【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 15
『アッザムリーダー、破壊されました!』
アッザムの中で、機長は測的手からの報告を聞く。
たかが旧式と侮ったか。まさかアッザムリーダーの方を狙うとは。
「先の戦いでは、高速で突っ込んで無理矢理引きずり出したのだったな。アッザムリーダー破りにも色々あるものだ」
つい先だってのシグー四機との戦闘では、一機を捕らえたものの、僚機による強行突破で脱出されている。
もっとも、僅かな時間だったとは言えアッザムリーダーの中に入った影響は免れなかったか、その後に仲間を抱えて鈍くなった隙を突かせてもらう事になった。
今度のはなかなか上手くやったが、結局、仲間を担いで逃げ出そうとすれば動きがとれなくなるのは一緒だ。
“一人の負傷兵は、二人の兵の手を奪う”
相手を嬲り殺す様なアッザムリーダーの特性は、相手を消耗させるには効率的であった。
ついでに言ってしまえば、アッザムリーダーの発生器は一つだけではないので、破壊されても戦力の低下と言うほどのことはない。
こちらに被害は少なく、仲間を救おうとした敵に出血を強いた。損得の勝負なら、アッザムの勝利だ。
と、モニターの中、救出されたジンの一機が、誘爆を起こしてバラバラになったのが映った。どうやら、救出は少々遅かったらしい。
その無様に嘲笑を浮かべ、機長は命じる。
「仲間を救出し、我等に背中を見せた敵に、たっぷりビームをお見舞いしてやれ!」
『了解。砲撃します』
砲手は応えた。
メビウス・ゼロは、残る一機を引きずって逃げようとしている。その重い動きに照準を合わせるのは容易い。
と、残る一機のジンが、スラスターを爆発させた。
誘爆かもしれないが、メビウス・ゼロに取り付く様な動きは何なのか。
溺れる者が救助者にしがみつくような動作。心情的には助けに縋る事を理解出来なくもないが、それは救助者もろともに溺れるだけの悪手だ。
メビウス・ゼロの機動性はより落ちる事になるだろう。ならば、抱き合ったままビームの炎に焼かれると良い。
機長は構わず、砲撃が行われるのを待つ。ほんの僅かな時間。しかし、その間に事態は急転した。
「今度は同士討ちか?」
理解しがたい事に、メビウス・ゼロに取り付いたジンが、さらにもう一機……ジン・ハイマニューバによって破壊される。
直後、アッザムから撃ち放たれたビームが、それら機体が固まる宙を薙いだ。
――が、メビウス・ゼロはそれを回避する。救出したジンから解放された事で、直前に機動性を取り戻していた様だ。
「……そういう事か! 味方を救う為に、負傷兵を切ったな!?」
ジン・ハイマニューバの行動の理由を想像して機長は声を上げる。
その想像は、それほど大きくは外れていない。味方を救おうとしたと言う点は正しく、だがアッザムからの攻撃を想定しての事ではなかったが。
「だが、終わったわけではないぞ。続けて攻撃を行え」
指示を下す。戦いは終わったわけではない。そう……戦いは続いている。
そしてその事を逆に教えるかのように、その時、アッザムを激震が揺らした。
「な!? 何だ!」
『もう一機のジンからの攻撃です!』
――オロールはやってくれた。だが、自分は身動きが取れない。
敵大型MAと砲撃戦を行うミゲルは、ほぼ釘付けにされている状況に歯噛みする。
相手の注意を引いているという点で戦果は出しているが、それは単にラスティやオロールが敵の注意を引いていないからとも言える。
今、ラスティとオロールの両機は確実に敵の注意を引いた。
どうする? 砲撃をし、それが命中したからと言って、相手の強引に振り向かせる事は出来ない。今までの攻撃の結果を考えれば無理だとわかる。
115mmレールガン“シヴァ”の一撃をもってしても、敵大型MAの装甲を削る程度に過ぎないのだ。
ならばどうする? 手をこまねいて見ている以外の行動だ。
意味のない無駄な足掻き以外の行動だ。
どうする?
敵は、仲間達を狙い撃とうとしている――
「良いさ、俺を殺して見せろ!」
決断は早かった。
ミゲルは機体の足を止める。敵大型MAが可能とする猛攻を前にしては自殺行為だ。だが、次の攻撃には必要だった。
そして冷静に敵に照準を合わせ、トリガーを引く。
それはレールガンではなく、ミゲルのジン・アサルトシュラウドのもう一つの追加武装、220mm径5連装ミサイルポッドがだった。
撃ち放たれたミサイルが敵大型MAへと直進する。
それが命中するまで足を止めて待つ。この時に反撃が来ればミゲルの賭けは負けだ。ミゲルの機は容易く撃破され、おそらくはその後にラスティとオロールも撃たれる。
だが、ミゲルの中の何処か冷静な部分が、その賭けは自分に分があると言っていた。
敵はラスティとオロールを狙っている。
ならば、自分への攻撃はきっと遅れるだろう。
……もう一撃を放つまでの僅かな時間くらいは。
ミサイルは敵大型MAに届いた。着弾したミサイルが装甲の表面で弾け、閃光を撒き散らす。
直後――ミゲルはレールガンを放った。
「アッザムの装甲は、奴の一撃程度では……」
アッザムの中に響き渡る警告音と、測的手の報告に、機長は焦りの声を上げる。
レールガンの一撃には耐えられた筈だ。それが何故?
答が返る。
『違います。ミサイルです! その上に、奴は砲撃を重ねて――』
ミサイルの着弾には、アッザムの装甲は耐えた。しかし、直後に撃たれたレールガンが、損傷した装甲を突き破って内部にダメージを与えたのだ。
『反撃します!』
砲手が叫び、機長の返事を待たずに反撃を行った。
モニターの中、宙に留まっていた砲撃戦型のジンの上半身がビームの直撃を受ける。
爆発を映すモニターを見ながら、砲手は報告に叫んだ。
『命中! 敵機撃破です!』
「……ミゲル。お前ってば、俺に見せ場を譲ってくれるんだものなぁ!」
ミゲルの機体がビームの直撃を受けたのを見ながら、オロールは自機に無反動砲を構えさせた。
その筒先を向けるのは宙に浮かぶ敵大型MA。
これはチャンスだった。
ミゲルが作ってくれたチャンスだ。
「落ちろ、糞玉葱!」
罵声と共に撃つ。放たれたロケット弾は、真っ直ぐに敵大型MAへと突き進む。
狙いは、ミゲルが穿った装甲の穴。
無論、そこに狙い当てるのは難しい。だが、それならば。
「全弾、持って行け!」
当て難いなら数を撃てばいい。どれかが当たるだろう。
その鉄則に従い、景気よく持ってきた全ての弾を撃ち尽くす。狙いなど、それなりにしか定めていない。文字通りの、「数撃ちゃ当たる」だった。
敵大型MAに突き進んだロケット弾は多くが外れ、また健在な装甲に弾かれる。
だが、その内の一発が、ミゲルの穿った穴から進入。その奥で炸裂した――
敵一機撃墜の戦果に機内が沸いたのは僅かな間で、更なる激震の後にアッザム内の警告音は一段と高まり、全乗員に非常事態を伝えていた。
装甲の中で炸裂したロケット弾に、機体は大きなダメージを受けている。自機を映したモニターでは、装甲の穴から炎と破片が吹き出しているのさえ見えた。
だが、機長は怒りにまかせて吠える。
「まだ……まだだ! たかが後二機、このアッザムならば!」
それは事実だ。
確かに大きな損傷を受けたが、アッザムの戦闘力はまだ残っており、戦闘の継続は可能。
残す敵は二機。アッザムからすれば大した敵ではない。
戦いはこれからだと気炎を吐く事も出来た。
しかし……
『機長。撤退命令です』
「何故だ! まだアッザムは戦える!」
通信手が伝えた艦隊からの命令に機長は思わず怒鳴り返した。
『貴重なアッザムを失うわけにはいかないとの事で……』
「少々不利になって臆病風に吹かれたか!? これだから、安全な後ろで椅子をケツで磨くだけの奴等は……」
文句を吐き散らしながらも、機長は落胆した様子で最後には命ずる。
「砲撃を行いつつ後退せよ。戦いは此処までだ」
『了解です』
命令は直ちに実行された。
ユルユルと距離を取りながら、残る敵に砲撃を行う。しかし、そんな身の入らない攻撃で落ちてくれるのは相当の間抜けだけだ。
そして、敵の追撃はない。
「ここで追撃でもしてくれれば落とせたものを。退き際は知っているようだな」
追撃の為に追ってくる所を、退き撃ちで討ち取る。そんな戦い方もある。こちらが戦闘態勢を維持している時、戦果に焦る敵には効果が高い。
残念ながら、敵は間抜けではないらしい。
機長は無念の気を抑えつつ、離れていく敵機の姿をモニターの向こうに見送った。
アガメムノン級宇宙母艦の艦橋。ジェラード・ガルシア少将は焦りを安堵に変えていた。
「アッザムの撤退は順調なのだな!? よし、ならば問題ない。早く下がらせろ」
アッザムは性能評価の為に貸し与えられた特別な機体だ。それを失っては、自分の面目が丸潰れになる。
「しかし、たかだかモビルスーツにやられるとは。機長は何をやっているんだ」
不愉快そうに、責任をなするかのようにガルシアが言う。
今まで積んだ勝利故か、MSの事をすっかり見下していた。“アッザムならばこの程度の敵”と、無意識に考えてしまっていたらしい。
「この程度……か」
その事に自分で気がつき、ガルシアは渋面を浮かべ、調子に乗っていた自分を恥じた。弱いと思い込んだ相手に調子づいて足下をすくわれる、そんな傾向がガルシアにはある。それを省みて。
しかし、その表情を機長への怒り故と見たのだろう。参謀達の方で機長を責める声が上がり始める。
が……ガルシアにとってそれは困るのだ。何せ、機長を推薦したのはガルシア自身なのだから。
どう話題を変えようかと考えていた所、その空気を読んでくれたのか、参謀の一人が声を掛けてくれた。
「ですが閣下。最後に撃墜したあのオレンジの機体は、ZAFTのエースである可能性があります。アッザムの性能の証明になるかと」
エース。今までに連合軍に流血を強いた怨敵。その撃破は、アッザムの性能を大いに保証する事になるだろう。
当然、その戦果を出した機長の功績も認めねばならない。「別の機長ならもっと戦果をあげられた」と言うのは容易いが、自分の馬鹿をひけらかす以外の結果を得るのは難しいだろう。
ガルシアは、エースという言葉にすぐさま飛びついた。
「ほう、エースとはどんな奴だね?」
「ハイネ・ヴェステンフルス。オレンジの機体カラーがトレードマークです」
参謀は資料の中から、何とも惜しい人名を上げる。確かにオレンジ色でエースではあるが……
ともあれ、それにガルシアは上機嫌で応えた。
「素晴らしい。アッザムの撃墜記録に記載しておくように。最後は無様と思ったが、エース相手に白星か。機長の事も評価すべきだな」
これで、アッザムの華々しい戦果の中にエース撃墜が加わる事となる。
ガルシアは機嫌を直して満足げに頷いてさえ見せた。
その上機嫌が消えない内にと、別の参謀が問いかける。
「閣下。奪われた連合モビルスーツはいかが致しますか?」
「…………」
ガルシアは一転して困った様子で眉根を寄せた。
これ以上の戦闘を行うなら、艦隊はアッザムに頼らずに戦う他無い。
敵の戦力は圧倒的に少数ではあるものの、万が一の被害を被る危険は犯したくなかった。
いや、敵が如何に少数でも、戦力の質で劣る以上、被害は絶対に発生するのだ。兵の命が大事という訳ではないが、失われる中に自分が含まれる未来は極力避けたい。
それに、既に十分な戦果はあげている……と、言い訳が出来るくらいには戦果はあがっていた。ならばもう、いいのじゃないだろうか。
ガルシアは、わざとらしく咳払いをし、言い繕う様に言葉を紡いだ。
「強攻はしない方針だ。此処は見逃してやるしかないな。実に残念だが、敵には幸運だったようだ」
「全くです。敵は命拾いしましたな」
「閣下の温情に感謝すべきです」
参謀達が口々に賛同してガルシアを褒めそやした。要するに、ここにいる誰もが、危ない橋を渡りたくなどないのだ。
どうせこの連合MSの一件は大西洋連邦の失点でしかない。多少、着せる恩が少なくなるが、ここで欲をかく必要がある事でもないだろう。
考えても見ろ。連合MSの件で大出血した大西洋連邦と違い、ユーラシア連邦は一人の兵も失わずに大戦果をあげ、自国製新型MAの性能を証明してみせたのだ。既に大勝利ではないか。
しかしまあ、つまらない所をほじくり返す連中も多い事だ。建前に近いものだったとは言え、作戦目標未達成は痛い。
しばらくは基地から根回しの日々だな……
自分の功績を最大限に活かす為、そして更なる地位を得る為、基地に帰ってからがガルシアの戦いとなる。こんな所で戦っている暇はない。
結論に至るとガルシアは改めて命令を下した。
「各艦、各モビルアーマー隊には、アッザム収容中の対空警戒を厳に行わせろ。アッザムの収容が完了次第、“アルテミス”へ帰還する」
敵大型MAの後退。その後、連合艦隊は見事と言って良いくらいに整然と撤退していった。
もっとも、そんな事は鉄の棺桶と化した自機の中にいるミゲルにはわからない。
火が落ちて自分の指先も見えないような完全な暗闇となったコックピットの中、ミゲルは身じろぎ一つせずに操縦席に座り続けていた。
と……機体が揺れる。何かが機体に触れたようだ。そしてそれは、ミゲルが期待した通りの相手だった。
『ミゲル、無事か?』
接触回線を通して通信が届く。相手はオロールだった。
「……何とかな」
ミゲルは安堵の息を吐きつつ、身動きはしないままに答える。
「敵は?」
『撤退してくれた。肝が冷えたよ。こっちは弾切れで、敵のもう一押しがあったら死んでたぜ。って……見えてないのか?』
オロールに戦闘結果を聞き、危機は去ったと知ってミゲルは安堵した。
「そうか、まあ勝ちだな……で、こっちはカメラ全損、通信不能だ。何も見えないし聞けない」
『だろうな。胸から上がごっそり無くなってるわ。よく生きてたな』
胸から上……ああ、そこに当たったのか。
ならば、メインカメラのある頭部、そしてアサルトシュラウドで追加された武装は全て失われた事だろう。肩辺りのサブカメラも死んだだろうし、肩から腕の駆動装置も全損か?
修理は……いや、ここまでやられれば、廃棄処分だろうな。
そんな事を考えながら、ミゲルは応答する。
「撃たれる事はわかってたからな。砲撃後に下に機体を移動させたんだ……」
反撃は絶対にあると考えていた。だから、砲撃後はすぐ機体を動かした。結果、それが命を救ったらしい。
まあ、命は救われた。それは良いとして……だ。
「あー、いや、痛い。体が死ぬ程痛い。酷く揺さぶられたからな。ラスティはよくあれで無事元気だったよ」
全身を痛みが覆う。着弾直後の激震の事は記憶に薄い。だが、これだけ全身が痛むのだ。おそらくはシェイカーの中のカクテルみたいに振り回されたのだろう。
打撲で済んでいれば良いのだが、骨だの筋だの壊していたら、回復に時間がかかる。
同じ様な撃墜のされ方をしておいて、よくもまあラスティは無事だったものだ。あれは、まるでその時にコックピットにいなかったみたいな無傷っぷりだった。
『帰ったら、予備機体も無いし、しばらく医務室生活出来るぜ? 羨ましいよ』
「羨ましいか? 代わってやるよ」
オロールに言われたが、そいつこそは御免だ。ベットに安全ベルトで拘束された状態で何日も過ごすなど、退屈で殺す拷問かと思う程に苦痛だ。
『くっ……』「はは……」
二人の間に小さな笑いが起き、それが静まるとただ沈黙が残った。
……気分的に話し難い。しかし、放っておける事でもない。
憂鬱な気分でミゲルは切り出す。
「ラスティはどうした?」
『お前の生存確認までは居たよ。今は、帰っちまったな』
オロールの返答は何の気無しの言葉の様に聞こえた。
が、味方パイロット……実質は仲間の背中を狙う敵だったわけだが、ともかく味方を助ける為に敵に突っ込んでいくあのラスティが、ミゲルの生存が確認されたからと言って、さっさと帰ってしまうはずがない。
あのやたら攻撃的で情熱的な性格からしても無い事だろう。
ならどうしてなのか。答えは一つだ。
「不味い所を見られたしな」
『言い訳は出来ないしなー……口利いてくれなくなっちゃったよ』
あの時。仕方なかったとは言え、オロールは“味方殺し”を行った。
ミゲルは重々承知であるし、ゼルマンにもそれがラスティを救う為だったとは理解してもらえるだろう。罪にはなるまい。
しかし、何も知らない……何も教えられていないラスティにとってはどう見えたか? それは言うまでもあるまい。
「お前は悪くない。命令したのは俺だ」
それは自身で背負う事に決めた。ミゲルが言うと、オロールも言葉を返す。
『だよなー。お前、責任とって何とかしろよ?』
「……ここは互いにかばい合う所じゃないのか? ああ良いよ。お前にそんなの期待した俺が馬鹿だった。帰還したらラスティに……っ!」
話を続けようとして、ミゲルは体を襲う痛みに呻く。苦痛は今も全身を苛んでいた。
『……全部、治療を終えてからだな』
オロールは苦痛に呻くミゲルへ気楽に言う。まるで気にしていないと言う様に。
『なーに。この任務が終われば、多分、ラスティともお別れだ。ラスティの中で俺が背中撃ちのままだったとしても、何も問題ないさ』
「そうだな……」
それはそれで良いのかも知れない。少なくともラスティが、自分自身が命を狙われ、彼女の愛する戦いを汚されていたと知る事はないのだから。
「お前一人、糞の様に嫌われればそれですむもんな。俺も楽が出来て良かったよ」
『おいおーい。ちょっと気を楽にしてやろうとしたら、本気にしちゃったのかい? 仕事しろよ? 任務終了まで、部隊の統率はお前の仕事だぞ? 隊員間の揉め事とか放置すんなー?』
冗談混じりに嫌みたらしい言葉を吐く。お互いに。その後、ミゲルとオロールは笑いあった。
もっともミゲルは、笑った事で呼び覚まされた体中の痛みに、しばらく声も無くもがく事となるのだが。
かくして、連合宙軍アルテミス所属ユーラシア連邦艦隊の戦場離脱により、ヘリオポリス沖会戦と呼ばれる一連の戦闘は終了した。
結果は、連合宙軍第8艦隊が壊滅。一部の艦は残ったが、第8艦隊が再編される事は当面無いだろう。
彼等は、連合製MSの奪還にも失敗しており、幾隻かのZAFT艦を撃沈させるも、自らも大きな被害を出し、目標は果たせずに終わった。
一方、ユーラシア艦隊は、その新兵器アッザムの実戦投入を行い、自らは被害を受けることなく大きな戦果を上げた。この事は、後にユーラシア製大型MAの存在を強くアピールする事となる。
ZAFTは、今会戦に参加した艦艇に全滅と言って良い被害を出した。とは言え、参加艦艇数が少なかった事もあり、それほど大きな被害ではないとも言える。
肝心の連合製MSは守りきっており、作戦目標を一応は達成していた。
この後、輸送艦と合流したローラシア級モビルスーツ搭載艦“ガモフ”はプラントへの帰途を辿る事となる。
ZAFTによる連合MS奪取から始まり、荒れに荒れたヘリオポリス周辺宙域は今、仮初めのものかもしれないが一時の凪ぎを迎えた。
機動戦士ザクレロSEED‥‥以上。
ヘリオポリス沖会戦終了。
次からはユウナ達のヘリオポリス編ですが、またしばらくお待たせするかも知れません。
アスラン達はヘリオポリス編の中で片付けます。
ザクレロSEEDは、web小説投稿サイト ハーメルンにも投稿しています。
ttp://novel.syosetu.org/14539/
おつおつ
>アスラン達はヘリオポリス編の中で片付けます
ファッ!!?
ザクレロ氏の更新だヒャッハー!
ミゲル、オロール、ラスティが生き残れて何より
オロールの目論みが崩れ去る方にベット!
うぽつー
ザフト三馬鹿トリオが生存して何より何より。
そして作者に盛大に死亡フラグを突き付けられたアスランたちの運命はいかに!?
もし……もし、種製作時にアサイラムが協力していたとしたら……
ナチュラルシャークvsコーディネートシャーク
ザクレロさん保守age
保守
保守AGE
86 :
通常の名無しさんの3倍:2014/08/12(火) 20:13:57.19 ID:nAwcQ/OC
保守アゲだぁー
ザクレロさんの続編まだかなー
もし……もし、レイ・ザ・バレルが別の種キャラクターに対して
「間違いない……奴はゲイだ!! 同じゲイとして解る!
よし、俺に任せろ! 奴を必ずオとしてくる!」
とか言い出して来ていたとしたら……甘美な電流……まさか俺……ッ!?
アッー
89 :
通常の名無しさんの3倍:2014/09/24(水) 05:06:58.36 ID:M3nEmSms
ザクレロ氏の更新を楽しみにしつつ保守
ほしゅAGE
もしもキラが戦場乱入時に、こんな感じの名乗り文句を挙げていたら……
「地獄からの使者、キラ・ヤマト!」
「ロゴスキラー、キラ・ヤマト!」
「親の愛に泣く男、キラ・ヤマト!」
「復讐に燃える男、キラ・ヤマト!」
「約束に命を懸ける男、キラ・ヤマト!」
「犬笛にむせび泣く男、キラ・ヤマト!」
「冷血動物ブルーコスモス殺し、キラ・ヤマト!」
「母と子の愛の絆を守る男、キラ・ヤマト!」
「モビルスーツ退治の専門家、キラ・ヤマト!」
「血は人間の絆。愛の証し。愛の為に血を流す男、キラ・ヤマト!」
「情け無用の男、キラ・ヤマト!」
「家なき子供達の為に涙を流す男、キラ・ヤマト!」
「少年の友達、キラ・ヤマト!」
「悪のからくりを粉砕する男、キラ・ヤマト!」
「物言わぬ動物の愛に泣く男、キラ・ヤマト!」
「親の心、子の心。大切な心を守る、キラ・ヤマト!」
「ザフト過激派を退治しに来た男、キラ・ヤマト!」
「亡き兄に復讐を誓う姉弟に心打たれる男、キラ・ヤマト!」
「キノコ狩りの男、キラ・ヤマト!」
「大都会の停電を阻止する男、キラ・ヤマト!」
「野生の少女に味方する男、キラ・ヤマト!」
「カメラのレンズは真実を見る瞳。ジェス・リブルの曇りなき瞳を信じる男、キラ・ヤマト!」
「少年の勇気に希望を見た男、キラ・ヤマト!」
「不死身の男、キラ・ヤマト!」
「孤独な少年の為に戦う男、キラ・ヤマト!」
「100メートル先に落ちた針の音をも聴き取る男、キラ・ヤマト!」
「アスラン・ザラの友情を信じる男、キラ・ヤマト!」
「スーパーコーディネーター、キラ・ヤマト!」
君は何故 君は何故 戦い続けるのか命を賭けて
ザクレロ保守
ほ
94 :
ザクレロさん待ちついでに:2014/10/16(木) 00:31:23.17 ID:R7zAc9O+
「もしフリーダム(およびストフリ)とキラが『汝の敵をも愛せ』『愛が欲しいなら誤解を恐れずに』
『争いを好まぬ僕に……武器は必要無い!』というスタンスで乱入していたら……」という話をどなたか執筆のほど御願い致します。
でも怒りが心頭に達すると前腕部を振動させて手刀で打った斬って来る場合があるので難しい所ですが。
どんなスタンスだろうがやること変わってないんじゃ意味ないんじゃない?
他人に依頼されて書くような物好きはここにはいない
自分で書け
AGE
懐かしいスレだなぁ。種ももう大分前なんだよなぁ……
とと、途中で書き込んでしまった。またネタを書きたいけど、それにはまず本編見直さないとな…。
まあ書いたとしても、エタる可能性のほうが大きいが…
100 :
通常の名無しさんの3倍:2014/10/29(水) 11:07:47.69 ID:noD9Tpro
>>98 種で12年、001stで7年だからな
AGE、BFとバンナムが子供向けに力入れるのも当然
>>100 今期のBFを観てガンダムマニアになる子どもは、相当業の深い人物になると思うんだが
BFは思いっきりおっさん向けだろ
プラモ狂四郎世代・SDガンダム世代あたりのガンプラ購買層がターゲット
まあガンプラのプロモみたいなもんだ
AGE
>>99です。ちょっと思いついたものがあったので、
少しでも皆さんの暇つぶしになればと思ってゆっくり進めたいと思います。
オリジナル機体や超展開とか出ますが、温かい目で見守っていただければと。
またこのSSはweb小説投稿サイト、ハーメルンでも掲載しています。
ひとまず1話目と、時間を空けて2話目いきたいと思います。
『赤になりたいんだろう?』
耳障りな声が聞こえてくる。落ち着いているようで、その内、快楽を求めている声だ。
その声を聞いた赤毛のショートヘアーの少女は、荒く息をしながら、目の前にいる少年達にライフルを構えている。
『どうした、これを撃てばいいだけだ。引き金を引けば終わる。そんな簡単なことをなぜ出来ない?』
この男は、少年達を【これ】と呼んだ。まるで生き物ようには扱っていない。
この男にとって、この少年達は生き物でもなんでもなく、ただの自分の欲望を満たすための道具に過ぎないのか。
だが、確かに少年達は生き物のそれと同じように、哀願の目を、そして最期の最期まで抗う目を少女に、男に向けていた。
その目を見るたびに、少女の息は荒くなる。
この少年達は、自分たちコーディネイター――遺伝子を操作された者――を敵対視し、殲滅しようとしているナチュラルの団体、ブルーコスモスの一員。
と、疑いがあるというだけで捕縛され、そしてここに並べられている。正式な命令ではない。この男と、そしてその部下達の命令だった。
部下と男は、まだかまだかと少女を見つめている。自分達と同類になるのを待っている。にたりにたりと笑っている。
この目の前の少年少女たちがブルーコスモスじゃないなんて、赤毛の少女には分かっていた。だが、自分が反抗すれば、
ザフトのエースである赤服になるための道は閉ざされる。そればかりか、命すら危うい。
ライフルを握る手が震える。なぜ、なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。
『どうした、早くしろ!』
『ナチュラルなど、ゴミ同然だろうが!』
『撃て!』
最後の言葉に、赤毛の少女は言葉にならない雄たけびを上げた。そして―――。
機動戦士ガンダム SEED Red Hawk Destiny 第一話
「うわぁああ!!」
悲鳴とともに飛び起きると、そこは最近では見慣れた自室だった。
そして、自分はベッドに寝ているのだということに気がつくと、なんとも言いがたい安心感に体が包まれ、もう一度ベッドに倒れこむ。
だが目は閉じなかった。赤毛の少女――ルナマリア・ホークは、もう一度目を閉じればあの続きを、それかまた初めから見るハメになると感じていた。
「なんで、今になってあの夢を見たのかしら……ったく!」
少しばかり八つ当たりをするように、乱暴に掛け布団を振り上げると、そのまま体を起こし、ベッドから立ち上がる。
そして、備え付けられている化粧台の鏡を見てげっそりとする。
夢を見ながら泣いていたのか、それとも……なのか、酷い顔と寝癖だった。
ひとまず顔を洗い、髪を整え、前髪の癖毛をピンっとはじくと、気合を入れなおし服を着る。ザフトの赤い制服ではない。
一企業の、それもMSを生産している中小企業のものだった。
「赤……ですらないのよね、私」
ルナマリアが所属しているこのラティス・エレクトロニクス社は、おもちゃの部品から巡洋艦の部品まで、
幅広い製品の開発に携わっていたが、その中にモビルスーツ(MS)の開発も含まれていた。
正確に言えば含まれた、だった。
コズミックイラ(C.E.)70年から72年にかけて、後にヤキンドゥーエ戦役と呼ばれたザフトと地球連合軍との世界戦争は、
最終的には双方の痛みわけとなった。
実質的指導者を失ったことにより停戦条約、【ユニウス条約】が結ばれ、ひと時の平穏を取り戻したかに思われた。
だが地球連合、ザフトともにそれでMSの開発が止まるわけではなく、まるで次の開戦があるかのように、軍事力の強化が水面下で行われていた。
その流れにラティス・エレクトロニクス社も乗ることになる。秘密裏に手に入れた連合のストライクダガーやロングダガーを独自に研究、改造を行い、またオーブから流出した研究者を雇い、
MSの機体開発からOSの開発まで独自に行った。
そしてC.E.73年10月2日、本社のあるコロニーから試験艦「エポナ」が発進し、試作1号機と2号機のテストを行うことになったのだった。
ルナマリア・ホークは、その1号機のテストパイロットとして、ザフトからの出向、いや正確に言えばザフトを離れ、この会社に入ることになったのだ。
他の道も探した。だがしかし、ルナマリアにとって、MSを動かすことしか出来ないという現実を受け止めざる得なくなり、かつて世話になったザフトの関係者からこの会社を紹介してもらったのだった。
「中小企業って言ったって、MS2機も開発しちゃうんだから、うちの会社もたいがいよね」
ルナマリアはMS格納庫に足を運び、整備士たちが働いている様子を見ていた。目の前には、自分も開発に関わったMS「ストライクダガーB型1号機【バゼラード】」が立っている。
頭部レンズの奥にあるデュアルアイは、まるで搭乗者、すなわち相棒であるルナマリアをじっと見つめているようにも思えた。ルナマリアは苦笑しながらその目と見つめあう。
「宇宙よ、宇宙。やっと外に出られたんだから。戦争に使われる前に、楽しまないとね」
戦争、その言葉をつい出してしまったが、それが現実にならないことを祈る。彼女にとってこのストライクダガーB型は、見た目こそ連合のものに見えるものの、自分の愛機には違いなかったからだ。
ここにはザフトも連合も、オーブもない。ただこのMSがあるだけだ。
ルナマリアはしばらく機体を見つめた後、飲み物を買うために休憩室へと向かった。そこで一人、ルナマリアよりも真っ赤な髪をツインテールにまとめている少女を見つける。
超展開なら遊戯王で慣れてるぜ!
「メイリン」
「あ、お姉ちゃん」
メイリンと呼ばれた少女はルナマリアを見つけるなり、パァっと明るい笑顔を見せた。
ルナマリアはまだ姉離れできていないこの少女に少し苦笑しながらも、飲み物を買い、彼女のそばに座った。
メイリン・ホークもまた、ザフトの士官学校に通っていたが、突然辞め、プラントを離れたルナマリアを追って、ここまでやってきたのだ。
そんな妹を最初はルナマリアも叱り、そしてプラントに戻そうとしたが、
結局は妹に言い負け、一緒にラティスで働くことになった。そんなこと思い出し、自分もまた妹離れしていないなと自虐しつつ苦笑した。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないの。それにしても、やっぱり驚きよね。メイリン、通信士希望だったのに、今じゃMSパイロットだもの」
「私は――お姉ちゃんのそばにいたかったから。少しでも」
「いい加減私から卒業しなさい、メイリン。じゃないと、いつまでたっても子供のままよ?」
「じゃあお姉ちゃんは大人だっていうの?」
「少なくともメイリンよりはね」
「ふーんだ、まだまだ子供だし、子供でいいもん」
不貞腐れたようにほほを膨らますメイリン。それを見て、ルナマリアはつい笑いがこぼれてしまった。実際、ルナマリアにとってメイリンの存在は助かった。
一人じゃない、それがどれだけ自分を救ってくれているのか、無意識のうちだったが、ルナマリアは理解していた。
メイリン以上に妹離れできていないのは自分かもしれない。そう考えると、まだまだ自分も子供だと彼女は思う。
『目標宙域に到達。1号機、2号機パイロットはテスト開始準備をされたし。繰り返す……』
と、そんなときに自分達を呼ぶ声が艦内放送で聞こえてきた。どうやらテストを行う宙域に到着したようだ。外を見てみるとデブリがところどころに見える。
隠れてテストを行うには最適な場所なのだろう。ルナマリアは気合を入れなおし、メイリンのほうを向きながら言った。
「メイリン、時間よ。間違ってデブリにぶつかったりしないでよね」
「わかっているよ。お姉ちゃんこそ、はしゃぎすぎないでね」
「私がいつはしゃいだ?」
「だってお姉ちゃん子供だもの」
「言ってくれるわね」
言い返しながらも、ルナマリアはロッカールームに向かう。メイリンもその後に続いた。そしてパイロットスーツに着替え、ヘルメットをつける。
このパイロットスーツだけは赤いものを指定している。ザフトにいた頃、もしも自分がパーソナルカラーをもらえるとしたら赤をもらおうと思っていたからだ。
メイリンは企業指定の黄色を基調としたパイロットスーツに着替えている。髪も解き、ヘルメットに収まるようにまとめなおしている。そのとき目が逢い、メイリンは微笑んだ。
ルナマリアも微笑み返す。
そして格納庫へと向かい、それぞれの機体のコックピットへと向かう。ルナマリアは一通り整備士から説明を受けた後、1号機に乗り込み、各設定を確認しながらカタパルトへと運ばれるのを待つ。
そのとき、モニターにブリッジにいる艦長の姿が現れる。
『ルナマリア・ホーク。調子はどうだ?』
「上々です、ナタル・バジルール艦長」
ナタル・バジルール。かつて、アークエンジェルの副艦長、そしてドミニオンの艦長を務めていた連合の女士官。
顔の半分を覆う眼帯と、そばに置かれている杖。ヤキンドゥーエの際に死の淵に立たされ、しかしながら死神に嫌われこうして生きているのだという。
本当に、生きていたのは奇跡としか言い様がなかったのだと、本人は語っていた。今はこのルナマリアと同じくラティスに所属し、エポナの艦長を務めているのだ。
「それよりもご自分のお体を心配したらどうですか?」
『ふふ、お前達に心配されるほどではないさ。今は体を縛る重力はないからな』
「無理はしないでくださいよ」
『お前達もな。……合図の後、1号機はブースターのテストを行う。デブリを避けながら、こちらの指示に従って出力を上げること。2号機は実弾を使った射撃テストだ。指定したデブリに向かって射撃をしてもらう』
「了解」
『ではがんばってくれ』
そこでナタルとの通信が切れた。そして、カタパルトハッチが開き、宇宙が広がる。
「しっかりと頼むわよ、相棒」
まるで生き物を激励するかのようにコンソールを叩くと、それに答えるかのように起動画面が映し出される。それに満足そうに笑みを浮かべると、ルナマリアは宇宙に出る準備を行った。
『1号機、発進どうぞ!』
「ルナマリア・ホーク、1号機バゼラード、出るわよ!」
ルナマリアの掛け声と同時に、ストライクダガーB型1号機『バゼラード』は宇宙に飛び出していった。
彼女達は知らない。この時、世界中を巻き込む渦に巻き込まれてしまったことを。そして、それに飛び込んでしまったことを。
彼女達は知らない。
以上です。連続投稿に引っかかってました。
5回で投稿できなくなるのか…厳しいなぁ。
二話目行きます。
プラントのコロニー【アーモリー・ワン】。一人の少年が、燃え上がる軍施設の中、叫びを上げる。
「また戦争がしたいのか、あんたたたちは!!」
彼もまた運命という大きな渦に巻き込まれていることを、この時は知る由もなかった。
ただ目の前に立ちはだかる敵、混沌を起こそうとする者たち、それに対する怒りと、奪われた3機のMSを奪い返す。それだけを考えているのだった。
このアーモリー・ワンでの強奪事件。これが世界を巻き込む大事件を予感していたのかもしれない。
機動戦士ガンダム SEED Red Hawk Destiny 第二話
「システムオールグリーン。一号機、各出力系等正常」
『こちらでも確認。そのまま徐々にブースターの出力を上げてください』
「了解」
宇宙に飛び出したストライクダガーB型1号機【バゼラード】は、デブリを避けながら、少しずつその速度を上げていく。
計器の示す数値は正常。シミュレーションどおり、いやそれ以上の動きをバゼラードは見せていた。その様子に、ルナマリアも思わず笑みを浮かべる。
姿かたちこそ連合の戦時量産されたMSストライクダガーとほぼ同じだが、その性能は同機に比べ勝っていた。何より動かしやすい。素直な機体だとルナマリアは感じる。
量産こそ難しいが、エースパイロットのために作られるのであれば十分なMSだと彼女は思った。
と、大きなデブリを前にしたため、一度ブースターを切り、ゆっくりと慣性だけで動き、そのデブリに寄りかかるようにして、少しはなれた場所にいるエポナと、
その近くにいる、メイリンの乗る2号機【タバール】を眺める。
2号機はゆっくりと腕を動かしたり、右腕に取り付けられた機関砲を空回りさせたり、肩のビームキャノンの角度を調整したりしていた。
あちらも上手くやっているのを見ると、ルナマリアは安心した表情を浮かべる。そんな時通信が入ってくる。
『なにをさぼっているんだ』
ナタルからだった。少しばかり呆れた表情を浮かべている。ルナマリアは悪びれてない笑みを浮かべ、デブリから離れると、再び宇宙を駆け始める。
バーニアをふかし、時々機体の姿勢の調節を行いながら、ゆっくりとブースターの出力を上げていく。
「順調のようだな」
「はい、各種問題はありません」
「ほとんど最終テストなんだ。問題があっては困るが、小さな問題こそ見つかって欲しいところだが……」
「そうですね……。ですが、ないことにはこしたことはありません。
ブリッジでも1号機と2号機のデータが送られてくる。そこに問題は見られなかった。それにナタルも、ブリッジの面々も満足そうな表情を浮かべる。
すべて正常どおり。そのままテストは順調に進み、終わるはずだった。
「……レーダーに反応……?」
ルナマリアはレーダーに何か反応があることに気がつく。3つ、何かが急速接近している。
「艦長、レーダーに反応!」
『こちらでも確認した!ザフトのジンのようだが、様子がおかしい!こちらの呼びかけに答えん!』
「こちらでも呼びかけ……!?」
ルナマリアが通信で呼びかけようとした瞬間だった。遠くから緑色のビームが飛んでくる。とっさに飛び上がり、それを避ける。
「いきなり発砲!?何のつもりよ……!?」
3機のMSが目視でも見えてくる。黒いカラーリングのジンがビームライフルを構え、こちらに突撃してくる。
「艦長、交戦許可を!このままじゃ撃たれる!それにそっちだって危ない!」
『通信は依然として通じんか!?……仕方がない!1号機の交戦を許可する!2号機はそのまま艦の護衛に回れ!』
「了解!戦闘モード起動!」
コンソールを操作し、ルナマリアは1号機のシステムを通常モードから戦闘モードへと切り替える。その瞬間に、メイリンからの通信が割りこんできた。
『お姉ちゃん!』
「大丈夫だから!あんたは自分の心配をして!」
『で、でも!』
「来る!」
メイリンとの通信を切り、謎のジンとの交戦に備えるルナマリア。しかし機体は戦闘テストを想定していないため、武装としては肩に装着されているビームサーベルとビームアクス、そして牽制用のイーゲルシュテルンIIしかない。
本来ならば肩部にはさらにミサイルポッド、そしてビームライフルと低反動砲を持っているはずだったのだが、これらがないためルナマリアは白兵戦を余儀なくされていた。
「こっちは無関係の民間船よ!?本気になって撃ちに来るなら……」
対ビームシールドを前に構え、ビームサーベルを抜き、ブースターを噴かしてジンへと向かっていく。ジンはビームライフルを数発発射する。それをデブリと細かな移動だけで避け、ジンに急速接近する。
「撃ったんだから、こっちだって撃つわよ!!」
1号機はビームサーベルを振り上げ、ジン一機に切りかかる。それを斬機刀で防いだジンだったが、1号機はさらに胴体部へ蹴りを入れて体勢を崩させる。そしてもう一機斬機刀で襲い掛かってきたのを避けると、その回転運動を利用して胴体を切り裂いた。ジンは爆発を起こす。
もう一機!とルナマリアはモニターを確認するが、後方に伸びるブースターの炎をみて、一機がエポナに向かっていることを把握する。
「メイリン、一機そっちに行ったわよ!」
『え、ええ!?あ、ほ、ほんとうだ……!』
「すぐ私も行く!」
メイリンとの通信の間にも、ルナマリアの一号機は体勢を立て直したジンとつばぜり合いをしている。
「この……しつこい!そんなに戦いたいっていうの!?」
なんとかルナマリアはジンを振り払おうとするも、まだジンはしつこく切りかかってくる。一旦イーゲルシュテルンIIを起動させ、けん制を図る。当たりどこによってはMSとて破壊できるはずだからだ。
その間にも、もう一機のジンはエポナに接近する。メイリンはその様子をついに目視で確認した。
「私に撃てるの……!?ううん、私にだって……!」
メイリンは震える体を抑えながらも、なんとか照準を合わせようとする。ビームキャノンならば射程の範囲内のうえ、シールドも打ち抜けるはずだ。
照準のマーカーが揺れる。中央に合せようとする。焦りが募る。
メイリンは震える体を抑えながらも、なんとか照準を合わせようとする。ビームキャノンならば射程の範囲内のうえ、シールドも打ち抜けるはずだ。
照準のマーカーが揺れる。中央に合せようとする。焦りが募る。
「目標をセンターに……センターに……!合った!発射!!いっちゃえ!!」
2号機の両肩から高出力のビームが発射される。それは真っ直ぐジンに向かっていったが、ジンはギリギリのところで避け、足の一部が溶けただけだった。なおもまだ突っ込んでくる。
「当たらなかった!?武器は!?あとは、機関砲!?これ撃つしかないの!?」
メイリンは半ば狂乱しながら接近するジンに対し、右腕の機関砲を発射する。だがやけっぱちな撃ち方ではジンを捉えることはできない。逆にビームカービンによる攻撃を受けてしまう。
「きゃああ!」
メイリンが悲鳴を上げる。機体の頑丈さで何とかなるが、姿勢は崩れた。その瞬間、ジンの斬機刀が振り上げられているのに気がつく。
「あっ……」
死ぬ。そう思った瞬間だった。
「メイリン達にぃぃ!!」
ジンが真っ二つに分かれてしまったのだ。その先に、怒りの色のように赤くレンズが光る1号機の姿があった。メイリンは思わずその様子に唖然としてしまう。
そして1号機は2号機の腕を掴むと、すぐさまエポナに帰還していく。そして真っ二つに割れたジンは遅れた爆発を起こした。
1号機は2号機を連れたまま、カタパルトに入り、そのまま格納庫へと運んでいく。そして2号機の姿勢が崩れると、ルナマリアが1号機から飛び出し、2号機のコックピットハッチを開く。
「メイリン!大丈夫!?」
「お姉ちゃん……よ、よかったぁ……」
メイリンはコックピットの中でぐったりとしていたが、ルナマリアの姿を見ると、すぐにシートベルトをはずし、彼女に抱きつく。無重力の慣性でそのまま2号機から離れてしまうが、お構いなしだった。
「それはこっちのセリフよ!よかったぁ……。怪我はない?」
「うん……。でも、私なにもできなかった……」
「仕方ないわよ。メイリンは戦闘訓練なんて受けてないんだから……。いいのよ。それに艦を守れたじゃない」
「うん……」
「さ、着替えよう?」
ルナマリアの言葉に、メイリンは何度もうなづく。ルナマリアはヘルメットごしに彼女の頭を撫でてやる。そして、整備士に機体を任せると、そのままロッカールームへと向かった。
ロッカールームで制服に着替えると、すぐに艦内放送でブリッジに呼び出される。さすがに疲れきっているメイリンは向かえないということで、ルナマリアだけがブリッジへと向かっていった。
ブリッジにたどり着くと、まずナタルと整備士長の姿が見えた。ルナマリアは軽く会釈すると、ブリッジの中に入り、彼女らの輪の中に入る。
ふと、ナタルはメイリンがいないことに気がつき、それを訊ねかける。
「ルナマリア。メイリンは?」
「初めての戦闘ですよ?疲労が酷いので部屋で休ませています」
「そうか。まあしかたないな……。ルナマリア、君が聞いてくれればいい」
「了解です」
ルナマリアは思わず敬礼しようとした手を下げて、少し恥ずかしそうに笑みを浮かべる。それにつられてナタルも少し笑ったが、すぐに気を引き締めなおし、先ほどの戦闘の映像を見る。
「ジンか……。相手はザフトなのだろうか?」
「しかし、ザフトとて、民間船を襲うなんて迂闊な真似、しますかね?いまは講和条約が締結されているわけですし。こちらは呼びかけを行った。それなのに襲ってきた」
副官が首をかしげながら言う。それに続いて整備士長も口を開いた。
「MSもジンとは少し違うと思われます。ハイマニューバ型と呼ばれる方に近いですな。生産数も限られているはず。そんな機体が襲い掛かってくるのは、何か……こう」
「不自然?」
「はい」
「あの、艦長」
ナタルと整備士長の話に割ってはいるように、ルナマリアは手を上げて発言しようとする。全員の視線が一気に自分に向けられて、ルナマリアは少しだけ怯んでしまった。
「なんだ、ルナマリア」
「えっと。まず本社には?」
「ああ、連絡済だ。プラントに問い合わせてくれるそうだ。それよりも、実際に戦った君としては、どう感じた?」
「どう……って言われても」
「些細なことでもいい」
些細なこと、と言われても、とルナマリアは困った表情を浮かべる。あの時は必死で、感じられることといえば妹を殺そうとしたジンに対する怒りだけだった。
それでもなんとか感触などを思い出し、それを話すことにする。
「そうですね……。明らかにあれはただの訓練を受けただけとは思えません。その……ベテランって言うんですか?なんか実戦慣れしているというか。怖かったです。
それに、明らかに警告や試験ではなく、『殺し』に来ていましたから」
「殺意があったわけか。それにベテラン……な。ありがとう、君もほとんど始めての戦闘だったのだろう?それにしてはよく動かせていたが」
「無我夢中でしたから。よくわかってません。多分、1号機のおかげじゃないでしょうか?」
ルナマリアは自嘲気味に言った。ナタルは苦笑してみせる。それでも、彼女はあの戦闘でジン3機を落としたのだ。それも白兵戦用の装備だけでである。
「謙遜だな。まあいい。……今後あのようなことがあっては困るが、念のため戦闘体勢はとっておこう。整備士長」
「はい」
「1号機、2号機は当初より早いが実戦用に切り替えてくれ」
「了解いたしました。1号機のフォーミュラーパック、ならびに他パックの整備も急ぎます」
整備士長は、「忙しくなるぞ」と呟きながらそのままブリッジを去っていった。その後、副官が呆れたようにルナマリアに言った。
「しかし驚いたぞ、ルナマリア。いきなりリミッターをはずして、
「そうじゃなきゃメイリンは死んでました」
「しかし、デブリ地帯であの速度では、下手したら君まで死んでいたぞ。シミュレーションでも、君はデブリ戦闘は苦手だったはずだが」
「シミュレーションはシミュレーションですから」
ルナマリアは真剣な顔で言い返す。副官はすこし厳しい表情でそれに反論した。
ルナマリアはあの戦闘で、メイリンに襲い掛かったジンを撃破するために、1号機に取り付けられていたストライカーパック「フォーミュラー」のリミッターを解除し、設定されている最大出力以上のものを出して
引き返してきたのだ。下手をすればデブリに衝突してMSがバラバラになる、なんてことだってありえたのだ。副官はそれを心配し、そして責めていた。
しかし、それをナタルが割って入り、副官をたしなめた。
「結果よければすべてよし、だぞ。ルナマリアはよくやってくれた」
「……まあ、そうですね。すまなかった」
「いえ……。私こそ無茶をしてすみませんでした」
「さて、これからだ。今後もこの宙域でテストを行いたいところだが、先ほどのような乱入がないともいえない。近辺の調査を行ったほうが……」
「艦長、本社からの入電です」
ナタルが今後の方針を決めようとしたとき、ラティスからの通信がやってきた。モニターには見慣れた上司の姿が映りだされる。それに対し、ナタルは敬礼をした。
『ナタル君、ここは軍ではないのだ。そんな堅苦しい敬礼はやめたまえ』
「はっ、失礼いたしました」
『うむ……。先ほどの襲撃に関しては聞いた。災難だったな。こちらでもザフトに問い合わせてみたが、わからないと一点張りだった』
「そうですか……」
『もしかしたら本当に知らないのかもしれないし、そうではないかもしれない。それを追求することはこちらにはできん』
上司も悩ましい表情を浮かべる。彼自身も困っているようだ。髪のほとんどの白髪が、そのすべてを覆うのもそう遠くはないのかもしれない。
「それで、こちらはどうすればよろしいのでしょうか?テストを続行しますか?」
『そのことについてなんだが、ザフトから変な要請が来た』
「変な要請?」
ナタル達は首をかしげる。上司は少し頭を抑えながら続けて言った。
『ああ。デュランダル議長直々からの要請でな。新造艦ミネルバの修理を行って欲しいとのことだった』
「ミネルバ?……そういえば、今日アーモリーワンで新造艦の進水式だったはずですけど。その名前が確か、ミネルバ」
ルナマリアはテレビで見た情報を思い出し呟いてみる。上司も頷きながら言った。
『それが緊急で出撃になったそうだ。ザフトも謎の部隊に襲われ、一時は危機に晒されたそうだが……。その追撃のためにも早めに修理を終わらせたいらしい』
「なるほど、こちらには戦艦の修理の知識のあるメカニックもいますからね。しかし、よろしいのでしょうか?」
『責任は命令を下したものが取るものだ。君たちは従ってくれればいい」
「……はっ」
多少言葉に引っかかるものを感じたが、ナタルは言葉をつつしみ、そのまま命令を了承した。上司もその様子に満足そうにしながら、目線をルナマリアに移す。
「頼んだぞ。座標は今送る。さて……ルナマリア君」
「あ、はい!」
『よくぞ1号機と2号機、そしてエポナを守ってくれた。ありがとう』
「あ……いえ」
ルナマリアは少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら、頭を撫でる。その様子に、まるで娘を見ているかのような穏やかさで上司は話した。
『何かボーナスでも、といいたいところだが、この状況ではどうにもできん。引き続き1号機のパイロットとしてがんばってくれたまえ。メイリン君もがんばってくれと伝えてくれ』
「はい。ありがとうございます」
『では、諸君。健闘を祈る』
そういい残して、モニターが切れた。それと同時にナタルはため息をつく。やれやれ、なんとも面倒ごとに巻き込まれてしまったと。それはブリッジにいた全員が感じたことだった。ただ一人、ルナマリアだけを除いて。
(……ミネルバ……か)
もしかしたら、かつての仲間がその新造艦に乗っているかもしれない。そう考えると、少しだけ憂鬱だった。
以上になります。次回はまったり作りたいと思います。
乙!
まさかのナタルさん登場とは。
しかもプラントの会社。
AGE
乙
微妙に異なる世界でルナやシンがどうなるのか楽しみです。