〜参加者一覧[作品別]〜
【魔法少女リリカルなのは】高町なのは/フェイト・テスタロッサ/ヴィータ/八神はやて/アリサ・バニングス
【ローゼンメイデン】真紅/翠星石/蒼星石/雛苺/金糸雀
【魔法陣グルグル】ニケ/ククリ/ジュジュ・クー・シュナムル/トマ
【ポケットモンスターSPECIAL】レッド/グリーン/ブルー/イエロー・デ・トキワグローブ
【デジモンアドベンチャー】八神太一/泉光子郎/太刀川ミミ/城戸丈
【ドラえもん】野比のび太/剛田武/リルル
【魔法先生ネギま!】ネギ・スプリングフィールド/エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル/犬上小太郎
【絶対可憐チルドレン】明石薫/三宮紫穂/野上葵
【落第忍者乱太郎】猪名寺乱太郎/摂津のきり丸/福富しんべヱ
【名探偵コナン】江戸川コナン/灰原哀
【BLACKLAGOON】ヘンゼル/グレーテル
【クレヨンしんちゃん】野原しんのすけ/野原ひまわり
【ドラゴンクエストX】レックス(主人公の息子)/タバサ(主人公の娘)
【DEATH NOTE】メロ/ニア
【メルティブラッド】白レン/レン
【ちびまる子ちゃん】藤木茂/永沢君男
【カードキャプターさくら】木之本桜/李小狼
【テイルズオブシンフォニア】ジーニアス・セイジ/プレセア・コンバティール
【HUNTER×HUNTER】キルア/ゴン
【東方Project】レミリア・スカーレット/フランドール・スカーレット
【吉永さんちのガーゴイル】吉永双葉/梨々=ハミルトン
【ヴァンパイアセイヴァー】リリス
【MOTHER】ネス
【サモンナイト3】ベルフラウ=マルティーニ
【Fate/stay night】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【みなみけ】南千秋
【武装錬金】ヴィクトリア=パワード
【BLACKCAT】イヴ
【からくりサーカス】才賀勝
【銀魂】神楽
【ひぐらしのなく頃に】古手梨花
【灼眼のシャナ】シャナ
【とある魔術の禁書目録】インデックス
【るろうに剣心】明神弥彦
【ボボボーボ・ボーボボ】ビュティ
【一休さん】一休さん
【ゼルダの伝説】リンク(子供)
【ベルセルク】イシドロ
【うたわれるもの】アルルゥ
【サザエさん】磯野カツオ
【せんせいのお時間】鈴木みか
【パタリロ!】パタリロ=ド=マリネール8世
【あずまんが大王】美浜ちよ
【ポケットモンスター(アニメ)】サトシ
【SW】ベルカナ=ライザナーザ
【Gunslinger Girl】トリエラ
【ぱにぽに】レベッカ宮本
【FINAL FANTASY4】リディア
【よつばと!】小岩井よつば
計86名
〜参加者一覧[あいうえお順(名簿順)]〜
01:明石薫/02:アリサ・バニングス/03:アルルゥ/04:イエロー・デ・トキワグローブ/05:イシドロ/
06:泉光子郎/07:磯野カツオ/08:一休さん/09:猪名寺乱太郎/10:犬上小太郎/
11:イリヤスフィール(略)/12:インデックス/13:イヴ/14:エヴァンジェリン(略)/15:江戸川コナン/
16:神楽/17:金糸雀/18:城戸丈/19:木之本桜/20:キルア/
21:ククリ/22:グリーン/23:グレーテル/24:小岩井よつば/25:剛田武/
26:ゴン/27:才賀勝/28:サトシ/29:三宮紫穂/30:シャナ/
31:ジーニアス・セイジ/32:ジュジュ・クー・シュナムル/33:白レン/34:真紅/35:翠星石/
36:鈴木みか/37:摂津の きり丸/38:蒼星石/39:高町なのは/40:太刀川ミミ/
41:タバサ(主人公の娘)/42:トマ/43:トリエラ/44:永沢君男/45:ニア/
46:ニケ/47:ネギ・スプリングフィールド/48:ネス/49:野上葵/50:野原しんのすけ/
51:野原ひまわり/52:野比のび太/53:灰原哀/54:パタリロ/55:雛苺/
56:ビュティ/57:フェイト・テスタロッサ/58:福富しんべヱ/59:藤木茂/60:フランドール・スカーレット/
61:ブルー/62:古手梨花/63:プレセア・コンバティール/64:ヘンゼル/65:ベルカナ=ライザナーザ/
66:ベルフラウ=マルティーニ/67:南千秋/68:美浜ちよ/69:明神弥彦/70:メロ/
71:八神太一/72:八神はやて/73:吉永双葉/74:李小狼/75:リディア/
76:リリス/77:梨々=ハミルトン/78:リルル/79:リンク(子供)/80:レックス(主人公の息子)/
81:レッド/82:レベッカ宮本/83:レミリア・スカーレット/84:レン/85:ヴィータ/
86:ヴィクトリア=パワード
計86名
〜ロリショタロワ・基本ルールその2〜
【舞台】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/clip/img/76.gif 【作中での時間表記(2時間毎)】(1日目は午前6時よりスタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【支給品】
・参加者が元々所持していた装備品、所持品は全て没収される。
・ただし体と一体化している装備等はその限りではない。
・また衣服のポケットに入る程度の雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される物もある。
・ゲームの開始直前に以下の物を「ランドセル」に入れて支給される。
「食料」「飲料水」「懐中電灯」「地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」「名簿」
「ランダムアイテム(1〜3種)」。
なおランドセルは支給品に限り、サイズを無視して幾つでも収納可能で重量増加もない。
その他の物については普通のランドセルの容量分しか入らず、その分の重量が増加する。
【ランダムアイテム】
・参加者一人に付き1〜3種類まで支給される。
・『参加者の作品のアイテム』もしくは『現実に存在する物』から選択すること。
(特例として『バトルロワイアル』に登場したアイテムは選択可能)。
・蘇生アイテムは禁止。
・生物および無生物でも自律行動が可能なアイテムは参加者増加になる為、禁止とする。
・強力なアイテムには能力制限がかかる。非常に強力なものは制限を掛けてもバランスを
取る事が難しいため、出すべきではない。
・人格を変更する恐れのあるアイテムは出さない方が無難。
・建前として『能力差のある参加者を公平にする事が目的』なので、一部の参加者だけに
意味を持つ専用アイテムは避けよう。出すなら多くの参加者が使えるようにしよう。
【ご褒美システム】
・他の参加者を3人殺害する毎に主催者から『ご褒美』を貰う事が出来る。
・トドメを刺した者だけが殺害数をカウントされる。
・支給方法は条件を満たした状態で、首輪に向かって『ご褒美を頂戴』と伝えるか、
次の放送時にQBが現れるので、以下の3つから1つを選択する。
1:追加のランドセルが貰える。支給品はランダムで役に立つ物。
2:ジェダに質問して、知人の場所や愛用品の場所などの情報を一つ聞ける。
3:怪我を治してくれる。その場にいれば他の人間を治すことも可能。
〜ロリショタロワ・基本ルールその1〜
【基本ルール】
参加者全員で殺し合い、最後まで生き残った一人が優勝となる。
優勝者のみが生きて残る事ができて『何でも好きな願い』を叶えて貰えるらしい。
参加者はスタート地点の大広間からMAP上にランダムで転移される。
開催場所はジェダの作り出した魔次元であり、基本的にマップ外に逃れる事は出来ない。
【主催者】
主催者:ジェダ=ドーマ@ヴァンパイアセイヴァー(ゲーム・小説・漫画等)
目的:優れた魂を集める為に、魂の選定(バトルロワイアル)を開催したらしい。
なんでロリショタ?:「魂が短期間で大きく成長する可能性を秘めているから」らしい。
【参加者】
参加者は前述の86人(みせしめ除く)。追加参加は認められません。
特異能力を持つ参加者は、能力を制限されている場合があります。
参加者が原作のどの状態から参加したかは、最初に書いた人に委ねられます。
最初に書く人は、参加者の参戦時期をステータス表または作中に記載してください。
【能力制限】
参加者は特異能力を制限されることがある。疲労を伴うようになっている能力もある。
また特別強力な能力は使用禁止になっているものもあるので要確認。
【放送】
放送は12時間ごとの6時、18時に行われる。内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」
「過去12時間に死んだ参加者名」など。
【首輪と禁止エリア】
・参加者は全員、爆弾の仕込まれた首輪を取り付けられている。
・首輪の爆弾が起爆した場合、それを装着している参加者は確実に死ぬ。
・首輪は参加者のデータをジェダ送っており、後述の『ご褒美』の入手にも必要となる。
(何らかの方法で首輪を外した場合、データが送られないので『ご褒美』もない)
・首輪が爆発するのは、以下の4つ。
1:『禁止エリア』内に入ってから規定時間が過ぎたとき。
2:首輪を無理やり取り外そうとしたとき。
3:24時間で死者が出なかったとき。
4:ジェダが必要と判断したとき(面と向かって直接的な造反をした場合)。
〜ロリショタロワ・基本ルールその3〜
【ステータス表】
・作品の最後にその話に登場した参加者の状態、アイテム、行動指針など書いてください。
・以下、キャラクターの状態表テンプレ
【現在位置(座標/場所)/時間(○日目/深夜〜真夜中)】
【キャラクター名@作品名】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(身に装備しているもの。武器防具等)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なもの。
収納している装備等、基本的にランドセルの中身がここに書かれます)
[思考・状況]
(ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
複数可、書くときは優先順位の高い順に)
◆例
【D-4/学校の校庭/1日目/真夜中】
【カツオ@サザエさん】
[状態]:側頭部打撲、全身に返り血。疲労
[装備]:各種包丁5本
[道具]:サイコソーダ@ポケットモンスター
[思考]
第一行動方針:逃げた藤木を追い、殺害する
第二行動方針:早く仲間の所に帰りたい
基本行動方針:「ご褒美」をもらって梨花の怪我を治す
【予約】
・キャラ被りを防ぐため、自分の書きたいキャラクターを予約することができます。
・期間は予約から72時間(3日)。期間終了後は、他の人が投下してもOKです。
・予約しなくても投下することはできますが、その際は他に予約している人がいないか
十分に確認してから投下しましょう。
【投下宣言】
・投下段階で被るのを防ぐため、投下する前には必ずスレで 「投下します」 と宣言を
して下さい。 投下前にリロードし、被っていないか確認を忘れずに。
【トリップ】
・投下後、作品に対しての議論や修正要求等が起こる場合があります。
本人確認のため、書き手は必ずトリップをつけてください。
テンプレ貼り完了。
順番間違えてごめんなさいorz
>>1乙!
>>1乙ついでにロリショタ川柳
マーダーは 死なない程度に 殺します
― なのは ―
遭遇者 『仲間』でなければ モンスター
― タバサ ―
どうしよう 『仲間』がみんな 怖い人
― 蒼星石 ―
ヤク中を イカせてみれば 変質者
― 梨花 ―
男手を 貸そうとしたら 包囲網
― 一休 ―
マーダー化 乳児と戦い 負けました
― のび太 ―
塔の上 孤立無援の 引き篭もり
― ニア ―
気が付けば 屠殺首狩り 惨殺者
― 弥彦 ―
アリサ脱ぎ トリエラの胸 メイドっ娘
― トマ ―
某所で文句言われちゃった……orz
こういうのは、せめて避難所でやった方が良かったな
スレ汚しスマン
いや俺は面白かったよ。
誰かが何にイラつくとか、いちいち気にしてたらSS投下とかできませんぜ。
まったく気にしないのは問題外だが。
のび太はなあ…
銃があれば強いけど
のび太、銃持った時は反射神経とか明らかに上がってるしな。
大長編ではわざと体を乗っ取らせようとして撃つ度胸まで有るし。
でも赤ん坊に負けても『のび太だからなあ』だw
連載と放送が長いせいで大抵の環境は経験してるし
無人島で人生を終えそうになったり人生をやり直したりで精神年齢もかなり高い
その気になれば根性もあるし発想力は驚異的
なぜか人外に対してよくフラグを立てる
ただのび太だからなあ……
人外にフラグ…
リルル、裏山、雪の精、美夜子
あとは宇宙人とかか
なのはが原作の方でも"なのはさん"化してしまった件
これでいつでもマーダーになれますね
>>22 キレたら最凶だったな……。
まあ、マーダーに限りなく近い脱出派になると思うよ(タバサと同じカテゴリ)。
>>22 あれはなのはさんカワイソスな要素も十分にあったからなぁ……って、まさに今の状況じゃないか
3期見れねぇぇぇ……。
レンタルビデオで出るのが待ち遠しいなぁ。
>>22-25 インデックスとアラストールがフォローできればなんとかなるんだけどなぁ。
エヴァが起きてもあの面子を纏め上げれそうにないなぁ。
感想&指摘ありがとうございました。
前スレ
>>614 しんべヱが水中で慌てたのは仰るとおりウニョラー化して獣の思考になっているのと、
爆発に驚いたせい、というつもりで書きました。
しんべヱが沈まないという点は……、あの体重だから勢いつけて水に落ちればさすがに沈むかなと
思っていました。この辺りはあとで修正してみます。
>>22 あれ見たときにはLSのなのはさんに原作のほうが追いついてきた、とか馬鹿なこと考えちまったw
先見の明ありすぎだろwww
「ヴィータちゃん。少し、頭冷やそうか」
「ニケ君……私のやり方、そんなに間違っているかな……」
こうですか(ry
>>27修正乙です。
しんべヱのスペックは高いのか低いのか微妙なんだよなー。
>>28 ピタリと嵌りすぎだw
なのは最新話放送が今夜の自分としてはどんな感じなのか実に楽しみだ。
なのはさんだとか悪魔だとか魔王だとか噂だけは聞いているw
そういえば落第忍者でもしんべヱの髪は固まるのか?
>>30 あとで一言感想聞かせてください。
なのはさん化させた張本人としてw
このロワのなのはさんは怖すぎる。
>>33 ニ、ニケと漫才やってたころは普通だったんだ!
魔法少女リリカルなのはさん最新話視聴終了。
……なんという迫力。怒ると怖いよなのはさん。
いやあの真っ直ぐさは状況によって怖いことになるかなーとは思っていましたよ、ええ。
原作であんなになるとは流石に思ってなかったけどw
無印の頃からでも、「フェイトちゃんと友達になりたい」とか言っておきながら、あの海上大決戦
視聴しながら思わず出た感想が
なのはさん殺す気かよ……。
ええ、怖かったです
無印のアレは演出が悪い。
無印だけは、悪魔とか言わないでやってくれい
ストーリー自体はハートフルだったんだよ。ええ、昔はね……
ヘンゼル、コナン、メロを予約します
>>39 予約来た! しかも久しぶりの◆uOOKVmx.oM氏……
これは期待
>>39期待。
…ヘンゼルに関して妙なことを思い出してしまったけど、あえて言わない。
何か分からないけど、必要なことなんだったら言ってくれよ
投下されてから矛盾とか何とか言われても困るし
43 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 21:58:04 ID:NYiRZlNH
なのはさんの恐ろしさは異常
>>42 矛盾というかなんというか、ヘンゼルのバルキリースカートが2本あっさり壊されたのに
時間が経っていないのに簡単に直ったのが前話題になってた。
現在は一本だけど、その一本はガチバトルで潰されただけであって、直った二本の内には
入るかどうか未定。ヘンゼルが足代わりに使っているから、結構な負荷が掛かっているはず。
後続書き手次第でどっちにも転がせるオイシイ状況、ってわけだな
原作見てると体重支えるくらいは大した負担じゃない気もするが、判断分かれるか。
日本語がちょっと変だった。
現在は一本壊れて三本だけど、残っている内の最低でも後一本は一時間ぐらいで直ったことになる。
完全に直っているのか、不完全に直っているのかが気になる。移動手段に使う等、結構酷使しているし。
ニア、キルア、太一、カツオ 以上4名予約します
知っている人は多いだろうけど、ここのところ交流所でアニメとLSの話題が出まくりであまり良い印象は持たれていないみたい。
で、最近自分は書き込み自重しているんだけど、それでも乗りたい話題はごろごろ出てくる。
人に訊くことではない気がするが、この衝動をどうすればいいのかちょっと訊いてみたい。
1.いや、おまえが黙ってれば済むんだから我慢しろ、な?
2.ここ(本スレ)にぶちまけていい。
3.したらばに「他所の話題に乗ってみるスレ」みたいなの建ててそこで語る。それか避難所スレで語る。
2でいいんじゃないか。
スレ維持にもなるし。
知るか
好きにしろよ
空気読んだ発言してれば誰も文句言わんよ
ここに書いちゃっていいとおもうよ。というか、そのためのスレだ。
>>51,53
了解。
>>52 空気は頑張って読むよ。ただ、最近は空気読む=書き込まないという結論になることが多くてな…。
たしかに2chだと「空気読め」は「書き込むな」の意味で使われること多いからね。
ちなみにしたらばの方最近過疎ってるのでそっちでも歓迎。
アニとLSの話題が多いのは最近に限ったことじゃないし、
そりゃ交流所で宣伝されて人増えたんだから話題になりやすいのも仕方ないんじゃないか
そこまで自重したらかえって交流所のほうでネタが縛られる
それに話題に出してるのが常にスレチェックしてる人とも限らない
まとめで作品だけチェックしてる人も居るだろうし
と思ったことを言ってみるが
状況次第。
話の流れ上自然なら黙る理由がないし、逆に既にある流れをぶった切るような状況なら自重。
他ロワの住人に対して新しい情報を提示できるなら書き込むべきだが、今までに何度も出た話を繰り返すのは避けた方がいい。
あと、「調子乗ってるな」ってのにも、2種類ある気がするんだよな。
本気で諌めてる場合と、話題に上がらない過疎な所が嫉妬してる場合と。
前者なら反省すべきだけど、後者はスルーして可。
あとどっちもただのネタで言ってる場合もね。
みおんとかみおんとかみおんとかみおんとか
>>31 それはもうしっかりと固まります。
梳かそうとしたら、クシどころかベアークローまで折れてた。
そして頭巾が被れないのでハカマを被ることになったww
土井先生の指にも刺さって、凶器のようだと言われ、シナ先生に紹介したら
剣山の代わりに使われた。
ヘンゼル、コナン、メロを投下します
「ふぅん。『魔法使い』からお誘いなんて童話みたいだね。どうしようかな?
ちゃんとお菓子の家は用意してあるのかい?」
「いや。消し飛ばすのは簡単だが、あれを作るのは意外と難しいんだ。
お前を太らせられなくて残念だよ」
「構わないさ。代わりに大きなカマドで美味しいパンを焼いてあげるよ」
「遠慮する。ローブを着たままじゃ暑くてかなわん」
童話に例えて応答するヘンゼルに好感触を感じたメロは、軽く合わせて返した。
ヘンゼルの顔は笑ってはいるが、目は笑っていない。こちらを値踏みしている目、
一切心を開く気はない目、見下した目。無論腹は立つが、それでいいとメロは思う。
ちゃんと損得勘定の出来る相手の方が猛毒だろうと計算しやすい。
「あれもダメ、これもダメか。じゃあ、そこの小さなお兄さんを魔法で消し飛ばして
見せてよ。簡単でしょ?」
ヘンゼルはメロとの間に挟まれているコナンを指差した。
今は大人しくしているが、自称といえど探偵が簡単に観念などするはずもない。
小さな頭で必死に打開策を考えているのか、隙を狙って視線を細かく動かしていた。
だがどんなに逃げ道を探そうとも廊下はメロとヘンゼルが塞いでいる。
窓からは飛び降りれるだろうが、ここは四階。重傷は避けられない。
教室に逃げ込めば袋のネズミ、素直に窓からダイブした方がまだマシだ。
大声で叫んだり、近くに設置された非常ベルを鳴らして助けを呼ぶ事は出来るが、
仲間の到着よりも死の方が早いだろう。つまり残された手段は口車だけ。
妙な道具を持っていれば話は別だが、あればとっくに使っているはず。
未練がましく手にした目潰しのスプレーと睨めっこしている姿は、惨めで滑稽だった。
仮にも探偵を名乗るのなら何とかして見せろ――とメロは心中で嘲笑う。
「ああ。簡単だ。チャチャゼロ、お前ならどうする?」
「ケケケッ!? 無難ニ『魔法の射手』カ、チョイト豪華ニ『雷の斧』ッテトコカ?」
「…………」
魔法の射手という言葉にヘンゼルが目を細めたのを見逃しはしない。
おそらくチャチャゼロの知り合いと出くわして既に魔法を見ているのだろう。
殺したか逃げ出したかは分からないが、この警戒の仕方から後者の可能性が高い。
「派手好きなお前らしい答えだな。だが正解は『雑魚に魔法は使わない』だ」
「ケケッ! ソウイウヒッカケ問題ハ反則ダゼ」
「……どういうこと?」
「お前も予想しているだろうが、魔法は童話みたいに無制限に使えるものじゃない。
弱い魔法はリボルバーのように使えるが、強い魔法はバズーカのように単発で隙も大きい。
お前は――その隙に一足飛びで俺を襲うつもりだろう? だから魔法は使わない」
もっともらしく適当な講釈を垂れて、メロは魔法の使用を断った。
相手に疑られた時は、こちらも疑い返して論点をずらすのが交渉のコツだ。
最初に見た魔法使いの女から勝手に解釈したハッタリだが、あながち的外れでも無いのか
頭上のチャチャゼロが意味ありげに笑っている。
ヘンゼルが『魔法』に対して抱くのが『不安』なのか『躊躇』なのかは分からないが、
確実なのは『安心』を求めているということだ。
得体の知れないものの恐怖や期待は、見ることや名前を知ることで格段に薄れてしまう。
その『不安』を煽って優位に立つ為にも『安心』は小出しにして、手渡してはいけない。
ヘンゼルにコナンを殺させる事になるが、ここは仕方ないだろう。もう一押しだ。
「ちぇっ! 悪い魔法使いだったのかよ! さっきコイツを吹きかけておくんだったぜ!」
ヘンゼルとの会話に割って入るように自称・探偵が間の抜けた大声を上げた。
オーバーリアクションで両手を肩まで上げ、いわゆるお手上げのポーズを取っている。
明らかに不自然な態度だが、メロもヘンゼルも思わず意識を向けてしまった。
○ ○ ○
コナンは『探偵』として、経験と知識を総動員しこの窮地を脱する策を考える
――のを早々に諦めていた。
状況から判断し、導き出した結論は『絶体絶命、魔術でも使わなきゃ逃げられない』と
いったあまり歓迎したくない結果だったからだ。
魔法使い、魔術師、魔導師、メイジ、マジシャン、ウィザード、ソーサラー。
呼び名なんてどうでもいい。
重要なのは目の前の青年メロが『魔法』を使えるということだ。
『魔法』なんて空想の産物だと思っていたが、ネギの人知を超えた戦いは記憶に新しい。
長い杖を持ちローブに身を包んだメロは、そのネギよりも遥かに立派な魔法使いとして
コナンの目に映っている。とても階段まで辿り着けそうにない。
もう一方のヘンゼルも見るからに凶悪そうな武器を装備し、勝てる見込みはない。
言動からして本人は魔法を使えず知識も乏しいというのが、ささやか過ぎる収穫か。
強行突破は当然無理だが、ヘンゼルの方へ数歩も歩けば火災用の非常ベルがある。
強引に鳴らす事くらいは出来るだろうが、ネギや小狼が来る前に殺されるだろう。
大体どこもかしこも非常事態だ。あまり現実的ではない。
どちらが相手でも戦って切り抜けるのは絶対に無理、勝負にすらならないのは明白。
かと言って教室の中に逃げ込むのは袋のネズミ、問題外だ。
それならば四階であっても廊下の窓から飛び降りる方が生存率が高いだろう。
では口先で切り抜けれるかといえば、こちらも難しい。
遊ぶことを目的にしていたリリスと違い、ヘンゼルは恐らく殺すこと自体が目的だろう。
メロの方はまだ分からないが、魔法を使えるくせに不利と見るや同盟を申し出るなど
冷静な状況判断能力を示している。
そもそもヘンゼルは物理的な力、メロは魔法の力を持っているがコナンには何もない。
何か一つでも切札があったなら。もしもネギのように魔法が使えたら。
魔術師のように姿を消せたなら。こんなに苦労はしないのに。
だが現実は非情である。悲しいことに『探偵』は推理しか出来ない。
(何かが引っ掛かる。些細なことだけど、なんでアイツは――)
『魔法』は確かに怖い。何が起こるか分からないビックリ箱だ。
コナンがメロに感じている恐怖と同じものをヘンゼルも感じているのだろうか。
だからヘンゼルは最初に『魔法使い』かと確認したのだろう。
そしてメロを見た時も同じように確認していた。
だけど今、コナンが引っ掛かっているのは『魔法』についてではない。
(アイツは殺虫剤の『目潰し』についても態々細かく口に出していたんだ。
あれは文句を言っていたんじゃない――俺への『確認』だったんだ)
手にした殺虫剤スプレー『キンチョ○ル』を見つめれば、鶏マークの赤い瞳が
力頭良く見つめ返した。不発だったスプレー攻撃。
でも本当に不発だったのか? 不発だと誰が言った?
護身用の防犯スプレーでもない限り、当然スプレーには本来の用途がある。
『キンチョ○ル』は日本では有名な殺虫剤だ。だけどこの二人は――
攻め方を変えよう。『探偵』は絶体絶命。でも『魔術師』ならこういう時どうする?
(ポーカーフェイスでこう言うのさ。『レディースアンドジェントルメンッ!』ってな)
落ち着いて考えれば、もっといい方法があったかもしれない。
でも今は、これが精一杯。
○ ○ ○
「ちぇ! 悪い魔法使いだったのかよ! さっきコイツを吹きかけておくんだったぜ!」
スプレー缶を持ったまま、コナンは降参とばかりに立ち上がって両手を肩まで上げた。
自称・探偵が何か企んでいるのは明白だろうとメロは警戒心を緩めない。
それはヘンゼルも同じだ。警戒するのは窓からの逃走と二番煎じの目潰しくらいか。
そして二人の予想は結果的には半分づつ当たっていた。
「なあ、さっき吸い込ませたコレが何のスプレーだったか知ってるかい?」
「……ん?」
ゆっくりとスプレー缶を数m離れたヘンゼルの方に突き出して見せた。
吹き付けたではなく、吸い込ませたという所を強調している。
見易いすいように数歩ほど近付くが、ヘンゼルに細かい字は見えないだろう。
そして振り返ると目潰しを警戒して数歩距離をとっていたメロにも向ける。
スプレー缶には大きな字で『キンチョ○ル』と書かれ、赤い鶏のマークが睨んでいた。
「そこの人形、日本語が分かるんだろ? スプレーに何て書いてあるか読めるか?」
「ケケケーッ! 『キンチョ○ル』ダナ。ケケッ!」
多少の距離と日本語で書かれていることからヘンゼルとメロには良く理解できない。
二人とも「だからどうした?」という感じでコナンを冷ややかな目で凝視する。
「そう『キンチョ○ル』。漢字で書くと『禁超類』、超常なる類を禁ずるという意味。
こいつは魔法の類を封じるスプレーさ。朝日を告げる雄鶏の鳴き声には、魔を祓う力が
あるって聞いたことはないかい? その力を液状にした日本製の新商品だ」
メロの顔が強張った。十中八九、いや間違いなくハッタリだと思う。
いくら何でもありの日本製品だとはいえそんな馬鹿げた物があるわけがない。
だがヘンゼルはどう思うのか。もし一割でも信じてメロに使う気になったら――
「そんな都合の良い道具があるものか! チャチャゼロ、お前は知ってるか?」
「ケケケッ! ソンナモン聞イタコトネーナ!」
「魔法使いのお兄さんはこう言ってるよ。小さいお兄さん」
焦る反面でメロは安心していた。冷や汗は流れたが、逆に自分が魔法使いであると
ヘンゼルに印象付けることが出来ている。災い転じて福となすとはこの事だ。
後は詰まらないハッタリを暴いてやればいい。だがその時間は与えられなかった。
「別にそう思うなら構わないさ。本物かどうかは使ってみれば分かるだろう?」
コナンは身構えたメロにくるりと背を向け、ヘンゼルの方を向く。
一歩、二歩と歩き、チラリと振り向いたコナンの口元がニヤリと笑う。
そして静かに腕を振り、手にしたスプレー缶をヘンゼルへ向かって放り投げたのだ。
メロはその意図を即座に理解した。
(こいつ、俺を道連れにする気か!?)
天罰の杖を握り締めたメロが空中のスプレー缶を睨んで悩む。
スプレー缶は放物線を描いてスローモーションのように、廊下の天井スレスレを飛ぶ。
コントロールが悪いのか、背の低いヘンゼルよりも少し高め、教室側に逸れているが、
難なくキャッチできるだろう。
バギでスプレー缶を吹き飛ばすことは容易い。だがそれは魔法封じのスプレーを
本物だと認めることであり、同時にヘンゼルと敵対することを意味する。
かといってヘンゼルがスプレーを手にすれば間違いなくメロで本物かどうか試すだろう。
『魔法』への対策を持たれて『不安』を解消されるのは危険だ。
だがどうにも出来ない。ただ厄介な物がヘンゼルの手に渡るのを見ているしかない。
何と歯痒いことだ。歯軋りしてコナンを睨み付けたメロは、ある違和感に気が付いた。
いつの間にかコナンが手に何かを持っている。赤い大きな円筒の物体――消火器だ。
投げられた物を受け取る時、誰でもそれを注視してしまう。脇に逸れたなら尚更だ。
メロも散々印象付けられたスプレー缶に釣られて視線を上げてしまっていた。
人の視界は意外と広く、視界の端に捉えている程度でも大まかな動きは察知できる。
だが逆に言えば大きく動かない限り、気付きにくいのだ。
背後にある扉から物を取り出すなどは、ただ立っているだけと変わらなく感じただろう。
その一瞬の隙を突き、コナンは非常ベル下の収納庫から消火器を取り出したのだ。
オーバーリアクションで誤魔化して立ち上がり、手にしたスプレーを印象付けながら
少しづつ収納庫の前まで移動し、最後はスプレー缶を投げて視線を逸らしたのだ。
まるで『魔術師』がハトを飛ばした隙に、手品のタネを仕込むように。
(小僧、やりやがったな!)
ヘンゼルがスプレーを取ると同時に、消火剤が白煙となって廊下を埋め尽くした。
○ ○ ○
白煙で視界が遮られていたのは僅か数秒のはず。
危険を感じたヘンゼルとメロがお互いに数m退いたとはいえ、状況は変わっていない。
それなのに白煙の薄れかけた廊下からコナンの姿は忽然と消えていた。
お互い脇を抜けられた気配もなければ、教室へ逃げ込まれたわけでもない。
まるで安っぽいニンジャムービーでも見せられているようだ。
「あの子も『魔法使い』……そんなわけないよね?」
「窓から飛び降りた……いや違う!」
ヘンゼルとメロが不満の声を上げ、窓の一つを睨みつける。
窓から外に向かって太い布製のロープ、いや消防ホースが垂れ下がっていた。
消防ホースの片側は消火器とホースが入っていた収納庫の中へ続いている。
おそらく消火栓に接続されているのだろう。それなら大人が掴まっても外れはしない。
窓の外に人影はなく、下の植え込みまで降りたか、別の階に入ったかは分からない。
どちらにせよ逃げら切られたらしい。怪我をしている割に大した身軽さだ。
そうメロの意識が外へ向いた隙を突く様に、ヘンゼルがふわりと動いた。
「ケケッ! めろ危ナイゼ!」
「!?」
驚いた小鳥のようにメロが飛び退くと、一瞬前の空間をブレードが引き裂いた。
閃光のような一撃を紙一重で回避した事は、本来ならば賞賛に値することだろう。
だがそれはより確実に獲物を捕らえるための撒き餌に過ぎなかった。
待ち構えていた二本目の鎌が、計画通りとばかりに体制の崩れたメロを捉えた。
それは必殺の斬撃ではなく、狙い澄ました刺突。
ブレードは左肩口を貫き、メロを採集された昆虫のように教室側の壁に縫付けた。
激痛で手にしていた天罰の杖がカラリと足元に転がり落ちる。
幸いにして致命傷ではないが、次の攻撃はどうやっても避けられないだろう。
「さーて、魔法使いさん。パン焼き釜の中へ招待するよ」
微笑を浮かべながらヘンゼルが『キンチョ○ル』を取り出すと、
このために態々捕獲したんだと言わんがばかりに吹きかけた。
まるで農薬のようにむせ返る匂いがメロの鼻と口の粘膜を刺激する。
何とか目は閉じたが、魔法封じの効果以前にあまりの臭さで死にそうだ。
「どう? これで本当に『魔法』が使えなくなったかな?」
「ごほごほっ! 俺は同盟を結ぼうと言ったんだ。魔法の知識は欲しいだろ?」
「もちろん。でもね、僕たちは素直に出される毒入りのエサなんて要らないんだ。
欲しいのは悲鳴と嗚咽と血に塗れた本当のご馳走だけだよ」
カチャカチャと音を立てるアームが死神の持つ鎌に見える。
一振りするだけで何時でも天使のお迎えを呼べるだろう。
何とかしてこの場を切り抜けるしかない。だがどうやって?
頭から落ちたチャチャゼロは足元で意味ありげに笑うだけだ。
後はハッタリでも何でも使って『生かしておいた方が有用』と思わせるしか――
「聞きたいことは教えてやるさ。嘘はつかない。必要なら神にでも誓うぜ」
「僕たちの神様は、僕と姉様だけのものさ」
トンッ小さな音が鋭い痛みと共にした。続いてペチャッと何かが落ちる音。
カチャカチャしたアームの音に紛れているのに酷く鮮明に聞こえた。
左手から血が吹き出し、痛みが腕を駆け上がってくる。
視線を降ろすと左手の小指が無くなっていた。
「ねぇお兄さん。僕はもう腹ペコで仕方がないんだ。
お菓子の家も出せないくせに、僕からご馳走を取り上げるなんて酷いと思わない?
泣いて叫んで、本音を全部さらけ出したくなるまで、可愛がってあげるよ」
「ぐ……俺は嘘なんて言う気は――」
またトンッと小さな音がした。
「――――!」
「本当か嘘かを決めるのは、キミじゃないよ」
メロは必死に頭を回転させるが、この場を切り抜けるアイデアが浮かばない。
肝心のヘンゼルには情報を聞き出す気はあっても、話を聞く気はないらしい。
この二つは似てはいるが大きく違う。
何を言ってもヘンゼルは途中で拷問を止める気がないという事だ。
だが絶望はしていない。それは拷問の後にはチャンスが巡ってくるということだから。
大量のリードを奪われていても、まだ九回の裏が残っている。
ニアの鼻を明かせぬまま、こんな所で野垂れ死ぬ訳にはいかない。
「うーん、少し軽いのが難点だけど中々良い感じだね」
拾い上げた天罰の杖の握り具合を試すように、ヘンゼルはメロの顔を殴打した。
「パン生地はしっかりと捏ねないと美味しく焼き上がらないんだよ。知ってた?」
無造作に杖を振る度に、メロの顔は首振り人形のように右へ左へと方向を変える。
その姿が面白いのか、待望の鈍器を手に入れたからかヘンゼルは御満悦のようだ。
「もう少し長めに握った方が良いかな? お兄さんはどう思う?」
「…………!?」
悪魔のように無邪気な笑みを浮かべたヘンゼルを睨み返そうとして、
メロは思わず声を上げそうになるのを呻き声で誤魔化す。
ヘンゼルの後方、非常ベルの下にある火災用収納庫から探偵の小僧が顔を出したのだ。
まるで小動物が巣穴から辺りを見回すかのように。
そんな近くに隠れていたという事実より、なぜ外に出ようとしているかの方に驚いた。
全く理解不能だ。扉の影から人差し指を口に当てて、シーッとゼスチャーしている。
ヒーロー気取りのお人好しか? ただの馬鹿か?
だが上手く利用すれば助かる可能性が挙がるかもしれない。
ヘンゼルに悟られぬように、足元に転がっているチャチャゼロに足先で突いて合図を送る。
九回の裏ツーアウト。少し頼りないがピンチヒッターの登場だ。
(ケケケッ! マダ諦メナイノカヨ。シブトイネー)
○ ○ ○
(……イカレてやがる。これじゃ拷問、いや公開殺人じゃねぇか。バーロ!)
杖で繰り返し殴打を受けるメロを見て、コナンは頭を抱えていた。
隠れているのは非常ベルの下のある収納庫。
狭い空間だが、中の物を出してしまえば子供一人くらいは隠れられる。
煙幕代わりの消火器は廊下に捨て、消防ホースはロープの代わりに窓から垂らす。
窓から逃げたように見せると同時に収納庫のスペースを空けるためだ。
使っていない消防ホースはペラペラだから、後は中に入ってギリギリまで扉を閉める。
以前コインロッカーに隠れた時は酸欠になって気絶してしまったが、今回は平気なはず。
『消失魔術』と呼ぶには初歩的過ぎるトリック。
けれど他の事に気を取られている相手には、意外と気が付かれないものだ。
例えば怪盗を追いかける警官隊とかには絶対に。
(どうする。どうすればいい? どうしろってんだ。俺にどうしろってんだよ!?)
正解は分かっている。このままヘンゼルが惨殺を終えて立ち去るまで隠れていること。
それが最良にして無力な探偵が生き残るための唯一の選択肢。
メロはどう見ても犯罪者だ。悪い奴だと直感が告げている。
でも――アイツは「魔法で殺せ」と言われた時、魔法を使わなかった。
もしかしたら「殺す」事を躊躇したていたのかもしれない。
もしかしたら「庇ってくれた」のかもしれない。
出会い頭で魔法を使った時も、殺す気がなかったから弱い魔法を使ったのかもしれない。
誰だって死にたくはない。人を殺したくもない。殺される所も殺す所も見たくない。
見殺しだって殺人なんだ。そして犯罪者であっても『探偵』が見殺すわけにいかない。
大きな深呼吸を三回。コナンは静かにゆっくりと収納庫の扉を開ける。
隙間から確認していたが、ヘンゼルはメロを目の前の教室側の壁に縫い付けている。
つまり無防備な背中を晒して拷問を行っているのだ。
コナンは『はやぶさの剣』を両手で構え、一気に間合いを詰める。
殺気に気が付いたヘンゼルが振り向くと同時に『はやぶさの剣』が突き出された。
○ ○ ○
「――――!」
結果だけ言うなら、コナンが決死の思いで繰り出した剣はヘンゼルの脇腹を浅く
抉っただけに過ぎなかった。そして『無駄死に』という言葉が脳裏に浮かぶよりも早く、
バルキリースカートの一本を叩きつけられて宙に舞った。
吹き飛んだコナンは白く染まった廊下に赤い花を咲かせて転がり落ちる。
「――がはっ!」
「そんな場所に隠れていたなんて驚いたよ。だけど僕の――?」
ヘンゼルは首を傾げた。子供なら簡単に真っ二つになるほどの斬撃だったはずだ。
だがコナンは死んではいない。呼吸は荒いが、出血量から見ても腹部を斬っただけ。
内臓まで届いていないようだ。何故だろう、そう思ったが謎は直ぐに解けた。
廊下には『はやぶさの剣』の砕けた刀身とブレードの破片が散らばっていたのだ。
どうやら再生したばかりのブレードは、コナンの剣に勝てずに砕けてしまったらしい。
少し酷使しすぎただろうか。残る二本も聞こえぬ悲鳴を上げているように感じる。
ヘンゼルの脳裏に湖畔で戦った、勇ましくも楽しい少女の姿が思い浮かんだ。
コナンが生き残ったのは彼の実力ではない。プレセアの力だとヘンゼルは思う。
「あのお姉さんに守られたんだね。でもそれで終わりさ、臓物をぶち撒けてね」
ヘンゼルが数mも吹き飛ばしたコナンへと歩き出す。ゆっくりと恐怖を醸し出すように。
両手で天罰の杖を持ち、その脇でブレードを失ったアームが蠢く。二本のブレードを
羽根のように広げる様は、天使の顔を持つ悪魔かはたまた六臂の阿修羅か。
上半身を起こしたコナンは傷のせいか、恐怖のせいか立ち上がれないようだ。
「へへヘ、残念だけどよ。俺にだって初歩的な『魔術』ぐらい使えるんだぜ?」
「嘘つきは泥棒の始まりさ。かくれんぼは『魔法』じゃないんだよ」
「分かってネーな。『魔術』だっての」
「?」
残る二本のブレードでコナンをバラそうと廊下を進んだ瞬間、頭上を影が通り過ぎた。
視界の端を通った物体を反射的に見上げてみれば、メロの頭で喋っていた人形だ。
不気味に笑う空虚な顔。その叫び声を聞いたヘンゼルに動揺が走った。
「ケケケッー! チャチャゼロ様ノ『魔法の射手』ハ絶対ニ避ケラレナイゼー!!!」
「――!!!」
あれは自分で動けたのか? あれは空を飛べたのか? あれは『魔法』を使えるのか?
そういえばメロにはスプレーを使ったが、人形には吹き付けていなかったはず。
もう少しヘンゼルが冷静ならば、背後のメロがチャチャゼロを投げただけだと気付いただろう。
だが『魔法の射手』と『避けられない』という単語がヘンゼルの動きを限定させた。
『魔法』の被害を防ぐため、咄嗟に二本のブレードを交差させ目の前に防壁を作り出す。
避けられないのなら防ぐしかないが、強力な『魔法』ほど隙は大きいはずだ。
その隙を狙えば――
「――!?」
だが衝撃は『魔法』に備えたヘンゼルの側面――コナンに抉られた脇腹から襲った。
見ればグッタリとしていたはずのメロが消火器で思い切り殴り上げていた。
持ち手を右逆手に持ち、左手を添えて下方から掬い上げるように振り抜かれる。
肋骨が折れる嫌な感触が全身を這い回る。
虚を突かれたヘンゼルの体はくの字に曲がって吹き飛び、教室の中へと放り込まれた。
(――――どうして!?)
机や椅子が吹き飛んでメチャクチャになっている教室の中。
埃だらけの床の上に横たわったヘンゼルが、食いしばった歯をギリッと鳴らる。
脇腹の傷は痛むが無理をすれば暫くは動ける。二本とはいえブレードは健在だ。
廊下の二人を仕留めれば、怪我を治すことも出来る。まだ戦える。
そう思った立ち上がろうとした時、廊下から大きな声が聞こえて来た。
その中には、さっき外で戦った『魔法使い』と剣士の声も混じっていた。
もう騒ぎを聞きつけて四階まで来たらしい。
「助けに来ました! 大丈夫ですか!? 」
「おい! 敵は何処にいる!?」
「敵は教室の中だ! さっさとお前たちの『魔法』を叩き込め!」
「ケケケッ! ヤッチマイナー!」
悔しいが潮時だ。複数の『魔法使い』や剣士を相手にする余裕は無い。
冷静に決断したヘンゼルは、スタングレネードの閃光を残して窓の外へ飛び出した。
そして蜘蛛のように外壁を下ると、休息を取る為に校外へと姿を消した。
【D-4/校外・学校より逃走中/1日目/真昼】
【ヘンゼル@BLACK LAGOON】
[状態]:中度の疲労。脇腹に裂傷及び肋骨数本を骨折(無茶をすれば動ける程度)
[装備]:バルキリースカート@武装錬金、天罰の杖@ドラクエX
[道具]:支給品一式、スタングレネード×7、殺虫剤@現実、
[思考]:少し疲れた。
第一行動方針:学校から離れて休息する(バルキリースカートも回復させたい)
第三行動方針:手に持って使える鈍器や刃物が欲しい(銃でも構わない。その時は姉様になる)
第四行動方針:『魔法使い』に関する情報を集める(『魔法』関係者は警戒する)。
基本行動方針:いろんな人と遊びつつ、適当に殺す。
[備考]:バルキリースカートの使用可能なアームは2本。
メロを魔法使いだと認識しました。
殺虫剤を「魔法封じスプレー禁超類」だと思っています(半信半疑)。
逃走方向は次の書き手さん次第で。
○ ○ ○
「助けに来ました! 大丈夫ですか!?」
「おい! 敵は何処にいる!?」
「敵は教室の中だ! さっさとお前たちの『魔法』を叩き込め!」
「ケケケッ! ヤッチマイナー!」
静まり返った廊下にネギや小狼の声が響いていた。
救援が間に合った――のではなく蝶ネクタイ型変声機を使ったコナンの一人芝居だ。
廊下にはメロと倒れたコナンの二人、それとチャチャゼロだけの貸しきり状態。
冷静になってみるとかなり格好悪い作戦だが、『魔法使い』のネギを嫌うと考えた
ハッタリは功を成し、教室の中のヘンゼルは廊下を確認もせずに退散したようだ。
即席のコンビでも相手が何を考えているか、推理しながらなら結構なんとかなるもんだ。
「ふぅぅぅ…………」
「何度も同じ手に引っ掛かるとは、学習能力のない奴だ」
ヘンゼルが教室から逃亡したことを確認して、メロが勝ち誇った。
右手に持っていた消火器をドンッと降ろす。煙幕に使って中身が空とはいえ、
こんなものでスイングされたら、ヘンゼルの軽い体など場外ホームランだろう。
気分はタコ博士をビルから叩き落すクモ男といったところか。
本当は殺す気で頭部を狙ったのだが、左腕が上がり切らずに脇腹に当たったのは内緒だ。
この場を凌げたのだから、結果オーライとしておこう。
「お前……なぜ出て来た? 大人しく隠れていれば良かっただろう?」
メロは怪我で動けないコナンを横目に、コナンのランドセルを漁った。
保健室から何か医療品でも持ってきていないかと思ったのだ。
コナンの怪我は中傷以上致命傷未満。いわゆる死にはしないが身動きは困難という類だ。
緊張の糸が切れた今は起き上がれもしない。当然、手当てをしなければ大事に至る。
量は少ないが出血は止まっていない。
「分かンねぇ。でも……見殺しにするわけにはいかネーだろ」
「さっき俺に殺されかけたっていうのに馬鹿かお前は。恩でも着せたかったのか?」
ランドセルの中には銀製の銃弾と妙なスコープ、それとラム酒が入っていた。
ろくな物が入っていない。保健室によったのなら包帯くらい持っておけと舌打ちをする。
そしてラム酒を口に含むと傷口に吹きかけた。
アルコール純度80%、火を点ければ良く燃えるだろう。簡易的な消毒には十分だ。
傷に染みる痛みが心地良い。生きている事を実感させてくれる。
「へへ……自己満足だから気にすんなよ。死にたかネーけど見殺しも嫌ってだけさ」
「ふん。これからお前は助けた俺に殺されるんだ。恨むなら馬鹿な自分を恨むんだな」
止血用の包帯代わりにコナンの破れたシャツを引き裂いて傷口に巻付ける。
簡易すぎる手当てだが保健室までなら十分持つだろう。
「……やっぱりそう来るのかよ。死にたかネーけど仕方ねーよな。
正解は分かっていたのに選ばなかったんだから。自業自得、『探偵』の辛いところさ。
ああ、それと――さっきは助けてくれたろ。ありがとな」
「……皮肉のつもりか? お前のようなガキが気安く『探偵』を名乗るな。
どうせそのトロい脳みそで、この場を誤魔化す『ペテン』を考えているんだろうが」
そう言うとメロは筒状に丸めた参加者名簿をコナンの口に捻じり込んだ。
そしてもう一口、ラム酒を口に含むとコナンの傷口へと吹きかける。
「ぎゃっ!!」
コナンは情けない絶叫を上げて呆気なく意識を手放した。所詮は子供か。
メロはシャツを脱ぎ裂くとコナンの傷口に巻き付け縛り上げた。
不格好だがこれで少しは出血を抑えられるはずだ。
「オイオイ、殺サネーノカヨ?」
「左腕の感覚が殆どない。オマケに武器も失った。今こいつ一人を殺したところで、
次がなければ意味もない。だからこのお人好しの馬鹿は『生かしておいた方が有用』だ。
こいつの仲間は大勢いるからな。仲間の命の恩人を大歓迎してくれるだろうさ」
「ケケケッ! 一網打尽ニスルツモリカヨ。ヤッパリ悪党ダナ!」
【D-4/学校・4F廊下/1日目/真昼】
【メロ@DEATH NOTE】
[状態]:軽い打ち身と掠り傷。顔に無数の殴打傷。左手の小指と薬指欠損。
左肩に刺傷(殆ど感覚がないが無茶をすれば何とか動く程度)。ツンデレ。
[装備]:賢者のローブ@ドラクエX、上半身裸
[道具]:基本支給品*2(ランドセルは青)、チャチャゼロ@魔法先生ネギま!
ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン(ちょっと不調)
バカルディ@ブラックラグーン、銀の銃弾14発、
シルフスコープ@ポケットモンスターSPECIAL、
リリスの食料と飲み掛けの飲料水
[思考]:とりあえず、こいつは生かしておいて利用するか
第一行動方針:保健室で治療及び物資の調達をする
第二行動方針:コナンをダシにしてその仲間に取り入り、隙を見て殺害する
第三行動方針:『ご褒美』を貰い、その過程で主催側の情報を手に入れる。
第四行動方針:どうでもいいが板チョコが食べたい。どこかで手に入れたい。
基本行動方針:ニアよりも先にジェダを倒す。あるいはジェダを出し抜く。
[備考]:ターボエンジン付きスケボーは、どこか壊れたのか、たまに調子が悪くなることがあります。
バカルディと飲み掛けの飲料水は、リリスが口をつけたため弱い催淫効果を持っています。
怪我はアルコール(バカルディ)で消毒済み。
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:右腕骨折(応急処置済み) 。全身に小さな裂傷。腹部に斬傷(放置すると危険)
[装備]:なし(上半身裸、包帯代わりにメロのシャツが巻いてある)
[道具]:蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、参加者名簿(口に咥えている)
[思考]:気絶
第一行動方針:????
第ニ行動方針:四階教室に居るはずの古手梨花と灰原哀を探す。
第三行動方針:ネギ、小狼の仲間を早めに見つけたい。
第四行動方針:リリスを倒す為に協力してくれそうな人物を探す。
最終行動方針:ロワから脱出する。
[備考]:リリスと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
一休さんの情報は部分的にのみ信じています(灰原哀が手錠を掛けられ囚われているなど)。
怪我はアルコール(バカルディ)で消毒済み。
メロを魔法使いだと思っています。はやぶさの剣@ドラクエを失いました。
ヘンゼル、コナン、メロを投下終了しました
最初トリップを打ち間違えた……orz
投下乙!
コナンの策が冴えてて見事。ステルスメロは怖えええ。
ヘンゼルはやっぱり御せなかったか、うーむ凶悪だ。
というかキンチョールwwww
>>89 乙です
コナン切り抜けたか…
メロがどんどん流されてる気がするんですがww
GJです!
やべぇ、バーローがかっこいい。
ホース囮にして隠れる作戦も頭いいし、その後にメロ助けに行くのとか熱すぎで燃えた。
でも、これきっかけにメロがマーダー脱却するかと思ったら、考えてること結構外道。
つか、キンチョールに怯えるマーダー達とか多分ロワ史上初www
| こ……この道具は
| もしや……
| “キンチョ○ル(禁超類)”……!?
\_ __________
V
┌─┐
r -''-、 _|___l|__≡ ノVVVVVVVVVV
(;`八´) 8(・≦・;3≡ ) なにっ
/ヽ三ハ (|l 三/l) ) 知っているのか?
) 雷電っ
あと、誤字見つけたので抜き出しておきます。
>>63 鶏マークの赤い瞳が 力頭良く見つめ返した。
>>89 GJ。
コナンよく切り抜けたな。禁鳥類てwww
メロのツンデレとかヘンゼルのヤバさとか色々感想は有るが。
持ってて良かったバカルディー。
>>89 GJ。キンチョールwwww
メロは狡猾なステルスになれそうなのに、ツンデレかよw
それヘタレフラグだぞメロ。
ところで、蝶ネクタイ型変声機の声の番号の振り分けは、
>>3の名簿の通りでおk?
ふみことリリスの名簿上の扱いで小狼の番号が変わるから
一応確認しておきたい。
>>88 「未知への恐怖」というものをこれほどたくみに利用するとは……。
いやあ、GJ!!でした。
キンチョールで危機を逃れてしまうコナン、すごすぎ。
そしてメロ黒すぎw
後、題名がなんとなくキンゲっぽいなあと思ったのは俺だけじゃない……よね?
96 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/26(土) 12:09:50 ID:joIzEyXN
キンチョールGJ
双子は相変わらず無理はしないなあ
連戦なのにほとんど疲れを感じさせないのも怖い
まあ双方負傷したからしばらくは体力回復だろうけど
放送まであとどんくらいなんだろうか?
レミリアお嬢様の反応が楽しみだ
無関心かマーダー化か
メロは日本語理解できた筈。
と思ったが細かいことは気にしないぜGJ!
コナンが頭のよさを見せてくれたところがいい
でもメロのハッタリはコナンにはばれそう
>>97 読めてもそれが殺虫剤のブランドとは知らないんじゃないかな
>放送まで
【午後枠】
レミリア、プレセア&アルルゥ、葵&ベルカナ、
桜&イリヤ&梨々、フェイト&ブルー&イヴ、グレーテル
【真昼枠】
グリーン&リリス、ひまわり&ククリ←のび太、イエロー&リルル&ネス←トリエラ
なのは&インデックス&ニケ&エヴァ&ヴィータ&勝
シャナ&小太郎&双葉←紫穂、はやて&トマ&アリサ←みか
白レン&イシドロ&蒼星石&タバサ、千秋←パタリロ&弥彦
ニア←キルア&太一、ベルフラウ&雛苺、コナン&メロ
カツオ、きり丸、レックス、ヴィクトリア、しんべヱ、ヘンゼル、
【昼枠】
小狼&リンク、梨花&灰原、一休さん、
ジーニアス&ベッキー←薫、ミミ 、金糸雀
平均してあと5時間くらい? とりあえずは、キャラの大半を午後まで進めることが目標か。
湖上の三竦みと学校組の残りを進められば、放送までぐっと近くなるんだけどなぁ。
同じ昼枠でも、ミミは気絶してたことにすればそれこそ午後や夕方まで時間すっ飛ばしても平気だし、
金糸雀も誰とも会えずにうろうろしてたことにして数時間は潰せるんだけど、
こっちはリアルタイムでイベント起こってるから…
昼枠が消えるまでは夕方にキャラを進ませないほうがいいな。
6時間もキャラ同士の差があるのはキツい
湖上の三人組は、少し前のベルみか組と似てるんだよな……
・「ゲーム系」「4コマ」出展の参加者が含まれているため、キャラ把握が難しめ
・周囲の状況との兼ね合いから動かしにくい
あそこは【昼】だけど、周囲の【昼】〜【午後】の動きをみると
レックスを中心とした一連の流れの処理がネックになりそう。
1.【真昼】にレックスが真横の橋を移動している。
それまでに三人は湖上を離れていなければならない。
(もしくは見つからない場所(西の山地帯や水中等)に移動していなければならない)
また、破壊や大きな音などに周囲の参加者は誰も気づいていないことから、
湖上では大規模な戦闘沙汰を起こしてはいないと思われる。
(他の二人はともかく、薫が戦闘した場合目立つのは必至)
2.【真昼】に湖の北〜北東で起こった雛苺・レックスを中心としたごたごたに巻き込まれていない。
おそらく、三人は東方面には移動していない。(?)
ちなみに、
【午後】に、プレセア&アルルゥが城から探索に出てくる。
また、橋の南岸でイリヤがさくら・梨々と合流する。
湖上組は、【昼】の位置のままだとこの二組にちょうど南北を挟まれている。
多分、湖上組が動けばこの二組も動きやすくなるんじゃないだろうか。
プレセアとアルルゥが出てくるのは3時以降だから、午後の中でも後半になる(三時のお茶会してるので)。
だから、この組の動きはあんまり関係なさそう。湖上3人が絡むとしたら、さくらチームと雛ベルかな。
と思ったらさくらチームは午後枠だった。うーん、2時間もズレてると流石に絡まないか。
何か理由づけがあれば可能だろうけど。
さくら組だと、イリヤははやてとリインフォースに合流されると袋叩きの目に遭いそう
だと考えるだろうから、北の方に行かないように誘導しそう。
湖上組、困った状況ですよねぇ……。
あれを書く前の段階も結構困った状況だったんですが、書いた後からも周囲が動いてますし。
はてさて。
予約していたタワー組、投下します。
今回も前後編……。予定より長くなってしまった。。。
電気の供給が途絶え、やや薄暗くなった展望室に呼び出し音が響く。
恐らくは階下からの内線電話。主電源とは別系統を持った緊急用回線。
ニアは、考える。
(そう、何故ここで向こうが電話をかける必要があるのでしょうか? それは……!)
やはりアクション仮面の犠牲は無駄ではなかった。
ヒーローの命と引き換えに落ち着きを取り戻した彼の頭脳、それが普段通りの鋭い回転を始める。
最初に電源を落とされた時には、まず混乱に乗じた突入・襲撃を懸念した。
しかし、これだけ時間が経っているというのに大きな動きは見えない。
エレベーターは動いていないし、エレベーターシャフト内にも動く者はいない。非常階段にも人影は無い。
支給品などの力で空を飛べる者が居たとしても、展望室まで昇ってくれば流石に目立つだろう。
つまり。
奇襲や強襲は、もはや無いと言っていい。奇襲の効果を得るには、既にタイミングを逸している。
(強襲前に存在を確認しておく、という可能性がほぼ消えた以上……
この電話は「展望室にいる人物と何らかの会話を交わしたい」、という意味でしかありえない。
それも、直接エレベーターで上がるのではなく、こんな迂遠な方法を使ってまで。
ということは……!)
ニアの頭脳の中で、いくつもの事実が繋がり、1つの結論に繋がる。
バラバラのジグソーパズルが、綺麗にハマっていく感覚。
間違いない。
この電話をかけてきた相手の正体も、その性格も、彼らの行動方針も、全て確信できた。
不安があるとすれば、「彼ら」の中でしっかりと意思統一が成されているか否か。
そしてさきほど上から見えた、「チラチラとタワーの方を窺っていた第三者」がどう動くか。
けれどそれらの不確定要素も、今のニアの自信を揺るがすには至らない。
(大丈夫。これは「私のフィールド」です。Lキラ=夜神月とも散々やりあった、私のための戦場ですから)
向こうの仕掛けたこの状況。
電話越し、という互いに限られた情報に基づく心理戦こそ、実はニアが誰よりも得意とする「戦い」だ。
深呼吸1つすると、彼は「勝利」を確信しつつ、受話器に手をかけた。
* * *
「出し抜かれたのは……俺達の方かよ!」
キルアは叫ぶ。
彼らにガスを吸わせた「展望台の人物」、それを追い詰めたと思ったら、タワーの外に参加者の反応だ。
慌てるのも無理は無い。首輪探知機を手にした太一と、受話器を手にしたキルアの視線が交錯する。
どうする?
この状況で、どう動くべきなんだ?
「その商店街の方の首輪、どう動いている?!」
「いや、今は動いて無い。探知機の範囲のギリギリに留まったままだ。
でもこれ、妙だな……。反応が2つ、ほぼ重なってるぜ。おんぶでもしてんのかな」
探知機を手に、太一が首を傾げる。
小さなモニターに映し出された光点は、ほぼ同じ位置にある。ほとんど密着していると言ってもいい状況だ。
太一が掲げて示した画面を見ながら、キルアは考える。
(さっき展望室に居たのは、「2人以上」の人間だ……。
最低でも、逃げ込んだ血まみれのヤツと、ガスを準備していたヤツの2名。
だが、それが全部かどうか分からない。他に仲間が居なけりゃ、2人とも外にいる、で終わりだけど……!)
最高の暗殺者になるべく叩き込まれた教育が、常に最悪の事態を想定させる。
さらに別働隊が居るのではないか? タワーの展望室に残っている者が居るのではないか?
探知機の索敵範囲外に居るだけで、何人もの参加者がタワーを取り囲んでいるのではないか……?
キルアの頭には、悪い可能性ばかりが次々と浮かんでくる。
「どうする? 外の様子、見にいくか?」
「いや、太一はここに残ってろ。万が一ってこともある、俺が見に行――」
ガチャッ。
『――もしもし?』
それはキルアが腰を浮かした、まさに、そのタイミングだった。
耳から離しかけた受話器から、聞き覚えの無い声が聞こえてきたのは。
『はじめまして――というのは変ですかね?
まあ、先ほどは顔も合わせずに帰られてしまいましたから、『はじめまして』でいいんでしょうけれど』
「――だ、誰だよ、オマエ」
激しく動揺しつつ、すんでのところで平静を装おうとするキルア。傍にいる太一も息を飲む。
だが、電話越しに聞こえてきた次の言葉によって、彼らの余裕は今度こそ完全に吹っ飛んだ。
『そういうあなたは、『キルア』さんで間違いありませんね? お連れさんもご一緒ですか?』
「な――!」
『やはりそうでしたか。あの後どうなったのか心配していたのですが、その様子では大丈夫そうですね』
淡々と紡がれる、静かな言葉。その落ち着きぶりが、キルアをさらなる混乱に導く。
どうして自分の名前を知っている!? こっちの何をどこまで把握されている!?
展望台の主はキルアの思考が追いつくのを待たず、ゆっくりと名乗りを上げる。
『さて、私の名前でしたね。私のことは――そう、N(エヌ)とでもお呼び下さい』
* * *
(やはり、あの時の2人でしたか)
受話器を握りながら、ニアはニヤリと笑う。
今頃、タワーの下では2人が目を白黒させていることだろう。読心術でも使われたと思っているかもしれない。
けれども、種を明かしてしまえばなんてことはない。
ごく単純な推理だった。
電気を落とし、しかし即座に強襲をかけるでもなく、ニアの行動を制限するに留めた階下の人物の行動。
それはすなわち、それだけ展望台にいる人物を強く警戒していることを意味していた。
だが、いくら慎重な人物だって、普通ならここまでの手は打たない。普通は展望台まで上がってくる。
こういう行動を取る理由があるとすれば、それはまず1つしかない。
この状況を仕掛けた人物が、過去に一度、展望室で痛い目に遭う危険を知っている場合だけだ。
そして、そんな条件に当てはまるのは、1組しかない。
(まあ、あの2人があの後に他の誰かと会っている可能性も、無いわけでは無かったのですが……
決め付けて言い切っておいて、もし違っていたら謝ればいいだけの話ですから。
当たっていた場合に得られる精神的優位を考えれば、分のいいギャンブルです)
『キルア』という名前も、あの時エレベーターで上がってきた片方が口にした名前だ。
『キルアを呼んだ少年』の方の名前は分からないが、その声色は覚えている。
電話越しに聞こえた声が『その少年』で無かった以上、受話器を『キルア』が握っているのは当然の帰結。
彼らが2人組だった以上、簡単な消去法だった。
ともかくこれで、一気に精神的イニシアチブを取り戻した。
だが、まだまだ油断は禁物。
追い詰めすぎてはかえって相手をパニックに陥らせ、強攻策に走らせてしまう。
かといって、甘く見られては彼らをコントロールできなくなる。
繊細な気遣いと大胆な決断が同時に要求される、難しい交渉だ。
だが幸い、相手の行動方針の予測もついている。性格についても想像ができている。
舵取りの方向さえ間違わなければ、負ける理由がない。ニアは言葉を選びながら、口を開く。
「最初に言っておきましょう。私は、あなた方がしたであろう『誤解』について、ほぼ見当がついています。
その上で、言います――私は、いえ、『私たち』は、殺し合いには乗っていません。
あなたたちと、同じように」
* * *
『私は、いえ、『私たち』は、殺し合いには乗っていません。あなたたちと、同じように』
明らかな偽名を名乗った『N』の言葉に、キルアと太一は顔を見合わせる。
Nの放つ一言一言が、キルアたちの先回りをしているような雰囲気。
何をどう推理したのか、キルアたちが殺し合いに乗っていないことを既に見抜いている。その上での言葉。
「ちょ、ちょっと待て! でも、さっきは……!」
『私が問答無用で攻撃してきた、と言うんですね? その点については素直に謝罪します。
ただあの時点では、私にはあなた方の真意は分かりませんでしたし、取れる手段も限られていました。
エレベーターを2基とも封じるような使い方をされては、こちらも警戒せざるを得ません』
丁寧な、しかし言外に込められた微かな非難に、キルアは ぐ、 と言葉を詰まらせる。
逆の立場になってみれば、逃げ場を完全に封じるあんなやり方をされれば、確かに怖い。
「絶対に逃がさないぞ」、と態度で表明しているのだ、「襲われる」と勘違いしてもおかしくない。
『あの時使った煙は、吸った者を一定時間無力化するだけの効果しかありません。だから使いました。
今現在、特に後遺症などはないでしょう?』
「……どうかな。今はなくても、後からフラッシュバックとか起こるかもしれないぜ?」
『だとしたらご愁傷様です。そうなったとしても、トータルで見れば被害は最小限に抑えられたと思いますがね。
私はあの場を、誰も傷つけることなく収めるつもりでしたが……
むしろ、逃げられてしまったことの方が想定外でした。
タワーから出た所で好戦的な人物に襲われやしないかと、ハラハラしましたよ』
キルアには豊富な毒物の知識がある。様々な毒を受けた経験もある。
言われてみれば、確かにあのガスは命を奪うには至らない種類のモノだ。
フラッシュバックの話も単にNに揺さぶりをかけようとしただけで、本気で心配してはいない。
多少幻覚作用が入っていたようだが、あれをいくら吸ったところで死なないだろう。
もちろん、無力化した上で暴力を振るうことは、不可能ではないのだが……。
『私は上から全てを見ていました。
あなた方が、あの胴着の少年・弥彦と遭遇する所も、その前に弥彦の身の上に起こったことも』
「ヤヒコ、って……あの剣持ってたヤツか?」
『ええ。まずはその時の経緯をお話しましょう。
そうすれば、こちらが取らざるを得なかった行動も理解して頂けるはずです。
真偽を判断するのは、それからでも遅くはないでしょう?』
疑われていることを既に承知の上で、それでも話を聞いて欲しいというNの申し出。
相手の掌に乗せられているような敗北感と不快感を感じつつ、しかしキルアにそれを拒む理由は無かった。
* * *
ニアは、確信していた。
階下にいるキルアたちは、相当に「慎重な性格」である。そして、相当「頭がキレる」。
先ほど展望台に襲撃をかけてきた時も、この今の状況も、「石橋を叩きながら渡る」ような印象が感じられる。
あるいはそれは2人に共通する性格ではなく、この電話を手にした「キルア個人」の性格かもしれない。
こうして話していても、キルアの言葉の端々に「疑いながらも可能な限りの情報を探ろうとする態度」が窺える。
だからキルアは、不信の念が拭いきれずとも、最後まで話だけでも聞こうとするだろう。
嘘かもしれない、と疑いつつも、最後まで全てを聞いた上で判断を下そうとするはずだ。
逆に、展望台に入ってきた時、うっかり仲間の名前を呼んでしまった「もう1人」は、ちょっと危うい。
考えなしのバカか、それとも考えるより身体が動いてしまうような直情型の人間か……
こちらの方とも電話で話が出来ればいいのだが、今は後回し。
電話に出ているのがキルアである以上、まずは彼から攻略せねば。
彼らが「殺し合いのゲームに乗っていない」のは、もはや疑う余地はない。
2人組で動いていた時点で、「出会った者は問答無用で皆殺し」という戦略ではないと分かる。
そしてこの2回目の接触に際しても、電源を落とすだけに留め、電話をかけてきた。
「あなたたちと、同じように」と、少しカマをかけてみた感触から言っても、間違いないだろう。
彼らは慎重なだけだ。根っこの部分では、善人だと言っていい。
(弥彦に首輪探しを頼んだことと、眠り火の催眠を弥彦にかけたことは、話すわけにはいきませんね。
けれど、それ以外は……)
出すべき情報は惜しみなく出してこそ、得られるものがある。
相手の持つ情報を握ることができれば、相手の行動をコントロールできる。
ニアは、語り始めた。
弥彦から聞いた話とニア自身が見聞きした事実を統合した、可能な限り真実に近いお話を。
* * *
Nが淡々と語ったことは、いささか突飛ではあったが、筋は通っていた。
行動を共にしていた弥彦・のび太・カツオの3人が、子豚と遭遇し。
食料にしようと解体したら、子豚の死体が少年の死体に変化。
2人が逃げ出し、弥彦1人が取り残され――そこに出くわしたのが、キルアと太一。
その一部始終を、Nはタワーの上から全て見ていて。
そして、逃げた弥彦を追った2人との、展望室での遭遇。
その説明は、一応、弥彦という少年やNの行動について過不足無く説明することができる。
しかし、豚が少年に変身する……いや、少年が豚に変身していた? そんなバカな。
普通なら一笑に伏すようなヨタ話だ。
だが――問題の核心はそんな所にはない。
ニアの話と、さきほど街で遭遇した茶髪眼鏡の話が、全く噛み合っていないことの方が、よっぽど重要だ。
茶髪眼鏡は、黒髪の少年が小さな少年の首を斬った、と言った。
ニアは、3人組が子豚を斬ったら少年になった、と言う。
どちらも、指していた場所から言って、あの死体に関する話なのは間違いない。
どちらかが嘘をついている。そして嘘をつくからには、目的がある。
普通に考えれば、信じ難いのはNの話だ。
けれども、嘘として思いつきやすく作りやすいのは、茶髪眼鏡の話だ。
キルア自身、必要とあらば嘘をつくことに躊躇いがないだけに、簡単に分かってしまう。
人間が豚に変身するのも、支給品によってはできるのかもしれないし……。
Nがこんな入り組んだ嘘を吐いても、利益を得られるとは思えない。
答えはほぼ出てしまっていたが、それでも一応、彼は尋ねてみる。
「……証拠はあるのかよ?」
『ありません。少年の死体を検分すれば何か分かるかもしれませんが、確証はありませんね。
ただ、嘘をつくならこんな嘘はつきません。もうちょっとマシな話を作ります。
『豚が少年に』の所で、もっと突っ込まれるかと覚悟していたのですがね』
「…………ッ!」
Nは一方的に情報を提供しているように見えて、その実、色々なものを相手の反応から読み取っている。
キルアが嘘つきの心理を考え、ニアの話を信じかけていることを、見抜いている。
そして「豚が人間に化ける」程度の話はすんなり受け入れられるような人物だと、見抜いている。
キルアの額に、汗が滲む。
(心が読める能力者なのか? センリツみたいに声から全てを読み取っているのか? それとも……)
ただ……そのことをわざわざ告げるのは、何故だろう?
精神的優位を示し圧倒するためか、情報開示で信頼獲得を狙っているのか、それとも単なる自己顕示欲か。
判断つきかねるキルアに、横で荷物を漁っていた太一が小声で呟く。
「磯野カツオ、野比のび太、明神弥彦……確かにどれも、名簿にある名前だぜ。
Nって名前は、やっぱり載ってない」
「そうか。……おいN、その『弥彦』って奴は今そこに居るのか?」
キルアがぶっきらぼうな口調で尋ねたのは、何も苛立ちからだけではない。
もしもその弥彦が展望室にいるなら、電話を代わらせればいい。
当事者と話ができれば、もう少し分かることもある。
それにNの話が本当なら、弥彦は真っ直ぐだが素直な性格。Nよりよほど「やりやすい」相手。
逆に、言葉を濁して弥彦を出そうとしないなら、Nが嘘をついている可能性がグッと上がるわけで……。
少しでも主導権を取り戻そうと考えを巡らせるキルアに、Nは実にあっさりと告げる。
キルアが想定していた、2つの反応のどちらとも違う答えを。
『いえ、今彼はタワーの外に出ています。
少し探してきて欲しいものがあったので、おつかいをお願いしました』
「!!」
「!! ……おいキルア、外って、もしかして……!」
「しッ!」
思わず声を上げかけた太一を、キルアが鋭い声で制止する。
太一が手にした、首輪探知機。そこに映った、未だに動かない2つの光点……!
探知機の存在は、情報戦における重要な切り札、Nに対する大きなアドバンテージなのだ。
しかし、Nはそんなキルアたちの短いやりとりを見逃さなかった。間髪入れずに問い掛けてくる。
『外? 外に誰かいるのですか?』
「い、いや、それは……」
『誰かが近くにいるんですね。
そこから見えるのですか? それとも、監視カメラか何かで捉えたということでしょうか?』
「…………」
『それが弥彦なら、今までの話で触れてこないわけがありません。
ということは――見知らぬ人ですか? 先ほどの話に出た、野比のび太や磯野カツオではありませんか?』
「…………」
『ああそれとも、『外に誰かいる』という所までは分かっても『それが誰か分からない』、と、そういうことですか』
「……!!」
思わず息を飲む。そして瞬時に息を飲んだこと自体を後悔する。
電話越しにも、向こうがニヤリ、と笑ったのが見えたような気がした。
『なるほど、なるほど……。支給品か何かの力で他の参加者の動きが分かる、と、そういうことですか。
呼吸や体温を元に生命活動を探知――いえ、違いますね。
参加者全員につけられたこの『首輪』の反応を拾い、表示している。そうでしょう?』
ここまで来ると、もう言葉もない。嘘や沈黙にも意味がない。
キルアは肯定する代わりに、降参の意を込めて吐き捨てる。
「てめぇ……何者だよ?!」
『探偵です。なに、簡単な推理ですよ。
『首輪』に元々備えられた機能を考えれば、主催者側がそういう機械を作るのも簡単そうですしね』
Nはサラリと言うが、これが簡単な推理のわけがない。
安楽椅子探偵、という言葉が脳裏に浮かぶ。自身はほとんど動くことなく、難事件を解決してしまう探偵。
ハンターの世界にも似たような存在はいるが、それだって多くは念能力に助けられてのことだ。
Nの推理力は、それさえ上回るのか。それとも、Nもまた、何らかの特殊能力を持っているのか。
どちらにせよ、舌戦でキルアたちが勝てるような相手ではない。
人格的には気に喰わない。一言一言がいちいちカンに触るし、人を小馬鹿にした態度が激しく不快だ。
このNという男、間違っても友達にはなりたくないタイプだ。
だが――その能力だけは、本物だ。
『有効範囲は結構狭そうですね。タワーの中に居ながら、展望室にいる人数も分からないわけですから』
「……しくじったな。『弥彦はいるか?』なんて聞くんじゃなかった」
『そしてここまでのあなた方の態度から察するに、その人物はしばらく動いていない――そうですね?
外に動きがあったのなら、キルアさんがそこまで落ち着いていられたはずがありませんから』
「ああ、そうだよ。それがどうした?」
『今捉えている反応の数、それから方向と距離を教えて下さい。ひょっとしたら――』
Nは笑う。
電話越しにも分かる楽しそうな声で、とっておきの情報を開示する。
『ひょっとしたらその人物、この展望台から見えていた『あの少年』かもしれませんから』
* * *
結局、カツオが心を決めるまでには、かなりの時間を要した。
悪い点のテストも早めに見せれば小言で済む――
そうと分かっていても、いつもそれができずにカミナリを喰らってしまう。
そしてそれを何度も何度も繰り返す。
それが磯野カツオという人格なのだ。この局面においても、彼の性格が簡単に変わるわけがない。
(でも……行くしかないよね。他に利用できそうな人もいないみたいだし)
タワーのように目立つ場所ならば、他の人物が来るかもしれない、という淡い期待があった。
もしも新たな登場人物が出現すれば、適当な話をデッチ上げ、衝突を演出することもできただろう。
けれども、いくら待っても誰も現れない。あんまり時間を置けば、明神弥彦が戻ってくる恐れもある。
(明神があの2人に何を言ったかは分からないけど、明神が言ったことこそ嘘だ、って信じさせなきゃ……)
カツオは恐る恐る、タワーとの距離を詰める。
まず第一声は、「逃げ出してしまってごめんなさい」、だろうか。
あの鋭そうな灰髪の男の子ではなく、もう1人の方を上手く取り込むようにしないと……。
……カツオは、知らなかった。
彼よりもずっと冴える人物がもう1人、タワーの中にいたことを。
その人物が既にカツオの嘘を見抜き、完膚なきまでに叩きのめしてしまっていたことを……!
* * *
「あの……誰かいま」
タワー1階のホール。恐る恐る扉の隙間から覗き込んだカツオの言葉は、途中で断ち切られる。
暗がりの中から飛んできた、小さな風斬り音。咄嗟に首を引っ込めようとするが、あまりに遅い。
飛んできた物体はカツオの頭を掠める。急に頭が軽くなる。
慌てて頭に手をやるが、触れるのは「自分の」髪の毛のみ。思わず間抜けな声が漏れる。
「えっ、ああッ!?」
「……なるほどね。最初会った時、何か違和感あったんだが……そういうことだったか。
言われてみりゃ、髪の色と眉毛の色が違い過ぎたな。
『アイツ』の言った通り、ってのが気に喰わねーが」
ヒュンヒュンと音を立てて投擲者の手元に戻っていったのは、1つのブーメラン。
ブーメランが掠め取っていったのは、茶色の毛が植えられたカツラ。
その2つを手にしていたのは、さっきの2人組の片割れ。もう1人の姿は見えない。
暗いホールの中、あの鋭い目をした灰髪の少年がカツオを睨みつける。
「野比のび太、だな? 『本当の』一部始終、全部聞かせてもらったぜ」
* * *
……Nは言っていた。
『商店街の方向? なら、間違いありませんね。
茶髪で眼鏡をかけた少年です。チラチラとタワーの方を窺っていましたよ』
ちょうど、太一の持っている首輪探知機の表示と同じあたりに、タワーを窺う不審人物がいたこと。
その動きから見て、展望台にいるNではなく、キルアたちのことを気にしている様子だったこと。
Nの語るその容姿は、間違いない。少年の惨殺死体と遭遇する前、キルアたちと接触してきた茶髪眼鏡だ。
『ほう、既にその人と会っていたのですか。
……なるほど、そんな話を吹き込まれていたなら、あのような言動に出るのも分かりますね。
証拠が無い以上、私の話と彼の話、どちらを信じるもあなた方次第ですが……
少し考えれば、分かりますよね?』
自分の方が正しい。臆面もなくそう主張するNの言葉は、キルアをいちいち苛立たせる。
だが、理屈で考えればNを信じるしかない。
『展望台の上からでは、顔の細かい造作などは分かりません。ですが……
眼鏡に半袖半ズボン、というのは、弥彦から聞いた野比のび太の特徴と一致しますね。
子豚の解体直後とは服の色が違うようですが……返り血でも浴びて着替えましたかね?
髪の方は、カツラで誤魔化しているのかもしれません。染めるだけの時間は無かったはずですから。
どちらにしても、何故そんなことをせねばならなかったのか、とても気になるわけですが』
堂々と偽名を名乗るNに言われたくはない、とも思うが、その情報と分析は確かだ。
やや決め付けるような口調が気になったが、具体的に反論すべき穴も見当たらない。
眼鏡が手放せないなら、姿を偽るにも服やカツラを変えるのが精一杯なのだろうし……。
『首輪の反応が、2つある? それも近接して? ……なるほど、それは興味深いですね。
しかし上から見た限りでは、1人しか居ませんでしたよ。
なら、おそらく誰かの死体から奪った首輪を持ち歩いているのでしょう。
そうなると、弥彦の帰りが遅くなるかもしれませんね……いや失礼。こちらの話です』
首輪探知機が示すのは、あくまで首輪の存在だけだ。なら、そういうことも起きるかもしれない……
だが、何故? 何故そいつは首輪なんかを持ち歩いている?
『そんなモノを持ち歩く理由は、いくつか考えられますが……話すことはできません。
ええ。『分からない』のではなく、『伝えられない』でもなく、『言えない』、です。
キルアさんなら、意味を分かってくれますよね?』
奥歯にモノが挟まったような、何かを気にしたような物言い。
だがNのヒントのお陰で、キルアもようやく理解する。
確かジェダは、3人斬り達成の際、『首輪に向かって』「ご褒美を下さい」と言うように、と指示した。
ということは……この首輪にはマイクや通信機の機能もあると見るのが自然。
いわば、参加者全員が盗聴器を仕込まれているようなもの。
これでは、ジェダに反抗するための重要な相談を、言葉でするわけにはいかないことになる。
そして、ジェダに反抗するための第一のハードルは、この首輪の解除――
『と、なると、その少年の目的もいくつか絞れます。
彼が我々と同じ目的を持っているなら、話は楽ですが……。
もしもその正体が変装した野比のび太だったとしたら、信用はできません。
あっさり弥彦を見捨てて逃げだし、あまつさえ正体を偽り嘘をつくような人間ですからね。
ゲームに乗っていて、でも支給品に恵まれないのでまずは交渉に活路を見出そうとしている、
といった所でしょうか』
そう、そしてそれは「ゲームに乗った者」でも簡単に想像できるはずのこと。
となれば、首輪は脱出を目指す者以外にとっても、取引などの材料として重要な役目を果たすことになる。
首輪を持ち歩いているからといって、簡単に味方として扱うことなどできない。
『くれぐれも、警戒して下さい――そして、できるなら、彼の持ち物を確保して下さい。
私には『それ』を有効活用する自信があります。……『何』について言っているか、分かりますね?』
実物さえ手元にあれば、Nには首輪の解析や解除ができる。そう言いたいのだろう。
おそらく、弥彦に頼んだ「外でのおつかい」というのも、その首輪の解析に関することか。
キルアの隣では、太一が首を捻っている。どうやらNの回りくどい言葉の意味が分からないらしい。
キルアはあえて詳しい説明をせず――説明なんかしたらNの深慮が全部無駄になる――、腰を上げる。
「太一、ここはちょっと頼む。Nとの電話を続けて、奴が変な動きしないか見張っててくれ」
「いいけど……キルアはどこ行くんだよ?」
「その茶髪眼鏡に接触する。そしてNの話の裏を取るんだ。Nを信用するのは、それからでもいい」
「え、でも……あっ!?」
Nの言ってること、信用してたんじゃないの? と言いかけた太一が、驚いたような声を上げる。
彼は慌てて手にした首輪探知機をキルアに示す。
「向こうから動き出した! こっちに近づいてるぜ!」
「手間が省けるな。よし……」
そしてキルアは受話器を太一に押し付けるようにして管理室の扉を開け、そして……!
* * *
「野比のび太、だな? 『本当の』一部始終、全部聞かせてもらったぜ。
大人しく本当のことを話すならよし、さもなくば……あっ、ちょっと待て!」
灰髪の男の子が何か言っている。
けれどカツオはそれを最後まで聞くことなく、すぐさま開けかけていた扉を閉め、脱兎の如く逃げ出した。
カンッ! カンッ! と背後で音がする。
灰髪の少年が投げたナイフが、紙一重の所で閉ざされた扉に阻まれたのだ。
(な、なんでバレちゃってるんだ!? いったい何を聞いたっていうんだ?
それに、こんな問答無用で殺そうとするなんて……!)
キルアはちゃんとカツオの手足を狙って投げていたのだが、素人の彼に分かるはずもない。
全速力でタワーから飛び出しながら、それでも必死に考える。
(あいつは僕のことを、「のび太」と呼んだ……!
きっと弥彦に聞いたんだろうけど、この誤解は使えるかもしれない……!)
思わぬところで変装が役に立った、ということか。
逃げながら、カツオは手持ちのカードを考える。
「のび太」との誤認。交渉に使えそうな首輪。使い道のない天体望遠鏡。そして禁止エリア指定装置。
さて、何をどう使えばこの失敗を取り戻せるだろう?
かなり不利な状況の中、カツオはまだまだ諦めてはいなかった。
* * *
「くっ、待てッ!」
逃げ出した「のび太」を追い、キルアはタワーから飛び出す。
こっちはNに散々やり込められて、苛立っているのだ。せめてあいつくらいは殴り飛ばさないと気がすまない。
相手は一般人にしては逃げ足が速いが、あくまでそれは一般人のレベル。
暗殺者としてのエリート教育を受け、念能力も身につけたキルアの敵ではない――すぐに捕まえてやる!
だが、そんなキルアの足が、ふと止まる。タワーの入り口で、はッと振り返る。
……このまま追いかけてしまって、いいものだろうか?
タワーの展望室には、まだNがいる。管理室には太一もいる。
彼らをここに残して、キルアだけ出て行ってしまって、本当にいいのか?
もちろんキルアは、すぐに「のび太」を捕まえ引き摺ってタワーに戻ってくるつもりではある。
けれど、留守にしている間に、他の参加者がタワーに来る可能性は?
留守にしている間に、Nが太一に何らかの策略を仕掛けてきやしないだろうか?
キルアは、Nが提示した情報については、ほぼ信じている。
弥彦がゲームに乗っていないことも受け入れた。「のび太」が嘘つきの悪人だという仮説も受け入れた。
けれど、Nの人格については、未だに信じきっていない。
あまりにも一方的にやり込められてしまったがために、心から信じることができないのだ。
キルアたちの想像も超えるような、さらに一回り大きな策略を企んでいるのではないか――
そんな不安が、拭いきれないのだ。
キルアは迷う。ほんの僅かな時間ながら、激しく迷う。
その間にも「のび太」の姿はどんどん遠ざかる。迷っている時間がそう無いのは分かっている。
キルアはそして、決断を下し――!
* * *
「き、キルア!? 1人じゃ――!」
太一が手にした首輪探知機の中で、2つの光点がタワーの外に向かって動いていく。
展望台と直通通話の繋がった受話器を手に、太一は何をどうするべきか一瞬迷う。
喋っていた内容の全てが理解できたわけではないが、キルアとNとの会話は全て聞いていた。
2人の推理によれば、今キルアが追いかけているのは、あの茶髪眼鏡だという。
そしてその茶髪眼鏡は、以前遭遇した際、太一たちに対して嘘をついていたらしい。
太一は思い出す。
路上で茶髪眼鏡と出会った時も、キルアはまるで相手を殺さんばかりの鋭さで威嚇していた。
では今回はどうなる?
嘘をつかれ、正体を偽られていたとなった今、あの時以上に過激な手段に出てもおかしくないのでは?
今度こそキルアは、あの少年を殺してしまうんじゃないか? 太一は激しい不安にかられる。
「と、止めにいかなきゃ――」
『もしもし。何がどうなったのですか? その場を離れるなら、せめてその前に現状を説明して下さい』
腰を浮かしかけた太一の動きを止めたのは、受話器越しの冷たい声。
展望室にいるNだ。焦る太一とは対照的に、淡々とした口調は変わることがない。
『それから、えーっとあなた、何さんでしたっけ。1つお願いがあるのですが』
「太一だ。お願いって何だ?」
『良ければ電源を戻して貰いたいのですがね。
いやエレベーターは止めたままでも構わないのですが――』
そしてNは、太一の名前を覚えてもいなかったNは、実につまらないお願いを口にした。
この緊急時に言う必要があるとも思えない、実につまらないお願い。
『――なにせ、電気が止まると展望室まで水道が来ないもので。トイレが流せません』
太一が迷ったのは一瞬。そして彼は、素早く決断を下し――!
* * *
「電気が止まると展望室まで水道が来ないもので。トイレが流せません」
抑えきれず顔に浮かぶ笑みが声色に現れないよう、注意しながらニアは告げる。
……言っていることに、嘘はない。揚水ポンプが止まれば展望室の水道は使えない。水洗トイレも流せない。
けれどもちろん、本気で「トイレを流すために」電源の復旧を願っているわけではないのだ。
彼が考えているのは、ただ1つ。
(電気さえ戻れば、定期放送が聞けます。タワー内の放送も使えます。そうすれば……!)
あえてシモの話を持ち出したのは、相手に「バカにしてもらう」ためだ。「甘く見てもらう」ためだ。
普通なら、こんな緊急時にトイレも何もないだろう、と考える。そんなことを言い出す相手が馬鹿に見える。
そして、そこに油断が生まれる。
いくら馬鹿なこととは言っても、人間生きていれば排泄は必要だ。この要請を断るのは難しい。
あの『キルア』はNのことを激しく警戒しているし、頭もキレる。だからこんな手は通じないだろう。
裏の裏まで考えて、冷たく断ってくることだろう。
けれど、『太一』なら。素直で真っ直ぐな『太一』なら。
(タイチ……きっと名簿番号71番、八神太一のことですね。
こうすんなり名前を聞きだせるとは思ってなかったのですが。きっと「いい人」なのでしょうね)
キルアはニアのことを信用してないようだが、頭はいい。理詰めで動く分、操縦はしやすい。
太一はニアの言うことを理解しきってないようだが、性格は真っ直ぐだ。これも操縦しやすい。
彼らが『首輪を探知する機械』を持っていることも考えると、実に有効な人材だ。
(私自身には、戦う力はありません。探索を行う能力もありません。
けれどその分、誰かに働いて貰えばいいんです)
名探偵Lの後継者を自認するニアは、ニンマリと笑う。
知恵こそ最強。最も知力に優れた者こそが、全てを支配するのだ――!
【B-7/タワー前道路路上/1日目/真昼】
【磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:少し疲労、パニック気味
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、天体望遠鏡@ネギま!、禁止エリア指定装置、首輪(しんのすけ)
[服装]:オレンジ色のシャツ、紺色の短パン、中島風伊達眼鏡 (イメージは夜神月@デスノート)
[思考]:なんでこうなるの!?
第一行動方針:キルアたちから逃げ切る。
第二行動方針:捕まっても、「のび太」と誤解されている状況や持ってる首輪を活かして最悪の展開は避ける。
第三行動方針:臨機応変に動き、状況の変化に惑わされない
第四行動方針:首輪を調べてみる。または交渉に利用する
基本行動方針:優勝する
[備考]:自分がキルアに「のび太」だと誤解されていることに気づきました。
【B-7/タワー入り口付近/1日目/真昼】
【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:健康
[装備]:ブーメラン@ゼルダの伝説、純銀製のナイフ(10本)、
[道具]:基本支給品、調理用白衣、テーブルクロス、包丁、食用油、 茶髪のカツラ
[思考]:太一は置いていこうか? それとも一緒に来させるか!?
第一行動方針:逃げ出した「のび太(実はカツオ)」を追い、持っているはずの首輪を奪う。
第二行動方針:展望室にいるNに警戒。手放しで信頼できる相手だとは考えていない。
第三行動方針:ゴンを探す
第四行動方針:太一に協力し、丈、光四郎、ミミを探す
基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくる馬鹿は容赦なく殺す
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nの仮説をおおかた信じていますが、Nの人間性を信じきっていません。
カツオのことを「のび太」という名前で認識しました。「のび太」がゲームに乗っていると考えています。
【B-7/タワー内1F管理室/1日目/真昼】
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:健康、 混乱
[装備]:フライパン
[道具]:基本支給品 首輪探知機、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣
水中バギー@ドラえもん、コンチュー丹(10粒)@ドラえもん、調味料各種(胡椒等)
[思考]:キルアを追うか、Nとの連絡役として残るか?
第一行動方針:キルアを追うかどうか思案中
第二行動方針:タワーの主電源をONにしていいものかどうか思案中
第三行動方針:丈、光四郎、ミミを探す
第四行動方針:キルアに協力し、ゴンを探す
基本行動方針:丈、光四郎、ミミを探した後、この場からの脱出方法を考える
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nのことを「本当はいい奴だったんだ」と考え信じていますが、Nの仮説の一部を理解できていません。
カツオのことを「のび太」という名前で認識しました。「のび太」がゲームに乗っていると考えています。
【B-7/タワー内展望室/1日目/真昼】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静、自信回復(ちょっと自信過剰気味?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:さて、どうしますか
第一行動方針:キルア・太一両名の動きに注意する。可能なら指示を出す。できれば電源を回復させる。
第二行動方針:「のび太(実はカツオ)」の動きや目的に注意。できれば彼から首輪を確保する。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
タワー内は非常灯や電話を除いて停電しています。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
投下完了です。支援に感謝。
ニアに持ち味発揮させてみたら、ワンサイドゲームに……。
一番ワリ喰ったのは太一かもしれません。申し訳ない。
昨日の分もまとめて投下乙
頭脳戦を書ける人は素直に尊敬の念が湧く。ニアとメロが輝いてるなあw
そして、さりげなくパーティーが分かれたわけだが……太一死亡フラグが立ったような予感が
乙です
案外太一みたいなのがニアに影響与えるかもしれないよ
投下乙! あぁ、カツオ。やはりステルスは表にでちゃいけないな…。
ニアの手ごまになる人は出てくるのだろうか。キルアじゃ弥彦よりも扱いにくそうな気が。
投下GJ!
ニアの考察がすげえ。いや、本当によくここまで細かく考えられるもんだ。
カツオに関する嘘とか誤解をほぼ全て消し飛ばしたのは見事。
首輪探査装置と手駒が渡ったらかなり強そうだ。
>>141 近くにマーダーがいないから太一は大丈夫だって。グレーテルも遠いし。
むしろキルアが危ない。
GJ。
学校4Fが納まったかと思ったら今度はタワー辺で心理戦か。
というかニアの状況ようやく動いたなw
GJ。
さあ、ややこしく、おもしろい展開になってきた。
GJ
カツオが真性ステルスマーダー化するかヘタレ化するか、あるいは対主催化するかの分水嶺かな
キルアの兄貴からの暗示が解けてるかどうかによっても展開は変わってきそうだ
そうでなくてもキルアには放送で親友の死を知ってしまうという起爆剤がまだ残っているわけで……
ああもう、どうしてロリショタ連中はどいつもこいつも爆弾抱えてるんだよ!?
このロワには、凶悪なマーダーや
並のマーダーより怖い対主催が多すぎる
純粋なだけに傷つきやすい……
まとも登場キャラの戦力が大分弱いなwwwww
対主催側の集団はほとんどが疑心つき。
マーダー側のほうが結束が固そうなところが多い件について。
楽しくて仕方がないw
その内にマーダーの大集団という極悪な代物が生まれるのではないかと少し期待している。
デスノ勢、対主催のニアよりもマーダーのメロのほうが善良に見えるってどういうことだ…
コナンへの態度とかチャチャゼロとの掛け合いとかで、まだ人間臭さの感じられるメロと違って、
ニアはマジで外道過ぎるわ。
ニアも誰かと漫才できたらいいんだろうけど
原作でもそんな感じだったような。
難題でも一晩でやってくれる仲間でもできればなぁ
元々近寄りがたいと思われてる人間だったからね
扱い辛いくらいの味方ができればいいのかもしれない
いっそこのまま外道でもいいけど。
ニアとヴィクトリアは間違いなく相性がいい
リンク、小狼、梨花、灰原、一休さんを予約します。
学校組の残りが動くー!
期待!
まあこの状況じゃ問答無用だろうな
一休さん自身には争うつもりはないのにな
彼ならあわてずさわがず飄々と切り抜けそうではあるが
一級さん期待sage
専用ブラウザでチェックするとスレの勢いが20前後か
最盛期100超えていたのに
今でも週に一回は投下来るし、充分速い方だと思う
【鬼畜教師】 教え子の女子小中学生6人や教え子の母複数人と性交しまくり、鬼畜先生に懲役7年求刑
・18歳未満の小中学校の教え子計6人にみだらな行為をしたとして、強姦(ごうかん)罪
などに問われた群馬県太田市の元市立小中学音楽教師 岩井彰人(旧姓 吉田彰人)被告(31)の論告
求刑公判が10日、前橋地裁(結城剛行裁判長)であり、検察側は懲役7年を求刑した。
検察側は「被害に遭った教え子らは、好意を抱いていた教師から性欲のはけ口とされた」
と指摘した。
論告によると、岩井被告は昨年3月から11月にかけて、12−16歳の教え子に計24回、
県内のホテルなどでみだらな行為をした。被害者には小学校教諭時代の教え子だった
当時12歳の女児もいた。
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070510-196611.html
何そのエロゲ
Fラインは……手強いぜ。今週末までに出来るかな……。
頑張れ。前誰かが言っていたけど、進行のために動かすよりは
渾身のネタがつまった作品のほうがいい。
俺があの辺動かすと進行のためのSSになりそうで駄目だ……。
Fラインって……湖の対立じゃないよな
すみません、魔導ボードの詳しい設定を知りたいです
>>169 腰の辺りまで浮かべるホバーボート。
バック・トゥ・ザ・フューチャーという映画に、似た性能のが出てくる。
外見は鍋の蓋。スピードはそこそこ。
そして済まないが脇から予約を持っていく。
湖の対立も含むので。
……頑張って仕上げよう。
ジーニアス、ベッキー、明石薫、しんべヱ、あとFラインの生存キャラ全てを予約。
省略しちゃまずいか?
>>171 思わず地図を見に行って、顎が外れそうになった俺がいますよ。
えーと正確には
レミリア、プレセア&アルルウ、ベルカナ&葵、ベルフラウ&雛苺、
レックス、梨々&イリヤ&さくらで全部? ……上のも合わせて15人予約ってマジ?
レックスは131話でG-6に帰還してるから対象外だと思われる。
(Wikiの地図は130話までの現在地)
それでも14人予約になるのかな? とんでもねえ〜がんばれ
うい、14人予約です。
状況を大きく動かすから置いて行くわけには行かないという端役気味なのも一部居ますが、
大多数を巻き込んで転がしてみようと考えまして。
>>170 ありがとうございますー、例えのおかげで理解しやすかったです
>>171 どうぞーw
そして期待しています
投下します。
「みぃ〜、だから何度も言うように、僕はウサギさんみたいに隠れているのですよ」
「そしてさっき遭遇したような変態に喰われる、と? 冗談じゃない、寝覚めが悪すぎるわ」
「まったく、哀は強情さんなのです」
「武器が一つしかないのに二手に分かれるわけにはいかないでしょう?」
数分間に及ぶ梨花と灰原の論争は、結局梨花が折れる形で決着した。
踊り場の真ん中で随分と無防備な二人だったが、運良く危険人物とは出会わなかったようだ。
意地の張り合いを終えた少女たちはタイムロスを埋めようと、急いで階段を駆け下りた。
4階から離れるにつれ、だんだんと物音が聞こえなくなっていく。
1階に着くころには、二人の耳にはもう何も聞こえなくなっていた。
そして現在、灰原たちは保健室へと向かって長い廊下を歩いている。梨花の傷を治療するためだ。
「僕の応急処置をしたらすぐに4階に向かうのですよ、哀」
「あなたをリンクとかいう子に預けた後でね」
「大切な人がどうなってもいいのですか?」
「……彼がいると確定したわけではないわ」
江戸川コナンがいるかもしれないという推測は、結局のところ決定的証拠がない。
コナンの声が聞こえたかもしれない、という状況証拠のみである。
ただの聞き間違いだと言われればそれまで。危険を侵させてまで向かうほどのことではない。
むしろ、そんなことぐらいで二手に別れるほうが馬鹿馬鹿しい。
そう、灰原は考えようとした。のだが。
(欺瞞、ね)
自嘲の吐息が少女の唇を湿らす。
灰原は、4階にコナンがいるかもしれないと思い始めていた。
この広い島において江戸川コナンが近くにいる可能性。普通ならば『低い』と考えるのが妥当だろう。
だが、ここは島の中央部で、しかも人が集まりそうな『小学校』。“あの”コナンがこの場所を目指す確率は決して低くはない。
1階に下りきってしまった灰原の耳にはもう何も聞こえないが、踊り場で聞いた声は確かに彼のものだった、ような気がする。
4階の声のことも考慮すると、江戸川コナンが4階にいることは十分考えられる。
とても推理とは言えない、いわば女の勘だ。だが、灰原には妙な確信があった。
心配でないと言えば嘘になる。だが、それよりも。
(私は、自分のせいで梨花が死ぬのが嫌なんだわ)
運命と戦えと古手梨花は言った。
だから、灰原哀は自分の選択に対して後悔しないことに決めた。
罪を滅ぼせと古手梨花は言った。
だから、灰原哀はこれ以上罪を重ねないようにしようと誓った。
安易に行動してはならないのだ。それが、梨花の提案であったとしても。
特に、梨花を死なせるような選択肢は絶対に避けなければならない。
恩人である梨花を死なせてしまって何が罪滅ぼしか。
もし梨花を死なせてしまったら、きっとその罪は滅ぼせない――
(――なんて、いくら言い訳を重ねたところで意味がないわね)
灰原は苦笑した。
結局、理屈や論理などどうでもいいということなのだろう。
灰原哀は、単純に古手梨花に生きていてほしかった。
自分を絶望の淵から救い出してくれた少女に、生きていてほしかったのだ。
一時的な感情なのかもしれない。薬による興奮から出た気持ちなのかもしれない。
それでも、灰原哀は確かにそう思ってしまった。
(工藤君。4階にいるのがあなただとしたら、悪いけどもう少しだけ耐えてちょうだい。
いくつもの事件を切り抜けてきた貴方ならその程度は楽勝でしょう?)
勿論、4階にいるかもしれないコナンのことを忘れているわけではない。
不確定の情報とはいえ、4階に行く覚悟はできていた。後は、梨花をリンクに引き渡すだけである。
灰原は足早に保健室に向かって進み――
『――何ィッ!?』
男の子の悲鳴を聞いた。
「今の悲鳴、保健室の中から……」
「リンクッ!」
灰原が言葉を発し終わるのも待たずに梨花が駆け出す。
廊下を猛ダッシュする梨花の後を、慌てた灰原が追う。
保健室に、最悪の仇敵が待っているとも知らず……。
※ ※ ※ ※ ※
甘い香りが立ち込める一室で、二人の少年が倒れていた。
リノリウムの床に突っ伏す顔は焦燥で満たされ、手足は自らの感覚を求めるように痙攣している。
動けない二人を見下ろすのは純白のマスクをつけた袴姿の人間。
いや、人間と称するのは間違っているかもしれない。
額に張られた十字創膏は『第三の目』を隠す魔物のようであり、身体中に装着された茶色いシールも不気味さを醸し出していた。
そしてなにより、その余裕。
二人の人間を叩き伏せたにも関わらず、彼の態度は全く変わっていなかったのだ。
奢りもせず、焦りもせず、恐れもせず、喜びもせず、憂いもしない。
ただ、平然とその場に立っていた。
それがどれほど強靭な精神を要する行為かは言うまでもない。
「では、とりあえず武器を回収させてもらいます。どうやらこの島には手の早い方々が多いようですからね」
発する言葉も平坦そのもの。まるで、流れ作業の一環のようだ。
てくてくと乱れぬ足取りで近づいてくる一休に、リンク達は恐怖した。
保健室の中は未だに甘い香りで満たされており、二人は吐き気と脱力感でまともに動けない。
対する一休はマスクを装着しており、ある程度自由に動き回れるのだ。
身動きできない状態で、正体不明の化物に近づかれる。どれほどのプレッシャーなのかは想像に難くない。
「く、るなっ」
「安心してください。説明が終わったらお返ししますよ」
ぬけぬけと言い放った一休は、リンクと小狼から武器を回収し始めた。
軽やかな手つきで『剣』のカード、あるるかん、二人のランドセルを順番に引き剥がしていく。
リンクと小狼は懸命に逃げようとしたが、脳は筋肉への伝達業務を放棄している。
胃に蟠る不快感も厄介だった。少年達は腹痛と頭痛で目の前の敵に集中できない。
碌な抵抗もできずに武器を奪われた二人は、屈辱に顔を歪ませた。
梨花の安全の確認。コナンやネギの援護。傷の治療。二人がやるべきことは山ほどある。
学校内にはまだ殺人鬼がいる可能性が高く、梨花に至っては目の前の坊主に何かされたかもしれない。
一刻も早く動く必要があるのだが、現実はその行動を許してくれなかった。
二人そろって危険な敵の手に落ちているのが現状だ。焦燥感だけが少年達の頭に降り積もっていく。
なんて情けない、とリンクはほぞをかんだ。小狼も悔しそうに拳を握り締めている。
だが、惨劇はこの程度では終わらなかった。
「さて、次は身体検査ですね」
「何ィッ!?」
一休の手がリンクのベルトに伸び、あっさりと金具を外した。
黒革のベルトが緩み、緑のツナギが大きくたわむ。
リンクの顔が恥辱に染まったが、一休は構いもしない。
変わった帯ですね、と感心までしている。
一休は変態ではない。決してない。
今回の行為も、リンク達が隠しているかもしれない武器を発見するためのものだ。
別に男色家というわけではない。神職者には同性愛者が多いという話もあるが、一休は違う。
ただ、お互いに何も装備せず、落ち着いて話し合いたかっただけなのだ。
相手の動きを完全に封じている状態では、何を言ったところで信用など得られるはずがない。
だから一休は換気によって、リンク達の毒を抜こうとした。
だが、二人に武器を持たせたままでは、力で捻じ伏せられてしまう。
それならばということで、一休は二人の装備を解除したのだった。
武器を回収した上で話し合い、誤解を解いたところで武器を返す。
そう悪い作戦ではない。少なくとも、殺意がないことは証明できる。
それに、口を使った戦いならば一休の十八番。相手がしっかりと話を聞いてくれれば、誤解などたちどころに消し去れるだろう。
しかし、大きな穴が一つ。
今までの行動を見ればわかるように、彼は致命的なまでに『タイミング』が悪い。
歯車は、正しく噛み違える。
「リンクッ、何があったのッ!」
廊下を激しく叩く音が聞こえた後、唐突に保健室の扉が開かれた。
ピシャリと、鋭い音が部屋の中に響く。
「おや」
「なっ……」
「え、あ?」
梨花が保健室のドアを開けたとき、ちょうど一休はリンクの服を脱がしにかかっていた。
緑のツナギが半分以上捲り上げられ、しなやかで細い身体が覗いている。
梨花の姿を確認したリンクは安堵に頬を緩めたが、すぐに羞恥とも屈辱とも取れる表情に戻った。
知り合いの女の子にいきなり裸を見られたのだ。リンクの耳は先端まで真っ赤である。
小狼はリンクを助けようともがいていたが、その努力は今のところ徒労に終わっている。
そして、一休。
彼は、仰向けのリンクに馬乗りになっていた。服を脱がしつつ、腰をしっかりと下ろした体勢で。
「あ……え……」
「……まさか、両刀使いだとは思わなかったのですよ。フ、フフフ……」
その現場を押さえた女の子二人は、非常に気まずそうな顔である。
灰原は頬を桜色に染め、呆気に取られたような顔をしている。流石に“こういう絡み”には免疫がないのだろう。
梨花は唇の端をヒクつかせ、こめかみに青筋を浮き上がらせていた。そのまま、ゆっくりと勇者の拳を掲げる。
何故まだ生きているのか。
お前はまともな格好ができないのか。
特に、身体中に張り付けている絆創膏はなんだ。
というか、なんでここにいるのか。
その体勢はなんだ。
リンクに何をしているのか。
私達に手を出しただけでは物足りなかったのか。
言いたいこと(ツッコミ)は色々思いついた梨花だったが、うまく言葉にできない。
本能的な怒りは、彼女の頭を溶鉱炉のようにかき乱していた。
爆発5秒前で震える時限爆弾のような梨花に対して、一休は言葉を選んだ。
相手を落ち着かせるには、自身が落ち着いていないといけない。
そう思った一休はこう言った。とても落ち着いた声で。
「お久しぶりです。まずは話を聞いていただけませんか?」
もちろん、リンクの腹に馬乗りになったまま。
梨花はキレた。
「このッッッッッッッッ、○モ坊主がァァァァァッッッッ!!!!」
轟音とともに勇者の拳が巨大化し、変態小坊主を押し潰そうと空気を引き裂く。
正義の鉄槌の威力を知っている一休は、勇者の拳が発動される前に動いていた。
「ばっ!!!」
倒れこむように伏せた一休の頭上を、勇者の拳が通り過ぎる。
破壊の拳が保健室に顕現し、獲物(ボケ)を食い損ねて衝撃波を撒き散らした。
強ツッコミの余波を受けた棚が倒れ、薬品や割れたガラスがばら撒かれる。
数十種類の雑音が不快な合奏曲を奏でた。
「だ、だめよ梨花! 医療道具がなくなったらあなたを治療できないじゃない!」
「ごめんなさい、つい……。でも、一発殴っておかないと気が済まなかったのよ」
「私も同意見だけど、その武器はマズイわ。もっと静かにやりましょう」
少女達の会話を聞きながら、一休は思った。
このままでは殺されると。
二人の言葉には一休への気遣いが微塵も含まれていない。きっと容赦などしてくれないだろう。
古手梨花などは言葉遣いすら変わっており、冷静でないことが手に取るようにわかる。
一体どのような誤解を受けたのか皆目見当がつかないが、二言三言ではとても解けそうにない。
こちらは攻撃する気がないのに一方的に攻撃されたら、それこそ勝負にならない。しかも、相手は二人なのだ。
とんちを閃かせようにも、状況が悪すぎる。このままでは瞬殺されてしまう。
(できれば取りたくなかった手段ですが、四の五の言ってはいられないようですね)
「いい加減……どいてくれ……」
一休の下でリンクが呻いた。
一休が伏せたということは、リンクに身体全体で覆いかぶさっていることを意味する。
半裸のリンクに対してその体勢は色んな意味で危なかったが以下割愛。
一休は申し訳なさそうに頭を下げると、近くに落ちていた大きめのガラス片を手に取った。
勇者の拳によって砕け散った棚のガラスだ。
「本当は、こんな方法は取りたくなかったのですが……」
本気で遺憾の意を示しながら、一休はガラスの切っ先をリンクの目に突きつけた。
少しでも力を入れれば、目玉を抉り出せる位置だ。
一休の凶行に、梨花と灰原の顔が強張る。
(ついにやってしまいました。ここからが正念場になりそうです)
一休は落ち着いて思考を巡らせていた。慌てず、騒がず。
『梨花ちゃんに、何をした!?』とリンクは叫び、一休の胸倉に掴みかかってきた。
あの行動は、リンクが梨花を思いやっているという証拠である。まさか赤の他人の心配などしないはずだ。
そして、梨花も真っ先にリンクの名前を叫んでいた。二人が仲間だということはほぼ間違いないだろう。
ここまで考えた一休は、一つの決断を下す。
緊急回避の手段として人質をとることを選択したのである。
その理由は、是が非でも言葉の戦いに持ち込む必要があったからだ。
暴力では勝ち目がないが、交渉に持ち込めば口八丁でどうにでもなる。
一休の特技はあくまでも『口』なのだから。
(あわてない、あわてない……。ですが、一休みはできそうにありませんね)
一休はリンクにガラス片を向けたまま、きっぱりと言い放った。
当然、落ち着き払った冷静な声で。
「それでは、武器を捨てていただきましょうか」
【D−4/学校校舎1F保健室/1日目/真昼(昼から移り変わった直後)】
【一休さん@一休さん】
[状態]:背中と腰の打撲に湿布。身体のあちこちに大量の絆創膏。
額の中央に大きな絆創膏で×印。顔の形にフィットした大袈裟なマスク。
[装備]:シャインセイバー(サモナイト石・無)@サモンナイト3
体操着(着物の下)、教科書(服の下に仕込んである)、活性炭入りマスク
[道具]:基本支給品×2、エルルゥの薬箱の中身(ワブアブの粉末(残数2)、カプマゥの煎薬(残数3)、
ネコンの香煙(残数2)、紅皇バチの蜜蝋(残数3)) @うたわれるもの
あるるかん@からくりサーカス、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
クロウカード「剣」@CCさくら(カード状態)、きせかえカメラ@ドラえもん(充電済み)
体操着袋、チョーク数本、雑巾、ブリキのバケツ、ホース数m、教科書数冊、100円ライター
[思考]:これは、説明が大変そうですね……。
第一行動方針:あわてない、あわてない。
第二行動方針:これまでに遭遇した人々の誤解を、どうにかして解きたい。(無理なら逃げる?)
第三行動方針:驚く事ばかりだけれど、周囲への理解と食料の確保をしたい。
第四行動方針:余裕があれば、森にでも骨格標本を埋葬し供養したい。
基本行動方針:ゲームをうまく脱出する。
[備考]:懐と体操着袋とバケツに細かい荷物を分けて入れています。
水道の使い方、窓や扉のカギの開け方、100円ライターの使い方を理解しました。
ブルーを不思議な力(スタンガン)を持った神仙または学術者の類と思っています。
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿に裂傷。歩行に少し影響。『ネコンの香煙』の煙を吸って、吐き気と脱力感(煙が引くまではまともに動けない)。
[服装]:中世ファンタジーな布の服など(ベルトが外され、緑色のツナギが捲り上げられて半裸)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:色々と……最悪だ……
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:自分と小狼の傷の手当てをする。
第三行動方針:梨花を守る
第四行動方針:最初に死んだ子(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:ゲームを壊す
参戦時期:エンディング後
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、何らかの人外の存在ではないかと強く疑っています。
【小狼@カードキャプターさくら】
[状態]:腹部に刺し傷。『ネコンの香煙』の煙を吸って、吐き気と脱力感(煙が引くまではまともに動けない)。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:……くそっ!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:自分とリンクの傷の手当てをする。
第三行動方針:手当てが済んだら、上の階に向かったコナンを追うか、森に向かったネギを追うか……?
第四行動方針:桜を探し、守る
第五行動方針:仲間を集める
第六行動方針:最初に死んだ(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:桜とともに島を脱出する。
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、何らかの人外の存在ではないかと強く疑っています。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:色々と疲労困憊。全身に無数の打ち身と擦り傷(骨折などは無い)。腕力低下(ワブアブの毒)
[服装]:体操服。体操着に赤ブルマ着用。
[装備]:勇者の拳
[道具]:基本支給品、5MeO-DIPT(24mg)、平常時の服
[思考]:リンク……!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(できれば殺す)
第二行動方針:同行者を増やす。
基本行動方針:生き延びて元の世界に帰る。ゲームには乗らない。
参戦時期:祭囃し編後、賽殺し編前
[備考]:一休さんの事は変態性犯罪者と認識しています。
【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:健康、薬の余韻なのか疲労を感じていない
(完全に切れたら一気にドッと来る?)
[服装]:子供服。着方が乱暴でなんか汚れてる。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、エスパー錠@絶対可憐チルドレン、エスパー錠の鍵@絶対可憐チルドレン
ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)
[思考]:この……!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:それが一段落してから、4階の様子を窺いたい。
第三行動方針:罪を滅ぼす方法を考える。梨花は死なせない。
基本行動方針:最後まで足掻き続ける。もう安易に死は望まない。
参戦時期:24巻終了後
[備考]:一休さんの事は変態性犯罪者と認識しています
[備考]:現在、D−4の学校の1階・保健室に、『ネコンの香煙』を焚いた甘い煙が満ちています。
一休はマスクをしていますが、あまり長時間滞在していると吐き気に襲われるかもしれません。
梨花と灰原は廊下にいるので無事ですが、保健室から漏れ出てくる煙を吸い込んだ場合影響を受けます。
窓を開けるなどして換気をすればリンク・小狼はある程度動けるようになるかもしれません。
投下終了しました。
指摘などありましたらお願いします。
嗚呼、一休。キミはなんて器用そうに見えて器用じゃないんだ
こりゃ最悪一休、死にそうだな
一休さん…
そこはホールドアップだよ…
GJ
とことんドツボにハマってるな、一休……w
しかし装備の充実ぶりが凄い。しかもこれ、ランドセル持って無いんだぜ?w
GJ! 一休さんマジ四面楚歌。
リンクがここに来て着々と(間違った)大人の階段上ってやがるw
>>186見て気が付いた。
バロスwwww 何だこのフル装備www
ろりしょた勘違い(する方、される方)四天王
一休さん:同性愛も含めて世の不浄は全て背負う坊主
トリエラ:マーダー殺すと見せかけて対主催減らしますよ
あと二人が浮かばなかった。パタリロとか葵とかみか先生あたりが入りそうだけど
決定打にならんな……。
乙。
流石に、一休さんが不憫に思えてきた…
一休さんwwwwwww
どんだけ誤解撒き散らせば気が済むんだwwwwwwwww
もう笑うしかねーやwwwwwwww
これで学校組も全員真昼だな。
湖上組も予約されてるし、昼に残っているのはカナリアとミミのみか。
結構進んだなあ……。
>「さて、次は身体検査ですね」
>「何ィッ!?」
腹が捩れたwwwww
一休さんあんたはツッコミ所しかないんかwwww
ほんと笑うしかねえw
このロワで知った作品は多いけど、中でも千秋の外見がイメージと全然違って驚いた。
黒髪ショート活発系、という感じかと思ってたんだけどな。
確かに男しゃべりだからそうイメージするのもむべなるかな。
俺はトリエラが想像と違ってたな。肌がトーン付きとは思わなかった。
>>192 外見に驚いたキャラか。
俺はベルカナだなあ。金髪だと思ってたら栗色の髪だった。
レミリアやフランの外見は幼すぎて噴いたw
>>192 とある魔術の禁書目録の4巻をブックオフで読んだときは驚いた。
インデックスがあんなのとは。
地獄を見た気分だった。
未だに外見知らないキャラが大多数だな
とくにラノベ系は全然知らない
>>195、無茶しやがって……。
薫は登場話で「ぶち殺す」だの悪魔だのとか書かれてたから
何となく中学生以上の外見を想像していたな。
>>195 よく分からないけど、そんなに酷いのか?
ちょっと意外だな
ところで、ふと思ったんだけど、参加者全員把握してる人っているんだろうか
始まってから全部調べた人はいるかもしれないけど、
もとから知ってた人は絶対いないと思う
>>195 ああ、あれには俺も驚いたぜ……。
P40の挿絵を見たときには文庫本を地面に埋めてやろうと思ったくらいだ……。
リルルの「古き良き時代のテイスト」に仰け反った。
あそこまで(外見上)無個性だったとは……。
ヘンゼルとグレーテルは、逆にあそこまで魅力的だとは思わんかった。双子最高。
>>198 始まってから倍以上にカバー範囲が広がったけど、それでも分からないのはあるな。
特にゲーム系は無理。ハードからして手元にないし。
知ってる人が張ってくれた資料系サイトにはお世話になったが
>>195>>199 …………4巻は言うなよw
あ、そうそう、4巻目次ページの馬鹿水着を支給品として出そうと企んでいたことは秘密だ。
>>198 ゲーム系が結構知ってるの多かったから楽だったな。
禁書とSWリプレイNEXT&ぺらぺらーずは全巻買ってしまった。なにやってんだろ俺……。
東方は漫画の連載が始まるらしいので期待。
最初はブルーをキリッとした委員長タイプだと思っていた。
ヴィクトリアは想像していたより大人っぽくて驚いたな
>>198 本気で4巻だけ見て勘違いする可能性が有るから言っておく。
4巻はちょっと酷い事情が有ったw
外見は全て把握した。全員把握は……概ね。一部うろ覚えやネット情報のみ有り。
ゲーム系は把握に時間が掛かる。
……ちょっと間に合わなさそう。
やはり予約延長を申請します。申し訳有りません。
非常に遅くなりましたが、したらばの修正スレに隠密少女Uの修正版を投下しました。
修正内容はしんべヱが水に沈んだ描写をなくしたこととそれに伴う一部加筆修正です。
結果は変えていないので◆CFbj666Xrw氏のSSには影響はないと思いますが、
もし何かありましたらお願いします。本当、遅くなって申し訳ないです。
これで問題がないようでしたらwikiのほうも修正します。
>>204 迷惑かけてすみません。楽しみにしています。
そいえば前に誰かどのキャラを書いたか、というまとめがあったな
あれ見ると得意不得意のキャラがわかって面白かったw
>書いたキャラまとめ
また最新版を見たいな。
このロワは、一度に大人数動かす書き手さんが結構多いから、調べるの大変ぽいが
>>206-207 とりあえずデータ取るところまでは行ったがこれから出かけなければ。
帰ってきたらWikiにでも。
よし、誰もいないな。こっそりグリーン&リリスをゲリラ投下してみる。
木漏れ日の中で少年と少女が心を重ねている。
幾度となく交わした甘い口付けが、お互いの心と共に理性までも溶かしていた。
誰に教えてもらったわけでもない。種の本能とも呼べる行動。
(こんなのって初めて。でもとってもフシギな感じ……)
リリスは自分の心がグリーンで満たされていることを感じていた。
乾いた大地が天の恵みを受けて潤うように、ゆっくりと染込んでいく感触を恍惚とした
顔で受け入れながら、少し戸惑ったグリーンの表情を軽いキスで溶かす。
グリーンの少し強引で不器用なところが堪らなく愛しい。
そして求められるままにその身を任せ――
(中略)
ぐったりとして全身の力が抜けたグリーンをリリスは優しく撫でていた。
怪我と連戦による疲労から眠ってしまったらしい。
少し上気してはいるが、安らかに寝息を立てる顔は天使のように可愛くて魅力的だ。
その寝顔を見ているだけで愛しさが膨れ上がり、力一杯に抱き締めたい衝動に駆られたが、
彼の眠りを妨げないよう軽いキスだけに留める。自制心の弱い彼女にしては英断だろう。
そしてグリーンの肌の感触と上気して少し高目な体温を内と外から味わいながら、
リリスはまどろみの時間を楽しむことにした。
○ ○ ○
『サキュバスの夢に捕らわれた魂の終焉を……
甘美な快楽に五感を奪われ、魂は深いまどろみの中に沈み
行き着く先は唯一つ、死……』
まどろみの中で、嫌味なくらいに綺麗な女性がリリスに囁いていた。
魔王の後継者と呼ばれる、誰よりも強くてそして気高いサキュバス。
会ったことはないが、魔界にいれば誰だって彼女を知っている。
彼女の言葉が意味することくらい、リリスにも分かっている。
しかしなぜ彼女が自分の夢に出てくるのか、その意味をリリスは深く考えなかった。
○ ○ ○
楽しいって気持ち、あったかい気持ち。
自分の中にこんな感情があるなんて思ってもいなかった。
今の気持ちを無理に言葉で表現するのなら『幸せ』。
そんな風に陳腐で、悪魔には縁遠い言葉しか思い浮かばない。
(へんなの……)
グリーンのことを思えば思うほど、考えれば考えるほど際限なく愛しくなっていく。
まだ出会ってから数時間も経っていない。それなのにグリーンとはとても長い間、
一緒にいるような気がする。ずっと、ず―っと昔から……
リリスの嫌いなものは退屈、そして恐れるものは孤独だった。
誰からも、本当の自分からさえも必要とされずに次元の狭間に忘れら去られた魂。
そんな自分をグリーンは抱き締めてくれる。愛してくれる。
誰よりも、本当の自分よりも必要としてくれる。
だから愛している。他の全てを犠牲にしても構わないほどにグリーンの全てを愛している。
誰にも渡さない。身も心も、精の一滴、魂の一欠片たりとも渡さない。
(でも――怖いな)
この湧き上がる思いも、グリーンの心も時間が立てば薄れていくのだろうか。
先程グリーンから得た精気はリリスの傷付いた体を癒し、消費した魔力を潤していた。
名実共に一つになるとは言え、自分の体を回復する為にグリーンの一部を吸収するのは
勿体無い。ずっとこの身に留めて置きたいと思ってしまうが、それも出来ない。
同じようにグリーンの思いも少しづつ消えていくのかと思うと、悲しくなってくる。
いやグリーンの心は変わらなくても、人間である限り百年もたたずに消えてしまうだろう。
だから欲しい。グリーンの全てが欲しい。過去も今も――そして残された未来も。
方法は簡単だ。このままグリーンの精気を全て搾り取ってしまえばいい。
グリーンだって進んでリリスと身も心も一つになってくれるだろう。
そうすれば今この瞬間のグリーンを永遠に独り占めすることができる。
いつでも夢の中でリリスだけを愛してくれるはずだ。
そんな甘美で身勝手な誘惑がリリスの心を激しく揺さぶる。
(ダメ――今はダメ)
眠っているグリーンの頬を撫でながら、リリスは誘惑を退ける。
自制心の弱すぎる彼女であっても彼の事を思えば、自分を抑えることが出来た。
彼の命を奪うことに抵抗があるわけではない。愛しているからこそ命まで欲しいのだから。
そんな愛故の殺意を抑制したのは、この魔次元の存在そのものだった。
リリスに他の参加者よりも優位な点があるとするならば、それは魂の選別とジェダに
ついて僅かながらに知識を持っていることだろう。
魔次元で死んだ者の魂は例外なくジェダの元へと送られ、神体を構成する材料となる。
その神体の中で全ての魂は一つになるのだが、今のリリスにはそれが気に入らない。
もしもリリスがグリーンの命を奪ったならば、その身と心は手に入れられても、
魂はジェダに奪われてしまう。グリーンの魂を人に渡すなんてリリスには耐えられない。
しかも神体の中で、自分を差し置いて他の魂と一つになるなど論外だった。
(そうだ。優勝して……ジェダ様にグリーンとの仲を認めて貰おう)
簡単なことだ。ゲームに勝って、欲しいものを手に入れる。何も変わりはしない。
本当の身体、そんなものはグリーンがいれば必要ない。今は彼の他に何もいらないのだ。
神体に必要な魂が足りないなら、二人で他の世界から幾千幾万でも魂を奪いに行くから。
とりあえずご褒美を貰う時に相談してみよう。
(ジェダ様、どんな顔をするだろう? 驚くかな? 怒るかな?
ううん、きっと喜んでくれるよ。意外と優しいんだから)
ジェダはリリスにとって敬愛すべく主であり、創造主――父親のような存在でもあった。
まるで父親に結婚相手を紹介する娘のように、リリスはあれこれと考える。
その九割以上が現状において全く意味の関係のないことばかりだった。
例えば今朝失くした指輪が見つかって、それをグリーンがリリスの手に嵌めてくれたら
どんな気持ちになるだろうか、とか。
○ ○ ○
あれもこれも、やらなきゃいけない事は沢山あったはずだ。でも今はどうでもいい。
柔らかな感触が吸い付くようにグリーンを包み、彼以外の体温で思考は溶かされていた。
何度も込み上げた高揚とは違う、何もかもがどうでも良くなるような安らぎ。
ずっとこの温もりを抱きしめていたい、そんな思いだけが彼を支配していた。
彼女の背中に回した腕に力を込めて抱き寄せ、唇を重ね――ようとして空を切った。
「あ、あれ? リリス?」
森の中、少し進めば神社の境内という木の根元にグリーンは寝かされていた。
辺りには誰もおらず木漏れ日の中、そよそよと風が足元の草を揺らしているだけ。
だが身体には心地良い虚脱感が残っていた。
「夢……だったのかな?」
夢の中とは言え欲望丸出しなんて最低だと、グリーンは少し自己嫌悪した。
恐る恐る着衣を確認したが乱れもなく、汚れてもない。少しだけホッとする。
まるで軽くシャワーを浴びた後のように妙にサッパリしているのは何故だろう。
ふと足元を見ると着ていたはずのシャツが一枚、ずぶ濡れになって汚れて落ちていた。
汗を拭くタオル代わりに使ったように思えるが、記憶が定かではない。
起き上がろうとした彼の身体を大きな疲労感が取り縄のように捕らえてよろめかせた。
腹部に感じる痛みが、意識を失う前のことを思い出させ、夢ではなかったと告げている。
だがはたして何処までが現実で、何処からが夢だったのだろうか。
自分の行動に自信が持てないなんて、生まれて初めてのことだった。
夢でないのならリリスは何処に行ってしまったのだろう?
最低な自分に愛想を着かせて、去ってしまったのかもしれない。
彼女を守るため首輪を手に入れると約束したばかりなのに、強引に抱きしめたりした挙句、
一人で眠ってしまったなんて、呆れられても仕方がない。
もしそうだとしたら、これ以上なく情けなかった。夢なら、やり直しを要求したい。
「ん……水の音……か?」
そよ風に乗って微かな水音が聞こえる。こういう時の定番は、水浴びに決まっている。
水音に誘われて木々の間を十m程も歩くと、グリーンは神社の裏手にある池の前に出た。
清水が湧き出しているのか、そう大きくない池だというのにそのまま手で掬って
飲めそうなくらいに水は澄み切っていた。だがグリーンは水など見てはいない。
なぜなら予想した通りに池ではリリスが水浴びをしていたから。
「…………」
リリスが水を身体に掛けるたびに水滴が日光を反射させ、キラキラと宝石のように
輝いて彼女の肢体を彩った。
悪魔だと分かっているのに、まるで天使が光を纏っているようにすら見えてしまうのは、
魅了の力に惑わされているからだろうか。
滴り落ちる水を目が無意識に追いかけて、隅々まで視線を這わせてしまう。
覗きなんて最低だ。頭ではそう思うが、魂を奪われたかのように目が離せない。
たっぷり数十秒、ついとリリスの視線が彼を捉えるまで、言葉を失っていた。
「グリーン。もう、起きて大丈夫なの?」
振り返ったリリスの一声は悲鳴でも罵倒でもなく、明るく彼を気遣ったものだった。
その声は僅かな不満を含み、口元は悪戯っぽく微笑んでいる。
まるで見られていた事を知っていて、声を掛けてくれるのを待っていたかのように。
白雪のように透き通った肌を隠すことはないが、頬をほんのりと朱に染める様は、
驚くほど色っぽく、グリーンに返答の言葉を詰まらせた。
「……あ、えーと……ごめん!」
何と答えれば良いのか全く思いつかず、グリーンは大声で謝るとリリスに背中を向けた。
今更ながらに心臓がバクバクと鳴っているが、顔を見なければちゃんと喋れる気がする。
しかしリリスはそんな微笑ましい気持ちを読もうとすらしなかった。
「あはは。可愛いなぁ、もう。そういう所も、だーいすき」
ふわりと池から跳び上がると、空中で周囲に散っていた蝙蝠たちがリリスを包み込み、
いつもの衣装を纏わせる。
そのまま大きな羽根で包み込むように、背後からグリーンを抱き締めた。
脇の下から通されたリリスの手がグリーンの胸上で、のの字を描いたりしている。
首筋に掛かる甘い吐息がグリーンの自制心を掻き乱した。
(細かいことはどうでも良いや)
グリーンは振り向きながらリリスの背中に回した腕に力を込めて引き寄せ、
唇を重ね――ようとして唇と腕が空を切った。
なんか奇妙な既視感(デジャヴ)を感じる。
グリーンの行き場のなくなった唇を、すぐ隣へ現れたリリスが人差し指の腹で押えた。
「お、あ、ず、け」
ペットを躾けるように一字づつ区切った言葉が耳に痛い。
これじゃまるで盛りのついた動物じゃないか。情けなくって涙が出てくる。
「ゴメン。こんなことするつもりじゃ……本当にゴメン」
「別に怒ってなんかいないよ。ううん、凄く嬉しい。ずっと、していたいくらい。
でも――してばっかりじゃキミの体が持たないしね。後のお楽しみだよ」
「……そうだな。とにかく夕方まで時間がないから、タワーに向かいながら首輪を探そう」
そっとリリスの手を握るとしっかり握り返してくれた。
潤みを含む妖艶な瞳がグリーンの網膜に焼き付いていく。
掌から伝わる温もりが、心臓の鼓動を大きくした。この子を守りたいと、心から思う。
まずは首輪を集めて、それから彼女を首輪から自由にして――
「うん。頼りにしてるよ。じゃあ、しっかり掴まっててね」
「掴まってって、うわぁ!」
リリスが軽く地面を蹴ると、グリーンを連れたまま羽ばたきもせずに空中へと浮かんだ。
重力や航空力学を頭から無視しているが、リリスにとっては歩くことと大差ないのだろう。
これなら直ぐにタワーへ辿り着けるだろうし、誰かを見つけることも容易いだろう。
感心する反面、グリーンの心境は複雑だった。
なぜなら木々や地面さえも邪魔をしない二人だけの時間が、短縮されてしまうから。
二人はお互いの手を力強く握っていた。絶対に離さないように、しっかりと。
【C-4/空/一日目/午後】
【グリーン@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:リリスにメロメロ、中程度の疲労と消耗、体の数箇所に怪我、
腹部打撲(内臓や骨を損傷しているおそれ有)、飛行するリリスに掴まっている
[装備]:こぶたのしない@FF4、ナインテールキャッツ
[道具]:魔女の媚薬@H×H、はりぼて首輪
[思考]:リリス……
第一行動方針:リリスのためにタワーへ向かいつつ首輪を狩る。
また、リリスを首輪の束縛から解放してやるために、首輪解除方法の模索は継続して行う
第二行動方針:レッド達は……まあ、大丈夫だろう。リリスが許してくれたら探してみようか
基本行動方針:リリスのために何でもしてやる。対主催、首輪解除方法模索のスタンスは継続
【リリス@ヴァンパイアセイヴァー】
[状態]:グリーンにメロメロ、魔力体力完全回復、お肌もつやつや、飛行中
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料は無し)
[思考]:グリーン……
第一行動方針:グリーンと一緒にタワーへ向かいつつ獲物を狩り、遊びを楽しむ
第ニ行動方針:18時にはB-7のタワーへ行く
第三行動方針:3人抜きしてグリーンを治療するついでに、ジェダに彼を紹介し相談する。
基本行動方針:楽しく遊びつつ、優勝してグリーンの全てを手に入れる
[備考]:コナン&ネギと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです
あまりイチャイチャしているとグリーンの体に悪いということを思い出しました。
[備考]:グリーンはリリスの体液の催淫効果によって、リリスは魔女の媚薬によって、
ともに相手にメロメロな状態にあります。
ちなみに、魔女の媚薬の効果は制限下で6時間程度。
どちらの効果が先に切れるかは、後続の書き手のかたにお任せします。
グリーン&リリスを投下終了しました。
他作品キャラで露骨にラヴラヴ出来る滅多にない機会なので書いてみました。
想像していたよりも遥かに難しかった。もっと恋愛小説でも読んで勉強すべきだったか。
投下中ずっとトリ間違えてた……
新人さん? と思ったら◆uOOKVmx.oM氏だったー!?(ビュティばりの驚き)
GJ。内面描写が丁寧だなぁ。
おお、投下GJ!
なんだこのバカップルw無駄に微笑ましいぞオイw
南西のタワー絡みはなかなか楽しくなりそうだ。
見覚えのあるトリだと思ったら、あの方だったか…
乙です、いわゆる「ヤりすぎ注意」ってやつですなw
>>208です。
とりあえずWikiの書き手紹介を更新しました。
主な登場キャラの欄は
・同率トップが1人or2人→そのキャラ
・同率トップが3人以上 →名簿順に上から3人
という形で機械的に書いただけなので、適宜修正頂けるとありがたい。
これから各作者ページの更新に移ります。
>>217 あまーい! 何だこの主人公とヒロインはw
互いのために動こうという心理描写がよかったです。
マーダーなのに応援したくなるじゃないかw GJ。
>>221 こちらも乙。登場回数も考慮すると纏めるの大変そうだな……。
あとでじっくり見ます。
全員分更新完了。お粗末さまでした。
グリーンの口調がレッドになっていないか
バカップルが直球ど真ん中でキター! なんだその結婚を前提にしたお付き合いっぷりは!w
大人の階段を駆け上ったくせにハダカ見たくらいで固まるとか順番逆だろグリーンw
自然な形でリリスに今後のエロ攻撃を自粛させたのはGJ
>>221 お疲れさまです。主要キャラとかが分かりやすくて見比べるとかなり面白いです
効果が切れたときが怖楽しみ
投下乙
だが何だこの無駄なエロさはwwwwww
あまりのラブラブっぷりに吐き気がしてくるぜwwwwww
>208氏の作ってくれた登場キャラを元に、書き手の登場キャラ数ランクを作ってみたので貼り。
トップは……すげーの一言。
1位/43人:
◆3k3x1UI5IA 氏(13話)
3回: メロ
2回: 薫、コナン、金糸雀、トリエラ、ネギ、雛苺、ヘンゼル、ヴィクトリア
1回: アルルゥ、イシドロ、カツオ、一休、乱太郎、イヴ エヴァ、キルア、武、勝、紫穂、ジーニアス、
真紅、蒼星石、なのは、タバサ、トマ、ニア、ニケ、灰原、ビュティ、しんべヱ、フランドール、
ブルー、梨花、ベルフラウ、太一、双葉、小狼、リリス、リンク、レックス、ベッキー、ヴィータ
2位/42人:
◆CFbj666Xrw 氏(11話)
2回: アルルゥ、勝、灰原、フランドール、梨花、プレセア、メロ、レミリア
1回: 薫、イエロー、イシドロ、光子郎、一休、乱太郎、インデックス、イヴ、エヴァ、コナン、丈、桜、
ククリ、グレーテル、ゴン、白レン、真紅、蒼星石、なのは、タバサ、永沢、ニケ、ネギ、ネス、葵、フェイト、
ブルー、ヘンゼル、ベルカナ、梨々、リルル、リンク、レックス、ヴィータ
3位/37人:
◆NaLUIfYx.g 氏(10話)
2回: 小太郎、シャナ、リディア
1回: イシドロ、光子郎、一休、乱太郎、イリヤ、イヴ、コナン、金糸雀、キルア、グリーン、グレーテル、勝
紫穂、白レン、きり丸、蒼星石、なのは、タバサ、ニア、ネギ、ひまわり、灰原、フェイト、ブルー、梨花、ヘンゼル
弥彦、メロ、太一、はやて、双葉、リンク、レン、ヴィータ
4位/29人:
◆o.lVkW7N.A 氏(9話)
3回: イエロー
2回: よつば、藤木
1回: 光子郎、カツオ、乱太郎、イヴ、丈、キルア、ククリ、グレーテル、ミミ、トリエラ、ニア、ネス、葵、
ひまわり、のび太、パタリロ、フェイト、ブルー、ベルカナ、千秋、ちよ、弥彦、メロ、太一、リルル、レミリア
5位/26人:
◆uOOKVmx.oM 氏(14話)
3回: ベルカナ、リリス
2回: 薫、イエロー、カツオ、コナン、パタリロ、藤木、千秋、弥彦
1回: 一休、 エヴァ、丈、キルア、グリーン、よつば、紫穂、ニア、ニケ、ネギ、葵、しんのすけ、のび太、ヘンゼル、メロ、太一
◆IEYD9V7.46 氏(9話)
2回: イリヤ
1回: アリサ、カツオ、小太郎、インデックス、イヴ、金糸雀、桜、キルア、シャナ、ジーニアス、翠星石、トマ、
雛苺、ビュティ、しんべヱ、フランドール、ブルー、プレセア、太一、はやて、双葉、梨々、レックス、ベッキー、ヴィクトリア
◆JZARTt62K2 氏(8話)
2回: アルルゥ、プレセア
1回: 一休、インデックス、エヴァ、金糸雀、ククリ、勝、なのは、トマ、トリエラ、ニケ、ネギ、ネス、葵、灰原、しんべヱ、
梨花、ヘンゼル、ベルカナ、小狼、リルル、リンク、レミリア、ヴィータ、ヴィクトリア
8位/12人:
◆gMrrx6WqIM氏(5話)
2回: ジュジュ、雛苺
1回: 光子郎、ジーニアス、真紅、翠星石、なのは、ミミ、ニケ、フェイト、レックス、ベッキー
9位/11人:
◆Gs3iav2u7.氏(4話)
1回: アリサ、アルルゥ、エヴ、みか、なのは、トマ、ニケ、はやて、小狼、レミリア、ヴィータ
10位/10人:
◆2kGkudiwr6 氏(5話)
2回: はやて、レン
1回: アリサ、イシドロ、イリヤ、金糸雀、白レン、真紅、ヘンゼル、レックス
◆aAwQuafMA2 氏(4話)
2回: リルル
1回: イエロー、ククリ、グリーン、グレーテル、サトシ、ネス、しんのすけ、ひまわり、リディア
めんどくなったのでここまでしか数えられなくてごめん…。
作品数で言うと◆3k3x1UI5IA 氏が32で、◆CFbj666Xrw 氏が30……。
いや、おかしいってw
作品数32、と言われて一瞬何のことだか分からなかった。
このロワ49作品も参加していたんだよなw
今何か予約あったっけ?
>>232 大きい予約が入ってて、まったり待ってるところ。
ちなみに空いてるパートは、
【午後枠】
グリーン&リリス、フェイト&ブルー&イヴ、ヴィクトリア、グレーテル
【真昼枠】
ひまわり&ククリ←のび太、イエロー&リルル&ネス←トリエラ
なのは&インデックス&ニケ&エヴァ&ヴィータ&勝
シャナ&小太郎&双葉←紫穂、はやて&トマ&アリサ←みか
白レン&イシドロ&蒼星石&タバサ、千秋←パタリロ&弥彦
小狼&リンク&梨花&灰原→一休さん、ヘンゼル、コナン&メロ
カツオ←キルア、ニア&太一、きり丸、レックス
【昼枠】
ミミ 、金糸雀
位置的にミミが空気になりそうで怖い。
まとめ乙。ミミはいざとなったら放送まで寝てましたでも問題ないような。
>>234 それを空気化って言うんだよォォォォ!!
レンタルでデジモン借りようかな……。
一週間になっちゃう火曜の終わりまでには投下しようと思う。遅くなってごめんなさい。
あー、ちょっと書きすぎなおかしな人(
>>230)です。
ちょっと躊躇いがあるんですが、学校組、予約しちゃっていいでしょうか?
間に他の人挟んだとはいえ、自分でもあの辺動かしすぎのような気がしてるので……
他に学校関係で展開考えてる人いたら、控えようかとも思ってるんですが。
あんたすごいよ
>>238 個人的には問題ないと思う。
書きたいって人が他にいないなら、あのゴチャゴチャした状況が動くことは歓迎。
あ、あと◆CFbj666Xrw 氏はSSが完成したら「〜時ごろに投下する」とか言ってくれるとありがたい。
支援を合わせたいんで。
投下は日が変わるくらいかその+30分くらいになると思う。
遅くなってすみません。
いえいえ待ってますよ
久しぶりってか初の大作ですし
私は一向に構わんッッ!
SS投下、いつでも待ってます。
>>241 頑張って下さい。
えーっと、とりあえず予約しておきます。
小狼、リンク、梨花、灰原、一休さん、以上5名。つまり現時点の保健室組。
色々と大変なことになりそうですが……ね。
まあ0時30分投下、で行きます。
三部作で、一部ごとにインターバルを起きます。投下いきます。
電撃の支援
彼ら、彼女らは睨み合っていた。
ジーニアスとベッキーは空中に浮遊する明石薫を見上げ、
明石薫は水面に奇妙な格好で漂う二人を見下ろしていた。
といってもそれは、明確な殺意や敵意から来ているものではない。
彼らの中にある感情の多くは動揺と困惑、それに迷いや苛立ちだったのだ。
今のところ、まだ彼らは互いを敵だと確信してはいなかった。
だが。
「ジーニアス。……やっちまえ」
薫には届かない程度に小声で、物騒な言葉が吐かれる。
「え、ベッキー……?」
「やれ、あたしが許す! あたし達のこと物理的に思い出せなくしろ!
死なない程度にぶん殴るとかして! こんな格好見た奴をただでかえすなー!」
「ちょ、ちょっと待ってよベッキー!? いきなりそんな……!」
ジーニアスとて薫を警戒してはいたが、それはあくまで強力な力の持ち主としてだ。
悪人か予想もできない内から攻撃するなんて事には抵抗を覚える。
「なに言ってんだ、アイツの顔を見てみろ!
あんなガキのくせしてどー見ても悪人面な表情を……あっ」
レベッカは薫の方を指差して。
「ふぅーん。へぇ〜」
薫はやっちまえだのという物騒な言葉を耳にして、しかし敵だと思いはしなかった。
なにせ明石薫も似たような性格なので、単に相手が怒っただけにしか思えない。
それが自分のようにエスパーなら警戒もするが、隣の少年頼りのあの様子じゃそれは無い。
だから危険とは思わない。
それどころかある種の共感を覚えすらした。
といっても、それと仲良くするかどうかも全くもって別のお話だ。
薫は無様な格好で水面に浮いている変な格好の少年少女を見て。
「…………プッ」
さも楽しげに鼻で笑ってやった。
レベッカの言うとおり実に非道い笑い顔だった。
その光景を見て、キレた。
「ああああ! アイツ笑いやがった!
笑うなバカ! あたしは先生なんだぞ! 笑うなったら笑うなー!!」
「落ち着いてよベッキー!?」
浮き輪となっているレベッカが暴れ、水面をゆらゆらと揺れる。
ジーニアスはしがみついていつのがやっとだった。
「くくっ、ま、そんな水の中に居ないで出てこいって。
お互いよーく見て話そうよ」
薫は笑いをこらえながら水面の二人に向けて手をかざした。
そして、力をこめた。
――轟と、水が渦巻く音が響いた。
「うわあああぁ!?」
「な、なんだよこれ!!」
水面が、不自然に窪んだ。
不可視の力が湖面の水を掴み取り、すり鉢状に押し広げたのだ。
しかしその中でもジーニアスとレベッカの位置は変わらない。
先程と同じ高さ、つまり二人は空中に浮かんでいた。
「な、何すんだよおまえ!!」
「えー? お互いよく見えるようにしただけだって。
それにしてもほんと変な格好だな、おまえら」
薫はけらけらと笑いながら二人を見下ろす。
別に殺意は無いし敵意というほどのものはない。悪意も度の過ぎたとはいえ悪戯心だ。
だがこれは、ジーニアスから見れば危機的状況だった。
(くそ、どうにかしないと!)
彼から見た明石薫は仮にもレベッカが敵とみなした相手であり、
その上にこの行為となれば、少なくとも逃げた方が良いと判断するには十分すぎる。
だがどうやって逃ればいい?
今の二人は空中に持ち上げられ、足場が無くまともな身動きが取れない。
当然、この状況でジーニアスに思いつく打開の手段は魔法となる。
素早く、そして小声で短い呪文を口ずさむ。
「…………ん? 何言ってんだ、おまえ?」
薫が首を傾げた時にはもう遅い。
「ビリビリだよ! ライトニング!」
「え……!?」
薫は反射的にサイコキノでバリアを作り出す。
だが、サイコキノ単体で雷や熱線を防ぐ事は、出来ない!
頭上から襲い掛かった小さな雷は薫の全身を突き抜けた!
「んぎゃっ」
フッと、二人を掴んでいた力が消えて。
ジーニアスとレベッカは湖面へと着水した。
* * *
それは予兆だった。
怖ろしい未来のささやかな前触れ。
訪れる未来との因果関係は薄いのに、ただ根拠の無い不吉な予感だけを残していく。
――遠くで小さな雷が、光った。
「ひっ」
少女は息を呑む。
それは廃墟を慎重に移動している時の事だ。
大通りの曲がり角から直線の先、その先にある橋、が掛かっている湖。
そこに小さな雷が落ちた。
「梨々ちゃん、あれって……!」
「うん、もしかしたらあのレックスっていう男の子があの辺りに居るのかも」
少女達は廃墟で息を潜めている。
「もしかして、また誰かが襲われてるの? それじゃ助けに行かなきゃ!」
「ダ、ダメ! 今度こそ殺されちゃう。
それにあのレックスっていう子とは別で、あいつはまだ近くに居るのかも」
「……そっか。うん、見つかっちゃダメだよね」
さくらは大人しく引き下がる。
少女達は慎重に移動していた。殺されない為に。
梨々も、そしてさくらも、また襲われるのが怖い事は本当だった。
さくらはそれでも危ない人を目にしたら飛び出しそうではあったが。
「でもリインの見た所だと、あの雷はそれほど強い魔法ではなかったようですよ?」
「え、それほんと? 私の時は直撃したら死んじゃいそうなくらい強かったのに」
「もしかすると別の人の魔法かもしれませんです。あるいは初級の魔法を使ったとか。
一瞬で遠かったから自信は無いですけど、多分当たっても死んだりはしないんじゃないでしょうか?」
* * *
当たった誰かこと明石薫は……宙に浮かんだまま半ば失神状態にあった。
電気ショックによって意識を刈り取られたのだ。
初級魔法とはいえ、直撃すれば殺せずとも多大な勝機を作り出す。
だがジーニアスもレベッカも追い打ちを掛けずに逃げ出したため、追撃は無かった。
ジーニアスは逃げる隙が欲しかっただけなのだ。
薫が気が付いた時、二人の影は既に湖底へと消えつつあった。
「くそっ、何しやがるあの野郎! 痛いじゃねーかチクショウ! 逃げんなあ!!」
薫はすぐに激怒した。
傷自体は致命的な物ではない。
その上に怒り狂った明石薫はアドレナリン大量分泌で痛みを即座に忘れ去る。
残った怒りだけを胸に、湖面を睨み付け。
突撃した。
支援
「ウソでしょ! 追ってこれるの!?」
「うわ、ヤベーな」
ジーニアスとレベッカの二人に焦りが浮かぶ。
視線の先には遥か湖面から迫りくる球体が有った。
サイコキノで周囲の空気を保持して水中に突撃してきた明石薫の姿だ。
ジーニアスとレベッカを見失っているのか、きょろきょろと湖底を見回しながら潜水している。
「どうしよう、ベッキー?」
二人は今、湖底に沈む都市に居る。
動かなければすぐには見つからないはずだ。
こっそり逃げてもいい。
水中だから種類こそ限定されるが、不意打ちでもっと大きな魔法を使えば倒す事も出来る。
「逃げるぞ。急いで、派手に」
だけどレベッカはそう言って……近くの、仲間の姿を示した。
「あいつ、知らない奴にあんな姿を見られたいなんて思わないだろ」
「……そうだね」
二人の近くには翠星石の死体が有った。
無惨に殺された、だけど満足げに笑みを浮かべた死体。
何かを果たした、だけど人形として無惨に壊された姿。
翠星石ならきっと怒るだろう。
『ジロジロ見てんじゃねーです!』だとか言って。
もしここで戦えば翠星石を巻き込んでしまうかも知れない。
そうでなくとも明石薫が翠星石の死体を見つけてしまうかも知れない。
ジーニアスとレベッカを笑ったように、翠星石を壊れた人形だとバカにするかもしれない。
(そんな事、絶対にさせるもんか)
ジーニアスとレベッカは見つめ合い、頷いた。
方針は決まり、その意志も堅い。
意志は迷うことなく実行へと移る!
「ジーニアス、あたしを持って走れるか? この服、すげー動きにくいんだ」
「判ってる。水中だからなんとかなるよ」
ジーニアスはレベッカを背中に担いだ。
宇宙服というのは基本的にとてつもなく重いものだが、
ぶかぶかになるほど中に空気が詰まったこの状態は水中において相当な浮力を生み出している。
つまりレベッカが行動できる程度の重さだ、ジーニアスにも担げない事は無い。
そして走り出した。
その速力はとてつもなく速い。
海底探検セットの一つ、快速シューズは水底において10倍もの速力を与えるのだ。
湖底の砂を巻き上げ爆走する二人の姿は即座に薫の目にも止まった。
「見つけた!」
薫は即座に追撃を始めた。
湖底を舞台にした長い追いかけっこが始まった。
* * *
少年が駆ける。水底をひた走る。
湖底都市をひた走り、遮蔽物に隠れ、建物の中を走り抜ける。
少女はそれを追う。水中を突き進む。
湖底都市を飛び回り、遮蔽物を粉砕し、建物を突き抜ける。
力任せに少年を追いかける。
しかし何度か迫りはしたものの、この湖底都市という環境は障害物が多すぎた。
「くそ、どこ行った!?」
薫はまた二人を見失った。
これで7回目くらいにはなるだろう。
すぐ近くに隠れているのだろうが、薫にそれを見つける適切な手段は無い。
こんな時、薫が思いつく手段は一つだけだ。
「そこら辺かあ!?」
ドンという音がして建物の壁が砕け散る。
もうもうと砂煙が立ちこめて、しかしその先に二人の姿は無かった。
「それじゃこっちか!?」
今度は別の方向の壁が砕ける。だがそれも外れだった。
とんでもない力任せの人捜しである。
ゆえに!俺の支援!
片っ端から障害物を破壊して目標を捜すなんて非効率的にも程がある。
制限が掛かっている今、隠れるところを全て粉砕する程の力技は出来なかった。
それにここは水中なのだ。常に周囲に力を放出して空気を維持しなければならない。
幾ら世界最強クラスの念動能力者とはいえ、限界は来るはずだった。
しかし薫はそんな事を考えもせず、そんな様子を見せもせずに破壊を繰り返す。
諦めるとさえ考えなかった。
「よっし見つけた! 待ちやがれ!」
なにせ何度もあと少しまで迫っているのだから。
そう、ジーニアスとレベッカの二人は何度も薫から隠れながらも逃げきれずにいた。
理由の一つは快速シューズの力を借りて走ると、速すぎて大通りしか走れない事だ。
だだっ広い障害物の無い海底を走る事を想定された快速シューズは入り組んだ地形に弱い。
下手にそんな所を走り回れば壁にぶつかりかねなかった。
そしてもう一つの重大な理由は……体力の限界だった。
「はぁ、はぁ…………つ、疲れたあ……」
8度目の追撃を振り切ったジーニアスは建物の中で荒い息を吐いた。
いくら担げる程度とはいえ、宇宙服を来た少女を担いで走るのは相当に体力を消耗する。
ジーニアスは別に飛び抜けた肉体能力を持ってはいないのだ。
レベッカを担いだまま逃げ切るのは相当難儀な事だと言えた。
「なあ、あいつほんとに限界なんて有るのか?」
「有る……と思ったんだけど、わからなくなってきた」
「ったく、どうすんだよそんな事で」
レベッカの問いにジーニアスは思わず弱音を吐く。
振り切れずとも薫に無駄に力を使わせれば疲労した所を逃げきれると思っていた。
ジーニアスは、いくらレベッカを担いでいるとはいえ支給品の力を借りて走るだけだ。
空気の問題だって支給品で解決している。
一方の明石薫は全てを自前の能力で押し通しているようだ。
どちらが消耗するかなんて言うまでもない……はずだった。
……それには、同じくらいの体力ならという条件が付いていた。
元の世界において殆ど無尽蔵の力を持ち、それを使い切れてすらいなかった明石薫は、
この世界においても貯蔵する力の量でいえば莫大なエネルギーを秘めていたのだ。
「ベッキー、空気の量は大丈夫?」
「もうあんまり持たないよ。純酸素じゃなくてただの圧縮空気だからな、このボンベ」
宇宙服の残空気量も残り少なかった。
活動時間で言えば純酸素ボンベの方が長時間活動出来るのは言うまでもない。
しかし濃度の高い酸素は危険な為、低い気圧で使わなければならず、
下手に使うと高山病になる危険が高いため、その使用には前もって専用の施設で、
何時間も掛けて低気圧に体をならしてから使う必要が有り…………
一言で言うとこの宇宙服には使い勝手の悪い酸素ボンベではなく空気ボンベが付いていた。
そこまで言ってふと気づく。
「あれ、でもそれって……」
「……あっちは圧縮もしてないただの空気だよな?」
二人は隠れた場所から薫の方を覗き見た。
「息が、息があああああぁっ!!」
酸素切れに藻掻きながら水面に浮上する明石薫の姿が有った。
「今なら逃げきれそうだね」「だな」
二人は頷き合うと、陸に向けて走り出した。
* * *
「すぅー、ぷはーっ。空気がうめー!」
まるでタバコでも吸ってるようなオヤジ臭い擬音だが、深呼吸である。
明石薫は川の畔で大きく息を取り入れていた。
酸素不足で窒息しそうになった後の空気はとても美味しく感じられる。
湖畔の爽やかで綺麗な空気ともなれば尚更である。
語彙が豊かな者ならば「この空気は爽やかでありながら命に満ちて瑞々しく」云々と絶賛するかもしれない。
しかし薫は、腹立たしげに表情を歪めた。
「それにしてもあの野郎、どこ行きやがったんだ?」
薫は再潜水して周囲を捜したが、あの二人の姿は既に何処にもなかった。
まだ湖底の街に居るとしても、辺りさえ付けられなければ見つけだす事は不可能だ。
そもそも陸に上がってると考えた方がいい。
ジーニアスとレベッカは完全に追撃を振り切っていた。
「あの湖底の街もなんだかよくわかんねーし。ここ、ダム湖なのか?」
ダム湖に村が沈んでいる光景は見た事がある。
だけどもしダム湖だとすれば、ダムは何処に有るのだろう?
それらしいものは何処にも見当たらない。
「…………ま、いいや。さっさと着替えよっと」
湖から上がる時、慌てた薫の服はびしょびしょに濡れてしまった。
太陽の日差しは眩くて、そこらに掛けていれば一時間かそこらで乾くだろう。
着ていたってその内に乾くはずだ。
だけどそれまで濡れた服を着ているのも気持ちが悪いから、薫はあっさりと服を脱いだ。
それを木の枝に掛けて、新しい服を手に取った。
……そう、新しい服である。
薫の居る湖畔には誰かの服が掛けられていたのだ。
「しっかし色気ねーの。男の子みたいじゃないか。これじゃパンチラも見れねーし。
パンツもはっちゃけてないんだな。まあ勝負下着穿いても皆本は居ないし、いっか」
ぶつぶつ文句を付けながら一つ一つ服を着替えていく。
パンツを穿いて、黒い長シャツを着て、ズボンに足を通して、上着を纏う。
ついでに空っぽのポシェットも身につけた。
それで全部だ。
イエロー・デ・トキワグローブの服装は下着が無ければ男物にしか見えない物だった。
「というか下着以外男物じゃん、これ。
くんくん……んー、微かに女の子の匂いはするな」
だからといって確認の為に匂いを嗅ぐのは年頃の少女として色々となんだが。
しかしツッコミ役は居ない。
「服を盗ってっちゃうけど、まああたしの服を残しときゃ良いよな。
というかこれなんかイマイチだし、乾いたらまた着替えに来よっと」
薫は自分の着ていたチルドレンの制服を枝に掛けた。
それから水際に立って、自分の姿を水面に映してみた。
「うっわ、色気ねえ」
元々男の子っぽい薫である。
それに男物の服となれば、知らない者が見れば男に見えそうな姿だった。
薫は盛大に溜息を吐いた。
それから、呟いた。
「……どうしようかな、これから」
開始直後から気になる物ばかりでそれに釣られて衝動的に動いていたが、
ここは殺し合いがそこら中で起きている“ヤバイ”場所だったはずだ。
幸いにも薫は一度も死体や殺し合いの現場に遭遇していなかったが、
それだけに今ひとつ、この世界に関する緊張感や実感が足りていなかった。
最初の会場で見た凄惨な光景さえその後の騒動で現実感を失いつつある。
木に激突させられ臨死体験までしたというのに、どうにも緊迫していない。
そんなだからいつもの調子で衝動的で乱暴な行動に出て、危険人物だと誤認されるのだ。
「うーん、ま、葵と紫穂をさがして……」
とりあえず親友を捜そうと決めかけたその時。
森の向こうの空が一瞬光って。
轟音が響いた!
「うわ!? か、雷か?」
薫は目を白黒させてその方角を見る。
その雷音は一度だけで、空は変わらない晴れやかさを保っていた。
それだけにこの唐突な落雷は薫の興味を惹くには十二分すぎた。
「もしかしてさっきの奴か? よし、今度こそ逃さねえ!
えーっと…………こっち、かな?」」
薫は宙に浮かび上がり、落雷の場所を捜しに向かった。
結局の所、薫はまたも状況に呑まれ、勢いに任せていた。
* * *
橋の下からでもその落雷は判った。
距離は多少離れていても一直線だったし、その雷はとてつもなく激しいものだった。
なにより彼女達はまた雷が鳴るかもしれないと思っていたから、その光と音を正確に観察できた。
だから一度目より詳しく状況を把握する。
「なにあれ、私の時のだってあんなにとんでもなくなかったのに……」
「リインの見た所だと相当強力な魔法みたいです。
もしかしたら、なのはさんの砲撃魔法と同じ位かもしれません」
梨々の怯えにリインの解説が続く。
「どうしよう、今度こそ誰かが襲われてるのかも……」
「でも音が届くまでの時間からして、2km近くは有ると思う。
何か起きてるとしても、それじゃ間に合うかどうかもわからないよ」
「それじゃ……それじゃせめて、この子だけでもどうにかしなくちゃ」
この子というのはさくらと梨々の前に倒れている少女だった。
橋の下の魔力反応を見つけて降りてみればそこには一人の少女が倒れていたのだ。
「……でも、この子だって信用できるかわからない。
連れてくにしたって縄で縛ったりした方がいいんじゃないの?」
「それはダメ。絶対ダメ!」
結局梨々はさくらに折れて、少女を担いで移動する事にして。
……少女が目覚めたのはそのすぐ後の事だった。
* * *
再び雷が鳴る少し前の事だ。
「おいジーニアス、体引っ張ってくれ」
「うん、わかったよベッキー」
二人は湖の畔で着替えていた。
といっても、こちらは別に素肌を晒していたわけではない。
「あんまり無理に引っ張らないでくれよー」
「うん、わかってるってば。よいしょ」
二人がかりでベッキーの宇宙服を脱いでいた。
水中の浮力無しでは宇宙服はとんでもなく重い。
少なくとも普通の子供ではまともに動けなくなる程に重いのだ。
着るのも脱ぐのも一苦労である。
「ふー、重かったー。防弾になるかなと思ったけど陸じゃただの棺桶だな、これ」
「ボクも着替えるよ。シューズはこのままでも大丈夫だけど、他は陸向きじゃないや」
ジーニアスの快速シューズは水底では重しにもなる重量のある代物だったが、
バネが効いている為、慣れてしまえば思いの外に軽く感じた。
流石に水中のように高速で走れるわけではないが、動きを阻害される事も無い。
ヘッドランプも良いだろう。しかしエアチューブと水着は陸上ではまるで意味が無い。
チューブが無い方が呼吸はしやすいし、水着も……外見の事も有るが陸の服の方が便利だ。
ジーニアスは近くの茂みでさっさと着替えを済ます事にした。
遠雷が鳴り響いたのは、ジーニアスが着替えを済ました丁度その時だった。
「今のって……」
「雷だな。近いぞ、せいぜい1キロだ。……でも、晴れてるな」
「うん、きっと誰かの魔法だよ。それもかなり強い」
雷の音はかなり強烈に鳴り響いた。
ジーニアスがイリヤに撃とうとした必殺の雷撃魔法、インディグネイションと同じ程ではなかろうか。
まあ遠くから音を効いただけでは大体の辺りしか付けられないが。
「……様子を見に行ってみよう、ベッキー」
「おい、危なくないのか?」
「様子を見るだけだよ。危なそうだったらそれだけで退けばいい」
それもそうかとレベッカは頷き、二人は森へと行軍を始めた。
……その上空を、明石薫が飛び去った。
「っ! 今のってさっきの奴じゃないか!」
「近くに居たんだな。あいつもさっきの雷を見に行ったのかな」
「でも……」「……ああ」
二人して顔を見合わせる。
明石薫の飛んでいった方角と雷が落ちた方角を照らし合わせる。
そして子供っぽくとも仮にも天才二名は、分析の結論を出した。
「ちょっと方角がずれてるよな、あいつ」「……だよね」
飛んでいてもすぐに着けるとは限らない。
* * *
「ベルフラウは、ここにキスするの。そうすれば、すぐにはジャコに斬らせないであげるの♪」
目の前の少女人形は手を差し出して、そう言った。
あまりにも朗らかに。
同族に見える別の、恐怖に歪んだ少女人形の首を抱えて。
カボチャのお化け人形に鋭利な鎌を突きつけさせて。
嬉しげに笑っていた。
「………………」
――本当に危険な選択はどちらなのか?
判らない……いや、違う。
(安全な選択なんて有りませんわ)
どちらを選んでも死の危険が存在する事を肌で感じれた。
戦ってこの状況を打破できる可能性は殆ど無きに等しい。
ならすぐには死なないであろう儀式を選ぶのか? 不吉な気配を漂わせるそれを。
それもまた、剰りに危険な選択に思えた。
「…………一つだけ、よろしいでしょうか……?」
だから少しでも先延ばして情報を得ようとする。
「なぁに?」
雛苺はこくりと小首を傾げて応える。
普段なら愛らしいであろうその仕草も、今では恐怖しか生み出さない。
ベルフラウは軽く唇を噛んで震えを押し殺すと、訊いた。
「それは何の契約ですの?」
「………………」
雛苺は無言で笑い続け。
ジャコの鎌が首に食い込み、ぷつりと小さな痛みが走った。
「ひっ」
「教えてあげない♪」
ベルフラウは恐怖しながらも一つの確信を得る。
この儀式はやはり何らかの契約だ。
契約というからには互いに何らかの代価を支払うのが筋だろう。
しかし目の前の少女はそんな事を教えもせずに契約を迫る。
圧倒的に劣位な状況ではこの契約を呑む以外に何が出来るというのか。
(どうすれば良いの、先生……!)
もうこのどう考えても一方的な契約を受け入れるしかないのだろうか。
そう思ったその矢先に……少年の声が聞こえた。
「キミ……もしかして、翠星石の友達?」
「……翠星石を知っているの?」
(この子の仲間……!?)
運の悪さに更にもうダメだと思いそうになる。
雛苺の背後、森の奥から一人の少年が姿を表していた。
言うまでもなく、ジーニアスだ。
雛苺やベルフラウからは見えないが、レベッカも森の奥で様子を見ていた。
呼び声に応えて、雛苺もジーニアスの方をゆっくりと振り返る。
それでもジャコの鎌は突きつけられたままだからベルフラウは動きが取れなくて。
胸に抱えた別の少女人形の首が、ジーニアスの視界に映った。
「な、なんなんだその……!」
「真紅だよ。これからはずっと、真紅と一緒なの。他のみんなとも一緒なの。
ねえ、翠星石はどこに居るの? 蒼星石は? 金糸雀は?」
ジーニアスが絶句し、雛苺が笑う。
雛苺はベルフラウに背を向けていたけれど、それでも笑顔を浮かべているのは間違いない。
……ふと、思った。
糸を操る者も居ないのに、ジャコはどうやって動いているのだろう? と。
(決まってますわ。この雛って子がどうにかして操って……あ……)
それはジャコが単独で動いているわけではないという事。
それならばもしかすると……ベルフラウを見ている目は雛苺の二つだけではなかろうか?
「………………」
驚く少年を遠目にベルフラウは少しだけ後ろに這った。
――ジャコは斬りかかってこない。
そっと体を起きあがらせる。
――ジャコは動かない。
(行けますわ)
ベルフラウはきびすを返し全力で走り出し……!
「逃がさないの」
いつの間にか地に広がっていた苺轍がベルフラウの足に絡みついた!
「きゃあ!?」
あっさりと足を取られて地に転ぶ。
すぐ脇の地面にジャコの鎌が突き立った。
ジーニアスは刺激すまいと駆け寄る足を止め、ベルフラウは再び囚われの身に逆戻る。
ベルフラウは見た。ジャコの鎌の柄の方が、いつの間にかコンと雛苺に当てられている事を。
雛苺に力を注ぎ込まれたジャコは、擬似的に自らの意志で動いているのだ。
「逃げちゃダメ。早くここにキスするの。それからヒナと一緒に行くの。
そうしないと、すぐにジャコに切らせるの。……次の人もすぐ近くに来たから」
「う…………!」
突きつけられた手を拒む術は最早無い。
逆らえばきっと、今度こそ殺される。引き延ばしても。
「早く。ね、ベル……」
雛苺がベルフラウを急かそうとしたその瞬間。
「葵に何しやがる!!」
乱暴な力の奔流が雛苺をジャコごと吹き飛ばした!
「ふぁ……?」
雛苺は何が起きたか判らないままに力の奔流に呑み込まれ。
小さな体の雛苺と、空を飛ぶために軽量素材で作られたジャック・オー・ランタンは。
空高く跳ね飛ばされ、綺麗な放物線を描いて…………川に、叩き込まれた。
高々と水飛沫が上がった。
「…………あれ? 葵じゃねえ。なんで葵の制服を着てんだ?」
「あなた…………だれ?」
明石薫の短絡は、偶然にも一人の少女を助ける結果へと繋がった。
そして刻限は午後へと進む。
ここで5分ほど一休みします。あわてない、あわてない。
「あたし? あたしは明石薫」
ベルフラウの目の前に現れた少年(?)はそう名乗った。
殆ど男物の服を着た明石薫は言わなければ男の子のようにも見えた。
薫という名前もやや中性的で性別を判断する根拠にならない。
一人称からすれば少女にも思えるが、つまるところ明石薫はそんな格好をしていた。
ベルフラウにはどうでも良いことだ。
「で、おまえ誰だよ。ていうかなんで葵の制服を着てんだ?」
「こ、この服は支給されただけですわ。それ以上でも以下でもありません」
質問には答えながら、自分の名前についてはさりげなく答えない。
助けてもらったのはありがたいが、信用が置けるかよく判らなかったからだ。
「へー、服なんて支給されたのか。
なんだ、おまえも外れ引いたんだ。ま、元気出せよ」
薫は急に気安げな口調に豹変した。
なにせ薫の支給品は完全に外れであり、それを笑われた怒りで一暴れしたほどだ。
同じ外れを引いたと知ってなんだか親しみが湧いてきたのである。
(……他にも魔法のカードや操り人形を引いた事は言わない方が良さそうですわね)
ベルフラウはそれを直感し、スルーする。
というより状況の変化が激しくてそれより気になることばかりなのだ。
「……ところで、そこの人は誰ですの?」
「へ? …………あーっ、テメーさっきの!!」
ベルフラウが指差した先に居るジーニアスを見て明石薫が沸騰する。
ジーニアスの表情にも焦りが浮かんだ。
「うわ、ヤバッ」
雛苺が吹き飛ばされた時点でさっさと隠れておけば良かったのだが、
一度飛び出した手前か隠れる事もせずに戸惑った事が失敗だった。
いつでも背後にある森に飛び込めるようにと身構える。
「この野郎、さっきはよくもやりやがったな!」
「なに言ってるんだよ、やったのはそっちが先のくせに!」
「なんだよ、あたしはちょっと笑っただけだろ。そのくらいで怒るなよ」
ちなみに薫の記憶には開始直後に笑われて大激怒した自分の事は覚えていない。
ついでに湖を割って相手を力で捕まえて持ち上げる行為がどういう印象を与えたかも気づいていない。
ジーニアスがその点を指摘すれば、もしかすると穏便な関係を作り上げる事が出来たかもしれない。
薫には敵意が有るわけではないのだから。
「そういえばなんか話してたけど、おまえあの呪い人形とどういう関係なんだ?
彗星がなんとかさ。あんな人形が他にも居るのか?」
「な……翠星石はあんなのじゃない!!」
だがより気になる話に移り、ジーニアスは指摘を忘れた。
即座に言い返したジーニアスに、木陰に隠れていたレベッカが少し慌てる。
「お、おい、言い返すのは良いけどあんまりヤバイ事になったら……」
「判ってるよ。だけど……翠星石はよくやったんだ。翠星石は勝ったんだ!
あの深い湖の底で……たった一人っきりであいつと戦って、勝ったんだ。
誰にも翠星石をバカになんてさせるもんか!」
「ジーニアス……」
その想いはレベッカだって知っている――そもそもジーニアスに翠星石の“勝利”を教えたのは
レベッカなのだ――だから、レベッカも何も言えずに押し黙る。
そんな二人に薫とベルフラウは事情が判らずに戸惑うばかりだ。
なにか強い想いを感じさせる懸命な言葉は、如何せん要領を得なかった。
ベルフラウに至っては状況がさっぱり理解できない。
あの不気味な少女人形、薫という少女、謎の少年、隠れているらしいその仲間、それに翠星石なる誰か……
「一体なんの話ですの? というより少しは状況を説明なさい。
何が何だかさっぱりわかりませんわ!」
「それは……」
ジーニアスが言葉を交わそうとしたその時。
「教えてあげる。そいつは殺人鬼よ」
「……え?」
少女の声がどこからか聞こえた。
「まさか……!」
ジーニアスが慌てて振り返った視線の先には、3人の少女が現れていた。
木之本桜。梨々=ハミルトン。
そして……ただ一人ジーニアスが名を知る、仇敵である少女!
あわてない、だが支援。
「イリヤスフィール! そんな、死んでなかったの!?」
体操服姿の白い少女が杖を片手に、立っていた。
手も足も付いたまま、命を失う事も無く。
――そしてそれは、わずか十数秒のやり取りだった。
「よくも……おまえは翠星石のっ」
「そう、あんな死に方をしたくはないわね。誰だって」
ジーニアスの言葉を継ぐように言葉の流れを惑わせて。
「だから提案が有るの。話し合いましょう」
「え……?」
予想だにしない提案で揺さぶって。
「誰かを失った事はとても悲しい事だけれど、それに囚われず力を合わせましょう。
だってそうしないと、また殺し合いになってしまうじゃない」
「な、なにを!」
白々しい一言を叩きつけ。
「どう? お互いに精一杯歩み寄りましょう。今後の為に、悲しみを乗り越えて!」
「このっ、ふざけるなぁっ!」
鮮やかな挑発で相手を飛び込ませた。
「ファイア・ボール!!」
ジーニアスは雛苺に対して密かにスペルチャージしていた術式を発動する。
即座に生み出された無数の火球は一直線にイリヤへと直進した。
『Round Shield』
対するは魔力の盾。だが――
(薄い……? これなら)
一発目で震え、二発目で歪み、三発目で砕け、四発目で壊れ、五発目がイリヤに撃ち込まれる!
「きゃあぁっ!!」
派手な悲鳴をあげてイリヤが倒れこむ。その姿はあまりに無防備で。
(これなら、行ける!!)
何かがおかしい事に気づかずジーニアスは追撃を掛けようとする。
「ダメだ、ジーニアス!!」
だけどその時にレベッカの声が聞こえて。
「この野郎!!」
気づいたそこには暴力的なエネルギーの奔流が迫っていた!
「くそっ。何するんだよ!?」
ジーニアスの姿はうっすらと半透明の球壁に包まれていた。
イリヤとの戦いでも使ったフォース・フィールドだ。
幸いにも緩衝はしたが攻撃の威力は破壊的だった。
もし直撃していたらと思うと寒気が走る。
「こっちのセリフだ! 何してんだよてめえ!」
「何ってあいつは危険な奴じゃないか! ……あ」
言い返して気づく。
当然だが彼女はイリヤが殺し合いに乗っている事を知らないのだ。
厳密に言うなら明石薫には気づくチャンスが有った。
その前にジーニアスは翠星石を庇うような言動を漏らしていたのだから。
だけど巧みに作り上げた光景は明石薫にジーニアスを悪人だと誤認させた。
そして真相を知らないのは明石薫だけではない。
「イリヤちゃんだいじょうぶ!?」
さくらは心配そうにイリヤに駆け寄る。
「心配ないわ、このくらいなら」
「大丈夫、バリアジャケットは破れてないです!」
リインの言うとおりイリヤは大した傷を受けず、自らの足で立ち上がって見せた。
一発だけの火球は体操服状のバリアジャケットを貫くには至らなかったのだ。
全てイリヤの計算通りに。
(あの少年が使おうとした魔術は三種。
小規模な結界と、恐らく一度撃つと続けざまには撃てない火炎魔術。
それからとてつもない力を感じた、だけどすぐには発動しなかった謎の魔術。
この三つが咄嗟に使う得意魔術だと考えていいはず。
火炎魔術は私の魔術でも一塊を相殺できた程度、一部ならバリアジャケットで止まるわ)
読みは当たった。
イリヤはジーニアスの攻撃を防ぎ、そして自らの攻撃を成功させた。
「……どうして?」
さくらがジーニアスに問い掛ける。
「イリヤちゃんは話し合おうって言ったのに。
大切な友達を……殺されたのに……話し合おうって。それなのにどうして!?」
「え!? ち、違うよ! そいつが翠星石を殺したんだ! イリヤは翠星石の仇なんだ!!」
ジーニアスはようやくイリヤが仕掛けた罠に気づいた。
だがもう遅い。
「なんて奴。翠星石を殺しておいて、私が殺したって噂をばらまくつもりよ」
「そんな、ひどい!」
話し合おうというスタンスを見せた者に先制攻撃をしたという事実。
更に本当に失ったのがどちらなのかというミスリードが事態を決定的な物にする。
「違う、ボクじゃない! ボクじゃないんだ!」
悲痛に叫ぶジーニアスの姿が……木陰に引きずり込まれた。
「ベッキー!?」
「逃げるぞ! 早く!」
レベッカがジーニアスの手を引いて森の中を駆けていく。
森の奥へ、敵の居ないところを目指して。
「で、でも誤解を解かなきゃ! あんなにヒドイ事を言われてるのに」
「誤解解く前に殺されちゃどうしよーもないだろ!」
二人の背後から叫び声が響く。
「待ちやがれこの野郎!!」
最初に追ってきたのはけしかけた張本人のイリヤでもイリヤと居た二人でも無い。
丁度その場にいた、怒りやすくて単純な、そして強大な力を持った少女。
湖で見た時とは服装が違うが、誰であるかなど間違えようがない。
「そうだね……逃げないと。ベッキー、茂みを逃げよう!」
「わかった!」
ジーニアスとレベッカはやや歩きやすい道筋から外れ、茂みへと飛び込んだ。
茂みから木陰へ、木陰から岩影へ、岩影から窪地へ、そしてまた茂みへと陰へ影へと走りいく。
「くそ、どこ行きやがった! …………そこかあ!?」
それに対して薫は、再び障害を破壊する事で捜索を再開した。
木々がへし折れ岩が砕ける暴威が森の中を進み彷徨う。
* * *
水が流れる。
無数の気泡が周囲で渦巻く。
水の流れに逆らって川底を進む人形は、誰の目にも止まらない。
誰も知る事なく、少女と南瓜の人形は川底を上流へと遡る。
(ヒナは聞いていたの)
声にならない呟きは、水流に紛れ水面にすら届かない。
だけど雛苺は水面で彼女達の会話を聞いていた。
あの少年と少女の言葉を聞いていた。
『あの深い湖の底で……たった一人っきりであいつと戦って、勝ったんだ』
『そう、あんな死に方をしたくはないわね。誰だって』
それを聞いて雛苺は川底へと潜り、湖へと向かい始めた。
翠星石は殺されたのだ。湖の底で、あの少女と戦って。
つまり翠星石はそこに在る。おそらくは翠星石のローザミスティカも。
(翠星石、今行くの)
川底を少女人形と南瓜のお化けが遡る。
ゆらり、ゆらり、ゆらゆらり。
まるで幽鬼のように、怖ろしく。
* * *
「あ、待って! 一人じゃ危ないよ!」
さくらの制止を聞きもせず薫は森へと突撃した。
やがて木々がへし折れるベキベキとした音、岩が砕ける音が響き始める。
それは力の音であり、争いを感じさせる不吉な音だ。
「ど、どうしよう」
「追って、倒さないといけないわ」
さくらの迷いにイリヤは素早く答えを与えた。
「倒すって……殺すの?」
「そうするしかないでしょ。あいつは悪い奴、なんだもの」
あの少年を悪と偽証する事に一抹だけの迷いを感じた。
少年は敵でしか無いけれど、少年の正義は……本当なら、守りたいものなのだから。
「でも生かしておいたらまたどこかで誰かを殺すわ。
さっき追いかけたあの女の子だって危ないかもしれない
もしかして話し合えるかもしれないって思ったけど、やっぱり甘かったみたいだし。
あの魔術だってサクラやリリに当たっていたら危なかったのよ」
「で、でも……」
桜はそれでもそれを認められない。
「それでもやっぱり、殺すなんてダメだよ。捕まえよう。
リインちゃんの力もあれば、きっと傷つけないで捕まえられるよ。それで良いでしょ」
「は、はいです、リインがんばります!」
さくらの期待にリインが元気良く返事する。
リインフォース2の本来の使用法は術者との融合だが、魔力さえ貰えれば自力で魔法を使う事も可能だ。
その中には相手を捕縛するような魔法も含まれている。
イリヤは少し考え、頷いた。
「良いけど危なくなったら無理しないで。私を助けてくれたサクラやリリが死ぬのは嫌だもの」
別にジーニアス達を殺すのを諦めたわけではない。
だって例え捕まえようとして戦うにしても。
(ストラグルバインドで『加減を間違えて』絞め殺しても良いし、
捕まえた後でわざと隙を見せて襲わせて『正当防衛で』殺しても良い。
なんとでもなるじゃない)
捕まえようとした相手が死ぬ可能性なんて幾らでもあるのだから。
焦る理由は何も無い。
「さっきから何も言ってないけど、リリはどうするの?」
「私は……」
梨々はずっと様子を見て、考えていた。
確かにジーニアスを放っておくのは危険かもしれないと思えた。
(他の誰かが殺されるかもしれない……そう、双葉ちゃんもこの島の何処かに居る。
さくらちゃんの友達だって、リインのマスターさん達だって居る。
悪い人を放っておいたら、双葉ちゃん達が襲われるかもしれない)
それは無いとは言い切れない可能性だ。
それでも梨々は、その可能性を無くす為にジーニアスと戦おうとは思えなかった。
とにかく慎重に行動して危険を避けたいと思っていた。
殺されるのは絶対にイヤだし、そうなってしまえば全て終わりなのだ。
それにジーニアスと戦わなくても別の誰かが彼を殺すかもしれない。
そもそもジーニアスが仲間と遭遇してしかも殺す可能性なんて殆ど無い。
あと、捕まえるだけでも一つ間違えれば殺してしまう危険はあるはずだ。
梨々はさくらよりもそれを許容できたけれど、悪人でも人殺しなんてしたくなかった。
さくらを説き伏せてみんなで安全な場所に隠れながらひっそりと動きたかった。
さくらだって何度も怖い目に遭っているのだ、説得したらきっとそうできるだろう。
――だけど梨々は、そうすれば安全だなんてとても思えなかった。
(イリヤちゃんは本当に信用できるの?)
ジーニアスの叫びが甦る。
『そいつが翠星石を殺したんだ! イリヤは翠星石の仇なんだ!!』
彼は確かにそう叫んだ。
イリヤの言うとおり、それはイリヤに罪を被せる醜い行為にしか見えないだろう。
だけど梨々には彼が嘘を言っているようには見えなかったのだ。
それからイリヤの言葉も。
『そうするしかないでしょ。あいつは悪い奴、なんだもの』
そう言った時のイリヤの言葉には迷いが混じっていた。
それは人が嘘を吐く時の揺らぎだ。
(もしかしたらあのジーニアスって子の言うとおりなのかもしれない。
本当に悪い人はイリヤちゃんなのかも……)
人を疑う事はとても気持ちが悪かったけれど、それでも状況は信じる事を許してくれない。
梨々は迷った末に、決めた。
「私も、一緒にあいつを追う。放ってなんておけないもの」
同行し、その先で見極めようと。
どちらが悪いのか、それとも両方が悪いのか。
何も知らないでいるのは一番危険なのだから。
「待って。貴方達の中に召喚魔法を使える者は居るかしら」
そしていざ出発、という所でもう一つだけ声が掛かった。
ベルフラウだ。
より優先する目の前の事柄に気を取られ誰も話しかけなかったが、彼女はずっとそこに居た。
ベルフラウもまた、彼女達の騒動に首を突っこもうとはしないでいた。
必要性がなければ、だが。
果たして皆が皆、首を振る。ベルフラウがそれなら良いと言おうとした所で。
「リインの中には召喚魔法の術式も有りますよ。リインにはちょっと難しいですけど」
放っておけない理由が生まれた。
「それ、本当?」
「本当です。でも難しいですから、リインを本来の使い方で使わないと使えないと思います。
マイスターはやてと協力すれば、得意分野では無いですが使おうと思えば色々出来ますです。
それで召喚魔法がどうしたんですか?」
「……私も協力しますわ」
「え?」
首を傾げる少女達にベルフラウは重ねて言った。
「私も協力してあげると言ったのですわ。私は召喚魔法の術師を捜しているの。
だから貴方達に協力してあげます」
「あ、ありがとう。え、えっと、それで……」
「何か?」
喜びながらも少し困った顔をするさくらにベルフラウが問う。
「あなたのお名前、なあに? あ、わたしは木之本桜だよ」
「そういえば名乗っていませんでしたわ。私はベル……で、良いですわ、今は」
言われて気づき、ベルフラウは名乗ろうとして、止めた。
協力するとは言ったが、まだお互いに信用できる段階では無い。
本当はこのベルという愛称は“先生”にだけ許した大切な呼び名だが、今は仕方ないだろう。
悪評をばらまかれる可能性も有るし、少しでも安全に行動すべきだ。
(下手をすればみか先生にまで害が挑んでしまうのだから当然ですわ。
しばらく様子を見るとしましょう)
そんな様子見路線でベルフラウは協力を決めて、状況を推し進める。
「貴方達の名前は聞いて居ましたから自己紹介は後で結構です。
随分遅れてしまいましたわ、早くあの方達を追いかけましょう」
「え、あ、うん!」
さくらがわたわたとする内に場は仕切られ、一同はジーニアスと薫を追って森へと踏み込んだ。
イリヤと梨々はベルフラウに心を許してはいなかったが、一応の集団が生まれていた。
* * *
その暴威は相も変わらず出鱈目で、底が無かった。
木々がへし折れ岩が砕け散る力の奔流が荒れ狂い、片っ端から障害物を叩き潰す。
「くそっ、どこ行きやがった!?」
さすがにその息は、荒い。
超能力は特別な使い方をしない限り、体を動かすのと同程度の疲労で使う事が出来る。
薫の場合の力の総量は、本人が未だ有効に使いきれない桁違いの代物だ。
制限下でも尚、使い続けられるエネルギー量は相当な物だった。
それでもこんな使い方をしていれば、いずれ限界も訪れるだろう。
だがそれはもう少しだけ先の話。
振るった腕の先にある木がへし折れ、その先のずっと遠くに二人の姿を発見して。
「待ちやがれ! サイキック森林破壊いぃぃぃぃ!!」
薫は木々をへし折りながら突撃した。
* * *
「ダメね、また音が移動したわ」
「リインちゃん、お願い」
「はいです。えーっと……はい、向こうに行ったみたいです」
森に踏み込んでからかなりの時間が経った。
だがさくら達は未だに明石薫やジーニアス達に追いつけずにいた。
彼女達がどこかに居るのは間違いない。時折音は響き続けている。
しかしジーニアス達を捜して四方八方に飛び回る薫に追いつくのはそう簡単な事では無かった。
「……でも少しずつ近づいているわね」
イリヤは言う。
確かに音源は徐々に近づいていたし、リインの探知魔法にはジーニアスも映り始めていた。
追いつめているのだ。
「あ、居た! あそこ、えーっと……」
「明石薫、だそうよ」
「待って、薫ちゃん!!」
さくらが呼びかけ、それに答え振り返る彼女にさくらと、少し遅れてイリヤが駆けていく。
更に遅れて梨々とベルフラウが駆けながら……言葉を、交わした。
「……ベルちゃんは、召喚魔法というので何をするつもりなの? 本当にそれが目的なの?」
「疑ってるのかしら。私はただ、この島から脱出したいだけですわ。当然でしょう」
ベルフラウはそう答え、逆に言い返す。
「それよりあなたも、あのイリヤという少女をもっと警戒した方が良いんじゃなくて?」
「ベルちゃんに言われるまでも無いわよ」
肯定の言葉が返る。やはり梨々はイリヤを警戒していたらしかった。
それを見てとったベルフラウは梨々に情報を提供する。
「あのジーニアスという少年、翠星石という誰かの事を庇っていましたわよ」
「え……それほんと!?」
「静かに。声を荒げないで。本当ですわ。それもそれにより敵とみなされかねない時に。
嘘だと思うならあの明石薫という奴に聞いてみれば良いわ。
ジーニアスが殺人鬼というのは信じていても、翠星石はその仲間だと思っている筈だもの」
それは彼女達に付き合って移動しながらベルフラウが推測した現在の状況だった。
明石薫にとって、翠星石という誰かはジーニアスの仲間であるはずだ。
だが同時に、ジーニアスをイリヤの仲間を殺した殺人鬼だと思いこんだ、らしい。
おそらくポイントは、明石薫はジーニアスが誰を殺したのか理解していない事だ。
つまりジーニアスと翠星石、イリヤと別の誰かのコンビが有って、ジーニアスはその誰かを殺した。
そう勘違いしたのではないかとベルフラウは朧気ながら推測し、事実それは間違っていなかった。
「そんな……それじゃ……」
ベルフラウの言葉を信じるならば、やはり嘘を吐いているのはイリヤなのだろうか。
梨々の中でイリヤへの疑惑が固まっていく。
・
「私はこの島を脱出する為に、送還の魔法が使えるような高位の召喚術師を捜しているだけ。
今は、無用な詮索はしないで下さりません事?」
「……うん、判った」
ベルフラウの言葉に梨々は頷く。送還云々は判らないがその目的は理解できた。
だから梨々はベルフラウを信じかけたけれど。
「先生が見つかれば一番なんですけど……本当に居るのでしょうかねえ」
「先生……って、誰?」
「先生は先生です。そういえばあなた、出会ってはいませんか? 私の先生はレックスと言いますの」
「え…………!?」
更なる混乱へと叩き込まれた。
「知っているのかしら?」
「う、ううん、知らない。あ、早く行かなきゃ!」
梨々は慌てて前を駆けるさくらとイリヤ、そして薫に追いつくべくペースを上げた。
その内では新たな疑惑が生まれつつあった。
(どういう事? ベルちゃんとあの男の子はどういう関係なの? まさか……)
疑惑の種は二つ。
(そういえばあのレックスって子はタバサという女の子を捜していた。
金髪をしているって……ベルちゃんも金髪じゃない。
ベルちゃんが名前を名乗る時もおかしかった。名乗る名前を途中で切っちゃったみたい。
タバサって子は様子からして妹だと思ったけど、教え子でもおかしくないかも……
……そう、なの?)
一つ目はベルフラウがレックスの捜したタバサではないかという事。
(それに様子を見ようと思ってきたこっちは、あの凄い雷が鳴った方じゃない。
もしかしてレックスはこの周辺に居たのかも。ううん、この子とも会ったのかも。
でもそうだとしたら、この子は何が目的で……!?)
二つ目はベルフラウが既に一度レックスと会っているという事。
絡み合う疑惑は見る見るうちに梨々の心を絡め取る。
イリヤと、ベルフラウ。梨々の心中には二人への疑惑が根付いていた。
* * *
「なんだよ、こんな方法有るなら最初から言ってくれればいーじゃん」
薫はそれを見て開口一番そう言った。
「だって薫……ちゃん? が何も聞かずに行っちゃうんだもん」
「迷うな! どーみても女だろーが!」
「ご、ごめん! 服が男物だから……そ、それでリインちゃん、見つかった?」
「はい、探査魔法に反応有りましたですよ」
さくらに提供された魔力でリインが使った探査魔法はジーニアス達の位置を捉えていた。
こちらがどの方向から近づいてきてるのか判らないせいか、その反応の移動方向は回り込む余地がある。
「まだ少し遠いですが、このまましっかり距離を詰めれば追いつけるですよ」
「よし、それじゃあたしが……」
「バカね、あなたが行ったら気づいてまた逃げ出してしまうじゃない。ゆっくり行きましょう」
「ちぇっ。まあいっか、ちょっと疲れてたし」
イリヤにたしなめられ薫は素直に同行を続ける。
その薫に、梨々が横から問い掛けた。
「ねえ薫ちゃん。……翠星石って子の事、知ってる?」
「ん? あのジーニアスって野郎の仲間なんだろ?」
答えはベルフラウの推測した通り。
そしてイリヤがすぐさまそれを訂正に掛かる。
「違うわ。翠星石は私の仲間で、あいつに殺されたのよ」
「え? そうなのか? だけど……」
「あいつが私に罪を着せようとしてるのよ」
しばらく話は続いたが、イリヤが二枚舌で薫を丸め込むのはそれほど難しい事ではなかった。
だけどその様子は梨々に更なる確信を与える。
(……多分、悪いのはイリヤちゃんだ)
疑心は芽吹き育ち始める。
……イリヤもそれを感じつつあった。
(このリリって子……まさか、気づいてる? ううん、気づきつつあるの?)
二人の少女は互いに警戒しながら、集団としては更なる追跡を続行する。
「距離、詰まってきましたです」
リインの言葉は、到着が近い事を報せた。
* * *
「……なあ、おまえはどう思う?」
「うん。あいつら、追いついてきてる」
レベッカの言葉にジーニアスが答える。
あの出鱈目な捜索の轟音が止み、追跡も終わると思った。
しかし追跡はむしろ正確さを増しつつあった。
理由は判らないが、どうにかして二人の居場所を把握しているとしか思えない。
「はぁ……はぁ……やべーな…………」
「ベッキー、そろそろ交替しよう。ボクはもう大丈夫だからさ」
「何言ってんだ……まださっきの後、5分くらいしか歩いてないだろ」
レベッカと話すジーニアスの位置は少し高かった。
二人は交替で魔導ボードに乗って逃走しているのだ。
最初はレベッカだけが乗っていたのだが、長引く逃走劇にジーニアスも疲弊したのだ。
幾ら旅や戦いの経験が有るとはいえ、ジーニアスは肉体派ではなかった。
「でも……ごめん、このままじゃ追いつかれる」
「そ、そうか。わかった……ごめん」
しかしもう一方のレベッカには年相応の体力すらなかった。
互いに一言謝り、ジーニアスとレベッカは再び魔導ボードを交替する。
「それじゃあっち……はあいつが一度通ったのかな。木が倒されてる」
「でもあの倒れ方、なんか違わないか?」
「え?」
レベッカの指摘によく見てみれば、確かにその破壊痕は明石薫のものではなかった。
明石薫の破壊の痕は一方向からの直線的なものか、弧を描くにしても遠距離を薙払うような方向を持つ。
破壊の位置も高さはばらばらで、なにより広い範囲と面積を持った破壊の痕ができる。
それに対しその周辺は木々に無数の切り傷が着けられ、粉砕された木も破壊の範囲が狭い。
例えば怪力の人間の攻撃でもこんな様子になるかもしれない。
そしてそこに落ちている桃色の髪の毛は……
「まさか……プレセア!?」
「あ、待て!!」
レベッカの制止を背にジーニアスは飛び出して。
「見つけた!」
「え……!?」
その場所でジーニアスは、追いつかれた事を知った。
『Struggle Bind』
放たれた殺意を秘めた三本の鎖。
それでもまだ距離が開いていた為、その制御は完全ではなかった。
鎖は木に絡まり、地を穿ち、体勢を崩して跳び転がった後の空を噛む。
しかし相手は一人ではなかった。
「リインちゃん、捕まえて!」
「はいです! ――フリーレンフェッセルン(凍てつく足枷)」
ジーニアスの足下から水が噴き出す。
慌てて逃れようとするが体勢を崩した今ではもう遅い。
水はジーニアスの半身を絡め取って凍結する!
「まず……っ」
そしてジーニアスが焦る猶予すら無く。
横合いの茂みより、一つの小さな影が飛び出した。
「いやああああああああ!!」
裂帛の気合と共に振るわれる得物と風切り音に、ジーニアスは思わず死をも覚悟した。
だが訪れる衝撃は予想より遥かに小さくて、骨が砕ける音も肉が裂ける音もしなかった。
聞こえたのはガラスのように澄んだ氷が粉々に砕け散る音。
それと、少年を気遣う静かな声だけだった。
「大丈夫ですか? ジーニアス」
「え……?」
その声が信じられず茫然と見上げたジーニアスの目に映ったのは、桃色の髪をした少女。
ジーニアスが密かに恋い焦がれる、大切な仲間の姿。
「――プレセア!!」
如何なる運命に導かれてか、少女は少年の危機へと間に合った。
あとは第三部ですが……都合により少し投下が遅れます。
インターバルも兼ねて10分ほどおまちください。申し訳有りません。
wktk
なんというフラグ
これは……うん、かなり期待できそうだ
wktkしつつ支援、頑張れジーニアス!
くおお、情報戦は大好物だぜ!
しかしカオスなことになっとるなw
梨々の胃にはそのうち穴が空くに違いない
これは……投下終了後に謝ろう。とりあえず全部投下されてから。
お待たせしました、第三部の投下を開始します。
「おいジーニアス、大丈夫か!?」
慌ててボードに乗ったレベッカが滑るように飛んでくる。
「プレセア、まって」
その逆方向からはアルルゥが飛び出した。
遭遇し、顔を見合わせ、見つめ合う。
「大丈夫だよベッキー、プレセアだ! ボクの仲間だよ!」
「アルルゥ、ジーニアスは仲間です。怖がらないでください」
「へえ、そうなのか」「ん、わかった」
短い自己紹介は終わる。
信頼できる仲間というものは、それを信じられる限りとても貴い。
仲間の仲間であっても、ある程度は信用しても良いと思わせてくれた。
続けてプレセアは遠くからこちらに近づいてくる集団を指して言う。
今さっき、ジーニアスに二重の捕縛魔法を放ってきた集団である。
「では、あの人達は?」
「あいつらは……敵だけど、悪いのは一人なんだ。他のみんなは、きっと騙されてるだけだよ」
「そうですか。では話し合いでなんとかなるかもしれません」
プレセアの言葉は頼もしくすらあった。
* * *
「仲間が居たの……!?」
氷の束縛を破壊した少女を見てイリヤが息を呑む。
更に獣耳の少女と、イリヤ達の場所からは木陰になって見えないがまだ誰かが居るらしい。
木陰に居る方はおそらく最初にジーニアス達を襲った時に見かけた金髪の少女だろう。
問題は新手の少女二人だ。
彼らに仲間が居たというのは、まずい。
「でももしかしたら、今度こそ話し合えるかもしれないよ」
「そ、そうね……」
さくらはそう言うが、イリヤにとってそれは一番危険な事なのだ。
(最悪のケースは、真実が露呈してこの場に居る全員を敵に回す事――!)
さくらと梨々、明石薫にベルと名乗った少女、更にジーニアスに金髪の少女にその仲間二人!
しかもその八名の内、最低でも五名は常人を外れた戦闘能力を持つ事が確定している。
こんなに多人数の相手が敵に回るだけではなく、全員に自分を危険人物だと認識されて逃したら、
その後に情報が広がる事を考慮すれば、出会う人間の相当な割合が即刻敵に回る事になる。
それは最後まで生き残れる可能性が絶望的なまでに低くなる事を意味する。
だが戦えば袋叩きにされて確実に死ぬ。
(私がやらなければいけない事は対立を維持する、それしか無い……!)
慄然となるイリヤに更なる悪い情報が追加される。
「ん? あれ、あれ?」
リインは怪訝な声を上げて目を凝らした。
「どうしたの、リインちゃん」
「えっとですね、さっきリインの魔法を破壊したあの女の子のハンマー、なんだか見覚えが有る気がするのです」
プレセアの振るうハンマー。
その正体はそれを振るうプレセア自身ですら知らない事だ。
「リインのマイスターはやての騎士ヴィータさんのデバイスで……
えーっと、つまり同僚のグラーフアイゼンっていうデバイスに似ているんです。
ただハンマーフォルムだと普通のハンマーにも似たような物が有りますから、
他人の空似ならぬ他杖の空似かもしれませんけど」
「それじゃ呼び掛けてみたら……」
「グラーフアイゼンさんは凄く無口ですけど、必要なら応えてくれると思います」
(な……!)
イリヤは表情を隠す猶予すらなく青ざめた。
よっしゃあ!
(まずい、まずい、まずい、まずい……!!
あのハンマーに知能が有って信用できる仲介役になるというなら、欺瞞が暴かれてしまう。
どうすればいい? リインを破壊……ダメ、敵だと露呈するだけじゃない。
グラーフアイゼンというあのハンマーを破壊……でもその為には戦闘にならないと。
だけどこの状況から戦いに押し込む建前が無い。
逃げる……ダメ、この人数から危険人物という噂を流されたら風説から逃げきれない。
いっそ不意打ちで数を減らして……それも生き残れる確率は無いに等しい。
どうすればいいの? どうすれば……)
完全に八方を塞がれ、イリヤは慌てふためく事しかできない。
リインはグラーフアイゼンに呼び掛けようと息を吸い込むアクションをして……
* * *
「プレセア、何か良い方法でも有るの?」
「はい。アルルゥの召喚獣で威嚇しましょう」
「ん……アルルゥの出番?」
獣耳の少女アルルゥは首を傾げて問い返す。
「出番です。召喚獣を盾にすれば、威嚇になって攻撃を躊躇うと考えられます。
出来るだけ威圧効果の高い召喚獣を選んでください」
「ん……それじゃ、ンアヴィワ」
アルルゥは綺麗な翠色の石をかざし、唱えた。
瞬時に空間が捩れ、翼を持った赤銅色の獣が出現する。
ワイヴァーンだ。
「ンアヴィワ、にらんでて」
「………………」
ワイヴァーンは応えない。
何も応えずに大きくその鎌首をもたげて……
「………………プレセアおねーちゃん、ごめん」
悪い事をしてしょげ返るような声色で、アルルゥが言った。
「……どうかしたのですか?」
不吉な予感を感じて聞き返すプレセアに、案の定危険な答えが返ってきた。
「ンアヴィワ、とまってくれない」
「…………え?」
ワイヴァーンは、その顎から向かい来る集団に向けて猛り狂う劫火を吐き出した。
* * *
少女の呼びかけに応え、中空から一匹の竜が姿を表す。
「な、なにあれ……」
「ワイヴァーン!?」
ベルフラウが悲鳴のような声を上げた。
「みんな、逃げて! 攻撃が来ます!」
「なにい!?」
薫の驚愕の声。
そして次の瞬間、劫火が炸裂した。
* * *
「制御できない……それはどういう事ですか?」
「アルルゥ、よくわかんないけど……ンアヴィワ、こうげきしかしてくれないみたい」
「……そうですか」
「ごめん」
アルルゥはぺこりと謝る。
直前に彼女達が攻撃を回避するのが見えたが、彼女達が生きていたのを喜ぶ事はできない。
今はもうもうと上がる煙が向こうとこちらを仕切っているが、これが晴れた時は戦いが来るだろう。
「でもあいつら、ほんとに交渉なんて出来たのか? 怒りっぽい奴とかさ」
「怒りっぽい奴、ですか?
……そういえばあの少年のような子は、見覚えが有りますね。別の服でしたけど」
「あ、それならいつの間にか着替えたみたいだったよ。
元々は……あのベレー帽の子みたいな服を着ていた」
ジーニアスの言うのは野上葵の制服を着たベルフラウの事だ。
明石薫は少し前まで微妙な差異が有るだけの同じバベルの制服を着ていた。
「……間違い有りません。彼女も危険人物です」
「そうなの? 確かに凄く暴れてて危険といえば危険そうだったけど……」
二度目に出会った時は話し合えそうにも感じた。
「怒った時が危険です。彼女はただの八つ当たりで二人を殺害しています」
「な……それほんと!?」
「本当です」
それはプレセアがまだ思いきりハサミの影響を受けていた時の事だ。
森の中で他の危険人物達(そう、アルルゥも居た)と二人の少年を包囲していた。
その時に突如現れ、二人を跡形もなく消し飛ばしたのだ。
…………と、プレセアには見えていた。
真実は違う。
確かにもしかしたら明石薫本人も似たような事をしでかす可能性は十分にあったが、
その時に起きた事はベルカナ(現偽薫)の作り出した幻影による二人の救出だった。
アルルゥは二人が生きている事と、その時の薫が何か妙だった事を知っていた。だけど。
「………………」
言わないでおく事にした。
アルルゥにもあの時の薫が何だったのかよくわかっていないという理由も有ったが……
何より叱られるのがイヤだった。このまま行けばあまり叱られないで済みそうだし。
「まさかあいつら、殺人鬼の同盟じゃねーだろーな!?」
「他の3人までそうとは限りません」
驚くベッキーをプレセアがたしなめる。
「でも危険な事には変わりないよ。
ベッキーは隠れてて……イリヤに優先的に狙われてるのはボクみたいだから。
勝ったら、呼びに行くよ」
「バカ言うなよ、ジーニアス。……勝ったって、呼びに来れるとは限らないだろ」」
「…………」
言葉に詰まる二人に、プレセアがフォローを入れた。
「では城に行って増援を呼んでください。レミリアという人がそこに居ます」
「レミリア? なんだよそいつ。なんで一緒に来てないんだ?」
「判りません。人を使おうとする、少し偉そうな人です。
でも悪い人では無いと……思います。
その人に会って『たくさんの人が居る。妹さんを見た人も居るかもしれない』と言えば、出てきてくれると思います。
もし出てくれなければ、そこで待っていてください。苦戦したらそこに逃げ込みます」
プレセアの言葉にベッキーは更に困惑する。
こんな島で妹を捜す者がどうして城に篭もりっきりなのだろう?
だが仲間を呼べるかもしれないというならそれは重要だった。
「おねがいします」
「……ん、判った。じゃあ行ってくる。良いか、死ぬなよ!」
「うん、ベッキーも気を付けて!」
レベッカは魔導ボードに乗ったまま飛び去った。
「ありがとう、プレセア」
「……もしもレミリアが来てくれれば頼もしいのは事実です。
それから本気で危なくなれば城まで後退する事も考えないといけません」
「うん、わかってる。それじゃプレセアと……アルルゥ、だっけ。アルルゥも、よろしくね」
「ん」
アルルゥはこくりと頷き、サモナイト石を構えた。
それに並びジーニアスも、ポケットからモンスターボールを放り投げてウツドンを呼び出す。
「ウツドン、命令したらそれに従って」
ウツドンは答えず葉を揺らすだけ。だが、こちらは忠実だ。
「ジーニアス、チャージを」
「うん、判ってる」
プレセアはハンマーを持つ腕に規格外の力を篭める。――マイトチャージ。
ジーニアスはいつでも放てるように魔法を詠唱する。――スペルチャージ。
「危険人物というのはあの男服の少女と、それからどれです?」
「白い女の子だよ。あいつは……ボクの仲間を殺した。あいつだけは許せない」
「……判りました。アルルゥ、良いですか?」
「うん。だいじょうぶ」
着々と戦いの準備を整える。
相手には騙されてる人が混ざっているのかもしれない。
それでももう戦いは避けられない。殺さないようにするしかない。
それに間違いなく、絶対に許せない敵が居る。だからそれと戦う事に迷いは要らない。
相手は数で勝っているのだ。甘さは敗北と死に繋がるだろう。
だから、ジーニアスとプレセアは戦う事には迷わないで済んでいた。
アルルゥに至っては……たとえ騙されているとしても、敵には一切容赦するつもりがなかった。
そして煙は晴れて――戦いの火蓋が上がる。
* * *
グラーフアイゼンは唯一、彼らの側で迷い、悩んでいた。
迷いと悩みの理由の一つは、敵勢の中に居たリインフォースIIの姿。
(何故あれがここに居るのだ? ……完成していなかったはずだ)
ミッドチルダ式とベルカ式の要素が混ざった、しかもおそらく現存する唯一となるユニゾンデバイス。
それは八神はやてにとっても製作する事が難しい難物だった。
試作品ですら実験段階を出ず、意志もまだ持っていないはずだった。
その完成予想図の姿が、何故かこの場所に存在していた。
他にも悩み事は有る。
プレセアにあの時の明石薫が幻影だった事を教えるべきか?
白い少女の持つS2Uの機能について助言すべきか?
だが問題は……今それをすれば、プレセアの集中力を欠きかねない事だった。
それはプレセアの死に繋がりかねない。
この争いはプレセアの本意では無い。グラーフアイゼンは彼女を死なせたくないと思っていた。
どうすればいいかの答えは出ず、寡黙なデバイスは悩み続ける。
* * *
「くそ、やる気十分って事かよ!」
明石薫が毒づいた。
彼女が咄嗟にサイコキノで全員を持ち上げ後退させた事で、怪我をした者は誰も居ない。
だが戦いが避けられない事は明白だった。
「ベルちゃん、ワイヴァーンとか言っていたけどあいつのこと、知ってるの?」
「ええ、あれは召喚獣ですわ。攻撃用召喚術により召喚された召喚獣です」
「攻撃用って……もしかして、攻撃にしか使えなかったりするの?」
さくらの問いにベルフラウが答え、すぐさま梨々がその答えに疑問を呈す。
「その通りです」
「それじゃ誤発って事も有るんじゃ……あの子、様子が変だったよ」
「有り得ませんわね。メイトルパならサモナイト石の使い方くらい知っているはずですわ。
変な世界からのはぐれ召喚獣からじゃあるまいし。相手は本気ですわ」
ベルフラウの言葉はよく判らなかったが、とにかく機能を判って使ったと言うらしかった。
だが梨々にはそれすらも疑わしい。
梨々はベルフラウが、あの危険な少年レックスの仲間、タバサではないかと疑っているのだから。
梨々にはもう、イリヤもベルフラウも対立を深めようとしているようにしか見えない。
(どうすればいいの……?)
一つだけ判っている事が有るとすれば……戦いになってしまう事は、もう避けられない。
どうすれば戦いを収められるのか惑いながらも、ただ死にたくないと思った。
イリヤは思いがけない幸運に茫然としていた。
これほど望む方向に転がるとは思いもしなかったのだ。
だが状況は依然、悪い。
(まずはジーニアスを殺して、グラーフアイゼンも壊して……目標が多すぎるわ。
相手を皆殺しにして疑われないのが最善だけど、そんな事できるわけが無い)
ある程度までの成果で満足する事。
そして出来るだけ多くの成果をもぎ取る事。
ベストは上手く立ち回り美味しい結果だけを頂く事だが、そんなに都合良く行くはずがない。
数の上で有利といっても安心できるような相手ではないのだ。
(第一放送まで……ここが勝負所ね)
覚悟と決意を胸に、イリヤはS2Uを強く握り締めた。
明石薫はあまり考えていなかった。
相手が敵という認識が揺らいでいなかったのだ。
だからむかつく奴らに一撃を見舞う、それだけで良いと思っていた。
(けど、なんか……ちょっと変な感じがする)
……明石薫は、気づいていない。
力の限界の一つの形が近づきつつある事に。
使いすぎた力の過負荷が脳の機能を疲弊させ……暴走の危険が迫っている事に。
明石薫は気づいていない。
ベルフラウはどう立ち回ればいいか考えていた。
彼女にとって重要な事は、『出来れば召喚術師を仲間にして』みか先生の所に戻る事だ。
さくら達を助ける理由は別にない。どちらが正しいのかすら怪しい状況なのだから。
ここまで危険な事態になれば即逃げても良いくらいだ。
だが下手に逃げれば逆に身を危険に晒しかねない。
生き残るにはどう立ち回ればいいか、ベルフラウは考えていた。
さくらは感じていた。
事態が悪い方へと転がっている事に。
その事に焦りを覚えてはいたが、さくらに選べる選択肢はあまり無い。
せいぜい……
「……リインちゃん。殺さないように、戦いを止めよう」
「は、はいです」
それだけだ。
「…………絶対……ぜったい、大丈夫だよ……」
魔法の言葉すら、この場面では頼りなく感じられた。
それでも、その言葉を信じ続けた。
そして煙は晴れて――戦いの火蓋が上がる。
* * *
城の一室にて……レミリアは優雅に紅茶を嗜んでいた。
葉がイマイチの一品だが、それでも少しは楽しめた。
「さて、あの娘はちゃんと再会できたかな? ……私が定めてやった、運命通りに」
そして偉そうに呟いた。
――レミリアは確かに運命を操る程度の能力を持っている。
それは人の出会いなどにも影響する力であり、本来ならプレセアとジーニアスを再会させる事は容易い。
ただ、元々レミリアは全ての運命を操れるわけではない。
この島に来てからは尚更だ、操れるものなど一部に過ぎない。
レミリアは運命を操ろうとしても手応えが無く、操れているのかいないのかも判らなくなっていた。
しかしそれでも、「運命を操ったからそうなったのだ」と言えばそれを反証する事は出来ない。
悪魔の証明というやつである。
よってレミリアはプレセアをジーニアスと再会できるように運命を操ったと宣言する。
もし出会っていなければこの宣言はそのまま独り言で誰にも言わない。
実に狡い。
「しかし……なんだおまえは?」
「…………ふえ?」
振り返ったそこには……肉ダルマが居た。
福富しんべヱである。
「えっとね、気づいたらこの島に流れついてたの。」
「ふん、そうか。で、おまえ」
「な、なに?」
レミリアは威圧的に問うた。
「フラン、という娘を見ていないか? ちょっと私みたいなやつだ」
「フラン…………あれ?」
「見たのか?」
肉ダルマ扱いの福富しんべヱはしばらくうーんうーんと唸って、答えた。
「…………えっとね、レイジングハートと遊ぶのとか、喋る杖があなたの魔法を使ってくださいとか、
そんな事を言ってたような気がするの。でも、殆ど思い出せない」
「思い出しなさい」
「む、むりだよう」
どう爆発するか判らない、危険かも知れず、危険でないかもしれず。
こちらはまだ、そんな状況だった。
* * *
その頃、野上葵は彼女が明石薫と思いこんでいる少女と共に湖畔に居た。
間違っても城の窓から見えたりしないように森の中をここまで南下してきたのだ。
途中で物騒な破壊痕が無数に有ったため、出来るだけ迅速にここまで突っ切ってきた。
目指す場所はこの先の橋を渡った先の、廃墟にある病院である。
薫に出来る限りちゃんとした治療をしてやりたいと思った為だ。
あと自分の左足に、義足だとかそういう物が見つかるかもしれないと期待していた。
……失った足の事は極力考えたくもなかったが。
葵はむりやり思考を目の前にある物に逸らして、溜息を吐く。
「……アンタ、こんな島でも呑気やったんやなあ」
そこに有るのは水辺に干してある、薫のいつもの制服だった。
下着まで全部干してある。
葵はあの二人が薫から衣服を奪ったのだと思っていたが、こんな所に衣服が有るとそれは怪しい。
「もしかして湖で泳いででもいる所を捕まったんか? ほんと何やってるんや」
その光景を想像するとどこかしら間抜けで、少しだけ気が抜けた。
「まだちょっと湿気てるけどこの位やったら良いわな」
葵は一人呟くと、寝かしている薫に手を向けた。
一瞬、薫を包んでいるシーツが全て掻き消えた。
次の瞬間には新たな衣服が薫の全身を包み込む。
テレポートによる早着替えである。応用すると魔法少女の変身みたいな事も出来る優れ技だ。
遠距離へ一気に転移する事は出来ないが、転移能力自体は以前健在である事を再認識する。
「さあ、後は橋を一気に渡ってしまえば誰にも見つからんで病院まで直行や」
これからやる事を再確認して、それを実行しようと思った時……ふと、湖を見た。
* * *
「――見つけたの」
雛苺は、笑った。
その手の内に有るのは紅く輝く翠星石のローザミスティカ。
そして湖底に眠る、翠星石の死体だ。
輝きながら水面に浮いているローザミスティカを見つけるのはそう難しい事ではなかった。
だけど翠星石を見つけるのは予想以上に時間が掛かる作業だった。
すぐ下に有ると思っていたのに、水に流されて場所がずれていたのである。
「ふふ、これで翠星石と一緒なの」
別に翠星石の死体は特別意味が有る物ではない。
翠星石のローザミスティカだけでも翠星石と一緒と思うことも出来た。
死体を捜したのはそれがすぐに見つかるだろうと思ったからのついでに過ぎない。
いつ取り込んでも良いローザミスティカをまだ手に持っているのもそれだけの事だ。
雛苺は翠星石のローザミスティカを自らの内へと取り込んだ。
それから翠星石の体を持っていこうと引っ張って。
「……あれ」
その一部が湖底に引っかかっている事に気が付いた。
――首だけを持っていく事にした。
「みんな仲良し、なの」
雛苺はぎゅっと二人を抱き締める。
恐怖に歪んだ真紅の顔も、安らかに微笑む翠星石の顔も、雛苺にとっては等しく大切な存在だ。
それがもう死んでいて、頭だけである事など大した事ではない。
ただ二人を抱えていくのは少し大変だと思った。だから。
「真紅、翠星石、ごめんなさいなの。ちょっとだけ悪戯するの。髪で遊ぶのは楽しいの☆」
楽しげに笑って、ちょっとした悪戯をした。
「さあジャコ、真紅と翠星石ともこれで仲良しなの。
さっきの所に戻って、そこから契約する相手を捜すの。みんなみんな仲良しになるの」
力を漲らせた雛苺の言葉に応え、ジャコは雛苺と共に水面へと上昇する。
水面は見る見るうちに近くなり、そして――
湖畔から湖を眺めていた野上葵は、見た。
湖から飛び出した人形達の姿を。
それは奇怪なカボチャのお化けの姿をしていた。
その背中にはあまりに壊れた笑みを浮かべる少女人形が乗っていた。
そしてカボチャおばけの首には……髪が絡まっていた。
――恐怖に歪んだ少女人形の首と、安らかに微笑む少女人形の首が、各々の髪の毛で吊り下げられていた――
うわあああああああああああああ(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル
これで投下終了です。
状態表は少しお待ち下さい。後はそれだけ。
続きを楽しみに書きはしましたが、とんでもない過密状況で投げてるので、
もしこのパートが遅れたら自己リレーしてでも始末は付けます。
少なくとも一月以上様子見ますけど。
こ…これは怖い
ら、ラストがKOEE……
テラGJです!あの大人数を消化するとは流石っす!
投下GJ。お疲れ様でした。
これだけの数のキャラ、これだけの集団戦闘とは……666氏は化け物か!
実に読み応えのあるお話でした。この先の展開も実に楽しみです。
そして……でも、指摘しなきゃいけないことがあります。後日、取り返しのつかなくなる前に、早めに指摘しておきます。
実は――イエローの服、湖畔に残ってなかったんです。
86話「ごめんなさい」の中で、金糸雀が既に持ち去ってしまっていたんです。
あの頃既にイエローの服は忘れ去られた状態で、近くに寄りそうな人物も無く、
また、あの時点ではイエローが金糸雀の近くに来る可能性が十分にあったんで、
ひょっとしたら出会うかもと思い、出会わずとも別の脱ぎキャラと絡むかも、と持ち去らせてみたんですが……
本当に申し訳ありません。あれじゃ読み落とされても仕方がない……。
遡ってあっちの方を直した方が良さそうな程ですね……。てか許されるなら、86話の方を修正したいところですが。
ヒナァァァァァ!?
こ、怖いよ。今の君は銀様でさえ敵わないよ。
感想言っていいのかな?
ギガGJ! 梨々の中で情報が錯綜しまくっててヤヴァイ!
ステルス発揮しまくってるイリヤ、完璧に騙されてるさくら、混乱を助長させるベルフラウ。
話し合いの芽を摘むアルルゥに、いい具合に引っ掻き回す薫。
TOSコンビは再会した途端にいきなりピンチだし、ヒナは怖いし、レミリアは乱入しそうだし……
ああ、大人数の対主催がたった一人のステルスに掻き乱されるのはいいなあ……誤解はいいなあ……ウフフフフ。
感想たくさんありがとうございます。
完成遅れて申し訳有りませんでした。
>>320 あうちっ。
いや、これはこっちのミスですしこっちで対応します。
幸い現時点では致命的な影響は有りませんし。
金糸雀もあそこ通ってた事を忘れてました。
そういうわけで近く修正スレにお邪魔するか完成稿をwiki掲載する事になりそうです。
TOS組再会キタ。いいタイミングで出てきたプレセアがかっこよすぎる。
アイゼン、働け。アルルゥ、叱られるのを恐れるなw
雛苺は順調に格を上げてどんどん怖くなってるし。
ローザミスティカ、疑心誤解など、いろんなフラグが消化されましたな。
特に誤解フラグはほとんど全部拾ったんじゃ? その皺寄せが梨々に集まってるとかありえないw
言いたいことがたくさんあって困る。大作GJ。
この集団戦は間違いなく序盤の山になるな。
>>323 そうですか?
まあ……過去の作品の方を弄って辻褄を合わせる、という前例を作ってしまうのは色々とやばそうなので、
そうして頂けると有り難いのですが。
イエローの服の使い方(および、薫の制服とのすり替え)が上手かっただけに、惜しいというか、なんというか……
本当に申し訳ありません。完成稿、期待してます。
【F-4西端/森(川の近く)/1日目/夕方】
【運命の再会?と大切な妹】
【プレセア・コンパティール@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:体力消耗(小)、軽度の貧血、右肩に重度の裂傷(処置済+核鉄で、なんとか戦闘可能なまでに回復)。
ツインテール右側喪失。思いきりハサミにトラウマ的恐怖。
マイトチャージ状態(一時的に攻撃力などが上がる力溜め。何度も使えるが極短時間のみ)
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはA’s、エクスフィア@テイルズオブシンフォニア
[道具]:カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA’s、支給品一式(生乾き、食料−1)
[服装]:冒険時の戦闘衣装(ピンク色のワンピース、生乾き)
[思考]:ジーニアスとアルルゥを殺させはしません。
第一行動方針:戦って状況を打開する。明石薫とイリヤには容赦無し。
第二行動方針:放送前には城に帰還して、レミリアと合流。
基本行動方針:ジーニアスとアルルゥが生きている間はゲームに乗らない。レミリアの捜し人を捜す。
※プレセアはアリシアの死を知った以降から参戦。
※グラーフアイゼンはこの状況を警戒しています。
【ジーニアス・セイジ@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:かなり疲労。中程度の魔力消費。何か呪文を唱えスペルチャージ済。
[服装]:普段着、足は快速シューズ。
[装備]:ネギの杖@魔法先生ネギま!、モンスターボール(ウツドン)@ポケットモンスター、快速シューズ、
[道具]:ナマコ型寝袋、支給品一式、木村先生の水着@あずまんが大王、
海底探検セット(深海クリーム、エア・チューブ、ヘッドランプ、ま水ストロー、深海クリームの残り(快速シューズ))@ドラえもん
[思考]:イリヤだけは許さない。
第一行動方針:戦って状況を打開する。明石薫とイリヤには容赦無し。
第二行動方針:殺し合いのゲームに乗っている奴がいたら、倒す。
第三行動方針:後で改めて湖底都市を探索する。
基本行動方針:主催者の打倒
参加時期:ヘイムダール壊滅後。ちなみにあえてクラトスルート。
[備考]:
ジーニアスは、薫がゲイボルグを投げた人物なのでは、と疑っています。
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:軽い疲労、頭にたんこぶ。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品(食料−1)、クロウカード二枚(バブル「泡」、ダッシュ「駆」)
[服装]:民族衣装風の着物(普段着)
[思考]:やっちゃえばいい
第一行動方針:戦って状況を打開する。誰に対しても容赦無し。
第二行動方針:イエローや丈を捜したい。放送前には城に戻る。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
【F-4西端/森(川の近く)/1日目/夕方】
【一時的多勢】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)、全身に切り傷(応急手当済み、命に別状はない)
[装備]:S2U@魔法少女リリカルなのは、凛のペンダント@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
第一行動方針:状況を打開したい。ジーニアスは最優先標的。
第二行動方針:できるだけ悪評を流せる者を少なくしてこの状況を抜けたい。
第三行動方針:とにかく生き残りたい。
基本行動方針:優勝して、自分の寿命を延ばす。
※セイバールートの半年後から参戦。
※イリヤのついた嘘の内容
翠星石を殺したのはジーニアス
レンを殺したのは正体不明の魔術師
はやてには会っていない
【梨々=ハミルトン@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:右腕骨折及び電撃のダメージが僅かに有り(処置済) 。
イリヤとベルフラウに確信的疑念。若干精神不安定。
[装備]:白タキシード(パラシュート消費)&シルクハット@吉永さん家のガーゴイル
[道具]:支給品一式
[服装]:白タキシード&シルクハット
[思考]:イリヤとベルフラウをどうにかしたいけど戦いが始まって……っ
第一行動方針:生き残りたい。さくらだけは信じている。
第二行動方針:双葉かリィンちゃんの友達(はやて優先?)及び小狼を探す。
第三行動方針:殺し合いに乗ってない人と協力する。
※永沢、レックス、イリヤ、ベルフラウを危険人物と認識。桜の知り合いの情報を聞いている。
【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:血塗れ、左腕に矢傷(処置済)、魔力消費(小)
[装備]:パワフルグラブ@ゼルダの伝説
リインフォースII(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品
[服装]:梨々の普段着
[思考]:敵対している相手を殺さずに、捕縛などで無力化する。
第一行動方針:誰も殺さずにこの状況を収めたい。
第二行動方針:リインのエリアサーチを定期的に使いながら移動し、友達を探す。
第三行動方針:他にも協力してくれそうな人を探す。
基本行動方針:襲われたら撃退する(不殺?)
※永沢、レックス、ジーニアスを危険人物と認識。梨々の知り合いの情報を聞いている。
【明石薫@絶対可憐チルドレン】
[状態]:かなり疲労。本人は気づいていないが暴走寸前。右足打撲。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、バレッタ人形@ヴァンパイアセイヴァー
[服装]:いつもの制服
[思考]:あいつらぶっとばす!!
第一行動方針:極悪人(と吹き込まれた)ジーニアスはゆるさねえ!
第ニ行動方針:葵や紫穂を探す。二人に危害を加える奴は容赦しない。
第三行動方針:あの女(ベルカナ)に会えたら、仕返しをする。
最終行動方針:ジェダをぶっ飛ばして三人で帰る。
[備考]:薫は、ベッキー&ジーニアスの2人が、城から飛び出した影の正体かと疑っています。
【ベルフラウ=マルティーニ@サモンナイト3】
[状態]:体力消耗、精神的疲労(まだ完全ではない)、墜落によって軽い打撲。
[服装]:『ザ・チルドレン』の制服姿(野上葵の物)
[装備]:クロウカード『水』『火』『地』『風』
[道具]:支給品一式、湿ったままの普段着
[思考・状況]:死なないように立ち回り、出来ればリインかアルルゥの協力を得たい。
第一行動方針:とにかく生き残る。
第二行動方針:召喚術師と交渉し仲間になってもらいたい。リインと八神はやてに期待。
出来ればメイトルパの少女(アルルゥ)とも交渉したいが、敵対意志有りと認識。
第三行動方針:みかの安否が心配。早く戻って合流したいが危険には巻き込みたくない。
第四行動方針:殺し合いに乗らず、仲間を探して脱出・対主催の策を練る。
基本行動方針:先生のもとに帰りたい。
[備考]:
ベルフラウは、ロワの舞台がリィンバウムのどこかだと思っています。
ロワの舞台について、「名もなき島」とほぼ同じ仕組みになっていると考えています。
(実際は違うのですが、まだベルフラウはそのことに気づいていません)
ベルフラウは、レックスが名乗るのを聞いていません(気絶していました)。
余計な危険を少しでも避けるため、ベルとだけ名乗っています。
【F-3/城内の食堂/1日目/夕方】
【レミリア・スカーレット@東方Project】
[状態]:魔力消費(中)
[装備]:飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心、シルバースキンAT(ブラボーサイズ)@武装錬金
[道具]:支給品一式(食料−1)、思いきりハサミ@ドラえもん、クロウカード1枚(スイート「甘」)
[服装]:シルバースキンAT(シルバースキンの下は全裸、服は洗って干している)
[思考]:フランの事、もっと思い出しなさい。
第一行動方針:しんべヱからフランの事を聞き出す。
第二行動方針:お茶を飲みながら放送と夜の訪れ、及びプレセアとアルルゥを待つ。
第三行動方針:フランを知っている瞬間移動娘、及びフランをプレセア達に探させる。
第四行動方針:服が乾き、なおかつ時間があり、更に気が乗っていたら爆薬で加速の実験をする。
基本行動方針:フランを捜す。ジェダは気にくわない。少しは慎重に、しかし大胆に。
【福富しんべヱ@落第忍者乱太郎】
[状態]:体のあちこちに軽い傷。体力消費(大)。びしょぬれ。凶暴化終了。
[装備]:なし
[道具]:ヒラリマント(チョンマゲに纏わりつくように引っかかっている)
[思考]:そ、そんな事を言われても……
[備考]:凶暴化は一旦治った後、何かのきっかけでフラッシュバックのように再発した例も報告されています。
[備考]:体力消費が激しいため、いつ気絶してもおかしくない状態です。
【F-3/森/1日目/夕方】
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:背中に裂傷(応急処置済)、疲労中程度
[服装]:普段通りの服と白衣姿
[装備]:木刀@銀魂、魔導ボード@魔法陣グルグル!
[道具]:支給品二式、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
[思考]:急いで城に行ってレミリアを捜す。
第一行動方針:レミリアを捜し、ジーニアス達への救援を頼む。
第ニ行動方針:殺し合いのゲームに乗っている奴がいたら、ぶっ飛ばす。
第三行動方針:後で改めて湖底都市を探索する
基本行動方針:主催者の打倒。
参加時期:小学校事件が終わった後
【E-5/湖畔の茂み/1日目/夕方】
【野上葵@絶対可憐チルドレン】
[状態]:左足損失、超能力の連続使用による微疲労、精神的疲労、強い決意
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、懐中時計型航時機『カシオペア』@魔法先生ネギま!、飛翔の蝙也の翼@るろうに剣心
ベルカナのランドセル(基本支給品、黙陣の戦弓@サモンナイト3、返響器@ヴァンパイアセイヴァー)
[思考]:??????(飛び立つ雛苺を目撃)
第一行動方針:廃墟の病院に薫を避難させたい。
第ニ行動方針:薫を守りながら紫穂を探す。
第三行動方針:レミリアかフランドールに出くわしたら、逃げる
第四行動方針:逃げた変質者(ベルカナとイエロー)は必ずぎったんぎったんにしたる
基本行動方針:三人揃って皆本のところに帰りたい
[備考]:ベルカナが変身した明石薫を本物だと思い込んでいます。
イエローをサイコキノ、ベルカナも何らかのエスパーと認識しました。
なお二人が城戸丈を猟奇的に殺害し、薫に暴行をしたと思っています。
テレポートに掛かっている制限は長距離転移不可(連続転移は可)、
「意識のある参加者(&身に着けている所持品)は当事者の同意無しでは転移不可」です
他者転移禁止の制限には気づいていません。
【偽明石薫(ベルカナ=ライザナーザ@新ソードワールドリプレイ集NEXT)】
[状態]:気絶、明石薫に変身中。左腕に深い切り傷、全身に打撲と裂傷(応急手当済み)、
あばら骨数本骨折(他も骨折している可能性あり)、出血による体力消耗
[装備]:全裸(シーツを何重にも羽織っている)、
[道具]:なし
[思考]:…………
第一行動方針:明石薫のふりをして、この場を切り抜ける
第二行動方針:イエローと合流し、丈からの依頼を果たせるよう努力はする(無理はしない)
第三行動方針:仲間集め(イエローと丈の友人の捜索。ただし簡単には信用はしない)
基本行動方針:ジェダを倒してミッションクリア
参戦時期:原作7巻終了後
[備考]:制限に加え魔法発動体が無い為、攻撃魔法の威力は激減しています。
変身魔法を解除した場合、本来の状態(骨折数箇所、裂傷多数、他)に戻ります。
【E-6/湖面/一日目/夕方】
【雛苺@ローゼンメイデン】
[状態]:真紅と翠星石のローザミスティカ継承。精神崩壊。見るものの不安を掻き立てる壊れた笑顔。
[服装]:普段通りのベビードール風の衣装。トレードマークの頭の大きなリボンが一部破けている。
[装備]:マジカントバット@MOTHER2、
生首付きジャック・オー・ランタン@からくりサーカス(繰り手もなしに動ける状態)
※:ジャコの首には真紅と翠星石の生首が髪の毛で括り着けてあります。
[道具]:基本支給品一式、ぼうし@ちびまる子ちゃん ツーカー錠x5@ドラえもん
光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、ジュジュのコンパス
[思考]:さっきの場所に戻って誰かに契約してもらうの
第一行動方針:誰かに媒介(ミーディアム)の契約を結ばせ、『力』の供給源にする。
第二行動方針:「新ルールのアリスゲーム」(=殺し合いのゲーム)に乗って、優勝を目指す。
基本行動方針:優勝して、「永遠に孤独とは無縁な世界」を作り、真紅を含めた「みんな」と暮らす。
[備考]:
雛苺は真紅と翠星石のローザミスティカを獲得したため、それぞれの能力を使用できます。
自分の支給品をマトモに確認していません。
『ジャック・オー・ランタン』は、真紅の持っていた「人形に命を吹き込む力」によって一時的に動ける状態です。
ただし雛苺の『力』を借りて動いているので、この状態は維持するだけでも雛苺の『力』を消耗します。
翠星石のローザミスティカでドールとしての力も回復しましたが、最大MPごと増えるような回復と思われます。
状態表の投下終了、こちらは一足早く衣服替え済です。
それはそうとなのは最新話を後ろでやってる(CM中)なのだが
リインってシグナムやヴィータともユニゾン出来る様子。どんどん設定強くなってるなおいw
状態表もこれで最後かな?
状態表見て気付いたけど、ノートパソコン雛苺が持っているんだよな。
宝の番人というか、はやくも中ボスの風格が。
>リイン融合
このロワでもある程度の汎用性が見込めそうですな。
あ、確認なんですけど、レベッカの位置はF-3の森であってますか?
あ、すみませんレベッカの位置はF-4の間違いです。
城まで行かせていた名残でした。
あ、そうだ、一つおまけを張り忘れていた。
あの大決戦の所はキャラと支給品が入り乱れてかなり厄介なので……
○重要度が極めて高い作品
>テイルズ・オブ・シンフォニア
プレセアとジーニアスが居る為、キャラの性格面でも戦闘面でも極めて重要な作品。
特に近接系であるプレセアの技は現物を見ないとピンと来ない。
スーパープレイの動画(プレセアによるノーダメージ強ボス撃破などがある)も参考になるか?
>魔法少女リリカルなのは
関係する参加者は居ないが、リインフォースIIとS2Uとグラーフアイゼンが有る。
リインIIは人格有り&さくらの攻撃の要だし、S2Uも意志こそ無いが
イリヤの攻撃の要であるため、戦闘面に置いては極めて重要度の高い作品。
グラーフアイゼンは攻撃面では今のところ軽くて丈夫なハンマーだし、無口だし、
リインII完成前の時間軸から持って来れば自分から話しかけはしないかもだが、
薫の幻影やS2Uに入ってる魔法など重要な情報も持っている割と大事な立ち位置。
>カードキャプターさくら
さくらが居る事、ベルフラウの武器が四大元素のクロウカードである事、
ついでにアルルゥも泡と駆を持っている事からかなり重要度の高い作品。
○そこそこ重要な作品
>サモンナイト3
ベルフラウが居り、更にアルルゥはサモナイト石を使用するが、
ベルフラウは戦闘面ではクロウカードを使用するし、
サモナイト石もこれまでの描写で何とかなるのではないだろうか、多分。
>絶対可憐チルドレン
明石薫が居り、更に野上葵が乱入してくる可能性も存在する。
ただし薫は戦闘面では基本は単純であり、葵もあくまで可能性である。
>吉永さん家のガーゴイル
梨々が居る。攻撃手段も彼女自身でどうにかするしかない。しかも結構重要な立ち位置。
○なんとかなるかな作品
>うたわれるもの
アルルゥが居る。ただし攻撃手段はサモンナイト3を参考の為、性格のみ。
>ポケットモンスター
モンスターボール(ウツドン)をジーニアスが使用した。ネットの情報で十分か。
>Fate/stay night
イリヤが居る。ただし攻撃手段はほぼリリカルなのは。
○その他、乱入の可能性がある作品
レベッカ@ぱにぽに+魔導ボード@魔法陣グルグル!
しんべヱ@落第忍者乱太郎+ウニョラー化@魔法陣グルグル!+ひらりマント@ドラえもん
レミリア・スカーレット@東方Project+飛翔の蝙也の爆薬@るろうに剣心+シルバースキンAT@武装錬金+思いきりハサミ@ドラえもん
野上葵@絶対可憐チルドレン+色んなアイテム
(気絶中)偽明石薫@ソードワールド+絶対可憐チルドレン
雛苺@ローゼンメイデン+ジャコ@からくりサーカス+色々
細々した物は他にもある。木刀とか、さくらの付けているパワフルグラブなどなど。
簡単に纏めておきました。割と大雑把。
今回を含めると、◆CFbj666Xrw氏の書いたキャラは48人、作品数33。
・・・いやもう凄すぎ。
336 :
sage:2007/06/07(木) 20:21:56 ID:AihpdBqb
今回の話で、まだ昼までしか書かれていない金糸雀が近くにいるのに夕方まで進めてしまって大丈夫かと少し心配。
あと夕方つながりで謝罪することがあります。(こちらが本題です)
「海の見える街」で状態表の場所と時刻のみを変更してwikiに掲載してしまいました。
話の中で場所と時刻に関する記述があったにもかかわらず訂正を待たずに掲載してしまいすみませんでした。
wikiでの訂正をお願いします。
337 :
336:2007/06/07(木) 20:24:11 ID:AihpdBqb
すみません。下げそこないました。
修正スレを使うと量が多くて大変ですので、修正版をwikiに直接掲載しました。
薫の服装が制服に戻った事により微妙に状況が変化していますのでご注意下さい。
金糸雀はちょっと不安ではありますが、アイテムの関係で見てるだけもできますし、
しばらく休んだり森に迷ったりでいざとなればなんとか書けそうだったので巻き込まずに進めちゃいました。
素早い修正乙です。
>>338 修正乙です。結局、薫は濡れずに済んだわけですね。
まあ着替えシーンがあったとしても、比較的色気の無い奴ではありますが……w
……細かい所ですが、第二部Frozen Warの途中で、
薫の服が男物・ちゃん付けで呼んでいいか迷うという場面が残ってましたよ。
本筋に関係のない所ですが、一応気づいてしまったので指摘しておきます。
さて、こちらの学校保健室組の予約、規定通りなら今夜が3日間の期限ですが……
どうも、スケジュール的に間に合いそうにありません。
展開が微妙に複雑なので、事実関係の確認もじっくり行いたいですし……
無理して破綻するのも怖いので、今のうちに、延長をお願いしておきます。
今夜の投下はありませんが、この土日の間に投下できると思います。
もし万が一、日曜の夜よりも後にズレ込むようなら、その時に改めて延長なり破棄なりを考えさせて下さい。
>>340 指摘ありがとうございます。
修正しておきました。
プロットは出来たものの、実際書くとなるとどうしても自己リレーになってしまうキャラが登場面子に一人だけいる…。
いや、オッドアイにして気絶させたせいで、ここんとこ空気なロリのことなんですが。
最近放置されてるし、自分で動かしてしまっても大丈夫でしょうか?
>>343 誰も書かないならしょうがないしやっちゃえ
>>343 いっちゃえいや行って下さいお願いします
地図で一人だけ離れてて不憫なんだ……
ありがとうございます。
大丈夫そうなんで、フェイト、ブルー、イヴ、紫穂、小太郎、シャナ、双葉、ミミで予約します。
大きくうごいたー!!
おお、頑張ってくださいませ!
しかし、これはブルーオワタの予感w
うわ、一気に動きますね。
……今夜も投下は無理です。待ってた人ゴメンナサイ。急な用事で昼間潰れたのもありまして……。
それでも明日には間に合わせる予定です。
時間の都合もあって、投下できるのは明日の夜と思われます。
ちなみにまたも3部作。我ながら面倒なプロット立てるから……orz
お待たせしました。予約していた学校保健室組、投下します。
予定では3部作でたが、どうも中編が長くなりすぎたので、wiki収録を考え4部作とします。
ただ、投下は(元の案通り、(2)(3)を合わせて)3分割で投下します。
(1)と(2)の間、(3)と(4)の間で、それぞれ10分ほどインターバル置きながら投下していこうと思っています。
では、投下開始。
真実はいつもひとつ! と探偵は言う。けれど、本当にそうだろうか?
* * *
「それでは、武器を捨てて頂きましょうか」
――梨花たちにとって、状況は最悪だった。
いったい何をされたのか、抵抗もできずに倒れているリンク。
同じく、縛られてもいないのに立ち上がれないらしい、見知らぬ少年。
よく見ればリンクの太腿には傷があり、もう1人の少年も腹部を血に染めている。
少年たちは荷物を持っておらず、よく見れば彼らの手の届かないところに集めて積み上げられている。
部屋の中からは刺激臭の混じった煙が廊下に向かって溢れ出し、場の異様さを引き立てている。
そして、場を支配しているのは、恐るべき変態男。
勇者の拳の直撃を受け、4階から叩き落されても死なず、目立った傷すらなく、逃げ出しもせず。
頭に被ったブルマが消えたかと思えば、その下から現れたのは額に十字に張られた絆創膏。
存在自体が理解不能な小坊主が、ガラスの破片を片手に握り、倒れたリンクの上に陣取っている。
狙っているのがリンクの「眼球」、というのも陰湿だ。
これが例えば首筋などを狙っていたなら、脅す側も簡単には掻き切れないだろう、と判断できる。
人質が死んでしまっては、人質としての価値が無くなってしまうからだ。
しかし人間、目を潰された程度では死んだりしない。取り返しのつかない傷ではあるが、死ぬことはない。
さらに、片目を突いても、目はもう1つある。同様の状況を続けられる。
つまり――人質を取られた時の常套手段である、「交渉を引き延ばして好機を待つ」ことすらできないのだ。
時間稼ぎをしようとしている、と悟られた時点で、脅迫者は躊躇い無く片目を抉り出すだろう。
脅迫者が本気であることを示し、交渉を有利に迅速に進める手段として。
古手梨花は、ほんの一瞬でそこまで思考を巡らせる。
見かけによらず「黒い」彼女だからこそ、そんな外道な交渉心理まで読めてしまう。
チラリと横にいる灰原哀の顔色を窺う。梨花の視線に気付いたか、哀は青い顔で小さく頷く。
哀もまた気付いているのだ。
梨花とは違う意味で「見かけ通りではない」哀である。梨花と同じ結論に辿り着くのは、難しいことではない。
どうすればいいのか? 互いに視線で問い合う2人に、一休は悠然とした態度を崩さず言葉を続ける。
支援ッ!
「そうですね、背負っているその『らんどせる』という鞄を、こちらに投げ渡してもらいましょうか。
その間、特にそちらの梨花さんとやら。あの『拳が大きくなる術』は使わないようにお願いしますよ。
そうですね、お2人には、しばらく両手を頭上に上げておいて貰いましょうか」
「…………!」
一休の何気ない言葉、しかし梨花も哀も聞き逃さない。目に光が戻る。
敵の事実誤認、そして状況打開の可能性を読み取って、素早く目配せをする。
(この変態小坊主……もしかして、『勇者の拳』が『支給品』だって、気付いてない……!?)
(なら、まだ諦めたものではないわね……!)
最初に「武器を捨てろ」と言われた時には、こちらの手の内が全てバレてるのかと思った。
なにしろ梨花も哀も、見た目だけなら「武器」に相当するようなものなど、何も持っていないのだから。
そして、今の2人が『勇者の拳』を手放したら、もう勝ち目はない。
けれど――思い返せば、一休は『勇者の拳』について極めて限られた知識しか持ってないのだ。
目撃したのは4階で殴り飛ばされた時と、つい先ほどの空振りの2回のみ。
説明書も読んでいないし、哀が使用した場面も目撃していない。
最初に使った時だって、哀からの受け渡しは後ろ手で、つまり一休からは死角に当たる位置で行った。
そして何より、待機状態の『勇者の拳』は、パッと見、綺麗なアクセサリーにしか見えない……!
もう間違いない。
一休は『拳が大きくなる術』を、梨花個人が使用できる魔法か何かのように勘違いしている。
そして、ランドセルに入ってるかもしれない、別の武器の存在を恐れている。
ならば――上手くこのブレスレッドを温存し、隙を見て哀に渡すことができれば……!
梨花は『拳が大きくなる術』の使い手として警戒されているが、哀なら不意を打てるかもしれない……!
「……いいわ。言う通りにしましょう。だから、リンクには手を出さないで」
「素直で助かります。……はい、確かに」
梨花たちは一休の指示に従い、背負っていたランドセルを順番に彼の方に投げ渡す。
隙ができるか、と一瞬期待したが、一休は片手にガラス片を持ったまま、器用に片手でキャッチ。
傍らに積み上げられた少年たちのランドセルの上に置くと、落ち着いた態度を崩すことなく、次の指示を出した。
「では、部屋の中に入ってきて貰いましょうか。あ、そうそう、ちゃんと扉は閉めて貰いますよ」
* * *
(梨花ちゃん、逃げて……! そっちの君も……!)
一休にのしかかられたまま、リンクは声にならない呻きを上げる。
梨花たちの存在が確認できたのはひとまず安心だったが、状況はどう見ても最悪だ。
見れば梨花も無傷ではない。身体のあちこちには痛々しい打ち身が見られ、表情にも辛そうな色が混じり。
身体に力が入らないのか、もう1人の少女――手錠をかけておいたあの少女だ――に支えられている。
その傷全てが一休にやられたもののように思えて、改めて怒りが込み上げる。
けれど、この状況ではどうすることもできない。
目の前にはガラス片。身体は傷と毒ガスのせいで思うように動かず、小狼も同じようなもので――
そこまで考えて、リンクはふと気が付く。
(――あれ? そういえば、さっきよりも――)
恐る恐る、上にのしかかる一休から死角にあたる拳を、握り締めてみる。
……僅かながら、力が戻ってきていた。
普段通りとまでは行かないし、まだ吐き気も残っていたが、全く動けない程ではない。
目線だけを横に向けてみれば、同じく小狼が拳を握ったり開いたりした後、リンクの方を見て頷いてきた。
小狼もまた、自分の身体に力が戻りつつあることを確認したのだ。
『ネコンの香煙』――
それは本来、このような閉鎖空間での使用を前提としたものではない。
そしてまた、完全に動けなくなるほど効果が強いものではない。
戦場のような解放的な空間で使用して、それでも意味のある種類の焚薬。
同時に、吸い込んだ相手の「完全無力化」ではなく、「能力低下」を意図した焚薬。
それが何故、ここまで強烈に効いてしまったかと言えば、それは保健室の扉が閉ざされていたからだ。
煙が拡散せず濃度が濃かった分、大量に吸ってしまったためだ。
となれば当然、梨花たちが戸を開けたことによって、煙は外に流れ出るわけで――
空気中の密度が下がれば、自然と影響は軽微になっていくわけで――
一旦体内に取り込まれた毒素は、そう簡単には抜けない。万全には程遠い。
けれど、動くことはできる。気合を入れれば立ち上がり、動き回れる程度には回復してきている。
自分の体調を確認し、改めて小狼と目配せする。
(けれど――今はまだ我慢、だね)
(一休はまだ『俺たちが動けない』と思っているはずだ。
反撃のチャンスは大事にしたい――もう少し、様子を見たい)
言葉には出せないが、視線だけで互いの考えが伝わる。
阿吽の呼吸で、言葉に出さずとも通じ合う。
ヘンゼルという強敵を前に共闘した経験が、2人の少年の間に確かな繋がりを生んでいたのだ。
梨花たちが、悔しそうな表情のままランドセルを投げる。一休が受け取る。
これで梨花たちには、支給品を使うこともできない。戦う能力のない彼女たちは、これで無力。
少年2人がなんとかしなければならない――そこまで考えて、リンクはふと気が付く。
(でも、あれ?
そういえば、さっき梨花ちゃんが使ったあの『手が大きくなる技』は、何だったんだろう?)
梨花がああいう技を使えたのなら、リンクは彼女をこれほど心配することはなかったわけで――
でも、少なくとも4階で別れた時には、彼女は「隠れているしかできない」と言っていたわけで――
リンクの疑問に答えは出ず、一休の穏やかな声が思考を中断させる。
「では、部屋の中に入ってきて貰いましょうか。あ、そうそう、ちゃんと扉は閉めて貰いますよ」
* * *
……このまま何事もなく進んで行けば、きっと一休は4人に叩きのめされていたことだろう。
一見すれば一休側が状況を支配しているように見えるが、何しろ人数が違う。
『ネコンの香煙』が抜けつつあった少年2人が機を見て飛び起き、リンクが人質状態を脱出して。
その隙に梨花が哀にブレスレッドを渡し、『勇者の拳』が不届きな小坊主を叩き潰していただろう。
だが実際には、そうはならなかった。そんな単純な幕引きは、訪れなかった。
さて、話を進める前に、この時点では「まだ誰も気づいてなかった事実」を指摘しておかねばならない。
冷静になって、思い出して頂きたい。
一休は、リンクと小狼の2人を無力化するために、『ネコンの香煙』という道具を使用した。
それはその名の通り、炎を上げることなく、じわじわと燃えて煙を吐き続ける「お香」のようなもの。
一休は保健室で見つけた100円ライターを用い、それに火をつけている。
さて保健室の扉が開かれたことで、空気の通り道が出来、煙の濃度は下がった。
『ネコンの香煙』も、もう掠れかかった薄い煙を吐くばかり。
確実な効果を発揮できるほどの煙は、もはや室内にはない――
――だが、ちょっと待って欲しい。
その『ネコンの香煙』の『燃えカス』、未だ僅かに燻っている火種は、今どこにあるのか?
それは一休の油断だった。
いや彼を責めるのは酷というものだろうか? ここまで事態が急転の連続だと、誰しも注意力は疎かになる。
リンクと小狼を武装解除する最中、火のついた香は一旦床に置かれ、それきり存在を忘れられ、そして……
梨花の放った『勇者の拳』の余波が、棚を破壊した。
ガラスが砕ける。薬品がブチまけられる。何本もの瓶が割れ、割れずに済んだ瓶もあたりに転がる。
それらに混じり、医療用のガーゼが、空気を適度に含んで実に燃えやすいガーゼが、ふわりと落ちて……!
一休の指示に従い、哀が後ろ手に保健室の戸を閉めた頃。
誰からも忘れられていた炎は、ようやくその赤い舌を延ばし、ガーゼの侵食を始めた。
ここは保健室。
ベッドやカーテン、包帯や可燃性の薬品など、炎にとっては大好物なものばかりが集められた部屋である。
* * *
――「それ」に最初に気付いたのは、灰原哀だった。
命ぜられるままに素直にランドセルを投げ渡し、命ぜられるままに部屋に入り。
後ろ手に保健室の戸を閉めた所で、ふと、視界の隅に揺れる赤いモノに気が付いた。
「ッ……! 燃えてるっ……!?」
「!!」
哀の喉から漏れた小さな呻きに、残る4人が一斉に彼女に注目し、ついでその視線の先を追う。
哀が見つけてしまったのは、チロチロと燃え始めた医療用のガーゼの山。
その近くには包帯の入った箱やら、割れた薬瓶やら、「健康診断のお知らせ」のプリントやら……
まだそれは吹けば消えそうな小さな火であったが、誰がどう見ても、危険な状態である。
「なっ……! なんで火なんか!?」
「ちょっ、消火器、消火器!」
「水! どっかに水ない!? 水道!」
不意打ちを狙っていたことも忘れて、リンクが悲鳴を上げる。小狼が身体を起こす。
梨花は水道の蛇口を求めて辺りを見回し、哀は廊下の消火器を取りに出ようと扉に手をかける。
そんな中、残る1人は――
「――動かないで下さい!」
穏やかな、落ち着いた、しかし有無を言わせぬ迫力の一喝で、4人を制する。
思わず金縛りになる彼らの前で、一休は落ち着いた様子を崩さず、穏やかに告げる。
リンクにガラス片を突きつけた、その姿勢のままで。
「あわてない、あわてない。あんまり慌てて、今の状況を忘れてもらっては困ります。
あわてても何ひとついいことなんてありませんからねぇ」
* * *
「あわてない、あわてない。あんまり慌てて、今の状況を忘れてもらっては困ります。
あわてても何ひとついいことなんてありませんからねぇ」
一休はマスクの下で微笑む。
状況は全然良くなっておらず、事態は悪化の一途を辿っていたが、それでもなお微笑む。
誰もが浮き足立っているこういう時こそ、まずは自分が落ち着かねばならない。
(あれは『ネコンの香煙』の残り火でしょうか。
いやぁ、失敗、失敗。わたしもまだまだ未熟なようです。火の不始末なんて笑い話にもなりません)
ともあれ、火が小さいうちに消さなければ、5人とも煙に巻かれてしまう。
しかし、火災の危険が迫っているからといって、彼ら4人に好き勝手に動かれたらどうなるか。
どうやら少年2人は『ネコンの香煙』の効果が薄れ始めているようだし、少女2人は自由に動ける状態だ。
火が消えた後、一休はそのまま誤解を解く間もなく殺されてしまうだろう。
人質によって4人を制しているこの状況は、まだ崩したくはない。
(『といれ』とかいう水場までは、あまりに遠過ぎます。小さな手桶で水を汲んできても、間に合うかどうか。
この場にあるもので何とかしなければなりませんね)
実はちょっと部屋を出れば消火器があり消火栓もあるのだが、室町時代出身の一休には知る由もない。
けれど、周囲を素早く見回した一休は、すぐさま得意のとんちで解決策を見つけ出す。
水を汲んでくる時間も惜しいなら、すぐそこにある水を使えばいい。簡単な話だ。
ただ何をするにも、リンクを押さえ込んだ今の態勢では難しいわけで――
一喝に凍りついた4人を見渡しながら、ゆっくりと身を起こす。
「これからこの手を離しますが、みなさん、まだ動かないようお願いします。
唐突ですが、実は私――『斜院征伐(しゃいんせいば)』という法術を習得しております。
霊験あらたかな『さもないと石』の力を借り、明王たちの武具法具を天から降らせて敵を討つ技です。
範囲は、そうですね、この部屋くらいなら満遍なく隙間無く仏罰を下せるでしょうか?
その名の通り、寺1つを傾ける程の力を持つこの術、手加減ができないので使いたくないのですが……
下手に抵抗されると、私もこれに頼らざるを得ません。お分かり頂けますね?」
もっともらしいことを言いながら、チラリと『シャインセイバー』の『サモナイト石』を示してみせる。
法術だとか明王だとか、『院』を『傾ける』から『斜院』だとか、その辺は説得力を持たせるためのブラフ。
効果範囲だって、まだ1回も使ったことが無いのだから、一休自身にも正確な広さは分からない。
でも、それで誰も血を流すことなく事が収まるのなら、この程度の嘘、御仏も笑ってお許し下さるだろう。
「嘘も方便」という言葉も、元を辿れば仏教用語なのだ。
困惑なのか恐怖なのか、4人が口を開けたまま動かないのを確認すると、一休は立ち上がる。
そうこうしている間にも、火は少しずつ大きくなっている。
一休は足元に転がっていた瓶を1つ、手に取る。
『勇者の拳』に打ち砕かれた棚から落下して、けれど偶然にも割れることなく床に転がった、薬瓶の1つ。
厚手のガラスで出来た大口の瓶の中には、透明な液体がたっぷりと入っている。
「そうですね……これで足りるでしょうか」
蓋を開けマスクをズラし、液体の匂いを嗅ぐ。刺激臭はするが、「恐れていた匂い」はない。
どんな効能を持った霊薬か知らないし、勿体無いと思わないでもなかったが、今は何より火を消すのが先だ。
息を飲む4人の前で、一休はその液体を炎の上に、…………、…………!
* * *
「この術、手加減ができないので使いたくないのですが……
下手に動かれると、私もこれに頼らざるを得ません。お分かり頂けますね?」
未知の魔法『斜院征伐』(しゃいんせいばつ?)の存在を誇示して4人を脅す一休。
立ち上がりかけた格好のまま、小狼は混乱する。
(ハッタリか? それとも――本当?
でもあの石、確かにただの石じゃなさそうだし、何よりこいつの余裕と自信は……!)
一休が嘘をついてないとすれば、おそらく『斜院征伐』はかなりの威力を持つ広範囲殲滅魔法なのだろう。
クロウカードの魔法とは対極に位置するような、応用性も発展性もない、ただ全てを破壊するだけの魔法。
そんな手の内を平気で晒すのは、知っていたとしても対策の立てようが無い魔法だからではないか。
開けた空間にいればともかく、こんな狭い室内では逃げる場所も無いし――
なまじ魔法の知識があるだけに、小狼の考えは悪い方向にばかり働いてしまう。
(でもそんな技を持ってるなら、何故使わない? 俺たちを殺す気じゃないのか?
いや――あるいは消耗が激しいのか。俺たち程度じゃ、大技は温存しておきたいとでも……!?)
小狼が結論を出せずにいる間に、一休は悠々とリンクの所から離れ、炎の側に歩み寄る。
いつの間に拾ったのか、その手には1つの薬瓶。
瓶の蓋を開け、マスクをズラして匂いを嗅ぎ、中身を確認している。
「そうですね……これで足りるでしょうか」
「…………!」
その落ち着いた声に、小狼はギョッとする。
何しろ、一休が手にしていた薬瓶のラベルに書かれていた文字は……
『消毒用アルコール』
それはエタノール濃度80%〜95%、揮発性に富み殺菌作用に優れた保健室の常備品。
もちろん、注意書きには大きく「可燃性」「火気に近い所には置かないで下さい」などの文字……!
わざわざ蓋を開けて中身を確かめた一休は、
そして迷うことなく、炎に振りかけた。
―― ボ ッ ! !
一際大きな炎が上がる。
文字通り火に油を注いだ状態。炎は一気に勢いを増し、その範囲を広げ、煙も上がり始めている。
着物の裾を炎で炙られた一休が、パタパタと裾を叩きながら「おおっと失敗失敗!」などと笑っている。
顔を覆うマスク越しにも、笑っているのがはっきりと分かるような声。小狼は確信する。
(こいつ……! やっぱり俺たちを殺す気だ! 間違いない!)
室内の全員を皆殺しにできる術を持っているというのに、わざわざ炎と煙に巻いて殺そうとする陰湿さ。
小狼は怒りにまかせて立ち上がろうとして――
(――あれ?)
次の瞬間、目に映る世界全てが、グニャリ、と曲がった。
引っかかった?
367 :
代理投下:2007/06/10(日) 23:55:50 ID:hl0kEYWy
163 名前:真実は煙に紛れて (1)発火点 ◆3k3x1UI5IA[age] 投稿日:2007/06/10(日) 23:49:04 ID:TuXpKL2w0
* * *
「おおっと、失敗失敗!
……いやはや、『燃える水』とはなんとも奇妙な霊薬です」
慌てて裾に燃え移った火を叩いて消しながら、一休は小さく呟く。
彼が言う「失敗」とは、裾が燃えたことではない。間違って火に油を注いでしまったことについてだ。
念には念を入れて、油でないことを臭いで確かめたはずなのに……まさか水が燃えるとは。
この世には自分の知識の及ばないことがまだまだあるのだなぁ、と呑気にも感心する。
こんなことならば、ラベルの注意書きをよく確認しておくのだった。
実のところ、一休は取り上げた誰かのランドセルを漁って、ペットボトルを取り出せば良かったのだ。
そうすれば、簡単に火を消すことができただろう。
けれども、開始早々に荷物を奪われた彼は、すっかり「ペットボトル」の存在自体を忘れてて――
「しかし迂闊に水もかけられないとなると、一体どうやって消せばいいのでしょう。
何か妙案は……おや?」
腕を組んで頭を捻ろうとした一休は、その拍子にふと、あることに気が付いた。
その手が炎に炙られた自らの袖を探る。
「おやおや……これは、まずいかもしれませんね」
一休は改めて燃え盛る炎の方に目を向ける。
可燃性のエタノールをたっぷりかけられ、ちょっとした焚き火ほどの火勢となったガーゼの山。
そこから立ち昇る、なにやら怪しげな煙――!
一休は、慌ててマスクをかけなおす。
「あわてない、あわてない。いやしかし、どうしたものですかね」
火は消えていない。状況は悪化するばかり。
そして、保健室内の他の4人は、…………、…………。
とんち自慢の一休にとっても、この『大混乱』を丸く収めるのは容易なことではないようだった。
真実はいつもひとつ! と探偵は言う。
けれど、人の目に映る「事実」は、それぞれに違う。
たったひとつの「真実」に、誰も辿り着けないこともある。
そんな「真実」に、いったいどれほどの価値があるのだろう? どれほどの意味があるのだろう?
予め警告しておく。
ここから先、各登場人物が見て、聞いて、体験したものは、それぞれ大きく異なっている。
そのどれが正しいのかは、ひとまず置いておくとして――
もしも当事者を並べて直接尋ねることができたとすれば、彼らは揃って隣の者の言葉を遮り、こう言うだろう。
「いや、僕/俺/私が見たことが本当だ!」と。
それほどまでに、「自分で見たこと」というのはインパクトが強い。
「自分の体験」というものは、何にも勝る説得力を持つ――。
* * *
古手梨花は、煙に包まれる保健室の中、おぞましい怪物の姿を見た。
エタノールを振り掛けられ、勢いよく燃え上がる炎。噴き出す煙。
梨花は唖然として言葉も出ない。
(な、何考えてるの、この変態タコ坊主――! これじゃ、本当に火事に――!)
一休自身も炎に巻かれかねない、自殺行為。
その「驚き」がうまく「怒り」に転化できれば、『勇者の拳』を発動させて全てを終わりにできたかもしれない。
巨大な拳によるツッコミで、炎も何も全て吹き飛ばすことができていたかもしれない。
けれどこの瞬間、梨花の胸に湧き上がったのは「怒り」ではなく「恐怖」。
反射的にツッコミを繰り出すこともできず、煙を吸ってむせ返る。
今は読めないが支援だけでも
「けほっ、こほッ……! このっ、タコ坊主っ!」
視界がグニャリと歪む。眩暈がする。
それでも気丈に叫びながら涙を拭った梨花は、次の瞬間、信じられないような光景を目撃する。
『タコ坊主、ですか――いヤぁ、正体がバレてしマったでようでスね』
壊れたラジオのように歪んだ声。それと同時に、一休の身体の輪郭が大きく歪む。
着物の袖から出た彼の手が、縦に裂ける。いや、「人の手」という偽りの姿を放棄して、「本来の姿」に戻る。
そこに現れたのは、何本もの触手。そしてそれが一気に伸びる。
「なっ――!?」
ツルリと剃られた頭はそのままに、一休の着物の裾から、袖から、隙間から、無数の触手が伸びる。
ぬめりのある、肉色の、つややかなミミズのような、「触手」としか表現のしようのない異形の器官。
頭から直接無数の触手が生えたその姿は、科学雑誌などで見た火星人や宇宙人の予想図にそっくりだ。
それが無理やり、僧侶の服を着ている格好。まるっきり化け物である。
梨花には、自分の見ているものが自分でも信じられない――
けれどそれは、変態小坊主の正体としてはこれ以上なく説得力があるもので。
正体がコレなら、確かに4階から叩き落されたくらいでは死なないだろう。見るからに生命力に溢れている。
ウネウネと動く、気味の悪い触手。
それが爆発的に増えて伸びて蠢いて、ほんの数秒で保健室の中を埋め尽くす。
足の踏み場もないほどに大きく広がり、梨花たちの身体に絡み付いてくる。
「ひっ……! や、やめるのです……! こ、このっ……!」
梨花の細い手足に、触手が絡みつく。
素肌にナメクジが這うような気味の悪い感覚に、梨花は肌を粟立てながらも抵抗する。
と、視界の外、後ろの方で、振り回した手が何かを弾く。確かな手ごたえ。
触手の先端でも殴ったか? と思った、次の瞬間。
『――お前ガ死ネ!』
「ぐぇっ……!?」
首に絡みつく、強い圧迫。梨花は無様な呻き声を上げる。
梨花の抵抗に怒ったか、触手の1本が首に巻きついたのだ。
ギリギリと、意外なほどの力で締め上げられる。触手を掴んで引き離そうとするが、ビクリともしない。
太さで言えば、女の子の手首ほどの太さだろうか。
息ができない。苦しい。痛い。視界が霞む。
この痛みと苦痛は、絶対に夢や幻などではありえない。
このままでは――本当に、殺される。
(ふざ、けないで……! このっ……火星人、がっ……!)
梨花はようやくこの理不尽かつ不条理な状況に怒りを覚え、ギリ、と拳を握るが――
けれど、声が出ない。言葉が出せない。口を開いても、空気が出せない。
これでは、ツッコめない。
発動条件を満たせない『勇者の拳』はブレスレッドの姿に留まり、梨花の反撃の手段は失われる。
意識が遠のく。視界が暗転する。
哀やリンクたちも、同じように束縛されているのだろうか? 彼らは捕まらずに済んだのだろうか?
今の梨花には、周囲を見渡す余力すらない。
(このまま殺されるなら、まだ諦めもつくけど……こんなのに、犯されたくは、な……
せめて、哀やリンクだけでも、逃げ……!)
死よりも酷い最悪の事態を目の前にして、それでも切れ切れの思考で、梨花は仲間たちの心配をして。
そのまま梨花は、白目を剥いたまま、口の端から泡を吹きつつ、気を失った。
* * *
灰原哀は、煙に包まれる保健室の中、悪夢の世界を垣間見た。
エタノールを振り掛けられ、勢いよく燃え上がる炎。噴き出す煙。
その煙を僅かに吸っただけで、グラリと揺れる視界。
「その道」について深い知識のある彼女は、咄嗟に気付く。
(これ、ひょっとして……何かの薬品?!)
世界が歪む。周囲の景色がひしゃげ、溶けていく。
そして何より――哀自身の思考力が、混濁する。
一瞬湧き上がった「幻覚作用のある薬品では?」という疑いは、しかしもうまともに検討できない。
激しい吐き気と眩暈。自分の皮膚の内側で、無数の虫が蠢いているかのような不快感。
時間の感覚さえ歪んでしまったかのようで、頬の冷や汗が伝うほんの数秒が、何十倍もの長さに感じられる。
バッド・トリップ。
麻薬の類を摂取した時に見ることのある、極めて不快な一群の症状だ。
快感や多幸感をもたらす通常のトリップとは異なり、それは不快の極み。酷い場合は後遺症も残る。
そしてそれは、複数の、異なる種類の麻薬を同時に摂取した時、容易に起こりやすい――
普段の彼女なら、自分が5MeO-DIPTを摂取していたことを思い出し、すぐにそのことに気付いただろう。
けれど、まさにその只中にいる彼女の思考は混濁し、自分の知識を上手く引き出すことができない。
上も下も分からない極彩色の世界の中、彼女は頭を抱える。
「うあぁぁっ……! 一体、何がどうなって……!」
『貴女が望んだことでしょう?』
不意に、耳元で囁かれる。熱い吐息を吹きかけられる。
混乱したまま、振りかえった彼女が見たものは――
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる、『自分自身』の姿だった。
『この世界が悪夢であることを願ったんでしょう? 悪夢の中で死ぬことを願ったんでしょう?』
「違う、私は……私は」
『違わないわ』
自分のつま先すらロクに見えない歪みきった世界の中、異常に鮮明な『灰原哀自身』の像が虚ろに笑う。
その『自分自身』の幻に、唐突にぱしッ、と頬をはたかれる。唇の端が切れ、血が流れる。
『よかったじゃない、願いが叶って。あとは殺されるだけね』
「……!!」
ニヤニヤ笑う『自分自身』の挑発的な言葉に、哀は目を血走らせて睨みつけ。
次の瞬間、彼女はその『自分自身』に、激しく掴みかかった。
迷い無くその細い首に手をかけ、ギリギリと絞め上げる。幻覚とは思えぬ、確かな手ごたえ。
「私は死なない――死ぬなら、お前が死ね!」
抵抗されても、なお絞める。『自分自身』が突き立てた爪が哀の腕を傷つけるが、一切の加減をしない。
普段の彼女らしからぬ激情にかられ、自分でも信じられぬような力を発揮し、容赦なく絞め上げる。
複数の薬品の相互作用で、無意識のリミッターが外れた状態なのだ。
「もう死んで償おうなんて思わない! 汚されることで許されるなんて思わない! だから、だから……!」
『うふふ、強情ね。でももう貴女、汚されちゃってるのよ?』
背後からかけられる、新たな嘲笑。彼女ははッとして振り返る。
思わず手の力が抜け、締め上げていた『自分自身』が床に崩れ落ちるが、気にする余裕すらない。
そこには、2人の人物がいた。
片方は床に横たわっている。片方はその上に馬乗りになっている。
寝ている方は、仰向けだ。馬乗りになっている方は、その胸をパシパシと、甘えるように叩いている。
煙でよく見えない。目を擦りながら近づいた彼女が、見たものは――
服をはだけ、淫蕩な笑みを浮かべて男の腰のあたりに馬乗りになった、新たなもう1人の『自分自身』。
そして身体の上に跨られ、飄々とした表情のまま笑っている『一休』の姿。
その位置、その体勢は、どう見たって……!
『でもこれってどうなのかしらね? どちらが汚されていることになるのかしら?』
「――あああぁぁおぅおおぉぉッ!」
哀はキレる。声にならない怒号を叫びながら、『緑色の服をはだけた』格好の『自分自身』に突進。
思いっきり、殴り飛ばす。
許せなかった。何もかもが許せなかった。
こんなことを望んでいたかもしれない、過去の自分が許せなかった。
それが夢だろうと幻だろうとバッド・トリップの果てに見た狂気のカケラだろうと、とにかく許せなかった。
渾身の力を込めて、殴り飛ばす。腰も入ってない素人の拳ながら、火事場の馬鹿力のようなパワーで殴る。
荒い息をつきながら、突き飛ばされた『自分自身』を睨みつける。
「――ふざけるな! 私は、そんな――」
『ふザけてイるのハ、どっチだ!?』
吐き捨てようとした、次の瞬間。
横たわっていたはずの『一休』が、跳ね起きる。
いや、跳ね起きる、と思った次の瞬間、哀の身体に激しい衝撃が走る。
「ごほっ……!」
彼女のみぞおちに、深々と足刀が叩き込まれる。
地面に寝た姿勢から、ワンアクションで起き上がりつつ放たれた、鋭い蹴り。
カンフー映画のワンシーンのような、正しい鍛錬に裏付けされた実力者の技。
まさかそんな動きができるなんて想像すらしていなくって、だから反応もできなかった哀は、そのまま倒れる。
(そん、な……! いくら、『夢』だから、って……!)
何がなんだか、分からない。あの腐れ坊主が、カンフーまでこなす達人だったなんて。
どこまでが幻なのだろう。どこまでが真実なのだろう。少なくともこの痛みは、嘘ではないようだけど……。
激しい混乱の中、灰原哀は、そのまま意識を失った。
* * *
これは……まさか、いやでも、そんな……!?
小狼は、煙に包まれる保健室の中、最愛の少女の姿を見た。
エタノールを振り掛けられ、勢いよく燃え上がる炎。噴き出す煙。
殲滅魔法『斜院征伐』のことも忘れ立ち上がった小狼は、グラリと襲ってきた眩暈に、一瞬顔を押さえる。
(前の毒ガスの効果が残っているのか? にしては――)
まだ体調は万全ではない。脱力感は残ってるし、吐き気はまだあるし、腹の傷は動くたびに痛む。
けれど今はそれよりも、一休を叩きのめして火を消さないと――
そう思って周囲を見回した小狼は、唖然とする。
「な……!? 何をやってるんだ、あいつら!」
さっき部屋に入ってきた女の子たち――どうやらリンクの仲間たちらしい――の動きが、おかしい。
梨花と呼ばれた女の子が、見えない『何か』を振り払うように両手を振り回す。
その手が当たったもう1人の灰色の髪の少女が、今度は凄まじい形相で梨花の首を絞める。
それも、「あんたが死ね!」などと物騒なことを叫びながら。
見るからに渾身の力が入っている。白目を剥く梨花の様子は、明らかに危険だ。
火事よりも一休よりも、まずどうみても正気ではない2人を止めなければ、と小狼は手を伸ばしかけて――
その身に、鈍い衝撃を受けた。
「がっ……!?」
完全に想像もしていなかった方向からの、体当たり。
脱力感と傷の痛みを残す小狼は耐え切れない。そのまま地面に押し倒される。受身も取れない。
タックルの勢いのまま、倒れた小狼に一気に馬乗りになった襲撃者、その正体は……
「え……? さ、さくら?!」
相手の顔を確認した小狼は、目が点になる。
そう、彼の上に跨っていたのは、誰あろう。
李小狼がその行方を心配しこの島で捜し求めていた少女、「木之本桜」その人だった。
ずっと会いたいと願っていた彼女が、何故か見覚えのない『緑色の服』を着て、彼の上に乗っかっている――
少女の服が『なぜか一部はだけている』のも含めて、小狼は場違いな鼓動の早まりを覚える。
なんで彼女がここに居るのだろう? いつの間に? どうして? なんで彼女が自分を押し倒してるんだ?
「な、なんでさくらがここに……ぐほっ!?」
驚き慌てる小狼の言葉を聞こうともせず。
彼の動きを全体重をもって封じた人物は、無表情のまま、無造作に、そして無慈悲に拳を振り下ろす。
子供のケンカのような体勢だが、格闘技の世界でも有効とされているマウントポジションだ。
いくら小狼に武道の心得があったとしても、そこからの脱出は容易ではない。一方的に殴られる。
力はさほどないが、的確で、殺気の篭った本気の拳。
(ど、どういうことだよ! なんでさくらが……!)
ぱッと脳裏に思い浮かんだのは、『さくら』が『操られている』可能性。精神を操作するような魔法の可能性。
そう思ってみれば、仮面のように無表情な顔はいかにもおかしい。
でも、だからと言って小狼に殴り返すことができるはずもなく、一方的に殴られ続けて――
『――あああぁぁおぅおおぉぉッ!』
「!?」
突如横から飛び出してきた人影が、奇声を上げながら小狼の上の『さくら』を殴り飛ばす。
自由になった小狼。呆然と見上げたその相手は――さきほど、梨花を締め上げていた灰色の髪の少女。
『――ふざケるナ! 私は、そンな――』
「ふざけているのは、どっちだ!?」
意味不明な叫びを上げる相手に、小狼の感情が沸騰する。
助けてもらった、という感謝の気持ちより先に、「目の前で『さくら』を殴られた」ことに対する怒りが爆発する。
考えるより先に身体が動く。飛びおきざまに鋭い蹴り。少女のみぞおちに深々と突き刺さる。
それっきり相手は動かない。小狼は荒い息をつく。
この少女も『さくら』のように、一休に『操られて』いたのだろうか?
どうやらリンクたちの仲間のようだし、そうとでも考えなければ梨花や『さくら』を攻撃する理由がない。
「ふぅ、ふぅ…………ぐはっ!?」
だが、一息つく間もなく、一旦は殴り飛ばされた『さくら』が、再度小狼に突進してくる。
今度も体当たり。全身の勢いをつけたタックルが、頭突きのような形で小狼の腹部に突き刺さる。
そこはちょうど、対ヘンゼル戦で負傷した部分で――
再び傷口が開く。血が滲む。激痛のあまり、腹を押さえて悶絶する。床をゴロゴロと転げまわる。
あまりの痛さに、起き上がることもできない。
(ちくしょう……! せっかく、さくらと会えたのに……!)
掠れる視界の隅で、『さくら』が誰かに殴りかかっているのが見える。
このままでは『さくら』がまた攻撃されてしまう。なんとかしなければ。……でも、どうやって?
朦朧とする意識の中、闇雲に伸ばした小狼の手が、床に転がっていた「何か」に触れた。
* * *
リンクは煙に包まれる保健室の中、恐るべき敵の姿を見た。
エタノールを振り掛けられ、勢いよく燃え上がる炎。噴き出す煙。
激しく咳き込みながら、リンクはすぐさま立ち上がる。
視界が歪む。眩暈がする。『ネコンの香煙』による脱力感は未だに残っている。
けれど、動けないほどではない。
「けほっ、こほッ……! このっ、タコ坊主っ!」
「梨花ちゃん、大丈夫?! って……!?」
仲間の少女の悪態に振り返ったリンクは、しかし彼女の姿を発見できない。
代わりに、彼が目撃したのは……4人の『一休』の姿だった。
「……は?」
呆然と見守るリンクの目の前で、『一休』が『一休』を殴っている。
すると殴られた『一休』が殴った『一休』の首を絞めた。
残る2人(2匹?)の『一休』は、動かない。様子を見ている。
梨花たちはどこに行ったのだろう? なんで『一休』同士が争ってるのだろう?
そもそもなんで『一休』が同時に4人も存在するのだろう?
疑問は沢山あったが、とりあえずリンクは……
「……やぁッ!」
手近な『一休』に、タックルをかける。
武器は無い。手足にも力が入らない。けれども、まがりなりにもリンクは勇者たる器の持ち主である。
油断していたらしい『一休』はそのまま押し倒され、リンクは素早く馬乗りになって相手の動きを封じる。
『さ、さく☆? な、なンでさ※ら▲こコに……ぐほっ!?』
「……このぉっ!」
訳のわからぬ言葉を吐く『一休』に、リンクは拳を振り下ろす。
消えた梨花たちのことも気になる。
4体に分身した『一休』、1匹ずつ手早くさっさと倒して、彼女たちを探しに行かなければ!
脱げかけた服がさらにはだけるのも構わず、抵抗を続ける『一休』を殴っていたリンクは、不意に。
『――あああぁぁおぅおおぉぉッ!』
「!?」
奇声に気付いて振り向いた時には、遅かった。
リンクが取り押さえていたのとは別の『一休』が、叫びながら突進。リンクの顔を殴りつける。
そのあまりのパワーに、リンクは吹き飛ぶ。押さえ込んでいた『一休』の上から弾き飛ばされる。
(他の『一休』が助けに来たのか……? くそっ……!)
強烈なパンチに、目がチカチカする。意識が飛びかける。
だがここで負けるわけにはいかない。頭を振りながら、素早く起き上がる。
見れば、立っている『一休』は2人。その近い方、よろめいている方にリンクは突進する。
全体重を乗せた頭突きが、相手の腹部に突き刺さる。
『…………ぐはっ!?』
攻撃を受けた『一休』は、いい所に入ったのか、腹を押さえて床を転げまわる。簡単には立てないようだ。
周囲には倒れた『一休』が3人。あとは……!
「はぁ、はぁ……! あとは……おまえだけだッ!」
残る力を振り絞り、リンクは最後に残った『一休』に突撃する。
こいつさえ倒せば。あとはこいつを殴り倒せば全てが終る――
拳を握り締め、渾身の一撃を繰り出そうとしたリンクは。
『ええ、あとはあなただけですね。1人ならなんとかなります』
次の瞬間、目の前に何やら、粉っぽいものを叩きつけられて――
激しい脱力感に、その場にがくりと崩れ落ちた。
* * *
一休は 『紅皇バチの蜜蝋』を ほのおに おとしてしまった!
梨花は こんらんした! リンクは こんらんした! 灰原は こんらんした! 小狼は こんらんした!
一休は こんらん しなかった……
梨花は こんらんしている! 灰原に こうげき! 灰原は 唇のはしを切って 出血した!
灰原は こんらんしている! 梨花に こうげき! 梨花は 首をしめられ きぜつした!
リンクは こんらんしている! 小狼に こうげき! 小狼を おさえこみ なぐりつけた!
小狼は こんらんしている! 小狼は 身をまもっている……。
一休は ようすをみている…… 「あわてない、あわてない」
梨花は きぜつしている……
灰原は こんらんしている! リンクに こうげき! リンクは 殴りとばされた!
小狼は こんらんしている! 灰原に こうげき! 灰原は 蹴りとばされ きぜつした!
リンクは こんらんしている! 小狼に こうげき! 小狼は 頭突きをうけ もんぜつしている!
一休は ようすをみている…… 「ポク、ポク、ポク……チーン!」 名案が ひらめいた!
リンクは こんらんしている! 一休に こうげき! ミス!
一休は 『ワブアブの粉末』をつかった! リンクは 力がでなくなった! リンクは たおれこんだ!
梨花は きぜつしている……
灰原は きぜつしている……
小狼は もんぜつしている……
リンクは たおれている……
* * *
『紅皇バチの蜜蝋』――それは激しい幻覚作用をもたらす焚薬である。
目に映るものを正しく認識できなくなり、耳に聞こえる声も正しく認識できない。
全てが歪み、混乱する。
どんな幻を見て、どんな幻聴を聞くかは、犠牲者ごとの精神的な背景によって大きく変わる。
見るものも聞くものも千差万別、同じ幻を見ることはまずありえないが――ただ1つだけ。
はっきりと外からも分かる、共通した症状がある。
それは、『敵味方の区別がつかなくなること』。そして、『短絡的な行動、特に暴力に走りやすくなること』。
戦場においては、まさにこの効果を狙ってこの焚薬が使用される。
嗅がされた犠牲者は混乱し、錯乱し、幻に捕らわれ敵味方の見分けもできずに暴れ始める。
敵陣営に混乱をもたらし、連携を断ち切り、同士討ちを誘発する――これはれっきとした『化学兵器』なのだ。
消火のつもりでエタノールを振り掛けてしまったあのとき、一休はさらに1つの失敗を重ねていた。
彼は朝の早い段階で、自らのランドセルを失っている。だから持ち物はあちこちに分散して持っていた。
かさばるものはブリキのバケツの中に。大事なものは懐の中に。
そして、素早く取り出さねばならないものは、袖の中に……!
一休がエタノールを振り掛けてしまったあの時、彼は袖についた小さな火を消そうと必死に叩いて。
その拍子に、うっかり袖の中の『紅皇バチの蜜蝋』を落としてしまったのだ――燃え盛る、炎の中に。
* * *
「……あわてない、あわてない」
エタノールを振り掛けられ、勢いよく燃え上がる炎。噴き出す煙。
一休の目の前で、壮絶な相討ちが繰り広げられる。
それでも一休は焦らない。マスクをしっかりとかけ、毒の煙を吸わないよう注意しながら、考える。
とりあえず、便利だからと言って着物の裾や懐に大事な品を入れておくのは危険なようだ。
同じ失敗を繰り返すのは愚者のやること。うっかり落とすのはもう御免だ。
いそいそと、体操着袋に薬やサモナイト石、クロウカードやモンスターボールを移し替える。
袋に入りきらない大きな荷物、『きせかえカメラ』や『あるるかん』のスーツケースは、ひとまず置いたままだ。
哀が梨花の首を絞めている。リンクが小狼の上に馬乗りになって殴っている。
けれども、どちらも素手だ。暴れるだけ暴れても、大事には至らないだろう。一休はそう判断する。
むしろここで焦って割って入ったら、一休ひとりが袋叩きに合う危険性もある。
5人の中で完全に正気なのは彼だけなのだから、そんなことになっては全員が破滅だ。
ポク、ポク、ポク、ポク……
一休の脳内で、木魚の音が響く。考えをまとめるための、彼独自のリズム。
そうしている間にも炎は燃え続け、混乱した4人の不毛な争いは続く。
首を絞められた梨花は気絶し、絞めていた哀は男の子たちに飛びかかる。
上から殴っていたリンクは殴り飛ばされ、殴られていた小狼が哀に蹴りを入れる。
気絶する少女。しかし間髪入れずにリンクが襲い掛かり、頭突きを腹部に喰らった小狼は悶絶。
横から見てると、助けてくれた人に感謝するどころか攻撃を仕掛ける、という恩知らずの連鎖だ。
ともあれ、これで立っているのはリンク1人。
少女2人はそれぞれ気絶し、小狼は腹の傷を押さえて立ちあがることもできない。
そして、リンクは部屋の中で唯一立っている自分以外の人間――すなわち、本物の『一休』を睨む。
今度は自分の番だ――そう緊張を深める一休の脳内で、ついに考えがまとまる。
ポク、ポク、ポク……チーン!
「あとは……おまえだけだッ!」
「ええ、あとはあなただけですね。1人ならなんとかなります」
怒りと焦りの滲んで見えるリンクの拳は、素人目にも分かり易い大振りなテレフォンパンチ。
ひょい、と軽く避けた一休は、そしてカウンターのようにリンクの鼻先に手の中の粉末を叩き付ける。
「ゲホッ、ごほッ、こ、これは……!?」
「『ワブアブの粉末』。なに、ちょっと力が出なくなるだけの粉薬ですよ」
倒れたリンクの呻きに、一休は全く調子を崩すことなく答える。
一休の閃いたアイデアは、簡単なものだった。
4人が『紅皇バチの蜜蝋』で錯乱しているのなら、まず4人を無力化してこれ以上の事態の悪化を防ぐ。
相討ちするに任せて、最後に残った1人を『ワブアブの粉末』で無力化する。
幸い、カーテンの向こう、窓のすぐ外には校庭が広がっている。
火を消すことを諦めれば、動けぬ4人を順次運び出すのはそう難しいものではない。
そう……既に一休は、消火活動を諦めていた。
本当は、まだ諦めるほどの炎ではない。実は消火器を持ってくれば十分消せる。消火栓を使ってもいい。
けれども、一休はそのどちらも知らなくて――その上、鉄筋コンクリートの耐火性を、全然知らなくて――
木造建築の火の回りの早さが念頭にある彼は、早くも「これは無理だ」と判断してしまっていた。
いかにとんちが優れていようと、知識がないものは仕方がない。
「さて、急いで4人を外に出さねばなりませんね。けれど、あわてない、あわてな……!?」
ジ リ リ リ リ リ リ リ リ リ … … … ! !
見事に作戦通りに事態を収めた一休は、突然鳴り響いた大音響にビクッと震える。
思考が真っ白になるような、ベルの音。凶暴な音の不意打ちに、知恵も何も出ず、一休はしばし凍りつく。
それは火災報知器のベルの音だった。
煙草やアロマテラピーのレベルの煙ならともかく、ここまで火が大きくなれば当然の帰結だ。
しかし、一休の時代にはそんなモノは存在してないわけで――
誰がどこでこの音を鳴らしているのかも分からず、激しく混乱するばかり。
そしてその機を逃さず、倒れていた者たちが動きだす。
幻から完全に脱したわけでもなく、それでも一方的にやられていた者たちが、反撃を開始する……!
以上、中編終了。本当に支援感謝します。
我ながらえらいカオス状態です。
ゲームじゃ「こんらん」の一言で済ませられることも、SSにするとこんな事態に……。
また10分ほど置いてから、ラストの後編の投下を開始します。
これはひどいテラカオスwww
「こんらん」の喩えがこれほどあてはまるのは初めて見たw
後編期待!
一休さん逃げてー!
うぁぁ、やばい続き気になる。
一休さん、あんたヤバイよ、ヤバすぎだよ……
でもこれより更にやばい事がありそうで後編をwktkしながら待つ俺がいる
それでも一休なら
それでも一休なら丸く治めてくれる…と信じたい
煙が立ち込める保健室に、耳障りな火災報知器のベルが鳴り響く。
どうやら設置されているのは火災報知器だけで、スプリンクラーなどはないらしい。
いったいいつの時代の学校なんだよ――傷の痛みに朦朧としながら、小狼は心の中で愚痴る。
(いや、でも今はそれどころじゃない……! なんとかしないと……!)
部屋の中、立っているのは1人のみ。諸悪の根源、精神操作の能力を持った魔法使い(?)、一休だ。
他の全ての人間が、倒れている。
胸が上下しているということは、まだ息があるようだが……このままでは、全滅する。
今すぐトドメを刺されてもおかしくない。
一休がベルの音に気を取られている隙に、小狼は震える手を伸ばす。
そこにあったのは、一度は取り上げられた武器の山だった。
一休が取り上げたものの、持ちきれずに置いておいた品々だった。
激痛に苦しむフリをして――いや、実際かなり痛かったわけだが――さりげなく近づいた荷物の山。
一休が着物の袖に納めきれなかった大振りな荷物が、そこに積み上げられている。
4つのランドセル、『あるるかん』の入ったスーツケース、そして……!
(よし、充電完了している……! いける……!)
一休は、『斜院征伐』という魔法を使う際に『さもないと石』という道具の力を借りる、と言った。
逆に言えば、彼の魔法は何らかの『媒体』を要するものである可能性が高い。
クロウカードやさくらカード、小狼が使う呪符のように、媒体を必要とする魔法は多いのだ。なら……!
(どこにどう隠し持ってるか知らないけど……これで、きっと……!)
拾った道具から、『あるもの』を抜き取る。本来必要な道具をあえて欠いた状態で、彼はそれを構える。
小狼は「一休が魔法使いだ」という間違った前提を元に、未来のひみつ道具のシャッターに指をかけた。
* * *
煙が立ち込める保健室に、耳障りな火災報知器のベルが鳴り響く。
リンクにとっても、この大きな音は未知のものだ。反射的に身が竦むが、すぐに正気を取り戻す。
(なにがなんだか分かんないけど……このままじゃ、まずいよ!)
身体に力が入らない。
脱力感をもたらす『ネコンの香煙』は未だその後遺症を残しており、さらにその上から『ワブアブの粉末』だ。
筋力低下作用のある薬を二重に喰らって、リンクは立ち上がることもできない。
周囲を見渡せば、仲間たちが倒れている。名前を知らない少女や、小狼の姿もある。
あれだけいた『一休』たちはどこに消えたのか? 自分に粉を振り掛けた最後の1体が『本物』だったのか?
そして、いつの間に仲間たちは戻ってきていたのか?
よく分からないが、ふと気が付けば、リンクのすぐ側には梨花が倒れている。
這うようにして近づけば、ヒュウヒュウと呼吸をしている。まだ生きている。
念のため、触れて脈を確かめようとした彼は、あることに気付く。
(そういえば……梨花ちゃんのあの技は……!)
見覚えのない、綺麗なブレスレッド。4階で別れた時には、戦闘力が無かったはずの梨花。
そして、そういえば確認もしていなかった、梨花の支給品……!
名探偵やトンチ自慢の小坊主ほどではないが、リンクだって謎解きは得意だ。すぐに真相を察知する。
使い方も……なんとなく、直感で分かる、気がする。
勇者の資質を持つ少年は、そして、その資質を証明する伝説の道具に、手を伸ばした。
* * *
煙が立ち込める保健室に、耳障りな火災報知器のベルが鳴り響く。
混乱していた一休は、ふと少年たちの動きに気付いて、はっとする。
小狼が、保健室の片隅に積み上げておいた荷物の所に、いつの間にやら移動している。
リンクが、倒れて動かない梨花の方に、手を伸ばしている。
咄嗟に脅して制止しようと、サモナイト石を取り出そうとするが……僅かに、遅い。
床に倒れた姿勢のまま、小狼は「その道具」を一休に向ける。
「これで……魔法は使えないぞっ!」
パチリッ!
小狼の手にした未来のふしぎ道具、『きせかえカメラ』が閃光を放つ。
小狼の推測では、一休は媒体無しには術の使えない魔法使い――ならば、どうするか。
媒体を、取り上げてしまえばいい。
杖のような道具は持っていないから、媒体は恐らく指輪か何かに偽装されている。
あるいは、衣類の下に隠し持っているのかもしれない。
どちらだとしても、『きせかえカメラ』に「あえてデザイン画を入れずに」シャッターを切れば――!
「え……?! おやおや、これは……!」
一休の着物が、綺麗さっぱり消えうせる。着物の下に着ていた体操着も、同じく綺麗に消えうせる。
防具代わりに体操着の下に挟んでいた教科書が落ち、マスクが消えて素顔が露わになる。
つまりは褌一丁無い、真っ裸。
両手にそれぞれバケツと体操着袋を持っただけの、完全に無防備な姿だ。
これなら、魔法の媒体を隠し持つことなどできない――いや、最初っから隠し持ってなどいなかったのだが。
裸に剥かれた一休は、流石に慌てて自らの口元を押さえる。
いや、服はどうでもいい。恥ずかしくないと言ったら嘘だが、それよりも問題なのは活性炭入りのあのマスク。
保健室の中には未だ『紅皇バチの蜜蝋』の煙が満ちている。自分も吸ってしまうのはマズい。
咄嗟にマスクの代わりに、手にした体操着袋を口元に押し当てて――
その「無駄な心配」、「無駄な動作」のせいで、彼はリンクの動きに対応しきれない。
「このっ……なんで、キミはっ……!」
身体に力の入らぬリンクが、梨花の腕からブレスレッドを抜き取る。
自分の腕にはめながら、怒りの篭った視線で一休を睨みつける。
床に這いつくばったまま、その手を向ける。
リンクは勇者の器を持つ少年だ。そしてどんな道具でも瞬く間に使いこなしてしまう一種の天才だ。
誰かが使った姿を横目で見れば、彼にはそれで十分。説明書も何も要りはしない。
必要なのは、ただ一言のツッコミだけ。
「なんでキミは―― そ こ で 脱 ぐ ! ? 」
リンクの叫びと共に、拳が爆発的に巨大化する。
服を剥がれ無防備な一休の身体を、アッパーカットのように斜め45度の角度から突き上げる。
『勇者の拳』の威力は、使用者の腕力に依存しない。ただ「おかしい」と思う想いの強さにのみ依存する。
ここで裸になったのは別に一休自身の意志でも何でもないのだが、そんなことは関係ない。
「ちょっと待って下さゴプろゲッ!?」
裸の一休が弾け飛ぶ。暴走するトラックに跳ねられたようなものだ。
奇妙な呻き声と共に窓枠を突き破り、宙を舞い、広い校庭を飛び越えて……
すぐにその姿は、煙の渦巻く保健室から、見えなくなった。
普通に考えて……死んだだろう、あれは。
床から起き上がる力もでないリンクには、確認することもできないのだが。
「げほっ、ごほっ……! ど、どうなった……?」
「小狼……? だ、大丈夫。文字通り、吹き飛んだ」
窓が割れたことで、保健室の中に新鮮な空気が流れ込む。
幻覚作用のあるガスの濃度が下がる。冷たい空気が美味い。頭の中にかかった靄が僅かなりとも晴れる。
状況を完全には把握できないながらも、リンクと小狼は互いの存在を確認し、不敵に笑う。
ともかく彼らは、勝利したのだ――この、一度は全滅をも覚悟した絶望的な状況から。
「手強かったな……まさか、人を操る力があったなんて」
「え? 何のこと? あいつの能力って、分身だろ?」
「それこそ何のことだよ? それに、さくらはどこに……? 俺の見間違いか……?
まあいい、で……どうする、この火事」
「……どうしようか、これ」
一休を倒した喜びも束の間、2人は顔を見合わせる。
保健室の片隅には、未だ燃え続け、広がり続ける火。
もしも今ここに消火器があれば、まだなんとか消すことができるレベルかもしれない。
けれどリンクは全身の脱力感で立ち上がることも厳しい状態だし、小狼も傷が開いて苦しい状況。
女の子2人に至っては、未だ気絶したまま、起きてこない。
室内を見渡しても消火器はない。おそらくは廊下まで探しにいかなければならないだろうし……!
頑張って火を消すべきか。それとも、諦めて脱出すべきか。
どちらにしたって、使えるものは少なく、出せる力は限りがあって。
耳障りな火災報知器のベルが鳴り続ける。彼らの危機感を煽り続ける。
危険な状況は、まだまだ終っていない――!
* * *
――水がなみなみと満たされたプールに、盛大な水飛沫が上がる。
津波のように何度も水がプールサイドに押し寄せ、乾いた床面に乗り上げる。
数秒の間を置いて、プールの中央にぷっかりと浮かんできたのは……
ツルツルに剃られた、綺麗な坊主頭だった。
「げほっ、ごほっ……いやはや、またもや酷い目に遭いました」
それはもちろん、一休。
どういう偶然の悪戯によるものか、彼はまたしても生きながらえていた。
普通だったら死ぬしかない状況から、生還していた。
ここからは保健室は直接見えない。L字型の校舎が邪魔をする。なのに、なんでこんな所に落下したのか?
「あの耳の尖った少年まであの術を使うとは……つまりはあれも支給品の力と言うことですか。
そういえば、綺麗な腕輪を抜き取っていましたね……今度からは、あの腕輪に注意しないと……」
体に絡んだカーテンの布地を引き剥がし、必死に泳いで岸辺に上がる。
一休自身、この「奇跡の生還」が信じられない。御仏の御加護に心から感謝する。
下手に踏ん張らなかったのが幸いした。斜め上に突き上げる打撃の角度も絶妙だった。
体の前に構えたバケツと体操着袋がクッションになって、『拳』の直撃の衝撃を和らげて――
窓を突き破る際にも、分厚いカーテンに包まれた格好になり、ガラス片の多くから守られて――
放物線を描いて校庭上空を舞った彼は、校庭の向こう側に植えられた並木の1本に衝突して――
大きくしなった並木は、衝撃を吸収すると同時に、プールの方向にピンボールのように跳ね返して――
そして、V字を描いて反射した彼が落ちた先は、水がたっぷり張られたプールの中。
4階からの落下と同等、いやそれ以上かもしれない運の良さだった。
「具合良くこんなところに池があって助かりました。しかし何なんでしょう、ここは」
全裸でプールサイドに這い上がりながら、一休は首を捻る。
真四角に区切られた大きな池、底には何本もの線が引かれ、周囲は硬い石造りで固められている。
庭園にしては味気が無さ過ぎるし、魚一匹泳いでいない。飲料水用の溜池にしては、変な味もする。
一体何のために作られた施設なのか? こんな場合だというのに、一休の興味は尽きない。
「この水を汲んでいけば、あちらの火事も……いや、無理ですね、もう」
一休はポタポタと水を滴らせながら、身体を引き摺るようにして歩き出す。
九死に一生を得たとはいえ、今度の打撃もかなり効いた。
命に関わるような怪我は無いが、走ってあそこまで戻る元気は流石にない。
バケツとその中身は弾き飛ばされた衝撃で失ってしまったし、今の一休には服さえも無い。
せっかく身体中に張った絆創膏や湿布も、あらかた剥がれてしまった。
もし戻ったとしても、またあの4人に襲われたら、今度こそ打つ手はない。
唯一手元に残った体操着袋を抱えて、彼はゆっくり首を振る。
「まあ――あれだけ元気なら、彼らだけでも逃げられるでしょうしね。
彼らが落ち着くのを待って、改めて誤解を解きたいところですが」
いささか後ろめたさも感じつつ、一休は自分を納得させる。
今はどこかで休みたい。傷の具合を確かめて、手元に残った道具を確認して、どこかで衣類を確保したい。
周囲を見渡せば、四角い『池』のすぐ近く、小さな建物が付属している。
まずは一旦ここに身を隠すべきだろう。
「入り口が2つありますが……まあ、入ってしまえば一緒でしょう」
○と△を組み合わせたマークが描かれた、2つの入り口。左右対称な建物の構造。
しばし考えた彼は、青い○と▽が描かれた方ではなく、赤い○と△が上下に並んだ入り口に歩を進めた。
いや、彼のその選択に、別に深い意味はない。
ただ単に、そちらの方が近かったというだけのことである。
室町時代に暮らしていた彼に、近代になって生まれた表示のお約束など、分かるはずもないわけで……。
このあたり、幸運なのか不運なのか、ともかく一休は、やはり一休なのだった。
【D−4/学校プール傍・女子更衣室内/1日目/真昼】
【一休さん@一休さん】
[状態]:全身に打撲。全身ずぶ濡れ。全裸。さすがに心身共に疲労。
(具体的なダメージの程は後の書き手さんにお任せします。とりあえず歩ける模様)
(絆創膏や湿布は、プールに落ちた時にあらかた剥がれ落ちました)
[装備]:なし
[道具]:エルルゥの薬箱の中身(ワブアブの粉末(残数1)、カプマゥの煎薬(残数3)、
ネコンの香煙(残数2)、紅皇バチの蜜蝋(残数2)) @うたわれるもの
モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL クロウカード「剣」@CCさくら(カード状態)、
体操着袋、教科書数冊、チョーク数本、100円ライター
[思考]:
第一行動方針:あわてない、あわてない。 一休み、一休み。
第二行動方針:できれば消えてしまった衣類の代わりを確保したい。
第三行動方針:これまでに遭遇した人々の誤解を、どうにかして解きたい。
第四行動方針:どこかで食料を確保したい。
第五行動方針:余裕があれば、森にでも骨格標本を埋葬し供養したい。
基本行動方針:ゲームをうまく脱出する。
[備考]:
体操着袋に細かい荷物を入れています。
水道の使い方、窓や扉のカギの開け方、100円ライターの使い方を理解しました。
ブルーを不思議な力(スタンガン)を持った神仙または学術者の類と思っています。
[備考]
『きせかえカメラ』の力で、着物と共に『(着物の下に着ていた)体操服』『活性炭入りマスク』が消えています。
『きせかえカメラ』の効果が切れれば(1時間後)、自然と戻ってきます。
体操服の下に入れていた教科書は、服が消えた際に落下、そのまま置いてきました。
[備考]
吹き飛ばされた際、『雑巾、ブリキのバケツ、ホース数m』を失いました。校庭に散らばっています。
体操着袋に入らなかった『共通支給品×4、あるるかん@からくりサーカス』は保健室に置いてきました。
【D−4/学校校舎1階保健室(火災発生中)/1日目/真昼】
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿に裂傷。歩行に少し影響。
『ネコンの煙』の後遺症と『ワブアブの毒』のダブルパンチで、大幅に筋力低下
[服装]:中世ファンタジーな布の服など(ベルトが外され、緑色のツナギが捲り上げられて半裸)
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル
[道具]:なし
[思考]:ここから、どうしよう?
第一行動方針:なんとか火を消す。または、この保健室からなんとか脱出する。
第二行動方針:梨花たちを守る
第三行動方針:最初に死んだ子(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:ゲームを壊す
参戦時期:エンディング後
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、放火魔、かつ分身能力を持つモンスターか何かだと確信しました。
【小狼@カードキャプターさくら】
[状態]:殴られて多少の打撲。腹部の刺し傷が開き、再出血&激痛。意識朦朧。
『ネコンの煙』の後遺症で多少の脱力感。
[装備]:きせかえカメラ@ドラえもん(充電完了まであと30分)
[道具]:なし
[思考]:……くそっ!
第一行動方針:なんとか火を消す。または、なんとか保健室から脱出する。
第二行動方針:自分とリンクの傷の手当てをしたい。
第三行動方針:上の階に向かったコナンと、森に向かったネギの安否が心配。
第四行動方針:桜を探し、守る
第五行動方針:仲間を集める
第六行動方針:最初に死んだ(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:桜とともに島を脱出する。
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、放火魔、かつ他人を操る能力を持った魔法使いの類だと確信しました。
木之本桜が学校に居たかもしれない、と思っています(自分でも半信半疑?)。
[備考]:
すぐ近くに、『共通支給品×4、あるるかん@からくりサーカス』が積み上げてあります。
共通支給品×4のうち、赤いランドセル2つには、それぞれ共通支給品の他に、
『エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた) 』
『5MeO-DIPT(24mg)、(古手梨花の)平常時の服』
が入っています。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:色々と疲労困憊。全身に無数の打ち身と擦り傷(骨折などは無い)。気絶中。
[服装]:体操服。体操着に赤ブルマ着用。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:……! (気絶中)
第一行動方針:今の危機的状況をなんとかする。
第二行動方針:同行者を増やす。
基本行動方針:生き延びて元の世界に帰る。ゲームには乗らない。
参戦時期:祭囃し編後、賽殺し編前
[備考]:一休さんの事は、放火魔で変態で性犯罪者な『触手の化け物』だと認識しました。
【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:気絶中。唇の端を切っている。
[服装]:子供服。着方が乱暴でなんか汚れてる。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:……!(気絶中)
第一行動方針:今の危機的状況をなんとかする。
第二行動方針:それが一段落してから、4階がどうなったのか知りたい。
第三行動方針:罪を滅ぼす方法を考える。梨花は死なせない。
基本行動方針:最後まで足掻き続ける。もう安易に死は望まない。
参戦時期:24巻終了後
[備考]:一休さんの事は放火魔で変態性犯罪者なカンフーの達人だと認識しました。
[備考]:
D−4の学校校舎1階保健室で出火しました。消火器などで消しきれるかどうか、微妙な状況です。
学校の校舎内で、火災報知器が鳴り響いています。ただしスプリンクラーは設置されていないようです。
このまま消火されずに放置されれば、校舎全体に火が回る可能性があります。
体育館やプールの更衣室など、校舎から独立した建物は延焼を免れるかもしれません。
火の回るスピードや火災の行方については、後の書き手にお任せします。
[備考]:
リンク、小狼、梨花、灰原の4名は『紅皇バチの蜜蝋』の煙を吸いました。
その後遺症や回復の速度などは、後の書き手さんにお任せします。
ちなみに、窓が大きく破れているため、ガスの濃度は下がる一方です。
以上で投下終了です。支援や転載してくださった方、本当にありがとうございました。
火の広がり方、保健室内の4人の回復速度は、後の書き手さんにお任せします。
火災報知器のベルが聞こえる範囲も、校内はまあ確実ですが、どこまで届くかお任せです。
まだ近くにヘンゼルもいますし、1マス隣には色々と人が集まってますし……
消火に成功しても、そのまま学校全体に燃え広がっても、どちらでも面白いかと思います。
大作乙です!
エルルゥの薬箱の中身、それぞれの粉末の使い方がうまいなぁ
個人的に梨花の幻覚に一番ワロタww
そして一休さん……それはだめだ。女性用トイレに入るなんて、変態のすることだよ。
それにしても一休さんテラカワイソスww
乙でした!そしてGJ!
吹き飛ばされたときには
アーッ!アーッ!南無サンダー!と思ったが、さすが一休
御仏の加護は伊達じゃない
GJ
「羅生門」みたいになってきたw
カオス!
失礼。
避難所の方で指摘を受けました。一休の荷物欄から「シャインセイバー」が落ちています。
単純な表記ミスなので、wikiに収録された時にでも、直しておくことにします。
指摘感謝します。
一休……女子更衣室はまずい、はやくそこから出るんだw
斜院征伐に吹いてたら煙が凄い事にw
ああ、そういやそんな薬も有ったような………。
バリエーション豊かな幻覚に吹いた。
特に灰原の視た図の本当の所。
>>433,436
ちょっと待て!
一休さんの入ったのは 女子更衣室 だ。
……あんまり変わらんな。
スクール水着ぐらいはあるんじゃなかろうか?
しずかちゃんあたりの。
誤解フラグって継承しやすいけどどんどん現実離れした誤解になるのはどうかとおもう
新作乙!
一休ならヘンゼルにも勝てる気がしてきた
>>アーッ!アーッ!南無サンダー!
ちょww全く同じ事思ったwwww
>>443 あー、他のキャラはともかく、
確かに梨花の状態欄の[備考]のところで「確信」と書いたのはまずかったかもしれません。
後でもうちょっと緩い表現に直しておきます。(疑っている、程度にしておきましょうか)。
現状では互いの見たものを話し合うどころではないですが、(だから誤解を解く段階にはないですが)、
その機会が訪れた場合、各人がどの程度自分の見たものに固執するかは、後の書き手さんにお任せです。
……そういう意味でも、「確信」という言葉を使ったのはこちらのミスですね。申し訳ない。
やっと読み終わった……。
一休さんに学校は鬼門だったな。しかし、一休さんが全く死にそうに見えないのは何故だろう?w
火災やベルの音、幻覚フラグなどいろいろGJでした。
大作超GJ!
今、時代は一休さんだ!
死者が出てない…
死にすぎ注意報出てるからな。
城前の大戦と学校裏のすれ違いと工場の三角関係辺で少なくとも2〜3人は出るよ、きっと。
学校だって煙に巻かれて誰か死ぬかもよ。
でも、これで死んだら殺害カウントどうなるんだろう
火をつけた人になるのかなあ…
心当たりもないのにご褒美もらっちゃう一休さんの図
一つ聞きたい。
例えば、メロが手足を縛ったコナンを火元の隣の教室とかへ故意に放り込んで、そのまま自分だけ逃げたとするよね。
で、身動きの取れないコナンは、侵食してきた炎に巻かれてその場で焼け死んだ。
この場合、カウントはどっちにつくと思う?
・放置すれば死ぬのがほぼ確定している場所にコナンを置き去りにしたメロ
・焼死のそもそもの原因(=発火)を作った一休さん
・どっちにも付かない
勿論、コレそのまんまの展開を書くわけじゃないんだが、
別のグループで似た状況を考えてるので、意見を聞かせて欲しいんだ。
実のところ、現時点じゃ「ジェダもそこまで考えてなかった」でいいと思うんだよね。
パタリロの口車に乗せられてその場で作ったルールだもの、穴の1つや2つある。
あげるかどうか決めるのはジェダだし、結局はジェダの主観ってことになるんじゃないか?
だからそういう時は、ジェダがどう判断したかまで書けばいいと思う。
いや、1人死んだ所で急いで決める必要もないかな?
ご褒美が貰えるか貰えないか、という所でもいいか。
>>453 個人的には「殺人事件として考えたら犯人は誰か」って感じでいいと思う。
上の例なら、火が出てから放置ならコナンを「死ぬような状況にした」メロのカウントだと思うし、
火が出る前なら「知らずに放火して殺してしまった」一休さんのカウントじゃないかと。
最終的にはジェダ(=死亡話の書き手さん)の主観で決めてしまっていいと思う。
ぐぁぁ……っ。
すいません。予約は今日(てかもう昨日)までですが、書き終わりそうにありません。
正直、後二日延ばしてもらってもいけるかどうか…。工場組と廃病院組ややこしいよ把握だけでorz
なので、大変申し訳ありませんが自分の予約は一旦解除させてください。
一応チマチマ書き進めるつもりですし、うまく行けば週明けくらいには投下できるかもしれませんが、
本当にそれまでに書き上がる自信も、実のところあんまりないので……。
勿論、予約したいヒトがいれば、自分に構わず予約しちゃってください。
大人数を予約した上、勝手な都合で予約破棄してしまってすみません。
>>456 残念です。完成したら是非投下してほしいな。
>>458 いつも助かってます。それとwiki更新してくれる人もいつも乙。
最近更新手伝えなくて申し訳ない。
マジレスすると、実際に被害者がいる惨事はどうかと思う。
しかしこれをもって虹を規制しようなんて、斜め上の動きがみられるのが今の日本。
話題転換。
ふと気づいたことがある。
パタリロ組が結構空気な気がする。
あの辺に他のキャラ乱入するとしたらカツオとキルアくらいか。
パタリロと千秋の把握ができていないからネタが浮かばないぜorz
>>463 書こうと思ってパタリロ!見たんだが、パタリロの性格が奔放すぎてキャラが掴みきれん。
>>463 今回はパタリロが状況に振り回される側だからな。
千秋と合流するのかどうか、それともちよたちの死体発見が先か……
パタリロも頭良すぎて動かしにくいタイプなんだよな。
しかも理詰めでなく、散々状況掻き回して最後に上手くいくタイプ。難しい。
>>464 きり丸も上手く誘導すれば使えるかと
パタリロって魔界の魔王とか面識があるって言うのが書きにくい点の一つかもしれない。
真面目に考察するとその辺りも絡んで考えちゃうだろうし。天界と魔界の魂争奪戦とか。
関係ないけど、みなみけアニメ化らしいな。
そして千秋の中の人が釘みぃという事実
神楽にしろ、某のピンク髪にしろなんやかんだで恵まれないことも
共通か?
前にも誰かが言ってたが、本気でスーパー釘宮大戦になりつつあるなw
アルフォンスとイクトとポケモンのおぼっちゃまも参加させなきゃだな
何人目だ釘宮!
このロワ始まったあとにヴィクトリアが釘宮になって
一人増えたなー、と思ったのに今度は千秋かw
そういや、ロリは声被ってるの多いけどショタのほうは少ないな。
コナンと乱太郎、ニケとヘンゼルくらいか。
ニケとヘンゼルといえば、みか先生とも同じじゃなかったっけ
他にも誰かかぶってたような気がするけど思い出せない
声優に詳しくない自分のような人のために、被っている声優を整理してもらえると助かる
太一と一休さんも同じ人だったはず
コナン=新一
コナンは嫁さんで、新一はらんまだ。
面白そうなやつだけ抽出してみた。
なのは、梨花、ティリエル(シャナ)、ルヴィアゼリッタ(Fate):田村ゆかり
フェイト、梨々、コレット(TOS):水樹奈々
はやて、富永美奈子(せんせいのお時間)、桃瀬くるみ(ぱにぽに)、遠坂凛(Fate):植田佳奈
ヴィータ、桜田ジュン(ローゼン):真田アサミ
アリサ、シャナ、神楽、ヴィクトリア、カミュ(うたわれ)、イクト(デジモン)、アリーゼ(サモナイ3):釘宮理恵
金糸雀、長谷川千雨(ネギま):志村由美
翠星石、アルフ(なのは)、綾瀬夕映(ネギま):桑谷夏子
真紅、アルルゥ、芹沢茜(ぱにぽに)、ナギ(ネギま):沢城みゆき
雛苺、かおりん(あずまんが):野川さくら
ニケ、鈴木みか、ヘンゼル、弓塚さつき(メルブラ):南央美
ククリ、シャコモン・ピヨモン(デジモン):吉田 小南美
太一、一休さん、マライヒ(パタリロ):藤田淑子
光子郎、ポンズ・ズシ・コルトピ(ハンター):天神有海
丈、ウイング(ハンター)、東宮天祢(ガーゴイル):菊池正美
エヴァ、春日歩(あずまんが)、エイミィ(なのは):松岡由貴
小太郎、リンク:松本さち
乱太郎、コナン、ミトス(TOS)スネ夫のママ(ドラえもん)、少年グリフィス(ベルセルク):高山みなみ
しんべヱ、マサオくん(クレしん)、ドラリーニョ(ドラえもん):一龍斎貞友
グレーテル、美浜ちよ、クルモン(デジモン)、田楽マン(ボーボボ):金田朋子
しんのすけ、リッケルト(ベルセルク)、アニタ(ヴァンパイアセイヴァー):矢島晶子
ひまわり、ミグ(グルグル):こおろぎさとみ
メロ、エリオル(CCさくら)、雪代縁(るろ剣)
レン、白レン、ユーノ(なのは)、サクヤ(うたわれ)、公由夏美(ひぐらし):水橋かおり
永沢、ユービック(ベルセルク)、出目川(デスノ)、大石(ひぐらし)、目暮警部(コナン)、団羅座也(クレしん):茶風林
プレセア、神楽(あずまんが)、高原イヨ(ガーゴイル):桑島法子
ゴン、本条鎌足(るろ剣)、ゴマモン(デジモン):竹内順子
キルア、リコ(ガンスリ):三橋 加奈子
双葉、ベッキー、アーニャ(ネギま)、スバル(なのは):斎藤千和
ベルフラウ、源しずか(ドラえもん):かかずゆみ
リリス、高石タケル(デジモン):小西寛子
イリヤ、ベホイミ(ぱにぽに)、葉加瀬聡美(ネギま):門脇舞以
カツオ、弥彦:冨永みーな
ビュティ、堀鳩子(せんせいのお時間)、一条さん(ぱにぽに)、近衛木乃香(ネギま):野中藍
イシドロ、ヌワンギ(うたわれ):吉野裕行
パタリロ、クラピカ(ハンター)、ククリのママ(グルグル)、スネツグ(ドラえもん):甲斐田ゆき
ちなみにジェダは千葉刑事(コナン)
>>477 ちょ、Sugeeeeeeee!!!!
知らなかったことが多すぎる。小太郎とリンク声同じだったのか。
あとパタリロ=クラピカだとぉ!?
水樹奈々のキャラって全部金髪なんだな。
というか釘宮多いよほんとw
……やばい、これは色々思いつきそうだ。
特に、非参加な知り合いまでフォローしてあるあたり本当に
>>477GJ!
通りすがりに
正確にはパタリロ西遊記のパタリロ=クラピカ。
今回出場してるパタリロはミライさんだな
でじこぷちこも遠くなりにけり・・・か。
>>478 とりあえずリトルウィッチレネット置いておきますね。
パタリロ(声:白石冬美の方)なら、五条露姫(一休さん)が同じ声
>>477 ジェダって意外と声若いんだな
てかちょっと待て、千秋=釘宮ってそもそもソースは何なんだ?
>>486 確かファミ通の本にあるアニメ情報に書いていた、と思う
みなみけか……
見た事ないしそれほど興味も無かったけど、アニメ化すんだったら見てみようかな
このロワの参加者は知らないのが多すぎるし
>>487 スマン、記憶があいまいだったんで確認してみたけど
ファミ通には書いてなかった。
でも何故だか俺の頭の中に記憶として残ってんだ
そんな俺って変?ああ、頭おかしいね
すべてが釘みぃになる症候群に陥ったかw
>>489……君は病気なんだ。釘宮病っていう病気。
もう、治らないんだよ……。
こうですか(ry
ちょっと接続に障害があり、レスが遅れてしまいましたが……
wikiの方で、既に予告しておいたステータス欄2箇所、「一休の支給品」「梨花の認識」を微修正しました。
というか、シャインセイバー入れておいてくれたんですね。感謝します。
で……予約無しの短編がちょっと手元にあるんですが、投下しちゃっていいでしょうか。
あ、さる規制にはかかりそうにない長さです。支援無しでも多分大丈夫です。
GO!
投下すると思った瞬間にはッ!
その行為は既に終了しているんだ!
……じゃ、投下します。ついこないだ書いたすぐ近くですが……。
……その薄暗く、粉っぽい、殺風景な倉庫の中に、それらは無造作に転がっていた。
何の変哲もない、ごくごくありふれた、数本の金属バット。
少年は、しばし動きを止める。
彼らしからぬ、何かを惜しむような、懐かしむような、微妙な表情。
「……思い出すね、姉様。『僕たち』の、『私たち』の『始まり』を」
ガラガラと音を立てて扉を開き、少年は体育倉庫に足を踏み入れる。
あたりにはハードルやら、跳び箱やら、ボールの入った籠やらが散在しているが、それらには目もくれず。
少年――名簿の上では『ヘンゼル』として登録されている――は、そしてそっと金属バットを拾い上げる。
ずしり、とした手ごたえ。冷たい手触り。
『あの時』と変わらぬ、金属の棒。
『あの時』から月日が流れ、『彼ら』は多くのものを失った。
涙を忘れた。恐怖を忘れた。過去を忘れた。空の青さを忘れ、太陽の眩しさを忘れた。
自分たちの本当の名前さえも忘れてしまった。
それらを失った代わりに、世界の『真理』を知った。何が起こっても笑っていられるようになった。
自ら受け入れ、堕ちていった暗黒の闇。
その『始まり』を思い出し、少年はうっとりとした笑みを浮かべる。
幼い顔には似つかわしくない、とろけるような、淫靡な微笑み。
少年は唄うように囁く。この場所・この時間に居ない、過去の『彼女』に向かって、優しく囁く。
「大丈夫だよ、姉様。これは『仕組み』なんだ。
殺して殺されてまた殺す、世界はそうして円環(リング)を紡ぐんだ」
『あの時』は、両手で構えるのがやっとだった。
ふらつきながら、泣きながら、拘束されている相手に振り下ろすのが精一杯だった。
そんな、子供の手にはいささか余るような凶器を、しかし少年は片手で構えて軽く素振りする。
重さ・長さ共に丁度いい。素振りの度に脇腹は痛むが、これなら戦える。
反対側の手にももう1本拾って持ち、二刀流の剣士のように構えてみる。……いけそうだ。
普段愛用していた2本の手斧のように手に馴染む。
『あの時』から――強要された『最初の人殺し』の時から比べれば、少年は確実に強くなっている。
だって……
「だって、僕らはこんなにも人を殺してきたんだもの。いっぱいいっぱい殺してきている。
だから……!」
* * *
逃走を決断したヘンゼルっただが、しかし一直線に逃げるほど彼は単純ではない。間抜けでもない。
逃げるに際し一番怖いのは、背中から狙撃されることだ。
『魔法使い』は、言ってみれば射程も性能も分からぬ銃火器を持っているようなもの。不安は尽きない。
森に逃げ込んでも、例えばロケット砲のような高威力の『魔法』があれば、森ごと吹き飛ばされるかもしれない。
次に怖いのは、複数の追っ手に追いつかれること。
バルキリースカートが万全で、全てのアームを「脚」として使えればかなりの速度が出せる。
けれど、今はそれは望めない。
生身の足で走ろうにも、折れた肋骨がかなり痛む。短距離ならともかく、長距離走は正直言って辛い。
だからヘンゼルは、あえて逆を突いた。
わざわざ派手に学校を囲む塀を飛び越えて見せた後、その陰に隠れて方向転換。
塀の陰に隠れてしばらく小走りに走って、別の所から、今度はこっそり塀の内側に戻る。
こうすれば敵たちとの直線距離は縮まってしまうが、相手の死角に隠れつつ、その動きを見ることができる。
しばらく追っ手の有無を確認しようと、体育館の陰に身を寄せて、ついでに武器でもないかと覗いてみて……
そして、発見した体育倉庫。発見した金属バット。
本当は思い出などに浸っているヒマはない、と分かっているのだが、ついつい昔のことを思い出してしまう。
彼が『ヘンゼル』になった頃のことを思い出してしまう。
そして同時に、最愛の存在のことも。
* * *
「姉様はどうしているのかな。『魔法使い』相手じゃ姉様も勝手が違うだろうし、うまくやってればいいんだけど」
未だ会えない双子の片割れのことが気にはなるが、でも実のところ、さほど心配してはいない。
彼女の強さは誰よりも彼がよく知っている。彼女1人でも、簡単に殺されるとは思えない。
ただ、自分がそうであったように、未知の力持つ相手を『殺しきれない』こともあるのではないか――?
彼としては、そちらの心配の方が強い。
「この世界は、殺すか殺されるかしかないんだ。だから殺そう、もっと殺そう。僕らが殺そう」
自分に言い聞かせるように、少年は囁く。
体育倉庫の薄闇の中に、泣きながら別の子供にバットを振り下ろす、自分自身の幻影を一瞬だけ垣間見て――
少年は、それでも微笑む。どこか寂しさのある笑顔で、それでも微笑む。
「さて……これから、どうしようかな。あの『魔法使い』のお兄さんたちとは、まだ会いたくないんだけど」
どこかで非常ベルらしき音が鳴っている。逃げてきた校舎の方だ。
また何か状況の変化があったのだろうか?
いくら自分好みの武器を手に入れたと言っても、さっきの『魔法使い』たちに正面から遭遇するのは避けたい。
核鉄の治癒効果が働き始めているとはいえ、傷はまだ痛むし、バルキリースカートも損傷したままだ。
どうやら追っ手もないようだし、最初に考えていた通り、学校から離れて休息を取るのが一番だろう。
が――このベルの音が気にならないと言ったら、嘘になる。
もしも混乱が起きているなら、それに乗じれば楽に殺せるかもしれない。沢山殺せるかもしれない。
薄暗い倉庫の中、少し迷った彼は、そして……。
【D-4/学校・体育館体育倉庫/1日目/真昼】
【ヘンゼル@BLACK LAGOON】
[状態]:中度の疲労。脇腹に裂傷及び肋骨数本を骨折(無茶をすれば動ける程度)
[装備]:金属バット×2@現実、天罰の杖@ドラクエX、バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、
[道具]:支給品一式、スタングレネード×7、殺虫剤@現実、
[思考]:久しぶりに昔のことを思い出した……。
第一行動方針:学校から離れて休息する?(バルキリースカートも回復させたい)
第ニ行動方針:学校校舎の非常ベルが気になる?
第三行動方針:『魔法使い』に関する情報を集める(『魔法』関係者は警戒する)。
基本行動方針:いろんな人と遊びつつ、適当に殺す。
[備考]:バルキリースカートの使用可能なアームは2本。
メロを魔法使いだと認識しました。
殺虫剤を「魔法封じスプレー禁超類」だと思っています(半信半疑)。
逃げるかどうか、逃げるとしたら逃走方向は次の書き手さんに任せます
以上。ちょっとヘンゼルを寄り道させました。
そのまま逃げちゃっても、戻っても、どっちでもいいかと思います。
ふと学校で見つかる武器にバットもあるよな〜、バットと言えばそういえば、と……。
投下乙!
バットを見るとヒナを思い出すのは俺だけでいい……
投下乙! 誰が来るかと思ったらヘンゼルだったか。
ヘンゼルにバットとなるとひぐらしな感じを期待せざるを得ないぜ。
逃げてもいいし飛び込んでもいい。
どっちに転んでも面白そう。
乙。
ヘンゼルには「魔法使い」という言葉がかなり効果的だな。
うまくすると一休さんでも撃退できるかもしれん。
というか今思ったんだが、双子は両方とも核鉄持ってる。回復効果持ってるから相当厄介なマーダー達だ。
持っているのがサンライトハートとバルキリースカートってのも因縁じみてるなぁ
>>504 本当だ。
狙ってやってたとしたらすごいなあ
投下乙、こういうしっかりした繋ぎの話があってこそその後のSSが映えるってもんだ
しっかりした礎を作ってくれてGJ!
体力回復さえすればバットあるわバルスカあるわスタンあるわで超常能力使えない組の中ではかなり高位の近接戦闘キャラになれそうな予感
ここじゃ姉様もご存命なんだ、二人で天使さまを呼びまくってくれ、期待している
考えていたネタが、やっぱりどうにも上手く纏まらなかった…orz
したらばの没スレにプロットと最後の最後のごく一部だけSSで投下したので、
よかったら笑ってやってください。
おつかれさまです。
ゆっくり休んでください……
て、このプロットは……これは……
(((;゚Д゚)))ガタガタ
こりゃ大作だァ……w
ただここで終わられると、効果的ではあるけど、続きが大変そう……
完全な形で読んでみたかったけど、没と決断するのも勇気かもしれない
乙!
寸止めで済ませるなんてフェイトは優しいな
さくら、梨々、薫、ベルフラウ、イリヤ、ジーニアス、プレセア、アルルゥ、レミリア、ベッキー、しんべヱ。
以上11名を予約します。
ktkr! まぁ、あそこをキャラ把握含めて一番うまく処理できそうなのは、JZ氏以外にはいないだろうと思ってましたがw
でもまァ、「あのセリフ」はやっぱり御本人様に言ってもらいたいかな俺は
避難所の死者スレにて故人を順番に振り返っております
お暇でしたら思い出話などを御一筆ください
釣れたw
四時間後、午後一時ごろに投下します。
少々長いので、よろしければ投下時に支援をお願いします。
>>516 了解しました。支援の準備を整えておきます
ゆっくり推敲なさってくださいませ。
それでは投下を開始します。
夕暮れの森に黒々とした砲煙がたちこめている。
焦げた黒土や木炭と化した樹木が舞い上がり、1m先も見えない有様だ。
身体の一部を焼失させた森は、ぶすぶすと黒煙を吐き出し続ける。
そんな森の死骸を挟んで、向かい合う者達がいた。
気を張り詰め、緊張に縛られ、皆一様に立ち尽くしている。
まるで、舞台の開幕を待つ出演者のように。
役者の数は合わせて八。
各々の武器を勇壮に構え、戦いの火蓋が切られるのを待ち受けている。
星の後継者は蒼天に想いを託し。
怪盗の娘は疑心を胸に仕舞い込む。
破壊の女王は暴走への時を刻み。
気高き射手は四元素に決意を込め。
天の杯は杖を手に取り未来に祈る。
マナを識る者は復讐に燃え。
うつろな魂は鍵に気付かず。
森の母はただ戦う。
それぞれがそれぞれの意志を貫き、それ故に起こるすれ違い。
誤解の流れは加速し、やがて濁流となった。
もはや話し合いの道は断たれ、残ったのは実に単純な一本の道。
屍山血河を築く、修羅の道。
彼らは、どこで道を間違えたんだろう。
彼らは、どこかで道を間違えたんだろう。
もう、戻れない道。一回限りの、一本道。
今、灰色の緞帳が上がる。
愚かで哀しく、馬鹿馬鹿しく事事しい戦いが始まる。
「先鋒・明石薫! 突撃ぃいいいいいい!」
煙の壁を突き破り、真っ先に飛び出たのは赤毛の少女。
強力な力場を身体に纏い、ビーンボールのように突貫する。
だが、大声を上げて空を飛ぶ特攻少女は、絶好の的でしかない。
「劫火の螺旋よ、敵を貫け! スパイラルフレア!」
少女に向かって殺意の引き金を引いたのは青髪の魔術師。
ジーニアスの持つ長大な杖から渦巻く火炎弾が発射される。
貫通属性を持つ火と風の複合上級晶術が、黒煙を焼き飛ばしながら薫に迫った。
運動エネルギーを前進のみに傾けているため、薫に回避の術はない。
レベル7の念動力者といえども、制限された状況下で火炎弾を前にして無傷ではいられないだろう。
それでも薫は前へ、前へと突撃する。
彼女“達”にとって、この程度は予測済みなのだから。
「リインちゃん、お願い!」
『はいです! 守護する楯、風を纏いて鋼と化せ! すべてを阻む祈りの壁、来たれ我が前に! ワイドエリアプロテクション!』
薫の背後から詠唱が響く。さくらとリインによる援護魔法だ。
魔を打ち払う守りの歌が障壁を発生させ、火の奔流を受け止めた。
炎の螺旋は障壁を食い破ろうとのたうったが、光輝く魔法陣は炎を削り、弾き、摩り減らしてゆく。
一瞬の攻防の後には、リインの障壁がジーニアスの炎弾の大部分を消し飛ばしていた。
打ち砕かれた火炎魔法は霧散し、威力は殆ど残らない。
「っしゃああああああああ!」
更に、切り込み隊長の薫が一睨みで残った火屑を打ち払った。
魔法を撃ち込まれても全く物怖じしなかった薫は、そのまま敵の陣地に突っ込もうとした。
しかし、事はそうそううまく運ばない。
魔力の残り香を消し飛ばし終えた薫の眼前に、突如鉄槌が現れたのだ。
薫と同じく特攻してきていた、プレセアによる槌撃である。
流石に動きを止めた薫は、攻撃を防ぐためにバリアを発生させた。
リインの防御魔法と合わせて二重の結界。ただの打撃が通るはずがない。
だが、そんな予測はあっさりと覆される。
「破ァ!」
「っにぃ!?」
弧を描くように振り下ろされた鉄槌はリインの障壁を軽々と破壊し、更に薫のバリアすら打ち破った。
ガードブレイカー。
「マイトチャージ」状態での攻撃で敵の防御を必ず崩すことができるという、プレセアのEXスキルだ。
生命の危険を感じ取った薫は、咄嗟に衝撃波を鉄槌にぶつけた。
力と力がぶつかり合い、固く荒々しい音を立てる。
相手の「反撃」を受けたプレセアは、衝撃を殺すために後ろに飛ぶ。
その横に、ひとつの影が躍り出た。
思わず構えるプレセアの横を、その影はするりと通り抜ける。
銀の髪を伴った白い影――イリヤは、プレセアに見向きもしなかった。
「狙いは術士ですか!」
叫ぶプレセアは、イリヤを追おうと踵を返す。
しかし、その行為は無理矢理中断された。魔法ではない、不可視の衝撃によって。
「お前の相手はあたしだ! 念動鉄槌ッ!」
「邪魔です!」
額に青筋を浮かび上がらせた薫をプレセアが迎撃する。
二人が再びぶつかり合うのを尻目に、イリヤは駆けた。
落ち葉を踏み砕き倒木を乗り越え土塊を蹴飛ばして、舞い散る灰霧の中を真っ直ぐに進む。
向かう先は、ジーニアスがいるはずの場所。
煙で前がよく見えない状態だったが、炎弾が飛んできた方向からおおよその位置を推測したのだ。
敵の魔術師がイリヤの接近に気付くかもしれないが、白銀の少女は構いもしない。
(最初に倒すべきはジーニアスって子。さっき魔術を使ったばっかだから、今は魔術を使えないはず!)
朝方の交戦で、ジーニアスが魔術を連続して使えないということはわかっていた。
つまり、魔術を使い終えた今が魔術師・ジーニアスを倒す絶好のチャンス。
イリヤはS2Uに魔力を込め、狙いを定めるために敵の影を探す。
標的は青い魔術師。獣人少女は後回し。
だが、イリヤの認識は少しばかり甘かった。
狙う相手は射撃の的ではなく人間で、ここは射的場ではなく戦場だ。
敵の進撃に反撃しない戦士はいない。そして、敵の攻撃手段は魔術だけではなかった。
イリヤが火種燻る砲撃跡を走り抜けた途端、無数の葉が襲い掛かる。
「ウツドン! 『はっぱカッター』!」
「そんなもの、効かない!」
『Accel Shooter』
ジーニアスの命令により、待機していたウツドンが更に葉刃を飛ばした。
だが、所詮は植物。回転しながらイリヤに向かう葉は、アクセルシューターによって次々と迎撃される。
S2Uから発射された光弾が、飛来する木の葉を正確確実に消し炭へと変えてゆく。
全ての葉を打ち落としても、イリヤは少し速度を落としただけ。はっぱカッターは足止めにしかならなかったのだ。
(自分の魔術を使わずにあんな使い魔を使うなんて、よっぽど余裕がないのね。これなら……)
「イリヤ! 上、危ないですわ!」
勝利を確信し始めていたイリヤに、ベルフラウの声が降りかかる。
「上? 一体何……えぇっ!?」
慌てて上空を仰ぎ見ると、赤銅色の鱗を纏った竜が炎を吐き出す直前だった。
アルルゥが召喚した魔獣が、その役目を果たそうとしている。
(あれは、ベルが言ってたワイヴァーン!? いつの間に!)
もちろんイリヤは魔術師がもう一人いるのを警戒していた。ベルフラウから使用魔術の名前も聞いていた。
しかし、こんな事態は想定外だ。攻撃のタイミングが早すぎる。
敵に向かって召喚術を使った場合、ワイヴァーンが現れ炎弾を吐くまでにはかなりのタイムラグがあるはず。
なのに、上空のワイヴァーンは炎を吐き出す寸前。話が違う。
(まさか……私が、いえ、私達の中の誰かが突っ込んでくるのを予測して、事前に呼び出していた!?)
おそらく、ジーニアスが魔術を使ったのと同じタイミングで呼び出したのだろう。
敵を攻撃するためではなく、自分達を守るためだけに。
その証拠に、ワイヴァーンの射線はプレセアとジーニアス&アルルゥの『間の空間』を貫いている。
敵が術士を狙うことを前提とした攻撃。それほど術士を守りたいということだ。
しかし本来、ワイヴァーンなど呼び出していたらすぐに気付かれるはずである。
それなのにイリヤは気付かなかった。いや、気付けなかった。
ウツドンのはっぱカッターを打ち落とすことに集中していたからだ。
ウツドンの攻撃は足止めだけでなく、イリヤの注意を逸らすことにも成功していた。
(しまっ……)
戦慄するイリヤの真上で、ワイヴァーンがゆっくりと翼を翻した。攻撃の前兆である。
巨大な力の顕現に空気が震え、温度が上がり、圧力までもが高騰してゆく。
そのプレッシャーにもかかわらず、イリヤは杖を天に翳した。
(一回くらい、防げる!)
イリヤは諦めなかった。
いくら竜が召喚されようとも、竜自身が突っ込んでくるわけではない。
発射されるのはただの炎弾。英霊の一撃でも宝具でもない熱の塊だ。
防御魔術で防ぎきれない道理はない。
「S2U、壁を!」
『Circle Protection』
イリヤの足元に輝く魔法陣が現れ、半球状のバリアを形作る。
バリアブレイクすら防ぎきるほどの強度を誇る術だが、リインと違ってミッドチルダ式の魔術に慣れていないイリヤのそれはひどく不安定だ。
冷や汗を流しながら魔力を集中させるイリヤの頭上で、溜めに溜められた炎弾が無情にも吐き出される。
イリヤのバリアに襲い掛かったのは、破壊の化身たる烈火の巨球。
S2Uが作り出した結界は、真正面からそれを受け止めた。
「く、うぅぅっ!」
魔の障壁が軋み、声なき悲鳴を上げた。
S2Uを持つイリヤの手が震え、半球状のドームにひびが入る。
炎弾の圧力は結界を押し潰そうとし、紫電を走らせながら抗う魔法陣が徐々に消えてゆく。
イリヤは更に魔力を集中させた。しかし、バリアの崩壊は止まらない。
震え、歪み、光を氾濫させたバリアは、きっかり三秒後、終に砕け散った。
――炎弾とともに。
イリヤの防御魔術は、確かに一発の炎弾を防ぎきったのだ。
「やっ、た……」
「だめぇえええええええええッッッ!」
炎弾を退けた安堵で一時的に意識を手放していたイリヤは、さくらの叫び声で我に返った。
そして見る。目の前の光景を。絶望的な光景を。
防いだはずの炎弾が、更に三発迫っていた。
「なん、で……?」
「ワイヴァーンの『ガトリングフレア』は数発の炎弾が発射されるんです! 出会ったときの技は『ブラストフレア』ですわ!」
ベルフラウが焦燥に塗れた声を出すが、イリヤは動かない。動けない。
『ワイヴァーン』の技はふたつ。
炎弾を一発吐き出す『ブラストフレア』と、炎弾を“数発”撃ち出す『ガトリングフレア』。
だが、その事実を知っているのはベルフラウのみ。成り行きでチームを組んだのが原因で、情報が完全には行き渡っていなかったのだ。
ワイヴァーンの見た目が全く変わらないため、イリヤは思い込んでしまった。
『あの竜は炎弾を一発吐き出して消える』と。
「あ……」
呆然とするイリヤの目前に火炎弾が迫る。
イリヤの真っ白な肌が高熱で乾燥し、チリチリと不吉な音を立てた。
炎弾が彼女に直撃すれば、それこそ炭も残らないだろう。
しかし、その結果が訪れることはない。
彼女は一人ではないのだから。
「リインちゃんッ!」
『わ、ワイドエリアプロテクション!』
イリヤが炎に呑まれる寸前、リインの広域防御魔法がイリヤと炎弾の間に形成される。
間一髪、命を拾い上げたイリヤの前で火球と障壁が激突した。
再び轟音。夕暮れの森に場違いな光が溢れかえる。
『ダメです! このままじゃ破られちゃいますよう!』
リインが悲鳴を上げる。
A+ランクのリインといえども、制限された条件下で竜砲三発は防ぎきれない。
障壁は三重の衝撃を受け、今にも崩壊しそうなほどたわんでいた。
高飛車な声が響いたのは、ちょうどその時。
「出番ですわよ、『地』!」
言葉とともに、ベルフラウが一枚のカードを取り出す。
取り出されたカードを見たさくらは、驚きに目を見開いた。
細やかな装飾に彩られたカードの名は『地』。クロウカードの中でも上級に位置する、四大元素カードの一枚である。
ベルフラウがカードを翳した途端、イリヤの足元の土が盛り上がり、炎弾に立ちはだかった。
同時に土の波がイリヤを持ち上げ、後方――さくらとベルフラウがいる場所まで運ぶ。
直後、リインの障壁が破られ、数瞬前までイリヤがいた場所に火炎弾が殺到した。
しかし、火炎の波濤は土の壁に阻まれ、イリヤまでは届かない。
結果的に、イリヤはかすり傷ひとつ負わなかった。
「イリヤちゃん、大丈夫!?」
『怪我はないですか!?』
「まったく、一人で突っ走るからこんなことになるのですわ! 敵の召喚魔法が届く場所に近づかないのは定石でしょう!」
「あ、ありがとう……」
やや腰が抜けているイリヤにさくら達が群がり、木々の影へと引きずり込む。
敵の視界から逃れた少女達は、仲間の無事を喜んだ。
さくらとリインは純粋な善意で。ベルフラウは少しの打算を込めて。
その様子を見ながら、イリヤは仮初めの仲間達に感謝した。
もし彼女達がいなければ、今頃自分は消し炭になっていただろう。
(ちょっと焦りすぎちゃったかな)
イリヤは自己の暴走を反省する。
いくらジーニアスを殺さなければいけないからといって、単独特攻は短慮に過ぎた。
相手はチームなのだ。一人で立ち向かったって勝てるわけがない。
――最小の被害で最大の戦果をあげる。この目的の為には仲間を頼らなければいけない、と少女は思い知る。
同時に、痛感する。やっぱりこれは戦争なんだ、と。
礼を言いながら立ち上がったイリヤは、隠れている木から頭を突き出し、大きく抉れた地面の向こうを見やる。
煙と陽炎で歪む視界の中で、ジーニアスがもう呪文を詠唱していた。
「あいつら、詠唱の隙を互いに補い合ってる……。これじゃ、近づけないじゃない!」
ジーニアスとアルルゥは、互い違いに魔法を使っていた。
ジーニアスが詠唱しているときはアルルゥが敵の接近を防ぎ、ジーニアスが攻撃している間にアルルゥが召喚獣を呼び直す。
敵陣に攻め入ることはできないが、守りの陣としてはなかなか強固だ。
両者が共に大威力の魔法を使うということも、イリヤ達にとっては厄介な問題だった。
そんな状況の中、大木を背に4枚のカードを整理していたベルフラウが呟く。
「一応“手は打ってある”とはいえ、そちらのほうも微妙に不安ですし……」
「……あのね、ベルちゃん」
「ん? 何ですの、さ」
くら、とベルフラウが言い終わらないうちに、人間砲弾が飛んできた。
砲弾はさくらとベルフラウの間の地面にめり込み、土津波を撒き散らす。
明石薫だった。
「っのやろー! 何が『しこうめつりゅうせん』だ! 無駄にカッコイイ技名つけやがってコンチクショー!」
二秒で復活する薫。念動力のバリアは健在のようだ。
それはつまり、『念動力のバリアを使っても吹っ飛ばされた』ということなのだが。
薫の視線の先では、鉄槌を持った少女が傍らの木に寄り掛かっていた。
あちらも薫の攻撃を受けたのだろう。呼吸は乱れ、わずかにふらついているように見える。
そんなプレセアを睨みつけながら、薫は高らかに宣言した。
「よくもあたしをギャグマンガみたいにぶっ飛ばしやがったな……。お前は絶対ぶっ潰してやる!」
『あ、あの……薫さん?』
猛る薫に、リインが恐る恐る声をかけた。
薫は首をぐるんと回転させると、鬼のような表情でリインを見る。
完全無欠に八つ当たりだった。
「なんだ妖精!」
『えとですね。あの人の持ってるハンマー、何か喋りました?』
「緑色の救急車で病院行って来い!」
『ひ、ひどいです!』
「とにかく邪魔すんなよ! あいつはあたしが倒す!」
もはや当初の目的を完璧に忘れ去ってしまったらしい。
薫は身体についた土を振り払うと、真っ直ぐプレセアに突貫していった。
プレセアも鉄槌を振り上げ、薫の念動力に備える。
二人はすぐにぶつかり合い、槌撃と念撃の火花を散らした。
木はなぎ倒され、葉は打ち破られ、土はぶち撒けられる。
このまま放っておいたら、森は間違いなく砂漠と化すだろう。
ちなみに、薫が地面に突っ込んだ際、さくら達3人は泥だらけになっていた。
「明石薫……この借りはいつか返させてもらいますわ……」
「ええ、そうね……」
『やっぱり杖違いだったですか……』
「ベルちゃんもイリヤちゃんもそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? リインちゃんもそんなに落ち込まないで!」
「そうですわ!」
我に返ったベルフラウが敵陣を覗き見ると、ジーニアスの詠唱は既に終了していた。
ただ、すぐに魔術を撃ってくる雰囲気はない。アルルゥも同様である。
おそらく、ベルフラウ達の正確な居場所を掴めていないのだろう。しきりに周囲を警戒している。
ただ、近づく者を警戒するだけで、ベルフラウ達を探しに近づいて来るようなことはなかった。
「完全に守りに入りましたわね……」
ベルフラウは舌打ちした。この膠着状態を崩すことが難しいとわかっているからだ。
どちらの攻撃も届かないギリギリの範囲で待機し、相手が近づいてきたところを狙い撃つ。
島の戦いにおいて、帝国軍や無色の派閥がよく使っていた戦法である。
無論、よく使われるセオリーには攻略法も存在する。
弓や銃などで遠距離攻撃したりMDFが高い仲間に囮になってもらえば、そこから乱戦に持ち込むことが出来るはずだ。
しかし現在、弓や銃などは手元にない。
誰かを囮にすることも憚られた。なにせ、回復手段がほとんどないのだ。大怪我を負ってしまったら治しようがない。
バリアを張りながら強引に突撃する方法も考えたが、どうしても躊躇いが生じてしまう。
障壁を張れるのはさくらとイリヤだけ。四大元素のカードは防御に使えないことはないが、確実性には欠ける。
(うまく使えば相手の術を無効化できるかもしれませんが……)
敵が炎で攻撃してきた場合に『火』のカードを使えば、その炎を操れるかもしれない。
水を発射してきたなら『水』を。風で切り刻もうとしてきたら『風』を。地面を操ってきたら『地』を。
そうやって敵の魔術に干渉すれば、意表を突けることだろう。だが。
(私は、このカードをそこまで上手に扱えるかしら?)
ベルフラウは、魔力を使うことがあまり得意ではない。得手としていたのは弓による射撃。彼女はあくまでスナイパーなのだ。
そんな自分が、このカードを自在に操れるだろうか? ……不安すぎる。
二人の防御魔法だけに頼って突っ込んだ場合、最悪、防御を破られて全滅することも有り得る。
まさに八方塞りだ。
「まずいですわね……。このまま膠着状態が続けば“彼女”も動けませんし……」
「あの、ベルちゃん」
歯軋りをするベルフラウにさくらが声をかけた。
思いつめたようなさくらの声色に、ベルフラウは数分前のことを思い出す。
「ああ、そういえば先程も何か言いかけてましたわね。何か作戦でも?」
「ベルちゃん、『水』とか『風』のカードって持ってる?」
「……なぜ、カードの名前を知ってますの?」
「さっきベルちゃんが使っていた『地』は、元々私のカードなの。それで、ベルちゃん4枚カード持ってたでしょ?」
「ああ、成る程。それなら納得ですわ」
『地』は元々さくらのカードである。そして、四大元素カードの一枚でもある。
ベルフラウが4枚のカードを持っているのを見て、『水』や『風』のカードもあるのではないかと推測したのだ。
さくらは言葉を続ける。
「ベルちゃん、お願い。私にカードを使わせて!」
「う、理屈はわかりますけど……。しかし、私にはこのカードしかないのですわ。
他の武器が手に入ればカードを返還することも吝かではありませんが……」
「わかってる。でも、私だけ何もできないのは嫌なの」
『そんなことないです! さくらちゃんはリインを』
「リインちゃんに魔力を渡しているだけ。私自身は何もしてないよ……」
レックスから逃げたときも、ジーニアスを追いかけていたときも、実際に魔法を使っていたのはさくらではない。リインだ。
さくらがいなければリインは動けないが、さくら本人は全く戦っていない。リインを連れて走り、指示を出すくらいである。
他の皆が身を削って戦っているのに、手を出せないことが歯痒かったのだろう。常に一線で戦ってきたさくらにとっては尚更だ。
決意の目で見つめられたベルフラウは一瞬戸惑ったが、ふと『ある事』を思いついた。
「……つまり、さくらは一人で二つの魔法を使えるということですわね?」
「そう……なるかな。私とリインちゃんが同時に魔法を使うってことだよね」
『ダメです! 魔力の消費量が高くなって倒れちゃいますよう!』
「リインちゃん、お願い」
『うー、……』
「それなら、いけるかもしれませんわ。手が一つ増えれば、この膠着状態を崩すことができるかも……。
とはいえ4枚とも渡してしまうわけにもいきませんし……。とりあえず、半分だけ」
ベルフラウは呟くと、『風』と『水』のカードをさくらに放った。
投げられたカードを両手で受け止めたさくらは、二枚のカードに向かって愛おしげに話しかける。
「ウインディ、ウォーティ……。また、力を貸してね」
「で、作戦会議は終わったの?」
さくらがカードを受け取ったのを見て、それまでずっと黙っていたイリヤが声を上げた。
大木を背にS2Uを握り締める姿は、まるで突撃命令を待つ軍人のようだ。
今すぐにでも仕掛けたくて仕方がないのだろう。
攻撃するのを待ちきれないイリヤに対して、ベルフラウが頷く。
「ええ、そろそろ仕掛けましょう。“彼女”がタイミングを合わせてくれれば案外早くカタがつくかもしれませんわ。それに……」
ベルフラウは、先程から轟音が響いている方向を見やる。すると。
「絶対可憐・バスタァアアアアァアアアアアッッッ!」
「双月、爆連舞ッ!」
少女のものとは思えないほどの咆哮が、木々の破砕音に混じって聞こえてきた。
二体の森林破壊マシーンは依然として森をボロボロにしているようだ。
もはや緑地回復は望めないほどに壊滅した森林が、あちらこちらで無惨な姿を晒していた。
そんな惨状を見て、ベルフラウは苦笑しながら言葉を続ける。
「このままじっとしていたら、あの二人の戦闘に巻き込まれてしまうかもしれません」
その言葉に、残りの二人も苦笑した。
時は黄昏。戦いの調べはまだまだ止みそうにない。
※ ※ ※ ※
砕けたガラスを夕日が真っ赤に染め上げ、埃だらけの礼拝堂の色を塗り替えている。
死翔の槍によってステンドグラスを破壊された礼拝堂は、訪れる者もいないまま彩色だけを変えてゆく。
そんな礼拝堂とはあんまり関係ない、少し離れた食堂にレミリアはいた。
フランのことを知っているらしい少年を詰問している最中なのだ、が。
「う〜ん、全然思い出せないよう」
「やっぱり、人間って使えないわね」
しんべヱ少年は結局、ほとんど何も思い出せなかった。断片的な記憶はあるようだが、それだけだ。
自分がどこにいたのかもわからないらしい。この暢気な少年は驚くべきことに地図すら読んでいなかったのである。
やっと見つけた(偶然転がり込んできたとも言う)フランの手掛かりはひどくちっぽけなものだったが、レミリアは落胆しなかった。
どうせ、直に夜が来る。夜が来たら自分が飛んで探せばいい。
そう、レミリアは考えていた。
とはいえ、せっかく手に入った情報だ。吟味しない手はない。
しんべヱが覚えていたキーワードは9つ。
紙の束。赤い宝石。フラン。レイジングハート。遊ぶ。喋る杖。貴女自身の魔法。スペルカードを使ってください。仮面の女。
このうち『レイジングハート』と『遊ぶ』はフランの台詞で、『貴女自身の魔法』と『スペルカードを使ってください』は喋る杖の台詞らしい。
喋る杖というのはよくわからないが、おそらくマジックアイテムの一種だろう。
レミリアの屋敷に居候している穀潰しの知識人ならわかるかもしれないが、あいにくレミリア自身はマジックアイテムについて詳しくなかった。
と、そんなことはどうでもいい。問題は喋る杖の台詞だ。
『スペルカードを使ってください』とはどういう意味なのだろうか。
(スペルカードなしで戦ったのかしら? まあ、フランがスペルカードを使うとすぐに終わってしまうしね)
どうせ遊んでいたのだろう、とレミリアは結論づける。遊びが過ぎるのはフランの癖、いや生き様だ。
次にレミリアが気になったのは、『レイジングハートと遊ぶ』というフランの言葉。
『遊ぶ』と言ってることから、『レイジングハート』は参加者だと考えられた。
しかし、そんな名前は名簿にない。
(偽名か、それとも二つ名か。どちらにしろ、フランの犠牲者候補に最も近いのは『レイジングハート』になるな……)
そこまでレミリアが考えたとき、城の中に雑音が流れてきた。
扉を開ける音や叩く音。床を踏みつける足音。そして、怒鳴り声。
やけに必死な雑音は城の中をうろうろ動き回っており、非常に喧しい。
雑音はやがて食堂の前に辿りつき、木製の扉を勢いよく吹っ飛ばした。
「レミリアってやつー! いるかー!」
「次から次へと……何処から入ってくるのかしら。全くもう」
新たに食堂に入ってきたのは白衣を着た金髪の少女。レミリアにとっては知らない顔だ。
「お前が……あなたがレミリアか!」
「あー? 騒々しいわね。一体何の用よ? てか誰よ?」
「……私は、プレセアの使いの者です。彼女から伝言を預かってきました」
「あの子から?」
少女の言葉にレミリアが首を傾げる。なぜ、プレセア本人が来ないのだろうか。
僅かに目を細めるレミリアに構わず、少女は『伝言』の内容を一字一句間違えずにぶちまけた。
「『たくさんの人が居る。妹さんを見た人も居るかもしれない』、以上です」
少女の言葉を聞いたレミリアは、伝言の内容をじっくりと吟味した。
そして尋ねる。
「で、何でそいつらを連れてこないんだ?」
「相手集団の中に悪人が混ざってて戦闘になってるんです。どうか加勢してください!」
「ああ、そういえば殺し合いをしているんだったな……と、その前にまず名を名乗りなさい。礼儀がなってないわよ」
「私はレベッカ……レベッカ宮本です」
「ふうん。まあ、話はわかったわ」
自分で聞いておきながらどうでも良さそうに呟きつつ、レミリアは考える。
そんなにたくさんの人間がいるなら、確かにフランの情報は得られるかもしれない。
なにせ、あの子は抜群に目立つ。性格上、一箇所にじっとしていることもないだろう。
それに、フランの情報が手に入らなかったとしても『喋る杖』や『レイジングハート』なる人物の情報が手に入る可能性がある。
レベッカとやらの話が罠ということも考えられたが、まあその時はその時だ。
とはいえ、プレセアの名前を出していることから虚言の可能性は低い。あまり気にしなくてよさそうではある。
「しかた無いな」
椅子から立ち上がったレミリアは、背後にある大窓を開いた。
吹き抜ける風が翡翠色の髪を揺らし、室内の空気を洗浄する。
外を見ると、落陽の空には薄く星が輝き、夕影が城の外観を一変させているのが窺えた。
もう、夜の時間なのだ。
「それで、あの子達はどこにいるの?」
「城の前にある森です! 外なんて見てないで早く……」
「だからここから行くんじゃない。わざわざ廊下を通って行ったら時間がかかるでしょう?」
「は? 何言って」
「時は金属製なり、よ。すぐに帰ってくるから、お茶の準備でもしておきなさい」
そう言い捨てると、レミリアは黒翼を大きく翻した。
窓から吹き込む風と翼が作り出す風がぶつかり合い、小さな気流を発生させる。
風を生み出した吸血鬼はそのまま窓の縁に上り、夕方の空に飛び込んだ。
ベッキーが慌てて窓に駆けつけた時には、レミリアの姿はもう見えなくなっていた。
文字通り一足飛びで戦場に向かったのだろう。
「本当に飛んでった……何でもありだな、この島は」
ベッキーは感心とも諦観とも取れる溜息を吐く。
なお、口調は元に戻っていた。ベッキーだって赤の他人に物を頼むときくらい敬語を使う。
そのまま夕日を眺めながら黄昏ていたベッキーだったが、ふと背後に気配を感じた。
振り返ると、忍者服を着た少年が所在無さげに立っている。
話の最中、完全に無視されていたしんべヱ少年である。
しんべヱに気付いていなかったベッキーは眉根を寄せた。
レミリアに紹介されなかったため、この少年が誰なのかわからないのだ。
もしこの少年が悪人なら、力を持たないベッキーにとって脅威そのものとなる。
「…………」
「…………」
が、少年を観察したベッキーは、なんとなく悪人ではないだろうと当たりをつけた。
危険人物なら流石にレミリアが警告するだろうし、なにより殺気がまるでない。
とはいえ、警戒しないわけではない。いつでも逃げられるように準備しながら少年の出方を待つ。
やがて、しんべヱがおずおずと口を開いた。
「ぼ、僕、しんべヱ」
「……私はレベッカ宮本だ」
まずは自己紹介。基本中の基本。だが、そこから話がつながらない。
お互いに牽制し合っているためである。
微妙な沈黙が流れる中、しんべヱがまた口を開いた。
「あの、これからどうするの?」
「あー、そうだな。レミリアの言ったようにお茶の用意でもしながら帰りを待……」
瞬間、ベッキーの脳裏にジーニアスの姿が映った。
そして、バラバラになった翠星石の姿が続く。
「って、できるかー!」
大声で叫んだベッキーは、部屋の隅に転がっていた救急箱を引っつかむと魔導ボードに飛び乗った。
魔導ボードが宙に浮き、高速移動を開始。ベッキーは食堂の中を滑空しながら、何故か浮かんできた涙を拭った。
もう、仲間が死ぬのは嫌だった。
戦闘では役に立てないが応急処置くらいならできるはず、とベッキーは自分自身に言い聞かせる。
出来ることがあるのに行動を起こさないのは、ただの臆病者だ。
なにより、ジーニアス達が戦っているのに一人安穏としてはいられない。
なお、しんべヱのことは一瞬で思考の遥か彼方に吹っ飛んでいた。
ボードは食堂から飛び出すと、城の入り口を目指して驀進する。
ベッキーが去り、食堂に取り残されたのは、唖然とした表情で突っ立っている少年のみ。
またも忘れられたしんべヱは、おろおろと周りを見渡した後、
「ま、待ってよう」
一人でいるのが不安になったのか、ベッキーが飛んでいった方向に向けて駆け出す。
しんべヱが飛び出した後、食堂はようやく静寂を取り戻した。
夕日が差し込み始めた室内では、カーテンだけが揺れている。
※ ※ ※ ※
ジーニアス・セイジはスペルチャージを終え、少し面積が小さくなった森を睨みつけていた。
現在、見えている範囲に敵はいない。
八つ当たりで二人の人間を殺したという明石薫はプレセアと共に森の中。
檄音が聞こえてくることから、両者とも生存しているのだろうと判断する。
ワイヴァーンの炎から逃げおおせたイリヤは木々の影に隠れ、未だに姿を現さない。
他の3人の少女など、姿を確認することすらできていなかった。
「アルルゥ、敵がどのあたりにいるかわかる?」
「うー、あのあたりだと思うけど、わかんない」
火と煙が立ちこめ、土砂と倒木で溢れている森は戦場の様相を呈しており、相手の動きを読みづらくしていた。
しかも、生き残った木々もそれなりに多く、障害物だらけ。敵がどこから襲ってくるか見当がつかない。
そのため、ジーニアス達は木々が少ない広場の真ん中に陣取っていた。
この場所で周囲を警戒していれば、近付く敵はすぐにわかる。
しかし同時に、敵に自分達の居所を教えてしまうというリスクも併せ持っていた。
だからこそ、ジーニアスはこの場所を選ぶ。『確実に見つけてもらうために』。
自分達が目立てば目立つほど、敵の攻撃はジーニアス達に集まる。つまり、プレセアに向く戦力を減らせるのだ。
数の差で圧倒的に不利なジーニアス達にとって、真っ向から戦うことは愚策でしかない。
故に、ジーニアス達は術士をあえて『囮』にした。
イリヤがジーニアスを狙っていることは明らかであり、なにより、真っ先に術士を狙うことは戦いにおける基本だ。
相手がセオリー通りに来るなら、何より優先してジーニアスを狙うはず。
それを、逆に利用する。
ジーニアスとアルルゥの役目は敵を倒すことではない。敵を引きつけ、耐えることだ。
そして、その間にプレセアが一人づつ敵を倒す。
それがジーニアス達の作戦だった。
勿論、すべてがうまく行くとは思っていない。相手の能力は未知数であり、不測の事態が起きる可能性は十二分に有り得る。
例えば、敵の接近を許してしまうかもしれない。
例えば、プレセアが負けてしまうかもしれない。
例えば、敵が思った通りに動かないかもしれない。
だが、戦いとはそういうものだ。予定通りに行く戦いのほうがよっぽど珍しい。
各自が戦況に即して臨機応変に対応する。戦闘の基本であり、真理でもある。
作戦はあくまで土台。そこからの応用が勝敗を分ける。
「……くる!」
ジーニアスの思考を中断させたのは、耳を逆立てて索敵していたアルルゥが警告。
ジーニアスは杖を構え、敵の接近に備えた。傍らのウツドンも攻撃態勢に入る。
一瞬の静寂。そして、
『Accel Shooter』
「『はっぱカッター』!」
光弾と葉刃が激突した。
それが合図だったかのように、木々の残骸から三つの影が飛び出す。
さくらとリインはジーニアス達にとって右斜め前から。
イリヤとベルフラウはジーニアス達にとって左斜め前から。
二方向、同時攻撃。
「オピァマタ!」
アルルゥが召喚術を発動する。呼び出したのは、毒の魔獣タマヒポだ。
アルルゥを守るように出現したタマヒポは、迫ってきていたさくらに向かって毒ガスを噴射した。
猛毒を伴った濃緑のブレスは、しかし、
『させないです! プロテクション!』
リインが出現させたバリアによって防がれる。
毒霧はバリヤにまとわりつくように漂うが、さくらの元には届かない。
タマヒポの攻撃を防いださくらだったが、防御魔法を使ったために動きを止めざるを得ない。
足止めという目的を果たしたタマヒポは、満足したかのように幻獣界へと戻っていった。
しかし、危機はまだ去っていない。
さくらは動けなくなったが、ジーニアス達に接近する敵は二人残っていた。
別々の方向から襲撃してきたため、タマヒポだけでは足止めできなかったのだ。
二人の少女は更に二手に別れ、挟み込むような形でジーニアスに迫った。
手持ちの武器に魔力を込め、今にも魔法を撃とうとしている。
だが、スペルチャージしていたジーニアスのほうが僅かに早い。
「悠久の時を廻る優しき風よ、我が前に集いて裂刃と成せ! サイクロン!」
ジーニアスの呪文と共に、小規模な竜巻が発生する。
吹きすさぶ烈風は土や木屑を巻き上げつつ、二手に分かれた少女達を丸ごと飲み込んだ。
自分が作り出した暴風を見ながら、ジーニアスは即座に次術の詠唱を始める。
ジーニアスは詠唱を続けながら、これから行う手順を心の中で復唱した。
二人はおそらく防御魔法を使うはずだ。自分の身を守るために。
しかし、防御魔法はいずれ解除しなければならない。
そして、防御魔法を解除するときには必ず隙ができる。
その瞬間を、突く。
隙を突かれたイリヤは、魔法を使うことすらできずに倒されるだろう。
ジーニアスにとってこの状況は、本来なら願ってもない好機だ。
それなのに、ジーニアスは粘つくような感覚に襲われた。
おかしい。順調過ぎる。
得体の知れない不気味さを感じたジーニアスは、反射的に竜巻の中のイリヤを見た。
荒れ狂う風に切り刻まれようとしているはずの少女は、しかし。
笑っていた。
風の檻に閉じ込められたイリヤは、笑っていた。
嘲りと残忍さを煮詰めたような目で、ただ笑っていた。
手に持つ杖をジーニアスに向けたまま、防御魔法などさらさら使う気がないように。
ジーニアスの背中を、無数の氷塊が駆け上がる。
“こいつは、こんな状況下でも攻撃のことしか考えていない”
それは、つまり、
「風よ!」
防御魔法を使っているはずのさくらが透き通った声を発する。
掲げているのは『風』のカード。大気を操る、四大元素のカード。
さくらの魔法は空気を伝い、イリヤとベルフラウを囲む竜巻に干渉する。
そう、イリヤが攻撃のことしか考えていないということは、防御を誰かに任せているということ。
しかも、ただバリアを張るだけではない。さくらが使ったのは、ジーニアスの攻撃を無効化する魔法。
要するに、“イリヤの攻撃は障壁に邪魔されることがない”。
敵を切り裂くはずの暴風が、優しく、穏やかな微風へと変わってゆく。
つむじ風程度にまで弱った竜巻の中で、イリヤが悠然と口を開いた。
それは、冷たい死刑宣告。
「やっちゃえ、S2U」
『Stinger Ray』
S2Uが唸りを上げ、高速の光弾を吐き出した。
全ては一瞬。詠唱中のジーニアスに逃れる術はない。
金色の魔弾は、ジーニアスの胸を突き破るべく空気を抉る。
(ダメだ!)
ジーニアスは死を覚悟し、目を瞑った。
直後、ジーニアスの身体にに衝撃が走る。
ただし、前からではなく、側面から。
突っ立ていただけのジーニアスは、横からの不意討ちに対して抵抗できない。ただ無惨に押し倒される。
真横に大きく吹っ飛ばされたジーニアスは、光弾が傍らを通り過ぎるのを感じた。
確実にジーニアスを貫くはずの魔法が、何かの乱入によって狙いを外したのだ。
ギリギリで命を繋ぎ止めたジーニアスだったが、頭の中は混乱で満ち溢れる。
一体、何が自分を突き飛ばしたのだろうか?
地面に倒れ付したジーニアスが、転がりながらもぶつかってきたものを確認しようと顔を上げた。
ジーニアスの胸に埋もれている“それ”は人の形をしていた。それも、見知った人間の。
「うー……」
「アルルゥ!?」
ジーニアスを吹き飛ばしたのは、アルルゥの体当たりだった。
『駆』のカードを使って突進したアルルゥが、ジーニアスの命を救ったのだ。
しかし、その代償は大きい。
アルルゥの顔が苦しげに歪み、手に持っていた『駆』のカードを取り落とす。
イリヤの魔弾は、ジーニアスの代わりにアルルゥの背中を抉り取っていた。
背中の傷口からどくどくと血が溢れ出ている。
「ッ! ウツドン!」
ジーニアスの判断は適切だった。
敵の追撃を防ぐため、何よりも先にウツドンに指示を出したのだ。
詠唱が中断されたため、ジーニアス自身はすぐに魔法が使えない。
無数のはっぱカッターを浴びせかけられたイリヤは一旦後ろに下がった。
イリヤも魔法を使った直後であり、迎撃が出来なかったからだ。
傷付いたアルルゥを抱えて距離を取るジーニアスの耳に、少女達の会話が飛び込んでくる。
「イリヤちゃん! なんで捕獲魔法じゃなくて攻撃魔法を使ったの!?」
「サクラ、相手はこっちを殺そうとしているのよ? 甘いことなんて言ってられないわ」
「それでも、話し合いで解決するってイリヤちゃん自身が言ってたじゃない!」
「できれば、だけどね。大丈夫、ちゃんと手加減したから」
ジーニアスは歯を食いしばりながら、虚偽に満ち溢れたイリヤの言葉を受け止めた。
手加減などしているはずがない。先程の攻撃は明らかに殺意が篭もっていた。
アルルゥが乱入しなければ、ジーニアスは確実に死んでいただろう。
イリヤの言葉は嘘に塗れており、ジーニアスの苛立ちを増幅させてゆく。
だが、今の会話からジーニアスは一つの確信を得た。
(やっぱり、他の子達はイリヤに騙されてるんだ。少なくとも、さくらって子は殺し合いを止めたがってる)
この事実は、ジーニアスにとって朗報だった。
イリヤが喋れるうちは邪魔されるだろうが、イリヤさえいなくなれば誤解を解けるかもしれないとわかったから。
しかしそれがわかったところで、状況は依然として厳しい。
現在はウツドンが粘っているが、打ち破られるのは時間の問題。
ジーニアスが必死で脱出策を練っていると、傍らに寝かせていたアルルゥが起き上がった。
「アルルゥ!」
「ん……。アルルゥが、やる」
サモナイト石を取り出すアルルゥの顔色は、蒼い。
傷口もまだ塞がっておらず、夥しい血がアルルゥの着物を濡らしていた。
それでも、震える手でサモナイト石を掲げ、
「オ」
召喚獣の名前を呼ぼうとし、そして――
「怪盗白色、行きますっ!」
突如茂みから現れた白いタキシードの少女にタックルされ、地面に引き摺り倒された。
腐葉土に叩き付けられたアルルゥの声が途切れ、サモナイト石が輝きを失う。
「アルルゥ!?」
「か、はっ」
「さあ、観念しなさいっ!」
緊張した声で叫ぶ白いタキシード少女の名は、梨々。
今までの戦いには全く参加していなかった少女が、遂に牙を剥いたのだ。
梨々は戦いが始まった当初から森の中を隠密に進み、ジーニアス達の背後に回っていた。
相手の隙を突き、奇襲するために。
そうして隠れて続けていた梨々が今、拙いながらも百色直伝の技を披露する。
「たあっ!」
梨々は熟練の腕捌きでアルルゥからサモナイト石を取り上げると、一瞬で腕を捻り上げた。
アルルゥが苦悶の表情を浮かべながらもがくが、梨々はびくともしない。
未だ修行中の身ではあるが、怪盗百色の盗みの技を受け継いだ梨々にとって、アルルゥを無力化することなど造作もなかった。
百色がこの場にいたら、『ブラボー!』とか言いながら両手を叩いて喜んだことだろう。
(伏、兵――)
ジーニアスの全身を絶望が駆け抜けた。
ジーニアス達は、相手が伏兵を使ってくる可能性を考えなかったわけではない。むしろ、最も警戒していた。
事実、今の今までジーニアス達の近くに潜んでいた梨々は、警戒に阻まれて仕掛けることができなかった。
しかし、敵に陣形を崩され、大怪我を負った状態ではどうすることもできない。
起こるべくして起きた奇襲。
しかも、ジーニアスはアルルゥを助けるという選択肢が選べない。
梨々を引き剥がしている間に、他の3人が攻撃してくることが明らかだからだ。
そうなれば一巻の終わり。全滅は免れない。
手を伸ばせば届く場所にいるアルルゥを、見捨てざるを得なかった。
絶望の鎖は更に連なる。
「よくやりましたわ! 後は私達に任せなさい!」
ベルフラウが一枚のカードを掲げる。カードの名は、『火』。
支援
「火焔撃!」
唱えられたのは、ベルフラウの護衛獣であるオニビの技名。
勿論、ベルフラウが火焔撃を使えるというわけではない。
いつも間近で見てきたオニビの技を、『火』の力を借りて再現しただけ。
本来の火焔撃と比べると形も小さく、威力も低い炎の陣。
言うなれば『見様見真似火焔撃』といったところだ。
それでも、ウツドンのはっぱカッターを蹴散らすには十分だった。
燃え盛る炎が葉刃を屠り、黒い粉へと変えてゆく。
ベルフラウの炎はウツドンの傍にまで迫り、熱気に焙られた植物ポケモンが身体を捩る。
『くさ』は『ほのお』に弱い。炎は、ウツドンの動きを確実に奪っていった。
目に見えて動きが鈍くなったウツドンに、イリヤがS2Uの切っ先を向ける。
イリヤはウツドンを哀れみの目で見た後、言葉を投げかけた。
別れの言葉を。
「ばいばい。あなたも主人に恵まれなかったわね」
『Blaze Cannon』
紅色の光が弾け、焼け爛れた森に凄絶な断末魔が響き渡った。
※ ※ ※ ※
「この、叫び声は……!?」
薫との戦闘の最中、プレセアは何者かの悲鳴を聞いた。
魂から絞り出したかのような叫び声は長く尾を引いた後、力尽きたように薄れていく。
誰かが、戦いに敗北したのだろう。
(一体、誰が……!)
プレセアは焦った。もしかしたら、今の悲鳴が仲間のものかもしれないからだ。
なにせ、ジーニアス達は2対4の戦いを強いられている。苦戦しないわけがない。
(これは、かなり厳しいですね……)
決していいとは言えない戦況に、プレセアは危機感を募らせた。
そもそも、こんな泥仕合になるはずではなかったのだ。
本来ならプレセアがすぐに薫を倒し、ジーニアス達に合流する予定だった。
だが、甘かった。
プレセアは、薫の実力を完全に読み違えていた。
「余所見してる暇はねーぞぉっ!」
薫が念動力のハンマーを作り、滅多矢鱈に振り回してくる。
プレセアは攻撃を避け、時には防ぎ、そして反撃した。
鉄の戦槌が薫を打ち据えようと唸りを上げる。
しかし、攻撃は届かない。鉄槌が敵に触れる直前で、ガチン、と音を立てて見えない壁にぶつかってしまう。
薫の張るバリアに当たったのだ。
念動力の壁は破れないほど強固なものではなかったが、どうしても威力と速度は殺がれる。
グラーフアイゼンがバリアを打ち破っている間に、薫は後ろに逃げてしまった。
結果として、全くダメージを与えられない。こんなことが何度も繰り返されていた。
(予想外に厄介な相手ですね)
明石薫のスペックは圧倒的だった。
攻撃では威力が高い衝撃波を連発し、防御においてはいつでも展開可能なバリアがある。
更に空も飛べ、障害物を持ち上げることまでしてくる。
強い。プレセアは、素直にそう思った。
それでも、ここでこれ以上時間を取られるわけにはいかない。
さっきの悲鳴がジーニアス達のものだったら、もはや一刻の猶予もないのだから。
(後先考えている余裕はありません)
プレセアは、グラーフアイゼンを両腕でしっかりと握り締める。
今までは怪我をしている右肩に気を使っていたが、そんなことを気にしていられる状況ではない。
武器を持ち直したプレセアが前を見ると、無数の石ころが宙に浮いていた。
薫による物体操作である。
念動力によって浮いた石々が、羽虫のように空中で蠢いている。
警戒を強めるプレセアは、ふと、石の軍隊を挟んで苦しそうな顔の薫を見た。
「ハァッ……ゼェッ……」
好き勝手に暴れていた薫も、流石に体力が尽きてきたようだ。
それはつまり、薫も賭けに出たということ。
「……これで、決着しそうですね」
「ああ……。あたしの勝ちでなぁっ!」
薫の敵意を全身で受け止めながら、プレセアはハンマーを持つ腕に規格外の力を篭めた。
EXスキルのひとつ、――マイトチャージ。
プレセアが力を込めている間にも、撃ち出されるのを待つだけの石群は次々と増えてゆく。
幾多もの石の弾丸がプレセアに狙いをつけ、女王の命令を待ち焦がれた。
石を従えた女王と、鉄を携えた戦士が対峙する。長かった戦いにも、遂に終焉が迫る。
始まりの合図は、薫の号令。
「行けぇ石どもっ! サイキック・ショットガン!」
薫の命令によって無数の石が銃弾となり、プレセアに向けて突撃する。
津波のように打ち寄せる、数多の石弾。
「――はあぁっ!」
プレセアは、その銃弾の雨に突っ込んだ。
石礫がプレセアの腕を、腹を、脚を、貫き撃ち抜き食い破る。
それでもプレセアは止まらない。
グラーフアイゼンで頭だけを防御し、顔面から飛び込むような形で石の雨を突き抜けた。
プレセアがとったのは力づくの作戦。本当に何の芸もないただの突進。
石の槍衾を突破したとき、プレセアの身体はボロボロになっていた。
肉は削れ、血は噴出し、無事な場所などひとつもない。
だが、生きている。
「マジ……かよ!?」
プレセアが顔を上げると、驚きの表情を形作っている薫の顔が間近にあった。
『肉を切らせて骨を断つ』を地でいく無茶苦茶な攻撃は、確かに成功したのだ。
「……終わりです」
プレセアは呟くと、グラーフアイゼンを振り被った。
「ちぃっ」
振り被られた鉄槌を見た薫が慌てて見えない壁を張る。
それに構わず、プレセアはグラーフアイゼンを振り下ろした。――地面へと。
「は?」
呆けた声を出す薫の足元で、土が抉れて飛び散った。
空振り。
薫の代わりに地面を穿ってしまったプレセアは――しかし、鉄槌を振り上げなかった。
グラーフアイゼンは地面に突き刺さったままである。
これは“空振りではあっても失敗ではないのだから”。
「――塵と化しなさい!」
瞬間、地面が爆ぜた。
グラーフアイゼンが突き刺さった場所を中点として大爆発が巻き起こる。
「奥義、烈破焔焦撃!」
爆炎は地面を焼き、空気を焙り、そして明石薫を吹き飛ばした。
念動力のバリアも、真下からの爆発に対しては無力である。
吹っ飛ばされた薫は空高く放り投げられると、茂みの奥へと堕ちてゆく。
悲鳴すら上げることなく、バベルの誇るレベル7の超能力者、ザ・チルドレンはプレセアの視界から消え失せた。
「敵、殲滅完了――」
後に残ったのは傷を負った少女と、焼け焦げた巨大なクレーターのみ。
長く続いた二人の戦いは、ここに終結した。
しかし、全ての戦いが終わったわけではない。
「早く、行かないと……」
プレセアは、勝利の余韻に浸ることもなく駆け出した。
ジーニアス達の下に向かい、援護するためだ。
けれども、体調は万全とは程遠い。
石礫を喰らった手足は傷だらけで、右肩の傷は殆ど開いてしまっている。
出血もひどく、焼け付くような痛みが身体全体を軋ませる。
プレセアは顔をしかめながらも、脚を動かすことを止めない。
激痛を抱えながら、うつろな魂は走り去った。
――そして、静寂が訪れる。
プレセアが去った後、森は急激に静かになった。
二人の戦いによって、獣や鳥や虫といった森の生物が完全にいなくなってしまったためだ。
もはや、この周辺の森に生きているものは一つもない――。
否。
まだ、息をしているものがあった。
「うー…………」
明石薫は、生きていた。
身体中に火傷を負っており服もボロボロだったが、かろうじて呼吸をしている。
無意識のうちに作り出した力場が爆炎のダメージを和らげ、落下の衝撃を最小限に抑えたのである。
プレセアが生死確認を行わなかったことも大きかった。九死に一生を得るとはまさにこのことだ。
茂みに埋まっている薫は、苦しげに顔を歪めている。――ふと、その茂みに異変が生じた。
呻き声を上げる薫の周りで、一人でに石ころが持ち上がったのだ。
念動力による物体操作。
しかし、薫は意識など取り戻していない。
「あ゛ー…………」
薫が再び呻き声を上げ、それに呼応するように石ころが旋回した。
異変はそれだけではない。薫が何か動作をするたびに、周囲の物が空を飛ぶ。
石に葉、土に枝。遂には倒木までもが飛行し出す。
あらゆるものがグチャグチャに飛び回る中、薫がむくりと起き上がった。
しかし、白目で頭をカクカク動かしている姿は、普段の薫からは想像もつかない。
当然だ。薫は今、自分の意志で動いていないのだから。
薫の脳は、とうの昔に限界を迎えていたのである。
「の゛ー…………」
石や木を引き連れたまま、薫がよちよちと歩き始めた。
一歩を踏み出すたびに周りの倒木が持ち上がり、薫を中心として狂ったように飛び回る。
無心の女王が物言わぬ兵隊達を引き連れ、本能のままに行軍してゆく。
――オーバーヒート。
脳がまだ完成しきっていない子供が強力な超能力を行使し続けることにより、能力が暴走する現象。
その際、能力者は意識を失ってしまい、行動は予測不可能となる。
なお、暴走時の能力は威力がケタ違いに上がっているため、注意が必要である――
※ ※ ※ ※
ジーニアスの目の前で、黒焦げになった何かがゴミのように転がった。
数秒前までイキモノだったそれは、もはやただの黒い塊にしか見えない。
イリヤの放った火炎弾が、ジーニアス達を守っていたウツドンを焼き殺したのだ。
「あ、あああぁぁ」
陽炎の中、ジーニアスは思わず膝を突きそうになる。
今まで共に戦ってくれたウツドンが死んだことが悲しく、悔しい。
だがそれ以上に、現状のあまりのどうしようもなさに目眩がしてくる。
すぐ前には、敵に押さえ込まれていて動けないアルルゥ。
ウツドンを焼き殺した炎の先には、無傷で立ちはだかる3人の魔術師。
どう考えてもジーニアス一人では攻略不可能な壁だ。
どれだけ強力な晶術を使っても、悪足掻きにしかならないだろう。
(――って、ダメだ! ここでボクが諦めたら、全てが終わる!)
ジーニアスは諦めかけた自分に活を入れ、折れかけた心を修正する。
どれだけ絶望的な状況に陥っても希望を捨てることだけはできない。
精神を奮い立たせたジーニアスは、汗でベタベタになった手の中のカードを見た。
それは、アルルゥが落とした『駆』のカード。アルルゥを抱えた時に抜け目なく回収していたのだ。
(……やるしか、ない)
カードを見つめたジーニアスは、心の中で呟く。
意は決した。後はただ、進むのみ。
ジーニアスはカードに魔力を込めた。敵の魔術師やアルルゥを見て使い方はわかっている。
青髪の魔術師は、カードに全神経を集中させた。裂帛の気合とともに。
(ドワーフの誓い第16番、『成せばなる』!)
ジーニアスの身体を風が包み込み、『駆』のカードが発動する。
『駆』は、短距離勝負で無敵のスピードを誇る獣。使用者に最速の足を与えるカードである。
クロウカードの力によって俊足を得たジーニアスは、力強く地を蹴り飛ばす。
――そして敵に背中を見せ、一目散に逃げ出した。
「ッ! 仲間を見捨てるの!?」
背後から、驚いたようなさくらの叫び声が追って来る。
アルルゥを完全に見捨てたのだ。当然の反応だろう。
それに対して、ジーニアスは吐き捨てるように応えた。
「ボクはまだ死ねないんだよ!」
その答えを聞いた少女達は、
「このッ……そこまで外道だとは思いませんでしたわ!」
ベルフラウは怒り、
「ウソ、本当に、逃げちゃうの……?」
梨々は戸惑い、
「ひどいよ!」『一緒に戦ってきた仲間じゃなかったんですか!?』
さくらとリインは悲しみ、
「やっと本性を表したわね! ほら、私の言った通りじゃない!」
イリヤは歓声を上げ、
「…………」
アルルゥは無言を通した。
それら一切合切を無視して、ジーニアスは背後の森に飛び込んだ。
と、すぐに倒木に足を取られ、無様に転倒してしまう。
「あはははははっ!」
『Chain Bind』
姿勢を崩したジーニアスを見て、嘲笑と共にイリヤが拘束魔法を放つ。
二本の魔力の鎖がジーニアスに襲い掛かる。
「……『駆』!」
が、ジーニアスは前転して姿勢を正し、再び『駆』を使用した。
転んだにも関わらず、流れるような動きで加速したジーニアスを捉え損ね、魔力の鎖が地面を貫く。
鎖を回避して走り出したジーニアスは、またも途中で腕を木にぶつけた。
バランスを崩し速度を落としたジーニアスが、ふらふらと森の中へと消えてゆく。
「ッこの! 逃がさないわよ!」
確実に狩れると思った獲物に攻撃を避けられたイリヤはムキになった。
S2Uを中段に構え、逃げる獲物を追い詰めるべく追跡を開始する。
「イリヤちゃん、一人で行っちゃダメ!」
「全く、さっきのことをもう忘れたのかしら!? しかたないですわね……梨々、その子は任せましたわ!
あと、亜人のあなた! あんな下衆に見捨てられたからって気にする必要はありませんわよ!」
「う、うん。わかった!」
「…………」
ジーニアスを追って飛び出したイリヤの後に、さくらとベルフラウが続く。
梨々はアルルゥを押さえる役目があるため、一人でお留守番だ。
茂みが掻き分けられ、3人の人間が森へと消える。
4人が入っていった森からは、すぐに魔法による轟音が聞こえてきた。
戦争は、どちらかが全滅するまで終わらない。それが摂理だとでも言うように、子供達は戦い続ける。
だが、その戦闘から一時的に離脱できた幸運な者もいる。取り残された梨々とアルルゥだ。
「さくらちゃん、気をつけてね……。多分、警戒すべき人はあの男の子だけじゃないはずだから……」
イリヤとベルフラウを危険だと疑う梨々はさくらを心配し、
「うー……」
梨々に押さえつけられているアルルゥは、ジーニアスが消えた森をずっと睨みつけていた。
※ ※ ※ ※
「こ……のっ!」
『Accel Shooter』
殺意を孕んだイリヤの魔法が放たれる。何発もの光弾が獲物を食らおうと空を駆けた。
しかし、アクセルシューターが狙った場所に辿り着いたときには、獲物は既に消えていた。
弱弱しい背中を見せながら逃げるジーニアスは攻撃が当たる瞬間だけ『駆』を使用し、危なげながらもイリヤの魔法を避け続けている。
その度にイリヤは悔しそうに唇を噛み締め、S2Uを強く握り込む。
ジーニアスはふらつきながらも要所要所で『駆』を使い、なかなか狩られてくれない。
あと、少しなのだ。だが、その『あと少し』が、遠い。
イリヤは再びS2Uを構え、逃げるジーニアスを追おうとした。
直後、背後から『仲間』の声がかけられる。
「イリヤ、待ちなさい! 一人で先行してはいけないとあれほど言ったでしょう!」
追いついてきたベルフラウである。
その言葉に対して、イリヤも負けじと言い返す。
「だって、あと少しで捕まえられるのよ? もたもたして逃がしたら、また人殺しをするに違いないわ!」
「こちらの消費も考えなさい! あなただって、魔力が残り少ないのではなくて?」
「……ッ!」
ベルフラウの言葉に、イリヤは反論できなかった。
魔力が残り少ないのは確かだ。
魔術回路“そのもの”であるイリヤでも、度重なる戦いによってかなりの魔力を消費していた。
凶戦士の英霊すら軽く使役できるほどの魔力量を持つイリヤにも限界はある。
疲労もひどく、気を抜くと倒れてしまいそうだ。
だが、それでも。
(あと一人……あと一人殺せば回復できる)
あと一人なのだ。ジーニアスさえ殺せれば、『ご褒美』で体力を回復できる。
アルルゥを殺してもご褒美は貰えるが、さくら達にバレないよう殺すのは骨が折れる。
『仲間』もまだまだ利用できそうであり、ここで切り捨てるのは得策とは思えなかった。
ならば、衰弱しているジーニアスを狩るのが一番効率的である。
皮算用を始めたイリヤの前で、ジーニアスがまた転倒した。
10メートルほど先の地面で、今にも死にそうな魔術師がふらふらと起き上がる。
それを見たイリヤの心に、焦りと後悔の感情が浮かび上がった。
こうして話している間に追いかけていれば、トドメが刺せたのではないだろうか?
あれだけ弱った敵なら、流石に自分一人でも倒せるのではないか?
イリヤは、決めた。
「もういい! 私一人でやるもん!」
「イリヤッ!」
ベルフラウの叫びを無視し、イリヤはジーニアスに向けて突進する。
それを見たジーニアスはすぐさま『駆』を使い、森の奥へと飛び込んだ。
それを追ったイリヤも森に消え、2人の姿はすぐにベルフラウの視界から消えた。
「このっ……もう知りませんわ!」
イリヤに拒絶されたベルフラウは頬を膨らますとそっぽを向く。
その後ろから、足音が近付いてきた。
少し遅れてしまっていたさくらが、ようやく追いついたのだ。
「はあっ、はあっ、ベルちゃん、イリヤちゃんは!?」
「勝手に先に行きましたわ。あんな子、どうにでもなればいいんです」
怒りを顕にしたベルフラウが冷たい言葉を吐く。
元々イリヤにいい感情を持っていなかったこともあって、ベルフラウは本当にイリヤのことなどどうでもいいと思っていた。
さくらは、そんなベルフラウを悲しそうに見た後、リインに尋ねる。
「リインちゃん。エリアサーチ、まだ使える?」
『は、はいです。使えますけど、でも、さくらちゃんの魔力が……』
「さくら、なぜそこまでしますの!? イリヤは私達の言葉を無視して行動しているんですのよ!」
あくまでイリヤを助けることに拘るさくらを見て、ベルフラウが昂ぶった。
さくらだって魔力を消費している。魔法の並列使用を行ったため、むしろ3人の中で最も消費しているかもしれない。
イリヤは、ここの島で始めて出会った、数時間しか一緒に過ごしていない相手だ。
勝手に突っ走って敵を捕まえようと――いや、むしろ殺そうとしている危険な少女。
普通に考えれば、さくらが身を削って助ける必要などないはず。
それでもさくらは言った。
「でも、見捨てることなんてできないよ。仲間なんだもん」
ベルフラウは声を詰まらせた。
さくらは、本当にイリヤのことを思いやっていた。
いや、イリヤだけではないだろう。さくらは、合って間もないはずの梨々も、ベルフラウも、敵でさえも思いやっている。
それが、木之本さくらという少女。
周りの誰かが傷ついたり、悲しんだりするのが見たくなくて。
その為に頑張って、苦しんで、傷ついて。
それでも、笑い続ける人間。まるで、あの先生のような――
ベルフラウは、髪をぐしゃぐしゃと掻き毟った。
そして叫ぶ。とても不機嫌そうに。
「ああもう! 何で私の周りには死ぬほど馬鹿なお人好しばかり集まるのかしら!
……わかりましたわ。行けばいいんでしょう、行けば!」
「ベ、ベルちゃん?」
「魔力切れの魔術師一人行かせるわけにはいかないわ」
「それは……」
「それに、今のあなた一人では碌に援護も出来ないのではなくて?」
「……うん。ありがとう、ベルちゃん」
「……それは偽名なの」
「ほえ!?」
「ベルフラウ。私の名前は、ベルフラウ=マルティーニですわ」
「あ、う、えっと……。ありがとう、ベルフラウちゃん」
「うん。わかればよろしい」
急な名前変更宣言に慌てるさくらを見て、ベルフラウは笑った。
それは、この島に着てから始めて浮かべた、無敵の笑顔。
その笑顔を見たさくらは、戸惑いながらもおずおずと笑みを返す。
「止めよう。あの男の子を、イリヤちゃんを、戦いを。大丈夫……私達なら、絶対大丈夫だよ」
「ええ。こんな馬鹿らしい戦いは、さっさと終わりにしてしまいましょう」
『はい、リインも頑張るです!』
頷き合った三人は、イリヤを追って駆け出した。
その途中で、ふとベルフラウは考える。
――それにしてもあのジーニアスって少年、動きが何か変でしたわね。
まるで、攻撃範囲ギリギリに陣取って敵をおびき出す『誘い込み』をしているような――
※ ※ ※ ※
「よかった……。ちゃんと、付いて来てる」
ジーニアスは、泥で汚れた口元を拭いながら呟く。
後ろを盗み見ると、遠く離れた木々の隙間にイリヤがいるのがわかった。
それを確認したジーニアスは“わざと”木の根に蹴躓き、できるだけ無様に見えるように転んだ。
ジーニアスの転倒を見たイリヤは速度を上げ、トドメを刺そうと一気に接近する。
地面に這い蹲っていたジーニアスはすぐに起き上がり、再び『駆』を使って逃げ出した。
不恰好に。ただ、不恰好に。
(これで、十分アルルゥから引き離せたかな)
イリヤさえ傍にいなければアルルゥが殺されることはない――。それが、ジーニアスの考えだった。
イリヤは自分達に問答無用で襲い掛かり、翠星石を殺した殺人鬼だ。
機会があれば何の躊躇もなくアルルゥを殺すだろう。
だが、他の少女達はどうだろうか? イリヤに騙されている、他の少女達はどうだろうか?
イリヤが自分を殺そうとしたときにイリヤを非難した、魔術師の女の子はアルルゥを殺すだろうか?
ウツドンが殺されたときに思わず目を伏せていた、コレットに似た女の子はどうだろうか?
敵であるはずのアルルゥに励ましの言葉を送った、高飛車な女の子は?
多分、大丈夫だろう。
あれだけ優しい少女達なら、間違ってもアルルゥを殺したりはしないはずだ。
(それに、裏切りに対してあれだけ怒る人に、悪い人はいないはずだしね)
ゼロスの裏切りに怒り、悲しみ、悔やみ抜いたロイドのように。
ならば、残る問題はイリヤだけ。
イリヤさえ自分が引き付ければ、アルルゥの安全は保障される。
(それなら、僕のプライドなんて安いもんだ。喜んで悪役になってやる!)
つまり、ジーニアスは“わざと”無様に逃げるフリをし、イリヤを引き付けていたのだ。
ただ、アルルゥからイリヤを引き離すためだけに。
現在、事はジーニアスの思惑通りに進んでいる。
このままいけば――いずれ自分は追い詰められるだろう。
残る魔力は少なく、イリヤの気を引くための演技で身体は傷だらけだ。
(ごめん、プレセア。アルルゥのことは任せた。それとごめん、ベッキー。約束、守れそうにないや。でも、それでも――)
ジーニアスは、小さく吼える。
「翠星石の仇だけは、絶対取るから……!」
牙を隠した獲物と狩人の追走劇も既に終盤。
ジーニアスが『駆』を使い、イリヤが追撃をかけるというループが終わろうとしている。
ちょうどその時、どこか遠くで爆発音が響いた。
※ ※ ※ ※
城の前にある森は、見るも憚られる惨状を呈していた。
多くの木が薙ぎ倒され、あちこちで火が上がり、爆発まで起こっている。
その上空に、浮かぶ影が一つ。
「あら、なかなか楽しそうなことをしているわね」
永遠に赤い幼き月。幻想郷のヴラド・ツェペシュ。紅い悪魔。
レミリア・スカーレットは、その黒翼を大きく揺らす。
レミリアは戦場と化した森を見下ろすと、小さな唇の端を吊り上げた。
「さて、どこから蹴散らそうかしら?」
悪魔が乱入し、舞台はますます混迷を極め始めた。
運命の針が狂い出す。
想いは全て空回り。
デウス・エクス・マキナなど顕れない。
カーテンフォールには未だ遠く。
少年少女は踊り続ける。
【E-4〜F-4のどこか/森/1日目/夕方】
【追う魔術師と追われる魔術師】
【ジーニアス・セイジ@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、全身に擦り傷
[服装]:普段着、足は快速シューズ。
[装備]:ネギの杖@魔法先生ネギま!、快速シューズ、クロウカード『駆』
[道具]:ナマコ型寝袋、支給品一式、木村先生の水着@あずまんが大王、モンスターボール(空)@ポケットモンスター
海底探検セット(深海クリーム、エア・チューブ、ヘッドランプ、ま水ストロー、深海クリームの残り(快速シューズ))@ドラえもん
[思考]:負けてたまるかぁっ!
第一行動方針:アルルゥがいる場所から十分イリヤを引き離したら、相討ち覚悟でイリヤに特攻する。
第二行動方針:プレセアなら薫を倒せると信頼しているが、やっぱり心配。できればアルルゥのことを任せたい。
第三行動方針:もし生き残れたら、後で改めて湖底都市を探索する。
基本行動方針:主催者の打倒
参加時期:ヘイムダール壊滅後。ちなみにあえてクラトスルート。
[備考]:
ジーニアスは、薫がゲイボルグを投げた人物なのでは、と疑っています。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(大)、疲労(大)、全身に切り傷(応急手当済み、命に別状はない)
[装備]:S2U@魔法少女リリカルなのは、凛のペンダント@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考]:ひとりで殺れるもん!
第一行動方針:ジーニアスを殺す。できればさくら達に殺害現場は見せたくない。
第二行動方針:できるだけ悪評を流せる者を少なくしてこの状況を抜けたい。
第三行動方針:とにかく生き残りたい。
基本行動方針:優勝して、自分の寿命を延ばす。
※セイバールートの半年後から参戦。
※イリヤのついた嘘の内容
翠星石を殺したのはジーニアス
レンを殺したのは正体不明の魔術師
はやてには会っていない
※桜と梨々の知り合いの情報を聞いている。
【E-4〜F-4のどこか/森/1日目/夕方】
【イリヤの援護に向かう二人】
【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:血塗れ、左腕に矢傷(処置済)、魔力消費(大) 、疲労(大)
[装備]:パワフルグラブ@ゼルダの伝説、クロウカード『水』『風』
リインフォースII(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品
[服装]:梨々の普段着
[思考]:大丈夫。きっと、止められる!
第一行動方針:誰も殺さずにこの状況を収めたい。当面の目標はイリヤの援護とジーニアスの捕獲。
第二行動方針:リインのエリアサーチを定期的に使いながら移動し、友達を探す。
第三行動方針:他にも協力してくれそうな人を探す。
基本行動方針:襲われたら撃退する(不殺?)
[リインフォースIIの思考]:リイン、がんばるです!
※永沢、レックス、ジーニアスを危険人物と認識。梨々の知り合いの情報を聞いている。
【ベルフラウ=マルティーニ@サモンナイト3】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)、精神的疲労(まだ完全ではない)、墜落による軽い打撲傷
[服装]:『ザ・チルドレン』の制服姿(野上葵の物)
[装備]:クロウカード『火』『地』
[道具]:支給品一式、湿ったままの普段着
[思考]:あの少年……まさか!
第一行動方針:ジーニアスを捕獲する。イリヤは気に入らないが、さくらが行くようなので一緒にイリヤを援護する。
第二行動方針:召喚術師と交渉し仲間になってもらいたい。リインと八神はやてに期待。
出来ればメイトルパの少女(アルルゥ)とも交渉したい。 ジーニアスに裏切られたところを見たため、アルルゥにはやや同情的。
第三行動方針:みかの安否が心配。早く戻って合流したいが危険には巻き込みたくない。
第四行動方針:殺し合いに乗らず、仲間を探して脱出・対主催の策を練る。
基本行動方針:先生のもとに帰りたい。
[備考]:
ベルフラウは、ロワの舞台がリィンバウムのどこかだと思っています。
ロワの舞台について、「名もなき島」とほぼ同じ仕組みになっていると考えています。
(実際は違うのですが、まだベルフラウはそのことに気づいていません)
ベルフラウは、レックスが名乗るのを聞いていません(気絶していました)。
余計な危険を少しでも避けるため、ベルとだけ名乗っています……が、勢いでさくらに名乗ってしまいました。ダメダメです。
【E-4〜F-4のどこか/森/1日目/夕方】
【捕らえる怪盗と捕らわれた獣使い】
【梨々=ハミルトン@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:右腕骨折及び電撃のダメージが僅かに有り(処置済) 。
イリヤとベルフラウに確信的疑念。若干精神不安定。
[装備]:白タキシード(パラシュート消費)&シルクハット@吉永さん家のガーゴイル
:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:支給品一式
[服装]:白タキシード&シルクハット
[思考]:この子に話を聞けば何かわかるかも……。でも、また嘘を吐かれたらっ!
第一行動方針:生き残りたい。さくらだけは信じている。
第二行動方針:ベルフラウは間違いないと言っていたが、アルルゥが本当に危険人物か確かめたい(ベルフラウが嘘を吐いていると思っている。
第三行動方針:双葉かリィンちゃんの友達(はやて優先?)及び小狼を探す。
第四行動方針:殺し合いに乗ってない人と協力する。
※永沢、レックス、イリヤ、ベルフラウを危険人物と認識。薫の事も少し疑っている。
※ランクB〜Aの召喚術のため、梨々はワイヴァーンを使えません。タマヒポは使えます。
※桜の知り合いの情報を聞いている。
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)、背中に大きな裂傷、頭にたんこぶ、梨々に捕獲されている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料−1)、クロウカード『泡』
[服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている)
[思考]:う〜(ジタバタ)
第一行動方針:なんとかサモナイト石を取り戻して脱出したい。見捨てられたため、ジーニアスに対して強い敵意と不信感。
第二行動方針:イエローや丈を捜したい。放送前には城に戻る。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
【E-4〜F-4のどこか/森/1日目/夕方】
【仲間の救援に向かう戦士】
【プレセア・コンパティール@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:体力消耗(大)、中度の貧血、右肩に重度の裂傷(処置済+核鉄で、なんとか戦闘可能なまでに回復していたが、再び傷が開きかけている)
ツインテール右側喪失、思いきりハサミにトラウマ的恐怖、全身に無数の裂傷
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはA’s、エクスフィア@テイルズオブシンフォニア
[道具]:カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA’s、支給品一式(生乾き、食料−1)
[服装]:冒険時の戦闘衣装(ピンク色のワンピース、生乾き)
[思考]:二人とも、どうか無事で……!
第一行動方針:ジーニアスとアルルゥを援護する。イリヤには容赦無し。
第二行動方針:放送前には城に帰還して、レミリアと合流。
基本行動方針:ジーニアスとアルルゥが生きている間はゲームに乗らない。レミリアの捜し人を捜す。
[グラーフアイゼンの思考]:話しかける隙がない……。
※プレセアはアリシアの死を知った以降から参戦。
※グラーフアイゼンはこの状況を警戒しています。
【E-4〜F-4のどこか/森/1日目/夕方】
【チルドレン暴走中】
【明石薫@絶対可憐チルドレン】
[状態]:暴走状態。全身打撲及び火傷。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、バレッタ人形@ヴァンパイアセイヴァー
[服装]:バベルの制服(焼け焦げてボロボロ)
[思考]:の゛ー…………
基本行動方針:無差別攻撃。
[備考]:脳がオーバーヒートを起こしたため、暴走状態に陥りました。
周囲の物を手当たり次第に念動力でぶん回し、突発的に大爆発や地割れなどを引き起こします。
一定時間経つとぶっ倒れて元に戻るかもしれませんし、戻らないかもしれません。
【E-4〜F-4のどこか/空中/1日目/夕方】
【悪魔襲来】
【レミリア・スカーレット@東方Project】
[状態]:魔力消費(中)
[装備]:飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心、シルバースキンAT(ブラボーサイズ)@武装錬金
[道具]:支給品一式(食料−1)、思いきりハサミ@ドラえもん、クロウカード1枚(スイート「甘」)
[服装]:シルバースキンAT(シルバースキンの下は全裸、服は洗って干している)
[思考]:ちょっとだけ、私の時間を使ってあげるわ。
第一行動方針:とりあえずプレセア・アルルゥと合流。
または、そこらへんのやつを捕まえてフラン・レイジングハートなる人物・喋る杖の事を聞き出す。
第二行動方針:フランを知っている瞬間移動娘、及びフランをプレセア達に探させる。
第三行動方針:服が乾き、なおかつ時間があり、更に気が乗っていたら爆薬で加速の実験をする。
基本行動方針:フランを捜す。ジェダは気にくわない。少しは慎重に、しかし大胆に。
※フランドールに関する情報、
『紙の束』『赤い宝石』『レイジングハートと遊ぶ』『喋る杖』『貴女自身の魔法、スペルカードを使ってください』『仮面の女』
を手に入れました。
【F-4/橋/1日目/夕方】
【戦場に向かう二人】
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:背中に裂傷(応急処置済)、疲労(中)
[服装]:普段通りの服と白衣姿
[装備]:木刀@銀魂、魔導ボード@魔法陣グルグル、救急箱(プレセアの治療に使われたもの)
[道具]:支給品二式、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
[思考]:ジーニアス、死ぬなよー!
第一行動方針:ジーニアス達の援護に向かう。
第ニ行動方針:殺し合いのゲームに乗っている奴がいたら、ぶっ飛ばす。
第三行動方針:後で改めて湖底都市を探索する
基本行動方針:主催者の打倒。
参加時期:小学校事件が終わった後
【福富しんべヱ@落第忍者乱太郎】
[状態]:体のあちこちに軽い傷、疲労(大)、びしょぬれ。
[装備]:なし
[道具]:ヒラリマント(チョンマゲに纏わりつくように引っかかっている)
[思考]:ま、まってよう!
[備考]:凶暴化は一旦治った後、何かのきっかけでフラッシュバックのように再発した例も報告されています。
体力消費が激しいため、いつ気絶してもおかしくない状態です。
【ウツドン 死亡】
投下終了です。
支援、本当にありがとうございます。とても助かりました。
今回分かれた参加者達は、誰と遭遇するか一切不明です。
誰とも遭遇しない参加者がいるかもしれませんし、全員が一同に会するかもしれません。
ヒナが乱入するかもしれませんし、葵ベルカナが乱入するかもしれませんし、カナが乱入するかもしれません。
その辺りは後の書き手さんにお任せしたいと思います。
後、申し訳ありませんが、今から外出しなければならないので、修正要求への返事は深夜になります。
本当にすみません。
ウツドーーーーーーーーーーン!!!
今しがたフグリーンで進化した矢先に……
GJ!
しかしジーニアス・・・ドワーフの誓いといい、熱いな!
GJ
チルドレンの中で戦闘してても薫だけギャグっぽさを感じてしまうのは俺だけだろうか?
リーフの石を支給品にとか考えたことがあったのを思い出した
GJ! ウツドン、……とりあえず乙。
戦闘の最中であっても薫のツッコミがいちいち笑えた。
「無駄にカッコイイ技名つけやがって」とかw
あと烈破焔焦撃キターと画面の前で一人はしゃいでしまった。
混沌とした状況はまだまだ続きますな。
GJ!
タイトルをFに揃えて来たのは上手いな。
死者スレのレス数が増えてるのも有って誰か死ぬのかとハラハラしながら読みました。
ウツドン……さらばっ。
決着はしなかったけど危険すぎる分散をしてこれは先が楽しみだ。
あと状態表のアルルゥとグラーフアイゼンに癒された。
乙。
良い乱戦でした。
しっかし、まだ第一放送前なのにこのバトルの多さは異常w
おかしいなあ……マーダーは11人しかいないはずなんだけどなあ……
対主催同士の戦いも少なくないのが原因か?
あとマーダー予備軍が多いからな。11人よりもっ増えるやもしれん
なんか止まっているようなので……
支援がてら、キャラが留まっていたり再登場の可能性があったりする建物を大雑把に案内してみる。
いや、自分のためにまとめてたものなんですが、多少なりとも状況把握のお役に立てれば、と。
【LSロワ 地形案内】
[ ] の内の数字は大雑把な登場話数(wiki上での収録番号)。143話『Fighting orchestra/戦奏』まで。
A−3:工場(ファクトリアルタウン?)
・光子朗いわく「ファイル島のファクトリアルタウンとは部分的に似ているが、大きく異なる」。
しかし工場前には、『ファクトリアルタウン』と書かれた【看板】が立っている。[013]
・中に入るとセンサーが人を感知し、自動的に灯りがつく。[068]
・中では、機械が作られ、また分解されるという工程が全自動で繰り返されている。[068]
・しかし、オリジナルのファクトリアルタウンで重要な鍵を握っていた【電池】は見かけだけ?
文字を消しても工場の機能に影響なし[068]
・【洗面所】が存在。[116]
注)NG扱いの作品あり。工場の監視モニタ類を操作できる部屋は、通った話の中では出てきません。
C−3:塔
・目立つランドマークではあるが、既出情報の少ない建物。
・イシドロのスタート地点がここの最上階。しかし、降りてきても特に変わったものは見つからなかった?[042]
B−3:廃病院
・1階と2階が登場。お話の展開や病院一般の構造から、階段や入り口は複数ある模様。
・2階には【浴室】。浴室と言ってもかなり荒れている。蛇口を捻ってもお湯は出ず、水のみ。[080]
・2階はシャナ・小太郎組とグレーテルの戦闘で、壊れた部屋がいくらかある模様。[127]
B−7:タワー
・階は【展望フロア】と【1階フロア】の2フロアが登場。
その2つを繋ぐのは、2機の【高速エレベーター】と、外から丸見えな【非常階段】だけ。
・【展望フロア】では、以下の部屋が登場。
外を見渡せる【展望室】、放送可能な【放送室】、【トイレ】(直接の描写なし)。
・【展望室】には、高速エレベーターや非常階段の出口が直接繋がっており、エレベーターの動きが分かる。
他に、1階管理室と直結した非常用内線電話や、備え付けの双眼鏡などがある。
展望室の窓の一部が、割られて破れている。
・【放送室】の設備を使ってタワー全体に放送をかけることができる。ただし一方通行。[024][088]
・【1階フロア】では、【管理室】と【ホール】が登場。
・1階【ホール】は、普通にタワーに入った最初の広間。あまり広くなく隠れる場所もない。
展望室に繋がる高速エレベーターもここに繋がっている
・1階【管理室】では、電源の操作や監視カメラの確認ができる。展望室の非常用内線が繋がるのもココ。[125][137]
D−4:学校
・外見は【野比のび太たちの小学校】に酷似。
・階数は不明だが【理科室】には人体模型と骨格標本。[087]
・4階にある【4−2の教室】付近は、度重なる戦闘で激しく損傷している。[112][136]
4階からドアと窓を破って叩き落される者はいるわ、廊下には消化剤が撒き散らされているわ……。
・1階には【保健室】。こちらも窓が割れ戸棚は壊れ、大きく損傷している。
現在、火事の危険。[119][138][141]
・学校の常として、階段は複数ある。下りる人と上る人が入れ違いになることも[119]
・プールの傍には【更衣室】。[141]
・体育館には【体育倉庫】。[142]
注)NG扱いの話あり。家庭科室は、未登場です。
F−3:城
・城の全貌は、未だ明かされていない(広さだとか、階数だとか……)
・【地下室】[004]が存在。
・【城の一室】[074、078、084、097]は、
葵のテレポートを駆使した超能力バトルによって壊れた家具で埋もれている。
そのせいで、近くの部屋の家具が根こそぎ消えている?
・【礼拝堂】はレミリアとアルルゥの激戦で大きく壊れている。[091]
(ゲイボルグの飛んでいった方向から考え、城の南側、それも少し南西寄り?)
・【食堂】には暖炉。[102]
・2階にある【書庫】には、色々な本が置いてある模様。[108]
魔術関係の書物もあるかも?
G−7:病院
・描写の少ない建物。少なくとも3階建て以上。
・3階に【手術室】[005]。1階には【正面玄関】と【裏口】が登場。
他にも【診療室】【エレベーター】【屋上】などが登場(描写は少ない)
H−5:シェルター
・入った者が閉めれば、後続の追っ手は踏み込めない。[054]
・【地上部】と【地下部】の2層のフロアが登場。[126]
・地上部の住居空間?の他に、地下に【機械室】が存在。
他にも物資を置いた部屋などがあるはずだが、描写はまだない。
以上。
かなり簡単な書き方になってしまいましたが、プロット段階での矛盾回避にはこの程度でもなんとかなるかと……
GJ!
そういえば出てたなという設定が結構有った。
>>571-572曰く
各施設は各参加者達の世界に準じているものが多かったりする。
(ジーニアスによればA-8にあるのは4階までの救いの塔らしい。
なので、各施設がどのようなものか雑談しない?
ちなみに自分の予想だとG−7:病院 は禁書のカエル医師の病院。
F−3:城はドラクエXのレヌール城。
C-4:東方の神社。原作未プレイだから賽銭が少ないということ以外知らない。あと腋巫女。
E-8の塔は中身まで救いの塔再現されていたら面白いんだけどな。
妄想が膨らむw
没ネタでは北西のオブジェが絶チルのあの椅子だっけ。
北東の港町がブラックラグーンのロアナプラだとかリリカルなのはの海鳴町だとか考えたけど、
関係するキャラは遠いんだよな。近いキャラでシェルターのアリサ&はやてか。
ロアナプラだと西の橋に絞首紐がぶらさがってたりしそうだw
C−4神社は東方Projectの博麗神社の他にひぐらしの古手神社ってのも有るよ。
ちなみに博麗神社は原作では幻想郷と外世界の結界の境界に存在する重要ポイント。
紅魔郷で負けた後、レミリアがよく遊びに行っている。
古手神社は祭具殿に古い拷問器具が山ほど眠っているどきどきホラーポイント。
梨花の神社であると同時に梨花が殺されること数千回の因縁深い場所。
ひぐらしの神社忘れてたぜ。
あと北東の町にはガーゴイルの御色町の商店街を考えたけど、
双葉も梨々も微妙に遠いんだよな。
そうそう、南西の住宅街には「魔夜」と表札に書かれた家があったな。もちろんパタリロネタ。
こんな感じで住宅街や平原に散らばってる家1件単位でもいいなら、全参加者に因縁ある建物が1つは作れそうだ。
ひぐらし関係は、ひょっとしたら湖の底に沈んでたりして……
あくまで「○○っぽい感じがする建物」ってだけで、本物じゃないよね?
建物関連の小ネタは大歓迎だし、あまり細かく考える人もいないだろうけど、
場合によっては「建物が登場する原作を未見なので書けない」とかなりそうw
救いの塔関連はテイルズオブシンフォニア攻略本や攻略サイトに
MAPのデータがあれば認識しやすいな
きっちり描写された場所(学校の保健室など)は無視しちゃまずいだろうが、「〜と同じだった」とか描写が薄い場所は勝手に改変していいんじゃないか?
ファクトリアルタウンでも救いの塔でも完全に同じってことはないだろうし、
工場の一部にポケモンの火力発電所が混ざってたり、塔の一部がボブルの塔だったりしてもいいと思う。
この島はジェダが魔力で作ったものらしいし、多少の無茶は許される気がする。あんまり突拍子もないものはダメだけど。
あと、
>>571-572氏GJ!
ボブルの塔って一瞬マリオでバブルがいっぱい飛びかう嫌なステージがあるのかと思った
確かに、工場はファクトリアルタウンに似て非なる建物らしいしな。
神社とかも、看板は博麗神社で中身は古手神社とかってこともあるかも
あ、今見たら013話に、
※ファクトリアルタウン、救いの塔は両方とも中身はフツーの工場と塔になっております。
ちなみに塔は三階建て。
って書いてあった。つまり、中身は自由。
急に死ななくなったな
いやさっきのSSでも死者出たじゃん
ポケモンだけど
130話で泉光子郎が死んで以来でてないのか。
急にってわけではないし、ある程度予想できた事態ではあるけど。
(放送直前で、どのキャラもフラグがたまってる)
フラグぶっちぎって殺すのもロワらしくてありだと俺は思う。
各自にフラグがたまりすぎても、それにがんじがらめになって身動きとりにくくなるからねぇ
放送はまだ遠いぞー。直前ってほどではない。
夕方まで進んだのが14人しかいないし、そいつらも全員大戦に巻き込まれてるから描写必須。
昼間にまだ二人いるうえ、学校や工場やタワーまわりも一朝一夕で書ききれるとは思えない。
パタリロたちも山小屋チームもシェルター組も残ってる。
時間さえあれば積極的に書くんだがなあ。どうも最近忙しすぎる。
シャナ、小太郎、双葉、紫穂予約します。
双葉と言う単語を見る度に次回には死ぬだろなーとか思ったりする
さて、焼かれてくるか
そういやジーニアスがスパイラルフレア使ってたけど、
イリヤとの初戦でインディグネイション使おうとしていたから、
原作におけるテクニカルとストロングの特技、細かく考えずどっちも使えるって事で良いのかな?
なに、気にすることはない。
プレセアも両方使ってた気がするけど、
話が破綻するようなものじゃないし。
参戦時期的にメテオスォームが出てきたら
さすがにまずいけどw
テクニカルとストロング両タイプ混在させることもできたんじゃないっけ?
今のところ術技の系統はかぶってないから、原作準拠でもいける。
そういえば二段変化する特技のみ、GC版の裏技で二重習得出来るらしい。
……このジーニアス、システムを極めてやがるw
なんだってー!?
てことはジーニアスはGC版で、プレセアはPS2版だったのかー
ところで、TS混在させてもスパイラルフレアと
サイクロンは同時には無理じゃなかったっけ?
ごめんなさい、完全に忘れてました。ありましたねそんなシステムorz
ジーニアスの術は別にスパイラルフレアである必然性はないので、エアスラストに変更します。
ついでにプレセアが月閃空破使ってたので、こちらも翔月双閃に変更します。
これからも問題になる可能性があるので、wikiのキャラ紹介に使える技を載せておきます。
乙かれさん〜
でも598で書かれてるけど、TとSは混在できるから、SSでその系統の技を使っていない
プレセアの爆焔焼破と岩砕襲撃と崩襲地顎陣は完全に使用不能とは決められてないんじゃ?
601 :
597:2007/06/28(木) 17:33:20 ID:4oGmP9Pi
ああ、混在ってそういう意味か。
ちなみに597で言ったのはGC版のみの裏技で、
魔皇刃と魔神連牙斬など同系統の特技を二重習得する技。
(二段変化する技のみ)
これを使わないとサイクロン+スパイラルフレアは無理っぽい。
602 :
598:2007/06/28(木) 18:03:27 ID:qCQ/QH3/
む、雑談の一環だと思ってたから、修正までさせてしまったのは少々罪悪感が。
>>599氏の真摯な対応に感謝&乙です。
ゲーム系キャラの割合
RPG:6人(レックス、タバサ、ジーニアス、プレセア、ネス、リディア)
格闘:3人(レン、白レン、リリス)
シューティング:2人(レミリア、フランドール)
SRPG:2人(ベルフラウ、アルルゥ)
サウンドノベル:2人(イリヤ、梨花)
アクション:1人(リンク)
パズル出身はやっぱいないなー
ゲームキャラ16人もいたのか
>>603 媒体こそ漫画やアニメだけど、ポケモンやデジモンも一応ゲーム原作といえるかな?
一応漫画・アニメキャラだろ
イエローとかだとゲームにはいないし
リリカルなのはも元々は……
まあ出てたのは微妙に設定違うなのはと、全くの別設定のアリサだけだけど。
そういうことなら
「ほうっておくと失明するかも」くらいの記述が適切かもしれないですね
610 :
609:2007/06/29(金) 23:42:08 ID:7nGqIPuR
誤爆失礼
>>603 パズルゲームのロリショタっていったら・・・
アルルとか?
>>611 アルルはRPGカテだと思われ
強いて挙げればパトラ子とか?ダメか・・・
気がついたら寝ていた……。すみません、今日中の投下は間に合いそうもありません。
明日の昼間に投下したいと思っています。
お疲れ様です。
ゆっくり推敲なさってください……
裸で支援の準備しておきますね
ふと気付いた。
ホムンクルス関係の参加者って結構多いな。
イリヤとヴィクトリアは言わずもがなでフェイトもそうだし、
広義の意味なら人工生命体なリルルもホムンクルスだし、
禁書でもホムンクルスが作中に登場するばかりかパラケルススの末裔まで出てくるし。
まあ関係ないから支援準備。
二時くらいに投下します。少々長いので、時間のある方支援お願いします。
お待たせしました。投下します。
よっしゃ、支援行きます!
『病院の探索は私がしてくる。小太郎は大人しくここで休みながらそいつの容態を見ていること』
何やそれ勝手に決めんなという小太郎の反論を早々と無視し、シャナは病院内を散策し始めた。
真っ先に向かうべき場所は既に決まっている。グレーテルがシャナたちに襲撃をかける前に銃声があった一階の廊下だ。
先の襲撃で、時間を大幅に浪費してしまっている。
ケガをして動けない人間がいたとしたら、手遅れになっているかもしれないほどの時間だ。
そもそも、仮に生き残りがいたとしても、幾多の銃声や破砕音が轟いた院内にいつまでも留まる人間はいるだろうか?
誰もいないか、それとも死体が転がっているか。
調査を買って出たものの、シャナはこれからの成果に大した期待など寄せていなかった。
逃げ場のない血の臭いが鼻腔をひどく刺激する。
一階の、とある場所にたどり着いたシャナを最初に迎えたのは詰まるような鉄の臭いだった。
そこにはバケツをひっくり返したような、目が痛むほどの赤が床や壁にこびりついている。
恐ろしいことに、それは廊下の惨状に文字通り色を添える程度の前座に過ぎない。
異形の光景。その中心は、血の池の中に浮かぶ、上半身と下半身が泣き別れになった少女の遺体のほうである。
さしものシャナも表情を一段と険しくした。
誰かが死んでいるかもしれないという予測はしていたが、その死体が一刀のもとに半身を両断されているとは、
予想だにしなかったからだ。
いかな名刀を用いようとも、素人にこんな芸当はこなせまい。
実のところ、シャナは闘争を日常としてきたが、人間の死体を見たことはあまりない。
というのも、彼女は封絶という自在法が開発された以降に誕生した、近代のフレイムヘイズだからだ。
封絶とは一種の結界である。
極少数の例外を除けば、封絶内において動けるのはフレイムヘイズと、
その宿敵たる紅世(ぐぜ)の徒(ともがら)だけだ。
遥か昔には卓越した技術を持つ人間が徒を倒すという事例もあったが、
封絶が紅世の住人に広まってからは、人間は無自覚のうちに一方的に狩られるようになった。
そして、徒に存在を喰われた人間は、最後には死体も残らずに世界から消えることになる。
ゆえにシャナは床に落ちている死体を見て、喰い残しがあるなんて珍しいという感想を一瞬持ち、
すぐにここはいつもの戦場とは違うのだと思い直した。
そう、いつもとは違う。
自在法の基礎とも言える封絶の展開ができないのだから。
ジェダがどのような手を用いて、封絶の展開を妨害しているのかは判別がつかないが、
なぜ、妨害したのかを推測することは容易である。
一つは、恐らく興を削がれたくなかったからだ。
封絶が展開可能であれば、徒がそうしているように、人間を一方的に狩ることができる。
この殺し合い、過程に意味があるのか結果に意味があるのかは分からないが、
フレイムヘイズによる一方的な虐殺を、ジェダは望んでいないのだろう。
(尤も、シャナはジェダの意に沿って虐殺するつもりなどさらさらなかったが)
そして、もう一つ。あるいはこちらが本命か。
封絶が別の意味でゲームを破綻させ得ると、ジェダは考えたのかもしれない。
封絶には『外部からの干渉を妨げる』という性質がある。
であるから、フレイムヘイズと徒は封絶を挟んで内と外で戦うことはなく、
たいてい同じ封絶内で戦闘を行っているのである。
ジェダの力がどういったものなのかは未だに判別できない。
だが、もしジェダによる首輪の遠隔爆破命令を防ぐことができるとしたら、
シャナの知る限り封絶を置いて他にはなかった。
何も、会場全体をカバーするほどの大規模な封絶を展開したいわけではない。
天目一個がそうしていたように、人間の周囲を覆う程度、
最悪首輪の周りだけでも展開できれば、目的は達成できる。
だが現実は厳しく、ジェダの準備は周到であった。
基本にして切り札でもある自在法は、発動の気配すら現れてくれない。
もどかしさを感じたシャナは不満を押し出すように溜息をつく。
再びむせるような血の臭いと、宙を漂う古い埃が鼻を強くついた。
顔を僅かにしかめ、しかしすぐにそれを掻き消し、表情を引き締める。
いつまでも悩んでいるわけにはいかない。
目の前に、やらなければならないことがあるのだから。
シャナは眉尻を強く吊り上げ、口を真一文字に結び、改めて臭いの元凶である死体を眺めて呟く。
「おまえは確かに死んでいる。だけど、分かる?
おまえはまだここにいるの。まだ、存在が残っている。
その証拠におまえは死んでいると私が認識できるのだから。
存在が消えたら、生きた証も死んだ事実も残らない」
死人は答えない。そんなことはシャナだって当然理解している。
これは会話でも命令でもなく、頼み、あるいは許可の取り付けだった。
これからシャナがすることに対しての。
「私はおまえが誰なのかは知らない。
けど、おまえがここにいたこと、ここで死んだことは私が今心に刻む。
……だから、悪いけど協力してもらう」
死体を説得するかのようだった。
断りを入れたシャナは右手で死体の上半身の二の腕を掴み、左手で下半身のふくらはぎを掴む。
そして、それら両方を持ち上げ病院の北側の出口を目指して歩き始めた。
持ち上げた遺体から乾ききっていない血がポタポタと垂れて廊下を汚し、赤い斑点が軌跡を残していく。
「我ながら貧乏臭いなぁ……まぁ、文句言ってもしゃあないか」
ぼやきながら、小太郎は病室から廊下へと出るべく、扉を開けた。
その目的は先の戦闘で投げた手裏剣の回収という、単純にして少々情けない理由だった。
かっこ悪いとか、せこいなどと見栄を張っている場合ではない。
気が底を尽きそうな現状、利用できるものは何でも利用するべきなのである。
本来なら、回収に出向くのはシャナが戻ってくるのを待ってからのほうがいいが、
彼女が病院をどのくらい探索してくるつもりなのか判別がつかない。
だいたい、シャナがこちらの反論を聞かずに勝手に出て行ったのだから、
大人しく言うことを聞く理由などどこにもない。小太郎はそう考えた。
それに、一度思い立った考えを押さえ込めるほど、彼は大人ではなかった。
「少しだけ、や。すぐに戻れば文句はないやろー」
そう言って、小太郎は扉を閉めて、先ほど戦闘があった場所へと歩き始めた。
小太郎が出て行ってから数十秒後。
ガチャ、という音を立てて病室の扉が再び開かれた。
「接触する前に得られるものは貰っておかないとね」
病室に忍び足で入ってきたのは黒タイツの少女、三宮紫穂だ。
シャナと小太郎への接触の機会を何となく逃してしまっていた彼女は、サイコメトリーで
病室の様子をずっと窺っていたのである。
そして今、小太郎とシャナの両者が出て行ったのを見計らって、
こっそりと情報を掠め取るつもりでやってきたわけだ。
「まずはこの子。双葉ちゃんだっけ」
そう言って、紫穂はベッドの上で寝息を立てる双葉の額に手を当てる。
ここに来てからサイコメトリーの調子は悪いが、浅い層の記憶を読み取るくらい、紫穂にとっては造作もない。
(吉永双葉。錬金術、動く石像ガーゴイル。特殊な技術がある世界みたいだけど、本人は喧嘩っ早い普通の女の子。
知り合いは……梨々=ハミルトン? 確かこの子の名前は名簿にあったわね。
ここに来てからは……、神楽という子を助けようとして、……ってこの銀髪の子はさっき病院に来た子?)
しばらくして、紫穂は静かに手を離す。
事件の被害者の情報はあらかた掴めた。
加害者であるブルーはすでに廃病院をあとにしているのだから、次に調べるべきは凶器だ。
幸いなことに、双葉を刺した鋏はベッドの横にある机の上にポツリと置かれていた。
紫穂はしめたとばかりに鋏を持ち、意識を集中させる。
物体の情報を読み取ることは人間と比べると容易で、瞬く間に鋏の記憶が流れ込んでくる。
(ただの鋏かと思ったけど……まさか人形の持ち物だったなんて。
ホント、何でもありだわ。
この鋏が誰に支給されたのかは、と……。なるほどね、ブルーが誰かの持ちものを奪ったのかしら?
ということは、あの子はすでに誰かを殺しているのかもしれないわね)
ブルーに会ったときの土産話が増えたことに、紫穂は笑みを浮かべる。
本人しか知りえないはずの、しかし絶対的な事実を指摘されたとき、ブルーはどのように取り乱すのだろうか。
そのことを考えると、楽しくて仕方がない。
普段はバベルの下で警察の捜査の手伝いという、言ってみれば正義の行いばかりしてきたから余計にそう思う。
誰にも縛られず好き勝手に力を使い、他人を陥れるシナリオを練ることは背徳的な楽しさがあり、紫穂はそれに没頭した。
ふと、冷静になって今の状況を考えてみる。
――これは、もしかしたら千載一遇のチャンスなのではないか?
実力者たる小太郎とシャナはここにいない。
自分の手の中には、一振りの鋏。
そして背後にいるのは、意識不明の少女。
紫穂の喉がごくりと唾を嚥下する。
人を殺すのに、これ以上の好機があるだろうか。
方法は至って簡単だ、先ほどブルーが刺した場所と同じ場所を、
手に持っている鋏で同じように刺せばいい。
いや、治りきっていないのだから刺すというよりは表面を撫でる程度でも充分。
実行可能な計画であると意識するたびに、手中の鋏に必要以上の力が入り、カタカタと震えてくる。
紫穂は恐怖と高揚感が入り混じった感情を、制御できなくなり始めた。
暴れ馬の手綱を握るように、必死で自身に言い聞かせ、なだめようとする。
駄目だ、これでは肉に刃を突き立てることなどできない。
何とかして震えを止めないと……、そうだ、深呼吸をすればいい。
深呼吸を三回してから、振り返ってそのまま胸の辺りに突き刺せばいい。
そうだ、そうしょう。
深呼吸一回目。頭の中をすっきりさせて、今からやることの整理。
深呼吸二回目。手の震えが少し治まってきた。大丈夫、これなら三回目と同時に――、
「ん……、何で、あたしは……生きているんだ?」
突然の声に、心臓が跳ね上がる。
反射的に振り返ると、意識を取り戻した双葉の姿があった。
双葉はベッドに横たわったまま、まだ焦点が合わさりきらない双眸を紫穂に向けて尋ねる。
「あんたが……助けてくれたのか?」
言葉を何一つ用意していなかった紫穂は焦りながら、
「……違うわ。今、あなたを助けた人たちを呼んでくるから少し待ってて」
「あ、待っ――」
ボロを出さないように、逃げ出すのが精一杯だった。
病室の扉をバタンと閉めてから、紫穂は早まる鼓動を落ち着かせようと胸に手を当てる。
(……私も、まだまだね。あんなことで取り乱すなんて。……でも、よくよく考えてみたら、
今双葉ちゃんを殺したら、シャナちゃんや小太郎君と合流しづらくなるかもしれなかった。
なら、今はこれで良かったのかもしれないわね。そろそろ覚悟を決めて、あの二人に接触してみるかな)
不測の事態に後押しされる形で、紫穂は決意し、歩き出した。
紫穂はサイコメトリーで得られた情報に絶対の信頼を寄せている。
そして、自分の描くシナリオが完璧であると信じて疑っていない。
先ほど偶然双葉が目覚めたことも、想定していなかったこととはいえ、とるに足らないことだと思っている。
確かに、これは些細なことだった。
だが、どんなに小さなことでも、積み重なれば話は違う。
場合によっては、状況に合わせて常に修正を繰り返しながら進まねばならないときもある。
そのことに気が付かなければ、思い描く脚本は根底から破綻することだってあり得るのだ。
掛け違えたボタンは、どこかで直す必要があるのだから。
* * *
「三枚目、と。これで全部やな」
二階の乱雑とした一室。そこには回収した手裏剣をしまいながらニコリと笑う少年の姿があった。
犬上小太郎である。
笑みによって、常人よりも目立つ犬歯が更に強調されている。
「さて。シャナに見つからんように戻らんとな」
広くない廊下であるから、目的のものはすぐに見つかるだろうと思っていたのは大きな間違い。
廊下にはシャナとグレーテルが破壊した扉の破片や、崩れた壁が散乱していたからだ。
それでも、廊下に落ちていた二枚の手裏剣を見つけるのはまだマシだった。
問題は最後の一枚。
これだけは廊下ではなく、シャナがグレーテルに接近するために散々荒らした部屋の中にあったのである。
そのため、三枚の手裏剣を見つけるのに思いの外手間取ってしまった。
小太郎は両腕を天井のほうへと思い切り伸ばして疲労感を拭いながら、何となく部屋の窓を通して外を見る。
(そういえば、さっきも外を眺めたからあいつの襲撃を避けられたんやな)
小太郎は少しのんびりとした気分で、緑に埋め尽くされた景色を楽しむように窓の外を眺める。
つい先ほど、シャナとともに命の危機を乗り越えたばかり。
襲撃がそう連続で起こるはずがない、そもそもこんな森の中にそうそう人が来るはずなど――、
途端、小太郎の表情に緊張が刻まれた。
予想に反して、誰かが病院の敷地内を歩いていたからだ。
その人物は長い黒髪で、堂々とした立ち振る舞いを見せる、だけど少々背が低い女の子で――、
「って、シャナやないか。脅かすな、まったく……」
軽い文句が口をついて出る。窓を隔てているため、当然彼女には聴こえていないだろうが。
「しかし、あいつ外に出て何やっとるんや?」
病院内の探索はもう済んだのか? 何か外に出なければならない理由があったのか?
どこか腑に落ちない小太郎は目を凝らしてシャナを観察する。
右手と左手、それぞれの手で何かを持っている。
左手の何かは見間違いでなければ靴を履いているように見えた。
右手の何かは錯覚でなければ桃色の髪の毛が生えているように見えた。
右と左、両方を足せば一人の人間になるような気がした。
小太郎は息を詰まらせる。
喉がカラカラに干上がっていく、だというのにそれとは対照的に全身からは嫌な汗が噴出してくる。
金縛りにあったように、身体が動かない。
小太郎が唖然としている中、シャナはふいに脚を止めた。恐らく、まだ小太郎には気付いていない。
シャナは両手に持っていた人間だったものを地面に置き、ランドセルから何かを取り出した。
両刃の西洋剣、マスターソードだ。
シャナは取り出した剣を頭上高く掲げる。
木々を縫って辿りついた日の光が、刀身を微かに煌かせた。
光を受けた剣。剣を振り上げた少女。
彼女の眼下。地面に横たえた人間の上半身。
その構図が何を意味するのか。分からない小太郎ではない。
だから小太郎は窓を壊さんばかりの勢いで乱暴に開けて、2階から躊躇なく外へ飛び出し。
そして、叫んだ。
「やめ――!」
遅かった。シャナは叫びよりも早く、マスターソードを振り下ろす。
小太郎の予測と違わない、断頭台の如き光景が広がる。
ぐちゅり、と水っぽく聴こえたのは首の肉が潰れる音。
あまりにも生々しいその音は、未だ少女の体内に血が詰まっていたことを教えてくれた。
剣が首を断ち切り、地面にめり込んだ後、ドロッとした赤い液体が少しだけ染み出し、その勢いはすぐに弱まった。
小太郎は二階からの跳躍を終え、地面に着地する。
そこで一瞬たりとも立ち止まらない。
その勢いのまま、シャナのほうへと駆け寄り、今しがた首を落とされた少女の遺体を見た。
遺体の皮膚の色や状態、死斑の様子からシャナが探索中に殺した人間ではないだろうという予測はついた。
恐らく、この少女が廃病院の最初の戦闘の犠牲者だったのだろう。
ならばなぜ、シャナは死体を損壊させたのか?
小太郎にはそれが分かった。
短い付き合いながらも、シャナの性格は掴めているから。
だからといって何も言わずに、容認するわけにはいかない。
「……一応訊いとこか。どういうつもりや?」
「病室で待っているように言ったはずだけど?」
「はぐらかすな」
互いに、視線は逸らさない。
一歩も引かないという意思を前面に押し出し、にらみ合いが始まり……、
しかし長くは続かない。
緊迫した雰囲気に耐えかねたというよりは、こんなことをしても時間の無駄だとばかりに口を開いたのはシャナだった。
彼女は自らの手で首を跳ねた遺体を指差し、
「一階で死んでいたコイツを見つけた。多分、拡声器や銃を使っていたのはコイツね。
死体の近くに幾つも弾痕があった。さっき私たちを襲った銀髪がコイツを殺したのかどうかは分からない。
まぁ、アイツが持っていた槍を使えばこんなふうに強引に切断――」
「ちゃうわ! そんなこと訊いているわけやない!
俺は何でおまえがこの子のことバラしたのかって訊いとるんや!」
言葉に苛立ちが乗り始める。対するシャナはあくまで冷静だった。
やれやれとでも言いたげに、冷たい瞳をたたえながら答える。
「首輪を外すにはサンプルがあったほうがいいに決まってるじゃない。そんなことも分からないの?」
予想通りの返答が来たことで、小太郎は憤りを隠せない。
まただ、またこの正論だ。吐き気がしてくる。
首輪を外すためには予備があったほうがいい。
だが、誰かを殺して手に入れるわけにはいかない。
ならば、死んでしまった人間から盗るしかない。
小太郎だって分かっている。綺麗事だけでは、生きていくことなどできない。
ましてや、ここは誰しもが死と隣り合わせの島なのだから。
それに小太郎自身、幼いころから汚いことは散々見てきたし、自らその片棒を担いだこともあった。
だけど。
ネギと出会った今の自分が、死んでいるとはいえ人間を解体するという行いを、
易々と肯定するわけには行かなかった。だから、
「お前のそういうところが気に入らないわ」
そう吐き捨て、小太郎は院内へ戻ろうと歩き出す。
質の悪い不良のように、両手をポケットに突っ込み、背中を丸めて足早に歩を進める。
そんな小太郎の背に、
「――はっ!」
短い、しかし力強い声が届いた。
大した興味もなかったので首だけで振り返ってみると、
シャナが逆手に持ったマスターソードを地面に突き立てていた。
それから数瞬の後。
ボン、という破裂音が響き、小規模な爆発と共に土と草が飛び散り、地面に穴が穿たれた。
その行動を不可解に思った小太郎は、脚を止めて、今度は身体ごと振り返る。
地面とシャナを交互に数回見やってから、やはり行為の意味が分からなかったので、
心に浮かんだ疑問をそのまま口から出してみた。
「……何をしとるんや?」
「対価よ」
「対価?」
やはり意味が分からない。続きを催促しようとしたが、
それよりも早くシャナが口を開いた。
「私はコイツから首輪を奪った。だから、その対価としてコイツを埋葬してやるの。
墓を作るくらいでコイツが許可をくれるかは分からないけど」
返答を聞き終えた小太郎は、それから逡巡し、
「……対価、か」
シャナの言葉を反芻してみた。
すると、小太郎は自覚できるくらい自分の険の表情が薄らいだのを感じた。
そして更に数秒考えて。
無言のまま墓穴へ近づき、自然と遺体を埋める手伝いを始めた。
その様を見たシャナは不敵な笑みをたたえながら、挑発的に口を開く。
「病室に戻るんじゃなかったの?」
「うるさいわ。おまえのやり方は気に入らんけどな、
死んだ人間をこのまま野ざらしになんかできないっていうのは俺も同じや」
「だいたい、何で外に出てきたのよ? 何度も言ってるけど病室で待ってるように言ったでしょ?」
「俺はそれを認めた憶えはないで。おまえが勝手に決めただけやないか。
とっととこの子のこと埋めて戻ればええんやろ」
シャナはまだ何か言いたげな様子だったが、どうにか押さえ込んだらしい。
二人は黙々と少女の墓を作り始める。
* * *
数分後。
少女を埋めるのに、長い時間はかからなかった。
人間大の穴を掘るという難儀な工程は、シャナが地面を爆破してあっという間に済ませたし、
遺体を穴に入れた後に土を被せるという工程も、二人がかりだからすぐに終わった。
出来上がったのは墓と呼ぶにはあまりにおこがましい粗末なもので、盛り上がった土だけがその存在を主張していた。
二人は、不自然に高くなった地面を見ながら、それぞれ思いを馳せる。
シャナはビュティの名が刻まれた首輪を丁重に自分のランドセルにしまいこみ。
小太郎は眉尻を少し下げながら誰にあてるでもなく言葉を発した。
「結局、この病院で何があったんやろな……」
「あいつが起きないことには何も分からないわね」
「――教えてあげましょうか?」
第三者の声が響き、小太郎とシャナは振り返る。
病院の外壁、くすんだ灰色を背にして、一人の少女が立っていた。
「そんなに警戒しないで。私は三宮紫穂、あなたたちの敵ではないわ」
紫穂は両手を挙げて、敵意がないことを強調し、言葉を続けようとして――、
突然、ふわっと吹いた風に目を瞑る。
紫穂が次に目を開いたときには、視界の半分近くを銀色が陣取っていた。
一足飛びで間合いを詰めたシャナが持つ、マスターソードである。
フェミニストを自称する小太郎は、見知らぬ少女にいきなり刃を突きつけたシャナに対して、
「また、シャナの病気が始まったんか……」
怒るのではなく、呆れていた。
憤りよりも先に、あぁ、こいつはこういうやつやもんなー、というある種の諦めが湧いてきたのだ。
もっとも、シャナが理由もなく危害を加えるわけがないという信頼があるから、焦ることなく見物しているわけだが。
シャナは脱力した小太郎を尻目に紫穂を凝視し、
「気に入らない」
開口一番、威圧感を乗せてそう言い放った。
目前に構えられた剣と相まって、全身が軋むような悪寒を感じる紫穂。
しかし彼女は、ここで屈するわけにはいかないとばかりに奮起して言葉を搾り出す。
「……会ったばかりなのにひどい言いようね。何でかしら?」
「理由は二つ。一つは、おまえが今までずっと病院内に隠れて私たちのことをコソコソと監視していたから」
紫穂の呼吸がほんの一瞬だけ確実に止まった。
なぜ、監視していたことがばれたのか?
自分がサイコメトラーであることを知る人間は、薫と葵しかいないはずなのに。
まさか、シャナもサイコメトラー、あるいはそれに準ずる能力の持ち主なのか?
「あー、やっぱ気のせいやなかったんやな。病院の中に絶対誰かいると思ってたんやけど、
どこ歩いても全然気配が近づかないから勘違いかと思ってたで」
「こいつは、私たちに見つからないようにこっそりと隠れながら様子を窺っていたのよ。
運がいいのか勘がいいのか知らないけど、ようやく尻尾を出したわね」
紫穂の頭の中に散っていた冷静な部分が総動員される。
(……勘? 今、この子は勘って言ったの? だとしたら……)
まだ、シャナたちは紫穂の能力には気付いていない。
紫穂の能力を知った上で詰問しているのだとしたら、逃げ場などどこにもなかったが、
そうでないなら打つ手はある。
「隠れていたことは謝るわ。でも、仕方がなかったの!
私には、こんな島で一人で生き抜く力なんてないから、誰が信頼できるのかを知りたかったのよ!
周りは知らない人ばかりなんだから、警戒するのは当たり前でしょ!?」
感情的に訴えながら、少々演技が臭いかもしれないわね、と心中で紫穂は呟く。
だが、一応これで筋は通るはず。
人間なら、多かれ少なかれ誰もが持つ弱さ、それを盾に訴えれば、
否定する材料などありはしないだろう。紫穂のように、相手の心の中を見通せない限りは。
実際、シャナもこの点を深く追求するつもりはなかったらしく、すぐに次の話に移り変わる。
「そしてもう一つ。これは……、もしもおまえの文化圏で当たり前なのだとしたら謝るけど」
シャナは極僅かに声のトーンを落として、
「そんな格好をした胡散臭い人間なんて、そう簡単に信じられるわけないじゃない」
はっきりと告げた。
瞬間、紫穂の中の張り裂けそうな緊張感は完全に吹き飛び、代わりに猛烈な羞恥心がこみ上げた。
誰かにこの格好を見られたら、不審に思われることくらい分かっていた。
覚悟もしていた。
が、先ほどから続いていた緊迫した雰囲気を乗り切るために、
用意していた覚悟は頭から抜けてしまっていたのである。
改めて自分の格好を意識してしまった紫穂は、恥ずかしさと微かな惨めさで胸が一杯になる。
「シャナ、そうやって切り捨てるのは良くないで?
あれや、この子はきっとクノイチなんや。だから目立たんようにこんな真っ黒な格好を――」
「違うわよ!」
頭の中がぐちゃぐちゃになった紫穂はやけくそになってツッコミを入れた。
小太郎はフォローのつもりだったのだろうが、どう考えても追い討ちにしかなっていない。
考えることを放棄し始めた紫穂の脳が、論理の迷路をショートカットしろと命令してきて、
彼女は呆気なくその命令に屈してしまう。
どうせこの格好になった経緯を説明する必要があったのだ。
感情のままに、全部ぶちまけてしまえばいい。
紫穂はそう結論づけて、叫んだ。心のどこかにあったブレーキなんて、殆ど壊れている。
「私だって好きでこんな格好しているわけじゃないわ!
神社にいた時に男の子に襲われて、バベルの制服があっという間にバラバラにされたから仕方なく着てるの!」
一息で叫びきり、息が荒くなる。
ブレーキが壊れた少女は気が付かない。
自分が赤信号を無視して走ってしまっていたことに。
そして、事故が目前に迫っていることに。
「服が、バラバラやって? ……なぁ、その男の子っちゅうのは赤髪で眼鏡を」
「――っ!?」
小太郎の言葉は暴走していた紫穂の心に、これ以上ないくらい綺麗に滑り込んだ。
カウンターを決められた紫穂は更に動揺を重ねてしまい、
「ネギに、会ったんやな」
それを見逃さない小太郎ではなかった。
紫穂の口から明確な回答は告げられていないというのに、
すでに小太郎の頭の中では件の人物の像が固定されてしまっている。
「はは、ついに手がかり掴んだわ! 間違いないで! 裸にひん剥くのはあいつの得意技やからな!」
「…………」
「ん? どないしたシャナ? 何で少しずつ後退りしとるんや?」
「気にしないで。例えおまえの交友関係に奇人変人がいたとしても……、
私のおまえに対する評価が緩やかに下降するだけだから」
「うわ、何やその言い方は……。いや、ネギはええやつやで? なぜか、しょっちゅう女の裸に出くわすのが難点やけど」
「……とりあえずその話は置いておく。で、喜んでるところに水を差すけど、少し落ち着きなさい小太郎。
さっきのそいつの話聞いていなかったの?」
シャナは一呼吸置いて、
「そいつ、そのネギかもしれないやつに襲われたって言ったじゃない」
「……あ」
642 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/01(日) 14:19:35 ID:127ZqFHF
風船の空気が一気に抜けるようだった。
喜びから一転、誰が見ても困惑していると分かる表情を浮かべ、小太郎は紫穂のほうへと顔を向ける。
眼光を更に鋭くさせたシャナもそれに続いた。
シャナは小太郎のことを信用している、その小太郎の仲間であるネギと紫穂が戦闘を行ったのであれば、
小太郎とシャナにとって紫穂は敵、少なくとも気を許せない相手だということになる。
味方の敵が味方であることなど、極まれなケースであるからだ。
不信感をいっそう濃くしたシャナは、視線で紫穂を突き刺し、
小太郎もまた、迷いを抱えながらも紫穂に対する警戒心を徐々に引き揚げていく。
無論、それにさらされた紫穂が平静を保てるわけがない。
無理矢理体内に氷を詰め込まれたように、中から全身が凍りついていく感覚に苛まれる。
(まさか、あんな一言でこうも状況が悪くなるなんて……!)
迂闊だった。
神社に残されていた支給品や病院の外壁から読み取った情報を使えば全てうまくいくはずだった。
だが、その情報には大きな落とし穴があったのだ。
物から読み取った情報には、ネギが小太郎について、小太郎がネギについて言及する場面が一切なかったのである。
もしもネギと小太郎、そのどちらか一人からでも直接読み取っていれば、この事態は避けられたはずだ。
状況は最悪。
小太郎とネギは信頼しあう関係、先の小太郎の様子からしてそこに疑いの余地はない。
見ず知らずの人間である自分と、友人であるネギの存在を秤にかけたとき、小太郎の心がどちらに傾くのかなど考えるまでもない。
ネギが全面的に悪いと吹聴したところで、果たして目の前の二人が信じてくれるのか。
かといって、薫のように空が飛べるわけではなく、葵のように瞬間移動することもできない自分が、
小太郎とシャナから逃げ出すことは不可能だろう。
(どうすれば、どうすればいいの――?)
心中で必死に足掻き、あらゆる打開策を模索し検討する。
可能性は時間と共に吹き飛ばされたようになくなり、結局のところ彼女の中で最後に残ったのは、
絶対の信頼を寄せる自身の能力、サイコメトリーだった。
混乱する頭は、暗闇の中を手探りで進むように、
サイコメトリーで得た情報を総当りで検索し始める。
ネギ、コナン、リリス、首輪、競争、18時、タワー……、
(!? これなら……いける、かしら?)
閃いた。
絶体絶命の状況を切り抜ける、一筋の道を。
そうだ、もともとこの手はどこかで使おうと準備していたはずだったのだ。
ただその手を仕掛ける対象が、小太郎という少々厄介な相手だっただけの話。
紫穂は残された勇気を掻き集めて、努めて気丈に、堂々と話す。
「そう、私は確かにネギっていう子に会ったわ。
彼ね、江戸川コナンっていう男の子と一緒にこの殺し合いに乗っていたみたいよ」
「!? 出鱈目言うな! あいつがそないなことするわけあるか!」
「嘘じゃないわ。ネギ君は他の参加者とどちらがより多くの首輪を
集められるかっていう競争をしていたの。それで私は襲われたのよ」
「他の参加者って誰?」
「リリスよ」
小太郎とシャナは絶句する。
対する紫穂は二人の表情を見て、ことがうまく運んだようねと満足し、重圧感から僅かに解放される。
首輪集め。主催者側の介入。
この突拍子もない、しかし絶対にないとは否定しきれない大きな事実は、
シャナと小太郎の注意を逸らすのに充分な働きをした。
「きっと、殺し合い進行の円滑化のためにジェダが送り込んだんでしょうね。
私が見たネギ君は明らかにリリスの手下として動いていたわ」
「……嘘や……」
ショックのあまり半ば放心しかけた小太郎の横で、シャナは思考を巡らせ、紫穂の言ったことを吟味する。
(嘘をつくにしてはやりかたが大胆すぎる。ジェダが刺客を送り込むのもありえない話じゃないし、
このことに関しては信憑性が高いと見ていい。小太郎もそう考えているから、
この話を信じて落ち込んでいるんだろうし。それに、リリスがここにいるということはある意味で――)
「――神社、やったな……」
思考の最中のことだった。
シャナは右手に持ったマスターソードを手首の捻りで大回りに一回転させ、切っ先をある一点に突きつけた。
剣先にあるのは、シャナに背を向け、ふらりと歩き出した――小太郎の姿。
切っ先の位置がピタリと定まり、それに呼応するように小太郎の動きも止まる。
「どこに行く気? 犬上、小太郎」
数時間の間に生まれていた親しみを、一切殺した声が響いた。
氷塊のような言葉が刺さり、小太郎はシャナのほうへとゆっくり向き直る。
「あいつは……、ネギは俺のライバルや。だから、あいつがもし間違ったことしとるんなら、それを止めるのは俺の役目なんや!」
「だから何? 行かせると思っているの? まだ病室にいるあいつの意識は戻らないのに、一人で出て行く気?
おまえが助けてって言ったから、私はあの女を助けた。だから、おまえにはあいつが目覚めるまで看ているっていう責任がある。
それを放棄して出て行くなんて身勝手、絶対許さない」
「……あの子なら、もう目が覚めてるわよ」
閉塞した空気に穴を空けたのは紫穂だ。
睨みあっていた小太郎とシャナが顔だけを紫穂のほうへと向ける。
「とりあえず病室に戻りましょう。そこで、私が知っていることを話すから。
この病院で何があったのかもね」
「……おまえの言っていることはひとまず信じることにする。けど、私たちに情報を話して、その見返りに何を求めているの?」
「さっきも言ったでしょう? 私は一人で生きていけないから、頼れる仲間が欲しいだけよ……」
告げ終えて、紫穂は二人を促すように率先して病院のほうへと歩き始める。
(ネギ君たちをみんなで探そうっていう流れになったら面倒ね……。いや、この際仕方がないのかな。
ネギ君に会ったら、あのときは変なカードのせいで仕方なく襲ったの、とでも言えば切り抜けられるだろうし)
シャナと小太郎がついてくることを耳だけで確認した紫穂は、誰にも見せないように深い溜息をつき、うまくいかない現状に苛立つ。
思い描いた青写真の中の自分は、今頃シャナと小太郎の意識をうまく誘導して、忠実な手駒としていたはずだった。
なのに、今のこの状態はいったい何なのか。
当初の計画は原型を留めず、二人にペースを乱され、あまつさえ自分が敵じゃないと弁明するだけで手一杯。
気に入らない。自分がこの場を支配できないことがひどく気に入らない。
そして。
行き着く先に何があるのか、これからどうなるのかを成り行きに任せてしまうのが、いたく不安で、歯痒い。
* * *
病室に全員が集まり、彼らはまず水とパンだけの味気ない食事を取り始める。
胸や腹に重傷を負っていた双葉も、存在の力による治療が功を奏したらしく、食事をとれる程度には回復していた。
そして食事の合間に情報交換が始まると、廃病院での出来事の当事者である双葉が話を進め、
事件を隠れて見ていたという紫穂がそれに補足していった。
が、話が佳境にさしかかるにつれて紫穂が発言する機会は増えていき、
最終的に彼女は双葉以上に事の経緯を詳細に語っていった。
錯乱したビュティが双葉を襲ったこと。
異能力者、イヴがビュティを殺したこと。
ブルーが姿を変えて、双葉を刺したこと。
イヴとブルーはグルであり、廃病院から一緒に逃げていったこと。
紫穂は今までの失態を取り返すように、様々な部分を誇張、
特にイヴとブルーが救いようのない悪人であるという点を強調して皆に話をした。
ただし、小太郎たちが信用に足るのかどうか分からないという点、
そして彼らのこれからの方針もつかめないという点から、
自分のサイコメトリー能力だけは完全に秘匿して話を展開させた。
仮にこの能力のことが誰かに知られたら、自分の優位点が削がれ、
今後の行動が大きく制限されることになってしまう。
殺し合いは始まったばかり。
最大の切り札を明かすのはこんな場面ではない、紫穂はそう考えていた。
「しかし、ここで起こったことに随分詳しいんやな。驚いたで」
「私は警察官の父の仕事を見てきた影響で隠れたり情報を集めたりするのは得意なの。
本当は双葉ちゃんがブルーたちと一緒にいることが分かったときに、すぐに接触しようかと思ったんだけど、
部屋から聞こえてくる話し声が穏やかじゃなかったから様子を窺っていたのよ」
紫穂の言葉に双葉が両腕を組みながら、うんうんと頷く。
「出てこなくて正解だったな。あの部屋ん中にいたのは、どいつもこいつもおかしいやつばっかりだった。
ブルーにイヴ、今度あったらただじゃおかねー……!」
キレてドロップキックをしたあなたも充分おかしいけどね、
と紫穂は思いこそすれ、口には出さない。
「それにしても、みんな私の言うこと変だと思ってないの?
私としては当然信じてもらいたいけど、身体を変形させたり、外見を変えたりする話なんて、
そう信じられるものではないでしょう?」
「俺の世界ではそういうことできるやつ結構おるからなー、
というか、ブルーっていうやつが使ってた歳変える薬、多分俺の世界のもんや。
俺も飲んだことあるから分かるわ」
「あたしも姉ちゃんがそういうの詳しいから何とも思わないな」
最重要事項である廃病院で起こったことが語り尽くされ、次に各自のこれまでのことが語られ始める。
双葉は北のモニュメントでのこと。
紫穂は改めて神社でのこと。
シャナと小太郎は先の襲撃のこと。
これらが滞りなく話され、長かった情報交換も終わりを告げようとしていた。
そして、集まった情報をもとに彼らはこれからの行動指針を練ることになるのだが……。
* * *
「目的地はB-7のタワーに決定ね」
病室内に凛としたシャナの声が響き渡り、一同は静まり返った。
二人の少女は惚けた顔でシャナを見つめ、残った少年はただ物思いに耽る。
そんな中、信じられないといった表情を浮かべながらもいち早く復帰し、おずおずと口を開いたのは紫穂である。
「あの……、シャナちゃん。私の話聞いてなかったの?
そこって18時にリリスがやってくる場所なのよ?」
直接見たわけではないが、リリスの力をサイコメトリーで目の当たりにした紫穂としては、
自ら死地に赴くのは真っ平である。
「ちゃんと聞いていた。その上で行くの」
「そんな、自分から危険な場所に行かなくても――」
紫穂の言葉が途中でばっさりと切られる。
「危険? 違う、これは好機。ジェダの手下が出てきたなら、
徹底的に痛めつけて情報を搾り出すいい機会じゃない。これを逃す手はありえない」
シャナが微かに、しかし力強く微笑む。
アラストールの手がかりは未だに掴めないが、主催側の人間の所在を知ったことで自分がやるべきことを悟ったのだろう。
使命に燃える彼女は、嬉しくて堪らないといった様子まで見せている。
対する紫穂は、シャナに活力を奪われたかのように沈んでいた。
確かに紫穂は戦闘力のある頼れる仲間を欲していたが、シャナは少々じゃじゃ馬に過ぎたらしい。
組もうとした相手を間違えたかしら、と眩暈までしてくる有様だ。
しかも、尚も紫穂の苦悩は終わらない。
「お前らは先に行っててくれ。俺は神社の向こう調べてから追いかけるから」
小太郎の言にシャナが疑問を呈する。
「は? 何でよ? 18時にはネギもタワーに来るんだから先回りするべきでしょ?」
「それまでネギを放っておけいうんか? 冗談やない。
本当にあいつが首輪集めなんてしとるんなら、一刻も早くひっぱたいて目覚まさせんと」
「ちょっと待ってくれよ! 神楽はどうなるんだ!?」
二人の会話に双葉が割って入ったことで、室内は混迷を極めた。
これで紫穂を除く全員の行動方針が示されたことになる。
紫穂にとって都合が悪いことに、奇しくもここに集まった人間は皆、
協調性をどこかに置いてきたような我の強いものばかりだった。
まとめるとこうである。
気が空の小太郎はネギ捜索のために南東の神社周辺へ。
瀕死の双葉は神楽救出のために北のモニュメントへ。
そして肩に裂傷のあるシャナは南のタワーへ。
と、それぞれ向かいたいわけである。
本当なら紫穂はブルーを痛めつけるためにサイコメトリーで彼女の道筋を追いたいところだったが、
最早この状況でそんなことを言い出す気力など欠片も残っていなかった。
心理操作を行うどころか、各人あまりにもバラバラ過ぎる方針を聞き、紫穂は本格的に後悔し始める。
考えることを放棄し始めた紫穂の胸中に辛うじて渦巻くのは、「なるようになれ」という念だけだ。
そこまで頭を悩ませるなら別行動をとればいいだけのことだが、
生憎紫穂にはようやく見つけたシャナと小太郎という安定した戦力を手放す度胸がなかったのである。
「なァ、頼むよ! 一緒に神楽を助けに行って欲しいんだ!
あたしのこと助けてもらっておいて、こんなことまで頼むのはムシが良すぎるってのは分かってる!
だけど、あたしは神楽を見捨てたくないんだよ!」
「双葉、さっきの私と小太郎の話を憶えている?
神楽を襲ったやつは、十中八九さっき病院に来た銀髪と同一人物。
……だとしたら神楽はもう、手遅れよ」
「けど……!」
双葉とて馬鹿ではない。
シャナと小太郎が告げた人物像は、神楽を襲った人間の特徴と合致する。
神楽がうまく逃げてくれていればいいが、今も殺戮が行われているこの島で、
そんな楽観論が通じることを前提とするのは死期を早めることになる。
死の恐怖に幾度となく直面した双葉には、そのことが痛いほどよく分かっていた。
だが、それで臆したり、割り切れたりすることができないのもまた、双葉の持つ一面だ。
双葉はどこまで行っても愚直で無力な、しかし真っ直ぐで強い心を持つ子供だった。
訴えかけるような不屈の視線は、フレイムヘイズのそれと比べても全く遜色などありはしない。
数瞬後。
その想いに折れたように、シャナは静かに口を開く。
「……行ったところで、神楽の死体があるだけかもしれない。
それでも行きたいの? その覚悟が、おまえにあるの?」
双葉はシャナの言ったことを噛み砕き、自身に問いかけ、揺ぎ無い答えを導き出した。
「……ある!」
答えるのに間があったのは返答に窮していたわけではない。
言葉に力を、そして決意を込めるために用いた時間だ。
真っ向から双葉の視線を受け止めたシャナはもちろん、小太郎と紫穂にもそのことはよく伝わった。
短い沈黙があり、ふ、と口の端を微かに吊り上げながらシャナが言う。
「決まりね。――小太郎」
「ん、何や?」
「ネギの捜索に行ってきてもいいわ」
「おぉ、急に話が分かるように――」
「ただし!」
シャナはそこで一旦区切り、
「16時。私と双葉は北の探索をして16時までに一度ここに戻るから、小太郎もそのときまでに戻ってきなさい。
その時間を過ぎたら、おまえが戻ってこなくても私はタワーを目指すから。いい?」
シャナの言葉を聞いた双葉はパッと明かりがついたように歓喜する。
「一緒に来てくれるのか!?」
「北のほうの探索のついでで良ければ、だけど」
もちろんだよ、と双葉ははしゃいで答える。
「そういうわけだけど、紫穂はこれからどうするの?」
「私は……」
問いかけられた紫穂はどう動くべきなのか迷う。
単独行動はありえない。いや、この先必要になるかもしれないが、今一人で動くメリットは少ないだろう。
ならば、誰についていくのか。
小太郎についていけば、運が悪ければネギたちとの再会が早まることになる。
ネギとコナンに再会しても恐らく口八丁でどうにかできるが、かといってわざわざ彼らとの接触を早める理由などない。
ならば……。
「私もシャナちゃんについていくわ」
かくしてそれぞれの行き先が定まり、彼らは廃病院を後にすべく準備を始める。
* * *
病院の北口にて、黒髪の少年と三人の少女が向き合う。
「それじゃ、俺は行くで」
「小太郎、ネギ以外の目的も忘れないようにしてよ」
「わかっとるって。ちゃんとアラストールのおっちゃんと、……梨々やったっけ?
その二人も探してくるから」
廃病院を出る準備の最中。
双葉は院内で集めた包帯を自分のランドセルにしまうときになってようやく名簿に目を通し、
梨々が参加していることに気がついた。
そして、自分の間抜けさを悔やみながらも、慌てて小太郎の捜索対象に梨々のことを加えてもらったのである。
「紫穂、あんたはこの島に知り合いはいないのか?」
「……いないわ。だから、気にしないで」
双葉の問いかけに対し、紫穂は嘘をついた。
このことに迷いがないわけではない。いや、むしろ迷いしかないのかもしれない。
他人の心を見通せるはずなのに、今の紫穂は自分の心の中すら分からない。
この島に来た直後、紫穂は元の世界に帰るため、皆本のところへと戻るために、殺し合いに乗る覚悟をした。
今もそれは変わらない。いざとなれば、誰かを殺すことだって厭わない。
しかし、それにも例外が存在する。
『剣』の支配から解き放たれてしまった今の自分が、果たして本当に薫と葵を殺せるのか?
何者のせいにすることもなく、自分の意思で銃口を向けて、躊躇うことなくその引き金を引くことができるのか?
結局のところ、紫穂は怖かったのだ。
知り合いは誰もいない、双葉にそう返したのはそのため。
きっと、あの二人に会ってしまったら、自分は立ち止まってしまい動けなくなる。
全てを放り投げて、皆本のもとに帰るという選択肢をとることができなくなる。
何かがおかしかった。何も分からなかった。
なぜ、こんなに迷っているのか。
廃病院の事件を目撃したことで、決意を固めたはずだったのに。
なぜ、まだ何かに縋りつこうとしているのか。
その理由を知りたかったから、もやもやとしていた疑問を心の中に思い切り投げてみた。
直後、まるで見えない壁にぶつかったかのように、何かが手元に返ってきたような気がして。
そして、答えが見つかってしまった。
(――私は、みんなで生きて帰れるなんていう夢物語を、信じようとしている……?)
シャナと小太郎と双葉。
愚かで命知らずな、しかし迷いの全く見えない彼らの言葉を信じたいと思い始めているのか?
心のどこかで、そんなことは馬鹿げているという冷笑が聴こえる。
そうだ、馬鹿げている。
ここがどこなのかも分からない上に、首輪で命を握られ、脱出する方法も不明。
それなのに。
リリスを倒して状況を打開する、そんな根拠もなにもない言葉を信じたいと思って――。
紫穂は首を何度も横に振る。
(違う、そんな甘言に溺れているわけじゃない!
ただ、シャナちゃんや小太郎君が、どこまで主催者に抗えるのかを見物するだけ。
あの二人が本当に脱出の鍵を見つけるならそれに乗ってしまえばいいし、
無理ならとっとと捨ててしまえばいい、それだけのことよ!)
迷いの在りかは分かったが、迷いを抜ける道は見つからなかった。
岐路に立たされた紫穂は、自らの意思で進むべき道を決めることができない。
だから、一先ず分岐の手前に座り込んで、考えてみることにした。
時間や周りの状況の変化が、答えを示してくれると信じて。
* * *
「小太郎、重ねて言っておくけどおまえはもう本当に限界が近いの。
戦闘になっても無理せずに逃げに徹すること」
「あぁ」
「……本当なら、放送まで動かずに休みたかったところだけど」
「時間制限があるからな。ぐうたら休んで、大事なものを取りこぼすのはゴメンや。
おまえかて、そうやろ?」
「当然」
二人の顔に不屈の笑みが宿る。友のため、主催打倒のため。
果たすべきことが明確になった今、彼らが恐れるものなどありはしない。
「じゃあな。なるべく戻るようにするつもりやけど……」
「時間に来なかったら、本当に置いていくから。万が一、私と双葉と紫穂のほうが16時に来なくても、
先にタワーに向かってていいわ。18時に誰かがリリスに接触できないと、次にいつチャンスが来るのか分からないから。
優先事項を履き違えないようにすること」
「分かってる。気ぃつけてな!」
「そっちもね」
別れの挨拶を済ませて、小太郎は森の中へと駆け出して行った。
目的地がはっきりしている彼の足取りは、風にように速い。
黒一色の後姿が、あっという間に薄暗い深緑の世界へと消えていった。
「時間は有効に使いたい。私たちも行こう」
「そうね」
「あぁ。……神楽、無事でいてくれよ」
小太郎を見送った三人もまた、ゆっくりと北へ歩き出す。
激しい運動はまだできない双葉と、身体能力的には普通の子供である紫穂がいる分、
北の探索には時間が掛かるだろう。
そんな二人の先頭に立つシャナは、後ろからついてくる二人をちらりと見やった後、
自分は甘いのかもしれないと自らに問いかける。
今のこの状況。
正直なところ、北を探索するメリットなどあまりない。
“北に誰かいるかもしれない。アラストールがいるかもしれない。だから、北に向かう”
実に苦しい理由付けだ。
北という言葉を東西南のどれに置き換えても、それは何の問題もなく成立するのだから。
それでも、何の意味も持たなくても、彼女にとっては必要なものだった。
双葉に頼まれたから行く、などという慈善事業では自分の中のフレイムへイズが決して納得しない。
何でもいいから、大義名分の代わりになるものが欲しかった。
(やっぱり、甘さは捨てきれないのかな)
多分、双葉の傷を治した時点で決まっていたのだと思う。
人間で言うところの情というものを、消し去れないことが。
もう、自分は見ず知らずの人間を安易に見捨てることが出来なくなり始めている。
フレイムヘイズとしては欠陥品になりつつあるのかもしれない。
(アラストールやヴィルヘルミナ、悠二はどう思うかな……。使命を誤魔化そうとしている、今の私の姿を見て。
……いや、そんなことを考えても仕方がない。迷わずに、一度やると決めたことは一つずつ片付けないと)
神楽を探す。リリスは倒す。首輪は外す。ジェダは討滅する。
そして……、生きて帰る。
全てこなすのは難題だが、掴んでみせる。
決意も新たに、魔神契約者は大地を踏みしめ、真っ直ぐと北へ伸びるアスファルトの上を歩く。
自分のあり方が分からない少女と、子供が持つにはあまりに強すぎる信念を持つ少女、二人の人間を引き連れて。
【B-3/廃病院北側、森の中の道路/1日目/真昼】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:左肩裂傷&右肩刺し傷(処置済み)、疲労(中)
[装備]:マスターソード@ぜルダの伝説(重量感あり、使えない事は無い)
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯、ビュティの首輪
[思考]:迷わずに、一つずつ片付ける。
第一行動方針:神楽捜索のため、北へ
第二行動方針:16時までに廃病院に帰還。その後18時までにB-7のタワーを目指す。
第三行動方針:コキュートスを見つけたい(アラストールと合流)
第四行動方針:小太郎の仲間(ネギとエヴァ)を探す
基本行動方針:ジェダを討滅する。
【吉永双葉@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:腹部の銃創と胸部の刺傷は塞がったが、激しい運動は禁物
[服装]:血のついたオーバーオール、腹部にカラフルな包帯。
[装備]:メガネ@ぱにぽに
[道具]:基本支給品一式(水少量、パン一個消費)、コキリの剣@ゼルダの伝説、ショックガン@ドラえもん、包帯
[思考]:神楽、無事でいてくれ……!
第一行動方針:神楽捜索のため、北へ
第二行動方針:梨々と合流
基本行動方針:このふざけた殺し合いを終わらせ、脱出する
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:スクール水着の上に全身タイツを重ね着
[装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOODスクール水着@魔法先生ネギま!、全身黒タイツ@名探偵コナン、
[道具]:支給品一式×2(水少量、パン一個消費)、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、血濡れの庭師の鋏@ローゼンメイデン、包帯
[思考]:成り行きを見守ってみるかな。
第一行動方針:とりあえず、シャナについていく
第ニ行動方針:誰も信用しない。状況に応じてステルスor扇動マーダーor対主催のどのスタンスもとれるように構えておく
第三行動方針:利用できそうな仲間を探す
基本行動方針:元の世界に帰るためには手段を選ばない。自分の安全は最優先。
[備考]:サイコメトリーを駆使し以下のことを知りました
1、神社で起こったコナン&ネギ&リリスの遭遇について、支給品を透視して大まかに把
握しました。先入観による勘違いあり。
2、廃病院内部で起こった事態について客観的に把握しました。表面的に透視していたの
で、会話以外の細かい部分は見落としている可能性あり。
3、庭師の鋏を透視して、これがブルーの支給品でなかったこと、また動く人形の存在を把握しました。
【B-3/廃病院南側、森の中/1日目/真昼】
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
[状態]:気が僅か、疲労(中)
[装備]:手裏剣セット×12枚@忍たま乱太郎
[道具]支給品一式(水少量、パン一個消費)、工具セット、包帯、未確認支給品0〜1
[思考]:時間が厳しいなぁ。
第一行動方針:神社、及びその周辺の探索。
第二行動方針:ネギやエヴァと合流
第三行動方針:16時までに廃病院に帰還。その後18時までにB-7のタワーを目指す。
第四行動方針:シャナのコキュートスと梨々を探す
第五行動方針:グレーテルの存在が気になる
※ビュティの遺体は病院の北側の敷地に埋葬されました。
※4人とも、ブルーとイヴは悪人であると認識しました。
投下終了です。支援してくださった方、山のない長文を最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
強引な時間指定をいくつかしましたが、どれが成立してもどれが折れてもいいと思います。
というより折れたほうが面白そうな展開になりそうな。
疑問点、指摘などありましたらお願いします。
投下GJ
>「気にしないで。例えおまえの交友関係に奇人変人がいたとしても……、
私のおまえに対する評価が緩やかに下降するだけだから」
ここで噴いた。
いや、なかなかいいコンビだったわこの二人。馴れ合いすぎず、尚且つそこまで仲も悪くない。
小太郎は混沌学校に向かい、シャナ達はオッドアイに接近……。wktk
投下乙です!
長いのに、紫穂の心情の変化や状況の転がり方に引き込まれて
全然長くてだれたりとかそんな感じがしなかった……GJ!
様々なフラグが拾われ、繋がれて、また面白い展開がたくさん起こりそうで先が気になるw
希望の兆しを感じる展開なのに、各々が万全の状態じゃないのに手分けして行動という死亡フラグを踏んでいること、
行く先にもミミ、ネギ死亡の事実、そしてMカップル等と不安要素がありまくりんぐで……とりあえず四人ともがんばれ
投下乙。
なんかややこしいことになってきたぞ。
足手纏い二人を抱えてるシャナが心配だ。
とりあえず、女子二人はまともな刃物をシャナに与えてください。
それだけでも安心だから。
>>676 マスターソードがまともな刀でないと申すか
女の子組は意外と武器は充実してるけど、格闘できるのはシャナぐらいだし……
あ、紫穂も銃とか使えるんだよな。ネックは瀕死から息を吹き返したばかりの双葉か。
時間帯を見ると、まだ、鋏でぐっさりやられてから二時間経ってないみたいだし
ミミはかろうじて生きてたような
GJ。
実に上手く繋いだなあ。
良い心理描写でした。
あと
>>674と同じとこで噴いた。
容量制限が近付いてきたようです。お気を付けください。
>>684 マスターソードは使い手を選ぶ剣だから。
リンク以外で扱えるのは一応勇者と呼称されてるニケ・レックス位じゃね?
どんな名剣でも重心が狂っていたら金属バットにも劣るしなー
しかし、それを言ったらそもそも子供リンクに
マスターソードが使えるのだろうか。
ゼルダ漫画しか読んでないから的外れならすまない。
ゲームでは「子供リンクの場合」では認めてないみたい。
7年の歳月が来るまで封印したくらいだからな。
とりあえず
>>684に期待
リンクがブルーの持ってる薬でも飲めばなんとかなるのでは?
身長伸ばす魔法とか誰か使えなかったっけ?
年齢詐称剤でマスターソードひっかかるかなぁ?
あの薬って見かけだけ年齢をごまかすことができて
本当にはなっていないんだっけ
マスターソードとコキリの剣、どっちがましなのか分かんないんだぜ。
重いけど退魔属性付き、軽いけど普通の剣……。
魔法使いや人外相手なら前者、それ以外なら後者とかそんな感じなんだろうか。
>年齢詐称剤
確か、あれの効果は「幻術」だとエヴァが言っていたような
だから、おそらくアレ飲んでもマスターソード使用可能! にはならないと思う
この件は緩和していいのでは
別に規制するほどの強さは全く無いわけで
>>688 原作でも、強化しないと虫取り網以下の武器だしな。
リリスや吸血鬼姉妹にはよく効きそうだが。
天空の剣も同じく制限緩和だろうか。
レックスが呼んでも、空間移動して来ないんだし
特定の人物にしか使えない武器は多少扱いに困るっぽい
リンクが勇気のトライフォースに選ばれた勇者だから勇気リンリンな参加者なら
使いこなせてもいいかもしれない。太一とか太一とか太一とか。
それに『勇者の拳』や『風の剣』だって勇者ニケ専用の装備だし。
専用アイテムでなくても使用者を限定するアイテムってどのくらいあるんだろう?
魔力のないキャラでは全く使えないデバイス、使えるけどフル活用できないダイレクとか、
探すとまだ沢山あるんだろうか?
インデックスの薀蓄やヴィクトリアの魔法、アルルゥの召喚術みたいにそれなりに説得力持たせられればある程度自由にやっていいと思う。
「勇気の紋章持ってる」から太一がマスターソードをそれなりに使えるとか、
「勇者」だからニケが天空の剣をそこそこ扱えるとか、
「ポケモンを癒す力がある」からイエローが意志持ち支給品の傷を治せるとかね。
個人的なイメージだけど、天空の剣とかマスターソードって、
勇者じゃなくても、剣に認められたら使えるんじゃないかと思う
喋ったり動いたりはしないけど、意思がある感じ
逆に元の持ち主でも、資格がないと判断されたら使えなかったり
今のレックスに天空の剣が力を貸すとは思えないし
まあまだ蒼星石の鋏のほうが使える気もするな。
まあ、シャナがラノロワの悲劇を繰り返さなければいいさ。
696 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/06(金) 13:14:06 ID:VIzS+YyX
>>165 > 【鬼畜教師】 教え子の女子小中学生6人や教え子の母複数人と性交しまくり、鬼畜先生に懲役7年求刑
>
> ・18歳未満の小中学校の教え子計6人にみだらな行為をしたとして、強姦(ごうかん)罪
> などに問われた群馬県太田市の元市立小中学音楽教師 岩井彰人(旧姓 吉田彰人)被告(31)の論告
> 求刑公判が10日、前橋地裁(結城剛行裁判長)であり、検察側は懲役7年を求刑した。
>
> 検察側は「被害に遭った教え子らは、好意を抱いていた教師から性欲のはけ口とされた」
> と指摘した。
>
> 論告によると、岩井被告は昨年3月から11月にかけて、12−16歳の教え子に計24回、
> 県内のホテルなどでみだらな行為をした。被害者には小学校教諭時代の教え子だった
> 当時12歳の女児もいた。
>
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070510-196611.html
もうあれだよ
伝説の剣は勇者王アムロのNORIで使えるんだよ
ジェダ「お前は私を倒すのに『天空の剣』が必要だと思っているようだが…別になくても倒せる」
レックス「このオレに生き別れた妹がいるような気がしていたが、別にそんなことはなかったぜ!」
微妙に過疎ってるし、ちょっと話題を振ってみよう
『これからの活躍をしているキャラ』
レックス…個人的に好きなキャラ。最強マーダーの一人として期待
一休さん…誤解の塊。終盤で再び場をかき乱してくれそう
ニケ…ジュジュ死亡で、放送後は真面目にならざるを得ない。真面目になったニケは好きだから
のび太…このまま落ちる所まで落ちるか、立ち直って対主催になるか
なのはさん…((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
梨花&灰原…けんぜ(ry
>>699 全く同じこと書こうと思ってたからふいたw
期待しているのは今まであまり目立っていない弥彦かな。
一般人よりは強く、超人には届かない実力というのは中々おいしい。
持ってるのが楼観剣だから、人外相手でも一発逆転を狙えそうなのがまたいい。
なのはさんのこれからが気になって仕方ない俺
……よしっ、とりあえず一段落!
久しぶりに予約。
トマ、はやて、アリサ、みか先生 以上4名。
要するにシェルター組を。
本当はもう一案ありましたが、そちらは長くなりそう&不安要素アリなので、まずはこちらを……。
この週末に書き上げるつもりです。順調に行けばおそらく投下は日曜かと。
期待!
新スレは明日あたりで大丈夫かな
>>703 乙!
>>700 パタリロ・ニケ…そこそこ戦える上にギャグもこなせる貴重な要員なので、負のオーラを和らげてほしい
蒼星石・きり丸…あまり目立った印象が無いので期待。特に蒼星石はタバサとの微妙な関係にわくてか
ネス…マザー厨なので期待
プレセア…生わふーを見るまで死ねない
>>700 なのはさんマジガクブル なにかが引金で途端にマーダー化しそうでマジ怖い というかタバサと似たようなポジションになるか。
活躍期待してるのはフェイト・・・・・なんだけどPT崩壊寸前で不安要素が多すぎるのがなぁ
狂マーダー雛苺やリリスにチャーム中のグリーンにも期待。
>>703 期待してます、頑張って下さいねー
>>693 面白そうだけどさすがにレックスに天空の剣が力を貸さないって事は無さそう。
世界が変われば倫理も変わるわけで
DQ世界では、彼らみたいな行動に走っても悪いことじゃないんだよなー
普段とやってる事がほとんど変わってないというw
つーか、その辺りの描写がこのロワでは本当に上手いと思う。
>>703がんばれー
>>700 雛苺……金と蒼のミスティカも手に入れてしまえ! むしろご褒美で銀ときらきーの分もGETしてアリスになる勢いで!
アリサ……一話ごとに無駄にコスプレるCCさくらのノリで。多分カレイドステッキが支給されてるこのロワでしかできん。
グリーン&リリス……一線越えろ! 一線越えろ!
ちょっとネタに走りすぎた気がするのでマジメにやろう。
今期待してるのはチアキとレミリアかな。
チアキは黒化後にどう動くか。レミリアは放送後が楽しみ。
>>708 グリーンとリリス……色々とボカシを入れながら既に越えちゃってるみたいですがw
越えてるよね(中略)あたりで
リリスとグリーンで思い出した。
普段は言えないから、あえて言う。絵師の方々GJ。
お絵かき掲示板の絵には、元気やアイデアを沢山頂いてます。全部書けるわけじゃないけど
一応、勝手に転載
5 名前: ◆CFbj666Xrw[sage] 投稿日:2007/07/07(土) 05:12:08 ID:8nI8JX5s0
eonet規制で本スレ書き込めない。
イリヤ、ジーニアス、プレセア、明石薫、木之本桜、ベルフラウ、レミリアを予約。
自己リレーにやや抵触してしまいますが……
カツオ、キルア、グレーテル、きり丸を予約したいのですが、大丈夫でしょうか?
>>713 自己リレーというと……ああ、きり丸か。
いいと思いますよ、他キャラも入ってますし、十分時間経ってますし。
それに、そのメンツで絡みそびれるとこの先も空気になりそうw
しかし一気に動き出しますねぇ
予約ラッシュktkr
期待してます
◆3k3x1UI5IA氏:トマ、はやて、アリサ、みか先生
◆CFbj666Xrw氏:イリヤ、ジーニアス、プレセア、明石薫、木之本桜、ベルフラウ、レミリア
◆M42qaoJlNA氏:カツオ、キルア、グレーテル、きり丸
三人もの書き手さんがいっぺんに動くとは。
お久しぶりです
なのは、勝、ニケ、ヴィータ、エヴァ、インデックスを予約したいと思います
ここの書き手さんがたはバイオリズムが一致してるんだろうかw
みんながんば!
皆さん頑張れー。久々の予約ラッシュだなぁ、テストや実験で忙しかった方々が復活したのかな。
wiki編集のやる気も出るってもんだ。午前中に更新してくれた人乙、おかげでSS間リンクのほうに手が出せました。
720 :
336:2007/07/07(土) 20:01:36 ID:sGDpbeA1
ここでグレーテルが動くとは思わなかった。
グレーテルの位置がA-6かB-6のどちらが正しいのか
もっと早く指摘するべきだった。すみません。
(地図ではB-6,wikiに載せたときにはA-6,wikiでの修正によりB-6に変更)
(wiki状態表でのタワー向かいのビルという表記は取り忘れていました)
何時間かぶりに来たらさらに予約が増えてる…
何だか嬉しくなるな
724 :
336:2007/07/08(日) 19:03:08 ID:2ZEn9OC9
>>722,
>>723 回答と次スレありがとうございます。
◆M42qaoJlNA氏には影響が出るかもしれません。すみません。
ハ、 ∧ ハ /\ /\ /\
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. |ソハ !} jレi \
} !/¨ 〃 '{ /
ト{´{ .ハ} r'"´} !{ \ このスレを埋めたいんですが
FY'弍{ }' 斥ァ`}ハ /
ヾ{:i /ノ〉` !rソ  ̄|/\/\ /\ /\
. ヽ /'f=ヘ ハト、 _/\/ \/ \/
,ノ´f\='/ノ!ヽ\._ \
/ノ !|`ヽ三イ ヽノノ `'ー-、._ /
/ r'/ | /::|,二ニ‐'´イ -‐''" /´{ \ 構いませんねッ!
{ V ヽ.V/,. -‐''"´ i / |/
ヽ { r‐、___ i / ∩  ̄| /\/\ /\ /\
} .ゝ二=、ヒ_ソ‐-、 i__,. '| r‐、 U \/
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|'}:} ,/|毒|\丶 i ,::'| 'ー' {
|ノノ |,ノ:::::|ト、 \ヽ ! i }`i´ r|
|_>'ィ毒::::ノ 丶 ハ し-' | ! | |
┌≦:::::::::::::/ lハ | ) U
/ィf冬::::::イ |::.. j: }lハ. |∩ '゙}
最近他所で流行っている書き手感想落とします。wikiに書こうかと思ったけど埋めついでにここへ。
選出基準は…、最近作品落としてくれた人中心。
◆3k3x1UI5IA氏
何でも屋さん。危険な状況の構築と予想外の展開にしばしば驚かされる。
予約の面子を見て「これなら〜〜は死なないだろ」と油断してた分、
真紅とフラン死亡SSの破壊力は凄まじかった。
好きなSS「世の中捨てたものじゃないから」「君と共に弾幕を」
◆uOOKVmx.oM氏
ギャグ、スプラッタ、恋愛、頭脳戦と展開の引き出しの広さは随一。
「ひとごろし」での描写は圧巻の一言。非力な子供しか出てこなかったせいで
一つ一つの描写が身近に感じてしまって恐怖が倍増してた。
好きなSS「ひとごろし」「嘘とブラフは言葉、意識させれば力」
◆CFbj666Xrw氏
色々と振り切れている方(誉め言葉)。
初期からの派手展開に加えて、最近は「それは狂的なまでに」「世界は皮肉に満ちていた」
のようなロワらしい不協和音を奏でる作品が出てきて戦々恐々中。
好きなSS「それは狂的なまでに」「世界は皮肉に満ちていた」
◆NaLUIfYx.g氏
繋ぎ作品がキラリと光る書き手さん。
キャラの守備範囲が広く、ロワらしい展開で動いてくれるのがいい。
好きなSS「正義は必ず」「誰にだって勝つ権利はある/難しいのはその行程」
◆IEYD9V7.46氏
最近は繋ぎ、ステルスを集団に紛らせるSSが多めの人。
あとラノベ作品への愛を感じる。
好きなSS「救いの棟は紅く染まりて」「三宮紫穂の憂鬱」
◆o.lVkW7N.A氏
個人的に文章力、語彙はLSで1番だと思う。ラノベを読むというよりは
小説を読んでるような気分になる。情景、心理描写が深くて、オッドアイは本当にトラウマ。
リアルタイムで読みながら呆然となってしまった。
好きなSS「CAN TAKE YOUR EYES OFF YOU」「人はいつでも間違うもの 大切なのはそれからの」
◆JZARTt62K2氏
バトル描写は毎回クオリティが高い。特にプレセアのバトルは2回とも面白い。
「Fighting orchestra/戦奏」は大人数を繋いだ熱い名作。
TOSキャラが二人とも輝いていて何度も読み返したくなる。
好きなSS「踊れプルタタ」「Fighting orchestra/戦奏」
◆aAwQuafMA2氏
LSでは登場話で死んだキャラは少なかったけど、その死に様はみんな良かった。
氏が書いたサトシもその一人。グリーンに子豚の竹刀、グレーテルに毒ガスは
絶対にヤバイ。
好きなSS「終わりは桜の下で、そして始まりも桜の下で」
◆Gs3iav2u7.氏
アリサの変身シーンは才能の無駄遣い(誉め言葉)
氏の真骨頂は地の文や会話からそのキャラらしさが良く出ていることだと思ってる。
好きなSS「拝啓、地獄の釜の底から」「紅楼夢」「迷走」
◆M42qaoJlNA氏
1話からの拡声器と丈包囲網は最早伝説。
リリスとグリーンのマーダーカップルもインパクト抜群。
あの二人応援したいなと思い始めたところで絵板に投下された絵で
止めを刺されてしまった。
好きなSS「Childrens in the foolish game」「his sin, his crossroads」
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水銀党員は全員集合。ヤクルトを持参の上で。
ローゼンメイデン第一ドール水銀燈よぉ。
ちょっと現状の寸評でもしようかしらぁ?
といっても、容量の関係で三名以上参加してるところだけだけどぉ。
, ==薔 ==、- 、
/ , -―― - 、 \ヽ
/'´ \ _jlヘ',
i' l | l l l /{に{」|',
! |、:l l |l l/l l Tj小〉! .:┐
l l ト _ヽ丶, ィ¬jイ〈j | l: |/ |
ヽトl'´| ! :!_丿 ! l |:/ /
ト、l└' _ r−、 l l/ /
l l\ ヽ ノ ハ |l / :/',
! l |>r=tォ=| l_/_, -‐、',
| ,!: |/└イ!ト┤ / , -−'i|
l/ Vー‐{」l」/{ V , -−ヘZ
/ / 薔 .]ハ L| r= |〔
/ l,._____〔_ ハ. └' /r」
{ ノ ̄ ̄ ̄`ヽ匕 こ二´ 「 ン
なのは勢は全員生存……の代わりに扱いが革命状態。
最悪ズガン要因だったバーニングアリサとズガン経験ありのはやてが一番有望と言う状態ねえ。
現状一番怖いのは仲間割れかしらぁ?
妹達はひどい有様ねぇ。情けないわよ真紅ぅ。あの双子姉妹もひどい有様だしぃ。
……雛苺はいつか私を脅かしにくると思っていたわぁ。カナブン?誰それ?
グルグルは男衆と女性陣で扱いが違うのは気のせいかしらぁ?
トマって子はいい意味でおいしい位置だし、ニケはロワ的においしいんだけど。
ポケモン勢はアニメの方もまとめて説明しましょ……ひどいことには変わりないし。
生き残ってる子はどの子も揃ってピンチねぇ。でも、グリーンは他よりずっと幸せだと思うわよぉ?
あーいうのは正気に還らず現実を見ないまま死ねればもっと幸福かしら?ふふ。
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デジモン勢はちょっと厳しいわねえ……二名死亡で一名重傷。
このままじゃデジ大王国全滅だぁ!よぉ?
ネギ勢はとりあえず全員生存で今後の危険要因も少なめ。
とはいっても全員何らかの不安要素を持っているのがやはり痛いかしらぁ?
吸血鬼さんは次の作品次第で結構変わってきそうな感じぃ。
乱太郎勢は少々目立たないわね……どこぞの食いしん坊はずっと暴れまわってばかりだったしぃ。
眼鏡の不幸っぷりは目についたけど、死んじゃったらねぇ。
守銭奴に期待したいところかしらぁ。
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-( ゚∀゚.)- ⊂⊃
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,'´r==ミ、
卯,iリノ)))〉 このスレはもう書けないわぁ
|l〉l.゚ ー゚ノl みんな、次スレに移動よぉ♪
キコキコキコ ( O┬O
≡ ◎-ヽJ┴◎
;;⌒::.;;.⌒⌒/  ̄/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/  ̄/::. :; ;⌒⌒:.:⌒:;⌒;;⌒
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: :::., / /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ /,,; :::., :: ::: ヽ|〃
. ,:.; / /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ /.., ,; : ,,。, ::;;, ,,,
そんなわけで、私の寸評は終わり。けど、ロワはまだまだ続くわねぇ。
ピンチになったらヤクルト飲んで頑張りなさぁい。それじゃ♪