あまり具体例は挙げたくはない。しかし、一つくらいはいいだろう。
ぱっと探してみた例なので、深い理由はない。
民法69番、「履行遅滞に基づく解除と催告 1,(二重の催告の問題)」というやつだ。
こんな論証である。
「期限の定めのない債務について、債務者が履行しない場合、
債権者は債務者を遅滞に付すための「請求」(413条3項)をした上で、
さらに541条の「催告」をしなければ契約を解除できないか。」
「確かに、541条の文言からすれば、債権者が催告をする前に、
債務者が遅滞に陥っていることが必要と思える。」
「しかし、このように解すると、不誠実な債務者に口実を与えることになりかねず、
誠実な債権者との間で、著しく公平を欠く。」
「そこで、債務者が履行遅滞にあることは、解除権発生の要件にとどまり、
541条の「催告」をする為の要件ではなく、かかる「催告」を改めてする必要はないと解する。」
どう思うかなあ。
続く
1号、頑張れ!
そりゃあさ、言っていることは分かるよ。
でもさ、「公平を欠くなら」何でもおっけーなのかなあ。そんな理由で何でもいいなら法律って何なんだろうな、…
なーんて感じないだろうか。
言っておくが、「公平」という考え方が理由にならないわけではない。
趣旨に取り込めば、立派な理由の一つになる。むしろよく使う。
でも、この論証がどうにも裸の利益、すなわち、現実の必要性ばかり押しつけているイメージなのは、あまり趣旨、原理原則に戻って、
そこからおろしてないせいだろう。
まあ、この程度でも受かるんだろうけどね。
続く
一方、こんな論証もある。
同じ論点だが。
「期限の定めなき債務の債権者が契約を解除する場合、
履行遅滞に陥らせるための催告の他に、解除のための「催告」(541条)が必要だろうか。」
「思うに、541条が解除について催告を要求した趣旨は、
債務者をして最後の履行の機会を与えることにある。」
「だとすれば、債務者の不履行が、違法であること、すなわち遅滞に陥っている事は、
解除の催告のための要件ではなく、解除権発生のための要件であると考えるべきである。」
「従って、二重の催告は必要ではなく、両者の催告を一度で満たすことが出来ると考える。」
この論証はどうだろう。
続く
まあ、こいつも、「趣旨」と、「だとすれば…」以下の論証のつなぎが悪い印象があるが、
しかーーーーし、
よほど、法律家の文章らしくないだろうか。
それも、書き方も簡単だ。
趣旨、原理原則から落とし、結論を導き出している。
たいしたことは言っていない。実際本当に。
でも、塾論証の、ごり押し的、裸の利益衡量的イメージはこの論証にはない。
この論証こそ、ご明察。セミナーのビニール本論証パターン、「受かる論証」である。
続く