異世界系リプレイスレ 〜武田騎馬軍団vs三國志 その2
―言焦―
曹操が帝位を称したという噂は、翌日にはこの[言焦]にも届いて
いた。
「兄さんはお聞き及びですか?曹操が不遜にも帝位を僭称したよう
ですぞ」
鉄が靴音も高く、上元節の宴席にやって来た。
「ああ、聞いてるよ。驚いてる」
僕は盃を傾けながら答えた。
ちなみに僭称したのは曹操だけじゃない。江陵の孫策も勝手に
楚王を自称して、それも今話題になっていた。
「…その割に驚いた様子が見えないのですが」
鉄は憤然とした面持ちで、僕の目の前に腰を下ろした。
「斯様な暴挙は袁術以来です。直ちに曹操の非を打ち鳴らし、逆賊
討伐の軍を起こしましょう」
「正月早々そんなに焦るなよ。まあ呑め」
そう答えて觴を差し出す。鉄が受け取ると、琥珀さんがその觴に
酒を注いだ。
「そうじゃそうじゃ。正月くらい、世俗の事は忘れてぱーっとやろうで
はござらんか。ぱぁーっと」
酒宴の席上から声が飛んでくる。韓玄だった。
韓玄は酒壷を抱えたまま、手酌でがぶ飲みしている。時折傍を通る
女官のお尻を触っては、うひょうひょと笑っている。…正直、世俗塗れ
だった。
「ちっ、これだから志の低い奴は…」
「志が低くて悪かったね」
「あ、いえ、兄さんの事ではなく……」
鉄の舌打ちに皮肉っぽく答えると、鉄は慌てて否定した。
「同じ事だよ。この三箇日の酒宴は僕の許可でやってるんだから」
それに鉄から見れば、漫画家として大成したいという僕の志は、
相当低いものに見えるだろうし。
「あ、いえ、その…」
鉄が返答に詰まる。まごまごしていた鉄の視線が、そこで初めて、
僕の隣に座っている雲碌を認識した。
「雲碌、お前からも何か言わないか」
「私は今はお兄様の判断に従います」
「何故だ」
「曹操の罪は今や誰の目にも明らかです。糾弾するのが2日や3日
遅れたくらいで、何が変わるわけでもありません。鉄兄様もお兄様
のように、もう少し泰然となさっては如何ですか」
雲碌がすまし顔で盃を呷る。
(やっぱり、夏の幕舎での件を根に持たれてるんだろうか…)
馬鉄は妹の取りつく島もない様子に悄然とした。
取り急ぎここまでアップしておきます。
次回は清河公主を出したいと思います。
あまり関係ありませんが、反三国志を読み直してみると、
雲碌の「碌」は偏が馬だったんですね。
第1標準にないフォントなので、私のPCでは出せませんが。
大体「緑」で置き換える字のようです。
ちなみに「碌」の意味は「正しい」「平らか」です。
>>538 ベッドシーンは…今後の予定はまだちょっと未定です。
短く書けそうならあるかもです。
>>539 武力の上昇分は閻行や雲碌の活躍で補う予定でしたが、
武術大会であんなに踏ん張られるとは…(苦笑)
堕落人間馬超に萌え
同意(藁
キユ氏の馬超はステレオタイプなええ格好しいのかっこつけじゃなくて
醜ささらけ出しまくりなのが逆に好感もてたりする罠。
547 :
無名武将@お腹せっぷく:03/07/29 13:38
保守
【孀閨少年婦】
やがて陽が傾き出す頃、キユは宴席を中座した。
一人廊下を歩き、とある部屋の前で足を止める。そして扉をノックした。
「どうぞ」と誘う声があって、キユは扉を開いた。
室内にいたのは清河君だった。
少女は当初、これからどうすればいいのか解らなかった。
故郷へ帰ったら、いくら亡夫の喪に服してみせようとも、親族から色目で
見られるのは間違いない。既成事実はなくとも、今更誰がそれを信じると
いうのか。
かといって親元へも帰り辛い。使命を果たせずにすごすごと引き返して、
父から疎まれるのが怖かった。
けどキユが引き留めた。
「暫くここにいるといいよ。今帰っても気まずいだけだろうから、少し落ち
着いていくといい。ここにいる限り、君の貞節は保証する。誰にも手出し
はさせない」
キユはそう言った。少女はふらふらとその言葉に縋った。そして今日ま
で、惰性で留まり続けていた。
「ごめんね。折角の正月なのに、こんなところに軟禁状態だなんて」
「いいえ。私の方こそ気を遣って頂いて、すみません」
キユが頭を下げると、少女もつられて頭を下げた。
少女にとって、キユは拍子抜けするほど腰が低かった。父の許にいた
頃は、相手がそんな態度だと、少女は嵩に掛かったように居丈高だった。
しかしここでは、キユを取り巻く他の女性たちに太刀打ち出来ないせいか、
その気丈さはすっかり鳴りを潜めている。それともこれは、キユの人柄に
感化されての事なのだろうか。少女にはどちらとも判断がつかなかった。
「で、飲んでるかい?」
「いえ、その…こうしてお心遣い頂いているのは有り難いのですが、
私は喪中ですので」
少女はちらりと、卓上に載せられた酒食を見やった。
「ああ、そうか。ごめんね」
キユは頭を掻いて謝った。
よく考えたら、清河君は改めて喪服を着るようになっている。正月だと
いうのに、今もやっぱり喪服を着ていた。見れば判りそうなものなのに、
僕は何を言ってるんだか。
そうは言っても日本の葬式じゃ、親戚一同が集まって喪服のまま飲み
食いする事が多いから、あんまりピンと来ないんだけど…。
「ところで、君のお父さんが呉皇帝に即位したらしいね。聞いてるかい?」
少女は驚きの余り、暫し絶句した。
「……いえ、初耳です。本当ですか?」
「まだ噂だけだけど、多分本当だよ。だから君も、これからは公主という
事になるね。僕もこれからは呼び方を改めるよ」
「はあ…有難うございます…」
少女はまだ実感が湧かないのか、生返事をした。が、それにしても――。
「キユ様。貴方はどうも思わないのですか?」
「ん。何が?」
「私の父がその…天子を自称した事についてです。犯科としては最上位
に……」
少女は最後まで言えなかった。父を大罪人だと断ずる事は、どうしても
出来なかった。
キユは指を顎に宛てて考え込んだ。
「そうだなあ…勝手に独立すれば内乱罪か。死刑または無期禁錮に
該当する犯罪だね」
時代的に言えば、死刑以外にはなさそうな気もするけど。
キユがそこまで言ったところで、公主が目に見えて落ち込んだ。
「…それで、私はどうなるのでしょうか」
「どうなるって、どうかなるの?」
キユはきょとんとした顔で訊き返した。
「ですからその、私も死刑になるのでは、と…。この様な場合は九族
滅殺だと心得ています」
少女の唇が蒼褪めている。つい先月までは自害をも厭わなかった
筈なのに、今、父の罪に連座して殺されると思うと、急に恐くなって
きたのだった。
「そうだっけ?うーん……」
キユは再び考え込んだ。
「けど、僕は君をどうかするつもりはないよ。前にも言ったろ。君がここ
にいる間、君の身の安全は保証するって」
「キユ様が約束して下さったのは、私の貞節を保証する事だけですが」
突っ込んでしまってから、少女は後悔した。言わなければ、このまま
なあなあで守ってもらえたかもしれないのに。
だがキユの返事は、少女にとって意外なものだった。
「そうだっけ?じゃあ身の安全も含めて、君の全てを保証するよ」
少女は茫然とした。この人はどうしてそこまでお人好しなのだろうか。
少女が父曹操の許にいた頃、物陰からキユを何度か見かけた事が
あるのは本当だ。だがその頃は、キユに対して何かの感情を抱いた事
はなかった。
だがキユは、自分達の企みを知ってなお、普通に接してくれた。それ
どころか手ぶらで帰る気まずさを見抜いてか、暫くここにいていいとまで
言ってくれた。
そうやって引き留められている間は、キユから肉体関係を求められた
ら、少女としては断る術がない筈だった。何故なら少女は、それが目的
でここに連れて来られたのだから。
けどキユは少女に迫るどころか、貞節を保証してくれた。それだけで
なく、今、父の登極すら私に累禍を及ぼさないとまで言っている。
(…今、私が頼れるのはこの人だけだ)
そう思うと、少女は俄かにキユの事が身近に感じられるようになった。
「キユ様、宜しければお酒をお注ぎしましょうか?」
そう言って酒壷を掲げる。それは少女が、父と亡夫と義父以外の男に
対して初めて見せた心遣いだった。
「有難う。少し貰おうか」
キユはそう答えて、盃を差し出した。
今夜も雲碌の部屋に行く予定だ。だが、夜まではまだ少し間があった。
>>545-546 そう言って頂けると本当に有り難いです。
「こんなの馬超じゃない」という批判も
覚悟していましたものですから(^^;
>>547 保守ageして頂き、有り難うございます。
ここで次回予告。北斗・南斗の両仙人が再び姿を現す。
そこでキユが告げられた事とは?
とりあえずテキトーにつきぬけちゃえ。
曹操が呉皇帝すか、面白い展開すね。
そんなことより未亡人ハァハァ。
∧_∧ ∧_∧
ピュ.ー ( ・3・) ( ^^ ) <これからも僕たちを応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄〕
= ◎――――――◎ 山崎渉&ぼるじょあ
【聖痕 弌】
上元節の3日目。一昨年も来た老人と青年の2人組が、この[言焦]に
やって来た。
2人組はキユへの謁見を許されると、宴席の中、静かにキユの前へと
進み出た。
「謹んで新年のお慶びを申し上げます」
「キユ殿、貴殿の名声は今や四海に響き渡っている。まさに休名(註1)
というに相応しい」
青年と老人が跪いて挨拶をする。キユはまだ腫れの引かない頬を撫で
ながら、憮然として頷いた。
「意味は解らないけど、褒めてくれてるんだよね。一応、有難う」
でもどうせなら、元の時代で僕の漫画が大ヒットして、それで有名になり
たかったけど。
「そこでじゃ。今日はそなたによいものをやろう」
「何ですか」
「『聖痕』じゃ」
瞬間、宴席が水を打ったように静かになった。
「ご老人。貴方は一体何者ですか?」
赫昭が訊ねる。
「なに、歯牙ない一老翁じゃよ。人よりちょっと変わった事が出来る程度
のな」
「『聖痕』を授けるなどと軽々しく言えるのに、歯牙ない老人なわけがあり
ますまい」
老人は呵呵大笑した。
「まあ、儂の素性などどうでもよいではないか。それよりキユ殿。『聖痕』は
どの様な形状がお好みかの?本人の希望くらいは聞いておくが」
そう言われてキユは考え込んだ。
(左頬に十字疵というのもいいけど、鼻に真一文字の疵というのもいいかな。
けど、出来れば目立たない方がいいかも…)
「…なかなか決まらんようじゃな。なら貴殿の心が決まり次第、また参上
するとしよう」
老人はそう言って苦笑した。
註1:立派な名声,よい評判。
【帰妹】
老人と青年が宴席に加わってから一刻。老人はほろ酔い気味の
様子で、低唱しながらまたキユの前にやって来た。
「ところでキユ殿。貴殿は今日は実に見事な桃を頬張っておられ
ますな。目出度い限りじゃ」
「…ああ、これ?」
キユは赤く腫れ上がった頬を撫でながら、ちらりと視線を流した。
雲碌はキユの視線を感じると、ツンとそっぽを向いてしまった。
キユは大きな溜息を吐いた。
結局昨夜、キユは雲碌の部屋へ来なかった。雲碌はキユの来訪
があまりに遅いので、気になって探し回った。そして散々探し回った
挙句、清河公主の部屋で、酔いつぶれているキユを発見したのだっ
た。
その時の雲碌の形相は、まるで浮屠僧の云う般若のようだったと、
後に清河公主が述懐している。ともあれ雲碌は、介抱している公主
を押しのけてキユの胸座を掴むと、しこたま往復ビンタを食らわせた。
そして辛うじて意識を取り戻したキユに向かって一声、
「お兄様の馬鹿!」
と怒鳴りつけると、嵐のように部屋から去っていった。
――とはいえ、どんなに腹を立ててみても、好きなものはしょうが
ない。傍にいたいという気持には嘘がつけず、雲碌は三日目の宴席
にも顔を出した。そして今に至っている。
(何よ、お兄様の馬鹿。私を放ったらかしにして、またあんな小娘と
いちゃついたりして。そもそもどうしてあの娘を匿ったりするのよ。
他の人にも隠してるみたいだし…)
だからといって、自分がそれを暴露しようとは思わない。けど、憤懣は
遣る瀬無い。
考えてみれば、お兄様は酔い潰れていただけだ。首に縄をかけて
連れ帰ればよかっただけなのに、怒りに任せて引っ叩いてしまった。
謝りたいような、赦すきっかけが欲しいような――それでいて、その
きっかけが掴めなかった。
(『聖痕』伝授を言祝ぐのはいいきっかけになる筈なのに)
けど、なかなか言い出せなかった。
雲碌は自棄になって盃を呷った。
キユはそんな雲碌の様子を、機嫌が直っていないと見ると、老人
に近付いて密談を始めた。
「ねえ。どうしたら雲碌が機嫌直してくれるかなあ?」
「そんな事を儂に訊いてどうする」
老人は呆れた顔をした。
「女子が機嫌を直す直さないは、全て男の誠意にかかっておろうが」
「や、そりゃそうなんだけどさ。誤解が解けないんだよ」
「じゃから誤解が解けるも解けんも誠意次第じゃと言うておる」
老人はそう言ってから溜息を吐いた。
「…そなた、果実をもぎ取ったな?あれほど心して選べと申しておい
たのに」
「……ヤバかった?」
キユは不安になって囁き返した。
「それはそなたがどう思うか次第じゃ。そなた、帰妹の卦が出ておる
ぞ」
「キマイ?」
キユは訊き返した。
老人は頷くと、「ちと喋り過ぎたかの。後は己でよく考え、己自身で
答えを見つけるがよかろう」と言って、キユの傍を離れた。
(キマイねえ…?)
キユは考え込んだ。
「人前で老人と密談とは、お兄様も面白い趣味をお持ちですね」
雲碌の皮肉がキユの頬を叩いた。
「ねえ雲碌。キマイのケって何の事だか解る?」
「何の話ですか?」
雲碌はきょとんとした。ふっと、それまでの蟠りが消えた。
「そっか。解らないか」
キユは頭を掻いた。雲碌にも解らないんじゃ、どうしようもない。
「まいっか。じゃあ、夜になったら行くから」
「はい。お待ちしております」
雲碌はにこりと笑った。
その夜――。
『おーい、ポン太−。どこ行ったー?』
『どうした八満?』
『げっ、兄さん』
『…"げっ"はこっちの台詞だ。なぜこの僕が八満の兄になどならなけれ
ばならないのかね?君の常識を疑うよ』
『……ああ、清丸か。けどなんで"兄さん"なんて思ったんだ?』
『そんなの僕が知るわけないだろう。で、どうかしたのか?』
『いや、知らないならいい。何でもない』
『待ちたまえ、八満。どうやら君は今困っているようだね?』
『いや全然!』
『とぼけなくてもいい。捜し物が見つからなくて困ってるんだね?いいだ
ろう、今日は君のために特別に、僕が創った探索器を貸してあげよう』
『どーせ金取るんだろ』
『当然じゃないか。元金1000円、日賦8割でどうだい?』
『…お前、いつから俺より金に汚くなった?』
『君が返さないのが悪い』
『あのな。俺は今、お前のたわごとにつきあってる暇はねーんだよ。早く
見つけないと昼休みが終わっちまうだろーが』
『何じゃれあってんの、あんたたち?』
『おっ、シアンさん』
『あれ、雲碌。なんで髪切っちゃったんだ?』
『はぁ?あたしは前からこの長さよ。それに"雲碌"って何?』
『…ああ、そうだった。シアンだったな。顔も違うし…なんでだ?』
『なんの話よ?』
『僕にもさっぱり』
『あーいや、そんなことはどーでもいい。ポン太はどこ行った?』
『ポン太?誰それ』
『はぁ?ポン太っつったらポン太だろ。お前が後生大事に抱えてた神獣
の卵じゃないか』
『神獣?ああ、あんた神獣の力が欲しいのね?だったら虎を倒すことね』
『…なんでそこで虎退治の話になるよ?』
『だってあんた、神獣の力が欲しいんでしょ?』
『だからそれと虎とどーいう関係が!』
『知らないわよ!この世界じゃそうなってるんだから仕方ないじゃない!』
『この世界?』
『…ねえ八満。あんた今自分が置かれてる立場がわかってないんじゃ
ない?』
『なんの話だよ』
『そうか、そういうことか。なら話は早い。この僕に任せたまえ』
『……ちょ、ちょっと待て、清丸。そんなもんで殴られたらいくら俺でも』
『大丈夫。君の石頭は折り紙つきだから。シアンさん、こいつ押えといて』
『はい』
『わっ、何しやがる、シアン?!離せ、離せって!』
『覚悟はいいかい、八満?じゃあいくよ。いっせーの…!』
『くそっ、死んでたまるか…っ!』
ゴチン。
「……………………痛い」
僕は目が覚めた。
どうやら夢を見ていたらしい。
乙部清丸に巨大なハンマーで殴られそうになって、死にたくなくて必死
で身を捩ったら、ベッドから落ちてしまったようだ。
「お兄様、大丈夫ですか?」
ベッドの上から雲碌が声をかけてきた。どうやら起こしてしまったらしい。
「ああ、うん。大丈夫」
僕は答えて、ベッドの上に這い上がった。
「まあ、お兄様、これ…」
雲碌が僕の額にそっと触れる。微かな感触にも関わらず、激痛が走った。
恐る恐る額に触れてみる。大きなたんこぶが出来ていた。
「痛いですか、お兄様?」
「ああ、うん。ちょっとね」
ていうか、かなり痛い。けどそれ以上に疑問なのは、何であんな夢を見た
のかって事だった。
あの清丸は兄さんそっくりだった。…被り物のせいかもしれない。
けど、とても科学の信徒とは思えないほどいかつい体格をしていた。
シアンもどことなく雲碌に似ていた。…髪の色のせいかもしれない。
それに雲碌も昔はあんな性格だった。
…いや、そもそも。何で『PONと!キマイラ』の面子で夢を見なく
ちゃならんのだ?
(……あー、キマイか)
こんな下らない夢を見るほど、実は気になってたのか。
――けど、示唆的な夢だった事には違いない。もしかしたら正夢
かもしれない。そう思うとわくわくした。いつか誰かを誘って巻き狩り
にでも出掛けてみるかな。
ふと、目の前が翳った。
額に柔らかい感触。
雲碌の唇だった。
痛みを和らげるように、優しく、暖かく、何度もキスをされた。
雲碌の白く細い項(うなじ)が、目の前にあった。
視線を落とすと、胸元に引き寄せられたシーツの端から、儚い胸の
膨らみが僅かに姿を覗かせていた。
また勃ってきた。
「隠さなくてもいいじゃないか」
シーツの上からそっと手を這わせる。「あん」と、雲碌が可愛い声を
漏らした。
雲碌の頤(おとがい)にキスを繰り返す。シーツの上から雲碌の乳首
を探り当て、こりこりと引っ掻いた。
左手を雲碌の股間に伸ばす。薄めの牧草地帯をさわさわと撫で回した。
撫で回す手を徐々に下にずらしていく。指先が肉芽に触れる度に、
雲碌は「あん、あん」と喘ぎながら、くたりとしなだれかかってきた。
「もう1回、いい?」
耳元で囁く。雲碌は爪を噛みながら頷いた。
今夜は長くなりそうだ。
キユはこの月、柴桑の陸績、呂範、襄陽の劉禅、陳留の王修、建業
の王朗、韓浩、張紹、陳式に手紙を送った。[業β]では王昶が太守に
任じられた。
またこの月、孟達率いる江州軍が永安に攻め込んだ。しかし馬超軍
は迎撃に出た楚軍に敗れ、申耽、孟達が楚に降った。その隙を突いて
建寧の劉循軍が江州に攻め込んできたが、馬超軍は何とかこれを撃退
し、虜将呉蘭を降した。
そんなわけで遂に聖痕を伝授されたキユですが…
最後にしょうもないネタが入ってすみません(;´Д`)
>>553 少女なのに未亡人ですしね(笑)
再登場は多分あるでしょう。
>>554 ぼるじょあ氏&山崎氏ですか…(笑)
保守して頂き有り難うございました。
リアルタイムキタ────(゜∀゜)────!!!!
エティキタ────(゜∀゜)────!!!!
キタ────(゜∀゜)────!!!!
キマイラ────(゜∀゜)────!!!!
569 :
無名武将@お腹せっぷく:03/08/05 09:33
保守
ageなきゃ保守にならないと思ってる奴はDQN
まあまあ。たまにはageるのも悪くないでがしょ。新たな読者を増やすのにもいいしw
建安二十四(219)年2月
【錦馬超】
―定陶―
「ふん、他愛もない。これが音に聞こえた趙雲の用兵か」
趙雲隊との交戦を始めてから約二刻。
馬超は敵の戦線が崩れていく様を本陣から遠望して、鼻先で笑った。
趙雲の部隊はあまり統率が取れていなかった。開戦前は馬超自ら
陣頭に立つ事も覚悟していたが、どうもその必要はなさそうだ。
(所詮は虚名を博していただけか?)
ふと、そんな事を思ったりもした。
一方の趙雲は自ら陣頭に立って指揮しているものの、
(何という猛々しさ…これが馬超か!)
と、内心舌を巻く思いだった。
馬超は今、親率して濮陽を攻略せんとしている。
濮陽太守程cは趙雲以下の諸将に城外での迎撃を命じたが、程c
の知略と趙雲の勇猛を以ってしても、今の馬超軍の勢いは抗い難い
ものがあった。
ただ、趙雲自身の部隊の統率が取れていないのには理由がある。
[業β]での敗戦の折、趙雲は不可思議な落雷を受けて部隊がほぼ
壊滅した。今率いている趙雲の麾下は、殆どが最近雇った新兵だった。
訓練が行き届いていないのである。そうした中で馬超率いる西涼騎兵
をここまで持ち堪えているだけでも、趙雲は矢張り非凡だった。
…だが、今は非凡以上でなければ勝ち目はない。そして趙雲は用兵
に関して優秀ではあっても、天才ではなかった。
「趙雲何するものぞ。突撃じゃ!」
「趙雲の首はこの俺が取る!老人に後れを取って笑われるな!」
趙雲隊の左右から、厳顔隊と魏延隊が襲い掛かる。それは既に友軍
が敗退した事を示していた。馬超隊の洗礼を受けていた趙雲隊の士気
は、ここに潰えた。
「陣形を乱すな。乱せば敵の思う壷だぞ!」
趙雲の制止に耳も貸さず、我先にと雪崩を打って逃げ出す。趙雲は目
を怒らせて歯軋りしたが、もうどうしようもなかった。趙雲は憤懣を抑えて
撤退の為の指揮に切り替えた。
馬超が濮陽を陥しました。濮陽にはホウ徳もいます。
…正直、馬超ずるい。
ここで次回予告。キユが遂に何かを決意する。
ロケットでつきぬけろ!
>>567-568 「PONと!キマイラ」の乙部清丸は「何かに食われたような頭」
をしています。私がこれを読んだのは最近ですが(^^;
それから、帰妹は易経(周易)64掛の1つです。
ご参考までに。
>>569-571 保守して頂き有り難うございます。今後とも宜しくお願いします。
何かに食われたような頭…。
馬超の「猫に食われたような兜」かw
帰妹の卦
希望事は妨げがあって達成できない。
結婚話は結婚しても離縁の可能性在り。
キユは離婚するのかよ(爆
ひっそりと保守。
まったりと保守。
お盆前に従兄弟の結婚式がありました。
出席ついでにお盆休みをとって帰省しています。
更新が止まっていてすみません。
>>577-588 保守して頂き有難うございます。
>>575 スキャナとかあったらお見せするんですけどね…。
>>576 >>189と576を見比べてみてください。
いずれにせよ「帰妹」ですから。
と、ちょっとネタバレ的な事を。
ぽっくりと保守
とりあえず山崎捕手
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
ほっしゅー
保守
【遥かなる時空の中で】
―言焦―
今月、僕は奮武将軍に降格された。兄さんもよくまあ、こんなちまちま
とした嫌がらせをしてくるもんだ。
…まあそんな事はどうでもいい。僕には今、もっと重要な懸案事項が
ある。
僕は呉と建業の情報を見比べていた。
どちらも去年手に入れた情報だ。と言っても、呉の情報は司馬懿から、
建業の情報は韓遂から貰ったものだけど。
呉の情報自体はもう5ヶ月も前のもので、今となっては正確な情報とは
言えない。けれどもこの2つの情報は、僕とって凄く重要な意味を持って
いた。
建業と呉は港湾都市だ。しかも港の外に広がっているのは海。東支那
海だ。その遥か東には琉球諸島が浮かび、琉球から更に北上するとそこ
には僕の祖国、日本列島がある…筈だ。
(あそこへ行けば船が手に入る。日本に帰る事が出来るかもしれない)
そう思うと急に、居ても立ってもいられなくなった。
せめて建業だけでも欲しい。無性にそう思うようになった。
僕はアシスタントに命じて、[言焦]にいる全ての武将を政庁に集めさせ
た。
「どうしたのですか、お兄様。突然その様な事を」
「すぐに解るよ」
雲碌の素朴な疑問を僕はそう言って躱した。
「僕は建業を手に入れたい。建業までロケットで突き抜ける」
政庁に集まった武将たちを前に、僕はそう宣言した。
宣言して一同を見回すと、皆一様に驚いた顔をしていた。
「偽帝討伐ではないのですか、兄さん?」
第一声は鉄のその疑問だった。
「名分はそれでいい」
「お兄様、何か変なものでも食べましたか?」
雲碌でさえ、そんな心配をしてきた。
「いや、そんな事はない」
「ご府君自らが左様な意思を示して頂ければ、我等としても心強いもの
があります。ですが唐突感は否めません。そもそも何故曹操のいる呉
ではなく、その手前の建業なのでしょうか」
「…船が要るんだ。船が」
赫昭の疑問に、僕はそれだけを答えた。
呉には曹操と曹休がいる。どっちかに頼めば、外洋航海用の船の一隻
や二隻、作ってくれるかもしれない。人血を流す必要なんてないかもしれ
ない。
けどそれを望むのも、もう難しいかもしれない。今までは曲がりなりにも
同じ「漢朝の臣」という立場にあった。けど今は違う。真の目的はどうあれ、
敵に塩を送るような真似をしてくれるかどうか、もう解らない。
それでも僕は、日本に帰りたい。
今まで漠然と抱いていたその思いが、港湾を視野に捉えた途端、俄か
に募り始めた。
覚悟はしよう。幾千幾万の血を見ようとも、例え地獄に落ちようとも、
僕は僕の目的を果たす。
「いいね?じゃあまず小沛を攻め落とす。出陣だ」
出掛けに清河公主に会った。そして僕は僕の意思で、曹操と戦う事
を告げた。
「父が帝位を称したからですか…?」
公主はおずおずとそう訊ねた。
「いや、違うよ。僕の我が儘の為に戦うんだ。怨んでくれて構わない」
「…いいえ、もうお怨みしようとは思いません。それが乱世なのだと、
割り切る事にしましたから」
公主はそう言ったものの、悲しそうに視線を落とした。
「…ですが、呉の軍勢は強いですよ。貴方に勝ち目は、まずありません。
死なないようにお気を付け下さい」
キユは目を丸くした。公主から心配してもらえるとは思っていなかった
のだ。
「心配してくれて有難う。勝てなさそうならまたこの街に帰ってくる。けど
僕たちが勝ったら、琥珀さんたちと一緒に引っ越してくるといいよ」
公主がびくりと肩を震わせた。顔色が蒼い。
「どうかした?」
「私…その琥珀という人、恐いです…」
「えっ?そんな事ないでしょ。凄く優しくて包容力のある人だと思うけど。
僕は好きだな」
「それは…貴方にとってはそうかもしれませんけど……」
だってあの女性(ひと)は、貴方の事を慕っているみたいだから。
だが、公主はそれを口にしなかった。
「公主には違うの?ふーん…。けど『琥珀は腐った塵芥を引き付けない』
とか言ってた人もいるみたいだし(註)、公主もなるべく壁を作らないよう
にね」
「…はい、解りました。お心遣い有難うございます…」
公主は跪いて一礼したが、その愁眉は晴れなかった。
註:「琥珀不取腐芥、磁石不受曲鍼」(呉書、虞翻伝)…
1.心が清らかで無欲な人は、不正の品物を受け取らないという
喩え(/角川新字源)。2.琥珀は塵芥を引き付けるという俗信が
あったが、腐った塵芥までは引き付けない。優れた人物には
つまらぬ人物が寄って来ないという喩え(/小南一郎)。
小南一郎の解釈を文意とした。
久々の更新ですが、少なくてすみません。
私の帰省中に保守して頂いた皆様には、改めてお礼申し上げます。
しかしこのスレも、いつの間にやら結構容量が危なくなっていますね。
そこで次回は新スレを立てて臨みたいと思います。
ここで次回予告。キユの行く手を遮る、漢末屈指の名将たち。
その先陣を切るのは雲碌の…!?シスター・オブ・ラブでつきぬけろ!
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無名武将@お腹せっぷく:03/08/20 06:23
あげ
保守ですよ