呂布が孔明以上の切れるヤツだったら 

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1無名武将@お腹せっぷく
どうなってたのだろう?(演義版で)
2無名武将@お腹せっぷく:02/09/13 13:14
呂布「これが饅頭(まんとう)だ。」
3無名武将@お腹せっぷく:02/09/13 13:21
呂不韋になってしまいました
呂布「陳宮。俺は朝敵となるのを好まぬ。曹操と組み、袁術を討伐する」
陳宮「何を仰います。早く曹操を討たねばその勢力は日に日に肥大化して行きますぞ」
呂布「袁術の拠点寿春は許都を超える豊かな都。ここを中心に国造りをすれば曹操など」
陳宮「しかしながら今更曹操と同盟など適う事ではありますまい」
呂布「大丈夫だ。手はある」
陳宮「それは」
呂布、剣を抜いて陽に輝かせる。陳宮、それを不思議そうに見る。
絶叫とともに鮮血が呂布の身体を染めた。
呂布「許せ、陳宮。俺が曹操と組むためにはお前の首が必要だったのだ」
呂布に軍師はいらなかった。
どこかでのんびり暮らして、天下の器を持つ人物に会うのを待つ。
呂布「袁術を討ち滅ぼし、孫策との盟約を得た今、次の敵は曹操だ」
張遼「曹操の陣営には名だたる参謀将軍があり、劉備もいます」
呂布「時に劉備と曹操は許田で揉め事があったと聞く」
高順「彼ら二人は帝位に関する考え方が違うようで…」
呂布「ならば劉備に密使を使わせ、ともに曹操討伐の密約を結ぶのだ」
張遼「なんと」
呂布「我が心は常に天子様とともにあり。董卓を討ったのもその為だった」
高順「劉備は勤皇の男。必ずや殿の志に呼応するでしょう」
呂布「同時に袁紹にも使者を使わせ、内外より曹操を討つ」
張遼「おお」
呂布「慎重な袁紹はおそらく一気に攻め入る真似はするまい。
    されば彼らが曹操を牽制している間に我が騎馬軍団が
    天子と都を得る事は間違いない。そうなれば天下は我が物」
7無名武将@お腹せっぷく:02/09/13 13:59
南征の際モウカクを一騎打ちにて捕獲する呂布
北伐の際キョウイを一騎討ちにて捕縛する呂布
8スポルチ:02/09/13 13:59
>>4
これぞ「泣いて陳宮を斬る」
9スポルチ:02/09/13 14:02
っていうか、呂布の戦闘力に孔明の知略・・・。
強すぎてどこぞの覇王のように誰も信用しなくなりそうだ。
「自分でやるのが一番だ」

 そして劉邦もどきにやられる。
曹操「この縄を解け! もしくは少し緩めよ」
呂布「いいだろう。非力なお前だ。少しくらい緩めても逃げ出せまい」
曹操「話の解る奴。ところで俺をどうするつもりだ」
呂布「そうだな。ここは一つ縛り首と行きたいところだが」
曹操「呂布、俺とお前が組めば天下は思うがままだ。俺には無敵の用兵術がある」
呂布「無敵の用兵術か…。それなのに何故、才能を持ちながら俺に敗れた」
曹操「天運が俺に向いてくれなかっただけのこと」
呂布「それは天もお前の存在を許していなかったのではないか」
曹操「なに、天は英雄に試練を与えるものなのだ」
呂布「…どうしたものかな、劉備殿」
劉備「彼が朝廷を脅かす事、董卓も及ばぬ野心が成せた事と思います」
曹操「こ、この大耳野郎! 人の恩を忘れたか」
呂布「劉備殿が受けたのは朝廷からのご恩であって貴様からの恩ではない」
曹操「この曹操、きっと力になる。殺してくれるな」
呂布「ふん、解った。その命、助けてやろう」
劉備「それはなりませぬ!」
呂布「いいのだ。そのかわり、貴様をその祖父の如く、宦官にする」
曹操「なんと」
呂布「お前は宦官として生きてこそ祖先への孝が成るというもの。
    生まれ変わった気分で朝廷に仕え直すがよい」
袁紹「呂布よ。どうして都に我が軍の入る事を拒む」
呂布「よく聞こえぬ。巨万の兵に隠れていないとものも言えんのか」
袁紹「我ら朝廷の重臣を都に入れないとは何事だと申しておる」
呂布「おい、河北の兵卒ども。袁紹殿は重囲に隠れているため、
    俺の言う事も聞こえていないらしい。
    我のように陣の前に出て大音声で語れと伝えよ」
袁紹「ぐっ、聞こえておるわ」
呂布「やっと数歩、前に出たな。その勇気に免じて答えてやろう。
    今、その身を、臆病を、兵の中に隠しているように、
    貴様は野心を隠している。帝位簒奪、それがお前の野心だ」
袁紹「世迷言を申せ。余は漢朝の臣。どうしてかような暴挙を企めよう」
呂布「劉虞殿や袁術のこともある。どうしてかような言葉を信じられよう」
袁紹「貴様こそ、変節を繰り返す梟雄ではないか」
呂布「我が戦は常に大義とともにある。見よ、この旗を」
呂布の陣営から『漢』の旗がいくつも立ち並んだ。
そしてそれは彼の旗である『呂』や『張』や『高』など、
その臣の旗よりも巨大なものだった。
呂布「漢の旗が、お前を逆賊だと言っている。さあ、矛を交えようではないか」
呂布が戟を高く振りまわす。『張』、『高』の旗が左右より前に出始めた。
袁紹「いかん。逃げるぞ!」
>>9
関羽「兄者。このまま我らは呂布の一部将と終わるのでしょうか」
劉備「さあな、呂布は武勇無双でしかも切れ者。逆らっても勝ち目はない」
張飛「だけれど、あいつのやり方には時々反吐が出そうになるぜ!」
劉備「確かに粗暴に過ぎるきらいはある」
関羽「粗暴というより、残忍です。呂布に降らなかった人材は皆、
   とてもむごたらしいやり方で殺されました」
麋竺「敵兵の扱いもひどく、協力した民も残らず煮殺されました」
簡雍「しかも、袁紹の残党を騙まし討ちする様は
    信義も何もないやり方でしたな」
劉備「だが今のままだと呂布を討つ大義に決め手がない。
    朝廷にはしかと尽くしており、過失らしい過失がない」
関羽「確かに朝廷への忠心が本音かどうかは解りませんが、
    曹操のように驕慢な真似は控えています」
張飛「でも何をやるか解ったもんじゃねぇぜ」
劉備「…今しばらく時間をくれ」
13無名武将@お腹せっぷく:02/09/13 15:33
面白すぎ(藁
すごい文才だ。
何故丁原時代からスタートしないのか疑問たっぷり
>>13
ジサクジエーン?
何が面白いのかさっぱりなんだが。
小ネタにこだわりすぎ。
演義ベースでも曹操が総力を尽くして尚敵の自滅でやっと勝てた
官渡を人材不足の呂布では勝てない
17安国寺恵瓊 ◆An5AfdN. :02/09/13 15:58
このスレのレス数予測

一週間後→305
一ヵ月後→423
dat落ち→678

>>4の文才により、最初のうちは稀に見る名スレとして君臨する。
しかし次第に職人のレベルが落ちていき、飽きられていく。
粗野で強かったからこそ呂布。だから人気があるしな。
智謀に優れた呂布は項羽と同じ四面楚歌になったんじゃないかな?
19無名武将@お腹せっぷく:02/09/13 22:53
じゃあ、孔明が呂布以上の豪傑だったら?
20スポルチ:02/09/13 23:01
 孔明は事務の仕事をほとんど自分でやってたっていうから
こいつも自分の能力しか信じれない類だと思うぞ。
21無名武将@お腹せっぷく:02/09/13 23:20
まず董卓なんかに仕えない。
22スポルチ:02/09/13 23:56
>>21
 でも董卓に使えて呂布に何かマイナスがあったかな?
乗っ取りに失敗したけど。
23無名武将@お腹せっぷく:02/09/14 00:00
おもろいぜ。
>>4からの職人ですが、自作自演はしていません。
しかし続きを書く予定もありません(藁
それだけを言いに来た。

また会おう、呂布に魅せられた者たちよ!
続きキボン。
おもろいよ、これ。
27無名武将@お腹せっぷく:02/09/14 21:16
誰か職人さん続き頼んますわ。
呂布「すると、劉備が我が領内より逃げたというのか」
張遼「関羽殿がそれがしに置手紙を残していた為、判明しました」
高順「それでは劉備殿本人は何も言葉を残さなかったのか」
呂布「そうなるな」
高順「何と言う恩知らず! 何と言う不義者か!」
張遼「しかし劉備殿は殿の何が気に入らなかったのでしょう」
呂布「あいつは龍なのかも知れない」
張遼「龍?」
呂布「あいつの意志によるものか、周りがそうさせるのかは別として、
    劉備には、彼自身の天下を築かねばならぬ宿命がついているのだ」
張遼「追いますか?」
呂布「うむ。だが、彼が別天地で築く天下を見てみたい気もする」
張遼「それを決して、実現させてはなりません」
呂布「…逃げたのは劉備一党全員か。何人になる?」
張遼「恥ずかしながら、我が軍に所属していながら劉備殿に心酔していた
    若年兵も含め、総勢五千の人数。それが荊州へ向かっています」
呂布「追え、逃すな。ただし殺してはならぬ。生け捕りにせよ。
    俺は彼自身より裏切った理由を聞きたい」
高順「御意!」
轢死が替わった
博望坡。

劉備軍五千が、小高い丘に陣を構えている。
守りに適した地形だった。
高順軍一万は、それを囲むようにして陣を広げた。

無論、丘の全てを取り囲め程の兵数ではないので、
劉備軍は逃げようと思えばいつでも後ろから逃れられる。

だが劉備はそれをせず、荊州の主・劉表からの援軍を待っている。
一方、高順はしきりに劉備を挑発し、決戦を挑もうとしている。
対陣は三日目になった。

高順「劉備! なぜ我が元を離れようとする!」
劉備「お前たちこそ、なぜ我々を暗殺しようとした!」
高順「な、なに?」
劉備「呂布殿とともに天下を平らげようと尽力する私を、
    お前たちは密かに殺そうとした。
    だからこうして同士を連れて荊州に逃れようとしたまで」
高順「ば、馬鹿な! デタラメを申せ。そんな企みは誰も抱いておらぬ」
劉備「黙れ。帰ってお伝えせよ。我々は呂布殿に反旗を翻すものではない!」
高順「くそう。嘘八百押し並べてでも逆賊の汚名を逃れようとするか」
劉備「さあ、帰れ帰れ!」
高順「こんな時、殿がいれば…」
更に数日を経て後。

関羽「あれこそは劉表殿の援軍だ!」
張飛「やったぞ!」

劉表自身の出陣はないが、蔡瑁が二万以上の兵を連れているのが見える。
しかし、何か様子がおかしい。

蔡瑁「劉備の陣にこれを届けよ」

劉備の元に簡雍の首が届けられる。
荊州への使者に送ったはずであった。
蔡瑁の使者は唖然とする劉備に向かってはっきりと言う。

使者「劉表様は『朝敵、劉備。覚悟せよ』との仰せです」
劉備「…おのれ!」
使者「これにて御免」

蔡瑁の軍勢が、高順と合流して劉備軍を取り囲む。
物見などの報せから察するに、劉備軍の兵糧はあと数日で尽きるはず。
無理をすれば一ヶ月は耐え忍ぶかも知れないが、それまでの命。
高順は折を見て降伏の使者を立てるつもりである。

だが、劉備軍の陣中からは、「高順討つべし」
「蔡瑁討つべし」の声が高まりつつあった。
劉備「かかれ」

夜明け前。劉備軍による決死の奇襲。張飛の騎馬隊が第一波だった。
突然の逆落としを食らい、蔡瑁軍が乱れはじめる。張飛が蔡瑁の陣を撹乱する。
蔡瑁軍が何が起こってるのか気づく前に、関羽が第二波として突撃する。
これは蔡瑁の旗本を狙う。巧く行けば、蔡瑁軍は壊滅する。
関羽の雄叫びが蔡瑁の肝を冷やすのと同時に、劉備の本体が前に進んだ。
蔡瑁軍の位置めがけて全軍突撃。女子供も含めた壮絶な突撃であった。
敵中突破は成るか成らぬか。

高順「何事だ、あれは」

目をこする。見れば、丘には篝火があるだけで、人気と言うものない。
そして蔡瑁軍が大混乱に陥っていた。しかもほうぼうで火が突き始めている。
何騎かの騎馬兵が蔡瑁の本陣を後ろに抜けた。
そしてそれが馬首を返して突撃をやりなおしている。
何が何やら解らないが、怒声があがる。剣のぶつかる音がする。
またしても数十ほどの騎馬隊が陣を抜けて、突撃を繰り返しているのが見えた。
それと入れ替えに『劉』の旗印が戦場を抜け、暗闇に向けて走って行くのも見えた。

高順「やられた!」

気づいたが最後、劉備はまんまと何処ともなく逃れたようだ。
そして残りの人数も次々と四方八方逃れて行く。
高順は鎧もつけずに剣を手にして馬に乗って、自陣を駈ける。

高順「急ぎ、蔡瑁の陣に走り、敵兵と見れば殺し尽くせ」

兵どもに直接、号令して廻る。隊列も何もなく、兵がまばらに火中に赴く。
あとは誰かどうぞ。
と思ったが続きを思いついたので書きます。

呂布「逃しただあ!?」
高順「面目次第もありません」
呂布「…仔細は後にうかがおう。それよりも深刻な事態になった」
高順「と言いますと?」
呂布「皇帝陛下の様子がおかしいのだ。聞いておらぬか」
高順「いえ、まだ何も…」
呂布「危篤状態なのだ。もう一週間になる。病症を見るに、
    毒物を投入された恐れがあるらしい」
高順「…だ、誰かそのようなことを」
呂布「劉備どもが逃げる時、朝廷に置き土産があったのだ。
    その中に劉備自身が野良仕事をして作ったという野菜があり…」
高順「まさか、あの劉備めが。そのような恥知らずな真似を」
呂布「俺は、この話を聞いた時ほど怒りを感じた事はなかった。
    誰よりも忠義を重んじるかのような顔をしておきながら、
    誰よりも凶悪な企みを成す卑劣漢!
    人の誠意を利用して何もかも騙しとおす国賊だ!
    あいつだけは絶対に魅かれてはならん男ぞ」

高順は絶句して二の句が告げられない。
如何に野心高いとは言え、そこまでおのれを隠し通して、
人を誑かせるほどの悪党がこの世にあるのか。
一介の軍人である彼は劉備に、特別な感情を持たず、
ただの小癪な敵としてしか見ていなかったが、ここではっきり、
憎しみの焔が立ち上るのを、顔の熱気で感じ取った。

高順「あの人でなしめ…」
張繍「劉備軍が劉璋の元に流れ、『皇帝陛下の仇』として我が君を糾弾し、
    挙兵の準備をしているそうです」
呂布「なんと。先帝陛下は俺が殺した事になっているのか」
張繍「それと、少帝の遺児を天子に擁立する件は巧くいっていないそうです。
    『呂布に擁立されれば私も殺されてしまうのでは』と怖れているとか」
張遼「どうも誰かがある事ない事、吹きこんでいるようです」
張繍「劉虞殿では行けませんか?」
呂布「袁紹の前であれだけ避難した劉虞の擁立をどうして俺が出来ると思う」
宋憲「しかしこのままでは天子のない世になってしまいます」
呂布「少帝の遺児に、強引にも帝位に就いて頂かねばならんな」


劉備「嫡男のいない皇帝陛下を殺した呂布の狙いは帝位簒奪。
    しかしそうさせてはなりません。
    呂氏が新たな帝位にのぼる前に、正当な天子を立てなければ」
劉璋「しかし、それが何処にもない。誰か天子によい候補はあるのか」
劉備「一つだけ、策があります」
劉璋「何だね」
劉備「呂氏の帝位を認めないために、劉氏である者が帝位を継ぐ」
劉璋「……」
劉備「どうか、帝位を名乗られますよう」
劉璋「余に天子になれと申すか…」
劉備「予言にも蜀より新たな天子が現れるとあります」
劉璋「しかし…」
劉備「天下のためです。なにとぞ」
創作文芸板出身の方ですか?
糞スレ決定
まぁ、呂布は孔明以上に人は切れるな
劉備極悪だなw
呂布 「漢朝の灯を絶やすわけには行かん。だが、今のままではどなたが
    帝位に就かれるにせよ、朝廷は更に混乱するばかりだ。何進の
    二の轍を踏まぬためには・・・」

暫しの黙考の後、呂布は曹操を召す。

曹操 「何やらお困りの様子ですな、呂布殿」
呂布 「ふん、その様子では貴様も大体の事情を知っているようだな」
曹操 「はい、貴殿のおかげをもちまして」

曹操が朝廷の事情に通じているのは、彼が宦官として朝廷に仕えているからで
ある。そして曹操を宦官たらしめたのは、呂布自身に他ならない。辛辣な皮肉で
あったが、呂布は気に留めた様子もない。

呂布 「ならば話は早い。貴様に命じる、朝廷に巣くう鼠を即刻焙り出せ」
曹操 「はははっ、呂布殿は未だにそれがしを見くびっておられるようだ」
呂布 「‥‥‥何だと?」
曹操 「この曹操、既にして劉備の息の掛かった者など見抜いておりまするぞ」
呂布 「誰だ、それは?」

せき立てるような呂布の問いに即答はせず、曹操はにやりと笑う。些かならず
心の平衡を欠いた状態の呂布を嘲笑うかのような態度ではあった。己が優位を
少しばかり楽しんだ後、曹操は一転して表情を消した。

曹操 「流言の首謀者、恐らくは、荀ケ、荀攸の二人かと」
呂布 「なっ‥‥‥」
ただ人を登場させているだけで時代考証も何もかもあったものではない
42無名武将@お腹せっぷく:02/09/15 10:51
>>41
すごいバカっぽい
おもろいじゃん
劉虞は既に死んでるような・・・
官渡の戦いの真実の>>1か?
46無名武将@お腹せっぷく:02/09/15 12:11
おもろい。煽りはほっとけ。
続きキボン
47呂布に知恵があれば・・・:02/09/15 12:49
呂布「美女を用いて董卓と李儒の仲を裂けば天下は我が物よ!」
己の力量を見極め一生文官で終わる
49無名武将@お腹せっぷく:02/09/15 14:13
知恵のある呂布=張遼
貂蝉と宦官曹操の不倫シーン希望
>>45
あの糞スレとは比べ物にならんよ
みんな、最初に書いてた人なの?
途中からつまらなくなった。
職人さん降臨キボンヌage
劉備「呂賊よ!覚悟して貰おう。悪名高き董卓の野望の片棒を担いだ不義の輩を生かして置く訳にはいかぬ」
呂布「劉備殿。それがしの武勇と貴殿のカリスマさえあれば後漢復活も夢ではないと思わんか?」
劉備「貴様の様な奴などおらんでも、我が元には誓いを交わした義弟達がいる。裏切りで名を馳せた貴様とは違う」
呂布「確かに。しかし、虎牢関での一件を忘れた訳ではなかろう?それがし一人で万の兵に相当するのだぞ」
劉備「貴様の首は、そのまま曹操との和解にもなる。斬らぬ訳にもいかぬのだがな」
呂布「成る程、確かに曹賊はこのまま覇者たらんとする勢いだ。しかし貴殿はそれを不義とするのだろう?」
劉備「当然だ。曹操は帝位簒奪の意思がある。口では漢の臣たらんと申しておるが」
呂布「ならば曹賊軍を滅ぼす為に協力しようではないか。利害は一致しておる。悪くない話だと思わんか?」
劉備「五月蝿い。物欲にて丁を裏切り、財と女にて董を裏切り、領地は曹操から奪った貴様に義などない。」
   大人しく観念されよ」
呂布「確かにそれがしは義父丁原を殺し、董卓を斬り、曹賊の領地を奪った。しかしそれは思慮あっての事。
   無思慮の行為ではない。すべて乱世を生き抜く為である。漢の名家袁氏を利用し勢力を拡大した曹賊と比べたら
   微々たる行為だと思わんか?もっと大勢を見られよ、劉備殿。曹賊こそ巨悪である。放っておけば漢を滅ぼしかねんぞ」
劉備「・・・義弟をどうして説得するつもりだ?それがしが納得しても、義弟達は納得しないであろうが」
呂布「長兄である貴殿が納得しさえすれば、関・張両名は納得するであろう?天下に名高い桃園の儀は、それがしも知らん訳ではない」
劉備「・・・いくら貴様が策略を語ろうとも、やはり義父殺しの件納得する訳にはいかぬ。解ってくれるな」
呂布「ふっ、所詮は貧民出身の劉玄徳殿だけある。武人の思考は出来ぬという事か。皇祖劉邦から数える漢の命数も尽きたな。
   貴殿が例え天下を獲ろうとも、その狭窄な視野では国を維持する事など出来ぬ。さぁ、斬りたければ斬るがよい。
   我は死して鬼となり、末代まで貴家を呪ってやろうぞ。」
>>54はスレの流れを無視しているので却下
漢中に割拠する張魯を討つべく、成都の劉備軍が進発したと言う。
そんな劉備の動きに呼応してか、楚越の地より孫策が、
呂布領の合肥へと兵を進めた。
これを知った呂布は合肥城を守る張遼の元へ急ぎ援軍に向かう。

孫策「遅かったな、呂布。既に合肥城はこの通り、我がものよ」
太史慈「張遼ごとき、我等の敵ではなかったわ。はっはっは…」
張遼「……」
孫策「呂布、拙い部下を持ったおのれを呪うがいいわ」
呂布「それはどうかな」
孫策「この期に及んで強がるか、逆賊よ」
呂布「ほう。逆賊とは誰の事を言っているのだ」
孫策「知れた事。我が父の形見である袁術より玉爾を奪い、
    皇帝陛下を殺害奉り、社稷なき世に君臨せんとする暴者。
    今のお前がそれであろう」
呂布「まずは我が前で堂々とたわ言を並べられる無謀を誉めてやろう」
孫策「思いあがるな。小覇王・孫策を侮る気か」
呂布「小覇王? お前がそうだと言うのか」
孫策「人はそう呼んでいる」
呂布「うむ。事実、人は確かにお前を「項羽」の再来だと噂している。
    しかし、そう言っているのはお前を誉めている者たちではない」
孫策「どういうことだ」
呂布「何と言う無知蒙昧な奴。それでも孫子の子孫を騙るか。
    『小覇王』。その呼び名はすなわち、お前を誉めているのではなく、
    嘲り笑っていると言う事にまだ気づかぬか」
城の周囲を取り囲む呂布の軍勢が次々と見覚えのある旗を掲げる。

孫策「……き、貴様らは!」

孫策の叫びを嘲笑うかのようにからからと笑いをあげる諸侯。

作融「よう、小覇王。覚えていてくれたとは嬉しいな」
于吉「呂布殿の空城の計にかかるとは、お主もほとほと阿呆じゃのう」
許貢「『覇王』とは、あの思慮の浅い暴勇の人、項羽の事。
    この程度の策にかかるお前は所詮、その雛型に過ぎんのじゃ」
劉ヨウ「合肥城には張遼殿が火種をたっぷり仕込んである」
王朗「一度は我ら、お前に辛酸を舐めされられたが、その怨み今こそ晴らさん」

呂布軍があちこちで火矢の準備を行なっている。
孫策、太史慈の顔が蒼白になった。

張遼「小覇王孫策。ここがお前の死に場所だ」
呂布「さあ者ども、火矢を放て!」
深謀も大義もなく、孫策は燃える合肥の灰と化した。
側にあった正室の大喬に、覇王の寵愛した『虞美人』のように、
舞いを披露して主人の最後を飾る才はなく、狂ったように泣き叫ぶだけで、
彼女もまた『小覇王』の妻に相応しく、『小虞美人』とも言うべき、
無様な死に様を遂げたのであった。

張遼「策の字を名に使う事ですらおこがましい奴でしたが
    あれでも孫子の子孫を名乗れるのですから、
    無謀とも言えるその度胸だけは大したものだったと思います。
    もっとも『王者』を志す我等は、『覇者』にすらなれなかった
    孫策から習う所など一つもないのですが…」

呂布は張遼と共に焔に包まれる合肥城を眺め、
「おそらく孫家はあれの弟、孫権が継ぐであろう。
 だが怖れるほどの男ではない。次は劉備だ」
と一人、意を決するのだった。
周喩はどこいった?
小覇王と呼ばれる様になったのは周喩がいればこそだが
>59
里にあって孫権を補佐しているところだと思います。
1000に達すると物凄い勢いで吐血するスレで死んだんじゃないの?
小覇王といえば、猛将伝の董卓が最高だった。(ネタバレになるので詳しくは言わん)
63無名武将@お腹せっぷく:02/09/16 12:39
お前らageとけ。
64無名武将@お腹せっぷく:02/09/16 13:16
呂布が切れるやつ・・・うーん。四国志?
しかし職人さんは、こんな難しい台詞よく思いつきますなあ。
異三国志はどう?
ここ面白いよ
呂布が「ただ勝つだけ」なんだよなこのスレ
>68
そんな事当たり前(w
どう勝つかの見せ場が面白ければいいんだよ
荀ケ「黙れ黙れ! 私は何があろうとも劉備殿を信じるぞ」
曹操「頑迷な」
荀ケ「誰が何と言おうとも劉備殿の仕業ではない。皇帝陛下を害し奉ったのは、
    呂布の意を受けた国賊の仕業」
曹操「しかし証拠があるのか」
荀ケ「………」
曹操「お前がそう思いこんでいるだけであろう」
荀ケ「この国を虎狼の思うがままにさせるつもりはない」
曹操「いい加減に目を覚ませ。お前も荀攸も、虚妄で道を誤っている」
荀ケ「だが、劉備殿の勤皇の志。こればかりは疑えるものではない」
曹操「やれやれ。我が元を離れて後、お前は変わってしまったな」
荀ケ「…私は、変わったか」
曹操「敗北がお前から自信を奪った。その自信が支えていた智も色あせた。
    残ったのは、歪められた信念と、それが生み出す狂気のみ」
荀ケ「狂気、とまで言うか」
曹操「そうなるな。正気ならば劉備如きに騙されるはずはない」
荀ケ「それではやはり、劉備殿が犯人だったと……」
曹操「文若。お前が俺の力を信じたように、劉備の志を信じたのは知っている。
    そしてこの俺はお前の期待を裏切り、呂布殿に敗北した。
    ここで劉備をも信じられないとなるとお前が信ずるものは何もなくなる。
    哀れなるかな、文若。
    しかし、目覚めよ。冷徹に真実だけを見つめるのだ。
    呂布殿は犯人ではない」

荀ケの眼から、涙がこぼれた。

曹操「新帝擁立。助力致せ」
大陸に天子のない時間が一年以上刻まれた。この間の中国は伝統的な国体を失い、
かと言って新たな国体を生み出してもおらず、一時的に滅んでいたと言える。
歴史とは多分、そういうものだ。
まず、我慢出来なくなった蜀の劉備劉璋が苦渋の選択で、劉璋を皇帝とし、
漢朝の命脈を受け継ぐ道を採った。仮の帝都は成都。
これは一面、暴挙に見えるが、まともな朝廷がない以上、
それほど非難される行いではないであろう。

周瑜「劉備や劉璋の如き不逞の輩を天子様として仰ぐ事が
    伯符殿の願いだったとは思えませぬ。ご決断を」
孫権「余に漢朝より独立をせよと申すか」
張昭「新朝の幕開けとお考えなさいませ」
孫権「覇王の弟が帝王を名乗る。それも一興か」

孫権もまた、呉帝国の皇帝を名乗らざるを得なかった。

これに数ヶ月遅れ、呂布は少帝の遺児を新帝に立てた。
さすがにこれは組織としての朝廷を擁していただけあって、
見様見真似では出来ない伝統的な即位式を盛大に挙行した。
その儀式は、正当な王朝という自負が持つ様式美だけでなく、
大将軍呂布が国費の多くを用いた事もあり、
到底、蜀や呉のそれとは比較にならない立派なものとなった。

呂布「新帝陛下万歳!」

呂布が文武百官、万民の前で唱えた。全員がそれに続く。
そしてその日のうちに、「蜀、呉にある偽帝を討伐せよ」
との勅命が呂布に下された。
>>71
結局呂布と曹操を入れ替えただけじゃん
73無名武将@お腹せっぷく:02/09/16 20:10
外面的にはそうだろうが内面的には全く違うだろう。
それに切れ呂布が曹操の立場だったらを想定すると萌えるではないですか。
>>72
違うよ。曹操存命中は劉備や孫権は帝位に就かなかったし。
劉備や孫権が帝位に就いたのは、曹丕が献帝から帝位を奪った時。
劉備も帝になってないしな。
>>75
劉備って皇帝になってなかったっけ?
劉禅からだっけ?
確かNHKの放送見てたら実際には劉禅の代に
3人の帝が存在する状況になったとか・・・

このスレ楽しませてもらってまつ。
>>75
初代呉帝孫権
初代魏帝曹丕
初代蜀帝劉備

何か?
劉備は渋々漢中王就任後、またも諸葛亮の薦めで渋々帝位に就いた。
曹丕が後漢を結果的に滅ぼしてしまった為、漢の命数を絶やさぬ為と彼に説得されたから。
そしてこの時代から司馬晋の統一までを俗に三国志時代と呼ぶ。
>>76
違う。このスレでの話。
このスレの蜀皇帝は劉璋。
寝所に横たわる呂布。
彼の手が、傍らの小箱から、無造作にいくつかの宝玉を一握り掴む。
三人の美女がその輝きに目を輝かせた。
呂布は帯を解いて、屹立したモノを差し出して言う。

「貂蝉、雛氏、甄氏。一人づつ、順番に咥えて見せよ。
 俺が『三』を数え終える前に、精を放たせた者にこれをやる」

貂蝉が呂布の膝の間に顔をうずめる。口いっぱいに含んだ。
熱い舌で、頭の方を転がすようになぶりあげる。

「うう、…一つ」

彼女の豊かな黒髪が呂布の下半身に広がっている。

「二つ……」

貂蝉の顔が左右する。毛髪が呂布の肌をくすぐる。

「三つ!」
「だめ…、口の中が焼けそうなくらい熱いのに。
 ちっとも感じて下さらないんですもの」
「惜しかったわね。次はあたし」

雛氏が、貂蝉のつばに濡れた呂布に頬擦りしながら、
所々、急所を狙って口先をつけて吸い上げる。
呂布はやはり、三をゆっくり数え上げた。
そのような真似がしばらく続いた。
やがて呂布も余裕がなくなり、三を数える間が早まってくる。
三人の美姫が代わる代わる呂布の精を搾り出そうと
熱い吐息を漏らしつつ、口をつける。
孔融「大将軍は如何しておられる」
宋憲「只今、三人の奥方と夜遊びをなさっておいでですな」
孔融「また宝石で女を愉しませておられるのか。不吉な…」
宋憲「な、何が不吉と?」
孔融「天文だ。あの三つの巨大な星を見よ。
    何だか今この邸を指しているように思えぬか」
宋憲「…そう取れなくもないようです」
孔融「近年、この国は三つに割れた。漢、偽漢、呉の三つに。
    おそらくあれはその三国の帝星であろう」
宋憲「ふむ」
孔融「その星が見つめる先で天下を占えるとの言い伝えがある。
    然るに今、この邸では、天下の英傑が、傾国の美女三人に、
    宝玉を争わせて、くんずほぐれつ淫蕩に明け暮れておる。
    これすなわち、三国滅亡の兆ではないかと…」
宋憲「まさか、それは」
孔融「例えこれが我が妄信の所産であるとしても、
    大将軍が万事において激し過ぎることは事実。
    やがてその激しき武が、三国を傾ける事になりそうな、
    そんな不安が頭から離れないのだ…」
宋憲「孔融殿、それは思い過ごしであろう…」
孔融「だといいのだが。あの星はしかし」

雲が流れた。月を隠す。しかし三つの巨星は露なままだ。
83無名武将@お腹せっぷく:02/09/17 03:27
エロチック勃起age
月下に馬影。二人の従者に馬を牽かせ、孔融は口の中で詩を吟じ続ける。だが、
どの詩も中途で絶えてしまう。いつものように言葉を流れるが如く紡ぐことが
できないのだ。頭上には三つの巨星。空を見上げ、孔融は小さく首を振った。

孔融「宮殿に戻る。馬を帰せ」

館に戻っても、眠ることなどできそうにない。かといって、酒を呑んだり愛妾と
戯れる気分にもなれない。今の自分にも出来そうな事と言えば、せいぜい雑務
くらいであろう。何でもいい。何かをすることで、不安を一時でも忘れたかった。

宮殿に戻った孔融は、執務の部屋に向かう廊下の途中で、不意に誰かに襟首を
掴まれた。驚いて振り向いた孔融の目の前にあったのは、訝しげな表情をした
呂布の顔であった。

呂布「こんな刻に何をしている、文挙?」

咄嗟に言葉が出ない。呼吸を整え、孔融は辛うじて言葉を返す。

孔融「将軍こそ、如何されたのですか」
呂布「飽きた」

どうやら孔融の質問を違う意味で受け取ったらしい。更に言葉を継ごうとした孔融の
襟首を掴んだまま「ちと付き合え」と呂布。孔融を半ば引きずりながら、すいと中庭に
出て行った。
護衛の兵や従者も退け、中庭には二人だけ。二人の顔を静かに夜風が凪ぐ。酒の
相手をさせられるのかとも孔融は思ったが、どうもそういうことではないらしい。

呂布「やあ、綺麗なものだな。大きな星が三つか」

中天を見上げ、無邪気な口調で言い放つ呂布。一方の孔融は、とても星の輝きを
愛でる気になどなれない。雲が消えた清冽な夜の空を映した池を、ただ眺めるとも
なく眺めるだけである。

混乱と不安が心の中で渦を巻く。先程宋憲に話したことを、呂布にも話したい欲求に
孔融はかられた。呂布ならばこの話を笑い飛ばすだろうか。或いは怯えの色を見せる
のだろうか。それとも自らに対する諌言と解され、不興を買うことになるだろうか。

とりとめもなくそんなことを考えていた孔融の思考は、だが次の瞬間、完全に停止する。

呂布「一つ減るのも、そう遠いことではなかろうな」
立ちすくんだ孔融を横目で見やり、呂布は言葉を続ける。

呂布「劉備のことよ。あ奴がおとなしく偽帝劉璋の下で蜀に引き籠もっていると
    思うか?」
孔融「では、偽漢の軍勢が蜀から出て侵攻してくると・・・」

呂布の目に小さく苛立ちの色が走る。

呂布「そうではない。それ以前の問題だ」
孔融「・・・」
呂布「偽帝劉璋は暗愚にして退嬰の気質。やむを得ず帝位に就いただけであって、
    天下に覇をとなえるような考えなどあるまい。俺が言いたいのは、そんな
    劉璋の下で劉備がおとなしくしていられるかということだ」
孔融「・・・劉璋と劉備の間に、溝ができると仰られるか」
呂布「或いは、既に溝は深きものとなっているやもしれんがな」

呂布は言葉を切り、澄み渡った夜の気を深く吸い込む。

呂布「劉備が帝位の座を狙っているのかどうかは判らぬ。少なくとも、奴の勤王の
    志だけは本物のようであるしな。だが少なくとも、奴は劉璋の下には長くは
    留まれぬ。いずれ劉璋の存在が邪魔になるであろう。その時が我らの機よ。
    劉備が如何なる手段を採るにせよ、蜀は混乱を免れえまい 」
孔融「では、劉備と劉璋との齟齬が表に現れたとき・・・」
呂布「漢中と荊州より大軍を送り込み、一気に片を付けるつもりだ。尤も、戦と
    なれば、劉備などどうでも良いのだがな。俺の興味を惹くのは関羽と張飛の
    二人だけだ。・・・だがその二人も、いつまでも劉備のやり口を是とするかな。
    我らが侵攻の以前に二人が真実を知ることがあれば、或いは・・・」

そう言ったときの呂布の言葉には、些か複雑な感情が込められているように孔融に
聞こえた。そうなってしまっては面白くなくなる、それが呂布の本心なのだろう。

呂布「劉備も存外に先の見えぬ男よ。確かに劉璋の下に逃げ込んだことで、暫くの
    身の安全は確かに得られた。だが、奴が本当に先の見える男であったなら、
    他人の力を頼りとするようなことはしなかっただろうよ。少なくとも劉璋を帝位に
    就ける過ちは犯さなかった筈だ。劉璋の即位によって劉備は大義名分を得た
    のだろうが、代わりに実を失った。自ら求めて足枷を填めたようなものだ」


・・・孔融は部屋で天井を見上げていた。呂布は何故、自分にあのようなことを話して
見せたのだろうか。しばらく考えてみたが、答えらしきものは見つからない。三つの
巨星が招いた己の不安を呂布が見抜いたのであれば、理由にならなくもないだろう。
だがそれでは、呂布はまるで仙人ではないか。人の心を見抜く神仙の力。呂布がその
ような力を持っているとは、さすがに孔融には思えなかった。そして、呂布の卓越した
戦略を聞きながらも、自らの心に巣くった三国の滅亡という不安を消し去ることは、
遂に孔融はできなかったのである。
88お前名無しだろ:02/09/17 09:43
このスレおもろいの。 続き早く書いてたもれ
89無名武将@お腹せっぷく:02/09/17 13:09
「少なくとも」を使いすぎ。
袁紹が呂布に負ける理由を説明してほしい
91無名武将@お腹せっぷく:02/09/18 02:01
>>90
スレタイを見ろよ・・・
劉備は腰の重い劉璋を急き立て、幾万もの兵を借り、漢中の張魯を攻めた。

張魯「この漢中を出発点にしね道教の正しき教えを体現した国家を成そう、
    …そう思っていたが、結局それは、私の思いあがりだったらしい」
張衛「何を仰いますか! 野戦にこそ敗れましたが、まだ教都は完全無傷。
    兄上が、忠実なる信徒たちとしばらく教都を守り続けて下されば、
    この張衛が遊軍を用い、見事敵の糧道を絶って見せます。さすれば」
張魯「さすれば、都より追撃の兵を出せと申すのか」
張衛「おお。さすがに解っておられるではありませんか」
張魯「なぜにそうまでして殺生を重ねなければならぬ?」
閻圃「過去に散った者への義理と、未来に生きる者への義理を思えば、
    この漢中に劉璋の支配を許していいものではありません」
張魯「劉璋の支配。それは私も許せないと思う。しかし、閻圃。
    このまま国土に戦を持ちこませるのは、民が気の毒である。
    何とか和議に持ち込めないか」
張衛「和議…!? そうなれば、この漢中は劉璋の領土となります。
    つまり我らはあの腰抜けに隷属を強いられるのですぞ」
張魯「民がそれで一時でも救われるならば…」
張衛「一時の辛苦を惜しめば、永代までの辛苦を逃れませんぞ」
閻圃「…お待ちなされ、張衛殿。一つばかり策があります」
張衛「策だと」
閻圃「劉璋と和議を結びながら、劉璋の治世を避ける手」
張衛「そんな甘い話があるのか」
閻圃「劉備に降伏を申し入れ、この漢中に招き入れるのです。
張衛「なんだ。結局、劉璋に降るのか」
閻圃「違います。我らは偽帝に降るのではなく、憂国の士に降るのです」

張魯と張衛が、全く同時に閻圃を見た。
閻圃は二人のそっくりな眼差しに、一瞬、どっちが誰か迷った。
閻圃の策はこうであった。
まず、劉備に降伏を申し出る。ただし、幾つか条件を出す。
その条件とは…

・漢中の人民が崇拝する教祖の張魯を要職に就ける事。
・略奪を一切なさない事。その変わりこちらは国庫を開放する。
・我らが旧来の朝廷と血筋の遠い、劉璋を皇帝と認めないのを許す事。
・五斗米道の布教を認める事。ただし軍権を奪われる事は厭わない。
・漢中の支配者は劉備かその嫡男に限る事。劉璋の臣が来る事は認めない。

閻圃「おそらくほとんど受け入れてくれるでしょうが、
    このうち、三つ目にあるものは、まず許されないと思います。
    しかしそれでも必ず条件の一つとして提示しなければなりません。
    そして絶対に譲れないのは、一番最後の条件です。
    もしこれが守られそうにない場合、張衛殿の仰せの通り、
    徹底的に抗戦すべきだと思います」

張魯張衛兄弟は、閻圃としばらく語り合う。

張魯「うむ。閻圃の策は、五斗米道に新たな宿命を与えるものだ」
張衛「しかもそれが民のため、国のためになるというもの」
張魯「解った。お前に任せよう。何としても劉備殿を漢中に招け」
閻圃「ありがとうございます。すぐにも準備に取りかかります」
劉備は事の他、寛大であった。
閻圃の提示した条件を全て呑んだのである。

簡雍「しかし、劉璋殿に相談もなさず」
劉備「『こんな重要な決断を勝手になさってよいのですか』。
    つくづくお前は解りやすい男だなあ」
簡雍「ええ、どうせ私は解りやすい男ですよ。
    殿みたいに解りやすそうで全く腹の底が見えない、
    そんな男じゃありませんもの」
劉備「おやおや、臍を曲げちゃったね。しかしこれでいいのだ」
簡雍「どうしてなんです…?」
劉備「俺はあの劉璋という男に愛想が尽きたんだ」

劉備の心が急速に劉璋から離れたのは、誰もが知るところであった。
理由はいくつかあるのだが、その一つにいざ劉璋が天子を名乗ってみると、
「これが私の求めていたものなのか」と(端から見れば甚だ勝手な話だが)、
劉備が冷めてしまった事がある。
加えて呂布が新帝を擁立した時、劉璋が帝位にある役割は終わったと思い、
「仮の帝位をまことの朝廷に返上し、呂布より新帝を奪回しましょう」
などと自分勝手な戦略を劉璋に持ちかけて拒絶され、
両者の間に深い溝が生じた事もある。

劉璋は劉備に、「何といい加減な奴だ。人を何だと思っている」と呆れ、
劉備は劉璋に、「一度帝位を名乗ってしまうとその味が忘れられないらしい」
と罵ったのだ。

閻圃「劉備殿、お待ち申し上げていました」
劉備「今日から、本当に私がここの主でよいのだな?」
閻圃「張魯様はそのように仰せです」

劉備軍三万が、城門をくぐる。
立派な白髭をたくわえた老人が、若武者相手に語っている。

曹操「呂布のもと、一端の将として働いているそうだな、丕よ」
曹丕「はっ。天下のため、身を粉にして」
曹操「そうか。若いのによい志だ」
曹丕「ありがたきお言葉」
曹操「呂布から譲られた女の味はどうだ」
曹丕「甄氏ですか。あれはその」
曹操「はっはっは。そう照れるな。あれによい子を生ませろ」
曹丕「はっ…」
曹操「その子が大人になる頃、乱世は終わっているはず」
曹丕「その時は呂布の天下も終わっていましょう」

曹操、曹丕の冷酷な微笑に眼を丸くした。

曹丕「父上、先帝を殺害したのは、呂布でも、劉備でもないですな」
曹操「…真実など誰も知るはずがない。俺以外はな」
曹丕「曹家の天下を思い描くならば、どうか一人で事を企てないで下さい」
曹操「お前も知らなくていい。知らなくても俺が駒に使ってやる」
曹丕「私は知らないままに父の操り人形と化す他にないのでしょうか」
曹操「お前ばかりではない。呂布も劉備も俺の操るままにしか動いていない。
    案ずるな。天下は必ずお前のもとに転ぶ。
    今はただ戦に明け暮れ、そして敵味方関わりなく、
   『人』というものを大事にせよ」
曹丕「……」
曹操「天は俺を欺けまいとも、俺は天を欺いて見せる男だ。俺を信じよ」

曹操の険しい顔に、曹丕の微笑が消えた。
この曹丕、当世きっての切れ者と自認するが、父だけにはかなわない。
宦官になって外貌は急に老いたが、眼の鋭さは逆に増したようだ。
おもしろいな、がんばって続きかいてくれ
97無名武将@お腹せっぷく:02/09/18 20:00
>>95
宦官に髭はないのでは?ただ俺の認識が間違ってるだけかもしれないが
>>91
演義の孔明でも勝てないだろ
おもしろくなってきた
100
>>97
清の宦官に髭を生やしている者がいましたからね。
それに切り取られたのが男根そのものか、睾丸か陰茎かだけで
男性ホルモンの違いも出てくるらしい。

>>98
それは人の思い込み次第だと思うが。
演義をもとにしたゲームだったら余裕で勝てるし。
お〜本格的だな
お気に入りにいれますた!
>>94
簡雍は二人いるんですか?
どこをどう読んだらそうなるのかと小一時間(略
>>104
いや・・・>>31を読んで普通に
ああ、確かに(w
作者が毎回違うのか
ネクロマンサー劉備
じゃ首を切られたのは伊籍だったことにしようや。
いや韓嵩で
>>109
あの時点では劉表の配下のはずだからここは孫乾で
これ、56以降は全部一人がやってるね


十常ジの時は宦官を
ひげの有無で見分けて殺していったって言うね。
>>112
最初からやっている者ですが、確実にほかに一人〜二人はいると思います。
宦官と簡雍の件は俺が描いたのだが、やさしいフォローに感謝。
また何かあほな間違いをやったらご指導歓迎、感謝感激です。
115お前名無しだろ:02/09/19 08:05
これ書くヤシは以前からの流れをよく読んでからしろやな
臧覇待ちsage(´・ω・`)
先に釘刺しておく
ハンやトリップ無しで続けてくれ
なんか、今のいい雰囲気が好き
とりあえず、呂布が最後に勝つ展開は勘弁してくれ
せっかくのifなので呂布が負ける展開こそ勘弁してくれ
120無名武将@お腹せっぷく:02/09/19 16:19
なんか、孔明ばりに賢くない気もするが、おもしろいのでよい
演義の孔明ばりに相手の裏をかくトコ見せてくれ
張衛「劉備殿、まことによい兵を揃えておられますな」
劉備「私も我ながらそう思います。彼らに勝る精鋭は他にないでしょう。
    これも皆、よい部下に恵まれたおかげです」
閻圃「よき人材が集う。これも一重にあなたの人徳でしょう。
    流浪に流浪を重ねながら、重臣や近臣に離反者すらいない。
    これは驚くべき事です」
劉備「いや、裏を返せば大将たる私が戦下手だと言うことですよ。
    これだけの人材を抱えながらまだ志に一歩も近づけていない。
    こう負け続きでは彼らも本当にかわいそうだ」
張衛「ははははは。劉備殿はお優しいですなあ」
劉備「義弟たちには、人が好すぎると、笑われています」
閻圃「今、さきほど、『志』と仰いましたね?」
劉備「そうです」
閻圃「その志に一歩も近づけないでいるとも仰いました」
劉備「恥ずかしながら」
閻圃「一歩を踏み出すには努力よりも思い切りが必要ですぞ」
劉備「……」
閻圃「思い切りなされ。劉璋が支配する蜀は望外にいい地です。
    『偽帝討伐』。その大義を掲げれば志は目の前です」
劉備「やはりやるしかないのか…」
閻圃「さすがに劉備殿、話が早い」
劉備は演義基準の性格じゃねぇなv

まるで魔王劉備編です
大々的な奇襲。
呂布勢に組する劉表の荊州、江夏群に孫権の軍勢が迫ってきた。
それは水軍を用いて北上。荊州の南北を両断する勢いだった。
襄陽を前にして堅陣を布く。その数、五万か六万。
おそらくこれが今の呉に出せるギリギリの人数だろう。
ただし孫権そのものは出陣しておらず、大将は周瑜である。

劉表「すっかり虚を突かれてしまった。呂布殿の援軍だけが頼りだ」
蔡瑁「ご心配召されますな。彼らの陣容を見るにあちらからは攻めて来ますまい」
劉表「呉軍は約一万を韓当に預け、南方の長沙へ向かったというぞ」
蔡瑁「それは挑発です。乗せられてはなりません」
蔡和「あれは我らが仕掛けてくるのを狙っているのです」
蔡瑁「ここは辛抱あるのみ。呂布殿の援軍を待つのです」

襄陽の劉表も、呉軍の周瑜も守りを固めて睨み合うばかりである。

周瑜「南方の状況は思わしくないようだな」
魯粛「ええ。地元民の頑強な抵抗に韓当殿が手こずっています。
    韓当殿の一万は装備も調練も充分ではありませんし」
周瑜「しかし精鋭四万はここに置いておかねばならん。
    いつ呂布が来るのか解らないのだぞ」
魯粛「解っております。私はただ韓当殿の苦渋を」
周瑜「それても私の作戦が準備不足だったと言いたいのか」
魯粛「いえ、呂布が水軍を持たぬうちに水路沿いに国土を広げるには
    この電撃的な急進策を採る他にないことは存じております。
    さればこそ、並み居る重臣方の反対を押し切って
    周瑜殿の戦略に賛成したのです」
周瑜「…少し言い過ぎたようだ。疲れているのだ」
魯粛「近頃、眠っておられる時間がことに少ないらしいですね。
    もっと身体を大事になさいませ」
陸戦にかけては敵なしの呂布が、荊州との関係を強くし、水軍を持てば、
呉がその国土を広げる事は不可能になり、引きこもらざるを得なくなる。
揚州を一つの大きな城と見立てれば、後詰のない籠城戦になると言う事だ。
それだけは絶対に避けねばならない。
その為には、呂布に水軍を持たせなければよい。
制水権の固持。揚州、荊州に跨る長江に呂布の兵を一人も入れぬよう、
長江のある限りまで、その以南を呉が支配するのだ。

それを狙って、長江を溯り、荊州にて、その大河の北に堅陣を置き、
南方の制圧を韓当に任せたのだ。
とりあえず呂布が来るまで荊州南方はあらん限り切り取らねばならない。
呂布が来れば、速やかに水路を用いて撤退する。
これを何度か用いれば、呉は荊州全土を制圧できよう。

これが周瑜の考えだった。

周瑜「その時はじめて中華と呉の天下が結びつく糸口が見えて来よう」

旧王朝に幕を下ろし、呉を正当な王朝と天下に認めさせる。
それが周瑜の念願である。

周瑜「孫策殿、見ていて下され…」
126無名武将@お腹せっぷく:02/09/21 01:56
久しぶりにageましょう。
周瑜の荊州侵攻から遡ること二月。間者によって呉軍の動きが変わったのを
知った呂布は、即座に軍議を開いた。。

賈ク 「孫権が軍事行動を起こすならば、目的は荊州奪取以外に考えられませぬ。
    合肥に侵攻して来るならばむしろこちらの思う壺。水軍なき呉軍など
    我らの敵ではありますまい」
呂布 「その通りだ。奴らの狙いは荊州。これははっきりしている」

呂布の目が賈クから田豊に移る。河北の袁紹を速戦で討ち果たした時、田豊は
人目を避けて野に降りていた。田豊の所在を知った呂布は降将の顔良と審配に
命じ、田豊を招いたのだ。袁家への忠誠を理由に仕官を固辞していた田豊であった
が、顔良と審配の(そして呂布の)しつこさに押し切られた形で、再び表舞台に
立つことになった。

田豊 「直接荊州に援軍を送るは下策。むしろ合肥に軍を進め、本拠の揚州を脅かす
    がよろしいかと。それまで堪える位のことは、劉表殿でもできるでしょう」
孔融 「お待ち下さい。漢中に進出した劉備は如何なさいますか?長安を攻められると
    些か困ったことになるのでは」
賈ク 「無用の心配ですな。漢中と益州とが一体であれば、長安侵攻も可能でしょう。
    ですが、両者の関係は現在ほぼ断絶しております。漢中に駐留する劉備軍三万
    のみでは、鍾ヨウ殿と審配殿の守る長安を陥落させることはまず不可能。五斗米
    道の弱兵が加わったとて、結果は同じでしょう」
呂布 「それに今、劉備の目は南を向いておろう。漢中と益州がぶつかるまでは、傍観
    しておくのが得策」
軍議は決した。呂布自ら軍を率い、合肥に入城する。場合によっては更に南下し、揚州へ
侵攻することにもなるだろう。従軍するは張遼、高順、魏続、宋謙、田豊らの諸将。
洛陽の守備は張繍と賈クに二万の兵を預けて任せることとなった。

出陣の日。宮殿の前に五万の軍勢が並ぶ。見送る賈クに赤兎を寄せ、呂布は耳打ちした。

呂布 「後の細かいことは貴様に任せる。うまくやれ」
賈ク 「全て心得ております」


呂布、合肥に入城す。その報を聞いても、周瑜はさして驚いた様子を見せなかった。
合肥への侵攻の可能性は、周瑜が描いた絵図の中に既にして折り込まれていたのである。
合肥への備えには甘寧を残してある。呂布の軍に勝つのは至難の業であろうが、周瑜が
荊州を落とすまで足止めをする程度のことは、そう難しいことでもないだろう。

周瑜 「よいか、後ろを振り返るな。ただ荊州を落とすことだけを考えろ」

呂布の合肥入城の報を受けて数日後、第二報が入る。高順の一万を先頭とする呂布の軍が
南下して攻撃を仕掛けてきたが、甘寧が敷いた水軍の厚い陣の前に攻めあぐね、一旦軍を
退かせて合肥城前に陣を敷いたとのこと。長期戦の構えであり、じっくりと揚州に圧力を
掛けてくるつもりらしい、報告はそう結ばれていた。
事は自分の予想の中で進んでいる。周瑜はそう思った。だが周瑜の傍らで報告を聞いた魯粛は
周瑜の安堵を共有することはできなかった。呂布が荊州を救うつもりならば、合肥での闘いが
長期戦になることは望ましくないはずである。呂布が合肥で足止めされている間に、周瑜は
悠々と襄陽を落とし、荊州全土ををその手に収めるであろう。また、そこまでは望めなくとも、
長沙をはじめとする荊州南部は確実に呉の影響下に置かれることになる。そのことを呂布が
見抜けないはずはないのだが。

周瑜 「甘寧が予想以上に上手く闘っているということだろうよ」
魯粛 「ならば良いのですが・・・」

だが、結果として事態を正しく見通していたのは魯粛の方であった。自らの夢を前に、
周瑜は焦っていたのだろうか。夢のまばゆさに目を奪われ、余事が視界から消えていた
のだろうか。いずれにせよ、この時ばかりは周瑜は呂布を見誤った。

何とか江夏を抜いたものの、襄陽の守りはなかなか堅かった。襄陽で劉表と、合肥で呂布と
にらみ合いが続く中で、一月の時が流れた。そして。

「海上より、長江河口付近に呂布の軍が上陸。長江南岸より、一直線に柴桑へ進撃中」

呂布は合肥になど向かわなかった。呂布は寿春で高順らと別れ、張遼と二万の兵を率いて
淮河沿いに徐州へ向かったのだ。そこで待っていたのは、臧覇と大小多数の船。臧覇は昔の
縁と金と脅迫とで近隣のほぼ全ての海賊を掌握し、彼らの船を供出させたのである。海賊
だけに操船はお手の物、呂布を始めとする将兵は大きな犠牲を出すことなく船旅を続け、
やがて揚州の大地を視界に捉えた。流れの強い長江河口を避け、河口の二十里ほど南に軍を
上陸させる。そして地上に立ってしまえば、呂布と赤兎馬の足を阻める者などいようはずも
なかった。呂布を先頭に、張遼が、二万の兵が走る。目指すは孫権の本拠、柴桑のみ。
130無名武将@お腹せっぷく:02/09/22 02:31
本格的だな、おい。
131無名武将@お腹せっぷく:02/09/22 02:38
周瑜や甘寧はどうでもいいが、孫権だけは殺さないでくれ。
132無名武将@お腹せっぷく:02/09/22 02:42
呂布と項羽ってどっちが強いの?
133無名武将@お腹せっぷく:02/09/22 02:50
>>132
項羽は騙まし討ちを受けた他に負け戦がないんだっけ?
134無名武将@お腹せっぷく:02/09/22 05:16
項羽は一騎討ちとかしてないからなあ…
それ言ったら正史の呂布のほうがやっていない

宿敵張魯が劉備に征されると、劉璋は劉備に「漢中を死守せよ」と命じ、
自らは都で安楽な生活に耽りはじめた。

張松「陛下。もう少し軍事について考えて頂きませんと」
劉璋「無粋な面を下げおってからに。ささ、お前も飲め」

皇帝劉璋は杯を気持ちよく傾けながら、侍女に命じて張松に杯を持たせる。
張松はしかしそれを辞して「申し上げます」と頭を下げた。

張松「張魯の脅威が去ったとしても、まだ呂布の脅威が残っています。
    劉備殿と緊密にこれの対策を考えるべきではありますまいか」
劉璋「ばかか、お前は。漢中さえ守られていれば、益州は安泰なんじゃ」
張松「はあ」
劉璋「万が一、呂布が攻めてきた時は、朕に秘策がある」

張松は半ば呆れながらその「秘策」とやらを尋ねて見た。

劉璋「話は簡単だ。
    劉備が盾になっている間に和平を結ぶ段取りをやればよいのじゃ。
    場合によっては『余を脅して皇帝に据えた劉備は逆賊である』
    として、呂布とともに劉備を討伐する手もある。
    呂布は張魯と違い、大義名分のない戦などやるまい。
    その時までは天子の権を楽しんでもいいだろう」
張松「陛下、酒が過ぎますぞ。それでは余りに劉備殿が」
劉璋「はっはっは。甘いのう、お前は」
法正「張松殿、陛下の仰る通りだ。我々は甘い」
張松「……それでは私はこれにて」
劉璋「おうおう、その無粋な面をさげよ」
法正「陛下、私は張松殿をお見送りして参ります」
宮殿裏口。

張松「法正、よくもまあ、酔っ払いの戯れ言を支持できたな。
    お前がそんなおべっか使いだったとは思わなかったぜ」
法正「落ち着け、張松。私は『我々は甘い』と言っただけだ」
張松「同じじゃないか」

怒気を発した時の張松は腰をかがめ、眉にしわ寄せ、チンピラが
因縁をつけるような姿勢でものを言う。
法正は毅然とした眼で張松を見下ろす。
張松の拳が風を切った。法正、吹っ飛ばされる。

張松「今のも油断がなければ避けられたはずだ」
法正「……」

張松が法正に手を貸した。法正も応じて起き上がる。

法正「それでも、『我々』は甘い」

わざと『我々』の部分を強めて言った。

法正「お前も陛下も、劉備殿に逆心がある事に気づいていない」
張松「…なにっ」
法正「私も甘かった」
張松「何があったのだ」
法正「私のもとに劉備殿からの檄文が密かに届けられたのだ」
劉備は閻圃より授かった策で、法正に送る檄文を書きつづった。

劉備「…さても帝位を取り下げぬは…朝廷への不忠極まりなし
    …かくなる上は偽帝討つべし…、と。
    こんなもんでいいのだろうか?」
閻圃「上出来です。必ずや法正殿の琴線に触れるに違いありません」
劉備「しかし、法正が重臣の一人だと言う事は解るが、
    本来、文官なんぞではなく、前線の守備を預かる軍人にこそ
    呼応を誘うべきではなかろうか」
閻圃「重臣法正殿の人脈は多岐にわたります。彼さえかかれば、
    芋の蔓を引くように数多くの重臣が味方についてくれるはず」
劉備「そんなものかね」
閻圃「そんなものです」
劉備「解った。お前を信じよう」
閻圃「ありがとうございます」
うおぉ、先が楽しみー。呂布の大暴れ期待age。
呂布、柴桑へ進撃中。そう伝えた急使の前で、さすがに周瑜は顔色を失った。

周瑜 「馬鹿な、そんな・・・海からだと・・・」
魯粛 「都督、一刻の猶予もありません。直ちに軍を返しましょう」

周瑜は即答しない。ややあって返された言葉は、魯粛を唖然とさせるものであった。

周瑜 「・・・いや、このまま襄陽を攻め落とす」
魯粛 「何ですと?都督、本気でそのように言われるか」
周瑜 「殿には耐えてもらう。もらわねばならぬ。その間に襄陽を落とせば」
黄蓋 「いい加減に戯れ言は止められよ、周瑜殿」

黄蓋の口調は静かなものであったが、その双眸には抑え切れぬ怒気の炎が灯って
いた。場の空気が、更に緊張感を増す。

黄蓋 「我らが襄陽を落とし、荊州を占領したとて、揚州が蹂躙され、殿が討たれれば
    全ては無に帰する。可及的速やかに全軍を柴桑に返すべし」
魯粛 「最悪の場合、柴桑は四方より攻め込まれることになりまするぞ。北からは
    合肥の高順、東より呂布の本隊、西からは劉表の追撃。更に、不穏な動きを
    見せている山越族も呂布の動きに呼応しないとは限りませぬ。今や柴桑は
    死地となりつつあります。我らが戻らねば、殿を守ること能わず」
周瑜 「だが、それでは荊州は・・・天下は・・・」

刹那、黄蓋の拳が周瑜の面に叩き込まれた。地に倒れ、うめいた周瑜を、黄蓋が睨みつける。

黄蓋 「幻の天下を追うなら一人で追うがいい。だが、殿を幻の供物にすることは決して許さぬ」

誰一人動かない。言葉もない。暫しの重い沈黙の後、周瑜は机に手を掛け、ゆっくりと
立ち上がった。右手で顔を抑えながら、苦渋に満ちた声で諸将に告げる。

周瑜 「・・・軍を返す。準備せよ」
濡須口で合肥の呂布軍と対峙している甘寧も、周瑜と同じく対応に苦慮していた。呂布の本隊と
呼応して、合肥から呂布軍が南下してきたのである。柴桑を救うために軍を返せば、高順の軍は
長江を渡ってくる。そして猛烈な追撃を受け、甚大な被害を被ることになるだろう。だが、ここで
合肥の軍勢を食い止めるとすれば、呂布の本隊は殆ど兵の残っていない揚州を一気に駆け抜け、
易々と柴桑に達する。そうなっては、孫権を救う途は残されていない。周瑜の本隊が軍を返し、
長江を下ったとて、呂布の軍より先に柴桑に達することができるかどうか。劉表の軍もここぞと
ばかり追い打ちを掛けてくるのは目に見えている。

だが、甘寧は速断の将である。四方の状況を把握するや、即座に決断した。

甘寧 「軍を返し、柴桑に向かう。柴桑の手前で街道に陣を敷き、周瑜殿の本軍が戻るまで、
    呂布軍の進撃を食い止めよう」

水上ならばともかく、陸の上で呂布の進撃を阻むことができるとは、甘寧は思っていない。しかし
孫権を守るには、これしか方法は見出せなかった。自らが呂布軍を食い止め、周瑜の帰還を待つ。
甘寧はこの男らしく、飄々とした態度の中で死を覚悟した。


甘寧の船団が長江を遡って行く。その様子を視認した斥候の報を受け、高順は満を持して
全軍に命を下した。

高順 「合肥の守備に宋謙を残し、残りは全軍渡渉。将軍の本隊と呼応して、柴桑を目指す」
審配が呂布に降るって、いくらなんでも・・・
劉備は南鄭を漢中の新都とし、軍備に力を入れつつあった。
幸い、漢中は戦乱の害を被っておらず、漢中の兵を、
劉備の色に塗り替えるのに大きく時間はかからない。

関羽「兄者、成都より補佐役が派遣されてきたそうですな」
張飛「張松って奴のことだろ。小兄はもう会ったのか?」
関羽「いや、まだお目にかかっていない」
張飛「あいつが休んでいる宿舎に簡雍と挨拶をしてきたが、そりゃあひどい面だったぜ」
劉備「そうか。噂どおり、ひどい面か…」
張飛「なに、ニヤニヤしてるんですかい」
劉備「いいから張飛、その宿舎まで共をしろ。私も彼の顔を拝みに行こうと思う」
張飛「えっ、あっちから来るのを待つんじゃないのかい」
関羽「あれはきっと劉璋の目付です。腰の低い態度で出る事はありませんぞ」
劉備「だからこそ、稲穂が垂れるように頭を下げて挨拶をせねばならんのだ」

数刻後。粗末な宿舎に、劉備とその兄弟の馬が止まる。

劉備「張紹殿」
張松「あんたは?」
劉備「漢中の守りを預かる劉玄徳と申します」

張松は劉備自ら出向いてくるとは思っていなかったので少し面食らった。
お互い挨拶を済ませると、張松は「私は回りくどい話は苦手ですので」
といい、姿勢を正して軍礼した。

張松「法孝直より話はうかがっております。彼の願いは天下の安寧」
そして、私も孟子敬もそれに同心するものです。
そう続けた。

張松「これはほんの手土産です」

張松の汗ばんだ手に、益州全域の軍用地図が握られていた。
それから半年ほども後のこと。
荊州に周瑜の軍勢が現れたという情報が大陸全土に伝わった。奇襲である。
荊州は呂布に味方する荊州牧劉表が統治する州。
かの地を攻めるということは、捨て置けばやがて成し遂げられたであろう、
呂布の築く天下を否定し、彼との戦をも辞さぬという宣言になる。

法正「見上げた覚悟でございますな。まず陛下には出来ますまい」
劉璋「それは朕を見下げているのか」
法正「とんでもございません。所詮、孫権や周瑜などは無謀の輩。
    民草を思い、労わることの出来る陛下には真似の出来ない事と、
    そう申し上げたかったのでございます」
法正「それにしても弱ったことになった…」

その日の劉璋は珍しく沈鬱な顔を見せていた。
益州巴郡に駐屯する征東将軍孟達が、独断で荊州に兵を乗り入れたのである。
どういう意図でそんな真似をしたのか、そして孟達軍の矛先すら解らない。
やがて成都に孟達からの使者が届く。

『今こそ好機。あの呂布に痛打を与えるなら今をおいて他になし。
 陛下の御為、命を捨ててその御威光を天下に知らしめる事こそ我が天命、
 火急の大事ゆえ誰とも語らうことなく兵を出した事、お許し下さい。
 もし許されざる事ならば、陛下より直々に討伐を受ける覚悟もございます。
 ただしその儀はなにとぞ、我が義挙をご照覧された後に願いたく存ずる次第』

劉璋「……ひょっとして孟達は、この機を利して独立を狙っているのか」
法正「孟達を許せば、彼の奪った領土はそのまま陛下のものになりますが、
    呂布を敵に回してしまう事になりますな」
劉璋「だが朕は、呂布とは戦いとうない。静観はならんのか」
法正「それもよろしゅうございますが、決断を遅らせるだけです。
    もっとも、時代の流れがこう激しくては先の事も見えませぬゆえ、
    決断を遅らせるのは、そう悪いことでもないのでしょうが」
劉璋「孟達の戦ぶりを見て、それから後の事を決めよう。朕は静観する」
周瑜の軍が撤退の準備に取り掛かっている。
蔡瑁が、「この機を逃してなるものか、追撃隊を出すべし」
と熱く主張したが、カイ越が蔡瑁の言を遮る。

蔡瑁は陰気くさい面を出しやがって、と忌々しげな気持ちで彼の眼を見た。

蔡瑁「なにゆえに追撃を許さんのだ」
カイ越「巴より長江の北岸沿いに南郡を抜けて、我らの江陵へと迫る兵団がある」
蔡瑁「…ほう。この機に乗じて劉璋までが出張ってきたか」
カイ越「どうもそうらしい。よって江陵に援軍が必要である」
蔡瑁「では、軍を二つにわけよう。周瑜軍の追撃は俺、江陵への援軍は文聘だ」

ふん、さすがは臆病将軍。明らかに勝てる戦ばかり引き受けて、
それが危うい時は人に任せる。一度、負け戦の味を知ってしまえば
普段大言壮語ばかり繰り返す軍人も、蔡瑁みたいにつまらない男になってしまうのか。

カイ越は心中、密かに唾を吐き捨てる思いで蔡瑁を見た。

彼は蔡瑁が一度、寡兵の劉備軍、しかも女子供を含めた流浪の集団に
途方もないほど蹴散らされて以来、辛らつな眼でこの男を見ている。

蔡瑁「なんだ、その眼は」
カイ越「いや、さすがに見事なご判断だと思ってな」
蔡瑁「そうであろう。それでは文聘」
文聘「…はっ」
蔡瑁「手勢を連れて西に向かえ」
柴桑に二十里の地点で、呂布は進軍を停止させた。眼前に敵陣。風に翻るは「甘」の旗。
陣容はおよそ一万五千というところか。陣を固く構え、不退転の意志を明確に示している。

呂布「船で川を遡上したか、さすがに速いな。いずれ高順も追いつくだろうが」
張遼「待っている暇は、ありませんな」
呂布「そうだな」

呂布は素早く魚鱗の陣を組む。先陣に張遼。後陣に呂布。一撃撃砕の構えである。

呂布「さて、始めるか」

遠乗りにでも出掛けるかのような呂布の口調。そして、全軍が一気に動いた。張遼の一万が
真正面から甘寧の堅陣にぶつかって行く。甘寧の陣から矢が飛ぶが、進軍を抑えられる程の
ものではなかった。激突。馬蹄の音と鋭い金属音が、天地の狭間を満たした。

甘寧「一兵たりとて通すな。はね返すのではない、陣を軽く緩め、敵の圧力を受け止めろ」

甘寧の指示が全軍に飛ぶ。だが、張遼の圧力は尋常ではない。陣を緩めようにも、その一瞬の
隙を狙われ、騎兵の突入を許せば、一瞬にして陣は崩壊する。堅陣であるだけに、一度崩れれば
取り返しのつかないことになりかねないのだ。

それでもいくらかの時を掛けて陣を緩め、張遼の圧力を上手く包み込んだかに見えた、その一瞬。
張遼の陣が二つに割れた。その間から撃ち放たれた、一本の矢。先頭には呂布と赤兎馬。

呂布「切り裂け」

その一言を残し、呂布の一万が一直線に甘寧の陣へ飛び込んで行く。恐ろしいまでの速度と切れ味。
甘寧の陣が牛刀で切り裂かれるかのように、二つに分断された。さすがの甘寧が、全く対応できない。
呂布の軍は易々と敵を突っ切り、甘寧の陣の背後に回った。
一旦分かれた張遼の陣も、再び一つになって猛攻を仕掛けてくる。甘寧の軍は、前後から挟み撃ち
される格好になった。陣の前からは、張遼の強烈な圧力。後背では、呂布の軍が縦横に駆け回り、
確実に甘寧の陣を切り取って行く。

さほどの時をおかず、甘寧の陣は崩れた。百から五百の兵がひとかたまりになって、ばらばらに
逃げて行く。だが、二千ほどの軍勢は未だ固くまとまり、張遼の攻撃を巧みに受け流しながら、
味方の兵の逃亡を助けていた。大勢が決し、合流した呂布と張遼が嘆声を上げる。

呂布「強いな」
張遼「少しく時を頂ければ、私が蹴散らしますが」
呂布「闘いたい気持ちは分からぬでもないが、あれは強いぞ。お前でも手間取るだろう」

呂布は傍らから弓と矢を出した。弓を構えたまま、剛胆にも、一騎で甘寧の陣に近づいて行く。陣の
中央で必死の防戦を続けていた甘寧も、呂布に気付いた。こちらは一言も発せず、即座に弓を構える。

弓を構えた二人の将。呂布と甘寧の視線が、束の間に交差した。そしてその視線を追うかのように、
二人の弓から矢が放たれる。

呂布の矢が甘寧の肩を射抜く。呂布の方は小さく首を動かし、殺気に満ちた矢を、すいと流しただけ
であった。甘寧は肩を押さえ、呂布の面を強く睨む。やがて双眸から力が消え、甘寧は落馬した。

それで、この闘いは終わりだった。最後まで抵抗した二千の兵は、傷つき落馬した将を拾い上げ、
静かに後退して行く。呂布も張遼も、敢えてそれを追おうとはしなかった。

呂布「手荒い歓迎だったな。さて、孫権に会いに行くか」
148無名武将@お腹せっぷく:02/09/25 04:50
寝る前にあげておこう。
孫権、劉備が帝位につく前に滅びるなよ(w
149無名武将@お腹せっぷく:02/09/27 21:09
あげ?
150無名武将@お腹せっぷく:02/09/28 02:11
おお、良スレなり!
多少流れが前後するが孟達の事である。
孟達は文聘の手勢を前に苦戦していた。蔡瑁が精鋭を率いたため、
文聘率いる援軍は、見るからに未熟で「右へ」と号令が出ても
すぐにそれを理解できないで、しばらく右往左往したりしている。
これが実に半日もかけて孟達が囲む出城に入る。

孟達にして見れば、こんな好機はまたとないのに、彼はなぜか、
二度ばかり小勢で襲わせただけで、本格的に撃破しようとしない。
このため、かえって文聘の兵は緊張感を得て隊列が見事に整い、
入城が早まったようである。

「この孟達も舐められたものだなあ」
「何を悠長なことを…」

だが、孟達は近臣の「一気に殲滅すべし」の声が出ても、適当に
話をそらし、陣地を固める事だけに専念する。

「なぜ、あの時攻め入らなかったのです」
「考えがあるのだ」

孟達は大あくびをしながら竹簡を書いている。

「先ほどから何をしたためられているのです?」

竹簡を書き終えた孟達が「見るか?」と言ってそれを手渡す。

『戦況はかくかくしかじか。急ぎ兵力の増員を求められたし』

「も、孟将軍、まさかこれを成都に送るのですか!?」

見ればわかるだろう、とだけ呟くと、孟達はそれを取り上げて使いを呼ぶ。
孟達の手紙は、今現在の戦況をありのままに記しており、特に、文聘の援軍を
見逃した事などはご丁寧にも「文聘の兵は弱小で、こちらが少し本気を出せば、
簡単に打ち破れそうではあったが、思わぬ手負いを受ける危険も感じた」等と、
やる気のない言い訳が添えられてあった。

劉璋「なんだこれは!」

竹簡を投げつける。

劉璋「あの戦は孟達が勝手にやったこと。しかも軍人と彼の思えぬ臆病ぶりに
    呆れて何もしてやる気が起きん。将としての誇あれば全て独力でやれ!」
使者「しかし、孟達殿は」
劉璋「やかましい! 援軍など送らぬぞ。決してな!」

成都より援軍拒否の報せが届くと孟達は一瞬、嬉しそうな顔をした。
だが、すぐに声を荒げて地団太を踏み鳴らす。

孟達「おのれ、劉璋! この俺が誰のために戦っていると思っている!」

使者をはじめ、近くにいた者が孟達の怒りに驚く。自分が悪いんじゃないのか。

孟達「この仕打ち、断じて許さん。これまで成都に尽くしてきたが…それも」

怒りに任せて剣を抜く。近くに見えた樽を叩き割った。

孟達「荊州など知った事か、陣をひくぞ。成都に眼にもの見せてくれるわ!」
足音が鳴り止まない。劉璋が広間を一人、歩き回っている。

劉璋「どうしたらいいんじゃ、どうしたら…。むむう…」

孟達から宣戦布告に等しい書簡が届いたのはつい先ほどの事である。
これを読んだとき、はじめ劉璋は唖然と口を開き、しばらくして玉のような
汗を全身から発し、手や足を振るわせた。

『陛下の御為、命を捨ててその御威光を天下に知らしめる事こそ我が天命、
 それがしはかつてそう書きました。しかるに貴殿、すなわち劉璋殿は、
 天下にただ一人であるはずの天子の名を騙りつつ、その悪行の原因を
 漢中の劉備殿におっかぶせ、自らは栄華と覇権を求めて益州にある人士を
 利欲で釣り、この孟達には荊州を奪わせようとした。それがしはこれまで
 成都より頂いたご恩に報じようと、不本意ながら荊州討伐の命に従い、
 敵将と死に物狂いの戦を続けていたが、よく思えばそれは逆賊に組する事。
 ここでようやく、それがしも長き不明を悟った次第。
 逆賊、劉璋。今すぐに我ら成都に手勢を向ける。覚悟して待つがよい』

逆恨みと言うべきか、狂気の沙汰と言うべきか、はめられたと言うべきか、
孟達が成都を奪う口実を得た。

法正「益州の兵力はすべて国境に集めてあり、この成都に残るたった数百
    の兵では到底勝ち目がありません。
    ここは急ぎ、他の国境守備にあたる将を呼び戻すべきでしょう」
劉璋「そうだ。呉懿、李厳を呼べ。孟達を攻めさせろ」
法正「彼ら二人が動かせる兵は多く見ても多分、二万。孟達が持つ兵は、
    おそらく三万。これは難しいですな」
劉璋「し、しかし他に何か手はあるのか!?」
法正「劉備殿ならいかがでしょう。漢中は守備堅牢で、備えを多くおかず、
    その兵力の大半を援軍に回せるはずです。今なら劉備殿が率いられる
    兵数は四万を超えるでしょう」
劉璋「そっ、そ、それだ! 今すぐに劉備殿に援軍を頼めっ!」
154無名武将@お腹せっぷく:02/09/28 03:51
無血入城。劉備軍が成都を得た。
何が起こったのかは解らない。だが、周囲の話すところによれば、以下の通り。

劉備が成都に入ると、劉璋は近臣王累にそそのかされて「劉備に逆心あり」と見た。
それで彼は密かに張任に劉備を暗殺の命を下す。ところがこれを察した法正たちが
群臣に「振り返ってみれば劉備殿が劉璋殿に帝位を勧めた時期に、劉璋殿が帝位に
ついたのは時勢にかない、天道に逆らうものではなかった。しかし、中原に新たな
天子が現れてからは、器量を小さくして、その御位にしがみつき、見苦しい真似を
続けている。これになおも従えば、我らは青史に逆賊の輩と記される事になろう」
と説く。

群臣「それで貴殿はどうすればよいと思う?」
法正「殺すのだ。偽帝を」

群臣の心のうちにある利欲と倫理が、法正の口を借りて「劉璋を殺せ」と言う。
誰もが少し後ろめたいものを感じながら、それに従う事に決めた。

かくて劉璋と、それに組する張任や王累が、劉備が眠っている間に殺された。
あくる日の朝、数名の死体を見て劉備が法正たちに問うた。

劉備「これはどういう事なのだ?」
法正「実は…」

かくして劉備は一夜にして益州の主となったのである。
155無名武将@お腹せっぷく:02/09/29 00:58
職人!
156無名武将@お腹せっぷく:02/09/29 02:36
イイ!続ききぼんぬ!!
柴桑宮殿。議席を埋め尽くす人の頭。所狭しと諸官で満ち溢れている。

一同、皇帝孫権の「忌憚なく思うところをお互いにぶつけ合い、意見を
三つまでにまとめて後、朕に奏上せよ」の声に従って、喧騒交じりの
論争をはじめ、持論の似通った者同士で徒党を組み合い、近くにある
徒党に向かって唾散らしながら討論を繰り返す。

「呂布は恐るるに足らず、あれは野戦こそ無敵だが城攻めは苦手と聞く。
今のうちにこの城の守りを固めれば防ぎようもある」「馬鹿な! 後詰の
ない籠城など下策も下策。周瑜殿がなぜ西に向かったか。もう忘れたのか」
「左様、我らが生き延びるには西へ進むほか、活路がなかったのである」
「では決戦を挑めというのか。野戦になればそれこそ敵の思うがままぞ」
「待て待てい、後詰がなければ作ればよい。蜀では奇怪な兵乱があったと
聞く。まだ乱世は続いておる。ゆえにその時々の力関係は絶対ではなく、
実に不安定なもの。これを活かさずして呉に生きる道があろうか」

意見はなかなかまとまらない。しかし、やがて時が過ぎた。

張紹「どうやら三つの意見が出揃いました様子です」

一つには、このまま柴桑に立てこもり、周瑜を遊軍として呂布軍を撹乱、
時間を稼がせている間に巴蜀や西涼の軍閥、豪族を扇動するというもの。
もう一つは、行く先はともかくとして、速やかに落ち延びる事。

孫権「そして今一つは?」
張紹「二人の皇帝陛下にご叡慮を願う事です」
孫権「それはつまり…朕が、いや…余が……呂布と和睦し、中原の朝廷に
    許しを請うというものだな?」
158無名武将@お腹せっぷく:02/09/29 08:02
中原の朝廷に許しを請う。そのためには孫権が玉座を降り、自らの帝位を
一時の戯れとする事に他ならなかった。

孫権「それしかあるまい。余は中原に従うとしよう」

張紹が遠まわしに表現したこの案を、孫権が即座に理解して採った事に、
驚きと哀しみを禁じえず、思わずその場に膝をついて顔を覆った。
我らからはっきりと申し上げる間でもなく、我が君は自らこの絶望的な
ご決意をなされた。臣としてこんな情けなき事があろうか。もったいなや。
その思いが、言葉ではなく、ただ押し殺そうとして殺しきれぬ嗚咽になった。

孫権は座より立ち上がり、つかつかと張紹のもとに歩み寄る。
そして年甲斐もなく大声をあげているその小さな老体を強く抱きしめた。

孫権「余は逆賊として処刑されるやも知れぬが、このまま周瑜やお前たちの
    ような呉の人材まで、我が拙い采配で殺させる訳にはいかん。
    兄や父には余から、しかと詫びておく」

張紹は「その一言ばかりでも我が君は父君や兄君に劣らぬ名君と申せます。
三代に至り、七生受けても返しきれぬ大恩を受けたこの張紹、例えなにが
あろうとも、我が君を逆賊になどさせませぬ。中原が我が君を殺すと言えば、
この張紹があやつめと刺し違えてご覧に入れます」と述べようとしたが、
どうやっても言葉が出ない。
だが、その場に居合わせる呉臣全員、同じ気持ちであった。

孫権「しかし、余は中原の朝廷に降っても、呂布に降るつもりはない。
    それだけはお前たちの誇りのためにも守り通す」

だが、孫権のその命は、朝廷ではなく、呂布が握る事になるであろう。
>158
すげえイイ!! 朝から感動したぞゴルァ 忠臣燃え〜
今後も期待。
呂布 魅力70
孫権 魅力99
曹操 魅力65
劉備 魅力50
161無名武将@お腹せっぷく:02/09/29 09:44
呂布、もっと外交を駆使してくれ〜age
162age アージュ:02/09/29 11:12
なんか、呂布がラインハルトっぽい (w
163無名武将@お腹せっぷく:02/09/29 15:51
呂布と孫権の対面が楽しみだ。
柴桑の門は開かれていた。城の前に整然と並んだ呂布軍二万の前で、城門を守る兵は
前を見据え、凛々しく屹立していた。怯えや緊張が皆無であるはずもない。彼らの姿は
すなわち、自らが命を賭して守ろうとする誇りを体現するものでもあった。

門前の広場に、孫呉の文武官が並んでいる。中央に立っているのは、他ならぬ呉の主
孫権。城門をくぐった呂布が相対すると、孫権は一歩前に進み、自ら地に平伏した。

孫権「漢帝国大将軍、呂布殿に謹んで言上いたす。我ら一同、漢帝国に降伏いたす」

その声を合図に、全ての諸官が呂布の前に平伏した。押し殺した歔欷の声が、彼らの
間から聞こえた。遠巻きに様子を見ていた民の間からは、無念の叫びさえ挙がる。だが。

呂布「はて、これは不可解な。降伏とはどういうことだ」

その一言は、屈辱と緊張感に満ち満ちた空気の中で、如何にも不釣り合いな言葉であり、
響きであった。孫権が、平伏した諸官が、一瞬呆気に取られて顔を上げる。

呂布「揚州にて不穏な気配あり。それを知った今上陛下は、我らに巡察を命ぜられた。
   揚州各地をつぶさに見て回り、諸官と民を鎮撫せよ、とな」

張昭を始め、数人の文官の表情が変わる。呂布の言葉の意味、その意図を解したのだ。
大半の諸官は未だに事の成り行きが理解できない様子であった。小さなざわめきがそこ
かしこに聞こえる。それを見遣り、呂布は言葉を続ける。

呂布「我らがこの地に至ったは、あくまで巡察のためよ。無論、漢帝国に刃を向ける者
   あらば、我らの剣もて掃討せねばならぬ。しかしそれ以外のところで、無用に戦を
   起こす気など在る筈もない。ま、元気な跳ねっ返りとは、ちと遊んでやったがな」

呂布は居並ぶ武官を見渡しながら小さく笑い、一転して表情を引き締める。

呂布「さて、先に申したように、揚州には不穏なる気配ありと聞いた。そこで揚州刺史
   たる孫権殿にお尋ねしたい。この地は漢帝国の威光の下、万事つつがなく治まって
   いるであろうか」

「揚州刺史」と「漢帝国」。この二つの言葉に、呂布はさりげなく力を込めた。尤も、孫権も
明敏である。既にして呂布の意図を理解していた。揚州は漢帝国の一部。孫権の登極などは
風の噂。全ては不穏な「気配」に過ぎず、揚州は万事平和に治まっている。そういうことだ。

孫権は側にいる張昭と短く視線を交わし、再び呂布に相対して平伏した。

孫権「万事、つつがなく治まっておりまする。・・・漢帝国の、威光の、下に」
呂布としても相当に考えた上の結論であった。まず、ここで孫権を討ち果たすことは
論外である。日和見を決め込んだ輩はともかく、孫呉との繋がりが深い豪族たちや
旧臣が、あっさりと呂布の支配を受け入れるはずもない。各地で勃発するであろう叛乱や
反抗を、呂布の率いた五万の兵だけで迅速に収拾することはまず不可能である。揚州に
時間を取られていては、漢中や益州の動きに対応できなくなり、更に、万が一揚州の
収拾に躓きが出れば、中原の空気さえも不穏なものになりかねなかった。

実際、孫権が降伏を申し込んできたから良いものの、柴桑に籠城して徹底抗戦の道を
選ばれた時には、即時撤退もやむを得ぬと呂布は考えていた。柴桑を落としたとしても、
周瑜らの軍の動きによっては、漢帝国の大将軍が揚州で孤立するという事態にもなり
かねなかったのだ。

次いで考えたのが、孫権を洛陽に同行させ、皇帝に謁見させる道である。だがこれも
幾つかの問題があった。降伏と謁見という事実は、孫権がかつて皇帝であったという
事実を追認するものであり、あくまで建前論ではあるにしても、結果として、漢帝国の
支配が及ばない地がこの中華に存在することを認めることにもなるのだ。

同時に、孫権以外の人間を揚州刺史に任命すれば、何らかの形で内政・軍事上の問題が
持ち上がることは必至であった。孫家三代の威光は、この地ではそれなりに力を持って
いる。その威光を奪って、揚州が今まで通りに治まるとは、呂布には思えなかった。
時をかけて鎮撫を続ければ、いずれ揚州も孫家の威光を忘れるであろう。だが、それには
少しばかり長い時が必要である。そしてそのような時間は、今の呂布に与えられてはいない。
孫権に対して、随分と寛大な処置にも見える。だが呂布は、単に寛大なだけではなかった。
明確に言葉にこそしなかったが、孫権の身柄を保証することを手札として交渉を行い、秣陵
(建業)を呂布に割譲させる言質を得た。秣陵と合肥、この二つの要地を押さえることで、
揚州の地には大きな楔が打ち込まれた格好になる。揚州に対する呂布の影響力は、極めて
大きなものとなるだろう。

更に「揚州の不穏な気配」について皇帝に報告するためとして、何人かの重臣を洛陽に同道
させることとなった。孫権の末弟である孫匡を始め、文官では張昭、虞翻。武官では程普、陳武。
これらの重臣が呂布に従って洛陽に赴き、「漢帝国の臣として」皇帝に謁見することになる。
ちなみに、これら重臣の全員が自ら同道を願い出たことは、孫呉の結束の強さを改めて呂布に
知らしめるものでもあった。

こうした交渉を手早く終えると、呂布は孫権の歓待の誘いを断り、あっさりと軍を返して東へ
戻って行った。後に残された柴桑の文武官はしばらくは魂を抜かれたかのようであったが、
孫権の一喝を受け、再び日常の激務へとそれぞれ身を投じることになる。

孫権の首には枷が掛けられた。しかし、その牙が抜かれたわけではない。そのことは呂布も
孫権も十二分に理解していた。いずれ力が蓄えられれば、再び孫権は反旗を翻すやもしれぬ。
そして中原を争い、呂布と矛を交えるときが来るかもしれない。だが、その刻までは、束の間の
平和を。今回の呂布の処置は大半の人間にとって受け入れやすいものであり、孫権の判断も
また、多くの人々を納得させるものであった。

だがここに一人、呂布の処置と孫権の対応に激怒した人間がいる。呂布が柴桑から去って三日後、
徒労となった遠征の疲れを背負い、ようやく荊州から柴桑に帰還した周瑜である。
(・∀・)イイ!!
169age アージュ:02/09/30 00:59
スゴク(・∀・)イイ!!
おはようございまふ。上の>>164-167を書いたものです。
致命的な間違いをやってしまったので、恥を忍んで参上。

「揚州刺史」を「揚州の牧」に、「刺史」を「州牧」に、
それぞれ脳内変換して下さいませ。大変失礼しますた。
明らかに何人かの職人が書いているはずであるが、
お互いが仕掛けた伏線を見事に駆使し、簡雍以外の矛盾もなく、
こうまで面白い物語を描ける事は驚嘆に値する。

呂布の「さて孫権に会いに行くか」に少し拍子抜けしたが、
こういう展開に至るのを見て逆転萌え。
洛陽。呂布が揚州を疾駆していたその頃、執金吾として都を警備する
張繍の下で、賈クは忙しい日々を送っていた。雑務に忙殺される中で、
賈クは呂布直々に命じられたもう一つの任務を秘かに進めている。

曹操。宦官となったことで軍事的な力は失ったものの、卓越した政治の
才は未だ衰えを見せない。そして野心。呂布に敗れ、その配下という
形になったとは言え、心の奥底に宿る炎は決して消えてはいない。

先の皇帝崩御に際しての宮中の混乱を短期間に収拾できたのは、
彼の才に負うところが大きい。しかしそのことが却って、曹操の野心に
対する疑念を呂布に抱かせた。野心なき者が、あれほどに情報に通じて
いる理由はないのだ。

某日の夜。賈クは館の奥まった部屋で、密偵の長を待っていた。音もなく
居室の扉が開き、長が入ってくる。前置きなしに、賈クは本題に入った。

賈ク 「曹操殿と荀ケ殿、荀攸殿との繋がりは」
長  「間を繋ぐ糸はございませぬ」
賈ク 「曹操殿が何を企んでいるにせよ、御両所とは無関係の事か」
長  「御意」
かつて、呂布は荀ケを司徒に就けたいと賈クに語ったことがある。荀ケ
ほどの内政の才を持つ者は、都のどこを探しても見つからないのだ。
曹操との繋がりがないと判明した今、障壁は荀ケ自身の意志だけであろう。
自ら国を創る喜び。それを知る荀ケならば、説得によっては再び表舞台に
立ってくれるかもしれない。呂布にとっては、まずは朗報である。

賈ク 「で、曹操殿自身の繋がりは掴めたか」
長  「侮れませぬ」
賈ク 「侮れませぬ、とは?」
長  「曹操殿の抱える密偵は極めて優秀。数も多うございます。
    容易く情報を掴ませてはくれませぬ」

賈クほどの男が内心の動揺を完全には隠しきれず、小さくうめく。密偵の
数と力、それが即ち野心の証。この瞬間、賈クの疑いは確信に変わった。
曹操、叛心あり。

賈ク 「‥‥‥あらゆる手管を尽くせ。何としても手掛かりを掴むのだ」

言わずもがなのこと。普段の賈クならば、決して口にしないことである。
長は小さく頷いただけで、居室から姿を消した。
諸葛亮。字を孔明。荊州の名高き『伏龍』として知られるこの若者は、
天下の動乱をよそに晴耕雨読の生活を過ごしていた。

一応、天下はまた平和な時代に向かっているかのように見える。
三つあった朝廷も再び一つに収束した。
あの帝星もいつの間にか、うち二つはすっかり闇に隠れてしまった。
多分、このまま呂布が漢帝国の第三時代を築くのだろう。

これまで私は人から鬼才だの天下に必要不可欠な人材だのと持ち上げられたが、
結局はこの動乱に身を投ずることなく、ただの百姓として生涯を終えるようだ。

孔明「だが」

桑を持つ両腕を大きくあげる。

孔明「それもまたよし」

土にぶつけた。また両腕をあげる。そしてまた叩きつける。

子元「本当に、それでいいのか?」

足元の土に自分ではない、もう一つの影がぬっと現れた。
振り返れば知る顔があった。ホウ統。字を子元。彼もまた、この荊州では孔明と
並び称されるほどの異才の男である。
子元「聞いたぞ。なぜ劉表の誘いを断った?」
孔明「……荊州は日々平穏。私がお仕えしたところで何も」
子元「すねたような物言いだな」
孔明「そういう君こそ落ち着く気はないのかい? 揚州の孫権は人材を集めてい
    るようだが」
子元「正しくは孫権ではなく、周瑜だろうね。あれは本当に馬鹿な男だ」

せっかく命拾いしたところなのに、またここで野心を露にすれば、今度こそ
呉は滅亡を免れまい。それに気づかぬ周瑜でもないとは思うが。
だが、孔明はその言葉を呑み込み、子元から顔を背けて土を耕す。

子元「……孔明、何を恐れているのだ」
孔明「我が風評。根も葉もない噂が人を惑わせるのが何より怖い」

水鏡が『伏龍と鳳雛を得れば天下を得るのはたやすい』との風聞を流し、門弟の
仕官先を探そうと勝手に動いていたことに孔明は少なからず不満を持っていた。
まだその頃はそんな誇大宣伝なくして仕官先を得ることは難しかったし、孔明も
子元も、良君に仕えて才を活かし、歴史に名を残す野心を持っていたが、乱世が
収束に近づくにつれ、泰平の世が垣間見えてきた今となってはそうでもない。

孔明「ただ百姓として平和に暮らせるならそれが一番だよ」
子元「しかし、望みどおりに行くかな?」

雨が降り始めた。
子元「昔のオンボロ小屋はどうした? 壁も家具も出来たばかりのものではないか」
孔明「劉表様のご好意によるものです。おかげで生活も少し楽になりました」
子元「あきれた奴だ。これだけのものをもらっていながら仕官を断るとは」
孔明「たった、『これだけ』のものです。劉表その人が汗水流して作ったものではない」

劉表が何をしなくとも彼の元に税は収められ、その幾らかは自分の思うように使うことが出来る。
彼はただ、それを気まぐれに少しばかり孔明に使っただけだ。
こんな事は金持ちならば、天子様でも山賊でも誰でも出来る。

子元「孔明。お前は欲張りだ」
孔明「……」

そうだと言う気持ちもないが、反論する気にもなれない。
私は多分、自分でもよく解らないのだと思う。本当に隠遁してしまいたいのか、それとも
動乱の時代におのれの才覚を活かして見たいのか。

雨はやさしく振り続ける。

子元「欲や迷いは身を滅ぼす。劉表はこれを恨みに思っているそうだぞ」
孔明「聞いています。水鏡先生と仲が悪い蔡瑁がしきりに私の悪口を並べている事も」
子元「妥協する気はないのか?」
孔明「それは君も同じだろう」

水の跳ねる音。

孔明「君は長く諸国をさすらって何か見てきたかい」
子元「中原は以前と変わっていたよ」

雨音に混ざり迫る刺客の足音。二人は全く気づかない。
孔明の庵を前に、劉表の刺客、徐庶が剣を静かに抜く。
孔明の話はあまりに唐突な気がするんだけど…
>>177
でもそろそろ出てくれないと劉備がやばい。
179無名武将@お腹せっぷく:02/10/03 00:13
徐庶が剣の達人カコイイ!w
180無名武将@お腹せっぷく:02/10/03 01:42
すっごく面白い!!
続きが楽しみ〜!
徐庶という男。荊州の侠として武芸を振るい、いくらかの高名を得ていたが、
仔細あって足を洗う。やがて学問の道に目覚め、一方ならぬ才能を発揮する。
呂布が天下を席巻する頃には、中原での遊学を終えて、司馬徽の推薦を得て
劉表の秘書となった。だが、秘書とは名目のみ。
実のところ、彼に期待されたのは、闇世界に持つ旧き縁と、その卓越した智謀
であった。要するに徐庶は劉表の影働きを任されていたのである。

その徐庶がある日、密命を授かった。時は夜、外は雨。執務室には劉表と徐庶。

劉表「久しぶりにお前の力を借りたいが、撃剣の腕は衰えていないかな」
徐庶「それは誰におっしゃっているのですか」
劉表「その僅かに怒りを隠した横顔がまた頼もしいわい」
徐庶「……。お役目はなんでございます?」
劉表「諸葛孔明を消せ」
徐庶「え」
劉表「お前の旧友、孔明を殺すのだ。奴は捨て置けば危険だ」
徐庶「なぜ一介の百姓ごときを恐れるのです」
劉表「世間はあれを『臥龍』と呼ぶ。『臥龍と鳳雛を得れば天下を得られる』と
    いう風聞も流れている。これがどういう意味だか解るか?」

徐庶が「はて」と首を傾げて見せると劉表は脂ぎった顔を寄せてきて、言う。
「孔明の存在を知る諸侯が、その才知を喉から手が出るほどに欲しがっている。
わしは試しに何人か人をやってその人物を確かめさせたが、噂を超える才能の
持ち主らしい。もし彼が世に出れば、たちどころに天下の勢力図は彼の望むまま
に一変すると誰もが言う。こんな奴を他の誰かに渡す手はない。そこでわしは
彼を召し出そうと手を尽くしたが、乗り気ではない。どんな甘い話を出しても
聞かないのだ。これは下手をすると既に何者かと、密かに主従の契りを結び、
百姓の姿を借りて、この荊州を狙っている可能性すらある」
徐庶「それはまた蔡瑁殿の推測ですかな」
劉表「蔡瑁は我が張良。軍事も謀事も彼に勝るものはない」

腹の底で苦笑いする徐庶。
劉表はそれを知ることもなく、滑稽なほど真剣な眼差しで一言述べた。

劉表「疑わしきは消せ」
徐庶「……」
劉表「速やかに。今月のうちに、だ」

数秒間、徐庶は孔明と劉表とを秤にかけた。どういう思考を基準にしたのか、
劉表に重きを見たらしい。彼はすぐに「では、これより」と立ち上がった。

劉表「今すぐにか」
徐庶「こういう事は迅速にやらなければ必ずや失敗します。一つには」

一つには情報の漏洩を防ぐため、一つには我が心が孔明に傾かぬため、
自他共に時を与えてはならないのです。

劉表は大きく頷き、一振りの剣を与えようとする。
だが、徐庶はそれを辞退し、床下から別の剣を取り出して帯びる。

徐庶「もしかすれば、これで今生のお別れとなるやも知れませんが」
劉表「そういうな」

徐庶は窓枠に足をかけたかと思うと、暗闇に向かい、跳躍した。
徐庶、孔明、子元の三人の動向は夜にでも続く。
このくだらない仕事はおのれの手でやり遂げねばならぬ。
下手に策や時、そして人を交え、事をややこしくすれば、必ずや仕損じる。
徐庶はそう考えて、単身で孔明の庵へと早足に歩きはじめた。

行き着いた。息を殺して耳を澄ませる。窓をのぞく。
諸葛亮、そしてホウ統が何も知らずに語り合っている。
ふむ、二人か。もし一人でも逃してしまえば厄介なことになる。
二人とも抹殺してしまわねばなるまい。

音もなく剣を抜くと、出入り口に忍び足で近づく。二人の話し声。

子元「孔明。君は呂布の天下をどう思うか?」
孔明「朝廷をよく補佐し、戦略や兵法を心得、無敵の陣容を誇る。あれこそ真の英雄かも知れません。しかし彼は、時々ひどくやりすぎる」

呂布は確かに急ぎすぎる。生乾きの天下を力づくで押さえ込もうとしている。
従うものには寛大だが、手向かうものには徹底して残虐な仕打ちを与える。
曹操は宦官にされた。袁紹やその子息たちは全身の生皮を一枚一枚はがされて殺された。
孫策夫婦とその精鋭一万は城ごと焼き殺された。
しかも彼らの未亡人を、残らず慰み者として徴収する。

孔明「こうして彼が生み出した、恨みの群れが大人しくしているとは思えません」
現に益州では、劉備とその一党の思惑をよそに「逆賊呂布」、「暴君呂布」の悪名が行き渡り、劉備らを戦

へと駆り立てている節すらある。かつて孫権もその声に押された感があったが、情勢が変わってしまった。

孔明「天下はおそらく少なくともあと一波乱はあるでしょう。そこで呂布と、その暴虐に苦しめられてきた

人々と、天がどちらに味方するのか、全く予断が許されません。そして」

そして、私ごとき不才の者が今更世に飛び込んだところで、天下に何の貢献もできないままに終わるでしょ

う。最後にそう、力なくつぶやいた。

子元「いや、孔明。そこまで先を見通しているのなら、お前に出来る仕事がある」
孔明「…私に?」
子元「お前がこのまま百姓として天寿を全うしてはいかん。民草を救うのだ、孔明」
孔明「民を…?」
子元「考えても見ろ。このまま天下が呂布の政権で落ち着く事はありえん。おそらく呂布はお前の見た通り

、力づくで天下を一つにする事は出来ても、そこで生まれる怨恨を鎮める徳を持ち合わせていないのだ。民

草の事を思えば、呂布が天下を治めることは、いつまでも乱の種を残すことになり、決して歓迎すべき事で

はない」

孔明は子元の突然の話にいささか驚く。

子元「孔明。世に出ろ。英雄に仕え、呂布の天下を覆すのだ」
孔明「話は分かりますよ。民草がこれからも苦しむであろう事も。ですが、呂布の天下を
    覆す英雄が、今のどこにあるのです? 馬騰、孫権、劉備、劉表…。どれも呂布の
    足元にも及ばない小物ばかりでしょう」
士元「それを束ねる英雄が、一人だけいる」
孔明「誰ですか、それは」
子元「我が主、そ…、そ、そこにいるのは誰だっ!?」

立ち上がるホウ統。表から、徐庶が一人、入ってきた。

孔明「やあ、徐庶ではないか。どうしたのだ。こんな夜更けに」

無言で微笑む徐庶の手には、剣が握られていた。孔明がはっとして徐庶を突き飛ばす。

孔明「逃げろ、士元」

倒れた徐庶に蹴りを食らわせると、二人は慌てて庵を飛び出た。走る。

士元「きっと徐庶は劉表の命令でお前を殺しに来たのだ」
孔明「もの言わず、走れ。徐庶は足が短いが、駆け足は速い」
士元「お前がどれだけ拒もうと、天下はお前を必要としているのだ」

かくて孔明、士元は、荊州を出奔した。
士元「我が主、そ…、そ、」
孔明「…曹豹?」

盛大にこける徐庶。

孔明「今だ、逃げるぞ士げ…!」
士元「あはははは、何が曹豹やねん…
    アホ抜かすな! 死ね!」

かくて孔明は友の手にかかりあえなく散った。
ホウトウがそ・・・(あえて略)に仕えてるってのか。

でも演義孔明はあいつには素直に仕えられないはずだが・・・
士元「徐庶め。こんなに早くやってくるとは予想外であったわ」

だが、それがかえって幸いしたかも知れない。
途中、二手に分かれた孔明は、我が策を知らぬまま、益州へと走るだろう。
それでもいい。
今、益州には続々と呂布の治世を好まぬ者が集まっている。
益州の官民もそれを拒む様子がなく、人材の登用にも積極的だ。
そして孔明の事。劉備のもとで頭角をあらわし、重用される事であろう。

士元「必ずや孔明は、我らが策を知らぬまま、筋書き通りに動いてくれる」

孔明よ、劉備を育ててくれ。
そして時間を稼がせるのだ。呂布の天下を定まらせてはならぬ。
乱世が長引けば、内外より起こる不満は全て、呂布に集まる。
なにせ全土に散った青州兵の一族が、呂布の悪名を広めてまわるのだ。

その後に、朝廷を牛耳る曹操殿と、民の声望を集めた劉備とが手を組めば、
大義という大義を呂布から奪えるだろう。
呂布を殺し、劉備を殺し、天子を殺す。そして新たな帝国を築く。

士元「腐り果てた漢室など潰してしまうべきなのだ」

この国の朝廷には、民を慈しむ思想が薄い。ただ君臨する事ばかり望む。
そんな朝廷が、衆望も覇気も失ったまま、政権を維持するなど、
有害以外の何ものでもない。

民を省みず、世の乱れを抑える力ももたない、そんな亡霊みたいな朝廷が
せっかく滅びかけていたのに、馬鹿な奴らが必死に蘇らせようとする。
董卓、呂布、劉備。こんな馬鹿な連中がいる限り、この国の民は苦しむばかりだ。

思えばその考えが、青州兵の残党を通じ、ホウ統と曹操を結ばせたのである。
謀略戦も面白いが、馬騰と呂布の騎馬軍団同士による
壮絶かつ痛快な戦闘きぼん。
ホウトウがなかなかのワルですな
周瑜と孫権は仲違いしちゃったのかな?
193無名武将@お腹せっぷく:02/10/05 21:05
孔明がホウ統の策を見抜き、呂布につくとかだったらおもろいな。
さあ次の職人は、
孔明と劉備を描くのか、ホウ統と曹操を描くのか、賈クと張繍を描くのか、
周瑜と孫権を描くのか、主人公呂布を描くのか?
それとも青州兵か貂蝉か曹丕か張魯か荀ケと荀攸か…。
賈ク 「申し訳ございませぬ、将軍のご帰還までに、張り巡らされた謀略の網を
   全て焙り出すつもりでおりましたが、力及ばず」
呂布 「ま、曹操だからな、相手は」

相変わらずのあっけらかんとした口調。気の知れた諸将に対する日頃の呂布の
口調は、帝国の武をその双肩に担う者のものとは思えないほど軽い。もっとも
これについては、呂布の方にもいくばくかの思案がある。己の言葉が無用な
重圧感を諸将に与えないよう、さりげなく意を回しているのだ。この辺り、呂布は
案外に気が細かい。

柴桑から東へと戻った呂布は、途上で合肥から南下した軍と合流し、五万の兵を
率いて秣稜に向かった。同行していた張昭らに秣稜譲渡の手続きを押しつけ、
一月ほど南の食事や酒や女を楽しんだ後、高順を秣稜の城主に任命し、長江を北に
渡河する。

寿春経由で洛陽に帰還した数日後、夕刻のこと。呂布は自邸に賈クを招き、不在の
間の様々な報告を受けていた。
居住まいを正した賈クが、言葉を続ける。

賈ク 「曹操殿が何を企んでいるかは、この際問題ではありません。謀略が動き出す
   前に先手を打ち、捕らえて斬り捨てるのが良いかと。朝廷や民心には多少の
   動揺を与えるでしょうが、大した影響はありますまい。理由は何とでも付けられ
   ます。将軍が一言申されれば、直ちに捕縛の手配をしますが」

賈クらしい、効率的な解決方法。謀略を未然のものとするには、最も効果的でもある。
呂布は酒の手を止め、天井を仰ぎ見る。しばし何かを考える様子。

呂布 「斬り捨てるのは簡単だが・・・・・・少し曹操と話してみるか」
賈ク 「は?お戯れを。曹操殿が素直に謀略の内容をお話になるとお思いか」
呂布 「話の内容が問題なのではないぞ。話すことそれ自体が重要なのだ」

呂布の抽象的な言葉に、賈クが首をひねる。呂布の意図が分からなかったのだ。
だが、その答えはすぐに明らかになる。部屋の外から呂家の家僕の声。

「曹操殿がお見えでございます」と。

さすがに唖然とする賈クに、呂布が人の悪い笑いを見せた。

呂布 「誘ってみた。逃げ出すような臆病者ではないだろうと思ったが、やはりな」
呂布と曹操の騙しあい…。
今更だが陳宮がいないのが寂しい。
本当は生きていた!
>>4で切り捨てたのは影武者の首という事で蘇れ>陳宮
呂布 「おう、待っておった。座れ座れ。まずは酒だ」
曹操 「この度はお招きに預かり・・・と、将軍は堅い話はあまりお好きでは
   ございませんでしたな」
呂布 「嫌いなわけではないぞ。戦や馬や酒や飯や女の方が好きなだけだ」
曹操 「それはそれは、お好きなものが多うてようござりますな」
呂布 「いいからさっさと座れ。おい、酒だ酒だ」

軽口のやりとり。曹操の杯に酒を注ぐ呂布も、それを軽く飲み干す曹操も、
日頃と全く変わらない。賈クだけが曹操の顔を食い入るように見つめている。

呂布 「いや、実は先にお主が朝廷の混乱の収拾に一役買ってくれたことを
   ねぎらいたくてな、今宵は一席設けさせてもらった」
曹操 「はは、あのような些事、わざわざお招きいただくほどのことでは
   ございませんでしたのに」
呂布 「いや、実際お主のはたらきのおかげで陛下の即位がつつがなく進め
   られたのだ。やはり礼を言わねばならぬだろう」
曹操 「それでは、ありがたくお言葉を頂戴しておきましょうか」
呂布 「正直、お主があれほど積極的にはたらいてくれるとは思っていなかった。
   と言うより、むしろお主にとっては好機であったとおれは思うのだがな」
曹操 「仰せの通り、それがしもどのように動くか、少しばかり頭を悩ませ申した」
呂布 「なるほど、起こりうる混乱はお主でも手に余ると見たか」
曹操 「はい。下手に動けば、洛陽は再び廃墟と化しかねないと」
呂布 「確かにな。今俺が死ねば、中原は焦土となるやもしれぬ」

死。その言葉に、杯を取ろうとした賈クの手が一瞬止まる。その様子を見て、
曹操が薄く笑った。その横で、呂布も忍び笑いを漏らしている。

呂布 「今更動揺してどうする、賈ク。こ奴の計画が如何なるものであるにせよ、
   おれの存在はどう考えても邪魔ではないか」
曹操が何かを企んでいること、そしてその対象に呂布が含まれていること。
二人の会話のやりとりは、この二つを前提にしたものであった。眩暈を感じ、
目頭を押さえる賈ク。動揺を抑えると、思い切って曹操に訊ねてみた。

賈ク 「曹操殿、何故に将軍の招きに応じられた?命の危険を感じられませ
   なんだか?」
曹操 「これは異な事を訊かれるものだ。それがしが将軍の手から逃げる道が
   あったと申されるか」

曹操の行動を監視していたのは他ならぬ賈クである。間者の動向ならともかく、
曹操本人の怪しい動きを見逃すはずはない。更には執金吾たる張繍の警備も
堅実なものであり、曹操の洛陽からの脱出は不可能に近かった。

曹操 「間者より報告がありました。何者かが我らの動きを探っていると。
   我らの動きを探る者、それは将軍以外にありますまい。ならば、動向を
   察せられた時点で、それがしの命運は半ば尽きたも同然にござる」

言葉を切り、杯を干す曹操。すかさず呂布が酒を注ぐ。

曹操 「今のそれがしは、軍事的には全くの無力。捕縛するお積りなら
   執金吾殿の配下の兵で事足りるでしょう。そして」

今度は曹操が、空いた呂布の杯に酒を注ぐ。

曹操 「それがしの処断をためらう理由は、将軍にはございますまいから」
呂布 「そういうことだ。今の自分は俎上の鯉。それくらいのことはこ奴も
   心得ておるよ」

曹操の言葉を呂布が引き継ぐ。二人とも平然としたものだ。賈クは今更ながらに
二人の剛胆さに舌を巻いた。いや、最早剛胆という言葉では説明が付かぬ。
二人ともどこか抜けているのに違いない。
そんな賈クの思いも知らず、呂布は「腹が減った」と言い出し、家人に食事を
用意させる。運ばれてきた羊の肉にかぶりつきながら、呂布は再び話を接いだ。

呂布 「お主が何を狙っているのか、ちと考えてみた」
曹操 「で、お分かりになりましたか?」
呂布 「天下。それ以外になかろう」

箸を持ったまま、曹操が苦笑した。

曹操 「御意にございますが、大地を槌で打つようなものですな。外れようが
   ござらぬ」
呂布 「実際に如何なる手段を用いて天下を狙うのか、それは全く見当が付かぬ。
   外敵と結ぶか、朝廷の実権を握るか、或いは内から崩すか・・・おい、酒」

今度は酒が切れたのに気付き、呂布は新たな酒を家僕に命じる。

呂布 「・・・だが、天下を狙うのなら、おれを何とかせねばなるまい」
曹操 「仰せの通り。それが一番の悩みにございます」
呂布 「ふむ。どうすれば良いのかな・・・」

気を抜かれたような賈クの前で、とんでもない会話が始まった。どうすれば曹操が
天下を取れるか、呂布と曹操は食事を進めながらその絵図を描き始めたのだ。


・・・暗殺はまずい。その後の実権を握る算段が立たない。朝廷だけでは無力。帝国の
内部はそれなりに治まっており、内乱の芽は今のところない。孫権や馬騰は非力。
劉表は毒にも薬にもならない。劉備が益州の実権を握ったが、呂布と比すれば未だ
弱小である。更に、偽帝暗殺の風評が急速に広まった。劉備自身が手を下したのでは
ない様子だが、この風評は如何にも痛い。呂布に敵対する人間は劉備の元に集まる
だろうが、逆に漢帝国に忠誠を誓う人間は劉備から離れて行くだろう。結果として
差し引きなし。匈奴や鮮卑の力を借りるのはあまりに現実離れしている・・・・
二人の話が落ち着いたとき、卓上の皿は全て空き、部屋には酒瓶がそこかしこに
転がっていた。全く酔いが回った様子のない呂布が、羊の骨を指先で回しながら
つぶやく。

呂布 「だめだな。お主の手に玉が落ちる算段が欠片も立たぬ。賭事どころの話では
   ないぞ、これは」
曹操 「まったく。青州黄巾兵との戦いが、今では児戯の如く見えまする」
呂布 「そこでだ」

呂布の表情が一瞬にして戦場のそれに変わった。部屋の空気が瞬時にして銀の糸を
張り詰めたたかの如くに緊張する。だが、曹操は未だ平然としたものだ。

呂布 「貴様が天下を取れるとは、おれには思えぬ」
曹操 「はい」
呂布 「だから放っておく」
曹操 「は?」
呂布 「好きにやってみろ。見届けてやる」

曹操の表情が僅かに変わった。探るように呂布を見る。

曹操 「・・・本気で仰せられるか、将軍」
呂布 「無論」

その瞬間、初めて曹操の目の光が鋭さを増した。長安に向かう董卓を、唯一人追って
きた時の目の輝き。その光に僅かに懐かしさを感じる呂布。

この感覚。強敵と相対したときの、命を賭けた戦場の感覚。しばらく味わえなかった、
極上の感覚。これを味わうために。そのためにおれは生きて来たのだ。
呂布 「・・・ただしだ。朝廷での貴様の職責は全てこなせ」
曹操 「それがいわば助命と放任の条件、ということですな」
呂布 「そうだ」
曹操 「否と言うなら・・・」
呂布 「死」
曹操 「でしょうな」

そして、部屋を沈黙が支配する。紛れもない戦場の空気。息苦しさが更に増し、
一瞬意識が遠のくのを賈クは感じた。やがて、曹操が静かに口を開く。

曹操 「承知しました」

その言葉に、呂布がにやりと笑う。

呂布 「そう来なくては」
曹操 「長き戦に、なりそうですな」
呂布 「それで生きる気力も増すというものだ。お互い若くはないのだからな」

呂布の言葉で一気に部屋の空気が緩み、賈クは胸が空になるほどの息を吐く。
息絶え絶えになった賈クを見て、呂布と曹操が笑った。もう、先程までの緊迫した
空気を伺わせるものはない。

呂布 「さてと、早速で悪いが、仕事を頼みたい」
曹操 「朝廷でのことですな」
呂布 「荀ケを司徒に就けたいのだ。お主から陛下に働きかけられぬか━━━━━━」
呂布カコ(・∀・)イイ!!
孟達「荊州の劉表が益州を狙っているとの風聞がございます」
劉備「聞いている。どうせただの風評だと思うが、裏を取らせている所だ」
孟達「それがしの手のものの報せによれば孫権と和したのは事実です。
    劉表の嫡男劉jと孫権の妹との縁組が話し合われているらしく」
劉備「信じがたいことだな」
孟達「劉表がそれだけ強く征西を企んでいるという事だと見ています」
劉備「違う。孫権のことだ。荊州を手に入れる事しか考えていなかった癖に」
孟達「時勢が変わったのだと思います。彼らも野心を捨てきったのでしょう」

劉備には何となく信じられなかった。
孟達はそう思い込みたい気持ちだけで語っているにすぎない。
だが荊揚の同盟が事実になるのは間違いあるまい。

法正「先手を打って、荊州に攻め入ってはいかがでしょう」
劉備「劉表殿には裏切られた恨みがある。いずれ晴らしてやるつもりだった」
張飛「兄貴さえ許してくれれば劉表どころか孫権もぶっ殺して見せるぜ」
関羽「我が精鋭で劉表を討ち滅ぼし、肥沃なる荊州を手に入れましょうぞ」
閻圃「おお、なんと頼もしきお言葉」
劉備「よし、兵の調練に力を入れておけ。多少厳しくしてもかまわんぞ」
張飛「へへへ。さすがは兄ぃ。そうこなくっちゃな」
関羽「…そのいやらしげな笑いはやめろ」
劉備「時に法正。お前が拾った荊州の士の事だが、そんなに名高い男なのか」
法正「荊州では『伏龍』と呼ばれ、張良や太公望に比せられる人材らしいです」
劉備「それがなぜ荊州では冷遇されていた」
法正「彼自身が望んでいなかったそうです。劉表ごときに仕えるのは」
劉備「それが災いして命狙われ逃げてきたのだったな」
法正「左様です」
劉備「時期からして如何にも臭い。殺しておくか」
法正「…せめて一度人物を見てからにしてはいかがでしょう?」
劉備「そうか。お前がそういうのならそうしてみるか…」
益州で諸葛亮が劉備にいたく気に入られ、常に近侍しているとの伝聞に、
劉表は歯噛みする思いであった。

劉表「やはり奴は益州の密偵だったのか。益州の野望、必ずや阻んで見せる」

かくて劉表の眼は益州に向き、軍備も自然西側に集いはじめる。
一方、東側への備えが少し物足りなくなるが、これはどうしてくれようか。
縁談が失敗すれば、孫堅の時みたいに刺客を使うか?
そういえば、孔明暗殺を命じた徐庶からはいまだ何の報告もない。
さては初めての失敗に叱責を恐れて奴も出奔したのか。

蔡瑁「徐庶のような肝の小さな奴ならば充分ありえることですな」
劉表「惜しい奴を失った。まだまだ使いたい事があったのに」
蔡瑁「たかが小男一匹です。後釜は他にいくらでもありますぞ」
劉表「まあいい。劉jの縁組の話はどこまで進んだ?」
蔡瑁「孫権殿の妹君がなかなか『諾』とせぬようで、少し手間取っています」
劉表「…そうか、しかし頼んだぞ。必ずや成功させるのだ」

まったく蔡瑁という男は知恵が働く。
彼が今まで提言した事は全て間違いではなかった。
劉備への裏切り、孔明の斥候説、孫権との同盟。どれも正鵠を射ている。

劉表「中にはお前を羨んであれこれ言う者もいるが、わしはお前を」
蔡瑁「最後まで仰せにならずとも、その気持ちありがたく心得ております」

劉表という男はすっかりこの蔡瑁に頼りきっている。
蔡瑁の知力も大幅アップ?
210無名武将@お腹せっぷく:02/10/06 23:16
これだけ、五斗米道が活躍するお話は見たこと無いな・・・
閻圃だけでなく、張魯の出番も希望!
難しいな、完全無欠の人が目立つ物語がここまでつまらないとは・・・
その辺考慮して書いて欲しい。
気になった点
カクは異民族に包囲されてる状態でも仲間を見捨てて自分ひとり交渉し
堂々と帰還してくる奴、呂布と曹操の会談で動揺を表すとは思えない。
呂布がかなり暴虐な行為を行ってるみたいだけど董卓とさして変わらないの
ならば国力は低下の一途を辿るはず、何故持つのか判らない。
呂布が勝つ摸写が前半におなざりだったため呂布の強さがアピール不測で
強いことそれ自体に疑問が残る。
このあたりかな。
>>211
つまらないなら期待しなくていいのでは?

>>212
呂布が暴虐なのは外部に対してだけと見ればよいのではなかろうか。
董卓は内部に厳しく、政治に口出しして経済も狂わせた。
しかしここの呂布は>>201での発言を見る限り政治への関与は好んでいないと思う。
そもそもこのスレの疑問に対する回答は自分で出してここで物語として示せばよい。
あと呂布の強さは演義だと最強みたいになっているから
わざわざここでアピールしなくてもいいだろう。
劉備の私邸。上座は劉備。その左右に閻圃、法正、諸葛亮の三人が並ぶ。
下座には二人の男。一人は魯粛、一人は呂蒙。孫権からの密使である。
そして外では趙雲が親衛隊を率いて巡回している。

劉備「魯粛殿。そなたが使い番に持たせた書簡を見た。
    して、揚州牧殿からは、私と何の協議をするよう命じられてきたのだ?」
魯粛「それでは早速ですが、劉玄徳殿は荊州と一戦交えるおつもりか伺いたい」
劉備「近頃、我が領内に荊州訛りの旅行者が増え、その荊州では山岳戦の調練が
    堂々と行われており、益州の領民はひどく怯えている。
    ここで一国の主がとるべき道は、一つしかないであろう」
魯粛「私も劉玄徳殿の立場にあれば、やはりそうしたと思います」
法正「ただ、我らに解せんのは、あの臆病な劉表がなぜ益州に、という事だ」

法正の眼が魯粛らを厳しく見据える。「お前らが焚きつけたんだろう」と言わん
ばかりの勢いだ。話の流れ次第ではこちらの胸倉をつかみ、詰問してくるだろう。

魯粛「荊州は劉玄徳殿からの復讐を恐れているのでしょう。
   あちらの蔡瑁が、『この恨み、劉備が忘れるはずがない。先手を打て』とか、
    上下を煽っているそうですから」
劉備「ありそうな事だ。私は一度、蔡瑁と矛交えたが、心栄えの小さな男だったよ」
魯粛「私もあれは、つまらない男だと思います。劉表殿も振り回されて大変でしょうね」
法正「その劉表の事だが、貴公ら揚州との縁談を進め、軍事同盟を企んでいると聞く。
    これは事実と見てよろしいのか?」
魯粛「はい。揚州の姫君と荊州の嫡男との縁談は来月にも執り行われる予定です」
法正「だとすれば、貴公はわざわざ荊州くんだりで斬られに来たのかな」
劉備「待て、最後まで話を聞こう」
魯粛「縁談は一応形ばかり進んではおりますが、実際に結ばれることはありません」
劉備「ほう」
「本題に入りましょう」と述べた後、魯粛が話したところによれば、孫権に
長年の宿敵である劉表と同盟するつもりはない。それどころか、この縁談を
利用して、荊州を奪い取ってしまうのはどうかと考えているらしい。
つまり劉備と密約を交わし、劉表を騙まし討ちにかけて東西より荊州を二分する。
これは以前の奇襲よりも巧く行くのではなかろうか。

劉備「しかし、そこまで露骨な騙まし討ちは、人としての信義を欠くのではないか」
魯粛「劉表殿の卑劣さに比べれば、これしきの事、何も後ろめたくはないでしょう。
    我が先々君の暗殺、劉玄徳殿への裏切り。情けをかける必要はありません」

ただ一つ残る問題は、それをやってしまうと、呂布が出て来る事である。
まず合肥にある、張遼が揚州に迫るだろう。
そういえば前に黄蓋が、呂布に屈した群臣に向かい、凄まじい形相でおらび立てた。

「この中で、柴桑に籠城し、決死の覚悟で抗戦しようと献言した者は…?
 なに? 誰一人、いなかっただと! 貴様らは武人が前に出て戦っているのに、
 わしらと我が君の命を犠牲にして、自分のことだけを守ろうとしていたのか?
 それでも呉の家臣といえるのか、貴様ら!」

その怒りに、周瑜がより激しく続く。

「優秀な武人を残らず前面に出して、足らず者だけ城に残していたのが何よりも
 悔やまれるわ。なぜ、呂布があっさりと下がったのか、お前たちには解るまい。
 呂布の戦は全て速戦。騎馬隊の突撃だけが彼の武器なのだ。
 これさえ封じてしまえば呂布など恐れるに足らなかったのに、それも解らず、
 我が君に降伏など勧めおって、この不忠者どもめが!」
 
柴桑に籠城し、そこに敵をひきつけておいて、遊軍がそれを撃破する。
もしくは捨て置き、敵の領土を奪う。
こんな事は兵法の心得以前に誰にでも思いつく戦い方ではないか、どうしてそれを。
叫ぶ声と、周瑜の剣が壁に叩きつけられて割れる音とが同時であった。
今度の決意は、その戦を新たにやり直そうというものである。
柴桑を囮にし、益州と揚州が荊州を挟撃する。この手ならば速やかに劉表を亡き者にし、
荊州を好きなだけ切り取ることが可能である。おそらく以前とは比べ物にならないほど、
あっけなく、そして確実に勝利を得ることが可能だろう。

魯粛「ただし、問題はその後です。呂布がどう出るかは予想出来ませんが、間違いなく
    益州、荊州、揚州のいずこかに主力を集めるでしょう。
    そのときは我々も速やかに対応せねばなりません。それで…」
呂蒙「荊州を分かち合った後、もし呂布が益州に出なければ、
    劉玄徳殿にはすぐ、長安に奇襲をかけてもらいたい」
魯粛「逆に益州に呂布が出れば、我らも合肥に奇襲をかけます」

呂布の本体が益、荊、揚のいずこかに出る。そこで呂布の現れなかった方が北に向かう。
これならば、呂布がどう転んでも誰かが必ず中原を侵略する。
そして、本拠地を奪われて、孤軍となった呂布などは、恐れるに足りず。

劉備「もし呂布が兵力を分散すれば?」
魯粛「各個撃破するまで…と行きたいところですが、守りを固めて強気で当たらず、
    抜け道を見つけて北に出ます。されば、そこにはがら空きの中原あるのみ」

劉備は長くうなり、「ひとまず続きは明日にさせてくれ。少し考えたい」と、
魯粛と呂蒙を下がらせた。

法正は「なかなかやるもんだな、呉は」とあごをさすりながら、諸葛亮を見たが、
彼は「果たしてそう巧く行くものですかね。どうせ周瑜が描いた算段でしょうが、
何の事はない。劉表の本体を我々がひきつけている間に、孫権が背後から荊州を
まんまと奪うつもりでしょう。その上、我らがに呂布の最大重要拠点のひとつ、
長安を攻めさせれば、呂布の本体はこちらに向かい、彼らは張遼さえ討てば、
あとは無傷で中原に出られます。どう考えても我々には不利な案ですね。
いっそ、あの二人を斬り殺して、劉表か呂布にでもくれてやってはどうですか」
と、周瑜の策を頭から笑い飛ばしてしまった。
>>216 下から四行目

「長安を攻めさせれば」を「長安を攻めてしまえば」に訂正。
他にも色々誤字とかあるけれどご容赦下さい。
演義基準の割には諸葛亮が横柄な性格してんな
失礼します、呂布と曹操のくだり(>>201-205)を書いたものです。
よろしければ、下をご覧になって下さい。
http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1030521499/23-25
江夏で軍の整備を進めながら、韓当は釈然としない気分を抱え込んでいた。
再び荊州に出撃し、劉表を打ち払おうというのである。しかも今回は、益州に
拠点を置いた劉備と連携して、作戦を展開するというのだ。恐らく周瑜らの
献策によるものであろう。

若い将軍たちは再度の出陣に意気込んでいる。それはそうだろう。先の荊州
攻めでは、後背から侵攻した呂布に、呉軍は翻弄されたようなものだからだ。
甘寧がわずかに意地を見せただけで、柴桑は一戦もすることなく呂布に降った。
徒労に終わった荊州侵攻。韓当とて、腹の中の悔しさに変わりはない。

だが、その悔しさに流されるようでは軍人ではない。韓当はそう思う。そして
その韓当の目から見たとき、周瑜は自らの感情に駆り立てられているように
見えるのだ。断たれた夢の続き。呂布への憎悪と報復の念。そうした想いが、
今の周瑜を縛りつけているのではないか。

慎重な態度を採る孫権を会議で一喝し、再度の荊州攻めを認めさせたやり方は
臣下たるものの採る態度ではなかった。黄蓋あたりが周瑜をたしなめるかとも
思ったが、彼もまた呂布の軍に翻弄されたという激情に身を焼かれていた。
慎重派であるはずの魯粛ともども、周瑜の作戦に賛同してしまった。

会議の後、孫権は俯き、唇を噛み締めていた。呂布に翻弄されて悔しかったのは
孫権も同じなのだ。だが、孫権はその悔しさに耐えていた。嘗胆の中で雌伏の
時を耐えねばならない。再び時が来るのを待たねばならない。そう覚悟を決めて
いた孫権を、居並ぶ諸将の前で周瑜は面罵したのだ。「臆病者」と。誰一人、
その暴挙をとがめる者はいなかった。
軍事的に見ても、今回の作戦は前回より賭けの要素が強い。秣稜を奪われたこと
で、長江の有する軍事的意義は相対的に低下した。安易に荊州に攻め込めば、
秣稜の高順、合肥の張遼、この両軍が一気に柴桑を突いてくる。合肥はともかく、
秣稜と柴桑は陸続きなのである。荊州と揚州、この二面作戦に耐えうるほどの
軍事力は、今の呉にはない。うかつなことはできない。できないはずなのだ。

この戦は勝てないかもしれない。軍人としてあるまじきことながら、韓当はその
思いを捨てきれない。だが、その思いをうち明け、相談できる相手が、今は一人も
いない。誰のための戦か。何のための戦か。そんなことを、いつしか韓当は考えて
いた。慌ただしい江夏のなかで、韓当は一人孤独だった。

韓当「大殿、若殿、わしはどうすればよいのでしょうか」

夕闇が迫り来る長江。水面を見つめ、韓当はつぶやく。答えはない。

翌日、韓当は部下に書状を持たせ、秘かに江夏から送り出した。使者の行先は
洛陽。張昭と程普。この二人なら、きっと孫権のために力を貸してくれる。
祈るような気持ちで、韓当は使者の背を見送った。
劉備「法正、本当に呉と盟約を結んでもいいのだな?」
法正「…孔明殿、説明申し上げよ」
孔明「呂布と正面からぶつからなければ、我が軍が利するところは多分にあります。
 呉と組み、荊州を強奪してしまいましょう」
劉備「だが、なんとも危うい感じがする」
 孔明「それは周瑜の編み出した戦略には軍事のことしか頭になく、外交関係というものが
 すっぽり抜けているからでしょう。そこさえ補えば我々は安全に荊州を奪えます。
 つまりこれはあくまで『荊州牧の討伐』という事にし、朝廷や呂布に反するものではない事を強調し、
 中原の介入を避けるのです。ここで呂布が荊州を犠牲にして我らとの直接対決を避けるか、
 強引に兵を集めて全面対決に出るかは解りませんが」
劉備「呉の抜け目は確かにそこだ。呂布との正面対決は正直なところ、避けたいと思う」
孔明「この戦、一度切り開かれたら、帝国全土を巻き込む前代未聞の大決戦となりましょう。
 呂布は手元の精鋭と、董卓の時代から付き従っている武将たちを別にすれば、
 他家より吸収したばかりの頼りない連中がほとんどで、まず使い物になりますまい。
 その事実を思えば、呂布が直接の対決を望まない可能性は高いと思います」
劉備「だが、もしも呂布が出てきた場合、本当に呉の提示した戦略で勝てるのか」
孔明「全く勝ち目がないという事はありません。ですが危ういと見れば、決死の大決戦を覚悟する
 呉を切り捨て、呂布に恭順しなければならないでしょう。勝敗の確約はできかねます」
法正「それで、中原に申し出る『劉表を討つ大義名分』は何かあるのか?」
孔明「『野心をもって益州をおびやかそうとしている』、この事実を持ち出して自衛のため、
 先手を打ったという事にすればよろしいでしょう。呉もこの義挙に応じたとすればよろしい」
法正「それではこの戦は我らが主導したように見られるのでは?」
孔明「望むところです。荊州との戦は我らの企みと見せましょう。しかし、そこから後に呉が
 怪しからぬ動きを見せれば、それは我々の知ったことではありません」
「孔明殿らしくありませんな。無謀が過ぎますぞ」
不意の声に振り向く。
そこに屹立しているのは荊州より亡命者の一人、馬良であった。
劉璋より下った董和も傍らに控えている。
225無名武将@お腹せっぷく:02/10/12 18:38
職人降臨待ち。あげとく。
226無名武将@お腹せっぷく:02/10/13 09:28
☆       ∵∴∴☆∴∵∴       /
  \  ※∵☆☆★☆★☆☆∵※
     *∵☆★☆*☆*☆★☆∴*
   ※∴★☆*°°|°°*☆★∴※
  *.∴☆☆°°°°|°°°° ☆☆∴ *
 *∴☆★°\°☆☆★☆☆°/°★☆∴
.. ※☆*°°★〜oノハヽo∩ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∴★☆°° ☆   ( ・●・)//<糞スレおめでとうございまーす♪
∴☆*°°☆   /   )/  \___________
※☆★― ★   と / . │    ★ ―★☆※*   ⌒★
∵☆*°°☆  /// |      ☆°*☆∵ *
∵★☆°°☆ (_/ (__)   ☆°°★☆∵
※☆☆*° ★  <<祝>>  ★°*☆☆※ *
*∵★☆°/°☆☆★☆☆°\°★☆∵
   ∵☆☆°°°°|°°°°☆☆∵
   ※∵★☆*°°|°*☆★∵※*  ☆
   *...☆∵★☆☆*☆*☆☆★∵。
 /     ※∴∵☆★☆∵∴※*    \ζ 
馬良「孔明殿ともあろう方が周喩の策が危ういとしながらも乗ろうと仰るとは、
   荊州でお会いしたときとは変わられましたかな?
   成都県令董和殿より言上があり参内いたしましたがそれ所ではないようですな。
   つきましてわたしからも申し上げたきことがございます」
劉備「成都城内の件は董和に一任する。好きにしろ」
董和「御意に」
劉備「それで馬良よ。なんだ?」
馬良「荊州討伐の機はその荊州内部にございます。
   わたしの弟馬謖、字を幼常というものが劉表に仕えておりますが
   その手紙によれば劉表は蔡瑁のような小物を側に置き、
   旧来の家臣すら遠ざけ、ましては若輩の幼常など目もくれないとのこと。
   蔡瑁や劉表に対する不満は既に家臣中にあふれているとのこと。
   檄を飛ばし、内乱を誘発すれば呉の力など借りなくても容易く荊州を手中に収められましょう」
法正「なるほど、隣国で反乱がおきれば収拾に兵を出すのも必然。
   呂布にたいする大義にもなりますな」
孔明「では我々は、檄の名代として上陽太守李厳を取り込み先方と為し西の諸県を抑え、
   劉表居城の上用、太守蔡和の収める新野は南下してくる呂布軍にくれてやりましょう。
   呉はこの機です、仇敵黄祖のいる広陵を真っ先に狙い南方は手が遅れるでしょう。
   如何に彼らの水軍が優れていようと南荊州全域までは手が伸びず
   西半分は我等の手に渡るかと思われます」
馬良(孔明殿の神算も戻ったようだ、あとはまかせるか)
孔明「呉の使者には出兵は快よく引き受けるとだけ伝えてください
   此度の戦は疾さこそすべて。荊州の内紛の件、早々に為して見せましょう」
曹丕 「父上、呂布殿とお会いになられたとか」
曹操 「あの男、喰えぬわ。見事に先手を打たれた。奴と対峙するのはもう少し
    後のことになると考えていたのだがな」
曹丕 「では、父上は呂布殿に臣従なさるのですか」
曹操 「そうとも言える。だが、そうでないとも言える」
曹丕 「?」
曹操 「天下を取れるなら取ってみろ。見届けてやる。奴め、そう言いおった」
曹丕 「何と・・・」
曹操 「清濁併せ呑むほどに器が大きいのか、それともただのうつけか。いずれに
    せよ、奴はわたしを掣肘する気はないらしい」
曹丕 「豪気、というには常軌を逸しておりますな、それは。父上の御心を
    知った上で、尚も火を煽るようなことを言われましたか」
曹操 「なめられたものだな、この曹孟徳が」

曹丕は曹操の表情を伺う。言葉とは裏腹に、父は笑っているように曹丕には見えた。
以前の父ならば、笑っているときが一番怖かった。笑いの裏に隠された冷酷な刃の
光がちらりと垣間見える度に、曹丕の背には冷たい汗が走ったものだ。だが。

曹丕 「失礼なことをお訊きします、父上」
曹操 「何だ?」
曹丕 「父上、少しくお変わりなされましたか」
曹操 「・・・何故、そのようなことを訊く」
曹丕 「楽しんでおられるように、見えます。呂布殿との鍔迫り合いを」
曹操 「・・・少しは人を見ることができるようになったか、丕よ」

曹操は卓から立ち上がる。小さいはずの父の身体が、一瞬、曹丕にはとてつもなく
大きなものに見えた。
曹操 「今思えば、戦場で過ごしたかつての日々は楽しかった」

曹丕は一瞬とまどった。何を言い出すのだ、父は。昔を回顧しているのか。そんな
曹丕を見下ろして、曹操は、今度ははっきりと笑みを浮かべた。子供のような、
それでいて猛獣のような笑み。動けない。曹丕は指一つ動かせない。

曹操 「そして今、俺は同じ気分を楽しんでいる」

そうつぶやいた刹那、曹操の目に頸烈な輝きが走る。曹丕がこれまで見たことのない、
恐ろしくも抗いがたい輝き。曹丕は完全に圧倒され、何も言えず、ただ、父を見上げる。

曹操 「俺も奴も、どこか似ているのだ」

その言葉の意味は、曹丕には、正確には掴めなかった。曹操は窓の外を見つめ、更に
言葉を接ぐ。

曹操 「奴を倒すは至難。だが、その至難に立ち向かい、それを乗り越えてこそ、俺は
    俺であることができる」

呼吸を整え、曹丕が問う。

曹丕 「呉蜀の動きが、何やら慌ただしくなっています。恐らくは荊州を狙っっての
    ことかと。この動きに乗じられるおつもりですか、父上」
曹操 「分からぬ」
曹丕 「は・・・」
曹操 「今の俺には兵がいない。将もいない」
曹丕 「はい」
曹操 「それでも俺は、呂布と戦う。そして戦うからには、必ず勝たねばならないのだ。
    その機は一度しかない。最初の戦が、則ち決戦。敗れれば、死」
曹丕 「・・・勝機が見えぬうちは動かない、ということですか」
曹丕は父の言葉をしばらく反芻し、恐る恐る疑問を呈する。

曹丕 「ですが、呂布殿の治世は確実に進んでおります。時が流れれば、呂布殿の力は
    ますます確固たるものになるだけではありませんか」
曹操 「丕よ、お前は曹家の天下を望むか?」

突然訊ねられ、曹丕は困惑する。

曹丕 「今更、何をお訊ねになられますか。我が志は、常に、父上と共にあります」
曹操 「ならば。その時の流れを停めるのが貴様の仕事だ」
曹丕 「・・・!」

今日幾度目のことだろう、曹丕は絶句する。

曹操 「丕よ、俺は貴様に志を語った。これ以上言うことは何もない」
曹丕 「・・・」
曹操 「洛陽から出よ。そして鳳統という男と会え。後は、貴様の才覚だ」

そう言うと、曹操は外へ出ていこうとする。話は終わった、その背がそう語っていた。

曹丕 「・・・お待ち下さい、父上!」
曹操 「・・・何だ」
曹丕 「呂布殿の庇護下に入って以来、私は野に降りた程イク殿に教えをいただいてきました。
    父上のお側での最後の仕事として、程イク殿を招聘いたします。再び父上のお側に
    就かれるよう、私が程イク殿を説いて参ります」
曹操 「・・・好きにしろ」

そう言い残し、曹操は部屋を出ていった。
「何故、今馬騰を攻めなければならん?!攻めるべきは劉備であろうや。」
「素人が!先に劉備の味方となり得る勢力を駆逐していくのだ。
            翼をもぎ取った鳥は飛べん。この意味がわかるな?」
二人の文官が熱い議論を続けている。
今の所、双方譲らぬ大論戦だ。だが、重臣達から見れば、正しい意見はどっちかなど明らかだ。
その二人を見据える男がいる。呂布である。
先ほどから無言で二人を見つめている。呂布にすればこんな無駄な会議はないだろう。
普通は劉備を攻める。圧倒的な国力の差で粉砕する。これで、天下の趨勢は完璧に決まる。
「俺は」
呂布が、口を開けた。
「馬騰を攻める」
重臣が皆、唖然とした表情で呂布を見る。
「今更奴等がどう足掻こうとも天下の趨勢が変わることは有り得ぬ。絶対に。
      それより俺は、戦を楽しみたい。中華最強の騎馬隊と矛を交えてみたいのだ。」
天才が天才たる所以―――それは、形に囚われぬ自分のスタイル。
中華の日が沈む。
「スタイル」とかの横文字は止めた方がいいと思われ。

つか、えらいことになったなヲイ(w。話が破綻しないことを祈ろう。
何人かで描くと物語が破綻しがちだな
しかし>>224はなかなかのスレッドストッパーだった
234無名武将@お腹せっぷく:02/10/15 22:42
ま、その破綻がやがて一つのストーリーになっていくのを
見るのが楽しみなわけなんだが。メインの職人は二、三人
だと思うけど、今回は大変だろうな。期待半分、不安半分。
スマソ、sage忘れた。
なんか文章のノリがジョジョっぽくなってきたな。
説明が過ぎると言うか
237無名武将@お腹せっぷく:02/10/15 22:57
>>231は職人と認めてよいのか?
ま、次に書く職人が無視するかどうかにかかっているが…。
238231:02/10/15 23:00
正直、すまんかった。スルーしてくれても構わん。
239231:02/10/15 23:16
やべぇ、まじですまない。流れ止めちゃった・・・。
すっげえ申し訳ない・・・、もう本当ごめん。
>>239
そんな事はない、これからどうなるか楽しみだ。
>>236
そうか?ほとんど会話でやってる職人と、ストーリーも
書いている職人の違いじゃないか?前からそうだった気が。

俺も>>240に同意。むしろ楽しみ。ふふふ(横山風)。
威風を備えた巨漢が戦友であり、好敵手であり、義兄弟である男前に杯を傾けていた。

馬騰「り、呂布めが?」

大きな手から杯が卓に滑り落ち、酒を撒き散らしながら床に跳ねた。
「驚くほどの事はないが」と、韓遂が新しい杯を差し出した。

馬騰「曹操が敗れた時、鍾繇殿とともに呂布に害意のない事を伝えたはずだ」

声がかすかに裏返っている。

馬騰「だ、第一、袁術の遺臣がこちらに亡命して来た時も、それを捕らえて…!」
韓遂「…確かに全員の首を送ったまでは間違ってはいなかった。しかし」

韓遂が芝居がかりに首を振る。
馬騰「……まさか、呂布は『アレ』を狙っているのか?」
韓遂「多分、そうじゃないのか」

玉璽。帝位継承権の象徴。今の天子はこれの模造品を儀典に用いて即位している。
馬騰や韓遂に何の価値もないはずのものではあったが、何となく手放すことが憚られた。
呂布と争うつもりはないが、彼に屈するつもりもなかった。それが玉璽の隠蔽につながった。

馬騰「だが、どうして気づかれたのだろう?」

手を額に置き、つぶやくように言う。

韓遂「……漢中の状況がいかに慌しくとも、募兵をもっと慎重にやるべきだった」

言われて見れば、漢中の動乱に備え、急ぎ兵を集めた時、間者への警戒を怠っていた。
実力のあった者の中には、わずか二年で重要機密の守備に抜擢された者もいる。
それなりに人物は見てきたはずだが、充分とは言い切れないところもあった。

馬騰「それはそうと、どうするべきか……」
韓遂「『アレ』を差し出して命乞いをする気があるか?」
馬騰「見損なうな。そこまで臆病ではないぞ。おぬしは?」
韓遂「…呂布だけには屈したくない。関中への守りを早急に固めようぞ」
田豊「ご説明いただけますか、殿」

会議の数日後、宮殿の一室。賈ク、田豊、張繍、孔融らの重臣が顔を揃える。全員が
不満と不審の念を隠そうともしない。田豊などは顔を真っ赤にし、今にも呂布に
掴みかからんばかりの勢いである。

孔融「第一、大義名分が立ちませぬぞ。馬騰殿は今のところ漢帝国に従順。それを
   あえて攻めるは、非道の行いと言われても仕方ありませぬ」
賈ク「劉備、孫権の動きが慌ただしくなっているとの報告もあります。近々に何らかの
   形で軍を動かすは必至。戦ならそちらが先決ではございませぬか」
呂布「劉備、孫権だけなら恐れる必要もない」

天井を見やり、あっさりと言い切る呂布。その場のほぼ全員が、呆れた顔をする。だが
その表情が、呂布の次の一言で瞬時に厳しいものとなった。

呂布「しかし、劉備、孫権に馬騰が呼応すれば、天下がどう動くかは分からぬ」
賈ク「・・・劉、孫、馬。三者の同盟を恐れておいでですか」
呂布「正確には、劉備との、だがな」

揚、益、涼の同盟が成れば、天下二分の形勢が現出する。現在の呂布の勢力を以てしても、
勢力は完全に拮抗するであろう。全員が慄然となる中で、張繍が聞こえよがしにつぶやく。

張繍「・・・どうやら、ご乱心なされたわけでは、なさそうですな」
呂布「何を言うか、俺はいつもまともだ」
張繍「そうは見えないのが、将軍の人徳」
呂布「やかましい」
両者の軽口に、場の雰囲気が和やむ。当初の重苦しい雰囲気は、ようやく消え去るかに
見えた。その中で、いまだ表情を変えない孔融が呂布に問いかける。

孔融「しかし、それにしても大義名分の問題は残りますぞ。何故に涼州を攻められるか、
   その名分はやはり必要かと思われます」
呂布「ない」
孔融「は?」
呂布「名分などない、と言ったのだ」

再び場の空気が変わる。流石に重苦しくまではならなかったが、全員が呂布に視線を
向ける。集まった視線に応えて、呂布は更に言葉を継いだ。

呂布「馬騰が劉備と結ぶか結ばぬか。それを確かめるためには、そして馬騰を劉備の
   側に靡かせぬためには、彼の地に軍を向けねばならぬのだ」
賈ク「・・・なるほど」

涼州武威の出身である賈クには、呂布の意図が呑み込めたものらしい。同郷の張繍も
小さく頷いている。納得が行かぬという孔融の視線を受け、賈クが説明を始めた。

賈ク「漢帝国への忠誠を改めて確認するために、使者を馬騰殿の下に遣わしたと
   しましょう。さて、馬騰殿はどう思われるでしょうな」
孔融「・・・」
賈ク「彼の地の人の気は荒うござる。自ら求めての忠誠ならともかく、忠誠をわざわざ
   確認されるなど、馬騰殿には不快にしか感じられますまい。ましてそれが呂将軍
   からの使者とあっては。こう申しては何ですが、現在の朝廷からの使者は、実質
   的には呂将軍からの使者に他なりませんからな」
呂布「だが、馬騰の意志はどうしても確認しておかねばならぬ。それには、使者を送る
   だけでは不十分なのだ」
孔融「では、馬騰殿を都へ呼ぶというのは?」
賈ク「事は馬騰殿一人の問題ではありませぬ。韓遂殿や諸豪族の動向も考慮せねば
   なりますまい。中原より遥かなる彼の地では、大半の豪族たちは漢帝国への
   忠誠心など持ち合わせておらぬのですから。馬騰殿が彼の地におられるから、
   そして豪族たちを掣肘しておられるから、彼らもそれに従っているのです。
   その馬騰殿が涼州から動かれれば、彼らがどのように動くか分かりませぬ。
   万一にも劉備と結ばれれば、将軍の憂慮が現実化することになります」

涼州人の気質までを読み込んだ、理路整然とした説明であった。だが、もし彼らが
玉璽のことを知っていれば、その説明は全く違ったものになったかもしれない。
疑心暗鬼に陥った馬騰が入洛するなど、絶対にあり得ないことであったからだ。
真の玉璽は、馬騰の手にあり。そのことを、呂布はまだ知らない。

孔融「・・・しかし、それでも。先の発言は、まるで将軍個人が戦を求めるかのような
   言葉でしたぞ」
呂布「ああ、あの言葉は俺の本音だ」
田豊「何と?お戯れになられるか、将軍?朝廷の軍は将軍の私兵ではありませぬ。戦を
   するために軍を勝手に」
呂布「誰が戦をすると言った」

憤り、座を立ちかけた田豊を呂布が制する。

呂布「俺は矛を交えたいと言ったのだ。戦をするなどと言うてはおらぬ」
田豊「・・・どういうことです、将軍?」
呂布「奴らが俺の進軍でおとなしくひれ伏すならそれでよし。それをあえて戦にしよう
   などとは思わぬよ」
張繍「ふむ。先の揚州への出兵と同じ、ということですな」
呂布「ああ」
田豊「そういうことでしたか。ならば」
賈ク「・・・ですが」
賈クのつぶやきに、呂布がにやりと笑う。肉食獣の笑い。

呂布「そうだ、賈ク。馬騰はよもや俺の期待を裏切ることはあるまい」
賈ク「馬騰殿はともかく、涼州の人間にとっては力が全て。力無き者に従うことは
   ありますまい。将軍が涼州に向かえば、まず間違いなく戦になるでしょう」
張繍「董卓将軍の頃より、彼の地は全てが力によって決まりまする。辺章の乱なども
   その証。ですが逆に言えば、彼の地にて将軍がその力をて存分に知らしめれば、
   馬騰や韓遂は劉備の側に靡くことはなくなります」
田豊「戦はあくまで手段、ということですな。先を見据えた戦略のための」
呂布「俺にとってはそれだけではないがな。まあ、第一にはそういうことだ」
田豊「・・・冀州の袁煕殿に使者を送り、洛陽に送る兵糧の手配をしておきましょう」
孔融「結局、涼州の動向は、戦によってしか定めること能わず、というわけか・・・」

戦は避けられない。集まった一同はそれぞれの思いで、その覚悟を固めた。

呂布「今回、馬騰との戦は速戦にせねばならぬ。数日中に軍を整え、俺は西に向かう。
   それまでに鍾ヨウと審配に先触れの使者を出し、一応馬騰にも使者を出して貰おう。
   先に劉備と孫権を恐るるに足らずと言ったが、それなりの対応は必要だろうし、
   そうそう涼州に長居するわけにもいかぬからな」

全員が深く頷くのを見て、更に説明を続ける呂布。

呂布「だが、今回に限って言えば、俺が自ら動かなくとも奴らには対応できるだろうと
   考えている。まあ、それにはちと事情があってな」
賈ク「事情、ですか」
呂布「奴らに対して全く手を打たずに涼州に向かうわけにも行くまい。この機に
   説明しておいた方が良かろうと思ってな、隣室に人を待たせてあるのだ。
   おい、入って貰え」

訝しげな顔をする一同。やがて、部屋の外から「失礼いたします」という声が掛かる。
「おう、入れ」と返す呂布。開いた扉の前に立っていたのは、張昭と程普であった。
正直、凄いな。>>231が見事にストーリーに取り込まれた。
職人一同へ応援sage。
うむ、全くもって見事だ
190 :無名武将@お腹せっぷく :02/10/05 14:58
謀略戦も面白いが、馬騰と呂布の騎馬軍団同士による
壮絶かつ痛快な戦闘きぼん。


もしかして231はこの読者(?)の声を取り入れたんじゃないのか?
漏れは190=231だと勝手に思ってた
張昭と程普、韓当の書状の伏線に期待sage
ストーリーが終わったら職人たちの裏話を聞きたい。
このレスに対してどう考えたとか・・・
某日夜、江夏。呉水軍の旗艦の一室にて。

魯粛 「周瑜殿、劉備殿からの返書が届きました」
周瑜 「・・・む、共同作戦の承諾を得られたか。まずはこれでよい」
魯粛 「しかし、周瑜殿。使いに立ったわたしが言うのも何ですが、果たして
    劉備殿は依頼通りに軍を動かしてくれるでしょうか」
周瑜 「恐らく動かすだろうよ。此度の戦、奴らにとっても利は大きい。
    そう見える作戦をわざわざこちらが呈示してやったのだからな」
魯粛 「蜀が軍を出すのは、あくまで彼らの目算に従ってのことと」
周瑜 「そうだ。劉備は我らの窮状に同情して軍を動かすわけではない。劉備は
    劉備自身の利のためにしか軍を動かすまい。当然の話だ」
魯粛 「仰るとおりです。共同作戦とは言え、実際の所は荊州の要地の奪い合い
    になるでしょう。更には・・・」
周瑜 「どちらが呂布の矢面に立つか」
魯粛 「やはり、それもお考えでしたか」
周瑜 「長江の利があるとは言え、基本的には荊州は原野。呂布の騎兵隊が
    荊州に入れば、奴らはその力を存分に発揮することになる」
魯粛 「その力、我らが受け止め役に回る謂われはありませんな」
周瑜 「ふふ、劉備もまた同じことを考えておろうがな」
魯粛 「此度の戦、何よりも肝要なのは江陵の奪取だとそれがしは愚考しますが」
周瑜 「その通りだ。だが、長江の北は劉備にくれてやる。我らは江陵を抑えた
    後、速やかに南郡の制圧を図るつもりだ」
魯粛 「襄陽は守りにくい土地。荊州の繁栄の象徴ではありますが、背に腹は
    代えられませぬな。襄陽に入ってしまえば、宛から南下する呂布の軍を
    真っ向から受け止めることになります。・・・ですが、もしかしたら劉備殿も
    我らと同じように南郡奪取を考えておるやもしれませぬぞ」
周瑜 「そのときはこちらが先に奪うだけさ。場合によっては夷陵まで船を進め、
    奴らの動きを妨害してやってもいい。言い訳は何とでもつく」
魯粛 「周瑜殿。この際です、一つだけお訊きしてもよろしいでしょうか」
周瑜 「何だ?」
魯粛 「我が君のことにござる」
周瑜 「・・・」
魯粛 「先の会議での態度はちと行き過ぎであった。率直に申し上げて、それがしは
    そのように思っております」
周瑜 「・・・」
魯粛 「あの怒りは演技ではございませんでしたな、周瑜殿」
周瑜 「・・・伯符の弟ともあろう者が、あのような惰弱な者とは思わなんだ・・・」
魯粛 「お気持ちは分かりますが・・・」
周瑜 「伯符の夢を、その弟が阻む。そのようなこと、許されてたまるか」
魯粛 「・・・公瑾殿、あなたが求める天下は誰の天下なのですか?」
周瑜 「訊きたいのはそれか、子敬」
魯粛 「・・・それがしはあくまで孫権殿の臣にございます。孫策殿の夢を追うことは
    できませぬ」
周瑜 「・・・」
魯粛 「ですが、公瑾殿。あなたが天下を目指すのであれば、わたしは非才の全てを
    擲って、あなたの天下のために尽くす覚悟があります」
周瑜 「孫権殿は?殿を見捨てることが、貴兄にできるのか、子敬」
魯粛 「・・・殿を見捨てるのではございません。殿には揚州がございます」
周瑜 「未だ心は定まっておらぬようだな。だが、お主の言葉はありがたく思う。
    とにかく、まずは荊州だ。全てはそれからのこと」
魯粛 「はい。今はそのために、粉骨砕身の覚悟で働きます」
周瑜 「頼む」
「殿、おひさしゅうございます」
「程イクか。入れ」

席に促され、他愛も無いことを話しながら酒を交わす。
(老け込まれたな、まるでわたしと同年のようだ)
すっかり変わってしまったかつての主を前に郷愁にふける。
(だが、この眼だけはかわらんな)

不意に曹操が切り出す。
「呂布は涼州に兵を進めるつもりのようだ」
「そのようですな」
「……」

しばしの沈黙。

程イクが返す。
「荊州をどうするつもりでしょうな」
「うむ。たとえ”誰に”であっても荊州を完全に抑えられてはならぬ。」
「荊州を抑えれば益州、揚州いずれからでも二正面に――」
「――うむ。襄陽だけは落とされてはならぬ」

曹操が程イクの言葉を遮る。

「まだ、総力戦になっては困るのだ。牽制し合うくらいでちょうどいい」
「襄陽の件、お任せいただけますかな?」
「策はあるのか?」
「『何があっても襄陽は守る』それだけなら簡単にございます」

程イクの口端が上がる。

「ところで”何か”あったときの新しい襄陽太守は誰にしましょうか?」
諸葛亮は完全な策を持って荊州を落とすはずだった。

荊州の西側に集中した兵力は城ごと寝返り劉表に迫る。
本拠襄陽に残る兵力も東から迫る孫権の警戒ために釘付けになり、
益州の本隊を導入して神速のごとき行軍で荊州を制圧する。
長江沿いに行軍してくる揚州軍と無傷の益州軍の
連合軍で最後の砦、襄陽に迫ることすら可能だった。

しかし、劉備の叫びとともに完璧な策が崩れ落ちる。

「馬謖が襄陽から出られないとはどういうことだ!!」
「それが将兵、官吏の襄陽の出入りを厳禁とする命令が降りたらしく…」

馬良は沈黙を守り、報告する法正の顔も青ざめている。

「武具兵糧が運ばれ篭城の準備をしているだけのようなのですが…」

李厳の内通はすみ、檄もまもなく方々に届く。残された時間はないのだ。
しかし、馬謖が襄陽に残されることは益州軍の封印を意味する。
馬良の弟、馬謖を残したまま軍を動かせばそれは配下の家族を見捨てること。
それは儒教に逆らうことに他ならない。
劉備が信頼を失うことは反呂布の旗の下に集まった益州軍閥ではそのまま崩壊に繋がる。

「太守の寝返りで荊州西部は得られても、南荊州までは手が伸びませぬ。
いま孔明が動いておりますが、間に合いますかどうか…」

劉備が肩を落とし、椅子に深く沈む。

「…………呂布め。やってくれる」
やや話が戻る。
劉jと孫氏との縁談の話が進まないでいる事に、荊州は揺らぎ始めていた。
揚州も益州に負けず、軍備を整えている。蔡瑁の話によれば、これは益州の侵略から
荊州を守るための援軍派遣を整えているらしいが、これはどこまで信用できるのか。

本当に揚州を信じてよいのか、いや、それ以前に、蔡瑁を信じてよいのだろうか?

近頃になって、蔡瑁の怪しい噂が流れている。
蔡瑁の邸に夜間忍び寄る人影が絶えないという噂である。
その人影は邸の裏で家人と竹簡を交換してはすぐに去るのが常らしい。
益州の間者が流した噂だろうか。

「蔡瑁殿は揚州と通じているのではないだろうか」

自他共に劉jの後見役と認められる蔡瑁が孫家の後ろ盾を得て、荊州を簒奪する。
ありえない話ではなかった。

馬謖はそんな話を一人一人にそっと漏らしてみた。
人の感情の機微を読み取り、臨機応変に受け答え、相手の心証をよくする事は彼の
得意技である。彼は容易に人の心の琴線を見つけ出し、すかさずそこに攻め入る。

馬謖「このままだと、荊州は蔡瑁のものになりますぞ」

策は図に当たった。内応者がほとんど芋づる式に増える。
幾人か予想外の人物まで同心した時は、蔡瑁に知られたのではと怪しんだが、
どうも本当に圧倒的な数の群臣が、蔡瑁という男に辟易しているようだった。
伊籍という男などは「事がなるまで、護衛を一人貸し与えておく」と申し出て、
馬謖に屈強な男を紹介した。聞けばこの男、元は蔡瑁に使えていた兵長だったが、
蔡瑁が、呂布から逃れる劉備を逃してしまった時、責任を部下に押し付けるのを
殴り飛ばして罷免され、それからずっと伊籍の元に身を寄せていたという。

一筋縄ではいかない男らしい。しかし、彼が身辺にあれば安全だ。
現在の状況

 西涼の馬騰・韓遂
     (玉璽隠匿)

                   <= 中原の呂布(朝廷掌握、宦官の曹操暗躍中)

      漢中(劉備領)

                荊州の劉表
                (蔡瑁の横暴が災いして
                 劉備への内応者続出)    <= 揚州の孫権
                                  (周瑜と魯粛が率先して開戦)
    益州の劉備 =>
     (豪傑、智者、多し)

他情勢
・張昭、程普、韓当が孫呂両家の策謀の真っ只中にある
・曹操は総力戦を嫌い、程イクと共に襄陽死守を企む
・徐庶行方不明 ・ホウ統は曹操の腹心 ・周瑜は暴走気味
・荊州をどれだけ取れるか、競い合う気持ち強く、益揚の連携危うし
>>17の予言かなり外れていてめでたし
ずっと地図を眺めている。許昌あたりに指を置く。何度か指を滑らせて洛陽に落ち着ける。
呂布に敗れて早、五年か。いや、もう七年くらいだったかな。

曹操「両方正しいかも知れないな」

一人笑みを浮かべた。酒が思考を曖昧にしている。近頃、唯一の道楽は一人酒を愉しむ事。
よくここまで来られたものだ。杯をもてあそぶ。

近頃は曹家の天下など興味がなくなりつつある。

曹昂や曹安民の天下なら実現する価値もあろう。だが、今の嫡男は曹丕。
その曹丕の器量、求心力を見るに、どうも天下の器ではないような気がして来る。
何かにつけて陰気過ぎるのだ。
人前ではことさら爽やかな顔を見せるが、裏ではかなり陰湿なことをやってのけている。
しかも何か大きな事を望んでのことではなく、ほとんどが小さな私心によるものだ。

他人には解らないが、俺には解る。
ちょっとした恨み、妬みでも持てばそれに全力を尽くす。
そして狙われた本人も気づかぬまま、陥れられ、ついには身分や命を失う。
頭はいい。さすがに俺の子だと思う。しかし、あれは人の頭に立つ器とはいえない。

曹操「だが、あやつの天下ならどうであろう?」

戦友にして仇敵であった劉備・玄徳。
俺が唯一、英雄と認めた男だ。

曹操「あれを呂布ごときの天下に従わせるのは面白くない。俺にすら従えなかった男を」
劉備の顔を思い浮かべたら、なぜか急にこれまでのことを思い出した。

誰も知らない、曹孟徳の暗躍の全て。

先帝に毒を盛り死なせたのは俺だった。劉備に刺客を差し向けて追い出したのも俺。
手のうちにある青州兵は全国規模の情報網を持ち続け、風聞を動かす事も思いのままだ。
それを全てお互いの仕業に見せかけ、まずは乱世を長引かせ、呂布の優位を食い止めた。

次に自らが天下を得るための抜け道を模索すうち、ホウ統という策士を得た。
荀ケのように気持ちのよい性分を持ってはいないが、知恵の巡りは荀ケより先走っている。
しかも彼は事を人任せにせず、自らの足と舌で策を進める。
彼を蔡瑁のもとに取り入らせる事で、蔡瑁を思うように動かせるようになった。

蔡瑁も実に使えた。彼自身は洛陽の宦官に操られているとはゆめゆめ思うまいが、
馬鹿は馬鹿なりに使いようがあった。
彼のおかげで鬼才孔明を荊州から追い出せたし、劉備と劉表の仲も険悪になった。
(本当は孔明という男、こちらの陣営に欲しかったが、劉備にやるのも悪くなかった)

おそらく劉備は荊州のいくらかを得るだろう。
孫権主従と呂布の動きだけ、やや予断を許さないところがあるが、
それでも全土に散らせた青州兵が劉備の人望を高めるよう日々動きを絶やさないでいる。

ここで、ふと思った。
(……俺は呂布の天下を邪魔し、隙を見て自らの天下を立ち上げるつもりではなかったか?)
それにしては、劉備への肩入れに度が過ぎているような気がする。

(もしや俺は、劉備に天下を取らせてやりたいのか?)

顎に手をやった。するりと全ての髭が落ちた。宦官になって尚、長生きしてくれていた髭。
鏡を取る。髪は白いが、熟年の女性のような顔がそこに写っていた。
朱を帯びて少し色気を感じる。
263無名武将@お腹せっぷく:02/10/18 17:20
ageとく。
荒れるからsager
随分斬新だなー

曹ヒを安民や昂より非才として曹操が自らの命を賭けて劉備を支援するとは。

個人的には面白いので良いぞ良いぞ(w
審配「呂布、このままでは終わらんぞ…」

華北四州は呂布の知略により袁紹の死と言う形で崩壊した。
烏丸の騎兵は守るべき袁家の崩壊を知り撤退、民衆を人質に
取られた審配等は降伏を余儀なくされた

辛評「とは言え、袁家最後の一人元才殿は行方不明、郭図・文醜・陳琳も
また所在が掴めぬ、我等だけで何が出来るというのか?」
審配「では貴様はこのまま呂布に尻尾を振り続けるのか!」
辛評「・・・・・・荊州に向かう呂布軍をあらかじめ半減させられれば・・・」
審配「我等だけでは何も出来ぬのではなかったのか?更にそれが何になる」
辛評「元才殿は益州におられる、陳琳もな。今我々に出来ることは捨て石のみよ・・・」

小者が呂布を推し量れぬように、呂布もまた小者の忠義を推し量ることは出来ない
薄暗い森の中、そこに徐庶はいた。
孔明、子元を仕留め損なってから幾日が過ぎた。
劉表の下には戻るに戻れない。
だがそれでよかった。
もともと劉表の下に長居するつもりはなかった。

蔡瑁。あの小物を劉表は信じきっている。
荊州はそう遠くないうちに落ちる、現に今、益州、揚州の二方面から攻撃をうけようとしている。
これで劉表は終わりだ。

だが徐庶自身このままで終わるつもりはなかった。
自分の目的はこの戦乱を終わらせること。
誰がそれに相応しいか。

劉備。この男は何がやりたいのか。
徐庶にはよくわからなかった。
この男のやっていることは、いたずらに戦乱を長引かせることに他ならない。
漢王室復興、これはすでに呂布によってなされたに等しい。
それでも劉備は戦を続ける、孫権もだ。

「呂布に会ってみるか」

これが徐庶の考えの結論であった。
魏延は右腕をさすりながら、剣を手にした。
手に縫い後を感じる。一ヶ月ほど前に縫われた傷跡である。
思い出す。傷の生まれた日の事を。

手負いの男に肩を貸す馬謖。邸に入ると男を寝所に横たえた。

馬謖「魏延、大事はないか」
魏延「……俺は大丈夫だ。それより貴公に怪我はないか」

二人が襲われたのは夕暮れ時だった。仕事を終えた馬謖を護衛兵魏延が出迎えた時、
四人の暴漢が後ろからついてきて、人通りの寂しいところに入るなり、
剣を抜いて踊りかかってきたのである。魏延はこれを振り向きざまに一人斬り捨て、
続けて馬謖に向かって来る一人に足払いをかけ、倒れたところで突き殺した。
そして一人が魏延の思わぬ武量に驚いているのを切り伏せた。
あと一人をと思ったとき、それはすでに逃げ出していた。追う魏延。
魏延の足は疾い。たちまち追いつく勢いだ。
だがそこで左右から三人の男が現れた。

魏延「しまった罠か」

この修羅場を潜り抜けた魏延は、七人の死体をそのまま打ち捨て、
馬謖とともに帰路についた。しかし少し腕を怪我した。
大きく割れた傷口から血が絶えない。
馬謖が、魏延の傷口をぬぐい、糸を縫いつける。

魏延「すまねえ、馬謖殿」

魏延の額を、脂汗がつたう。馬謖が、酒を差し出す。

馬謖「少し酔うといい。痛みが和らぐ」
馬謖「どうするべきか。ここが思案のしどころだ」

李厳は既に動き始めており、諸県諸郡の要所に兵を走らせ占拠させ、内通者も続出している。
本来ならここで劉表らは慌てふためいて動乱の鎮圧に動くはずであるが、
これがなかなか慎重であった。
劉表は蔡瑁の意見を受けて、襄陽の守備を固めさせ、打って出ようとしないのだ。

劉表「これでいいのか。いつ劉備がこの乱に乗じてやって来るか解らないぞ」
蔡瑁「揚州からの援軍が近づきつつあります。これと合流して後鎮圧軍を向けましょう」

そんな悠長な態度でよいのかと劉表は首を傾げたが、蔡瑁は劉備との直接対決を恐れていた。
自ら危険をおかす必要などない、戦など全部揚州にやらせてしまえばいい。密かにそう考えた。

そんな、普通なら愚策と呼べるこの軍略が、劉備一党に、皮肉な効果をもたらした。
馬謖の動きが封じられ、一番重要なことが手はず通りに動かなくなってしまったのである。

もちろん、不測の事態に備えていくらか策は拵えていたが、馬謖という男が全ての鍵だった。
馬謖の無事が確認できねば、他の内通者たちも決断に踏み切れないのだ。

もしここで馬謖を見捨て、益州より大軍を送り込むと、
内通者は劉備の信義を疑い、どう転ぶか解らない。

馬謖は自分の置かれている事態を明確に察し、劉表に諫言せんとする。

馬謖「速く打って出るべきです。揚州兵など入れてしまえば、騒ぎは大きくなるばかり」

だが、その声は劉表に届くべくもない。
ある重臣にその意見を託したが、劉表よりも先に、蔡瑁の耳に入ってしまったのだ。

蔡瑁「馬謖なる男、捨て置けぬわ」
曹操邸。質素な造りをしている。

突然の来客は、本当に突然であった。
小雨に濡れたその客は水の滴る頬に手を当てながら、席に着いた。

雛氏「お久しぶりに曹様の顔を見たくなりましたの」

好奇心を秘めた眼が、曹操をじっと見つめている。

曹操「久しく見ないうちに、女ぶりに磨きがかかったな。言い寄る男も数知れまい」
雛氏「実はそうでもないのですよ。このところ、どなたも相手にして下さらなくて」
曹操「……何をしに来た?」

この女、宦官の俺を前にして肉感的なしぐさを絶やさぬ。
人外と化した俺を暇つぶしにからかいに来たのだろうか。

曹操「お前、暇なのか。だとすれば、それもよい。実は俺も暇なのだ」

雛氏が少し無邪気に首を傾げる。何を思っているのか解らない。

雛氏「……宦官になられましてから、少し雰囲気がお変わり遊ばされましたのね」
曹操「みんな、そう思うらしい。自分では何が変わったのかよく解らないが」
雛氏「そうね。見た目やしぐさ、それと声が少し女ぽくなったみたい」
曹操「……」

彼女はいつも歯に衣着せぬ物言いをする。だがそれがなぜか心地よい。

雛氏「一番変わったのはどこかしら」
曹操「多分、ここじゃないかな」

曹操が衣を広げた。そこにあるべきものが、やはり、ない。
曹操がそれを見せると雛氏はその手に触れて、自分で彼の衣を取った。
彼が久しぶりに触れたその手は冷たかった。

雛氏「本当に、変わられましたこと……」

雛氏が曹操のそこに顔をうずめる。何もないそこに、唇をやさしく這わせた。
しばらく吸ったり、噛んだりした後、彼女は曹操の眼を切なげに見つめ、
そして静かにその唇に吸い付いた。

雛氏「唇まで変わってしまわれましたのね」

曹操の手を取って、自らのもとに導く。
指が、昔のように淫蕩な動きを見せた。

雛氏「でもやはり、あなたは曹様」

吐息混じりに雛氏がつぶやき、情事の時が訪れた。
そのまま二人は官能的に絡み合い、雨音に似た音を重ねながら、求め合った。
最後には曹操の背後より、雛氏が道具を用いた。
この時の狂おしい曹操の顔、彼の娘にそっくりだった。

この時、二人は、男ではなくなった曹操の肉体に、新しい美しさを見出した。
時が終わると、雛氏は曹操の身体に甘えながら、幾度か言葉を囁きあった。
起き上がると、甘い空気の覚めぬまま、曹操の顔にいたずらをする。

齢を隠す技を施し、髪には香を染ませ、その唇に紅を塗る。
雛氏が鏡を渡した。「戸惑うように美しうございます」。
しかし曹操は鏡を床に転がして、雛氏の手を握り、またその身体を求めた。
─────────────────────────────
    余談ですがこの拙い文才をエロチャットを使い、
    何人か女性を釣らせて頂きました事をここに告白。
─────────────────────────────
エロ化か
ツァオツァオと劉備の801なんて展開はマズー
>270 逝っとけ。
276無名武将@お腹せっぷく:02/10/21 00:07
うおおおおおおお復活しろおおおお
277無名武将@お腹せっぷく:02/10/21 00:11
801路線が潰れたので他の路線を考え中なのでは?(w
だからsage
>>276
一気にたくさん書いたのだからはじらく待っとけ
蔡瑁は馬謖を殺すつもりか。
夜も更けた私邸で暗闇から姿無き声が告げる。
除庶「劉表様、ただいま戻りました」

ここ数日は毎夜、蔡瑁が訪れ謀議にかかっていた。
今日も蔡瑁が馬謖を益州の密偵だ、処分すべしと詰め寄っている。
いい加減怒鳴るようにしゃべり続ける蔡瑁に辟易していた劉表は、
窓からの突然の声にも、一時の救いと快く答える。

劉表「除庶か、今までどこにいっていた?」
蔡瑁「貴様!よくものこのこと戻ってこれたな?!」

蔡瑁が窓の外の暗闇に怒鳴りながら席を立ち窓枠に手を掛け、怒鳴り続ける。
蔡瑁「いまさら何のようカハッ――」

急に押し黙った蔡瑁の横からぬっと除庶が入ってくる。
除庶「……お命を頂戴に」
劉表「何をっグッ―――」

劉表が除庶の右手の血に染まった剣に気付いた時には
左手が口を押え、その剣が胸を貫いていた。

―四半刻ほど後、
再び暗闇を疾駆しながら除庶は思うとも無く考えていた。

(まさか命を狙った鳳統に張本人劉表の暗殺を依頼されるとは。
程イクの元に母上がいるというのは本当だろうか。
曹操も何を考えているのかわからんが、もはや関係ないか。
もうこれで世に出ることは無いかもしれないな。)
劉表暗殺エンドか
徐庶じゃなくて除庶か。偽者?
話を広げることは出来ても纏めることができないスレの典型ですな
>>284に同意。最近の職人はネタ振りしかしてない。
>>281>>267の流れに乗ってないが、いいのか?
やっぱり途中で終わったな、予想はしてたが・・・

  期        飛び入りの連中は、流れを読まずに、
    の
      職      無駄なネタフリするのを止めてくれ。
        人
          だ    初期の職人だけで書いて欲しい。
            け
              で
                書
                  い
                    て
                      欲
                        し
                          い。
その初期の職人がいないんだっつーの
騎兵二万、歩兵一万五千を率いて、呂布は長安に入城した。付き従う将は張燕と張コウ[合β]。
賈クや田豊が随従を申し出たが、「此度の戦に軍師はいらぬ」と呂布にすげなくあしらわれて
いる。賈クは洛陽にあって、張繍の補佐をしながら諜略の要を担い、田豊は張昭や程普と相談
しながら南への対応に備えている。秣稜や合肥とも伝令のやりとりが始まり、その準備は着々と
進んでいた。

涼州への随従を命じられて一番驚いたのは、当の張燕であろう。元々彼は山岳戦を得手として
おり、逆に平地での大会戦の経験は少ない。慌てて断ろうとしたものの、呂布の「やかましい」
の一言で、一も二もなく呂布に従って西に向かうことになった。

一方の張コウ。呂布の袁家討伐によって、袁紹を始めとする袁家の将士は次々と地に倒れた。
戦の帰趨を唯一人幽州で見守っていた袁煕は、逃げ込んできた諸将から袁紹や兄弟の討死を
聞いて抗戦の無駄を悟り、また呂布による民衆への危害を回避するため、生き残った将士と
共に、呂布に降伏したのである。

呂布はその内政の才と実直な性格を認め、袁煕を赦して河北四州を彼の手に任せた。審配の
ように要地に配された者もいるが、顔良を始め、袁煕と共に降伏した諸将の多くは河北に
あって袁煕を補佐している。そして、今や「北の鉄壁」として異民族に畏怖され、敬意を
払われる存在となった顔良の配下から、今回、張コウが抜擢されることになったのだ。騎兵を
率いるに長け、涼州の強剛な兵たちと充分に渡り合える力量を持つものと思われた。

長安の守将である鍾ヨウと審配が呂布を迎える。「面倒なことはいらん」との呂布の一言で
挨拶は全て省略され、五人の将は城の一室に入った。酒が一つ交わされ、事務的な会話の
やりとりが二、三。そして呂布が促し、鍾ヨウが馬騰の話に入った。
鍾ヨウ「先に出した使者が帰って参りました。馬騰殿曰く、朝廷への叛心などかけらもない、と」
呂布「ほう‥‥‥」
鍾ヨウ「更に朝廷への忠誠の証として、牛車数十台に一杯の財物、それに西域の女を同じく
   数十人、使者に帯同させられました。その一方で、韓遂殿と共に豪族たちに使者を出し、
   慌ただしく兵を集めているとのこと。将軍の軍が西に動いたと聞いたので、馬騰殿も
   警戒心を強めたのでしょう」
呂布「‥‥‥」

女と聞いて呂布が目の色を輝かせると予想した張燕。当てが外れて、呂布の顔をまじまじと
覗き込んだ。呂布は目を閉じ、何かを考えている。

呂布「‥‥‥鍾ヨウ、馬騰が衰えたという話はあるか」
鍾ヨウ「寡聞にして存じませぬ‥‥‥やはり、将軍も感じられますか」
呂布「ああ。腑に落ちぬ」
鍾ヨウ「それがしも、些かの違和感を覚えました。どうにも馬騰殿らしくない対応だ、と」
呂布「馬騰は気骨の士。兵を集めるのは当然としても、使者などは追い返されると読んでいた
   のだがな。それを一つの口実に、俺は軍を進めるつもりであったが‥‥‥」
張燕「我らに阿ったということは」
呂布「あり得ぬ。馬騰は董卓に対してさえ牙を剥いた西涼の雄。俺に阿る理由などないだろう。
   奴らが俺にひれ伏すとしても、こちらの力を測った後のことのはず。それが一戦もせずに
   この体たらくとは‥‥‥分からぬ」

呂布がここまで考え込むのは珍しいことだ。四人はただ、呂布の次の言葉を待った。

呂布「‥‥‥確かめねばなるまい。審配」
審配「はっ」
呂布「出撃を数日送らせる。ありったけの間者を馬騰と韓遂の周囲に放て。俺の進撃の途中に、
   随時報告が入るようにせよ」
審配「御意」
それらの手配を終えると、呂布は解散を命じた。だが、審配と張コウの二人は部屋に呼び止められ、
呂布の酒の相手を命じられることとなった。鍾ヨウと張燕の二人は、むしろ安堵したような表情で
足取りも軽く部屋から出て行く。呂布の酒の御相伴、ある意味では地獄の訓練よりもきつい。

酒杯数巡。しかし、三人とも全く酔った様子はない。呂布は口元に笑みを浮かべながら立て続けに
酒杯を煽り、逆に審配はすっかり緊張した面持ちである。そして張コウは、背筋をぴんと伸ばし、
謹厳な表情をかけらも崩さず、しかし呂布に匹敵する酒量を呑んでいる。杯が止まる気配はない。

呂布「おう、そうだ。辛評との謀議はうまくいっているか、審配」

何気なく放り込まれた、衝撃の一言。審配が一瞬怪訝な表情を浮かべ、次いでその顔が凍り付いた。

審配「な‥‥‥何を仰せか、唐突に」
呂布「賈クの手の者たちは実に優秀でな。お主らの謀議についても、逐一報告してくれた。
    お主らのやりとりを記した竹簡もあるぞ。何なら見るか」

ことり。審配の手から、杯が卓に落ちた。顔色は蒼白を極め、呼吸は乱れている。その様を横目で
見ながら、相変わらず表情を変えずに酒を飲み続ける張コウ。呂布は対照的な二人を見比べながら、
審配に語りかける。

呂布「貴様が俺の打倒を企むのは勝手だ。だが、それを袁家のためと言うのは詭弁が過ぎよう」

どうやら覚悟を決めたのだろう、審配の目が座り、呂布を真正面から睨み返す。審配とて歴戦の
武将である、先の動揺の色を伺わせるものは、既にその面にはない。代わりにその双眸にある
のは、呂布に対する憎悪の炎である。

審配「我が忠誠は常に袁家の旗の下にある。呂布よ、貴様を主と仰ぐつもりなど、我には端から
    ないわ」
張コウ「ならば何故、袁煕殿の下に馳せ参じないのだ、審配殿」

張コウの重い声が部屋に響く。その声が、審配の面に朱を注ぐ結果となった。張コウの方にぐいと向き
直り、審配は一気に強烈な舌鋒を張コウに浴びせた。
審配「張コウ、貴様、袁紹殿の大恩を忘れたか。生きては袁家のために生き血を絞り、死しては
    袁家の鬼となる。それこそが袁家に仕える者の正道ではないのか。それを、貴様も田豊も
    呂布なぞに尻尾を振り、逆臣の手先となりおって、裏切り者どもめが」
張コウ「私の質問には答えて頂いておらぬな、審配殿」

審配が昂ぶるほどに、張コウは冷徹の気を増すかのようである。謹厳な面の眉間に、太い皺が寄った。

張コウ「私も田豊殿も、袁家への忠誠を捨ててはおらぬ。我が主は袁煕殿。そしてその袁煕殿の
    主が今や呂布殿である以上、我らが呂布殿に忠誠を尽くすは道理」
審配「小賢しい口を叩くな。貴様なぞに袁家への忠誠などを語る資格はないわ」
張コウ「では改めてお訊きしよう。審配殿は袁家に忠誠を尽くされると言われるか」
審配「何を今更。我は袁家の忠臣、それ以外の者など主とは認めぬ」
張コウ「では、今の袁家の頭領はどなたでござるか」

審配が、初めて言葉に窮した。言うまでもない、袁紹なく、袁譚も袁尚も亡き今、袁家の頭領は
袁煕以外にいない。

張コウ「それ故、私は最初にお訊きした。袁家の忠臣たる貴殿が、何故に袁煕殿の下に走らぬのかと」
審配「‥‥‥それは、袁家の天下のためだ。袁紹殿の目指した天下のため」
呂布「やれやれ、貴様もものの見えぬ輩か、審配」
審配「何だと、逆賊めが」

呆れたような呂布の声。審配が激する。酒杯を壁に叩き付けて立ち上がり、殺意を凝縮したような
劫火を湛えた眼で、呂布を見据えた。

呂布「貴様が忠誠を誓っているのは、断じて袁家ではないぞ、審配」
審配「呂布、貴様‥‥‥」
呂布「おお、貴様は確かに忠臣だ。ただし、亡者の怨念のな」
審配「この上戯れ言を抜かすか、呂布。この審正南、そのような邪な者に仕える心など持たぬ」
張コウ「ならば審配殿。貴殿自身が、怨念を抱いた亡者なのだ」

天帝の裁きの如き、張コウの一喝。審配はまるで彫像のように、その場に立ち尽くした。
張コウ「知らぬか、審配殿。郭図殿を始めとする袁家の旧臣が、袁煕殿の下に再び集まり始めて
    いることを」
審配「なっ‥‥」
張コウ「袁煕殿は袁紹殿とは違う。呂布殿と闘うつもりもなければ、天下を望んでもおらぬ。だが、
    袁煕殿も自らの命を賭けて、闘っている。荒廃した河北四州を再び富ませ、民が安らかに
    暮らせること。それだけを願って、日々その血肉を絞りながら日々闘っておるのだ」
審配「‥‥‥」
張コウ「だからこそ、真っ先に袁煕殿の志を知った顔良殿は、敗戦の怨恨を捨て去り、袁煕殿の
    ために尽くす覚悟をなされたのだ。僅かな生き残りの兵を率い、北へ向かった。烏丸や
    鮮卑らの異民族が、袁煕殿がその精魂を傾注して立ち直らせようとしている河北を荒らし
    回らぬとも限らぬ。顔良殿はその脅威に、ただ一人で立ち向かわれたのだ」
審配「‥‥‥」
張コウ「真の袁家の忠臣とは、顔良殿のような御方のことを言うのだと私は思う。そして、忠義の
    灯を消すことのなかった者達が、袁煕殿の志に触れ、今、その下に集っているのだ」

審配がへたり込むように着席する。既に、双眸の炎はきれいに消え失せていた。

呂布「‥‥‥直ぐには心も定まるまい。俺が涼州から長安に戻ったとき、改めて貴様に問おう。
    己の進む道を見定めておけ、審配。俺に逆らうも、従うも、袁煕の下に走るも自由だ」
審配「‥‥‥」
呂布「ま、考える時間があるかどうかは判らぬがな」

意味ありげに、呂布がにやりと笑う。そして翌日、審配はその笑いの意味を知ることになる。

涼州遠征の一方の将が、交替となったのだ。張コウに代わって涼州に向かうことになったのは、
当の審配であった。
送信直後にミス発見。見つけた方、何事もなかったようにスルーして下さい。

失 礼 し ま す た 。
どうでもいいが、華北の異民族は徹底的に袁紹派だったりする
うーむ。しかし話の流れが硬派に戻ったのは大歓迎だ。
馬騰と韓遂の企みはどうなっているのか…。期待。
関羽と張飛、そして孟達、法正、馬良が荊州に兵を乗り入れた。

関羽「貴殿には非情な決断になったが……、悔いはござらんか?」
馬良「……私が自分で劉玄徳殿に提案したのである。あるはずがない」

もしあの時、自分が差し出がましく馬謖を用いることなど進言せねば……。
それを幾度か思ったが、今となっては詮無きこと。

思えば、なぜ孔明が内応策を自分から言い出さなかったのか、今となっては解る気がする。
彼はおそらく、馬謖のまだ育ちきっていない智謀よりも、呂布の陣営のほうが上だと見た。
弟・馬謖の才は確かに優れてはいるが、それは充分な経験を重ねてこそ生きるものだった。
素質だけなら、孔明や士元と並ぶ。この馬良など足元にも及ばない。
しかし、やはりもっと多くを学ばせてから世に出すべきだったのかも知れない。

襄陽からの脱出に失敗したのは、馬謖の小さな油断によるものだったが、
それが、劉備軍をして、馬謖を見捨てて進撃することをためらわせる事につながり、
荊州争奪作戦の機を逸する事態に陥らせた。

この時、馬良は決断せざるを得なかった。

「……弟を斬るしかない」

馬良は内通者の伊籍を通じ、馬謖の護衛を命じている魏延に馬謖を斬らせた。
そして魏延はその場で、蔡瑁の兵一人に向かい、「馬謖の仇!」と大声上げてこれを殺す。
それが全てのはじまりとなった。荊州の各地で反乱の狼煙があがったのである。

災い転じて福となす。

ここで早速、劉備軍は「荊州の内紛鎮圧に助力いたす」と関羽たちを差し向けた。
>>281は無視させて頂きますが異論ございませんか?
この動乱に関して、様々な流言蜚語が何者かの意図により、荊州全土に流された。
いったい、何が起こったのか、誰がどこと戦っているのか、真相を知らない人々は
次のごとき『蔡瑁謀反説』をそのまま信じ込んでしまった。

「あの蔡瑁が兵を使って劉表様を監禁し、劉jへの政権移譲を強要している。
 それに反対する重臣はことごとく蔡瑁への反旗を翻し、各地で蔡瑁派の臣たちと
 抗争を繰り広げている」

蔡瑁への怒りに燃える荊州人民。
そこへ来たのが蜀の関羽張飛軍と、それに少し遅れて来た呉の周瑜軍である。

「荊州の眼を覆う惨状を捨て置けず、劉表・劉gを救出すべし」と喧伝して入荊した
関羽張飛軍を、『蔡瑁謀反説』を信じ込む荊州の人々は歓迎し、
内通者の手引きもあって、蜀軍はほぼ無血の状態で要所要所を押さえてゆく。

一方、蜀軍が先に荊州に攻め入って、劉表軍を食い止めているうちに、
背後から奇襲攻撃を仕掛けようとしていた呉軍は、国境に足を踏み入れて間もなく、
「この火事場泥棒め。人の不幸をつけねらって荊州を奪いに来たか」と、
無数の豪族たちが味方する黄祖にその進撃を阻まれる。

対峙する黄祖軍と周瑜軍。こうしている間にも関羽と張飛が馬に跨り、荊州各地を
『解放』してまわっている。

周瑜「わ、わが必勝の策が……、呂布ならまだしも、劉備如きに出し抜かれるとは!」

悔しさに唇を噛み締める周瑜。血が流れている。

そこへ一本の矢が飛んできた。黄祖に味方した韓玄の腹心、黄忠が弓を放ったのだ。
場所は変わるがここは南の地、南蛮。
その地で空を見上げる一人の男が居た、
彼はここの地の者ではない、一見して他民族だということは誰でも分かった。
一人、彼に近づく者があった、
空を見ていた者は彼の気配に気づき、振り向いて彼は言った、
「これは猛穫殿、このような場所に何か用事でも?」、と。
猛穫と言われる者は少し間をあけ、
「いや、貴方がこんな所で何をしているのかと思ってな、陳宮殿。」
と、言うと陳宮の正面に進んだ。
陳宮は再度空を仰ぎながら語った、
「いえ、あの頃私の代わりを使わなければどうなっていたかと思いましてな・・・、
あの頃、呂布殿は何かおかしいと思い、私によく似た者に行かせたら・・・・、
ああ、恐ろしい・・・。」
「しかし、よく気づかれなかったな、奴も間抜けではあるまい。」
陳宮は微笑しながら続けた、
「恐らく気づいていたと思いますよ、
しかし呂布殿は私を試しているのだと思います。」
「試す・・・、か・・・、フン、奴もたいしたものだな。」
「フフ、あの人はそういう方だ、智謀も弓も私は勝てませんでした・・・、
しかし、今は呂布殿に勝てる気がします・・・・、
私の智謀と貴殿の兵さえあれば!!」
猛穫は笑うと、
「ふふ、そうだろう、貴方の知略と我の兵があれば無敵!
この天下、我らが取ろうではないか!!」
と、強く言った。
陳宮は薄く笑うと猛穫の手を取り、
「そうです、天は私達に味方をしてくれます。」
と言うと長安の方向を二人は見た。
各地の要所を抑え、劉表の本拠たる襄陽に向かった関羽の軍。ここまでは予想以上に
事はうまく運んでいる。荊州を手中にすれば、劉備の勢力の影響力は飛躍的に伸びる。
僅かに胸躍る心持ちになっている自分を、関羽は感じていた。

だが。

襄陽の門は固く閉ざされていた。手はず通りならば、馬良の指示通りに伊籍が城内の
混乱を煽り、それに乗じて一気に城内に突入、劉表一族や主立った重臣の身柄を
抑える筈であったのだが。

関羽「劉玄徳が腹心、関羽。荊州の混乱を平らかにし、劉表殿をお助けするために
    参上した。直ちに開門を願う」

大音声で呼ばわる関羽。しかし、城内はしんと静まりかえっている。混乱の様子は
微塵も感じられない。焦りを感じながら、再び関羽が城内に呼びかけようとしたとき、
城門の上に人影が見えた。

??「城内の混乱は既に治まり、劉表殿は実権を回復された。助力は最早無用、
    直ちに軍を返されよ」
人影は二つ、いや、三つか。大きくなる不安を無理矢理抑え、関羽は再び問いかける。

関羽「我らは君側の奸たる蔡瑁を除かんと参上したもの。敵にあらず、直ちに開門を」
??「ほざくな、盗人が!」

どさり。関羽の前に、何かが落ちてきた。地に落ちた「それ」を視認し、関羽は全身を
硬直させる。「それ」は、人間の生首であった。

??「貴様等の手先であった伊籍は、既にその罪を命にて贖った。この上まだ、盗人の
    理を振りかざし、この襄陽を奪おうとするか」

城門の上から哄笑が降り注ぐ。困惑と怒りで関羽が歯がみした、その刹那。

関羽軍校尉「背後より敵襲!」

鳳統の、曹丕の、そして魏延の張り巡らせた策略は、完璧な形で実を結んだ。
馬騰「呂布の軍が長安を出たそうだ。その数、約四万とのこと」
韓遂「結局、進物も無駄に終わったか・・・」
馬騰「我ら、玉璽に目が眩み、些か姑息な手を弄したかもしれぬ」
韓遂「こうなれば戦は避けられまいな、馬騰。兵はどれほど集まった?」
馬騰「八万。とは言え、半数は豪族たちの軍。呂布の精鋭とは質が比較になるまい」
韓遂「それでも、倍の兵数ではないか。うまく兵たちを御することができれば」
馬騰「そこだ。はっきり言って、呂布の軍と曲がりなりにも戦えるのは、俺とお前の
   軍だけだろう」
韓遂「ふむ。豪族たちの兵は、間接的に使うということか」
馬騰「と言うより、そう使うしかあるまい。側面や背後からの圧力としてしかな。
   まともに呂布の軍とぶつかっては、奴らでは勝ち目はない。なかんずく、
   下手に手玉に取られるようなことがあっては、逆に我らにとって迷惑だ」
韓遂「随分な云いようだな。ま、実際そんな程度の輩ではあるが」
馬騰「玉璽のことは一旦頭から忘れよう。今我らが玉璽を持っているからといって、
   どうこうできるものでもあるまい。だが、呂布を破ることができれば、玉璽が
   意味を持つかもしれぬ」
韓遂「・・・なるほどな。機に乗じて、長安から洛陽を一気に陥れるつもりか」
馬騰「さすれば、玉璽の存在が初めて生きてくる。我らが天下、見えるやもしれぬ」
韓遂「ふふっ、大きく出たな、馬騰よ」
馬騰「呂布の軍は確かに強い。そして呂布自身も当たるもの無き剛勇。だが、韓遂。
   地の利は我らにありだ。勝機はそこにある」
韓遂「呂布の軍を涼州の奥まで引きずり込むつもりか」
馬騰「いや、その策は取れまい。それができれば、それに越したことはない。だが
   その場合、呂布が通るのは豪族たちの領地だ。奴らはそれを肯んじぬだろう。
   たとえ策だと言ってもな」
韓遂「・・・分かった。涼州の入り口付近で、地の利の得られる場所を早々に探そう」
馬騰「決戦は一度。呂布を取り逃すことは許されぬ。頼むぞ、韓遂」
糞くだらねぇ孟獲を除いては、また随分と面白くなってきた。
しかし、曹丕と鳳統がついに組んだのか!
鳳統にとって蔡瑁など何でもなかったから、簡単に斬り捨てられたのですな。
しかも魏延まで伊籍を裏切って鳳統に味方するとは思わなかったよ。
これはますます面白い。
長安の守備兵を加えて、四万となった呂布軍。長安を出た軍は、放たれた弓のような
凄まじい早さで、一直線に西へと走った。余人の追従を許さぬ進軍の早さ。それもまた、
呂布が最強と呼ばれる理由の一つである。厳しいという言葉を越えた訓練を生き抜いた
兵士たちは、平気な顔でこの速度に付いてきている。

長安の城門をくぐり、西への第一歩を踏み出したとき、呂布は審配に告げた。

呂布 「貴様が亡霊ならば、さっさと死ね。真の袁家の忠臣というなら、生きて忠義を
    全うして見せろ」

実際の所、張コウを伴うことができないのは、呂布にとって痛い。騎兵、歩兵、どちらをも
縦横に指揮できる張コウの力は、此度の戦では是非とも必要なものだった。それが欠けた。
大きな誤算である。

それにも関わらず審配を伴ったのは、審配の心を見極めるためである。審配もまた、
名将と呼ばれるだけの資質を有している。特に守城については当代随一と言って良い。
その能力を見込んで、呂布は審配を袁煕から離し、長安に廻した。だが、その心が
定まらねば、審配が守る城も堅固たるものとはなり得ないだろう。

味方となるにせよ、敵に回るにせよ、その決心を見極めること。呂布にとっては、
審配の決心そのものが長安の動向そのものであり、ひいては己の勢力の生命線を
確かめることでもあった。

その審配は、今のところ任務を放棄することもなく、黙々と呂布に従っている。呂布の命に
従い、間者からもたらされる情報を確認し、逐一呂布に報告してもいた。
天水に差し掛かった街道の側で休憩を取っていたとき、審配が呂布の側にやってきた。

審配 「ようやく、重要な情報が掴めたようだぞ、呂布」

長安でのあの酒席以来、審配の言葉遣いは臣下のそれではなくなっている。審配なりの、
それが意地の現れなのであろう。

審配 「まず、奴らの軍の目的地が判った。どうやら楡中を目指しているらしい」
呂布 「涼州の入り口ではないか。俺はまた、もうすこし奥にまで引きずり込まれるものと
    思っていたが」
審配 「そうなれば豪族どもの反発を免れ得ないのだろう。豪族どもは自らの土地を守る
    ことが第一。馬騰の軍に参陣したのも、我らに領土を荒らされるのを防ぐため。
    それがむざむざ自領を犯されるのは我慢ならぬ、というところではないか」
呂布 「朗報、と言って良さそうだな」
審配 「良いことばかりではない」
呂布 「ほう?」
審配 「確かなことは判らぬが、馬騰と韓遂は何かを隠匿しているらしい。その所持を公に
    できぬ物をな。馬騰と韓遂の密談で、それを巡ったやりとりが交わされていたそうだ」
呂布 「何をだ?」
審配 「それが判らぬのだ。だが、その所持を隠さねばならぬような物、恐らく生半可な
    物ではあるまい。私には想像も付かぬがな」
呂布 「・・・それも朗報ではないか、審配」
審配 「何?」
呂布 「奴らのどうにも中途半端な対応も、これで説明が付く。奴らは俺に攻められたく
    なかったのだな。それは、領土を犯されるからというだけではなく、その何かの
    存在を俺に悟られたくなかったのだろう」
審配 「ふむ。だが、それが判ったからと言って、こちらは何もすることはできまい」
呂布 「そうでもないさ」

そう審配に告げて、呂布はもう一人の将、張燕を呼んだ。しばらくして、張燕が馬に乗って
駆けてくる。

張燕 「お呼びですか、将軍」
呂布 「張燕、お前はここで歩兵五千を率いて南に向かい、祁山付近に潜め。馬騰の敗残兵が
    こちらに向かってきたら、劉備の元に向かうのを阻止して、悉くとっ捕まえろ」

訳が分からない様子の張燕。だが、呂布の命令に否やはない。加えて、得意な山岳地での
軍事行動である。「承知」と一言残し、張燕は即座に駆け去る。後方に控える歩兵を編成
し直し、直ぐに南へ向かうのだ。その後ろ姿を見やり、審配が聞こえよがしに呂布を皮肉る。

審配 「これで従う将は私だけか。全ての軍を一人で率いるつもりらしいな、呂布という男。
    三万五千の兵を一人で率いる。大した自信だな」
呂布 「おい、冗談ではないぞ。俺一人に苦労を全て押しつけるつもりか、審配」

思わず呂布を見直す審配。

呂布 「騎兵二万は俺、残りの歩兵一万五千はお前が率いる。当たり前ではないか」

審配もさすがに呆れる。潜在的な敵である自分を、全軍の半数近くの軍の頂点に置くとは。
一体何を考えているのか。自分が仰ぐ旗を翻しでもしたら、どうするつもりなのだろう。
やれやれと言わんばかりに頭を振る審配を見ながら、呂布は脳天気に笑う。

呂布 「俺向きの軍の編成だ。実に分かりやすくていい。そう思わないか、審配?」
宵闇が迫る中、一人黙々と槍を振る男がいる。振り上げ、弧を描き、振り下ろし、
突き出し、なぎ払い、また振り上げる。槍の穂先と男の双眸だけが、遥かな山間に
消えて行く太陽の残照を受け、赤々と輝いていた。

馬騰「まだやっているのか、孟起」

背後から掛けられた父の声に、馬超は振り向かない。縦横に槍を操り続けながら、
馬超は父に応えた。

馬超「身体が鎮まってくれませぬ。心には波風一つありませぬのに」
馬騰「呂布か」

一瞬、槍が止まり、再び動き始める。

馬超「強いのでしょう、呂布は」
馬騰「強い。お前が今までに見たこともないほど強い」
馬超「私よりも?」
馬騰「お前も強い」

息子の問いに、馬騰は曖昧にしか答えなかった。我が息子ながら、その武勇は既に
神技の域に達しようとしている。共に戦場で戦ったとき、その槍先を眼で捉えることが
できなかったことも一度ではない。武勇は呂布に匹敵する、馬騰はそう思っていた。

馬騰「一軍の将としては、お前は呂布に遥かに及ばぬ。だから、お前はただ呂布一人を
   敵と見定めよ。将や兵士などどうでもよい、ひたすらに呂布のみを」
馬超「心得ております、父上」

陽が落ちる。身体の熱は、未だ収まらない。身体の内から溢れ、全身にまとわりつく
熱気の中で、馬超は一人踊り続けた。父が歩み去ったことにも、気付かなかった。
311無名武将@お腹せっぷく:02/10/27 06:00
錦馬超のお出ましとなれば、さすがに呂布も危ないだろう。
曹操から長安を奪った男だ。もし韓遂さえ裏切らねば洛陽も…。
応援age。
錦馬超vs呂布キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
めちゃめちゃ燃える展開になってきたなー
プレイ日記スレになんか似たような紹介されてた。↓
ttp://isweb22.infoseek.co.jp/play/gukko123/replay/replay10.htm
小間使い(;´Д`)ハァハァ
>>313
気持ちは分かるが そこ晒さないで・・・
>>314 なぜ? いま逝ってきたがけっこうワロタよ
呂布というより陳宮が活躍してるから、スレ違いではあるが。
316郭図公則 ◆sW2getuhmE :02/10/27 21:24
>>315
2ちゃんに晒す→厨がサイトに押しかける

納得した?
317315:02/10/27 21:33
>>316
そういう意味で言ってたのか。了解。
それらを踏まえた上で敢えて言うが、そこのリプレイの世界大好き。
スレ違いにつきsage

では何事もなかったかのように、こちらの呂布対馬超の続ききぼん。
斥候の注進通りだった。遥か彼方にまで拡がる荒野に、大軍が布陣している。幾つかの
方陣に分かれ、中央は四段の構えか。こちらを待ち構えている。ざっと見ただけでも、
自軍の倍に近い軍勢が集まっていることは分かる。

呂布は配下の精鋭騎兵を従え、いつものように先頭に立っていた。陣の構えは、先陣が
錐行に構えた呂布の騎兵一万。中央に審配の歩兵一万五千が方陣を構えて控える。後陣に
騎兵が一万、これは呂布の部将、周越が率いる。かつての盪寇将軍周慎の庶子であり、
董卓殺害後、呂布と行動を共にしている。大局を見る目は足りないが、目の前の戦は上手い。

敵は大軍の利を生かし、その圧力を以てぐいぐいと押し寄せてくるだろう。だが斥候の報から、
馬騰の軍の兵の質に差があることを呂布は見抜いていた。敵歩兵の弓が届く寸前に、先陣と
後陣の騎兵が一斉に拡散し、審配の歩兵が主力を受け止める。その間に、寄せ集めの豪族の
軍を蹴散らす。しかる後に騎兵は敵主力の側面と後背に周り、三方から敵を切り裂く。
自分が鍛え上げた兵の質を考えれば、そう難しいことではない。

呂布の軍が歩みを止めた。荒野が静寂に包まれる。双方の軍が睨み合う。次の瞬間、呂布は
信じられないものを見た。静寂を破り、敵陣中央に砂煙が上がったのだ。そして砂煙は一気に
膨れ上がり、こちらに向かってくる。何の前触れもない、突撃。


荒野に響く雄叫び。馬超は槍を構え、一直線に敵陣へと駆けた。それに続くは、麾下の騎兵五千。
目指すは「呂」の旗。旗が次第に近づいてくる。風が頬を切る。見えた、呂布。方天戟を携え、
自分を見ている。敵はただ一人、あの男。馬超はもう一度、腹の底から雄叫びを上げた。
父は戸惑っただろう。大軍で攻め寄せ、敵の動きを止めた後、馬超が呂布を抑え、その間に
敵兵を殲滅する。父と韓遂の立てた作戦を、馬超も無論知ってはいた。だが、敵の騎兵は
中華の大地の最強最速を謳われる呂布の騎兵だ。数を恃んで攻め寄せても、まず抑えきれる
ものではない。ならば。

馬超の動きを見て、馬騰は全軍に命を下した。馬騰もまた、卓越した戦術眼を持つ武将で
ある。予め立てた作戦を違えることになるが、馬超の動きに呼応するには、勢いを以て一気に
攻め寄せるしかない。その勢いは、馬超自身が作ってくれる。馬超に続け。全軍、前進。


見誤った。呂布は一瞬、後悔した。敵がこれほど直裁に動くとは、呂布も想像していなかった。
後に控える二陣に指示を出す。その声が、僅かに上ずった。

呂布「審配に伝えよ、急いで陣を固めろと。周越は歩兵の横から敵の側面に廻り、敵陣の中を
   駆け回れ。敵の勢いを削ぎ、混乱させろ」

自分の一万は広がれない。拡散させる暇はない。敵の先陣は、それほどに速かった。騎兵一万の
機動力が封じられた。僅かな後悔と逡巡を捨て去り、呂布は大音声で兵士たちに呼ばわる。

呂布「全軍、我に続け。敵を迎え撃ち、殲滅させるぞ」

その瞬間、呂布の耳に届いた叫び。

馬超「錦馬超、推参!」

凄まじい音を響かせて、呂布の方天戟と馬超の槍が激突した。
馬超(・∀・)イイ!!
自分で錦馬超とか、言うかな?
気持ちが昂ぶっていればいいそうだ。
中国って自己主張強いし。
保全sage
最初の一撃は押された。すかさず突き込まれた二撃目を、呂布は辛うじてかわす。馬超の
槍は左肩を掠め、疾風が頬を凪いだ。僅かに出来た隙を狙い、今度はこちらから打ち込む。
方天戟がうなりを上げ、馬超の身体を打ち砕かんばかりの勢いで空気を裂いた。だが、
必殺の一撃を、馬超は槍の柄でがっしりと受け止める。交わされた金属音が消え去ろうと
する刹那、、呂布の声が戦場に轟いた。

呂布 「逃げろ。歩兵の陣の背後に廻れ」

数瞬の間に翻された指令。呂布麾下の騎兵たちは微塵も混乱の色を見せない。それぞれが
即座に小さくまとまり、一気に審配の陣に向かって走る。呂布の周りにいた一千騎ほどだけが
主将の側に従い、迫り来る相手を迎え撃とうと武器を構えていた。

馬超の動きが、一瞬止まった。「逃げる」という言葉が呂布の口から発せられる。それは
想像の遥かにある出来事であった。そしてその一瞬が、決定的な隙となった。

最後まで残った呂布の一千騎が、その一瞬に後方に駆けた。その殿に呂布。馬超は猛烈に
馬を駆り、呂布に追いすがった。

再び打ち交わされる方天戟と剛槍。五合、十合、二十合。馬超が攻め、呂布が受ける。
だが、呂布は揺るがない。敵の殿の中央に巌のように立ちふさがり、馬超の五千騎の
猛攻をしのいでいる。

呂布が守りの態勢に入っていることを、両手に伝わる衝撃から馬超は直観した。今の呂布は
戦士でなく、将である。麾下の騎兵を可能な限り背後に逃がす。そのための最善の方法が、
自らが殿に立つこと。だから呂布は殿にいる。戦士として自分との闘いを望んだ結果ではない。
そのことが、馬超を赫怒させた。

馬超 「なめるな、呂布!」

俺は戦士だ。どこまでも一人の戦士だ。戦士たらざる呂布に、敗れるわけにはいかない。
馬超は槍を手繰り、呂布の額を狙って渾身の力で突いた。
全身汗まみれで、その上から砂埃が肌にまとわりつく。気にする余裕は、今の呂布には
ない。錦馬超の名は呂布も知っていた。馬騰の息子、涼州の譽。その豪勇の噂も、確かに
聞いてはいた。賈クと鍾ヨウは度々馬超の名を挙げ、その強さについて呂布に警告していた。

だが、繰り出された槍の矛先は、想像を遥かに上回る鋭さを備えていた。このままぶつかれば、
俺は馬超一人に掛かりきりになる。麾下の兵は動くことができない。馬超の五千騎と乱戦に
なり、加えて馬騰の本軍に襲いかかられては、最早勝ち目はない。僅かな時間の馬超との
手合わせの中で、呂布は一瞬にしてそのことを悟った。思わず叫んでいた、「逃げろ」と。

戦士として、自分が馬超に劣るとは思わない。そもそもこの男の場合、一騎打ちで誰かに
敗れるという発想自体が頭にない。一騎打ちは、則ち相手の死を意味した。

その一方で、冷徹な呂布の判断力は、殿に立つ自分に警鐘を鳴らし続けた。このままでは
自分は死ぬ。将として殿に立つ今の自分では、馬超の鋭鋒をいつまでも防ぎ続けることは
できない。赤兎を全力で駆れば、自分は一人は逃げられるだろう。だが、麾下の兵たちは
馬超の手に掛かり、多くの者が命を落とすことになる。それは、この戦の敗北を意味して
いた。兵たちを出来る限り救うための、選択。将としての、選択。

麾下の騎兵が歩兵の背後に回り込むのが先か、自分が打ち倒されるのが先か。命を賭した
戦の、肌が焼けつくような、全身の毛が逆立つような感覚。久しぶりだ、懐かしいな。馬超の
必殺の槍を紙一重でかわしながら、呂布はそんなことをふと思った。

長い時間ではなかっただろう。馬超の軍の頭上から、突如として矢が降り注ぐ。驟雨の勢いは、
さすがの馬超の足をも止めるものであった。怒りの思いを目に滾らせながら手綱を引き、
兵を退かせ、それでも尚、呂布を睨み付ける馬超。その視線が、呂布のそれと交錯した。

馬超の双眸にあったのは、氷のように青白く輝く炎だった。高温を極め、冷たい輝きを
放つ炎。呂布はその炎に戦慄した。そして、この男と戦いたいという抑えきれない激情が、
凄まじい勢いで全身を駆け巡るのを感じた。

戦士として。
保守
歩兵による弓矢の援護で馬超の追撃を間一髪で免れた呂布。すかさず麾下の
騎兵に反撃を命じ、同時に周越に伝令を送った。

呂布 「豪族の軍を蹴散らすな。混乱させることだけに力を注げ」

七万五千の兵が勢いに乗って攻め寄せて来る。これを真っ向から受け止めては
ひとたまりもない。むしろ敵陣をかき回し、混乱の極みに陥らせるのが得策。
そのためには、むしろ豪族の兵たちには死んでもらっては困るのだ。中核である
馬騰や韓遂の兵たちは、それなりに統率が取れているだろう。そうした兵をも
巻き込んで、一緒に混乱してもらおう。

周越の兵が両側面から敵陣に突っ込み、一気に駆け抜けた。一旦歩兵の背後に
廻った呂布もそこから騎兵を左右に展開させ、周越に続いて騎兵を突撃させる。
周越の兵が通り過ぎ、混乱から立ち直りかけた敵兵は、もう一度呂布に陣を
断ち切られ、更なる混乱に陥った。

涼州軍の動きが鈍くなる。その機を逃さず、審配指揮下の歩兵から一斉に弓が
放たれた。涼州軍の混乱に拍車が掛かり、あちこちで軍の動きが完全に停止する。

馬超の危惧は的中した。涼州の兵たちは、呂布麾下の精鋭の足を止めることが
できないのだ。馬超自身、歯がみして呂布を追おうとしたが、混乱する自軍の
兵士たちに遮られてしまう。追撃を妨げるのが敵ではなく味方であることが、
馬超の苛立ちを倍加させる。

それは馬騰にしても同じだった。騎兵の動きがこれほど迅速でなければ、軍の
混乱は大したものにはならなかっただろう。そうすれば、先に歩兵の陣を押し潰し、
改めて騎兵を取り囲んで殲滅することもできた。だが、呂布の騎兵はそれを
許さない。陣中を駆け回り、しかも殆ど兵を減らした様子はない。豪族たちの兵は
大混乱に陥り、その混乱が自分や韓遂の麾下の兵にまで伝染し始めている。
馬騰が全軍に一時退却を命じたのは、戦術眼の確かさを示すものであっただろう。
全軍が混乱の極みに陥る寸前で、馬騰は軍を退いた。実際の被害は大したものでは
ない。馬騰と韓遂の軍は整然と、豪族の兵たちはそれを追うように、退却して行く。

審配は舌を巻いた。呂布の騎兵の機動力を目の当たりにしたのは、審配にしても
これが初めてなのだ。冀州にいたときは、袁尚と共にギョウ城を守った。父を助ける
ために審配の制止を振り切って出撃した袁尚は、遂に帰ることはなかった。

審配の心は未だ揺れている。ここで呂布を裏切り、馬騰に付くか。そんなことが頭を
よぎったりもした。だが、心の奥底の何かがそれを押し留める。「裏切り」という
行為に対する強烈な嫌悪感。そして、張コウの言葉。

張コウ 「貴殿自身が、怨念を抱いた亡者なのだ」

そうではない、私は袁家の忠臣なのだ。審配は心に叫ぶ。だが、その後が続かない。
今の自分の姿は袁家の忠臣たるにふさわしいものなのか。長安での一件以来、
審配は自問し続けている。

もっとも、審配が戦場で矛を逆しまにしたところで、呂布から預けられた一万五千の
兵たちが自分に従う筈もない。だからといって、自分一人で馬騰の陣に駆け込んだ
とて、自分がその先どうなるか、何を為せば良いのか、見通しが立たない。

戦場では将として最善を尽くす。差し当たり、審配はそれだけを心に決めた。それ
以外のことは何一つ決められなかった、そう言うべきか。
呂布と周越の騎兵が歩兵と合流する。騎兵の数は減ったようには見えない。陣を守り
切り、一息付いた審配の目の前を、赤い稲妻が走った。呂布を乗せた、赤兎馬。

敵陣に向かって、一騎で駆けて行く呂布。誰も制止する暇がなかった。適当なところで
赤兎馬を止め、呂布は敵陣をゆっくりと見渡す。先程までの喧噪が嘘のような静寂の
中に、呂布の大声が響き渡った。

呂布 「馬超、出てこい。俺と戦いたいのだろう」

両軍の陣が一瞬どっと沸き、ついでざわざわと揺れた。呂布は悠然としたものだ。
戦場を駆け回った疲れなど微塵も見せず、馬騰の軍から視線を離さな。

やがて、馬騰の陣から一騎の騎兵がゆっくりと現れた。芦毛の馬。槍。血と砂で汚れ
ながら、未だ煌びやかな色を失わない兜と鎧。僅かな疑いの色を顔に浮かべつつ、
馬超は呂布に問いかける。

馬超 「本気なのだな、呂布?」
呂布 「ははっ、臆したか、若造」

その一言で、馬超の血は逆流した。目に青い炎が灯る。

馬超 「嬲るか!」

呂布に向かって、馬超が一気に駆ける。喊声が大地を満たした。
ところ変わって荊州に話を戻す。

関羽張飛は荊州南西一帯を支配下に置いたが、肝心の襄陽までは奪いきれず、
周瑜もまた深手を受けたところ、態勢を建て直す間も与えられず、黄祖らの
追撃にさらされ、悪夢のような防衛戦を繰り広げていた。わずかに踏ん張り、
敵軍を押しとどめたのは黄蓋の部隊であったが、これも痛手を蒙った。

やがて来る膠着状態。

曹丕・ホウ統があるおかげで首都周辺の死守はかなったが、
あちこちの州道が蜀・呉、もしくは彼らに通じた豪族たちに寸断され、
荊州はもはや劉表の君臨する所ではなくなった。
地図を見てもどこが誰の領土なのか明確ではなく、うかつに軍勢を動かせば、
いつ何時、予期せぬ方角からの襲撃により、補給路や退路を奪われるか解らない。
最悪の場合、全くの孤軍となって敵中突破を試みねば生き残ることすら困難になろう。

孔明「ですが、この状況を凶事と見てはなりませぬ。たとえ蜀を空国にしてでも
    劉玄徳殿自らが軍勢を乗り出して、関羽、張飛、両将軍の戦果を
    確かなものにするべきでしょう」

法正を通した孔明の献策が劉備に受け入れられる。

それにしても周瑜といい、孔明といい、軍師というのはどうしてこんなに無理ばかり
強いるものなのだろうか。もし彼らに問うものがあれば、彼らは答えたに違いない。

「王佐の任につく者は、第一に主君の安寧を思い描くもの。
 しかし一度でも君が『天下』を夢に思い描いたならば、決して君の安寧のために、
 夢を犠牲にしてはならず、不忠者の名を覚悟で、夢だけを追い続けねばならぬ」

一度、天下に夢を思えば、それを捨てる時は、夢に付き従い逝った者たちのためにも
ただ、ひたすら死があるのみ。
もう一挙に天下とっちまえ!>呂布か劉備か孫権か曹操か
333無名武将@お腹せっぷく:02/11/09 22:09
馬超と呂布の勝負が気になる!!
もう本で読みたいね。
334無名武将@お腹せっぷく:02/11/11 14:30
早く馬超との決戦を!
一閃、槍がうなりを上げた。短くも甲高い金属音に続いて、方天戟が風を捲く。
烈火の如く攻め続ける馬超。全く揺るがず、強烈な反撃を叩き込む呂布。二人の
戦士の力は、まさに拮抗していた。

既に撃ち合いは五十合を越える。両者とも全く動きは衰えない。馬超の槍裁きは
更に鋭さを加え、呂布は自ら剛槍の前に身を晒してゆく。呂布の肩当ての上を槍が
滑る。それを意にも介さず、呂布は馬超の喉元を狙って方天戟を振るった。馬上で
巧みに身をひねり、死の斬撃を間一髪でかわした馬超。立て続けに二撃目、三撃
目が襲いかかる。完全にはかわしきれず、左の腕を方天戟の刃がかすめた。鮮血が
舞う。傷は深くない。ここを機と見たか、呂布の攻撃の圧力が更に増した。遂に
馬超が押され、涼州軍の陣営から悲鳴が上がる。

次の瞬間、信じられない角度から槍が降ってきた。正確に眉間を的とした、突き。
辛うじて見切った呂布の攻め手が、止まる。すかさず馬超の逆襲。大気を螺旋状に切り
裂いて、槍が繰り出される。かわした。赤兎が動いてくれた。再び方天戟が空を破る。

いつしか、二人の距離が開いた。百合を遥かに越えていただろう。とうに喊声は止み、
聞こえるのは己の荒い息と荒ぶる血の鼓動、それに僅かな風の流れ。

呼吸を整える。呂布。最強と呼ばれた男。倒す。俺が倒す。馬超の槍が再び構えられた。
呼応するように、呂布の方天戟も上がる。そして馬蹄が大地を蹴ろうとした刹那。
呂布に向かって、涼州の軍の一角から矢の雨が注いだ。両軍からどよめき。呂布は
難なく矢を避け、打ち落とし、次いで自分に向かって馳せかけた軍を手で制した。

涼州の軍が動いた。矢を放った軍の一角を取り囲む。砂煙が上がり、直ぐに収まった。
手を止め、成り行きを見守る呂布と馬超。やがて、涼州軍から一騎の騎兵が現れた。
こちらに向かって駆けてきた馬の横に、二つの首が下がっている。二人の前で立ち
止まったのは、細面の若武者であった。

馬休 「豪族の軍が勝手に動いた。闘いを冒涜する者達を、我らの手で討ち果たした。
    この首は勝手に動いた豪族の長、張横と馬玩のもの。これを以て詫びの証と
    したい。我が父、馬騰よりの伝言にございます」
呂布 「ふむ」
馬休 「すまなかったと伝えてくれ、父はそう申しておりました」

それを聞いて、呂布は小さく溜息をついた。

呂布 「‥‥‥詫びるなら、俺よりも馬超に詫びるのだな」
馬休 「は?」

思わず呂布を見つめる馬休。馬超も眉を顰めている。

呂布 「興が削がれた。この上闘いを続ける気分にはなれぬよ」

それを聞いた馬超が悔しそうに唇を噛んだ。何と言っても非は馬騰の側にある。興を
失ったと言う呂布にこれ以上の闘いを強要することは、馬超にはできない。

呂布 「また闘おう、馬超。なかなか楽しかったぞ」

捨て台詞を残し、自軍に駆け戻ってゆく呂布。兄弟はただ、それを見送った。
呂布と馬超の壮絶な一騎打ちから八日が過ぎた。この間、両軍の間に交わされたのは
僅かな小競り合いのみ。速戦を意図していた呂布にとっては、些か面白くない状況に
なっていた。馬騰と韓遂の軍が前衛を占めて、守りをがっちりと固め、一向に攻めに
転じようとしない。豪族の軍は後陣に固まり、馬騰と韓遂の軍に守られる格好である。

審配 「我らの軍への怖れ、それに馬騰や韓遂への反発で、豪族たちが揺れている」
呂布 「向こうも大変だな。同情するような心持ちにはなれんが」
審配 「守りに徹しながら、豪族たちを何とか懐柔しようとしているのだろう。
    奴らが離散しては、兵数は我らとほぼ同数にまで減ってしまうからな」
呂布 「それにしても、馬騰も情けない。豪族など、力で無理矢理束ねてしまえば
    良かろうに。実に情けない」

理不尽極まる呂布の不平に、護衛の兵たちが忍び笑いを漏らした。

戦場から十数里離れた小高い丘陵地に設営された野営地。今日の戦も大したものでは
なかった。夕闇が迫る空の下、営舎の前で食事を取りながら、呂布の愚痴は更に募る。

呂布 「主立った豪族の首を馬超が全て刈ってしまえば良いのだ。兵士は強い将に従う。
    軍は馬騰と馬超の下、一つにまとまる。そうすれば俺と戦うこともできる」
審配 「八万の兵に一丸となられては、困るのはお前の方だと思うがな」
呂布 「やかましい」

審配の冷静な指摘をきっかけに、呂布の八つ当たりが始まった。
呂布と馬超の壮絶な一騎打ちから八日が過ぎた。この間、両軍の間に交わされたのは
僅かな小競り合いのみ。速戦を意図していた呂布にとっては、些か面白くない状況に
なっていた。馬騰と韓遂の軍が前衛を占めて、守りをがっちりと固め、一向に攻めに
転じようとしない。豪族の軍は後陣に固まり、馬騰と韓遂の軍に守られる格好である。

審配 「我らの軍への怖れ、それに馬騰や韓遂への反発で、豪族たちが揺れている」
呂布 「向こうも大変だな。同情するような心持ちにはなれんが」
審配 「守りに徹しながら、豪族たちを何とか懐柔しようとしているのだろう。
    奴らが離散しては、兵数は我らとほぼ同数にまで減ってしまうからな」
呂布 「それにしても、馬騰も情けない。豪族など、力で無理矢理束ねてしまえば
    良かろうに。実に情けない」

理不尽極まる呂布の不平に、護衛の兵たちが忍び笑いを漏らした。

戦場から十数里離れた小高い丘陵地に設営された野営地。今日の戦も大したものでは
なかった。夕闇が迫る空の下、営舎の前で食事を取りながら、呂布の愚痴は更に募る。

呂布 「主立った豪族の首を馬超が全て刈ってしまえば良いのだ。兵士は強い将に従う。
    軍は馬騰と馬超の下、一つにまとまる。そうすれば俺と戦うこともできる」
審配 「八万の兵に一丸となられては、困るのはお前の方だと思うがな」
呂布 「やかましい」

審配の冷静な指摘をきっかけに、見境なしの八つ当たりが始まった。
>>337-338が二重投稿になってしまいました。失礼しますた。
二日後、戦場に出た呂布は、涼州軍の変化を認めた。陣形が守りの形から攻めの
それに変わっている。昨日までとは違い、陣の気も張っている。

呂布 「ようやく馬騰が豪族をまとめたようだな」

待ちかねた、といった表情の呂布。嬉々として軍に命令を出してゆく。

両軍とも、一日目と同じ陣を敷いた。この日は、呂布の軍が先に動いた。一気に側面に
散会し、敵の両側に回り込む。だが、一日目とは勝手が違った。馬騰は思いきった策を
採ってきた。主力歩兵を側面に配し、騎兵を中央に集める。ここまでならば、中央の
騎兵が突出し、前方に陣を敷いた歩兵を蹴散らす構えだ。だが、この騎兵は敵歩兵には
向かわない。両翼の歩兵が呂布の騎兵を抑えている間に、二万の騎兵を韓遂が指揮し、
呂布の軍の更に外側に回り込んで、呂布の騎兵を一気に呑み込み、押し潰す計画だった。

敵陣の中央が蛇のようにうねりながら動き出した。その先頭には馬超。配下の騎兵を
率いて、自軍の背後に廻ろうとしている。呂布は包囲される危険に気付き、退却の
指示を配下の騎兵に素早く出した。だが、退こうとした騎兵の背後から涼州軍の歩兵が
食らい付き、騎兵を一兵でも多く減らそうと闘いを挑んでくる。呂布の騎兵と言えど、
容易には離脱できそうにない状況に陥った。

後方にいて危険を察した審配が歩兵を前進させたが、馬騰の指揮する一万の陣に動きを
阻まれ、押し合いになる。強引に包囲から抜け出そうとする呂布の騎兵と、それを阻もうと
する韓遂と馬超の騎兵が入り乱れる。陽光が遮られるほどの土埃が、宙に舞った。
敵陣との押し合いの最中、後方からの伝令の報を受けた審配は蒼白になった。背後に
砂煙が上がったと言うのだ。この数日の間に敵が背後に回り込んだのだろうか。しかし、
敵陣への斥候は欠かしていなかった。伏兵を置くような動きは皆無の筈だった。

しかし、事情はすぐに判明する。張コウが三千の軽騎兵を率いて、呂布を追ってきたのだ。
胸をなで下ろした審配を一顧だにせず、張コウは呂布を救うべく、敵陣に斬り込んだ。
外側に回り込んだ韓遂の騎兵は、呂布と張コウに挟み撃ちされる形になった。たまらず
乱れる敵陣。その隙をついて、ようやく殆どの騎兵が脱出に成功する。言葉を交わす
余裕もなく歩兵と合流する呂布と張コウ。馬騰も軍をまとめ、戦況は睨み合いになった。

しばらくして、呂布の軍が静かに退く。馬騰の軍は、追っては来なかった。


呂布 「何故ここに来た、張コウ?」
張コウ 「五千の兵が別行動を取ると、張燕殿から伝令が届きました。鍾ヨウ殿と相談の上、
    兵数の穴埋めをするため、軽騎兵を率いて長安を出たのです」
呂布 「いや、助かった。危うく乱戦になりかけていたからな」

千八百の騎兵が帰還できなかった。だが、これが本格的な乱戦になっていれば、犠牲は
更に大きなものになっていたであろう。張コウの働きが、乱戦を回避させたと言ってよい。

張コウ 「正直に申して、戦に間に合わぬかとも思いましたが」
呂布 「馬騰の動きが、ここ数日鈍かった。それに助けられたな」

しばらく話をしてから、呂布の前を辞そうとして、張コウは側に控えていた審配に
声を掛けた。二人で、少し離れたところまで歩く。野営地から離れて丘を降り、
頃合いを見計らって足を止めた張コウに、皮肉を込めた審配の声が向けられた。
審配 「随分と都合良く現れたものだな、張コウ」
張コウ 「‥‥‥」
審配 「見上げた戦働きだな。新たな主君に阿るため、独断で兵を動かしたか」

張コウは審配の中傷には答えず、傍らから竹簡を取り出した。

審配 「何だ、これは」
張コウ 「袁煕殿の信にござる‥‥‥審配殿への」
審配 「む‥‥‥」
張コウ 「間に合って、本当にようござった」

そう言い残して審配に竹簡を渡し、張コウは陣へ戻って行く。審配はその後ろ姿を見送り、
竹簡を開いた。懐かしい、袁煕の手の書。袁紹や袁尚のことを想い、視界が僅かに滲んだ。

自分が今、何をしているか。そんなことから文は始まっていた。河北を豊かにするため、どの
ような方策を採っているか。政策のこと、土木工事のこと、役人のこと。そして、自分の下に
集まってきた袁家の旧臣のこと。今後、袁煕の下に集まった旧臣は、袁煕の下以外には配置
しない。そのような暗黙のお墨付きを呂布が与えてくれたという一文が、審配の目を引いた。

そして、審配への言葉。自分を支えて欲しいと思っている。呂布のためなどと思わずとも
良い。冀州のために、河北のために、そして袁煕自身のために。以前のように、袁家の臣と
して。お主の力が自分には必要なのだ。信は、そう締められていた。

竹簡を閉じた審配の心から、迷いは消え去っていた。冀州へ、袁家の地へ戻ろう。自分の
全てを擲って、袁煕殿のために働こう。長安に戻れば、呂布に決断を迫られることになる
だろう。今ならば、胸を張って「自分は袁家の臣である」と言える、審配はそう思った。

陣に戻った張コウは、袁煕の竹簡のことを秘かに呂布に伝えた。呂布は鼻で笑っただけで
あったが、その表情は満更でもなさそうであった。
袁家に泣けた。それに呂布の配慮、
この機微をかけるあんたは、何者なんだ。すげー!
ホシュ
袁家もやはり名門と言われるだけのことはあったな、と
ここの小説を読んで思いました。(・∀・)イイ!
ほしゅ
陽光の下、居並ぶ鎧兜が燦々と輝く。三万五千の呂布軍全軍に、溢々と気が漲っていた。

呂布 「張コウが合流したのも機だろう。そろそろかな」
審配 「ようやく片を付ける気になったか」
呂布 「これ以上戦を長引かせては、こちらが不利になるだけだ。兵糧も多くは準備
    しておらぬし、何よりも南の動きに対処できぬ」
張コウ 「馬騰の軍は、未だ我らに倍する大軍。大きな犠牲が出るかと思われますが」
呂布 「だが、勝たねば全ては失われる。分かるな」

前日夜の決定は、速やかに全兵士に伝えられた。

鶴翼を大きく右に偏らせた斜線陣。右翼には張コウ、中央に呂布、左翼に審配。張コウと
呂布の騎兵で敵左翼を半包囲し、撃滅する作戦である。騎兵は犠牲を顧みず、ひたすら
攻め続ける。その騎兵の側面と背後を守ることになるのが、審配の率いる歩兵である。


韓遂 「・・・ほう、決戦の構えか」
馬騰 「まずいな、左翼には豪族の兵が多い。下手をすればひとたまりもないぞ」
韓遂 「俺が左翼に回ろう。馬騰、本陣は任せた」
馬騰 「頼む」

敵陣を見て、馬騰と韓遂は素早く決断した。韓遂が直属の兵一万を率い、左翼の援護に
走る。馬騰の本陣は敵騎兵を横撃する機を見計らいながら待機。騎兵をうまく包囲し、
乱戦に持ち込めれば、兵数の差がものを言うことになるだろう。勝機は充分にある。
韓遂が辛うじて左翼の後詰に就いたとき、戦は既に始まっていた。張コウの騎兵が一気に
敵左翼の外側に駆け込み、側面から敵を押し始める。同時に真正面から呂布の騎兵が
なだれ込み、豪族の兵を文字通り刈り取り始めた。見る間に切り裂かれる涼州軍の前衛。
四万を越える兵が、半数の敵に文字通り翻弄されることになった。

韓遂 「怯むなっ、押せ、押し返せ」

韓遂が声を限りに叫び、麾下の兵を全面に押し出す。背後からの援護に力づけられ、
豪族の兵もその場に踏みとどまる。側面の張コウが攻めあぐね始めた。


呂布 「ほう、しぶといな。だがこれならどうだ」

つぶやいた呂布。赤兎を駆り、振り下ろされた大鉈の如くに敵陣に躍り込んだ。その
背後から、精鋭の騎兵一万が一瞬の躊躇もなく、呂布に続いた。切り裂く戦術から、
叩き割る戦術へ。敵前衛から、第二陣、三陣へと、呂布は押し進み、敵陣を断ってゆく。
涼州軍左翼は、見事に二つに分断された。その半分に、再び張コウが食らい付く。見る間に
殲滅されて行く豪族の兵。後背から兵を鼓舞していた韓遂が、ぎりりと歯を咬んだ。だが。

馬騰 「今だ、敵騎兵の背後に廻れ」

ぎりぎりまで堪えていた馬騰が、遂に命を下した。引き絞られた弓が放たれるかのように、
呂布の本軍の背後に向かって兵が駆け出す。その数、三万。
その様子を見た審配も、全軍に指示を出す。呂布と張コウの背後を守り通す。守り通せば
こちらの勝ちだ。敵を殲滅した騎兵が、旋回しながら敵本陣の後背に回り込めば、万に
一つも敵に勝機はない。倍の兵力を受け止めて、どこまで耐えられるか。そこが審配の
勝負だった。審配の指揮には最早、曇りも迷いもない。素早く的確に兵を配し、瞬く間に
堅陣を作り上げた。

馬騰 「突き破れ。この敵陣を突破し、呂布の背後に付けば、我らが勝利ぞ」

馬騰の兵が、審配の陣にぶつかってゆく。はね返された。半分の兵とは思えない、厚く
固い守り。両軍は押し合いになった。


韓遂は暗澹としていた。倍以上の兵力を備えながら、涼州軍は全く何も出来ずに呂布に
蹂躙されている。必死に声を励まし、味方に指示を送るが、敵の騎兵の動きはその指示の
更に先を行く。陣の中央に乗り込んだ呂布が、縦横無尽に麾下を駆り、内側から陣を断ち
割ってゆくのだ。獲物の腹を食い破る飢狼の牙。呂布の一万の騎兵は、まさにそれだった。
更に、側面からの張コウの攻撃が辛辣を極めた。小憎らしいほど鮮やかな軍の指揮を見せ、
断ち割られた豪族の兵を実に効率よく蹴散らして行く。

この五万が全て自らの精鋭であったなら。いや、せめてその士気が高かったら。詮無き
ことと知りつつ、韓遂はそう思わずにいられなかった。豪族たちの恐怖は完全に兵たちに
感染し、あちこちで潰走する兵が出始めている。降伏の声さえ上がり始めた。更に。

「程銀殿、討死」

追い打ちのように届けられた報に、韓遂は天を仰いだ。
馬騰の軍の圧力は凄まじいものだった。矢を放ち、槍を立て、敵の勢いを削ぐ。それでも、
敵兵は幾度も突撃を繰り返してきた。それも当然だろう。この陣が破られれば呂布も敗れる。
まさに乾坤一擲の戦だった。

突き崩されるわけには行かない。審配は更に陣を固めた。少しずつ、兵が削られ始めている。
長くは持たない。呂布は、張コウはまだか。必死に耐えつつ、審配は指揮を出し続けた。その
審配の下に、呂布からの伝令が届く。

伝令 「もうすぐ酒が呑める、とのこと」

如何にも呂布らしい言種に、一瞬戦場の喧噪を忘れた審配が苦笑した瞬間。陣がぐらりと
揺れた。敵騎兵が陣に楔を打ち込み、突き破ろうとしている。これまでにない攻めの勢い。

審配 「馬超か」

審配は即座に伝令を返した。馬超が動いた、と。その一言で、呂布は状況を理解するだろう。
走り去る伝令から目を離し、審配はぐっと前を見据えた。馬超。勢いに乗って押してくる。

審配 「敵を両側から絞り上げろ。動きを封じ込めるのだ」

兵が動いた。ぎりぎりと敵を締め上げて行く。だが、馬超の動きは止まらない。速度こそ
鈍ったものの、ぐいぐいと陣を押し破り、こじ開けて前に進んでくる。その背後から馬騰の
強烈な圧力。審配は危機を悟った。呂布が戻るのが先か、馬超が陣を突き破るのが先か。
思わず審配は馬を駆っていた。馬超の進路の直線上に走り、そこから再び指示を下す。馬超。
見えた。憑かれたような目で、こちらを見ている。いや、奴が見ているのは私ではなかろう。
奴の目が捉えているのは、ただ一人、呂布のみ。だが、この陣は絶対に抜かせない。絶対に。

馬超が迫ってきた。審配は矛を構える。もとより、自分が馬超に勝てるとは思ってもいない。
ただ、少しでも敵の足を鈍らせたかった。もうすぐ呂布が戻ってくる。それまでは。

馬超 「どけぇっ!」

袁家の臣は自らの道を譲ることはない。遂に陣の中核に達し、眼前に駆け込んできた馬超に
向かって、審配は心中につぶやいた。

四度までは受け止めた。五撃目で矛が叩き折られた。腰の帯剣を抜こうとする刹那、馬超の
槍が右腕の付け根を深く貫く。

落馬した審配に向かい、敵兵が群がる。左手で抜き放った剣で三人の敵を斬り捨て、審配は
駆け抜けようとする馬超に追い縋った。だが、一瞬よろめいた審配に、無数の白刃が襲い
かかる。十以上の傷を受け、全身を朱に染めながら、それでも審配は倒れない。一人の
敵兵の頭蓋を最後の力で両断し、大地をしっかと踏みしめて、昂然と胸を反らす。

審配 「我、袁家の鬼とならん」

天に向かって嘯いた審配の躰を、三本の槍が貫いていった。
駆ける。ひたすら駆ける。
兵が吼える。馬が啼く。
更には無数の剣撃を塞ぎ込めるように
土を人を踏む蹄の音。

目の前の涼州軍は散々揉み散らした結果、乱れ、崩れようとしている。
だが意外にしぶとい。怖れながら、怯みながらも敵軍は叫び続ける。
もうすぐ錦馬超が来る。ここに錦馬超が来る、と叱咤の声が呪詛のように繰り返される。

馬超孟起。

涼州軍総帥の馬騰の嫡男にして、西涼最強の男。
それが三万の兵の先陣をきって背後を護る審配の陣を襲っている。
彼の左翼の陣が抜かれればこの本陣の背後を突かれ、挟撃される。
それまでに目の前の敵を破り、陣を反転させられるかが勝負。

それぞれ敵の部隊を崩していた呂布の旗本の成廉が、魏越が呂布の左右を固める。
彼等を始め、呂布の本体は主の心を知っている。思うことを知っている。
だからこそ、命を下すまでもなく固まった。

呂布は、乱れながらも踏み止まっている敵陣の中心を見据えた。
ホウ令明の陣。彼と彼の旗がこの戦域を支えている。
方天戟を構え直し、両脚に改めて力を込めた。

―――突く。
353青心:02/11/24 09:09
お見事。
ここ最近の投稿は同一人物によるものと見受けますが
揺れる審配の心情と決心、そして壮絶な最期。
見事に烈士 審配を描ききったのではないでしょうか。
応援sage!
今更ホウ徳とかが出てきてもなあ。>>352は蛇足に見えてしまう。
>>354
?
審配好きとして最高━━(゚∀゚)━━。
ところで、異三国志のあと書きにあった中原を追われた呂布が、
匈奴の兵を率いて逆襲するというのも夢があっていいな。
ホシュ
ホシュ
抜いた。馬超は背を振り返り、自分に続いて敵陣を突破した麾下の数を数えた。三千
強の騎兵。敵の抵抗は想像以上に大きかった。自分の槍を受け止めた者さえいた。
父の本陣は、まだ敵陣を破れないでいる。だが、助力はできない。今ならまだ間に合う。
韓遂とホウ徳が必死の抵抗を続けているうちに後方から襲いかかり、呂布を討ち取る。
休む間もなく馬超は再び馬を駆り、もう一つの戦場へと向かった。

韓遂が、なかなかにしぶとい。それに目の前の「ホウ」の旗。実に頑強に陣を守り、呂布の
猛攻にも崩れない。馬超が動いたことが、審配から伝えられている。もう猶予がない。
舌打ちをひとつし、呂布が再度の攻撃に移ろうとしたとき、後方から三騎の騎兵が呂布の
下に駆け寄った。審配に預けてあった、伝令のための騎兵。訝しげな色を小さく浮かべ、
呂布は無言で報告を促す。息の荒れた伝令の口から、ようやく言葉が出た。

「審配殿、討死・・・」

その瞬間、呂布の顔から表情が消えた。無言で陣の後方を見る。馬蹄と砂煙。馬超。

「旗本二千、続け。残りは周越の指揮の下、張コウと連携して敵を掃討」

それだけを言い残し、呂布は後方へと赤兎を駆った。

前方から一団の騎兵が迫って来た。先頭にひときわ大きな赤い馬。呂布自ら、自分を
食い止めるためにこちらへ向かって来たのか。勝てる。自分が呂布を釘付けにすれば、
父の本陣がやがてやってくる。呂布のいない呂布軍ならば、韓遂も粘ってくれるだろう。
そう算段し、更に馬を駆ろうとした馬超の口元が凍った。
疾風の如く走る二千の騎兵が、赤い霧に包まれたように見えた。瞬き、敵を凝視する。
違う、霧ではない。陽炎、赤い陽炎。呂布の全身から、そして続く騎兵から、陽炎が
立ち昇っている。凶々しくうねり、一瞬毎に色を濃くする、濃赤色の騎兵。

馬超が気付いたとき、陽炎は目の前に迫っていた。いつの間にこんなところに。俺が
二千の騎兵を見失ったとでも云うのか。そんなはずは。

馬超「皆、我に続け。敵を突き破れ」

陽炎などどうでもいい。敵は目の前にいる。俺が呂布を討ち取れば、全ては終わる。
一瞬の逡巡を捨て去り、馬超は自ら敵の中央へと疾駆する。狙うは、先頭に立つ呂布。

呂布の姿が突然消えた。次の瞬間、左側面から強烈な衝撃が部隊に襲いかかる。何が
起こったか、馬超が理解するまで数瞬かかった。呂布の軍は紙一重で馬超の軍をかわし、
凄まじい角度で軍を反転させて、側面から攻撃を仕掛けたのだ。

巌に打ち砕かれる波濤のように、兵士が弾け飛んだ。赤兎に身を任せ、呂布が方天戟を
振るう度に、数人の兵士が大地に叩き付けられる。凄まじい速度で左から右へと二千の
騎兵が駈け抜けたとき、馬超の兵は千近くが減っていた。時を措かずに再び軍を返し、
右から襲いかかる呂布。その背には二千の騎兵、そして濃赤色の陽炎。

馬超「貴様等、どけ!」

味方の兵にどなりつける馬超。あの敵を受け止められるのは、俺しかいない。馬超は
再び自陣に迫る呂布めがけ、一直線に駆けた。
馬超「呂布!」

思わず叫んでいた。呂布の意識を引くためか、それとも自らを鼓舞するためか。渾身の
力を込め、必殺の一撃を見舞う。だが、呂布は馬超の槍を力でねじ伏せ、何事もなかった
かのように、再び馬超の陣へと駆け込んだ。たちまち宙に舞い上がる味方の兵。粉々に
打ち砕かれる馬超の軍。

馬超はしばし呆然としながら、自分の軍が地上から消えゆくのを見つめていた。たった一合。
槍こそたたき落とされなかったものの、完全な力負けであった。打ち合ったとき、わずかに
視線が交錯した。だが、呂布の瞳は自分を見ていなかった。十日前に一騎打ちをしたあの
呂布は、もうそこにはいなかった。

幾ばくの時間もかからなかっただろう。馬超の率いた三千は、既に影も形もなかった。
大地に倒れる累々たる死屍の中に屹立し、赤く濁った目だけを動かして、呂布は今まさに
審配の陣を呑み込もうとする馬騰の本陣を認めた。刹那、自らの意志であるかのように
赤兎が駆け出す。殆ど同時に、二千の騎兵がそれに続いた。馬超の目には、騎兵では
ないものが動いているようにさえ見えた。

呂布の戦い方。凄まじい速度で敵を切り裂き、突き破る戦い方。だが目の前の軍は、そう
ではなかった。ただ、砕く。触れるもの全てを跡形もなく打ち砕く。赤い陽炎、触れては
いけないもの。生まれて初めて、馬超は心からの畏怖を感じた。

だがその思いとは別に、馬超は再び呂布に向かって走り出していた。呂布を討ち取ること
さえ、頭にはもうない。ただひとつ、あのまま呂布を駆けさせれば、父は確実に死ぬ。
父の率いる二万五千の軍も、木っ端微塵に打ち砕かれる。戦ではなく、純然たる破壊。

馬超「父上、逃げろ。逃げてくれ」

届くはずがないと知りながら、馬超は叫び、呂布を追った。
カコイイです。
呂布 「どうしたのだろうな、俺は」

意識のどこかで、自分に問うてみる。

身を焦がれるような怒りの只中に身を置いたとき、あらゆるものを壊してきた。貂蝉が
死んだときには、長安城外を赤兎と共に闇雲に駆け回り、あらゆるものを手当たり
次第にひたすら斬り続けた。そうすることでしか、怒りを鎮めることはできなかった。

俺は怒っているのだろうか。そう、俺は今、確かに怒りを覚えている。だが、何故だ。
審配が討たれたからか。俺にとって、審配とはそれほどの男だったのか。

部下の誰が死んだときも、これほどの怒りを感じたことはなかった。賈クや張コウが
死んでも、これほどの怒りを感じることはあるまい。まして、審配は俺の部下では
ない。奴は所詮、袁家の臣でしかなかった。

袁家の臣。

そう、審配は袁家の臣として、自分の道を貫き通した。袁紹の死によって心を揺らがせ
ながら、最後には再び自らの道を見つけた。奴の死に様が、俺には手に取るように
分かる。自ら馬超の矢面に立ち、その突撃を止めようとしたのだろう。俺のためでは
ない。自分の信ずる道を守っただけのこと、審配はきっとそう言うはずだ。

その生き様が、俺の心を打ったのか。その死に様が、俺の心を掻き乱すのか。


やがて、馬騰の軍が眼前に迫る。何も考えられなくなった。呂布は方天戟を構え、二千の
旗本の先頭に立って、無造作に敵中に乗り込んだ。赤い陽炎が深く揺らぎ、烈炎と化した。

それが、終わりの始まりだった。
直線的にただ敵を突き破っていく。赤兎の赤に象徴される、烈火如きスピードとパワーで。
今の呂布を止めることなど、例え馬騰率いる先鋭達であっても、出来はしなかった。
「そこにいたか馬騰!!」散々に陣中を食い破り、近づいてきた若武者を一刀で伏せた呂布は、
その衰えぬ勢いのまま、馬騰へ切りかかる。
 無念であった。

??「志半ばにして、我が計が潰えようとは」
 蛮夷の地で、病床の床に就いた男はそう悔しそうに唇をかみ締める。

 思えば何もかにもが上手くいかなかった。
 人を見る目には自信があるつもりだった。
 生き延びる術には長けているつもりだった。

 自分がいた徐州ほど騒乱が続いた土地も珍しい。
 陶謙に仕えた時は、父の敵として曹操の猛進撃を受けた。
 陶謙の跡を継いだ劉備に仕えれば、劉備は呂布に襲われた。
 呂布を見切り曹操に仕えれば、独立しようとする劉備に頼られた。
 車胄を売り劉備に寝返れば、南下した曹操に劉備は打ち破られた。
 曹操に降伏した後も、孫策が幾度となく襲撃をかけてきた。

 その徐州を自分は生き抜いてきたのだ。
 が、中央の主が曹操からよりにもよってあの呂布に変わったことが彼の人生を狂わせた。

 呂布がいる以上、自分達親子が徐州に留まれるはずはなかった。
 曹操と共に呂布を罠にかけた自分達親子が赦されるはずがない。
 事実、病床の父陳珪と、徐州の城に留まった弟陳応は孫策征伐の際に血祭りに挙げられている。
 ここに逃げ込んできた自分は、見る目がなくはなかったと言えよう。

 元々は孫家に逃げ込むつもりだったが、潜伏中に孫策が討ち死にしたことを知り、更に奥地に逃げ込むこととなった。
 孫策死後の孫家では最初は歓迎されても、攻め込まれた時に自分の首は呂布への降伏の手土産になる可能性が高い。
 実際、孫権は一度呂布に屈服している。
 やはり、自分は生き延びる術に長けている。
 呂布の手の届かないところへと逃げ込んでみると、南蛮の地である男の評判がたっていた。
 その名を孟獲。彼は蛮夷の出自ながら、義に熱く仲間想いで、中央の事にも詳しい力だけの男ではないとのことだった。
 劉璋の派遣した役人を追い払い、近隣の部族を結集し独立した存在を知り、血が熱くなるのを感じた。
 父や弟を失ってまで鼠のようにひたすら逃げ続け、身も心も草臥れ果て、ただ生き延びることしかできなかった自分にとってその勢力は呂布に対しての意地を貫けるかもしれない。
 だが、こんな自分にそれだけの男が相手をしてくれるだろうか。
 否。だとすれば、相手の男にとって興味ある存在になるしかない。
 今の自分には何の力もない。計略を立てて能力を売り込んでみせたくても、最初に相手にしてくれなければはじまらない。
 自分は相手にとって興味を持たれる存在になるには…。
 幸い孟獲は都の情勢を知ってはいても、実際に行った事はない。主な部下達はそれすらないだろう。
 だとすれば、自分を偽っても判別できるものなどいるだろうか、いやいる筈はない。

 我は、陳公台なり。
 義によって布を援け、義を忘れた布に殺されかけた、復讐に燃える男だと。

 その名と、その声は孟獲に届いた。が、それもここまでだ。
 孟獲に迎えられ、高定朱褒らとの戦で功績を立て、幕僚から軍師にまで上り詰めたところで病に倒れた。
 自分は生き延びた、だけで終わりたくなかった。
 立派に生きたかった。闘いたかった。
 呂布を裏切り、曹操や劉備についたのは間違いではなかったと思いたかった。
 だがどうだろう。
 今際の自分が得たものは南蛮の狭い屋敷と一組の布団だけ。息子の陳粛の才では孟獲を操り呂布に対抗する勢力に育て上げるどころか、生き延びることすら難しいだろう。

 血すら、こんなところで耐えるのか。

 無念をじっと噛み締める。
 全てはただひとつ。呂布奉先という男を見誤った。もし彼に助力を続けていれば自分はそれなりの地位にいただろう。
悔いても仕方がないとは言え、それだけを悔いる。
 自分は確かに、生き延びた。
 だが、それだけであった。

 陳登元竜、南蛮の地にて陳宮として死す。
x血すら、こんなところで耐えるのか。
○血すら、こんなところで絶えるのか。

南蛮陳宮の話自体が無しでしたらこれも無しで。
いや、すげーよ!
なんじゃそりゃの話を見事昇華させたと思うよ
審配といい陳登といい、自分の生き様に殉ずる男は(・∀・)イイ!!
曹植「父上、お呼びになられましたか」
曹操「植か。待っていたぞ」
 曹植が曹操の私室に呼ばれたのは深夜遅くのことだった。
 待っていたという割には部屋には何の用意もなく、僅かに蝋燭の点りだけが曹操の背中を照らしているだけだった。
 詩作の話だとばかり思っていたので、その雰囲気に曹植は眉をひそめる。
曹植「それでいかなる用向きでございましょうか」
曹操「うむ・・・」
曹植「父上?」
 曹操は机に向き合ったまま、入ってきた曹植を見ようともしていない。
 その様子にも不審を抱いて曹植は首を捻る。
 何かを言いよどんでいる、そんな父を見るのは曹植は初めてだった。
 曹植の知る曹操はいつも果断であり、鷹揚としていた。
 一体何があったのだろうかと思いながら、側に腰を下ろす。
 曹操は手にしていた筆を動かし、何かを認めながら口を開く。
曹操「植よ。汝南での不穏な動きについて聞いているか?」
曹植「黄巾崩れの残党が結集しつつあるとの話でしょうか」
 曹操は詩や政治以外のことで自分に話をすることがない。
 それだけに曹植も戸惑いながら答える。
 一度も曹植を見ようとせず、下を向いて書き物をしている曹操がまるで別人のように思えてきた。
曹操「そうだ。蜂起後に豪族とも結びつけばそれなりの数になるだろう」
 あの土地は袁術が一時期は割拠していた土地ではあるが、袁家が根付いた土地ではない。
 袁家が滅び、曹操、呂布と主を変えようとも土地の豪族は残り、それらはそれぞれ呂布に従いながらも、心から従ってはいない。
曹植「ですが、彼らが殿から賊に寝返るとも思えませぬが・・・」
 黄巾賊と豪族との確執は今もまだ根強く傷痕として残っている。
 だが、曹植のその言い方に曹操は心の中だけで苦笑する。
 軍にいた曹丕と違い、文官として仕えている曹植は呂布を普通に殿と呼ぶことに抵抗はないらしい。
曹操「寝返るのではく、共に共通の主の下結集するのだ。それほど無茶な話ではない」
曹植「主・・・劉辟とかいう男でしょうか?」
 汝南黄巾賊の中心的存在の男の名前をあげる。が、それは小者だ。
曹操「・・・」
 やはり、今の曹植では汝南では役に立たない。
 そう判断すると、決意が固まった。

曹操「植よ。南へ征け」

曹植「南・・・汝南へですか?」
曹操「いや、そんな生易しい場所ではない」
 そう言って曹操は初めて顔を上げると、呆然とする曹植にニヤリと笑った。
曹植「ヒッ・・・」
 思わず曹植の口から悲鳴が漏れる。
 宮中でしか父に会った事のない曹植の知らない、戦の中の曹操の笑いだった。
曹操「お前が行くのは南も南、遥か南だ」
曹植「で、では蜀に・・・」
 使いにでも行くのかと言おうとすると、曹操の言葉が遮る。
曹操「蜀よりも南、南蛮と呼ぶ土地に苗床がある。種を蒔きにいって貰うのがお前の役目だ」
曹植「南・・・蛮・・・? 南蛮っ!?」
 数秒かかって理解した時、今度こそ曹植の悲鳴が上がった。
曹操「そうよ。本当は子桓の手伝いでもさせようと思うていたが、役にたたぬわ」
 そこで曹操は書いていたものを机の隅に退けると、地図とホウ統の手のものからの書状を広げて見せた。
 ホウ統からの書状には、南蛮では俄かに部族間での内乱が続いていること、その乱も孟獲という男が収めようとしていること、その孟獲に陳登が参謀としてついていることなどが書かれていた。
 その動きをホウ統は使えると判断し、どう利用するか曹操に伺いをたててきていることを説明する。
曹操「お前の好きにしろ」
曹植「は?」
曹操「ホウ統の進言どおり劉備に協力させるもよし、説き伏せて呂布に従わせるもよし、交趾あたりまで進出し第三戦力にさせるもよし、逆に他勢力に助力して力をそぐもよし」
 曹植は父が自分をからかっているのではないかと思っていた。
 だが、曹操の口調こそ面白がっているが、目は笑っていない。
 曹植はそのことに背筋が凍るような悪寒を覚える。
曹植「し、しかし・・・それならば私ではなく兄上の方が・・・」
 曹植は都を離れたことは一度もない。
 自分が僻地どころが蛮地に行くことなど想像も出来ないでいた。
曹操「植、いや曹子建よ」
曹植「はっ」
曹操「丕には志は伝えた。奴は奴なりに自分で生きる道を歩むことであろう。彰は既に呂布に心酔し、部下として生きる道を選んでいる。それぞれ奴等に語るべき言葉はもうない」
 曹丕はもうホウ統の元に向かったことであろう。
 ホウ統と曹丕は曹家の天下の為に動き出した。
 曹丕は旧臣に頼ることなく人材を集め、目的の為に羽ばたこうとしている。
 既に汝南へは秦真――曹子丹を送り込み豪族を自分の勢力へ抱え込むべく工作を始めている。
 それが曹操の為であろうと、自分自身の為であろうと構わない。
 それはそれでいい。
 曹彰は呂布に気に入られ、目に見えて可愛がられている。
 曹操の旧臣への懐柔の意味合いもあろうが、実際ウマがあうらしい。
 彼を中心に夏侯一族の生き残りの若い世代――夏侯徳、夏侯尚兄弟らと一軍閥を形成しつつある。
 それもまた、一つの生き方だ。
 だが、曹植は自分の生き方を決めていない。
 このまま曹丕が表なり陰なりで動き始め、曹操もまた呂布と宮中で更に激しく戦うことになるだろう。
 それから慌てて目覚めたのでは曹植にとって遅過ぎる。
 曹操は父として最後の温情を、この南蛮行に向けることにした。

 南蛮問題を曹植に預ける。
 荒療治だが、そこで曹植がどうするかが曹植自身の生きる道を決めることになる。
 曹丕に協力させるのか、劉備に預けるのか、呂布の元で生きるのか。
 曹植の元には使えない輩が多いが、丁儀兄弟らもいる。
 今回で家臣の見極めも出来るはずだ。出来なければ、それまでの器だったということだ。
 呂布の目が西涼に向き、劉備孫権らが荊州を争っているこの僅かな時間を生かせぬのも同様だ。

 さあ、植よ。
 この曹操孟徳の血を受け継いだ男よ。
 お前の生き様を、この俺に示せ。

 目の前で震える頼りなき息子を見ながら、曹操はもう一度戦場での目つきで笑って見せた。
「程銀殿、討死」

 伝令の声。また一人、盟友を失った。
 我が兵は乱れ、呂布の騎兵にいいように蹂躙され続けている。ここに自分が踏み止まれているのは、己の力でも判断でもない。
 ホウ悳の陣が多数の敵を食い止め、背後には韓遂の軍が全軍を統括するように指揮を振るっているせいだ。
 だが、見方を変えれば前と後ろで監視されているとも言える。

 果たしてこの戦、勝てるのであろうか。
 漠然とした不安が次第に膨らみ、今では自分の中では抑え切れなくなってきている。
 怒号悲鳴喚声に怯むのは悉く自分と仲間達の将兵のみ。
 敵の騎兵の勢いは留まることを知らない。
 馬騰軍との挟撃など、上手く果たせるのであろうか。
 いや、挟撃は果たせたとしてもそれで勝てるのであろうか。
 更に言えば、例え勝ったところでそれまで自分は生き延びていられるだろうか。

 思えばこの戦は不満ばかりであった。
 盟主とは言え作戦の全ては馬騰と韓遂のみで当たり、我々は配下のように一方的に命令されるだけであった。
 腹立たしいのは先の馬超との一騎討ちで横槍を入れた咎で張横と馬玩が斬られたことだ。
 我々の命と全軍の勝利よりも小倅の名誉を優先したのだ。
 元々馬騰如きがこれだけの大軍を率いられる身なのは我々の尽力あってのことだ。
 そして我々が馬騰に組するのは我々の領土を護るために助け合うということで一致した関係だった筈だ。
 だが、今回の戦ではどうであろうか。
 呂布は我々を狙うように攻め続け、馬騰は使い捨てにするような指揮を取り、韓遂は我々を見張るように陣を構える。
 このままでは我々だけが滅びるような事態になってしまうのではないか。
 最早不安ではなく、その思いは確信に近い。

「………」

 だとすればどうしたら良いのだろうか。
 どうやったら生き延びられるのであろうか。
 呂布に降伏する。それだけで助かるだろうか。
 ここまで来てはただ降伏しただけでは赦されまい。
 だとすれば……

 そこまで思い詰めた所で、李湛は敵軍の勢いが急に弱まっていることに気付いた。
 何故だかは判らない。馬騰が駆けつけるにはまだ早い気がする。気付かれたのか。それとも何かあったのか。
 だが、李湛は即座に伝令を飛ばす。これ以上の迷いは命取りだ。
 幸い小煩い成公英は羌族の兵を借りに行って韓遂の側には居ない。
 侯選、梁興、成宜、楊秋の陣に一人づつ。彼等の思いも自分とはそう変わりはない筈。

 我々の手で韓遂の首を―――獲る。
必勝の構えだった。必死の堅守を続けた歩兵の陣を、馬超が一直線に突き破った。開いた
亀裂に圧力をかけ、敵陣を一気に呑み込むはずだった。だが、歩兵の陣をまさに呑み込まんと
したその時、禍々しい色を湛えた炎が自陣に襲いかかってきた。

そして今。三万の兵が組み上げた陣は、崩壊寸前の状態にある。馬騰の指揮は的確を極めた。
だが、その指揮も戦況を好転させることはできなかった。敵の騎兵の動きは、馬騰の想像を遥かに
超えていた。直線的に突破を試みたかと思えば、凄まじい角度で反転し、再び陣に楔を穿つ。
陣の中核がえぐり取られた次の瞬間には、既に戦場の外へと駈け抜けており、時を措かずに
また戦場へと雪崩れ込んで来る。桁外れの機動力と破壊力は、とどまることを知らなかった。

そこには、確たる意志も明確な目的も感じられなかった。具現化した破壊衝動。味方の陣はいい
ように引きちぎられ、砕かれ、消えていった。地を覆う死者たちの上に、巻き上げられた砂が
積もる。その砂が、次第に赤黒く染まって行く。むせかえるような血の匂いが荒野に満ちた。

崩壊寸前だった敵歩兵の陣も、既に態勢を立て直している。騎兵の動きに呼応するかのように、
こちらの陣を牽制し続けていた。いや、牽制などと言う生易しいものではない。隙あらば突撃を
掛けんとする構え。そこには紛うことなき殺気が満ち満ちている。この陣が崩壊すると見定め
れば、あの陣は躊躇なく動くのだろう。その瞬間に向けて、全ての力を蓄えている。
馬超「父上!」

遠くから駆け寄る息子に目を向ける。それだけのことが、馬騰にはひどく重労働に思えた。
馬騰の傍に馬を寄せ、必死の形相で馬超は語りかける。

馬超「お逃げ下され、父上」
馬騰「‥‥‥」
馬超「お分かりでしょう、父上。あの敵を破る術はござらぬ。最早この戦場に、我らの勝機は
   一つもありませぬ」
馬騰「だが、あれから逃げられると思うか、孟起よ」
馬超「それがしが止めます。止めてご覧に入れます」

馬超は小さく息をつく。

馬超「尤も、それも暫時のことではありましょうが。されど、父上の逃げる時間くらいなら、
   私の槍でも稼げるでしょう」
馬騰「孟起、お前」

死ぬつもりか。そう言いかけて、馬騰は言葉を失った。この逆境の下で、馬超は父に笑って
みせたのだ。砂と汗とにまみれた、しかし莞爾とした笑み。
馬超「この戦は負けです。ですが、次もそうだとは限りますまい。敵を涼州深くまで引きずり
   込み、地の利を大きく得られる場所で戦えば、勝ちを得ることも難しくはないはず」

気休めだとは分かっていた。もう一度戦っても、何度戦っても、結果は同じだろう。いや、
次など、もうない。涼州のほぼ全勢力が、この一戦に投入されていたのだ。そう知りながら、
馬超は父を説き続けた。何としても父を死なせたくない、その一心だった。

馬超「急がれよ、父上。時がございませぬ」
馬騰「‥‥‥済まぬ、孟起」

遂に折れた父を、近衛の旗本が取り囲む。振り向いた父に、馬超はもう一度笑顔を投げかけた。
旗本千騎に守られた父が、敵歩兵の陣を避けつつ、戦場から離脱して行く。


馬超「‥‥‥やはりな」

戦場に目を戻し、馬超はつぶやいた。本来の呂布ならば、戦場全てに目を配らせるはず。そこに
隙を見出すのは、容易なことではない。敵将の離脱など、決して許さなかったに違いない。それが
どうだ。あの騎兵の一軍は、殺戮以外の全てを忘れてしまったかのようだ。目の前に立つ敵以外の
ものは、何も見えてはいないのだろうか。

陣の中央に立ち、馬超は呼吸を整えた。僅かに残った馬騰麾下の兵が、その周りに集まる。呂布が
ここに突っ込んできたときが、最後の勝負になるだろう。馬超はただ、その時を待った。
唐突にその時は訪れた。視線の向こうで、味方の兵が弾け飛んだ。頭が、腕が、血を撒き散らし
ながら大地を撲つ。馬超は槍を構えた。我が身の全てを擲って、呂布を止める。

刹那。馬超を両断せんばかりの勢いで、方天戟が頭上から襲いかかった。殆ど無意識に、槍が動く。
受けた。だが、圧倒的な力でそのまま押される。馬超は歯を食いしばり、渾身の力で方天戟を受け
止め続けた。槍がきしむ。血管が破裂し、全身から血が吹き出るかと思われた。

受け切った。呂布の騎兵の動きが、止まった。赤兎の上で昂然と胸を張る呂布。その目は茫漠とし、
赤く濁ったままだった。何の感情も感じ取ることはできない。その目が、自分を捉えた。

次の瞬間、凄烈な連続攻撃が馬超を襲った。致命傷は避けたものの、全身に負った傷は五つを
下らない。左腕と右股の傷は、特に深かった。痛みはない。もう死んだのか。だから痛みも感じ
ないのか。そう思いつつ、馬超は再び槍を構える。死んでいるとしても、俺はまだ戦える。

馬超「来い、呂布」

叫んだつもりだった。だが、もう声にはならなかった。

呂布の目から、濁りがすっと消えた。満身創痍の馬超の姿。審配の姿が、そこに重なった。
深く深く、呂布は溜息をつき、宙天を見上げる。そして、生き残った全ての将兵に命じた。

呂布「誰も、手を出すな」


七合の打ち合いの後、馬超は静かに大地に倒れた。
ばちょーーーーーーーー!!
380無名武将@お腹せっぷく:02/12/18 03:34
「敵の騎兵の一部が離脱した模様!」

 呂布が旗本だけを連れて後方の備えに割れたらしい。
 計算通りと言いたいが、思ったよりも連れる数が少ない。
 残った騎兵の撃破までは難しいが、それでも耐え凌ぐことはできよう。
 それならばそれでいい。馬騰が歩兵を蹴散らせばそこで勝負は決まる。
 押し寄せる騎兵をここに引き付けるだけで十分だ。

 そう韓遂が思った時に、急にざわめきが大きくなる。
 異変が起きたようだ。
 早馬が駆けてくる。また豪族の一人でも討ち死にしたのだろうか。
「り、李湛殿、寝返り!」
「何っ!?」
 思わず腰を浮かす。
「梁興殿、楊秋殿、侯選殿らも次々と陣をこちらに向け……」
 その言葉が終わらないうちに豪族らの陣から矢が射掛けられてくる。
「馬鹿者どもがっ!」
 思わず吼える。何故、今なのだ。
 あと少し、あと少しで呂布の軍を挟撃できるというのに。
「もしや、初めから仕組まれて……」
 喚声が近くなってくる。
 豪族らの軍が一気に押し寄せてくるのが判った。
 韓遂の周りの将達も立ち上がる。
「韓将軍!」
「駄目だ。ここで踏み止まらないでどうする!」
「ですが……」
「ならんぞ。ここを凌ぎさえすれば、馬騰が呂布を倒す。勝てるのだ! ここで引いてはならぬ。敵の騎兵をひきつけるのだ」
 言いながらももうそれが果たせないことを韓遂は自覚していた。
 ギリギリのところを踏み止まっていた均衡が一気に崩れたのだ。
 将兵が恐慌をきたすのが、肌で感じ取れる。
「しかしっ!」
 それでも踏み止まらなければならない。
 敵の騎兵を自由にさせるわけにはいかないのだ。
 呂布の旗本と再合流されたら、馬騰はどうなる。
 たとえ歩兵を踏み潰したところで、生きては還れない。
「臆病風に吹かれた豪族共如きに怯むな! 馬を寄越せ」
 どうせろくに統率も連絡も取れていない急場の寝返りだ。蹴散らせばすぐに……
「閻行殿の軍が退却を始めました!」
「成宜の軍が勝手に離脱していきます」
「ホウ徳軍の背後を豪族の軍が攻め立てております!」
「将軍!」
「………」
 用意された馬の手綱を握り締めたまま韓遂は暫く固まる。
 敵の喚声と剣戟がすぐ近くまで聞こえてくる。
「………引く 退却だ!!」

 すまん、寿成。できれば、生き延びてくれ。

 心の中で馬騰に詫びながら、韓遂は馬に跨った。旗本らもそれに続く。
 羌族の部落にまで逃げ込めば、再起はなる。してみせる。
 そう呪詛のように心の中で繰り返しながら、韓遂は馬に鞭を当てた。
「逃がすな! 追え、追うんだ! 韓遂の首級を挙げろ!」
 敗走する韓遂軍を追い立てながら、李湛は絶叫する。

「思った以上に逃げ足が早い。もう無理だ」
 楊秋が疲れた顔をしながら馬を寄せてきた。
 彼自身血刀を振るっていたらしく、鞍にはいくつか首級がぶら下がっていた。
「何を言うか、楊秋!」
 李湛は側近の騎馬兵らも駆り立てて追撃をさせていたが、確かにもう追いつくのは無理だろう。
 だが、それでも吼えないわけにはいかなかった。
 ただ裏切っただけでは、
「ああ。どう贔屓目に見ても本領安堵とはいかぬだろう」
「だったら」
「一つだけ手がある」
「手?」
「ああ」
「それは一体な……」
 李湛は最後まで言うことなく馬から落ちた。言うまでも無く、楊秋に斬り落とされたのだ。
「今更見苦しく裏切ったのはそなた達。そういうことにしておいてくれ」
 そう言って李湛の首を掻くと、他の首と一緒に括りつけた。それは梁興と侯選の首であった。
 見ると既にホウ徳の陣も周越の騎兵隊に崩されて跡形もなくなっている。
 馬騰らの戦の状況がどうなっているかはわからないが、周越が急いで軍を返そうとしていないところを見ると、呂布の勝利は間違いなさそうだ。
「………」
 戦は終わろうとしている。が、楊秋の戦はこれから始まる。
 誰からも助けては貰えない。たった一人の戦い。
 自分の命を守るための、分の悪い苦しい戦いが待っている。
「………」
 韓遂を始め、諸将が西へ敗走していくのを余所に、成宜は漢中を目指していた。
 馬から降りて、徒歩となって兵と共に山に入る。
 李湛からの伝令が届いた時点で彼なりに考えた結果だった。
 李湛に同心して韓遂を攻めたところで、本領安堵がなるほど甘くはない。
 かといって韓遂と共に戦う気持ちにもなれなかったし、自らの領地に戻ったところで囲まれて終わりだろう。
 運が良ければ呂布の軍は引き返すかも知れないが、これだけ叩かれれば馬騰らはともかく自分達程度では鍾ヨウら長安軍にでも潰されてしまう。
 どう転んでも生き延びる可能性は低い。すると生き残るには劉備を頼るほかは無い。今呂布の敵は一兵だって欲しいはずだ。
 今の自分でも歓迎とまでいかなくても冷遇されることはあるまい。
 そこまで計算しての行動は、彼なりに機転が利いたつもりだった。
 だが張燕軍がてぐすね引いて待ち構えていることを、彼は知らない。
384無名武将@お腹せっぷく:02/12/20 14:05
このスレの面白いところは「演義」準拠にあるところと見た。
纏めてどっかにアップして欲しいな
演義と言うか、近年正史を含めて出来上がったイメージ準拠とみる。
(´-`).。oO(まとめてみようかすら)
388無名武将@お腹せっぷく:02/12/23 03:46
司馬懿、字を仲達。京兆尹を務める名家、司馬防の次男として河内郡温県にて生まれる。
幼少の頃からその非凡な才能で知られていたが、成長するに従って彼の地では名を馳せ、
名士たちから高い評価を受け、その評判を耳にした郭図にその才を見抜かれ、河北の袁煕
のもとで幕僚として出仕していた。

遠国、涼州で激戦が繰り広げられている最中、河北では異民族の掌握もほぼ手中にし、
この地では安穏と過ごす住民のなかで”国家”としての富国を徐々に進めていった。

中でも、もともと尚書として政治における手腕を存分に振るっていた司馬懿は、徐々に
袁一族の中でも発言権を持ち始め、顔良・文醜・郭図・田豊などの幕僚の中でも一際
目立つ存在となっていた。

やがて天下の趨勢が呂布軍に移ろうとしているなか、彼の野心と才能が天下を得んがため、
これまであらゆる策を弄し、着実にその力を蓄えてきた。
もっとも、彼には意のままに扱える兵卒は存在しない。
彼は、袁一族の過去の遺恨を焚きつけ、あわよくば漁夫の利を得ることを画策しようと
していたのである。
389sage:02/12/23 03:47
sage
面目ない。。
これ以上登場人物増やさないでくれ(w
 汝南を治める城には紀霊という将軍がいる。
 かつては袁術軍の大将として重きをなしていた男であり、最後まで袁術に付き従った将であった。
 彼は袁術の敗死後、呂布に捕われたが赦されていた。


呂布「久しいな。轅門射戟の時以来か」

 縛られて引っ立てられてきた紀霊の縄を解くように命じながらそう笑う呂布に紀霊は戸惑ったものだ。
 並外れた豪傑でお調子者。我侭。身勝手。短気。性格の全てに於いて子供染みた部分は何一つ変わっていない。
 それなのにも関わらず、今壇上で自分を見て懐かしんでいる呂布がまるで別人のように見えてならなかったのである。
 誰かにどこが変わったのかと聞かれると全く変わっていないと答えるだろう。
 それなのに何か違うように感じた。

紀霊「武運拙く捕われ申した。首を刎ねられい」

 その不思議な違和感に戸惑いを感じながらも腹を括っていた紀霊はそう言うと、呂布は紀霊を引っ立ててきた兵に軽く片手をあげて合図を送った。
 首に刀がおろされる、そう思って目を瞑ると斬られたのは首ではなく戒めの方だった。

呂布「紀霊。俺に仕えろ」
紀霊「………断る」
 縄から解き放たれたものの紀霊は身動き一つせず、薄目を開いて答えた。
呂布「ほう、何故だ?」
紀霊「………」
呂布「そこまで偽帝に殉ずることもあるまい」
紀霊「一度臣として仕えた以上、二君に……」
呂布「そうだ」
 言い掛ける紀霊の言葉を遮って呂布が喋りだす。
呂布「俺とお前は弓による縁がきっかけだ。だったら今度も弓で決めよう」
紀霊「何?」
呂布「誰か俺の弓を持って来い!」
 いきなりの発言に戸惑う紀霊を余所に呂布は近臣に自分の弓を持って来させた。
呂布「あの時と同じのだ。懐かしいだろう」
紀霊「何を……」
呂布「簡単だ。また弓で決着をつけようではないか」
紀霊「ま、待て! そうはいかんぞ。お前の腕前はもう十分に知っている」
呂布「ああ、そうだな」
紀霊「だからその手には乗らぬ」
呂布「いや、今度弓を引くのは俺ではない」
 そう言って弓と一本の矢を紀霊の足元に放り投げた。
紀霊「?」
呂布「引くのはお前だ」
紀霊「な……」
呂布「そうだな。お前は俺ほどの腕前は無いだろうから」
 そう言いながら壇上から降りて目を白黒させる紀霊の横を通り過ぎると、そのまま百歩ぐらい歩いたところで立ち止まる。
呂布「こんなところか」
紀霊「な、何を……」
 紀霊だけでなくその場にいた群臣全員がその呂布の謎の行動に面食らっていた。
 突拍子も無いことをやる主とは言え、そうそう慣れるものでもない。
呂布「そこから弓で射てみろ。的に当たったらお前の勝ちだ」
紀霊「(たったそれだけの距離をだと。馬鹿にしているのか?)戟を射るのか?」
呂布「いや、的は俺だ」
紀霊「何だと!?」
 今度こそ本当に面食らった。
王楷「と、殿!?」
臧覇「そ、それはあまりにも……」
呂布「何処でもいい。顔でも胸でも腹でも構わぬ。周りの目が気になるのなら肩や手足でもいいぞ。俺に当てればお前の勝ち。自刎するなり、何処かに行くなり、隠遁するなり好きにしていいぞ。その代わり外したら俺の勝ち。俺の下で働いてもらおう」
 周りの動揺と諫止の言葉が聞こえていないように紀霊を見て言う。
 状況ばかりに気をとられ、勝手に話を進められていることに紀霊は気付かなかった。
紀霊「ちょ、ちょっと待て。それではあまりにも……」
 一体この男は何を考えているのか。百歩。たった百歩の距離。外しようが無い。
 ここで自分が奴の脳天を射抜いてしまったらどうするのだ。
 勿論周りがそんな真似をした自分を生かす筈は無いが、それでも呂布奉先という男を殺せてしまうのだ。
呂布「難し過ぎるか? だが流石に俺もこれ以上は譲歩できんぞ」
 知ってから知らずか呂布は紀霊の言葉を反対の意味で捉えている。
 この男、本当に馬鹿なのか。それとも怖いもの知らずなのか。
呂布「心配するな。避けたりはせぬから」
紀霊「くっ……」
 おちょくられているのかと思うと怒りを覚える。紀霊は足元の弓を拾うと、矢を番えて構えた。周りが騒ぎ出すのがわかった。
呂布「お、その気になったか」
 それなのに当の呂布は腕を組んで平然と自分に向けて弓を構える紀霊を面白そうに見つめていた。自分の身体に矢が当たるとは思っていないように。
紀霊「………」
 ギリギリと腕に力が籠もる。外しようが無い。絶対に外れない。
 それなのにこの圧迫感は一体なんなのだろうか。
紀霊「………」
 全身から汗が吹き出る。今までここまで緊張したことがあっただろうか。
 周囲のざわめきは消えたくせにやけに耳障りな音がして煩い。
 自分の呼吸の音。口から息を吸い吐く音がやけに大きい。
呂布「どうした? そのままじゃ日が暮れるぞ」
紀霊「くっ……」
 腕が震えてくる。身体中の震えが止まらない。
 どうしたいのか、どうしたらいいのか何一つ判らない。
 狙いを定めるどころではない。頭が混乱して何が何だかわからなくなっていた。

 ブンッ

 汗で滑るようにして矢が放たれたのだと紀霊が気付いたのは、周囲が悲鳴をあげた後の事だった。見ると、呂布のつま先の前の土に矢が刺さっている。
 外した。
 だが、何故か紀霊は安堵の気持ちが自分の中から沸いてきたことに気付いていた。
呂布「今度も俺の勝ちだな」
 そう言って高笑いする呂布につられ、紀霊も自分の頬が緩んでくるのを止められなかった。
 自分がここまで彼に見込まれ買われたのであれば本望だ。仕えよう。紀霊はそう思い、近づいてくる呂布に対して手を組み膝をついて臣従の形をとったのだった。

 そして時は流れ、紀霊は汝南一帯を任されていたのだが、最近になって足元が騒がしくなっているという報告を受けていた。
 袁術を見切り崇山に籠もって賊となっていた陳蘭雷薄の輩が街に下りて匪賊らと共謀し略奪を働いているらしい。
 近辺には李通ら豪族が割拠している土地なので、街が荒らされるのを放置することはできなかった。
紀霊「放置しては豪族達が動揺する。軽騎兵を率いて賊共を叩こうと思う」
 その紀霊の出兵計画に、従事としてついていた趙儼が反対した。
趙儼「確かに山賊の所業は赦しがたく叩くべきものではありますが、表を立て軍を揃えてから揉み潰すのが良いかと」
 うかと手を出しては危ないとの進言である。
 近隣には黄巾の残党も多数潜伏しているという噂もあり、臆病とは言い難い。
紀霊「たかだか山賊如きにそれは大袈裟であろう」
趙儼「ですが、この度の連中の動き、何やら不審の点も多く、油断なりません」
紀霊「だとしたら尚更怪しげな行動をとられる前に叩くべきではないか」
趙儼「それでも様子を見ていた方が」
紀霊「ならぬ。そうすれば奴等は益々行動が派手になり、調子をつかせるだけであろう。早いうちに叩き、鎮撫せねば却って災いを受けかねん。王忠」
王忠「はっ」
紀霊「先陣を任せる。すぐに兵を選び出陣せよ」
王忠「畏まりました」
 王忠は命令を受けると足早にその場を退出した。
紀霊「我輩と王忠で奴等を攻める。他のものは城を守りつけいられないように用心せよ」
 紀霊はそう言って場を打ち切った。
 かつて同じ袁術に仕えた仲間だが彼等は困窮する主人を見捨てて逃げ去った。
 そればかりか袁紹の元に落ち延びようとする際には後ろから襲い掛かり、多くの荷を奪ったりした連中だった。
 軍の先頭に立って呂布の軍と戦っていた紀霊にはどうすることもできなかっただけに、恨み深いものがある。
紀霊「あやつらの首は我輩が刎ねる」
 そんな思いを抱えながら五千の兵に出陣の令を発した。

 だが敵は陳蘭雷薄ではなかった。
 彼等の後ろには黄巾軍が、豪族達が、そして曹丕から派遣されていた秦真子丹が控えていた。紀霊の軍は誘い込まれ、分断され、叩かれた。紀霊は王忠以下数千の兵の屍を残し、数百の兵と共に城に逃げ帰るのが精一杯だった。
 これが汝南戦線の幕開けである。
その頃冀州を拠点としていた袁煕は、平州を統治する公孫康とは異民族の平定
の手柄を競い、お互いがライバル視していたこともあり、両者の間は冷え切っ
た状態だった。むしろ、その溝を作った原因は呂布による”土地切り取り令”
に端を発するものであった。つまり、異民族を追いやった後の土地は呂布直轄
の地ではなく、切り取った勢力そのものが統治できるというものであった。
両者を並び立たせることでお互いにやる気を奮起させ、自軍の兵隊を損じるこ
となく、北からの脅威を外様に排除させるということでも呂布の狡猾さが伺え
る。

高幹「殿、匈奴の王、単于からの密使が着ております。」
袁煕「通せ。」

密使「我が国の王、単于は我が軍はすでに袁煕殿に屈服しておるのに、なぜ
   公孫康は攻撃の手を止めず、度々我が土地を蹂躙するのかを問うてお
   ります。」

郭図「殿、公孫康は手柄をあせっておるようでございますな。」
許攸「我が軍に匈奴は任せておけばいいものを。。ここは是非、公孫康をこ
   らしめなければなりませんな。」

袁煕「確かに、最近の公孫康の振る舞いは独りよがりが過ぎているようだ。
   すでに我が軍に恭順されておる単于殿のお気持ち良くわかる。」
密使「されば、我が王が申すには、互いが協力し公孫康を討ち取りましょう
   とのことです。」
袁煕「まさか!?」
密使「無論、袁煕殿自らが手を下すこともございますまい。」
袁煕「どういうことか。」
密使「つまり、表向きは我が軍の必死の抵抗にて公孫康を討ち取るという事
   ですが、その裏で袁煕殿に暗躍していただきたい。」
袁煕「ふむ。どうしたものか。」
高幹「これは、妙案ですな。殿にとっての目の上のたんこぶである公孫康を
   大義がなくとも消すことができますな。」
許攸「しかも、単于は我が軍が公孫康を葬りたいのを予め理解した上で、そ
   れがお互いの利を得ることに繋がるということを考えておる。」
沮授「しかし、これまで敵対した匈奴と裏で手を組んで、もしそれが露呈し
   てしまったら我が君が危うくなりますぞ。」
高幹「沮授殿はかくも臆病者だったのか。我々がこの冀州で朽ち果てること
   をお望みか?いや、そうではなかろう。呂布軍に降伏しながらも、い
   ずれ再興を目指しこれまで耐え忍んできたではないか。」
許攸「沮授殿、この千載一遇の機会を放ってはいけませぬぞ。今こそ、冀州
   ・平州・幽州・青州をすべて手中にし、呂布軍に対抗できる勢力を築
   くのです。それの足懸りとして公孫康は邪魔者ですぞ。」
沮授「されど。。。これは何かイヤなものを感じるが。」
袁煕「・・・・・・。」
袁煕「仲達はどう考えるか。」
司馬懿「はっ。私も許攸殿・高幹殿と同様、これを機に四州すべてを手中に
    し我が軍の威光を再び取り戻すことを望んでおります。」
袁煕「うむ。そうか。」


これから二日後、二つの書簡を手に匈奴の密使は帰途についた。
一つは袁煕からの承諾の書簡。もう一つは。。。
二千の旗本。そのうち、六百が死んだ。殆どは討たれたのではない。戦が終わると同時に、兵たちは
地に崩れ落ちた。自らの限界を遥かに超えて、彼らは戦い続けたのだ。成廉などは、陣に運ばれた
後も二日近く眠り続けた。だが、目を覚ました者はまだ僥倖を得たと言ってよい。そのまま二度と
目を覚まさず冷たくなる者も、また多かった。

戦が終結してすぐ、呂布は張コウに命じ、五千の軽騎兵を指揮させて馬騰と韓遂を追撃させた。追撃は
一日限り、兵を休めながら一日半から二日で帰還。捕らえた敵の馬の中からも元気な馬を選び出し、
兵を揃えた張コウは、自らと兵を叱咤しながら追撃に向かった。


戦から三日が経った。既に日は傾き始めている。帰還の準備は着々と進んでいた。捕縛した馬の数が
多かったため、重傷の兵たちを運ぶための用意もできた。成廉も魏越も回復した様子で、周越と共に
帰還の編成を整えている。張コウが戻るのを待って、全軍が長安に帰還することになるだろう。

そんな中、呂布は傷病兵の幕舎の一つにいた。寝台の傍に置かれた胡床に腰を下ろしている。傍らの
卓には酒、手には杯。外の喧噪がここにも響く。寝台に横たわった若武者が、顔をしかめた。

呂布 「痛むか」
馬超 「貴様が痛むようにしたのではないか」

横を向いた馬超が小さく呻く。傷の痛みは小さくないらしい。
この日の朝。馬超が目を覚ましたと聞き、呂布は馬超の寝かされている幕舎に向かった。帳を
くぐって現れた呂布を見て、開口一番馬超が訊ねたのは、馬騰のことであった。

馬超 「父上は、どうした?」
呂布 「逃げた」

馬超の口から安堵の溜息が漏れた。次いで強い視線を呂布に向け、かすれた声で詰問する。

馬超 「何故俺を生かす?」
呂布 「殺すには惜しい」
馬超 「惜しい?」
呂布 「なかなか面白い奴だからな、お前は」
馬超 「ふん」

馬超は頭から布団をかぶった。貴様と話などしたくない、その意思表示らしい。

呂布 「お前は人質ということにする。今はまた利用価値はないが、馬騰が涼州で再起を図った
    ときには、使い道があるだろうな」

反応はない。呂布は布団の上から話し続ける。

呂布 「もっとも、馬騰が捕らえられれば話は別だ。張コウに追撃を命じてあるからな。ふふふ、
    もしかすると首だけが届けられるかもしれんな、御父君の」

布団をはだけた馬超が呂布を睨んだ。双眸に怒気。その目を見て、呂布はにやりと笑う。

呂布 「眠れ、馬超。宵前に、また来る」
仄かに漂う酒の匂いに、馬超は目を覚ました。既に呂布が傍の胡床に座している。天幕の中では
陽光も朧だが、それでも夕刻に近いことは分かる。目を開けた馬超を見て、呂布が口を開いた。

呂布 「張コウからの報せが届いた。お前の父親も韓遂も、首尾良く逃げおおせたようだ」
馬超 「当然だ。貴様らに捕まるような父上らではない」

馬超の回復力は驚くべきものだった。身体に満ち満ちた若き活力が、傷の回復を助けているの
だろう。顔色は目に見えて良くなり、目の光も言葉も着実に力を取り戻している。

呂布 「お前は長安まで同道させる。恐らく鍾ヨウに預けることになるだろう。涼州で表立った動きが
    現れたとき、お前に役だってもらう」
馬超 「ふざけるな、誰が貴様のためになど働くものか」
呂布 「お前がどう思おうが知ったことではない。俺がそう決めた」
馬超 「さっさと殺せ、呂布。貴様に殺す気がないのなら、自分で命を絶ってやる」
呂布 「ほう、ほう、寄る辺なき父親を見捨てて、自分一人だけは苦難から逃れるというわけか。
    やれやれ、馬騰も哀れな奴だ。最愛の息子にも見放されるとはな」
馬超 「ち、違う!」

馬超を軽くあしらい、呂布は話題を変えた。

呂布 「豪族の中で、楊秋と云う者が降伏を申し出てきた。梁興、侯選、李湛の首を持ってな。三人は
    馬騰を裏切り、韓遂やホウ徳の陣に襲いかかったらしい。楊秋は裏切りという卑劣な行為を
    許せず、味方であった三人を敢えて討ち、我らに降伏した。そういうことだ」
馬超 「・・・楊秋は剛の者ではない。三人を正々堂々と討ち取れる武勇など持ち合わせていない」
呂布 「ふん、良く見ているな。多分、お前も俺と同じことを考えているのだろう。だが、それなりに
    使い道がありそうなのでな、奴は生かしておくことにした」
馬超 「・・・俺には関係のないことだ」
呂布 「ならば、そう思い込んでおけばいい。いずれにせよ、俺はお前を長安まで引きずって行く」

嘲笑するような表情で馬超を見下ろしてから、呂布はふいと立ち上がり、外へと出ていった。
宵闇が大地を覆う寸前に、張コウが帰還した。日も落ちた中、呂布は張コウを伴って、近くの小高い
丘陵へと馬を走らせた。馬を止めた呂布の後に続いた張コウが見たものは、小高く土が盛られた塚。

張コウ 「・・・眠っているのは、審配殿ですな」
呂布 「ああ」

塚の前に、二人は並んで立った。雲間からかすかな月光が差す。遠い山々から吹きつける風。響き
渡る獣の雄叫び。呂布は押し黙ったまま、塚に酒を注ぐ。乾いた土の中へと、酒は滲みていった。

呂布 「張コウ」
張コウ 「はい」
呂布 「貴様に長安を任せる。審配の抜けた穴を埋めるのは貴様だ」
張コウ 「心得ました」
呂布 「それから、こいつだ」

傍らから取り出した一振りの剣を、張コウに手渡す。受け取った張コウが剣を見つめ、視線を呂布の
面へと移す。貌に、躰に、月光が深い陰影を刻み、呂布の姿はさながら一箇の彫像の如くに見えた。

呂布 「そうだ、審配の帯剣だ。そいつを握りしめたまま、奴は死んでいた」
張コウ 「・・・」
呂布 「西はひとまず区切りがついた。次は南だ、張コウ。劉備との闘いが本格化すれば、長安は
    荊州と並んで最前線になる。貴様の役目、軽いものではないぞ」
張コウ 「心得ております」
呂布 「その剣、貴様に預ける」
張コウ 「・・・必ずや、審配殿の名に恥じぬ働きを」

不意に、淡い月光が一面に降り注いだ。雲の帳を押しのけ、円い月がその姿を顕わにしたのだ。
審配の塚に映る張コウの影。その肩が小さく揺れているように、呂布には見えた。泣いているのか。
呂布が確かめる間もなく、張コウは黙って踵を返し、主人を待つ愛馬のもとへ歩いて行った。
( ゚∀゚)ノ <西はひとまず区切りがついた。ので、しばらくお休みしまふ。
劉表が死んだ。暗殺だという噂も立っている。
伊籍の館に徐庶が顔を見せたのは、そんな折だった。
「良い位置だ。近くも無ければ遠くも無い」
面食らっている伊籍をよそに、開口一番徐庶は月を仰ぎ評した。
館の使用人は2人しかいない。
混沌としたいまは当然として、荊州がぬくぬくと肥えていた頃から、伊籍は贅と無縁の生活をしてきた。
「こんな所に、のうのうと顔を出す……」
風の無い宵の門前で、伊籍は責めずにはいられなかった。
いま、荊州は抜き差しならない状況を迎えている。
そびえ立つ山々の向こうに劉備。河水の先に周瑜。
左右だけではない。北に呂布。
涼州は直に呂布のものとなるだろう。そうなれば、南下は必定。
そして狙われるのは、恐らくここ、荊州だろう。
主を亡くし、遺された若君をめぐって宮中は穏やかではない。
蔡瑁が、そういう種だけを残して逝った。
そしてそれらが放たれたのは、目の前に立ち、月光の燐を瞳に輝かせる、この男の所為なのだ。
「別れの挨拶に来た。討ちたくば、討てばいいさ、機伯」
瞬間、見ている方が心底切なくなるように瞼を伏せたかと思ったら、次の瞬間には飄然と伊籍の横をすり抜けて館の門をくぐって行く。
昔からそうだった。今更胎も立たなかった。溜息ひとつを湿った夜に残し、伊籍も屋敷に戻った。
「家人を起こすほどの事じゃないよ、機伯」
遠慮というものが、この旧友には無い。生来性根は無頼なのが徐庶という男だった。
「……荊州はこれから荒れる。外からも、内からも」
「だろうな」
「――簡単に言う!」
荒げるつもりは無くとも、自然と声音が吊り上り、裏返った。
情けなく延びた自分の声が耳の中に張り付く。何とも言えぬ羞恥に襲われ、徐庶から眼を背けた。
「相変わらず忠烈だ。だが、もう見えただろう? 荊州は天に届かない。君は月明かりすら浴びようとしない」
「暗きに耐える。その先で陽光と向かいあえると、私は信じている」
伊籍は自分で自分の言葉を噛み締めていた。自分は劉表の臣下だ。そういう道を選んだのだ。
徐庶は突然席を立つと、勝手知ったように屋敷にあった酒と杯をふたつ持って帰ってきた。
「言ってみただけさ」
杯を満たして伊籍に向け、自らの杯も満たした。杯を重ねる事も無く、徐庶は一口で呷ってそれを空けた。
「別れを告げに来た、と言ったな徐福。仰ぐ天でも見つけたか?」
言って伊籍も杯に口を付けた。
「もう懲りた、とでも言えば満足かな?」
いたずらに口の端を歪めながら、早くも徐庶は次の杯を空けていた。
「……徐福。徐庶の名を捨てろ。もう一度、私に、荊州に力を貸してくれ。私は民を、そして劉g様を救いたい」
「やめておけよ機伯。頼む相手も間違えている。私は表に出る人間でもない」
「……血か? 生まれか? いつまでそうやって逃げている。能力を持っているにもかかわらず逃げるのは、傲慢と変わらない。傲慢さの裏に矮小な保身を計る魂を篭めた臆病者の様だ」
「この乱世、血が起こした。最北ではまた、血が新たな火種を起こそうとしている。ふたつもな。人は血を捨てられんのだ。それが自分だと信じて疑わない。この世は未だ血で縛られる事を望んでいるように思える。ともすれば、表舞台にやはり私の出番ではない」
「理由にならない。得心も出来ない」
「仕方の無い男だな、君は。では機伯。君は何故劉g殿に肩入れしている? この乱世が無ければ、劉g殿は良くこの荊州を治める器ではある。しかし、それだけだ。これこそ正に血じゃないのか、機伯? そういう事なのだよ」
「……血には従わない、それが君の考えなのか、元直?」
「いや――」
焚かれていた炎が、徐庶の輪郭に翳を差した。
悲しい顔をして笑う男だ。これまで何度も伊籍が思った事だ。
「――自分で言っていて、何か違うような気もする。どうでも良いような気もする。……自分の心根が一番解らないな。孫氏のようにはいかない」
「ならば、いまだけでいい。この混沌の中だけでいい。力を貸してくれ。荊州を守ってくれ、元直。私には出来ない事が、君になら出来る」
翳を湛えた口元に、徐庶はまた杯を運んだ。
伊籍は待った。
沈黙。数瞬のはずのそれが、長い。
「……母が」
徐庶が口を開き、結果はどうあれ、伊籍の緊張が拡散し始めた。
「元直の母上か? 死んだと前に聞かされていたが、生きているのか?」
「ああ。死んだと、俺もそう思っていた」徐庶の口調が昔の擦れた其れに戻りつつあった。
「だが、どうやら生きておられるようだ。いま、ある所に匿われているという」
差した蔭の濃度がより濃くなった。俯いたからである。あの徐庶が。
拡散し始めていた緊張が、また胸の真ん中に収束する。
まさか。
「――それが、あの暴挙に……」
「さっき言ったか。自分が一番解らぬ。血など、と思っていても、ああいう事が出来る」
伊籍は言葉を無くした。何という音を出せばいいのか判らなくなった。
政治と個人を切り離すのは容易だ。だがこれは、それとは少し違う気がするのである。
言葉でそれを示す事ができず、伊籍の沈黙は加速していった。
「呂布……あの飛将軍は、自らの養父を手に掛けた。あああるべきだと、俺も思う。だが出来なかった」
独白を続ける徐庶の横顔を、伊籍は見つめる事しか出来ずにいた。
「……これから、どうする?」やっとの思いで、それだけ訊いた。
「また、殺すだろう。そのために裏で少々の策を弄する。だが、それより先は、俺には解らない」
誰を、そう訊きかけて、止めた。変わりに浮かんだ疑問があった。
「そのために荊州を使おうとは思わなかったのか?」
徐庶の顔から翳が引いた。そこには、見ている者の方が切なくなってくるような微笑が浮かんでいる。
「君がいる。だから荊州は使わない。君には君の乱世を生きて欲しい。奇麗事だけどね」
徐庶を荊州に留める事を、伊籍はようやく諦めようと思った。
ここに徐庶が訪ねて来た理由も、ようやく解った。
「さっき、私は酷い事を言った。許してくれ徐福。君は傲慢ではなかった。臆病者でもない」
どうだかな。徐庶は小さく笑い、また杯を空けた。
伊籍もようやく杯を空け、徐庶に次の杯を注いだ。別れの宴が始まった。これが今生の別れだろう。
410無名武将@お腹せっぷく:02/12/24 14:44
短期間にすげぇ話が進んでいたのでage。
しかしここまで多人数でリレーしている本格派小説スレってここ以外にあるの?
みんなハードボイルド北方がすきなのですね
412無名武将@お腹せっぷく:02/12/25 04:06
伊籍は>>303で殺されているのですが……。
荊州、襄陽。

戦は有利に運びつつある。周瑜が負傷し、揚州に送還されてからは呉軍の勢いは弱まったし、
蜀軍も、関羽隊を徹底的に追撃した後は、戦意を失い、長らく守勢に回っている。

だが、また新たに憂慮すべき事態がそこに生まれた。

劉表は呂布の援軍に曹丕を招きいれたはよいが、その曹丕のやり方に頭を悩まされつつあった。
「あの城は欠かすことの出来ない要所」だの「世継殿は安全な中原に送られてはどうか」だの、
荊州における劉表の支配権を脅かすような要求を重ねてくるのだ。
蜀呉の勢い目覚しい時は已む無く彼に多くの権限を貸し与えたが、曹丕は一度借りたものを
決して返そうとしない。幾らかの荊州兵がそうであるし、将校の指揮権もそうである。
蜀呉の軍を国外に追いやりつつある今、最も憂慮すべきは、曹丕がそのまま荊州に駐屯し続ける事である。

曹丕だけならまだよかったかも知れない。彼には軍事の天才と言える鳳統が味方している。
鳳統の軍事的才能は神がかりと言えるものがあり、人は韓信の再来と噂しあっている。
数倍する呉軍を、二度も奇襲で打ち払った時、彼の名は荊州全土に鳴り響いた。
そして武勇無双と謳われる魏延。彼は荊州の武人であるにも関わらず、劉表の腹心である
蔡瑁と馬が合わないがために、自然と曹丕の陣営に加わった。

劉表「……曹丕め、何を企んでおる」

言うまでもない事ではあるが、曹丕・鳳統の両名は曹操に命じられ、
劉表を欺き、荊州に地盤を築こうとしているのである。
曹操がその拠点を失って後、解散した青州兵は、漢土全域に散らばり、日夜諜報活動に従事していた。
誰が彼らを束ねているのか、それを知る者はいない。
もちろん、曹操が彼らと通じている事を知る者すらいない。

曹操は絶えず、底辺より世の流れを左右していた。

西に謀反の動きあれば、それを唆し、呂布の眼をそこに向けさせ、南の諸勢を保護せんとす。
北に面白き人材の噂あれば、それを土地の有力者に吹き込んで働かせ、力量を見定める。
実際、この国を今、思いのまま動かしているのは、その所有者であるはずの帝でもなければ、
大陸最大の軍事勢力を持つ大将軍呂布でもなかった。

もちろん、幾らかの誤算もあったが、

曹操「それも時には面白し」

今は曹丕を荊州に遣わし、曹植を雲南に派遣し、「曹一族のため」として働かせている。
しかし、今の曹操は本気でそんな野心など持っていない。

曹操「私は、一度敗れた志にいつまでも縛られる未練たらしい真似はしたくない」

今はただ、余生を用いて、思うままに天下を操る楽しみの方が面白い。
そしてその目指すところは、

曹操「この私が唯一、自分のほかに認めた英雄に天下を取らせる」

その一事のみであった。その英雄とは劉玄徳。
この英雄だけは呂布に尻尾を振る連中と違い、曹操自身が育てた男だ。
それだけに唯一無比の「龍」である。
以前、呂布と対話したとき、曹操は「お前は天下を狙っているな」と問われて、
嘘偽りなく「御意にございます」と答えた。

あの場での応答は、一つの挑戦というより、宣誓であったとするのが正しいであろう。
呂布と交わした言葉の数々。あれは決して酒の戯れではない。
例えあれを戯れにしても、二人の約束である事実は隠れようもない。
約束である以上、敗れる訳にも降参する訳にもいかない。途中で降りられないのである。

だから、必ず「天下」を狙い、それを得なければならない。
手立てはどのようであろうともよい。しかし、必ず天下を奪わねばならないのだ。
そして、奪った天下はどうしようと、それは私の勝手である。

曹操「であるな、玄徳」

また薄く輝き始めている帝星に胸で語る。
傍目にはその姿、麗人が一人、月明かりのもと、星空に禁じられた恋心を託す姿に似て、
妖艶に映るであろう。

曹操の近頃の美しさは、年齢や性別を逸脱し、人外の領域に至りつつある。
曹操のその胸のうち、知る者は一人としていない。
417青春編・1:02/12/25 06:16
 ・・・あたりは、静寂がつつんでいる。静かにすすきの穂が、が揺れている。ここが明日は屍の転がる
戦場になるとは、信じられない。枚を含んでいる回りの男達も、みな同じ気持ちであったろう。戦袍を脱
ぎ、装備、腰に剣がひとつ。秋も半ばにさしかかっており、、いささか肌寒く感じられる。そこにいる若
者達のほとんどは、初陣と言っていい。張遼には、皆の気持ちが手に取るようにわかった。本当に、黄巾
の族に勝てるのか。知らず、手には汗がにじんでいた。
418青春編・2:02/12/25 06:18
昨日の朝。いつも通り厳しい調練を終えた張遼は、呂布から呼ばれていることを知らされた。広場に
集まると、他にも仲間の若者達が三十人ほど集められている。
「いよいよ明日は、戦場に出る。」
思わず張遼が声を出した。「では」
「張遼か。そうだ。戦場だ。明日、黄巾の族と戦う。そこでだ。」
呂布は言葉を切り、全員をゆっくりと見渡した。
「お前達には、命を捨ててもらうかもしれない。」
若者達に緊張がみなぎった。恐怖ではない。これまでの厳しい調練に比べれば。
「初の戦い。私にとってもそれは同じだ。どうだ。怖いか」
このようなとき、兄貴分として皆から慕われている張遼が、自然答えることになる。
「怖いなどと。で、我らのはたらき場所は。」
「うむ。丁原殿のお考えでは、馬邑の族が一番に叩いておく敵となると考えておられる。」馬邑は、
同郷も多く、皆にとっても様々な思いがある。中には親を殺された者も、いる。「望むところです。
で、どのように。」
「まあまて。それでだが、この度の戦いは、我が部隊だけで、との仰せだ。」
「それは」
「落ち着け。丁原殿が我々に目をかけてくださっているのも、近い将来の、より大きな何かを見て
おられるからだ。その期待には応えねばなるまい。それに丁原殿は」
そこで呂布は遠くを見た。
419青春編・3:02/12/25 06:20
「いや、いい。とにかく、馬邑の族は、この并州でも強敵である。守りも固い。我らだけでは兵数は少な
く、勝ち目は乏しい。だから、お前達だ。」
すでに、目が血走っている者もある。黄巾の害を見てきた張遼にも、その気持ちは痛いほど、わかる。い
くら貧しいとはいえ、昨日までの同じ百姓仲間を手にかけるなどということは、張遼には許せなかった。
「まず、敵の砦に突っかける。もちろん敵をつり出すには、負けねばならぬ。」
「では、その役目を我らに」
「いや、これは策だ。お前達の働きは、そのあとだ。一里行くと、すすきの野にでる。そこで埋伏せよ。
火計だ。お前達は、火の手が上がり、合図のあとに飛び出せ。」
「しかし、呂布様は」
そこで呂布は白い歯を見せた。
「俺は大丈夫だ。それとも、俺が黄巾の族などに倒されると思うのか?」
呂布の強さは、そこにいる若者達が最も良く知っているものだった。張遼など、少々鼻にかけているとこ
ろがあったが、その自信は、とうに打ちのめされている。そして、時に見せる火の出るような激しさも、
張遼のような武芸に自信のある者には時折見せたりした。中には酷い怪我を負った者もいる。だが、呂布
は、調練が終わると、うってかわったような優しい態度に変わり、必ず夕食を共にした。そして、よく食
べ、欲のみ、そして良く冗談を飛ばした。そのときばかりは、大男の呂布のからだがひょうきんに見えた。
そういうところが、張遼は好きだった。
420青春編・4:02/12/25 06:22
 夜がうっすらと白み始めた。そろそろ呂布様が敵の砦に攻めかかる頃であった。と、遠くから吶喊。
続いて馬のいななき。砦からここまで一里。呂布様は、大丈夫なのか。一体何騎で攻めかかったのか。
詳しいことは、策が万が一遺漏無きように、ここにいる者は知らされていない。騎馬の足音が大きく
なった。近い。北に火の手。そして。
「呂布様」思わず声を上げそうになった。一騎で逃げているではないか。追いすがる敵の騎馬の追撃
をかわしているが、その背中には矢が数本。血も流れている。もとより声を発することは許されない。
それでも。隣の者も、泣いていた。合図はまだか。眼前を騎馬隊が通り過ぎる。三十騎はいる。
「ひゅー」鏑矢の音。一目散に駆け出す。騎馬に追いすがった。憎悪。羽交い締めにして、引きずり
おろす。頸を掻き切る。次。既に敵の馬は、火に驚いて棹だっている。三人を手にかけたところで、
ふと見ると、呂布様が馬首を返して敵に向かっている。怪我は。大丈夫なのか。こともなげに数騎を
突き落としたところで、声を上げた。白い歯。他の敵も、既にほとんどが討たれている。
421青春編・5:02/12/25 06:24
「どうだ。張遼」
「呂布様。何故」
「うむ。歩兵は途中で別れた。今頃は、飛び出した敵を挟み撃ちにしているところだろう。」
「何故我らは。呂布様と共に戦いたかった。呂布様を一人にして」
「だから、大丈夫だといったろう。逃げるのも、なかなか大変でな。それに」
呂布は、馬から下りて、張遼の前に立った。血が沢山流れていたが、気にする風もない。
「お前達は、俺が危ないと見れば、自分を投げ出しかねない。」
「それは当然のことです。」
「いや、違う。一兵卒ならそれでもいいが、お前達のことは、そう思っていない。これから、いくらでも
働きどころは、ある。」
「では」
「試したと言いたいのだな、張遼。そうだ。すまん。だが、正直なところを言う。お前達には、こんなと
ころで命を落として欲しくなかった。やはり初陣は、難しいものだ。自分を投げ出すことはたむしろたや
すいが。それに、流石に騎馬は手強かったぞ。凶奴の血も混じっているからな。それは俺たちも一緒だが。」
そして、豪快に笑った。
不意に涙が出た。
「呂布様」他の者も泣いている。一生、呂布様についていこうと、思った。
>>405
馬騰馬超がらみの大半はあんたが書いたと見た。物語をちゃんと
区切りまで持って行って、きっちりカタをつけたのが凄い。

とりあえず乙。でもしばらく休んだらまた戻ってきてくれ。
>>412
あ。最初から愛読してたんだけど、すっかり見落としてた。

てことだったので、406-409はスルーしてくらはい。
宙ぶらりんな徐庶を片付けて、
伊籍の視点で荊州が滅ぶまで書いてみようと思ったんだけど、
dだスレ汚しになっちまった。
素直に一読者に戻るから勘弁してくれ。すまなんだ。
徐庶は呂布のとこ行くんだろ?
425無名武将@お腹せっぷく:02/12/26 11:29
>>423
でもあんたは面白いぞ。ぜひ徐庶の行く末を描いて欲しいです。
>425
でも徐庶に興味なさそうだよ。
現在の状況

 西涼の馬騰・韓遂(呂布に敗れた。玉璽隠匿中)

                   中原の呂布(朝廷掌握、宦官と化した曹操が暗躍中)

      漢中(劉備領。張魯と閻圃健在し、劉備に協力)

                荊州の劉表
                (曹操の命を受けた曹丕・鳳統らが
                 火事場泥棒同然に占拠工作中)    <= 揚州の孫権
                                          (周瑜負傷中)
    益州の劉備 =>
     (人材多し。しかし孔明・法正の荊州占領策は、
      曹操の派遣した曹丕・鳳統に敗れる)

   南蛮(曹操の命令を受けた曹植が放浪中)

諸勢力
・蜀の劉備は劉璋旧臣と五斗米道とを取り込み、成都に拠点を構えている。
・呉の孫権は、天下取りの妄執にとりつかれた周瑜に引きづられ気味。
・中原の呂布は今は亡き献帝の遺児を天子に迎え、大陸最大の勢力を誇る。
・曹操は解散した青州兵を操って世情を動かし、劉備に天下を取らせようとしているらしい。

他近況
・荊州に攻め込んだ蜀呉の大軍は、曹丕・鳳統・魏延が蹴散らした
・呂布は馬超を生け捕り、これを篭絡する事に成功
・袁煕主従は呂布に降伏し、河北で所領の保守を許されている
・徐庶が行方不明。これからの動向が気になるところ
追加
・袁煕公孫康連合が匈奴相手に交戦中だが、
 袁煕が匈奴と裏で共謀して公孫康の失脚を狙う
荊州の工作員・徐庶。

劉表の命を受け、旧友の孔明を殺害する運命になったて男。
しかしその孔明は、これまた旧友の鳳統とともに徐庶の奇襲を退け、辛くも一命を取り留めた。
そればかりではない。孔明はそのまま益州に亡命し、劉備に仕えた。
そしてかつて司馬徽が広めた声望と人脈を武器に頭角を現し、
今では劉備軍の重臣の一席に座を占めているという。

徐庶「彼らしい事だ」

川に顔を映しながら、無精髭を剃る。
あれからずっと放浪していた。

一度、呂布に会ってみようかとも考えたが、呂布が西涼を侵した時、その興味は失せた。

徐庶「呂布には」

──呂布には、天下を刷新する気概がない。しかも悪いことに戦えば必ず勝つ。
これでは時代がなぜ乱世に傾いたかを、時代が反省するより先に、
力づくで一時的に乱世を終わらせてしまうだけだろう。

今の民は乱世の収束を望んでいるが、まだ膿が出足りないのではないか。
後の民に更なる大きな災いの種を残したままで終わってしまわないか。
徐庶「本当は曹操がもっと活躍するべきだった」

徐庶は曹操という男が嫌いではなかった。あれこそ時代の革命児。
国政を独裁し、ごく短期間に新しい色に染め替えてしまう覇者は、彼一人だったのではないか。
呂布も一見独裁体制を布いている様であるが、国政ばかりは司空・荀ケが掌握する文官が、
万事を託され、乱世とは思えぬほどに緩やかな行政改革を施しているのが関の山である。

徐庶「では劉備や孫権はどうだろう」

思えば劉備は面白い。自分と似た境遇から身を起こしている。
この時代に梁山泊という言葉があれば、徐庶は迷わず劉備一党を
「反呂布人士の梁山泊」と呼んだであろう。
事実、劉備の本拠には今も続々と呂布を好まない人材が集まっていると言う。
世に知られる名では、袁術の遺臣・雷薄。袁紹の遺臣・趙雲。
そして曹操に近づけると危険と言う事で、陳羣に毒殺されそうになった郭嘉。
噂では馬騰も郎党を引き連れて、漢中に入ったらしい。
これでは近々、呂布と一戦ある事だろう。

孫権はどうか。
これは見た目以上に食えない男だ。荊州に攻め上ったときは、
「あくまで敵は荊州の劉表であり、呂布ではない」などと言い繕っている。
呂布も関中への進出で忙しく、孫権には軽い叱責をするのみでとどまった。
その場逃れの印象が残るにしても、機を見るに敏であればこその結果である。
荊州を奪えても奪えなくても孫権はそれほど大きな傷を受けるとは思えない。
全て周瑜の筋書きだろうが、それを演じる孫権もなかなかの役者である。

──さて、このような思案の末、徐庶は自分の身の振り方に決断を下さねばならないのだが。
431無名武将@お腹せっぷく:02/12/26 17:06
青春編は、よけいでしたか?一応、設定は変わらないようにしたのですが。
呂布は、三国志の前半の主役とも言われるぐらいで、武人としては優秀で
部下からの信頼も篤かったのでは、とかねて思っていたもので。それに知
謀が加わるわけだから、更に魅力的な人物になると思い、書きました。
(それと、このスレの問題点として、呂布そのものの魅力ある記述がいさ
さか少ないと思ったので。余計ならやめます。)
432無名武将@お腹せっぷく:02/12/26 17:11
陳宮が呂布を巻き込むまでは、張遼が呂布の部下だったとは思えないが。
433無名武将@お腹せっぷく:02/12/26 17:31
演義ベースと聞いていましたが?

一応、張遼も呂布も丁原の部下からスタートしており、「人中の呂布」と、
と「曹操第一の武将」との関係も魅力的かと思いまして。出生も近いわけで
すし、そのあたりあまり書かれることも注目されることもありませんが、
いい機会かな、と思ったので・・・・・。
出立を明日に控えて、魏越は遠乗りに出かけていた。

馬騰との激戦による疲労は言葉には言い表せないほどのもので、
旗本の兵戦の中で死んだ数よりも戦が終わった後に死んだものの方が多かったぐらいである。
残りのものも身体をロクに動かすことも出来ず、寝たきりに近い状態になっていたのだが、
ようやく成廉や旗本の兵達も回復し始めてきたようで明日にはここを立つことになっている。

魏越と成廉は元々それぞれ一軍を率いる将であった。
だが一時曹操と同盟を組む際、それまでの軍組織を再編成されることになり、
彼等二人には呂布の側近として旗本を率いるように直々に命じられた
配下の兵を奪われる格好になり抗議した魏越達に対して呂布は言ったものである。

呂布「お前達の将としての勇猛ぶりは俺が一番良く知っているが、
 一軍を預かる者として臨機応変に兵を動かす才は並みだ」
魏越「それがしの常山での働きを殿はご覧になっていたではありませぬか!」
呂布「ああ。魏越も成廉も張燕の農民軍相手に実に良く働いた。
 だがな、あの戦で俺はお前等を手元に置くことに決めたのだ」
成廉「そう申しますと?」
呂布「初め張燕が数を頼んで押し潰そうと攻めかけた時は相手に怯むことなく
 踏み止まり実に良く敵を叩き蹴散らした。
 が一旦相手が敗走を始め追撃に移ると、相手の小才の策に嵌り僅かな兵の動きにつられて
 余所の隊に比べて十分な働きとはいい難かった。損害も一番多かったしな」
魏越「そ、それは・・・」
呂布「お前達は明確な目的を持ってそれを遂行することはできても、
 自分で咄嗟の判断をするには長けていないと見たのだ」
呂布「別に貶しているわけではない。人にはそれぞれ適したところがある。それを生かすのが上に立つものの役目だ。
 それにお前達が側近として控えれば我が旗本の騎馬隊は更に強くなる。
 待遇も部隊長扱いに落とすことなく今まで通りだ。駄々をこねず腹を括れ」

思えばあの辺りからだろうか。呂布の顔つきが変わったのは。
それからというもの呂布軍は負けを知らない無敵の軍団へと成長していったのだ。
魏越も呂布の赤兎馬の両脇を自分と成廉が固めることに誇りすら覚えるようになってきていた。
魏越は最後にこの地を離れるに当たって戦場となった場所を馬で見て廻っていた。
屍は片付けられていたが、ここが戦場だったという痕跡は至る所で残されていた。
魏越も幾度と無く死ぬ思いをしながらも、こうして無事に生き残れた。
感傷などは持ち合わせていないが、見納めという気持ちぐらいにはなっていた。

魏越「成廉などはまだまだ鍛え方が足りないのだ」

魏越はそう思う。
主の呂布の域までくれば人ではないと思うが自分を始め、今日ぐらいになればこうして動ける者も出てきている。
成廉と共に駆けたい気分だったのでそんな愚痴もでる。
一度は乗っていた馬が潰れて落馬し、敵の馬を奪うものの一度はその馬も斬られてまた落馬と二度の落馬を経て、戦い抜いたのだ。
共に戦っていた成廉はその間ずっと呂布を護りながら戦い抜いてきたという差もあるのだが、魏越は気付いていなかった。

魏越「次は一度都に戻ってすぐに荊州か・・・」

僅かな間にもやることは沢山ある。
まず失った旗本の騎馬隊の兵を補充しなければならないし、訓練も施さねばならない。
呂布軍の命でもある旗本隊の全体の質を維持する為には、激しい鍛錬になるであろう。
魏越にとってものんびりできるのは今日ぐらいしかない。

この涼州での戦で得たものは少ない。
少なくてもここで残した数多くの屍の成果と呼べるだけのものがない。
馬騰韓遂の大軍を打ち破ったものの、肝心の両巨頭には西に逃げられた。
馬騰の三人の息子、馬超は生け捕り残り二人は乱戦の中に斃れていたが馬岱やホウ徳の生死はわかっていない。
韓遂にしても成公英ら主な幹部は全員逃げ延びている。
共に羌族と深い繋がりがあるだけにどれ程のものにせよ何れ再起しないとも限らない。
せいぜい豪族達を楊秋を除き、昨日合流した張燕が捕らえた成宜を含めて全員倒したぐらいだ。
これだけの血の代償と呼ぶには安過ぎる。
だが、全ては殿が決めることだ。我らは殿に従って目の前の敵を討つ。
それだけでいい。そうせよと命じられた生き方だったが、なるほど自分には性にあっている。

またここに来るかもしれない。
無駄とも思えるほどの、死闘を繰り返すかもしれない。
そして今度この地に斃れ伏すのは自分かもしれない。

魏越「それでも、構わぬ」

良い時代に、良い主君に巡り合えたと思う。
魏越は馬を返して、陣に戻ることにした。
寝込んでいる成廉をからかいながら、つかの間の休息を楽しもうと。


・・・西涼の酒も悪くない。

丁原の従事だった筈なので同僚関係。
ただ呂布が丁原と義理の親子関係を結んでいたのなら
上下関係があっても良いんじゃないだろうか。
青春編自体はどっちでもいい。

それよりも徐庶のは他の話と噛み合わない気がするのだが。
馬騰が漢中に逃げないための張燕の存在とか汝南にいるはずの雷薄とか。
別に問題が無いのなら、こっちの方をNG扱いで。
正直、荊州編全体に見直しの必要を感じる。
混沌としているのは判るが、本当に混沌としているままでどうする。

>430
趣味で人名だしすぎ。
>>298-303>>331>>413

          襄陽:曹丕・鳳統と劉表の対立

劉備勢:南西一帯を押さえるも関羽の敗走の後支配の確立ならず。
     近く、劉備率いる増援の投入。

                     孫権:周瑜の負傷と黄祖の抵抗に劣勢。
                          韓当の書状はどうなった?(>>221-222>>247)

※軍事的な膠着状態により各城がそれぞれ独立状態。
じゃあ429、430はなかったことで。
呂布が涼州を攻めた。
それを聞いたとき徐庶は呂布らしいと感じた。
なるほど、たしかに涼州は呂布に従っている。
しかしそれは形だけのものにすぎないと呂布は見抜いていたのだろう。
劉備と孫権が本気で呂布を潰そうと攻めてきたとき、涼州が敵にまわる可能性はかなり高い。
そうなればいかに呂布とてその平定にはかなり難渋するはずだ。
先を見据えた戦。
「恐るべき男だ」
徐庶は心からそう思った。
だが同時に呂布という男に強い興味を抱いている自分もいた。

自分が天下に一番近い男としてみていた曹操。
それを打ち破った呂布。
戦をすればまさに鬼神。
やはりああいう男が天下を取ればいいと思う。

その呂布がまもなく涼州から帰還してくる。
休む間もなく次は荊州に向かわねばならない。
その前に一度呂布に会い、自分も軍師として連れて行ってもらうことを頼むつもりだ。
荊州のことは知り尽くしている。
自分がいれば荊州平定も少しは楽になるはずだ。

孔明は劉備を選んだ。
子元もあの様子では誰かに仕えているのだろう。
自分は呂布を選んだ。
ならば呂布に天下を取らせる。

徐庶は呂布が帰還してくるであろう方向を飽きもせずただ眺め続けていた。
どうにも自分を安売りしたり型に嵌めた考え方をする徐庶は我慢できないな。
思うにこのスレで徐庶は鬼門ではなかろうか?
443青春編:02/12/27 08:12
漏れもそう思うわけだが。
しかしながら、原作でもその実像は希薄だし、孔明の前触れ的存在なので、
創作上の自由度は高いのでは。
442に同意だが、441は他と違って話自体に問題は無いのでいいのではないか。
後はそれをどううまくもっていくかだ。

>>427
紀霊編は無し?
今、袁煕の足元に公孫康の首級が横たわっている。

前日の匈奴の猛襲により捕らえられた男の最期であった。
匈奴軍に組する者が公孫康軍内部から呼応したため、パニックに陥った軍隊は完膚
なきまでに打ち滅ぼされた。その勢いに乗って匈奴軍は公孫康が統治する并州にま
で討ち入った。
一旦は匈奴軍が占拠したと思われた并州はあっけなく袁煕軍によって奪回された。
もともと匈奴は流民であり、土地を侵略し統治することに固執いていないためで
ある。袁煕軍が并州城に到着した時には既にもぬけの殻で匈奴の軍は退却した後だ
った。唯一つ、公孫康の変わり果てた姿を残して。
そして、袁煕軍は全て手筈通りのように一兵も損じることなく并州城に入城した。

密使に託されたもう一つの書簡とは司馬懿が匈奴王に宛てたものであった。
「此れまでの謀、恙無く候。」
もっとも、匈奴からの密使は司馬懿が画策したものであった。
許攸「漁夫の利とは当にこの事。まんまと并州を手に入れることができた。」
袁煕「うむ。」
高幹「こう、あっけなくては、むしろ拍子抜けしますな。」
沮授「公孫康の軍に内応者がいたらしく、近隣の農民などにはさしたる被害もなく
   あっさりと戦が終わったらしいです。事実我が軍が到着する前に匈奴軍すら
   退却していたのですから。。。公孫康様は手厚く葬って差し上げましょう。」
袁煕「そうだな。公孫康殿をこの并州の一番高い丘に埋葬し大げさに葬儀を執り行
   え。」
沮授「畏まりました。」

近隣の勢力や農民達に匈奴と組んだことを悟られるのはまずい。
袁煕以下、主だった者達はそう考えていたに違いない。


この後、平州城にて事態の収拾で数日駐屯していた袁煕のもとに呂布からの使者が
到来した。
使者「今回の事変のこと、迅速に鎮圧した功で河北一帯の統治を任ずる。との呂布
   様からの御言葉を慎ましく御受け頂きたい。」
袁煕「恐悦至極でございます。しかし、事態の収拾が未だ片付いておらず、呂布様
   への報告も怠っていたのだが、一体誰からの通達か?」
使者「司馬懿様からの急使にていち早くお知らせ頂きました。」
高幹「さすがは司馬懿殿、抜かりは御座いませんな。」
司馬懿「このような事は一番でに片付けることが得策かと思い、身勝手に自己判断
    で呂布様に遣いを出し、御報告申し上げました。申し訳ありません。」
袁煕「いや、その心遣いで事態が事の外、楽になった。わしからも礼を言う。ご苦
   労であった。」

後に、袁紹の甥である高幹を并州の牧に任じ、袁煕は冀州へと帰還した。

沮授「(・・・何かおかしい。事態をまるで予測しているかのように振舞っている。
   司馬懿殿は何か企んでおるのではないか・・・。いや、考え過ぎかもしれぬ。
   確かに司馬懿殿は我が袁一族に利するよう働いているではないか。)」
自分に言い聞かせようとしたが、その気持ちが晴れたのではない。
(もうしばらく、様子を見る必要がある。。)
448無名武将@お腹せっぷく:02/12/27 14:22
徐庶は劉備に肩入れすれば問題なし。
449無名武将@お腹せっぷく:02/12/27 14:24
>>439
とりあえず韓当の書簡だとか、そういうややこしい伏線は
張り巡らせた奴が自分で始末つけて欲しいですな。
450無名武将@お腹せっぷく:02/12/27 14:26
>>444
紀霊編は後に続くもの次第でせう。
父の袁紹に
「大人しすぎてものにならない」
と評され跡継ぎの候補に上がらなかった袁熙。
兄の袁譚と弟の袁尚の陰に隠れて目立たない次男の袁熙。
特に弟の袁尚の美貌を愛し、袁紹は後継者にしたいと思っていたが
今やその兄も弟もこの世にはいない。

「もし、二人が生きていればこのような地位に就けなかったであろう。」
それが本心であった。
だが、彼はいまや河北一帯を統治する首領となっている。

公孫康と匈奴の争いに乗じて并州を平定し、さらには北方の烏丸・匈奴
などの異民族をも鎮圧した袁熙は河北一帯から大きな名声を得た。
其れを聞くに及び、亡き父に仕えていたが、争乱後全国に散り散りにな
っていた旧家臣たちが続々と袁熙のもとに馳せ参じた。

父とともに八校尉として活躍した淳于瓊。
袁紹軍の勇将として活躍した顔良と文醜。
辛評・辛比兄弟。
数々の面々が集い、徐々に肥大して確実に勢力を増していく。。。
複雑な表情を浮かべながら退出する沮授とは対照的に、
落ち着いた物腰で場を後にした男がいる。
郭図公則。

袁紹父子の敗死後、各地で呂布軍と転戦していた兵は散り、
それを率いていた将は降る隠れるかしかできないでいた。
そんな境遇の中でも再起を誓ったのが辛評と郭図だった。
益州にまで逃れていた高幹、陳琳を呼び寄せ、降っていた審配も引き入れ、
共に呂布に反旗を翻そうと共謀したものである。

だがその謀は既に呂布に見破られた。
それどころか理を尽くしてその愚を責め、改めて自分に従うように諭したのだ。
その時、郭図は初めて自分が敗れたのだと悟った。

呂布の勧めもあって旧臣として冀州に戻り、袁熙に仕えるようになって少し経つ。
ここは何も変わっていなかった。
袁紹軍として綺羅輝く将星達が揃い、数々の学者賢者が集まっていようとも何一つ昔のままだ。
大軍を擁しながらも小策に固執し、自分だけが苦労を背負い込まずに益を得ようとしている。
いや、袁熙殿は変えようと変わろうと努力している。
が、この土地が自分達がそうさせないでいる。

かつて袁紹は自分達策士を大量に抱えながら、それを互いに競わせようとした。
その結果切磋琢磨するのではなく、互いが互いの足を引っ張り合う結果となり、何一つ良いことなど無かった。
郭図自身、仲間の誰とも肌が合わなかった。
沮授田豊らは頑迷で、審配はひたすら強硬一辺倒、許攸は自分の懐を膨らますことばかり考え、逢紀は媚び諂ってばかりだった。
郭図も良き家臣とは呼べないだろう。自分の策を絶対と信じ、自分と相容れないものは押し潰そうとし続けた。
そんな愚かなだったあの頃の自分も今だからこそ、見えてくる。
今回の一連の会議、軍議では郭図は一度も発言をしなかった。
以前の彼を知っているものは皆黙って座っているだけの郭図を不思議に感じたであろう。
彼はいつも先陣を切って熱弁を振るい、逆らう意見を撫で切るようにして論破していったものである。
その彼が一度も口を出さず、冷ややかに見詰めている。
老いたと受け取られたようで、そのことを彼に聴いて来るものはいなかったが。
郭図に親しい友人はいない。今、呂布に重く用いられている田豊や、先ほど退出していった沮授とは特に仲が悪い。
審配と彼等、彼等と逢紀、審配と許攸などと特に憎しみあっているわけではない。
誰に組することも無く、誰に阿ることも無く、自分一人の才を信じきっていた郭図だった。
ただ自論に逆らう相手は敵であり、敵を叩くことに関しては躊躇しなかっただけのことだ。
自分の言葉さえ受け入れられれば良いので手段は問わなかった。
時には審配と結んだり、逢紀の後押しをしたりした。
田豊と沮授の二人はそういうことを何よりも嫌った。だからあの二人は今でも郭図を嫌っている。

自分の意見に酔いして、自分の策に溺れきった。
そんな己を戒めたのは誰でもない。主、呂布奉先である。
審配、辛評らとの謀が漏れた時、自分の全てを言い当てられた。
あの時は反発しか沸かなかったのだが、今こうして冀州に戻ってみてわかった。

このまま放っておいては、腐り果てる。

司馬懿仲達という男、袁家の為に尽くす男ではない。
人を見ず、心を信じず、策謀だけを信奉する自分だからこそ気付けたのかも知れない。
あの男をそのままにしておけば、袁一族は彼にいいように操られかねない。
今度の企てで既に奴に借りと負い目を作っている。
だが、その事を言ったところで浮かれている今の状況では受け入れられまい。
何より、自分の方が信用などされていないだろう。

郭図は自室に籠もると、呂布にあてて密書を書いた。
己に司馬懿を凌駕する才がなければ、今はこうするしかない。
諦めに似た気持ちを抱きながら、郭図はため息をついた。

これが、おそらく袁家への最後の奉公となろう。
今まで地味に袁一族を一人で書いていたが、作家さんが一人増えた〜
さんくす(´∀`)ココロヅヨイデス
お前らか袁紹の一族を書いていた奴は。
邪魔だから止めてくれ。
部屋の小窓から差し込む月光が、一人の若者のシルエットを浮かび上がらせる。
自分の才能を信じ、頭脳に酔いしれ、常に勝つことだけを信じて疑わない男、司馬懿仲達。
彼は自分を推挙した許攸に阿りながらも巧みに袁家内に自分の勢力を伸ばしていた。
雁首は揃っているものの自分に匹敵するような智謀の主はいない。
皆古いものばかりだ。時代は変わりつつある。
自分のような若者こそがこれからは必要になっている。国家自身が望んでいる人間なのだ。
まずは呂布の地盤のひとつでもあるこの河北を袁熙の手から奪う。
策略を大して寝るまでも無く、それは簡単なことだった。匈奴とも既に話はついている。
まるで戦の結果がわかっていたかのように現れた呂布の使者に誰一人疑おうともしない。
本当は中央にこのことなど知られていない。
従って袁熙が独断で公孫康の首をとったということになる。
袁熙の首を取る大義名分はそれからなら幾らでも作り上げることが出来る。
匈奴に兵を出してもらい、内応の者と共に袁熙を討ち果たし冀州を取る。
この土地を制し、匈奴と組めば呂布も容易く討ち入ることは出来ない。
そして何よりも有益なのが時間である。呂布にはまだ跡継ぎがいない。
懐柔策の一環として娘の一人が曹彰に嫁ぐらしいが曹操の息子に跡を継がせるわけはない。
呂布が死ねば呂布の王国は崩れ去る。そうなれば劉備孫権との勝負である。
縮こまってばかりの臆病な孫権に、目先の物事に捕われて大儀を失っている劉備など敵ではない。
逸早く呂布の旧領を制すれば・・・そんな勝算が司馬懿にはある。
その時にすべき策謀が次から次へと頭に沸いてくる。
「・・・逸る必要はないのだ」
そう呟きながらも、司馬懿は夢想をやめない。
あまりにも上手く行き過ぎている現状に驕っていた。
そう今の彼は天下を手に掴むことなど容易いとさえ思えている。
「ん?」
風もないのに燭の灯りが揺れた。
「・・・っ」
だがそれも一瞬の事であった。
人知れず、闇が蠢いた。
「全て終わりました」
匈奴の若者達が深々と頭を下げる。
「ご苦労であった。殿へは私から必ず話しておく。単于殿に宜しくお伝えしてくれ」
そう労いの言葉をかけると、若者達はそれぞれの収穫物をその場に置いて彼の前から姿を消した。
彼等は都に留め置かれた単于呼廚泉の弟去卑の配下の若者達である。
今の南匈奴の首脳達と敵対する勢力の彼等からすれば、郭図の内命は自分達の存在をアピールする良い機会だっただろう。
だがそんな彼等すら郭図は欺いていた。これは全て彼だけの独断による謀なのだ。
目の前には司馬懿と彼に踊らされた許攸、そして司馬懿と手を組んでいたと思われる淳于瓊の首があった。
それぞれに驕慢という弱点を抱えていただけに、殺されるまで自分が命を狙われるということさえ気付かなかったであろう。
特に司馬懿仲達。
もっと歳を経て経験を積んでいれば思慮深く、恐ろしき存在になっただろう。
恐ろしき才を持ちながらも、迂闊過ぎた。

生涯で一番の策がなった。そう自惚れても良いだろうか。
首級を肴とし、郭図は毒酒をあおった。
司馬懿らを殺した罪を袁熙に及ぼしてはならぬ。
公孫康を匈奴と組んで勝手に滅ぼした罪を袁熙に背負わせてはならぬ。
司馬懿を操ったのも、袁熙を誑かしたのも全てはこの逆臣郭図公則の企みである。

「我が謀、成れり」

郭図の最後の言葉を聞くものはいなかった。
>>455
本当にやめちゃったよ
もともと袁熙の話の設定は>>294>>342とずれてたし、
いいんじゃないの。旧臣がほとんど生きてたってのも
萎えるし。でも幕引きは見事だったかも。郭図ナイスだ。

問題はむしろ荊州だな。こんがらがった状況をどうやって
整合させるのか、そっちに期待。

あと、職人はできるだけ表に出てこないでほしい。
塩基の話は魏が晋にかわる様を見られるような気がして
楽しみだったのだが、これはこれで面白かったのでいいのではないか。

徐庶は史実に同じく使えるべき主を失っての隠遁も一案かも。
最終的には、銀英伝の様に不安要素を残しつつ、
呂布の天下統一がなるものだと思ってた。
誰でも彼でも呂布に心酔するのはなー。
 ドタドタドタと荒い足音が徐々に近づいてきて、曹操は顔をしかめた。

曹彰「親父殿。いるか?」
曹操「声だけ潜めても、それだけ足を踏み鳴らしておれば意味はない」
曹彰「そうか。どっか抜けてるな、俺も」
曹操「……よい。用があるのだろう。入れ」
 曹操がそう言うと、曹彰がノシノシと彼の部屋に入ってきた。
 彼を見たものは誰も曹操の息子とは思わないだろう。
 去勢され宦官となった曹操とは既に三回り以上の体格の差があった。

 誰もが曹彰を初めて見た時、図体ばかりの馬鹿だと認識する。
 呂布のような巨躯というわけでもないのだが、年齢以上に育った肉体からは繊細さは窺えない。
 その上、うるさい奴で嫌でも目に入り、何かと態度も目立つ。
 曹彰とはそんな男だった。

 曹操自身、数ある子供の中でも嫌っていた。
 落ち着きが無く、煩く、我侭で自分勝手、
 その癖陽気で明るく緊張感のない態度癇に障って仕方が無かった。
曹彰「それで親父殿」
曹操「植のことか?」
曹彰「……すげぇ。お見通し?」
 驚いたような顔を向ける曹彰を見ていると久しく忘れていた頭痛の痛みを思い出さずにはいられない。
 できれば曹操にとってみれば顔もあわせたくない息子である。
曹彰「お袋から頼まれてたんだけど……やっぱり親父殿が何かやったんだな」
曹操「恐らく植が卞に泣きついたのであろう。全く稚気が抜けぬ奴だ」
曹彰「あっはっは。そりゃあ無理だ。親父殿。子建は兄上や俺みたいに開き直れるところはないから」
 他人事のように笑う曹彰を冷ややかに見詰めるが当の本人は気付いた様子はない。
曹彰「親父殿。たまにはお袋に会ってやれよ。せっかく女遊びもできなくなったんだし」
曹操「用はそれだけか?」
曹彰「熊なんか親父殿の顔忘れちゃうんじゃないかって……おっと、脱線しちまった」
曹操「父は忙しい。手短に話せ」
曹彰「親父殿の持っている倚天の剣だけど、俺にくんない?」
曹操「……」
曹彰「親父殿も承知していると思うが、涼州の仕置きも済んだし次は荊州だろ。あと、予州の汝南方面で賊が暴れているとかいうからそれの討伐隊もあるだろうしそろそろ俺も一軍の大将として働きたいんだわ」
 曹彰は曹操の顔も見ず勝手に喋り続ける。
曹彰「ホラ。もう親父殿が戦場に立つことってないだろ。兄上も剣を奮って戦うような感じでもないし、折角の名剣が死蔵されるのは勿体な……わっと!?」
 一振りの剣が鞘ごと曹彰の顔に投げつけられ、すんでのところで受け止めた。
 部屋に飾られていた倚天の剣である。
曹操「これ以上きさまの声を聞いていたら脳が腐るわ。失せろっ!」
曹彰「お、悪いね。親父殿。でも本当にお袋のところに帰った方がいいぜ。子建の奴、亡者みたいな白い顔をしてふらふらしてたし」
曹操「誰かある! 野人のお帰りだ。丁重にお帰り願え!」
曹彰「どっちに行くにしろ凱旋したらまた寄るわ。じゃ」

 曹彰がいなくなってから曹操は大きなため息をついた。
 心底疲れたような顔である。
 曹丕といい、曹植といい、あの曹彰や病弱の曹熊など、正室の卞夫人の息子達は全員何か欠けている。
曹操「子脩が生きておれば……」
 初めて漏らした弱音だった。
464無名武将@お腹せっぷく:02/12/29 00:25
>>459
どこがずれているんだろう?顔良くらいだが

460の言うように自分は司馬懿の表舞台での活躍を見たかった。
呂布の下でも曹丕の下でもいいが。

職人が表に出るのは確かに萎えるな。
このスレでは炎症は派手に戦死して、その様は呂布の苛烈さを示す語り草になっている。
それなのに顔料・文集の将軍をはじめに元配下が悉く生き残ってるいるのはいかがなものか。
ぼくも激しくそう思った。
だから袁紹の遺臣が出ることに強い抵抗感が。
>>465
>>466
まあ待て。
ポンポン増やしていったのは>>454一人だ。
それ以外のは許してやろうや。
あまりに酷いのは文醜以外は郭図が始末してくれたし。
shoujiki河北騒動編は審配・郭図でお腹いっぱい。
袁紹旧臣は張コウあたり除けばもう出てこないだろうから、
つじつま合わせは、もうしなくていいと思う。

北方民族を心酔させ、呂布に逆らう気も無い袁熙のもと
静かに繁栄して、ゆくゆく王になってみたり
そのあとのお話で一騒動あったりと妄想シテミル。

ヤッパリ ブンカンガ イッパイ ウマレタリ、 ソノゴノ レキシノ キーポイントダッタリ シチャウノカナ…モウソウハツヅク…
ところでこのスレの話は何年に起こってるんだ?
470454:02/12/29 20:37
まず、表に出てきたのはスマン。
ただ、同士がでてうれしかったのでつい感謝の言葉をいったまで。
それをわかった上で職人がコンタクトとるにはどうすればいいものか。。

>>467
郭図の謀略編以外はすべてオレ一人の創作なのでお間違いなく。
エンショウ配下はどうでもよかったが、それを足場にしてシバイを表舞台
に出したかっただけ。
これから職人さん頑張ってください。
もう書きませんすみません。すみません
>>470
気にしないほうが良いんじゃない?
ここの住人、文句が多いから。
完成度云々は言える立場じゃないけど、ちゃんと書いたのは充分立派だと思うよ。
職人はずっと黙ってろってことじゃないだろ。実際上でも何度か出てきてるし。
ただ、馴れ合いに見られかねないカキコミはしないほうがいいだろうな。
このスレは最初から職人同士や職人と住人との馴れ合いを避ける方向で
やってるし。

司馬懿を登場させたことで文句言われたわけじゃねえだろ。登場のさせ方が
まずかったわけで(遺臣をワラワラ出したりしたとこがな)。個人的には
わざわざまわりくどく河北に登場させるよりも、端から襄陽あたりに放り込んで
曹丕に絡ませた方が面白くなった気が。鳳統あたりと反目して対立するとかさ。

その辺の匙加減に気をつけて、また書いてみればいいじゃん。
473無名武将@お腹せっぷく:02/12/30 19:22
芸を非難して、人を非難せず。
多数の趣味に合わせるのは大変だと思うが頑張れ。
>>472みたいにエラそうに書く香具師に限って文意を理解してない。
「それをわかったうえで」と言ってるだろう。それに司馬懿を登場させた
ことを謝罪してるのではなくて、司馬懿を表舞台に出さんがために遺臣を
登場させたことを言ってるはず。ここからどうもって行くかは職人の力量
次第。>>457でちゃんと区切りつけてるみたいだし。
ここでは職人が物語を創作して住人が読む場所。
文句ばかりの香具師は出てこないでほしい。

次の職人さ〜ん カモ━━(゚∀゚)━━ン
徐庶「ん・・・あ・・・」
目を開くと天井が見えた。
徐庶「む・・・?」
自分はどうやら寝ているらしい、そう気付くと同時に徐庶は身体を起こした。
徐庶「うっ・・・ぐ・・・」
全身がキシむように痛みで、自分がどうしてこんな状況になったのを思い出していた。
??「目が覚めましたか」
若い声。その声の方に首だけを向けると召使に水の入った盥を持たせた青年がいた。
??「徐庶殿でしたな。ご無事で何よりです」
召使に命じて徐庶を寝かせて布団を直させると、すぐ側に腰を下ろした。
徐庶「貴殿は?」
??「ああ、申し遅れました。孫礼将軍の下で校尉を努めている費曜と申すものです。
主の命により徐庶殿を我が屋敷に迎え入れさせていただきました」
徐庶「徳達殿は将軍に昇格なされたのか」
費曜「ええ、大将軍閣下が都に凱旋し、叙勲式が執り行われた際に・・・」
徐庶「大将軍か・・・」
その言葉にズキズキと傷が痛む。この傷はその大将軍呂布に打たれた傷だった。
徐庶「その大将軍殿は噂に聞いていた以上の気まぐれなお方と見える」
費曜「それがしこそ、徐庶殿にお聞きしたい。どうしてあんな口をお聞きになられたのか」
徐庶は涼州から帰還する途中の呂布の軍を待ち受け、宿泊場所を探して堂々と面会を申し出た。
そこで呂布に会い、天下への計略を述べて自分を売り込むことにしたのだ。
派手で豪胆な男を好む呂布の性格を考え、豪傑としての振る舞いをしたのだが突然呂布は嚇怒すると徐庶を拳で打ったのだった。
もし自分の行いが無礼だと思われたのであれば門前払いを食らうであろうと思ったがそれはなかった。そこは読み通りであった。
しかし、弁舌に対して不機嫌になったのであれば表情を読んで話し方を変えるつもりであっただけに、いきなりの豹変は流石に予期できなかった。
それまでは上機嫌とまではいかずとも自分の言葉を面白そうに呂布は聞いていた。
少し言葉が過ぎた部分もそれほど気分を害していなかったのだけに、あの豹変振りは気まぐれ過ぎる。
それだけに呂布の激怒の理由がわからないという徐庶の言葉を費曜は苦笑しながら聞き取ると、こう答えた。
費曜「徐庶殿と同じことを言って叩かれた御仁をそれがしは二人存じております」
徐庶「二人?」
費曜「はい。一人は幕僚の中でも内向きな部分を総括されておられる賈ク様。
もう一方は冀州で仲間と再び反乱を起こしかけ、遭えなく自害した郭公則」
徐庶「その二人は私も知っているが・・・呂布殿の下で天下を語るのはそんなにいけないことなのか?」
費曜「違います。そのお二方と徐庶殿は口にされてはいけないことを口になさったのです」
徐庶「判らぬな」
費曜「大将軍閣下の下で働くのであれば決して言ってはならぬことが一つだけあるのです」
徐庶「なんだ、それは?」
費曜「"軍師"です」
徐庶「はあ?」
費曜「大将軍閣下は常々こう申されております。"俺の軍師は陳宮唯一人"と。
従って何方も大将軍閣下の軍師になることも、それを申し出ることもしてはならぬのです」
徐庶「馬鹿な。呂布・・・殿はその陳宮の首を差し出して身の保全を図ったのではないか」
費曜「だからこそです。丁建陽、董仲潁を始め大将軍が斬った者の数は計り知れませぬ。
その中で唯一、大将軍閣下が斬った事を悔んでおられるのが陳宮殿だということです」
徐庶「・・・」
確かに自分は呂布の軍師になるつもりで出向いていた。その事を口に出していたかもしれない。
焦りがあった。かつての仲間達は皆、それぞれの陣営に散って要職に上り詰めていたのだ。
劉備軍の法正の下では諸葛亮孔明が、曹操曹丕親子の下ではホウ統士元がそれぞれ存在感を強めている。
自分だけが劉表如きの雇われ暗殺者で留まるのは口惜しい気がしていたのだ。
その上を、と考えて焦っていたのかも知れない。
自分は策謀の士というよりも戦場に控え計略を立てる方が向いている。そんな気持ちもあった。
だが、呂布が軍師に関してそのような感情を抱えているとは気がつかなかった。
当時の呂布奉先の立場を考えれば、陳宮は曹操との同盟にはどうしても邪魔な存在である。
そして曹操と組むしか生き延びる道は無かったと呂布は考えたからこそ、股肱の臣である彼を斬ったのだ。
その悔しさが、軍師職を彼に捧ぐという彼なりのけじめみたいなものに繋がっているのかもしれない。
そこまで考えると徐庶の中での呂布像を修正したくなった。
まだ自分の知らない呂布奉先の部分を知ってみたい気分になった。
費曜「幸い打撲傷も酷くなく、骨も折れていないみたいです。鍛えていらっしゃったのが幸いしたのでしょう」
呂布の拳をまともに食らったら文官などは命に関わりかねないのだそうで、前述の二人などは暫く寝込んだのだそうだ。
それでも賈クはまだ諦めていないらしい。難しければ難しいほどやりがいを感じるのだそうだ。
郭図の方はそれを不満と感じ、恨みが募って許攸らを語らい反乱を起こしかけたらしく、その企みは袁熙と沮授の手で潰されていた。
費曜「冀州殿は郭図らに騙されて奪った形になった并州を大将軍閣下に返還なさることで、侵略の件は不問となったそうです」
徐庶「それよりも費曜殿」
費曜「何でしょう」
徐庶「呂布殿を怒らせた私をどうして孫礼殿は運んでこうして介護までして下さったのだ」
費曜「それは・・・」
徐庶「ふむ。何か事情があるようですな」
初めて表情を変える費曜に徐庶は身体の痛みも忘れて笑顔を向けた。
費曜「これは私も聞いただけのことですので、はっきりとはわからぬのですが」
徐庶「ふむ」
費曜「もし仕えたければ、曹彰様の下で働くようにとの仰せです」
徐庶「曹彰? 曹操殿の三男坊でしたか」
費曜「はっ」
徐庶「ふむ・・・すると曹彰殿は近々軍を率いる立場になられるのですな」
費曜「予州へ派遣する軍の大将を命じられたそうです」
徐庶「予州・・・汝南ですか・・・その軍には孫礼殿は?」
費曜「いえ。救援軍の中核は夏侯兄弟ら旧曹操軍が固めるそうで、孫礼殿は恐らく荊州かここの留まるかどちらかと」
先に荊州に派遣している曹丕を信用していないのだろう。曹彰らが裏切らなくても曹丕が反乱を企てれば兵や将校は動揺する。
同様に費曜の表情からは窺えないが、曹彰は呂布の義理の息子という立場での大将抜擢で不安が拭えないのだろうとわかった。
嫡子がいない呂布なだけに曹彰の立場も微妙な位置にあるといえる。
言ってみればこのまま呂布が世継ぎを作らねば後継者レースの一人に立ちうる可能性が高い。
呂布を観察する上でも少し離れた位置にいた方がいいかも知れない。
徐庶「ほ・・・悪くない話ですな」
他にアテもない徐庶は、曹彰という人物に不安を抱きながらも費曜に頷いてみせたのだった。
 都に戻った呂布を待ち構えていたのは想像を遥かに超える雑務の山であった。
 内政は荀ケ田豊らが、外務は孔融らが、軍務は張繍らが、その他の部分は賈クらが、
大分処理をして負担を減らしてはいたものの大国を治める主としての仕事の量は少なくなかった。
 すぐさま荊州に出征するにしても兵を再編成せねばならず、その準備も忙しかった。
 河北の袁熙ら各地に書状を出し、兵を送るように指示しながらも自らは今後の軍略を練っていた。

 改めて陣容を眺めると東南の孫権の備えに高順と張遼を置き、
 西には新たに張コウを残してきているので、
 中央の呼び掛けに応じて兵を出せるのは徐州を抑える臧覇軍ぐらいである。
 その臧覇の軍も荊州に入るのは汝南の賊の掃討を優先させねばいけない。
 一見するとかなり痛いように思える。
 更に荊州の援軍に向かわせた曹丕が不穏な動きを見せているとの連絡があり、
汝南の騒乱も何やら裏があるとの報告を受けている。
 北の方も并州の公孫康が騙まし討ちに遭い、今は落ち着きを見せているというものの万全とは言い難い。
 宮中の曹操の屋敷も人の出入りが激しく油断ならない。
 遠征した西涼も鎮撫し終わるにはもう少しかかるだろう。
 周囲皆敵とまではいかなくとも、寛げる場所は殆どなかった。
 それでも呂布は苦悩することはなく、状況を楽しんでいた。
 西でも馬超のおかげでそれなりに楽しむことができた。
 今度の荊州遠征ももっともっと苛烈で苦しい戦いが待ち受けていることだろう。
 それが楽しみで仕方がなかった。

 呂布奉先にとって興味があるのは一呂布奉先が戦い抜いて天下を獲ることであり、
それ以外に興味はなかった。
 だからこそ呂布の後継者問題などには興味がない。
 彼自身は呂氏の天下というものに興味はない。
 自分自身が楽しめればそれで良い。
 戦って戦って戦い抜くことができる立場に立つということをしたいが為の今の大将軍という地位である。
 戦いに魅入られてしまったのだとも言えよう。
 曹操を倒し、袁紹の大軍を打ち破ってからの呂布は戦いそのものに執着するようになってしまっていた。
 陳宮との夢。天下を獲ること。これは果たそうと思う。
 しかしただ獲るのではなく戦場に立ち、戟を振るい矢を射掛け馬を駆けさせ続けて獲ることを思っていた。
 自分が王になるとか、皇帝につくとかは考えていない。
 自分の王国、王朝などに興味はない。天下一にさえなればそれでいい。
 結果は周りで勝手につければ良い。荀ケらの望むような漢王朝を盛り立てる立場でも構わない。
 今自分がやること全てを誰にも邪魔されず、束縛することなければ後はどうだって知ったことではない。
 この世が自分という男を生み出したのであれば、自分らしく生き抜いて見せよう戦い抜いて見せよう。

 もし自分が戦い半ばに斃れたのならば、滅ぼうとも構わない。
 それまでのことだ。

 曹彰を紀霊の救援に向かわせた。
 臧覇軍の山岳兵を側面につければまず問題はあるまい。

 荊州も孫権軍は張昭と程普の計で引くことになっている。
 既に先に揚州に送還された周瑜は帰した程普の手で軟禁されているとの知らせを受けている。
 残った魯粛は大人しく兵を返すしかない筈だ。
 後は劉備軍と、曹丕である。
 呂布としては曹丕が劉備と結んでいるかと思っていただけに今の膠着状態を不思議に感じていた。
 既に劉表を斬り劉備軍を入城させているとの読みは外れていた。
 曹丕が自分に従うとは思っていないので、どうやら曹丕は荊州で独立したいらしい。
呂布「曹操にしてはつまらぬ手だ」
 ここは劉備軍に従った方が呂布を迎え撃つには得策である。
 下手をすれば挟撃を受けかねないし、従った振りをして呂布の油断を討つのだと考えているのであれば更に下策だ。
 曹丕の目指す曹氏の天下獲りと曹操の劉備への天下獲りの手助けとの狙いの齟齬ができていることを呂布は知らない。
 だからこそ今の膠着状態が不思議でならなかった。
呂布「まとまらぬのであれば、まとめさせるか・・・」
 曹操軍で生かしておきたいものは曹彰の軍に編入させてある。
 後は何れは逆らう者と決めていたし、その筆頭が曹丕である。
 この荊州伐で討つ相手と定めていた。
呂布「劉備とはまだまだ先の戦いが残っている」
 贅沢はすまいと思う。ここは周瑜と曹丕を叩ければ良い。
 劉表の身柄を差し出した代償とすればその程度で十分だろう。

 そう思いながら呂布は荊州派兵の選抜を行うことにした。
 少しまとめてみたつもりですが、ここは違うという部分があれば修正宜しく。
 現状では方向性がよくわからないのでちょっと出てみました。
 ウザかったらスマソ。

 年代は劉表が健在なのと曹操の子供らの成長振りを考えて
 203〜7年あたりを考えていますがどうですか?
徐庶のあつかいもうまくまとまってるし、いいんじゃないの。
陳宮がクローズアップされてるのいいな。
袁家と徐庶の話が綺麗にきまったね。
曹操の子供に参謀がついてるっていうのも面白い。
これから荊州がどうなるのか。
期待してます。
見事です。理想的な方向に進みそう。
保守
487無名武将@お腹せっぷく:03/01/06 23:20
age
曹熊「あ、兄上〜」
曹彰「あははは。どうした熊。もう降参か」
自分の前に座らせた曹熊に手綱を任せて、曹彰は馬を走らせていた。
まだ童子とも言える相貌の曹熊の怖がるその手に自分の手を重ねて馬を抑えた。
曹彰「怖かったか?」
曹熊「は、はい。心の臓が止まるかと」
曹彰「だがどうだ馬の上は? 視界が違って見えるだろう」
曹熊「はい」
曹彰「そうかそうか。熊ももう少し身体を鍛えねばな。植もああ見えてなかなか体は丈夫なのだぞ」
曹熊「子建兄上様はご無事でしょうか」
曹彰「まー、親父が行かせたわけだし、大丈夫じゃないか?」
曹熊「心配です」
曹彰「お前、優しいやつだなぁ・・・」
曹熊「あ、兄上。痛い・・・」
大きな手で曹熊の頭を擦るように撫でる。
曹彰「今日は身体の方も大丈夫そうだし、どうする? もう少し乗ってるか?」
曹熊「いえ。そろそろ日も落ちてきましたし・・・」
曹彰「そうだな。身体が冷えるといけない。これぐらいにしておくか」
曹熊「はい、兄上。わざわざ、ありがとうございます」
曹彰「馬鹿。無理矢理連れてったんだから礼なんて言うな」
曹熊「ですが、こんな私に構ってくれるのは兄上だけです」
野営地の方に馬を返し、先に下馬してから曹熊を抱きとめて降ろす曹彰に曹熊は嬉しそうな目を向ける。
曹彰はその眩しい視線を受け止めるのが嫌いではない。
だからなのか昔から必要以上に曹熊に構っているところがあった。
元々同腹の兄弟でありながら曹兄弟はうまくいっているとはいえない。
父親である曹操、長男にあたる曹丕の二人が特に家族という存在を重く見ていないせいか、バラバラな部分が強い。
曹彰『俺だけなのかなぁ・・・こーゆーの』
やっぱり血を分けた兄弟家族は特別な存在だと曹彰は思う。
だからこそ遠い存在になりつつある父曹操に嫌がられながらもちょくちょく会いに行くし、
計算づくで冷徹な兄曹丕にも、夢見がちのくせに醒めている弟曹植にも兄弟として接しようと心掛けている。
曹熊「それでは兄上。おやすみなさい」
曹彰「おい。暖かくして眠るんだぞ」
曹熊「はい」
この末の弟の曹熊に至っては父も兄弟もまるでいないもののように扱っているのが辛かった。
確かにこの乱世で病弱というのは欠陥なのかも知れない。
だからといって存在を見捨てられるということがどうにも曹彰には納得がいかない。
できれば曹熊にはもっと強くなって欲しいと思う。それには布団から出ることだ。
そんなわけで屋敷で寝てばかりいては身体が腐ると、無理に連れ出した。
戦場は確かに危険だが帷幕に置いておけば自分さえ敗れなければ大丈夫だろう。
曹彰「帰ったらお袋に大目玉だな」
それでも曹熊が自分を慕ってくれているのを見ると嬉しくてたまらない。
他の兄弟ともこうできればいい。だがそれが無理であることは曹彰も気がついていた。
徐庶「子文様」
曹彰「おう。今行く」
参謀の徐庶が呼んでいる。恐らくまだ洛陽に近い今のうちに曹熊を帰せという苦言だろう。
曹彰は野営の為の篝火のひとつを眺めながら、どう徐庶を言い包められるかという言葉を探していた。
490無名武将@お腹せっぷく:03/01/08 02:21
持ち回りのリレー小説って、メールゲームとかもこんな雰囲気なの?
曹彰と曹熊(゚∀゚)イイ!
曹熊、布団から出れるように頑張れ(笑)
492山崎渉:03/01/11 02:30
(^^)
493無名武将@お腹せっぷく:03/01/11 12:02
>>491
禿胴。
願わくばもっと活躍してほしい。
で、紀霊は何処へ?
なんかつまらなくなったような・・・
主役はまだかえ?
紀霊は出なくていい。つーか、なかった事に。
呂布にばかり人材が集まるのが疑問。
強い呂布が切れる奴だったらって言うのがこのスレの主旨だったはずなのに、
いつのまにか「呂布が完璧な男だったら」にされている。
せめて性格の悪さだけは残しておいて欲しかったな。
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今の勢力図、誰か描いてくれ。
何処が呂布なんだろうか?
おまいら文句言い過ぎ。
途中から見た漏れからすれば、最近のも十分面白いし、様々な人物の活躍があるからこそ物語が引き立っている。
はっきり言って、ここの小説のレベルは三戦でも一、ニを争うくらいなんだから、アドバイスならともかく、あんまり文句を言って職人さんを困惑させないように。以上。
スレ汚ししてスマソ。
>>499
禿同

その文句で職人さんが止めちゃったり、話の方向転換させられたりしている。
だったら、自分で書いてみろ。面白くしてみろ。ってことだ。
漏れも人のこといえないがな・・・
徐庶「子文様。歩兵を中心に不穏な動きがあるのをご承知ですか?」
参謀として参加している徐庶が曹彰の馬に自分の馬を寄せる。
曹彰「ん? 尚が仕切ってる歩兵隊か。尚がなんかやらかしたのか?」
夏侯兄弟の弟である夏侯尚が曹彰軍の歩兵隊を担っている。若輩ながら文武両道を鳴らし、曹彰陣営の中でもその才には評判がある。
本人も意識しているらしく驕慢な素振りこそないが、自惚れている面はあるようで、今回徐庶が参加したことを鼻白んだ態度をとっていた。
自分では我こそ曹彰の参謀と自負しているのだろうが、徐庶から見ればまだまだ見通しの甘いひよっ子である。
一方で全軍の後方を押さえているその兄である夏侯徳は存在感が薄く、地味な性格をしている。
すばしっこい弟に比べ全ての面で劣るが、特に悪い部分もなく使いやすい武将のように思っていた。
意外なのはこの兄の言うことであれば弟が素直に従うところだった。
従軍の際の取り決めを自分が中心となって決めた際、不平を鳴らした夏侯尚を諌めたのは彼だった。
徐庶は彼に対しては自分が曹彰に尽くす限り信頼しても良い相手のようだと判断していた。
徐庶「いえ。夏侯尚殿ではなく、呉質殿が……」
そんな夏侯兄弟の他にも今回の遠征で付けられた陳矯他数名の武将が居たが、その中に彼のような油断ならない存在が混ざっていた。
どうも彼と彼の帷幕を中心に幾つかの捨て置けない流言が流れている。
曹彰「斬るか?」
徐庶「い、いえ。それはまだ流石に……」
元々言動や素行に問題のある人物なだけに、逆にそれほど深刻に受け取られていないようだがそれが却って怪しいと感じていた。
わざとつまらないいざこざを普段からおこさせることで、本当の怪しい動きを隠しているように思える。
まだ決定的な証拠はあがっていないが、曹彰には喚起を促しておくにこしたことはない。
曹彰「冗談だ」
どうも曹彰は腰に佩いた名刀を使いたくて仕方がないらしい。心なしか少し残念そうだ。
徐庶は従軍中に曹彰の側近らの品定めをしていたが、この主自身についてはまだ評価を定めかねていた。
頭はそれ程良くないように思う。が、勘は妙に鋭い。人の意見には素直に耳を傾けるが、常に従うというものでもない。
曹操軍というものが呂布によって敗れてもう数年になる。
夏侯惇夏侯淵、それに曹洪曹仁ら曹操の一族、李典楽進ら名だたる名将達が悉く討ち果たされたというのにもうこうして曹の旗の下に大軍が揃っている。
徐庶は曹操の力の厚みを実感していた。
曹彰以下、それを率いる武将達の顔ぶれも違えば、その目的も呂布の為の軍になっている。
それなのにそんな風に実感するのは何故だろうか。徐庶は自分の仕事を改めて考えてみる。
呂布政権を支える存在として呂布の為に働くのか、曹彰軍団の参謀として曹彰の為に働くのか、それとも自分の為に……。
まだ決めかねているところがある。

斥候の報告により、城から少し離れたところで陣を張る。
汝南の城を取り囲む軍は事前の報告以上に大軍だった。
廬江郡でそれぞれ鳴らしていた筈の雷緒、梅乾。それに梅成。
陽安郡に瞿恭、江宮、沈成。
そして桃山の賊、張赤。

近隣の諸豪族がこうも足並みをそろえているという事態に曹彰軍の面々も困惑を隠せない。
それぞれ自領を守るのが常の彼等が一斉に出陣している。これでは紀霊も城に籠もる他はない。
徐庶「大分、話が違いますな」
どうも斥候の質が良くない。徐庶は改善すべき点だと徐庶は頭に留めておいた。
曹彰「問題ないだろ。全部まとめて斬ってしまえばいい」
陳矯「それができれば苦労はしませぬな」
曹彰「無理か?」
徐庶「ただ攻め入るだけでは」
左右に展開する陳蘭や雷薄はこちらが攻め掛けたらすぐに対処できるような陣の張り方をしている。
こちらは元袁術軍にしては隙の少ないなかなかの陣構えだ。
そして気掛かりなのは劉辟キョウ都らが率いている黄巾の大軍が見当たらないことだった。
今四方に斥候の兵を出して行方を捜させているが何も掴めていない。
夏侯尚「徐庶殿も弱気な」
夏侯尚が口元を歪ませながら二人の会話に割ってはいる。
夏侯尚「所詮は利に釣られた烏合の衆。我が軍の勢いを持って叩けば連携などとれず散り散りに逃げ疾るのみ。城内の紀霊将軍と連携が取れれば、怖れるに足らず」
徐庶「そうは言いますが、では連中はどういう利で動いていると夏侯尚殿はお考えか」
夏侯尚「汝南を奪えばそれで……」
徐庶「何方が、ですか?」
夏侯尚「連中に決まっているではないか」
徐庶「連中の中の誰が、です」
夏侯尚「そんなことは知らぬ。劉辟でも張赤でも、そんな事は連中が決めることだろう」
徐庶「事前に大掛かりな連携もろくになく、それなのにここまで統一された軍事行動を夏侯尚殿はおかしいとは感じられませぬか」
夏侯尚「何だと」
夏侯徳「伯仁」
ここまで黙っていた夏侯徳が立ち上がりかけた弟をたしなめる。
夏侯尚「兄上……すまぬ」
あれだけ猛っていた夏侯尚だったが隣の夏侯徳の一言で大人しくなる。
曹彰はそれに羨ましさを感じ、徐庶は奇妙さを感じていた。
夏侯徳「徐庶殿。それで、我等はどうすれば良い」
その夏侯徳の言葉に徐庶は我に返った。
徐庶「徐州軍の仕掛けを待ちましょう。臧覇将軍は呉敦、尹礼、孫観らに配下の山岳兵を率いさせ、今頃我等の側面支援にあてて下さっているはずです」
山岳軍でまずは賊将達の本拠地を叩く。留守部隊相手では苦労しない戦いになるだろう。
混成軍の弱点をまずは突く。まず乱れやすい賊達を浮き足立たせ、その混乱に豪族達の軍を巻き込む。
陳矯「その前に汝南城が陥落する怖れは」
徐庶「断言はできませぬが趙儼殿がいれば大丈夫だと思います」
戦に強い男ではないが、基礎を忠実にした手堅い戦い方をするという。下手な挑発にも乗らないだろう。
紀霊自身も歴戦の勇将であるし、王忠は戦死したとのことだが、袁術の部下時代からの繋がりが深い秦翊、戚寄らの配下の武将達の手綱もよく握れている。
そう簡単に敗れることはないと徐庶は楽観している。
徐庶「しかし、解せませぬな」
誰が糸を引いているにせよ、こうも乱れずに一つの軍として機能していることがおかしい。
事態はどうやら差し迫っているもののようだ。
曹彰「長陣になるか?」
徐庶「徐州軍の働き次第としか今は」
徐庶はもう少し時間が欲しいと思った。何かがおかしいと感じていた。
曹彰の軍を取り巻く全ての環境が怪しく感じられる。
進軍中、曹彰達の観察にばかり気をとられていたことに後悔を覚えていた。
夏侯尚「・・・」
夏侯尚が何やら言いたげな素振りを見せる。彼も何か感じているのだろうか。
徐庶「夏侯尚殿?」
夏侯尚「何でもないわ!」
徐庶に対して、そう夏侯尚が吐き捨てるように言ったところで曹彰は立ち上がった。
曹彰「救援に駆けつけてそのまま囲まれているのを眺めているのでは籠城している者達に申し訳がない」
夏侯尚「その通りです。紀霊殿も我が軍の攻撃を待ちわびている事でしょう」
その言い方に夏侯徳が眉を潜める。
徐庶「・・・子文様がそう仰るのであれば、異はございませぬ」
曹彰「夏侯徳」
夏侯徳「はっ」
曹彰「弓兵の全てを率いて我が軍の側面支援にあたれ」
夏侯徳「畏まりました」
曹彰「徐庶、陳矯ら諸将は夏侯尚と共に残りの兵をまとめて、我が騎兵の後詰めをせよ」
陳矯「はっ」
徐庶「は・・・ははっ」
一瞬、曹彰の側につくべきかと迷ったが今の自分の技術では足手まといになるかもしれない。
夏侯尚「仰せのままに」
こうして軍令を手早く済ませると、諸将は一斉に幕舎を飛び出した。
真っ先に飛び出していった夏侯尚を追う徐庶に夏侯徳が近づいてきた。
徐庶「何か?」
夏侯徳「伯仁は今回の戦で紀霊将軍に恩を着せて我が陣営に引き入れたがっている」
徐庶「は、はあ」
夏侯徳「徐庶殿の力で無理をさせないで戴きたい」
肩に力の入っている弟のことが気掛かりだったしく、そう言って徐庶に頭を下げた。
徐庶「私は・・・」
夏侯徳「それでは、また」
用件だけ言うと夏侯徳は従者の用意した馬に跨り、自分の率いる部隊の下へと駆けて行った。
陳矯と呉質が何やら話しているのが見えたが、徐庶は頭を目の前の戦へ向けた。

軍議が終わるとすぐに陣を払わせ、兵を進めた。
そして曹彰は自ら先鋒となって五百の騎兵を率いて汝南の城を囲む敵軍に攻めかかる。
曹彰「山湖に潜む鼠賊めらがノコノコと平地に下り、どの面さげて人間様に逆らう気か!」
その曹彰に答えるものはなく、攻囲軍は一斉に矢を射掛けてきた。
夏侯徳の弓兵隊がすかさず応戦する。
曹彰「行くぞっ」
戦機を見計らっていた曹彰が方天戟を振り上げて合図を送った。
敵軍の一部が正面から迎え撃つ。軍装がまちまちで統一感がない雑軍の一部のようだった。
曹彰は相手に手ごたえのなさを不審に思いながらも、数度蹂躙してから騎馬を返した。
その間も互いの陣からは矢箭が飛び交い、小競り合いが暫く続いた。
互いに兵を引いたのは数刻後のことだった。
曹彰「思った以上に弱いな」
包囲の敵の一部とぶつかった感想を曹彰はこう評した。
こちらが小勢で動いたためか、敵軍も一部しか動かず両翼の陳蘭雷薄の軍も動いては来なかった。
曹熊「手ごたえがないというのは相手が弱いということでしょうか」
曹彰が今日の戦の話を曹熊に聞かせてやっている。微熱があったので戦闘中も曹熊は陣幕の内に居た。
曹彰「いや、スカスカと言ったらいいのか、どうもあしらわれたような感があったな」
突っ込ませた時よりも敵兵の筈が少なく感じたということを説明する。
もしかしたら敵は兵数を誤魔化していたのかもしれない。
ただその割には軍律は徹底していて簡単に蹴散らすことはできなかった。
曹彰「何か気味が悪い」
そう口をへの字に曲げる曹彰を曹熊は可笑しそうに笑った。
その直後に軽く咳きこむ。
曹彰「おい、大丈夫か」
曹熊「はい」
曹彰の気遣いに対してニコニコと笑う曹熊。いつものやり取りだった。
曹熊「それで兄上は今後どうなされるおつもりですか」
曹彰「無闇にぶつかるのはまずい気がするからなあ。やっぱりここは徐庶が言っていた通りにするしかないだろうな」
曹熊「焦ることはないですよ。兄上ならきっと成し遂げられます」
曹彰「よせやい。俺は煽てられると調子に乗っちまうんだからさ」
気恥ずかしげに頬を掻く曹彰に、曹熊は
曹熊「兄上ならきっと」
そう誇らしげに繰り返した。

徐庶「敵の正体が何者かを見極めることが険要です」
翌朝の軍議でも徐庶の自重論が口火を切る。
斥候を数多く出して報告を受け取っていはいたのだが、どれもまちまちで信憑性にかけるところが多かった。
情報戦で負けている、経験の足りない軍の欠点を徐庶は嘆く。
陳矯「既に敵は今まで言われていたような突発的な軍事行動ではなく何らかの明確な目的に沿って動いていることは間違いありません」
夏侯尚「・・・」
昨日と違い、今日は夏侯尚が終始押し黙り、寡黙な夏侯徳と並んで座っている。
曹彰「孫観らの各地の砦に向かわせた軍の動きはどうなっているのだ?」
呉質「未だ、何の連絡も届いておりません」
徐庶「・・・」
何かがおかしい。前日よりも不安が増してきている。
将校「敵軍が動き始めました!」
監視の軍の将校が軍議中の曹彰達に告げる。
曹彰「夏侯尚は一万の歩兵を率いて対陣しろ。陳矯も付け。徐庶は俺の側を離れるな。他の者は昨日と同じ配置で指示を待て」
一同「はっ」

曹彰「どういう狙いがあると思う?」
徐庶「斥候の報告によると迂回している一軍があるそうですが、それは囮です」
曹彰「ふむ」
徐庶「敵将がはっきりしない混成軍というのは狙いが定まらず簡単に打ち払えます」
曹彰「ああ。昨日も左程被害もなかった」
徐庶「ですが相手もそれ程損害はこうむらなかったようですし、何よりも落ち着いています」
曹彰「確かに。そうだとすると?」
徐庶「一見混成軍に見えて命令系統が確りとしているという最初の見立てを変える必要はないでしょう」
曹彰「武装は雑多だったが互いの連携はなかなかだった。むしろ着ている物が違うという方が不自然なぐらいに」
曹彰は昨日の手ごたえのなさを思い出しながら、そう呟く。
徐庶「昨日の報告ではそのことは聞いておりませぬが」
曹彰「すまん。今思い出した」
徐庶の顔色が変わる。
徐庶「だとすると、敵は全て同じ軍の兵・・・」
その言葉がきっかけになったかのように、前進を続ける敵の混成軍の陣営の旗が次々と伏せられていった。
曹彰「何事だ?」
真っ先に張赤の旗が軍の中に沈むように消えていった。
雷緒の旗が、梅乾梅成の旗が、瞿恭江宮沈成の旗も伏せられていく。
そして残った旗は「劉」の文字。いつの間にか上がっていたようだった。
曹彰「劉辟か。しゃらくさい真似を!」
そう言って曹彰は夏侯尚らに伝令を飛ばすと共に、旗下の騎馬隊に突撃の命令を下した。
黄巾軍の偽装とは恐れ入ったが、正体がわかってしまえば怖くはない。
想像よりも数は多いが、踏み潰せない相手ではない。
自分の騎馬隊が敵陣を突っ切って、歩兵隊で揉み潰す。義父呂布が好む戦法だった。
徐庶「いえ、お待ちください!」
徐庶は違うことを考えていた。汝南黄巾軍などがこういう手合いができるはずがない。
一糸乱れぬ進軍をこなせる黄巾軍はこの世にただ一つしかない。
不幸にも曹彰はその軍の存在を敵として受け止めたことがない。
徐庶「違います。子文様!」
騎馬を走らせるが、先に駆けて行った曹彰に離されずにいるのが精一杯だった。
敵軍とぶつかろうとする曹彰に必死に呼び掛ける。
だが、その瞬間にざわめきが増した。
夏侯尚の歩兵隊が動き始めた瞬間、その背後から火の手があがった。
戦闘描写がヘタクソなので荊州は上手い人にお願いしたくこっち書いてます。
こっち方面評判悪そうなので一気にまとめて終わらせたかったが力不足スマソ。
510無名武将@お腹せっぷく:03/01/13 00:01
>509
いや、なかなか面白いよ。
>>509
なかなかに面白い。が、
ローカルどころがおおいのでそのまま一気に仕上げていただきたい。
夏侯尚「くっ」
夏侯尚は自責の念に駆られていた。
自分は決戦に逸り、目がくらんでいたとしか言いようがなかった。

夏侯尚は自らの歩兵を突出させ、攻囲軍の中心から吐き出されるように沸いて出た黄巾軍と、
左右から襲い掛かってきた陳蘭雷薄の軍に潰されそうになっていた曹彰の騎馬隊を収容する。
夏侯尚「曹彰様!」
徐庶「夏侯尚殿!」
曹彰と共に駆けていた徐庶が先に夏侯尚を見つけて声をかける。
曹彰は厳しい顔で手短に配下の兵に号令をかけていて、夏侯尚に気付かない。
そして夏侯尚とそのまま前衛を入れ替わるようにして曹彰率いる騎馬隊が後退する。
徐庶「夏侯尚殿。夏侯徳殿と協力して前の軍を食い止めて戴きたい」
夏侯尚「承知した!」
血走った目で夏侯尚の横を駆けて行った曹彰と旗本の騎兵を慌てて追う徐庶の言葉を頷いて答えた。
徐庶「城の存在があるから前の相手もそうは無理に潰しては来ない」
だから無理をすることはないという意味だろう。
夏侯尚「曹彰様を頼む!」
徐庶の言葉には答えず、そう言うと自ら率いていた歩兵を立て直す。
両手を大きく広げるようにして左右に展開する陳蘭雷薄らを食い止めているのは兄の夏侯徳の弓兵のようだった。
お陰で自分は中央に押し寄せてくる黄巾軍に集中できる。
夏侯尚「正面の敵に集中しろ!」
彼にとって一番の敵は賊や地方豪族の連合軍ではなく、荊州の救援に赴いていた曹丕だった。
曹丕が劉表を援け、劉備や周瑜の大軍を相手に廻して互角以上の戦果を挙げている。
気に入られて、実際に縁組が為されているのは彼の主である曹彰だが、曹一族の後継者としては曹丕の存在が大きい。
曹操の旧臣に対しても曹丕の方が評判は高かった。
今回の汝南行は彼の主にとって最高の見せ場にしなくてはいけなかった筈なのだ。
同行した陳矯や呉質は勿論、救援先の紀霊将軍らにも曹彰の力を見せ付ける格好のアピールにする予定だったのだ。
それがどうだろう、必死になって陣営に誘い込んでいた筈の呉質らが敵だったとは。
彼らが誰の差し金で動いているかは考えるまでもない。
曹丕子桓。彼の曹彰の抹殺を目的とした計略にまんまと嵌ってしまっていた。
彼等の動きの不可解さに気付いていながらも、機嫌を損ねぬように見て見ぬふりをした結果がこれである。
せめて兄や徐庶にでも打ち明けていれば少しは違った結果になったかも知れない。
ただの呂布陣営内の権力闘争の延長でしか捉えられなかった自分と、その呂布をも敵とする覚悟で挑んできた曹丕達。
敵と定めながらも彼らとは覚悟も知恵も劣っていた。繰言ばかりが胸を打つ。
だが、今はそれどころではない。主曹彰を生き延びさせねばならない。
曹彰子文の家臣として生きることを決めたその時から、この命は曹彰に捧げている。
夏侯尚「曹彰様の為に死せよ!」
既に数千に減っていた配下の兵に改めてそう厳命すると、押し寄せる青州黄巾軍の大軍に正面からぶつかった。
夏侯尚「貴様は・・・子丹!」
秦真「者共、あの指揮官を討て!」
乱戦の中、夏侯尚は曹丕の腹心の一人の姿を認める。恐らく攻囲の偽装もこの陣立ても全てあの男が中心になってやったに違いない。
夏侯尚「子丹、勝負!」
普段から溜め込んでいたライバル心も重なって、夏侯尚は全軍の指揮を副官に任せると自ら槍を抱え秦真に向けて駆け出していた。

形勢の変化と呼ぶには生易しい。曹彰軍という存在そのものが壊滅の危機に陥っていた。
三段構えの陣の最後尾にあたる兵の一部は曹丕の送り込んでいた工作兵で、指揮をとる呉質、陳矯も曹丕に属していた。
呂布に従い、曹彰に殉じる他の将軍は彼等によって既に斬られていた。
今の曹彰の軍は変則的な錐の陣を取っている。
騎馬隊が最前衛に位置し、その後ろを先鋭の歩兵隊が続くようにして、最後尾に他の兵がつく。
前に来れば来るほど強く信頼のおける将士が揃っている。
最前列の騎馬隊と入れ替わった歩兵は、夏侯尚が常日頃から側に置き、鍛えていた曹彰軍の精鋭だった。
弓兵の部隊は騎馬部隊が最も効果的に機能するためにその都度配置を換えられるので別扱いに近い。
つまり呉質らの持つ兵は追加で加わった兵士が中心で、怪しげなものがどれだけ混じっていても気付かれなかった。
自軍に敵など存在しない。その思い込みが油断を誘ったとも言える。
覚悟の差も大きい。曹丕は既に荊州に向う前から呂布に叛旗を翻すことを決めていた。
その為の手は各所で打ってある。その一つがこの曹彰軍の解体と、汝南に於ける足場の確立であった。
劉備に荊州を取らせることで、汝南は劉備とも孫権とも連携が取れる土地になる。
曹丕の狙いの一つである。その為に豪族達を随分と前から懐柔し、計を授けていた。
平地の戦に不向きな呉敦らの山岳兵の動きも曹丕陣営には計算通りであった。
ひっそりと静まり返った各山砦を留守と信じて不用意に襲う彼等は、それぞれの山賊軍に手痛い反撃を食らっているだろう。
そしてその一方で理由なく一方的に攻め懸けられた豪族達は、今後は呂布を敵として曹丕を迎え入れる筈だ。
しかし賊に借りた旗や偽装した豪族の旗だけで、ここまで上手く行くはずがない。
一番の成果は斥候部隊にある。あまり重視されていなかった曹彰軍にとって曹丕の手の者が入り込むことは容易だった。
それら練りに練った曹丕の罠に曹彰達はまんまと陥ったことになる。完敗であった。

あちこちで火の粉が舞い上がる自陣に向って曹彰は馬を駆けさせていた。
曹彰「熊!」
曹彰は自軍の最奥から火の手が上がったのを見て、真っ先に思い出したのが曹熊のことだった。
そして敵に掛かる前に騎馬隊を引かせると、前面の敵を夏侯兄弟に任せて自ら背後の騒動を鎮圧に向ったのだった。
一軍を率いる指揮官として感情で動いた失格の筈のその行動は、徐庶にとっても最善手であった。
徐庶にとって一番困るのが乱戦に少数の騎馬隊が包まれてその機動力と破壊力を損なわれることだった。
正面の相手とぶつかる前に全騎馬が引いたお陰で、後方の敵を叩く格好になって存分にその能力を発揮できている。
怪我の功名と言いたいところだが、今は肝心の曹彰が一人突出してしまっているに焦っていた。
徐庶は夏侯尚と違って後悔はしていなかった。悔いることは後でするとして頭を切り替えて今の状況に最善を尽くすことを考えていた。
攻囲の混成軍と思われていたものが実際はそうでないならば、そこにいるべきと思われていた連中はそれぞれの本拠地にいるのだと想像できた。
恐らく徐州山岳軍と合流などできないだろう。連絡が届かないだけで、既に敗退しているかもしれない。
今回の騒乱は呉質らが主導だとするのなら、連絡網も全て敵の手に落ちていると判断して良い。今までの斥候の質の悪さもそう考えれば納得がいく。
敵は青州黄巾軍を中心とした、黄巾軍が主体。それに陳蘭雷薄らの軍が加わっている。
迂回しているとされた軍こそが汝南黄巾軍。今回の戦に豪族はきっと関係していない。
だがこれで敵に廻したことになる。恐らく予め呉質らは徐州軍が豪族達の本拠へ襲い掛かってくるということを伝えているだろう。
徐庶「ここは負けておく」
だが、負け続ける義理はない。想像よりも敵の兵は少ない筈だ。
思い切った軍事行動もとれないだろうからここは素直に背後を崩して立て直せば良い。
だが、曹彰の突出がそれを容易にさせそうもなかった。
徐庶「子文様!」
全ては曹彰が生き延びてからだ。徐庶の悲壮な叫びは曹彰に届くことはなかった。

曹彰「熊! 曹熊っ!」
大声で喚き続けながら、弟の姿を探す。
曹彰『何の面目が! 何の面目があって!』
何れは衛青や霍去病を超える武将になると昨晩話していたというのに。
呂布を超える男になってやると心に誓っていたというのに。
この様はなんだ。今の俺は弟一人守ってやる事も助け出すこともできないでいる。
正面の敵しか見えず、その敵でさえも見誤っていた。最悪だ。
勝ち戦を見せようと思った。もっと褒めてもらいたかった。
勇ましい姿を見せたかった。もっと頼られたかった。
好かれる男になりたかった。もっと心酔されたかった。

曹彰「曹熊っ!」
この世にたった四人しかいない実の兄弟。
昨晩、自分と語らった弟の無邪気な笑顔が浮かぶ。
曹彰「兄上!」
そしてかき消すように自分を殺そうとする兄の酷薄な顔が重なり、思わず吼えていた。
陳矯「黄髭君。何処へ行くのかね」
陣屋を撹乱した後、黄巾軍と示し合わせるべ押し上げていた陳矯の軍が一騎で駆ける曹彰を見つけて追いかけてくる。
だが曹彰の目に陳矯の姿は映らず、耳にも陳矯の声は届いては居なかった。
追いつ追われつを続け、まとわり付く敵兵を切り倒して進む曹彰の前に鬨の声があがる。
別の一隊が曹彰に気付いて押し寄せてきていた。
挟撃の形を取り、退路をまんまと塞いでしまう。同時に陳矯の軍も追いついて包みかける。
曹彰に向かってあたかも蟻のように陳矯の兵士が群がりかけていく。
絶叫しながら、曹彰は向ってくる歩兵の群れを方天戟で薙ぎ倒す。
死に物狂いで暴れ廻り、馬の腹を絞り上げ囲みの薄い場所に突っ込んでいった。
そのまま敵兵の一部を押し潰しながら包囲を突破すると、再び曹熊のいる場所へと馬を向ける。陳矯らの部隊が後を追いかける。
それに気付いた徐庶ら残りの騎兵が陳矯の軍を蹴散らしにかかる。
しかしその間にも曹彰は突出していく。陳矯の兵を叩きながら、徐庶は兵を割いて曹彰を追わせた。
勢いの差はあれど弱兵相手に怯む軍ではない。徐庶が残りの兵を指揮する中、陳矯は逃げ出した。
曹彰の本陣が見えてきた。が、陣幕から出てきたのは呉質の一隊だった。
呉質「いたぞ! 暴虐の呂布如きに媚を売る曹一族の面汚しめが!」
呉質がそう怒鳴るのを聞いて曹彰は嚇怒した。
曹彰「貴様に何がわかる!」
父を慕いながら疎遠される子の哀しみ。兄を敬いながら侮蔑される弟の哀しみ。
嗚呼、自分は愚か者だと曹彰は思う。どうしてあの二人のように肉親を他人と思えないのだろうと。
苛立ちが、悲しみをかき消して怒りへと昇華する。
呉質「曹彰の首を獲れ! 獲ったものには、重い賞与を出すぞ!」
烈火のように暴れる曹彰に怯んだ呉質はそう叫んで兵の中に隠れる。
代わりに矛を取り押し寄せる健将が四人。口々に喚きたてながら曹彰に襲い掛かる。
曹彰「呉質、そこを動くな!」
が、曹彰はそう大喝し、彼等を見ずに後ろに下がった呉質だけを見据えていた。
それが功を奏して兵の一部が弩を持ち出して援護に入りかけるのが目に入る。四人は囮だ。
曹彰「小賢しいっ」
そこへ徐庶が曹彰につけるべく向わせた騎兵が喚声と共に押し寄せてくる。同時に曹彰の馬が呉質の軍に飛び込む。
矛を挺し、馬を躍らせた四将が次々と戟で撫で斬られる。踏み込まれた兵達も勢いに押され、曹彰の戟から逃れるべく背を向けだす。
軍はたちまち二つに割れ、それが同時に後退をはじめる。
呉質が泡を食って逃げる。曹彰の黒鹿毛馬からは逃げる歩兵と攻め寄せる歩兵が邪魔になって距離が詰らない。
怨敵である。曹彰はその背に向けて馬上のまま腰の刀を抜くと、飛刀の要領で投擲した。
倚天の剣。名刀のその太い刃は小太刀のように飛び、吸い込まれるように憎むべき敵を兜ごと刺し貫いた。
曹彰は刃先が呉質の額まで突き抜けた倚天の剣に見向きもせず、彼の躯を踏み潰しながら陣屋へと駆け込んだ。
徐庶は残兵を蹴散らさせながら、前衛の歩兵が崩れたとの報告を受けた。
徐庶「・・・駄目か」
既に最初から負けていた。そう思うしかなかった。
国境でばらばらに散って兵を休める一隊があった。
華々しく都を大軍で出て行きながら、三分の一にまで兵力を損ねた曹彰軍だった。
夏侯徳「汝南の城が堕ちたそうです」
徐庶「そうか。もう暫くしたら我等もここを発つことにしよう」
夏侯徳「はっ。ではそのように」
夏侯徳が指示を出すと、伝令が全軍に飛ぶ。
損害が少なかったのは彼が請け負った弓隊ぐらいのものだった。
戦闘自体はそれ程長いものではなかった。
しかし呉質を屠り、陳矯を追い払ったものの軍として壊滅的被害を受けた曹彰軍は大きく退いた。
夏侯尚「・・・」
先ほど自刎しようとして止められた夏侯尚が、徐庶や夏侯徳の目から逃れるように自分の軍に戻る。
紀霊が城から討ってでなければ自分の命はなかっただろうと言っていたが、自身を苛んでいるのはまた別の問題らしい。
恐らく今回の呉質らの裏切りについてのことではないかと徐庶は推察していたが、今知ったところで何の意味もない。
城を出て敗れた紀霊らが生き延びているかどうかは不明だが、せめて落ち延びてくれればと思う。これ以上の失点はしたくない。
519長々スマンでした:03/01/15 03:07
曹彰「・・・」
曹彰は一人離れて埃と血にまみれた屍を両手で抱えたまま、地面に片膝をついて頭を垂れている。
徐庶は何も訊かなかった。そのことに触れるのはあまりにも空しいことと知っていたから。
そうして彼等以外の仕度が整い、多くのものがその若者の背中を見守っていると、
曹彰「徐庶」
背を向けたまま、意外にも確りした声で呼び掛けられた。
徐庶「はっ」
曹彰「このまま徐州に入るのか?」
徐庶「そのつもりですが」
多くの兵を損ね、糧が焼かれた以上、どこかで一度立て直さねばならない。
恐らく山岳軍を各個撃破され、次の手に苦労しているだろう臧覇軍に合流するぐらいしか手はない。
曹彰「徐州に俺が入っても大丈夫なのか?」
徐庶「と申されますと」
曹彰「徐州ほど曹一族が怨まれている土地はない」
徐庶は曹操の徐州で行った大虐殺を思い出す。
進軍中、この若者は先に徐州に寄って臧覇軍との連合をこの理由で拒んでいた。
それについて何も知らない腕に抱いたものの為に。
徐庶「臧覇将軍が良く収めていますから・・・」
曹彰「なあ、徐庶」
曹彰は膝を上げて立ち上がった。
曹彰「俺は、曹家を捨てようと思う」
夕陽に照らされた曹彰の肩が、微かに震えているのを徐庶は何とも言えない気持ちで見詰め続けていた。
それから暫くした後、曹彰は呂布に認めてもらい呂彰と名乗ることになる。
そして二度と曹家と交わることはなかった。
曹彰改め呂彰(゚∀゚)イイ!
521無名武将@お腹せっぷく:03/01/17 13:13
新展開希望age
面白かったよ。
誤る事なんて無いと思う。
今日始めて見た!
面白し!今後に期待カキコ!( ゚д゚)y-~
524無名武将@お腹せっぷく:03/01/18 03:31
哀れ曹熊・・・でもその後の曹彰、じゃなくて呂彰に期待age。
ホシュ
526山崎渉:03/01/22 14:32
(^^;
527山崎渉:03/01/23 16:57
(^^;
528山崎渉:03/01/24 11:53
(^^)
自動でホシュしてくれる山崎はありがたいと思う
530無名武将@お腹せっぷく:03/01/25 21:12
      ___
      /∧_∧ \ 
    ./  (   ^^ ) .`、
   / /\ \つ  つ、ヽ
   | |  ,\ \ ノ  | |
   ヽヽ.  し \ \) / / 
    \ `[山崎禁止]' /
     ヽ、 ____,, /
        ||
        ||
    ┌─┴┴─┐
    │ .渉 . な . │
    └─┬┬─┘
        ││
        ││
        ││
        ││
        ││
531無名武将@お腹せっぷく:03/01/27 10:03
533そのとき南蛮の地にて:03/01/28 14:08
 その南蛮の地に汝南の戦いの転末が噂として伝わったのは、劉備や孫権が知る以前であったし、呂布で
さえ最新の情報を事細かに入手していないころだった。
 曹植の前に楊脩、丁儀がいる。みな悲痛な面持ちで、曹植などは二人を見ずにうつむいている。
「今、事実関係を確認させているところです」
 丁儀は出来るだけ感情を抑えて言う。
 無駄だろう。楊脩は思う。噂がすべて真実であり、真実のすべてを伝えているということは普通ない。
だがこの噂に限っては違う。何者かが故意に広めた噂なのだ。噂の広がりの不自然なまでの速さから、そ
う思い当たるまでに長くはかからなかった。そして噂を広めたがっている人物にも心当たりがある。それ
が、曹彰、現在は呂彰だが、彼を陥れたものと同一人物であることも確実だろう。
「無駄であろう。そのようなこと・・・」
 言葉は、いまだうつむいている曹植のものだった。
 楊脩、丁儀が、驚きの顔で彼らの主を凝視した。
「・・・なぜ、そのようにお考えなさいますか?」
 少しだけ震えた声で、楊脩はたずねた。
 曹植は顔を上げる。その目に涙はないが、逆に暗く、かつて別の者に見た影があった。
「曹彰兄上を陥れたのは、兄上だ」
 曹植がただ兄上というとき、それは曹丕をさす。
「噂の伝わりが早すぎる。兄上の仕業だ」
 曹植は馬鹿ではない。だが、騙し騙される世界では生きてゆけないほど人のよい人物である。謀略を看
破することなど、今まで一度もなかった。
「これは兄上の警告だ」
 楊脩と丁儀の、一致した見解と同じである。
『穴に篭りじっとしていろ。出なければ曹彰と同じ道をたどることになるぞ』
 曹丕の、暗さと冷たさをあわせ持つ顔が、その言葉を言い放つ。そして主の打ちひしがれた顔が、不意
に重なる。
「曹丕に従い、恭順を申し入れたとしても、安全なのは今のうちだけですぞ」
 楊脩は、ほとんど衝動的に叫んでしまった。
 ただじっと主を見る。曹植も、目をそらすことはない。
534そして争いへ:03/01/28 14:12
 呼吸を整える。ちょうど七度目の息を吸ったとき、曹植は口を開く。

 「豆を煮て持って羹を作り
  菽を漉して以って汁と為す
  まめがらは釜の下に在りて燃え
  豆は釜の中に在りて泣く
  本は是れ同根に生ぜしに
  相煮ること何ぞ急なる」

 それが曹植の答えであった。
 楊脩は目の奥が熱くなるのを感じた。
「では、そのように取り計らいます」
 それだけ言うと踵を返し、曹植のもとを去る。丁儀もそれに従った。やはり、目にいっぱいの涙を浮かべている。
「楊修殿ぉ、曹植様は、曹植様はぁー・・・」
「兄君を、許せぬのですなぁ」
 釜の下で燃えているのは曹丕。釜の中で泣いているのは曹彰殿なのか曹熊殿なのか曹植様なのか・・・。
 だが、そんなことはどうでもいい。曹植様は今まさに飛び立とうとしておられる。それこそ喜ぶべきなのだ。
「楊修殿、楊修殿」
 丁儀はしきりにはやしたてる。
「して、我々はこれからどのように」
「我等に強靭な軍はない。あってせいぜい護衛数百。ならば、借りれるだけ借りようではないか」
 丁儀はそれだけでやるべきことがわかったようで、すぐに行動に入った。
 楊脩はその迷い無き後姿を頼もしく感じた。
 気がかりなのは、乱世で生きるということが、曹植様を曹植様でなくしてしまうことだけだが。
 暗い瞳が何を語っているのか、楊脩はまだはっきりとした答えを出せずにいた。
535無名武将@お腹せっぷく:03/01/29 15:59
  ∧ ∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  (  ,,) <  http://ruin.s12.xrea.com/ 2ちゃんねら系ちゃっと、きてぽ♪
  ./  |   \______________
 (___/
536無名武将@お腹せっぷく:03/01/29 17:48
後漢の大陸が風雲を告げているこの乱世を終息させんと獅子奮迅する呂布。
しかし彼の奮闘空しく、この大陸には恐るべき事態が発生しようとしていた。
天空に輝く将星が突如轟音を立てて、大地へと飛来し始めたのである。
一つは成都に、一つは建業に、そしてもう一つは鄴に向けて迫り来る。

そして実の所、その「将星」とは、今日で言う彗星や惑星の類ではなく、
ある種の生命体のようなものであった。
しかもとてつもなく好戦的な。

そしておそらく、彼ら三将星の目的は、大陸の覇権。

正体不明の三つの将星により、
いよいよ、一時代の終幕が訪れようとしていた。
537無名武将@お腹せっぷく:03/01/30 00:18
???????
どうなるんだ?
538無名武将@お腹せっぷく :03/01/30 01:16
三将星てなんなんだー!!
話がとんでもない方向に向かっている予感・・・
539無名武将@お腹せっぷく:03/01/30 14:38
>>536
ネタフリだけ??責任もって書いてよ〜
>>536
むしろ無かったことに。
541無名武将@お腹せっぷく:03/01/30 16:30
書いたとしてもベル背るクみたいなことになって逝くんだろうな・・・
>>539
このスレって元々ネタフリばかりだったじゃん。
自分で始末つける職人のほうが希少。
ネタフリっていうかネタなんじゃないのか?
放置でいいと思うが。
宋憲に誘われて酒に付き合ったはいいが、いささか呑みすぎたようだ。
孔融は宋憲に断って、酒の気を飛ばすために夜風に当たっていた。
「宋憲殿に聞くところでは、呂布殿は宋憲殿よりも酒豪らしい。
 いったいどのくらい呑むのやら……」
つぶやきつつ、呂布に思いを馳せる。
かつて、彼とともにあの三つの巨星(>>82)を眺めた事を思い出した。

孔融はふと驚いて宙を見据える。
あの巨星が、赤く輝きを増しているように見えたのだ。
「なっ!?」
「如何なされた?」
振り向くと、そこには宋憲がいた。
「宋憲殿か、いや、貴殿には話したことがあったと思うが、あの三つの巨星が輝きを増したのだ!」
「はは、あいかわらずですな、孔融殿の心配性は」
「貴殿は不安では無いのか?」
「生憎占星術よりは酒の方が好きなので。ささ、涼む時間は終わりでござるぞ?」
ずるずる……(孔融の首根っこ持って引きずっていく宋憲)
「宋憲殿、それがしは、あの星を……!」
「もう少し呑んでいただければその話を聞きますよ、ささっ、ぐいっと!」
「そ、それがし、もう呑め…うわ、無理矢理……ゴフッ」
「あれ? 孔融殿? こーゆーどのー?」

翌日……
孔融は酒のせいで重い頭をさすりながら呟く。
「……昨日の事、覚えてない……」

ちなみに、三つの巨星が輝きを増したのは、その夜に大気圏突入して燃えたため。
で、その夜のうちに燃え尽きました。
間違っても落ちてきません。

つーわけで>>536はみんな忘れましょう。
545無名武将@お腹せっぷく:03/01/31 13:49
誰か荊州内部の状況を教えてくれ。
もう一回初めから読め( ゚Д゚)ゴルァ!!とかいわれるかもしれませんが、
スルー多過ぎで解らんのです。
546無名武将@お腹せっぷく:03/01/31 14:31
今、書き手ってどれだけいんの?
荊州編書いてる人いんの?

正直、角川スニーカー文庫
548郭図公則 ◆sW2getuhmE :03/01/31 16:16
後付け設定ドンと来い、整合性など無視しまくれ。
どうせ数日レスが滞ることもあるならいっそのこと
読んでいるその瞬間の面白さを追及してみれば?
連載するタイプならその時その時が面白ければいいし。


と少年漫画みたいなことを口走ってみるテスト。
549無名武将@お腹せっぷく:03/01/31 23:40
(`へ´)キライ!
>>546
荊州はどうなっちゃうんでしょうね。自分の中では劉備と孫権が二分する予定だったんですが。

はじめの頃、劉備と孫権に力を与えて、これを呂布が一挙に滅ぼすという筋で
やろうと思って書いていた者なんですが、次第に呂布勢力のみが膨張していったので、
これはどうも自分の出る幕ではないらしいと思い至り、今はロムしています。

これはこれで面白いですし。
>>550
同じく荊州は常用新野を呂布(実質は曹丕)に残して孫権と劉備で2分させるつもりでいた。

徹底抗戦の蜀の劉備、仮の臣従のなか機をうかがう呉の孫権、漢の内側から蝕む曹操
それぞれが強大な呂布の漢に向かう筋を思い描いてた。

全土のまとめ>>427 荊州のまとめは>>439
552許昌の酒家:03/02/02 16:42
昼間の食事時もすぎ人影もちらほらとしか見えなくなった飯店に男が二人入ってきた。
夏も終わりに近づいたとはいえ昼の日差しはまだまだ暑い。
顔に疲労の影がみえる旅装束の男はもう一人の笑顔のままに頷く男に、
まるで独り言でも言っているかのように、一方的にまくし立てている。
店の奥、窓からの日差しを避けたのか少し薄暗い席に着いた二人は
まだ明るいというのに店主に、酒と適当なつまみを、と注文する。

「いやいや今日はご苦労様でした。まだ引越しの荷物もといていない
というのにお付き合いいただいて本当に申し訳ない」
「こちらこそ、わざわざお持て成し頂き感謝しております」
「歓迎の酒席はまた改めて用意しましょう。なにしろ荊州で
空を上ること雲雀のごとくといわれるあなたが越して来たのですから、
すぐにでもお話をうかがいたいと思いまして」

社交辞令に過ぎないのだが「お話を」と聞いて、旅装束の男は
待ってましたといわんばかりにまたもしゃべりだした。
この飯店に着くまでの道中でも引越しの道のりが如何に大変だったか、
許昌の町並みに見かけた商店の善し悪しまで延々と話していたのだ。

その男はもとは豪族の分流、商業家の若頭に過ぎなかった。
早くに父をなくし、本家の名と金を元に己の才覚で人と物の集まる荊州において
若くして財と名声を得、その晴眼を世間に広く評価されている人物である。
553許昌の酒家:03/02/02 16:42
「今の襄陽は昔の面影はさっぱりありません。
特に最近、襄陽に曹丕が来てから酷いの何の!
来ていきなり襄陽から出入り禁止ですよ!それを解いたかと思ったら今度は
襄陽より南には使いっ走り一人送るにも丸一日かけて検査しだして。
そのうちに今度は店に役人よこして
『夜中まで随分ひとが出入りしてるようだが調べさせてもらおう』
うちは荊州のなかじゃそりゃ手広く商売してましたからね、人が多くて当然でしょ?
タダでさえここんとこあっちこっちで戦争がおおくて困ってるのに
そんなことされちゃ・・・・・・」

(まだ続くのか・・・)
話を聞いている男、許昌で内政の一切を任された男―賈ク―は
息継ぎの度に喉を潤すようにを酒を流し込む男を見ながら
笑顔でその表情を固めたままに頷き、静かに杯に口寄せる。

しだいに話は襄陽から荊州全土のことに広がる。
又聞きに違いないのにまるで見てきたかのように話は続いていく。
554許昌の酒家:03/02/02 16:43
一度は襄陽門前まで迫った関羽は南に落ち延びた。
使用人のひとりが見事な髭をみたらしい、髭にみとれて顔はわからないそうだ。
厳しい警戒の西を避け劉備と通じている趙範を頼ったのだろう。

荊州の西は反蔡瑁で一度寝返っているから、遠くないうちにまた劉備につく。
劉備本人が動くって噂もある、叩き出した劉表は気が気じゃないだろう。
もっとも宿を貸した劉章がああなってはどっちが正しかったのやら。

呉との縁談もあったが、初めから呉にそのつもりは無かったに違いない。
前から揚州からのあやしい客は多かったが縁談の頃にますます増えている。
間諜を増やす理由は結ぶ気がない事以外になにがあろうか。

南に比べて襄陽から北へ向かう際の検査は格段に甘い。
加えて見かけない商人や不自然な客なんかが北から多く、
汝南での戦いとなにか関係があったのではないかと読んでいる。

江夏の黄祖も可愛そうに。
呉を倒したと思ったら今度は襄陽を抑えた曹丕と対立、孤立している。
呉に攻められて降伏の手土産にされるか、親劉表派として曹丕に消されるか。

孤立といえば長沙の韓玄だが人の話を聞けない奴だから長くはもたない。
金旋は自負心だけの頭の固い親父だ、そのうち切られて終わる。
もう一人いた、か?・・・わすれた。

(なかなかに鋭い。饒舌がすぎるが晴眼は噂どおりか)
酒瓶を覗き込む男をじっと見据えながら、既に作り笑いが消えている自分に気づく。
(・・・いつの間にか聞き込んでいたようだ)
555許昌の酒家:03/02/02 16:44
男が大きく息をつく。
さすがに延々としゃべり続けて疲れたのだろう。
もう日は沈み、酒家へと姿を変えた店へ人が入り始めている。

お互いに言葉も少なく席を立った。

大路にでてしばらく別れの挨拶の後に賈クが短く問う。

「その才を発揮する場がほしくは無いか」

男の名を楊儀。賈クの耳目となり歴史に名を残す。
「呂布を殺す」

 兄が殺された日から、揚州牧となった孫権はずっとこの一念を胸に刻み生きてきた。
自らを奮い立たせるために、厳しい職務の合間を縫っては大史慈と調練に身を投じた。
 打倒呂布。この志を忘れたことは一瞬たりともない。
だが、建業、合肥と揚州にとっての命綱である長江の要所を押さえられた自分の力はあまりに心細い。
 良き相談相手だった張紹が洛陽に行ってしまってから、最近孫権は諸葛謹を部屋に招き話を聞いていた。

諸葛謹「殿。」
孫権「謹か…。どうだ。山越との懐柔はうまく行ったか。」
諸葛謹「ええ、何とか。殿が時間を下さったお陰で数百人単位ですが、兵の供出まで持ちこめました。
    それよりも…周喩様のことです。」
孫権「わかっている。」

 周喩。兄の親友だった男だが、どうも急ぎすぎているような気がしてならない。
呂布もそうだ。中原は落ち着いているようだが、冀州では南匈奴の者たちが
何者かの暗殺を企てた形跡がある。呂布に反旗を振ろうとでもしていたのだろうか。
 今回の戦も危ういところだった。黄蓋がいなければ、とうに周喩の首はとられていただろう。
そうすれば水軍も勢いを失い、もしかすれば孫家の存亡にかかわったかもしれない。

孫権「周喩も老いたのかな。他者を利用するなどといった甘い策を使うような男ではなかったのに。」
諸葛謹「気を病んでいるのかもしれません。策殿の死はあまりに唐突だった…。
    それゆえに死を、敗北を恐れているのかもしれません。」
 長江の流れが夕焼けに照らされる。
諸葛謹「それよりも、」
 諸葛謹の目に光が走った。
諸葛謹「建業攻略。お忘れではありませぬな?」
孫権は一人考える。

呂布の騎馬隊は異様だ。なによりも速く、なによりも強く、信じられない速さで戦場を駆け巡る。
だが、人は老いる。呂布とはいえ、死ぬ間際まで戦場をかけれるだろうか。
人中の呂布、馬中の赤兎、その勇姿と戦えないのは、いささか残念だが…それも天が与えた好機なのだろう。

揚州にはこの長江がある。たとえ呂布が騎馬隊の名手であろうと、三代に渡る孫家の水軍に勝るものはない。
前回は臧覇とやらの奇策によって揚州への上陸を許してしまったが、逆にいえば上陸さえさせなければよいのだ。
水の上の戦は、操船の巧みなものが勝つ。兄の戦を見てよく実感した。

そして、周喩がいる。
兄が死んだ時、自暴自棄になっていても、周喩だけは信頼できた。用兵、練兵、兵法、軍を一つにまとめる統率力。
あの男なら、呂布にさえ勝てるのではないか、と思うときもある。

だからまず建業をとることだ。諸葛謹の努力の甲斐あって山越族とは強いよしみを通じている。
南を恐れる必要はない。建業を取れば、長江南岸を制したことになる。
あとは、呂布に上陸させないよう沿岸の警備を高くしていればいい。

どうやって建業をとるか。時間をかけることは許されない。呂布が来る。
だが、建業は堅城だ。しかもそこを守るのは高順。呂布の親衛隊とも言っていい男だ。恐らく無茶はしまい。

「周喩を呼ぼう。」
あの男なら分かってくれるはずだ。
558無名武将@お腹せっぷく:03/02/05 00:37
hosyu
太史慈が呂布を暗殺して欲しいな。
>>559
>>57で死んでるけどな
561無名武将@お腹せっぷく:03/02/11 02:31
ホッシュ
562無名武将@お腹せっぷく:03/02/12 12:56
ほしゅ
夕刻、個人的に邸宅に周喩を招いて酒の席をもうけていた。
呼ばれた周喩は孫権の眼前にて礼をしていた。
酒席である…と、堅苦しい礼をたしなめた孫権はおもむろに酒を一杯あおると、周喩に話を切りだしていた。
「お主も分かっているとは思うが、世はこのままで終わるつもりはない。
されば我ら孫家、如何にすべきとおもうか?お主の考えを聞きたい。」
周喩は孫権の言葉に嬉しそうなそぶりを見せながら話に耳を傾け進言した。

「まず建業攻略が先決でしょう。子喩(諸葛謹)が努力した甲斐あって山越は抑えられたようですからな。建業が我らの掌中にあらば、あとは呂布の動きに気を配り、隙をみて中原に打ってでるのみ。」
ふむ、と満足そうな笑みを浮かべ同意する孫権。思うところは同じだったようである。だが孫権には自力で解決できない課題があった。次の言葉にそれがにじみ出る。
「だが如何にして建業を落とすか、それが問題だ。守将の高順は呂布揮下でも指折りの猛将。しかも時間をかければかけるほど―。」
「呂布が来る、と申されたいのでしょう。
それは、それがしも考えるところでございましてな。如何にして短期決戦で建業を落とすかが命題です。
然るに、これには準備が一番肝要。呂布に従属するわれわれは玄徳や馬騰と違って“呂布側から仕掛けられることがない”ことにあります。
建業攻略には多少の時間がかかってもやむを得ません。必勝を期すべきでしょう。」
孫権は頷きながら、「うむ、頼んだぞ。時が来たら世に必ず言うのだぞ。」
その言葉の裏には、独断で建業に攻め入らないかという心配が孫権にあった。
孫権と周喩の酒席の頃、韓当は呂蒙に招かれて同じく酒席にあった。
呂蒙の背後には最近取り立てられた書生が一人起立している。
最近の国難を語り数刻の時が過ぎた辺り。
呂蒙が韓当の酒を注ぎながら、突然質問を浴びせた。
「将軍、最近都にはどういった御用向きかな?」
韓当はぎょっとしながらも必死で平静を装って逆に質問した。
「何を根拠に…?それがしが都に用向きとは異なことを申されるな。」
呂蒙はいやらしい笑みを浮かべながら一枚の書状を取り出した。

−我が心、未だ呉の地の殿とともにあり。
程普
書状にはそうあった。
韓当はため息をつくと覚悟を決めたようにうなだれた。
「見ての通りだ。最近の周喩、なんぞおかしいところを感じ、都の程徳謀に相談しておった。」
そこまで語ったところで韓当は諦めたかのごとく、更に言葉を続けた。
「我は大殿(孫堅)に仕えて以来三代、孫家に仕えてきた。周喩の行いは臣たるものとして行き過ぎてはおるまいか?そう感じてならんのだ。
それがしは別に二心あるものではない。だが都にいる程徳謀に書を送ったのは確かに軽率であった。好きにされるがよい。この韓当今更この命惜しくはない。」
しばらくその場に静寂が訪れた。
「別に御命を頂戴したりするつもりはありませんよ。」
韓当が言葉を切って暫くのち、静寂を破ったのは意外にも呂蒙ではなく、その背後に立つ書生だった。
書生はさらに言葉を続ける。
「国難を憂うのは、我らも同じ。憂国の士として国を、ひいては殿を案ずるのは周喩殿も我らもそして…」
「韓当殿も同じ事ではありませんか。」
呂蒙もこのあとに言葉を続ける。
「韓当殿、我々は何も貴殿を取って喰おうと言うわけではござらん。今の我らの命題は―。」
「建業か。」
韓当は分かっていると言うように、その名を口にした。
そしてこの流れが意味するところも同時に悟った。
そんな韓当を見て呂蒙が察したらしい。「やるしかありますまい。」
韓当は頷くだけだった。
孫権と周喩の酒席の頃、韓当は呂蒙に招かれて同じく酒席にあった。
呂蒙の背後には最近取り立てられた書生が一人起立している。
最近の国難を語り、数刻の時が過ぎた辺り。
呂蒙が韓当の酒を注ぎながら、突然質問を浴びせた。
「将軍、最近都にはどういった御用向きかな?」
韓当はぎょっとしながらも必死で平静を装って逆に質問した。
「何を根拠に…?それがしが都に用向きとは異なことを申されるな。」
呂蒙はいやらしい笑みを浮かべながら一枚の書状を取り出した。

−我が心、未だ呉の地の殿とともにあり。
程普

書状にはそうあった。
韓当はため息をつくと覚悟を決めたようにうなだれた。
「見ての通りだ。最近の周喩、なんぞおかしいところを感じ、都の程徳謀に相談しておった。」
そこまで語ったところで韓当は諦めたかのごとく、更に言葉を続けた。
「我は大殿(孫堅)に仕えて以来三代、孫家に仕えてきた。周喩の行いは臣たるものとして行き過ぎてはおるまいか?そう感じてならんのだ。
それがしは別に二心あるものではない。だが都にいる程徳謀に書を送ったのは確かに軽率であった。好きにされるがよい。この韓当今更この命惜しくはない。」
しばらくその場に静寂が訪れた。
「別に御命を頂戴したりするつもりはありませんよ。」
韓当が言葉を切って暫くのち、静寂を破ったのは意外にも呂蒙ではなく、その背後に立つ書生だった。
書生はさらに言葉を続ける。
「国難を憂うのは、我らも同じ。憂国の士として国を、ひいては殿を案ずるのは周喩殿も我らもそして…」
「韓当殿も同じ事ではありませんか。」
呂蒙もこのあとに言葉を続ける。
「韓当殿、我々は何も貴殿を取って喰おうと言うわけではござらん。今の我らの命題は―。」
「建業か。」
韓当は分かっていると言うように、その名を口にした。
そしてこの流れが意味するところも同時に悟った。
そんな韓当を見て呂蒙が察したらしい。「やるしかありますまい。」
韓当は頷くだけだった。
後日。
周喩の前には韓当の一件を報告する呂蒙の姿があった。
「ふむぅ…。」周喩は一言うなると少し考えて言った。
「と、言うことは韓当将軍には何も問題なかったと。言うことだな。」
呂蒙は間髪入れず、
「韓当将軍は孫堅公以来の忠臣。なんぞ二心などありましょうや。」
「それがしの書生が妙案を考えておりましてな。韓当将軍にはまだまだ働いて頂かなければなりますまい。」
「む、それは建業のことか。」
「左様でございます。」
話してみよ、と聞く周喩に献策する呂蒙の姿があった。

建業決戦の時が近づいてゆく…。
565はナシで・・・m(_ _)m
568sage:03/02/18 10:51
昨日からROMってますが、ここの職人さん達凄すぎ!!
なんとか、この話が続いてくれると嬉しいのですが(汗)。
曹彰…カッコ(・∀・)イイ!!
呂布もカッコ(・∀・)イイ!!
馬超また出てくれないかなぁ……。
西涼の話がお気に入りです!!
間違えてageてしまった(汗)
570無名武将@お腹せっぷく:03/02/18 11:27
呂布と諸葛謹を掛け合わせても、まず遺伝子結合しません。

実は毎回やってます。

「謀反の疑い、近親処分の計!」
571563-566:03/02/20 00:48
初めてこちらに書かしてもらったんですが、正直言って続きを書かせていただいて良いのか不安で…。
何かありましたら聞かせていただきたいんですけど。。。
572無名武将@お腹せっぷく:03/02/20 02:22
>571
ぜんぜんいいですよ。面白いですよ。
文才がある人はいいですね
573無名武将@お腹せっぷく:03/02/20 08:46
>571
(・∀・)イイ!!
ガンガン続きを書いて下さい!!
楽しみにしてますので!!
574563-566:03/02/21 01:19
ありがとございます。がんばりますので、温かい目でみてやってください。
保守
576無名武将@お腹せっぷく:03/02/26 19:01
保守
577無名武将@お腹せっぷく:03/02/27 00:23
 呂布軍には魏続という古参の将軍がいる。
 この男、呂布とは遠い親戚という関係もあり、昔から重用されてきた者であった。
 だが、呂布軍の陣容が大きくなり、人も集まりだした頃になり、徐々に扱いが軽くなってきていた。
 武勇も左程ではなく、何より才がない。人としての徳も薄い。
 呂布が公正な目で陣営を立て直した際、真っ先に外される存在なのはある意味仕方がなかった。

 そんな呂布の事情を汲み取り、己を鍛えて精進するような男であれば良かったのだが、小人の常で彼は主である呂布を怨みに思っていた。
 だが、怨んだところで彼一人では何もできない。
 与えられた役目もろくに果たさず、愚痴と文句を肴に酒ばかりを喰らう日々を過ごしてきた。
 そんな態度を続ければ続けるほど、信頼も無くし、扱いも軽くなる。
 そして不満を更に募らせ、自暴自棄になるという悪循環を続けてきた。
 彼のような存在は、急速に成長した呂布政権の暗部である。

「曹彰の餓鬼が失敗したか……へっ、いい気味だ」

 最近入った話では、汝南の賊征伐に先ほど華々しく都を出て行った曹彰率いる軍が敗北し、徐州へと落ち延びたらしい。
 特に曹彰に恨みがあるわけでもないのに、愉快そうに手を叩いて喜ぶ。これが今の魏続だった。

「あんな糞餓鬼が一端の将軍気取りで兵を率いるから山賊如きに負けるんだ」

 俺にはわかっていたことだ。大将軍には人を見る目がない。
 自分一人が強くても戦争に勝てるわけではない。
 今まで誰のお陰で勝ってきたと思っているんだ。

 そんな怪気炎を上げる魏続に

「全く、その通りですな」

 と、追従する者が現れた。
「……?」

 酔眼をその男に向ける。
 魏続の言葉に反応するものはもう随分昔からいなくなっている。
 親友だった宋憲は既に戦死し、侯成もいつしか自分と離れて政務に励むようになっていた。
 他のものも落ちぶれていく魏続に対しては嘲りか無視かの反応しか向けてこない。
 魏続は孤独だった。自分がこうなったのは己のせいではない。
 周りがそうしたのだ。追い詰めたのだ。落ちぶれるように仕向けられたのだ。
 大きな面をしているかつての敗軍の連中が。
 連中を怨み、そんな連中の言いなりになっている呂布を怨み、自分を救ってくれないかつての僚友を怨み、この世を怨み続けていた魏続は賑やかな酒場でも鼻つまみ者に近い扱いを受けていた。
 酒代こそ支払っているが、いつも隅っこで陰気な酒を飲み、文句ばかり垂れる男が、魏続将軍という肩書きを持つものでなければ追い払われていただろう。
 それぐらいの存在だったからこそ、誰もが魏続をいないものとして扱ってきていただけに、彼に声をかけてきたことは本当に珍しいことだった。

「呂布将軍は本当に人を見る目がない。いや、むしろ曹操にいい様に操られているほどだ」
「誰だ、お前は」
 酒臭い息を吐きながら、胡散臭そうに魏続はその笑顔を絶やさない男を睨みつけた。
 決して体の小さくない魏続からしても、その身長八尺余りで魁偉な男には存在感があった。
「某は彭ヨウ永年と申すもの。書生でござる」
 嘘だろうという言葉を魏続は飲み込んだ。
 その体躯の割には大して鍛え上げられているようには見えなかったからである。
 だが、本人が言うような書生とも思えない。服装は町民の着る物だが、そうにも見えない。
 魏続には目の前の男が何者か判りかねた。
「某としては呂布将軍に天下を治めてもらいたいのだが、今の呂布将軍ではいかん」
「何を言っている」
 呂布に対する呼称が不敬だと言いかけて、止めた。散々そう自分もそう呼んでいたのを聞かれていたのだと判断したからだった。
「この都を落とした時の呂布将軍は実に猛々しく、頼り甲斐があった。それが今はどうだ。
 揚州へ行った時は孫権を討てず、涼州に遊びに行った時は馬騰を討てず、そして予州に至っては自身で出向くことも無く小童を遣わせて失敗している。
 これは呂布将軍が衰えた証拠ではないのか?」
 男は魏続の酒を勝手に手酌で飲みながら喋り続ける。
「どうして急激に呂布将軍は衰えたのだろうか。もしや都の毒の為せる業なのか」
 そしてそのもってまわった言い方が癇に障る。
「このまま駿馬が老いて駄馬にも劣るようになっていくのだろうか。それにしては早過ぎる。将軍に毒を勧めるものがおるのではないかと思われぬか」
「毒だと」
「左様。あれほど激烈で果敢だった呂布将軍が今のようになったのはおかしかろう。何よりあの頃は側には魏続将軍もおられたではないか」
「……」
「口先ばかり上手く阿る者だけが残り、将軍のように真っ直ぐな生き方しかできぬものがこうして不遇を託つというのは間違っていると某は思われます」
「阿る者ばかり、か……」
 そう言いながら自然、頬が熱くなるのがわかった。
「魏続将軍は毒を流し込む者達を、君側の奸を除くべきだと思われませぬか」
「奸……」
「某は呂布将軍の為にも、魏続将軍の為にも嘆きます。このままで良い筈がない。悪しき者が悪しき流れを作っている。魏続将軍のような古参の武将が今、立ち上がらなくてどうするのです」
 古参という言い方を彭ヨウは強調した。
 特に言わなくても、魏続の頭にどのような顔ぶれが浮かぶのかが容易に想像できる。
 思わず口の端に笑みが浮かびそうになるが、そんなヘマはしなかった。
 たとえそんな笑みを浮かべても、今の魏続の目に入るとも思えなかったが。
「先ごろの曹彰の失敗は奴が豎子であったこともありますが、何でも新参者の一部が敵に寝返ったからだという話も聞いております」
「あいつらは……信用ならぬ」
「まことに」
「荊州の曹丕も知れたものではない」
「まことに」
「何よりも、この都で我が物顔に振舞う連中でさえも……」
「もし、彼らが野心を起こしたらどうなりましょうか。しかもあの曹操は腐刑を受けたとはいえ今も生きておりますし、彼の嫡子の曹丕は荊州で軍を持ち、その弟の一人は遠く南にまで行っている……何かあってからでは遅いと思われませぬか」
「……」
「某は真に国を憂うものです。そして某のようなものは沢山存在します。某らはこの都に凱旋した頃の呂布将軍と、その将兵に国を、未来を託しておるのです」
 魏続の脳裏には、この都に華々しく入っていったあの頃の自分を思い出していた。
 あの頃は、自分も呂布軍の将軍として一目置かれた存在だった。華やかな未来が待っていると思った。王として一国を領する身になれるとまでは思わなくても、呂布が皇帝となれば自分もそれなりにという栄華は信じていた。
 今、起てばあの頃に思い描いていた頃に戻れるかも知れない。
 呂布の目を曇らしている連中を討ち果たせば、自然覚えも目出度くなる筈だ。
 呂布は間違いなくかつて、自分を重用していたのだから。

「確かに、忠義の士として今の状況を見逃すわけにはいかぬな。お前の言う通……?」

 魏続が目を見開いて立ち上がった時には彭ヨウと名乗る男はいなかった。
 左右を見回すが、いつもの陰気な酒場でしかなかった。
 屋敷で飲めばいいのにと陰口を叩く常連客と、愛想笑いすらしなくなった店主などがいるだけだ。
 誰も魏続など存在しないかのように振舞っている、いつもの光景だ。
「まさか、夢か?」

 だらしのない今の自分を叱咤するための幻を見ていたのだろうか。
 魏続は目を二三度瞬きをするが、何も変わらなかった。

「だが……」

 あの決意は間違いはない。今の呂布将軍は間違っている。
 正さなければならない。それが、民の、己の中の声であるならば尚更だ。
 それでこそ、自分も見直されるというものだ。

 そう密かに決意すると、今までで初めて魏続は酔いを醒まし、顔を真っ直ぐ上げながらその酒場を出た。
久しぶりにわくわくして来る流れになってきたな。
583無名武将@お腹せっぷく:03/02/27 21:34
続きが気になる・・・!!
職人さん、頑張って下さい!!
楽しみにしてます♪
584無名武将@お腹せっぷく:03/02/28 12:04
建業に居を構える高順は、合肥にある張遼と共に、対孫権への備えであった。
孫権は表面では恭順を誓いながらも、荊州の動乱に乗じて兵を出すなど、油断のならないところがある。
その件についても強硬派の周瑜、魯粛らの半ば独断による軍事行動であって、揚州の総意ではないという。
豪族達の連合国家としての弱点を抱えているのが最大の弱みのようだった。

その出兵行動についても、都に留め置かれている張昭ら穏健派の協力で周瑜を軟禁することによって未然に防いだことになっている。
実際、周瑜が負傷し送還された当時の間者の知らせによると、江南地方では不穏な空気が高まり一触即発の色合いさえ浮かび始めていくようになっていたという知らせを受けている。
周瑜の屋敷の者を買収して知った経緯は以下の通りであった。

穏健派が誓った通りにまず荊州に出兵したものの負傷の為単身で帰国した周瑜の屋敷を孫瑜の兵が囲んだことから全ては始まった。
これは先に洛陽から帰還した程普の進言である。この事態に孫権の地盤は大きく揺らいだ。
今まで曲がりなりにも一挙体制をとっていた孫呉政権だったのだが、二つに割れてしまっていた。
この状況を危惧したのは他ならぬ国主孫権である。
彼としてはこういう事態を避ける為に我慢に我慢を重ねてきていたのだ。苦慮するのも無理はなかった。
だが洛陽に留まっている張昭、そして程普の意見に揚州の豪族の多くが賛同した。
彼等も今回の出兵にはあまり気乗りがしていなかったことと先ほどの呂布の侵攻に恐れの色が消えていないことが理由だろう。
今まで孫呉政権が確立されてからあそこまで追い詰められたことはなかった。
向こうにも余裕がないとは言え、その気になれは踏み潰される、そんな怯えが豪族達を支配していた。
呂布が荊州よりも先に涼州に攻め入ったのも良くなかった。
それによってどう相手が攻め入ってくるか予想が付かないという不安まで上乗せされた。
そして初代孫堅から三代に仕える重臣達も周瑜軟禁には賛成していた。
彼等も周瑜の暴走ぶりには苛立たしい思いをしていたものが少なくなかったのである。
元々寄り合い所帯の色が薄くない呉の国である。彼らの意向を無視できるほど今の孫権には力が無かった。
あの時周瑜を叱り付けてまで抑えつけていれば、孫権はそう思ったが後の祭りである。
585無名武将@お腹せっぷく:03/02/28 12:05
一方で当の周瑜は矢傷の治療を屋敷で続けていた。
魯粛の機転で無理をさせないで帰国させたことが体には良かったらしく、
若さもあって大分良くなってきていた。そんな体とは対照的に心境は苦りきっていた。
この大事な時期に自分を閉じ込めるとは、度し難い軟弱者めという孫権に対しての怒りが彼を飲酒に走らせていた。
親友と思っていた孫瑜がその任に当たっているということも癪の種であった。
自分の為に体を張ってでも取り成すべき立場なのに唯々諾々と従い、自分に顔も見せようとしないとは。
そう思えば思うほど閉じ篭って酒ばかり飲む日々が続く。

ある日、周瑜はいつもの通り酒を飲んでいると、
不意に屋敷の外が騒がしくなっていることに気付いて窓の外に身を乗り出した。
??「周都督には何方もお会いすることはできません。お引取り下さい」
??「黙れ。俺は国主の弟だぞ。お前如きにあれこれ言われる筋合いはない!」
どうやら入る入らないで押し問答が続いているようだ。
それだけ確認すると周瑜は再び席に戻って杯を傾けた。
暫く待つと片が付いたらしく、一人の若者が案内も連れず周瑜の前に現れた。

孫翊「周都督。お久しぶりです」
周瑜「これはこれは叔弼様。わざわざおいでいただけるとは恐縮です」
孫翊「いえ、お気になさらず。それよりも矢傷の方は如何ですか」
周瑜「お陰さまで、もう大分癒えました」
周瑜は孫翊に杯を渡して酒を勧めるが、孫翊は座ると周瑜に向かって頭を下げた。
孫翊「それにしてもこの度は全くの仕打ち。兄に代わってお詫び申し上げる」
周瑜「いや、頭を上げてください。叔弼様に謝られるわけにはいきませぬ」
慌てて取り成して改めて酒を勧める周瑜に孫翊は頷き、一気に飲み干した。
孫翊「しかし、本当に兄の心は度し難い。呂布が何を言ってきたのかは知らぬが
よりにもよって誰よりも呉の国を案じる都督をこの様な憂き目にあわせるとは」
周瑜「孫権様も辛い立場なのでしょう」
孫翊「いや、何と言おうとここは呉の国だ。兄が確りしていれば誰も異を唱えることなど・・・
それに元はと言えば兄が呂布などに屈服するからだ」
激高する孫翊に周瑜は何も言えないでいた。自分の思いと重なる。
586無名武将@お腹せっぷく:03/02/28 12:08
周瑜「叔弼様」
孫翊「周都督」
そこで孫翊は声を潜めて呼び掛けた。
孫翊「今の呉は本当に兄で大丈夫だろうか」
周瑜「な、何を言われる」
孫翊「このまま一部豪族と惰弱者達の論理に引かれて呂布の属国と化す呉の国を俺は見たくない」
周瑜「・・・」
孫翊「俺は自分が人の上に立てる器だとは思っておらぬ。だが、周都督は違う」
周瑜「叔弼様。いけませぬぞ」
孫翊「わかってはいる。いるのだが・・・」
周瑜「孫権様もきっとわかってくださって・・・」
孫翊「しかしこのままでは周都督の命さえ危うい。
呂布が都督の首を求めたら差し出しかねない。そんな空気も一部にはある」
周瑜「・・・」
孫翊「呉は豪族達のものでも兄のものでもない。そうは思われぬか」
周瑜「・・・」
血走った目をした孫翊の問いに周瑜は答えることができなかった。

その夜、苦悩する孫権の部屋では一人の若者がいた。
昼間周瑜の屋敷にいた孫翊である。
孫権「それではお前から見ても周瑜は危ういと申すのか」
孫翊「ああ、兄上。日頃の都督に似合わず酒に溺れ、正確な判断ができないでいるようだ」
孫翊は孫権の内命を受けて周瑜の様子を探りに来たのだった。
普段の周瑜ならは察知していたかも知れないが、
心身ともに腐りきった状況では迂闊にも嗅ぎ分けることができなかったらしい。
孫権「そうか・・・」
孫翊「担ぎ出すものが現れる前に早く手を打たねばまずいことになるぞ」
孫権「わかった。下がって良い」
孫翊「ああ」
孫翊がいなくなってからも、孫権は頭を抱え続けていた。
587無名武将@お腹せっぷく:03/02/28 12:09
既にこれは孫権の日課になってしまっている。
誰にも相談することができない苦悩の日々。
国主になるのでさえも心の準備が出来ないままになってしまったのだ。
若い彼を補佐するべき周瑜と張昭がここまで反目しあっていては
孫権はどちらにも安易に寄りかかることができない。
だが今この状況では先の戦で冷静さを失い続けている周瑜よりも
都で呂布を抑えている張昭の方が信頼に長ける。
たとえ呂布に反旗を翻すにしても今は時期ではない。
それに作戦自体が荊州に拘り過ぎている気がする。
劉備と組むことですら、ハナからお互いを信用していないことを前提にしている。
こんなやり方でそうそう自分に都合よく転がることはまずないことを孫権は知っている。
周瑜に野心があるとまでは今の孫権は思っていなかった。
だが亡き兄孫策を思うあまりに全てを見失っている危うさを感じていた。
それに殉じられるほど孫権は純粋ではない。
父もつまらない意地で劉表を執拗に攻め、逆に戦死している。
あの時からの孫家の苦労を孫権は忘れていない。
怨みを忘れる必要はない。が、怨みに引き摺られてはならない。
それが孫権の考えだったし、同時に彼は呂布にそれほど憎しみを抱いてはいなかった。
直接会ったからということもないだろうが、
呂布と彼の騎馬軍団には畏怖と共に敬意を抱かせるものがあった。
そんな気持ちに気付かれたからこそ、
却って周瑜を暴走に走らせているのかもしれないと反省する。
どちらにしても今は後悔している場合ではない。
張昭の書状にもあるようにまずは兵を戻らせ、それから周瑜と会うべきだろう。
腹を割って話し合うしかない。周瑜は呉にとって掛け替えのない存在なのだから。
588無名武将@お腹せっぷく:03/02/28 12:09
そんな孫権の気持ちを知ってか知らずか、魯粛が率いている軍が戻る気配はない。
何度も命令を飛ばしているのに、交戦中というのを理由にして戻ってこない。
そうなると周瑜の拘留期間も無駄に増えて更に解決が難しくなる。
孫権は苦悩し続けていた。


そこまでは上手くいっていた・・・そう思っていたのはどうやら高順の早とちりだったらしい。
元々、全て策に踊らされていたのだ。孫権と周瑜、そして孫翊に。
全ての間者が初めから泳がされていたということなのだろう。
一芝居打たされたと気付いた時には、既に周瑜は再び軍権を握っていた。

高順の打つ手は都にこの状況を知らせることと、守りを一層固めることしかできないでいた。
もう一つ工作を進めるように言われていた取って置きの計画があるが、今の段階では時期尚早だった。

高順「張昭、程普めが・・・早まった真似をしたな」

荊州への出兵の責任を周瑜が取らない以上、孫権が周瑜を追認した以上、こうなることは覚悟の上とはいえ、些か軽率な感がある。
まだ雌伏の時ではなかったのか。高順はそう思う。
だが、高順は知らない。汝南が曹丕の手に落ち、荊州の状況も大きく変わっていることを。
気がついたら話の展開が変わっていて、書いたものがもったいないのでちょっと混ぜてみた。
無理に話を繋げているのでスルーでも一向に構わない。
いや、見事見事。流れがわかりやすくなった。
>589
講釈は要らぬ
>>578
宋憲は>>544で元気に孔融の首根っこを引きずり回してるんだが・・・
593無名武将@お腹せっぷく:03/03/01 03:03
>>591のレスのほうが要らぬ
594無名武将@お腹せっぷく:03/03/01 14:30
>>592
50レスも昔のこといちいち指摘するなよ
リプレイ記…では、ないのですな。
にしても、孫翊がイイね。
596563-566:03/03/02 02:54
長江のとある河岸。
周喩は闇に紛れて準備をしていた。部下を乗せた船に細かな指令を出し長江に送り出している。
呂布の軍に気取られてはならない。だからこそ慎重に、自らの手で事を進める。
その甲斐あってか、呂布の軍に気取られている気配はない。
―分かっている。
頭で分かっているが、体のどこかでは緊張が爆発しそうな感じがしていた。
頭で分かっているが、心音が高まってゆくのが感じ取れた。
そして、心臓の鼓動が少しずつ、また少しずつ早くなってゆく…。

「オレも年をとったと言うことだろうか。」
船を大体命令を行き渡らせた部下達を見送り、一人きりになった周喩の口からふとそんな言葉がでてきた。
最近、よく口にしてしまう台詞なのだが、呂蒙などから言わせると「バカな事を…。」と一笑に伏せられる。
当の本人は意外にも本気だ。
「伯符(孫策)と共に駆けていたのは、そう遠い昔ではないはずなのだがな。」
独り言を言っている周喩の視線の向こうでは部下を乗せた衝船が遠ざかっていた。
誰に聞かせるわけでもなく孤独に船を見送る周喩が言葉を紡ぐ…。
「あの頃は、どんな謀略であってもこれだけ緊張することはなかったろう。それなのに。。。なぜ私はこんなに高揚しておるのか?
人からは激務と言われる。しかし、なにも激務ではない。孫家のためであればこの周喩、この身朽ちようが後世に悪名を残そうが何も恐れはせぬ。だが―。」
そこで、言葉を切った周喩は人の気配を感じ素早く振り返った。

振り返った先には、美青年とまでは行かないでも整った顔立ちで精悍な顔つきの若者が立っていた。
「これは失礼いたしました。まさか夜涼みに来て周提督がいらっしゃるとは思いませんで…。」
青年は深々と礼をし、謝した。
周喩はその様子を見て笑みを浮かべながら青年に話しかけた。
「恥ずかしい迷い言を聞かれてしまったな。どこから聞いておった?」
青年は、孫伯符様と駆けておられた件(くだり)を答えとして提示した。
「ふむ。あのころは、本当にそうだった。そして今も昔も恐れるものはない。それは真実。」
そこで周喩は視線を長江に向け、こう続けた。
「だが、私だけでは何も出来ぬ。何も収まらぬ。何も解決せぬ。孫家の天下が見えんのだ。
このちっぽけな命だけでは。」
「周提督は此度の戦でいったい…?」
周喩の悲壮な言葉を聞いた青年はいぶかしげに問いただした。
「何をなさるおつもりですか?」
周喩は青年に向きなおると、問いに答えた。
「此度の戦は、我らの命運をかけたものになろう。仲謀(孫権)も望んでいることだ。結果をいまさらとやかくいうまい。ただ、な。」
周喩は、これ以上言わせるな。というような笑みで青年を見やった。
青年はわけも分からず困惑する。
困惑する青年を面白そうに見ていた周喩はおもむろに話を続けた。
「お主が呂蒙のところの書生か?」
「左様でございます。」
「お主の策、採らせて頂いた。これからはお主らの世代の時代ぞ。…名をなんと申す?」
青年は、恭しく礼をしながら自らを名乗った。
「姓は陸、名は遜、字を伯言と申します。呉郡呉県華亭、呉四姓陸家の者です。」
「陸遜と申すか。これからもよろしく頼むぞ。」
周喩は青年に期待を込めて、そう言うと肩を軽く叩いた。
598アナザー:03/03/03 00:13
孫権「何事だ」
朝議に入る前の早朝、孫権が部屋で身支度をしていると近侍のものが兵を連れて慌しく入ってきた。
孫権「これは何の騒ぎだ」
近侍「奮威将軍の隊が襲撃されました」
孫権「何だと!それで仲異はどうなった?」
近侍「深手を負いましたが幸いにも命には別状なく……」
孫権「そうか……それで襲ったのは?」
近侍「まだわかっておりません。ただ……」
孫権「ただ?」
孫瑜が襲われた以上目的は一つだろう。だから孫権は続く言葉を怖れた。
近侍「都督がその連中に連れ去られました」
孫権「っ!」
馬鹿者と怒鳴りつけたくなるのを必死で抑えた。
だがその勢いも続いての伝令が届くまでのことであった。
孫権の身辺を守るべき親衛隊を率いる宋謙と賈華がそれぞれ武装して駆けつけてきたのである。
宋謙「大至急、ここを立ち退きください!」
孫権「謀反か!」
呻くように叫ぶ。最悪の事態だ。
遂に国が二つに割れるときがきたのである。それも最悪な形で。
賈華「はっ」
孫権「誰だ? 誰が……」
宋謙が孫輔の名前を告げた。事実彼の軍がいきなり各地で暴れだしての反乱であった。
そしてそれに追随するものが出始めたのだそうだ。主に国内に残っていた親周瑜派達の軍である。
孫権「魯粛め!」
恐らく糸を引いているだろう男の名前を叫ぶ。
賈華「既にかなりの要所を抑えられております。計画的なものだと」
孫権「どちらにしても構わぬ。すぐに軍令を出せ」
宋謙「秦松様が既に準備をしてお待ちです。お急ぎください」
孫権「わかった。お前らは予を守れ」
賈華・宋謙「「はっ」」
599アナザー:03/03/03 00:13
諸葛瑾の言により周瑜との和解は表向きは伏せられていた。
無論、それは許都にいる張昭達の顔を立てる為でもあり、荊州出兵の責任を取る為であった。
極力内密に運んだのは呂布の息のかかったものの目を晦ませるためであり、孫権自信の慎重さからでもあった。
疑いを晴らすために、孫翊を使って一芝居までうってみせた。ことさら周瑜との仲に緊張感を高めて見せていた。
だがそれは全て建業攻略までの偽装である。偽装でなくてはいけなかった。
今もなお軟禁状態にするように進言したのは建業攻略の陰の指揮をとる諸葛瑾だった。
だからこそ、周瑜との対談は極秘に進め、誤解を解くためにもと韓当をわざわざ軍から一人連れ戻させて周瑜が望むように事情聴取までませた。
その際に軍を率いていた魯粛には念書を渡し、了解を得ていた。意思の疎通は成っていた筈なのだ。
それが、どうしてこのような事態に陥ったのであろう。
そして肝心の周瑜はどうなっているのだろう。
魯粛は周瑜を助けるつもりで兵を出したのかもしれないが、周瑜からすれば魯粛の行為は認められるものではない。
内乱など起こしているゆとりはないのだ。

賈華と宋謙の率いる僅かな警護の兵と共に宮殿に赴きかける孫権に向かって兵が押し出してきた。
陳武、董襲らの兵であった。思えば彼等は皆、孫策に取り立てられた者たちである。
諸豪族の権益を守るだけの孫権よりも彼の片腕でもあり志を継ぐ周瑜の方に肩入れるのは当然である。
しかも周瑜自体がそもそも揚州の名族周氏なので、古い繋がりにある家も旗色を見て行動するところが増えてきた。
想像以上に孫権に味方するものは少なかった。彼が急遽なった若い当主という印象が災いした。
孫権は国主になってから、何一つ実績をあげていない。不安がられるのも仕方がなかった。
600アナザー:03/03/03 00:14
次々と寄せられる情報から情勢が一つ一つ判ってくる。
顧雍、歩隲ら重臣は既にそれぞれ捕縛され身動きが取れないでいるらしい。
孫賁、孫翊は行方をくらまし、呉景は国許で中立を表明、それぞれの本拠地にいる筈の呂範朱治らとも連絡が取れずに孤立することになった。
誰が味方で誰が敵かもわからないという恐慌状態が自体を悪化させていた。
こうなると軍閥を揃えている諸族の方が強い。
周瑜が今、どのような状態になっているのかは判らないが、周瑜の為にも魯粛の為にも自分自身の為にも今は捕まる訳にはいかなかった。
たとえ誤解から生じたクーデターであっても自分が囚われてしまえば話は面倒になる。
魯粛がたとえ周瑜が説得しようとも、虜となった自分を見てそのまま解き放つという保障はないのだ。
魯粛にこれ以上変な気を起こさないためにも、この事態は魯粛の早とちりで留めなくてはいけないのだ。
反乱に、内乱へともっていってはいけないのだ。

だが、魯粛の計略は間違いなく自分を捕らえる為のものになっていた。
叛旗を翻すと腹を括った時点で、十分に練ったのであろう。
網を張り巡らせるように、至る所に豪族軍が沸いて出てくる。
孫権を助けようと思っても、誰が敵なのかが見極められず、否応なく中立に立たされている諸軍も多かった。
孫権自身、こうなっては孫家自体の軍以外は殆どが信用できない。最悪だった。

孫権の取れる道は建業攻略のために軍兵を揃えている諸葛瑾の陣に向うことだった。
この軍と合流さえできれば、一息つける。
たとえ居城を落とされても、交渉次第で何とでもなる。
何しろ魯粛は誤解しているし、周瑜は孫権とは和解しているのだから。
そう、逃げ延びれれば。
601アナザー:03/03/03 00:17
宋謙「ここはわたしが抑えます。殿は先をお急ぎください」
そう叫んで陳武の陣に突進した宋謙の姿を孫権はもう見ることができなかった。
残った賈華が声を嗄らして走り続ける中、一軍が駆けつけた。
凌操「孫権様!」
孫権「おお、凌操」
凌操「これより我が軍が孫権様をお守りします」
孫権「うぬ、頼んだぞ」
凌操の一軍を加えて人心地ついたのもつかの間、宋謙が足止めしきれなかったらしい陳武、董襲らの軍が追撃をかけてきた。
だが、孫権らの行く先には甘寧の軍が見えていた。あそこまで逃げ込めば陳武らの攻撃を防げる。
孫権「急げ! 急ぐのだ!」
強かに討たれた宋謙、賈華の兵を励ましながら駆ける。
凌操「甘寧殿! 殿を頼……なっ

甘寧の姿を認めて手を振った凌操の胸に矢が突き刺さる。
馬上の甘寧が放った一矢だった。

凌操「こ……このぉぉぉぉぉぉぉ!」
胸板に矢を刺したまま、凌操が吼える。
馬を甘寧の軍に向けようとするその咽喉に二本目の矢が刺さる。
凌操「がぼ……」
それでも手綱を握り締めた手が微かに動く。
凌操「……」
そして最後に左目に矢が刺さると同時に、凌操の体が鞍から滑り落ちた。
孫権「凌操!」
賈華「ひ、引けっ! 甘寧も賊に寝返っておるぞ!!」
目の前で戦死した凌操に慌てて賈華は兵を叱咤した。
が、追撃してくる陳武らの軍とさっきの矢を合図に攻めかけてくる甘寧の軍に挟撃させる格好になった凌操軍は浮き足立っていた。
602アナザー:03/03/03 00:21
凌統「慌てるな。俺に続けっ!!」
一際大声を張り上げて、一人の若者が地に足の着かなかった軍勢を収める。
凌統「賈華様は殿をお連れして下さい。陳武甘寧の輩は俺と父の兵で食い止めます」
無理だと言いかける賈華に凌統は眦をキッと上げた。
凌統「食い止めます!!」
賈華「わ、わかった」
真っ赤になった目の迫力に圧されて賈華は頷くと、
賈華「孫権様。こっちです!」
ただ主従二騎で横を駆け抜けていく。
パラパラとその二人に向かって矢が射掛けられる。
凌統「盾となり、壁となれ!!」
孫権と賈華を守るように凌統は配下の兵を横に展開させる。
凌統「このっ!」
そして矢を番えていた甘寧に向かって腰の剣を抜くと放り投げて注意を引いた。
剣は甘寧の近くに落ちただけだったが、気を逸らすことはできたらしい。
舌打ちをして凌統の方を向いた。
凌統「凌統公績これにあり! 裏切り者甘寧、父の仇。この刃を受けよ」
戟を構え直すと甘寧に向かって馬を駆けさせた。
甘寧は孫権に向けていた矢を凌統に対して放った。
凌統「ぐぁっ!」
正確な狙いが却って予期しやすく、凌統は眉間に向かって飛んできたその矢を斬り落とす。
甘寧が弓を捨て、槍を構える。
その甘寧に向けて凌統が戟を突き出す。
同士討ちといえる範囲ではない、死闘が始まってしまっていた。

そんな悲劇に対して周瑜は手をこまねいて見届けていたわけではない。
孫輔の軍によって連れ出されると、すぐさま魯粛に会いに向った。
魯粛の軍は城下まで進軍してきていた。全て計画していたことのようだった。
荊州遠征軍。かつて自分が選抜し、率いていた軍勢である。
そしてその軍を今、率いているのは先頭に立っている魯粛であった。
その貌は、周瑜が見た今までの魯粛の顔とは全く違っていた。
603アナザー:03/03/03 00:23
周瑜「魯粛!」
魯粛「都督。ご無事で何よりです」
周瑜の怒鳴り声に対しても、涼しげに受け流して馬上で礼をする。
その落ち着きぶりが周瑜に身震いを誘った。
周瑜「お前、大変な間違いを犯しているぞ!」
魯粛「そうでしょうか」
周瑜「知らなかったのか! 殿と俺との話は既に決着していると。俺が軟禁されていたのはあくまで呂布に対しても見せかけだ!」
そう言って、諸葛瑾が孫権に提示した建業計略の謀を手短に語って見せた。
周瑜「つまり今、お前がやっていることは全て誤解だ。俺は殿を憎んでおらぬ!」
すぐに攻撃を止めさせるように言うが、魯粛は無言のまま応じる素振りを見せなかった。
周瑜「魯粛!」
魯粛「周瑜殿」
周瑜「何だと言うのだ」
魯粛「周瑜殿はかつてこう言われましたな。「伯符の弟ともあろう者が、あのような惰弱な者とは思わなんだ・・・」と」
周瑜「ろ、魯粛。それは……」
魯粛「この度の騒動。全て見せていただきました。周瑜殿と共に荊州に向い、その合間に殿がなされたことを」
周瑜「そんなことを今は言っている場合ではあるまい! 急がねば取り返しのつかぬ事になるぞ!」
魯粛「あの時、わたしが言ったことを覚えてお出でですか。公瑾殿」
周瑜「あの時はっ」
魯粛「何度でも言えます。あなたが天下を目指すのであれば、わたしは非才の全てを擲って、あなたの天下のために尽くす覚悟があります、と」
周瑜「俺は反逆の徒として名を成すつもりはない。それに第一、俺が伯符の弟を殺せるか!」
魯粛「殿が信用に値しない人物でも、説を通すと仰られるのか」
周瑜「魯粛。お前が何を考えているのかは敢えて問うまい。すぐに兵を引いて俺と共に殿に詫びろ! あくまで誤解から……」
魯粛「連絡は届いておりました」
周瑜「何っ?」
604アナザー:03/03/03 00:24
魯粛「荊州攻略が難しいので建業取りに変更すると。その際、荊州攻略が周瑜の独断であったということにして表向きは軟禁にすると。全て書状で知っております」
周瑜「だとしたら何故だ!?」
魯粛「だから殿は信用がおけないのです。呂布が周瑜殿の首を要求なされたらどうします? 周瑜殿は股肱の臣ですし、周瑜殿を斬れば豪族達の離反を招き、自滅するので避けるでしょうが、周瑜殿でなければ? 例えばこの魯粛子敬の首では?」
周瑜「そんなことは俺がさせん!」
魯粛「では他の荊州への征伐を積極的に賛同した将軍達は?」
周瑜「そんな要求がきたらその時こそ、一致団結して呂布を倒すべく兵を挙げれば良い。何を考えている」
魯粛「出兵に反対していた者達はさぞかし、不満でしょうな。周瑜らのおかげで危機に陥ったと」
そこまで言われて周瑜はようやく魯粛の言いたいことに気がついた。
周瑜「国が割れるのを避けるために、殿はお前か将軍達を斬ると考えているのか」
魯粛「荊州攻略を失敗した非はこちらにあるのですから、処置として当然でしょう」
周瑜「ではお前、自分達の為に俺を担ごうというのか」
魯粛「周瑜都督でさえも、いいように振り回される。そのような不安が我等にはあります」
周瑜「愚かなことを……」
魯粛「殿は揚州の主であることをわたしは願っておりました。ですが、揚州の主として相応しくない振る舞いを続けられて、臣として決断を下さねばなりませぬ」
周瑜「魯粛。早まるな。いいか、殿は馬鹿ではない。確かに慣れない面もあるが、悪い主ではないぞ」
魯粛「孫輔殿には揚州の主の座を約束しております」
周瑜「子敬!!」
魯粛「周瑜殿。今一度、お願いいたします。我等と共に立ちましょう。殿は今、一番見放されている時です。この時を外して……」
周瑜「言うな! それ以上言えば、俺はお前を斬らねばならなくなる」
魯粛「では、どうあっても」
周瑜「俺は伯符の夢を追う。だが、伯符の弟を討ってまでの夢でどうしてあると言うのだ!」
魯粛「それでは、我々は……」
周瑜「俺と共に来い。殿に詫びろ。孫輔は……恐らく助からないが、他の者は全員助ける。そうしてみせる。だから」
605アナザー:03/03/03 00:25
魯粛「……宜しいのですか?」
周瑜「当たり前だ」
魯粛「いえ、本当にそうして宜しいのですか」
周瑜「子敬!」
暫く無言で互いの顔を見つめあう。
この揚州の重鎮であり、親友として結び合った二人。
様々な思いが葛藤する。
だが、周瑜に躊躇いはない。
魯粛の友情は友情として受け入れつつも、このような反乱は周瑜の望むところではない。
なにより、伯符の一族を殺すことなど考えにも及ばない。
その思いが魯粛にも通じたのだろうか、大きく一つ息を吐いた。
魯粛「ひとつだけ、策があります」
周瑜「何?」
息と共に、魯粛の中に張り詰められていたものが、解れたような印象だった。
魯粛「どうあっても周瑜殿が首を縦に振らない時の為に、練っていた計が」
周瑜「何だと」
魯粛「それを殿への最後の手土産にしようと思います」
周瑜「……」
そう語る魯粛の表情は今までの、周瑜が良く知る魯粛子敬の表情に戻っていた。
魯粛「今、殿は甘寧の軍に追われて諸葛瑾殿の軍に合流しようと逃走している筈です」
周瑜「あれだけの混乱では、建業攻略軍へ合流するのは当然だろう」
魯粛「既に建業に使者を派遣しております」
周瑜「何?」
魯粛「魯粛率いる反乱軍に襲われていると。朝廷の家臣である孫権は同じく朝廷の家臣である高順に救援を求めると」
周瑜「誘い出す計か」
魯粛「はい。殿は本当に追われているだけに、高順がどれだけ疑おうとも嘘は入っておりません。ただ、使者が孫権からではないというだけで」
周瑜「なるほど。建業の城を殿に渡すことでこの度の事に片を付けるのだな」
606アナザー:03/03/03 00:26
魯粛「それともう一つ」
周瑜「何だ」
魯粛「たとえいきさつはどうあれ、反乱をおこしたのは事実です」
周瑜「まだ言うのか」
魯粛「大事なことです。わたしは殿より周瑜殿を選びました。これは臣として死に値する罪です」
周瑜は魯粛が眦を決してやってきていた理由が理解できた気がした。
魯粛「そして今回で少なからず死傷者が出たことでしょう。たとえ和がなっても怨みは決して忘れません。普段大人しいものほど、卑屈なものほど、軟弱なものほど、怨みは深く根強く残ります。責任を取らねばなりません」
周瑜「……」
魯粛「孫輔の首はお斬りなさいませ、都督。そして……」
そう言うと、魯粛は自分の腰にさげていた刀を抜くと、
魯粛「この魯粛の首と二つで、他の者の帰順のとりなしをお願い致します」
周瑜「子敬!」
魯粛「公瑾殿。くれぐれもご自愛のほどを」
周瑜「子けーぃぃぃぃっ!!」

今回の混乱の結果、孫権は高順を追い払って建業をその版図に加えた。
孫権の代になり、初めての勝利である。だが、それを祝うものは誰一人いなかった。
重臣である魯粛とその一党が周瑜軟禁を誤解したまま暴発し、たまたま建業を巻き込んだために得たいわば棚ボタの産物であったからだ。
その過程で誤解とはいえ同士討ちをしあった者達の互いの感情は収まりがつかないものとなっていた。
だが、彼らも今回の事件の真相を知るものの苦悩に比べればいくらかマシであったかも知れない。
早とちりした魯粛を怨み、憎むということが、魯粛の真意を知っているために彼らにはできないのだから。

周瑜公瑾の覇業を夢見、適うこともなく知っていった謀士の夢を。

魯子敬。公瑾より先に逝ってしまうとは。
>>607
>598-606は本筋とはずれたので流せ「アナザー」というのはそういう意味でしょう。
609世直し一揆:03/03/06 13:34
<血液型A型の一般的な特徴>(見せかけのもっともらしさ(偽善)に騙されるな!!)
●とにかく気が小さい(神経質、臆病、二言目には「世間」、了見が狭い)
●他人に異常に干渉し、しかも好戦的でファイト満々(キモイ、自己中心、硬直的でデリカシーがない)
●妙に気位が高く、自分が馬鹿にされると怒るくせに平気で他人を馬鹿にしようとする
(ただし、相手を表面的・形式的にしか判断できず(早合点・誤解の名人)、実際にはた
いてい、内面的・実質的に負けている)
●本音は、ものすごく幼稚で倫理意識が異常に低い(人にばれさえしなければOK!)
●権力、強者(警察、暴走族…etc)に弱く、弱者には威張り散らす(強い者にはへつらい、弱い者に対してはいじめる)
●あら探しだけは名人級でウザイ(例え10の長所があってもほめることをせず、たった1つの短所を見つけてはけなす)
●基本的に悲観主義でマイナス思考に支配されているため性格がうっとうしい(根暗)
●単独では何もできない(群れでしか行動できないヘタレ)
●少数派の異質、異文化を排斥する(差別主義者、狭量)
●集団によるいじめのパイオニア&天才(陰湿&陰険)
●悪口、陰口が大好き(A型が3人寄れば他人の悪口、裏表が激しい)
●他人からどう見られているか、人の目を異常に気にする(「〜みたい」とよく言う、
世間体命)
●自分の感情をうまく表現できず、コミュニケーション能力に乏しい(同じことを何度
も言ってキモイ)
●表面上協調・意気投合しているようでも、腹は各自バラバラで融通が利かず、頑固(本当は個性・アク強い)
●人を信じられず、疑い深い(自分自身裏表が激しいため、他人に対してもそう思う)
●自ら好んでストイックな生活をしストレスを溜めておきながら、他人に猛烈に嫉妬
する(不合理な馬鹿)  
●後で自分の誤りに気づいても、無理にでも筋を通そうとし素直に謝れない(切腹あるのみ!)
●自分に甘く他人に厳しい(自分のことは棚に上げてまず他人を責める。包容力がなく冷酷)
●男は、女々しいあるいは女の腐ったみたいな考えのやつが多い(例:「俺のほうが男
前やのに、なんでや!(あの野郎の足を引っ張ってやる!!)」)
610無名武将@お腹せっぷく:03/03/06 13:45
し皇帝の二の無になる
終了
611無名武将@お腹せっぷく:03/03/07 10:26
簡雍殺すなよバカ
612無名武将@お腹せっぷく:03/03/07 10:29
あ、やっぱいいわ。
劉備悪者なら。
613無名武将@お腹せっぷく:03/03/07 10:37
簡雍、なんか復活してるし。
614無名武将@お腹せっぷく:03/03/07 12:18
呂布に対抗する為とはいえ、呉の不穏状態をなかったことにしていた最近の本筋よりは面白かった。>アナザー
書いてる職人もこれに負けないものをキボン。
615向寵:03/03/07 12:39
末将、仕える主を求め、諸国を遍歴しておる向寵と申す。
諸兄らに現在の中華の様子をご説明致そう。

#以降「まとめ」を書く人はできたら「向寵」で書きこんでください。
#向寵を選んだ理由はメジャーとマイナーの中間だからです。
616向寵:03/03/07 12:41
まずは中華全土の勢力図をご覧いただこう。
末将に力があれば、大陸地図に描くところなのであるが、
非力ゆえ、げいむなどというものの地図で我慢していただきとう思う。
617向寵:03/03/07 12:41
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※▲襄平※ 
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ▲=袁煕(呂布に従属)
※※※※※※※※※※※※※※※※▲※※※※▲北平※※※ ★=馬騰(呂布に従属)
※※※※※※※※※※※※※※※※薊※※※※※※※※※※ △=孫権(呂布に従属)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※▲※※※※ ●=劉表(呂布に従属)
※※※※※※※※※※晋陽※※※※※※※※※南皮※※※※ ◇=劉備
※※※※※※※※※※※※■※※※※※※■※※※※■北海 ◎=周瑜
※※西涼★※※※※※※※※※業β※※平原※※※※※※※ Θ=孟獲
※※※※※※※※※安定※※※※※■※※※※※※※※※※ 
※※天水★※※※★※※※■河内※※※※■濮陽※※※※※ 
※※※※※※※※※※※※※※※※※陳留※※※※※※※※ 
※※※※※※※※※■※※■洛陽※※■※※※小沛※■下ヒ 
※※※※※※※長安※※※※※※※※※※※※■※※※※※ 
※※※※※※※※※※※※※※※■※※※■※※※※※※※ 
※※※※※※※※※※※※※※許昌※※言焦※※※※※※※
※※武都◇※※※※※※※■※※※※■※※※■※※※※※ 
※※※※※※◇漢中※※宛※※※※汝南※寿春※※※※※※ □=不明
※※※※※※※※※※※※※●※※※※※※※※※※△建業
※※※※※※※※※※※※新野※※※※廬江※※※※※※※
※※※※※◇梓潼※※●※※江夏●※※※△※※※※※※※
※※※※※※※※※襄陽※※※※※※※※※※※※※△呉※
※成都◇※※※※◇※※※●※※※※◎紫桑※※※※※※※
※※※※※◇※永安※※江陵※※※※※※※※※※※※※※
※※※※江州※※※※●※※※※●長沙※※※※※※△会稽
※建寧◇※※※※武陵※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※※●※※●桂陽※※※※※※※※※
※南蛮Θ※※※※※※※零陵※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※□※※※※※※※□※※※※※※※※※※※
※※※※※※交趾※※※※※※南海※※※※※※※※※※※
618向寵:03/03/07 12:44
次に、諸勢力の状況をご紹介いたそう。
末将、旅の者ゆえ、多少、現在の状況とずれておる所があるかも知れぬ。
また、遍歴の後、ご報告いたしますゆえ、そこは勘弁して欲しく思う。

......呂布陣営
参謀:賈ク、田豊
将軍:張遼、高順、張コウ
※袁煕、馬騰、孫権、劉表、曹操などを支配下に
 本人は天下に対する欲はなく、純粋に戦いを楽しみたい様子

......曹操(宦官);呂布に従属中
参謀:程イク
将軍:曹丕、曹彰
※実子を全中華に散らし、秋(トキ)を待つ
  曹丕:洛陽(ホウ統、魏延)
  曹彰:汝南(徐庶)
  曹植:南蛮

......劉備陣営
参謀:法正、諸葛亮、閻圃
将軍:関羽、張飛
※揚州軍との荊州分割を狙うも、相次ぐ策失敗
 現在の揚州混乱によって実施できないでいる
 呂布軍とは目下不可侵状態
619向寵:03/03/07 12:45
......孫権陣営
参謀:諸葛瑾、張昭
将軍:程普、黄蓋
※周瑜・魯粛・甘寧らの謀反騒ぎで大混乱中
 益州軍との荊州分割を狙う
 呂布に従属中

......周瑜陣営
参謀:魯粛(→死亡)
将軍:甘寧
※魯粛が反乱の罪を一身に負い、孫権・周瑜関係修復か?
 周瑜自身は小覇王孫策との誓いとの間で揺れる
 呂布従属を嫌い、徹底抗戦を主張

......劉表陣営
参謀:蔡瑁、カイ越
将軍:魏延、黄忠
※益州・揚州軍に再三攻撃されるも、呂布軍の援軍によって持ちこたえる
 南荊州には関羽軍を追い払った謎の将(=蒋[王宛])も
 しかし、戦乱が続き、各城は連携できず、独自防衛を余儀なくされている
 呂布に従属中
620向寵:03/03/07 12:45
......馬騰陣営
参謀:韓遂
武将:馬超
※呂布軍に叩きのめされ、心服
 馬超と呂布は意気投合
 呂布に従属中

......孟獲陣営
参謀:曹植
武将:特になし
※突如中原からやってきた曹植によって発展か
 曹植は孟獲を東南方面に進出させ、力を蓄えて後に劉備と結ばせたい様子
 荊州に対する三方作戦か
621向寵:03/03/07 12:57
追伸
襄陽諸将は蔡瑁に愛想を尽かし、
故・馬謖殿の策によって形成された、カイ越殿中心の益州派、
劉j・孫尚香の婚姻を支持していた揚州派に分かれ、
また、断乎呂布殿の庇護を求めるべきだという蔡瑁殿を中心とした派閥もあり、
何やら不穏な空気である。南荊州との連絡は依然として取れず、皆悶々としておる。
城下の民などは、また戦があるのではないか、などと互いに噂しあい、
戦乱による土地の荒廃などもあり、食物の値段は徐々に上がっているそうな。

209年春、襄陽にて。   向寵
まとめ乙だが、>>598からのアナザーの件が混在してます。
孫権と周瑜の反目は、高順の目を欺くための策だったということで、
魯粛も死んでないよ。
曹丕:洛陽(ホウ統、魏延)

曹丕とかは襄陽を乗っ取った状態じゃないの?
作家は固定禁止な
625金 正日:03/03/11 22:18
あげ
>>625
荒らしはアク禁されろ

三国志のAAを集めるスレ
http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1047388170/
向寵殿へ。別スレから拾ってきますた。
下邳、鄴、譙
あと紫桑→柴桑
628山崎渉:03/03/13 15:17
(^^)
hosyu
アナザーは本編とは、関係ないとこのはなしなのでしょうか?うまく続いてるのなら、本編と認定しても良いと思います。
もともとリレー小説の形をとっているので、先手必勝はルールと思われます。アナザーの内容が好きなので、続きを読みたいと思っただけなのですが。
いちROMのたわごとなので無視してくれてもかまいません。
夜明け前。
周喩は建業へ向けて出発をした。
陣容は黄蓋、韓当といった古参の武将もいれば、朱桓や丁奉といった新進気鋭な将の姿もある。
ただ不思議なことに、孫家直参の将は一人もその陣容には入っていなかった。

建業は長江を背後に置く要所。
ここには呂布旗下の猛将高順が守将にあたっていた。
高順は呉の不穏な動きには気づくこともなく、都には周喩を陥穽する計の進捗を報告の使者として飛ばしていた。
「全く…。都の官どもは全然分かっておらぬわ。」
高順は最近の苛ただしさをあたるところもなく疲れが溜まっていた。
張遼や臧覇は長江の向こう側に構えている。
立地だけ考えれば、高順の建業だけが長江によって味方の補給線から孤立している。
水軍が盛んではない呂布軍においてその意味は非常に大きかったと言える。
現地の将軍の苦労が分かっていない、そんな被害妄想にも似た考え方に高順が行き着くまでそんなに時間はかからなかった。
そして、そんな不安を内包したままで暫くの時が流れたのだが…。
来るべき時は来てしまった。

周喩が建業を見据える所まで軍を進めたのは夜が明けて数刻後のことだった。
最近の呂布軍、統制が取れているようで内に暗部を秘めている事を周喩は知っている。
都の程普からの報告によって「大国ならではの問題」が内包していることを知っている。
建業の高順もその問題を抱える一人のはず。
そして、長江を背にした建業の立地条件で守将は猛将高順。
籠城はあり得ない。
周喩が付け入る隙がそこに生まれていた。
呂布軍の援軍に対する策も打ってあった。

野戦で全ては決する。
いまこの時、ようやく周喩は長い暗闇を抜けようとしていた。
−しかし。

戦いの号令をかけようとしたまさにその時。
周喩は、自身の筋書きが大きな誤算をしていた事をその時初めて知ることになる。
「伝令!荊州軍が謀反!!」
伝令が馬上の周喩に横付けし事態を告げる。
「なに?!」
周喩はまったく思いもよらない伝令の言葉に耳を疑う。
しかし、それはすでに建業攻略云々以前に謀られていたことだった。
事態を飲み込んだ周喩は、すぐに軍を諸葛瑾に預け建業に気取られないよう野営を命じた。
そして単身、魯粛の元へと馬を駆っていた。
悲劇の結末をまだ知らず…。
魯粛「公瑾殿。くれぐれもご自愛のほどを」
魯粛のそんな言葉に周喩はたまらず叫ぶ。
周瑜「子けーぃぃぃぃっ!!」
しかし周喩の叫びは空しく響くだけだった。
孫家麾下指折りの謀臣にして、温厚な名士でもある漢の最期である
魯粛、字を子敬
臨淮郡東城の富豪、方正謹厳で、自らを飾ることが少なく、その生活は内外とも質素であって、人々がもてはやすようなものには興味を示さなかった。
周喩が自らの任を安心して任せることの出来る唯一の臣であった。

孫権が建業攻略軍に命辛々逃げ延びたのは、建業攻略軍に不穏な空気が流れ出しす前の事になる。
建業攻略軍総指揮代理の諸葛瑾は、ほっと胸を撫で下ろし孫権を迎えた。
「殿、大事なく何よりです。。。」
しかしそれを聞いた孫権は、
「大事なく、だと?何が大事でないものか!」
苛立った様子で諸葛瑾に当たり散らしてしまった。
「すまぬ。少々気が立っておるようだ。朝から何が起きたのか、気持ちの整理がついておらぬのでな。」
孫権はすぐに自らの過ちに気づき、諸葛瑾に謝罪した。
諸葛瑾もそれに応じ、自身の軽率な発言を謝した。
孫権の安全が確保出来たところで、これからどうするべきかは諸葛瑾の双肩にかかってきた。
作戦決行か?
はたまた、現状のまま待機か。

引くことは許されない。
混乱したこの状況が「なんとしても建業を落とさなくてはならない」と言っている。
しかし、ここに建業攻略総大将にして水軍大提督、周喩公謹その人は居ない。
今回の出兵、全て周喩が取りまとめている。
自分に出来るだろうか?

−そのとき。
幕外から一声が挙がった。
「殿の御身を確保した今、建業へ向けての進軍をおこなうべきでしょう。」
諸葛瑾が声の主をさがしたその先には、
呂蒙、陸遜の二人の姿があった。
このスレがこんな展開になってるの知らなかったよ…
続きが楽しみです。
636無名武将@お腹せっぷく:03/03/17 02:18
常勝将軍と歌われた、陥陣営高順の大活躍を見てみたい。
hosyu
保守です
ホウ統 「揚州の間者より報せが届きました。揚州に不穏な気配あり、秘かに兵が
    動いているとのこと」
曹丕 「ほう、懲りずにまた軍を動かすつもりか、孫権は」
ホウ統 「いえ、それが微妙なところでございまして」
曹丕 「・・・どういうことだ」
ホウ統 「孫権の命の下に動いているのかどうか、些か不分明なところがあるそうで」
曹丕 「それでは内乱ではないか。周瑜あたりの叛乱か」
ホウ統 「内乱かどうかはまだ分かりません。或いは隠密裏の軍事行動やもしれませぬからな」
曹丕 「む、まさか江夏が攻められるということは」
ホウ統 「いや、どうもそれはなさそうです。江夏付近の呉軍には動きがないそうですから。
    いずれにせよ、詳しいことはまだ分かりかねます。次の報せを待ちましょう」

某日夕刻、襄陽城の一室。今や、襄陽を中心とする荊州北部は、実質的に曹丕の手に
落ちつつあった。対外的には劉表の名の下の軍事行動であったが、見る者が見れば
その戦はおよそ劉表のそれらしくないことが観て取れるだろう。巧妙にして果敢、更には
辛辣。汝南を落とした戦のやり方などは、劉表の退嬰の質とはかけ離れたものであった。

劉表は死んではいない。だが、既に病は膏肓に入り、最早言葉を発することもできない。
これ幸いとばかりに、ホウ統は療養を名目として劉表を家族もろとも自宅に軟禁してしまった。
現在は劉表の名代として、劉gが襄陽の政を取り仕切る形になっている。
曹丕 「揚州の動きを奇貨として、こちらも何か手は打てぬものかな。できれば江夏は
    我らの勢力下に置きたいものだ。黄祖めが邪魔で仕方がない」
ホウ統 「まあ、あれも老いの一徹、ですかな。見方によっては微笑ましくもありますぞ」
曹丕 「冗談ではない。あれのどこが微笑ましいものかよ」

苦り切った顔をする曹丕。黄祖が曹丕と反目などせず、おとなしく襄陽に従っていれば、
曹丕の力は倍加することになっただろう。汝南、襄陽、そして江陵。現在でも荊州北部の
重要拠点は抑えているものの、如何せん領土が縦に長く伸びすぎている。南の四郡とは
行かぬまでも、江夏が確保できていたならば、政も軍事ももう少し楽にできたはずなのだ。

ホウ統 「黄祖が孫権と結ぶことがなさそうなのが、せめてもの救いですかな」
曹丕 「だからこそよ。揚州がうまく治まれば、孫権や周瑜が次に狙うのは江夏だろう。
    先手を取って江夏を取り込まねば、喉元に匕首を突きつけられるやもしれぬぞ」

考え込む曹丕。その横顔を見ながら、ホウ統は考えていた。この人は巷間言われている
ような、極度に冷酷な性でも無用に残忍な性格でもない。ただ、その思考が極度に
合理的なだけだ。その根底にあるのは、あらゆる状況を己の為に利用しようとする
徹頭徹尾実利的で現実的な考え方である。情緒が欠落したようなその考え方が、
人によって、時として、冷酷に見えるだけなのではないだろうか。
曹丕 「それはそうと子元よ、先日の話だが、考えてくれたか」
ホウ統 「は・・・確かに一理ございますが・・・」

連合。曹丕がホウ統に図ったのは、呂布に対抗するための連合であった。現在の荊州は
呂布、劉備、孫権、三者の思惑が入り乱れた地となっている。荊州を勢力下に置くことが、
どの勢力にとっても急務となっていたのだ。その間隙を突いて、曹丕は見事に襄陽を
押さえ、荊州を自らのものとした。

しかし、これは危うい綱渡りのようなものでもある。三つの勢力を向こうに回して、独力で
勢力を維持できるほどの力は、今の荊州にはない。呂布の勢力の伸張を阻むため、
劉備、或いは孫権、いずれかと手を結ぶべきではないか。曹丕が考えたのはそれだった。

曹丕 「独力で呂布の覇権を打ち倒したい、その思いは分かる。私もできるものなら
    そうしたい。だが、我らはまだ力不足だ。汝南を押さえる魏延も韓嵩も
    限界に近い。呂布の打倒が最終的な目標である以上、一時的にでも他者との
    同盟を考えるべきだと思うのだが」

ホウ統は小さくうなる。曹丕と自分の思いは、微妙なところで齟齬を来している。呂布の打倒。
この点については、二人の思いは等しい。問題なのはその後だ。

曹丕はあくまで曹家の天下を目指している。そのためにはどんな手段を取ることも厭わない。
一方、ホウ統の目指すのは腐り果てた漢室の打倒だ。そのために、当初はホウ統も劉備との
連合を考えていた。だが、劉備は漢帝国の維持と復興を旗印としている。加えて、益州を
奪い、更に荊州に侵攻した劉備のやり口は、民を顧みることの全くないものであった。
劉備も腐った漢室の一員なのだ、そうした思いはホウ統の中で次第に強くなっている。
ホウ統が認める自らの数少ない欠点。自分は潔癖に過ぎる。己の考えが理想に偏った
ものであることは承知している。それでもなお、劉備と結ぶことに抵抗を感じてしまう。
そして、諸葛亮。あの男と旗を同じくすることを、今の自分は望んではいない。

まだしも孫権と結ぶ方が、抵抗感は少ない。ただ、揚州の動向が見定められぬ以上、
現時点で安易に同盟を持ちかけることは避けた方が賢明であろう。

黙り込んだホウ統を見やり、曹丕は小さく溜息をつく。

曹丕「ま、考えておいてくれ。私はg君とでも話をしてくる」

何故か劉gは曹丕と馬が合う。父劉表に疎まれていたせいか、劉gは曹丕やホウ統に
あまり敵意を持っていない。むしろ政や学問に関しては、積極的に曹丕と協力しながら
仕事を進めている。宋忠ら儒者の仕事をまとめる事業を二人で始め、宋忠の下にいた
零陵の俊才・周不疑がそれに加わって、学の都たる襄陽の復興に向けて奔走している。


部屋を出て行く曹丕の後ろ姿を見ながら、ホウ統は自らの採るべき道を考え続けていた。
所は変わって揚州、建業攻略軍内
諸葛瑾はまだ迷っていた。
この状態で戦闘が出来るかどうかはわからない。
相手は常勝将軍と謳われた、陥陣営の高順。
曹操軍の猛将夏候淳の左目を射抜き、曹操軍を敗走させたこともある。
攻撃した相手を必ず打ち破ったため、陥陣営の通り名を持っている呂布配下随一の名将。
一方のこちらは、揚州の猛将揃いとはいえ背後に混乱した国を抱え、その影響は士気にも関わっている。
このまま予定通りの野戦では敗色濃厚な線が強かった。
しかし、諸葛瑾の眼前に居る二人の若者は進軍を進言している。
なにか策でもあるのだろうか?
諸葛瑾には全く理解できなかった。

孫権はその時自分の代になる前の孫家を考えていた。
当主孫堅時代はどん欲に名を挙げ、中原を狙い、玉璽を手中に収めるまでの勢いがあった。
そしてその嫡男孫策に代がかわり、裸一貫から揚州一帯を納めるまでに成長した。
それから幾年が経ったのだろうか、いつしか揚州孫家は中原奪取よりも豪族の利害を守る事に注力するようになっていたようだ。
実際孫権も「地盤ありき」の国策を採っていた事は重々承知のことである。
そんな孫権の中庸路線に、多くの「安全を望む臣下・豪族」は賛同をしていた。
しかし、先代孫策までに仕えた臣の中にはそれを良しとしない者も多くいた。
孫権だってそんな中庸路線を採りたくて採ったわけではない。
兄のように打って出たい気持ちはあった。が、自分はそんな器量ではない。国を守ることが、孫家を守ることが自分の存在理由であり役割である。
だが、そんな自分で決めた理には従う必要はないと分かり始めていた。
国の礎たる重臣達を己の不明で失うことで初めて気づいた事がそこにはあった。
孫権がそう気づいた時、既に重臣が一人世を去っていた。が、孫権はそれを知る術がない。

孫権は自分でも気づかない早さで国が真っ二つに割れた己の不明を取り戻すためにも指令を出していた。
「どのように建業を落とす。そして陥陣営とどう相対するつもりか。」

陸遜、呂蒙の両名が策を説明し始めた。
決戦の時は迫る。
644無名武将@お腹せっぷく:03/03/25 00:27
 荊州の主はと問われれば劉表景升と答えるだろう。
 曹寅の檄により孫堅の手に掛かり死んだ王叡の後任として荊州刺史に劉表が就任して十数年のが経とうとしている。
 蔡瑁ら荊州の豪族を集めて相談し、当時江南に覇を唱えていた宗賊を騙まし討ちにし、その軍兵を手に入れてからというもの荊州は安定期を迎えていた。
 豪族の助力もあったにしろ彼一代で良くこの荊州を治めてきたのは紛れもない事実である。
 幸いにも攻め込まれたのは二度で、その二度ともに孫堅、張済と敵の総大将が討ち死にするという結果にも助けられ、領土を大きく侵されることは無かった。
 各地の騒乱を逃れてきたものは皆こぞってこの荊州の地を選んだ。
 肥沃で豊かな土壌に、有識者集まり学問の徒ともなった。
 戦乱の世につかの間のオアシスとも言える場所がこの荊州であり、そうさせたのがこの劉表という男であった。
 だが、もうその実権は彼の手には無い。
 同盟国であり、都で皇帝を戴く大将軍呂布奉先の派遣した援軍の部将、曹丕が彼の長子である劉gを唆して彼の手から実権を奪ったのだ。
 寵愛する後妻の子で、しかも豪族の蔡瑁の妹という繋がりと、老いてからの子ということから弟の劉jを愛し、疎んじていたところを付け入れられたのだ。
 曹丕の手腕が鮮やかだったこともあり、気がついた時にはもう軍兵の主権は劉表の手から奪われていた。
 怒りと屈辱で倒れ、今ではこの病床が彼の唯一の居場所である。
 いや、医者や近侍でさえも曹丕、劉gの息が掛っている可能性もあるので、もうこの荊州に彼の自由となるものは何もなかった。
 彼の信頼する蔡瑁も囚われ軟禁されたか、殺されたかしたのか自分の前に姿を見せることは無い。
 彼の一族で支配していた荊州兵も各地に分散されたようで、もう今頃は小隊長レベルで懐柔され取り込まれていることだろうと推測できる。
 抵抗できるのはせいぜい前線の現地司令官とその軍兵ぐらいだろう。
 劉表は友人の黄祖のことを思い出していた。彼なら曹丕には下るまい。しかし、劉gが言えば落ちる気もした。どうなるのかはわからない。
 このまま放っておいても自分は死ぬと劉表は思ったが、その前に殺されることも覚悟していた。いづれは自分の死が発表され、劉gの後継が告げられることだろう。
 まだ自分が健在だった頃に曹丕に勧められて都に送った劉jは無事だろうか。この軍事行動が呂布と関係が無ければ無いだけ、劉jの身は安全になる。
 本当に無事に送り届けられていればの話だが。
 今の自分では祈るくらいしかできない。

 劉表の危惧は的を射ていて、そして外れていた。
 彼よりも先に劉jはこの世にはいなかったのだ。
 彼を警護するべく警護兵が最初からそう決められていた通りに、道中で劉jを殺害し、その首だけが荊州に帰還していた。
 丁度その時同席していた劉gに、曹丕は朗報だろうと思って首を見せたのだが、曹丕の予測とは裏腹に、劉gは顔色を悪くしてそのまま倒れてしまった。
 劉jの近臣に主が病弱だと聞かされて、納得はしたものの失望は隠せなかった。

『肉親の首を見ただけで倒れるというのでは気弱すぎる。あまり期待はできぬな』

 自分にも病弱の弟がいたことも、その弟を自分が討ったことも曹丕は忘れていた。
 だが、曹丕は多少誤解をしていた。
 劉gは恵まれない生き方をしていて、多感であった。
 多感ということは、考え過ぎるということにも繋がる。
 実の弟の死ということ以上にその首を見て彼が感じたのは、それ程曹丕にとって大事ではない劉jまで逃さず殺したということは、将来荊州統治に邪魔になる自分もこのように簡単に殺されるのではないかという危惧である。
 その首に自分を重ねてしまったのだ。
 例え信用しなくとも自分から心を許せる相手というのが曹丕には存在する。だが、それは曹丕の一方通行の感情でしかない。そこに曹丕は気づいていなかった。
 また同時に、それが曹丕の欠点になることがなかった。
 彼はそこをつけ入られれる様なことがない抜け目の無い性格の持ち主だったからだ。
 そんな彼だからこそ、相手がどう考え、どう思うかということに関してはいささか抜けている部分がある。自分なりの予測とそれ相応の結果があれば問題が無かった。
 今まではそれでも問題がなかったが、これからはそうはいかない。
 曹丕は自分がそういう能力に欠けていることを自覚しているからこそ、はっきりできる部分ははっきりさせておこうとしていた。
 だからこそ、ホウ統を呼んでこう言ったのだ。

「ホウ統殿はどっちを選ばれるのかな」
「どっちとは?」
「儂か、父上か」
「なんと」
「儂も馬鹿ではない。父上の野望の贄として祭壇に供えられるつもりはない」
 そうは言ったものの、曹丕が曹操の考えに気づいたのは荊州に駐屯して随分経ってからだった。
 曹丕はここで劉備と孫権を一度追い払い、その実力を見せ付けた上で劉表を除き、汝南と北荊州を己の版図とし、南荊州を孫権と劉備に売りつけて手を組むというシナリオを描いていた。
 だからこそ、劉備の内部攪乱の策略には乗らなかったし、関羽の猛攻にも凌ぎきった。
 だが、その劉備の計の後始末をしていくうちに妙な痕跡を見つけ、それを辿っていったら曹操に繋がった。
 そして関係者を捕らえ、拷問の末に父の計の一部を吐かせることに成功した。
 その計では新野と襄陽以外の全てを劉備に明け渡す密約になっていた。
 この事は自分は曹操から一言も聞いていない。思えばホウ統も自分の策に従いながらも、どこか怪しい動きをしていた。
 もしや、自分は劉備に対する人質に差し出されるのではないだろうか。
 半信半疑ではあったが、確認してからでは遅い。もしそうであればこの時点で自分は数手遅れている。
 そう危惧するとすぐに汝南の秦真と呉質に連絡を取った。曹操には告げていない一策である。
 曹彰を謀殺し、曹家の後継としての地位を完全に確立し、曹操と青州黄巾軍を引き離す。
 曹操に頼らず自分の狙う、対呂布連合軍の激を飛ばすことにした。
 かつて曹操が董卓に対してしたように、呂布の罪を数え上げ、全国の群雄に檄を飛ばす。
 勿論それは劉備と孫権しかいないのだが、曹丕には彼らを説得する自信はあった。
 例え不快でも、彼らは受け入れるしかないのだ。
 もし曹丕を見捨てれば、呂布軍は荊州を完全に制圧する。そうなれば劉備と孫権は連携をとろうにも相当不利な状況で戦わねばならない。
 今、曹丕を助けて兵を挙げれば、曹丕がまず呂布への槍となり盾となる。そういう計算がそれぞれに成り立つ。
 だからこそ、曹丕は手厳しく両軍を追い払った。自分の実力を示すと共に、舐められつけいれられることのないようにする必要があったからだ。
 叛旗を翻しても曹丕自身は荊州で呂布の軍とまともにぶつかるつもりはないのだが、劉備と孫権はそう信じて兵を出すだろう。
 これは彼らにとっても呂布を倒せる千載一遇のチャンスになるのだから。

 だが、曹丕には曹操の存在が恐い。彼が何を考えているのかがわからない。
 許都で話した頃は、父もまた自分とおなじく、曹政権の再起を目指しているものと思っていたが、この荊州の仕掛けを見る限りやけに劉備に肩入れしている。
 自分よりも劉備の器量を買っているようにしか見えない。
 だからこそ、はっきりさせておきたかった。目の前の父に従う策士の真意を。
「父上の思惑はどうあれ、儂は劉備などという者に膝を屈するつもりはない」
 そう言い切る曹丕をホウ統は若いと感じた。黙っていれば済むことなのに、わざわざホウ統に宣言するということが甘い。
 しかし、曹丕はホウ統を信じているから話しているわけではないようだ。かといってホウ統を反応を試しているというわけでもない。自分が話したいから話す。そこが曹丕の不思議なところである。
「わたしは曹丕殿に従う身。曹丕殿の命令ならば何でも致しますぞ」
 こう答えて、曹丕はどう判断するのか。
 例え口で幾ら誓おうとも、最後で裏切られればそれまでのことなのだ。尤もこんなことで騙されてくれる曹丕ではないことは承知している。
 彼が本当に信じているのは自分自身だけだろう。だが、それでも反応を見たいという気持ちがあった。
 そう思いながら、ホウ統は不謹慎ながら曹丕の反応を楽しみに見ていると、意外なことに曹丕は不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど。そういう返事ならばこちらにも考えがある」
「考えとは?」
「言う義理があるのか? ホウ統殿」
 使って信じず。そういうことなのか。それではややつまらない。今までの曹丕の姿勢を続けるだけに他ならない。もう少し違った展開を期待していただけに拍子抜けだった。
 が、そう思ったのも曹丕の顔を覗き込んでみるまでだった。
「っ!?」
 禍々しい顔つきになる曹丕を見て、この若者はこの年齢でこんな表情ができるのかとホウ統は背筋が寒くなる。
「軍師殿」
「はっ」
 それでも気圧されないようにかしこまった。
「汝南での騒ぎの結末だが」
「存じております」
「実は戦端を開く前に南に向けて早馬を用意してあったのだ」
「は?」
「その者は、汝南での事が済み次第、子建の元に向うことになっている」
「それはどういう意味ですかな」
「曹家を継ぐのは儂一人で良いという意味だよ」
 その言葉の真意をホウ統が知るのはやや後になる。

「血筋が儂以外に絶えてもなお、父上は儂を認めぬ気かな?」

 それから暫くして、汝南での秦真の働きぶりの報告と共に、許都で何者かがまだ成人にも達しない曹操の残りの子を皆殺しにするという事件の報告を受けてホウ統はあの冷笑の理由を知った。
 そして荊州城では曹丕の旗が高々と掲げられたのだった。
649無名武将@お腹せっぷく:03/03/25 00:44
うんこ
建業城内では一つの騒ぎが起きていた。
騒ぎの元は、「孫家当主、孫権仲謀」その人である。
みすぼらしい格好で、孫権を見知る者がいなければ本当に孫家当主とは思えない、そんな風体であった。
高順は状況を理解するのに少々の時間を要した。
それは孫権の口から語られた内乱の事であった。
周喩を陥穽する計略は進捗からなかなか難しいように思えた。いや、むしろ高順のなかでは失敗だった。
元来、高順は策謀を張り巡らす性分ではない。戦場を駆けめぐり敵陣を陥落させる、そこに陥陣営の異名を持つ高順の本懐があった。
そんな高順の思いを知ってか知らずか、目の前にいる孫権と言う男は信じがたい事を言っている。
−内乱が発生した。首謀者は謀臣魯粛。孫権の命を狙って荊州遠征軍を動かしている。
−内乱の勢いはとどまるところを知らず。手の者がこの建業に向かって進軍をしている
にわかには信じがたいことだった。
そもそも孫家は内部の結束は強固であったはずだ。
間者からもそう聞いている。が、目の前の孫権を見る限りではとてもではないがそんな虚言を述べているようには見えなかった。

「孫権殿、間違いないか?」
高順が聞く。もうこれで何度同じ質問をしたか。孫権は多少うんざりした様子で、
「嘘でこんな戯れ言をどうして申しましょうか。道中で何人もの部下の命を失いました。こうしている間にも…。」
孫権はうつむく。刹那顔を上げ高順の目を見据えて続けた。
「建業を攻略する軍がこちらに向かっております。」
孫権がそう説明を終えるや否や、物見からの叫び声がこだました。

「大変です!周喩の軍がこちらに向かってきます!!」

物見の声で高台から城外を見やれば、
−周の旗印
高順は全てを理解した。
「さては周喩め。漢王朝に弓引くだけでは飽きたらず、いまここに臣の道を踏み外すとはな。よかろう、出陣じゃ!すぐに用意せい。」
高順の軍は鎧、甲、武器等、すべてよく鍛えられ手入れが行き届いていた。そして呂・孫防衛戦最前線らしく奇襲・夜襲に備えて常に戦いの準備は整っていた。
陥陣営の出陣である。
戦いは始まった。
ほしゅ
652無名武将@お腹せっぷく:03/03/30 09:06
保守
ほしゅ
いいかげん周「喩」は萎えるので勘弁してくれ。
ところで、青心のスレは落ちたのか?
保守します。

職人さんもういないのかな……
大風呂敷広げすぎて完結できないのはよくある話だから諦めようぜ
657無名武将@お腹せっぷく:03/04/12 10:25
ホッシャァァァぁー!!
658元投稿者:03/04/14 10:51
もう気力ないっす
659無名武将@お腹せっぷく:03/04/15 07:39
魏続は深夜に信頼できる兵士を集めていた。
もちろん逆賊曹操を討ち取るためである。

この決起の前に曹操暗殺も考えはした。だが計略を練るうちに曹操に漏れないとも限らない。
ならば自分の武威を示すためにも曹操に対しての夜襲がうってつけであろうと考えたのであった。

そして・・・

            「逆賊曹操を討つ!!」

            号令の元、魏続は兵を挙げた。
曹操は裏では暗躍しているが自分の兵はほとんど持っていなかった。そこに魏続の軍勢の夜襲である。
館には火が放たれ曹操の家臣たちは虐殺された。

数時間後、そこには焼け焦げた宦官の死体があり、その死体の傍らにあった埼天の剣を手に
取りながら満足そうに笑っている魏続の姿があった。





魏続の決起は思わぬ影響を与えた。魏続の反乱と取った許昌にいる呂布の兵や文官などが
一斉に逃亡したのである。呂布が前線に主な武将を集中させ許昌が文官中心であったのが裏目に
でたのであった。

カクも魏続に君側の奸として狙われ逃亡。許昌は実質魏続が支配する状況に陥ったのであった。
そのとき曹操一行は蜀へ向かっていた。

程イク「うまくいきましたな。・・・しかしよかったのですか?。」
曹操「しょうがなかろう。曹ヒが荊州を奪ったらしいが呉や蜀と未だに和睦していない。
このままであれば各個撃破され呂布の天下になるのは目に見えている。ならば我々が蜀に
赴き和睦の斡旋をするのが良策というもの。」
程イク「なるほど・・・。そうですな。」

「ところで埼天の剣の偽者は一興でしたな。」
程イクはそれまでの真面目な顔を変え笑いながら言った
曹操「ああ、奴の事だ偽者とは知らずに悦に浸っておろうな。」
程イク「まさに。そしてそろそろもうひとつの趣向が見られるころですな」
曹操「そうだな」
曹操は冷たく笑った。

一体どのくらい走っただろう?曹操が何かしらの策を弄していたのは知っていた。
だが魏続が曹操を攻めるとは思わなかった。それもその混乱の結果、魏続に襲われる
のを恐れ兵は逃げ出し許昌では放火が相次ぎ自分も逃げる羽目になろうとは・・・。
呂布殿には合わす顔がない。しかし一刻も早く知らせなければ大事にもなりかねない。
そう考えていた刹那。カクは腹に衝撃を受けた。振り向くとそこには槍を持った武人
が立っていた。その槍が自分の腹を突いているのに気づくのに時間は掛からなかった。
武人は「我は曹操近衛兵筆頭趙雲カク殿お命頂戴つかまつる!!」と叫びもう一撃を
腹にあびせた。カクはその瞬間曹操の企みを初めて理解した。
だが次の瞬間にはカクは事切れていた・・・
662無名武将@お腹せっぷく:03/04/15 14:28
「誰だ!?」

ふ、「余の顔を見忘れたか」

「…ハッ! 呂布様!?」

「陳宮!もはやこれまでだ、いさぎよくこの場で切腹せよ!」

「…いや!呂布様がこんなところにいるはずがない!こいつは呂布様の名を騙る不届き者!斬り捨ててしまえ!」

でーでーでーでででででででーでーでー



ナレーション:一生懸命に生きるものたちが報われる世の中にしなければと思う呂布であった


663上の少し前:03/04/15 15:15
曹操はここ数年間ただ無為に過ごしたわけではなかった。
密かに屈強なものを自分を守らせるために雇っていたのであった。
このことは当然呂布にも知られており、カクも辞めさせるべきだと主張したが
数が少数だった事と曹操縁故のものは曹操の息子達についておりたいした事には
ならないと判断された為見逃されていたのであった。
その中に趙雲がいた。趙雲は公孫サン、公孫サクに仕えていたが袁家の攻撃により主家
が滅亡した後は北平で隠遁生活を送っていた。これに目をつけたのが曹操である。
彼を召抱えるとすぐさま近衛兵筆頭に昇格させた。
そして自分の知識を注ぎ込みそれに趙雲も応えた。

ある日趙雲は曹操に呼ばれた。

趙雲「なにか御用でしょうか。」
曹操「うむ。・・・大事な用件がある。このことは他言無用だ。そして危険で
それゆえ重要でもある。やってくれるか?」

趙雲「たとえどのような事でも主のためならやりましょう。それが私の天命だと思いますれば」
曹操「天命か・・。まあよいそれでその用件だが・・・」

魏続の反乱も曹操が焚きつけ、兵が大量に逃げ出したのも放火が多発したのも
青州兵の仕業であった。カクの暗殺も曹操が企図したものだった。
だがこの事実を知るものは限られた人間であった。

世間では誰一人として曹操の死を怪しむものはいなかった唯一人を除いては・・・


664663:03/04/15 15:17
上の少し前とは661のことです
こちらは蜀
関羽「大変だ兄じゃ曹操が殺された!!」
劉備「本当か!?だれにだ!?」
関羽「魏続らしい」
劉備「魏続か・・・」
劉備も魏続にたいしていい印象を抱いていない。傲慢不遜な態度が頭に焼き
付いているのだ。

孔明「どうしたのです。」孔明が中に入ってきた。
関羽「曹操が魏続に殺された。」
孔明「そうですか・・・ならばおもてなしの手配をしなければなりませんね。」
関羽「だれのだ?」
孔明「決まってるではありませんか・・・おや、もう来たようですね。」

中に3人の人物が入ってきた。2人は分からなかったが1人は見間違うはずのない人物
だった。
劉備「曹操!!」劉備は叫んでいた。
関羽もおどろいて固まっている。
孔明「そろそろ来る頃であろうと思っていました。」
曹操「ふん、すべてお見通しという訳か。まあいいだろう。」
孔明と曹操の落ち着いた会話を聞いてやっと気を取り直した関羽が叫んだ。
         「曹操何しに来た!!」
曹操「決まっておろう劉備を助けにだ。」
この一言で関羽は混乱してしまった。当の劉備もである。
劉備「曹操の言う事は信じられるのであろうか?」
孔明「信じられます。そして信じなければ私達に明日はありません。」
孔明は断言した。
劉備はまだ曹操の顔をみて考えていたが昔と比べると別人のように険が取れているのに
気づき。これは信頼できると確信したのであった。
もう少し句読点をちゃんとしてくれ。読みにくい。
>>666
一ヶ月ぶりのレスをよくも・・・・
一室には5人が座っていた。
劉備、曹操、程イク、孔明、関羽。現在の蜀の主要メンバーである。
議題は和睦の方法であった。

まずは孔明が、口を開いた。
孔明「どのようにして、曹ヒ、孫権と和睦を結ぶかですが・・・」
曹操「俺が、曹ヒの元へ行く」
孔明が言い終わる前に曹操は言った。
孔明「実の父親とは言っても、兄弟を殺した、今の曹ヒを説得するのは難しいでしょう。何か
秘策でもあるのですか?」
曹操「ああ。あいつは、まだ未熟だ。付け込む隙はいくらでもある。」
孔明「では曹操殿に曹ヒの事は、お任せしましょう。そして孫権の元には、私が行きましょう。
呉は反乱があり、国力が落ちています。和睦も、すんなりいくやも知れません。」
劉備「孔明が、行かなくては行けないのか?誰か他のものでは・・・」
劉備は軍師の不在を恐れた。

孔明「この和睦は、蜀の浮沈に関わることです。私が行き万全を期さなければ、
勝利はおぼつかないでしょう。」
劉備「そうか・・・。では、孔明がいない間の軍師は、誰が適任であろうか?」
孔明「程イク殿。」孔明は即答した。
劉備は満足そうに、うなずき程イクに言った。
劉備「では、よろしくお願いします。」
程イク「不肖の身ですが、身を粉にして働かせて、いただきます。」
と程イクは頭を下げた。

ここに蜀の軍師、程イクが誕生した。
関羽は、渋い顔をしていたが、最後には首を立てに振り程イクを軍師として認めた。
一方呂布は、まだ、洛陽にいた。呂布は、涼州が一段落したことにより、荊州へ進軍するつもりでいたのだが、
涼州からの帰還途中に起こった豪雨により、軍の再編に手間取っていたのだ。
田豊「殿下。やっと出陣のめどが立ちました。明後日には出陣できるかと・・・。」
呂布「そうか・・・。思ったより時間が掛かったな。」
田豊「すみません。馬を大量に率いてたので被害が大きくなりまして・・・」

豪雨は土砂崩れを呼んだ、その結果、軍の一部が死に、土砂崩れに驚いた軍馬が暴れだしたため、
負傷者を含めれば被害は甚大なものになっていた。」

呂布「まあいい。流石に、俺も天運までは、見抜けぬという事よ。」
呂布は笑いながら言った。

呂布「ところで、カクからの連絡は、あったか?」
田豊「いえ・・・ここ数日ありません。なにかあったのでしょうか?」
呂布「無事でいてくれればいいのだがな・・・」
呂布は沈痛な表情を浮かべ言った。

ここ数日、カクからの連絡が、途絶えていた。呂布は許昌で、何かが起こった事
を確信していたが、何が起こったか分からない以上、下手に動くのは下策と思い、
留まっていたのだ。
そのとき、呂布と田豊のいる一室に一人の男が入ってきた。
その男は、服は破れ憔悴しきっていた。
楊儀「お初にお目にかかります。カクの家臣、楊儀と申します。」
呂布「おお、カクの話は聞いておる、なかなか優秀らしいな。それで、何か変事
でも起こったか?」
楊儀「はい。実は、魏続が曹操を襲い、曹操は戦死した模様に、ございます。」
呂布「そうか・・・、では、カクは、どうしておる?無事なのか?」
楊儀「カク殿は混乱の中、魏続の兵に襲われ・・・・」
楊儀は泣きながら箱を取り出した。
そして、その箱の中には、首だけになった、カクの変わり果てた姿があった。」

呂布「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

その呂布の雄たけび、全軍を揺るがすほどのものであった。
呂布は、雨の中、馬に乗って走っていた。
あの後、詳しく聞いたところによると、魏続兵から逃げる途中、楊儀は、変わり果てた
カクを偶然にも発見し、首だけを取って逃げてきたという事だった。
呂布は、怒りに打ち震え魏続を討つために、今、動くことができる精兵を集め、その日の夜
出陣した。

呂布は、自分の昔からの家臣が、カクを討ったことは、自分の責任であると考え、一刻も
早く魏続を討ち果たし、墓前の前で詫びることが、今出来るせめてもの罪滅ぼしだと自分を
思い込ませた。

呂布は、そんな事は、意味がない事を知っていた。そんなことをしても、カクは、帰ってこない
からだ。だが、何かしないと悲しみが襲ってくるので、仇を取る事が罪滅ぼしだと、自分に思い込ませていた。

呂布は泣いていた。だが、雨のせいで誰も気づく事は、なかった。呂布自身さえも。


魏続は満足していた。曹操を討ち果たし、許昌は事実上自分のものになった事、
そして、目の前の光景に。
目の前にはジュンイクと漢皇帝がいた。
ジュンユウは魏続の反乱を聞き、逃げ出したが、ジュンイクは、漢皇帝を守るため
残ったので捕まったのだ。
警護には、張繍がいたが、兵の脱走が続き、混乱しているところを魏続軍に攻められ
敗走、張繍も最後まで粘ったが討ち取られてしまったのであった。

ジュンイク「こたびは何故このような事を!!これは立派な反乱ですぞ!!」
魏続「ふん。負け犬が、よく吠える。これは、君側の奸を取り除く義挙だという事が、
わからぬらしいな。」
ジュンイク「義挙とは!!ただの独りよがりではありませぬか!!」
魏続「まだ、自分の身分が分からぬらしいな。この埼天の剣で貴様の首を切っても
よいのだぞ。」
ジュンイク「・・・その剣は偽者ですな、やはり心が曇っているものは、目も曇っていると見える。」
魏続「なに!!この減らず口が!!死ねい!!」
魏続の剣は怒りの余り目測をはずしジュンイクの右手を切り裂いた。
ジュンイク「一振りで私を仕留められぬとは、剣技までも曇っているようですな。」
魏続「黙れ!!黙れ!!黙れ!!死ねい!!!」
その言葉にますます激高した魏続は、もう一度剣を振り上げ今度は胸を貫いた。
そしてジュンイクは絶命した。

「漢皇帝は、いかがいたしましょう?」
兵士は魏続が落ち着いた頃を見計らい尋ねた。
魏続「そうだな・・・。子供を殺すのは忍びない。国外にでも追放しろ。」
兵士「かしこまりました。」

この後、漢皇帝の行方は杳として知れなくなった。


673少し前:03/04/16 07:37
漢室が長安から許昌に移ったのは豪雨のためだった。長安が酷い惨状になり、
これを呂布が憂慮していた時、曹操がこんな提案をしてきたのだ。

曹操「皇帝を長安から許昌に移しては、どうだろうか?」
呂布「何故だ?」
曹操「今、長安は豪雨により酷い状況になっている。下手をすれば、伝染病
も蔓延するだろう、それならば長安が安全になるまで、1度皇帝が身を置いた
ことがある許昌に移した方がいいのではないか?」
呂布「道理だな・・・。曹操何を考えている。」
曹操「何も。すべて皇帝の御為だ。」
呂布は、曹操をずっと見ていた後、口を開いた。」
「まあよい。好きにするがいい。皇帝もそう望んでいるのならな。」

こうして漢室は長安から許昌に移ったのであった。
数日後、魏続に急報が、もたらされた。
呂布が、明日にも許昌に到着するという報であった。
魏続は、自分が君側の奸を討ち取った事を報告するため、全軍をもって、
翌日には陣を敷き待っていた。

そうして待っていたところ、呂布軍が目の前に陣を敷いた。
魏続は、君側の奸を報告するため呂布軍の前に立ち、叫んだ。
魏続「殿下!!君側の奸を討ち取りし、義臣が戦勝報告に来ましたぞ!!」
しばらくすると呂布が出てきた。
その顔は、義臣を迎える顔ではなく修羅の顔であった。
「くっ。」このとき魏続は始めて気づいた。
君側の奸を討ったところで呂布は、変わらなかったのである。

呂布「逆臣魏続よ!!貴様が、こうなったのには俺にも責任がある!!
俺、自らお前をあの世に送ってやろう!!それが、お前への手向けだ!!」

魏続は一瞬躊躇したものの叫んだ。
魏続「よかろう!!物の道理が分からぬものを大将にすることは、できぬ。
ならば俺自ら、お前を討ってやろう!!」
そう言うと馬に乗り、いまだ徒歩のままの呂布に向かって駆けた。
呂布「そこまで腐っていたか魏続!!」
魏続「おりゃーーーーーーーーーー!!!!!」
魏続の渾身の一撃は呂布によりあっさりはじかれ、次の瞬間には、魏続の
喉元に呂布の槍が深々とささっていた。
魏続そのまま絶命し、馬から落ちた。

魏続を討った呂布の目は、悲しみにあふれていた。
一方荊州では
曹ヒ「同盟の話、考えてくれたか?」
ホウ統「はい。呉は内乱の末、抗戦派の周ユが実権を握ったようです。今すぐに
でも使者を立てるべきでしょう。」
曹ヒ「そうか。」曹ヒは満足そうにうなづいた。

ホウ統「ところで殿下、蜀の使者と名乗るものが来ておるそうです。どういたしますか?」
曹ヒ「そうか。流石に呉との同盟が、出来ておらぬのに邪険にするわけには、いくまい。
通せ」、
中に使者が入ってきた。
曹ヒ「曹操!!何故お前が、ここにいる!?」
曹ヒは驚きながら叫んだ。
曹操「蜀の使者に対する態度としては最悪だな、曹ヒ。ずばり要点だけを言おう
同盟を結びたい。」
曹ヒ「・・・・・」
曹ヒは迷った、呉との同盟が、なってない今、同盟の申し出は願ったり叶ったり
である。しかし、曹操がいる劉備軍と同盟は、したくない。もしかしたら呉との
同盟が上手くいくかもしれない。だが逆もありうる。

曹ヒが黙っているとホウ統が口を開いた。
「お断りさせて頂きます。」


曹操「ほう、そんな余裕があるのか?、やせ我慢はしないほうがいいぞ。」
ホウ統「我らは呉との同盟をする事に決めたのです。蜀とは、する必要が
ございません。」
曹操「俺は2国間での同盟を目指しているのではない。3国間での同盟だ。
これならばよかろう?」
ホウ統「・・・・」
ホウ統も黙ってしまった。考えている事は曹ヒとほとんど同じ事であった。

どのくらい時間が経っただろうか?静寂を破り曹操が言った。
「そうだな・・・江夏をやろう。それなら異存はあるまい。」

曹ヒは笑った。
「江夏には、黄祖がおる、そんな事、出来るわけなかろう。」
曹操「やってみなければわかるまい」
曹ヒ「いいだろう。江夏が貰えるのであれば同盟を結ぼう。」
曹ヒは、嘲笑しながら言った。
曹ヒ「ホウ統もそれならよかろう。」
ホウ統「はい。」
は笑った。
「江夏には、黄祖がおる、そんな事、出来るわけなかろう。」
曹操「やってみなければわかるまい」
曹ヒ「いいだろう。江夏が貰えるのであれば同盟を結ぼう。」
曹ヒは、嘲笑しながら言った。
曹ヒ「ホウ統もそれならよかろう。」
ホウ統「はい。」
後日、曹ヒの元に黄祖の首が届いた。

最後まで抵抗した黄祖の最後は、黄祖の家臣であった藩シュンの裏切りという
あっけないものであった。

これは、後日、分かった事だが、曹操は、藩シュンに目をつけ、好事を持って
篭絡し、黄祖が曹ヒ軍と戦っている時に、裏切らせたのだった。

ここに、いろいろな思惑が渦巻きつつも劉備と曹ヒの同盟が、なったのであった。
678677:03/04/16 11:44
どなたか呉の戦い、及びその後の呉を書いてくださいませんでしょうか?
呉の戦いが書けない為に呉だけ時間軸が遅れてしまいました。
659から書かせていただきましたが、乱文が多くすみませんでした。
所々で練りこみ不足みたいなのが目につくが、展開としては凄く面白いな。
これまでの流れを無理せず、しかも恐れずにいい方向に持っていっている。
新たな職人の登場に期待。
曹操が劉備の元に走る所は驚かされたよ。
がんばれ!!
681山崎渉:03/04/17 10:56
(^^)
新しい職人に期待ということで保守。
683山崎渉:03/04/20 05:43
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
hosyu
ほっしゅ。
686無名武将@お腹せっぷく:03/04/23 18:44
おお良スレ!
>>672
からの魏続をアナザーの話で書いても宜しいか?
初期の頃の職人がいなくなったので、
もうこのスレはおしまいです。

下手糞な文で荒らした、でしゃばりちゃん達はあやまりなさい!
今の職人も面白いと思うが。ただ途中で投げ出すのは(・A・)イクナイ!。
ゆっくりでいいから話を進めていって欲しい。ということで保守。
689無名武将@お腹せっぷく:03/05/03 07:41
ホシュ?
690bloom:03/05/03 07:51
高順が出陣して見たものは、敗走する孫権兵とそれを虐殺する周ゆ軍であった。

高順「ぬっ。主君を裏切りこの非道ぶり、周ゆめ!!皆のもの孫権の兵を助けよ!!
目指すは周ゆの軍ぞ!!!!」

兵「うおぉぉーーーーーーーー!!!!!!!」

高順の号令の下、高順軍は突撃を開始した。
高順軍の突撃の前に周ゆ軍は健闘するものの押され始めていた。
数刻後、高順軍は周ゆ軍を壊走寸前まで追い詰めていた。
高順が勝利を確信した。・・・・・そのときだった。
高順軍の後方が崩れ始めたのである。

高順「なにがあった!!」
兵士「孫権殿が建業の城を占拠し、我らの軍に攻撃を始めましたっ」
高順「ちっ。周ゆ謀反は偽りであったか。後方を固め孫権軍の攻撃に耐えよ!!
もうすぐ援軍がやってくる!!!!」

孫権の言は偽りだった。敗走する孫権兵も疑いなく建業の城へ入るための偽りだったのだ。
孫権の命を賭けた策はなったのである。


693無名武将@お腹せっぷく:03/05/03 16:33
周瑜
おい!俺が新しいシリーズ書いてもいいですか?
書きます!おまいら!駄目文でも許せ!
張遼「殿!曹操は今のうちに掃討せぬと、脅威になりますぞ!!」
呂布「張遼…わしにも考えはある。せかすでない」
張遼「しかし!」
呂布「…華北のえん紹と曹操はいま表面上では交友を保っているが、近々戦が起こる」
張遼「なぜおわかりか?」
呂布「…もうやつらは終わりだ。高慢で不遜。その割に優柔不断なエン紹に曹操は
    いらいらしておる…そして曹操方の国力が急速に減った所で曹操を叩く。」
張遼「安易な考えはよくないですぞ!」
呂布「いまにみておれ…
697692:03/05/04 00:36
長江の反対側では臧覇が出陣の準備を終え、出陣をするところだった。
その時、張遼の使者が中に入ってきた。
使者の持っている手紙には、こう書いてあった。
「長江に謀略の促しあり、長江への進撃はしばらく控えるように。」と。

それを見た臧覇は不快そうに言った
臧覇「ふん、偉そうに何様のつもりなのだ。偉そうに指図しおって、俺はあいつの
手下ではない。すこし呂布殿に目をかけられているからといって増長しすぎなのだ。
よし。いますぐ、出陣じゃ!!!」

こうして張遼の忠告は無に帰し、臧覇は罠にはまる事になる。

長江の中ほどまで来た頃、臧覇は奇妙な軍船に気づいた。
臧覇「なんじゃ!?あれは!?」
兵士「さぁ?見た事のない軍船です。」
臧覇「まさか・・・。あの船を止めよ!!!急げ!!!」

どーーーーーーーーーーん

その軍船が船に激突し、炎上した音だった。
折からの強風により船を安定させるため連環の構えを取っていた事もあり、
次々に船が炎上し始めた。
臧覇臧覇「間に合わなかったか・・・。消化を急げーーーー!!!」
臧覇の絶叫もむなしく、消火活動は焼け石に水であった。
これにより臧覇軍の大半が失われることになった。

698692:03/05/04 00:58
高順は苦境に立たされていた。
いくら高順と兵が優秀だからといっても挟撃された状況で戦い続けることは
不可能である。逃げようにも建業の城は孫権により占拠され、長江の対岸に
渡るには船を取り戻さなければならない。
高順は決死の突撃を考えを思案し始めていた。

そのとき張遼の使者が高順を訪れた。
内容は「南東に軍船を用意したのでそれに乗り、撤退するように」と。

張遼軍は臧覇軍とは別に大きく迂回して軍をすすめ、高順軍苦戦を聞き、
撤退を勧めたのであった。

高順は、すぐに撤退を決め、整然と撤退し始めた。
流石に歴戦の勇士である。見事な撤退で、呉の追撃を寄せ付けず、
無事、長江の対岸までの撤退にする事に成功したのであった。



袁紹
700692:03/05/04 01:42
呉は、とりあえずの平穏を取り戻していた。
未だ長江を挟んでのにらみ合いが続いていたが、臧覇軍の損害が甚大で敵勢は身動きが
取れずにいたからだ。
そんな時、呉に蜀から使者が訪れた。

孔明「始めまして。周瑜殿。私は蜀で軍師を勤める孔明と申します。」
周瑜「ご高名は、かねがね伺っております。して、こたびは、どんなご用件で?」
孔明孔明「察しは、ついているかと思いますが三国での同盟の話です。」
周瑜「やはり、そうですか・・・いいでしょう。もう後戻りは出来ません。」
孔明「賢明な、ご判断でございます。」
周瑜「ですが、同盟を結んでも密接な連携が取れなければ厳しいのではないでしょうか?」
孔明「そうですね。だから一計を案じるのです。」
周瑜「して、その策とは?」
孔明「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
周瑜「!!!そんな手が呂布に通じるのですか?」
孔明「他の者では通じないでしょうね。ですが、呂布だからこそ通じる策なのです。」

周瑜は天を仰ぎながら言った。
周瑜「大きな賭けになりますね・・・・」
孔明「大きな賭けだからこそ、やる価値があるのでしょう。」
周瑜「そうですね・・・。」

戦火の火は急速に一つに集結しつつあった。
だが、その火は激しさを増し続けていた。
701692:03/05/04 02:45
呂布は魏続を討ち取った後、荊州への進撃のため南下を続けていた。
そんなある日、田豊は呂布に呼ばれた。
田豊は呂布に会うとすぐに口を開いた。

田豊「すみませぬ。漢皇帝の所在まだ、つかめませぬ。」
田豊は、漢皇帝の捜索が芳しくない事を叱責されると思ったのだった。

呂布「見つからなければ仕方がない。俺は、そんな事でお前を呼んだのではない。
今日こんな物が届いた。」

呂布は笑いながら一枚の書状を田豊に渡した。
田豊「こ、これは・・・・」

それは、劉備、曹丕、孫権の荊州での共同の会戦要求であった。

田豊「まさか・・。これに応じるのでは、ないでしょうな!?」
呂布「俺は応じようと思っている。一気に決着をつける、いい機会だ。どちらにしろ
こいつらとは、戦わないといけないのだからな。」
田豊「罠に決まっております!!もし戦っている間に他の地域が落とされたら
どうする気ですか!?」

呂布は笑いながら言った。
呂布「そう、怒るな。最低限の兵は置いていく、それに、荊州での決戦は
嘘ではあるまい。荊州を落とされたら蜀と呉は、進退に窮する。賭けに
出たくなるのも分かるというものだ。それに奴等は一枚岩ではない。
勝算も十分ある。それに、こっちの方が手っ取り早いではないか。」

田豊「ですが・・・」
田豊は、口を開きかけて辞めた。この方は自分の考えを他人の意見で変える方では
ないことを思い出したからだ。
702692:03/05/04 02:46
田豊「・・・では全軍に通達しておきます。」
呂布「すまんな・・・。」
呂布は口から出た言葉とは違い、始終、楽しそうであった。

703692:03/05/04 03:27
そして、会戦の刻が来た。
呂布「ついに来たな・・・」
田豊「はい・・・ですが、参陣できなかった兵が、多くおります。袁煕殿は
異民族の侵攻の鎮圧で参陣できず。張遼殿は、城を囲まれ防戦中でございます。」
呂布「今更そんな事を言っても始まるまい。それに袁煕の参陣が出来ない事は、
予想通り、張遼は呉の大兵を抑えてくれているのだ。むしろこの人数が集まった
事は上出来だと思わなければならん。」
田豊「そうですね・・・」

陣容
呂布軍
右翼、張コウ 中央後衛、呂布 中央前衛、呂彰 左翼、馬超、高順

陣容
三国連合軍
左翼、劉備  中央後衛、曹丕 中央前衛、劉g 右翼、周瑜、

注、名前が書いてある武将は大将格の人物です。
704692:03/05/04 04:18
開戦の時が来た。開戦と同時に兵と兵がぶつかり合う。どちらも一歩もひかない。
両軍とも弱兵は地方に置き強兵のみを連れてきた結果だった。
数刻の間戦況は硬直した。

一番最初に崩れたのは周瑜軍だった。
張遼へ軍を割いたため軍人の数がすくなかったのだ。
逆に中央では後衛の曹丕が積極的に前衛を助け押し気味になっていた。
張コウぐんは一進一退を繰り返していた。

左翼
臧覇は焦っていた。この前の失態のため呂布の心証を悪くしてしまったからだ。
このままでは俺の地位が危ない・・・そう考えた臧覇は手柄を取るため真っ先に
周瑜軍は始めの方は健闘していたものの時間が経つにつれ軍を後退し始めていた。
これを敏感に察知した臧覇は、突撃を敢行。敵本陣近くまで乗り込んでいた。
だが、自分が孤立している事には気づかなかった。
臧覇が孤立した所を見計らい伏兵が出現した。

びゅん ぐさ!!
臧覇の腕に弓矢が刺さった
「なに!!」臧覇が振り返るとそこは敵兵で溢れ返っていた。
ついに臧覇は突撃を敢行するも大量の弓矢によって討ち死にする事になった

せっかく来てくれた職人には悪いんだけど、もう少し推敲した方がいいよ。
臧覇のくだりは文章になってないし。あと流れがかなり強引なのが気になる。
706692:03/05/04 12:12
>>705
でも自然にやったら呂布が一つの国ずつ滅ぼしました。おしまい。
とか、各地で反乱が起こってあぼーんとかの方がお好みならそちらで書いても
よろしいが?
他にも攻めている間に呂布が病死しましたの方がずっと自然だと思うが。
あなたの理論で言うと少なくとも地方戦をだらだら書くヤシがいないと完結
しない事になる。別にそれでも漏れはかまわんし、どうせもう書かない。
悔しかったら誰か呉の決戦の時点から完結まで書いてみろ。
どうせ未完に終わると思うがな(藁
職人だったら作品で勝負。あれこれ言われても、言い返さない方が男をあげる。
708692:03/05/04 20:05
>>707
匿名の掲示板で男を上げてもなぁ。それにおそらくこのスレはdat落ち。
未完で終わらせるのが、やだから強引にしてみたんだがなぁ。
それに>>705みたいな書き込みの後も作品の続きを書けというんですか?
普通は書き込みをやめると思うが。
漏れは、たまたま反論したが大体は沈黙するだろ?
このスレが寂れた原因考えてみろよ。一番は収集がつかなくなったことだろうが、
2番目は職人への注文のせいだろ?
だから>>705みたいな注文だけじゃなく注文するくらいならアイディアを出せよ。
その自然な流れというものをな。

>>708
カチンときたのは分かるけど、706-708みたいなこと書くなよ。自分の品性を下げるだけだぞ。
それに書く以上賛否あるのは当然。俺も他所のスレでちょこっと言われたよ。
710:03/05/04 21:46
横槍だが、確かに692のレベルは・・・・
その後の言い訳もカコ悪イ。
題名読んでみたら?展開が変だよ

696を書いてくれた人には悪いが、袁紹はいないよ。
書くのは歓迎だけど前後関係を認識してから
書くのが最低限のマナーだよ。
711無名武将@お腹せっぷく:03/05/04 22:13
>>692
つーかぶっちゃけダセえ。
終わらないよりも、むしろむりやり話進めて「はい終わり」みたいな方がタチ悪い。
このスレ好きだっただけに、汚すくらいなら放っておいて欲しかった。
頼むから文章力も構成力も無い奴が書かないでくれ・・・・



初期の職人さん降臨キボン・・・
712無名武将@お腹せっぷく:03/05/04 22:13
713無名武将@お腹せっぷく:03/05/04 22:14
>>692は自分が才能あると勘違いしてる香具師
714無名武将@お腹せっぷく:03/05/04 22:49
で、お前等は完結させられるんですか?
劉備の漢中入りの展開、審配の最期の構成を読んでから、
自分が書いた文章を読み直してみな。

この文章で無理矢理にただ完結させるだけなら、書かないほうがまだいい。
714=692
びゅん ぐさ!!
718無名武将@お腹せっぷく:03/05/04 23:33
ワラタ
719無名武将@お腹せっぷく:03/05/04 23:48
>>692

「びゅん ぐさ!!」的な文章で完結されるよりも、
むしろ、巧い文章で未完成の方を選ぶよw
720無名武将@お腹せっぷく:03/05/05 00:00
第二回バトロワスレみたいだな・・・
721三戦編者:03/05/05 00:06
三戦志 娯志固定伝

<びゅん ぐさ!!>
 呂布が孔明以上の切れるヤツだったら 
 http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1031890411/
 の692より降臨。それまでの流れを一新するかのような
 素晴らしい文才でスレ住民を絶望させた。
俺は職人にぐだぐだ文句を言うのは好まない。
だが692のようなつまらん文しか書けないくせに口ばかり達者なやつは職人と呼べるだろうか?
職人はきちんとした内容のある文章を黙々と書いてこそ職人だと俺は思う。
推敲もしないでオナニーを見せつけるだけの692は逝ってよし!
ふと思った、荒れてるスレに職人は来るのだろうか?
そして、一度盛り上がったスレが盛り下がるのを食い止められるのだろうか
それは、無理である。
725無名武将@お腹せっぷく:03/05/05 02:40
>>724
君はアフォである。
  /    \    )        (  __.__        ___
 /       \__)   ハ   (  (:::} l l l ,}      /     \
 |         ──)   ハ   (   l::l ̄ ̄l     l        │
/        │  )   ハ   (   l::|二二l     |  ハ こ │
/|        ∩  )        (,   '´ ̄ ̄ ̄`ヽ   |  ハ や │
 │       ( (  \      (  ,'  r──―‐tl    |  ハ つ │
 │       / J  // ̄ ̄ ̄   { r' ー-、ノ ,r‐l    |  ! め │
 │      / U;           ,-l l ´~~ ‐ l~`ト,   l        |
  │     // │           ヽl l ',   ,_ ! ,'ノ   ヽ ___/
  ,)NWMW i /|;;,            ハ. l  r'"__゙,,`l|     )ノ
_/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\__        / lヽノ ´'ー'´ハ
 ”\_____/   \へ  _,へ,_', ヽ,,二,,/ .l
                  \_,<´    l      ト、へ
      >>724            \
727では650からの続きを:03/05/05 05:44
建業の救援に向かう軍は長江越えにさしかかるところであった。
都からの援軍の総大将として候成が選ばれていた。
建業の戦局はどうなっているのだろう。

長江で船を手配しようとしたそのとき−
周の旗印を掲げる船団が救援軍に雨霰の矢を降らせた。
思わぬところでの足止めであった。
まさか内乱の軍がここまで周到に準備をしているとは。

その援軍の中には程普の姿もあった。
程普は自ら志願して「攻められた建業の援軍」に向かう所であった。
−足踏みなどしておれぬ。
そう思うが早いか、手勢だけで小舟に乗り込み呉の戦艦の間隙縫って、長江の横断を敢行していた。

周瑜の軍は陥陣営に攻められ、すんでのところで持ちこたえている状態だった。
これは別に策でも何でもなく純粋な力負けであった。
呂蒙は大きなため息をつくと、自らの出陣の用意を近従の者にさせていた。
相手は陥陣営。
一筋縄ではいかず、さりとてここで踏みとどまらねば、孫呉の明日はない。
「ひょっとして、ここで最期かもしれんな。」
何の最期かは明言せず、悲痛な覚悟で出陣を開始した。
あとに残された陸遜は、出陣前に呂蒙に大事あったときの後事を託されていた。
728では650からの続きを2:03/05/05 05:45
陥陣営は周瑜の軍を次々と踏みつぶし散々に打ち破った。
右翼韓当、左翼朱桓、そして中陣周瑜本陣へと向かって馬を飛ばしていた。
もとより、高順の側近はこういった状況でも脱落しないよう、よく訓練された兵達が側近に就いている。
だが陥陣営高順、一つの異変を察知する能力に劣っていた。
中陣に突撃を敢行したその刹那−。

周囲から火矢が一声に射かけられた。

「我が名は、建業制圧軍呂蒙子明!陥陣営御大将の御首頂戴致す!!」
火矢の主は呂蒙。
その呂蒙の土壇場での策。
しかし、陥陣営高順は全くこれに動ずることはなく、よりいっそうの武をもって相対した。
「お主が誰だか知らんが、孫家の反乱軍だという認識でよいのだな。義と言う名の刃を以て、そちを討たせてもらおう。」
呂蒙はあまりの陥陣営と呼ばれる一軍とその大将高順の猛々しさに、純粋な恐れと畏怖の念を抱く…。
729では650からの続きを3:03/05/05 06:18
「やれやれ、さすがにしんどいわい。」
程普は周の旗印の船に追われつつもどうにか建業に上陸することに成功した。
若輩者にはまだ負けぬと言いつつも、体はシ水関で董卓軍の将を討ち取った時のようには動かないことを薄々感じる最近であった。
建業城内は陥陣営高順の軍が出陣しており、残るは守備の兵がわずかに残されているだけであった。
程普の読みでは、あの援軍の総大将は援軍としてはあまり当てにならない。
「漢王朝、いや呂軍は人材豊富と思ってはいたが、地方にまわしておる余裕はないのかもしれんな。」
程普は建業を救うために、急ぐ。
730では650からの続きを3:03/05/05 06:21
焦る呂蒙−。
陣屋ごと焼き討ちしようとしたのは呂蒙なりの陥陣営をくい止めるための苦肉の策であり、また最期の計でもあった。
この策に動ずることなく、陥陣営の陣立ては全く崩れることはなかった。
−ありえん。
呂蒙がその言葉を発するかどうかのところで陥陣営大将高順は目前に迫ってきた。

呂蒙は死を覚悟して精魂果てるまで切り倒す覚悟で馬を駆ろうとした。
−その時。
高順騎乗馬の足下で爆発が起こった。

何事か?

高順も呂蒙も目を疑った。
が、高順はその正体を見る前に驚いた馬が立ち上がり、どうと落馬していた。
爆発の主は、爆発直後に馬を駆って名乗りを上げながら陥陣営の軍勢を相手に奮迅していた。
「我が名は黄蓋公覆!この鉄鞭の味を知りたい者はかかってくるがいい!」
孫家直参黄蓋手製の爆弾が呉の名将の命をほんの少しで延命した瞬間である。
「老将軍!礼は後ほど致す!」
一刻が過ぎる時には孫家譜代の老将と呉下の阿蒙が、必死で陥陣営から中軍として本陣を守る姿があった。
731では650からの続きを3:03/05/05 06:48
周喩は神速の如き早さで馬を飛ばしていた。
悪い予感が現実のものとなった後味の悪さを忘れようと努力して。
だが、忘れようとして忘れられるものでもなかった。
−魯粛子敬。
この名を一生忘れることはないであろう。
また、その謀臣の夢も。
だが、夢幻となった魯粛の気高き志と同時に周喩は現実と戦う運命を背負ってしまった。
戦力分析では、現在の孫家に呂布と五分に戦える猛将はいない。
甘寧も先の戦での重傷が完調とは言い難く此度の戦には戦列に入っていない。
周泰や蒋欽では一枚落ちる感が否めない。
如何にして軍団戦・組織戦にして呂布陣営と相対すか。
これこそ周喩が見出した絶対唯一の呂布軍との戦闘法であり、また孫呉が呂軍と戦うために一番の力を発揮する戦術であった。
「ふっ、蜀の劉備や孔明がうらやましい…。なにせあの呂布と互角に戦える豪傑が幾重にも居るのだからな。」
伯符や太史慈が居れば…。そう思う周喩の眼前には目的地が近づいてきていた。
732では650からの続きを:03/05/05 07:04
「えぇい!!あの爺めが!あと一歩のところで。」
中軍の陣を落としながら、黄蓋に阻まれ今一歩で本陣を陥穽しそこねた高順は悔しがりながらも冷静に軍を退いていた。
それは並の猪武者と高順の大きな違いである。
戦は今日ばかりではない。出立直前に援軍を手配していた高順は一日で勝利せずとも建業を守りきればよいのだ。
そう自分に言い聞かせて高順は建業城内に向かって撤退命令を全軍に通達していた。


高順が建業城に近づいたその時、ある一軍が高順に迫ってきていた。
焦ることなく戦闘準備を暗黙のうちに終えた高順の軍に対し、迫ってきた軍は先頭の将が大きな声で戦う意志のないことを主張した。
「陥陣営高順殿の軍とお見受けいたす!
我が名は建業の援軍として参上した候成将軍麾下程普、字を徳謀と申す者。建業の大事を伝えに参った!」
これを聞いた高順、動揺を隠しながら程普と馬上で相対し、何事かと問いただせば
「既に建業城内には周喩の軍で溢れ、建業が占領されておりますぞ!」
と程普が報告をする。
これを聞いた高順。大いに驚き急ぎ建業の城門まで馬を飛ばしていった。
程普もそれを追い、道すがら知り得る限りの情報を報告する。
高順が城門にたどり着くまでにそんなに時間はいらず、程なく見慣れた建業城門が視界に入ってきた。
733では650からの続きを:03/05/05 07:46
城門にたどり着いた陥陣営は、城門に掲げられた「周」の旗印をみて当然居るであろう男を呼ばわった。
「周瑜!出てこい周瑜!!」
「なにごとか」
周喩は冷静に高順を門上から見下ろしながら、招きに応じた。
「これは何事かと問いただす。周喩!」
周喩は今まで見せたことのない、冷たい笑みを浮かべると高順の問いに答えた。
「知れたこと、ここは今日から我が城、我が国ぞ。そう決めた。」

その答えは烈火のごとく高順を怒らせた。
「誠の忠に反し、義の道を踏み外し、信の御旗を折り何処へ向かう!周瑜公瑾!!
貴様、己の犯しておる大罪が分かっておるのか!」
「知らねば、かような事にはなっておるまい、高順。そもそも国を侵し、我らを蹂躙したのはそちらの方ぞ。」
「ばかな!漢に弓引き、刃を向ける気か?周喩よ。貴様の主君は漢の烏程候であろうが。」
「関係ないな。主君とは常に力ある者がなればよい。」
取り付くしまのない周喩に対して高順は一つの質問を投げかけた。
「孫権殿はどうした?」
周喩は笑みを崩すことなく、
「さて?虎の子はどこぞに逃げおった。まぁ数日中には首級が届くことであろう。」
答え終わって、次は周喩の方から投げかけられたのは既に問答ではなかった。
「高順!自分の心配をせよ!!それっ。」
周喩の号令で一斉に矢の雨を浴びせられた高順の軍はやむなく散り散りになり、後輩の張遼を頼って落ち延びた。
734では650からの続きを:03/05/05 08:36
孫権は呉へ落ち延びた。
といえば、周瑜の軍に追いやられたように聞こえるのだが。
呉の地で、建業のことを全く知らずに療養中と公称されていた。
そんな孫権の元では、建業にいる周瑜や戦場で怪我を療養中の呂蒙に代わり陸遜が孫権と会談していた
「此度の戦、周瑜以下諸将の命懸けの奮闘によって見事建業を奪取する事に成功した。
しかし手筈通りなのだろうが、解せぬ事も多い。
そもそも、余の知る限り高順は援軍を手配して出陣をしておった。その援軍をどのように防いだのか?
また、どのように建業城内を占領したのか?
謎ばかりだ。」
陸遜はこの度の戦を知る数少ない臣下の一人である。その陸遜の口から建業攻略の真実が孫権に語られた。
「現在のことは大体分かった。援軍はどのように防いだのか?」
「援軍は長江を盾にしました。ですがそれだけでは完全ではありません。臧覇の例もございますから、周幼平将軍のつてで水賊を頼み、足止めを行いました。
案の定敵援軍は、水賊と周提督の水軍に二の足を踏んでしまい時間が稼げました。」
ふむと、感嘆する孫権に陸遜は建業占領の種あかしもしてみせた。
「建業攻略にはこの方のお力を借りました。」
陸遜がそう促すと一人の初老の男が部屋に入ってきた。
その男は、程普、字を徳謀。烏北平郡土根県の人。鉄脊蛇矛の使い手で諸将から程公と慕われる呉の重鎮である。
「そうか、此度の戦。一番危ない橋を渡ってくれた。感謝する。」
いえ…、と謙遜する程普は、孫権が驚くことを口にした。
「都には周提督の叛乱として報告があがっております。」
735では650からの続きを:03/05/05 08:48
「なんと!周喩の叛乱とな!!」
孫権はひどく驚いた様子で二人に詰め寄った。
陸遜は表情一つ変えずに説明を続ける。
「周提督は御身と引き替えにこの孫呉の地を、文字通り体を張って護られるおつもりです。
建業が落ちれば孫呉の未来はないでしょう。
しかし、殿が先陣を切って建業に押し寄せれば呂布に刃向かい、ひいては漢の逆臣との汚名を着せられることになります。
周提督は殿に危ない橋を渡らせるわけにはいかないのです。孫呉の血を絶やすわけにはいかないのです。
今回の建業攻略は決して“周瑜公瑾の乱”ではございませぬ。
むしろ、“何があっても孫呉を生かすための行軍”でございます。
一見すると建業軍が独立しておるように見えますが、建業は我らが孫呉の強固な鉄壁となって呂布から殿を護るのです。
全ての責任を殿から周瑜公瑾へすり替えるための周提督一世一代の戦略です。
ご覧下さい。」
差し出されたのは一通の書状だった。
そこには、周喩の直筆でこう書かれていた。
「此度の戦は、孫呉と全く関係のないところで、周喩・魯粛の両名で実行したものであり関係している全ての者には詫び切れぬ思いである。
それがし魯粛とは違うやり方にて、呉の地を安寧に導きたく候。
そのためには、後世の悪名でも罪状でも残ろうが構うものではなく、すべては大願成就されることが公瑾の夢。
大願成就された暁には、此度の罪、この公瑾の首を以って全て償うことお約束致します。
周瑜公瑾」
孫権は周瑜の悲痛な決意を初めて理解し、涙した。
そして自分の不明を心の中で改めて詫びることとなった。
またそれと同時に、呂布に気取られないよう周瑜を全面的に支援し、いずれは呂布と決戦するその時まで、周瑜とは同じ天を仰がずと堅く誓ったのであった。
736では650からの続きを:03/05/05 09:09
都にいる呂布は高順などを信賞必罰した後、謀臣田豊と相談していたが高順の話を未だ半信半疑の状態であった。
しかし、高順は凡庸な将ではないし嘘をつく男でもない。呂布はそれがよく分かっていたから、やにわに呉で争乱が起きたことが信じられなかった。
田豊との相談の結果として一致した事象がいくつかあった。

今回の争乱の首謀者は周瑜で、上手くいけば孫権を葬っている。
首謀者の周瑜は肉体的にではない、大きな傷を負っている。
そして、傷ついた彼の軍が持ち直すには時間がかかるはずだ。

そこから導き出された結論はやはり慎重論だが一致した見解である。
やはり現在警戒するべきは劉備であり、不穏な動きを見せている曹操であるということが確信された。
「しばらく、呉は捨て置いてよかろう。田豊の言う通り留守を劉備に狙われる方が怖い。
しかし周瑜、あの状態から建業を奪るとはな。おもしろくなりそうだ。」
737650:03/05/05 09:13
650まで呉の話を書いていたものです。
遅筆でどうもすいませんでした。
呉の話はこんな感じで一旦落ち着かせましたがどうですか?
呂砲氏を召還できないかな
>>737
今まで放置されて変なやつが出た状態から見れば何でもないと思います。
また面白くなってきたのでこれからも頑張ってください!
>>737
面白いです!職人と呼ぶに相応しい出来ですね。応援してます。
>>738
氏は、忙しい合間を縫って非常に練りこんで某スレを書いてくれている。
某スレは氏の力がなければ決して立ち行かないわけだし、
それに、このスレは名無しのままで繋げていく所にこそ面白さがあると思う。
コテハンのままでの降臨も、またそれを期待するのも違う気がする。
脊髄反射でマジレスする自分に完敗。

>>650
乙〜。面白いです。
死を背負った周瑜の覚悟と哀愁とが伝わってきました。
結局、魯粛死亡のアナザーから続けたのか?
もう、ごっちゃなんだが
>>742
男塾を読んでいると思え
744650:03/05/08 01:21
わかりにくくて申し訳なし。
あまり出てこない方が良いと知りつつ説明させてもらいますと、
私563から呉の話書いてたんですけど、遅筆なもんですから別の職人さんがアナザーを書かれたんですね。
で、そのアナザーの話がまたカッコイイわけですよ。>魯粛
そこで、アナザーの前後をそのまま書かせて頂いて、呉の話を続けて書かせていただいたわけです。
アナザーは本筋に入れていただいて問題ないと思います。

個人的には魯粛好きなので死なせたくはなかったのですが、漢(おとこ)な魯粛もまたカッコイイかと。
というわけで、表に出てきてもうしわけないです。
745無名武将@お腹せっぷく:03/05/10 00:03
保守の方向で
hoshu...
747無名武将@お腹せっぷく:03/05/14 07:02
保守age
748無名武将@お腹せっぷく:03/05/17 03:20
このスレの職人さん、すごいですね。
保守age
>>1
曹操の天才・万能超人ぶりが強調され、美形で名家の生まれな上に嫁さん美人な周ユが実は軍事司令官としても超一流であったことが見直されている昨今、
これ以上完璧超人を増やしてどうするのだと小一時間……
>>749
今さらそんなことを言ってどうするのかと小一時間……
永遠に完結せずいつのまにか三戦板1の長寿スレになる
752無名武将@お腹せっぷく:03/05/18 13:53
>>751
まあどうせ最初の職人さんは帰ってこないんだしいいんでねえの?
ageちまった・・・・鬱
( ゚∀゚)ノ <ミテルヨー。
俺はひとまず馬超VS呂布や審配の最期を書いてくださった
職人の復活キボン
>>755
禿堂。あのへんはやたら燃えた。
あの戦神呂布はよかったが、スレタイ通りの切れ者呂布も見てみたい。
劉備もなんだからよく解らんうちに自然な流れで益州を盗んだまではよかったな。
最近は影が薄すぎる。
759山崎渉:03/05/22 01:23
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
曹操が呂布に変わっただけになってしまったのが・・・
孔明も法正の下あたりにいたはずが軍師になってるし
呉は書く人によって設定変わってるし
>>760
曹操が呂布に変わられたのは地理的な関係だけ。
孔明が軍師なのは演義準拠だから。
だが呉が書く人によって設定変わってしまうのは言い訳できんか。
呂布陣営は人材どんどん減ってるけど、大丈夫かな…。
カクやジュンイクは無駄に死んじゃった感じがする。
呉はともかく、一体どこまでを本筋と読めばいいんだ?>>677
764無名武将@お腹せっぷく:03/05/27 01:21
asage
765 :03/05/27 01:38
孔明って実際あんなにすごくなかったんだよな。ほとんど連戦連勝のようなかんじだが。
766山崎渉:03/05/28 16:07
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
767bloom:03/05/30 22:34
>>754
涼州編感動しました。
そのほかに言葉が出ません。
769無名武将@お腹せっぷく:03/06/05 20:41
aga
770無名武将@お腹せっぷく:03/06/10 17:41
職人キボン!!
益州遠征編求む!!孔明、関羽、張飛、超雲と呂布の対戦が見たい・・
771無名武将@お腹せっぷく:03/06/13 23:29
さっぱりになったね・・・
772董卓:03/06/13 23:29
     ∧_∧
ピュ.ー (  `´ ) <これからもワシを応援しろ(`´)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      董卓 
773孔明:03/06/14 14:16
孔明ですよ!
南蛮編を少し書いたが、うpしてよろしいか?
775無名武将@お腹せっぷく:03/06/14 22:07
>>774
しろ、しなかったら殺す
776南蛮編:03/06/14 22:13
時間が少し遡る。ここは南蛮と呼ばれる地。
晴れ渡った空に兵たちの声が響き渡る。しかしそれに象や虎の鳴き声が加わるのはここ特有の光景である。
一人、明らかに漢民族と思われる男が、総大将と思しき人物に近づいた。
「盛が出ますね」
将は振り向く。一瞬見せた警戒も、話しかけた男を認識するなりすぐにといた。
「おお、曹植殿か」
将、孟獲は豪快に笑った後、兵たちに小休止とらせ、男、曹植のもとに駆け寄った。
「珍しいではないか。訓練場に顔を見せるとは」
「北の用兵は南の人々に合うものかと、少々気になりまして」
曹植は笑った。しかし目は笑っていなかった。
「笑い事ではないぞ、曹植殿」
曹植の笑わずの目を確認していないのか、孟獲は多少怒気をはらんだ声で続けた。
「北のがんじがらめの用兵は、確かに効率はいいが、我等にはまったく馴染みの浅いもんだ。
 さっきも木鹿んとこの兵が苦情を言いに来たばっかりだ。『我々には我々のやり方がある』ってな」
曹植はじっと孟獲の言葉に耳を傾けた。しかし感じ入った様子はない。まるで、この状況を予想していたかのように。
「孟獲殿。私があなたに授けた北の兵法は、ほんの木簡の切れ端の一部に過ぎません」
彼が何を言おうとしているのか、孟獲は身構えてしまった。
「私は決して兵法に長けているわけではありません。しかし、北の地にはよく兵法に長けた者がごまんといて、
 そして兵士はその兵法に忠実に動くように訓練されています。
 あなたが感じた効率のよさの、何百倍ものレベルのものを相手に、我々は戦を仕掛けようとしているのですよ」
痛いところを突かれたのは確かだ。
これから仕掛ける戦が、もし曹植にそそのかされたものだけであるなら、この論法は通用しない。
しかし孟獲の、そしてその他多くの南の勇者たちの野心に火はついてしまっている。引き返せるものではない。
「お主の言っていることはもっともだがな、曹植殿。それを奴らに説明しなければならん俺の気にもなってみろ」
「はっはっはっ、期待していますよ。孟獲殿」
曹植は笑った。確かに笑った。
777南蛮編:03/06/14 22:14
ひとしきり話が済んだ後、曹植は訓練場を後にした。
しかしそのとき、孟獲は誰にも聞こえぬほど小声で呟いた。
「北の匂いが漂っちょるぞ」
曹植は少なくとも表向きには何の反応を見せず、与えられた館に戻った。
館といっても、そこは決して豪華なつくりではない。
北の人間である曹植達でも生活できる、といった程度だ。
その館の広くない広間には、すでに丁儀が控えていた。
「交州との交易の件、確かに結んで参りました」
「そうか、ご苦労」
「しかしながら、兵の提供に関しては最後まで渋られまして…」
「まぁ、当然だろうな」
曹植は、丁儀から渡された書類に目を通しながら答えた。
「もともと期待はしていないさ。
 どっちにしろ、こちらの兵の訓練がひと段落つくまで動けないことは変わりない。
 …ところで丁儀」
「はっ」
「先ほど孟獲殿に会ってきたのだが、どうやら北の匂いが漂っているらしい」
丁儀はその言葉を聞くと、みるみる顔を赤らめて言いはなった。
「彼らは、そんなにも妬ましいのですか!!?我々が北の人間だというだけで…!!!」
778南蛮編:03/06/14 22:14
言葉はそこで切られたが、まだ何か言いたそうに肩を震わせている。
曹植は一瞬きょとんとした表情を見せ、しかしすぐに首を振って否定の意を表した。
「違う、そうではない。そちらの意味ではないよ、丁儀」
言葉の真意をはかりかね、丁儀は首をかしげて見せたが、すぐに顔色が赤から青へと急変した。
「これは、あ…、失礼しました。そうですか、そちらの意味で…」
「そうなんだ、すぐに対処してほしいのだけど」
「はっ、それはもう…」
丁儀は急いで退室の礼をとり、出口へ向かった。
しかし、すんでのところで立ち止まり、恐る恐る曹植を振り返った。
「あの、それで、『北の匂い』のその後の処置は如何いたしましょうか?」
曹植は机に向かっていた。
「ああ。今から手紙を書くよ。これと、財宝をありったけつけて、北へお帰り願おう」

指示はすぐに実行され、北の匂いこと北方の暗殺者は、
曹植のいかにも曹植らしい畏怖心と恐怖心を詰め込まれた手紙とともに、荊州に送り返された。
ときに、都で曹一族大量暗殺が行われたときである。
曹丕はこの手紙にいったん納得し、南の問題を思考の外へ追いやった。そうせねばならない理由ができたからだ。
そしてそれは、曹植たちにとってもまず第一に考えなければならないこととなる。
すなわち、都の叛乱による曹操殺害のうわさの否定と、それに伴う蜀荊呉同盟存在の情報である。
779無名武将@お腹せっぷく:03/06/15 01:29
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
780無名武将@お腹せっぷく:03/06/18 23:48
キタキター
781呂布:03/06/19 10:11
全員死ねーギャハハ。

呂布は皇帝となった
久方ぶりの更新は嬉しいが、レベルはないだろ
783南蛮編:03/06/21 16:10
すいませんでした。語学力ないもので。
>>782
出過ぎだぞ、自重せい!
785無名武将@お腹せっぷく:03/06/22 21:40
すいませんm(ー −)m
( ゚∀゚)ノ <思うところあってリトライ。以前より身辺が忙しくなり、どこまで
       続けられるか分かりませんが、できるところまで頑張ってみまふ。
       間が空くかもしれませんが、生暖かく見守って下さいませ。

       以後、中の人は登場しないつもりなので、言いたいこと全部書きます。

       1.職人さんキボン。呂布・劉備&曹操・孫権&周瑜・曹丕・曹植と
         大まかに見ても五陣営になっている現状。私だけだと二陣営
         書けるかどうかも怪しいです。
       2.ネタフリ歓迎。でも内紛多すぎるとシンドイのでご勘弁を。
       3.批判歓迎。ただ、すみませんが以後お返事は一切しません。
         職人が表に出ないここの雰囲気が好きです。
       4.>>754は私ぢゃないです。
荀攸 「将軍、嘉徳殿の修復が終了いたした由にございます」
呂布 「ご苦労だった、荀攸、孔融。陛下の所在はまだ掴めぬが、全力を尽くしてお探し申し上げて
    いる。今しばらく、時をくれ」
孔融 「ご無事であらせられれば良いのですが‥‥」
呂布 「恐らく、身を隠されているのは戦のない河北だろう。袁煕がかなりの人を割いて、各地を
    くまなく当たっているらしい。吉報を待とうではないか」
荀攸 「はい‥‥」

魏続の乱に端を発した中原の動乱を、呂布は強引に纏め上げた。洛陽、長安、そして許昌。
帝国の拠点とも言える場所が三カ所に分かたれ、政や軍の指揮系統が分断されたのが、魏続の
乱の一因であった。権力の所在を明確化するため、呂布は漢帝国皇帝の名で全土に公布を
発し、洛陽が帝国の唯一無二の都であることを改めて宣言した。更に、董卓に焼き払われた
嘉徳殿を修復し、漢都洛陽の象徴としてその存在を全土に知らしめた。無論、かつての
華美を極めた宮殿の偉容には及ぶべくもなかったが。

加えて、洛陽守備のために独立した軍を編成。三万の兵の指揮官として張繍を任命し、洛陽の
軍事的任務を全面的に統括させることになった。

長安・許昌は、大都市ではあっても、あくまで一つの都市。長安は帝国の西の拠点として、許昌は
汝南に進出した曹丕の勢力への抑えとして、また徐州や寿春との交通の要所として、その役割を
果たすことになる。苦い教訓を踏まえた都の再建であり、帝国そのものの再建でもあった。
こうした一連の国政において手腕を発揮したのは、魏続の乱の難を逃れた荀攸であった。国政の
重鎮であった叔父、荀イクは既に亡い。孔融の献身的な協力が得られなければ、これらの難事業の
中で荀攸は倒れていただろう。嘉徳殿修復の報せを持って現れた荀攸は、憔悴し切っていた。

呂布 「休め、荀攸。貴様が病めば、帝国も病む。残った仕事は我らの責務だ」

退出する荀攸の警護を配下に命じ、呂布は孔融と共に別室へと向かった。


孔融 「珍しく、張昭殿が参内されているそうですな」

虞翻や程普が孫権の元に戻った後も、張昭は一人洛陽に残り、呂布と孫権の間の折衝役を務めて
いる。その身の処し方は、呂布陣営の偵察の任を自らに課している風もある。実際、商人などに
身をやつした密偵が、張昭の仮居宅を足繁く訪れているらしい。

呂布 「一昨日書状を携えて来た程秉が、恐らく張昭にも意を含めたのだろう。改めて孫呉の
    立場を釈明しに来たものと見える」
孔融 「書状の内容は?」
呂布 「此度の建業攻撃は孫呉の与り知らぬ所、だそうだ。ついでに、帝国の忠実な下僕たる臣
    孫権に叛し、更に高順将軍に刃を向けた周瑜は、最早生かしてはおけぬ帝国の敵だ、と」
孔融 「無理もありますまい。周瑜将軍は孫呉きっての名将。孫権殿にしてみれば、最も信頼して
    いた臣下でありましょうし。まさか裏切られるなどとは思っておられなかったのでしょう」
呂布 「軍を整え、いずれ周瑜を討ち果たす所存。何とぞ力添えを。まあそんなところだ」
孔融 「‥‥信頼が厚かっただけに怒りも深い、というところでしょうか」
将軍府の廊下を歩きながら、呂布は小首を傾げる。

呂布 「だが、どうも腑に落ちぬのだ、俺は」
孔融 「と言いますと?」
呂布 「孫権に何の動きもないのが、ちとな」
孔融 「軍が整っていない、と申されているのでは?」
呂布 「周瑜には後ろ盾となる勢力がない。高順が押さえていた時とは違い、今の建業は
    完全な孤立状態だ。外部に連携勢力がない現状ならば、建業を囲んで干上がらせる
    ことは難しくなかろう。わざわざ戦をする必要もない」
孔融 「ふむ‥‥」
呂布 「建業は長江の要所。周瑜に扼されていては、孫権も都合が悪かろうはずだが‥‥」

孔融は目線を下げ、しばし考え込む。

孔融 「将軍に漁夫の利を得られることを警戒している、とも考えられますが。再び我らに
    居座られるよりは、周瑜がいた方が扱いやすい。そういうことではございませぬか」
呂布 「一理ある。が、だからといって何も手を出さぬという法もあるまい。せめて周瑜が
    おとなしく建業に引き籠もるように、圧力を掛けて然るべきではないか」
歩みを止めぬまま、呂布はもう一度首を傾げた。

呂布 「周瑜の意図ももう一つ分からぬ。建業は、我らか孫権、いずれかが領有してこそ真に
    意義を持つことになる。建業単独では、大した軍事的意義も主張できぬだろうよ」
孔融 「それは確かに仰せの通りですが‥‥」
呂布 「孫権に背いて建業に拠った以上、周瑜としては我らと結ぶ以外の選択肢はないはずだ。
    それが未だに一片の書状さえ寄越さぬとは‥‥何を考えているのか、見当が付かぬ」
孔融 「考えすぎではございませぬか、将軍。長江は周瑜の庭と言ってもよい川。むやみに中原に
    動こうとせず、勝手知ったる場所を拠点に選んだに過ぎぬのではございませぬか」
呂布 「それならそれで良い。奴は天下を狙う器ではないというだけのことだ」

だが、呂布は周瑜の軍才を決して低く評価していない。その評価が、頭のどこかで警鐘を
鳴らす。周瑜ほどの男がこのような稚拙な戦略を採るはずがない。何か裏があるのでは
ないか、と。とは言え、さすがの呂布も、周瑜が打った大博打を見抜くまでには至らなかった。
孫権が周瑜に討たれる寸前にまで至った。その一事が、心の隅に浮かぶ両者の結び付きの
可能性を否定し続けてていた。
呂布 「今、田豊が張昭と会談を持っている。追っつけ、何がしかの報告が来るだろう」

そう言いながら部屋の扉を開けた呂布の前に、細身の男が平伏していた。ぎょっとして身を退ける
孔融に、男が間者であることを呂布は説明した。

呂布 「話せ」

男は孔融の方を見、呂布の表情を確かめる。小さく頷いた呂布を見やり、男は口を開いた。

男   「長安の鍾ヨウ殿の意を受けて参上しました。馬騰と韓遂が、長安に使者を寄越したとのこと」
呂布 「ほう、あ奴らもようやく降伏する気になったか」
男   「いえ、降伏ではなく、和議を求めているとのこと」
呂布 「和議だと。今更何を言うか、戯れ言にも程がある」
男   「それが」

男が初めて言い淀んだ。無表情だった顔に微かな困惑を浮かべ、もう一度孔融に視線を向ける。

呂布 「かまわん、続けろ」
男   「事は漢王室に関わる、とのこと。鍾ヨウ殿がそれがしを遣わされたのも、その言葉故です」
呂布 「王室、だと」
男   「鍾ヨウ殿も事情をご存知でございます。しかし、自分の手には遥かに余る一事と仰せられ、
    将軍に長安までお出まし頂きたい、と」

呂布の表情が硬くなる。孔融と顔を見合わせ、独り言のように呟いた。

呂布 「一つ終われば、もう次か。厄介事は減らぬものよ」
おっと復活か?
現在の状況を纏めた物キボン。
容量限界までに話、終わりませんでしたね。

まとめでもあらすじでも、次スレ立てる際にあると便利ですが…
立てても寂れっぱなしな駄スレになる可能性もありますし。
どうしましょうか。
このスレを復興させてやりたい・・・・不憫だ(´Д⊂)
795あらすじ書いてみた
知勇を兼ね備えた呂府、彼に軍師は必要なかった。
曹操、袁紹、損策を破り、天下の趨勢は決まったかに見えた。

しかし、宦官となった曹操の謀略で皇帝は毒殺され、その罪を着せられそうになった劉備は逃亡。
益州の劉璋に身を寄せ、彼はそこで劉璋を皇帝に据える。
同じ頃孫策の跡を継いだ孫権も呉皇帝を名乗った。
しばらくして劉備は劉璋と反目するようになり、だまし討ちの結果、漢中、益州を含め反呂筆頭の勢力となる。
孫権は周瑜を大将に荊州に大々的な奇襲をかけていたがこれに失敗し、呂布にいったん膝を折ることになった。
荊州では劉表に命を狙われた諸葛亮が益州劉備に身を寄せる。
ホウ統は曹操に仕えており、彼等の刺客であった徐庶は後に曹彰に仕えるのだった。

さて、呂布は涼州掃討戦に出陣した。
戦中審配を失いながら、馬超を捕らえながらの勝利を得る。
呂布が涼州に目を向けている頃、劉備は荊州を目指したが、派遣された曹丕、ホウ統の前に策はもろくも崩れ去った。
周瑜もまた黄祖の激しい抵抗にあい、勝利をつかめずにいた。

南方では陳宮の名を語った陳登が病死し、北方では司馬懿の謀略を郭図が命を以って阻止していた。
彼等の思いとは別に、時の流れは留まることを知らない。

汝南の賊を、呂布の婿養子である曹彰が討伐に向かった。
しかし曹丕の謀略により、多くの兵と最愛の弟曹熊を失い、徐州へ寄る。
彼は曹の名を捨てた。
一方南蛮に送られていた曹植は、兄の非常さに悲しみを以って戦の只中に身を置くことを決意した。

呉では夢に命を賭けた漢、魯粛によりからくも建業を奪還。
世間には独立の形をとって、周瑜は自ら盾となる道を選んだ。
その頃都では魏続の叛乱がおき、重鎮の多くが殺され皇帝も行方不明となる。
益州に逃れた曹操は、蜀荊呉同盟を画策。
また、他方で涼州の玉璽の存在が明らかになりつつあった。


長文スマソ