>>25 代表作を一冊挙げろと言われれば、「推測と反駁」ではないでしょうか。
また論文集である「客観的知識」もポパーの科学方法論の太陽がつかめると思います。
また、「歴史主義の貧困」と同時期に執筆された「開かれた社会とその敵」は、
「歴史主義の貧困」で批判されている歴史法則主義がプラトンにまで遡って、
大掛かりに批判されています。
>>12 「貧困」で述べられている通り、ポパーは方法論的一元主義で、自然科学と社会科学の
探究の方法は同じ方法を適用しうることを述べています。ポパーの特徴は普遍言明を仮定して、
それをテストにかけて、それを反証しようとする活動の中に合理性を見出すことにあります。
また彼は、ヘンぺル・オッペンハイムモデルを用いて、普遍言明と初期条件を区別することで、
社会科学で問題となっている錯綜性や新奇性、またはポパーのいうエディプス効果
(社会学でいう自己成就的予言・自己破壊的予言)は、
自然科学にも存在することを指摘したうえで、大きな困難ではないことを主張しています。
それが大きな困難に思えるのはひとえに歴史法則主義者の自然科学に対する誤解に基づいていることを
繰り返し述べています。
ハイエクは一時期相当にポパーの影響が見られ、反証という言葉が彼の論文にも散見できますが、
普遍法則を求めることの困難は社会科学においては新奇性の存在、すなわち状況が刻一刻変化してしまうことを
専らの理由にして仮説のテスト(験証)が容易でないことを述べていたように思います。
>>29 24を読む限り、ボケて笑わそうとしているのかと思いましたが・・・
「フレームワークを作っている」とはどのような意味なのでしょうか。
ポパーのいうフレームワークとは、概念枠相対主義およびそれに類する
思想を指しています。なぜ批判するかというと、概念枠というものが
存在し、真理が概念枠に相対的であることを認めた場合、ポパーの標榜する
批判的合理主義の肝要である批判的行為が、無力化したようにみなされて
しまうからです。批判の有効性を確保するためにもポパーは厳しく相対主義を
批判しています。相対主義は20世紀に復活した一種の知的流行ですが、
それに対して最も批判の矛先を向けて攻撃した哲学者はポパーであったと思います。
ポパーの理論は科学哲学あるいは科学方法論に限定すれば、ポパー理論の成果は、
科学的知識の生産の手続きを整合的に描いて見せたという点にあると思います。
おそらく主著を熟読すれば、その整合的な説明に結構ハマると思いますよ。
諸科学の分野には各分野それぞれ独自の研究方法があります。どの方法を用いて、
どのように実験しようとも、ある予測が実験によって間違いであることが明らかに
なるということがあるでしょう。ポパーはそこに目をつけて、知識の進歩はいわば
予測の失敗から始まると考え、その失敗から目をそらさずその失敗をさらに説明できるような、
新しい法則を提示し、さらにその新しい法則をテスト(実験)にかけて
また実験結果との齟齬(すなわち反証)を見つけていく、というサイクルに
知識の進歩があると考えました。テストにかけられる言明は反証可能性を
もっていなければならないとはこの文脈で理解すべきです。
すなわちこれこれこういう事態が起きれば反証される(言明が偽となる)
可能性をもっていなければ、上記のサイクルがうまく作動しません。
言明が偽であることが明らかにならなかったら、新しい説明を見出そうという動機が
あり得なくなるからです。
かつてアインシュタインは「科学研究はやはり反証ということを
念頭に置かなければならない」といった旨の事を述べています。
また、60年代の経済学は科学としての資格を意識して、ポパーの方法論の影響を
受けた学者が数多くいました。役に立ったかどうかは断言しかねますが、
諸科学の方法論に大きな影響を与えたことは間違いありません。