>>634-637の続きです
またまた調子に乗ってシマッタ…
『なるみ・鈴世の小さな恋の物語U-@』
『南の島での出来事』から数日が過ぎ、2人にとって忘れられない夏休みが終わった。
そして、学園生活が始まる。そんな、ある秋の深まった頃―――
いつものように体育の授業に向けて、なるみのクラスの女子が更衣室で着替えをしている。
ふと双葉がブラウスを脱いだなるみの肌に目をやる。
「なるみ、なんか下着の趣味変わってない?…もしかして鈴世くんとヤッタ…とか!?」
双葉の問いにコクリと頷くなるみ。
「やったね!どこで・どんな風に!?」
なるみはこの夏の出来事を話す。双葉は顔を真っ赤にして告白するなるみを想像していたが
なるみの反応は少し違った。そして何か思い悩んでいる事がなるみの表情からわかる。
「何か…あった?」
「鈴世くん、私の体に興味…ないと思う。もう2ヶ月近くたつのに、あれ以来何もないの…。
やっぱり、この傷のせいかな…」
なるみは寂しげな表情を浮かべながら自分の胸の傷を指差す。幼い頃に心臓の大手術を受けたという
証が、なるみの白い肌に生々しく残っている。
「なるみ、何言ってんのよ。鈴世くんはそんな事…!」
「ゴメン。ナンか深刻になっちゃって…。でもね、鈴世くんに誘われたらいつでもOKなように
下着だけは可愛いの着けておこうと思って!」
なるみはわざとおどけてみせる。双葉は同じ女のコとしてなるみの気持ちが痛いほどよく解る。
「なるみ…」
「もう、ナニ双葉が気にしてるのよ?さ、早く行かなきゃ遅れちゃうよ!今日は男子と混合でバスケット
だよ。鈴世くんにいいトコ見せなきゃ!私、がんばっちゃう!」
2人は急いで更衣室を後にした。
試合が始まる。残念ながら鈴世とは対戦相手のチームだ。その代わりといっては何だが幸太と同じ
チームとなった。なるみは試合中だというのに先程の双葉との会話から南の島での出来事を思い返す。
(あの時、鈴世くん何も言わなかったけど胸の傷見えてたよね…)
ボーっとしているなるみに、幸太からの鋭いパスが来る。ボールがなるみの胸の傷に直撃した。
「きゃぁっ!」
なるみの胸に大きな痛みが走る。思わずうずくまるなるみ。
「えっ!?い、市橋!?どうしたんだよ!!」
幸太を筆頭に皆が集まる。なるみは胸を押さえたまま立ち上がれない。
「早く医務室へ!」
双葉が叫ぶ。そんな中、鈴世がなるみをフワリと抱えた。
「先生、僕が連れていきます!皆はそのまま続けてて下さい」
不謹慎だが女子のため息がこぼれる。そんな中、鈴世は急いでなるみを医務室に運んで行った。
なるみを抱えたまま、勢いよく医務室に飛び込む鈴世。
「曜子先生!なるみが……あれ、誰もいない…」
曜子の机には『本日、私用につき休業!』と書かれたメモが置いてある。
「曜子先生らしいや…なるみ、大丈夫?横になったほうがいいね」
小さく頷いたなるみを鈴世は医務室のベッドに寝かせる。