまったらしいのだ・・・」
先程まで上がっていた幸盛の目じりが、情けなさにするすると落ちていく。
「・・・おう。俺は、誰にも仕えたっていう感覚が無いんだが、辛いんだろうな・・・、主君の死っていうのは・・・。気にするな。全部持っていってくれ」
同情のような物を感じたのか、重秀は落ち込んだ幸盛を励ますように言った。
「すまぬ、重秀殿。手前の弱さとしっかり向き合って、今よりもっと強くなって帰って参る。そのときは必ずお二人の力になることを誓おう」
幸盛は彼らの思いやりに答えるように、強く、雄雄しい言葉で答えた。
「うむ。達者でな」
「待ってるぜ」
その幸盛の吹っ切れた様子を見て、二人も簡単な見送りの言葉を送った。
「それではこれで、御免!!」

やがて幸盛の姿が、重秀の視力でも捉えきれないほど離れてしまったそのとき、重秀は一発の祝砲を空に向けて撃った。
再会を誓った友に向けて、励ましを込めての一発は高く高く響きわたった。
それを背中で聞いていた幸盛は、拳をより一層硬く握り、熱く・・・、熱くこみ上げるものを噛み締めながら、強く歩みを踏み出すのだった。
「重秀殿・・・、昌景殿・・・、ありがとう・・・」

【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ』】食糧なし。
【29番 飯富昌景 『フルーレ』】 共に3-G林の入口

【98番 山中幸盛 『エペ』】食糧少量 3-Gから出発
211画竜点睛 1/10:05/02/18 02:39:17
唐突に、長秀は持っていた武器『Mk2破片式手榴弾』のピンを抜いた。
利家「バッ・・・・!!おま、お前!!早く投げろ!!今すぐ捨てろ!!どっかに投げ・・・・!!」
長秀「大丈夫だよ、心配するな。これだけじゃ爆発はしないらしい・・・・って、ゆするな!危ない!」
長秀が持っていた武器は、ピンを抜くと爆発する事を、利家も既に知っている。
だからこそ、長秀が持っている『ピンが抜かれた手榴弾』を必死に奪い取り、どこかに投げようとしたのである。
しかし、そんな利家に対し、長秀は己の持っていた手榴弾を眼前に突きつけた。
長秀「ほら、私が握っているところに、握り手(クリップ)があるだろう?
   どうやらこの武器は、ピンを抜いてもここを握っていれば爆発はしないらしい。そして――」
落ち着き払い、長秀はもう片方の手で持っていたピンを手榴弾に戻す。
長秀「こうすれば、握り手を離しても爆発はしないというわけだ」
利家「・・・・あまり驚かせるな。成政や一益、信行様が死んだという報を聞いて・・・・・」
長秀「後を追うと思ったか?そんなつもりはない・・・・なぜかな。実感が沸かないんだ。
   あんな帝の知らせで名前だけ告げられてもな・・・・・お前もそうだろう?」
利家「・・・・・ああ。大掛かりな芝居だとしか思えなくなってきた・・・・」
おそらくは、天皇の放送は真実だろう。現に、自分達が殺した『今川義元』の名も呼ばれている。
だが、もはや長秀も利家もそれを信じられなくなっていた。
現実を直視して、考えれば考えるほど嫌な気分になる。なぜ自分達はここにいるのだろう、と。
・・・・そんな流れを断ち切るように、利家が無理に口を開いた。
利家「・・・・・そういえば・・・・その武器がピンを抜いても爆発しないと言う方法、お前はどうやって知ったんだ?」
長秀「ああ。それは、解説書を・・・・・お前、自分に与えられた武器の解説書をよく読んだか?」
利家「いや、簡単な使い方を調べる程度だ」
長秀「・・・・・・よく読んでおけ。肝心なところで命を落としかねんぞ。
   まあ、私も確認する前は随分危ない使い方をしていたから、あまり偉そうな事は言えんがな。
   実際、死んでいてもおかしくなかった」
212画竜点睛 2/10:05/02/18 02:40:33
長秀はため息をついて背伸びをすると、持っていた地図を広げ、自分達の場所と方角を確認した。
長秀「食料配布場所はここからそう遠くはない。人数も少なくなったし、いきなり敵に会うこともまずないだろう。
   私が食糧を取ってくるから、お前は武器の解説書をよく読んでおけ」
利家「む?任せていいのか?」
長秀「言っても、どうせお前は来ないだろう?」
利家「・・・・むむむ・・・・まあ確かにそうだが」
長秀「何が・・・・・いや、もういい。やめておこう・・・・それじゃあ、行ってくる」
笑いながら、長秀は食糧配布地点へ歩を向けた。
だが・・・・・・途中振り返り、利家に向かい矢を五本投げ、また言葉をかけた。
長秀「・・・・私は一騎当千の力も無ければ、天下をそっくり手に入れる程の智も無い。
   それでも、ここまで生きて来れたのはお前のお陰だ・・・・本当に、感謝してる」
利家「そんな事言いださんでいい。早く食糧を取って戻って来い」
長秀「情緒の欠片もない奴だな・・・・・まあいいか。あと、その矢はお前が持っておけ。
   義元公の時の様な無様な戦いをまたしてしまったら、槍の又左の名が泣くぞ」
また笑いながら、長秀は歩を進めた。
・・・・しばらくして、銃の解説書を読みながら、利家が呟く。
利家「・・・・・そういう言葉は生き延びた時でいいだろう・・・・戻ってくるまで、俺は情緒に満ちた言葉はかけん」

食糧配布地点に人の気配は無かった。おそらく、長秀が一番乗りであろう。
長秀「今度こそ一番乗りだな・・・・・こんな好機二度と訪れないと思っていたが」
初日に会ったような恐ろしい男が辺りにいない事を確認すると、長秀はそう呟いた。
小走りで食糧配布地点まで近づき、食糧をいくつか取る。
長秀「しかし不思議だな・・・・・一体、いつの間に、どこからこんな物を用意しているのだろう・・・・」
考えれば考えるほど疑問が沸く。武器はどこから?死んだ人間が確認できるのはなぜ?
213画竜点睛 3/10:05/02/18 02:41:51
長秀(・・・・・考えてもらちがあかないか。とりあえず、今出来るのは食糧を持って帰るだけだ)
片手に食糧を抱え、先ほどの場所に戻ろうとした長秀は、ふと辺りを見回した。
誰もいない事は、先ほど確認した。だが、なぜだか、ピリピリする空気が漂っていた事を感じたのだ。
長秀とてそれなりの戦人である。勝家や利家程ではないが、殺気と言うものを感じられないわけではない。
この場に漂っていた空気、気配は、まさにその殺気であった。
長秀(・・・・逃がしてくれるかな?・・・・いや、無理だな・・・・・・)
とっさにそう感じた長秀は、先ほどとった食糧をその場に置き、クリップを握り、ピンを抜いた。
長秀(あとはこれで脅しをかけるか・・・・・私を殺せばお前も死ぬ、と・・・・)
この状態で自分が死ねば、手榴弾の握り手は外れる。いや、死ぬ直前に掌を広げ、意地でも外す。
そう覚悟を決めた長秀は、また辺りを見回す。
・・・・・・いた。霧で誰かまでは確認できないが、銃を持っていることは確認出来る。
長秀「逃げていたら撃たれていたな・・・・・・・」
『対峙』それしかないと感じ取った長秀は、近づいてくるその人影に向けて叫んだ。
長秀「そこの御仁!私の武器は爆弾だ!!私が死ねば爆発するようにしてある!私を殺せば・・・・・・え!?」
そこまでで、長秀は叫ぶのをやめた。その人影がよく見知った人間であったからだ。
・・・・・・それは他の誰でもない、この島で誰よりも会いたいと思っていた己が主君『織田信長』であった。
長秀「の・・・・・信長様!!信長様ではありませんか!!ご無事でしたか!!」
急ぎ、長秀は信長に駆け寄る。
・・・・・・が、完全に信長である事を確認できる距離まで進むと、長秀は足を止めた。
信長「・・・・・・・長秀であるか」
信長の声が確認できる。『冷たい』『恐ろしい』なにより『違う』なぜだか、そう感じられた。
主君の瞳。姿。刀。声。そして全て。呼び起こされる、先ほどの殺気への恐怖。
その全ての要素が、確実に起こる、そう遠くない自分の未来を予感させた。
――――私は、ここで死ぬ。
214画竜点睛 4/10:05/02/18 02:43:06
利家「・・・・・・なるほど・・・・・弾は全部で七発・・・・か。と言う事は、あと三発・・・・心許ないな」
霧がかかっているとは言えど、解説書を読む程度では不自由しない。
利家は、己に与えられた武器の解説書をいちいち口に出しながら読んでいた。
相変わらずわけのわからない言葉が多いが、多少なりとも知らなかった武器の事実は浮かんでくる。
利家「注意、弾の補充は銃口からではない・・・・銃身に物を詰めると爆発・・・・・っと、しまった」
そこまで読んだ時ふと風が舞い起こり、利家は持っていた解説書を地面に落としてしまった。
地は雨で濡れている。解説書が地面に落ちて湿ってしまったら、読めなくなる部分もあるかもしれない。
利家「仕方ないな・・・・・」
そう言いながら、利家が解説書を拾おうと姿勢を落とした時。
凄まじい銃声が響き、とてつもない速さの何かが自分のすぐ側を通っていったのが感じられた。
利家「な・・・・・なんだ!?」
解説書を拾おうとした手ですぐに己の銃を持ち、回り込み木の陰に隠れ、銃声のした方向に銃を構える。
その利家の目に写ったのは、銃を構える己に向かって走ってくる巨躯の男という異景であった。
敵意や殺気、狂気、それ以上に『執念・怨念』と言うものが、その男から感じられる。
利家(・・・・またあの手の狂った手合いか!)
刀を持った男や今川義元の姿が一瞬脳裏に浮かぶと、利家は躊躇うことなく引き金を引いた。
銃声が盛大に鳴り響く。直後、利家は背を向けて全力で駆け抜けた。
どうも自分は、この島では一発目を外してしまう運の元に生まれたらしい。
己の運の無さを嘆きながらも、利家は森の中を逃げ続けた。

しばらく走り続けたが、巨躯は何か叫びながら、ピッタリと自分についてくる。
利家「クソッ・・・・・変な執念抱きやがって!殺し合いなら狂人同士でやりやがれ!馬鹿野郎どもが!」
何度も毒づくが、それで追っ手が離れれば世の中は泥棒天国だろう。
215画竜点睛 5/10:05/02/18 02:44:22
無論そんなにうまく行くわけも無く、むしろ振り向いて罵声を吐いたせいで
利家は注意を削がれ、雨でぬかるんだ悪地に足を取られ転んでしまう。
その拍子に持っていた銃も遠くに投げ飛ばしてしまった。
利家「うぐッ・・・・・!!」
その隙に、巨躯の男は利家に詰め寄ってくる。
利家の銃が無いからだろうか、それとも元からなのだろうか、明らかに常人ではない笑みを浮かべていた。
?「ククククク・・・・・・・追イ詰メタゾ・・・・・道三・・・・・・」
利家「・・・・・・道三・・・・・だと?・・・・・・・まさかお前・・・・・!」
・・・・・そこまでで、利家は追求をやめた。
もう己は死ぬしかない。この男の正体を追及して、何になるのだろう。
利家「・・・出来れば死ぬ時は笑っていたかった。それが出来ぬ事が心残りだが・・・・もはや、何も成せまい」
?「ククク・・・・・・父ノ仇ダ・・・・・」
利家「おい!!俺はお前の父親に恨みを買うことなど・・・・」
?「死ネ・・・・・クククク・・・・・ハハ・・・・ヒヒ・・・・・」
『人の話を聞けよ』そうは思ったが、狂人に何を言っても無駄だろう。今までもそうだった。
仕方ない。自分より強いこの男に自分は殺されるが、いつかこの男もまた強い者に殺されるだろう。
そう思うと、笑えない事もない気がする。
男もはや足元まで近づき、己に銃を構えようとしている。
最後に、こいつに何を言ってやろうか。何を言っても無駄だろうが、何か心に残る言葉を吐いてやりたい。
そう、利家が考えた時だった。
―――どこからか銃声が鳴り響いた。・・・・自分が絶命したかと利家は考えたが、どうもそうではないらしい。
巨躯の男がなにやら戸惑っている。銃声がしたと思しき場所に目をやっている。
・・・・そうか。さっきの銃声は俺ではなく、この狂人を狙ったものか・・・・・。
216画竜点睛 6/10:05/02/18 02:45:55
・・・・今だ!生き残るために何かを成すのなら、この狂人の注意が逸れている今しかない!
利家「だああああッ!!」
そう思った時の利家の行動は早かった。すぐさま足を引き、全力で狂人の脛に蹴りを入れた。
狂人「グッ!?」
『弁慶の泣き所』とも呼ばれるように、どんな強者でも鍛えられない人体の急所。
利家の蹴りは、見事としか言いようが無いほど、的確にそこを捉えていた。
狂人「ガアッ!!・・・・・・オノレェェェ!!道三ンンンッ!!」
狂人もすぐさま引き金を引くが、今の一撃で銃の方向がずれたのか
銃弾は利家の身体をやや外れて地面を貫いた。
利家(いつぞやの事といい・・・・どうやら、俺はここぞという時の運には恵まれているようだな)
そう感じ取った利家はすぐさま身体を起こし、走り、自身の飛ばした銃を拾う。
狂人「逃ガサンゾォォォォッ!!道三ンンンッ!!・・・・・ヌウッ!!」
またも狂人を狙った銃声が響く。
二発とも直撃はしなかったものの、銃弾は狂人のすぐ側に当たっている。
そして、狂人がその銃声に気を取られている隙に、利家は既にその場から逃げていた。
代わりに、先ほど狂人を狙ったであろう男が、狂人の視界に現れたのである。
勝家「犬め、逃げたか・・・・だが、それでよい。よい判断よ。そうは思わんかね?斉藤義龍殿」
義龍「グググ・・・・・!!ガアアアアアァァァァァッ!!貴様ガ道三カァァァァッ!!!」
勝家「フン、吼えるか・・・・だが狂犬の遠吠えごときでは『懸かれ柴田』を退かせる事叶わぬわ」

・・・・・随分走っても、利家はまだ考えていた。
先ほど、義龍を撃ったのは誰だろう・・・・あるいは知り合いか?
利家「いや・・・・・まさかな・・・・・」
そうそう現実は調子の良いものではない。恐らく、巨躯の義龍のみが視界に入ったのであろう。
217画竜点睛 7/10:05/02/18 02:49:41
そう結論を出しながらもまだ考え続ける利家の目に、朝露を帯びて光る物体が入った。
利家「あれは・・・・・?」
疑問に思った利家がその物体に近づく。ある程度近づいたところで、それが槍だとわかった。
槍が立ててある下の土は、やや不自然だ。何かを埋めたかのような形をしている。
利家「これは・・・・・そうか、墓標か・・・・・・」
こんな狂った島で墓を作られるとは、恐らく土の下の人物はよほど立派な人間だったのだろう。
・・・・・しばらく考え込んでいた利家は、意を決したように下の土に語りかけた。
利家「あんたは・・・・・・俺がこんな事を頼める縁は無い人物であろうと、きっと思う」
そう言うと利家はその槍に近寄り、しっかりと『鉄槍』を掴んだ。
利家「だが・・・・それでも頼む!一片でもいい!あんたの力、智を俺に貸して欲しい!
   俺は生き延びたい・・・・そして、友の仇を取りたい!友を守りたいんだ!!」
そう叫ぶ利家の頭に、天皇に名前を呼ばれた友の在りし日の姿が浮かんだ。
そして次に、まだ生きている信長、勝家、そして長秀が。
・・・・今まで抑えていた感情が全て溢れ、利家の目から涙が流れた。
だが、すぐに利家は涙をぬぐい、両手でまた『鉄槍』を掴む。そして、また語りかけた。
利家「・・・・必ずだ!いつか必ず、諸悪の根源を俺が絶つ!!絶ってみせる!!だから・・・・!」
そう叫び、鉄槍を抜く。そこには『槍の又左』の、決意を秘めた顔があった。
利家「あんたの意志を・・・・・俺に貸してくれッ!!」
武田家の勇将馬場信房の鉄槍は、猛将柴田勝家を辿り、そして今、若き前田利家に託された。
218画竜点睛 8/10:05/02/18 02:50:57
長秀「・・・・・利家は、ここに来なくて良かったかもしれません」
信長「・・・・・・」
長秀「あいつは少し一本気なところがあります。今の信長様に会えば・・・・・」
信長「俺を・・・・殺そうとするか?」
長秀「その時は、命を捨てても私が止めますがね。たとえどの道死ぬにしても・・・・」
信長と長秀、両者が出会ってからまだ五分と経っていない。
だが、長秀には、なぜかその時間が一時間にも二時間にも、永年にも感じられていた。
・・・・・先ほどの会話からしばらくの沈黙の後、長秀が先に口を開いた。
長秀「・・・・・帝が言っていました。食糧配布地点に四半時とどまれば、その者は死ぬ、と。
   今でもそうなのかはわかりません。ですが・・・・・・」
またしばらく長秀は黙る。そしてまたしばらくの沈黙の後、覚悟を決めた顔で言った。
長秀「・・・ですが、信長様にそんな死に方はして欲しくありません。同様に私もそんな死に様は嫌だ」
信長「・・・・・何が言いたいのだ」
長秀「信長様ならこの狂気を勝ち抜けると、私は信じています。そして今から出す、私の課題も」
信長「・・・・・課題・・・・だと?」
長秀「私の手の中には爆弾が握られています。これは私が死ねば爆発します」
そう言いながら、長秀は手榴弾を握った手を前に出す。その後、その手榴弾の説明を始めた。
クリップ。ピン。4秒後の爆発。そして有効範囲は約8メートルとはいえ、破片は遠くまで飛ぶ事を。
その説明を聞きながら、信長は軽く笑ったように見えた。
信長「・・・・主君を試す、か・・・・・」
長秀「最初で最後の無礼、どうかお許しください。
   ・・・・最後にもう一度見てみたい、試したいのです。信長様の力、智、そして運を」
信長「・・・・お前は、死ぬのが怖くないのか?」
219画竜点睛 9/10:05/02/18 02:52:57
長秀「・・・怖いですよ。死にたくない。絶対に死にたくない。
   ・・・・しかし、こんな狂気に満ちた島で、顔も名も知らぬ誰かに殺られるくらいなら・・・・」
そう呟き、長秀はしっかりと信長を見た。
長秀「貴方に殺されるほうがいい」
信長「いい顔だ。ならば、是非にも及ぶまい」
そう言うと、信長は己の刀を抜き、構えた。
信長「最後に聞く・・・・・そんな簡単な課題でいいのか?」
長秀「・・・・・・・え?」
長秀が疑問の言葉を発しようとした時、手榴弾を握っていた長秀の手首は身体から離れた。
信長はその手首を地に落ちる前に受け、手首ごと森の中へ投げる。
その後、本当に四秒なのかと思えるほど長い時間の後、森で爆発が起きた。
無論、信長は傷一つ負っていない。
・・・・・長秀に手首の痛みは無い。いや、むしろ『視』『想』以外の全ての感覚は感じられなかった。
・・・・さすがだ・・・・・さすが、信長様だ。
・・・・この方なら、この島の誰も敵にならない。間違いなく、絶対に勝ち抜ける。
長秀「・・・・・信じています・・・・・」
そう長秀が呟いた時、信長は己の刀をまた構えなおそうとしている。
その動き全てが、やけに遅く見える。一秒一秒が何分にも、何時間にも感じられる。
・・・・・せめて最後に言葉をかけたい。何と言うべきだろう?何と伝えればいいんだろう?
『ありがとう』?『お元気で』?『さようなら』?『お見事』?
・・・・違う。そんな言葉なら、誰にでも言える。私にしか言えない言葉が、きっとあるはずだ。
考えろ。考えるんだ。この人の心に、わずかにでも残る最後の言葉を。
・・・・・ああ、そうだ。こう言おう。
長秀が『言うべき言葉』を思いついたとき、既に信長は刀を構え終わっていた。
信長「長秀。大儀であった」
長秀「あの武器、もう一つあるんです」
220画竜点睛 10/10:05/02/18 02:54:59
―――爆発は起きなかった。長秀が手榴弾のピンを抜くより圧倒的に早く、信長の刀は長秀の首を刎ねた。
・・・・もう、この場に信長はいない。誰もいなくなった。
残ったのは、長秀の胴体と、胴体から離れた首だけ。
ただ、首は胴体のすぐ上に、生きていた時と同じように置いてある。
誰がそうしたのか。それは何のためであったのか。
―それを成したのは、信長の心に残っていた一片の心情であったのか。
―あるいは、食糧配布地点に来た誰かの哀れみだったのだろうか。
その答えを知る者は、もう誰もいない。
だが、長秀の顔は、涼やかで安らかな、少しの曇りも無い笑顔をしていた。

【72番 丹羽長秀 死亡】(Mk2破片式手榴弾(1個)と矢(4本)はその場に放置)

【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『相州五郎入道正宗』】3-D付近(食糧は確保)

【54番 柴田勝家 『マテバ 2006M(残弾3発)』『備前長船』『H&K MP3(残弾15発)』】VS
【49番 斎藤義龍 『スプリングフィールド M1(残弾4発)』『スラッパー』】4-D森で交戦中

【86番 前田利家 『SPAS12(残弾3発)』『鉄槍』『矢(5本)』】4-E森地点(目的は諸悪の根源撃破&他の織田家臣を探す)
221カマラータ 1/2:05/02/18 22:38:43
祝砲を撃ち放したUSSRドラグノフの銃口からまだ煙が立ち昇っている。
遠くから応射のように聞こえた山彦を聞いて、昌景は思い出したように重秀に話し掛けた。
林の中で聞こえた銃声を聞いて、義輝はその場に留まって様子を見るという危険な役を自ら買って出たのである。
彼のその行動がなければ、後方を気にしつつ走らねばならず、幸盛の窮地に間に合わなかっただろう。
あるいは、銃声が途切れて、見失っていたかもしれない。

「そういえば、あの場に留まってくださった義輝様は・・・」
無事だろうか?―そう昌景が言い掛けたときだった。
「余の事であれば、案ずるな。銃声を聞いてここだと思ったぞ」
堂々とした声が森の奥から聞こえた。
ぱっと見て外傷はなく、刀も昨夜重秀が渡した松明もそのままである。
「義輝様、ご無事で?」
何事もなかったのは明白だったが、構わず昌景は問う。
「ああ今、奥の死体の傍で、これを見つけて来た。」
答えて、義輝は袋に入っていた黒い紙―隆元を豹変させたその悪魔のような薬を彼らの目の前に差し出した。
「これは・・・?」
昌景は今ひとつ事情を飲み込めていないという顔で、聞き返す。
「谷川に捨てたはずのあの薬だ」
義輝は、薬の入った袋を投げ捨て、もう片方の手に持っていた火のついた松明をそれに押し付けた。
メラメラと薬が袋ごと燃えて行く。ポリの袋から出る黒い煙は、まるで形を持っている「大悪」が火刑に処せられている様に思えた。
その煙を一瞥して義輝は目を閉じる。
「あの時に、余がこうして置かなかったばかりに・・・」
義輝はやりきれない怒りをぶつけるように、まだ煙の燻るその袋を切っ先で刺すように切る。
「義輝様、それはあなたのためではありません、どうかお気を召されるな」
「こんな狂った余興がすべての元凶なんだ、気にするなよ」
二人の慰めの言葉も罪の意識に苛まれる義輝には空虚な物に感じられた。
222カマラータ 2/2:05/02/18 22:39:30
少したって、ようやく煙が消えた時であった。不意に義輝が口を開いた。
「・・・余はまだまだ未熟だ。山中殿を追って、頭を下げねばな」
自虐的に言って、義輝は歩き出した。
「お、おい、アンタ・・・」
「義輝様、どこへ!?」
慌てた二人が、声を掛ける。しかし、義輝は、歩みを止めようとはしない。
「言った通りだ。贖罪という訳ではないが、彼を助けようと思ってな。」
「おいおい、アンタは俺達と一緒に大悪の天皇を斬るとか言ってたじゃねえか」
重秀が昨夜の話題を思い出して、義輝を留めようとする。
「・・・そうだな。そのためにも彼を失いたくは無い。そうではないか?」
「・・・確かに」
重秀も理にかなった義輝の話に不満ではありながらも、頷いた。
「そういえば昌景、おぬしのあの剣は?」
昌景の帯に挿している剣が一本しかないのを見咎めて、義輝は足を止めた。
「ああ、丸腰に近い状態だったので一振り幸盛殿に譲り申した」
「・・・その細身の剣だけでは折れたときに困ろう?これをもっていけ」
拾い物だが、使うのに支障はないはずだ。と付け足して、義輝は袋から大身の斧を取り出した。
「しかし、アンタの刀も刃こぼれが」
重秀は、義輝の九字の破邪刀を指差して、心配する。
義輝は聞かずに、拒む昌景の足元にその大きな両刃の斧を投げてよこした。
「刀とは勝手が違って、いささか使いづらいのでな、余には必要ない。」
言って二人から目を離し、義輝は行く先を遠い目で見据えた。
「余は山中殿もおぬしらも失いたくない。同志よ、生きてどこかで逢おう」
最後にもう一度だけ振り向いて、昌景と重秀の顔を忘れぬように目に焼き付けると、義輝は再び歩き始めた。
「・・・ああ、またどこかで」
「達者でな・・・同志」
一拍遅れた返事が、朝日の方角に向かって歩いていく義輝を、どんな言葉よりも強く励ました。

【11番 足利義輝 『九字の破邪刀』】3-Gから移動 目的:幸盛との合流
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ』】食糧なし。
【29番 飯富昌景 『フルーレ』『オーク・ダブルアックス』】 共に3-G林の入口
223軍神と武神1/3 ◆IVgdXngJC6 :05/02/18 23:16:53
「ふう・・・。どうやら氏照も憲秀も無事なようですね」
早朝の放送に聞き耳を立てていた氏政は、まだ弟と家臣が生きていることを知り、素直に喜んだ。
しかし一人、隆家の表情は暗い。いつもは自分の体にしか興味のない綱成がいち早くそれに気付く。
「如何なされた隆家殿」
綱成が自分をいたわったのが不思議に思えたのか、隆家はまじまじと綱成の顔を覗き込む。
が、すぐにまた沈鬱な表情になり、一つ深いため息を吐いた。
「・・・どうやら義理の弟に当たる者が死んだようです。なかなか気持ちのいい奴でしたが、まさか死んでしまうとは・・・」
聞いているほうが辛くなるような、悲しく、淋しい声音で話す。
綱成などは、もうそれだけで顔中をくしゃくしゃにして泣き崩れている。
「うっうっうっ・・・。そうか、そうだったのか隆家殿。それはさぞ辛かろう。さぁ遠慮はいらん、我が大胸筋に包まれて泣くがいい!」
両手で隆家を抱えあげると、その分厚い胸板に押し付けるように羽交い絞めにしてしまう。
見かねた氏政が綱成を止めて、ようやく引き離した。
「叔父上、やりすぎですよ!・・・隆家殿、でしたか?私も父を目の前で死なせてしまった身。心中、お察し申す」
綱成に抱きしめられて、余程苦しかったのか、ゴホゴホと咳き込む隆家に、氏政は優しく声を掛けた。叔父に悪気はないとも付け加えるのも忘れなかった。
「・・・かたじけない。・・・しかし今は一人にしてもらえませんでしょうか・・・?」
もう一度、抱きしめてやろうとする綱成を制して、氏政は、
「わかりました。私達は先に行きます。もし、一緒に来る気になったら後を追ってきてください」
と、言い残してその場を後にした。
224軍神と武神2/3 ◆IVgdXngJC6 :05/02/18 23:17:51
氏政は歩きながら、氏康の最後を綱成に話してやっている。
最後まで話し終えるまでに、顔中を涙で濡らした綱成に、何度抱きしめられたか分からない。
それでも氏政は嬉しくてたまらない。血は繋がっていなくても、綱成は氏政の自慢の叔父だった。
その自慢の叔父を掠めるようにして、氏政の足元に穂に鎌がついた槍が突き刺さった。
「また逢ったようだな、氏政殿」
聞き覚えのある声だった。
「もしや景虎殿・・・か?」
霧の中から姿を現したのは長尾景虎だった。
「晴信を捜していたら貴殿を見つけたのでな。先日の約定により、一槍馳走に参った次第」
景虎は地に突き刺さる槍を引き抜いて、氏政の前に立ちはだかった。
「なるほど、噂にたがわぬ義理ぶかいお人だ。叔父上、私はこのお方と立合わねばなりません。少しお待ちになってください」
「ならんな。氏康殿亡き今、俺の主君は氏政殿だ。御辺、殿と戦いたくばまずは俺と立合え」
景虎に黙殺されたのに腹を立てた綱成が、木太刀を手にして二人の間に割って入る。
「貴公とか?小生には貴公と刃を交える謂れはないのだが、それが家臣の務めとあれば異論はない。存分に打ちかかって参られい」
槍の穂先を綱成に向けた景虎の顔は、いくさ人としての厳しいものになっている。
綱成もそれに呼応するように戦闘態勢に入る。
225軍神と武神3/3 ◆IVgdXngJC6 :05/02/18 23:18:39
「ちょ、ちょっと待ってください!景虎殿は私と立合うために来られたのでしょう?だったら叔父上は下がっていてください!」
「氏政殿の方こそ、下がっていなさい。俺には氏康様のように内政や外交を教えてやることができん。ならばせめて、戦というもののなんたるかをご伝授仕ろう」
こうなった綱成が何を言っても聞かないのは、長年、付き合いのある氏政にはよく分かっていた。ここは諦めるしかないと、しぶしぶ立会いの権利を譲ることにした。
景虎の方はこの一本気で、上半身裸でいる一風変わった男が気に入ったのか、嬉しそうに肯いている。
「貴公はなかなか面白い男だな。名をなんと云う?」
「北条上総介綱成だ。御辺の名も承りたい」
「これは失礼した。小生は長尾景虎と申す。例の帝に仇をなす者の一人よ」
「これは面白い。久々に我が肉体を、存分に振るえる相手に出会えたようだな」
「ふふ、それは小生も同じこと。・・・では始めるとするかな」

【53番 穴戸隆家 『キャット・オブ・ナインテイル』】3-Eで落胆している
【82番 北条綱成 『ヌンチャク・木太刀』】
【80番 北条氏政 『南部十四式(弾切れ)・クナイ9本・短刀コブラ・頭に鍋】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(4本)』『十手』】3-Fで戦闘開始
226護る理由(ワケ) 1/7:05/02/19 20:21:42
閉じた目の裏にゆっくりと射しこんでくる、朝日の光で私は目覚めた。
いつもより大分寝過ごしたようだ。まだ重い瞼を開いて、そのまま二、三度目をしばたく。
・・・?
見慣れない物が私の胸の上に乗っている。―手?いや、こんなに細く繊細な指は私のものでは無い。
ついでによく見ると、私の胸の上に被さっているべき物がない。私は裸で野宿していたのか・・・。待て・・・。

そこで寝ぼけていた脳が一気に覚醒する。どうやら深く眠り過ぎて、寝ぼけていたようだ。あんな夜の後にこんなにものうのうとしていられるものか!
がばっと起き上がると、とたんに腹部に激痛が走る。
そしてとき同じくして、私の枕が声を上げて跳ね上がった。
奇怪な・・・。しかし、よくよく見てみると、状況はすぐに飲み込めた。
彼女は私の濡れた服を脱がし、私の体が冷えないよう、彼女の腿に私の頭を乗せるようにして、一晩中見守ってくれていたのであろう。
死ぬ事すら覚悟していた為か、彼女の慈愛は、この心身に染み渡った。

しばらくして、長座して頭を上げた私と、同じ様に長座して木に寄りかかっていたノドカの目が合う。
「脅かしてすまない。・・・おはよう、ノドカ。」
本当は、一日ぶりに逢えたその喜びを声を出して表現したかったのだが、これ以上彼女に心労を掛けないよう、なるべく静かに挨拶する。
ノドカもはじめは驚いていた表情をしていたが、私の様子を見てゆっくりと微笑んだ。
「長政様、おはようございます」
本当に、天真爛漫な笑顔。あの時自暴自棄になって修羅にでもなっていたならば、この笑顔は一生見れなんだろう。
私は、暴走しそうな私を押さえ続けていてくれた自制心と、その支えであった目の前のノドカに、深く感謝した。
「すまないな、私は一晩中膝枕をしていてもらったのか。足は大丈夫か?」
何から切り出せばいいのかは解らなかったが、とりあえず身近な話題から振ってみる。
「あ、それはえっと、あの、その、・・・大丈夫です」
随分と取り乱した上での答えであったようだ。無難な問いだったつもりなのだが。

勿論、長政は彼女が温かい朝になるまで起きていて、彼に抱きついていた事など露ほどにも知るはずが無い。
227護る理由(ワケ) 2/7:05/02/19 20:22:53
「だが、もう君も足を休めたほうがいい」
そう言って、体を動かそうとする。しかし、即座に
「駄目です、今動いたら傷口が開きます!」
と、ノドカには珍しいほどのすごい剣幕で押し留められた。
見ると、昨日よりも大きくなった傷口が私の腹に穴を開けていた。先程の激痛の元はこれか。しかし矢尻は?
消えた異物感に戸惑って、手拭を紐で縛りつけた手当てが施してある患部を何度かさする。
その様子を見て取ったように、ノドカが口を開いた。
「昨日、失礼かとは思い出したが、矢尻を抜かせて戴きました。・・・命に関わるかもしれませんでしたので・・・今まで、やったこともなかったんですけど・・・でも、放って置けなくて・・・」
始めは少し自慢げだった彼女の言葉は、だんだん泣きじゃくるようになり、最後には支離滅裂というわけではないが、辛うじて意味が解る程度までバラバラになっていた。
目の端からも、この小さな体に収まりきらないほどの恐怖を味わったのだろうと解るほどの涙が溢れ出ていた。
「怖かっただろう、心配を掛けたな、私はもう大丈夫だ。」
慰めるように、語りかけて、胸を張る。少し腹の傷が痛んだが、昨日彼女が受け止めたであろうショックと恐怖からすれば、瑣末な物だ。
「長政様・・・」
ノドカは潤んだ目で、私を見つめ返してくる。
「ノドカ、君は『同じ無茶を、痛みを、死を。私はこの人と分かち合う!』といっていたね?今度は私の番だ。私にも君の苦しみを分けてくれないか?」
さりげなく切り出したつもりだったが、泣きじゃくっていたノドカの顔は、私が置きだしたときよりも色濃く驚きの色が浮かんでいた。
「聞いておられたのですか?」
声も、少し裏返りかけている。本当に正直な娘だ。
「ああ、夢うつつではあったのだがな。あの言葉には励まされた。」
私がそういうと、今度は驚きの色を浮かべていたノドカの顔が赤みを帯びていった。
228護る理由(ワケ) 3/7:05/02/19 20:24:04
しかし、そんな平和な時間も束の間、森の奥から足音が聞こえた。
ノドカの顔の前に手をやって、静かにするよう合図する。だが、ノドカはそんな事もおかまいなしに、自分の世界に浸っているようだ。・・・ある意味では心配ないだろう。
そして、貧血でふらつく足に鞭打って、刀を杖に起き上がり、忍び足で少し離れた木の幹に身を隠す。
幸い、山林は普段から歩きなれている事もあり、寝起きの体でも音も無く移動する事程度はたやすかった。
問題はどうやって仕留めるか、だ。
ノドカには大丈夫だといったが、私は思った以上に体力を消耗している。おまけに腹の傷は異物が除かれたとは言え、まだ少し痛む。
武士として、卑怯だとは思ったが不意打ちしかないだろう。ノドカを護る為にはなりふり構ってはいられない。
私がやらねば、ノドカが死ぬのだ。それだけは避けたい。
そして、一歩一歩こちらに近付いてくる足音で大体の距離と、こちらまで来る時間と歩数を予測する。
あと、五歩、四歩、三歩、二歩、一歩・・・今だ!
意を決して、飛び出して、上段に刀を薙ぐ。しかし、見覚えのある顔に、力任せに逆方向に振りなおし、目標まであと一寸という所で、刀は切り返された。
「血が足りないだろうと思い、朝飯を捕ってきたのですが。いきなりご挨拶ですね。」
冷たく批判する昌信の手にはその朝飯と思しき肉が握られていた。既に捌かれているので解らないが、恐らく野兎の類だろう。
恐らく、ノドカの目の前では捌きたくなかったのであろう。
少し、この男の事を理解できたような気がした。
「お主が春日源五郎か?」
この男の昨夜から今日に掛けての行動や言動から、直感的にその名前に結びついた。
「本名は知りません。ですが、今は高坂昌信と呼ばれています。」
昌信はあくまで冷静に答えた。恐らく何故私が彼の名前を知っているかも理解しているのだろう。
「昨夜といい、今といい申し訳ない。ノドカからお主の話は聞いている。」
昨夜の決闘で、昌信が決闘に入る前にしたような、深々としすぎず、かつ軽くでもない礼をする。
それは、色々な意味のこもった、礼だった。
「・・・私のほうこそ、あなたのことを誤解していたようです。ノドカの事、ありがとうございました。」
昌信も、軽くお辞儀をする。それだけで、私達は旧知のように心が通ったような気がした。
229護る理由(ワケ) 4/7:05/02/19 20:25:49
肉が痛まないように足を急げた先では、自分の世界から戻ってきていたノドカが湿っていない木を選んできて、民家から貰って来た道具で火種の用意をしていた。
―私にはあの道具の使い方は全然わからなかったのに、器用な娘だ。
近寄ってきた二人分の足音に気がついたのか、ノドカがこちらに顔を向けた。
「おかえりなさい、長政様、源五郎君」
満面の笑みで二人を迎えてくれるノドカを見て、ふと―これが平和な世界の家で見られたら。と場違いなことを想う。
「ああ、何も無かったですか、ノドカ?」
変な想像をしていたせいか、返事が遅れてしまった。昌信に遅れて私も返事を返した。
「ノドカ、置いてけぼりにしてしまって、すまぬ」
置いてけぼりにした事と、返事が遅れたことがあいまって、さぞ怒っている事だろうと思ったが、そんな感じを微塵も見せないノドカの様子を見て少し安心した。
ノドカは一旦、こちらから目をそらして、燻る火種を燃えやすいものに軽く押し付けて火をおこすと、予め組んであったのだろう、枯れた小枝やら襤褸布やらで作った木組みの下にそれを入れて、火を大きくした。
それに、今息を吹きかけている先のそれは、土が少し窪んでいる所を石などを囲んでなかなか本格的だ。
私が昌信と落ち合って、ここに帰ってくるまでそう時間は無かったはずなのに、ここまでしてしまうノドカの行動力に私は舌を巻いた。
そうこうしている間に昌信はそのすぐ近くまで行って、大きな平たい石を見繕って火のそばに置いていた。
私も慌てて、そのそばによる。―どうやら、昌信の言う通り血が足りていないようだ。
しばらくして、ほどよく石が熱されてくると、その上に昌信は先程の兎の肉をノドカが渡した箸で手際よくおいていく。
間もなく、肉がいい匂いを出し、色が変わってきた。そして、すぐに箸でそれらを裏返し、もう一度焼く。
裏返した物も色が変わりきる前に箸で上げてしまった。
230護る理由(ワケ) 5/7:05/02/19 20:27:06
「昌信、少し早すぎないか?」
私とて山で食事をした事もあるし、ぼたん肉や山鳥の肉をその場で捌いて食べた事もあるが、いくらなんでも早すぎる。だが、
「石で焼くと、火加減が上手く出来ず、すぐに石に張り付いてしまうのですよ。」
私の顔も見ずに淡々と答え、ノドカに顔で合図をした。すると、すぐにノドカが皿の代わりの椀を差し出して、昌信は焼けた肉をその中に入れていく。
言葉は無かったが、二人は通じ合う物があるのだろう。
そう考えていると、何故か少し不快になった。
ノドカの差し出してくる肉も、一度断ったが、ノドカの説得・・・というか「長政様は怪我人なんですから!」という剣幕で、冷静な思考に戻って箸をつけた。
隣で昌信が黙々と次の分の肉を焼いている中、ノドカはきらきらと下目でこちらの表情を窺ってくる。
その視線を気にしつつ、箸の先のまだ赤身が残る肉を口に入れる。始めは無味乾燥で生臭い物を想像していたが、塩味が聞いていて、意外と美味い。
「美味いな・・・。」
先程までの不快感が吹き飛び、素直に感想が口に出るほどであった。
「ああ、そのままでは不味いだろうと思って、一度海によって潮水に浸してある。なかなか美味いだろう?」
咀嚼する度ににじみ出てくるような美味さはそれだったのか。
「都の美味と言われる食事は何度か口にしたことがあるが、これは別の、そう小谷の山の味に近いが、それとも違うものだな。」
確かに、少し生臭いような感じがしないでも無いが、それ以上の野性味あふれる独特の肉汁が口の中を覆い尽くす。
そこまでは小谷の山でも同じ様な味はあったが、それとは違う美味さがあった。
「この味が、海の塩か?近江から海のある越前の朝倉の所へ行った事もあったが、そこでの食事は皆京風味の薄味だったので、塩の味という物はあまりなじみが無いものなのだ。」
「私とて、物心ついてから、甲信から出た事はほとんどありませんよ。ただ、なんとなくこうした方法があったような気がして」
昌信の言葉に少し陰りが見えた。まさか、この男も・・・?
「きっと、源五郎君は海のある国の家で生まれたんでしょうね。」
私の気持ちが口に出る前に、ノドカが当り障りの無い言葉で、私の疑問に答えてくれた。
231護る理由(ワケ) 6/7:05/02/19 20:28:52
・・・・・。
「お前の料理美味かったぞ」
食事を終えたあと、私と昌信は倒木に腰を掛けながら、椀で水を飲みながら話し込んでいた。ノドカは昨日からの憔悴しきった体を癒す為に寝かせてある。
「ああ、ノドカと二人で暮らしている内に覚えたんです。」
少し気になる話題を昌信は切り出した。私もいずれ切り出そうと考えていた話題だ。
「お主とノドカは一体・・・?」
端から見れば不躾な聞き方かもしれないが、あまりにも不明な点が多すぎるこの話題に、単刀直入に質問する。
「私もノドカも捨て子であった所を御館様に助けていただいたと聞いております。二人で共に暮らす家と毎日世話をしてくれる世話人までつけていただきました。」
昌信は輝いた目で遠くを見据え、昔語りを始める。その瞳の様子はノドカによく似ていた。
「しかし、晴信殿が捨て子を積極的に引き取っているのは三つ者なる忍びにするためだと聞いたが?」
武田の三つ者、歩き巫女。遠国の大名であっても、一度は聞いた名称だろう。
武田に限らず、周辺の大名も例えば長尾は軒猿、北条は風魔、わが浅井家は近江商人に化けさせた忍びなどを使っている。
ただ、武田の他と異なる所は、私達のように雇い忍びではなく、捨て子から忍びを育成して、絶対忠誠を誓う忍びを持っているという事だ。
雇い忍びなら抜け忍や情報を敵に売り渡すような輩もいるであろうが、武田の忍びにそんな奴は一人もいない。
巷ではそのように話されている。
しかし、そのためとは言え、昌信とノドカの扱いは別格だろう。忍び一人を育成する為に果たしてそこまでするだろうか?そう疑問に思ったのだ。
その疑問に昌信は、予想もしない答えを返してきた。
「御館様は人を見抜く力を持っておいででして、武田の将になってから教えられた話ですが、私達二人は異能を持つ者として、格別に良い待遇で育てられたそうなのです」
その話を疑って、私に露骨にきつく当たって来た人間も居ましたけどね。と苦々しく付け足すと、私が口を挟む間もなく、昌信は今までよりさらに真剣な顔になって、私の瞳を見据えた。
「つまり、私もノドカも人とは異なる物を持っているのです。―長政様、あなたのようにね」
最後の一言は、一瞬とは言え私の心を凍て付かせるには十分な響きを含んでいた。
232護る理由(ワケ) 7/8:05/02/19 20:31:18
「何故それを?」
震える声を押し留めて言ったつもりだったが、それでもその短い言葉すら奇妙な発音になってしまった。
「昨夜の貴方を見て直感しましたよ。異能は異能を知ると言いますか、貴方の鬼気迫る、その様子でわかりました」
少し、理解の出来ない所もあったが、昌信の言葉で、私は少し安堵した。
「その異能ゆえに人々はノドカに近付こうとしませんでした。同じ様に彼女も心を閉ざしかけていた所に私は御館様に拾われたのです」
靄が掛かっているように不明瞭だった世界が昌信のわかりやすい話で大分飲み込めてきた。
私は理解を示す為、そして、次の話を促す為に二度頷く。
「幸い、ノドカは魔に取り込まれる前に私に心を開いてくれました。そして、彼女が初対面の人間に心を開いたのは、あなたが初めてだ」
そういって、大分火がなくなってきた木組みの中から、一本の枝を取り出して、私と昌信の顔を結ぶ直線上にその炎をかざす。
「しかし、彼女は御主以外にも、晴信殿のことを慕っているようであったが?」
過去の記憶の断片の中から、ふと浮かび上がった疑問を口にする。
「初めは御館様すら拒否していたのですよ、ノドカは。ただ、私が仲介して彼女は御館様も受け入れたのです。御館様は彼女の能に大いに興味をもっていらっしゃいます。」
「能?一体何なのだ、晴信殿ほどの男が固執するノドカの能とは?」
少しづつ解りかけていた世界が、なまじ一度に付けた知識だらけであったがために、今度は疑問だらけになってしまう。その最もたる疑問を昌信に問った。
「神巫(いちこ)ですよ。彼女はその体に鬼神の類いを入れたり、彼らに影響したり、されたりするのです」
現実離れした、突飛な話も今なら飲み込めた。こんな島があるくらいだ。そして、私のような人間が居るくらいだ。そんな話が合ってもおかしくない。
本心ではあんな笑顔を見せる彼女が鬼の類いに近いのはずがない。と否定したかったが、かく言う私もそれに近い性質なのだから、否定しようにも出来なかった。
何も言い返せない私を置いて、昌信は話を続けた。
233護る理由(ワケ) 8/8:05/02/19 20:32:32
「それ故に、貴方や私が彼女を護らなければいけないのです。一度鬼になりかけている彼女は、今でこそ大丈夫ですが、今度彼女が衝撃を受けるような事があれば、いつ何が彼女の身に起こってもおかしくないのです」
そんな、何も汚れを知らない彼女の微笑みが、鬼にとらわれるなど有ってなるものか。
鬼にとらわれて、この手を血に塗れさせるのは私だけで十分だ。
「初めからそのつもりではあったが、何とあっても、彼女を護らねばならぬ理由が出来たな。」
呟くように、けれど一言一言を噛みしめるようにはっきりと言った。

残った肉を燻している、熱を持った煙の行く先には、いつの間にか高く上って来た太陽が燦然と輝いていた


【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】
【71番 長坂長閑 『無銘・匕首』】
【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】2-B森林

7つでおさえるつもりでしたが、8つになってしまいました。すみません。
234輝政に愛をこめて1/2:05/02/20 18:21:55
「じゃ、名前は輝政。輝政にしよう。」
輝政・・・13代将軍足利義輝の輝を拝借したものである。
「輝政・輝政・輝政〜」
猫とじゃれあって、どれ程の時が経ったのだろう。
久政はこれが永遠に続けばいいな・・・と言う甘い幻想を抱いたが、
不幸を呼ぶ男はいつまで経っても不幸だった。

輝政は久政とのじゃれあいに飽きたのか、洞窟の外へ走り去った。
「輝政、どこへ行く?待てってば」
久政は走った。走って、走って、輝政を追いかけた。
逃げる猫・追いかける久政・・・
無論、お魚を銜えてはいないし、裸足で追いかけているわけでもない。
1匹と一人はどこまで走ったのだろう。
息も荒くなり、足もガクガクになっていた。それでも、久政は追いかけた。
彼にとって輝政は自分の生きる希望であり、かけがえのない親友でもあったのだ。
「ふぅ〜。やっと捕まえたぞ、輝政。もう、二度とお前を離さないからな。」
235輝政に愛をこめて2/2:05/02/20 18:23:09
輝政を捕まえ、安心した久政は洞窟に戻ろうとした・・・が、
「ここはどこ?」
無我夢中で追いかけていたために元に戻ろうにも、戻れなくなってしまった。
不幸中の幸いだが、久政は臆病だったために武器だけは持っていた。
「どうしよう・・・どうしよう・・・」
考え事に集中しているせいか、下を全く見ていなかった。
「ふぎゃっ」
石に躓き、転んだのだ。
「うっ・・うっ・・うっっ・・・」
鼻血・鼻水・涙と顔から出るものはすべて出た。
「もう、嫌だ。僕は戦いたくない。僕は・・・僕は・・・」
輝政は久政の顔を舐めて慰めた。
「輝政、お前はなんていい奴なんだ。僕はお前とずっと一緒にいるぞ。輝政〜!」


息子が女の子と恋愛をしている所、
父は猫との恋愛を始めようとしていた・・・
【07番 浅井久政&輝政 『S&W M36チーフススペシャル』】3−H
ドスーンッ!
辺りの静寂を突き破るようにして、何かが落ちる音がした。
憲秀が木の根に足を取られて、派手に転んだのだった。
顔から転んだために、鼻血がポタポタと地面を濡らしている。他に、鼻の頭と顎、それと手の平を少し擦りむいていた。
「どんくせえ奴だな」
後ろを歩いていた氏照が、侮蔑の表情を浮かべながら、目の前で倒れている憲秀の尻に蹴りを入れる。
「あいとわ!」
氏照の爪先が、丁度、尾骶骨を捉えて、憲秀は堪らず跳ね起きる。
「ご無体な!手を差し伸べるならまだしも、尻を蹴り上げるとはあまりに酷すぎるではありませんか!」
いくら怒っても、鼻血を垂らしながらでは迫力に欠けていた。
「黙って歩け」
氏照の蹴りが、再び憲秀を襲う。憲秀も心得たもので、後ろに跳び下がってかわすが、一瞬早く、蹴りが脛に入った。
「あいとわ!!」
憲秀は、蹴られた脛を両手で抱えて、その場でピョンピョンと跳ね回る。
大の男が鼻血まみれの赤い鼻をして跳ね回る様は、滑稽としか言いようがなかった。
「俺は遊んでる暇はないんだ。そんなに遊びたいならお前一人で遊んでいろ」
氏照は、まだ脛を摩っている憲秀を尻目に、すたすたと先を歩いていってしまう。
(おのれ〜!どこまでわしを虚仮にする気だ!)
いっそ背後から襲い掛かってやろうとも思うのだが、慎重な性質の憲秀は、氏照の得物が何か解るまでは手を出せずにいた。
歯噛みをしながら、いそいそと氏照の後を追っていく。
氏照は健脚で、憲秀の足ではなかなか距離は縮まらなかった。
(見失ったか?)
と、思ったが、少し先で氏照が手ごろな石に腰掛けているのが見えた。
殺すと決めた者を見て、安堵するというのもおかしな話だが、いきなり一人にされるのは恐ろしいものがある。
憲秀は自分でも知らぬ内に、何処かで反りの合わぬ氏照を頼りにしているようだった。
「遅い」
鼻血を抑えて、血だらけになっている手拭いを見ても、氏照は冷たく接する。
別にこれは氏照に悪気があってのことではない。元々がこういう性格の上に、長年付き合っている憲秀に、今更優しい言葉を掛けるのが照れくさいだけだった。
それでも憲秀が心配で、こうして遅れて来るのを待っていてやったりもする。いわゆる天邪鬼のような男だった。
しかし正反対の性格を持つ憲秀には、そんなことは通じていない。ただ氏照への殺意を煽るだけの効果しかなかった。
憲秀は、いい加減腹が立ってきて、つい、
「おい氏照、お前は何か思い違いをしていないか?わしは何時でも、お前を殺すことが出来るんだぞ」
と、言ってしまった。
千載一遇の好機が訪れるまでは、猫を被り通して、従順なふりを演じようと思っていたが、一時の怒りに任せて氏照に宣戦布告とも取れる発言をしてしまった。
「ほう、お前は俺を殺したいような口ぶりだな」
氏照は、腰掛けていた石から立ち上がりながらそう言った。憲秀を睨む様は、なかなか迫力があった。
憲秀も負けじと睨み返すが、氏照のそれには遠く及ばない。ついには目を逸らせてしまった。
「フン、まぁ今は見逃してやる。・・・今は、な」
口は薄く笑っているが、目は笑っていない。
氏照は行くぞと言って、また歩き始めた。が、数歩も行かないうちに立ち止まってしまう。
正直、憲秀はドキっとした。油断させておいて、いきなり攻撃されるのではなかと危惧したが、その様子はなく、氏照は前方に目を据えたままで立ち尽くしている。
恐る恐る憲秀が近づくと、顔は動かさずに、
「黙ってそこから一歩も動くな」
と、緊迫した声で言い放った。
氏照は一箇所だけを見ているのではなく、焦点を合わせないで、漠然と辺りを見ている。この方が、以外に広い範囲を見ることができるためだった。
「どうかなされましたか?」
「シッ!黙っていろと言っておろうが!」
小さいが、確実に憲秀に聞こえる声で怒鳴りつける。
憲秀にも、氏照の表情からただならぬ気配を感じ取ってはいるが、何が起こっているかまでは解らない。ここは氏照の下知に、素直に従う他なかった。
「誰かが近くに潜んでいるようだ。今なら逃げられるかもしれないが・・・憲秀、どうする?」
どうすると言われても、憲秀には判断がつかない。逃げられれば儲けものだが、もし追いつかれでもしたら・・・。
そう考えると、まだこの島に来て一度も戦闘をしていない憲秀には、即決しかねる質問だった。
実はそれは氏照の同じである。彼もまた、此処に来てから一度も戦闘を経験していない。そのため、退くべきか、退かざるべきかで悩んでいた。
「先手を打って、こちらから襲ってみてはどうでしょうか?」
逃げる希望より、追われるかもとの不安の方が押し勝ったらしい。憲秀は、氏照に伺い訊ねるように自分の案を上げてみた。勿論、小声でのやり取りである。
「相手の得物によるな。鉄砲の類を使われては、こちらに勝ち目はないだろう」
いつものような厳しい口調ではなく、どこか弱弱しい物言いだった。氏照も不安で一杯なのだろう。
「そう言えば、氏照殿の得物はなんですかな?一度も教えてくれはせなんだが」
「得物と呼べるほどの物ではない。『各種弾丸詰め合わせ』なるもので、肝心の鉄砲がないために使い物にはならんのよ」
そう言うと、静かにデイパックを下ろして、中から一つの箱を取り出した。
蓋を開けると、中には様々な弾が入ってはいた。なるほど、これだけあっても弾だけではクソの役にも立たないであろう。
「こんな物にわしは怯えていたのか・・・」
憲秀は、つい本音が出てしまう。
「ん?何か言ったか?」
「いえいえ、何でもないですよ。・・・それより、得物がこれじゃあ、早く此処を立ち去った方が賢明ですな」
誤魔化すようにして、早く逃げようと急きたてる。
ついさっきまで、先手をつこうと積極的なことを言っておきながら、分が悪いと見るやいなや、もう逃げ出そうと考えている。この変わり身の速さは、ある意味ではこの男の最大の特技といえるだろうか。
「そうだな。無理に戦って、いらぬ騒ぎを起こす必要はないな」
逃げ出すことに、氏照も賛同し、二人はこそこそとその場から離れようとした。
「お待ちなされ」
不意に頭上から声が降ってくる。
二人は仰天して空を仰ぎ見るが、そこに人影は見えない。
「何処だ!何処にいる!」
憲秀が喚くようにして吠え立てる。氏照の方はさすがに落ち着いていて、落ちている木の棒を拾って急の襲撃に備えている。
「驚かせるつもりはありませぬ。そこもとらに訊ねたいことがあるだけです」
先程とは違う場所から声がする。
「訊きたいことがあるならまず、姿を見せろ。隠れていていながらでは、物を訊ねる態度ではなかろうが」
これは氏照が言った。
「失礼致した」
不意に二人の背後から声がして、どこか気品があり、匂い立つような涼やかな青年が姿を現す。
「だだだ、誰だ!」
突然の出現に、憲秀は腰を抜かして驚いている。
「申し訳ありませぬ。別に驚かせるつもりはありませんでした。そこもとらが不穏な密議をしていたため、用心のために身を隠していただけに過ぎませぬ」
「忍の術を使えるのか?」
氏照はまだ拾った木の棒を下ろさずに、正眼に構えを取っている。相手の出方次第では、棒で殴りかかるつもりなのだろう。
不安がってはいたが、一度腹が決まってしまえば氏照に恐いものはない。あえて二つ、彼の恐いものを挙げるとしたら、叔父の綱成と、長老の幻庵くらいのものだろう。
「生まれが甲賀のため、少々心得がある程度です」
青年は言葉は丁寧だが、棒で威圧してくる氏照にも臆するとこなく、堂々と受け答えしている。
「甲賀か・・・。で、訊きたいことってのはなんだよ?」」
「はい。手前は将軍家に仕えている、和田惟政と申します。何処ぞで将軍・義輝様を見かけなかったかと思い、声を掛けた次第にござりまする」
「義輝ってのは、初日に帝に食って掛かったお調子者の馬鹿のことか。・・・悪いが見てないな。俺が逢ったのは、そこにいる阿呆と、死体が二つだけだ」
惟政は『お調子者の馬鹿』という言葉に気分を害したようで、氏照のことを睨み据えた。
「こ、これ氏照殿!仮にも将軍家に対して、馬鹿とは何事でござるか!お言葉を慎みなされ!・・・あいや和田殿、この方は生来口の利き方を知りもうさん。ここは一つ大目に見てもらえませぬか?」
「誰が口の利き方を知らないんだ!それを言うなら、主家に連なるこの俺を殺すと言った、お前の方じゃねえか!」
できるだけ穏便に事を運ぼうと、氏照の失言を訂正した憲秀の頭を、氏照は力一杯に殴りつける。
「あいとわ!!!」
鼻血を出し、顔を擦りむき、脛を蹴られ、腰を抜かしていた憲秀は、今度は頭を抱えてうんうんと唸っている。
「・・・ま、まぁいいでしょう。今のは聞かなかったことにさせていただきます」
切支丹である惟政も、無駄な争いは好まぬ性質で、氏照の失言を深く追求しなかった。
「では、もし義輝様を見かけることがあれば、惟政が捜していたと、必ずお助けに参りますと、そうお伝え願えませぬか?」
「えぇえぇ、いいですとも。出遭うことあれば、必ずお伝えしましょう」
頭を抑えながら、憲秀が請合う。もっとも憲秀には、
(ここで将軍家に恩を売っておけば、後々良い事があるじゃろう)
という魂胆があってのことだった。
「あっ、わしは北条の松田憲秀と申します。『ま・つ・だ・の・り・ひ・で』でございますから、お忘れなきように」
「はい、しかと覚えました。では、手前はこれで失礼致します。お時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした――」
急に強い風が吹いたかと思うと、惟政の姿は掻き消えていた。
「消えた・・・?」
憲秀がキョロキョロと辺りを見回しながら呟いた。
「フン、小太郎なら、もっと巧く消えているわ」
負けず嫌いの氏照が、そう嘯く。
「さっさと立て!もう行くぞ!」
氏照の蹴りが、三度憲秀を襲う。
「あいとわ!!!!」
蹴られた腰を抑えて、憲秀はまたこう思った。
(絶対に・・・絶対に、この野郎をぶっ殺してやる!)
と・・・。

【100番 和田惟政 『不明』】
【89番 松田憲秀 『スタンガン』『毒饅頭』】&【79番 北条氏照 『各種弾丸詰め合わせ』】
244 ◆IVgdXngJC6 :05/02/21 15:04:03
追記

三人は5-Cから出発。
惟政の目的は義輝との合流。
氏照の目的は北条の者との合流。
憲秀の目的は氏政・氏照の殺害。なお憲秀は、氏照の暴行により、数箇所を打撲。
245無名武将@お腹せっぷく:05/02/22 19:43:00
01赤尾清綱×  26岡部元信×  51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政×  77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行×  53宍戸隆家○  78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家○  79北条氏照○
05安居景健×  30小山田信茂× 55下間頼照×  80北条氏政○
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉×  81北条氏康×
07浅井久政○  32柿崎景家×  57上条政繁○  82北条綱成○
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○  83細川藤孝○
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀×  60滝川一益×  85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×  86前田利家○
12甘粕景持×  37北条高広○  62武田信繁   87真柄直隆×
13尼子晴久×  38吉川元春×  63武田晴信○  88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞○  64竹中重治×  89松田憲秀○
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×  91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如○    67鳥居元忠×  92三好長慶○
18石川数正×  43高坂昌信○  68内藤昌豊×  93三好政勝×
19磯野員昌○  44香宗我部親泰○69長尾景虎○  94村上義清○
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景×  95毛利隆元×
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○  96毛利元就○
22岩成友通×  47斎藤道三○  72丹羽長秀×  97森可成×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉×  98山中幸盛○
24遠藤直経○  49斎藤義龍○  74蜂須賀正勝× 99六角義賢×
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房×  100和田惟政○

×印:死亡確認者 62名
○印:生存確認者 37名
無印:未登場者  1名
246無名武将@お腹せっぷく:05/02/22 19:53:46
【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE』『ベレッタM1919』『相州五郎入道正宗』】3-C(3-D森前に向かっている)
【42番 顕如 『FFV M2カール・グスタフ(望遠レンズ附属、残弾1発一時使用不能)』】3-I海に逃亡
【48番 斎藤朝信 『モップ型暗器』】3-C荒野から移動
【100番 和田惟政 『不明』】5-Cから出発
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾24発)』】現在地不明
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(4本)』『十手』】1-E
【98番 山中幸盛 『エペ』『ダマスカスナイフ』】食糧少量 3-Gから出発
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀』】3-Gから移動 目的:幸盛との合流
【07番 浅井久政&輝政 『S&W M36チーフススペシャル』】3-H
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾3発)』『鉄槍』『矢(5本)』】4-E森地点(目的は諸悪の根源撃破&他の織田家臣を探す)
【53番 穴戸隆家 『キャット・オブ・ナインテイル』】3-Eで落胆している

交戦中
【82番 北条綱成 『ヌンチャク・木太刀』】&【80番 北条氏政 『南部十四式(弾切れ)・クナイ9本・短刀コブラ・頭に鍋】
VS【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(4本)』『十手』】3-Fで戦闘開始

【54番 柴田勝家 『マテバ 2006M(残弾3発)』『備前長船』『H&K MP3(残弾15発)』】VS
【49番 斎藤義龍 『スプリングフィールド M1(残弾4発)』『スラッパー』】4-D森で交戦中
247無名武将@お腹せっぷく:05/02/22 19:59:03
【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『USSR AK47 カラシニコフ(残弾少量)』『ボーガン(5本)』『十文字槍』 (軽い打撲。命に別状はなし)】&
【46番 小早川隆景 『グロック17C(残弾17+1発)』(右腕骨折・体調最悪、意識は少し回復)】 負傷の為進行遅延。4-Cで浅井長政をやり過ごす
【19番 磯野員昌 『呉広』】&【24番 遠藤直経 『マクアフティル』】&【09番 朝比奈泰朝 『青龍偃月刀』】目的、浅井家臣との接触。今川親子が死んで、泰朝の目的不明
【29番 飯富昌景 『フルーレ』『オーク・ダブルアックス』】 共に3-G林の入口
【37番 北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾2発・一時使用不可)』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】&
【39番 吉良親貞 『武器不明』『ジッポ』『モトローラ トランシーバ T5900』】(共に3-B廃墟付近)
【89番 松田憲秀 『スタンガン』『毒饅頭』】&【79番 北条氏照 『各種弾丸詰め合わせ』】3-C出発
【90番 松永久秀 『青酸カリ(小瓶に入ってます)』】 &
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢・6本)』】 (久秀負傷。左足を引ずづることになります。)当面の目的は休息できる、安全な場所の確保
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』】&
【94番 村上義清 『槍・日本号』】両者ともに4-E森地点から移動(武田晴信&長尾景虎を探しています。義清は晴信を少し恨んでいます)
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】&【71番 長坂長閑 『無銘・匕首』】&【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】2-B森林
248無名武将@お腹せっぷく:05/02/23 23:56:20
>>247修正
【29番 飯富昌景 『フルーレ』『オーク・ダブルアックス』】&
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ』】 共に3-G林の入口から出発
249偽りの親子 1/6:05/02/24 00:35:31
「そこは歩くな。泥に足跡がついて、敵を呼び寄せる事になりかねん」
端的、しかし厳しい声で道三は言う。親泰はその言葉に素直に従う。
長兄・元親に似たのであろう子どもであることもあいまって姫のような外見に似合わず、その手は擦り剥けるか否かぎりぎりのところにまでなっていた。
昨夜、殺された正勝や直隆の死体を的、つまり練習台にして人を殺める方法を道三から集中的に叩き込まれたからである。
それ以前にもこの島で道三と偶然出会ってから、同じ様な殺人術、格闘術を何度となく教えられたが、死んでいるとは言え人の体に直接、暴力を振るった事によって、親泰も何かがプツンと切れたように、道三に妄信的に従った。

―逸材だ。・・・これならば。
道三は虚ろな目をして、隣を歩く親泰を見てそうほくそえんだ。
初めにあったときこそ道三の空恐ろしい迫力と厳しい態度に歔欷していた親泰であるが、あの訓練で才能を開花させたようにメキメキと実力をつけている。
その早さたるや、まさに旭日昇天の如しであった。
この2日で親泰は『変身』した。女の子のようにたおやかであった筋は余分な脂肪が取れ、鋭いナイフのような危うさを感じさせるようになり、服の袖や裾から覗いていた雪のように白い肌は、太陽にさらされている部位だけが少し褐色を帯びていた。
その袖口で白い肌と淡い褐色がかった肌が成すコントラストは、手足の先から徐々に侵食されていく親泰を現しているようであった。
しかし、肌の色の侵食は袖口で止まっても、既に親泰の心も道三に掌握されていた。道三によって『変心』させられたのだ。

―この技術がこんな所で役に立つとはな。
道三の技術。それは槍を自分の体の一部のように操り、物干し竿の先につけた針で宙に浮く永楽銭の穴を突き通す槍術もある。
笑顔で狙った獲物に近付き、主君となった獲物の信頼を得てその実権を握る、下剋上の申し子としての術もある。
そして、ある時は恐怖的な法令を出し、ある時は宥和的な御触れを出して、戦国有数の強大な国を作り上げる政治の術もある。
しかし、それらは他の人間にもできる、衆に抜きん出るという物である。
250偽りの親子 2/6:05/02/24 00:36:23
彼自身にしか出来ない技術、それは暗示や情緒の操作など、いわゆる洗脳という分野に於ける技術であった。
もちろん、現代のような薬物を使ったり、特殊な機械を使ったりするものではない。
基本的には会話で心を掌握し、巧みな話術で暗示を掛けるのだ。
道三の暗示は少量の眠り薬で朦朧とした相手の意識に働きかけて、脳の奥深くに暗示をかける物で、主君を騙し続けるのにもこの手を使った。
大の大人ですら簡単に掛かるのだから、親泰のような子どもに至っては造作も無いことだった。
子の義龍も、裏切った主君の子であるのが明らかであったが、道三が勘当すると言った今日まで彼が叛旗を翻さなかった裏にはその事がある。
もっとも、暗示によって必要以上に道三に依存させていた分、裏ぎられたと知ったときの彼の怒りは尋常ではなく、恐らくこの島でも狂ったように道三を求めている事だろう。
いくら得意な獲物である槍を持っているといえど、小柄な道三だけでは、優に六尺を超える巨漢である義龍に対抗するには心許ない物がある。
それに、義龍の得物が近接格闘兵器であるとは限らない。この島の空に何百発と響く銃声がそれを克明に物語っている。
―協力者が・・・いや、思い通りになる人形が必要だ。即ち、手近に居る凡愚そうな武将を騙せばいい。
そのように道三が思っていた時だった。
そんなまどろっこしい事をせずとも、道三の思い通りになるべくして生まれてきたような素材―親泰が現れたのだ。
やや内向的な性格で、精神もまだまだ未熟で暗示する余地は大いにある。
さらに、その肉体は、この時代に於いては決して強健とはいえない物ではあるが、二次性徴が全く現れていない程で、まだ成長は望める。
まさに、鴨が葱を背負って飛んできたようなものである。その鴨が道三の手に堕ちるのにさほど時間は掛からなかった。
今や彼の虚ろな目は道三の姿以外は何も捉えていないだろう。
251偽りの親子 3/6:05/02/24 00:39:14
道三はそこで歩みと考えを同時に止めた。彼らの行く先に一人、親泰に負けず劣らずの虚ろな目で空を眺めている人間が居たからだ。
親泰との違いを上げるとすれば、男の目が悲哀を含んだうつろさなのだとしたら、親泰の目は絶対の虚無である事だろう。
やや遅れて俯いて、道三の後に続いていた親泰も道三が止まった事に気付いて道三の横に出てきた。
道三は前の方に佇む男を指差して、「これを貸す」と言い、腰帯に挿していた長曾禰虎徹を鞘ごと親泰に手渡した。
親泰はその意味を図りかねながらも、彼の小さな体に対して大きすぎる凶器を受け取る。
「お前が本当にワシに忠誠を誓っているのかどうかを確かめる」
ぼそりと呟くように道三は言った。
「えっ?」
親泰の疑問は声になってそのあどけない面影を残す口から漏れた。
しかし、道三は冷徹にただ一言、
「あの男を殺せ」
とドスこそ利いていないが、恫喝じみた声で言い放った。
「でも・・・」
戸惑う親泰を見て、道三はしゃがみこみ、親泰の肩に手を掛けてその空洞のような瞳を見据える。
「ワシは誰だ?」
「・・・斎藤秀龍」

「お前を救ってやったのは誰だ?」
「・・・斎藤秀龍」

「お前の尊敬すべき親は誰だ?」
「・・・斎藤秀龍」
252偽りの親子 4/6:05/02/24 00:40:13
「そう、全てはワシであろう?」
そういって満足げに深々と頷くと、親泰の肩に掛けていた手で再度、先の男を指差した。
「殺れ」
「・・・はい」

知己であった毛利隆元の死を悼む53番宍戸隆家は森の中の少し開けだ場所に立ち尽くしていた。
あまりにもショックな話であったのか、呆然自失の状態だったと言っていいだろう。
その横顔に拳大の石が投げつけられたのに気付くのにも多少のタイムラグを必要とした。
ようやく我にかえって振り返った隆家の顔が見る見るうちに怒りの色に染まっていく。
石を投げつけられた事それ事体よりも、姻戚である隆元への静かな黙祷を、そして、彼との思い出を振り返っていたのを邪魔された怒りが激しく彼を昂奮させていた。
この男が先程まで、綱成の横で小さくなっていた男とは誰が信じようか?

得物の九尾の猫―キャット・オブ・ナインテイルをぶんぶんと振り回しながら、石の来た方向に向かっていく隆家はこれ以上ないと言うほどの憤怒を体現していた。
振り回される猫の尾に触れた草の葉が千切れて宙に舞い上がり、打ち付けられた幹は皮が剥がれ、生木の緑が覗いた。
「何処だ、出て来い!」
大声を上げて威嚇するも、誰も出てくる様子はない。石を投げつけられた方向と勢いから推測される、相手の位置はとうに過ぎている。
―どこかに逃げたか?糞垂れが!
百分の一の確立だが、相手が隆元の仇であるかもしれないという気持ちがここまで隆家を突き動かしたのだ。今更逃げたなど認められようか。
相手を倒す。いやせめて相手の顔を見て、一矢報いるまででもいい、彼は石を投げた人間を地の果てまで追う気でいた。
253偽りの親子 5/6:05/02/24 00:41:13
そう心に決めたその瞬間、また違う方向から隆家に先の石ほどの勢いはないが、二つ目の石が投げつけられた。
それは隆家の膝にあたって、ころころと地面に転がり落ちた。
「今に見ておれ!うぬを必ず狩り出してくれる!」
叫んで、隆家は石の投げつけられた方向に駆け出した。
しかし、今度も大体の位置を予測してそこに向かったにもかかわらず誰もいなかった。
足元の朽ち葉は少ないとはいえないこの拓けていない森で、音を出さずに歩くのも、昨日の雨で湿った地面に足音を残さずに逃げ去るのも至難の業だろう。
―相手はかなりの手練だな。
そう隆家は悟ったが、そんな事で怯むほど隆家の怒りは生易しい物ではなかった。

そして、右手の九尾の猫を振り回さんとした時、隆元は肩口に熱い感触を感じ、腹から自分の鮮血と共に出てきた白刃を認めた。
―刺された・・・のか?
自らの体に深々と食い込んだ刀の感触を隆家が他人事のように感じられたのは、昂奮のあまりだろうか?それとも隆元の後を追えるという安堵感からだろうか?
少し遅れて、自分の体に走る激痛でもう助からないであろう事を隆家は自覚した。
―後からの足音はなかったのに何故?
刺された瞬間から浮かんでいた疑問は死を前にすると、いともあっさりと答えが出た。
―木の上から飛び降りたのか・・・
大きく斜めに刺されて、下腹部から突き出した刃先がその答えを証明している。
「む、無念だ・・・」
血を吐きながらそう言い残すと、隆家は絶命した。
254偽りの親子 6/6:05/02/24 00:42:09
・・・飛び降りたせいで手元が狂って、急所を微妙に外れたのか、親泰に刺された男はしばらく刺されたまま悶え、その後なにやら言い残して倒れた。
当の親泰は、飛び降りた衝撃と、刀を突き刺した衝撃で着地に失敗し、地面に尻餅をついてへたり込んでいた。
その上に隆家の死体が倒れこんできたのだ。
親泰は隆家を押しのけようとするが、恐怖に打ち震える腕に力が入らず、ただただその隆元の体から流れ出る血の雫をその身に受けていた。
少しして、不意に隆元の体が持ち上がって親泰は開放された。
見ると、道三がその体で隆家の体を持ち上げている。親泰はおずおずとその下から抜け出し立ち上がる。
「僕、ちゃんとできましたか?」
「お前の忠誠しかと見届けた。最後の『死上げ』だ。刀を抜いて手にとれ。」
妙な含みを持たせた道三の言葉に、親泰はまた戸惑うのかと思われたが、
「・・・はい」
と、多少の時間を置きはしたが、迷いの言葉は一言も発しなかった。
そのまま、傾いた隆家の体に刺さった柄に手を掛け、何のためらいもなくそれを一気に引き抜いた。
一瞬死体がびくりとふるえ、噴出した血が道三と親泰の間に真紅の血の虹を作る。
それは二人の間に結ばれた、掛け橋を。そして親泰の首に掛けられた切れない赤い糸を示していたのかもしれない。

「お前はワシの自慢の息子だよ」
声が森に響いて、二人は歩き始めた。

【53番 宍戸隆家 死亡】『キャット・オブ・ナインテイル』は3-Eの死体の傍に放置。
【残り36人】
255初戦1/4修正版:05/02/24 15:28:35
「信廉が死に、兄上はお尋ね者。今日こそは出会わねば」
島一面を照らす眩しい朝日を浴びながら、歩を進める男が一人
男の名は62番・武田信繁。晴信の弟に当りここ二日まったく動きを見せていない
自問自答を繰り返しながら、彼はふと考えていた
思えばこの島に着てからずっと兄を探していた。しかし彼は未だ島で誰にも出会ってさえいない
「こんなものじゃ敵に出会った途端に撃ち殺されて終いだ。刀でも落ちてないのか・・・」
彼の手にはフォークが二本。このハズレ武器ではいくら信繁でも勝負にならない
極力人と出会わぬよう慎重になりすぎたのが原因だった
―このままではいずれ死ぬ。誰かを殺さねば生き残れない
そんな事はとうに分かっている。それでも心と体は違う結論を出した
「人は・・・斬れない。無為に人を殺すなど俺には出来ない!」
 
一瞬の殺気を感じた時には引き金は引かれていた
そして走った。昔から知る道のように何も考えずに
その後間もなく、背後から炸裂した爆音は信繁の足を止めさせ、爆風で体が吹き飛びそうになる
幸い狙いが外れたものの、 気づくのが少しでも遅ければ巻き込まれていただろう
地面には大穴が顔を覗かせ、その更に遠くからは、砲撃したと思われる男が迫ってくる
この距離からでも分かる威圧感。それを信繁はヒシヒシと全身で感じていた
「・・・たたでは済みそうにないな」
256初戦2/4修正版:05/02/24 15:32:43
二人の男は徐々に間合いを詰め、互いの顔を確認できる所で立ち止まる
「私は武田信繁。帝が言っていた武田晴信の実弟だ。何故私を狙うのか?」
「ほう・・・ならばお前を殺して晴信の頸も頂こう。そしてこの島を脱出する・・・」
「!!兄上か景虎の頸を捧げればこの島を出れるのか!?それは本当か!?」
「それは定かではない。しかし邪魔者を消して損は無いだろう?」
その言葉に信繁は衝撃を受けた。ひとつは兄が多くの参加者に狙われている点
もうひとつは上手くいけばこの島を脱出できるという点だった
(あの放送の内容から考えるに、兄上は景虎と一緒にいるはず。ならそれと合流して二人で景虎の頸を取る!!)
もちろん相手の話に証拠などない。しかし信じたかった。
―嘘でもいい、とにかく兄を救いたい。そしてあわよくばこの戦いを終わらせる
それが信繁の決意であった
「・・・さて、お喋りもここまで。晴信戦への肩慣らしだ。いくぞ!!」
「いいだろう。では我が典厩信繁、参る!!!」
257初戦3/4修正版:05/02/24 15:37:40
彼は勢いよく駆け出し、相手へフォークを突き立てる
(あの構え・・・戦い慣れしている。だが一撃でも当たれば・・・)
しかし両手のフォークで突いても斬ってもリーチの短さが災いしまともに当たらない
逆に、顕如の素早い動きから繰り出される拳に信繁の体力は奪われ続けた
(先程の武器は使わないのか?自分が巻き込まれるからか?近接戦闘に向かないからか?ま、そんな事どうでもいい・・)
必死でガードしていた腕の感覚はなくなり、体中アザだらけで意識も朦朧とする
「ハハハハハハハ!!どうしたもう終わりか!!ハハハハハハハ!!」
―自分は何故殺されかけているんだろうか?ふと考えていた
―経験の差か?相手が悪かったのか?武器に恵まれなかったからか?
いや、全て違う
―負けぬと思えば負けたとしても心まで負ける事はない
誰かが言っていた言葉。たしか小さい頃聞かされた気がした
その言葉を思うたび恐怖心は薄れ、不思議と痛みを感じなくなった
「ウォォォォォォォ!!!」
信繁は雄たけびをあげ、相手へと向かっていく
それに驚きつつも、それを迎え撃つ顕如
だが彼とて人間。ここにおいて最大の失態を犯す
「あ、足が動か・・・や・・・やめろーーー!!」
先日の雨でぬかるんだ土に足を取られた。その一瞬が生死を分けた
グチャ!
258初戦4/4修正版:05/02/24 15:44:33
信繁のフォークは顕如の頭を貫き、即死だった
そのまま泥の中に倒れ動かなくなった
「・・・強かった。だが色々な事を学んだ。感謝する」
軽く手を合わせ、彼を土に埋めもう一度手を合わす
そして傷だらけの体を引きづり、また晴信を探しに歩き出す
信繁の遅いスタートとなった

【42番 顕如 死亡】FFV M2 カール・グスタフは残弾0で放置
【62番 武田信繁 武器なし】 3-H家へ向かう(全身にケガ、休養が必要)
259旗age部隊 ◆1ewW8msWlI :05/02/25 11:38:09
age
260旗age部隊 ◆1ewW8msWlI :05/02/25 11:39:37
ageておきながらsageてしまうとは無念・・・
261狂心:05/02/26 02:28:26
「ワシは天皇の余興に乗ることに致す。」
元就の突然の一言が隆景にはすぐには理解出来なかった。
「それは・・どのような意味でございますか・・?余興に乗るとは・・もしや・・」
「意味が解からぬか・・?ワシはこれより天皇の言う二人を殺すことを目的と致すと申しておるのじゃ」
二人といえば武田晴信・長尾景虎のことである。だが隆景にはその強敵を敵とすることよりも、人を殺すと元就が口にしたことに驚いた。
今までの元就なら決してむやみに人を殺すなどとは言わなかった。敵に情けをかけることになっても命を助ける、それが隆景の知る父の姿だった。
「父上・・どう考えても悪は天皇ではないですか・・?それなのに・・」
「悪?何を申しておるのじゃ隆景。もはやワシにはお主しか居らん。他は皆敵じゃ。遭った者から殺していく。それだけであろうが」
「まだ毛利の者が居るかもしれませぬ!」
「信用ならぬ!良いか!ワシにとって仲間はお主のみ!お主にはワシしか居らぬ!後は敵と思え!」
(父上は鬼にでも魅入られたのか・・?正気とは思えぬ・・・)
隆景は元就の眼によどんだものが見えた気がした。
(子をすでに二人も失ったショックは並ならぬものであろう。特に隆元兄の死は・・。だが、それだけでここまで変わるものなのか・・?)
実の父である元就に隆景は恐怖を感じた。元就の気迫に圧倒されそうになり隆景の足は後退りそうになったが元就に左腕を摑まれる。
「このようなところで間誤付いても埒が明かぬ。さ、行くぞ」
軽い打撲とはいえ老齢の元就には結構なダメージであるはずなのに、元就は隆景を引っ張り先を急ぐ。
(まるで痛みがないのか・・いや、もはや感じていないのか?やはり・・父上は狂ってしまわれたのか・・)
少し前の元就は隆景の身体を案じて進んでいたはずである。だが、今の元就はそんなことどうでも良いことになっていた。
まだ、下がりきらない熱と右腕の骨折による痛みに耐えながら隆景は必死に歩いた。

【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『USSR AK47 カラシニコフ(残弾少量)』『ボーガン(5本)』『十文字槍』】
【46番 小早川隆景 『グロック17C(残弾17+1発)』二人4-Cから3−Cの方へ進行中
元就の目的は敵を探し殺すことです。(特に武田晴信・長尾景虎が目標)





262自己崩壊す?:05/02/26 03:36:18
(私はどこへ行こうとしているのだ・・?)
元親はふと足を止めた。訳の解からない殺し合いに巻き込まれて、人を殺めた。
元親は思考回路が麻痺しているような気がした。
(私は・・悪を許せない・・。じゃあ天皇を殺しに行ってるのか?いや、それは無理だ。場所が何より解からない。もしかしたら島にはいないかもしれない。
・・弟たちを探しているのか?・・会っても敵になるかもしれないのにか・・?)
何度も自問自答を繰り返すが答えが見つからないでいた。
(生き残る為には殺さなくてはいけない。だが、それは何やら間違っている気がする・・。悪なら斬っても良いかもしれないが、皆が皆悪とは思えない。)
考えれば考えるほど途方に暮れるばかりであったが、ふと元親の心に何かが切れた気がした。
「私が・・殺さずとも他の奴らが殺すのではないか?ただ、殺される者・殺す者が変わるだけでこの悪夢からは醒めれないのではないか?」
「そうだ、ならば私が殺す者となれば良いだけではないか。私に刃を向けるものは敵。容赦なく殺す・・それで良いのだ」
自分の気がつかぬ間に元親は、理性・情け・優しさなど、人として失くしてはいけないものを失っていくのであった。

【65番 長曽我部元親 『鎌・ウィンチェスターM1897(残弾5発)】 現在2−Eにいる。だんだん殺すことに躊躇いが無くなっていっている。



「信廉が死に、兄上はお尋ね者。今日こそは出会わねば」
島一面を照らす眩しい朝日を浴びながら、歩を進める男―62番武田信繁は考え事をしながら、独り言を呟いた。
彼はここ二日まったく動きを見せていない。食もここまで歩いてくる途中の林野で多少は調達出来たのでそれでしのいできた。
自問自答を繰り返しながら、彼の頭にはふと疑問に近い考えが浮かんだ。
思えばこの島に来てから彼はずっと兄を探していた。しかし彼はまるで人っ子一人居ない島を歩いているように誰にもであっていないのだ。
そう―味方にも、中立の者にも、敵にも、だ。
この島には100人もの殺意を持った人間が居るというのに、運命のいたずらなのか、彼は血の一滴すら見ていない。
「こんなものでは敵に出会った途端に撃ち殺されて終いだ。刀でも落ちてないものか・・・」
彼の手にはフォークが二本。このハズレ武器では信繁がどうあがこうと、刀や鉄砲を持った相手に対しては勝負にならないだろう。
極力、人と出会わぬよう、慎重になりすぎたのが裏目に出てしまったのだ。
―このままではいずれ死ぬ。誰かを殺さねば生き残れない
信繁にもそんな事はとうに分かっている。それでも心と体は違う結論を出した
「人は・・・斬れない。無為に人を殺すなど俺には出来ない!」
そう呟いた直後、一瞬の殺気を感じ信繁はとっさに振り返る。
小高い丘の上から途轍もなく巨大な砲を携えた男が、信繁にその砲口を向けんとしているのが目に映った。
一瞬の逡巡も許されず、彼はその砲口に対して横様に走った。昔から知る道のように何も考えずに。
その直後、急に標的が動いた為に小回りの効き辛い巨大な砲身が災いしたのか、あらぬ方向へ飛んでいった砲弾が、赤々とした爆炎で辺りを照らし、少し遅れて、天を衝くような爆音を轟かせた。
しかし、かなり遠くで爆発したはずの爆風は嵐のように信繁の背中に叩きつけられ、衝撃で体が吹き飛びそうになった。
振り返ると地面には大穴が顔を覗かせ、辺りの草原が爆発の残り火をともしている。
男の存在に気付くのが少しでも遅ければ、信繁もあの炎の一部に成り果てていた事だろう。 信繁は身を萎縮させた。
間もなく、まだ煙を巻き上げる草原を踏み分けて、先ほどの男がゆっくりと迫ってきた。
264初戦 2/4:05/02/26 21:28:18
この距離からでも分かる形容しがたい威圧感。それを信繁はヒシヒシと全身で感じていた。
「・・・ただでは済みそうにないな」
男は徐々に間合いを詰め、信繁が顔を確認できる所まで着て立ち止まった。
見ると男はどこかで濡れたと思われるくたびれた僧服に質素な袈裟を掛け、そしてその格好に似つかわしくない巨大な砲が異彩を放っていた。
「拙者は武田信繁。どこぞやの高僧とお見受けするが、何故にして私を狙う?」
「・・・貴様の知るところではない。ただ、天皇の余興に乗った名も無い破戒僧とだけ覚えておけ」
その僧は、閉じているのか、いないのかが解らない程までに瞼を細め、眉間に皺を寄せて重々しく名乗る。
「・・・兄上か景虎の頸を捧げればこの島を出られるという、あれか?」
「その様な話は関係ない。しかし、帝が喜びわが衆に肩入れをして戴けると言うのであれば喜んでその男共を屠ろう。」
―この男、天皇と同じだ。狂っている!
しかし、信繁はこんな形とは言え、初めて人と接した為か、自分の推論をこの島での勝利の方程式として認識を改めた。
―あの放送の内容から考えるに、兄上は景虎と一緒にいるはず。ならばそれと合流して二人で景虎めの頸を取る!!
もちろん、方程式が確立したからと言って、物事が全てうまくいくわけがない。何よりも目の前に居るこの男をどうにかしない事には方程式どころか、信繁が命を落とす事となる。
―嘘でもいい、とにかく兄を救いたい。そしてあわよくばこの戦いを終わらせる
それが信繁の決意であった
「・・・さて、お喋りもここまでだな。行くぞ、小童!」
「受けてたとう、典厩信繁、いざ参る!」
265初戦 3/4:05/02/26 21:29:40
彼は勢いよく駆け出し、目の前の男へ唯一の頼れる得物―フォークを突き立てる。
―あの構え・・・戦い慣れしている。だが一撃でも当たれば・・・
そう考えはしたものの、両手のフォークで何度突いてもリーチの短さが災いし、掠りもしない。
逆に、男の素早い動きから繰り出される拳に信繁の体力は奪われ続けた。
―先程の武器は使わないのか?いや、自分も巻き込まれるからか・・・、しかしあのような重いものを持っていては次は避けられまい
体は激しく動いても、冷静沈着な頭はそう答えを割り出していた。
しかし、そう思った瞬間、左右同時に繰り出したフォークが、男がとっさに振り上げた砲身に左手を弾かれ、手から離れた一本が草むらのどこかへ落ちた。
それに気をとられて、横を向いていた顔の頬に容赦ない正拳が炸裂する。ごきり。と鈍い音がして歯が何本か折れた。
―今更、落ちたフォークを取りに行っていては相手に隙を見せるだけだ。
そう考えて、残ったもう一本のフォークを固く握り締めて突き出すがやはり、ひらりとかわされてしまう。
反撃の拳の三連撃が、信繁の肩を、胸を、顎を目にも留まらぬ速さで激しく殴打する。
そのような応返徒労とも思える応酬が何度となく続いた。
見る見るうちに痣だらけになった信繁の体からは感覚がなくなり、意識も朦朧とした。
「フン、口ほどにも無いな。典厩とやら。」
ニヒルな男の嘲笑も、感覚の薄れた信繁には絵空事のように思えた。
266初戦 4/4:05/02/26 21:31:46
―拙者は何故殺されかけているのだろうか?
今にも機能が停止しそうな信繁の脳は漠然とした疑問を浮かべていた。
―経験の差か?相手が悪かったのか?武器に恵まれなかったからか?
いや、全て違う。
―負けぬと思えば、よしんば体が負けたとしても心まで負ける事はない。
―誰が言っていた言葉だろうか。たしか小さい頃聞かされた気が・・・。
その言葉を思うたび恐怖心は薄れ、体中に走る激痛も、一線を超えたのか不思議とそれを感じなくなった。
「ウォォォォォォォ!」
思い出された言葉に励まされ、起死回生を賭けた信繁は雄たけびをあげ、相手へ再び右手を突き出す。
男は驚きつつも、それを迎え撃たんとした。 だが、戒律を破った僧への仏罰であろうか、とっさに避けようとした男の足は昨夜の雨でぬかるんだ地にとらわれた。
「ぬぅ!」
とっさに、足を踏ん張り、無理にでも後退しようとする男に、それよりも早く届いたフォークが彼の眉間を貫いた。
ぐちゃりと、世にも奇妙な音がして、男は泥の中にその体をうずめた。
フォークは生死を司る小脳には至らず、即死ではなかったが、致命傷であるのは誰の目にも明らかだった。
男はショックで声は出なかったようだが、今わの際に震える手で合掌をし、そのまま動かなくなった。
「・・・手強かった。だが色々な事を学んだ。感謝する」
あの教室で見た天皇のように狂っていた男が最後に浮かべた仏のような表情のためであろうか、信繁もこの男を安易には憎めず、静かに手を合わせた。

満身創痍という形容が適当な、傷だらけの体を引きずって、信繁の遅いスタートはきられた。

【42番 顕如 死亡】『FFV M2 カール・グスタフ』は残弾0で3-Hに放置
【62番 武田信繁 『フォーク』】 3-H家へ向かう(全身にケガ、休養が必要)
【残り35人】
267埋伏の毒1/3:05/02/27 12:09:13
(・・今思い返しても腹が立つことよ・・。まさか、このワシが傷を負うとはな・・)
久秀は舌打ちをした。突然の敵の襲撃に遭い左足を負傷してしまったのである。
初めは供にいる長慶に身体を張ったことでより一層信頼を深めれたと喜んでいたが、思うように動けなくなったことと痛みで苛立ちが増す。
安全な休めるところを求め歩いたが、結局初めの目的地5−Hで腰を落ち着けることとなった。長慶は周囲を警戒して見回っていたため久秀の舌打ちは聞こえてなかった。
久秀は長慶の部下であるが、けして忠誠を誓って仕えては居ない。今、殺そうと思えば躊躇いなく殺せるであろう。久秀には生き残るための殺し合いより、一人の男を殺すことに燃えていた。
その男の名は《足利 義輝》、剣聖将軍である。
久秀は、幼少の頃最低な父を持っていた。その父の死後は盗みをして生きてきた、苦しい浮浪者時代。そんな暗い過去から逃げたいのか、「人の上に立つ」という野望で久秀は形成されていたのだ。
三好家に仕えながらもいずれは上に立つつもりである。
(邪魔になればいつでも殺せる・・だが、今はその時ではない。今回のように人の助けがいることもあるはずじゃ・・たっぷり利用してから消せば良い・・)
久秀は己の武器である毒の小瓶を見つつほくそ笑んだ。
 
「久秀」
長慶に声をかけられ振り返る。その表情には微塵の闇もなく、長慶が怪しむ要素は一つも無かった。
「殿、面目ないですな。本来なら家臣である某が見回りをするべきでござるのに・・」
「何を申すのだ、久秀。おぬしは怪我をしているのだぞ?それより、大丈夫か?傷は痛まぬか?」
心配そうに問う長慶に久秀は微笑んで答えた。
「なに、このような傷・・たいしたことではござりませぬ。ただ・・この足では殿に迷惑をかけてしまう故・・」
「馬鹿、おぬしとワシの仲ではないか。ワシがまだ幼かった頃おぬしはワシを可愛がってくれた。覚えておるかのぅ?」
「無論、忘れるはずがござりません・・。初めて御逢いしたとき、この久秀には殿は必ず立派なお方になると思っておりました」
(そう・・あのときより作り上げてきた信頼関係なのよ・・)
「殿、少し前にもお話しましたが・・覚えておいでかな?」



268埋伏の毒2/3:05/02/27 12:11:37
「何の話だったかのう?」
「ほら、拙者は蠍と呼ばれたことがあると申した・・」
「ああ、そういえば。蠍の毒は後で効くとか・・・?」
「拙者が笑えましたのは毒が今回武器として支給されたことでござる。」
「その毒は後で効くというやつか?・・ワシからすれば銃でも支給されたほうが良いと思うが・・久秀は気に入っておるのか」
「そうですな。拙者に相応しいと思うております。殿。良い事をお教えいたしましょう。拙者にはすでに昔より毒を持っています。
その毒は死には到らしめませぬが、もしかすれば死以上に厄介な毒かもしれませんぞ?」
久秀の言葉に長慶は顔を顰めた。
「なんじゃ・・謎賭けかなにかか?おぬしの言う言葉は難しくてかなわんな・・」
「・・左様ですか。いや、申し訳ない。拙者の悪い癖ですかな」
久秀は、顔は笑っていたが心では冷ややかなモノがこみ上げてきた。
(もし・・ワシの言葉が理解できるほど賢ければ違っていたであろうが。昔より築いた信頼と言う毒・・もはや不審という思いさえ
麻痺させましたようじゃな。この毒からは逃れられませぬぞ・・)
久秀は己より優れたる者にのみ、一時の忠義を持つ。だが、少しでも己より相手が劣ればすぐに不要となってしまうところがあった。
(大切な宝と思っても・・何故かガラクタに変わることばかりじゃわい・・物も人間も。)
蠍と呼ばれた久秀の埋伏の毒に長慶は気がつかぬ間に蝕まれていた。そして、今久秀の中で長慶の存在が完全に不要となっていっていた。
(使えなくなったら殺してしまうか。その前にさっさと足利義輝を討ち果たさねばな・・)
「殿、逃げ隠れしていてもどうにもなりますまい。敵を探し倒していきましょう。優勝せねばなりません」
「しかし、もし仮にワシらが生き残ったとして・・二人で優勝はありえるだろうか?」
「その時は殿が拙者を殺してくださればよいこと・・。それが望みでござる」
「久秀・・」
久秀の言葉に長慶は目頭が熱くなった。もちろん久秀はそのようなことを考えてはいない。
(その時はワシが生き残るのよ。長慶・・おぬしの優勝などワシが生きておる限りありえんわ・・)


269埋伏の毒3/3:05/02/27 12:12:42
【90番松永久秀 青酸カリ(小瓶に入ってます)】
【92番三好長慶 ジェンダワ・矢(10本)】
5-H地点に休憩中だがそろそろ敵探しに行くつもり。

270小さな風穴 ◆XoNjNH489g :05/02/28 17:39:58
久政も落ち着いてきたのか周りが見えるようになった。
「この場所は見晴らしが良いな。
 が、ここから見やすいという事は向こうからも見やすいということじゃな。」
久政は知っていた。
見晴らしのいい場所は、相手に発見されやすく命を取られる危険性が高い事を・・・
そのため、自己保身力が優れている久政は、目立たない場所に今まで隠れていたのである。
「まず、どこか隠れる場所を探さなくては。
 戦においてまず大切な事は退路を確保する。これが、戦のいろはじゃな。
 さて、見渡してみると森が向こうの方にあるな。とりあえず、行ってみるか。」
逃げ道を見つける・・・久政らしいと言えば、そうだが・・・
しかし、「森に行く」と言う選択肢が久政に小さな風穴を開けた。
その、風穴が後に大きく、そして深くなっていく事を久政はまだ知らない・・・


【07番 浅井久政&輝政 『S&W M36チーフススペシャル』】3-H  3-Fへ移動開始
271無名武将@お腹せっぷく:05/03/01 19:32:24
皆の者、やっておるか?三日目の昼である。
昨夜の雨で昨日の昼よりよほど涼しいの。それとも、この冷たさはまた別の物なのかのう?
ひょほほほほ。

しかし、今回、朕は非常に残念である。今朝は死亡者が少ない。読み上げるぞえ?
74番蜂須賀正勝、87番真柄直隆、72番丹羽長秀、53番宍戸隆家、42番顕如、以上5名。
残りの37人はいつになったら、殺し合いを始めるのじゃ?

罰として、食糧を減らす。そうだな20人、20人分じゃ。さらに、島に数匹狼を放つ事にした。
どちらも、今日の日没から施行じゃ。・・・もっとも今後の展開次第では、考えてやらんでも無いぞ?

して、今回の食糧の配布場所だが、2-B林道の前、5-D民家前、3-G二番トラック到着地。
以上じゃ。

罰を期待して待っておるが良いぞ?クハハハハハハハ。
・・・ブツッ
272招かれざる者 1/5:05/03/01 23:35:19
そいつが来たのは、食糧配布地に指定されて危険地帯となった林を抜け、寝ぼけ眼のノドカを起こして他の林などに退避しようとしていた時だった。

私達はキョロキョロとせわしなく辺りを見回しながら、私達はだだっ広い平原を横断して、島の中央の山に行こうとしていた。
行程の半ばを行き過ぎた頃、何処からともなく3発の銃声が響き、私達の近くに着弾したのだ。
「こんな時に見つかるとは!」
吐き捨てるように言うと私はホルスターからFN 5-7を取り出し、応戦の構えを見せる。姿は見えなくとも、音の響いた方向から、大体の位置は割り出せる。
すると、いともあっさりとまだ硝煙の立ち昇る銃を抱えたそいつがいやにニヤニヤとしながら、姿を見せたのだ。
私は驚きつつも得物の銃把を固く握り、引き金に指をかけて、いつでも撃てるようにする。
「・・・お・・・さま・・・。」
絞り出すような声が聞こえて、隣の二人に目をやると、昌信は見てはいけないものを見てしまったような顔で、ノドカに至っては、義賢との戦いでもさほど怯えなかった彼女が、がくがくと震えて、昌信の腕を握っている。
二人とも、私とは別の意味で驚いているようだった。
私が疑問を口にするより早く、昌信がもう一度そいつに向かって、
「・・・御館様」
と、呟いた。
しかし、その言葉とは裏腹に昌信は構えていたエクストリーマ・ラティオをしまおうとはしなかった。
ノドカも相変わらず、打ち震えて昌信の後ろに隠れるようにして縮こまっている。

「貴殿、一体?・・・甲斐の武田晴信公か?」
家臣の二人よりも先に、声をかけたのは他でも無い私だった。
いくら真面目な昌信の言葉とは言え、気が動転しているようだし、このままでは確証が取れない。そう思ってのことだった。
そいつは、ふてぶてしくも、ゆっくりとその巨体でこちらに近付いてきた。
「いかにも、私が武田晴信だ。のう、昌信?」
質問に答えて二言目には昌信の名を出す。
―本物か・・・。
273招かれざる者 2/5:05/03/01 23:38:42
「御館様に於かれましてはご機嫌麗しく・・・」
呼びかけられた昌信が一動作遅れて、型にはまりきった口上を述べようとする。
「前口上はよい。・・・長閑は使えるのか?」
―こやつ、今、何と言った?使えるのか?だと?「無事か」でも「大丈夫か」でもなく、使えるのかだと?
―本人を前にして憚る事もなく、物を使うような言い草。これほどの酷薄さでこやつはのぼり詰めたのか・・・。
考えれば考えるほど、名状しがたい嫌悪感に襲われ、私は逃げるように目の前の男の事について、フィジカルに考えをめぐらした。
武器は私のFN 5-7の数倍はありそうな大型の銃。恐らくその能力もこちらより上だろう。
幸か不幸か、昌信やノドカと面識があるようだが、これも剣呑な様子。
接近戦に持ち込めば、私の長身と、こやつの巨体。筋肉太りと言う訳ではなさそうなので、頑張れば押し切れそうだが、要は昌信やノドカがどう取っているかである。
―また初めの疑問に戻ってきてしまった。
その疑問を口に出せないまま、奇妙な関係の四人組はここまで来たのだ。


新天地ともいえる新しい本拠地は、偶然にも、私とノドカが始めてあったその場所であった。
しかし、私がノドカと共に行動する理由となったそいつへの感情は、大きく変わっていた。
―何が良い父親だ。
隣に居るノドカが、あれほどまでに怯えていた様子を思い出して、そいつを探そうと提案した私の馬鹿さ加減に心底うんざりしていた。
蕭墻の患なのだろうが、昌信は私にノドカを連れて、しばらく本拠地の洞窟から離れて置くように依頼した為、私達は林を歩いていた。
ノドカが時折、おもむろに嫌悪感を顔に出す私に声を掛けてくれるのだが、それに対しても生返事しか出来なかった。
・・・私はふと、自分がどんどん悪いほうに悪いほうに物事を考えている事に気がついた。
隣に居るノドカの顔を見て、ようやくそれを悟るとは、ノドカを護る者として失格では無いか。私の心は私の物であると同時に、彼女に影響を及ぼす物でもあるのだ。気をつけねば。
274招かれざる者 3/6:05/03/01 23:40:39
「そう言えば、このあたりで私達は出会ったのだな。」
「え?・・・あ、はい。そうですね。」
私が今まで口を真一文字に結んで、沈黙を保っていた為か突然の私の言葉と笑みに、ノドカは急に対応しきれないようだったが
「長政様、やっと笑ってくださったんですね。」
といって、彼女も喜びを隠し切れないように満面の笑みを浮かべた。
「ああ、すまなかったな、少し考え事をしていたのだ。」
当り障りのない答えを返したが、ノドカは表情を固く変えて
「源五郎君と御館様のことですか?」
と、聞き返してきた。まさに図星だった。

普段の私にはない程うろたえ、どう答えようか困っている所に、助け舟のように洞窟から出てきた昌信が現れた。
「どうしたのですか、長政様、ノドカ?」
いつになくギクシャクしている私たち二人を見て不思議そうに聞いてくる様子を見ると、今ここに着たばかりのようだ。
「いや、昌信こそどうした?晴信殿と話をしていたのでは?」
質問に質問で返すのは失礼だとは思ったが、私達と同じ様に昌信の様子が少しおかしいのを見咎めたからだった。
「いえ、御館様は臣下の私では考えもつかぬことをなさるお方です。」
昌信が顔を上げると、今まではわからなかったが、目のあたりにかすかに痣が出来ていた。
「源五郎君、それは!」
言うのと同時に、ノドカが駆け出す。私も遅れて、昌信に駆け寄った。
「何でもありません。気にしないで下さい。」
強がった子どものように昌信は言い張るが、それが何を示す物なのかは皆目明らかだった。
「気にするなと言われても、気にします!長政様、お水を貸してください」
片手で昌信に座るように促しつつ、ノドカの手に言われなくともとばかりに、さっと水の入ったペットボトルを手渡す。
ノドカが機転を利かせて、食糧配布が始まった瞬間に多めに水や食糧を持ってきていたのが正解だった。
「これを。」
私は懐からちり紙を差し出したが、彼女はそれを受け取らず、彼女自身の懐から、純白の布を取り出すと、それに水を掛けた。
「準備がいいのですね。ノドカ。しかし。」
昌信が、立ち上がりながら言うが、もう一度よくよく見ると痣は拳大のものでは無い。恐らく、あの大型銃の銃床か何かで打ちつけられたのだろう。
275招かれざる者 4/6:05/03/01 23:42:23
「昌信、強がりは言うな。お主らしくも無い。」
私がそういうと、
「そうですよ、源五郎君」
と、私に同調したノドカが、昌信を寝かせて、水を絞り終えた布を患部に当てる。
昌信も、ノドカには反駁できないのか、おとなしくそれを受け入れた。
すると、やおら、昌信が上半身を上げたかと思うと、私の方を見て、
「長政様、御館様がお話したいと仰ってました。私達二人はここに居ますので、存分に・・・」
その時の昌信の言葉に妙な感じを抱きながらも、それに目を瞑ってしまったのは、この異常事態と、怒り心頭に発していたせいだろうか。

やけにどしどしと洞窟の中へ歩を進めた私は、丁度、洞窟の外に出てこようとした晴信に出くわした。
「昌信か?」
晴信は一瞬、逆光で私の顔がわからなかったのか、そう言った。
それにしてもおかしい。昌信の話では、晴信は私を呼んだはず。それなのに何故第一声がそうなる?
私がこないとでも思ったのか?それで、あちらから出向こうと・・・考えても仕方がない、か。
「浅井備前守長政だ」
頻んでいた口を開け、鯱張った態度でそう名乗る。それはもう露骨に私に今の真情を表に出していた事だろう。
しかし、予想に反して、晴信は私に突っかかってくるでもなく、無礼を咎めるでもなく、静かに、後を向いて来た通を引き換えした。
そして、呆然と立ち尽くす私を振り返ると、
「話がある、ついてこい」
と、促した。
私は、怒りを押し留めて、その奥へといった。

洞窟には脇道もあって、外見より広さがあり、奥に行くに連れて狭くなっていたが、それでもずん止まりの空間は私達4人が大の字に寝そべってもまだ余裕があるほどだった。
そこに都合よく置かれていた石の一つに晴信が腰掛けると、私もそれに習って、手近にあった石を持ってきて同じ様に腰掛ける。
その様子を見て、晴信のしかめ面はさらに厳しい物となった。
「で、話とは何だ、晴信殿」
押し留めた怒りは、それでもなお言葉の端々に現れている。いつもの丁寧な口調は何処へ行ったのかともう一人の私が意地悪そうに言っていた。
276招かれざる者 5/6:05/03/01 23:43:34
「まず、座れ」
・・・私はその意味を捉えかねた。
「この通り座って・・・」
「誰が腰掛けろといった。座れ」
今にも切れそうな堪忍袋の緒を必死に押さえると、おとなしく石の上から降りて、土ぼこりを払って、そこに座り込んだ。
「よい。私と同座に座って良いのは景虎めだけであるからのう。・・・昌信から大体の話は聞いている。」
「・・・・・・」
怒りをこらえる意味もあって、私は沈黙を守る。
それから後は、私の能について、いやと言うほど質問された。
初めは昌信が漏らしたのかと考えたが、昌信のあの性格と物の考え方、それに晴信の確証をもてていなかった様子から考えると、昌信の言っていた人を見抜く能力で晴信は私のそれを見抜いていたのだろう。
ともあれ、晴信の追究をやり過ごして、洞窟の外のお天道様の光を全身に浴び、土臭くない清涼な空気を胸いっぱいに吸い込むと、開放されたのだと実感が湧いた。

洞窟の入口から少し離れたあの場所に足を向けると、早い手当が効いたのか、大分様子がよくなったと見える昌信が、こちらに来た。
ノドカは足りない睡眠をとるべく休ませている。と昌信が第一声でそう告げた。
昌信の後ろに目を向けると、昌信を寝かせていた木陰で、ノドカが安らかな表情で眠りについているのが見えた。
「首尾はどうでした?」
最近、昌信も晴信もどこか急いだ様子で、意味を捉えきれない言葉で物を言ってくる。
山奥の閉鎖された國だと、人々もこうなってしまうのだろうか。と思いつつ、
「首尾というと?」
と聞き返した。
277招かれざる者 6/6:05/03/01 23:45:28
「その様子を見ると御館様は健在のようですね。」
昌信の事もなげなその言葉に私は全身に戦慄が走った。
「昌信、御主一体何を考えている?」
昌信の人間を信じたい一心で、あえて脳裏によぎった考えは口に出さず、昌信にそう聞く。
「私は駄目な奴です。武田家の臣失格です。この昌信、御館様に拾われて命を救われたにもかかわらず、今では晴信様の事より、ノドカのほうが大切なのです」
捻り出すような声で昌信は戦慄く。それは今まで見たことも無い正信の意外な一面だった。
「昌信、どうしたというのだ?」
その言葉の意味を解っているにもかかわらず、いやいやする子どものように「有り得ない」ともう一人の自分に言い返す。
しかし、昌信はそんな私のはかない希望を打ち砕くように言葉を続けた。
「私は鬼神にノドカを魅入らせ我らの道具にしようと仰った御館様に一瞬とは言え殺意を抱きました。」
まるで基督教の告悔のように、罪深い羊は眦から浮かんだ涙をこぼしながら、私にその所業を告げた。
私が、パードレのように福音を与え、懺悔滅罪を出来たらよかったのだが、生憎私は宣教師に会った事はあっても、基督教のいろはなど縁がなかった。
「嘘偽りで、義を尊ぶ貴方を私が殺す事が出来ないからと、御館様にけしかけたのです。」
昌信の懺悔を聞いて、全ての物事に辻褄があった。
全ての因縁を悟った今、やっと私は昌信に私なりの慰めを与える事が出来た。
・・・洞窟の入口から、耳を欹てている存在にも気付かずに。

【06番 浅井長政 『FN 5-7』『天国・小烏丸』】4-D森
【71番 長坂長閑 『無銘匕首』】
【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾21発)』】

5分割するつもりが、6分割になってしまいました。申し訳ありません。
278三者三様 1/7:05/03/02 03:55:07
妖刀の持ち主を斬った感覚は、今でも細川藤孝の手に残っていた。
だが、それは別に藤孝の心を苛ます事も無く、かといって満たす事もなかった。
彼にとって、自分以外の人間など『どうでもよい』その一言であった。
多少は縁者の生死の報に耳を傾ける事もあるが、死んだのであればそれでもよい。
生きているのであれば、それでもよい。
ある種達観してしまった、と藤孝は己を評価していた。
その彼の目的は『天皇の真意』その、ただ一つ。
『狂気の頂点』に到達した天皇。
己とは違う世界を開眼した男に対して
藤孝がその世界を知りたいと思うのは当然であったと言える。
方向こそ違えど、藤孝もある種天皇に魅せられた人間であった。

藤孝「・・・・・・さて」
ここ数日の間、藤孝は『島の抜け道』の様なものはないか、と探し回っていた。
脱出するための道ではない。天皇の場所へと向かうための道だ。
日の出、正午、日没に行われる『放送』。
そして天皇が最初に発した言葉『この島で殺し合いをせよ』・・・・『[この]島で』。
それに関わる全てのカラクリはわからねど、その二つの要素から
『天皇自身もこの島で、我らを見ている事は間違いないであろう』。
その予感は漠然と、だが確実に感じられた。
藤孝「しかし・・・・・私が天皇であればこの島に居たりなどせぬ・・・・」
そもそも、大茶会ならともかく、この手の余興などまず開かないであろう。
279三者三様 2/7:05/03/02 03:56:04
そう藤孝が思った時。
大きな銃声が近くで響いた。直後に、人間の絶叫が。
藤孝「・・・・殺し合いか?」
そうは思ったが、先ほどの絶叫に込められた感情は、恐怖や憎悪、絶望、狂喜等と言った
たいていの人の勝利、あるいは絶命に発せられるものは何もなかった。
ただその絶叫に込められていたのは、深い悔恨、そして深い悲哀。
藤孝「死に際、あるいは生存にこの悲鳴は発せまい・・・・。
    なんらかの要素が絡んだのだろうか・・・・・・」
興味を持った藤孝は、その絶叫の方向に目を向ける。直後、二度目の絶叫が鳴り響く。
同じ人物の声だが、今度は怒気を含んでいる。どちらかというと、咆哮か。
藤孝「生者か・・・・この島で私が物事に興味を持つのは、これで三度目か・・・・」
藤孝は、視線の先に、そのまま歩を向けた。

咆哮を上げたと思われる男は、しばらく歩を進めた先にいた。
近づいてきた藤孝にも気づかず、その男は、己の拳を幾度も大木に叩きつけている。
藤孝「私には関係ないことだが・・・・・そのような事をしていたら寝首をかかれても」
男「ッ!?」
声をかけられて初めて藤孝に気づいたその男は、木を殴るのを止め、すぐさま後方へ飛び退いた。
直後己の武器であろう槍を藤孝に向け構え、威圧的に叫ぶ。
男「・・・・何者だ・・・・・・何者だお前ッ!!いつからそこにいたッ!?」
藤孝「つい先ほどからだ。私は」
男「お前の自己紹介なんか聞いちゃあいねえェッ!!」
そう叫ぶと、男は一足飛びに藤孝に向かい槍を振るってきた。
280三者三様 3/7:05/03/02 03:56:59
その行動をある程度は予測できた藤孝は、間を置かず後方へ跳ぶ。
そのお陰で槍の直撃は免れたが、藤孝は槍が起こした風圧を己の身体で受け、姿勢を崩した。
すぐさま、槍の横一閃が飛んでくる。が、槍閃は藤孝をスレスレで逸れ、空を薙いだ。
藤孝(姿勢を崩した事が、思わぬ僥倖だな!)
そう思うや否や藤孝はすぐ起き上がり、槍を持った男を掴み、そのまま背負って投げ地に叩きつけた。
直後、地に伏せた男から距離を取り、太刀を抜く。
藤孝「勝手な男だ・・・・・お前が『誰だ?』と言ったから答えてやろうとしたというのに」
しかし早い。動きが早過ぎる。
槍の風圧を受け、姿勢を崩していたからこそ、二発目をうまく避ける事が出来た。
仮にあの男が動きを見て冷静に二発目を撃っていたら、私は槍の直撃を受け、間違いなく絶命していた。
いや、並大抵の将なら一発目が飛んできたときに、わけもわからぬまま頭を吹き飛ばされるだろう。
あの槍にはそれほどの重量がある。そしてそれを軽々に振るうこの男も決して油断がならない。
現に、地から立ち上がりまた槍を構えたあの男には、一分の隙も見当たらない。
藤孝(それは、私も同様だがな。太刀を抜けば槍を防ぐ方法はある)
藤孝はそう思考をまとめ、すぐさま太刀を握り直した。

気の抜けない緊張感の中、先に相手の男が口を開く。
男「敵意はない・・・・・と言っても信じられないか?」
藤孝「よく言う・・・・先じたのはどちらだ?」
互いの武器を構えたまま、またしばらく沈黙は続く。そしてまた、相手の男が口を開く。
男「あんた誰だ?」
藤孝「細川藤孝」
男「あんたの目的は?」
281三者三様 4/7:05/03/02 03:57:53
藤孝「強いて言うなら帝か。うぬはどうなのだ?」
男「・・・・・・・同じ・・・・・か。互いに信用」
直後、膠着状態を嫌った男が槍を振るい込みに飛び掛る。藤孝はまた後方に飛びのく。
男「出来んがなッ!!」
先ほどの言葉の続きを叫び、尚も男は槍を振るって藤孝に向け飛んぶ。
藤孝は持っていた太刀を槍にあわせ、槍の向かう方向をずらす。
藤孝(この槍をまともに受けては、この程度の太刀ではそれこそ太刀打ちできぬな)
つまらない諧謔を思い浮かべながらも、藤孝は槍に太刀をあわせ、方向をずらす。
男が槍を振るっては、藤孝が方向をずらす。
だが藤孝が太刀を振るおうと思えば、また槍の一閃。
そしてそれにあわせ、藤孝はまた槍の方向をずらす。
この打ち合いはしばらく続いた。

男「だあああッ!」
だがその打ち合いも、終焉の兆しを見せた。男の槍の横一閃のスピードが、わずかに落ちたのだ。
藤孝(疲れか!)
すぐさま藤孝は槍の一撃を薙ぐ。そして今までに無い速さで、藤孝は相手の首に向け太刀を振るった。
藤孝「勝機!」
男「とった!」
そう二人が同時に叫んだ直後、二人の今までの動きは嘘の様に収まっていた。
というより、動きたくとも動けなかったと言うべきだろうか。
男の首には、藤孝の太刀が斬る直前で押し当てられていた。そして・・・・。
藤孝「・・・・・大した芸当だ。いつの間にこんなものを仕掛けた?」
282三者三様 5/7:05/03/02 04:00:17
男「ついさっきだ。槍の速さをわずかに緩める直前かな」
藤孝の首には、男の手に握られた矢が、突き刺さる直前で押し当てられていた。
男の槍の遅れは、疲れから来たのではない。
男は槍の横一閃を藤孝が払った時、勢いに任せそのまま槍を放り投げた。
そして直後、今までに無いスピードで袖に隠し持っていた矢を藤孝の首に押し当てたのだ。
藤孝「なるほど・・・・重い槍を戻す動作を省いた分、それなりの速さはあるという事か。
   この藤孝、不覚を取ったわ。
   しかし聞かせてもらおうか。なぜ直前で矢を止めた?」
男「それは俺が聞きたい所だ」
藤孝「・・・・・そうだな・・・・・強いて言えば、うぬの咆哮に込められた感情の意味、か。
   有利な状態でなら、聞きだせるかと思ってな」
男「・・・・は?」

男「・・・・・絶叫、咆哮・・・・・・か」
『なぜ己がこの場所に来たか』その理由を藤孝から聞き、男はある程度飲み込めたようだ。
男「・・・・・・さっきの昼の報・・・・・・あんたも聞いたか?」
藤孝「うむ」
男「・・・・その報の中で、俺の友の名が呼ばれた。この島に来てから、ずっと一緒だった男だ。
  そいつがいなければ、俺は一日目に死んでいたかもしれない・・・・・いや、きっと死んでいた」
いまだ、お互いの首に凶器は突きつけられている。
にも関わらず、矢を押し当てている男はその事を考えていないかのように、ただ喋り続けた。
男「そいつが食糧を取りに行って・・・・・それで終わりだ。
  俺も行けば、そいつは死ななかったかもしれない。
  ・・・・・・・きっとその後悔、そして軽く考えていた自分への怒り・・・・・・か」
283三者三様 6/7:05/03/02 04:01:23
そこまでは落ち着いて話していた男も、次の言葉でまた怒気を孕んだ絶叫を放った。
男「骨身に染みて知っていたはずなのに!!ちくしょう・・・・・・ちくしょう・・・・・!!」
何を知っていたのか。言うまでも無く、この島の狂気だろう。
その絶叫で、ふと、藤孝も名を呼ばれた縁者の在りし日を思い出す。
藤孝「・・・・・・うぬに問おう。なぜ、矢を私の首で止めた?」
その言葉に、男は涙を拭い、また語りだした。
男「・・・・あんたの狙いは帝だって言っただろう・・・・。
  それが本当なら、俺と目的は同じだ。そんな奴と殺し合いをしたら、俺も狂人だ。
  ふと、そう思った。俺は狂人の仲間入りなんてしたくない。それだけだ」
藤孝「命を握られた時点で、まともに話せるとは思わないがな・・・・いや、私も同じか」
それだけ言うと、藤孝は男の首から太刀を離し、また鞘に収めた。
藤孝「・・・・目的は同じ・・・・と言ったが、うぬの狙いは帝の命か?」
男「俺はただ、諸悪の根源を倒したい・・・・そして、友を殺した奴も」
藤孝「帝が諸悪の根源かどうかなど、我らには計りしれんがな。
   だが、目的が同じなら、共に行くのも悪くあるまい。
   うぬほど強き男がほかにいては、この藤孝一人では油断がならぬやも知れぬ」
男「・・・・・・何だと?」
藤孝「ここからそう遠くは無いところに、私が日の出に取った食糧がある。
   多めに三人分取っておいたが、欲しければ共に来るがよい。強要はせぬ」
男「・・・・・ああ、そうだな・・・・・行くさ」

藤孝が言った『三人分の食糧がおいてある場所』には、既に先客がいた。
284三者三様 7/7:05/03/02 04:02:55
上条「スゲェなァ〜・・・・・この食糧と短刀、オレもらっちゃっていいワケ?
   でも三人分っつーのはどーかなァ〜・・・・・・どんだけ持って行くか悩みどころだよォ〜」
蒲生との戦いの後、義清は日の出の報を聞き、3-Dへ食糧を取りにいった。
その間暇を潰して歩き回っていた上条は、今しがた藤孝の置いた食糧地点へ辿り着いたのだ。
そこには藤孝が妖刀との戦いの後、妖刀の犠牲者『土橋景鏡』から取った
短剣『バゼラード』も置いてあったのだ。
まごついてる上条と向かう藤孝、そして以前一度会った男とまた出会うのはその数分後の事である。
当然一悶着あるのだが、結局は合流する事になる。

その場所に向かう間、藤孝は光秀や義秋の事を思い出していた。
達観していたはずの彼の人間としての『情』が、共にいる男によってまた呼び起こされたのだ。
藤孝(情を忘れ何が達観か・・・・・くだらぬ。この藤孝、まだ何にも達しておらぬ。汗顔の至りだ。
   ・・・・・・ならば一から上り詰めるも悪くあるまい)
ふと思い立った藤孝は、共にいる男に対しこう言った。
藤孝「そういえば、うぬの名、まだ聞いておらぬな」
藤孝の友であった光秀、主筋にあたる義秋を殺した男、今川義元。
その今川義元を討った男と出会ったのは、偶然であろうか。あるいは・・・・。
男「織田家が家臣、前田利家だ」

【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発)』『鉄槍』『矢(5本)』】&
【83番 細川藤孝 『太刀』】&
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』】
(村上義清が4-E地点に到達するのを待つため、4-E森で待機)
――何も出来なかった。自分が逃げるので精一杯だった
――そしてまた守れなかった。自分の大事な人を
「叔父上・・叔父上ーーーーー!!!」

話は少し遡る
まだ日が昇りきらない頃、戦いは行われようとしていた
涼しく流れるその空気は、とても殺し合いが行われるような場所には感じない
そこには二人の男が得物を構え、睨み合う姿があった
一人は大きな槍を構える偉丈夫で、もう一人は上半身裸で筋肉が盛り上がっている
「貴公の体、素晴らしい鍛え方だ。美しさすら漂わせている・・・」
「当たり前だ、我こそは筋肉に選ばれし男!筋肉と私は常に一心同体なのだ!!」」
いつもながら言葉の意味は分からないが気合の程は氏政にも十分理解できた
「小生も体には多少の自信があってな。そう容易くやられはせん」
景虎も服で隠れてはいるがたくましい体を持ち合わせている。過去幾人もの猛者を討ってきたのが何よりの証拠だろう
「よし、ならばおぬしも筋肉美学同好会に加えてやろう。共に良い筋肉を育てようではないか!」
「はは・・・この島を生き延びたら・・・考えてやろう!!」
先手は景虎だった
綱成との距離を詰め、槍を振るう
繰り出される槍をかわすものの、景虎の動きが一瞬勝るのか綱成の体にひとつふたつと切り傷が増えていく
こちらが反撃に転じようとも槍の風圧と景虎の俊敏な動きがそれを許さなかった
(叔父上殿が劣勢・・・もしもの事が起きればなんとしても止めなくては)
氏政はそう心に決め短剣コブラに手を添える
亡き父が携えていたナイフ。敵に殺された、いや、自分が殺したようなものだ
弱弱しい自分を見捨てず、命を賭して守ってくれた父。物覚えの悪い自分に諦めず内政や外交の知識を授けれくれた父
――また父上にあっても恥ずかしくない。いや、父上より凄い人間になる
それが氏政の生涯の夢となった


打ち合いがどれだけ続いただろうか
綱成の体からは血や汗が絶えず流れ、普段と違う戦人のような風貌となった
景虎も息を荒げ疲労の色が見え隠れしている
「ふ・・木太刀で小生の攻撃を防ぐとは北条にこれほど恐ろしい男がいるとは・・・」
「それは俺も同じ事。我が筋肉の全てを賭けても互角以上とはのう。ではそろそろ決めてくれるわ!」
そうはいうものの、彼の木太刀は大きく磨り減り、いつ折れてもおかしくないほど消耗している
「小生には毘沙門天のご加護がある・・・死んでも恨むなあぁぁぁ!!!」」
その直後周囲には3つの音が響いた
ひとつは綱成の木太刀がへし折れた音
ふたつめは景虎の頭を捕らえた音
そして3つめは・・・
「・・・叔父上・・叔父上ーーーーー!!!」
彼の鋼の体を2発の銃弾が貫いた。血が噴出しその場に倒れこむ
「叔父上、叔父上、大丈夫!血はすぐ止まる!!大丈夫だよ!!」
なかば狂ったように声を上げる氏政。しかし普段あれほど元気な綱成の声はとても弱弱しい
「氏政殿・・・はや・・く・にげ・・・て・・くれ・・」
「叔父上!一緒に逃げよう!!今なら間に合うよ!!」
「駄目・・だ・・体が・・・それに・・・・敵は・・強い・・・ものすごい・・・妖気・・・だ・・」
氏政にも分かる。相手は危険な人間。おそらく強い。この島で一番強い男に狙われている事を
徐々に姿がはっきり見えてきた。手には刀。肩には銃が二挺担ぎ、服は血糊がベットリ付き赤く染まっている
「に・・げ・・・ろ」
その男の名は織田信長
得物、実力、状況
全てにおいて氏政は劣っていた。しかし負けると分かっても何とかしたかった
氏政が信長に走り出そうとする寸での所で意識を取り戻した景虎に制止される
「氏政殿、すまぬが私が2人いても敵うか分からない相手。今は逃げるんだ、綱成殿の為にも」
その言葉にハッとし視線を足元にやると綱成はぐったりしている。あわてて声をかけるがろくに声が出ない
「う・・・じ・・・・」
「叔父上!叔父上!」
「惜し・・い・・のう・・北条家の・・・・旗が・・・天下を・・・染めるまで・・・生きたかった・・・・」
涙でしわくちゃになる氏政を尻目に話は続く
「氏政・・殿・・・あなたは・・・生きて・・俺の・・・墓でも・・作ってくれ・・・後これ・・・これを形見と思い・・・・
持って置いて・・・くれ・・・」
これとは綱成のヌンチャク。常に腰に携帯していた物でうっすら綱成の血もついている
「こんなものしか・・・あげられないが・・・俺の事を・・・・忘れる・・・なよ・・・」
そういい終え彼は息を引き取った
その直後景虎は氏政の手を引き全力で走った。即座に逃げねば命は無い
「氏政殿・・・二手に分かれ逃げるんだ!!必ず生き残るんだぞ!!」
そういうと彼は火炎瓶を手渡し、森の中へと消えていった
幸い信長は景虎を追いかけた為氏政は難を逃れる事が出来たがふと我に返り涙が溢れてきた
「お、叔父上・・・・・」

【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE(残弾4発)』『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】3-F(景虎を追っている)
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(1本)』『十手』】3-F(2-Eに向かっている)
80番 北条氏政 『南部十四式(弾切れ)・クナイ9本・短刀コブラ・頭に鍋・火炎瓶(3本)・ヌンチャク】3-F(綱成の死のショックで泣き崩れている)
【82番 北条綱成 死亡】
289襲撃!1:05/03/03 01:04:00
少々時を遡った話である。
三日目昼下がり、木々の生い茂る深き森の中で、僅かな睡眠から目覚めた二人の若者が話していた。
一人は小柄ながらも鍛え抜かれた肉体を持つ、品性豊かな武人飯富昌景。もう一人は細身ながらも同じく鍛え抜かれた長身の傾いた風体、しなやかな雰囲気の漂う自由人鈴木重秀。
彼らの交わす会話の内容はこうだ。

重秀「あんた、もうとっくに気づいてるよな」
昌景「お館様のことか」
重秀「ああ」
昌景「どうやら我々と同じお考えのようだな。この様な戯けた余興の中に在っても心乱さぬとは、さすがでござる」
重秀「ははは、わかったわかった。あんたのご主人様の話はもう何度も聞いたぜ」
昌景「だが、あまり呑気なことも言ってはおれぬな。どうやら先の放送によれば、その思惑が天皇に知れたご様子」
重秀「褒美とやらに目が眩むバカ共ってのは、…やっぱり居るんだろうなぁ」
昌景「心強き者ばかりではないであろう。残念ながらな」
重秀「ところでよ…、もう一人のやつ…、長尾景虎って言ってなかったか?」
昌景「うむ。私も確かに聞いた」
重秀「それって、長尾家のお偉いさんじゃなかったか?どういうことだ?武田家と長尾家ってのは敵同士じゃなかったのか?」
昌景「うむ。その通りだ。」
重秀「全くわからねぇや。何がどうなってんだ?」
昌景「詳しい経緯は私にもわからぬな。しかし、先の放送によれば恐らくお二人は行動を共にされているのやも知れぬな。」
重秀「穏やかじゃねぇな・・・・」
昌景「しかし長尾景虎殿は敵ながらご立派なお方であることは確かだ。いたずらに殺生を働くお方では無い。そして何より滅法強い。心身共にな」
重秀「ほほう。そいつはご立派なもんだ。そういうの嫌いじゃねぇぞ」
昌景「うむ。もしお会い出来たならば、お力になっていただけるやも知れぬ」
重秀「話のわかる奴なのか。そりゃありがてぇなぁ。さて、腹が減ったな」
そう言って呑気に寝転ぶ重秀の視線が上に移ったその時…
290襲撃!2:05/03/03 01:05:23
重秀「お、なんだありゃ?」
昌景「む?」
重秀が何かを見つけた様子だ。昌景もわけのわからぬまま見上げる。
重秀「あの、あそこの高いところにある、あー…、見えないか?あれだよあれ」
昌景「木が邪魔してよく見えぬわ。しかしながら、お主の目はすごいのう。見えぬ物は無いのか・・・?」
重秀「ははは、よっしゃ。一丁獲ってくるかな」
そう言ってぴょーんと体を反転させて飛び起き、そのまま一番背の高いであろう大木によじ登り、みるみるてっぺん付近まで辿ると、そこから跳躍一番それを掴み獲り、そして昌景の元に着地する。
昌景「うぉ!見事な身のこなしであるな」
重秀「はっはっは、それはそうと・・・、これだこれ。変わった形してやがるな。」
昌景「うーむ…、なんだこれは・・?私の知る物ではないな・・・すまぬ。」
重秀「初めて見る物だな。よくわからんがどうやら武器では無さそうだ」
すると突然、それから機械的な声がした。天皇の声だ。
それこそまさに、先程行われた天皇による昼の放送であった。しかしながら、まさか自分達の手にしているわけのわからぬ物体のそれから天皇の声がするなどとは、彼らも当然想像だにせぬことだろう。
二人は勿論、突然のことに驚愕した。
昌景「おおおお!!!!!」
重秀「うおぉぉ!!!」
昌景「な・・・、なんだこりゃぁ!!??」
重秀「い・・・、今・・、今!!これから聞こえたよな!な!?なあぁァァ!!??」
昌景「どういうことだ・・?中に人が入っておるのか?こんな小さな物の中に?」
重秀「喋った!!喋ったぞ!!こいつ!生き物なのか?こんな小さくて変な形なのに!!コイツ天皇なのか?」
昌景「な、なに?お!!おのれ!!ふざけた恰好しおって!!帝と言えど悪事に手を染めた罪、決して許さるることではございませぬぞ!!さぁかかって参られいぃぃ!!」
重秀「え?あ、ああ!!よし!!てめぇ!!かかってきやがれこの外道が!!」
昌景「ど、どうした!!怖気づいたか!!!」
重秀「貴様!!なんとか言ったらどうなんだ!!」
すぴーかー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無論それは何も言わない。彼らにそれが何なのかなど、わかりようがない。
291襲撃!3:05/03/03 01:08:01
重秀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
昌景「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
重秀「・・・なにも言わないな・・・・・?」
昌景「・・・うむ、もしかしたら、天皇では無かったのかも知れぬな・・・・・」
重秀「・・・人違い・・・か?」
昌景「・・・そもそも人なのか・・?」
重秀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
昌景「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

重秀「・・・とりあえず・・・、落ち着こうじゃないか…、なぁ!うん、そうしよう!」
昌景「う…、うむ!承知した!!」
そして、混乱の元凶である得体の知れぬ人物?(実際はスピーカーであるが)を破壊し、その後二人が無理矢理冷静さを取り戻した頃おもむろに昌景が口を開く。
昌景「どういうことなのだ?そもそも天皇は、どのようにして島全体に語りかけておるのだ?何故島全体に及ぶ死亡者を把握できるのだ?どうやって情報を入手しておるのだ?」
重秀「考えれば考えるだけわからなくなるなぁ・・。普通ではないカラクリを使っているのかも知れんな。とりあえずコイツを使って放送しているみたいだぞ」
粉々になったそれを指差し、重秀が神妙な面持ちの昌景に語りかける。
昌景「うーむ…、これがカラクリか…、お館様や景虎殿の思惑が漏れたのも、カラクリの仕業であろうか?」
重秀「わからねぇなぁ…、天皇に通ずる間者が居るのでなければ、…やっぱりそうなんじゃないのか?」
昌景「うーむ…、天皇にかかわること全てが疑わしくなってしまうな…」
重秀「そもそも天皇ってやつは、この島のどこに居るんだ?あんな権力だけの弱腰オッサンが急に強気になるんだ。なにかあるのは間違い無いだろうが、それにしても不可解だらけだよなぁ?」
昌景「うーん…、それに食料とかは誰がどうやって配布してるのであろう?」
重秀「さぁな。全く見当も付かん。・・・・・お、そういえば!」
昌景「む?どうした?」
重秀「なあ、食料配布地点って、ここからすぐ近くだったよな?」
昌景「うむ、3-Gトラック付近と…、お、おい!」
重秀「そうか。よし!急ぐぞ!!」
昌景「ど、どうしたのだ?」
重秀「いいから早く!!食料が配布される前にそこに急ぐんだ!」
昌景「一体どうしたと言うのだ…」
292襲撃!4:05/03/03 01:11:29
二人は物凄い速さで駆け抜けた。
そして、3-Gトラック到着付近に程近い森林出口にたどり着いた。偶然にもそこは、昌景と重秀が初めて出会った場所でもあった。
昌景「ゼェゼェ…、お主…、一体どういうことなのだ」
息を切らせて問う昌景。
重秀「間に合ったみたいだ…、まだ食料は配布されてないな。よし!」
昌景「何故そんなこt……!!む、もしや…」
重秀「おう。恐らく配布しに来る奴らは天皇の使いか何か、まあ少なくとも奴に関係する人物だろう。
ここで待ち伏せてりゃ、そいつらがどうやって現われて食料を配布しているのか知ることが出来るはずだ。
それってなんらかの手がかりを得ることになるんじゃないか?」
昌景「…うむ」
重秀「……どうだい?少しは現実味が出てきただろ?」
昌景「全く…、余りに突然過ぎて驚いたわ!」
重秀「ははは、毎度毎度すまねぇなァ。」
昌景「!…おい、…向こうから何か来たぞ!」
重秀「む?もう来たのか。…って、うぉ!!速えぇ!!あ、あれは…、なんだ?確か…、一番最初に乗った“とらっく”じゃなかったか?」
そう。初日に参加者全員をこの島の各地へと運んだあの乗り物だ。それが大きなエンジン音と排気ガスを放出しながら配布地点に近づいて来るのだった。
昌景「うむ!馬より速く走るデカい奇怪な輿であったな」
重秀「成る程な。あんな物を使って配布していたのか。道理で放送直後に素早く、そして都合良く配れるわけだ」
昌景「あれに乗っているのは4人…、いや…、5人か。物騒な鉄砲や刀の類を携えておるわ」
重秀「用意がいいこった。よし…、こうなったら奴らがあの“とらっく”から降りた直後、襲撃するってのはどうだい?」
昌景「やれやれ…、当たり前にように言ってくれるわ…、どうせそのような無茶を言い出すのではないかと思っていたわ。まぁ異論はないがな」
昌景も、重秀同様あのトラックに大きな手がかりがあると踏んでいたのだった。
二人は無言のまま、しかし、目で意思疎通を図りながら息を潜めてトラックに近づく。
やがて、トラックがその場に停車する。
二人とも戦闘態勢に入った。
そして、トラックのドアが開き、銃や刀で武装した男が出てこようかというその時、重秀は襲いかかろうとした。
293襲撃!5:05/03/03 01:12:51
その瞬間
(待て!)と小声で、しかしはっきりとすぐ側の相棒に伝わるよう昌景が重秀の行動を制す。
重秀「!?」
いきなりの制止に戸惑う重秀。
昌景(奴らも“とらっく”から出る瞬間は警戒しているはずだ。見ろ、見事に全員鉄砲や刀を手にしている)
重秀(じゃあどうすんだよ!)
昌景(食料を運ぶ時、奴らの片手なり両手なりが荷物で塞がるだろう。襲撃はまさにその時だ)
重秀(おお!成る程!)
トラックからは、5人全員が出ていた。彼ら全員が未だ警戒を解かず、武器を手にしている。うち2人が銃、3人が刀を携え周囲を窺っている。
昌景(・・・・・まだだ・・・)
重秀(承知!)
二人は言い知れぬ緊張と集中の中に居た。一筋の冷たい汗が額を背中を伝う。
やがて、銃を持った一人と刀を持った一人が武器を置き、そそくさと食料の入っているであろう荷台の荷物に手を伸ばした。
昌景(・・・・・・まだ待て・・・・)
重秀(まだか?)
そして、もう一人の刀を持った男もそれを置き、両手に荷物を持って予定の位置に運ぼうとしたそのとき…
昌景(今だ!)
重秀(おう!!)
294襲撃!6:05/03/03 01:16:30
二人は疾風の速さで隠れていた木々から現われ襲撃した。先頭にUSSRドラグノフを片手に恐るべき速さで迫る重秀、その後方に長い柄とその両端に両刀二枚刃の大斧で鬼神の如く襲い掛かる昌景。
武器を手にしていない三人の男は完全に虚を付かれた形となった。しかし、刀を携えた男はそれを構え、銃を持つ男は、先頭の重秀にターゲットを定める。
重秀は、銃の男に標的にされているにも関らず、得物を構えずに全力疾走に全霊を注ぎ男に迫る。
構わず男は重秀に向けて発砲する。しかし彼の相手は恐るべき鉄砲術の心得を持つ鈴木重秀。
男が銃を構える角度、開いた足の方角等によって発砲する前から弾がどこに向かうのかを予測することなど彼には容易過ぎていたのだった。
そして極めつけは、彼の超人的な動体視力と身体能力である。男が発砲する弾を悉く読み、見事に避けながら恐るべき速さで近づき、男の額に銃先を突きつける。
男が死を感じる間もなく銃筒は火を吹き、煙を吐く。直後刀の男が重秀に襲い掛かるが、一閃の閃光が走った次の瞬間、男は真っ二つになった。
重秀「おお!助かったぜ」
昌景「お主こそ見事であった」
重秀が昌景の方を振り返ると、そこには四人の死体が転がっていた。
重秀「一気に4人も片付けちまったのか…、すげぇな…」
息を弾ませながら重秀は、一瞬で四人を料理してしまう昌景の底知れぬ強さに目を丸くした。
昌景「そのうち三人は丸腰だったのだ。お主の方こそ一番危険とされる鉄砲使いを相手に大して実に見事な戦いぶりであった」
重秀「お互いに見事だったってことだな!わっはっは!!」
昌景「うむ!お主、この戯けた余興から生きて帰れたならば晴信様に仕えてみぬか?お主程の猛者ならば皆諸手を挙げて歓迎するであろう」
重秀「はははは、やめとくぜ。性分じゃねぇんだ」
昌景「うむぅ…、それは残念だ」
重秀「でもまぁ、アンタになら仕えてもいいぜ。わっはっはっはっは!」
昌景「またお主のほらが始まったわい。うっはっはっは」
295襲撃!7:05/03/03 01:17:45
重秀「よし、食料とこいつらの武器を頂くとするか!」
そう言って地面に置かれた銃の類を手にしようとする。
重秀「ケッ、こいつ全弾撃っちまいやがったのか。しょうがねぇ。もう一人の銃を頂戴するかな」
昌景「こちらもまともな物は一つだけのようだな」
重秀「ま、何も無いよりはいいか。よし!それじゃ、さっそく乗り込むとするか!」
昌景「うむ!大きな手掛かりの匂いがするぞ」

【29番 飯富昌景 『フルーレ』『オーク・ダブルアックス』『吉岡一文字』】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ』(残り4発)『スモールボアライフル 』(残り15発)】3-G 2番トラック到着地点。トラックに乗り込んでいます。
この余興や天皇の状況に関するなにかしらの手掛かりが内部に隠されているかもしれません。なお、エンジンはかかったままです。
296自分こそ全て 1/4:05/03/03 05:15:31
高広「オイ」
親貞「なんだい?」
3-B廃墟内で雨に濡れた銃を弄りながら、高広は近くにいた少年に呼びかける。
だが、その礼儀のカケラも見られない声にも関わらず、少年-吉良親貞-は嫌な顔を見せず答えた。
高広「お前確か帝の要請受けたとか言ってたが・・・・そういった奴は他にもいんのか?」
その高広の言葉に、親貞はやや考える顔をして、こう答えた。
親貞「さあね・・・・・・ま、いるんじゃないの?
    僕一人だけとは考えにくいし、弱味や願望を持っている奴もいるだろうし」
高広「弱味や願望、だあ?」
明らかに不信感丸出しの高広の言葉にも、またもや親貞は笑顔で答える。
親貞「だって考えてもごらんよ。真偽は定かじゃないけど、僕は早死にするらしいんだから。
    仮に僕が一人残って天下を手にするにしても、早死にしちゃ意味ないでしょ。それと同じ」
高広「・・・・・ふ〜ん・・・・・」
わかったようなわからないような答えを返され、高広も曖昧な答えを返す。
そんな高広の態度にもまた気にせず、尚も親貞は言葉を続けた。
親貞「まあでも・・・・・そういう人間はよほどのマヌケじゃなきゃ、最後近くまでは生き残ると思うよ。
    僕が持ってる武器の様に、かなり強力なものを与えられているはずだから」
高広(・・・・・・強力な武器、だあ?)
親貞の武器が銃火器タイプのような大きいものでない事は、二日目の夜に高広も推測している。
だが、高広も親貞の武器を実際見たわけではないので、どういったものかはわからない。
短刀か?という推測が一瞬高広の脳裏にも流れたが、であれば強力な武器などと言うだろうか?
高広「そーいやオレはてめーの武器をまだ見てねーな・・・・・ちょっと見せてくれよ」
結局の所、そういう結論になるわけだ。
297自分こそ全て 2/4:05/03/03 05:16:41
だが、その高広の言葉を受けた直後、親貞の顔は笑顔から急に冷たく変化し、強い口調でこう言った。
親貞「 嫌 だ ね 」
高広も、この一瞬の変化には少したじろいだ。すぐに冷たい表情のまま、親貞は言葉を続ける。
親貞「考えてもみなよ・・・・僕らの間には甘っちょろいカスが良く使う『信頼』なんてものは一片もない。
    君に僕の武器の使用法を教えたら、君は僕を殺してその武器を奪えば良いだけだ。違うか?」
高広「違いねーな。たった少しの間で『よくここまでわかってるな』と感心するぐらいだ」
無論、親貞の持っている武器は強力な武器などではないのかもしれない。
全てが親貞のハッタリという可能性もある。
だが裏を返せば、親貞の言っている言葉は真実である可能性もある。
どちらかに断定するまで高広は親貞を殺す気は無かった。
何より高広の手には『銃』という、圧倒的に強力な武器がある。
高広が有利である事には、一片の疑いも持てようはずがない。
そんな高広の心を読み取ったのか、また下手に出るような無邪気な笑顔で親貞はこう言った。
親貞「まあそれに、僕の武器は生きている人間相手じゃなきゃ意味がないからね。
    この廃墟にあるのは三つのカス達の成れの果てだけ。これじゃあ、君には見せられないよ」
高広「その事なんだが、いい加減この廃墟は出た方がいいんじゃねーか?」
親貞「なぜ?」
高広「こんな辛気臭せー場所に留まってんのは性に合わねー。お天道様が拝みたいぜ」
親貞「似合わない言葉だね・・・・・まあいいさ。ここで待ってても誰も来そうもないからね。
    この島を歩いていた方が人に会う可能性はありそうだ。
    じゃあ景気付けと、狼煙代わりに少し派手な事でもしでかそうか」
『景気付け』と言う言葉に、高広は訝しげな顔をする。
無邪気な笑顔から冷たい笑顔へと変わっていた親貞は、楽しそうな拍子でこう言った。
親貞「この廃墟の死体・・・・・三つ全部集めてくれないか?」
298自分こそ全て 3/4:05/03/03 05:17:59
高広「オラ、集めたぞ。これでいいんだろ?」
『松平元康』『今川氏真』そしてかつての同僚『甘粕景持』の死体を一箇所に蹴り運んだ高広がタルそうに呟く。
親貞「死体を蹴っちゃあ、いけないよ。人道に反してるじゃないか」
高広「よーく言うぜこのクソガキが。で?何始めるんだ?」
親貞「人道に反する事はしないよ。僕はただ・・・・」
そう言った親貞は、ポケットから『ジッポ』を取り出し・・・・・。
親貞「このクズでカスで甘っちょろいバカどもを火葬してやろうとしてるだけさ」
三人の死体に向かって、投げつけた。

親貞「あーはっはっはっは!!燃える燃える!よーく燃えんじゃんッ!」
死体の山が盛大に燃え上がる中、親貞はただ狂ったように笑い続けた。
高広(このガキ・・・・・何考えてんだ?)
一瞬、高広はそう思う。
だが、結局の所『まあ、どうでもいいか』という結論に落ち着いた。
こんなガキがどんな執念、信念を持とうが、そんな事はどうでもいい。
いや、むしろ、イカレた人間の方がこの島で生き残る事が出来るのかもしれない。
そう高広が思考を巡らせていた時、妙に弾んだ声で親貞が語りかけて来た。
親貞「君はさあ・・・・・『信頼』とか『友情』とか『愛情』とかって物を信じるかい?」
高広「さあな・・・・・・まあ、あっても面白いかもな」
親貞「気が合うな。僕もだよ」
その言葉にすぐ続け、また親貞が口を開いた。
親貞「そういうものを信じきって、こんな場所でまでもそれに頼りきってるクズどもは
    それを壊された時にどんな表情を浮かべるかな・・・・・?
    信頼している家族や友人に裏切られた・・・・ああ楽しみだ!楽しみだッ!興奮してくる・・・・!」
299自分こそ全て 4/4:05/03/03 05:22:43
高広「ンな事てめーに出来んのかよ?」
親貞「出来る!僕の武器ならそれが出来る!!」
そう断定されても、親貞の武器など見てもいない高広には想像できるはずはない。
だが、『それ』がどういったものなのか、効果の輪郭だけでも高広は推測する事は出来た。
親貞「ねえ君。僕は狂ってると思うかい?」
高広「聞くまでもねー」
親貞「僕もこれ以上無いほどそう思う。意見が合うじゃないか。君は僕の最高の相棒になれそうだよ」
高広「ハッ!何言ってやがんだ?」
所詮はオレ達は『利用し利用され』と言った形じゃねーか。
片方が自分にとって不利益となるなら、間違いなくもう片方は関係と生命を切るだろーが。
オレはてめーを散々利用し尽くしてやる。
そして用が無くなり次第、すぐにでもアタマ撃ち抜いてやるさ。
高広(ま、それはこのクソガキも思っていることだろうがな)
死体の山で燃え盛った火がやや収まりかけると、親貞の顔はまた無邪気な笑顔になる。
親貞「ははは。もう見る影もないね」
高広と親貞は、利の一致だけで仲間として組んでいる。
だが、それがこの島においての最大の正解と言える関係かもしれない。
『信頼』や『友情』という、言葉だけの、そして足枷になりかねない関係よりも
こちらのほうが人間・・・・いや動物として絶対的なものであるのだから。
自分こそ全て。命ある者は、思考ある限りこの言葉から逃れられないのだろう。
高広「行くか」

【37番 北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】&
【39番 吉良親貞 『武器不明』『モトローラ トランシーバ T5900』】(共に3-B廃墟から移動)
3-G二番トラック到着地に向かっている一行がいた。員昌・直経・泰朝の三人だった。
この三人はこれまであまり動きを見せていない。
と言うのも、泰朝の目的である今川親子との接触が、今川親子の死によって叶わなかったために、泰朝自身が戦意を喪失してしまったことにあった。
員昌・直経の両人は、一刻も早く浅井の家の者―つまり久政・長政と合流したかったのだが、
自分らの危機を救ってくれた命の恩人とも言うべき泰朝を放っては置けずに、今までじっと泰朝の側についてやっていた。
そのために三人は大分うち解け、今では三人それぞれが欠いてはならない存在になっていた。
しかしこの状況下では、そうはのんびりしていられない。食料は尽き、次々と天皇の放送により訃報がもたらされる。
一ヶ所に留まるのは危険と判断した員昌と直経が、なんとか冷静さを取り戻した泰朝を説き、食料を求めて配布場所へと急いでいた。
自然と三人の話題は天皇の放送の内容に向けられる。
「まさか、あの大力無双の真柄直隆まで討たれるとは思いもよらなかったな」
員昌が、泰朝を挟んだ向こう側にいる直経に言った。
「確かに。真柄殿のような猛者と渡り合えるものがいるとは、やはり天下は広い」
直経は直隆の死を悲しむでもなく、むしろ直隆を殺した者に興味を持ったような言い方で返答した。
「真柄とは誰の事だ?」
二人の間に挟まれてやり取りを聞いていた泰朝が訊ねた。
「同盟国の者で、戦場では大太刀を振り回し、朝倉家中では並ぶもの無しと言われた豪の者よ」
員昌が答えてやる。
「仲が良かったのか?」
「別にそういうわけでもないな。ただ同盟国のために、何度か顔を合わせることはあった。まぁ、顔見知り程度の間柄よ」
「そうか。いやしかし、知り合いが死んだと聞いてはいい気分はしなかろう。いらぬことを訊いた、許せ」
泰朝は歩きながら頭を下げる仕草をした。それに二人は「いやいや気にするな」と手を振って答えた。

一向は目的地である配布場所にやって来た。
比較的すぐ近くにいたため、それほど時を要せず配布場所へと来ることができた。まだ放送から20分も掛かってはいない。
しかしそこには、肝心の食料が米粒一粒として置いていなかった。
「どういう事だ?何もないではないか!員昌殿、本当にこの場所で間違いないのであろうな?!」
地図を見ていたのは員昌であった。直経は、員昌が地図を読み違えたのではないかと怒っているのだった。
「そんな筈はない!確かにここで合っている筈だ!」
「しかし、現に食料などありわしないではないかッ!身の危険を侵してここまで来ているのに、道に迷って食料を取りそこねるとは笑い話にもならんわ!」
「何だと貴様!誰にものを言っているのか、解っているのか小僧ッ!」
「やめろ!こんな所で言い争っても無意味なことだ。それより一旦ここを離れよう。四半刻後に爆破されては食料どころの騒ぎではない」
泰朝に言われ、確かにそうだと三人はその場を離れることにした。
配布場所からほどない場所で、三人はもう一度地図を開いていた。
「見ろ、やはりこの場所に間違いはない」
員昌がコンパスと地図を見比べ、自分達が通ってきた道を確かめると、さっきのあの場所は間違いなく食料配布場所だった。
「む、確かにそのようだ・・・。員昌殿、大変な言いがかりをつけていたようだ、許してくれ」
直経が、自分の非を認めて素直に頭を下げる。
「分かればよい。――それよりどういう事だろうか。帝の勘違いか、時間が早すぎたということなのだろうか?」
「あの用意周到な帝のことだ、勘違いなどあるはずはない。ここは何かの手違いで配布が遅れていると考えるのが妥当な線だろう。
で、どうする?このままここに留まり、遅れて来るであろう食料を待つか、はたまた食料なぞ諦めて早々にこの場を去るか、お主らの意見を聴きたい」
話し合いの議長格は、年長の泰朝が勤めている。
「俺は諦めた方がいいと思う。なに、一食ぬいたとて死にはせぬ」
「俺も直経の意見に賛成だ。手違いとはいえ、何か問題が起きている以上、ここに留まるべきではないと思う」
「では決まりだな。早くこの場を離れるとしよう」
泰朝は二人の意見を聞き入れ、食料は諦めることにした。
三人は元来た道を戻っている。
「泰朝殿、どうしたんだ?さっきから黙りこくって」
先刻からずっと黙っている泰朝を心配して員昌が訊ねるが、泰朝はそれには答えず、しきりに鼻を蠢かしている。
「なんだ、風呂に入ってないから臭うか?」
直経がおどけるが、泰朝は渋いままの顔でいる。
「囲まれている」
二人は泰朝のその言葉に驚き、周囲に気を配るが人の気配は感じられない。
「冗談はよせ。人の気配などしないではないか」
「人ではない、獣だよ。臭いがするだろう?」
そういえば、確かに獣とも思える独特の臭いが辺りに漂っている。同時に、人ではない何かが、自分達の周りを取り巻いているような気もしてくる。
「俺は駿河の山の中で、似たような臭いを嗅いだことがある。恐らく、狼だと思う。帝も数匹の狼を放ったと言っていた」
そうだった。放送で言っていたのは、食料が減らされたことだけでなく、狼がどうとか言っていたのを員昌と直経は今思い出した。
「クソ!食料はおとりで、端っから狼に襲わせるのが帝の魂胆か。小賢しい真似を!」
直経が苛立たしげに吐き捨てる。
「見ろよ。気の早い奴がやって来たようだ」
泰朝の視線の先に、銀色の毛皮をまとった大きな狼が一頭姿を見せた。
体は仔牛ほどもあり、一見して日本に分布している種ではないことが分かる。
「・・・これが狼か?明らかに普通じゃないぞ!」
「帝は坊主が持っていたような鉄砲を用意できるんだ。異国かなにかで手に入れた獣がいても不思議はない」
冷静に員昌が言うが、彼もまた、いかに自分達が危険な生き物に狙われているのかを肌で感じ取っているようだった。
「このままではまずいな。固まっていては食い殺されるだけだ。仕方がないが別々に逃げるとしよう」
員昌の提案に、他の二人も賛成した。
三人は、持っていた得物を抜くと、丸く円になり、中央で刃を重ね合わせた。
「無事に再会しよう」
「ああ、無事にな。決して死ぬなよ」
「分かっている。再会場所は坊主に破壊された民家としよう。では泰朝殿、直経、ご武運を」
員昌の言葉を合図に、三人はそれぞれ思い思いの方角へ走りだした。
数頭の狼が追ってくるのがよく分かる。兎などの小動物の気持ちが、今なら痛いほど分かる気がした。
狼は、尚も執拗に追ってくる。
員昌は知らずのうちに、先程の配布場所付近にまで逃げ戻っていた。
「ハァハァ・・・撒いたのか?」
一度立ち止まって、辺りを見回すが狼の姿がない。
しかし油断は出来ないと、息の続く限り走り続けた。
不意に、開けた場所に出て、何処からか聞き慣れぬ音が響いてきた。
「なんだこの音は・・・?――そうだ、あの音だ。初日にこの島に連れて来られたときに、乗せられた鉄の車の音だ」
員昌が聞いた音は、3-G2番トラック到着地点に停められたままのトラックのエンジン音だった。
トラックの周りには五つの死体が転がっている。見覚えがある服装をしている。天皇配下の兵達だった。
内一つの死体は、真っ二つに切り裂かれ、下手人が尋常の者ではないことを物語っている。
トラックの中から数人の話し声が聞こえる。
「これは狼などより、厄介な相手かもしれん。前門の虎、後門の狼といったところだな」
逃げ出そうとも考えたが、今逃げたとて狼に狙われるだけだと思い直し、員昌はトラックのドアに手を掛けた・・・。
一方、直経はまだ執拗に狼からの追跡を逃れられずにいた。
何度か追いつかれ、その度に得物のマクアフティルで斬りつけるのだが、いかんせん切れ味は非常に悪く、
狼に致命傷となるような傷をつけるまでには至らなかった。
そのうち、狼が直経の脹脛を狙って噛み付いてきた。
間一髪、その攻撃をかわしたが、直経は体勢を崩してしまい、そのまま前のめりに倒れこんでしまう。
狼はその機を逃さず、直経の喉首目掛けて飛んでくる。
直経は、倒れたままマクアフティルを振り回し、狼を追い払おうとするが、仔牛ほどの大きさの狼達の力は想像以上に強く、
とても一人の人間が敵うものではなかった。
「ぬぅ、この馬鹿力めがッ!」
必死にもがく直経をあざ笑うように、馬乗りになった狼は、その大きく裂けた口から不気味な唸り声をあげて直経の喉元にかぶりついた。
「があ・・・ごえ・・・うぅ・・・・・・」
狼は刺さった牙で喉を抉るように、頭を振って直経の息の根を止めようとする。直経は、最後の力を振り絞って、マクアフティルを狼の腹に突き立てた。
「すまん・・・約束は・・・まも・・・れな・・・い・・・・・・」
破れた喉からヒューという音が発せられ、喋った言葉は巧く喋れていなかった・・・。
直経が狼と相果てた頃、泰朝は不思議な男を見つけていた。
その男はこの惨劇が起こっている島には似つかわしくない、可愛らしげな猫を大事そうな抱いていた。
(なんだって猫なんか・・・?)
帝が差し寄越した猛獣には見えない。男―といっても、もう老人だが、この老人も温和な顔をしていて、とてもじゃないが帝が派遣した刺客とは思えない。
(では何者だ?)
泰朝でなくとも疑問に思うであろう。なんといっても猫を抱いているのである。疑問に思うのも仕方のないことだった。
この老人は07番浅井久政であった。久政は覚束ない足取りで、森へと足を踏み入れていく。
(何処に行く気なのだろうか?)
幸いにも狼はもう追って来ない。
泰朝はこの不思議な老人を尾けてみることにした・・・。
308続・三剣士 ◆IVgdXngJC6 :05/03/04 16:10:25
【24番 遠藤直経 死亡】マクアフティルは直経が握ったまま、狼の腹を突き破っています。
【19番 磯野員昌 『呉広』】3-G 2番トラック到着地点。トラックに乗り込もうとしています。
【09番 朝比奈泰朝 『青龍偃月刀』】目的、浅井久政の尾行。
【07番 浅井久政&輝政 『S&W M36チーフススペシャル』】3-F森
309冷静と情熱の間と阿呆 1/7:05/03/04 19:13:22
銃で撃ち抜かれた腕を、もう片方の腕で抑えながら、勝家は苦々しげに呟いた。
勝家「義龍め・・・この『懸かれ柴田』を退かせるとはな・・・・・・」

日の出からしばらく後、利家を救い、義龍と向かい合った勝家は
木を盾としながらも、正午の放送まで義龍と対峙していた。
その時までは、互いに銃を数発撃った程度の威嚇程度であったため
勝家も、義龍も、お互い傷も負わずにいたのだ。
そして正午の放送時、勝家にとって同じ家中の者の名が呼ばれた時、不意に事は進展した。
一瞬気を取られた勝家の腕を、義龍の凶弾が貫いたのだ。
不意に勝家は逃げた。全力で逃げた。だが恥ではない。
不利を一瞬にして悟った歴戦の猛者である勝家だからこそ出来た、生死の分けた一瞬の判断である。
その場から離れるのがわずかにでも遅かったのなら、直後飛んできた銃弾で既に勝家は骸と化していただろう。
・・・だが、随分逃げても、殺気は離れることは無かった。

勝家(妙な事だ・・・なぜとどめを刺しに来ぬのだ?警戒か?あるいは愉悦か・・・?)
義龍であれば、負傷している今の勝家を仕留める事など赤子の手を捻るより容易い事だろう。
襲ってこない理由は勝家にはわからない。義龍の心理など読めようはずはない。
だが、ただの狂人ではない事、それだけは理解できた。
勝家(だが、それはそれでありがたいやも知れぬな・・・。とどめを刺さぬなら、それを利用させていただくか・・・)
そう考えると、勝家はまた走り出した。それにピッタリと殺気や奇妙な声もついてくる。
いや、仮に離れたとしても、腕から流れる血が地に目印をつけているため、逃げ切れる事は無いだろう。
なぜ一思いに殺さないのか、それはわからないのだが・・・。
勝家(馬場殿よ、許せ・・・貴殿の最後、晴信殿には伝えられぬかも知れぬ・・・が)
逃げる勝家は、ふと織田家中の者を思い出す。
勝家(某を親父と慕う者と、この化け物をもう一度対峙させるわけには行かぬのでな)
310冷静と情熱の間と阿呆 2/7:05/03/04 19:14:40
少し離れた場所に、視点は移る。
上条「やっぱり義清の奴、遅すぎるな・・・・・敵にでも会ったんじゃあねーだろーなぁ〜」
石に腰掛けていた上条がふと呟く。その言葉に、近くに立っていた利家が答えた。
利家「報で名は呼ばれなかったんだろ?じゃあ、生きてると考えていいじゃないか。
    ウカツに動いてすれ違いになったら、それが一番最悪だろ?」
上条「そりゃあ、そーだけどなァ〜」
座りながら愚痴る上条を見て『さっきから同じ問答の繰り返しだな』と利家は思う。
義清は日の出の放送から出て行って、まだ戻ってこないのだ。
怪我を負っているかも、と考えると、確かに向かったほうがいいのかも知れない。いや、向かうべきだろう。
だが、利家には『向かう』という気は起きなかった。
利家(長秀の奴は、上条の仲間と同じ場所に食糧を取りに行って・・・名を呼ばれた)
正直、名前を呼ばれただけで死を認める気は無い、という思いはまだ残っている。
だが、食糧を取りに行ったのなら、その場所、あるいは向かう途中に死体がある可能性は高い。
死体を見てしまっては、『死』というものを否応無く認めさせられるだろう。
利家「・・・それだけは勘弁願いたいな」
上条「え?」
利家「いや、独り言だ。気にするな。
   それより、細川さん。あんた、和歌とか嗜む教養人なんだってな。よければ披露してくれないか?」
利家は考えを断ち切るため、『我関せず』といった風な態度を取る藤孝に無理矢理に話しかけた。
そうとは知らず、上条もその言葉に乗ってくる。
上条「おっ、いいねェ。細川サン、頼むよ」
藤孝「うぬごときに語る言葉は無し」
だが、藤孝は上条に冷たく言い放つ。
311冷静と情熱の間と阿呆 3/7:05/03/04 19:16:07
上条「あの・・・細川大将軍様。まだ怒っていらっしゃるんで?」
藤孝「至極当然・・・不愉快千万」
利家(無理も無いな・・・)
自分の得た食糧を誰とも知らぬ人間が漁っていたら、誰だって腹が立つだろう。
上条が利家の知っていた人間でない、あるいは利家が哀れみを覚え仲介に入らなければ
間違いなく藤孝は上条の首を飛ばしていただろう。
利家(なのに上条は俺に感謝しないよな・・・)
藤孝「前田利家」
利家「え?あ、ああ・・・どうかしたのか?細川さん・・・」
不意に名前を呼ばれ、利家はやや驚いた。
それを意に返す素振りも無く、すぐに藤孝は言葉を続ける。
藤孝「・・・うぬは、帝を目的にすると言っていたな?」
利家「・・・ああ。正確に言えば、悪の根源・・・か?」
藤孝「であるか。だが、で、あるならば、帝を悪と何故決めた?その判断、そしてうぬは正しいと言えるのか?」
利家「・・・?」
その言葉は、利家にとって思ってもいない言葉だった。
藤孝「初めに言った『全てに飽いた』・・・この言葉は真実か?
   ただそれだけで、どこの物とも知れぬ、我々では消して創れぬこのような武器や場所を持ち出すか?
   そしてそれは、即ち『悪』と決め付けられるか?そして、己の判断は正しいと?」
利家「・・・その言葉だけ取ると、あんた帝側の人間と取られかねんぞ?」
藤孝の言葉を受け、ふと利家が鉄槍に手を伸ばす。だが藤孝は気にせず喋り続けた。
藤孝「人の意志は二つの道に分かれている。即ち『生・・・生きたい』と『死・・・滅びたい』と。
   この島の・・・いや生きる者全て、一人一人は生き延びる事を望んでいる。
   その生きる意志が重なり合うと、どういうわけかそれは『滅びの意志』へと結びついていく」
312冷静と情熱の間と阿呆 4/7:05/03/04 19:17:59
上条「・・・そんなもんか?」
上条も話に乗ってくる。だが、藤孝は上条を気にする素振りも無く、また話し続けた。
藤孝「良く考えてみよ。
   我らの生きていた世界でも『戦』『人斬り』は生の意志の集合が引き起こした物だ。
   この島でも『生きたいから殺す』『助かりたいから倒す』・・・ではないのか?
   結果、また一人一人死に滅んでいく。そして生きる事を望む数は減っていく。
   一人一人は生きたくとも、全体としてみればそれは悪とされる『滅びたい』ではないかね?」
利家「・・・まあ、確かにそうなのかもしれないが・・・」
藤孝「古来より悪や鬼など、人の忌み嫌うものは、その滅びの意志だと私は思う。
   己たちの滅びの意志にも気づかず、あるいは気づかぬ振りをして
   存在もしない『鬼』にその責任を押し付ける・・・考えてもみれば、ひどく臆病なものだな」
だが、そこまでで藤孝の始めた講釈に、そこで上条から『待った』が入った。
上条「結局何が言いたいの?臆病さが人を殺めるってワケ?」
藤孝「・・・うぬは本当に人の話を聞いていたのか?」
藤孝は呆れた顔をする。だが、イマイチ何を言いたいのか利家にもわからない。
正直、上条から『待った』が入って利家も助かったところだ。
そんな気持ちも露知らず・・・かどうかはわからないが、藤孝はため息をつき上条に向けこう言った。
藤孝「臆病でなければ人はここまで生きて来れぬ。
   猪や狼に殺されたくないからこそ、人は知恵をつけ、力を得て、それを倒せるほどになったのではないか?」
上条「まあ確かになァ〜・・・素手で狼と戦えって言われてもよォ〜、どんな奴でも結構無理だよなそれ」
藤孝「かと言い、過度に震えては手足もまともに動かぬがな。
   『勇敢』と『無策』、『臆病』と『無為』、それぞれを取り違えるなという事だ。
   そして即ち、『悪』と『正』もな。見方次第では帝すら『善』となる」
313冷静と情熱の間と阿呆 5/7:05/03/04 19:21:02
利家「・・・つまり、どういうことだ?要するに帝は悪じゃないとでも言いたいのか?」
藤孝「その通りだ・・・と言うより、この島の百人と帝、善も悪も一人もおらん。誰一人としてな。
   対象が帝であれ我ら百人であれ、『滅びの意志』に繋がる事に変わりは無いのだからな。
   元々『善』や『悪』も非常に曖昧なものよ。というより、存在などせぬのかもしれん。
   だからこそ、『己は善だ』『帝は悪だ』などと安易に考えるな。足枷になりかねんぞ」
利家「・・・なんでわざわざ・・・そんな話を?」
藤孝「うぬが『帝は悪』などと愚考しているからだ。善悪など己の心のための免罪符にしかならん。
   そのような愚か者とこの藤孝が共にいようとは考えたくないのでな」
自分に言っているかのように呟いた後、藤孝は上条に向かい言った。
藤孝「うぬに問う。この島で一番大切なことは何だ?」
上条「えっ?いや・・・イキナリ聞かれてもな・・・・・・帝を倒すとか?」
藤孝「たわけ。生き残る事だ。裏切りでも恥でもいい。最後まで生き残ればそれで勝者となる。
   我らは格闘に多少の得手はあれど、それより強い者は少ないが、確実にいる。
   ぶつかり、死ねばそれで全て終わりよ・・・無為無価値、路傍の石と同じだ」
利家「死んだら、それで終わりだと・・・・・・?」
『その言葉だけは認めたくない』という思いが、利家の中に確かにあった。
この島で残っている織田家の人間はもうわずかしかいない。
他の人間、友と呼べる者は全て死んだ。
その友はそれで終わりなのか?死んでしまったら全ては否定されるのか?
路傍にうち捨てられた、何の役にも立たないゴミクズと同価値になってしまうのか?
『そんな事があってたまるか!』・・・とっさに、利家はそう思う。
そしてその言葉がはっきり思い浮かんだ時、利家はある方向に向けて足を動かしていた。
利家「上条。村上義清・・・ってお前の仲間が行ったのは、この方向だな?」
314冷静と情熱の間と阿呆 6/7:05/03/04 19:22:41
上条「ん、ああ、そりゃそっちだが・・・どーゆー風の吹き回しよ?
   あんたが一番『行きたくない』って言ってたんじゃねーの?」
利家「考えが変わった。理由は、おいおい話す。来ないなら置いていくぞ」
上条「いや、おい・・・お前一人で行ってもしょーがねーだろーがよォ〜」
上条の言葉も耳に入らず、ただ利家は歩きながら考えた。
利家(この先には・・・確かに、長秀の骸があるかもしれないな・・・)
確かに、長秀は死んだ。
だが、己の知っている丹羽長秀という男は、ただ無為に死んでいくような男ではない。
必ず、何かしらの痕跡は残しているはずだ。
『死を信じたくない』などという怯えに震えて、無為に時間を過ごして死ぬのだけは嫌だ!
利家(お前も、他の皆も、そして俺も無価値じゃない!俺が・・・俺だけでもそれを証明してやる!!)
利家は既に藤孝や上条より先に歩き出している。
藤孝は、先の利家の槍を振るう姿、そして先の利家の話を思い出し、また思った。
藤孝(帝へと辿り着く道を探すためには、動かねば始まらぬ。
   ただ『無為』に動けばいいというものではなく、己から、な。
   あれだけの剛勇の士が動かぬわけは無いと思ったが・・・やはり、先の話の友か。
   しかし、あの程度の口先八丁で焚きつけられるとはまだ若い・・・)
そうは思うが、藤孝も顔に少しの笑みを浮かべ、また利家と同じ方向に歩き出した。
藤孝「だがそれがいい。それも悪くない」
上条「何がさ?おおっと次にあんたは『うぬごときに語る言葉は無し』って言うぜ!」
藤孝「うぬごときに語る言葉は・・・・ぬう!屈ッ!!」
315冷静と情熱の間と阿呆 7/7:05/03/04 19:23:49
既に義清は3-D地点にはいない。それより離れた3-C地点にいた。
義清「いつぞやの夜には撒けなかったが・・・・・。
   フン、足手まといのバカが・・・・来るはずの無い食糧を待ち、野たれ死ぬが良いわ」
日の出に別れた時に、既に義清は上条と離反するつもりでいたのだ。
どれだけ待っても、決して帰ってこないのは当然の事であった。
義清「景虎殿・・・待っていてくだされ・・・。
   この村上義清!!恩義のために、必ずや武田晴信めを討ちましょうぞ!!」
晴信に対する義清の怨念は、この島の狂気と相乗し、誰にも止められないほど大きくなっていた。
天下の名槍『日本号』を手に、義清は『怨』に染まった目と、鬼の笑みを天へ向けた。

【54番 柴田勝家 『マテバ 2006M(弾切れ)』『備前長船』『H&K MP3(残弾13発)』】(右腕負傷)VS
【49番 斎藤義龍 『スプリングフィールド M1(弾切れ)』『スラッパー』】
(4-Fにて交戦中。勝家は逃げるつもりです。義龍は追っています)

【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発)』『鉄槍』『矢(5本)』】&
【83番 細川藤孝 『太刀』】&
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』】
(4-E森から3-D森の前に向かっています)

【94番 村上義清 『槍・日本号』】3-Cから移動予定(武田晴信を殺る気満々で探しています)
316修正:05/03/05 00:46:27
>>271の天皇による放送ですが、以下のように修正されました。詳細は雑談スレにて。

皆の者、やっておるか?三日目の昼である。
昨夜の雨で昨日の昼よりよほど涼しいの。それとも、この冷たさはまた別の物なのかのう?
ひょほほほほ。

しかし、今回、朕は非常に残念である。今朝は死亡者が少ない。読み上げるぞえ?
74番蜂須賀正勝、87番真柄直隆、72番丹羽長秀、53番宍戸隆家、42番顕如、以上5名。
残りの37人はいつになったら、殺し合いを始めるのじゃ?

罰として今から島に数匹狼を放つ事にした。せいぜい逃げ回るがよいぞ。さらに、食糧を減らすことも考えておる。クックック・・・、
そうじゃな20人、20人分じゃ。こちらは今日の日没から施行する予定じゃ。・・・もっとも今後の展開次第では、考えてやらんでも無いぞ?

して、今回の食糧の配布場所だが、2-B林道の前、5-D民家前、3-G二番トラック到着地。
以上じゃ。

罰を期待して待っておるが良いぞ?クハハハハハハハ。
・・・ブツッ
317無名武将@お腹せっぷく:05/03/06 10:51:31
>>316は無効となりました。
詳細は雑談スレにて。
318無名武将@お腹せっぷく:05/03/06 14:17:09
01赤尾清綱×  26岡部元信×  51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政×  77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行×  53宍戸隆家×  78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家○  79北条氏照○
05安居景健×  30小山田信茂× 55下間頼照×  80北条氏政○
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉×  81北条氏康×
07浅井久政○  32柿崎景家×  57上条政繁○  82北条綱成×
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○  83細川藤孝○
09朝比奈泰朝○ 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀×  60滝川一益×  85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×  86前田利家○
12甘粕景持×  37北条高広○  62武田信繁○  87真柄直隆×
13尼子晴久×  38吉川元春×  63武田晴信○  88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞○  64竹中重治×  89松田憲秀○
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀○
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×  91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如×    67鳥居元忠×  92三好長慶○
18石川数正×  43高坂昌信○  68内藤昌豊×  93三好政勝×
19磯野員昌○  44香宗我部親泰○69長尾景虎○  94村上義清○
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景×  95毛利隆元×
21今川義元×  46小早川隆景○ 71長坂長閑○  96毛利元就○
22岩成友通×  47斎藤道三○  72丹羽長秀×  97森可成×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信○  73羽柴秀吉×  98山中幸盛○
24遠藤直経○  49斎藤義龍○  74蜂須賀正勝× 99六角義賢×
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房×  100和田惟政○

×印:死亡確認者 65名
○印:生存確認者 35名
319鬼の目にも涙 1/5:05/03/06 19:19:42
「何故この様な事になってしまったのであろうな」
壁中に撒き散らされた夥しい量の血を見ながら、元親はそう呟いた。

事の発端は、この島の血生臭い空気に当てられたのか、全ての人間が汚いモノに感じられ、空を見上げている時に近付いた足音だった。

「誰だ?」
このような島で近付いてくる足音に動じる事も無く、全てを達観した仙人のように元親はゆっくりと振り向く。
しかし、予想に反して、そこに居るのは殺気の籠もった目をしているケモノでも、助けを求める弱者でもなかった。
「ハジメマシテ元親サマ、私ハ『ロヨラ』ト申ス者デス」
近頃土佐のような辺鄙な国にまで来るようになった南蛮の宣教師らしく、うやうやしい言葉で、しかしそれとは裏腹に顔は元親を値踏みするように薄ら笑いを浮かべていた。
まさに慇懃無礼という言葉がお似合いな喋り方であった。
「何の用だ?参加者ではあるまい?」
そうでなくても妖しげで、うさんくさい雰囲気の宣教師。
この島に居ると、際立ってぺてん師のように見えるその男に元親は堂々と、しかし必要以上は突っ込まないように受け答える。
「私ハ元親サマニ、良イオ話ヲ持ッテキマシタ」
「いい話・・・か。その手の先に隠している物を放せば話くらいは聞こうか」
元親の、まだ声変わりのしていない高く冷たい響きの声が、ロヨラと名乗ったその男に総身の毛が弥立つ様な震えをおぼえさせた。
しかし、そこでただただ動揺しているロヨラではない、手に握っていたそれを手放すと、気さくな笑顔を浮かべて視線を元親に向けなおした。
「スミマセン、殺サレテシマッテハオ話ガ、デキマセンノデ」
言って、両手を肩ほどまで挙げて、両手の手の平を広げてみせた。しかし、元親は顔を緩めず
「ついでに、その宣教師ぶった口調は辞めたらどうだ?」
と、静かに持ち上げた右手でその男の口を指差した。
元親の不思議な雰囲気に飲み込まれぬよう、気をつけていたはずのロヨラは一度ならずと二度までも、背中に冷たい物を感じた。
「お見通し、という訳ですか・・・」
日本人らしい、いやそれでもまだ多少妙な発音であった。
それが唇が震えているからであるという事を視認すると、ゆっくりと目を閉じて、
「では、聞こうか」
とようやく先を促した。
320鬼の目にも涙 2/5:05/03/06 19:22:08
「お話というのは他でもありません。元親様、貴方にこの殺し合いを促進する為に協力して頂きたいのですよ」
予期しない問答を終えて、ようやく本題に入り、本来の調子を取り戻したのか、ロヨラはまた慇懃な口調でとんでもない事を口にした。
今まで、冷静を保っていた元親も、ぱっと見て解るほどに、顔を打ち震わせている。
「私は悪なる人間を許せんタチなのだ、生憎だが・・・」
元親は溢れかえらんばかりの怒気を押さえて努めて冷静に答えようとする。片手はいつ襲い掛かられてもいいように鎌の柄に掛けてある。
しかし、元親が言い終わる前に、それを遮ってロヨラは口を開いた。
「断ろうというのですか?まだ終わっていない話を聞けば、貴方が断る事などありませんね」
元親を挑発するかのように軽い口調で、ロヨラは笑ってみせる。
普段ならさっぱりとした宣教師の男の笑みと思えるのであろうが、この時の元親にはひたすらに醜悪な笑みとしか思えなかった。
「どう言う事だ?」
「こちらとて、物事を依頼するのに、タダでとはいいません。報酬があります。」
思わせぶりにロヨラは言う。
「報酬、だと?」
元親はロヨラの話術に巻き込まれているとも知らずに次を促した。
「元親様、貴方には親貞と親泰という弟が居ますね?帝はあなたの働き次第でこの二人の運命が決まるという事にしました」
「何だと!?」
不意に告げられた肉親の名に元親は動揺を隠せず激昂する。
「つまり、貴方がこのまま血の雨を降らせないというのであれば、代わりに我々の手の者がお二人に血の雨を降らせて貰うだけですよ」
「き、貴様!」
もう何も考えず飛び掛ろうとした腕を、元親は最後に残った理性で必死に押し留める。
確かに、この島で3日も生き延びているというのは、2人の運や実力かもしれないが、彼らは若い元親のさらに年下の弟、親泰に至ってはまだ元服もしていない少年なのだ。
持病を持ち、戦の最中にも激しく咳き込むような親貞と、幼い頃の私と同じ様に女子のようになよなよとした親泰。
そんな二人が、教室で見たような圧倒的な装備をした天皇の手のものに襲い掛かられればひとたまりもあるまい。
―しかも、あの狂った帝の事だ。私の目の前でいたぶり、殺すなど、おぞましい『余興』を用意するに違いない。
―私に助けを求める弟達の指を一本一本飛ばすとか・・・
321鬼の目にも涙 3/5:05/03/06 19:23:07
見るに耐えない、想像をしてしまった元親は首を振って、考えをやめた。
しかし、元親の周りだけが冬になったように、一気に凍て付いたような体温だけはなかなか戻らなかった。

「どうしました?良い報酬では無いですか、逆を言えば、貴方の働き次第では弟さん達を助ける事が出来るんですよ?」
―もっとも、他の参加者に殺されるかも知れんがな
もはや、元親は持ち前の冷静さを完全に欠いている。針に掛かった魚も同然であった。
どうあがこうと、喉に掛かった針は冷静になれば外す事もできようが、焦っていては外れない。
―さしずめ私は渭水に釣り糸をたらす太公望という所か。フフ。
ロヨラは今まで浮かべたどんな表情よりも醜悪な笑みを浮かべ、勝ち誇るように腕組みをした。

「わかった」
ロヨラの思惑通り、元親は答えるしかなかった、選択肢のないその言葉を口にした。


しばらく己の口にした言葉の意味を考えながら、西へ西へと太陽を追うように元親は早足で歩いた。
ともかく、天皇に示しをつけなければ成らなかった。
天皇のように悪の権化たる人間の手下に成り下がるなど、以前の自分であれば、自らの命を断ってでも辞めなければならない事柄であっただろう。
しかし、逆らう事などできない。
―逃げられない。私は。戦からも、血の匂いからも

初陣で初めて、人を殺した時。怖くて震えが止まらなかった。恐ろしい死に顔、断末魔の絶叫、炎よりも赤い血。
父に言われたとおり槍で襲い掛かってくる敵の顔をついた瞬間、私の目の前に地獄が現れたのだ。
地獄絵図の合戦場で、自分もその登場人物になっていることに、これ以上ない恐怖を覚えたのだ。
それでも、私は戦い、殺さなければ成らない人間だったのだ。その日初めて私は自分の生まれを呪った。
・・・それからは、悪い人間を社会を乱す「鬼」として考えるようになった。
そう考えるだけで、大将として斬らねば成らない敵を斬ることに、いくらかの救いを見い出せ、少し助かった気がしたからだ。
この島でも、相手が弱いと見るといたぶって楽しもうとする「鬼」を一体討ち取った。
それが今や、私も立派に閻魔に従う鬼の一員だ。
322鬼の目にも涙 4/5:05/03/06 19:24:20
いきなり黒く焼け焦げていた足元に気付くと、日は大分赤くなり、そろそろ寝床を探す頃合となっていた。
―待てよ、同じ様に考えている連中がいるやもしれん
私の視線は私の思考に合わせたかのように、建っていた民家へと向いた。
近付くと、先程の草むらと同じ様に黒く焼け焦げ、崩れている民家がいくらかある。
元親は崩れていない民家の扉を一つ一つ開けて中を調べていく。
ついでに使えそうな物も物色しようかと考えたが、何よりも示しをつけるのが先決だ。
そう考え直して、周りの家屋と違って平屋ではない家屋の扉を開いた時だった。
視線の先には、見慣れない箪笥の扉を開けて、中に入っている食料を貪っている男がいた。
必死に物をほお張っていた男も、ビクッと打ち震えて、痣だらけの体を飛び上がらせ、手の平に収まるような尖った匙をこちらに向ける。
「何者か!?」
まだ口の中に残っていた食料を飲み込まないまま、叫んだその男を見て、元親は先刻裏切った仏に感謝した。
そして黙って、手に持っていた鎌を胸の前で構えると、その男は元親の敵意を感じて、その匙を振り上げて飛び掛ってきた。
距離と元親が手に持つ得物からして、接近戦で闘えると考えたのであろう。
だが、元親は予測済みの信繁の行動に対して、手に持った鎌を投げつけた。

その鎌は刃を男の肉体に突き立てる事無く、柄で男の痣だらけの体にダメージを与えるのみに留まって、からんと床に落ちた。
「無闇に人を殺したくないが、拙者は景虎めを討ち取るまで死ねん!覚悟!」
落ちた鎌を確認して、叫んだ男は、しかしそれ以上進む事無く逆に後の流し台に吹き飛ばされた。
信繁が鎌に気を取られている間に、元親がいつでも撃てる様、安全装置をはずして背負っていたウィンチェスターM1897を構えていたのだ。
そして、引き金を引いた瞬間に、勢いよく発射された散弾が至近距離にいた男に穴を穿って、吹き飛ばしたのだ。
323鬼の目にも涙 5/5:05/03/06 19:25:15
「あ、兄上・・・」
ただ一言、言い残すと、糸の切れた操り人形のように男の体から力が抜け、動かなくなった。
しかし、その一言は初対面の人間を有無を言わせず撃てる鬼になったつもりの元親の意識を引き止めるには十分だった。
―兄上。確かにこの男はそう言った。
「兄がいるのか。」
呟くように問い掛けるが、動かなくなった男は答えない。
「私にも弟がいる。天皇に掛かったその弟を生かすためだ、すまない」

「勝手な言い草だな」
死んだふりをして逆転を狙っていた男はいきなりそう言った。
本来なら、死亡を確認しに近づいてきたところで、心の臓なり、頭なりを刺し貫いて道連れにするつもりであったが、
死の淵でもう助からない事を自覚して人をきづつけたくないという本来の自分の生き様を思い出したのか、
それとも、元親の言葉を聞いて、その事情に同情したのか、男は口を開いたのだ。
「弟を大切にしてやれよ」
そう言って、数奇な運命の末、自らの命を奪った男―元親の顔を見上げようとした時だった。
「言われなくてもそうするさ」
声が聞こえて、拾い上げられた鎌が、容赦なく振り下ろされ、男の脳天を割った。
「そうするさ・・・」
血飛沫が迸る中、鬼の目から涙がこぼれた。


【62番 武田信繁 死亡】『フォーク』は死体の手に握られたまま放置
【65番 長曽我部元親 『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾4発)』】2-H民家 

【残り34人】
324突然の放送 1/4:05/03/07 22:24:23
薄暗い部屋に煌々とディスプレイの画面から発せられる青白い光が無機質な作業員の顔を映し出す中、ある一人の男がいらだたしげに腕を組んで、何度も舌打ちをしていた。
予定外の事態の詳細がロボットのような抑揚のない声で、延々と続くたびにその怒りと焦りが募っていったのだ。
彼の目の前には多くの電子機器が小山を成し、彼の青筋をたてんばかりの激昂とは逆に、顔に精気の色が感じられない、十数人の作業員達が脇目も降らず、黙々と作業を続けていた。
電灯の無い部屋の中でただディスプレイに照らされる精気のない顔がならぶ様子はそれだけで異様であった。
空気は澱み、間断なく聞こえるタイプ音と報告の声が聞こえる以外には動きというものが、まったく感じられない。
「また、この際作業員が発砲していますが・・・」
「もうよい」
耐えかねたように、小さく男が声を漏らす。
しかし、その声は朗々と流れる報告の前には小さすぎたのか、作業員の口は止まらなかった。
「もうよいっ!」
窓のない部屋に男の怒鳴り声と平手で頬を打つ甲高い音が響きわたり、遅れて、作業員が床に倒れ、書類が落ちる音がした。
しかし、張り倒された作業員はそのまま、何もなかったように書類を拾い上げ、男に一瞥もくれず所定の席に戻ろうとした。
その余りの気味の悪さに、男がもう一度手を振り上げようとした瞬間、奥の扉が開き、一条のまぶしい光が差し込み、そして扉の閉まる音と共に光も消えた。
「やあ、どうしたんだザビエル、偉く不機嫌じゃないか?」
入ってきたもう一人の男がザビエルと呼ばれた男に、笑いを浮かべながらそう挨拶をする。
「――ロヨラ、貴様今まで何処に行っていた?同志に報告無く消えるなど許されんぞ!」
拳を振り下ろす場所をなくし、さらにへらへらと笑うロヨラと呼ばれた男を目の前にしたザビエルは地下室中に響くような声で怒鳴った。
「怒るな、あのヒステリー天皇の命令だよ。仮初めの力を手にしただけで、今では何でも出来ると勘違いしているようだな。急激に力を手にした者がよく起こる症状だよ」
「しかし、事前に報告もできたであろう!こちらはその間大変な事になっていたのだぞ!」
アメリカ人のように大袈裟に両手をいっぱいに広げて、その心労を訴える。ザビエルのただならぬ様子にロヨラも真剣な顔に戻った。
「一体どうしたというんだ?」
325突然の放送 2/4:05/03/07 22:26:08
「いつ、どこでだ?下手人は?」
ザビエルの持つ焦りという流行病を移されたように、矢継ぎ早にロヨラが詳細を聞き返す。
「時間は丁度、お前との連絡が途切れた頃だな」
「元親と会っている時か・・・だから、この時間帯は良くないと言ったのに」
苦虫を噛み潰したような表情をしながら、頷いて先を促す。
「場所は3-G地点、下手人は29番と58番だ。」
「それも丁度私が行ったあたりか・・・で、状況は?」
色々な偶然から、ありえた未来を想像しつつも、先に職務を果たさんとする。
「最悪だ。狼の調達で人数を減らしていたとは言え、食糧2班の作業員は全滅。武器は丁度今、仕込み爆弾で処理する信号を送っている所だが・・・」
先程の報告作業員の受け売りで、ザビエルは話す。ただ、抑揚がある分、深刻な印象をロヨラに与えた。
「あと、トラックが奪われた。予備はあるし、まだ動いてはいないが、奴らも試行錯誤の末動かすかもしれん・・・大体はそれだけだな。」

三日間、つつがなく進行していたはずのこのゲームにヒビを入れられた。
それまではコーヒーを飲んでいても、問題なく進んだはずのこのゲームにだ。
その事はエリート意識の強いロヨラに激情を起させた。
しかし、自ら出向いて殺す事は出来ない。それがルールである限り。
それに、不意をつかれたのだろうが、作業員を全滅させてしまう実力の持ち主を相手にするのは、圧倒的な武器を持っていったとしても冷や汗物である。
最悪、自分が返り討ちに遭う可能性すらある。
ロヨラはまるで殺された作業員の肉親のように復讐に燃え、いかにしてゲームを問題なく進行させつつ、29番と58番の二人に天誅を下すかを考えた。
326突然の放送 3/4:05/03/07 22:31:41
数分間の沈黙の後、耐え切れなくなったザビエルが口を開いた。
「おい、ロヨラ、どうするんだ?」
「確か、例の狼が高速ヘリで届いたらしいな」
いたずらを思いついた子どものように、にやりと笑みを浮かべながらロヨラはザビエルに確認する。
「ああ、この場所がばれんよう、擬装も完璧にされて丁度、届いてるはずだ」
嫌な笑みを浮かべるロヨラに困惑しながらもザビエルは荷物を受け取らせに行った作業員のことを思い出して答える。
「それでいい、で、使えるのか?」
「ああ、ジッとしていたから、空輸される時に異常をきたしたのか、と近付いた作業員が腕を食いちぎられて死んだくらいだ」
先程は輸送作業員全滅の話にとらわれて、気にも止めなかった報告をロヨラに伝える。
「それでいい」
ロヨラは満足そうに唇の先を吊り上げさせて、高笑いをする。狂ったような響きが部屋の中に響いた。

「ザビエル、これは緊急事態だ私は放送・連絡室へ行く・・・それと、予備のトラックはまだ出さなくてもいいぞ」
ロヨラは決めていた台詞をザビエルに言い残すと、足早に部屋を去った
327突然の放送 4/4:05/03/07 22:33:12
・・・ガガッ
参加者の諸君に緊急の連絡だ。
大変残念な話なのだが、我々の食糧輸送班を襲い、皆を全滅させようと企んでいる参加者がいる。
そのため、次の食糧配布は二箇所になる。
そして、この行いへの罰として予定より早く例の狼を放つ事にした。
くりかえす。次の食糧配布は二箇所になる。予定を繰り上げて狼を放つ。

くれぐれも我々に刃向かおうなどとは考えるな。以上だ。
・・・ブツッ

いつもの天皇の声ではない短い放送が流れた時、参加者が、天皇が、ザビエルら作業員が皆、驚いたのは言うまでも無い。
そして、この放送がこの狂った時を刻む世界に重大な影響を与える事となった。
328無名武将@お腹せっぷく:05/03/08 13:01:25
>>325>>326の間に次の文を入れるのを忘れていました。
どうか脳内補完してください。

見当もつかず、ロヨラが聞き返す。その様子にザビエルも怒りを捨てて、任務を優先した。
「食糧輸送作業員が参加者に殺られた」
端的な言葉は、しかしロヨラを驚かせるには十分すぎた。
329無名武将@お腹せっぷく:05/03/09 12:58:08
>>300-308はここに入ります。

【24番 遠藤直経 死亡】
【残り33人】
重秀は心を躍らせながらトラックの内部を探っていた。
「いやぁ、全然動かんな。そっちはどうだい?お、この干し肉美味いぞ」
食料にありつきながら珍しそうに車内を、そして運転席を物色する。どちらが運転する席かなんてことなど、もちろん二人に知る由はないが。
「こちらも同じだ。と言うよりそれらしき仕組みすら見つからぬぞ。やはりそちら側に座る人間が動かすものではないか?」
「うぇ?俺かい?うーむ、今ひとつ仕組みがわからんな、おお、この干し柿も美味い!」
「先ほどの連中は、お主の目の前にあるその丸い輪っかのような物を動かしていたようだぞ」
ハンドルを指差し昌景はそう言った。
「この蜜柑はもう一つだな。やはり蜜柑は紀伊のが一番だ。おお、こいつか。さっきから弄り回しているんだが、全く変化なしだ。わっはっはっは」
「全く気楽なものだな、まあよい。焦っても仕方あるまい。わからないことが多すぎるな」
「はっはっは。おうおう。そうだぞ。あんたも食うのに没頭しちまいなよ。なにしろ初めて会った時以来の飯だぜ。美味いぞ!」
「お主の陽気さが羨ましいわ・・・、お、これは美味い!」
昌景も久しぶりにありつく握り飯に、少々感動気味だった。中には好物の鮭が入っていたのだ。

二人が程なく食事を終える頃、予定のされていない聞き慣れぬ声が辺りに鳴り響いた。
――・・・ガガッ
参加者の諸君に緊急の連絡だ。
大変残念な話なのだが、我々の食糧輸送班を襲い、皆を全滅させようと企んでいる参加者がいる。
そのため、次の食糧配布は二箇所になる。
そして、この行いへの罰として予定より早く例の狼を放つ事にした。
くりかえす。次の食糧配布は二箇所になる。予定を繰り上げて狼を放つ
くれぐれも我々に刃向かおうなどとは考えるな。以上だ。
・・・ブツッ ――


この声は天皇のそれではない。二人の顔が、すっと引き締まる。
「なんということだ・・・」
「かぁ〜〜〜〜!!こっちの動きは筒抜けかよォ〜!上手いことやって天皇の喉元に迫ってやろうと思ってたのによォ〜!」
「いや、そのことよりもだ。狼が放たれたことのほうが気懸かりだ。恐らく我らの行いに腹を立ててのことだろう」
「狼なんぞより、人間の方がよっぽど怖いさ。たかが獣相手に生き残れないようじゃ、人間相手にここからは生き残れまい。いちいち悔いても仕方ないぜ」
「うむ・・・、しかし、こちらの動きを知られているとなると、今後、如何にしても後手後手に回らざるを得ないな」
「クッソ、つくづく面倒だな。しかも御大層なことに、お仲間もいるそうで」
「先ほどの声の主か・・・、やはり向こう側の人間と考えるのが妥当であろうな。こちらもそれなりに同志を募らねばならぬな」
「同志か・・・、幸盛や将軍様はどうしてんだろうな。上手いこと無事でいてくれりゃいいけどな」
彼らは願っていた。度重なる主君の死を乗り越えた友との再会を。そしてあの時自ら後ろを守ってくれた将軍との再会を。
突如、トラックのドアが開き、息を切らした見知らぬ男が切羽詰った様子で叫ぶ。19番磯野員昌だ。
彼が走ってくる足音は全てトラックのエンジン音にかき消された為、車内の二人はその男の存在に全く気づかなかったのである。
「助けてくれ!!」
「おわ!!なんだオッサン?何者だ?」
突然の来客の叫び声に、驚き飛び跳ねる重秀を見た員昌は、更に驚いた。
「ぎゃぁぁ!!いや、すまん!助けてくれ!」
気が動転したその男は、間髪入れずに叫び続ける。
「突然どうしたのだ?お主は一体?」
「牛ほどもある狼共に追われておるのだ」
(げ!俺達のせいだ・・・)
申し訳無さそうな顔で昌景を見つめる重秀。
(うむ・・・)
苦々しそうな表情で応えるしかない昌景であった。
「お、おうオッサン!俺達に任せときな」
謝罪は事態を終えてからと決意し、重秀は銃を片手にトラックから外に出た。
「うむ。後ろで隠れておるのが良かろう」
言いながら昌景は員昌を車内に避難させる。トラックの中に入ると、員昌は心から安堵した様子を見せた。
「かたじけない・・・」
「いや、こちらこそ申し訳ない・・・」
「??」
「重秀、気をつけろ」
トラックの窓から顔だけ出して、声をかける昌景。もうすっかり車内の居心地に慣れたようだ。
「来た来た。やつらだな・・・」
重秀の視界に、恐ろしい唸り声を上げながら数匹の狼が迫るのが映っていた。
「う・・・、うぉぉ・・・、やつらじゃ・・・」
一旦は落ち着きを取り戻したものの、執拗に追いかけられた恐怖そのものの存在であるそれを、再び目にした員昌の不安は言い知れぬものであろう。
「落ち着きなされ。あやつの腕は確かだ。」
その不安を拭い去るべく言葉をかける昌景であった。
(あいつが親玉だな・・・)
神経を研ぎ澄まし、群れの中でも一際大柄の狼に照準を当てる狙撃者。
「グアァァァオォォォォォォ!!!!!!」
本能のまま血肉を欲して襲い掛からんと迫り来る野獣達。
冷静と集中、暴走と爆発、両者対極のような位置に居た。
「ズドーーン!」
闘志を剥き出しにし、全速力でこちらに向かってくる狼の群れの中で、それらを率いる一番大きな、恐らくリーダー格であろうその銀狼を一撃で撃ち抜く。
全速力で走っていたこともあって、銀狼は物凄い勢いで前に崩れ落ちた。それを見た周りの狼達は恐れ戦き、その場に凍りついた。
「ぬはははははは!!ガァァオオオォォォォォ!!!!」
獣を真似た勝利と威嚇も含めた雄たけびを狼達に投げつける。
所詮集団行動を習性とする狼である。一瞬で我がリーダーを骸にしたバケモノの存在は彼らの恐怖そのものを意味する。そのバケモノの雄たけびを耳にしたのだ。彼らは、更なる恐怖により忽ち戦意を喪失した。
ややあって一目散に来た道を引き返し森の中へと逃げていった。中には「キャン・・・」という情けない声をあげる者や、糞尿を漏らす者までいた。
「ふははははは!人間様にさからおうなんて百年早いぜ!」
「ご苦労だったな」
「・・・。」
「ようオッサン、どうした?もう安心だぜ」
「・・・す、凄いな・・・、お主ら一体何者なんじゃ・・・?」
「おお、申し遅れた。拙者、武田家家臣、飯富昌景にござる」
「すまねぇオッサン、もうちょいそっちに詰めてくれ。どっこらせっと。俺は雑賀衆の鈴木重秀ってんだ」
「ハッ・・・、すまぬ、拙者は浅井家の磯野員昌と申す。先に名乗り出ずに失礼致した。どうも気が動転してしもうて・・・」
「はっはっは、気にすんなって。後ろに積んである食い物でも食って落ち着いてくれよ」
「何?先の緊急の放送を知らぬのか?」
「むぅ・・・、面目ない・・・。どうやら食料のことに関して、仲間内で言い争って居る内に聞き逃してしまったようだ・・・」
「う、うむ・・・、ともかく事の詳細は今お話した通りだ。申し訳ない」
「とんでもござらぬ。窮地を救っていただいて有り難き事にござる」
「まぁ、その、なんだ・・・、早く仲間と再会できるといいな、はは・・・、ははは・・・(だめだ・・・、俺はやっぱりこういう雰囲気は苦手だ・・・)」
「おお!そうであった。それではわしは約束の場へと向かいまする。世話になった。感謝申し上げる」
「お?なんだ?もう行っちまうのか?飯でも食ってきゃいいのに」
「仲間と無事合流できたなら、その後はどうなさるおつもりだ?」
「うむむ・・・、いや、そこまでは考えておらなんだ、なにしろ突然散り散りになってしもうたからのう・・・」
「それでは、もしよろしければ我々にお力を貸していただけぬであろうか?」
「おお!それは願っても無いことでござる。」
「ありがてぇぜ。オッサン、生き残れよ」
「後ろの食料は好きなだけ持ってゆくがよい。仲間と無事再会できることを祈っておるぞ。さらばだ」
「それではこれにて失礼致す」
員昌は急ぎ人らしい手短な別れを述べて、その場を後にした。
「あーあ、行っちまったな」
「うむ。律儀に、食料を一つしか持っていかなかったな」
二人は遠ざかる男の後姿と、後ろの荷台に積まれた食料を交互に眺めながら再び会話を始めた。
「そういや、コイツらどうすんだい?このまま俺達が独占するわけにもいかんだろ?」
「うむ。そうだな。残った糧食はこの場に置いていくとしよう」
「うぇ!?全部かい?一個くらいは余分に頂戴しようぜ・・・、あ!ほら!誰か新たに同志が加わるかもしれねぇじゃねぇか。な?」
「うーむ・・・、まあ・・・、一理あるな・・・、はたまた幸盛殿との再会に備えておくのも道理かもしれぬ・・・」
「お!いいねぇ。アンタァ話の分かる男でよかったぜ。うっはっはっは。おいどうだ?一個と言わず二個くらい・・・」
「却下!」
「・・・ケチ。まあそれはさておき、早いところこいつを動かしてみたいもんだな」
話しながら重秀は、荷台によじ登り食料の入った荷物を三つ、その場に置き、一つを車内に持ち運んだ。
「うむ、しかし目ぼしいところは探ってみたつもりなんだがな・・・。これでも試行錯誤が足りぬものなのか」
「しっかしよぉ。こんなデカブツがとんでもねぇ速さで動くんだなぁ。なんだか楽しくなってきちまうぜ」
「全く呑気な・・・、む?お主の足元に何かがあるようだぞ?」
「うん?おお、こんなところにも変なもんが付いてんだな。不思議なもんだ」
「どうにかならんか?」
「ちょっと待ってろ。今いじってみr・・・!!!!!おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「ぬおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!!!!」
突如トラックは物凄い勢いで、唸り声を上げた。と同時に鉄砲弾のように走り出した。
大地には、激しく抉れた車輪の跡と、舞い上がった無数の砂埃を被った三つの荷物が残されていた。
「うおぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!」
「おあああああ!!!!!ととと、と、止め、止めろ止めろおぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!!!」
「ど、どう、ドウスンダァァッァーーーー!!!!!!!!」
「足を離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!!!!」
「な、なるほどおおぉぉぉぉおおお!!!!!」
彼らにとって、尋常ではない状況の中での懸命で迅速な判断にトラックも気を利かせたのだろうか。段々と速度を落とし、やがてはその場に止まった。
「はぁ・・・、はぁ・・・、死ぬかと思ったぜ・・・」
「う・・・うむ・・・、なんとか、止まった・・・、ようだな・・・」
「こ・・・、こいつを踏み込むと動くようだ・・・、ははは・・・、いきなり踏んだら駄目みたいだな・・・」
「うむ・・・、この身で思い知ったな・・・、ふぅ・・・、ふぅ・・・」

突然の窮地に仰天した後、少々時間を置いて、草臥れた派手目の上着を整えながら重秀が呟く。
「よし、今度はゆっくり踏んでみるよ」
「お・・・、おい、ゆっくりとだぞ?穏やかに頼むぞ・・・」
さっきの出来事がすぐさま蘇り、焦りを抱く昌景であったが、トラックは先ほどとは打って変わって申し訳程度の速度で動いた。
「お、動いた。それもゆっくりと」
「うむ!ははは、い・・・、いや・・・、その、良き乗り心地だ・・・」
「おお!隣のこいつを踏むと停まるようになってるらしいぞ」
「お・・・、おい、だからって急に停まるなよ?そっちも踏むときはゆっくりと穏やかに・・・」
「おうおう!わかってるって」
「それは何の為のものなのだ?」
「お、これで進行方向が変わるようだ」
――しばし練習中―――

「わっはっはっは。楽しいなぁ!」
「うはははは!素晴らしい乗り心地だ!」
この狂った余興に在る中で、二人はそれに似つかわしくない和やかで楽しいひと時を過ごしていた。
しかし、それも長くは続かず、運命の渦中に巻きこまれることとなる。
「・・・おい、あそこに誰かいるぞ」
ふいに深刻な声をあげる重秀。
「む?どこだ?」
「走ってるな・・・、また狼の仕業かな?」
「うーむ・・・、またか・・・」
「ま、いいさ。いちいち気にしちゃもたないぜ。どれ、いっちょ腹ごなしといくか」
「むむ!!あれは!」
なにかに気づいた様子で突然トラックから外に出る昌景であった。
「なんだ?知り合いか?」
まばたきを忘れ、いつになく強張った昌景の表情にわけがわからず重秀も外へと出る。
「長尾景虎殿ォーーー!!!」
「な、なにぃぃー!?あれが軍神様か!」
「む、小生を呼ぶのは・・・?」
「こちらにお逃げくだされ!」
「ふむ。かたじけない。おお!お主は、武田家の勇敢なる若侍ではないか!久しいのう」
(敵同士なのに随分と仲良いみたいだな・・・、よくわからん)
「はっ!覚えておいでですか。光栄でございます。して、狼の類に?」
「いや、そんな生易しい者ではない。む、これはかの“とらっく”とやらではないか。おお!そうか。それでは先の放送の者が言っておった襲撃者とは、お主らのことであったか、・・・と、失礼。一方的に話しすぎたようだ」
(ははは、どうやら軍神様はちゃんと放送を聞いてたみたいだ)
にやける重秀は嬉しそうに話しかけた。
「おう。アンタと一緒で俺達までお尋ね者になっちまったぜ。わっはっは」
「ふふふ、愉快な奴じゃのう」
「この者、元来より礼儀というものを知りませぬ。どうかお許しくださりませ。それより景虎殿、大丈夫ですか?見たところだいぶ疲労が溜まっておられるようですが」
「うむ。彼此半日くらい動きっぱなしだ。正直きついな。であるから恥を晒して退いておるのだ」
「げげっ!半日動きっぱなしって・・・、アンタとんでもねぇ体力してやがんだな・・・」
「なんと!ご無理をされては、如何に景虎殿程のお方とも言えど、お体に障ります」
昌景と重秀は一斉に驚きの声をあげる。
明け方から現在にかけて、北条綱成との死闘、そしてそれに横槍を入れて尚追ってくる者との鬼ごっこに明け暮れていたのである。普通の人間ならば呼吸困難に陥り、まともに話す事等不可能である。息を乱さず平然を語ることが出来るのは、この男の真の強さからだろう。
「よっしゃ。ここは俺に任せな。昌景サンよ。アンタは軍神様を安全な場所まで連れてってやってくれ。このデカブツはさっき俺がやってたようにすりゃなんとかなるだろ」
「すまぬ。お主には世話になりっぱなしだ」
「若者よ。初対面にして面目ない。この長尾景虎、感謝申し上げ奉る」
「おう。気にするな。無事戻ったら改めて名乗るぜ。昌景サンよ、軍神様を頼むぞ。なんとか味方に引き入れてくれ」
「うむ。案ずるな。話の分かるお方だ。それよりお主、その銃だけでは弾に限りがあるだろう。これを預ける。だがきっと返せよ」
昌景は願いを込めて、吉岡一文字を重秀に手渡す。
「おう。すまねぇな。遠慮なく預かるぜ」
「すぐ追いつけよ。それでは後ほどな」
あえて死ぬなよとは言わずに相棒と別れる昌景であった。
「おう。あれはゆっくり踏むモンだぞ。いきなり踏んだらさっきの二の舞だ」

――ブォォォォーーン!!

物凄いエンジン音と砂煙を残し、トラックはその場からすっ飛んでいった。
「・・・だからゆっくり踏めって言っただろうが・・・」
苦笑を浮かべた重秀は、随分前から自分の後方に立ってその時を待っていた男に意識を向けた。
「よう。待たせたな」
そして後ろの人物、織田信長に背中を向けたまま声をかける。
「別れは済ませたか?若造」
信長の手に握られた剣は重秀に向けられていた。
「おー、怖い怖い」
重秀は、おどけて両手を上に上げ、信長のほうを向いて見せた。
信長の視線は一瞬たりとも重秀から離れず、重秀も信長の視線から逃れようとはせずにいた。
「正直アンタとやりあう理由は無い。あの軍神様とアンタとの間に何があったのかも知らん。どうしてもやるのかい?」
「そんなことはどうでもよい。お前が例の物盗りか」
信長が珍しく目の前の男に興味を示した。
「言うじゃねぇか。俺がその物盗りだってんなら、どうなるんだい?」
「ふっふっふ・・・、うぬの目的はなんだ?」
不敵な笑みを浮かべながら信長は問う。
「ここから抜けることさ。必要なら天皇さえ亡き者にするつもりだ(十中八九避けては通れぬだろうがな)」
「ふはははは。うぬ、面白いことを申すのう・・・、奪ったあの乗り物で海を渡るか?」
「・・・不気味な野郎だぜ、一体何考えてんだか・・・」
「余の目的も、うぬと一緒だと言ったら信じるか?ふっふっふ・・・」
信長は、剣だけでなく、左手に所持していたデザートイーグルの筒口までも、重秀に向けた。
「剣と銃を一緒に向けながら言う台詞では無いな」
「ふははははは、それもそうだな」
――ズガーン!
言い終えるより早く、信長はいきなり発砲した。
「尤も、余の場合は、優先順位は異なるがな」
「けっ、天皇を殺すことが第一目的ってかい?どう見ても、単に殺しを楽しんでいるようにしか窺えんがな」
「ふふふふ・・・」
――ズドーン!!
「ほう・・・」
――ズドーン!!
「うむ・・・、銃弾を避けるか。珍しい者も居るようだな」
落ち着き払った様子で信長は呟く。
「へっへっへ・・・、相手が悪かったな。アンタの腕がいくら優れていても、始点、角度、斜線軸を見切るくらい造作も無いぜ(とは言え、避けっぱなしじゃ疲労は溜まるばかりだ・・・)」
フェイクの無い弾など、自分には通用しないと彼は確信していた。・・・あくまで体力の続く限りは、という条件付きではあるが。
照準を定める時の集中力、そして引き金を引く瞬間に生じる衝撃などのことから、射撃の際にフェイントを入れるのは熟練の鉄砲使いとて不可能に近いだろう。連射などもってのほかである。
この鈴木重秀ただ一人を除いて。
「・・・なるほど、それならば」
「なに!」
重秀は絶句した。
なんと信長は、未だ銃口の煙収まらぬデザートイーグルを、恐らく奥の手として懐に忍ばせておいたベレッタ共々あろう事か、その場にあっさり投げ捨ててしまったのである。
「どういうつもりだ!」
「銃弾が効かぬ以上、この様な物は不要だ。うぬにはこいつを馳走してやろう」
正宗の剣先を重秀に向けて、信長は言い放った。
「・・・随分潔いじゃねぇか」
(正直助かったぜ・・・、あのまま銃弾を避け続けるのは流石にキツい・・・)
「遠隔手段で殺すには惜しいでな。ふっふっふ・・・」
「・・・貴様、わかっていたのか」
そう。信長はわかっていたのだ。
あのまま数十発も引き金を引き続ければ、いかに重秀が鉄砲術に長けた者であっても永遠に回避し続けるのは不可能である。
いずれ体力に限界が訪れ銃弾の餌食になるか、仮に信長の所持する全てのピストルの残弾が尽きても、乳酸の蓄積され、動きの鈍った者を刀の錆びにすることなど造作も無いであろう。
「・・・てめぇ、楽しんでやがるのか?」
「ふっふっふ、うぬ程の剛の者と出会ったのは初めてだ。楽しいなぁ・・・」
「・・・あ?いまいち理解できねぇ野郎だ」
「ゆくぞ!」
戦闘態勢に入った信長は、今にも襲い掛からんとしていた。
「ほれ」
その信長を尻目に重秀も同じように、持っていた得物の全てをその場に投げ置いた。
「む!?」
「さて、遠慮なくかかってきやがれ」
「どういうつもりだ・・・?」
先ほどの重秀と全く同じ言葉を同じ立場で口にする信長。
「てめぇなんざ素手でも勿体無いくらいだ。どっからでもかかってきやがれ」
「・・・ふざけているのか?」
しかし彼の表情からは、決してふざけている様子は窺えない。挑発しているようにも見えない。
「この剣はな、粗末な物だが、友から拝借した大事なものなのだ。貴様のような薄汚れた殺戮者の血で汚すわけには行かん。それだけだ」
「ほう、うぬには余が薄汚れて見えるか。ふふふ、若いな・・・」
そう言って信長も正宗を置く。
「良いだろう。それなら貴様と同じく拳にて存分に語るとするか。これならうぬも納得するか?若造よ」
「・・・ったく、若造若造言いやがって、俺は強いぞ。後悔するなよ!(尤も、貴様も恐ろしく強いんだろうがな)」
「ふふふ、うぬこそな。ゆくぞ!!」
「うおおぉぉぉぉーーーーーーー!!!」
暖かい日差しが大地をやさしく照らし、涼しく柔らかなそよ風が木々を揺らす。小鳥は囀り、野兎やリスは餌を求めて忙しなく動き回る。
のどかで平和そのものの情景の中に、静寂を切り裂く激しい拳撃音が響き渡る。

重秀の恐るべき速さの拳に、信長の激しい突きが交差する。幾度となく激しく衝撃を与え、そして受けているはずなのに、両者ともに疲労の色は全く無い。
精神が肉体を上回る。正に互角の戦いがそこにあった。
更に仕掛ける重秀。信長のガードが上段に集中したのを見逃さず、腹部へと渾身の鉄拳を放つ。
信長は瞬時に腹筋に力を込め、そして後ろに仰け退くことでダメージを最小限に抑える。
「ふっふっふ、うぬ、できるな」
「アンタもな」
お返しとばかりに信長の疾風の如き蹴りが重秀を襲う。
(む!入ったか!?)
しかしそれも束の間、体制を崩しながらも重秀は腕を伸ばし、膝蹴りを決めるべく信長の顔を掴もうとする。
(かかった!!)
絶好のチャンスだ。信長の頭を掴むことに成功した重秀はそのまま膝蹴りを決めようとする。
しかし次の瞬間驚くのは重秀だ。
頭を掴まれた体制から信長はなんと、自分の頭を掴んだ重秀の腕を更に掴んで関節を決めようとする。
足蹴りでなんとか信長から距離をとって逃れる重秀だったが、好機から一変、窮地に立たされたことに驚きを隠せないでいた。
一瞬のその隙を逃さず、信長は重秀に迫った。完全に隙を付かれ、距離を縮められ劣勢に立たされるかと思いきや、
助走も無しに、重秀は空中へと身を反転し、信長の後ろを取る形となった。
重秀はそのままスリーパーに入った。しかし信長も足を後ろに振り上げ振りほどく。
体制を崩した重秀の襟元を掴んで背中から地に倒れこみ、片足を相手の腹部に当てて反動で投げ飛ばした。いわゆる巴投げである。
大きく投げ飛ばされた重秀だったが空中で体制を整え見事に着地する。
「ふふふ、見事だ」
「・・・焦ったぜ」
「どうだ?これでも余のことを薄汚く見えるか?」
「げ・・・、アンタそう言われたこと根に持っていやがるのか?執念深い野郎だな」
「ふっふっふ・・・、うぬ、名はなんと申す?」
「鈴木重秀だ」
「ほう、余は織田信長である」
「げ!アンタが信長だったのか・・・(道理で強いわけだ・・・)」
「余とここまでやりあえたのは、うぬが初めてよ。先ほどの益荒男も相当な使い手と見たが、退くことを選びおった」
「そりゃあ、てめぇ中心に世の中回ってるわけじゃねぇからな」
「この次は、得物を携えてやりあいたいものよ」
「なに!逃げるのか!?」
「死に急ぐな。うぬはここで死ぬべき人物とは思えん。この勝負、日本の地で改めて決しようぞ。それまでせいぜい首を洗って待っておれ」
「な、なに!?おい、どういう意味だ?」
置いた武器を無言で拾い上げ、その場を後にしようとする信長だった。
「協力する気は・・・、あるのか?」
重秀は、言ってすぐ後悔した。どう考えても、目の前に居るこの男が自分達の考えに同調するとは思えなかったからだ。
そして彼は意外な言葉を耳にする。
「鈴木重秀、再びうぬに出会った頃にはその答えも出ているであろう」
言いながら信長は歩き出した。
「がら空きの背中を見せ付けやがって・・・、後ろから撃たれることを疑わんのか?」
「武士の礼儀を知らぬでもあるまい」
「・・・やっぱりよくわからねぇ男だぜ」
(だが・・・、拳で語り合っていた時だけは、あいつのことを少しわかったような気がする。薄汚れた殺戮者か・・・、俺の見る目も曇っていたようだな・・・、奴も一端の武人か・・・)
遠ざかる背中を見送りながら重秀は物思いに耽っていた。
「よし!さっさと昌景サンのとこに戻るとするか!軍神様、待ってろよ!」
重秀は、地面に大きく残ったタイヤの後をひたすら辿って走った。そして、先ほど拳を交えた男との再会を、彼には内緒で願うことにした。

――空はどこまでも青かった。
【19番 磯野員昌 『呉広』】3-Gから出発。3-Iの民家を目指し移動

【29番 飯富昌景 『オーク・ダブルアックス』『フルーレ』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(1本)』『十手』】共に2-Eから発車
バックの運転方法は理解していません。あくまで前進運転のみ可能です。

【58番 鈴木重秀 『吉岡一文字』『USSRドラグノフ』(残り4発)『スモールボアライフル 』(残り14発)】2-Eからトラックの後を追っています

【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE(残弾1発)』『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】2-Eから再び森の中へ移動

なおトラックはオートマ仕様とします。ガソリンは1/5程消費しました。残り4/5程です。
「くっ、某としたことが情けない・・・」
我ながら頼りない足取りに、幸盛はウンザリしたように立ち止まる。
連日続く戦闘、ろくな食べ物を口にできないことによる空腹、不眠からくる疲労、そしてなにより晴久・誠久の二人の死。
これら一つ一つが、確実に幸盛の体を弱らせている要因になっていた。
幸盛は、自分の思うように動いてくれない足を殴りつけ、なんとか歩き出すが、一向に歩は弾まない。
「某としたことが・・・」
思わず、同じ事を呟いてしまう。
このまま歩き続けるのを諦めた幸盛は、その場で大の字に寝転がってしまう。
今の幸盛を襲おうと思えば、誰でも簡単に襲うことができるだろう。
それほど無防備な格好で、幸盛は寝そべっていた。
「因果なものだ・・・。主君ら二人もが、我が宿敵と決めていた毛利の者どもに討たれるとは・・・」
霧が晴れ、ようやく晴れ間が見え出した空を眺めて、幸盛は一人涙した。
「辛いか?」
一瞬にして、幸盛の全身に緊張が走る。
不意に声がした方とは反対側に跳ね起きると、すかさず昌景から貰ったエペを引き抜く。
相手との距離は一間半。十分に相手の顔が見て取れる。
「あ、貴方は将軍様ではございませぬか!?」
そこには将軍・義輝が立っていた。
「ほう、疲労困憊の身とはいえ、なかなかの身のこなし、恐れ入った」
立ち姿同様、さりげない口調で義輝は続ける。
「山中殿だな?余は、そなたを追って参った」
これがもし、少しでも不自然な動き・口調だったら、幸盛は動かぬ体に鞭を打ち、敵わぬまでも挑み掛かっていったかもしれない。
この数日の戦闘で、『殺られる前に殺る』ということを実践しない限り、容易には生き残れないことを幸盛は嫌というほど体感している。
それが、義輝の自然で、さりげない仕草に触れ、機先を制されたような形になった。
「某を追ってきた?」
危険はないと判断した幸盛は、エペを鞘に収めながら義輝の言ったことを反芻した。
「フム、そなたに一言、謝らなければならぬことがある。・・・他でもない、そなたの主君を殺したのは余だ」
幸盛は自分の耳を疑った。今の今まで、晴久を殺したのは隆元だと思っていた。実際に自分はその現場を目撃している。が、義輝は自分がその下手人だと言う。
疲労が極限に達しようとしている幸盛の頭では、なにがなんだか訳が分からなかったが、仮に義輝の言ったことが真実ならばこれは見逃すことはできない。
「今の言葉に偽りはございませぬな?事と次第によっては義輝様、貴方といえど、某は一戦も辞しませぬぞ」
再びエペの柄に手を掛けた幸盛の顔は朱に染まっており、義輝の顔を穴が開くほどに睨みつけている。
「偽りではない。余の不徳が招いた結果だ。余が・・・余があの時、あの妖しき薬を谷川などに捨てなければ、このような事態が起きることもなかった。すまぬ、許せ」
「妖しき薬?」
その言葉に、幸盛は柄を握る手の力を緩める。
「その薬を服用すると、精神になんらかの影響を及ぼし、やがては発狂し、周りの者を見境なく襲いだすという厄介なものだ」
「それでは、隆元がおかしくなっていたのもその薬のせいで?ならば、義輝様には何の落ち度もないではありませぬか」
「いや、余が始末を怠ったゆえに起きた惨事。山中殿、すまなかったな」
深々と頭を下げて詫びる義輝の誠実な態度に、幸盛は『この男こそ、信ずるに足る者』と心の中で思い決めた。
「分かりました。事情が分かれば某は義輝様を責める理由はない。ささ、お顔をお上げくだされ」
「よいのか?斬りたければ斬っても構わんのだぞ?」
嘘ではなく、本心からそう思っているのは幸盛にも分かる。こうまでされて、幸盛が義輝を怨むことがあろうはずがなかった。
「いや、某が義輝様に刃を向けるつもりは毛頭ない。それはお断りいたそう。それに、刀も抜かず、戦意のない者を斬っては武士がすたる」
「・・・そうか。ならばこれ以上言うのは止そう。しかし、このまま別れては余の気がすまぬ。せめて何か、余に出来る事はないのか?」
「出来る事、でござりまするか・・・。・・・一つだけ、ないこともありませぬ」
そう言うと、幸盛は言葉を濁してしまった。
「なんだ、遠慮は要らん。申せ」
ならばと、幸盛は自分の存念を義輝に語った。
「某は帝を倒そうと考えておりまする。そもそも我が主君達が死んだのも、他の方々が死んでいくのも、すべてはあの方がかような事を考え付いたのが事の発端。
ならば某は帝を討とうと思い定めましてござる。義輝様には何卒、その時にお力添えいただければと」
「なんだ、そのことか」
義輝は大笑した。
「某はおかしなことを申しておるのでしょうか?」
自分の考えを笑われたのかと、幸盛は心配した。
「さにあらず。実はな、余もその口よ。昌景や重秀らと共に、大悪を斬ることを決意しておるのよ」
「なんとッ!すでに昌景殿、重秀殿のことを知っておられるか!?それは話が早い。義輝様が付いていてくれれば、百万の軍が付くよりも心強い」
幸盛は義輝の手を取らんばかりに喜んだ。
これでこの悪魔の所業から開放されるのではないかと、一筋の光明を見た思いがしたのである。
「はは、そう言ってもらえるのは嬉しいが、あまり余を買い被りすぎるなよ。いざ事が起こった時に、何の役にも立たなかったら立つ瀬がないからな」
「わっはっは。では義輝様にはあまり期待しないでおくとしよう」
「むう、それはそれで淋しいのう」
幸盛も大笑した。こんなに笑ったのは何日ぶりなのだろうか。早く、こうして笑い合える日がくればいいと思いながら、しばらく二人は大声で笑いあった。
「いやあ、楽しかった。――しかしここで話し合っていても始まらぬな。そろそろ行くとするか?」
義輝は幸盛を誘うが、当の幸盛はまだやり残した事があると言って義輝の申し出を断った。
「やり残した事とは?」
「はい、某は二つの約束をしておりまする。一つは晴久様より決して死ぬなとの事。いま一つは、誠久様より我が無念を晴らせとのこと。
某は帝を討つ前に、怨敵毛利の者どもを殲滅せねばなりませぬ。元就・隆景の首を誠久様の墓前に供えぬ限り、某は義輝様と往くことは出来もうさぬ」
それを聴いた義輝は渋い顔を作った。
「それは如何であろうか?そなたは先程、『すべては帝がかような事を考えたのが事の発端』と申したでないか。さればそなたの怨敵は毛利ではなく、帝その人ではないか。
そのようなくだらぬ私闘は止めて、余と共に昌景達と合流するとしようぞ」
「・・・それはまだ出来ませぬ。如何にくだらぬ私闘と言われようと、某に後事を託した誠久様の無念を思えば、おいそれと義輝様と往くわけにはまいりませぬ。
某はまず毛利を討ち、その後、改めて義輝様の後を追わせていただく。それでどうでありましょう?」
「主君の遺命というわけか・・・。余があれこれ言おうと、そなたの思いは変わらぬのだな?・・・致し方なし、よきようにせい」
幸盛の顔には、その意志の強さがありありと表れている。さすがの義輝も、幸盛の宿願を止めることは出来なかった。
「はッ!では某はこれで失礼します。義輝様、無事でいてくだされよ」
「そなたもな」
義輝に辞儀を済ませると、幸盛は動かぬ体を引きずって、再び歩き始めた。
「無事でまた逢えればいいのだがな・・・」
幸盛の後姿を見送る義輝には、一抹の不安が拭いきれなかった。

【11番 足利義輝 『九字の破邪刀』】3-F 
【98番 山中幸盛 『エペ』】3-Fから移動 食糧少量 目的は毛利親子の首
350現在の状況 ◆IVgdXngJC6 :05/03/12 00:31:52
【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE(残弾1発)』『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】2-Eから再び森の中へ移動
【48番 斎藤朝信 『モップ型暗器』】3-C荒野から移動
【100番 和田惟政 『不明』】5-Cから出発
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾24発)』】現在地不明
【98番 山中幸盛 『エペ』】3-Fから移動 食糧少量
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀』】3-F 
【07番 浅井久政 『輝政』『S&W M36チーフススペシャル』】3-F森
【65番 長曽我部元親 『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾4発)』】2-H民家
【09番 朝比奈泰朝 『青龍偃月刀』】3-F森 目的、浅井久政の尾行。
【19番 磯野員昌 『呉広』】3-Gから出発 3-Iの民家を目指し移動
【58番 鈴木重秀 『吉岡一文字』『USSRドラグノフ』(残り4発)『スモールボアライフル 』(残り14発)】2-Eからトラックの後を追っています
【94番 村上義清 『槍・日本号』】3-Cから移動予定(武田晴信を殺る気満々で探しています)

交戦中
【54番 柴田勝家 『マテバ 2006M(弾切れ)』『備前長船』『H&K MP3(残弾13発)』】(右腕負傷)VS
【49番 斎藤義龍 『スプリングフィールド M1(弾切れ)』『スラッパー』】(4-Fにて交戦中。勝家は逃げるつもりです。義龍は追っています)
351現在の状況 ◆IVgdXngJC6 :05/03/12 00:33:00
【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『USSR AK47 カラシニコフ(残弾少量)』『ボーガン(5本)』『十文字槍』】&
【46番 小早川隆景 『グロック17C(残弾17+1発)』二人4-Cから3−Cの方へ進行中
【37番 北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】&
【39番 吉良親貞 『武器不明』『モトローラ トランシーバ T5900』】(共に3-B廃墟から移動)
【89番 松田憲秀 『スタンガン』『毒饅頭』】&【79番 北条氏照 『各種弾丸詰め合わせ』】3-Cから出発
【90番 松永久秀 『青酸カリ(小瓶に入ってます)』】&【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10本)』】5-H地点に休憩中だが、そろそろ敵探しに行くつもり。
【47番 斎藤道三 『オウル・パイク』『長曾禰虎徹』】&【44番 香宗我部親泰 『武器不明』】共に3-Eから出発
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】&【71番 長坂長閑 『無銘匕首』】&【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】&
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾21発)』】4-D森
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発)』『鉄槍』『矢(5本)』】& 【83番 細川藤孝 『太刀』】&
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』】(4-E森から3-D森の前に向かっています)
【29番 飯富昌景 『オーク・ダブルアックス』『フルーレ』】&
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(1本)』『十手』】共に2-Eから発車 バックの運転方法は理解していません。あくまで前進運転のみ可能です。

なお、島には数頭の狼が放たれています
352水杯 1/6:05/03/12 21:17:12
―この馬鹿主君を見限る潮時か・・・
長尾政景の死体の傍にうち捨てられていた寸鉄―こんな非力な武器でも、この島では立派な凶器になりうる。
―そもそも、自分が見つけて、「どうぞ」と言ったのではあるが、遠慮をする知恵もなかったのか、こいつは一も二もなくそれを受け取りよった
小物といえど、初めて得た得物だけに、それを取られたという事がこの男―松永久秀に殺意を芽生えさせたことは言うまでも無い。
元々利用した果てに殺すつもりではあったが、ついにその殺意が確固たる形を持ったものとなりつつあったのだ。
―長慶、次の食事の時間がお前の臨終の時だ
心の奥底に潜む怒りと野望を、人に気付かれぬよう秘めながら、久秀は袖口に隠してあった茶色い薬ビンの重さを確認した。

「長慶様、そろそろ小腹がすいてきましたな」
小一時間後、毒殺を考え始めてから、なかなか食事の話に結びつくような話を切り出さない長慶に耐えかねて、久秀はそう切り出した。
森の静謐な空気のせいか、それとも今から死を迎える者のいわゆる死相という物なのか、長慶の顔はいつになく引き締まっている。
久秀が言葉を掛けてから、その硬い表情が崩れるのにも少しばかり時間を要した。
―どうした?もしや、感づかれたか?
久秀の背筋に冷たい物が走る。だが、
「確かにな、言われると何故か腹が減ったような感じがする、一服しよう」
一動作遅れたとは言えど、いつも通り、人を疑うことを知らない子どものように返答する長慶を見て、「思い過ごしだ。」と大きくため息をついた。
「ちと一服する前に小便に行ってきます」
準備をするためにそう理由付けて、久秀が立ち上がる。
「久秀、足は大丈夫なのか?それに行った先で襲われでもしたら・・・」
それを見た長慶は律儀にも久秀を気遣う言葉を口にする。
―ふん、わしの事より、自分の身を案じるのだな・・・
「心配ご無用、ちぃとばかし待っておってください」
心と口とで全く別の言葉を長慶に掛けながら、久秀は茂みの中へ入っていった。
353水杯 2/6:05/03/12 21:18:36
鬱蒼と言うほどではないが生い茂る木の葉の影に、さほど離れていないはずの長慶の姿は既に久秀の視界から消えていた。
一応、来た方向を確認した久秀は耳を澄ませて追ってくる足音がないかを確認する。
幸い、久秀の耳に聞こえてくるのは、この島で起こっている血生臭い戦など対岸の火事とばかりにぴーちくぱーちく囀る鳥の鳴き声と、時折吹く風で梢がすれる音だけであった。
しかし、念には念を入れて、久秀は森の奥深くに踏み込もうとするが、よくよく考えると、デイバッグは長慶の元に置いてある。もしも迷ったりしたら、長慶を殺すどころではなくなるのだ。
一度、不安が頭をよぎると、これから殺す相手を前に自分の心を悟られぬよう押し殺していたネガティブな考えが次々と湧いて出て来た。

―今まで介抱してくれた主君だぞ?それを殺すことが出来るのか?
―果たして気付かれずに上手く事を運ぶことが出来るか?
―それにその後はどうするのだ?
考えられる、良くない方向に進む可能性が久秀の精神を削る。
しかし、久秀も並みの男ではない。そのネガティブな思考を一転させてポジティブに考え直す。
―確かに今、殺すのは得策ではない。よくよく考えてみろ、奴を殺したとして武器は寸鉄と弓、それにこの毒薬のみ。寸鉄と毒薬を上手く使えば懐に入り込んで殺すのも簡単だろうが、次に会う奴が騙せるとも、友好的とも限らん。
―それに、取られたといってもたかが寸鉄一つ。何をわしはこんなに熱くなっていたのだ?

頭を振って今までの怒りを捨て、体中に籠もった熱っぽさを振り払う。
久秀の中で出た結論は、『今はまだ様子見に徹して、まだ利用する』であった。
そう結論付けると、久秀の行動は早い。来た方向の道無き道を確認すると、危険な感じのするアーモンド臭を漂わせる薬ビンにさっと蓋をする。
蓋を閉める瞬間に少しだけ見えた薬の中身は、今まで後ろめたい思いがあったためか、少し減っていたように見えた。
354水杯 3/6:05/03/12 21:19:35
わざと、いかにも小便を終えてきたかのように袴のしわをなおすような音を立てて長慶がいる場所に姿を現す。
それを見て、切り株に腰を掛けていた長慶は立ち上がり、屈託の無い笑顔でそれを向かえた。
「遅かったな、心配したぞ」
行って長慶が久秀の肩に手をかける。
「申し訳ありませぬ、何分慣れぬ森でちと迷うて仕舞いましてな」
久秀も、長慶を殺すと決めていた時よりも、大分落ち着いたのか、用意されていた台詞はごく自然に口からこぼれた。
「これからは余り離れぬほうが良いな」
長慶もそれを信用したように大きく頷き、切り株のほうに久秀とともに歩く
―ああ、これからも離れないさ、お前が死ぬときまでな
笑い返す善良な家臣としての表情の裏で、久秀は抜け目ない策士としての独り言を、無邪気な笑顔を見せる長慶を頭の中で冷笑した。
そう思っているうちに、長慶に促されるようにして座った倒木と長慶が座っていた切り株の間には用意がいい事に、既にペットボトルに水が用意されていた。
というのも、久しぶりに生か、さもなくば死かという決断を迫られた久秀の喉は、心身相関の作用でカラカラになっていたのだ。
「さぁ、一服しようではないか」
丸太に浅く腰掛けた所で、正面の長慶が右手でペットボトルを
「ええ、そうしましょう」
申し合わせたように、杯を酌み交わし、乾杯する風に水の入ったペットボトルを軽くぶつける。
ひしゃげた壁に押し出されるように波立った水が爆ぜる様に小さな飛沫を上げ、ごぽんという味気ない音が響いた。
355水杯 4/6:05/03/12 21:22:12
だが、酌み交わした意味などないかのように、あくまで主君である長慶が口をつけた杯つまりペットボトルを久秀のほうに差し出す。
―飲めという事なのか?この島でなくともこのような慣習何の役にもたたんというのに・・・
心の中でブツブツ言いながらも、不承不承慣例に従って、今まさに口をつけんとしていたペットボトルを下ろし、差し出されたほうのペットボトルを受け取って、同じ様に久秀もごくごくと中身を飲む。
―一味神水ではあるまいし、こんな事をした所で、利用し、利用されるというわしらの関係は変わるはずなどなかろうに、全く間抜けな主君だ・・・
心の中でそう呟いた久秀は、その間抜けな主君が今どのような顔をしているかと、視線を下げた。
しかし、そこで久秀を見つめていたのは、決して間抜けな主君の瞳などではなく、かつて管領細川家を辣腕を持って支配した餓えた狼のような男の目であった。
いや、それだけではない、かすかに久秀が今までいたぶって、利用して、打ち捨てた人間に睨まれた時のその目の色もある。
―何だ、一体!?この表情、尋常の沙汰では無いぞ?
先程まで屈託なく笑っていた主君が、別人に替わった事に疑問を抱いた。
さらに奇妙な事に長慶は飲んだと思っていた水をおもむろに口から吐き出したのである。
その異常な光景を目にした瞬間、久秀は胃から込み上げる、焼けるような熱さを感じ、口の中におさまりきらなくなった鉄臭い液体が口を押さえていた手の中に溢れた。
それが血だと分かった瞬間、久秀は長慶の表情の変化と吐いた水が意味するところをようやく知ったのである
「何故だ!長慶、お前」
血反吐を森のしっとりとした地面に激しくぶちまけながら、久秀は声を上げる。
「久秀よ、策士という者はな、敵に感づかれぬようにして初めて策士たりえるのだ。貴様が蠍?笑わせるな」
その言葉に、先程までの明るさなど微塵も無い。あるのはただ、刀の身のように危うくて、重い現実を含んだ絶対の冷たさだけだ。
「お、おのれ・・・」
久秀は、先程、自分が決断をしていれば。と今更悔やみながら怨嗟の声を上げる。
―わしが思いとどまったから長らえた命を、よくも・・・
356水杯 5/5:05/03/12 21:23:20
「貴様は失格だ」
夜中の内に久秀の持っていた薬のビンからくすねた毒薬の量が少なかったのか、いまだ息絶えず血走った目でこちらをねめつける久秀を見て、長慶は立ち上がり、久秀を見下げるような体勢をとる。
「貴様は今、『何故』と疑問をもっているはずだろう、何故か?弟達の無念わしが知らぬはずがあるまい?貴様が仕組んだ戦で命を落とした一存、貴様の放った刺客に眉間を撃たれて死んだ義賢、貴様の讒言で信用を失い切腹させられた冬康。」
子どもの頃の長慶を慕う3人の弟達との過去を思い出しながら、長慶は続ける。
「義興も貴様さえおらなんだら、命を長らえていただろう、まだ戦も知らぬ子であったのにな」
子のない長慶の唯一の子・義興、この子の死はまだ記憶に新しかった。
「幸いにも、証拠を掴んで処刑する必要もなく、このような余興が舞い込んできた。実は儂も天皇の余興に乗った一人なのだよ。天皇が宣教師を遣わしてわしと交渉に来よったわ、この余興を盛り上げるならば、貴様と会わせてやる、とな。」
宣教師の口から漏れる悪魔の囁きは今でも、仏のお導きの言葉として、長慶の頭に強く残っていた。
「貴様は儂を利用しようと考えていたようだが、儂が何故今まで猫をかぶっていたか分かるか?貴様を確実に、この手で殺すためよ。弓では急所を外れる可能性もあるしな。そして・・・今がその時だ。」
言って、凡愚な主君を演じて手に入れた寸鉄を握りなおす。脅しを込めて気違いのような表情を浮かべたつもりだが、久秀の血走った目はそれでも瞬き一つしない。
そのことに少し長慶はたじろいだが、しかし、そのたじろぐ様子にも久秀は全く反応しない。
とうの前に久秀は息絶えていたのだ、怨嗟で血走った目を開けながら。


―ふん、謀反人がいい根性よ。ん?こやつめ・・・
見ると、久秀は長慶が独白をしている間に久秀が飲もうとしていた水の入ったペットボトルを倒して中身をこぼしていたのである。
久秀なりの最後の抵抗だったのであろう。
水は諦めて、久秀の袖からビンを取り出すと、それを彼の分の食糧とともにデイバッグに放り込んだ。
「貴様と儂、似た者同士だったのかもしれんな」

【90番 松永久秀 死亡】
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』、『青酸カリ』、『寸鉄』】4-G森

【残り32人】
357無名武将@お腹せっぷく:05/03/13 01:22:59
気まぐれにたまたま見付けたのをageてみる
【27番 織田信長 『デザートイーグル.50AE(残弾1発)』『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】2-Eから再び森の中へ移動
【48番 斎藤朝信 『モップ型暗器』】3-C荒野から移動
【100番 和田惟政 『不明』】5-Cから出発
【98番 山中幸盛 『エペ』】3-Fから移動 目的、毛利親子の首
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀』】3-F 
【07番 浅井久政 『輝政』『S&W M36チーフススペシャル』】3-F森
【65番 長曽我部元親 『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾4発)』】2-H民家
【09番 朝比奈泰朝 『青龍偃月刀』】3-F森 目的、浅井久政の尾行
【19番 磯野員昌 『呉広』】3-Gから出発 3-Iの民家を目指し移動
【58番 鈴木重秀 『吉岡一文字』『USSRドラグノフ(残弾4発)』『スモールボアライフル(残弾14発)』】2-Eからトラックの後を追っています
【94番 村上義清 『日本号』】3-Cから移動予定(武田晴信を殺る気満々で探しています)
【80番 北条氏政 『南部十四式(弾切れ)』『クナイ(9本)』『コブラナイフ』『鍋(頭に装備)』『火炎瓶(3本)』『ヌンチャク』】3-F
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】4-G森

交戦中
【54番 柴田勝家 『マテバ 2006M(弾切れ)』『備前長船』『H&K MP3(残弾13発)』】(右腕負傷)VS
【49番 斎藤義龍 『スプリングフィールド M1(弾切れ)』『スラッパー』】(4-Fにて交戦中。勝家は逃げるつもりです。義龍は追っています
【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『USSR AK47 カラシニコフ(残弾少量)』『ボーガン(5本)』『十文字槍』】&
【46番 小早川隆景 『グロック17C(残弾17+1発)』二人4-Cから3−Cの方へ進行中
【37番 北条高広 『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』『モトローラ トランシーバ T5900』『AK74(残弾2発)』】&
【39番 吉良親貞 『武器不明』『モトローラ トランシーバ T5900』】(共に3-B廃墟から移動)
【89番 松田憲秀 『スタンガン』『毒饅頭』】&【79番 北条氏照 『各種弾丸詰め合わせ』】5-Cから出発
【47番 斎藤道三 『オウル・パイク』『長曾禰虎徹』】&【44番 香宗我部親泰 『武器不明』】共に3-Eから出発
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾18発+mag1)』『天国・小烏丸』】&【71番 長坂長閑 『無銘匕首』】&【43番 高坂昌信 『エクストリーマ・ラティオ』】&
【63番 武田晴信 『U.S.M16A2 (残弾21発)』】4-D森
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発)』『鉄槍』『矢(5本)』】& 【83番 細川藤孝 『太刀』】&
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』】(4-E森から3-D森の前に向かっています)
【29番 飯富昌景 『オーク・ダブルアックス』『フルーレ』】&
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『火炎瓶(1本)』『十手』】共に2-Eから発車 バックの運転方法は理解していません。あくまで前進運転のみ可能です。

※ 次の食糧配布は二箇所になります
※現在、島には数頭の狼が放たれています
360決意と寂しさ1:05/03/14 23:36:32
久政は森に着いた。そして、後を尾けていた泰朝も森へと入っていった。
「さて、隠れる場所を早く探そうか」
(隠れる場所とはなんだ?しかし、大きい声を出すと敵に気づかれやすい事がわかっているのか?)
久政は常日頃から、影の薄い自分を気にしていた。
なので、自分を誇示するためにいつしか大声で話す様になったのである。
どこか抜けている久政を見ていると、泰朝は自分の子供を心配する親の気持ちがわかる様な気がした。
その後、歩いていると久政の視界がある物を捕らえた。
「ひ・・・人だ」
よほど嬉しかったのであろう。久政は大声で叫んだ。誰よりも大きく、高らかに・・・
その声に驚いたのか、北条氏政はショックを忘れ大声を発した人物に問いただした。
「あなたは誰?あなたの目的はなに?」
「わしか・・・わしは浅井久政じゃ。貴公も名ぐらいは聞いた事があるはずだ。
 わしの目的は・・・ない。あえて言うなら、輝政と過ごす時間が永遠であってほしい事じゃ。」
361決意と寂しさ2:05/03/14 23:39:03
「某は北条氏政と言います。」
「おおっ 何とあの北条氏康殿の息子であるか。お父上は勿論ご壮健じゃろうな?」
「久政殿、我が父はこのゲームで命を落としまし・・・」
最後は、カトンボの様にか細い声となり、思い出したのか氏政は涙目になった。
「そうか。知らなかったとは言え、失礼した。所で、氏政殿。わしと共に行動をせぬか?」
「真に申し訳ないのですが、それは出来ません。
 某は亡き父と叔父上の為にも、一人で頑張っていこうと決心しました。」
「そうか・・・では、又どこかで会おうぞ。」
(はぁ〜。どうしてわしと行動しようって言わないかな。わしは虚勢を張っているが、本当は寂しくて、寂しくて胸がいっぱいなのに)
久政は肩を落として森の奥深くへ、氏政は決意を新たにし、久政と反対の方向へそれぞれ行くのであった・・・

【07番 浅井久政 『輝政』『S&W M36チーフススペシャル』】3-F森  目的3−Eへの移動
【09番 朝比奈泰朝 『青龍偃月刀』】3-F森 目的、浅井久政の尾行
【80番 北条氏政 『南部十四式(弾切れ)』『クナイ(9本)』『コブラナイフ』『鍋(頭に装備)』『火炎瓶(3本)』『ヌンチャク』】3-F 目的3-Gへの移動
362叛意1/3 ◆IVgdXngJC6 :05/03/15 21:02:57
「一体どうなっておるのじゃ!!」
部屋いっぱいに怒声が響き渡る。
叱責を受けているのはロヨラとザビエル。実質上、今大会を仕切っている二人だ。
もちろん、怒鳴りつけているのは正親町帝である。
帝は大きくて座り心地のよさそうな椅子に腰掛けて、二人はその正面に立たされている。
帝の後ろには巨大なモニターがあって、終始、帝はこの部屋で島で行われている殺戮の模様を見続けている。
帝が怒っているのは、昌景と重秀による食糧輸送班の襲撃の件だった。
彼等二人は直接、作業員達を指揮している。そのため、作業員達のミスはそのまま彼等二人のミスとなる。
そしてそれは今回のような帝の叱責へと繋がっていくのだ。
「この責任をどう取る気なのじゃ!?」
帝の怒りは収まらない。
別に帝は、殺された五人の作業員を想って怒っているのではない。自分に歯向かう者に、そして自分の思う通りに事が運ばない事に激怒しているのだった。
「お怒りはご尤もですが、この度の事はわれら二人も寝耳に水。責任を取れとはお門違いもいいところです」
対してロヨラは、顔に似合わぬ流暢な日本語で反論する。
「なんじゃ?そちは朕に意見するのかえ?」
帝の目が細められ、声が押し殺したように小さくなる。
瞬間、帝の体からは『妖気』のような、例えようのない強大なプレシャーが放たれる。
さすがにロヨラもザビエルもその異常な重圧には抗し難く、顔を背けて一歩二歩と後退りをしてしまう。
「も、申し訳ございません」
たまらず、ロヨラに変わってザビエルが詫びる。
「・・・まぁ、よいわ」
そう言うと、帝は椅子をくるりと回し、巨大モニターに映し出された参加武将達に目を向ける。
モニターには、長慶によって盛られた毒で、悶え苦しむ久秀の顔が映されていた。
島中に、隠しカメラがいくつも備え付けられている。映像はその中の一台が捉えているものだった。
363叛意2/3 ◆IVgdXngJC6 :05/03/15 21:04:59
「あっはははは、良い表情をしておるわ。人の死ぬ様を見ると、なんと気分の晴れやかになることか」
手を叩いて喜ぶ帝を見るロヨラとザビエルの顔は、先程の脅しによって青ざめたものに一変していた。
(変態の狂人めが)
これが、まだ若いこの国の新しい天皇に対する二人の一致した評価だった。
もっとも、一致しているのは帝への評価だけで、二人の帝へ協力する真の目的も、その思想も、その他全ての点に置いて二人は異なっている。
「今回の事は不問に処すとしよう。そのかわり、二度とこのような失態があることは罷りならんぞよ」
モニターを凝視したままで帝は言った。
二人は無言で帝の背に向けて一礼すると、いそいそと部屋を出て行った。

「その顔から察すると、どうやらお叱りを受けたようですね」
部屋を出て廊下を歩いて行く二人に、陽気な声で話し掛ける者がいた。
「フロイスか・・・。何の用だ?」
吐き捨てるようにロヨラが言う。この男は帝の叱責が余程忌々しかったのか、強く握られた拳からは血が滲んでいた。
「やだなぁ、そんなに邪険にしないでくださいよ。ボクはお二人を心配してるだけなのに」
フロイスと呼ばれた男は、ロヨラに睨みつけられても意に介さないのか、平然とてニコニコと笑い続けている。
ロヨラはその態度が気に食わなかったのか、舌打ちをして何処かに行ってしまった。
「やだやだ、年を取ると気が短くなるのかねぇ。どう思います?ザビエルさん」
「図に乗るなよ小僧。貴様を拾ったのは誰かを忘れるな。貴様ごときにさんづけで呼ばれる筋合いではないわ」
ザビエルもまた、フロイスが気に入らなかったのか、足を踏み鳴らしてその場を後にしてしまった。
やれやれとため息を吐くと、フロイスはロヨラやザビエルが歩いて行ったのとは反対側に廊下を進んでいった。
突き当たりに扉が一つある。そこを開けると、フロイスは身を中に入れ、内側から鍵を掛けた。
「どうだい?頼りになりそうな人はいたかな?」
暗い部屋の中で、黙々とディスプレイに向かって作業をする男にフロイスは話しかけた。
「一人、候補がいます。この者ならきっとワタシ達の期待に答えられるとは思いますが・・・」
「思いますが?」
もったいぶるなよと、フロイスは先を急かす。
364叛意3/4 ◆IVgdXngJC6 :05/03/15 21:05:47
「少々、扱いにくい人物かと・・・。しかし、現在一番の殺害人数を誇っていますし、肉体的にも精神的にも群を抜いていると思います」
「扱いにくいねぇ・・・。まぁ、アルメイダが目をつけたんなら間違いは無いさ。そいつにするとしよう。で、名前は?」
「27番・織田信長」
あぁと言って、フロイスは納得したように一人ごちた。
「あいつか・・・。確かに扱いにくそうだなぁ」
口とは裏腹に、ひどく楽しそうにフロイスは言った。
「我らが意図することに同意するかしないかはともかく、彼なら成し遂げられる筈です」
「分かった分かった。そんなに言うなら信長に賭けてみよう。――こんな馬鹿げた所業を終わらせるためにも、あの残忍な独裁者を排除するためにも、そして・・・」
一旦そこで言葉を切ったフロイスは、
「・・・そして、あの二人を消し去るためにも彼のような力が必要なんだ・・・」
と、搾り出すように言った。
あの二人とはロヨラとザビエルのことだ。
「はい。我らの手で必ず平和を取り戻しましょう。――それから他の候補者ですが、11番・足利義輝、58番・鈴木重秀、86番・前田利家などといった者もおりますが?」
「いや、まず信長に逢ってみる。今挙げた奴らは複数で動いているか、またはこれから合流しようとしている奴らだ。ボクらの真意を知る者は少ない方が良い。
かの者がどれだけ信用できるか分からないが、単独で動いてる分、少なくともその点での心配は無い」
「なるほど、では信長に決めましょう」
アルメイダは自分のデスクの引き出しを開けると、ごそごそと中を漁って黒い塊を取り出した。
「これをお持ちください」
アルメイダがフロイスに手渡した物は『ベレッタM92FC』だった。
「おいおい、こんな物は要らないよ。ボク達はこんな物を使わせないために動いているんだよ?これを使うようなことがあればボク達も奴らと同じ穴の狢じゃないか」
フロイスの言にアルメイダは首を振る。
365叛意4/4 ◆IVgdXngJC6 :05/03/15 21:06:30
「外には狼が放たれています。貴方を帝の手のものと勘違いし、亡き者にしようとする者もおりましょう。用心のためです。お持ちください」
「用心のためか・・・。そうだな、ボクが死んでは元も子もないものな」
フロイスは渋々ではあったが、アルメイダの言う通りにベレッタM92FCを持っていくことにした。
「フロイス、ワタシはここで監視カメラを操作し、上手く貴方のことが見えないようにするつもりです。しかし、あの聡い帝をそんなことで騙し通すことは難しいでしょう。
信長の説得に時間が掛かれば事が露見します。なるべく早く済ませてください」
「ふふふ、人使いが荒いなぁアルメイダは。心配しなくても大丈夫だよ。ボクだって血に飢えた狼や、気が狂った武将達がいるところなんて恐くて長居なんて出来ないさ」
フロイスはおどけて言うが、根が生真面目なアルメイダはニコリともしない。
「相変わらず固い奴だなぁ。まあいいや、じゃあ後は頼んだよ。アルメイダはボクが無事でいられるよう、ここで祈っていてよ」
そう言い残して、フロイスは部屋を出て行った。

【∞番 ルイス・フロイス 『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】目的:信長の協力を得ること
高広「あれは・・・村上じゃねーか。何やってんだ?」
37番・北条高広、39番・吉良親貞が廃墟を出てから数時間。
一番最初に高広の目に写ったのは、同じ家中の者である『94番 村上義清』であった。
だが親貞の目には、『村上と評された人物』はまだ米粒程度にしか見えてはいない。
親貞(ま、豪雨の中で距離のある人間を捉えるような目だ・・・それも知り合い・・・なら判別もつくだろう)
親貞「・・・ふうん・・・知り合いかい?」
高広の視力、そして名前を呼んだ事から、親貞は答えの見えている問いを高広に発した。
高広「ああ、知り合いではある・・・・最も、それ以上ではねーけどな」
やはりと言うか、案の定というか、それが高広の答えだった。
親貞「で、どうするんだい?仲間に引き入れるか、殺すか・・・?」
高広「晴信ならともかく、アイツを景虎殺しの仲間に引き入れるのには無理がある。
    ・・・放っていくか・・・いや、殺しておくか。ただし、お前がやれ。お前がアイツを殺してみろ」
先ほどの答えと違い、その答えは親貞の予想を超えたものだった。
親貞「・・・僕が、かい?」
高広「ああ、そうだ。お前だ。不都合でもあるのか?」
親貞「なるほど・・・ね」
親貞には、完全に高広の手の内が読めた。
親貞(この場で、僕も殺すつもりか・・・思ったより早かったな)
いまだ高広は親貞に支給された武器を見ていない。
親貞の言葉や、状況などから
『さほどの大きさは無い物』や『強力な武器』『生きた人間にしか意味は無い』程度の推測しか
高広は得ていないのだろう。
しかもそれは、『ハッタリでないとしたら』という不安定な地盤の上の推論だ。
その疑問を払拭するためには、どうすればよいか?
完全に目にわかる、最も簡単な答えは一つである。武器を使わせればいい。
全てがハッタリなら親貞を『役立たず』と評せばいい。
あるいは役に立つ武器なら、親貞を殺しその武器を奪い取ればいい。
それだけ、今の高広にとって親貞と組むメリットは薄い。
デメリットこそないものの、せいぜい囮程度にしか役に立たない。
しかし、赤の他人に「お前は囮になれ」と言われて「はい、頑張ります!」などと答える者はいるだろうか?
親貞「僕が、ね・・・わかった。やらなきゃ君に殺されそうだからね」
親貞(やっても殺されそうだが・・・)
全ての選択の道は行き詰った親貞は、支給されたままのバッグから己の武器を取り出す。
その『武器』はとても小さく、そしてまるで玩具の様な形をした『銃』だった。
高広「・・・なんだよ・・・やっぱり銃か」
親貞「僕は『銃じゃない』などと一言でも言ったかい?」
高広「まあ、別にいいけどな・・・ただし間違ってもそれをオレに向けるなよ」
そう言いながら、高広は『AK74』を親貞の頭に向ける。
親貞「もう少し信用してくれてもいいんじゃないかい?」
高広に笑いながらそう言うと、親貞は米粒大の人間にその銃を構えた。
親貞(さて、ここで僕が生き残る道は・・・。
    @村上を殺す
    A僕と組むことの有利点-メリット-を不利点-デメリット-以上に高広に見せる
    この二つを同時にこなさなければいけない、というわけか・・・。
    @だけなら多少道義に外れた手段をとれば何とかなるが、問題はAだな・・・・。
    他にはこの男-高広-を殺す、という手段もあるが・・・。
    気を抜いているならともかく、今、僕がそれなりの動作を取るまでこの男は黙っているだろうか?
    いいや・・・そんな愚鈍な奴ならわざわざ僕の頭に銃を突きつけたりはしない・・・)
そこまで、親貞が思考をめぐらせた時、不意に持っていたトランシーバーから、何か奇妙な音が聞こえた。
親貞(・・・なんだ?この男の仕業か?)
そう思って、銃口はそのままに高広に目を向ける。だが、どうも高広がやったわけではないらしい。
その証拠に、高広も音が漏れたトランシーバーに奇妙そうに見つめている。
親貞「・・・君がやったのかい?」
高広「いや・・・」
親貞「・・・おかしいな・・・壊れたのかな・・・?」
そこまで親貞が言った時、今度はトランシーバーから、不鮮明に、だが、人間の物とわかる声が聞こえた。
?『キ・・・チ・・・ハ・・・ガル・・・』
親貞「・・・君が殺した人間の亡霊じゃないのかい?」
高広「バカ抜かせ・・・アイツらにそんな度胸があるはずがねー」
そこまで話をしたとき、今度ははっきりとした、鮮明な人の声が聞こえた。
?『吉良親貞・・・吉良親貞様ですね?話があり・・・』
親貞「・・・どうやら亡霊殿は僕に話があるようだ。悪いが、少し話をしてくる」
高広「ああ・・・好きにしろ。亡霊と話をしたがるなんて、物好きな奴だな・・・。
    ただし、ここでは話すな。亡霊と話すなんて気が気じゃねーからな・・・」
『亡霊』という言葉に恐怖があるのか、それはわからないが
高広は、親貞の頭に向けていた銃を下ろした。
親貞(多少は恐怖というものでもあるのか・・・この男がねえ・・・)
親貞も、口では『亡霊』と言っていたものの、話しかけてきた人物の推測はついていた。
・・・そして親貞の姿が見えなくなってきた頃、高広はまた村上に目を向ける。
先ほどは米粒程度だった村上が、今度は完全に『村上義清』と確認できる大きさになっていた。
高広「村上め・・・気づきやがったか・・・どうしたもんかな・・・」
?『吉良親貞様ですね・・・私は、ロヨラと申します』
親貞「ふん、やっぱりね」
他の支給者にトランシーバーが渡されるとは思えない。
では高広が話しかけてきたのではないとすれば、武器を支給した主催者としか思えない。
どんな細工があるかは知れないが、今の時代には無い武器を支給できるのだ。
この程度の小細工くらい、たやすいものだろう。
親貞「しかしこのトランシーバーとやらは僕に支給されたものではないだろう?
    なぜ、僕がこれを持っているとわかった?」
ロヨラ『この島での全ての出来事は、我らの確認できる所となっております』
親貞「ふん・・・まあ確かに僕達が殺し合う様を見なければ楽しみなんてないだろうからね。
    唐突に『最後に生き残ったのは私です』だけじゃあ、何がなにやらわからない」
とは言えど、新たに確認した事実に、親貞は内心、恐怖を覚えた。
親貞「いったい君達は、どこまで出来るというのかな・・・ふふふ、恐ろしいものだね」
ロヨラ『それで本題ですが・・・』
親貞「おい、待てよ」
あくまで丁寧なロヨラに対し、親貞は高広のような口調でロヨラの言葉を遮った。
親貞「くだらないお喋りはしたくない・・・僕も本題だけを言おう。
    君たちはいったい何者だ?ただの宣教師とはとても思えないけど・・・?」
ロヨラ『お答えする事は出来ません』
親貞「君達はいったい何人いる?」
ロヨラ「お答えする事は出来ません』
親貞「君達の目的は?」
ロヨラ『・・・それも、お答えする事は出来ません』
親貞「・・・言えない、という答えが多いね」
ロヨラ『無論嘘をついても、真実を言っても構わないのですよ?ただ、参加者はあくまで公平に・・・』
親貞「公平、ね・・・」
親貞は、先ほどから手に持ったままの、己の支給武器である銃をふと見つめた。
ロヨラ『なぜそんな事を知りたがりますか?』
親貞「言葉が少しおかしいね・・・ふん、さすが宣教師だな。ただの興味だよ。
    で、君の用件は?先ほどの報の事かい?狼がどうとか・・・」
ロヨラ『貴方には、元親という兄がいらっしゃいますね?』
親貞「!!・・・いるが・・・ああ、いるさ。だがそれがどうした!?お前には関係ないだろうがッ!!」
ロヨラ『申し上げにくいのですが・・・元親様は、どうやら帝を討つおつもりのようです』
親貞「それが僕に兄貴の名を持ち出すことと何の因果があるッ!?」
ロヨラ『私も元親様に仰いました・・・帝を討つという事は、親貞様を見捨てる事と・・・しかしそれでも・・・。
    いえしかし、「帝に与する者など弟ではない」、と・・・』
親貞「!!・・・ああ、そうか・・・そういう事か・・・!!」
無論、実際は逆である。ロヨラの甘言で元親はたぶらかされたのではあるが・・・。
親貞「フッ・・・ハッハッハ・・・ああ、まあいいさ・・・で?僕は何をすればいい?」
ロヨラ『この殺し合いを促進させて欲しい事は、既にいつぞや仰いましたね?』
親貞「ああ」
ロヨラ『それを少し変えましょう・・・現在、帝に敵意を持つ者・・・つまり
    『11番 足利義輝』『27番 織田信長』『29番 飯富昌景』『58番 鈴木重秀』
    『63番 武田晴信』『69番 長尾景虎』『86番 前田利家』・・・この者達を優先的に殺して頂きたい』
親貞「名前も知らない奴もいるけどね・・・まあいいさ。それより、兄貴もだろう?」
ロヨラ『当然でございます』
親貞「しかし、それが僕に出来るとでも思っているのかい?」
ロヨラ『先ほども言いましたが、私達は今までこの島で起こった事全てが確認できております。
    その上で、親貞様ならできると思っております』
親貞「やるだけならやってみるさ・・・でも、最後に聞こう。
    僕がその者たちを殺した時・・・僕の病を完治させるという事は出来るか?」
ロヨラ『当然でございま・・・』
親貞「ふん!」
最後まで聞かず、親貞はトランシーバーを耳から下ろした。
親貞「兄貴がね・・・これは驚いた・・・はっ・・・はっはっは・・・」
乾いた笑いを少しこぼしたあと、親貞は大きく息を吸い込み・・・。
親貞「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァァァァッ!!」
と人間の声とはとても思えない叫びを発した。
確かに、親貞は姫若子などと呼ばれていた兄を嫌っていた。
だが、共に出た戦での槍さばき、そして見事な指揮に、心の底で感服もしていた。
そういったアンビバレンスの中でこの島に突き落とされた際、一番最初に頼りたかったのは兄だった。
高広に吐いた言葉が全てではない。兄に会うまでは、全てを利用しようと決めていた。
だが先ほどのロヨラの甘言で、その全ては完全に崩れ去った。
アンビバレンスは大きな傾きを示し、親貞は完全に憎しみと殺意の塊となった。
親貞「ゲホッ!!ゲヘッ!!ガフッ!!・・・くそ・・・死んでたまるか・・・殺されてたまるか・・・!!」
激しい咳き込みの中、親貞は怨に染まった目で己の武器を見つめる。
親貞「ああ、いいとも・・・僕ならできる・・・僕ならできるはずだ・・・!!」
親貞は己の武器を手に持ち、その銃口を自分の口の中に向ける。
親貞「兄貴も親泰も言った奴らも・・・いやこの島に生きる全てを・・・!!」
本来なら病に死すべきところを、この余興によって救われる可能性が出てきた。
本来なら自分が撃たれるところを、突然の豪雨で高広も利用でき、一人殺させた。
本来なら高広に殺されるところを、ロヨラの突然の言葉によって生き延びる事が出来た。
親貞「僕の運は誰にも負けない・・・僕は誰にも負けない!!僕はッ!!」
そう叫ぶと、親貞は、己の口に突っ込んだ銃の引き金を引いた。
直後、一帯に大きな銃声が響いた。

高広「・・・言っただろ?」
高広が、眼下の死体を見つめ、そう呟く。
高広「お前は恨みに凝り固まりすぎてる・・・それじゃ、せっかくの運も逃げちまうぜ」
そういい残すと、高広はその死体を蹴り飛ばし、馬鹿にする口調で呟いた。
高広「確かに大したものだとは思っているぜ。少なくともオレには出来そうもねえ。
    しかし、だ。お前が倒した当時の晴信は幼すぎただけだ。その勝利に固執するようじゃあ道はねえ」
蹴り飛ばした衝撃で、死体の手からから『日本号』がこぼれた。
親貞「それは君の同僚だったんじゃないのかい?」
高広「戻ってきてたのか・・・。ン?どっかで水でも飲んできたのか?唾でてるぞ」
親貞「本当に良く見てるね、君は・・・」
笑いながら、親貞は死体となった義清に近づく。そして、義清の支給武器である日本号を見つめた。
親貞「槍を持った人間なんか、殺しても君に得は無いだろう?」
高広「ああ、確かにな。しかし仕方ないだろ?どうもそいつはオレが気に入らなかったみたいだからな。
    オレが普段から主君に叛意を持っていることは、同僚には周知の事実だったって事だ」
親貞「なるほど・・・」
高広「まあ、もう少し歩けば誰かに会うだろ。お前の武器はその時に見せてもらうさ」
親貞「・・・何言ってんの?」
その言葉と同時に、親貞は日本号を拾い、凄まじい速さで振るい高広の首を弾き飛ばした。
首を失った高広は、親貞に銃口を向けたまま、ゆっくりと地に向かい倒れだした。
親貞「・・・なんとなく君の考えていた事はわかる。君は僕を弱いと思っていただろう?
    だからこそ、僕が槍に近づいてもさほどの危機感を覚えなかった・・・。
    ・・・違うかい・・・フフフ、聞こえてないか」
親貞は、醜悪な笑いを浮かべたままの高広の首に近づき、それを蹴り飛ばした。
親貞「まあ、運が良かったよ。君に撃たれる前に君を殺す事が出来て。
    恨みに凝り固まっていても、別に運は逃げないらしい」
冷たい笑いを浮かべたまま、親貞は己の支給武器『水鉄砲』を取り出し・・・。
親貞「これは君にあげるよ。もう僕にいらないものだから」
と、まだわずかに動いているように見える高広の体に向かい、放り投げた。
なるほど、確かに生きた人間になら恐怖心を植え付けられるかもしれない。
この島に三日も生きていれば、銃の怖さはわかっているだろう。
そこに、小型とはいえ銃を向けられたら・・・と、生きていたら高広は思っていただろうか。
親貞「少なくなってきたとはいえ、全員殺すというのも楽ではないかな・・・まあ、やってやろうじゃないか」

【94番 村上義清 死亡】
【37番 北条高広 死亡】(『モトローラ トランシーバ T5900』と『水鉄砲』はその場に放置)

【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900』『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』『AK74(残弾1発)』】
3-C付近から目的地無く適当に移動(対象の目的がなんであろうと全員殺す気でいます)

【残り30+1人】
374荒野の戦慄き 1/7:2005/03/22(火) 16:20:46
また荒野に一輪の赤い赤い花が咲く。
その様子を淡々と映し出すモニターを通して狂った主催者は眺めていた。
「良いぞ、良いぞえ。もっと、もっとじゃ」
脳内に駆け巡るアドレナリンなどの昂奮物質は戦っている本人達よりも多量に分泌され、情動から来る叫びは理性に左右される事なく、そのまま口から発せられている。
時折来る宣教師は数々のお膳立てをしてくれた協力者ではあったが、今この時にはただの至福の時間を邪魔するものに他ならなかった。
・・・それでも、このゲームにおける手足といえる彼らを殺したりはしない。この島で唯一主催者の意のままになるのは彼らだけであるから。
そうして、この島でもお飾りに過ぎない事を知らない主催者の声はいつまでも響いていた。

視点は天皇が眺めている荒野に変わる。
荒野には3人の参加者がいた。そのうち一人はもう一人に背負われるようにして、少し離れた所にいる者はその二人の様子をまじまじと見つめるように。

見つめられている二人は観察者の事には気付いていない。
しかし、その二人事体もお互いのことに気付いていないかのように一言も発せず、ただ黙々と歩き続けていた。
背負われているほうの参加者はある程度回復した時期もあったが、病にでもかかったのか、今はただ弱弱しく、けれど熱い吐息を背負っている参加者の背中に吹き付けている。
少しはなれた岩陰からその様子を窺う観察者の目にも二人が病人で、もう一人はそれを助けているのだという事がすぐにわかった。
為に、岩陰から出て、その二人の傍に駆け寄ったのだ。
「そこ行く御仁、見た所病人を抱えておられるようだが?」
逃げも隠れもしないその足音に振り向いた二人を脅かさないよう声をかける。
「誰じゃ?」
病人を背負っているその男は意外と頭に白髪の混じり始めた初老の男であった。
しかし、それを補って余りある血色の良い精悍な顔つきは、その横に覗く病人の、今にも死にそうな青白い顔と対照的であった。
「私は斎藤朝信と申す者、これでも薬師の心得がある。」
375荒野の戦慄き 2/7:2005/03/22(火) 16:22:08
男っ気の濃い越軍に在っては優男なほうではあったが、それでも武将然としている朝信の顔。
この騙し騙され、殺し殺される島では、この朝信の風体から言っている事が信じられず、有無を言わさず撃たれる可能性もあった。
しかし、彼は薬師の端くれとして病人、怪我人を放っては置けなかったのだ。
「薬師か・・・。胡散臭いな」
予想通り、疑いの眼で朝信を見る。しかし、朝信も怯む事無く、
「信じる信じないはどちらでも結構だが、急がんと手遅れになりかねんぞ。」
と、訝しむその男を諭した。
「わかった、信じよう。」

草がほとんど生えていない土臭い地面の中でも、比較的石の少ない所にゆっくりと病人の隆景が横たえられる。
「・・・おねがいします」
今まで黙っていた隆景も目を閉じながらもごもごと小さな声で朝信に礼を述べた
「うむ、始めるぞ」
言って、まず左手で脈を計りながら右手を当てて熱を診る。
―高熱に、脈が早鐘のように打っている。
体全体を見渡すと、いくつもの小さな傷の中に一際深いものがあるのを見つける。
「この傷はいつ出来たものだ?」
「昨日だ。爆風で飛んできた釘が刺さったようなのだが・・・」
「食事は?」
「すこし、咀嚼が出来ておらぬようだが、食べている」
―間違いない。ただの風邪の症状に隠れてはいるが・・・
「落ち着いてよく聞け、これは破傷風だ」
「というと・・・?」
言うか言うまいかを少しためらった。
あまりに耐えがたい事態を宣告した事で逆上した彼らが襲い掛かってくるかもしれないからだ。
しかし、薬師として、言うべきことは言うのが義務である。目を閉じて深呼吸をすると、静かに彼は言った。
「傷口から入る雑菌が全身痙攣を引き起こす病だ、治る治らぬは半々かそれ以下。よしんば治ったとしても筋が硬直したままである事もある。」
そこで一息ついて、朝信は言葉を続ける。
「こんな場所で私に出来るのは薬を調合して痛みと症状を和らげる事くらいだ。」
考えていた事ではあるが、聞いていた老人の顔は見る見る赤く、病人の顔は見る見る青くなっていった。
376荒野の戦慄き 3/7:2005/03/22(火) 16:23:56
「・・・言いたい事はそれだけか?」
怒気を孕んだ声で元就は朝信ににじり寄る。
その足を弱弱しく隆景が掴んだ。
「父上、この病はこの薬師の方のせいではありません、どうか」
「五月蝿い、その様な事とうにわかっておるわ!」
元々、元就にも望み薄なのは分かっていた。
しかし、この薬師と名乗る胡散臭そうな輩を溺れるものが藁にもすがる思いで信じて、僅かな可能性に掛けた・・・それが裏切られたのだ。
しかも、なまじ薬師と名乗っているだけにその病状や病の実態は正確であろう。
神に唯一のこった息子の死を宣告されたような思いであった。
元就は隆景の手を荒々しく振り解き、先の欠けた十文字槍を朝信に突きつけた。
「薬師よ、朝信と言ったな?」
「ああ、そうだ」
朝信も得物に手を掛けながら答える。
「お前は一体なんなのだ?絶望を与えにきたのか?それだけか?」
「薬師として、症状を正しく伝えたのみだ。早くこの場所から―この島から搬送しないと取り返しの着かないことになる、と。」
―薬師として、いや病人を前にした人間としてこれほど自分の無力を呪った事は無い。
―確かに診断するのは早かった。恐らく病状も正確に予告している事だろう。
―しかし、私に一体何が出来た?この御老のお怒りはもっとも。なのに、何故私はこれに手を掛けている?
様々な矛盾と後悔そして絶望。・・・このような気持ちを押さえられる薬があったなら、と朝信は自信を憫笑する。
この気持ち、恐らくこれを糧にして、薬師の腕と言うのは上がっていくものなのだろう。
事実、これまでも朝信は戦場を駆けずり回って、怪我人を癒し、深傷の者を看取って、その死のたびに次の怪我人を救えるように精進してきた。
敵陣においてはその槍捌き鬼の如く、自陣においてはその慈愛は仏の如く―朝信が越軍の鐘馗と世に謳われる所以だ。
377荒野の戦慄き 4/7:2005/03/22(火) 16:25:14
―だが、どうだ?それだけ精進しようと、打ち破る事のできないこの壁は!?
―こんな時、私に出来る事が症状を抑え、痛みを和らげる事くらいだと?笑わせるな?なんと、ちっぽけな事なのだ?
―私の生命力を分け与える事が出来たなら・・・。声をかけて、それが病人への励ましになるのであれば・・・。私はいくらでもそうしよう。
―しかし、生命力を分け与えるなど到底無理な話。それに、私はあくまで他人で健康な人間だ。どんな励ましの言葉を、どんな同情の言葉をかけようともそれは全て詭弁に過ぎない。
―結局私には何も出来なかったという事か・・・。

「それが詭弁だというのだ!出来ない事をさも簡単に言って、そんなに愉しいか?」
叫びながら、元就は十文字槍を振り上げる。
―そうだ、その通り。確かに詭弁だ。私の存在そのものが矛盾。
―戦場では何の恨みも無い敵兵の命を狩る鬼。そのくせ、自陣では何の恩も無い人間の命を助ける仏。
―これを矛盾といわずして、何と言う?
元就が槍を振り上げてから、こちらに返してくるまでの間、その長い時間に悟ったつもりになって、朝信は死を受け入れ目を閉じる。

だが、次の瞬間。
朝信がいた場所で、ぶおんと勢いよく空を斬る音がした。
「往生際の悪い・・・」
吐き捨てるように元就は言う。
「悪いな、私は人の命を救い続ける事こそが私が殺めた命へのせめてもの償いと考えておるのでな。・・・それに、私には酒の約束があるのだ。」
「酒か、この様な場所でよくもそんな悠長な事がいえるな・・・」
元春を失い、隆元を失い、娘婿の隆家を失い、さらに今残った隆景の死まで宣告された元就が憎憎しげに朝信をねめつける。
「出来るなら見逃していただきたいのだがな」
「了承すると思うかっ!?」
叫んで元就は第二撃を繰り出す。
怒りのせいか、大振りなその攻撃を紙一重でかわすと、朝信はモップを元就の足に叩き付けた。
モップが足に触れた瞬間、元就の足に激痛が走る。細い木、その上布が当たっている部分なのに、何故?
元就が抱いた疑問は、元就に痛みを与えていたその棒が元就の足から離れた時に解けた。
378荒野の戦慄き 5/7:2005/03/22(火) 16:27:30
―仕込み針か・・・、小賢しい。
元就の目に見えたのは普段ならモップの布に隠されて見えない針であった。
そして、それを確認した瞬間、元就は片膝をつく。
しかし、それも束の間、既に怒りが痛みなどとうに凌駕していた元就は勢いよく血を噴き出す左足を立て直して、カラシニコフを背中から回して構えた。
朝信もその元就の武器を見て、危険を察知し、すかさず全身の筋をバネにして、大きく左に横っ飛びをする。
瞬間に火を噴いたカラシニコフの銃口もそれを追い、同じ様に朝信の飛んだ軌跡を辿るように次々と土ぼこりが巻き上げられる。
そして、元就のほぼ真横にいる朝信をその狂気と凶器の銃口が捕えんとした瞬間、突然にしてその銃口は動かなくなった。
カラシニコフの長い銃身が邪魔になって、それ以上右に旋回する事が不可能な位置、つまり死角であったのだ。
元就と、朝信の違い。それは激昂と冷静、そして絶望と希望であった。
死角にいる朝信を撃ち殺さんと、強引に傷ついた足を動かす元就、しかし、着地の瞬間の隙が出来ていた朝信をその銃口が捕えた瞬間、絶え間なく光り輝いていたマズルフラッシュが途切れた。
―こんな時にっ!
元就は自身の不運を呪いながらも弾切れになったカラシニコフを、肩紐を外して未練もなく投げ捨てる。
続いて、ボウガンを構えんとした元就に対して、体勢を立て直した朝信が布の方を持ってモップを大きく振る。
間合いも狙いも、力加減もてんで見当違いなその攻撃をほとんど気に止める事もなく元就はボウガンの装填を終えようとした。
が、その瞬間、モップの柄の先から飛び出した鎖分銅が、ボウガンの弦を捕え、弾けさせた。
「小癪な!仕込み分銅か」
朝信の得物である、モップ型暗器の多彩な攻撃の前に、元就はどんどん冷静さを失っていき、逆に朝信の心には僅かに余裕が浮かんだ。
元就は、遠距離戦を諦め、壊れたボウガンも投げ捨てて、最初の得物・十文字槍を手にとる。
朝信も戻ってきた分銅を柄に仕舞うと、モップの中程を持って、上下逆にひねる。
すると、上下に分かれたモップの柄の中から、先程の分銅のものと同一と思われる鎖がその姿を見せた。
朝信も、針があると分かってその針に当たる元就ではないと悟っていたのだ。
379荒野の戦慄き 6/7:2005/03/22(火) 16:28:47
そして、モップの柄の方を握ると、布と針がある方の部分をフレイルのように勢いよく回すと、元就に飛び掛っていった。
元就も槍を振り上げて迎撃する。その十文字槍の枝とモップの部分が複雑に絡まった。

―!
―!
朝信にも、元就にも戦慄が走る。
同時に、お互いの武器を奪おうとする為に自分の武器を引っ張り合う。
ぎりり、ぎりりと軋んでいるのは両者の筋か、それとも絡まりあった武器なのかは分からない。
分からないが、はっきりしたのは、朝信の握っていたほうのモップの柄尻が砕けて、鎖分銅が抜けてしまったという事だ。
「くっ!」
余裕から出た慢心のせいかもしれない。と今更、朝信は後悔する。
「やはり、最後の最後に不運なのはお前であったな薬師よ」
投げ捨てたカラシニコフとボウガンを一瞥しても隣は愉悦の笑みを浮かべる。
両者の色々な思いが錯綜した瞬間、その思いを断ち切るように、鎖が絡みつき、先の欠けた刃先が走り、朝信の心臓を貫いた。


「父上、何故です・・・?」
全てが終わってから、少しして、元就の背後からそんな声が聞こえた。
「この薬師はホラ吹きだ、御主とわしを侮辱した。殺すには十分すぎる理由だ」
元就も自身を理論武装し、背後の隆景に言い繕う。
「父上、私にも自分のことくらいはわかります」
搾り出すような声が聞こえた。
「な、何を言っておるのだ!?」
振り向いた元就が捕えたのは膝立ちで俯いた隆景と、その米神に当てられた銃口であった。
「あの方を殺し、父上を鬼に変えてしまったのは私です。父上、同かこの親不孝な私をお許しください。」
隆景の目からこぼれた涙が地面に付くのより早く、元就が隆景の銃を取り上げようとするのより早く、隆景とその小さな凶器の僅かな隙間から火の花と、遅れて血の花が咲いた。
380荒野の戦慄き 7/7
「何故だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
わずかに鉄の匂いが混じる風が吹きすさぶ荒野に、全てを喪った悲しい父の戦慄きが響きわたった。


【48番 斎藤朝信 死亡】『モップ型暗器』は破壊されて、十文字槍に絡みついたまま
【46番 小早川隆景 死亡】『グロック17C(残弾17発)』は96番毛利元就が回収
【96番 毛利元就 『梓弓(4本)』『十文字槍』】4-C荒野
『USSR AK47 カラシニコフ』『ボーガン(5本)』はそれぞれ弾切れ、破壊の為、4-Cに放置。

【残り28+1人】