【もしも】種・種死の世界に○○が来たら12【統合】
スレ立て有り難うございます。お疲れさまです。
では、引き続き投下させて頂きます。
19/23
彼女はあまり良い表情を見せていないが、母という響きには一瞬反応していた。
彼女にも女としての母性本能の様なものが芽生えて来ているのだろう。
艦長日誌補足
その後の数日は激務だった。
トランスポンダー経由で送られた医療キットを持って、私は毎夜20人のペースで回復させていった。
予めピックアップされていた重度患者を軽度の傷に癒し、『奇跡的に』回復した患者はバナディーヤの病院に移送した。
20人のペースでも六日かかる計算だ。それでも命を粗末にするわけにもいかない。
負傷者達からすればバナディーヤの奇跡として語られていたが、その作業を施すこちらは重労働だ。
艦内では唯一誰にも怪しまれずに「視察巡回」として回れる立場上、私以外にこの作業が出来ないのだ。
作業自体はトリコーダーで患部を調べて、治療用ビームで患部の傷を塞いで行くだけだ。
難しい作業ではないが、腕が疲れる。こんな状況でドクターを尊敬する事になろうとは思わなかった。
帰ったら彼にも勲章を贈るべきだろうか。
日中は朝から明けの砂漠の若者達の教育から始まる。
彼らには自治を行う為の知識が圧倒的に不足していた。そのため、自治を行う為の最低限重要な知識を与える必要があった。
パッドの方へ必要な情報はダウンロードして渡すが、実際の生身の人間同士のコンタクトは重要なのだ。
バナディーヤを視察して回り、周辺地域のゲリラとの会合を纏め「明けの砂漠都市連合」を結成させた。
闇市場の元締めであるジャイリー氏もこの連合に(半強制的に)加盟してもらった。彼が居なくては意味が無い。
彼には単なる流通網だけじゃなく、技術陣へのコネもあった。これらを結びつけて一定の戦力を保持させるため、
戦場で破壊したZAFTのバクーを6機修理し、その為の母艦としてヘンリーカーターも動かせる様にした。
この仕事は帰って来たセブンが精力的にこなしてくれた事もあり、そう手間もかからずに進行した。
勿論、この間には軍事指導も含めた技術供与が行われている。
我々は意図してこの地域に不相応な戦力を整えさせているのだ。
バジルールは勿論この行動に猛反対した。
将来的には連合に対して牙を向けるかもしれない相手に、これほどの兵器を与えるのは愚かだと。
確かに彼女の言葉はその通りだが、現在の連合の纏まり方は私自身気に入らないのだ。
私はとある話を思い出していた。
支援
支援
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それはピカード艦長がボーグから守りフェニックスを飛ばすのに関与した話だ。
もしもこの「過去」の地球に来る事が必然であるとすれば、私にも何らかの意味が与えられている筈だ。
そして、この地球は我々の地球とは似て非なるものだが、類似点は有る。
しかし、このままでは我々にはならない。
……であるとすれば、我々がピカード艦長になるべきなのではないか……と。
シャノン・オドンネルとしてこの世界に関与し始めて以降、日に日にその思いが強くなるのだ。
私はある少年の葬儀に呼ばれていた。
この戦いで勇敢に散って行った少年、アフメド。
彼はまだ成人にも満たない年齢で戦い、自らの意志でキラ少年を庇って散って行った。
このような年齢の少年ですら自らの死を恐れずに向かって行くのだ。彼を我々は最敬礼で見送った。
葬儀の終了後、彼の母親はカガリ嬢に何かを渡していた。形見だろうか。
その時、サイーブ氏とキサカ氏が私の方へ歩いて来た。
「……素晴らしい葬儀でしたわね。我々も彼を送る式へ参列出来たことを誇りに思いますわ」
「なに、あなた方が居なければ、我々はあの戦いに勝つ事は出来なかった。それに、この都市連合もな。
全部あなたのお陰だ。深く、深く礼を言いたい。……有難う」
彼は正装のターバンを脱いで私に深く礼をした。このような畏まった彼を初めて見る事となった。
「良いのよ。私達の間に礼は要らないわ。困った時は助け合うものよ。
それに、約束していたスカイグラスパーを置いて行く事はできそうもないから、
せめてそれに見合うものを用意出来ればと思ってのことよ。気にしないで」
私は彼の手を取り姿勢を直させて笑顔で語りかけた。
彼はゆっくり姿勢を正すと、再びターバンを被り口を開いた。
「こんなに良くしてくれて頼める話じゃないが、お願いしたい事が有る」
「お願い?」
「あぁ、この俺の隣のキサカと、その連れのカガリをオーブへ連れて行って欲しい」
「オーブへ?どういう事かしら」
「詳しくはキサカ、お前が話せ」
支援
支援
21/23
キサカ氏はコクリと頷くと、私に話しかけて来た。
「私はこの街の出身ですが、現在はオーブ陸軍第21特殊空挺部隊の一等陸佐としてオーブに所属しています。
この度はオーブ連合首長国前代表首長であられるウズミ・ナラ・アスハ様の命に従い、
ご子息であらせられるカガリ・ユラ・アスハ様のご留学に付き添っています。
しかし、情勢は刻一刻と変わります。先日ウズミ様から帰国するよう連絡が入りました。
そこで、あなた方はアラスカへ向かうと仰られた。ならばその進路上のいずれかのポイントまでで構いません。
我々を一緒に乗せて欲しいのです。現状では引くのも難しい情勢ですから、是非」
彼女がただの少女ではないと思っていたが、お姫様だったとは。
しかし、彼の話も何かの縁。この話を使わない手は無かった。
「良いでしょう。しかし、条件が有ります」
「どのようなものでしょう」
「あなた方の国は不可侵中立でしたわね。でしたら我々が近づけば牽制射撃を受けると考えて良いわね」
「……はい」
「ならば、せめて繋いで下さるかしら。できれば補給中継点にも使いたい所ですけど、
確か私が知る範囲では、アスハ前代表はかなりの堅物との話。危険を承知で引き受ける以上は、
相応の代価を要求したい所ですわね」
「……わかりました。可能な限り善処させて頂きます」
「そう。でしたら期待していますわ」
「……というと、宜しいのですか?」
「えぇ。喜んで。ただ、うちは無銭飲食は駄目よ。それ相応に働いてもらいます。勿論お姫様も。良いかしら?」
「それはもう構いません。カガリ様の教育の為にも、ご自由に宜しくお願いします」
「あら、そう?ふふふ」
こうして、私達の船に新たな乗客が増える事となった。
キサカ氏は軍人というだけあり、保安部所属となるだろうか。
カガリ嬢は……彼女と話してみないことには分からない。
私は葬儀後もスケジュールに追われている。
まずは残務を処理しなければ出航出来ない。
支援
;y=ー( ゚д゚)д゚)д゚)д゚)д゚)・∵. ターン
支援
22/23
艦長日誌
都市同盟軍を編成した我々は、アフリカ共同体政府と秘密裏に交渉を持った。
我々は彼らのZAFTとの中立に近い関係を逆手に取り、我々とも同一の対応を採る様要求した。
彼らに対する見返りは無いが、将来的に連合が勝利した場合の保険は必要ではないかと持ちかけ、
こちら側に関与しない無関心であればそれで良いとした。
この交渉は連合政府正式の交渉ではないが、我々はトランスポンダーを通して月と交信し、
月の連合を通してトゥヴォックにアズラエル氏と話をさせ、彼とアフリカの引き込みで合意した。
勿論これは仮定の話では合ったが、理事と意志が同じであれば良いのだ。
私はこれを加味した上で、我々との絆を結び将来への芽を残すか一つに二つだと迫った。
彼らは私の要求に屈し、都市同盟への不可侵を受諾する。
この後は壊れかけた南アフリカ統一機構との再交渉となったが、
私は北アフリカの共同体政府との不可侵が成立した以上、北軍の南進は無いこと、
そして、その北軍最大の軍勢であった砂漠の虎が撤退したことから、
アフリカの連合はビクトリアへ向けて反転攻勢をかけるチャンスであると説き、
残党が宇宙へ逃げ出して行くのを見計らって攻撃に転じる様要請した。
この計画にはこちら側でも一計を案じていた。
トゥヴォックの編成した新艦隊はビクトリア向けの対応を目指していた。
そこで、ビクトリア向けのZAFTの降下ラインの閉鎖を視野に補給ライン確保に入ることにした。
宇宙に脱出してくる軍に対してはこちら側も対応する必要は無い。
必要なのは再侵入しようとする勢力に対してだ。
統一機構政府側は一度撤退した連合に対する不信感を募らせていたが、砂漠の虎を敗退させた私の存在と、
アフリカ共同体政府との不可侵成立、そして、都市同盟という友軍の発生に信用し、攻勢に入る準備を約束した。
実際の所攻撃する必要は無い。ただ干上がる様に囲むだけで問題は解決するだろう。
何も実動部隊を実際に動かさずとも戦争は戦える。兵站線を如何に分断するかは重要だ。
尚、ここまでの交渉で私が常に連れ歩いたのはサイ・アーガイルである。
彼は私の秘書として良く働いてくれた。大抵は私とラミアス艦長とサイ少年で入り、
事務的な仕事はバジルール大尉に任せた。
支援
支援
>一つに二つ
ん?
23/23
私はバジルールの言う通りにアーガイルを上級士官として育てる事に同意したが、
結果的には正解だった様に思う。
彼は育ちの良さも有り、軍人である彼女等よりも社交を知っていた。
元々アーガイルは連合の事務次官である故、アルスター氏の娘との婚約を結ぶ程の名家。
彼には素養が有ったのだろう。また、性格的にも気配りが出来る視野の広さは外交に必要だ。
私は彼に備わっていない度胸と駆け引きの仕方を教えることで、私の考える次世代に繋げたいと考えた。
こうして私は数日の激務の末に、アフリカでの必要な処理は完了した。
アフリカの確保の為にかなりの時間を要したが、ここが今後の要となるだろう。
何事も種を撒いておかなくては芽が出る事は無い。
……私の種が願わくば大きく育つ事を願って。
「アークエンジェル、発進!目標、アラスカ!」
ラミアス艦長が命令する。
ブリッジに同席した私は、視界前方に迫る紅海を見ながら新たなる旅路に心引き締めた。
多くの支援書き込み有り難うございます。
これにて投下第一期は終了となります。再開予定は来年始めを考えております。
その間に気が向いたら放送及び掲示板へのネタ投下も有るかもしれませんが、
ひとまずはこれで暫くの定期投下はお休みになります。
GJ!
いやー、見事なまでの艦長の根回し!ついに帰ってきたセブンとイチェブ。
グランドスラムの実機は製作されるのか気になる。
オーロボロスに強化されてるデュエル、ナノプローブはやっぱパネェな、このままAAも改造しそうだw
長時間投下乙
イイ感じでまとまったですがここから1クール間が空くんだなぁ
にしても悪魔艦長がピカード艦長の事を思い浮かべていたがST世界の歴史に戦国自衛隊は流石に無いわな、当たり前だけどw
22/23
私はこれを加味した上で、我々との絆を結び将来への芽を残すか一つに二つだと迫った。
私はこれを加味した上で、我々との絆を結び将来への芽を残すか二つに一つだと迫った。へ、訂正します
発見してくれた方、有り難うございます。
乙!
なんか世界が動きそうな予感!
23/23
元々アーガイルは連合の事務次官である故、アルスター氏の娘との婚約を結ぶ程の名家。…は
元々アーガイルは連合の事務次官である故アルスター氏の娘との婚約を結ぶ程の名家。に訂正します。
………なんで、こんな所に点が付いたんだろう。(苦笑
14/23
個体の持つ感情がさそれをさせるのだ。ボーグに感情は存在しないから有り得ない。 は
個体の持つ感情がそれをさせるのだ。ボーグに感情は存在しないから有り得ない。
GJ!!!!!!!!!!!!!
続きは来年か・・・
長いなぁ!!!!
でも待ってるぜ!!!!
命ある限りこのスレは守っていくよ!!!!
超乙!
続き全裸ニ―ソで待ってます!w
>>20>>25 え?それどういうこと?
なんかあったの?
637 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:46:59.18 ID:???
9/23
「……ソリッドビジョン(うわぁ、驚かない、驚かない、驚かない〜〜〜!!)」
『ラスティ君、それじゃぁ、テストを始めてもらおうか。これから君に任務を与える。
(略)
ラスティは唐突に告げられた世界観に呆気にとられた。
ワープ5?光学遮蔽?フォースシールド???……どれも謎の用語ばかりだ。
勿論、言っている意味は分かるが、そんなものはSFの世界の産物に過ぎない。
『まぁ、ゲームの世界だ。気張らずに頑張ってくれ。ただ、攻撃を受ければ衝撃も走るし、
機体もちゃんと損傷する。完全に破壊されたらゲームオーバーだ。
なお、エリア内に有る物は何を使っても構わない。どのような方法であれ、
生きて敵艦から脱出して目標点へ向かえれば良いが、飽くまで見つからない様に工夫することだ。
わかったね。じゃぁ、健闘を祈る』
「あぁ、待って!?ちょっと、たんま!あぁ、……切れた。
はぁ。何だよそれ。ワープだって?シールド?わけわかんねぇよ」
そうこう考えている間もなく、視界は宇宙空間に切り替わった。
そこには彼がまだ見た事も無い景色が広がっていた。どう見たって地球の景色ではない。
それもこんなにリアルに。息を飲む景色とは、こういうものを言うのだろう。
「えーと、スペックは……」
彼がそう言うと、リングメニューが瞬時に回転して目前に必要な情報をポップアップさせる。
そこにはこの機体の詳細なスペックが表示されていた。
「マイクロワープドライブ!?最高速度はワープ5……どんなスピードだ?
武装はアームラインフェイザーキャノン左右腕に二門に、アームビームブレイド?ビルトインか。
えっとー……ブレイド出力とパルスビームの変換が出来る様になっているんだ。
で、フォースシールド?……バリアみたいな物か?防御スクリーンモードってのは壁?
あと、腕の中に仕込みで光子魚雷?…魚雷っていうんだから、実弾兵器みたいなもんかな……が2個」
…これ宇宙世紀でもどの位無双出来るんだろ?w
つかこれにアムロが乗ったら?…と妄想してしまったw
太陽系内、惑星間では超光速移動出来ない設定ならともかく
ワープ戦闘、亜光速戦闘上等な恒星間文明の機動兵器相手には
最低でも宇宙世紀のミノドラやCEのVLが無きゃ対抗出来ないだろな
まぁ外宇宙発祥の髭兄弟辺りなら密かにワープ戦闘可能だったりするかもだが
伝説邪神も銀河13少年少女漂流記も恒星間文明だけど超光速航行には制限があったっけ
某宇宙戦艦も艦載機を出すのは大抵は艦が止まってるとかそういう時だったし
>>28 ミノドラやVLでも正直お話にならないぞ。
相変わらず艦長は野心的過ぎるwww
>>30 だから「最低でも」と書いた、ヤマト世界の艦載機相手なら亜光速出れば対抗出来る
小型シャトルにワープ機関搭載されてるスタトレ相手だと無理ゲだが
>>32 所詮延々と加速すれば理論上出るだの、機体もパイロットも耐えきないれだのじゃお話にならない以外にどう言えばいいんだよw
>>32 旧ヤマトなら、波動砲撃たせなければホワイトベースが勝つってハゲが言ってたぞw
だがしかしそこには再生したヤマトの姿が!
>>33 その辺の欠陥やら技術的未成熟やらを引っ包めて「最低でも」と書いているニュアンスを解ってくれw
V2やらスタゲやらがそのままでドナウ級ラナバウトとかに対抗出来るとは思ってないよ
宇宙船がワープするには超加速が必要でMSと戦闘速度にそう差が無いバイファムのRVにならむしろ圧勝かもしれんし
操縦性やら耐久性やら整備性やら速度以外はRVの方がMSを大きく引き離してるかもだけど
>>34 ありゃ〜ヤマトへの対抗心で出た言葉だろうな、
何せ禿は西崎と対立してヤマトから追放された過去があるから
スペック比較だとミノ粉での初見奇襲以外にガンダム側艦船に勝ち目は無いだろうし
重力下での主砲の射程距離からして50`以下だしなWB
ワープレベル1で光速 レベル5は光速の214倍 8で1000倍超えだっけ?
ガンダムの世界じゃ最高レベルでも最低に入るか入らないかってとこか
>>37 真面目に相手するような質問じゃなかったから言ったただの冗談だったと思うよ
>>38 ワープファクターはこうなってるな。
1 1 光速と同じ
2 10
3 39
4 102
5 214 ヘカラス条約制限速度
6 392
7 656
8 1024
9 1516
9.2 1649
9.6 1909 USSエンタープライズD最大速度
9.9 3053
9.975 5754 USSヴォイジャー最大速度
9.99 7912 ボーグ・キューブ最大速度(通常ワープ)
9.9997 198696 亜空間通信速度
9.9999 199516 亜空間通信速度(ブースターリレー使用時)
10 ∞無限の速度 実質到達不可能
>>39 冗談でも相手に対抗しちゃう嫉妬深いのが禿。
その一方で禿自身がバンダイの干渉と戦い続けたからだろうが
スポンサーからの無茶な横槍を排除し切った西崎の手腕を認めて
「日本で本物のプロデューサーは彼だけだ」とも言っている。
日本ではアメリカと違ってプロデューサーが現場をスポンサードから守ってくれないからな
>>41 要約するとネタにマジレスって言いたかっただけなんだ
ワープとかばっかに目が行きがちだがスタトレはセンサー系や解析の能力がヤバい。
数光年先でも余裕で感知できたり、スキャンで敵艦の情報手に入ったり。
主砲の口径だけならヤマトよりもデカイな、ホワイトベース
ガンダム世界だとGガンがようやく亜空間通信の試験段階だっけ
まあスタートレックの連邦の艦長は1惑星の代表とだって直接交渉行うような存在なので、
乗ってる艦もそれ相応の存在ということだな。
サンライズは1stの焼き直しは止めて外宇宙探検ガンダムを作ってくれ
これはどうやら1夜にして1パーセクを駆けるという機動忍者の出番のようですね
>>25 どういうことなの?
ニコで何か言ってたの?
どうか詳しく
シン「ステラ、止めるんだステラ!ステラァアアア!」
カミーユ「シン、援護する!(力を貸してくれ、フォウ!)」
ジュドー「ぜっったいにステラを助けるぞ、みんな!(プル、プルツー…!)」
バーニィ「了解!こんな、子供が戦争のために利用されるなんて…!クソっ!」
ノリス「伍長、動きが悪いぞ!私たちができるだけのことをするのだ!」
なんかふと思い付いた、ごめんなさい
艦長ほど大きい目標持って布石打って行動するクロスキャラは新鮮だな。
帰還するまで腰を据えなきゃならないからだな
これが通りすがりの悪魔艦長だったらスレ○ヤーズの短編みたいな酷いオチだったかも
ガミラスの戦闘機相手だったらMSがマッハ10で機体、パイロットを保護しつつ戦闘できるようになれば対抗できる
しかしそこには瞬間物質移送機を積んだガミラス母艦の姿が!
コスモタイガーUで決まりで良いじゃないか
私がヤマトでもしクロスをするなら、敵はガミラスもどきで、
遊星爆弾が初っ端から打ち込まれ、地球は全員コーディネイター
となる事を決意して生き残る道を選ぶ。(放射能耐性)
ここにイスカンダルのスターシャみたいな援軍は来ない代わ
りにアクエリアスで沈没したヤマトが登場し、ガミラスを倒す
為に沖田艦長を主軸に新造戦艦アークエンジェルを建造して遥
か14万8千光年の向こうへの旅を決意する。
クルーは沖田のもとに集められたまだ幼い青少年達。彼らは
滅び行く地球を救えなかった場合に備え、他の星で生き残るこ
とも視野に集められた……みたいな感じ?
ザフトも連合も関係無くクルーは美味しさで選びます。
ヤマトxヴォイジャーxSEEDで行くと、現れるのはヤマトで
はなくヴォイジャーで、悪魔艦長が量子スリップストリームワ
ープ艦建造のためにセブンと奮闘して…となりそうですねww
量子スリップストリームワープは痛い目にあったんだからやめておけよw
>59
あれはヴォイジャーに無理矢理適用したからなので、構造設計から新造すれば、
たぶん問題無く量子スリップストリーム艦をセブンなら作れると妄想してます。
というか、量子スリップストリーム艦じゃないと14万8千光年の旅は無理ゲー
になるという印象です。トランスワープハブがあるならともかく、トランスワープ
ドライブでも辛いかなと。Voyの旅はハブ使用しなかったら20年に及ぶ旅だった
わけで、7万光年を20年で踏破すると考えると、40年は最低必要になります。
ヤマト式ワープドライブである波動エンジンを手に入れて新造するというパター
ンもあるとは思いますが、スタートレック的に解決をつける方が趣があるかなと。
波動砲が安易に使えるよりは、トリコバルトや量子魚雷やトランスフェイズ魚雷
で戦う方が悪魔艦長には似合っていると感じます。w
旅の旅程は量子スリップストリーム&ワームホールを幾つか使用でようやく届
く距離という感じで、その間を彼女の外交力で切り開いていく感じですかね。
放射能耐性持った場合ガミラス人と共存出来そうだが…デスラーいい人だし
ベイジョーワームホールの繋がった先が種世界でした。
>61
デスラーはビジネスでやっているから、耐性ついても共存不可ですよ。
ただ、全ての戦闘後にガミラス人と共存フラグを立てることは可能ですね。
でもこの場合は「ガミラス人が」コーディネイトされる形ですけど。w
>62
ベイジョーワームホール接続だとDS9フラグですね。w
松本世界も実はインフレすごいしな
アルカディア号なんて頑丈さとワープ戦法はどこのスーパーロボットだって性能だし
>>61>>63 ぶっちゃけ続編では大人の都合で地球人と同じ空気を吸ってるので遺伝子操作の意義をあまり感じない
そういやガミラスの元ネタはロミュランだっけ
まあ、古代もヘルメットだけでヤマトの甲板に上がってるからなwデスラーなんて生身だったし
ところでスタトレの光子魚雷/量子魚雷ってどの位の
破壊威力・爆破範囲(効果範囲つか殲滅範囲、ちなみに地上で使った場合も)
でしょうか?
Memory Alphaによると弾頭には1.5kgの正・反重水素を用いているため
2.7×10^17 Jのエネルギーを放出するみたいです。
ちなみに、世界最大の水爆であるツァーリ・ボンバは2.1×10^17 Jのエネルギーを放出するので、
これと比較すると約1.3倍の放出エネルギーということになります。
光子魚雷といってもいろんなクラスがある、ヴォイジャーの光子魚雷はクラス6で爆発力200アイソトン。
ボーグのマルチキネティック中性子魚雷は爆発力500万アイソトンで星系全体に影響でき、5光年の拡散力を持ってる。
>>68-69 …すまん、正直頭から煙が…w
ぶっちゃけその「クラス1〜6」とやらで
各クラス別での破壊力&爆破範囲と
仮に都市に一発…と仮定してどの位の威力か…を判り易くどうかお願いしたいです…
68 :名無し三等兵:2005/06/08(水) 21:43:03 ID:???
>>67 「ハンドフェーザー一つでナポレオン時代の一個連隊を消滅させる事が出来る」らしいが...
…マジですか?・・・w
>>70 光子魚雷、都市は消し飛ぶ、と考えればよい。
で、量子魚雷は光子魚雷の2.5倍のエネルギー。
>>71 ハンドフェイザー持った100名でローマ全軍を打ち破れるならあった。
しかもヴォイジャーから100年前の時代の時点で。
>>68 あー…んー…
つまり「ツァーリボンバの破壊性能・破壊範囲の1.3倍」=「光子魚雷」×2.5=「量子魚雷」…
でいい訳ですか?
・ツァーリボンバ
致死域は半径6.6キロメートル、
爆風による人員殺傷範囲は23キロメートル、
致命的な火傷を負う熱線の効果範囲は実に58キロメートル
・光子魚雷
致死域は半径8.58キロメートル、
爆風による人員殺傷範囲は29.9キロメートル、
致命的な火傷を負う熱線の効果範囲は実に75.4キロメートル
・量子魚雷
致死域は半径21.45キロメートル、
爆風による人員殺傷範囲は74.75キロメートル、
致命的な火傷を負う熱線の効果範囲は実に188.5キロメートル
こんな計算になるんか?…(汗
宇宙空間じゃ爆風の影響は無いからそれは考えなくても良いな
特に光子魚雷は対消滅兵器だし
いや、流石に地上で使った場合はそうなるだろ?
>>70 25アイソトンの光子魚雷一発で大都市が消滅する威力だそうだよ。
>>77 ぶっちゃけ不謹慎なんだが
・東京駅
・ソウル(京城)
・ペキン
・ワシントンDC
・ロンドン
・パリ
…に一発投下…で、「どの位の範囲」が云々…を知りたいんだけど…
大都市が消滅…と言われても漠然としかイメージ出来ん…orz
どうか判ってる範囲で…。
>>78 そこまで設定ない。
まあアメリカの作品だからニューヨークとかロサンゼルスであたりでいいだろう。
>>76 ボーグとかならともかく宇宙艦隊の誓い的に地上で使うことは(建前上)ありえない。
そもそも光子魚雷って宇宙空間では核兵器の爆風が発生せず威力も拡散して非効率だから採用された兵器だぞ。
対象との対消滅反応で発生したエネルギーは100%γ線で放出される上に爆発自体が収束しているので爆風で広範囲に被害とか原理上無いから。
逆に量子魚雷は局所的にビッグバンを引き起こす兵器なので地上で核を使うよりもっと酷い事になる。
考察もいいがもう少し控えないか。他のが投下しにくくなる、例えばクスィーとか
マフティー先生が最後に投下したのっていつだったたっけ?(遠い目…)
もう来ないでしょ、あの人
此処の一部の住人に散々叩かれて嫌になったんだよ
そんな事象あったか?
俺は見た覚えがないんだが…「三ガンダムseedデスティニー」のほうだよね?
つか、避難所に近況報告してくれていたぞ
>>84 あれ、そうだっけ?
おっかしいなー、勘違いしてたのかな
歴代主役ガンダムをスタトレ技術で魔改造。
88 :
692:2012/10/06(土) 22:46:12.49 ID:???
それマウンテンサイクルの機械人形じゃんw
>>87 基本的に
「攻撃(フェイザー)・防御(スタトレ装甲orバリア)・スピード(ワープw)」が
ほぼ同じになるから後はパイ次第になるな…
>>89 ZZのハイメガキャノンにジェネシス装置搭載するとか。
ボーグによって超大量生産され
宇宙の色が見えないほどの数がやってくるサクとシム
>>91 (イグル―の青葉区のシーンだったか?)
「最大の戦力差はもっとも分厚い所で30対1、最も薄い所でも6対1であった…」
これすら凌いでしまうな…ハハハ…w
>>91 (サクとシムをみて)
ボーグ「これはボーグが同化する基準を満たしていない、同化の実行を拒否する」
ボーグは93の方が仰る通り同化基準が存在するから、
ワープ未満の文明はそもそも無視されます。
ちなみに強い文明にも攻撃を仕掛けますが、撃退され続けます。
一見無意味で無謀な挑戦でも、ボーグはそうした戦闘を通して
相手の技術を少しずつ吸収してキャッチアップします。
だから、僅かに強い程度の技術差は簡単に乗り越えられしまう
為貯金になりません。ボーグを撃退するには圧倒的な戦力で被害
ゼロレベルで叩きのめさない限り、抵抗の糸口を見つけられてし
まいます。
彼らがあっさり倒された生命体8472は、圧倒的な戦闘力と、
同化困難な生物科学技術が有った為で、機械生命体のボーグの対
極だったから同化出来なかったという面も。
Voy & SEEDでやってますが、MSだけ他所の作品投入って
アリですかね?勿論、そのままの仕様では出て来ないけどw
>>94 そのぐらいOKですよ!
原作じゃボーグって惑星連邦に対して全然本気出してないですよね。
アートゥリスの時とかそれこそ数百隻のキューブで一気に攻撃しかけてる。
>>89 スタートレックはいろいろヤバげな物質やエネルギーは盛りだくさんだぜ!
>>94 必然的な性能や用途の要求があるなら、他の作品にあったようなMSが製作される可能性はありえるんじゃないでしょうか?
ただ姿形はにてても、中身と能力は違うものっていうものになる気がしますが
>>95 スタートレックでヤバイ物質とかエネルギーとかいったら、最小でも惑星規模から最悪星系規模で被害出るようなものばかりじゃないですかw
まぁTNGやVOY、映画では惑星連邦相手には威力偵察レベルの対応だよなぁ、ボーグは
本編より未来が舞台のスタートレックオンラインはやってないから実際にどうだったかは知らない
オンラインの時代にはボーグは少しはその気を出して艦隊規模で戦力派遣してる。
逆シャアに艦長が来たらアクシズ落としにブチ切れてクルーの意見を押し切って介入、
アクシズをフェイザーや光子魚雷で木っ端微塵にしてシャアもメタメタにするな。
それは悪魔艦長じゃなくてもカークだって介入しかねないレベルの暴挙だし
(ただしその前のCM明けにロンドベルの美女とのブーツシーンが入る)
カークだったらシャアにドロップキックかますぐらいはやってのけるな。
シャアの思想は惑星連邦の人間からしてみたらアホかよで終了してしまう。
第三次世界大戦で核戦争が起きて、3700万人が死亡して核の冬が到来、1世紀あまりにわたって地球上が無政府状態って歴史があるからなぁ
優生戦争も経験してるし、全て過去にあった暴挙って結論が出てるものを容認するはずも無い
どう考えても人類が衰退する以外に結果が無いからな
ニュータイプ論もただのテレパシーだろたいしたことないよJKで一蹴される。
CCAのテロリズムと連邦政府の腐敗に対しての見方は微妙な所かなぁ。
連邦政府は地球を特権階級と歴史的遺物の保護区として、その他人民は
地球外のコロニーへ強制移住させているわけだから、これが惑星連邦との
決定的な人道意識の違いと映ると思うんで、喧嘩両成敗に向かうんじゃな
いかなと。
「私はテロは許さないけど、格差を固定化する差別意識も容認しないわ」
……みたいな感じにジェインウェイなら判断しそう。
最初は連邦政府の方を助けてCCAを阻止し、後半はシャアの理念の一部
に配慮して連邦政府の打倒に助力するって道が開けそうに思います。
そして統治者の居なくなったUC世界は宇宙戦国時代に突入
悪魔艦長は「あとは彼らの問題よ」とハイサヨナラですね、わかります
腐敗腐敗言われるけど、正直50億人虐殺してコロニー落とされてるのにジオンをあの程度の処分で済ませてる連邦は凄いと思うよ。
統治だってけっこうよくやってる方だと思う。
>>105 実は難民のような戸籍の無い人間を除くスペースノイドにも選挙権があってロナ家の人間が議員になれたりする
なので惑星連邦の理念からすると、敵対してくるわけでもない少なくとも制度上は民主的な国家を打倒する事はありえないと思う
連邦政府内部で改革を行おうとする勢力に人材を送り込む位は頼まれればやるだろうけど
カークやピカードならそうだろうな
でもジェインウェイなら状況によってはかなり怪しくなるw
艦長だって攻撃されて防衛したなともかく主権国家の内政にどうこう干渉したことないはずだが。
何度もコロニー落としてるジオン残党を殲滅するのなら有りうるけど。
そういう「状況」ってことじゃね。
>>111 どんな状況よ?
スペースノイドは皆殺し!とかそんなレベルか。
つか艦長を過激な行動の一面しか見てないだろ。
誰も「ジェインウェイならスペースノイドは皆殺し!」とまでは言ってないと思うんだが
まぁ惑星連邦へ帰還可能な状況ならジェインウェイはVOY本編よりももっとお行儀が良いと思うけどね
VOY本編の行動はデルタ宇宙域で生き残るための緊急的なものが多かったわけで
>>113 連邦の状況がスペースノイド皆殺し方針ってことだよ。
なんで艦長の行動になってんだ?
>>114 スマンが何でこの流れで連邦の状況の話になったのか本気で判らないから落ちついて説明してくれ
まずは連邦って地球連邦?惑星連邦?
>>115 地球連邦に決まってるじゃん。
>そういう「状況」ってことじゃね。
これはつまり行った先の地球連邦の状態ってことじゃないのか?
ヴォイジャーの状況なんて結局原作と同じ孤立状態しかあり得ないわけなんだから、「状況」って言ったら現地側の状況だろ。
地球連邦で「スペースノイドは皆殺しじゃ〜!」なんて言ってる奴ってバスク以外に居たっけ?
むしろティターンズが暴れてる状況でヴォイジャーが孤立してたらなおさら介入しそうなものだが
オラ、今度は意見が揉めてる理由が判らなくなってきたぞ
バスクならワープアウトした惑星連邦艦を問答無用で攻撃しても不思議じゃないな
なにせジオンのムサイ級はコンステレーション級を逆さにして円盤部をスターデストロイヤーに変えたような姿なんだから
バスクが余りにも強圧的過ぎたのがティターンズの敗因だからな
スタート時点で挽回不可能なレベルの失策するとかドンだけ・・・
ジャミトフ始め上層部は資源の再分配と連邦軍の組織改革と捉えてたのに、
30パンチ事件で「アースノイドVSスペースノイド」と言う思想戦争にシフトしてしまった
>>10 カガリがご子息になってるよ、ご息女だよね
なんかあれこれ言ってる感じだが、悪魔艦長が政治思想や体制、主義主張に介入しないってのは同意
そんなことで自分から介入するなら艦隊の誓いなんかそもそも成り立たんし、惑星連邦における各文明の尊重なんかそもそも出来ない
緊急避難として、なんらかの必要性に迫られてって可能性はあるだろうが文明レベルが違いすぎるんだよな
ありえるとすればCCAの文明レベルで阻止できない、大型隕石の衝突とかコロニー落しくらいなものだが、こちらにしても正面切らずに隠れてって可能性が高い
スタトレの原作で、どんな文明相手にどういう行動してきたかってのをみればいちいち内政介入はしないってのはわかるはず、変えようって内部の人間に最小限の助力はすることはあるが
>120
ご指摘有り難うございます。仰る通りです。訂正します。
私の見解だと、単純に地球が環境問題を理由に特権階級の
持ち物になっている事が、彼女の目から見たら異常な状態に
映るんではないかと思ってのコメントです。
環境破壊から保護する名目で地球を出ると言いつつ、それ
ほどの必要性がCCA時点では無かったので、単なる口実とし
て利用されていて、一般人はコロニーの老朽化にも耐えなが
らシリンダーの中で命の行方を握られているため、反発する
組織も現れることになる。
ジオンはそうした流れの産物だから、暴力テロ行為自体は
否定しても彼らの声には一理ある。宇宙民の自主独立の動き
は正しいと見た場合、地球内部で環境保護を訴えた連邦政府
がジャブローを作って、しかも自分で核兵器で破壊したりと
いった行動を見ても、正当性は無いと見るんじゃないかなと。
彼女が介在するなら、連邦内部の良い勢力とジオン側の話
せる人物を協力させ、現行政府を追い落とさせる形で新しい
体制を模索するんじゃないかと思います。結果的に駄目な連
邦組織の解体って感じになり、体制が刷新されるのかなと。
皆、「UC世界で漂流、巻き込まれてやむを得ずこっそりと介入」を前提にしてると思うんだけどな。
さすがに「スキャンした結果、気に入らない文明だから介入、内政干渉」は前提としてどうかしてるし
逆に他人がそれを前提とした話をしていると考えてるとしたらそれもありえないわ。
CCAの世界なら、地球は特権階級の持ち物にはなってないよ?
地上に住んでる人間は一般市民のほうが多いし、むしろ貧困層などの分布のほうが多い
ニューフロンティアとうたって人を集めて置きながら、結果としてそれが夢で語られるほどの現実でなかったというだけの話だったはず。
地球連邦の上層部にいる一部の幹部が地球連邦という組織を私物化しているって言うのはあるけど、それは組織の内部の話であって地球は棄民とかしてるわけでもないんだから、単なる利害関係による闘争にしかなってないはず
そもそも、ジオンの独立自体がコロニーを宇宙植民地として搾取されたことと、宇宙生活者による自治権確立の運動、それと地球を聖地として人類は汚すべきではないという思想から来るもので
最終的に地球連邦側が制裁などの強硬手段で独立を阻止しようとした結果、武力によって独立を承認させようという流れになっただけで
ジオン側の自主自立を求めた主張はともかく、それ以外の点では地球連邦も有能ではないが保守的で長年で腐敗が進んだ組織にありがちな物でしかなく、それだけを理由には介入はしないのでは?
スタトレ的に言えば、組織の正常化のために力を貸してくれと現地の人間が言ってきても「艦隊の誓い」を理由に断るケースだと思う
それぞれの陣営でばらばらに動いている活動家とかに渡りをつけて、きっかけを与えてもそれで改革ができるかは彼ら次第っていう見守る形が一番可能性が高いはず
どうしても、悪魔艦長として早急に地球圏を統一して地球人類の組織として異星文明との接触に備えなくてはならない、という話なら又前提が代わるとは思うけど・・・
>>123 誰も書いてない、「巻き込まれてやむ得ない」という状況と理由の説明がないのにそれを前提にしてる時点でおかしい
後からこういう前提がーって言われるのと同じで、前提があっても最初から書いていならないものと同じ
それは単なる言葉遊びだな
しょせんNT能力者でも拳で語り合うガンダムファイトでもないんだから
言葉以上に言葉足らずな掲示板の議論なんてお互いの勘違いによって成り立っていると過言しても良い
結局の所、行間を読めってのは無意味だってことだな
書かれてる文章が全て、小説も同じこった
もっとも、それを言ったら逆に相手の書いた文章の行間を読んだか読まずか
相手が何を前提に話してるかどうかすら受け手次第なんだけどな
小説ならともかく、掲示板で顔すら見えない相手の書いた文字の情報量なんてたかが知れてるから
おまいらいい加減もちつけよ…
スタトレってフェイザー以外でビーム兵器とか実弾系火器(光子魚雷・他のミサイル系とかで無く)ってあるの?
>>118な遭遇から始まった
「スタトレin Z」を見て見たくなったw
>>130 ヒントをあげよう
1;
威力や連射速度が調整でき、射程や命中性が高い汎用性のあるエネルギー周波数なども変えられる兵器があるのに、わざわざ別の兵器を開発する理由
2:
光速の90%ととかの速度でお互いに移動している船が標準の世界、宇宙のちりとかもその速度で船にぶつかっても大丈夫
3:
光子魚雷にはワープドライブが搭載されている
フェイザー系以外のビーム兵器を採用してる文明も当然あるけどな
もっとも、その代表だったロミュランも今じゃディスラプター砲標準標準装備だが
>>133 そして、ディスラプターもフェイザーと同じナディオン素粒子を利用したエネルギービーム兵器で
言ってしまえば殺傷力と爆発力に特化して強化したフェイザーというオチ
まだ「行間と読解力」を考察する流れを引きずってるのか
地球と宇宙は一年戦争前は完全に宇宙側に多く人が居て、
戦争結果として膨大な死者を出したけど、地球上の文化維持
に放置されてる民族等以外はそのまま宇宙生活維持で地球降
下を推奨していないと認識していました。
で、政治的意思決定が地球で行われ、約20億の地球人と
その他大勢のコロニー宇宙民という構造自体は変わっていな
い。勿論その宇宙民の上層部が地球で政治を行っているんで
すけど。
地球での居住可能人口を制限する上で成立している連邦と
いうシステムがある以上、コロニーが消える事もなければ、
コロニー民が勝手に地球に戻る事も出来ない。だからこそ、
コロニーが中心となった封建国家的貴族主義(コスモバビロ
ニア等)が登場するとかの構想に繋がって行くんだと思うの
ですが、違うのかな?
ただ、そういう面から考えると、Vの地球連邦は相当にそ
の力を無くして、政治の中心が宇宙に移ったことを意味して
いるのだと思いますが。
>>135 お前には速さと理解力が足らない、その話題の最終レスの日付くらい見ろよ
>>136 過剰な人口の宇宙への移民推奨って政策と、移民先のコロニーなどの植民地化は連邦の政策だけれど
地球及びその周辺の開拓地である月やコロニーなども、当然地球連邦としては統治下に置く形になるのは当然で
50年という短期間で90億の人口を宇宙空間で生存させる為のコロニーなどを作ったのだから、その莫大な費用を回収する為にコロニーから収入を得なければなら無いというのは当たり前の流れ
人口の大多数がコロニーなどで生活していて、なおかつ実際にそこにすむ人間なんだからそこから回収しろという理屈は容易に考えられる
で、この1点がそもそもソースを知りたい
「地球での居住可能人口を制限する上で成立している連邦というシステム」
経緯と結果は上の通りだが、地球上の人口が増えたからといって地球連邦というシステムはそもそも崩壊しない、元から多かったのを移してきただけで人口が多くて崩壊するなら移民始める前に崩壊してるはず
生活の拠点と糧を一度移してしまった移民にとっては、過去に海外移民として他国に渡った人間が容易に自国へ戻ることが出来なかったように、戻ればどうにかなるという話ではなかったのでは?
ファーストの歴史設定などを見ていても、どこにも宇宙移民政策の撤回の要求や、地球への移民の自由化など、そういう面での問題提議がされているのを見たことないんですが何処かにありましたか?
人口分布という形では、宇宙移民のほうが多数派という事になっているのだから、宇宙移民の中での自治権の拡大や地球中心の組織である地球連邦に対しての対等な立場の要求という流れになるのは、不自然ではないはずです
棄民政策が同という話ではなく、人口や経済・政治力の移り変わりで主導が地球から宇宙に移り変わる流れでしょう
既に地球文明というのが地球上だけでは確立できず、月や宇宙空間のコロニーなどを前提に移り変わっている中で、必然的に従属的立場だったものが独立へと向かう話では?
ん、ソースって言われると、ソース無いです。有るとしたら、
アニメとか見て得た情報からってくらい。最初の方でも書いて
いるけど、飽くまで私の勝手な見解ですw
あれ?「過剰な人口の宇宙への移民推奨」って政策とご自分
で理解されている様に思うのですが、何か矛盾有りますか?
環境負荷等からの保護目的に棄民政策されたことで90億の
人口が宇宙に出るわけで、そうじゃなかったら経済的理屈から
そんな大勢の人が出て行けるコロニー開発はされないと思いま
す。=居住人口制限と捉えたのですが違うのかな?
私はアニメの情報からそう読み取ったんですが、違うのかな
と尋ねたのですよ。じゃなきゃやる意味無いかなと。
たぶん、普通に人口増加向けの対策をするなら、食料や産業
生産プラントを作って増産すりゃ良い。それは宇宙空間という
特殊性を考えれば殆どを全自動化して最小限の人員を常駐させ
るという方が、万が一の事故の補償とか考えても経済的に理に
適ってる。
それをせずに人ごと持って行くってのは、明確に人を地球か
ら追い出したい意図があってやっていることだと思うんです。
劇中でも地球に暮らす特権階級という感覚で見ている人々の
反応があったと思うんですが、理由無く気軽に降りられる様な
もんじゃないんだろうなと。
んで、仰る通り移民撤回要求とかは無かったと思います。自
治権の要求運動ってのがアニメでは中心ですんで。ただ、要求
が無いことと必要が無いことはイコールじゃないから、視点の
与え方次第で変わる様に感じるポイントなので、悪魔艦長が見
たなら違和感を覚えるだろうなと思ったから、そう捉えるんじゃ
ないかと書いたわけです。
例えば、自然保護のために自然公園を作ったのだから、そこ
で暮らすのはもってのほかだ!…という感覚を作ってしまえば、
本来は暮らせるのに暮らせないと思い込むことは有り得るわけ
で、そうした心理誘導も行われた結果の棄民政策なんだろうな
と個人的に考えていました。
ちなみにCCAのスウィートウォーターも違和感の二つ目かな。
廃棄コロニーを再生するより、地球に人を戻すことでサイド3
を潰してしまえば問題はかなりコントロール可能になる。なの
にも関わらず飽くまで宇宙生活に拘っている辺りとかかな。
たぶん、そこで戻すと「戻りたい」というニーズが有るから
戻せないんだろうなぁって勘ぐったんです。自分も自分もって
手を挙げるスペースノイドの発生を防ぐ意味で。
既に宇宙空間に自治権もとめるくらいに生活基盤置いてる人間の集団が、それを全て放棄してまでもどっても自分の財産は一切ない地球に帰るかといえばありえない
最初の移民計画から始まって、既に地球の人口は20億程度まで減ってるんだから多少の人間が戻ってきたところで問題ないし、戻ってきたところで0からのスタートでどれだけの人間が定住できるかといえば貧困層に落ちるだけのほうが多いはず
宇宙空間での経済圏のほうが大きいから商売やるならそちらのほうがいいし、人口が減るって事はそれだけ商売のチャンスや儲けが生まれにくいってこと
人口が増えた→地球環境が悪化した?→生存権を確保しないといけない→宇宙移民を行うに連邦政府が発足
って流れは公式設定なんで間違いないけど、人口が90億から20億だかにへって地球環境も改善されたら継続する理由がなくなって中止されただけ
最初期の移民はコロニーに一戸建てとかをもらえて、その後も雑居ビルに一室とかいっても移民には最低限の生活環境を用意してるわけで、コストに見合う成果と目的がなくなれば続かなくなるのはよくある話でしょ
地球上に計画を主導した政治家や官僚、資本家などが残るのは自分の影響力のある地盤や資本が地球にあるのだから当たり前として
さまざまな連邦政府からの圧力や経済的な搾取、そういったものから来る感情・思想的な意味での「特権階級」であるというのが、宇宙移民が自分たちと地球に住む人間を区別して考えてる問題では?
原作の登場人物やシーンとかから見ても、何処からどう見ても特権階級に見えない地球上で生活している人間が多数いるわけで、特権階級との闘争というのはある種のプロパガンダでしかないというのは間違いないです
自然保護と地球聖地化などの思想は宇宙移民側から生まれたもので、これを発端に地球との差別や権利拡大などの運動を経てジオニズムに進むわけですが
実際には地球連邦としてはこういった地球を聖地化する思想は、好ましいものではなかったという記述を確かどこかで見た記憶があります
これらの思想は、突き詰めると地球上から人類はいなくなるべきだというものである以上、地球に利権などを持つ連邦政府にとって都合が悪いのが間違いないでしょう
サイド3とかの人間を地上に戻さない理由は、簡単に言えば費用の問題でしょう
サイド3というのはラグランジェポイントにあるコロニー群のひとつであり、その人口全てを地上に戻して衣食住を与えて、そのうえ今ある運用中のコロニーをすべて廃棄するというのは莫大な費用と労力がかかるだけで経済的にメリットがまったくありません
それに彼らの求めていたのは自治権と対等な関係であって、全てを捨てて地球に戻りたいという話ではないんですから、強制的にサイド3を潰すという話になれば結局戦争になるというのは代わらないはずです
一度生活の場所を移した後、その場所に数十年も住めば既にその場所が自分たちの故郷であり、自分たちの生活の場になるというのは現実の問題として考えてみればわかるのでは?
それと、スィートウォーターのコロニーの廃棄コロニーについてですが、諸説あるようですが複数の作品で出てくるそれぞれのコロニーは同じものを再利用したのではなく別のコロニーを指しているものという指摘もあります
と、書くだけ書いたけどなんかスレ違っぽいと反省したのでこれ以降はこのネタ書き込まないことにする
よく考えたらSEED板だよな、このスレ
まあ、よく考えなくても結局UCの政治関連は元よりたいした情報がなく、
妄想レベルの推測しかできないのに自分の妄想の方が正しいと!ばかりに他人に押し付けるのはねえ。
>>143 そもそも、コテハンの量産型牛自体が根拠あって言ってるわけじゃないしな、公式資料とかに載ってないものに回答があるわけがない
初代ガンダムの設定なんか、結局は宇宙と地球って対立を作る為のいいわけでしないんだし、数字とか背景とか資料で出ててもいい加減なもんばかり
40年で50億を宇宙に移民とか、1年辺り1億2千万人で1ヶ月1200万人、1日40万人をシャトルとかで打ち上げるとか無理すぎだろw
>>144 さんをちゃんと付けような。SS書いてくれてるんだしそのくらいの礼は払おう。
量産型牛さんはあくまで自分個人の勝手な見解に過ぎないとちゃんと述べてるよ。
>>144 SEEDの設定見たって似たようなもんだろ、むしろSEEDのほうが酷くなってる部分もある
SEEDは設定なんぞよりまず嫁脚本をだな(ry
映画化…はもうないんだろうか
映画化する気がまだあるんなら脚本は小太刀右京先生で頼みます。
>139
なるほど。そういう考え方もあるのかぁ。
良い勉強になりました。やっぱりガンダム話が出来る事は良い事ですね。
答えて下さいまして有り難うございます。
最近pixivにログ置き場作ってます。
徐々にアップしながら絵描きさんも付いたら良いな的な意味で。(え
現在、次の投下に備えて書き貯めてます。早ければ来年一月半ばくらいか
ら投下予定で考えています。
んで、皆様に質問です。
もしVoy-Seedに登場させるなら、どんなMSを希望しますか?
ガンダム以外の汎用量産MSの中からお願いします。
希望者の多いMSは魔改造されて登場するかもしれません。(おい
スペックも趣味で書いてあったら参考にするかもしれません。
量産する汎用MSって意味だと、SEEDの世界じゃ殆どシェアないんじゃない?
寧ろ生きる場所があるのは局地専用のMSぐらいだと思う
クソ固い装甲のXのクラウダさん。
>>151 ないならあるように話を作るまで、それがSSというものだ。
153 :
通常の名無しさんの3倍:2012/11/07(水) 01:17:59.74 ID:Pfo1HfWD
量産型牛さん
ZZでハヤトが地球連邦のお偉い方は地球上の人口が一人でも減る事を望んでいると言ってるので
連邦政府の上層部が地球から人を追い出したいと思っているのはあながち間違いないと思いますよ
宇宙市民が地球に戻りたいは逆シャアでのシャアの演説で「彼らは地球に引きこもり我々に地球を解放する事はしなかったのである」
という台詞の解釈次第だとは思いますけど
≫もしVoy-Seedに登場させるなら、どんなMS〜
ガイア・ギアの
「ブロン・テクスター量産型(両肩に円形の盾?有る奴)」
「 同 改良型」
「ギッズギース」
「同 ライトアーマー」を何卒…。
>>153 いや、ハヤトのあの台詞はコロニー落しとかそういうのを防げない連邦に対する当て付けでしょ
ファーストから短期間に、戦争とあわせて億単位で人口減ってるのに更に減らす理由はないし
逆シャアのシャアはプロパガンダ、逆シャアの時代になるとシャアの演説は政治的目的あってのアジテーションばっかりじゃん
そもそも、アクシズ落す計画の一環での演説だし
>>150 プラント側の起死回生に使えそうなってので考えたら、Wに出てきたモビルドールとかどうだろう?
汎用型の量産モビルスーツで、しかもパイロットがいないから数でも対抗できる
Gセイバーのフリーダムを出してフリーダム同士で対決だ!
>>155 ハヤトは「知ってても何もしない連中が地球連邦政府なんだよ」と言ってるだが
これを当てつけと断言するのは難しいのでは?映像で前後の台詞・演技を見てるとなおさらなんだが
シャアの演説がアジテーションなら尚更それを望んでいる宇宙市民がいるからこそ発言するのでは?
まあシャアの演説もハヤトとジュドーのやりとりも解釈次第だと思うから、量産型牛さんの解釈も『有り得る』と思うと言いたかっただけですけど
トーラスが変形してデルタフライヤーに(ry
一応丁寧に呼ぼうという呼びかけがありましたので、
今後は気をつけて「氏」とか「さん」を付けますね。
>153 氏
そうですか。劇中で言っているなら原作も考えたんでしょう。
つか、そこまで台詞は覚えてなかったです。すごいなぁ。
>155 氏「更に減らす理由はない」について
ふむ、官僚主義なら前例踏襲はよくあることだから、
そんなに不思議な話でもないかなと考えるのは駄目ですかねぇ?
正論で無益でも修正しない組織は古今東西有りますし。
>152 氏
クラウダかぁ。宇宙用ですね。性能の根拠はルナ・チタニウムですが、
カーボンドで代用ですかね。軽くて強いは維持可能かな。
>154 氏
ガイア・ギアを私がよく知らないっていう致命的欠陥がありますが、
出すだけなら不可能じゃないけど、いわばUCシリーズ最強の汎用機だからなぁ。
使いどころに悩みます。
>156 氏
あぁ、いいですね。w
>157 氏
むぅ、もう少しレベルの低いMSを魔改造しましょうよ〜
>159 氏
何かに偽装しているフライヤーのシーンは有り得ると思います。
pixivにログアップ続けてます。絵師見つかると良いなぁ〜
ニコニコのコミュの方も資料の中継点として利用出来ればと考えてます。
まずは30話までの整理を進めて来年の開始に備えてます。
>>160 ジオン独立戦争の切欠は、地球連邦政府が宇宙への移民政策を途中で放棄してしまったのが原因の一つ
必要性が薄れて、多くの労力と多額の費用がかかるコロニー建設などを打ち切って、1年戦争前には既に有形無実化してしまっていたという設定らしい
プロジェクトの予算や補助金のカット、支援などの規模の縮小で経済や生活環境は悪くなったってのも連邦への反発の一つだろうね
>>137の自意識過剰な煽りに亀レスするのもアレだが
>>135のレスは「ディスラプターキャノンはフェイザーの一種」という文が書かれていない
>>133へ
>>134が突っ込みだか補足だかを入れたのを茶化したのであってお前の様な読解力の無い奴はお呼びじゃない
162
今更喧嘩売るのはどうかと思うが
喧嘩がしたいなら余所でやってくれ
>161 氏
すみません、参考にそれらの情報はどの辺を見たらわかるのでしょうか?
>>164 宇宙世紀年表みると、宇宙暦0051年に「地球連邦、新規コロニー開発計画の凍結を発表」となってたから、中断してるのは間違いないっぽい
一年戦争開始時が宇宙暦0079年だから、入れ物作らない移民を続けるのはどう考えても無理だろう
スタトレ世界でガンダムみたいなコロニー作ったら事件の度に破壊されそうだな。
やはりDS9並にガチガチな武装は必要か。
っていうか、スタトレに出てくる観測ステーションとか研究ステーションって、しょっちゅう全滅してたり破壊されたりしてる気がする
居住の為だけの宇宙ステーションってのはそういや出てきた記憶がないな、あるんだろうか?
ヴォスの軽く数百kmはあるシティシップや数兆のボーグがいた超巨大拠点とかぐらいか?
>165 氏
ふむ、そのようなものがあるのですか。有り難うございます。
ただ、私はその話を見て違う印象を持ちました。
開発を凍結したのは単純に必要数に達したからではないのか?ということ。
つまり、トータルで約110億の人口の内、私達の地球でも土着経済に近い
生活を送る土着民は約20億いますが、このUCの時代に至ってもたぶん生活は
ほぼ変えずに居続けると考えたら、20億という数字は移送しなくても良い限界
人数として、政治的/経済的に決めたのではないかと。
20億人分は不要ですから、差し引き90億人分のコロニーが建設されれば充分
です。なのでその分に達した段階で建設を凍結したんでしょう。そして、当初
方針としての宇宙棄民政策は維持するから、一年戦争後も地球人口は20億の
ままで、宇宙で大幅に減った人口を地球に戻す事も無かったのだろうと思います。
移送不要に土民を残す理由は、彼らが文化的生活を送れないことや、地球文
化を残すためという保護的側面も有りますが、土民は賢くないから歯向かって
も怖くないし、必要な土地を与えておけば大人しく何百年でも同じ生活を暮ら
すと理解した上で、無害なため追い出す必要がなく金をケチったと言う感じ。
同じ事がチベット仏教などの宗教国家にも言えるかもしれません。だから
映像上に彼らの様な人々が残ったのも不思議じゃない。
最後に疑問となる地球にもまだ残る例外的文化生活者については、必ずしも
全員を連れて行く必要も無い事や、地球内部の残された都市機能をある程度維
持するのに必要な人員は残されたでしょう。また、政府の意図に反発しても放
置可能な人数まで減らした上で、労働に使える下層民はそのまま残されたんだ
ろうと考えます。そうしないと地球内部の経済損失は大きいですから。
とまぁ、こんな考えに至りました。
連邦政府の意図は市民の管理だったと思います。大統一後はひたすら安定し
た支配である必要を考え、何時でも簡単に消せる様に人を一カ所に集めて、強
制的に税金を捕捉し徴税して労働に向かわせ、反発する人が増え過ぎたらいつ
でも始末出来る体制。それを地球内部でやると環境負荷が酷いけど、宇宙なら
可能だと考えてコロニー移送計画を作った。
で、それを実際に実行したのはジオンであったことで、地球連邦政府の正義
は作られる。ジオンが失脚しザビ家に移りファシズム化させながら、デギンが
連邦と講和の交渉に向かえたのも、ある意味プロレス的意味合いがあったんだ
ろうと思います。もっといえば、あえてジオンを作ったとも言えると。
ただ、アニメで当時そこまでやったらサッパリ分からないから本来の意図と
は違うでしょう。後付け的に考えられる程度のアイディアかなと思いますが、
連邦政府の正当化には悪い手ではないと思います。
そう考えた上でだと、地球の重力に引っ張られる云々の文言とCCAの地球
寒冷化は「全員同じ土俵に立てば少しは自重する様になる」と読めるのかな。
結局軸足が地球か宇宙かでいえば、連邦は地球だから宇宙民の平和なんて考え
ようとはしないと考えたのだろうと。
>>169 うん、裏を穿って考えすぎ
軽くでもネットで探って資料と考察みてくれば?考察すきな人間が集まってるところとか有るし
>170 氏
ん?想像するから違う側面が描かれるわけで、
想像否定したら二次も何も産まれませんってw
>>171 だから、考察したいなら別の所にそういう奴が集まってる所があるって、誘導したんだけど?
ここは種・種死のスレでしょ?
>>171 宇宙世紀系の考察をしたいのなら、この板でするより旧シャアとかの方が良いんじゃないですかね?
そっちの方が詳しい人が多いですし
>171氏
裏を穿って考え過ぎというご指摘は受け取りませんが、
クロスオーバーから離れ過ぎるという面は汲み取ります。
>172 氏
仰る通りですね、すみません。
これ以上はスレ違いというご指摘を受け取ります。
確かに有りましたね。良い機会なので、そちらのスレ
も覗いてみることにします。いつかUC世界ネタで話も
考えてみたいですし。
まあスタトレ世界はテラフォーミング技術も凄いからコロニーつくるより植民の方がコストよさそうだな。
1/2
それは、私が考えていた結末とは全く異なるものだった。
旅の終わりは新たなる人生の始まり……そんな結末が物語のセオリーではあるが、
まさかこの様な終わりを誰が予想出来ただろうか。
「……ミスタートゥヴォック、後方スフィアへ向けてトランスフェイズ魚雷発射」
「トランスフェイズ魚雷、発射」
後部魚雷発射管よりトランスフェイズ魚雷が射出される。
トランスワープハブを逃げ切った我々の後方から迫ったスフィアは,
ハブの爆発に巻き込まれ大破しつつも執念の如く我々を追い迫る。
しかし、これまでの私達と違うのは、もはや彼らは敵ではないということだ。
「トランスフェイズ魚雷、命中。ボーグスフィアは爆発しました」
「ふぅ。警戒を解かないで、キム少尉、周辺宙域の長距離スキャンを。ここは何処なの?」
当面の問題であるボーグはこれで沈黙しただろう。しかし、彼らがアレで終わるとは思えない。
”私達”が放った策も彼らにとっての規模の縮小は意味しても消滅には至らないのだ。
ボーグは増殖する。それが誰の願いによって作られたものなのかは不明だが、
彼らのシステムはそのように作られて来た。たぶん、それが本来の彼らのシンプルな願いなのだ。
現在の凶悪さは取り込まれた生命体の意識を吸収する中で醸成された、
複合的な思念とでも呼ぶべきものであろうか。肉付けはされていても、
彼らの願いは至極単純なものなのだろうと推測する。
「艦長、宙域はα宇宙域です。ただ……」
「ただ?」
「……故障でしょうか、惑星間の亜空間通信が一つもキャッチ出来ませんでした」
「……どういうことかしら。セブン、あなたの方で分かる?」
「やってみよう」
彼女は手近なコンソールからボーグプロトコルでスキャンを命令する。
それらの命令は天体測定ラボを通じてディフレクターから広域スキャンが発せられる。
「ん、これは!?艦長、小型のボーグ船の反応を感知」
「何処からなの!?」
「今スクリーンにラボの分析映像を出す。スクリーン・オン……これだ」
その映像には宙域に太陽系が表示され、
そちらへ向けて小型のシャトルサイズの船体が進んでいるのが見える。
距離にして数光年程度。こちらがワープで追えばまだ間に合う。
でも、地球へ到達するぎりぎりだろうか。
「ミスターパリス、コースセット。故郷へ!フルスピードよ!」
「はい、艦長、コースセット、地球。ワープ9!」
ヴォイジャーはワープ航行に入る。
ボーグ艦を追ってヴォイジャーは故郷への残り僅かな距離を足早に迫った。
2/2
「地球が保たん時が来ているのだ」
「それはエゴだ」
「ならば、地球の重力に引かれた連中を今すぐニュータイプにでも変えてみせろ」
第二次ネオジオン戦争で揺れる地球圏は、
小惑星アクシズを地球に落とそうとするネオジオンに対し、
必死に降下阻止に取り組むロンドベル部隊が交戦していた。
そして、敵の大将であり、長年の戦争の立役者の一人であるシャア・アズナブルと、
地球連邦軍の英雄でありシャアのライバルとも呼べる
アムロ・レイが戦うという歴史的な一戦でもあった。
『……見つけた。ジェインウェイ、この借りはこの程度で済まされるものではないが、
お前の故郷の消滅でバーターとしてやろう。……今の私は寛大だ。
この程度で許されることを幸運に思うが良い』
小型のキューブ型シャトルがこの交戦中の宙域のど真ん中に現れた。
突然の登場に双方がこの船の存在に躊躇ったが、ネオジオン型が攻撃を開始したのを見て、
連邦はそれを阻止する様に交戦を開始。
だが、シャトルはこの彼らの意図とはお構いなく独自の行動を始めた。
『うるさいハエが沢山いる様だ。……少し黙って貰おうか』
キューブから無差別にビームが一閃する。
周囲を円を描く様に放たれたビームは射線上の全ての機体を一瞬にして破壊した。
それはこれまで両軍が使用して来たあらゆる兵器の常識的破壊力を逸していた。
『シャア、アレはなんだ!?』
「知るか!あんな物を用意した覚えは無い。大方連邦の新兵器だろう」
『そんな筈は有るか!大量に味方が破壊されたんだぞ。連邦にそんな余裕は無い!」
「よく言う。ソーラーシステムの事を忘れたとは言わせまい」
『だとしたら、それはソーラレイを撃ったジオンにも言えるだろう!』
「……おかしいな。アムロ、本当に知らないのだな?」
『あぁ』
「ならばアレは何だ。ネオジオンの総帥である俺が知らないのだ。
知っているならこんな質問はしない」
『……』
二人は戦うのを止め、新たに現れた小型の真四角の物体を注視した。
物体はアクシズにゆっくりと向かって来ていた。
そして、なにやら緑色の光線をアクシズに照射し始めた。
『ほぉ、地球人は自分の星を自ら滅ぼそうというのか。これは面白い。
私が加担するは本望と見える。フフフ、ならば逝くが良い』
トラクタービームを半重力ビームとして照射しアクシズの降下を後押しする。
アクシズはそれまでゆっくりと降下を始めていたものが急速に動き始めた。
『何だと!?』
「ほぉ、これは傑作だ。あのキューブは我々に味方をしたいらしいな。止めるのか」
『勿論だ。お前達の好きな様にはさせない!』
その時、一筋の緋色の光線がキューブへと命中する。
衆目がその発射もとへと集まった。
そこに現れたのは巨大な白いイカの形をした船だった。誰がどう見てもイカだった。
サンプルとして作ってみました。
Star Trek Voyager in CCA
色々と妄想する切っ掛けに使えますかね?種終わったら考えてみようかな。
USSプロメテウス「イカんの意を表明する、ヴォイジャーはスリッパでゲソ」
この後ヴォイジャーがアクシズを木っ端微塵ですね。分かります。
ヴォイジャー59話で集合体から断絶し、自我を取り戻したボーグ達ですが争いが頻発、
結局争いを無くすために再び意識をリンクし自分達の集合体を作りましたが、
ボーグの発端もああいうより良き社会のためのものだったかもしれませんね。
やたらと同化したがるのは種の特性や知識の吸収以外にも、『いっしょに究極の生命目指そうぜ!』という善意もあるから、なんというか…
どちらにしても、種・種死の世界にやってきてるわけじゃないから別スレで書いてくれ
なんで同じ事を何度も言われるんだろうか、ここはCCAスレじゃない
>180 氏
そうですね。全てが悪意だけで形作られるわけでもなく、
どこかに善意があるから善悪の判断だけでは割り切れないんでしょうね。
>181 氏
最初からサンプルと書いてます。
これ以上この話の続きは書く事無いのでご安心下さい。
もしも種死世界にELSが来たら
ジェネシスとか取り込まれて、地球\(^O^)/状態になると思うがどうなんだろ?
キラやラクスは対話なんてしないと思うし、唯一対話出来る可能性があるのは……ムウ?
>>183 GNドライブ・イノベイター・ヴェーダの3点セットがないと対話不能w
種死にスターウォーズの帝国軍が着たら…というネタを考えていたんだが
最後はデススターにMS突入させてコア壊せば原作どおり!って、安易に考えてたらよく考えるとデススターの大きさと帝国軍の船の破壊力忘れてたわw
戦艦に主砲撃たれたら地球滅亡、MSでデススターに乗り込もうとしても航続距離が足らないとか無理ゲーだった
スパロボとかだと気にされないが、ワープ技術に達しているかいないかってのは絶望的な差を生む。
スタートレックのワープエンジンは恒星並のエネルギーはあるらしい。
今の科学では宇宙創世と同じエネルギーが必要としてワープが不可能とされてるから恒星程度でワープ出来ちゃうトンデモ技術なんだよな
ガンダムもレシプロ機級の出力で核融合炉燃やして20メートル級の人型兵器動かすトンデモ技術だよ
個人的には
ガワは20世紀の兵器で中身が汎銀河文明レベルの
マクロスゼロのF-14を推す
あの密度で水に沈むGWXのMS達。
マーメイドガンダムがスイスイ泳いでる辺りはあの軽さだからなのかな
さて艦長たちはオーブに対してどんな感想を持つのか楽しみだ。
種ガンスタトレいつからでしたっけ?
テスト
スタートレックで中立と言ったら惑星連邦とロミュランとの中立地帯だな。
量産牛先生、再開いつからでしたっけ?
>194 氏 & 197 氏
私の投下再開は2013年1月15日以降を予定しています。
でも、実際に投下作業出来るのは19日くらいじゃないかなと思われます。
ただ、予想以上に私生活が忙しいので多少制作遅れてます。
また近い時期になったら予定を知らせます。
過去ログ(0〜30話)は終盤戦がwikiに追加来ていないですが、
pixivにて投下してあります。終盤28話以降はpixivでとりあえずご覧頂けます。
少しだけ修正したりしてますが、ほぼ同じものです。
ttp://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1648572 あと、悪魔艦長へのリクエストや登場して欲しいMSやキャラ等ご意見有りましたら、
ニコニコのコミュニティへ書き込み頂ければと思います。
こちらだと他のクロス作者さんの投稿の妨げになっちゃうと思うので。
コズミック・イラ メカニック&ワールドによると全コーディネイター人口5億人のうち、プラント市民は6000万人だそうです。
AFC前だと人口100億人だから、CEは20人に1人はコーディネイターだったということになるな。
もしもシラリーとコダラーがいたら
シラリー→宇宙でプラント破壊しまくりでザフト涙目
コダラー→ビーム兵器をすべて跳ね返されるためビーム兵器主体のMSなど涙目
一応接近戦に持ち込んだら勝ち目あるのかな?
シラリーはグレートに首を斬られてやられてたし
>>201 一番恐ろしいのはあの2匹じゃなくて地球が敵に回ることじゃねえの
たぶん通信もレーダーも下手するとミラコロも使えなくなる
あの2匹ただの掃除屋なので
一方ウルトラマングレートがナチュコディ問わずCEの現人類を
信じてくれるかというとこれまたかなり悲観的だしなあ…
ところで、ロボット魂Ξガンダム発売も決まった事だし、
閃ハサクロスの166氏のカムバックもぜひともお願いしたく。
皆様お久しぶりです。お元気でしたでしょうか?
体調も崩し易い時期ですので、お体に気をつけてください。
1/26(長いから3回に分けて投下します。今後の詳細は0時から放送で)
スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED 二期開始です。
第31話「飾り」
「海へ出ます。紅海です」
ノイマンが告げる。
艦橋の窓全体に迫るパノラマに皆の視線が集まる。
アークエンジェルは遂に紅海へと出た。
非番のトノムラと交代で副操縦士席へ座るトールが思わず感嘆の声を漏らす。
その様子を隣で微笑を浮かべながら、ノイマン自身も迫り来る海に感動していた。
ラミアスがクルー達の様子を見てにこやかに告げる。
「少しの時間なら交代でデッキに出ることを許可します。艦内にもそう伝えて」
「やったぁ!……あ、すみません」
トールが思わず拳を振り上げて喜びを表したが、はっとして周りを見渡した。
ブリッジクルー全員の視線が彼に飛んでいるの見て恐縮する。
それに対して普段なら一番早く叱責を飛ばす人物が思わず微笑んだ。
「くくく、トノムラと交代だったのは残念だったな。まぁ、安心しろ。
お前の順番もいずれやってくる。それまで我慢する事だな」
ナタルの言葉に赤面して向き直ったトールを見て、ノイマンはまた微笑んだ。
(……もう、トールったらぁ)
ミリアリアも自分の彼氏が馬鹿な真似をして他人事じゃなく恥ずかしかった。
だが、バジルールの反応を見て一安心といったところだろうか。
さて、寛大な反応を見せたバジルールだが、内心はそれほど穏やかではない。
海に出る事自体は可能だと分かっているが、アークエンジェルには海の備え等無い。
ハンガーのハンセン女史の話では、センサー類の調整準備は整えるという話だったが、
まだ報告は上がって来ていないのだ。彼女にしては苦戦しているのか?
ナタルはハンガーへコミュニケーターを利用して通信する。
「バジルールよりハンセン。そちらの準備はどうなっている」
『……ラボよりハンセン。大尉の要求する装備は整えた。
ジオスキャン・カイト及びソニックスキャナーの稼働を開始した。
スキャンエリアはアークエンジェルから半径1000kmといったところだろうか。
海中はかなり狭く100km前後に搾られる。すまない。急ごしらえではこれが限界だ』
「ひゃ、100km!?そんなにあるのか!?」
2/26
バジルールは彼女の言った言葉に驚きを隠せなかった。
さすがに一般的なスキャンの限界を遥かに超える性能を、
事も無げに「急ごしらえ」と言ったのだ。
……大抵の事には驚かない方だが、そんな彼女でも度肝を抜かされる事はあるのだ。
『……ん?問題があるか?』
「あ、いや、充分だ。すぐにCICとのリンクを確立してくれ」
『わかった。後程私がブリッジへ出頭し作業する。入室の許可を貰えるか?』
「あぁ。宜しく頼む」
『了解。こちらの作業が完了次第そちらへ向かう』
ナタルは天才科学者とでも言うべきハンセンの存在を心強く感じていた。
ただ、その一方で容姿端麗頭脳明晰才色兼備、
……天は二物どころか三物も四物も与えるのかと思うと、どうも納得がいかないものがあった。
そこで真っ先に沸き上がる疑問はコーディネイターかどうかだ。
しかし、結論から言えばコーディネイターではなかったのだ。
如何に船医がオーブの民間医師とはいえ、彼女に手心を加えて検査データをすり替える筈も無い。
大佐はコーディネイターも分け隔てない任用をする人物だけに、
彼女がコーディネイターである可能性も無くはないが、
ヤマトと同様にこちら側にとって味方であるなら、それ以上の理由は必要ないのかもしれない。
思えばアカデミー時代から考えても、現状の様な自分をどうして予見できようか。
教官達の中にはブルーコスモスもおり、
上層部との関係にそうした「自然主義」は前提とも言えた。
彼女はそうした中で優等生として育って来たのだが、現在の上司は全くの真逆の合理主義者だ。
だが、その上司は彼女が知る範囲でも連合内でも、誰も成し得ない快挙を軽々と成し遂げている。
これだけの結果を見せられれば、合理主義が悪だなんて誰も言わないだろう。
「……ふふ、どんな地球も、青は青か」
「…あら、ナタル、どうしたの?」
「あ、いえ、独り言です。……ただ、どこの海も青いなと、そう思ったもので」
「……そうね。濁る事はあっても、深い海の青が染めあげてしまうものね」
「……艦長」
3/26
ラミアスはにっこりと微笑んだ。
彼女からすると、ラミアスのこうした態度が軍人らしくなく気に入らなかった。
彼女の何気ない様な気配りには甘さすら感じていた自分からすると、
現在の自身の反応は信じられないものがある。
そして、気付いてみれば彼女はちゃんと見ているのだと、
自分の考えが見透かされた様なものを感じて、恥ずかしさすらあるのだ。
以前は、艦長という重責も大佐がいるから出来るのだと思っていたが、
実際はそうではない事を実感していた。……自分には無く彼女に有る物。
ジェインウェイの講義では、艦隊は一つの家の様なもので、艦長は家長の様なものと話していた。
家長は指針を決めるだけではなく、家族全員に目を向けて把握していなければならない。
その中で臨機応変にルールの範囲内でクルー達の生活をケアして行く。
それが結果的に全てのクルーのモチベーションを上げる事に繋がり、
艦隊全体の能率と生存率を上げることが出来るのだと。
自分はルールにばかり目が行き過ぎて、人間として相手をすることを忘れがちだが、
決断するためには気持ちを知っていなくてはならないし、それを踏まえて考えなくてはならない。
そうでなくてはクルーの気持ちを一つに纏める事は難しく、采配の成功率も低下するに違いない。
低軌道会戦当時から一つの疑問があった。
それは「なぜ大佐が艦長席に座らないのか」ということだ。
本来ならばあの席は大佐が座るのが正しいのだ。
だが、彼女はあえてそうせずにラミアス大尉をわざわざ中佐にして据えた。
……大佐はこれまでに確立したシステムが変わる事で起こるクルーの葛藤を押さえたかったのだろう。
それだけではない。それはそのまま業務効率の低下を招き、クルーの士気を低下させる。
それを彼女は自身をお飾り宜しく門外漢という言葉であっさりと処理していたが、そんな筈は無いのだ。
……今更ながら、大佐の偉大さを思わずにはいられない。
アークエンジェルは紅海を出て海路を東へ進み、赤道連合を経由してオーブへ向かい、
そこからハワイ経由でアラスカを目指す進路を予定した。
赤道連合は大国インドを盟主とし、自由経済圏であるシンガポールを擁する
東南アジア諸国連合ASEANが合体して結成された同盟圏だ。
明文化された首都は存在しないが、事実上の政治の中枢はデリー、
経済の中心はバンコク及びシンガポールとなっている。
4/26
第三次大戦後、宗教的対立が解消され、インドが小インド圏であるパキスタン、
バングラディシュと連邦を形成し、過去最大の版図である大インド連邦が成立。
そこに東アジア3カ国が同盟を結んだ事に危機感を感じたASEAN諸国が、
タイを中心にインドとの南アジア同盟圏構想を進め、
南のオーストラリアとニュージーランドが連合化による南アジア圏への覇権意欲を見せ始めたことで、
インドとの自由貿易経済圏がまず急ぎ成立し、そのすぐ後に赤道連合憲章がバンコクで成立し、
赤道連合が成立した。
しかしその後、宗教が廃れたと言っても生活習慣に根ざして成立した文化までは否定できず、
それはそのまま文化対立に発展し、その流れは汎ムスリム会議という、
東南アジア内の旧イスラム諸国を集めた独自のルール圏としての成立に至る。
赤道連合と汎ムスリム会議の関係は、基本的に赤道連合内のイスラム諸国連合という立場を守っており、
軍事同盟圏としての赤道連合、小規模経済ブロックとしての汎ムスリム会議という形になっている。
具体的には、汎ムスリム会議は伝統的価値観を共有する諸国とのイスラム経済流通の保護と、
域内イスラム文化の保護がメインとなっている。
ちなみに現在は、ユーラシア連邦内に組み込まれた旧アラブ諸国とも交流が進み、
汎ムスリム会議のオブザーバー枠としてユーラシア連邦所属国との交流も始まっている。
ユーラシア連邦に組み込まれたアラブ諸国内でもイスラム文化に対する無理解への対立が深まっており、
その対立の緩和の為の方策として、汎ムスリム会議への注目が集まっているのだ。
勿論、その動きが分離独立に繋がりかねない事を警戒し、ユーラシア連邦は赤道連合に牽制を仕掛けるが、
ZAFT側の大洋州連合に寝返られるよりは、中立を貫く赤道連合の存在を容認する方が利益があるため、
汎ムスリムの動きに警戒しつつも現状維持している状況だ。
この海域は幾ら中立と言っても、連合の艦が何の通告も無しに通れる程には簡単に行く地域ではない。
特にアークエンジェルはこれらの諸国にとっても「宝」の様な最新鋭艦なのである。
インド洋はインド連邦軍が中心となって海上警備行動を敷いており、非武装中立というわけではない。
また、アークエンジェルが出て来た紅海自体がZAFTによって本来は制海権を奪われていた領域だ。
いわばインド洋の東西はZAFTとの交戦は避けられない海域なのだ。
5/26
赤道連合政府との関係を上手く進める事が出来ればかなりのリスクは低減出来るが、
彼らが「厄介者」と見た場合は最悪の事態も考えられる。中立であるということは、
どの勢力にも基本的に協力しないのだ。
まさかアークエンジェルを例外と見るというわけにも行かないだろう。
こうなってくると、大洋州連合との関係が一つのポイントとなってくる。
彼らが親プラントを貫く真の理由は彼らに聞かない限りは分からないが、
元々は資源輸出国として経済振興を進めていたオセアニアの両国は、
大西洋連邦に飲み込まれる事によって起こる貿易障壁の消滅が、
両国経済の基盤を根底から破壊し隷属する関係になる事を恐れた事によるのだろう。
地球連合によって起こされた戦時体制は、これまでの国家の枠組みを大きく変え、
それまで独立国として存在した様々な人種・民族的な権利を超越した政治統制によって、
多くの人々が冷遇される結果となった。
彼らはそれに対する反感を親プラントという対立軸に乗る事でバランスを取ることを目指し、
連合の暴走に歯止めをかけようと動いたのだ。それは過去の時代に起きた、
Trans-Pacific Partnershipといった自由貿易経済ブロック協定が、
両国に大きな爪痕を残した教訓からでもあった。
ZAFTでは新たな方針が発表された。
それは、これまでの戦力に対する考え方を一新し、
連合がMSを運用し始めることを視野に入れ、対MS戦闘を明確に意識した上で、
戦術的に確実な勝利を収められる機体に搾って量産化するというものだった。
この方針はパトリック・プランと通称されるが、
これは国防委員長であるザラの提案によるものだからだ。
「……我々はとても小さく脆い。
その脆い我らに対し、地球連合政府は膨大な物量で滅しようとする。
その様な暴挙に我々が屈するわけには行かない!
……我々は己の良心と理性により押さえていた力を、今まさに、ここに解放する時だ」
新たに発表された新世代機ZGMF-600-GuAIZは、
低軌道会戦を経て集められた試作機の戦闘データ及び連合の情報を元にして、
連合のストライカーコネクタと大容量バッテリーパックを装備した新しい設計が採用された。
ZAFTが少ない物量で対応するためには、一つの機体を最大限量産し、
それをストライカーパックで振り分けるのは効率が良いという判断からだ。
6/26
装甲はフェイズシフト装甲を一部取り入れ、重要な部位の保護にのみエネルギーを供給する。
これは全体に適用するよりも必要部分に割り当てることでバッテリー消費を回避する為だ。
この機体に求められたのはシグーより長い戦闘時間と汎用性である。
操作性の改善の為にEEQ7Rはストライカーパックとして分離され、
その代わりに新開発された対艦ヒートソードとビームライフルが標準装備された。
プロトタイプで設計されたビームクロー付きシールドは廃止され、
当初設計より大きめのラミネートシールドが装備された。
ZAFTは徹底的に部品点数の削減と修理時に必要な時間の短縮の為の設計簡易化を進め、
ゲイツのデザイン自体も試作よりずっと「刺」の少ない設計となった。
新型ゲイツの配備が進む中、旧機種向けにもリファインプランが提示され、
全機種にストライカーコネクタの装備を指示。
ジン・エクステンダー/シグー・エクステンダーが同時に発表された。
これら機体向けにはストライカーコネクタを通して大容量バッテリーを搭載し、
ビーム兵器の使用を可能にする他、稼働時間を大幅に伸ばす事が出来る。
装甲等は旧来のままだが、飽くまで間に合わせである。壊れたらそれまでだ。
「……パトリックめ、嬉々としてやりおる」
シーゲル・クラインは、パトリックを中心に軍事の采配を自由にさせる事で、
ザラ派のガス抜きを進めていた。結果的に彼の思惑は成功し、
ザラ派は彼が実際に全面協力を打ち出した事を好感し対立は解消しつつ有った。
まだ彼らの中には警戒心も有る様だが、
彼らが要として要求したX-00Aシリーズの開発にGOサインを出し、
積極的にフラッグシップ機の量産に協力したことで大半の人心の掌握に成功したのだ。
クライン自身もこの計画に協力するメリットは有った。
オーソンを引き入れるという当初目的は勿論、
娘であるラクスの救出のためにも軍事的な力は必要という判断があった。
また、そうした背景こそが彼の政治的立場に対する疑心を抱かせない、
効果的な印象を作る結果ともなった。
7/26
彼からすれば娘は可愛いことは間違いないが、それ以上の意味は無い。
幸せであれば確かに良いが、それが成立するのはコーディネイターに自由が存在してこそだ。
……とはいえ、出来れば無事に戻って欲しいという気持ちはあったが、
連合に利用される結果となるならば、覚悟する腹積もりは有った。
「……私は間違った父親だ。それでも世界は変えねばならぬ」
コーディネイトすることの未来は限界に来ている。
ブームによる遺伝嗜好の偏りが致死遺伝を産んだ結果、
第二世代以降のコーディネイトは致死遺伝回避としてクローニングするか、
それとも劣勢調整する他に無い。
人間の欲望の塊であるコーディネイトは、その持ち得る力を最大限に活かすのではなく、
単なる飾りとしてゴテゴテと付け合わせたものに過ぎない。
全てへのエキスパートを目指す事は理想だが、実際はそうはならない。
何より人間の意志までコーディネイトする様な事が無い限り、
全てを効率的に働かすことは出来ないのだ。
仮にコーディネイトの究極的な体制が有るとすれば、それはカースト化に他ならない。
全ての能力を高めるよりは一点に最大級の力を発揮してもらう方が効率的なのだ。だが、
その代わり人の意志すら制御し、プラントは一つの機械とならなくてはならない。
ナチュラルはその多くが不完全な能力を持つが、故に多くの人が横断的に協力する余地が産まれる。
それが新しい技術の生じる源泉となり、進化を促す力を発揮するのだ。
現在のコーディネイターは、皆ほぼ同じ方向を目指した結果、
似た様な力を持った人材が多く偏って存在し、それらが互いの能力を殺し合って暮らしている。
技術開発という面では、科学技術に特化して豊富に人材が居る為支障無く開発が進んでいる様に見えるが、
文化的側面を見たとき、コーディネイターの持つ技術とはナチュラルのコピーに過ぎない。
彼はそれへの反省として、自分の娘のコーディネイトをわざと芸術的方向へシフトさせた。
そうする事でプラントの機械的な側面を少しでも和らげる道を模索したいという思いが有ったからだ。
だが、彼はそれすら間違いであったことに気付いていた。
人間が人間足り得るのは、自分自身で考えて道を進むからだ。
親が敷いたレールを完璧に走ることがコーディネイトの究極であるとすれば、
それは進化ではない。機械化なのだ。……彼女が機械にならなければそれで良い。
間違いを正せない以上、犯した罪を受け入れる他に無いのだ。
「……自由…か。……我々は自由であるべきなのだろうか」
そう彼は心の中で呟き、自身の心を閉ざした。
8/26
「あーーー!気持ちいいぃ!」
潮風に煽られ髪が舞う。
ミリアリアは髪を押さえるの忘れて風を感じていた。
「地球の海ぃ!すんげー久しぶりー!」
大きく背伸びをしながら彼女の隣で相槌を打つ様に言った。
ミリアリアとトールはお互いの交代時間を調整して、皆で甲板に出られる様ラミアスに申し出ていた。
彼女は紅海周辺は敵襲も無いと見て、その調整に同意した。
サイは他の仕事の交代で出ているし、キラはハンガーでストライクの調整の為に出払っている。
フレイはトレーニング時間の調整が出来なかったので、結局集まったのは二人の他にはカズイのみだ。
「……でも、やっぱ……なんか変な感じ」
コロニー生まれの彼は初めて海を見る。
勿論コロニーにも人工的に作った海は存在するのだが、
このような周囲一面全てが水で囲まれた海は初めて見るのだ。
「あれ?そっか、カズイは海初めてか」
「うん」
他のクルーや民間人の笑い声が聞こえる。見方を変えればクルーズ旅行の様だ。
ミリアリアがトールにとある方向を指差した。彼はそれを見て彼女へ笑顔で頷くと、彼女は駆けて行った。
その先は食堂の料理長であるスズキさんが、かき氷の実演配給をしており行列ができていた。
「ヘリオポリス生まれだったもんなぁ」
「砂漠にも驚いたけどさぁ、何かこっちのが怖いなぁ。深いとこは凄く深いんでしょう?」
「あぁ。怪獣が居るかもなぁ〜」
トールがふざけて怪獣の真似をして迫る。
カズイはそれを見て動じるでもなくあきれ顔で答えた。
「そんなのが居るなら、とっくに有名だよ」
トールは彼のこの冷め切った反応を予想していなかったわけではないが、
さすがに演じてまで煽ろうとした自分に萎えた。
その後の三人は、ミリアリアが笑顔でトレーに載せて持って来たかき氷を、
暖かな日射しのもと潮風を受けながら食べていた。
作戦室ではジェインウェイとキサカが話していた。
「しかし呆れたものですね、地球軍も。アラスカまで自力で来いと言っておいて補給も寄こさないとは。
水や食料ならどうにかなるでしょうが、戦闘は極力避けるのが賢明でしょう」
9/26
「……仰る通りと言いたい所だけど、連合の戦力はご存知の通りというべきかしら。
それほど潤沢でもないのよ。何より世代が違い過ぎる。
MSとの戦闘で旧世代の兵器の損耗率を考えれば、
それがどれほど現実的な選択肢ではないかをご理解頂けるかと」
彼女の話は合理的ではある。
無駄死にする将兵を作るよりは、ホームで迎え撃つのは正しい選択だ。
だが、だとしても要(かなめ)だという味方を援護しない首脳部というのもどうだろうと感じたのだ。
しかし、そんな思いすらも越えて彼女は自ら援護を否定する。
「……確かに。仰る通りです」
「連合の戦力が少なくともキャッチアップするまでは、私達が孤軍奮闘する他に無いのよ。
その代わり、ソフト面でのバックアップはしてもらうつもりですけど」
「……そんな事が可能なのですか?」
「可能かどうかは問題じゃないわ。やるのよ」
キサカは彼女の側近として、作戦室付きの護衛官となった。
現在の作戦室は彼女の他にはキサカの他、
チャンドラ2世とアーガイルとアルスターが交代で彼女の補佐を務めている。
補佐と言っても、やる事はジェインウェイに付き添い艦内の巡回時の秘書として活動するか、
小間使い的な役割だ。それでも、毎日朝9時から開始される作戦会議では、
模擬的な外交戦術などの討議が行われ、作戦室への入室が許可される上級士官へは、
ここでジェインウェイが中心となって様々な教育が行われた。
この部屋での話に参加した者は、後の時代にオドンネル学校と呼んだほどで、
彼女が教育した人材が大きな役割を果たす事になる。
ちなみに現時点でここへの入室が許可されるのは准尉以上の者だ。
それ未満の階級の例外はアーガイルやアルスターの他、民間クルーの自治会長のみとなっている。
「……失礼ですが、この場に私を置くということは、
あなたの采配がオーブに筒抜けになるリスクを承知ですよね」
「そうね。それは百も承知よ。言い換えればあなたが私をどう見るか次第で、
我々とオーブの今後が決まるかもしれないわね。
あなたはそれを言葉にしてしまった以上、その言葉の意味を理解すると良いわ」
10/26
「……と申されますと」
「私も別にボランティアであなた方を受け入れたわけじゃない。
ギブアンドテイクとまでは言わないけど、それ相応の代価は頂くつもりよ。
その上で、あなたには我々との取引に応じた以上は、
我々が要求する代価を提供するに値するか評価する責任がある。
あなたはお姫様の単なるお守りかもしれないけれど、私からすれば立派な外交よ。
……そう、あなたの責任は重大ね。そうした意味で、私はあなたの存在を過小評価しない」
彼女は穏やかに話しているが、その視線の奥に光る野心の様な強い光は一つもぶれる気配がない。
少なくとも彼の記憶の中で、彼女の様な強い意思を持った目を持つ者を本国の軍人の中で見たことは無い。
だからとただ気圧されているわけにはいかない。
彼も軍人だ。……軍人同士のつばぜり合いに負けるわけにはいかないのだ。
「大佐、私の判断が必ずしも上層部の判断に影響を与えるとは限らないのですよ」
表情を動かさずに普段通りに対峙した彼だが、彼女もまたその視線をそらさない。
「えぇ。そうね。でも、オーブが欲しているものも同じと、私は判断しているの。
我々が困っている以上にね」
……虚勢を張ってみた彼だが、呆気なくもその判断を改める事にした。
挑戦するには些か荷が重過ぎた様だ。
微動だにしない相手の態度を前に、キサカは自分には無理だと感じた。
「……勘弁して下さい。私は他の職責でも構いません。
オーブという国家はそうした個人の意図を反映しない国です。
私の判断は印象の問題であって、国家意思そのものとは別物です」
彼の反応はジェインウェイからすれば想定内だった。
それでも自分に一矢報いようとした彼を微笑ましく感じていた。
状況が状況なら彼を受け入れる事もやぶさかではない。それまでの張りつめた表情を解き、
彼女は朗らかに微笑んだ。
続きは明日と明後日に分けて投下します。ではでは、今後とも宜しくお願いします。
GJ!
ついにセカンドシーズンキター!
なんかゲイツがエライ強化されてるー!
試作段階で早くもゲイツの盾のビームクローや腰のビーム砲付きアンカーは産廃だと気付くとはこのザフトはできるな。
11/26
「ふふふ、そんなに萎縮しないで。私は単純にあなたの力量を買ってのことよ。
但し、私の意図に口を挟む以上、相応の覚悟は持ってもらわなくてはならない。世の中単純ではないでしょ」
キサカは改めて完敗であった事を実感した。
彼女からすれば赤子の手を捻る様なものだったのだろう。
そして何より、彼女の恐ろしさも感じていた。
なぜなら、彼女は自分に問い掛ける事で、
言外に「口外するな」という圧力を加えながら「評価しろ」と言うのだ。
彼がその意図をそのまま意訳すれば「口を割るなら好意的に伝えろ」とも言えるが、
彼女はそうしろとは言っていない。飽くまでこれは彼女の話を聞いて得た彼の勝手な感想なのだ。
そして、だからこそ怖いのだ。
彼女の言う言葉に責任を持てというのは、
その言葉一つが外交を実際に動かしてしまうリスクを意味している。
そして、その判断の責任を彼にしっかりと負わせるというのだ。それも半強制的に。
彼女は自分の仕事を見せる事で、有無を言わせぬ決断者としての立場に自分を立たせようとしている。
それは見方を変えれば彼への深い信頼の証ともなるが、
その立場に立たされる者からすれば大きなプレッシャーだ。
はっきり言ってしまえば迷惑きわまりないものだが、
迷惑だと言って断れないジレンマこそが彼女の狙いだろう。
そう気付いたからと、彼からすれば現状には何の変化も無いのだ。
彼に出来る事は確かに見ている事だ。そして、自分が正しいと思うものを選び取る他に無いのだ。
「……あなたは怖い人だ。しかし、そう仰るなら、私もあなたの行動を見ていよう」
「えぇ、そうして頂戴」
彼女からすれば、彼の中の葛藤も些末な事に過ぎなかった。
彼女の定めた焦点からすれば、彼の判断などは何の問題でもないのだ。
どのような答えが返って来たとしても、オーブへ行くことに変わりはないし、
必要なものを貰うことにも変わりはないのだ。
12/26
キラはハンガーで作業の助手をしていた。
自分のストライクにハンセンがソナーを備え付けるというのだ。
彼女の作ったソナーはZAFT製の改造品だ。
ソナー周波数を海洋生物に影響を与えない様に調整しつつ、
地形データを遠距離まで取れるように周波数調整を施し、
ノイズキャンセリングと敵ソナーの周波数相殺撹乱機能(ソナーキャンセラー)を持たせている特別製だ。
ソナーキャンセラーを利用すれば敵側の情報収集能力を無効化しつつ、
こちら側が確実に位置を把握出来る他、共振させることで敵ソナー機能自体を破壊する事も出来る。
単純にソナー周波数伝達を相殺するだけじゃなく、
音波の持つ周波数から共振波を発生させて敵ソナー自体を破壊するのだ。
セブンは艦船用にはジオスキャンカイトという、
簡単に言えば凧を揚げる事で簡易GPSスキャンエリアを設け、
半径1000km圏内の詳細なスキャンを取れる環境を整備し、
海中もそれを利用したソナーによって100kmの視界を設けたが、MSは直接海中で対応する以上、
電波通信環境も制限されることからソナーとセンサーに頼らざるを得ない。
その為、現在ある物で使える様にする他に道が無く、
彼女は制限された機能を最大限に活かすべくスキャンエリアの狭さを逆手に取り、
相手側のスキャンをキャンセラーで取り除くという手法をとる事にした。
この時代にこの技術はまだ存在しないが、
彼女からすればそう難しい技術でもないため、流出しても問題ないという判断だ。
その他、試作カーボンドでコックピットを構造的に補強し、海水圧に耐える様に作り直した。
「ソナーキャンセラーなんて初めて聞きました。凄いですね」
「……ZAFTがNジャマーで空間電波を撹乱するならば、我々はこれで海中の動きを縛るだけだ。
だが、そうだな。Nジャマーもそう遠くないうちに乗り越える。ZAFTに出来るのだ。我々に出来ぬ事はない」
彼女は事も無げに言ってのけるが、実際の話は相当凄い事をしている。
その彼女が乗り越えると断言するのだ。もう目星はついているのだろう。
だが、話のポイントはそこではない。
13/26
彼女はZAFTが「既に」それをしていると言ったのだ。
つまり、ZAFTは実戦に投入して来ていると考えているということだ。
彼自身、低軌道会戦で遭遇した白銀のMSのスピードは、
通常出力のバッテリーで可能な速度には思えなかった。少なく見積もっても、
通常の3倍以上の速度で迫って来たあのMSを現行のバッテリーで稼働させたなら、
ものの数分も使えずに使用不能になってしまうのではないだろうか。
「……やっぱり、ハンセンさんもそう思ったんですね」
「ん?……気付いていたか。そうだ。あれは従来のバッテリーでは説明がつかない。
ZAFTにそれほどの技術は無いからな」
「でも、そうすると……あのデュエルってもしかして?」
「……あれはお前の考えている様なものではない。
だが、技術的に可能な条件が揃ったので試作の品を使っている。実証実験の様なものだ。
お前のストライクも同様のものを積む予定だが、現状はタッチ給電で対応する」
「デュエルの改造はどうやってしたんですか。
何も無い状況で。あのオーロボロスってロボットも含めて」
セブンは溜息をついた。
だが、感というよりは観察力に優れている事を示す彼の反応に、
知的探求を感じた彼女は小気味良いものに思えた。
彼は純粋にただその疑問を口にしているのだ。
技術者としての彼女からすれば、このような反応が返ってくる方が楽しいものだ。
彼女は微笑みを浮かべる。
「……お前は知りたがりだな。あれは……」
その頃、ZAFT軍ビクトリア宇宙港基地に着いたレセップスは、
予想外の状況を目の当たりにしていた。
「……どうなっている!?ダコスタ君、基地の状況を調査。負傷者は収容し治療に当たらせるんだ」
「はい!」
ダコスタが足早に采配に動く。
彼はモニター上に映るそれを見て困惑していた。
ビクトリア基地は既に壊滅的な打撃を受けていたのだ。
14/26
軍港や地球離脱用艦船自体は無事だが、それ以外はほぼ壊滅に等しい状況だ。
彼がその後で知ったのは、負傷者はごく僅かで、聞き取り調査したところでは、
黒い飛行物体がやって来て、抵抗も虚しく敵側のビーム兵器に破れたというものだ。
黒い飛行物体……それがもし彼も知る「あれ」だとすれば、首謀者の目星は着くが、
彼が不可解なのはそこではない。
負傷者は少なからず出た様なのだが、彼らが一様に言った言葉は「自分は死んだと思ったが、
気付いた時には無傷だった」というものだ。
そんな事が可能なのだろうか。
彼にとって一番の不可解な謎だった。
「……あれは、ZAFTの壊れた拠点を見つけてな。
爆発から逃れた後、暫くそこで傷を癒しながら廃材を利用して改造した」
「……へぇ」
キラはその程度の説明で到底納得出来る話ではなかったが、
彼女がとても優れた技術者である事は間違いない。
実際、ユニウスセブンの廃材でジーニーを作ってしまう程の人だ。
そうだと言われたら納得する他に無いのだが、
彼女の話が言葉通りの物だとは思えない程度には、ハンガーの人間より技術の違いを理解していた。
彼女はNジャマーを乗り越えると言っていた。
もし乗り越えられるとすれば、いや、乗り越えているのだとしたら、
デュエルは核動力で動いている可能性がある。だからこそ、
彼女はデュエルやオーロボロスの整備はさせないし、大佐自身がそれをハンガーのクルーに命令した。
……でも、彼女はそれを否定した。
彼はその否定の言葉が事実だと感じたのだ。
彼女の場合、嘘をつくという事が基本的には無い。
有るのは必要か不要という部分での判断の様に感じる。
その意味で核動力は不可能じゃないが必要ではないと考えている。
そして、それ以外の手段を用いてデュエルのバッテリーは強化されたのだろう。
それが何なのかはわからないが、自分が知っている範囲では、
とてつもない物を使っているのだろうことは言えると思うが、
それを知った所で自分にとって利益になる話かと問われると、
……なかなか微妙な話だと苦笑する様なネタだろう。
彼はこの疑問を胸の奥に仕舞っておく事にした。
15/26
ジェインウェイは休憩時間に入り自室へ戻って来ていた。
実際は単純に休んでいるわけではない。
この時間を利用して宇宙と通信しているのだ。
通信相手は月の連合基地にいるトゥヴォックだ。
『……そのようなご判断をされていたのですか。
私も既にこの様な立場に立たされている身です。
それをお止めになる様に言えた状況では有りませんが、
再考されるおつもりは無いのですか』
「無いわ」
私の即答に、彼はしばし間を置いていた。
いつもの事と片付けるのは彼に悪いが、私は既に葛藤する時間は終えていた。
何かを悩むには時間を浪費し過ぎている。しかも既に動いているのだ。
最早何かを再考する時ではない。ゴールを目指して突っ切るのみだ。
『そうですか。わかりました。それでご提案の件ですが、
ヴォーラック少尉以下の3名で考えています。
あなたの補佐をする以上、冷静沈着な人間が必要だと判断しました』
「それで構わないわ。ギルモアは技術士官として内燃機関に詳しかったわね。
ヴォーラック少尉の他にジュロット少尉を加えたのはどういうことかしら?
彼女を加える状況を想定しているということは」
『今後、あなたが為さろうとしていることを考えれば、
彼女の助けが必要となることが有るでしょう。
彼女の能力は以前あなたが協力を要請した頃とは違い、
かなりの進歩を遂げていることを保証します』
「どういうこと?」
『あの後、私は彼女に精神感応力に関する修練の仕方を伝授し、定期的に推移を見てきました。
その甲斐有りまして、飛躍的にベタゾイドとしての才能を伸ばして来ています。
本来のベタゾイドの能力であれば、我々バルカンの持つ能力は超えています。
きっとお役に立てると考えております』
16/26
私が行おうとしていることが戦争ではなく外交だと、彼も見破っているからだろう。
こちらが譲らない事を知っていて、彼はあえて先程の様な質問をしてくるのだ。
そして、それが駄目であればともう一つのプランの為の保険も用意されている。
彼は常に二手三手先の事を見越して用意している。これだけの事を出来る士官は連邦にもそうはいない。
だからこそ、私は彼の判断に全幅の信頼を寄せているし、彼と親友として親しく付き合っているとも言える。
だが、彼はその冷静さ故にバルカン人特有の自己犠牲に捕われる事が有る。
……実際、彼は既にその渦中だ。
「……そちらでも必要じゃなくて」
『それには及びません。私には必要の無いものです。
論理があれば大抵の人間は見破れます。勿論、あなたの様な規格外な人物もおりますが』
私の質問にユーモアで返すこともある。こういう場合は彼も好調なのだろう。
私は気にせず彼の好意に甘える事にした。思わず顔がほころぶ。
「ふふふふ、そう、わかったわ。で、連合の動きだけど、何か変化は有って?」
『こちらでセブンの開発していたカーボンドの量産を始めた事はお知らせしましたが、
モビルスーツの量産を開始しました。GAT-01-Daggerと呼ばれております。
X105-Strikeの量産型ですが、装甲性能等の基本性能はこちらが上回るでしょう』
「頼もしい情報ね。でも、月の連合での量産では、地球の混戦状況を打開することにはなりそうも無いわね」
『……それが、そうでもありません』
「どういうことかしら」
『デトロイトのアクタイオン・インダストリー社でも量産が開始されました。
但し、カーボンドは実装されておりませんし、ストライカープラグが省略されたものですが、
マテリアルナとしての輸出第一陣は無事に到着していますので、
その中の一部にはカーボンドが採用されたフラッグシップが用意される模様です』
「……つまり、地球内部の戦闘でも連合が本格的にMSの採用を始めるという事ね」
『はい。この件についてはアズラエル氏も言及されておりましたので、
間違いなく進められていることが確認されています。
ただ、カーボンドの送り先はアクタイオンでは有りません。
彼は新しくMS開発専門の技術会社として、アズラエル財閥100%の子会社を設立されたそうです。
アクタイオンの株式の40%はアズラエルグループのものですが、彼は技術の自社化に拘っている様です』
17/26
彼の話をそのまま受け取ると、
連合のMS開発はアズラエル氏主導というよりは独占に近い形で進められ、
量産機の大量投入の為に見切り発車したと言った状況の様に思える。つまり、
近い将来に地球内部での大規模な戦闘を予定しているのだろう。
だが、アズラエル氏の独占という事は、敵は「ZAFTのみ」では無いということだろうか。
「……たしか、アクタイオン株の残り3割近くをジブリールが保有していたわね。
あとの残りをモッケルバーグが2割。彼は技術が他のロゴスに渡る事を警戒しているというより、
ロゴスと距離を置き始めたのかしら」
『わかりません。現状の動きだけを見るならば、
技術の独占という商業的利益のみに主眼が有る様に見えるでしょう。
ですが、彼が動いて築いた連合という組織を考えれば、
それと逆行する動きに見えなくはない事は確かです』
「……そう、分かったわ。
チャコティーが進めているVSTインダストリーの方はどうかしら」
VSTインダストリーとは、
以前買収した機動兵器開発メーカーの4社を合併させて築いた会社だ。
チャコティが主導している計画で、私は全くタッチしていない。
『副長の買収された4社は順調に仕上がっている様です。
コスモグラスパーという戦闘機の開発計画へ参画していますが、
正式にその開発計画を降板する事を決めました。
その代わり、対抗として新しい戦闘機を開発しています。
副長の話ではカーボンドを全面採用し、
ストライカーパッケージを共通利用出来る戦闘機とだけ聞いております』
「それだと、モルゲンレーテが単独受注に切り替わる以上、
そちらが持って行くんじゃなくて?」
『どうでしょうか。
副長がそのような下策を放置するとは思えません。何か考えがあるのでしょう』
確かに、チャコティがそのまま引き下がる程にお人好しとは思えない。
だが、今更戦闘機を開発してどうしようというのか。
連合にはMAパイロットが大勢居るため、一見すると大量に売り先が有る様に思えるが、
時代と逆行していると考えるのはこのC.E.に浸かり過ぎただろうか。
しかし、私の興味は既にそちらには無かった。
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「……ねぇ、そのカーボンド、私の所へ送って貰えないかしら?
勿論転送じゃなくて、投下で」
彼は私の唐突な願いに、彼はしばらく沈黙していた。
『………不可能では有りませんが、我々との通信関係を気付かれる危険性があります』
「だったら、戦闘の結果不時着したとすればどうかしら?
ビクトリアからの脱出組と火遊びをして、彼らとの戦闘結果として、
『運悪く』落ちてしまった機体が有れば、それで良いわ」
『わかりました。詳細は後程データでオーロボロスへ送信致します。
それと、実はダガー以外にもう一機試作したモデルがあります。そちらも詳細を入れておきます』
彼からの話では、カーボンドの投下用に試作モビルスーツに持たせた形で降下させるという話があった。
降下ポイントはインド洋のど真ん中に設定した。
……インド海軍や大洋州連合軍との戦闘を回避するためにも、
多少の遠回りは仕方ないとクルーに納得させられるぎりぎりのポイントだろう。
アークエンジェルの甲板の上で一人の少女が立っていた。
彼女は自分の身につけたネックレスの飾りを強く握りしめる。
それは先の戦闘で戦死したアフメド少年の母より譲り受けた、彼の遺品だ。
少年は自分よりも幼い身でありながら、自らの命を賭してキラを守ったのだ。
結果的にキラはその後の戦闘で大活躍し、大半を掃討し、勝利へ導く結果を出した。
もしあの場で彼が守らなかったならば、……どのような結果が待っていたのだろうか。
もしかしたら彼が身を挺せずともキラは助かったかもしれないし、
そうではなく彼は亡くなり、大きく劣勢に立たされて多くの死者を出したのかもしれない。
……少なくとも現在の結果は彼のお陰だ。
「……はぁ」
彼女は悩んでいた。
戦争をしない、させない、関わらない。……という考え方のオーブに育った彼女。
それは少なくともヘリオポリス崩壊のあの日までは、そう信じて生きて来たのだ。
しかし、実際は……サハク家によるとの説明であれ何であれ、連合と共同でMSを開発し、
それが引き金となって、ヘリオポリスはZAFTの攻撃を受けて崩壊した。
19/26
その結果として多くの犠牲者を出し、
父はその責任をとって代表首長の座を叔父に譲った。
戦端を開く行動をオーブが犯した事は間違いないのだ。
もし、忠実に守っていたならば、ヘリオポリスは攻撃されなかっただろう。
……それでも父はオーブのMS開発を止めるとは一言も言わなかった。
そして、彼女を戦場の現実を知って来いとキサカに預けたのだ。
戦場で実際に一緒に戦った少年の命が消えたという事実は、とても受け入れ難いものだった。
それでも彼は亡くなり、自分の首元にはこのネックレスが掛かっている。
それを認めたくなくても、現実として受け入れなくてはならない。
彼はそうまでして力を欲し、戦い、そして散って行ったのだ。
彼が守りたかった自由の為に。
キラは整備を終えて休憩時間に入ったので、甲板に上がることにした
そこには潮風に煽られながら海の向こうを見つめるカガリの姿があった。
彼はゆっくりと彼女のもとへ歩き、声を掛けた。
「やぁ」
カガリは唐突に背後から声をかけられ、驚いて振り向いた。
「あ、お前は!………あ、いや、……まぁ、ご苦労だな」
彼女はキラの姿を見て、何を言って良いのか頭が真っ白になった。
実際、彼を責める様な話でも無い。……自分の感情は封じて取繕う他に無いのだ。
キラは彼女が握るネックレスを見て、彼女が何を思って居たのか気付いた。
彼女にとっては友達、または弟の様な存在が亡くなったのだ。
ショックは大きいだろう。
胸の詰まる思いを押さえつつ、自分の力無さが悔しく、
あの時自分がもっとストライクを上手く動かせたなら、彼の命はあるいは……。
「………ごめん」
彼が言える言葉はこれしか見つからなかった。
その言葉を聞いた彼女は、伏し目がちな表情を一変させた。
20/26
それでも彼女は憤りを押さえた。
「……お前が謝る事じゃないだろう。お前はよくやった。充分にあいつの敵を取ってくれたよ」
「……でも、僕がもっと上手くストライクを動かせたなら……」
その時、頭で考える前に既に身体が動いていた。
彼の胸ぐらを左手で力強く掴んで引き寄せると、間髪入れず右ストレートで彼の頬を思い切り殴り上げていた。
「ぐあぁぅ!!!」
殴られた瞬間に左手を離された彼は、そのままの勢いで後方に大きく尻餅をついて倒れた。
思わず殴られた左の頬に手をあてる。全くの予想外の出来事に彼も虚を突かれたのだ。
そして、彼女の方はというと、もはや我慢など出来なかった。
「ふざけんな!!!お前、自分が少しばかり上手く乗れるからって調子に乗るなよ!
あいつはナチュラルで技術も低いかもしれないけど、それでも精一杯戦ったんだ!
……それなのにお前のその言い草じゃ、まるでお前が手を抜いた結果死んだみたいだろ!
いい加減にしろよ、この馬鹿野郎!!!」
「……ぼ、ぼくは……」
彼女の言葉にキラは自分の言葉の持つ意味に気付かされ動揺した。
そんな気持ちは無かったとしても、意味の上では確かにその通りなのだ。
誤解を解こうと一瞬言葉を出したが、躊躇い続きを言えなかった。
彼を殴った彼女の方は、思わず行動に出ていた自分を恥じつつも、
それでも許せない気持ちで溢れていた。……とはいえ大人げないことも理解していた。
強い憤りに心拍と呼吸が荒れる。
「ハァ、ハァ、ハァ……殴ったのは、悪かった。許せ。でも、お前の言葉に対する怒りは訂正しない。
幾らコーディネイターが私達より優秀だとしても、起きた結果を覆す事はできないだろう!
どんな奴だって、その日を精一杯生きているんだ。それを愚弄する奴を……私は許さない」
「……」
というわけで、明日、残りの21/26からを投下します。有り難うございました。
GJ!
ビクトリアに何が起きたのか?
確かに核じゃないな、もっとヤバい何かだけどw
艦長は本当にパネェ行動力だぜ。そして盟主王の動きも気になるぜ。
乙!!
待っていました
さすがの完成度と面白さ!!
21/26
何も言えずに座ったままの彼に、彼女はゆっくりと手を差し出した。
彼はその手を取り立ち上がるが、この状況をどう反応して良いか分からず呆然としていた。
彼女はその反応に自重の意味も込めて彼の服の埃を払う。
彼はその行動に戸惑いつつもされるがままにしていた。
そんな態度を見て、彼女は余計に腹の虫の収まらないものを感じつつ、衝動を抑える。
「……何で大人しく殴られるんだよ。本当は殴られる前に受け止める事も出来たんだろ。
お前は優秀なコーディネイター様なんじゃないのか?それとも、
お前の体はこんなか弱い女の手も受け止められないくらいにひ弱だったのか」
彼は吐き捨てる様に言う彼女の言葉をただ聞くしか無かった。
キラ自身、自分の思慮の足りなさを痛感していた。
どんなに優れたコーディネイトをされたとしても、
人の心までコーディネイトすることは出来ない。
生きるとは、なんと難しいものなんだろう。
「優秀」なはずの自分にも分からなかった。
「……カガリの言う通りだよ。僕はコーディネイターであることに驕っていたんだと思う。
いや、今も分からずにそう判断しちゃうんだ。だから、殴られて当然だと思った。
でも、……やっぱ、痛いね」
彼は頬をさすり、痛みに引きつりつつ微笑む。
カガリは泣くでもなく許しを乞い願うわけでもなく受け入れる彼に、毒気も抜かれ、
怒っていた自分が馬鹿らしくなり、苦笑するほか無かった。
「……全く、お前って奴は。……ごめんな。痛かったか。って、痛いか」
カガリは自分が殴った彼の頬を、彼の手の上に重ねる様に手を添えて触れる。
キラは触れられた瞬間ビクリと動きつつも、優しく添えられた彼女の手の温もりを感じた。
支援
22/26
「ま、お前がコーディネイターってことに変わりはない。
それが悪いって言いたいわけじゃないんだ。それならそれで良いんだ。
でもさ、後悔する様な生き方って、嫌だろ」
彼は彼女の言葉に驚かされていた。
彼女は自分を認めると言うのだ。
思わず自分の中のどこかが暖かくなった気がした。
「……うん、そうだね」
彼の同意に安堵したように、彼女は海の方を見て話す。
潮風に煽られて彼女の黄金の髪がなびいて煌めく。
「アフメドは……たぶん、後悔したくなかったんだ。だから思い切ったんだろう。
あいつの家の親父も戦いで死んでいった。
正直な話、家族を守るために死ぬなんて、って私も思ってたところがある。
でも、本当に守りたいもののためなら、自分の命を賭ける事も出来るんだろうな。
……人間って凄いな」
「……うん」
二人は遠く続く海の向こうを、当ても無く眺めていた。
それぞれの思いは心の中に仕舞いながら。
ハンガーではMSの整備が進む中、とある一角にいつぞやの白い幕が張られていた。
そこに有るのは先の戦闘で回収したGAT-X303-Aegisである。
ストライクがアーマーシュナイダーで打ち取ってくれたお陰で、
イージスは比較的損傷面が少なく回収出来た。
セブンはこの機体を単純に修理するのではなく、機体の補強を含めて全面改修する事にしたのだ。
23/26
「ハンセンさん、あんたの設計書見たよ。大体やりたい事は分かったんだが、意外だな」
「そうか?」
「あぁ。いつものあんたなら、コイツをもっとバラしてやるのかと思っていたが、
コア部分とMA時の飛行能力確保以外は、殆ど弄る要素がないじゃないか」
「あぁ、それか。それは社長の命令もあってのものだ。
納期を短縮して実戦投入を早めたいというので、私は自重する事にした。
だが、この機体のエネルギー効率の酷さは目に余る。
そこでフェイズシフト時のエネルギー管理を、この機体で調整出来る様にするつもりだ」
「……それがAdjusted Phase Shift……略してAPSですか」
「あぁ、機体表面のカラー状態で目視的に管理出来る。
装置自体は現行の物と大差ない形で実装可能だ。ストライクへの転用も視野に入れて考えた。
バッテリーの強化も必要だが、消費効率の最適化は重要な要素だ。
消費効率はどんなシステムに対しても、稼働性能の基礎条件を決定的に左右する」
イージスの開発が進められている間、この機体のパイロットの話が持ち上がっていた。
OSも含めた改修が進められるため、この機体に乗るパイロットはナチュラルでも可能なのだ。
そして、その候補は当然トール・ケーニヒだと誰もが思っていた。
「え、……お、俺、あ!私がですか!?」
作戦室に呼ばれた彼は、ジェインウェイの命令に驚きを隠せないでいた。
彼女は命令書のプリントを彼に差し出し、サインする様に促す。
「あなたは戦闘部隊の隊長よ。そして、連合のエースパイロットでもある。
フラガ少佐、そろそろ良いんじゃなくて?」
大佐からの笑顔の問い掛けに、当の本人は苦笑いだった。
「いや、しかし、俺はMSなんて乗った事無いんですよ?」
「大丈夫よ。私でも乗れたんですもの。あなたの方がずっと若くて元気でしょう?」
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「あ……いやぁ、それは……そうかもしれませんが……って、ぅあ!
えーと、そうじゃなくて、いきなり実戦投入ですか!?」
思わず彼女の言葉に同意してしまった彼は、その意味することに青ざめた。
対するジェインウェイは、そんな彼を弄ぶ様な微笑みを浮かべていた。
「ふふふ、いくら私でもそんな事は言わないわよ。しばらくはスカイグラスパーで行ってもらうわ。
でも、並行してシミュレーターで訓練はしてもらうわよ。一応言っておくけど、あなたは飾りよ」
「飾り?」
「えぇ、言い方は悪いけど、あなたは上に対するお飾りの様な物よ。
考えてもみて、このままアラスカへ行ったらどうなるかしら?」
彼はしばし考える。
アークエンジェルがこのままの体制で行ったとすれば、単純に無事に帰還した事を喜ぶ…のか?
殆どの上級士官を失い、MSも2機失い、低軌道会戦でも負け……主戦部隊は民間人。
そう、アークエンジェルのMSを運用しているのは皆「民間人」なのである。
「それはつまり、軍人としての私がMSを運用している必要があるということで?」
「それも有るけど、もっと大きな事はブルーコスモスね。
主義者を納得させるには飾りが必要よ。あなたには華やかな経歴と見事な容姿がある。
私としては、エースパイロットの指揮者が欲しいのよ」
「……なるほど。確かに飾りか。いや、俺の力量からすれば、飾りが精一杯でしょうね」
ジェインウェイは彼の心情も理解していた。それをあえて自分の口から彼に告げた。
それは酷なことではあるが、下手な期待を背負わせるよりは、
役割がハッキリしている方が適度に気が抜けて良いだろうという判断からだ。
ただ、これは彼の性格を考えての事だ。
これをキラ少年の様な精神的に弱い者へ告げたならば、逆効果だろう。
「……はい。了解しました。あー、正直な話で言えば、乗ってみたい気持ちはあるんですよ。
しかし、あの機体、戦闘データは見てきましたが、そのぉ、凄い動きをしますよね。……酔いそう」
25/26
「何言ってるのよ。スカイグラスパーに掛かるGと比べたら大した事無いでしょう。
ほら、もう用済みよ。あなたはあなたの仕事をしっかりして頂戴。
フフ、あんまりだらしないと、マリューさんに振られるわよ?」
「え、ちょ、大佐!?……バレバレですか?」
「そうでもないみたいよ」
そう言って彼女は秘書をするサイの顔を見た。
彼も彼女の言葉に驚いていた1人だったのだ。
彼は慌てて恐縮した様に縮こまった。
砂漠での戦闘から脱出した3人は、ジブラルタルへ行き、
そこから飛行ルートで南アフリカへのルートを取っていた。
「……バルトフェルド隊長の敗北は、私も大変哀しみました。
地球に足付きを降ろしてしまったのは、元より我々の失態。複雑な思いです」
ディアッカ・エルスマンが3人を代表して挨拶をしていた。
彼らはモラシム率いるボスゴロフ級潜水艦部隊へ派遣されていた。
南アフリカからインド洋沿岸のケニアに下ろされた彼らは、そこでモラシム部隊と合流したのだ。
「ふん!敵前逃亡者3名のお出ましってわけだ。
エリートの赤服って聞いたが、こんな腰抜け坊ちゃん達かよ」
「な!?…んだと!?」
イザークが怒り拳を振り上げようとするが、それをディアッカが片手で強く引き止める。
驚くイザークに彼は振り向く事もなく、モラシムから目線を逸らさなかった。
26/26
「仲間の非礼をお詫びします。しかし、敵前逃亡には当たりません。
我々は隊長の命令により撤退したのです。隊長命令に背く事はそれこそ重罰に値しますが、
あなたは命令に背く兵士を信頼出来るとお考えですか」
ディアッカの返しにさも面白くないといった表情のモラシムは、
この年端の行かない少年の言葉に乗ってやる事にした。
「……ほぉぅ。なら、隊長が死ねと命じたら、お前は死ぬのか?」
「……それは戦術的に理に適う命令であるならば。
そうでなければ、あなたが軍規違反でしょうから従う必要は無いと考えます」
さすがに頭はイカレていないらしい。
エリート様のお行儀の良い返しに、彼は隠す事無く不快感を露にした。
「ふん!可愛くねぇガキどもだ。あぁ、わかった。良いだろう。お前達を迎えよう。
で、何だあれは。お前達と一緒に運んで来られたうちの1機は連合の鹵獲機で、2機は新型と。
これはまた景気が良いなぁ。精々期待させてもらうよ。
まぁ、尤も、お前等が活躍する前に、この俺様が奴らをインド洋に沈めてみせるがな」
モラシムのデスク上にはノート型の端末が置かれており、
そこには持ち込まれた機体の情報が表示されていた。
26/26終了
32話へ続く
…というわけで、セカンドシーズン開始ですが、投下は二週に一度という感じにさせて頂きます。
拙い文では有りますが、お楽しみ頂けましたら幸いです。支援や感想コメいつも励みになります。
有り難うございます。では、次の投下の2月始めくらいにまた。
GJ!
相変わらずセブンは飛ばしてるなww
そして艦長は政治を考えてるわあ。
もしも第二次スパロボOGの四凶が来たら
トウテツに食われたりキュウキに五分割されたりと阿鼻叫喚な予感
さてイザークはどんな御笑いを見せてくれるのかw
過疎
皆様こんにちは、15分割なので2回に分けて投下します。
明日の夜辺りは放送を後半分を投下しながら放送でもやれたら。
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第32話「会敵」
「……司令代理、目標宙域上へ到着しました」
「メビウス・F及びフォールディング部隊を展開。
投下用コンテナをフォールディング部隊に曳航させなさい」
「は!」
旗艦ハルバートンの艦橋からは、
次々に上がってくるZAFTの敗残兵達を乗せた脱出艇の姿が目視できた。
彼らの艦隊は丸腰同然であり、攻撃すれば圧倒的な戦果を上げられるであろう。
「中佐、攻撃はされないのですか」
彼の副官として乗り込んだロッシ少佐は恭しく尋ねる。
それに対する上官の答えは静かなものだった。
「ここで叩けば間違いなく全滅に追い込める。
だが、我々の目的はその為の進軍ではない。飽くまで補給線の確保のためだ。
余分な弾薬を持ち合わせてはいない事を忘れてはならない」
「しかし、彼らを逃がせば……いずれ我々のもとへ牙を向けるのでは?」
「我々は飽くまで人道を知る人間だ。ここであえて獣となり汚名を着る必要もあるまい。
君には分からないのかね?……ここで恩を売れば、上層部に政治的駆け引き材料を与える利益になる事を」
「利益?」
「見ての通りの負傷兵を積み込んだ脱出艇を人道的に見送るのだ。
その人道を無視して相手が攻撃したならば撃てば良い。
我々は飽くまで正義の味方でなくてはならない。
軍にとって、世論が味方ではない戦争程悲惨なものは無いと知るべきだろう」
トゥヴォックの悠然とした態度で語られる内容は、確かに一理ある話だった。
ロッシは自分の浅はかさを恥じた。
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「……なるほど。さすがは中佐。私の浅慮な発言はお忘れ下さい」
畏まるロッシに対し、トゥヴォックは無表情な態度には変わりないが、
彼の対応を軽く手を上げて遮った。
「いや、君の言葉はここに居る全ての兵達が思う疑問だろう。
中には強い怨恨を持つ者も居るに違いない。
そうした者からすれば、私の采配への疑問はあって然るべきだ。
むしろ代表して良く質問してくれたと礼を言おう」
「いやはや、そこまでお考えでしたとは。
中佐の心得を部下達にも深く知らせるべく、私も尽力させて頂きます」
ロッシ少佐はそう言うと、ぴっと姿勢を正して敬礼し艦橋を出て行った。
彼は最初は司令部の『反対派』の指命も帯びて、彼の監視に当たっていたのだ。
連合軍内部には、アズラエルの庇護下にある『オドンネル派』が勢力を伸ばすのを、
良しとしていない勢力が複数存在する。
その中でも最大の勢力を形成するのは、ウィリアム・サザーランド大佐率いるサザーランド派である。
ロッシはサザーランドとも通じて月軍内部の状況を逐一報告することで、
これまで自身の地位を保って来たのだ。
最初はハルバートン准将の監視としての役割を受けて月軍に籍を置いていたが、
そのハルバートンが戦死して後継者となったオドンネル大佐の代となってからも、
彼は半ば惰性でこの任務に就いていた。
彼は揺れていた。
ハルバートン時代は、アズラエル理事も准将に対して殊更目に掛けることは無かった。
どちらかというと、准将を自由に泳がせながらボロを出すのを待って果実をかすめ取る。
……そのような考えはサザーランドの考えに近いものだった。
しかし、現在の理事は違った。
オドンネル大佐率いるVSTとの関係を強める理事の母体であるアズラエルグループは、
この提携関係を深めるのと同様に大佐との関係を強固にしようと動いて来ている。
その一つが直通ホットラインの設置である。
……こんな事はハルバートン准将の時代ですら有り得なかったのだ。
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特に中佐と理事の関係も、これまでのどの上司のものとも違った。
これまでの上司は誰もが理事に低姿勢で、
対等な会話というものが出来る者は一人も居なかった。
だが、中佐は理事の前でも物怖じする事無く淡々と論理的に必要なことを伝え、
確実に自身の欲する答えを引き出しているのだ。
そして、その彼の言い分を理事も冷静に聞き入り応じていた。
こんな姿は後にも先にも中佐以外に見た事は無い。
そして、この中佐の上司というオドンネル大佐は、
低軌道会戦での戦績や砂漠の虎の撃破等着実に実績を上げていた。
いわば勝ち馬と言っても良い勢いがオドンネルには有るのだ。
これまでの古い派閥の領袖であるサザーランドに与し続けるメリットと、
オドンネルに鞍替えるメリットを慎重に天秤に乗せていたのが、現状のロッシの立ち位置と言った所だ。
しかし、彼は遂に決断する。
先程のトゥヴォックとの会話で確信した彼はオドンネル派に鞍替えすることを決めた。
そして、それを見える形で実行しなくてはならないと自ら動いたのだ。
勿論、彼のこのような葛藤をトゥヴォックが知らぬ筈は無かった。
むしろあえてそうした葛藤を誘発する様に彼に仕事を任せ、必要に応じて重用したのだ。
彼の様な窓際族が「ただ単に」窓際族であることはない。
このような組織で生き抜くには、必ず何者かがバックアップしている背景があるのだ。
そして、実際に彼の背景にある者達は全て洗い出されている。
それはシャトルアーチャーによる全世界のハッキング結果からも明らかにされているが、
それ以前にトゥヴォックには彼の様な人間の中身を見抜くのは雑作も無かった。
「……全軍宙域に停止。防御陣形を布陣の上で、
彼らに人道的見地で通過を許すと打電。しかし、照準は絞る。
我々がいつでも攻撃出来るという姿勢を見せるんだ。
その際、動作が多少荒くても構わない。一糸乱れぬ動きを諸君等には希望しよう」
トゥヴォックの命令が伝わり、
メビウスF及び先行試作MSフォールディングx2機が攻撃照準を絞る。
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ZAFT軍脱出部隊では、指揮を採るバルトフェルドが連合軍の布陣を確認していた。
彼の脳裏には例の声による指令が思い出されていた。
『セブンオブナインよりエイトオブワン及びツーに告げる。
ビクトリアよりプラントへ向けて負傷兵を連れて速やかに脱出せよ』
「……エイトオブワンよりセブンオブナイン、これはどういうことだ。
ビクトリアはあんたの機体がやったのか?」
『答える義務は無い。間もなく地球連合の艦隊が宙域を制圧するだろう。
その前に地球を離脱出来ねば命の補償は出来ない』
彼の質問はあっさりと遮られ、新たに突き付けられる選択肢は生きるか死ぬかだ。
……これほどシンプルな選択肢だと内心笑いが込み上げてくるものだと感じていた。
「……選ぶ余地無しか。だが、艦隊が来るならこちらは丸腰同然だ。全滅する恐れがあるが?」
『大気圏離脱後の脱出艇に対する攻撃は我々が予め制限する様に手配した。
お前達は命令通りに脱出艇で離脱しろ』
「ほぅ、それは心強い。だが、不測の事態はあり得るよなぁ?」
『……そうだな。お前の言う通りだ。
我々の知る情報では、連合の新型MSが投入されるという。必要ならば撃てば良い』
彼女の話をそのまま受け取れば、彼女の立場からすれば「味方を撃ってくれ」というのだ。
こんな馬鹿げた話があるのだろうかと思いつつ、連合でもないと言い切った彼らからすれば、
このように自分と交信している事実をもって現実を追認するべきということだろうか。
「……それは撃たなきゃやられるってフラグか?」
『そうだな。その可能性は否定しない。
だが、最悪交戦状況に陥ろうとも、お前達の命は保証しよう』
「……どうやって?」
『それはお前の知るべき事ではない。
お前達が我々の意図に従う限り、最悪の事態は避けられるだろう』
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セブンオブナインの指令はこのようなものだった。
それから急いで地球離脱用の艦艇に負傷兵を含めた全兵士を詰め込んで離脱し、
現在は地球軌道上まで上がって来たわけだ。
そして、彼の目前には予告通りに地球連合の艦隊が待ち受けていた。
それも見た事も無い陣容だ。全て新型である。
「ダコスタくん。あれ、突破出来ると思う?」
「……隊長、敵の戦力で情報が割れているのは、ドレイク級と新型メビウスくらいのものです。
その新型メビウスですが、かなり高機動で、
オールレンジ攻撃システムを普及型として実用化を果たしている様です。
我が軍で撃墜できた機体はゼロ。そして、ドレイク級も改装されてるタイプですね。
ナスカ級並のスピードです。こちらの脱出艇のスピードでは、
このドレイク級に追いつかれるのは間違いないでしょう」
「……説明良く出来ました。でもねぇ、アレを突破しないと僕らは帰れない。
その為にも無い頭を使わないといけないんだよ。どうしたものかね」
バルトフェルドは自軍の陣容を眺めた。
手元のディスプレイ上の情報では、ジンが4機あるだけ。
地上用の機体は全てやられていたため、格納されていたこの4機しか無いのだ。
この4機で4隻の脱出艇を守らなくてはならない。
対する相手はMS型は2機にMAが10機。
その他新造艦らしきものが一隻に僚艦として2隻のドレイク級改だ。
脱出艇のスピードはローラシア級と殆ど変わらない。
対する相手はナスカ級クラスのスピード。……逃げて逃げられる様な内容ではない。
バルトフェルドは敵艦隊との衝突距離手前でMS部隊を展開させ、
側面防御態勢を整える。そして、次の策を思案していると敵艦から通信が入った。
通信の内容は「貴艦隊を人道的見地から通過を黙認する」というものだった。
「隊長、これは……信頼して良いものなのでしょうか」
ダコスタの不安は当然のものだ。
進路を断つのは戦争行為としては有り得て不思議ではない話だ。
それを逆にわざわざこちらへ道を開くというのだ。
敵に塩を送る真似をして、彼らにどんなメリットがあるというのか。
「警戒態勢を解くな。敵側の動きを厳に注視し、攻撃モーションがあれば躊躇わず撃て」
「アンディ!?…そんなことしたら」
「アイシャ、……良いんだよ。それくらいの意地を見せなくては、ZAFTの名折れだ」
そして、それは起こった。
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「中佐、敵MSが発砲しました。
我が方のフォールディングが牽引する輸送機に命中しました」
ZAFTのジンが放った攻撃はフォールディングの装甲に弾かれて輸送機に命中。
高い装甲性能が災いし超弾する結果となった。
輸送機も当たりどころが悪くエンジンが発火し制御不能に陥り、
降下軌道に入ってしまう。トゥヴォックはそれを見て、
牽引していたフォールディング二号機搭乗のジュロット少尉に命じ、
輸送機の危険域の落下阻止を命じた。
だが、トゥヴォックは反撃命令は出さずに防御陣形を敷き、
同時にフライのガンバレルを全機展開させた。
「……通信回線を開け、チャネルはオールで出すんだ」
「は!」
副官が命令を受けて準備をさせる。
トゥヴォックは回線が開かれると一方的に語りかけた。
『私は地球連合軍プトレマイオス艦隊司令代理、
トゥヴォック・ヴァルカン中佐である。
我々は人道的見地から貴艦隊の通過を黙認すると通告したはずだが、
これはどういう事だ?……君等も知っての通り、我が方の戦力は貴艦隊を圧倒している。
懸命な判断とは言えないが、その理由を知りたい』
ZAFT側では全チャネルで敵側の通信が開かれた事に驚くと共に、その内容に更に驚いた。
これまでの連合のイメージとは全く違う理性的な対応に、
ZAFT艦内では罠ではないかと疑心暗鬼になっていた。
しかし、バルトフェルドは冷静に彼の通信へ返答する。
「……私はアンドリュー・バルトフェルド。この部隊の隊長を務めています。
我々は見ての通り負傷兵の輸送艦隊。そして、これまた見ての通りの有り様に対して、
貴艦隊は仰る通りの陣容だ。そのような艦隊が我々を黙認すると言いつつ銃口を向けるならば、
こちらは正当防衛として撃つ他に道が無くなるだろう。貴官の様な人道を重んじる紳士の申し出を、
我々が泥を塗る様な対応をしてしまったことを謝罪する。
もう一度再考頂けるならば、我々の通過を黙認して頂きたい」
彼は映像通信で深々と礼をした。
その映像にハルバートンの艦橋ではどよめきが起こったが、トゥヴォックはそれを静止し彼に告げる。
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『……何事も事故は付き物だ。我が方は平和を重んじる。
貴官の謝罪を受け入れ通過を再度黙認しよう。我が方も若者の無益な死を望む所ではない。
互いの長寿と、繁栄を望む所である』
「貴官の寛大な対応に深く感謝する」
こうしてZAFT脱出艦隊は無事に宙域を通過しZAFTへの帰路を辿る事となる。
その後、艦隊はビクトリア基地へ向けて、ドレイク級2隻に搭載した先行試作型ダガー部隊を投下。
ヤスベイ・ラムレイ曹長以下ダガー部隊はビクトリア基地を制圧した。
指揮官機として投入されたフォールディングは、
装甲にカーボンドを採用した可変機で、空間戦闘用モードを持つ。
黒いボディのフォールディングの登場でビクトリアに残っていたZAFT部隊も、
先日の戦闘の悪夢もあり戦意を喪失し降伏した。
アークエンジェルはインド洋を赤道付近まで南下していた。
丁度この海域がZAFTや赤道連合といった勢力の空白海域になるのもあり、
この海域を暫く突っ切るという判断が採られていた。
パル少尉は新型センサーであるジオスキャン・カイト及びソニックスキャナーの情報を注視していた。
宇宙の時に使われていたセンサーとは全く違うものだが、
それらの情報処理は殆どをOSが分かり易く処理してくれている為、
使い方自体はほぼ同じインターフェース上で行われている。
センサーエリア上には、半径千km範囲内の全ての勢力の艦艇や民間船の情報が表示された。
勿論このGPSが無効化されている時代に識別情報等発信されていないが、
ジオスキャンカイトは範囲内の艦型から類推する形で、全ての船の形状をデータベースと照合して確定する。
実際の判定はカイト内部に極秘で埋め込んだ電波探知機を利用して、
各船の船内通信内容を盗聴して識別しているため、ほぼ100%の判別率であるが、
その情報はクルー達には伝えられていない。
カイトはそれぞれの艦艇の進路や速度、武装状況等も詳細に表示出来、
パルはこれらの情報をフィルタリングして、進路上に向かってくる船のみにアラートが鳴る様に設定。
それを操舵席に送る形にしている。
操舵席に送られた情報は操舵コントロールで自動運転の設定がされ、
ノイマンを含めてパイロットシートに座る者はその目視監視のみに留めて、
交代で出来る限り休む様にシフトが組まれた。
パル達が交代となり、ノイマンとパルは交代で現れたトノムラとアーガイルに席を譲ろうとした時、
それは起こった。
CICのセンサーがアラート音を発して警告、サイが駆け足でモニターを確認すると、
そこには急速に接近する艦影があった。
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機体の形状はZAFT艦のものと一致。
距離はまだ60km以上離れているが、追いつかれるのは時間の問題だ。
サイは交代で艦長席に座っていたフラガに状況を伝えると、彼は全艦に第二戦闘配備を命令。
すぐにコミュニケーターでジェインウェイへ報告すると、彼女から上級士官に向けて作戦室招集が告げられた。
作戦室では敵部隊の分析情報を元に作戦が練られた。
ジェインウェイは水中用MSとの遭遇を念頭に作戦を練る必要がある事、
こちら側に水中用のオプションは限られている事が告げられる。それを踏まえて議論が進む。
「……大佐、ストライクのマリンストライカーユニットの開発を進められていたと聞いておりますが、
そちらの方は使えないのですか?」
「バジルールさん、アニカの話だと、完成品はまだ掛かる様ね。
素体の水中用の補強は施したと話していたけど、水中を高速で動く様な装備は無いみたいね」
「では、ストライクにはそれで間に合わせましょう。
デュエルの方も同様の扱いの様ですが、一機であたるよりは二機でしょうか」
彼女の言う通り水中対応能力がある機体は2機とも出すべきだとは考えたが、
ここで空戦仕様の機体が現れた場合は不味い事になる。
スカイグラスパー及びジーニーで空戦に当たらせて、
ストライクとデュエルを水中戦に慣れさせるべきか、デュエルがエールを装備して空戦にあたるべきか。
出来ればイージスが完成していると良いが、改修は始まったばかりのため、
まだまだこちらも掛かるのが問題だ。
「会敵時間は約4時間後。機体の整備状況は現状で出来る範囲の万全の体制だとは思います。
敵潜水艦はかなりの高速航行で迫っており、我々を追って来ていることは明らかでしょうから、
相応の装備を揃えて来ていると見て間違いないと考えます。慎重な選択を要するかと」
「あなたならどうするのかしら?」
バジルールの説明にジェインウェイがラミアスの方を向き質問する。
それに対してラミアスは冷静に返答を始める。
彼女はジェインウェイと話すのに慣れて来ていた。
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「私でしたら、スカイグラスパーに先行させ爆雷を投下します。
その後をエール装備のジーニーで追い、ディンが出て来たならば叩かせ、
出なければストライクとデュエルを潜行させ待機させます」
「良い判断ね。こちらの最大の利点は既に相手の動きを感知していること。
相手の位置も全て筒抜け。これを最大限に利用した攻撃を採用する意味でも、
打って出るのは良い考えね。他の皆さんもどうかしら?」
「俺は異論有りませんよ。
スカイグラスパーも装甲が強化されてMSの火器に耐えられる程度にはなった。
攻撃は最大の防御……が大佐のお気に入りでしたよね?」
ムウはラミアスの意見に同意した。
彼の答えにジェインウェイは微笑んで頷き、作戦は全会一致でラミアスの考えで纏まった。
ただし、陣容は修正した。
戦闘部隊はスカイグラスパーで先制攻撃後、エール装備のデュエルで対応。
ストライクとジーニーは水中対応で投入する事が決まった。
ジーニーのパイロットにはトール・ケーニヒが乗る。
「トール、僕と一緒だ。宜しくね」
「おう、キラ、初めてだからな。精々優しくしてくれよ」
トールがいつもの悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
二人はパイロットスーツに着替え、互いの拳を突き合わせた。
ハンガーでは出撃準備作業が整然と進む。
これまでは相手側からの攻撃を待っての対応が多かったが、
今回は逆の立場なだけに段取りが粛々と進められていた。
「スカイグラスパー、発進、どうぞ!」
「ムウ・ラ・フラガ、スカイグラスパー、発進する!」
スカイグラスパーが先行する。
そのすぐ後に、エールストライカーを装備したデュエルがリニアカタパルトに据えられる。
ここで、とりあえず本日分はおしまい。
また明日残りを投下します。有り難うございました。
乙!
早くも可変機体登場とは、技術テコ入れ効果がパネァな。
そして艦長の策が早くも炸裂www
二次創作のほうが完成度が圧倒的に高くて面白いってどうなのよ…
種は素材としては優秀だね
本編が酷すぎたからなおさらだけど
>>251 材料はよかったが料理人が荒れしてたってことだろう
残り投下します。放送がなかなか出来そうにないので。
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「(デュエルより大佐、本当に良いのですか。彼ら二人に任せて)」
『(良いのよ。それより、あなたにはくれぐれも頼むわよ)』
「(はい)イチェブ・オドンネル、デュエル、出撃します」
デュエルがリニアカタパルトを颯爽と出撃した。
艦橋ではセンサーが敵潜水艦から3機の水中用MSが出撃したのが捉えられた。
識別情報ではグーンと呼ばれるZAFTの普及型水陸両用MSと、もう一つは不明の新型だ。
CICでは海上は初戦のため、パル、トノムラ、チャンドラ2世、アーガイルの4名が対応し、
操縦席はノイマンが、副操縦席にはカズイが座った。
フレイ・アルスターは作戦室付きとして今回はジェインウェイの側近として勤務する他、
カガリもこの作戦室に呼ばれていた。
「私も戦える!大佐、私にも何か戦わせてくれ」
彼女は戦闘態勢に入ったことでとても興奮している様だ。
先日の戦闘での少年の死も引きずっているのだろう。
何もしないでいる事が苦痛に感じる事は無理からぬ反応だ。
だが、それをそうだと頷いていては意味が無い。
「あなたの戦場はここよ。これから戦闘が起こる。
その場であなたならどう判断するのかしら?」
「え……」
「さぁ、ここを見なさい」
私は作戦室のテーブルのディスプレイを点灯させた。
そこに映された詳細な情報に彼女は圧倒されている様子だ。
いや、これを見て驚いているのは彼女だけではない。
彼女の付き人である彼も同様の反応を示していた。
「……これは」
「見ての通りよ。この青く光るのが私達。
そして北方に見える黄色く光るのが赤道連合の艦艇。
東側に見える幾つかの緑が大洋州連合で、紫は識別下に無い民間の漁船や客船ね。
そして、この南西のマダガスカル方面から迫る赤が……ZAFTよ」
私の話に彼女の視線は机上に釘付けだ。
彼女自身どう反応して良いのか真っ白と言った所だろうか。
私の向かい側に立つ「彼」の方は、その情報の詳細さ具合に驚いているのだろう。
「……この青二つはスカイグラスパーとデュエルか。
そして、接近するのはボスゴロフって出てる。連合はいつも、
こんなにハッキリと相手との距離や動向が分かっていて戦っているのか?」
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彼女の反応はジェインウェイも意外だった。
……思ったよりは冷静に考える頭が有るらしい。
「これは私達が特別よ」
「それは、アークエンジェルが新造艦だからか?」
「それもあるけど、元とはかなり違うんじゃなくて?」
私はそう言ってキサカ氏の方を見た。彼は私の視線に脂汗を滲ませて黙っていた。
彼からすれば、確かに「新造艦だから違う」という彼女の話は合っているのだが、
まさか自分達が知っていたものよりずっと進んだ装備を持っているとまでは考えていなかったのだろう。
これを喜ぶべきか、危ぶむべきか……彼の内心は複雑なものだろう。
「……そうか。キラが言っていた『色々あった』ってのは、そういうことだったのか」
「キラくんが何か言っていたのかしら?」
「いや、深くは聞いていないが、感慨深げにそう言っていたんだ。
つまりはそのまんまじゃ突破は無理だったってことだろう?
……理想を集めたとしても、実戦じゃ理想通りには行かない。だから改造し現実に合わせて行く。
それが戦術兵器としての完成なんだろう。」
カガリは砂漠での経験を通して、様々なものに対して考えを改め始めていた。
これまでは戦争は全てが悪であったが、自分の身を使って戦う経験を通した出会いと別れが、
彼女の中でこれまで考える事を閉ざして来たものへも視線を向け始めさせたのだ。
「あそこでも色々な兵器があったさ。そもそもその場に合っているのかすら分からないものも、
何も無いよりはマシだとばかりに掴まざるを得ない。それがあの場の現実だった。
そうやってあの場の現実に使いながら合わせて行く。
そして、その実戦データは先進国との取引材料になっていた。
……その先進国は、表立っては戦えない。だから代理戦争で兵器を投じるんだ。嫌な話だな」
彼女は彼女なりの目であの砂漠で起こっていた現実を見てきた様だ。
実際、この彼女の話したことは昨日今日始まった様な話ではない。
もうこの時代ですら百年以上続けていることだ。
単純な兵器の試し撃ちだけじゃなく、謀略構造研究としての政治工作等、
力の弱い地域や国は常にそうしたビジネスの舞台として使われる。その場に正義等は無い。
有るのはただ人類の明日への糧という綺麗事の上でのビジネスだ。
少なくとも、彼女の留学はそれを知る事が出来ただけマシであったと言えるのだろう。
【第00話時空転移】
時に西暦2210年
地球を滅亡の淵から救った英雄の1人古代進(30)大佐は、宇宙戦艦ヤマトの艦長として太陽系外縁部のパトロールの任務に付いていた。
「あれからもう10年になるのか・・・・」
古代進は艦長室で独語し思いをふけながら、PCにスイッチを入れ今の地球を眺める。
「この10年間で大分回復をしたな地球は」
とは言え、地球が本来の環境を回復したとは言えず。地球人類の大半は未だに地下都市生活を余儀なくされていた。
「真田さんの話しだと、後90年はかかるのか・・・・」
ガミラス戦役で地球が受けた傷跡は生々しく残り、イスカンダルの惑星活性化装置と、ガミラス軍が冥王星に残した環境管理装置を使いながらも、地球が本来の環境を取り戻すのには、一世紀はかかるのだ。
「それまではずっと地下都市生活か・・・・・」
ピッピー
物思いにふけている最中に呼び出しコールが鳴る。
「私だ」
『副長の小田切です。古代艦長、地球に向けてのワープ準備が整いましたので、第一艦橋にお越しください』
副長の小田切貢(階級は少佐)は僅か25歳でヤマトの副長に抜擢された逸材ではあるが、国連地球防衛軍の慢性的な人材不足がそうさせたと言っても良い。
「わかった今降りる」
古代進は制帽を被りながら家族の写真を見やる。
「今、帰るからな」
「ワープ10病前、8、7、6、5、4、」
メインレーダー主水島倫子中尉(23)がワープカウントを読み上げ、カウントが0になる。
「ワープ!」
カウント0と同時にヤマトのメイン操舵主氷室聡中尉が、操縦桿を押し倒す。
そしてヤマトは次元の狭間へと姿を消す・・・・・・
地球連合軍所属アークエンジェルは、ユニウスセブンでの補給作業を終了してデブリ帯から抜け出た・・・・その直後、
艦全体が奇妙な振動に揺さぶれ始めた。
「いったいなに?」
AAの艦長マリューラミアスは艦長席から放り出されないよう艦長席にしがみつく。
その直後にCICルームの警報が鳴り響く。
「異常な重力振動が発生」
「空間変異が艦の右舷後方に発生」
「凄まじいエネルギー反応、計測値振り切れまーす!」
パニックに陥るブリッジとCICルーム。
「何かが空間変異の中から飛び出してきます」
そう、その中からた
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「そうね。世の中嫌な話でいっぱいよ。だからこそ、私はこの仕事を一度は辞めたの。
でも、こんな状況に立たされて『関係無い』では済まないでしょう?……だから戦うのよ。
人は自分に関係無いうちは動こうとしないものよ。だけど、関係有る状況ですら『現代』は動かない。
そして、誰かが動いてくれると期待する。でも、期待が外れるから落胆するのよね。
そんな期待、始めからしなければ落胆なんてしないけど、人は主人公である事より、
その物語を眺める傍観者でありたいものなのよ。だから、ビジネスが発生する」
「……それは、おかしくないか?」
「えぇ。そうね。でも、おかしい事がおかしいと分かっていてやめられないのが人間よ。
その平和は誰かの犠牲の上で成り立っているけど、その犠牲が自分でありたいなんて誰も思わないもの。
勇者は物語の誰かであるべきで、自分はただの一人の人間でありたい。
そう考える時代に生きているとしたら、そこに居る全ての人はすべからく不幸よ。
あなた、その不幸を受け入れることができるかしら?それが大人の対応だと言われて」
「ちょっとまて、なんで不幸なんだ?……全員が戦えるわけじゃないだろう?」
「そうね。でも、幸せは勝ち取るものなのよ。そして、一人一人が意識して維持するもの。
誰かが守ってくれるだとか、自分には出来無いだとか……そういう甘えを放置すれば、
世の中には越えなくてはいけない壁があって、それは人を選んではくれない。
そんな状況で出来ないと諦めるならば、待っているのは破滅だけよ。違って?」
「……」
「もっと分かり易く言おうかしら。地球に何かが攻めてきて、殆どの戦える軍が敗退して、
そこに残されたのがあなたならば、あなたが戦う事を諦めた時点で人類滅亡よ。
戦う意志を諦めたら全てが終わってしまう。だから意志を持っていることは大きな違いなのよ。
そして、それこそが進化のセオリーなの。それを怠けた文明に明日は無いわ」
カガリはジェインウェイの話に深くショックを受けていた。
自分が求めて来たオーブの理想と現実の違いだけでも強い落胆を感じていたのに、
彼女の言う話は確かにオーブが抱えている大きな問題を指摘していた。
オーブの理想は言い換えれば他力本願なもので、自分達自身の独立を維持するためという一方で、
国民がそのために努力しているとは言い難いし、あえてそのようにして来なかった。
これは戦争による揺れが国民生活に及ばない様に配慮しているからと言えなくもないが、
考えてみれば元々の建国の祖である5大氏族は、争いを避けて『祖国』を出奔した逃亡者だ。
それの善悪は置いても、元を正せばやっていることには変わりない。
本当の問題から目を背けているうちは、『祖国』と同様の過ちを犯すかもしれない。
支援
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ZAFT軍モラシム隊クストー潜水母艦では、アークエンジェルが向かった航路を追っていた。
彼らZAFTは海中に光ビーコンを投下しており、付近の海域を何かが通過した際にログを光で送信する。
Nジャマーの影響下では通信が飛ばない。それはそのまま自分達にも当てはまる問題だ。
ビーコンは自分達が作り出した戦場で有利に事を運ぶための備えだ。
光ビーコンネットワークのお陰でZAFTは制海権を確保出来ているともいえ、
自分達のバラまいたNジャマーはなかなかに厄介なものと言えた。
ハンスに愛機を貸してグーン2機を付けて行かせた。まずはこちら側が先制攻撃を仕掛け反転離脱。
帰還したハンスと交代して自分がゾノに乗り込み真打ち登場と行く算段だ。
「……よーし、足付きはもうすぐだ」
その時、オペレーターが艦長へ慌てた様子で報告する。
「報告します!艦長、魚雷が!?」
「なんだと!?」
強い衝撃が走る。
スカイグラスパーから投下された爆雷がクストーに直撃した。
幸い爆雷は連合の標準的な型式のものであったため、装甲も固いクストーに目立った損害は出なかった。
だが、敵に先制されたのだ。
「ぐぅ、俺達の先を行っただと!?」
モラシムが苦っていると、センサー上にはもう一機の機影が確認された。
彼はここまでの道程で下手を打った覚えは無かった。
勿論、ZAFT出身の彼からすれば生粋の海兵等と言う程に自惚れてはいない。
だが、少なくともZAFTの中では最も海を知る男としての自負は有った。
特に潜水艦部隊を率いる自分達がこの距離で連合に見つかるなど有り得ない話だ。
しかし、どういうわけか相手はこちらの動きを補足していたのだ。
だからと彼も苦ってばかりはいられない。
自軍の陣容はディンx1、バスターx1、ゲイツx2、そして水中用にグーンx3、ゾノx1だ。
まだ足付きへの距離はある。
直掩任務にはディン及びザラの3人に任せるとして、問題は得意とする水中だ。
潜行速度はクストーよりずっと高速だが、この距離からの出発ではエネルギーの浪費になる。
少しでも長い戦闘可能時間の確保が戦闘の勝敗を左右するだけに、
出来るだけ長く潜行して接近したい所だが、上空の機影がそれを許すだろうか。
モラシムが取れる選択肢は2つだ。浮上して迎撃するか、限界震度まで潜行して航行を続けるか。
ただ、気になる事はこれまた「距離」だ。
14/15
連合のセンサーは『潜行している』こちらの側の艦影を捕捉していたのだ。
捕捉性能は深度による影響の有無も気になる所だ。
彼の知る連合制のソナーはこちらの接近を確認するどころか、
至近距離での観測も撹乱に脆弱な程の性能の筈だった。
仮にこちら側のソナーを連合が調達またはコピーして使用していたとしても、説明が付く距離ではない。
衛星等の測位システムを利用した正確さが必要だが、Nジャマーがそれを不可能にしているし、
先の軌道上の戦闘で殆どの衛星類は、デブリ等の衝突で損傷して使用不能に陥っている。
何より連合の制宙権はその殆どを失っており、衛星を新たに打ち上げるどころか、
マスドライバーすら失いかけている状況下では、
彼らが衛星システムを復旧させることに重点を置くとは到底思えなかった。
ーーどうなっている。
あの足付きはどうやって俺達を捕捉したんだ。何か、何か有る筈だ。
彼は出動部隊の編成を考え直した。
「ハンスを戻せ!至急だ!」
「は!」
クルーに急ぎ命じると、ディンを出撃させる命令を出す。
彼は敵がこちら側の位置を把握した以上、速度で振り切ることは無理と判断し、
ディンで上空を巻きながら残りの機体は全て温存して接近に集中することとし、
ひたすら攻撃をやり過ごす方向で戦術を組み直した。
「敵、ボスゴロフ級、一機のディンの出撃を確認」
CIC敵艦担当のトノムラが敵側の動きを報告する。
その発言に呼応する様にチャンドラ二世がデータベース上の分析結果を報告。
「エンジン出力データから改造はされていないものと思われます」
「ジオスキャン・カイトはディンの接近速度から会敵は10分以内と思われます」
パルが上空からのスキャン結果を報告。
「海中の3機が敵母艦に急速に戻って行きます」
アーガイルがソナーの情報を上げた。
新しいシステムにバージョンアップしたことで、これらの情報確認の役割分担をしつつも、
全員が他のシステムにも気を配っていた。
今後はこのシステムを二名で運用することになるため、
二人で対応出来る様に全てを把握しておく必要が有るのだ。
ラミアスはCICの情報から見て、敵側は満足な対空戦力を用意して来なかったのか、
それとも温存しているのか判断しかねた。
15/15
周囲に援軍の影は無い事を考えると、
出来るだけ距離を詰めてから海中からの攻撃を仕掛ける事に集中している様に感じられるが、
こちら側の爆雷を受けても仕掛けてくる辺りは勇敢な指揮官の様だ。
「大尉、敵の出方を見てどう思うかしら。
私達の装備からすれば、対グーンの前に一気に落としたい所だけど」
「艦長、ディン1機でこちら側の2機に対峙するのは時間稼ぎでしょう。
敵の目的はあくまで我々であると考えれば、
先行機を後退させながら爆雷による敵母艦への直接攻撃を仕掛けるのが上策かと」
「ハンセン女史のラボの研究はどうなっているの」
「アップデート時の話では、海洋航行装備への工事予定は英領ディエゴガルシア島で行う予定です。
その時に正式に魚雷発射管を搭載させるという話です」
「ディエゴガルシアまではまだ距離があるわね。向かってくるなら逃げましょう。
距離を稼いでディンを消耗させながら敵母艦へ直接攻撃を仕掛ける。
少佐のスカイグラスパーは対潜攻撃に専念してもらって、ディンはイチェブ君に任せましょう」
「は!」
スカイグラスパーが爆雷を投下して飛び去る。
断続的に続く攻撃だが、モラシムは潜水深度を下げる事で爆雷の攻撃から避けて前進を継続していた。
潜水深度は既に限界水位ぎりぎりでの航行だが、この深度を維持する限りは爆雷の攻撃は防げる。
だが、水上のディンには一切支援が出来ない。
「さすがにこの深度では攻撃はぬるくなったが、足付きめ、
飛ぶだけかと思えば色々と持っているじゃねぇか。何処の誰だ。
丸腰同然の孤立無援艦隊とか言っていた奴は」
敵艦へ迫るにもこのままでは満足な攻撃が出来ない。
だからと尻尾を巻いて逃げ帰るのは彼の主義に反していた。
何とか一撃を加えてやりたい所だが、ディンの陽動も見抜かれるのを見越していた彼は、
敵がこちらへ向かってくるとは思ってはいない。それでも時間を稼げれば充分だと言えた。
既にかなりの距離を縮めていたクストーからならば、
彼の愛機のスピードで足付きに一気に迫る事が出来る。
「よし、俺が出る。お前達は手筈通りにやるんだぞ」
モラシムがハンガーへと駆けて行った。
32話終わり。33話へ続きます。支援や感想コメ有り難うございました。
つか、投下中に新しい作品が!?……ヤマトはヤマトでも2199ではないようですね。
旬(?)だからヤマト良いですね。まぁ、2199キャスト版や復活編版で誰か種に入れないかなぁw
>>257 そう、中から飛び出して来た物はこのUC世界に実在するはずがない物、《宇宙戦艦ヤマト》だった。
すみません。一回途切れた形での書き込みになりました。
AAのブリッジとCICルームは突如として、亜空間から飛び出して来た戦艦らしき物に呆気に取られた。
だが、呆気に取られた一同の中で真っ先に正気に戻ったのは副長ナタル・バジルール少尉で合った。
「何ボケッとしている索敵照合を急げ」
ナタルの一括で我に戻るブリッジとCIC一同。
「艦索敵照合・・・・・・該当艦ありません」
「艦の全長はほぼアガメムノン級に匹敵します」
「総員第一級戦闘配備、MS、MA発進準備」
艦全体に警報が鳴り響き慌ただしく戦闘準備に入るAA。
「CIC、正体不明の艦に通信を送って、正体を確かめるわ」
「わかりました艦長」
「ミリアリア・ハウ、正体不明艦に通信を送れ、所属・艦名を明らかにせよと」
「はい」
ミリアリアは急いで通信装置を動かし、正体不明艦に向けて通信を送る。
だが、マリューとナタルの2人は正体不明艦が、自分達の概念からかけ離れた存在ではないかと漠然に思っていた。
>>262 GJ!
さすが艦長!カガリもしっかり導いている!
突然ですまないけど、種ドモンスレ時代にいた人って今でも残ってるのかな
なんか急に懐かしくなってしまった
あそこ面白かったよね
乙!
フォールディングって可変機なのか?
連合の技術発達がパネァな。ストライカーパックも色々作られそう。
皆様へ
遅くなっておりますが、明日2/20の夜辺りに次の話を書き込みます
時間帯は9時くらいからぼちぼち書こうかなと。
1/17 ……17分割なので、最長3回くらいに分かれるかな。
ではでは、遅くなりましたが、投下失礼します。
第34話「転進」
「よーし!足つきを確認した!グーン隊、発進準備!」
モラシムの命令でクストーから魚雷が発射された。
アーガイルが敵側の動きを察知して報告する
「敵母艦より魚雷の発射を確認。こちらへ真っ直ぐ向かって来ています」
「離水上昇!」
ラミアスの命令でアークエンジェルが浮上する。
「敵水中MS3機出撃を確認、ライブラリー照合……グーン二機と……先程の新型です」
「!?」
敵の新型はグーンより高速に接近して来ていた。
しかも、グーンより大型だ。
「対潜攻撃部隊出撃!アークエンジェルはディエゴガルシアへの進路維持で前進!」
ラミアスの命令が艦橋に響き渡る。
呼応する様に艦内が慌ただしく動いた。
「キラ・ヤマト、ストライク行きます!」
「トール・ケーニヒ、ジーニー行ってきます!」
二人がリニアカタパルトを歩いて進む。
今回は射出ではなく潜行のため、カタパルトデッキからそのままドボンと降下して海中に入る。
トールからすれば初の出撃が飛び込みというのは格好付かないが、
自分のタイミングで降りられるというのは少し心構えが出来て良いと思う半面、
逆に自分から進んで海へ沈まなくてはいけないことに気が滅入る思いだ。
支援
2/17
例えるならば、バンジージャンプで飛び降りる前の心境だろうか。
大袈裟に感じる話かもしれないが、
巨大な金属の塊に乗って飛び込むとは、底知れぬ闇へ身を投じる様な物だ。
しかも潜水艇ならばともかく、MSは人形の巨大ロボという以外は何ら人間と変わらないとも言える。
彼のジーニーは果たして泳ぎが得意だろうか。
彼のそんな思いを他所に、キラはさっさと海中に沈んで行った。
それを見て内心項垂れつつも、彼も意を決して飛び込んだ。
不安に感じていたトールだが、海の中はほぼシミュレーションした通りの世界だった。
動きにくさは勿論、真っ暗で吸い込まれそうな程深い闇も全く同じだ。
センサー上は既に敵が迫っているのが表示されていた。
新型が近付いてくる。
「ほぉ、来たか。足付きの前にまずお前達を始末しろというわけだな」
アークエンジェルが離水上昇しているため、
母艦からのソニックスキャナーの補足は得られない。
MSに取り付けられたソナーを使用するが、
アークエンジェルのものと比べたら大幅に劣る。
ただ、ZAFTと比較するならば同レベルのスキャンエリアは確保されているため、
単純比較での差は無い。だが、問題はその装備を使う側が何もかも初めてという事だ。
潜水仕様の脚部は小型スクリュー付きになっている。
両機はノーマルの連合製と比較すれば随分強化された方だ。
だが、相手は水中に特化して開発されたMSだけに、その機動性能は段違いだ。
「ハンス!お前達はその丸っこい奴をやれ!俺がストライクにあたる!」
「了解!」
ハンスのグーンがジーニーを狙う。
トールは敵のグーンが二機とも自分の方を狙い始めたのを見て焦る。
「ちょ、なんだよぉ!俺の所に来やがってぇ。
くそ、ジーニー、オートセーフティモード。
シュベルトゲベールでファイティング、スタンバイ!」
『ジーニー、オートセーフティ、ファイティング、オンライン』
「深度に気を付けるったって、こんな状況で、んなこと言ってられっかよぉ!」
支援
3/17
トールは二機が速度を上げて交互に襲いかかってくるのを、シュベルトゲベールを構えて躱していた。
動きはジーニー側も反応して調整してくれる為、彼は攻撃への対応に専念出来た。
戦闘条件は相手側の方が圧倒的に有利だが、ジーニーは良く対応してくれていて悪くない。
それでも打撃攻撃に対しては防御出来るが、魚雷からは逃げる他に無い。
なるべく岩礁の多い場所を目指して攻撃を躱すが、相手はスピードでその動きを阻止しようと阻んだ。
ジーニーが二機のグーンと対峙している頃、キラは敵の新型を目の当たりにしていた。
「ぐぅ」
「ストライクだな!一太刀は傷を入れさせてもらおうではないか!!!」
「うわぁ!?」
モラシムのゾノが体当たりを仕掛けた。
強かに打ち付けられたストライクは衝撃の他に水圧の影響もあり自由が利かない。
強烈な圧力が前後両側から掛かり、機体の軋み音がコックピットに伝わってくるのを、
キラは歯を食いしばりながら耐えていた。
「……連合のMSは手強いと聞いていたが、この程度か。水上じゃぁ知らねぇがなぁ。
水中でこの俺に勝とうなんざ無理だって教えてやる」
「(接触通信!?おっさん声)……負けない」
「!?(少年!?)」
キラは水流の流速を計算させ、
付近の潮流を利用してゾノの攻撃の力を受け流す様に機体の防御行動を再計算した。
そして、ゾノの攻撃から逃れると、足のスクリュー下駄のスクリューを回転させ、
推力を得て体制を立て直す。
相手の攻撃はスピードも相まって打撃攻撃力のパワーは相当の物だ。
しかも、耐水装甲はこちらの物より数段頑丈で、
攻撃を仕掛けても思う様なダメージは与えられない。
魚雷等の飛び道具も無い現状では攻撃オプションが限られる。
せめて水面近くに誘き寄せて上空からの雷撃を誘導出来れば効果的だが、
相手はそれを警戒して上がっては来ないだろう。
来ないなら仕向ける他にないが、他に方法は無いのか。
支援
4/17
ふとキラはトールの方を調べた。
センサーではトールもグーン2機と戦っている。
意外にも上手く躱しているが、あちらも決定打は与えられていない様だ。
加勢すれば少しは有利になるだろうかと考えたが、
相手が3機になるリスクよりは2対1の現状を維持した方がこちらも都合が良い。
だが、より良い道がある。
キラはシュベルトゲベールのビームを一瞬発動させた。
その瞬間、周辺がショートして強い衝動が発生すると同時に、
細かな泡で視界が塞がれた。
「なんだ!?」
モラシムは突然のことに事態が飲み込めなかった。
視界が泡だらけになったからといって支障があるわけではないが、
だからと見えないのは具合が悪い。
原因はあの剣だろうが、そんなものが今更何になるのだろうかと考えていた矢先、
味方の機影が一つロストした。
「!?くぅ……」
シュベルトゲベールはジーニーと戦闘していたグーンのうちの一機を貫いていた。
キラはビーム熱の衝撃を利用して目くらましを掛けると、
そのままグーンのうちの一機へ突進していた。
彼によって深く突き刺されたグーンは、爆発して沈んだ。
周囲に泡が更に増えて視界は完全に失われた。
ソナーも泡に阻まれて思う様な効果が上がらない。
「……ハンス、撤退だ」
「……しかし」
「……良い。言うな。この失態……必ず返させてもらう」
ゾノはハンスのグーンを援護して撤退を始めた。
トールがそれを追おうとするが、キラはそれを静止した。
トールはまだ気付いていない様だが、
正直これでひいてくれたのはラッキーだと思いたいくらいだった。
こちらも長く戦える程のエネルギーはない。
海中での移動は普段より圧倒的にエネルギーを必要とする様だ。
それがハッキリとゲージに表れていては、キラとしても動き様が無い。
試験を予めしていたものだが、やはり実戦となると想定外の動作が増える。
撃退させたといえば聞こえは良いが、新たな課題が残された。
支援
5/17
海上でもその動きは確認された。
グーンと新型が撤退して行くのが確認されると、ボスゴロフ級も進路を転進した。
空中でデュエルと交戦するディンは、意外にもしぶとく生き残っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、撤退!?……くそぉ、デュエルめ」
ディンに乗っていたパイロットはイザークだった。
モラシムは今回の作戦を敵戦力の評価に留めるため、
なるべく自軍の戦力を沈めるわけにはいかなかった。
だからと司令部から渡された新型を使えば何を言われるか分からないし、
エリート小僧に何かあれば煩い。
それでも、あの3人をそのまま何の評価も無しに信用して使うのは憚られた。
彼らの忠誠心と実力を評価する一つの方法として、ディンに一人を乗せてみる事にした。
ディンであれば換えがきくし、坊ちゃんの一人が勇んで戦死したならば名誉の戦死だ。
そこで彼らに作戦への協力を求めた。
ニコルはこのモラシムの思惑に気付いて、作戦への参加を最初の話では保留に持ち込んだ。
そして、二人にモラシムの意図を伝えたが、イザークがモラシムに協力すると言ったのだ。
「イザーク!?正気ですか?」
「俺は常に冷静だ!」
ニコルは内心「どこがだ!」と言いたい気持ちを抑えつつ、その真意を尋ねた。
「あなたは、はめられ様としているんですよ。罠と分かっていて何故」
「なら、尚の事やらないと駄目だろう。
俺達3人が揃って拒否してみろ、それこそモラシムに良い様に乗せられる。
なら、ここで進んで協力する姿勢を見せた方が、後々楽になるだろう」
「……しかし。ディアッカからも何か言ってください」
ディアッカはイザークの表情を見て決意が固いのは分かっていた。
イザークが妙に冷静な時は、敏感に危機を判断している時だ。
いや、普通は誰しもが冷静に判断する物だが、
彼の場合は普段が上げ上げ状態にテンションが高いので、冷静に振る舞う事が珍しい。
しかし、こういう時のイザークは神がかった判断力を示す。
コーディネイトの妙というべきか、動物的感と言うべきか、
それとも霊感(?)だろうか……彼には何か良からぬものが分かるらしい。
いや、守られているとでも言うべきだろうか。
支援
6/17
「……俺は、イザークの意志を尊重するぜ。
正直、俺がやっても良いんだぜ?」
「ディアッカ!?あなたまで……」
「ニコル、心配は有難うな。
お前はこん中では一番年少なのに、いつもよく気付いてくれてた。
そういう所は尊敬するぜ。
それに、大気圏でのあの行動も……俺はお前に助けられた。
だから今度は俺がお前達を助ける番だ!」
こうしてイザークはモラシムの要請を受け入れ、ディンへ乗って出撃したのだ。
そして、イザークは見事に生還しようとしていた。
「……あ」
デュエルに乗るイチェブが思わず口に出した。
ディンの後方上空から落下して来たコンテナが見事にディンと衝突したのだ。
コンテナはパラシュートで減速していたものの、その重量は相当の物だったのだろう、
ディンと衝突することで落下スピードは大きく減速したが、
ディンはその衝撃で真下の海中に強かに打ち付けられる様に落下した。
そして、海中深く沈んだまま出てくる事はなかった。
その時デュエルに通信が入った。
「……無事に届けられましたね。ジュロットです」
彼の目前に現れたのは、
何のユニットも無しに上空を飛ぶ黒光りした機体の姿だった。
艦長日誌
インド洋沖の会戦でZAFTを追い払った我々の前に現れたのは、月よりの宅配便だった。
荷物を運んで来たのは、我々のクルーであるジュロット少尉だ。
彼女はトゥヴォックの選んだ派遣クルーだ。
トゥヴォックが動けない現状で、彼女は彼の代わりとなる役割を担う為にやってきた。
支援
7/17
彼女を作戦室に呼んだジェインウェイは、上級士官を呼び紹介した。
また一人増えた女性上級士官の登場に、男性クルー達は興味津々といった所だろうか。
「ジュロット・ヴォイジー少尉です。
月軍司令代理の命令で、大気圏へ突入したコンテナの回収任務に当たっていましたが、
命令が変更となり、落下地点をアークエンジェル付近にする任務に当たっていました。
無事皆さんのところへ降りる事が出来て一安心です。私もこの船の所属となりますので、
皆さん、宜しくお願いします」
彼女は敬礼すると笑顔で周囲に微笑みかける。
その穏やかな表情を見ては、誰もが笑顔で彼女を迎えてしまうだろう。
ただ一人、バジルール大尉を除いては。
尤も彼女の場合は常にポーカーフェイスを心掛けているのだが。
「皆さん、彼女の本来の任務は外交交渉を専門的に扱う交渉のプロよ。
今後、我々の旅先では彼女の交渉力が生きてくる場が訪れるでしょう。
彼女は私のもとで7年働いた実績を買っての抜擢よ。彼女の処遇は作戦室付きとするので宜しく」
「あの、大佐、外交交渉についてですが、宜しいですか」
バジルール大尉はもはや新しい士官に興味は無い様で、早速の質問だ。
「えぇ、どうぞ大尉」
「具体的に交渉を持つ予定国は、赤道連合またはインド連邦といった所でしょうか」
「そうね。大洋州連合は交渉する余地は無いと見て、
中立国の領域を通過するのは今後の死活問題でしょう。
公海上を抜ける分には目立った対応は無いと思うけど、
ZAFTの出方次第では彼らと取引せざるを得ない状況はあるでしょうね」
「我々が取引する際に提示する物はなんでしょうか」
「それは相手次第ね。勿論あなたが想像している様なものも有るかもしれないけれど、
カードは直前まで伏せておく物よ」
「それは連合の規約に逸脱する恐れがあるのでは……」
支援
規約を曲げるんですね!
8/17
彼女の指摘は尤もだ。
私が仮に彼女の立場であったとしても同様の指摘をするだろう。
彼女が念頭に置いているのは、都市同盟に提供した様な「技術支援」という形の技術流出についてだ。
だが、私はこの旅の中で一つだけ無視する事に決めたルールがある。
ワープ未満の文明に対する技術支援の禁止についてだ。
この規定の適用には「異星文明に対しての」という前置きがある。
……そう、ここは「地球」だ。
地球人が地球の文明に「歴史のセオリーに従った範囲」で関与する分には無視出来る。
ここで問われる判断は、歴史の流れから逸脱するか否かだ。
「連合のものを流出させるかどうかでいえば、私は何もそれのみが選択肢だとは思っていないわ。
ただし、それを要求する勢力が居る事に対して何らかの対応に迫られる事は間違いない。
この場合、流して良いものが何であるかは予め決めてある必要はあるわね」
「それを我々の一存で決めても良い物なのでしょうか」
「じゃぁ、どうするというの?アラスカへお伺いを立てるのかしら?」
「それは……」
「……勿論、ここで決めた事の責任は全て私に有るわ。だからあなたが心配する必要は無いわね。
その代わり、良いアイディアを皆さんには出して欲しいところかしら。
さて、紹介も済んだし、これにて会議は解散。ジュロット少尉は後程私の部屋へ来て頂戴」
「はい」
ジェインウェイは笑顔で答えた。
言っている事はずっと重い事を話しているのだが、彼女は事も無げに責任を被ると言ったのだ。
バジルールは改めて自分との器の違いをハッキリと実感させられた。
会議は解散され、それぞれが持ち場へ戻って行く。
ジェインウェイはジュロットへ必要な職務情報を入れたパッドを渡すと作戦室を出た。
彼女が向かう先はハンガーだ。
わざわざ月へ要請して取り寄せた品物を実際に見に行く為に。
ZAFT軍モラシム艦隊クストー内部では先の戦闘後の反省会が行われていた。
グーン1機を失った彼らはモラシムの判断で撤退したが、
もしあのまま戦闘を続けていたならどうであったろうか。
モラシムは単純性能差はZAFTに軍配が上がると当初から判断していた。
支援
9/17
実際のスペックでもそうだっただろう。だが、現実は……機体のスペックの良さが、
必ずしも勝敗を決するわけではないことを如実に示した。
特にあのストライクのパイロットの判断力は侮れない。
彼の目前には、右腕と言って良いハンスとエリート3人組が呼ばれていた。
「……まずはジュール、君の奮戦を労おう。
よく頑張ってくれた。……心より礼を言う。有り難う」
モラシムがイザークの目を見て真顔で礼を告げて来たので、彼は思わぬ対応に恐縮した。
「いえ、自分は出来る事をしたまでです。礼には及びません」
「……言ってくれる。さすがエリートのレッドだ。
出来る事をする……それがどれほど大変な事か。
確かに赤を着るだけの実力が君等の中に備わっている事は理解した。そこで聞きたい」
「なんでしょうか」
「あのストライクのパイロット。……あれはコーディネイターか?」
「……それは……ハッキリした確証はありませんが、
そのように考えても不思議じゃない節はあります。ただ、連合の機体のOSは、
我々の物より遥かに高性能であるということも考慮に入れる必要があります」
「そんなに凄いのか?」
「はい。……といっても、私は実際に動かした事は無いので、
動かした事のある二人に聞いて下さい」
「ほぉ、では、エルスマン、
君はまだ連合の機体に乗っているが、アレには搭載されているのか?」
「いえ、連合のOSにはトロイが仕込まれていたので、低軌道会戦前の戦闘で強制排除しました。
ただ、彼の言う通り、連合のOSは次元の違う操作性を提供していました。
まず違うのは学習能力です。彼らのシステムはこちらの動きの癖を読み取って、
常に微調整しながら動作を最適化します。そして、次に省電力性能です。
動作の最適化は同時に不要な動作エネルギーの排除を行い、高い省エネを実現しています。
単純に同等機体との比較性能差は、連合製OS利用で4割の性能差を産みます」
「4割だと!?半分近いじゃないか!」
「はい。しかし、実際はこれにパイロットの腕も入ると、
5割超の省電力性能を実現する可能性があります。実際、手前味噌ではありますが、
自分の戦闘データでは5割超の性能差を出した記録があります。
こちらは記録が有りますので、必要でしたら後程お持ちします」
支援
10/17
「……そうか。海中でのストライクはかなりのエネルギーロスが有ると考えていた。
だが、あれは最後までフェイズシフトダウンを起こさなかった。
おかしいとは思っていたんだ。こちらに回って来ていた資料の機体スペックから計算しても、
絶対にあの数字にはならない。司令部は汚点を隠す為にわざと出さなかったわけだな。
……これだから役人って奴は」
彼はディアッカの話でようやく合点が行った。
パイロットの腕は勿論、機体のスペック計算自体が間違っていたのだ。
もしあのまま戦闘を続けていたら、
想定外の事態がより大きな被害を出した可能性も否定出来ない。
特に連合は海中対応していない筈のストライクを、例え簡易であれ対応させていた。
そして、新型まで投入して来ている。
記録上では、足付きはこれまでの移動経路で連合基地に立ち寄ったことは無い。
低軌道会戦前の第八艦隊との接触ですら、そう長い時間を居たわけではないのだ。
それなのにも関わらず新型を投入して来たという事は、
あの艦内で何らかの製造を行っているということだ。
しかも、それはかなり高度な設備が整っている。
……だとすれば、時間を与えれば与える程対応能力を上昇させるに違いない。
撤退の判断が間違っていたとは思わないが、
次にあたる場合は中途半端な軍備では絶対に駄目だという事は言える。
砂漠の虎と言われた知将であるバルトフェルドですら、多勢に無勢に終わったのだ。
取り寄せた情報では決して手抜きをした様な形跡は無い。
しかも、最後の決戦には新型のラゴゥまで投入されての敗北だ。
先の戦闘でもこちらの動きは完全に読まれて先手を打たれていた。
それもこちらが反応するよりかなり前に、向こう側はこちらの動きを読んでいたのだ。
少なくともセンサー性能も化け物の様な距離があるということは言えるだろう。
「ハンス、帰投だ。本部と連絡を繋げる。
確か、カーペンタリアにザラが降りるという話だったな。
ならば奴らの部隊と合流するのが得策だろう」
「!?……本当に、よろしいんで?」
とりあえず、これで10連投になるので休止です。眠くなって来たので明日続きを投下します。
待っていて下さった方は申し訳ないですが、また明日お付き合い頂けましたら幸いです。
投下協力有り難うございました。
乙!
安定の艦長と安定のイザークwww
皆さんこんばんは。昨夜の続きを投下します。
11/17
ハンスは普段のモラシムからは考えられない選択に驚いていた。
いつもの彼ならば、自らの力だけで勝ち上がる事に固執していたはずだが、
そうではない選択をしたからだ。
彼がこのような慎重な判断を下す事は滅多に無い。
有るとすれば、それだけ危機的に感じている時だ。
「他にどうすれば勝てる?……ザラ国防委員長は尊敬出来るお方だ。
その彼の息子の部隊にこうして縁が出来たんだ。
彼からも協力要請が来ている以上、断る理由は無いだろう。俺としては幸いだね」
モラシムは既に決断していた。
名誉欲が満たされて亡くなるならば本望だが、それすら満たされずに敗北するのは勘弁ならない。
戦争は勝たなくては意味が無い。
負ければ全ての言葉が力を失うのだから。
ハンガーでは、海中で戦闘した二機の洗浄が行われていた。
アークエンジェルは先の戦闘海域付近で停泊中だ。
本来であれば一心不乱にディエゴガルシアを目指すべきだが、とある目的で停泊している。
目的のものはそろそろ持ち込まれる予定だ。
『オーロボロスよりハンガークルーに告ぐ。目的物を回収し帰還した。
速やかに道を開けて待機するように』
艦内放送後にカタパルトに侵入して来たオーリィは、グラップラーに荷物を抱えての登場だ。
彼の持って来た物は「グーン」だ。
損傷したグーンを海中から引き揚げて持って来たのだ。
セブンはグーンを回収して使うのが一番手っ取り早いと話していたので、
ジェインウェイは彼女の引き揚げ案を許可した。
オーリィならばどんな深海でも潜る事が出来るという事も有る。
ただ、このオーリィに海中での攻撃能力が有る事は秘密だ。
12/17
オーロボロスは使えない兵器扱いとなっている。
幸い、人工知能を持った生命体として会話が出来る事も有り、
ハンガークルーと会話が出来るオーロボロスを戦闘に出したいと思う者も出なかった。
彼らにとってオーリィは友達だ。
しかも有能なハンガークルー達の助っ人でもありエンジニアでもある。
しかし、先程の通信を聴く限り、性格は親であるセブンにそっくりである事は間違いないようだ。
「オーリィ、よくやってくれたわ。ご苦労様」
「大佐、礼には及びません。これも任務ですから」
「いいえ。どんな任務でも着実にこなすのは有能な証拠よ。誇って良いことだわ」
「……お褒めに預かり光栄です。申し訳有りません。
感情サブルーチンの異常を感知しました。修復します」
「フフフ、大丈夫よ、オーリィ。
それは異常じゃなくて正常な反応よ。あなたは、感動しているの」
「……感動?……これが感動か。理解しました。
感情サブルーチンを拡張し経験を蓄積します」
「どう?慣れたかしら?」
「はい、上々です。大佐。これより、マードック准尉の設計チームに加わりますので、失礼します」
「えぇ。頑張って」
「はい、大佐。では」
ジェインウェイはセブンの作業しているスペースに歩いた。
彼女の作業場にはどんどん目新し機材が組み上げられていた。
どれも全て工具として利用するために彼女が自作した物ばかり。
勿論その部材にはレプリケートして作成した精密な物もあるが、
基本的にはこの時代の技術水準に「合わせた」ものだ。
いや、彼女の場合の合わせたですら、
この時代のハイエンドの基準を十分以上に満たしていると思われるが。
クルー達も彼女が作った工具を使い作業をする様になっていた。
最初は彼女一人がぽつんと作業していたものだが、今では数人のクルーが彼女のサポートをしている。
彼女は新しい機体のOSの調整を行っていた。
「ハイ、セブン。これが月からの贈り物その2の方ね。どうかしら、使える?」
「あぁ、トゥヴォックの考えた設計は空間戦闘に合理的な整形をしたと言える。
このGAT-X304-FoldingはX300シリーズとして可変機構を持つ機体だ。
大気圏内での空戦能力はMS/MAどちらも優秀な性能を持つ。
装甲の殆どをカーボンドAを採用しているため軽く、それでいて装甲性能はアークエンジェル並の固さだ。
この時代に必要充分のコストパフォーマンスだろう。
低レベルのフェイズシフト機構を採用する事で、大気圏突入機能も備えている」
13/17
彼女はいつもの通りというべきか、ディスプレイから視線を逸らす事はない。
ジェインウェイは機体の方を見上げた。そこには特徴的な長い砲芯が見える。
黒光りした機体の中でも随一の長さと威容を誇る装備だ。
「この特徴的な砲芯がフェイズシフトリニアガン『Blitzstrahl(ブリッツシュトラール)』ね。
今後の戦闘でZAFTがフェイズシフトを採用してくる時の、切り札の一つと言った所かしら」
「あぁ。PS装甲は実弾でエネルギーロスを生じさせ打ち破るのが現在の方法だが、
このブリッツシュトラールならば装甲ビームを貫通する。勿論、周波数変調されれば性能は低下するがな」
それでも武器として正面から効果を発揮することは重要な事だ。
我々の世界ですら、武器の実破壊力よりも貫通力の方がずっと重要なのだから。
「盾を回転式のロッド形状にしたのも軽量の為かしら。
パルスビームガンがビルトインされているのも、省電力が主体の様ね。
それでもカーボンドの蓄電性能のお陰でかなりの電源容量を確保している」
「回転式ロッドには強フェイズシフトのビームコートが入る。
実弾を含めて装備を最適化しつつ低コストを実現するには、この程度の妥協は必要悪だろう。
そのロスに目を瞑っても十分な空戦性能は無視出来ない特徴だ。原始的な割に良く出来ている」
この機体は月軍の今後の主力にする予定だという。
連合のダガー計画を推進しつつ、フォールディングをフラッグシップマシンとして採用する。
どうやら製造はVSTテクノロジーに外注生産という形を採った様だ。
……私の裏でトゥヴォックとチャコティは繋がっていたのだ。
これでコスモグラスパー開発計画への対抗が、このフォールディングであることがハッキリした。
ただ、地球上での生産拠点が問題で、チャコティの話では東アジア共和国のフジヤマを予定しているという。
技術上の要求に応えられる能力がある国が日本のためだ。しかし、連合内部では東アジア共和国の位置は微妙だ。
以前は大西洋連邦に所属する国家であった日本は、
国内政界が世論の猛反対を押し切って東アジア共和国に参加したため、
オーブの様な国家を作り分離独立した勢力と、
新支配層の政治を我慢する旧来勢力に国内が分裂状態にある不安定な国だ。
14/17
政治的工作が仕掛けられ易い土壌を放置した為に起きた事態だが、
逆を言えば、簡単にコインの表裏が裏返る国家だともいえる。
東アジア共和国大統領の果実を取った形の新支配層は、
自国の利益の最大化には興味が無い様で、
所属する中国や朝鮮半島に半ば利益を横取りされやせ細る一方だ。そして、
それが世論の反発を招いており政権基盤は盤石ではないが、
共和国軍を全土に配置することで現在は高圧的に支配を徹底している状況にある。
このような国家に産業振興する事が、果たして得策なのだろうか。
と言っても、ジェインウェイも自分の事を棚に上げる事はできないと自重した。
なぜならば、彼女はボーグというより凶悪な勢力と取引をしたのだから。
それと比べれば……可愛らしいくらいの話だろう。
ZAFTでは彼らの先端技術の粋を集めた最新鋭の宇宙艦が出航仕様としていた。
その艦隊を率いるのは真新しい白服に身を包んだ女性だ。
「……エターナル艦長、タリア・グラディスです。
本艦はこれより地球カーペンタリア降下部隊を運ぶ任務の為出航致します。
予定航路上の敵部隊は、地球軍第八宇宙艦隊旗下のものと推測されます。
全クルー、一丸となって対処し、共に帰還することを求めます。エターナル、発進!」
プラント本国を出航したエターナル号は、最先端モビルスーツを満載し出航した。
目的はカーペンタリア降下部隊を降下させ、足付き掃討の任務にあたらせる為だが、
彼女の任務はもう一つある。
「アーサー、降下部隊を下ろしてからが本番よ。
行きは良い良い帰りは怖い……とでも言っておこうかしら」
グラディスの内心は憂鬱なものだった。
本国帰還後すぐに白服へ昇進しフェイスにまで抜擢され、
更に最新鋭艦まで任された事は軍人として名誉ある待遇だが、
結果的に家庭生活は大きな犠牲を払っている。
彼女の立場上もあり、夫は家庭の仕事を一手に引き受けてくれているが、
問題はそういうことではない。幼い子の時間は過ぎ去るのが早い。
船での航海は長期の仕事になるのがしばしばだ。
その為に子供との貴重な時間を過ごせない事に心痛めていた。
そして、それ以上に問題なのは、
司令部が命令した事以上に重大な任務を議長より賜っていることだ。
「(ZGMF-X09NF-Justice、……この一機で本当にやれるのかしら。
どんなに力のある機体だとしても、それ一つでどうにか出来る程のものとは思えないけど、
……議長の自信はどこからくるのやら)」
同じ艦内にはザラ隊隊長であるアスランとクルーゼの姿があった。
とはいえクルーゼは降下後は別任務が与えられる事となった。
司令部は彼の低軌道会戦での戦果を重視し、
ヘリオポリスの失態に対する責は相殺する事とした。
彼の部隊は赤服に昇進したオロール・クーデンブルグ他、
シホ・ハーネンフース及びアイザック・マウが部下として入る。
クルーゼとアスランは船内のミーティングルームで話していた。
「またクルーゼ隊長と普通に呼べる様になりましたね」
「あぁ、私も新たな部隊を受け持つ事になって、気の引き締まる思いだよ。
ところでアスラン、足付きの事だが、例のパイロットの件はどうするんだ。
本気でやらなければ……今度は痛い目を見るかもしれないぞ?」
彼の指摘する事は尤もな話だった。
この一ヶ月近くの時間のうちに情勢は大きく変わっていた。
アフリカ戦線はZAFTの有利に進んでいたのが一転して、
連合がアフリカの勢力を制圧したのだ。
ZAFTはやっとの思いで制圧した筈のビクトリアを失い、
宇宙の制空権も大きく後退を余儀なくされた。
月の連合がこれまで以上に強力になったのも一因だが、
何より足付きの戦果による所が大きい。
足付き艦隊が砂漠の虎に勝利し、北アフリカの政治体制すら変えてしまった。
単なる敗北だけでなく、政治的な工作面でもZAFTは大幅な後退を強いられたのだ。
事前の情報では殆どの有能な士官を失っているはずだった。
それがどういうことだろうか。……現状は彼らの予想の斜め上を行き過ぎていた。
16/17
「……分かっています。
後戻りが出来ない以上、私には進む他に道はありません。
打ってくるならば、問答無用で打ち据えるまでです。ただ…」
「ただ?」
「……こうして友とすら戦った末に、私達は何を得るのだろうか……と思うと、
軍人という仕事は難儀なものだと苦笑します。其の癖、動機は怨恨ですよ。馬鹿げた話です」
アスランは立場上自重気味に話しているが、これが正直な思いだった。
この若さで死線を目の当たりにして、そして他人の命までその手に預かって、
この先何人の死を受け入れ、そして恨まれる立場になるのだろうかと。
クルーゼはそんな彼に穏やかに話しかける。
「……そうだな。だが、晴らされない思いというものは、簡単には消えてくれない。
何故、どうして、どうしたら?……その先に有るのが傷つけるものであったとしても、
そうして相手を滅する他に晴らされない思いもある。
だからこそ、処刑法としての死刑もまたあるのではないかな?」
彼の指摘はその通りだった。
話し合いで解決が着かないから力を行使する事に至ったわけで、
始めから話し合える程度の事であれば、誰も悩むことはない。
失った物は戻らないからこそ、そこへ執着するのは仕方の無い感情だ。
代償とは言ったものである。……そしてその究極が死刑である。
「……そうですね。僕等はいわば、その執行役だ。
戦うことを選んだ時点で分かっていたこと。その処刑人が為損じては、
また新たな悲劇を生むのに手を貸しているのと同じになってしまう」
「……その通り。何もしなくても何かは起こってしまう。
そして、それは大抵自分にとって悪い話だ。
だからこそ、自分の手で欲しい未来を手にする為に戦う。
それは有志以前からの自然の理(ことわり)だ。アスラン、君は優し過ぎる。
その心が君を弱くするとすれば、よく考えた方が良い」
「……はい。お言葉を胆に命じておきます」
クルーゼはこのアスランな弱気な態度を見て、内心はしたり顔であった。
この若く有能だが優柔不断な彼だからこそ付け入る隙がある。
キラ・ヤマトの件は彼にとっても予想外の遭遇ではあったが、自分はついている方だと感じていた。
必要な時に必要な駒が揃うという事は、自分自身に動くべき運命が有るのだろう。
そう、運命。……彼にとってはそうであって欲しいとすら願ったものだ。
17/17
時は少し遡り、イザークが海中へ墜落した後の事だ。
「くはぁ、……死ぬかと思った」
MSから出た彼の一声はそんなものだった。
イザークは自力でクストーへ帰投した。
実際、あの状況で死なない方がおかしいくらいの不運さではあるが、それでも彼は生き残った。
と言っても、乗っていたディンの方はかなりの損傷で、
整備して使うにしても実戦に耐える様な内容じゃない。
イザークは仲間のディアッカとニコルに出迎えられ、照れ隠しに声を張り上げていた。
その様子を他のクルー達も笑いながら暖かく迎えて見ている。さながら勇者の凱旋だ。
そんなハンガーの映像を艦橋のモラシムは艦長席で眺めていたが、
ディスプレイに触れて表示を他の画面に移動させた。そして、深く溜息を吐くと背もたれに体を預ける。
正直モラシムは彼を見捨てる覚悟だった。
クストーはあの時点で戦線を離脱する判断を下していた。故に回収しに行く事は有り得ない。
何よりディンは囮として利用しているわけだから、そもそもその気は無かったのだ。
ただ、「勝ち戦になれば」帰ってくる当てもある。……そんな程度の話だった。
であるにも関わらず、イザークは彼らのもとへ帰還した。
それもこれもあの「落下物との衝突」だ。
飛来した落下物による強い衝撃で叩き付けられたディンだが、
そのお陰とでも言うべきか、海中に突入する結果となった。
モラシムはまさかの展開に驚きはしたが、ニヤリと笑みを浮かべて回収の指示を出した。
戦場で運は重要な要素だ。運のある男というのを逃す手はない。
自分で生き残る道を引き当てたこの男がいる限りは、自分達の部隊もまた生き残れる。
……クルー達にそう思わせることが出来さえすれば良い。そして、勿論上層部に恩も売れる。
一石二鳥である。
「……良い奴を亡くした。……でも、新しい死に損ないがやってきた……と。っフフフ。
ハンス、クストーの操舵を頼む。俺は少し休ませて貰うぞ」
彼はそう言って一度は深く預けた体を再び起こし、席を立った。
第34話の投下終了です。次回第35話は3月半ば以降くらいに投下時間を設けようと思ってます。
では、お楽しみ頂けましたら幸いです。
乙です
クルーゼがいよいよ動き始めたか、ほかのやつらの動向も含めてわくわくが止まらない
しかし次は3月ですか
長いような短いような
とにかく楽しみにしています
乙!
フォールディングってフラッグ?
しかしこの時点で可変機登場とはザフト涙目すぎるだろw
GJ!!
相変わらず新技術の大盤振る舞いだなw
まあ、ヴォイジャー保有の技術がぶっ飛びまくってるから、この程度が出てもまだまだだなと思えてしまう不思議!
そしてザフトは早くもジャスティス投入とは、もう色々繰り上がって兵器関連グチャグチャじゃなかろうか。
ウォーバードシミター対ザフト
シミター無双じゃないかw
第35話を明日の夜辺りに投下予定です。
皆様こんばんは。
遅くなりましたが半分までアップします。残りは明日かな。
1/19
第35話「一石」
アークエンジェルは大西洋連邦イギリス領ディエゴガルシア島へ入港していた。
珊瑚礁が作り出した島内に目立った軍の基地施設は無く、連合領といっても何も無いに等しい。
というのも、既にこの島は引き払われており、他の国々も現状では手出ししていない。
大洋州連合からすればZAFT側に与しているとはいえ、連合に強く敵対する気も無い。
飽くまで貸し出しているだけであって、彼ら自身の立ち位置はニュートラルだ。
赤道連合もそこは同じで、大西洋連邦やユーラシアを相手にして戦う程に愚かではない。
ディエゴガルシアはそうした思惑の末に英領のまま無人島となったのだ。
「……どれくらい掛かるのかしら」
ラミアスは艦長席からナタルに訪ねる。
「ハンセン女史の予定では12時間の予定です。
設備自体は工事を進めながら進んできました。
彼女の言う時間は妥当な所でしょう。むしろ早いぐらいかもしれません」
そう話す彼女の表情はとても納得している様には見えない。
12時間という時間は実際には長い。敵側と交戦して間もないのである。
警戒を解ける程楽観出来る様な状況ではない。
「……そうね。でも、こんな綺麗な海だというのに、クルー達へ休暇も出せないのは辛いわね」
「レジャーに来たわけでは有りません。我々は作戦行動中です」
「そうは言ってもね……この船は軍人だけの船じゃないわ」
「それは、……そうですが」
ラミアスとてナタルの言いたい事は理解していた。
それでもここであえて言葉にしておきたいと思ったのだ。
ハンセンもキラも皆民間人。
彼らの支えなくして現在の自分は無い。
2/19
艦橋は彼女等の他は、操縦席のノイマンとバスカークの他は、
パルとチャンドラ二世が持ち場に付いていた。
艦内通信及びMS管制のミリアリアもレギュラーメンバーだ。
彼らはいつでも出発出来る様にブリッジで待機していた。
艦長日誌
ディエゴガルシアへ到達した私達は、
船を海中の敵へ対応すべく工事を進めていた。
ZAFTの次の攻撃があることは間違いないとして、
いくらセンサーエリアを広げていても、
攻撃オプションに制限があるのは先の戦闘でハッキリしていた。
MSが潜水対応を完全に果たしたとしても、
艦艇に魚雷すら無い状況は改めたい。
幸いセブンに進ませていた設置作業は滞り無く進んでいた。
「バナディーヤで予め調達しておいた魚雷についてだが、
追尾用のセンサー類を付加した。
我々のセンサーリンクと同期することで追尾性能を上げている」
セブンはマードック達に魚雷発射管取り付け作業を任せ、
自身はMSの整備を続けていた。
彼女が整備を進めているのはグーンだ。
グーンはZAFTのスタンダードな潜水用MSであり、
連合がこれまでに無事に鹵獲出来た試しは無い。
……それだけ連合は海洋戦力でも水を開けられていたのだが、
初めて我々は完璧なモデルを鹵獲した。
機体の気密はチタンをかなり高度に加工して製造しているため、
軽くて強い強度を保持している。
改めて思うが、連合と比較すると加工技術の先進性でZAFTはかなり進んでいる。
彼らには限られた中での最大限の力を発揮する能力には長けているが、
発想の転換等の柔軟性に欠けるのかもしれない。
「小型魚雷の調達は知っていたけど、
まさか始めからこれを考えていたのかしら?」
「いや、マリンストライカーパッケージとして予定していたモジュールで利用予定だった。
だが、グーンを改造して連合の装備に適合させる方が早いだろう」
「その様ね。マリンストライカーはどうするのかしら?」
305 :
通常の名無しさんの3倍:2013/03/17(日) 23:43:03.88 ID:tw2WSf6I
お待ちしておりました。では支援砲撃を
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「仕様を簡略化した。足部、背部スクリューモジュールは完成しているが、
腕部スクリューモジュールである魚雷発射官付きグローブの装填魚雷数を、
全部で2発に削減した。そして、シュベルトゲベールが使えなくなる代わりに、
トンファーを付加することにした」
「トンファー?棍棒みたいなものかしら?」
「あぁ、そのような物だ」
彼女はそう話して設計情報を表示させたパッドをジェインウェイへ見せた。
確かに当初設計よりはかなりスマートな印象になっている。
……というより、最初の設計があまりにも物々しい内容だったのではないだろうか。
大体の作業は彼女に任せているが、こればかりは止めてくれて正解だろう。
彼女はそんなことを思いつつ、質問内容を変えた。
「ところで、例の贈り物の扱いは進んでいるのかしら?」
「……あぁ、あれか。進んでいる。
イージスの装甲をほぼ全て換装する方向で進めている。
付加する飛行翼のためにも、カーボンドによる軽量化は確実に必要だ。
完成すれば、フォールディング並の空間戦闘能力を獲得出来る筈だ」
「それまではフォールディングを少佐の機体として使ってもらうことになりそうね」
「あぁ。あの機体は良い機体だ。少佐なら使いこなしてくれるだろう。
それを見越して私はイージスの計画を変更しようと考えている」
「どういうことかしら?」
「イージスは飛行試験も必要になる。
現状でこの機体を試験無しに利用するのは無謀だ。
私としてはそれを加味した上で、イージスを当初予定していた改造に変更したい」
イージスについては彼女と事前に話していた。
戦闘に逸早く投入出来る様に要請したのは、
本来は5機のMSを運用出来る筈のこの艦の装備を考えた時、
一機でも多くの機体を運用させたかったからだ。
しかし、彼女はフォールディングを見て考えを改めた様だ。
当初予想されていたダガーの変形型という想像とは遥かに違う高性能振りを見て、
当面はこの機体に任せられると踏んだのだろう。
……新しい玩具で遊び倒したいという彼女の願望もあるだろうが。
ジェインウェイは暫く悩んだが、彼女の願いを聞き入れる事にした。
その代わり一つだけ課題を与えた。
307 :
通常の名無しさんの3倍:2013/03/17(日) 23:56:43.79 ID:tw2WSf6I
再支援砲撃
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「そろそろ、この世界で使えるバッテリーの開発を優先してくれるかしら」
「……技術的なクリアは可能だ。
デュエルで使用している試作型はオーリィによるレプリケートだが、
そこからある程度のヒントは得られた。量産ベースに乗せられるだろう。
ただ、小型化には設備が足りない」
「それはここでは一つも作れないということかしら?」
「それは違う。ここにある機体分は用意出来るだろう。
ミラージュコロイドの精製設備を作る必要はあるが、
それはそのまま艦の装備として転用可能だろう。
許可をくれるのであれば、私としても都合が良い話だが」
「……許可します」
セブンはこの提案は受け入れられないものと思っていたが、
ジェインウェイがあっさり許可を出した事に眉を上げて驚いた。
「……本当に良いのか?
あれはテクノロジーバランスを根底から覆すものだ。
そして、この世界のミリタリーバランスすらもだ。
知れ渡れば破滅を呼ぶかもしれない」
「……だとしてもよ。
この世界の技術にミッシングピースは無かったのだから、
いずれは作られるものなのよ。
そして、それは比較的早い段階にやってくるかもしれない。
トゥヴォックもこれには同意見だったわ。
なら、先にその技術を知っておく必要がある」
「……あなたがそうまで言うのならば、間違いは無いだろう。
良いだろう。完成までは暫く時間を貰うが、出来次第順次換装させて行く。
それで良いな?」
「えぇ」
ジェインウェイの表情からは普段の笑顔は無かった。
とても真剣な表情の彼女を見て、
セブンはこの決断が彼女にとっても博打なのだと理解した。
それでもそれに賭けるという意志を汲み取った彼女は、再び作業に没頭した。
所は変わり、薄暗い室内に幾つものディスプレイが張り巡らされた壁。
その中央に座るはブルーコスモスの強硬派として知られるユーラシアの王、
ジブリールグループ頭首、ロード・ジブリールだ。
彼が見ている壁のディスプレイは、
普段であれば個別に様々な情報が表示されているものだが、
この日は一人の人物を大きく映し出していた。
「……何だい、君から通信を送ってくるとは珍しいこともあるものだね、ロード」
「なぁに、君と私の仲だ。そんなことを気にする事はないではないか。ムル」
5/19
彼の相手はムルタ・アズラエル。ブルーコスモスの若き盟主だ。
この日、この部屋では世界を動かすトップツーが滅多にしない通信をしていた。
ロード・ジブリールはユーラシア連邦の軍需産業を牛耳るトップであり、
アクタイオン・インダストリーへの議決権も
アズラエルに次ぐ規模を誇る連合の盟主の1人だ。
彼がブルーコスモスを率いていても全く不思議ではない程度には、
アズラエルに見劣りはしない。
彼自身も自分の実力に自負があるため、
普段であれば彼から話しかける事は滅多に無いが、
この日は珍しく彼から連絡を入れた。
「よく言うよ。聞いているよ?
……君の所で色々と興味深い物を作っているってことをね。
僕等の技術を君達は何の承諾も無しに盗用している
……とでも言った方が良いかな?」
アズラエルはテレビ電話越しに不敵な笑みを投げかける。
ジブリールは彼の直球発言に不快感を滲ませながらも押し殺した。
「……盗用は過ぎる言葉だ。
忘れている様だが、アクタイオンは君の独占企業ではないのでね。
何より我々は連合だ。仲間同士で融通し合うのに理由はいるのかな?」
「フフフ、そうですねぇ。過ぎた言葉は訂正しよう。
君等が勝手に開発したアレは……何のつもりかな?
僕は別に君等が開発すること自体を否定はしないよ。
でも、飽くまでこれはビジネスだ。
これまでもそうであった様に、
ルールには従ってもらわないと困るんだよね」
双方はこれまで同盟の契りを交わしても、
商取引については厳密な法的根拠に則り取引していた。
少なくともこれまでは技術を利用するにも、
クロスライセンスを締結する等の相応の見返りが存在した。
だが、ジブリールはこの件に関しては全くの承諾も得ずの行動だったのだ。
その為アズラエルはアクタイオンとの関係を見直し、
わざわざ自社でメーカーを新設して技術開発拠点を移す動きをせざるを得なかった。
ジブリールからすれば唐突なアズラエルの動きに憤慨したのは勿論、
元々大西洋連邦にMS開発で技術的に開きの合ったユーラシアが
キャッチアップするための機会と捉えていただけに、
その目論見が大きく外れようとしている現状に不満があった。
6/19
「……手続きを踏まなかったという非は詫びよう。
必要な条件が有るというのであれば、こちらもそれを受け入れる用意が有る。
ただ、戦術兵器の技術レベル向上に我々の貢献もあることを忘れないで欲しいね。
大西洋連邦は確かに資金や技術面で大きくリードしている。
だが、トータルの開発力では我々が上だ。その我々の技術支援無しに、
GAT-Xの計画が進まないということも理解して欲しいね」
アズラエルからすれば、この彼の言葉は聞き捨てならなかった。
GAT-X開発計画は基本的に大西洋連邦が主導した計画だ。
しかも、ユーラシアはこれら計画への貢献はおろか、
殆どの開発資金をアズラエル率いる大西洋連邦が主導し、
モルゲンレーテの技術協力の末に実現したのだ。
彼らはその成果を勝手に盗用し、裏のGAT-X計画を主導したに過ぎない。
ただ、彼の言う通り、
彼らの個々の技術力はこちらよりも高いことは認めざるを得ない。
盗用されたとはいえ、
オリジナルのこちらよりも高性能なコピーモデルを開発出来る開発力は、
ユーラシアが口だけの勢力ではない証でもあるのだ。
それでも彼に言われっぱなしで居る程お人好しのアズラエルではない。
「笑わせないで欲しいですね。
ライセンスを受けて生産したいというなら、
その申し出を受け入れても良いでしょう。
しかし、クロスライセンス等といった話には応じられませんよ。
あれらは元々我々の開発した物です。
あなた方の作った物はそれの改案程度のもの。
根拠技術の正式利用無しに成立し得ません」
「……光波防御シールドのライセンスでもかな」
彼の言う光波防御シールドとは、
宇宙空間上で連合唯一の基地であるアルテミスに装備されたシールドシステムだ。
大規模なエネルギーをプレート状に出力する事で形成するエネルギーシールドは、
現在までZAFTの攻撃をはねのけ続けている鉄壁の守りとして知られている。
通称「アルテミスの傘」と呼ばれるシールドのお陰で、
ユーラシアはZAFTのより深い動きを知る事が出来ている。
「……虎の子のライセンスを提示して欲するというんです。
真意をおっしゃいなさいな」
「OSだ。VSTの開発したMS用OSを、
……こちらでも利用出来る様ライセンスして欲しい」
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彼の表情からは屈辱の色が伺える。
普段の偉そうな彼からすれば当然だが、
その彼がこうまで低姿勢に出てくる案件がまさかOSだったとは、
流石のアズラエルも驚いていた。
だが確かに、あの盗用された情報にはあのOSは含まれていない。
あのOS自体はVSTが開発後期のヘリオポリスの工場施設へ来るまで、
存在すらしなかったものなのだから。
「(……成る程)ほぉ、あなた方の技術力は、
我々をトータルで上回るんではなかったのですか?」
「……ソフトウェア開発力は不本意だが君等の方が上だと認める。
恥を忍んで頼むのだ。どうか、我々にOSをライセンスする様話をつけて欲しい。
VSTは君との独占契約故、君と話し合って欲しいの一点張りなのだ」
ここでまさかVSTの信頼度の高さが証明されるとは思わなかった。
アズラエルとしては内心笑いが込み上げて仕方なかった。
……あの小さな会社がジブリール相手にすらも上手く立ち回ってみせたのだ。
チャコティの様な有能な経営者は世の中にそうは見つからないだろう。
少なくとも、この目前に映っている男よりは数段上手だという証明だ。
「……良いでしょう。光波防御シールド技術の移転を確認し、
GAT-Xへのライセンス料の支払いを確認した段階で、
VST製OSのライセンス供与の話を進める事を約束しましょう」
「なんだと、シールドとOSは同時履行でなければ納得できん!」
「……なら、この話は無かったことにしましょうか?」
この瞬間、完全にアズラエルに軍配が上がった。
ジブリールは怒りをこらえつつ、渋々その話を受け入れることにした。
アズラエルはテレビ会議を終了すると秘密の部屋を出た。
部屋自体は自室の隣にあるのだが、普段は本棚の裏に入口は隠れている。
彼は部屋のカウチにどっしりと腰をおろすと、テーブルの上のポットに手を伸ばし、
一緒に置かれたグラスに水を注いだ。
312 :
通常の名無しさんの3倍:2013/03/18(月) 00:13:59.10 ID:C1C0NjHk
支援砲撃斉射三連!
8/19
8分目まで注いだグラスを手に持つと、
注がれた水のひんやりとした水温が伝わってくる。
彼はそれを一飲みに飲み干し大きく息を吐いた。
そして、ズボンのポケットに入れていた携帯端末を取り出すと、
入って来ている情報に目を通した。
「(……ほぉ、VSTインダストリーが日本に拠点を移す予定ですか。
……彼らも我々と目論みは同じようですね。
精密加工技術に優れた彼らをこちらに引き入れなくては、
次の一手が打てない……彼らの意図はどこまで?
そして、ジブリールがユーラシアで開発した新型に、
VSTのOSが渡るのは面白くない話ですが、
彼らはそれを読んで我々にお鉢を回した。
全ては我々の采配に委ねると見せかけて、彼らは得をするわけです。
どこで彼らは馬脚を現すのでしょうか。
このまま何も無い事を祈りたいくらいですけどねぇ)」
そこへ秘書が入って来た。
「社長、我が社の工場での生産が開始されました。
来月までに30機生産される運びです」
「……ようやくですか。わかりました。
すぐ視察に向かいます。用意して下さい」
「はい!」
彼は立ち上り秘書からジャケットを受け取ると羽織り、部屋を出て行った。
アークエンジェルは最終稼働準備に入っていた。
魚雷発射管は前後に二門ずつ、合計四門が設置された。
この発射管は水中専用というわけではなく、
装填する弾頭を変える事で空中や宇宙でも使用可能だ。
「アークエンジェル、発進!目標、インド連邦ムンバイ!」
アークエンジェルが浮上する。
ディエゴガルシア湾を飛び越えたところで徐々に降下させると着水した。
9/19
ジェインウェイは一気にマラッカ海峡を目指すのではなく、
先にインド連邦との接触を試みる事にした。
インド連邦軍との同盟までは行かなくとも、
中立が確約されればそれだけでもかなりの安全が確保出来る。
また、この海域でのスーパーパワーであるインド連邦が、
今後のキーパーソンとなると確信していた。
「インド連邦への航海とは、どういうことですか?」
カガリの質問にジェインウェイは穏やかに答える。
「あなたならどういう道があると考えるかしら?」
「私なら表向きの中立の確約だけでも後顧の憂いを断てると考えるが、
インドがそれを飲むとも思えない。赤道連合は足並みが揃っているわけではない。
ただ一国が勝手に決めた事を赤道連合が履行するとは思えないが」
カガリの指摘は的を得ている。
インド一国の決定が赤道連合の意志になるとは限らない。
場合によってはインドの脱退すらもあり得ることなのだ。
だが、その懸念は有り得ない。
「インドが決めた事を他の国が守るとは限らないことは同意よ。
でもね、この赤道連合がどのような力を根拠に成立しているかは、
分かっているかしら?」
「……どのような力?……インドの軍事力……ということか?」
「そうよ。でもそれだけじゃない。
インドは赤道連合締約国の文化的母体でもあるの。
彼らは全て零細な国家ではあるけど、宗教的、
文化的な同質性においてインドはそう遠くない親戚よ。
中華帝国主義に飲み込まれた日本という拠り所を失った彼らが選べる選択肢は、
力の上でもインド連邦以外に存在しないのよ。」
カガリは彼女の言葉に思わず俯いた。
「……オーブも同じだ。母国である日本が、
……進む道を誤ったことを切っ掛けとして立ち上がったのが5氏族」
「そうね。東アジアの軍事バランスが崩壊した結果として、
周囲の国家はその伝統的立ち位置を変える他に無かった。
唯一インドのみがその力をもって独立を維持した事は大きな事だったのよ。
表向きの平等とは裏腹にインドの持つ覇権は大きな物よ。
それでもインドはその力を無闇に行使したりはしない。
彼らは先程も言った通り、この赤道連合締約国の歴史的文化的な母体でもあるの。
それが成立するのは彼らが力に対して自制的であるからこそともいえるわね。
315 :
通常の名無しさんの3倍:2013/03/18(月) 00:22:54.07 ID:C1C0NjHk
反航射撃!
10/19
だけど、インドは必要であれば行動出来るオプションを持っているのよ。
彼らはいわば眠れる象よ。大人しそうに見えて、実はただ存在するだけでも危険な存在。
倒れかかられても困るし、暴走されても厄介よ。
だから、彼らはバランスを維持するためには要求を飲まざるを得ない」
「では、あなたはインドの加護を得ることが出来ると考えているわけだな?」
「そう考えてもらって良いわ。勿論、それを誘引する手立ても考えている。
この会談は成功させなければならない話ね」
カガリはジェインウェイが一心不乱にアラスカを目指さないのを不思議に思っていた。
その気になれば、アークエンジェルはマラッカ越えをせずとも越える手立てはあるだろう。
なのにも関わらずわざと寄り道をしている様に感じていた。
その頃、地球軌道上では新しい動きがあった。
地球、ビクトリア上空軌道上の月軍旗艦ハルバートン艦上では、
彼らの作戦行動の最後の仕上げが行われようとしていたのだ。
『Holy Lance(ホーリーランス)、直上射程に入りました。
目標、ビクトリア周囲マーカー全16ポイント』
通信士が読み上げる内容を聞きながら、
トゥヴォックは地図上のビクトリア周辺に光る幾つかのポイントを見ていた。
この光は全てニュートロン・ジャマーの光だ。
地上から核分裂反応を消し去った犯人であり、電波撹乱の元となったものだ。
「Holy Lance投下!」
彼の命令と共にホーリーランスが投下された。
それらは天より投げ放たれた文字通りの槍として、
地上へ加速を付けて投下される。
そして、ものの数分もせずに地中深く突き刺さった。
『目標、消失を確認!Holy Lance投下、成功しました!』
周囲から歓声が沸き上がる。
ようやく地上に埋め込まれた忌々しい存在が取り払われた瞬間に立ち会えたのだ。
クルー達は皆自分の事の様に喜んでいた。
しかし、トゥヴォックはこれから起こることに気を引き締めていた。
この動きは間違いなくZAFTや他の連合も知る事となるだろう。
その時に月軍の立場は様々な意味で今後を左右する事になるからだ。
「ハルバートンはこれより撤収する。全軍撤収!」
彼はプトレマイオスへの帰路についた。
……というわけで、10分割目です。本日はこの辺で切り上げて残りを明日夜にでも投下します。
皆様、支援射撃有り難うございました。また明日の夜にお会いしましょう。
317 :
通常の名無しさんの3倍:2013/03/18(月) 00:32:22.76 ID:C1C0NjHk
お疲れ様でした。後半パートも楽しみにしています。お休みなさい。
続きを投下します。
11/19
ヴォイジャーの医療室では上級クルーが集まっていた。
彼らは室内中央のフォースフィールドに囲まれた集中治療室の前に立っていた。
その視線の先には横たわる生命体の姿がある。
ドクターがその生命体の首にハイポスプレーを注射した。
すると、次第に意識を取り戻し始めた。
「……私は……ここは……どこ!?」
生命体は鯨のDNAを持ってはいるが、その姿そのものはヒューマノイドだ。
性別は雌で、声も女性の人間の声と同じ様だ。
それもそのはずで、彼女のDNAは鯨のDNAを引き継ぎつつも、
ほ乳類ヒューマノイドとしての特徴を進化させた生命体なのだ。
「……落ち着いてくれたまえ、私は君を治療したドクターだ。
君は数日前に難破していた船から救出され、このヴォイジャーへ収容されたんだ。
私達は君の敵ではない。詳しい状況を話してもらえないかな?」
ドクターが優しく話しかけると、彼女は彼の方を見て頷き話し始めた。
「……私はガーディより旅をしていた探査船、アーケ号のクルーをしていました、エリー。
私達の目的は起源星テュロンを探す旅でした。そして、ようやくその手掛かりを見つけ、
近くまで来ていた所でした」
彼女の話にチャコティが問い掛ける。
「私はチャコティ。この船はヴォイジャーという探査船だ。
我々は地球という星を母星に持っている。
君の言うテュロンとは、たぶん地球のことではないかと思うのだが」
「地球?」
「あぁ、我々のDNAと君のDNAには極めて特異な類似が見られる。
これはほぼ同じ星を起源に進化したと考えない限り説明が付かないのだ。
それを……君を治療する過程で確認して、そういう結論に至った」
12/19
チャコティの話を聞いた彼女は、どこか哀しげな表情をしていた。
彼女は静かにしばし考えてから口を開いた。
「………そうでしたか。では、あなた方はテュロン人ということですのね」
「あぁ、そうなるな。君達は地球を見つけてどうしようと思っていたんだ?」
その問いかけは、彼女からすればとても話し難い内容だった。
だが、自分達があらぬ誤解を受けるくらいであれば話す方が良いと判断した。
それでもその決断が正しい事なのかはわからない。
「……私達の記録では、大昔の災害によりテュロンを離れ、
長い恒星間移動の末にガーディへ辿り着きました。
私達にとっての6000万年以上の年月は、長い開発の歴史でした。
様々な技術開発の為に数世代を費やしてガーディをテラフォームし終えてからは、
暫く平和な時代を迎えたのですが、ガーディが謎の異星人からの攻撃を受ける様になり、
新たな土地を探さざるを得ない状況に陥ったのです」
「……それで、地球へ戻ろうと?」
「……はい。計算上は環境が復旧するには充分な時間が経過していました。
しかし、あなた方が居るとなると……移住は無理ですね」
彼女はようやく見つけた筈の起源の星の情報を得たのも束の間、
移住の希望が断たれたことを確認する様に語った。そして、項垂れる様に目を瞑った。
だが、それを見つめるチャコティの方は何やら考えているようだった。
「君を攻撃した異星人のことを聞きたい。何故攻撃を受ける様になったんだ?」
チャコティの問いは彼女からすると意外だった。
自分達が領土的野心を持っているかもしれないと考えられてもおかしくない話を、
彼はそのまま流すどころか、攻撃した異星人の事を問う。
彼らが味方になりたいと考えてくれているのであれば歓迎すべき事だが。
「……私は詳しい事は分かりませんが、彼らはバルカンを名乗り、
とても獰猛で強力な兵器を持っています。
特徴的なのは遮蔽技術を持っている事です。
彼らの艦船は見つけた時では遅く、あっという間に破壊されます」
「そのバルカンという種族とは、交渉した事はないのか?」
「星を明け渡す様最後通牒をしてきた事は知っています。
彼らは他の星系の人々の情報からすると、
居住可能な惑星を確保して転売する事をビジネスとする種族だと聞いています」
「……それは本当にバルカンという名なのか?」
「……はい」
13/19
チャコティもここまでハッキリと答えられては、
さすがに「バルカン」がやっていることを否定しようがなかった。
惑星の転売ビジネスというとんでもない所行を働くバルカン。
それはまるでロミュランだが、もしかしたら、
この世界ではロミュランがバルカンである可能性もあるのだ。
ただ、それが分かった所で問題は何ら解決しない。
それどころか、もしこの話が本当であるとすれば、
その危険なバルカンは既にこの地球に目星をつけているだろう。
ガーディ人がこの星へ向かっている事自体を掴んでいる以上、
これは動かし様の無い事実だ。
ここまで分かったからには早速対策を立てる他に無い。
クルー達には彼女の回復を待って詳しい情報を聞きながら対策を立てる様指示し、
ジェインウェイにも早急に知らせなくてはならなかった。
インドのムンバイ沖まで辿り着いたアークエンジェルは、インド連邦軍に囲まれていた。
唐突に現れたアークエンジェルに、インド連邦も引くわけにも行かず、
とりあえず出動したと言ったところだろうか。
「こちらはインド連邦軍、侵入する艦艇に告ぐ。所属と目的を述べよ」
相手側からの要求に答えたのはジェインウェイだ。
この交渉には艦橋で艦長席に座って応対することに決めていた。
『こちら地球連合軍第八艦隊所属アークエンジェル。
我々は貴国に補給と保護を求める』
この返答に困ったのはインド連邦だ。
まさか地球連合の艦艇が保護を求めるなど前代未聞であった。
この事例をどう対処するかで国際的な風当たりは大きく変わってしまう。
出来るならば何とか追い返したいというのが本音であるが、
政治的にも軍事的にも地球連合は上である。
かつての事例に照らし合わせれば、彼らは引きそうに無いだろう。
14/19
「我々は中立であり、地球連合とZAFTの戦闘には与しない事を旨とする。
早々に立ち去られる事を希望する。
それ以上の侵入は我が国への敵対行為と見なし、攻撃を開始するものとする」
『では、こういう事ではどうかしら。我々は故障した故に不時着した。
インド連邦は人道的見地から仕方なく保護することとした。
こちらに相応の見返りの用意は有るわ。どう?』
インド連邦側は数時間の時間を費やした末にこの提案を受け入れた。
アークエンジェルはそれが決まるとエンジン部で派手な爆発を起こした。
バランスを崩したアークエンジェルは、そのままなし崩し的に領海に侵入。
その後はインド海軍の誘導のもと、ムンバイ近くの軍港に誘導された。
アークエンジェルがムンバイに入ると、
政府要人がこぞってアークエンジェルのもとへやって来た。
連邦大統領であるサジーブ・チャヒルは、見事なターバンを頭に巻き、
伝統的衣装に身を包んでジェインウェイのもとへ現れた。
会談はアークエンジェル作戦室で行われ、
インド側は大統領の他に外務大臣と防衛大臣が列席、
アークエンジェル側はジェインウェイを中心に、
ラミアスとジュロットの他にカガリも同席した。
アークエンジェル側には男性の交渉人はこの場におらず、
書記としてサイ・アーガイルが部屋の隅で会談を記録している程度だ。
インド連邦側は女性ばかりの応対に驚いていたが、
なかなかの美人の集まりに鼻の下を伸ばしていた。
「いやぁ、お美しい皆様との交渉とは予想外でした。
初めまして、私はインド連邦大統領、サジーブ・チャヒルです。
この度は不慮の事故ということで、我々も人道を鑑み、
あなた方を保護する事を受け入れることにしました」
「有り難うございます、閣下。
私は地球連合軍第八艦隊大佐、シャノン・オドンネルです。
我が艦へようこそおいで下さいました。
貴国の配慮には大変感謝しております」
ジェインウェイの猫を被った様な見事な対応に、
最近彼女の振る舞いに見慣れたラミアスは、
改めて素直にジェインウェイの胆の座り方に感心していた。
正直な所は、このメンツに自分が居る場違い感に気が引ける思いでいっぱいだが、
大佐は笑顔でさも当然のごとく彼らを歓待し話しているのだ。
その時、相手側の外務大臣が大統領にひそひそと何やら耳打ちした。
大統領は頷くと口を開く。
「さて、単刀直入ですが、我々も危ない橋を渡る以上は、それ相応の見返りを要求します。
ついては連合の艦艇が備えるデータベースを、全てこちらへコピーさせる事を要求します」
15/19
この発言にラミアスは目をパチクリして驚く他に無かった。
いや、それよりももっと反応した人物が居る。
「おい、そんな横暴な提案があるか!」
カガリである。
彼女は瞬間湯沸かし器とでも言うべき早さで沸騰した。
彼女の反発にも大統領は動じるどころか、
鋭い眼差しでジェインウェイを見据えた。
「彼女は?」
「……申し訳有りません、閣下。彼女の非礼はお詫びしますわ。
ただ、私も彼女同様にその提案を受け入れる事は不可能と申し上げますわ。
我々が欲するのはあなた方の領海での安全な通行許可です。
その為に我々が用意出来る提案は限られていますわね」
「……その女はつまみ出せ。……そうでなければ会談は決裂ですよ。大佐」
彼は一歩も引かないと言った表情だ。
しかし、その程度で怯むジェインウェイではない。
「まぁ閣下、ここには女しか居ませんわ。
その発言、我々への侮辱と受け取って宜しいかしら?
我々はあなた方が協力して下さるならば、
相応の見返りを提供する事にやぶさかでは有りません。
支援を頂けるのであれば、それ相応に弾む事も可能でしょう。どうします?」
にこやかに語る彼女だが、目は全く笑っていない。
サジーブはさすがに大佐とつくだけある彼女の胆力に、
話題の方向性を変える事にした。
「……あなた方の艦艇であれば、
我々に庇護を求めずとも海峡を越える事は容易ではないか?
何故我々を巻き込もうとする。我々は知っての通り中立なのだ。
その我々に矛先を向ける行為は、アズラエル氏の差し金かね」
彼の発言は確かにアズラエルも考えそうなことではあるが、
これは彼の提案ではない。
飽くまでジェインウェイ個人の判断だ。故に間髪入れず彼女は答えた。
16/19
「いいえ。私は彼とは全く面識もありません。
だからその勘ぐりは当たりませんわ。
ただ、良い線は行っているわね。仰る通り、
あなた方に中立で居てもらおうなんて思っていないわ」
「……なんだと!?」
彼女の発言に一同が戦慄した。
インド側の防衛大臣は怒りの表情すら見せていた。
それを大統領は制止してジェインウェイの発言を待った。
「……続きを言って下さい」
「……どうも、閣下。
では……北はユーラシア連邦、東は東アジア共和国、
南は大洋州連合……どれも大国ですことね。
その中で赤道連合を率いるインドとしては、
彼らに一矢報いる戦力を欲していることは間違いない。
でも、問題は戦力を保持しても四面楚歌であるということ」
「……ぐぅ」
さも当然のごとくいうジェインウェイに大統領は何ら反論出来なかった。
苦い思いを噛み締めて我慢する。
「この戦争は表面的には地球連合諸国とZAFTの戦いよ。
でも、実際は同じものの戦いよ。先進諸国が敷いたレールの上を、
途上国が右往左往しながら犠牲になる。
そして破壊された土地が新たな取引の材料にされ、地域の力が消耗して行く。
最後に残るのはどちらも疲弊し切った奴隷の様な社会かしら」
彼女の話は唐突な中身だが、
実際にそのような方向で世界は動いているとも言える。
途上国の運命は先進国に振り回され続けて来た。
それを進行させたのは間違いなく戦争であり、
その結果として生じた連合やZAFTという大きな組織の存在だ。
だが、それを連合の軍人が語るのは真意が見えない。
「……大佐、何を仰りたいのです」
17/19
彼女は不敵に微笑む。
「簡単よ。一石を投じるのよ」
「一石を投じる?」
「えぇ。私は予言するわ。今後地球連合は優勢になって行く。
その中で権力闘争が始まるのは想像に難くない。
そして、それは新たな線引きの始まりよ。
始まりは何処かしら……連合の中で一番弱い場所がまず犠牲になる。
そして次は?……中立国と謳う地域がその立場を鮮明にする様迫られるでしょうね。
勿論、ZAFTに与していた地域は真っ先にその旗色を変えてくるでしょう」
彼女の言っている事は一理ある。
連合がアフリカで反転しつつある状況で、
物量に劣るZAFTが対応するのは容易ではない。
原理主義的なブルーコスモスが台頭しつつある連合が暴走するという予想もあったが、
このところの国際情勢の動きを見るにつけ、
それらの予想が破綻しつつあるのは事実だ。
それを踏まえてのこの彼女の自信たっぷりの発言だ。
時流に乗った人間の風とでも呼ぶべきだろうか。
彼は経験的にこのような人間を敵に回すのは得策ではないと理解していたが、
相手の目的が見えない事には対応のしようが無い。
ターバンで巻いた額に汗が蒸れるのを感じる。
「……むぅ。我々に何をしろというのだ」
「あなた方も連合に参加するのよ。
いいえ、地球連邦を作る……と言った方が良いかしら」
「地球連邦……?」
「赤道連合は全てマスドライバー設置に有利な地域の集まり。
あなた方次第で新しい組織では良いポジションを模索出来るでしょうね。
私が提案するのは、それに耐える戦力をあなた方も揃える事よ」
「揃えると言っても、どうやって」
「……貴方達が望むより先の物を提供するわ。
具体的にはモビルスーツの設計図を提供する。
OSもライセンスしましょう。それで軍事力を揃えて、
来るべき時に備える事。どう?」
18/19
大統領は彼女の話をにわかには信じられなかった。
ただ、彼女の提案する話は間違いなく彼らが欲している物である。
「……その連邦とやらは、何か根拠が有って言っているのかね。
我々は酔狂で軍事力を行使する様な国家ではない。
軍事力は飽くまで最終交渉手段だ。
それを曲げてまで危ない橋を渡れというのだ。根拠が欲しい所だな」
確かに彼の言う通りだった。
ジェインウェイもそこは用意していた。
「私の会社が現在日本のフジヤマ社に工場を集中させているの。
VSTインダストリー。もうすぐ稼働するそうよ。
生産が開始されれば、新型空間戦闘機が大量に開発される予定になっている。
モデルデザインはこちら。X-304フォールディング。どうぞ」
彼女はテーブルの上のパッドを操作すると、サジーブのもとへ渡した。
彼はパッドの映像をしげしげと見ていた。デザインは独特だが戦闘機には違いない。
「……あなた方の機密には違いないだろうが、
今更戦闘機がどうしたというのだね」
「……それが月産15機、二ヶ月で30機かしら。
これがモビルスーツだったら、脅威的な戦力よね」
彼女の話は確かにそうであったなら脅威であろう。
だが、ここに映っているものは戦闘機だ。
それなのに何故彼女はこれほどの自信を持って話すのだろうか。
彼には分かりかねた。
「……どういうことだ?」
「例えば、数ヶ月もしないうちに大西洋連邦が、
東アジアへ侵攻するとしたらどうかしら?」
「……仮定の議論か。良いだろう。
侵攻するならば同盟国のユーラシアが出てくるだろう。
そこでユーラシアと東アジアの連合が出来、大西洋連邦は孤立するだろうな」
19/19
「えぇ。そうなるかもしれない。
でも、日本が独立したならば……?」
「……有り得ん。たったの30機の戦闘機程度で何が出来る。
東アジア正規軍の大量の兵器を考えれば、
あっという間にやられて終わるだろ……、ん?
…まてよ……まさか、これはモビルスーツだというのか?」
彼女は思わせぶりな笑顔を見せた。
「……どうかしらね。答えは数ヶ月もしないうちに分かると思うわ。
その時にもしもあなた方が加勢したらどうなるかしら?
……上手くすれば大西洋連邦と同盟の上、
東アジアの軍事バランスも破壊出来、
長年の問題児である中国を堂々と叩けるわよ」
ジェインウェイの話は恐ろしい内容だった。
だが、彼女がその後示したデータはどれも否定しようの無いもので、
仮にその動きが有るとすれば、千載一遇のチャンスかもしれない。
その後、サジーブは一度持ち帰り提案を吟味すると答えて帰るが、
その数時間後には正式な回答が届いた。
それはジェインウェイの部隊に全面的に協力するというものだった。
第35話終了。36話へ続く。
次回は4月始めは年度始めで忙しいので、一ヶ月後の4月半ばくらいを予定しています。
落ち着いたらペースを早めて行けたらと思いますが、暫くはすみません。
インドの登場は原作には有りませんが、Voy-in-Seed的観点で進めております。
一応、色々と新しいものが登場してきますが、良い舞台装置となれば幸いです。
相変わらずの乙
しかし宇宙ではとんでもない事態がw
地球大丈夫かな
まさかCE世界が宇宙戦争に巻き込まれるのか
コーディますます涙目w
あれ、もうコーディネータ出番要らなくないか?
GJ!
なんかサイヤ人みたいなことしてるバルカンがキター!
そして相変わらず艦長の交渉力は悪魔級!
乙です!
交渉の準備は万端とは、さすがです!
プラントの連中はバルカンやほかの圧倒的に高度な文明を持つ異星人が現れて
地球に何らかの形で交渉してきても、自分たちは進化した人類なんていう
馬鹿げたプライドとそれに固執した主張をしそうだな
今更な話だけど
もしプラント自体が、
例えば「全くしがらみの無い世界(の同じ宙域)」に転位…」したとして
転位先の世界で紳士的な振る舞い…とかできるだろうか?
実は某「交差する世界」の同じラグランジュ点に転移、そして…
を妄想してるんだが、某ローリダと似た様なマネしか出来ん未来しか見えない…w
昔CCAクロススレだかで見た小ネタで
カナーバ議長のプラントがハマーン戦争直後の宇宙世紀に転移すれば上手く行くんじゃないか、
ってのがあった気がする
日和見全盛期の連邦と穏健時代のプラントという構図
そもそもカナーバ政権が続けばCEでも安定してたんじゃないですかね
その時期だと
ライバルに恋人奪われた意趣返しをしたい盛りの赤い人という
宇宙世紀最大の不安要素があるぞ
337 :
種&XクロスSS某作者:2013/04/05(金) 18:49:31.60 ID:ApjCMh2F
一応本スレでも書いたけれど念の為。
プロバイダーが規制によく引っ掛かる。
おまけに自分のトリップ忘れてしまった…。3年以上もブランク開けばそうなるものだが
だが、自分で止めてしまった時計の針は動かさなければな…動かしたいんだが…新しいトリで始めても良い物なのか?
それともこっちの統合スレの方に投下した方がいいのか?
おお、またクロスSSを書くのですか
あなたの描く話がまた読めるならかまわないので自分のやりやすいようにどうぞ
待ってます!
支援
>>332 「交差する世界」の同じラグランジュ点に転移〜
…「自分達より弱くて占領可能」なら確実にプラント右寄り連中の
「積極的自衛権」&「積極的生存圏拡大」を掲げて…だろうな…
スタトレ世界は色々凄いけど、何よりすごいのはやっぱ医療技術。
ピーッとスキャンしてプシューで完了。
スパロボUXって世界観ベースが種00で前日談があるのは原作終了後の種00ダンクーガノヴァだけ
人間だけの戦争は種×001stクロス→種死×002ndクロスで妄想のし甲斐があるんだよなあ
でも種と00の世界観統合が相当無理あるわ、当然といえば当然だが
ストーリーも種死×002ndはまあ連合アロウズVSザフト、CBカタロンでギリギリまとまる気がするが
種×001stストーリー統合なんてプロット考えるだけで頭がショートしそう
ガンダムシリーズでジェインウェイ艦長と張り合えそうな交渉能力ありそうなキャラってどれくらいいるだろうか?
直接の描写はないものの新連邦と革命軍の和平交渉を地道に進めてると
思われるジャミルとランスローはどうだろうか。
あるいは戦後のアメリアの主導権を握って月と順調にやってるリリ様とか。
ユニコーン6巻のフロンタルとの問答に悪魔艦長が介入。
量産牛先生来ない…(泣
皆様、大変遅くなりました。
仕事が忙しくて殆ど編集時間が取れてないもので、結局連休までずれ込みました。
楽しみに待って下さっていた方には申し訳有りませんが、第36話を投下します。
投下は連休中に少しずつ分けて上げてきますので、宜しくお願いします。
1/21
第36話「初会談」
インドに寄港したアークエンジェルは、
特別編成の協力グループをインド政府の開発チームに派遣し、
共同開発プロジェクトがスタートした。
時間にして一週間程度という短期間の共同プロジェクトだが、
技術的検証をする時間がこちら側に無い以上、ジェインウェイはインド側の要請を押し切った。
プロジェクトチームのリーダーはジュロット少尉を中心に編成し、
OSはセブンの開発したプログラム基盤を元に、
インド政府が進めていた国産システム計画を取り込んで構築する「ヴェーダ」プロジェクトが立ち上がり、
インド側の優秀なプログラマー数人と共に共同開発される。
この計画の執行役はイチェブとヤマトに任せる事にした。
この計画の進行で一番驚いていたのはインド側であった。
連合はこれまでインドやいわゆる「第三世界」に対して、技術を開示する事を頑なに拒絶して来た。
出される物はモンキーモデルとでも言うべき劣化コピーであり、
最先端のオリジナルの開発に協力するなど聞いた事が無かった。
それだけにこの計画に賭けるインドの本気度は違った。
インド政府は国内主要企業5社のトップ技術者を集め、
ジェインウェイが示した開発プランに沿って開発を進めさせた。
ジェインウェイはこの計画でインド軍の軍事力を大幅に引き上げる事を計画していた。
戦闘機で3世代は立ち後れたインド軍は、
日本を取り込む事で最先端の開発力を保持する東アジア共和国に、質や両共に見劣りしていた。
それを一気に5世代上げるというのである。つまり、東アジアを二世代飛び越えるというのだ。
当初はインド側も眉唾物の様に受け止めていたが、ジェインウェイは具体的な設計計画を披露し、
VSTインダストリー製次世代型支援戦闘機開発計画「コスモグラスパー」をベースにした、
インド政府向け改良プランを提示したのだ。
あら、あっさり書き込まれた。アクセス規制されていたもので、暫くだめでした。
一応、避難所の方にも先日どうしたものかと書き込んだりしたのですが、
色々と対策を考えている間に、「もう一度やったら…?」と駄目元でやったらあっさり。
とりあえず、今後は規制があったら放送コミュニティの方に一時避難で書き込んだりします。
→
ttp://com.nicovideo.jp/community/co1722789 あと、実際に制作も遅れているので、しばし月一でやり、ストックたまったら回数増やします。
2/21
コスモグラスパーは連合による最先端の開発プロジェクトで、
計画自体は現段階では中止されたという噂も囁かれているが、インドからすれば最先端の技術に変わりない。
それを無償で改良まで施して提供すると言い、現物の設計書まで提示した。
そこには表向きに公表されていた技術情報以上の改良計画が出されており、
インドの開発資金負担を軽減する為の様々なコストダウン案を提示しながら性能を上げるという離れ業をやっていた。
こうして出来上がった戦闘機はほぼ完全に一新され、コスモグラスパーとは誰にも分からないものとなっていた。
そして、名付けれた名前が「ラタ」である。
ラタ型コスモグラスパーは、カーボンドの惑星内用コストダウンタイプ「カーボンド-LC」が採用された。
このカーボンド-LCはインドのみで生産され、インド国内でのみ使用するライセンスで生産が許可されている。
ラタの基本性能はM5のスピードと垂直離着陸機能、可変翼、そしてビーム兵器標準搭載にある。
生産コストは現行のインド政府軍が生産している標準的な戦闘機と同等の値段のため、
順次リプレースする形で難無く刷新可能だ。インド政府は勿論現行機の生産を中止し、
全てラタに生産設備を移行する決断をした。
一週間後の夜、ジェインウェイはインド政府から招待を受けていた。
それは地下深くに位置するインド政府の極秘開発工場だ。
案内するのは大統領自らであった。
サジーブは数人の技術者を随行させながら、
ジェインウェイを地下深くの彼らの最重要プラントに案内していたのだ。
「……データでは拝見しておりましたが、
これほどのプラントをお持ちだとは、私も思っておりませんでしたわ」
地下とはいえ、天井までの高さは30mを越えているだろう。
大きなホールは酸化処理後のアルミの様な白濁したメタルカラーで覆われており、
そこをライン状に等間隔で壁に仕込まれた照明と、
天井からの照明で昼間の様に明るく清潔な印象の空間になっている。
何よりここへ来るまでは幾つものクリーンルームを通っての防塵設計で、
最先端の機械技術で製造する上では欠かせないプロセスを経てのこの場所だ。
「……このプラントも、作る物が駄目では宝の持ち腐れでした。しかし今は違う。
それもこれもあなたのお陰です。本日はあなたに最初にご覧頂きたかった。
これが我々の新しい剣(つるぎ)です」
3/21
サジーブが指差した。
そこには白い空間に対立する様に黒いカラーのロボットの姿があった。
いや、この世界流に言うならばモビルスーツと呼ぶべきか……それは、
インド軍の開発したモックアップの様なものだった。
シャトルのコンピューターと、
これまでの戦闘データの蓄積からの改善点を組み込んで作り出したこの機体は、
「ヴィマナ」と呼ばれている。
ベース機はダガーだが、フェイスデザインは全く新しいものを採用し、
コックピットは専用フルフェイスメットを利用した全天球表示を実現している。
掛けているコストはダガーと同等だが、基本性能ではこちらが上になる。
ストライカーパッケージは作成されない代わりに、
同時に開発されるラタをサブフライトシステムとしてドッキング出来る。
「……実際に見てみると、やっぱり迫力が違いますわね」
「そうです。本当に。これが我々の物だと思うと安心感すら受けますが、
まだこれは模造品にすぎません。
ただ、光造形技術で形成させたモックを元に生産が開始されるまで、
一ヶ月も有れば充分整います。我々にはそれが可能です」
彼は自信たっぷりに言った。
実際彼の言う通り、インドにはそれに見合うだけの技術力があると彼女も踏んでいたからこそ、
この計画を振ったのだ。これが出来ない様では最初からこのような話はしない。
「さすがですわ閣下。だけど、量産ベースでの生産は頑張り過ぎないのが賢明ですわね。
少なくともインドに力があると思わせる必要は……ぎりぎりまで取っておくべきでしょうね」
張り切っている所をすまないと思いつつ、彼女は苦言を呈すことは躊躇わなかった。
インドが実際に力を持つ為には現実的に進んでもらわなくては困るのだ。
今後彼らの国内にいるスパイが、
何らかの形で連合やザフト側に情報を流すだろうことは想像に難くない。
それはサイバー空間上のフィルタリングはシャトルから全て制御出来るが、
人伝(ひとづて)に伝わる物まではどうしようもないのだ。
それで出してくる挑発にほいほい乗って貰われては計画が水泡に帰する。
しかし、この点でもインドは合格点を出してくれる。
彼らの歴史がそれを証明している。
第二次大戦以降のインドの対応は現実主義であり、等身大の自分を自覚している。
彼らは自分自身を正しく把握していたからこそ、
第三次大戦以降も国力を順調に伸ばして来たのだ。
4/21
「仰る通り。我々には無理を出来る余裕すらない。
出来る限り我々が表舞台に立たずに済むのであれば、それが幸いというものでしょう。
しかし、どこまでそれが維持出来るのかは……難しい舵取りです。
まぁ、やれるだけやるまでですな」
サジーブの言葉を聞き頷くジェインウェイ。
彼らが作り上げた光造形によるモックアップは、
彼女にとっても重要な一里塚というべきものであった。
アークエンジェルのクルー達は、通常業務以外はこの一週間久々の休暇扱いだった。
船の外には出られないが、インド政府の計らいで通販という形で商品を入手する事も出来る。
民間人についても、アラスカまでは守秘義務の関係上下船させる事は出来ないが、
彼らも同様の処置がとられた。
食堂では久々に加藤ゼミのメンバーが揃う事となった。
「ちょっと、見た?給料凄かったよね。
私、バジルール大尉から明細渡されてびっくりしたわ」
ミリアリアは食事をとりながら一同に話しかける。
その話を聞いて彼らも同様の感想に至ったようで、皆が思い思いに頷いた。
カズイが続く。
「僕なんて殆ど活躍していないのに、……あの額って……僕等が一般的に稼ぐっていう、
生涯賃金の三分の一は有ったよね。……なんていうか、軍って凄いんだね」
彼自身が言った通り、
ここに居るメンバー達は少なくとも「それくらい」の額は支給されていたのだ。
「いやいや、たぶん、俺達……というか、
このアークエンジェルがそれだけ特別だって事なんだろう。
俺の知る範囲では、軍の給料はそんなに高くない。
だけど、アークエンジェルは既に連合でも特別な存在なんだろう。
じゃなかったら、こんな金は出て来ないよ」
サイは実際に給与処理に携わった側だ。
その彼の立場上「本当の事」は言えないが、
この給料が普通の給料とは違うということは話せる範囲だと考えたのだ。
彼が見て来たものは、ジェインウェイとアズラエル理事との初のテレビ会談だった。
秘書として同席した彼は、ジェインウェイの他、
ジュロットとラミアスが座る応接椅子の隣に机とPCを置いて居合わせた。
5/21
「……これはこれは、お初にお目にかかります。私がムルタ・アズラエルです。
皆さんの活躍、大変心強く思っております。そして、この度の事故につきましては、
ご無事でこうしてお話し出来る事を幸いに思っております」
スクリーンごしのアズラエルは、ゆったりと深く椅子に背を沈めた格好で映っていた。
サイ自身は写真でちらりとは見知っていたが、改めて動画で実際に見たいわゆる「盟主」の姿は、
若いながらに落ち着いた雰囲気とオーラの様なものが感じられた。
対する彼の上司である大佐の方もまた、アズラエルに負けず劣らず堂々と応接椅子に深く背を沈め、
足を組み手をひざの上に置いて笑顔で話しかける。そこには普段以上の貫禄があった。
「初めまして、理事。あぁ、ここでは……そうねぇ、話も話ですし、
キャスリーン・ジェインウェイとしてお話させて頂いて宜しいかしら?
ここに居る皆さんは、私の会社の秘書のジュロット、ラミアス、
そしてアーガイルの3名です。宜しいですか?」
彼女の提案に満面の笑みを浮かべてアズラエルが同意する。
彼は彼女の「商談」を受ける事にしたのだ。
アズラエルから話かける。
「……まずは、最初の一報を聴いたときは驚きました。
あなた方がそちらにいらっしゃるとは思わず。
私の方でも手は打っているつもりですが、お恥ずかしい話、
我が国の産業の立ち上がりにはなかなか時間が要りましてね。
火がついてしまえば早いのですが、
こちらとしても先日ようやく立ち上がったばかりという始末。
失態の連続をあなた方に負わせる結果となったことを素直にお詫びしたい。
……申し訳有りません」
アズラエルは礼をして謝罪した。
それを見てサイは勿論、ラミアスも呆気に取られていたが、
ジェインウェイとジュロットはそれに動じずに冷静に礼を返しているのを見て、
この二人の落ち着きぶりの凄さにまた圧倒された。
6/21
「理事、何事も不測の事態です。満足に準備が出来ないのはお互い様。
ただ、そう仰って頂けるのでしたら、頼みを聞いて下さいませんか?」
「えぇ、構いません。むしろ望む所です」
「では、私は社員一同を始めとした協力者達に給与を支払いたいところですが、
なにぶんこうした境遇故に民間人として行使することに制限があります。
そこで、理事の方から働きかけて頂き、
彼らに我々が提示する給与額を満額支給して頂きたいと思うのですが、
それは可能でしょうか。……勿論、私が提示する要求通りでなければ、
我々にも考えが有ると申し添えての話ですが」
アズラエルはジェインウェイが穏やかかな笑顔を向けつつも目が笑っていない事は勿論、
自分をこれほど堂々と見据えて射すくめる人物に初めて出会った。
自分の父親ですら、彼からすればもはや越えるべき対象ではなくなったと感じていて、
負けるのはコーディネイターとの先天的能力差くらいと考えていただけに、
彼女のある種年齢相応の威風も漂う表情に、自分の中で久々に心躍る物を感じていた。
「良いでしょう。世間一般に言う工業王の名に恥じない程度にはやらせて頂きますよ。
それに我々も御社との取引では大変美味しい思いをさせて頂いてます。
これからも末永い協力関係を約束して頂けるのでしたら、私に異存は有りません」
「我々との取引?」
「あぁ、ご存知有りませんでしたか。これは失礼しました。
あなたが不在中に御社の副社長と直接取引させて頂きましてね。良い商売になりました。
お陰で我が社は始まって以来の歴史的増益を記録した程ですよ。本当に有り難い事です」
「それはまぁ、左様でしたか。存じ上げず申し訳有りません。
でも、そう言う事でしたら、理事とは良いお付き合いが出来そうですわね」
ジェインウェイの笑顔の答えに、アズラエルも笑顔で応じる。
「それはもう。何でも仰って頂いて結構ですよ」
「……それを聞いて安心しました。
彼らへ強(し)いたこれまでの不自由に沿うだけの厚さを……この会見では望んでおりましたので、
私としても肩の荷が下りましたわ。理事、本当に有り難うございます。期待させて頂きますわ。
さて、本題に参りましょうか?」
「ほほぉ、本題……があるのですか。いいですよ」
「……既にご承知ではありましょうが、我々はアフリカの連合勢力を構築し直しました。
ザフトとの戦闘状況は今後も続きつつアラスカを目指す事となりますが、
そろそろ勢力バランスの再構築も必要と考えます。
この中で問題となるのは、大洋州連合及び東アジア共和国との関係です」
7/21
アズラエルは来たかと内心思っていた。
VSTが既に活発に投資を振り向けている事案を考えれば、
彼らが何を狙っているのかは大方見当はついていた。
実際問題、自分自身でも同じ事を考えていただけに、彼女の提案自体に異存は無い。
だが、この計画が彼女の発案であるのだとしたら、
彼女は現在の状況が起こる相当前に、この状況を予見していたと考える事も出来る。
しかし、そんな事が可能なのだろうか。
いくら自分の力に絶対の自信を持っていたとしても、
これを自分で実行してやり遂げるのは相当の難度のはずだ。
「あなたの提案は我々も同意します。
仰りたい事は大体理解しているつもりですよ。ですが、一つ疑問があります」
「どうぞ」
「あなたはこの話をいつの時点で考えられたのです?
……少なくともあなたは会社と連絡する術は無い。
であるにもかかわらず、副社長のチャコティ氏は、
まるで決まっていたかの様にブレない動きを見せている。
そして、呼応する様にあなた方の動きは同期している。
こんなこと、可能なのですかねぇ?」
アズラエルからすれば、このような質問など本来ならば愚問だと考える方だった。
しかし、彼らには例え愚問であろうと聞かずにはおられない何かがあった。
これまでとは全く違うタイプの動き方に、洗練された行動力。そして、実行力。
彼らを知る為には例え無意味な事であろうと、一つでも多く知っておく必要があった。
それに対しジェインウェイは、彼の問い掛けに動じる事も無く淡々と答えた。
「可能かどうかで言えば、例え計画していたとしても不可能でしょう。
あなたが仰る通りなのであるとすれば、
それは我が社の社員がとても優秀に判断し行動した結果だと考えます。
各自が最高の結果を出す事を旨とする我が社の社風からすれば、
当然の判断の積み重ねであったと言うべきでしょうか」
アズラエルには彼女の言葉は嘘には聴こえなかった。
少なくとも彼自身の知る範囲では、嘘をつく者の言い様では無かった。
最高の結果を出そうと考えた結果として結論が似るということは有り得なくはない。
第一、彼らはOSのソースコードを全部社長に預ける程忠実に働いていた。
彼女と彼らの間には、彼女の言う通りの信頼関係があるものとして考えられた結果と見た方が、
この状況を説明するには妥当な様に思える。
……それでも彼には何か引っかかるものがあった。
8/21
「……そうですかぁ。良い社員をお持ちだ。
ところで、まだお話ししていませんでしたが、あなたに昇進のお話が来ています。
あなたには正式に月司令部総司令の辞令が出ています。
亡くなられたハルバートン氏の後を継ぐ形で第八艦隊の司令官になって頂く他、
月面連合艦隊の総司令としても働いてもらいます。
また、北アフリカのZAFTを攻略した功績と、
南北アフリカの連合を統一した功績から准将への昇格が決まりました。
おめでとうございます」
唐突な話だが、周りの者達はその話を聞いて驚くと共にジェインウェイを祝福した。
彼女は半ば呆然としていたが、喜ぶ周囲に頷き応じた。
「私が准将ですか。理事、有り難いお話ですが、
そうなると色々と私の肩に掛かる負担も重くなるというもの。
その辺のサポートは期待して宜しいのですか」
彼女の不安そうな表情に、アズラエルも先程まで考えていた疑問を止める事にした。
彼女は軍を嫌になって辞めた人間であり、
その辞めた理由も軍の不祥事の責任転嫁の産物であった。
そんな彼女がこれほどの事を計画的に進めるなんてことは愚問であった。
彼は笑顔で答える。
「勿論、私が出来る事でしたら何でも致しましょう。
貴女は自信を持ってご自分の職責を果たして頂いたら良いですし、
その上で起こる障害は私が責任を持ってお守りしますよ」
「……それを聞いて、心強く思います。ただ、肩書きが増えても、
アラスカまでが私の責任の範囲との条件で引き受けています。
それについては譲れない一線ですわ」
アズラエルは彼女のこの言葉を聞いて、より一層先程の結論の正しさを実感した。
彼女は軍と距離を置きたがっている。これまでの彼女の行動は実力と運が味方をしたのだろう。
それでもその実力は換え難いものであることは間違いないが。
その後の話し合いで彼女はアズラエルの作戦計画「ライジングサン」の話を聞き、
アークエンジェルもこの計画に参加することが事後として伝えられる。
ジェインウェイは計画案に最初から同意したため、これにはアズラエルが驚いた程だが、
彼女は彼に援軍は不要だが経済的な後ろ盾となって欲しいと願い、彼もそれを了承した。
また、彼女は自分に連合の外交特権を適用し、
カウンターパートとしての能力を発揮出来る様に外交権を認めて欲しいとも話したが、
これは連合大統領府の説得も必要な事から、
暫く時間は貰うが事後承認は出来る様にするとアズラエルは応じた。
そして最後に、
9/21
「あぁ、そうそう、忘れていました。
私は別にあなた方がライジングサンに参加出来なくても仕方ないと思っています。
でも、私の計画通りに参加頂けるのであれば、
それはこちらとしても有り難い……そういう話です。まずは無理をせず、
アラスカまでの旅程を無事にクリアされることを願っておりますよ。では」
……と話して彼は通信を切った。
その後、会議を終えた会議室の面々は息抜きにお茶会となった。
「みんな疲れたでしょう。まずはお疲れ様です。
理事との取引は有意義なものとなりました。
これで我々の後顧の憂いは無いと言った所かしら」
ジェインウェイの話にジュロットがティーカップを片手に続く。
「理事側も今回の会議は有意義にお感じになっていたご様子。
大佐はこれから准将として益々活躍して頂くことになりますね」
「准将だなんて、荷が重くなるだけだわ。でも、必要な権限は認めて貰ったわけだから、
私達が今後動いて行く上で外交上の取引をよりし易くなった事は間違いない。
外交権が有る無しではかなりの違いよ」
ジェインウェイは自分自身で当初目標とした事柄は、
全てクリア出来た事にひとまず安堵していた。
チャコティの報告通り、アズラエルは柔軟な人間で、
彼自身はブルーコスモスという主義を手段程度にしか考えていない。
個人的怨恨まではわからないが、彼には少なくとも拘りは無い。
あるとすれば彼自身の目的に合致するかどうかの判断なのだろう。
その彼の目的が何であるのかまではわからないが、
仮に分かっていたとしても彼女にとっては全く問題とはならなかった。
ラミアスは初の大物との会談の席に自分が居合わせた事に緊張していた。
これまで大佐とのやり取りで慣れては来ていたものの、
さすがに主義者のドンであるアズラエルは別格の相手だった。
あの若さで大佐と同様の風格を漂わせる彼の話し振りは感心する程だった。
…というわけで、この辺で本日の投下は終了致します。皆様有り難うございました。
……と言って書き終えたらまた規制入ったりして。(汗)
まぁ、その時はその時で上で書きました様な対応を取ろうかと思いますので、
宜しくお願いします。
待っていました!!
ジェインウェイとアズラエルの対談の緊張感が素晴らしい
乙でした!!
続きを首を長くしてお待ちしております
10/21
「これからは准将ですね。艦隊の指揮系統についてはどうなされますか。
本艦は現状を踏襲されるものと思われますが、
管轄権が増えた事による人事管理は膨大なものになると思われます。
特に月までとなると、アラスカに出来るだけ早く帰還されるか、
もしくは宇宙との交信手段を持つ国家との接触が必要になります。
現状で一番それらの条件が整うのはオーブということになるのでしょうけど……」
ラミアスの話はジェインウェイからすれば問題でも何でも無いが、
表立ってはそうだとは言えない。
アークエンジェルは孤軍奮闘してアラスカを目指すわけで、
その間の通信手段は限られる事になっている。
インドを通して理事と会話出来たのは理事側が察知してのもので、
赤道側と大西洋側が正式に外交チャネルを開いたわけでもなければ、
アークエンジェルの話はネタ話程度の扱いになっているのだ。
「オーブとの接触が一番の近道でしょう。
いずれにせよ我々はカガリ嬢を預かっている。
彼女を通した接触は現状では最良のチャネルと思って良い筈よ。
人事については月司令代理としてトゥヴォックが着任している。
彼が私の意図を理解して十分な仕事をこなしてくれていると思うから心配ないわ」
ラミアスは成る程と頷いた。
確かに既にトゥヴォックが中佐として司令代理になっている。
月との交信をあまり重視していないのは、
それだけ彼を信頼している結果なのかと納得していた。
実際、理事からもたらされたアフリカのビクトリア攻略の情報は、
まるで彼女の動きに呼応する様な見事な連携を見せての結果だった。
サイは3人のやり取りを聞いていて今後のアークエンジェルの進路を理解しつつ、
傍目に聞いている分にはかなりの綱渡りを受け入れたにも関わらず、
余裕のジェインウェイを見て頼もしく思う半面、より一層厳しくなって行く戦況を予想した。
11/21
モラシムは早々にカーペンタリアへ進路を変更し帰還した。
この判断は、相手側との戦力が違い過ぎることから戦力不足を痛感した為だ。
特に空戦能力がディンでは手に負えない状況では水中戦に賭ける他無いが、
出来れば空戦能力も互角であった方が何かと都合が良い。
爆雷を投下されるのを許すより牽制出来た方が良いに決まっている。
「ジュール、お前の働きを俺は評価しているぜ。
降下部隊合流後も宜しく頼むぞ」
「は!」
イザークが敬礼する。
彼はそれを見て礼を返すと執務室からの退室を許可した。
執務室から出て来たイザークをニコルとディアッカが囲む。
「どうでした、何か言われました?」
「何も無い。俺を評価するって話だ。どうやら相手は信頼した様だ」
「そうでしたか。それは良かった。さすがはイザークでしたね」
ニコルが微笑む。
イザークは照れくさく感じて頭をぽりぽりと掻いた。
そこにディアッカが腕組みしながら話しかける。
「で、俺達はどうすんだ」
「降下部隊合流後も頼むという話だ。
このまま現状を維持する他に無いだろう。
まさか、お前、ここから出るというのか」
「そうは言ってないけどよぉ、満足な装備も無く飼い殺しだぜ?
司令部側は俺達のことを覚えてるのだろうか」
現状は渡り鳥のごとき状態ではあるが、イザークからすれば、
どんな機体でも対応出来る能力をアピールする良い機会だと考えていた。
赤服といってもまだ若く舐められ易い。しかも親の七光りと揶揄もされる立場だ。
そうした意味では、この立場は言う程悪くはないと感じていたのだ。
だが、ディアッカの言い分も分かる。
12/21
「覚えていることは間違いないだろう。だからこそゲイツが与えられている。
司令部からしてもどうにかしたいのだろうが、連戦連敗だぜ?
……向こうも何か言いたくもなるだろう。勿論それが理由だとは言わん。
だけど、それも覚えておく必要があるんじゃないか」
ディアッカはこの反応に面食らった。
普段のイザークからは考えられない冷静な判断に、
なにか悪いものを食べたのではないかと。
……確か今朝はエミュの卵から作ったオムレツを食べていたが、
そんなものは自分も食べた。変わったものには違いないが、
それが理由ではないだろう。
「はいはい、そうですか。……まぁ、悔しいが言う通りだな。
俺達も戦果を上げないと何も言えないよな。さすがに同意するよ」
ディアッカはそのまま通路の向こうに消えていった。
残された二人も互いに頷いてそれぞれの仕事に戻った。
あっという間に時は過ぎ、出発の日を迎えていた。
アークエンジェルの整備は万全で、この一週間で損傷部は全て修復した。
また、エンジンの改修も進められ、
搭載するレーザー核融合炉はオーリィによって高効率化された。
これまでのエンジンより強力な出力を得られることで、
以前より更に高い高度で航行出来る様になった。
山脈程の大きな山は越えられないが、
多少の山や丘は越えられる程度には安定した出力が得られる他、
速度もこれまでより速く航行出来る様になった。
これにより、順調に行けばアラスカへの到達時間の短縮が期待出来る。
「アークエンジェル、発進します」
ラミアスの号令下、アークエンジェルが静かにムンバイの地下ドックを進む。
進路をマラッカに向けて、夜の闇の中インドを後にした。
その頃、アークエンジェルのとある部屋では……
「……長い地下生活でしたわね」
「テヤンディ!」
13/21
街の光が遠ざかるのが見える。
ムンバイの街の明かりがこんな風に輝いていたのかと、彼女は興味深く眺めていた。
宇宙での暮らしを考えれば地下の暗闇もあまり変わらない。
星の瞬きが見えるか見えないかだが、それさえも砂時計の中では全くの作り物である。
あの場所と宇宙が違うなどと区別をつけたいのではない。
ただ、こんな小さな変化が新鮮なのだ。そこにインターフォンが鳴る。
「どうぞ」
「……こんばんは」
入って来たのはいつもよく知る自分と同じ年頃の少年だ。
「まぁ、キラ様。いらっしゃいませ」
「あはは……ラクスさん、今日は、お招き下さいまして有り難うございます」
「いいえ、お待ちしておりましたわ。さぁ、どうぞお座りになって」
「はい」
彼女が椅子へ座る様促す。
四角いテーブルの上には、彼女がソノッコさんに教わって作った料理が所狭しと並べられていた。
ソノッコに料理を教わり始めた彼女は驚異的な早さで習得し、
ソノッコも合格点を出す程の腕前に成長した。
しかも掃除も彼女が全て行っている。
伊達に艦内清掃で馴らしてはいない。
この日の彼女の部屋は、彼女の手で作られた造花が飾られて、
普段より一層ピカピカの部屋となっていた。
キラはこの彼女の力の入り様に驚きつつも、促されるままに椅子に座った。
彼女も対面に座って微笑む。
「今日はインドとのお別れですから、インド料理を作ってみましたの」
「ラクスさんはどんどん上手くなりますね。もうプロでも通るんじゃないですか」
「あら!そう思われます?」
ラクスの目が輝いている。
どうやら彼女もその反応を見る限り満更でもないらしい。
14/21
「はい。いつも美味しい料理、有り難うございます」
「まぁ!そんな、わたくし、本日ソノッコさんにも褒められましたのよ。
もう食堂にそのまま出しても、不満を口にされる方はいらっしゃらない程度に上達していると。
それを聞いてわたくし、次は厨房にて一緒にお仕事をさせてもらう約束をして頂きましたの。
ようやく皆さんのお口に召し上がって頂ける許可が下りました。感無量ですわ」
「そうなんだ。凄いじゃないですか。
あ、そういえば、ラクスさんにもお給料は出ているんですか?」
キラの質問に再度彼女の目が輝く。
彼女にとっては余程聞かれたかった質問の様だ。
「はい!もう、びっくりしましたわ!
私、産まれて初めて給与明細というものを頂きましたの。
お仕事をしてお給料をもらう。この瞬間こそが労働の喜び、
一人前の大人として仕事が認められた瞬間ですわよね。
もう、それだけでお腹がいっぱいになっちゃいそうなくらい感動致しましたの。
あ、そうですわ、キラ様もご覧になって!これですわ!」
彼女はエプロンのポケットに仕舞っていた、
折り畳まれた紙を取り出してキラに手渡した。
彼はそれを開いて中身を見ると、そこには確かに給与明細表が。
時給:5アースダラー(500円)
勤務時間:4x30日(120時間)……計600アースダラー(6万円)
連合軍事共済保険料:200アースダラー(一律)
雇用保険:50アースダラー 連合年金:150アースダラー
花代:100アースダラー 食事代:50アースダラー
「(差し引き手取り……ご…50……これ、だけ?……いやいや、
その前に時給が法定外……じゃないのか?でも、彼女喜んでるし……だけど、
食費はわかるとして、花代???)ラクスさん、本当に……これで大丈夫?」
15/21
キラは彼女の明細を見て、どこをどう突っ込んで良いのやらというか、
もはや突っ込む所しか無い内容に、むしろ彼女はネタとして、
自分を騙して反応を見ているのではないかとすら思っていた。
当の本人は全くそんなことはお構い無しに喜んでいる。
「大丈夫ですわ。
私、まさか自分にお給料が支払われるなんて思っても見なかったんです。
それなのに大佐さんは、形式上は救出されたと言っても、
捕虜同然の立場の私にお給料をお支払い下さったんですよ。凄いと思いませんか。
無くて当たり前の私のこともちゃんと考えて下さったあの方のご恩に報いる為にも、
今後はより一層力を入れてお仕事をしたいと思いましたわ。
……と思うのは、おかしいですか?」
彼女の言葉にキラは思わず虚を突かれた様な気分になった。
自分にとっては当たり前の報酬だが、確かに彼女の立場ならば当然とは限らないのだ。
彼女はそうした自分の立場を理解した上で、その場その場を楽しむ余裕を持っている。
改めて凄い人だと感じていた。
「あ、いやぁ、そういうわけじゃ……そうですか。
ラクスさんは素敵ですね。僕もあなたを見習わないといけないな」
「まぁ、キラ様はもっと凄い事をされていますわ。
命のやり取りをする以上の大変な事がありますか。
私はそんなキラ様達を労うことが出来る事を、とても誇りに思います」
「ありがとう。じゃぁ、お言葉に甘えて、頂きます」
「どうぞどうぞ、召し上がって下さい」
二人は密やかに静かな一時を過ごした。
本日はこの辺にしとうございます。
有り難うございました。また明日。
乙
次が楽しみです
明日と言いながら遅くなりましたが、続きを投下します。
16/21
「グランドスラム、シナプシスリンケージ、
アルファ12からベータ9までオンライン。回避モード、ガンマ1、
オプショナルプログラムのアインからゼクスまでオフラインにしてドレス起動。
フェイザーバンク1から3までチャージ、シールドはフォワードプレートモード」
『命令を確認しました。フェイザーバンクチャージまであと30秒。
シールド出力は100%で維持。回避プログラムがアルファ1から変更されました。
ドレス起動まで10…9…8…7……』
全天球ディスプレイが全ての情報を瞬時に表示し処理して行く過程を映している。
グランドスラムはドレスによりそのボディを漆黒の闇に同化させた。
同時に質量の上でも塵以下に偽装する亜空間フィールドに没入させ、
機体をセンサーで検知不可能な値に偽装する。
前方に見えるのは2機クリンゴン・バードオブプレイ、
そしてその後ろに巨大な戦艦であるロミュラン・ウォーバードが陣取る。
相手側はまだ気付いていない。
それはスキャンされていないことからも明らかだ。
何度も試してきたが、彼らには尽く発見され続けて来た。
そして最後のオチは、ディスラプターを撃ち込まれての終了のお知らせである。
だが、これまでの所は順調に推移している。
「(まずはバードオブプレイをなんとか避け切らないと。
でも、見えているバードオブプレイの周囲に1機の同型機が隠れて居るのは確認済み。
そいつをやり過ごさないとウォーバードには辿り着けない。)」
ラスティはこの数日でかなりの上達を見せていた。
最初の一日はグランドスラムの操作法に悩み、
その翌日は動かすだけで精一杯。ようやく動かせる様になったのは4日後だ。
そこからは何度も実戦を繰り返すのみで、
文字通り身体を張ってぶつかり稽古の如くバードオブプレイに向かって行った。
すみません。脱字見つけました
>前方に見えるのは2機クリンゴン・バードオブプレイ、……は
>前方に見えるのは2機のクリンゴン・バードオブプレイ、……です。すみません。
17/21
初戦は文字通りの瞬殺だった。
彼らの前に現れたと同時にディスラプターの一撃で破壊された。
その後は回避行動を徐々に編み出し、
彼らの攻撃を躱すための照準妨害プログラムを組むまでには上達したが、
それだけでは彼らをやり過ごす事は根本的に無理だった。
ようやくシールドの使い方に気付き、
シールドによってディスラプターの一撃で撃沈する事は無くなったが、
それも単純に被弾3回猶予程度のもので、
3発以上の攻撃を食らえばシールドが消滅して撃沈となってしまう。
ドレスによって宇宙空間に溶け込んだグランドスラムは、
ゆっくりと通常エンジンで宙空を抜ける。
バードオブプレイにまだ気付いた様子は無い。
「(ここまではいつも通り。しかし、クリンゴンって奴らは一体どういう奴らなんだ。
一見すると整然と行動する様に見えて、一度戦闘が始まると、まるで違う激しさを見せる。
しかも巨大な船体の割にスピードが速い。どんなエンジンを……ってのは愚問か。
こんな性能の世界なら、戦艦が遅いって考えも間違いだよな。単純に出力が大きいんだから、
その分だけ高速航行が出来ると考えないとおかしいんだ)」
ラスティは徐々にではあるが、この世界の「設定」に慣れ始めていた。
技術的にはかなり高度な世界で、単純に動かすだけでも相当の予備的知識を必要とされる。
目視領域に存在する恒星や惑星からは当然に重力フィールドが発生しており、
そのフィールド干渉圏に居る限りは重力補正が必要となり、
それらはグランドスラムが発生させるフィールドや兵器に影響を与える。
勿論それらの干渉はコンピューターが粗方制御してくれるが、
その補正が常に正しいとも限らず、彼自身で臨機応変に補正をしてやる必要もある。
彼はこれらの補正のために久々に勉強を始めた程だ。
分からない計算方法はムルケイに聞くなどしてクリアし、
惑星間航行技術に関する初歩的な知識は全て把握するに至った。
18/21
「グランドスラム、スラスター4分の1インパルス。敵は気付いたか」
『4分の1インパルスに減速しました。敵に気付いた反応は見られません』
「なら、このまま抜けるよ。でも、抜けるだけじゃ芸が無い。グランドスラム、
敵の機関部を狙って攻撃した場合、戦闘不能に持ち込む事が出来るか?」
『3機中2機に対しては光子魚雷の有効射程圏にあり、撃墜が可能です。
1機は装填魚雷数制限により破壊不能です』
「……そうか。やっぱだめか」
ラスティは諦め、当初予定通りのコースでウォーバードを抜ける航路を辿る。
バードオブプレイは通過後に通常航行モードに戻り、3機全てがその姿を現した。
「警戒を解いた。ならウォーバードも何とかなりそうか。
グランドスラム、ワープ1でウォーバードの下を突き抜ける。出来るか!?」
『ウォーバードはバトルモードを解いていません。
ワープフィールドはセンサーに捕捉されますが、実行されますか?』
「フルスピードで突っ切るならどうだ」
『ウォーバードはワープ8で航行する恒星間巡洋艦です。確実に追いつかれるでしょう』
「……そうか。でも、やってみなけりゃわからない。いくぞ、グランドスラム!」
『了解しました。システム、オールグリーン。コースセット完了。いつでも行けます』
「行くぜ!」
グランドスラムがワープモードに突入する。
スラスターが完全に停止すると、ワープナセルが後方へ展開される。
腹部のディフレクタープレートが稼働を始めると、エンジンの音が増して行く。
ラスティは空間に浮かぶコンソールバーをフルスピードワープまで押し上げた。
前傾姿勢をとったグランドスラムがワープする。
一瞬にして宙域を飛び立った彼の機体はワープフィールド内に没入した。
「やった!」
19/21
『警告、後方からスキャンされています。警告、後方からスキャンされています』
コンピューター音声が告げたアラートの後、
自分の目前の空間にウィンドウが開かれて後方の映像が表示される。
そこには確かに彼の機体を追う3機のバードオブプレイの姿があった。
バードオブプレイは正三角形に編隊を組み、
先頭機が青緑色のスキャンビームを飛ばしていた。
「知らない振りをしていたってことか!?何だよそのパターンは」
『武器を準備しています。ターゲットロックが入りました』
「グランドスラム、シールドを後方へ最大。
回避モードγ1からβ2へシフトさせ撹乱。
フェイザー、先頭の奴のブリッジへ集中。
充分に弱った所を見て光子魚雷1番2番連続発射!」
両腕のフェイザーが出力最大で敵艦のコックピットを狙う。
敵側は早速ディスラプターを撃ち込んでくるが、回避行動で上手く避けていた。
その間も集中して攻撃した事が功を奏して先頭艦の前方シールドが弱まった。
彼はその機に乗じて2発の光子魚雷を連続で発射した。
魚雷は瞬時に相手艦へ到達する。
バードオブプレイのうちの一機を戦闘不能にした。
「おっし!でも、まだ2機がいたな!」
そう言うや否や、ラスティはワープスピードの急減速をして後方艦2隻の間に入ると、
シールドを調整して相手シールドへ同調させ、バードオブプレイの羽の上に降り立つ。
そして、羽の上を走って進みアームからビームブレイドを出力すると、
ディスラプターをそのブレイドで破壊。
続けざま、その破壊された場所にフェイザーを撃ち込むと、
バードオブプレイは兵器のエネルギーが暴走して誘爆を始めた。
「懐に入ってしまえばこっちのものってのは同じだな。所詮でかいMAか」
20/21
ワープフィールドを変調させてバードオブプレイの空間から離脱すると、
もう一機のバードオブプレイは撤退して行った。
遂に実力でバードオブプレイを撃退する事に成功したのだ。
「やりぃ!!!」
『警告、後方から高エネルギー反応です』
「!?」
気付いた時には遅かった。
ロミュランウォーバードの巨大な姿が後方に突如現れたかと思うと、
一瞬にしてディスラプターの集中砲火を受けて破壊された。
『システムフリーズ。残念ながらあなたの機体は破壊されました。
敗因は相手艦への集中が途切れたことによる油断と判断します。改善方法は……』
コンピューターがいつもの様に敗因分析を一方的に話している。
ご丁寧に敗因分析してくれるのは良いが、それを聞いている側はより一層心を抉られる。
何度か殺意を感じたりもしたが、これが上手く行ったときはまた気持ちの良い報告にもなり、
半ばそれを目標にしている様な面も無くはない辺り、人の心理を上手く突いていると感心する。
「……はぁ。どっから湧いたんだ」
ラスティはコックピットに力なく項垂れた。
彼の挑戦はこれで100回を越えた。
そんなぐったりした彼のもとに通信が入る。
『ラスティくん、ご苦労様。今日の所はこの辺で終了にしよう』
「はい。……っていうか、ムルケイさん、設定……弄ったでしょう。
なんであそこで知らない振りして襲いかかってくるんです。
こんなのこれまでの設定から想定不能ですよぉ。まったくぅ」
『ははは、君の言う通りに意地悪しても良いんだけど、そんなことはしていないよ。
このプログラムの全ては君の成長に合わせて変化する。まぁ、考えてもみてくれ。
想定通りの人生なんて、つまらないと思わないか』
「……それは、そうですけどぉ……」
ラスティは眉間に皺を寄せていかにも不満という表情を露にし、
文句を言っても仕方ないと思いつつ独り言をぶつぶつ呟きながらヘルメットを取った。
「……コンピューター、一名転送」
ラスティがそう言うと、彼の体は青白い光の粒子となってコックピットから消えた。
21/21
ところは変わり、
プラントのコロニーであるアップリリウス市のとある邸宅の書斎では、
ある男が壁面に並ぶディスプレイを眺めていた。
「……ようやく見つけた。私は探したぞ、お前の事を」
ディスプレイに表示されているのは、不鮮明ではあるが漆黒の宙空に浮かぶ船の姿だ。
彼はディスプレイ越しにその船をなぞる様に触れた。
すると白い皮膚の内側がうごめき、およそ生身の人間にあるには相応しくないものが浮かび上がる。
その手がディスプレイから離れ、棚の上に飾られた一つのフォトフレームに移る。
そこには濃紺の髪を短く束ねた美しい女性の笑顔が写っていた。
「……長く人間として暮らしている中で、私は随分と様々な物事を学んだ。
彼女には悪い事をしたが、私のことに触れた以上は仕方の無い事。
……お陰で堂々と行動にも移せた。感謝しているよ」
その顔に普段の厳しい表情は無く、ただ無表情に見つめている。
「人の憎悪は愉快な程に全ての論理を超越して混沌を作り出す。
人間にバルカン程の秩序を構築し得ない隙があることこそ、
私が付け入る最大のチャンスということだ。見ているが良い。ジェインウェイ。
この世界はお前達の望むものから、絶望的に遠ざかるだろう。
そして、私が全てを飲み干し、お前達の望むものにとって変わろう。
……そうすることが私の望みであり、お前達の幸福にもなるのだ。
……ふふふ、私は優しく、とても慈悲深い」
彼は笑顔を作った。
しかし、その笑顔は人間らしからぬものだった。
第36話終了。第37話へ続く。
皆様有り難うございました。次回は6月始めにでも投下しようと思います。
ある程度書き進んだら投下回数は増やす予定ですが、暫くはこの方向で。
GJ!
なんかスタトレ世界の人物が来ているのか!?
プラントでも一波乱ありそうだな。
というか、プラント終わたw
としか思えないが考えすぎかな
ひょっとて星戦争の暗黒卿な方々?w
乙!
ラクスがこんな長い間AA乗ってるのは初めてだなw先が読めないぜ。
やはりSSにおける盟主王のたのもしさは異常。
ザフトは何故階級がなかったのか?
>ザフトは部隊の規模を悟らせない為に、階級や大隊小隊などの編成や階級を使いません。
プラントのコーディネイターは底抜けのアホだと分かった。
ガンダムバトルオペレーションネタで
フェイザーライフル、ハンドフェイザー装備で
逆にMSを狩り捲るw
>>379 フェイザーとMSじゃ歩兵が圧倒的有利だわw
スタートレッククロスが随分と盛り上がってるし雰囲気似てるゼノサーガクロスでも書こうかな
ぶっちゃけフェイザーライフル1丁歩兵がどの位「無双)出来るものなの?
想像がつかん…
量産型牛先生…そろそろかなー?…
保守
そろそろΞの活躍もよみたい。あのペテン師達の
閃ハサの18.5話が去年11月の時点で避難所に投稿されていたのに
遅ればせながら気づき、先ほど倉庫に登録してきました。
166氏遅くなってすみませんでした、次回も気長に待っております…
…と思ったら、ほぼ同時にザクレロSEEDの最新30話が
倉庫に直接登録されてるゥゥゥーーーッ!?
保守
1/18 アクセス規制受けていて、何度か投稿挑戦してますが、上手くいくかなぁ。
第37話「挑戦状」
オーストラリア領カーペンタリアZAFT基地。
大洋州連合を構成するオーストラリアよりZAFTが借り受けたこの湾の基地は、
同軍の地球内部の基地では最大級を誇る一大拠点だ。
ボスゴロフ級クストーは部隊編成を整えたところだが、出航はせずに停泊している。
「……丘の上は性に合わねぇが仕方ねぇか」
クストーの艦長室には艦長であるモラシムが自室のデスクの椅子に腰掛けていた。
室内には彼の他に副官であるハンスが、応接椅子に丁度モラシムの対面方向になる方に座っていた。
モラシムは前回の戦闘での敗因分析を入念に行っていた。
まず一番の原因は、敵側の反応がこちら側の予想より遥かに上回っていたことだ。
連合にはインド洋は勿論、マラッカ沖ですら満足なレーダー網を持ち得ていない。
……のはずが、こちら側の索敵範囲を大幅に越える範囲で識別し、
迷い無くこちらへ向かって来たことは大きな敗因の一つだ。
彼はクルーゼやザラが書いた報告書を読んではいたが、彼らの情報を鵜呑みにする気は無かった。
敗者は自身の責任を軽く見せる為に相手を強く印象付ける様に書く事がある。
彼らは『実力のある』敗者であるから、自身の置かれる立場を鑑みると虚飾があってもおかしくはない。
しかし、蓋を開けてみれば彼らの報告は正しかったということになる。……なるほど、
有能な上に馬鹿正直なのかとモラシムは感心したほどだ。
足付きを唯一追いつめられたのはザラによる暗礁宙域での戦闘だ。
この戦闘でザラはあともう少しという所まで追いつめたが、不測の事態により退避せざるを得なかったとある。
不測の事態が極秘扱いになっている為何であるのかは分からないが、少なくともそれさえ無ければザラは勝てたのだ。
この時の戦闘では自陣営を二手に分けて挟み撃ちしたとあった。
足付きは強力な戦力を保有する部隊だが、単艦で進む孤立無援の艦隊だ。
チームプレイで追いつめるというのは有効な攻撃法だろう。
彼の副官であるハンスは寡黙で従順に自分の命令に従うが、丘に上がれば友人関係だ。
ZAFTに入ってからというもの、数々の戦場で彼と共に行動をとってきた。
自分の戦績の中で彼の活躍が締める割合も相当数になるだろう。ハンスは優秀なMS乗りだ。
彼は友人に語る様に穏やかに話しかけた。
2/18
「なぁ、ハンス。お前の意見を聞きたい。俺はこのままやっても無駄だと思っている。
それより、もう少し戦力を増やして確実に叩きたい。だが、司令部は俺達を無視ときている。
あの七光りボーイズのゲイツを有効に使うにしてもだ、もう一隻別動部隊が欲しいのが俺の腹積もりだ」
ハンスは友人の問いにしばし考えると、静かに答えた。
「俺はあなたの考えに異を唱える立場に無いが、無い物ねだりをしても仕方が無い。
ある物を有効活用する方策を考える方が現実的である……と答えておこう」
彼の答えにモラシムは僅かに唸ると、この寡黙な男に答えが有ったことを重視した。
ハンスの言い分を汲むならば、有る物で出来るならばやる価値はあるということだ。
ふと思い出し、彼はデスクのPCを操作しメールをチェックした。
思わず顔がほころぶ。……そこには彼の求めるものが有る様に感じられた。
大西洋連合本部のあるアメリカはフロリダ基地にムルタ・アズラエルは来ていた。
彼の編成する「特別部隊」のためにわざわざフロリダの軍の機密区域にまでやって来たのだ。
アズラエルは米国内の軍事もほぼ手中に収めている米国の所有者でもある。
古くからの財閥グループから数えれば、もう何代も代替わりし名前も変わった彼らだが、
その影響力自体は何らの曇り無く健在だ。その所有者が直々に軍へ関与するのである。
その重要度も相当のものと言えるだろう。
アズラエルは司令官室の応接椅子に座っていた。
彼の正面には国防大臣が座り、その右隣には見事な長い銀髪の老人が座り、
左隣には若いブロンドの青年が座っていた。
ブロンドの方は自分とそう変わらない年齢だが、軍人らしからぬ美麗な顔立ちをしている。
「盟主、こちらが開発指揮を担当する、
ハーバード大学のレイフ・エイフマン教授、そして、こちらの彼が、
我々が選定した特別部隊を指揮するエーカー上級大尉です」
エイフマンはアズラエルに軽く会釈し、エーカー大尉は片手を上げピッと敬礼した。
アズラエルはエイフマンへは会釈を返し、エーカーには彼に倣って敬礼を返しにっこりと微笑んだ。
※とりあえず、うまく投下出来たので、残りは仕事後に。w
3/18
「あぁ、お二人の話は聞いてますよ。まずはエイフマン教授。
あなたは我が国の至宝とも言うべき頭脳だ。その知識を我々にお貸し下さる事、本当に感謝しています。
そして、エーカー上級大尉。あなたをここに呼んだ理由は、
我々が用意したMS操縦技術試験に優秀な成績を収めたことからです」
エイフマンがまず口を開いた。
「お褒めに預かり光栄です。ただ、私は始めに言っておくべきことがある。
私はあなた方の……失礼だが主義者としての振る舞いが気に入らない。
この話は、あなたが自重して下さる……という条件を飲んで頂けるのであればだ。
ただし、広義の自然主義には理解を示しますよ。
私も人類の為に遺伝子バラエティは維持されるべきだと考える。
その意味においてのブルーコスモスならば賛同は可能だ……という話です」
エイフマンは物怖じする事無く、ブルーコスモスの盟主でもあるアズラエルに言って退けた。
それを隣で聞いていた国防大臣の方は顔面蒼白だが、
そのまた隣のエーカー大尉に動じている様子は無い。
アズラエルはこの三人三様の受け止め具合に人間的なレベル差を読み取った。何より、
この老人がこれまでこちらの要請に頑として応じなかった度胸を考えれば、
少なくとも彼の隣の男よりずっと人間的な力は上であることは間違いない。
「教授、私もあなたの考えに同意見ですよ。
私も近頃のブルーコスモスには辟易している側です。私の意図する所も、
人類が歩む道に多くの遺伝子が存在することを許容すべきだというものです。
教授も仰る通り、一般的な遺伝的欠陥というものも、
過去の時代のウィルス等から防壁として獲得した副作用という面もある。
それを否定して人類は最高の遺伝子を常に保持し続けるというのは、
理想としてはよく聴こえるが、それによって失われるバラエティは、
未来の世代の存続に大きな禍根を残すと私も危惧します」
用事があるので、少しだけ投下。
4/18
エイフマンは思わず眉を上げた。
彼は相手を怒らせる覚悟で話したのだが、当の相手は逆に自分の考えに同意したのだ。
しかも、その内容は十分に筋の通る話だった。
彼はムルタ・アズラエルという男の考えに興味を持ち始めた。
「おぉ、左様でしたか。直接理事のその考えを聞けて、
私も参加する上での障害は何もないと認識を新たにしました。
私の知識や技術が国の役に立つのでしたら、
このエイフマン、喜んでお力になりましょう」
エイフマンが右手を差し出した。
アズラエルもそれに笑顔で応じて固く握手を交わした。
「さて、エイフマン教授。
早速ですが、私はあなたに見てもらいたいものがあります」
アズラエルは持って来たカバンからパッドを取り出すと、
電源を入れて目的の情報を表示させてからテーブルの上に三人が見える様に置いた。
そこには設計図のようなものが描かれた図面と、
詳細な技術情報の様なものが細かく記述されていた。
「これは………モビルアーマー……の設計にしては随分と物々しい内容ですな。
中を読ませて頂いて構いませんかな?」
エイフマンの問いにアズラエルは笑顔で頷くと、
彼はパッドを手に取って暫く中身を見ていた。
最初は淡々と見ていた彼だが、徐々にその表情に変化が見える。
興奮の色と言うべきだろうか。
「……これは、誰が作ったのです」
「これですか?……私も設計者については知りませんが、
これを設計した組織はわかります。VSTインダストリーですよ」
「VSTインダストリー?」
5/18
「はい。現在我が社が提携しているシステム開発メーカーに、
VSTという会社がありましてね。VSTインダストリーは、
先頃コスモグラスパー入札から降りた4社を吸収して出来た彼らの子会社です。
しかし、彼らの作るものはシステムも然りというべきでしょうか、
私はあまり技術に詳しい方では無いですが、そんな私にもこれがどれほど凄い物かはわかる。
彼らはとても……次元の違う何かを持つ集団です」
「確かに……目から鱗が落ちる様なとでも言うべきですかな。
ここに書かれている設計技術は、我々がこれまで常識的に考えてきた理論に縛られていない。
とても独創的な考えから発しているが、それらは全て理路整然と纏められている。
これほどのものを作り出せる集団がいるとは……、私も様々な理論を学生に教えてきた身ですが、
いやはや……こんな面白いものを考える人々がいたとは、何か触発されますな。
で、私にこれを見せるという事は」
「はい、あなたにこの設計を凌駕するものを造って頂きたい。
資金は我々が青天井で保証しましょう。あなた方にはこの設計に勝てる兵器を開発し、
我が国の誇るべき部隊を造って頂きたい」
アズラエルの言葉にエイフマンはしばし間を置いた。
彼はアズラエルの提案自体は魅力的だと感じていたが、それの使われる先が気になったのだ。
「……私の返事はYESといっても良い。だが、私が生み出した物が害をなすのであればNOだ。
国の役に立つことは本意だが、それによって人類の進化に禍根を残したくはないのでね」
アズラエルはこのエイフマンの含みある言葉に興味を持った。
彼の言っている事はアズラエルからすればさほどの意味は無い。
自分自身でも人類の歴史に悪の権化として名を刻むつもりは毛頭ないのだ。
だが、それでも武力は意図しない効果を生み出す事を否定はしない。
「教授、仰りたい事がよくわからない。
それは協力して下さると理解して宜しいのですか?それとも?」
「協力はやぶさかではないが、使途をハッキリさせて欲しいということです。
私とて技術者の端くれとして、誰にも負けないものを作るという自負はあります。
しかし、それによってもたらされる災厄というものもまた、この年齢になると沢山見ています。
我が国がして来たことは、利益を確保するに至っていたかという面において、
私は明確にNOだと言い切れるだけの行状を見ている。それをこの期に及んで覆せますかな」
彼の表情は熱い興奮とは裏腹な冷徹さが垣間見える。
これまでこちらの要請を尽く拒んで来た彼だけに、さもありなんと言ったところだろうか。
アズラエルは苦笑しつつ答えた。
「……ははは、これは手厳しい。我々としては不本意ですが、
教授の仰る通り、利益に反する結果を残した事は事実でしょう。しかし、それで人類は発展しますか。
失敗を恐れずに試行錯誤をした結果として文明は興ります。
失敗を恐れてはなんらの発展も見ない。いわば必要悪とでも言うべきですかね。
勿論、それにあぐらをかこうとは申しませんよ」
では、また後で
乙です!!
まさかあの二人がこちら側にいるとはw
別次元の同一人物ということでしょうか
一瞬別のクロススレと思った
しかし相変わらず緊張感と知的好奇心の両方を刺激する会話を考えられますね
6/18
エイフマンはアズラエルの話を聞き、再び沈黙を置いてから答えた。
「……良いでしょう。ただ、やるからには徹底的にやらせてもらいますよ。
こちらの要求は全て飲んでもらいます。青天井の言葉、忘れませんぞ」
エイフマンの視線がアズラエルを直視した。
この反応にアズラエルは普段通りの不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「それは技術的な要求ということに限定させてもらいますよ。
そうでなければ、この話は無かった事にしても良いでしょう。
私はそれくらいには本気で仕掛けているんでね」
「……勿論、その内容で構わない。私は私のやり方で表現をさせてもらいますよ」
「では、改めて交渉成立ですね」
今度はアズラエルから手を差し出した。
二人は固く握手を交わした。
艦長日誌
私は自室にセブンとジュロットの2人を呼んでいた。
情報端末には『もう一人』のヴォイジャークルーとも言うべきオーリーをダウンロードしている。
彼らを呼んだのは単なる定期会合ではない。重大な理由があった。
それは、セブンによってもたらされたアズラエルからの作戦計画書のデータにあった。
「……社長、緊急の招集ということだが、彼の計画に何かあるのか」
「少尉はもう私の意図は分かっているわね。彼の作戦計画書自体には問題なんて無いわ」
「じゃぁ、何が問題だ」
「データそのものよ」
「?」
7/18
セブンはジェインウェイの言いたい事がいまいち分からなかった。
彼女の問題にしている作戦情報のデータは、単純にセキュリティ上の暗号化をされたデータにすぎない。
中身は大西洋連邦の軍事機密である事は間違いないが、その情報はアズラエルも言っていた通り、
十分に大西洋連邦単体で対処出来る内容であり、こちら側が馳せ参じる必要はなさそうだった。
「セブン、このデータ、通常の連合の暗号解凍解読処理では処理出来ない、特殊な形式だったそうね」
「あぁ。それで私の方に持ち込まれたから、私の方で処理した。
ただ、中身の性質上、あなたに直接渡す方が良いと考えて、先に持ち込んだまでだ」
「その判断は正しいわ。セブン。おかげで私は重要な意図を見落とす所だったのだから」
「意図?」
「あなたの持って来たデータの解読方式が問題なのよ」
ジェインウェイの言葉に、セブンはいかにも不可解という表情で返す。
「解読方式が?データそのものは、基礎的な量子演算による簡単な暗号圧縮アルゴリズムを採用していた」
「……それが問題なのよ。この量子演算、私もただ渡されただけなら気にもしなかったわ。
でも、アークエンジェルの通常の暗号処理が機能しなかった。
……ということに引っかかったのよ。それで、私も試しに調べてみたの。
……結果は、この世界の量子演算技術でも解けない最高レベルの暗号化が施されていたわ」
「つまり、どういうことだ?それだけ重要だからこそ暗号化を重くしたのではないのか」
「そうね。そういう考え方も出来るかもしれない。
でも、それがもし『誰にも開けない』ものだとしたらどうかしら?」
「……そんな無意味なものは暗号化とは言わない」
「そうよ。これは暗号ではない。
我々への挑戦状……とでも言うべきかしら。オーリー、2人に話してあげて」
私は端末のオーリーに話を振った。
オーリーが画面に了解の文字を表示して語る。
『ジェインウェイ社長は、私にこの暗号の処理を依頼されました。
私の計算によると、この内容をC.E.の最高水準にあるZAFT製量子演算システムで計算した場合、
最短の演算方式で約5年、最長で約10年の時間を要するものと算出できました』
「ありがとう、オーリー。あなたの計算結果は正しいわ。
これは私達への挑戦状であると同時に、挑戦状にしては随分とハイレベルなものであるとも言える。
勿論、私達からすれば、技術的にかなり立ち後れたものに過ぎないけれども、
彼らからすれば解読不能な処理なのよ」
8/18
「理事は我々が解読出来ると考えたからこそ、この処理をしたのだろう?
そこに問題があるとは思えないが、問題なのか?」
「これはこの世界の人間には現時点で誰も解読が不可能なデータなのよ。
オーリーの試算でも、連合より進んだZAFTですら5年以上の時間を要するもの。
それを私達が処理出来るという根拠を与えてしまったのは、私達自身の過ちね。
でも、彼がそう考えたのだとすれば、尚更私は彼の挑戦状を受けるわけにはいかない」
「どういうことだ」
「私達のOSの暗号化処理はZAFTにも解読不能なものにしたわよね」
「あぁ」
「それが火種よ。
彼らはOSの暗号化技術の高さから推測して、我々の技術水準を試したのね。
あのOSの暗号解除鍵が用意出来る技術があるならば、
このデータを解読する事は可能だと考えるのは筋が通る。
だけど、それにしては大袈裟過ぎる辺りは、
彼の視点が我々の想像する方向とは別に向かったと見るべきね」
ジェインウェイの問い掛けにようやくセブンが気付いた。
「……ん?ファーストコンタクトか」
「えぇ。これはファーストコンタクトの数学的アプローチに似ている。
やり方は真逆だけど、彼の合理的性格からすれば、
自分の求める答えがハッキリと出さえすれば良いと思っている。……危なかったわ。
あの会見で少尉も見抜けなかった彼の意図には、こんな隠し球が有ったのよ」
「申し訳有りません。私の力が至らなくて……」
ジュロットが恐縮するが、ジェインウェイは彼女の肩に優しく手を置いて告げる。
「いいえ、仕方の無い事だわ。
ただでさえ原始的映像システムから伝わる情報は光学的映像データのみ。
私達の技術は多くの情報を伝達し過ぎるが故に、知らず知らずのうちに頼り過ぎていたのよ。
でも、仮にあなたが100%のテレパス能力を発揮したとしても、この事例は無理ね。
彼は不可能な程の難しい暗号処理を頼んだだけ。それがどれほどのものかなんて考えてはいない。
ただ、暗号化処理をしたものを解読してくれたら良い程度の思いを読み取った所で、
それはその言葉通りの意味にしか受け取り様がなかったもの」
9/18
私達は、事態が新しいステージに上がった事を、否応無く認識せざるを得なかった。
艦長日誌
インドを後にした我々は、マラッカ海峡へ向けてゆっくりと航行していた。
敵側の待ち伏せがあると踏んでいるが、そうだと考えている分には抜かりは無い。
クルー達には訓練をさせて練度を上げ、いつでも戦闘があっても良い様に準備させた。
幸いと言うべきか、現状では敵側に動きは無い。
「どうぞ、入って」
ジェインウェイの呼び声に、失礼しますと静かに挨拶をして入る者の姿があった。
警備の兵士に伴われてやって来たのはラクス・クラインだった。
「皆さん有難う。下がって良いわ。後は私と彼女で話します」
警備兵は敬礼をして速やかに下がった。
ドアが閉まると、ジェインウェイは彼女を自分の向かい側の席に座る様促した。
その招きに彼女は笑顔で会釈すると、静かに席に着いた。
「おはようございます。准将閣下」
「えぇ、おはよう、ラクスさん。今日呼んだのはあなたの処遇の件よ」
「処遇、ですか。
……では、先日のムンバイで上層部とお話しする機会をもたれたのですね」
「いいえ。そういう話では無いわ。まぁ、そう構えないでちょうだい。
今日私が話したいと思うのは、あなたの捕虜待遇の終了のお知らせよ」
「……え」
ラクスはあまりに唐突な話に耳を疑った。
ジェインウェイは彼女の反応を想像していた様で、微笑みを浮かべて続ける。
10/18
「唐突で驚くかもしれないけれど、あなたが今後本国に帰りたいということであれば、
可能な限り手配するわ。でも、こんな状況でしょう?……正直な話、
私もどこまであなたを保護出来るか分からない。とはいっても、
このままあなたを連合本部に渡す気も無いのよ」
ジェインウェイは彼女に文書という形にしてわざわざ手渡した。
それを差し出された彼女の方は、本当にその旨が書かれていて動揺する他に無かった。
「それは、どういうことなのですか。わたくしを連合本部に渡さないともなれば、
閣下の置かれる立場は色々と……問題があるのではないかとお察ししますが」
「そうね。そうした場面も有るかもしれない。
でも、そんな状況よりあなたが渡る方がずっと悪いのよ。
あなたには少なからぬ影響力があるわ。
そんな人物がカードに使われることで起こる悲劇は相当のものよ。
私はそうしたリスクを回避出来るなら、
あなたを返すことなんて安い買物だと思っているのよ」
彼女は相手の意図に困惑し、暫く沈黙する。
彼女が言っていることはとてもシンプルだが、それの意味する所はとても危険だ。
しかし、彼女は事も無げに自分にそう告げるのだ。これはどう理解したら良いのだろうか。
これまでの経緯を考えるならば、彼女の意図は明確ではあるのだが、それでも不可解だ。
「……閣下は本当に変わった方ですのね。最初にお話しした時もそうでした。
わたくしに何時でも逃げて良いというニュアンスで話していらしたあなたは、
この船の中でわたくしを普通の一般人と同じ様に扱って下さいました。
仕事をする、食事をする、学ぶ、話す、考える。
……これまでわたくしが暮らして来た環境を考えれば、あなたがわたくしに用意された環境は、
どれもとても新鮮で生き生きとした時間でした。一般には捕虜というのでしょうけど、
わたくしは、ここに留学しに来た……そう感じます。いいえ、留学しに来たのです。
短期だけど、大事な……大事な時を過ごす為に」
珈琲カップを片手に彼女の話を聞いていたジェインウェイは、彼女の反応に穏やかに笑った。
11/18
「フフフ、私はそんなに高尚なことを考えていたわけではないわ。
私の主義として拘束する必要を感じていなかったこと、
そして、気に入らない結果にしたくないだけよ。
あなたが何かを気に病むこともなければ、そもそも私は人道的に要救助者を収容して、
有るべき場所へ返すだけ。そこには何も変わった事はないわ。
むしろ、捕虜だとかどうとかは後付けの、フフ、言ってしまえば作り話よ」
「……作り話……ですか。そうですわね。作り話。
でも、私にはそれがとても楽しく、大切な時間でした。
いえ、これからも私にとっては掛替えの無い物語として、
心の中に刻まれて行くのだと思います」
ラクスは思い返していた。
艦内を自分のしたい様に掃除させてくれた事。
スズキさんから料理を学び、沢山の人たちへ料理を作った事。
小さな子ども達へ歌や勉強を教えた事。
……どれもこれまでの生活では表面的にしか知る事の出来なかった事ばかりだった。
ジェインウェイは彼女にそれを知る機会をくれ、
沢山の違いを持った人との交流の場を与えてくれた。
彼女にとっては敵軍の将というよりは、ちょっと怖い母という印象すらあった。
「……ん、どういうことかしら」
「わたくし、クルーに志願することは、駄目でしょうか?」
彼女の突飛とも言える言葉を聞いたジェインウェイは、
彼女の目を見据えて悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
「……本気?」
「はい」
「……もう。あなたも大概どうかしているわね。
でも、そうね、ならこういうのはどうかしら。
あなたは連合でもZAFTでもない『私達』のクルーよ」
「……それは、どういうことなのです?」
「簡単よ。何処の組織にも縛られない私達が考える地球を作り出すのよ。
そこには馬鹿げた主義者も、凝り固まった遺伝子強化も無い世界を目指す。
……今の所の考えはこんな所よ。乗る?」
ジェインウェイの話に彼女の目がパッと輝いた。
そして思わず身を乗り出すように言った。
12/18
「すごく、面白いです。是非乗らせて下さい!乗りますわ!」
「そう。とても辛い挑戦になるかもしれないけど、大丈夫よね?」
「はい!」
「なら、あなたと私はこれからは同じ志しを持つ戦友よ。良いわね?」
「えぇ、戦友ですわ」
2人は両の手で握手を交わした。
そしてその後、2人は交渉成立とばかりにささやかな乾杯をした。
翌日、クルー達に正式にラクス・クラインの捕虜解除が告知され、
晴れてラクスはただの「客」となった。
彼女はこの船に「友好親善」のために乗船していると話し、
将来的なZAFTと連合の和解のモデルとなる様な協力が出来ればと、艦内の人々に語りかけた。
ーーZAFT、カーペンタリア基地
「……カーペンタリア、こちらZGMF-X08A-Erfolg(エアフォルク)、
アスラン・ザラ。着陸許可を願う」
『こちらカーペンタリア管制。X08A-Erfolgは7番着陸ポートへ着陸してください。
その後はオートドライブモードでの誘導を許可して下さい」
「了解。X08A-Erfolg、7番ポートへ向かいます」
エターナルより投下された降下ポッドに乗り、アスラン達は無事にカーペンタリア基地へと降下した。
降下を共にしたクルーゼ隊は、そのまま作戦行動のために一足早く出撃し、
アスランはモラシム艦隊のクストーへ向けて移動する事となった。
彼はカーペンタリア基地に降りる事無く、そのまま機体で待機し整備終了を待っていた。
その時、基地より通信が入った。
『ザラ隊長、本国より伝言を預かっております。
そちらのコックピットに送信しますので、ご確認下さい』
「了解」
基地から送信されたメールはムービーデータが埋め込まれたもので、
差出人はシーゲル・クラインからのものだった。
「(……議長?)」
14/18
内容を開くと自動的に再生された。そこには彼も知らない背景をバッグに、
普段あまり見た事の無い表情の議長の顔が有った。
あのいつもにこやかなシーゲルからは想像もつかない表情だ。
『……アスランくん、久しぶりだね。唐突なメールに困惑をしているものと思う。
だが、落ち着いて聞いて欲しい。これから話すことはとても重要な事だ」
シーゲルからのメッセージは20分にも及ぶ内容で、その内容は想像を絶する様な話だった。
この話を彼が信頼してアスランに告げたのは、アスランが彼の娘の婚約者という立場だからだろうか。
それとも、アスランだからだろうか。いずれにせよ、
自分の置かれた立場はこれまで以上に慎重に考える必要がある。
そして、その決定が自分の未来は勿論、国の未来すら左右するかもしれないのだ。
地球連合軍アラスカ本部。
ここは地球連合の中でも強力な戦力を保有する一大拠点だ。
この基地の総司令であるウィリアム・サザーランド大佐は、
昨今の状況に色々と納得の行かないものを感じていた。
一見すれば連合がZAFTを圧倒することは良いことだ。
これまで連合は敗戦に次ぐ敗戦で多くの将兵を失い、戦力差も大きく開き続けて来たのだ。
それが盛り返して来ていることは軍としては良いことに違いない。
だが、そこへ導いた人間が問題だった。
シャノン・オドンネルは彼らの拠り所としたブルーコスモスを表立って否定していないが、
その戦術はコーディネイターも有効活用した上での孤軍奮闘であり、
それにより絶大な戦果を打ち立てつつ有る。
このまま彼女がアラスカへ来る事になれば、間違いなくブルーコスモスは劣勢に立たされるだろう。
何より既に彼の後ろ盾であるはずのムルタ・アズラエルが、オドンネルの保護に動いているのだ。
彼の想像が現実になるのも時間の問題というものだ。
サザーランドはこの状況を打開すべく、アズラエルのライバルであり、
狂信的なまでの主義者であるロード・ジブリールに支援を求めた。
15/18
ジブリール側はこの話を承諾し、
サザーランド率いるアラスカ基地に対して支援を行う事をあっさりと約束して来たが、
ジブリールにとってもアズラエルの動きは座視出来ない内容だったのだろう。
サザーランドは自陣営が大きな戦果を打ち立てなければ、
ブルーコスモスは間違いなく衰退すると確信していた。
そのため、当初はアラスカを放棄してZAFTの軍勢を沈めるつもりであったが、
オドンネルという新興勢力の登場で、アラスカを捨て駒にしては後が無い状況に陥ったのだ。
アラスカから戦果を打ち立てる為にも新戦力の投入による戦果を焦っていた。
ジブリール側はサザーランドの申し出は渡りに船であった。ユーラシアを支配する彼だが、
大西洋連邦所属の新造部隊が大きな戦果を上げるにつれ焦りが出て来ていた。
「……君がそういうことなら、僕は考えを改める様促すまでだ」
ジブリールは状況を不利と悟った現状からの対処はとてもシンプルなものだった。
ブルーコスモスは確かにアズラエルを盟主とするレイシズム組織ではあるが、それは表向きの顔に過ぎず、
実際の彼らはブルーコスモスという名前に拘りを持っているわけではない。
飽くまで世界を掌握するシステムの一つなのだ。
そして、それは彼が立つものでもなければアズラエルがトップである必要も無い。
なぜならば、トップは他に居るからだ。
「5thブラザーがWWIIまでの世界を築き、ファミリー3がWWIIIを主導し、
この戦いも2シスターズ……いずれも一族の結束無くして成立しない歴史の必然。
アズラエルがいくらもがこうが、『我々』への抵抗は無駄というものだ」
彼の言う一族は世界のこれまでの『秩序』を築いた事実上の世界の王だ。
彼らは自らに抵抗する王家を駆逐する為にWW2で共産主義運動を作り出し、
それに対立する資本主義世界を主導する事で莫大な富を築いた情報と金融の巨人だ。
彼らは全ての情報と金融を手中に収める事で世界を自由に動かして来た過去があり、
その結果としてその後の戦争も彼らの意図する計画の中で起こされて来た。
つまり、これまでの戦争は全て管理された予定調和とでも言うべき終点が用意されていたのだ。
そもそもゴールの無い戦い程無駄なものはない。何事も終わりが有るから限度が設定される。
一族の存在はそうした限度を作り出す調停者であり、世界の管理人とでも言うべきだろうか。
人々はそうした「黒幕」の存在を良しとはしないものだが、
彼らが主導する事で得られた利益もまた無視できるものではない。
そして、ジブリールはそんな彼らに忠実に従う番人の一人だ。
彼は一族の目指す理想の実現の為であれば手段を選ぶ必要を感じない程度には心酔している。
そうした観点から見れば「主義者」のレッテルは彼からしても不服なものらしい。
「……さて、アズラエル。君の焦る顔が見物だよ。フフフ」
ジブリールは歴史を作り出した巨人のもとへと出発した。
「X07A-Vertrauen(フェアトラウェン)、並びにX08A-Erforg(エアフォルク)着艦しました」
カーペンタリア基地、モラシム艦隊ボスゴロフ級クストーへ2機の最新鋭MSが格納された。
モラシムの待ちこがれた「援軍」がこの二機の存在だった。
16/18
「失礼します」
姿勢よく入って来たのは赤服に身を包んだ若い少年だ。
襟には軍部でも独立した権限を持つ者に与えられるフェイスの襟章が付けられている。
「特務隊フェイス所属、アスラン・ザラです。
モラシム隊長、部下共々宜しくお願いします」
「あぁ、固いことはなしだ。ザラ隊長。俺はそういうのがどうも性に合わなくてな。
ZAFTはコーディネイターの優秀な判断力に委ねた階級の少ない軍隊ってことだろ?
……俺は軍人としての規律ってのが苦手でな、その点は良い軍だと思ってるよ。
あんたはどうだい?」
「……私は組織の一員として任務を全うするという事において、
どんな形でも全力を尽くすまでです」
少年の返答は模範的ではあるが、少年らしい「らしさ」が無くつまらない。
……どいつもこいつも胸くそ悪いガキ共だと内心思う彼だが、この時は心の中で思うまでにした。
優秀な事は結構なことだ。何より足付きを追いつめたというのだ。
お手並み拝見と決め込むもよし、上手い具合に利用すれば結果を出せるだろうという打算はあった。
そう思ってしまえば案外愉快な奴ではないか。そうすり替える程度には図太く生きて来た彼だ。
「そうかい。それなら俺とあんたの認識に違いは無い。……ってなわけだ。
ザラ隊長、俺は規律上はあんたに指図することが出来ねぇから、
お互い線引きをしようと思う」
「線引き……つまり、役割分担といったところですね。
わかりました。良いでしょう」
「そうかい。……でだ、水中は俺の本領を発揮する場所だが、海上はどうも苦手でな。
海上の敵はあんた等の部隊に任せることにしたい。引き受けてくれるか?」
「はい。こちらとしても、その方がやり易いです。お引き受けしましょう」
「よし。なら海上はあんた等に任せた。
具体的な作戦計画については後で会議を開いて決めるが、
このクストーの操艦計画は俺の専任だ。あんたの指図は受けない。
……あぁ、勿論、フェイスとして命令するってなら別だがな」
17/18
その後、モラシムとアスランはそれぞれの役割分担を細かく検討し、合意に達した。
部隊はモラシム隊が水中を、ザラ隊が海上の敵を相手にすることが決まった他、
足付きへの作戦計画も速やかに討議され決定された。
全ての算段がつくと、彼らは早速カーペンタリアを後にした。
「私をこんな所にずっと幽閉とは、なかなか素晴らしいことをしてくれるじゃない」
そう話すのは『本物』のシャノン・オドンネルだ。
相手はハリーとチャコティの2人だ。場所はVoyagerの拘束室だった。
フォースフィールド越しに話す彼女の迫力に、強く言えないハリーはしどろもどろだ。
そんな情けない彼の前にチャコティが立って答える。
「その件は済まない。色々とこちらにも事情があってね。
あなたの身の安全を確保しつつとなると、こちらにも都合がある。
こんな場所で申し訳ないと思うからこそ、あなたの要望には極力答えた」
「えぇ、そうね。お陰で私が昔読みたかった沢山の本を、
じっくりゆっくりと楽しく読書させて貰ったわ。
正直、あなた達の技術の底が知れないことは、この数日で十分に理解したつもりよ。
そして、ここがただの宇宙船でもないことくらいはね。でも、どういうことかしら、
替え玉まで作って私をここに置いて、あなた達は一体何をしようと言うのかしら。
まさか、あの破壊された宇宙船と関係あるの」
チャコティも彼女のジェインウェイに負けず劣らない頭の回転の良さに、
さすがに溜息が漏れた。とはいえ彼女は一応「客人」だ。
丁重におもてなしするのが『艦長』からの命令だ。
「我々はアレには何も関係無いことは言える。あれはアクシデントだった。
それ以上に判断はつかない。だが、あなたが想像する様な方向とは違う意味で動いている。
勘違いしてもらっては困るが、我々はあなたが思う様な宇宙人でもなければ、同じ地球人だ。
侵略のために来ているのだとしたら、あなたも乗ったシャトルの技術力を考えて貰えば、
何が出来るか分かるだろう」
「……そうね。だとしても私の考えを否定出来るわけでもないことは言えるわね。
技術があるなら、いつそれを使うかも自由よ。自由に動ける力があるということは、
余裕があるということよ。それは平和を保証しないし、間違いを犯さないとも限らない」
「そうだな。間違いは……無いように祈ってもらうしかないな」
18/18
副長の返答に横に立っていたハリーの方が驚いていた。
しかし、告げられた側は全く動じる様子はないどころか、目が据わっている。
「お生憎様、私は信心深くないのよ。
科学的に説明出来ないものに身を委ねる程愚かじゃないの。
出来る事は出来る限りやれる所までやるのが人間の文明力よ。
そうしなかったなら、私達の社会はどこかで止まってしまう」
腕組みをしながら話す彼女の姿を見ていると、まるで本物がそこにいる様に錯覚できた。
内心本物と話しているのではないかとさえ思える程だ。ハリーが動揺するのは無理も無い。
ジェインウェイという人物は、その話術と知謀でボーグすらも誑るのだ。
彼女の話をそのまま受け入れていては、7年もの長期に渡って副長は務まらない。
「(……まったく、どこまで似ているんだ。
彼女が1人いるだけでも……なのに、また2人だ。
今度のはパラレルな先祖ということだが、ジェインウェイは血で走るということか)
疑うことは仕方ない。我々があなたの考えを制止する事もできないからな。
だが一つだけ覚えておいて欲しい。我々はあなたの敵ではない。むしろ味方だ。
いや、仲間というべきだろうか。いずれ近いうちにあなたに改めて説明する日を設ける。
それまではゆっくり生活してほしい。こちらも出来る限りの要望は聞く」
彼女の目は据わったままだが、彼の話には真面目に返答した。
「そう。分かったわ。この光の壁を見ても、どうにかなるものではないもの。
ただ、説明を聞く日は楽しみにしているわよ。
面白くない説明だったら、ただじゃおかないわ」
彼女が不敵に微笑んだ。
2人は何か嫌な挑戦状を貰った様な気がして、悪寒が体を走った。
第37話終了、38話に続く。投下完了。有り難うございました。
規制で遅れてすみません。お楽しみ頂けましたら幸いです。では、また。
乙
本当に楽しめました
ジェインウェイ、アズラエル、ジブリールなど様々な人間がどんな智謀を魅せてくれるのか
そしてラクスがどうなるか等とても続きが気になります
多重クロス化し始めたか
もう駄目かもわからんね
カミーユスレ落ちちゃったんだな
もしもデストロイアが来たら
あえて言わせて貰おう、乙
☆ゅ〜
テスト
量産型牛先生
スタトレ イントゥダークネス見に行きますか?
「宇宙艦隊の掟、フルにガン無視な悪役キャラ登場」
(聞けばカーク陣営も「スポックがカークの窮地助ける為に掟破り捲り…(汗?なシチュあるとか?)
&「原作以上のフルアクション」に凄い期待。
牛先生
エタったか?…w
前述のカミーユスレ、見事に完結いたしました
ご報告だけでも
420 :
通常の名無しさんの3倍:2013/09/17(火) 10:01:22.23 ID:jx4Udr3R
お前らワークおはよう
ビール(キリッ)
関東ドライブ
書き込み
422 :
通常の名無しさんの3倍:2013/09/26(木) 17:20:38.22 ID:vPgZGLW2
オマエラ
中HIGHドライブ
びーるうまい
バイト
SSこない…
また規制されてるんですが、書き込めるかなぁ。庭に来てから規制ばっかり。
解除されたら書き込みたいんだけどー。
Star Trekの新作映画は見に行く暇がありませんでした。(涙)
1/16 (また規制されちゃう?)
第38話「雨」
マラッカ海峡に到達したアークエンジェルはゆっくりと航行していた。
オーリーによって調整されたレーザー核融合炉は、
これまでより高い高度を継続して航行出来るが、
エンジン出力音を押さえるために着水してゆっくりと進んでいた。
アーガイルのセンサーには周辺1000kmの識別情報が表示されている。
周辺には赤道連合の艦艇がかなり遠巻きに陣取っている他には動きらしい動きは無い。
大洋州連合の艦艇は現状では動いておらず、勿論ZAFT艦の影も無い。
赤道側の動きはこちら側を認識しての行動のため、問題となる様な動きではないが、
ZAFT艦がいないのが気になった。
「大尉、妙だと思いませんか」
アーガイルが定時報告する。
バジルールもあまりに静か過ぎることに不安を感じていた。
ブリッジは操舵席にノイマンがいる他は、艦長席にバジルール大尉が座り、
アーガイルがセンサーモニターをチェックしている以外には誰もいない。
アークエンジェルのシステムはかなり集約が進み、
操舵以外は艦長席とCICに一人ずついれば足りる程度までにシステムがアップデートされていた。
平時はCICがセンサー周りを一手に引き受け、
艦長席でその他の制御を全て請け負える様にしたことで、
ブリッジの人員のローテーション計画が大きく改善した。
本来であればノイマンも休暇が与えられている日だが、
マラッカ海峡という難しいルートを通ることもあり、一番慣れている彼が席に着いている。
「センサーが艦影をキャッチしない以上、我々が知る事が出来るのは目視だけ。
目視での観測でもZAFT艦は確認されていない以上、妙だとしても流す他にあるまい」
「……そうですね」
「……だが、お前の不安は私も同感だ。
これが思い過ごしであれば良いのだが、その為にも万全の体制を……ということだろう。
しかし、インドの寄港でもそうだが、我々は本当に休み知らずに働いている。
この様な形でも休むことを徹底しなければ、本当に必要な時に対応が出来ないのも現実だ。
……大佐…じゃなかった、准将閣下も、あれだけ精力的に動いておられるが、
しっかりと休みをとられている。有能な人間は自己管理も大切にしなければ続かない。
それを実践されているのだ。我々に異論を挟む余地はあるまい?」
おぉーー!!書き込まれました!
大変遅くなりましたが、とりあえず9/16まで書き込みしておきます。
それでまた時間をあけた時に規制入ったらごめんなさい。
2/16
そう、このローテーションはジェインウェイからの命令によるものだ。
インド寄港でクルー達に休暇を出した彼女だが、
クルー達は自分達の持ち場で結局作業してしまい、
折角の休みも普段出来ない仕事をしようと、
彼らは自発的に仕事をしていたのだ。
そんな彼らの自発的な行動までを止めてしまっていては、
全体の士気にも関わってくるため、個別の事例には目を瞑っていたが、
それでも無視出来る状況ではなくなって来ていた。
というのも、この数週の間に医務室へ行くクルーの数は日増しに増えており、
それらの殆どの理由が過労ということだった。
彼らには真面目に全ての仕事を協力し合って進めるチームワークがある一方で、
ワーカーホリック的なまでの集中が徐々に蝕みつつあったのだ。
バジルール自身、クルー達が働き詰めに働いていることを見ていた。
「システムも強化されて操縦自体はこの3人でも出来る程度にはなっているんです。
最小限の人数で稼働させられる様に訓練をしていると考えましょう。
出来ればこの状況で戦闘にも対処出来た方が、たぶんずっと危機に強くなれます」
ノイマンの言葉にバジルールは微笑むと、
「そうだな」
……と、珍しく素直に同意した。
その反応にノイマンも前方を見つめたまま口角を僅かに上げた。
そんな2人をみていたアーガイルは穏やかな笑顔を向けつつ、
「リア充爆ぜろ!」
……と心の中で言っていたかどうかは、定かではない。
気象レーダーは低気圧の支配する領域に入りつつ有る。
天候は徐々に曇り空になろうとしていた。
「今夜は雨になりますかね」
「そうだな。ジオスキャンカイトが使えなくなる。
警戒の哨戒番の命令を出す予定だ。
如何にアークエンジェルきっての大天才も、自然の力には勝てないらしい」
3/16
アーガイルの問いにバジルールは溜息を吐きつつ言った。
自然には勝てないという至極真っ当な話といえばそれまでなのだが、
これまでの神がかったハンセンの活躍に密かに期待もしていたのだ。
そんな彼女にも人間らしい限界があった事に微笑ましいものを感じる一方で、
悩ましい現実を思うのだった。
フレイはシミュレーションルームで訓練に励んでいた。
次の戦闘ではフレイが出撃する予定で準備が進められている。
彼女の乗機はジーニーだ。
シミュレーター上ではピンク色に塗装されている機体を操縦する。
「ジーニー、フェイズシフトダウン、マリンストライカー稼働開始」
ジーニーへ命令後、シミュレーションステージの艦から海中へ飛び込んだ。
海の中は静かで真っ暗な闇が待っていた。
センサーには早速2機のグーンが迫っている。
ジーニーはトンファーを構える。
グーンのうちの一機が高速で迫り魚雷を発射してきた。
フレイはそれを紙一重で躱してグーンの去り際に一撃をくわえる。そして、
素早く振り返ると魚雷を撃ち込んだ。程なく衝突し爆発の衝撃が伝わる。
そこにもう一機から連続して2発の魚雷が迫る。
フレイはトンファーの歯を発熱させると、
それは一瞬で水蒸気爆発を起こして衝撃を伝え魚雷が誘爆する。
爆発で泡立つ海中をスクリューの出力最大に設定して突き抜けグーンに迫る。
相手側グーンはクローで応戦してくるが、フレイは左手のトンファーでそれを受け止めると、
右手のトンファーでグーンのボディーに突き刺した。そして、レーザーを起動して焼き切る。
鈍い内部爆発が伝わり、グーンは力なくぐったりとした。
ジーニーがそこから遠ざかると、程なくしてグーンは爆発した。
「……ふぅ、任務終了」
シミュレーターが採点結果を表示する。結果は85点。
その結果に彼女は眉を寄せ唇を噛み締めると、
ヘルメットを脱いでシミュレーターのハッチを開けて外へ出た。
すると、そこにタオルと水筒を持ったイチェブの姿があった。
「お疲れ様。シミュレーション観ていたよ。上手くなったね」
彼女は驚きつつ、頬を赤らめながら彼からタオルと水筒を受け取った。
戦績が悪かったことに皺を寄せていたのが嘘の様に。
「有り難う。イチェブさん」
「いや、僕も海の中の戦闘はまだ経験が無いから、
君の戦闘を見せてもらっていたんだ。おかげで良い勉強になったよ。
……ここの所、整備やセブンの手伝いで忙しくて、
殆どここには来れなくて。それに、いまいちみんなと話すのは慣れなくて」
4/16
イチェブはここ暫くはずっとエンジニアとしての仕事に追われていた。
セブンによるデュエルのオーバーホールも開始されたため、
彼の持ち場が触れなくなったこともあり、これ幸いと周りは彼を引っ張り合った。
セブンの手伝いに始まり、整備チームの助っ人から、
医務室でのコーディネイター患者の診断、厨房での料理等、
彼は行く先々で重宝がられていたため、シミュレーターに乗る機会はめっきり減っていた。
さすがの彼もこれだけの仕事を全部こなすのは大変だ。
ここに来たのはそうした仕事から一時的に身を隠すため、……とでも言うべきだろうか。
触れる時間が少ないとはいえ、技能を維持する為に脳内シミュレーションをする等、
彼なりに対応はしてきた。だが、彼女のしていた様な海中での戦闘等、
経験の無い戦闘を想定したシミュレーションは難しい。
彼の中にはそうした新しい事態への対応に対する焦りも生まれていた。
「そうなんですか。でも、イチェブさんは何でもこなせて凄いです。
私には何もできないから、ずっと訓練する以外に無くて、でも、これだけ訓練していても85点。
自分ではこれ以上無いくらいに頑張ったつもりなのに」
フレイはずっと訓練に没頭していた。というのも、
初戦でトールは実績を上げなかったとはいえ、
海中で二機のグーンと対峙しながら無事無傷で帰還したのだ。
それと比べて自分は初戦で傷付き、助かったとはいえ味噌が付いた様なものだ。
そんな彼女の言葉に、イチェブは彼女の肩にそっと手を置いた。
「大丈夫。コンピューターは全てを想定できない。
むしろ不確定な要素にこそ意味がある。
コンピューターの想定通りに動く事が満点に出来たとしても、
それが実戦で必ずしも活かせるわけじゃないんだ。
僕は君の持つ人間的な不確定要素の方が重要だと思うよ」
「……イチェブさん」
「良かったら、今度一緒に対戦しよう。お互いに色々と勉強になると思う」
イチェブの穏やかな表情につい見とれてしまったフレイ。
彼女は自分の顔の熱が上昇するのを感じて焦った。
『セブンよりイチェブ。至急開発ラボへ出頭する様に』
イチェブのインプラントにセブンから直接通信が入る。
5/16
「あ、ごめん。仕事を思い出した。
僕、行かなくちゃ。じゃぁ、今度ここへ来る時は呼びかけるよ」
「はい、待ってます」
イチェブは穏やかに笑いかけると、僅かに手を上げて彼女に別れを告げた。
彼女はシミュレーターの前で棒立ちのまま、彼が部屋から出て行くのを見送った。
その頃、ハンガーでも忙しく働く少年の姿があった。
そこに彼の友人が笑顔で駆けてくる。
「キラーーーーー!」
「トール!?どうしたの。確か、今日は非番じゃなかったの」
「へっへー、冷やかしに来た」
キラはトールの屈託の無い笑顔ににこやかに顔を向けると、作業の手を止めた。
そこにマードックの声がする。
「おい、ぼーず!お前も休んで良いぞ!
おまえ、ずっと出ずっぱりだろ?整備は俺達の方でやれる」
マードックは若い2人の学生らしい笑顔を見て、
久々にキラが少年の顔をしているのを見た気がした。
そんな2人の姿に、本来は学生なのだからその世界に返してやりたい。
そう思ったのだ。
「すみません、マードックさん」
キラは一礼をすると、他の作業員へも手を振って知らせ、
トールと共にハンガーを出ていった。
そこに近くの若い整備クルーがマードックに言った。
「良いんですか、アレの整備遅れているんじゃなかったんですか」
彼の言うアレとはイージスのことだ。
イージスのシステム整備はキラが行っている。
セブンの提案でキラの「有機的システム開発力」を活用して、
より機体とフィットしたOSの開発を目指しているためだ。
そのためキラはシステム整備に連日追われている。
インドではインド軍用OS開発とも並行して行われていたため、
キラは寝る暇も惜しんで開発していた程だ。
6/16
「良いんだよ。あいつは俺達よりずっと働き過ぎだ。
ここ暫くあいつがあんな笑顔をする所を見た事ねぇ。
学生って奴は学生らしく馬鹿やってりゃいいのさ。
戦士にも休息は必要って言うだろ」
「うは、そんな良い事言って良いおじさんしちゃうとか、らしくねぇ〜」
普段のマードックからは信じられない様な台詞に、
若い整備クルーは驚きと共にふざけた表情で彼を茶化す。
「なんだとぁ!?おらぁ、査定下げっぞ」
「うげ、マジっすかぁ!?パワハラっすよぉ、それぇ」
「文句言うな。俺達と違って、アイツらは戦いにも出るんだ。
……そこんとこ、わかってやれよ」
「……そっすねぇ」
若い整備クルーは敬礼をして足早に走り去って行く。
マードックは苦笑いしつつ2人が去った通路の方を振り向き、
再び向き直ると自分の仕事に戻った。
横並びに通路を歩く2人は歩きながら話していた。周囲からは様々な音が聞こえてくる。
最も大きいエンジン音の他に規則的な機会音が幾つも混ざり合い、合奏している。
防音設備も行き届いていたはずの艦内だが、このエリアだけは例外だ。
「しっかし、ここはどんどん変わって行くよなぁ。
よく言えば飽きないくらい目新しいけど、悪く言えば雑然としているというか……」
「そうだね」
ハンガーへの通路には、セブンのラボ等沢山の新しい作業スペースが増設されている。
それらの入口は他のアークエンジェルの通路と違って異様な程に統一感が無いが、
新しい技術がどんどん導入されており、中でもリサイクル関連技術の進歩は著しい。
「ま、ハンセンさんの天才っぷりは半端無いからなぁ。
たぶん、ここの研究って世界でも1・2を争えるんじゃないか?」
「そうかもしれないね。僕もハンセンさんと仕事していると、
時々分からない事が出てくるんだ。僕、正直、大学でもそんなに困った覚えはないんだけど、
ハンセンさんとの会話には困っちゃうかな」
「まじで!?おまえ、めっちゃ頭良いのに、それでも理解出来ないって宇宙人だろ!」
キラの話にトールは正直に驚いていた。
キラから勉強で困るという言葉を聞く日が来ようとは思ってもみなかったのだ。
秀才っぷりで有名な彼でも困る程の頭脳……と聞くだけで、彼には十分凄さが伝わった。
そんな彼の反応に苦笑混じりな表情のキラ。
「……ん、あー、トールの場合は、もう少し勉強した方が良いと思うよ」
「うっせ。俺の事は置いておけって。つか、俺達どうなるんだろうな。
このまんま軍に居続けることになるのか、それともオーブで帰る事になるのか」
7/16
キラの頭の中では既に結論は出ていた。
否応無く選択せざるを得ない現実を。
「……それは、降りれたら良いけど……僕等は関わり過ぎているよ。
そんな僕等の事を考えているから、あの給料になったんだと思う。」
2人の頭の中ではゼロが普通の生活では到底集まらない数が並んでいた。
その額の意味するところが本当に悩ましい。
「……だーよなぁ〜。正直、あの金額はすげーって思ったんだけど、
何処で使えるんだか。あれを自由に使える日が俺達にやってくるのか。
……それが問題だよなぁ。あー、欲しいものはいっぱい有るんだぜ?たぶん、
俺のこれまで考えていた欲しいものリスト全部買っても余っちゃうくらいなんだけどさ、
通販にしたって、……こんな軍艦の中じゃ即日配達とかないしさぁ……」
キラはトールの反応にクスりと笑った。
確かに軍艦に即日配達は有り得ない。しかし、
こんな非日常でも普通の生活を思い浮かべられるのがトールの凄いところであり、
良いところだ。
「じゃぁ、トールはオーブに行ったら、通販生活だね?」
「だな!あははははは」
2人の笑い声が響く。
彼らは食堂へと歩いて行った。
雲行きの粗さが増し雨雲が辺りを支配する。
ついに予想より早くポツポツと雨粒が艦を叩き始めた。
艦長日誌
雨脚が強くなりそうだ。私達はマラッカ海峡を通っている。
幸いソナーの方は順調に稼働しているため航行に支障はないが、
ジオスキャンカイトは雨天では使用出来ないため下ろす他になかった。
この状況で敵に襲われる可能性は考慮しているが、出来れば未然に防げる手を打ちたい。
そこで、哨戒機として待機させているスカイグラスパーに、
カイトの機能の一部を載せることにした。
これによりスカイグラスパーを道先案内として利用する事ができる。
出来れば使う事の無いよう願いたいところだ。
8/16
「失礼します」
「どうぞ」
ドアの向こうから入って来たのはオーブ市民団代表のスノマン・ポポヤマ氏だ。
彼はヘリオポリス議会の議員を務めていた政治家で、通称宇宙人と呼ばれている。
政治家としての彼の手腕は正直な所……かなりの疑問符が付く所だが、
彼の八方美人で馬耳東風な性格は良いサンドバッグ役として機能している。
お陰で市民とクルーの調整役というより、調整弁としては有能と言っておこう。
「どうも、ポポヤマでございます。
大佐……あーではなくて、准将に昇進されたそうですね。
おめでとうございます。准将閣下」
「これはこれはどうも。わざわざご挨拶に来て下さるだなんて、
本当に申し訳有りませんわ。本来でしたらこちらから出向くべき所ですが、
忙しさを理由に疎かにしたことをお詫びします」
私は立ち上がって彼を歓待すると、椅子へ案内した。
彼は私の反応に、私の側の非を否定して自身の用事でたまたま来ただけだと述べた。
私達は対面する形で椅子に座り、話を始めた。
「それで、ご用件というのは」
「はい、これは私の個人的な用件なんですよ」
「左様ですか。個人的なというと」
「はい、オドンネルさんの会社へ投資をしたいと思いまして」
「投資を?まぁ、我々としては、その申し出は有り難い話ですけど、
それは直接株式を購入されるであるとか方法があるのでは。
それとも、そうした意味ではない何かをお望みということかしら」
「……鋭いですねぇ。私の実家であるポポヤマは事業をしておりまして、
その規模は世界でも屈指の実績を上げていると断言できます。しかし、時代が変わり、
モビルスーツが我々の業態に決定的な変化を促すとまでは行かないでしょうが、
相応の修正を余儀なくされる事を予感させます。
そこで、私はあなたの会社に投資をしたいと思っております」
「……つまり、オーブのブリッジ・スットーン社が、
私の会社と業務提携して大きく事業を展開したい。……ということかしら」
「お察しの通りです。我々が協力できるのは素材分野になると思います。
この船には私の会社の技術者も多数ハンセン女史の研究開発に協力していますが、
彼女の開発したカーボンドは素晴らしいものだと、皆口々に話しています。
そこで、その素材製造権を我々で買いたいと考えています」
9/16
私は彼の話を聞いて、今後の状況を想像した。
オーブは我々の入港を拒否する事は想像に難くないが、
カガリ嬢の他にポポヤマというカードの存在は大きい。
ポポヤマはオーブの中でもかなりの大企業であり稼ぎ頭だ。
そのポポヤマが私と業務提携をしている状況で、彼らは拒否出来るだろうか。
彼らとしては一つでも多く産業技術を欲している加工貿易立国である。
宝の山を入手できる口実として、ポポヤマの存在は彼らとしても無視出来ない。
何より我々からの技術を合法的に入手できるのだから、そう悪い話でも無い。
だが、我々が一方的に提供する側に立つのだけは容認出来ない。
「良いでしょう。では、その投資は御社の議決権付き株式を、
21%譲ってもらえるという条件で如何でしょうか」
「株ですか。現金での投資ではなく、株で良いのですか」
「はい。お互いに痛まずに業務提携を進めて工場生産に結びつけるには、
最良の方法だと思いません?」
「……なるほど、我々は丸々現金を設備投資に振り向けられる。
良い話だ。有り難うございます!」
「いいえ、こちらこそ」
こうして「我が社」の商談は成立した。
私は結果的にポポヤマの議決権付き株式を21%
譲渡してもらう権利をタダで入手した事になる。
……ポポヤマ氏には悪い事をしたが、これくらいの保険は貰っておかなくては。
ポポヤマ兄弟が持つブリッジスットーン社の株式は全部で50%で、
それぞれ兄スノマン氏が25%、弟ランドマン氏が25%を所有し、
他に25%を会長が保持しているため75%の自社株を保有している計算だ。
今回兄スノマン氏が手放す分が彼の持ち分の25%の内の21%。
この持ち分を売り払ったとしても、全部で54%を保有しているのであり、
ポポヤマが攻撃を受ける可能性は排除出来る計算なのだ。
彼は宇宙人と言われ流され続けてきた人物だが、
最後に一族をアッといわせる結果になるのだろうか。
……そればかりは保証できないが、なかなか思い切りが良い話なのではないか。
支援
10/16
「なに!?バスカークが食中毒だと!?!」
バジルールが眉間に皺を寄せて苦った。
それを進言するアーガイルもばつが悪そうな表情を隠せない。
「いや、その、天ぷらを食べた後にスイカを食べたらしく、
それで食中りになってまして。数時間安静にしていれば良いという事ですが、
今すぐは難しいというのが医師の診断でした」
彼女はあまりにも馬鹿らしい話に目眩がしそうな気分だったが、
ここに艦長も准将もいないことが正直救いだった。
「……わかった。具合の悪い者に無理をさせる必要はない。
代わりの任務は誰になっている」
「はい、アルスター軍曹です」
「アルスター?……彼女は未経験だろう。フラガ少佐はどうした」
「少佐は本日非番です。
そこで、事前にこちらで残っているアルスターとケーニヒの比較をした所、
アルスターの訓練結果が良好と判断し、
彼女にローテーションの先行をさせる事にしました」
「そうか。まぁ、上がるだけだ。
もし攻撃があれば他の機体も出撃させるから大丈夫だろう。
……まったく、だろうだとか、かもしれないは使うべきではない言葉なのだがな。
……わかった。彼女に早速準備をさせ、警戒にあたらせろ」
「は!」
バジルールは自分で言葉を使いながら自重した。
実際、彼女の言葉通りであり、
普段の彼女からすれば決して容認出来ないと考えていた言葉遣いだ。
しかし、この船での実務に追われる中で、
理想と現実の狭間を行ったり来たりする自分に葛藤し、
そして折り合いを付けることの連続であった。
彼女の自重はそうした経緯も含んだ自分自身の未熟さを恥じた、
悩ましさを吐露したようなものだ。
11/16
「……足付きの監視網が広かろうと、追わねばならぬが俺の務め……と」
モラシムは艦橋の艦長席に深々と座りながら、前方のモニターを凝視していた。
クストーは機体の補充を受けた後、ザラ部隊との正式な合流の末に動き出した。
目的は足付きの撃破だが、司令部側は唐突に足付き部隊に対する注文を寄越してきた。
それがまた難題なため、彼は内心腸が煮えくり返る程に怒りが込み上げたものだが、
その為にやってきたザラ隊の最先端の機体を見て、司令部の本気を悟った。
これをクリア出来ればかなりの昇進は間違いないだろうが、
これだけの戦力で撃破出来ないならば、ZAFTに明日は有るのだろうかという不安も有った。
「撹乱出来れば良いが、それで駄目なら駄目元か」
補充された戦力は確かなものだが、足付きには謎の製造設備があると見られる。
その製造力がこちらの側にどのように対応してくるか分からないのだ。
一度でも戦えば、相手は必ずその攻撃に耐える装備を整えてくる。
深追いすれば損失は免れないし、だからと追わなければより強くなる。
引き際が肝心ではあるが、足付きに時間を与えるのは得策ではないのだ。
これが彼の得た答えであり、その言葉は自虐的でも謙遜でもなく現実なのだ。
……とはいえ、まだ作戦は始まったばかりだ。
その頃、アークエンジェルの艦橋では一人の少年が恐縮していた。
「ごめん、僕のせいで」
カズイは通信でフレイに謝っていた。
彼女の代わりに艦橋勤務をすることになった彼は、
ミリアリアの通信システムを借りて彼女に話していた。
「ホントよねぇ。なんであなたの代わりにあたしが乗らなくちゃいけないのかしら。
……なんて、気にしてないわ。こういう機会でも無かったら、
違うものに乗る経験は出来ないでしょ?良い勉強だと思っているわ。
あなたはしっかりと私の代わりに仕事をするのよ?いいわね?」
「ホントにごめんよ。あ、スカイグラスパー、たぶんジーニーと比べたらずっと古い作りだから、
色々と気をつけて使ってね。あれでも僕の大事な機体なんだから」
彼の発言は意外だった。
思わず彼女の目が開き、眉が上がる。
通信機越しに話す彼女だが、思わず彼の姿を想像した。
「あら、そんなに大事に思っていたの?」
「そりゃ……僕の専用で用意されてるのに、こんなじゃ皆の役に立てないし」
「……気に病む事は無いわ。あなたって、いつもよくみんなの事を見てる。
たま〜に頭に来るけど、よく見てるからグッサリ刺さる言葉を言えるんでしょ。
あなたはちゃんと役立ってるわ」
「……フレイ、気をつけて。えーと、スカイグラスパー、発進、どうぞ」
「フレイ・アルスター、スカイグラスパー、行きます!」
12/16
強い雨の降る中、フレイの搭乗したスカイグラスパーがリニアカタパルトから発進する。
彼女は既に何度かシミュレートしている。この発進も想定内だが、
実際とシミュレートではやはりGの掛かり方が違う。
「(ジーニーとは段違いのスピード。戦闘機ってやっぱり速いのね。
でも、上昇してしまえば旋回滑空に切り替えられる。それまでの辛坊よ)
エンジン良好。システムオールグリーン。スカイグラスパー、
ジオスキャンシステムスタンバイ」
モニターがシステムの起動を開始する。
スキャンエリアモニタがサークル状に表示され、
周囲1000km範囲の索敵情報を表示する。
だが、その時フレイはモニターに表示された情報に驚愕した。
「……え(何よこれ、エリア内にZAFTマーカーが1、2、3、4つも!?
どうなってるの)こちらスカイグラスパー。アークエンジェル、情報を見ましたか」
『……ジジーッジジー……こ…ら…アー…ジェル……リン……が正常……して…い』
「(まずいわ、ジャマーが戦闘濃度で働いている。
って、それより通信システムのリンクが上手く行ってない。
手順間違っていたかしら!?え、どうしてこうなるのよ」
フレイはふと思い出していた。
先程発進前にカズイが言った言葉を。
「……古いシステム……そうか。
ジーニーと違ってマニュアルで通信を調整しないといけないのね。
こんな雨だもの、普通の手順と条件が違う。
オートで働くのはシステムの起動まで。そういえば、
ハンセンさんもそんなこと……あぁ、もう!どうして!
私の馬鹿!……って言ってる暇ないわ」
彼女は通信のリンク接続の調整を試みた。
その時、アラート音が鳴り響いた。
13/16
「何!?」
スキャンエリア内マーカー4つの内、
1つがスカイグラスパーのすぐ近くまで迫っていた。
晴天の雲上からフレイは急降下して荒れる雲の中に機体を沈めた。
マーカーのうち3つはアークエンジェルの方を目指している。
早く知らせなくてはいけないが、その前に自分の機体の無事の方が危うい状況だ。
「敵のスピード……ZAFTのディンにしては有り得ない速度。
通常の3倍以上はあるわ。何なのこれ!?」
その時、彼女の脳裏に低軌道会戦の時の話が思い出された。
僅か1機のMSに終盤大きくひっくり返されたという事実。
白銀の悪魔がやって来たのか。
「……冗談じゃない。あんなものにやられてたまるもんですか。
幸い、この子も基本性能は上がってる。装甲は紙同然でも、
スピードでは負けないし、攻撃力も多少は上がってるから!」
武器システムを表示する。
ブリッツバルカン2門(30mmフェイズシフトコーティング弾装填型機銃)
ブリッツシューター(フェイズシフトコーティング型ホーミングミサイル)両翼2発ずつ。
これらはいずれも対フェイズシフト型MSへ対抗するために開発された武装だ。
従来型のMSは勿論、通常兵器では対抗不可能なフェイズシフト型に対しても
貫通できる性能を持つ。
既にフォールディングで採用されているブリッツシュトラールの派生型だ。
ミサイルの追尾はGPSの代わりにジオスキャンシステムを利用する。
敵はこちらに気付いているのかわからないが、見つかるのは時間の問題だ。
ならば仕掛けるのなら先手必勝しか道はない。
先に仕掛けて傷を負わせてから逃げるに限る。
何より、無傷の敵から追われること程大変な事は無い。
「悪いけど、一気に目つぶしさせてもらうわ!」
支援
支援有り難うございます。
14/16
その頃アスラン達ザラ隊は、モラシムとは別に空を進んでいた。
ニュートロンジャマーキャンセラー搭載型のエアフォルクとフェアトラウェンは、
空をほぼ無制限に飛び続ける事が出来る。
実際は一定の補給が必要ではあるが、この作戦には十分な時間があると踏んでいた。
「(……イザークは熱くなり過ぎなければ良いんだけどな)
……足付き予想ポイント通過。目標確認出来ず。引き続き策敵ポイントの捜索にあたる」
アスランの搭乗する深紅に輝くエアフォルクは、対艦用大型ビームソードを装備する他、
飛び道具等地上戦闘で威力を発揮する装備を搭載した機体だ。
ZAFTの核分裂炉搭載型MSとしては8番目に開発された機体であり、
フラッグシップ機の一つと言える。
その時、唐突にアラートが鳴った。
モニターには後方からの攻撃と表示されているが、わからない。
強い衝撃が走る。
機体後部エンジンノズルにミサイルが一発命中。
PS装甲は働いていたが、攻撃を貫通してノズルの一方が停止した。
ダメージコントロールシステムが機体バランスを安定させるが、
再度の攻撃アラートが鳴り響く。
「二度はくらうか!」
後方へ振り向き様クラスターマキビシを発射。
敵のミサイルはマキビシに接触して爆発した。
本来であれば上空で撃つものではないが、相手のミサイルを迎撃するには丁度良い。
雲間から敵機が見えた。
「戦闘機!?……馬鹿にしてくれる」
ルプスビームライフルを構え発砲する。
彼はわざと敵の機体を外しながら攻撃する。
15/16
「なんなの!?ヘタな鉄砲って奴!?そんな攻撃って、きゃぁ」
エアフォルクからの攻撃は微妙に外されていたが、
同時にスカイグラスパーの進路も阻まれていた。
彼の攻撃は彼女の進路を巧妙に塞ぐ様に誘導していたのだ。
「こい、連合機。傷を負わせた分は払ってもらうぞ」
エンジン出力が落ちた分は行動で補う。
アスランは持ち前の技能を駆使して彼女を自分の所へ誘い出す。
接近戦に持ち込めればこちらのものだ。しかし、
彼女もただ黙ってやられる程にはおしとやかではない。
「(……アークエンジェルとのリンクは無理ね。まずは生き残ることを優先。
そのためにはコイツを何とかいなす他に無い。エンジンはもう片方を塞げたら)
賭ける!」
フレイはエアフォルクに突進を始めた。
アスランは唐突に逃げ回っていた敵機がこちらに突進してきたのを見て驚いた。
「気でも触れたか!?そういうことなら、斬ってやるさ」
対艦ビームソードを構えて待ち受けるエアフォルク。
スカイグラスパーはバルカンを放って急上昇を始めた。
アスランはビームソードを構えてバルカンをそのまま受けたが、それがいけなかった。
PS装甲によって弾かれるはずのバルカンがメインモニターを破壊し、
装甲を強かに撃ち抜いたのだ。
「くそ!!このままやられてたまるか!!!」
彼は咄嗟に脇腹のクナイを手に取ると、感で投げ放つ。
それはスカイグラスパーの片翼を貫いた。
支援
16/16
「きゃぁ!!!」
急激にバランスが失われる。
きりもみ状態になりつつ急降下するスカイグラスパーに、
メインカメラ映像を失いつつも、目視に切り替えてエアフォルクが追って来た。
半ば意識が遠のきそうになりながらも、彼女は必死に体制を立て直そうと操縦桿を握る。
その時、視界に一瞬何かが見えた。
「(……島!?)こんな所でやられてたまるもんですか」
「逃がさない」
「しつこいわねぇ、しつこい男は大嫌いよ!」
なんとか立て直した彼女は、急降下させて水面すれすれに飛ぶ。
それを追ってエアフォルクも降下してきた。
急速にエアフォルクが迫る。
片翼を撃ち抜かれてバランスが崩れたスカイグラスパーではスピードは出せないが、
幸いそれは相手も同じであり、エンジンを損傷した敵機もそう速度は出ていない。
彼女を追うエアフォルクの中では、アスランが照準を絞っていた。
スピードではともかくとしても、MSであるエアフォルクの火力には勝てない。
このままでは捕捉されるのは時間の問題だ。その時、
「何だ!?」
唐突にエアフォルクのエンジンが爆発した。
もう片方のエンジンも負荷に耐えられず暴発したのだ。
その衝撃でエアフォルクは大きくバランスを崩し、
姿勢制御もままならず水面を滑る様に落ち込んだ。
フレイはラッキーと思ったのも束の間、自分の機体も上昇を掛けられず、
このままでは島に激突してしまう。
急制動を掛けて必死に減速させる。なんとか減速が間に合いそうだ。
彼女は安堵して落ち着いて機体を制御すると、島の岸辺に止める事に成功した。
とはいえ、この状態では二度と飛ばせないのだが。
仕方なく非常用の薬箱と食料等を取り出して島に上陸した。
天候はとてもじゃないが晴れやかとは言えない曇り空。
半ば自分の今後を暗示する様で気味が悪い。
「はぁ、どうしてこうなっちゃうのかしら。
やだなぁ。虫とかいっぱいいそう……」
彼女はそう呟きながら、島を探検する事にした。
第38話終了39話へ続く。
規制されてたり、仕事も忙しかったり、なんだか伸び伸びですみません。
とりあえず、お楽しみ頂けましたら幸いです。Pixivの方に少しずつログを
載せたりもしてます。規制が続けば前後しちゃうかも。支援有り難うございました。
ポッポ山wwwwwwwwブリッジスットーンwwwwwwwwwワロタwwwwwwwww
投下おつおつ
乙
また読める日が来て嬉しいです
445 :
通常の名無しさんの3倍:2013/12/03(火) 17:47:49.41 ID:o13/2SzK
立てようと思ったがスレ立て規制も回避できなくなってるのな>●
しかもStyleから乗り換えたXenoでdat落ちしたスレダブルクリックしたら再読み込みしやがってログも消えたしorz
せっかく投下があっても2〜3レスしかつかない様だし、そんなスレ立ててもなぁ
ここも一緒だろ
そんなこと言いだすから雰囲気悪くなって過疎るのさ
それが目的かも知んないがな
未だに●使ってる奴がいる事に驚き
自殺願望でもあるのか?
あれは雰囲気が悪くなる以前の問題だがなぁ
何か嫌われてんのかい、あのSS?
投下があってもスレがお通夜だったぞ
それはちょっと上に投下されているSSのことですか
量産牛せんせー・・・なんか近況でも一言―っ
1/32 こんばんは。今年最後の話の投下にやってきました。数日に分けて少しずつ投下出来たら。
453氏ご要望の近況としては、ボーナスも出てまったりと暮らしている感じでしょうか。
車買いたいなと探してます。新車じゃなく中古ですよ。税金ネタが話題になってますが、
軽じゃなく普通車で探してます。サイズはフィットからフィットシャトルサイズまでかな。
フレイネタでは他の作者さんが色々とやってる方がいますが、戦うフレイは結構好きです。
私のフレイもどちらかと言えばそっち方向ですが、弄っていて楽しいキャラですね。彼女。
……カテジナさんも壊れなかったら、違う道があったんだろうか?(カテジナルート!?)
第39話「無人島の2人」
島を歩き始めたフレイは、次第に暮れ行く空模様を眺めながら溜息を吐いた。
雲行きも悪く、上空はすぐにでも雨が降りそうで、
どことなく自分の気持ちを反映している様で気味が悪い。
海岸付近の岸壁を歩く自分の姿を、岩の窪みに貯まった水が映し出していた。
父を亡くし、母はもう遠い昔に亡くなり、自分に残された肉親は遠い親戚程度。
蝶よ花よと育てられ、ナチュラルといえども恵まれた容姿に生まれた彼女は、
目前の自分の姿をどうして想像出来ようか。パイロットスーツに身を包み、
無人島に不時着して非常食と薬品を担ぐ現実が、
ふと、とてもおかしく感じられ笑いが込み上げて来た。
「あは、あははははは、うふふ、あははははは……」
笑いながらも頬を伝わる熱い流れ。
なんでこんなにおかしいのに涙が出てくるのだろう。
涙が出る程おかしいなんてどうかしている。
でも、これを笑わないわけにいきますか。笑うしかない。……笑えないけど。
そんな思いを抱きつつ、ただ彼女は高らかに笑った。
艦長日誌
我々は豪雨の直中で彼らと交戦することになった。
最も我々の警戒能力が劣るこの時にやって来たのは偶然だろうか。
私は急ぎブリッジに入り状況を確認した。
「准将、申し訳有りません。対応が遅れました」
私が入るなり、すぐに声を上げたのはバジルールだ。
彼女は敬礼してその後冷静に状況を報告する。彼女の報告によれば、離水し上昇を掛けた後、
上空から攻めて来たZAFT機に対応すべく、デュエルとストライクを出撃させたという。
敵は確認出来ている範囲で3機で、全部新型だという。
2/32
「ここに来て新型が三機。しかも、データが正しければ、
そのうち一機は低起動で表れたアレと同じね。
その他2機はあの部隊が用いていた機体の派生機といった所かしら。
でも、彼らの母艦は何処から。例の潜水艦が彼らの母艦だとすれば、
敵はまだいると見るべきよね」
私の問いに艦長席に座るラミアスが答えた。
「はい。しかし、ソナーでは捕捉出来なかったところを見ると、近場には居ないようです」
ラミアスの話通りだとすれば、「我々の」ソナーを振り切るのはほぼ無理と判断すれば、
離水時点では近海に存在しなかったことは言えるだろう。しかし、空に上がっている現在はわからない。
仮に襲って来ている空戦対応機が遠距離を飛行してやって来たとしたら、
到着まではしばらく掛かると見るべきだろう。だが、逆に「彼ら」を先に叩けば、
あとの調理はし易いというものだ。
「敵の潜水母艦は近くにいると見て、叩くべきはそちらが先よ。
ただ、相手が低起動のアレだとしたら、デュエルとストライクだけでは不安ね。
フォールディングは出られるのかしら?」
「整備は終わっていると聞いていますが、まだアレのパイロットは正式に決めていません。
少佐はモビルスーツを操縦した経験が無いわけですから、この戦闘で訓練というのは……」
バジルールの言いたい事は理解出来る。
確かに彼にこの状況で慣れてもらうのは酷かもしれない。
しかし、時を選べる程に我々は余裕が有るわけでもない。
「少佐に出てもらうしかないでしょう。
ただし、MSとして操縦してもらうのではなく、MAとして使ってもらえば良いわ」
「……わかりました。フォールディングにはフラガ少佐に搭乗を命令。
直ちに出撃するように伝えて」
「はい」
ラミアスの命令下、フラガの出撃が決まった。
フォールディングの初陣は彼のMSパイロットとしての第一歩でもある。
大事に使いたい所だが、彼の腕にも期待したい。
「……あの、大佐。宜しいですか」
3/32
ラミアスが私に唐突に問う。その表情は浮かない。
彼女同様にバジルールの表情も曇っている。
「哨戒任務に出撃させましたアルスター軍曹ですが……、上空で消息を絶ちました」
「……何故それを先に言わないの。どうなっているの」
「それが……全くわかりません。敵と交戦した可能性も考えられます」
「……そう。分かったわ。まずは戦闘を終結させることに全力を傾けましょう。
そして、出来る限り早く片を付けて彼女を捜しに向かいましょう。良いわね」
「……はい」
アルスターの無事が気になるが、目前の敵にしっかり対処しなくてはならない。
はやる気持ちを押さえつつ、私は戦闘態勢に入った。
「出たな、ストライク!今度は前とは違うぞ!」
イザークの駆るX07A-Vertrauen(フェアトラウェン)は、
ZAFTが低軌道会戦で投入した機体の発展型試作機であり、
コックピットニュークリアガードシステムによる放射線シールドが施された、
実用的核分裂反応炉搭載型機だ。
要はX06A以降と以前では核分裂炉の制御系等が格段に進歩しており、
人体への影響が大幅に低減されている。また、そのお陰でエネルギー制御も洗練され、
炉心の安定とエネルギーの安定供給が実現している。
ここに来てZAFTのジャマーテクノロジーが大幅な進歩を遂げたのは、
この開発を主導したオーソン・ホワイトの参加が大きい。
当初は主戦論者ではないオーソンが距離を置いたため、
ZAFTの技術開発におけるジャマーテクノロジーの進歩はストップしていたが、
シーゲル・クラインと和解後のクライン・ザラ・オーソンによる三者協力体制が
ZAFTの政治的事情を改善させたのだ。
そして、その協力時にクルーゼの活躍で評価された第一世代(Generation 1…以下G1)
核分裂炉搭載型試作機の事も有り、開発が進んだGeneration2(G2)では大幅な進化を遂げた。
4/32
フェアトラウェンの持つビームライフル「キラービー」からパルスビームが打ち出される。
連続で三発射出されるパルスビームは、一発の威力は低いが、
当たれば当たる程PS装甲のエネルギーは消費する。
そのくせ相手側の消費は通常ビームと違い僅かだ。PS装甲の弱点を突く武装と言える。
ZAFTはここに来てエネルギー管理を大幅に向上させてきたのだ。
連合は確かに技術で上回る機体を作り上げたが、
応用力にかけてはZAFTの右に出るものは無いと言うべきか。
キラは「敵」ながら自分にも流れるコーディネイターの血の力を感じた。
「連合が俺達を越えるなんて、100万年早いんだ!!」
「ぐぅ(声!?……低軌道の彼なのか)」
ディンとは大幅に違うスピードは、ただ早いだけではなく全ての敏捷性が上がっている。
ストライクは必死に避けるが、向こう側の動作速度になんとか抵抗している程度で、
とても対応出来ているとは言えない。
この状況が長く続けば、間違いなくこちら側が不利になるだろう。
『警告、ロックオン、されています。直ちに、回避行動、を、してください』
「わかってる!!!くそぉ!(遅い!ストライクが僕について来れていない)」
フェアトラウェンは牽制射撃を加えながら徐々に迫る。
キラービーの執拗な弾幕を避けるストライクをあざ笑う様に、
イザークはラケルタを抜くとビームを起動させて構える。
ストライクも相手の行動に対応すべくシュベルトゲベールを構えるが、
相手は完全なビームサーベルに対して、こちらは実体剣を部分的に持つ。
どの程度対応出来るのかは正直不安があるが、賭けるしかない。
「ストライク!!!」
「このぉ!!!」
5/32
ビームが弾ける音が木霊する。
強い衝撃が互いのビームの衝突時に発生し、
後方へ押し付けられる様な強いGがキラの体を強かに締め付ける。
だが、相手側はその衝撃も無かったかの如く、
力負けせずにこちらにラケルタを構えて襲いかかる。
「終わりだ!ストライク!!!」
「(完全に力負けしている。これじゃ!?)」
フレイは島の中で海岸沿いに洞窟があることを見つけ、
そこに薬品や非常食を置くと、そのまま付近を歩き出した。
彼女が動いたのは理由がある。
先程の戦闘で不時着したのは「自分だけ」では無い事を記憶していたからだ。
あのZAFTのMSがどうなったのか。
……彼女の正直な願望としては壊れてお亡くなりになっていて欲しいが、
あの程度の損傷でどうなるというものでも無さそうだった。
何より不時着時に体制を維持出来ずに衝突したなら爆発の一つでも起きようものだが、
そんな気配は全く無かったどころか煙一つ上がらなかった。
ということは、こちら同様に相手も無事と見るべきだろう。
こんな状況になってみなければ分からないものだが、
フラガとの訓練はキツかったが実用的な訓練だったと実感した。
彼は訓練時はとても厳しい男だったが、妥協無く全ての必要な物事を順序良く教えてくれた。
時間的には即席に等しいはずだが、彼女自身も性格的に生真面目な程ストレートな猪突猛進型なため、
一度決めたらとことんまでやり込まないと気が済まないタイプだ。
そんな自分の性格も幸いしたおかげか、ここでの状況を意外に冷静に受け止めていた。
勿論、怖くないわけではない。相手のZAFT兵がどんな奴なのか。
無事で居て欲しくないが、無事ならば身の危険があるのだ。
それをそのまま放置しておく程には「軍人フレイ」はお淑やかでは無かった。
6/32
「まったく(……どんな変態男が来ても、許さないんだからね。
お父様を殺したZAFTなんて、根絶やしよ!)」
溜息を吐くと、気持ちを引き締めて歩き始める。
日もだいぶ沈みかけ、夕日の赤が夜の闇に浸食され始めた頃、遂に見つけた。
相手の赤い機体とその下を歩くヘルメットを被ったパイロットの姿を。
「ふぅ(情けないな。しかし、あの連合機。装甲を貫通した。どうやったんだ)」
アスランはそう思いながら損傷し不時着した無惨なエアフォルクを見上げた。
メインカメラとエンジンを撃ち抜かれたエアフォルクは、PS装甲を搭載した「対実弾装甲」のはずだ。
現時点では実体弾のみならず、ビームも弾く最強の装甲技術と言っても良い。
それをいとも簡単に貫通したのだ。連合はPS装甲を開発した時点で弱点も用意していたというのだろうか。
……しかし、だとしたらZAFTのラボが気付かない筈は無い。同じものを実装するのだから、
相応の解析とテストをした上で改造を施すのだから、オリジナルより高性能なものになっておかしくはない。
少なくとも個々の性能は完全に連合機を上回るスペックに仕上がっているはずだった。
……にも関わらず、よりにもよって戦闘機に貫かれたのだ。
幸いというべきか、機体は本国が地球上にバラまいたジャマーのお陰で爆発は免れた。
ニュートロンジャマーはキャンセラーが破壊されたことで有効になったのだ。それだけ、
この地上のジャマー強度は高いことが証明された結果だが、内心複雑なものを感じていた。
「(……ジャマーに助けられるとはな。それでも有る無しじゃ圧倒的な差がある。
敵に使わせるわけにはいかないが、自分達は使う。……呆れた現実というべきか。
しかし、あの連合機は鹵獲する必要がある。大破していなければ良いが)
……って、まずは生き残るのが先か。はぁ、参ったな」
コックピットから緊急用キットとロープを持って降りたアスランは、
システムにロックをかけると島を歩く事にした。
まずは寝場所を確保しなければならない。
その為に必要な物が島にあるかどうかをまず確認することは大事なことだ。
だがその時気配を感じた。
研ぎすます様に目を閉じて辺りの気配を探りながら片手は銃に触れる。
銃声が響き渡る。
7/32
「ぐぅ!?」
アスランの構えた銃が相手の銃弾で撃ち飛ばされる。
素早く身を躱すと、銃声がした方へと駆け寄り迫る。
その間も発砲が続くが、まるで焦点が定まっていない。相手は素人だろう。
連合兵には悪いが、ここで亡くなってもらう他に無い。
アスランは相手の手に持つ銃を跳躍し様蹴り飛ばした。
怯む相手に更に攻撃を加えようとしたが、相手は見事に腕で受け止め、
素早く懐に入ると腹に拳の一撃を加えた。しかし、その攻撃でよろける事は無く、
アスランはその体をホールドし、相手を取り押さえた。
「恨むなら君を巻き込んだ連合を恨むんだな。」
「キャアアアアアアーーーーー!!!!」
突然至近距離から女の悲鳴がした。
その発生源は自分が押さえた敵兵からのものだ。
「え……女?」
「ちょっと、あんた何処に目を付けてるのよ!
こんな麗しい乙女を見て『女?』ですって!失礼にも程が有るでしょ!!!」
「いや、あ、すまない。集中し過ぎていて性別まで頭が回らなかった」
「は?何よそれ、あんた達ってみんなそんなに殺人マシーンなわけ!?
信じらんない。普通見りゃ分かるもんでしょうが」
「……人に発砲しておきながら、殺人マシーンは無いんじゃないのか」
アスランは相手の女を少し強く締めた。
「ちょ、ああん、痛い痛い!痛いってば!悪かったわね!
そりゃ無人島に男が居たら身の危険を感じるのが女ってもんでしょ!
こっちから見たらあんたは敵よ?何されるか分かったもんじゃないじゃないのよ!!」
「あぁ、そうですか。って、素直に俺が謝ったって、君は聞く様な人じゃなさそうだな」
「当然でしょ!そっちは女を押さえつける変態敵兵!こっちはか弱いうら若き乙女よ。
誰がどう見たってあんたの方がおかしいでしょ!」
8/32
女のあまりの台詞にアスランは遂に噴き出した。
「……ぷ!くくく、あっはっはっはっは……はぁ、そうだな。乙女?
あー、何話してんだか。とにかく、君は捕虜。俺は敵。それで良いかな?」
「……選択権無いんでしょ」
「正解」
アスランはニッコリ笑顔で微笑むと、彼女をロープで縛り上げた。
大西洋連合、グアム基地。米国海軍の太平洋上の最大級の拠点港に数えられるそこに、
他の拠点から数隻の空母艦艇が集まって来ていた。ムルタ・アズラエルの命令下、
大西洋連合軍はダーレス少将を中心とした新しい部隊を組織させたのだ。
「ダーレスさん、僕はあなたに相応の働きをして欲しいと思っています」
モニター越しのアズラエルの表情は笑顔だが、
相変わらずその裏に何を考えているのかわからない冷酷さが垣間見える。
ダーレス少将からすれば、ムルタ・アズラエルという人物は外部の煩いパトロンである。
早々無碍に扱えないが、だからと彼の言うとおりにすることが全てにおいて正しいとまでは思わない。
彼はブルーコスモスが多い大西洋連合の軍人の中では比較的まともな指揮官の方だろう。
少なくとも彼自身はそう思っている。
少将という地位にはあるが、この地位ですら中間管理職のごとき板挟み具合である。
イエスマンをするのはポジションを維持をする上での必要悪であって、
それが必須要件であるとまでは考えない。傍から見れば五十歩百歩な話だが、
それでもこの違いがいわゆる「主義者」との大きな違いであることは言えるだろう。
「理事、しかし、この数で台湾を攻略するのは……そもそも東アジアは我々の同盟国ですよ?」
9/32
「あなたの疑問ですが、戦力は実際に使ってみれば分かります。もう一つの疑問は、
あなたは大西洋連合の士官であって、東アジアの士官ではない。上の命令は絶対……ですよね?
そして、昨日の友は今日の敵……となることも珍しい話じゃない事はわかりますよね?」
「……ですが」
「政治はあなた方の仕事の範疇では無いことはお分かりですよね。
とはいえ、疑問があっては戦えぬというのなら、東アジア……特に我々にとって、
日本と台湾の二国は本来死守していなければならない防衛線でした。
それが守られているのは同盟という不可侵協定の存在有ってのものですね。
しかし、その同盟の根拠は……?」
「……ZAFTへ対抗するための共同戦線……ですか」
「正解です。では、ZAFTが倒れたら……どうなるんでしょうね?」
「……つまり、理事は東アジアが離反するとお考えになっている……ということですか」
「そうです。十中八九そうなる。もはやZAFTは恐るるに足らずですが、
そうなると身内が敵に回るのですよ。我々と同盟する両連合諸国は、
伝統的に宗教的にも経済的にも思想的にも反目する2大勢力でした。
特に東アジアを我々の勢力圏に置く為に、
日本と台湾の二国を餌に組み込んだのは大安売りでした。
しかし、安売りセールは続かないものです。
永遠のバーゲンセールだと勘違いされたら値打ちが無くなる。
宝は宝として扱わなければ、輝く事もなければ見向きもされなくなる。
そうなって困るのは持ち主ですが、我々が留意しなければならないのは、
東アジアではなくユーラシアです。彼らは価値を知っている。
彼らも『次』を見越して動いています。
そして彼らもその可能性を考慮する時が来るのですよ」
身振り手振りで大げさに表情をくるくる変えて説明する理事。
彼の内容は確かに的を得ている。実際にZAFTが片付いたなら、
次なる敵は東アジアとユーラシアになるのは必定だ。
それでも同盟という国際条約を反故にするというのは、歴史に残る大事である。
……という辺りで、本日の投下は終了です。また数日後にでも。(規制入らなければ)
有り難うございました。
単発SS投下テスト
「では最後の質問を…あなたの望む未来とは?」
「…スペースノイドとアースノイドが共に理解をし、
互いを尊重し、手を取り合いより良き世界を育む事です。
私はそうなるように願っています。」
昼間だと言うのにカーテンが閉めきられ、
窓には板が無数に打ち付けられている部屋の中で
グレイのスーツとライトブルーのシャツを羽織い、
黄色いネクタイをしめている男は両膝に両肘に当てて、
向かいのソファに座る端整な顔をした男性の言葉に耳を傾けている。
テーブルにはボイスレコーダーが置かれており
バッテリーは残り少なった。
この取材がかなりの長時間であった事が伺えた。
「…ありがとうございました。
あなたのような方とお話できて、良い体験になりました。」
「こちらこそありがとう…えぇっと……」
インタビューを行っていた男が静かに立ち上がり、
開いたスーツのボタンを締めると、向かいに座る男に握手を求めた。
男もそれに応じ、スッと立ち上がると
彼の名前を発しようとするものの思い出せず、
目の前のテーブルに置かれた名刺を見やる。
「フリージャーナリストのカイ・シデンです。
ジョージ・グレンさん。どうかお気をつけて…あなたの周りは敵だらけだ。」
彼の言葉に反応するように微笑むような表情で答えるカイ・シデン。
インタビュー取材を受けていた男はジョージ・グレン元連邦軍大佐。
カイ・シデンは固く握った手を離し彼の身を案じる言葉を投げかけた。
「お心遣いありがとう。
カイさん。あなたの記事が良い記事になる事を願っているよ。
またお会いできる日を楽しみにしている。」
カイは彼の見送りを受けながら、
暗く閉ざされたその異常とも言える部屋を後にした。
しかしジョージ・グレンは再び彼に取材を受ける事はなかった。
この数日後、彼は帰らぬ人となった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
彼の生まれ故郷であるサイド1アプリリウス市では彼を見送ろうと多くの人々が葬儀に参列していた。アプリリウス市のアルバート市長を始め、人々はジョージ・グレンの功績を称え彼との別れを惜しんだのだ。
数日後、アルバート市長はコーディネイターへの民衆からの差別や
弾圧を訴える為に中立国家オーブを始め、
地球を行脚し演説を行った。
しかし、オーブ以外ではコーディネイターに対する目は冷ややかだった。
時に罵声が飛び、
暴徒により演説が中止となるなど厳しい現実を突きつけられた。
連邦政府も同様だった。
胎児期における遺伝子操作は重大な違法行為であり、
世論と共に連邦政府はコーディネイターを簡単に容認する事をしなかった。
翌年、弾圧や差別に耐えかね、
政府からも見捨てられたアプリリウス市を含めた、
コーディネイターが住む120基余りのコロニーの市長や住民達は
一つの国家としての自治独立要求を声高に訴えた。
中立国オーブは彼らの独立を認めるように連邦政府に働きかけるが、
政府は独立に対して強い反対の意思を示したのだった。
彼らの住むコロニー群は各サイドでもっとも経済面に影響を与え、
尚且つ農業用プラントやコロニーから良質な穀物、野菜、家畜を産出していた。
いわば連邦政府にとって経済の中枢とも言えるコロニーだった。
それはコーディネイターという基盤があってこそであり、
コロニーだけで自活が出来るという事が明らかになれば、他のコロニーに住む者達の連邦政府へ脱却の足掛かりとなる原因になると危惧していたからに他ならなかった。
自治独立を要求するデモ活動が盛んになり、
まもなくして驚愕の事件が起きる。
サイド1・42バンチの農業用コロニー
ユニウスセブンへ連邦軍内部の強硬派による核攻撃が行われたのである。
後に『血のバレンタイン』と呼ばれる悲劇だった。
連邦の強硬派の独断行動に焦り、
世論からの糾弾を恐れ保守に凝り固まった連邦政府は、
すぐさまコーディネイターの過激派テロリストによる自作自演と発表した。
この発表に憤慨したアプリリウス市アルバート市長は
連邦首都ダカールに飛び立った。
しかし、彼の抗議が認められる事もなく発表は覆らなかった。
悲劇はユニウスセブンだけにとどまらなかった。
ダカールからの帰路に発ったアルバート市長を乗せたシャトルが、
大気圏突入と共に爆発事故を起こし、市長を含めた乗員、乗客が死亡した。
この報を受けたコーディネイターはすぐさまこれを暗殺だと主張
ダカールに集まり大規模な暴動が起こす。
この暴動の鎮圧に向かったのは
強硬派が差し向けた連邦軍警察だった。
この暴動でおよそ50人のコーディネイターが死亡。
200人が逮捕されるという大きな事件に発展してしまった。
再三の弾圧や差別による過酷な仕打ちによって、
コーディネイターの住むコロニー群の市長達は民衆を味方につけ、
120基からなるコロニー群を一つにまとめた国家、
『プラント』と名付け独立を宣言。
プラントは独立に際して独自政府を設立。
最高評議会議長としてアルバート市長の後任である、
アプリリウス市長のパトリック・ザラがその席に座った。
さらに一年戦争の生き残りでプラント出身である連邦軍人達や
士官学校生を集め、軍事組織『Z.A.F.T.』(ザフト)を設立。
それと同時に連邦政府、及び連邦軍に対して宣戦布告したのである。
ザフト軍はその類稀なる順応性と頭脳、
身体能力を武器に一年戦争以降、
軍縮を行っていた連邦軍を圧倒して行く。
そして、ザフトの地球降下を簡単に許すと
オーストラリア北部と西部、東ヨーロッパ地区、
アメリカ西海岸地区をザフト軍に制圧されてしまう。
この混乱に乗じて地球に息を潜めていたジオン残党も
各地で頻繁にゲリラ作戦を展開。
横腹を突かれた連邦軍はザフトのみならず
ジオン残党にまで硝酸を舐める事になった。
連邦政府内部ではプラントの独立や
ジオン残党の蜂起を抑えきれなかった保守派や穏健派は
その立場を弱くし、強硬派が連邦政府を掌握する事になった。
そして、プラントとの対立以前にジオン残党軍との小競り合いが続く連邦政府は、
反スペースノイド派のアースノイド至上主義組織『ティターンズ』を結成。
連邦を掌握したティターンズのジャミトフ・ハイマン中将は、瞬く間に勢力を拡大し、
各地で劣勢だった戦局を立て直していった。
ティターンズ派が占める強硬派体制となった連邦政府は更なる反発を生まない為に、
プラントを含めたスペースノイドを押さえつける政策を打ち出して行った。
これにより連邦軍とプラント、スペースノイドとの間に大きな溝がさらに深まって行くのだった。
需要は無いと思いますのでチラ裏程度と思って下さい。
PC壊れてiPhoneからなので
改行とかおかしいのは勘弁してください。
過疎ってますねぇ〜
乙ですー
偶に(1〜2日)じゅんかいはしてるんですぜ?
>>470 了解です(`・ω・´)ゞ!
ありがとうございます!
投下おつー
何その続きが気になる単発w
二人とも乙です
自分は続きをちゃんと待ってますので
>>472 どうもですw
色々と考えているんですけど、規模がデカくなるんで
単発で残しておこうかなぁ…?て感じです。
一応、これで終わらせるつもりはないので今はどうかご勘弁を汗
>>473 コテハンがちょい違いますけど
469は私ですますwww
なんか数字付けたほうがカッコいいかなと思って。
第1話 刻が動く日
月面都市グラナダーーー
月の裏側に位置する第2の都市
旧ジオン公国キシリア・ザビ中将率いる機動軍の本拠地とされ、
一年戦争の終戦協定が締結された軍事都市でもある。
そのグラナダ市内にあるエゥーゴの為に極秘裏に設けられた、
ごくありふれた5階建てほどのビル。ビルの最上階の一室で
エゥーゴの指導者でもあるブレックス・フォーラ准将と、
月面基地プトレマイオスに拠点を置く
連邦宇宙軍第8機動艦隊司令、
デュエイン・ハルバートンとの間で会談が行われていた。
「私にエゥーゴへ参加しろと?」
ハルバートンは腕を組み、鋭い視線をハルバートンへ向けながら問いかける。
ハルバートンの視線で一瞬だが応接室に緊張感が走る。
しかしブレックスは臆する事もなく、彼の目を真っ直ぐに見て応える。
「知将と呼ばれるお前の力があれば、
臆病風に吹かれた保守派を動かす事もできるはずだ」
「ブレックス……
いくら友人の頼みでもそうやすやすと決断出来るものではないぞ…?」
2人は士官学校時代からの同期であり親友だった。
ブレックスは、アースノイド至上主義組織であるティターンズのやり方に猛反発し、
ティターンズなどの強硬派による監視の下、軟禁状態に合っていた。
ハルバートンはそんな彼の身を案じ、
連邦上層部やティターンズに彼の軟禁状態を解くよう働きかけるなど、
ブレックス・フォーラとデュエイン・ハルバートンの間には、強い絆があった。
「私はお前のように軍政に参加するつもりはないのは分かっているだろう?
世直しをするなど私には荷の重すぎる話だ。」
彼の言うように、ブレックスは連邦軍階級は准将でありながら、
議員資格すらも持つ大物中の大物である。
ハルバートンはエゥーゴの存在を認めない訳でもなく、
ティターンズに賛同している訳でもない。
連邦政府を動かせるのはブレックスしかいないと考えてもいる男で
ハルバートンは現在の連邦を改革するには重要な人物なのだが、
彼にはその自覚はなかった。
「……そうか。いや、無理を言ってすまなかったな。」
ブレックスは彼の返答に納得し、
清々しい表情でハルバートンへ語りかけていたが、
ハルバートンは下を見て何やら考え込んでいるようだった。
「…デュエイン。どうした?」
「……いや、待てよ…」
ハルバートンの考え込んむ様子をブレックスが不思議に思うと、
ハルバートンはふと何かを呟く。
それを聞き逃さなかったブレックスの眉がピクリと動く。
「…ブレックス。お前に聞きたい事がある。」
ハルバートンは再び顔を上げると鋭い視線を再度、ブレックスに向ける。
その空気を読み取ったか、ブレックスは何だ?
と返すとハルバートンはゆっくりと語り出した。
「現在、連邦宇宙軍が再編計画を行っているのは知っているな?」
ハルバートンの問いかけに当然だと言わんばかりに
何も言わずにブレックスは大きく頷くと、ハルバートンはさらに続ける。
「その中で穏健派である第3地球軌道艦隊のジョン・コーウェン中将がアナハイムと協力し、
ガンダム開発計画を行っている。そしてティターンズも
独自の技術でガンダム開発計画を行っている。」
「なんと…ガンダムだと?」
そうだ。と、言うとハルバートンは
それまで組み続けていた腕を解き身振り手振りで話を続けた。
「実は私もガンダム計画を極秘で行っている。
その為の艦艇も完成している。
もちろん、アナハイムや連邦の技術では無い、
ある所の技術を用いてな。」
アナハイムガンダムは自身の知るところではあるが、ティターンズや、
ましてや旧友である彼すらもガンダム計画を行っている事を知らされたブレックスは驚きを隠さなかった。
一年戦争以降、軍縮によりモビルスーツ開発自体が進まずにいた事にも起因はしているが、
兵器開発に消極的になっている企業は多かったからだ。
ブレックスは迷わずにどこの協力でモビルスーツ開発を行っているのかをハルバートンへ聞き出す。
「モルゲンレーテ社…アナハイムとはそれなりに仲の良い会社とは聞いているがな。
モルゲンレーテはオーブの軍需産業会社だ。
新型モビルスーツはサイド7のヘリオポリスで密かに行われている。」
ブレックスは驚愕した。
中立国を標榜するオーブが何故連邦軍に協力しているのかと。
どうやらハルバートンとオーブとの間には、
太いパイプがあるそうだが、モルゲンレーテとの利害関係の一致が決め手だったそうだ。
戦争に関わらないと宣言した国とその軍需産業を味方につけるとは、
やはりこの男は連邦の改革に関わるべき男だとブレックスは思ったが、
それをここで言っても首を立てには振らない男だというのももう分かっていた。
しかしアナハイムのメラニー会長も人の悪い方だ。
だが、企業ならば我々みたいな顧客が離れるような情報などをおいそれと流す事はしないな…
などと色々と考え込んでいたブレックスを尻目にハルバートンはさらに続ける。
「ブレックス…心血を注いだこの計画。
何故お前に簡単に漏らしたと思う?」
ハルバートンの真剣な表情にピリピリと肌が痺れる感覚を覚えたブレックスは、
彼のその言葉の意味を数秒ほど考える。
やがてその意図を読んだブレックスが
ハッとハルバートンの顔を見やると彼は大きく頷く。
「そうだ。その新型をエゥーゴにくれてやる…
しかし私はエゥーゴへの参加は出来ん。
計画に参加している艦長を始めとする士官達は
エゥーゴへの参加をかねてから希望していた。
それらを全てお前に託す…彼らを正しき道へ導いてやってくれ。」
ハルバートンはここまで来て断るとは言わせんと言うと、ブレックスも彼の意思を尊重し彼の要望を快く快諾し、2人の極秘裏に行った会談は終わった。
サイド7(グリーンオアシス)
オーブ首長国コロニー・ヘリオポリス
アークエンジェル級強襲機動特装艦・アークエンジェルーーー
連邦宇宙軍第8機動艦隊司令、デュエイン・ハルバートン准将が
オーブ・モルゲンレーテ社の協力のもと極秘裏に推し進めた、
連邦宇宙軍再編計画の一角として開発された記念すべきタイシップである。
その姿は一年戦争最大の功労艦であるペガサス級2番艦ホワイトベースに酷似していた。
優雅なその白亜の船体は来たるその『刻』を待っていた。
プロローグからの続きですが
一緒に書いておいたものを載せておきます。
フラグ立てたりしなきゃいけないので後は時間かかりそうです。
誰もいませんが…
やっけ駄文投下開始
第2話_「平和の国へ」
サイド7宙域を航行するエゥーゴの旗艦《アーガマ》ーーー
アナハイム・エレクトロニクスがエゥーゴの為に建造した
アーガマ級強襲機動巡洋艦のタイシップである。
その《アーガマ》に自らも乗艦しているブレックス准将は、
ハルバートン准将の情報からティターンズが
新型ガンダムの開発をしていた事を知った。
そしてティターンズが拠点としているサイド7・グリーンノア2にて
ティターンズの新型モビルスーツ・《ガンダムMk-U》を奪取する為の作戦を結構
紆余曲折はあったものの、アーガマ隊は無事に
《ガンダムMk-U》の奪取に成功し、グリーンノア2を離れていた。
「クワトロ大尉、《アーガマ》はどこへ向かってるんです?」
アーガマに設けられた回転式の居住ブロックにある食堂で
《アーガマ》のパイロット達は食事を摂っている
その大人たちに混じっている青い髪の少年、
カミーユ・ビダンは向かいに座る金髪のサングラスをかけた男、
クワトロ・バジーナ大尉に《アーガマ》の向かっている場所を聞いた
「ヘリオポリスだ。
君はグリーンノアに住んでいたならどういう所か分かるだろう?」
「ええ…分かりますけど。
どうしてそんなところへ向かっているんですか?
早くサイド7から離れた方が良いと思いますけど…」
クワトロは隠す事もなく淡々とカミーユの問いかけに応じる。
そんなカミーユはクワトロから目的地を聞いて率直な疑問を投げかける。
追手であるティターンズを振り切る為にもカミーユの言うように、
一刻も早くティターンズの拠点があるサイド7から離れる必要があった
しかし、《アーガマ》の向かう先はオーブ首長国という
連邦政府すらも介入する事が許されない中立国コロニーである
「そこにエゥーゴへ新たに参加してくれる連邦の部隊がいる。
ヘリオポリスに入り、彼らと合流する。」
「中立国に連邦の部隊?一体なんで…」
クワトロはさらりととんでもない事を言っているが、
カミーユ自身もそれは分かっていた。
さらに疑問を抱きクワトロに聞くと
色々とカミーユに情報が入ってきた。
カミーユがクワトロから聞いた事は、
ヘリオポリスにいる連邦軍部隊はエゥーゴへの参加を希望している。
中立国が連邦軍に協力しているのは彼らの部隊にのみであり、
他の連邦軍人や関係者すらも知らない極秘事項だという事。
そこで新造艦と新型モビルスーツが開発されていた事。
モビルスーツはガンダムタイプで全部で5機も開発されているという事だった。
クワトロから聞いた話はこの程度のもので、カミーユは驚きはしたが、何か釈然としなかったらしい。
そんなカミーユを見たクワトロ曰く
「灯台下暗しさ…」
という事らしい。
カミーユはクワトロからいきなりことわざをしたり顔で聞かされ、
これ以上聞くのはやめようと思った。
我ながら上手い事を言ったと勘違いをしているのか、
サングラスの下からもその表情を伺える程の満足そうな顔で、食事を終えたクワトロは食堂を出ていった。
「カミーユ、お前はまだ入りたてのルーキーだ。
知らないことがあって当たり前だ。」
「そうだな。これからその目で色々と見て行けば分かるだろうさ。」
同席していた《リック・ディアス》のパイロット、
アポリー・ベイ中尉やロベルト中尉は
状況が理解できていないカミーユに、そう言うとカミーユは
そんなものかと考えながら、食事に再び手をつけた。
「准将、もう少しでヘリオポリスに到着します。」
《アーガマ》のブリッジにある、
艦長席に腰かけている強面で髭面の男、
アーガマ艦長ヘンケン・ベッケナー中佐はちょうどクワトロと共にブリッジへやって来たブレックスに報告する。
ヘリオポリスはまだ肉眼では捉えられない距離だが、
光学モニターには筒状のオーソドックスなコロニーの形が確認できる場所まで来ていた。
「そうか。予定通りのタイミングだな。
向こうにはそろそろモビルスーツのパイロットが到着する頃だ。」
「しかし、ティターンズのお膝元のようなサイド7でよくもまぁやりますね。」
ブレックスの言葉に頷きながら、
顎の髭を摩りながらヘンケンが皮肉っぽく言うと、すかさずクワトロが言った。
「灯台下暗し…か…」
「周辺にティターンズらしぎ影は見当たりません。
このままの針路でよろしいかと。」
クワトロはまたしても、
したり顔でキマった…と思っていたが、誰もその事に反応はなかった。
そもそも、誰もがそう思っているからだったが
クワトロはそんな事にも気付かず
ジっとモニターに映るヘリオポリスを見ていた。
そんなクワトロを尻目にモビルスーツが足りない影響で、
ブリッジ要員として座るレコア・ロンド中尉がブレックスらに報告すると、
クワトロの言葉はロウソクの火が消えるかの如くかき消された。
レコアの報告にうんと頷くと、
ブレックスとヘンケンは淡々と言葉を交わす。
「ハルバートンは抜け目ないヤツだ。
ティターンズごときの目を欺くのは楽なものなんだろう。」
「そう言えば、准将はハルバートン准将とお知り合いでしたね。」
「まぁな。昔からの腐れ縁というヤツだ。」
ブリッジに静かに立つクワトロは完全な空気になりつつあったが、
当の本人は自覚していなかったようだ。
サイド1(ザーン)・プラント
プラントーーー
サイド1に所属する120基で構成される世界一の大コロニー群で、
ジョージ・グレンの告白を発端に、
弾圧や差別から連邦政府からの独立を宣言したコーディネイターや
ハーフ・コーディネイターそして第一世代のコーディネイターを産んだ
ナチュラル(非コーディネイター)で構成される、
総人口6000万人ほどの独立コロニー国家。
サイド1・40バンチのアプリリウス市以降は特殊な構造のコロニーで、
砂時計型の特殊な形状であり、それから連なる120基ものコロニーは、
アプリリウス市にあるコロニー公社が建造した。
プラント・首都アプリリウス市
静寂の漂うプラント本部の議長室の扉が開くと、
黒いスーツを着た秘書らしき女性が議長のパトリック・ザラへ報告をする。
「議長、クルーゼ隊からの報告であります。」
「ン…。それで?ヘリオポリスにあったのか?」
議長席に座り、机のコンピューターから手を離し
背もたれに体を預けて秘書の顔をチラりと見る。
「は。諜報部からの情報通りとの報告がありました。」
「…分かった。下がってよい。」
パトリックは一言だけそう言うと、
秘書はパトリックに一礼をして議長室を後にする。
再び静寂が訪れると、僅かにギシという音がかすかにした。
パトリックは拳を強く握り締め、眉間に皺をよせて一人呟く。
「…オーブめ…!どういうつもりだ一体…」
パトリックは中立国と謳うオーブが
連邦に加担したという事実に腑が煮え繰り返るような感覚を覚えた。
しばらく、その怒りを抑えながら考えこむと、
前首長の顔が浮かんだが怒りは少しづつ納まり、
パトリックは平静を取り戻し冷静に考えた。
ヤツが影響力を保っているのならば、
オーブにも何かしらの事情があったのだろうと考えた。
そこへ議長室の扉がノックされ、
パトリックは入れと施すと再び議長室の扉が開かれる。
「失礼いたします。テネス・A・ユングであります。」
「おお、ユングか。そういえば貴様は地球へ降りるのだったな。」
「は!!」
議長室に入ってきた男。
テネス・A・ユングは元連邦軍所属のパイロットで、
一年戦争時における敵機の撃退数は149機の連邦軍No.1のスコアを持つ男である。
コーディネイターの顔は整った顔に美形などが多いのだが、
彼は特殊な存在で、あらゆる能力はコーディネイターでも指折りだが、
顔はナチュラルと変わらない上に頭髪はやや後退気味。
その為、学生時代から平凡な顔の影響もあってか
居場所はここでは無いと感じ、
故郷を離れ連邦軍人を目指し地球へ降りた経緯を持つ。
「貴様には期待している。」
「は!良い報告をご期待下さい!」
ユングの言葉に頼む。と言うとユングは議長室を出て行った。
彼を見送るとパトリックは一人考え込むのだった。
終わりですぅ( ;´Д`)
明日からまた仕事なんで頑張ります
GJ!
種世界を内包する宇宙世紀ものというのは珍しいな
お、ゼータ世代なのか
しかし一年戦争経験してるくせにこの連邦は原作の連合より無能だのう……NJ抜きで降下させるとは
あとトリップは923#ふんだらら、でつけられますぜ
>>490 >>491 ありがとうございます!
そうなんです。
NJは邪魔なんで無かった事にしております。
その分、連邦をクズっぽくしなきゃならんかった訳ですが…
まあ、ZからUC見ても連邦はクズってのはお分かり頂いてると思いますので
連邦派の方々はどうかご勘弁をば…
要らん事ぶっちゃけたジョージさんのせいでティターンズ結成!
てのはまあ、自分なりに上手く繋げたかなぁ?といった感じです。
実は最終話は書き終わってまして消去法的に
そこまでのプロセスをどうやって構成していくかってな所です。
これから先はさてさてどうなるのやら…状態です。
ちなみにパイロットスーツや連合の軍服は
ゼータ版で脳内補正をお願いしマスオさん。
長々と失礼しました。
仕事の前に…
投下開始!
サイド7(グリーンオアシス)
オーブ首長国コロニー・ヘリオポリス
「予定の時間まであとどれくらいだ?」
「2時間後です。」
「先に食事を済ませばちょうど良い時間ですね。」
ヘリオポリスの市街地にあるエレカの乗車場に並ぶブレックスとヘンケン、
クワトロがこのコロニーに駐留する連邦の部隊と
コンタクトを取るための時間を確認していた。
その後ろでは三人の女子学生が楽しそうに話していた。
クワトロはブレックスの護衛として付き添っていた為、
周囲に気を配っていると女子学生達の知り合いらしい男子学生二人と
女子学生一人がやって来た。
そのうちの男子学生と目が合った気がしたが、
エレカが到着した為すぐにそちらへ向き直し、
エレカに乗り込んで市街地の中心区へと向かう。
「フレイったら、サイ・アーガイルに手紙貰ったのよー。」
「えっ!」
フレイと呼ばれる少女と一緒にいた少女がそう言うと一人の少年が驚く。
彼は近くの工業カレッジに通う学生キラ・ヤマト。
一見、気の弱そうな少年だが、
長めの前髪に隠れ気味のその顔は整っており、
かなりの美形というのが伺い知れる。
彼女達はキラと同じ工業カレッジの学生達で同級生だった。
キラはこの中の話題の的であるフレイ・アルスターにほのかな想いを寄せていたが、
奥手な彼は中々彼女にアプローチ出来ずにいた。
それどころか、親友のサイ・アーガイルに先を越されたというのだ。
「そうなのフレイ?」
「あんた達っ!もういい加減にっ…」
キラと一緒にいたトール・ケーニヒの恋人、
ミリアリア・ハウがフレイにそう聞くと、
フレイは良いネタにされていた事に腹を立てたのか
大きな声で何かを言おうとしたところ、
後ろにいた黒髪のショートカットの一人の女性が咳払いをした。
「んっんーん…」
その場にいた全員が静まり返り、気まずそうにあっと声を出す。
「乗らないのなら先によろしい?」
「…あっ!すいませんどうぞ!」
女性がそういうと、
トール・ケーニヒが慌てて彼女と連れと思われる二人の男性に道を譲り、いつの間にか到着していたエレカに乗り込み発車していった。
「…っもう!知らないから!行くわよ!」
「ああん、待ってよ〜。」
見ず知らずの人間に恥かしい所を見られたと思ったフレイはそそくさと
次に到着したエレカに乗り友人二人もそれを追うように
フレイの乗ったエレカに乗り、キラ達はその場を去る彼女達を見送った。
「手紙だってさ、サイが。」
「えっ…」
周りに自分達だけになると、
トールが肘でキラを突つきながらそう言うと、
キラは顔を赤くして動揺する。
「意外だなぁ、フレイ・アルスターとは。
けど強敵だよ〜これは。キラ・ヤマト君〜」
「えっへっへ〜」
「ぼ…僕は別にっ!」
キラへ追い打ちをかけるようにトールが言うと
トールにひっつくミリアリアも
悪戯心が働いたのか茶化すように笑った。
「なんとも平和なことだ、まったく…」
「あぁ、さっきの学生の事ですか。」
「あのぐらいの歳でもう前線に出る者もいるというのに…」
「そうですね。特にあのアムロ・レイに憧れて
軍に入る少年は多いですからね。」
工業区を目指して走る一台のエレカ。
そのエレカの後部座席に座る連邦軍第8機動艦隊のナタル・バジルール中尉。
先ほどのキラやフレイ達の会話を聞いていた女性達だった。
彼らの事を思い出してナタルは呟くと、
一緒にいた助手席に座るアーノルド・ノイマン中尉が
彼女の言葉にそう応えていた。
サイド7・ヘリオポリス周辺宙域
ヘリオポリス周辺宙域に浮かぶ二隻の艦艇
その内の一隻、ザフト軍・ナスカ級高速戦闘艦ヴェサリウス
ヴェサリウスは隕石に錨を打ち付け
息を潜めるように停泊していた。
そのブリッジの艦長席に座る
フレドリック・アデスは硬い表情をしていた。
この部隊を指揮する隊長のラウ・ル・クルーゼは
静かに立ち上がりアデスへ言葉をかける。
「そう難しい顔をするな、アデス。」
「はっ、いえしかし…
評議会からの返答を待ってからでも遅くはないので…」
そう言いかけたアデスの言葉に、
遅いな…と言うとクルーゼが続ける。
「私の勘がそう告げている…ここで見過ごさばその代価、
いずれ我らの命で支払わねばならなくなるぞ。
連邦軍の新型機動兵器、あそこから運び出される前に奪取する。」
彼らザフトの目的は、ヘリオポリスで開発された
『GAT-X計画』のモビルスーツの奪取にあった。
オーブには戦争から逃れようと亡命したコーディネイターなどが住んでいるが、
諜報部のスパイも紛れている。
このスパイによる情報が本当だった場合、
新型モビルスーツの鹵獲作戦を決行するのだが、
相手がオーブという事もあり評議会からの承認を待つ事になっていた。
マルセイユV世級輸送艦・フロッグがヘリオポリスの港へ、
ガイドビーコンに従い入港する
モビルスーツを運ぶ能力の無い旧式の元連邦軍の輸送艦の為、
今は民間に払い下げられている輸送艦だが、
ここに乗艦しているのは『GAT-X計画』に参加する
ハルバートン艦隊所属士官達だった。
「これでこの船の最後の任務も無事終了だ。
貴様も護衛の任、御苦労だったな。フラガ大尉。」
輸送艦の艦長が隣に立つブロンドの髪をした
長身の男に労いの言葉をかける。
男の名前はムゥ・ラ・フラガ大尉。
連邦軍でも指折りのエースパイロットで
『エンデュミオンの鷹』と呼ばれるなどその実力は折り紙付きらしい。
『GAT-X計画』のパイロット移送の護衛任務の為に乗艦していた。
連邦宇宙軍第7艦隊所属のパイロットで、
『GAT-X計画』のパイロット候補達が模擬戦の相手にもしていた男だった。
「いえ、航路何もなく幸いでありました。周辺の様子は?」
「ん、問題ない。」
「しかし…中立国でありますか。聞いて呆れますが。」
「はっはっは。だがそのおかげで計画もここまでこれたのだ。
オーブとて地球の一国ということさ。」
ムゥと艦長が談話していると、
ブリッジに5人の男達が入ってきた。
彼らが『GAT-X計画』のパイロット達で、
艦長とムゥに挨拶へ来ていた。
「では艦長、フラガ大尉。」
「ん。頑張りたまえ。」
「新型を壊すなよ?」
艦長とムゥが一言言うと、
彼らは敬礼をしてからブリッジを離れて艦を降りていった。
「…上陸は本当に彼らだけでよろしいので?」
パイロット達が出て行ったのを確認すると、
ムゥは艦長にそう聞くが楽観的な艦長からは予想通りな返答が返ってくる。
「奴らもトップガン達だ。問題なかろう。
貴様等がちょろちょろしてるほうがかえって目立つぞ。」
「……」
ムゥは黙って彼の言葉に従ったが、
彼の心配する事はパイロットに選ばれた者達の腕だった。
ムゥの彼らとの模擬戦のスコアは
10戦無敗でムゥの実力が高すぎると言われればそれまでだったが、
抜擢されたわりには歯ごたえのない彼らに、この先に待ちうけるザフトとの戦いや、ジオン残党との戦いをくぐり抜けるだけのものを持っていると彼は感じておらず、心配ないと言い切れる艦長その根拠が理解できなかった。
ムゥは模擬戦の相手などこの計画に参加している一人と自覚していたが、
彼らがエゥーゴへ参加するという事は当然知らないし、
あくまでも模擬戦の相手と護衛任務のみと考えていた。
彼はこの任務が追われば、
キャリフォルニアベースへの配属が決まっており、
久々の地球へ行く事を楽しみにしている。
市街地の中心区で食事を1時間ほどで終えた
クワトロやブレックス達は、エレカに再び乗り込み
クワトロがハンドルを握りペダルを踏み込みエレカを走らせる。
市街地の繁華街だけあって、
かなりの人で賑わっている。
他所では滅多に見られない、
街ゆく人の穏やかな表情や笑顔は平和そのものだった。
「平和の国…か」
「…ですがあまりにも外の世界に隔絶され過ぎています。
このような場所はむしろ危険です。」
「確かにな…危機意識も薄てしまいそうだ。」
乗り込んだエレカから街の様子を見ていたブレックスが呟くと、
クワトロは外界とのズレに違和感を感じずにはいられなかった。
それを聞いていたヘンケンもクワトロと同じような感覚を持っていた。
「しかし、本来はこうでなければならんのだ。
何も心配する事なく、皆が穏やかに過ごせる世界でなければ……」
ブレックスがそう言うと、
遠くを見ながら平和の国と呼ばれるその景色を静かに見ていた。
ヘリオポリスの工場内にある一室。
その扉が開くと、カトーゼミのキラやトール、ミリアリアがやって来る。
ヘリオポリスの工場区は連邦軍とオーブの監視下に置かれていたが、
『GAT-X計画』のプログラム解析に携わっていたカトー教授のアシスタントとして入る事が出来た。
もちろん彼らにそんな事は知らされておらず、
機密が漏れない範囲での仕事を任されており、
バイト代も貰えるので手伝っていたという事らしい。
「うーっす。」
「あ、キラやっと来たか。」
「う…ん?…!…」
「…誰?」
扉が開くと、机に座りコンピューターをいじっている
眼鏡をかけたいかにも秀才のお坊ちゃんといった少年が
キラ達に声をかける。
彼がフレイ・アルスターに手紙を渡したという
サイ・アーガイルでみんなのまとめ役のような少年だった。
キラたちが入った部屋には帽子を深々と被りコートを着た少女がいる。
それに気づいたトールが、カズイ・バスカークに聞いてみる。
「あ、教授のお客さん。ここで待ってろって言われたんだって。」
「ふーん。」
カズイがそう応えると、
トールはあまり興味なさそうな返事をしていた。
「で、教授は?」
「これ預かってる。追加とかって。」
キラは辺りを見回して教授がいない事に気づきサイに聞くと、
カトー教授からの仕事がまた増えたのかといった表情になる。
「これってなんなんだ?
どうせモルゲンレーテの仕事の方なんだろうけど。」
「興味ないよ。フレーム設置モジュールの改良とか。
とにかくプログラムの解析さ。」
サイはキラに手渡そうとしたテキストに目をやると、
キラにこれが何なのか聞いてみるが、
キラは興味がなさそうにそのテキストを受け取る。
この後、キラはトールの悪戯で
フレイ・アルスターへの手紙の件などで騒いでいたが
当然、工場の職員が部屋に入ってきて
彼らはキツイお叱りをうけたのだった。
ヘリオポリスの港第5ゲートに一つのシャトルが入港していた。
グリーンノアを発った旅客用スペースシャトル、テンプテーション。
ジャブローからサイド7へティターンズ兵を移送していたが、
エゥーゴのガンダムMk-U奪取による騒動で明るみに出た、
ティターンズのコロニー基地化に反対した民間人を乗せたシャトルが到着していたーーー
旅客用スペースシャトル・テンプテーション。
ジャブローからサイド7のグリーンノア2へ
ティターンズ兵を移送していたが、
エゥーゴの襲撃によりグリーンノア2の
基地化が明るみに出た事により、民間人が反発した。
テンプテーションの船長を務めているブライト・ノア大佐は、
反発する民間人に危険が及ぶと感じて彼らをシャトルに乗せ、ヘリオポリスに難民として避難させる為に来ていた。
シャトルを出迎えていたのは、ヘリオポリスの市長だった。
テンプテーションを降りたブライトと固く握手を交わす。
「難しい状況での受け入れを感謝いたします。」
「構いません。本国からも緊急事態との事でしたから。」
ブライトが市長に感謝の言葉を彼に言うと、
市長は穏やかな表情でそれに応じる。
その時、シャトルから続々と降りて来る
避難民の中から一人の少女が涙を浮かべながらブライトのもとへ駆け寄る。
「ブライトキャプテン!」
「ああ、ファさん。」
少女はカミーユの幼馴染のファ・ユイリィ。
エゥーゴと共に姿を消したカミーユに
ティターンズが彼女の両親を拘束し、
彼女にも危険が及びそうになっていた所を
ブライトに助けられこのシャトルに乗っていた。
「ファ・ユイリィさん。すまない、ご両親は見つからなかった…」
「……良いんです…両親も私が生きてるってだけでも知っていてくれれば…」
「お嬢さん、ここはもう安全だ…ご安心なさい。」
ファは大粒の涙を流しながら健気に言うと、
いたたまれなくなった市長は優しく声をかけ、
市長のそばに立っていた女性にファを介抱させた。
隕石に紛れて身を隠していたクルーゼ隊のヴェサリウスでは
クルーゼが静かに口を開く。
「時間だな…」
「抜錨!ヴェサリウス発進!」
そう言うと、アデスがクルーゼの顔を見てコクリと頷き、
発進の指示を出す。
この日、ヘリオポリスの平和の刻が崩れようとしていた…
以上です。
やっつけ仕事なんで
文法がめちゃくちゃなのはご勘弁を…
それでは仕事にいってきます。
また、明日にでも投下できるように頑張ってみます。
どうでもいいが、名前がコピペだからニセモノ臭く見えるぞ
ちゃんと「#******」の形で記入しないから◆が◇になってる
>>503 失礼しました。
これでいいんですかね?
ちがうなぁ…
これかな?
分からない(゚Д゚≡゚Д゚)
テスト
こうで良いのだろうか…
>>512 どうもありがとうございましたw
投下開始します。
第4話_「混乱の渦」
ヘリオポリスの管制室でけたたましいアラート音が鳴り響く。
ザフト軍のヴェサリウスと僚艦の
モビルスーツフリゲート・ローラシア級の
ガモフがヘリオポリスに接近する。
ヘリオポリスの管制員が、
オープン回線を用いてヴェサリウスとガモフに通信を行っている。
「こちらヘリオポリス。接近中のザフト艦、応答願います。
ザフト艦、応答願います!」
オープン回線でも呼びかけに応じない様子を見て、
もう一人の管制員が管制長に指示を仰ぐと、
管制長が代わって接近するザフト軍に再度通信を繋ぐ。
「落ち着け、えーい…!アラートを止めんか!
接近中のザフト艦に通告する!
貴艦の行動は条約に大きく違反するものである。
直ちに停船されたし。ザフト艦!
直ちに停船されたし!」
管制長の呼びかけにも応じない。
ザフト艦の動きを見ていた管制室のセンサー員が、
悲鳴にも似た声を出す。
「ミ…ミノフスキー粒子上昇!?散布源はザフト艦!!
これは明らかに戦闘行為です!」
ヘリオポリスの第3ドックに停泊するアーガマのブリッジでは
管制室のオープン回線を傍受していた。
ブリッジに残っていたオペレーターのトーレスは
その内容を聞き逃していなかった。
「こりゃまずいな…ザフトかよ!」
そうぼやきながらセンサーを確認すると、
ミノフスキー粒子がぐんぐん上昇しており、
まもなく戦闘濃度まで達しようとしていた。
トーレスはすかさず、艦内のアラートを鳴らした。
「え…!?なんだ?」
アーガマの自室で待機していたカミーユは何事かと思い、
部屋の壁に埋め込まれ設置された通信用モニターでブリッジに繋げる。
「トーレス、どうしたんだ?」
「ヘリオポリスにザフトが接近してる。
ミノフスキー粒子もどんどん上がってる。
とりあえず、モビルスーツデッキで待機しててくれ。」
カミーユはそれを聞くと、分かったと言って部屋を出る。
すると、ちょうど部屋を出たところでレコアと通路で顔を合わせる。
「カミーユ、アポリー中尉とロベルト中尉は
もうノーマルスーツに着替えに行っているわ。
あなたも急いで。」
「レコア中尉は出ないんですか?」
「クワトロ大尉のリック・ディアスを勝手に使うわけにいかないでしょ?
とにかく着替えてデッキで待機してて。」
レコアはそう言うと、ブリッジに繋がる通路の方へと向かっていった。
「モビルスーツ発進しろ!」
アデスの発進指示でヴェサリウスからは3機のモビルスーツが発進する。
モビル・ジンーーー
旧ジオン公国軍のザクに似たこのモビルスーツが、
ザフト軍初のモビルスーツである。
性能はティターンズのハイザック相当ではあるが、
モノコック方式のクラシカルなモビルスーツである。
ジンは3機編隊を組み、モノアイを光らせ、
マシンガンを手に背中のウイングバインダーから
激しい火を噴かせながら、ヘリオポリスに侵入せんと突き進む。
パイロットの移送を終えて、港から出港する準備にとりかかっていた、
輸送艦マルセイユV世級のフロッグでも管制室の通信が聞こえており、
こちらの艦内にもアラートが鳴っていた。
そこへノーマルスーツを着てブリッジに入ってきたムゥが状況を艦長に聞く。
「敵は?」
「ザフト艦2隻だ。ナスカ級及びローラシア級。
ミノフスキー粒子戦闘濃度だ。さきほどザフトのモビルスーツ発進も確認した。」
ムゥは艦長の言葉を聞きながら、センサーで確認すると、
ヘリオポリスに迫る3つの機影を確認する。
「チっ…。ルークとゲイルはメビウスにて待機!まだ出すなよ!?」
ムゥはそう言うと、急いで発進の為の準備に向かって行った。
一方、ヘリオポリスの警備隊はコロニー防衛の為に内火艇を6機発進させる。
無重力エリアの工場区の管制室では
ヘリオポリスの管制室からの報告を受けたオペレーターが
慌てた様子でダウムの顔を伺う。
「ダウム艦長……!」
「慌てるな。迂闊に騒げば向こうの思うつぼだ。
対応はヘリオポリスに任せるんだ。」
アークエンジェルのダウム艦長は、冷静になるように部下へ施し、
各部署の責任者に指示を出していく。
「いざとなれば艦は発進させる。
エゥーゴとの合流はその後だ。
ラミアス大尉を呼び出し、Gの搬送を開始させい!」
「はっ!」
その場にいたアークエンジェルのクルーである
ナタルやノイマンらもその指示に従い工場区内の管制室を出て行く。
「アークエンジェルへ!急いで!!」
外の工場区画では、管制室からの指示でマリュー・ラミアス技術大尉が
モビルスーツの搬送作業の陣頭指揮を取っていた。
そして工場の目の前にまで来た一台のエレカ。
ブレックス達は工場の門に誰もいない事に気づいたその時だったーーー
アークエンジェルを格納しているドックの壁に仕掛けらた時限爆弾が爆発すると、
ダウム艦長らのいる管制室もその爆発に巻き込まれる。
その爆発により、工場区画全体か大きく揺れる。
「うぉ!」
「むぅ…!?」
「この振動は!!」
大きな振動を体に感じたブレックス達は、互いの顔を見る。
「この揺れは隕石ではありませんね…」
「ああ、爆発の振動だ…」
「この近くのはずだ。嫌な予感がする…とにかく、工場へ入ろう。」
クワトロが言うと、ヘンケンは爆発の揺れだとすぐに分かった。
爆発の振動を感じた彼らは工場で何か異変が起きていると察知し、
クワトロがエレカのアクセルペダルを強く踏み、工場へ入って行く。
ヘンケンは後部座席のブレックスの顔を見て
コクリと互いに頷くと胸に忍ばせたハンドガンを取り出した。
工場内にいたカトーゼミのキラ達も、
部屋の書類や机の上のものが散乱する程の振動を肌で感じていた。
「あぁあっ…!」
「…隕石か?」
サイは周辺の隕石にコロニーがぶつかったと思っていた。
彼らは戦争を知っているクワトロ達とは違い、
この揺れや振動が爆弾などの類いなどによるものとは分かるはずもなかった。
ヘリオポリスに肉薄するジンに対して、
コロニーから出てきたヘリオポリス警備隊の警備艇は、
左右に装備された機銃をジンに放ち、迎撃にあたっている。
輸送艦のフロッグにいるムゥは愛機の特殊装備型戦闘機、
メビウス・ゼロに乗り込む。
「フラガ大尉。」
「艦を出して下さい。港を制圧されます!こちらも出るぞ!」
コックピット内には艦長がムゥの様子を伺う。
ムゥはパイロットシートのベルトを締め、
耳元には白い羽が描かれたヘルメットのバイザーを下ろし発進準備をする。
アーガマのモビルスーツデッキでは
リック・ディアスに乗るアポリーとロベルト。
ガンダムMk-Uには、カミーユがコックピットに乗り待機していた。
3機のコックピットにブリッジにいるレコアから通信が入る。
「ザフトのモビルスーツ3機がコロニーに侵入したわ。」
それを聞いたアポリーが顔をしかめてレコアに言う。
「コロニーで戦闘かよ?」
アポリーの反応に同調するようにロベルトが
「中立のコロニーでか?グリーンノアの時とは状況が違うんだぜ?」
と半ば文句を付けて来た。
レコアは男のくせに文句の多い人達だと思っていたが、
アポリーやロベルトはコロニーへのダメージを考えると、
コロニー内での戦闘は極力ならば避けたいという気持ちがあった。
そこへカミーユが通信に割り込んで来る。
「でもほっといたらもっと大変な事になりますよ。
ブレックス准将達もいるんですから!僕は出ますよ!?」
「トーレス、早くハッチを開けてくれ。」
カミーユが続けて言うとトーレスはレコアの方を見て
「レコア中尉!どうします!?」
と彼女からの指示を仰ぐ。
それを聞いていたレコアはしばらく考えてから顔を上げる。
「そうね…トーレス、ハッチを開けて。
モビルスーツ隊を出撃させましょう!!」
意を決したようにレコアはトーレスへハッチ開放の指示を送り、
カタパルトデッキへ発進体制に入らせる。
レコアからの指示を受けたカタパルトデッキは誘導員達が忙しなく動き回る。
リック・ディアスのコックピットの中で
「今度の相手はコーディネイターだってよ、アポリー。」
とロベルトはアポリーへ言うと彼は即座に返す。
「あぁん?ビビってるのかよロベルト?」
そう言って余裕を見せると、ロベルトは癪(しゃく)に障ったらしく
「ぬかせ!モビルスーツ戦に関しちゃこっちの方がベテランだ!」
ロベルトは身を乗り出して声を荒げていると
「無駄口は叩かないで!!
射出出来ないから自分達で出て下さい!」
とレコアが横から通信に割り込んで来た。
アーガマをドックに停泊しているせいで、
カタパルトのモビルスーツ射出が困難であるため、
リック・ディアスの前方には誘導員が
赤く発光するスティックで前進するように合図をしていた。
「おっと!そうだったな。
リック・ディアス、アポリー・ベイ出る!」
思い出したようにアポリーがそう言って、
カタパルトを歩き軽くフットペダルを踏む。
リック・ディアスの背部のバーニアスラスターから小さく火が出ると、
ホバー状態のままカタパルトから離れる。
「よし、リック・ディアス、ロベルト機出るぞ!!」
ロベルトのリック・ディアスもスラスターを軽くかけながら、
カタパルトの誘導員の合図でゆっくりと発進して行き、
アーガマから離れるとコロニー内に向かって一気に加速して行く。
2機のリック・ディアスがカタパルトから発進して行くのを確認すると
カミーユがレコアに尋ねる。
「外に敵の戦艦がいるんでしょ?
アーガマは出さないんですか?」
カミーユは外の敵が気になりレコアにそう聞くと、
レコアの言葉は納得のいくものだった。
「アーガマを出して敵艦と戦闘になったらティターンズに見つかるわ。
それにブレックス准将達が戻るまで動けないわ。」
カミーユは分かりました。と言うと、
ヘルメットのバイザーを下ろし発進体制に入る。
「ガンダムMk-U、カミーユ・ビダン行きます!」
ガンダムMk-Uは右舷カタパルトから、
アポリーやロベルト同様と同じようにスラスターを調整しながら発進すると、
やがて加速してコロニー内部へと向かって行った。
コロニー内に侵入した3機のジンは
市街地の上空をスラスターを噴かし轟音と共に滑空して行き、
一気に工場区画へ目指し突き進んで行く。
工場区の近くに切り立つ、丘の上からザフト軍のエリート兵の証である
赤いノーマルスーツを着たイザーク・ジュールが望遠カメラを手に
「あれだ。クルーゼ隊長の言ったとおりだな。」
と言い工場区から抜け出そうとしている3台のトレーラーを確認し
手に持った望遠カメラを目から離すと
「突けば慌てて巣穴から出てくるってか?
やっぱり間抜けなもんだ、ナチュラルなんて。」
などとまるで小馬鹿にするように言ったのは、
イザークと同じ赤いノーマルスーツを着たディアッカ・エルスマンだった。
他にも三人の赤いノーマルスーツの
アスラン・ザラ、ニコル・アマルフィ、ラスティ・マッケンジーに、
五人の緑のノーマルスーツの兵士達がイザークらと共にその先を見据える。
3機のジンが工場区付近へ近づいた所でイザーク達からの情報が入る。
「ミゲル、お宝を見つけたようだぜ。セクターS。第37工場区!」
ザフト兵の一人がその情報を確認してミゲル・アイマンに伝えると
「了解。流石イザークだな、早かったじゃないか。」
とこちらも余裕を見せる表情だった。
彼もイザークらと同じ、赤のノーマルスーツを着ており彼もエリートの一人だった。
ミゲルを含めた2機のジンは情報通り37工場区へと向かい、
残る1機はイザーク達の援護に向かうために散開して行く。
コロニーの外では輸送艦フロッグから発進した
ムゥの乗る航宙機のメビウス・ゼロと、
メビウス2機がガモフから発進したジン2機と交戦中で、
ヴェサリウスの対空砲火をなんとかかわす。
モビルスーツ運用能力の無い、
旧式の輸送艦を偽装させていたためにムゥ達は不利な戦いを強いられていた。
「チッ…あいつらにジムカスタムくらいありゃ良かったんだがな…!!」
ムゥはそう言いながら、
マシンガンを連射させるジンの攻撃と対空砲火の雨をかわし続ける。
彼の乗るメビウス・ゼロは偵察機として
使われているメビウスの強化航宙機であり、
機動性能はメビウスよりも数段上である。
装備にはガンバレルという、
有線式遠隔操作兵器を実装していた。
ガンバレルは連邦軍が開発している
準サイコミュ兵器の試験運用兵器であり、
空間認識能力に優れるムゥに与えられたのである。
ムゥは四基のガンバレルを展開すると、
ガンバレルが複雑に動きながらジンの四方に展開して、
ポッドから放たれるマシンガンで集中放火を浴びせ、リニアガンを撃ち放つ。
「チッ…浅かったか!!」
ジンはメビウス・ゼロの攻撃に耐えると、メビウス・ゼロからすぐさま距離を取る。
そこへ、1機のメビウスが追い打ちをかけんと下がるジンを追いかける。
「おいゲイル、よせ!!」
ムゥは深追いし過ぎたゲイルにそう言ったが、ジンはすぐさま反転し、
腰から抜いた重斬刀を手に、メビウスのコックピットと機体を両断する。
ゲイルのメビウスは即座に爆散すると
ムゥの頭の中にゲイルの叫び声のような音が流れてくると、
ヘルメットの上からおもわず頭を押さえた。
「くっ…な…なんだ!?」
#b
37工場区ではマリュー・ラミアス技術大尉が工員に指示を送っており、
一人の工員がアークエンジェルとの交信を試みていた。
「ラミアス大尉!艦との交信途絶。状況不明。」
その時、正面から突っ込んできたジンがマシンガンをラミアス達に向かって攻撃を行ってきた。
「…!!ザフトの……!X-103と303を起動させて!とにかく工区から出すわ!」
「分かりました!」
ラミアス達はなんとか身を伏せて、攻撃から免れ工場区にあるモビルスーツの搬送を急ぐ。
工場の建物は既に停電状態となっていた。
不安な表情で通路に集まるキラ達は、非常階段の扉を開けると、工場職員達がぞろぞろと階段を登って行く。
「どうしたんです?」
サイが一人の職員にそう聞くと、ザフトのモビルスーツに工場が襲撃されている事を初めて知った。
この事実を知ったキラやカトーゼミの学生達はたちまち不安感に苛まれる。
キラ達と同じ部屋にいた少女はそれを聞き、何やら思いつめた表情をしていた。
「とにかく、君達も早く!」
「はい、行こうみんな。早く!行くぞ!」
トール達はコクリと頷くと非常階段から避難を始める。
だが、一人の少女は反対方向の通路へと駆け足で去って行く。
それを見たキラはすかさず、少女を追う。
「君!?」
「うっ!」
キラは少女を追うと、正面の通路から体に打ち付けるような砂埃と爆風が
あたり一面に広がっていく。
少女はひるみながらも、顔をあげてその先へと向かって行った。
「キラ!どこ行くんだよ!?」
「ゴメン!すぐに戻る!」
少女の事が気になったキラはサイに呼び止められるが
キラは何故だか少女の事が気になり後を追った。
ブレックス達はようやくジンが向かって行った方を目指してようやく、
それに追いついた。
目の前の建物からは続々と避難をする為に工員達が出てきていた。
「あれはザフトのジンだ。
ここにいるという事は新型ガンダムはすぐそこだな。」
「鹵獲目的とは言え、ここまで破壊するとは…やり方が荒々しいですね」
ブレックスはそう言うと、ヘンケンが辺りを見回し、
破壊された建物を見ていた。
ブレックス達の目の前の建物から出てきていたサイ達は、
ジンを間近に目の当たりにして言い切れない恐怖に襲われて立ち尽くしていた。
キラと少女は共37工区に到着すると、そこでは激しい銃撃戦が行われ、
あちこちで手榴弾などの爆発が起きている。
二人はそのキャットウォークから見下ろす2機のモビルスーツが目に入る。
「こ、これって…」
モビルスーツじゃないか…なんでこんなところに?
そう思っていたキラの横で少女が体を小さく震わせている。
「…やっぱり…連邦軍の新型機動兵器…うっ…お父様の裏切り者ー!」
ガクリと膝を付き涙を流しながら少女がそう叫ぶと、
下でマシンガンでザフト兵に応戦していたラミアス技術大尉が、少女の声のする方へ銃口を向ける。
「うあっ…じょ…冗談じゃない!」
ラミアスがキャットウォークに見えた人影に思わず発砲すると、キラは少女の手を取り走り出す。
「…子供!?」
ラミアスは人影が子供である事に気付いた。
「泣いてちゃ駄目だよ!ほら走って!」
キラは涙を流し続ける少女に声をかけてとにかく、逃げるよう言った。
3台のトレーラーに運び出されていた3機の新型モビルスーツは
既にコロニーに侵入したジンの1機とイザーク達によって制圧されていた。
3機のモビルスーツはトレーラーからその躯体を起こす。
「ほお、さすがにすごいもんじゃないか。これがガンダムってやつか。
そっちはどうだ?ディアッカ。」
イザークは3機の内のデュエルのコックピットに座り、
データを見るとジンなどとは比べものにはならない性能に感心していた。
「OK。アップデータ起動、ナーブリンク再構築、キャリブレート完了。動ける!」
「こちらもOKです!動けます。」
ディアッカとニコルも乗り込んだバスターとブリッツのOS構築が終了すると、ディアッカが続けて言う。
「アスランとラスティは?遅いな。」
「ふん。奴ならな大丈夫さ。ともかくこの3機、先に持ち帰る。
クルーゼ隊長にお渡しするまで壊すなよ。」
37工区へ向かったアスランとラスティからの連絡が無い事に気付いたディアッカだが、
イザークはアスランの実力を認めているのか、
余裕すら伺えた。
しかしその時だった。
3機のコックピットにアラートが鳴り、レーダーに3つの機影が映し出される。
イザークが全天周囲モニターに映し出された上空に目をやると
真ん中に映る白いモビルスーツ、ガンダムMk-Uを見て心臓が高鳴る。
「おい!…あれって!」
「……ガンダムだと!?」
降下するガンダムMk-Uは奪われたガンダムに対してビームライフルを構えたのだったーーー
>>513乙。
投下終了かそれとも連投規制喰らったのか。
>>527 すいません。
連続投稿規制食らってました…
とりあえずこれで終わりです
第5話_「キラとストライク」
「…連邦軍!?…あんなのがここにいたってのかよ!」
ディアッカが《ガンダムMk-U》の姿を見て驚いていると
イザークが「散開するぞ!!」そう叫ぶと、
デュエル、バスター、ブリッツは三方向に別れて
スラスターを一気に全開にすると、
灰色の機体がその場を離れて行く。
「やはり遅かったか!!」
「破壊せずに奪い返すっての難しいんじゃないのか!?」
アポリーとロベルトが言っていると
「どっちにしたって、このまま逃がすのはマズイんでしょう!?」
とカミーユが叫ぶと、再開したデュエルに照準を合わせて右手のグリップボタンを押す。
同時に《ガンダムMk-U》が構えていたビームライフルから
収束されたメガ粒子が放たれ、黄色い光線がデュエルに襲いかかる。
「ちっ!!」
イザークは状態を立て直し、すんでのところで
ビームコーティングの施された青いシールドで防ぐと、
ディアッカが「イザーク大丈夫か?」と声をかける。
眉間にしわを寄せたイザークは自軍の新型に躊躇なく撃って来る
《ガンダムMk-U》に少々驚いていた。
イザークは即座に「フェイズシフトを作動させろ!」
とディアッカとニコルにそう叫ぶと、
灰色の躯体をした3機のガンダムはみるみる内にそれぞれの機体色へと変わった。
「なんだアレは!?」
「色が変わった?」
カミーユ達は、3機のガンダムの機体色の変化に驚きの表情を見せた。
《デュエルガンダム》は右手に持つビームライフルをカミーユの乗る
《ガンダムMk-U》に撃ち放ち、距離を取るとイザークがディアッカ達に叫ぶ。
「コイツらは破壊してでも逃がすつもりは無いらしい!
ここで迎え撃つぞ!」
そう言うと「了解!」「はい!」
とディアッカとニコルもそれに呼応する
「チっ!当たれよ…!」
外れればコロニーに穴が開く…とにかく当たれ。
《リック・ディアス》に乗るアポリーは祈りを込めるように
レバーを前に押し出してビームピストルを構え、
視線の右側にいた《バスターガンダム》に狙いを定めて撃つ。
「おおっと!!……あのゴツいヤツもビーム持ちかよ!?」
《バスターガンダム》を操縦するディアッカが
焦る様子もなく冷静にかわす。
するとコロニーの地表部に
収束されたメガ粒子が貫通して穴が空いてしまうーーー。
「しまった!?」
アポリーは慌てて穴のあいた場所に、
左手からトリモチを放ち穴を塞ぐ。
コロニーに穴を開けるビームピストルの威力を見ていたニコルが
ディアッカに注意を促す。
「ディアッカ、気をつけて下さい!
あのビームの収束率だとシールドが無ければ耐えきれません!」
ニコルはそう促すとすぐにディアッカは
「OK!でも心配ご無用!」と焦りのない返事を聞くと、
ニコルはロベルトの《リック・ディアス》に向かって
《ブリッツガンダム》の右手のシールドに内臓されたビームガンを放つ。
「っく!…いい狙いだ!!」
《ブリッツ》の素早い動きからの攻撃に肝を冷やしつつ
ロベルトはバルカンファランクスで応戦するが、
コーディネイターの戦闘能力を肌で感じていた。
「あれが新型ガンダム…!結構早いぞ!?」
カミーユは《デュエル》にビームライフルを2発、3発と放つが、
全てがかわされ鉱山部に当たり大きな爆発を起きている。
「まずい…やっぱりコロニーの中じゃ下手にビーム兵器は使えない…!」
破壊力のあるビームライフルが危険と判断したカミーユが躊躇すると、
《デュエル》が《ガンダムMk-U》に一旦距離を置く。
「フン!あのガンダム…黒い2機よりも動きが単調だな。
そんな腕で俺に戦いを挑むとは笑わせる!!」
イザークは相手を冷静に分析し、
チャンスと見るやビームライフルを腰にマウントし、
バックパックから右手にビームサーベルを引き抜いて、
《ガンダムMk-U》に突進して行く。
「……!来るのか!?」
カミーユは真っ直ぐ向かって来る《デュエル》に気付き、
カミーユもすかさずビームライフルを左手に持ち替え、
ビームサーベルを引き抜くと、《ガンダムMk-U》と
《デュエル》のビームサーベルがぶつかり合い、激しい火花を散らす。
「なんで中立コロニーでこんな真似をする!?
モビルスーツを奪うだけならこんな人を殺すんじゃない!」
「…!なに!?」
ビームサーベルがぶつかり合ったことによって、
接触回線が開いているためカミーユの声が、(デュエル》のコックピットに響く。
イザークはカミーユの声を聞くと、
自分とあまり年齢の変わらないくらいの男の声に驚く。
「貴様たち連邦がオーブと裏でコソコソしていなければこんな事にならん!!」
「それはティターンズと戦う為のガンダムなんだよ!!
おとなしく返すんだ!」
「…なっ!!」
カミーユがイザークへそう言うと
《ガンダムMk-U》が左手に持ったビームライフルで
《デュエル》の胴体を殴りつけると《デュエル》の体制が大きく崩れる。
その隙を突いた《ガンダムMk-》はビームサーベルを縦に振り降ろしたーーー。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
キラは少女の手を引き、近くにあった避難シェルターに到着した。
「ほら、ここに避難してる人が居る。」
キラが満員を知らせるランプが点灯していない
シェルターまで通じるエレベーターのスイッチを押すと
中から男の声が聞こえてきた。
「まだ誰か居るのか?」
「はい。僕と友達もお願いします。開けて下さい。」
「二人!?」
「はい!」
「もうここはいっぱいなんだ…!
左ブロックに37番シェルターがあるから…そこまで行けないか?」
男からそう言われると、キラは辺りを見回してから
何かを決した顔付きに変わる。
「なら一人だけでもお願いします、女の子なんです!」
「…分かった…。すまん!」
キラは中に避難していた男とそう話し、
スイッチから手を離して開いたシェルターの扉に少女を押し込む。
「入って。」
「え?…なにを!?私は……ーーー。
少女は驚いた表情で何かを言いかけていたがキラがすかさず
強い口調で彼女を説き伏せる。
「いいから入れ!僕は向こうへ行く。大丈夫だから、早く!!」
「…待て!お前…名前は!?」
少女は必死になって助けてくれたキラの名前を聞いてくると、
キラは穏やかな表情で「キラ、キラ・ヤマト。君は?」
と言って、少女の名前を聞く。
「……カガリだ。」
カガリと名乗ったその時にシェルターの扉が閉じられ、
エレベーターがシェルターに向かって下がって行った。
一人になったキラは37番シェルターのある方へ走る。
キャットウォークを横切っていると、
下では依然としてモビルスーツを守るためにラミアス技術大尉や連邦軍と
ザフト兵達が激しい白兵戦を行っていた。
「ハマダ!ブライアン!早く起動させるんだ!」
新型ガンダムの上に乗り、
銃を撃ち応戦しながらラミアスが必死の表情で指示を送っていると、
ラミアスを背後から狙いを付けているザフト兵の姿がキラが発見し、
「危ない後ろ!」と叫ぶとラミアスが反射的に身を隠し、
キャットウォークにいるキラを発見した。
「…さっきの子?まだ…!」
ラミアスはキラを気にしながら、近くいたザフト兵を撃ち、
立ち上がるとキラへ「来い!」と叫ぶ。
「左ブロックのシェルターに行きます!お構いなく!」
そう言ってキラは再び走り出すが、それを聞いたラミアスは
「あそこはもうドアしかない!」とキラに向かって叫んだその時、
キラの目の前で爆発が起き足場が失われてしまう。
ラミアスは再びキラへ「こっちへ!」と言うと
キラは高さ6mはあろうかという高さのキャットウォークから飛び降り、
ラミアスの目の前に着地をしてみせた。
それを見たラミアスは少々、驚いた顔をキラに向けていた。
しかし、キラの降りた場所はまさしく戦場であり、
あちこちで銃弾が飛び交っていた。
ラミアスの部下である技術士官のハマダ伍長がマシンガンを乱射していると、
ザフトのラスティ・マッケンジーの肩口へ銃弾が直撃する。
「は…!?ラスティ!!」
ラスティと共に行動していたアスランが怒りの表情を浮かべて、
ハマダ伍長に発砲すると銃弾がハマダ伍長の手に当たり、倒れこむ。
それを見ていたラミアスがアスランへ銃を構えると、
アスランはの刹那、ラミアスに銃を発砲する。
左の肩を撃ち抜かれたラミアスは倒れこみ、
激痛の走る肩を押さえて悶絶している。
そのラミアスへトドメを刺そうと、
アスランはマシンガンのトリガーを引くが
弾が空になった事に気付くと舌打ちをして
腰に備え付けたコンバットナイフを手にラミアスへ襲いかかる。
その時だった。
撃たれて負傷したラミアスのそばへ寄っていたキラは、
ナイフを振りかざしていたアスランと目が合うーーー。
‘‘‘ほんとに戦争になるなんてことはないよ。
プラントと地球で。
避難なんて意味ないと思うけど…
キラもその内プラントに来るんだろ?'''
キラの記憶の中で、昨日の事のように、
鮮明に蘇る親友とのあの時間ーーー。
「アスラン…?」
その言葉を聞いたアスランはピタリと動きを止めて、
キラの顔を見て驚愕する。
「…!?キラ…?」
数秒の間、何の言葉も交わす事もなくアスランはその場に立ち尽くしていた。
その時、ラミアスが痛みを堪えて体を起こしてアスランに向かって銃口を向けると、
アスランは慌てて後ろに飛び下がっていった。
ラミアスはアスランが下がって行くのをチャンスと見て、
キラをコックピットブロックへ押し込み自身も乗り込んだ。
支援
「シートの後ろに。
…この機体だけでも、私に動かす事くらい…」
ラミアスはそう言いながらキラをリニアシートの横へ下がらせ、
《ストライク》を起動させる。
するとコックピットはたちまち360°cをの景色を映すモニターに切り替わり、
キラがその光景を見て少々驚いていた。
《ストライクガンダム》の鹵獲に失敗したアスランは
負傷したラスティの体を起こす。
「大丈夫か?ラスティ…?」
「あ…あぁ、すまない。
ナチュラルに撃たれたなんて笑われちまうな…はは…」
ラスティは気遣うアスランにそう言って見せると、痛みに耐えながら笑う。
アスランはラスティが無事で良かったと肩を撫で下ろす気分だったが、
急いで残りの機体《イージスガンダム》にラスティと共に乗り込む。
コックピットモニターには二人のザフト兵が
《イージス》に乗り込む姿をキラが見ていたーーー。
(アスラン…いやそんなまさか…)
キラは信じたくなかった。
アスランがこんなところに…こんな事をする筈が無いーーーと。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
『ヘリオポリス全土にレベル8の避難命令が発令されました。
住民は速やかに最寄りの退避シェルターに避難して下さい。
ヘリオポリス全土にーーー
ブライト・ノアが移送してきた
ファ・ユイリィを含めるグリーンノアの民間人達は、
オーブへの入国申請中の最中にコロニー全土で
シェルターへの避難命令が発令されていた。
ブライトは市長との会談の為に、
出迎えていた市長と共に市庁舎へと向かっていたが、
グリーンノアの避難民や憔悴しきっていたファ・ユイリィを心配して、
途中で乗り捨てられていたエレカに乗り込み、
第5ゲートの港を目指していた。
市街地の中を走っているとブライトは逃げ惑う人々や、
路上に乗り捨てられたエレカをかわしながら進んで行く。
安全な場所と思われていたヘリオポリス内の遠くの方では
爆発による轟音が聞こえており、振動がおさまる事がなかった。
「ザフトが攻めて来たとは……
いったい何だと言うんだまったく…!」
ブライトがそうボヤいていると逃げ惑う人だかりから外れて、
辺りを見回し何かを叫ぶ女性と少女がおり、
そらを見ていたブライトは妙に気になった。
エレカから降りて彼女達のもとへ駆け寄り声をかける。
「どうしました!?早くシェルターへ避難して下さい!」
そう言うと、彼女達はブライトの方へ振り向く。
「え…?軍人?」
「あ、あれって…連邦軍の軍服ですね…」
ブライトは不安な表情を見せている二人に歩み寄り言葉をかける。
「レベル8の避難命令が出ています。
急がないとどこのシェルターも一杯に……ーーー
そう言いかけた時だった。
女性と共にいた少女が、ブライトの両手の袖を掴んで訴えかける。
「娘さんとはぐれちゃったそうなんです!!まだ小さい女の子で…!」
ブライトにそう言うのは、キラ達の友人フレイ・アルスターだった。
フレイは友人とはぐれた時にこの母親と娘と出会った。
だが、混乱の中で母親と娘がはぐれてしまい必死に探していたらしく、
とにかく彼女は相手が誰であろうとブライトに必死に助けを乞う
母親の娘、エルはブライトの愛娘チェーミンと同じ3歳だった。
話を聞いたブライトは「それはまずい…」と思い
彼はすぐさま彼女達とエルを一緒に探す事にした。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
工区を逃げ惑うサイ達は、
どこのシェルターも一杯になっており彷徨い必死に逃げるが、
とうとう《ストライク》と《イージス》のある37工区の目の前まで来てしまった。
するとサイ達の後ろから「君達!」
と声をかけられると、後ろを振り返る。
「こんな所で何をしている?早く逃げろ、戦闘に巻き込まれるぞ!」
サイ達の後ろから声をかけたのはクワトロ・バジーナだった。
その後ろにはブレックスやヘンケンらが立っている。
「で…でも!友達とはぐれてしまって、
どこのシェルターも一杯なんです!!」
まずいな…という表情を浮かべるブレックス達の目の前には、
肩で大きく息をはいている少年と少女達が恐怖に震えている。
その近くを連邦軍の作業服を着た男が通ると、
ブレックスが慌ててその男に駆け寄り声をかける。
「おい!君、アークエンジェルとガンダムはどうなった!!」
「エッ…!?」
男がそう声をかけられピタリと立ち止まると、
後ろにいたクワトロやヘンケンが男の顔を見ていた。
「だ、誰です…?あなた達は…」
立ち止まった男が怪訝な顔でブレックス達を見てからそう聞いて来る。
ブレックス達は軍服を脱いでヘリオポリスに上陸していた為に
連邦兵にとっては機密事項を何者か知らない者に答えるつもりはなかった。
するとブレックスは迷わず男に自分達の正体を明かす。
「私はブレックス・フォーラ。エゥーゴの者だ。」
そう聞くと男は目を見開き口を大きく開けてから姿勢を正し
「エ…エゥー…?…し…しし失礼いたしました…!!
エゥーゴのブレックス・フォーラ准将閣下と知らずに…もも、申し訳ありません!!」
と敬礼しながら大きな声で謝っていると、
「そんな事は良い!状況はどうなっておる!!」
とブレックスが彼に怒鳴るとお前は体をビクリとさせる。
「は、はい!…最初にアークエンジェルのあったドッグが爆発しました…
…その後、艦長のいた管制室との通信が途絶え…おそらくは…」
男がそう答えると下を向いて体を震わせていた。
「そうか…だが君は軍人なのだろう?
ならば少年達の前でそのような情けない姿を見せるな。」
ブレックスが男の肩を掴んでそう言うと、
「はっ!!」と男は背筋を伸ばして返事をする。
ブレックスと男の会話を聞いていたサイ達はぼそりと話をする。
「おい…あの人、エゥーゴって言ってたぞ」
「ああ…しかも准将とかなんとか…それってかなり偉い人だよな?」
「で、でも確かエゥーゴって…」
彼らはエゥーゴの名を聞いてすぐに
『反地球連邦組織』というワードが頭に浮かび、さらに不安になっていた。
クワトロは彼らを見て、連邦の作業員に近寄る。
「君、近くにシェルターは無いか?
あの少年達が逃げ遅れているらしい。」
クワトロが男にそう聞くと、
35番シェルターがまだ空いているはずだと言うが、
どうやらザフト兵達が戦闘を行っている場所の近くらしい。
それを聞いていたヘンケンは
少し考えサイ達の方へ目を送ると、トールと目が合う。
強面のヘンケンと目が合ったトールは少したじろいで
生唾をゴクリと呑んだ。
「そこを突っ切るしかなさそうだな…
民間人に被害が及ぶのはもっとまずい。」
ヘンケンが意を決した表情でそう言うと「確かにそうだな…」
と言って頷くとブレックスはさらに続ける。
「よし、おそらくはもうガンダムも奪われているはずだ。
危険だがそこを突っ切りあの子らだけでも避難させよう。」
この言葉にクワトロとヘンケンが大きく頷いて
「了解。」と言ったその時だったーーー。
「あっ!!」とサイが声を上げて指を差した方向を見ると
50mほど先で爆発が起き、2機のモビルスーツ、
《ストライク》と《イージス》が飛び上がり、着地をする。
「まずい…!とにかく彼らを!!」
そう言ってクワトロ達はサイ達を連れてシェルターに向かって走る。
《イージス》のもとへミゲル・アイマンの乗る
《ジン》が近寄り肩を掴み接触回線を通して声をかける。
「アスラン!」
「失敗だ!ラスティがやられた!」
アスランの言葉に心臓がドクンと強く動いたミゲルが
「何っ…死んだのか!?」と声を荒げると
《ジン》のコックピットに弱々しい声で
「ばぁか…なんとか生きてるよ。肩が痛っえ…」
と聞き慣れた声が聞こえてミゲルはホッと肩を撫で下ろす。
「向こうの機体には連邦の士官が乗っている。」
アスランがそう続けるとミゲルが
前方でぎこちない動きをしている《ストライク》に目をやり
「ならあの機体は俺が捕獲する。
実はイザーク達が連邦軍のモビルスーツと交戦中でな。」
ミゲルはそう伝えアスランとラスティが驚いていると、
続けて「お前はそいつを持ってあいつらと合流して先に離脱しろ。」と言うと、
右手に持つマシンガンを腰部背面のラッチにマウントすると、
腰部側面にマウントされた重斬刀を右手に掴んで構える。
(…キラ、いや違う。あいつがあんなところに居るはずは…)
ミゲルの言葉を聞きながらOSの立ち上げを行うアスランは、
さきほど出会った少年の顔を思い出していたーーー。
ミゲルの《ジン》は重斬刀を右手に構え、
おぼつかない足取りで動く《ストライク》に向かって、
機体を走らせ突っ込んで行く。
《ジン》がよろよろと動く《ストライク》の左側面から重斬刀を振り下ろす。
「くっ…!?」
ラミアスは重いフットペダルを踏み込み、
スラスターを作動させると《ストライク》が飛び上がり、
後ろに下がってなんとか《ジン》の攻撃を回避する。
「うわぁ!」
着地の激しい衝撃で《ストライク》のコックピットが揺れると、
ベルトの無い状態のキラは体制を崩して
ラミアスの豊満な胸に向かって顔面ごと倒れこんだーーー。
クワトロやブレックスらはサイ達を連れて、
動き回るモビルスーツの足元をくぐり抜けながらシェルターを目指す。
目の前で重い動作で動く《ストライク》を見ていたクワトロは、
なんとか1機だけが奪われずに済んだ事と、
そのモビルスーツのOSが立ち上げられていない事に気づいていたーーー。
倒れたキラは柔らかいものに顔が包まれている事に気付き、(ヤバイ…)
そう思っていた彼にラミアスが叫ぶ。
「ちゃんと後ろに下がってなさい!死にたいの!?」
「す…すいません!」
慌てて立ち上がりラミアスから離れて、
顔を赤くしていたキラは内心それだけで良かった…そう思っていると、
目の前まで迫っていた《ジン》が、
《ストライク》に再び重斬刀を振り下ろすのが視界に入る。
ラミアスは咄嗟にコンソール右側にあるボタンを押し、
レバーを操作すると、《ストライク》の腕をクロスさせて防御体制をとる。
その瞬間《ストライク》はトリコロールの機体色に包まれて、
《ジン》の重斬刀を腕だけで受け止める。
「うわぁぁ!」
《ストライク》は火花を散らす重斬刀の振動効果で激しく揺れると、
キラとラミアスが舌を噛まないように歯を食いしばる。
「あっ!!」
「何ぃ!?」
後方でミゲルの戦いを見ていたアスランとラスティが声をあげると、
ミゲルも思わず声をあげて驚いていた。
それはシェルターを目指して走るクワトロ達も同様だった。
「あれは!!」
「あれがフェイズシフト装甲か…!?」
新型のガンダムのデータを予め読んでいたブレックスだが、
彼もその変化を目の当たりにして驚いていた。
驚いたミゲルが重斬刀を《ストライク》から離して、
飛び上がって距離をとる。
「こいつ!どうなってる!?こいつの装甲は…!!」
「こいつらはフェシズシフトの装甲を持つんだ!
展開されたらジンのサーベルなど通用しない。」
後ろから肩を掴んで通信してきたアスランがそう言うと、
ミゲルは唇を強く噛んで《ストライク》を見やる。
「ち…!分かったからお前達は早く離脱しろ!
いつまでもウロウロするな!」
嫌な汗を肌で感じているミゲルは、
アスランへ離脱するように大声で叫ぶと、
OSの立ち上げが完了した《イージス》も機体色が赤に変わる。
その横から、ミサイルが飛んでくると
《イージス》の75mmバルカンで撃ち落とすと、
その先から特攻をかけてきたミサイル搭載トラック《ブルドック》を破壊し、
離脱を開始するーーー。
奪われた《イージス》がスラスターを噴かせて、
離脱する様子を見ていたキラとラミアスだが、
コックピットにアラート音が鳴り、
モニターを見ると《ジン》が地面を滑空して正面から迫る、
「くっ…!」
ラミアスはグリップのボタンを押して、
《ストライク》の75mmバルカンで迎撃する。
武器を使っても動かない《ストライク》を見ていたキラが
この機体の違和感を感じる
(…これってまだ!?ーーー。)
「ふん!いくら装甲が良かろうがぁっ!」
「あっ!?うわぁぁ!」
《ジン》は三たび重斬刀でストライクに斬りかかると、
相変わらずぎこちない動きでなんとかかわす《ストライク》ーーー。
「そんな動きで!」
ミゲルは叫ぶと、《ジン》が一文字に
《ストライク》に斬撃を浴びせると、
追い打ちをかけるように右肩部にも斬りかかるーーー。
ミゲルの無駄の無い波状攻撃で《ストライク》はその衝撃により、
機体ごと後ろのビルに倒れ込むと、ビルが倒壊するーーー。
そのビルの近くを走っていたサイ達やブレックス達に思わぬ事態が起きる。
「うわああぁ!?」
倒壊して来たビルの瓦礫の大きな破片がトールとミリアリアに飛んで来るーーー。
「…危ないっ!!」そう叫んだ声が聞こえた。
思わず目を閉じてしまっていたトールとミリアリアが目を開くと、
そこにはヘンケンが目の前に倒れ込んでいた。
「あ…あぁ…」
「お…おっさん……」
「ヘンケン艦長!!」
サイやトール達が、その光景を見て体を震わせていると、
クワトロが叫びながらヘンケンのもとへ駆け寄る。
「ヘンケン艦長…大丈夫ですか?立てますか?」
「あ…あぁ…大…丈夫だ。大尉、すまないが肩を貸してくれ…。
お…お前達、怪我はないか…?」
意識のあったヘンケンにクワトロが肩を貸して立たせると、
ヘンケンがトールとミリアリアの身を案じ、
そう言うとトールが大きく頷きミリアリアは涙を流してコクリと小さく頷いた。
ヘンケンは「そうか…良かった…」と言って口元を上に上げて笑顔を見せる。
その横でブレックスは「よし…とにかく急ぐぞ!」
と言うとトールもヘンケンに肩を貸して、その場を離れて行く。
《ストライク》のモニターが離れて行くサイ達や、
怪我をしたヘンケンを支えて走る
クワトロやトール達の様子が映り込んでいた。
「…あっ…!?」
さらに拡大されるモニターには、
涙を流しながらヘンケンの様子を見ていたミリアリアが映るーーー。
「生意気なんだよ!ナチュラルの雑魚共が!!」
ミゲルはトドメと言わんばかりに《ストライク》へと突進をかけて行くーーー。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「ち…しまった!」
カミーユの乗る《ガンダムMk-U》がビームサーベルを振り下ろすと、
《デュエル》の左スカートアーマーが溶断される。
「はあ…はぁはぁ…」
「イザーク!大丈夫ですか!?」
イザークの心臓の鼓動が少し早くなっており、
肩で息をしていたーーー。
(俺で無ければやられていた……)
そう感じたイザークだが次に彼を襲ったのは
まるで火山の噴火が起きる直前のような己の感情だった。
彼はその感情を抑える事もなくそれを表に出すと、
右のこめかみから汗が垂れてくる。
ニコルの声も既に彼には聞こえていない様子だった。
「おの…れぇ…よくも俺に恥をかかせたなぁ!!」
そう言うと《デュエル》はビームライフルを手に取り、
《ガンダムMk-U》や《リック・ディアス》に向かって手当たり次第に乱射する。
「こ…こいつは…!」
「あ、あの野郎!めちゃくちゃやりがって!!」
慌てて、ビームライフルをかわすが、
コロニーの地表面に3つ、4つと穴が空いていく。
「馬鹿!?イザーク!!」
「よして下さい!コロニーが壊れますよ!」
「うるさぁい!!こんなコロニーなど…!」
ディアッカとニコルが通信でイザークを宥めるが、彼の爆発した怒りは収まる事を知らずにビームライフルを撃ちまくる。
「くっ…貴様!いい加減にしろ!!」
カミーユがそう叫ぶと、腰のマウントラッチに装着した散弾式のバズーカを手にして、《デュエル》に向かって撃ち放つーーー。
一直線に飛んでゆく砲弾がやがて弾けると砲弾の中に詰められた榴弾が扇状に拡がり、《デュエル》のビームライフルの熱線とぶつかり合い、あちこちで爆発が起きる。
「うっそぉ!?」
「うわああ!!」
拡散した榴弾が《ブリッツ》や《バスター》にも襲いかかり、榴弾の雨をかわす事も出来ずに直撃を受け、機体に衝撃が走る。
「あのガンダムの野郎もカミーユのやつも頭に血が昇ってやがる!」
「アポリー!これ以上の戦闘はマズイぞ!!」
アポリーとロベルトはそう言うと、カミーユを止めに入っていく。
「カミーユ!よせ!!もうこれ以上はまずいぞ!」
「あいつらは逃がせませんよ!!」
アポリーがカミーユに叫ぶと、異常ほどにアドレナリンが出ているカミーユがアポリーに噛み付く。
「馬鹿野郎!敵の1機がこちらに向かってる!!これ以上戦ったらこっちもコロニーもダメになる!」
「……くっ!?」
ロベルトが熱くなっているカミーユに一喝する。
カミーユはレーダーに目を向けるとかなりの早さでこちらに向かってくる機影を捉えていた。
その時アポリーがオープン回線を使用する。
「聞こえるか!ザフト!!」
「お…おいアポリー!?」
イザーク達は驚いた表情で、
コックピットに映し出されたアポリーを見ている。
イザーク達のもとへ向かう《イージス》にも
《リック・ディアス》からの回線が入り込んでくる。
「俺たちはエゥーゴだ。」
「エゥーゴ…!?」
「反地球連邦組織の……」
アポリーの言葉にディアッカやニコルは、
彼らは相手が単なる連邦軍だと思っていた分
ティターンズや腐敗した連邦という、
敵を同じくするエゥーゴだと聞いて少し動揺していた。
「…そのエゥーゴが俺たちに何のようだ!!」
イザークが少しの沈黙ののちに、語気を強めて言うと、
アポリーが落ち着いた様子で
「これ以上ここで戦えばどうなるかって事くらいは、
お前達もスペースノイドなら分かるだろう?」
そう言うと、すぐさまイザークが反論する。
「中立と名乗っておいて連邦と手を組んで、
モビルスーツをコソコソと作る国のコロニーなどどうでもいい!!」
イザークはそう反論すると、
アポリーの《リック・ディアス》へビームライフルの銃口を向ける。
「ここには亡命したコーディネイターだって住んでいるんだろう!?
同胞を殺す事を厭わないわけじゃないだろう!」
アポリーが彼を説き伏せるように声をあげると、
イザークは何も言い返せなくなった。
「国と国の問題はあるだろうが、
民間人には何の罪もないんだ。
俺たちはこれ以上ここでは戦わない。
だからとっとと、ここから出て行くんだ。」
「なっ…!!」
「なに!?」
「アポリー中尉!!」
アポリーの言葉にイザーク達だけでなく、
カミーユも驚愕するがロベルトだけが黙ってアポリー言う事を聞いていた。
「どうせ、後ろから撃つんだろう!?そんな言葉に惑わされるものか!!」
イザークは声を荒げて尚も食い下がるーーー。
が、その時アスランとラスティの乗った《イージス》が
イザーク達のもとへと辿り着く。
「イザーク!!」
「アスラン!?」
「良かった…!……もう1機は…ラスティはどうしたんですか!?」
ディアッカとニコルがアスランの到着に喜ぶが、
ニコルはもう1機の《ストライク》が到着していない事に気付き、
アスランに慌てた様子で聞くとラスティが彼らに返事をする。
「す…すまない…失敗しちまった…」
イザーク達はモニターに映る、
痛みで表情の歪んだラスティを見て驚くが、
オープン回線でアスランがアポリーに語りかける。
「エゥーゴの士官の方、お話は聞いていました。
あなた達の言葉を信じて宜しいんですね?」
「…!…アスラン貴様なにを……
イザークが驚きアスランに食ってかかろとうと言いかけ
「イザークは黙って聞いててくれ!」
と彼は語気を強めると、アポリーから返答が帰ってくる。
「当たり前だ、お前達の会話が聞こえたが負傷兵がいるんだろう?
早く帰って手当てしてやるんだな。」
「……」
そう言うと、何故かアポリーに妙な感覚を覚えたアスラン達は
黙っていると、ロベルトも通信に割り込んでくる。
「怪我をしてる若造の背後を撃ったんじゃあ、
一年戦争をくぐり抜けてきた俺達のプライドが傷付く。
分かったら気が変わらんうちにとっとといけ!!」
その時、彼らの言葉を聞いたアスランは信用したという証明を見せる為に、
《イージス》のフェイズシフトを解除するーーー。
それを見たニコルもアスランと同じ事をすると
「みなさん…行きましょう。」
と言って《イージス》と《ブリッツ》が
スラスターを全開にして離脱して行くと、イザークが叫ぶ。
「そこのガンダムのパイロット!
俺に買ったと思うな!次は手加減などせん!」
そう言うとそのまま離脱して行き、最後に残ったディアッカが
「あんたらカッコいいぜ。敵ながらあっぱれってやつだな!」
と言ってアスラン達の後を追うように離脱していったーーー。
「……良かったんですか?逃がしちゃって…」
「さあな…分からん。」
しばしの沈黙の後にカミーユがアポリーにそう聞いたが、
彼からは気の抜けた返事だけが帰ってきた。
「カミーユ、お前はアーガマに
准将たちが戻っているか連絡を取ってくれ。」
「あ…は、はい。」
アポリーはそう言うと、そそくさと地表面に開いた無数の穴を塞ぐ為に
ロベルトと共に《リック・ディアス》を再び稼動させていた。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
《ジン》が全速力で突っ込んでくるのを見たラミアスは距離を取ろうと、
《ストライク》を後退させる。
しかし怪我をしたヘンケンを抱えたクワトロ達に、
下がり続ける《ストライク》が迫るのをキラが見ていた。
そしてミゲルは《ジン》の右手に持つ重斬刀を
《ストライク》のコックピット部分めがけて突き刺そうとしたその時ーーー。
「あぁ…っく!!」
キラは咄嗟に左のグリップレバーを動かして
《ストライク》の体勢をしゃがみ込ませて、
《ジン》の攻撃が右肩部あたりをかすめると、
キラが続いてレバーを力いっぱい押し出す。
「うわあぁぁぁ!!」
スレスレで攻撃をかわした《ストライク》は全身を前に踏み込みんで、
《ジン》へ体当たりを喰らわせると大きく後ろへふき飛ばされて、
地面に大の字に倒れる。
「…君!?」
ラミアスが彼の行動に驚いていると、
キラは身を乗り出してコンソール周辺の機器を操作して行く。
「ここにはまだ人が居るんです!
こんなものに乗ってるんだったら何とかして下さいよ!」
ラミアスに愚痴をこぼしつつもキラはOSの状態を確認する為に、
OSのデータを開いて行く。
「くぅぅっ……!!」
倒れ込んだ《ジン》を起こそうと、
ミゲルはグリップをおもいきり引き込んで体勢を立て直していくーーー。
「無茶苦茶だ!こんなOSでこれだけの機体を動かそうなんて!」
「まだ全て終わってないのよ…!仕方ないでしょ!」
キラはOSデータを確認していたが、
その内容に呆れた声でラミアスに言うと、
彼女はキラの言葉にムッとしながらもそれを見ていると
倒れていた《ジン》が起き上がるーーー。
「…どいて下さい!」
「え…?」
「早く!!」
起き上がった《ジン》を見たキラは慌てて、
ラミアスをリニアシートから退かせて、
キラがシートに座り込み、異常な早さでコンピューターを操作して行く。
その姿を見たラミアスは何かを感じ取った様子で彼を見ていた。
「……(この子…!?)」
起き上がり、再び《ストライク》に突進をかける《ジン》に対して、
キラはグリップのボタンを押すと、
75mmバルカンを正面から来る《ジン》へ命中させる。
「なに…!?」
ミゲルは《ストライク》の再三の反撃に違和感を感じ始めていたが、
そのまま直進して重斬刀を突き出すと、
《ストライク》はそれをかわして《ジン》の頭部にカウンターの形で右のパンチを叩き込む。
「ぐわあぁぁぁぁっ!!」
先ほどの体当たりよりも、激しい衝撃にミゲルはリニアシートごと体が強く揺らされ、
吹き飛ばされるとビルに機体が埋もれる。
「ああぁぁ…」
「なんだ!?」
「…動きがよくなった…?」
なんとかその場を離れたブレックス達やカトーゼミの少年達も、
先ほどとは違う展開になって来ている事に気付き、
いつの間にか足を止めてその戦いの行く末を見ていた。
(キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…、
チッ…なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結!
ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築!
メタ運動野パラメータ更新!
フィードフォワード制御再起動、伝達関数!
コリオリ偏差修正!
運動ルーチン接続!
システム、オンライン!
ブートストラップ起動!)
キラがコックピットで黙々とOSデータの構築を行っている姿を隣で見ているラミアスは、
先ほど何かを感じたモノが確信に変わっていたーーー。
「やっぱりだ……なんなんだあいつ…急に動きが…」
ミゲルはそう言いながら、
《ジン》の右手に持った重斬刀を腰へマウントすると、
後ろの腰に備えたマシンガンを手にして
《ストライク》に連射する。
「うっ!」「ああっ!」
マシンガンの衝撃で《ストライク》のコックピットが揺れるが、
キラは両足元のフットペダルに目を送ると、一気に踏み込むーーー。
すると《ストライク》の背部バーニアスラスターから青い炎が激しく噴き、
ぐんぐんと機体が上昇して行くーーー。
それを追うように、《ジン》はマシンガンを放ちながら
《ストライク》めがけて上昇する。
いったん浮上した《ストライク》はしだいに降下をしていく。
「武器……!」ーーー。
キラはその状態でデータを開いて、
《ストライク》に装備されている武器を確認する
コックピットのコンソールに表示されていた武装は
75mmバルカン…
そしてーーー。
「後は…アーマーシュナイダー……!?これだけかっ!」
キラは声を上げて、迷わずアーマーシュナイダーを選択すると、
両腰部から小型のアサルトナイフが飛び出し、両手に装備する。
地面に着地した《ジン》と《ストライク》ーーー。
《ストライク》アーマーシュナイダーを両手に、
バーニアスラスターをブーストさせて
《ジン》のマシンガンを動き回りかわして行く。
「くっそぉ!!チョロチョロと!」
先ほどまでと動きがまったく違う《ストライク》
既に対応しきれていない上に性能に劣る《ジン》目掛けて
スラスターを全開にした《ストライク》が目の前に接近したーーー。
「こんなところでっ!…やめろっー!!」
キラはそう叫び両手のレバーを動かすと、《ジン》の右腕、
右肩部辺りと頭部にアーマーシュナイダーを突き刺すと
《ジン》の右腕がダランと下を向くと、機体の動きも完全に停止するーーー。
「…ハイドロ応答無し!多元駆動システム停止…!?…っえぇい!!」
ミゲルは各部チェックを行うが、《ジン》の機能自体がやられたと判断して、
レバーを引くと、コックピットハッチが開き、
機体を残してミゲルだけが脱出していった。
最後までその戦況を見つめていたブレックス達。
ブレックスが独り言のように呟く
「終わったな…」
その言葉にクワトロが応える。
「はい…ですが色々と問題がありそうです。
とにかくアーガマと連絡を取りましょう。」
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
ヘリオポリスの外では未だにムゥ・ラ・フラガが
なんとか持ちこたえていたが、旗艦であるフロッグが《ジン》に
攻撃されて沈もうとしていた。
「そ、操舵不能ぉ!!」
「ぬおわぁぁ!!」
フロッグはそのまま、コロニー外装部に激突して轟沈して行く。
旗艦であるフロッグを沈めた《ジン》を
ムゥの《メビウス・ゼロ》が追いかけるーーー。
「くそ…!やはりこの戦力差ではどうにもならんか!!」
必死に《ジン》に追いすがるムゥは照準に敵を捉えると、
ガンポッドを展開して行く。
「ちい!あのメビウス・ゼロは厄介だ!」
緑服のオロール・クーデンベルクはメビウス・ゼロの性能をよく知っていた。
そして相手は指揮官のラウ・ル・クルーゼと幾多も死闘を繰り広げ、
未だに生きているあの『エンデュミオンの鷹』が乗っているという事も知っていた。
オロールはその難敵をなんとか振り切ろうとするが、
ムゥに完全に捉えられていた。
「そこだ!!」
グリップのボタンを押すと、
展開していたガンポッドから放たれる鋼弾が火を吹き、
《ジン》の右腕を完全にもぎ取る。
「しゃあ!!」
「くそっ…!!離脱する…!」
オロールはなんとか《ジン》の体勢を立て直すと、
母艦のヴェサリウスへ帰艦して行ったーーー。
ヴェサリウスのブリッジではオペレーターが
オロールからの通信を受け取っていた。
「オロール機大破、緊急帰投。
消火班、Bデッキへ。」
「オロールが大破だと!?隊長、一体どういう事でしょうか?
イザークの奪ってきた機体も損傷していましたし…」
外ではオロールの《ジン》がやられ、
中ではイザークの持ち帰ったガンダムまでダメージを負って帰ってきたとなれば、
アデスにとっては不測の事態と言わざるを得ない状況だったーーー。
「ふん…どうやら外ではいささか五月蠅い蠅が一匹…
中では野良犬が数匹紛れているようだ。」
アデスの言葉にクルーゼは慌てる様子もなく、ただ冷静に戦局を見つめていたーーー。
と、その時
「ミゲル・アイマンよりレーザービーコンを受信。エマージェンシーです!」
オペレーターがそう報告すると、クルーゼの表情が少し硬くなった。
「なるほど…ミゲルが機体を失うほどに動いているとなれば…
最後の一機も、そのままにはしておけん。」
終わりです……長すぎますねw
SS倉庫には前編、後編に分けて記載してみようかと思います。
誤字、脱字、改行がおかしい部分などありましたら、教えて下ちい
久しぶりに覗いたら
一気に来ているではないか!
ええことや
×ここで問題なし
○ここのままで問題なし
>>558 どうもです。
>>559 あくまでも
スタートがZ系というだけですので、
こちらで続けさせて頂ければと思います。
カオスの予感……!
あ、例の単位のほうじゃなくてね
>>562 はい、かなりカオスな事になって行くと思います。
ですので、なんとか矛盾点などが出ないように
慎重に作って行こうかと思っています。
923です(´・ω・`)
投下開始します。
最初のヘリオポリス編はあと2話で終わります。
ではどうぞ。
第7話_「ラウ・ル・クルーゼ」
「ラスティの件は仕方あるまい。
赤服が生きていただけでも良しとしよう。」
クルーゼはヴェサリウスのブリーフィングルームに
ガンダム鹵獲作戦で負傷したラスティ・マッケンジーを覗いた、
アスランやイザーク達を集めていた。
クルーゼの皮肉にも聞こえる言葉に、皆が一様に口を噤んでいた。
クルーゼは沈黙する彼らに向けて、
ミゲルより渡された《ストライク》との戦闘データを記録したソフトを手に、
淡々とした口調で話を続けるーーー。
「ミゲルがこれを持って帰ってくれて助かったよ。
でなければいくら言い訳したところで、
ナチュラルを相手に機体を損ねた我々は、大笑いされていたかもしれん。
オリジナルのOSについては、君らも既に知っての通りだ。
なのに何故!!
この機体だけがこんなに動けるのかは分からん。
だが我々がこんなものをこのまま残し、
放っておく訳にはいかんと言うことは、はっきりしている。
捕獲できぬとなれば、今ここで破壊する。」
彼の言葉にアスランが驚きつつも、上官であるクルーゼに意見を述べる。
「隊長…まさかコロニー内でもう一度戦闘をするつもりですか…!?」
「…無論だアスラン。」
クルーゼの言葉はハッタリや嘘ではなかった。
この言葉に血の気の荒いイザークですらも驚きの表情を見せている。
そして尚も「しかし…!」と言ってアスランはクルーゼに食い下がる。
「彼らはエゥーゴです!!エゥーゴとの戦闘行為は本国からの承認なしには…!」
「だが先制攻撃を仕掛けたのはあちらなのだろう?
そうだろうイザーク?」
「………は…。」
イザークはクルーゼからの問いかけに、
表情を曇らせながらも応えるとクルーゼが続ける。
「エゥーゴなど所詮は叶いもしない理想主義を押し付けるだけの、
連邦の一組織に過ぎん。
そして我々の敵は連邦だという事を忘れるな。
やつらとて所詮はナチュラルでしかないのだよ。」
クルーゼはそう言うとオロールとミゲルに
発進の準備に取り掛かるように指示を出していた。
ーーー
「誰か!誰か居ないのか!……はぁ…くそっ!…生き残った者は!?」
「バジルール中尉!御無事で!」
「ノイマン少尉か!…他に生存者はいないのか!?」
「三人の下士官がいます…他の生存者を探させていますが…」
「そうか…他に生存者がいないと判断したら、
アークエンジェルのブリッジへ集まるんだ。」
「はっ!」
ーーー
ほとんどの民間人達は、シェルターへの避難をしていたため
市街地はゴーストタウンと化していた。
ブライトやフレイやエルの母親は必死に彼女の名前を呼び続けた。
街が静かになった事で、エルにも彼女らの呼ぶ声が聴こえていた。
間も無くブライト無事にエルを見つけ、
その小さな手を引いて母親と引き合わせた。
「ああ…エル……良かった…」
「ママ痛いよぉ…」
母親は強く娘を抱きしめていた。
エルは自分が迷子になったのではなく、
迷子になった母親を探していたつもりでいたらしい。
将来は強い子に育つな…。
そう思っていたブライトは母親とエルを見ていると、
家族の顔が頭に浮かんで来て無性に会いたくなっていた。
「あ、あの…早く避難したほうが良いんじゃないですか?」
フレイが感動の場面に水を刺す事に気まずそうな表情で言うと、
そうだったーーー!!
ブライトは慌てて、彼女達を連れてエレカに乗り込んだ。
「あの…よろしければお名前を教えて頂けますか?
娘を見つけてくれたお礼をしたいと思いまして…」
後部座席に乗る彼女がエルを大事そうに抱き抱えながら、
ルームミラーに写るブライトの顔を覗き、たずねて来た。
「ブライト・ノアです。訳あって今日ここに来たのですが…
とんだ災難に巻き込まれました。」
彼はハンドルを握ってルームミラーにチラと目を配らせ、
さらりと自分の名前を名乗って色々と説明するが、
それを聞いていた彼女達が顔を見合わせていた。
フレイはとんでもない有名人…
というより英雄が隣の運転席にいる事に緊張していた。
そんな状況に気付かないブライトは、
第5ゲートの港を目指しエレカを飛ばした。
ーーー
戦闘を終えたカミーユ達は、
クワトロ達と合流をすることが出来た。
37工区での銃撃戦で負傷した兵士達が、
仮設の救護所で手当てを受けており、
その中にはラミアスやトール達を
庇って負傷したヘンケンの姿もあった。
「ブレックス准将、申し訳ありません……。
守りきれたのはたったの1機のみでした。」
ラミアスは俯き加減にそう言いながら、
ストレッチャーから身体を起こしてブレックスへ頭を下げる。
「仕方あるまい。ザフトにしてやられたと今回は割り切るしかないだろう。」
「ですが…ハルバートン提督の悲願であったガンダムが敵の手に落ちたとあれば……」
ラミアスはショックが隠せないのか、
ブレックスの言葉に対しても後ろ向きな言葉を並べてしまう。
しかし、彼女の心情を察してかブレックスは彼女を決し責める事なく、言葉を続ける。
「ハルバートンはこんな事で下を向くような男ではないぞ大尉?
そして、下を向くような部下を育てたつもりもないんじゃないか?」
「……申し訳ありません。准将にそのようなお言葉を頂けるとは…」
《ストライク》が停止しているその近くには、
トールやカズイが感動して目を輝かせて見ていたーーー。
「うわぁぁぁ…」
「す…スゲぇ…」
《ストライク》の横に並ぶようにカミーユ達の乗って来た《ガンダムMk-U》と
《リック・ディアス》を二人はまじまじと見ていた。
ついさっきまで《ストライク》を見てはしゃいでいたが、
それとは比べ物にならないくらいの反応で食い入るように見ている。
どうやら《ガンダムMk-》や、
特に《リック・ディアス》には妙に男のロマンを感じるという事だそうだ。
クワトロにはそれがよく分からなかったが、
《リック・ディアス》の開発に関わった自分として
そんなに悪い気はしていなかった。
しかしミリアリア曰く、
《ストライク》の方がイケメンでカッコいいという事らしい。
こんな時にそんな呑気な会話が出来るのも
ここに住んでいた影響なのだろうなと少年達を見ていると、
アポリー達がクワトロに話しかける。
「大尉、すみません。
ザフトを逃がしてしまって。」
「仕方あるまい。
コロニーの事を考えれば正しい判断だった……
とにかくヘンケン艦長をアーガマへ連れていけ。
ここはカミーユと私が残る。」
クワトロはアポリーの肩をポンと叩きそう言うと。
クワトロはカミーユを呼んで、
ヘンケンとラミアスのいる救護所へ歩いて行く。
「ヘンケン艦長…大丈夫ですか?」
「…ん?…カミーユか…」
まあな、腕が折れたくらいだ。
と怪我をした包帯で巻かれた腕に目を見やり言う。
怪我は左腕の骨折と肋骨に亀裂が入った程度に済んだが、
今後の航海に支障が出るのは間違いなかった。
「私と向こうにいるトールを守ってくれて怪我をしたんです…本当に感謝してます。」
その横でラミアスの手当てを手伝っていたミリアリアがカミーユに言うと、
その場にキラが入ってくる。
「あの…クワトロさん。僕に何か用でも…?」
「ああ、すまんな急に呼び出して。
カミーユ、彼はキラ・ヤマト君。
君と同じように、始めてモビルスーツに乗って敵を撃退した。」
クワトロはなぜか、カミーユとキラを引き合わせて紹介をしている。
言っている内容にも驚くが、クワトロが何を考えているのか
カミーユはまったく分からなかった。
「え…はあ。……カミーユ・ビダンだ。よろしく……。」
戸惑いながらも、彼はキラに握手を求めると、
キラはその握手に応じる。
「よ、よろしくお願いします…カミーユさん。」
そして二人はしばらく握手をかわしたままだったが、
クワトロが二人に問いかけてきた。
「何か感じたか?」
「は?」ーーー。
カミーユとキラは同じタイミングで言うと、クワトロがさらに問う。
「何か見えなかったか?」
カミーユもキラも互いの顔を見合い、
「何も?」と首を横に振るとクワトロが二人に
ありがとうとだけ言って二人を引き離した。
カミーユが「どうしたんです?」と声をかけても、
クワトロは腕を組み、ただ黙って考えて混んでいた。
そこへクワトロがブレックスやヘンケンのもとへとやって来た。
ブレックスはラミアスと一旦話を終えて
アーガマとの連絡を取っていたようだ。
「准将、いかがでしたか?」
「ああ、少々面倒な事になった。」
「面倒な事?」
クワトロ大尉何か空回り中支援
クワトロとヘンケンがブレックスにそう聞くと、
《アーガマ》のもとへグリーンノアの避難民が押し寄せて来たという事だった。
乗って来たシャトルの港は閉鎖されており、
2ブロック先のドックにあるシェルターを目指したが、
シェルターはすべて満員となっていた為に、
アーガマへ救助を求めたという事らしい。
ーーー
ムゥはオロールの《ジン》を撃墜したものの、
撤退もしなければ、こちらに敵を差し向ける事もしない
ヴェサリウスとガモフを警戒していた。
「やつら…なぜ撤退しない…?」
新型モビルスーツの鹵獲という任務を達成したにも関わらず、
20分以上経ってもその場を動かない事にムゥは困惑していた。
《アーガマ》の停泊するドックでは
グリーンノアからの避難民の収容がようやく終わった。
艦外での作業にあたっていたアストナージは
視線の先に見えた扉が開いたのに気付く。
扉が開かれたそこには連邦軍の服を着た男と女の子を抱えた女性と少女がいた。
彼らは駆け足で近寄り、アストナージに声をかける。
「君たちはエゥーゴだな?私はブライト・ノアだ。
ここにグリーンノアの避難民が来ているはずだ。」
「私達、逃げ遅れちゃって!
それでブライトさんに助けてもらったんです!」
「え?…ブ、ブライト・ノア?…ぇ…?ちょ…ちょっと待って下さい!」
ブライトはフレイとエル親子を連れて第5港まで到着したが、
港は既に閉鎖されておりなんとかここに辿り着いたらしい。
アストナージは慌ててブリッジに連絡を取りに行く。
( ´∀`)つ旦
,.-、 ,.-、
(,,■) (,,■)
0===。El
(・∀・ ) 俺にメビウスのスラスターくっつけたら格好良くならね?支援
>┘>┘
ブライトはフレイとエル親子を連れて第5港まで到着したが、
港は既に閉鎖されておりなんとかここに辿り着いたらしい。
ブライトは《アーガマ》を見て、すぐにエゥーゴだと気付いたが、
もともとティターンズを毛嫌いしていたブライトにとって、
心強い味方が目の前にいる感覚だった。
一方でアストナージは慌ててブリッジに連絡を取りに行っていた。
しばらく話をしているとアストナージが
ブライト達の前に戻ってくきてブライト達は
《アーガマ》の中に通された。
すると、レコアが彼を出迎え敬礼をする。
「ようこそいらっしゃいましたブライト・ノア大佐。
レコア・ロンド中尉であります。
現在、艦長が上陸中の為私がここの代理艦長です。」
レコアはブライトへ敬礼を済ませると、
避難民の確認をしてからフレイやエル親子は
居住ブロックへの移動を促した。
「ブライトさん。本当にありがとうございました。」
「おじちゃん、ありがとう。」
「ありがとうございます。」
フレイらがブライトにお礼を言うと船務員に連れられて行く。
エルは自分の姿が見えなくなる最後まで
こちらにその小さな手を振り続けていた。
「ブライト大佐。色々とお話がございますのでこちらへ…」
レコアはブライトと共にブリーフィングルームへ向かって行った。
ーーー。
「6番コンテナだ!ジンにD装備を!」
作戦開始、0100時、発進機は順次、待機位置へ前進しーーー
《ヴェサリウス》艦内のモビルスーツデッキは
アナウンスやメカニックマン達の声があちこちで響き渡り、
油で汚れた男達が忙しなく動きまわる。
モビルスーツデッキを見降ろす事のできる休憩所ではドリンクを片手にイザーク、
ディアッカ、ニコルらが下のモビルスーツデッキを見ていた。
「ミゲルの《ジン》…D装備だってよ。」
「拠点制圧用装備とはな…」
「でも、そんなことしてヘリオポリスは…!」
コロニーは間違い無く崩壊する…三人は全く同じ事を考えていた。
「……今度こそぶっ壊れちまうかもな。」
「ああ…クルーゼ隊長の言うように、確かにエゥーゴは連邦には変わりはないが……」
「……」
あの時のアポリーの言葉が彼らの心に引っかかっていたのは間違いなかった。
国と国との間に問題はあっても、
民間人には何の罪もない…確かにそうだーーー
だがそれはここだけの問題だ…
民間人が全員ナチュラルだけなら躊躇などしないはずだーーー
そんな彼らの様々な葛藤はより深くなっていくのだった。
オロール機発進準備完了。ミゲル機、左舷カタパルトへーーー。
モビルスーツデッキはさらに活気付く。
オロールのD型装備の《ジン》とミゲルの同じく
D型装備のパーソナルカラーである橙色の《ジン》が全ての準備を終えて、
カタパルトでの発進態勢に入る。
y=ー( ・ω・)カチャ
:y=-( ゚д゚)・∵;; ターン
「システム・オールグリーン。
カタパルト射出準備OK、進路クリアー、発進どうぞ!!」
ヴェサリウスのブリッジオペレーターの指示に従い、発進準備が整うーーー。
「ミゲル・アイマン、《ジン》出るぞ!」
「オロール機、発進する!」
そしてミゲル機とオロール機が発進して行くと
突然奪取した《イージス》が動き出す。
「お、おい!これも出るのか?」
「聞いてないぞ!!」
カタパルトのスタッフ達が慌てふためいている間に
《イージス》はカタパルトを使用して出撃して行く。
この報を受けたアデスが慌てた様子で大声を上げる。
「なにっ!?アスラン・ザラが奪取した機体でだと!?
呼び戻せ!すぐに帰還命令をーーー。」
アデスが言いかけた時に、
通信からコックピットシートに座るクルーゼが割り込んで来る。
「行かせてやれ。」
「……は?」
アデスはクルーゼの言葉に一瞬考えていると
クルーゼが不気味な笑みを浮かべて続ける。
「データの吸い出しは終わっている。かえって面白いかもしれん。
新型モビルスーツ同士の戦いというのも。」
クルーゼがそう言うとアデスは、少し不満の残る表情で、
了解。とだけ返事を返した。
「アデス、私の留守中はくれぐれも艦を頼んだぞ?」
「は…!ご武運を…隊長。」
《ヴェサリウス》から隊長機である、
白銀の躯体を輝かせる《シグー》が発進して行く。
ヴェサリウスより発進したモビルスーツ部隊をムゥは捕捉していた。
「来たか!…これはっ!?」
ムゥは目の前に何かが弾ける感覚を覚えた。
彼が感じたものの先にはクルーゼの操る《シグー》が見えた。
「私がお前を感じるように、…お前も私を感じるのか?
不幸な宿縁だな、ムウ・ラ・フラガ!」
互いに感じ合う存在でありがらも、
互いが理解し合う事のない存在。
クルーゼは憎しみにも似た感情でムゥの《メビウス・ゼロ》に襲いかかる。
シールドにマウントされた28mmバルカン砲を
《メビウス・ゼロ》に向けて連射して行く。
「……んっ!?
くそ…!やはりラウ・ル・クルーゼかっ!」
ムゥは引き合うその感覚によって、
敵がクルーゼだと本能的に分かっていた。
「お前はいつでも邪魔だな!ムウ・ラ・フラガ!
尤もお前にも私が御同様かな!?」
ムゥも《シグー》に対して、ガンバレルを展開して応戦する。
機体をロールさせてリニアガンを放ちながら、
四方を取り囲むように《シグー》を狙い撃つが
なんなくかわされ《シグー》の右手に持つ
76mm大型マシンガンの迎撃により
一瞬のうちにガンバレル3基を失う。
さらに、ミゲルやオロールの《ジン》。
アスランの《イージス》が次々と港口の隔壁を破壊し、侵入して行く。
「っ!?ええーい!ヘリオポリスの中にっ!」
ムゥは慌てて、侵入して行く3機を追って行くが、クルーゼの邪魔が入る。
「もう少し私に付き合ってもらうぞ、ムゥ・ラ・フラガ…」
「ち……クルーゼ…!」
戦場は再びヘリオポリスの大地となるのであったーーー。
第7話終了です。
前半から詰め込みすぎで話が中々進みませんね…
これからはもっと端的にやれていければと思います。
投下おつー
でもその詰め込んだのが見たいという欲望もありますからね
どう折り合いを付けるか、ですね
投下乙です。ところでベースが宇宙世紀ならG兵器どころかメビウスレベルまで核融合炉搭載機ですよね?
技術力のザフトがビーム兵器持っていないのはどうしてなのでしょうか?
>>583 頑張ってみますw
>>584 自分的設定としてはビーム兵器はプラントでは既に出来ています。
ではなぜクルーゼ隊が実弾しかないのかと言うと、
そもそもこの作戦を失敗しない。
敵がいるわきゃない。
相手は雑魚兵器だし。
とタカをくくっていた為に携行可能なビームライフル
やビームマシンガンを用意しなかったわけです
最初のミゲル・アイマンとキラの一騎打ちで、
ビームマシンガンにしようと思ったのですが
FS装甲を最新技術的な演出にするためにボツったんです。
ああ、ハイマニューバ2型のビームカービンみたいなのが前倒しですか
てゆうか、基本は宇宙世紀だからとっくにビーム兵器あるんだろう
それをコロニー内でぶっ放すのは馬鹿のやる事
でもザフト軍人って全員馬鹿だから・・・
>>587 そんな感じですね〜
>>588 そうですねぇw
第3話-崩壊の大地じゃミゲルがデカいビーム砲を
撃ちまくってましたねw
そもそも種の軍人はナチュラルは皆殺しとか青き正常なる世界の為にとかヴェイガンは殲滅するとかしか言わないし
13時に仕事なんでそれまでに第8話_「決着の時」
仕上げます!!
転載は12時過ぎに行えるようにしてみまぁす!
今回もクワトロ大尉にはお休みしてもらってます!
アーガマ戻るまで我慢我慢!
923
投下開始〜_φ( ̄ー ̄ )
第8話_「決着の時」
この肌がザラザラとする感覚ーーー。
不愉快だ…クワトロは何かの存在を感じていた。
アムロ・レイではない……
この感覚はもっと黒くて禍々しいものだ…
そう感じたクワトロはすぐさまカミーユ達に指示を出す。
「アポリー!ロベルト!ザフトが来るぞ!!」
「えっ!?」
クワトロがそう叫ぶと周りにいた全員が驚き、辺りを見回す。
ロベルトとアポリー、カミーユはヘルメットを被り発進準備に取り掛かる。
「准将、ヘンケン艦長を《アーガマ》へ連れて行くのは中止です。
あの少年達も連れて安全な場所へ。」
ブレックスが分かったと言うと、
トールやサイ達も一緒になってヘンケンの体を支えて
その場を離れる準備をする。
すると、どこからともなく空気を切り裂くような轟音が遠くから聞こえ始める。
モビルスーツだーーー。
アポリー達はその音がすぐにスラスターの噴射音だと気付くと、
腰の位置まで下ろしていたノーマルスーツを着直し、
駆け足で自分達の機体へと向かう。
ヘンケンの隣に寝ていたラミアスも起き上がると
クワトロ大尉へ不安げな表情で話しかけて来る。
「クワトロ大尉…もしかしてあの《ストライク》をお使いになるのですか?」
「ラミアス大尉、冗談はよしてくれ。
あのOSでは私に操縦など出来ん。
君は彼の隣で見ていたのだから分かるだろう?」
「えっ…!?」
ラミアスは驚いていた。
そういえばクワトロ大尉はまったく《ストライク》を調べていなかった。
むしろ、調べようという気配すらならかったと言えばよいのだろうか…
もしかしてこの人は何か分かっているのではないか?
そう考えていたラミアスにクワトロがラミアスに顔を近づけ耳元で囁く。
「あれは既にコーディネイターのキラ・ヤマトにしか動かせない状態なのだろう?」
やっぱりだわーーー。この人は最初から分かっていた……。
コーディネイターが構築するOSのモビルスーツの操縦は
どんなに優れたパイロットでも対応するのが難しいと言われている。
一年戦争時、連邦軍に所属していた当時は天才と呼ばれていた、
コーディネイターのモビルスーツパイロットは、
量産機故の非力さを補うべくOSの調整を徹底的に行っていたらしい。
そのOSには優秀な技術スタッフも手が出せないほどと言われており、
彼らの乗るモビルスーツはワンオフ機並の能力を発揮していたと言われている。
「クワトロ大尉…彼は民間人でまだ子供です…」
「…」
ラミアスの言葉にはクワトロも納得はしていた。
だが《ストライク》をこのままにしていたら、
奴らに奪われるか破壊されるだけだというのは分かっていた。
すると、ヘンケンやブレックスらと避難をしようとしていたキラが足を止めるーーー。
「お、おい…キラ?どうしたんだ?」
サイがキラに気付くとキラは覚悟を決めたような表情で彼らを見て言う
「サイ…みんな…ごめん!先に逃げて!!
僕はあれに乗って戦うから!」
キラはそう叫ぶと《ストライク》に向かって駆けて行く。
僕が戦って友達を守るんだ…
それにどうしても確かめなきゃいけない事があるーーー。
彼は…アスランは絶対に僕に会いに来るから……。
キラは心の中で恐怖と戦いながら、
モビルスーツと戦う決心をする。
その様子を見たクワトロとラミアスがキラの前に立ち
「君のサポートは我々エゥーゴがしよう、キラ・ヤマト君。」
「……あなた…大丈夫なの?」
そう言ってクワトロとラミアスはキラに気遣うと、
キラは力強くコクリと頷き《ストライク》に搭乗する。
ラミアスは《ストライク》に乗る彼を見ると、
部下のメカニックマン、ブライアン伍長に指示を送る。
「ブライアン!ソードパックの用意をして!」
「え!?は、はい!!」
ブライアンが慌てながら、
トレーラーに向かってコンテナハッチを開く。
「ラミアス大尉、これは?」
「《ストライク》用に開発されたバックパック換装用兵器です。
あれは接近戦向けで、コロニーへのダメージを考えれば
近接戦闘武器が一番だと思います。」
なるほど…技術士官の割には
戦術レベルの事もしっかりと考えている優秀な人間のようだ。
クワトロはそう感じながら、悠然と立ち並ぶモビルスーツを見上げた。
ーーーーー
ナタルやノイマン達は無重力ブロックの中で浮遊する瓦礫や
死体の中を掻き分けようやくアークエンジェルまで辿り着いていたーーー。
「無事だったのは爆発の時、
艦におりましたほんの数名だけでした。
とはいえほとんどは工員ですが…」
アークエンジェルの艦外にいた生存者はナタル、
ノイマンと部下の三名だけだった。
彼女たちは艦外の生存者の捜索は諦めて、
アークエンジェルに着いており、
中にはメカニックマン達が数名ほどが生きており、
ナタルはノイマンらを連れてブリッジへと到着していた。
「状況は?ザフト艦はどうなってる?」
「…分かりません。
私どももまだ周辺の確認をするのが手一杯で…」
ナタル達ははブリッジの計器類やCIC席に目をやって
各部のチェックをして行く。
……流石はアークエンジェルだな。
これしきのことで沈みはしないか……
とナタルはこの新鋭艦の頑丈さに感心しながらも、
港口は瓦礫で崩されて身動きがとれない状況に苛立つ。
ナタルは色々と考えながらも各部の計器類をチェックし、
センサーに電気が通りるとセンサーの表示した物に目を見開く。
「これは…!ザフトのモビルスーツか!?
奴らの狙いはモルゲンレーテということか!」
索敵用のセンサーにはモルゲンレーテの工場に向かう
ザフトのモビルスーツ隊の機影をハッキリと捉えていた。
「え!?」
ノイマン達は彼女の言葉には驚き、
センサーの周りに集まってそれを確認する。
「なんてことだ……しかも1機は《イージス》だ!
あちらの状況は…!?ガンダムはどうなったのだ…
とにかく急いで各部を立ち上げるぞ。」
ーーーーー
隔壁を破壊してコロニー内部に突き進むザフトのモビルスーツ隊。
ミゲルの乗るオレンジの専用カラーの《ジン》には、
拠点制圧用兵器のD装備
ザフトではバルルス改・特火重粒子砲と呼ばれる、
いわゆるビームキャノンを右手に抱えている。
もう1機のオロールの乗る《ジン》は、
両手には大小、計4発の大型ミサイルと
両の脚部には三連装ミサイルポッドを装備している
まさに強襲用と呼ぶに相応しい武装だった。
「アスラン、おまえ無断出撃なんだって?」
「………ああ。」
ミゲルはアスランの無断出撃を出撃後に知らされていた。
しかし彼はそんなアスランの無断行動を、
責める事もなくアスランに声をかける。
「……ヴェサリウスに戻ってから様子がおかしいが…
無理矢理ついて来た根性見せてもらうぞ!」
「ああ…分かっているさ…!」
アスランとミゲルが話していると、
センサーのアラートがコックピット内に響く。
「目標を発見、2時の方向!!
エゥーゴのモビルスーツも一緒だ。」
先行していたオロールからの通信が入ると、
ミゲルとアスラン達に緊張が走る。
「よし、散開して挟み込むぞ!」
「来たぞ!!数は5機!みんなわかってるな!?」
「大袈裟な武装してるのもいやがるな!!
俺はあの坊主の《ストライク》をフォローする!」
アポリーはキラの支援をしながら戦う事を選び、
ロベルトはカミーユとコンビを組み、
左翼に展開するオロールのD装備型《ジン》と
通常の2機の《ジン》の計3機を相手にする事になった。
「カミーユ!くれぐれもビームとバズーカは使うな!?」
「分かってます!バルカンとサーベルだけって言うんでしょ!?」
「そうだ!だからって泣き言は言うなよ!?」
そんな事誰が言うかよーーー。
カミーユは少しイラっとしながら、
前方に見える3機の《ジン》に向かってフットペダルを思い切り踏み込む。
「キラ・ヤマト!バルカンで牽制しながら距離を詰めろ!!じ
ゃないと好きなように撃たれるぞ!?」
「は、はい!」
アポリーがキラにアドバイスを送ると、
キラはグリップのボタンを押して頭部のバルカン砲で相手の射撃を止める。
「よし…このタイミングか!」
キラはほんの少し手応えを感じ、
レバーを前に押し出して
フットペダルをいっぱいに踏むと、
一気に距離を詰めてシュベルトゲベールを
ミゲル専用の《ジン》に振り下ろす。
「っうお!」
ミゲルは紙一重でこの一撃をかわすが、
《ストライク》が両手に持つその大きな獲物を見て、
ミゲルはゾクリとするーーー。
これを胴体にでも食らえば、一発であの世行きだ……
ミゲルにジワリと嫌な汗が滲み出す。
「く…だが、当たらなければ意味は無い!!」
ミゲルは《ストライク》の横にまわり「落ちろ!」と叫ぶと、
ビームキャノンを《ストライク》の至近距離から放つ。
「うわっ!?」
キラは直撃をさける為にとっさにミゲルの攻撃を回避する。
「な…こんな距離を避けるだと!?」
ミゲルは《ストライク》の異常な反応速度に驚愕の声を上げる。
しかし、キラもコックピットの中で焦っていた。
「コロニーが壊れる…どうしろっていうんだ…!」
「慌てるなキラ!隙を見つけるんだよ!」
アポリーはそう言うと、《イージス》にバルカンを放ちながら、
ビームサーベルを構え《イージス》に向かって直進する。
「あのモビルスーツ…来るか!」
アスランはビームサーベルを引き抜くと、
《リック・ディアス》とビームサーベルをぶつけ合う。
「坊や!また会ったな!」
「…くっ!……!!」
アポリーが接触回線を通して、アスランに話しかけるが、
アスランは何も言い返さない。
「なんだ?だんまりかよ!!」
そう言うと《リック・ディアス》は少し後ろに下がり、
横一閃にビームサーベルを振ると《イージス》がこれを躱す。
「アスラン!?…食らえよ!」
ミゲルが押され気味のアスランを援護しようと、
《リック・ディアス》にむけてビームキャノンで狙い撃つ。
不意を突かれたが、アポリーはなんとか躱すものの、
それにより被害は拡大して行く。
コロニーの港口部分から内部へと突き進みながら、
ムゥの《メビウス・ゼロ》が最後の残ったガンバレルを《シグー》に向け、
撃つがあっさりと躱され撃ち落とされる。
「くっ…!こいつはどうだ!!」
ムゥは苦し紛れにリニアガンを撃つがクルーゼはシールドであっさりと防ぐ。
ドッグファイトを繰り広げながら突き進む2機は、
やがてヘリオポリス内部に到達する。
「なっ…!モビルスーツ戦だと!?」
コロニー内部に始めて入ったムゥは、
中の光景を見て驚愕し、
クルーゼは広がるコロニー内部の被害を見て口元を吊り上げて笑っていた。
「そこっ!」
《ガンダムMk-U》が《ジン》の胴体に
ビームサーベルを突き刺すと空中で激しい爆発をおこす。
ロベルトもバルカンでもう1機の《ジン》のメインカメラを破壊すると
一気に胴体を真っ二つにする。
するとロベルトは《メビウス・ゼロ》と《シグー》の存在に気付く。
「ん!?まだいたのか!」
ムゥの《メビウス・ゼロ》は全てのガンバレルを失い、
コロニー内部の状況に驚きつつも、
目の前のクルーゼに追いすがる。
「くっそぉ!!」
「そろそろ死んでくれるとありがたいのだがね!」
《シグー》はビームサーベルを引き抜くと
《メビウス・ゼロ》に向かって突進をかける。
「ちいっ!やらせるかよ!!」
「ムッ!!……しぶといヤツめ。ならばこれはどうだ!」
《シグー》は《メビウス・ゼロ》に向けて、
大型のマシンガンを持ち替えて狙い撃つと
《メビウス・ゼロ》の機体後部に命中する。
「エンジン部分損傷…!?もうダメってことかよ!!」
《メビウス・ゼロ》はぐんぐんと高度を下げて、
機体の腹から地面に叩きつけられた。
「くっ…ヤツらめ…落ちろ!!」
オロールは僚機の《ジン》があっさりとやられると、
一気に距離を離して三連装ミサイルポッドからミサイルを発射する。
ミサイルは《ガンダムMk-U》と
《リック・ディアス》目掛けて撃ち放つとすかさずバルカンで迎撃をするーーー。
しかし、撃ち漏らしたミサイルがコロニーの表層部に直撃すると、
大きな爆発が起きて、コロニー全体が激しく揺れる。
「落ちろっての!!」
「ちっ…!」
アポリーはミゲルの攻撃をすれすれでかわす。
しかし、躱し続ける事によりコロニー内部のダメージがどんどん広がって行く。
アポリーは焦りの色を隠せずにいた。
慌てたキラはミゲルを狙うがアスランの《イージス》が割って入る
「キラ…!キラだろう!?」
「アスラン…!?…なぜ君が…」
アスランの呼びかけにキラとアスランは互い機体を止めたその時、
コロニーの鉱山区付近の表層部に大きな爆発が起きた。
全員がその爆煙の上がった方へ目をやると、
砂煙を突き抜けて巨大な船体が現れる。
その光景を見ていたラミアスは思わず声を上げる。
「アークエンジェル!!無事だったの!?」
歓喜と驚きが混じる上ずった声を上げるラミアスの表情に安堵の色も伺えた。
「あれがアークエンジェルか…」
クワトロはアークエンジェルのその姿を見て、妙な懐かしさを感じていた。
「開口部を抜けました!コロニー内部に進入!」
「モルゲンレーテは大破!ストライクがザフトのモビルスーツと交戦中!」
「…コリントス、発射準備。レーザー誘導、厳に!
フェイズシフトに実体弾は効かない、
主砲、レーザー連動、焦点拡散!」
「は!」
アークエンジェルのブリッジにはナタル中尉が
生き残ったノイマン少尉やトノムラ曹長ら数名と共に
アークエンジェルをなんとか発進させていた。
「あれは…連邦の新造艦…?ちっ。仕留め損ねたか…!」
クルーゼは沈めたと思っていた想定外の相手の登場に毒づいた。
ーーーーー
ドックの《アーガマ》でもコロニー全体の激しい振動と衝撃を感じていた。
「ブライト大佐…本当によろしいのですか?」
レコアは少し不安げな表情でブライトへそう言うと、
ブライトは鋭い目つきに変わり、レコアへ言う。
「ザフトの母艦を叩けば、中で暴れまわるヤツも引き揚げるはずだ。」
「確かにそうですが…大佐は我々に協力するおつもりですか?」
「今は避難民もいる緊急自体だ。それは終わってから話そう。」
そう言うと、充てがわれたノーマルスーツのヘルメットを頭に被る。
ブライトの判断により、《アーガマ》はコロニーの外へと出ようとしていた。
ルナツーの監視が厳しいサイド7とあらば、
艦隊戦を行えばたちまちティターンズや
ルナツーの駐留部隊に捕捉される可能性はあったが、
ザフトの母艦を《アーガマ》で追い詰め、
相手の撤退を狙うという強引な策で、
コロニーの崩壊というリスクを背負うならばーーー。
というブライトの判断だった。
「レコア中尉、おそらくだが
外にザフト艦がいる時点で遅かれ早かれティターンズは、
ここの騒ぎを嗅ぎつけて来る。
最大船速で《アーガマ》の有効射程圏内に入り次第、
ザフト艦への攻撃を開始。
一点突破でザフトの撤退を誘う。
勝負は一瞬で決まるはずだ、集中するんだ。」
ブライトは椅子に座らずに艦長席に座るレコアへ
細かなアドバイスを送ると、大きく頷く。
「分かりました。両舷全速前進!《アーガマ》発進。」
ーーーーー