シベリア郵便局・487通目【レス代行】

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宜しくお願いします
【板名】ミステリー板
【スレ名】新・面白い叙述トリック考えた 6
【スレのURL】http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1371777072/l50
【名前】とある国の監獄にて1/2
【メール】sage
【本文】↓
ハァハァ、78・・・79・・・80・・・ハァハァ、81・・・
傷跡だらけの鍛え抜いた身体が脈動する。
隆起した筋肉に汗が流れ、冷たいコンクリートの床にポタポタと落ちる。
サムは黙々と腕立て伏せを続けていた。薄暗く狭い鉄格子の中で。

ここは、とある独裁国の監獄。
政治犯扱いされたサムは終身刑を言い渡され収監されていた。
まわりは窓1つ無いコンクリートの壁に囲まれ、簡易な二段ベッドが1つと奥に便器があるだけ。
ひんやりと冷たい鉄格子の前に顔を見せるのは定時に食事を運ぶ看守くらいなもの。
話し相手もおらず、ずっと一人房だったのだが、そこにまた一人、看守に連れられてきた新入りが入ることになった。
そいつは名前をアレックスといった。
アレックスは見るからに悪人面したふてぶてしい様相で、囚人服の襟元から蛇の刺青が覗いている。
でっぷりと太った大きな体格に腹が出て、やたらとその腹をさする。
サムもアレックスもお互いを意識しあい一言も言葉を交わすこともなく、鉄格子の中はイヤな沈黙が続いた。
その沈黙を破るように、そこに現れたのはあの看守ではなく、死神だった。
(つづく)
9312/2:2013/10/08(火) 16:17:38.22 発信元:61.197.20.226
宜しくお願いします
【板名】ミステリー板
【スレ名】新・面白い叙述トリック考えた 6
【スレのURL】http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1371777072/l50
【名前】とある国の監獄にて2/2
【メール】sage
【本文】↓
(つづき)
鉄格子をすり抜けスーっと入ってきた死神は、二人に向かって、地獄の底から響くような声でこう言いだした。
「今夜、この中の一人を迎えに来る。その一人をお前達に決めさせてやろう。フフフ・・・」
そう言うと死神はまた鉄格子をすり抜けスーっと闇の中に消えた。
覚悟は出来ていたはずのサムも、いざ死神を見ると怖じ気づいた。
「まだくたばるのは御免だ」するとアレックスも「同じだ」
しばらくの沈黙のあとで口を開いたのはアレックスだった。
「ここには三人の人間がいる。あんたも死にたくないようだからこうするしかない」
腹をさするアレックスを見てサムはようやく理解し頷いた。

翌朝、食事を運んできた看守がサムとアレックスの顔を眺め一言つぶやいた。
「昨晩、ここで何かあったのかしら?」
「べつに」と返すアレックス。
そしてサムとアレックスは生き残ることが出来たのである。
たとえそれが監獄の中の日々であろうとも。