>>442-443続き
…あいつが現われるまでは。
アレクサンドリア城の大広間。(引用
六号(ビビの末子「お姉さん、もう戦争はやめよう、この国は…」
ガーネット「ここへきて、退けと?もう世界は後戻りのできないところへきているのだ、
おまえのような小僧には世界情勢などわからないだろうがな。」
六号「こんなことは言いたくない、お姉さんよく聞いて。
霧の大陸だけじゃ戦争がおさまらない。
ジタンとミコトが作り上げた黒魔道士たちは、この国が昔もっていた
低技術の量産タイプじゃないんだ。戦ったら、世界がめちゃくちゃになっちゃうよ。」
ガーネット「…私を脅しにきたつもりか?。」
六号「今なら、まだ、間に合うよ、アレクサンドリアとリンドブルムの仲介に
入ってくれるようジタンに頼むよ!」
ガーネット「ふん、どうだかな、ジタンも何を考えてるかわかったものじゃない。
あいつこそが世界支配をたくらんでいるかもしれない。あのクジャと同じやもしれぬ。
そして、こんなことも言ったな「俺もクジャの立場だったらどうしていたかわからない」とな。」
六号「…そんな、ジタンやミコトはそんなことのために軍をつくってるんじゃない!」
目前で連呼される「ジタン」の名前。
近衛兵自身は一度も面識がない男の事だが、ジタンの名前を耳にして胸が高鳴る、
(…やめろ……!)
そのあとの黒魔道士の会話はよく覚えていない。動揺して耳に入らなかった。
ガーネット「その小僧を黙らせろっ!」
…ガーネットの言葉で我に返る。近衛兵は腰元の剣に手をかけた。
…が、一手遅く、別の兵士が黒魔道士を殴りつけて気絶させた。
ガーネット「敵はリンドブルクとプルメシアだけでは終らないようだな。」
誰だあれは。…マジで。
今朝抱いたはずのガーネットが遠く感じた。
そして、その後、
「ガーネッ……」
「………」
廊下ですれ違いざまに呼びかけてもなにも応えることはなかった。
夜、ガーネットの寝室のドアに手をかけるが、鍵がかけられている。
こんな形で、ガーネットとの関係が終わるのか?焦燥感にかられてドアを叩いた。
「何事?騒々しい。」
わずかに開かれたドアの隙間には怪訝そうに近衛兵を見る女王の姿があった。
数時間の内に、二人を隔てるものが決定的になってしまったことを思い知らされる。
「ガーネット…」
「身分をわきまえなさい、誰にものを言っているのです。」
「女王陛下…。」
言われるままに、言いなおすがその先の言葉が続かない。
近衛兵の言いたいことを汲み取るように、ガーネットは別れの理由を述べた。
「……この国は黒魔村と戦うことになる、
そのときに敵の指導者と似た男を男妾にしているなんていい笑い者だわ。
そんな女王に誰がついてくるの、私にも立場がある。」
「……」
「先に言っておく。明日移動の通知があるでしょう。」
「……」
「今の近衛兵団から、一般の兵士に。」
「そこまでして俺を遠ざけたいのですね。」
「黒魔村との戦争が終わるまでの一時的なことと思って。」
「それはいつの事ですか。」
「さあ、わからない。」
「……ガーネット陛下にとって、俺はなんだったんですか…。」
「あなたに対して情がないわけではない。でも今はあなたを思いやれるような余裕がないの。」
ガーネットのその言葉は
これ以上、口を挟む余地を与えなかった。
少し前のアレクサンドリアの軍隊はベアトリクス将軍の指揮の元、
厳しい規則の徹底された軍隊であったが、
その将軍が地位を剥奪され、新たに兵を徴収し軍隊が作り直された。
前にいた近衛兵団の方はまだ幾らか以前の雰囲気が残されていたが、
末端の方ともなれば、半数以上が元傭兵という急ごしらえの軍である。
軍の食堂。
喧騒と酒の匂いは食堂というより酒場の雰囲気に近かった。
ケインが夕食のトレーを運んでいると、男がふんぞり返るように腕を広げて肘がトレーにぶつかった。
ガシャンという音とともに床を汚す。
「おい、気をつけろっ」
「え、…すいません。」
そっちがぶつかってきたくせに、と思いながらもそう答えた。
無用な揉め事はさけて、さっさと床を片して部屋に戻ろうと考えていた。そのとき、
「あいつガーネットの情夫だぜ」
誰が呟いたのかはわからない、ざわめきの中で、
その言葉はケイン自身にもはっきりと聞き取れた。
先ほどの男がケインにつよい興味を持った。
つま先から頭まで舐めるように眺めると、嘲笑するようにふっと笑う。
「これがガーネットの趣味ねぇ…おい女王様の裸はどうだったよ?」
「……え」
「どんな格好で突いてる?週に何回くらい呼ばれてんだ?」
「……言えません」
「お前なめてんのか、答えろっつってんだよ!」
「……関係はあったけど昔のことです、今はなんでもない…」
「そうかい。飽きられて用済みってえわけだ。」
その言葉に目元がピクリと動く。
「おー何か、言いたげだな?」
そういってにやにや笑うと、
ケインの顎を掴んで、碧眼をのぞきこんだ。
「…目付きは気にいらねえが、へえ、良く見ればかわいい顔してるじゃねえか。」
「何言ってんですか?」
「……ガーネットのお下がりをやるってえのもいいな。」
一瞬、男の言葉の意味が理解できなかったが、
「冗談でしょう…?」
じわじわ…と恐怖が込み上げ、血の気がひく。
欲情の結果にこぼれた言葉は、どんな脅し文句より効果があった。