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>>1よ。聞いてくれるか?
かなり昔のことだから覚えているやつぁ少ないだろうが
俺がラオウ様の軍の兵士としてある村を攻撃した時のことだ。
不思議なことにその村の連中は少しも俺達に抵抗しやがらなかったんだ。
そのかわりにひとりのごっつい野郎が出てきてよぅ、俺たちを睨みつけるんだよ。
残虐なことで世界中から恐れられていた俺達もさすがにびびっちまってよぅ。
自分の震えを抑える方法が分からず呆然としていたらラオウ様に叱られちまったぜ、へへ…。
何でもそこの男の言うことにはよぅ、俺がやる気になればラオウ様だって倒せるっていうんだよ。
なるほど、確かに俺達はそいつの度胸と気迫に押されちまった。いよいよラオウ様自ら戦うのかと思ったその時だった。
そのときそいつが言ったんだよ、「だが、俺が勝っても侵攻隊は暴徒と化す。そうしたら戦って傷ついた俺ではこの村を守れない」と。
自分ひとりで何があっても村を守ると決めてたんだろうよ。
男はそのかわりに自分で脚を切り落としたね。平和を買う代償として。
ラオウ様に匹敵するだけの力を持っていながら村のために自らの脚を差し出す。
こいつは決して戦いから逃げ出したヘタレなんかじゃねぇ。
自分の脚なんかどうでもいい、村のみなを守るためならってことだ。ちょっと泣けてきたもんだぜ。
ラオウ様もその男のほんとうの強さに惚れちまってよぅ。脚を大切そうに受け取って
「元斗皇拳のファルコ、その脚、一国に匹敵する」
なんて言うんだ。ラオウ様のあの感服しきった表情が今も忘れられないぜ。
>>1よ。あんた見てると俺はどうしてもあの男を思い出しちまう。
きれいごと言うのは勝手だが、そのきれいごとが通じないような圧倒的な現実に直面した時
あの男の100分の1でもいいから骨のあるところを見せてほしいモノだ。頼んだぜ、まったく。