司試浪人の就職事情 ver.2

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585氏名黙秘
>>581
> P.324に元受験生である上原高史さんの実体験小説


「彼女と試験と転職と」 P.N.上原高史さん(35歳)

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 フリーターから7年前に某官公庁関係の仕事に就いた。きっかけは5年間付き合ってきた彼女に、突然、別の彼氏が出来たことだった。新しい彼氏は、大手メーカーの研究員だった。彼女は「生き生きと自分の仕事を話してくれるのが嬉しかった。」と言い残し僕のもとを去っていった。

 そのころの僕はフリーターをしながら、司法試験の浪人生活を続けていた。膨大な知識の詰め込みには、やはり膨大な時間が必要だった。根っからの“勉強嫌い”という性格の矯正も大変だったが、一人暮しで仕送りもなかった僕には、仕事をしながら勉強に費やす時間を確保することが、難題であった。そのために何度も転職を繰り返した。新幹線の車内販売や救急病院の夜間受付、新聞配達、司法試験予備校の社員、警備員、道路の白線引き、中古車販売店の車清掃、清里の保養所の皿洗……。どれも時給が良いか、手待ち時間の長さを利用して勉強ができる仕事だった。また、大学の講義は試験勉強に役立たないことを知り、時間がもったい無いから休学してしまった。

 この間、僕なりに生き生きとした生活を送っていたつもりだった。だが、司法試験では何度も地面にたたきつけられるように、不合格を繰り返した。そうこうしているうちに、僕は少しずつ疲れていった。応援してくれていた彼女も、敏感に僕の疲労を読み取ったのではなかったろうか? 同い年で、当然結婚は意識していたようだ。5年間付き合えば、必然的に彼女も5つ歳をとる。別れる半年くらい前に、「お風呂と全自動洗濯機があれば結婚してもいいよ」なんて言っていたのを、聞き流してはいけなかったのだろう。