【6月10日夕刻 岡崎城】
徳川軍動員を完了、国内要所に守備兵を配した結果、総勢一万八千が岡崎城に集結。
翌朝の出陣を全軍に告げ、戦勝祈願を終えた家康の下に、時機を見計らったかの如く、
>>150の明智からの密書が届く…。
寝所の家康、側に侍した無二の謀臣に件の書状を見せる。
家康「惟任め、早くもご機嫌伺いとは。殊勝な事よ。」
正信「あの御仁も、四方八方敵だらけ。藁にも縋る思いで御座いましょうな。
で、上様としては如何なさるおつもりですかな?」
家康「聞くまでもあるまい。ここで奴と通じては当家まで逆臣扱いぞ。
今は飽くまで、あの男の仇討ちの出師で通す。後は、上方の戦況次第…。」
正信「御意。只、機を失しては筑前や修理に先を越されますぞ…。御油断は大敵で御座います。」
家康「口説いぞ、弥八郎。皆まで言うな。」
言い放つと家康、正信の手より書状を取り上げると、燭台の灯火に翳す。
翌朝、生憎の増水の為、出陣を延期した岡崎城より上方へ使いが奔る。
その懐に密書の類は無い。只、「葵と桔梗を雑ぜた錦菊の花束」を携えしのみ…。
【6月13日、光秀の本陣に到着予定】