〜参加者一覧[作品別]〜
【魔法少女リリカルなのは】高町なのは/フェイト・テスタロッサ/ヴィータ/八神はやて/アリサ・バニングス
【ローゼンメイデン】真紅/翠星石/蒼星石/雛苺/金糸雀
【魔法陣グルグル】ニケ/ククリ/ジュジュ・クー・シュナムル/トマ
【ポケットモンスターSPECIAL】レッド/グリーン/ブルー/イエロー・デ・トキワグローブ
【デジモンアドベンチャー】八神太一/泉光子郎/太刀川ミミ/城戸丈
【ドラえもん】野比のび太/剛田武/リルル
【魔法先生ネギま!】ネギ・スプリングフィールド/エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル/犬上小太郎
【絶対可憐チルドレン】明石薫/三宮紫穂/野上葵
【落第忍者乱太郎】猪名寺乱太郎/摂津のきり丸/福富しんべヱ
【名探偵コナン】江戸川コナン/灰原哀
【BLACKLAGOON】ヘンゼル/グレーテル
【クレヨンしんちゃん】野原しんのすけ/野原ひまわり
【ドラゴンクエストX】レックス(主人公の息子)/タバサ(主人公の娘)
【DEATH NOTE】メロ/ニア
【メルティブラッド】白レン/レン
【ちびまる子ちゃん】藤木茂/永沢君男
【カードキャプターさくら】木之本桜/李小狼
【テイルズオブシンフォニア】ジーニアス・セイジ/プレセア・コンバティール
【HUNTER×HUNTER】キルア/ゴン
【東方Project】レミリア・スカーレット/フランドール・スカーレット
【吉永さんちのガーゴイル】吉永双葉/梨々=ハミルトン
【ヴァンパイアセイヴァー】リリス
【MOTHER】ネス
【サモンナイト3】ベルフラウ=マルティーニ
【Fate/stay night】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【みなみけ】南千秋
【武装錬金】ヴィクトリア=パワード
【BLACKCAT】イヴ
【からくりサーカス】才賀勝
【銀魂】神楽
【ひぐらしのなく頃に】古手梨花
【灼眼のシャナ】シャナ
【とある魔術の禁書目録】インデックス
【るろうに剣心】明神弥彦
【ボボボーボ・ボーボボ】ビュティ
【一休さん】一休さん
【ゼルダの伝説】リンク(子供)
【ベルセルク】イシドロ
【うたわれるもの】アルルゥ
【サザエさん】磯野カツオ
【せんせいのお時間】鈴木みか
【パタリロ!】パタリロ=ド=マリネール8世
【あずまんが大王】美浜ちよ
【ポケットモンスター(アニメ)】サトシ
【SW】ベルカナ=ライザナーザ
【Gunslinger Girl】トリエラ
【ぱにぽに】レベッカ宮本
【FINAL FANTASY4】リディア
【よつばと!】小岩井よつば
計86名
〜参加者一覧[あいうえお順(名簿順)]〜
01:明石薫/02:アリサ・バニングス/03:アルルゥ/04:イエロー・デ・トキワグローブ/05:イシドロ/
06:泉光子郎/07:磯野カツオ/08:一休さん/09:猪名寺乱太郎/10:犬上小太郎/
11:イリヤスフィール(略)/12:インデックス/13:イヴ/14:エヴァンジェリン(略)/15:江戸川コナン/
16:神楽/17:金糸雀/18:城戸丈/19:木之本桜/20:キルア/
21:ククリ/22:グリーン/23:グレーテル/24:小岩井よつば/25:剛田武/
26:ゴン/27:才賀勝/28:サトシ/29:三宮紫穂/30:シャナ/
31:ジーニアス・セイジ/32:ジュジュ・クー・シュナムル/33:白レン/34:真紅/35:翠星石/
36:鈴木みか/37:摂津の きり丸/38:蒼星石/39:高町なのは/40:太刀川ミミ/
41:タバサ(主人公の娘)/42:トマ/43:トリエラ/44:永沢君男/45:ニア/
46:ニケ/47:ネギ・スプリングフィールド/48:ネス/49:野上葵/50:野原しんのすけ/
51:野原ひまわり/52:野比のび太/53:灰原哀/54:パタリロ/55:雛苺/
56:ビュティ/57:フェイト・テスタロッサ/58:福富しんべヱ/59:藤木茂/60:フランドール・スカーレット/
61:ブルー/62:古手梨花/63:プレセア・コンバティール/64:ヘンゼル/65:ベルカナ=ライザナーザ/
66:ベルフラウ=マルティーニ/67:南千秋/68:美浜ちよ/69:明神弥彦/70:メロ/
71:八神太一/72:八神はやて/73:吉永双葉/74:李小狼/75:リディア/
76:リリス/77:梨々=ハミルトン/78:リルル/79:リンク(子供)/80:レックス(主人公の息子)/
81:レッド/82:レベッカ宮本/83:レミリア・スカーレット/84:レン/85:ヴィータ/
86:ヴィクトリア=パワード
計86名
〜ロリショタロワ・基本ルールその1〜
【基本ルール】
参加者全員で殺し合い、最後まで生き残った一人が優勝となる。
優勝者のみが生きて残る事ができて『何でも好きな願い』を叶えて貰えるらしい。
参加者はスタート地点の大広間からMAP上にランダムで転移される。
開催場所はジェダの作り出した魔次元であり、基本的にマップ外に逃れる事は出来ない。
【主催者】
主催者:ジェダ=ドーマ@ヴァンパイアセイヴァー(ゲーム・小説・漫画等)
目的:優れた魂を集める為に、魂の選定(バトルロワイアル)を開催したらしい。
なんでロリショタ?:「魂が短期間で大きく成長する可能性を秘めているから」らしい。
【参加者】
参加者は前述の86人(みせしめ除く)。追加参加は認められません。
特異能力を持つ参加者は、能力を制限されている場合があります。
参加者が原作のどの状態から参加したかは、最初に書いた人に委ねられます。
最初に書く人は、参加者の参戦時期をステータス表または作中に記載してください。
【能力制限】
参加者は特異能力を制限されることがある。疲労を伴うようになっている能力もある。
また特別強力な能力は使用禁止になっているものもあるので要確認。
【放送】
放送は12時間ごとの6時、18時に行われる。内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」
「過去12時間に死んだ参加者名」など。
【首輪と禁止エリア】
・参加者は全員、爆弾の仕込まれた首輪を取り付けられている。
・首輪の爆弾が起爆した場合、それを装着している参加者は確実に死ぬ。
・首輪は参加者のデータをジェダ送っており、後述の『ご褒美』の入手にも必要となる。
(何らかの方法で首輪を外した場合、データが送られないので『ご褒美』もない)
・首輪が爆発するのは、以下の4つ。
1:『禁止エリア』内に入ってから規定時間が過ぎたとき。
2:首輪を無理やり取り外そうとしたとき。
3:24時間で死者が出なかったとき。
4:ジェダが必要と判断したとき(面と向かって直接的な造反をした場合)。
〜ロリショタロワ・基本ルールその2〜
【舞台】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/clip/img/76.gif 【作中での時間表記(2時間毎)】(1日目は午前6時よりスタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【支給品】
・参加者が元々所持していた装備品、所持品は全て没収される。
・ただし体と一体化している装備等はその限りではない。
・また衣服のポケットに入る程度の雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される物もある。
・ゲームの開始直前に以下の物を「ランドセル」に入れて支給される。
「食料」「飲料水」「懐中電灯」「地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」「名簿」
「ランダムアイテム(1〜3種)」。
なおランドセルは支給品に限り、サイズを無視して幾つでも収納可能で重量増加もない。
その他の物については普通のランドセルの容量分しか入らず、その分の重量が増加する。
【ランダムアイテム】
・参加者一人に付き1〜3種類まで支給される。
・『参加者の作品のアイテム』もしくは『現実に存在する物』から選択すること。
(特例として『バトルロワイアル』に登場したアイテムは選択可能)。
・蘇生アイテムは禁止。
・生物および無生物でも自律行動が可能なアイテムは参加者増加になる為、禁止とする。
・強力なアイテムには能力制限がかかる。非常に強力なものは制限を掛けてもバランスを
取る事が難しいため、出すべきではない。
・人格を変更する恐れのあるアイテムは出さない方が無難。
・建前として『能力差のある参加者を公平にする事が目的』なので、一部の参加者だけに
意味を持つ専用アイテムは避けよう。出すなら多くの参加者が使えるようにしよう。
【ご褒美システム】
・他の参加者を3人殺害する毎に主催者から『ご褒美』を貰う事が出来る。
・トドメを刺した者だけが殺害数をカウントされる。
・支給方法は条件を満たした状態で、首輪に向かって『ご褒美を頂戴』と伝えるか、
次の放送時にQBが現れるので、以下の3つから1つを選択する。
1:追加のランドセルが貰える。支給品はランダムで役に立つ物。
2:ジェダに質問して、知人の場所や愛用品の場所などの情報を一つ聞ける。
3:怪我を治してくれる。その場にいれば他の人間を治すことも可能。
〜ロリショタロワ・基本ルールその3〜
【ステータス表】
・作品の最後にその話に登場した参加者の状態、アイテム、行動指針など書いてください。
・以下、キャラクターの状態表テンプレ
【現在位置(座標/場所)/時間(○日目/深夜〜真夜中)】
【キャラクター名@作品名】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(身に装備しているもの。武器防具等)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なもの。
収納している装備等、基本的にランドセルの中身がここに書かれます)
[思考・状況]
(ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
複数可、書くときは優先順位の高い順に)
◆例
【D-4/学校の校庭/1日目/真夜中】
【カツオ@サザエさん】
[状態]:側頭部打撲、全身に返り血。疲労
[装備]:各種包丁5本
[道具]:サイコソーダ@ポケットモンスター
[思考]
第一行動方針:逃げた藤木を追い、殺害する
第二行動方針:早く仲間の所に帰りたい
基本行動方針:「ご褒美」をもらって梨花の怪我を治す
【予約】
・キャラ被りを防ぐため、書き手は自分の書きたいキャラクターを予約することができます。
・期間は基本的に予約から72時間(3日)です。
・やむにやまれぬ事情で完成が遅れる場合、最大で一週間まで期限を延長することができます。
ただし、3日の期限の間に、進行状況の報告も合わせて延長申請を行う必要があります。
・予約期間終了後は、他の人がそのキャラを使った話を投下して構いません。
・予約しなくても投下することはできますが、その際は他に予約している人がいないか
十分に確認してから投下しましょう。
【投下宣言】
・投下段階で被るのを防ぐため、投下する前には必ずスレで 「投下します」 と宣言を
して下さい。 投下前にリロードし、被っていないか確認を忘れずに。
・近頃連投規制が厳しくなっております。居合わせた方は、できるだけ支援するようにしましょう。
【トリップ】
投下後、作品に対しての議論や修正要求等が起こる場合があります。
本人確認のため、書き手は必ずトリップをつけてください。
テンプレ投下終了です。
予約してる方の次作品が40kb超だとのことでしたので念のため早めに建てさせて頂きました。
そして予約をかけさせていただきます、不安定要素強集団残り+αの
インデックス・ニケ・エヴァ・ヴィータ・きり丸を予約します。
もう少ししたら投下を始めます。
重なる延長、本当に申し訳有りませんでした。
(えーっと、今は大体二時前ってとこやったな。
神社に行って帰っての時間を抜くと使えるのは……二時間足らずか)
小太郎は使える時間がどの程度有るかを頭の中で計算しながら森の中をひた走っていた。
その方向はまず南。それから東に向かうつもりだ。
森の入り口から廃病院に向けては僅かながら道があり、走りやすい。
なにより一度見晴らしの良い開けた場所に出たかった。
明確に人を捜している今、擦れ違いや行き違いは避けたかったからだ。
「ん……誰かおるな」
その足が森も出ない内に止まった。
仲間を捜す為に人に会う為に見晴らす為に森を出ようとした選択が、森を出ない内に成果を上げる。
理性が選んだ順序を飛ばして偶然が招く結果が現れる。
「もしかして……犬上小太郎くん?」
「……だれや、お前?」
小太郎は怪訝な様子で足を止めた。
視線の少し先にいるのは、白を基調とした服装の少女だ。
森の樹に背を預け、見るからに気を落とした暗い表情をしている。
見覚えは、無い。
「やっぱりそうなんだ。耳が生えてたからもしかしたらって思ったけど……」
少女の方も小太郎を見た事があるわけではなく、聞いて知っていただけだ。
それに気付いて小太郎も理解した。
「お前、もしかしてネギかエヴァの知り合いか?」
少女――高町なのはは頷いた。
「うん。わたしは高町なのは。エヴァちゃんの……仲間だよ」
小太郎はその言葉に概ね納得したが、一つだけ疑問を覚える。
「なんでエヴァの仲間が一人でこんな所におるんや? というかエヴァは一体どこで何をしてんねん」
「わたしは、その……少し一人になりたくて……」
「はあ? ここがどんな世界かわかっとんのか? 女子供が一人でいたら殺されてまうで」
そもそも子供しか居ない世界ではあるが、小太郎にとって基本的に女性は守るべき存在である。
共に戦ったシャナの力などは認めているが、別にこの基本が無くなったわけではない。
「大丈夫だよ、戦う力は有るから。でも……」
なのはには判らない。
なのはは一つの疑問を抱え込んでいる。
大切な友達であるヴィータを止める事にあそこまでを出来た一方で、
それを非難される事に耐えられなくて山小屋の前から逃げ出してしまった自分。
まるで制御できない、自分自身の想いが判らない。
「……自分がした事が本当に正しいのか。
ううん、正しいと思えてるのにそれが辛くて恐くてたまらないの」
「なんや、難しい事を考えるガキやな」
小太郎は否応なしに親友の事を連想した。
ネギ・スプリングフィールドの事を。
「そや、ネギや。それとエヴァの事も。エヴァはどこにおるんや?」
「エヴァちゃんなら……」
答えようとするが一拍の間。なのはの理性は確認を要求する。
「待って、その前に一応訊かせて。小太郎くんはこの殺し合いに乗っていないよね?」
「当たり前やろ! こんな胸糞悪いゲームなんぞだれがやるかい! ただ……」
「ただ……?」
小太郎は歯を噛み締め拳を握り締めると、吹き上がる怒りを発露した。
「ネギのバカがこのゲームに乗ってるって、聞いた」
なのはは息を呑む。
それはエヴァとニケがリリスから聞かされた真偽も定かではない情報。
曰く、ネギとコナンはリリスの僕だ。
「……信じられへん。ネギは善人とか良心とかそういうのを絵に描いたみたいな奴や。
俺やエヴァがやる方がまだ説得力が有るわ。
でももし……もしも本当やったら、行って殴り飛ばしてやる。叩きのめしてでも止めてやる!
俺は、ネギのライバルで……ダチなんやから……」
「小太郎くん……」
なのははそんな小太郎を見て、少し思い悩んで。
問うた。
「叩きのめしても、止まってくれなかったら?」
「…………何?」
答えを求める。
「もしも何か仕方のない理由が有って……戦う力が有る限り止まろうとしなかったら?
振るう腕がある限り、武器を手に殺そうとしてきたら?
小太郎くんは、どうするの?」
「それは……」
――殺す、という言葉が出てこなかった。
幼い頃からたった一人、裏の世界で生きてきた。
誰も助けてくれなくて、生きる為には色々やった。
最後の一線だけは超えなかったし、裏の世界じゃ誇り有るつもりだけれど、それでも、
いや、だからこそネギがより大きな間違いを犯すならば、殺してでも止めなければならない。
それがネギのライバルで親友である自分の役目だ。
(あいつを……殺すのか? 俺が?)
想像できなかった。
突きつけられた問いに、惑う事しかできない。
――答えは得られなかった。
その様子を見て、高町なのはは落胆して顔を伏せた。
「わたしの友達も、この殺し合いに乗っていたよ」
「なんやて……?」
惑う小太郎に驚愕が与えられる。
「大切な人を生かすために、それ以外の人を手当たり次第に殺そうとしていた」
昏い、言葉。重い、事実。
「それで……お前はどうしたんや?」
なのはは答えた。
「わたしは友達の、ヴィータちゃんの腕を……潰したの」
重く昏く。
「取り押さえてから、武器を握れないように、人を殺せないように両腕を焼いた。
加減はしたけれど、魔法で治さない限りヴィータちゃんはもう武器を握れない。
お箸だって持てないかもしれない。そうしてから、縛ったの」
それでいて滑らかに口は動く。油を差した機械のように滑らかに、無機質に。
重くて滑らかなその言葉。
「……もし足で蹴ってきたら?」
「歩いてもらうのには必要だけど……やっぱり、潰していたと思う」
「声だけで魔法を唱えたら……?」
「息とかお食事は出来る程度に……喉を焼いていたと思う」
凄惨な回答。
「ぜんぶ、生かすために。死なせないために」
全ては耐え難い苦しみのために。
小太郎は僅かに恐れすら抱いた。
何もできない程度に生かす。死なない程度に殺す。
その選択は殺すという選択よりも冷徹な発想力が無ければ生まれない。
人を傷つける行為に未熟な者は、加減というものを思いつきすらしない。
傷つけるか傷つけないかだ。
走り屋が安全と警察に注意しながら速度を超過するような『計算された暴走』。
殺し慣れた者だからこそ辿り着けるはずの境地。
それに慣れた者でさえ、ふとした事で自らを見失う際どい破滅の綱渡り。
「考えて、考えて……それが一番、失う物が少なくて済むって思ったの。
その為なら悪魔になっても良いって、そう思った」
その境地に一足飛びで辿り着いてしまった少女は、惑う。
「でも……そこまでしたのに。もうそんな事をしてしまったのに。
耐えられなくなって、逃げちゃったの。……身勝手すぎるよね」
吐き出す。想いを。弱さを。苦しみを。
小太郎はただそれを聞いていた。
何も言ってやれず、逆に打ちのめされた。
目の前の少女の意志と選択に。
(くそ……なんなんや。こんな女の子やってこんな決意を固めてるのに、俺は……)
ネギを殺す、という難しくも単純な決意すら出来なかった。
別にそれは、必ずしも間違いや弱さとは言えないだろう。
むしろ最後の一線を超えまいとしている小太郎がそういった冷徹な発想に惑うのは当然の事だ。
だが小太郎にとって、それは間違いなく弱さだった。
自分と同年代の少女が選んだ非情な正しさより、より容易い筈の答えを選ぶ事すら出来なかった。
少年にとってそれは、同年代の女子に負けた男の恥だ。
「……変な話して、ごめんね。
エヴァちゃんはここから南の山中、地図には載ってない山小屋に居るよ。
リリスに襲われて酷い怪我をしたけど、命に別状は無いから安心して」
「あのエヴァが大怪我? リリスに襲われた!?
まて、リリスがどこかに居るって事はやっぱりネギは……」
高町なのはは頷く。
「小太郎くんがリリスとは別の誰かに聞いたなら、多分間違いないと思う。
リリスは、ネギくんとコナンって子と首輪を集める競争をしてるって言ったらしいから。
私はその場にいなかったから詳しくは知らないけれど」
「………………」
「でも、今はエヴァちゃんの所に行ってあげて。仲間なんだから、一緒に居た方がいいよ」
少し迷ったが、小太郎は首を振った。
「あかん、今はネギの方が先や。エヴァは他にも仲間が居て、命に別状は無いんやろ?
それやったら後回しや、神社に行ってネギを捜さなあかん。
それに俺も他に仲間が居る。
4時にはここに戻って合流して、リリスが現れるっていう6時にはタワーに行かんとあかん。
リリスを捕まえようって腹や。
4時から6時の間にやったら行けるかもしれんけど、今は……後回しや」
「そうなんだ……」
「できればネギを捜すの一緒に来てくれへんか?
もっと詳しく聞きたいし……お前もこんな所に一人で居たら危ないやろ」
なのはは少し考えて頷く。
「良いよ。行きながら……一緒に捜しながら、お話ししよう」
小太郎は自らの行いを知っている一人となった。
その人が一緒に来てくれと、言い換えれば受け入れてくれた。
今のなのはにとってそれは不安だけれど、それでも嬉しい事だったから。
「よし、なら行くで」
小太郎となのはは神社へと向かった。
* * *
場面は大きく移る。
そこは片側を高い塀が、逆側をそれよりも高い壁が挟む道筋だった。
高い壁は今、所々にある小窓からもうもうと煙を吐き出している。
学校の火事は、もはや消火しようのない規模になっていた。
この校舎の横側は窓も少なく火事の影響は割合少なかったが、それでも危険な場所には違いない。
その塀と壁の間を学校の裏手に向けて走る者達が居た。
李小狼。それに灰原哀だ。
李小狼はそれなりに鍛えられた肉体を持った少年だった。
だが彼は、自分より遥かにか弱い灰原哀に伴って走る以上の事が出来ないでいた。
無数の怪我による消耗と疲労。開いた傷から噴き出す出血。薬物による脱力感の後遺症。
それらが少年の力を奪い去り、自分の面倒を見る事で精一杯になっている。
一方、灰原哀の左足は捻挫している。
その上に同年代の少年の体を背負い、懸命に走り続けていた。
大して鍛えてもいないその体はか弱く、それでも足を進められるのは意志の力に他ならない。
そして灰原哀の背の江戸川コナンは、今は荷重でしかなかった。
意識を失ったその体は何も考える事なく、目覚めの時を待ち続ける。
再び訪れるかも判らない覚醒の時を。
李小狼と、江戸川コナンを背負った灰原哀は走る。
一刻一秒でも早く校舎裏へと逃げ切って、二人の仲間と再会するために。
この苦難の中でも前を見つめて走り続ける。
しかしそんな彼らの前に舞い降りたのは絶望以外の何者でもなかった。
「ふふ、どうしたの? そんなに急いで。
大きな薪が焼べられて、これからパーティの料理を作る所じゃないか。
臓物を抉りだして血の海でぐつぐつ煮込めば、素敵なシチューの出来上がりさ」
“厄種”ヘンゼルが、彼らの前に舞い降りた。
* * *
「くそ、結局神社での収穫はこんなもんか」
「うん、そうみたい」
犬上小太郎と高町なのはは目的地の神社の探索を終えた。
判ったことは少ない。
戦いの痕跡から見て、ネギがここで戦ったのは事実らしいという事だ。
「……わたし達の知り合いの話の方が多かったね」
「そやな。まさかシャナの捜し物まで一緒に居るとは思わんかったわ。
コキュートスやったっけ。
で、なのはの方で捜してるのはフェイトにはやてにアリサに、ククリにジュジュに…………
……あーっ、多すぎて覚えられるかこんなもん!」
ざっと30人もの生徒について細かく記憶しているネギに少し尊敬の念を抱いた。
「名簿に印を付けて置いたから、名前だけでも覚えておいてね。
えっと、それから小太郎くんの方は、ブルーとイヴって二人に気を付けて、だっけ」
「ああ、そや。どうも悪人らしいからな。外見は紫穂からの口伝てやけど言ったとおりや」
「うん、わかった」
なのははしっかりと頷いた。
高度な魔法を習得するなのはの記憶力はかなり良い方である。
口伝てに聞いた外見から実際の容姿もおおむね想像できていた。
他に小太郎の仲間であるシャナ達についても聞いている。大きな成果と言っていいだろう。
更になんでもいいから行動する事によりなのはの心は少しだけ癒されつつあった。
この探索は高町なのはに重要な成果を与えていたのだ。
「そういえば見つかった物から何か判らないかな?」
「といってもこんな物じゃなあ……」
神社で見つかった物は二つだ。
一刀両断されて転がっていた刃物を仕込んである箒。
肩紐の切れたランドセル。それで全てだ。
後は攻撃の余波や流れ弾で破壊された箇所、踏み込みの足跡程度。
戦いがあったのは間違いないが、それ以上は何か判るのだろうか。
「……斬り合いをしたのかな。両方とも刃物を持って」
「斬り合い? なんでそーなるんや?」
「だって、この刃物を仕込んである箒が斬られてるでしょ。
それじゃきっと、相手の方も刃物を使っていたはずだよ」
「あー、言われてみればそうやな」
それはつまり、襲われたという紫穂が箒で応戦したという事だろうか。
それほど腕が立つようには見えなかったのに。
(って、ちょっとマテや)
小太郎は、重大な見落としをしていた事に気がついた。
ネギが殺し合いに乗ったという情報が衝撃的すぎてその事を見落としていたが……
『紫穂はどうして生きている?』
ネギが本当に殺し合いに乗っているとして。
ネギに加えて更にコナンという仲間までいるという二人組を相手に、
武装解除を受けて武器も防具も剥ぎ取られたはずの紫穂はどうやって逃げ延びた?
それに紫穂は(見た目は兎も角として)代わりの衣服やある程度の装備まで携帯していた。
ネギの実力を知る小太郎に言わせれば、まず有り得ないことだ。
(紫穂が嘘を吐いてんのか? でも……)
「なのはって言ったな。ネギが殺し合いに乗ったってのは、リリスから聞いたんか?」
「うん。エヴァちゃんとニケくん……わたしの仲間がリリスと戦った時、そう聞いたって」
理解できない。
紫穂とリリスは、ネギとコナンがリリスの手先として殺し合いに乗ったと言ったようだ。
紫穂についてはネギに襲われたとまで言っていた。
だけど目の前にある状況を考えれば、それを信じてはつじつまが合わない。
(それなら何がどうして…………………………あ。
まさか……いや、でも…………そう……なんか?)
連想した可能性。
それはリリスの手下とはネギとコナンではなく紫穂である可能性だ。
リリスと紫穂が結託して嘘を吐き、ネギとコナンの二人を陥れようとしている。
紫穂はネギに遅いかかり、武装解除を受けて敗北したが、ネギはそれを殺せずに見逃した。
小太郎の知るネギの人物像からすればその方がずっと説得力を持っていた。
(確信は持てへんけど、もしそうやったらシャナと双葉がヤバイやないか!)
焦る小太郎。
だがその思考を整理する時間は与えられない。
何かに気付いたなのはがハッと東の方角に視線を向けたのだ。
「学校が、燃えてる!?」
「なんやて!」
言葉通り視線の先で学校の校舎が黒煙を吹き出していた。火事だ。
1km近く離れていた為に気付くのが遅れたが、どうやら火の手は大きく広がっている。
「学校っておまえらが移動する予定の場所ちゃうんか!?」
「うん。まだ誰も来てないはずだけど、でも火事が起きたなら誰か居るよ!
逃げ遅れた人だって居るかも!」
「クソッタレ!」
素早く神社の境内から飛び出した小太郎がその人影を見つけた。
「見い、あそこ。裏口に誰か居る!」
* * *
小狼――多大な消耗と傷有り、武器は無し。
灰原――運動能力は並の子供、格闘経験無し、武器も無し。背中には気絶中のコナン。
コナン――意識無し。
ヘンゼル――怪我と消耗は有るが戦闘を仕掛ける程度に余力を残す。
武器は二本の金属バット及び二本のアームを残すバルキリースカート。
「くそ、逃げろ!」
小狼が叫びヘンゼルの前に立ちはだかる。
その叫びと共にヘンゼルは二本のアームとバットを振り回し小狼に突撃する。
灰原哀は脇目も振らずに逃げ出した。
小狼を助けよう、などと考える余裕はなかった。
助けられる手段など思いつかない。
だからせめて背中に有る江戸川コナンだけでも護ろうと――
「あぐっ」
捻挫している左足に何か重い物が直撃した。
激痛が走り、それに耐えて左足を地に付けてぐにゃり、急激に地面が迫る。
衝撃。
「どこに行くのさ。逃げちゃダメだよ、何処へも行かせない」
「くそ、しま……ぐああああああああぁあぁがっああっ」
瞬間、絶叫と共に小狼の右腕から親指と人差し指と中指と薬指が姿を消した。
重い打撲で地面に叩きつけられた。
何が起きたか。
ヘンゼルは二本のアームで連続して小狼を斬りつけた。
小狼とて少しでも時間を稼ごうと攻撃を回避。
しかしアームと同時に襲い来るバットを避けたと思った瞬間、投擲。
そのバットは小狼ではなく、その背後を逃げる灰原哀に直撃。転倒させる。
更にそれにより動揺し生じた隙を突いて、小狼に追撃。右手の指の殆どを奪い取る。
加えて残る一本のバットを振り回し、小狼の左肩を叩き割る。衝撃により更に転倒。
以上、わずか数秒で戦いは決着。
赤く燃える狭間に少年の哄笑と狂気が満ちた。
* * *
「誰か来る!」
リンクの短い叫び。梨花もその叫びを聞いて振り返る。
学校の西の神社から飛び出してくる少年と少女の姿が目に映った。
身構えるリンクを前に小太郎もまた瞬動の間合いぎりぎりで立ち止まった。
「おい、お前! 何が起きとんのや!?」
問い掛けも交渉の一つ。即座の戦いではない。
リンクは警戒しながらも答えを返す。
「火事だ! 妙な……筆舌に尽くしがたい奴に火を点けられた!」
「ド変態のタコ坊主なのです」
梨花の補足。
「お坊さんなの?」
小太郎に続いて駆け付けたなのはが聞き返す。
「はい、そうです。
頭がつるつるで和服で……今は全裸で触手で……と、とにかく異様な姿の奴なのです!」
「は、はだかって……」
想像してしまい少し赤くなる。
「でも、そいつは倒した! けどその前に点けられた火を消しきれなかった!」
リンクが続けて説明する。
「それで、もう誰も残っとらんのやな!?」
梨花は一瞬沈黙。この二人は信用できるのか?
リンクは迷わない。即座に助力を求めようとする。
「いや、まだ仲間が――」
瞬間、轟と突風が吹いた。
燃える校舎が上昇気流を作り出し、学校に向けて風が吹く。
周囲の大気を校舎に向けて掻き集める。
小太郎の鋭敏な嗅覚を通り抜けてゆく。
「血の臭い……?」
小太郎はハッと校舎とは違う方角に目を凝らした。
校外。風上。東の方角。森の入り口。木々の合間。粒のような赤い色。
遠すぎて風景に紛れ、意味を拾い上げる事すら難しい小さな欠片。
だけどそれを知っている者なら。血の臭いと併せて予想を付けた者なら。
「……ネギ…………?」
それに、気付いた。
駆け出す。近くでそれを確認するために。
全力で、脇目も振らず、全ての音を置き捨てて。
迫る。近づく。広がる。
事実に迫る。悲劇が近づく。光景が広がる。
――そして、確信を得た。
「……なんでや。なんでや、ネギ!
お前が首輪を集めるなんて、殴り飛ばしてでも止めてやろうと思ったのに!
そやのにこんな、こんな事に……。
お前がっ。お前が首を刈られてどうするんや!
ネギ――――ッ!!」
慟哭はただ虚しく響く。
紅く染まり煙る世界。
ずぶりと肉を抉る音。
絶叫。悲鳴。断末魔へと続く声。
「あはは、あはははは、ははっ、あはははははははははははははははははははははははは」
狂った笑い声が響く度、肉を抉る音がする。
骨を削る音がする。神経を千切る音がする。間接を砕く音がする。
人が壊れる音がする。
「あ……が…………っ」
声にならない声と共に、小指一本しかない腕が、目的すら定まらずに掲げられた。
それともそれは体がたまたまそう反応しただけなのか。
どちらにしろ関係無く、その前に立つ狂気はそれを見て愉しげにくすりと嗤って。
杭を打つように無造作に、金属バットを叩き込んだ。
ぐしゃりと腕が潰れても、上がる声は掠れるような吐息だけ。
ぴくりぴくりと動くだけ。
「……あれ、もう壊れちゃった?
ちょっと急ぎすぎたかな、もう少し長く遊びたかったのに」
もう一度、肉に鋭い刃物が突き刺さる音がして、その動きは更に小さくなった。
まだ、死んではいない。すぐに死ねはしない。
致命傷を与えられて、肉塊と人の狭間で死を待つ惨劇。
「でも欲張りすぎちゃだめだよね。玩具にできるのはまだまだ残ってる」
それに興味を失った少年は、くるりと振り返って残った皿に目を向けた。
一人の少女と、さっきは食べ損ねた一人の少年。
少年を引きずって、少しでも逃げようと這いずる少女。
「まだこんなに残っているんだもの。僕達はまだまだ殺す事が出来る」
厄種ヘンゼルの言葉を背に受けて、灰原哀は望みを絶たれるのを感じた。
逃げることも戦う事も出来ない。
小狼は切り刻まれ叩き潰された。
コナンは目を覚まさない。
覚ました所で、コナンも灰原も『足の筋を斬られて』しまった。
足首から先は動かず這いずる事しか出来ない。
手の方は残されたけれど、武器もなくてこれでは何もできない。
梨花やリンクに悲鳴や絶叫は届いただろうか。
届いたとしても彼女達は間に合うだろうか。
間に合ったとしても彼女達は勝てるだろうか。
武器は有れどもあまりに消耗し、力を失っている彼女達で。
(ダメ……来ないで。せめて梨花達だけでも逃げて!)
背後から近づいてくるヘンゼルの気配を感じて、灰原は背中から江戸川コナンを振り落とした。
せめて彼を少しでも長生きさせるために。
それから少しでも堪えようと歯を食いしばり、痛みを待った。
それを見たヘンゼルが極上の悪意を湛えて嗤う。
「ねえ、お姉さん達の足の方だけを切ったのはどうしてかわかる?」
「…………え?」
愉しげに、楽しげに。
無邪気な心に悪魔的な残酷さを湛えて笑う。
「指の感覚が無くなっちゃうからだよ。
指には痛みが詰まっているんだ。手でも足でも、指を潰すとみんな激痛に悲鳴をあげる。
遊ぶところが減っちゃったら、つまらないでしょ?」
灰原は絶句した。
後ろに立つ者の……全てに。
「だからさ」
バットを振り上げる音がした。
後ろを振り返るまでもない。少年の嗤う顔がありありと脳裏に映る。
「ヒッ……」
灰原は恐怖に息を呑み、体を丸めた。
ヘンゼルはじっくりと間を伸ばし、獲物の恐怖を愉しんでから。
「良い悲鳴上げてよね」
激痛を振り下ろした。
「ぎゃああああああああっ、が、あがっ、がああああああああっあぐっ」
激痛の悲鳴が音となって漏れる。
すぐ横から。
「工藤君!?」
「は、灰原……? くそ、何が…………うっ」
激痛にたたき起こされた江戸川コナンは痛みの源を見て、青くなった。
最初に潰したのは横に転がった江戸川コナンの、左手の小指。
バットで叩き潰されて、圧力に負けて引き裂かれた肉が千切れ、
砕けた骨の白い欠片とピンク色の肉片が真っ赤に吹き出る血の中で存在感を主張する。
それを認識した瞬間、再び押し寄せた痛みが思考の全てを焼き尽くした。
「ひっ、な、こんっ、あ、あがっ、ぎやあああああああああああああっ」
「工藤君!!」
這いずって必死に駆け寄ろうとする灰原の無防備な右手の甲を鋭い刃が貫通。
「ギッ」
激痛。そして恐怖。
動かせない。バルキリースカートの鋭い刃は手の甲を貫いて地面に串刺している。
「やっぱり観客も居た方が面白いな。
それは鋭いからそんなに痛くないよね。もちろん、それだけじゃないよ」
「え……」
振り下ろされた金属バットが串刺して固定した手の親指を無造作に叩き潰した。
視界が、真っ赤に染まった。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
肺の中に溜まっていた空気が一気に抜けた。
「二本目はゆっくりと」
ヘンゼルの声。人差し指の爪先に金属バットの角が当たる。
体重が掛けられて、ぺきりと爪が割れて、くちゃっと小さな音がして。
そこからテコの原理で金属バットの先の面を使って指を圧し潰した。
指の骨が砕ける音。
更にぎゅるっと金属バットが芯を軸に回されて。
ぬめった音と共に指が、擦り潰された。
「――――――――っ」
今度は肺の中の空気が全部抜けていて、悲鳴すら出せなかった。
ぱくぱくと生け簀から上げられた魚の様に口を動かす。
ぼろぼろと涙が零れて表情がぐしゃぐしゃに染まりあっというまに何も考えられなくて痛くて痛くて痛くて
のたうち回り貫かれた手の甲がズタズタに引き裂かれてまた痛くていたくてイタクテイタクテイタクテ――
何故かその刃が引き抜かれ新たな痛みが無くなった瞬間、灰原は考えるのを止めた。
* * *
「――どうして」
問い掛ける。
「ねえ、どうして?」
理解できないものを。
「どうしてあなたは、そんな事をするの?」
少しでも理解するために問い掛ける。
「どうしてあなたは、そんな事ができるの?」
その心に触れる為に問い掛ける。
「――何を言っているのさ」
答えには一片の迷いも有りはしない。
「これは世界の仕組みなんだ」
それは当然の事なのだから。
「僕達は殺すことで生きる事ができるんだ。
殺す事でその分だけ生きる事が出来るんだ」
「違うよ。ジェダの言った事なんて間違ってる。
それに殺すだけなら、こんな事をする必要なんて、無い」
「ジェダ? 違うよ、僕達はそうじゃない。ジェダはルールを知っていただけさ。
殺す事はただ死を与える事なんかじゃないんだもの。
死を飾るんだ。絶望や苦痛、恐怖と激痛、そういったもので飾るんだ。
みんなを愉しませてみんなで愉しんで殺すんだ。殺して、殺して、殺すんだ。
それこそがこの世界の仕組み」
笑う。嗤う。笑う。嗤う。笑う。嗤う。嗤う。笑う。嗤う。嗤う。笑う。
無邪気に残酷に楽しく昏く嬉しく邪悪に冷酷に明るく深く壊れて正しく笑う嗤うわらうワラウ――
「お姉さん達は知らないだけ。僕達は知っているだけ。
殺した人の血でにかわのようになったドレスを身に纏って。
殺すように言われて殺した死体と寄り添って寝て。
殺すのを躊躇った日は殴られて叩かれて蹴られて顔を洗うだけでも痛くて。
殺して殺して手にその感触がこびりつき髪から血の臭いが抜けなかった日は柔らかい寝床で寝られて。
殺せなかった奴はクズ肉にされて。殺した奴は生きられて。でも殺した数が少ない奴は殺されていって。
殺す事だけが殺されない事で。殺せない事は殺される事で。
殺すのに迷うことは殺される事で。殺す事を愉しむ事は殺されない事で。
殺す事は生きる事殺される事は殺される事、生きることは殺して殺して殺す事だけしか無い事を。
お姉さん達は知らなくて、僕達は知っている。
それは世界の仕組み。神様が世界をそう作ったんだ」
命に感謝できる。人生を謳歌できる。今日がちゃんとあって明日もまだ生きている。
それらの事柄全てを手に入れた少年は幸福と共に笑っている。
「だからたくさん殺した僕達を殺す事は誰にも出来やしないんだ。
たくさんたくさん殺す僕達を殺す事は誰にも出来やしないんだ。
そう僕達はネバー・ダイ。Never dieなのさ
まだまだたくさんたくさんたくさん殺す為に生きていく」
断片的で装飾的で抽象的であまりに不完全なその言葉。
だけど彼女はそこから真実を組み上げた。
高町なのはは理解した。
目の前の少年がどうやって生まれて、どういう存在で、どうやって生きていくのかを。
過去も現在も未来も少年の狂気の全てを理解した。
狂気を、理解した。
くすりと笑ったヘンゼルが跳ね上がる。
バルキリースカートの二本のアームで跳ね上がり塀の上に立つ高町なのはに襲い掛かる。
対する高町なのはは呪文を詠唱
「リリカルマジカル 福音たる輝き、この手に来たれ」
「へえ、魔法使いなんだ。でも遅いよ」
振り下ろされる二本の金属バット。
なのはの攻撃は基本的に発動が遅く先手を取ることが難しい。
――当然高町なのははその事を知っている。だからヘンゼルに向けて左手を向けて。
「堅いね」
ヘンゼルの金属バットはなのはの前面に現れた半透明な障壁に防がれた。
ラウンドシールドだ。
攻撃を耐えて必殺の攻撃で叩きのめすのが彼女のやり口。
――もちろんヘンゼルも魔法使いの得体の知れ無さは知っている。
だから何時でも逃げれる余裕は残しているし、この攻撃は逃げる機会を作る為でもある。
なにより自在に動かせるバルキリースカート2本を残している。
一本のアームが塀に刺さり自らを支え、もう一本が障壁を迂回して横から襲う。
なのははヘンゼルの力を知らず、見た事も無い。
――それでも高町なのははヘンゼルを理解したのだから、これすらも判っていた。
殺して殺して殺して生きてきた彼はこの程度では止められない。
その上で呪文を詠唱したのは止める余裕を残したからだ。
右手の先に現れた二つ目のラウンドシールドがバルキリースカートの刃を食い止めた。
同時に左手の前に現れていた一つ目のラウンドシールドが消え去って。
「導きのもと、鳴り響け。ディバインシューター、シュート!」
至近距離からの魔弾が襲い掛かった。
――当然ヘンゼルは判っている。
魔法使いならその位してきてもおかしくない。
だから障壁が消える直前に自らを塀に固定するバルキリースカートの刃を抜いてくと同時に、
消える前の障壁を金属バットで強く押して推力を作り出していた。
空中に舞い上がったヘンゼルはディバインシューターのスフィアをかわしきる。
――高町なのはもその位なら予想は出来る。
「コントロール!」
だからそのスフィアが方向を転換してヘンゼルに襲い掛かった。
ヘンゼルはそこまでの予想は出来ていなかった。
咄嗟に金属バットで防御するのが精一杯、スフィアの直撃が少年を打ちのめす。
――だけどヘンゼルにも判っている。ただ攻撃だけでは攻めきれない。
攻撃の合間に空中に放り投げたフラッシュグレネードが起爆する。
至近距離の閃光と爆音は確実に敵の動きを奪うだろう。
高町なのはにそれに抗する術は無い。
――しかし高町なのはは信じていた。
「させるか!!」
突如飛来した手裏剣がフラッシュグレネードを弾き塀の向こうに跳ね飛ばした。
なのはもそれに応じて既に塀から飛び降りている。
これで直接フラッシュグレネードに晒される者は誰も居ない。
校舎に高町なのはが向かったという事を聞かされ、それを追いかけた犬上小太郎。
ネギの死体を置いて生きている仲間を心配して駆け付けた。それが彼の選択だ。
――ただし犬上小太郎は一つ勘違いをした。
彼はヘンゼルが投げた物が手榴弾だと思いこんだ。
しかし真実はフラッシュグレネード。
撒き散らされるものは殺人的な破片ではなく、閃光と轟音。
閃光は塀の向こうに遮断されて、しかし轟音は塀を越えて周囲を満たす。
犬上小太郎は獣人の血を引いている。
当然ながらその嗅覚や聴覚は人より格段に鋭くて、轟音を諸に受けた。
三半規管をやられ平衡感覚すら失いよろけてしまう。
――ヘンゼルはフラッシュグレネードの事を知っていた。
だからヘンゼルは閃光と轟音に備え、容易く轟音だけを耳を塞ぎ耐えきった。
地面に着地し、駆け出し逃げだそうと試みて。
「逃すかよ!」
近くに倒れていた江戸川コナンが上半身でヘンゼルに組み付いた。
――江戸川コナンもフラッシュグレネードの事を知っていた。
一度目に戦った時にヘンゼルが放り投げたそれを知っていた。
だから江戸川コナンはその轟音を耐えきって考えた。どうするか?
簡単だ、逃してはならない。
何故こうなったかの状況は理解できない。
メロは何処に行った? 自分は何故生きている? ここは何処でどうしてこうなった?
だけどヘンゼルが灰原を左手の指を二本、たった二本だけ潰したその場面は彼に衝撃を与えた。
近くに転がっている小狼の無惨な姿に気付いた時は恐怖に凍り付いた。
(こいつを逃がすわけにはいかない)
これまでに会ったどんな殺人鬼やテロリストでも、倫理は無くとも論理があった。
憎しみや汚い欲望、嫉妬に誤解、保身から自己満足まで。
中には同情の余地もない理由も有った。幾つも。
(だけどこいつは狂っている)
あの“黒の組織”の集団故の事務的な仕事とも違う。
快楽と愉悦と至福に包まれた拷問と虐殺。
絶対に止めなければならない行為。
(今なら止められる奴らが居る)
誰かは知らないが二人の、目の前の少年の敵が駆け付けた今なら。
こいつをどうにかする事が出来るはずだ。
江戸川コナンはそう考えた。
(だから止めなきゃならない)
何より許せないのだ。
正義を信じる名探偵には、彼の論理が許せないのだ。
殺せば生きられるだとか、殺さなければ死ぬだとか。
「殺人が世界の仕組みだなんて、そんなわけねーんだよ! バーロー!!」
――ヘンゼルは置かれた状況に気付いた。
即座に足にまとわりつくコナンを排除しようとし、しかしその表情が焦りに染まる。
もっとも手っ取り早いのはバルキリースカートで切り裂くことだ。
足を掴む腕を、腕を動かす脳を切り裂いて殺すことだ。
だがコナンはバルキリースカートを装着する根本、足に組み付いている。
アームの第一関節まではコナンの体に邪魔されて動きを制限されていた。
無理に切り裂こうとすれば自らの足まで切断しかねない。
(まさかこいつはそこまで考えて――この!)
ヘンゼルは金属バットをコナンに振り下ろした。
一撃、二撃。徐々にコナンの腕の力が抜けていく。
――そして、高町なのはは答えにたどりついた。
高町なのは轟音による影響をそこまで受けていなかった。
彼女の聴力は現在大幅に低下している。
普通に会話できる程度まで回復したものの、それでも今彼女の耳は、鈍い。
だから予想だにしなかった轟音を受けても、少しくらくらした程度で耐えきった。
即座に状況を把握して思考する。
犬上小太郎は轟音により予想以上の被害を受けて戦力外になっている。
組み付いている江戸川コナン以外の戦力は無い。
裏門から梨花とリンクが向かっているかも知れないが、それも恐らく間に合わない。
彼らは消耗し、小太郎はとてつもない俊足でここまで駆け付けたのだから。
ヘンゼル、江戸川コナン、そして自分だけがこの戦場の要素として残される。
――ここに江戸川コナンの誤算は有った。
それは乱入してきたはずの犬上小太郎が戦力外になった事。
そして同じ魔法使いであっても、なのははネギほど多用な魔法を使えるわけではない事だ。
そもそも、超実戦派魔砲少女である高町なのはの魔法にはかなりの偏りが見られる。
ネギは『どんな相手でも柔軟に対応する』遠近両方で戦える魔法剣士型の修行を積んでいたが、
なのはは『どんな相手でも自分の間合いに引きずり込む』遠距離に特化した砲撃魔導師だ
魔法学校でみっちり基本を積んできたネギと最初から実戦の中で叩き上げられたなのは。
それを“似たようなもの”と考えてしまった事が、江戸川コナン最大の誤算だった。
(ディバインシューターを……)
なのはは一瞬そう考える。今度こそそれでヘンゼルを仕留めようと。
しかしすぐにそれを否定。彼はその程度で仕留められる相手ではない。
誘導操作弾は高町なのはが砲撃魔法と並んで攻撃の軸とする有力な魔法ではあるが、
如何せんデバイス無しでは数が少なすぎ、この世界で相手を戦闘不能にするには威力が足りない。
(それじゃやっぱり……)
ミニ八卦炉を堅く握り締めて思う。
エヴァがヴィータを仕留めた、ヴィータを焼いた出力を絞った細い光線でも無理だ。
恐らくヘンゼルは、それを回避するだけの余裕を作り出してしまう。
高町なのははヘンゼルの脅威を理解していた。だから判った。
彼女に今できる一番正しい選択肢が何かを。
(そんな事できるわけがない)
即座に否定する。それは人として絶対にしてはいけない選択だと。
しかし判る。それがこの状況において最も正しく多くを救える選択だと。
それでも許されない事だと。
それでもやらなければならない事だと。
否定するのは感情。ある種の弱さ。人間的な資質。
肯定するのは理性。ある種の強さ。悪魔的な資質。
理性は感情と戦った。
弱さは強さと戦った。
人間は悪魔と戦った。
結論は……出た。
「『にっくきターゲットを狙い、放つは恋の魔砲』」
小さな呟きと共に、魔砲の予兆となる光の筋がヘンゼルを照らした。
――ヘンゼルは世界の仕組みを信仰していた。
ヘンゼルは最早一秒の猶予すら無い事に気づいた。
同時にこの状況を打破する手段に気が付いた。
(簡単な事じゃないか。殺せば良い)
世界は殺す事で廻っている。
誰を殺せばその分だけ生きることが出来る。
ヘンゼルはすぐさまルールに従った。
バルキリースカートの刃の部分に手を掛け、それを外す。
このまま使った所でアームによる鋭い動きは得られない。
この体勢でコナンに振り下ろしても殺し損ねるかもしれないし、腕を切り落とすなんてまず無理だ。
だからそれを振り上げ、投擲した。
「キャァッ」
……小さな悲鳴が響いた。
江戸川コナンが俯いていた首を上げて、その音の発生源に向けて傾げた。
そして灰原と、その音源の名前を呼ぼうとした瞬間。
ヘンゼルはコナンの腕から逃れ跳躍していた。
魔砲の予兆となる光の筋からも抜け出して。
――――だけど高町なのはは、それも判っていた。
判っていてこれを選んだ。
恋符「マスタースパーク」では仕留められない事を知っていてこれを選んだのだ。
ヘンゼルなら避ける事を理解していてこれを選んだ。
その為にどんな外道な手段を選ぶかも予想できていて、その上でそれを見逃した。
なのはにはそれを止める適切な手段が無かった。
灰原を守ろうとすればヘンゼルはコナンを殺して逃げきれると判っていた。
コナンを守る手段はヘンゼルを逃し最悪敗北し皆殺しにされる選択だった。
だから高町なのはは正しい答えが何かに気付いた。
その時点で思いつく限り全ての選択肢の中で最も適切な答えが何かに気付いたのだ。
そして全てが決着する。
感情は理性に挫折した。
弱さは強さに敗北した。
人間は悪魔に屈服した。
その時に思いつくありったけの選択の中で最も正しく冷酷な選択が選ばれた。
「恋心『ダブルスパーク』」
高町なのはは命を賭してヘンゼルに組み付いた江戸川コナンを、見捨てた。
――ヘンゼルはその答えを知った。
逃げる方向は右か左かと考える。
左は塀の壁によって塞がれていた。
だから右に逃げて――逃げた先もまた光に照らされていた事を知ったのだ。
真っ白い明るい光の領域。
死を約束する光の領域。
有り得ない。
「だって僕達はネバー・ダイなんだ。そう、Never」
信仰への祈りの言葉が断ち切られた。
強烈な閃光と高熱が全身に襲い掛かった。
盾と掲げたバルキリースカートのアームが一瞬で砕け散る。
皮膚が沸騰し肉が溶解し骨が焦げて砕け散る。
だけどそれをヘンゼルが知る事はない。
真っ白い光の中で、ヘンゼルの上半身は瞬時に焼き尽くされた。
それと共に、当然。江戸川コナンも上半身を焼き尽くされた。
最初に照準を定めた以上、それを変える事も片方だけ止める事も出来はしない。
ヘンゼルを殺すために二本の魔砲。
その一本はヘンゼルに振り解かれた勇敢な江戸川コナンだけを殺すため。
本当の狙いであるヘンゼルを殺すためにどうしても必要だった、犠牲の魔砲。
――二つの死体が転がった。
* * *
灰原哀はそれを見た。
バルキリースカートの刃を投げつけられ、
激痛と共に覚醒した少女の目が最初に映したのは、二人の少年が焼き尽くされる光景。
二人とも綺麗に下半身だけが残っていた。
死者の頭数を間違える事は有り得ない、腰から下が二揃え。
熱で焼き切られた断面はもちろん血を吹いたりなんてしていない。
綺麗な下半身が二揃え。その上にある続きを幻視しそうな不思議な悪夢。
「あ……あぁ…………」
こぽりと血が溢れる。
ヘンゼルの投げた刃は胸に刺さっていた。間違いのない致命傷。
もはや喉は血を湧き出す泉と化している
「ぁ、ああ、ああぁ……あ……あああ…………ぁ………………」
喉から浮かぶ譫言のような声は、その内に小さな塊を紡ぎ出した。
こぽこぽと溢れる血の泡が弾ける音に紛れて。
「………………悪魔…………」
と。
恨める道理なんて無いのかも知れない。
ヘンゼルが生きていたらどんな惨事が起きていたのか、判りきった事だ。
状況を把握すれば。理屈で考えれば。
彼女を責める理由なんてきっと無い。
だけど人間というものは、理性だけで考える事なんて出来はしないのだ。
感情が、思う。憎いと。悲しくて、許せないと。
「………………」
高町なのははその言葉を聞いても何も言わなかった。
いや、言えなかった。
悪魔でも良い。
それが彼女のした選択なのだから。
「なの……は……!」
ようやく轟音から回復した犬上小太郎が立ち上がる。
「高町なのは! 何を……何しとんのや、おまえは……!」
なのはは答えない。
ただ自らの手の内を見下ろした。
ミニ八卦炉。ヘンゼルと江戸川コナンを同時に焼き尽くした凶器。
才賀勝が危険すぎる武器として一時は封じようとした炎の源
しかし判っていた。
彼らを殺したのはミニ八卦炉ではない。
彼らを殺したのは。
「なんで……なんであのガキまで……」
「そう。殺したのはわたし」
彼らを殺したのは高町なのはだ。
武器が勝手に人を殺したわけではない。
「わたしがあの二人を、殺した」
高町なのはが、ヘンゼルと江戸川コナンの命を奪った。
ヘンゼルが同情すべき境遇にある事を理解した上で、殺した。
江戸川コナンを助けられるなら助けるべき事を判っていて、殺した。
「…………おかしいな」
茫洋とした声。
心の欠け落ちた音。
冷たくて震えのない、正しい言葉。
「わたし、どうしちゃったのかな。…………おかしいな……」
その手は震えていなくて。
その足はしっかりと地面を踏みしめていて
「人としてやっちゃいけないって思うのに。
悪魔って言われるのがあんなに怖くて、辛かったのに。
ううん……今でも、そうなのに」
涙すら流れなかった。
「どうしてわたし、こんな事が出来るんだろう」
鋼の意志。如何なる選択すらも惑わない鋼鉄の選択。
少女の心。鋼鉄の選択すらも裏切って逃げ出した弱さ。人間らしさ。
矛盾している。
相反している。
ただ間違いなく言える事が一つ有った。
「でも、まだ終わってないよ。……終わらせない」
それは、今の高町なのはを動かしているのは紛れもなく鋼の意志という事だ。
「な、何をする気や!?」
小太郎の問い掛けを無視して、なのはは灰原哀に歩み寄る。
「ちょっとだけ我慢してね」
そう言って、そっと灰原哀を動かした。
李小狼のすぐ横に。
「何……を……?」
「この男の子、まだ息があるんだ」
なのはの言うとおり、李小狼はまだ呼吸をしていた。
ゆっくりと息を吸い、吐く。あまりにか細い小さな呼吸。
「でもこのままじゃ、あなたも男の子も死んじゃう」
それは灰原哀も同じ事。
確実な死へ向かってゆっくりと転がっていく少年と少女。
違うのは少年の方がより死に近いという、ただそれだけの事だ。
「だから、あなたたち二人に聞こうと思うの。
ねえ……どちらが生き残りたい?」
「え…………」
高町なのはは、言った。
「わたしは今さっき、二人殺してしまった。……ううん、殺した。
だから、あなた達の片方だけなら助ける事ができる」
だからで文章が繋げられたその理由。
その意味に気付いた時、その場にいる誰もが絶句した。
高町なのはだけが、言葉を続けた。
「3人を殺した人は、ある程度のお願い事を一つだけ叶えて貰える。
だからわたしは、あなた達の内の片方だけなら助ける事が出来る」
それは悪魔の選択。
一人でも多くの人を助けたいという真摯な想いが選んだ、残酷すぎる選択肢。
悪魔は依然その場に在りて、人々に悪夢を突きつけた。
「わたしは、どちらを生かそうか?」
――わたしは、どちらを殺そうか?
高町なのはは、一人で森を歩いていた。
歩みは正しく、狂った道筋。
何のために、何処へ行く。
どうして、何をする。
そうできるのは、どうしてか。
断片的に迷いや惑いが浮き上がり、だけど足取りは迷い無くて、惑わない。
全てがちぐはぐ。正しく狂った互い違いの迷路の最中。
(どうして、こうなったんだっけ)
未来へ向けて足を進めて。
過去へ向けて記憶を開く。
* * *
時は遡る。
「ごめんね。……それじゃ、ばいばい」
一方的にそう言って、高町なのはは学校に居た者達に背を向けた。
何処かへと歩み去る為に。
裏門から西へ、森に向けて歩き出す。
「ま、待て! どこ行くんや!?」
小太郎の声。
なのはは少しだけ考えてから、言った。
「……まずは廃病院かな。
小太郎くんの仲間と会って、ここに来て判った事を伝えてあげないといけないから」
「それやったら俺が行くに決まってる……」
「ネギくんの死体を置いて? ネギくんについて聞かないで?」
「っ…………」
言葉が、詰まった。
「とにかく、わたしはもうここに居られないよ。
居ちゃいけないと思うし、それにきっと、一緒に居ることに耐えられないもの。
わたしはあなた達と一緒にいる事ができない」
「…………そうね。私もあなたを見ていると腹立たしさがおさまらないわ」
古手梨花は沸き上がる感情を抑えきれずにいた。
いや、抑えようとすらしていないのかもしれない。
「この世界にやり直しは効かない。起きてしまった悲劇を回避する事はできない。
それが……こんなに…………っ」
その感情は怒りか憎しみか、それとも哀しみや無力感なのか。
感情に翻弄される少女を庇うようにリンクが立つ。
「……何が起きたかの詳しい事は話してくれないの?」
なのはは少し惑い、応えた。
「ごめんなさい。多分それは、わたしが話すべき事じゃないと思うの。
今のわたしじゃきっと、伝えなきゃいけない事が伝わらないから。
小太郎君か、それか……生き残りに、聞いて」
「そう……」
リンクは背後の生き残りを……まだ茫然としている生存者を振り返った。
……少しすれば話もできるだろうか。
とにかく、なのはは答える事を拒絶した。
自分の口から伝わらない事が誤解を招くかもしれない事を知っていて。
――それとも、誤解されるために?
少女の心は彼女自身にすら伏されたままだ。
「犬上小太郎くん。古手梨花ちゃん。リンクくん。江戸川コナンくん。李小狼くん。灰原哀ちゃん。それからあの少年。
覚えたよ、知っている限り。
わたしはここで会った人達の事は忘れない。
……殺した人達の事は、一生忘れないし、忘れられない。
だから、生きていて縁があったらまた会えるよ、きっと。
ごめんね。それじゃ……ばいばい」
なのはは『翔』のカードを使い、一息に森まで飛んだ。
ずっと飛んでいくつもりはなくて、ただ付いてこさせない為に。
再び、全ての絆を拒絶して。
* * *
歩く足取りは一切の疲れを感じさせない。
少女は一足一足に鉛のような重さを感じているというのに。
体は軽やかささえ見せる動きで、土を踏みしめ、木の根をまたぎ、森の中を進み行く。
生かすために殺した事。
一人でも多くを救うために何人もを殺して、殺した数より少ない数しか救えなかった事。
突き刺さる致命的な矛盾はずきずきと痛みを送り続ける。
どれだけ振り切ろうとしてもこの事実はなのはの心を傷つけ続けるだろう。
それなのにその痛みこそが体が軽くしていく事に気づいた。
心が引き裂かれる度に思考が冴えていくのを感じていた。
それが強さなのか弱さなのかも判らないまま、高町なのはは歩き続ける。
そして、廃病院の前で彼女達に出会った。
* * *
高町なのはは選択の時へと遡る。
「どちらかを……殺す……?」
「……そう。それが今のわたしにできる、一人でも多くを助ける方法」
提示したのは最低の選択肢。
それでも選択肢が無い最低よりはマシだと理性が命じた。
「……何を言ってるんだ、キミは……」
「そんな結果で満足しろというの……!?」
挟まれた言葉に横を見ると、そこには先に校門に向かった二人の姿。
その怒りや戸惑いは当然のものだとなのはは思う。
「……でも、この状況で他に何ができるのかな?」
「この……状況…………」
周囲を把握した二人は言葉に詰まった。
灰原哀の胸は真っ赤に染まり、濁々と血を流している。応急処置程度では助かるまい。
李小狼はずたずたに切り刻まれ、叩き潰されていた。まだ生きている、だけどもうすぐ死ぬ。
そして周囲に転がる二組の…………足。
「ま……さか…………」
灰原哀が、端的に事実を報せた。
「工藤君は…………江戸川コナンは、死んだわ」
自らも死の淵に立ちながら。
「そんな、どうして! 間に合わなかったの!?」
動揺した梨花は叫び、即座にそれが違う事に気付いた。
一瞬、校舎に取り残されたコナンを助け出すのが間に合わなかったのかと思った。
だが状況を整理すれば明らか、いや、一切の推理をしなくともこんな死は異常すぎる。
この状況は無惨すぎる。
そもそももう一組の足は誰のものだ? もう一人の死人は誰なのだ?
「後で、話すわ……きっと……」
少なくとも今は、その話をする猶予すら無い。
それは灰原も認める所だった。
「……確認するよ。この二人の傷を癒す方法は、誰も持っていない。そうなんでしょう?」
なのはの言葉に皆が言葉を詰まらせた。
誰かを癒せる物なんて一つも無くて、そんな魔法も知らなくて、奇跡を起こせる筋書きも紡げていない。
小狼の傷はもちろん、灰原に付けられた傷さえも死に繋がる深い傷。
なのはは最初は傷を焼く事も考えたけれど、それですら助からないと気付いてしまった。
たとえ出血を止められても、今度はその火傷が間違いなく命を奪う。
「くそ…………シャナが居れば、こういう傷やって……」
轟音のショックから回復した小太郎が呻く。
「でもその子は森の北に捜索に行っているんでしょう? ……とても、間に合わないよ」
あっさりと明確に否定され、場に生まれたのは沈黙だ。
十秒。
……二十秒。
…………三十秒。
「無いんだね、他の方法は」
沈黙がそれを肯定した。
「じゃあ……灰原哀ちゃん、だよね。聞かせて。あなたはどちらを選ぶ?」
灰原哀は高町なのはを見つめた。
そして聞いた。
「あなたは私達に、人の命で生きろっていうのね」
「……うん、そうだよ」
灰原哀の問い掛けと、高町なのはの回答。
「…………この殺し合いの縮図を作り出せというのね」
「そう。…………わたしのしようとしてる事は、きっとそういう事」
灰原哀の言うとおりだった。
誰かの命を犠牲にして生き残る。
それはこのバトル・ロワイアルの最も奥底にある本質だ。
生きる為に他の者達を殺せ。
助かる為に仲間の死を許せ。
その違いは自ら手を汚すかどうか程度の差しか無い。
「……あなたはやっぱり、悪魔だわ」
「………………」
だけどどうすればいいのだろう。
高町なのはには悪魔になる以外に彼女達の片方でも救う方法が見当たらないのに。
考えて考えて、考え抜いてもやはり答えは変わらない。
このまま悪魔でいる事だけが、今のなのはに出来ること。
「なら……おれを、殺せ…………」
「李君!?」「小狼!?」
その場にいる全ての者が驚愕する。
“まだ生きている”状態の小狼がまだ喋れた事に。
そしてその内容に。
「なにを……言っているの……?」
「こうなったのは……おれの力不足だ。
せめて時間を稼げていれば、おまえらは逃げられた……」
「……そんなわけないじゃない。あなたは身を張ってあの少年に立ち向かったのよ」
「そうだ……死ぬ覚悟は、さっき……済ました……」
小狼は武器も無しに身を張って足止めを試みた。
それは例え灰原とコナンが逃げきれても己の生還は望めない選択だった。
その時に既に、死は覚悟したのだ。
「だから……おれが逝く。
コナンが死んで、それでおまえも死なせたら……そんなの、あまりに報われないから……」
「…………やっぱり、ダメよ」
それでも灰原哀はきっぱりと止めた。
そして小狼を見つめると、か細い声で……けれどはっきりと呟いた。
「……さくら」
「それは……どうして、知ってるんだ……?」
隠していたわけではない。
ただ灰原と会ってからはとても互いの事を話す余裕は無かったはずだ。
動揺する小狼の様子を見て灰原はくすりと笑った。
「やっぱり居るのね、仲間が。
あの保健室の戦いで倒れた後、微かに……ぼんやりと聞こえたのよ。
『さくらはどこに……?』ってね」
それを聞いていたリンクがハッとなる。
確かに保健室で小狼はその名を呼んで、誰か大切な人が居る事を匂わせていた。
半ば意識を失っていた灰原にとっては聞こえた事すら気のせいに思えた朧気な記憶だ。
しかし今になって思い出せた。
その言葉と、そして名簿に載っていた木之本桜という日本人風の名前に。
死を覚悟したはずの小狼の顔に浮かぶ表情を見て唐突に思いだし、繋がったのだ。
「男の子がそんなに未練たっぷりで死ぬなんて良くないわ」
「おまえは……無いって言うのか?」
小狼の言葉にも灰原はうっすらと浮かべた笑みを崩さない。
「哀……」
その様子を見て梨花は思う。
結局灰原の心を救うことは出来なかったのだろうか。
そしてそれ故に苦しむ事なく、苦しむ事すらしないで死を選ぼうとしているのだろうか。
……それは間違いだった。
灰原に未練は無かった……この島に来た頃ならば。
「そんなの有るに決まってるじゃない」
今は、有る。
皮肉にも多くの者が殺されて死んでいくこの島で、
幸運にも最初に出会った少女のおかげで、灰原哀は生きる意味を取り戻した。
諦めずに生きて、罪を滅ぼそうと心に決めた。
「ありがとう、梨花……これはあなたのおかげよ」
「哀……!」
梨花の悲鳴が胸に痛い。
灰原哀は古手梨花によって救われたのだから。
それなのに。
「私は罪深いわ。でもだからって死を選んで良いわけがない。
罪を滅ぼす為に生きなきゃならない。
梨花にそう教えられた……そう心に決めたわ。だけど――」
その矢先にこんな形で死を選ぶ事になるなんて思いもしなかった。
「――それでも、あなたを死なせちゃいけない。李君は……生きなきゃいけないわ……」
結局灰原は挫折した。
こんな形の死が罪滅ぼしになどなるものか。
小狼を生かすためとはいえ、殺し合いのルールを許容した死なんて更なる罪に他ならない。
それでも判ったのだ。彼を生かさなければならないと。
「これは、ただの妥協よ……コナン君が敗北して、私は妥協する……。
あなたがあなたの大切な人を救える事を願って。
……あなたや梨花達が、コナン君や私の敗北したものに勝利する事を願ってね」
「勝利……?」
「ふふ……『殺人が世界の仕組みだなんて、そんなわけねーんだよ! バーロー!!』……だそうよ」
それが江戸川コナンの最後の言葉。
だがヘンゼルを殺す為に江戸川コナンは殺された。
そしてこれから、李小狼を生かすために灰原哀が殺されようとしている。
「それじゃ……こんなの、間違ってる……!」
小狼の否定の言葉を聞いて、灰原は一筋の涙を零して。
言った。
「良い皮肉ね。……嬉しいわ、李君」
高町なのはは灰原哀に向けてミニ八卦炉を掲げた。
痛みも苦痛も与えないように、無駄な魔力を使わないようにしっかりと狙いを定める。
その行為を止める事は誰にも出来なかった。
止めない。いや、止められない。止められる理由が見つからない。
「もう、時間がないよ。もしまだ何かあるなら、言ってね」
小狼は致命傷を負っている。
それでもまだ死んでいないのは、すぐには死なずゆっくりと事切れるようにヘンゼルが調節したからだ。
だがその猶予も最早無い。急いで『治療』しなければ間に合わなくなるだろう。
校舎の火事も問題だった。
校舎の裏手横側というのは殆ど窓が無くて煙も熱もあまり回っては来ないが、部分的でも崩れてくれば話は別だ。
巻き込まれれば命が危うい。
「それじゃ……なのはと言ったわね。最後に、あなたに一つだけ」
「わたしに? …………何?」
なのははギュッと拳を握り締めて、言葉を待った。
罵倒されるのか。憎悪の言葉を投げかけられるのか。
――与えられた言葉はそれ以上に辛辣な言葉だった。
「あなた、イギリスの推理小説家……ギルバート・ケイス・チェスタートンを知っているかしら?」
なのはは怪訝に首を振った。
灰原はくすりと微かに笑ってみせる。
「ギルバート曰く。
『狂人とは理性を失った人のことではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である』、よ」
「………………」
それを最後に灰原哀は静かに目を閉じて、その時を待った。
高町なのはは灰原哀の命を摘み取った。
レーザーが小さな焦げ跡を灰原哀の額に穿つ。
それで、灰原哀の殺害者は高町なのはになった。
「ご褒美をちょうだい。李くんを、治して」
ご褒美は叶えられ、李小狼は一命を取り留めた。
* * *
「あなた達は……誰?」
場所は廃病院の前。
時間は16時の少し前といった所だろう。
時間と場所から考えれば小太郎の言っていたシャナ達なのかもしれない。
だけど違う。合わないと。
簡単に聞いていた風貌とも、人数も合わない。シャナ達とは。
果たして目の前の少女は答えた。
「アタシはブルー。それからこの子はイヴって言うのよ」
合うのは別の話。とても悪い二人の情報。
ブルーの外見は聞いた年齢とは合わないが、年齢を変えられるという前情報に一致する。
ブルーはたまたま出会った相手を出来るなら丸め込もうと考えて話しだし。
「それであなたは誰かしら? アタシ達は名乗ったんだもの、あなたのお名前も聞かせて欲しいわ」
「ブルーに、イヴ。そっか……小太郎君が言ってた、わるい人達だ」
「……え?」
予想だにしない言葉に動揺した。
(この子、今イヴを含めてわるい人達って言ったわ。どういう事?
アタシだけならあの一休という坊主から広がったにしても、どうしてイヴの事を知っているの?)
イヴに出会って生きている人間は少ない。
ビュティも、双葉も、光子郎も、フェイトも死んだ。少なくともブルーの認識では。
サイコメトラーである紫穂の存在など予想できるはずもない。
(でも誰かから聞いただけなら言いくるめる事だって……)
「わたしは、高町なのは」
その名前を聞いた瞬間、何も言わずにブルーの側に居たイヴが反応する。
いつでも戦えるよう身構えたのだ。
イヴはその名前を知っている。
ブルーと光子郎が別室に居る間にフェイトと話した短くも安らいだ時間。
その中で聞いたフェイトの大切な親友の名前だ。
だけどフェイトはもう居ない。イヴが殺してしまった。
彼女の優しさに耐えられなくて、イヴは彼女を殺してしまった。
全ての優しさを否定して、イヴは心を凍らせてしまった。
凍った心からは何も浮かびあがらない。罪の意識も、悲しみも。
「ねえ。その服は、フェイトちゃんから剥ぎ取ったの?」
「………………」
(言いくるめるのは無理みたいね)
ブルーは覚悟を決める。
ブルーの今の服装はフェイトの死体から剥ぎ取った普段着だ。
そんな状態で既に事前情報を聞いているフェイトの友人に遭遇するなんて運が悪いにも程がある。
「答えてくれないの?」
だからその問いへの返答は、命令。
「やりなさい、イヴ!」
イヴは一声も発さずその指示に従った。
29 :
代理投下:2007/08/26(日) 10:02:32 ID:qtBHixUb
239 :運命のルーレット廻して(後編)(6/7) ◆CFbj666Xrw:2007/08/26(日) 09:51:54 ID:e8j35HYY0
素早い踏み込みから髪を変化させた刃で斬りつける。
ナノスライサー。特殊合金のアーマーすらも容易に切り裂く限りなく鋭利な刃。
なのはもまた瞬時に展開した魔力の力場でそれを防ぐ。
ラウンドシールド。特に物理的な攻撃に高い防御力を発揮する、一方向への強固な障壁。
物質を容易く切り裂く刃も力場には相性が悪く弾かれる。
なのははそのままミニ八卦炉をイヴへと向けた。イヴと背後のブルーに向けた。
声は無し。言葉も呪文も無し。
イヴは咄嗟に飛び跳ね退き、放たれた細いレーザーから身をかわす。
危険を感じたブルーも辛うじてかわしたそれは、髪の一部に焦げ跡を、木々を貫通して小さな穴を穿って消えた。
(まず……この攻撃、貫通力が高いじゃない)
ブルーは一目でその攻撃の性質を分析した。
その細さから急所に当たらない限り殺傷力は高くない。
攻撃範囲も狭くて、事前に気付きさえすれば避けられないわけではない。
ただしレーザー故に発射から着弾までは一瞬、一つ行動が遅れれば直撃する。
何より貫通力が高いのが最大の特徴か。
並の防御では貫通される。イヴに防がせる事は出来ないだろう。
今のようにイヴとブルーを射線上に並べれば、一度に二人を攻撃できる。
つまり前衛にイヴが居ようと関係無しに後衛のブルーを攻撃できるのだ。
今なのはがミニ八卦炉から撃っている、本来はイリュージョンレーザーの名で呼ばれるレーザーはそういうものだ。
(この、アタシがやられちゃ話にならないのよ!)
ブルーは前衛の戦いから目を離せない。
時折飛んでくるレーザーを必死に避けながら戦況を観察する。
イヴは続けざまに髪を変形させて攻撃を繰り返していた。
その攻撃はなのはのラウンドシールドを貫く事は出来ないが、巧みに回り込ませて攻撃していく。
イヴは速い。その上にその攻撃は多角的だ。
一方のなのはは近距離戦はむしろ苦手とし、ミニ八卦炉によりある程度の速射を可能としながらもやはり遅い。
徐々に攻撃はラウンドシールドの裏側へと回り込んでいく。
あのまま行けば勝てるかもしれないが……
「『にっくきターゲットを狙い、放つは恋の魔砲!』」
足に魔力の羽を生やし後方に飛翔、距離を取ったなのはが高らかに叫ぶ。
射線上には少しずれてイヴとブルー。逆に言えばそれは、少しのズレを巻き込む“広い”攻撃が出来るという事。
イヴはギリギリで回避して反撃しようと目論んで、同じく翼を生やして攻撃の瞬間を見極める。
恐らくはイヴならそれが可能なのだろう。
だがイヴは――ブルーは単なる経験不足だと思っているが――背後のブルーの事を全く頓着していない。
(冗談じゃないわ、そんなやばそうなの撃たれたらアタシがたまったもんじゃないのよ!)
「戻りなさいイヴ!」
指示と同時にブルーは用意しておいたカードを手の内に潜ませた。
「なのはちゃんって言ったわね、フェイトちゃんの居場所を知りたくない!?」
砲撃体勢のままなのはがピタリと止まる。
ダブルスパークの時とは違い、砲撃全体なら少しは発射を送らせる事も十分可能だ。
その間にイヴがブルーの元へと舞い戻る。
(ホホ、さすがにこれは効くわね。これならカードを使う隙は十分有るわ。
問題は行き先がロクに無い事だけど……イヴが一緒なら問題ないわ。
あそこに飛んで、今度こそイヴに殺させればいい)
ブルーはほくそ笑みながら、言った。
「フェイトちゃんならここから西の工場に居るわ」
「――――っ!!」
息を呑むなのは。
(今よ!)
その瞬間にブルーは手の内のカードを掲げて宣言した。
「同行使用(アカンパニーオン)! 一休!!」
「あ、恋符マスター……」
遅い。
ブルーとイヴは一筋の流星となって何処かへと消えた。
「…………逃げられちゃった」
発射直前まで高まっていた荒れ狂う魔力を抑え込む。
ゆっくりと息を整えながら、動悸や不安と共に鎮めていく。
静かに、確実に。
239 :運命のルーレット廻して(後編)(6/7) ◆CFbj666Xrw:2007/08/26(日) 09:51:54 ID:e8j35HYY0
素早い踏み込みから髪を変化させた刃で斬りつける。
ナノスライサー。特殊合金のアーマーすらも容易に切り裂く限りなく鋭利な刃。
なのはもまた瞬時に展開した魔力の力場でそれを防ぐ。
ラウンドシールド。特に物理的な攻撃に高い防御力を発揮する、一方向への強固な障壁。
物質を容易く切り裂く刃も力場には相性が悪く弾かれる。
なのははそのままミニ八卦炉をイヴへと向けた。イヴと背後のブルーに向けた。
声は無し。言葉も呪文も無し。
イヴは咄嗟に飛び跳ね退き、放たれた細いレーザーから身をかわす。
危険を感じたブルーも辛うじてかわしたそれは、髪の一部に焦げ跡を、木々を貫通して小さな穴を穿って消えた。
(まず……この攻撃、貫通力が高いじゃない)
ブルーは一目でその攻撃の性質を分析した。
その細さから急所に当たらない限り殺傷力は高くない。
攻撃範囲も狭くて、事前に気付きさえすれば避けられないわけではない。
ただしレーザー故に発射から着弾までは一瞬、一つ行動が遅れれば直撃する。
何より貫通力が高いのが最大の特徴か。
並の防御では貫通される。イヴに防がせる事は出来ないだろう。
今のようにイヴとブルーを射線上に並べれば、一度に二人を攻撃できる。
つまり前衛にイヴが居ようと関係無しに後衛のブルーを攻撃できるのだ。
今なのはがミニ八卦炉から撃っている、本来はイリュージョンレーザーの名で呼ばれるレーザーはそういうものだ。
(この、アタシがやられちゃ話にならないのよ!)
ブルーは前衛の戦いから目を離せない。
時折飛んでくるレーザーを必死に避けながら戦況を観察する。
イヴは続けざまに髪を変形させて攻撃を繰り返していた。
その攻撃はなのはのラウンドシールドを貫く事は出来ないが、巧みに回り込ませて攻撃していく。
イヴは速い。その上にその攻撃は多角的だ。
一方のなのはは近距離戦はむしろ苦手とし、ミニ八卦炉によりある程度の速射を可能としながらもやはり遅い。
徐々に攻撃はラウンドシールドの裏側へと回り込んでいく。
あのまま行けば勝てるかもしれないが……
「『にっくきターゲットを狙い、放つは恋の魔砲!』」
足に魔力の羽を生やし後方に飛翔、距離を取ったなのはが高らかに叫ぶ。
射線上には少しずれてイヴとブルー。逆に言えばそれは、少しのズレを巻き込む“広い”攻撃が出来るという事。
イヴはギリギリで回避して反撃しようと目論んで、同じく翼を生やして攻撃の瞬間を見極める。
恐らくはイヴならそれが可能なのだろう。
だがイヴは――ブルーは単なる経験不足だと思っているが――背後のブルーの事を全く頓着していない。
(冗談じゃないわ、そんなやばそうなの撃たれたらアタシがたまったもんじゃないのよ!)
「戻りなさいイヴ!」
指示と同時にブルーは用意しておいたカードを手の内に潜ませた。
「なのはちゃんって言ったわね、フェイトちゃんの居場所を知りたくない!?」
砲撃体勢のままなのはがピタリと止まる。
ダブルスパークの時とは違い、砲撃全体なら少しは発射を送らせる事も十分可能だ。
その間にイヴがブルーの元へと舞い戻る。
(ホホ、さすがにこれは効くわね。これならカードを使う隙は十分有るわ。
問題は行き先がロクに無い事だけど……イヴが一緒なら問題ないわ。
あそこに飛んで、今度こそイヴに殺させればいい)
ブルーはほくそ笑みながら、言った。
「フェイトちゃんならここから西の工場に居るわ」
「――――っ!!」
息を呑むなのは。
(今よ!)
その瞬間にブルーは手の内のカードを掲げて宣言した。
「同行使用(アカンパニーオン)! 一休!!」
「あ、恋符マスター……」
遅い。
ブルーとイヴは一筋の流星となって何処かへと消えた。
「…………逃げられちゃった」
発射直前まで高まっていた荒れ狂う魔力を抑え込む。
ゆっくりと息を整えながら、動悸や不安と共に鎮めていく。
静かに、確実に。
31 :
代理投下:2007/08/26(日) 10:04:12 ID:qtBHixUb
放出直前の輝きを灯していたミニ八卦炉が、再び元のひんやりとした冷たさを取り戻す。
それをしっかりと掴んでいた掌には無数の小さな火傷が有るだけだ。
一度大出力で使用し、出力を抑えて使うやり方も学んだ上での使用は、最早その程度の傷しか残さない。
強靱な意志さえあれば問題なく使える程度の小さな火傷。
強靱な意志がなければ熱さに負けて手放してしまう程度の小さな火傷だ。
「西の工場……そう言ってたよね……」
その強さすらも、今回は弱さに敗北した。
理性はその前に病院に書き置きを残すべきだと思うのに、感情はそれさえも拒否して足を進める。
いつの間にかブルーとイヴに躊躇無く殺傷力の高い攻撃を向けてた悪魔的なまでに冷徹な思考は、
あまりにも人間的で正常な思考へと押し流される。
ただ友の所へ。ただただ親友の元へ。
歩き、走り、疾走した。
これまでは確かだった足取りすら木の根に取られ地に転んだ。
それを気にもせず立ち上がり、ひたすらに走り続ける。
その先にある光景を予想は出来ていた。
危険人物であるブルーとイヴがフェイトの服を着て歩いていたのだ。
何がどうなったかは予想できてしかるべきだ。
それでも僅かな幻想を抱いて走る。
フェイトは強くて賢くて。違う、そんな理由ではなくてただ。
――親友だから。
無事で居て欲しいと願っていたから。
だからそれがどんなにありえない幻想でもそれに縋って走り続ける。
フェイトがそこに居ると、どんな怪我を負っていてもせめて生きていると信じて。
そして辿り着いた光景は、あまりに当然の結末だった。
「フェイト……ちゃん…………」
血の臭いが立ちこめていた。
血の海が広がっていた。
少女はそこに浸かっていた。
「………………」
握り締めた手が、痛む。
見開かれた瞳は視線を移せない。
震える足はそれでもゆっくりと歩み寄って、屈み込んだ。
血の海はまだ、生温かった。
「…………フェイトちゃん…………」
血の海から少女の裸体を抱き上げる。
血と同じようにその体はまだ温かく、柔らかかった。
目の前に見える死に顔は恐怖でもなく、憎悪でもない。
理解できないという驚愕と、それから僅かな悲しみ。
それが彼女が最後に見せた表情だった。
「…………う…………」
失われた。
奪われ、喪われた。
砕かれた。
傷つけられ、壊された。
殺された。
亡くされ、終わらされた。
「……う……く……うぅ…………う………………」
彼女との全てを回想した。
過去も、未来も、夢も、思い出も、絆も、情熱も。
その全てに炎が灯り、触れようとする度に心が焼かれる。
悲しみが全て覆ってしまう。
「フェイト……ちゃん…………」
逃げる事は出来なくて。
耐えきる事も、出来なかった。
――だから。
「う……あ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
ただただ親友の亡骸を強く、強く抱き締めながら。
少女は全ての涙を流し尽くした。
32 :
代理投下:2007/08/26(日) 10:05:43 ID:qtBHixUb
241 :運命のルーレット廻して(死亡表記) ◆CFbj666Xrw:2007/08/26(日) 09:56:48 ID:e8j35HYY0
【江戸川コナン@名探偵コナン 死亡】
【ヘンゼル@BLACK LAGOON 死亡】
バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金が転がっています。
ただし午後の時点ではアームの3本あるいは全てが破損しています。
その他のヘンゼルの装備は全て焼失しました。
死亡表記を忘れていました。
上の物は本来中編終了時に付ける予定でしたが、付け忘れました。
後編終了時にも入りますが、行数限界ぴったりになっていますので1レスには入りきらないと思われます。
以下、後編終了時。
【灰原哀@名探偵コナン 死亡】
33 :
代理投下:2007/08/26(日) 10:06:32 ID:qtBHixUb
242 :運命のルーレット廻して(状態表) ◆CFbj666Xrw:2007/08/26(日) 09:58:48 ID:e8j35HYY0
【A-3/工場入り口/1日目/午後】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:魔力消費大、軽度の耳鳴り・聴覚への衝撃による頭痛、複雑な精神状態
[装備]:ミニ八卦炉@東方Project
[道具]:クロウカード×1(翔)@カードキャプターさくら(ポケット)
[思考]:今は……このまま…………。
第一行動方針:??????
第二行動方針:落ち着いたら自分の友人やニケ・エヴァの仲間を探す?
第三行動方針:仲間や情報を集める。
基本行動方針:仲間と共にゲームから脱出。できれば主催者打倒。
相容れない相手も出来るだけ殺さないで無力化する。その為には手段を選ばない?
【D-4/学校裏門/1日目/午後】
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
[状態]:気が僅か、疲労(中)
[装備]:手裏剣セット×11枚@忍たま乱太郎
[道具]支給品一式(水少量、パン一個消費)、工具セット、包帯、未確認支給品0〜1
[思考]:俺は……どうすればええんや……
第一行動方針:ネギの墓を作る? あるいは高町なのはを追う? あるいは山岳地でエヴァを捜す?
あるいは16時までに廃病院に帰還しその後18時までにB-7のタワーを目指す?
第二行動方針:シャナのコキュートスと梨々を探す
第三行動方針:グレーテルの存在が気になる。そういえばなのはが仕留めたガキがよく似ていた?
[備考]:エヴァが仲間と共に山岳地帯のB−5辺りにある山小屋に居て、コキュートスもそこに有り、
直に学校へと移動する予定という事を知りました。
紫穂に疑いを抱いていますが確信はしていません。
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿に裂傷。歩行に少し影響。 右掌に裂傷
『ネコンの煙』の後遺症と『ワブアブの毒』のダブルパンチで、まだ少々筋力低下
[服装]:中世ファンタジーな布の服など
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル
[道具]:ランドセルと共通支給品×2(自分と小狼のもの)、あるるかん@からくりサーカス
きせかえカメラ@ドラえもん(充電完了まであと数分)
[思考]:一体何があったんだ……
第一行動方針:犬上小太郎か小狼に何が起きたか問い質したい。その後、皆で安全な場所まで逃げる?
第二行動方針:休息を取り、全員の傷の手当てをする。
第三行動方針:最初に死んだ子(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:ゲームを壊す
参戦時期:エンディング後
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、放火魔、かつ分身能力を持つモンスターか何かだと確信しました。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:色々と疲労困憊。全身に無数の打ち身と擦り傷(骨折などは無い)。
[服装]:体操服。体操着に赤ブルマ着用。
[装備]:なし
[道具]:ランドセルと共通支給品×2(自分と灰原のもの)、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、(古手梨花の)平常時の服
[思考]:一体何が有ったの……。
第一行動方針:犬上小太郎か灰原哀に何が起きたか問い質したい。その後、皆で安全な場所まで逃げる?
第二行動方針:休息を取り、全員の傷の手当てをする
第三行動方針:同行者を増やす。
基本行動方針:生き延びて元の世界に帰る。ゲームには乗らない。
参戦時期:祭囃し編後、賽殺し編前
[備考]:一休さんの事は、放火魔で変態で性犯罪者だと認識しました。
また『触手の化け物』ではないかと疑っています(ただし、さすがに半信半疑)。
34 :
代理投下:2007/08/26(日) 10:07:39 ID:qtBHixUb
243 :運命のルーレット廻して(状態表) ◆CFbj666Xrw:2007/08/26(日) 09:59:27 ID:e8j35HYY0
【李小狼@カードキャプターさくら】
[状態]:健康体。精神状態は不明。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:………………。
第一行動方針:皆で安全な場所まで逃げる?
第二行動方針:休息を取り、全員の傷の手当てをしたい。
第三行動方針:桜を探し、守る
第四行動方針:仲間を集める
基本行動方針:桜とともに島を脱出する。
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、放火魔、かつ他人を操る能力を持った魔法使いの類だと確信しました。
木之本桜が学校に居たかもしれない、と思っています(自分でも半信半疑)。
[備考]:
校舎からは逃げ延びました。校舎の延焼度合いは不明です。
体育館やプールの更衣室など、校舎から独立した建物は延焼を免れるかもしれません。
【X-?/一休の居る場所にワープ/1日目/午後】
【ブルー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:健康(傷は全て「ご褒美」で完治)、14歳モード、イヴを完全に支配したと思い込み慢心気味
[服装]:フェイトの普段着(微妙にサイズ合ってなくてヘソが見えてる&胸がキツキツ)
[装備]:風の剣(マフラー状態)@魔法陣グルグル
[道具]:支給品一式(食料少し減)、支給品一式×2[フェイト][光子郎]、
チョークぎっしりの薬箱、年齢詐称薬(赤×3、青×3)、G・Iカード(『聖水』)@H×H、
Lのお面@DEATH NOTE、ジャスタウェイ@銀魂、マジックバタフライ@MOTHER2
[思考]:ホホホ、ごきげんようさようならよ
第一行動方針:一休の所に飛んだ後は、イヴを使って一休を殺害するかそこから逃げるかする。
第二行動方針:イヴを支配し、利用して生き残る。
第三行動方針:生き残るためには手段を選ばない。
第四行動方針:フェイトの知り合いと遭遇してしまう前に、どこかで適当な服を手に入れておく。
第五行動方針:レッドやグリーン、イエローのことが(第三行動方針に矛盾しない程度に)心配
基本行動方針:バトルロワイアルからの脱出、元の世界への帰還(手段は問わない)
[備考]:
イヴのナノマシンの能力をあらかた理解しました。
ブルーは、双葉を始末したであろうと思っています。
フェイトの知人(なのは達)と、リリカルなのは世界の魔法についての知識を得ました。
光子郎たちの工場についての考察を一通り聞いています。ただし、あまり重要性を感じていません。
イヴの心変わりに気付いていません。
イヴは自分に心酔し、命を投げ出してでも守ってくれるものとばかり思っています。
【イヴ@BLACK CAT】
[状態]:左腹部に銃創(処置済み・回復中)、全身に中程度の打撲(回復中)、疲労感大、思考停止状態
[服装]:ナース服
[装備]:スタンガン@ひぐらしのなく頃に、バトルピック@テイルズオブシンフォニア、
[道具]:支給品一式(食料少し減)、支給品一式[ビュティ]、アタッシュ・ウェポン・ケース@BLACK CAT、
G・Iカード(『左遷』)@H×H、神楽の傘(弾0)@銀魂、血塗れの自分の服
[思考]:もう「鬼」でいい……心の無い殺人機械でいい……今この島でだけは……!
第一行動方針:「命令をくれる主人役」として、ブルーを利用。当面彼女に奉仕し、守る。
第二行動方針:「主人役」にはできるだけ他参加者の抹殺を進言し、なるべく早く全ての戦いを終わらせる。
第三行動方針:ブルーより良い「主人役」候補が見つかれば、状況次第で「乗り換え」も考える。
基本行動方針:マーダーチームの戦闘要員として行動し、最後の最後に「主人役」に牙を剥いて優勝する。
そして全てを忘れて、元の世界に戻る。
[備考]:
ブルーが「4歳児の姿」になるのは、ブルー本人が持つ特殊能力だと信じています。
転載お疲れ様。
これは凄い。悪魔がいる。
投下乙様です
これは酷い(褒め言葉)
マーダーヘンゼルの襲撃で予測できたけど、この結末は予想できなかった。
ヘンゼル襲撃から、コナンを見捨てるまで、それに御褒美で回復するために行った命の取捨選択って
・・・・親友が悩んでる事あっさりやるとは。
……やっぱり、向かう方向的にはそうなるよなぁ。ちとなのはのツメが甘い気がしましたけど。
しっかし、これでなのはがマーダーランキングトップタイに一気に浮上か。
スタンスは今は対主催?ですけど、今のなのはの精神上どうなるか……
これは、GJ・・・?
とにかくなのはがとことん追い込まれてるな、精神的に。
こう読んでて精神的にくるものがあって、読んでて恐怖を感じてるんだけど
・・・うん。やっぱりCFbj666Xrw氏GJ!蝶GJ!怖かったw
投下&転載乙です。
いや凄い展開……。
予約の時点で1人2人死ぬだろうなと思いましたが、ここまで死屍累々とは……。
なのは、ここまでやっちゃった上でフェイトの死体と遭遇ですか……これは辛い。
そしてブルー&イヴが一休の所に飛ぶとは思わなかった。こっちもカオスな展開になりそうな……。
あ、それから、予約&トリップ変更します。まずは旧トリップを……
すげええええええ
まさに冥王なのはさん。
対主催(?)なのにトップとは
そして学校での鬱展開。読んでて胸がキリキリ痛みました
旧◆3k3x1UI5IA の新トリはこちらで。
そして予約の方ですが、
蒼星石、タバサ、白レン、イシドロ、グリーン、リリス、のび太
以上7名予約します。
やばい・・・・メモ帳でイデが発動してしまったぁぁぁぁぁぁぁ
今日が予約期限ですが、本日中の投下は少々怪しいかもしれません。
>>40 おおぅ、真昼で残ってる白レン組予約ですか、しかもリリス組まで。期待wktk。
そしてのび太が非常に危険そうな件。
投下GJ。命の選択に震えた……。
あと、一休さんやべええええええええ
>>41 イ、イデ発動とは……!
予約は4日間延長可能みたいなので、頑張ってください。期待してます。
灰原、小狼、なのは、コナン。それぞれの決意が皆痛々しくもひたむきで、読んでいて泣かされました。
物凄く鬱グロ展開だけれど、残された学校組はどうなるんだろう。なのはを憎んでもおかしくなさそうだけど…。
梨花やリンクがこの後どう動くか、マーダーコンビと一休さんの再会、と今後の展開にも期待できる終わり方でGJでした。
◆CFbj666Xrw氏の鬱展開はもう芸術ものだな
今回もええものを読ませてもらった
乙!
少し心を落ち着けようか…
なのはさんまだ壊れてないだけに怖いよ
壊れてしまったら射程内の全てを焼き払う魔人に変貌しそうだ
そして一休とのび太に激しく危険な香りが
それでも一休なら…一休なら何とかしてくれる
うめぇぇぇぇぇ!相変わらずフラグの捌き方がうめぇ!
ヘンゼルはマーダーのセオリー通り集団にフルボッコ、だがそれがいい。
コナンは報われないが名言吐きつつ意地を見せたし、灰原の心境の変化もうまい。
なのはの選択も胸に来たなぁ。ご褒美システムうめぇ。
みんな精神的に欝になってきて次どう動くのか楽しみ。
しかしなのははミニ八卦炉と翔が板に付いてきたな。
組み合わせ的に強いし面白い。
これ両方ともなのはの支給品じゃなかったのがまた面白い。
特にミニ八卦炉は似合いすぎるw
本来の持ち主とダブって見えるんだよなー
>>40 動きのなかったあの組が動くか…楽しみにしてます
なんとか間に合いました。
今からインデックス・ニケ・エヴァ・ヴィータ・きり丸投下します
「まっじぃことになっちまったなぁ……」
複雑に絡み合うコンクリートジャングル、その中をきり丸は走っていた。
きり丸にとってはあくまで"落ちて"いたランドセルを探っていただけなのだが、
本来の持ち主の少年――のび太から見てみれば泥棒に見えたわけで。
一度水入りペットボトルで気絶させようとしたのもマズかった。
結果あらぬ誤解を招いてしまい、こののび太ときり丸の奇妙な追いかけっこが始まってしまった訳である。
……最も、きり丸は既に対象を見失っているのだが。
「ん……? こっちは山の方か」
見失った少年を追いかけるうち、きり丸は市街地の北の方――山脈の入り口に着いていた。
草木の茂った、きり丸にとっては見慣れた光景の一つに、少しほっとする。
人間という物は不慣れな場所に居ると、精神的に居づらい物がある。
いくら対応力の高い人間であろうと半日程度はいつもと違う違和感に悩まされる事が多い。
きり丸にとってはこのコンクリートジャングルは全く見慣れないものであり、それが若干精神的疲労を引き起こしていた。
先ほど少年を気絶させようとしたきり丸の行動も、変な焦りから出た行動の末である。
商売人は信用第一であり、あらぬ誤解を招かせるような行動は慎むべきであったのに。
――きり丸は中世の時代の人間である。
そして彼は忍術学園といった忍者の学校に通っていた。
隠れる時、忍者は木や石、土などの自然を巧みに使いこなし潜伏する。
また追っ手を撒く時など人から逃げる際には、障害物の多い森や山で相手を見失わせたり、迷わせたりもする。
つまり、忍者にとっては森や山の中は絶好の隠れ場所であり、人を撒くのにも最適な場所である。
一応きり丸も忍者の端くれであり、このような考えが一応ながら根の底にある。
自分があの少年の立場ならどうするか、おそらく自分を泥棒の類、ましてや殺人者にまで考えているに違いない。
それから逃げるためには、複雑に入りくだった森とかに逃げるに違いない。
こんな石だらけの変な場所よりも、森や山の方が逃げるのにはうってつけだろう。
そんな風に考えるに違いないと思考を張り巡らせる。
「既に見失っちまったけど……誤解は流石に解かねぇとマズイもんなぁ……」
このまま誤解されっぱなしでは、少年が他の人間に会った時に、誤解された内容が他人に伝わってしまうだろう。
それは非常にまずい事だ。
そうなってしまっては他の人間から情報やモノを、交渉の末に譲ってもらうことなどとても出来やしない。
下手すれば誤った情報を元にいきなり襲われて、殺されてしまう事だってありうる。
冗談じゃねぇ。いくらなんでも命あっての物種だ。なら、誤解を解くべきだな。
誤解さえ解ければ、誤った情報は伝わることは無いんだしな。
後で稼ぐ為なら、今の苦労はしかたねぇ。
考えを纏めると、きり丸は荷物をしっかり抱え、山の中へと走っていった。
少年の誤解を解く為に。そして将来のゼニもうけの為に。
「商売人は、信用第一、ってな」
◇ ◇ ◇ ◇
きり丸の決断から約三十分ほど前。
場所を北に約1キロ。
きり丸が入っていった山脈の一つの山頂――その山小屋の中。
そこに舞台は移る。
「いやー、俺の知ってる悪魔ってみんなマヌケな奴ばっかりでさー、それに比べたら……」
目の前であいかわらずの調子で話を続ける少年、ニケ。
しかし、先ほど感じたある事で、今のインデックスの思考は占められていた。
(……なのはの魔力を感じるんだけど)
先程感じたなのはの魔力。
インデックスは周囲の魔力には敏感である。しかもつい1時間程前までこの場に居た人間の物だ。
間違えるはずも無い。
しかし、それ故に考えることがあった。
(……なのは、なんで入って来ないんだろ)
なのはの魔力を感じてから1〜2分弱だけど、何故かその場所から動かない。
すぐ入ってきても良さそうなのに。何故だろう。
(……何かの魔法発動!?)
……その時、ドアの向こうにて、魔力の流れが僅かに変わった。
何か道具を発動させたような――
それに気が付いた瞬間、インデックスはドアに向かって駆け出した。
なんだか解らないけど、止めないと非常にまずそうな気がした。
「え、ちょっおいっ、どうしたんだよいきなりっ!」
後ろからニケの声が聞こえたが、無視してドアに走る。
そう広くない山小屋の中、丸テーブルや椅子などがあって少々通行の邪魔になったが、気にせずに向かう。
そして山小屋の扉を開けた。
――しかし時は既に遅く。ドアの前には誰も居なかった。
インデックスが急いで周囲を見渡すと、遥か森のほうの空に、そこへ向かって飛ぶものが見えた。
それが何であるかは、嫌でも解る。
いや、魔に関する感知に長けたインデックスだからこそ解ってしまった。
――あの急速に遠ざかる魔力の持ち主は、仲間であるはずの少女のものだということを。
「なのは……」
何故なのはがこんな行動を取ったか解らずに、インデックスの頭の中が混濁する。
なのはは、何であんな行動を取った? 私たちから逃げる理由は?
それに、まさるはどうした? 何故一緒に居ないの?
何で……!?
「おいおい、どうしたんだ、何があったんだ!?」
インデックスの思考が遅れてきたニケの言葉によって止まった。
ニケは相変わらずの調子で次の言葉を紡ぐ。
「なのはや勝が帰って来たのかと思ったんだけど、違うのか?」
ああ、そうだね、気が付かないよね。あのスピードじゃ、もう見えないよねぇ。
なのはの姿は今ではもう、点にしか見えない。
今の状況にまでなったら、例え私でもなのはとは気が付かないだろうね。
魔力探知でいち早く気が付いたインデックスからこそ、飛んでいくなのはの姿に気がつけた。
遅れてきたニケでは、おそらく気が付かない。
例え疑問を持とうとも、なのはであると思えないだろう。
思考の展開により流れる僅かな沈黙の時間。
その沈黙を破ったのはやはりニケで。
「……おい、どうしたんだよ、早く中入ろうぜ」
「あのさ、ニケ……一つだけ、いいかな」
「ん?どうしたんだ?」
「なのはとまさるは多分戻ってこないと思う」
話を振ったインデックスが残酷な宣告を告げる。
これはインデックスが僅かな時間で立てた仮説が元にあった。
なのはと勝が同時に戻ってこなくて、なのはだけが戻ってきた。
おそらく勝に何かあったのかもしれない。それで一人で帰ってきた。
二人一緒に帰ってこないのだ。何も無いと言う事はない。
もしかしてなのはと勝が仲間割れでも起こしたのかもしれないけど、その可能性は横に置いた。考えたらキリが無い。
少なくとも何らかの分裂が起きたって考えた方が適切かな。
なのはは、自分達から逃げる様にして飛んでいった。おそらく戻ってこない。
勝は何かあったに違いない。もしかして戻ってくる可能性も無いとは言えないけれど……
以上のような仮説を立てて、出した結論がインデックスの先程の言葉である。
勿論、ただの仮説に過ぎない。ただ勝が遅れてきただけなのかもしれないし、
なのはも別の考えがあってすぐ戻ってくるつもりなのかもしれない。
ただ、そうとは思えなかった。飛んでいくなのはの急ぎ様が気になったのもあるけれども、
何かあの飛び方には意味があるような気がして思えなかった。
それに……飛ぶ方向が森なのも気がかっていた。
「は……!? 冗談にしては笑えねぇよ」
「冗談じゃないよ。でも……多分確かなこと」
「意味わからねぇよ……」
「ごめん、話が飛躍しすぎたかもしれない。じゃあ何故、私がこう考えたか、話すね」
インデックスはニケに先程立てた仮説を話した。
ついでに、先程なのはの魔力を感じていたことも。
聞いてる内にニケの表情が微妙に曇る。
悩んでいるのか……それとも。
「聞かれちまったのかなぁ……」
「どうしたのさニケ?」
「いや、さっき俺なのはのことをさ、悪魔らしかったって言っちまったじゃねぇかよ」
「確かに言ってたね」
「……もしかしてさ、それを聞いてたんじゃないかなって」
ニケの先程の発言は、まずその本人が聞いていれば確実に何かしらの影響を与えるものだった。
友人を止める為に心を痛めてまで拷問を行ったなのはの行動、
それをニケが今まで出会ってきたであろう、邪悪な悪魔の行動と比較された。
あまつさえそれよりも上だと。そんな事を言われた人間は、果たしてどう思うのだろうか。
ニケやインデックスは知らないが、事実、なのはは実際にそれを聞き、かなりの精神的ショックを受けていた。
少なくとも、彼らに対する疑惑と僅かながらの人間不信を巻き起こすほどには。
「……おそらくさ、聞いてたんだと思う」
「だよなぁ……酷いこと言っちまったな」
「どうする?」
「どうするって……」
「なのはに対してさ、謝るの? それとも更に傷を抉る?」
ニケは、罪悪感に囚われていた。
なのはが心を痛めてまでとった行動を、俺はどうしたんだよ。
……茶化したんじゃねーか。最悪なことに多分本人にまで聞かれた。
確かに、俺が出会ってきた悪魔はマヌケでアホばっかだったしな。
でも、知らない奴らには多分、悪魔なんてイメージは、極悪で、血も涙もない奴ばかりって感じだろうな。
それとなのはを比べてみて考えて、なのはの方が上だって言われたら……そりゃあなぁ……
普段能天気なニケが、これ以上も無いほど深く考えている。
自分の何気ない発言で人を多大に傷つけた。
そのことはニケ自身にも大きな後悔を負わせる羽目になった。
まさに、あの言葉は失言であったのだ。
「俺は……なのはに謝る。なのはの奴、傷付けちまったし……
例え許してもらえなくても何度でも謝ってやるさ」
「……」
「それに、人を心無く傷つけちまってさ、何が勇者だって感じだしな」
「……ニケならそう言うと思ってた。ニケは、意外と優しいから」
「意外とは余計だ、余計。それで、インデックスはどうするのさ」
「私も……かな。共犯者に近い立場だしね。私も会って謝るんだ」
二人の決意。実際に失言したのはニケではあるが、
それを止められなかった、それになのはの存在にある程度気が付いていたことを言わなかった、
インデックスも少しながら、その事が気になっていた。
だから、次会ったらなのはに謝ろうと。二人は、そう決めた。
◇ ◇ ◇ ◇
「でさ、中央部に行く話はどうするんだ?」
今後のなのはへの決意が決まり、二人は小屋の中へ戻った。
そして、当面の問題にさし当たる。
今の全体の目的は、島の中央部に行く事。そこで他の参加者、特に八神はやてを探したり、またはその情報を得ることである。
ただ、気絶した人間を二人運ばなければいけないというのが、今の最大の問題であり、
なのはと勝が居ない今、一人ずつ運ばなければいけない。
エヴァもヴィータも小柄ではあるが、自分達や二人の荷物が加わる。
それに、ニケはともかくインデックスが長時間一人を担いだまま、山道を含めた道のりを行くのは厳しい。
「さすがにエヴァちゃんやヴィータちゃんを担いだまま行くのは厳しいかな・・・・」
「でも、このままだと時間だけ過ぎちまう。なーに、最悪の場合俺が二人担ぐさ」
「でも、ニケだって疲れてるんだよ?」
「あー、レディを守るのは勇者の努め、ってな。気にするんじゃねーよ」
「でも……」
流石にエヴァとヴィータを抱えたまま行くのは厳しいと、悩まされる。
時間が過ぎていき、どうしようかと迷っていたその時、部屋の中に変化が訪れた。
「……ん……んんっ……」
部屋の片隅、ロープで縛られていた少女ヴィータが気絶から目を覚ましたのだ。
すぐさま傍へ二人が駆け寄る。
意識が半ば覚醒して、縛られていることに気が付いたヴィータではあったが、特に暴れる様子も無く、じっとしていた」
「ヴィータ……だっけ? 目を覚ましたんだ」
「ここは……何処だ?」
「ここは山小屋の中。……言い出し難いんだけど、あなたが暴れた後縛らせてもらったの」
「……そっか。……高町、なのはは? いないのか……?」
「……」
対応していたインデックスの思考が止まる。
果たして、ヴィータを止めたなのは本人が、おそらくは戻ってこないであろうこの状況を伝えるべきか。
悩んでいると、横から意外な助け舟が飛んできた。
「……なのはは、先に行く為の道を探しにいったんだけど、戻ってこないんだ」
「……何だって……?」
「……そ、そうなんだ。だから私たちはこれから探しに行く所だったの」
ニケのフォローに慌てて話を合わせるインデックス。
「……高町なのはが、早々くたばる訳ないだろうから、探しに行かなくてもいい気がするんだけどな……」
ヴィータは思ったままに言葉を漏らす。
あのあたしたちヴォルケンリッターの襲撃や闇の書の攻撃を何度も凌いで、
そして肝心な所で勝利を収めてきた、高町なのはを知っているからこその発言だ。
「そんな訳には、いかないんだ、大事な仲間なんだし、探しに行かなくちゃ。……それでね、ヴィータ」
「……何だよ」
振られた言葉に、ぶっきらぼうに返す。
「私たちはなのはを探しに行くと共に、あなたのご主人、八神はやて……って子を探しにいくつもりなんだ」
「……なんだって!?」
聞こえてきた言葉にヴィータの目が見開かれた。
……はやてを探してくれるっていうのか……?
「なのはが、提案したんだ。人が多そうな中央部に向かって、そこではやてを探す、って。」
「なのはの奴がか……」
なのはの事だ、どうせ自分の事を気遣っての提案だろう。
こっちとしては願っても無い事なんだけどな……腕の怪我は非常に痛いが、はやてを守るために何かは出来るはずだ。
「でね、一緒に行かない? このまま私たちに大人しく着いてきてくれれば、私たちは何も危害を加えないし、
回復が出来る人が見つかったらその傷を治してあげられる。はやてって子が見つかったらすぐさま会わしてあげられる……
それに、そんな怪我を負った女の子を一人にする事なんて出来ないよ」
あたしは愕然とした。まさか一緒に行こうなんて言われるとは思っていなかったから。
あたしはついさっきまでお前らの敵だったんだぞ!?
いくらこの両腕の怪我じゃ何も出来ないだろうとはいえ、そう簡単に……いいのかよ。
10
「あたしは……お前らを襲った奴なんだぞ? ……いいのかよ」
「昨日の敵は今日の友っていう言葉もあるくらいだしな、気にすんなよ」
あたしの中で、閉ざされた心の扉が音を立てて開いた気がした。
なんであたしなんかの為にそこまでやってくれるんだよ。
なんで、襲ったあたしをそんなに簡単に許してくれるんだよ。
……あたしも、なんでこんな気持ちになるのかわからねえよ。チクショウ。
……これも、はやてやあいつら……なのはとテスタロッサの奴と出会ってからの影響かもな。
「うん、そーいうこと。で……」
「……分かった。あたしはあんたらについてく。それにこれ以上人も襲わない、……これでいいか」
……あたしは提案を受けることにした。こいつらは純粋な善意で動いてくれている。
先程まで敵だったあたしの為に、なのはの提案でとはいえ動いてくれてるんだ。
はやてを探してくれるなら、今はこの差し出された手をとってやる。
そもそも腕の傷が酷い時点で誰も襲えないしな……今更襲うつもりも無いけど。
……ありがとよ、おめーら。
でも、あたしにも譲れない事がひとつだけあるんだ。
ヴォルケンリッターであるあたしの使命は主、八神はやてを守ること。
あたしはそれだけの為に闇の書から生み出され、そしてそれは今でも変わらない。
はやてを守ることだけは、どんな事があっても諦めてたまる物か。
(でも、もしこの傷のせいではやてを、守れないことがあったら)
なのはの拷問で受けた両腕の傷、それは今でも痛み、腕はもう殆ど動かない。
なのはが自分を止めるために仕方なくやったって事ぐらいは、
今になってなんとなくだけど、分かってる。
――あいつの目は悲痛に満ちていた。
――考えたくは無いけれど、この傷のせいで、
はやてと合流したとしても、肝心な時守れないかもしれない。――もしそうなったなら。
(――高町なのは、あたしはおまえを、絶対に、許さない)
ヴィータは胸の内で静かな、そして絶対的な決意を固めた。
きり丸は自分の未来の商売の為に、何が何でものび太の誤解を解こうと決めた。
ニケとインデックスは傷つけてしまったなのはに謝りたい、それだけを胸に決めた。
ヴィータはあくまではやてを守ることだけを考え、最悪の場合の決意も固めた。
例え場所も思いも理由も人、それぞれなれど、決意は、固く。
◇ ◇ ◇ ◇
「うん、十分だよ。それじゃ、早速向かおうか。なのはとまさると、それにはやてって子を探しに。」
「俺は・・・・エヴァを担いでいけばいいよな。……ヴィータ、一人で歩けるのか?」
「その前に。これ外してくれないのかよ……」
視線で自身が縛られている即席ロープを指すヴィータ。
「……あー、すまね。外すの忘れてたわ、…………ホラ、よ、立てるか?」
「あぁ、すまねー……わわっ」
ロープを外してもらい、腕を使わず足の力だけで立ち上がろうとするも勢いあまって転びそうになる。
そしてそのヴィータを支えようとして――
57 :
代理投下:2007/08/26(日) 22:06:04 ID:sFR3rXlE
246 :決意を胸に秘めて ◆0gyFSm2QyM:2007/08/26(日) 21:58:48 ID:MZ2n.Y/Y0
ぺた。
ぺたぺた。
――ニケが触った所はどう見ても胸です。ご愁傷様でした。
「ど、」
「ん……」
「どっこ……」
「……やっぱぺったんこだな……(ボソ」
ぷち。 なんかどこかで聞いたような擬音が響いた気がした。
刹那、ヴィータは唯一自由な頭を振り上げて、ニケの頭に向かって振り下ろした。
「どっこ触ってるんだバカヤローっ!!!」
ごす。
ごすごす。
ごすごすごす。
ヴィータの頭突きが、ニケに炸裂した。
占めて計3発。
バーバラパッパパー♪ 【ヴィータは『ぺったんこ』の称号を手に入れました】
バーバラパッパパー♪ 【ニケの『すけべ大魔神』のレベルがまた無駄に上がりました】
58 :
代理投下:2007/08/26(日) 22:07:05 ID:sFR3rXlE
247 :決意を胸に秘めて ◆0gyFSm2QyM:2007/08/26(日) 21:59:16 ID:MZ2n.Y/Y0
【決意と共に】
【B-5/山小屋/1日目/午後】
【ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:すけべ大魔神LV.7、魔力大消費、中程度の疲労、左肩に切り傷あり
[装備]:スペクタルズ×8@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品、クロウカード『光』、 コエカタマリン(残3回分)@ドラえもん、メタルイーターMX(弾切れ)@とある魔術の禁書目録
[思考]:道のりは結構大変そうだけど、まぁなんとかなるだろ。後ヴィータ、誤解だ、誤解っ!
第一行動方針:自分の仲間となのは&エヴァの友人(八神はやてを優先)を探すため、島の中央部に移動して情報を集める。
第二行動方針:もし、なのはに会ったらなのはにちゃんと謝る
第三行動方針:水の剣が使えるか試しておきたい
基本行動方針:とりあえずラスボスを倒す。その過程で女の子の仲間が増えればいいッスねぐへへ
[備考]:ニケとエヴァは、1つの仮説を立てました。その概要は以下の通り。
※『結界』は空中だけでなく、地中にまで及んでこの島を球形に包み込んでいると考えられる。
この『結界』は外部との念話や、転移魔法を阻害する性質を持つと思われる。
OPで全参加者を転移させたことなどを考えると、ジェダもまたこの『結界』内部にいる可能性が高い。
おそらくは島の地下。
その地下空間と地上の間に、緊急用の通路がある可能性がある。特に怪しいのは城や塔、洞窟など。
【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:それなりの空腹とそれなりの疲労、
[装備]:水の羽衣@ドラゴンクエストX、コキュートス@灼眼のシャナ、葉っぱの下着
[道具]:支給品一式(食料−1日分)、逆刃刀・真打@るろうに剣心
[思考]:なのはも心配だけど、中央部にも行かなきゃならないんだ、結構大変だよねぇ、後ニケは自業自得。
第一行動方針:状況を打破するため情報を集める。(島の中央にある学校を目指す)
第ニ行動方針:シャナと合流
第三行動方針:なのはに会ったらちゃんと謝りたい
第四行動方針:信用できる、回復の出来る人がいたならヴィータを回復させたい
第四行動方針:太った男の子(パタリロ)を警戒
第五行動方針:普通の下着、てか服がほしいかも。保健室に『たいそーふく』はあるかな?
基本:誰にも死んで欲しくない。この空間から脱出する。
[備考]:主催者の目的を最後の一人か、この状況を何らかの魔術儀式に使うと考えています。
アラストールと互いの世界に関する詳細な情報交換を行いました。
59 :
代理投下:2007/08/26(日) 22:08:08 ID:sFR3rXlE
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:両腕がほぼ動かない程の傷(治癒魔法で治療可能)、
左足にもレーザー火傷、左手爪全剥、幾つかの打撲、聴覚障害軽微
[装備]:祈りの指輪@DQ
[道具]:基本支給品 ぬのハンカチ×20(即席ロープ)
[服装]:普段着(ドクロのTシャツ、縞模様のニーソックス等)
[思考]:……なんつーか、ありがとよ、おまえら。……ニケ、次は無いからなっ!
第一行動方針:今はニケとインデックスについていき、はやてを探す。ついでになのはも。
第二行動方針:殺し合いに乗るつもりは(一応)もう無い
第三行動方針:途中で回復の出来る奴を探し、出来れば腕を治して貰う
基本行動方針:はやてを見つけ出し、守り抜く。
※:肉体強化を行っていた為か、なのはより聴覚障害は軽微です。
足の火傷は歩けないほどではありません。ただし、走るのは少々厳しいです。
[備考]ニケとインデックスはなのはの向かった方向について良く分かっていません。
彼等が分かっているのは"森の方向に向かった"という点だけです。
また、ヴィータには森の方向〜云々は全く教えていません
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま! 】
[状態]:気絶、一見無傷だが命に関わりかねない程に衰弱、魔力消費(空)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品、歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、クロウカード 『希望』@CCさくら
なのはの荷物(基本支給品、時限爆弾@ぱにぽに、じゃんけん札@サザエさん)
[思考]:……(気絶中)
第一行動方針:????
第二行動方針:リリスに激しく警戒、というか殺す!
第三行動方針:同じ目的の者を探し、仲間と情報を集める
第四行動方針:ジェダが島の地下に居る、という仮定に基づき、地下空間に通じる道を探す
基本行動方針:ゲームからの脱出。ジェダを倒す。
[備考]:
エヴァンジェリンは、預けられた「なのはの荷物」を一通り調べています。
支給品の説明書も読んでいるようです。
光魔法『カッコいいポーズ』がジェダにも有効かもしれないと考えています
リリスが他の参加者と同じ待遇だと認識しました
【B-5/山脈地帯/一日目/午後】
【摂津のきり丸@落第忍者乱太郎】
[状態]:健康、戸惑い
[装備]:デッキブラシ@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品一式 魔晶石(15点分) テーザー銃@ひぐらしのなく頃に
のび太のランドセル(基本支給品一式、ロボ子の着ぐるみ@ぱにぽに、林檎10個@DEATH NOTE)
[服装]:青い忍者服
[思考]:商売人は信用第一、まぁ、とりあえず見つけねぇとな……
第一行動方針:のび太を見つけ、誤解を解きたい。無理なら口を封じることも考える
第二行動方針:道具と情報を手に入れる
第三行動方針:ゼニにつながるものを集める
第四行動方針:乱太郎、しんべヱの情報を探す
基本行動方針:生き残り脱出する。他人には極力会わないし、会ってもまずは疑う
[備考]:きり丸にとって、テーザー銃はあくまで「拾った」ものです
代理投下完了
ヴィータも仲間になって、良い繋ぎ乙です
勝は置いてけぼりカワイソ
投下乙
インデックス違う違う!w 勝は道間違えて休憩してるだけだってばw
超乙!あまりの展開に正直、震えた。
パズルのピースが嵌るようになのはが追い込まれていくのが
いい意味であんまりだと思いました。あまりに自然な流れすぎる……
コナンもヘンゼルも死んでしまいましたが
二人とも最後に思う存分「らしさ」を発揮していて
よかった(よかないが)です。
しかし、小狼……哀の命を犠牲にして生き残ったのに
愛しの桜は現在、とてもひどいことに……受難が続くなあ。
>>40 おお、この不安定パーティがついに動くのか!
……ってロリロワはどこもかしこも不安定パーティだらけか。
期待してます!
>>41 まさか、イデとは……激しく凹んだでしょうが頑張ってください。応援してます!
個人的にはきり丸の動きに期待。
しまった!リロードしろよ俺……
というわけで乙です。
まあ、確かにインデックスが確認した限りでは
勝となのはが仲間割れしたと思っても不自然じゃないよなあ……
すれ違いがもどかしいロワらしい作品でした。
しかし、ニケの周りがどんどんハーレム状態になっていくな……
ククリに見つかったら殺されるぞ……
イデにもめげず投下乙です。
これは……大いなるすれ違いが起きうるなぁ……。
勝は置いてきぼりになる危険があるし、
なのはを追って漠然と森に向かっても見つかるかどうか。
なのはの動きも読めないけれど、なのはの方は「みんなは学校に向かう」と思い込んでるわけで……。
しかしニケは相変わらずですなw ヴィータの頭突き、相当に効きそうだw
それにヴィータが自力でちゃんと歩いてくれるなら、移動の問題はかなり解決する……先々の自由度が増しますねぇ。
これは今後が面白そうです。
GJ。今日一日でなのはとその周りが大きく動いたな。
ニケのここからの挽回を期待しておこう。
しかしグルグル男勢のハーレム度がどんどん増していくなw
八卦炉持ち逃げ+みんなに置いていかれた勝カワイソスwwww
きりちゃんの接触した相手ってのび太だけだろ?(グリーンには姿は見られてないはず
もし何かあって死んだら悲しんでくれるのがしんべえだけに・・
早く誰かと出会ってほしいもんだ
しかしきり丸自身が慎重な行動を心がけて接触を避けてるからな…。
まあその内、商売として誰かに接触するんじゃないかなあ、きり丸。
見るからにやばそうでなければ慎重には接触していくだろうし。
ニケ達は……学校に行くとミニ八卦炉による死体がごろごろしてるのも怖ろしい。
どう見てもなのは大量殺人犯ですありがとうございますというか動機はともかく事実です。
ご無沙汰しており、申し訳ありませんでした。
どんだけ前の話だよと突っ込まれそうですが、グレーテルの話の修正をしました。
(位置の調整と、時刻描写のあたり)
トリエラ、リルル、ミミを予約します。
お久しぶりです&予約キター
やっぱり議論になってしまったので、発想を転換した修正版を投下しておきました。
予約ktkr
なのはが大変なことになってヴィータが正常になったのはどういう皮肉だろうかw
>>71 えーっと、修整スレですね。
これはつまり……メガンテ炸裂直後にはプレセアはまだかろうじて息があって、
桜との契約完了後にサクッと雛苺が(ジャコに命じて)瀕死のプレセアにトドメ、ということですか。
…………外道〜〜ッ!!(褒め言葉)
うん、確かに発想の転換です。確かにこれで全ての問題解決です。
雛苺の外道ぶりがさらに際立ちましたけど……。
別に、キスしたらプレセア助けるなんて一言も言ってませんもんねぇ。
>>69 期待
うん、すっきりしたな
修正乙
雛苺、グロっw プレセアがさらに南無い・・・・
確かにこれの方がすっきりしていい感じですな。修正乙です
そろそろwiki更新しないと溜まってきたなぁ・・・・・・
これ書いた自分がやればいいんだけど、なんかエラーでて更新できなくて俺号泣
前スレの埋め立てに魔理沙が参加した模様
最後に噴いたw
新作はマスタースパークが無い(ボムが全キャラ共通エフェクトになっている)んだよな。
バグで通常のレーザーが反則強いそうだがw
支給品紹介は良いな。
えーっと、申し訳ありませんが、今のうちに予約延長申請しておきます。
明日の昼前が3日間72時間の期限ですが、ちょっと間に合いそうにありません。
自由になる時間を計算に入れると、推敲の余裕も含めて、投下は金曜の夜あたりになりそうです。
たぶん延長期限いっぱいの丸一週間まで延ばすことは無いと思います。
もしも万が一金曜以降に延びるようなら、また連絡します。
報告乙
がんばってくだしい
ガンスリって7巻以上出てたんだね……orz
予約期限を少し過ぎてしまうかもしれないので、先にお詫びを。
繋ぎのそんな長い話じゃないので、上手くいけば明日、できれば明後日までには
投下できるよう善処します。
わりと各参加者達の時間が放送間際に進んでいるな。
……予約組みをのぞけば、左下の面子の時間の進み具合が遅い。
ふぅ、4日ぶりに帰宅できたぜ…長かった。ということで大分音速が遅いが前スレの埋めワラタw
魔理沙が最新作でマスタースパークを使えなかったのはこのロワに盗られていたからだな。
しかし本当の主人公はまったくもって話題にならんね。あれじゃ本当に魔理沙が主人公みたいだw
>>83 ほとんどのキャラは午後まで進んだなぁ。
やべぇ前スレ魔理沙萌えwww
>>84 某MADで名前だけは有名になった上になぁ・・・・もう一人の主人公が影薄い。
まぁ名前だけなら某うどんげとかえーりんの方が・・・って感じだけどこれ以上はスレチだな
あと一応魔理沙も主人公なんだがなw
>>83 ぶっちゃけて言う。左下組すげぇ書きにくい。
一応書き手だが、把握できるキャラがあそこだけかなり少ない。
把握しようとはしてるけど原作読んでもワカラネーorz
あそこ大体のキャラが真昼に固まってるんだよな。
以前はミミが取り残されすぎててある意味注目されてなかったけど、ミミが進んだから遅さが目立ってきたな。
とりあえず予告。
今のところ、今夜7時頃からの投下を考えています。
3部構成とちょっと長いので、お暇の合う方は、どうか支援(及び、万が一規制された場合の転載)をよろしくお願いします。
では予告通り、投下を開始します。
なお、トリップ変更の理由ですが……実はあのトリップ、とある某所で公開されてたことに気付いてしまいまして……。
今さらですが、この作品投下をもって、当人確認とさせてもらいたく思います。
では。↓
……この光景は、何なのだろう。
森の中に、穏やかな風が流れる。揺れる木々の隙間から、キラキラと眩しい陽光が降り注ぐ。
目の前ののどかな、笑顔さえ零れるやりとりに、蒼星石は微かな眩暈を覚える。
「……なるほどね。で、『バルディッシュ』、だったかしら? 私にも貴方を扱えるのかしら?」
『白レン、あなたからもリンカーコアの存在は感じられます。
私がフォローすればミッドチルダ式の魔法も使えるでしょう。ただ……』
「ただ、この子をあなたに渡しちゃうと、今度は私が使える武器がなくなっちゃうの」
森の中にそびえる塔の前、ちょっと開けた空き地にて。
穏やかな青空の下、タバサと白レンがお互いの武器を手に取りながら話をしている。
そこには警戒も何もない。初対面からほとんど間も無いというのに、数年来の友人のような親しい雰囲気。
そして話しているのは、詳しい自己紹介よりも先に始まった、お互いが持っている武器と能力の確認――
2人の間を取り持った蒼星石にも、この2人の行動は予想外。
白レンのすぐ傍、黙って周囲を警戒しているイシドロのことも、どう判断したものか迷う。
「私にも『エーテライト』が使えるようなら、交換してもよかったんだけど……。
パーティの戦力バランスを考えると、バリアジャケットがある人が前衛に立った方がいいと思うの。
みんな防具は持って無いし、バルディッシュが作るバリアジャケットはかなり頑丈だし」
「でしたら、貴方が持っていた方が良さそうね。
私は杖で戦った経験は無いし、後ろから氷の技で援護させてもらうことにするわ」
「あの――ちょっといいかな?」
どんどん進んでいく話に、蒼星石はとうとう我慢しきれずに口を挟んだ。
何? と不思議そうな表情で首を傾げる少女2人の視線に、蒼星石は少し戸惑う。
「その……さ、何でまた、いきなりそんな話をしてるのかな……。
互いの自己紹介とか、これからの方針の相談とか、もっと先にやることはあると思うんだけど……」
「何言ってるの、蒼星石? パーティの仲間が増えたらまず『そうび』を確認するのは、基本じゃない?」
「残念ながら、この島ではいつ誰に襲われてもおかしくないの。まずは身の安全を図らないとね」
ごくごく当たり前のことのように、事もなげに断言する2人。蒼星石は混乱する。
確かに筋は通っているようだけど……でも、本当にそれでいいのか!?
自らの常識的な感覚が揺るがされる。何を信じればいいのか分からなくなる。
いや、夢の中での出来事を深く突っ込まれないのは、蒼星石にも都合がいいのだけど……。
そんな彼女の前で、白レンはふと思い出した様子で、ランドセルから何かを取り出す。
「そういえば……貴方がたのどちらか、これ何だか分かるかしら?
支給品の1つなのだけど、使い道が分からなくて」
「?? 楽器? それともオモチャ?」
「それは……!」
蒼星石は思わず声を上げる。
出てきたのは小さなバイオリンケース。普通の人間には小さすぎる、ミニチュアサイズの精巧な一品。
見間違えるはずがない、それは、どう見ても……
「知ってるの、蒼星石?」
「それは、金糸雀のバイオリンじゃないか!」
「カナリア? 誰、それ?」
「ボクの姉妹の1人さ。ローゼンメイデン第二ドール、金糸雀が使うバイオリン。
演奏する曲に力を乗せて、多彩な技を放つ彼女の武器だ……!」
自分自身の『庭師の鋏』が奪われていたから、姉妹たちも似たような状況にあることは容易に想像できた。
けれども、こうして実際に他の姉妹の道具を目の前にすると、不安になってくる。
今ごろ金糸雀はどうしているのだろう。バイオリンが無くて苦労してないだろうか。
あの子はコレが無いと、使える技がほとんど無くなってしまうから……。
「へー、音楽で戦うの? 楽しそう! 蒼星石にもできる?!」
「いや、ボクには無理だ。金糸雀のローザミスティカがあればともかく、これはボクの道具じゃないから。
ただ……」
目を輝かせるタバサの前で、蒼星石はバイオリンケースを受け取って蓋を開く。
取り出したのはバイオリン――ではなく、それに付属している演奏用の弓の方。
「ただ、こっちは使えそうだ。
軽いし、短いし、『庭師の鋏』のようにはいかないけれど――はッ!」
バイオリンの弓を剣のように構えると、唐突にその場で跳躍、そして一閃。
空中で1回転した彼女が着地すると同時に、太い樹の枝がゆっくりとズレ始め、やがてバサリと落ちる。
その切断面は鏡のように滑らかで、まるで日本刀で斬ったかのようだ。
まさに一流の剣士のような動きに、白レンもイシドロも目が点。
元々蒼星石はローゼンメイデンの中でも珍しい、近接戦闘に特化したドールだ。
そしてこれは万能型の金糸雀が剣の代わりに使っていたバイオリンの弓……使いこなせない道理がない。
「と、御覧の通り、これでボクも戦えるね。ボクも前衛ということになるのかな」
「すごいすごい! 蒼星石、お兄ちゃんみたい!」
「そういうことなら、その弓はバイオリンと一緒に差し上げるわ。頑張って頂戴ね」
白レンが微笑む。蒼星石はようやくにして自分の考え違いに気付く。
自分が「使える」武器を手にした途端、自信が湧いてきた。何とかなりそうだという気になってきた。
普段の平和な日常であればいざ知らず、「この異常な状況」の中では、タバサや白レンの方が正しいのだ。
バイオリン本体の入ったケースをランドセルに収めた蒼星石は、ふと気付いて、あるものを取り出す。
「そういえば……これ、イシドロのだよね?
こうなってくると、これは誰が持っているのが一番いいのかな……?」
それは小さな人形と、小銭入れ。
卵のような体型をした、ギャングを模したコミカルな小型ロボットだった。
* * *
「飛び立った途端、こんな近くで獲物が見つかるとは思わなかったが……4人か。多いな」
「あの程度、簡単だよ♪ リリス強いもん♪」
「君の強さは俺自身が良く知っている。だが数の差を甘く見るな。
確実に首輪を集めていくためにも、ここは慎重になるべきだ」
「むぅ〜〜っ」
「しかし、これはチャンスかもしれない……考えていたことを、試してみるか」
「?? 考えていたことって?」
「……リリス。手短にでいい、君の使える『技』を一通り教えてくれ。
君は君の『本当の力』を知らない。そして、俺ならきっと君の『本当の力』を引き出すことができる。
もしも君が俺の指示に従えるなら――君は、もっと強くなれる」
* * *
(ふふふっ……簡単過ぎて張り合いがないわね)
白レンは内心でほくそえむ。
自ら前衛を志願したタバサ。同じく前衛向きの能力を持つ剣士・蒼星石。
ここまでは、まさに白レンが願っていた通りの展開だ。
白レン自身、実は格闘戦をやらせても相当に強い。武器が無くとも、十分前衛を張れるだけの実力がある。
けれども参加者の数は多く、戦いは長期に渡るのだ。こんな序盤から危険を犯すべきではない。
バルディッシュは出来れば手に入れたいところだが、それはタバサが倒されてからでいい。
小さなバイオリンも、元々ハズレの一品だ。これを手放すことで『盾』になってくれる者が増えるなら、悪くない。
「では――この『ころばし屋』は私が預かりましょう。
貴方たちは前衛で忙しいし、イシドロは片手しか無いものね」
蒼星石から小さな人形を受け取りながら、白レンは微笑む。
元はイシドロの支給品だったというこの人形。上手く使えば戦闘で大きな優位が得られる。
ただ、使うには頭の後ろからコインを投入せねばならないわけで――
敵と剣を交えている最中には使いようが無いし、隻腕のイシドロにも使いづらい。
白レンが持つことになるのは、ある意味必然だった。
かくして戦闘時のフォーメーションが確定する。
前衛は防御力の高いタバサと、スピードに優れる蒼星石。
どちらも状況に合わせ、適宜魔法や戦輪も使っていく。
イシドロはやや後方に位置して遊撃。投石をメインに、手榴弾も織り交ぜながら敵の体勢を崩すことを狙う。
状況によっては、タバサや蒼星石のポジションと入れ替わることも視野に入れておく。
そして白レンが最後方で後衛。
氷を飛ばしての援護射撃と、エーテライトや「ころばし屋」での遠距離攻撃に徹する――
「ふふっ、なかなかいいバランスのパーティになったね♪
できれば重装備の戦士タイプと、回復系魔法が使える僧侶タイプも欲しかったんだけど……」
「まあ、全てが思い通りってわけにはいかないよ」
呑気に素直に喜んでいるタバサと、常識的ながらも少しばかりツメの甘い蒼星石。
おいしいカモ2人の会話を横目で見ながら、白レンはイシドロを手招きする。
「……なんでしょうか、白レン様」
「これは貴方に預けておくわ。使い方は分かるわね?」
最も忠実な彼女の騎士に、彼女は『あるもの』をこっそり押し付ける。
それは彼女の持ち物の中でも使いにくい一品。イシドロは不安の声を上げる。
「俺、いや私に使えるのでありましょうか?! てかこれって魔法の……」
「イシドロならできると思うから任せるの。使いどころは貴方に任せるわ。頼りにしてるわよ、私の騎士」
調教済みのこちらはもっと扱いやすい。ちょっと褒めてやれば、簡単に操縦できる。
最初は躊躇っていたイシドロも、甘い言葉1つで自信を取り戻し、『それ』を受け取る。
全ては白レンの思い通り。
――そう、ここまでの展開は、ほとんど彼女の思い描いた通りだったのだが。
* * *
* * *
「リリス。君は近い間合いなら申し分なく強い。技も豊富だし、動きも素早い。分身もできる。
1対1なら、誰が相手でも遅れを取ることはないだろう。だが――そんな君にも、弱点がある」
「弱点?」
「それは、遠距離の間合いで使える技が少ないことだ。
『ソウルフラッシュ』は使い勝手がいいようだが、射程に限りがある。威力もそこそこだ。
『グルーミーパペットショウ』は隙が大きいし、演じている最中に他の敵に殴られたら目も当てられない。
敵が1人なら突進技で間合いを詰めてもいいが、相手が複数になれば途端に困ってしまう。
敵だって馬鹿ばかりではない。格闘に強い者が足止めして、射撃に長けた者が後方から狙撃する――
これが、考えられる最悪の展開。
腕の立つ者たちにこれをやられれば、君といえどもタダでは済まない」
「むぅ……。でも、じゃあどうするのよ? せっかくの獲物、見逃しちゃうの!?」
「いや心配するな。策ならある。リリスには少し危険な役割を担ってもらうことになるが、上手くいけば……!」
* * *
平穏は、唐突に破られた。
「……こんにちわ♪ あれあれ、みんな何やってるのぉ?」
並べていた武器の類を片付け、少し遅めの昼食でも食べようか、としていた4人の間に、緊張が走る。
森の木々の中から、のんびりと出てきた小柄な人影。場違いなまでに呑気な声。
しかし、その声や態度をそのまま受け止めるわけにはいかない。
何故なら、その人物は……!
「……キミは、あの広間に居た!?」
「リリス!?」
「そうだよ、リリスだよ♪」
蒼星石とタバサの驚きの声に、まるで散歩中に友達に出会ったかのように、笑顔で手を振る淫魔の少女。
だが彼女が穏やかな分だけ、相対する4人には緊張が高まる。イシドロも白レンも、それぞれに身構える。
「何のつもりでいらっしゃるのでしょう?
ジェダの忠実な部下である貴方が、わざわざこんな所においでになられる理由がわからないのですけれど」
「ふーん、やっぱりそういう反応なんだ。――の言った通りだね♪」
白レンの、険の篭った慇懃な問いかけにも、リリスは口の中で何やら呟くだけ。
余裕たっぷりな笑みを崩さない。
そしてリリスは、悪戯っぽい笑みを浮かべたまま、何故か棒読みのような抑揚の無い口調で、言い放った。
「じゃあ教えてあげる。
リリスはね――『退屈だから戦いに来た』の。ジェダ様に首輪とランドセル貰ってね♪」
――その一言で、4人の警戒の度合いが一気に跳ね上がる。瞬時に臨戦態勢を取る。
それぞれ戦いの中に生き、数々の修羅場を潜ってきた者ばかりである。考えるより先に身体が動いた。
タバサがバルディッシュを構えて、1歩踏み出す。
蒼星石がバイオリンの弓を手に、タバサの横に立つ。
イシドロが石を握りつつ、1歩下がる。
白レンがエーテライトを素振りして、最後方に飛び退く。
それはたぶん、この4人で闘うなら最善の布陣。
リリスは強い。戦っている姿は見ていないけれど、こうして相対すれば雰囲気だけで分かる。
4人が4人とも、それくらいの見当がつくくらいの経験は積んでいる。
そしてリリスの側も彼女たちの強さは見当ついているだろう――にも関わらず、余裕の笑みを浮かべたまま。
(何故……!? 何故リリスは、この余裕を崩さない……?!)
ざわり、と白レンの総毛が逆立ったのは、そんな疑問が脳裏に浮かんだ瞬間だった。
理屈でその答えに辿り着いたわけではない。むしろ、野生の勘。
はッ! と振り返るのと、背後の藪からもう1つの人影が飛び出してくるのは、ほぼ同時だった。
「なっ……!?」
「――遅い」
塔の前に広がる広場は、決して広くはない。
リリスに対して身構えれば、すぐ背後に鬱蒼とした森と茂みを背負うことになる。
後衛が、森に対して無防備な背中を晒すことになる。
疾風のように飛び出してきた人影は、そして白レンやイシドロに逃げる間も与えず、手にした武器を振るう。
スパンッ! 小気味のいい音と共に、右手に握られた竹刀が白レンを打ち据え。
ビシッ! 風を切る音と共に、左手に握られた9尾の鞭がイシドロの顔面を捉える。
そして一瞬遅れてポンッ、と軽い音が響き、白い少女は、真っ白な子豚と化した。
* * *
「いいかリリス。君の顔は全ての参加者に知られている。
君が姿を現せば、誰もが警戒し、次いでこう問い掛けるだろう。『ジェダの部下が何しに来たんだ』と」
「ん〜、そういえば、今まで会った子もみんなそんな感じだったね〜。
リリスと遊んでくれないで、ツマンナイことばっか聞いてくるの!」
「そう、それが当然の反応だ。逆に言えば、リリスと会った者がどういう行動を取るかは、とても読みやすい。
警戒して、いつでも戦えるよう身構えはするだろうが、問答無用で攻撃したりはしない――
多少なりとも頭が回る奴なら、リリスからジェダの情報を聞き出したいと考えるだろうからな」
「それもそっか。それで?」
「そこにリリスが一言挑発すれば、彼らは一気に臨戦態勢を取る。これもまず間違いない。
例えば、『退屈だから戦いに来た』とでも言えば一発だ。そして、それから俺が――!!」
* * *
(計算通りッ……!)
右手の竹刀が白い少女を打ち、左手の鞭が隻腕の少年の顔面を叩きのめす。
彼らの背後を突くことに成功したグリーンは、己の策が間違ってなかったことに自信を深める。
グリーンの策とは、実のところ簡単なものである。
リリスが挑発して、4人に身構えさせる。そうすれば敵は、自然と前衛と後衛とに分かれて陣形を組むだろう。
前の方には、近距離での戦いに優れた戦士タイプが。後には、後方支援が得意な遠距離タイプが。
しかしリリスは格闘の間合いなら無類の強さを誇っている。その強さはグリーン自身、身をもって知っている。
敵の後方支援要員さえ排除できれば、後は力押しでもなんとかなるだろう――グリーンはそう踏んだ。
ゆえに、リリスが気を引いている間に、グリーンが密かに森の中を抜け、彼らの後ろに回りこむ。
挟み討ちの形。こうなればグリーンの目の前にあるのは、敵の後衛の背中なわけで――
「――!?」
「ぐえっ!?」
『こぶたのしない』で叩かれた少女が、ポンッ! と子豚の姿に変身する。
美しく、可愛らしさの中にどこか妖艶な雰囲気すらある、真っ白な子豚。
事態が飲み込めないのかキョロキョロ周囲を見回しているが、もうこれで彼女は完全に無力なはず。
一方、顔面に『九尾の猫』の直撃を受けた少年は、手にした石を取り落とし、地面をのた打ち回る。
どうやら9本の革鞭のうちの1本が彼の右眼に直撃したらしい。顔を押さえる手の隙間から、血が迸り出る。
地面を転がる少年には『こぶたのしない』の追い討ちは届かなかったが、しかしこれで十分。
一瞬動きを止められれば上等、と思っての攻撃だったが、片目を潰せたのは僥倖だった。
グリーンはそのまま2人の犠牲者の間を駆け抜けながら、リリスに向かって大声で叫ぶ。
「リリス、『メリーターン』だ! 残り2人、まとめて弾き飛ばせ!」
支援ですぅ
支援かしらー?
* * *
「リリス、『メリーターン』だ! 残り2人、まとめて弾き飛ばせ!」
「うんッ!! ――えやっ!」
愛しのグリーンの叫びを受けて、リリスは大きく跳躍する。
跳躍と同時に翼を刃に変える。瞬時に死の独楽と化し、揃いの蒼い衣装を纏った2人に襲い掛かる。
グリーンの作戦は完璧だ。味方の損害に驚く前衛2人の反応は一瞬遅れて、だから飛びのく時間も無い。
ギギギギンッ!!
1人目は小柄な方。人形のようなサイズの小人。
ボーイッシュな雰囲気の彼女は、咄嗟の反応で、手にしていた「糸の張られた木の棒」を目の前に構える。
高速回転するリリスの翼と擦れあい、耳障りな音を立てる。まるで刃物で受け止められたような感触。
魔力か何かを篭めているのか、あの木の棒は、ちょっとした名剣ほどの切れ味を秘めているらしい――
だが、刃は止めても勢いまでは殺せない。悲鳴と共に、人形の小さな身体が弾き飛ばされる。
「蒼星石ッ!!」
『――! Defenser!』
もう1人、こちらは普通の少女の体格をした方が仲間の名を呼ぶが、構わずリリスは回転と突進を続ける。
2人目との衝突の寸前、金髪の少女が手にした黒い杖が光る。人工的な、機械的な声が響く。
すぐさま少女を包む光のバリアが展開されて――しかし、リリスの翼の斬撃を受け、あっさりと砕け散る。
障壁を破っても、回転は止まらない。2回転、3回転、4回転。
ガードするように構えられた杖もろとも、リリスは少女に斬り付ける。
斬り付けながら、その手応えに顔を歪める。
(――こっちは妙に硬いねっ。どう崩せばいいん――)
「リリス、着地と同時に軽く2発、続けて『ソウルフラッシュ』全力でッ!」
「ッッ!!」
その意味を理解するより先に、身体がグリーンの言葉に沿って動いていた。
竜巻のような回転が終わり、着地すると同時にしゃがんでローキック1発。瞬時に伸び上がってジャブ1発。
どちらも威力よりも、技の「出」と「入り」の速さを重視した軽い技。
もちろん、この妙に硬い服を着ている少女には、ほとんどダメージは通っていないけれど――
それでも、ほんの少しだけ姿勢が崩れる。ほんの僅かだけ、身体が仰け反る。そして、それだけで十分。
「――『ソウルフラッシュ』ッ!!」
ゴッ!!
リリスの手から放たれた、ハート型の光を纏った蝙蝠が少女の胸を直撃する。
射程は短いが、スピードの速い弾。小技で動きを止められては、避ける間もガードする余裕もありはしない。
驚きの表情のまま、少女の身体が弾き飛ばされる。いかに少女の守りが硬くとも、これは相当に効くはずだ。
ニヤリ、と笑いかけたリリスの背に、グリーンの声が飛ぶ。
「まだだ! 振り返って『シャイニングブレイド』! 飛び過ぎるなよ!」
え?! と唐突な指示に驚きつつも、身体は間髪入れずにグリーンの声に従う。
振り向きざまに、翼を刃に変えて飛びあがって――まさに頭上から斬りかからんとしていた人形と目が合う。
リリスがすっかり忘れていたもう1人。小人のように小柄な軽戦士。
最初のメリーターンでタウンした後、いつの間にかリリスの死角、後方に回り込んで跳躍していたらしい。
不意打ちを見抜かれ唖然とする蒼い服の人形に、それでも容赦なく下から斬り上げる。
またも間一髪バイオリンの弓に防がれるが、今度は大きく弾き飛ばすほどの勢いはないわけで――
「そのまま『チャイルディッシュドロップ』! 絶対逃がすな、リリスッ!!」
「うんッ! いっくよーッ!」
「な――!?」
空中で人形との間合いを詰める。空中で人形の身体を翼で捕まえる。そしてそのまま、もろともに急転落下。
――ズン!
腹に響く重い音を響かせ、リリスは勢いよく大地に叩き付ける。2人分の体重を乗せた、重い一撃。
この攻撃ばかりは、武器で受けることはできない。
凄まじい衝撃に、地面に半ばめり込んだ人形が目を見開いて呻く。
「かっ……はっ……!!」
「そ、蒼星石ィっ!? バルディッシュ、『りりょくのつえ』っ!!」
『 Yes,.sir. Haken form. 』
先ほど『ソウルフラッシュ』でダウンさせた少女が、苦痛に顔を歪めながらも再びリリスに肉薄する。
少女の手の中の杖が形を変え、光の刃を持つ巨大な鎌と化す。
あの、硬くてタフな少女に、見るからに切れ味良さそうな武器まで加わったら、どれほど厄介なことだろう?
けれどもリリスは慌てない。もう迷わない、怖れない。何故なら。
「すぐに次がくるぞっ! 初撃を受け流しつつ、カウンターから連続攻撃!」
「はいっ!」
何故なら――グリーンの声に従っていれば間違い無いのだと、リリスには分かってしまったから。
後方から矢継ぎ早に出される指示は適切で、タイミング良くて、戦場の大局を常に視野に収めていて。
リリスの胸の内に、自信が湧き上がってくる。自然と笑顔が零れる。
戦いながら、自分がどんどん成長していくような感じがする……!
* * *
「目が、目がぁっ!!」と叫んで転げまわっていたイシドロが、ようやく痛みに耐えて身体を起こした時――
状況は、既に最悪だった。
蒼星石は強烈な投げ技を喰らい、半ば地面にめり込んだ形のまま、動けずにいる。
タバサは強靭なバリアジャケットの防御力のお陰でなんとか持ちこたえているが、どう見ても防戦一方。
そして、騎士としてイシドロが守らねばならない主人、白レンは――
「ええと……白レン、様?!」
「…………」
そこに居たのは、可愛らしい子豚。
どういう品種なのか、全身雪のように真っ白で、瞳はつぶら。
豚小屋の汚らしさなどからは全くの無縁の、貴族か大金持ちのペットのような、綺麗な子豚だった。
イシドロの戸惑う声に、子豚は不覚をとった自分を恥じているのか、無言のままプイとそっぽを向く。
何がどうなってこんなことになったのか、イシドロには分からない。
けれど、この白い子豚が白レンであることだけは、その僅かな素振りからも理解できた。
魔法か何かなのだろうか? どのみち、イシドロにはその魔法を解く能力も知識もない。
ならば、イシドロが今やらねばならないことは、子豚となった彼女を守ること。
襲撃してきたリリスと、その連れを倒すこと。
イシドロは潰れてしまった右目を堅く閉じたまま、なんとか立ち上がる。
ナインテールキャッツは、本来大した威力のある武器ではない。武器というより拷問道具だ。
けれども偶然、9本のうち1本が、コンマ数秒閉じ遅れた右目を直撃して――
堅くつぶった瞼の間から、ドロリと嫌な粘性を持った液体が零れる。激痛が走る。
左手に続いて、目までガッツと一緒かよ――心の中で毒づきながらも、イシドロは石を握る。
「けどなぁ……男には野望ってモンがあるんだ! 目玉の1つくらいで、へこたれていられるかッ!」
かなり虚勢もはらんだ言葉を、それでも威勢良く吐き捨てながら、イシドロは石を投擲する。
狙いはタバサと激しい戦いを繰り広げているリリス――ではなく、その背後から指示を出しているもう1人。
あちらの青年が「指揮官」だと見た。
そして集団戦においては、まず指揮官を潰すのが基本戦術。旅の中でも何度も経験してきたことである。
必殺の気合を込めて、イシドロは手にした石を、その優男の整った顔面に向けて投げつけて――
「え?!」
石は、あさっての方向に飛んでいった。
思わず間抜けな声を上げたイシドロは、すぐに2つ目、3つ目の石を投げつける。
……どれも当たらない。青年は軽く身を反らせるだけで避けてしまい、指示の声を遮ることもできない。
最初はムキになっていたイシドロの表情が、石を投げるごとに、焦りに歪んでいく。
とても当たる気がしない。傷の痛みとは関係なく、脂汗が滲む。
支援なのだわ
距離感が、完全に奪われていた。
人間の視界が写真のように平坦ではなく、奥行きが備わっているのは、目が2つあるからだ。
左右の目の間の距離を利用した、無意識のうちの三角測量。
特に器具など使わずとも、慣れた者なら目標までの距離を瞬時に、かなりの精度で測ることもできる。
しかし、片目を奪われれば、その距離感が喪われる。
もちろん、隻眼になったからといって飛び道具が使えなくなるわけではない。世の中には隻眼の戦士もいる。
イシドロと共に旅していたガッツも、石弓や投げナイフを常用し、炸裂弾を正確な狙いで投げていた。
ただし――その視界に慣れるのには、少しばかり時間がかかるのだ。
イシドロの要領の良さを考えれば、30分も練習すればまたコントロールを取り戻すだろう。
けれど、今はその時間さえ無い。
「なんてこった……! これじゃ、オレは……!」
一番の特技である投石を封じられ、イシドロは呻く。
これでは彼は戦えない。戦力にならない。手元には手榴弾もあるが、こちらはこの状況ではなお悪い。
距離とコントロールを誤って味方を巻き込んだら、それこそ終わりだ。
今さらながら、あの竹刀と鞭を持った青年が自分を深追いしなかった理由を悟る。
あと彼に残された、唯一の手段は――
リリスに一方的に押されまくるタバサを視界の隅に見ながら、イシドロは覚悟を決める。懐に手を伸ばす。
この状況を打開するには、もうこれしかない。白レンを守るには、この力を使うしか――!
* * *
――タバサは、焦っていた。
「――『プラズマランサー』!」
「リリス、『コウモリ変化』! 戻ると同時に『インセクトハグ』!」
「任せてっ、グリーン!」
タバサの『ミッドチルダ式魔法』の呪文詠唱に、グリーンの指示が重なる。
個人を標的とするにはタバサの知る魔法よりも優れているという、バルディッシュ直伝の攻撃魔法。
だが、放たれた8本の光の槍がリリスを貫こうとしたまさにその瞬間、リリスの姿が掻き消える。
無数のコウモリが舞い上がり――驚くタバサのすぐ隣、手を伸ばせば届く距離に集まって人の形となる。
「な――!?」
「うふふっ、遅いよっ! 次どうするのグリーンっ!?」
「技を決めたら追い討ちで連続攻撃、足を払って『トゥピアス』! 休ませるなっ!」
タバサが逃げる間もない。
見かけだけなら細いリリスの腕が、思いもよらぬ怪力でタバサを捕まえ、動きを止めておいた上で翼が一閃。
腰から真っ二つにされたかと錯覚するような一撃に、タバサはよろめく。
さらにそこに、1発、2発、3発。小気味良く繋がっていく連続技に、逃れるタイミングを逸して。
最後に喰らった足払いに尻餅をついたところに、これまた強烈な踏みつけ攻撃。
ドリルと化した翼に全体重を乗せて、標的の腹を抉る。タバサの口から、血の混じった空気が吐き出される。
(つ、強い――! 1発1発が重たい上に、こんな連続攻撃なんて――!)
リリスの攻撃速度は「はやぶさの剣」よりなお早く、多彩な必殺技の1つ1つは「魔神の金槌」のように重たい。
もしもバリアジャケットが無ければ、きっと既に3回くらいは死んでいる。
散々殴られて、蹴られて、斬りつけられて、本当はタバサだって逃げ出したい。本当は泣き出したい。
けれど――。タバサはそれでも、チラリと仲間たちの方を向く。
気絶でもしたのか、まだ動けない蒼星石。
石を投げても投げても当たらず、呆然としているイシドロ。
そして、白い豚の姿になって、氷のひとかけらも出せずに見ているしかない白レン。
タバサがリリスをひきつけているから、彼らはまだ息をしていられるのだ。
「ぼうぐ」もほとんど持っていない仲間たちを、リリスに攻撃させるわけにはいけない。
血反吐を吐きながらも、さらなる踏みつけ攻撃を転がって回避し、タバサは素早く立ち上がる。
リリスの肩口には、乱戦の中でバルディッシュでつけた小さな傷がある。
タバサの側の攻撃も、効かないわけではないのだ。防御を貫けないわけではないのだ。
ただ相手の動きがあまりに素早過ぎて、クリーンヒットが出ないだけで。
「あと一押しだ! 『ソウルフラッシュ』長め、重ねて連続攻撃!」
「!! バルディッシュ、『ひかりのたて』!!」
『 Yes, sir. Round Shield. 』
聞き覚えのある技の名に、タバサは咄嗟に防御姿勢を取る。防御力の高い、円形の魔力の盾を出現させる。
『ソウルフラッシュ』と言えば、戦闘開始直後の一連の攻撃の中で、一瞬気が遠くなりかけたあの魔力弾だ。
絶対にくらうわけにはいかない――そうして身構えたタバサの目の前で放たれたのは。
ヘロヘロと、超低速で飛ぶ、見かけは似ているが何とも迫力のない、弱々しい魔力弾。
タバサの動きと思考を止めるためのハッタリだったのだ、と気付いた時には、既にリリスは至近距離。
激しい連続攻撃(チェーンコンボ)が、円盤状の魔法障壁の上から構わず叩きこまれる。
これでは動けない、逃げられない、反撃できない。防御姿勢を崩した瞬間に、やられてしまう。
「――ッッ!! ガードが堅いよグリーン! これじゃ――」
「なら、そこから『ミスティックアロー』! 叩き込めっ!」
新たな指示がまた飛んでくる。『ミスティックアロー』……『神秘の矢』? 今度も飛び道具系の技だろうか?
瞬時にそう考え、防御魔法『ラウンドシールド』を維持し続けようとしたタバサの身体は、次の瞬間。
円盤状の障壁を掻い潜るようにして飛び込んで来たリリスに、がっしと掴まれた。
ガードの姿勢を取っていたのに、掴みに来られては抵抗のしようがない。
片方の翼が巨大な手の形になり、タバサの身体を鷲掴みにする。もう片方の翼が、巨大な弓を形作る。
矢を射って攻撃する遠距離技ではなく、『犠牲者そのもの』を矢にして射るという、破天荒な技――!
タバサがその事実に気がついた時には、既に遅し。
「飛んでけ〜〜っ! バイバイッ!!」
まさに矢のようなスピードで、タバサの小柄な身体は打ち出される。
広場のすぐ近く、石造りの塔の外壁に叩きつけられる。
轟音。そして爆発音。
頑丈なはずの壁もその衝撃に耐え切れず、ガラガラと大きな穴が開く。
少女の小柄な身体が、壁を突き破って叩き込まれる。姿が見えなくなる。
もうもうたる粉塵が舞い上がり、どう見ても、散々痛めつけられたタバサが耐えられるダメージではない。
そこにいる誰もが、タバサの戦闘不能を確信した。
もしかしたら死んではいないかもしれない。一命は取り止めたかもしれない。が――もう、動けまい。
そして残されたメンバーに、リリスの攻撃を真正面から受け止めるような力は無いわけで――!
* * *
――リリスは、一言で言えば、舞い上がっていた。
信じられないほど自分の身体がよく動く。
自分で考えて戦っている時よりも綺麗に、最高のコンボが次々と決まる。
『君は君の『本当の力』を知らない』『俺ならきっと君の『本当の力』を引き出すことができる』――
まさにグリーンの言った通りだった。
タバサを石造りの塔に叩き込んだリリスは、かつてない充実感に顔を綻ばせる。
タバサは間違いなく強かった。光る鎌の斬撃も、魔法攻撃も、どれも当たっていれば危ないものだった。
実際、激しい攻防の中、光の鎌が肩を掠めていたが、それだけでもかなり痛い。直撃だったら大変だった。
その強いタバサを相手に、ここまで一方的に戦えたのはグリーンのお陰。
適切な時に適切な指示を出してくれた、グリーンのお陰。
(グリーンと一緒なら、あたしきっと誰にも負けない!グリーンが指示を出してくれるなら、誰にも負けない!
ニケにも、エヴァにも、デ、ディ、えーっと何だっけ、ともかく『ディなんとか』って子にも、きっと負けない!
もしかしたら、ジェダ様にだって……!?)
心の中、何の気もなしに呟いて――ふと、リリスはその言葉の持つ重みに気付いて、凍りつく。
とうとう思い出せなかったインデックスの魔法名など、もはやどうでもいい。
そんなことよりも……!
(あたしが……ジェダ様に、勝てる?! 本当に、あたしが、勝てちゃうかもしれないの?!)
それは、リリスの胸の中に初めて芽生えた叛意。
今までは想像することすらできなかった発想。
確かにジェダはリリスの恩人だ。身体を持たぬ魂に、この仮初めの身体を与えてくれた。
けれどもそれ以上に、間近で見ていたジェダの力は強大で、絶大で、圧倒的で――。
決して勤勉な部下とは言えないリリスも、流石に面と向かって逆らったことは一度も無かったのだが。
そのジェダに、勝てる、のかもしれない。
もしも、グリーンが背後から指示をくれるのならば。
――そう思ってみると、色々と前提が変わってくる。そう考えれば、浮かぶ発想も変わってくる。
今までは、ジェダのご機嫌を取って、最大限彼の望む行動をとって、その上でご褒美を貰おうと思っていた。
ジェダに頼んで請うて、なんなら土下座してでも、グリーンの魂を見逃してもらおうと思っていた。
精一杯頑張って考えても、そこまでしか思いつくことが出来なかった。
けれど。
もしもジェダと戦って勝てるなら――リリス自身に、ジェダさえも上回れる素質が眠っているなら――
そこまで低姿勢に出る必要は、無い。
自分の力を見せ付けて、ジェダを脅してもいい。妥協を引き出してもいい。力づくで認めさせてもいい。
そして最悪の場合、ジェダを殺して下克上を狙うという手も――!
(――ダメ! ジェダ様に逆らうなんて、そんな……! でも……!)
自分の中に沸き上がってきた、とてつもない発想。あまりのことに眩暈さえ覚えて、慌てて否定する。
ジェダは敬愛すべき主であり、父親のような存在であり、彼女にとってはまさに神そのもの。
だけど、グリーンはまた違う意味で大切な存在で、たとえジェダの命令でも絶対に失いたくない存在で……!
リリスの中で、ジェダへの忠誠心と、グリーンへの想いがぶつかり合う。
リリスの心が、激しく揺れ動く。
「……リス! リリス! どうした、まだ終わってないぞ!」
だからリリスは、しばらくの間、自分がボーッとしていたことにすら気付かなかった。
何度も呼びかけられて、ようやく正気に戻る。
まだ1人を倒して1人を子豚に変えただけ。まだ動ける相手が2人残っている――
そのことをリリスが思い出した時には、僅かに遅かった。
* * *
支援
!
――グリーンもまた、舞い上がっていた。
大雑把にリリスの持ち技とその特性を聞き出しただけで、この強さだ。
見た目だけならクールで落ち着いた普段のグリーンのままだが、内心では激しい興奮を抑えきれない。
強力で忠実な仲間から、自分の指示で120%の実力を引き出す――まさに、トレーナー冥利と言っていい。
本来、天性の戦闘センスを駆使し、機転を利かせて戦うのはレッドの得意とするスタイルだ。
グリーンはむしろ育成が本分。時間をかけて鍛え上げ、絆を深め、そして正攻法で確実に勝利するタイプ。
けれども、常に自分の理想通りに戦えるわけでもない。
トレーナーとして様々な経験を積む間に、グリーンもまた、それなりに鍛えられてきたのだ。
レッドには及ばないまでも、並大抵の人間よりはよほど頭が回る。戦闘の駆け引きも知っている。
ともあれ、出会ったばかりでコレなのだ。
もしこの先、じっくり特訓する時間が持てるなら、彼女はまだまだ強くなれる。
戦いの中で垣間見えたいくつかの欠点を補っておこうか。それとも、長所をさらに伸ばす方向に進めようか。
『育てる者』としての才能を最大限に発揮すれば、どちらの方針を選んでも、きっと……!
(きっとリリスは強くなる。できれば新たな技も覚えさせたい。
俺の持てる技術全てを注ぎ込めば、きっと今までのどんなポケモンよりも強く……
……って、ちょっと待て。俺は今、何を考えた!? 何を考えてる!?)
心の中に浮かんだ言葉に、グリーンはようやくハッとなる。自分自身の考えに気付いて、愕然となる。
グリーンは……いつの間にか、最愛の恋人・リリスを、ポケモンと同等の存在だと見なしていた。
そして、ポケモンの育成とバトルの技術を、そのままこの人間同士の殺し合いのゲームに持ち込もうとした。
そのどちらも、グリーンの潔癖な倫理観には相容れないもの。
きっと祖父のオーキド博士は許さないだろう。ポケモントレーナーとしては、許されない態度だろう。
なのに何故、自分はそんな考えを持ってしまったのか。
何故、自分はポケモンバトルの時のように、リリスに指示を出して戦わせてしまったのか。
今さらながらに、激しい後悔に襲われる。
……グリーン自身には、自覚が無かった。
今の彼は、リリス、つまりサキュバスの体液によって「酔っ払っている」ようなものなのだ。
当然、自制心や理性の働きは、普段より鈍くなる。
リリスへの想いを最優先にした結果、それらの倫理を軽視してしまったのも、無理はなかった。
呆然とするグリーン。とはいえ、流石に彼は冷静である。
すぐに、今はまだそんな物思いにふけっている場合ではないことを思い出す。正気に返る。
まだ1人倒しただけ。その1人だって、損害の様子は確認できていない。まだ終わっていない。
こちらも何を考えているのか、頭を押さえてボーッと立ちつくすリリスに、グリーンは声を荒げる。
見れば隻腕の少年は何かを懐から取り出していたし、最初にKOした小人はようやく起き上がろうとしている。
そして、白い子豚は回れ右して逃げ出そうとしている。仲間を見捨てて、1人で逃げ出そうとしている。
ここで反撃を許すわけにはいかない。1人だって逃がすわけにはいかない。
「リリス! リリス! どうした、まだ終わってないぞ!
子豚が逃げる、決して逃がす――グゥッ!?」
叫びかけたグリーンの口から、苦痛の呻きが漏れる。何の前触れもなく、グリーンを激痛が襲う。
竹刀を取り落とし、右顔面を押さえながら、思わずその場に膝をつく。
見上げれば、隻腕の少年が1冊の古い本を手にしている。
互いに片目同士、視線の合った少年がニヤリと笑う。
「俺もよく分かんねーけどな……『最も単純な報復の呪い』、だそうだぜ。どうでぇ! そのお味は?」
* * *
――白レンは、早々に見切りをつけていた。
自分自身も格闘の心得があるから、分かる。分かってしまう。
タバサではリリスに勝てない。このままでは、万が一にも勝てない。
タバサ自身が言っていた通り、彼女は本来後方支援向き。スピードもパワーもあまり無いのだ。
せめて白レンが万全であったなら、タバサと代わって前衛に立ち、あの高速の連続攻撃に対応したのに。
イシドロは片目を潰されて投石のコントロールを失い、蒼星石は早々にKOされた。
事態が打開される可能性は、限りなく低い。
白レンは、改めて自分の姿を確認する。
雪のように真っ白な肌を持つ、綺麗で可憐な可愛い子豚。目だけが血のように赤い。
いや、他の人は「可愛い」と思うかもしれないが、白レンにとっては我慢のならない屈辱的な姿だ。
そして姿だけでなく、ほとんどの能力が封じられてしまっている。
氷を出すことも出来ない。猫を召喚することも出来ない。白猫に姿を転じることも出来ない。
牙も爪もないこの姿では、肉弾戦を仕掛けることさえ出来ない。
目の前にはさっきまで握っていたエーテライトが1本落ちているが、もちろんこれを振るうことも出来ない。
常識から考えて、こんな強制変身など、そうそう長続きするとは思えないのだが。
(これは……駄目なようなら、早めに逃げ出さないとね。
せっかくの『戦力』をここで失うのは痛いけど、私が死んだら元も子もないし――)
傍からは可愛らしい鳴き声にしか聞こえない独り言。
何を言っているのか、とイシドロがこちらを向くが、やはり意味は分からないらしい。
こちらの真意が伝わらないのはいいが、これでは指示を出すことすらできない。白レンは小さく溜息をつく。
と、そんな彼女の目の前で、事態が急変する。
1人でリリスと渡り合っていたタバサ、その身体がリリスの翼に掴まれ、矢のように放たれる。
石造りの塔に激突。轟音。爆発音。
なんとも呆れたことに、あの頑丈そうな外壁を突き破ってしまっている。あれでは、まず死んだと見ていい。
白レンは決断する
(まったく、全然使えないじゃない! イシドロ、後は任せたわよ! 私は逃げるわ!)
白レンは鼻を鳴らすとクルリと回れ右し、その場から逃げ出した。
口に自分のランドセルを咥えて、一目散に逃げ出した。
子豚の足は短い。ゆえに全力で走っても大したスピードが出ないが、白レンは逃げ切れると確信していた。
何故なら。
「リリス! リリス! どうした、まだ終わってないぞ!
子豚が逃げるぞ、決して逃がす――グゥッ!?」
「俺もよく分かんねーけどな……『最も単純な報復の呪い』、だそうだぜ」
何故なら、こういう時のためにイシドロを調教し、こういう時のために『あの宝具』を委ねたのだから。
* * *
――蒼星石は、ようやく目を覚ました。
どれほどの間気絶していたのだろう。
軋む身体を大地から引き剥がすように起こした彼女が、そして見たものは。
塔の中に叩き込まれるタバサの姿と、一目散に逃げ出す白い子豚の姿だった。
(くっ……タバサっ……! 戦闘は、まだ続いてるのかっ……!?
白レンは……あれじゃ足手まといになるだけか。なら、一時身を隠すのも手か……!)
身体のあちこちが痛い。それでも頑張って身体を起こす。
タバサが動けないなら(まだ死んではいないと思いたいが)、蒼星石がなんとかしなければ。
そう思って必死に身体を起こしたのだが、何故か動きがない。
敵味方双方、何故か攻撃らしい攻撃もしていなくて――
「リリス! リリス! どうした、まだ終わってないぞ!
子豚が逃げるぞ、決して逃がす――グゥッ!?」
「俺もよく分かんねーけどな……『最も単純な報復の呪い』、だそうだぜ。どうでぇ! そのお味は?」
「ぐ、グリーンっ!!」
グリーン、と呼ばれた指揮官的立場の青年が、右目を押さえて膝をつく。
イシドロが、古い本を手にしてニヤリと笑っている。
リリスが、彼女らしくもなく大いに動揺している。
まだ息を吹き返したばかりの蒼星石には、何がなんだか分からないが……ただ1つだけ。
一連のドサクサの中で、地面に落ちた「とある武器」に視線が釘付けになる。
これだ。この劣勢を一挙に覆せる、唯一の手段は――!
「キミっ――グリーンに何したのっ!? 早く戻してよっ!!」
「へっへっへ。戻せって言われて戻す奴がどこにいるよ!? 俺達は敵同士だぜ?!」
「こ……このぉぉっ!!」
まるで攻撃して下さい、と言わんばかりに挑発をするイシドロ。激昂して彼に突進するリリス。
その場の注意は全てそちらに惹きつけられて、蒼星石はイシドロの意図を「そのように」理解する。
(すまない、イシドロっ! 君がそれほどの覚悟なら、ボクは、ボクのやるべきことをするだけだっ!!)
身体中の関節が軋みを立てるが、蒼星石は構わず飛びおきてダッシュする。
狙いは未だ膝をついたままのグリーン、および――その足元に転がる、1本の竹刀。
ハッ、とグリーンが顔を上げるが、もう遅い。
蒼星石は、素早く竹刀を蹴り上げて――
空中で、薔薇乙女の体格には大きすぎるその竹刀の柄を、両手で抱えるようにして捕まえて――
全身で振り回すようにして、動けぬグリーンの身体に振り下ろす。
次の瞬間。
ポンッ! と煙が上がって、グリーンは変身する。一房の前髪の生えた、1匹の子豚に変身する。
無理して長大な竹刀を振るった蒼星石は着地に失敗し、無様に地面に転がってしまう。
それでも、これは大きな一撃。戦況を一変させる一手。
「――やったっ!」
「がっ……はっ……!!」
蒼星石の歓声と、イシドロの呻きが重なる。
一瞬、歓びに顔をほころばせかけた蒼星石は、振り返って見て愕然とする。
ほぼ同じタイミングで、リリスの貫き手がイシドロの腹部を貫いていた。
それはどう見ても、致命傷。
そして致命傷を負ってなお、イシドロは血と共に最期の呪詛を紡ぐ。
「かかったな――『偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)』!!」
まだまだ支援
* * *
――バルディッシュ・アサルトは、タバサという少女のことが好きだった。
バルディッシュの目には、本来の主人・フェイトと、現在の仮の主人・タバサが、どこか重なって見えたのだ。
もちろん、表面的な外見や性格は大きく異なる。金髪、という以外にほとんど共通点が無い。
けれども、どこか世間ズレした感性とか。その芯の強さとか。
傷ついても傷ついても、諦めずに立ち上がる不屈の勇気とか。
自分自身のためではなく、仲間の、トモダチのために全力を尽くすその誠意とか。
そういった深い部分に、どこか共通する魂の輝きを見たのだ。
インテリジェントデバイスの矜持に賭けても、この少女をこんな所で死なせるわけにはいかない。そう思った。
「くっ……ふぅっ……! あ、あれ……? わたし……生きて、る?」
『衝突の瞬間、自分の判断で『リアクターパージ』を行いました』
――もうもうと粉塵舞い上がる、薄暗い石造りの塔の中。
頭を振って身体を起こすタバサに、バルディッシュは現状を説明する。
いつの間にか、タバサの身体を包んでいたあの蒼い衣装は消えうせている。
代わりに残されていたのは、白いドロワーズとキャミソール。蒼星石が服の下に着ている下着と同じもの。
服を犠牲にすることで、タバサはなんとか命を取り留めたのだ。
『バリアジャケットの表層部分を『自爆』させ、衝撃を相殺する技です。
速力が上がる代わりに防御力が著しく低下してしまう、最終防衛手段だったのですが……』
解説をするバルディッシュのボディに、時折、ビリッと紫電が走る。黒い杖にも、所々にヒビが走っている。
あのリリスの連続攻撃は、それを受け止めていたバルディッシュにも深刻なダメージを与えていた。
それでも彼は苦痛を訴えることなく、タバサの身を気遣う。
『バリアジャケットを再構築しますか? 今再び攻撃を受ければ、今度こそ貴方の身体が持ちません』
「ううん、待って……。今、『すばやさ』が上がる、って言ったよね……?」
血を吐きながら、それでもタバサは確認する。
身体に受けたダメージは深刻だが、それでも闘志は未だ消えていない。タバサはまだ、諦めていない。
バルディッシュの何気ない一言から、一発逆転の可能性を探っている。
『はい。現在の『インナーフォーム』は、本来の主・フェイトの『ソニックフォーム』にも相当します。
『ソニックセイル』を出せば高速戦闘も可能になるはずですが……防御の方は、裸とほとんど変わりません』
「なら――リリスより先に、攻撃を当てることもできるかもしれないね。
こっちの攻撃が効かないってわけじゃないんだから……もしも、一撃で決めることができれば……!」
タバサは立ち上がる。フラつく身体を杖で支えながら、なんとか立ち上がる。
そして暗い塔の中、その幼い顔に不敵な笑みを浮かべると、一言。
「ごめんバルディッシュ。もうちょっとだけ、『無茶』する。最後まで付き合ってくれる?」
『 Yes sir. 』
もちろん、バルディッシュ・アサルトに異論があろうはずが無かった。
* * *
イ、イシドローーーーー!!!
――リリスは、パニックに陥っていた。
愛しのグリーンを苦しめた少年は、怒りに任せて即刻その腹をブチ抜いた。
だがリリスが彼を襲っている隙に、グリーンは彼自身の武器で子豚の姿に変えられてしまって。
今度は蒼い服の人形に怒りをぶつけようとして――突然、激痛に襲われた。
「『偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)』――!!」
腹を貫かれ、打ち捨てられた少年が、確実に死に至る傷を負ったまま、それでも宝具の真名を開放する。
その身は大地に崩れ落ちても、息のある限り呪詛は効力を表す。
リリス自身に、ダイレクトに苦痛が跳ね返る。
腹の真ん中に大きな風穴を開けられたような感覚。立っていることも困難な激痛。
ダークストーカーたる自分は、実際に腹を貫かれても、これほどの痛みは感じはしないというのに……!
リリスは、がっくり膝をつく。
動けない。いや、どう動いたらいいのか分からない。
経験のない痛みに、自分がどこまで動けるのか分からない。こういう時どうしたらいいのか分からない。
救いを求めるようにグリーンの方に視線を向けるが、当然ながら子豚は何も言わない。言うことができない。
(グリーン……ここから、どうしたらいいの?! ねぇ、グリーン!)
リリスは動けない。グリーンからの指示を断ち切られて、どう動けばいいのか分からない。
自分1人で「みんなと遊んでいた」時は、どうやって自分の行動を決めていたんだっけ?
分からない。分からない。何もかも、ワカラナイ。
そして、混乱の極地にあって動けぬリリスの前に、静かな死神の足音が聞こえてくる。
蒼星石も、死にかけていたイシドロも、その人物に釘付けになる。その人物の迫力に息を飲む。
塔の中、薄暗がりの中からゆっくり歩み出て来る影。考えのまとまらないリリスにも、直感的に分かってしまう。
これは――この足音は、敗北の音だ。
死を齎す者だ。全ての終わりを告げる者だ。何もかもブチ壊しにする者だ。
「……バルディッシュも、力を貸してくれている。カラダとココロの全てを賭けて、支えてくれる。
だからっ……私もっ……!」
それは――既に殺したと思っていた第一の強敵・タバサだった。
もう、あの堅く蒼い服は無い。あられのない下着姿で、傷だらけの身体で、それでも堂々と姿を現す。
純白の下着の所々に鮮血を滲ませながら、それでも尽きぬ闘志を漲らせ、彼女は杖を振りかざす。
呆然とするリリスの眼前で、少女は大きく腰を落として身構える。
「いくよ、バルディッシュ――『てんくうのつるぎ』ッ!!」
『 Drive ignition. Load Cartridge. ―― Zamber form!』
バルディッシュの頭部、リボルバー状のシリンダーが火を吹き、空薬莢を3連続で排出する。
見る間に杖が大きく姿を変える。
伸びて、ズレて、回転して……最後に光の刃が出現し、身長をも遥かに超える長さの巨大な剣の姿になる。
『ザンバーフォーム』。
アサルト、ハーケンに続くバルディッシュ・アサルトの第三形態。もはや杖の原型さえ留めぬ破壊の力。
それだけでも凄まじいプレッシャーだというのに、タバサはさらに……!
「さらに加えて―― 『 バ ・ イ ・ キ ・ ル ・ ト 』 ぉ ッ ! ! 」
絶叫と共に、異質な魔法を迷わず重ねがけする。魔力の刃の上に、さらに魔力を乗せる。
光の大剣の上に、輝くオーラが纏わりつく。過剰な集中を強いられた魔力が、バチッ、バチッと所々で爆ぜる。
暴発寸前、限界ギリギリ紙一重。一極集中された破滅の光。
よく見れば既にバルディッシュ中央の宝玉にも亀裂が入っていて、そう長くは持ちそうにない。
そしてタバサも長く時間をかけるつもりは無い。
出し惜しみ一切なし。手の内がバレても気にしない。考えうる限り最強の一撃で、決める。
勇者。
今のタバサを一言で表現するなら、おそらくこの言葉しかない。
絶望的な状況でも決して諦めず、たった1つの勝機に己の全てを賭けることのできる者。
たとえ天空の武具を扱う資格は持たずとも、タバサもまた、立派な勇者なのだ。
手足に生えた加速用の光の翼を見ても、その決意の篭った瞳を見ても、タバサの作戦はまず1つきり。
まっすぐ突っ込んで、斬りつける。ただ、それだけ。
圧倒的な速度と破壊力で剣を振るだけ。小細工も何もない。外れた時のことも考えていない捨て身の作戦。
それに対する、リリスの方は――
(どうすればいいの? グリーン、指示を頂戴! グリーン、あたしを操作して!
あたしじゃダメなの、グリーンの指示がなきゃ……!)
報復の呪詛のせいで身体が痛む。普段通りの動きはきっとできない。
でもまだリリスには多彩な技が残されている。幻惑の手段も反撃の手段も、山ほど考えられる。
選択肢は無数にあって――しかし、だからこそ、今のリリスには「選べない」。
絶対にミスのできない局面を目の前にして、自分自身の判断も直感も信じられない。
グリーンの適切な指示、それに従う喜びを知ってしまった彼女には、もう指1本動かすことができない。
「疾風、迅雷……『バイキルト・ザンバー』、『会心の』ォ――!」
「――グリーン! 指示を! 指示を頂戴! あたし、どうすれば――!」
轟っ!
タバサが大地を蹴る。凄まじい速度で、天を衝くような光の刃が迫る。
いくらリリスでも、こんなものの直撃を喰らったらどうしようもない。一瞬で死んで消滅した上にお釣りが来る。
冥王ジェダだってまともに受け止められるかどうか。それくらいのエネルギー量。
そうと分かっていても、リリスはもう、自分の判断では動くことができなくて――!
「―― 『 会 心 の 一 撃 』 ィ ッ ! ! 」
斬。
森の中、巨大な刃が容赦なく振り下ろされる。
その余波だけで何本もの大木が吹き飛ぶ。爆音と共に、大きく土煙が舞い上がる――
* * *
「……っと、これで全部かな? これでもういいでしょ? さっさと遊びに行こうよぉ。
あたし、説明するの疲れちゃった。グリーンでなきゃあたし、きっと殺しちゃってるかも」
「――じゃあ、最後に、1つだけ。他のことは全部忘れてもいいから、覚えておいて欲しいことがある」
「何? 面倒くさいことだったらイヤだよ?」
「リリスが俺の指示に従うなら、おそらく勝てると思う。負けるとは思えない。
けれども、戦いというのは何が起こるか分からない。
ひょっとしたら、俺が指示も出せない状況に陥るかもしれない。
もしも万が一、そんなことになった時には――――」
* * *
がんばれタバサ! 支援
――空を見上げれば、太陽はいつの間にか天頂を過ぎ、傾き始めている。
今もこの島のどこかでは殺し合いが続いているのだろうか。少なくともこの辺りはまだ静かなものだ。
森の中、子豚は鼻を鳴らす。
(……ふん。音は聞こえなくなったけど……どうなったのかしらね)
白レンは、様子を見に戻ろうか、とも思う。
彼女が逃げ出した時の状況から考えれば、イシドロたちはまず殺されてしまっただろう。
持ち物もあらかた奪われているはず。
けれど――ひょっとしたら、何か残っているかもしれない。
特に気になるのは、タバサが持っていたバルディッシュ・アサルト。
宝石の姿に戻れば、襲撃者たちにはそれがあの杖だとは分からないだろう。見落とす可能性は十分にある。
戻って、戦いの跡を調べなおす価値は十分にある。
それに、万が一彼らが勝っていたなら、貴重な手駒として利用できるだろうし……。
(ま、どっちにしても、元の姿に戻ってからでないと、危険だけどね……)
そこまで考えて、白レンは溜息をつく。
この強制変身の効果も、そうそう長く続かないだろう。時間が経てばいずれ解けるだろう。
けれども、子豚化が解けるまでは、迂闊なことは出来ない。
しばらくどこかに隠れておくべきかしらね――そう思った白レンのすぐ側で。
ガサガサッ、と音がして、藪の中から1人の少年が飛び出してきた。
咄嗟に身を隠す暇もなく、メガネの少年と白い子豚の目が合ってしまう。
「……!! え、えーっと……ジャイアン、じゃないよね?」
こいつは何を言っているんだろう?
出会い頭に意味不明の単語を聞かされた白い子豚は、小首を傾げた。
名簿の上には『ジャイアン』という名前は無い。『剛田武』という名前しか載っていない。
それが人名である、ということに気付けなかったのは、無理もないことだった。
* * *
「え、えーっと……ジャイアン、じゃないよね?」
白い子豚が、「何を言っているんだろう?」と言わんばかりの態度で小首を傾げる。
見れば咥えているランドセルの色は赤。女の子が持つ色。
白くて綺麗なその身体も、ジャイアンのイメージからは掛け離れたものだ。
野比のび太は、確信する。
少なくとも、これはジャイアンじゃない。なら、殺したって構わないんだ。
何がどうなって「人間が子豚になる」なんてことが起こるのかは分からない。
これで2匹目。最初の子豚が殺された時のトラウマがフラッシュバックし、一瞬気分が悪くなる。
けれども――冷静になって見れば、首に嵌っている首輪は、確かに自分たちの首輪と同じものだ。
すなわち、参加者の1人。
参加者を3人殺せば、ご褒美が貰える。
「ふふふ……! に、逃げちゃだめだぞぉ……!」
恐怖に負けた。赤ん坊に負けた。女の子にも負けた。
けれど、無力で小さな子豚が相手なら……!
のび太は白い子豚ににじり寄る。グルグルと渦を巻く危険な目つきで、白い子豚との距離を詰める……!
【C−2/森/1日目/午後】
【白レン@MELTY BLOOD】
[状態]:腹部に大きなダメージ(休んでマシになってきた)、中度の疲労、体の所々に擦り傷
「こぶたのしない」の力で、白く可愛らしい子豚の姿に変身中。ランドセルは咥えて運んでいる
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、エーテライト×2@MELTY BLOOD、
ころばし屋@ドラえもん、小銭入れ(10円玉×5、100円玉×3)、
[服装]:こぶたに変身中なので今は無し。
元の姿に戻れば、『いつもの白いドレス(洗ったばかりなので一部が少し湿っている)』になる。
[思考]:ジャイアン? 何よそれ?
第一行動方針:目の前の子供(のび太)への対処。
第ニ行動方針:蒼星石たちを置いて逃げてきてしまったが、後で戻って戦場跡を漁るかどうか思案中
第三行動方針:できれば『ご褒美』で傷を治したい。
基本行動方針:優勝して志貴を手に入れる。
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:心身ともに疲労、鼻骨骨折。
[装備]:なし
[道具]:グリーンのランドセル(金属探知チョーク@ドラえもん、基本支給品(水とパンを一つずつ消費)、
アーティファクト『落書帝国』@ネギま!(残ページ3))、ひまわりのランドセル(基本支給品×1)
[服装]:いつもの黄色いシャツと半ズボン(失禁の染み付き。ほぼ乾いている)
[思考] :こ、この子豚が相手なら、僕だって……!
第一行動方針:目の前の白いブタをやっつける
第二行動方針:最初の子豚≠ジャイアンだと確信するために、ジャイアンを探す。
第三行動方針:出会う人には警戒し、基本的に信用しない。
だが、自分を守ってくれそうな人・脱出する方法を知ってそうな人なら考える。
基本行動方針:死にたくない。
[備考]:「子豚=ジャイアン?」の思い込みは、今のところ半信半疑の状態。
目の前の白い子豚は、少なくともジャイアンではないと確信しました。
* * *
――空を見上げれば、太陽はいつの間にか天頂を過ぎ、傾き始めている。
今もこの島のどこかでは殺し合いが続いているのだろうが、少なくともこの辺りはまだ静かなものだ。
森の中、子豚は一声鳴くと、その前足で地面を引っ掻く。
地面を引っ掻いて、不器用に文字を書く。筆談を試みる。
『――なぜ退いた? あれくらい避けれただろう?』
「だ、だって……だって、グリーンが……グリーンが……!」
子豚の視線に泣きべそをかいていたのは、リリス。
こうして見た限りでは五体満足。身体の一部だって欠けてはいない。もう呪詛による痛みも消えている。
なのに、手に鞭やらビンやらを抱えたまま、地面にぺったりと座ってグズグズと泣いている。
突き刺さりそうな前髪の生えた子豚――他ならぬグリーンが変身した姿だ――は、胸の中で溜息をつく。
確かにグリーンは、戦いが始まる前、作戦会議の時点でこう言った。
『ひょっとしたら、俺が指示も出せない状況に陥るかもしれない。
もしも万が一、そんなことになった時には、撤退することも考えておくんだ』、と。
その言葉を間一髪のところで思い出したからこそ、リリスは逃げることが出来た。
迫り来る巨大な光の刃が衝突する寸前、恥も外聞もなく背中を見せて、その場から逃げ去ることが出来た。
逃げざまに、落ちていたグリーンの持ち物と、子豚になって軽くなったグリーンを掻っ攫っていくことも出来た。
けれど……それでもグリーンは考えてしまうのだ。
あの、タバサが振るおうとした最後の一撃。
確かに、あれが当たっていたら大事になっていただろう。いくらリリスでも耐えられなかっただろう。
だけど――あんな見え見えの攻撃、いかに速かろうが、リリスに捌けないわけがないのだ。
彼女が冷静だったなら、避けて反撃することは十分出来たはず。
そうすれば、今頃は4つの首輪をゲットしていたはずで……返す返すも、悔やまれるのだった。
やはり、こういうトラブルが起きた時こそ、訓練不足の影響が出てしまう。即席コンビの弱さが出てしまう。
グリーンが直接状況を把握し、指示を出している間はまだいい。
だがそれが出来なくなると、途端にモロさが出る。阿吽の呼吸で互いの意図を察することも出来ない。
戦いの最中にも考えたことだが、やはり一度、彼女につきっきりで鍛えなおした方がいい。
半日も特訓を積めば、リリスの戦闘技能も2人の絆も、より強くなることだろう。
けれど――やはりそれは「できること」ではあるが、「やってはいけないこと」なのだった。
明らかに、ポケモントレーナーとしての道に反することなのだった。
リリスへの愛を取り、彼女を鍛え上げるか。ポケモントレーナーとしての倫理を取り、別の方法を探すか。
グリーンは苦悩する。子豚の姿のまま、イライラとその場を歩き回る。
「ねぇ、グリーン……。これから、どうしよう……」
『……小一時間もすれば、元の姿に戻れる。それまでは、身の安全を第一に行動しよう』
「そうだね……。
あ、そうそう。グリーンが落とした持ち物、逃げる時に一緒に拾ってきたから。
とりあえず、あたしのランドセルに入れておくからっ」
リリスは涙を拭うと、必死に顔を見せてくる。無理やり浮かべたというのが手に取るように分かる笑顔。
あの戦いの途中から、リリスの様子は明らかにおかしい。彼女は彼女で、何か悩んでいる節がある。
それが何なのか、今のグリーンには分からないけれど……グリーンにとって、悪いことではないだろう。
グリーンは、黙ってリリスの動きを見守る。荷物を仕舞いこむリリスをじっと見守る。
『こぶたのしない』は奪われたままのようだ。九尾の猫、ハリボテの首輪、そして無数のアメ玉の入った瓶。
意味も知らずそれらの道具を仕舞うのを、黙って見守る。
魔女の惚れ薬。
自分自身も媚薬効果のある体液に毒されていると気付かぬグリーンは、そして自らの行いを恥じた。
そんな下らない道具で愛する人の心を縛ろうとした自分自身のことを、深く深く恥じた。
あるいは――この敗北は、そんなグリーンに対する罰なのだろうか。
ここで支援
【B−4/森/1日目/午後】
【グリーン@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:リリスにメロメロ、中程度の疲労と消耗、体の数箇所に怪我、
腹部打撲(内臓や骨を損傷しているおそれ有)
「こぶたのしない」の力で、彼自身が子豚の姿に変身中(尖ったクセのある前髪が少しだけ生えている)
[装備]:なし
[道具]:なし(持ち物は全てリリスが拾って預かっている)
[思考]:リリス……
第一行動方針:豚化状態が解けるまで、なんとかしのぐ。
第ニ行動方針:リリスのためにタワーへ向かいつつ首輪を狩る。
また、リリスを首輪の束縛から解放してやるために、首輪解除方法の模索は継続して行う
第三行動方針:レッド達は……まあ、大丈夫だろう。リリスが許してくれたら探してみようか
第四行動方針:時間と余裕があれば、リリスと特訓を積んでおくべきか?
基本行動方針:リリスのために何でもする。対主催、首輪解除方法模索のスタンスは継続
【リリス@ヴァンパイアセイヴァー】
[状態]:グリーンにメロメロ。肩口に掠り傷。多少の疲労。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料は無し)、ナインテールキャッツ、魔女の媚薬@H×H、はりぼて首輪
[思考]:グリーン……
第一行動方針:グリーンが人間の姿に戻るまで守り抜く。
第ニ行動方針:グリーンと一緒に獲物を狩り、遊びを楽しむ
第三行動方針:18時にはB-7のタワーへ行く
第四行動方針:3人抜きしてご褒美でグリーンを治療する。
基本行動方針:優勝してご褒美でグリーンを手に入れる? それとも、グリーンと共にジェダに反抗する?
[備考]:コナン&ネギと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
ジェダに反抗してでも想いを通す、という選択肢に思い至りました。
現在、忠誠心とグリーンへの想いの間で揺れ動いている状態です。
[備考]:グリーンはリリスの体液の催淫効果によって、リリスは魔女の媚薬によって、
ともに相手にメロメロな状態にあります。
ちなみに、魔女の媚薬の効果は制限下で6時間程度。
どちらの効果が先に切れるかは、後続の書き手のかたにお任せします。
* * *
「……逃げられちゃった」
激戦の舞台となった、塔の前の広場。
タバサは呆然と、呟いた。
後の先を取るようなカウンター攻撃を喰らう可能性は、考えていた。
一旦その場を飛びのいて、相手が仕切りなおしを狙う可能性は、考えていた。
けれどまさか、あの状況から回れ右して逃げ出してしまうとは。
再度森から飛び出して来やしないか、と身構えるタバサに、バルディッシュが雑音交じりの声を上げる。
『エリア・サーチ……感知できる範囲に敵影なし。完全に逃げられたようd……ジジジッ……』
「バルディッシュ!?」
『中核部分に損傷確認……システムに重大な障害が発生……ジジジッ! ……待機状態に戻ります……』
呻くような声と共に、バルディッシュの姿が消えうせる。
タバサの身につけていた白い下着も光の粒子となって消え、代わりに元々着ていた普段着が出現する。
タバサの手の平の上で、ヒビの入った宝石が謝罪の言葉を呟く。時折その表面に電光が走る。
『 I'm sorry, sir. これよりしばらく、自己修復に入ります……どれ程の時間がかかるか分かりませんが……』
「分かった。直せるんだね? ……お疲れ様。しばらく休んでていいよ。無茶に付き合ってくれて、ありがとね」
タバサはバルディッシュを労うと、宝石を仕舞って仲間たちの所に歩みよる。
白レンはもう居ない。イシドロは倒れている。蒼星石は、倒れたイシドロの隣で涙を浮かべている。
戦闘中に聞こえた言葉を思い出し、タバサは小さく憤慨する。
「それにしても……白レンはもう信じられないねっ。あんなやつ、パーティに加えるんじゃなかった!
私たちのことを駒扱いして、『使えない』だとか何とか……その上、1人で逃げちゃって。
戻ってきたって、絶対許さないんだから!」
白レンが知らなかった事実がある。
それは、タバサが持っている特殊能力。
『動物の言葉を理解する能力』。父親から受け継いだ天性の才能。
常人にはただのブタの鳴き声にしか聞こえなかった白レンの愚痴も悪態も、彼女は全て理解していたのだ。
そりゃ、怒って当然である。
「……タバサ。そんなことより、イシドロが……!」
蒼星石が涙に濡れた顔でタバサを見上げる。どことなく恨めしげな視線。
タバサがバルディッシュを仕舞い、白レンのことを考えている間に、イシドロは息を引き取ってしまっていた。
彼の最期を看取った蒼星石は、哀しみと怒りの入り混じった表情でタバサを睨む。
「イシドロが、死んだのに……なんで君は、そんな平気な顔で……!」
「え? ああ、イシドロ死んじゃったのかー。まああのダメージじゃ無理もないか」
だが、タバサには蒼星石の怒りが理解できなかった。
彼女は平然と、「彼女の常識」に基づいた言葉を紡ぐ。
「死んじゃったなら、仕方ないよね。それじゃぁ……!」
* * *
タバサがバルディッシュを仕舞っていた、まさにその頃……
イシドロは、死の河を渡ろうとしていた。
倒れた少年に駆け寄った蒼星石は、顔を歪める。
片腕は無い。片目も潰れている。そして、腹部に開けられた大きな穴。
どう見ても助かるはずのない傷を前に、それでも蒼星石は必死で呼びかけた。
「イシドロ、しっかりするんだっ! 待っていろ、今傷の手当てを……」
「ちくしょう……畜生っ……! 俺は、おれは……!」
かつては敵同士、問答無用で襲ってきた彼。けれども、こうなってくると同情以外の感情は湧いてこない。
手当てなんて間に合う訳が無い。それでも悔しそうに涙を流すイシドロに、蒼星石は何かしてあげたくて。
せめて彼の無念、彼の心残りを和らげてあげたいと、必死に言葉を探す。
夢の中で見た光景を思い出し、彼の望むであろう言葉を紡ぐ。
「大丈夫、大丈夫だよ、イシドロ。君のお陰で、僕らも助かった。君の主人の白レンも逃げることが出来た。
何にも心配することなんて無いんだ。君は立派な騎士だ。だから、だから……!」
「ちくしょうっ……俺が護りたかったのは、そんなんじゃねぇ……! 騎士なんて、クソくらえだ……!
俺が、本当に、護りたかった、のは……!」
蒼星石はハッとする。
イシドロは――少年は、最期の最期になって、正気に戻っていた。
白レンの調教から、洗脳の影響から、脱していた。
霞んでもう見えない目で、彼は本来の仲間を探す。1本しかない手を、虚空に伸ばす。
「ガッツ……ファル姉ちゃん……パック……シール、ケ……」
最後に呟いたその名こそ、彼が本当に護りたかった相手なのだろうか?
それっきり、イシドロの身体から力が抜け、伸ばした腕も崩れ落ちた。
* * *
「……にしても……白レンはもう信じられないねっ。あんなやつ、パーティに加えるんじゃなかった!
私たちのことを駒扱いして、『使えない』だとか何とか……」
すぐ側で、タバサが1人でブツブツ文句を言っている。
イシドロの死に、しばし呆然としていた蒼星石の胸に、1つの感情が灯る。
それは、怒り。
「その上、1人で逃げちゃって。戻ってきたって、絶対許さないんだから!」
「……タバサ。そんなことより、イシドロが……!」
確かに、彼女たちとイシドロの関係は微妙なものだった。
深い信頼で結ばれている、とまでは言えなかった。
それでも、彼は仲間だったのだ。彼の自己犠牲があればこそ、あの強敵たちを撃退することも出来たのだ。
彼の死を悼み、哀しみ、埋葬するくらいはしてやってもいいはずだ。
なのに、タバサは泣こうともしない。蒼星石の口調も、思わず荒くなる。
「イシドロが、死んだのに……なんで君は、そんな平気な顔で……!」
「え? ああ、イシドロ死んじゃったのかー。まああのダメージじゃ無理もないか」
睨みつけても、タバサの態度は全く変わらない。
その軽い口調に蒼星石が怒りを爆発させようとした、まさにその時。
「死んじゃったなら、仕方ないよね。それじゃぁ……とりあえず棺桶に入れとこうか。いつもみたいに」
「…………は?」
……この子は、何を言っているのだろう。
『棺桶』? 『いつもみたいに』? この子は、一体何を……?
「あっ、そうか、棺桶ないのか……じゃあどうしよう。死体をそのまま担いで運ぶわけにもいかないし……」
「た、タバサ……君は、一体、何を? イシドロの身体を、どうするつもりなんだ?!」
「え? だって、死体でも連れてかないと困るじゃない。復活させる時に。
教会――は行ってもきっと神父さんが居ないか。世界樹の葉っぱも無いし……。
お兄ちゃんなら『ザオリク』使えるはずだけど、お兄ちゃん、そんなにMP残してるかなー」
『復活』? 『教会』? 『世界樹』? この子は何を言っているんだ?
蒼星石は激しい眩暈に襲われる。
人の死を「取り返しのつかないこと」なのだと理解してないその言動に、当初の怒りさえもしぼんでいく。
――もう、限界だと思った。
これ以上ついていけない、と思ってしまった。
この子と分かり合うのは無理なんだ、と思ってしまった。
いくら寛大な蒼星石でも、もう、色々と限界だった。
空は蒼く、森は静かで。
タバサは相変わらず、飛びっきりの笑顔を浮かべたままで。
蒼星石の心だけが、取り残されていた。
【C-3/塔の前/1日目/午後】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:全身打撲(度合いは不明)。姉妹達への精神的な壁、タバサに対し激しい混乱。
[装備]:バイオリンの弓@ローゼンメイデン、こぶたのしない@FF4、戦輪@忍たま乱太郎×9
[道具]:支給品一式、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、金糸雀のバイオリン@ローゼンメイデン
[思考]:……タバサ、君は何を言っているんだ……!?
第一行動方針:タバサと行動を共にし続けるかどうか、再検討する?
第二行動方針:簡単にでもイシドロを弔いたい。
第三行動方針:タバサの『夢』に入ってレックスと接触する? そのための準備をする?
基本行動方針:タバサに協力しつつ自分探し?
【タバサ@ドラゴンクエスト5】
[状態]:全身に大ダメージ、MP消費(大)、バリアジャケット解除(普段の服装に戻りました)
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは(カートリッジ残数2)(待機形態)(破損あり)
[道具]:支給品一式
[思考]:?? 蒼星石、どうしたの?
第一行動方針:イシドロの死体をどうするか考える。棺桶があれば迷わないが……埋葬なんてもってのほか。
第二行動方針:自分と仲間の身は「何としても」守る。
第三行動方針:信頼できる仲間を捜す。
第四行動方針:イシドロを「復活」させる手段を考える。
基本行動方針:「どんな手段を使ってでも」レックスを捜し出し、仲間と共に脱出する。
[備考]:「ドラゴンクエスト5」内でタバサが覚える魔法は全て習得しています。
ミッドチルダ式魔法について、バルディッシュからある程度説明を受けました。
いずれイシドロは「復活」させるつもりです(最悪、全ての戦いが終わった後にでも)。
白レンのことを見限りました。もう味方だとは思っていません。
バルディッシュ・アサルトはダメージを受け、自己修復中です。
受けたダメージは相当なものですが、少なくとも、手足が動かなかったり欠損したりはしていません。
(具体的な怪我については後の書き手さんに委ねます)
【イシドロ@ベルセルク 死亡】
[備考]:イシドロの死体は、支給品を持ったままです(食料の半分は上着の裏)。
基本支給品一式、手榴弾×2、ヴェルグ・アヴェスター@Fate/hollow ataraxia を持っています。
[備考]:白レンが逃げた際、手にしていた エーテライト@MELTY BLOOD を1つ、落としていきました。
すぐ近くに落ちています。
[備考]:C−3に立つ塔の外壁に、大きな穴が1箇所開いています。
塔の周囲の木々が、バルディッシュ・ザンバーの攻撃の余波で何本か倒れています。
以上、投下完了です。多大な支援、感謝します。
1名死亡、2名子豚化、負傷者多数。
幻の大技となったバイキルト+ザンバーフォームは、また使う機会もあるかもしれません。修復が済めば。
バルディッシュの損害、及び自己修復にかかる時間は後の書き手さんにお任せします。
修復完了前でも、無理すれば起動できるかもしれません。
なのは一期終盤のあの直し方が出来るか否かも、以降の書き手さんにお任せです。
投下乙!
結局最後はそれかタバサ……
どうしてマーダーやってる兄貴の方が常識人なのか。
あと、FF4のポーキーは魔法や特技が使えなくなるだけで、
移動速度や能力は変わらないし武器も普通に使いこなせますよ。
投下GJ
リリスグリーンのバカップルtueeeeeeeeee! なんだこの見事な連携プレー!
イシドロは漢だった……! ヴェルグアヴェスターを使った自己犠牲は燃えたぜ。
タバサの善悪を超越した価値観が出ていてGJでした。あと白レンやべえw
>>180 あれ、FF4はそうでしたっけ。
では、後日そのように直します。となると……エーテライトも持っていくことになるのかな……。
どのみち、魔法と特技を封じられた白レンの判断は変わらないことになると思います。
指摘に感謝です。
投下乙です。
やっぱ戦闘シーンとか派手で上手だなー、魔法の使い方とかすごく巧いですよね。
グリーンとリリスは即席な割に相性いいコンビで、すわパーティー全滅か!?とハラハラしました。
何とか逃れたものの、イシドロは死んじゃうし、白レンはのび太目の前にしてピンチだし、
バルディッシュは壊れかけだし…と、問題山積みですね。それぞれ、続きが気になる終わり方GJです。
で、それ以上にタバサこええ……、いや、基本いい子なんだけどさ。
価値観の相違って恐ろしいね、また二人っきりにされちゃった蒼の子カワイソス
>>182 あ、勘違いさせたようなのでもう一つ。豚状態はFF4にしかありませんよ。
ちなみに魔法特技封じ+攻撃力と防御力ダウンはカエルです。
>>184 むう、プレイしたのずいぶん昔だからか、記憶が曖昧になってる…… orz
重ね重ね感謝です。どうもカエル化とゴッチャになっていたようで。
後日、ちゃんと直しますが、とりあえず。
・白レンはエーテライトを落とさず、持っていく
・それ以外に展開の上での変更点なし。白レンが逃げに入るのは同じ
を約束しておきます。次の書き手さんのために。
足の速さなど、細かい豚の能力描写などを書き直す形になると思います。
乙です
白レン大ピンチだw
タバサ…ほんのちょっと言葉で説明すれば防げる食い違いなんだがなぁ
世界観が違えば価値観も倫理観も異なってくるよなそりゃ…蒼星石カワイソス
イシドロはよく頑張ったなあ
投下GJ
バトルがポケスペぽくて面白かった
イシドロの最後の叫びがキクなあ
投下GJ!
というか本当にタバサの価値観見てると
リリス&グリーンのバカップルのほうが遥かにマトモに見えてしまうから困る。
ゲーム版ドラクエの世界観はマジヤベエw
イシドロカワイソスwwwwwwwww
いや本当に、いろんな意味で。
タバサ…
先にしたらばを見ていた俺参上。「お、投下があったのか。死亡者スレは増えてないな…よし」
と思ってたらイシドロ死んだのかよ!誰も追悼してくれないなんてマジカワイソス。
まぁ、最後は洗脳されていたとはいえ、いや、されていたからこそか?
とにかくカッコよかったよ。残ったタバサと蒼星石のほうは心も身体もボロボロだな。
そして赤ん坊に負けたのび太は豚になら勝てるか気になるw
はじめは豚も殺せない子だったのに。
優しいのだけがのび太の取り柄だったのに
イシドロ死亡と明記されてないのは伏線?
タバサの言う通りザオリクがあれば助かるかもって事だろうか
そろそろ思い出して欲しい
のび太は自分が撃たれてもリルルを撃てなかったような優しい子だってことを
豚になろうと身体能力変わってないからのび太vs豚は五分五分だな。
リーチの差をどう活かすかが鍵だ!
なのはさんの殺害数は3どころじゃ収まらないだろうな。
1話で3人もやるなんて悪魔めw
八卦炉攻防戦でシューター当てた勝と拷問したヴィータを入れると5人w
イヴとかも正直死んだかと思ったぞ。
もし豚にまで負けたら、次の相手は……
そういや、第一話で組んだチームの中で、今も健在なのはタバサ・蒼星石だけだな
それももう崩壊しそうだけど
えー、修正スレに部分的に修正したものを投下しました。
実際に修正したのはそう何行も無いんですが。
主に豚の能力に関する描写や考察を直し、
また豚化しても装備は持てる、ということでステータス欄にも僅かに修正があります。
魔女の媚薬などは、変身した時のはずみで取り落とし、リリスが拾ったことにしてあります。
指摘してくださった
>>180=
>>184に再度感謝です。
修正乙です
今予約入ってたっけ?
◎現予約状況
・2007/08/27(月)予約 (延長申請済み:9/2(日)まで)
◆aAwQuafMA2 :トリエラ、リルル、ミミ
もっとも、水曜の時点で「明日か明後日には投下したい」とのことだったので、気になるところですが……
身の回りが忙しく、いったん予約を破棄させていただきます。
延長して間に合わなかった上にキャラを拘束してしまい、申し訳ありませんでした。
今北産業
グリーンktkr
バカップルコンビ強いな。重い怪我も負ってないようだし、ブタ化が解けたらまた脅威になりそうだな
あくまで解けたらだが・・
しかしブタ化が解ける頃にはリリス→グリーンの想いも消えてしまいそうだという事実
媚薬の効果あと二時間くらいだろ、効き目切れたらあの二人どうなるんだ
>>207 しんのすけの例を見る限り、ポーキーの方も効果は二時間くらいだぞ。
戦闘不能でもポーキーは解除されないし。
話題も無いし、出したかったロリショタの羅列でもしてみる
とりあえずパッと思いついた15人
うずまきナルト@NARUTO
奈良シカマル@NARUTO
ハリー・ポッター@ハリー・ポッターシリーズ
ハーマイオニー・グレンジャー@ハリー・ポッターシリーズ
出木杉英才@ドラえもん
ダイ@ダイの大冒険
ピノコ@ブラックジャック
小金井薫@烈火の炎
三千院ナギ@ハヤテのごとく!
愛沢咲夜@ハヤテのごとく!
ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!!
ティオ@金色のガッシュ!!
ゼオン@金色のガッシュ!!
倉田紗南@こどものおもちゃ
羽山秋人@こどものおもちゃ
一部マイナーなのもあるけど
俺も話題にのるか
俺は
ナランチャ@ジョジョ5部
広瀬康一@ジョジョ4部
日番谷冬獅郎@BLEACH
がせめて出したかったな
ん?ショタじゃないヤツがいる?そんなの気にしない
アトム@PLUTO
バレッタ@ヴァンパイアセイバー
シールケ@ベルセルク
トレイン=ハートネット(子供状態)@BLACKCAT
リコ@Gunslinger Girl
アリス@不思議の国のアリス/鏡の国のアリス(児童文学)
ドロレス・ヘイズ(ロリータ)@ロリータ(文学作品)
タバサ……棺桶あったらイシドロいれて引き摺って行くんだろうなぁww
懐かしいな、こどもちゃ、あれは名作だった。
堀内 愛理衣@ムシウタ
セレスティア・E・クライン@ウィザーズブレイン
迦遼 海江@DDD
非人間参戦を望んでた俺は15では収まらない
もともと小さい望みがCもどきが暴れた所為で皆無にOTL
非人間参戦不可はちゃんと投票で決まったことだよ
別に誰かが暴れたからとかじゃない
だから元々小さい望みって言ったじゃん
いやだから、Cもどきとかは関係ないって言ってるんだよ
>>218 もどきの暴れた後に投票があったんじゃなかったっけ?
何でもかんでも人のせいにするのはどうかと思うよ
スレの主旨を考えたら当然の結果だったんだからさ
それに、「非人間は参加不可」って言うよりは「見た目が人間っぽくない奴は参加不可」って感じだな
>>209 あえて流れを切って話題に乗る
ロワ登場作品限定だけど。
月村すずか、ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは
博麗霊夢、霧雨魔理沙、魂魄妖夢、チルノ、蓬莱山輝夜@東方project
ポーラ、ジェフ@MOTHER
有馬都古@MELTY BLOOD
主人公(幼年時代)@ドラクエ5
少年探偵団メンバー全員@名探偵コナン
イリーナ=フォウリー、ケッチャ、レジィナ@SWシリーズ全リプ
ok、あんまり思い浮かばなかったけど浮かぶだけ上げてみたんだぜ。
輝夜にたすけてえーりんさせたかt(ゴフゴフ
ドラクエ5の主人公が参加してたら、双子との絡みが面白そうだったな
ところで、ドラクエ系で他に良さそうな奴いるか考えてみたけど、
ドラクエって子供キャラ少ないな
子テリーとガボくらいしか思い付かない
バーバラはいけるかな?
普通に幼年ビアンカとか幼年ヘンリーとか。
あとガボがいけるならフォズとかかな?
確かに双子以外あんま子供っていないね、バーバラはちょっと微妙な気がする
脇巫女とまりさとNEETってロリなんか?
NEETが外見ロリじゃ無かったか?年は1000越えてるけど。
霊夢と魔理沙は相対的にロリの範疇。魔理沙はともかく霊夢はちと厳しいラインだけどさ。
とりあえずこのロワに出てる作品の中から挙げてみよう。
ユーノ、クロノ@リリカルなのは
おそらく今後もこの二人がロワに出ることはないだろうが、アリサが化けてくれたから無問題。
ミトス@TOS
ジーニアスと組ませて心が綺麗なミトスも見たかったが…。テイルズロワの外道がいるからいいか。
ソラト、ティリエル、カムシン@灼眼のシャナ
前二人はマーダーとして期待…だったけどヘンゼルとグレーテルがいたからおk。
御坂、白井@禁書
絶チル勢と絡ませたかったかな。
あとはこのロワに参加してから調べた作品では
シールケ@ベルセルク
イシドロが出てるからシールケも票を集めると思ってたな。魔術の扱いが面倒だからみんな避けたのか?
それと東方projectは…、公式で外見が幼いとされてるキャラがよく分からんw
>>224の言うようにその3人ロリかという疑問もあるし(多分中学生から高校生くらいだとは思うが)
まぁ
>>221が輝夜の二次設定推すなら俺はちっこい映姫さまを推すけどな!w
>>226 輝夜、素でロリかと思ってたぜwあれ二次設定だったのかw 永夜抄プレイしたことあるんだけどなw
まー、霊夢と魔理沙は作品内で相対的に若い方だからギリギリいけないかなーって
ま、スカーレット姉妹という適任がいる以上、精々他には妖夢やチルノのような奴らぐらいしかロリ扱いできないかもな。
>>227 ちがうちがう、輝夜の二次設定はたすけて(ryのほうのつもりだったw
>>226 同士よ、禁書読んで御坂が出ないことに泣いたのは俺だけじゃないはずだ。
でも御坂はロリというにはメンタリティは少女寄りだよなぁ。
本家で色々考察されてるが、東方の霊夢と魔理沙は最新作(風神録)の時点で19歳説が有力である。
つまり東方キャラはみんな見た目ロリなんだということさ。
みか先生がいるなら禁書の小萌先生もありだよな?
金田正太郎@鉄人28号
草間大作@ジャイアントロボ 世界が静止する日
天海護@勇者王ガオガイガー
出て欲しいがスパロボになりそうだ
パーマン1号@パーマン
パー子@パーマン
キテレツ@キテレツ大百科
ブタゴリラ@キテレツ大百科
藤子F不二雄作品は子供が多いな
鬼太郎@ゲゲゲの鬼太郎
猫娘@ゲゲゲの鬼太郎
今アニメやってるし勢いがあるうちに
絵板に久しぶりに二枚投下あったんで宣伝
>>230 パーマンと鬼太郎は盲点だったな
パーマン出たらパーマンセット支給されてたかな
強すぎるか?
233 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/03(月) 17:42:33 ID:68xNqspa
どうでもいい
鬼太郎は五期放映開始後だったら参戦ありえた
そう
じき
じゃあ俺も遅れたけど話題に便乗
巻@瀬戸の花嫁
シロ@GS美神
タマモ@GS美神
玖渚友@戯言シリーズ
闇口崩子@戯言シリーズ
巳屋本いろは@すもももももも
苺ましまろの4人
擬宝珠檸檬@こち亀
ホシノルリ@機動戦艦ナデシコ
飛影@幽遊白書
つまんね
>>237 なぜ紫木一姫を入れん。
俺はイユ・イエール@ルナティックムーンかな。
まあ姫ちゃんは一応女子高生だから微妙だな。
崩子ちゃんはぜひ出てほしかった。
まあ圧倒的に知名度が低いんだが。
孫悟飯@ドラゴンボール
初登場時で4歳、セル撃破の段階でも11歳。バランスブレイカーにもほどがあるぜ
でも「ピッコロとの修行前」からの参戦ならどうか?
ただの泣き虫な子供キャラになるが、ぶち切れたら誰にも手がつけられなくなる核爆弾キャラ
というのはおいしいかもしれん
今回参加してる作品から
マロン@ゼルダの伝説 時のオカリナ
ポーラ@MOTHER2
ジェフ@MOTHER2
ポーキー@MOTHER2
ゴールド@ポケットモンスターSPECIAL
クリスタル@ポケットモンスターSPECIAL
酢乙女あい@クレヨンしんちゃん
ぼーちゃん@クレヨンしんちゃん
源しずか@ドラえもん
タランダ・リーゼロッテ・橘@からくりサーカス
北条沙都子@ひぐらしのなく頃に
カスミ@ポケットモンスター(アニメ)
ナナコ@ポケットモンスター(アニメ)
ハルカ@ポケットモンスター(アニメ)
ロリキャラが多めなのは気にしない
お前はプーが地味だと、そう言いたいわけか
>>242 支給品にデジタマでもあればゴールド活躍できそうだな
>>242 むしろ俺はキック力増強シューズ装備で人間凶器になる
クリスが見てみたかったと言ってみる
キャラ1人しか出てない作品は妄想が広がるな。
誰か知り合いが1人でもいれば色々違っていたかも、って奴がちらほらと
ま、そういう揺らぎも含めてバトルロワイヤルなわけだが。
それはそうと、青色サヴァンはどう考えても扱いにくいぞ……w
天才だけに書き手の手に余るかと。
サヴァンだけじゃなくて戯言というか西尾維新キャラは全て書きづらいだろうな
俺としては出夢くんとか見てみたい。ヘンゼルたちより強力なマーダーになってたかっもしれんし
あとはH×Hのビスケとか
遅いけど便乗
LIVEALIVE@ユン・ジョウ
レベルE@赤川太陽
レベルE@清水良樹
レベルE@横田国光
レベルE@百地治
レベルE@黛真夜
レベルE@魔王
幻想水滸伝3@セシル
アーク・ザ・ラッド@ちょこ
地味なのばっか
魔王はバカ王子出せないから名残
どうでもいい
吉永さん家のガーゴイル、アニメがGYAOで放送中だから把握したい人は今がチャンス。
しかし、ラノベが原作なのにこのロワでは登場話見るとアニメ出典になってるんだなー。
251 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/04(火) 15:11:25 ID:/vGgS+gn
あそ
メダロット@テンリョウ イッキ
メダロット@アマザケ アリカ
メダロット@カラクチ コウジ
メダロット@ジュンマイ カリン
ババンバーン♪よりゲームと漫画のほうが記憶に残っている俺
イシドロ頑張ったな…
登場させたときは、適当にウロウロしたあげく無様に殺されるのが関の山かなーと思ってたがw
そう?
255 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/04(火) 18:01:00 ID:Qsg9W3hC
ここはオタが苦しいスレですね
なんかさっきから粘着してる奴いるね
>>255 むさ苦しいか暑苦しいの間違いだとは思うが
オタが苦しむのは良いこと
オタチを苦しませるなんて許せん
で?
っ?
なのはのバインドってデバイスなくてもできるんだっけ?
ユーノがやってたし今のなのはさんなら出来る?
バインドでマスタースパークとか・・・恐ろしいが。
なんのこっちゃ
>>262 19才なのはさんならティアナの頭を冷やしたときに使ってたな
>>262 元々ユーノはデバイスがいらないタイプだから、
ユーノができるからなのはに出来るとは限らないかと。
ユーノは「結界魔術師」って言って、そっちの方面のスペシャリスト。
なのはは砲撃タイプに分類される別方面の天才。
まあ、それでもデバイスがあればたぶん出来る。レイジングハートがあれば確実に出来る。
「デバイスもどき」が手元にある現状では……解釈が分かれるところか。描写次第かな。
まあどうでも
ミニ八卦炉はバインドとかには関わりなさそうだから何とも。
2期までのなのははバインド使ったのたしか一回くらいだった気がしたから得意ではないはず。
もはや関係ないが、アルフは無手でジャケットも飛行も使えるのに対し、
主のフェイトは武器なしでどこまで魔法使えるのか気になってたな。
ところであとどのくらいしたら放送なんだ?
もうこんな長いならいっそのこと6時間ごとにすればよかったなぁ
>>269 全員が最低でも夕方に到達しないと・・・・
大半が午後だし、某所で愚痴られてたけど真昼でしばらく止まってる左下が最大のネック
要するに、まだまだ先。
レミリアやレベッカ、雛苺辺りは放送直前まで進んでるけど、カツオやパタリロは真昼のままだから。
そういえば……ネギもコナンも死んでしまったから、
放送時(18時)にリリスがタワーに行っても誰もいないんだよな。
首輪集めの約束もう反故同然じゃね?
あ、ニアと太一がピンチ?
ふーん
午後でもなのはとかは『放送までじっとしてました』で行けるんじゃない?
そういう状況だから。
問題は左下方面が遅れてる事か。
ある程度は全キャラ把握できてるんだけど展開が浮かばない俺。
>>272 しかし反故と分からないのがポイント。リリスたちは愚直に塔に向かうことになる。
……いや、リリスたちも結局首輪1つもゲットできてないし、このまま夕方になったら困るのか……。
>>270 以前にも言われてたけど、今後は6時間ごとに変更する?
ジェダ側の心変わりの理由を出さなきゃならないけど……。
子供だからと甘く見たのが間違いだったのだよ!(うまい)
>>276 誰がうまいことを、……って別にうまくねーよwww
ジェダのキャラが分からんからその言動がギャグなのかマジなのか判別つかんw
>>275 昼に放送入れるのは賛成。夜中0時の放送は前に少し話したとき意見が分かれてたような。
ジェダ「予想以上にペースが速いので、今後は6時間毎に放送を行う」
いや、俺もジェダのキャラは知らないからこれでいいのかわかんないけど
夜0時には、死者の放送じゃなくて
ジェダとQBの送る「よいこのおやすみラジオ」でも流してればいいよ
適当に安眠を誘いそうなBGMと、安眠妨害になりそうな煽り情報の投下で
却下
終わったことをグデグデ言うのもアレだけど
ピノッキモンなら「放送の反応待つの飽きた」で簡単に済んだんだろうな
しかし、ジェダはきっと1人で頑張ってるんだろうな……。
QBはバカだし、気紛れだけどQBよりはマシなリリスは参加者になっちまったし。
全参加者の会話の盗聴とか、実際問題できてるんだろうか?
元々、誰に頼まれたわけでもないのに全ての魂の救済とか考えちゃう苦労人だ。
今も裏で大変な思いをしている気がする。自業自得だけど。
>>282 タイムマシンで未来のジェダを連れてきて手伝ってもらっているんだよ
アナザーSSってさ、書いていいのかな。
投下はしたらば没SSスレでするつもりだけど。ちと、ロワ外ネタで浮かんだんだよね。
興味あり
内容にもよるけど、このロワに関係あるものだったら、没スレでいいと思う
いや、ただ参加させられてる人達がいなくなった事後、その後の残された人の様子の一幕、みたいなのさ。
ロワに絡むかどうかは少々グレーゾーン。ネタの性質上ロワ参加者は出せないし。まぁ、だからアナザーなんだけど。
ロワ参加者を探す残された人達、という立場になつのかな。さっき思いついたネタだと。
ただ、後書き手さんを下手に縛りかねないような事があるかも知れないから、簡単に書くのは気が引けるだけ。
ま、もしなんかあってもスルーしてくれれば問題は無いんだけど。
どうでもよか
いいんじゃない?
ちょっと見てみたいし
悪魔じみた正義感、か
あれだけ悪魔悪魔と言われる魔法少女主人公は他に無いな。
二期と三期で一回ずつ言われただけなのに印象に残ること残ることw
292 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/05(水) 10:18:04 ID:+pGAm4/l
つまんね
【夕方】
雛苺&桜、金糸雀&イエロー←ベルフラウ、ベッキー&しんべぇ、レミリア
霧周辺 (みか先生、アルルゥ、梨々、レックス)
シェルター組、葵&ベルカナ、ククリ&ひまわり、ヴィクトリア
【午後】
グリーン&リリス、蒼星石&タバサ、のび太→白レン
学校組+小太郎、ブルー&イヴ→一休
旧山小屋組、勝、きり丸、なのは、メロ、グレーテル、トリエラ&リルル
【真昼】
廃病院組、ミミ
千秋←弥彦&パタリロ、カツオ←キルア、太一←ニア
現在の進み具合一覧。左下組書ける方急募
どうでもいい
どうでもよくねーよwwww
午後で止まってる奴の中には
左下が動かないと動かしづらい奴も混じってるな
そのまま放置で
なんか変なの沸いてるのな
まあそんなことは置いといて、放送どうしようか?
一応このままでも問題はない気もする、守るメリットは予定の維持でカオスりにくい
(放送を考えて張られた複線もあるきがするし)
早めるメリットは、アクションがおきやすくなる
特に何組かは劇的に変化する
変更すると、書き手の予定を狂わせかねないのがとりあえずの心配事
放送を早めるんじゃなくて、回数を増やすって話じゃなかったっけ?
仮に今から放送早めようとしても、結局夕方までは全キャラ動かさないといけないから意味はないし。
読み違えてたらすまん。
今放送を強行したら左下組は放送が終わる直前まで生存することになる。
それで他の方々がいいなら自分はなにも言わない。
でも、そんなことになったら、すっごく書きづらくなると思います。
まずは夕方の放送を終わらせてからだな
考えてることはあるけど、ちょっとこの週末は忙しい。
時間取ってプロット詳細に検討して予約に入れるのは、良くて来週半ばくらいか。
だから、他にも考えてる人が居れば構わずどんどん予約してどんどん進めて欲しい。
そのプランも左下の全員を一気に夕方まで進められる話じゃないし。
ただ、無茶な先走りはまだ待って欲しい。
放送なんてされて生存確定とかされたら、それこそ終わる。
たとえ結果的に全員生存したとしても、お話の盛り上がりに困る。
あと、左下が注目されてるけど、廃病院組とかミミとかもまだ真昼なんだね。
そっちだけでも、書ける人には進めて貰ってもいいかもしれない。
もしこの辺のメンツが左下に絡むとしても、1話では絡めないだろうし
まったり待ってます
一部のキャラは書けるネタがあるけど、自己リレーになるので自粛。
左下は全キャラ未把握で書けない・・・・
アナザーでも書いてよorz
>>305 更新乙。
学校が赤くなってたりして芸細かいw
シャナ、紫穂、双葉を予約。
予約ktkr!
>>305 本当だ、学校燃えてるww
モニュメント壊れた次はこれか。芸が細かい地図だw
>>305 更新乙様です。芸が細かい・・・・って言われるまで気が付かなかったけど私。
そろそろヴィータは黄枠外してもいい気がしますね。なのはは逆に付けてもいいかも。
ブルーとイヴは全裸一休の側にワープしたはずじゃない?
グリーグアイランドのカードで
>>311まだ到着していないし、一休の位置がどうなってるか分からないからこの状態なのでは?
投下を開始します。
再開を誓って別れた彼女は、例えるならスーパーカーだった。
見蕩れるほどの優美なフォルム。
輝かんばかりの運動性能。
熟成された一級品のパーツ。
強く、速く、格好良い、正義のヒーロー。
だが、目の前にあるのは、かつてスーパーカー“だった”モノ。
今はどう贔屓目に見たところで、その呼称を継続できそうにない。
フレームは元に戻らないほど潰れ折れており、特にフロント部分は見る影も無い。
タイヤは4つとも弾け飛び、千切れたゴムの断片が残骸の周りに撒き散らかされている。
ヘッドライトを二つとも持ち去られたそれは、駆動装置すら再起不能。
――まして、エンジンなど語るべくもない。
醜く、汚く、直しようがない、堕ちたヒーロー。
真っ赤なオイルで地面を汚したそれは、かつて『神楽』と呼ばれたモノだった。
※ ※ ※ ※ ※
「……必ず戻るって、言ったじゃねーか」
双葉の声は震えていた。
後方から勢いよく伸びるポニーテールが微かに揺れており、睨みつけるような三白眼は普段より鋭く、脆い。
身長130cmちょっとの小柄な少女は、かつて神楽だった残骸に辛辣な言葉を浴びせかける。
「なぁ、神楽。あの銀髪を倒して戻るって、おまえ、あたしと約束したよな?」
憤慨。激昂。悲壮。後悔。混乱。戦慄。恐怖。失望。忌避。嫌悪。
負の激情を一言一言に封じ込め、吉永双葉はただ吼える。
「なのに、なんで死んでんだよこんちくしょうがぁっ!」
一方的で理不尽な罵倒。
直接的で暴力的な非難。
それらは全て、期待の裏返しだった。
生存の可能性が低いことはわかりきっていた。
冷静沈着とはとても言えない双葉だが、その程度の判断はできる。
それでも、いや、だからこそ期待していたのだ。
漫画の主人公のように、神楽が生還することを。
けれども、双葉が戻ったとき、ヒーローは負けていた。
負けて、死んで、決して見たくなかった、みっともない姿を晒していた。
だから、叫んだ。
そうでもしないと、膝をついてしまいそうだったから。
「……気は済んだ?」
背後に立っていたシャナが静かな声で尋ねる。
「私は『覚悟はあるか?』と聞き、おまえは『ある』と答えた。
今更、『やっぱり見たくなかった』とは言わせない」
「……んなことはわかってるよ」
応える声は、いくぶんか落ち着いていた。
シャナは、そう、とだけ短く返し、周囲の探索をするためにその場から離れていく。
同時に、死体に近づくひとつの影があった。三宮紫穂である。
「おい、何するつもりだよ?」
躊躇無く死体に向かって手を伸ばす紫穂に、双葉が顔をしかめながら問う。
「検死よ。死後硬直や傷口を見ることで、死亡時の時間や状況が割り出せるかもしれないわ」
「そんなことできんのか!?」
「私は政府の機関で調査全般を請け負っていたの。そのくらい簡単にできるわ。さあ、わかったら素人は離れてて」
紫穂は双葉を追い払うと、眉一つ動かさずに神楽の死体を調べ始めた。
「ちっ、なんだよ……変な格好してるくせに……」
「……聞こえてるわよ」
「地獄耳め!」
双葉はブツブツ文句を言うと、何とも無しにモニュメント跡を歩いて回った。
数分後、付近を偵察していたシャナが戻ってきた。
どうやら、この辺りに参加者が潜んでいる雰囲気はないらしい。
その後、双葉も一緒になって細かく捜査したが、成果と言えるものは、地面に落ちていた黄金の玉くらいだった。
「誰もいねーみてーだな」
「ある程度予想はできていたわ。誰かが残っていたら、あの銀髪が逃すはずがないから」
「…………」
それきり二人は押し黙り、嫌な沈黙が場を支配する。
やがて、神楽の死体を検分していた紫穂が声を上げた。
「死後6時間以上経ってるみたい。犯人が近くにいる可能性は低そうね」
「そう……それじゃ、戻るわよ」
それは、シャナにとって当然の判断だった。
付近の調査と検死によって、この近辺に犯人が留まっている可能性が極めて低いとわかったからだ。
それどころか、自分達以外に人がいるのかどうかさえ疑わしい。
また、この場所に来たのはシャナにとって寄り道以外の何物でもない。
一応、アラストールを探すという名目はあるが、あくまで『未見の場所を潰す』程度の気持ちである。
よって、神楽の死亡を確認した今、島の端に留まる理由は存在しなかった。
だが、それはあくまでシャナの理屈だ。
「おい! 神楽をこのまま放っておくのかよ!」
シャナの方針を聞いた双葉が慌てて抗議する。
双葉にとって、神楽の死体をそのまま放置するのは耐え難いことだった。
しかし、シャナの答えは無情だった。
「そいつをどうにかすることに何かメリットがあるの?」
「おい! そんな言い方……」
「双葉ちゃん、少しは全体のことも考えたほうがいいわよ。あんまりワガママばっかり言うものじゃないわ」
食い下がる双葉を紫穂もが嗜める。
冷たい言葉のようだが、事実、この場で最も我が儘を言っているのは双葉だ。
元々、シャナと紫穂は何の見返りも無く、双葉が希望した場所に付いてきてくれたのだ。
これ以上双葉の意見を押し通そうとするのはずうずうしいと言える。
――加えて、戦闘能力が低い双葉は保護される立場だ。
あの銀髪の少女が再び襲ってきた場合、シャナの助力無しでは撃退は難しいだろう。
集団内における暗黙の上下関係。変えられない実力差。
それは、立場の弱い者の意見を封じ込めるには十分な力だった。
この先双葉が生き残るためには、ここで事を荒立てるのは得策ではない。
だが、吉永双葉は“そんな些細なことを気にする人間ではない”。
「……じゃあ、いい。先に行っててくれ。16時までには戻る」
「……なに?」
シャナの目が細くなる。
双葉は、シャナを強く睨み返した。
「あたしは神楽を埋めてから行くって言ってんだよ!」
燃えるような眼光で睨みつける双葉を、しかし、シャナは冷たく見返す。
「おまえ、一人で穴を掘るつもり?」
「おう」
「道具もないのに?」
「神楽から預かった剣を使う」
「馬鹿? 剣が使い物にならなくなるわよ」
「ゴチャゴチャ言うな!」
売り言葉に買い言葉。二人の間の空気が徐々に張り詰める。
急速に険悪になる二人を見かねて紫穂が叫んだ。
「いい加減にして! 単独行動がどれほど危険なことかわかってるの!?」
「うるせえ! あたしはあたしのやりたいようにやる!」
双葉は紫穂の言葉すら拒絶する。まるで、駄々をこねる幼児のように。
あまりの無鉄砲ぶりにウンザリした紫穂は、呆れたように首を振った。
「……そんなことばっかり言ってると、あなた、そのうち死ぬわよ」
「それがなんだってんだ!」
双葉は拳を握り締め、自らの意見を叩きつける。
それは、甘く愚かな子供の理屈。
だけど、とても人間らしい理屈。
「吉永家の人間はなぁ、我が身可愛さでボロボロの仲間を放置できるほどツラの皮は厚くねーんだよ!」
それが、吉永双葉の行動原理。
死してなお醜態を晒し続けている神楽を助けたいという、ただ、それだけの想い。
「……好きにして」
完全に機嫌を損ねたらしいシャナは冷たい言葉を残すと、双葉を置いて立ち去ってしまった。
紫穂も溜息を吐いた後、シャナに続いて森に消える。
「ケッ」
遠ざかる二人の背中を最後まで見送らず、双葉はさっさと穴を掘り始めた。
コキリの剣を地面に突き立て、一心不乱に穴掘り作業に没頭する。
だが、剣先が地中の石にぶつかるたびに手は痺れ、跳ねる土は脚を泥色に変えていく。
「……っの、やろっ!」
両刃剣は掘削作業には向いていない。
故に、作業は困難を極め、双葉の体力は徐々に削られていった。
素手で作業を行ったために手の平は薄く擦り剥け、血が汗と混じって不快な臭いを発し出す。
顔は汗にまみれ、身体に張り付く服も鬱陶しい。
それでも双葉は休まなかった。
隣に神楽がいるのだ。情けないところは見せられない。
額を袖で拭った双葉は、黙々と手を動かし続けた。
※ ※ ※ ※ ※
「なによ、なによ、なんなのよアイツ!」
大地を踏み抜かんばかりの荒々しさで歩を進めているのは、シャナである。
茂みを斬り払い、根を踏み潰し、周囲を警戒しながらも、延々と文句を垂れ流し続けている。
「これ以上足掻いてもどうしようもないじゃない! そいつはもう、死んでるんだから!
なにをどう思っても、もうなにも、どうにも、なんともならないのよ……そう、ならないのよ……」
わずかに悔しさを滲ませた声は、誰に聞き取られることもないまま、森の闇に消えた。
シャナは、冷酷非情な人物というわけではない。ただ、考え方が合理的すぎるだけだ。
苛立ちまぎれにスピードを上げ続けていたシャナだったが、背後から呼びかけられたことで我に返った。
「シャナちゃん!」
シャナが振り返ると、息を切らしながら追いかけてくる紫穂の姿が目に入る。
文句を言うことに熱中しすぎて、紫穂のことを忘却していたらしい。
「ん」
シャナはバツが悪そうな顔をすると、紫穂に合わせてペースを落とした。
それでも、怒りの声が止むことはない。
そう、シャナは怒っていた。
双葉の不合理な主張にも苛々したが、何より、小太郎が自らの存在の力を使ってまで救った双葉が、自分の命を粗雑に扱ったことが一番腹立たしかった。
とはいえ、そんなことで文句を言うのは何か(小太郎に対して)癪なので、別の方面から双葉を批判する。
「本当、非効率的。いくら死体を埋めたって、そいつが生き返るわけでも、何か感じるわけでもない。
時間をかけて、手間をかけて、ただ疲労を蓄積させるだけ。
その時間と手間を犯人追跡にあてて、次の被害を防ぐほうがよっぽど大事じゃない!」
「それでも、気持ちの整理くらいはできるんじゃないかしら」
特に期待してもいなかった返答に、シャナは思わず隣を見る。
紫穂は視線を正面に固定したまま、淡々と言葉を吐き出した。
「死んだ人間は確かに何も感じないけど、生きている人間は違うわ。
知り合いを無残な姿のまま野に晒しておくのは……精神衛生上、良くないでしょうね」
「……ふん。気持ちの整理程度で時間と体力を浪費するなんて、馬鹿馬鹿しい」
実際はシャナも少女の死体を埋めていたりするのだが、さんざん文句を言いまくっていた手前、言い出すわけにはいかない。
(……ううん、アレは首輪を得るための行為だから。うん、ただの等価交換よ。等価交換)
そんなシャナの内心に全く気付かず、紫穂は言葉を続ける。
「そうね。ここでは、そんな甘さが命取りになる。
知り合いが死ぬたびにいちいち墓を作るなんて、ただの徒労よ。自分の痕跡を残す分マイナスかも。
だから、今後のことも考えて厳しめに言ったつもりだったんだけど……裏目に出ちゃったみたい」
「…………」
シャナは、紫穂と会話を続けるうちに、徐々に冷静さを取り戻し始めた。
すると、それまでとは違った考えが浮かんでくる。
果たして、双葉を置いて来たことは正しい選択だったのだろうか、と。
双葉を置いて来たことが小太郎に知られれば、間違いなく口喧嘩が勃発するだろう。
お互いに譲らないため、小太郎との口喧嘩は長引く。午前中など口喧嘩だけで数時間無駄にしてしまったほどである。
その時間に比べれば、埋葬にかかる時間など知れたものだ。
シャナが手伝えば、それこそ病院でおこなったように一瞬で穴を作ることが可能だっただろう。
存在の力は多少消費するだろうが、仲間割れをするよりははるかにマシなはず。
それなのに、なぜ自分は双葉と喧嘩してしまったのだろうか。
(ちょっと、大人気なかったかな)
ふと、神楽の死体を前にした双葉の、まるで決壊寸前のダムのような、小さい背中が思い浮かんだ。
(……ああもう!)
「……小太郎との待ち合わせには、まだ時間があるわね」
「シャナちゃん?」
シャナの呟きに、紫穂が訝しげな声を上げる。
「もう少し探索を続ける。まだ、完全に調べ尽くしたわけじゃないから」
今来た道とは反対方向、つまりモニュメントがある方向に引き返そうとするシャナを見て、紫穂が目を瞬かせた。
「ええと、つまり、双葉ちゃんのところに戻るの?」
「おまえ、何を聞いていたの? 私は“探索を続ける”と言ったのよ。
まだ調べきっていない場所があっちのほうにあるから行く。それだけ」
シャナが冷たく事務的な口調で言い返す。
しかし、それに対して紫穂は呆れたような表情を浮かべた。
「……心配なら、素直に戻ればいいのに」
「うるさいうるさいうるさい。あいつはあれだけ啖呵を切った。それなら、あいつは一人でやらなければいけない。
だって、自分の言葉には責任を持つべきだから。……私達が行くのは、お門違いよ」
つまり、『双葉を助けに行くつもりはないが、周囲の安全は保つ』とシャナは言っているのだ。
その言葉を聞いた紫穂は肩を竦めると、背後の木に背中を預けた。
「わかったわ。じゃ、私はここで待ってる。シャナちゃん一人で行ってきて」
「……おまえがあいつを嫌うのは理解できるわ。確かにあいつはおまえの言うことを聞かなかった。だけど」
「ああ、違う違う。双葉ちゃんのワガママなら、私、特に気にしてないもの。
子供なら普通、あんなものじゃない? パニックにならなかっただけ上出来よ(棒読み)」
むしろ楽しげにしている紫穂に、今度はシャナが訝しげな顔をする番だった。
「じゃあ、どうして?」
「私はシャナちゃんほど体力がないから、無駄な動きは極力抑えたいの。この格好、動きにくいし。
それに、私がいないほうがシャナちゃんも動きやすいでしょ?」
恥ずかしそうにタイツの端をつまみあげる紫穂。
「この辺りは来るときに調べて安全だということがわかってるし、敵と遭遇する確率は高くないはず。
それに、私も時間稼ぎくらいはできるわ。何かあったら大声を上げるから、そのときはよろしくね」
紫穂は柔らかい笑みを浮かべ、黒光りする銃を取り出した。
その様子を見たシャナは、
「……うん。わかった」
頷くと、風のように駆け出した。
森を抜け、アスファルトを蹴り抜きながら、シャナは自分自身に言い聞かせる。
(別に、心配してるわけじゃない。小太郎にまたゴチャゴチャ言われるのが鬱陶しいだけ。
それに、おまえの命は小太郎が自らの存在を削ってまで救ったもの。おまえだけのものじゃないわ。
そう、それだけなんだから!)
※ ※ ※ ※ ※
森の外に消えたシャナを見送り、紫穂はすぐさま木の後ろに隠れた。
太く曲がりくねった根に腰を下ろすと、やや乱暴にランドセルの蓋を開く。
取り出したのは――奇妙な形をした短剣。
神楽の死体を検分するときに、こっそり拝借したものである。
短剣には赤黒い血がべったりと貼りつき、鼻を突くような異臭を放っている。
「う……。何か拭くものあったかな……」
紫穂は鼻をつまみながらランドセルの内部をまさぐったが、目当てのものは出てこなかった。
(ここまで血の臭いが強いと、携帯するのは無理っぽいわね。
……いえ、元々、保険のために持ち出してきたものだから、それでいいのかしら)
シャナや双葉に黙って短剣を盗み出したのは、単純に道具の占有が目的だった。
たとえ血で濡れていようが、殺人犯が使った凶器であろうが、武器であることに変わりは無い。
普通に戦闘具として役立つかもしれないし、交渉の道具になるかもしれない。
そう判断した紫穂は、神楽の身体に刺さっている短剣を抜き取ると、双葉に気付かれないようにランドセルに放り込んだのだ。
そして今、死体から剥ぎ取った盗品の短剣は、紫穂の手の中にあり――
「……本当、嫌になるわね」
浅ましく這いずり回り、親友を蔑ろにし、こそ泥の真似を繰り返す。
それしか生き残る道がないのだから仕方が無いとはいえ、惨めな気持ちだった。
……あの二人は、今頃どうしているのだろうか。
自分と同じように、生き残るための行動を起こしているのだろうか。それとも――
「……ダメ。考えてる暇なんて、ない」
脳に染み渡りかけた甘い感情を振り払う。
“それ”を考えてはダメだ。
“それ”についてだけは考えてはいけない。
生き残る。そのためには……切り捨てなければならない。
紫穂は大きく息を吐き出すと、思考を切り替えるためのきっかけを求めて視線を巡らせる。
その目が、ふと、手の中の短剣に向いた。
モニュメントで起こった出来事はサイコメトリーを使って大方把握していたが、確か、この短剣は“視て”いなかった。
神楽の死体によると、長髪の少女の持ち物らしいが……
(ま、視てみればわかるかな)
そうして、紫穂は軽い気持ちで、
『邪剣ファフニール』に、サイコメトリーを使ってしまった。
邪竜の骨によって作られた、悪意の象徴たる魔装備の声を、聞いてしまった。
――始めに見えたのは、巨大な竜のイメージ。
――鋭い牙は盗人の肉を食い千切り。
――固い鱗は鋼の剣を跳ね返す。
――呪われし財宝を狙う者は、悉く地獄の猛火で焼き尽くされた。
――しかし、終わりは唐突に訪れる。
――たった一人の英雄によって、邪竜は命を奪われた。
――全身に血を浴びる英雄。
――焼かれ、喰われる心臓。
――やがて、竜の死体はバラバラになり、その骨の一片から一つの短剣が作られる。
――その短剣は、
――人間をエルフをドワーフをハーフエルフを動物を昆虫を植物を魔物を精霊を機械を天使を悪魔を。
――斬って突いて抉って穿って貫いて裂いて削って裁って刻んで刎ねて刈って削いでほじくってくりぬいて。
――幾十幾百幾千幾万殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して、ただ殺す。そのイメージが、
熱湯のごとく紫穂の脳に流し込まれた。
「――――――――――ッ!」
紫穂がいた現代日本ではありえないほどの量の『命の搾取』。
たった一振りの短剣が、膨大な量の『死のイメージ』を孕み育て産み落とす。
普通の武器ならこうはならなかったかもしれない。
だが、不気味に蠢く『邪剣』は、紫穂に手を離す暇すら与えない。
瞬く間に『死』の奔流に晒された紫穂の、声無き悲鳴が上がった。
【B-2/森/1日目/午後】
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:邪剣による精神汚染開始(程度は不明)
[装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD、邪剣ファフニール@TOS
スクール水着@魔法先生ネギま!、全身黒タイツ@名探偵コナン
[道具]:支給品一式×2(水少量、パン一個消費)、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、血濡れの庭師の鋏@ローゼンメイデン、包帯
[服装]:スクール水着の上に全身タイツを重ね着
[思考]:――――――――――ッ!
第一行動方針:???
第ニ行動方針:誰も信用しない。状況に応じてステルスor扇動マーダーor対主催のどのスタンスもとれるように構えておく
第三行動方針:利用できそうな仲間を探す
基本行動方針:元の世界に帰るためには手段を選ばない。自分の安全は最優先。
[備考]:サイコメトリーを駆使し以下のことを知りました
1、神社で起こったコナン&ネギ&リリスの遭遇について、支給品を透視して大まかに把
握しました。先入観による勘違いあり。
2、廃病院内部で起こった事態について客観的に把握しました。表面的に透視していたの
で、会話以外の細かい部分は見落としている可能性あり。
3、庭師の鋏を透視して、これがブルーの支給品でなかったこと、また動く人形の存在を把握しました。
4、モニュメントで起こった出来事について、神楽の死体を透視することで把握しました。
【B-1/モニュメント跡/1日目/午後】
【吉永双葉@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:腹部の銃創と胸部の刺傷は塞がったが、激しい運動は禁物。手に擦り傷。
[服装]:血のついたオーバーオール、腹部にカラフルな包帯。
[装備]:メガネ@ぱにぽに、コキリの剣(泥がついている)@ゼルダの伝説
[道具]:基本支給品一式(水少量、パン一個消費)、ショックガン@ドラえもん、きんのたま@ポケットモンスター、包帯
[思考]:神楽……ちくしょー……
第一行動方針:神楽の死体を埋葬した後、16時までに廃病院に帰還
第二行動方針:梨々と合流
基本行動方針:このふざけた殺し合いを終わらせ、脱出する
【B-2/道路/1日目/午後】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:左肩裂傷&右肩刺し傷(処置済み)、疲労(小)
[装備]:マスターソード@ぜルダの伝説(重量感あり、使えない事は無い)
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯、ビュティの首輪
[思考]:ああもう、世話の焼ける!
第一行動方針:双葉に気付かれないように周囲の警戒を続ける
第二行動方針:16時までに廃病院に帰還。その後18時までにB-7のタワーを目指す。
第三行動方針:コキュートスを見つけたい(アラストールと合流)
第四行動方針:小太郎の仲間(ネギとエヴァ)を探す
基本行動方針:ジェダを討滅する。
投下終了です。
乙。紫穂ヤバいな
ツ・ン・デ・レ……見事な……
GJ。各人それぞれらしく動いたなぁ。双葉の意地、シャナのツンデレ(?)、
そして『剣』に続いてまたもうっかり炸裂な志穂。
なんでこうも呪い系のアイテムに縁があるのやら…。
原作でアビシオン乗っ取った魔装備の意思は見ちゃいけないw
乙!
というか何気にくぎみぃキャラ共演したな
片方は死んでるけど
志穂の運の値が低すぎるな。これではサイコメトリー能力も役に立たない。
そういえばマケンって運にマイナス補正だっけ?
まとめの時系列順を読んでて思ったんだが
ゆとり教育の弊害?はリリス乱舞/斬より前の話なんじゃないか?
>>325 攻略サイト見てきたら、邪剣のほうにはマイナス補正なし。魔剣ソウルイーターのほうは素早さとか運とか色々マイナス。
>>326 その作品の登場人物のうち、のび太だけ午後でヴィクトリアとかは夕方だった。
全然描写がないキャラがいるんだが飛ばして放送というわけにはいかないの?
このスレの300あたりを読んでほしい。
書いてくれるかもしれない人をゆっくり待とう。
他にも進めなきゃならないところもあるし。
むしろ何故ここで放送を急ぐ、という感じなんだが。
確かに遅れの目立つ所はあるが、午後枠にもまだまだいっぱい溜まってるぞ。
夕方組にしか興味ないとか?
ファフニールのくだりでバーローの悪魔の血を浴びた英雄の絵の話を思い出した
>>328 焦る気持ちがわからんでもないが、今はまだ早い。
全員が夕方(最低でも午後)に移動した上で、白レンvsのび太みたいな戦闘直前パートを終わらせてからでないと。
やむを得ん、無理矢理にでも!
予約なしのゲリラ投下行きます。短めなので、今回は支援なしでも大丈夫かも。
明るい太陽が照りつける、無人の住宅街。
静けさの広がる路地の真ん中に、場違いなものが2つ、無造作に転がっていた。
それは、2つの死体。
明神弥彦は、唖然として目を見開く。
「な……!?」
硬く握った拳が、やり場のない感情に震える。
変色した顔で舌を突き出した、幼い少女の死体。
白目を剥き、口の端から泡を零した、少年の死体。
少年の方の顔には、見覚えがある。
あの、風呂場で出会った火傷の少年だ。おそらく「ちよ」という少女を殺した少年だ。
そして、もう1人の少女の方は。
「……まったく。これじゃギャグにも何もなりやしないじゃないか。
チアキは何をやってたんだ。家から出るなと、このぼくがあれほど言ったのに」
「じゃあ、こっちの子は……」
「よつばだ」
口調はぶっきらぼうだが、内に篭る怒りが伝わってくるようなパタリロの声。
ペンギンのきぐるみに遮られ、彼の表情は見えない。たぶん、見られたくないのだろう。
弥彦はしかし、そんなパタリロに気を使う余裕もなく、呆然と2つの死体を眺める。
今度も、弥彦が殺したわけではない。
けれど「間に合わなかった」、その事実が弥彦の心に重くのしかかる。
こういう結末を見るのを避けたくて、ここまで走ってきたのに――。
そもそも弥彦がちよの首を斬ろうとしなければ、ニアに操られたりしなければ、こんなことには――!
だが、弥彦はただ、打ちのめされていればいい、という状況でもなかった。
自責の念に集中することすら出来なかった。
無力感と同時に彼を襲ったもの、それは激しい混乱。
これがもし、少女2人の死体が転がっていたのなら、悔しくはあるが状況は理解できる。
この火傷の少年はちよを殺した犯人だろうし、そうであれば少女たちを襲ってもおかしくない。
けれど実際には、その少年もまた、死体となってここに転がっている。
そして、煙のように消えうせ、姿を消したチアキという少女。
「いったい……ここで何が起きたんだ? 俺たちが駆けつける前に、いったい何が――!」
「……これは『世界名探偵友の会』会員のぼくに対する挑戦だな。
よつばの方は絞殺で、こっちの少年は……なんだこりゃ。何をどうしたらこんな死に方するんだ。
ともかく、手のサイズは――ふむ。やっぱりそうか、けどな……」
冗談そのものを煮詰めて作ったような顔に精一杯に厳しい表情を刻んで、パタリロが現場の調査を開始する。
死体の検分をし、遺留品をひっくり返すその仕草は、彼がこの手の状況に慣れていることを感じさせる
これがマリネラならホームズのコスプレでパイプを咥えているところ――とまでは、弥彦には分からないのだが。
ともかく、何かを掴んだらしい彼の言葉を待つ。
「よつばの首な――絞殺痕、つまり手形だな。首を絞めた時の手の跡が残ってたぞ。
で、残された手のサイズや指の長さが、そこで死んでる奴と寸分違わないときた」
「じゃあ、この子は……でも、そうなると……」
「よつばはコイツに殺された。そしてコイツはぼくらの知らない殺人者に殺された。そういうことだ。
そうだな、仮にここは、この名前不明正体不明の殺人者を『バンコラン』とでも呼んでおくことにしようか」
「なんだよその名前」
「名前が無いと言いづらいから適当につけただけだ。深い意味はない、気にするな。
とにかくぼくの考えは、こうだ――!」
* * *
チアキはああ見えて責任感の強い性格だ。いや責任感じゃないな、あれは単に意地っぱりなだけか。
ともかく、無理やりでもよつばのことを任せられたからには、そう簡単に見捨てたりはしない。
チアキがよつばから離れるとしたら――よつばを守るのに必要な時だけだ。
たぶん2人は、先に正体不明の殺人者、『バンコラン』に襲われた。
状況は分からんが、あの家が襲われたんだろうな。そしてチアキは2人揃って逃げるのは無理だと判断した。
となれば、チアキがよつばを守れる方法はまず1つ。
『バンコラン』を挑発して、その注意と敵意を自分1人に惹きつける。そして、逃げる。
『ロングフックショット』を使えば素早く移動できるし、おまけにチアキ自身、人を怒らせるのがめっぽう上手い。
あいつはぼくほどの天才ではないけれど、この程度のことはすぐに思いつける頭の回転がある。
まあ、だからぼくもよつばを任せることができたんだがな。
よつばに隠れているよう口先三寸で言いくるめて、チアキは『バンコラン』を惹きつけて逃げ出して――
よつばが1人きりになった所で、この火傷の少年に襲われた。
そう。ぼくのミスだ。
ゲームに乗ったバカが1人なら、チアキたちも逃げきれると思ってた。最悪でも殺されないだろうと考えてた。
流石の超絶美形天才少年のぼくも、この短時間にマズいことが重なるとは思わなかったんでな。
ともあれ、よつばはコイツに殺されて――コイツは、戻ってきた『バンコラン』に殺された。
ん? いや、ぼくはチアキが『バンコラン』に殺されたとは思わないぞ。
さっきも言った通り、『ロングフックショット』は便利だし、多少の怪我なら治せる杖を持ってるからな。
何よりチアキの性格から言って、そんなヘマをするわけがない。
ただ多分、チアキは上手く逃げすぎた。
途中でチアキを見失った『バンコラン』は、チアキを諦めて、「もう1人の獲物」を狙いに現場に戻ったんだ。
そして、よつばを殺したコイツを殺して、持ち物を奪った。
……チアキと『バンコラン』の行方? さてね。いくらなんでも情報不足だ。
ただ、チアキは首尾よく『バンコラン』を撒いたらよつばの所に戻ってくるつもりだったろう。
『バンコラン』も、死体の温かさから言って、まだ犯行からそう時間は経ってない。
だから、どちらもまだそう遠くないあたりに――おい待て話は終わってないぞ、どこに行く気だ?!
* * *
「……そうと聞いて、じっとしていられるかっ!
今まさに『バンコラン』とやらにチアキって子が襲われてるかもしれないんだぞ!」
「だからいきなり走り出してアテはあるのかって言ってるんだ!」
パタリロの罵声にも応じることなく、駆け出した弥彦の姿はすぐに路地を曲がって見えなくなる。
家々の立ち並ぶこの住宅街、手当たり次第にチアキと犯人を捜そうというのだろうか。
咄嗟に腰を浮かしたパタリロは、しかし伸ばしかけた腕を力なく垂らす。
「ええいこれだからゆとり世代は……って平成生まれどころか明治以前の生まれか弥彦は。
寺子屋世代もああなのか? ま、そんなことより、まだ気になることは残っているんだがな」
パタリロは少年の死体の頭を、ペンギンのつま先で軽く蹴る。
途端に口の端から零れ出たのは、水……。
言っても混乱を増やすだけと思い、あえて黙っていたのが、この少年、なんと陸の上で溺死していたのだ。
どうにも尋常な死に方ではない。いったい何をどうやればこんな殺し方ができるのやら。
とはいえ、何らかの方法で相手の自由を奪うことに成功すれば、意外と簡単な殺人方法ではある。
鼻を摘んで水を注ぐだけ。素手での絞殺と違い、腕力すらほとんど必要としない。つまり、『女の子にも出来る』。
それに……。
「それに、少年の食料だけ手つかず、ってのも変だ。食い物を粗末にする泥棒にはロクなことがないんだぞ!
……じゃなくって、食い物だけ残すには、それなりの意味があるはずだ。
例えば、『犯人』が小柄で小食だとか、生理的嫌悪感があって喰う気もしなかったとかな……となると……」
口の中で呟きながら、パタリロはやがて、1つの仮説に辿り着く。
弥彦に披露した仮説、その中で『バンコラン』と仮に命名した『犯人』が――もし「居なかった」としたら?
この場にはよつばと、チアキと、火傷の少年、この3人の人物しか居なかったとしたら?
パタリロの拳が、きぐるみの中で握り締められる。
「いくつか不足してるパーツはあるけど、まさか、な――もし万が一そうなら、あいつは本物の大バカだ」
ともあれ、いつまでもこうしているわけにはいかない。
よつばと少年の死体を軽く整え、目を閉じさせてやると、パタリロは立ち上がる。
「まずは、チアキを確保するのが先だな。何にしてもあいつの話を聞かないことにはどうにもならん。
いや、その前に弥彦を捕まえなきゃならんか。一体どこまで走っていったんだ、アイツは」
弥彦には「遠くに行ってない」以外に何も伝えていないが、まさかこのエリアを虱潰しに探す気なのか?
パタリロ=ド=マリネール8世は、そしてまずは弥彦を捕まえるべく、ゴキブリ走法で走り始めた。
* * *
それは、なんとなく――だった。
なんとなく、あの自称国王の潰れ肉饅頭の所に戻るのは、気が引けた。
なんとなく、全てを見透かされてしまいそうな気がした。
あの良く分からない『速解術』とやらで。あるいは、あの妙に冴えてることもある洞察力で。
自分が隠しておきたいことも何もかも、暴かれてしまうような気がした。
だから。
「あのバカ野郎から、できるだけ離れないと――」
千秋は、パタリロとの合流を避けた。
住宅地を出て、沼地から遠ざかる方に――大雑把な方向で言えば、北西に。
素早く太い道路を渡り、向こう側の市街地に進んで角を曲がり、千秋はぼんやりと考える。
パタリロと再会したくはない。
けれども、自分の手を汚さず、みんなに殺し合いをしてもらうには、誰か他の参加者と接触せねばならない。
しかし、この広い島、広い街で、他の参加者と確実に会えるような所と言ったら――
「――そうだな。バカ野郎がいかにも好きそうな所じゃないか」
バカと煙は高い所に上りたがる。
きっとあそこならばバカが居るに違いない。千秋が利用し、出し抜けるようなバカが。
市街地の真ん中に聳え立つタワーを見上げて、千秋は暗く、小さく微笑んだ。
【C−7/市街地/1日目/午後】
【南千秋@みなみけ】
[状態]:疲労大、顔面打撲(軽度)、額に切り傷(支障はない)、
人間不振&精神衰弱(見た目は普通)。
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、
祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
核鉄(シルバースキン)@武装錬金(展開せずポケットに)
[道具]基本支給品x2、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4
青酸カリ@名探偵コナン、的の書かれた紙(5枚)@パタリロ!
[思考]:
第一行動方針:当面、B−7のタワーを目指す(深い目的は無いので状況次第では柔軟に対応)
第二行動方針:パタリロとの合流はできれば避ける。
第三行動方針:自分を人殺しと疑う者がいれば排除したい。
基本行動方針:誰も信用せず、いつもの自分を演じてみんなに殺し合いをしてもらう。
最終行動方針:このゲームを知るもの全員に死んでもらって家に帰る
【C−8/住宅地/1日目/午後】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:健康、右腕に火傷(軽度だが悪化する恐れあり)、精神的疲労、
[装備]:楼観剣@東方Project、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け)
[思考]:これがじっとしていられるかよ!
第一行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第ニ行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第三行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第四行動方針:のび太とカツオがどうなったか不安。
第五行動方針:出来ればあの子たち(野原しんのすけ&ちよ)を埋めてやりたい
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
とりあえず、C−8の住宅街を虱潰しに調べていくつもりのようです。
【C−8/住宅地の路地(よつばと藤木の死体の近く)/1日目/午後】
【パタリロ=ド=マリネール8世@パタリロ!】
[状態]:健康、ペンギン状態。ゴキブリ走法開始
[装備]:S&W M29(残弾6/6発)@BLACK LAGOON、ペンギンの着ぐるみ@あずまんが大王
[道具]:支給品一式(食料なし)、ロープ(30m)@現実、44マグナム予備弾17発(ローダー付き)
[思考]:ええい、バカどもが。このぼくの手を焼かせるんじゃない!
第一行動方針:勝手に周囲を調べに行った弥彦を見つけ、追いつく。
第二行動方針:チアキを発見して事情を問い質したい(彼女が藤木殺しの犯人の可能性を疑っている)
第三行動方針:仲間集め。チアキがマトモなら、彼女に弥彦を仲間として紹介したい
第四行動方針:弥彦の持つ首輪を調べたい(道具や設備も確保したい)
第五行動方針:好戦的な相手には応戦する。自分を騙そうとする相手には容赦しない
基本行動方針:ジェダを倒してお宝ガッポリ。その後に時間移動で事件を根本から解決する。
[備考]:自分が受けている能力制限の範囲について大体理解している。
着ぐるみ着用でも普段と同じ行動が可能(変わり身などがある分むしろ強い?)。
偉そうな事を言ったが、弥彦を完全には信用していない。弥彦と簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死の真相について、大雑把にですが勘付いています。
あ、状態欄1つ間違えていました。
弥彦の第五行動方針、
第五行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい
に一行差し替えです。今気付きました、我ながら迂闊……。
……と、いうわけで、パタリロ組の3名、微妙に散らばらせました。
3人バラバラで進めるもよし、任意の組み合わせで再合流させるもよし、です。
チアキは一応タワーを目指していますが、真っ直ぐ行くとも限りません。
なんならあっさり3人合流して貰っても構わないかな、とも思ってますんで。
弥彦は藤木も埋めてやるつもりなのか いいやつだ
おお、いきなりで驚いた! GJ
パタリロの言い回しや思考がうまいなあ。
名探偵パタリロwww……と、笑ってる場合じゃないな。
しかし千秋、高いところにはバカじゃなくて人使いの荒い引き篭もりがいるぞ
たぶん行かないほうが身のためだ、行くなー!
パタリロ組がやっと動いたぜ。
これを景気に左下組も動いてほしいなぁ。
346 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/16(日) 10:28:58 ID:PkS4A+ZG
バンコランwwwww
あいつが人殺しの犯人に自分の名前をつけられてること知ったらパタリロ撃ち殺しに来るぞw
しかし、このロワの参加作品の幅広さはスゴイな
少年漫画に少女漫画に青年漫画に長寿アニメに萌えアニメにアクションゲームに同人ゲームに実在の人物まで
ある意味クロスオーバーとしては究極だな
ヒューイットと名付けなくて良かった
地味にしんのすけとのびたとか戦闘経験豊富だよな。
映画とか大長編でもそうだけど、アニバトの方でも出場してたし。
のび太、白レン、ミミ、トリエラ、リルル予約します。
おぉ、左上の森が動くか。期待して待ってます…ってなんだこの危険人物の集い
うわw メンツだけ見ても危険だw
考えてみれば、どこも爆弾だらけだもんなぁ。
危険人物しか居ないw
のびたとリルルが再開か…
のびたが改心するか、リルルがマーダー化するか、どっちかな
目の前にエーテライトというのび太にぴったりな武器があるし、のび太マーダー化もありえる
殺せなかったら大長編モードに突入しそうだが
おお、予約ktkr。というかさりげなくミミがいるって事は時間大幅に進むのか。別の可能性も高いけど。
某所で過疎りかけてね?って言われてたけど
予約もあるし、作品投下も何個かあったし、なんかアナザーSSまで書かれてるし、全然過疎じゃねーなw
あと絵師さんたちも頑張ってるしな、お絵かき掲示板で。
SSが多少途絶えてた時も活動は止まってないという
今月に限って言えばSSより絵板のほうが賑わっていて困る。いや、困らないな。むしろ嬉しい。
絵のほうも幅広く描ける人がいてすごいなといつも思ってる。萌えあり、欝あり、感動ありで。
って描こうとしたら何で被るんだよこのタイミングでw 驚いたなw
某所になんか投下あったし、wikiに番外編のページでも作れたら作ろうかな・・・・
予約延長お願いします。
おk
>>360 ゆっくりどうぞ。
質問スレと迷ったけど、雑談がてらこっちで。
からくりサーカス3巻まで読んだ。まだプロローグっぽいのに勝が天才過ぎて笑ったw
で、からくりサーカス知ってる人に尋ねたいのですが、ロワの勝を把握するには何巻くらいまで読んだほうがいいですか?
全巻読むのにはまだ大分掛かるので、もし良かったらどなたか教えてください。
俺も便乗して……
最近ジョジョを読み始めたんだが、ぜんぜんスタンドとか出てこないんだが
何巻ぐらいまでを読めば把握できる?
ガハハハハ、こやつめ
荒しじゃないならせめて漫画ロワのほうで訊いてくれよww
俺はからくりもジョジョもよく知らんから何とも言えんが
365 :
363:2007/09/23(日) 00:32:37 ID:JR9OVOES
素で間違えてたw
スレ汚しすまん
>>362 3巻だとようやく序章が終わった所か。
まず言うと……完全に把握しようと思うと殆ど読まないとならない。
話は色々あるけど、飛ばして読むと根底にある一本の大筋が理解できなくなる。
四巻からのからくり編&サーカス編(幾つもの幕に別れ交互に進行)は第28巻まで続く。
勝に関する超重要設定が露呈するのがこの最終幕。
勝がワンランク覚醒するのもそれと同時。
※:勝を理解するだけならこの編を終盤以外飛ばしてしまう手も有る。
勝のサーカス編は割と日常的な話やロワに参加してないキャラとの交友が大半を占めるので。
ただしお薦めはできないし、長い中で伏線も大いに撒かれている。
特に勝の設定に収束するからくり編の様々な設定を理解していないと混乱すると思う。
で、29巻で『本編』という衝撃的なタイトルの新章がスタートするw
ただ、これは割と短くて34巻で終わる。
この短い(?)間に勝はギャルゲばりにイベントをこなしながらバリバリ修行してる。
勝のまともな戦闘&雛苺が連れているジャコの活躍は28巻辺りから始まってる。
ここまで読まないと完全には把握できない。
その後の最終章は時期的に読まなくてもなんとかなると思う。
このロワの勝の参戦時期は不明だけど、今のところ出てる設定とキャラの把握なら問題ない。
まあ9冊省略出来た所で34巻までなんてとんでもない冊数だけど。
一人把握するために40巻以上はキツイよな
でも、からくりサーカス面白いからさ
時間があるなら全部読んで後悔はしないと思うよ
話をぶった切って申し訳ないですが、質問です。
自己リレーになりますが、南西のタワー組(+α)書いていいでしょうか?(ちなみに旧トリは◆3k3x1UI5IAです)
誰か何か考えてるなら、(まだ予約できる段階でなくても)もうちょっと待とうかとも思いますが。
夜にまた顔出します
369 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 10:26:32 ID:hZk6APvV
これだけの期間放置されているなら問題ないと思う。
あげごめん
かなりの期間空いてる以上自己リレーはやむなしかと
私は左下面子のネタがないので、sU氏に書いてもらいたいですかね
>>367 一応漫画ロワにも出てるしな。
漫画ロワとLSの両方を把握するために読むと思えば少し楽かも。
勝がジャコ持ったら勝てるヤツはかなり限られる
勝VSフェイスレスからラストまで読めば行動のパターンとか戦闘能力は大体分かる
体に触れただけで間接外したりするし
ヴィータを焼くより勝が関節外したほうがよかったんじゃねーのとすら思えるw
頭も切れるし間違いなく最強候補の一角
勝は何が強いって結構強いのに加えて閃きと底力が有る事だろうな。
かなり劣勢になる程度なら十分ひっくり返せるから、物語的に凄く強い。
設定なら、原作において白兵戦でも人形使いでも上は居るんだけどね。
肉体能力も一応は人間の範囲内だし、このロワだと魔力強化したなのはに置いていかれたw
あとジャコは元々ラスボスが自分用に作っておいた人形だからか、かなり高性能。
(まあ同じくラスボスが作っておいたあと二体はパッとしなかったけど)
近距離遠距離どっちもいけて、応用がかなり効く特殊武装が有って、移動手段が飛行。
雛苺こわいよこわいよ雛苺。
40巻って、時間取れるなら漫画喫茶一日分だろ
俺は近所の古本屋で全部読んだ
あと、ハンタと剣心とブラックキャットも全巻読んだ
店主の視線が痛かったけど気にしない
378 :
362:2007/09/23(日) 19:12:56 ID:pggZfw+p
答えてくれた方々ありがとう。
暇を見つけて全巻読むことにします。
支給品も面白そうなのが出てるしね。
>>375 そりゃ原作では主人公補正入るからな。フェイスレスやしろがねOとの戦いでは演出効果で最強に見えるぜ。
勝は遠距離攻撃ないから狙撃系や広範囲攻撃の魔法には弱い。
近距離なら確かに上位だな。腕力はトリエラに負けそうだが。
まあ、異能力は持ってないからリリス、小太郎、小狼、ゴン相手はキツいような気がする。
そういや、リンクがあるるかん持ってるんだよなー。
どうやら反対もないようなので、正式に。
カツオ、キルア、太一、ニア、グレーテル 以上5名予約します。
期待期待
没SSスレに、アナザーとも呼べないちょっとしたネタを投下したので報告しておきます。
バンコランてこんな奴だったのwwwww
パタリロ知らないけど笑ったwwwwww
>>383 うはwwGJ!!
本編で不足気味のショタ分を補わせてもらいました
>>383 GJ! クロノ逃げてーw
いえいえー、むしろ 大 歓 迎>後書き
正直もっとやれ(待て
証明の為に一応トリップ付きで。自分も某889の人のネタ使ってちょっとだけ修正するつもり・・・・・・
……でも本編のプロットが浮かばないorz
>>383 誰も言ってないからまず一言。アッー!
パタリロ知らんがこれは笑ったw
このまえパタリロが言ってたバンコランがこいつかwww
何て露骨なガチホモなんだよwwww
誰かエイミィ呼んで来い、クロノが落とされるぞw
このショタコンどもめ!!
とてもGJだったのだけれど……。
途中から、クロノと一緒にいた二人が忘れられてないか?
いや、それだけが気になって気になって。
>>389 きっとバンコラン視点だったし、興味の無い女は脳内消去されたんだよ(多分紫と霊夢辺りと見た)
>>389 なぜバンコランを見てその場に居た女性二人が何も喋ってないのか?
それはあの場所にいた女性二人が誰であろうとも、なのは世界にも幻想郷にもいない
ガチホモというものを見て固まって言葉が出なくて黙ってたんだ、多分。
ガチホモならこーり(ry
バンコランは
「美少年だと思って手を出したら実は変装した美女でした」
で再起不能になりかける程のガチホモだからな
>>392 俺が出すのを躊躇った名前を出すとは…!てかあれはホモなのか?w あの設定が変態なのには異存ないが。
>>393 そういうやつなのか。もしヘンz…やめとこう。
予約していたタワー組+α、少し不安な要素があったために、避難所のテスト投下スレに一旦投下しました。
何が不安なのかは、読んで頂ければ分かるかと思います。
問題が無いようなら明日夜にでも本投下、修正すべきとなれば少し時間を頂いて修正版を投下しようと考えています。
お手数ですが、ご意見お聞かせ下さい。
>>395 なーる。すげえ展開。自分は修正する必要性は感じませんよ。
たしかあれって、あの槍だけの設定のはずですし。
>>395 投下SS読んでみたけど俺はOKだと思う
カツオによるフラグもまいたし
核鉄の復活ならジャンプ1stでも通った道だし別に問題ないと思う
覚醒するかどうかも微妙だし
>>395 核鉄って全部が心臓代わりにできるんだっけ?
原作では黒い核鉄しか使われてないから気になる……、
と書こうとしたら
>>396が答えてくれてたか。
まぁ、どのみち修正は必要ないと自分は思ってます。
あの時点での核鉄の使用なら蘇生じゃなくてただの全回復っていう解釈もありですし。
>>395 同じく修正の必要は感じないですね。
脳機能が壊死するまでの間だからギリギリセーフでなんとか回復ってイメージです。
にしてもようやく暗殺者っぽいキルアを見れたぜ。GJ。
新世界の神カツオは南無。キャラとしては一番笑わせてもらったよ。
>>395 有りだと思います。
復活って言うより死ぬ前に間に合った感じだろうし、核鉄もちゃんとカズキのだし。
ヴィクター化したところでまあ無敵ってわけでもない。
(そもそも時間経って癒着してからじゃないと起きないんだっけ?)
>>395 乙!手に汗握る展開の連続で楽しませてもらったよ。
キルアに圧倒されるグレーテルには妙に納得した。
いくらブララグ世界ではイカれた殺人者で通ってるとは言え
ジャンプ世界から来た殺し屋に喧嘩売ったらそりゃ負けるわw
核鉄については俺も問題ないと思います。
本投下までは詳しい感想は避けたほうがいい
仮投下の時点では読まない人もいるんだから
問題ないようなので、こちらに本投下しようと思います。ほとんど手は加えていませんが……。
カツオは逃げていた。
ビルの合間をジグザグに駆けながら、カツオは必死で思考を巡らせる。
カツオの側が持っているカードは、3つ。
自身の名前と正体。子豚だった少年の首輪。そして、禁止エリア指定装置。
自分が「のび太」だと誤解されている、という事実は……どう使えばいいのか見当もつかない。
交渉材料になりそうな首輪は……しかし、こう追われている状況では、問答無用で奪われかねない。
どちらも「使えそうだ」とは思っても、カツオの頭では、「どう使えばいいのか」が分からなかった。
このあたり、磯野カツオという少年の限界である。
もとより飛びぬけた策士というわけでもない。悪戯なら知恵も回るが、それでも結局は「悪戯」レベル。
大抵の場合、調子に乗ったところでバレて大目玉を食らう、そんな悪戯だ。
頭の回転1つで凶悪な犯罪者と戦う探偵ではない。探偵たちを出し抜く犯罪者でもない。
ましてや、今は格好は似ていても、その頭脳を活かして「新世界の神になろう」などとは考えもしない。
彼は、良くも悪くも「普通の子供」でしかないのだ。
それでも、カツオは必死に考える。走りながらも、最後に残った選択肢・「禁止エリア指定装置」を取り出す。
カツオを追ってくる少年は1人。確かキルアとか呼ばれていただろうか? 鋭い目をした銀髪の少年だ。
もう1人仲間がいたはずだが、その姿は見えない。状況から見て、あのタワーに居ると思っていいだろう。
となれば……!
(『B−7』、セット、っと……。あとは決定ボタンを押すだけ……!)
この装置のことを上手く伝えれば、相手を脅すこともできるはず。
装置を素早く弄り、指定座標をタワーのある『B−7』に設定し、決定ボタンに指をかけた所で――
追跡者の方を振り返ったカツオは、見た。
銀髪の少年キルアが、地面を蹴って跳躍する姿を。
その高さは、とても人間のジャンプとは思えない。ビル数階分にも及ぶその高さに、唖然として足を止める。
そして、その一瞬の躊躇こそが、彼の運命を決めてしまった。
「えっ――」
「――『鳴神(ナルカミ)』」
まさに、晴天の霹靂。
轟音が鳴り響くのと、カツオの身体を衝撃が駆け抜けたのは、ほぼ同時。
自分の身に何が起こったのか理解する間もなく、肉の焼ける臭いに包まれながら、彼の意識は暗転した。
* * *
キルアは――カツオを追いながら、タイミングを狙っていたのだった。
太一を呼びつけるには、距離があった。彼を待っていたのでは、「のび太」に逃げられる危険があった。
だから、1人でも追うことを選んだ。早めに取り押さえる必要があった。
ただ、カツオを逃がすまいと考えながらも、キルアの意識はもう1つの問題を忘れることはなかった。
N(エヌ)。タワーの展望室に陣取る、タワーの主。
彼の存在を忘れるわけにはいかない。
(まだ、こっちの手の内は晒したくないな……特に、太一にも見せてないオレの『能力』は)
キルアは、まだNのことを信用しきっていない。
当面は敵対することは無いだろう、とも思ったが、用心しておくに越したことはない。
だから彼は、『念能力』の存在をまだ伏せておきたかった。
オーラを電気に変える彼特有の能力についても。超人的な肉体能力を与えてくれる、『念』の基本技術も。
これらは伏せておけばNに対するアドバンテージになる。
あくまで常人レベルのスピードで「のび太」を追いながら、キルアは機会を伺う。
(このままビルの谷間を逃げてくれれば……よし、ここだ!)
彼が待っていて、そして「のび太」が知らずに踏み込んだのは、タワーの展望室から死角になる位置。
ビル群が上からの視線を遮ってくれる場所。
キルアは素早く『念』を練る。素早く足にオーラを集中させて脚力を『強化』。跳躍。
空中で『電気』に変換された『念』を手に溜めて、そして。
(間合いは――ギリギリか?
『念』の調子もおかしい……ジェダの言ってた制限か……念には念を入れて……!)
「えっ――」
「――『鳴神(ナルカミ)』!」
青空の下、雷が落ちた。
* * *
――白い砂浜を、1人で歩いていた。
明るい砂浜。静かな砂浜。あまりに光に満ち溢れて、あまりに眩し過ぎて、周囲はよく見えない。
カツオの刻んだ足跡が、波に洗われては消える。
ここはどこだろう。周囲を見回す。
遠くに、大勢の人が居る。その多くが、自分と同じくらいの体格の、少年少女たち。
あの大広間で見かけた人々のうちの、何人か。どうやら、彼の到着を待っている様子だった。
みんな、微笑んでいた。みんな、笑っていた。
(……ああ、そういうことか)
憑き物が落ちたように、不安も何もかも消えうせて。カツオは彼らの方に向かって駆け出した。
越えたら戻れないであろう、目に見えない一線を踏み越えながら、カツオは笑顔で天を見上げる。
どこまでも続く、光り輝く白い砂浜。延々と広がる青い海。頭上に広がるのは、抜けるような青空。
こんな日なら、海に還るのも悪くない。そう思える。
みんなが、笑ってる。お日様も、笑ってる。
今日も、いい天気――
* * *
「……っと、音がでか過ぎたかな。Nにも聞こえたか」
信号機よりも高い位置から、難なく着地を決めたキルアは、軽い調子で呟いた。
『鳴神(ナルカミ)』。それはキルアの持ち技の1つ。電気の『念』を、敵の頭上から叩き付ける技だ。
多少の距離があっても敵を捕らえることができる、という長所を持つが、欠点も無いわけではない。
オーラの性質を変える『変化系』能力者であるキルアは、遠距離攻撃である『放出系』を苦手としている。
その弱点を補うために、高い所から低い所に落ちる、という雷の特性を模倣している。
つまり、放つためには敵の頭上を取る必要があるのだ。
おまけに、どうも『念能力』そのものの調子が悪い。ジェダの制限のせいであるらしい。
そのため、ちょっと強めに技を放ってみたのだが……。
無人のビル街の中、思っていた以上に大きかった音が、反響してしまっていた。閃光も見えたかもしれない。
これならもっと距離を詰めて、スタンガン的な接触技『雷掌(イズツシ)』を使っておくべきだったか?
そんなことを考えながら、ゆっくり「のび太」に近づいたキルアは、そして。
「さて、色々と話を聞かせてもらうぜ。おい、聞いてるのか――!?」
倒れて動かない相手に、それでも反撃を恐れて慎重に近づいた彼は、急に何かに気づいてハッとする。
恐る恐る、相手の頭をつま先で蹴る。
ゴロン、と、力を失った首が、蹴られるままに転がって。
白目を剥いた少年の顔。開かれっぱなしの口から、一筋の煙が上がる。
――死んでいた。
焦りのせいか、Nの視線を意識していたからか、それともジェダの能力制限に動揺したせいか。
あるいは、所詮は「ただの子供」に過ぎなかった、カツオのタフネス不足のせいか。
キルアは彼らしくもなく、『鳴神(ナルカミ)』の威力調整を間違えて――
あまりのことに呆然とする彼は、死体の手から小さな機械が零れ落ちたことに気付かない。
落雷の衝撃で決定ボタンの押されてしまった『装置』が、音もなく道路脇の側溝に落ちたことに気付かない。
「お、おい! この程度で死ぬなよ! おいっ!」
殺す気は無かった。ただ痺れさせて、動きを止めるだけのつもりだった。なのに。
別に殺人行為自体には躊躇いはない。この少年の生死そのものにもさほど関心もない。
ただ、太一とNに対する説明に困る。そして、死なれてしまっては情報を引き出せなくなる。
慌てて少年の胸に手を押し当て、止まった心臓に電撃を叩き込む。電気ショック療法の要領で蘇生を試みる。
けれども、半ば黒焦げになったような死体が、簡単に息を吹き返すわけもなく……。
磯野カツオは、その本名と正体を知られることなく、また、禁止エリア指定装置の使用にも気付かれることなく。
タワーの死角、ビルの谷間の小さな路地で、その生涯に幕を閉じた。
* * *
「……こちらから見る限りでは、まだ帰ってきませんね。そちらはどうです?」
『こっちも相変わらず反応ないぜ。ま、そのうち戻ってくるだろ。何なら探しに行くか?』
「いえ、それには及びません。そこで見ていて下さい」
何度目になるかも分からぬ会話を交わして、ニアは溜息と共に受話器を置いた。
どうにも上手く行っていない感じがする。理屈抜きに嫌な予感がする。
理性的な考えかたをするニアには、珍しいことではあるのだが。
あの後――階下の太一は、すぐに電源を復旧させてくれた。明かりも放送も水道も、全て元通りになった。
基本的にイイ奴なのだろう。ああいう形でお願いすれば、断るような人物ではないようだ。
ただし。太一が守ったのは、ニアのお願いだけではなかった。キルアのお願いもまた、正確に守っていた。
「Nを見張っていろ」――飛び出していく際、彼はそう言い残していったらしい。
そして悩んだ太一は、電源を復旧させると同時に、2機のエレベーターを緊急停止させてしまったのだった。
階下の制御室から緊急停止されては、展望室の側には復旧させる手立てがない。
電源の回復には成功したが、事実上展望室に軟禁された状況には変わりが無いのだった。
(ここで太一君が出て行ってしまっては、本当に降りる手段が無くなってしまいますからね……。
万が一、エレベーターを復旧させる人が居ない状態で、ここが立ち入り禁止区域に指定されてしまえば……)
そんなことになったら、本気で死にかねない。
頭脳だけならLにも迫ると自負するニアだが、体力面ではからきし。その点スポーツ万能でもあったLとは異なる。
非常階段を降りるとしてもこの高さだ、どれだけの時間がかかってしまうことやら。
ワイヤーや鉄骨を伝って降りるのも論外だ。アクション仮面の犠牲を忘れてはいけない。
だから、太一にキルアを探しに行かせるわけにはいかなかった。タワーから離れさせるわけにはいかなかった。
イザという時、エレベーターを復旧してくれる人が必要なのだ。何としても留め置く必要がある。
それに、太一が1階に居れば、彼の持つ『首輪探知機』の効果も期待できる。
実のところ、展望室からの観察には、限界がある。
ビル群による死角も各所にあるし、ニアが一度に見れるのは1つの方向だけだ。
太一の首輪探知機は、範囲こそ限られているが、展望室からの観察の欠点を補ってくれる。
そしてその効力を活かすためには、探知機を持った者は1階に留まる必要があるのだ。
探知機の効果範囲は半径50メートル。タワーの高さはそれを軽く越えている。
もし仮に展望室のニアの手元に探知機があっても、地上を動く参加者を捕らえることはできないのだ。
(今は、これでいい……この状況を維持するのがおそらく最善……。
けれども、何なのでしょうか、この焦燥感は……!)
タワー1階の奥にいた太一は気付いていなかったようだが、つい先ほど、気になる音と光があった。
ビル街の方向、タワーからは建物が邪魔で直接見えない場所だ。まるで雷でも落ちたような閃光と轟音。
キルアが「のび太」を追っていった方向にも近い。
きっと、追う者と追われる者の間で、「何か」があったに違いないのだ。
(まあ、キルアもあの性格です。こちらを……というより、太一君を長時間放ってはおかないでしょう。
仮に問題が起こったとしても、深追いはせずに戻ってくるはずです。
キルアか弥彦君が戻ってきたら、太一君を説得して、一時的にでもエレベーターを使わせて貰いましょう。
全ては、彼らの到着を待ってからでも問題ないはず……!)
結局、ニアに頼れるのは己の知性のみ。
頭を大きく振って不安を振り払うと、彼はメタちゃんが変身した双眼鏡を手に、周囲の観察を再開した。
* * *
キルアは結局、自分が殺した少年の死体を埋めて隠すことに決めた。
死体があれば、その損傷の具合からキルアの能力が見抜かれるかもしれない。
いや、死体単独から推測するのは難しいだろうが、あの雷の音と光も合わせて考えられたらかなり危険だ。
それに、技の加減を間違えて殺してしまいました、なんてことを素直に認めるのは、キルアのプライドが痛む。
死体さえ始末しておけば、Nや太一には「追いかけたけど途中で逃げられた」と言えば済む。
「追跡の最中に相手がランドセルを落とした」ことにすれば、荷物だけでも持ち帰れる。失点を補える。
夕方に流されるという定期放送で「のび太」の名前が呼ばれても、知らぬ存ぜぬを押し通せばいい。
キルアはけっこう嘘つきなのだ。もしも嘘が必要なら、いくらでも嘘をつける。
ランドセルの中には、確かに首輪があった。それに、支給品らしき天体望遠鏡。他には共通支給品のみ。
『ゲームに乗ってはいるが、支給品に恵まれていなかった』……まさにNの分析通りの状況。
改めてNの推理力に感心してしまう。そんな相手、できれば敵にはしたくない。
(ま、実戦の方はからきし駄目、という可能性はあるけどな)
それでも、現時点でNや太一に、「キルアもゲームに乗った」と誤解されることは避けたかった。
僅かでもそんな可能性があるなら、潰しておきたかった。
幸い――と言っていいのか、太一の手元には『首輪探知機』がある。タワーの上にはNもいる。
他の参加者がタワーに近づいても、すぐに分かるだろう。
Nの知恵と慎重さがあれば、もし好戦的な相手が近づいて来ても大事にはならないだろう。
キルアがこの死体を運び、埋めてくるくらいの時間なら、彼らだけでも身を守るのに問題はないはずだ。
キルアは死体を担ぎ上げる。頭の中に地図を思い浮かべる。
現在地はB−7、タワーの北側に広がるビル街の狭間。確かB−6の北のほうで街が途切れていたはず。
いや、ここからなら、東に向かってC−7かC−6に抜けた方が早いか?
ともあれ、死体を埋めるつもりなら、アスファルトに覆われた街から出なければならない。
キルアは死体を肩に担ぐと、ビルの陰、タワーから死角になる位置を選んで歩き出した。
* * *
ただ――この時点では、キルアも気付いていなかった。
雲1つない青空の下で響いた、雷鳴の音。それが、街の中にいた他の参加者を引き寄せてしまったことに。
カツオの死体を担いで歩み去るキルアの背中を、1人の少女が見つめていた。
立ち並ぶビルの1つ、高層階のバーの窓。
遠ざかる背中を見下ろしながら、少女は唄うように小さく呟く。
「ふふふっ……どうやら、今まで会ってきた子とは、違う感じね。
あの子は、私たちと同じ臭いがするわ。……そう思わない? 兄様?」
* * *
「…………チッ。仕方ないか」
キルアは何度目になるか分からぬ舌打ちをする。
死体を担いで、タワーから死角になる位置を通って街の外に出る――これが、案外大変なのだった。
ビルが密集して建っているため、タワーからの死角は多い。
けれど、道路があれば建物も途切れる。建物の高さも一定ではない。
所々に「展望室から丸見えになってしまう」場所が点在し、キルアの行く手を阻む。
建物の中を通り抜けたり、匍匐前進のように身を縮めて進んだり、時に引き返して方向転換したり。
ここまでは展望室から見えない範囲を移動できているとは思うが、しかし予想以上に時間が掛っている。
地図の上では、既にB−6エリアに入っているようだが、街の切れ目はまだ遠い。
「……仕方ないな」
改めて吐き捨てるように呟くと、肩の上の死体を担ぎなおして、キルアはビルの1つに踏み込む。
解体する寸前だったのか、テナントも何も全て出払った、廃ビル同然のビル。
迷いのない足取りでビルの1階ホールに踏み込んだ彼は、そして静かに振り返って言った。
「……出て来いよ。つけて来てるのは分かってるぜ。
こっちも色々とストレス溜まってるんでね。気晴らしがてら、相手してやるよ」
* * *
「……うふふっ。気付いてたのね」
少年に呼びかけられて一瞬目を丸くしたグレーテルだったが、すぐにいつもの微笑みを取り戻す。
声だけで応えながら、物陰を移動する。
何を思ってなのか、銀髪の少年が自ら入り込んだこのホール、グレーテルが奇襲をかけるには最適の環境だ。
廃ビルらしく、あちこちに搬出を待つ机や椅子が積み上げられている。隠れる障害物は沢山ある。
その上、カーペットも剥がされたこの広間は、声もやたらと反響する。喋り声からは正確な位置を掴み難い。
埃を被ったガラクタの間を音もなく移動しながら、彼女は挑発する。
「素敵ね、お兄さん。ずっと隙を窺ってたんだけど、とうとう撃てなかったわ。でも、もうこれで終わり」
「いいから出て来いよ。無駄なんだから。かくれんぼを楽しむつもりなら、殺気と血の臭いが強すぎるぜ」
「!!」
死体を肩に担いだまま、ホールの中央に立ったまま、銀髪の少年は淡々と呟く。
ガラクタの間を抜けて背後に回り込もうとしていたグレーテルは、その指摘に足を止めるが。
「……ふふふ。やっぱりあなたは私と同じ臭いがするわ。血と臓物の臭い。光より闇に馴染む魂。
その子もあなたが殺したのでしょう? 私とあなたは、同じものよ」
「フン。そういうお前からは、ドブの臭いがするな。腐った裏路地の臭いだ。一緒にされちゃ、困るぜ」
「ふふふ。私、お兄さんのそういう所、嫌いじゃないわ。
こんな出会いでなかったら、色々楽しいことも『試して』みたかったのだけど……残念、ね」
ひゅんっ。
楽しそうな言葉と共に、グレーテルは手にしたものを投擲する。
銀髪の少年は咄嗟に純銀のナイフを投げて迎撃するが――それは、グレーテルの狙い通り。
空中で刃物に貫かれたお手製の催涙弾は、泡と悪臭と共に毒ガスを撒き散らす。少年の頭上に降り注ぐ。
ホールは広いし空気の逃げ道がいくつもあるから、せっかくのガスもすぐに拡散してしまうだろう。
それでも咳き込ませ、涙で視界を奪うことくらい出来るはず。不意打ちを喰らわすことができるはず。
そう考え、銃を手に飛び出したグレーテルは……
「――残り1発、ってとこか? 1発なら死体を盾にかわせるから、撃ったらそれで最後だな」
「!?」
「ビンゴか。ホントは、そっちの気配や、見た感じの銃の重さからカマかけただけなんだけどね」
平然と、涙1つ流さずこちらを見据える少年の視線に、動けなくなってしまった。
モロに毒ガスを浴びたはずなのに。少しくらいは隙が出来るはずなのに。
自然体でいながらつけいる隙の見えない少年の構えに、グレーテルは呆然と呟くことしかできない。
「な、なんで……?」
「ん? ああ、さっきのボトルか? なに、物心つく前から『訓練』を受けて来た身だからさ。
あんな、素人があり合わせのモノで調合したような『弱いガス』じゃあ、オレには効かないよ」
さらっと言う銀髪の少年。半ば金縛りのようになりながらも、グレーテルは必死に考える。
常人相手なら十分効果があるはずの毒ガスのボトルも、通用しない。塩酸のビンも、どれほどの使えるやら。
構えた銃は、見抜かれてしまった通りの残弾数1。
連射できれば勝機も無いでもなかったが、不意打ちに失敗した今、たった1発ではどうしようもない。
となると、残された武器は……。
グレーテルはゆっくりと、自分の右腕に左手を伸ばす。
左肩を前に、銀髪の少年の視線を遮りながら、手当てのために巻きつけられていた金属片を手に取る。
「にしても……素人だな。遊び過ぎだぜ。殺気の感じじゃ、もうちょっと『できる』奴かと思ったんだけどさ」
「あら、私たち、アマチュアじゃないわよ? いっぱい殺して、いっぱいお金も貰っていたんだから」
「じゃあ訂正。オマエのは、そうだな……曲芸犬の芸みたいなもんか。無駄が多すぎる。本物の『プロ』じゃない」
「まあ、酷い人ね。レディを捕まえて『雌犬』だなんて。そんな風に罵られたら、思わず濡れてしまうじゃない」
核鉄を手の中に隠しながら、淫靡な笑みで軽口を叩きながら、グレーテルは機を窺う。
相手の少年は死体を肩に担いだまま、相変わらず動きを見せない。
先ほどと同様、グレーテルが動いたらそれを迎撃する構え。武器は手にしていない。
ゆっくりと相手の周囲を回りながら、グレーテルは言葉を紡ぎ続ける。
「『私たち』は、いっぱいいっぱい殺してきているの。『僕ら』はこんなにも沢山の人を殺してきてる。
だから、『私たち』はそれだけ命を増やせるの。『僕ら』は永遠さ。そう、永遠に死なない( Never Die )……」
「へぇ――」
命を増やせる。そう言った途端、それまで不機嫌そうだった少年の表情に、変化が生まれた。
嘲るような、馬鹿にしたような、いびつに歪んだ笑み。
同時に、少年の雰囲気が微かに「揺らぐ」。隙のない構えが、ほんの少しだけ崩れる。
その僅かな「揺らぎ」に勝機を見たグレーテルは、そして唐突に、これ見よがしに銃を放り捨てる。
廃病院でシャナと戦った時と同様、パッと見に分かる唯一の武器、それを捨てると同時に、武装錬金を――
「『武装れ』――?!」
「――じゃあさ」
不意を打つべく、サンライトハートを発動させようとして――グレーテルは、息を飲む。
すぐ目の前に、銀髪の少年の顔が迫っていた。恐ろしいほど素早い踏み込みで、距離を詰めていた。
グレーテル自身が言った通り、2人は「似た者同士」なのだ。彼女の作戦も発想も、全て見透かされていたのだ。
先ほど見せた「揺らぎ」が、実はグレーテルの行動を釣るための餌だった――そう気付いた時には、もう遅い。
武装錬金を実体化させるよりも早く、少年の手が。
サディスティックな笑みを浮かべた、少年の手が突き出されて。
「そんだけ『命』があるなら、1つくらい無くなったって大丈夫だよな?」
シュバッ。
目にも止まらぬスピードで引き抜かれた少年の手に、何かが握られている。
ビク、ビクと脈打つ、赤黒い肉の塊。
痛みよりも先に、空虚な喪失感を感じた彼女は、己の胸に手を当てて――
そこに、「何も無い」ことに気付く。服の胸の中央が破けて、空虚な空洞が開いていることに気付く。
握られていた肉塊は、グレーテルの『命』そのもの。
今まさに抜き取られた、彼女の、心臓だった。
「……!! か、返し、」
グシャッ。
片手で胸を押さえたまま、もう1方の手を伸ばした彼女の目の前で。
小さな心臓は、無情にも握りつぶされて――彼女はそのまま、倒れ伏した。
* * *
それは結局のところ、「格の違い」、だったのだろう。
伝説の暗殺者一族・ゾルディック一家に生を受け、幼い頃より「エリート教育」を受けてきた天才児キルアと。
不幸の坂を転げ落ち、変態たちに弄ばれ、暗黒の闇を受け入れるしかなかったグレーテルの差。
闇のエリートであるキルアに、所詮は見世物でしかなかったグレーテルが、かなうわけも無かったのだ。
これが、もしも相手が「似たタイプ」でなかったなら、グレーテルにも勝機はあっただろう。
相手が普通の「正義の味方」やそれに類する種類の人間なら、足元を掬うことも出来たかもしれない。
この完敗は、単純な彼我の戦力差に拠るものではなかった。
グレーテルにとって、キルアはある意味、最悪の相性の相手だったのだ。
せめて、もう少し状況なり装備なりが整っていれば、また違っていたのかもしれないが。
「なんだ、やっぱり1つしかないんじゃん。もうちょっと楽しめるかと思ったのにさ」
少女の「心臓を盗む」ために変形させていた手を元に戻しながら、キルアは倒れた少女を鼻先で哂う。
素手で、生きている人間の心臓を盗む――念能力を身につける前から既に覚えていた技だ。
相手との「格の違い」を見抜いて、さてどうやって殺してやろうか、と悩んでいた所に、「命を増やせる」という話。
ひょっとしたらそういう『能力』の持ち主なのかもしれない、と思ってこんな酔狂な殺し方をしてみたが……。
「こいつの死体は……放置しといてもいいか。持ち物も……いらないな」
簡単に少女の死体をあらためたキルアは、カツオの死体だけを担いで再び立ち上がる。
心臓盗み、などという技、死体の状況を見たところで誰にも想像つくまい。
そもそも、こんな廃ビルに好き好んで入ってくる者もいないだろう。
残されていた持ち物も、大して魅力のあるものは無い。弾のほとんど無い銃にも用はない。
キルアが持ったところでナイフを投げた方が速いし、太一に持たせるのは暴発や誤射の方が心配だ。
お手製らしい毒ガスのボトルや塩酸のビンなども、別に必要ない。
そのまま、廃ビルから立ち去ろうとしたキルアは、ふと思い出して首を捻る。
「そういや……最後に使おうとしてた『アレ』は、どこ行ったんだろうな?」
何をやろうとしていたかは分からないが、キルアが心臓を盗む寸前、少女は「何か」をしようとしていた。
その時、手には金属の板のようなものを持っていたようだが……?
「『具現化系能力者』の具現化物、みたいなものかな。……あ、やべ。名前聞いておくの忘れてた。まぁいっか」
勝手に納得したキルアは、そしてそのままビルを出て行く。
少年の足音が遠くに消えても、少女の死体は、ピクリとも動かなかった。
動けるわけが、なかった。
* * *
――白い砂浜を、1人で歩いていた。
純白のスリップ1枚の姿で、白い砂浜を静かに歩く。小さな素足がつけた足跡を、波が洗う。
血の臭いもドブの臭いも、もうしない。清潔な服から、爽やかな洗剤の香りがほのかに立つ。
銀髪の少女は、そして青空の下、砂浜に刻まれた別の足跡を見つける。
自分と同じ歩幅。誰よりもよく知る存在。彼女は顔を上げる。
彼が、待っていた。
自分と同じ、純白の下着姿の少年。自分の半身。最愛の存在。
直感的に状況を把握した彼女は、溜息混じりに、何かを諦めたような口調で呟いた。
「……兄様も『こっち』に来ていたのね」
「ボクは失敗しちゃったよ、姉様。もっとうまくやらなきゃね」
爽やかな風が、2人の間を吹きぬける。青空は遥かに高く。海はどこまでも蒼く。太陽は白く輝いて。
こんなお天気なら、空を仰いで、海を眺めて眠るのも悪くはない。
暗黒の闇に生きてきた彼女は、晴天の青の美しさに目を細める。素直に美しいと思える。心から安らぐ。
「でも――これからはずっと一緒なのね。2人でずっと、この光の中で――」
「――何を言ってるの、姉様?」
諦観と、安堵と、歓喜の混じった彼女の言葉を、彼は突然遮る。
唐突に、空が曇る。恐ろしい速度で真っ黒な雲が湧き上がり、青い空を覆っていく。
辺りを満たしていた光が消えていく。生まれ故郷のカルパチアの山中を思わせる、分厚く憂鬱な雲。
急転していく空の下、慌てて周囲を見回す彼女に、彼は微笑みを浮かべたまま、断言する。
「僕たちは決して死なない。永遠に死なない。 Never Die なんだ。こんな所で終わるわけがない」
「兄様、何を――」
彼女は問い質そうとするが、その言葉が最後まで紡がれることはなく。
これも唐突に、大地が割れる。愛する彼を残し、砂浜に走った大きな地割れが、彼女1人を飲み込む。
そして堕ちていく先は闇よりなお深い、真の闇の中。血とドブの臭いに満ちた、酷く慣れ親しんだ地獄。
「殺して殺されてまた殺す、僕らの紡ぐ円環は決して終わらない。終わることができないんだよ――」
嘲るような、哂うような彼の言葉を浴びながら、少女はそして1人、安らぎの楽園から追放された。
* * *
「…………」
目を覚ました時――世界は血の色に染まっていた。
寝ぼけているかのように、状況が把握できない。
その紅い色が夕日によるものだと理解するのに、数分ほども要した。
自分は気絶していたらしい。そのことに思い至った彼女は、ゆっくりと身を起こす。
「わた、し……なんで……生きて……?」
ゆっくりと自分の胸元を撫でる。
服は破けている。胸の中央部分、肉塊を掴み出された時そのままに、破けている。
けれども――確かに触れて確認したはずの空洞は、もうそこには無い。
肉が塞がっている。傷が癒えている。痕すら残っていない、綺麗な素肌がそこにあった。
「これは……?」
(姉様、だから言ったでしょう? 僕らは決して死なない、 Never Die なんだ、って)
「ああ、そういうこと……。ふふ……ふふふ……!」
耳元で最愛の「兄様」の幻影に囁かれ、グレーテルは微笑みを取り戻す。
自分たちの「信仰」は間違ってなかったのだ――先ほどの敗北の痛みも忘れ、彼女はゆらりと立ち上がる。
彼女の身を包む闇と、血の臭いが、前よりも一層濃いものになる。
それはまさに、闇の与えた奇跡だった。
起きてはいけない奇跡。冥王ジェダの想像すら超えていたであろう、悪夢のような奇跡だった。
心臓を盗まれたグレーテルは、反射的に己の胸の空洞に手を当てて――
そしてたまたまその時その手には、核鉄が握られていて――
その核鉄は『アリス・イン・ワンダーランド』と同じ『LXX』、存在しないはずの同一番号が刻まれた核鉄で――
押し当てられた核鉄は、倒れた拍子に空洞に突き込まれる格好になって――!
それはかつて、津村斗貴子が武藤カズキに行った「ある施術」と同じ効果をもたらしたのだった。
すなわち、喪われた心臓の代理。核鉄と肉体の融合。
人間を辞めるための、第一歩。
「武装、錬金……! うん、やっぱり槍は出てくるわ。今までのように、消すこともできる。
ということは、あの板は傷の中に入ってしまったのね。傷を塞ぐ不思議な力があったみたいだから……。
でも、これはかえって好都合かしら。わざわざ手に持たなくても、不意打ちで使えるということだから」
グレーテル自身は、まだ知らない。
己の身に起きたこと、その真の意味を。
自らが心臓の代わりとした核鉄の、真の姿を。真の力を。
果たして、それを彼女が知る時は来てしまうのだろうか?
もしも来てしまえば……それは同時に、大惨事の発生を意味するはずであったが。
未だそれらの可能性を知らぬグレーテルは、それでも哂う。
「うふふ……。なら、もっと殺しましょう。たくさんたくさん、殺しましょう。
殺して、殺されて、また殺して。永遠に続く円環(リング)を紡ぎましょう。……ねっ、兄様?」
赤く染まった光が、廃ビルに斜めに差し込んでくる。もうしばらくすれば、日が暮れる。
突撃槍の武装錬金、『サンライトハート』。直訳すれば、『陽光の心臓』。
血のように赤い、今日最後の太陽の光に浸かりながら、グレーテルはそして、邪悪に淫靡に、微笑んだ。
【B-7/タワー内1F管理室/1日目/午後】
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:健康
[装備]:フライパン
[道具]:基本支給品 首輪探知機、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣
水中バギー@ドラえもん、コンチュー丹(10粒)@ドラえもん、調味料各種(胡椒等)
[思考]:キルア、遅いなぁ
第一行動方針:キルアの帰りを待つ
第二行動方針:丈、光四郎、ミミを探す
第三行動方針:キルアに協力し、ゴンを探す。
第四行動方針:キルアを裏切らない範囲でNに協力する。
基本行動方針:丈、光四郎、ミミを探した後、この場からの脱出方法を考える
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nのことを「本当はいい奴だったんだ」と考え信じていますが、Nの仮説の一部を理解できていません。
カツオのことを「のび太」という名前で認識しました。「のび太」がゲームに乗っていると考えています。
【B-7/タワー内展望室/1日目/午後】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:さて、いつまで待ち続けましょうか
第一行動方針:太一には当面、タワー1階に待機させておく。
第二行動方針:キルアの帰りを待つ。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
[備考]:
タワーのエレベーターは、2機とも緊急停止状態で動きません。
【C−6/街の外/1日目/午後】
【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:やや疲労。カツオの死体を担いでいる。
[装備]:ブーメラン@ゼルダの伝説、純銀製のナイフ(9本)、
[道具]:基本支給品、調理用白衣、テーブルクロス、包丁、食用油、 茶髪のカツラ
支給品一式(カツオのもの)、天体望遠鏡@ネギま!、首輪(しんのすけ)
[思考]:早く戻らないとな……。
第一行動方針:背負っている「のび太(実はカツオ)」の死体を街の外に人知れず埋めて隠す。
第二行動方針:死体の始末が終わったら、タワーまで戻る。
第三行動方針:展望室にいるNに警戒。手放しで信頼できる相手だとは考えていない。
第四行動方針:ゴンを探す
第五行動方針:太一に協力し、丈、光四郎、ミミを探す
基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくる馬鹿は容赦なく殺す
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nの仮説をおおかた信じていますが、Nの人間性を信じきっていません。
死んだカツオのことを「のび太」という名前で認識しました。
グレーテル(名前は聞いていません)を殺したと思い込んでいます。
【B-6/とあるビルの中(タワーから死角になる位置)/1日目/夕方】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:疲労(中)、全身に中度のダメージ。右腕にダメージ。
喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている
[装備]:ウィンチェスターM1897(1/5)@Gunslinger Girl)、サンライトハート(核鉄状態・胸の中)@武装錬金
[道具]:支給品一式、塩酸の瓶×1本、神楽とミミの眼球 、毒ガスボトル×2個
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。
[思考]:私たちは永遠に死なない。ずっと続く円環の中にいるんだもの……!
第一行動方針:放送まで休む
第二行動方針:誰か新しい相手を見つけて遊ぶ。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」 (兄様はもう探さない)
[備考]:キルアの名前は聞いていません。
【磯野カツオ@サザエさん 死亡確認】
[備考]:
カツオの支給品・禁止エリア指定装置は、B-7の街中の側溝に落ちています。
装置は既に使用され、タワーを含むB−7が「次の指定禁止エリア」に指定されています。
キルアを含め、その事実に気付いている者はいません。
カツオの死体は、現在キルアに担がれて移動中です。
以上、本投下終了。支援感謝です。
仮投下の時にも書きましたが、キャラごとに時間軸が異なるので注意して下さい。
グレーテルだけ夕刻、タワーの2人とキルアは午後枠です。
改めて投下GJ。カツオあっけないwww……が今後面白くなりそうなフラグを残してくれたな。
サザエさんの世界で悪戯しても叱られるだけだが、ここでは死に繋がったか。
てか禁止エリアがタワーになればニア涙目で面白そうだと考えてたら第一放送で早くも実現しそうかw
キルアの行動も理に適っていてらしさが出ていたと思います。
同じ殺し屋同士でもスタンスの違いが出てて面白かったです。
さて、グレーテルはこれからどうなるやら。キルアとの再戦があるだろうか。
仮にヴィクター化しても手がつけられなくなることはないと思います。
エナジードレインは制限されるだろうし、身体能力上昇くらいで落ち着くのでは。
投下お疲れ様です。
タワーが禁止エリアになる事でニアの篭城が出来なくなったか……
下手すればグレーテルや千秋とはちあわせ、か。
先にも言われてる通りグレーテルのヴィクター化に関しては問題ないと思います。
そういや・・・2G氏は今日が予約延長期限の筈だけど、どうなんだろう
見ていたら何か報告をお願いします
申し訳ありません。色々と限界なので予約を破棄します。
投下乙
カツオ・・死に際にやってくれたな
誰も禁止エリア追加に気づいてないし、これは1人か二人死にそうだな
>>435 投下GJ
なんか展開がすげえ魅力的だぜw グレーテルも禁止エリアも楽しみだ。
>>438 乙。もし完成することがあったら投下してほしいな。
左下組が一気に進んでくれたな
禁止エリアはタワーと一緒にシェルターもやってほしいな
完璧に近い篭城はロワの敵だなw
過去ログみてえ・・・
カツオGJだ
下手すりゃニア一生動かないもんw
引きこもり卒業w
>>441 禁止エリアのことを詰めるのはまだ早い気はするけど、俺はシェルターにまで設定するのは反対しとく。
あの中は探索のし甲斐があるし、朝からずっとタワーにいるニアと違って
トマたちはシェルターに来てそんなに時間が経ってない。
それにトマはともかくはやてとアリサがいつまでも篭ってることはないと思う。
>>442 Janeのログはあるけどどうすればいい?
wikiにもあげられるけど、どうすれば他の人が見られるようになるのか分からんわ。
シェルターは未探索の場所に面白いのがありそうだしな
あと一番新しい話見る限りはやて達は調べ終わったら出るつもりみたいだし禁止エリアにするには勿体無い
投下乙です!
これはまた予想外の展開に……グレーテルとニアの今後が楽しみすぎて動悸がやばい。死ぬ
ベッキー、しんべヱ、レックス、アルルゥ、雛苺、さくら、梨々を予約します。
まだ放送やってないのに、そのメンツを動かすのは無理なんじゃ……?
さくらって放送直前じゃ無かったか?
作中に「放送が入った〜」的な描写もありませんでしたし、前作と放送の間に起こった出来事ということで書きました。
投下の際には一時投下のほうに落としますので、駄目だと思ったら破棄請求してください。
書き方次第だね。書き手さんがその問題把握してるならまあ大丈夫だろうと信じてる。
しっかし、午後枠に結構溜まってるんだね……。
>>452を見て、今の進度を纏めてみた。
【放送直前】
雛苺&桜、金糸雀&イエロー←ベルフラウ、ベッキー&しんべぇ、レミリア
【夕方】
霧周辺 (みか先生、アルルゥ、梨々、レックス)
シェルター組、葵&ベルカナ、ククリ&ひまわり、ヴィクトリア、グレーテル
【午後】
グリーン&リリス、蒼星石&タバサ、のび太→白レン
学校組+小太郎、ブルー&イヴ→一休
旧山小屋組、勝、きり丸、なのは、メロ、トリエラ&リルル
紫穂&シャナ&双葉、弥彦&パタリロ、千秋、キルア、太一、ニア
【真昼】
ミミ
……ミミ、お前はどうしていつも一人取り残されるんだ…
>>453 こう考えるんだ。一人取り残されるという事こそ、生存フラグなのだと。
あー、すいません。
これまでの流れを見て、自分の認識が甘かったことがわかりました。
SSは没スレに落とします。お騒がせしました。
あ、ごめんなさい。
単に便宜上時間帯毎に分けただけで深い意図は無かったんだが、考えさせてしまったならすみません。
スレ見てきたけど、自分は没にするほどではないと思いましたよ。
E−4→F-4→E-5と移動したしんべぇの速度はちょっと速いかな?とも感じたけど、
多分そこは、状態表に書かれた『放送直前』をどう捉えるかの差だと思うんですよねー。
自分はあれを呼んで放送まであと数分程度だろうと考えてたのだけれど、
『放送まで三十分』でも十分直前とはいえると思うし、その位の時間があればあの行動も可能だろう、と。
自分も没でなくていいと思う派。
そもそも……
2時間で区切った時間表示ルールって、細かい時間管理から書き手を解放するためのツールだったはず。
古い話を蒸し返す形になって申し訳ないですけど、「放送直前」、という表示が微妙にルール違反だった気がしますね。
前の話、作中に夕陽を入れたい、ってのはアリだとは思うんですけど。「その後」の残り時間まで縛るのはやり過ぎというか。
うお、昨日早く寝ちまったら予約と破棄が一度に来ている!?
本投下まで見るつもりはないので見ないで意見を言わせてもらいますが、
もう他の人が言ってるように時間の問題をJZ氏が把握してるならいいと思います。
ついでに放送前にこの話があって良かったと思える話ならなお素晴らしい。
没スレに落とされちゃってるけど間に合うか…?
意見ありがとうございます。
問題ないとする意見が多いようなので、深夜0時までに否定意見が出なかったら改めて予約して、
時間の経過が出来るだけ少なく見えるように修正したいと思います。
「放送の描写を追加して放送後に改めて予約したほうがいいんじゃないか?」などの意見がありましたらお願いします。できないこともないので。
460 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/29(土) 15:48:02 ID:Km9LSSm0
その直後、不気味な音が空から轟いた!!
461 :
新たなる戦い:2007/09/29(土) 15:50:11 ID:Km9LSSm0
不気味な色 角張ったフォルム 吹き出る蒸気 巨大な船体
そこには巨大な宇宙戦艦が君臨していた。
そして、謎の光線を四方八方にぶちまけたのだ!!
その光線がやむと脇の扉が不気味な音を立てて開いたのだ!!
中から出てきたのは巨大なロボット それも小さい奴や大きい奴等で溢れ出した。
そして、忽ち姿を変え始めたのだ。そして、金属をひっかくような音が消えた直後そこには・・・・。
戦車 戦闘機 ドラゴン 拳銃 UFO スーパーカー 爆撃機 恐竜・・・・・がたくさん存在したのだ!!
>巨大なロボット それも小さい奴や大きい奴等
明らかに矛盾しております!
宇宙小戦争のスモールライトの効力が切れたドラえもんは小さいけど巨大だぞ
では、改めてベッキー、しんべヱ、レックス、アルルゥ、雛苺、さくら、梨々を予約します。
期待
投下します。
(よし、殺そう)
尾行をしながら悩み抜いた結果、結局、殺すことにした。
仲間は必要だが、話が通じるかどうかもわからない相手に無理をする必要はない。
交渉が失敗した場合のことを考えると、目の前のモンスターを仲間にするのは諦めたほう良さそうだった。
タバサのためにも――もう、失敗するわけにはいかない。
機を待ちながら尾行を続けていると、やがて、木々の間に四角い建物が見えてきた。
どうするか悩んでいる間にずいぶんと移動してしまったようだ。ここは、E-4あたりだろうか。
時計を見ると、放送の時間まで残りわずかのようだった。
(……いい加減、時間がないな。これからは、ご褒美の入手も仲間の確保も、確実に成功させなきゃダメだ)
これまでレックスが遭遇した敵は9人。
そのうち仕留めることができた――というよりまともに攻撃を当てることができたのは、たったの1人。
この命中率は、あまりにも酷い。魔神の金槌を装備したギーガより酷い。
別にはぐれメタル狩りをしているわけでもないのにこの体たらく。タバサに何て言われるか。
でも、許されるなら言い訳をさせてほしい。
ここまで勝率が低いのは、戦闘前にタバサについていちいち尋ねていたからだ。
余計なことを考えずにいきなり攻撃していれば、もう2,3人は殺せていたはず。
(別に、僕の器量と見識が悪いとか、そういうことじゃない)
そうだ。ちょっと作戦を間違えただけなんだ。
だから、僕は二軍じゃない。回復要員じゃない。酒場メンバーじゃない……
(違う! これが一番余計な思考だ!)
落ち着け。先制攻撃のチャンスをみすみす逃す手はない。
何せ、『相手はまだこちらの存在に気付いていない』のだ。
ここは慎重かつ大胆に……
「わーん!」
「ぶわっ!?」
背中に衝撃を受けたのは、ちょうど奇襲を仕掛けようとしたタイミングだった。
一瞬、何が起こったかわからず、思考停止状態に陥ってしまう。
剣を構えて茂みに隠れていたはずなのに、何をどうやったら口の中を黒土で満たすことになるのだろうか?
(げほっ、ぅえペッペッ! なんなんだ一体!?)
原因はすぐにわかった。誰かが泣きながら背中にぶつかってきたのだ。
そいつのせいで自分が土を食べさせられたということを理解した途端、戸惑いの感情は怒りへと変わる。
憤然として振り返ると、ぶつかってきたのは青い肉の塊だった。
「っ痛ー……何すんだよ!」
「あわわ……ご、ごめんなさい」
「ごめんじゃないっ! 今、一番大事なところ……ってああっ!」
慌てて視線を戻すと、案の定、人獣型モンスターは思いっきり警戒していた。
「じー……」
その目は、冷たい。明らかに不審者を見る目つきである。
第一接触は、どう見ても大失敗だった。
「ほらっ! 気付かれちゃったじゃないか!」
「えと、あの」
「ああもう、なんなんだよオマエ!」
思わず地団駄を踏みたくなる。最悪だ。いつもと変わらず最悪だ。
また、先制攻撃のチャンスをみすみす逃してしまった。
(ちくしょう。なんで僕はこんなに運が悪いんだ!)
どうせ、どうせ今回もあと一歩で逃げられるんだ。
ダメージを積み重ねたとしても、残りHP1というところでまんまと逃げられるんだ。
何が『魔物の群れはいなくなった』だ! だったら最初から出てくるな!
(そうさ……いつもそうさ……)
ん?
でもあれ待てよ?
今は別に、経験値やゴールドが目的じゃないんだっけ。
「あ、そっか。それなら、まだ大丈夫だ」
「え……なに?」
すぐ傍で蹲っている青い塊に目を凝らす。
うん、問題ない。ちゃんと首輪してるや。
本当に、なんでこんな簡単なことに気付かなかったんだろう。
「代わりにキミを殺せばいいんだ」
僕は、獲物の首を刈り取るためにラグナロクの刃を奔らせる。
※ ※ ※ ※ ※
しんべヱは、レックスが振りかぶるラグナロクをぼーっと眺めていた。
見たこと無い文字が刻まれた金色に輝く刀に、思わず見蕩れてしまったのだ。
それほどまでに、しんべヱの神経は麻痺していた。
(うわー、凄く綺麗だなー……)
唸る断頭刃は陶然としているしんべヱの首に迫り、
「馬鹿! 避けろ!」
紙一重のタイミングで、しんべヱの丁髷がいきなり引っ張られた。
グギリという嫌な音とともに視界が吹っ飛ぶ。
しんべヱは、遠ざかる風景の中に、冷たく光る白線が見えた気がした。
「あ痛っ!?」
後ろに引っ張られたしんべヱは、当然のように尻餅を突き、悲鳴を上げる。
しんべヱがお尻をさすりながら振り返ると、赤い布を握り締めた人影がゼエゼエ息を吐いていた。
丁髷に引っかかっていたヒラリマントを引っ張り、しんべヱの命を救ったベッキーである。
(あ、さっきの化け物から逃げれたんだ!)
しんべヱの記憶が確かならば、ベッキーは紅い化け物に捕まったはずだった。
それがここにいるということは、少なくともあの化け物からは逃げ切れたということ。
知り合いの無事を認めたしんべヱは、とりあえず喜びの声を上げた。
「よかった。無事だったんだー」
「見捨てたくせによくもぬけぬけと!
つーか、どうして落ち着いていられるんだよ! 今、何が起こったかわかってんのかー!」
言われたしんべヱは前を見てみる。
本日五度目の初撃失敗を喫したレックスが「僕のマヌーサはいつ解けるんだ……」と呟きながら呆然としていた。
自信を根本から打ち砕かれた顔を見たしんべヱは、理由がわからないながらも同情する。
「かわいそう……」
「って、おかしいだろ! 何で同情してるんだー! お前、殺されかけたんだぞ! もっと慌てろ!」
思いがけない言葉に、しんべヱが目を見開く。
「え……ぼ、ぼくが……?」
「そうだよ! あいつが剣を打ち下ろしてきたの、見ただろ!」
「あ! そ、そういえば……」
今更ながらにしんべヱは、自分が命の危機にあることを理解した。
理解して、戦慄した。
「う、うわああああああああああああああああああああああああ!?」
「前言撤回! もっとおおおおおお落ちちちちちち、つ、つつつつ着けッ!」
しんべヱがが大声を上げると、つられるようにベッキーの声も大きくなる。
ベッキーも、決して冷静というわけではなかった。紅い化け物の恐怖は、色褪せることなく染み付いている。
命を狙われたはずのしんべヱが不自然なまでに落ち着いていたおかげで、なんとか気を張っていられたのだ。
だが、恐慌の叫びを前にして、ちっぽけな壁は崩壊した。
紅い化け物がベッキーに噛み付いたときのように、二人そろってパニック状態に陥ってしまう。
本来なら殺されてもおかしくない隙なのだが、殺そうとした相手にすら同情されたレックスは自失しており、叫び合う二人を呆然と見つめていた。
間抜けな喜劇が、無意味に続く。
「……あれ? べっきー?」
空気を破ったのは、流れに置いていかれたアルルゥだった。
いきなり目の前で漫才を始めた三人にどう接していいのかわからず、とりあえず見知った顔に声をかけたのだ。
「あ、アルルゥか!」
しんべヱと叫び合っていたベッキーが救われたような声を出す。
声をかけられたことで、少しだけ冷静になれたようだった。
もしそのまま放っておかれていたら、夜まで二人で叫び合っていたかもしれない。
「どうして一人でいるんだ? ジーニアスはどこだ?」
「…………」
しかし、ベッキーが『ジーニアス』という名前を出した途端、アルルゥの態度が変化した。
敵意を剥き出しにして黙り込んでしまう。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったベッキーは、声を張り上げた。
恐慌からではなく、焦燥から。
「何があったんだ!? あの二人はどうしたんだよ!」
叫ぶベッキーをたっぷり睨み付けた後、アルルゥは無感情に呟いた。
低く、押し殺すような声で。
「……ジーニアス、アルルゥ見捨てた。だから、キライ」
「え?」
アルルゥは、それ以上言うことはない、とでも言うように背を向けると、振り返ることなく走り出してしまった。
「おい、ちょっと待て! ジーニアスは……くそ! お前も走れ!」
「うええ!?」
「逃げるんだよ!」
その台詞を聞いたレックスが、ようやく我に帰る。
「逃がすかッ!」
1対2対1の鬼ごっこが始まった。
※ ※ ※ ※ ※
鬼ごっこはすぐに終わった。
ベッキーの体力が遂に尽きたのだ。
「はぐ……うぅ……」
「だ、大丈夫?」
しんべヱに手を引かれてようやく走っている状態のベッキーは、労わりの言葉に返事をすることすらできない。
ここに来て、魔導ボードの故障が響いてきていた。
「もう、ダメだ……」
ベッキーの足がガクガク震えている。もうすぐ走れなくなることは明らかだった。
背後では、レックスがすぐ傍まで迫って来ている。
(このままじゃ、ダメだ!)
しんべヱは、パニックを引き摺りながらも強く想った。
恩人である女の子を、助けなければならないと。
さっきまでならともかく。今は逃げるわけにはいかない。
自分は、この子に命を掬われたんだから。
ここで逃げたら、男じゃない。
(ぼくが守らなきゃ!)
しかし、しんべヱだけではベッキーを守りきれない。
ならばどうするか。簡単だ。
忍者学校で学んだことのひとつにこういうものがある。
――自分一人ではどうにもならないときは、他人を使え!
「アルルゥ!」
しんべヱは叫ぶ。さっき知ったばかりの名を、叫ぶ。
「ベッキーはもう走れない! このままじゃ殺されちゃう!」
叫ぶ。
「だから、僕の代わりにベッキーを安全なところへ! 後ろの子は、ぼ、ぼぼぼぼぼぼくが足止めするから!」
ただ、叫ぶ。
「ベッキーを、助けて!」
――しかして、前を走っていた少女の足が、止まった。
「……ッ!」
同時、ベッキーが遂に足をもつれさせ、前のめりに倒れる。
「よしッ!」
最大のチャンスと受け取ったのか、レックスがラグナロクを振り上げた。
白刃が、煌めく。
「うわあああああああああああああッ!」
鼻水を撒き散らしながら、しんべヱが剣の前に躍り出る。
ベッキーをかばうように両手を広げ、レックスの前に立ち塞がった、
その、瞬間。
「オピァマタ!」
アルルゥの号令とともに、しんべヱの眼前に巨大な獣が現れた。
名を、タマヒポ。
幻獣界メイトルパの沼に棲む、四足の魔獣。
『ブルァアアアアアアアアアアアッ!』
吐き出すブレスが持つ属性は、人体を侵し蝕む猛毒。
「こいつ! どこから!?」
いきなり目の前に現れたタマヒポを見て、レックスは驚愕した。
その驚愕は、魔獣の口から漏れ出る濃緑の息により恐怖へと変わる。
(毒の息だって!?)
恐怖は剣を止め、攻撃に使われるはずだったエネルギーを全て軸足に流し込む。
レックスが地面を蹴り砕いて後ろに飛ぶのと、アシッドブレスが吐き出されるのは同時だった。
辛くも毒のブレスを回避したレックスは、背中に冷たいものが落ちるのを感じた。
(冗談じゃない! 僕は……キアリーが使えないんだぞ!?)
教会もなく、毒消し草もない現状で毒を食らうことは、間違いなく致命傷。
ラグナロクを持つレックスの手に、冷たい汗が滲んだ。
タマヒポの身体は薄くなり、やがて消失した。
目の前の光景を信じられない思いで見つめていたしんべヱは、ふと気配を感じて横を見る。
荒い息を吐くアルルゥが、そこにいた。
「今の獣は……きみが?」
「…………」
アルルゥは答えなかったが、しんべヱにはなんとなくわかった。
「……ありがとう」
「……おう」
一言だけ呟いて、再びレックスに向き直る。
アルルゥは、別に二人を助けたくて助けたわけではない。不信も全く消えていない。
ただ、見捨てるという行為が、どうしても出来なかっただけ。
(アルルゥは、ちがう)
それは、自分を見捨てたジーニアスに対する、意地のようなものだった。
善でも悪でもない少女は、ただ意地のためだけにレックスと対峙する。
しんべヱは、レックスはアルルゥに任せることにしてベッキーに駆け寄った。
「怪我はない?」
「あ……足を、ちょっと、挫いた、みたいだけど、大事は、ない」
ベッキーは息を切らせながら、途切れ途切れに言葉を発する。
ベッキーは顔を上げると、しんべヱの顔を真っ直ぐ見つめた。
「頼みが、ある」
掠れてはいるが、力の篭もった声。
ベッキーの頭は、生命の危機に瀕して、逆に冴え渡っていた。
「アルルゥは、怪我をしている。このままだと、あいつに、勝てない、ような、気がする」
見ると、アルルゥの背中には血が滲んでいた。
先程息が荒かったのも、この怪我のせいだろう。
「だから、この森のどこかにいる、仲間を探してきてほしい。助けを、呼んでほしい。
ジーニアスっていう青髪の男の子と、プレセアっていうピンク髪の女の子と……
城で会った、変な服を着たレミリアってやつだ」
ベッキーはそこで大きく咳き込むと、再びしんべヱの顔を見つめた。
「……頼めるか?」
「うん」
一も二もなく頷くと、しんべヱは森の中に向かって駆け出した。
単純なしんべヱの頭の中に、もはや『逃げる』という選択肢は存在しなかった。
その背中に向かって、ベッキーが声をかける。
「ちょっと待て! せめて……名乗ってから行ってくれ」
しんべヱのほうは会話の内容からベッキーの名前を知っていたが、ベッキーのほうは知らなかったのだ。
しんべヱは走りながら振り向き、自分の名を名乗った。
「僕は、福富しんべヱ!」
「そうか……しんべヱ!」
ベッキーは、大声で叫ぶ。
「ありがとな!」
「うん!」
その言葉が聞けただけで、しんべヱは満足だった。
たとえそれが、二人が交わした最後の言葉になったとしても。
※ ※ ※ ※ ※
ベッキーと別れたしんべヱは、すぐに一つの人影を発見した。
慌てて木の影に隠れ、人影の正体を確かめようと目を凝らす。
しかし、シルエットから女の子だということはわかったが、髪の色までは見えない。
(プレセアって子かなあ……)
しんべヱは物音を立てないようにして、背後から人影に近づく。
気配を消すことは苦手だったが、視界に入らなければそうそう見つかることはない。
はずだった。
“本当に相手が一人だったならば”
結局しんべヱは、攻撃を受けるその瞬間まで、人影が二つあることに気付けなかった。
身長が腰の高さまでしかない参加者がいる可能性を、考慮しなかったから。
だから、足元に伸びる苺轍に気付けないのも必然だった。
「えいっ! 一本吊りなの!」
「うわあっ!?」
罠にかかった猪のように逆さ吊りにされたしんべヱに、無邪気な歓声が浴びせられる。
「吊れたの! 吊れたの! わーい!」
「う、く、放せっ!」
足を縛り付けている苺轍を引き千切ろうとしたしんべヱだったが、足掻けば足掻くほど轍は足首に食い込んでいく。
どころか、腕や身体の動きまで封じようと更に本数を増やし始めた。
やがて、しんべヱは指一本すら動かせない蓑虫になった。
苺轍を操ってしんべヱを縛り上げた張本人である人形の少女――雛苺はその様子を見て、幸せそうに笑った。
「見て、さくら! さくらがミーディアムになった途端に獲物がかかったの! 凄い凄い!」
雛苺の呼び掛けに応じて、木の影から一人の少女が姿を現す。
徐々に影が剥がれ落ちていくシルエットを見て、しんべヱの脳をたった一つの感情が支配する。
――嫌悪、だった。
「…………」
少女は、血だらけだった。
少女は、バットを引き摺っていた。
少女は、身体のいたるところに痣を作っていた。
だが、最もしんべヱの目を引いたのは、少女の目だった。
焦点などなく、虚ろで、世界の何も映していないような、平らな目。
人間であることをやめた、人形の目。
「きみが、やったの?」
わかりきった問いを、投げかける。
見る者の不安を掻き立てるような、どうしようもなく壊れた目をした人形の少女に。
「次は、ばってぃんぐせんたーごっこなの!」
雛苺はしんべヱの問いには答えず、楽しそうに宣言した。
本当に、楽しそうに。
「…………」
さくらが、無言でマジカントバットを振り上げた。
よく見ると、その手には無数の苺轍が絡みつき、さくらの動きを制している。
まるで、マリオネットの糸のように。
「じゃあ、千本ノック開始なの!」
「や、やめ」
ぐじゃ。
「にーい、さーん、よーん、ごーお」
ぐじゃ。ぐじゃ。ぐじゃ。ぐじゃ。
「ろーく、しーち、はーち、きゅーう」
ぐじゃ。ぐじゃ。ぐじゃ。ぐじゃ。
……………………………………。
※ ※ ※ ※ ※
「ウソ……だ……」
梨々は、見てしまった。
この島で唯一信じていたさくらがバットを振り下ろす瞬間を、茂みの中から見てしまった。
人を殺すシーンを、見てしまった。
「さくらちゃんが、人殺し……?」
信じたくない。認めたくない。
しかし、現実として、遠目ではあるが今でもはっきりと見えるのだ。
既に肉のサンドバッグとなった人間に、延々とバットを打ち付けている姿が。
無表情で肉を砕き続けている、さくらの姿が。
「もう……やめてよ……」
イリヤちゃんは人殺しかもしれなかった。
ベルちゃんは嘘を吐いているようだった。
薫ちゃんも信用できなかった。
アルルゥちゃんは逃げてしまった。
そして、唯一信頼していたさくらちゃんは、今、目の前で人を殺した。
「どうし、て……」
梨々の世界が、軋み始めていた。
【E−4/森/一日目/夕方・放送直前】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:疲労、魔力中消費。袈裟懸けに小程度の傷。
[装備]:ラグナロク@FINAL FANTASY4、ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5 (ドラゴラム使用回数残り2回)
[道具]:基本支給品、エーテル×2@FINAL FANTASY4、GIのスペルカード(『交信』×1、『磁力』×1)
[思考]:モンスターが消えた!? ルーラ? モシャス?
第一行動方針:目の前の二人に対処。
第ニ行動方針:3人抜きを達成し、主催者にタバサの居場所を尋ねる。
第三行動方針:そのためにも、同盟を組む「仲間」を作るかどうか考え中。
第四行動方針:余裕があったら、お城を調べてみたい。
第五行動方針:雛苺に対して対抗心。準備が整ったらリベンジする?
基本行動方針:兄妹どちらかの優勝(タバサ優先)。優勝者がもう片方を蘇生させ、2人で両親の元に帰る。
[備考]:エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
アルルゥや真紅はモンスターの一種だと思っています。
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:背中に裂傷(応急処置済)、疲労(極大)、血を吸われて貧血気味、右ひざ打撲、右足を挫いてまともに動けない
[服装]:普段通りの服と白衣姿
[装備]:木刀@銀魂、魔導ボード@魔法陣グルグル!(故障している可能性有り)、ヒラリマント@ドラえもん
[道具]:支給品二式、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
[思考]:しんべヱ、頼んだぞ……!
第一行動方針:目の前の敵に対処。しんべヱが助けを呼んでくるまで耐える。
第ニ行動方針:殺し合いのゲームに乗っている奴がいたら、ぶっ飛ばす。
第三行動方針:後で改めて湖底都市を探索する
基本行動方針:主催者の打倒。
参加時期:小学校事件が終わった後
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)、背中に大きな裂傷(貧血気味で意識が朦朧としている)、頭にたんこぶ
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品(食料−1)、クロウカード『泡』
[服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている)
[思考]:なんか、ねむい……。
第一行動方針:目の前の敵に対処。見捨てるという行為に嫌悪。
第二行動方針:イエローや丈を捜したい。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
プレセアに少し不信感を抱きました。梨々のことは「怖くて嫌いなひと」です。
本能的に、アリス・イン・ワンダーランドに対して嫌悪を覚えています。
【E-5/森/1日目/夕方・放送直前】
【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:血と脳漿まみれ、左腕に矢傷(処置済)、魔力消費(極大) 、疲労(大)
かなり精神不安定、雛苺のミーディアム
[装備]:マジカントバット@MOTHER2、パワフルグラブ@ゼルダの伝説、クロウカード『水』『風』
リインフォースII@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品
[服装]:梨々の普段着
[思考]:完全に思考停止状態
※魔力があるため、雛苺が戦闘しない限りは持ちこたえられます。
ただ回復していく分の魔力はほとんど雛苺に持っていかれます。
※近くに核金状態のシルバースキン・アナザータイプが落ちています。
[リインフォースIIの思考・状態]:
※永沢、レックスを危険人物と認識。梨々の知り合いの情報を聞いている
※魔力不足により、現在使用不能
【雛苺@ローゼンメイデン】
[状態]:真紅と翠星石のローザミスティカ継承。精神崩壊。見るものの不安を掻き立てる壊れた笑顔。
桜をミーディアムにしたことにより消耗回復&自動回復付加。
[服装]:普段通りのベビードール風の衣装。トレードマークの頭の大きなリボンが一部破けている。
[装備]:生首付きジャック・オー・ランタン@からくりサーカス(繰り手もなしに動ける状態)
※ジャコの首には真紅と翠星石の生首が髪の毛で括り着けてあります。
[道具]:基本支給品一式、ぼうし@ちびまる子ちゃん ツーカー錠x5@ドラえもん
光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、ジュジュのコンパス
[思考]:じゅーう、……うにゅ。えーとー、次なんだっけ?
第一行動方針:桜をミーディアムとして、戦う。 彼女の負担なんて知ったことではない。
第二行動方針:「新ルールのアリスゲーム」(=殺し合いのゲーム)に乗って、優勝を目指す。
基本行動方針:優勝して、「永遠に孤独とは無縁な世界」を作り、真紅を含めた「みんな」と暮らす。
[備考]:
雛苺は真紅と翠星石のローザミスティカを獲得したため、それぞれの能力を使用できます。
自分の支給品をマトモに確認していません。
『ジャック・オー・ランタン』は、真紅の持っていた「人形に命を吹き込む力」によって一時的に動ける状態です。
雛苺の『力』を借りて動いているので、この状態は維持するだけでも雛苺の『力』を消耗しますが、
現在負担は桜へといきます。
【E-5/森/1日目/夕方・放送直前】
【梨々=ハミルトン@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:右腕骨折及び電撃のダメージが僅かに有り(処置済) 。
イリヤとベルフラウに確信的疑念。精神不安定。恐慌気味。
[装備]:白タキシード(パラシュート消費)&シルクハット@吉永さん家のガーゴイル
:ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:支給品一式
[服装]:白タキシード&シルクハット
[思考]:私、は……。
第一行動方針:唯一信じていたさくらに裏切られ、絶望。
第二行動方針:アルルゥを信じればいいのか分からない。アルルゥとベルフラウは危険人物同士のいさかいかもしれない。
第三行動方針:双葉かリィンちゃんの友達(はやて優先?)及び小狼を探す。
第四行動方針:殺し合いに乗ってない人と協力する。
※永沢、レックス、イリヤ、ベルフラウを危険人物と認識。薫とアルルゥの事も少し疑っている。
※ランクB〜Aの召喚術のため、梨々はワイヴァーンを使えません。
※桜の知り合いの情報を聞いている。
【福富しんべヱ 死亡】
投下終了しました。支援感謝です。
し、しんべヱぇぇぇぇぇぇぇ!!
忍タマで唯一無事なのはきり丸だけか……
それにしてもヒナ怖すぎるよヒナ 間違いなくポジションアニロワのアーカード+ニコロワの闇サトシ
しんべヱ、罠を看破するのも忍者の役目だぞ…。ちゃんと勉強しないと駄目じゃないか…!
しかし、同作品参加キャラ少ないけど、ここの面子は放送後に影響受けそうなやつが随分集まってるな。
どうなるんだ、これは……。投下GJ。
レックスがネタキャラに見えてきたのは気のせいじゃないハズ。
このへんもうずっと阿鼻叫喚
レックスの心理描写がネタキャラすぎるwwと書こうと思ったら
後半の大惨事に完全にもってかれちまった……雛恐すぎ!
GJ
ヒナが……怖すぎる……。あくまで遊び気分なのがなお怖い……。
さくらの心中を察するともう、ね……。
梨々の今後も気になるところ。
レックスは、いろんな意味で吹っ切れてない感じだな。
まだ無意識のレベルで後ろめたさとか不安とかが残ってるんだろうなぁ。
それにしても最近のロワの中でも
このロワは郡を抜いてグロいなwwww
レックスがサラマンダー化しそうだw
もう一人殺ってるけど
雛苺は相変わらず怖ぇ
幼いってことが残酷ってことにつながるのはよく聞くけどメチャクチャな飛びっぷりだよ
誰だよ、ここまで壊したの
いいぞ!もっとやれ
妙に壊れキャラが多いよなw
雛苺、さくら、イヴ、なのは、千秋、のび太、タバサ
他にもいたっけ?
>>490 タバサはアレが素な様な気がするな。ただ、元の世界の法則に忠実なだけでw
葵、ミミ、金糸雀も壊れてたハズ
そいつらの大部分は壊れかけなだけであって、完全に発狂してないのがミソだな。
素で常識のズレてるタバサと、今回の雛苺以外はまだ「戻ってこれる」気もするしな。
まあ戻ったらそれ死亡フラグじゃね? って奴もいるけど
これはいいへタレックスw
投下乙
しんべヱ…
さくらは本人が意識しないながらも状況を悪化させる名人な気がするぜ
正気の時も壊れてからも
桜はとった行動のほとんどが否定されたり無意味だったり
だもんな。今まで信じてたものが崩されるのは辛かろう。
>>490 なにょはさんは壊れてるのとは違う気もするな、まだ
あれが壊れなら最初から壊れてるw
なのはさんは正常でも怖いw
おお、すごい。秒数まで一致してる。
そんだけ、いろんな意味でなのはさんが凄いってことかな……
壊れかけのキャラ意外と多いんだな。
……放送後展開によっちゃその中に上げられてる奴らと同じ作品の奴を発狂マーダー化させる案が浮かんでたり。
発狂自重?……アーアーキコエナーイ
俺が発狂阻止しようとしてるキャラと
被ってる予感。正確には阻止じゃなくて
先送りにするだけだけど。
きり丸も親友二人が死んでるんだよな
そういやしんべヱ殺害カウントはどっちになるの?
実際手を下したのは桜だが雛が操っているようだし…
ちなみに雛だと3人目ご褒美のことも考えないといけなくなる
桜じゃないの?
手を下したのが桜なら桜のカウントだろう。
しんべヱは桜のカウントになると思う
桜が手にかけた訳だし
きり丸は発狂はしなさそうな気がしてる
クールというか冷めてるというか…生い立ちが生い立ちだけにな
身体能力高いし頭の回転もいいから発狂したらしたで面白そうだが
とはいえ全く動じないのも寂しいよな
ちょっとくらいはショック受けて欲しいもんだ
忍たま組の中じゃ一番ハードな人生送ってるし、放送でショックを受けても冷静に行動できるんじゃね?
冷静にステルスマーダーに走る可能性もあるが>きり丸
千本ノックは原作ロワにもあったが……
>>490-491を見て書き手方頑張ってるなと思った。
発狂するのに元の世界の仲間がきっかけになったの雛苺だけだ。
うまく他作品同士の絆や友情が出てて、その結果の発狂っていうのはすごい。
あ、なのはも元を辿ればヴィータがきっかけか。
その肝心のヴィータは今は対主催との境目。
このままヴィータ対主催になったらなのはは浮かばれるのか浮かばれないのか
このロワのヴィータははやてさえ死ねばマーダーになる可能性が高い。
>>511 そのヒナの発狂も他世界のアイテムのせいだしな
ヴィータの行く末がどうなるかはきっとニケにかかっている
フェイトがなぜイヴに殺されたのか?
それを考えればニケがとるべき道はおのずと見えてくる…!
我ながら何というメタ視点
>>516 これ以上駄フラグGetしたら多分ククリに殺されるw
>>516 かみつきシスターでは駄目ですかい?
頭脳派ネタキャラってめずらしいな。
519 :
363:2007/10/02(火) 10:09:35 ID:fgsUoN5X
そうか?
むしろ頭脳派ってネタキャラ多いと思うが。
このロワではそんな雰囲気はあまりなかったけど金糸雀もバーローもけっこうなネタキャラだぜ
ロリショタ関係ないけどルルーシュやライトもネタキャラだしな
だってニケのほうが面白そうなんだよ、
主にギャルゲ的バッドエンドの観点から。
Nice Boat.
また鬱グロ展開っすかwwwww
ククリ「中に誰もいませんよ」
ニケなら……ニケならきっとその幻想をぶち壊す!
ってな感じでうやむやにしてくれるさ!
ニケって原作では別にもててたわけじゃないよな。
なのにロワ内においては駄フラグゲッターと同じ印象を受けるのはなぜだw
別に、ロワ内でももててはいないがな。
単に女キャラとの接点が多いだけで、むしろ好感度下がりそうな選択肢ばっか取ってるし。
それを言うなら、トマの良フラグゲッターっぷりの異常さが……
他が悲惨すぎるから相対的に良く見えてるような希ガス。
ニケは周辺が女性ばかりだったからな、そりゃフラグもいくらか立つわ。
トマは美味しいフラグばかりだが、こういうキャラはいつか絶対悲惨な目に会うと相場が決まってる、そうにちがいない、たぶん。
ドロドロの三角関係に陥った末、自殺したり殺されたり発狂したりするわけか
フラグがどうこう言えるほど余裕のあるチームが
他にいないからニケとトマが目立つんだな。
あとは崩壊まで秒読みに入ってそうなとことか
戦闘中のとこばかりだw
まぁ安定してるところも一話で落ちるかもしれんがね。
激突してる時点で、フラグの回収はすんでそのの支払いの段階に移るからな
誰が払う事になるかは時の運だが・・・
書き上げれられるのか相当怪しいものの、自分を追い込むために予約。
紫穂、双葉、シャナ、トリエラ、リルル、白レン、のび太、なのはで予約します。
ktkr
期待!
wktk
また爆弾ばっかりだなw
期待
のびた危険だ
没ネタのトリエラ対のび太が現実にgkbr
蒼星石、タバサ予約します。……規制早く解けてくれないかな。
>>532 予約は今日までなので、間に合いそうになかったら連絡お願いします
>>541 すみません。とりあえずあと二日お願いします……orz
週末になるまでには,、必ず投下しますので。
大人数だし身体に気をつけて。
報告があるだけでも安心して待っていられる。
72時間になるので一応。
10時くらいに投下します。
きたきた
ワクワクテカテカ
投下します。久しぶりで緊張する…
ガタ、ガタ。
「痛、またぶつけちゃったか……」
左手で引きずるように運んでいた箱から鈍い感覚が返ってきて、僕は思わずぼやいた。
最早道なんて呼べない森の中を、僕は必死で歩く。
足場は安定しないし、おびただしい量の草木が行く手を阻んでくる。
おまけに薄暗くなって視界まで悪くなってきた。
行くときにはまだ明るかったし、こんなに時間をかけるつもりなんてなかったんだけど、
どうやら見通しが甘かったみたいだ。
帰路についた今では、右手に持ったコンパスの文字を見るのが辛いくらいに影の密度が増していた。
手の中で左右に揺れる針を視野外に追いやり、辺りを見回す。
黒を多分に含んだ濃密な緑の世界。
その上方に、異彩を放つ光が見えた。
葉の密度が少ない場所から、オレンジ色の太陽の光が差し込んでいたんだ。
細かな網目を無理矢理通る光は、森という夜空に橙色の星が散りばめられているようにも見えた。
そろそろ本物の星も姿を現す時間になるんだろう。
視線を前方に戻し、足場を確かめながら歩く。
どこまでも続いていそうに見える暗い森の中に、僕一人。
ここに来てからの自分……いや、ここに来る前も含めてかな。
暗がりに一人というのは孤独な自分のことを象徴しているみたいだった。
元の世界では宿命に従って、姉妹たちと対立して一人になった。
後ろめたさがないと言えば嘘になる、だけどそれが彼女たちに対する裏切りだとは思っていない。
僕の願いは、お父様の願いなのだから。
僕はその信念を揺るがせたくなかった。だけど、状況はそれを許してはくれなかったんだ。
状況というのは、言うまでもなくこの島での殺し合いのことだ。
アリスゲームはドールと、そしてミーディアムだけで決着をつけるべきもの。
何も知らない他人が姉妹を破壊したとして、そのおこぼれで得たローザミスティカに、どれほどの価値があるというのか。
そんなこコソ泥が、アリスに相応しいはずなんてない。
だというのに、ジェダはドールも人間も関係なく殺し合えと言う。
だから僕は迷った。こんな特殊な状況下でアリスゲームを続行するのか、
信念を覆してでも翠星石たちを助けに行くのか。……ごめん、これは嘘だ。
最初から僕の意思はみんなを助けてここから脱出する方向に傾いていたんだ。
けど、僕はやはり動けないままだった。
しかも、情けないことに自分の行動の転機を他人に委ねようとまで思っていたんだ。
そうして、僕はすぐにタバサに出会い……、
「?」
ふいに闇が途絶えて、開けた場所に出た。
考え事に夢中だったせいで気が付かなかったけど、どうやら目的地に辿りついたらしい。
全身を包む赤みがかった黄金色の光が、やけに懐かしく感じた。
空を見上げる。
そこにそびえるのは、天高く屹立した一つの塔。
柔らかな太陽の光を纏うのがごく当たり前のように思える、
そんな神々しささえ放つ塔だった。
僕はこの凄惨な島には似合わない芸術をぼんやりと眺めて、こう思った。
森の闇は、ここに来たばかりの僕のことを象徴していた。
ならば、闇を抜けた先にあった光の塔が象徴するのは、もちろん――
* * *
一本の塔が建っていた。
塔の周りにはまるで侵入者を拒むためにあるのではないかと思える、深い深い森がある。
そんな勇猛さを持つ森も、塔の極近い部分だけは、
塔を中心に周囲を丸くくり貫いたようにほとんど草木が生えていない。
広場となっているその場所に、二人の少女が向かい合っていた。
激しすぎる温度差を伴った、二人の少女だった。
蒼星石は最後の警告をするつもりだった。それ以上続けると、
自分でも分からない感情の波に潰されてしまいそうだったから。
イシドロの死を目の当たりにしたときに流した涙のあとから、
また熱いものが目の下に溜まる。
その痛みに負けないように、蒼星石は声を震わせて立ち向かう。
「……タバサ、イシドロを埋めてあげよう。……手伝って、ほしい」
その弱弱しい言葉には、載せられるだけの願いが詰められていた。
そして、
「? どうして? そんなことしちゃだめだよ蒼星石。
それよりもイシドロを運ぶ方法を何か考えようよ」
その場違いに明るい声は、磨耗した蒼星石の心を吹き飛ばすのに充分なものだった。
――あぁ、やっぱりか。
蒼星石はそれ以上何も言わなかった。
タバサに背を向けて、柔らかい地面に片膝をつく。
そしてバイオリンの弓を逆手に持ち、黙々と地面に突き立て始めた。
金糸雀のものを勝手に、しかもこのような用途に使うのは気がひけたが、
穴を掘るのに手ごろなものが他にない。
それに、何か他のことをやっていなければどうにかなってしまいそうだった。
ザッ、ザッと土と砂と弓が擦れあう音が等間隔で生まれる。
今の蒼星石を見て、この人形は生きていると言っても誰も信じないだろう。
そのくらい、蒼星石の動きは調整された自動人形のように機械的なものだった。
突然押し黙り、こちらを拒絶するように背を向けた蒼星石を見て、
タバサは急に不安になり始めた。
「蒼星石……?」
そう呟くと同時。
サーッ……、と。ふいに吹いた風が言葉の端を攫っていく。
森を吹き抜け、葉を揺らし、二人の髪をなびかせて風はあっという間に消え去った。
蒼星石は、何も答えなかった。
風の邪魔があったとしても、タバサの呼びかけは確かに蒼星石の背中に届いたはずだ。
しかし蒼星石はタバサのほうに振り向こうとしないどころか、
まるで何も聴こえなかったかのようにただただ穴を掘り続ける。
「ねぇ、蒼星石ってば……」
さっきの声が聴こえなかったのかと思ってもう一度呼んでみたが、
やはり蒼星石はなんの反応もしてくれなかった。
言葉を掛ける前と後で何も変わらない。
奇妙なほどに一定の間隔で刻まれるザッ、ザッという穴を掘る音が、
タバサの不安をどんどん煽っていく。
ここに至ってようやく、タバサは蒼星石が怒っているのではないかと思い始めた。
けれど、それが分かったところで何もできない。
タバサには蒼星石が怒っていること以外、何が起きたのか少しも分からなかったのだから。
もし蒼星石が怒っているとしても、いったい何が原因で怒っているのかちっとも分からない。
せめて、蒼星石の顔が見えればどうすればいいのか分かるかもしれない――
そう思い、足の先に力を入れて地面を蹴って進もうとするが、
タバサは最初の一歩を踏み出すことさえできなかった。
改めて見た蒼星石の後ろ姿が、「こちらに来るな」と威嚇しているように見えてしまったせいだ。
タバサとて幾多ものモンスターを屠り、大魔王にさえ打ち勝った戦士だ。
幼い身でありながらも、これくらいの威圧感など今までにいくらでも感じてきた。
だが、そのような敵意を仲間から感じたことなどありはしなかった。
自分よりもずっと小さい人形の背中が、更に小さく、遠くに見える。
歩幅にして10歩も離れていない距離のはずなのに、
蒼星石との間には越えることができないくらい深く、大きな溝があるような気がした。
それが悲しくて。けどそれ以上近づくのは躊躇われて、行くことも退くこともできない。
どうしようもなくなったタバサは、唯一自由に動く口を目一杯動かして、
とにかく言葉を投げ掛ける。
闇雲に言葉をぶつければ、どれかが蒼星石に対する答えになると願って。
「蒼星石……怒って……いるの?」
ザッ。ザッ。ザッ。
「……ねぇ、どうして?」
ザッ。ザッ。ザッ。
「何で穴を掘っているの……?」
ザッ。ザッ。ザッ。
「ダメだよ……、やめて……」
ザッ。ザッ。ザッ。
「そんなことしたら、イシドロが復活できなくなっちゃうよ……」
ピタリ、と音が止む。
まさかそれで止まるとは思っていなかったのだろう。
面食らったタバサはビクリと全身を緊張させ、恐る恐る蒼星石のほうを窺う。
丁度、蒼星石もタバサのほうへと身体を向けている最中だったらしい。
それから間を置かずに完全に向き直り、蒼星石は自身の表情をタバサの前へと晒した。
そこに、タバサが想像していたような憤怒の表情など微塵も存在していなかった。
代わりにあったのは、憑き物がとれたように穏やかな、見ようによっては諦めきったような顔。
出来の悪い生徒に一から十まで説明しようとする教師のような顔だった。
ただし、今の蒼星石がそこまで優しいかなんて分からない。
なぜなら、その顔はタバサよりずっと年上の教師のように見えるのと同時に、
怒りを通り越して感情を作る器官が破壊されてしまったようにも見えたのだから。
そのことが、タバサに更なる恐怖を与える。
蒼星石が何を考えているのか、欠片も掴むことができない。
* * *
もううんざりだった。全部吐き出して吐き出して吐き出しつくして。
……楽に、なりたかった。
考えてみればこれが初めてなんかじゃない。
タバサがイシドロの腕をなんの躊躇いもなく切り落とした時から感じていたもの。
それがとうとう、我慢するには痛すぎるくらいに膨れ上がっただけのことなんだよ。
人とドールの感性の違い? そういう問題なんかじゃない。
いつの時代のミーディアムとも、そしてジュン君とだって言葉も心も通じてきたんだから。
例え、それが一時の繋がりだったとしてもね。
だから、種族の違いだとか、存在の違いだなんていう些細な問題じゃない。
きっと、もっと根源的で、致命的なところからずれているんだと思う。
……手を動かすことにしよう、やることはたくさんあるんだから。
まずはイシドロに義理を立てようと思う。
彼はこの結末を望んでいなかったし、僕たちを守りたいわけでもなかった。
僕たちの盾になったことを後悔するどころか、恨んでさえいるかもしれない。
恨むなら、それでも全然構わない。彼を埋葬するのだって僕のわがままだ。
ただ、彼がいなければ僕の命はきっと終わっていたのだから、
生き残った僕が彼のために時間を使うのも悪くない。
僕が勝手にそう思っているだけなんだ。
……そう、僕が勝手に思っているだけ。
それでも僕はタバサにも僕と同じ思いを抱いて欲しかった。
助かった。ありがとう。ごめんね。
一言でいいから、タバサにも彼の死を悼んで欲しかっただけなんだ。
それなのに。
ジワリ、と視界が歪む。
ダメだ、今は泣いたり悲しんだりする時間が惜しい。
早く埋葬を済ませて、みんなを探しに行かないとなんだから。
僕はそこで余計なことを考えるのをやめて、目の前だけに集中した。
タバサが何か言っている気がしたけど、もう僕にとってはそんなことはどうでも良かったんだ。
弓に力を込めて、振り下ろす。
弓に力を込めて、振り下ろす。
弓に力を込めて、
「そんなことしたら、イシドロが復活できなくなっちゃうよ……」
ドクン。
全てを遮断していたはずなのに、なぜかその言葉だけは胸を叩いて、僕は手を止めてしまった。
止めた後、なぜそんなものを気に留めてしまったのかと後悔した。
その言葉は過剰な量の薪を、火にくべられるのと同義だったのだから。
この期に及んでまだそんなことを言うタバサに、
言葉では到底表せないような感情が沸きあがる。
滾る心にあえて逆らうように、僕はタバサの方へゆらりと身体を向けた。
別に今さらタバサを説得したいわけじゃない。
単に、胸に詰まった泥を吐き出したいだけなんだ。
吐き出す先のゴミ箱がどんなものなのか、そんなことに興味なんてない。
「死んだ人間は生き返らない」
「何言っているの、……蒼、星石?」
死んだ人間が生き返る。
どうやら本気で信じているらしいタバサが、なんだか哀れに思えてきた。
そんな馬鹿なこと、あるはずがない。
「もう一度だけ言うよ」
もし死んだ人間が生き返るなら、それはさぞ素晴らしいことなのだろう。
僕たちドールに課せられたアリスゲーム、
その目的の半分である「死んだお父様に会うこと」が達成できるのだから。
代え難い姉妹を犠牲にせずにお父様に会えるのだから。
「死んだ人間は」
でも、現実はそんな都合のいいものじゃない。
だから僕は真紅たちと袂を分かち、最愛の姉である翠星石にまで刃を向ける覚悟を持った。
そして僕は水銀燈と戦って……。
戦って……。
たた、かって?
「…………え……ぁ……?」
「……蒼星、石?」
あれ、おかしいな。そんなはずないじゃないか。
落ち着け、もう一度冷静になって考えるんだ。
翠星石たちと別れて……
すぐに水銀燈と薔薇水晶が戦いを仕掛けてきて……
僕は水銀燈と戦って……
……戦って僕はどうした? どうなった?
思い出せ、何かがおかしいじゃないか。
剣と鋏を何度も、何度も打ち合って。
押し勝って、押し負けて。
隙を見せてしまった僕の胸に、病的に白い腕が伸びて――
「……僕は、水銀燈に負けた……?」
一度口に出してしまったら最後、その事実は僕の中に最初からあったように深く根付いた。
いや、実際にもとからあったに違いない。
ただ、無意識のうちにそのことを考えるのを避けていただけで。
もう否定することなんてできないし、する気力だってなかった。
「水銀燈にローザミスティカを奪われて……死んだんだ」
なら。もしそうならば。
「ここにいる僕は、いったいなんなんだ……?」
これは夢なのか。夢だとしたら、いったいどこからが夢なんだ?
ここに来てから? 水銀燈に負けてから? ジュン君に出会ってから?
前のミーディアムのところにいたときから?
それとも……僕なんてものは最初から……?
違う、そんなはずないだろ!?
じゃあどうやって現状に説明をつければいい!?
僕は確かにローザミスティカを失った!
絶対にあのとき死んだんだ!
そんなことも疑わなくちゃいけないなら、僕は何を信じればいいんだ!?
落ち着くんだ、僕! 本当に死んだならここは死後の世界っていうものなんじゃないか?
死後の世界……? あぁ、そうか。そうなのかもしれないね。
……だめだ、ここが死後の世界なら翠星石が、真紅も雛苺も金糸雀も!
みんな死んでいることになるよ!?
でもそう考えればジュン君がここにいないことにも納得がいくよ?
彼はきっと、今もアリスゲームとは関わりないところで生きているのだから。
契約していたドールが皆死んで、彼はミーディアムではなくなったんだよ。
それでも水銀燈たちに殺されていないのだから、喜ぶべきなんじゃないかな?
できない! それを認めたら、水銀燈か薔薇水晶のどちらかがアリスになるっていうことじゃないか!
そんなこと、事実だとしても尚更認められないよ!
くそ、違う、こんなものは違う!
なんで行き着く考えは都合の悪いものばかりなんだ!?
誰か否定してくれ。優しく諭して欲しいなんて贅沢は言わない、
だから僕の弱い考えを否定してくれよ!
「そんなに難しく考えることはないよ、蒼星石」
縋るものが欲しかった僕は叩かれたようにタバサのほうを見やる。
さっきまでの悲しそうな、怯えたような表情とは打って変わり、
タバサはいつも通りの微笑をたたえていた。
不思議だ。
抑えきれないくらいの憤りを蓄えていたはずなのに、
なぜかその笑顔を見て安心してしまう自分がいた。
今は誰でもいいし、何でも良かったのかもしれない。
僕に答えをくれるなら。
「蒼星石も生き返っただけのことなんだから。
きっとジェダがザオリクを使ったんだよ」
生き、返る。
今となってはタバサのその言葉は世界中のどんなものよりも強いような気がしたし、
信じてしまうのが僕にとって一番の救いだと思った。
「でも……でも! ドールが、人だってそうだ!
そんなに簡単に生き返れるはずないじゃないか!?」
それでも僕の心の中の最後の砦が、そんなことできるわけないと警鐘を鳴らしている。
とはいえ、それは既に抗弁するためのものではなく、
問いをぶつけることでタバサから更なる情報を引き出し、
裏付けるための手段でしかなかった。
既に僕の砦には白旗が揚がっていたのだから。
あとは空虚な跡地に何を満たしてくれるのか、そんなことしか考えられない。
「そんなことはないよ。私のいたところには殆どの町や村に教会があるの。
そこにいる神父さまに頼めば誰だって生き返らせてもらえる。
人も魔物もみんな平等にね。そんな人が、世界にはたくさんいるんだよ」
「……本当だとしても、それは君の故郷での話なんだよね。
ここにいない人のことを言っても……」
「あれ、言ってなかった? 私のおにいちゃん、
レックスなら死んじゃった仲間を復活させることができるんだよ」
「っ、本当、に?」
「もちろん! レックスは天空の勇者だし、すごいんだよ!
傷なんてベホマですぐに治しちゃうし、
死んじゃってもザオリクで復活させてくれるの! ……でもね」
唐突にトーンが落ちる。
僕の心はまだ全然落ち着こうとはしなかったけど、
そんな状態でもなぜかタバサの気持ちを察することができた。
これから彼女は、自分の傷を抉って僕に見せようとしているのだと。
「……それでも、助けられない人はたくさんいたよ。
私のおじいちゃんもおばあちゃんも、死体も残らずに殺されちゃったから。
癒す箇所がなければ、復活させるためのもとがなければ魔法はかけられない……。
でも、イシドロは違う。まだここにイシドロはいるし、
レックスだってこの島にいるの! だから、助けることができるんだよ!」
胸を貫かれたような衝撃を受けた。
タバサの語ることは荒唐無稽な戯言でしかなかったはずなのに、
なんでこんなにもリアルに響くのだろう。
現実的じゃないって吐き捨てるなら、むしろ今僕がここにいること、
この島で行われている殺し合いのことのほうがよっぽど非現実的だ。
考えの浅い子供が作り出した陳腐な幻想なんかじゃない、
タバサの言葉には経験に裏打ちされた確かな骨組みがあると思った。
同時に、フッ――、と。
暗く深い海の底に沈んでいた僕の心に、煌々とした光が差し込んだ気がした。
その光を、僕はゆっくりと確かめるように辿り始める。
「ねぇ、タバサ。……お兄さんに頼めば、ここにいるみんなを生き返らせることも……?」
「できるよ。悪い人以外、私たちの仲間はみんな助けてくれる。
一日じゃMPが足りなくなるかもしれないけど、何日もかければきっとみんな生き返れるよ」
……そうか、そうだったんだ。
やっとタバサの今までの行動の意味が分かった。
そして、呑み込みさえすればタバサの行動は理に適ったものばかりだと思った。
敵とはいえ、なぜ初対面の相手にあぁも徹底的な攻撃を加えることができたのか。
それは、例え殺してしまっても、蘇生する手段があると知っていたからなんだ。
倫理観が欠如しているなんて非難する意味はない。
多分、彼女の世界ではそれが当たり前なのだから。
タバサからしてみれば、きっと僕がいた世界にだっておかしいことはたくさんあるんだろう。
今はそんなどうでもいいことを考えるのではなく、素直に喜ぶべきなんだ。
姉妹に合わせる顔がなくて何もできないでいた僕が、この島で初めて手にした確かなもの。
レックスとタバサがいれば、みんな死なずにすむ。
ならば、僕がするべきことに迷いが生じるわけがない。
答えはこんなにも身近にあったんだ。
僕にはもうタバサの言葉を疑うことなんてできなかった。
一度認めてしまえば、こんなにも甘く、そして美しい果実を手放すことなんて出来るはずがなかったんだ。
「ごめん、タバサ……。僕は、君の言うことを今まで信じてあげられなかった。
でも、もし今からでも許してくれるのなら……僕を君の本当の仲間にして欲しい」
虫が良すぎると思った。あれだけタバサのことを拒絶して、
傷つけたというのに、僕はなんて醜い言葉を投げているのだろう。
それでもタバサは、
「なに言ってるの蒼星石……。私たち、もうずっと仲間でしょ……」
指で自分の目の横を軽く拭いながら、こんなにも優しい言葉を掛けてくれる。
やっぱり僕は馬鹿だったんだ。
タバサは分かり合えない怪物なんかじゃない。
泣いたり、笑ったりできる強くて頼もしい女の子だったんだから。
* * *
塔の中の一室の前に辿りつき、鈍い音を立てながら部屋の扉を開ける。
大人しく待っていてくれたか不安だったけど、杞憂だったみたいだ。
少しだけ眠そうにしながら壁に背を預けていたタバサはそこにちゃんといたし、
今は動けないイシドロだって変わらずに床に横たわっていた。
僕はそのことに安堵し、タバサと顔を見合わせる。
「ただいま」
「あ、おかえりー」
あれから、僕はタバサの意見に全面的に従うことにして、
イシドロを運び出すための手段を考えた。
何かいい手はないかと悩んでいた僕とタバサは、近くに廃病院があることに気がつき、
そこから必要なものを調達してくることにした。
タバサは付いてくると言って聞かなかったけど、僕はそれでもタバサをここに残した。
さっきの戦闘の傷が癒えないのだから、どうしても休ませるべきだと思ったんだ。
野外よりは屋内のほうがいいだろうと考えて、試しに近くの塔の中を軽く探索したら
幸運にも休めそうな個室を見つけられた。
人が住むための施設なのか相当疑わしいけど、塔の中を全て探検したわけではない僕たちが、
この塔がなんのためのものかだなんて想像できるわけもなかった。
少なくても、この部屋は安全そうだったから僕はタバサをここに残して廃病院に出向き、
タバサ所望のこれを持って無事に帰ってきた。
「白い棺桶……。少し色が落ちててボロボロだけど……うん、やっぱりこれがいいね♪」
タバサが蓋を開けて中を覗き込んだり、しきりに表面を観察したりしている。
顔なんか見なくても、声色からタバサの気持ちなんてすぐに分かる。
どうやら気に入ってくれたらしい。
タバサが言ったように僕が持ち帰ったのは白い箱型の棺だ。
廃病院の用具室にゴミのように放置されていたものの中で、一番状態がマシなものを選んだ。
最初は、担架とか車いすのほうがいいんじゃないかと思っていたんだけど、
タバサがどうしてもと言うから棺にした。
何でも、これじゃないとしっくり来ないのだとか。
よくよく考えてみたら、棺は蓋ができるし、
いくらかは丈夫に出来ているから実用的にもありなのかもしれない。
そもそも、こんな森の中で車いすを押すのも大変だし、
ちゃんと使える物があったのかも疑わしい。
まぁ、棺だって運び難いのは変わらないけどね。
驚いたことに、タバサは馬車が使えないときは、
これを引きずって旅をしたこともあったらしい。
中身が空っぽでも運ぶのはが大変だったというのに。
それだけでもタバサがしてきた旅の過酷さ、その一端を覗き見た気がする。
「蒼星石、ありがとう。重かったでしょ?」
「気にしないで。仲間が助けあうのは当然のことなんだから」
自分でも分からないうちに、口元が緩む。
一度は確かに仲間と決別したはずの僕が、
こうも自然に「仲間」と口に出せるなんてなんだか可笑しかった。
「タバサ、これからどうするのか決めよう」
「うん。えーと、……外に出るなら今出ないと森を抜けられなくなるかもしれないね」
「そうだね。あと少しで陽が落ちるから外に出るのは危険だ。
夜までに安全な寝床を確保することを考えると……、
いっそのこと今晩はこの塔に居座るのもいいと思うんだ。どう思う?」
「うーん、そうだね……。どうしようかな……」
* * *
ごめん。みんな。
君たちを探すことを後回しにする僕を、どうか許して欲しい。
僕は知ったんだ。
多くの命を助けることができる、一番の方法を。
そして、そのことを知った僕が何をするべきなのかを。
これは僕の役目。
僕が繋がなければいけない、繋ぎたいと強く思う希望の糸なんだ。
だから僕は、タバサとレックスを守ってみせるよ。
二人を守ることが、この島にいるみんなを守ることになるのなら。
この悪趣味なゲームが終わりを迎えるときに、
みんなで笑い合うことができる道が、そこにあるのなら。
僕は脇目を振らずに真っ直ぐと、その道を進もうと思う。
世界を救ったっていう天空の勇者たちの従者に、僕もなるんだ。
君ならきっと分かってくれるよね? 翠星石。
大丈夫、すぐに迎えに行くよ。心配しないで待っていて欲しい。
最後には、みんな助かるんだから。
【C-3/塔の中の一室/1日目/夕方】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:全身打撲(度合いは不明)。疲労(中)
[装備]:バイオリンの弓@ローゼンメイデン、こぶたのしない@FF4、戦輪@忍たま乱太郎×9 、イシドロの死体in棺桶
[道具]:支給品一式、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、金糸雀のバイオリン@ローゼンメイデン
[思考]:タバサとレックスは僕が必ず守るよ。
第一行動方針:塔を出るのか、それとも留まるのかを決める。
第二行動方針:タバサの『夢』に入ってレックスと接触する? そのための準備をする?
第二行動方針:レックスを最優先で探す。姉妹たちは後回し。
基本行動方針:タバサとレックスをどんなことをしてでも守る。
【タバサ@ドラゴンクエスト5】
[状態]:全身に大ダメージ、MP消費(大)、バリアジャケット解除(普段の服装に戻りました)
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは(カートリッジ残数2)(待機形態)(破損あり)
[道具]:支給品一式×2(イシドロの服の食料も回収済み)、手榴弾×2、ヴェルグ・アヴェスター@Fate/hollow ataraxia
[思考]:レックスを早く探したいけどもう暗くなるね。
第一行動方針:塔を出るか、留まるかを決める。
第二行動方針:自分と仲間の身は「何としても」守る。
第三行動方針:信頼できる仲間を捜す。
第四行動方針:イシドロを「復活」させる手段を考える。
基本行動方針:「どんな手段を使ってでも」レックスを捜し出し、仲間と共に脱出する。
[備考]:「ドラゴンクエスト5」内でタバサが覚える魔法は全て習得しています。
ミッドチルダ式魔法について、バルディッシュからある程度説明を受けました。
いずれイシドロは「復活」させるつもりです(最悪、全ての戦いが終わった後にでも)。
白レンのことを見限りました。もう味方だとは思っていません。
バルディッシュ・アサルトはダメージを受け、自己修復中です。
受けたダメージは相当なものですが、少なくとも、手足が動かなかったり欠損したりはしていません。
(具体的な怪我については後の書き手さんに委ねます)
[備考]:C−3に立つ塔の外壁に、大きな穴が1箇所開いています。
塔の周囲の木々が、バルディッシュ・ザンバーの攻撃の余波で何本か倒れています。
蒼い子唆されちゃらめぇぇぇぇぇぇ!!
投下終了です。支援ありがとうございました。
問題点、指摘などありましたらお願いします。
蒼の子はアニメ三期があったら復活してたんですかね?
そ、蒼星石がタバサ色に染まりやがった! それは天然マーダーフラグだ!
ついでに言うと、頼りにしてるレックスは色々とダメダメだw
にしても、廃病院って今どうなってるんだろう。
夕方枠だから葵ベルカナもどっかの部屋にいるはずだし(蒼星石が棺桶を回収した後にやってきたかもしれないけど)
……シャナや小太郎は16時までにたどり着けたんだろうか?
タバサはいい子だな……いい子なんだけど……
今のレックスはアレだからなぁ……蒼い子……
くそう、気持ちよく騙された! 途中まで、とうとう蒼星石がタバサを見捨てたか? と思ってしまった! GJ。
しかしこれ……もし合流できて、レックスを説得できたとしても……
ザオリクは制限対象だろうし、効果なかったらこの信頼が一気に逆転しちまうんじゃないか?w
それにさり気なくタバサが復活の対象として「悪い人以外は」と断り入れてるのも微妙に怖いw
>>566 葵ベルカナがいるのは南東の廃墟の中の綺麗な病院ですよー。
シャナ小太郎は……蒼い子が来た時間が上手くぼやけてるから、来てたとしてもすれ違うことは出来ると思う。
ひょっとしたら棺桶を引き摺った跡とか見つけるかもね
>>566 そこは本当に悩みました。o.l氏が投下予定のSSに不都合をあたえてしまうなら、
できる範囲で修正しようと思っています。
もともと今ここを予約するのはまずいなと思いつつも、我慢できずに予約してしまったので…。
タバサが蒼の子を攻略しますた!
\(^o^)/
投下乙です
蒼星石、タバサに懐柔されちゃったか
にしても、合理的な考えのはずなのに妙に恐ろしいのは何故なんだろうw
ああああ!!ついに蒼い子がドラクエ世界に入門してしまった!
ローゼンメイデン勢、最後の常識人だったのに……
ああ、蒼星石とタバサの絆は固いなあ。
うん、タバサも良い子だよ。健気だよ。コワクナイヨ? ……多分?
あと時間軸はぼかされてるから大丈夫だと思う。
一応廃病院辺の時間軸整理すると
・午後の相当遅い時間に廃病院すぐ近くでなのはVSイヴ&ブルーが発生。すぐに終了して移動。
・午後と夕方の境目にはシャナ達が居るはず。
・その時刻に小太郎はシャナ達と合流したいが、こいつはやることが多くて間に合うか微妙w
・午後〜夕方の何時かに蒼星石が柩を取ってくる。
こんな感じだから、ちょっと混み合ってるけど問題ない思う。
蒼い子が感染しちゃったか…
常識が異なる人間てある意味言葉の通じない化け物より怖いよな
それが生死に関わってくることならなおさら
まあ蒼星石には下地も有ったからなあ。原作でも蘇生の起きた世界だし。
……死者蘇生の有る原作って他にどの位あったっけ。
ローゼンメイデン、東方Project、とある魔術の禁書目録、ソードワールド位か?
ローゼンはドール限定の上に出来る人がどっか行って、禁書目録もアルス=マグナ失われたが。
ドラクエV以外のゲーム作品はHP0になっても戦闘不能だから死者復活は基本的に無いよね。
あとは時間軸移動可能な作品が幾つか位で。
東方は死者蘇生はなかったはず
死んだら冥界か閻魔のとこ行って転生待つみたいな感じだったような
まあ死んでも幽々子みたいに自我保って好き勝手やってるのもいるし、賢者の石や蓬莱の薬みたいな蘇生に活用できそうなグッズ持ってるのもいるから死に対する忌避意識は若干低そうではある
「生き残った後、悪人以外を蘇生させればいいんだ!」の思考が世界観として許されてる連中は書き手次第でいつでもマーダー化できることを今更ながら実感した
そいつが弁の立つ奴だったら更に地獄絵図が広まるし
ジャンプ1stのドラゴンボール勢みたいなもんか
東方、一応手段としては有ると思う。
紫の能力で境界弄れそうだし、冥界から転生前に魂捜して来るとか、理屈の上では出来るんじゃないかな。
……紫や映姫の神様級連中に掟破りの協力させるって考えると無茶苦茶難度高いが。
あとソードワールドも可能とはいえ楽ではないな。
東方よりは楽だけど『コネとカネ』が必要なのは地味に難関だ。多人数はまず無理だし。
やはりドラクエの生き返り易さは群を抜いているw
リリカルなのはでもレリックウェポンという形で蘇った人はいる
まぁ結局失敗作扱いですぐ死んだしそもそも未来の話だから関係ないけど
この時期のなのは達なら、死者蘇生と聞いて頭に浮かぶのはフェイトママのことだと思うんだぜ
たった1人の娘を蘇生させようとして、思いっきり道踏み外してたしな。
肝心のフェイトが既に死亡済みなのが残念。はやてとヴィータはどれくらい話を聞いているか分からないが
やっと書き終わりました。
えー、先に謝罪しておきますと、予約していたキャラのうち、なのはが出ません。
途中でどうにも上手くいかなくて中盤のプロットを変えてしまったせいなんですが、
自分の無計画のせいで、他の書き手さん他に迷惑を掛けてしまってすみません。
それでは投下します。
それなりの長さなので(50K超えちゃったよorz)、支援してくださる方いましたらよろしくお願いします。
木々の間を器用にすり抜け、一匹の豚が森の中を逃げ走る。
一方、呼吸を荒くしながらその影を追うのは、運動音痴の小学生だ。
先ほどグリーンの振るった竹刀によって掛けられた豚化は、未だ解けていない。
白レンは短い足を交互に動かしながら、ちらりと後方を振り向き覗いた。
茂る葉の間から見えるのは、眼鏡を掛けた鈍そうな少年の姿だった。
随分と駆け回ったせいで漸く疲れが滲み出し始めたのか、その顔には焦燥と疲労が色濃く現れている。
しかし、こちらを追う足取りそのものの勢いはまだまだ衰えておらず、諦める気配も見られない。
……まだ追いかけてきてるなんて。まったく、しつこいったらないわね。
苛立たしげにそう思いながら、白レンは短い下草を掻き分けて疾走を再開する。
鬱蒼とした森林内は、頭上を覆う枝葉のために陽光が差し込まず、昼間のこの時間でもかなり薄暗い。
そのうえ、あちらこちらに根や木の瘤が突き出していて、気をつけなければすぐにでも転んでしまいそうだ。
事実、純白の毛皮の所々には、跳ねた泥や草木の汁が既にいくつも飛び散っている。
けれど、そんなことに構っている余裕など彼女にはない。
せめて子豚から人間に戻れるまでの間は、何が何でももあの少年から逃げ回らねば。
この状態でも運動能力などは殆ど変わっていないようだが、技が使えず喋る事もできないのは正直言って厳しい。
元の姿になれば、相手を逆に仕留めることも、適当に洗脳して新たな駒にすることもできるのだろうが。
白レンはそう考えつつ、先端に蹄の付いた己の前足を鬱陶しげに眺めた。
最後の一人になるのが目的の彼女にとって、こんなところでゲームから脱落するわけにはいかない。
しかもこんな間抜けな格好でだなんて、冗談にしたってちっとも笑えないではないか。
タッタッタと軽快なリズムで地面を蹴り上げながら、真っ白な子豚は森を抜ける。
できれば、開けた草原に出る前に相手を撒いてしまいたかったのだけれど……。
足の動きは止めないまま、今飛び出したばかりの背後を振り返った。
遥か後方に、未だゾンビのように追いかけてくる少年の姿を見つけ、ついつい閉口する。
本当に、いつになったら諦めるてくれるのだろう。往生際が悪いったらな――――
「――――ぶぅっ!?」
後方へ意識を向けていた白レンが、何かふにゃりとした柔らかいものへ盛大に頭をぶつける。
思わず抗議の声を上げながら目をぱちくりさせて顔を上げ、その壁の正体を仰ぎ見た。
見上げた先にいたのは、腰までありそうな長い髪をはらりと背中へ垂らした、幼い容貌の少女だ。
まずい、あいつに気をとられすぎていたわね。まさか、別の参加者に遭遇するなんて……。
慌てたように身体を振るいながら、しかし白レンは平静を装って少女の脇を平然とすり抜けようとする。
確かに自分はランドセルを持っているし、首輪もつけている。
だが何も知らない人間からすれば、ただの豚にしか見えない自分が参加者の一人だとはそうそう思いつかないだろう。
そう考え、彼女は何食わぬ顔でその場を通り過ぎようとした。
しかし眼前の少女は驚いたように眉根を持ち上げて白レンの全身を不審そうに眺めると、ひょいと両腕でその身体を持ち上げた。
遠慮なくぐるりと身体中を見回して、その首根に嵌められている銀色の拘束具を見咎める。
少女は白レンのそれを指先でなぞりながら、不可解そうに首を捻って言った。
「この首輪……。まさか、おまえも参加者なの?」
単なる子豚にしか見えないけれど、などと言いながら白レンの身体をじろじろと観察する少女。
そこから何とか逃れようともがくものの、がっちりと掴まれた両腕からは容易に抜け出せない。
苛立ち任せに声を荒げても、所詮咽喉から出るのは意味を成さない鳴声だけだ。
「ぶう! ぶうぶうっ!!」
「怒ったの? 綺麗なのに短気な豚ね」
そんな風に軽く流されて、プライドの高い白レンが怒り出さないわけはない。
足をちょこまかと動かしてどうにか相手に一撃を食らわそうとするものの、身軽な少女にひらりひらりと攻撃をかわされる。
それが、また何とも腹立たしくて――――。
「ぶう!! ぶーうっ!」
慇懃無礼で優雅なはずの白い少女は、草叢の中大きな声でそう猛り鳴いた。
* * *
「ジェダって言うのは、どうしてこんな豚まで参加者にいれたのかしら?」
自分の腕の中で脚をばたつかせる純白の毛並みをした子豚へ問いかけるように、シャナは言った。
そこに居るのはどう見たってただの豚で、特に不思議な力を持っているようにも思えない。
首輪を嵌めていることから、取りあえずは参加者なのでないかと予測ができるものの……。
「ねえ、おまえ、私の言っていることが分かったりはしないの?」
つんつん、とピンク色の鼻面を突付いて、そう尋ねてみる。
それでも抱きかかえた子豚は面倒そうに「ぶい」と一鳴きしただけで、一向にまともな反応を見せない。
こちらの手の中から出ようと考える頭くらいは一応あるようだが、短い脚ではいくら暴れても焼け石に水だ。
「ぶう、ぶうっ!!」
「うるさいわね、少しは静かにしてなさい」
広いおでこをぺちんと指ではじくと、豚はますます怒ったように唸り声を強くした。
まるでぬいぐるみの様なそれを見下ろしながら、シャナはどうしたものかと考える。
シャナにとっての当面の目的は、この周辺の警戒と捜索である。
我侭で自分勝手な双葉が、一人で神楽とやらを埋めに行ってしまったものだから、『仕方なく』周囲を見回っているのだ。
勿論それは、危険人物が双葉に近寄らないようにするためだったのだが、まさか最初に見つけたのが豚だとは予想していなかった。
こんな子豚一匹放置しておいても、まさか双葉達に危害を及ぼすことはないだろうが……。
そう思いながらもう一度子豚に目をやり、シャナはふうと小さく溜息を吐く。
「まあ、ジェダの考えていることは意味不明だけど……、取りあえずは放っておいても大丈夫でしょ」
言いながら豚を解放しようとしたシャナが、しかし寸前ででその身体を微かにこわばらせる。
それは、視界の端に広がる森を掻き分けて現れた少年と、彼の口元から聞こえてきた台詞によるものだった。
「そそ、その豚を僕に渡せ!! 早くっ!!」
全身に汗をたっぷりと掻いた眼鏡の少年が放ったその言葉に、シャナは眉を顰める。
驚いて、抱いている子豚へ目をやれば、対するそちらの表情にもどこか焦っているような色が滲んでいた。
* * *
漸く追いついたと思ったら、また他の誰かに守られている――――。
のび太は、先ほどひまわりを追い回したときの事を思い出し、苦々しく顔を歪めた。
あのときも、せっかくチャンスだったっていうのに、急に現れた別の女の子に邪魔されてしまった。
でも、今度こそ大丈夫なはずだ。絶対に、油断しないでやっつけてやる……。
そう思いながら、追いかける最中に拾っていた手ごろな大きさの石をポケットから取り出す。
硬い石の感触をぎゅっと握った指先で感じながら、子豚を抱えている長髪の少女へ命令する。
「聞こえないの!? 早くその豚を放せってば!!」
咽喉がひっくり返りそうなほど大きな声で叫んで、手にしている石を振り被る。
しかし少女は平然としたまま、逆にのび太へ向かって冷静な態度で問い返した。
「……おまえ、この豚をどうするつもり?」
「き、決まってるだろ。殺すんだ! 早くウチへ帰るために!!」
その返答に瞳を針の様に細めると、少女は思わず背筋を正したくなるほど強烈な視線でのび太を射抜いた。
のび太は、がくりと肩を震わせながら、それでも咽喉を振り絞って少女へ反論する。
「別にいいじゃないか。……そっ、それに僕が殺そうとしてるのは人じゃない! 動物だ!!」
自身が語ったその言葉が嘘であるのを、のび太は誰よりもよく知っている。
開始直後に殺めてしまった子豚は、自分達の目の前で人間へと戻ったではないか。
無残な少年の死体として、その真実の姿を眼前へ現したではないか。
だとすればこの白い豚もまた、同様に人間が何かの道具で見た目を変えられているだけなのかもしれない――。
そう分かっていながらも、のび太は己の口から出る言葉を止められなかった。
「そうだよ……、だから早くその子豚を貸してよ! そうしないと僕が帰れないじゃ……」
絶叫したのび太の声が、中途で途切れた。
まともに言葉を紡ぐことができず、ぱくぱくと鯉のように口を開閉させる。
彼が声を失った理由、――それは自身の前へ現出した圧倒的な気配のせいだった。
「つまりおまえは、この馬鹿みたいなゲームに乗った側なのね。
色々言い訳しているみたいだけど、所詮おまえの言っているのは紅世の徒達と同じことよ。
自分よりも弱くて劣る存在だからって好きに殺してもいいだなんて――、そんなのはおまえの傲慢だわ」
少女はそう口にして、抱き締めていた子豚をそっと後ろ手で逃がす。
「行きなさい」とでも言うように軽く後ろへ首を傾いでみせると、背負っていた大刀に手を掛けんとする。
向けられた剣の先は、まるで血を求めてでもいるようにぎらりと不穏に光り輝く。
その刃の鋭さにごくりと唾を飲み込むと、それまで固まっていたのび太は慌てて行動を起こした。
グリーンが預けてくれたランドセルに入っていた、残りページの少ないクロッキー帳。
それに描かれたものが実体を持って現れることを、のび太は目の前で体験して知っていた。
使ったことはないけれど、多分ドラえもんの道具のうちの一つなのだろう。
ランドセルの一番上に放り込んでいたそれを掴み取り、残っているページ全てに羽ペンで絵を殴り描く。
勿論、具現化するものをしっかりと考えたり、細かいところまで描き込んだりする時間なんて存在しない。
ページいっぱいを使って、巨大な四角い塊を描くのが精々だ。
けれどそれによって目の前に現れたゴーレムの姿は、彼の予想を超えるものだった。
分厚く頑丈そうな身体を携えた、漫画本に出てくるぬりかべのような土人形。
それが三体、のび太の周囲を取り囲むようにして具現化される。
「なっ……っ!?」
流石に驚いたらしい少女が身体を緊張させたのを確認するまもなく、のび太は走り出す。
本日何度目になるのかもう覚えていない、再々々度の全力疾走だった。
* * *
「東の街についたら、まずはどうするの?」
「……うーん、そうだな。武器や薬が見つかりそうな建物を回ったあと、今夜眠れる場所を探そうと思う」
トリエラは真横へ顔を向け、リルルの問い掛けへそう返答した。
この奇妙な同行者の存在が、現在の彼女にとっては一番の懸念事だった。
こちらを襲ってくるつもりはなさそうだし、自分の身を守れるだけの技能は持っているようだ。
相手を過剰に恐れる必要も、足手まといにならないか心配する必要も、恐らくはないのだろう。
とは言え、ただ『観察する』行為だけをすぐ側の人間から延々とやられるというのは、そう気分のいいものではない。
多少なりともフラストレーションが溜まっていたトリエラは、腰に差していたナイフへ手をやり、苛々と弄んだ。
硬い柄の感触を指先に感じながら、昼間、ナイフポーチを自分に作ってくれた少年のことを思い出す。
彼はまだ、生き残れているだろうか?
見たところ、人並み以上の体力は持ち合わせていないようだったけれど。
ぽややんとした、いかにもお人よしそうな笑顔を脳裏に浮かべ、トリエラは薄く笑う。
別に、あんなのが一人や二人死んだところで、ショックを受けることもない。
この島は無数の殺人者で溢れているのだ。いつ誰がどこで命を落としても、少しもおかしくない。
――――ただ、彼とは『取引』をした仲だから。
同情でも博愛でも慈善事業でもなく、ましてや友情や愛情などでは微塵もなく。
そんな風に生易しい、感傷的なものではなく、ただ『取引』を交わしたというだけの間柄。
けれどだからこそ、トリエラは、出来ればトマが死んでいなければいいなと思った。
彼が語った呆れたくなるほど楽観的な計画を、トリエラは未だ全面的には信じていない。
この首輪を、周囲に広がる大海を、そして何より悪趣味なゲームの主催者をどう克服するのか。
自分には想像もつかないその方法を、もしも彼に用意することが出来るなら――。
そう思うと、少しばかりは彼が死んでいないほうに期待してみてもいいかな、と感じたのだ。
そんなことを考えながら、北東の住宅街を目指して歩を進める最中。
トリエラは、背後遠くから走りくる足音を敏感に感じ取り、足を止めた。
振り返れば、遥か彼方に少年らしい小さな人影が見える。
咄嗟にそちらへ警戒の姿勢をとり、握っていたナイフをくるりと順手に持ち帰た。
しかし、そうして身体を張り詰めさせた彼女に反して、隣のリルルは少し驚いたような表情で「あら」と声を上げた。
「何、あなた、あの子の事知ってるの?」
まさか、またロボットじゃないだろうな……と思いつつ、トリエラはリルルに尋ねる。
対するリルルは、その問いに首を上下へ振って、肯定を示した。
「ええ、私の『観察対象』の一人よ。この島へ来る前から知っている人なの」
「つまりあなたにとっては、今の私と似たような存在、ってことね」
「そうよ。のび太君は私が初めて会った人間なの。
でも、悪い人ではないと思うからそんなに心配しなくても平気だわ」
そう言われてもなぁ……、と思いながら、トリエラは徐々に接近してくる少年の姿を眺める。
視界の先の彼は確かに、何かから無我夢中で逃げるように、必死な形相で駆けている。
こちらを襲うために近づいてきているように見えないのは、事実なのだが……。
「のび太君!」
「……って、ちょっとリルル!?」
などと考えているうちに、横に立っていたリルルがいつの間にか少年へ手を振っている。
その呼びかけに、漸く向こうも彼女が知人であるのに気づいたのか、急ぐ足取りでこちらへと寄ってきた。
それを横目で見ながら、トリエラは溜息混じりの声で告げる。
「リルルってば、勝手に何してるのよ」
「私はこの島での経験を通して、出来るだけたくさんのサンプルを取りたいの。
のび太君が今までどこで何をしていたのか、折角だから聞いておきたいわ」
その答えにもう一度大きく溜息を吐くと、トリエラは天を仰いで「あーあ」と呟いた。
* * *
「……リルル!?」
「こんにちは、のび太君」
自分達の下へ走り寄ってきたのび太に笑顔でそう挨拶すると、彼は荒い呼吸を抑えて話しかけてきた。
「どっ、どうしてこんなところにいるの……?」
「東の街へ向かう途中だったのよ。のび太君こそ、そんなに慌ててどうしたの?」
その問い掛けに一瞬目を白黒させると、のび太は激しく唾を飛ばしながら、縋るようにして彼女へ答えた。
「そのっ、僕、今そこで襲われそうになったんだ! それで、怖くて……」
「そうだったの。だから、ここまで逃げてきたのね」
のび太の返答にこくりと首を頷かせて、リルルは一人思考する。
彼は以前自分に、「おざしきつりぼり」という不思議な道具を貸してくれた。
誰も居ない広くて静かな場所への入り口になるそれは、兵団の前線基地を作るうえで大いに役立ってれた。
だから、もしまた何か便利な道具を持っているようなら、あの時同様に使わせて貰おうと思っていたのだ。
だがこの様子では、のび太が役に立つ道具を持っていることは無さそうだ。
彼は親切なお人よしだから、同行すればそれなりに利用できるだろうし、『観察対象』にもなるだろうが……。
リルルがそんなことを考えていると、予想外の声が横から降ってきた。
「あなた、その話もう少し詳しく聞かせてくれない?」
「……えっ? えっと、あの、あなたは……?」
「私はトリエラ。一応、今はリルルと一緒に行動してるの」
「あ、僕はのび太。野比のび太って言います。リルルとは前から友達で……」
「そんなことはいいから。早く答えて」
トリエラはのび太にずいと詰め寄ると、握ったナイフを見せつける様にひらりと刃を一閃させて尋ねる。
「あなたを襲ったっていうのは、どんな相手?
場合によっては私が殺してきてあげるから、そいつについて教えてよ」
ぶるぶると身体を震わせて怯えているのび太にそう訊きながら、トリエラはリルルへと向き直って告げた。
「街へ行くのは一旦、ストップかな。もっと簡単に武器を手に入れるチャンスが来たみたいだし」
「トリエラさん、何を考えているの?」
首を傾げてそう問えば、トリエラは先ほど様々なことを質問したときと同様、実に合理的な返答をしてみせる。
「三人殺せば、ご褒美がもらえるって言ってたでしょ? 弾薬、手に入るかもしれないじゃない」
* * *
息を荒げ、シャナは構えている剣を上へ下へと忙しなく振るった。
目の前のゴーレム達はさほど強くもなく、動くスピードものんびりとしている。
だが一対三という単純な数の差は、それなりの負担になっていた。
目の前の一体へ斬り付けているうちに、左右、或いは前後を他の二体に挟まれる。
高く跳躍し、頭上を飛び越えてそこから逃れても、ゴーレム達はしぶとくシャナを追いかけてくるのだ。
痛覚などもないのか、いくら刺傷や火傷を全身へ作ってやっても表情一つ変えやしない。
とは言え、まともな知性も能力もないゴーレムが、そう長く彼女を足止めできるはずもなかった。
ひらりと薙いだ剣の一閃で一体が、掌から放った灼熱の業火でまた一体が、がらがらと崩れ、掻き消えていく。
僅か数分の後、最後の一体を「うー」という鈍重そうな断末魔の元に斬り伏せると、シャナは顔を顰めて言った。
「何だったのよ、あいつは。私にあんなのと戦わせてる間に逃げるなんて、むかつくったらないわね!」
顔を真っ赤にしてぷりぷりと怒っていたシャナの表情が、何事か思いついたようにふと曇る。
それは、破壊されたモニュメントの周囲に未だ一人でいるであろう双葉と、置いてきた紫穂に対する心配だった。
逃走した少年の行き先は東方向だったはずだから、今現在、二人へ危機が及んでいることは考えづらい。
けれど、もしヤツがまたこっそりこの辺りへ戻ってくるようなことがあれば問題だ。
あの能力で作られたゴーレムは決して頑強ではなかったけれど、一般人が楽々倒せるほど弱くもない。
戦闘能力のない彼女達、特に満身創痍の双葉を一人ぼっちにしておくのは、流石に気が引けた。
「まったく、もう! 本当にあいつは、世話が焼けるったらないわね……。
何で私が、あんなのの心配をしたりしなきゃいけないのよ!? 理不尽だわ!!」
……尤も、素直でない彼女がその想いを正直に口にすることは、当然なかったのだが。
* * *
双葉はそこで、指先を組み瞳を閉じていた。
彼女の前にあるのは、小さな小さな、本当に些細な墓が一つ。
土を盛り、壊れたモニュメントの欠片を墓標のように突き刺しただけのそこを前に、少女は瞑想する。
あのとき、神楽は笑っていた。
『絶対に戻る』と、そう自分に約束してくれた。
まるで特撮番組に登場する正義のヒーローのように、誰よりもかっこよく、何よりも美しく。
――――なのに今はこうも呆気なく、別れたときに比べて何倍も小さくなったような姿でここにいる。
血と臓物を周囲に広くぶち撒けて倒れ臥した彼女は、どう見たって正義の味方のそれとは思えなくて。
唇を噛み締めた。前歯で噛んだそこから血が滲んで、鉄錆の味が口の中全体に広がる。
その塩辛さに咽喉を震わせて、双葉は小さくしゃくり上げた。
つうと一筋、瞑った目の端から涙が零れ落ちる。
「――――双葉」
唐突に、自分の名を呼ぶ声が後ろから掛けられる。
背後へ振り向く瞬間、彼女の笑顔がそこに在ることを期待してしまう自分が居るのに気付き、絶望した。
けれど、その希望は仕方のないものだと言えるだろう。
何せ投げかけられた声は、あのとき神楽に掛けられたそれとあまりに似通って、似通り過ぎていて。
「……何だよ、あんた。何で戻ってきたんだよ」
「ふん、悪い?」
しかし当然、振り返った先に居るのは神楽ではなかった。
そこに立っていたのは、先ほど盛大にケンカしたばかりの相手――シャナだ。
彼女がさっき自分に言った内容が未だに許せない双葉は、如実に態度を悪くして返答する。
「病院に向かったんじゃなかったのか? 大体、もう一人のやつはどうしたんだよ」
「紫穂なら、森でおまえが戻るのを待っているわ。それから私は、おまえを迎えに来たの」
「は? どーしてあんたが?」
「さっき、そこで怪しいヤツに会ったの。ここは危ないから、三人で病院へ戻るわよ」
苛々としたぶっきら棒な口調でそう問えば、対するシャナもまた攻撃的に返す。
その口ぶりからは、先刻口にした事柄を謝る気なんかさらさら無いように思えて、双葉は苛立ちを倍増させた。
……何が『ここは危ないから』だよ。都合のいいときばっかり、大人ぶりやがって。
神楽のことを放って行こうとするような薄情者のくせに!
双葉は差し出された手を乱暴にぴしゃりと振り払って、ぷいと横を向く。
その仕草に、ぴきりと青筋を立てて眉根を上げたシャナが、「はぁ!?」と声を上げた。
「何なのよ、せっかく迎えに来てやったって言うのにその態度は!?
ああ、もうっ! むかつく、むかつく、むかつく!!」
顔全体を真っ赤に染めて地団太を踏むシャナに、ふんとそっぽを向いたまま双葉も言い返す。
「あんたこそ、あたしのことなんかどーでもいいんだろ? だったら、一人で行きゃいーじゃねーか!」
「うるさい、うるさい、うるさい!!」
元々、両者とも非常に沸点の低い性格である。一度こうなってしまっては、お互い簡単には収まらない。
二人は相手の服や髪を掴み合い、こんな状況だというのに、ほとんど取っ組み合った状態で口喧嘩を始めてしまった。
特に双葉は、ずっと胸に残っていたもやもやを吐き出すように精一杯大きな声で叫ぶ。
「あたしのことが嫌いだったんじゃなかったのかよ! だったら、もう放っとけよ!!」
「何よ、その言い方は!? 私だってね、おまえなんて……」
「なんだと!? 人を馬鹿にすんじゃねーよ!」
……殺人ゲームの最中であるのも、危険人物が周囲に居たことも忘れて行われる、お子様同士の口喧嘩。
延々延々続けられるかと思われたそれを先に止めたのは、意外にもシャナの方だった。
突然口を噤んだ彼女を不思議に思う間もなく、双葉は無理やりシャナに手を引っ張られ、引き寄せられる。
不平を言う間もなく、いわゆるお姫様抱っこの形で横抱きにされたと思うや否や。
――――彼女の体は、自分を支えるシャナもろとも空高く飛翔していた。
「……なっ、嘘だろ!?」
思わず叫んでしまった双葉にも構わず、シャナは憮然として告げる。
「あまり暴れないで。このまま、病院まで一気に向かうから」
言いながら、シャナが眼下に小さく見える三つの影へ向かって顎をしゃくった。
どうやら、口論に夢中になっているうちに、シャナが言っていた『怪しいヤツ』が近づいていたらしい。
とは言えこうして上空に逃げてしまえば、相手に追いかけるすべはないだろう。
そう思いながら、双葉は自分を抱きかかえているシャナの姿をちらりと上目で眺めた。
燃え盛るような二枚の翼を背中から生やした彼女の姿は、どう贔屓目に見ても人間には思えない。
だが、常日頃からおかしなガーゴイルらと生活している双葉にとっては、さほど驚くべきことではなかった。
むしろ、彼女にとって衝撃だったのは――。
「あたしは放っておけばいいって言ったろ!」
あれだけひどい口喧嘩をしていた相手である自分を、シャナが迷うことなく連行させたことだった。
自分でも、相当ひどいことばかり言い放った自覚がたっぷりあるのだ。
短気なシャナなら、それこそ怒って双葉一人だけ置き去りにしてもよさそうなものだったのに。
「まだその話? そんなに行きたくないのら、このまま落としてやっ、て、も…………」
そう言いかけたシャナの台詞が、小さな呻き声とともに半ばで途切れる。
それに対してどうしたんだと思う間もなく、双葉は異変に気付き顔を青褪めさせた。
シャナの身体が、地面へ向け一直線に落下しているのだ。
浮力をなくしたボートが海底へ沈んでいくように、風を切り二人の身体は真っ直ぐ下へ落ちていく。
「シャナ!? おい、どうしたんだよっ!!」
肩を揺さぶりながら叫んでも、当のシャナからは一向に答えが返らない。
何分にも何時間にも感じられるような、長い長い数秒の後――――、二人はどさりと大地へ投げ出された。
* * *
全身を襲うじわじわとした痛みに、漸く意識が蘇ってくる。
先ほど唐突に浴びせられたのは、恐らく電撃によるビームのようなものだろう。
予期していなかった突然の攻撃で、瞬間的に身体が麻痺してしまっていたらしい。
存在の力の無駄遣いを抑えるため、双葉の重量を考慮して、いつもよりかなり低い位置を飛んでいたのが失敗だったか。
大きく胸を上下させて一度だけ深呼吸すると、シャナはよろよろと立ち上がった。
落下の衝撃で身体中の至る所に打撲や擦傷ができていたが、気に留めるほどではない。
素早く体勢を整えると同時に、攻撃を仕掛けてきた相手をきっと睨み付けた。
それを待っていたかのように、ナイフを手にした褐色の肌の少女がシャナへ尋ねる。
「あなた? この子を殺そうとしたってのは」
「だったら、何? 私は自分のするべきことをしただけよ。非難される理由なんてない」
視線を逸らさずきっぱりとそう答えたシャナに、相対する少女もまたはっきりとした口調で宣言する。
「だったら……か。そうだね、だったら私があなたを倒す。それが私の『するべきこと』だから」
そう口にするや否や、こちらの胸元へ入り込まんと駆け出してきた少女に対し、反射的に剣を振り抜く。
しかし相手は、それしきの威嚇行為に臆する様子もない。
スピードを緩めることなくシャナへと突進すると、短く握り締めたナイフを直線的な軌道で左から右に薙いだ。
「チッ……、本気みたいね」
苦々しく唇を歪めてそう呟きながら、重い剣でナイフを受け止める。
そうしながら、視界の先で未だ倒れ伏せたままの双葉に、精一杯の声量で叫び掛けた。
「……双葉、おまえは逃げなさい!」
当然、そう口にする瞬間も眼前の少女は余所見をする猶予など与えてくれはしない。
シャナの隙を狙い定めて振り被られた彼女のナイフは、正確に喉元寸前へと迫り来る。
煌めく刃先を間一髪で避け、一瞬よろめいた体幹を天性のバランス感覚ですぐさま立て直した。
手にした重厚な剣を構え直し、そのまま相手の胸元目掛けて一直線に反撃へと転じる。
しかし、対する少女も悠長にシャナの攻撃を待っているほどお人よしではない。
シャナの動きに反応し素早く上半身を屈めると、振り上げた腕へナイフを一閃させ、勢い任せに斬りかかる。
かわしきれず皮膚の薄皮を軽く掠めたその刃先に眉を顰めたシャナは、仕方なしに僅かな後退を強いられる。
数歩下がって、前方へ向けた剣を再度煌かせながら、漸く立ち上がった双葉に大声で怒鳴りつけた。
「聞こえないの!? 早くここから立ち去りなさい!!」
* * *
かけられた台詞に、双葉はぎりぎりと拳を握り締めて悔しがる。
何だよ。あたしはあんたのこと嫌いなのに、すっげー嫌いなのに、どうしてそんなこと言うんだよ。
……あたしはもう、耐えらんねーんだよ。
誰かが自分の代わりに死んで行くなんて、そんなのこれ以上まっぴらなんだ。
どんなに偉そうなことを言ったって、あたしは所詮普通の小学生で。
神楽やシャナみたいな強いヤツに守ってもらうしかない、戦う力のない弱い子供で。
でも、だからってそのせいで他のヤツが死ぬなんて、そんなの絶対に嫌なんだよ!
「やめろよ、何でそんな風に言うんだよ!!」
思わず絶叫すれば、対するシャナもまた腹の底から出しているような大きな声で言い返す。
「おまえはあの女に助けられたんでしょ? だったら、こんなところで死のうとしちゃダメなの。
他人の命と引き換えに救われた人間が死に急ごうとするなんて、私は、一人の戦士として赦さない!」
表情を見せぬままそれだけ言うと、シャナは最後に僅かだけ振り返り、言葉を失った双葉に告げた。
「――――絶対に戻るって約束するから。だから、ここは私に任せなさい」
そう言った彼女の声に、今朝方聞いた神楽のそれがぴったりと重なる。
「絶対もどるアル、だからココは任せて欲しいヨ」と、笑いながらそう言った神楽の声。
あの銀髪の少女に向かって、ヒーローのように突撃していった後姿の眩しさ。
最後の瞬間に見せてくれた、はっとするほど綺麗なキラキラした笑顔。
それらの一つ一つが、シャナの姿と二重写しになる。
固めた拳を、もう一度ぎゅうと強く握った。
……どうしてこういう人間は、揃いも揃って皆同じようなことを言うんだろう。
どっかに、破滅願望でもあるんじゃないだろうか。
本当に、馬鹿ばっかりだ。
そんな風に思いながらも、双葉はいつの間にか森へ向けて走り出していた。
神楽の想いを、シャナの想いを無駄にしないために。
彼女達との約束を、守るために。
* * *
走って逃げて行く双葉を横目で見やりながら、シャナは安堵の溜息を吐いた。
別に心配しているわけじゃない。
ただ、あのままあいつが死にでもしたら小太郎が怒るだろうし、明日の夢見もちょっとは悪いだろうから。
それだけよ、と自分自身に無理やり言い訳をすると、シャナは再び眼前の少女と対峙した。
先ほどの僅かな交戦だけでも、彼女がそれなりの手練であるのはわかる。
身のこなしなど、一流の戦闘員のそれといっても過言ではないだろう。
けれどそれは、所詮人間レベルで考えてのものだ。
フレイムヘイズである自分の身体能力は、一般的な人間などとは比較するべくもない。
一閃、二閃。相手の振るったナイフが、こちらの鼻先を掠めては退く。
浅く単調な横への払いの繰り返しを、シャナが機械的な動きで受け続ける。
その攻撃に目と腕が慣れるか慣れないか、といった瞬間に、今度は深く抉るような突き。
下から上へ、半月状に弧を描いてこちらに差し出されたナイフに、シャナのタイミングがずれる。
刃で受け止めていては間に合わないと瞬時に判断し、彼女は後ろに半歩、素早く跳んでその剣先をかわす。
そのまま一歩二歩と後退し、相手との距離を取り直しながら、手の中の長剣を再び真正面へ構えた。
容赦など一片もない瞳で彼女を見据えると、胸部目指して振り上げた剣に力を込める。
跳び上がり、彼女の心臓を一突きにせんとばかりに剣を振るうシャナ。
対する相手はその攻撃を、片掌を地面へ付かせごろりと横向きに転がり込みながら回避した。
流れるような動作で身体を起こし、そこから低い体勢のままシャナの左脛を斬り付ける。
それを、またもや間一髪で上へとジャンプして逃れると、シャナは空中で身体全体を無理やり方向転換させた。
地に付いたままの左足を軸足に、勢い付けられた右足へ全身の力を凝縮させて相手を蹴り上げる。
がら空きの腹部狙って放たれたローキックが、吸い込まれるようにして鳩尾へ落とされ、その衝撃に相手がよろめく。
膝をかくんと曲げ顔面から倒れこみそうになった彼女の肩口に剣を浅く突き立て、抉る様に横へと払う。
力任せに引き裂かれた肩甲骨付近の皮膚が熟れた柘榴の様にぱっくりと割れ、見慣れない炭素フレーム製の骨格が現われた。
目を覆うばかりの残虐なその光景に、けれどシャナは呼吸一つ乱さずにいる。
ついに倒れ臥してしまった少女の傍らに立つと、その長い後ろ髪をぐいと乱暴に掴んで持ち上げた。
露になった首筋目掛け、剣の先端を何の感慨もなく降り下ろ――――。
「……え?」
――――そうとしたシャナの身体がくるりと反転。
瞬間的に、小柄な彼女は地面へと引き摺り下ろされる。
回避する間もなく馬乗りにされ、鉛の様な重量でぎゅうと押さえ込まれてしまう。
そこから必死にもがこうとして、シャナは全身に回る違和感を素早く感じ取った。
神経を支配する、痺れるようなじりじりとした感触。――――麻痺毒だ。
一体いつの間に!? そう考えて、シャナは一つの心当たりに辿り着く。
相手の武器であるナイフ、その刃先に彫られた奇妙な形の薄い溝。
先ほど僅かに掠ったあの刃物の先に、恐らくは毒物が仕込まれていたのだろう。
シャナの動きを封じた相手が、よく訓練された猟犬のように無駄のない手つきで両手両足の健を切断する。
「…………ぃあぁぁぁっ!!」
思わず、声を上げていた。
俎板の上の野菜でも切るかのように淡々と、少女はシャナの四肢から動きを奪っていく。
ぷつりと皮膚を切り裂かれた瞬間、熱湯を垂らされたのに似た熱さがその箇所を襲い、次にはじわりとした痛みが押し寄せる。
痛覚神経そのものを引き千切られたかのような激痛に、言葉にならない悲鳴を上げた。
取り落とした剣を拾おうと指先を虚空へ伸ばすものの、関節一つ動かそうとするだけで眩暈がしそうな苦痛がやって来る。
「何、なのよ……っ」
先刻、勝負が付いたと思い込んで一瞬の油断を許してしまった自分自身を激しく恨んだ。
あのとき、自分はもはや相手が立ち上がることはないだろうと考えた。考えてしまった。
けれどそれは、致命的な判断ミスだったのだ。
刃を付き立てられた側の少女は、自身の怪我に微塵も動じてなどいなかった。
彼女はただ虎視眈々と、シャナが自分に接近する絶好のチャンスを狙っていたに過ぎなかったのだ。
口中で小さく舌打ちしながら、瞳だけを僅かに動かして後方へ視線をやった。
双葉は逃げきることが出来ただろうか。紫穂と無事合流していればいいのだけれど。
そう胸中で思いながら、彼女は重い瞼を閉じる。
ゆるゆるとゆるゆると、夢の中に入り込むかのように――――。
* * *
二つの人影が、北東にある港町目掛けて歩いていた。
そのうちの片方、桃色の長い髪を靡かせる色白の少女が、褐色の肌をしたもう一人に話しかける。
「あれで、良かったのかしら」
「さあね」
その問い掛けに少々むっつりとした表情で振り向くと、彼女はぶすりと呟く。
「ああしろって言ったのは、私じゃなくてあなたでしょ」
「確かにそうだわ。でも、トリエラさんだって承諾したじゃない」
相手から平然とそう言い放たれて、少女は益々むっとしながら反論を試みようとする。
けれど視線を向けた先では、淡々とした狂いのない歩調で歩みを進める少女が、興味深そうにこちらを見つめていた。
それに毒気を抜かれた形になった彼女は、大きく吐息して胸の中に詰まった空気を一斉に吐き出すと、掌をひらひらさせて告げる。
「そうだね、確かに私もオーケーした。はいはい、あなたの言う通りだよ……」
* * *
まるで肺に小さな穴でも開いているかのように、吸っても吸っても酸素が足りない。
眩暈がするほどの息苦しさに倒れ込みそうになりながらも、双葉は駆け足を止めなかった。
目的地へ続く森の中を一目散に走り、朽ちかけた廃病院を一人、目指す。
シャナの行為を無為にするわけにはいかなかった。
戦う力を持たない自分に出来るのは、守ってもらった命を無駄にしないよう努めることだけだ。
双葉は荒い息で木々の間を掻き分け、よろめく足で一歩一歩と前へ進んだ。
先ほど上空から落下した衝撃で体中に鈍痛が響いていたものの、泣き言を言う暇はない。
苦しさを無理やり抑え込んで、少しでも速くと疾走する。
「……いて削って裁って刻んで刎ねて刈って削いでほじくってくりぬいて薙いで断って削いで……」
その途中、林の間から耳に飛び込んできた誰かの独言に、思わずびくりと身体を強張らせた。
あまりにも異常で物騒なその単語の羅列に息を呑み、相手に気付かれないよう迂回しようとする。
大きく距離をとってその場から通り過ぎようとしたところで、しかし双葉は気付いた。
そこに立っているのが、先ほど別れたばかりの紫穂だということに。
安堵に胸を撫で下ろそうとするものの、常軌を逸したその表情を見て判断を迷う。
正直に言って、とても恐ろしかった。近寄りがたい気色の悪さすら感じた。
すぐ側にいる双葉にも気付かないのか、紫穂は壊れたテープレコーダーのように言葉を紡ぎ続ける。
どんよりとした双眸に明るい色はなく、ただ闇のように深い黒色が澱んでいるだけだ。
恐怖に竦む足で、それでも双葉は紫穂へと足を進めた。
『三人で病院へ戻るわよ』と、シャナはそう自分に言ったのだ。
だったら、紫穂をここへ置いていくわけにはいかない。
首に縄をつけてでも彼女を病院まで連れて行って、そうして三人で再会しなければ。
「紫穂? おい、どーしたんだよ!」
生気の感じられない彼女に近づいて、がくがくと肩を揺さぶった。
そうされて漸く双葉の存在に気がついたのか、紫穂は薄い笑みを湛えたまま呟く。
「きっと、皆皆皆死んじゃうんだわ。シャナちゃんも小太郎君も薫ちゃんも葵ちゃんも、皆皆皆……」
「……何言ってるんだよ? 紫穂、お前、おかしいぞ!?」
そう問いながらさらに強く身体を揺すっても、彼女は平然としたままだ。
まるで幽霊の相手でもしているような気分になって、ぞっとした双葉が背中一面に鳥肌を立てた。
「人形がね、棺桶を運ぶのを『見た』のよ。あれはこの島にいる皆のための棺。次は誰のためのものかしら。
私? あなた? ああ、そう言えばシャナちゃんが居ないわね。シャナちゃんのかもしれないわ」
「……なっ、てめぇ!!」
双葉には、人形だの棺だのという言葉の意味は分からなかった。
どんな理由でかは知らないが、今の紫穂は相当に混乱している。
そのせいで死神の登場する白昼夢でも見て、現実との区別がつかなくなったのかもしれない。
けれど、だからと言って、今の彼女の発言が許せるわけはなかった。
「……何よ、シャナちゃんは強いから死ぬわけなんてないって、そう思ってるの?
でも、そんなわけないじゃない。だって、あなたを助けた神楽ちゃんは呆気なく死んじゃったでしょう?」
ケラケラケラケラと耳を劈く甲高い声を立てて、紫穂が可笑しそうに笑う。
双葉は見開いた両目で相手を真っ直ぐに睨み付けると、その笑声を打ち破るようにして叫んだ。
「……あいつらのことを、そんな風に言うな。あいつらは、あたしに約束してくれたんだ。
絶対に戻るから、きっとまた逢えるからって、そうあたしに言ってくれたんだ!!」
そうだ、シャナは自分に約束してくれた。
すぐ怒るし、考え方は合わないし、冷たいし、頑固だし、素直じゃないし。
そんな嫌なやつだけど、それでも、双葉の前で確かに誓ってくれた。
――――だから、守ってもらった自分に出来るのは。
「……だから、だからあたしは信じてるんだ。
シャナがあんなやつに負けるわけねーって、死んだりなんかするはずねーって!!」
* * *
赤い髪をした少女は最早、絶体絶命どころではなかった。
死の淵に足を掛けているどころか、全身がその沼に浸かり辛うじて指先だけが岸辺に引っかかっている状態だ。
のび太の見ているすぐ先で、トリエラがナイフを振るっている。
腕と脛に鋭く線を引いて相手の動きを封じた彼女が、ついにその剣先を喉笛へと持っていった。
あと数センチ、5ミリ、3ミリ、1ミリ……。――――さくり。
耳を塞ぎたくなる様な音は、意外にも聞こえなかった。
むしろ、温めたナイフでバターを切るのに似たごく軽い手応えで、刃先は皮下へ潜り込んでいく。
その光景に思わず息を呑んだのび太には微塵も構わず、トリエラの手にするナイフの鋭利な先端が少女の喉下へ喰らい付く。
そのまま指先に力を込め、彼女は皮膚に食い込んだ刃先を真横へ引こうとした。
まるで、仕留めたばかりの獲物を巨大な虎が一撃で屠るかのように無駄の省かれた動作で、そのナイフを真っ直ぐに――――。
「だだだだだだだ駄目、駄目ぇぇっっっっっ!!!!!」
瞬間、のび太は反射的に叫び声をあげていた。
その絶叫にトリエラがぴたりと作業をやめ、不可解そうな表情で彼へと振り返る。
「怖いなら目でも瞑ってなよ。すぐに終わるから」
トリエラはそれだけ言い捨てると、すぐに止めを差そうと少女の身体へ向き直る。
それを阻止せんと急いで彼女に駆け寄ると、のび太は泣きそうな顔でぶんぶんと首を激しく横に振った。
「ちちち違うんだ。……僕、僕っ、トリエラさん達に嘘吐いてたんだよ……!!」
「……どういうこと?」
のび太が口にした言葉に、トリエラが眉を顰めて問う。
先ほどまで使用されていた血染めのナイフを向けられ、のび太はうっと声を詰まらせた。
怖い。怖い。本当のことを言ったら、きっと殺されてしまう。
まるで、石でも丸ごと飲み込んでしまったみたいに喉の内側が苦しかった。
たった一言の言葉を発するのがひどく困難で、舌の先は縺れているのか思うように動かない。
それでも、自分の嘘のせいで関係のない人が死んでしまうなんて、やっぱり耐えられない。
僕は運動だって勉強だってできないし、弱虫の臆病者だけど、それでもそんな卑怯な人間にはなりたくないから。
「……先に襲おうとしたの、本当は僕のほうなんだ。
でも、その人に反撃されそうになって、それで……腹が立って……、僕……っ」
「それで、私達にあることないこと吹き込んだ、ってわけね」
ふぅと心持長めな溜息を吐いて、トリエラが左右の瞳を苦々しげに歪める。
握っていたままだったナイフの先端をのび太の胸元へ押し当てると、怒ったように告げた。
「だとしたら、私が今退治するのはあなたってことになるけど」
「……うん、分かってる」
ごくんと唾液の塊を嚥下すると、のび太は恐怖に震えた聞き取り難い声で言った。
膝をがくがくと振動させ、顔中に冷たい汗をびっしりと掻きながら、それでも彼はしっかと口にする。
「ぼっ、僕が死ぬのは……、仕方ないからいいんだ。
すごく、すごくすごくすごく怖いけど! 本当に怖くて怖くてしょうがないけど!! でもいいんだ!
だけど、だけどお願いだから、僕を殺したら、代わりにその人を助けてあげて!」
「言っている意味が分からないよ。あなたを殺したって、この子を助ける義理も方法もないしね」
にべもなくそう返すトリエラに、けれどのび太は怯まない。
死への恐怖も戦慄も、自分の情けなさへの嫌悪感も勿論全部ある。
それらは、ともすれば体中全てを飲み込んで襲い掛かってきそうなほどに強すぎる感情だ。
だが今はそれ以上に、自分のせいで重傷を負ってしまった少女を助けたい、助けねばという一心が勝っていた。
「あ、あのね……」
野比のび太は、決して学校の成績がよいほうではない。
むしろ、万年0点ばかり取っているような相当の落ち零れ少年である。
けれど彼には、二つの特徴があった。
一つは、定められたルールの応用が人並み以上に巧みであるということ。
例えばひみつ道具を使用する際など、彼は瞬時にその道具の最適な利用方法を思いつくことができる。
その特異な発想によって、お金儲けやちょっとした悪巧みに利用された道具は数知れない。
彼のそういった才能は、ドラえもんですらしぶしぶ認めざるを得ないところだった。
勿論、最後に何らかのしっぺ返しを喰らうことも多々あるのだが、顔に似合わずアイディアマンであるというのは事実だ。
そしてもう一つ。
――――彼は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる少年だった。
この殺し合いが始まってからの彼は、確かに駄目なところばかりが目立っていた。
自分達が手掛けてしまった子豚の死に怯え、グリーンに泣き言をいい、果てには幼い赤ん坊や少女を殺害しようとまでした。
だがそれでも、のび太は根っからの悪人などでは決してない。
ただひどく臆病で怖がりなだけで、奥底では誰よりも優しい心の持ち主――それが彼だった。
他人のために泣いてあげられ、友人のために命をかけられる少年。
普段はいじめられてばかりなのに、ここぞというところでは歯を食い縛ってでも意地を貫き通すことの出来る少年。
そんなのび太だからこそ思い付けた、少女の助け方。
それは。
「トリエラさん、さっき言ってたよね。これで三人目だから、そうしたらご褒美でも貰おうか、って……。
だから、だったら僕を三人目にして……そのご褒美で、その人の怪我を治してあげて……!」
* * *
リルルは、眼前の状況を面白いものとして捉えていた。
単にお人好しなだけだと思っていたのび太が放った覚悟、それが非常に興味深かったのだ。
自分の命と引き換えに他者を助けようとするなんて、非効率的で非合理な判断だわ。
そう思うものの、彼の行いを『馬鹿げた行為』とばっさり切り捨てられない自分が、心のどこかに存在した。
この島で出会った人間達を通して知った、『他人を思いやるこころ』というキーワード。
人間を理解する上での重要なその言葉の意味を、リルルは未だ本質的には把握していなかった。
その語意を分かろうと思えば思うほど、頭の中で激しいエラー音が鳴り響く。
けれどその障害ゆえに益々、リルルは『こころ』について関心を引かれた。
人間の本質を、ロボットと人間の差を知りたいという彼女の欲求は、最早己でも止めようがない。
折角銃を持っていたのに、自分を撃たず結果的に死んでしまったサトシ君。
元々は敵だったはずなのに、危機に陥った少女を助けに入った黒髪の少年。
その彼の理性的な命令を無視して、無意味にも援護に向かおうとしたお下げの少女。
そして、大切な人を壊してしまったにも関わらず、自分を心配してくれたイエローさん。
彼らの不可解な行動に共通する『こころ』というものの存在を、リルルはもっと理解したかった。
そして彼女は、それが一般的なロボットの思考回路から相当に逸脱していることも知らず、思う。
ここでのび太君を死なせてしまっては、いけないのではないかと。
――それは、彼女の思考内に現われた、小さな、けれど明確なバグだった。
リルルは考える。サンプルを減らすのは得策ではないから、と。
けれど、この島に人間はまだまだたくさんいる。観察対象が必要ならば、トリエラを注視していればいい。
一人くらい壊れたところで損失とは呼べないし、その一人が以前からの知り合いだったとしても同じことの筈だ。
それなのに彼女は、のび太を殺さずに済ませる方法を探していた。
自分の選択したその行動の真意には気がつかないまま、リルルはトリエラに告げた。
「のび太君は私にとって重要な観察対象だわ。壊すのはやめて」
「そういう訳にはいかないよ。その子はゲームに乗ろうとした側だし、そもそも本人がそれを望んでる」
ナイフを翳したままそう答えるトリエラに、リルルが臆することなく言葉を続けようとする。
「いいえ。それでも私は、大切なサンプルを失うわけにはいかな……」
「……いいんだ、リルル」
言いかけた声を途中で遮ったのは、彼女が庇おうとしたのび太本人だった。
その口調は、以前に聞いた情けないそれとは百八十度違い、別人のように力強いものだ。
驚くリルルに、のび太は憑物が落ちたようなからっとした笑顔で更に告げる。
「すごく怖いし、痛いのは嫌だけど……、でも悪いことをしようとしたのは僕なんだから。
それに、こうでもしないとあの子の怪我は治せないんだもの」
真っ直ぐな瞳で自分を射抜くのび太に、リルルは何か言い知れぬものを感じた。
そして彼女の体の奥底から、純粋な感情が湧き上がる。
――――『この人を、ここで壊したくはない』と。
リルルは無言で顔を伏せると、背負っていたランドセルから小さなガラス瓶を取り出した。
桃色の液体がなみなみと注がれたその小瓶を手に、彼女は告げる。
「それなら、問題はないわ」
「え?」
彼女の言葉に、のび太とトリエラが二人揃って首を捻り、不思議そうな顔を向けた。
リルルはその疑問に応えるように、手の中の瓶を左右に揺らしてみせる。
中の薬液がちゃぷちゃぷと音を立て、小さな波を起こした。
「折角だから、これを使ってみようと思うの。
効果がどのくらいあるかは分からないけれど、試してみてからでも遅くはないでしょう?」
言いながら、リルルは倒れている赤髪の少女へそっと近づいてその脇にしゃがみ込む。
強制的に上下の前歯を抉じ開けて、その隙間から桃色の液を流し込もうとする。
とはいえ、意識のない人間に薬を飲ませるのは難しい。
流し入れた溶液の大半は唇から零れ落ち、僅かでもきちんと嚥下できたのか相当に疑問が残る。
その様子を見つめながら、リルルはぽつりと小さな声で少女へと向けて呟いた。
「……あなたは、このまま壊れてしまってもいいの?」
* * *
少女は、がらんとした広い堂内を、一人、ぽつりぽつりと歩いている。
そこは、かつて彼女がある契約を交わした場所と酷似していた。
紅蓮の炎が壁際一面にゆらゆらと揺らめいて燃ゆる、天道宮最奥の聖堂。
それまで呼ばれる名前の無かった少女が、己のすべてと引き換えにして一つの称号を得たそこ――。
今現在彼女の眼前に広がっている光景は、記憶の中のその場所とあまりに似通いすぎていた。
色が、音が、匂いが。五感のすべてがその相似性を鋭敏に感じ取る。
けれど細部が似ていればいるほど、埋め様の無い、あの日あの瞬間との絶対的な差異が際立っていた。
彼女に力を与えた、'天壌の業火’アラストール。
――――大いなる紅世の王であり、彼女の無二のパートナーでもあるその姿が、今ここには存在していないのだ。
彼の代わりとして目の前にあるのは、どこまでも落ちていけそうな深い奈落の闇と、その脇に立つ一人の男だった。
いかつい身体つきに、ばらりと肩へ垂れ流した長い髪。
そしてその顔に纏われた、サーカスの道化のようなデザインをした奇妙な仮面。
その面の間から覗いているぎょろりとした両の目玉が、これでもかというほどの眼力で少女を睨み上げる。
けれど痛いほどのその視線に、彼女は微塵も怯みなどしない。
むしろ、相手を逆に圧倒せんばかりの鋭さを持って、男を真正面からねめつけた。
互いの視線が、中空で交錯する。
瞬間、火花が飛び散るのにも似た刹那的な緊張感が辺りを包み、重苦しい空気を周囲に齎した。
「お前にたずねたいことがある」
注ぐ視線を逸らさぬまま固そうな口を開くと、男は目の前に立つ少女に質問する。
それはあまりにも重い問い掛け。
これまでに、ある難病を患った幾人もの者が尋ねられてきた、生死を分かつ究極の二者択一。
「――――生きのびたいか? それともこのまま死んでゆくか?」
「どういうこと?」
男の言葉に少女は眉を顰め、そうして先を促すように顎を傾けた。
彼女の仕草を了承したのか、男はゆっくりと己の伝えるべき言葉を続ける。
「お前はこのままでは、いずれその怪我によって死ぬ。
ゆっくりと失血死に見舞われ、或いは傷口が化膿して、やがてもがいて死ぬ……」
そう言われて四肢に目をやった少女は、漸く自分の手足の健が深く断たれていることに気付く。
今の瞬間まで痛みを感じなかったのが不思議なほどに重傷だった。
わざわざ相手に指摘して貰わなくとも、確かにこの傷ならばいずれ自分の命は消えてなくなるだろう。
どこか冷静にそう判断を下している少女を再び凝視すると、男は懐から何物かを取り出して指の先で摘んだ。
手の中へ容易に隠れてしまいそうなほど小さな瓶に入れられた薄赤色の液体。
それを彼女の前で軽く振ってみせると、男は告げる。
「しかし、この『生命の水』を飲めばおまえの怪我は治るだろう」
「…………っ!」
小瓶の中の液体が、ちゃぷんちゃぷんと表面を波立たせて波紋を作った。
期待に満ちた眼差しでそれを見つめる少女の鼻先へ、男がにこりとも笑わずにその華奢な瓶を差し出す。
少女が、おずおずと腕を伸ばした。
けれど後ほんの僅かというところで、男は瓶をぶらりと上空高く持ち上げ、少女から遠ざけた。
その行為に、少女が全身から苛立ちの色を発散させる。
「私は生きたいの。もっともっともっと生きたいの。生きなきゃいけないの!
……だから、早くその薬を渡しなさいよ!!」
苛立たしさを声に変換させるようにして絶叫した彼女を、男は無表情のまま軽く手で制する。
開かれた掌を胸の前に突き出され、少女は未だ憤懣冷めやらぬ顔のまま「何よ」と口にした。
「私は、公平を期するため、前もって言っておかねばならない。
これを飲んだ瞬間から、お前は死の苦痛から解放されるとともに、人生の様々なものをあきらめねばならない……。
お前は『生命の水』のあやつり人形になるのだ」
そこで一旦言葉を区切ると、男は薄く胸先を上下させて息を吐き――――、そして訊いた。
「……さあ、どうする?」
尋ねられ、少女はそっと瞳を閉じた。
そのまま、永遠にも感じられるほど長い――けれど実際には刹那でしかない時間が経過する。
今にも心臓の鼓動が響いて聞こえそうな静寂が周囲に帳を下ろし、闇がさらに深さを増した。
しんと静まり返ったその暗闇を切り裂いたのは、彼女の瞳。
ぱちりと開かれたその双眸に宿るのは、全ての昏き物を斬り伏せる灼熱の赤き炎だ。
闇の中で燃え盛る二つの紅き業火が、男の瞳を一直線に射抜き貫く。
「……馬鹿にしないで。私はとっくに人間をやめてるの。
過去も現在も未来もなくして、その全てを代償にしてフレイムヘイズになった。
失ったものも諦めたものも数えきれないくらいなのに……、
今更それが一つ二つ増えるのを、まさか怖がるとでも思ってるの?」
少女はそれだけ言うと、男の手にしていた瓶を奪うようにもぎ取った。
それを鷹のような視線でただ眺めながら、男は彼女へ告げる。
「苦難の道を選んだか。――――覚悟は出来ているんだな?」
「……茨の道ならずっと前から歩いてる。何度も言わせないで」
少女は手にした小瓶の蓋を回し明け、中に詰められている液体を一息に仰ぐ。
薔薇に似た柔らかな香りがふんわりと鼻を抜け、微かな甘みを伴ったそれが喉を滑り降りた。
それを最後に彼女の意識は霧の様に失せ――――、
同時に、'炎髪灼眼の討ち手’と呼ばれた少女の存在もまた、完全に消えてなくなった。
* * *
「本当にいいわけ?」
不審そうな顔で尋ねてくるトリエラに、のび太は力強く首肯した。
彼女がのび太に訊いたのは、彼がこれからどうするつもりなのかという事だった。
「あと数時間もすれば、陽が落ちて辺りが闇に包まれる。
足を引っ張りさえしなければ、北東の街で夜を明かすつもりの自分達に同行しても構わない」と。
そう話してくれたトリエラの提案は、確かにとても魅力的だった。
彼女達は二人とも十二分に強いから、一緒に行動すれば一人でいるよりもずっと心強いだろう。
それに、この島にいる中で数少ない友達であるリルルとここで別れるのも、非常に躊躇われる。
けれどのび太には、まだやらねばならないことが残っていた。
だからこそ、彼は二人の誘いを断って一人この場に残る決心をしたのだ。
それを決意するのはとっても勇気がいることだったけれど、それでものび太は覚悟を決めていた。
……一言でもいいから、この子に謝ろう。
のび太は自分の吐いた嘘のせいで大怪我を負ってしまった少女へ、心からそう思っていた。
あの液体を無理やり飲み込ませたあと、彼女の身体にあった傷跡は波が引くようにして消えていった。
その光景は、まるでビデオテープの映像を逆回しに流しているような不思議なものだった。
だが、傷が消えても少女の意識はなかなか戻らない。
そのためのび太は、倒れたままの彼女が目覚めるのをじっと辛抱強く待っていたのだ。
意識が戻ったら、今度こそ僕はこの子に殺されてしまうかもしれない。
でも、たとえそうなってしまうとしても、やっぱりちゃんと謝らなくちゃ、との思いを抱いて。
「それじゃあ私達、そろそろ行くわ」
「うん、……リルルたちも気をつけて」
そんな風にまるで普段と変わらない挨拶を交わして二人と別れてから、どれほど時間が経っただろう。
のび太は、地面に横たわっている少女が小さく唸り声を上げて、ぴくりと身体を動かすのに気付いた。
肩を抱えて前後に揺さぶれば、腕の中の彼女が緩やかな動作で半身を起こす。
「……起きた!!」
ほっとして思わず歓声を上げるのび太に、対する少女がゆっくりと瞳を開く。
恐らく、起きたばかりで現在の状況が分かっていないのだろう。
眼前にいるのが、先ほど自分を落とし入れようとした相手であるのにも、気付いていないのかもしれない。
少女はきょろきょろと辺りを見渡すと、突然、目の前に居たのび太に勢い込んで問いかけた。
吐息のかかりそうな距離まで近づけられた相手の顔面が、必死の形相を見せている。
「……おまえ、茶色い肌の女を知らない!?」
「ト、トリエラさんのこと? それなら、もう行っちゃったけど……」
咄嗟にそう答えたのび太に、少女は憎憎しげに顔をくしゃりと歪める。
それは上官の命令を遂行しそこなった下士官のようであり、或いは親の敵を逃した復讐者のようでもあった。
まるで、背後の何者かに十本の糸で操られているかのように感情を抑えた声色で、少女はぼそりと呟く。
「あいつの肩から覗いて見えた、あの骨組み……」
そうして、怖気のするほど低い声で彼女は告げた。
感情を見透かさせない銀の双眸に、透き通るようなプラチナブロンドの髪の少女。
――――'銀髪白眼の破壊者’が、「しろがね」としての唯一絶対の使命を。
「…………自動人形は、全部壊さなきゃ」
【B-2/草原/1日目/夕方】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:しろがね化、生命の水の効果で傷は全て回復
[装備]:マスターソード@ぜルダの伝説(重量感あり、使えない事は無い)
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯、ビュティの首輪
[思考]:あの自動人形はどこ……?
第一行動方針:のび太から情報を聞く
第二行動方針:廃病院に帰還し、双葉・紫穂と合流。その後18時までにB-7のタワーを目指す。
第三行動方針:自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する
第四行動方針:コキュートスを見つけたい(アラストールと合流)
第五行動方針:小太郎の仲間(ネギとエヴァ)を探す
基本行動方針:ジェダを討滅する。
[備考]:義体のトリエラを、自動人形の一種だと認識しました。
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:心身ともに疲労、鼻骨骨折。
[装備]:なし
[道具]:グリーンのランドセル(金属探知チョーク@ドラえもん、基本支給品(水とパンを一つずつ消費)、
アーティファクト『落書帝国』@ネギま!(残ページ無し))、ひまわりのランドセル(基本支給品×1)
[服装]:いつもの黄色いシャツと半ズボン(失禁の染み付き。ほぼ乾いている)
[思考] :こ、怖いけどちゃんと謝らなきゃ……
第一行動方針:シャナに自分のしたことを謝る
第二行動方針:リルルたちを追って、北東の街へ向かってみようか?
第三行動方針:最初の子豚≠ジャイアンだと確信するために、ジャイアンを探す。
基本行動方針:もう、他の人を殺そうとしたり嘘をついたりは絶対にしない
[備考]:「子豚=ジャイアン?」の思い込みは、今のところ半信半疑の状態。
【B-2/森/1日目/夕方】
【吉永双葉@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:腹部の銃創と胸部の刺傷は塞がったが、激しい運動は禁物。全身に打撲や擦り傷。
[服装]:血のついたオーバーオール、腹部にカラフルな包帯。
[装備]:メガネ@ぱにぽに、コキリの剣(泥がついている)@ゼルダの伝説
[道具]:基本支給品一式(水少量、パン一個消費)、ショックガン@ドラえもん、きんのたま@ポケットモンスター、包帯
[思考]:……シャナ、絶対に戻って来いよ!?
第一行動方針:紫穂を連れて廃病院に帰還。そこでシャナや小太郎の帰還を待つ
第二行動方針:あまりにシャナが遅いようなら、様子を見に行くことも考える
第三行動方針:梨々と合流
基本行動方針:このふざけた殺し合いを終わらせ、脱出する
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:邪剣による精神汚染、
[装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD、邪剣ファフニール@TOS
スクール水着@魔法先生ネギま!、全身黒タイツ@名探偵コナン
[道具]:支給品一式×2(水少量、パン一個消費)、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、血濡れの庭師の鋏@ローゼンメイデン、包帯
[服装]:スクール水着の上に全身タイツを重ね着
[思考]:削って裁って刻んで刎ねて刈って削いでほじくって死んで死んで死んで……
第一行動方針:???(精神汚染真っ最中)
第ニ行動方針:誰も信用しない。状況に応じてステルスor扇動マーダーor対主催のどのスタンスもとれるように構えておく
第三行動方針:利用できそうな仲間を探す
基本行動方針:元の世界に帰るためには手段を選ばない。自分の安全は最優先。
[備考]:サイコメトリーを駆使し以下のことを知りました
1、神社で起こったコナン&ネギ&リリスの遭遇について、支給品を透視して大まかに把
握しました。先入観による勘違いあり。
2、廃病院内部で起こった事態について客観的に把握しました。表面的に透視していたの
で、会話以外の細かい部分は見落としている可能性あり。
3、庭師の鋏を透視して、これがブルーの支給品でなかったこと、また動く人形の存在を把握しました。
4、モニュメントで起こった出来事について、神楽の死体を透視することで把握しました。
5、蒼星石が棺を運んでいる姿を、森の中を透視して目撃しました。
【D-1/道路/1日目/夕方】
【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:胴体に重度の打撲傷、中程度の疲労。右肩に激しい抉り傷(骨格の一部が覗いている)
[装備]:拳銃(SIG P230)@GUNSLINGER GIRL(残段数1)、US M1918 “BAR”@ブラックラグーン(残弾数0/20)
ベンズナイフ(中期型)@HUNTER×HUNTER、 トマ手作りのナイフホルダー
[道具]:基本支給品、回復アイテムセット@FF4(乙女のキッス×1、金の針×1、うちでの小槌×1、
十字架×1、ダイエットフード×1、山彦草×1)
ネギの首輪、金糸雀の右腕(コチョコチョ手袋が片方だけついている)、血塗れの拡声器
[思考]:余計な運動しちゃったなぁ……、早く街で休もうっと
第一行動方針:リルルに警戒しつつも、一時的な同盟を了承。足を引っ張ったり敵対するようなら始末も考える。
第二行動方針:安全な場所まで移動して休息。
第三行動方針:好戦的な参加者は倒す。
第四行動方針:南西or北東の街に行き、銃器店or警察署を探して武器弾薬の補給を図る。
第五行動方針:トマとその仲間たちに微かな期待。トマと再会できた場合、首輪と人形の腕を検分してもらう。
基本行動方針:最後まで生き延びる(当面、マーダーキラー路線。具体的な脱出の策があれば乗る?)
[備考]:
US M1918 “BAR”@ブラックラグーンは、地面に叩きつけられた際、歪みを生じている可能性があります。
少なくとも肉眼的には異常は見られません。
【リルル@ドラえもん】
[状態]:左手溶解、故障有(一応動くが、やや支障あり)、人間への強い興味
[装備]:長曾禰虎徹@るろうに剣心
(※レッドの体液でべっとりと汚れ、切れ味がほとんどなくなっている)
[道具]:基本支給品×2、さくらの杖@カードキャプターさくら、クロウカード(花、灯、跳)@カードキャプターさくら
[服装]:機械部分の露出している要所や左手を巻いたシーツで隠した上から、服を着ている
[思考]:のび太さんが助かってよかったわ。また逢えるかしら?
第一行動方針:とりあえずトリエラに同行。邪魔をしないよう注意しながら、観察を続ける
第二行動方針:人間に興味。「友達」になれそうな人間を探す
第三行動方針:強い参加者のいる可能性を考え、より慎重に行動する。
第四行動方針:兵団との連絡手段を探す。
第五行動方針:のび太に再会できたら、そのときこそ一緒に行動する
基本行動方針:このゲームを脱出し(手段は問わない)、人間についてのデータを集めて帰還する
参戦時期:映画「のび太と鉄人兵団」:中盤
(しずかに匿われ、手当てを受ける前。次元震に巻き込まれた直後からの参戦)
【B-2/草原/1日目/午後】
【白レン@MELTY BLOOD】
[状態]:腹部に大きなダメージ(休んでマシになってきた)、中度の疲労、体の所々に擦り傷
「こぶたのしない」の力で、白く可愛らしい子豚の姿に変身中。ランドセルは咥えて運んでいる
[装備]:エーテライト×3@MELTY BLOOD、
[道具]:支給品一式、ころばし屋@ドラえもん、小銭入れ(10円玉×5、100円玉×3)、
[服装]:こぶたに変身中なので今は無し。
元の姿に戻れば、『いつもの白いドレス(洗ったばかりなので一部が少し湿っている)』になる。
[思考]:とにかく、今のうちにどこかへ逃げなきゃね
第一行動方針:のび太達から逃げる。
第二行動方針:豚化が解けるまでは、どこかで大人しくしておこう
第三行動方針:蒼星石たちを置いて逃げてきてしまったが、後で戻って戦場跡を漁るかどうか思案中
第四行動方針:できれば『ご褒美』で傷を治したい。
基本行動方針:優勝して志貴を手に入れる。
[備考]:白レンはシャナに解放されてすぐ、この場から離れました。
その後どちらの方向へ向かったのかは、次の書き手さんにお任せします。
投下終わったみたいだね。投下GJ。代理投下も乙。
炎髪が銀髪になったと思ったら、危険な思考までついてきている!?
自動人形と間違えられる面子いうと、ドールズにトリエラ、リルルくらいか。
これで黄枠がまた増える……。なんて危険人物だらけなんだ。
投下乙
神楽とシャナの声優ネタを盛り込んだ展開は非常に感動!
そしてのび太、どたんばで改心してくれてよかった
やっぱり人の不幸を悲しむことができる、それがのび太のいいとこだもんな
しかしシャナがしろがね化で多少危うくなったな
これからどうなるかすごく楽しみなSSでした
投下乙。少し意外な結果だ。遂に使われたか、生命の水。
……ここのシャナ、スペック高い方なのに負けっ放しの印象が有るのはなんでだろう。
トリエラが二度有る事は三度有りそうな流れだったからそのまま殺されるかと思って凄くハラハラしたぜ。
しろがねとのハイブリッドと化してこの先どう転ぶかはかなり楽しみだな。
GJ。
遅くなりましたが、代理投下終了。
代理投下の最後のステータス欄を投下した直後、「代理投下終了」と言おうとしてさるさん喰らいました……。
いや、最後まできっちり入ったから、まだ良かったですが。
「代」の一文字は、「代理」ということです。タイトル欄長くて「代理」まで入りませんでしたので。
で……うわぁ……。
のび太は人の道に戻ったけど、他が大惨事に……。のび太もこれからどうなることやら。GJです。
のび太かっこいいよのび太
リルルは大変な天敵を作っていきました
紫穂は……ギリギリ正気ライン?
投下GJ。のび太がようやくマイナスから0くらいに戻れたか。
自分の手で誰かを傷つけていたなら戻れなかっただろうなー。
トリエラも3度目の対主催殺しを踏みとどまれてよかったな、
本人は殺したところで気にしないだろうけど。
シャナのほうは読んでて何度やばいと思ったことか。
そのセリフは死亡フラグだからー!ってずっとハラハラしてました。
で、命の水をシャナに使うとは思ってなかったです。
日々の鍛錬で常人の2倍、フレイムヘイズ化で更に2倍、
とどめにしろがね化の2倍を掛ければ(ry
>>608 強キャラと目されるやつほどへたれる例が結構あるな。
レックスとかエヴァさまとか。レミリアも余裕ぶっこいてたら爆弾岩に吹っ飛ばされるし。
投下乙です!
のび太が立ち直ってよかった!これからの活躍に期待したいところ。
シャナしろがね化か……もし勝と会ったらどんな反応されるんだろう。
>>611 レミリアは元からヘたれみr(ry
残り動かさなければいけない奴ら後20人前後かな?
今月中に放送行けたらいいな。
お二方ともGJ!
蒼星石は某鼻なしハゲみたいに暴走しないでほしいな
からくりまだ読み終えてないんだがホムンクルスやユニゾンデバイスは自動人形に入るのか?
のび太は大長編属性に近づいたのかな
リルル・トリエラは相変わらずだけど厄介な相手に狙われることになる、と
GJでした
ところでサーカスは通して読んでないしシャナは完全に未見で何だが
しろがね化した場合フレイムヘイズの能力はどうなるんだろう?
今までの話読んだ限りでは存在の力を利用した治癒と炎の翼ぐらいか
しろがね化の付加能力は不死身に近い身体(制限はされるんだろうが)ぐらい?
>>615 シャナの能力はだいたいそれであってると思う。後は炎弾や炎剣出したり
存在の力による身体強化くらい。
しろがね化はからくり全部読んだわけじゃないから俺には分からないや。
どうやら記憶とかは残ってるみたいで少し安心した。
比較的平和な同作品再会はひさしぶりだな
シャナの能力はメインが肉体強化で、治癒や単純な炎の爆裂が有って、
原作の作中(=最近一年以内)に使えるようになったのが炎の翼とかだな。
ほぼ近接戦闘に特化していたのが話の中でそれ以外も覚えて割とバランス取れたっていうキャラ。
得意分野で負け続きなのはちょっと可哀想。
ちなみに性質上、しろがねになっても能力は失われない(力を発現したらまた炎髪にもなる?)。
しろがねになる事で得られる能力は高い生命力と若干の再生力、あとしろがね共通の知識&技術。
得られる戦闘技術はシャナの場合あんまり役に立たない。既に戦闘経験豊富だから。
あるるかんとか入手したら別だけど。
再生力の方は血液内を生命の水が流れてる事によるもので、血を失い続けると結晶化して死ぬ。
総合すると頑丈さ&再生力が高いレベルって所じゃない? この二つは両方に有るし。
で、これに人形破壊者としての使命、自動人形への憎悪が付いてくる。
ただし状況によっては破壊せずに監視したり、嫌悪しつつも利用したり、別の自動人形相手に共闘する事すら有った。
更に元人間のサイボーグは全然OKなので落ち着いて行動すれば割と問題ないんだけど……これは別の意味で期待できるw
GJ
相変わらずトリエラの必殺仕事人っぷりが凄いなあ
躊躇しない精神に、人体の急所を熟知しそこを突ける技術もある、さすがだ
のび太はリルルと会えたのが功を奏したかな、ようやく株下落が収まったw
シャナたちは絶妙な距離感でいいトリオだと思ってたけど、三人とも大丈夫か…?
しかしシャナはどうしてロワにでると+αの要素がつくキャラなんだろうね
あれか、ツンデレの法則か?
>>620 そういや吸血鬼にもなってたんだよなw
しかしリルル、自分が使えないどころか使うと命を狙われるようになるもの持ってたんだな…。
突然だが古いネタを。
蒼「特技はザオリクとありますが?」
レ「はい。ザオリクです。」
蒼「ザオリクとは何のことですか?」
レ「魔法です。」
蒼「え、魔法?」
レ「はい。魔法です。死んだ仲間を復活させます。」
蒼「それはすごい! では早速イシドロと僕の姉妹を生き返らせてください」
レ「いいでしょう。ザオリク!」
蒼「……」
レ「……」
蒼「……? あのー?」
レ「ふ、運が悪かったね。ジェダの制限のせいで使えない」
蒼「( Д ) ゚ ゚」
蒼い子の悲惨な未来は108式まであるぞ。
没ネタのほうでもヤンデレタバサに絡まれてるしw
とりあえずあのネタの最後の一言にツッコミを。
あんたが言うなw そしてだが断る!
この俺の最も好きなことの一つは苛められている蒼い子を眺めることだ!
放送までに描写が必要なキャラって、あと誰がいたっけ?
ミミか?でも放置しといても問題ない・・・?
えー、描写が必要そうなうちの1組、
小太郎、小狼、梨花、リンク 学校組残党+αの4名、予約します。
>>622 午後組の多くは、ここで一気に放送後に跳ばれると続きが書き辛くなる気がしますね。
一気に時間が飛ぶ、という問題以上に、進行中の状況とかが多いので。
最新2作品投下前の表ですが、
>>453が参考になるかと。
……唯一残された真昼組のミミは、逆に放置されてもなんとでもなりそうではあるんですけど……。
タワーに向かってる子らは?
予約、投下が続いて嬉しいかぎり
期待
待ってました!
>>453を見た限りだと描写必須なのは
ブルー&イヴ→一休
これか。それと南西のタワー周辺。
他の連中はぼーっとしてたとかゆっくり歩いてたとかで何とかなる…のだろうか?
残った面子が自己リレーになる関連で殆どロクに動かせないから困る。
タワー周辺組で何かネタ思い浮かべろMy脳。
そして最近多い予約と投下にwktkが止まらない私。
>>627 なのはとかはもう放送まで放置してもよさげな気がする……かな?
真昼のミミも視覚ハンデの分進みが遅くなるだろうから放置した場合、放送の辺りで街着くぐらいにはなるかもね。
シェルター組や、なのはを探しに行ったニケ達、それに廃病院に集まる面子も必要そうな感じ。
北東に向かっているらしいミミはヴィクトリアやククリひまわりとの絡みでなんとかできないだろうか……
中央部はもう必要ないでしょう。
シェルター組は今すぐに誰か死ぬ可能性は低いからもし残ったら置いといても良いと思う。
北東部市街地は面白そうだな。
ククリ&ひまわり、ヴィクトリアが居て、そこにミミと、トリエラ&リルルが向かっている。
人口密度が高まりつつある。
太一、ニア、チアキ、弥彦を予約します。
こんなに予約が続くの久しぶりだ、期待!
投下終わったと思ったら早速次の予約が!
何か最近盛況だな
このまま放送まで行けたらいいな
動かす「必要」の薄いところでも、動かすことが「可能」なところはどんどん書いて貰って構わないんだぜ
夕方組とか。
どこか動かせば、それが刺激で新しいこと思いつく人が出るかもしれないし
では、ちょっと意見を頂きたいです。
いくつかの理由で躊躇ったため、プロットしか立てていませんが、
なのは、グリーン、リリス、アリサ、はやて、トマを予約しようと思っています。
面子で分かると思いますが、ヘルメスドライブを使うつもりです。
しかし、これでヘルメスドライブ使ったら自分が二連続で使ったことになります。
4時間に一回しか使えないものを占有するのはまずいので、
すぐに予約とれなくてもこのキャラたちで何か考えている方がいましたら
予約は行いません。どうか意見をお願いします。
明日の0時くらいまでに反対がなければ正式に予約したいと思います。
【放送直前】
雛苺&桜←梨々、金糸雀&イエロー←ベルフラウ、
ベッキー←レックス、レミリア、アルルゥ、
【夕方】
葵&ベルカナ、ククリ&ひまわり、蒼星石&タバサ、トリエラ&リルル
紫穂&双葉、シャナ&のび太、ヴィクトリア、グレーテル
【午後】
ブルー&イヴ→一休、旧山小屋組、
なのは、メロ、パタリロ、キルア、白レン、勝、きり丸
【真昼】
ミミ
◆sUD0pkyYlo氏:学校組+小太郎
◆JZARTt62K2氏:太一、ニア、千秋、弥彦
◆IEYD9V7.46氏:グリーン&リリス、シェルター組(予約検討中)
各書き手氏が今考えている話がどうなるかによるとは言え、
これで放送まで最低限必要なパートは、あとブルー達と山小屋組くらいですかね。
何この予約ラッシュ
その面子でヘルメスドライブを使うということは……悲劇の予感
というかヘルメスドライブ使う時点でシェルター組に不幸があるか
置いてきぼりがあるかだしな
ブルー、イヴ、一休、
きり丸、エヴァ、ニケ、ヴィータ、インデックス、才賀勝。
以上9人、予約します。
(実際に出番があって動くのは4,5人程度になりそうですが)
以前に破棄・遅刻歴が重なっているので、あまり期待せずお待ちくだされば幸い……orz
書き手さん超がんがれ!!
一気に状況が動き出しそうだな
wktkwktk
なんと言う一斉予約…これは間違いなく今月中に放送
では正式に。
なのは、グリーン、リリス、アリサ、はやて、トマを予約します。
背中を押してくれた
>>634さんに感謝。
なのはさんこれはもうダメかもわからんね
グリーン&リリス逃げてぇぇぇーーー!!!
逃げたら逃げたで狙撃されそうだがな
地図を見れば色々気付くな、これは。
しかしどう転ぶかの結果はまるで予想付かない。
話によっては何かネタが浮かびそうだ。ちょっとわくわくしながら待とう。
>>646 グリーンとリリスは心配される側かwww
誰から逃げるのかはあえて訊かないw
ところで、次スレってまだ立てなくてもいいの?
容量とかよく分からないけど、まだ大丈夫?
近いうちに多数投下あるだろうし、ちょっと気になった
そういやあと43kbしかない。
一作くらいなら行けると思うけど、連続してきたらまず確実に埋まると思う。
立てておこう。
スレ立て乙
なんというSOSOU。
◆/3aZj0MaeI=自分です。避難所で指摘してくださった方に感謝。
あらためて、ブルー、イヴ、一休、
きり丸、エヴァ、ニケ、ヴィータ、インデックス、才賀勝。
の予約を宣言します。
蛇足発言で、気をもませて申し訳ありませんでした。
きりちゃんがハブられそうな点を除いて、執筆は今の所順調です。
wiki編集してくれた方に感謝します。
あと、7時ごろ投下する予定なので、時間がある方は支援をお願いします。
wiki編集してくれた人ホントにありがとう。
SS書いてると編集してられないんだな…。
支援準備。
それでは、投下します。
wktkで待ってます!
あー、自分も放送前にもう一本予約したいけど今週いっぱいは忙しいのがなぁ……。
今予約された分が投下されきったら放送に行きそうなムードなので、駄目モトで訊いてみるけど、
放送後に【夕方】の時間枠(つまり、放送前の話)書くのって、やっぱりマズイですよね?
「ん?」
食事をしながらキルアの帰りを待っていた太一は、首輪探知機の異変に気付いた。
光点が一つ、タワーの方に向かってきているのだ。
「キルアが帰ってきたのかな……?」
だが、それにしては様子がおかしい。
キルアは『のび太』を捕まえているはずだから、レーダー上の光点は二つになっているはずだ。
まさか、『のび太』を捕まえることに失敗したのだろうか?
それとも――キルアとは別の参加者がタワーに近づいているのだろうか?
「……よし」
食べかけのパンを飲み込み、ペットボトルの水で胃へ流し込むと、太一はタワーの入り口に向かっていった。
(入り口から見るだけなら、危険は少ないよな)
そろりそろりとガラス戸に近づき、顔を半分だけ出してタワー前の広場を見張る。
『N』に指示を仰ぐことは考えなかった。
いちいち人に聞かなければ動けないほど臆病な性格はしていないし、『N』を完全に信用しているわけでもないからだ。
太一が首輪探知機と外とを交互に見ていると、やがて一人の参加者が姿を現した。
だが、不審者の容姿は、太一の想像していたものとはやや異なっていた。
(女の、子?)
この島に来てから初めて女子を見た太一は、その女子がたった一人で行動していることに小さな驚きを覚えた。
赤みがかった茶髪をした少女は、物陰に隠れながらタワーに近づいてくる。
電話がかかってこないことから、『N』もまだ気付いていないのだろう。
(見たところ武器も持っていないな……。それに、ふらふらだ)
足取りすら危うい少女をほぼ無害と判断した太一は、自分一人で対処することにした。
「そこで止まれ!」
タワーの中から大声をかけると、少女はビクリと身体を震わせて立ち止まる。
「一つだけ質問するぞ! お前は殺し合いに乗ってるのか!?」
相手の反応を確認した太一は、考える時間を与えないよう、間髪入れずに最も重要な問いを投げかけた。
それは、『お前は自分たちの敵となるのかどうか』という問い。
この質問に対して少女が『No』と答えてくれれば、仲間として受け入れることができるかもしれない。
嘘を吐いてくる可能性もあるが、そのときはそのときだ。話し合う余地があれば説得も可能だろう。
だが、もし少女が『Yes』と答えたり、攻撃してくるような場合は、問答無用で少女と敵対しなければならない。
それは、避けたい。
(頼む……違うと言ってくれよ……)
しかし、返答は『Yes』でも『No』でもなかった。
「バカ野郎! 人に質問するときはとりあえず自分の名前を言え!」
少女は大声で、そう怒鳴り返してきたのだ。
体力を消耗しているはずなのに、そんな弱みを全く感じさせない返答。
強がっているのは見え見えだったが、本人はうまく振舞っているつもりなのだろう。微塵の躊躇もない。
(しまった、ちょっと焦りすぎたか!)
予想外の……しかしよく考えれば当然の態度に、太一は思わず反省した。
そして、少女の気丈な態度に感心する。
いきなり怒鳴ったこちらも大胆だったが、少しも萎縮せずに怒鳴り返した少女も相当のものだ。
太一の中で、弱弱しいイメージだった少女の印象がガラリと変わった。
「俺は太一。八神太一だ! ちなみに、殺し合いには乗っていない。お前は?」
「南チアキだ! あと、男だったら隠れてないで出て来い!」
あくまでも強気のチアキに、太一は苦笑しながらガラス戸を開け、タワーから外に出た。
「エ?」
まさか本当に出て来るとは思わなかったのだろう。
口をぽかんと開けたチアキが、あっさりと姿を現した太一にどう対応していいかわからず、硬直している。
「ほら。これで満足か?」
「……本当に出て来るなバカ野郎。こっちはまだ、質問に答えてないんだぞ?
私が殺し合いに乗っていたらどうするつもりだったんだよ」
ようやく硬直から回復したチアキが、眉を寄せながら文句を言った。
言われたとおりにタワーから出てくる行為は迂闊過ぎで、馬鹿以外の何者でもない、と。
そんなチアキの文句を聞いて、太一は苦笑した。
疲れ果てた表情で、息を切らしながら立っているチアキは、はっきり言って武器を使う元気もなさそうだったからだ。
そんな状態では、とても人を殺せるとは思えない。
たとえ襲い掛かってこられたとしても、容易く返り討ちにできるだろう。
(にしても、出て来いと言ったり出て来るなと言ったり、わけわかんねーやつだな)
そう、心の中で突っ込みを入れながらも、相手の目を真っ直ぐ見る。
「でも、乗ってないんだろ?」
「……まあ、な」
チアキは、微妙に目を逸らしながら答えた。
※ ※ ※ ※ ※
「小岩井よつば?」
「そうだ。私はそいつを探している」
ここでは目立つから、という理由でタワーの中に入れてもらったチアキは、ロビーの一角に座っていた。
机を挟んで太一と向かい合わせに座ったチアキは、しばらく太一のことを値踏みするように睨み付けていたが、
やがて、一人でうろついていた訳を話し始めた。
曰く。
同行者と一緒に、とある少女を保護した。
少女は、仲間を助けてほしいと訴えた。
同行者が少女の仲間を助けに行き、自分は少女を守るため、ある民家に留まった。
だが、保護した少女は『自分も助けに行く』と民家を飛び出し、行方不明になってしまった。
このままでは同行者に申し訳が立たないので、なんとか少女を探し出して再び保護したい――
「とまあ、そんな感じだ。心当たりはないか?」
「……悪い」
「そうか……」
太一の返事を聞いたチアキは、失望したように俯く。
慌てた太一は、元気づけるための材料を探した。
「えーと……そうだ、俺にも仲間がいるんだ! 今は出払ってるけど、皆で探せば……」
「いや、気にするな。私の責任だから。自分で探すよ」
乾いた笑いを浮かべながら太一の申し出を辞したチアキは、ふと机の上を見た。
「食事をしていたのか」
「ん、まあな。腹が減っては戦は出来ぬって言うし、食えるうちに食っとかないと」
「それもそうか」
太一の言葉に頷いたチアキは、顎に手をあてて少し考えた後、緊張した様子で口を開いた。
「……なあ、私もここで食事をしていっていいか? 流石に休憩しないと身体がもたない」
「おう、いいぜ。どうせなら情報交換もしよう」
軽く答える太一に、チアキは安堵の溜息を吐いた。
その溜息がどんな意味を持つのか、太一にはわからない。
今は、まだ。
食事をしながらの情報交換は順調に進み、やがて支給品の段に差し掛かった。
「私の支給品は、ロングフックショットと拳銃の二つだ。まあ、今持ってるのはロングフックショットだけなんだけどな」
「ロングフックショット?」
「鉤爪つきのロープを発射する装置だ。どこぞの冒険者が使っていた代物らしい」
チアキは、ランドセルからボウガンに似た道具を取り出すと、ドスリと机の上に置いた。
食料の横に置かれたロングフックショットは威圧感があり、ペットボトルなどと比べて明らかに異彩を放っている。
太一は、食事中に物騒なもん取り出すなよ、という顔をしたが、チアキは無視して話を続けた。
「後は、祝福の杖だな。体力を回復させるという優れものだけど、あと『2回』しか使えない」
ロングフックショットの次にチアキが取り出したのは、天使を象った純白の杖だった。
天使の像が持つ碧玉は淡い光を放ち、神秘的な雰囲気を醸し出している。
「へえ。治療系の道具は貴重みたいだから、その杖はなかなか便利そうだな」
「といっても、これは元々パタリロの支給品なんだけどな。取られた銃の代わりに奪い取ってやったんだ」
私に銃は使えなかったから丁度良かったよ、と呟きながら、チアキは目を細めた。
まるで、そのときのことを懐かしがっているかのように。
まだ、一日も経っていないのに。
「……その、チアキの同行者だったパタリロってのはどんなやつなんだ?」
「天下無敵のボケ王子だ」
チアキは即答した。
「冗談が服を着て歩いているようなヘチャムクレだ。自分のことをアイドルなどとほざくナルシストだ」
酷い言い様だった。
「おい、それはちょっと言い過ぎじゃないか?」
「言い過ぎなものか。あのバカへのツッコミで、私の処理能力はもはや限界寸前だよ」
両手を振り回しながら文句を言うチアキ。
だが、太一には、チアキが不平不満を言っている姿が、まるで自慢をしているように見えた。
「……ま、悪いやつじゃないんだろーな」
「ちゃんと話を聞いていたのか?」
チアキのジト目を、太一はあさっての方向を向くことで回避した。
(にしても、勘が外れたなー。偉そうなまんじゅう王子って話だから、てっきり『アイツ』だと思ったんだけど)
『パタリロ』の特徴を聞いた太一は、最初の広間でジェダと交渉を始めた少年を思い浮かべたのだが、どうやら間違っていたらしい。
あの少年は殺し合いに乗っているはず。もしチアキの同行者があの少年なら、今頃チアキは殺されいるはずだ。
そんなことをつらつら考えながらチアキの追撃を待っていた太一だったが、予想に反してチアキは黙ったままだった。
「おい、チアキ?」
不思議に思った太一が視線を戻すと、チアキはテーブル上の一点を見つめていた。
太一が持つ、首輪感知レーダーを。
「太一。さっきから気になっていたんだが、それはなんだ? まさかゲームというわけじゃないだろう」
「あーっ、と。これは……」
太一は言い淀む。
首輪探知機は自分の切り札だ。そう簡単に教えてしまっていいものだろうか。
しかし、続くチアキの一言で、そんな考えは綺麗さっぱり吹っ飛んだ。
「ついさっき、新しい光点が出てきたんだけど……問題はないんだろうな」
「なんだって!?」
見ると、確かに光点が一つ……いや、重なるように二つ、増えていた。しかも、タワーの前で止まっている。
つまり、タワーの前に誰かがいる、ということ。
チアキと話していたせいで、首輪探知機の異変に気付けなかったのだ。
「くそっ!」
太一は勢いよくソファから立ち上がると、目を白黒させているチアキを尻目に駆け出した。
首輪探知機の反応がキルアなら問題はない。
だが、あの慎重なキルアが、見通しのいい場所で堂々と立ち止まっているとは思えなかった。第一、立ち止まる理由がない。
タワーの入り口に辿り着いて外の様子を窺うと、予想通り、どう見てもキルアには見えない少年が、厳しい表情でタワーを見上げている。
そして太一は、その少年に見覚えがあった。
死体の前で呆然としていた血まみれの少年で、『N』の仲間。名前は確か……
「弥彦! そこで止まるんだ!」
入り口の影に隠れた太一は、『N』から教えられた名前を叫んだ。
※ ※ ※ ※ ※
タワー前の道路を走る弥彦は、行き詰っていた。
殺人者『バンコラン』に狙われているという南チアキの捜索が、さっぱり進んでいないのだ。
そこらじゅうの民家を手当たり次第に探しているのだが、手掛かりすら見つかっていない。
何のヒントもなく探し始めたのだから当然ではある。
(ちくしょう。このままじゃ……)
弥彦の焦りが大きくなる。
目の裏に浮かぶのは、二つの惨状。
自分が間に合わなかったせいで起こった、二つの惨事。
防げたかもしれなかった、二つの惨劇。
(絶対に、繰り返させねえ!)
握り締めた拳に血が滲む。
ここで諦めることは簡単だ。自分には関係ないとしらを切ることは、至極簡単だ。
だけど、諦めたら、ニアの言葉を認めることになる。
『一人でも多くの人を救いたい』という自分の言葉に、嘘を吐くことになる。
(そんなことできるか!)
弥彦は立ち止まり、すぐ傍まで迫ったタワーを見上げる。
空高く聳える塔は、まるで弥彦を見下しているかのように思えた。
いや、実際ニアは、展望台からこの街を見下ろしているのだろう。
見下ろして、情報を集めて……しかし、実際に行動を起こすことはせず、思考のパズルを組み立てているのだ。
ニアに聞けば、もしかしたらチアキの情報が得られるかもしれない。
だが、弥彦はニアに聞こうとは思わなかった。
おそらく、ニアはこう言うだろう。
『ああ、見ましたよ。追いかけられて殺される寸前でした。私が何をやっても無駄だから放っておきましたけど』
殴り飛ばさない自信は、ない。
そんなことで無駄な時間を消費するくらいなら、始めからあてにしないほうがいい。
「……負けるかよ」
捜索の不振は焦燥を呼び、焦燥は弥彦の頭を熱くする。本人の、与り知らぬまま。
弥彦はタワーに背を向けると、走るために一歩を踏み出した。
大声がかけられたのは、ちょうどそのとき。
「弥彦! そこで止まるんだ!」
一歩を踏み出した姿勢のまま、固まった。同時に、弥彦の頭を疑問符が駆け巡る。
弥彦の顔と名前を知っている人物は、のび太、カツオ、ニア、パタリロの四人。
しかし、今の声はその四人の誰でもなかった。
「……誰だ、お前。なんで俺の名前を知っている?」
弥彦は慎重に振り返りながら、できるだけ低い声で威嚇する。
最初、声の出元であるタワー入り口には誰の姿も見えなかったが、少し間があってから一人の少年が顔を出した。
その顔は、弥彦の見知った顔だった。
髪を逆さに立て、大きなゴーグルをした活発そうな少年。自分を追いかけてきた二人組の片割れである。
「俺は、八神太一。お前の名前は……『N』から聞いた」
太一と言うらしい少年は、弥彦の問いにゆっくりと答えた。
だが、言っていることは弥彦にとってさっぱりだった。『えぬ』なんて人間は知らない。
(それにしてもまずいな……。誤解を解いてる暇はねえぞ……)
太一は、弥彦が死体の前で佇んでいた場面を見て、そのまま弥彦を追いかけてきたことがある。
殺人を見咎めるくらいだから善人なのだろうが、弥彦を殺人者だと誤解しているのは確実だった。
本来なら誤解を解くために全力を尽くすところなのだが、あいにく今は時間がない。
時間の浪費を避けるため、弥彦は再びタワーに背を向けた。
「悪い、今はお前に構っている時間はないんだ! 俺が殺し合いに乗っていないってことは後で説明する!」
一目散に駆け出そうとする弥彦に、再び太一の怒鳴り声が浴びせ掛けられる。
「あーもう、お前のことは『N』に聞いたよ! 殺し合いに乗ってないことはわかってる!」
「だから『えぬ』って誰だよ!」
怒鳴り返しながら、弥彦は太一の言葉を吟味した。
どうやら、『えぬ』という人物が自分の誤解を解いてくれたらしい。カツオやのび太から事情を聞いた人だろうか?
(誰だか知らないけど感謝するぜ。ニアみたいに根性ひん曲がったやつばかりじゃないんだな……)
弥彦は、見知らぬ人の思わぬ助けに感謝した。
だが、それとこれとは話が別だ。
誤解が解けているなら、ここに留まる理由は余計にない。
(っと。せっかく誤解も解けてるんだし、一応太一にも聞いておくか)
三たび駆け出そうとした弥彦は、念のため、太一にもチアキのことを尋ねてみることにした。
焦りのせいで荒くなった口調で、太一に向かって怒鳴り聞く。
「おい太一! このあたりで、女の子を見なかったか!?」
「え、お前何言……って!?」
しかし、即答は得られなかった。
何か言いかけた太一は、急に顔を引っ込めてしまったのだ。
「……おい、太一!」
太一の突然の行動に、弥彦は更に熱くなる。
その行動が、ふざけているようにしか見えなかったからだ。
苛立つ弥彦の前で、太一はすぐに顔を出し直した。
「……いや、見てないぜ」
太一の答えは、否だった。
答えを聞いた弥彦は何か釈然としない感覚を得たが、しかし即座に気持ちを切り替える。
(まあ、信用してもいいだろ。嘘吐いてもなんにもなんねーし)
それより今は、危険が迫っている南チアキの保護だ。余計なことを考えている暇はない。
積もり積もった焦燥が、早く行け早く行けと弥彦を促していた。
そして弥彦は、焦燥の言葉に従った。直情的に。短絡的に。
「じゃ、俺はもう行くぞ!」
「あ、おい、待てよっ!」
弥彦は、今度こそ立ち止まらなかった。
今は動くことが最善だと、思い込んだから。
結局、熱くなっていた弥彦は、最後まで『なぜ太一がタワーにいるのか』という疑問を、
『なぜ“女の子”の特徴さえ聞かないまま、太一が質問に答えたのか』という疑問を、
『なぜもう一人の少年が姿を現さなかったのか』という疑問を、考えつかなかった。
※ ※ ※ ※ ※
「あ、おい、待てよっ!」
制止の声も空しく、弥彦の後姿はあっという間に見えなくなってしまった。
追いかけようにも、キルアに任されたタワーを放っておくわけにはいかない。
悔しそうに弥彦が消えた方角を睨みつけていた太一は、ふと、あることに気がついた。
(あいつ、なんでタワーに戻ってこなかったんだ?)
『N』によると、弥彦は『N』に首輪を届ける役割があるはずだ。
それなのに、タワーに戻ることは一切考えていない様子だった。
(むしろ、タワーを避けていたような……)
「……ち」
そう。太一がタワーの入り口に辿り着いたとき、弥彦はタワーを睨みつけていた。
そしてそのまま、タワーから遠ざかろうとしたのだ。
(首輪が見つからなかったのか? それで『N』に合わせる顔がないとか?)
「……一」
だが、レーダー上の点は確かに二つあった。
つまり、弥彦は首輪を手に入れたということだ。
それなのに、タワーに戻ることもせず――『女の子』を捜している。
(女の子、か……)
「太一!」
「ぐえっ!」
弥彦について考え込んでいた太一は、突然襟首を引っ張られ、思考を細切れにしながら姿勢を崩した。
“二度目の”不意打ちに、激しく咳き込んでしまう。
「げほぐぇほっ!? だからいきなり引っ張るなって!」
「太一が話を聞いてないからだろう!」
太一の後ろでは、無視され続けたことに怒り心頭なチアキが、腰に手をあてて仁王立ちしていた。
だが、太一も負けてはいない。
二度も首を絞められたことに対して、厳然と抗議する。
「だからって、いきなり襟を引っ張るなよ! “さっきは”本当に死ぬかと思ったんだぞ!」
「だって、ああでもしないと私のことを喋っちゃうかもしれないじゃないか!
あの、弥彦とか言うやつが女の子狙いの変態野郎だったらどうするんだよ!」
交渉の最中、会話の内容を聞き取ろうと太一の背中に近づいてきたチアキは、
弥彦が『女の子』を捜していることを明かした瞬間に太一を引き摺り倒し、自分のことを言わないよう頼み込んだのだ。
チアキの気迫と、傍に寄ってきた途端に首を締める強引さに、太一は思わず言うことを聞いてしまったのだが――
「だから、弥彦は殺し合いに乗ってないんだって!
チアキが顔を出して、あいつが探している『女の子』かどうか確かめたっていいじゃねーか!」
弥彦は確かに人を一人殺したが、それは不可抗力であって、進んで人を殺し回っているわけではない。
太一は、『N』からそう聞いていた。
それに、チアキを知っている参加者は、太一を除けばパタリロとよつばだけ。
弥彦が探している『女の子』がチアキである可能性は、低かった。
チアキのことを教えても教えなくても、特に重要な意味はない。
それならば、チアキが姿を隠す理由はないはずだった。
……しかし、太一の主張にチアキは首を振る。
「それは、誰が確かめたんだ?」
「誰が、って……」
「誰が、あいつが殺し合いに乗っていないと確認したんだ?」
チアキは、感情の灯っていない声で淡々と続ける。
「嘘を吐いてるだけかもしれない。殺意を隠しているだけかもしれない。善人のふりをしているだけかもしれない。
どうして、殺し合いに乗っていないと断言できる? そう信頼するほど、太一はあいつを知っているのか?」
弥彦の無実を『N』に聞いただけの太一は、反論することができない。
太一自身が弥彦と真正面から向き合ったのは、実際、先程の交渉が初めてだったのだ。
何も言えない太一に向かって、チアキは言葉を重ねる。
「まあいいや。仮にあいつが殺し合いに乗っていなかったとしよう。
でも、その考えがずっと変わらないと、どうして言い切れるんだ?
脱出は無理だと諦めて、優勝を目指すことにしたかもしれない。人が死ぬのを目の当たりにして、常識が崩壊したかもしれない。
――人を殺してしまって、吹っ切れたかもしれない」
徐々にチアキは、言葉に感情を上乗せしていく。
何かを、訴えるように。
「人間なんて、いくらでも変わるんだ。
なのにッ、あいつが殺し合いに乗っていないと、どうして断言できるんだよッ!」
最後は、ほとんど叫び声になっていた。悲痛さを滲ませた残響が、タワーの内部に広がって、消えた。
平坦な表情をした少女の姿は既になく、唐突に感情を昂ぶらせた“参加者”だけが、非難するように太一を睨みつけている。
目に涙すら浮かばせたチアキを前に、太一は言葉を選ぶように沈黙していたが、やがて、静かに口を開いた。
「落ち着け、チアキ。その理論でいくと、俺もお前も殺し合いに乗ってることになっちまうぞ?」
「…………」
黙りこくるチアキを無視して、太一は徐々に声のトーンを上げていく。
雪山の遭難者を諭すように、熱く。そして、力強く。
「疑心暗鬼は、ジェダの思う壺だ。こんな罠に引っかかってちゃ、アイツを倒すことなんてできない――
……だから! ジェダを倒すためには、お互いに信頼し合わないとダメなんだよ!」
きっぱりと言い切った太一は、両手でチアキの肩を掴んだ。
ビクリと震えるチアキに構わず、放つ言葉に勇気を宿らせる。
「チアキ、一人で戦うな! ジェダを倒さなきゃ、俺達は生き延びることはできないんだ!
敵の力は強大だけど、皆の力を合わせれば絶対勝てる! だから、信じるんだ!」
デビモン、エテモン、ヴァンデモン、ダークマスターズ……
太一が今まで戦ってきた敵は皆、絶望的なまでに強大な力を持っていた。
たった一人で立ち向かっていたとしたら、間違いなく敗北していただろう。
だが、太一は勝った。
光子郎の知識を駆使し、空の愛情に助けられ、丈の誠実さで皆をまとめ、ミミの純真さで仲間を募り、
ヒカリの示す光を目印にして、タケルの掲げる希望を信じ、ヤマトの友情を力に変え、太一の勇気であらゆる困難を突破してきたのだ。
一人では倒せない敵も、皆で戦えば必ず倒せる。
太一は、そう信じていた。
――そしてチアキは、そう信じていなかった。
「……もういい」
元の無表情に戻ったチアキは、肩に置かれた太一の手を振り払うと、くるりと踵を返した。
「チアキ!」
「邪魔したな。私はそろそろ行くことにするよ」
机の上の食料や支給品を、自分の分だけランドセルに戻しながら、チアキは別れの言葉を口にする。
太一の存在を無理矢理無視しているかのような、厳然とした拒絶。
ひび割れた貝殻のように、触れれば壊れてしまいそうな、危うい拒絶。
太一は、黙々と出発の準備を始めたチアキに更に声をかけようとして――やめた。
(……これ以上言っても逆効果みたいだな。チアキは、チアキの道を行くってことか)
誰だって、独りになりたいときくらいある。そんなときは、他人が何を言っても無駄だ。
しかし、別れて終わりではない。志が同じなら、いつかまた会えるはず。
ダークマスターズとの戦いの最中に離れ離れになりながらも、再び共に戦うことになった、石田ヤマトのように。
(でも、なんか危ういな……)
荷物をまとめているチアキの後姿を見た太一は、漠然とした不安を覚える。
ヤマトにはガブモンがいた。それに比べて、チアキは本当に一人なのだ。
敵に襲われたとき、果たして対処しきれるのかどうか……
(そうだ!)
唐突に“ある考え”が浮かんだ太一は、ポケットから円形の容器を取り出した。
円形の容器には穴が開いており、太一が容器を振ると、穴から丸薬が3つ転がり出る。
丸薬に問題がないことを確認した太一は、ランドセルを背負おうとしていたチアキに向かって、手の平を突き出した。
「これ、持ってけよ」
「……なんだ、コレ?」
目の前に突き出された奇妙な物体に、チアキが疑惑の視線を向ける。
「『コンチュー丹』って言ってな。飲むと『虫の力』を得ることができる薬なんだ」
丸薬は、太一の支給品の一つである『コンチュー丹』だった。
チアキの身を心配した太一は、護身用の道具として10粒中3粒を譲ることにしたのだ。
「身につく力は、アリの怪力に、チョウの身軽さに、ハチの素早さ……それと、カブトムシの硬さだな。
これさえ飲めば、大抵の敵から逃げられると思うぜ」
自慢げに説明する太一から丸薬を受け取ったチアキは、その不思議な丸薬をためつすがめつ見ていたが、
やがて、そのうちの一つを選び取り、太一に突き出した。
「飲んでみろ」
「は?」
「その、虫の力とかいうのを見てみたい」
チアキは平坦な声でそう言うと、当惑している太一の手に丸薬をねじ込んだ。
しばらくの間、太一は、チアキと突き返された丸薬を交互に眺めていたが、やがて得心がいったように苦笑した。
「なるほど。信用できないってか」
「当然だ。いきなり不気味な薬を渡されても飲めるわけないだろう」
「ったく、本当に疑り深いやつだな。
……まあいいや。俺も飲んだことなかったし、テスト代わりってことで」
太一は特に気分を害した様子もなく、丸薬を飲み込んだ。
変化は、劇的だった。
虫の力を得た太一は、チアキの目の前で4人がけのソファーを軽々と持ち上げたのだ。
コンチュー丹の効能の一つである『アリの怪力』を見せ付けられるたチアキは、始めは驚愕した。
だが、太一がコンチュー丹の効果を証明するにつれて――
チョウの身軽さでタワーの内部を跳ね回る姿を見て、
ハチの素早さでフロアを何度も往復する姿を見て、
カブトムシの硬さで様々な物を弾き返す姿を見て、
――なぜか、チアキの表情は暗くなっていった。
「どーだ! 信じたか!」
薬の効果の証明を終え、勢いよくソファーに沈み込んだ太一は、やけくそ気味に大声を上げた。
タワーの中で激しく動き回っていたため、滝のように汗を流している。
といっても、コンチュー丹の効果に興奮してはしゃいでしまった太一の自業自得ではあるのだが。
しかし、そんな太一とは対照的に、チアキは顔を俯けていた。
「……なんでだよ」
チアキが、聞き取れないほどのか細さでボソリと呟く。
「なんで、こんな便利な道具を、出会ったばかりの私にくれるんだよ」
ソファーの上で息を整えていた太一は、チアキを見た。
それまでずっと俯いていたチアキは、太一を見た。
二人の視線が交錯し、チアキは、非難すら混じった目線で太一に訴えかけた。
『一体、何を考えているんだ』と。
チアキの視線を受けた太一は、少し照れくさそうに顔を背けながらも、答えを返した。
「……お前が、悩みを自分一人で抱え込んで、あまり他人を頼らなそうなやつだからだよ。
最後まで我慢するやつは、危なっかしいからな。
――ヒカリも……俺の妹も、そうだった」
太一が口にした『妹』という言葉に、チアキは驚いたような、焦ったような、複雑な表情を浮かべた。
「妹が、いるのか」
「言っとくが、チアキとは全然似てないぞ。意地っ張りなところ以外は、本当に、マジで、全ッッッ然似てない」
過剰なほどに言い切った太一は、しかし、不意に声のトーンを落とした。
チアキから顔を背けたまま、いつになく真剣な表情で言葉を繋げる。
「ヒカリは、いつも人のことばっかり考えて、自分が辛いとか苦しいとか、絶対に最後まで言わないやつなんだ」
「……本当に、似ていないな。私は、むしろ自分のことばかり考えているよ」
自嘲の笑みを浮かべたチアキを、しかし太一は慰めない。
慰めの言葉など無意味だと、わかっているから。
だからただ、自分の想いだけを、語る。
「まあ、そんな性格だから、俺が死んだらヒカリは多分泣く。だから、俺は絶対に生きて帰らなきゃいけないんだ。
……チアキだって、生きて帰りたい理由が――待っている家族が、いるんじゃないか?
仲間割れをしてる場合じゃないと、俺は思うんだけどな」
「…………ッ!」
不意打ち気味に話を振られたチアキは、唇を噛んで俯いた。
そんな、再び俯いたチアキを見て、太一は思う。
推測でしかないが……多分もう、大丈夫だと。
チアキの表情は、最初と比べて随分と険が取れている。
誰も信じず、周囲に敵意を振り撒いていた少女の心が開かれつつあるのかもしれない。
流石に、今すぐとまではいかないだろう。だけど。
(独りで考えをまとめれば、きっと仲間になってくれるさ)
希望的観測を心に描きながら、ペットボトルの水で乾いた喉を潤す。
ちょうどその時、何かを決心したように、チアキが顔を上げた。
「た、太一!」
「ん。どうした?」
太一はペットボトルから口を離し、チアキを見た。
決意を秘めた、チアキの顔を。
――そして、その顔が真っ青に染まる瞬間を。
「あ……」
「……チアキ? どうし……、ごほっ」
言葉の途中で咳き込んだ太一は、反射的に口を押さえる。
大量の血が、その手を紅色に染め上げた。
「え……?」
口から手を離した太一は、紅く汚れた自分の手を、他人事のように見つめた。
どろりとした赤色は太一の手をてらてらと照らし、肘の先から床へと落ちる。
ぼたぼたと、口から血が垂れる感触。ぼろぼろと、身体が崩れていく感覚。
「ぁ……」
墜ちる視界。
消える触覚。
鈍る思考。
薄れゆく生命を感じながら、太一が最後に見たものは、泣き出しそうなチアキの顔。
最後に聞いたのは、掠れて消えそうなチアキの声。
「……他人の前に食料を置いて、目を離すなよ。どこまでお人好しなんだバカ野郎……」
※ ※ ※ ※ ※
結局のところチアキの目的は、太一が持っていた首輪探知機だった。
参加者の居場所を知ることができるレーダーは、チアキにとってあまりにも有用すぎたのだ。
探知機を奪うためだけに『利用価値があるかもしれない参加者』を一人殺しても、十二分にお釣りがくるほどに。
だからチアキは、太一が不審者の確認のために席を立ったとき、目の前にあった太一のペットボトルに青酸カリを入れた。
それは、これ以上ないチャンスであり、幸運であり、不運であった。
もしも、直前のやり取りから、チアキが首輪探知機の存在に勘付いていなければ。
もしも、食事が終わっており、机の上に飲みかけの飲料水がなければ。
もしも、チアキが青酸カリをポケットに入れていなければ。
チアキの目の前に、太一の死体が転がることはなかっただろう。
「……うぷッ」
チアキは、喉の奥に込み上がる胃液を必死で飲み込んだ。
胃酸による独特の苦味が、チアキの舌を麻痺させる。
死体を見るのは、初めてではない。顔がどす黒く変色したよつばの死体は、今でも頭に焼き付いている。
人を殺したのも、初めてではない。陸の上で溺死させたあのバカ野郎の顔は、今思い出しても腹が立つ。
だけど、無関係の人間を殺すのは、直前まで普通に話をしていた人間が“自分のせいで”絶命する瞬間を見るのは、初めてだった。
(これが見たくなかったから、出て行くつもりだったのにな……)
その場で太一の死を待ったほうが効率がいいにも関わらず、タワーを離れようとした理由の一つがこれだ。
少しの間でも交友を持った人間が――笑いながら、自分を受け入れてくれた太一が死ぬ場面を、見たくなかったから。
八神太一が死ぬ場面に遭遇することと比べれば、時間を置いてからタワーに戻ることなど、些細な手間だった。
結局、選択肢などなかったのだけれど。
「……まあ、いいか。目的は、達成できたんだし」
レーダーは、手に入ったんだ。良しとしよう。
そう、擦り切れた声で無理矢理自分に言い聞かせたチアキは、机の上の首輪探知機に手を伸ばす。
運よく血で汚れていなかった首輪探知機を掴んだチアキは、その拍子に、見開かれた太一の瞳を見てしまった。
「…………ッ」
居眠りでもしているかのように机に突っ伏した太一の死体は、虚ろな目でチアキを見つめていた。
その顔に、苦痛はないように見える。ただ、『何が起こったかわからない』といった表情を、死貌に貼り付けているだけだ。
「……苦しんだ、かな」
よつばを殺したバカ野郎と違って、太一に恨みはない。ただ、首輪探知機のために殺しただけだ。
苦しんで死ぬことなど、望んでいなかった。
(って、何を言ってるんだよ。私が殺したことに、変わりは無いじゃないか)
そうだ、何も変わらない。
こんな思考の理由は、きっとただの罪悪感。単なる言い訳だ。
死に方如何に関わらず、自分が太一を殺したことは変わらない。
南チアキが『ひとごろし』であることに変わりは――
(あれ?)
おかしいな。
私は、『ひとごろし』にならないために戦っているはずなのに。
どうして、人を殺しているんだろう。
(なんでだっけ。なんでだっけ。なんでだっけ)
思考の迷路に嵌り始めたチアキは、必死で記憶を探った。
太一と出会ったせいで忘れかけていた目的を、記憶の底から引きずり出す。
二人の人間の死によってチアキの価値観が崩壊した、最悪の記憶を。
(変な広間からこの島に飛ばされて、パタリロと出会って、よつばと出会って、パタリロと別れて、よつばと別れて、それから……)
よつばが死に、チアキは人を殺した。
だから、地獄で決意した。
「……思い出した。私が『ひとごろし』だと知っている人間を、残さないためだった」
そのために、優勝する。そのために、他の参加者を殺す。
何か致命的に間違っているような気もするが、関係ない。
だってもう、戻れないのだから。完全に、戻れなくなったのだから。
八神太一を、殺したのだから。
……………………………………。
「……私は、戻りたかったのかな」
多分、戻りたかったのだろう。
戻れなくなった今だから、はっきりとわかる。
自分は、利用するために近づいたはずの太一に、いつの間にか魅せられていた。
真っ直ぐに人の目を見ることができる太一に、勇気に溢れた太一に、光の道を歩いている太一に。
人を殺してしまったチアキは、嘘を吐き続けているチアキは、影の道を歩もうとしているチアキは、魅せられた。
あまりにも日常的な太一の態度は、血に塗れたチアキの思考を徐々に洗い流していったのだ。
だから、ほんの少しだけ思ってしまった。
よつば殺しの犯人を“撃退”しただけの自分は、まだ戻れるかもしれないと、傲慢にも思ってしまった。
そうでなければ、『誰でも殺し合いに乗り得る』といった、自らの首を絞める主張を、大声で叫ぶことなどしなかっただろう。
(だいたい、お前を信じて弥彦だけを疑う理屈はないだろう……。よく、考えろよ)
チアキが自分の姿を見せたくなかった理由は、『南チアキが八神太一と一緒にいた』という情報を、誰にも漏らしたくなかったから。
太一殺しの疑いがかかる危険を避けるために屁理屈を並べて。
そのまま、溢れる感情に飲み込まれた。
(自分の言葉で興奮するなんて……まったく、恥ずかしい)
もし、あのとき太一が、言葉の真意に気付いていたら。
疑心暗鬼の否定などせず、南チアキが作り出した殺人装置を看破していたら。
今頃どんな事態になっていたかはさっぱりわからないが、少なくとも、太一が死ぬことはなかったと思う。
――けれど、太一は最後まで気付いてくれなかった。
結局太一は、チアキの錯乱を、ただの恐怖によるものと思ってしまったのだ。
だから最後まで、人を信頼することの重要性を主張し続けた。
“人はそう簡単に殺し合いに乗らない”とでも、信じていたのだろうか。
だとしたら、この島に来てから、よほど“まともな”人間ばかりに出会ってきたようだ。
一度でも惨劇を経験していれば、人の善性を信じることがどれほど愚かしい行為なのかわかっただろうに。
自分が言えた義理ではないのだけれど――本当に、失望した。
(私を信用しちゃ、いけなかったのに)
最も疑うべき人間に向かって『仲間を信頼すること』を勧めるなんて、あまりにも馬鹿馬鹿しい。
ひどく笑えて、泣けてくる。
「きっと、全部、遅すぎたんだ」
自分自身が『戻りたい』と思っていたことに気付いたのは、ついさっきのことだ。
太一の飲み水に青酸カリを入れたときは、突然やってきたチャンスに思わず乗っかってしまった。
自分の気持ちの変化など考えず、決めていた方針に従ってしまった。
気付いたときには、もう手遅れ。
「……あと、ほんの少し早く気付いていれば良かったんだけどな」
最後に太一の名前を呼んだとき、自分は“ペットボトルの水を飲ませないようにしよう”としていた。
――結局それも、間に合わなかった。
「…………」
……過ぎたことを考えるのは、やめよう。
ただ、後戻りできる最後の機会を逃しただけ。
元々存在していなかった希望が、改めて潰えただけ。
優勝するという方針が、変わらないだけ。
それよりも今は、一刻も早くこの場を離れなければならない。
太一が言っていた『仲間』が、いつやって来るかも知れないからだ。
レーダーを片手に持ち、タワーの入り口に向かいかけたチアキは、最後にもう一度だけ振り返る。
口元を赤く染め、陰鬱に目を見開いた太一の死体が、場違いなほど鮮やかに存在していた。
(本当に、変なやつだったな)
見知らぬ参加者を平然と信じ、本気で励まし、快活に笑う。殺し合いの参加者とは、とても思えなかった。
だが、一番驚いたのは、何の見返りもなくコンチュー丹をくれたこと。
想定外すぎて、自分と同じように毒殺を狙っているとしか考えられなかった。
譲渡の理由も、『人を頼ろうとしないところが妹と似ていた』といった、どう考えても納得できないもので――
(そういえば、妹がいたんだっけ)
死ぬ直前に太一が語っていた、八神ヒカリ。
太一の帰りを待っている、家族。
ただ、いつものように家族の帰りを待っている、ひと。
八神ヒカリの話を聞いたとき、チアキが真っ先に思い浮かべたのは、二人の姉の姿だった。
それが、太一に毒を飲ませまいと動くための、最後の引き金になったのだ。
決して間に合わない、引き金の。
(……なにが、『待っている家族が、いるんだろ?』だ。
他人の家族より、お前の家族のことを、お前の命を第一に考えるべきだろう。
私にかまって、死んでいる場合じゃないだろうが……!)
唇を噛みながら、しばらく死体を見つめていたチアキは、やがてぽつりと呟いた。
「そう、だな。――形見くらいは、届けてやるよ」
※ ※ ※ ※ ※
「ふむ。変化はありませんね」
展望台から、キルアと『のび太』が向かった廃墟群を眺めていたニアは、欠伸を噛み殺しながら目を擦った。
落雷があった付近をずっと観察し続けているのだが、何の変化もない。ニアはいい加減、諦めつつあった。
(しかし、尻尾すら掴ませてくれないのは異常、と言っていいでしょう。……私が見える範囲を考慮して動いているのでしょうか?)
溜息を零したニアは、気分転換でもしようと内線電話に手を伸ばした。
電話をかける相手は、八神太一。
レーダーによってタワー周辺の監視をしている人物である。
太一がいるから、ニアは安心して一方向だけを見ていることができるのだ。
なぜなら、もしタワーに何か異常が起これば、すぐさま連絡がくるはずだから。
連絡が来ないということは、何も問題が起こっていないということ。
もしくは、太一が『何の問題もない』と判断したということ。
(彼も馬鹿というわけではありませんし、まあ心配はないでしょう)
とはいえ、油断は禁物である。
あまり頻繁に連絡を取って機嫌を損ねるのも利口ではないが、完全に連絡を絶つのもいけない。
人は、逐一行動を管理されることを嫌がる。
だが、管理監督なしでは、もしもの事態には対応できない。
これからかけようとしている電話は、そういった意味も含んでいた。
「……しかし、どんな話で場を繋ぎましょうかね」
※ ※ ※ ※ ※
トォルルル――
電話のベルが鳴っている。
静寂に包まれていた1階フロアに、耳障りな電子音が木霊する。
トォルルル――
受話器を取る手は現れない。
唯一存在しているヒトガタは、一切の反応を放棄している。
トォルルル――
ヒトガタは動かない。
かつて八神太一だった塊は、置物のように鎮座している。
トォルルル――
ヒトガタの目は閉じられている。
まるで、眠っているように閉じられている。
――そして。その額に、ゴーグルはついていなかった。
【B-7/タワー内展望室/1日目/午後】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:出ませんね……。
第一行動方針:太一と連絡を取りたいが……。
第二行動方針:キルアの帰りを待つ。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
[備考]:タワーのエレベーターは、2機とも緊急停止状態で動きません。
【B−7/住宅地/1日目/午後】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:右腕に火傷(軽度だが悪化する恐れあり)、疲労(小)、精神的疲労、強い焦り
[装備]:楼観剣@東方Project、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け)
[思考]:どこにいるんだあっ!
第一行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第ニ行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第三行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第四行動方針:のび太とカツオがどうなったか不安。
第五行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
C-7住宅街の西半分はある程度調べ終わりました。次はB-7住宅街を虱潰しに調べていくつもりのようです。
【C−7/裏路地/1日目/午後】
【南千秋@みなみけ】
[状態]:疲労小、顔面打撲(軽度)、額に切り傷(支障はない)、
人間不振&精神衰弱(見た目は普通)。
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、
祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
首輪探知機、核鉄(シルバースキン)@武装錬金(展開せずポケットに)
[道具]基本支給品x2、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4、コンチュー丹(容器なし、2粒)@ドラえもん
青酸カリ(半分消費)@名探偵コナン、的の書かれた紙(5枚)@パタリロ!、太一のゴーグル(血がついている)
[思考]:今は、誰にも合いたくないな……。
第一行動方針:下がってしまった“殺し合い”のモチベーションを上げたい。
第二行動方針:パタリロとの合流はできれば避ける。
第三行動方針:自分を人殺しと疑う者がいれば排除したい。
第四行動方針:全て終わったら、八神ヒカリに形見のゴーグルを渡したい(自分が殺した事実は隠す)。
基本行動方針:誰も信用せず、いつもの自分を演じてみんなに殺し合いをしてもらう。
最終行動方針:このゲームを知るもの全員に死んでもらって家に帰る
【八神太一 死亡】
※フライパン、コンチュー丹(7粒)@ドラえもん、は太一の死体が持っています。
※太一のランドセル(基本支給品、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣、水中バギー@ドラえもん、調味料各種(胡椒等))
は太一の死体の傍に放置されています。