新機動炭酸コーラサワーW 模擬戦6戦目

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1通常の名無しさんの3倍
このスレは我らがパトリック・コーラサワー他00の面々とWの皆さんの
日常を描いた心温まるスレです。

00が終わってもコーラとカティがゴールインしてもこのスレはまだ終わりません。

<<前スレ>>
新機動炭酸コーラサワーW 模擬戦5戦目
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1238488720/

<<過去スレ>>
新機動炭酸コーラサワーW 模擬戦4戦目
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1218545997/
新機動炭酸コーラサワーW 模擬戦3戦目
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1210763914/
新機動炭酸コーラサワーW 模擬戦2戦目
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1204543589/
コーラーサワー主人公でW作り直そうぜ
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1191923320/

<<まとめ>>
ttp://arte.wikiwiki.jp/
ここのクロス(ガンダム)の「00-W」にあります。
2通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 22:38:46 ID:???
主な登場人物

*プリベンターと、その関係者*
(日々、世界平和の為に戦ったり、戦わなかったりする)

パトリック・コーラサワー
 主人公。コードネームはプリベンター・バカ。
 プリベンターが誇る変態一号。
 何か行動を起こすたびに問題が発生するスペシャルバカ。
 元AEUの少尉らしいが退役した理由は不明。
 何が起きても生還率100%。
 今日もわが道を突き進む。

グラハム・エーカー
 コードネームはプリベンター・アホ。
 プリベンターの変態二号。
 独特の美意識を持ち、発せられる言葉はグラハム語と称される。
 ガンダムラブでプリベンターにきたらしいが詳細は不明。
 五飛の師匠(ガンプラの)

アラスカ野ジョシュア
 コードネームはプリベンター・マヌケ。
 プリベンターの変態三号。
 グラハムによってむりやり加入させられたかわいそうな人。
 あげくコーラさんによって呼称が「アラスカ野」になってしまった。
 すげえヘタレ。
 3馬鹿の中では意外とまとも。

ヒイロ・ユイ
 コードネームはプリベンター・ウイング。
 Wの主人公だがここでは影が薄い。
 MS(ミカンスーツ)の操縦から家事全般まで何でもこなす。
 リリーナの漫才がトラウマとなる。

デュオ・マックスウェル
 コードネームはプリベンター・デス。
 お調子者。
 立場上自然とつっこみ役になる(というか唯一の突っ込みキャラ)。
 喋る回数はコーラさんに次いで多い。

トロワ・バートン
 コードネームはプリベンター・ウエポン。
 口数は少ないがやるときはやる男。
 『しまっちゃうおじさん』を恐れる、妄想少年。
3通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 22:39:27 ID:???
カトル・ラバーバ・ウイナー
 コードネームはプリベンター・サンド。
 プリベンターの良心。
の筈だが意外と黒い。一度キレると誰も止められない。

張五飛
 コードネームはプリベンター・ドラゴン。
 得意技はコーラサワーいじり。
 強引すぎる手段で事件を解決しようとする。
グラハムの策略によってガンプラ作りにはまる。


サリィ・ポォ
 コードネームはプリベンター・ウォーター。
 プリベンターの現場部隊のまとめ役。
 コーラさんの暴走に頭を痛める毎日。

ヒルデ・シュバイカー
 コードネームはまだない。
 キレたら怖い。
 得意技はフライパン投げ。

レディ・アン
 コードネームはプリベンター・ゴールド。
 プリベンターのリーダー。
 本編にはあまり登場しないが、コーラさんやグラハムの加入を認めるある意味心のデッカイ人。

シーリン・バフティヤール
 コードネームはまだない。
 皮肉屋メガネ。
 レディ・アンの秘書みたいなことをしているらしい。

ビリー・カタギリ
みかんエンジンを発明した天才科学者。
喋りだすととまらない。
プリベンターに自身の開発した発明品を提供してくれる。
グラハムの一応友人。

マリナ・イスマイール
プリベンターのスポンサーその1。
この世界ではプチセレブ。
重度のショタコン。
20歳以上の男には容赦無くスタンガン攻撃を食らわせる。
4通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 22:40:08 ID:???
ドロシー・カタロニア
 プリベンターのスポンサーその2。
 自身の屋敷の庭にはイカしたセンスの像が沢山立ち並んでいる。
 本編と同じく、気分屋と見せかけて意外と色々考えているお嬢様。


リリーナ・ドーリアン
 外務次官。
 ドロシーとお笑いコンビ『リドリロ』を結成。
 夢はM●1グランプリ優勝。
 ヒイロの恋人。


*マイスター運送*
(『24時間何処でも何でも運びます』がモットーの民間企業)

刹那・F・セイエイ
 マイスター運送の配送係。
 無愛想。
 ハローキ●ィちゃんマニア。

アレルヤ・ハプティズム
 マイスター運送の配送係。
 客に愛想の悪い刹那をたしなめた。

ロックオン・ストラトス
 マイスター運送の配達係。
 事実上マイスター運送のまとめ役。
 問題児が多く気苦労が絶えない。
    
ティエリア・アーデ
 マイスター運送の配送係。
 愛銃(水鉄砲)『ヴァーチェ』を携帯している。
 絶望するのが日課。

リヒテンダール・ツエーリ
 マイスター運送の配送係。
 陽気な性格。
 同僚のクリスティナ・シエラに片思い中。
 デュオと仲が良い。
   
スメラギ・李・ノリエガ
 ビリーの同窓(ビリーには九条君と呼ばれている)。
 一升瓶を持った酔っ払い。
5通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 22:41:03 ID:???
*人類革新重工*
(『揺り籠から墓場まで』が社訓。ここ数年、日の出の勢いで伸長を遂げている気鋭の企業)

セルゲイ・スミルノフ
 人類革新重工の商品開発部部長。
 心の俳句を詠む。
 俳句を詠む前は必ずブツブツと呟く。

ソーマ・ピーリス
 セルゲイの秘書。
 現在「バケラッタ」という言葉にこだわっている。
 コーラサワーと奇妙な友情が芽生える。

ミン
 人類革新重工の商品開発部係長。
 中間管理職。
 このスレでは数少ない普通の人。

*その他、頻繁に登場する人々*

カティ・マネキン
 元AEU大佐。
 現在は歌手デビューし、世界の歌姫として各地を飛び回っている。
 なんだかんだでコーラサワーの事が好き(?)

アリー・アル・サーシェス
 別名ゲイリー・ビアッジ、またはひろし。
 PMCのちょっかいかけ担当。
 世界が平和になって仕事がなくなったのでプリベンターを逆恨みしているが、  いつもやられている。
 武器はソッコ君もびっくりの異臭靴下と健康にいいアグリッサ。

トリニティズ
 トリニティ運送に勤める三人兄妹。
 ヨハンは腹黒、ミハエルは客にけんかをうる問題児、ネーナは天然。

コーラサワーの女たち
 何人いるかわからないコーラさんの愛人。
 コーラさんいわく、プリベンターに入ってからはそっち方面は自重しているらしい。

看護婦
 新人ながらコーラ番にされてしまったかわいそうなナース。
 コーラさんが入院するたびにさんざんな目にあっている。
6通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 22:41:47 ID:???
ラッセ・アイオン
 マイスター運送の配送係。
 このスレにおいては完全なるノンケ。
 ホモネタを振られると本気で泣く。

マリーメイア・クシュリナーダ(バートン)
 レディ・アンと共に暮らす幼女。
 年齢の割りに大人びておりクールな性格。
 コーラサワーに懐いている。

ミレイナ・ヴァスティ
 プリベンターを離れたシーリンの後任としてやってきた。
 重度のラノベマニアで、コーラサワーの天敵2号。

アンドレイ・スミルノフ
 セルゲイの部下にして実子。
 優秀な父親が重荷らしい。
 元OZだが、崩壊前に上手く離脱出来た様子。
 コーラサワーに「ドレイ」とあだ名をつけられる。

リボンズ・アルマーク
 世界的なアイドルグループ「イノベイター」のリーダー。
 なんかアリーを使っていらんことを考えているらしい。
 相当裏の世界に通じている様子。
 ちなみにマネージャーはあのアレハン様らしい。
7通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 18:53:32 ID:???
>>1GJ
キャラ紹介もかなり前のになってきたな、と思ったので、
ごめん、即死回避もこめて主要キャラだけ現状にあわせようとやってみた

<プリベンター>
 政府直結の組織。
 本部は政府の首都(ブリュッセル?)の議事堂内。
 トップはレディ・アン、現場リーダーはサリィ・ポォ。
 いまだ不安定な統一政府の平和を、裏から守る隠密同心。
 死なないから屍拾う者なし。


パトリック・コーラサワー
 主人公。
 だいたい33、34歳。
 コードネームはプリベンター・バカ。(もっとも、コードネームはほとんど使用されない)
 MS(ミカンスーツのこと。以下この説明は略)は専用ネーブルバレンシア→シークヮサー。
 プリベンターでもマイペースのスペシャルっぷりは相変わらずで、メンバーの頭痛の種。
 ただし、時としてその無茶苦茶な行動力・発想力が事態の打開を促すことがある。
 二部から三部にかけて、ついに晴れてカティ・マネキンと結婚、現在幸せ真っ盛り。
 とにかく動くたびに問題がおこる。

グラハム・エーカー
 別名ミスター・ブシドー。
 だいたい32、33歳。
 コードネームはプリベンター・アホ。
 MSは専用ネーブルバレンシア→カラタチ。
 ガンダム大好きが嵩じて不意打ちでプリベンターにやってきた。
 日本カブレで、意味も無く仮面を被ってブシドー状態になったりならなかったり。
 ビリー・カタギリが製作中のカラタチの完成が待ち切れないようで、やっぱり我慢弱い男。
 趣味は修行。

ジョシュア・エドワーズ
 別名アラスカ野。
 アニメでは一期で早々に脱落しているので、年齢は一期当時のまま。
 コードネームはプリベンター・マヌケ。
 MSは専用ネーブルバレンシア→紅鮭。
 グラハムがプリベンターに入る時に彼によってムリヤリ引き込まれてしまった。
 三巨頭の中では比較的まともだが、それだけにコーラサワーやグラハムのオモチャと化す。
 好物はサーモン。
 あとものすごいヘタレ。
8通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 18:54:36 ID:???
ヒイロ・ユイ
 年齢はおそらくEWの直後。(他のWキャラも同じか?)
 コードネームはプリベンター・ウイング。
 MSは専用ネーブルバレンシア→タンゼロ。
 もともと口数が少ないキャラクターなので、あんまりセリフがない。
 ただ、ガンダムパイロットの中では張五飛と並ぶ武断派。
 結構ぶっとんだこともするほうで、他のガンダムパイロットをプリベンターに集める時、かなり無茶な方法を使っていた。
 リリーナとの関係は相変わらずのそのそといった進展具合の様子。

デュオ・マックスウェル
 コードネームはプリベンター・デス。
 MSは専用ネーブルバレンシア→マンダリン。
 ガンダムパイロットの中で一番陽気で面倒見がいい性格なのが運の尽き、なんだかんだでコーラサワーのお守役に。
 会話も多く、おそらくこのスレの中でコーラサワーの次にしゃべっている回数が多いのは彼のはず。
 もうスレの過半がコーラサワーのボケと彼のツッコミでなっている漫才といっても過言ではない。
 気の良い常識人は損をする、という天然色の見本。

張五飛
 コードネームはプリベンター・ドラゴン。
 MSは専用ネーブルバレンシア→バンペイユ。
 デュオのツッコミが言葉ならば、彼のツッコミは拳。
 必殺技は人間ミサイルで、事件の解決手段としてコーラサワーをぶん投げることもしばしば。
 コーラサワーがボケの大暴走をかました時、最後に黙らせるのは彼の武術かヒルデのフライパンと相場が決まっている。
 グラハムによってガンプラ作りに目覚めたらしい。

カトル・ラバーバ・ウィナー
 コードネームはプリベンター・サンド。
 MSは専用ネーブルバレンシア→シトロン。
 いわゆるボンボンで、スレではウィナー家の副当主もやっているいそがしい人。
 家のほうからお茶っ葉やおかしをいろいろ持ってきているらしい。
 コーラサワーとからむこともあるが、あまり会話ははずまない様子。
 あと、本気でキレると一番こわい。

トロワ・バートン
 コードネームはプリベンター・ウエポン。
 MSは専用ネーブルバレンシア→タンジェリン。
 無口な男二号、であるからして自然とセリフは少ない。
 それだけに時折見せる強硬な姿勢とセンスの域を超えた前髪が彼のチャームポイントか。
 コーラサワーとはほとんどと言っていいほどからまない。
 なお、案外こわがり?
9通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 18:55:50 ID:???
サリィ・ポォ
 年齢は20代後半?
 コードネームはプリベンター・ウォーター。
 現場でコーラサワーやらガンダムパイロットやらを指揮する立場にある人。
 まじめで優秀だが、裏を返せばコーラサワーにふりまわされまくりともいえる。
 最近目じりにシワが増えてきたらしい。
 あだ名はオデコ娘一号。

ヒルデ・シュバイカー
 コードネームはない。
 デュオがプリベンターに加入した時、一緒にくっついてきた。
 ある意味、コーラサワーの日常における最大の天敵。
 必殺技はフライパンアタック。
 あだ名はオデコ娘二号。
 
ミレイナ・ヴァスティ
 年齢は00二期終了時?
 コードネームはない。
 反省府組織カタロンにうつったシーリンの後釜として、レディ・アンの秘書になった少女。
 ドがつくオタク。
 別の意味でコーラサワーの日常の天敵。
 あだ名はオデコ娘三号。

レディ・アン
 コードネームはプリベンター・ゴールド。
 プリベンターの責任者。
 本部とは別にある執務室にいるか、または出張しており、いそがしいようす。
 なので何とスレ初期からいるキャラにもかかわらず、まだセリフがない。
 コーラサワーやグラハムの加入を認めちゃう、ある意味心がデッカイ人。

ビリー・カタギリ
 正式なメンバーではないが、MSをはじめとしてプリベンターの活動に大きく貢献している人。
 諸科学に強く、ミカンの皮を燃料にして動くエコドライブ「ミカンエンジン」を開発した。
 その頭脳はノーベル賞クラスだが、とにかくうんちくを語りはじめると止まらない。
 のほほんとした人柄で、グラハムとは親友。


ガンクロ倉庫のまとめを読み返しつつやってみた
ウザかったらすまない、まちがいがあったらもうしわけない
10通常の名無しさんの3倍:2010/01/27(水) 11:14:26 ID:???
hosyu
hosyu
11通常の名無しさんの3倍:2010/01/28(木) 00:58:04 ID:???
即死回避
12通常の名無しさんの3倍:2010/01/28(木) 01:40:00 ID:???
>>1乙〜
13通常の名無しさんの3倍:2010/01/28(木) 02:12:44 ID:???
>>1&土曜氏乙
14通常の名無しさんの3倍:2010/01/28(木) 16:43:42 ID:???
即死判定はレス何番くらいまで?
とりあえずそこまで進めて生存確定させたほうがいい?
15通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 09:59:13 ID:???
ほしゆ
16通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 12:32:19 ID:???
今のところ生存を確認できてる職人さんは土曜日氏と不定期氏と模倣氏か……
名無しでもネタを投下しちゃってくれていいのよ
17通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 13:29:15 ID:???
なにしろほぼ週一で投下があるスレだからなw
18通常の名無しさんの3倍:2010/01/30(土) 02:34:44 ID:???
(大体)毎週続きが投下されるスレは貴重だ
土曜日さんは実にエレガントイヤッフだと思う
19通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 02:17:05 ID:???
星湯
20通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 08:45:33 ID:???
最近規制多いなあ
21通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 13:16:10 ID:???
ほし
22名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/01/31(日) 23:06:07 ID:???
 ミレイナ・ヴァスティ。
プリベンターのリーダーであるレディ・アンの秘書を務める少女。
歳はまだ14、世間一般から見れば尻が青いどころか、社会人としてすら認められない年齢である。
が、ところがどっこいしょ。
彼女、相当の才媛だったりする。
各種技能を持ち、前任のシーリン・バフティヤールの後を継いで、まったくの不足無く大役をこなしている。
「ふふーん、今日もよく働いたですぅ」
 レディ・アンは世界中を飛び回っている激務であるからして、当然その秘書もかなり忙しい。
だが、山のように積み上げられている実務も、彼女の力でかなり軽減されている。
人は見かけによらない、その典型と言ってもいいかもしれない。
「さーて、帰ったら『とある六法全書の誤字探し』の続きを読むですぅ」
 しかし、歳相応の趣味ももちろん持っている。
それは、ラノベ、マンガ、アニメ等が大好きというところ。
つまりは、重度のオタクなのである。
現代の輝けるオタクの一番星、それが彼女、ミレイナ・ヴァスティなのだ。
「と、その前に本部に寄ってお茶でも飲んで行くですぅ」
 ですです語尾がどーにかなんないかとも思うわけだが、ま、これも彼女の個性なのであろう。
なお、彼女の両親、イアンとリンダはマイスター運送の重役である。
ミレイナがどうしてシーリンの後釜になったかは、まあ簡単な話、レディ・アンとヴァスティ夫妻が知り合いだったから。
 レディ・アンの人脈は、大海のように広い。
ついでに言っとくと、前任のシーリンもそうだし、マイスター運送の現トップスメラギ・李・ノリエガ、
コーラサワーの嫁のカティ・マネキン、グラハムの親友で在野の天才ビリー・カタギリ、彼の師匠のレイフ・エイフマン、
この辺りも彼女の知人であるからして、その気になれば大同団結を組んで世界を制覇することもあながち不可能ではあるまい。
多分、おそらく。
「おーおー、相変わらず騒々しいところですぅ」
 ミレイナはプリベンター本部のドアを開けて、中へと入った。
「はーいどーも、ミレイナちゃんですぅ」
 彼女が口にした通り、今日も本部は騒がしかった。
主に、一人の男を中心にして。

 ◆ ◆ ◆
23名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/01/31(日) 23:08:40 ID:???
 プリベンター本部が静かな日は少ない。
パトリック・コーラサワーが休みな日を除けば、大抵うるさい。
彼がハネムーンに行っている間は、実に穏やかな日々であった(そうでもないかもしれんが、武士面さんとかいるので)。
「今日も賑やかですぅ。で、いったい何の話なんですかあ?」
「あらミレイナ、いらっしゃい」
「はーい、ヒルデさん、こんにちはーですぅ」
 ミレイナはヒルデ・シュバイカーと仲が良い。
同性であり、年齢も近いことから、自然と関係が育まれていった。
まあ自然っつってもある意味ミレイナの趣味の押し売りだったわけだが、まあそれは置いておくべきであろう。
ちなみに、ヒルデは幸いにもオタク光線に感化されなかった。
その辺りは一歩退きつつも良好な関係を築いていくのが、オトナの付き合い方というものであろう。
まあヒルデはミレイナと一歳程しか違わない少女ではあるが。
「見ての通りよ」
「はあ、またまたスペシャルさんですねえ」
「またまたまたアイツよ」
 ミレイナはコーラサワーのことを『スペシャルさん』と呼ぶ。
なかなか色々な意味が含まれていて、実に良い呼称である。
グラハム・エーカーについては素面状態時は普通に『エーカーさん』、お面状態時は『ブシドーさん』と呼び分けているのだが、
その辺りはミレイナ、結構天然で皮肉家の素質があるのかもしれない。
「で、どーいったことからまたこんなに揉めまくりやがってるんですぅ?」
「ま、聞いてみたら? やり取りを」
「はいはーい」
 ヒルデの言葉に、ミレイナは頷くと、ひょいと喧噪の中心地である休憩室を覗いた。
中では、何時もの如く何時ものように、コーラサワーとデュオ・マックスウェル、そしてガンダムパイロットたちが激論を交わしているのだった。
漫才という名の激論を。

「簡単な話だぜ、ズバッとやってバシッと撃ってドギャッと片付ける! これで解決だ」
「擬音ばっかり使うな、説明能力が皆無かお前は」
「デュオ、つっこむだけ無駄だ」
 コーラサワー達が何を話しているのかというと、
くいっと纏めて簡単に言ってしまえば、『籠城したテロリストを如何にとっ捕まえるか』ということになる。
「仮にもAEU時代に一つの部隊の指揮を取ってた人間がこれでいいのかねえ」
「今更な話ですね、結構」
 休憩室にいるのは、コーラサワーとデュオ、そしてカトル・ラバーバ・ウィナー、ヒイロ・ユイといった面々。
張五飛とトロワ・バートンはサリィ・ポォの御供で只今出張中、
グラハム・ブシドー・エーカーさんは毎度の如くビリー・カタギリの研究所で我慢弱い性を全開にしていて不在である。
哀れなアラスカ野・サーモンことジョシュア・エドワーズも無理矢理にグラハムに同行させられており、
うん、何と言うか、グラハムさんちゃんと仕事しろ、と。
「何だか楽しそうな話ですぅ、私も混ぜてもらって構いませんかあ?」
「ああミレイナか、別に楽しくも何ともないぜ?」
「余計な刺激さえしなければ、いいですよ」
「……しそうだがな」
 不意のミレイナの参戦に、ちょっとばかり眉を顰めるデュオたち三人。
今までコーラサワーにこの娘が絡んで、落ち着いた結末を迎えたことがあまり、いやほとんど無いのだ。
24名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/01/31(日) 23:12:20 ID:???
「でまあ、かくかくのしかじかというわけだ」
「ふーん、そーなんですかあ。うーん、ミレイナはちょっと専門外ですぅ」
 ミレイナの本領はデスクワーク(とオタクワーク)にあり、切った張ったはまるっきりの対象の外。
一応護身術的にジュードーのイロハはマスターしているが、大の男が一人ならともかく、集団でかかってきたらもうアウト、といった程度だ。
まあ彼女の体格からすれば、それでも十分過ぎるっちゃ十分なのだが。
「立て篭もりなんざあ、脅せば一発だ。ドカンと撃ち込んでだな」
「人質がいたらどーすんだよ、巻き添えだぞ」
「捕まる方が悪い」
「仮にもプリベンターの一員として言うべき台詞じゃねーぞ、それ」
 とまあ、ミレイナが来るまでコーラサワーをはじめとする面々は、こーいったやり取りを繰り返していたわけである。
コーラサワーの作戦はぶっちゃけて言うと、大味の極端。
緻密さの欠片も無く、やはりどこまでも現場で駒として使われてナンボな人材だと謂わざるを得ないわけで、
今更ながら、デュオ達は彼と同僚であることの不幸を噛み締めまくっている次第。
「流石はパーソナルジェットで天空に突撃をしただけのことはあるな」
「褒めるなよ」
「褒めてねーよ」
 これで軍人時代から今まで、大きな怪我を戦場で負ったことがないというのだから、
余程強運の女神様に好かれているか、不真面目な死神に取り憑かれているかのどっちかとしか言い様が無い。
プリベンターに来てからの怪我も、無茶故の自爆かそれともヒルデ、五飛辺りのツッコミの結果が多く、敵の攻撃の因るものは皆無と言っていい。
「そうは言うけどお前ら、ちゃんと色々解決してきてるだろ? この天才・コーラサワーの手腕で」
「偶然が偶然を呼んでいるだけだけどな」
「ま、まあ、偶然を呼びこむのも力かもしれませんけどね」
「それを最初からアテにして戦いたくない。少なくとも俺は」
 密漁事件、アザディスタン事件を終息に導いたのは間違いなくコーラサワーである。
それは、デュオやヒイロも認めるてはいる。
だがやはりそれは、説得力の無い説得で犯人を無理矢理に自首に追い込むようなもんで、
個人プレーが生み出した運命のラッキーな一滴に過ぎないのだ。
ある意味、奇跡の範疇と言えるだろう。
「だいたいよ、相手が引き籠ってるならよ、表に引きずり出しゃいいんだろ?」
「それが一番難しいんだよ」
「簡単じゃねーか、空調を操作して室内にコショウをぶちまけるとか」
「はあ?」
「ガラスを引っかく音をスピーカーに流すとか」
「はああ?」
「美味い食いモンを表に並べておびき寄せるとか」
「わあ、スペシャルさんの作戦、まるで子供向けのアニメみたいですぅ」
「ああ、大人の殻を被った子供の脳味噌から出た発想だからな」
「あ、でも子供に失礼かもしれないですぅ、今時のちっちゃい子、結構賢い子が多いですぅ」
「そーいや以前、幼稚園児に馬鹿にされてたことがあったな……」
 ミレイナとデュオ、言いたい放題。
二人の年齢をプラス二十程すればコーラサワーの歳なのだが、普通ここまで言われまくる三十代半ばもおるまい。
25名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/01/31(日) 23:20:19 ID:???
「おおそうだ、籠っている建物を建機でぶっ壊して追い出す、ってのは」
「コーラサワーさん、もう犯人も人質の命も完全に無視してますよ」
「それは違うぜ坊っちゃん、犯人に人権は無い! 人質もヤバいと思ったら逃げ出す努力をしろってんだ、待っている方が悪い!」
「流石にそれ、冗談ですよね?」
「いや、本気だろこれは」
 コーラサワー流のやり方をコーラサワー流で説明される。
これでは理解しろという方がもうどだい無理な話である。
「スペシャルさん、前から結構思ってましたけど、頭の中が鮒寿司とシュールストレミングとクリスマスプティングとブート・ジョロキアがミックスですぅ」
「どーいう意味だよ、オデコ娘三号」
「深く考えないで良いですぅ、半分勢いで出た言葉ですぅ」
「ふうん、そーなのか」
「……これで納得しちゃう辺り、スペシャルさんは根は良い人なんですかねえ」
「極悪人じゃないのは確かだな」
「個性的、ですよね」
「ああ、世界に誰一人とて並ぶ者がないくらいのな」
 デュオ達は肩をすくめた。
そして、溜め息をついた。
コーラサワーのスペシャル過ぎるプランに対して出来るのは、それだけしかなかった。
いや、それだけじゃ本当は駄目なのではあるが。
「まあ、味方は全員無事、人質も無事、犯人逮捕ならどーいう過程だってオッケーですぅ」
「ミレイナ……それだとアイツと同じってことになるぞ」
「いや、無論個人プレーや偶然に頼らない過程、ってことですぅ。詳しい内容はサリィさんにお任せ、ということで」
「サリィの小ジワと白髪が増えるってことか、結局」
 デュオはもう一度、溜め息をついた。
そして内心で決めた。
サリィは外出中だが、この論争(?)は報告しないでおこう。
現場でならもうしょうがないが、本部での出来事でサリィに余計な心労をかけてはいけない。
そう、小ジワと白髪の増加を促進させるような……と。





 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の度は続く―――



 前スレ最後容量ギリギリにしてしまってすいませんでしたコンバンハ。
誤字脱字がありましたらごめんなさいサヨウナラ。
26通常の名無しさんの3倍:2010/02/01(月) 19:38:23 ID:???
土曜日氏乙!
ミレイナwwwww
27通常の名無しさんの3倍:2010/02/02(火) 09:11:57 ID:???
保管の人も乙

しかし携帯また規制かよ、これでPCも規制かかったら2ch全滅じゃねーのか
28通常の名無しさんの3倍:2010/02/03(水) 16:25:22 ID:???
hosyu
29通常の名無しさんの3倍:2010/02/04(木) 17:41:00 ID:???
まとめの話数を見ると、よくここまで続いたものだと思う
30通常の名無しさんの3倍:2010/02/04(木) 22:55:11 ID:???
土曜日さん乙です!!

>>27
俺はOCNだが、今日になってやっと規制解除されたよ…
31通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 17:24:03 ID:???
ケータイとパソがダブル規制くらったらどうしようもないからなー
巻き込まれないことを祈るしかできないし

助けてコーラさん!
32通常の名無しさんの3倍:2010/02/07(日) 22:28:12 ID:???
保守
33名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/07(日) 23:19:22 ID:???
 ビリー・カタギリは天才。
これは、マゴウカタナキ事実である。
ミカンの皮を燃料にして動くエコドライブ「ミカンエンジン」を開発し、
さらにはそれを積んだMS(ミカンスーツ)まで自前で作ってしまうのだから、もう天才と言うっきゃない。
例えセンスがちょっと微妙であろうとも何程のことがあろうか。
優れた才能の前に、いささかのセンスの欠乏など、砂の一粒レベルのマイナス点でしかないのだ。
多分。
「しかし、ようやく完成か」
「えらく時間がかかったもんだな」
「まあしょうがないですよ、何しろ博士一人でやっているわけですから」
「しかもアレだしな、ずーっと我慢弱い男にまとわりつかれての仕事だからな」
「今日も行ってるそうだ、研究所に」
「……最早それが仕事だな」
 プリベンターの本部は、今日は弾んでいた。
そう、とうとう新型MS(ミカンスーツ)の完成が、ようやく近づいたのであった。


 プリベンターのメンバーが使用していたMS(ミカンスーツ)、ネーブルバレンシアは、
アザディスタンでのアリー・アル・サーシェスとの戦闘で、ボロボロになってしまった。
強大な敵に抗する力を持つ必要性に迫られたプリベンターは、ビリー・カタギリにそれぞれの専用機の製作を依頼し、
そしてようやく長い開発と調整の期間が、今終わろうとしているところだった。
新型は外見とネーミングセンスに少し注文をつけたくなる出来だが、
まあそれは十分に我慢の許容範囲であるからして、メンバーに文句は無かった。
と言うか、ほぼ無償で戦力を提供してくれるのだから、ありがたい以上のナニモノでもないわけで。
「だが、またガンダムに乗ることになるとはなあ」
「ガンダムじゃないけどな、ガンダムじゃ」
「ああ、確かに」
「それでいい。ナタクは、ガンダムは役目を終えた。だから、こだわる必要もないはずだ」
 ガンダムというMS(これはモビルスーツ)に、ヒイロ・ユイをはじめ、ガンダムパイロットたちは愛着を持っていた。
今、ガンダムはもうこの世に無い。
張五飛が語った通り、彼らの愛機はその役目を終え、永遠の眠りについたのだ。
今更その名前を引っ張り出しても、それぞれの相棒への冒涜にしかならないだろう。
新たな剣には、新たな名前と新たな役割を。
それでいいはずだった。
「イヤッホー、とうとうシークヮサーが出来あがるわけだな!」
 で、もちろんこの男、パトリック・コーラサワーもはしゃいでいた。
「お、ちゃんと発音出来てるじゃないか」
「当たり前だぜ! 夫婦水入らずで特訓したからな、発音の!」
「……何やってんだか」
34名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/07(日) 23:24:52 ID:???
 新型機の名称は、パトリック・コーラサワー機が『シークヮサー』。
AEU出身のコーラサワーに合うように、イナクトのデータが使われている。
近遠両面に対応出来る、万能型と言えるMS(ミカンスーツ)である。
 我慢弱い武士ことグラハム・エーカー機が『カラタチ』。
ユニオン時代からグラハムの嗜好を知り尽くしているだけに、グラハムがぞっこん惚れ込む程の出来栄えになっている。
近接戦闘に特化してあり、集団戦よりもタイマン勝負に向いている機体と言えるだろう。
 アラスカ野ことジョシュア・エドワーズ機は『紅鮭』。
ヘタレ根性丸出し、ではない、後方からのサポートを役割として考えられた機体である。
両腕に装備されたシールド、そして狙撃型の強化トリモチガンが標準装備となっている。
 ヒイロ・ユイ機は『タンゼロ』。
剥かれたミカンの皮のような四枚羽根が特徴で、スピードに長け、長距離を駆けての先制、一撃離脱をスタイルとするMS(ミカンスーツ)である。
近距離戦も十分に対応可能で、トータルバランスで言えば最も優れているかもしれない。
 デュオ・マックスウェル機は『マンダリン』。
瞬間的な機動性が特徴であり、さらには電波妨害装置により、隠密性も高い機体である。
特殊装甲の『オレンジクローク』で防御力もあり、後方撹乱、単独潜入に向いていると言える。
 張五飛機は『バンペイユ』。
カラタチ以上に接近戦を重視されたMS(ミカンスーツ)で、風貌もどことなく猛々しい龍(と、ミカン)を思わせる。
ちなみに、漢字で書けば『晩白柚』となる。
 カトル・ラバーバ・ウィナー機は『シトロン』。
高い防御力と索敵能力を持ち、言わば指揮官機のような趣きになっている。
サリィ・ポォの下でサブリーダー的な役割を務めるカトルには相応しいMS(ミカンスーツ)であろう。
 トロワ・バートン機は『タンジェリン』。
これは完全に中〜遠距離専用機で、複数のトリモチガン、粘着ミサイル、捕獲ネットを装備しており、
多数を相手にする時に相当の力を発揮することが出来る仕上がりとなっている。
「これで群がる敵どもをギッタンギッタンになぎ倒していけるぜ!」
「ギッタンギッタンになぎ倒されなきゃいいけどな」
「前に立ちふさがる馬鹿どもを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」
「言っとくけど、あくまで俺達のMS(ミカンスーツ)は相手を取り押さえる為のものだからな? 破壊する為のものじゃないぞ」
「つまんねーこと言うんだな、みつあみおさげ」
「プリベンターを何だと思ってんだよ、お前」
 そう、プリベンターは隠密同心的な組織とは言えど、相手を斬ってはいお終い、が出来ない。
裏に潜む無法の者どもを白日の下に叩き出し、法の裁きを受けさせるのが彼らの仕事なのだ。
まあ、現状のミカンエンジンの出力では、どう足掻いてもバスターライフル等の重火器は積めやしないのだが。
「さて完成と決まれば、あとはあのヒョロヒョロ赤鬼をぶち倒すだけだ」
「まだ出てきてないだろ」
「そのうち出てくる」
「……まあ、そうかもしれんが」
 コーラサワーが言うところのヒョロヒョロ赤鬼、つまりソンナコト・アルケーは、アリー・アル・サーシェスの乗機である。
分離球体式武器のハッサクを操り、アザディスタンではプリベンターを壊滅寸前にまで追い込んだ強敵だ。
「結局、カタギリ博士の研究所からデータを盗んだってことになるんですよね」
「それ以外の可能性がないからな」
 アリーがソンナコト・アルケーを持つに至った経緯は、未だ闇の中。
だが、ミカンエンジンを積んでいる以上、ビリー・カタギリの研究所のPCをハッキングしたとしか考えられない。
「奴一人の仕業なのか、それとも」
「黒幕がいるのか……」
 プリベンターの現場リーダーであるサリィ・ポォは、黒幕がいる説に現在傾いている。
そして、それはガンダムパイロット達も同様である。
アリーに援助している裏のスポンサーがいる、と考えた方が自然だからだ。
35名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/07(日) 23:27:05 ID:???
「まあ、奴をとっ捕まえなきゃ始まらないわけだ」
「ふん、いずれ首根っこを押さえ、芋づる式に関係を洗っていってやる」
 プリベンターに敗北は許されない。
負けはすなわち、闇の勢力に対する手段を表の世界が失うということである。
統一政府の、人類の平和を守るためには、必ず勝ち続けなければいけないのだ。
「まー見てろって、このスペシャルなエース様、パトリック・コーラサワーがまた奴に勝ってみせるからよ!」
「野球殺法は、もう通じんと思うが」
「なぁに、ならば今度はサッカー戦法だ」
「普通に戦えないのかよ、お前は」
 アザディスタンでは、コーラサワーのバッティング攻撃で逆転一発、アリーを退けた。
だがアリーも戦闘にかけてはプロ中のプロだけに、同じ轍を踏む可能性は低い。
パワーアップしたMS(ミカンスーツ)で、プリベンター一丸となってアリーとソンナコト・アルケーを退治しなければならない。
「そう言えば、カタギリ博士が言ってたぞ。シークヮサーだけスペアパーツを多めに作ってある、って」
「どーいう意味だそりゃ」
「決まってるだろ、一番よく壊すからだよ、間違いなく」
「何だと―!? ナメやがって、あのポニテ博士ー!」
「正しい判断ですね、きっと」
「ぼっちゃんまでそんなこと言うのかよ!」
「破損第一号は、賭けをしなくても明白だな」
「なんじゃーそりゃあ!」
 新型の完成を控え、意気の上がるプリベンターなのであった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの旅は続く―――




 コンバンハ。
規制巻き込まれが怖いですサヨウナラ。
36通常の名無しさんの3倍:2010/02/07(日) 23:42:55 ID:???
土曜日塩津

>夫婦水入らずで特訓したからな、発音の!
なんか女教師と不良生徒みたいな夫婦だ
37通常の名無しさんの3倍:2010/02/08(月) 10:26:19 ID:???
この物語はどうやったら終わりになるのか
まったく想像がつかんゴクリ
38通常の名無しさんの3倍:2010/02/08(月) 22:27:48 ID:???
土曜日さん乙

>規制巻き込まれが怖いです
確かに、最近規制が多いですからねえ…
39通常の名無しさんの3倍:2010/02/10(水) 22:40:47 ID:???
保守
40通常の名無しさんの3倍:2010/02/11(木) 10:35:56 ID:???
映画は九月らしいね
41通常の名無しさんの3倍:2010/02/12(金) 22:59:12 ID:???
>>40
そうなのか、楽しみだなあ
42通常の名無しさんの3倍:2010/02/14(日) 20:21:46 ID:???
>>40
映画でもコーラは不死身で居られるかなあ
43通常の名無しさんの3倍:2010/02/14(日) 20:39:51 ID:???
>>42
脚本の人曰く「彼は永遠に彼のまま」なので、不死身は変わってないんじゃね
44名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/14(日) 21:53:27 ID:???
 二月十四日。
独り者には辛い日である。
チョコなんざ欲しくねーや、食いたければ普通に店で買うからいいもんねふんふーん。
……などと強がっているうちは、永遠に意中の人からは貰えまい。
悔しいことだが。
 まあ現在の日本ではイベント化しているが、詳しい由来等はネットで調べればすぐわかる。
なので、ここでは特に説明はすまい。
つうか、行数が稼げるけど、書いてて虚しくなるし。
物凄く。

「はい、あげる!」
「……? あ、その、ええと、これは?」
「……今日、何の日だと思ってるの?」
「はい、ええと、その、二月十四日で、セントバレンタインデーだね」
「なら、そういうことじゃない」
 統一政府の首府の、とある公園のさらにとあるベンチ。
天から注ぐ陽光に草花の香りが優しく乗り、冬の終わりが徐々に感じられるこの日、
一組のアッツアツやぞなカップルが、バレンタインデーという祝祭を存分に楽しもうとしていた。
「何でそこで戸惑うのよ、沙慈」
「いやあ、何でだろうね。はは、ははは」
「だいたい、付き合い始めてから毎年バレンタインにはチョコをあげてるのに」
「そうだね、うん。ごめんね、ルイス」
 沙慈・クロスロードと、ルイス・ハレヴィ。
沙慈はJNNTVの報道アナウンサー、絹江・クロスロードの弟で、現在大学で宇宙工学を専攻している学生である。
ルイス・ハレヴィは富豪ハレヴィ家の一人娘で、沙慈と同じ大学に通っている。
沙慈と絹江がまだ東京で暮らしていた頃、留学生としてルイスが沙慈と同じハイスクールに転入してきて、それ以来の付き合いになる。
統一政府の誕生、絹江のJNN(ちなみに、ジェットニュースネットワークである。ジャパンニュースネットワークではない)本社への異動、
ハレヴィ家の首府への引っ越しなどが重なり、無事今日までその愛を育み続けているという次第である。
「はっくしゅん!」
「大丈夫? まだ寒いんだから、コートは必要だよ」
「わかってるよぅ。でも新しく買ったこの服を、沙慈に早く見せたくて」
「いや、その、嬉しいんだけど、風邪をひいたらまずいよ」
 ふわりと一陣の風が舞い、二人が座っているベンチを包む。
すっかり雰囲気が春色な二人だが、積極的なルイスに振り回される沙慈、という構図は未だに変わらず、
男女の仲というより、男の子と女の子の仲、といった感じが強い。
沙慈は「まだ僕も彼女も若いんだから、ゆっくり進めばいいや」と考えている節があり、
ルイスがじれったいモードに入って我儘が加速してしまうことも度々ある。
45名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/14(日) 21:57:39 ID:???
「早速食べてくれるかな」
「え、ここで?」
「もちろん」
「うーん」
「何よう、問題でもあるの?」
「い、いや、もったいないかなーって思って」
 まあ何にせよ、二人なりの恋愛の形であるとは言えるだろう。
どちらかが駆け足ではいけないのだ、こういうのは。
二人三脚でペースを互いに合わせることで、愛という樹木は枝を成長させていくのだから。
「わざわざ手作りでこしらえた身としては、早く食べて欲しいんだけどなー」
「……うん、そうだね。じゃあ、いただくよ」
「ほんと?」
「こんなことで嘘言ってもしょうがないじゃないか」
 両親はすでに他界してしまっているが、姉と二人暮らしで生活に問題はなく、
夢であるコロニー技師への道を真っ直ぐ進んでいる沙慈。
さらに彼女は金髪美人でお金持ち、トドメにベッタベタのベタボレ。
リアルが充実しているとはこういう人間のことを言うのだろうか。
「うわ、これってチョコレートケーキ?」
「えへへ、頑張ったんだから」
「凄いね。……うーん、凄いんだけど」
「な、何? 何かダメなところでもある?」
「いや、やっぱりここでは食べられないな、って」
「……どうして?」
「切り分けるナイフも無いし、フォークも無い。このままパクついたら形が崩れちゃうよ」
「あ……そうか、そうだね」
「だから、やっぱり後で食べるよ。……僕の家で」
「ね、じゃ、行っていい? 一緒に」
「もちろんだよ、一緒に食べよう。ああ、姐さんが買ってきた良い紅茶の葉があるから……」
 うーん、甘酸っぱい。
輝いている青い春、溢れる若さと純粋さ。
「あ、そうだ」
「なあに?」
「刹那が今日仕事が休みだって言ってたから、呼んで……」
「……オホン、オホンオホン」
「……呼ばないで、休ませてあげた方がいいよね、多分疲れてるだろうから。ははは」
46名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/14(日) 22:00:37 ID:???
 危ない、沙慈君危ない。
恋人同士で二人っきりになれる空間に異分子を呼ぶのは、
ゼッ○ル粒子いっぱいの部屋で銃火器を使うのと同じ行為である。
性格が穏やかなだけに、お隣さんの刹那に対して色々と気を利かせてしまう沙慈であるが、
彼女であるルイスからしてみれば、気を利かせるのはどこまでいっても自分だけにして欲しいのだ。
 なお、刹那と沙慈は東京時代もお隣さん同士であった。
そして今でもお隣さんなのだが、ここはあれ、全て話の都合ゆえ(何か久しぶりにこの言葉を使った気がする)。
「じゃ、行こうか。ルイスが風邪をひいちゃう前に」
「もう、馬鹿にしないでよ、ひかないった……はっくしゅん!」
「ほら、また」
「うう……」
 沙慈は自分のコートを脱ぐと、ルイスの肩にかけた。
そして、手を取って先に歩きだした。
 二人の頭上を、二匹の蝶が、絡み合うように飛んでいった―――

 ◆ ◆ ◆

「おらあ、もっと食えよ、アラスカ野!」
「いや……もう無理、口の中がドッロドロで」
「根性ねーな」
「根性とかいう問題じゃない……うえっぷい」
 さて、所変わってプリベンター本部。
ここも、今日はチョコレート一色だった。
「おい、みつあみおさげ、食ってくれ」
「嫌だよ」
「ならちんちくりん、頼む」
「断る」
「じゃあ前髪……」
「この歳で糖尿病にはなりたくない。拒否させてもらう」
 バレンタインデーだから、ではない。
「ぐはあ、どうしろってんだこの量!」
「強運の己を呪え、そんなもん引き当てる方が悪いわ」
 パトリック・コーラサワーが『ハロルチョコレート全種類一年分』を懸賞で当てちゃったからである。

 事の発端は、さして難しい話ではない。
製菓会社のバレンタインデーのキャンペーンの一環で、そういう懸賞があったのだが、
これに何の気無しにコーラサワーが応募しちゃったのが全ての始まりになっている。
応募と言っても、コンビニで適当に飲み物を買った時、
店員に「これこれこういう懸賞がありますけど、チャレンジしますかあ」と聞かれて、ハイと答えちゃっただけのことである。
無論、店員も職務上の義務として客全てに同じことを申し出ており、特にコーラサワーを狙ったわけではない。
で、またこういう社会的に特に意味の無いイベントにて大当たりのクジをぶち当てちゃうのがコーラサワーという男だったりするわけで。
47名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/14(日) 22:06:12 ID:???
「だいたい何で本部に持ってきたんだよ、おかげで狭くなっちまってるじゃねーか」
「いや、だって家には置いておけないしよ」
「カティさんに怒られたみたいですね」
 当てたことそのものついては怒られるべきものではないが、
それでも家に置いたら邪魔で邪魔で仕方がないのは事実である。
嫁のカティ・マネキンとしても、当てたのか良かったじゃないか、で済ますわけにもいかないのだった。
何しろ全種類一年分である、段ボールで数十箱ときたもんだ。
「しかし、色々な種類があるものだな」
「サワークリーム納豆味、紅生姜カツカレー味、超激辛味噌ラーメン味……本当にチョコレートなのか、これは」
「ゲテモノ系だとしても、普通にカレー味とかラーメン味とかに出来んのか」
「作った人のこだわりじゃないでしょうか」
「おえっぷ、トロサーモン味というから食べたんだが、やはりこれはサーモンでもチョコでもない」
「ワンダフル塩ちゃんこ味、ミラクルワサビ醤油味、マジカル辛子明太子味……ふむ、残念ながら今回は私も興がそそられん。喝ッ」
「やっぱり私、食べたくないわ」
「だよな」
 ガンダムパイロット達もヒルデ・シュバイカーも、グラハム・エーカーもジョシュア・エドワーズも、チョコレートが苦手というわけではない。
だが、このように複雑怪奇な味付けをされたチョコレートを食べる気には、とてもとてもなれなかった。
「これ、不良在庫を無理矢理プレゼント品にしただけなんじゃないでしょうか」
「鋭いなカトル、俺も今そう考えていたところだ」
「だが待てデュオ、ならば一人の当選者にではなく、複数の当選者にばら撒いた方が効率が良いはずだ」
「五飛、それはおそらく手間の問題だろう」
「ヒイロの言う通りと、俺は見る。面倒臭かったのだろう、製菓会社も」
「いや、そういう詮索はいいから食べてくれ、ちょっとでも!」
 コーラサワー、本気で困り気味。
『意味不明な味だらけの大量の』チョコレートは、さすがの彼も対処出来ないレベルの強敵と言えた。
「一つの鍋に全部ぶちこんで溶かしたらどうだろうか」
「ますます強烈に不味いチョコになるだけだと思いますよ」
「福祉施設に配るという手もあるが、この奇天烈な味では迷惑になるだけだろう」
「なら答は簡単だな」
「そういうことだ、貰った者が全部食べればいい」
 容赦の無いガンダムパイロット達。
無理矢理コーラサワーに一部を食わされたジョシュアが首を高速に縦振りして、全力同意の構えを見せている。
グラハムはと言えば、先程も興が乗らぬと宣言した通り、どーでもいい様子。
流石はワンマンアーミー。
「わかったわ、プリベンターの現場リーダーとして、パトリック・コーラサワーに命令します」
「へ?」
「自己責任で処理しなさい。ただし、捨てるとかは無しの方向で」
「そんなあ!?」
 独身時代はモテまくりだったコーラサワーだけに、バレンタインデーに大量のチョコレートを貰うこと、食べることには慣れている。
だが、それは皆、「ちゃんとしたチョコレート」だったから、時間をかけつつも全部食べきることが出来たのだ。
48名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/14(日) 22:10:27 ID:???
「味覚異常になったらどーすんだ!」
「いやあ、味覚くらいの異常ですむかなあ、これ」
「逆に考えろ、デュオ。異常と異常が重なって」
「ますます異常になるだけだと思います、僕は」
「お前らマジで頼む、マトモな味のやつだけでもいいから、本当に食べるの手伝ってくれ!」
 バレンタインデーは恋人たちの甘い日。
だが、プリベンターにとっては変人の甘くない日なのであった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――


 沙慈とルイスにやっとちゃんとした出番を用意出来ましたコンバンハ。
多分、刹那を間に挟んでプリベンターに関わってくることになるかと思いまサヨウナラ
49通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 00:25:04 ID:???
まさかここでゼッフル粒子なんて
単語を見るとは思わんかったw
50通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 12:42:54 ID:???
そういや沙慈とルイスは、第一部での雪合戦しか登場してなかったな。
51通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 22:14:36 ID:???
土曜日さん乙!!

>サワークリーム納豆味、紅生姜カツカレー味、超激辛味噌ラーメン味
しかし、食えば吐きそうなチョコレートだなあ…w
52通常の名無しさんの3倍:2010/02/17(水) 19:44:59 ID:???
好きな食べ物:何でも食える!
のコーラさんだ、こんな試練なんてことないはず!

でも、食えるのと美味いか不味いかは、また別の問題だよな…
53通常の名無しさんの3倍:2010/02/19(金) 23:42:25 ID:???
保守!
54名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/20(土) 02:31:03 ID:???
親戚の結婚式で遠出するため、次回は少し遅れます。
申し訳ない。
55通常の名無しさんの3倍:2010/02/20(土) 02:35:03 ID:???
>>54
おめでとうございます
行ってらっしゃい土曜氏さん!
56通常の名無しさんの3倍:2010/02/21(日) 17:08:03 ID:???
>>54
了解しました!
57通常の名無しさんの3倍:2010/02/23(火) 17:24:56 ID:???
hosyu!
58名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/24(水) 23:24:14 ID:???
 グラハム・エーカー。
魂の名(自称)をミスター・ブシドー。
一昔前のインディー団体の覆面レスラーみたいだ、などと言ってはイケナイ。
本人は本気である。
ドがつくまでに本気である。
 ブシドーとは言うものの、別に当人は日本人ではない。
生まれも育ちも生粋のユニオンのアメリカ人である。
金髪である。
白人である。
重ねて言う、日本人ではない。
「心頭滅却し六根清浄、義を見てセザールは勇無き也。喝ッ」
 ぶっちゃけて言うと、日本カブレである。
サムライ好きである。
どこでどう間違った異文化解釈をしたのかわからないが、彼の背中を押した神様は相当意地が悪いに違いない。
「キエエエエエエエエィ!」
 猿叫一閃、彼の朝は鍛練より始まる。
六時に起床し、洗面と清めのうがいをした後、
準備運動をきちんと行い、住居を出て、そのままジョギングへ。
以前は読経かもしくは暗記した『葉隠』を全文口上しながら走っていたのだが、
さすがに近所から苦情が出て、これは取りやめた。
走る速度は本人は抑えているつもりだが、
同じ時間帯に朝トレをしていた近くのハイスクールの陸上部の三倍の速さがあるという未確認情報がある。
あくまで未確認であり、自己申告も他者申告もなされていないため、不明となっている。
ちなみに、走る時は袴姿である。
 ジョギングより戻ると、次に木刀の素振りに入る。
剣術についてはどの流派にも属しておらず、正式に教えを受けたことはない。
もっとも、軍人だったわけで、修行に全てを捧げるわけにはいかなかったという事情は一応ある。
まあそんなわけで、剣はほとんど自己流だが、それでも一定の理にかなった動きになってしまっているのが恐ろしいところではある。
何しろ初めて乗ったMSで本来ならスペック上不可能なはずの空中可変を行ってしまうくらいであるからして、
無茶も通せば道になる、ということを直感でわかっちゃっているのだ。
信じるということはまったくもって怖いと言わざるを得ない。
つまりは、『一流の修行家』と表現してもいいだろうか。
まあ、正味の話、そんな人間は振り返ればロンリネス、振り返らなくてもロンリネスだが。
「うむ、良い汗をかいた。本日も身体は健全也」
 日本文化を好きになるのは別に良いし、多少の曲解は致し方ない部分もある。
だがしかし、彼の現状については次の言葉によって全てが表現される。

「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ」

 なお、彼の友人で、曾祖父が日本人のビリー・カタギリが武士化について諌めただの制止しただのという記録は無い。
 

 ◆ ◆ ◆
59名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/24(水) 23:29:26 ID:???
「本日も快晴也。諸君、おはようというところだな」
「あれ、エーカーさんですぅ、おはようございますですぅ」
「ほう、これは珍しい。君がこの時間から本部にいるとはな」
「レディさんが遠方に出張で、今日は残留なんですぅ」
 出勤したグラハムを最初に出迎えたのは、レディ・アンの秘書を務める少女、ミレイナ・ヴァスティだった。
普段はなかなか絡まない二人であるが、実際、特別仲が良いというわけでもない。
グラハムは誰にでも「グラハム・エーカーな態度」だし(一応、相手が女性の場合、目上の場合は言葉遣いや態度は丁寧にはなるようである、礼儀として)、
ミレイナはミレイナで、グラハムに深く絡んだら疲れるだけだということを十分理解している。
ミレイナにしてみれば、自分の得意分野(オタク道)で攻めても、武士道バリヤーであらぬ方向へ弾き返されてしまうわけで、
そこら辺りがパトリック・コーラサワーなどとは異なり、からかい易くも絡み易くもないのであろう。
ちなみに、ミレイナは素顔状態のグラハムは「エーカーさん」、お面状態は「ブシドーさん」と呼び分けている。
以前「サムライさん」とか呼んでいた記憶もあるが、まあそれは多分気のせいである。
そういうことにしておいて欲しい。
してもらえればありがたい。
うん、いっそそんな記憶も事実も無かったということにしておこう。
「ようナルハム野郎、朝からご機嫌だな。脳味噌の中でディズ○ーランドでもオープンしたのか」
「仮にそうだとしても、君には関係の無いことだな」
「何なのこの朝の挨拶立体交差点は」
 次いで声をかけたのはパトリック・コーラサワー。
ご存知、不死身にして幸せの男である。
「珍しいじゃねーか、こうやってちゃんと出勤してくるのは。まだ勤労意欲ってやつが残ってたのか?」
「聞き捨てならんな、私は一度たりとも職務放棄した覚えはない」
「いや、最近は顔を出したと思ったらすぐにあのポニテ博士のところに行くじゃねーか」
「我が愛機『カラタチ』の完成が待ちきれないのでな」
「二人とも微妙に会話がドッジボールだな」
 合い間にてツッコミを入れているのは、もうすっかりその役割が板についてしまったデュオ・マックスウェルである。
別にグラハムとコーラサワーの異次元会話を無視したっていいのだが、
そうすると逆に精神衛生上よろしくないので、仕方なしにツッコんで空気の修正を図っている。
これはもう、性分であるとしか言いようがない。
他のガンダムパイロットはグラハムとコーラサワーを強引なりともスルーすることが出来るが、デュオはそうではないのだ。
「本来なれば終日側にいて、その生誕を見届けたいのだが」
「ならとっとと行ってこいよ、今日は特に目立って仕事がないらしいぞ」
「肝心のカタギリが不在なのだ。知人に会う約束があるとのことだ」
「あー、ポニテ博士がいなきゃ完成には近づかないな、確かに」
 新型MS(ミカンスーツ)の完成が待ちきれないのは、別にグラハムに限った話ではない。
コーラサワーだってガンダムパイロットだって同じである。
グラハムがビリー・カタギリの研究所に通い詰めなのは、
彼が際立って我慢弱い男だからに他ならない。
60名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/02/24(水) 23:33:51 ID:???
「スペシャルさん、別に仕事が無いわけじゃないですぅ」
「だって出動がないだろ」
「その気があるのなら、いくらでも書類の仕事を回してあげるですぅ」
「そんなつまらねー仕事は別にしたくない」
「社会人としてあるまじき発言ですぅ」
 プリベンターにおいて、書類関係の仕事は、責任者であるレディ・アンと、
現場リーダーのサリィ・ポォ、そしてレディの秘書であるミレイナが主に扱っている。
デュオだってヒイロ・ユイだって張五飛だって、やらなきゃならない時は書類仕事もする。
だが、コーラサワーやグラハムにはあまり回ってこない。
単純に得手不得手の問題である。
 パイロットとしての能力は、グラハムもコーラサワーも折り紙つきである。
何しろユニオン軍とAEU軍において、共にエースと呼ばれる存在だった。
普段の行いを見ていると甚だ怪しいが、実際そうだったのだから仕方がない。
操縦技術については、おそらく二人ともこの世界の二十傑には入るであろう。
「カラタチが完成した暁には、不逞な悪人共は私が一刀両断にしてくれよう」
「お前だけにいい格好させるか、悪人は俺が倒すってんだよ」
「はいはいプリベンター全員でかかるのが基本だぜ。暴走は厳禁だからな」
「私がいつ暴走をした?」
「俺がいつ暴走をしたってんだ?」
「わあ、サリィさんが聞いたら怒り爆発な発言ですぅ」
 プリベンターは、日常の業務とは別に、とある人物の尻尾をつかむべく情報を集めている。
その人物の名前はアリー・アル・サーシェス、別名ゲイリー・ビアッジ。
プリベンターの前に幾度も立ちはだかってきた強敵である。
特にアザディスタンの一件では、コーラサワーを除くプリベンターのメンバー全員が彼に煮え湯を飲まされている。
「受けた屈辱は必ず返す。サムライとして」
「次もまた俺が倒してやるよ、このスペシャルエースの俺には誰も勝てねえ」
 新型MS(ミカンスーツ)の完成は近い。
そして、プリベンターの反撃の日も近い。
「一騎討ちにて、絶対に倒す。私にも矜持というものがある」
「キョウジだかドモンだかツマヨウジだか知らないが、奴は俺が倒すって言ってるだろ」
「だーかーら、プリベンター全員で当たるって」
「どれだけ言っても無駄ですぅ、この二人」
 近い……はずである。
多分。

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――


 コンバンハ。
年度末が近く仕事が立て込むので、ペースがちょっとズレていくかもしれませんサヨウナラ。
61通常の名無しさんの3倍:2010/02/25(木) 17:43:20 ID:???
00側の設定が結構改変されてるから、
厳密に言うと《クロス》スレではないのかもしれないな、ここは
じゃあなんだといわれるとうまく表現できないが
えーと、寄せ鍋というかミックスジュースというかカレギュウというか

語彙が乏しくてスマン
62通常の名無しさんの3倍:2010/02/25(木) 18:11:02 ID:???
土曜日塩津
デュオが貧乏くじ過ぎて泣けてきたwww
63通常の名無しさんの3倍:2010/02/25(木) 22:55:54 ID:???
土曜日さん乙
奇人二人の会話を無視しようとも出来ないなんて、デュオも大変だなあw
64通常の名無しさんの3倍:2010/02/27(土) 19:13:18 ID:???
保守
65通常の名無しさんの3倍:2010/02/27(土) 19:16:52 ID:???
小説でコーラさん大尉に昇進してたことが明らかになったわけだが
こっちはもう軍人じゃないからなあ
66通常の名無しさんの3倍:2010/02/28(日) 10:57:42 ID:???
>>65
退役した理由は不明なんだよね>このスレのコーラ
67通常の名無しさんの3倍:2010/03/02(火) 21:08:17 ID:???
祝鯖復帰保守
68通常の名無しさんの3倍:2010/03/03(水) 00:10:09 ID:???
やっとDoCoMo規制解除された。
土曜氏乙
69名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/04(木) 01:30:09 ID:???
 西の空には、太陽が一日の役目を終え、地平線の下へ身を休めようとしている。
俗に、この時間帯を逢魔時、という。
 一人の男が、世界統一政府の首府であるブリュッセルのとある路地裏を歩いている。
男は歳の頃、だいたい三十半ばから四十というところか。
だが、その身体から発せられる精気は、決して中年のそれではない。
若者に負けない―――いや、安穏と今ある暮らしを生きている若年には、決して出し得ない凄味のようなものが、精気に混じっている。
「ヘッ……」
 男は、ビルの隙間から漏れる、血のように真っ赤に染まっている夕焼けの明りを目を細めて見上げた。
周囲には、誰もいない。
ここ一帯は、OZが起こした騒動の一件で寂れて以来、未だ再開発の目途が立っていない場所である。
現在の人類文明の中心たるブリュッセルにも、こうした場所は残っているのだ。
 しばし、男は立ち止って夕陽を見つめていたが、やがてまた歩き出した。
彼は、所謂「裏社会」の人間である。
様々な悪事に手を染めてきたし、傭兵として幾多の戦場を潜り抜けてきた猛者でもある。
「晩飯までに話がまとまりゃいいがな」
 口の端をくいっと釣り上げて、男は笑った。
それは、肉食獣の笑みであった。
 彼は今、世界レベルの陰謀に加担している。
その成就の為に、陰謀の主の手足となって、色々と暗躍をしている最中なのだった。
「景気の良い色だぜ、今日のお日様はよう」
 彼の名前は、アリー・アル・サーシェス。
傭兵としての仮の名は、ゲイリー・ビアッジ。
全身を深紅に染めて、彼は歩く。
下ごしらえも終わりに近づき、いよいよ大きく動く時が側に迫っている。
これから、具体的にどう動くかについて、話し合いが行われることになっている。
とは言っても、謀主に直接会うわけではないのだが。


 逢魔時。
昼と夜の間に位置し、この世に在らざるものが、大手を振って活動を始める時間であるとされる。
または、大禍時ともいう。
大いなる禍の時、すなわち「著しく不吉な時間」、それが、今である―――。


 ◆ ◆ ◆
70名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/04(木) 01:32:54 ID:???
「やれやれ、今日も一日が終わるな」
「ふわああ、早く帰って晩飯を食いたいぜ」
「もうちょっと包み隠して言えよ、あからさま過ぎるぞ」
「だって俺、新婚だし。嫁さんの手料理を食べたいのは当たり前だし」
「いや、だから帰りたい気持ちを露骨に表すなって言ってるの!」
 世界の平和を裏側から守る組織、プリベンター。
現代の隠密同心と言えるこの集団は、統一政府内において、最強の戦力を持っている。
物量こそは他の組織に劣るが、集められたメンバーは、精鋭中の精鋭で、簡単な表現を用いれば、「一人が百人力」なのである。
「まったく……緊急出動があっても、『嫁さんに会いたい』と帰るつもりかい」
「当然だ!」
「胸を張って言うな!」
 先程から漫才紛いのやりとりを交わしているのは、
プリベンターのメンバー、パトリック・コーラサワーとデュオ・マックスウェルである。
歳の差は二十もあろうかという二人だが、会話の内容にはそれ程大きなレベルの違いは無い。
むしろ、若いデュオが合わせている部分がある。
「怒るなよみつあみおさげ、地球が滅ぶとかいう規模の事件ならともかくだけどよ、それ以外は家庭を優先させるのが俺のツトメだ」
「……社会人だろお前、一応」
「社会人の前に、パトリック・コーラサワーという男であり、カティ・マネキンの夫だ」
「相変わらず噛みあってるのかそうでないのかわからんな、お前らは」
 二人のやりとりに絡んでいったのは、同僚の張五飛である。
中国拳法の達人で、プリベンターの中でも特に武断派とされている。
デュオと五飛、そして今はこの場にはいないが、
ヒイロ・ユイ、カトル・ラバーバ・ウィナー、トロワ・バートンの計五人は、かつてはガンダムのパイロットとして、
OZの暴挙に真っ向から立ち向かった勇者達である。
十代の後半にもならない彼らだが、
身に付けたメカの操縦技術、武器の取り扱い、戦闘の行い方等々、「闘う」ことにかけては、
ここ近年のどの軍隊の兵士よりも確かな実力を持っている。
「まあいい、一応定時にもなる。帰りたいというのなら帰らせてやれ」
「そりゃそうだけどさ」
「それに、いよいよ明日は例のモノが完成する日だ。ここでいらん体力や精神力を使う必要もないだろう」
「でも、事件が急に起こるかもしれないぜ」
「その時はその時だ、こいつを外して臨む。その方がおそらく、俺達にとってもやりやすいはずだが?」
「……否定出来ないな」
 プリベンターは現在、世界で唯一、『戦力』と呼べる人型機動兵器を持っている。
すなわち、ミカンエンジンを動力機関として動く、MS(ミカンスーツ)。
天才ビリー・カタギリがデザインした新しいMS(ミカンスーツ)が、いよいよ明日、本当に完成するのだ。
「完成するのは楽しみだけど」
「テストもしなければならない。今日ばかりは、馬鹿の相手を無駄にして力を使うな」
「おい、馬鹿って誰のことだよ」
「お前のことだ」
 コーラサワーの疑問に、間髪入れずに返す五飛。
彼に遠慮の二文字は無い。
躊躇の二文字も無い。
いや、彼の辞書には一応載っているのだが、
コーラサワー相手にそれらを使うつもりは、五飛にはさらさら無い。
71名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/04(木) 01:34:54 ID:???
「あの自称サムライもおかげで研究所に入り浸りだ、事件さえ起こらなければ、今夜は静かに過ごせるだろう」
「今更だけどあの人、仕事を何だと思ってるのかね」
 自称サムライとは、グラハム・エーカーのこと。
日本文化に間違った解釈で入れ込んでいる彼は、ビリー・カタギリの親友でもあり、
またMS(ミカンスーツ)にえらく思い入れがあるので、新型のプランが上がってからこっち、
出動がある時以外はほとんどカタギリ博士の研究所に詰めているのだ。
「でも、起こって欲しくない時に限って起こるのが事件ってもんですぅ」
「そういうこと言わないでよ、ミレイナ」
 さらに会話に加わったのは、プリベンターのリーダーであるレディ・アンの秘書を務めるミレイナ・ヴァスティと、
デュオ達現場組の後方支援を役割とするヒルデ・シュバイカーの二人の少女達だった。
年齢も近く、仲の良い二人であるが、
プリベンターという特殊な組織に身を置くだけあって、
五飛程ではないにしても、共にかなり遠慮が無い性格をしている。
「でも、心構えは必要ですぅ」
「それはそうだけど……」
「まあスペシャルさんとエーカーさんは心構え以前の問題だとは思いますですけどぉ」
 にこやかな表情でキッツイことを言い、ズズズと熱い緑茶をすするミレイナ。
苦笑しつつ、ヒルデも合わせて湯呑みを口に運ぶ。
「何ぐじゃぐじゃ言ってやがるんだよ、オデコシスターズ」
「どういう呼び方よ、それ!」
「私達がオデコシスターズなら、差し詰めスペシャルさんとエーカーさんはオバカブラザーズってところですぅ」
 デュオとコーラサワーが漫才なら、全員を巻き込めばそれこそ新喜劇か。
当人達は不本意だろうが、これではプリベンターは「愉快な組織」と他者から思われても仕方がない。
「とにかく、俺は定時になったら帰るぞ」
「わかったよ、ロウドウシャとしてのトウゼンのケンリだからな、とっとと帰れ」
「俺の全身に流れる血、あの夕焼けの太陽のように真っ赤で熱い血が、『家へ帰れ』と言っているんだよ!」
「誰でも彼でもない、お前自身の血がか」
「なーるほど、誰彼時ってやつですぅ」
 プリベンターに一日が賑やかに終わる。
そして、今日という日の幕が閉じれば、また新しい一日がやってくる。
「結婚したは良いけれど、人生の黄昏時にならないようにしろよ」
「どういう意味だよ、みつあみおさげ」
「嫁さんに愛想尽かされるようなことはするな、ってこと」
 明日という日がどのような日になるのか、
希望や願望はあっても、神ならぬ人の身、正確に予知も予測も出来はしない。
出来るはずも、無い。

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――


 コンバンハ。
前にも言いましたが、三月四月はちょっと投下が変則になると思いますサヨウナラ。
72通常の名無しさんの3倍:2010/03/04(木) 17:35:38 ID:???
土曜日さん乙〜
次回以降何かが起こりそうな予感
73通常の名無しさんの3倍:2010/03/05(金) 22:07:15 ID:???
土曜氏乙です。
これはハプニングが起きること確定ですねw
74通常の名無しさんの3倍:2010/03/07(日) 08:29:28 ID:???
コーラは残業したくないタイプなのかw
75通常の名無しさんの3倍:2010/03/09(火) 18:39:50 ID:???
過疎でも投下があればスレは継続する
その見本みたいなスレだな
76通常の名無しさんの3倍:2010/03/11(木) 12:39:51 ID:???
ほしゅ
77通常の名無しさんの3倍:2010/03/13(土) 14:36:05 ID:???
ここはギャグだが、シリアスなWと00のクロスというのも読んでみたい
しかし、どういう世界設定になるか・・・
AEU,ユニオン、人革連、コロニー、OZを並列させられるのか

イナクトのお披露目中に空からエクシアとWが降ってきてカチ合わせ、コーラは巻き込まれでフルボッコ
グラハムはガンダムだらけの状態に歓喜でとにかくどのガンダムにも戦いを挑み、
OZ主導で三国連合が組まれ、ヒイロたちとソレスタの両方の排除しようとし、
リボンズとトレーズがよくわからん会話を・・・
78通常の名無しさんの3倍:2010/03/14(日) 11:44:52 ID:???
>>77
その場合、CBとヒイロ達はやはり敵対するのかな?
79名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/14(日) 19:35:11 ID:???
持ち帰りの仕事&休日出勤が多く、話の続きは順調に遅れております。
申し訳ないっす。
80通常の名無しさんの3倍:2010/03/14(日) 21:59:50 ID:???
>>79
休日出勤ですか、大変ですね…
話の続きは落ち着いてからでも構わないですよ
81通常の名無しさんの3倍:2010/03/16(火) 22:11:36 ID:???
保守しとく
82名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/18(木) 01:33:03 ID:???
 世界政府の中心たるブリュッセルの裏町に、その建物はあった。
小さなビルディングで、外見は薄汚れており、かなり年季が入った建築物であることがすぐにわかる。
表には小さな看板がかかっており、そこには、『専用貨物・第一分所』という文字だけが書かれている。
何の貨物なのか、第一というのが何の意味なのか、それらを示すものは一切無い。
「やれやれ」
 血の色に似た夕焼けの光を背に浴びつつ、一人の男が、その建物の入り口をくぐっていく。
彼の名前はアリー・アル・サーシェス。
だが、この本名よりも、ゲイリー・ビアッジという仮の名前の方が、まだよく知られている。
良い意味では、無い。
むしろ悪名である。
それは、かつて数多の軍事組織で恐れられた、そして今でも恐れられている傭兵としての名前だ。
「手間のかかるこって」
 入り口のドアを開けると、細い通路の奥に、さらにまた頑丈に作られた鋼鉄製の扉がある。
生半可な銃弾では決して貫通しそうにないそれの横に、古ぼけた建物には似合わない、
番号入力式のロック・システムが、薄青い電子光を放っている。
「ピ・ポ・パ……じゃないってね」
 アリーは番号のボタンには手を伸ばさず、そのまた横にある、小さな液晶画面に親指を押しあてた。
実は、ボタンはダミーで、本当は指紋認識型のロック・システムなのだ。
 数秒のブランクがあり、ガコン、という重たい金属音が、廊下に響く。
分厚い鋼鉄扉の鍵が、開かれた音だった。
「邪魔するぜ」
 誰に聞かせるでもなく、アリーはそう呟くと、扉をゆっくりと押し開けて、中へと入った。
ギギギ、と錆び付いたような耳障りな金属音が彼の耳に届いてきたが、特に不快がる素振りはアリーは見せなかった。
 扉の向こうは、さらに先へと続く通路があり、そのまた奥に、地下へと伸びる階段があった。
アリーは、薄ら笑いを浮かべつつ、その階段を下っていく。
周りは限りなく闇に近いが、足元を乱すことはない。
優れた傭兵である彼にとっては、この程度の暗がりなど、たいしたことはない。
「よお、待たせたな」
 階段の下には、小さな地下室があった。
そしてそこでアリーを、一人の男が待っていた。
「……遅いぞ、君」
「悪いね、何せこんなヘンピな場所にあるタテモンだ、いつまで経っても覚えられなくてね」
「それでは困る」
 その男の名前は、ラグナ・ハーヴェイ。
世界の輸送、交通の大部分を仕切るリニアトレイン社の総裁たる人物であった。
83名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/18(木) 01:39:15 ID:???
「四分と三十五秒の遅刻になる」
「だいたい五分ね」
「違う。四分と三十五秒だ」
 アリーは肩をすくめると、ラグナの前を通り、奥の戸棚へと足を進めた。
リニアトレインの総裁であるラグナは、細かいことにやかましい。
一分一秒の大事さは、傭兵であるアリーはよくわかっている。
だが、遅れても問題ない時と、遅れてはならない時の違いもよくわかっている。
今回は前者であると、アリーは認識していた。
ラグナとは見解の相違があるだろうが、それについて議論するつもりは、アリーには毛頭無い。
どうやっても歩み寄れないからだ。
根っこの部分で異なっている以上は。
 ちなみに、一代で企業を興す男には、二種類あるという。
数字にとことん細かくて厳しいか、それとも細かい部分と大雑把な部分を併せ持つか。
とある企業家は、細君と口喧嘩をした際、
「何月何日何曜日の午後何時、おやつに食べたポテトチップスをお前の方がこれくらいの大きさのを何枚多く食った!」と罵り、
それを聞いた細君は怒るどころかすっかりあきれ果ててしまったそうな。
そいで最後には離婚したそうである。
今際のきわに病室で、『結婚してからお前に対して使った金の額が云々』と言われたくない、という理由で。
……何の話だったったけ。
ああそう、アリーとラグナが同志であっても歩み寄れない、というところである。
「こんな都会で、一分一秒違ったって死にゃあしねえよ。戦場じゃあるまいし」
「む……」
 ラグナは明らかに不快な表情を見せた。
アリーの答えが気に食わなかったからではない。
アリーが戸棚を開けて、そこにあった酒のボトルを取り、グラスになみなみと注いで、一気にあおったからだ。
「ん……ふいぃ、さすがにうめえな」
 そこにある酒はどれも高級なものばかりだが、アリーが手に取ったそれは、中でも最も値の張る物だった。
無論、アリーはそれを承知で呑んでいるのだが。
そしてさらにアリーは、机の上の葉巻きのケースにも手を伸ばした。
酒と同じく、「貰うぜ」や「いただくぜ」という許可は取らない。
ある意味、あてつけと皮肉である。
この辺り、アリーは「意図的に他人を不快にさせる」能力も一流であると言えよう。
「……とにかく、もうすぐ通信がある」
「へいへい」
 アリーは葉巻きを口にくわえながら頷き、次いで部屋の中をぐるりと見回した。
ここは、ラグナ・ハーヴェイの所謂『隠れ家』の一つである。
リニアトレイン社の総裁として社会的に伸し上がる為に、彼は色々と汚いこともやってきた。
ここは、そうした時に使われる『裏の商談場』なのだ。
だから、酒や葉巻きだけではない、部屋の中にあるものは全て一流と言って良いモノばかりであった。
長く裏社会で生きてきているアリーにしてみれば、その体面主義はいささか馬鹿らしいものに映る。
それが必要であることも承知はしているのだが、何と言うか、この部屋はあまりにも「きっちりし過ぎ」ているように、彼には思えるのだ。
ただ、あのアレハンドロ・コーナーよりかはラグナの方が趣味が良いのは、彼も十分認めるところであった。
何しろあのコーナーさん、ほったらかしておくと部屋中をキンキラキンのキーンにしてしまいかねないので。
84名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/18(木) 01:42:38 ID:???
「今は火を点けるのはやめたまえ」
「わかってますって」
 これから、彼らの主から、重要な通信がある。
何処に行き、そして何をすればよいのか。
すでに計画は動き出している。
「―――時間だ」
 ラグナは、壁の大きなモニターに身体の正面を向けた。
灰色の画面が一瞬青白く光ったかと思うと、次の瞬間には、そこにはとある人物の姿が映し出された。

「やあ、息災のようだね。二人とも」

「はっ……」
「大将も、お元気そうで」
 ラグナは小さく頭を下げ、そしてアリーは酒の入ったグラスを掲げて見せた。
モニターの中の人物こそ、彼らの主にして、計画の立案者なのだ。

「さて、本題に早速入ろうか」

 リボンズ・アルマーク。
世界的アイドルグループ、イノベイターのリーダー。
それが、ラグナとアリーの『現在の主君』である。
主君と言っても、心からの忠誠を捧げたわけではない。
リボンズにはリボンズの、ラグナにはラグナの、そしてアリーにはアリーの思惑がある。
利益が一致しているなら、当面は手を携えていけるはずである。
未来永劫そうであるかは、今のところ定かではないが。

 ◆ ◆ ◆

「イヤッホーウ! やっと完成するんだな」
 プリベンターの本部は今日も朝から賑やかだった。
そうじゃない日があるのか、というツッコミすら入りそうだが、今日はとにかくいつもに輪をかけて騒がしかった。
無論、理由はある。
そう、とうとう今日、ビリー・カタギリによる新型MS(ミカンスーツ)がプリベンターにやってくるのだ。
「これでプリベンターの戦力も回復ですね」
 カトル・ラバーバ・ウィナーの表情も明るい。
戦うことについては、一度ガンダムを捨てた身としていささか思うところもあるが、
それでもやはり戦力が無ければ、アリーをはじめとする未だ世界に残る悪党たちに対抗出来ない。
世界統一政府は未だ生まれたばかりの赤ん坊にも等しい体力しかない。
コツンと脛を蹴飛ばされただけで、すってんころりんと転んでしまうかもしれないのだ。
プリベンターとしては、せっかく人類が手に入れたこの平和を、そう簡単に覆させるわけにはいかない。
「で、やっぱりと言うか何と言うか、あのミスターサムライマンは本部にいないわけだな」
「昨日退出してからすぐさまポニテ博士の研究所に飛んでいったらしいぞ」
「……昨日今日なら一晩寝りゃあすぐだろうに、ホントに我慢弱い奴だな、あの人」
 そう、ミスター・ブシドーことグラハム・エーカーは、昨日の晩からカタギリ研究所に絶賛突撃中。
ここ数カ月は自宅とプリベンター本部にいるより長い時間を研究所で過ごしてきたわけで、
もういっそビリーに頼んで研究所に住まわせてもらったらいいのに状態だったのだ。
とにかく自分の興味の対象というか、入れ込んだことについては一直線、他はおかまいなしな人である、グラハム・エーカーは。
85名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/18(木) 01:45:33 ID:???
「とにかく、俺達も行こうぜ。ポニテ博士の研究所に」
「待てよ、サリィが確認取ってからにしろ」
「確認なんて今更いるかよ、ポニテ博士が完成だって言ってるんだろ?」
「手順が必要なんだよ、こういうのは。子供がオモチャを貰うのとはワケが違うんだぞ」
 コーラサワーにつっこむデュオの横で、小さくヒイロが「コイツは大きな子供だ」と呟く。
それについてはほぼ同意見だったので、敢えてデュオはヒイロには何も言葉を返さなかった。
「でも全員で押し掛けるわけにはいきませんよ」
「そうだな、本部を空にするわけにはいくまい」
 カトルの言葉に、トロワが同調した。
プリベンターは緊急時には速やかに出動しなければならないので、本部に誰もいないという状況が生まれてしまうのは確かにまずい。
「オデコ娘二号を残していけよ、どうせアイツには乗るMS(ミカンスーツ)なんて無いんだから」
「もとからヒルデは残留だぜ、いつだってほとんど連絡員として本部に残ってるだろ」
「ならそれでいいじゃねーか」
「いやだから、連絡員だけが本部にいても仕方ねーだろって話だろうが!」
 怒鳴りながら、デュオは今日のこれからの流れというものが薄らとだが脳内で見えていた。
どうせコーラサワーは止めても無駄、何だかんだで研究所に行くことになるわけで、
そうなるとそのお守として自分が間違いなく同行者に選ばれるであろう、と。
「おーい、オデコ姉ちゃん一号! とっとと行こうぜ、ポニテ博士のところに!」
「誰がオデコ姉ちゃんよ」
 オデコ、もとい額を指先で押さえつつ、プリベンターの現場リーダー、サリィ・ポォは皆の前に姿を現した。
丁度今、ビリー・カタギリと連絡を取り合っていたところである。
「……不本意だけど、アナタを連れていかざるを得ないわね」
「不本意って、どういう意味だ」
「そういう意味よ」
 コーラサワーを無理矢理残していっても、ギャアギャアとわめき散らすだけだし、
仮に緊急出動せねばならなくなった場合、コーラサワーがそんな様子で本部に居残っていては、残留組の士気と仕事に差し障る。
結局は、連れていくのが無難っちゃ無難なのであった。
「で、不本意だろうけど、デュオもお願い」
「ああ、不本意だけどお願いされたよ」
「あとはヒイロと五飛もついてきて」
「了解した」
「当然だな」
 ヒイロと五飛もプリベンターの中ではどちらかと言うと武断派であり、新型MS(ミカンスーツ)にはかなり期待を寄せていた。
コーラサワーとは違った意味で、連れていくべき二人ではあった。
「ヒルデとカトル、トロワはお留守番をお願い。一応、ミレイナにも仕事に一段落ついたら本部に来るようには伝えてあるから」
「ちょっと残念ですけど、わかりました」
 残留組三人を代表して、カトルがサリィに答える。
基本、カトルはサブリーダー的立場になので、プリベンターが別れて行動する場合は、サリィとは別の班になることが多い。
86名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/18(木) 01:46:41 ID:???
「よし、話はまとまったな。さぁ行こうぜ、今すぐ行こうぜ、ちゃっちゃと行こうぜ!」
「言っておくけど、向こうで面倒は起こさないでよ」
「すでに面倒な奴が先発で行っちゃってるけどな」
「その場合は俺が黙らせよう、二人とも」
「そうなったら俺も手を貸す、五飛」
 面倒なことが起こることがほぼ確定しちゃってる気もしないでもないが、まぁこれもプリベンターである。
とにもかくにも、新型MS(ミカンスーツ)は今日完成する。
無論、コーラサワー達は知り様も無い。
ブリュッセルの、それほど離れていない場所で、彼らの敵となる者達が、世界的陰謀をさらに進めようとしていることを。
プリベンターの戦力が新しく生まれた日、プリベンターの最大の敵もまた、生まれたのだ。
新型MS(ミカンスーツ)を駆って、プリベンターが本格出動する日は、それほど遠くはない。
もちろん、それを知っているのは、意地悪な神様だけである。

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――




 コンバンハ。
もうマジで残業はどうにかならないかしらサヨウナラ。
87通常の名無しさんの3倍:2010/03/18(木) 22:00:45 ID:???
土曜日さん乙!!
そろそろアリー達がなにやら事件でも起こしそうな雰囲気ですねえ…

残業ですか、身体には気をつけて…
88通常の名無しさんの3倍:2010/03/19(金) 19:10:40 ID:???
hosyu
hosyu
89通常の名無しさんの3倍:2010/03/21(日) 19:33:07 ID:???
アリー達は何をしでかすつもりなんだろうか…?
90通常の名無しさんの3倍:2010/03/22(月) 19:16:06 ID:???
保守
91通常の名無しさんの3倍:2010/03/24(水) 17:17:30 ID:???
九月の映画公開まであと半年か、長いようで短いようで長い
我らがコーラの出番が少しでもあれば嬉しい
92通常の名無しさんの3倍:2010/03/25(木) 17:53:09 ID:???
人減ったな
93通常の名無しさんの3倍:2010/03/25(木) 17:58:58 ID:???
静かに待ってるだけだ
94通常の名無しさんの3倍:2010/03/26(金) 20:38:38 ID:???
宣言通り3、4月は仕方がないというところか
95通常の名無しさんの3倍:2010/03/26(金) 21:03:51 ID:???
その代わり公式外伝がコーラさん外伝になりつつある件
96通常の名無しさんの3倍:2010/03/26(金) 22:08:40 ID:???
映画って九月ってことだけしかわかってないんだっけか
祝日がある第四週くらいか?
97通常の名無しさんの3倍:2010/03/28(日) 08:21:55 ID:???
>>96
何にせよ楽しみ
98名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/03/29(月) 01:17:15 ID:???
どうもです。
四月から昇進することになりました。
下につく連中が揃って、手順を何も知らない新人+転勤組です。
入社以来、本気で上司を恨んでおります。
仕事がクソ忙しいのは変わりませんが、投下が遅れるにしてもきちんとせねばならぬと思い、
映画公開時を最終回と決めた以上、そこに向かってこれからの話をどう動かすか、図やら何やら造ってまとめております。
正味、ここまで95%は投下当日(か前日)にに「無計画に勢いと思いつきで一気に書き上げ」ていたので、
そりゃもう呼称やら経過時間やらがかなり前後でチグハグになっているところが多々あります。
さすがにこれからはそうはいかんな、と……。

取りあえず四月の半ばまでには再開をしたいと思っております。
その辺りだといい加減仕事も落ち着くかな、と(願望込み)。

で、何にもナシなのはアレなので、まとめの最中に脳内設定の足しにしようと適当に描き散らかしたものを、ラノベTESTのup51660.zipに置きました。
解凍パスはいつもどおり cola です。
長々と自分語り失礼しました。
では。
99通常の名無しさんの3倍:2010/03/29(月) 16:36:28 ID:???
イヤッ砲!
100通常の名無しさんの3倍:2010/03/29(月) 21:23:32 ID:???
>>98
大変ですね、身体には気をつけてください・・・
101通常の名無しさんの3倍:2010/03/30(火) 11:47:16 ID:???
このスレの職人は絵・文ともに描書できるのかいw
102通常の名無しさんの3倍:2010/03/30(火) 17:43:40 ID:???
脳内設定画もっとありませんか
103通常の名無しさんの3倍:2010/04/01(木) 17:12:45 ID:???
誰もいない
コーラとカティの幸せな新婚生活を覗く権利を貰っていくなら今のうち
イヤッホ
104通常の名無しさんの3倍:2010/04/01(木) 17:13:34 ID:???
>>103
コラッ
105通常の名無しさんの3倍:2010/04/03(土) 15:10:27 ID:???
保守
106通常の名無しさんの3倍:2010/04/07(水) 12:50:35 ID:???
結構規制が厳しくなってる
職人は大丈夫か?
107通常の名無しさんの3倍:2010/04/09(金) 17:41:34 ID:???
スレどころか板全体が過疎過疎だなあ

まったり保守
108通常の名無しさんの3倍:2010/04/09(金) 23:19:03 ID:???
>>107
大規模規制の所為もあるだろうね、OCNもやっと解除されたようだし
109通常の名無しさんの3倍:2010/04/11(日) 10:33:03 ID:???
一応保守
110名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/11(日) 20:57:12 ID:???
お疲れ様です。
続きは来週の日曜までに(plalaとdocomoが規制されない限り)何とか出来ると思います。

ラノベTEST、up52565.zip(passはいつもの  cola  )に描き散らかしたものを三つ程追加しました。
111通常の名無しさんの3倍:2010/04/11(日) 22:24:17 ID:???
>>110
了解しました!
>plalaとdocomoが規制されない限り
大手プロバイダ程、規制に巻き込まれやすいですからねえ…
112通常の名無しさんの3倍:2010/04/13(火) 17:26:27 ID:???
保守
113通常の名無しさんの3倍:2010/04/15(木) 12:50:10 ID:???
そばからplalaが規制かかってるねー
ドコモはなんかもうずっとアウトしてね?
114通常の名無しさんの3倍:2010/04/15(木) 17:30:53 ID:???
ドコモはまだ大丈夫
115通常の名無しさんの3倍:2010/04/16(金) 14:34:11 ID:???
ようやくDoCoM解除されたか
116通常の名無しさんの3倍:2010/04/17(土) 16:48:48 ID:???
なんにせよリアル生活を最優先してもらったらいい
ここのために無茶をすることはなイヤッフ
117通常の名無しさんの3倍:2010/04/18(日) 12:57:15 ID:???
あくまでマイペースでおkですよ
118名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/18(日) 20:27:40 ID:???
 時というものは、常に動いていく。
よく時間を川の流れに例えることがあるが、これは実に言い得て妙である。
歴史の大河、そこに人は放り出され、ぷかぷかと浮いている状態に過ぎず、その「流れ」に逆らうことは決して出来ない。
遡行することも、また先へ飛ぶことも、現在の物理科学では不可能だし、
おそらくこれから先、どのように人類が進化しようとも、叶えられることは無いであろう。
そう、この世界に生きる以上は、どう足掻いても「時」は跨げない。
超常の力を持つエスパーであっても。

「本格的に動くよ、皆」
 リボンズ・アルマーク。
超人気アイドルグループ『イノベイター』のリーダーであり、同時に、特殊な能力を持つ特級の陰謀家である。
彼の野望は、今まで誰も実現し得なかった、究極のものである。
それは、人類の全てを統べること。
 過去、地球全てを支配しようと企んだ者は数多く居た。
企みだけでなく、実際に実行に移そうとした者はそこからかなり減るだろうが、
「世界征服」という四文字は、遥か昔から燦然と「野望の頂点」に君臨してきた。
無論、現実にそこに辿り着いた者は皆無である。
人種、思想、文化、宗教、風土……このちっぽけな惑星の上には、数え切れない程に「異なり」が存在する。
これらを全部まとめてその上に立つこと、これは時を飛ぶことと同じく、物理的に可能ではないのだ。
完璧な制度、完璧な統制があれば夢物語ではない、という意見もある。
だが、その完璧も、万人にとっての完璧ではない。
絶対的な「完璧」があれば、とっくの昔に地球は宗教か思想によって、または経済システムによって統一されているはずである。
「歴史は大きく区切られるはずだ、これまでと、そしてこれからとに」
 リボンズの野望は、一言で言ってしまえば、「世界征服」そのものである。
だが、彼は旧来の野心家とはまったく別の方法で世界の頂点に立とうと考えている。
今のよちよち歩きの統一政府を転覆し、新たに絶対的なリボンズ王朝を作ろうとは思ってはいない。
それが不可能なのは、彼も十分承知している。
「我らイノベイターこそが、人類の頂点に立つ」
 完璧な制度も、思想も、宗教も必要ではない。
ただ、「全てを見る眼」があれば、それで彼の野望は達成される。
何処で誰が何を考えているか、何をしているか、その結果がどうなるのか。
それらを見通すことが出来れば、過去の野心家が企んだものとは全く別の「世界征服」が出来る。
「それは、もうすぐだよ」
 薄暗い部屋の中、ゆったりとしたソファーに腰掛けつつ、リボンズは背後に立つ『同志』たちに声をかけた。
ヒリング・ケア、リヴァイブ・リバイバル、ブリング・スタビティ、デヴァイン・ノヴァ、リジェネ・レジェッタ。
リボンズと同じ能力、「脳量子波テレパシー」「老化の抑制」「強化された身体能力」を持つ者たち。
「さて、まずはあの男がかき集めた『道具』を、もとの持ち主に返すことにしようか」
 リボンズは、ソファーから音もなく立ち上がり、部屋の外へと歩き始めた。
その背中に、五人の同志が続く。
ただ一人、リジェネだけがやや歩きだすのが遅れたが、それを咎める者はいなかった。
「さあ、『これから』の始まりだ」
 外の光が、リボンズの身体を包みこんだ―――

 ◆ ◆ ◆
119名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/18(日) 20:35:10 ID:???
「お待たせ、と言うべきなのかな。新型MS(ミカンスーツ)、ようやく手渡せる状態になったよ」
「おおおおおおお」
 プリベンターのメンバー、パトリック・コーラサワー、ヒイロ・ユイ、デュオ・マックスウェル、
トロワ・バートン、カトル・ラバーバ・ウィナー、張五飛、ヒルデ・シュバイカーの七人は、ビリー・カタギリの研究所を訪問の真っ最中。
その目的が何か、最早説明はいらないであろう。
そう、ネーブルバレンシアに代わる、エコドライブ『ミカンエンジン』で動く新型のMS(ミカンスーツ)がとうとう今日、完成したのだ。
「文字通りの新品、ピカピカだよ」
「おおおおおおお」
 実は、MSそのものはちょっと前に稼働可能にはなっていた。
だが、何しろビリー・カタギリが一人で組み上げ、調整を施していたために、「最終的にオーケー」のサインがなかなか出せず、今日までかかったのだった。
新型MSが全て同じ外観で同じ能力だったなら、もう少し早くプリベンターに届いていたかもしれない。
しかし、そこは伊達に天才の冠をいただいてはいない男、ビリー・カタギリ。
コーラサワーやデュオ、グラハムといった個人個人の特性を考えて、それぞれに合ったMS(ミカンスーツ)を造り上げた。
つまりは、完全なる個人専用機となるわけだった。
「起動させるにはボタン一つで済む。一応、指紋認識と網膜パターン認識のチェックもつけてるけど」
「おおおおおおお」
「得物の方も、共通のものからそれぞれの特性に合わせたものまで、ちゃんと用意しておいた」
「おおおおおおお」
 研究所に着いて、地下の格納庫まで連れてこられてこっち、
コーラサワーをはじめ、プリベンターのメンバーの口からは感嘆の「おおおお」という台詞以外が出てきていない。
コーラサワーも、デュオも、五飛だって、素直に感心しているのである。
つまりは、余計な茶々など挟む余地も無いくらいに、ビリー・カタギリの造ったMS(ミカンスーツ)が素晴らしいのだ。
「それぞれの操縦の癖なんかも、模擬戦やシミュレーションのデータを使って生かせるようにしてある」
「おおおおおおお」
「搭載したミカンエンジンはさらに改良を加えたバージョンで、『蜜柑エンジンEX』という」
「おおおおおおお」
「燃料はミカンの皮から精製したものだけど、さらに関節部にもミカンのオイルを使うようにしたんだ」
「おおおおおおお」
「フレームはミカンダニュウム合金ZZ(ダブルゼット)、衝撃吸収性、柔軟性、反発性は前のものに比べて約二倍」
「おおおおおおお」
「さらに関節とフレームの一部に、エネルギーを蓄える効果も付いている。メイン動力が切れても、一分位だけど動くことが出来る」
「おおおおおおお」
「色々と奮発して機能をつけちゃったから、一機ごとの予算が通常のMS(モビルスーツ)の数十倍になっちゃったのが問題点かな」
「おおおおおおお」
 凄いんだか凄くないんだか一瞬わからないが、実際は超凄い。
プリベンターの面々としてはもう感謝感激大感心以外のナニモノでもないのだが、
いずれ細かい能力はビリー・カタギリの説明の他、乗って動かしてから理解することになるであろう。
ちなみに、『蜜柑エンジンEX』とミカンの部分が漢字なのは、「ハイカラでしょ?」というビリーの個人的な考えによるものである。
「しかし、こうして目の前にしてみると、何かこう、ムラムラしてくるな」
 コーラサワーにしたって、何だかんだで素直に喜んでいる。
おもちゃを手にした子供ではないが、根がストレートな男だけに、側から見てるとむしろこういう時はわかりやすい。
120名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/18(日) 20:39:17 ID:???
「ドキドキの間違いだろ」
「メラメラじゃなですか?」
「ウキウキとか」
「ボロボロ、だな」
「ダメダメ、でしょ?」
「いや、バカマヌケアホトンマ、だ」
 ツッコミなんだかそうでないんだかわからないが、まあこれもプリベンター。
言い様があまりにヒドイ、という意見はなかったりなかったりなかったり。
「さて、どのMS(ミカンスーツ)もすぐに動かせる状態だよ。どうだい、早速乗ってみるかい?」
「当たり前だのファイヤークラッカーだぜ!」
 ビリーの提案に、即座に返答するコーラサワー。
もちろん、ガンダムパイロット達も異存はない。
何しろ自分達の新たなる相棒なのだ、開発を知らされてから今日まで結構時間がかかったこともあり、誰もがウズウズしている。
「じゃあ、ここから運び出すのを手伝ってくれるかな。トレーラーはあるよね?」
「ええ、ちゃんと借りてきてあります」
「あと、場所の確保も出来ている」
 受領のサインも何もなく、こうしてあっさりと、新型MS(ミカンスーツ)はコーラサワー達のものとなった。
あくまでビリー・カタギリの個人的な「支援」というカタチなので、現場においては複雑な事務処理は存在しない。
無論、プリベンターは公的な組織であるから、レディ・アンが必要な手は全てうってある。
「よし、それじゃお前ら、とっととMS(ミカンスーツ)を運び出そうぜ!」
「お前が仕切るなよ。この場の責任者はカトルになってるんだぞ」
「関係ねえよ、そんなの」
「いや、気にしろよ一応」
「さあさあさあ、やろうぜ模擬戦!」
「聞いちゃいないな、まったく」
 デュオは溜め息をついた。
その横で、カトルが苦笑しつつ頬を人差し指で掻いている。
こういう時でも、コーラサワーはコーラサワーで、プリベンターもいつものプリベンターだ。
「ともかく、行くとしよう」
「ああ、これでやっとこちら側から打って出ることが出来る」
「そういうことだな」
 デュオ達は歩き出した。
まずは、トレーラーを格納庫の出口に寄せなければならない。
 新型MS(ミカンスーツ)、それは戦うための、統一政府の安定と人類の平和を守るための盾であり、剣。
その出番は、近い。

 ◆ ◆ ◆
121名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/18(日) 20:45:10 ID:???
 コーラサワー達がカタギリ研究所でワイワイとやっている頃、
プリベンター本部では、残留したサリィ・ポォとミレイナ・ヴァスティが来客の応対をしていた。
いや正確には、これからするところ、だった。
「……ミレイナ」
「はあい、何ですかあ」
「この件について、彼女は何か他に言ってた?」
「レディさんですかあ、いいえ、私は何も聞かされてないですぅ」
 プリベンターの応接室には現在、五人の人間がいる。
彼らは肩書も違えば、社会的な地位も違う。
本来なら、こうしてプリベンターの本部に同時に訪れることはまず無い面子である。
「他に、っていうことは、その前に何か言われたんですかあ?」
「そりゃあ事情説明はね。ただ……」
「ただ?」
「ただ……」
 サリィは言葉を止めると、湯呑みを手に取り、一口お茶を飲んだ。
ミレイナが淹れてくれたばかりなので、十分な熱さがあり、喉が心地よい。
「彼女はともかく、私自身の判断が」
「?」
「どうすればいいのか、どうなってるのか、それがなかなか見えてこないのよ」
 サリィはプリベンターでは、ナンバー2にあたる。
もっとも、ガチガチの上下関係があるわけではない。
トップのレディ・アンが決めたことに、一応口を挟むこともある。
過去にはメンバー構成(特にコーラサワーやグラハムの加入を認めた件)で、文句に近いことを言ったこともあった。
しかし、きちんとした信頼、信用が二人の間にある。
「とにかく、会うしかないわね」
 レディから受けた説明は、納得に足りるものだったし、それについてはとやかくはサリィにはない。
ただ、現場を預かる立場の人間として、どう扱っていけば良いかだけが、悩みどころなのだった。
「はぁい、じゃあ、誰からにしますですぅ?」
「……誰からにしたらいいと思う?」
「……乙女の勘はこういう時には働かないみたいですぅ」
 応接室にいる五人。
人類革新重工の商品開発部、通称『開発超部』のソーマ・ピーリスと、アンドレイ・スミルノフ。
マイスター運送の社長スメラギ・李・ノリエガと社員の刹那・F・セイエイ。
そしてJNNTVの報道アナウンサー、絹江・クロスロード。
ソーマとアンドレイはミカンエンジンの件やアザディスタンの件、
マイスター運送は、グラハムやジョシュア・エドワーズを「持ってきた」ことがあり、
絹江はアリーにさらわれた時、プリベンターが助け出した(また、レディが取材を受けたこともある)。
それぞれ、かつてプリベンターと関わったことのある人物ばかりである。
「いっそのこと、全員まとめて会うってのも手かしら」
「お話が速く進むから、そっちの方がいいかもしれないですぅ」
「何にせよ、待たせっ放しには出来ないわね」
 サリィはもう一口、お茶を飲んだ。
このお茶を飲みきるまでは、待たせてもいい。
そう思いつつ。

 ◆ ◆ ◆
122名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/18(日) 20:50:48 ID:???
「急げ、急げジョシュア! 急げと言った!」
「急げったって無茶ですよ、道なんでないでしょうが!」
「喝ッ! 我が進むところは全て道! 切り拓いて走れ! それが人生也!」
「アンタの人生はそれでいいかもしれませんけどね! 俺まで巻き込まんで下さい!」
「む、ジョシュア気をつけろ。右手の藪にマムシが見えた」
「ええええええ!? ちょ、ま」
「む、あの木の枝にぶらさがっているのはスズメバチの巣か?」
「のおおおおお!? おま、その、は、とっとと行きましょう! 降りましょう!」
 さて。
新型MS(ミカンスーツ)がプリベンターにやってくるこの晴れの日に、
カタギリ研究所にいなかったプリベンターのメンバーが、若干二名いる。
「おお何だ、速く走れるではないか」
「痛い痛い、何かトゲのある草に突っ込んだ」
 それは、グラハム・エーカーとジョシュア・エドワーズ。
で、何故この二人が今日、MS(ミカンスーツ)の受け取りにいなかったのか。
全ての原因は、グラハムの『我慢弱さ』にある。
「だいたい、アンタがじっと研究所で待ってりゃ良かったんですよ! 一晩くらい我慢出来るでしょうが!」
「ランニングをしていれば、すぐに朝になると思ったのだが」
 昨晩、グラハムは当然と言うか何と言うか、カタギリ研究所に詰めていた。
MS(ミカンスーツ)の受け取りは明日、プリベンターとしてのスケジュールは守らなければならない。
だがしかし、100%に近い状態の新型が手を伸ばせば届く距離にある。
その現状に、とうとう彼は耐えきれなくなった。
ので、走り出した。
ランニングをすることによって、気持ちを落ち着かせようと考えたのだ。
また、走っていれば、時間も経っていく。
「近くの公園でも河川敷でも、どこにだって適当な場所あるのに! 何だって山まで走ってくる必要が!?」
「それだけ抑えきれぬ力が身体にあった、というわけだ」
「つきあわされる方の身にもならんかーい! マジで背中を狙うぞ、アンタ!」
 研究所の仮眠室に寝ていたジョシュア(当然、グラハムが無理矢理連れてきていた)を叩き起こすと、行くあてもなく飛びだした。
で、ジョシュアを引っ張りつつひたすら脚を動かし続けた結果、気付けばどっかの山奥にまで来てしまっていた、という次第であった。
「いかん、予定の時刻を過ぎてしまった」
「痛い痛い、岩にぶつかったあ」
 道を見失い、ふもとに向かって、藪の中やら林の中やらを真っすぐに走り降りていくグラハムとジョシュア。
もう危険とか安全とか、そういうレベルを軽くぶっちぎっちゃっている。
「む、谷がある。飛べ! ジョシュア」
「飛べるかー! うわ、転ぶ! 落ちる! 死ぬー!」
 超常の力を操るエスパーならまだしも、普通の人間では、どう足掻いても生身で空を飛ぶことは出来はしない。
「飛べないなら止まれ! ゆっくりと岩を伝って谷を降りるぞ!」
「あああ、タイムマシーンくれ! 昨日に飛んで仮眠室から逃げ出すから!」
「過去を振り返るな、ジョシュア! 時は止まらん、ただ進むのみ! 我らもそうだ!」
 山岳救助隊なり警察なりに連絡を入れて助けてもらう、というアタリマエの発想が出ない二人であった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――


 コンバンハ。
一応最終回までの計画とかを立てました。立てましたがそれを守れるかはわからなサヨウナラ。
123通常の名無しさんの3倍:2010/04/18(日) 20:53:36 ID:???
リアルで読ませていただきました、乙!
ついにktkrミカンスーツ、
グラハムお前、一人で走れwww
124通常の名無しさんの3倍:2010/04/18(日) 22:15:50 ID:???
土曜日氏キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
お疲れ様です、気長に待ってるので無理せずドゾー
125通常の名無しさんの3倍:2010/04/19(月) 22:08:09 ID:???
土曜日さん乙です!
リジェネは本編と同じく、離反フラグかな?
プリベンターとの関係者一同は、プリベンターに協力するんでしょうねえ
あと、グラハムとジョシュアは無事に帰ってこれるのかw(多分大丈夫だと思うが)

もう直ぐでクライマックスのようで、これからの展開が楽しみです
126通常の名無しさんの3倍:2010/04/21(水) 00:25:23 ID:???
俺も規制解除来た!
土曜日さん、復活するなり大量投下ありがとうございます!
ハムが静かだと思ったら案の定ジョシュアが災難で大笑いですww
127通常の名無しさんの3倍:2010/04/21(水) 21:58:13 ID:???
保守
128通常の名無しさんの3倍:2010/04/23(金) 23:10:52 ID:???
まったり保守
129通常の名無しさんの3倍:2010/04/25(日) 08:36:18 ID:???
hoshu
130名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/26(月) 00:49:32 ID:???
 模擬戦。
文字通り、模擬の戦いであって、本当の命のやりとりではない。
とはいえ、軍隊においては、統一した行動を取る為、
また緊急の事態に速やかに対応する為に、必ず取り組んでおかなければならないことである。
団体スポーツで紅白戦をするのも、全く同じ理由である。
個人練習で技術は伸ばせても、チームとして動く以上、「実戦」を想定した訓練を行うのは、当たり前のことなのだ。
「イヤッホー! さあさあさあ、やろうぜやろうぜやっちまおうぜ!」
「うるさい奴だな、ホントに」
 プリベンターは今、首府ブリュッセルから少し離れた山間にいる。
ブリュッセルの近くにそんなところがあるのか、などとツッコンではイケナイ。
あるったらあるのである、そういうことにしておくのである。
「さあ、最初に俺に、模擬戦二千回不敗のコーラサワー様にぶっ倒される奴は誰だあ!?」
「何を勝手に最初にやることにしてんだよ」
「もう別にいいと思うよ、デュオ」
 ここはかつては物資の集積所であり、古くは北大西洋条約機構(NATO)も使っていたと言われる、何気に歴史のある場所である。
近年は欧州の政経の一大地であったブリュッセルを「支配」するための要地として、OZが直接管理をしていたところでもある。
山間とは言え、広く切り拓かれており、いくつかある大きな倉庫と事務所を覗いては、
目に見えるのは、山々の木々と茶色で平坦な地面、そして青い空だけである。
OZ時代はここの地下に基地めいたものがあり、さらに倉庫はMS格納庫及び整備工場として稼働していた。
OZが倒れ、統一政府が出来てからは、管理だけを政府の管轄に移し、現在では特に目的をもって使われてはいない。
いずれ政情が安定すれば、民間に譲渡されることになるであろう。
「しかし、昔はここにリーオーとかトーラスがたくさんあったんだな」
「昔と言っても、そんなに遠くのことじゃないですけれどね」
「それが今や、誰も使わぬ無人の地だ」
「ある意味、今の平和の象徴のような場所かもしれんな」
「……歴史のボタンがかけ違っていれば、俺達がガンダムに乗って襲撃をしていたかもしれない、ここを」
 OZが堂々と使っていた。
それだけで、ガンダムパイロット達にとっては、感慨深いものがある。
「おいコラ、とっとと乗れよ! 何のためにここまで運んできたんだよ、MS(ミカンスーツ)!」
 んが、あまりコーラサワーにとっては関係ナイ。
AEUは三国の中でもOZと結びつきが強かったが、彼は別にOZ支持派ではなかった。
むしろ、「何が黄道帯機構だ(OZはOrganization of the Zodiacの略称)、デカイ面してるヤな奴らだ」と嫌っており、
OZが一時地球の支配権を掌握した時も、AEU軍に留まり続けていた(OZ派が多かったAEUでは、かなりの離脱者が出た)。
もっとも、OZ側もコーラサワーのことは「優秀なパイロット」として認めてはいたものの、
「性格に超難有り」として、スカウトの対象にはしていなかったが……。
 ちなみに言っておくと、彼の妻であるカティ・マネキンはOZに誘われたことがある。
無論、彼女は即答で断っている。
グラハム・エーカー、ジョシュア・エドワーズにも引き抜きの手が伸びていたが、
これはユニオン軍が実際に二人にOZの手が届く前にカットしている。
もしかすると、変に上昇思考が強いジョシュアは、場合が場合ならOZに移籍していたかもしれない。
グラハムは……まあ、しなかったであろう。
OZの制服がキモノで、さらにMSが武者風だったらわからなかったかもだが。
ついでにMS(ミカンスーツ)の開発者、ビリー・カタギリも勧誘を受けていたが、これも本人が断っている。
131名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/26(月) 00:53:04 ID:???
「模擬戦模擬戦! みつあみおさげでも坊っちゃんでもちんちくりんでもいい、とにかくかかってこいよ」
 専用機“シークヮサー”のコクピットから身を乗り出し、吠えるコーラサワー。
AUE軍時代も、こうやって相手を挑発していたのであろう。
当時の対戦相手はホント御苦労様である。
そして今のガンダムパイロット達も。
「どうする?」
「誰もいかないのなら俺がいく。構わないな? カトル」
「五飛……」
 ここで手を挙げたのは、張五飛だった。
プリベンターの中では、武闘派でならす男である。
中国拳法をマスターし、彼の専用ガンダムであったシェンロン、アルトロンも近接戦闘に優れていた。
新型MS(ミカンスーツ)“バンペイユ”もその辺りを考慮して作られている。
「穏便に、とは言いませんけど……無茶だけはしないで」
「アイツ次第だな」
 カトルの言葉に、ニコリともせずに五飛は答えると、“バンペイユ”に乗り込むために、トレーラーへと向かった。
サリィ・ポォの不在を受けて責任者となっているカトルからすれば、
完成したばかりの新型MS(ミカンスーツ)を身内同士の模擬戦でいきなり壊す、なんてことはしてほしくはない。
開発者のビリー・カタギリも側にいるので、とにかく「普通の模擬戦」で収めておきたいところではある。
もっとも、そのビリーはと言えば、「いいデータが取れそうだなあ」とノートPC片手にニコニコと笑ってなんかいるが。
この辺りはボンボン気質というか、人が良いと言うか、天然気味と言うか、まあそんな天才さんである、ビリー・カタギリ。

 ◆ ◆ ◆

 プリベンターが模擬戦を始めようとしている頃、ブリュッセルのとあるデパートでは、
キョーアクな傭兵とその部下達が色々と買い物をしていた。
キョーアクな傭兵が誰かって、そんなもん説明せんでもわかるでしょうが、
へいそうです、アリー・アル・サーシェスさんでございます。
「ボス、ボスゥ」
「大きな声でボスはやめろや、目立つだろうが」
「う、すんません、ボス」
「だからボスはやめろっての」
 アリーは今、映像ソフト売り場に来ていた。
この男、ナリに似合わず、コッテコテの人情劇やベッタベタの恋愛ドラマが好きという欠点(?)がある。
彼曰く、「作り話だからこそ、御都合展開が心地良いんだよ」とのことらしい。
現実で不条理なドンパチを繰り返してきた分、架空の世界には真逆なものを求めるのかもしれない。
それに現実は現実、架空は架空と、彼の中では線引きが一応出来ているのであろう(現実でもやってることはトッピョーシもないが)。
「あー、『愛と恨みと信号無視の交差点』はやっぱり三巻だけがねーなあ。DL購入するしか手がねえかあ」
「ですからボス、三人程フィギュア売り場に血走った目ではりついてますけど、いいんすか」
「今日は盗みに来てんじゃねーんだから、欲しけりゃちゃんと金出して買えって言っとけ」
「はあ」
「盗みってのは下準備があってこそなんだよ。わかってるだろ?」
「ええ、もちろんっす」
 ちょっと前、アリーとその一味は、リボンズ・アルマークの陰謀の下、世界各地で盗みを働いた。
価値のある美術品から果ては遊園地のキグルミまで、その量たるや、小さな倉庫が二つ三つでは足りない程である。
これらは、ちゃんと準備を整え、計画を立てて行ったものである。
基本、アリーは衝動的、行きずり的な窃盗はしない。
かつてプリベンターに阻まれたデパートの襲撃にしても然り、改造潜水艦で挑んだ海産物密漁にしても然り。
132名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/26(月) 00:56:34 ID:???
「でもですねえ、何か限定品らしくて、結構な値段がついてるんでさあ」
「『赤い首輪と黒い手錠と蒼い恋』も全巻揃ってねーかあ……って、どれくらい高いモンを買おうとしてるんだ、その三人」
「さあ……でも、フィギュア好きからしたらたまんねーもんらしいっす」
 手を伸ばせば届く、目の前にある。
だけどなかなか入手するのに踏ん切りがつかない。
そんなこと、人生にはよくある話である。
アリーとその一味は今でこそリボンズの支援によって一定の金は持っているが、
以前はそれこそ、先述の通り、デパート襲ったり密漁したりせんと暮らしが安定しない程だったのだ。
困窮が長続きしたからこそ、恵まれた(と思われる)今に戸惑いに近い喜びの感情を持つ。
例えて言うなら、

  グリー○ウェル(神のお告げ最強伝説)、ハ○アット(三振マスター)、シー○リスト(穴埋めは所詮穴埋め)→1997年、
  ハン○ン(失策数>本塁打数)、ウィルソ○(身体はデカイ、それだけ)、○ウエル(全盛期はとっくの昔)→1998年、
  ブ○ワーズ(外角に投げてりゃ安全)、ジョン○ン(夏まで男)→1999年、
  タ○スコ(実はまだマシな方だったりする、あの成績で)、ハー○キー(ウリはスイッチヒッター、それだけ)、バ○ル(多分呪術師)→2000年、
  クルー○(オープン番長)、○バンス(どこで活躍したっけ)、ペレ○(名選手の子は名選手ならずな例)→2001年、
  ホ○イト(あだ名はトラのタイソン、だから何)→2002年、
  キ○ケード(見どころはデッドボール)→2004年、
  スペ○サー(意外性の男、と冠がつく時点で……)→2005、6年、
  フォー○(や○きたかじん曰く「何でこんなん取ったの」、岡○監督曰く「アイツ野球わかっとらん」)→2008年、
  バルデ○リス(二軍だけなら……二軍だけなら)→2008、9年
  メン○(良かった、二年で四億の契約を結んでおかなくて本当に良かった)→2009年……。
  普通に貢献してくれたのがア○アス(2002〜4年)と○ーツ(2005〜7年)だけなんじゃあ悲しいんじゃあ、
  だけど今年はちゃうんじゃあ、ブラ○ル(2009〜)とマ○トン(2010〜)で優勝じゃあ日本一じゃあくはははは。
  ……多分、きっと。
  どうしよ、どうなるんや今年。

そんな「NGワードは『バースの再来』」な阪神ファンの気持ちに似ていると言えようか。
よくわからんと思われたなら、お近くのトラキチにお聞き下さい。
多分一時間は話し続けると思います。
「まあ、とにかく今日が最後の休暇だ。ハメを外さん程度に楽しめ、って全員に伝えとけ」
「了解っす、ボス」
「だから、大きな声でボスはやめろっつの」
 手を振って部下を追い払うと、アリーは再び映像ソフト選びに戻った。
真剣な顔で恋愛ドラマのコーナーをうろつく彼は、とても血と銃弾が降り注ぐ戦場を駆け抜けてきた傭兵には見えない。
ただ、がっしりとした体つきと、見る者にはすぐわかるオーラを放っているので、やっぱり場違いっちゃ場違いではある。
133名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/04/26(月) 01:00:11 ID:???
「そう、休暇は今日で終わりなんだからよ」
 昨日、アリーはリニアトレイン社総裁のラグナ・ハーヴェイと共に、リボンズ・アルマークから『命令』を受けた。
傭兵にとって、雇い主の指示は絶対の拘束力を持つ。
無論、アリーは戦場で、はたまた契約の場で、「自主的判断」によって雇い主を裏切ってきたことは何度かある。
だがそれはあくまで非常の時であり、いつでもホイホイと掌を返しているわけではない。
アリーが、彼自身が与しやすい、または組んでおもしろいと思っている者を雇い主に「選んで」いるという事実もある。
そしてリボンズ・アルマークは、金払いの良さから言っても、
またやることの過激さと言っても、彼には実に望ましい相手なのだった。
例えば、昨日側にいたラグナ・ハーヴェイなど、小心過ぎて、「雇い主」としてはアリーには物足りない。
「次の休暇はいつ取れるかわからねえんだ、なあ、大将?」
リボンズの陰謀が成功すればさらなる金が手元に転がりこむことになる。
リボンズの真の目的が何であれ、当面は裏切るだけの材料が無い。
向こうから手を振りほどいてきたならば、その手を打ち返してやればいいだけのことである。
陰謀が成って、それでもし切り捨てられたら、「別の雇い主」を見つけて「仕返し」をすればいい。
仮に陰謀が失敗したとしても、そうなればなったで、世界は渾沌とするであろうし、アリーのような人間の活躍の場が結果的に増えることになる。
「ふ、ふはは」
 映像ソフトを抱えて、アリーは笑った。
少なくとも、今は彼はリボンズ・アルマークという雇い主に満足している。
 向こうが必要としている限り、その手足となって働く。
賽の目は希望通りに出るとは限らないが、だからこそおもしろい。
それが現実ってやつだ、架空の話なんかじゃあ、とても太刀打ち出来ないくらいに。
「さぁて、飯はどうすっかな」
 アリーが受けた命令は、簡単なものではない。
だが、だからこそ、彼にとってはおもしろい。
そして、さらにおもしろくなる要素が絡んできそうな気配もある。
プリベンターの介入、という―――


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の模擬戦は続く―――




 コンバンハ。
アルェー? はやくも予定に遅れがががサヨウナラ。
134通常の名無しさんの3倍:2010/04/26(月) 22:40:42 ID:???
土曜日さん乙!!
そろそろアリーが動き始めるのかな?

あと、阪神ファンなんですか?
135通常の名無しさんの3倍:2010/04/27(火) 18:57:46 ID:???
不定期さんや模倣さんはどうなさっているだろう
136通常の名無しさんの3倍:2010/04/28(水) 12:31:32 ID:???
アリー・アルェー・サーシェス
137通常の名無しさんの3倍:2010/04/30(金) 22:10:59 ID:???
保守
138通常の名無しさんの3倍:2010/05/01(土) 17:58:26 ID:???
しかし住人も職人も少数ながらよく続くな、このスレ
原動力はいったいなんだ
139通常の名無しさんの3倍:2010/05/03(月) 17:05:10 ID:???
>>138
コーラに対する思いではないかと
140通常の名無しさんの3倍:2010/05/03(月) 20:51:24 ID:???
test
141不定期.com:2010/05/03(月) 22:41:53 ID:???
「グラハム、どうしてもいってしまうの?。」
「ああ、夢を追うためにな。」
うつろな目で海辺の駅のポスターをみつめる彼女をグラハムはみつめていた。
汽車がホームに入ってきた。
汽車に乗り込むグラハムに彼女は「いかないで」という目を向けていた。
汽車が動き出したとき、彼女は汽車のデッキにつかまり、乗り込もうとしたが、
つまづいて倒れこんだ。
 グラハムはそれを見て、思わず飛び降りた。
「グラハム…。」彼女は傷つき枕木の上に倒れこんだグラハムに顔を埋め、泣きじゃくった。
「このままでいい・・・。ずっと・・・。」グラハムはチケットを破り捨てた。
チケットは、海風にのって高々と舞い上がっていった。

「はい、御苦労さま。 いまのTAKEでいきます。」 監督の声がひびいた。
「あの野郎、普段は武士道だの、ミカンスーツだのいってるくせに、結局女が絡むとああいう本性が
あらわれるんかい。」コーラサワーが毒づいていると、「役者魂といえないのかい。
むしろ、女にだらしがないのは、おまえさんのほうだろ。」とグラハムのおかえし、
「失礼なことを言うなよ。おれはまんべんなく美女に愛を振りまくのさ。これこそ我がフランスの
博愛精神の体現じゃないか。」と自分の女こまし精神を国是と無理やり絡ませる強引さは呆れるというよりも
逆に感心してしまうほどだ。
 「何やら二人とも、わめきあっているようだが・・・。」とトロワ。
 「ほっとけ。どうせ女をめぐっての痴話げんかだろうよ。」とバッサリ斬る五飛。
「でも、二人とも女性が絡むと、演技の迫力が増すのはなんなんでしょうね。」とカトル。
「まあ、両者とも女には目がないというが、ありゃ天性のものだろうて。それよりカトル、
今度はおまえさんが大変な役目を負わされそうだぜ。」と新しい脚本をヒイロから
から手渡されたカトルは、一目見て顔から血の気が失せるのが傍からみてもわかった。
そこには、稀代の美少年マニアのマリナ・イスマイールの名前がヒロイン役のところに
書かれていたのである。
 そしてカトルはそのヒロインを助け出し、敵と戦う役である。
絡みも多く発生し、逃れられそうにもない。
「これはやはり逃げられないんですか。」とカトルが問うと、「マリナはうちのスポンサーだし、
この映画のスポンサーにもなっている。逃げられんだろう。」とデュオはあきらめ口調でいった。
なんといっても、どこの世界でも金を出すやつが一番強い。 これは古今東西洋を問わない真理である。
さて、5人はどうやってこの危機を乗り越えるのか。
 それはみなさまでご想像してください。
_______________________________________________

どうも、不定期です。土曜日さまがいよいよクライマックスへ向かっておられますが、
私が邪魔してはならないと思い、規制も相まって書き込みができませんでした。
 土曜日さまの世界とは分離しますが、ネタができ次第書き込みいたしますので、
どうぞよろしくお願います。
 それでは今回は失礼します。
 土曜日さま及び皆様方のご健勝をお祈りします。
142通常の名無しさんの3倍:2010/05/04(火) 07:50:32 ID:???
乙〜


マリナ様の扱いがどこぞの年増妄想事務員みたいだw
143通常の名無しさんの3倍:2010/05/05(水) 22:31:28 ID:???
>>141
乙です
このスレのマリナは変態だなあw
144通常の名無しさんの3倍:2010/05/07(金) 11:12:33 ID:???
不定期さん乙!
145通常の名無しさんの3倍:2010/05/09(日) 11:00:08 ID:???
保守
146名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/09(日) 22:34:13 ID:???
「どう考えても俺の勝ちだっただろ? な、そうだろ?」
「引き分けだよ」
「何でだよみつあみおさげ! お前の眼は節穴か!」」
「そうだとしても、アンタ以上に節穴じゃないと思うね」
 新型MS(ミカンスーツ)の模擬戦は、滞りなく進んでいた。
いや、約一名滞らせる人物がいるのだが、まあ誰かは敢えて言うまい。
しかし、二十も年下の人間にアンタ呼ばわりされる元エースってのもどうなんだか。
アンタ呼びをしたデュオ・マックスウェルの態度も失礼と言えば失礼だが、
言われた方、パトリック・コーラサワーにも問題があるっちゃあるっちゃ大ありなわけで。
何つーか、ねえ。

「だって俺の方が押してたじゃねーか!」
「主観の問題だろ、結局」
「あのまま続けてたら俺が勝ってた! さっきも、その前も! 続けてれば!」
「終わった後のタラレバは無意味だな」
 で、さっきからコーラサワーが何をギャアギャアと言っているのかというと、模擬戦の勝敗についてである。
新型MS(ミカンスーツ)のテストも兼ねて先程からここ、
元物資集積所だった空き地にてプリベンター同士で模擬戦をしているのだが、
何しろ遮る物もなく、敷地そのものも狭いと来れば、
そんなもん近距離型に思いっきり有利なわけで、
遠距離からの射撃タイプであるトロワの『タンジェリン』とか、
一撃離脱型のヒイロの『タンゼロ』などはどうしても制限上、不利になっちゃうのだ。
かくして近接戦闘に優れた五飛の『バンペイユ』、
瞬間的な機動性に優れたデュオの『マンダリン』が基本、
どの相手にも押し気味で模擬戦を進め、
指揮官機型のカトルの『シトロン』、そして件のコーラサワーの万能型『シークヮサー』は可もなく不可もなく、
という展開になるのは仕方が無いっちゃ仕方が無いわけで。
ほいで、時間も有限であるわけで、延々と決着がつくまで模擬バトってるわけにもいかず、
また受け取ったばかりの新型MS(ミカンスーツ)を初日でぶっ壊すわけにもいかず、
ある程度やりあったらそこでひとまず区切りをつけるようにしているので(カトルがそう決めた)、
それがどーにも「模擬戦2000回不敗でスペシャルなんだよお」なコーラサワーにしてみれば消化不良といった次第なのだった。
「別に引き分けでいいだろ、負けなけりゃ不敗の記録も続くじゃないか」
「そーかもしれねーけど、スッキリしねーんだよ」
「別にスッキリするために模擬戦してるわけじゃないし」
 とまあ、一部の者に不満が残った模擬戦ではあるが、一通りの対戦を終え、
どのパイロットも、新型にかなりの手ごたえを感じていた。
かつてのガンダム程ではないにしろ、ネーブルバレンシアと比べると格段に全ての面がパワーアップしているのがわかったし、
何より、自分の得意分野に合わせて作られているというのが実にやり易かった。
 全機がまとめて交戦状態に突入する機会があるかどうかはさておき、
索敵能力と防御力に優れたカトルの『シトロン』が本陣を固め、
遠距離からトロワの『タンジェリン』が時に狙撃で一発必中を、時に牽制射撃で足を止め、
中距離からヒイロの『タンゼロ』が一撃必殺を狙って入りと退きの激しい攻撃を行い、
隠密性の高いデュオの『マンダリン』が敵陣を撹乱し、
近距離では五飛の『バンペイユ』が格闘で敵をなぎ倒せば、
かつてのガンダム時代と同様に、高い戦果が期待出来るというものだった。
147名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/09(日) 22:36:16 ID:???
 一方、遠近両用のコーラサワーの『シークヮサー』、
近接特化のグラハムの『カラタチ』、
完全サポート機のジョシュアの『紅鮭』は、時と場合に応じて投入される遊軍というべき色合いが濃い。
もともと、他のパイロットと連携面において劣る彼らであるからして、
集団戦よりも個人戦、統一した行動よりも単騎の方が実力を発揮し易いのだ。
この点については、どちらにも対応出来るガンダムパイロットよりかは、指揮官としては使いにくいと言えるだろうか。
まあ三人とも元軍人だから、本来ならゲリラ的存在だったガンダムパイロットにこの面が負けてるのは本当はアカンわけだが。
とにかく、基本的には今までと同様(多分に偶然の要素を含んでいたが)、
コーラサワーとグラハムは『決戦用』として使われるのはほぼ確定的と言えた。
ジョシュアは知らん、サリィの護衛でもしててもらうべきでしょう、適当に。
つうかまあ、グラハムとジョシュアは今、いませんけどね、この場に。
模擬戦やってませんけど、どの道二人の役割はもう確定的に明らかですわ、ハイ。
「いやあ、やっぱり実際に人が乗って動かすと違うよね」
 新型MS(ミカンスーツ)を作った男、ビリー・カタギリは素直に喜んでいた。
コーラサワー達が乗って動かしたことで、かなりのデータが手に入ったのが嬉しかったようである。
仕事熱心という表現はやや違う気もするが、
少なくとも骨惜しみせず、嫌がりもせずに積極的に取り組む姿勢は、開発者として十分に立派と言えた。
と言うか、八割方趣味の範疇なんだろうけど。
「蜜柑エンジンの方はまだまだ改良の余地があるからね、今後も強化が図れるよ」
「かつてのMS(これはモビルスーツ)レベルまで?」
「時間をかければ、あるいはね」
「でもそれだと『兵器』になっちゃいますね」
「今でも十分兵器な気もするけどな」
 ポットに入れて持ってきたお茶で一息入れつつ、
デュオたちは模擬戦を終えたばかりでまだ余熱の残るMS(ミカンスーツ)を見上げた。
隠密同心のプリベンターが使うからこそ、裏からの抑止力として、また緊急時の鎮静力として有効だろうが、
これがもし、「戦争をしよう」と思う者の手に渡れば、一気に『殺人兵器』になり下がる。
今でさえ、カトルと五飛が言ったように、「ほとんど兵器と同じ」なのだ。
何しろ、人の何倍も大きく、パワーがある。
ちょいと腕を振らせれば十数人が軽く吹っ飛んでいくだろうし、
ひょいと足を動かせば二、三人はまとめて踏みつぶせるのだから。
人類の恒久的な平和を目指す統一政府において、やはりプリベンターは異質な存在ではあるのだった。
現実に治安を守る警察や警備隊があるわけだが、これらの組織は基本、「戦争する」ことを目的としていない。
プリベンターが一度強行すれば、いくらでも「OZの代わり」に成り得るのだった。
148名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/09(日) 22:38:04 ID:???
「新しい力を得て、正直気分は高揚している」
 太陽の光を受けて、眩しく輝く『相棒』に視線を送りつつ、ヒイロは呟いた。
口調に熱は籠っているが、同時に冷静さもまた、あった。
「だが……こいつが活躍するようなことが無い方が、世界にとっては良いんだろう」
 ガンダムパイロット達は、一様に頷いた。
新型MS(ミカンスーツ)が度々現場に出撃するような事態は、
つまりはそれは世界が紛争や事件に塗れている証拠になってしまうのだ。
「とは言え、やはりこいつの力は今は必要だ」
「そうですね……」
「統一政府は最初の一歩を踏み出し、ようやく二歩目に移ろうとしている最中だ」
「歩くのを覚えた幼子と同じ、いつ転ぶかわからない……」
 二度の世界大戦、冷戦、経済戦争、国際連合の有名無実化、
世界の三国分立化、OZの台頭を経て、ようやく地球圏は一応の安定を手に入れた。
ここまでの歴史は、圧倒的に「争いあっていた」時間の方が圧倒的に長い。
更生前のマリーメイア・クシュリナーダがリリーナ・ピースクラフトに語った通り、
人類は争いのワルツを繰り返し続けることで、生物としての主張である進化を行ってきた側面があるのだ。
統一政府の足並みが不揃いになれば、主義や思想のあり方について銃剣を用いるワルツの時代に再び戻りかねない。
そしてまた、それを望む人々も、実際にいるのだ。
少なくない数で。

 ◆ ◆ ◆

「ねーねーにぃにぃ」
「おいネーナ、子猫じゃねえんだから。鳴き声かよ」
「え? 何? 子猫? そんなに私って可愛らしい?」
「そりゃお前……妹のことが可愛くない兄がいるか」
「きゃあ、嬉しい嬉しい。ピースピース」
 ブリュッセル中央部にある、リニアトレイン駅のホームに、二人の男と一人の女が、トレインを待っている。
ヨハン・トリニティ、ミハエル・トリニティ、ネーナ・トリニティの、三兄妹である。
普段はトリニティ運送という、小さな運送会社を営んでいる彼らだが、実は、隠された裏の顔を持っている。
アリー・アル・サーシェスやラグナ・ハーヴェイと同じく、
この三人も、『イノベイター』のリーダーであるリボンズ・アルマークの部下なのだ。
「ミハエル、ネーナ、あまり騒ぐな。ここが駅だということを忘れるな」
「いや、さすがに忘れないって兄貴」
「そーだよヨハンにぃ、私、ちゃんとジョーシキは弁えてるつもりだし。ミハにぃは知らないけど」
「そうそう俺は知らねえけど……って、何でだよネーナ!」
「きゃはははは」
「だから静かにしてろと言ってるだろうが」
 この三人、見かけはそれ程似ていない。
似ていないが、れっきとした兄、弟、妹である。
ぶっちゃけて言えば、彼ら三人はデザインベビーなのだ。
簡単な話、特定の親を持たない人工生命体というわけだった。
149名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/09(日) 22:40:15 ID:???
「それで? さっきは何を言いかけてたんだ、ネーナ?」
「え、何の話? ヨハンにぃ」
「……『ねーねーにぃにぃ』と呼びかけてきたのはお前だろう」
「あ、そうだったね」
「ジョーシキを弁えてる、ねえ。言ったことを忘れてる奴がジョーシキたぁ、ジョーシキが腹抱えて笑うぜ、きっと」
「むー! 何よ、ケンカ売ってるの? ミハにぃ」
「だから静かに……で、何なんだネーナ」
 三人は、今はトリニティ運送の制服は着ていない。
皆私服である。
一応、『ジョーシキ』に則った服装をそれぞれしている。
長兄のヨハンが「目立つ格好はするな」と命令したからだが、
そうじゃなけりゃネーナはヘソ丸出しルック、ミハエルは不良系ルックだっただろう(それぞれの趣味である)。
まあ下手すりゃヨハンも半ズボンだったかもしれないわけで、
そうなりゃなったで目立つの目立たないので済むレベルではなかったかもしれない。
「バナナっておやつに入る?」
「何だと?」
「だから、バナナ」
「……」
 ヨハンは絶句した。
妹が何を言っているのか、瞬時に理解出来なかったのだ。
代わりに反応したのは、ミハエルの方だった。
「バッカお前、バナナは含まねえに決まってるだろ!」
「そうなの? ミハにぃ」
「そんなの世界のジョーシキだぜ!」
「ホント? ヨハンにぃ」
「あ、こらネーナ、俺の言うこと疑うのかよ!」
「ミハにぃのジョーシキはあてになんないもん」
 弟と妹のやりとりを聞きつつ、理性を回復させたヨハンは溜め息を一つついた。
「ネーナ、我々は遊びに行くんじゃないんだぞ」
「え、そんなことわかってるよ、お仕事に行くんでしょ」
「そうだ。だからおやつがどうのとかバナナがどうのとか……」
「でも、でもねヨハンにぃ」
 ネーナはぴょこんと跳ねると、ヨハンの前に回り込み、その顔を見上げた。
ミハエルがついさっき、ネーナのことを子猫に例えたが、成る程、どことなくそんな雰囲気が彼女にある。
「こうやってさ、三人で遠くに行くのって、久しぶりじゃない?」
「……」
「お仕事なのはわかってるけど、でも、何だか楽しくてさ」
「ネーナ……」
 三人は、人工的に命を造られ、そして人工的に身体能力を強化された。
ソーマ・ピーリスとはまた別の施設だが、生まれた目的はまた同じだった。
幼い頃から軍の施設において訓練を受け、そしてその後、色々とあって、『イノベイター』に拾われたのだ。
「やることやったらさ、時間って取れるのかな」
「時間?」
「そ。今度のお仕事は大きいでしょ? リボンズが言ってたもんね。だったら、終わったら休みを貰っても別にいいよね」
「お、そりゃいいな! がっつり遊びたいぜ、兄貴!」
「……」
150名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/09(日) 22:41:07 ID:???
 子供のように顔を輝かせるミハエルとネーナ。
ヨハンは、二人の気持ちは痛い程によくわかった。
自分もそうだが、この世界に『強制的』に生を受けてからこっち、人並みの旅行や遊びというものは、ほとんど無縁だったのだ。
軍の施設がOZによって接収される寸前、彼ら三人は軍の関係者によって、表に出された。
何のことはない、どさくさ紛れに売り飛ばされたのだ、その関係者の小遣い稼ぎの為に。
そして、リニアトレイン社のラグナ・ハーヴェイに買われた。
リニアトレイン社の総裁として裏で色々と動くための駒が欲しかった、ということだが、結局ラグナの『道具』としての期間は短かった。
ラグナのさらに上の立場であるリボンズ・アルマークが、直々に部下として欲しがったからだった。
「……そうだな。全てが終わったら、リボンズに頼んでみるか」
「ほんと? 話せるぅ、ヨハンにぃ!」
「おやつはバナナどころじゃねぇな、こりゃ!」
「だから騒ぐなと言うのに。いいか、終わってからだぞ」
「オッケー! ネーナは頑張っちゃうよ!」
「俺だってやってやるぜ!」
「何度同じことを言わせるんだ、大きな声を出すな、目立つ」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐ三人。
周囲の客は、マナーを守らない奴等だ、といった感じでトゲのある視線を送っているが、
しかし、そこに異常さまでは感じなかったので、特に何もしなかった。
これくらいなら、空港でも港でも、はたまた町中なら、どこにだってある『光景』なのだから。
「行動についての詳細な内容は、現地で説明する」
「え、別に今でもいいじゃない」
「……俺達は今からニリアトレインの客になるんだ。それを考えろ」
「あ、そっか」
「でもラグナの野郎もケチ臭ぇよな、何で用意したのがリニアトレインのチケット何だよ、特別に輸送機でも飛ばせば簡単だろうが」
「騒がれずに内部に入るには、一般人という立場が都合がいい。そういうことだ」
「そりゃそーかもしれねーけど、チケットだって普通の指定席だぜ、これ」
「まあ、それは確かにな」
 三人のポケットには、薄いカード型のチケットが入っている。
昨日、リボンズより直接命令を受けたラグナ・ハーヴェイが三人の為に用意したものだが、
普通の指定席にしたのは、さて、ラグナがケチな為か、それともまた別の意図があるのか。
「お、来た来た、時間通りだな!」
「世界の経済を支えるリニアトレインだ、秒単位はともかく、分で遅れることはない」
「さ、乗ろう乗ろう、にぃにぃ!」
 カード型のチケットの中には、客の名前、トレイン番号、席番号、各駅の発車及び到着時刻、その他諸々がデータとして入っている。
席に用意されたリーダーに差し込めば、クラスに応じてサービスを受けることも出来る。
そして、三人のチケットにある、行き先とは。
「はしゃぐなよ、二人とも」
「私は大丈夫だよ、ミハにぃは心配だけど」
「俺!? 俺は騒がねえよ!」
「もう騒いでるよ」
「たいした時間はかからないが……もう一度言う、目立つなよ? アザディスタンまでは」
 そう、アザディスタン。
マリナ・イスマイールが代表を務める、中東の自治区―――


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
151名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/09(日) 22:42:13 ID:???
 GWは皆さんどう過ごされましコンバンハ
多忙のために間が開いてしまい申し訳ありません。誤字脱字等ありましたらごめんなサヨウナラ。
152通常の名無しさんの3倍:2010/05/10(月) 22:31:44 ID:???
土曜日氏乙〜
トリニティ兄弟は、アザディスタンで何かやらかすのかな
そして、プリベンダーの出番と
153通常の名無しさんの3倍:2010/05/11(火) 09:27:06 ID:???
コーラさん、映画での出番があればいいなあ
154通常の名無しさんの3倍:2010/05/13(木) 22:11:18 ID:???
>>153
カティが出てくることだし、普通に出てくるんじゃないかな?
155通常の名無しさんの3倍:2010/05/14(金) 12:14:04 ID:???
何度も言うようだが、ネットラジオで黒田氏直々に出番あるって言われたんだから
156通常の名無しさんの3倍:2010/05/16(日) 09:23:23 ID:???
保守
157名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/16(日) 22:26:57 ID:???
すんません、ちょっと次回遅れます
158通常の名無しさんの3倍:2010/05/17(月) 17:38:12 ID:???
こういってはアレだが、板自体も過疎気味だし、
映画も公開が決まってるし、無理に一週に一投下にこだわらんでもいいんじゃない
マイペースであれば
159通常の名無しさんの3倍:2010/05/17(月) 22:10:37 ID:???
>>157
無理せずに、マイペースで充分ですよ
160通常の名無しさんの3倍:2010/05/18(火) 14:48:59 ID:???
まあぶっちゃけ、スレがたったとき、確か00の初回直後だっけか
一発系のネタスレ程度で終わると思っていたが、ようもここまで続いたもんだよ
そういう意味でもコーラサワーの一種のすごさなのかいな
161通常の名無しさんの3倍:2010/05/20(木) 22:08:42 ID:???
保守
162通常の名無しさんの3倍:2010/05/21(金) 18:38:42 ID:???
定期的に投下する職人
定期的に保守を試みる住人
定期的にガンクロ倉庫で編集をするまとめ人

少ないながらもそれぞれがきちんと存在するから今の今まで落ちることなく続いてきた感じはある
163通常の名無しさんの3倍:2010/05/23(日) 15:34:50 ID:???
保守
164名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/23(日) 23:32:22 ID:???
「かーっ、うめー!」
 パトリック・コーラサワーはナプキンで口を拭うと、満足げに息を吐いた。
「やっぱり働いた後はカレーだな!」
「働いたのか?」
「働いただろ!」
「そうか、働いたのか」
「何が言いたいんだよ、おい」
「いや、別に」
 プリベンターは今、首府ブリュッセルより少し離れた山間の平地で、
ビリー・カタギリより譲渡された新型MS(ミカンスーツ)のテストをしている。
そして、テスト―――すなわち模擬戦―――も一段落ついたので、
パトリック・コーラサワーとデュオ・マックスウェルの漫才……ではなく、ちょっと遅めの昼食を取っていた。

「何杯でもイケるぜ」
「あまり食い過ぎるなよ、三十代」
「三十代は関係ないだろ! つうか、カレーは別腹だ!」
「どこのCMだよ」
 で、どこをどうこねくりまわしたのか知らないが、何故か昼食はカレーということになった。
今回、サリィ・ポォに代わって現場責任者を務めるカトル・ラバーバ・ウィナーは、
最初は弁当形式の食事を用意しようとしたのだが、
発注寸前になって「こういう時はカレーだろ!」というコーラサワーの強引なサイドスピアー、
いや横槍によって変更を余儀なくされてしまったのだった。
何しろ米からルーから野菜、肉に至るまであらかじめ準備されたときたら、もう許可するしかないわけで。
一応他のメンバーから反発の声もあがったが、最終的には「まあカレーなら」と落ち着いた次第。
つまり、余程の下手をうたない限り、誰が作ってもカレーは失敗しない料理、という認識だった。
「もう一杯おかわりくれ、坊っちゃん」
「まだ食べるんですか? コーラサワーさん」
「お前……あとで腹を抱えて転げまわることになっても知らんぞ」
「そうなると俺達も腹を抱えて転げまわることになるな」
 コーラサワーは腹痛で、それ以外は愉快さで、と結構意地の悪い台詞を放ったのは、張五飛。
だが何だかんだで彼をはじめ、ガンダムパイロットも最低二杯はおかわりをしていたりする。
コーラサワーが言うとおりカレーはおいしかったし、
何よりまだガンダムパイロットの面々は十代半ば、育ち盛りの食べ盛りなのだから。
三十代青春真っ盛りなコーラサワーがバクバク食べてるのは、まあ人生是全て食べ盛りなのであろう、きっと。
しかしこの男、中年太りとは無縁であるが、いったい普段はどのような食生活をしているのやら。
今は妻帯者だからある程度嫁のコントロールが入ってるとしても、
結婚前、AEU時代から「お前、軍人にしてはスリム過ぎじゃね?」という体型である。
アニメの身体設定なんてそんなもんだ、と言ってしまえばそれまでではあるのだが。
165名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/23(日) 23:33:23 ID:???
「そもそもお前、カレー作るのに何か手伝ったか?」
「材料揃えたじゃねーか」
「それだけだろうが」
「何言ってるんだよ、材料が無けりゃ料理がそもそも作れねーじゃねーか!」
「……カレー作りをゴリ押ししたのはお前だろうに」
 調理はガンダムパイロットが行い、コーラサワーは見ているだけだった。
自称「何でも出来る」だけに、全く料理が作れないということもないのだろうが、少なくとも積極的でないのは確かだった。
どこの料理部の部長であろうか。
「いやあ、カレーなんて久しぶりだなあ」
 一方、新型MS(ミカンスーツ)の開発者であるビリー・カタギリは、にこやかな顔でカレーを食べていた。
彼も一人で研究所暮らしな為、手料理からはどうしても遠ざかってしまいがちである。
新型MS(ミカンスーツ)を独力でこしらえることが出来るなら、
その気になれば人型メイドロボくらい簡単に作れそうなもんではある。
まぁこの時代、未だ人と同じ大きさの「アンドロイド」は作られてはいない。
公式には。
「ほれ、ポニテ博士も喜んでる。カレーにして正解だろ」
「正解か不正解か、って話じゃない気もするが」
 屋外でカレー、それは確かに「美味い! テーレッテレー」の鉄板のパターンではある。
キャンプ等ではバーベキューと人気を二分、つうか団体で行けばほぼ確実にカレーになる。
飯盒でご飯を炊き、慣れない手つきでニンジンやジャガイモの皮を剥き、
火を着けるのに手間取り、大きな鍋の底に焦げを作り……嗚呼、美しき(?)青春の形。
「さあ、メシを食ったらまたやるぞ!」
「何を」
「何を、じゃねーだろ! 模擬戦だよ、模擬戦!」
「やらないっての」
「何で!」
「最初からそういうプログラムだろ、何聞いてたんだよ」
 デュオは呆れた様子で肩をすくめ、スプーンを皿に投げるように置いた。
紙の皿だったから音は立たなかったが、陶器の皿ならさぞかし乾いた音が鳴っていたであろう。
「嫌だね、俺はやりたいんだよ!」
「無茶言うな」
「やりたいったらやりたいんだ!」
「子供かよ……」
 これが三十代、元軍のエースパイロットの姿だろうか。
ガンダムパイロット達は一様に溜め息をついた。
ああいう大人にはなるまい、その天然色の見本が目の前にいる現状に、いささかの憂鬱さも覚えたりするのだった。
 もちろん、その腕前は皆一定は評価している。
今までのプリベンターのメンバーとしての結果、軍時代の評価、そして先程の模擬戦と、
やはり「デキる」パイロットであるのは、十分にわかっている。
能力の高い者が人格者とは限らない、むしろそうでないことが多いこの世界であるが、
コーラサワー程顕著な例も珍しいかもしれない。

 ◆ ◆ ◆
166名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/23(日) 23:35:52 ID:???
「ふう、ごちそうさまでした」
「お皿をお下げしてもよろしいですか? 姫様」
「ええ、どうもありがとう。カレーライスなんて、久しぶりに食べました」
 さて、所変わってアザディスタン特殊自治区。
その代表を務める、マリナ・イスマイールもまた、昼食にカレーを食べていた。
「あのう、姫様……お味の方は」
「とてもおいしかったわ」
「ありがとうございます。実はうちの息子が作ったもので……」
「あら、では今度厨房に入った新しいコックというのは」
「はい、私の実子です」
「まあ、もうそんなに大きくなったのね」
 アザディスタンは今でこそレアメタルの採掘により、一定の収入があるが、
かつては化石燃料の枯渇とともに、国の経済は凋落の一途を辿り、中東の貧困国の代名詞のように言われたこともあった。
「そう……あんなに可愛らしかった男の子も、もう……」
「時が流れるのは早いものです」
「何ともったいな……いえ、そうですね、光陰矢の如し、とはよく言ったものね」
 マリナと彼女のメイド―――マリナが少女の頃より身の回りの面倒を見てくれていた―――は、
流れ去った時に思いを馳せ、無意識のうちに、陽光差し込む窓に視線を移した。
 アザディスタン王家の姫であるマリナ・イスマイールも今、自治区代表として落ち着いた日々を送っている。
かつて第一皇女として太陽光発電の電力供給権確保を求めて世界中を飛び回っていた時は、
どうにも空回り気味で頼りない、といった印象しかなかった彼女だが、自治区代表となってからは、
完全ではないものの短期間で国内の経済を回復させるなどの功績を上げたことからして、実は結構な商才を秘めていたようである。
「姫様、外線が入っております」
「外線?」
 メイドが去った後、今度は別の女性が執務室の中に入ってきた。
マリナとそう変わらない年齢のように見える彼女は、マリナの謂わば副官のような立場に就いている者である。
かつてのシーリン・バフティヤールの役職に近いであろう。
「誰かしら」
「バフティヤール様です」
「シーリンから!?」
 そして、急に入った外部からの連絡とは、まさにそのシーリンからのものだった。
シーリンは現在、マリナの元を離れ、反省府組織カタロンに身を置いている。
過去の行いを全力で反省することで、未来への教訓にする。
いったいどういうところなんだかわからないが、とにもかくにも立派に政府の中央にある公的な組織なわけで、
ある意味、立場的には今はマリナより上、とは言えた。
167名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/23(日) 23:38:41 ID:???
「何かしら?」
「詳しい話は直接、ということです」
「わかりました。では、こちらに回線を……」
「すぐにお繋ぎします、姫様」
 なお、マリナは未だにアザディスタンの人々から『姫様』と呼ばれている。
OZによってアザディスタンが国家として解体され、その王家としての社会的立場も失われたので、
マリナの身分は『一般人』と同じなのだが、それでもアザディスタンの人々は、親しみを込めて『姫様』『マリナ姫』と呼び続けている。
彼女に近い人物で、堂々と敬称を省いて呼ぶのは、現在通信を試みてきているシーリンと、そして旧知の刹那・F・セイエイくらいであろうか。
『お久しぶりね、マリナ』
「お久しぶり、シーリン。前にお話ししてからもう一カ月以上になるかしら」
『そうね、それくらいになるかもね』
 マリナ、そしてシーリンともに、それぞれに語りかける眼差しは優しい。
遠く離れていても、モニター越しであっても、二人の間には友情、そして信頼という名の紐が固く結ばれている。
「それで、シーリン……」
『マリナ、色々と話したいことがあるのだけれど』
「……ええ、わかっているわ。貴女がいきなりの時は、本当に重要だってことだから」
 笑顔から真剣な表情になり、一拍の呼吸を置いて、シーリンはマリナに『用件』を話し始めた。
マリナに、アザディスタンに、そして世界に大きく関わってくる、とても大切なことを―――

 ◆ ◆ ◆

「美味! まさしく美味! この胃袋に流れ込むカレーに覚えるのは、まさに感動の二文字! モグモグ」
「あー、人心地ついた。このまま遭難したらどうしようかと。パクパク」
「落ち着いて食えよ……。胃がびっくりするぞ」
 プリベンターのちょっと遅い昼食は、さらに遅い昼食となってまだ続いていた。
食べているのは、ガンダムパイロットではない。
ヒルデ・シュバイカーでもない(彼女は少女らしく、一杯で止めておいた。ちょっと未練があったようだが)。
そしてパトリック・コーラサワーでもない。
「センチメンタルな乙女座の私としては、運命的なものを感ぜずにはいられない!」
「サーモンがトッピングであれば完璧なんだけどな」
 今朝、つうか昨夜から忽然と行方不明になってしまっていた、
グラハム・“ブシドー”・エーカーと、ジョシュア・エドワーズの二人だった。
グラハムの赤き血潮が騒ぎ過ぎたが故の行方不明事件だったわけだが、とにもかくにも、ここに無事合流、と。
「炊煙が見えたからそれを目印に来てみれば……やはりこれは運命と言わざるを得ない」
「……便利な言葉だな、運命って」
「普通に昨晩過ごしていれば、問題も起こらなかったわけだからな」
 下手すりゃ捜索隊を出さなきゃならない事態にまでなった可能性もあるわけで、
こうして偶然でも何でも再開出来たのだから、まあ奇跡っちゃ奇跡ではある。
「やはりプリベンターは常に一心同体! 一丸というわけだ!」
「自分勝手な行動をする奴が言う台詞じゃないなあ」
「とにかく反省して下さい、いい歳の大人なんですから」
 デュオのツッコミもカトルの苦言も、今のグラハムとジョシュアにはどこ吹く風。
夜通し、今の今まで山の中を迷いまくっていた二人の空腹は、そんなもん受け付けるわけもなく。
「これはジャ○カレーの甘口とエクセレン○カレーの辛口、二段○カレーのミックスだな、間違いない!」
「サーモン欲しいなー」
 ちなみにコーラサワーが用意したのは単なるバー○ントの中辛である。
さらに言うとサーモンなんてどこにも無い。
168名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/05/23(日) 23:40:51 ID:???
「うむっ! よし、もう二杯程食べたら早速取りかかるとしよう!」
「……え?」
「え、ではない! 待ち望んだ新型機のテスト! 模擬戦にて華々しく剣を打ち重ねようではないか!」
「えー!?」
 ひっくり返るカトル。
コーラサワー一人だけならまだ五飛やヒイロで抑えられるが、そこにもう一人、『やりたい君』が出現してしまった。
「お、やる気だなナルハム野郎! よし、アラスカ野も付き合え、模擬戦だ模擬戦!」
「ちょちょ、ちょっと!」
「いやあ、『カラタチ』と『紅鮭』のデータも取れるのか、願ったりだねえ」
「カタギリ博士まで!? デ、デュオ! どうにかしないと!」
「……どうにもならねーんじゃね? もう」
 すっかりその気のグラハムとコーラサワー、そして止める気の全く無いビリー・カタギリ。
カトルに統率力が無いわけではないが、こうなっちゃうともう、簡単に三人を止めることなど出来はしない。
「これまでの模擬戦でも結構激しかったのに、受け取ったその日に壊すわけにはいかないんですよ、新型を」
「あー、もう『シークヮサー』と『カラタチ』は壊してもいいんじゃないか? 当面修理出来ないくらいにさ」
「そんな、デュオ!」
「そうだな、そうすれば緊急に出動があった時に、邪魔されないで済む」
「丁度いい機会というわけか」
「五飛にヒイロまで!?」
 サリィ・ポォがこの場にいたら、果たしてどう収めたであろうか。
しかし、とにかく。
「カタギリ、我が盟友! 新たなる旅立ちに、心奮わされる思いだ!」
「よし、すぐやろうぜ今やろうぜ、この模擬戦二千回不敗のスペシャルエース、パトリック・コーラサワーがギッタンギタンにしてやるからよ!」
「サーモン、欲しいなー」
「データはあればある程、良いからねえ」
 やたらと元気過ぎる大人たちなのであった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――



 誤字脱字があったらごめんなさいコンバンハ。
遅れてすいません、ですが次回も知人の結婚式で土日は遠くに出るのでまた遅れサヨウナラ。
169通常の名無しさんの3倍:2010/05/24(月) 12:50:31 ID:???
そうだ、カレーを食べよう!
170通常の名無しさんの3倍:2010/05/24(月) 16:45:28 ID:???
土曜日氏乙
胃袋も不死身のコーラさんパネェ
171通常の名無しさんの3倍:2010/05/24(月) 22:14:32 ID:???
土曜日さん乙〜
カレーは季節関係なく美味いからねえ

>「美味い! テーレッテレー」
ねるねるねるねか、そういう駄菓子があったなあ(今でもあるかも)w
172通常の名無しさんの3倍:2010/05/25(火) 18:54:07 ID:???
練って美味しいねるねるねるね♪

昔は「これ、食べて大丈夫なんか?」という駄菓子がたくさんあったな(今でもあるのか)
173通常の名無しさんの3倍:2010/05/25(火) 19:48:03 ID:???
手間暇かかるばっかで、まじぃぞあれ
174通常の名無しさんの3倍:2010/05/25(火) 20:08:57 ID:???
あのテの科学(化学?)菓子はなぁ・・・味は二の次三の次
てか土曜氏さんが同い年な気がしてならねぇw

乙でした
175通常の名無しさんの3倍:2010/05/27(木) 22:20:27 ID:???
保守
176通常の名無しさんの3倍:2010/05/30(日) 16:05:52 ID:???
保守
177通常の名無しさんの3倍:2010/06/01(火) 22:06:50 ID:???
保守
178通常の名無しさんの3倍:2010/06/02(水) 16:28:23 ID:???
ここいらで一度、種や種死で言うところの「総集編」をしてほしい(状況と設定の確認のため)
179名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/04(金) 00:07:05 ID:???
了解しました。
次回でちょっとやってみます。
180通常の名無しさんの3倍:2010/06/04(金) 21:55:22 ID:???
>>179
楽しみに待ってます!
181通常の名無しさんの3倍:2010/06/06(日) 19:04:54 ID:???
保守
182名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/06(日) 21:24:01 ID:???
次回は水曜の夜になると思います。
間があいて申し訳ないです。


全ての原因は仕事が(ry
183通常の名無しさんの3倍:2010/06/06(日) 22:20:58 ID:???
>>182
くれぐれも無理なさらずに…
184通常の名無しさんの3倍:2010/06/07(月) 19:13:38 ID:???
なんか春先から急に間隔が空くようになったな>SS投下
仕事って忙しくなるときはほんとに忙しくなるからな、まーそれなりに適当にスレも進めばいいんじゃないかと

それよりガンクロ倉庫の保管が止まってないか?
保管作業を行ってくれていた有志の人は健康は大丈夫なのだろうか
185通常の名無しさんの3倍:2010/06/08(火) 18:46:01 ID:???
長い間投下がないとそれだけ住人の離脱者も増える、ということか
186通常の名無しさんの3倍:2010/06/08(火) 21:13:11 ID:???
>>185
俺はまだ居る方だぜ!
187名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/09(水) 21:23:04 ID:???
西暦23XX年。
この時点において、地球圏にある政治機構は、「統一政府」のみ。
厳密には、その下に各特殊自治区や特区都市があるが、国家としてのくくりで見れば、それただ一つである。
 統一の二文字を冠とする政府。
他に国家は、無い。
人類が金属の船と飛行機という、高速移動手段を手に入れてから、
いやもっと昔、地球が丸いということが常識ですら無かった頃から、それはずっと一種の夢であった。
地図を一色に塗り替える、という夢想は、数多くの政治家、革命家、理想家、宗教家の脳内に巣食い続けてきた。
もちろん、それを現実に達成した者は絶無である。
ほとんどが、その中道どころか門をくぐったところ、はたまた靴を履くことすら出来ずに挫折してきた。
最大の「結果」を残したのは、中世のモンゴル帝国だが、
それでもアジアの東西過半と東ヨーロッパの一部を征服するのみにとどまった。
尤も、当時の地域人口率から見れば、ある意味「世界の半分以上を支配した」とは言えるかもしれないが。

 
 統一、それはまさに甘美な響きを持つ言葉である。
物が散らかっている部屋より、整理整頓された部屋が良い印象を与えるように、
バラバラな足並みで前進するより、リズムに沿って脚をあげ、きちんと行進する隊が美しく見えるように、
「ひとつに統べられた」「完全にコントロールされた」ものに、人間は憧れを持つ。
それは、人間が群れで生きる、個体として脆弱で、不完全な生物であるからかもしれない。
 輪郭を崩し、色を乱し、形の意味そのものを否定するような絵でも芸術と成り得るのは、
統一感に対しての、生物としての強烈な欲求の裏返しであり、そうありたいという願望があるからに他ならない。
だからこそ絵画は、真実として統一された写真より、遥かに人の心に訴えかけてくる。
 不格好な積み木の家は、一度壊さねば、新しい家は作れない。
ページが抜け落ちた本は、一度バラバラにせねば、新しく綴じることは出来ない。
破壊による再生、統一の為の解体。
つまりは、そういうことなのだ。
188名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/09(水) 21:28:13 ID:???
 ……東西冷戦が終結し、政治の手綱が思想から経済に移ったのが、今より三百年以上も前のこと。
その傾向を加速させたのは、化石エネルギーの枯渇と、太陽光発電の進歩であった。
国家間の貧富差は拡大し、国家群を束ねる国連やその他の国際機関は、それにより二十一世紀の後半より、影響力と統率力を失った。
二十二世紀の半ばに大国を中心に次々と実施された宇宙コロニーの建設は、
人口増加問題と環境問題をある程度解決させたが、一方で地球と宇宙に暮らす者の対立という新たな火種を生んだ。
それらの諸問題は、二十三世紀において、アジア、アメリカ、欧州、そしてコロニーの四大経済圏の強引な周辺吸収と搾取化を促し、
宗教的思考、観念的思想による小国家の乱立、地域紛争の激化に繋がった。
危機感より生まれた、軌道エレベーター建造という連帯も、結局は大きな効果を生むことは出来なかった。
そして、それらは国家という括りを超えた『OZ』なる軍事結社を台頭させ、全人類の実効支配という、暴走状態を招いた。
 これらを乗り越え、地球圏に統一政府が出来るまでにかかった年月、
これが果たして短いのかどうか、それが判断出来るのは、今の段階では誰もいない。
統一政府が続いたにしろ続かないにしろ、さらにあと百年近く経ち、評価を待たねばならないだろう。
同じく、流された血と涙の意味も。


 統一政府は、ようやく立ち上がって歩き始めたばかりの赤ん坊と同じである。
それを転倒させるのに、大きな力は必要ない。
その爪先に、何かを置いておくだけで良い。 
 善意と悪意、そして稚気と無邪気が複雑に絡み合い、時代は歩みを止めることなく、無慈悲に動いていく。
 ようやく人類が手に入れた平和を守ろうとする者、
逆にそれをおもしろく思わず、壊そうとする者。
歴史に積極的に関わっていく者、
消極的に関わらざるを得ない者。
理想の為に闘う者、
野心のままに戦う者。
奪おうとする者、
奪われまいとする者。
運命の女神は、果たしてどちらに加担するのだろうか―――



 コンバンハ。 
行き当たりばったりのごまか、もとい過去話の振り返りと、設定の後づ、もとい確認の回の間は、
短いのを短い期間でちょっと連投することになると思います。
 最終回までのおおまかな道筋整理をしたのが今年の三月、
一週毎の投下でどこまで話を進め、映画公開付近でラストとか、脳内スケジュールを決めたにもかかわらずのこの遅れっぷり。
どうしてどうしてこうなっ(←自分が悪い)

 終わらせるまでは逃げ出しません、では明日か明後日までサヨウナラ。
189通常の名無しさんの3倍:2010/06/09(水) 22:01:30 ID:???
乙です、これからも頑張って下さい!
190名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/11(金) 23:32:36 ID:???
 プリベンターは統一政府の内閣直属の組織である。
さらに言えば、時の大統領のみが、この組織に対しての全責任を持つ。
尤も、その活動においては、プリベンターのリーダーが全権を持っているが。
 組織そのものは、統一政府が成立直後に設立され、働きかけたのは旧OZのメンバーで、
トレーズ・クシュリナーダの腹心とも言われたレディ・アンという若い女性である。
MS(モビルスーツ)という機動兵器が全面廃止され、
さらに軍隊という武力集団が一端解体、治安維持と警備にその活動目的を変えた今、
おそらく単純な戦闘力においては、構成メンバーから見ても、最強の公的武力組織であると言える。
戦争という解決手段を放棄する、という選択をした人類にすれば、ある意味、無意味で不必要な組織に思える。
だが実際、統一政府は成立直後であり、未だ紛争の火種が世界各地で完全に鎮火していない以上、
発火の前に、また延焼拡大を速やかに防ぐために、どうしても『強力な武力』を備えた集団は必ず要るのだった。
 プリベンターの長であるレディ・アン曰く、「ドブさらいの組織」。
現場のリーダーであるサリィ・ポォ曰く、「昔の日本のジダイゲキ風に言えば、隠密同心みたいなもんね」。
とにもかくにも、プリベンターは昨日も、今日も、そして明日も、世界の平和を裏から守るために、奮闘をしている。
戦闘力と、そして個性に溢れた面子でもって。


 パトリック・コーラサワー。
年齢は推定29〜35歳。
出身はAEUフランス、元AEU軍MS部隊のエースパイロット。
二つ名は「不死身のコーラサワー」、もしくは「幸せのコーラサワー」。
プリベンターにおいては唯一の既婚者で、妻は軍時代の元上司、天才の異名を取ったカティ・マネキン。
結婚後は公式にはそれぞれ別姓を使っている。
コードネームはプリベンター・バカ。
もちろん本人未公認である。
 性格は簡単に言えば、ポジティブな自己中心男。
自らを天才と断じて憚らず、己の行動に一切の疑問な悩みを持たない。
操縦テクニックの才能は豊かで、AEU軍時代は模擬戦で2000回も不敗という前人未到の記録を打ち立て、
新型MS(モビルスーツ)のテストパイロットに選ばれたこともある、エリートと呼ぶに十分な実績を残している。
正月早々に川で寒中水泳をしたり、入院中に散りゆく雲の数を数えたりと奇行が時折目立つ。
全身に自信が満ち溢れているが、その出所は不明。
 AEU軍解体により退役したが、当時の階級は少尉。
活躍の割に階級が低いと言われることがあり、様々な揉め事を起こして、
昇進と降格を交互に繰り返してきたからだと噂されているが、これは正しくはない。
確かに、軍の上層部に比べて人格面で覚えが良くなかったのはレッキとした事実だが、
実際は寄せ集め感の強かったAEU軍(と、言うよりAEUそのもの)のバランス人事と、士官学校卒ではないのが最大の理由である。
なお、OZが勢力を各方面に拡大中、スカウトの話も持ち上がったのだが、性格に難ありとして見送られている。
また、コーラサワー自身もOZを快く思っていなかった、という情報もある(ソースは当時の彼女、ちなみに複数の証言有り)。
 パイロットとしての特徴は、直観的でありながら、動きそのものは理に反していないという点にある。
テストパイロットに度々選ばれたというのは、そういうところを評価されてのことである。
射撃、格闘、ともに技術水準は高く、小隊指揮の能力にはいささかの疑問符がつくものの、
作戦の実行役としては(本人の意図は別にして)優れており、
火急速やかなる判断が求められる土壇場においては、
スタンドプレイからの華麗な爆走ドリブルを決めて大逆転、という奇跡を度々起こしている。
強運から幸運、悪運、様々な女神の寵愛を受けているとさえ言われるが、本人はあくまで実力であると強弁している。
191名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/11(金) 23:35:42 ID:???
 プリベンターにはレディ・アンの誘いで、サリィ・ポォと張五飛の後に加入。
レディ・アンとどういう繋がりがあったかは一切合財不明である。
ちなみに、レディ・アンは彼の妻であるカティ・マネキンをはじめ、数多くの知人がいる。
彼女も実に謎である。
 人間関係は単純にして複雑。
とにかく慕われているということもなく、嫌われているわけでもない。
二十近く歳の離れたガンダムパイロット達からは何かにつけ皮肉られたり「コイツダメだ認定」されているが、
心の底から馬鹿にされているということはない。
プリベンター内でよく言葉を交わすのはデュオ・マックスウェルであり、
コーラサワーのボケ(本人は真面目)とデュオのツッコミ(本人は半ば嫌々)はプリベンターの日常茶飯事となっている。
レディ・アンの現在の秘書であるミレイナ・ヴァスティの格好のおもち……遊び相手であり、
張五飛には事件解決の手段として中国拳法の秘中の秘儀である「人間核弾頭」の弾として(無理矢理)使われている。
サリィ・ポォにとってはグラハム・エーカーと並ぶ頭痛の種で、
ヒルデ・シュバイカーの必殺技であるフライパンアタックの最大の犠牲者でもある。
グラハム・エーカーとはプリベンター内のライバルで、
競馬場のターフでがっぷり四つに組みつつ見えないロープに振りあってるかの如き迷勝負を勝手に繰り広げている。
また、他人を自らつけたあだ名で呼ぶことが多く、
デュオは「みつあみおさげ」、ヒイロは「ちんちくりん」、カトルは「坊ちゃん」、グラハムは「ナルハム野郎」、
ジョシュアは「アラスカ野」、サリィは「オデコ娘一号」、ヒルデは「オデコ娘二号」、ミレイナは「オデコ娘三号」等々。
かつては数多くの彼女というか愛人がおり、その全ての名前を記憶しているというトンデモな異性関係を誇っていたが、
プリベンターに入ってからは自重(自己申告)しており、カティと結婚が決まってからは一切他者に手を出してはいない。
なお、プリベンターの女子連には加入当時からまったく食指を動かしていなかったが、
これは彼曰く「好みというわけではない」とのこと。
どうやらキャラデザインの違いがポイントうわらばばばばば。
 AEU時代の乗機はイナクト、ジンクス等。
プリベンターメンバーとなってからは、MS(ミカンスーツ)のネーブルバレンシアを経て、
ビリー・カタギリが組み上げた専用機のMS(ミカンスーツ)「シークヮサー」となっている。
 とにかく、プリベンター内の問題児。
三十代でも問題児。
功績は実は大きいものの、やっぱりそれでも問題児。
それがパトリック・コーラサワー、この物語の主人公……である。



 コンバンハ。
この設定はあくまで当物語におけるもので、謂わばパロディであり、
各キャラクター、ガンダムの世界観を馬鹿にしているわけではないことを申告しておきます。
 では次回はグラハム達ということでサヨウナラ。
192通常の名無しさんの3倍:2010/06/11(金) 23:40:57 ID:???
おお、たまたまこのスレを覗いたらキャラまとめが!
土曜日氏乙でした〜
193通常の名無しさんの3倍:2010/06/12(土) 20:13:57 ID:???
土曜日氏乙です
194通常の名無しさんの3倍:2010/06/12(土) 21:25:10 ID:???
まとめ乙です
やっぱりとんでもない人だなコーラさんは
195通常の名無しさんの3倍:2010/06/13(日) 09:10:25 ID:???
まとめ乙であります!
196通常の名無しさんの3倍:2010/06/15(火) 15:22:02 ID:???
保守
197通常の名無しさんの3倍:2010/06/18(金) 12:46:19 ID:???
ほしゅ
198通常の名無しさんの3倍:2010/06/20(日) 14:15:41 ID:???
保守
199名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/21(月) 00:49:26 ID:???
次回は水曜日までに。
安定しなくて申し訳ない。
200通常の名無しさんの3倍:2010/06/22(火) 15:24:51 ID:???
>>199
了解いたしました
201通常の名無しさんの3倍:2010/06/22(火) 17:16:56 ID:???
ところで、板の下すぎると勝手に落ちるとかの危険性はないの?
202通常の名無しさんの3倍:2010/06/22(火) 20:35:18 ID:???
スレが沢山建ったら押し出されて落ちる
書き込みがあれば落ちないなんてのは幻想にすぎない

だから上げとくわ
203通常の名無しさんの3倍:2010/06/23(水) 18:10:16 ID:???
…なるほど
うん、W杯が終わるまで投下は焦らなくていいのよ?(ニヤソ
204名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/23(水) 22:31:50 ID:???
 プリベンターは軍隊ではない。
とは言え、固有の戦力を持ち、そのメンバーの大半、というか全員が過去に戦争を体験し、
死線を潜り抜けてきた歴戦のツワモノ達ばかりなのは確かである。
野球で言えば一流ばかりを集めたオールスター、サッカーで言えば身体に技術を備えた銀河系軍団、とでも言おうか。
もっとも、それでイコール無敵の最強チームとならないのが、現実の難しいところではあるのだが。
 地球圏の平和を陰から守る政府直属の組織プリベンター、
そこに集った面々が、一筋縄で行かない者ばかりなのは諸兄等もよくご存知の通り。
さてその中に、特に異質と言うか、明らかに雰囲気が違う人間が二人、含まれている。
一人はパトリック・コーラサワー。
この物語の主人公たる彼は、前回にて改めて紹介をした。
で、今回はもう一人の方を取り上げたい。
誰と言わずとも十分おわかりであろうが、そう、あの男である。

 

 グラハム・エーカー。
年齢は推定27〜33歳。
出身はユニオンで、元MSWADのエースパイロット。
二つ名は「ミスター・ブシドー」、おそらく自称。
本人は迷惑だなどと時々“笑顔で”言っている。
コードネームはプリベンター・アホ。
当然本人未公認である。
 性格は簡単に言えば、ナルシスティックで素敵に頑固な大胆不敵センチメンタリスト(全然簡単ではない、とはツッコまないように)。
行動力はエベレストを越える位にあり、堂々と「私は我慢弱い」と親友の前で言っちゃうくらいに我慢弱い。
おそらく行列の出来る店には並べない。
代わりにバーゲンセールの争奪戦は多分強い。
自信家だが、その源はおそらくコーラサワーと同種。
表現がストレートなコーラサワーに対して、時代がかったもの言いをする為に変化球型と見られることがあるが、
そんなことはない、彼だって十分真っ向直球。
オーバースローかアンダースローか、投げ方が違うだけである。
 口調は独特で、時として掴みどころがなく、仰々しい。
その為に「グラハム語」とさえ言われる。
 MSの操縦技術はウルトラ一級品で、遠距離からの射撃による攻撃より、近接戦闘を好む傾向がある。
以下、ユニオン軍にて広まった数々の伝説一覧。
205名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/23(水) 22:41:37 ID:???
 ・三回の攻撃で撃墜五機は当たり前。
 ・一回の攻撃でソニックブレイドが三本に見える。
 ・地球上どこでもトレーニングを欠かさない。山の上でも海の中でも。
 ・出撃の無い日でも撃墜。
 ・どんな敵でもまず名乗りを上げて自己紹介。
 ・グラハムにとって射撃での撃墜は撃墜に含まれない。
 ・空中可変シークエンスの無いMSで強引に空中変形、世界初。
 ・それが「グラハム・スペシャル」と公式に名づけられる。
 ・同僚のジョシュアのヤジに、華麗にグラスペしながら背面斬り。
 ・リニアライフルで居合斬りをした。
 ・ディフェンスロッドで真剣白刃取りをした。
 ・あまりに技術が凄く、三輪車でプガチョフコブラが出来る。
 ・乙女座の運命を信じている。
 ・OZの基地に襲来したガンダムを一目見てから、ガンダムに惚れ込み、追いかけることを誓う。
 ・が、結局ユニオン解体から統一政府誕生までガンダムに再開出来ず。
 ・食事は三食マッシュポテト。
 ・新型機の催促をしに来たので「あと一日かかる」と技術顧問が答えたら、三十分後に「まだかカタギリ」。
 ・ユニオンを守る為に専用機を注文、何と武器は近接用のビームサーベル一つだけ。
 ・宴席の最中の敵襲に出撃、これを撃退。戻ってきた時、まだマッシュポテトは冷めていなかった。
 ・OZが引き抜こうとしたが引き抜けなかった。
 ・その理由は「私にそんな話が? ははは、知らなかったぞ!」
 ・どうやらユニオン軍の上層部が手を尽くしてスカウト阻止したとのこと。なお、知っていても本人は行くつもりはなかったらしい。
206名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/06/23(水) 22:47:22 ID:???
 パイロットとしての特徴は、先にも述べたが、操縦技術がとにかく高いレベルにあるという点に尽きる。
強引かつ大胆ながら、同時に繊細であり、「機体に無理をさせる」技量はおそらく並ぶ者はいない。
近接戦闘に傾倒するのはおそらく本人のこだわりと言うかスタイルだが、かと言って決して単純な猪武者ではない。
戦いについては、彼なりの理(ことわり)を持っているようである。
なお、射撃は不得手ということはなく、一般のパイロットに比べれば十分に優秀である。
また、小隊を率いていたこともあり、指揮官としての能力もある。
とは言え、本人は単独で戦うことの方が「自分にあっている」と感じている。
 どこでどう知ったかはわからないが、極度の日本カブレ。
中でもサムライ、武士道というものにえらく心を惹かれたようで、一種の憧れにすらなっている。
通信教育で剣術を覚えたり、修行と称して滝に打たれたり、陣羽織をプリベンターの制服の上に来たりと、
ハッキリ言って「勘違い文化」なのだが、本人はまったく気にしていない。
信じりゃ竹光だって名刀の切れ味、というヤツである。
 兜の面のようなものを顔に装着することがあり、その時は「ミスター・ブシドー」モードである。
何が違うということもないが、通常のグラハムの三倍程度に武士になるらしい。
 プリベンターには、宅急便で送られてきたダンボールの中に入ってやってきた。
どうやって加入許可を貰ったのかはまったくの不明であるが、レディ・アンが認めている以上はそういうことである。
 ユニオン時代から彼を慕う部下も多く、またビリー・カタギリ等の親友も数少ないながらおり、
コーラサワーに比べると同性の知人や友人の関係は豊かである。
異性については、過去に上司の娘と一時恋人関係にあったと言われているが、真相は不明である。
 プリベンター内においては、良いも悪いも、コーラサワーのライバル的ポジションにある。
ガンダムパイロット達からもコーラサワーとほぼ同様の扱いを受けている。
ヒルデやミレイナなどの年少の女性陣とはあまり絡まないが、
これは向こうが寄ってこない為(「行動がウルサイ」のがどうやら理由らしい)。
 ユニオン時代の乗機は専用にカスタムされたユニオンフラッグ。
プリベンターメンバーとなってからは、MS(ミカンスーツ)のネーブルバレンシアを経て、
ビリー・カタギリが組み上げた専用機のMS(ミカンスーツ)「カラタチ」となっている。
また、アザディスタンでの一件において、アリー・アル・サーシェスの駆る「ソンナコト・アルケー」に対して遅れをとったことを無念に思っており、密かにリベンジを狙っている。
 真剣の如く研ぎ澄まされ、
甲冑の如く固い意志を持ち、
行動は溢れるままにワンマンアーミー。 
グラハム・エーカー、そんな男である。



 コンバンハ。
この設定はあくまで以下略。
では次回はガンダムパイロット及びプリベンター関係。
 では次回までサヨウナラ。

 ガンバレニッポン。
207通常の名無しさんの3倍:2010/06/24(木) 15:23:08 ID:???
まとめグラハム編、乙です!
208通常の名無しさんの3倍:2010/06/26(土) 15:44:58 ID:???
さぁ〜て次回のコーラさんは?
209通常の名無しさんの3倍:2010/06/27(日) 08:30:03 ID:???
保守ワ〜〜
210通常の名無しさんの3倍:2010/06/29(火) 15:28:55 ID:???
まったり保守
211通常の名無しさんの3倍:2010/07/01(木) 00:12:14 ID:???
保持するぜ〜〜
212通常の名無しさんの3倍:2010/07/03(土) 23:22:24 ID:???
保守ゥ〜
213通常の名無しさんの3倍:2010/07/04(日) 10:37:15 ID:???
保守ァー
214名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/05(月) 00:44:41 ID:???
公私ともに忙しく、遅れまくってすいません。
今週中には投下いたします。
215通常の名無しさんの3倍:2010/07/05(月) 22:43:13 ID:???
>>214
無理せずに、あくまでマイペースで構わないですよ
216通常の名無しさんの3倍:2010/07/07(水) 21:22:09 ID:???
まったり保守ワー
217通常の名無しさんの3倍:2010/07/09(金) 22:13:20 ID:???
保守ゥ〜
218名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 11:03:07 ID:???
保守ァー
219名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/11(日) 22:27:09 ID:???
 プリベンターには個性的なメンバーが多い。
正味の話、何でこんな濃ゆい面子にしちゃったの、と発足人のレディ・アンに小一時間程問い詰めたいところだが、
純粋に人間としては世界最強レベルの集まり故に、まあ実績と能力優先で選んだのであろう。
 構成員は、総責任者のレディ・アンを筆頭に、
現場リーダーのサリィ・ポォ、
元AEU軍少尉のパトリック・コーラサワー、
元ユニオンのMSWAD隊員であったグラハム・エーカーとジョシュア・エドワーズ、
元ガンダムパイロットのヒイロ・ユイ、デュオ・マックスウェル、
カトル・ラバーバ・ウィナー、張五飛、トロワ・バートン、
OZ志願兵だったヒルデ・シュバイカー、
マイスター運送のイアン・ヴァスティの娘であるミレイナ・ヴァスティ……といった面々である。
うむ、やはり濃ゆい(ゼクス・マーキス、ルクレツィア・ノインは現在は不在)。
と言うか、コーラサワーとグラハムとジョシュアの三人だけでその濃さの半分以上は持っていっている。
 さらに、外部協力者として、在野のスーパー技術者ビリー・カタギリ、
元アザディスタンの皇女で、現在は同自治区の代表を務めているマリナ・イスマイール、
世界的な名家である王家の当主である王留美、
ロームフェラ財団の遺産を一部引き継ぎ、若き投資家として注目を集めているドロシー・カタロニア、
大手企業である人類革新重工のセルゲイ・スミルノフ、ソーマ・ピーリス(マリー・パーファシー)、アンドレイ・スミルノフ、
元メンバーで、現在は反省府組織カタロンに転出したシーリン・バフティヤール……。
何だか、レディ・アンがその気になればクーデタであっさり政府転覆が出来そうな気もする。
 そして、明確な協力者では無いが、
統一政府の外務次官であるリリーナ・ピースクラフトと、
あのトレーズ・クシュリナーダの実子であるマリーメイア・クシュリナーダ、
JNNTVの報道者である絹江・クロスロードが「関係者」におり、
更には、まだ先の話になるが、マイスター運送とウィナー家(マグアナック隊)も加わってくる。
もう多士済々ってレベルじゃねえって感じで、
大丈夫なの、こいつらに敵う奴がいるのって話だが、まぁそこはそれ。
『敵』であるイノベイター、アリー、トリニティズ、アロウズはぶっちゃけ同等に濃い。


 さて、今回で振り返りと後付あわわ設定確認も三度目になる。
あまりここで足踏みしていると、どんどんスケジュールが押してくるが、やり始めたものは仕方が無い。
仕方が無いので、一歩一歩前に進んでいくしかない。
今回は、プリベンターの残りメンバーの紹介と行こう。
220名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/11(日) 22:33:19 ID:???
 レディ・アン。
年齢は推定20〜22歳。
トレーズ・クシュリナーダの元副官で、今でこそ落ち着いているが、
昔は結構過激なことをやっちゃったり、二重人格だったりとなかなか一筋縄ではいかないお方である。
コードネームはプリベンター・ゴールド。
ちなみにレディバの進化形ではない。
 OZによる地球規模の動乱が集結し、統一政府の成立直後に直轄組織『プリベンター』を立ち上げた、つまりは発足人。
コーラサワーを始め、グラハム、ジョシュア、シーリン、ミレイナをプリベンターに加入させたりと、ある意味心が銀河系並みに広い。
良きにつけ悪しきにつけ、かつての上司であるトレーズに相当影響を受けていると言える。
なお、プリベンター本部に置かれている茶菓は彼女の趣味が反映されている(煎餅等)。
 現場はサリィ・ポォに任せ、ほとんど自身の執務室で書類に埋もれているか、
または政府の関係者として世界を飛び回っているかで、滅多に、と言うか全くコーラサワー達の前には姿を現さない。
つーか、まだ一話からこっち、一言も台詞が無い。
さてさて、最終回までこれを引っ張るか否か……まだ未定。

 サリィ・ポォ。
年齢は20代後半。
元軍医で、階級は少佐と、何気に偉い人である。
OZの騒乱ではレジスタンスに身を投じ、さらにガンダムパイロット達に情報を伝えたり、
ガンダムを回収したりと、結構、いや相当に活動的な女性。
コードネームはプリベンター・ウォーター。
 プリベンターでは現場の責任者を務める。
コーラサワーやグラハムの爆走に頭を痛めつつ、平和維持活動に尽力する、頼れるお姉さんである。
最近目尻に小ジワが増えてきたようだが、間違いなく前述の二人による心労が関係していると思われる。
また、溜め息の回数がプリベンター着任当時に比べて格段に多くなっている。
 指揮官としては優秀で、半ば偶然とは言え、一流の傭兵であるアリー・アル・サーシェスにその周到ぶりを感心されたことがある。
一方で、どうしてもコーラサワーとグラハムの強引グマイウェイズを抑えることが出来ないのも事実ではある。
 コーラサワーから、「オデコ姉ちゃん一号」と呼ばれている。
理由は推して知るべし。

 ヒイロ・ユイ。
年齢は推定15〜17歳。
元ガンダムパイロットの一人。
コードネームはプリベンター・ウイング。
 OZの動乱後は、積極的にプリベンターに関わる意志を持っていなかったが、
張五飛の「リリーナが危険という嘘の情報」によって、半ば強制的に加入させられる(コーラサワーのお守を増やす為)。
そういったことから、最初こそおもしろく思っていなかったようだが、
プリベンターの仕事は結果的にリリーナを守るということに繋がるのは確かなので、今ではまんざらでもない様子である。
 現在の乗機は、ビリー・カタギリがこしらえた新型MS(ミカンスーツ)で、先制攻撃と一撃離脱に長けた『タンゼロ』。
実はグラハムとコーラサワーに次いで、MS(ミカンスーツ)の外見にこだわりが強いのは彼である。
 とにかく無口で、滅多にコーラサワーと絡まない。
が、だからと言って面白味の無い人物ではなく、時々真顔でとんでもないギャグ(本音?)を口にしたりする。
 コーラサワーからは「ちんちくりん」と呼ばれている。
理由は、その服装から。
221名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/11(日) 22:39:44 ID:???
 デュオ・マックスウェル。
年齢は推定15〜17歳。
元ガンダムパイロットの一人。
コードネームはプリベンター・デス。
 ヒルデ・シュバイカーと共にジャンク屋を営んでいたが、張五飛の「嘘の儲け話」によって、半ば強制的に加入させられる。
以後、プリベンターに必要欠かさざる『潤滑油』となる。
本人が望む望まないに関係なく。
 現在の乗機は、ビリー・カタギリがこしらえた新型MS(ミカンスーツ)で、撹乱及び単騎潜入に長けた『マンダリン』。
 台詞の数がコーラサワーに並ぶくらいに多い。
何故かと言うと、コーラサワーの喋る相手が大抵彼だからである(他がなかなか絡まない)。
彼とコーラサワーの会話はほとんど漫才と化しており、プリベンターの日常となっている。
どうやら徹底的に貧乏くじを引く運命にあるらしい。
 コーラサワーからは「みつあみおさげ」と呼ばれている。
理由は、その髪型から。

 トロワ・バートン。
年齢は不詳(他のガンダムパイロットと同年代と思われる)。
元ガンダムパイロットの一人。
コードネームはプリベンター・ウエポン。
 キャスリン・ブルームや仲間とともにサーカス団で暮らしていたが、張五飛の「威しの営業停止命令」によって、半ば強制的に加入させられる。
その為か初期はとにかく態度が硬化しており、自己紹介?をしてきたコーラサワーを問答無用で気絶(首筋にチョップ一撃)させてしまったこともある。
が、郷に入ってはの精神か、何時の間にやらヒイロとともに台詞数は少ないながらもポジションを確保している。
ある意味、メンバーの中では最も柔軟性に富んでいる、とも言える(体術的な意味ではなく)。
 現在の乗機は、ビリー・カタギリがこしらえた新型MS(ミカンスーツ)で、距離を置いての支援に長けた『タンジェリン』。
戦法は相変わらずの軽業&ぶっ放し。
 コーラサワーからは「前髪」もしくは「前髪野郎」と呼ばれている。
理由は、語るまでも無し。

 カトル・ラバーバ・ウィナー。
年齢は推定15〜17歳。
元ガンダムパイロットの一人。
コードネームはプリベンター・サンド。
 動乱後はウィナー家に戻り、商売の手伝いと戦後復興に努めていたが、張五飛の「偽の同窓会の招待」によって、半ば強制的に加入させられる。
出自や経験から、まとめ役、または補佐役としても能力が高く、現場リーダーのサリィ・ポォを支えている。
言葉遣いも一貫して丁寧で、コーラサワーやグラハムに対しても、態度を崩さない。
また、サリィが本部から出れない時は、代理でリーダーを務めることもある。
なお、本気で怒ると一番怖い。
 現在の乗機は、ビリー・カタギリがこしらえた新型MS(ミカンスーツ)で、高い防御力と索敵能力を持つ『シトロン』。
 実はデュオの次くらいに、コーラサワーとよく喋っている。
会話が噛みあっているとは、まぁ正直言い難いが。
 コーラサワーからは「坊っちゃん」と呼ばれている。
理由は、名家の出で、動作も落ち着いているから。
222名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/11(日) 22:45:34 ID:???
 張五飛(チャン・ウーフェイ)。
年齢は推定15〜17歳。
元ガンダムパイロットの一人。
コードネームはプリベンター・ドラゴン。
 レディ・アンやサリィ・ポォに続く、プリベンターの準初期メンバー。
火星探査(テラフォーミング)で不在のゼクス・マーキスとルクレツィア・ノインの後任として入ってきたコーラサワーを、
「自分とサリィだけで面倒を見ることはない」と、他のガンダムパイロットを強引に巻き込んだ張本人。
ただし、彼自身は全く悪びれていない。
 現在の乗機は、ビリー・カタギリがこしらえた新型MS(ミカンスーツ)で、接近戦に強い『バンペイユ』。
 トレーズに対するこだわり、正義と悪にたいするこだわりは、いくらか角が取れており、以前に比べると丸くなっている。
高い洞察力と戦略眼を持つが、プリベンターでは一番の強硬派であり、膠着状態においては直線的な打開策に撃って出ることが多い。
 また、中国拳法の達人で、最終局面において必殺技の「人間核弾頭」を使うことがある(弾は基本的にコーラサワー)。
 コーラサワーからは普通に「五飛」と呼ばれている。
理由は特に無い(コーラサワーが若干の苦手意識を五飛に持っているのは事実)。

 ジョシュア・エドワーズ。
年齢は20代、おそらく半ば。
ユニオンのアラスカ基地ではエースを張っており、MSWADでもオーバーフラッグスの一員に選ばれた。
コードネームはプリベンター・マヌケ。
当然本人は認めていない。
 グラハム・エーカーの勧誘(ダンボール箱に詰め込んでプリベンター本部へ郵送する)によって、半ば強制的に加入させられる。
ユニオン時代の経緯からか、とにかくグラハムに反感を持っており、口調は基本的に敬語を使いつつ、態度は悪い。
MSの操縦技術は高いものの、根がヘタレなため、プリベンターのメンバーとしての目立った戦績は無い。
 現在の乗機は、ビリー・カタギリがこしらえた新型MS(ミカンスーツ)で、サポート主体の『紅鮭』。
 コーラサワーとはとにかく仲が悪い、犬猿と言っても良い。
ある意味、デュオに続く貧乏くじ体質で、コーラサワーとグラハムの爆走に引きずられまくる日々である。
 コーラサワーからは「アラスカ野」と呼ばれている。
理由は、「アラスカのジョシュア」→「アラスカ野ジョシュア」→「アラスカ野」。

 ヒルデ・シュバイカー。
年齢は推定15〜17歳。
元OZの志願兵で、デュオの協力者。
コードネームは無し。
 デュオが五飛の策略に引っかかってプリベンターのメンバーになった際、一緒に加入する。
すぐにサリィと意気投合したりと、切り替えや割り切りが速く、つまりは思い切りが良い。
 プリベンターでは後方担当で、前線に出るメンバーを支える。
経理にも長けており、買い出しもほぼ彼女の専任である。
また、同性で歳が近いこともあって、ミレイナ・ヴァスティからよく慕われている(ただし、ヒルデとしてはミレイナの趣味についていけない様子)。
 コーラサワーとはまず会話を交わさないが、彼女の必殺技である「フライパンアタック」の一番の犠牲者はコーラサワーである。
コーラサワーの暴走が過ぎた時、または彼女の機嫌を著しくコーラサワーが損ねた時などに、この必殺の技は繰り出される。
 コーラサワーからは「オデコ娘二号」と呼ばれている。
理由は、まあご存知の通り。
223名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/11(日) 22:55:28 ID:???
 ミレイナ・ヴァスティ。
年齢は推定14〜16歳。
若年ながら才能豊かで、各種資格を持つ。
両親はマイスター運送の重役であるヴァスティ夫妻。
 反省府組織カタロンに移ったシーリン・バフティヤールの後任として、レディ・アンの秘書を務める。
何故彼女をレディ・アンが選んだかは、今もって不明。
 基本的にレディ・アンの執務室で共に仕事をしている為、本部に常に居るわけではない。
だが、仕事が速いのと、持ち前の好奇心故か、自身の終業後に度々本部に「遊びに」来る。
 性格は人懐っこく明るいが、超絶ド級のオタク。
趣味は幅広い分野に及び、語らせるととにかく長い(ビリー・カタギリに匹敵する)。
 ヒルデに続くコーラサワーの天敵で、ソリが合わないというより生き方が全く別のもの。
それでいてよく絡み、デュオ並みの漫才を繰り広げたり、カードゲームでガチでやり合ったりと、何だかんだで仲が良いようにも見える。
ちなみに言っておくが、二人の間には約20歳の隔たりがある。
 コーラサワーからは「オデコ娘三号」と呼ばれている。
理由は、まあ御察し下さい。

 ビリー・カタギリ
年齢は推定35〜38歳。
科学全般を修め、エコドライブ『ミカンエンジン』(ミカンの皮が燃料)を開発した。
 正式なメンバーではないが、MS(ミカンスーツ)の提供等、プリベンターにとっては縁の下の力持ち。
レイフ・エイフマン教授を師匠に持ち、叔父は総合企業アロウズのトップであるホーマー・カタギリ。
日系の名家の一族で、お金持ちであり、生きる為に働く必要が無く、研究と開発に今のところ人生を捧げている「趣味的科学者」。
この手の天才の常で、語りはじめるとノンストップエクスプレスで止まらない。
 マイスター運送の社長であるスメラギ・李・ノリエガ、コーラサワーの妻であるカティ・マネキンとは大学の同窓。
ついでに言っておくと、レディ・アンともどうやら旧知。
また、グラハム・エーカーとはユニオン時代からの親友で、彼の日本カブレの良き理解者、というかカブレさせた張本人。
 コーラサワーからは「ポニテ博士」と呼ばれている。
理由は、見たまんま。


 世界の平和を裏から守る、隠密同心プリベンター。
まあ、こんな面子が集まった組織である。


 コンバンハ。
この設定はあくまで以下略。
昇進したら仕事が楽になるつった上司は誰だ出てこいやゴルァー。
 ではサヨウナラ(ぼちぼち次回辺りで設定&振り返り編も切り上げます。先に進まないし)。
224通常の名無しさんの3倍:2010/07/14(水) 03:19:20 ID:???
保守
225通常の名無しさんの3倍:2010/07/14(水) 10:49:04 ID:???
土曜氏さん、乙です!

コーラをとりまくそれぞれの立ち位置がうかがえる総集編、
笑いながら振り返らせていただきました。

昇進して楽になる・・・?そんな人見たことないww
お体にどーか気をつけて、まったりペースで待ってます。
226通常の名無しさんの3倍:2010/07/17(土) 17:00:02 ID:???
保守
227通常の名無しさんの3倍:2010/07/19(月) 14:03:35 ID:???
さすがに勢いも落ち気味だなあ…
まあ板そのものが過疎だから仕方ないか
228通常の名無しさんの3倍:2010/07/19(月) 15:42:20 ID:???
書き込むことは少ないけど、いつも楽しみに待ってます
229名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/22(木) 22:13:51 ID:???
すんません、夏風邪で隊長、じゃない体調を崩しておりますので、次回はちょっとまた遅れます。
230通常の名無しさんの3倍:2010/07/22(木) 23:34:47 ID:???
>>229
酷暑の候、どうぞお大事に土用丑・・・じゃない土曜氏さんノシ
231通常の名無しさんの3倍:2010/07/23(金) 17:50:24 ID:???
投下出来ない時はわざわざ言わない方が良いよ
かまってちゃんだと思われて噛みつかれる危険性がある
普通に保守でおk
232通常の名無しさんの3倍:2010/07/24(土) 17:33:15 ID:???


233通常の名無しさんの3倍:2010/07/25(日) 15:36:14 ID:???
>>227
亀だが、規制もあったからそれもあるんじゃないかな?>過疎
234名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/26(月) 22:47:45 ID:???
 古今東西、物語に深みと厚みを増す為に必要なのは、主人公の対極に位置する者、
すなわち敵、もしくはライバル(宿敵)と言われるキャラクターの魅力如何に因ってくる、と言われている。
最近でいくと、赤い仮面の人、ICPOの専任捜査官、脱出不可能よッ無駄無駄無駄無駄無駄ァー、等々。
 とある編集者によると、例え本筋の展開がクソつまらなくても、
その敵キャラクターが魅力的なら、十分に読者は食いつくし、ある程度は話も引っ張れる、とのこと。
さらにその類型を増産すれば、あら不思議、一つのスタイルとなり、潮流が作られる、という寸法である。
現代における作話能力の全体的な後退、と批判する節もあるが、
結局のところ、言葉が生まれ、物語というものが誕生してから今日に至るまで、
文学なんてものは、似た展開と似た人物の繰り返しが基本だったりする。
パクりとアレンジは文化伝播の根幹なのだ。
 勿論、作者が意図的に、己の想いのままに書き、潮流から外した(外れた)ものも存在する。
大抵は下手糞扱いで評価されないが、稀に文化の進化として「独創的」「前衛的」と評価されたりする。
宮沢賢治は「銀河鉄道の夜」や「風の又三郎」等の幻想的な作品で、今でこそ誰でも知る国民的な作家だが、生前はほとんど無名のままであった。

 で、敵の話である。
この物語において、主人公であるパトリック・コーラサワー、そしてプリベンターの『敵』は、
正味の話、ここまででハッキリとそういう扱いになっているのは、一人しかいない。
その一人以外は、未だ対決前なので、『敵候補』と呼ぶのが正しいのかもしれない。
まあいずれ本式に敵になるんですけど、それはそれ。
魅力があるかも、またそれはそれ……。

 では、振り返り&後付けあわわ確認も今回がラスト。
「プリベンターの敵編」でよろしく。


 ◆ ◆ ◆
235名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/26(月) 22:56:49 ID:???
 アリー・アル・サーシェス。
年齢は30半ばから40前後。
裏社会では名の通った傭兵で、数多くの紛争、事件に関わってきたツワモノ。
また、ゲイリー・ビアッジの偽名で、表社会で堂々と活動することもある。
かつては様々な組織に身を置いていたが、現在は何処にも属さず、部下を率いて傭兵団長なことをしている。
現在は、「イノベイター」のリーダーであるリボンズ・アルマークに雇われている。
おそらく、「人間」としては、コーラサワーやプリベンターの最大にして最強の敵。
 世界が統一されて紛争そのものが激減してしまった為、生活に苦しんでおり、
密輸や窃盗、密漁等のこすっからい悪事に手を染めることもある等、それなりに苦労している。
 傭兵としては疑問の余地を差し挟むことなく、生身でもMS操縦でも、超が付くレベルで一流。
部下を率いての集団戦もこなせば、単騎で無双することも可能。
色々と計画をプリベンターに潰されてきているが、部下の一人も逮捕されておらず、自身もほとんどダメージを負っていない。
コーラサワーの無茶パワーが無ければ、潰された企みのうち、おそらく何度かはアリーに凱歌の旗が揚がったであろう。
事実、アザディスタンの事件では、プリベンターを壊滅一歩手前にまで追い込んだ実績を持っている。
 性格は、所謂お約束のワルモノ。
金品にウルサイ辺りはいささか小悪党の雰囲気もあるが、それもプロ意識の現れであろうか。
戦いというものに人生の価値を見出しており、「自分がおもしろければ」というのが行動原理の一つになっている。
粗野で強引ではあるが、愚鈍ではなく、退路を必ず確保してから無茶をするタイプ(所謂死んだら負け理論)。
芸術を理解し、ギャンブルを楽しみ、酒や料理の味にもやかましい等、単なる戦闘狂ではない。
絵面的に言うと、高級なブランデーを傾けてニヤリと笑うより、
居酒屋で安酒とヤキトリをカッ喰らう、もしくは立ち食いソバでかけソバネギ抜きを一気にかき込むタイプの悪役か(よくわからん)。
なお、最近は極東ドラマ(恋愛系)にハマっており、再放送もきっちり見ている。
アリー自身は現実主義者だが、そういったドラマについては、「現実は現実、虚構は虚構。分けて考えりゃそれはそれで楽しめる」とのこと。
 交友関係は良好とは言い難い、ってか友人と呼べるような人物は皆無。
だが、部下とのやりとりを見ていると、一定の信頼関係はそこにあるようである。
リボンズの手下のうち、アレンドロ・コーナー、そしてトリニティズとは特に折り合いが悪い。
リニアトレイン社のラグナ・ハーヴェイはかつての雇い主だが、特に敬意を払ってはおらず、
アロウズの面々に対しても、どうやらあまり良い印象は持っていない。
リボンズ本人とは、それなりにウマが合う様子。
 乗機は健康に良い『アグリッサ』(微量の電流を周囲に放出することが出来る)と、
ミカンエンジンを搭載したMS(ミカンスーツ)の『ソンナコト・アルケー』(コーラサワーが言うところの「ひょろひょろ赤鬼」)。
『ソンナコト・アルケー』には分離式の小型兵器『ハッサク』が装備されており、
これを空中で操ることによって、全方向からの攻撃が可能となる。
アリーはこれを完璧なまでに使いこなし、アザディスタンでプリベンターをフルボッコ状態にまで追いつめた。
ミカンエンジンはビリー・カタギリの特製で、未だ世間には発表されていないが、
イノベイターが色々と手を使って情報を入手し、MS(ミカンスーツ)を造り、アリーと契約した際にこれを譲渡した。
 ちなみに、靴下は物凄く臭い。
変なこだわりでもあるのか、アザディスタンでは部下達の靴下も集め、
これを空中にばら撒くことでバリヤーの代わりにしようとした。
 滅茶苦茶強いが、バカ。
紛う方無きバカ。
でも強い。
アリー・アル・サーシェス、そんな男である。
236名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/26(月) 23:04:23 ID:???
 リボンズ・アルマーク。
年齢は不詳(外見年齢は10代半ば〜後半くらい)。
世界的な人気アイドルグループ「イノベイター」のリーダー。
諸兄もご存知の通り、「人間」ではない。
リボンズが何を目的にしているかは、今のところ物語内では不明。
とりあえず、「今の世界」に対して何らかのアクションを仕掛けようと考えているのは確実。
 一応、現時点でのラスボス候補。
なのだが、コーラサワー達とは未だに絡んでいない。
これでいいのかどうなのか。
 アロウズ、トリニティ、そしてアリーを傘下に収め、計画を進行中。
どうやら、マイスター運送の創始者であるイオリア・シュヘンベルグ、そしてアザディスタンが関係しているようだが……ま、それはおいおい。
 性格はほぼアニメの通りだが、「世界転覆を企む悪の親玉」と言うには、
醸し出す雰囲気と言うか、カリスマと言うか、そんなのがやや欠けるか。
自ら新人類を自認している割には、懐古厨乙なんてもんじゃないレベルに趣味が古臭い。
いや、趣味だけでなくセンスも相当古臭い。
 イノベイターのメンバーは彼以外に、リジェネ・レジェッタ、
ヒリング・ケア、リヴァイブ・リバイバル、ブリング・スタビティ、デヴァイン・ノヴァらがおり、
どれも美形で、中性的な外見をしており、小さい子供から大人まで、幅広い年代に支持されている。
ライブを開けば数万の単位が入場出来るベースボールパークの会場もあっという間にチケット完売満席御礼、
歌をリリースすれば発表直後にDL回線パンクは当たり前の、世界規模のウルトラアイドルユニット。
現在は、表向きには充電中ということで、活動を休止している。
代表的な曲は『パラダイス木星圏』『進化気分でロックンロール』『形式番号のないエース機』等。
作詞作曲、舞台演出は基本的にリボンズが行っている。
が、正直、メンバーのウケは前述のセンスの理由であまりよろしくない。
マネージャーは金ぴか趣味で陶酔癖のあるアレハンドロ・コーナー。
 乗機は現在は未定。
まあ、多分リバーシブルな感じにはなるでしょう。
……おそらく。

 リジェネ・レジェッタ。
年齢は不詳。
リボンズより少しだけ年長に見えるが、見えるだけかもしれない。
世界的な人気アイドルグループ「イノベイター」のメンバー。
イノベイターの中では唯一の眼鏡属性持ち。
リボンズの腹心的な立場だが、皮肉を言ったり混ぜっ返したりと、本当にそうなのかは謎。
とりあえず、イノベイターの他の面々よりかは出番が多めになる予定。
つうか他の面々をどうやってキャラ立ちさせたものか。
 性格はほぼアニメの通り。
あっちではリボンズを出し抜こうとして結局ツメの甘さを露呈したが、さてこちらではどうか。
と言うか、お約束通り○○○て、○○○○○○に○○る予定、今のところ。
○○○○○○○と○○○○、そして○○○○○○の絡みで、今後のキーキャラになる……はず。
あくまで、はず。
237名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/26(月) 23:11:32 ID:???
 トリニティズ。
長兄ヨハン・トリニティ、次兄ミハエル・トリニティ、末妹ネーナ・トリニティ。
トリニティ運送という、小さな会社を運営している(マイスター運送とはライバル)。
リボンズ・アルマークの招集を受け、彼の手足として動くべく、現在は会社を休業してアザディスタンへ向かっている最中。
 長兄ヨハンは冷静沈着で、態度も静か。
つまりは「オトナ」な男。
トリニティ運送の社長を務め、弟や妹が暴走しないように、終始気を使っている。
言葉遣いも丁寧な為、トリニティ運送の渉外はほとんど彼一人でやっている。
ネーナ曰く、「結構腹黒い」。
 次兄ミハエルは粗暴で喧嘩っ早い問題児。
気に食わないことがあるとすぐに威しにかかる。
が、兄妹想いでもあり、兄には決して逆らわず、妹のことになると甘い。
アリーとはソリが合わず、物凄く嫌っている。
 末妹ネーナはじゃじゃ馬で活動的。
イメージ的にはやんちゃな子猫(注:関西圏の風俗ではない)。
思いつきで行動することがある為、ヨハンの眼の届かないところだと何をしでかすかわからない爆弾娘。
マイスター運送の刹那・F・セイエイを気に入っているが、今のところ、目立ったアクションは起こしていない。
 三人共に人工生命対(デザインベビー)であり、直接の血の繋がりはない。
 乗機は未定。
つか乗らせる物語的な余裕があるかどうか。

 アロウズ。
今をときめく巨大総合企業。
実はOZと強い繋がりがあったのだが、OZ崩壊に伴って新政府側へと乗り換えた。
裏では色々と動きがあったようだが、一般市民がそれを知ることはない(で、それを絹江が調べていた)。
 イノベイターに協力しているのは、会長のホーマー・カタギリ、
欧州地区マネージャーのアーサー・グッドマン、
アロウズ・エレクトロニクス副社長のリー・ジェジャン、
アロウズ・セキュリティ・サービスの警務部長アーバ・リント、
リントの部下であるバラック・ジニンといった面々。
 形的にはイノベイターの部下的な立場だが、実のところは、「利用する間は利用する」という関係。
特に会長のホーマーは、何か思惑を秘めているようだが……。
また、グッドマン達も決して一枚岩ではない。
特にジニンは色々と思う所がある様子。
 ホーマーは在野の天才ビリー・カタギリの叔父で、
ビリーの才能を惜しみ、アロウズに引き込もうとしているが、ビリー本人は今のところ首を縦には振っていない。
ちなみに、アリーの『ソンナコト・アルケー』を組み上げたのは実はアロウズである。
ミカンエンジンのデータを盗んできたのは別の誰かさんだが。
で、ミカンエンジンをビリーが開発中という情報を誰かさんに渡したのは実はホーマー。
 正直、ジニン以外はコーラサワーと直接絡まない……かも。
プリベンターにとっては、背面の敵となる予定。



 謎の軍団イノベイターとその仲間達。
ま、こんな面子が集まったアクヤク様である。
238名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/07/26(月) 23:12:46 ID:???
 遅れまくって申し訳ありませんコンバンハ。
次回から本編に戻ります。
ぶっちゃけ、話そのものは、細かい部分を除いて頭の中でラストまで出来てます。
でもこのペースだと映画公開までには絶対間に合わないな( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \ /  \
ハァ

ではサヨウナラ
239通常の名無しさんの3倍:2010/07/27(火) 17:36:06 ID:???
他の職人さん復帰希望
240通常の名無しさんの3倍:2010/07/28(水) 17:28:38 ID:???
>>233
元から住人が多いとは言えないのに、規制は本当にスレ存亡にかかわるよな
住人職人併せて、保持していくしかないか
241通常の名無しさんの3倍:2010/07/31(土) 17:07:35 ID:???
ほしゅ
242通常の名無しさんの3倍:2010/08/03(火) 17:14:23 ID:???
ガンクロ倉庫のほうも保管されてる
管理の人、実に乙&GJ
243通常の名無しさんの3倍:2010/08/05(木) 20:24:04 ID:???
保守しとく
244通常の名無しさんの3倍:2010/08/08(日) 09:34:13 ID:???
保守
245通常の名無しさんの3倍:2010/08/09(月) 18:59:26 ID:???
週一ペースはもう不可能なのかね
246通常の名無しさんの3倍:2010/08/09(月) 21:51:23 ID:???
>>245
土曜日氏の都合もあるし、仕方ないですよ
247不定期やさー:2010/08/09(月) 21:56:48 ID:???
何故か、フィギュア・スケートである。 コーラサワーを筆頭にプリベンター
達はアイス・ショーに出演することになっていた。
 「何が嬉しくて、氷上で演技しなくちゃいけないんだ。」とコーラはこの話を
聞いた時、文句を言っていたが、ペアを組むのがカティ・マネキン嬢と聞いたとたん
態度は一変。 仕事が終わると毎日リンクに足を運ぶようになった。
「げに恐ろしきは女の力なり。」とデュオがいうと、「やっぱり、カティさんの
事になると、力の入れようが違いますね。」とカトル。
「奴の頭の中は、女、酒、食い物、ギャンブル、模擬戦で一杯だからな。」と五飛。
「さて、俺たちも練習しないとな。 最初からすべってころんだら、いい笑い者だ。」
とヒイロ、トロワ。
 練習も最初は軽くステップを踏む程度だったが、さすが運動神経は非常に発達している
面々である。 最後にはお互いを持ち上げ、滑走することもできるようになった。
 そして当日、有名スケーターの面々に交じってプリベンターの面々も登場した。
パリの古い街並みをイメージしたセットを背景に軽やかに滑る有名スケーターとプリベンターたち。
 そして、花屋の屋台を模した中からカティ・マネキンが登場するシナリオだが、
そこで登場するのがコーラさんである。
 恋人もおらず、金もない、女性におくるあでやかなバラの花束も持っていない。
まるっきり自分の現在の生活状況を表したような配役に、不満を示すが、カティ
とランデヴーで滑走できるというので我慢していた。
 そして、優雅に滑るカティに「大佐ーーー!!」と叫びながら近づくコーラ。
「ゴン。」とカティの掌ていがさく裂した。 コーラの体は高い天井近くまですっ飛び、
リンクに墜落した。 「た、大佐ーーー・・・」とコーラが近づくと、裏拳から、ひじ打ち、
そのあととどめの北斗百裂拳がさく裂した。
「んな…馬鹿な…。」とさすがのコーラもその場に崩れ落ちた。
そして、カティはごみ捨て場に持って行くようにひきづって退場。観客席からは大きな歓声が
あがっていた。
 さすがに、コーラこのことについては怒ったらしいが、カティには最初から別のシナリオを
わたされていたらしく、何もいえなかったようだ。
今日の教訓「うまい話には罠がある。」
------------------------------------------------------------------------------------
どうも、久しぶりに書かせていただきました不定期です。m(__)m
まさか、カラスに光ケーブルを食われていたとは思いもよりませんでした。
大団円に向かいつつある土曜日氏の話はどうなっていくか、自分もワクテカ
しながら、まちのぞんでいます。
 皆様、猛暑の中お体ご自愛のほどを。 では。
 
248通常の名無しさんの3倍:2010/08/10(火) 18:24:02 ID:???
不定期氏GJ&乙
実に良いタイミングの投下!
249通常の名無しさんの3倍:2010/08/12(木) 17:06:33 ID:???
なんという恐るべきカラスw
250名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/08/12(木) 23:53:23 ID:???
不定期氏乙です。

当方、諸々の事情で遅れまくってますが、お盆明けにまでには投下出来ると思います。
こりゃもう映画公開には絶対間に合(ry
251通常の名無しさんの3倍:2010/08/15(日) 09:41:53 ID:???
保守
252通常の名無しさんの3倍:2010/08/17(火) 10:25:16 ID:???
のんびりやれよ、もう
253名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/08/19(木) 01:14:31 ID:???
 サリィ・ポォはプリベンターの現場リーダーである。
発足からこっち、世界中を飛び回り、火種の処理に奔走してきた。
と言うか、プリベンターが出来る前、OZの動乱の時代から似たようなことをやってきている。
女の身でここまで濃い活動を続けてきた者は、この世界にも数える程しかいないであろうことは、おそらく間違いない。
まだ三十路も前で、二十代の大半をそんなことに費やしてきた彼女だが、それについての悔いは特には無い。
やりたいことをやっている、やるべきことをやってきた、という自覚と誇りがしっかりと心の中にあるからだ。
「とは言え」
 彼女は眉間の辺りを右手の人差指でツンツンと小突きつつ、軽い溜め息をついた。
「どうしたものかしらね……」
 神ならぬ身、如何に優秀であれ、全てを背負える程には彼女は大きな存在ではない。
提示された問題をどのように解決すればいいのか、どのように理解すればいいのか、そうそう判断つかないこともある。
 無論、彼女は独りではない。
責任者であるレディ・アンをはじめ、プリベンターに集った人材は優秀である。
肩を組むことで、圧し掛かるモノの重さをいくらでも軽減出来る。
だが、しかし。
「新しい未知の合金と、そして……」
 右手を額から離すと、サリィは机の上の書類に手を伸ばした。
つい先程、『客人』が彼女に手渡していったものだが、その中に記された文章は、
聡明な彼女をして、俄かには信じ難いものだった。
「半永久機関……GNドライブ、か」

 ◆ ◆ ◆

 人類は遥かな昔から、何を作るにしても、その肉体を道具にしてきた。
その過程で、「早く終わらせる為」「完成度を高める為」「より細かい工程を行う為」に『道具』を進化させた。
時代ごとの「限界」に阻まれつつ、一歩一歩、人類は自らの生活圏を拡大させ、文明を伸ばしてきたのだが、
その「限界」とは、すなわち「体力と精神が尽きた」、そして「道具を使ってもこれ以上出来なかった」の二つだった。
この二つを合理的に解決(限界を超えたものは労働とは言わない)する方法こそ、
どの時代においても、貴賎の差なく、全ての人が求め続けてきた「夢」に他ならなかった。
そう、その夢への希求こそが、人類をここまで進歩させてきた糧だったのだ。
「新しいモノが次々生み出され、古いモノを駆逐し、時代を切り拓く」
 壁にかかった時計を、サリィは見た。
ビリー・カタギリが作り上げた新型MS(ミカンスーツ)のテストから、皆が帰ってくるまで、あと少し。
「耐久性、持続性、精密性、そして安全性、どれが欠けても……」
 ついこの前までは、『時代の最先端技術』は、文句無しにMS(モビルスーツ)であった。
中でも、ガンダムと名前が付けられた五機の機体は、破格の性能を持っていた。
今は、そのガンダムは無い。
役目を終えて、歴史の舞台から姿を消した。
そして、「兵器」としてのMS(モビルスーツ)も、公的には、地球上には残っていない。
メンバーがテストをしているMS(ミカンスーツ)が、おそらくは、現在の「技術のトップ」である……はずである。
254名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/08/19(木) 01:17:45 ID:???
「……次代に繋がる技術には成りえない」
 MS(ミカンスーツ)に搭載したミカンエンジンは、ミカンの皮を燃料として動く。
これの改良次第では、柑橘類以外の作物でも代替出来る可能性がある。
しかも、目立った公害に繋がらない。
原子力に比べると安全性は格段に高く、太陽光エネルギー程に大仰な設備も必要としない。
課題は量産と出力のみ、とくれば、これは最早人類史上最大レベルの「技術革命」以外の何物でもないだろう。
農作物の食用外の用途拡大という意味でも、今後の人類社会における「世紀の大発明」に十分成り得る。
MS(ミカンスーツ)で得たデータを有効に使えば、人類の生活はかなりの進歩を見せるに違いない。
「ミカンエンジン、まさに天才の成せる技……」
 製作者であるビリー・カタギリの才能を、サリィは疑問視していない。
工業分野の頂点と言われたレイフ・エイフマン教授を師匠に持ち、
科学化学その他諸々の学問を修め、
ほぼ独力でMS(ミカンスーツ)とミカンエンジンを開発した。
それを天才と言わずして何と呼ぶか。
まあ、何で在野なんだよどっかの企業か大学で働いて社会に貢献しろよ、というツッコミが髪の毛三本程にサリィの中にあるが。
 しかし、とある『客人』が語った半永久機関は、規模そのものがミカンエンジンとは異なった。
簡単に言うなら、段違い、レベルが全く別次元という具合だ。
何しろ、極端な話をすれば、燃料切れによるガス欠というものがない。
そして得られるパワーがとにかく東大、じゃねえや強大。
ミカンエンジンでさえ、現在の主流である太陽光エネルギーをぶっちぎるくらいに優秀なのに、
それを更に上回ってしまうというのだから、W杯で勝利国を連続で当てるタコ以上に、簡単には信じられない。
「もうボチボチ、ですぅ」
 と、ヒョコッという感じで、サリィの前に一人の少女が現れた。
ツインロールパンナちゃんこと、ミレイナ・ヴァスティだ。
十代も半ばという若さの彼女だが、この歳でレディ・アンの秘書に抜擢され、
前任のシーリン・バフティヤールに勝るとも劣らない働きを見せる、相当な才女である。
「そうね、ボチボチね」
「で、どうするんですぅ?」
「どうするも何も……現状では、動くしかないわね」
「信じたんですかあ? アレを」
「信じると言うより、信じざるを得ない、かしらね」
 『客人』が自分のところに来た理由というのを、サリィは把握している。
すなわち、レディ・アンが事態の深刻性、重要性を見抜き、門を開いたということだ。
そうでなければ、サリィに直接『客人』は来ない。
至るまでに、追い返されているはずなのだ。
「ミレイナはどうなの?」
「信じて良いかわからない、ってところですぅ」
「まあ、普通はそうよね」
 ミレイナの素直さに、サリィはクスリと笑った。
信じろという方が、確かにおかしいのだから。
現物でも見れば、また違ってくるのだろうが……。
255名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/08/19(木) 01:20:49 ID:???
「でも、今は別のことが気にかかってるですぅ」
「別のこと?」
「皆さんが理解出来るですかねえ、と」
「……うーん」
 サリィとミレイナは、『客人』から説明を受けたが、それでもまだ完全に信じるには至ってはいない。
果たして、外出テスト組が「オッケー納得!」となるだろうか。
ガンダムパイロットはまだ良いとして(それでもおそらく信じはすまい、彼らなりの態度で疑問を示すはずである)、
何よりの問題は、模擬戦二千回不敗のスペシャルと、ワンマン武士道アーミーの二人である。
「会わせるおつもりなんですかあ?」
「そりゃあ、会わせるわよ。出ないと話が前に進まないじゃない」
「えー、でも絶対こじれると思うですぅ」
「こじれるでしょうね」
「うー、不安ですぅ」
 GNドライブの情報を持ってきた『客人』は、まだ面識が薄い分大丈夫だろうと、サリィは踏んでいる。
だが、別の『客人』はどうか。
コーラサワーにとって天敵とも言える人物が何しろいるのだ。
それに、マスコミ関係の人間もいる。
「荒れたら困るですぅ。お茶の湯呑み、買い替えたばかりだから、何かのはずみで割れちゃったりしたら勿体ないですぅ」
「最悪の場合、席を外してもらうしかないわね」
「それがいいかもですぅ。どーせスペシャルさんとブシドーさんには理解出来ないと思うですぅ」
「まあ……そうでしょうね」
 サリィはまたまた溜め息をついた。
形的にはスペシャルことパトリック・コーラサワーも、ブシドーことグラハム・エーカーも、
サリィの部下ということになっているので、命令というやり方で強引に話を纏めることは出来る(まあ完全には出来ないだろうが)。
だが、事が事だけに、理解しないままに出動をさせる、というのも危険ではある。
「じゃあミレイナ、応接室の『客人』達に声をかけてきて。あと、お茶も淹れ換えておいて」
「はーいですぅ」
 踵を返したミレイナの背中に視線を送りつつ、サリィは思った。
まあ、なるようにしかならないわね、と。
 そして、ミレイナがドアを開けた瞬間、騒がしい連中の騒がしい声が、サリィの耳に聞こえてきた。
帰還を知らせる、声が。

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――


 コンバンハ。
忙しェ――――――――――――ッということで次回までサヨウナラ。
256通常の名無しさんの3倍:2010/08/19(木) 20:45:23 ID:???
ストーリー再開乙です
あと、マイペースでゆっくりでも構わないですよ
257通常の名無しさんの3倍:2010/08/22(日) 08:25:43 ID:???
土曜日さん乙〜
258通常の名無しさんの3倍:2010/08/24(火) 10:04:59 ID:???
厨二ラノベの続きもそろそろ密かに期待
259通常の名無しさんの3倍:2010/08/26(木) 12:47:50 ID:???
おいイソノ、乙しようぜ!
260通常の名無しさんの3倍:2010/08/26(木) 16:13:50 ID:???
実に淡々と進むスレである
なんという安定感
261通常の名無しさんの3倍:2010/08/28(土) 11:22:52 ID:???
映画でも愛と勇気で生存だ!
262通常の名無しさんの3倍:2010/08/30(月) 11:58:17 ID:???
別に映画公開日を最終回にせんでも、職人が続けたいと思うところまで続けたらいい
263通常の名無しさんの3倍:2010/09/01(水) 18:13:16 ID:???
模擬戦2000回不敗のスペシャルエース、パトリック・コーラサワー様がイヤッフで保守するぜ
イヤッフ
264通常の名無しさんの3倍:2010/09/03(金) 17:11:28 ID:???
保守
265通常の名無しさんの3倍:2010/09/04(土) 10:02:46 ID:???
本当に映画公開直前なのか、ってくらいに静かだな板全体が
266通常の名無しさんの3倍:2010/09/04(土) 11:12:32 ID:???
映画はコーラサワーシリアスモード初の映像化が見所です
ここのコーラさんはシリアスモード搭載してますか?
267名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/05(日) 11:21:09 ID:???
次回は九月中頃になりそうです。
一カ月近く空いてしまいますが申し訳ありません。
ちょっと他部署の臨時異動の余波に巻き込まれてあばばばばばば
268通常の名無しさんの3倍:2010/09/05(日) 11:22:24 ID:???
>>267
おk
269通常の名無しさんの3倍:2010/09/07(火) 18:33:01 ID:???
保守
270通常の名無しさんの3倍:2010/09/09(木) 17:39:40 ID:???
映画までもう少しですなー
ここの住人共は見にいくかい?
271通常の名無しさんの3倍:2010/09/09(木) 20:28:30 ID:???
>>270
初日にいくぞー
もちろんコーラさん見にな
272通常の名無しさんの3倍:2010/09/12(日) 09:59:16 ID:???
保守
273通常の名無しさんの3倍:2010/09/14(火) 18:22:57 ID:???
映画のコーラさんは強くてかっこいいらしいじゃないか
胸が熱くなるな…!
274通常の名無しさんの3倍:2010/09/16(木) 18:59:34 ID:???
マジかどうかは知らんが、もうバレがきてるんだな
映画で熱があるうちに投下カモーン
275通常の名無しさんの3倍:2010/09/17(金) 10:59:27 ID:???
映画公開がはじまると、板も多少は活気を帯びるだろう
コーラサワーパワーも加わるで実際
276通常の名無しさんの3倍:2010/09/18(土) 18:09:58 ID:???
最後まで不死身すなあ…
277通常の名無しさんの3倍:2010/09/20(月) 12:24:05 ID:???
劇場版は未見だが、コーラはきっと活躍しただろうなあ
278名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/20(月) 18:18:39 ID:???
「全員揃っているわね?」
「ええ、全員います」
「では、始めましょうか」
 サリィ・ポォを筆頭に、プリベンターの現場勢は揃って、本部の会議室に詰めていた。
会議室と言っても、本部を抱える政府議事堂の中央大会議室に比べれば遥かに小型、
大会議室は千人を越える人員を修養出来るが、こちらはせいぜい、二十人も入るかどうかといったサイズ。
もっとも、少数精鋭のプリベンターにとっては、これくらいの大きさが適当であるのもまた事実である。
「レポートは読んできてくれた?」
「一応は、な」
「熟読した」
 不意の『客人』の来訪があってから二日経っている。
その『客人』がもたらした『情報』は、やはり一日では整理がつかないものだった。
新型MS(ミカンスーツ)のテストから戻ってきたメンバーと、『客人』を交えて話し合ったものの、
プリベンター側は俄かに信じることが出来なかったのだ。
『客人』とは、マイスター運送の当代社長であるスメラギ・李・ノリエガ、従業員の刹那・F・セイエイ、
人類革新重工のソーマ・ピーリスとアンドレイ・スミルノフ、
JNNTVの報道アナウンサーの絹江・クロスロードの五人であり、
『情報』とは、スメラギが持ってきた、マイスター運送創始者のイオリア・シュヘンベルグが『封印』したとあるシステムについてのもので、
これがまた現代のテクノロジーを超越するシロモノで―――とまあ、正味の話、
持ち込まれた方もたまたま居合わせた方も、メガンテいやもとい目が点になってしまうレベルの話だった。
それに、パトリック・コーラサワーとその天敵のソーマ・ピーリスが同じ場にいるもんだから、
だいたいにしてまともな話し合いになるわけがなく、
最終的にソーマの中に眠るマリー・パーファシーが表に出てきて収拾するまで、
グラハムはトンチンカンなことを言う、サリィの怒号が飛ぶ、
アンドレイは困惑する、スメラギは呆れる、刹那は黙る、絹江は戸惑う、
張五飛は鉄拳を繰り出す、ヒルデはフライパンを持ち出す、と、
もう話し合いなのかそれともプロレスのバトルロイヤルなのか、判断付き難いドタバタに終始してしまったのだ。
会議潰すにゃ反論はいらぬ、コーラ一人がいればいい、とは、サリィが改めて思った次第であるが、まあそれはともかく。
「読みはしたんだけど、その、こう、やっぱりピンとこないんだよな」
 足を組みかえて、デュオ・マックスウェルは頬を右手の人差指でポリポリとかきつつ呟いた。
側に座るヒイロ・ユイも、カトル・ラバーバ・ウィナーも、彼の言葉に同意するように頷く。
いや、三人だけではない。
トロワ・バートンも、張五飛も、ヒルデ・シュバイカーも、ミレイナ・ヴァスティも、ジョシュア・エドワーズも……皆同じ思いだった。
理屈としては理解出来るが、納得し難い、と。
「それは私だってそうよ」
「サリィさんもですか」
「だって……実物を目の前にしたわけじゃないし」
「だよな」
279名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/20(月) 18:22:29 ID:???
 GNドライブ。
 陽電子と光子を特殊な粒子―――GN粒子―――に変換し、さらにそれを電力に変換させる動力源。
稼働の為の燃料を必要としない為、文字通りの半永久機関。
作り上げる為には特定の環境と年月が必要であり、あくまで「現在地球上に」存在するのは理論だけ、である。
……と、いうことになっている。
「それに、イオリア・シュヘンベルグって三百年近く前の人物だろう」
「今もって地球上では実現し難いのに、そんな昔に理論だけでも完成させていたなんて……」
「そもそも完成と言わないだろう。実証出来ないのだから」
「科学的根拠はまったく無いわけではないですぅ。仮にこれが現実のものとなったら」
「……カタギリ博士のミカンエンジンなどぶっちぎってのエネルギー大革命になるな」
「現実のものになれば、ね」
 産業革命以降、人類文明の進歩速度は格段に上がった。
だがそれでも今なお、人類の生活圏は地球と太陽系内の一部に留まっている。
言ってみれば、GNドライブはそれこそSFの世界の存在にほぼ等しい。
「そして、このGNドライブが必要とされるのは」
「……地球外生命体、異星文明との出会いにおいて重要となる、と」
「まったくの夢物語としか思えないけどな、ぶっちゃけ」
 人類は『幼年期の終わり』を未だに迎えていない。
異星人という存在は、まだ見えぬ、謎のものである。
「つまり、人類という生命体が地球から、そして太陽系から、銀河系から飛び立ち、未知の生命体と触れ合う為にこそ」
「半永久機関と言えるGNドライブは必要である、ということだな」
「太陽光エネルギーの安定が図られ、ようやく化石燃料の『檻』から外に出ようとしている段階では……」
「ああ、やっぱり夢物語だよな」
 スメラギの提供を受け、レディ・アンとミレイナ・ヴァスティが纏めたレポートには、こう記されている。
いつ何時、人類は外宇宙の脅威に晒されないとも限らない。
だからこそ、人類はその種としての進化を速めるために、まず環境から整えなければならない。
つまりは生命体としての生活レベルそのものを構築し直す必要があり、その為にこそ、GNドライブという動力源は重要なのだ、と。
「ミレイナ」
「はい、なんですぅ?」
「お前の両親はマイスター運送に勤めてるんだろ? 本当に何も聞いていなかったのか?」
「パパからもママからも何も聞いてないですぅ」
「ふうん、つまり知っていたけど、ミレイナに教えなかっただけなのか」
「それとも、教える程の話ではないと判断したのか」
 メンバーは黙り込んだ。
GNドライブそのものの情報については、プリベンターの協力者であるビリー・カタギリにも、
スメラギの了解の下、渡してある(なお、ビリーはスメラギと旧知である)。
現在の『人類の中』ではトップクラスの頭脳を持つ彼に、この謎の動力源については当面任せるしかない。
280名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/20(月) 18:27:02 ID:???
「サリィ」
「なあに、五飛?」
「奴らは、マイスター運送は、全てを話したと思うか?」
 先程とは異なった空気の沈黙が、会議室を覆った。
「つまり……まだ隠していることがあると?」
「そんなあ、スメラギさんはそんな人じゃないですぅ」
 ミレイナが頬を膨らませて、五飛に反駁した。
が、五飛は動じない。
五飛はガンダムパイロットの中でも、最も洞察力に優れ、口調も鋭い。
蓄えた知識こそミレイナの方が上かもしれないが、会話のコントロールにおいては、五飛に旗が揚がる。
「何より、何故この時に、プリベンターにこのような情報を持ってきたか、だ」
「……」
「奴らの話を信じるなら、少なくともマイスター運送は三百年間近く、イオリア・シュヘンベルグの『遺産』を守ってきたことになる」
 パン、と五飛はレポートの表紙を叩いた。
彼が言いたいこと、言おうとしていることは、ここにいるメンバーのほとんどが薄々感づいていたことでもある。
「さっき話したように、まだ人類は真の『宇宙生活』というものを手に入れていない」
「でもですぅ、スメラギさんは……」
「さらに今後数百年、会社を存続させて秘匿することも出来たはずだ」
「それは、OZが壊滅し、一応地球圏に統一政府が出来たからであって、その、ですぅ……」
「曲がりなりにも人類が纏まったから、とミレイナは言いたいのだろうが、俺にはそうは思えない」
「うー……」
 五飛はレポートを机の上にポイと投げて置いた。
「五飛の言いたいことはわかります」
「そんな、カトルさんまでえ」
「いや、マイスター運送を悪者にしようとか、そういう話じゃないよ、ミレイナ」
「……」
 ここで、五飛とカトルに代わって、デュオが言葉を発した。
「こういうことだな。マイスター運送がこの情報の封印を解いたのは……」
 数瞬、沈黙が場を支配した。
そして、デュオは息をつくと、言葉を継ぎ足した。
「自分たちだけでは守りきれなくなる、という事態が近付きつつあるとマイスター運送が判断したからだ」
「それも、イオリア・シュヘンベルグの意図したところと違う使い方をされる、という懸念の下に」
 ミレイナはもう、何も言わなかった。
再々度、会議室は静寂に満たされた。

 ◆ ◆ ◆
281名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/20(月) 18:33:17 ID:???
「ところで」
 すっかり冷めてしまったお茶(今日は緑茶)を淹れ替え、皆が喉を潤したところで、デュオは改めて口を開いた。
言葉の先は、とある人物二人である。
デュオの眼光が先程の話し合いとは全く異なったものになっているが、
それに気づいた者はこの場に―――って、いないわけがなかった。
とうの二人を除いて。
そもそも、デュオ本人も隠そうとすらしていない。
「ず―――――――――っと黙りこくってたけど、御両人は何か意見はないのかよ」
 二人とは、もう紹介の必要があるのかないのかあるのかやっぱりないのかわからないが、
そう、プリベンターが誇る二大巨頭(敢えて何のかは記さない)、
“スペシャルなエース”ことパトリック・コーラサワーと、“ミスター・ブシドー”ことグラハム・エーカーのことである。
「んあ? 俺に聞いてるのか?」
「何だ、私に聞いているのか?」
「他に誰がいるってんだよ」
 デュオが言ったようにこの二人、この会議が始まってから、ウンともスンともオッペケペーとも、喋っていない。
コーラサワーもグラハムも、目を瞑って腕を組んでじっと座っていただけである。
「そうだなあ」
 上着の襟元をぐいっと指で緩めると、コーラサワーはしばし空中に視線を走らせた。
そして、のっそりと言葉を紡いだ。
「よくわからん」
「やっぱりか!」
 コーラサワーとグラハムを除く、場の半数がジト目になり、さらに半数は溜め息をついた。
予想していた答だったが、予想通りに言われると、それはそれで何かイヤなもんである。
「だいたい、レポート読んだのかよ?」
「読んでない!」
「きっぱり言うな」
「嫁さんには読んでもらったけどな。興味があるって一晩中ずっと読みふけってた」
「……お前、機密だぞこれ」
「はあ? 嫁さんが外部にバラすわけないだろ、疑うんじゃねーよ」
「つうか本来ならこれで一発クビだ」
 コーラサワーの嫁さんとは、カティ・マネキンのことである。
かつてAEUの天才戦術予報士と言われた女性で、今は一線から退いている。
確かに彼女なら、外部にホイホイとこの話を漏らすようなことはしないだろうが、
それにしてもコーラサワー、危機管理がまったくなってない。
カティ・マネキンと出会う前は、軍の内部にしろ外部にしろ、数々の女性と浮き名を流した彼が、
よくぞ情報漏洩の疑いをかけられなかったもんである。
282名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/20(月) 18:36:25 ID:???
「で、あんたは?」
「私か?」
 デュオは矛先をグラハムに移した。
なお、今日は仮面はオフで、通常の“グラハム・エーカー”モードである。
仮面を着けるか着けないか、彼のその日の気分で変わる。
まあどっちにしろそれで性格が変わったりすることはないのだが。
「取りあえずは読んだ」
「ほう」
 この辺りは、流石にコーラサワーとグラハムの性格の差が出ている。
行動こそはウルトラマイペースだが、グラハムはグラハムなりに真面目なのだ。
「で、どう思った」
「そうだな……」
「?」
「敵が来れば、これを討つ! 武人の本懐これにあり!」
「何処をどう読んだらそういう結論になるんだよ、おい!」
 もう一度言う。
グラハムは“グラハムなりに”真面目なのだ。
一般人の真面目とは、ちょーとだけ違う。
「GNドライブの現実的な問題は知らん。そちらは盟友の分野だ」
「ああ、カタギリ博士ね」
「私としては、異星人が邪な考えで地球を侵略するのなら、これと戦い駆逐する! それ以外にない!」
「ウルト○マンかよ、あんた」
 ツッコミを入れてはいるものの、二人の回答はデュオの十分に想定内だった。
つうか、これで二人に口から「GNドライブとは云々」と具体的な意見が出てきたら、それこそ夢物語でSFである。
「そもそも、GNドライブは闘うためのものじゃなくて、人類が外宇宙の知的生命体と『会話』する為に必要なもんだって話だぞ」
「ちょっと待てみつあみおさげ、どうやってエンジンで話すんだよ。ブオーンブオーンとか言うのか?」
 腋から、もとい脇からコーラサワーが口を挟む。
「……お前、マジでレポート読んでないな」
「褒めるなよ」
「褒めてないよ!」
 外宇宙の知的生命体と対等に会話するためには、まずそのレベルまで人類が宇宙に進出しなければならない。
そう成る為に、GNドライブという現時点では究極とも言える動力源が必要である、というのが、
滅茶苦茶簡単に言って、イオリアの思想なのだ。
283名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/20(月) 18:38:52 ID:???
「まあ、難しいことはよくわかんねえよ」
「威張るなよ」
「つうか、俺達がやることって、こうやって考えることなのか?」
「え?」
 コーラサワーは目の前のレポートを丸めると、ペシ、と机を叩いた。
レポートを上げると、そこには潰された小さなハエの死骸がひとつ、あった。
「オデコ姉ちゃん一号は、もう決めてんだろ?」
「……どういうこと?」
「あのボインの姉ちゃんの運送会社がどういう思惑か知らないけど、こうしてプリベンターに接触してきたってことはよ」
「……」
「つまりは、俺達の力が必要とされているってこったろ?」
「……」
「なら、俺達がやることって一つじゃねーか?」
「……」
 デュオは突っ込まなかった。
いや、場の誰も突っ込めなかった。
まず行動ありき。
今はそういう時ではないのか―――と、コーラサワーは言う。
深く考えてのものでは、当然ない。
彼一流の直感的な発言であるに過ぎない。
だが、それは、無形の大きな説得力を伴っていた。
「どうせ、メガネの姉ちゃんは『行け』って言うって」
「私もそう思う。不本意だがこの男に同意する」
 グラハムもまた、口を開いた。
「マイスター運送とやらが、まだ隠していることがあるというなら、それはそれで良い。いずれ聞き出せばよいことだ」
「……」
「場合によれば、向こうの方からこちらにさらに歩み寄ってくることもあるだろう」
「……」
「何百年も隠してきた情報をこちらに提供したのは、彼らがそうせざるを得なかったのだと考えると、ここは応えることこそが義であると考える」
「簡単に言うけれど、単に利用されるだけかもしれないわよ」
「懸念ばかりでは機を逸する。丁か半か、賽の眼は振られなければわからない。今は向こうの波に乗るべきだ」
「……頭より身体を動かせ、と?」
「然り。急場においては長考は無用の足枷、既にレディ・アン女史から指令が出ているのではないか?」
「……」
 サリィは皆の視線が自分に集中するのを感じた。
その視線が意味するのは、唯一つだ。
グラハムの問いの答は、如何なるものであるか、という。

「……ふぅ」
 サリィはお茶を口に含み、喉の奥に流し込むと、小さく溜め息をついた。
彼女の脳内には、今朝、レディ・アンから下された一つの命令がある。

「マイスター運送の創設の場であり、イオリア・シュヘンベルグの研究所があったアザディスタンに、プリベンター全員で明日、調査の為に出立せよ」という命令が。



 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
284名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/09/20(月) 18:39:48 ID:???
 遅れてすいませんコンバンハ。
何とか仕事も一息つける状況になりました、まぁ明日からまた怒涛の残業が待ち構えているわけですが。
今ならELSと同化してもいいかな、なんぞと思ったりしなかった(ry

で、映画のキャラクター(デカルトとかミーナとか)はどうしましょサヨウナラ。
285通常の名無しさんの3倍:2010/09/20(月) 20:57:55 ID:???
>>284
乙です、劇場版は観たんですか?
うちの地方は10月30日以降ですよorz
286通常の名無しさんの3倍:2010/09/21(火) 17:39:59 ID:???
もしかしてこのSSでも○○○(劇場版未試聴組の為に伏せ字)を出すのか?
287通常の名無しさんの3倍:2010/09/22(水) 15:22:01 ID:???
バレスレとかはともかく、いまいち板が盛り上がってない気がするが、
やはりまだ公開されてない地区があるからか?
288通常の名無しさんの3倍:2010/09/22(水) 15:27:12 ID:???
SSスレは過疎気味だけど、
キャラスレとかはにぎわってるよ
SSスレは職人と読者が規制だと致命的だし
バレスレは何でもありだから凄いことになってるが
289通常の名無しさんの3倍:2010/09/24(金) 16:58:23 ID:???
コーラさんのカードが欲しい…
290通常の名無しさんの3倍:2010/09/25(土) 17:07:26 ID:???
黒田ェ…ノリノリでねえか>カード
291通常の名無しさんの3倍:2010/09/25(土) 17:16:18 ID:???
ストーリーカード、ここのコーラさんみたいなノリで吹いたw
292通常の名無しさんの3倍:2010/09/26(日) 09:54:56 ID:???
保守ワー
293通常の名無しさんの3倍:2010/09/26(日) 13:48:58 ID:???
職人カモン
294通常の名無しさんの3倍:2010/09/28(火) 21:04:28 ID:???
保守
295通常の名無しさんの3倍:2010/09/29(水) 17:05:16 ID:???
他の職人さんどこいっちゃったの…
296通常の名無しさんの3倍:2010/10/01(金) 18:18:35 ID:???
こんなコーラサワーで大丈夫か?
297通常の名無しさんの3倍:2010/10/01(金) 23:55:54 ID:???
大丈夫だ問題ない
298通常の名無しさんの3倍:2010/10/02(土) 07:14:08 ID:???
一番(頭が)いいのを頼む。
299通常の名無しさんの3倍:2010/10/02(土) 07:54:25 ID:???
多分コーラさんも死ぬ瞬間時間が巻き戻ってんだよ
300:2010/10/02(土) 17:01:12 ID:???
 シミュレーションマシンの操縦席に座るグラハムにビリーから通信が入る。
「そんな装備で大丈夫かい?」
 今回のシミュレーションでは、操縦者が装備を己の好みにカスタマイズできるようになっている。
 グラハムは自信たっぷりにこう答えた。
「大丈夫だ、問題ない」
「……本当に?」
 ビリーは何故か不満げである。
「問題ないと言っている。グラハム・エーカー、出撃する!」
 事実、グラハムは己にとって最良と思える装備を選択していた。
 操縦桿を動かし、シミュレーション上のグラハム機が出撃を開始する。
 外部に接続されたモニタにも離陸する様子が写されていた。
 ビリーは面白くなさそうな顔をしていたが、ふといたずらを思いついた子供のような表情でコンソールに指を走らせた。
『難易度:阿修羅をも超越』
 簡単に言えばチートである。
 グラハムとて、実機ならば血反吐と汗にまみれながらもチート機相手に引けを取ることはなかったろうが、
さすがにデータ上では努力だけで事態を乗り越えることは難しかった。
 たちまち身ぐるみを剥がされていくグラハム機。
 あわや撃墜される寸前というところで、急に敵機の動きが止まった。いや、相手だけでなくグラハム機さえ
いかなる操作を受け付けない。まるでシミュレーションマシンがフリーズしてしまったかのようだ。
 と思った次の瞬間、コックピットのモニタに移る景色が目まぐるしく変化しはじめた。
 それが己のとった行動を巻き戻ししているのだと気づいたときには、グラハム機は既に
出撃前の状態にまで強制的に戻されていた。
 友人の声が通信機から響く。
「そんな装備で大丈夫かい?」
 声音に若干の含み笑いが伺える。
 ビリーの思惑を察したグラハムは、溜息混じりにこう答えた。
「……一番いいのを頼む」
「それはちょうどいい、試してもらいたい新装備があってね──」

 ちなみに余談だが、同じ質問を次にテストしたコーラサワーにしてみたところ、
「一番スペシャルな装備を頼むぜ!」
 と即答したという。
301:2010/10/02(土) 17:05:27 ID:???
ところ変わって。
「宇宙の心は言っているよ、人々は争う運命ではないと」
「そうか」
「うん。ところでトロワ、その手に持っているのはなんだい?」
「これか。先日キャスリンからもらった爪楊枝だ」
「へえ、不思議なデザインをしているね」
「素材は不明だが美しいだろう。これでみかんを差して食べれば手を汚さずに済む」
「でもトロワ? 食べるだけならそんな凝ったデザインでなくていいし、皮を向くときに結局手は汚れるんじゃないかな」
「……!」



***
ネタ抜きにエルシャダイが面白そうで困る。
しまった、中の人的にロックオン出せばよかった。
あ、ちなみに劇場版は二回見に行きました、カティさんのカードをもらいました。
コーラサワーさん本編以上に大活躍でひゃっほおぉぉぉう!
それでは。
302通常の名無しさんの3倍:2010/10/02(土) 17:24:43 ID:???
おお、これはエルシャダイのネタとしてもなかなかおもしろく纏まってるんじゃない?
GJ&乙っした!
303通常の名無しさんの3倍:2010/10/03(日) 20:44:00 ID:???
>>300-301
乙です!
304通常の名無しさんの3倍:2010/10/04(月) 14:46:26 ID:???
乙でした!

で、結構スレが下がってるけど、これって上げたほうがいいのかな
305通常の名無しさんの3倍:2010/10/06(水) 09:55:32 ID:???
さすがにもう皆は映画はみた?
306通常の名無しさんの3倍:2010/10/06(水) 15:01:03 ID:???
>>305
見てないし、見ないつもり
映画ネタはネタバレみて追い掛ける
307通常の名無しさんの3倍:2010/10/08(金) 18:26:24 ID:???
DVDとBDはいつ頃発売になるんだろうか
その時までここの話が続いてたりして…





ま、まさか
308通常の名無しさんの3倍:2010/10/08(金) 18:37:05 ID:???
土曜日さんってマリナをあんな扱いにしてたから、劇場版見たらもう書けなくなったのかもね
309通常の名無しさんの3倍:2010/10/08(金) 19:21:47 ID:???
なんじゃそりゃ
310通常の名無しさんの3倍:2010/10/09(土) 08:59:03 ID:???
どうせ仕事が忙しいとかなんだろw
それにここのキャラ崩壊は今にはじまったことじゃねーべ、ここはそういうSSスレだってこっ鯛
311通常の名無しさんの3倍:2010/10/09(土) 23:45:02 ID:???
元々は映画前に終わらせる予定だったんだから、映画のオチなんざ関係ないだろ
ネタ系SSスレなんだから原作にそぐわないキャラなんざ当たり前
312名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/11(月) 00:27:45 ID:???
投下遅れて申し訳ないです
仕事を片づけて、なるたけ早いうちに何とかします、すんません
313通常の名無しさんの3倍:2010/10/11(月) 08:25:07 ID:???
>>312
マイペースで良いと思うよ
314通常の名無しさんの3倍:2010/10/11(月) 09:44:32 ID:???
いつまでも待ってます
315通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 20:43:57 ID:???
保守ワ〜
316通常の名無しさんの3倍:2010/10/14(木) 00:20:56 ID:???
>>312
気楽にやって下さい。のんびり待ってます
317通常の名無しさんの3倍:2010/10/16(土) 10:58:36 ID:???
本スレでも話題になってたが、
コーラさんのパーソナルマークはどんなのが似合うだろうか
318通常の名無しさんの3倍:2010/10/17(日) 19:14:59 ID:???
>>317
やっぱり枕でw
319通常の名無しさんの3倍:2010/10/19(火) 16:38:35 ID:???
枕マークのコーラサワー


薬みたいである
320通常の名無しさんの3倍:2010/10/20(水) 04:15:49 ID:???
>>316
政治思想と物乞いの区別が付かないのが、チョウセンヒトモドキ
321通常の名無しさんの3倍:2010/10/20(水) 06:32:56 ID:???
>>320
誤爆乙
ゴリ腐アンチスレで汁婆でも来てたのかな?
322通常の名無しさんの3倍:2010/10/20(水) 18:04:27 ID:???
SSが長期に渡った場合、職人のやる気と職人の環境変化(学業や仕事)が最大のネックだな
ここはまだ職人がやる気を失ってないだけマシなのか
323通常の名無しさんの3倍:2010/10/22(金) 17:28:24 ID:???
コーラさんの外伝アニメでないかなあ
324通常の名無しさんの3倍:2010/10/23(土) 14:55:39 ID:???
ほっしゅわー
325通常の名無しさんの3倍:2010/10/23(土) 18:10:19 ID:???
test
326名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/24(日) 17:12:43 ID:???
今週末までには投下できると思います
327通常の名無しさんの3倍:2010/10/24(日) 21:02:36 ID:???
イヤッホゥゥ!!!
328通常の名無しさんの3倍:2010/10/26(火) 18:32:56 ID:???
>>326
待ってます
329通常の名無しさんの3倍:2010/10/28(木) 12:59:43 ID:???
保守
330不定期.co.jp:2010/10/28(木) 19:06:41 ID:???
 「闇鍋しないか。」いいだしたのは、五飛であった。
「おもしろそうじゃない。」とヒイロが同調し、なんやかんやといいながら
みんなが材料を持ち寄ってきた。
事前に五飛から食い物に限定することを言い渡されていたが、何にも考えて
いないのが、何人かいるようだ。
 さてその日、プリベンターの部屋には大きい鍋と調理機が用意されていた。
「一応、だしはカツオ節と昆布、しょうゆで味付けしてある。後は自分の入れる
物でどうやって変わってくかを楽しむんだ。そして一度つかんだものは自分で責任を持ってくうこと。
」と五飛はいった。
明りが消され、みんなが各々席についた。
 女性陣と男性陣に別れ、ごとごとと鍋の音がひびいていた。
ざばざばと各々が材料を入れ、煮えるのを待った。
 「ん?。これは鮭か。まあ、もってきたのは誰か予想はつくがな。」
とデュオ。
 ジョシュアは「それ、俺が食おうとしてたのに。」と残念そうに言った。
「まあ、うまいからいいか。」とデュオ。
「これはなんだ?。なんかぽろぽろ崩れるが・・・。」とグラハム。
「うん、これはフォアグラか。 察するにこれはカトルだな。」
「そうですよ。鍋でどんな味になるか楽しみたくて。」とカトル。
「いや、鳥の臓物だから、なかなか味わい深いな。」とグラハムは鞘を収めた。
「ん?これは何だ、餅のようだが。よいしょっと。 うん?うわ、これ納豆がはいってる。
ヒイロだな、これは。」とコーラサワー。
「別に食いもんっだからいいだろ。ちゃんと食えよ。」とヒイロ。
「納豆餅とは、いくらスペシャルな俺でも、苦戦するぜ。」とコーラは顔を歪めていった。
「さて、俺も食うか。」と五飛。
「ん?どうやら餅のようだ。俺も持ち込んだが、まさか・・・。」不安がよぎった。
「おい、一度箸を付けたものはちゃんとくえよ。言い出したおまえが責任とれよ。」とコーラサワー。
覚悟を決めて口に入れた五飛がこの世のものとは思えない叫びをあげて、水道の蛇口に突進したののに
時間はかからなかった。
「あいつ、何を入れたんだ?。」とトロワ。
そう、五飛の持ち込んだものはたっぷりと豆板醤のはいった餅であった。
策士が策にはまることはよくあることであるが、代償には高くついたようだ。
 ______________________________
お久しぶりでございます。 やっとネタ投下できました。
これからもよろしくお願いします。m(__)m
土曜日氏もご多忙でしょうが、頑張ってくださいね。
331名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/28(木) 19:42:40 ID:???
 人間、何かしら何処かに取り得というものがある。
例えば絵が上手かったり、歌が上手かったり、速く走れたり。
未来からやってきた青いタヌキ……もとい猫型ロボットに助けられてばっかりのメガネの少年だって、
ガンマンとして超優秀で、人の痛みをわかってあげることが出来て、何処でもいつでもすぐに寝られるという特技を持っている。
 だいたいにして人間の能力というものは相対的なものが多い。
絶対的な力なんてものは、まずありゃしないのが相場である。
とある哲学者はこう言ったものだ、「絶対的な力を持つのは、神と呼ばれる者だけだ」と。

 さて、ここに一人の男がいる。
年齢は二十代、容姿はそれなりに整っており、社会的地位もまず申し分ない。
統一前のユニオンではMSのエースパイロットとして鳴らしており、過去の経歴も十分である。
 だが、彼は今置かれた状況に満足はしていない。
元来上昇志向が強いだけに、現在の地位に不満がある……というわけではない。
むしろ、不満があるのは、自分の立場そのものと言った方が正しい。
つまりは、「何で俺、こんなことやってるんだろ」という戸惑いにも似た「ミタサレナイ感」である。
アラスカ基地ではエースとして堂々君臨し、MSWADとしてフラッグファイターに選抜され、
OZの動乱では先陣を切って戦い、多くの武勲を挙げた彼が、今就いている職というのが。
「おらあああ、起きろアラスカ野! いつまで寝てやがんだ! プリベンター、揃って出発の時間だぞ!」
 政府直属、世界の平和を裏から守る隠密同心的組織、プリベンター。
そう、彼―――ジョシュア・エドワーズはそのメンバーなのである。
……立派な。

 ◆ ◆ ◆

「……しかし、ドアを蹴破るなよ」
「どれだけピンポン鳴らしてもウンともスンとも言わねーから、実力行使ってヤツだ」
「だからと言って器物破損していい理由にならんだろうが」
「お前が起きてこないのが悪い」
 寝ぼけ眼をこすりながら、ジョシュアは早朝にいきなり闖入してきた不届き者に文句を言った。
だが、言われた方はあまり堪えている様子はない。
他人から何を言われようが気にしないというトクな性格(得でも特でも可)な人間である為だが、
それを差し引いても、ジョシュアの方にもあまり文句に熱や毒が無いのもまた事実だった。
無い理由は、ジョシュアとこの侵入者の間に友好関係が築かれているから、というわけではなく、
単純にジョシュアが睡眠不足で元気がないというだけのことであるが。
「オデコ姉ちゃん一号がプンスカ怒ってるぞ」
「……」
「何だよ、その顔は」
「いや、寝過したのは俺が悪かったとしても」
「うん?」
「何でお前がやってくるのか、不思議で、さらに不満で仕方が無い」
 ジョシュアを起こしにきた男の名前は、パトリック・コーラサワー。
今は結婚して婿養子に入ったので、嫁の方の名字で正式にはパトリック・マネキンなのだが、
表だっての通りとしては、パトリック・コーラサワー・マネキンとなっている。
まあ、彼のことを「パトリック・マネキン」と呼ぶ者はほぼいない。
パトリック呼びの嫁や親族を除けば、他は誰だって「コーラサワー」呼びである。
なお、オデコ姉ちゃん一号とは、プリベンターの現場部隊の指揮官、サリィ・ポォのことである。
何でそう呼ばれているかは、まあこの場では説明を控えさせていただく。
332名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/28(木) 19:46:20 ID:???
「なあ、一つ聞くが」
「ちゃっちゃと着替えろ……んあ、何だ?」
「あの男は、ちゃんと集合時間に遅れなかったのか」
「あの男って誰だ、名前で言えアラスカ野」
「お前も俺のことを名前でちゃんと呼べ。……隊長のことだよ」
「名前で呼べっつの」
「隊長は隊長だろが」
 ジョシュアが隊長と呼ぶのは、プリベンターのメンバーである、グラハム・エーカーのことである。
かつてユニオンでフラッグ選抜隊が組まれた時、グラハムが隊長となり、ジョシュアの上司になったのだ。
ちなみに、その時の面子には、ダリル・ダッジやハワード・メイスン達がいる。
「ナルハム野郎か? ピンピンしてるぞ、何でも集合時間の二時間前に場所に来たとかナントカ」
「二時間前……」
「私は我慢弱い男だから、とか言ってたが、そういうレベルじゃねーよな、あのバカは」
「バカにバカって言われたらおしまいだな、隊長も」
「何か言ったか?」
「別に」
 ジョシュアにとって、グラハムは一種、目の上のタンコブのような存在だった。
ユニオンのMS部隊の中でも、まず腕っこきとして一番に名前が上がるのがグラハムで、
自尊心の強いジョシュアにとっては、実にうっとおしい人間だったのだ。
選抜隊の一員になって以降、事あるごとに中傷めいた皮肉をグラハムにぶつけていたのも、
グラハムが創始した「グラハムスペシャル」というフラッグのフライト中の可変を無理矢理やったのも、
全てはグラハムに対する嫉妬であり、僻みであった。
俺の方がスゲエんだよ、なんてあからさまにやるのは、言ってみりゃ「男として小さい」わけだが、
何しろグラハムがああいう性格なので、人間関係においては、
ダリルやハワード、ビリーのように尊敬したり親友になるか、
またはジョシュアのようにうざったがられるかの二極化が激しかったりするのもまた事実ではあった。
ジョシュア程とはいかずとも、グラハムを快く思わない連中は、結構ユニオン軍の内部にいたのだ。
 まあ、ジョシュアの場合はグチグチ言いつつも、「隊長」呼びして曲がりなりにも目上として扱っている辺りがやっぱりヘタレの証明かもしれない。
333名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/28(木) 19:47:24 ID:???
「で、ナルハム野郎が何なんだよ」
「……いや、昨晩もトレーニングに付き合わされて」
「トレーニング?」
「浜辺で延々、コシティを振らされた」
「コシティ?」
「さらにゆらゆらクッションでバランスの特訓を」
「ゆらゆらクッション?」
「アブドミナルベンチで背筋と腹筋を鍛えて」
「アブドミナル?」
「最後にWiiフィットでヨガ」
「フィット?」
「それを夜の10時から朝方の4時までずっとだ」
 グラハムの趣味の一つに、自己鍛錬がある。
男として高みに登る為には、常に自らを鍛え続けなければならない、人生是日々修行也、という彼の信条故だが、
何つーか、とにかくその方法が斜め上過ぎて常人には理解し難い。
人気の無い深山の荒れ寺で読経三昧とか、
一日ずっと滝に打たれるとか、
河原を走っていたら急に山の奥までランニングするとか、
何かもう、高みと言うか深みにはまってどーにもならないんじゃないか、という気すらしてくるレベルである。
で、それに毎度つきあわされるのが、ジョシュアという次第。
トレーニングなんざ自分一人でやればいいものを、グラハムという男、お節介というわけではないが、
「我は精進する、だからお前も精進しろ」という性格なので、
ユニオン時代から縁のあるジョシュアはとにかく被害に遭いやすいのだった。
なお、ガンダムパイロットの少年達も一度ならず彼に誘われたことがあるのだが、全て一言の下に断っている。
つまり、ちゃんと拒否すればグラハムもゴリ押しはしてこないわけだが、ジョシュアが毎度つきあわされるのは、
ジョシュアのヘタレな性格故か、それともグラハムに「シゴキの対象」として特に目をつけられているからか、
果たして、はてさて。
「ちょっと待てよ、浜辺ってどこだよ」
「浜辺は浜辺だ、海の側だ」
「……結構距離あるぞ」
「んなこたわかってる」
「で、器具は浜辺に最初からあったのか?」
「んなわけないだろ、持っていった」
「車で?」
「担いで走って」
「うーん、何つうか、トレーニング器具というよりトレーニング危惧だな」
「上手い事言ったつもりか? こっちは大変だったんだよ」
「そりゃそうだろうな」
 だがしかし実際、グラハムの無茶な特訓に付き合っているうちに、
ジョシュアもそれなりに鍛えられてきているのは事実であるようだった。
途中で離脱したことも何度かあるが、
何だかんだで結構「つきあいきれている」のだから。
普通、遠い砂浜までトレーニングの資材担いで走ってはいかない。
いや、いけない。
334名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/28(木) 19:50:11 ID:???
「ほれ、顔洗って歯ァ磨いて髭剃ったか?」
「やったよバカヤロウ」
「んなら着替えて来いよ、オデコ姉ちゃんをあんまり待たすと鬼より恐いぞ」
「鬼より、ねえ」
「おっと、俺の目の前で脱ぐなよ、俺は男の着替えを見る趣味はねーぞ」
「誰がここで着替えるかボケエ!」
「ボケてんのはてめーだろうが、この遅刻野郎! 今日は大事な日だって皆言ってただろうが!」
「わかってたわい! 俺が悪いんじゃねえ! 隊長だ!」
「言い訳すんな! 俺なんか嫁さんに起こされなくてもちゃんと間に合ったぞ!」
「自慢出来ることかー!」
 まあ、とりあえず纏めると、今日、プリベンターは出発するのだ。
これから起こるであろう、未知の事件の舞台となるはずの、アザディスタンへ。
世界の裏側に潜む悪の陰謀を暴く為に。
「ブツブツ……だいたい全部隊長が悪いんだ……ブツブツ、俺を段ボール箱に押し込めて……ブツブツ」
「なぁに呟いてやがる、ほれ、さっさとしろさっさと!」
「急かすなよ、ちゃんとやってるつうの」
「あと10秒でやれ、ほれ、じゅーうー、きゅーうー」
「ガキかお前!」
 扉の奥と手前で(ジョシュアは部屋で着替えて、コーラサワーは廊下にいる)、大のオトナと思えぬやり取り。
世界平和の守り手の一番星であるプリベンターのメンバーと思えないが、これが現実である。
絹江・クロスロード辺りがこの光景を見たら、さて、この事実を報道しようと思うだろうか、どうだろうか。
「荷物持ったか? ハンカチは? ティッシュは? おやつはちゃんと上限金額守れよ?」
「だからガキか!?」
「ほれほれ、車用意してあるから乗れ! 空港まで飛ばすぞ!」
 コーラサワーは準備の終わったジョシュアを半ば蹴り飛ばすように玄関のドアから放り出すと、
すぐに首根っこ掴んで階段を駆け下り始めた。
「ちょ、おま、ここは20階だぞ?」
「んなこた知ってる。お前、なかなか良いところに住んでるな」
「そーいうことじゃねー! 痛てて、引っ張るな! エレベーター使え!」
「まどろっこしいだろ!」
「エレベーターの方がどう考えても速いだろうが!」
「んじゃあもっと速くしてやる。こっから落とすからちゃんと着地しろよ」
「無茶言うな!」
「だったら、ちゃんと走れやあ!」
「うううう、くそう、何で俺がこんな目に!」
 ジョシュアは、望んでプリベンターに入ったわけではない。
グラハム・エーカーによって、無理矢理に加入させられてしまったのだ。
世界を守る、言ってみれば地球防衛隊みたいなもんだから、社会的な地位としては、ジョシュア本人もケチのつけようはない。
ないが、とにかく職場の環境が彼にとって心地よいものでは決してない。
335名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/28(木) 19:54:12 ID:???
「くそう、世が世なら、AEUの少尉如きのお前なんざ、アゴで使える立場になってるはずなのにー!」
「ああン? 何か言ったかアラスカ野?」
「名前で呼べー! 俺はジョシュア・エドワーズだ!」
 アラスカ野、とはコーラサワーがジョシュアにつけたあだ名である。
ユニオン時代はアラスカのジョシュア、で通っていたが、プリベンターじゃそんなの、門の表札にもなりはしない。
「だいたい、さっきも言ったが、何でお前が迎えに来たんだよ!?」
「俺じゃ不服か」
「当たり前だ!」
「別にどうという理由はねえよ、集合場所に行ったら俺が最後だった。だからその罰で行かされたんだよ!」
「お前も遅れてんじゃねーか! 偉そうに俺に言えた立場かー!」
 地下の駐車場にジョシュアを引きずり込むと、コーラサワーは一番奥に停車している車に彼を放り込んだ。
薄暗い地下でも、新橋色のボディが目に鮮やかな車である。
「ほれ、車に乗るぞ! 飛ばすからな、こっから喋ると舌噛むぞ!」
「ばばばば、バカヤロ、交通法規は守れよ! 一応俺達は公的に―――」
「模擬戦2000回不敗、スペシャルエースの運転を信用しやがれ! 行くぜイヤッフー!」
「ほんぎゃあああああああ」

 ◆ ◆ ◆

 人間、何かしら何処かに取り得というものがある。
例えば絵が上手かったり、歌が上手かったり、速く走れたり。
他人のペースに巻き込まれても何とか生きていけたり。
母と離れ、父にもあまり親らしいことをしてもらっていない引きこもりがちの少年だって、
MSを操縦させたら天下一品だったり、新人類としてとぽこじゃか他人と感応したりと、特技を持っている。
 だいたいにして人間の能力というものは相対的なものが多い。
絶対的な力なんてものは、まずありゃしないのが相場である。
そんなものを持っているのは、神様だけである。
コーラサワーの悪魔的な強運だって、所詮は他者と比較してわかるだけのこと。
全てを良い方向に持っていく絶対的な運なんて、んなもんありゃしないのだ。
多分。
「ほれ、次は右だ!」
「ほああああ、こ、こんな運転で大丈夫か!?」
「大丈夫だ、問題ねえ!」
「ぐあああああ、あぶねえ! い、い、一番いい運転を頼むうううう!」
「だから黙ってろって、舌噛むって!」
「のああああああ、コイツは人の話を聞かねえ!」
 
 コーラサワーやグラハムはともかく、 ジョシュア・エドワーズは今の自分の置かれた立場に満足していない。
だが、少なくとも、当面は改善されることはないであろう。
プリベンターにいる限り。



 プリベンターとパトリック・コーラサワー(とジョシュア)の心の旅は続く―――
336名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/10/28(木) 19:56:14 ID:???
 コンバンハ。
不定期氏ごめんなさい、直後の投下になってしまいました。

 最近仕事と身体がマジ半端なくキチイですサヨウナラ。
337通常の名無しさんの3倍:2010/10/29(金) 12:22:30 ID:???
>>336
乙です、季節の変わり目もといグラハムスペシャルなので体には気をつけて下さい
338通常の名無しさんの3倍:2010/10/29(金) 21:35:51 ID:???
>>330
五飛自爆したのかw

>>336
ジョシュア超がんばれww
339通常の名無しさんの3倍:2010/10/29(金) 23:45:11 ID:???
>>336
ジョシュア頑張れ、超頑張れ
土曜日さん乙です。
急に寒くなりましたからね…風邪引かないようお気を付けを
340通常の名無しさんの3倍:2010/10/30(土) 16:27:19 ID:???
今は板に強制DAT落ちの日月制限ってなかったんだっけ?
下がりすぎをあまり気にするのもなんだし、勝手にageていいものかわからんし
341通常の名無しさんの3倍:2010/10/30(土) 20:18:09 ID:???
このペースなら問題ないよ

不定期さん土曜氏さん乙!

鍋に納豆はNGだと思うw

変人二人に振り回されるジョシュアの受難は気の毒だけど
見てる分には面白いw
342通常の名無しさんの3倍:2010/10/31(日) 08:34:10 ID:???
>>340
定期的に保守しとけば無問題だと思う
343通常の名無しさんの3倍:2010/10/31(日) 10:48:20 ID:???
さらっとエルシャダイネタ混ぜんなwww
344通常の名無しさんの3倍:2010/11/01(月) 23:13:46 ID:???
乙シュワー
345通常の名無しさんの3倍:2010/11/03(水) 20:35:11 ID:???
保守
346通常の名無しさんの3倍:2010/11/05(金) 21:29:18 ID:???
保守
347通常の名無しさんの3倍:2010/11/05(金) 21:46:35 ID:???
保守
348通常の名無しさんの3倍:2010/11/05(金) 22:07:58 ID:???
>>340
TVシリーズ放映中でなければ週1位で充分じゃね?
349通常の名無しさんの3倍:2010/11/07(日) 10:15:57 ID:???
保守ワー
350通常の名無しさんの3倍:2010/11/08(月) 16:54:22 ID:???
ガンクロ倉庫に保管した人も乙!
351通常の名無しさんの3倍:2010/11/10(水) 17:52:34 ID:???
しかし、未だに姿すら登場しないレディ・アンとノインとミリアルド兄貴…
いつの間にやら00のキャラのほうが数が上になっちゃったな
352通常の名無しさんの3倍:2010/11/12(金) 18:02:30 ID:???
イヤッフー!
353通常の名無しさんの3倍:2010/11/14(日) 10:06:51 ID:???
保守
354通常の名無しさんの3倍:2010/11/15(月) 20:32:50 ID:???
保守
355通常の名無しさんの3倍:2010/11/17(水) 15:30:33 ID:???
保守ワー
356通常の名無しさんの3倍:2010/11/20(土) 17:06:47 ID:???
作者逃亡で尻切れトンボだけは避けてくれ!
357通常の名無しさんの3倍:2010/11/20(土) 19:23:34 ID:???
まあまあ、まったり待とうぜ
358通常の名無しさんの3倍:2010/11/21(日) 21:06:07 ID:???
保守
359名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/11/22(月) 22:59:26 ID:???
次は今週末までに……
360通常の名無しさんの3倍:2010/11/22(月) 23:04:40 ID:???
>>359
まったり待ってますよ〜
361通常の名無しさんの3倍:2010/11/23(火) 09:25:41 ID:???
>>359
待ってます!
362通常の名無しさんの3倍:2010/11/23(火) 16:28:11 ID:???
いつでも待ってるんでシュワー
363通常の名無しさんの3倍:2010/11/25(木) 22:04:32 ID:???
保守ワー
364通常の名無しさんの3倍:2010/11/28(日) 09:53:25 ID:???
保守ワー
365名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/11/28(日) 21:14:54 ID:???
「ふいー、いい湯だったぜ!」
 男は全身から湯気を立ち上らせつつ、破顔した。
纏っているのは、腰に巻いたバスタオル一丁と、額を覆う絞り手拭いのみ。
「湯上りにはやっぱりコレだろ、コレ!」
 そして男は更衣場に備え付けられている自動販売機で、『特選搾りたて牛乳』を選び、
ガチャコンと音を立てて取りだし口に落ちてきたそのビンを掴むと、
勢いよくフタを開け、ぐいぐいと一気に飲み干した。
「カーッ! サイッコーにイヤッフーだな、おい! お前ら!」
「……サイッコーにオヤジだな、お前」
「しかし、今時いたんですね、お風呂上りに牛乳を一気飲みする人って」
「しかも、タオルを捩じりハチマキにしてな」
「さらに、片手を腰に当てて」
「おまけに、胸を反らして不動ときている」
 男の名前はパトリック・コーラサワー(・マネキン)。
そして彼に続いた声の持ち主は、かつてガンダムパイロットと呼ばれていた少年達。
「何だあ!? 何か文句あるのか? お前ら!」
「別にないが、まあ何と言うか、お約束過ぎる奴だと思ってな」
「そんなに大したもんか? 基本だろ、一応」
「基本ねえ……むしろそれが似合うのはお前より、入浴中も仮面をつけたままのあの男の方だと思うんだが」
 ここはアザディスタン、その首都の一角にあるホテルの中の大浴場。
そう、プリベンターは今、トップのレディ・アンを除いた全員がこのホテルに集っているのだった。

 ◆ ◆ ◆

 マイスター運送よりもたらされた、『究極の動力炉』GNドライブと、マイスター運送創設者であるイオリア・シュヘンベルグの『遺産』の情報。
そしてそれに絡む『陰謀』を阻止するべく、プリベンターはアザディスタンにやって来た。
「アイツ、出てこないな」
「サウナにずっと入りっぱなしだ。かれこれ三時間以上になるな」
 コーラサワーと会話しているのは、少年達の一人、デュオ・マックスウェルである。
で、デュオが言った『仮面をつけたままの男』、コーラサワーが言った『アイツ』とは、もう説明の必要もないと思うが、
プリベンターのメンバーの一人、グラハム・エーカーのことに他ならない。
「倒れるぞ、そのうち」
「……すでに倒れた奴がいるがな」
 デュオの視線の先では、一人の男が寝そべっている。
冷水をたっぷり浸したタオルを額に置き、うーうーと唸りながら扇風機に当たっているその男は、
これまたプリベンターのメンバーの一人、ジョシュア・エドワーズ。
こちらこそ本当にお約束なのだが、またしてもグラハムの『修行』(※耐久サウナ)に無理矢理つきあわされ、
我慢出来ずに早々に脱落したのであった。
長時間のサウナ利用は危険です、良い子は真似しないように。
「しかしまあ、立派な大浴場じゃねえか」
「……立派っちゃ立派だな、確かに」
 このホテルの大浴場は、男女合わせてサッカー場の面積程もある。
と言うか、一つの階をまるまる浴場としており、無駄に広すぎとも言える。
366名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/11/28(日) 21:18:54 ID:???
「広い風呂は好きだぜ、俺は」
「泳げるからか」
「そうそう泳げるから……って違うわ! 気分の問題だ!」
 アザディスタンは、つい先頃までは、ドがつく程の貧乏国だった。
石油資源は枯渇し、隣国との長い争いの果てに、国土も国民も消耗しきっていた。
さらに国際的地位が無い為に、太陽光エネルギーの供給網から外され、
レアメタルの鉱脈が発見されてさあこれから逆転の道へ、というところでOZの侵犯によって国は解体の憂き目を見た。
「だけど、感慨深いものがあります」
「カトル……」
「僕の父も、まさかここまで復興が速いとは思ってなかった、と言ってましたから」
 世界が統一され、新政府が生まれ、アザディスタンは特殊自治区となった。
そして、レアメタルの他に、観光を国家財源の柱に据えることで、短い期間で潤いを取り戻しつつある。
「あの姫さん、結構やり手だったんだなー」
「とてもそうは見えんけどな」
 その中心となったのが、元アザディスタンの第一皇女、マリナ・イスマイールである。
OZの台頭以前から、王家の人間として外交と内政に飛びまわっていたのだが、
その頃はどうにも「理想のみが先走りがち」であり、太陽光エネルギー問題においても、
国内の民族・宗教紛争においても、とかく頼りなさげな人物であった。
OZによって一時はその身柄を拘束されるも、その解体時に解放され、アザディスタンに戻り、再び国政の主の座に返り咲いた。
それも、自らが積極的に望んだからではなく、「誰も責任を負える人間がいない」という理由で、担ぎ出されたのだが……。
なお、シーリンがマリナから離れ(嫌気がさしたわけではなく、統一政府の内側に入ることで、マリナをサポートしようとしたらしい)、
カトル・ラバーバ・ウィナーの父がアザディスタンへの支援を厚くしたのは、この過程中のことになる。
「もともと凄く責任感の強い方ですし……」
「経営の才能もあったんだろうな」
 マリナが採った近隣協調、積極復興路線は何だかんだで実を結び、
アザディスタンは物心両面で、平和と豊かさを、徐々に取り戻しつつある。
「これだけデカいホテルが建てられるようになったんだ、すげーよな、あの姉ちゃん」
「……ホテルは国の金で建ってるわけじゃないけどな」
 自治区外からの企業誘致が上手くいったおかげ、というわけである。
「つうか、とっとと着換えろよ。いつまでバスタオル一丁でいるつもりなんだよ」
「バーカ、この格好が気持ち良いんだろうが」
「……嫁さんと一緒にいる時でもそうなのかよ」
 嫁さんとは、コーラサワーの妻であるカティ・マネキンのことである。
プリベンターのメンバーではないので、もちろん同行していない。
「まさか。女性と一緒の時はちゃんと然るべき格好に決まってるだろ」
「あー、そう」
「女性と一緒で風呂上り、なんてのはもう状況が限られるだろ。雰囲気ぶち壊しなことするかよ」
「そのナリが雰囲気ぶち壊しってことは一応認めるんだな」
「これはこれで気持ち良い、でも女性と一緒ならこの後もっと気持ち良いからな」
「サイテーだな、お前」
「最低言うな、当然のことだ。……あ、言っとくけど、結婚前の話だからな! 今はそうするの、嫁さんだけだからな!」
「わかっとるわ! いいから早く何か着ろ!」
367名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/11/28(日) 21:22:24 ID:???
 ガンダムパイロット達は、もう既に全員着替えが終わっている。
ドライヤーもかけ終わり、何時だって浴場からの引き上げが可能である(しかし、デュオとトロワは髪を乾かすのが大変そうな気がする)。
「わーったよ。……で、あそこでぶっ倒れているバカはどうすんだよ」
「いざとなったら医務室行きだな。まあ、当面は寝かしておけよ」
「風邪、ひかねえかな」
「そう思うんだったら、お前が担いで部屋に連れ戻してやったらいいだろ」
「嫌に決まってるだろ、何で男を抱えていかなきゃなんないんだよ」
 哀れ、ジョシュア。
「で、夕飯は何だって言ってた? あの姫の姉ちゃん」
「……カニでないことは確かだな」
 本格的な調査は明日からすることになっている。
今日は、その意気を養う為に、合成、もとい豪勢なディナーがプリベンターに振る舞われるのだ。
「オデコ姉ちゃんたちはもう風呂からあがったかな」
「確かめてこいよ」
「よっしゃ、ちょっと言って来る」
「おいコラ待て、本気で行くな!」
「まるっきり覗きと同じだな」
「確実にフライパンが飛んできますね」
 女風呂には、現場リーダーのサリィ・ポォと、雑務担当のヒルデ・シュバイカー、レディ・アンの秘書のミレイナ・ヴァスティがいる。
まだ湯船の中にしろ、着替え中にしろ、そこに入っていったら間違いなく半殺し確定である。
なお、マイスター運送の面々や、人類革新重工の二人、そして報道記者の絹江・クロスロードは、後日合流する予定になっている。
「まだかー、って聞きにいくだけだろ」
「それがマズイってんだよ、それに、他の客もいるんだぞ」
「お前が確かめてこいって言ったんだろ、みつあみおさげ」
「普通行かないだろ、冗談と思うだろ?」
「思わねえなあ」
 会話だけなら何とも天然臭バリバリなコーラサワーだが、
これは、プリベンターの女性陣を異性としてあまり気にしていないが為でもあろう。
かつては多くの女性と浮き名を流したレディ・キラーなコーラサワーだが、
カティ・マネキンと出会ってからはとにかく彼女一筋であり、他の女性は目に入らなくなっている。
無論、美人にはちゃんと相応の評価を与えたりはするが、恋愛やら性的欲求の対象からは外れてしまっているのだ。
浮気の危険性ゼロ、という意味では、案外良い夫なのかもしれない。
それ以外は知らないが。
「とにかくやめとけ」
「わーったよ。なら、部屋に戻るか」
「夕食まで……あと一時間くらいありますね」
「マリナ・イスマイール、来ると言っていたな」
「ああ、そう言っていた」
 ヒイロ・ユイとトロワ・バートンは目を見合わせた。
その横で、ムスッとした表情で、張五飛が頷く。
「はは、ははは……」
 その行為の意味を正確に察し、カトルは頬をかきつつ、苦笑した。
マリナ・イスマイールは少年愛とまではいかないが、ややショタコン傾向にあり、ガンダムパイロット達にえらくご執心なのだ。
紛争に巻き込まれずに少女時代にマトモに恋愛出来ていたら、とは、彼女をよく知るマスード・ラフマディ師の言葉である。
368名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/11/28(日) 21:24:29 ID:???
「大丈夫ですよ。……多分」
「そう願いたいな」
 アザディスタンにプリベンターが到着した時、マリナはガンダムパイロット達に抱きつかんばかりの勢いだった。
色々と仕事がある為に、結局出迎えのみで、その場は別れたが、
もし仕事がたてこんでなければ、間違いなくこのホテルまで同行していたことであろう。
つうか、ちゃんと仕事を優先した辺り、十分に彼女はエライ。
「美味いメシ、楽しみだな、オイ」
「言っとくが、観光で来たんじゃねーからな」
「わかってるっての。イヤッフ♪」
「こりゃダメだ」
「何時ぞやの密漁事件の時と同じか、コイツは」
 浴衣姿(コーラサワーが何処からか持ってきた)の三十代妻持ち・元AEUのエースの背中を見つつ、
ガンダムパイロット達は眉根を寄せて、一様に溜め息をついた。
デュオは呆れたように。
カトルは困ったように微笑みつつ。
ヒイロは聞こえないように小さく。
トロワは首を左右に振って。
五飛は何時でもぶん殴れるよう、拳をさすりながら。



 なお、ジョシュア・エドワーズとグラハム・エーカーが宴に合流するのは、これから実に三時間後のことになる。
その頃には料理が冷めきってしまっていたのは言うまでもない。
で、グラハムが全然そんなことを気にせず「これも修行!」とバクバク胃袋に収めまくったのも言うまでもない。
さらに、半裸で長時間放置されたジョシュアが食事出来る状態になかったのも、言うまでもない。
 


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の宴は続く―――
369名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/11/28(日) 21:26:08 ID:???
 コンバンハ。
よっしゃ、ブエナ頭で16-6-2で取った!

















フ    ン    ガ    ー    !




 ではサヨウナラ。
誤字・脱字がありましたらすいませんでした。
次回は多分12月半ば、アリーやイノベ達のお話で。
370通常の名無しさんの3倍:2010/11/28(日) 23:02:31 ID:???
ktkr
乙でした、ジョシュアも乙…
371通常の名無しさんの3倍:2010/11/29(月) 14:18:05 ID:???
>フ    ン    ガ    ー    !

こwwwれwwwはwww
372通常の名無しさんの3倍:2010/11/29(月) 21:13:29 ID:???
ジョシュア、可哀想に…
373通常の名無しさんの3倍:2010/12/01(水) 21:58:52 ID:???
保守ワー
374通常の名無しさんの3倍:2010/12/03(金) 22:18:54 ID:???
保守
375通常の名無しさんの3倍:2010/12/04(土) 11:38:16 ID:???
ここも四年目突入か…
376通常の名無しさんの3倍:2010/12/05(日) 08:50:55 ID:???
>>375
ここまで続くとは思ってなかったなあ
377通常の名無しさんの3倍:2010/12/08(水) 17:19:57 ID:???
つくづくコーラサワーは特異なキャラであるということだな
378通常の名無しさんの3倍:2010/12/09(木) 16:05:30 ID:???
年末年始に向けて、このスレの敵(ここだけに限らないが)はやっぱり「アクセス規制」か……
379名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/12/13(月) 01:18:06 ID:???
規制に巻き込まれなければ、次は今週中に……
380通常の名無しさんの3倍:2010/12/14(火) 14:10:58 ID:???
ほしゅ
381通常の名無しさんの3倍:2010/12/18(土) 14:38:58 ID:???
保守ワー
382通常の名無しさんの3倍:2010/12/18(土) 19:12:04 ID:???
>>379
別にあせらんでいいよ、年末だし自分を優先したらいい
いつまででもとはさすがにいわんがそれなりに待つから
383通常の名無しさんの3倍:2010/12/19(日) 11:58:02 ID:???
>>379
マイペースで良いよ
384名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/12/19(日) 23:56:03 ID:???
 リジェネ・レジェッタは焦っていた。
いや、焦っていたというのは、適切な表現ではないかもしれない。
ここ最近の彼は何時も通り「落ち着いた」態度を崩さずに振る舞ってきたし、
他者と接していても、また一人で居る時でも、不機嫌な素振りは一切表に出さなかった。
だから、「焦っていた」という言葉は、現在の彼には当てはまらない。
当てはまらないはず、なのだが……。
「……」
 薄暗い廊下を、彼は今、歩いている。
側に並ぶ者はなく、唯一人である。
「……」
 無言で、彼は足を進める。
明確な行き先があるわけではない。
 彼と、彼の仲間たちが推し進めている計画は、今のところ順調である。
些細な問題はいくらかあったが、それは計算違いというものではなく、
手順が前後した程度のものであり、障害としては微細で、何ら全体に影響はない。
「リボンズ……」
 彼は足を止めると、ぽそりと、仲間の名前を呟いた。
この計画の、リーダーの名を。
 そう、計画に支障はない。
ないが、だからこそ、彼は不満だった。

「リボンズめ」
 リジェネ・レジェッタは焦っていたのではない。
「このままでは……」
 戸惑っていたのだ。
自身が介入する余地が全くない、この現状に。

 ◆ ◆ ◆
385名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/12/19(日) 23:58:15 ID:???
 世界的に有名なアイドルグループ、『イノベイター』。
リボンズ・アルマーク、リジェネ・レジェッタ、リヴァイヴ・リバイバル、ヒリング・ケア、ブリング・スタビティ、デヴァイン・ノヴァ。
この六名から成り、新曲を発表すれば一瞬で世界中からダウンロードされ、
コンサートを開くと報告すれば、これまた一瞬で前売りチケットが完売になってしまう。
超が付く程に売れっ子の彼らが、活動を休止したのは、それ程前の話ではない。
表向きには、充電中という扱いにしている。
表向きというからには、無論、裏には裏の理由があるわけだが。
「このままでは、いけない」
 彼らは、実は人間ではない。
正確には、人間であって、人間でない。
通常の人間を超えた身体能力、知的能力、そして同種間での特殊な「通信能力」を持ち、
遺伝子操作とナノマシンによって、老化現象さえもコントロールされている。
男と女による生殖行為によって生みだされたわけではなく、つまりは、完全なる「人工生命体」である。
「何故だ……? リボンズのやり方は、明らかに彼の思惑が色濃く反映され過ぎている。なのに、何故躓かない?」
 イノベイターと、彼らの部下達は、リーダーのリボンズ・アルマークの指揮の下、とある計画を進めている。
遥かな昔、一人の科学者が手掛け始めた、壮大な計画。
地球圏という、全宇宙からすればあまりに小さな揺り籠から、人類を解放するという……。
「どうにかして、この手に主導権を握らないと」
 計画が達成されれば、リボンズ・アルマークはイノベイターのではなく、
人類の、いや、地球圏に生きる全ての生物の「リーダー」と成りおおせるだろう。
計画の辿りついた先については、リジェネは、特に何らの不満は抱いてはいない。
彼もまたリボンズと同じイノベイター、目指す物もまた同じである。
それは別に構わないが、リジェネにとって、どうしても譲れない部分がある。
「計画成就は、リボンズによってではない。このリジェネ・レジェッタこそ……」
 手柄争いでは、ない。
功名心でも、ない。
そんなものは、所詮他者と比較することによって集団の中での優位性を見出したい、というだけの卑小な欲に過ぎない。
リジェネが望んでいるのは、そのようなものを、さらに超えたところにある。
少なくとも、リジェネはそう思っている。
だからこそ、リボンズの主導で計画が進んでいることに、
そこに自分が介入―――つまりは横槍―――を入れる隙を見出せない状況に、戸惑いを覚えるのだ。
リボンズはどうにも自分の趣味に走り過ぎる、
計画を歪めかねない、という疑念もある。
386名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/12/20(月) 00:01:49 ID:???
「よう、眼鏡の大将じゃねえか」
「!?」
 不意に背後からの声を受け、リジェネは振り返った。
そこには、一人の男が立っていた。
赤茶けた髪、日焼けした肌、服の上からでも鍛えられたのがわかる身体、
そして、猛禽類を思わせる目つき。
「アリー・アル・サーシェス……君か」
「どうも」
 立場的にはリジェネは、アリーの上に立つ。
だが、アリーは畏まるでもなく、また卑屈になるでもなく、飄々とした態度を決して崩さない。
それは、リジェネに対してだけというわけではなく、
リボンズに対してもそうだし、他のイノベイターにもそうである。
「考えごとかい? 眼鏡の大将」
「……そういうわけではないけどね」
 さん付けでもなく、様付けでもない。
かと言って呼び捨てでもない。
だからと言って、敬意を払ってないわけでもない。
そんな、微妙で曖昧な「大将」呼びを、リジェネはあまり好きではなかった。
最初の頃は辞めるようにいちいち口頭で伝えていたのだが、
どうしてもアリーが辞めない為、今はもう放置している。
それに、アリー・アル・サーシェスがどういう人間であるか、それを考えれば、特に拘るべき問題でもない。
些細なこと、である。
「そうかい、ならいいけどよ」
「何か」
「ん?」
「君の眼から見て、何かおかしいように見えるのかい?」
 リジェネはアリーに問い返した。
アリーが勘の鋭い男であるということは、熟知している。
が、だからと言って、胸の内を読まれてしまうようでは、計画の介入など出来はしないだろう。
「いやあ、そういうわけじゃあねえけどさ」
「なら……?」
「いや、ま、何つうか、こっちに来てからどうも、静かなもんで」
「静か?」
「眼鏡の大将、前はもちっとスマートに喋ってた覚えがあるんでな」
「え!」
「それに、こうして俺が声をかけるまで気づかなかったしよ」
「……!」
「俺、少し前からいたんだがな。いくら薄暗いと言っても、なあ」
 リジェネは息を飲む寸前で、それを押しとどめた。
アリーが言わんとしていること、つまりは、「今のアンタにゃ余裕が感じられない」ということに他ならない。
自分自身では上手に隠しているつもりだったが、そうではなかったのか。
アリーがそう思っているということは、意思を交換出来るリボンズは、他のイノベイターは……。
「まあ、こうして文字通り地下に潜ってりゃあ、気も塞ぐってもんだな」
 アリーは右の掌を、天井に向けて伸ばしてみせた。
その指先はまだハッキリ見えるが、さらに先になると、薄ぼんやりとしか視界に入らない。
387名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2010/12/20(月) 00:03:31 ID:???
「リボンズの大将はお仕事中ってことだが」
「……ああ、彼の合流はもう少し後になる」
「色々と仕事があって大変だね、リーダーってのは」
「そうだね」
「俺も傭兵の長やってるから、まあわかるんだけどな」
「……」
「とにかく、大将が早く来てくんねえと、あの金ピカ野郎とか、三つ子の馬鹿共が目障りでしょうがねえ」
「諍いは起こさないようにして欲しいね」
「そりゃ、向こうの問題だな。俺は何時だって喧嘩は売らねえ。買うだけさ」
「……」
 下手な冗談だ、とリジェネは思った。
が、口には出さなかった。
「まあ何にせよ、気楽に行こうぜ? 眼鏡の大将」
「気楽に、ね」
「ああ、気楽にだ」
 アリーは首を左右に振ると、コキリ、と両の肩を鳴らした。
「でねえと、他人が躓く前に、自分が躓いちまうからな」
「な……」
「何でも、焦ったら負けさ」
 じゃ、とアリーは小さく右手を挙げると、鼻歌を口にしつつ、リジェネの前を通り、廊下の角の向こうへと消えていった。

「……」
 リジェネは動かなかった。
否、動けなかった。
アリーの姿が見えなくなっても、彼の鼻歌が聞こえなくなっても。
「焦っては……いない」
 絞り出すように、リジェネは呟いた。
「この、リジェネ・レジェッタは……」
 じわりと、額に汗が滲むのを、リジェネは自覚した。
「……」
 リジェネは再度、アリーがやってきた方向に視線を移した。
そこには、静謐と闇の細長い空間のみが、あった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅を他所に、リジェネの「焦り」は続く――― 




 コンバンハ。
雨にも負けず風邪にも負けず、冬の寒さにもノロウイルスと年末進行にも負けず、
シリアス展開はギャグへの味付け、そんな職人に私はなりたいサヨウナラ。

 年内に何とかもう一回投下を目指して。
388通常の名無しさんの3倍:2010/12/20(月) 21:27:57 ID:???
乙、やはりリジェネには裏切りフラグかw
389通常の名無しさんの3倍:2010/12/22(水) 19:19:40 ID:???
リジェネは裏切ってこそのキャラ
本編でも最後は中途半端に味方?になったしな
390通常の名無しさんの3倍:2010/12/24(金) 21:46:33 ID:???
保守ワー
391通常の名無しさんの3倍:2010/12/26(日) 10:55:22 ID:???
保守ワー
392通常の名無しさんの3倍:2010/12/27(月) 11:47:03 ID:???
過疎保守
393通常の名無しさんの3倍:2010/12/29(水) 23:51:25 ID:???
保守ワー
394通常の名無しさんの3倍:2010/12/31(金) 21:13:53 ID:???
保守ワー
395通常の名無しさんの3倍:2011/01/02(日) 12:18:05 ID:???
保守ワー
396通常の名無しさんの3倍:2011/01/04(火) 19:36:47 ID:???
過疎保守
397通常の名無しさんの3倍:2011/01/05(水) 17:17:51 ID:???
うーん、さすがにもう住人は何人もいないのか?
398通常の名無しさんの3倍:2011/01/05(水) 18:13:01 ID:???
せっかく第二次スパロボZで、コーラさんとWの競演が実現したというのに
399通常の名無しさんの3倍:2011/01/05(水) 19:50:20 ID:???
いや、いるぜ!
帰省と規制組もいると思うんだ
400通常の名無しさんの3倍:2011/01/06(木) 13:41:49 ID:???
>>398
コーラさんが使用できると良いな
401通常の名無しさんの3倍:2011/01/08(土) 21:04:25 ID:???
保守ワー
402通常の名無しさんの3倍:2011/01/10(月) 07:25:12 ID:???
保守ワー
403土曜日@出張先:2011/01/11(火) 12:43:44 ID:???
あけましておめでとうございます。
ただ今巻き込まれ規制中です。
解除されたら、また投下を再開したいと思います。
404通常の名無しさんの3倍:2011/01/13(木) 22:03:19 ID:???
>>403
待ってます!!
405通常の名無しさんの3倍:2011/01/16(日) 06:52:05 ID:???
保守ワー
406通常の名無しさんの3倍:2011/01/18(火) 21:23:40 ID:???
保守ワー
407通常の名無しさんの3倍:2011/01/20(木) 21:04:40 ID:???
保守
408通常の名無しさんの3倍:2011/01/23(日) 09:47:15 ID:???
保守ワー
409土曜日@再び出張先:2011/01/23(日) 11:22:45 ID:???
お疲れ様です。
ぷららちゃんがなかなか解除されない上に、ドコモちゃんまで規制中です。
さすがに出張先のPCを使いまくるわけにもいかないので、もうしばらくお待ち下さい。
あんまり長く規制が続くようだと、また別の手段も考えます。

では。
410通常の名無しさんの3倍:2011/01/23(日) 19:03:04 ID:???
>>409
最近人が少ないのは、やはり規制のせいもあるんでしょうね
411通常の名無しさんの3倍:2011/01/25(火) 20:52:54 ID:???
保守ワー
412通常の名無しさんの3倍:2011/01/25(火) 21:48:31 ID:???
大手は殆ど規制されてるんじゃないか?
ぷららは規制が特に酷い
一年の大半が規制なんじゃないか?
2chでもっともオススメできないプロバイダのひとつ
413通常の名無しさんの3倍:2011/01/25(火) 22:01:07 ID:???
>>412
そんなにひどいのか>ぷらら
ちなみに自分はOCN
414通常の名無しさんの3倍:2011/01/25(火) 22:27:34 ID:???
永久規制が多いのよ・・・
415通常の名無しさんの3倍:2011/01/27(木) 21:44:01 ID:???
保守ワー
416通常の名無しさんの3倍:2011/01/30(日) 09:29:08 ID:???
保守ワー
417通常の名無しさんの3倍:2011/01/31(月) 14:23:29 ID:???
てす
418土曜日@携帯:2011/01/31(月) 15:04:45 ID:???
ドコモは解除されたようですので、今週中には何とかしたいです
419通常の名無しさんの3倍:2011/02/01(火) 21:33:02 ID:???
>>418
待っています
420通常の名無しさんの3倍:2011/02/03(木) 21:10:44 ID:???
保守ワー
421通常の名無しさんの3倍:2011/02/03(木) 21:20:11 ID:???
スパロボスレでここのネタ出した人手を挙げなさいw
422通常の名無しさんの3倍:2011/02/06(日) 10:02:08 ID:???
保守ウー
423名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/06(日) 21:24:39 ID:???
 平和・安寧の無為に耐えきれる者こそが、最終的な勝者に成り得る。
……という言葉がある。
原因は何であれ、事件や戦争、異変といったものは全て人間が起こすものであり、
それを実際にやるのも、また見るのも大好きだったりする。
歴史を振り返ってみればわかるように、至るところに戦争、革命、大事件の繰り返し。
平和と安寧の時代の方が少ないくらいである。
 何も無い日々、というのは現実にはまず、有り得ない。
大なり小なり、自分の身にも、そして他者の身にも、事件というものは日常的に起こり得る。
もちろん、日常的というからには、運命に大きく関わるものはほとんどない。
大抵は、短ければ数分、長くても一カ月程度で解決するものばかりだ。
そして、それで済む状態を、平和であり、また安寧であると言うわけだ。
ただ、対岸の火事とはよく言ったもので、遠く離れた異国の地では、
民族・宗教・主義その他諸々を理由に、血が流されているわけだが。
 平和や安寧は退屈という御供を引き連れており、
その退屈と上手く付き合うことが出来れば、自分が事件の中心人物にならずに済むし、また被害者にならずに済む。
過激で悲惨なことが起こらず、またそれを求めない心を持てるようになれば、人生というものは穏やかに過ごせるようになる。
それが、「耐えきった勝者の姿」というわけだ。
 ここで難しいのは、「なら怠けてしまえば、ずっと平和じゃないか」と思ってしまうのは大間違い、というところである。
それは「耐えている」のではなく、「流されている」のであり、その行きつく先は「遭難」しかない。
大河に浮かんだ葉っぱと同じで、いずれは大海に出て、呑まれて底に沈むだけだ。
それは、日常を生きていることにはならない。
耐えるというのは、流れに「乗りつつも」「流されない」ことなのだ。

 ◆ ◆ ◆
424名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/06(日) 21:29:05 ID:???
「どこから調べるかはもう決まっているわ」
 プリベンターの現場リーダー、サリィ・ポォは胸を反らして言った。
別に意図してその仕草をしたわけではない。
彼女が作戦を説明する時の、癖のようなものだ。
「イオリア・シュヘンベルグの研究所、そこしかないわ」
 サリィは皆を、プリベンターのメンバー一同を見回した。
誰一人として、異議を唱える者はいない。
当然であろう、皆がサリィと同じ考えなのだから。
……いや、若干一名、わかってないというか、あんまり深く考えてない者がいるが、ま、それは別に良いだろう。
毎度のことである。
そう、毎度の。
「彼の研究所は、市街に一つ。そして市外に一つ」
 サリィは手元のノートパソコンを操作した。
薄暗い部屋の中、アザディスタンの首都(という呼び方はもう適切ではないが)の地図が、スクリーン上に鮮やかに映し出される。
 ここはアザディスタンの旧首都にある、とあるホテルの一室。
プリベンターのメンバーはここに集って、今後の「方策」を練っているところである。
「市街のものは、建物はもう現存せず。かつての紛争の際に……」
「木端微塵というわけか」
 ここで口を挟んだのは、ヒイロ・ユイだった。
彼の言葉に、サリィは首を縦に振る。
「その通り。だけど、かなり前から研究所の建物は、別の目的で使われていたようね」
「別の目的?」
 そう呟いて小首を傾げたのは、トロワ・バートンである。
「マイスター運送を設立後、イオリアはここを引き払ったわ」
「その後は、いくつかの民間会社が所有していたようだな」
 張五飛が手に持ったレポートを捲りながら、サリィの言葉を継いだ。
「今はまったく別の建物がある。ここは正直、捜査の対象にはならないわね」
「そうだな。ってか、地図を見るとそこは公園になってるじゃないか。調べようがない」
 やれやれ、といった風に肩をすくめてみせたのは、デュオ・マックスウェルである。
「地下には水道管やらガス管やらが設置されていて、何かが埋まっている、ということもなさそうよ」
「ならば、調べるところは自ずと限られるな。と言うより、一つしかない」
 腕を組み、背を壁に預けながら、グラハム・エーカーは言った。
椅子が空いているのに、この男は腰を下ろそうとはしない。
集団の輪から変に外れている辺り、彼の「ポジション取り」の心理が垣間見える。
なお、今日は仮面は無しで、ブシドーモードではない。
「だから最初に言ったでしょ、どこを調べるかはもう決まっているって」
 サリィは再び、ノートパソコンを操作した。
スクリーンからアザディスタン首都の地図が消え、また別の地図が浮かび上がる。
「ここはどこなの?」
 ヒルデ・シュバイカーが緑茶をすすりつつ、サリィに質問する。
「アザディスタン首都から、北東に約70q。砂と岩の大地で、付近には建物も疎ら」
「何かまた、不便そうなところですぅ」
 ミレイナ・ヴァスティが眉を顰める。
その手には、今日すでに三枚目のゴマ煎餅が握られている。
425名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/06(日) 21:30:47 ID:???
「イオリアのもう一つの研究所。表向きはどうあれ、どうやらこちらの方が彼の『主宅』だったようね」
「建物は?」
「データを見ると、もう無いわね。100年程前に資材置き場として整地されたみたい」
「成る程ね」
 サリィの言葉に、ほぼ全員が頷いた。
整地されているということは、地上に何ら手がかりはない。
だが、しかし。
「地下か、こっちの方の」
「おまけに、すぐ側にはむき出しの岩山があるわ。洞窟付きのね」
「そこは手つかず?」
「一度、どこかの国の学術探検隊が入ったことがあるようね。他にレアメタルの調査隊も。だけど、何も発見されなかった」
「怪しいな」
「怪しいですね」
「そこに、イオリア・シュヘンベルグの『遺産』があるわけか」
「まだわからない。だが、最低でもその一欠片程度なら見つかるかもしれん」
「そういうこと。さ、ここから先は移動しながら説明するわ」
 サリィはノートパソコンの電源を落とした。
ほぼ同時に、ヒルデが部屋の灯りを点ける。
「連中は待たないんだな?」
 ヒイロがサリィに尋ねた。
連中というのは、マイスター運送の面々、人類革新重工のソーマ・ピーリスとアンドレイ・スミルノフ、
JNN通信の絹江・クロスロード、そして在野の天才科学者ビリー・カタギリのことである。
「彼らには後から来てもらうわよ。何があるかわからないんだから、いきなり同行はさせられないわ」
「まあ、そうだな」
 デュオが小さく笑いながら、サリィに同意した。
彼女の言葉の裏が、彼には十分わかっている。
つまり、同行させたくない理由があるのだ。
「おい、行くぞ」
「……んが」
「行くってば」
「んが、あ」
「行くから起きろって言ってるんだよ!」
「ふんが! あいて! な、何しやがる、いきなりドツくとはどういう料簡だ!」
「お前こそミーティングの最中に堂々と寝るとはどういう料簡だ!」
 デュオは、すぐ横で船を漕いでいた男を思いっきりぶっ叩き起こした。
それが誰かは、説明はいるまい。
426名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/06(日) 21:35:42 ID:???
「模擬戦二千回不敗、AEUの元スペシャルエース、パトリック・コーラサワー様を殴るとはこの、ぐがぅ!」
 さらに背後から五飛が背中を蹴り飛ばす。
「お前、何を、はげヴぁ!」
 そして、何時取り出したのやら、前につんのめったコーラサワーの顔面に、フライパンを差し出す。
「……それくらいにしときなさい。ここで怪我されて使い物にならなくなったらどうするの」
「そっちの方が今後楽にならないか?」
「トドメさしといた方がいいですぅ」
「お、お、お前らなあ……」
 フライパンの裏にしたたかにぶつけた鼻をさすりつつ、コーラサワーは涙目でデュオ達を睨みつけた。
あんまり勇ましくない。
つうか、マヌケすぎて全然怖くない。
「これから下手すりゃドンパチ始まるかもしれないってのに、ぐうすかと寝るかね普通」
「どこまでも変わらん奴だ」
「バカなんだよ」
 最後の言葉はジョシュア・エドワーズのものであるが、
グラハムの陰にかくれてこっそりと言っている辺り、コーラサワーの反撃を幾らか警戒している模様である。
「ミーティングで寝るくらいなんだってんだ、俺は今までも数知れず会議で居眠りしてきたが、それで不始末を起こしたことはないぞ!」
「そう思ってるのはお前だけだろ」
「周りが不始末を消してくれたに違いないな」
 容赦のないツッコミを。デュオと五飛はコーラサワーに浴びせた。
恐ろしいのは、この二つのツッコミがツッコミじゃない、つまりほぼ事実に近いということである。
「居眠りしてなかったのは、多分嫁さんが上司だった時だけだな」
「何でわかるんだよ」
「わかるよ!」
「いいから早くしなさい、貴方達!」
 ぐりり、とサリィの眉間にシワが寄る。
「やっぱりもう一回ドツいたらどうですぅ?」
「昔から今までずっと変わらんのだな、こいつは」
「平時であっても、戦時であっても、ね」
 コーラサワーはコーラサワー、わかっていることだが、もうどうしようもない。
「おいおい、褒めるなよ、あんまり」
「褒めてねーよ!」
 苦笑するしかない皆なのであった。 

 ……さて、無為という言葉には、「何もしない、自然のまま」という意味の他に、もう一つ意味を持つ。
それは、「因果の関係から離れ、絶対変化しない永遠の真理」という。



 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の無為は続く―――
427名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/06(日) 21:38:15 ID:???
 遅れましてごめんなさいコンバンハ。

正月→大晦日に上司から「ごめん、三が日待機ね」と連絡が来る。
一月→ぷららちゃんが規制をかっくらう。ついでに職場のマイPCがイカれる。
二月→突然上司に呼び出しくらう。「あ、君、四月から異動だから」

 ……順調に投下が今後も遅れそうですサヨウナラ。
428通常の名無しさんの3倍:2011/02/07(月) 15:17:01 ID:???
>>427
乙です! 次回は何かありそうな感じですねえ
429通常の名無しさんの3倍:2011/02/08(火) 15:23:56 ID:???
土曜日さん乙〜
430通常の名無しさんの3倍:2011/02/10(木) 18:02:04 ID:???
保守ウー
431通常の名無しさんの3倍:2011/02/13(日) 00:53:55 ID:???
保守
432通常の名無しさんの3倍:2011/02/15(火) 21:00:00 ID:???
保守ワー
433通常の名無しさんの3倍:2011/02/15(火) 21:04:39 ID:???
伊集院静さんの小説にコーラさんの名が堂々登場してしまった件
434通常の名無しさんの3倍:2011/02/17(木) 15:28:07 ID:???
なにそれkwsk
435通常の名無しさんの3倍:2011/02/19(土) 13:49:38 ID:???
保守ウー
436通常の名無しさんの3倍:2011/02/19(土) 14:53:45 ID:???
>>434
http://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up487813.jpg
河北新報連載「青葉と天使」 伊集院静・著
437通常の名無しさんの3倍:2011/02/19(土) 21:54:12.54 ID:???
>>436
本当だ、すげえw
もしや、伊集院氏も00を観ていたのかな?w
438名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/20(日) 22:46:13.58 ID:???
お疲れ様です。
異動に伴う引き継ぎ業務に従事する為、2、3、4月はかなり跳び跳びな投下になると思います。
取りあえず、次回は二月中になんとか。

では。
439通常の名無しさんの3倍:2011/02/21(月) 15:23:12.77 ID:???
了解しました
440通常の名無しさんの3倍:2011/02/24(木) 18:10:04.15 ID:???
保守
441通常の名無しさんの3倍:2011/02/25(金) 22:30:04.64 ID:???
Gジェネでのコーラさんはどんな塩梅かな?
442通常の名無しさんの3倍:2011/02/26(土) 01:41:47.93 ID:???
>>441
「愛と、俺の、幸せの! スペシャルフィンガー・ソード!!」
「幸せ掴めと、轟き叫ぶぜぇ!」
「大好きです!! カティーーー!!!」

絶好調のようです
443通常の名無しさんの3倍:2011/02/26(土) 02:11:18.66 ID:???
あと通常戦闘は「大佐の勝利のために!」
アロウズに行ってからも一人だけ別の目的のためにwktk戦っていたようだ
444通常の名無しさんの3倍:2011/02/27(日) 11:07:01.05 ID:???
>>442>>443
そうなんだ、コーラさんらしいなw
445名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/27(日) 21:31:21.00 ID:???
 砂混じりの乾いた風が、緩やかに吹き付けてくる。
肌がざらついたような感じを覚えて、やや不快そうに、パトリック・コーラサワーは頬を撫でた。
「しかし、何もないところだな」
「まあ……そりゃそうだろ」
 彼のすぐ横で、腕を組みながら、デュオ・マックスウェルは答えた。
彼らの周囲にあるのは、荒涼たる砂と岩の大地と、そして僅かに確認出来る、
かつて建物があったであろうという土台の跡のみ。
「整地されてから、ほとんど人の手が入ってないってんだから」
 デュオは、足元の石ころを一つ、蹴りあげた。
その石は、放物線を描くと、砂の上に落ち、跳ねることなく、少しだけ転がった。
「ここに、イオリア・シュヘンベルグの研究所があったわけだ」
「何つーか、もの好きなオッサンだったんだな、そのイオイオナントカって奴」
「何で?」
「だって不便だろ、こんなところに研究所建てたって」
「……まあ、な」
「これがラブホテルだったら、間違いないくオープンから一カ月で潰れるな」
「どんな例えだよ」
「でも、わかるだろ?」
「不便だ、ってことはな」
 コーラサワーの言葉を一応肯定しつつも、デュオにはまた、違った思いがある。
人里離れたこんな寂れた土地にて取り組むということは、それなりに理由があるからだ。
でなければ、コーラサワーの言うとおり、こんな不便な場所を選びはしない。
つまり、イオリアの研究があまりに特殊であったが故に……。
「周りには、本当に何もないようですね」
 二人に、カトル・ラバーバ・ウィナーが近付きながら言った。
その手には、防塵処理を施された、デジタル双眼鏡が握られている。
彼は生まれが中東であるので、こういった気候には慣れている。
首から防砂用の特殊ゴーグルをぶらさげているが、これはおそらく、ウィナー家の自前のものであろう。
「遠くに送電塔、そして使われていない石油パイプラインくらいです」
「そして、後はあの岩山か」
「はい、あれですね」
 コーラサワーは、カトルが指差した方向に目をやった。
砂と土の大地の上に、ポツリと、赤茶けた岩塊が見える。
「岩山ってーのには、ちょっと大きすぎるな」
「強いて言うなら、大岩山か?」
「そうですね」
 おどけたようなデュオの言葉に、カトルはクスリと笑った。
だが、その大岩山こそが、彼らにとっての重要な目的地であるのだ。
そこにある、洞窟の奥が。

 ◆ ◆ ◆
446名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/27(日) 21:37:00.75 ID:???
 ビリー・カタギリは天才である。
エコドライブであるミカンエンジンを開発し、
それを動力とする巨大人型メカ、MS(ミカンスーツ)を作り上げた。
常人には、おいそれと出来ることではない。
「これは、置いていかれちゃったかなあ」
 そんな彼は、首を傾げつつ、空を見上げて呟いた。
口調は困ったような感じだが、その表情はそこまで深刻なものではない。
本気で心配していない、と言うより、生まれつきやや鈍感、というかのんびりとした気質なのだ。
これは彼が名家の出であることも関係しているかもしれない。
「……そうみたいですね」
 そして、そんなビリーの態度にやや呆れつつ、相槌を打つのは、
JNN通信の報道アナウンサー、絹江・クロスロードである。
隣に立つビリー・カタギリも研究者としては若いが、彼女もアナウンサーとしてはまだ若い。
二十の半ばにも達しておらず、業界ではペーペーの扱いである。
「何も連絡は聞いてないんですよね、カタギリ博士?」
「うーん、ホテルまで来てくれとは言われたけど、それだけだねえ」
 別に二人は連れ立ってやって来たわけではない。
たまたま、到着のタイミングが重なってしまっただけである。
「うーん、どうしたものか」
「……」
 ビリーと絹江、互いに多少面識はあるものの、どうにも居心地が悪くなってしまうのは仕方が無い(より絹江の方に)。
何しろ、在野の科学者と報道アナである。
普通なら、取材される側と取材する側なのだ。
どうしても空気が微妙にはなってしまう。
「クジョウ君達はまだ来てないみたいだなあ」
「クジョウ……?」
「マイスター運送の社長だよ。僕のかつての学び仲間さ」
「……スメラギ・李・ノリエガではなくて?」
「ああ、今はそうみたいだね」
「今は……」
 絹江は右手の人差指をこめかみに当てた。
彼女自身のそもそもの目的はアロウズの不正を暴くことだが、
何時の間にやら、それを越えた出来事に関わってしまったように思えてならかった。
プリベンター、アロウズ、人類革新重工、マイスター運送、ビリー・カタギリ、そしてイオリア・シュヘンベルグ。
いったい、どこに、そしてどのように着地するのか。
こうなったら、最後まで付き合うしか、道はない。
出発前、弟の沙慈・クロスロードは言ったものだ。
姉さんは熱心なのはいいけれど、突っ走り過ぎるところがあるから気をつけてね―――と。
「余裕が無いのかしら、私」
「え?」
「ああ、いえ、独り言です」
 危ない橋を渡ることに、慣れているとは言えない。
何しろまだ自分は若いし、危険な場所に言った経験も少ない。
アロウズの裏を覗いたことで、危険人物(向こう側の)として、密かに「処理」されてしまうことだってある。
JNNの上層部にもアロウズの手が伸びている可能性は高く、身内で味方と言えるのは、
弟である沙慈、そしてJNN資料部の主であるハワード老人と同僚のイケダくらいである。
絹江としては、ここまで来た以上、プリベンターにとことんくっつく、卑屈に言えば庇護してもらうしかないのだ。
447名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/02/27(日) 21:38:41.89 ID:???
「あ、来た来た!」
 いつの間にか俯いていた絹江は、ビリー・カタギリの声にハッと顔を上げた。
道の向こう、空港からの直行便であるバスの降り場のところに、見知った顔が並んでいる。
すなわち、マイスター運送の面々と、そして人類革新重工の二人。
「これで全員かな?」
「そう、ですね……」
 絹江は胸のポケットを、そっと上から抑えた。
丁度心臓の位置にあるそこには、小型のカード式映像カメラが収められている。
ジャーナリスト必携のもので、持ち運びに容易であるし、何より、使っているところを他者に咎められにくい。
「余裕は……作るものよね」
「ん?」
「また、独り言です。カタギリ博士」
 絹江は視線を、道路の向こう側から、上に移した。
砂の為か、空は青の他に、うっすらと黄色の膜がかかっているようにも思える。
が、太陽の光はそれによって鈍くなるどころか、いっそうの強さを増しているように、絹江には感じられる。
「やらなきゃ。私の為に、父さんの為に、沙慈の為に……」
 絹江にとって、まだその目的地は遠い。
だが、確実に近くに寄っては来ている。
後悔をせぬ為に、彼女は闘わなければならないのだ。
プリベンターの力を、借りて。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――



 コンバンハ。
誤字脱字がありましたらゴメンナサイ。
四月からの異動先は夜勤も入ってくるんで、以前みたいな週一ペースはちょっと難しくなりそうです。
本来の予定なら昨年末までに完結しているはずのこのお話、まだまだ終わり(れ)そうにありまへん。
ですが、スレ続く限り、頑張って投下していきます。

ではまた次回までサヨウナラ。


ちなみにGジェネは買ってません。
今は戦国無双3Zをやってあばばば、さらにもう少しすると真三国むそおぼぼぼぼ。
448通常の名無しさんの3倍:2011/02/28(月) 20:50:08.81 ID:???
乙です、今回は割とシリアスな感じですね
449通常の名無しさんの3倍:2011/03/01(火) 21:09:56.01 ID:???
土曜日さん乙〜
次回も待ってます!
450通常の名無しさんの3倍:2011/03/03(木) 21:25:49.43 ID:???
乙でーす
451通常の名無しさんの3倍:2011/03/05(土) 22:43:51.46 ID:???
保守ワー
452通常の名無しさんの3倍:2011/03/06(日) 10:05:16.73 ID:???
スパロボでコーラさんが使えたらいいなあ
453通常の名無しさんの3倍:2011/03/07(月) 21:03:59.39 ID:???
このスレ、立ってから1年以上経つんだなあ…
454通常の名無しさんの3倍:2011/03/07(月) 21:22:58.15 ID:???
そして初代スレが立ったのは07年10月9日
ファーストシーズン第一話の3日後
455通常の名無しさんの3倍:2011/03/07(月) 21:39:24.45 ID:???
>>454
もちろん、現スレの事ね
456通常の名無しさんの3倍:2011/03/09(水) 21:10:43.99 ID:???
保守ワー
457通常の名無しさんの3倍:2011/03/11(金) 16:10:43.14 ID:???
保守ウー
458通常の名無しさんの3倍:2011/03/12(土) 08:15:37.36 ID:???
スレ住人の無事を祈る
459通常の名無しさんの3倍:2011/03/13(日) 13:11:30.74 ID:???
>>458
色々と大変なことになってるからね・・・
460名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/03/13(日) 20:43:55.26 ID:???
私も大阪なので特に影響は受けてはいないですが……ちょっとSS云々という事態ではないですね。
しばらく投下は様子を見ます。
461通常の名無しさんの3倍:2011/03/15(火) 10:30:01.66 ID:???
>>460
延期、了解しました
462通常の名無しさんの3倍:2011/03/17(木) 09:00:25.22 ID:???
保守ワー
463通常の名無しさんの3倍:2011/03/19(土) 15:34:47.98 ID:???
保守ウー
464通常の名無しさんの3倍:2011/03/21(月) 09:07:14.36 ID:???
保守ワー
465通常の名無しさんの3倍:2011/03/23(水) 08:44:27.55 ID:???
保守ウー
466 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/03/25(金) 09:02:45.04 ID:???
保守ワー
467 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2011/03/27(日) 10:03:48.24 ID:???
保守
468名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/03/27(日) 23:43:51.38 ID:???
次回は四月に入ってからになると思います。
さすがに引き継ぎと残務処理がシャレにならん忙しさですので……。
469 忍法帖【Lv=5,xxxP】 :2011/03/29(火) 20:16:53.94 ID:???
>>468
了解しますた
470通常の名無しさんの3倍:2011/03/31(木) 13:37:04.10 ID:???
コーラパワーを全国に!
471 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2011/04/02(土) 17:19:30.68 ID:???
保守
472 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 :2011/04/04(月) 22:02:02.28 ID:???
保守
473通常の名無しさんの3倍:2011/04/06(水) 18:01:47.87 ID:???
ホシュワー
474 忍法帖【Lv=13,xxxPT】 :2011/04/08(金) 16:54:09.95 ID:???
保守ワー
475名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/04/09(土) 01:03:52.82 ID:???
「さて、どうしたものやら」
 デュオ・マックスウェルはやや呆れたように、額を人差し指でかいた。
逆側の手には、ヘルメットを抱えている。
「調べる、と言っても簡単にはいかないだろうな」
 斜め後ろからデュオに話しかけたのは、張五飛。
彼にしては消極的、と言うか曖昧な語りだが、実際『簡単にはいかないだろう』というのがメンバーの共通認識ではある。
「入るのも一苦労ですね、これは」
 さらに、その二人にカトル・ラバーバ・ウィナーが言葉をかける。
彼はすでにヘルメットを被っているが、妙に似合うのは、
ウィナー家の当主として様々な現場に出てきて、身に着け慣れているからであろうか。
「入口はここだけなんだろう?」
「データによると、他にも一応出入り口は複数あるみたいですけど」
「今となっては、そちらは使い物にならないだろうな」
 三人は腕組みをすると、ふぅ、とそれぞれに息を吐いた。
彼らの目の前には、今回の目的地―――の入り口がある。
分厚い鋼鉄製の扉に塞がれた、洞窟の入り口が。

 イオリア・シュヘンベルグが遺した、『謎の遺産』。
そして、それを狙う者達。
前者の秘密を解き明かし、そして後者を捕縛するのが、今度のプリベンターの任務である。
ついでに言えば、プリベンター単独での仕事ではない。
ビリー・カタギリ、マイスター運送、人類革新重工、JNNTVの報道員。
それぞれに思惑を秘め、プリベンターに同行している。
もっとも、現在は彼らは後着組として、ここはまだいないが。
「よし、ふっ飛ばそうぜ」
「……どうやって?」
 入口を塞いでいる扉については、プリベンターの現場リーダーであるサリィ・ポォが何らかの手段を講じることになっている。
焼き切るなり、引きはがすなり、溶かすなり、やり方はいくらでもある。
ただ、それなりに時間はかかってしまうだろうが。
「爆薬で」
「却下」
「じゃあMS(ミカンスーツ)で蹴り飛ばそう」
「再度却下」
 で、その件でさっきからアブない意見を提出しまくっているのは、我らがヒーローのパトリック・コーラサワーさん。
「なんでだよ、ぐだぐだとややこしいことせんでも、その方が簡単だろ。ちゃっちゃと終わらそうぜ」
「ああ、お前の言う通りにすると確かにちゃっちゃと終わるな」
「だろ?」
「失敗という結果でな」
 コーラサワーの無謀な提案に律儀(?)に答えつつ、デュオは溜め息をついた。
爆薬でふっ飛ばしたり、MS(ミカンスーツ)で蹴り飛ばしたりすれば、確かに扉は壊すことが出来るだろう。
が、入り口が無事という保証はない。
さっき五飛がカトルに言った通り、他の入り口は使えない。
正面のこの入り口程大きくないし、何より、管理面の問題で、コンクリート等で完全に塞がれているのだ。
476名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/04/09(土) 01:05:26.00 ID:???
「何で失敗だって言いきれるんだよ」
「何で失敗しないって言いきれるんだよ」
 爆薬で扉を吹っ飛ばす→鋼鉄製の扉を壊せるくらいだから結構な爆発でないとダメ→扉周りの岩盤が耐えきれるわけがない。
MS(ミカンスーツ)で蹴り飛ばす→鋼鉄製の扉を蹴り壊せるくらいだから以下略。
何でこんなこともわからんのか。
デュオとしては、コーラサワーが本当に元軍人だったか、改めて疑わしさを覚えざるを得ない(本当に何度目だろうか)。
「だいたいよー、扉ってんなら、開けられるのが普通だろ」
「ああ、普通だな。普通の扉ならな」
 そもそも、この鋼鉄製の扉は、扉であって扉ではない。
寧ろ、壁とでも言うべきものである。
コーラサワーの言う通り、扉なら開閉が出来るからこそ扉なのだが、
この鋼鉄製の扉は、「塞ぐ」ことのみを目的として作られている。
押したり引いたり、横にスライドさせたり、そういった機能はハナから無いのだ。
「ああもう面倒くせえな、何でそんな扉にしたんだよ」
「そんな扉が必要だったからだよ! お前、ミーティングとかで今まで何を聞いてたんだ!」
「聞いてたぞ、イオイオナントカの爺さんの謎がこの奥にあるんだろ?」
「そうだよ!」
「だから、とっととそれを探しに行こうぜって俺は言ってるんだ」
「……あーもう、あーホントにもう」
 デュオはがっくりと肩を落とした。
ちゃんと話を聞いていたなら、それが簡単に出来ないことがわかるはずなのに、と。
とても、軍時代に作戦の下で成果を残してきた『エース』とは思えない。
「とにかく、サリィがなんとかするから待ってろよ。カーゴでコーヒーでも飲んでろ」
「……何か、物凄くバカにされてる気がするんだがな」
「してるけどしてねーよ。いいからおとなしくしてろって、今は」
 かつてのAEU軍の上司は、さぞかし苦労をしたことであろう。
と言うか、マトモにコーラサワーを「操縦」出来ていたのがカティ・マネキンだけだったのではないか。
そう思い、苦笑を禁じ得ないデュオだった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――





 遅くなりましてコンバンハ。
ちょっと短くてすいません、異動したてでまだちょっとアレでしてサヨウナラ。
477通常の名無しさんの3倍:2011/04/09(土) 19:15:22.19 ID:???
>>475>>476
乙です!
しかし、コーラがいると雰囲気がゆるくなるなあw
478通常の名無しさんの3倍:2011/04/12(火) 15:28:08.40 ID:???
ホシュワー
479通常の名無しさんの3倍:2011/04/14(木) 15:23:32.68 ID:???
保守ウー
480通常の名無しさんの3倍:2011/04/17(日) 07:15:07.15 ID:???
スパロボZで、コーラさんは仲間入りしないのかな?ルート選択とかで
481通常の名無しさんの3倍:2011/04/19(火) 21:17:57.70 ID:???
保守ワー
482通常の名無しさんの3倍:2011/04/21(木) 15:27:10.27 ID:???
てすと
483通常の名無しさんの3倍:2011/04/23(土) 19:16:06.30 ID:???
保守ワー
484通常の名無しさんの3倍:2011/04/25(月) 20:35:44.24 ID:???
保守ウー
485名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/04/27(水) 00:45:36.01 ID:???
間が空きまくって申し訳ないです。
異動早々に大きめの仕事を振られて苦労しております。
次回は次の土曜か日曜にて。
486通常の名無しさんの3倍:2011/04/27(水) 21:11:01.85 ID:???
>>485
了解です
487通常の名無しさんの3倍:2011/04/28(木) 22:33:42.78 ID:???
test
488不定期.go.gb:2011/04/29(金) 00:45:06.80 ID:???
「というわけで、本日はアメリカン・フットボールをやってみようと思う。」
いいだしっぺはグラハムであった。
いきなりのことに、椅子からずり落ちるプリベンターたち。
また始まったと頭を抱えるサリィ・ポォ。
コーラサワーは歯磨きをしていたが、歯磨き粉を飲んでしまい、むせまくる始末。
水で何回もうがいとのどを癒してから、グラハムにつっこんだ。
「おい、ここの人間はアメフトのルールすら知らないやつばっかりなんだぞ。 いまから覚えていったって、
どうやってプレイするのか混乱するだけじゃないか。」とめずらしくマトモなことをいった。
「ふっ。何故やろうといったわけがわかるだろう。 なにしろ、アメフトは女にもてるからだ。」
とナルシズム満開のグラハム。
呆れ顔のプリベンターたちと心を動かされた模様のコーラサワー。
「ジョシュアだって、アメフトのルールの基礎的なことは覚えているだろう。なにせ、ユニオンでは各部隊の対戦が夏場を
除けば、いつもカードが組まれたからな。」とユニオン時代の同窓生をジト目で
にらみつけた。
哀れ、小心者のジョシュアは蛇ににらまれた蛙のごとく縮みあがり、「はい・・・・。」と
グラハムの目を見ることができずにふるえながら、返事をした。
「まあ、俺も3,4回やったことあるけど、プレイブックが厚くて覚えるのがしんどかったな。」と
ヒイロがいった。
「なんだ、やったことある人間がいるじゃないか。それなら話が早い。 ビリー片桐がヘッドコーチで
戦術をコーディネートしてくれるよう話をつけてある。 早速練習だ。」
とプリベンターたちをアメフトのコートへ連れて行った。
 

489不定期.go.gb:2011/04/29(金) 00:46:35.64 ID:???
ここで、アメフトの簡単な説明をしたい。
プレイする人数は11人。 これはアソシエーション・フットボールつまりサッカーと
一緒だが、オフェンスとディフェンスが同じチーム内で役割が分かれている。
あとスペシャルチームとしてキッキングチームとレシービングチームが存在するが、
これについては後述する。
 要するにボールを使った陣取りゲームであることはラグビーやサッカーと同様であるが、
ヨーロッパ発祥のラグビーやサッカーは、攻守が激しく時間内で交替するが、アメフト
の場合は、1プレイずつオフェンス専門チームとディフェンスチームとで対峙する。
そして、4プレイで10ヤード前進できないと攻守交替となる。
故に、4プレイ目は攻撃権を放棄する意味でキッキングチームが登場し、パントという
キックで相手の陣地深くにボールを移動させ、相手の攻撃のリスクを減らすようにする。
レシービングチームはリターナーというボールキャッチがうまく、足の速い選手が配置される。
ただし、ボールがエンドゾーンに入るとタッチバックとなり、攻撃側の20ヤード地点から
プレイが再開される。 また、手を大きく広げて合図を送るとフェアキャッチ
となり、リターンができない代わりに、キッキングチームのタックルは禁止される。
 さて、アメフトで一番花形のポジションはなんといってもクォーターバック(QB)である。
5人のラインメン(この人たちはパスやボールを持って走ることができない。)
の後ろに位置し、プレイコールで攻撃の仕方を暗号で伝え、ランプレイかパスプレイ
かを選択し、陣地を1プレイごとに敵陣を削っていく攻撃の総司令官の役割を担う。
 そのせいか、非常に頭の切れるプレイヤーが多く、顔もイケメンが多い。
 故に女性からもて、カレッジ(大学)やプロフットボールの中で一番美女や良家のお嬢様を射止める確率が高い。
長くなったので、またルール等についてはおいおい書いていきたい。
_______________________________________________________
「だったら、QBは俺だな。」とコーラサワーがいうと、「おまえ、オフェンス・コーディネーターやヘッド・コーチが指示
してくるプレイのデザインを他のプレイヤーに伝えられるのか。 そんなもの、
QBサック(QBがディフェンスにタックルされ、陣地を後退させれらること。)とインターセプト(QBが投げたパスをディフェンス
がキャッチしてリターンすること。 攻撃権が自動的に相手に移る。いずれもQBとしては最も屈辱であり、
ディフェンス側にとっては勲章になる。)の花ざかりになるわ。」とグラハムが
毒を放った。
 さていかなる運命になるのか。 見たくもあり、見るのが怖いものでありますが。
___________________________________________
皆様お久しぶりです。 不定期です。m(__)m
パソコンがぶっ壊れ、書き込みができるところを探してたんですが、
インターネット喫茶ってほとんど規制にかかってしまうんですね。
今は人のパソコンを借りてカキコしています。
貧乏の私からすればパソコンは高嶺の花ですし、どうしようか考え中です。
土曜日氏も多忙の中ネタを投下されており、ネタの引き出しの多さが
非常に素晴らしいと思っています。
  さて、どれだけ引っ張れるか。 長くなりすぎて申し訳ありませんが、
しばらくまあ、お付き合いいただければ幸いと存じます。
今日はここまでで失礼します。m(__)m
490通常の名無しさんの3倍:2011/04/29(金) 19:58:11.92 ID:???
不定期の人ひさしぶり!続き楽しみにしてるよ
491不定期.go.gb:2011/04/30(土) 01:44:08.95 ID:???
さて花形のポジションといえば、サッカーであればフォワードかトップ下、ラグビーであれば
No.8、アメフトではQBであるが、得点するには誰かに決めてもらわなくてはならない。
その役割を果たすのが、ワイドレシーバー(WR)、ランニングバック(RB)、タイトエンド(TE)
といったポジションに位置するプレイヤーたちである。
 やはり、このポジションに属するプレイヤーは俊足で、キャッチがうまいものが多い。
そして、QBは1プレイごとにコーチから送られてくるプレイのデザインをフィールドにいる
味方のプレイヤーに伝え、前進を目指すのである。
対峙するディフェンス側は、ディフェンス・バック(DB)、ディフェンス・エンド(DE)、
フリー・セイフティ(FS)、ストロング・セイフティ(SS)と称されるプレイヤーがいて、攻撃を
封じる役割を演じる。
 これらのポジションはセカンダリーと総称され、ディフェンスの最終防衛ラインを担う。
主にパスによるロング・ゲインを封じる役割が多く、オフェンスのWR,RBと同様に俊足を誇り、一回り
体が大きいプレイヤーが多い。
そして、ラインメンといわれる前線で対峙する面々はいかにも力強いマッチョマンが多く、
オフェンス側のラインメンはQBを守り、攻撃が完遂できるよう体を張り、ディフェンス側の
ラインメンはその壁を打ち破り、QBやRBを封じる役割を担い、あわよくばインターセプトを狙い、攻撃権を奪い取るように
プレイを行う。
 攻撃はラインメンのセンターがスクリメージライン(いわゆる境界線)にボールを置き、QB
にスナップして、プレイが始まる。
 ここでQBには3つの選択肢がある。
 RBを使い、ショートゲインを積み重ねて確実に陣地を拡大する方法と、WR,TEを
使って、大きく陣地を拡大する方法と、QB自らが中央に走りこんだり、外側に回り込んで走りこむ
いわゆるQBスクランブルという非常手段である。
これらを組み合わせ、ファーストダウンを更新しながら、相手の陣地に到達すると
タッチダウンとなり、6点が与えられる。
 そしてポイント・アフター・タッチダウンとして、キッキングチームが登場し、キックした
ボールが枠内を通過すれば、1点が与えられる。
但し、2ポイントコンバージョンというオフェンスチームがもう一度相手陣に飛び込む
プレイもあり、2点が与えられるが、これはリスクも大きくよほどせっぱつまった
場面でないとみられない光景である。

492不定期.go.gb:2011/04/30(土) 01:59:33.34 ID:???
「さて、問題は攻撃陣をどう組み立てるかだが・・・。」とグラハムがいうと、
「なあ、いまプレイする人間は8人しかいないんだぞ。 どうやって練習するんだよ。」とコーラサワーがつっこみを入れると、「あわてることはない。ダリルとマイスター運送と
人類革新重工の面々に声をかけて、受諾してもらった。」とグラハムにしては周到な用意。
「なんだ。前々から計画してたのか。」とデュオがいうと、「ははは。物事は秘密裏に進めていくのが成功する秘訣だ。」とグラハムは笑いながらいった。
「おはようございます。」といって現れたのは、マイスター運送の面々、ハロの衆、人類革新重工のスミルノフ親子、ミン、沙慈、そしてラーメン屋のダリルであった。
 「まあ、交替要員を入れれば、まずはこのくらいでいいだろう。」とグラハムがいうと、
練習相手の旧ユニオンのOBたちが到着して、トレーニングが始まった。
 タックルや戦術の熟成、プレイ・デザインの創案など、様々なことが行われた後、各々のポジションがカタギリから発表された。
「ラインメンはセンター(C)がダリル、後ガードとタックルは、ロック、アレルヤ、ティエリア、ラッセ
にお願いする。 QBはグラハム、RBはカトル、WRはトロワとデュオ、TEは五飛とヒイロ、
ディフェンスとキッキングの時はグラハムに代わってラインバッカーに刹那、ディフェンスの時のラインメンは
リヒテンダ―ル、スミルノフ親子、ミン、それとジョシュアでやってもらいたい。
あと、ラインバッカーやセカンダリーはその時に応じて決める。」
「なあ、誰か大切な人間をわすれてやしないかい?。ヘッドコーチ。」とコーラサワー。
「おお忘れていた。君はキッカーとパンターをやってくれ。君のAEU時代の強烈な運の強さを見込んでな。」
コーラは内心不満だった。本当はQBもしくはタッチダウンを決めるWRかTEをやりたかったのだが、
次の言葉でコロリといくのがこの男の真骨頂である。
「なにせ、最後のプレイで勝負を決めるのはキッカーだからねぇ。フィールドゴール(FG)で勝負を決められりゃ、女の子にもてるだろうなぁ。」
「うぉしゃあああああ!!。この俺様に任せな。 華麗なFGで勝利に導いて、もてまくるこのスペシャル様の光景が目に浮かぶぜ。」と早くも英雄になった気分で燃えていた。
グラハムに散々つっこんでいたのにこうなるのは、やはり根は至ってシンプルなのだろう。
ここでFGについて説明したい。
 ほぼ敵陣内20ヤードから30ヤード地点まで進入したが、タッチダウンまで至らなかった時に 、
キッカー(K)とホルダーが登場し、相手陣地内のゴールポストの枠内に蹴り込むと3点が与えられる。 
カタギリがいうように最後のプレイで勝負を決めるのがFGであることが多いのは現代のプロやカレッジでも事実である。
 それだけ接戦が多いという証拠でもあるが。
陣地は100ヤードで、お互い50ヤードずつあらかじめ与えられている。
ラグビーは陣地をメートルで計るが、アメフトとゴルフはヤードで距離を計る。
1ヤードは0・9166メートルで、そのフィールド内でプレイが行われる。
「ところで、誰と対戦するんだ?。」とデュオが尋ねると、なにやら怪しげな群衆があらわれた。
「早速あらわれたな。」とグラハムはつぶやいた。
その相手とは?。
「ヒャッハー!!。 今日はご挨拶にきたぜ。フットボールという戦争をおっぱじめるためにな。」
そう、皆さんもご存じのとおり。アリー・アル・サーシェス、トリニティ運送の男2人、イノベーターの面々である。
「おまえさんら、人数が足りないんじゃないかい?。」と五飛にいわれたが、
「こっちには手下がどんといるんんだよ。 少なくとも人数的には俺のチームの方がそろってるぜ。」とサーシェスは不敵な笑いを浮かべた。
「それじゃあなぁ。1ヶ月後の試合がたのしみだぜ。ギーヒャヒャヒャ。」と高笑いしながら彼らは去って行った。
「厄介な相手だな。」とヒイロ。
「まあ、スポーツで決着をつけようというのは、やつらにしては平和的だが、ラフプレイには気をつけないとな。」とトロワ。
さて、どのような決着をみるかは皆様のご想像におまかせしよう。
書けたら、書く予定ですが、あまり期待しないように。


493不定期.go.gb:2011/04/30(土) 02:12:05.47 ID:???
490様。お久しぶりでございます。
なんとか、いろいろなネタを絞り出して書ければいいなと思っています。
それでは失礼します。
皆様方のご健勝をお祈りいたします。
494名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/01(日) 01:04:51.21 ID:???
 文明社会における技術とは、必ずしも「発達し続ける」ものではない。
より便利な物を手に入れる一方で、人類が手放してしまった技術もまた多い。
例えばギリシアの火、ダマスカス刀剣の製法、曜変天目茶碗等々。
これらは世界的に有名であり、取り戻す研究も絶え間なく続けられている。
しかし、狭い地域、地球レベルで見ればほんの砂粒程の場所で代々受け継がれてきた「民間技術」等は、
一度失われてしまえば、最早取り返しがつかない。
地理的な理由で隔離されてきた場所で、言わば本流から外れて発達した技術というものは、
案外バカに出来ないものだったりするのだが(科学的な証明は為されてはいないが、特に民間医療の数々)。
 だがしかし、それもまた仕方の無いことかもしれない。
ヒトがサルの違いを見てみれば一目瞭然だろう。
体毛や尾を何故、ヒトが失ったか?
それは、「必要としなくなったから」に他ならない。
後継者の途絶、優勢な他技術の発達、過度な秘密保持等で失われた技術は、
結局、人類が進歩するにあたって、淘汰されたと考えることも出来るのだ。

 ◆ ◆ ◆

「……特に何も無いな」
 デュオ・マックスウェルは、ヘルメットの正面に装着したライトの向きを調節し、
手元のタブレット式コンピュータを覗きこんだ。
タブレットコンピュータは画面が発光するので、本来はライト等の灯りは必要ではないのだが、
デュオのヘルメットライトは、別にコンピュータの画像や文字を読み取る為のものではない。
「本当になんも無いな」
 デュオの隣に座っている男は、呆れたように片手をヒラヒラと動かしてみせた。
長めの前髪が、実にヘルメットに収まりづらそうに、同じように揺れている。
パトリック・コーラサワーである。
「昔、調査隊が調べたままってことか……」
「暗いは埃っぽいわ何も無いわ、どうしようもねぇところだな」
 デュオとコーラサワーは、だだっぴろい坑道のようなところに、今居る。
かつて、イオリア・シュヘンベルグの地下研究施設があったこの洞窟(?)を調べることが、今回のプリベンターのお仕事である。
495名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/01(日) 01:07:16.27 ID:???
「金目の物なんて何もねえな」
「……盗賊の台詞だな、それは」
「だってよお、ここまでスッカラカンなんだぜ」
「そりゃまあ、大昔の施設だからな。調査隊も入ってることだし、何か残ってるほうがおかしいっちゃおかしいんだけどな……」
 入口を塞いでいた超鋼製の扉を、特殊な溶解液で一部溶かし、中に入ったまでは別に問題はなかった。
データから、かなり広く、下に長い地下施設だということはプリベンターの皆もわかってはいたが、
実際に目で、肌で体感してみると、知識による想像よりかは遥かに大きく感じるものである。
「地下3階のフロアB、特になにも無し、と」
「なあみつあみおさげ、まさかこれ、最下層までやるつもりか?」
「当たり前だろ」
「効率、悪すぎねえか?」
「……まさかお前の口から、効率なんて単語を聞くとはな」
 デュオはコーラサワーにツッコんだが、しかし半分、いや三割程は同意せざるを得ない部分がある。
昔の探偵や刑事よろしく、こうやって逐一自らの足と目で「過去を確認」することが、もどかしいのは確かなのだ。
だが、仕方が無いと言えば仕方が無いのである。
何しろ、この地下施設は、電源が生きていない。
もっとも、生きていたとしても、エレベーターや照明は当然壊れているし、
機械類もほとんど運び出されているのだが。
「中央の管理室にはサリィ達が行ってる」
「だから何だよ」
「……まあ、俺達は俺達でやるってだけ、ってことさ」
 施設の捜査は、二名ずつに分かれて行っている。
ヒイロ・ユイとトロワ・バートン、
張五飛とカトル・ラバーバ・ウィナー、
サリィ・ポォとミレイナ・ヴァスティ、
そしてデュオとコーラサワー。
なお、ヒルデ・シュバイカーとグラハム・エーカー、ジョシュア・エドワーズは施設の外で連絡と警備にあたっている。
グラハムが捜査メンバーから外れたのは、
「やかましいのはコーラサワー一人で十分」というサリィの判断によるものである。
まあ、独断で動くことに関してはコーラサワー以上のものがあるグラハムであるからして、これは正しい配置であるとは言える。
道理を無理で覆すことにかけては実に定評のあるお方ゆえに、何しよるかわからんわけで。
496名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/01(日) 01:09:07.12 ID:???
「小型のエレカー持ってきてるだろ? あれ、使おうぜ」
「そりゃ、使えないこともないだろうけど」
「スロープがあっただろ、上下の行き来も楽になるぞ」
「でも、隅から隅までってわけにもいかないぞ」
「移動の手段とするだけでも時間が短縮出来るだろ。足で調べるところは足でやりゃいいだけで」
「……」
「何だよ、マジマジと人の顔を見つめてきやがって」
「……」
「おい、言っとくが俺にそんな趣味はねぇぞ。いくら暗がりで二人きりだからって……」
「バカタレ、そんなこっちゃないっつーの」
「じゃあ何なんだ」
「いや、まあ、な……」
 デュオは手の甲で右の頬を一つ、撫でた。
コーラサワーがマトモなことを言うというのが、どうにもキモチワルイというか、居心地が悪いのだ。
「あ、お前、今心の中で俺のことを凄くバカにしたろ」
「そんなわけねーよ。半分はそうだけど」
「やっぱりバカにしてんじゃねえか!」
「怒鳴るなよ、耳に響く」
 デュオは首を一つ振ると、歩を進めた。
まだ、調べるべきところはたくさん残っている。
「おいみつあみおさげ! 有耶無耶にすんな!」
「だから騒ぐなってば」
 ……後日、デュオは苦笑交じりに思い返すことになる。
この時コーラサワーが普段に比べてやけにマトモだったのは、
コーラサワーが時折見せる人間離れした「勘」が、働いていたのではないかと。
ロストテクロノジーのように埋もれている「真実への近道である直感」が、コーラサワーの頭の中で警報を鳴らしていたのではないか、と。


 コーラサワーとプリベンターの心の旅は続く―――



 コンバンハ。
不定期氏、乙&GJであります。
では次回までサヨウナラ。
えーと、ゴールデンウィークってなんでしたっけ。
そんなもん、日本にありましたっけハハハ。
497通常の名無しさんの3倍:2011/05/01(日) 10:09:19.27 ID:???
>>491-493
アリー達が対戦相手なのかw

>>494-496
次回辺りで何かが有りそうな雰囲気だね
498通常の名無しさんの3倍:2011/05/03(火) 21:06:02.19 ID:???
お二人とも乙であります!!
499名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/04(水) 00:19:29.75 ID:???
 人の心は、決して表には出ない。
思考と行動(特に表情)がまんま直結している人間もいるが、実際のところ、それは少数派である。
 美しい絵を描くからといって、その作者が美しい心の持ち主であるとは限らない。
美しい歌を唄うからと言って、その歌手が美しい思考の持ち主であるとも限らない。
その逆もまた然りで、それが人間という生き物のおもしろいところでもあるのだが。
 つまりは、人はイメージによって、社会を築いていると言っても過言ではない。
太古の昔から、精神の重要性を説く格言が多いのは、それ故である。
心身の両面から、正しく、美しく、気高く、立派に生きようと努力をしてきた。
だがしかし、人類文明が起こった時から、今に至るまでそれを完全に成し得ていない。
それをよく知っているから、人間は、イメージというものを大切にするのだ。
俺は、私はこういう人間ですよ、と。
そして、心を隠し、表面を繕って生きるのだ。
自分は、貴方にとって不都合な存在ではありませんよ、と。
だから―――よろしくやっていきましょう、お互いにね、と。

 ◆ ◆ ◆

 カラン、と乾いた音を立てて、グラスの底に氷が落ちた。
綺麗に音が響くのは、氷があまり溶けていないからであり、
つまりは、注がれた液体が、ほぼ一息で飲まれた証拠でもある。
「ふいい」
 液体―――酒だが、それを一気に飲み干した男は、満足そうに、息を吐いた。
混じったアルコール臭が部屋の空気に溶け、天井へと登っていく。
「うめぇなあ」
「焼酎ですか? ボス」
「ん? ああ、赤霧島だ」
 ボスと呼ばれた、酒を飲んでいた男は、背後からかけられた声に、振りむきもせずに答えた。
「リボンズの大将と組んで何が良かったって、美味い酒が堂々と飲めるってとこだな」
「ちょっと前までは安酒しか買えませんでしたからねえ」
「おいおい、昔の酒の話をすると、今の酒が泣くぜ?」
 つまりは、酒が不味くなるからあまり過去の話はするな、ということである。
「こりゃすいません、ボス」
「いやまぁ、いいけどな」
 男は、さらにグラスに酒を注いだ。
そのグラスの横に、彼に背後から声をかけた男が、ツマミの皿を置く。
乗せられているのはコンビニならどこでも買えるようなスルメで、ぶっちゃけ貧乏臭いが、
これはまあ、『ボス』の嗜好であるからして、仕方がない。
高級なツマミが嫌いというわけでは決してないのだが。
「でも、のんびりしてていいんスかねえ」
「いーんだよ。出番はまだ後だ」
「はあ」
「出るところを間違えた俳優程、舞台を汚すモンはねえ。幸い監督はちゃんと考えてんだ、俺らは演じる時と場所を間違えなければいいのさ」
 ニヤリ、と男は笑った。
彼の名前はアリー・アル・サーシェス。
腕利きの傭兵だが、世間的にはゲイリー・ビアッジの仮名の方が通りが良い。
OZが台頭する以前から、その名前で至るところで暴れてきた。
無論、仮名が意味を持つ程に育っているということは、本名の方も、しっかりと裏で通じるように売れていることでもある。
500名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/04(水) 00:23:02.49 ID:???
「そうっスね」
「ん、そうだろ?」
 男はまた、一気に赤霧島を喉の奥に流し込んだ。
「他の連中にも言っとけよ、今のうちに英気を養っとけって」
「了解です」
「アニメを見るもマンガを読むも、フィギュアで遊ぶも何でも可だ」
「うちの連中、趣味が濃いっスからねえ」
 うんうん、と頷く部下の男。
ちなみに、この部下の男の趣味は編み物である。
ついでに言っておくと、アリーの趣味はベッタベタな恋愛ドラマの観賞である。
人は見かけによらない。
「きちんと悔いが残るように、な?」
「残るように、っスね」
「残さなかったらそこで死んでもいいってことだからな。傭兵稼業は生きてこそだ。覚悟は必要だが……」
「キレイな生き方はいらない、と」
「そーいうこった。ほれ、お前も飲め」
「いいんスか?」
「いいんだよ。ほら、そこの棚にグラスがまだあるから、持ってこい」
「へへへ……ボスと一緒に酒が飲めるたあ、嬉しいや」
「気色の悪いこと言ってんじゃねえよ」
 アリーの言葉に従い、部下の男はグラスを持ってきて、前にそっと差し出した。
ガンガン飲めや、とアリーは言うと、そのグラスに赤霧島をなみなみと注いでいく。
アリーが部下にこうやって酒を勧めるのは、機嫌がすこぶる良い時であり、部下の方もまた、変に遠慮をしたりはしない。
絆、という言葉はいかにも表現が綺麗過ぎるが、傭兵団の長と、その下で働く手下の連帯ではある。
一般企業だろうが傭兵だろうが、上と下とが関係を築けていない集団は、集団としての力を決して発揮出来ない。
「……今頃、プリベンターの連中は焦ってますかね?」
「かもな。連中の困り顔が見れたら、それこそ最上級の肴になるんだが」
「しかし、必死こいて探しているあのホラアナが……」
「なーんにも意味がねぇ、って何時気づきやがるかねえ?」
 口の端を引きつるように釣り上げて、アリーは笑った。
プリベンターが慌てている。
その場面を想像すれば、腹の底から笑いが込み上げてくる。
何しろ今まで散々邪魔をしてくれた連中である。
「連中の強さは、言ってみれば現場での精鋭の強さだ」
「はあ」
「それは裏を返せば、他に頼るものがねぇってことになる」
 選び抜かれた強者が集う、と言えば聞こえは良い。
が、それは周囲がそれらと同等の強さを持っていないという証明でもある。
「プリベンターが新政府の中でキチンとした組織として成り立ってたなら、俺らは多分ここでのんびりなんざしちゃいない」
 幾度もプリベンターとやりあってきたアリーは、プリベンターの強さをよく知っている。
が、だからこそ、弱点もまたわかっている。
501名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/04(水) 00:29:02.49 ID:???
「奴等はな、少数過ぎんだよ」
「少数、っスか」
「ああ。俺らも決して大集団じゃねえが、大将と組むことで、出来ることの選択肢が大幅に増えた」
「確かに」
「プリベンターはな、成立の経緯もあって、政府直属といっても浮いてる部分がある」
 その結果、ビリー・カタギリや人類革新重工、マイスター運送という外部民間人・組織と協力をせざるを得ない。
政府の組織図の中でしっかりとその地位を確立しているのなら、
各地の警察やら警備隊やら、はたまた各省ともっとしっかり連携が取れるはずであり、
わざわざ「僕達仕事頑張ってます」的に式典の警護に駆り出されたりはしない。
要は、プリベンターの組織としてのイメージが、政府の中で不動のものになっていないのだ。
「この前かっぱらってきた美術品やらメカ類やら、果ては遊園地のキグルミやらも、俺達だけじゃあ」
「こうも上手く盗めなかったし、足跡をごまかすことも出来なかったっスね」
「それが大将と協力した結果さ。ま、美術品の方はいずれ大将が表の場で返すだろうがな。適当な理屈を貼っ付けて」
「ちょっと勿体無いっスけどね」
「まあな。だが、表面の価値は大将にとって意味がねぇのさ」
「そうなんスか?」
「偏屈じいさんの遺産を手に入れる為には、美術品の、『裏』の価値が重要なんだと」
「裏……」
「よくは知らんがな。まあ俺達にとっては、『これから』のことを考えたら、美術品以外の方が大切だぜ」
「確かに」
 アリーは、雇い主であるリボンズ・アルマークから、今回の計画の全てを聞かされてはいない。
雇い主の隠し事は正直好きではないアリーだが、それ一つでは契約を切る理由にはならない。
リボンズがアリーを雇っているのは、リボンズにとってアリーの傭兵としての手腕が利用価値があるからだが、
アリーの方からしても、リボンズは十分、雇い主として利用価値がある。
契約が円満に終了すれば良いが、何らかの事情で向こうがこちらを見捨てるなり、
また、こちら側から裏切るなりした時の為に、アリーは手を打っておかねばならない。
傭兵としての契約は、全てを任せて、委ねることではない。
騙し合い、化かし合いの要素が多分にあるのだ。
それを表に出さずに、双方が利用出来る間、利用しあえば良い。
「大将の脚本に、演者として今のところ文句はねえ。演出の仕方は、ちと古臭いと感じるけどな」
「金に糸目はつけないところは、ありがたい監督っスけどねえ」
「まったくだ。んー、そうだな、他の演者には結構文句をつけてえかな?」
「あのキンキラのマネジャーとか、三人のガキとか?」
「ま、向こうもそう思ってるだろうが」
 そう言うと、グイ、とアリーはスルメを噛みちぎった。
赤霧島の瓶は、三本目に移っている。
 キンキラのマネジャーとはアレハンドロ・コーナーのことであり、
三人のガキとは、トリニティ兄妹のことである。
アリーとその部下にしてみれば、この四人はリボンズの取り巻きの中ではとにかく鬱陶しい。
性が合わないと言おうか、若い女性で容姿もそれなりなネーナ・トリニティに対してでさえ、部下の誰もがちょっかいをかけようとしない。
ソリの合わなさもよっぽどである、と言える。
502名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/04(水) 00:33:47.02 ID:???
「俺達は、俺達の都合の良いようになれば、それでいいさ」
「そのついでに、プリベンターの連中にギャフンと言わすことが出来れば?」
「おうさ、さらに良い」
 ここで、アイスペールが空になったので、アリーは部下に命じて氷を取りにいかせた。
また、新しいツマミを持ってくること、暇そうな奴がいたら酒を飲ませてやるから連れて来い、というのも加えて。
「……」
 部下がドアの向こうに姿を消すと、アリーは一度、目を閉じた。
別に、酔っぱらって眠たくなったわけではない。
これから起こる―――起こすことについて、少しだけだが、思いを巡らせたのだ。
「ま、なるようになるさ」
 アリーは、自分の実力に疑いを持ってはいない。
自分を信じれないような人間が、そもそも傭兵という命のやりとりを行う仕事が出来るはずもない。
部下達も、万全とは言わないが、率いて戦うことについては、自信を持っている。
なんだかんだでここまでついてきた連中であり、それなりに鍛えてきたという自負もある。
「出るところを間違えた俳優程、舞台を汚すモンはねえ……」
 リボンズ・アルマークは今のところ、監督として、演者であるアリーに不都合は点はない。
具合が悪くなれば、良くなるように舞台をぶち壊すだけである。
出るところ、出る時間をきちんと演者の側から考えて、一発カマして舞台を汚して去る。
その時に泥を踏まなければいいのだ。
「……他の奴が出るところを間違えたら」
 アリーは赤霧島の瓶を掴むと、グラスに注がず、直接口をつけ、残りを飲んだ。
勢いよく、一気に。
「派手に下手をこくのを袖から傍観するか。それとも」
 そうなる前にそいつを楽屋から追い出すか。
何にせよ、巻き込まれないように注意を払わなければならない。
他人の泥で、すっ転ぶのだけは避けたい。
転びたければ勝手に、そいつだけで転べばいい。
何なら、転びやすいように靴の裏にこっちで泥を塗ってやってもよい。
「ま、焦ったら負けさ」
 リボンズは明敏な監督であるから、彼が作ろうとする舞台を汚すような奴は許すまい。
「他人が躓くのはいいが、自分が躓くのは嫌だからな」
 演者が、脚本が気に入らないからと監督に歯向かえば、その演者は首を切られるしかない。
監督を追い落とし、その演者が新たな監督になるという可能性もあるが、滅多にそんなものは成功しない。
その演者に余程の実力と権威と、そして周囲を巻き込む周到な作戦がないと無理である。
アリーは、その道を採るつもりはない。
巻き込んで仲間にするには、他の連中は癖が強くて、気に入らない者ばかりだし、
そんな面倒なことをするなら、出演料だけ貰って、自分が傷つかないように舞台から降りるだけのこと。
「だよなあ、眼鏡の大将?」
 チン、と空になった赤霧島の瓶を、人差し指でアリーは弾いた。
無論、赤霧島の瓶は、アリーに返答なぞするはずもない。
弾かれた勢いで倒れ、机の上を転がるだけだった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワー、そしてアリー・アル・サーシェスの心の戦いは続く―――
503名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/04(水) 00:35:27.86 ID:???
 コンバンハ。
親戚の結婚式なので明日(もう今日か)だけが、GWのお休みです。
お休みと言っても昼だけで、朝と夜は違いますが。
全くどういうことなのサヨウナラ。
504通常の名無しさんの3倍:2011/05/04(水) 21:57:32.75 ID:???
>>503
乙です!!

>「だよなあ、眼鏡の大将?」
やはりリジェネは何か企んでるのかな?
505通常の名無しさんの3倍:2011/05/05(木) 21:51:30.76 ID:???
>>503
土曜日さん乙〜
506通常の名無しさんの3倍:2011/05/07(土) 18:59:40.07 ID:???
保守ワー
507通常の名無しさんの3倍:2011/05/09(月) 21:33:06.57 ID:???
保守ワー
508通常の名無しさんの3倍:2011/05/11(水) 20:47:01.30 ID:???
保守ワー
509通常の名無しさんの3倍:2011/05/13(金) 22:09:54.76 ID:???
保守ワー
510通常の名無しさんの3倍:2011/05/15(日) 10:58:40.31 ID:???
保守ウー
511通常の名無しさんの3倍:2011/05/17(火) 18:28:59.14 ID:???
保守ワー
512通常の名無しさんの3倍:2011/05/19(木) 20:59:07.45 ID:???
保守ウー
513土曜日@携帯:2011/05/21(土) 10:54:10.85 ID:???
次回は月末までになんとかします
514通常の名無しさんの3倍:2011/05/21(土) 18:41:58.21 ID:???
>>513
了解しました
515名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/23(月) 02:48:07.83 ID:???
 すれ違いが起こるのは、人間の常である。
では、何故すれ違いがおこるのか?
答は簡単、人の心は決して外には見えないものであり、
また心を表現する為の手段としての言葉が、あまりに意思疎通の方法としては不足であるからだ。
百聞は一見に如かず、とは言うが、裏を返せば、一見出来なければそれは理解不可能であるということに他ならない。
世界には芸術と呼ばれている文学が多々存在し、名曲と呼ばれる歌も同様に数多い。
だが、それについての評論がその倍以上あるということは、
作者(作詞者、歌手)の意図を結局は皆が皆、はっきりとわかってはいない証明でもあるのだ。
文字や言葉は、決して万能ではない。
受け取る側の解釈で如何様にも変貌し、また、発信した側も、正確に「心」を表現しきっているわけではない。
 ならば、すれ違いが起こらないようにするにはどうしたらよいのか?
これも答は簡単である。
心が見えれば良いのだ。
言い方を変えれば、言葉という手段に頼らず、心と心が繋がりあい、意思の疎通が盤石になれば良い。
それが可能になった時、人類は、確実に生物として次のステップに上るだろう。
もっとも、そうなった場合、「人類」は「人類」という生物ではなくなるかもしれないが。

 ◆ ◆ ◆

「はぁあ、しかし見事に空振りだなあ」
「まあ、予想はしていましたけどね」
「当然と言えば当然ではあるがな」
「ここが使われなくなってから、長い年月が経っている。残っているものなど……」
「多くは無い。と言うか、あるはずもない」
 ガンダムパイロットの少年達は、皆一様に肩を竦めた。
彼らの目の前にはサンドイッチやコーヒーといった軽い食事が並べられているが、誰も手をつけてはいない。
肉体的に食欲はあるが、精神的にその気になれないのだ。
「考えてみれば、ムシの良い考えだったかもしれないわね……」
 プリベンターの現場リーダー、サリィ・ポォは、紙コップに注がれたコーヒーの湯気を顎に当てながら、呟いた。
彼女も、コーヒーを一口飲んだだけである。
「おいおい、今更それはない……ぜ。んぐ」
 ガンダムパイロットの一人、デュオ・マックスウェルが、ツッコミをいれた。
語尾が濁ったのは、サンドイッチに勢いよくかぶりついたからである。
食べる気になったとわけではなく、半ばヤケクソ的な行動であるが。
「イオリア・シュヘンベルグの『遺産』……」
「その一欠片でも、と思ってはいたが、粒程もここには無かったということか」
「いや、まだわからん。短時間で結論を出すのは危険だ」
「そうだな。手がかりは簡単に見つからないから、手がかりなのだから」
 デュオにつられるように、他の少年達もサンドイッチに手を伸ばした。
その気が無くとも、食べなければ活力は湧いてこない。
肉体が健全でなければ、思考も回転しない。
「……やっぱりスメラギさん達を待った方が良いんじゃないかと思うんですぅ」
「彼女達が到着すれば、無論協力してもらうわ。でも、今は私達だけで調べないと」
 ミレイナ・ヴァスティの提案を、やんわりとサリィは拒絶した。
ミレイナに言われずとも、プリベンター単独で調査を行うことの限界を、サリィはわかっている。
だがサリィとしては、万全の信頼をまだスメラギ達、つまりマイスター運送には置いていない。
これは彼女が疑り深いのではなく、プリベンターの現場リーダーとして、軽々しい行動は決してとれないという責任の現れである。
516名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/23(月) 02:50:15.77 ID:???
「ええいまどろっこしい! だいたい、イオリア・シュヘンベルグが良くないのではないか」
「まーたトンチキなことを言いだしたよ、この隊長は」
「何か言ったか? ジョシュア」
「いーえ、何にも言ってないでありますですよ」
 突如として、グラハム・エーカーが大声をあげた。
ジョシュア・エドワーズのツッコミを聞き逃さなかったのは、さすがの地獄耳とでも言うべきか。
「わかりにくいことをするから、後世の我々が苦労するのだ!」
「無茶苦茶な論理だ……」
「その『遺産』に価値があるというのなら、こうして隠す必要はない! 何か後ろ暗いことがあるのでないのか!」
「世の中は全部が全部、隊長みたいに単純明快じゃないんすよ」
「マイスター運送がイオリアと繋がりがあるというのなら、まず彼らを問い詰めるべきであろう! オシラスの場において!」
「トーヤマのキンサンじゃないんですからね」
「とにかくこのままでは五里霧中、暗中模索、焼肉定食だ!」
「最後間違ってます」
「ええい! さっきから五月蠅いぞジョシュア! 言いたいことがあるならハッキリと言え!」
「ハッキリ言ったらアンタ、怒るでしょうが!?」
 グラハムは苛立っていた。
調査に参加出来なかったことが(つまりは体を動かせなかったことが)、彼のイライラを促進させていた。
フラストレーションというやつである。
子供か、お前は。
「全く暑苦しいったらありゃせんな。ほれ、ヒルデもフライパン収めろよ。こんなのでいちいちキレてたら持たんぞ」
 そう言うとデュオは、ヒルデ・シュバイカーの手からそっとフライパンを引っこ抜いた。
用意の良いことで、彼女はちゃんと料理以外の目的の為に、フライパンをわざわざ持ってきていたのだ。
 ちなみに、グラハムだけはサンドイッチではなくオニギリである。
この軽食はミレイナとヒルデが用意したものだが、ちゃんとグラハムの人となりを読んで、彼だけオニギリにした。
別に機嫌を取ったわけでも、餌付けでもないが……。
「だってぇ。行動も言葉もウルサイのよ、この人」
「そりゃ、わかるけどな」
 今のところ、ヒルデの必殺技であるフライパンアタックの主な犠牲者は、パトリック・コーラサワーに限定されている。
だが、近いうちにグラハム・エーカーもそこに名前を連ねそうである。
まあ、グラハムなら避けるかもしれんが(むしろ白羽取りとかしそうである)。
「……とにかく、休憩の後は、調査を再開しましょ」
「それしかないですね。時間は無限にあるわけではありませんし」
「今のうちにしか出来ないことだしな」
 サリィの言葉に、カトル・ラバーバ・ウィナーと張五飛が同意を示した。
聡い二人であるので、サリィの考えていることを、カトルと五飛は正確に見抜いている。
マイスター運送が到着するまでに、出来れば手がかりを見つけておきたいのだ。
だからこそ、先行してここに来たのだから。
カトルも五飛も、マイスター運送に特別に不信感を持っているわけではないが、
やはり、ホイホイと部外者と肩を組んじゃうというのは、仮にも公的な組織として危機管理が無さ過ぎというものである。
「ところで」
「何だ? ヒイロ」
「えらく静かだな。アイツは」
「……そうだな」
 この場―――今プリベンターは、施設から出て外でテントを張って休憩している―――において、未だに一言も発していない人物がいる。
そう、歩くトラブルメーカー、不死身と幸せの融合体、パトリック・コーラサワーである。
517名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/23(月) 02:53:26.58 ID:???
「寝てるんじゃないのか」
「かもしれん。おい、コラ、起きろ!」
 コーラサワーは、休憩が始まってから、ずっとテントの隅で目を閉じ、腕を組んで考え込んでいる。
考える、などという行為はコーラサワーにとって最も縁の遠いものであり、デュオ達が「寝ている」と思っても無理はない。
つーか、今まで会議において度々居眠りこいてるコーラサワーさんであるからして。
「おかしいんだよ」
「お、寝てなかった」
「おかしいんだよ、何かおかしいんだよ」
「何がおかしいんだよ、ハッキリ言え」
「だから、何かおかしいんだって言ってんだろ、みつあみおさげ」
「わかんねえよ!」
「何かおかしいのは何かおかしいから何かおかしいんだよ!」
「わかんねえって言ってるだろ!」
 もし、手に持っている紙コップにまだコーヒーが残っていなかったら、デュオは確実にそれをコーラサワーに投げつけていただろう。
他の者は、誰もツッコミすら起こさない。
無論、ツッコンでもしょうがないと理解しているからである。
「とにかく、何か違うって気がするんだよ」
「いい加減過ぎるぞ、オイ」
 紙コップを思わず取り落としそうになるデュオ。
コーラサワー本人がよくわかっていないものを、そしてそれを説明出来ないものを、デュオが、他の面子がわかるわけがない。
「直感って言うか、そんなのだ」
「勘かよ。アテにならんな」
「無理にアテにしろとはさすがに俺も言わねえよ。あー、悩んでても腹が減るだけだな。おーいオデコ三号、俺にもサンドイッチくれ」
「そろそろスペシャルさん、私の名前はちゃんと呼んでほしいですう。……はい、サンドイッチ」
「おうサンキュー。あ、コーヒーはミルクと砂糖をちゃんと入れてくれよ」
 ミレイナからサンドイッチを受け取ると、コーラサワーはそれをガツガツと食べ始めた。
その様はまるで大きな子供である。
「……とにかく、休憩が終わったら調査を再開するわよ」
「む、私も参加させてもらう。もらうと言った!」
「はいはい、貴方も加わってもらうわよ」
 でないとウルサイから、とはサリィはグラハムには言わなかった。
態度には出してはいたが。
「勘ねえ、それで正解が出たら、どんな問題も苦労しないぜ。なあ、ヒイロ?」
「……」
「ヒイロ?」
「いや……あながち」
「ん?」
「的外れな勘ではないかもしれん、な」
「おいおい、どうしたってんだ? アイツの味方すんのか?」
「そういうわけではないが……」
 ヒイロはデュオの追求をかわすように口を閉じると、時間を確認した。
マイスター運送やビリー・カタギリ達がこの場に来るまで、そう余裕はない。
コーヒーメーカーの横のデジタル時計の数字は、それを表していた。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
518名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/05/23(月) 02:57:22.67 ID:???
 案外早く投下出来ましたコンバンハ。
先日学生時代の友人達と呑みに行きまして、たまたまガンダムの話になって、
揃いも揃って1stから00まで全員視聴していた(無論、再放送とレンタル含む)のはさすがに馬鹿ばっかりじゃねえかと思ったり。
で、そっから「ガキの頃から今までで、ガンダム以外で一番ハマったアニメは?」という話題になりまして、

A:エヴァンゲリオン
B:スレイヤーズ
C:機動戦艦ナデシコ
D:カウボーイビバップ
E:サムライトルーパー

……おい、一人だけ年代がズレ違ってる奴がいるぞ、と。
まあそれが誰かってほにゃららサヨウナラ。
519通常の名無しさんの3倍:2011/05/23(月) 21:24:50.16 ID:???
>>518
乙です、冒頭の文は、00本編と同じく、人類がイノベイターに進化するフラグ?
とにかく何かが分かりそうな雰囲気ですねえ…
520通常の名無しさんの3倍:2011/05/24(火) 20:55:05.81 ID:???
土曜氏と似た年代か
521通常の名無しさんの3倍:2011/05/25(水) 21:00:08.03 ID:???
>>518
乙であります!
522通常の名無しさんの3倍:2011/05/27(金) 21:19:46.01 ID:???
保守ウー
523通常の名無しさんの3倍:2011/05/29(日) 11:35:39.26 ID:???
保守ワー
524通常の名無しさんの3倍:2011/05/31(火) 21:29:06.28 ID:???
保守ウー
525通常の名無しさんの3倍:2011/06/02(木) 11:48:35.37 ID:???
保守ワー
526通常の名無しさんの3倍:2011/06/04(土) 20:03:32.16 ID:???
保守ウー
527通常の名無しさんの3倍:2011/06/06(月) 21:26:16.65 ID:???
保守ワー
528通常の名無しさんの3倍:2011/06/08(水) 18:08:14.72 ID:???
保守ウー
529通常の名無しさんの3倍:2011/06/10(金) 23:12:40.57 ID:???
保守ワー
530名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/06/11(土) 12:18:12.35 ID:???
来週には投下できると思います
531通常の名無しさんの3倍:2011/06/12(日) 09:50:11.28 ID:???
>>530
了解しました
532通常の名無しさんの3倍:2011/06/14(火) 21:56:38.72 ID:???
保守
533通常の名無しさんの3倍:2011/06/16(木) 21:53:29.23 ID:???
保守
534通常の名無しさんの3倍:2011/06/19(日) 09:51:32.99 ID:???
保守ワー
535通常の名無しさんの3倍:2011/06/19(日) 19:35:19.00 ID:???
すんません、知人に不幸があり
二、三日程投下遅れます。申し訳ない
536通常の名無しさんの3倍:2011/06/19(日) 20:41:22.95 ID:???
>>535
お悔やみ申し上げます、あまり無理をなさらないでください
537 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2011/06/21(火) 16:48:12.68 ID:???
保守
538通常の名無しさんの3倍:2011/06/23(木) 21:26:34.83 ID:???
保守ワー
539土曜日@携帯:2011/06/23(木) 23:32:54.22 ID:???
投下しようと思ったらぷららちゃんが規制中でした。
様子を見つつ、筆を進めておきます。
解除されないようなら以前のようにどっかのあぷろだを使うかもしれません。
540通常の名無しさんの3倍:2011/06/25(土) 22:32:58.29 ID:???
了解です
541通常の名無しさんの3倍:2011/06/27(月) 18:03:46.48 ID:???
保守ウー
542名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/06/28(火) 20:48:50.81 ID:???
 ビリー・カタギリはソファに座り、腕を組んで考えていた。
目の前のテーブルには、皿に乗ったドーナツが二つと、ホットコーヒーが置かれてある。
ドーナツは彼の好物であるのだが、注文したは良いものの、
ウェイトレスがそれを持ってきてから、彼は全く手をつけていなかった。
コーヒーの方も、昇る湯気がだんだんと細くなってきている。
こちらも、口をつけられてはいないままである。
「うーん……」
 ここはアザディスタン特殊自治区のとあるホテルの、ロビー横にあるカフェテラス。
ビリー以外にも客がおり、中には子供連れの家族の姿も見える。
かつてアザディスタンは人種問題、宗教問題、エネルギー問題等で大荒れに荒れていた頃があるのだが、
この光景からは、そのような時代を想像するのは難しいだろう。
つい十年から数年前の話であり、実際、街には当時の傷跡がまだ多く残ってはいる。
だが、それでもこうして観光客向けのホテルを営業出来る程に、情勢は回復をしている。
これも自治区代表の元アザディスタン王女、マリナ・イスマイールの努力の成果であろう。
「……うーん」
 白衣でサンダル、長身のポニーテールという装いの彼は、カフェの中ではやや浮いている。
と言うか、どこでも浮いちゃうわけだが、まあそれは置いておく。
白衣の下がスーツではなく、レンジャー服(の、ようなもの)なのは、
彼なりに今回の「仕事」について考えた結果であるのかもしれない。
「どうしたものかなあ」
 天才と言われ、一見浮世離れした彼だが、悩むことはある。
いや、天才的な学者だからこそ、普通の人が気にも留めないことで悩むのかもしれない。
そして今回の彼の悩みは、学術的なものではない。
「プリベンターの皆に、やっぱり言うべきなのかなあ……」
 ポリ、とひとつ、彼は額を指でかいた。
こちらに着いてから、彼のミニ・PCに届いた一つの情報が、彼を悩ませている。
「そもそも、僕は信じたいのか、信じたくないのか、この事実を……」
 彼はやっとカップに手を伸ばした。
コーヒーは、もう湯気をたててはいなかった。

 ◆ ◆ ◆
543名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/06/28(火) 20:52:05.17 ID:???
 スメラギ・李・ノリエガは、窓の外を見降ろしつつ、顎に手をあてて考えていた。
身にまとっているのはバスローブ一つで、つい先程まで、シャワーで汗を流していた。
ローブに覆われていない、素肌や髪の部分からは、軽く湯気が上がっている。
酒好きの彼女は、普段なら風呂上りに軽く一杯やるのがいつものことなのだが、
今それをしていないのは、ここが自分の家ではないことと、単にそうする気にならなかったからである。
「……う、うん」
 アザディスタン特殊自治区のとあるホテルの、スイートルーム。
同ホテルの最高級の部屋ではないが、調度品はしっかりしたもので、室内も清潔であり、窓からの景色もかなり良い。
窓ガラスはマジックミラー方式で、外からは中を伺うことが出来ない。
だから、スメラギはバスローブ一丁という、ほとんど裸同然の姿でも堂々としていられる。
 この部屋は、彼女が望んで取ったわけではない。
プリベンターの関係者ということで、自治区代表のマリナ・イスマイールが特別に便宜を図ってくれたのだ。
「んー……」
 歳は30を少し超えたが、彼女のスタイルは良い。
豊かな胸、そして濃い茶の、長い髪、整った顔立ち。
酒を毎日嗜んだり、運動をあまりしない(マイスター運送の社長という立場上、動かないっちゃ動かないんだが)割に、
身体のラインが崩れていないのは、ある意味、これも天性のものなのかもしれない。
「どうしたものかしら」
 実は、彼女もビリー・カタギリに負けず劣らず、相当な才の持ち主である。
かつては、ビリー、そしてパトリック・コーラサワーの妻である天才戦術家カティ・マネキンと同じ大学で席を並べて学んでいたこともある。
卒業後は一時AEU軍に所属していたが、すぐに除隊し、マイスター運送に転職した。
そして今ではマイスター運送の社長として、辣腕を振るっているわけだが……。
「プリベンターの皆に、やはり伝えるべきなのかしら……」
 くい、とひとつ、彼女は前髪を一房、引っ張った。
こちらに着いてからも、着く前も、彼女は悩んでいる。
「マイスター運送の、真の『業務』を……」
 彼女はバスローブの襟元の乱れを、そっと直した。
覗く肌からは、もう湯気は昇っていなかった。

 ◆ ◆ ◆
544名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/06/28(火) 20:54:23.69 ID:???
 絹江・クロスロードは、淡く発光するミニPCの画面を見つつ、額に手を当てて困っていた。
持ち込んだこのミニPCは、最新型ではないものの、色々とパーツやソフトに手が加えられており、
取材の酷使にも耐えてくれている、彼女の良き「戦友」とも言える存在だった。
情報化社会という言葉が過去の遺物になった現在、ノート型のPCだけではない、
指の爪サイズの装置さえあれば、膨大な情報を、ネットから呼び出して、閲覧・入力することが出来る。
「……ふむ」
 アザディスタン特殊自治区のとあるホテルの、ドリンク・コーナー。
分煙が制度化されて久しいこの時代、ドリンク・コーナーには灰皿は置かれていない。
煙草を吸わない彼女にとっては、もちろん、その方が有り難い。
思考する際にニコチンとタールを必要とする者はこの時代にも多いが、彼女はそうではなかった。
ドリンク・コーナーの隅に、透明なガラスの敷居で区切られた喫煙ルームがあるが、
先程まで誰かそこで喫煙していたのか、灰皿から一本、煙があった。
エアクリーナーが吸引しているのか、煙は筋にならず、灰皿から上がるはしから千切れて宙に溶けている。
「ふ……むー」
 ミニPCには、彼女の、決して多くは無いツテから様々な情報が流れ込んでくる。
名の知れたジャーナリストであった彼女の父の知人も居れば、彼女が自ら切り開いた情報先もある。
だが、ここのところ、状況伺いも含めて、連絡を寄こしてきているのは一人しかいない。
「どうしよう」
 持ち前の正義感故に、また、父が偉大過ぎるが故に、彼女はJNNTVの報道員として、いささか急ぎ過ぎた。
巨大総合企業アロウズの闇を探ろうとして、その行為を上司に煙たく思われてしまったのだ。
報道局のメインから外されたことで、逆に取材に自由に時間を使えるようにはなったのだが……。
「プリベンターの皆に、やっぱり教えるべきなのよね……」
 ふう、とひとつ、彼女は溜め息をついた。
数少ない、だが有力と思われる、手に入れた情報を前にして、彼女は困っている。
「ハワードさんからのこの情報……今回の件にどう絡むのかしら」
 彼女は視線をPCから外した。
ガラス向こうの喫煙ルームの煙は、既に消えていた。

 ◆ ◆ ◆
545名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/06/28(火) 20:56:49.12 ID:???
「……」
 刹那・F・セイエイは、じっと動かなかった。
もう何分経つだろうか。
ここに―――アザディスタン特殊自治区のこのホテルの、屋上展望台に来てから。
彼の眼下に広がるアザアディスタンの街並みは、彼が知っているものであり、また同時に知らないものであもある。
かつてアザディスタン王国の隣国であったクルジス共和国、そこで彼は産まれた。
彼がこの世に生を受けてからまだ20年そこそこだが、もうすでに祖国のクルジスは無い。
アザディスタンに併合され、さらにそのアザディスタンもOZに蹂躙され、世界が統一されて、アザディスタンは「国」ではなくなった。
「……人が、いる」
 刹那は小さく呟いた。
ガラスの壁越しに見える街中には、多くの人の姿が見える。
ターバンを巻いている者もいれば、明らかに中東生まれではない髪の色の者もいる。
彼が幼い頃、この街に「特殊任務」で潜入した時、街には「人」は居なかった。
居たのは、武器を手に持った「兵隊」だけだった。
 街は、元王宮の自治区議事堂を中心に、順調に復興をしている。
街の外縁に目をやれば、まだ瓦礫が残っていたり、半壊状態の建物がチラホラと見える。
「たいしたもの……だな」
 刹那が少年兵だった頃、何も知らず、世界には定められた絶対の真理が存在すると盲目的に信じ込まされていたあの頃、
アザディスタンのこの地で、無事だったのは王宮と兵舎のみだった。
店という店はなく、生活の匂いがする建物は、ほぼゼロという状態だった。
あれから十と数年、刹那の視界には、「人」がいる。
「店」があり、「街」があり、「生活」がある。
「マリナ・イスマイール……」
 元アザディスタン王女、そして元アザディスタン特殊自治区代表の名を、刹那は口にした。
彼女は、刹那にとって、縁浅からぬ人である。
まあ、いささか性格というか嗜好に難があり、やや理想に思考が傾きがちな面があるが。
「彼女は、前に進んでいる」
 刹那は、ガラス壁から離れた。
マリナはやるべきことを頑張っている。
ならば、彼もやらねばならない。
頑張らねばならない。
スメラギ・李・ノリエガが語った、イオリア・シュヘンベルグの遺産。
それを、守らねばならない。
「プリベンター、か」
 アザディスタンに到着後、プリベンターが既に調査に出発したことを知った。
すぐに後を追おうとしたが、それを止めたのはスメラギ・李・ノリエガだった。
彼女は聡い、他者が見えないことが見えているし、わかっている。
ティエリア・アーデがすぐに同意したのも、彼も理解しているからであろう。
プリベンターに置いていかれた、その意味を。
「……」
 結果的には、これで良かったのだろう。
合流したところで、共通の意思が持てていないのであれば、望んだ成果は得られない。
一日、休養も兼ねて、整理する必要がある。
マイスター運送も、ビリー・カタギリも、絹江・クロスロードも。
そして、刹那自信も。


 プリベンターと、パトリック・コーラサワーを取り巻く人々の心の旅は続く―――
546名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/06/28(火) 20:59:00.72 ID:???
 コンバンハ。
一カ月以上も空いてしまい、申し訳ありませんでした。
今回は真面目回ですが、まあぼちぼち終盤ですので……。
しかし、00の映画公開日に終わらせる予定だったのにもうすでに2011年の半ば。
まさか次のTV版ガンダム公開も決まるとは……。
 では次回(おそらく、マイスター運送の面々とアロウズの面々の話)までサヨウナラ。
547通常の名無しさんの3倍:2011/06/28(火) 21:48:05.43 ID:???
>>546
お待ちしておりました、乙です!!
こういったシリアス寄りな回も、中々良いと思います
548通常の名無しさんの3倍:2011/06/29(水) 21:43:57.48 ID:???
>>546
土曜日さん乙〜
次回も期待して待ってますよー!!
549通常の名無しさんの3倍:2011/06/30(木) 02:12:02.79 ID:???
スメラギさん色っぺえ
550通常の名無しさんの3倍:2011/07/01(金) 21:37:02.80 ID:???
保守ワー
551通常の名無しさんの3倍:2011/07/03(日) 15:16:22.37 ID:???
保守ウー
552通常の名無しさんの3倍:2011/07/05(火) 15:26:00.25 ID:???
保守ワー
553土曜日@携帯:2011/07/06(水) 23:43:01.73 ID:???
まーたぷららちゃんが規制
解除されたら投下します
554通常の名無しさんの3倍:2011/07/07(木) 17:04:02.64 ID:???
>>553
了解です
555通常の名無しさんの3倍:2011/07/07(木) 20:04:25.93 ID:???
ぷららなんて解約しちゃいなさい
規制率が群を抜いて高すぎる・・・
556通常の名無しさんの3倍:2011/07/08(金) 18:33:03.62 ID:???
加えて言うなら表現検閲への協力度が酷過ぎる>ぷらら
557通常の名無しさんの3倍:2011/07/09(土) 10:05:16.93 ID:???
>>555>>556
ぷららはそんなに酷いのか…
558通常の名無しさんの3倍:2011/07/11(月) 15:21:24.27 ID:???
保守ワー
559通常の名無しさんの3倍:2011/07/11(月) 23:13:46.63 ID:???
ぷららちゃんは様々な理由で解約出来ない事情がありまして……
規制解除されないようなら、またどこぞのあぷろだ使います



今年中に終わるのかこのペースで(始めた時はまさかここまで続くとは思ってなかった、我ながら)
560通常の名無しさんの3倍:2011/07/13(水) 21:28:28.01 ID:???
>>559
>あぷろだ
それが一番よろしいかと
561通常の名無しさんの3倍:2011/07/15(金) 15:25:15.43 ID:???
保守ワー
562通常の名無しさんの3倍:2011/07/17(日) 11:41:45.97 ID:???
保守ウー
563土曜日@携帯:2011/07/17(日) 21:04:24.23 ID:???
出張と研修で数日空けるので、その間に解除されなければあぷろだ使います
564通常の名無しさんの3倍:2011/07/17(日) 23:47:23.34 ID:???
了解です
565通常の名無しさんの3倍:2011/07/19(火) 19:26:37.70 ID:???
保守ワー
566通常の名無しさんの3倍:2011/07/21(木) 15:24:29.98 ID:???
保守ウー
567名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/07/22(金) 13:39:21.02 ID:???
「ひゃー、立派なもんすねえ」
「これが所謂、本当の『バザール』ってものなのね」
「何つーか、異国情緒溢れてて良いな」
「そりゃ……僕等は異国人だからね」
 午後の陽光が、通りの天井を覆う色とりどりの布を透き、行き交う人の頭上に落ちかかる。
七色の光は、同じく七色の影を作り、その淡く穏やかな相克は、人々の楽しげな表情をよりはっきりと浮かび上がらせる。
それは、笑顔の虹とでも言おうか。
「見ろよ、あれってペルシャ絨毯ってやつだよな?」
「鮮やかだね、多分お土産物なんだろうけど。多分、本格的なモノなら相当な値段のはずだよ」
「土産物だとしても、デジタルでは決して産みえない美しさだな……」
 リヒテンダール・ツェーリ、クリスティナ・シエラ、ラッセ・アイオン、アレルヤ・ハプティズム、ティエリア・アーデ。
マイスター運送の主だったメンバーは、現在自由時間ということで、ホテルから出て街を散策していた。
正確に言えば自由時間ではないのだが、だからと言ってホテルの部屋に閉じこもっていても、こうして表に出ても、それ程大差はない。
プリベンターに『置いていかれた』今、出来ることはそんなにないのだ。
ビリー・カタギリや絹江・クロスロードはそれならそれでと何かしていたが、彼らへの協力も畑が違うので出来ない。
畑を越えて手伝う程、まだ互いに親しくないという理由もあるが。
「この辺りは、紛争でもそれ程破壊されていなかったみたいだな」
「これが街の中心の方だったら、そうはいかなかっただろうな」
「古いモスクが無事に残っていることから見て、もしかして意図的に避けられていたのかもしれない」
「宗教上の理由からか? よくわからないが」
 観光客丸出し、といった感じのマイスター運送の面々。
だが、周囲から浮いているというわけではない。
似たような人々が多く、バザールにいるからだ。
紛争からまだ長い時が経っていないにも関わらず、この平穏さは、
何とか復興をしようという住民の努力の賜物であろう。
「これから何がどうなるかわからないけど、こうして街を歩くのは悪くないよな」
「そうっすね、地図だけじゃわからないことが多いし」
「こうして直に目で見てみないとね……。きゃあ、あのアクセサリー、かわいい!」
 面々の中でも、特にクリスティナ・シエラのテンションはかなり高い。
女の子故、だからであろうか。
「刹那とフェルトも連れてきてあげた方が良かったんじゃない?」
「いや、刹那は……さすがに誘えないだろう」
「あいつは昔のここを知っているしな。思う所もあるはずだ」
「じゃあ、フェルトは……」
「刹那が残ってるんだから残るだろ、そりゃ」
「そうだな」
 刹那はクルジスの生まれで、かつて少年兵としてここで戦っていた。
敵と、仲間と、そして自身の血を流した地だ。
街を出歩くことに、抵抗とまでは言わないまでも、いささか複雑な思いもあるはずである。
そしてフェルトは最近、刹那に対して好意から一歩さらに進んだ感情を抱いている節がある。
刹那が街に出ないのなら、それが気になって外出が出来ないのも、仕方がない……はずである。
568名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/07/22(金) 13:45:59.59 ID:???
「とにかく、バザールを進んでみようよ」
「土産も買うっすか?」
「まあ、ほどほどにな。旅行に来たわけでもないし」
 クリス達の会話を聞きつつ、アレルヤとティエリアは視線を交わし合った。
敵地のど真ん中、というわけではないが、既にマイスター運送としての「仕事」の最中である。
何かが起こる可能性が例え低くとも、気を抜くことは出来なかった。
下手な油断は、即危険に繋がる。
どれくらい危険かって、夜勤明けで酒を浴びる程に呑んみつつヘッドホンで平沢進をガンガンに聴くくらいに危険である。
「まあ、行こうぜ」
「りょーかい」
 面々は歩き出した。
バザールの雑踏の中へと。

 ◆ ◆ ◆

「……ねえ、にぃにぃ。あいつらって」
「ああ、間違いないな。マイスター運送の連中だ」
「奴らが来てるってのは知ってたが、まさかいきなり出くわすとはな」
 で、マイスター運送の面々のかなり後方、建物の陰から伺う三人の男女の姿があった。
「リボンズ・アルマークからの情報通り、か」
「ねえにぃにぃ、殺っちゃう? 殺っちゃったりする?」
「たりめーだ! あいつらは俺らの敵だ!」
 三人の男女とは、ヨハン・トリニティ、ミハエル・トリニティ、ネーナ・トリニティ。
トリニティ運送という、小さな運送会社を営んでいる兄妹である。
リボンズ・アルマークの部下として、彼の計画に従ってアザディスタンにやってきた。
マイスター運送とは、一応のライバル関係にある。
「落ち着けミハエル、ネーナ、こんな街中で騒動を起こす気か?」
「だけどよ兄貴……」
「いーじゃんヨハン兄! ドカンといっちゃおうよ!」
 はあ、とヨハンは溜め息をついた。
長兄にして社長たる彼は、常に血の気の多い弟と妹のストッパー役でもある。
兄弟仲は良く、ヨハンの命令ならミハエルとネーナは何でも聞く。
だが、さすがにヨハンも呆れて溜め息くらいつくことはある。
ここら辺り、コーラサワーのゴーイングマイロードぶりに振り回されるサリィ・ポォの苦悩に通じるところがあるのかもしれない。
まあ、末妹のネーナに言わせると、「いざとなるとヨハン兄が一番過激で腹黒いんだけどね」ということらしいが。
「リボンズ・アルマークからはこの街で揉め事を起こすな、と言われている」
「ちぇ、つまんねーなあ」
「つまんねーつまんねー、ぶー」
 唇を尖らせ、ふくれっ面になるミハエルとネーナ。
そんな二人を見て、再度溜め息をつくヨハン。
何となく、「散歩に連れてってくれ」と足元にじゃれつく仔犬と仔猫、その主人……と言った図である。
569名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/07/22(金) 13:48:46.60 ID:???
「本番は未だ先だ、ここで計画を破綻させるわけにはいかないだろう」
「ちょっとくらい早めても問題なくね?」
「俺達が計画の立案者なら、な。だがそうじゃない。俺達は所詮、駒に過ぎない」
「むー、フトウにシイタゲられているロードーシャのジツジョーをウッタえて、タイグウカイゼンをヨーキューだ!」
「あのな……いい加減にしろ」
 どうしても騒動を起こしたい様子の弟と妹を窘めつつ、ヨハンは考えた。
ここはリボンズ・アルマークに連絡を取り、具体的な行動の指示を仰ぐのが適切な対応である、と。
だがしかし、彼もまたトリニティ。
弟と妹程直線的ではないが、やはり好戦性はもとから高い性格をしているのだ。
「いいか、絶対に揉め事は起こすな。これからの計画に影響する」
「ぐぐぐ、わかったよ兄貴」
「はーい、ヨハン兄ぃ」
「よし。じゃあ追跡するぞ」
 ポン、とミハエルとネーナの肩を叩くヨハン。
きょとん、とする二人。
「え? だけど兄貴、今……」
「俺は揉め事は起こすな、と言った」
「あ、じゃあヨハン兄ぃ、つまり」
「そうだ。問題さえ発生させなければいい」
「おおお、そういうことか、兄貴!」
「それに、奴らの動向をチェックしておけば、良い意味でこれからの計画に影響を与えることが出来るかもしれない」
 マイスター運送の面々の尾行。
それをヨハンは決意した。
リボンズに伺えば、間違いなく止められていたであろう。
だから、ヨハンはそれをしない。
そして、報告をするつもりもない。
余程の『発見』がない限りは。
「じゃあ変装する? する? にぃにぃ?」
「必要ない。……いや、帽子くらいは被っておけ。服はいい」
「りょーかいっ!」
 三人は歩き出した。
マイスター運送の面々を追って。

 ◆ ◆ ◆

「ねえ、ライル。あいつらって……」
「ああ、間違いないな。トリニティ運送の連中だ」
 マイスター運送を追跡するトリニティ運送のさらに背後、柱の陰から顔を覗かせる二人の姿があった。
「何でここに?」
「もしかして、今回の件と絡んで……」
「可能性はある、な」
 ロックオン弟ことライル・ディランディ、そしてその彼女のアニュー・リターナー。
スメラギから自由行動を許されるなり、他のマイスター運送の面々より早く、街に二人は出てきていた。
ぶっちゃけ、デートというやつである。
570名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/07/22(金) 13:54:04.79 ID:???
「そうだな。……いや、やめておこう」
「どうして?」
「今俺達が連中のことを皆に知らせると、玉突きでトラブルが起こる可能性がある」
「成る程」
 ティエリアやアレルヤなら、おそらくは尾行を知らされても冷静に対応は出来るだろう。
だが、クリスティナやリヒテンダール、ラッセがいる。
今後のことを考えても、ここでトリニティ運送と問題を起こすのは、得策ではない。
それに、尾行しているのがトリニティ運送だけとも限らない。
藪を突いて蛇、というのは避けたいところである。
「じゃあ、どうするの?」
「そう、だな……」
 顎に手を当てると、ライルは考えた。
ここは早い決断が要求される。
「そうだ、兄さんだ……」
「兄さんって、ニールのこと?」
「ああ、そしてスメラギさんだ」
 外出している面子の中には、ロックオン兄ことニール・ディランディがいない。
そして当然、スメラギ・李・ノリエガもいない。
「アニュー、スメラギさんに連絡を取ってくれ。トリニティ運送がこの街に来ている、と」
「ええわかったわ。ライルはどうするの?」
「俺は兄さんに連絡をする」
 本来なら、『皆のまとめ役』を自認しているニールが外出組に同伴していないのはおかしい。
おそらく、ホテルに残ったスメラギ、刹那、フェルト達の方を気にしているのだろうが、それが今、ライルにとって良い賽の目に出た。
「スメラギさんに具体的な指示を仰ぐ。そして兄さんには別行動で街に出て調べてもらう」
「そして私達は、トリニティ運送を追う、というわけね」
「ああそうだ。追跡の追跡、ってやつだな」
 親指を立て、ニヤリ、とライルは笑った。
こういう仕草がわざとらしく見えてしまうところに、彼の精神的な『少年ぽさ』が現れている。
この辺りが兄であるニールとの違いであり、ライル本人もまた、それを自身の精神的未熟さと思い、コンプレックスとなっている節がある。
だがアニューにしてみれば、そんなライルが実に「可愛く」て「愛しい」わけだが。
「アニュー、デートは台無しだけど……」
「あら、これも楽しいじゃない? 立派にデートよ」
「……お前、強い女だな」
「褒めてくれてありがと。さ、あいつらが動くわよ」
「よし、気付かれないように、出来るだけ露店の側を通ろう。……っと、歩きながらでいい、スメラギさんと兄さんに連絡をするぜ」
「了解」
 二人は歩き出した。
マイスター運送の面々を尾行するトリニティ運送の三人の、さらに後を追って。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
571名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/07/22(金) 13:55:30.71 ID:???
 コンニチハ。
誤字脱字がありましたら申し訳ありません。
 一日が24時間じゃなくて48時間なら仕事が山積みにならなくて済むのに。
昨夜は眠々打破を飲みながらそう思いました。
そして仕事が明けるまでその考えが根本的におかしいことに気付かないままでした。
次回はまた規制に巻き込まれないうちになんとか。
ではサヨウナラ。
572通常の名無しさんの3倍:2011/07/22(金) 19:18:38.94 ID:???
土曜日さん乙です。

大きなカブ状態になってきたww
楽しみ〜
573通常の名無しさんの3倍:2011/07/22(金) 19:21:25.02 ID:???
乙です!

平沢進とか懐かしすぎる・・・
574通常の名無しさんの3倍:2011/07/22(金) 21:27:54.93 ID:???
土曜日氏乙〜
こういう適度に緊張感の感じられる展開も良いですね
次回も楽しみにしてます!!
575通常の名無しさんの3倍:2011/07/23(土) 20:24:01.32 ID:???
土曜日さん、乙であります!!
576通常の名無しさんの3倍:2011/07/25(月) 21:56:46.97 ID:???
保守ワー
577通常の名無しさんの3倍:2011/07/27(水) 15:18:24.29 ID:???
保守ウー
578通常の名無しさんの3倍:2011/07/29(金) 22:53:31.85 ID:???
保守ワー
579通常の名無しさんの3倍:2011/07/31(日) 10:22:15.14 ID:???
保守ウー
580名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/08/01(月) 22:28:08.11 ID:???
次回は今週末にでも
581通常の名無しさんの3倍:2011/08/02(火) 06:31:02.32 ID:???
>>580
了解です
582通常の名無しさんの3倍:2011/08/04(木) 15:15:35.87 ID:???
保守ワー
583通常の名無しさんの3倍:2011/08/06(土) 10:17:21.83 ID:???
ホシュウー
584名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/08/07(日) 22:57:36.63 ID:???
 成功を収めるためには、努力をしなければならない。
だが、努力は全て報われるわけではない。
努力を成果に繋げる為には、「無駄な努力」をどれだけ省くことが出来るかにかかっている。
努力に無駄なものなど無い、というのは幻想に過ぎない。
目的を理解し、適切な時間に、適当な分を、正しい情報に基づいて努力する。
それでこそ、成功により近づくのだ。
 一枚の宝の地図がある。
遠く離れており、洞窟の奥深くにある。
そこに辿り着くこと、そして準備をすることはもちろん努力に含まれるが、まず何より、最初に行うべき努力がある。
そう、「その宝の地図はそもそも本物なのか」と、確認をすることである。

 ◆ ◆ ◆

「一端出直したほうがいいかしらねえ……」
「せっかくプリベンターだけで乗り込んだのに?」
「うーん、考えが甘かったかもしれないわ。何か手掛かりだけでもとは思っていたけど、ねえ」
 プリベンターの現場リーダー、サリィ・ポォは溜め息をついた。
ビリー・カタギリやマイスター運送等と連携して当たる今回の件、
プリベンターが主導権を握る為には、どうしても「イオリア・シュヘンベルグの遺産の秘密」の切れっぱしでも良いから、手に入れておく必要があった。
特にマイスター運送はイオリアと関わりが深い分、
下手に状況に流されると、「マイスター運送が抱える問題を解決する」為にプリベンターが使われる、ということになりかねない。
マイスター運送の現社長であるスメラギ・李・ノリエガは、
かつては天才戦術予報士として名が高かった人物である。
彼女と親交があるミレイナ・ヴァスティは「スメラギさんは良い人ですぅ」と強調するが、
サリィとしては、半端に妥協するつもりも、気を許すつもりもない。
「もうちょっと粘ってもいいと思うんですけど……」
「そうだな、連中を待たずに先発しておいて、何の成果も挙げられなかったでは、軽んじられる原因になる」
 カトル・ラバーバ・ウィナーと張五飛は、サリィの意見に納得し難い様子。
まあそれも無理はない、マイスター運送やその他を置いてきぼりにして先に調査を行う、と決めたのは、何よりサリィ本人なのだから。
「俺は退いても良い、と思っている」
「俺もヒイロに同意する。近道を選んだつもりが実は遠回りだった、という事態は避けるべきだ」
 ヒイロ・ユイとトロワ・バートンはサリィに同調する構え。
カトルと五飛は調査続行、ヒイロとトロワは一時撤収、ガンダムパイロットの間でも別れた形だ。
「デュオは?」
「ん? ああ、俺か?」
 ガンダムパイロットで残るはデュオ・マックスウェル一人。
本来なら、こういう時は真っ先に自らの意見を出す彼だが、何やらさっきからしばし黙考中だった。
「珍しいな、デュオ。お前がそうやって考え込むとは」
 五飛がデュオに言葉をかけたが、若干挑発的な成分が含まれていた。
つまりは「さっさと意思表示しろ」ということだが、これはまあ五飛の性格故であろう。
もちろん、それなりに付き合いが長いので、デュオが腹を立てることはない。
585名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/08/07(日) 22:59:31.67 ID:???
「……他はどうなんだ?」
「ん?」
「だから、他の奴らだよ」
 デュオがくいっと視線を動かした。
それに釣られて、五飛達もそれを追う。
「え? 私ですかぁ?」
「へ、私も?」
「な、何だ、俺もか?」
「ふむ、おさげの少年! この私の意見を欲するか?」
 ミレイナ・ヴァスティ、ヒルデ・シュバイカー、ジョシュア・エドワーズ、そしてグラハム・“ブシドー”・エーカー。
確かに彼ら彼女らも、プリベンターのれっきとしたメンバーなのだから、当然意見を出す権利がある。
「あの、そのう。私は、スメラギさん達と合流した方がいいと思いますぅ」
 ミレイナは撤収と合流を主張。
まあ、先も述べたが彼女はマイスター運送と関わりが深い。
それだけプリベンターのどのメンバーよりもマイスター運送の面々をよく知っているわけであり、
同時に「早く皆に会いたい」という思いもあるだろう。
「私はもうちょっと粘った方がいいと思うけど。手ぶらで帰るのって、何だか悔しいじゃない」
 ヒルデはヒルデらしい表現で、調査続行の意見。
言いながらちらちらとデュオの方を見ていたのは、おそらく、デュオが自分と同意見だと思っているからであろう。
確かに、いつものデュオなら積極策の方を選択するはずだが……。
「俺も……やっぱりもっと調べた方がいいんじゃないかと思う。なんつーか、せっかくなんだし」
 いまいち歯切れが悪いが、エドワーズも調査を続たい様子。
〜じゃないか、とか、〜せっかく、とか、ハッキリしない辺りに、彼のヘタレ根性が垣間見える。
まあジョシュアは潜入捜査等もやっていたガンダムパイロットやサリィ・ポォに対して、
プリベンターに来るまで正規の軍人としてほぼMSパイロットだけをやっていたので、
こういう時にどう判断を下せば良いのかわからない、という酌量の余地もあるのだが。
「決まっている! 武士に前進はあっても後退はない! 腹からするからセップクであるので、背中からするのはセップクではない!」
 グラハムさん、わけわかんねえ理論で調査続行派。
そもそも関節的に背中からセップクって難しいだろ、というツッコミは誰も入れない。
グラハム理論にどれだけ口出ししても無駄だということを、皆が共通して認識している。
「これで続行に賛成が五人……」
 カトル・ラバーバ・ウィナー。
張五飛。
ヒルデ・シュバイカー。
ジョシュア・エドワーズ。
グラハム・エーカー。
「一端撤収、が四人」
 サリィ・ポォ。
ヒイロ・ユイ。
トロワ・バートン。
ミレイナ・ヴァスティ。
586名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/08/07(日) 23:04:46.22 ID:???
 皆の目線が、デュオに集中する。
現在は調査続行派が一人、多い。
もっとも、プリベンターの活動が全て多数決で決まるわけではない。
最終的には現場リーダーのサリィ・ポォの判断である。
「……まあ、私だって未練が無いわけじゃないけどね」
 サリィがポツリと呟いた。
誰よりも早く釣り場についても、どのポイントにどの魚が集まり易いか、そしてどういった針や餌が適切か、それがはっきりしていないと、釣果は上がらない。
最初は先発しての調査に利と理があると思ったから、サリィはそれを行った。
そして今は、「認識不足」を俄かに覚えて、撤収に傾いている。
「俺は……引き上げるべきだと思うぜ」
 皆から視線を送られたデュオは、ここではじらすこともなく、さらりと答えた。
ヒルデが思わず「えっ?」と驚きの言葉を口にしたが、デュオはそれに構うことなく、自らの思う所をさらに述べた。
「正直、俺は残って作業を続けたい、とは思う」
 デュオはそこで一端言葉を区切ると、右手の人差し指で唇の端を撫でた。
地下フロアの調査で、いくらか埃を被ったが、その小さな欠片が、口に入ったのだ。
「その理由は、サリィが最初に思っていたのと同じ。プリベンターはプリベンターとして動くべきだしな」
 サリィがマイスター運送や絹江・クロスロード、人類革新重工に万全の信頼を置いていないのと同様、デュオも彼らをいきなり信用はしていない。
それぞれに思惑があってプリベンターに近づいてきたのだ。
肩を組む前に、まず手を握り合うところから始めなければいけない。
段階を踏んでこそ、より協調出来るというものである。
「だけど、それでもなお、俺は一度戻るべきだと考える」
 考える、の部分を強調するように、デュオは言った。
思いと考えは別、ということである。
「……それは、何故?」
 カトルが先を促す。
「マイスター運送の連中が、イオリア・シュヘンベルグについて何を隠しているか。それをやっぱり聞き出しておくべきでは、ってことさ」
 知らないままに動き、知らないままに手酷いダメージを喰らう。
デュオは、過去に痛い経験をしている。
そう、ガンダムパイロットになり、オペレーション・メテオの駒となってから―――。
「……だいたい、爺さんの遺産を狙う敵がどんな奴でどんな規模なのか。それすらもハッキリしてないんだし」
 ガンダムパイロット達は、自然と互いの顔を見やった。
デュオの言わんとしていることが、理解出来たからだ。
真実を知らされずに戦い、その果てにどのような痛手を負ったか。
デュオと同様、それを彼はよく知っていた。
「それにもう一つ、いや、もう一人、だな」
 デュオは皆に背を向けると、すたすたと迷いなく歩を進めた。
その先には一人の男が、ランチボックスを枕にして居眠りをこいている。
「計算に入れたくないが、俺の他にもう一人、残っている。……ほら、起きろおっさん!」
 両手を腰にあて、デュオは左の足を勢いよく払った。
カツン、という音とともに、綺麗にランチボックスが蹴られた方向に転がっていく。
直後に、ゴツン、という音が続く。
これが何か、言うまでもあるまい。
「んがっ! いて、痛てて!」
「目ぇ覚ませ、この不良中年」
「ぐ、ぐぐい……だ、誰が不良で誰が中年だ!」
 そう、意見を述べていない者がまだ残っていた。
「俺は模擬戦で2000回でスペシャルのパトリック・コーラサワーだ!」
587名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/08/07(日) 23:08:30.35 ID:???
 ご存知、コーラサワー。
サンドイッチで軽食休憩を取るまでは一応起きていた彼だが、
その時から妙におとなしく、眠ってるのではないかと周りから疑われるくらいに静かだった。
で、食後に実際にこうして居眠りをかましてしまう辺り、流石と言うべきか何と言うべきか。
「仕事中にグースカと居眠りする奴がスペシャルなわけあるかよ」
「……いや、間違えた」
「ほー? 何だ、えらく素直なんだな。寝起きで頭が働いてないのか? だったらずっと寝起きのままならいいのにな」
「今は、模擬戦で2000回でスペシャルのパトリック・コーラサワー・マネキンだった」
 場の緊張感が、一気に緩んでいく。
コーラサワーが口を開くと、そしてコーラサワーとデュオが『漫才』を始めると、どうしてもこうなってしまう。
「で、よ。そのスペシャルでパトリックでコーラサワーでマネキンさん、どうする?」
「どうするって、何が」
 後頭部を擦りつつ、コーラサワーは立ちあがってデュオに問い返した。
若干涙目になっているが、どうやらさっきのゴツン、かなり打ちどころが悪くて痛かったらしい。
「このままここに残って続けるか? それとも一端引き上げるか?」
「……へあ? 何のことだ」
「調査のことだよ」
「何の?」
「イオリア・シュヘンベルグの遺産の」
 あー、とコーラサワーは頷いた。
その様を見て、ヒルデがフライパンを、五飛がヌンチャクをそれぞれ取り出しかけたが、ギリギリで自制した。
居眠りの間に調査のことが頭から抜け落ちていたのであれば、もはやそれは鳥頭を通りこしてスライム頭である。
「帰ろうぜ、じゃあ」
「理由は?」
「……特にねぇよ、理由なんて」
 ようやく頭の後ろから手を離すと、真顔でコーラサワーは言った。
「勘、というやつか」
 理由が無い、というコーラサワーに、ヒイロが問いかける。
「んー、まあ、そんなもんだ」
「そうか」
 頷くヒイロ。
その表情は、疑惑でも不審でもなく、得心のそれである。
コーラサワーが居眠りを始める前、つまりサンドイッチを頬張っている時、
ヒイロとデュオは、コーラサワーの「何かがおかしい」という直感について言葉を交わした。
その時、既にヒイロは何処かコーラサワーの勘に同調する気配があった。
むしろ、デュオの方がコーラサワーの勘について懐疑的だったのだが―――。
「とにかく、何かおかしい気がするんだよ」
「と、いうことだそうだ」
 苦笑気味に、だが決して苦笑の成分だけではない笑いで、デュオは皆の方に向き直った。
「これで続行派が五人。撤収派が六人。で、どうするサリィ?」
 ガタン、とコーラサワーとデュオの背後で音がした。
さっきデュオが蹴ったランチボックスの蓋が外れて、開いたのだ。
「……そう、ね」
 サリィの視界の隅に、中身が空になっているランチボックスが転がっている。
まるで、カラッポの宝箱のように。
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
588名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/08/07(日) 23:09:35.25 ID:???
 誤字脱字があったら申し訳ありませんコンバンハ。
震災の余波を受け、マイ煙草であったキャメル・マイルドが生産停止になってから3カ月近く経ちます。
ああああああめっちゃ吸いたいいいいいいいいいいキャメルマイルドオオオオオサヨウナラ。
589通常の名無しさんの3倍:2011/08/08(月) 21:14:45.23 ID:???
>>588
土曜日さん乙です!!
やはりコーラさんはムードメーカーだなあw
590通常の名無しさんの3倍:2011/08/10(水) 21:20:02.35 ID:???
>>588
土曜日氏乙!
次回も楽しみ!
591通常の名無しさんの3倍:2011/08/12(金) 14:16:07.95 ID:???
保守ワー
592通常の名無しさんの3倍:2011/08/14(日) 09:04:00.22 ID:???
保守ウー
593通常の名無しさんの3倍:2011/08/15(月) 00:41:37.58 ID:???
>>588
土曜日さんGJ!

あといい機会だしyou禁煙しちゃいなyo!
594通常の名無しさんの3倍:2011/08/15(月) 02:00:47.75 ID:???
次は今週末か次週頭に
ヤバい、サカつく新作にドップリでお盆休みが潰れる
子どもの頃に初代サカつくに触れてから、ずっとシリーズやってますがやめられなさ具合はガンダムと通じるものがありますな
595通常の名無しさんの3倍:2011/08/16(火) 10:13:16.06 ID:???
>>594
了解
596通常の名無しさんの3倍:2011/08/18(木) 22:15:22.00 ID:???
保守ウー
597通常の名無しさんの3倍:2011/08/20(土) 22:09:22.02 ID:???
保守ワー
598土曜日@出張先:2011/08/22(月) 01:51:26.39 ID:???
PCが規制に巻き込まれました……。
しばらく待機します。
599通常の名無しさんの3倍:2011/08/22(月) 18:39:23.57 ID:???
>>598
了解です
600通常の名無しさんの3倍:2011/08/24(水) 21:36:46.81 ID:???
保守ウー
601土曜日@仕事先休憩中:2011/08/26(金) 12:56:37.05 ID:???
規制、忍法帳のおかげでPCからも携帯からも書き込めません。
当分待機せざるを得ないようです……。
602通常の名無しさんの3倍:2011/08/26(金) 20:11:31.82 ID:???
>>601
早く規制が解けると良いですね
603通常の名無しさんの3倍:2011/08/27(土) 20:44:43.01 ID:???
test
604 忍法帖【Lv=19,xxxPT】 :2011/08/28(日) 09:21:13.92 ID:???
保守ワー
605名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/08/30(火) 01:25:49.95 ID:???
規制が解けたようです。
次回は今週末か週明けに投下出来ると思います。

再度規制に巻き込まれなければ……。
606通常の名無しさんの3倍:2011/08/30(火) 22:03:48.11 ID:???
>>605
そうですか、楽しみに待ってます!
607通常の名無しさんの3倍:2011/09/01(木) 16:23:24.78 ID:???
保守ウー
608 忍法帖【Lv=21,xxxPT】 :2011/09/03(土) 22:29:15.34 ID:???
保守ワー
609通常の名無しさんの3倍:2011/09/05(月) 09:53:44.11 ID:???
保守ウー
610名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/05(月) 17:46:42.67 ID:???
 勝利は偶然に左右されるが、敗北は必然によってもたらされる。
これはどの分野においても共通の真理である。
そして敗北に繋がる必然とは、小さな要因の積み重ねであることが多い。
気がつけば負ける理由が揃っていた、ということは珍しくない。
勝利者から言わせれば、それは「見落とした方が悪い」ということになるのだが。
 敗北とは、次の勝利に繋がるステップである。
だが、その次が無い敗者も多くいる。
負けるということは、それだけ可能性を失うということだからだ。
負けた後のことを考える奴が勝てるわけがない、という言葉もあるが、
自分が今、どの位置に立っていて、どれだけ後ろの崖に距離があるか、
それを正確に把握していれば、「次の勝利の為」の余裕を持てることになる。
そうすることで、負けの必然を減らし、勝ちの偶然を拾う確率も上がるのだ。

 ◆ ◆ ◆

「ふぅ……」
 バラック・ジニンは溜め息を吐いた。
筋骨隆々たる大男の彼だが、吐きだした息は決して大きくない。
彼はアロウズ・セキュリティ・サービス、通称ASSの特殊警備隊長に就いており、
その立場上、悩んだり困ったり、といった態度を表に出さないように自ら努めていた。
上司が不安そうにしていたら、部下の不安になる、というわけだが、
それが故か、周囲に他に誰もいなくても、自然と溜め息なり、肩を落とすなり、
そういった行為が他者より小さくなるのだった。
ただ、それらが全くない、というわけではないのが、所謂彼の人間らしいところだった。
事実、職務に厳しい彼だが、家庭では良き夫であり、親類一同からの評判も良い。
近く、子が誕生する予定もあり、私人として「父」の責任も背負うことになる。
「何をしているんだろうな、俺は」
 彼が今いるのは、アザディスタン特殊自治区のとあるホテルのロビーである。
アロウズ・セキュリティ・サービスは、業界では名が高い。
ASSに任せていれば犬も吠えなくなる、とまで謳われる程である。
ただ、裏の評判もある意味高く、トラブル解決の為に手段を選ばない、とも言われている。
ジニン自身、現場を預かる者として、そういった場面に身を置いたこともある。
「……こちらジニン。ロビーに異常はない。各場、現状を報告せよ」
 ジニンは携帯電話を取り出すと、小さな声で指示を飛ばした。
もちろん、ただの携帯電話ではない。
ASS用に通信機能を強化されたもので、一般には流通していないものである。
『こちらA班、屋上アミューズメント広場。異常なし』
『B、こちらB班。展望レストラン内。問題ありません』
『C班です。30〜40階を往復中。連中の姿はありません』
『D班より異常なし……』
 ジニンが決めた順番通りに、各班から報告が入ってくる。
体格から見てわかる通り、彼本人も各武術の達人だが、部下も同じく、一級の能力の持ち主ばかりである。
個人の格闘技術はもちろんのこと、隠密行動や情報収集等、必要と思われる技能は、
ジニン自らがみっちりとプログラムを組んで鍛え上げた。
611名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/05(月) 17:50:13.99 ID:???
「各班、今は監視の目を緩めるな。何か動きがあればすぐに報告しろ。以上」
 どの班も問題無く遂行している。
それについては、ジニンも不満はない。
だが、手落ちを感じている部分はある。
それは、このホテルに従業員として部下を送り込むことが出来なかった点だ。
アザディスタンは最近ようやく復興した地域であり、
ホテルそのものも色んな資本が入っているので、苦労しないと思っていたのだが、存外にガードが固かった。
「やれやれ」
 ジニンは、彼の上司であるアーバ・リント警務部長の命令で動いている。
そして、アーバ・リントの上にはアロウズ会長のホーマー・カタギリがおり、さらにその上には、イノベイターがいる。
「歌手どもの力を借りれば、もう少しスマートに進んでいたかもしれんが……」
 ジニンは苦々しげに呟いた。
彼は、イノベイターを快く思っていない。
と言うか、好いていない。
仕事そのものに手を抜くつもりは全くないが、彼に指示を出す者として、あまりにイノベイターは不明な点が多すぎる。
何がしたいのか、何が目的なのか。
ジニンに教えられていることは少ない。
職務に忠実なことと、不満を覚えないことは、別の問題だとジニンは思っている。
いや、最近そう思いだした。
部下を駒としか考えていないリント辺りが、詳しい情報をシャットしている可能性はあるが、
イノベイターという「歌手グループ」は、どうしてもジニンからすれば、胡散臭い存在にしか思えないのだった。
「本当にこれで良いのか……?」
 ジニンは今、悩んでいる。
自分達がしていることは、本当に正しいことなのか、と。
以前の彼なら、そういった疑問は決して抱かなかったに違いない。
「プリベンターと、マイスター運送か」
 やれと命令されたら、やる。
ジニンは自分の立場をよくわかっている。
プロとして職務を放棄するつもりもない。
だが、わからない。
イノベイターたちは何をしたいのか。
アロウズがどこに向かっているのか。
プリベンターを敵として良いのか。
「おっと……いかんな」
 首を左右に小さく、ジニンは振った。
こんな姿を部下に見られたら、士気に関わる。
612名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/05(月) 17:52:30.81 ID:???
「やるだけ、か」
 背もたれにしていた大きな柱から、ジニンは離れた。
マイスター運送の面々が外に出ていってから、それなりに時間が経つ。
そろそろ、尾行させた部下から連絡が入る頃合いである。
このタイミングで、玄関ホールに出ていくのは悪いことではない。
報告の内容次第では、すぐに動かなければならないこともある。
プリベンターの方は追えていないが、あちらはイノベイターがどうにかするということで、タッチさせてもらっていない。
「……」
 ふと、ジニンは立ち止って後ろを振り返った。
ロビーには客の姿が多く見られる。
他に注意すべきものは、何もない。
「……ふっ」
 溜め息より小さく、ジニンは笑った。
微笑というより、それは苦笑に近かった。
「さて、どうなるか」
 まだ、彼の後ろに崖はない。
「……そして、どうするか」
 今回の件、勝ちと負けはどこにあるのか。
それはどういったものなのか。
彼にはまだ何もわからない。
だが、彼は敗者になるつもりはない。
悩もうとも、不満を持とうとも、それだけは彼の中で揺るがない決意だった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――


コンバンハ。
なかなかペースが上がらなくてすいません。
誤字脱字があったらごめんなさい。

プリベンター、というかコーラさんの周囲以外はギャグ方面になかなか行か(け)ない。
もうちょっとしたら力技でそっちに持っていきます。
613通常の名無しさんの3倍:2011/09/05(月) 21:55:20.33 ID:???
>>610-612
土曜日さん乙です!!

>プリベンター、というかコーラさんの周囲以外はギャグ方面になかなか行か(け)ない。
>もうちょっとしたら力技でそっちに持っていきます。

アロウズサイドのコミカルなシーンも見てみたいですねw
614通常の名無しさんの3倍:2011/09/07(水) 07:51:33.39 ID:???
♪ >ーヽィ  ♪
  イ从lヘ | ♪
  ノ从∀´ bレ ))    YES YES ♪
 (( ( つ ヽ、   ♪  いつでも どこでも
   〉 とノ )))     YES YES ♪
  (__ノ^(_)
615通常の名無しさんの3倍:2011/09/07(水) 22:20:52.44 ID:???
土曜日氏乙〜
次回も期待してます
616通常の名無しさんの3倍:2011/09/09(金) 22:05:05.10 ID:???
保守ワー
617通常の名無しさんの3倍:2011/09/11(日) 10:04:20.07 ID:???
保守ウー
618通常の名無しさんの3倍:2011/09/13(火) 22:05:47.24 ID:???
保守ワー
619通常の名無しさんの3倍:2011/09/15(木) 22:46:26.06 ID:???
保守ウー
620通常の名無しさんの3倍:2011/09/17(土) 16:51:24.58 ID:???
保守ワー
621通常の名無しさんの3倍:2011/09/19(月) 09:19:54.59 ID:???
保守ウー
622土曜日@スマホ:2011/09/21(水) 21:01:29.01 ID:???
次回は今週末か来週頭に
623通常の名無しさんの3倍:2011/09/21(水) 21:40:10.50 ID:???
>>622
待ってます
624通常の名無しさんの3倍:2011/09/23(金) 21:19:13.97 ID:???
test
625通常の名無しさんの3倍:2011/09/25(日) 09:21:41.18 ID:???
保守ワー
626通常の名無しさんの3倍:2011/09/27(火) 21:41:36.07 ID:???
保守ウー
627名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 22:36:43.93 ID:???
 人生楽ありゃ苦もあるさ、とは有名な国民的時代劇の主題歌の一部であるが、
「禍福は糾える縄の如し」という故事があるように、良いことと悪いことは表裏であり、
ラッキーな出来事がアンラッキーな出来事の導火線になっている、またはその逆なんてことは当たり前のように人生に転がっている。
「俺は不幸続きだよ、良いことなんて一つもないよ!」と己の不幸を語る(これは一種の自慢である)人がいるが、
何のことはない、某賭博漫画の登場人物のようなことは常に起こるわけじゃなし、
単に自分で「良い結果」を導く努力を怠っている、もしくは「良い結果」に転ずるきっかけに気付いていないだけのこと。
不幸続きの人生、なんてのはそうそうありゃしないのだ。
例え小さくとも、幸せはどこかにポツンとあったりするもんである。

 ただ、稀に、本当に稀に、幸運が続く人間がいる。
努力をしなくても、勝手に幸せが転がりこんでくる者がいるのだ。
それは物理学、というか地球上に存在する全ての学問でも解明出来ない、謎のパワー。
いるのだ、そういう人間が。
で、そういう人間は決して後ろは振り返らない。
前ばかり見ている。
ひたすら見続けている。
後ろを向くなんて、考えたことがないかのように。

 ◆ ◆ ◆

「全ては順調だね」
 薄暗い部屋で、淡い緑色の髪を持つ青年―――見方によっては少年―――は小さく呟いた。
彼の目の前には大きなスクリーンがあり、その発光が、仄かに彼の体に反射している。
「ご機嫌だね」
 その緑色の髪の青年が座っているソファのすぐ後ろから、声をかけたのは、紫に近い紺色の髪の、眼鏡の青年。
こちらもまだ少年という呼び方が正しいかもしれないくらいの容姿である。
さらに言えば、少年ではなく、少女と言っても差し支えないかもしれない。
「今のところ、特に問題はないからね」
「ふん、そうかい?」
 のんびりとした口調の緑色の髪の青年に、やや棘を含むような口調で、紺色の髪の青年は言葉を返す。
「飲むかい? リジェネ」
「いや、結構。リボンズ」
 緑色の髪の青年、リボンズ・アルマークが差し出したグラスを、
紺色の髪の青年、リジェネ・レジェッタは穏やかに、だがハッキリと拒絶した。
「メッコールは嫌いかい?」
「いや、そういうわけではないけどね」
「サスケもあるよ。ドクターペッパーも」
「……遠慮しておくよ」
 やや呆れたように、リジェネは首を横に振った。
まったく、この時代のどこに、そんな遥か昔の飲料水が残っているというのか。
とっくの昔に製造が終了しているはずなのに。
もともと何かを飲む気分ではないが、
リボンズが進める飲み物はとにかくアヤしくて喉に通す気がしない。
628名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 22:39:07.42 ID:???
「どこぞの廃屋の壊れた冷蔵庫の奥に眠っていました、なんてシロモノじゃないから安心していいのに」
 そんなリジェネの心を見透かしたように、リボンズは笑った。
彼らはイノベイターと言われるアイドルグループで、脳量子派によってテレパシーが出来る。
人の気持ちは顔に出やすいとはよく言われるが、
彼らの場合、意図的に無言で通信が出来るのだ。
まあこの場合はテレパシーではなく、リボンズがリジェネの態度からその気持ちを推測したわけだが、
リジェネにとっては心を読まれたようでいささか腹立たしい。
「製法はちゃんと記録に残っているから、それをもとに作ったんだよ」
「で、何を見ているんだい」
 リジェネは飲み物の話題を強引に逸らした。
リボンズのペースで会話が進むのは、どうにも精神衛生上良くない。
二人は形の上では同志だが、抱える野望は違う。
向かうところは同じでも、その主役になりたいのだ、どちらも。
「アタック・オブ・ザ・キラー・トマトだよ」
「……トマト?」
「凶暴化したトマトが人を襲う映画でね、実におもしろい」
「…・・・おもしろい?」
 リジェネは首を傾げた。
スクリーンの中では、トマトが人を襲う滑稽なシーンが続いている。
それには失笑こそすれ、「おもしろい」という感情は沸いてこない。
「映画史に燦然と輝くB級ムービーの傑作だよ」
「Z級の間違いじゃないないのかい」
「それはこの映画にとっては最高の褒め言葉だね」
「……そうかい」
 リボンズはセンスがやたらと古臭い。
懐古趣味と表現すればまだ響きは良いが、それに収まりきらないものがある。
そこが、リジェネにはついていけない。
「この次は、『殺しが静かにやって来る』を見ようと思ってるんだ」
「やけに詩的な題名だね」
「西部劇なんだけどね、マカロニウエスタンの中でもとにかくオススメさ」
「ふうん」
「特にラストは劇的だね。初めて見たら絶句すること請け合いだよ」
「ふうん」
「主人公のキャラクター設定はね……」
「もういいよ」
 語り始めようとしたリボンズを、リジェネは咄嗟に制した。
彼の映画薀蓄を聞きにきたわけではない。
「えらく悠長に構えているけど、それで大丈夫なのかい」
「またその話かい? 君は大胆な人物だと思っていたけど、案外繊細なんだね」
「何をいまさら」
 リボンズの視線を受けて、リジェネはスッと顔を逸らした。
「心配しなくても大丈夫だよ、全ては順調だ」
「それならいいんだけどね」
 何度、順調だという言葉をリボンズからリジェネは聞いただろうか。
裏を返せば、それだけリジェネがリボンズに進行状況について問いただしたことになるわけだが。
629名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 22:40:06.69 ID:???
「まあ、君がそんな感じで僕としてはありがたいよ」
「……どういう意味だい」
「他のみんなは、まぁ僕も含めてなんだけど、楽天的だからね」
「……」
「君が色々と心配してくれるおかげで、僕の気も引き締まるというものさ」
「そう、かい」
「もし、僕の進め方に穴があったら」
「?」
「いつでも……ね」
 いつでも、何なのか。
本来なら、その後に続くのは、「指摘してほしい」となるだろう。
だが、リジェネはそうは思わなかった。
いや、思えなかった。
「失礼するよ」
「おや、映画を見ていかないのかい?」
「遠慮しておく」
「これからが良いところなのに」
「あまりこういうものに興味が無いからね。そんな者が側にいたら、君も心から楽しめないだろう」
「気の回し過ぎだよ。僕達の間に相応しくない気遣いだ」
「……ともかく、遠慮しておく」
 くるり、とリジェネはリボンズに背を向けた。
普段の彼に比べて、やや歩調が乱暴なのは、どのような心境の現れか。
「やれやれ、味気ないね」
 部屋からリジェネが出て行くのを確認して、リボンズは薄く笑った。
「焦るとねえ、碌なことがないよリジェネ。ふふふ、他の連中からもそう思われているかもしれないよ?」
 ドアからスクリーンに、リボンズは身体を向けた。
ふわり、と瞳が光を帯びる。
「そんなことじゃ、幸運は掴めないさ」
 その金の色は、スクリーンを反射したものでは、なかった。

 ◆ ◆ ◆

「ぶえーっくし!」
「うげ、汚いだろ! くしゃみをする時は掌で口を押さえろ!」
「うー、風邪ひいたかなあ」
「ホテルに帰ったら薬でも飲んでおけよ」
 ガタゴトと揺れるバンの後部座席で、デュオ・マックスウェルは顔をしかめた。
そしてポケットからハンカチを取り出すと、顔を拭く。
まあ実際には、幸いにも唾は飛んできていなかったのだが、それでも気持ちの問題である。
「体調は悪くないから、多分ホコリのせいだな。あんな地下にずっといたから」
「ずっとって程でもないだろ」
 デュオの隣でくしゃみをした男、パトリック・コーラサワーも同じく懐からハンカチを取り出した。
それを鼻に当てるが、すぐに思いなおして、別のポケットからティッシュを取り出す。
さすがにハンカチで鼻をかむのは躊躇われたのだろう。
この辺り、レディキラーとしてブイブイ言わせていたコーラサワーらしくない行為だが、
結婚して幾分、そこらへんの意識が下がっているのかもしれない。
まあ所謂、新婚ボケか。
リア充爆発しろ、てなもんである。
630名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 22:44:16.27 ID:???
「とにかく鼻がムズムズするんだよ」
「ふん、誰かが噂でもしてるんじゃねーの」
「そりゃ困る、俺はもう既婚者だから諦めてもらわないと」
「どーいう噂だと思ってるんだよ!」
 コーラサワーはとにかく自分の都合が良いように解釈する。
そんなコーラサワーを、ポジティブシンキングの極みだとデュオはかつて思っていた。
が、今は違う。
ポジティブシンキングとは、文字通りポジティブな考え方をすること。
自らがそういう意思をもって、「良い方向に考えていこう」と心がけていることになる。
しかし、コーラサワーからはそんな殊勝な姿勢はカケラも感じられない。
「ま、バカは風邪をひかないって言うから、ただのくしゃみなんだろうさ」
「成る程な、だからナルハム野郎は風邪をひかないわけか。変に頑丈だからな、あいつ」
「……別に俺はあいつのことを言ったつもりはないんだけどな」
「じゃあアラスカ野のことか。確かにあいつもバカだもんな。おまけにヘタレだし」
「いや、あいつのことでもねーよ」
「何だよ、じゃあまさかオデコ姉ちゃんズの」
「お前のこと言ってるんだよ俺は!」
 ぶっちゃけた話、天然なのだ。
別の呼び方をすればバカとも言う。
 ほっとくと宇宙方面にすっ飛ぶパターンが多いガンダムキャラの中では、ある意味すがすがしいと言えるかもしれない。
だからこそ、この手のキャラクターはガンダムシリーズの主人公に成りにくいのだが。
ガロードとかジュドーとかドモンとかはありゃまた別の系統。
 ちょっと話がズレるが、コーラサワーがガンダムのキャラクターとして特異過ぎるという点は、
他のシリーズのキャラクターと会話させてみればよくわかる。
ここだってWとのクロスであるが、メインで喋りあってるのがガンダムキャラとしてはコミュ力の高いデュオだし、それにギャグだし。
まあ、例をいくつか挙げていこう。
631名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 22:51:25.02 ID:???
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


@ファーストのガルマ特攻のシーンで、ガルマをコーラサワーに代えてみた
 コーラ「おわっ、なんだこりゃ? 何で後ろから撃たれてんだ?」
 シャア「ふふふ、パトリック。聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい」
 コーラ「はぁ? 不幸?」
 シャア「そうだ、不幸だ」
 コーラ「おい赤いの、お前……」
 シャア「君は良い友人であったが、君の父上がいけないのだよ」
 コーラ「? 俺の親父が何かしたのか? 意味わかんねえよ!」
 シャア「ふふふふ、ははははは!」
 コーラ「とにかく、俺だってAEUのスペシャルエースだ! 無駄死するわけねーだろ!」

 ※この後、WBの総攻撃を喰らってガウ爆発も当然の如く無傷。
  無論総帥のあの演説も行われないし、さらにコーラが全てを上層部に告ってシャア永久追放。
  シャアの野望、ここに終焉。
  いや逆にララァとずっと一緒に暮らせるわけで、そっから人類の安全な革新が始まるかもしれん。


AZのファとレコアの男女論で、ファをコーラサワーに代えてみた
 コーラ「どうして裏切ったりなんかしたんだ」
 レコア「やはりそういう風にしか、見えなくて?」
 コーラ「……いや、そりゃそうにしか見えないだろ」
 レコア「私はね、もともと主義者ではないわ。戦争でなくしてしまった私の感情の行きどころを探して生きていたわ」
 コーラ「じゃあ簡単な話だ、付き合ってみりゃ解決するぜ、とりあえず一晩でも」
 レコア「……今の私は女としてとても充足しているの。安定しているのよ」
 コーラ「嘘だな」
 レコア「えっ?」
 コーラ「俺には、このスペシャルエースのパトリック・コーラサワーにはわかるぜ。あんた、ホントは愛して欲しいんだろ?」
 レコア「よ、世の中には男と女しかいないけど、そ、それは思想や信念とは別ものよ! 貴方も含め、アーガマの男達は自分のことしか!」
 コーラ「ややこしいことはよくわからん。まあとにかく一緒に戻ろうぜ」

 ※この後、レコアは毒気を抜かれてアーガマに再投降。
  カミーユたちも温かく迎えて相互理解を深め万事解決。
  最終決戦に向けてエゥーゴに大きな戦力が加わったのだった。
  当然パラス・アテネもお持ち帰り〜で白く塗られたりします。
632名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 22:56:28.95 ID:???
B種の世界が憎い仮面の男の人間論で、キラをコーラサワーに代えてみた
 クルー「正義と信じ! 分からぬと逃げ! 知らず、聞かず!その果ての終末だ! 最早止める術などない、そして人は滅ぶ! 滅ぶべくしてな!」
 コーラ「はあ? ああ? もうちょっとゆっくり喋れ! つか長い!」
 クルー「それが人だよ、コーラサワー君」
 コーラ「馴れ馴れしく君づけで呼ぶなよ!」
 クルー「この憎しみの目と! 心と! 引き金を引く指しか持たない者たちの世界で、何を信じる? 何故信じる?」
 コーラ「いや、俺は大佐のことだけ信じてるから」
 クルー「知らぬさ、所詮人は己が知ることしか知らぬ!」
 コーラ「えーと、何が言いたいんだお前?」
 クルー「まだ苦しみたいか、いつか、やがていつかはと! そんな甘い毒に踊らされ、いったいどれほどの時を戦い続けてきた?」
 コーラ「戦うって、MSに乗ってってことか? んー、軍に入ってからだから10年ちょっとだな」
 クルー「人類は滅ぶ! 今日は人が数多持つ預言の日だ!」
 コーラ「すまんが、全然わからん。言ってることが」
 クルー「それだけの業! 重ねてきたのは誰だー!」
 コーラ「少なくとも俺じゃねーなあ」

 ※この後、ドラグーンで一方的にコーラサワーを追い込まれるも、当然それで死ぬわけもなく。
  直後にホイホイと現れたキラとアスランがタッグでクルーゼをボコるのでした。
  で、「早く来いよガンダム!」というオチ。
  ついでに種運命じゃまったく登場しない、と。



C∀のやったぜフラン砲のシーンで、ジョゼフをコーラサワーに代えてみた
 コーラ「やりました大佐! へへへっ」
 御大将「きょォーだいよォ!」
 コーラ「へ?」
 御大将「今、女の名前を呼ばなかったかァい?」
 コーラ「MSの首が喋ってる!?」
 御大将「戦場でなァ、恋人や女房の名前を呼ぶ時ってのはなァ、瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよお!」
 コーラ「ええ、いや、その、大佐はまだ恋人でも女房でも……へ、へへへへへ」
 御大将「地球人よォ! お主の生体反応のデータを採りつつ、神の世界への引導を渡してやる!」
 コーラ「へ、性感反応?」

 ※さすが御大将である、コーラサワー相手にも見事に会話のドッジボール。
  言いたいことだけ言って相手の話はあまり聞かないというのがガンダムのキャラクターに多いが、彼はまさにその極北。
  まあジョゼフの立場なら当然コーラサワーが死ぬわけもなく、御大将はロランに倒されて終わり。
  で、戦後はアメリアのどっかに大佐と家を構えて、めでたしめでたし。
  リリ嬢やディアナからは、「おもしろい人」と思われるか駄目男認定されるか、両極端のどっちかでしょうな。


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633名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 23:02:03.97 ID:???
 何と言う会話&物語ブレイカー。
まあ結構無理矢理な感じもするが、もともとガンダムも会話しているようで全然会話してない、
何を言ってるのかちょっとわからない、文法ってか日本語としてそもそもおかしい、等々の台詞がてんこ盛りなわけで、気にしては負け。
00でも尺が足りないようだったら脚本からコーラの台詞が真っ先に消された、なんてのは冗談ではなく本当のことに違いない。
コーラサワーのキャラクターとしての最大の欠点は、単独で話を動かせない、本筋に絡んでいけない点にある。
一時はジェリド・メサやマシュマー・セロ、クロノクル・アシャー辺りとキャラの比較がされたこともあるが、
何よりジェリドらは物語の最後の方まで「ライバル格」として主人公に絡み続けた。
つまりグラハム・エーカーにこそ立場が似ているのだ。

「じゃあ大佐が俺の話をしているんだな、きっと」
「隣の奥さまと旦那の愚痴の言い合いしてるのかもな」
「バッカ、そんなことするわけねーだろ!」
「何でそう言いきれるんだよ」
「大佐だぞ? 素晴らしい人なんだぞ? 俺の大佐がそんなことするわけない!」
「つーか仮にも自分の嫁だろ、いつまで大佐って階級で読んでるんだよ!」
「大佐は大佐なんだよ!」
 一応、この物語ではカティは大佐で退役しているという設定です。
准将になる前、てかスメラギと同窓とか語られる前からこの話やってるので、細部は本当に適当です。
あしからず。

「……止めないんですか?」
「貴方が止める? カトル」
「……いいえ、いいです」
「ほっときましょう。五飛辺りを放り込んでもいいけど、そうすると車が壊れるかもしれないから」
 バンの前部座席と後部座席は、遮音壁によって分けられている。
音は完全に遮断されているのだが、遮音壁は透明なので、
バックミラーを通じて全て前部座席のサリィ・ポォとカトル・ラバーバ・ウィナーに丸見えなのだ。
 一応、このバンは乗員として運転手のサリィ、助手席のカトル、そして後部座席のコーラサワーとデュオというメンバー構成になっている。
他の面子は機材を積み込んだトラックに乗っており、このバンにはこの四人だけである。
出来るだけ騒動を起こしたくない、サリィの苦心のパーティ分けが見てとれる。
つーか、プリベンター全員で出動すると、大抵こんな感じの分け方になっちゃうわけだが。
張五飛とかグラハムとかと長時間コーラサワーを一緒にしておいて良いわけない。
「デュオに今回は泣いてもらいましょう」
「今回、ですか」
「訂正。今回も、よ」
 サリィは溜め息をついた。
正味、コーラサワーの問題程度で頭を痛めている余裕はない。
これからホテルに帰還したらしたで、難問が待ち構えているからだ。
「持ち札は全て晒してもらわないとね、マイスター運送」
 ハンドルをくいっとサリィは握りなおした。
デュオのげんなりとした顔が、ちらりとバックミラーを通して見えたが、すぐに視線を逸らす。
 プリベンター単独での、イオリア・シュヘンベルグの旧研究施設の捜査は失敗した。
後ろを振り向いている時間はない。
瞳を向けるべきは、前なのだ。
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
634名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/09/27(火) 23:02:29.72 ID:???
 コンバンハ。
遅れて申し訳ありません。
自分でやってて何ですが、ここんところ話が進まなさ過ぎですな。
どーにかせんとあかんですなこりゃ。
635通常の名無しさんの3倍:2011/09/28(水) 21:57:58.79 ID:???
>>634
土曜日氏乙です!
リボンズの趣味が特殊すぎるw
でも、リジェネの企みはお見通しの様ですね…
もしもコーラが〜のシーンは、やっぱりコーラだとノリが軽くなりますねw
次回も楽しみにしてます!
636通常の名無しさんの3倍:2011/09/30(金) 18:24:33.12 ID:???
土曜日氏乙です。
それにしても、重苦しい各ガンダムのシーンがコーラサワーに代わると、
ドリフのコントになって、BGMに盆回りがかかってそうに思えるのは何故www
それと、飲み物www
メッコールってなんぞwwwww
なんかカオスになってますね次回楽しみにしております。
637通常の名無しさんの3倍:2011/10/02(日) 09:34:21.42 ID:???
保守ワー
638通常の名無しさんの3倍:2011/10/04(火) 22:10:03.71 ID:???
保守ウー
639通常の名無しさんの3倍:2011/10/05(水) 10:01:12.05 ID:???
セリフの噛み合わなさに笑った。
640通常の名無しさんの3倍:2011/10/06(木) 21:54:45.53 ID:???
土曜日さん乙〜
次回も期待!!
641通常の名無しさんの3倍:2011/10/08(土) 17:13:39.61 ID:???
保守ワー
642通常の名無しさんの3倍:2011/10/10(月) 08:30:15.98 ID:???
保守ウー
643土曜日@スマホ:2011/10/12(水) 21:13:36.30 ID:???
次回は今週末か次週はじめにて
644通常の名無しさんの3倍:2011/10/12(水) 21:50:32.57 ID:???
>>643
待ってます!
645通常の名無しさんの3倍:2011/10/14(金) 21:17:29.47 ID:???
保守ワー
646通常の名無しさんの3倍:2011/10/16(日) 09:19:15.78 ID:???
保守ウー
647名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/17(月) 23:46:33.04 ID:???
「敵兵の頭に狙いをつけているからって安心するな。
また別の場所から、敵兵が同じようにお前の頭に狙いをつけているかもしれないぜ」

―――第二次世界大戦、名もないスナイパーの言葉―――


 ◆ ◆ ◆

 アザディスタンの旧王都では、いささか奇妙な尾行劇が繰り広げられている。
マイスター運送の面々をトリニティ運送が追い、さらにトリニティ運送を別のマイスター運送がつける。
神の視点から見ればなかなかに茶番と言えるが、やってる本人たちは至って真剣である。
まず追われている立場のマイスター運送だが、
 リヒテンダール・ツェーリ、クリスティナ・シエラ、ラッセ・アイオン、アレルヤ・ハプティズム、ティエリア・アーデといった面子である。
待機時間を利用してバザールに繰り出したわけだが、
普段こういう外出にあまりつきあわないティエリアが加わっているのは、ホテルに閉じこもっていても仕方がない、と判断した為であろう。
 そして彼らを追いながら、また別のマイスター運送に追われているトリニティ運送、ヨハン、ミハエル、ネーナの三人兄妹である。
マイスター運送とは業務上のライバルだが、
リボンズ・アルマークの陰謀が進んでいる今、そしてイオリア・シュヘンベルグの遺産の謎が解き明かされんとしている今、
運送会社という枠を越えて、完全に敵対関係の位置にそれぞれがある。
 さらにそのトリニティ運送を追うマイスター運送の別行動組、
ロックオン弟ことライル・ディランディと、その彼女のアニュー・リターナー。
ティエリア達とは別に外出したら、こうして「仲間を追うトリニティ」を発見した次第である。
オラオラの人なら「挟み撃ちの恰好になるな」と言いそうな状況だが、
幽波紋を使えない身なのでそうもいかないところである。
 バザールで追いつ追われつしているこの面々以外のマイスター運送関わる者、
それらが今どこにいるのかと言うと、まず社長のスメラギ・李・ノリエガはホテルにいる。
刹那・F・セイエイ、フェルト・グレイス、おやっさん夫妻、モレノも同様にホテル内。
プリベンターはイオリアの研究所捜索が空振りに終わり、現在撤収の最中。
ビリー・カタギリ、絹江・クロスロードは色々と思いを馳せながら、それぞれの仕事に手をつけているところである。
 一方のトリニティ運送側は、ASSことアロウズ・セキュリティ・サービスが旧王都でマイスター運送やマリナ・イスマイールの監視役。
首魁のリボンズ・アルマークは同志であるイノベイター、部下であるアリー・アル・サーシェスは絶賛潜伏中。
はいそこ、話が数カ月、下手すりゃ一年も進んでないぞ? とか言わないように。

 ……で、まあ。
現在、上記の面子から一名、名前の漏れている者がいる。
ロックオン兄、ニール・ディランディである。


 ◆ ◆ ◆
648名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/17(月) 23:49:33.88 ID:???
『すまないな、兄さん』
「いやいや、堂々と弟のデートをデバガメ出来るんだ、幸運ってもんさ」
『……まいったな』
「なんなら、このままイイコトしてもらってもいいんだぜ?」
『やめてくれ、アニューが睨んでる』
「ははは、了解」
 ライル・ディランディはバザールの中、そしてニール・ディランディはホテルにそれぞれいる。
互いに小型のトランシーバー(耳にセットするタイプ)で会話をしている。
こういう時、イノベイターなら脳量子派で通信出来て便利だが、生憎と二人は普通の人間である。
「しかし、ティエリア達についていかなくて正解だったってことだな」
『結果的にはね』
「スメラギさんを一人でほっといたら酒をガブガブ飲むかもしれないしなあ」
『刹那とフェルトも気になるし?』
「おいおい、俺はそこまでおせっかいでも下世話でもないぜ?」
『弟のデートを覗き見ることが出来て幸い、といった男の台詞じゃないな、それ』
「……へいへい、まいったね」
 ニールとライルは双子である。
容姿もそっくり、声もそっくりで、互いに並ぶとなかなか見分けがつかない(マイスター運送の仲間はさすがに分かるようである)。
兄のニールはどちらかと言うと面倒見がよく、文字通りの兄貴肌タイプ。
弟のライルは兄に比べるとやや軽い部分が目立つが、その分人当たりは良い。
二人で一人のコードネーム、「ロックオン・ストラトス」を名乗るが、
たいていはニールが「ロックオン」と呼ばれ、ライルは普通に「ライル」と呼ばれることが多い。
まあぶっちゃけ、ややこしいから仕方がない。
以下、ロックオンの呼称は使わず、ニールとライルの呼び方で文を進めていくのでよろしく。
『映像はクリアかい? 兄さん』
「ああバッチシだ。今斜めから歩いてくる爺さんの顔の皺までクッキリ見えるぜ」
『さすが兄さん、目が良い』
「おいおい、ここは俺じゃなくてこのシステムを褒めるべきだろ?」
 ニールはホテルのベッドの上で胡坐をかきつつ、両膝の間にノートパソコンを乗せている。
そのモニターの中には、今現在のバザールの様子が、鮮やかに映し出されている。
『この眼鏡、少しゴツイからあまり好きじゃないんだけどな』
「変装だと思えばいいさ、何ならアニューにかけさせても良いぜ、俺は?」
『……いや、却下するよ』
「何で」
『そうすると、アニューと兄さんが通信することになるだろ。アニューの精神衛生上、よろしくないな』
「ちょ、おま、それはヒドいぞおい」
『そうかい? 兄さんのことだ、いかがわしい質問でもするんじゃないかってね』
「今日の下着の色は何か、とかか?」
『ほら、そういうやつだよ』
「昨日はお楽しみでしたね、とかもか?」
『……兄さん、戻ったら一発殴っていいかな』
「冗談だよ、冗談!」
『冗談に聞こえないのが悲しいね』
649名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/17(月) 23:51:13.39 ID:???
 ライルは今、眼鏡をかけている。
眼鏡というより、薄型のゴーグルと言った方が差し支えない形状である。
これを通じて、ライルが見ている光景がニールの手元のパソコンに転送されているわけである。
こういうのは映画やゲームでよく見かけられるが、まあアレらとほぼ同じと思ってもらって構わない。
『アニューが肩をすくめてるよ、兄さん』
「ははは、おっとわざわざそっちを見なくても良いぜ、想像出来るからな」
 この兄弟、仲が良い。
最後に喧嘩をしたのが遥か昔のガキ頃、と二人が口を揃えるくらいである。
ちなにみ、父母は健在で、エイミーという妹がおり、故郷で幸せに暮らしている。
マイスター運送の面々は家族がいない、もしくは関係が薄い者が多いので、
家庭がきちんと存在するのは、彼らディランディ家と、おやっさんとこ(ヴァスティ家)の二つのみである。
「おっとライル、もう少し進むと三叉路がある。人の流れがごちゃつく場所だから、見失わないように気をつけな」
『了解、兄さん』
 ライルは今、自分が見ている光景をニールに送る。
そしてニールは、ライルに道や場所の情報を伝える。
こうして連携を取っておけば、これから起こるであろう事態に、対処しやすくなる。
無論、二人が勝手にしているわけではない。
奇妙な尾行に至った経緯をスメラギ・李・ノリエガに伝え、そして彼女から出た指示の結果である。
『アニューがこの眼鏡を持っていたおかげだな』
「お前、一生彼女に頭が上がらないぞ」
『ははは、何となくわかってるよ、それは』
「……ごちそうさま」
 このゴーグル(説明が面倒臭いから、以後ゴーグルで通す)、もちろん普段から持ち歩いている物ではない。
用意周到なアニューが万が一のことを考えて、持ち出していたのだ。
「スメラギさんが策を練ってる。それまで見失うなよ、ライル」
『大丈夫だと思うね』
「ほう?」
『だって奴ら、派手だし』
「……ああ、まあ、そうだな」
 ライルの言葉を受けて、ニールは苦笑した。
モニターの隅に、トリニティの三人兄妹の姿が映っている。
確かに見失うまい、何故なら、トリニティの特に弟と妹が、
やたらと派手な色合いの衣裳を身につけているのだから。

 ◆ ◆ ◆
650名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/17(月) 23:53:44.65 ID:???
「てれってれ〜ん♪ てれってれ〜ん♪」
「……うるさいぞ、ネーナ」
「えー、こういう時って雰囲気が大事でしょ? だからピンクパンサーのテーマを」
「でっでんでっで♪ でっでんでっで♪」
「……お前もうるさい、ミハエル」
「えー、こういう時は雰囲気が大事だぜ? だからスパイ大作戦のテーマを」
「いいから、そういうのいいから」
 で、ライルとニールに派手認定されたトリニティ。
長兄のヨハンこそ普通の服装(さすがに短パンではない)だが、
次弟のミハエル、末妹のネーナの服装がえらいことになっている。
「尾行するなら変装だよな」とかナントカ言いだして、そこらの露店で適当に急いで買い漁った結果、
ミハエルは黄色のターバンに丸いグラサン、派手な意匠のマント(お土産用)。
ネーナは如何にも手作りといった感じのアクセサリーを頭やら首やらでじゃらじゃら鳴らし、
明らかにサイズのあってない真っ赤なショールをぐるぐる巻き。
目立つか目立たないかで言ったら、間違いなく目立つ格好である。
零心会のズンドコ節でも踊ってもらいたいくらいである。
「真剣にやれ、真剣に」
「えー、私はいつも真剣だよ」
「俺だってそうだぜ」
「……バレたらどうするつもりだ」
 大きく溜め息をつくヨハン。
何と言うか、隠密行動にハッキリと向いてない弟と妹である。
兄としてはいつマイスター運送に気付かれるかと不安ではあるが、
これだけ周囲に人が多ければ、と若干希望観測的に腹をくくらざるを得ないところである。
まあ残念ながら、ライルとアニュー、ニールにすでにバレているわけですが。
「とにかく、このまま静かに追うぞ」
「わかってるって!」
「わかってらい!」
「だから声が大きい」
 しかし、このまま延々と追跡を続けるわけにもいかないのも事実である。
どこかでアクションを起こさないといけないわけだが、
下手に騒ぎになるような真似だけは慎まねばならない。
ヨハンとしては、マイスター運送が別の騒動に巻き込まれて、
そこに介入するのが最も望ましい展開である。
651名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/17(月) 23:56:18.93 ID:???
「……やはり、彼らを使うか」
「ん? なあに、ヨハン兄ぃ」
「いや、独り言だ」
 ヨハンは気付いていた。
バザールですれ違う、または露店の前で立ち止まっている者の中に、ASSのメンバーが何人かいたことを。
リボンズの指示で動いているのなら、間違いなくトリニティにもそういう連絡がくる。
だが、ヨハンは何も聞いていないので、ASSはASSで今のところ、単独で動いていることになる。
もしくは、自分達の前で何かしらの指示があり、それが意図的に誰かの手でカットされている可能性もある。
「それならばそれで、やり方はあるが」
 ミハエルとネーナはまだASSに勘づいていない。
どうASSが動くか、または動かすかはヨハンも今は決めかねているので、迂闊に二人に伝えることは出来ない。
下手に教えると、戦場のバッドカンパニーの如く、「だったらやっちゃえ」と暴走しかねないからだ。
ミハエルとネーナが暴れ出したらそう簡単には収まらない。
暴れん坊将軍で言うと、冒頭のテーマ曲が終わった次の瞬間に徳田新之助が正体をバラさずに悪人を斬り始めるみたいなもんである。
うむ、よくわからん。
よくわからん上に例えが間違っている気がする。
まあいいや。
「最悪の場合、何事もないまま終わる……ということになるか」
 ASSがマイスター運送と自分達に気付いていないということは考えにくい。
彼らも承知の上で動いているのなら、リボンズではなく、ASSの現場から何かしらのアクションがあるかもしれない。
今のところ、リボンズに指示を仰ぐ、という判断を簡単に下すつもりもヨハンにはない。
それがベターとわかってはいるが、彼もまたトリニティなのだ。
「えー、おもしろくなーい」
「そうだぜ、おもしろくないぜ」
「……まあ、おもしろくするさ」
 不敵に、ヨハンは笑った。
リボンズやアリーとはまた違った、危険な笑みだった。



 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――




 コンバンハ。
おかしい、とうとう次のガンダムが始まってしまった。
とっくの昔に終わってなきゃならないはずのこの話なのに、映画公開が最終回予定だったはずなのに。
つうかコーラさん不在もしくは出番が薄い回が増えてきた、イカンイカン。
では次回までサヨウナラ。
652通常の名無しさんの3倍:2011/10/18(火) 21:55:35.43 ID:???
>>647-651
土曜日さん乙です!!本編と違い、ディランディ家は健在なんですね
今回は、一見シリアスなようで、結構軽い描写があったのが良かったです
トリニティは彼らで、何かしらの企みがあるんですかね…
次回も期待して待ってます!
653通常の名無しさんの3倍:2011/10/20(木) 22:02:54.82 ID:???
土曜日氏乙〜
もしや次回で大きな動きあり?
続きも期待してます!
654通常の名無しさんの3倍:2011/10/22(土) 09:51:21.46 ID:???
乙!
>「昨日はお楽しみでしたね、とかもか?」
ちょww
655通常の名無しさんの3倍:2011/10/24(月) 21:40:34.57 ID:???
保守ウー
656通常の名無しさんの3倍:2011/10/26(水) 22:03:53.18 ID:???
保守ワー
657土曜日@スマホ:2011/10/28(金) 22:26:06.53 ID:???
次回は週開け頃には
658通常の名無しさんの3倍:2011/10/28(金) 23:17:27.27 ID:???
>>657
了解です
659名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/30(日) 01:48:47.18 ID:???
 俺の名前は英雄国原稲久斗。
私立田古王学園に通う二年生。
日本全国、どこにでもいるような男子学生だ。
ただ、若干違うところがある。
それは俺がハンサムで天才でいずれ世界を統べる存在になることだ。
人前でそれを宣言すると、大抵の奴らは憐れむような目で俺を見る。
悲しいかな、そいつらは理解出来ないのだ、俺の偉大さが。
貧弱な物差ししか持っていないから、俺のような傑物の価値を計れない。
まあ仕方があるまい、A4サイズの紙には、どうしたってB2サイズを必要とする絵を描けないのだから。
縮小? 切り取り?
そんなもの、所詮自らの小さい器に対する言い訳だ。
 ……いや、えーと。
今、俺はそういうことを言いたいわけではない。
なんつーか、その。

「ばらばらさん、絶対動かないで下さい!」
「……嫌だね」
「困ります、それじゃあ!」
「いや、困るのは俺だって同じだ」
「とにかく、じっとしていて下さあい!」
「と、言われてもなあ、おい」

 何か知らんが追い詰められていた、俺は。
青い髪のちっこい美少女と一緒に。

 ◆ ◆ ◆

 さて、どこから説明すれば良いものやら。
命を失う危険が目の前に迫っているこの現状で、さすがの俺もいささか冷静さを欠いている気がする。
いや違うな、そう判断出来るということは、俺は十分冷静だ。
そういうことにしておこう。
 ……えーと、今俺の周りで起こっていることを、簡単に羅列すると、こうなる。

○俺は襲われている。
○俺は守られている。
○守っているのは件の墜落少女、荘礼須樽恵空紗(それすたる・えくさ)。
○俺を襲っているのは女性。
○しかも何かえらい美人。
○学校がおかしい、人気が感じられない。
○外に出られない。
660名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/30(日) 01:50:07.46 ID:???
 ……。
すげえな、俺。
将来俺の伝記を書く時、まるまる一章くらい使えそうだな、これで。
無事にこのわけのわからん状況が解決すりゃの話だが。
いや、解決してもらわんと非常に困る。
俺だけではない、地球にとっても人類にとっても、俺という存在を失うのは、重大な損失だ。
神が実在するとして、その神が「お前シネ」と言っても俺は死んでやらん。
 で、順番に考えていこう。
まず、俺は襲われている。
が、これは事実であって事実ではない。
最初に襲われていたのは、青髪少女だった。
俺は巻き込まれたに過ぎない。
 次に、俺は守られている。
で、どう守られているか。
えー、あー、超能力モノのマンガやアニメを想い浮かべてもらいたい。
そいで、キャラクターが敵の攻撃から身を守る時、身体の周りに球形のバリヤーみたいなのを張るだろう。
そんなの。
くそ、我ながら凄く下手な説明だ。
何かそれに腹が立つ。
 そんなバリヤーみたいなのを張って自分と俺を守っているのが、青髪少女。
俺を「ばらばらさん」とか呼びやがる以上、こっちも名前は決して呼んでやらん。
青髪少女が何故バリヤー(なんちゃらフィールドとか、正式な名前があるんだろうか?)を張れるのか。
わからん。
青髪少女が何故襲われているのか。
わからん。
世の中にわからんことは多くある。
俺だってまだ若い、経験の外のことに対してはどうしても認識が甘くなるのは承知している。
が、この「わからなさ」はちょっと別格である。
ああ、これも腹が立つ。
 青髪少女と俺を襲っているのは、謎の美女。
すらりとした長身で、長い黒髪を後ろで縛っており、服のところどころに中華っぽい意匠が見てとれる。
さて、中国人だろうか。
わからん。
謎の美女、なんか三つ又の槍みたいなのをさっきからぶんぶん振り回しては青髪少女に叩きつけている。
俺は格闘のプロではないが(一応言っておくが、喧嘩には自信がある)、
動作が流れるようにスムーズなので、おそらく相当の使い手なのだろう。
さて、どういう武術なのか。
わからん。
ああもう、わからんつーの。
661名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/30(日) 01:51:18.44 ID:???
 学校がおかしい。
何か暗い。
電灯がまったくついていない、つーかつかない。
教室にも職員室にも家庭科室にも技術室にも美術室にも視聴覚室にも用務員室にも下駄箱にも食堂にも、とにかく校内に全然人がいない。
いるのは俺と青髪少女、謎の美女だけ。
 外に出られない。
空は、というか学校を取り巻くように何か灰色の壁がある。
閉鎖空間というやつだ。
おまけに音もこちらから外に漏れないようだ(何故かというと、学校の外の音が俺に聞こえないからだ)。
ふざけんな、物理学を勝手にぶっちぎりやがって。
ニュートンやアインシュタインや諸々の学者に謝ってこい、誰か。
 だいたいアンフーが悪い、アンフーが。
それと知恵だ、あいつも悪い。
青髪少女に対する追求がもうちっときちんとあの時出来ていれば―――

「何時までそうやって殻に閉じこもっているつもりだい? お嬢ちゃん」
「貴女が私たちの前から去ってくれるまでです」
「ああ、そりゃ無理だね」

 謎の美女はさっきから、青髪少女を挑発するような発言が多くみられる。
俺は眼中に入っていない様子である。
ふざけんな、ぼけ。

「どこまで頑張れるかね? いつまでもそうやってられないだろう?」
「どこまでも頑張ります!」

 あー、むかつく。
わけのわからんことに巻き込まれている現状と、
そして俺を置いてきぼりにしてその現状が転がって言っていることに、物凄くむかつく。

「おい、青髪少女」
「なんですかばらばらさん」
「どうにかなるのか、これは」
「どうにかします」
「どうやって」
「どうにかしてです」
「……」
 
 コイツ、絶対後で思い切りハタいてやる。
662名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/30(日) 01:54:14.74 ID:???
「……お前、アイツを知っているのか?」
「少しは」
「教えろ」
「そんなことしている暇はないです」

 駄目だ、こいつ頭悪い。

「逃げるなら逃げる、戦うなら戦うでやり方を考える必要があるだろ!」
「だから、私が何とかします」

 くーそーばーかー。
何とかしますで解決するなら、社会から公務員は全員消えるわ。

「何をぺちゃくちゃとしゃべってるんだい!」
「くうっ!」

 謎の美女の攻撃を、青髪少女が弾く。
ビリリ、とバリヤーが揺れる。
空気が振動し、俺の顔に当たる。
んー、まいったなこりゃ。

「いいから、速く教えろって!」
「だから……」
「だからもクソもジャック・デリダもねえ! お前が知ってることだけでいいから!」

 俺はここを切り抜ける。
その為には、いささか不本意ながら、青髪少女の力が必要である。
駒として動いてもらって、俺の安全を保障してもらわねば。
こうなった経緯とか、それ以外の疑問は全部後だ。
俺にしては大きな妥協だ、くそったれ。

「ばらばらさんっ!」
「だからばらばらじゃ……まあいい。で? アイツは何だ?」
「ジャック・デリダって何ですか?」
「……」

 頼むぜ、おい。
ほんとに。




――続く
663名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/10/30(日) 01:56:12.92 ID:???
 三年ぶりのラノベっぽいものの続き。
ちょっと酔ってるからその勢いで突貫で(ぶっちゃけ覚えてないです)。
優先順位はもちろん新機動炭酸の方で進めます。
664通常の名無しさんの3倍:2011/10/30(日) 02:16:40.75 ID:???
????(・ω・)????
何のガンダムネタかわからん……
665通常の名無しさんの3倍:2011/10/30(日) 14:34:45.62 ID:???
ラノベ的なものは無理してまで続けんでもよかですたいよ
つうかもう3年も前になるんかい
666通常の名無しさんの3倍:2011/10/30(日) 14:52:26.06 ID:???
あー、あのネタかww
3年前じゃそら忘れるわ
667通常の名無しさんの3倍:2011/10/31(月) 11:38:23.65 ID:???
もう、そんな昔の話だったのか……
668通常の名無しさんの3倍:2011/11/01(火) 17:15:02.42 ID:???
懐かしいなw
669土曜日@スマホ:2011/11/02(水) 00:25:54.53 ID:???
すんません、今夜投下する予定でしたが、同僚が家庭事情で急遽早退したため、
代わりに夜勤に入ることになりました。新機動炭酸の続きは少し遅れます、申し訳ありません。
670通常の名無しさんの3倍:2011/11/03(木) 21:49:07.31 ID:???
>>669
お待ちしております
671通常の名無しさんの3倍:2011/11/05(土) 15:11:42.04 ID:???
保守ウー
672土曜日@スマホ:2011/11/07(月) 00:25:45.04 ID:???
今週中には投下できると思います。
673通常の名無しさんの3倍:2011/11/07(月) 21:32:52.78 ID:???
>>672
待ってます!
674通常の名無しさんの3倍:2011/11/09(水) 21:25:08.95 ID:???
保守ワー
675通常の名無しさんの3倍:2011/11/11(金) 22:27:24.86 ID:???
保守ウー
676名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/12(土) 01:51:06.44 ID:???
 人類には最強の技がいくつかある。
最強が複数あって良いのか、というツッコミはここでは取りあえず無視する。
まず最強の言葉、「それがどうした」。
某スペース・オペラの某提督も言っていたが、この一言で大抵の不満や反論は封殺出来る。
次に最強の態度、「無視」。
学校や職場でやれば単なるイジメだが、スケールアップすれば国同士、
いや銀河同士の駆け引きにおいて切り札と成りうる(全てが終わった後の「だって知らなかったもん、ボク」は最強の言い訳である)。
そして最強の行為、「寝る」。
ああっこんな仕事(宿題)やってられるか! 俺はもう知らん! 寝る!
果報は寝て待てとも言う、睡眠欲は食欲や性欲を凌駕する人類最大の欲なのだ。
そう、寝てるうちになんとかなるかもしれないではないか。
例え責務の放棄と言われようとも、99%事態が進展せずとも、残りの1%に賭ける価値が眠りにはある。
いや、本当に。

 ◆ ◆ ◆

「……つまらねえな」
「まあ、そういうことだ。おっと挨拶がまだだったな、おはようさん」
「つまらねえ」
「朝飯が食いたきゃロビーのカフェに行けよ。今日のパンはなかなか良い焼き具合だったぜ」
「つまらねえってんだよ!」
「ま、とっとと着替えろ。いい歳こいた大人がいつまでもパジャマのままでいるな」
「無視すんなやこらぁ!」
「ああもううるさい! 今の今までぐうすか寝てたお前が悪いんだろ!」
 目覚めたばかりの男に、少年はタオルをぶん投げた。
顔でも洗ってこい、ということだが、そんなもん男にわかるわけがない。
頭にバサリと乗ったタオルを思い切り跳ね除けて、男はさらに叫ぶ。
「何で俺が寝てる間に話が進んでるんだよ!」
「何でお前が寝てる間に話を止めとかなきゃならないんだよ!」
 男の名前はパトリック・コーラサワー。
30代、元AUE軍所属のMSパイロット。
少年の名前はデュオ・マックスウェル。
10代、元ガンダムパイロット。
共に、統一政府を陰で支える組織『プリベンター』のメンバーである。
677名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/12(土) 01:54:31.46 ID:???
 さて、パトリック・コーラサワーが何故不機嫌なのか。
それを少々、説明せねばなるまい。
簡単である、彼が眠っている間に、プリベンターに関わる事件が進展したから。
……いやまあ、さすがにこれだけだと説明不足であるから補足する。
 プリベンターは、300年も前の科学者であるイオリア・シュヘンベルグの『遺産』を調査すべく、
中東のアザディスタン特殊自治区へ赴き、イオリアの旧研究所跡地に潜入した。
同時に、イオリアに関係が深いマイスター運送、在野の天才科学者ビリー・カタギリ、
JNNTVの特派員である絹江・クロスロードらが、アザディスタンへと集結していた。
そしてこれはまだプリベンターが知らぬところだが、
同じくイオリアの遺産を狙う世界的アイドルグループ『イノベイター』と、
彼の部下的立場であるアリー・アル・サーシェス、トリニティ運送、
アロウズ・セキュリティ・サービス(以下ASS)といった面々もまた、アザディスタンにいた。
旧研究所跡地での調査は結局空振りに終わり、
プリベンターはとりあえず当面の拠点であるアザディスタン旧王都のホテルへと戻ることにした。
時をほぼ同じくして、旧王都ではマイスター運送とトリニティ運送、そしてASSが入り乱れる奇妙な追跡劇が繰り広げられていた。
さらにイノベイターの内部では、リーダーであるリボンズ・アルマークに対して、
メンバーの一人リジェネ・レジェッタが不穏な態度を見せていた―――
と、いうのがここ最近の流れになる。
ほいで、コーラサワーが今ふくれっ面なのは、まさにその流れの最後の『進展部分』に関われなかったことにある。
それは何故か?
答は先程語った通り、彼が寝ていたからである。
イオリアの旧研究所から戻るなり、「寝るわ」と宣言して部屋のベッドに潜りこんでしまったのだ。
で、彼が眠りについたそのまさに直後に、旧王都でのマイスター運送とトリニティ運送とASSの三者の間で事件が起こり、
それをマイスター運送の社長であるスメラギ・李・ノリエガが解決、
プリベンターの現場リーダーであるサリィ・ポォが事情説明とイオリア・シュヘンベルグについて彼女に説明を求め、
スメラギはそれを承諾、改めてプリベンターとマイスター運送の間にきちんとした体面の場が設けられ、
情報の交換も行われ、さらに言えば予想外の『捕虜』まで手に入れる結果となった。
ま、ここらへんについては次回以降で。
ほれ、コーラサワーさんとの関わりが薄いから、ね。
 で、目覚めたばかりのコーラサワーに、デュオが一気にそこら辺を説明したという次第である。
最早公認のコーラサワー番となったデュオがある意味哀れっちゃ哀れ。
仕方ないね、W本編でも損な役回りがチョコチョコ回ってきてた彼だし。
678名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/12(土) 01:58:25.24 ID:???
「何で起こさなかった! おもしろそうだったのに!」
「何で寝てた! おかげで話がスムーズに進んだぜ!」
「何で俺が怒られる!?」
「何で俺が攻められる!?」
「知らねえよ!」
「俺も知らんよ!」
 嗚呼、やはり漫才。
00本編においてコーラサワーの相方(あらゆる意味で)はカティ・マネキンだったが、
この物語においては間違いなくデュオである。
 しばし、二人の間でにらみ合い。
デュオは両手を腰に当てて仁王立ち。
かたやコーラサワーはベッドの上でパジャマのまま、まくらを抱えて不貞腐れ。
何ともアホウな図であることよ。
「……つうか、俺は起こそうとしたぞ」
「へっ?」
「でもお前が起きなかったんだよ」
「はあ?」
「寝付きが良くて一端寝たらなかなか起きない。まったくガキかっての」
「……」
 嘘である。
コーラサワーがいたらそれだけで物事がややこしくなる。
何で好きこのんで、静かな状態の彼を叩き起こすものか。
眠り人に口なし、ここら辺りはデュオが交渉的に有利である。
ま、そんなに大したもんでもないわけだが。
「耳元で怒鳴っても起きないもんな、お前なら多分悪名高いコミケット会場のど真ん中でも寝てられるよ」
「褒めるなよ」
「褒めてねーよ」
679名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/12(土) 01:59:08.13 ID:???
 この時代にもまだ、コミケはある。
オタク文化とゴキブリと風邪の根絶は不可能とかなんとか。
ちなみに私、コミケには大昔に一度だけ、学校の先輩から誘われて参加したことがある。
ジャンルと参加者のあまりの多さに立ちくらみを起こしたことを覚えている。
さらに余談ではあるが、知人(かつては筋金入りのオタクだった)の弟が某同人弾幕ゲームのイベントに参加し、
知人は帰ってきた弟に酒と寿司で労をねぎらおうとしたが、
弟、死んだ魚の目状態で、無言で自室のベッドに倒れ込んでしまった。
そして何時間も起きてこないので、知人が心配になって部屋に行ってみたら、
布団を抱えて苦悶の表情で「オ、オレノマリサガ……」と歯軋りして寝言を呟いてたそうな。
知人、そっと布団をかけ直してやったとかナントカ。
 話が逸れ過ぎた、本題に戻そう。
「とにかく起きて顔洗って髪を整えて、飯食ってこい。話はそれからだ」
「母ちゃんみたいに言うな」
「お前の母ちゃんがどんなのか知らんわ。さ、とっととしろ」
「うぐぐ」
 自分の半分以下の年齢の少年にここまで言われるコーラサワー、大人としてこれで良いのだろうか。
うん、多分これで良い。
何せコーラサワーだもの。
「わあったよ、着替えるから部屋から出ろ」
「男の着替えを見る趣味は俺には無いね」
 何かデジャブな会話である。
「寝てる間に進展したんだ、お前からしたら楽で良かっただろ」
「楽かもしれんが、つまらねーじゃねーか」
「日頃の行いの報いだな」
「俺は報いを受けるよなことは何もしてねーがな」
「死んだ後に閻魔様に真顔でそう言ってみろよ、間違いなく地獄に落とされるぜ」
「無条件で天国に行けるに決まってるだろ、スペシャル様だぞ俺は」
 コーラサワーの言葉を背に、デュオは部屋を出た。
コーラサワーが着替えた後、とにかく飯を食わせて、そして皆がいる部屋に連れていかねばならない。
不本意過ぎる『任務』だが、これを遂行出来るのは、プリベンターには今、デュオしかいない。
「ま、眠れる時に眠れってられるのは、ある意味良いことかもしれんけどな」
 デュオは前髪をかきあげた。
とにもかくにも今回の件、ここにきて急展開を迎えつつある。
これから先、安眠を約束してくれる保証などどこにもない。
そう、全てが解決するまでは。



 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
680名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/12(土) 02:00:44.25 ID:???
 コンバンハ。
いささか強引気味ですが、展開のスピードアップを図ってます。
なお『捕虜』が誰かについては次回で、多分。
 ではまた次回までサヨウナラ。
681通常の名無しさんの3倍:2011/11/12(土) 21:46:06.30 ID:???
>>680
土曜日さん乙です!!
やっぱり、コーラとデュオの掛け合いは良いものですね
やっぱり『捕虜』が誰なのか気になりますねw

余談
>某同人弾幕ゲーム
東方シリーズですね、知人の弟さんに何があったのか…w
682通常の名無しさんの3倍:2011/11/13(日) 20:13:19.56 ID:???
>>680
土曜日氏乙〜
下手に起こしたらややこしくなるだろうな、やっぱりw
しかし、30代なのに10代にあしらわれてるコーラって一体…w
続きも期待して待ってます!
683通常の名無しさんの3倍:2011/11/15(火) 21:23:37.94 ID:???
保守ワー
684通常の名無しさんの3倍:2011/11/17(木) 22:11:11.13 ID:???
保守ウー
685通常の名無しさんの3倍:2011/11/19(土) 10:44:36.71 ID:???
保守ワー
686通常の名無しさんの3倍:2011/11/21(月) 22:08:16.74 ID:???
保守ウー
687土曜日@スマホ:2011/11/23(水) 20:52:33.30 ID:???
次回は週明けくらいになると思います。
688通常の名無しさんの3倍:2011/11/23(水) 21:41:36.30 ID:???
>>687
了解です
689通常の名無しさんの3倍:2011/11/25(金) 06:41:43.99 ID:???
保守ワー
690通常の名無しさんの3倍:2011/11/27(日) 09:54:15.31 ID:???
保守ウー
691通常の名無しさんの3倍:2011/11/29(火) 15:23:18.63 ID:???
保守ワー
692名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/30(水) 01:49:25.89 ID:???
 どうしてこうなった。

 それは、後悔の台詞ではない。
ただの嘆息であり、飾りを一切排除した感情の「漏れ」である。
恨み、辛み、憎しみ、苛立ち、冷笑、そういったものは、この言葉の直後に連なる。
 大好きだったテレビドラマ。
映画化するというので期待して映画館に脚を運んだら、
主役はちっとも魅力的に映らず、大物ゲストの演技は棒、脚本は穴だらけ、演出は派手なだけでイモ、しかも終わりが露骨に続編匂わし。
そのあまりの出来に、席から動けず一言。
「どうしてこうなった?」

 あと数分で全国大会進出。
栄光の舞台に手が届きかけたところで、神様が悪戯心を起こしたかのような逆ミラクル発生。
エースが投げたウイニングショットがすっぽ抜けて大暴投、あろうことかそれを振ったバッターが振り逃げ、
次に出てきた代打の一年生は明らかに緊張でガチガチなのに、闇雲に振ったバットにエース渾身の速球が偶然当たりホームラン、サヨナラ負け。
崩れ落ちるナインをスタンドから見て一言。
「どうしてこうなった……」

 ファンだったゲーム。
続編発表だというのでゲームショウに乗り込んだら、
使用可能キャラは減らされ、存在価値に疑問があるライバルキャラが追加、声優は一部変更、プロデューサーは報告だけしてさっさと退散。
顔を真っ赤にして怒り狂う同朋と肩を並べて一言。
「どうしてこうなった!」

 世間から祝福されて結婚した美形俳優と美形女優。
夫婦生活も円満と報道されていたのに、わずか数カ月で旦那はホモ発覚、妻は家事能力ゼロで家がゴミ山状態を週刊誌にスッパ抜かれ。
挙げ句夫婦揃って事業失敗で借金地獄、離婚も出来ずに別居で互いに罵りあい。
それをワイドショーを流し見つつ一言。
「どうしてこうなったw」

 言ってみれば、これは「区切り」なのだろう。
この台詞とともに、色々なものが一つ終わり、そしてまた色々なものが始まっていくのだ。
感情の整理に必要な言葉、と言えるかもしれない。


 ◆ ◆ ◆
693名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/30(水) 01:50:51.30 ID:???
 どうしてこうなった。

 メガネのブリッジ部分を、右手の中指と人差し指で持ち上げて、リジェネ・レジェッタはそう呟いた。
今、自分がいる場所をぐるりと見回してみる。
先程から何度も行っている行為だ。
もちろん、視界に入ってくるものに代わりはない。
大きな窓。
立派なテーブル。
クッションの利いたソファ。
観葉植物。
全方向に展開可能なスクリーンビジョン。
内線電話。
そのどれもに、前回確認した時と変わりはない。
 立派なホテルの一室。
リジェネとしては、見かけについてそう形容する以外にない。
一晩の相場が如何程までかはわからないが、結構なお値段になるのだろう。
天井は高い。
空間は広い。
窓から見える景色はここが高い位置、すなわち上級のルームであることを感じさせる。
694名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/30(水) 01:51:34.99 ID:???
 どうしてこうなった。

 前髪をゆっくりとかきあげつつ、リジェネ・レジェッタは再度呟いた。
さっきとは逆の流れで、自分がいる場所をぐるりと見回してみる。
こればっかりしているが、実際、これ以外にすることが今の彼には無い。
 大きな窓。
ただし開かない。
セキュリティロックが外部コントロールでかけられているらしい。
ついでにガラスはどうやら超強化防弾仕様の様子で、マシンガンでも撃ちぬけない。
 立派なテーブル。
ただし動かせない。
床に電磁固定されており、細工が出来ない。
ついでに木目調が施されているが木製ではなく金属製で、削り取ったり割ったりも出来ない。
 クッションの利いたソファ。
これはまあただの高級なソファ。
しかし、皮を破ったら中から仲間の隠したメッセージや武器が、なんて展開はもちろん望めない。
 観葉植物。
ただし偽物、疑似素材。
触って調べた結果、どうやら吸音素材を使っている模様。
つまりホテル側がちょこっと細工すれば、いくらでも喋り声が外部に筒抜け。
 全方向に展開可能なスクリーンビジョン。
ただし電源オフ。
つまりそこにあるだけ。
 内線電話。
ただし繋がらない。
これもそこにあるだけ。
 どこが立派なホテルの一室だ。
リジェネとしては、苦笑混じりにそう形容する他ない。
客の安全を守るためだとしても、いささか大仰に過ぎる。
 天井は高い。
室内にあるものを重ねても、届きはしない。
 空間は広い。
だが逃亡に必要なものは一切見つからない。
 窓から見える景色はここが高い位置、すなわち上級のルームであることを感じさせる。
仮に窓を破ることが出来ても、外に脱出することは不可能であることも同時に感じさせる。
695名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/30(水) 01:54:13.54 ID:???
 どうしてこうなった。

 リボンズ・アルマークの計画を乗っ取るはずだった。
怪しまれてはいても、気取られてはいないはずだった。

 どうしてこうなった。

 「まだ本番じゃない」と動かないリボンズ。
部下任せで自分の趣味に没頭するのリボンズ。
出し抜くのは今しかないはずだった。

 どうしてこうなった。

 味方は必要なかった。
 イノベイターとは脳量子波で意思疎通が出来るが、秘めた野望までは開帳していない。
なんだかんだでプライドが高く、リボンズに忠実な者ばかりなので、同志には出来ない。
アリー・アル・サーシェスは『人間』としての戦闘力は優秀かもしれないが、自身の欲望に忠実なだけにコントロールはしにくい。
アロウズの面々は所詮利権目当て、最終的に自社優先の立場を崩さないはずなので除外。
ラグナ・ハーヴェイは小物。
トリニティ運送はある意味一番扱い易いように見えるが、下手に兄妹三人の結束が強い分、機嫌取りが必要になってくる。
 だから、一人でやる。
一人で出来る。
自分には、それだけの力がある、はずだった。

 どうしてこうなった。

 状況を確認する。
そのはずだった。
 軽い気持ちだった。
そのはずだった。
 騒動を離れた場所から見届けるだけ。
そのはずだった。
 だから、『巣』から単身で出た。
そのはずだった。
 終わったら戻る。
そのはずだった。
 そして、リボンズを裏切る機会を待つ。
そのはずだった。
 それが、どうして、どうして。
696名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/30(水) 01:56:32.27 ID:???
 どうしてこうなった。

 部屋には時計がない。
窓の外に見える空は青く、日中の良い時間帯であることはわかる。
脳量子波を使えば、おそらくイノベイターの誰かが教えてくれる。
いや、使えばではない。
使えれば、だ。

 どうしてこうなった。

 意識を取り戻し、周囲の確認を行った直後にリジェネがまず行ったのは、イノベイターの「仲間達」への呼び掛けだった。
だが、それが出来なかった。
誰一人にも届かない。
誰一人の意識も感じられない。
誰一人からも返事が来ない。
 やがてぼんやりとだが、自身の置かれてしまった状況を知る。
もしかして、自分は捕まってしまったのではないか?
そう、『敵』に。

 どうしてこうなった。

 わからない。
バザールの雑踏の中、マイスター運送の一人がトリニティ運送の存在に気付いた。
それは直に見ていたから覚えている。
そしてトリニティ運送の次男が、何故か嬉々としながらマイスター運送に喧嘩を売ったのも覚えている。
そしてそこに、ASS(アロウズ・セキュリティ・サービス)と思われる屈強な男達が介入しようとしたのも覚えている。
そこから―――そこから?
そこからがわからない。
一体何が起こったのか、自分がどうなったのか。
697名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/30(水) 01:58:01.41 ID:???
 どうしてこうなった。

 ふぅ、とリジェネは溜め息をついた。
自分が苦境に置かれていることはわかる。
そして、おそらくリボンズに「切られた」ことも。
 本来なら、ショックを受けて落ち込んでもよいはずの状態である。
だが、何故かリジェネはそうなならない、いや、なれなかった。
悔しさ、挫折感、怒り、そういった感情が湧いてこない。
だが、呆然としているわけでもない。
冷静さは保てていると感じているし、部屋を調べることもした。
結果として脱出は不可能という答にすぐに辿り着いたのだが、それが絶望に直結もしていない。
自分の精神状態をどう説明すれば良いのか、それを仮にここに他の誰かがいて、問われたとしても、リジェネはおそらく上手く説明出来ないであろう。

 どうしてこうなった。

 テーブルの上には、一枚のメモがある。
リジェネがソファの上で意識を取り戻す前から、ずっとそこに置かれていたのであろう。
メモには、英語で、綺麗な字―――筆致の柔らかさから、おそらく女性が描いたと思われる―――でこう書かれていた。
『しばらくおとなしくしているように』と。
しばらくとは果たしてどれくらいの間なのか。
それもまたわからない。

 どうしてこうなった。

 ソファにリジェネは背をぐいっと預けた。
動きようがないということは、動いても仕方ないということだ。
おとなしくしていろというなら、おとなしくするしかないということだ。
そして、待つしかないということだ。
誰かが、ここに尋ねてくるまで。
事態が動くなら、そう、誰かがここに来てからだ。
何時までもここでほったらかしということもあるまい。
誰がやって来るかはわからない。
わからないが、来たなら話をすることになるだろう。
尋問、質問、そういったものもされるだろう。
相手は一人とは限らない、複数の可能性もあるだろう。
 リジェネは目を閉じた。
そして、脳に意識を集中させた。
どういったことを聞かれるか、そしてどう答えるか。
それを考えておく必要がある。

 さて、これからどうするか―――


 ―――そしてその一時間程後、リジェネ・レジェッタは相対する。
『敵』と。


 プリベンターとリジェネ・レジェッタ、ついでにパトリック・コーラサワーの心の旅は続く。
698名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/11/30(水) 02:03:10.78 ID:???
 コンバンハ。
つーことで捕虜はリジェネさんです。
その経緯については次回以降、おそらくスメラギさんかティエリアさん辺りが語る予定。
いや、まさかのコーラサワーさんかも。
 年末が近づいてきて仕事の関係で忙しいですが、何とか隙をぬって投下をしていきたいと思います。
つーか本当なら去年の今頃終わってるはずだったんですがね、この新機動炭酸は。
このままだと年越し確定、すなわち五年目突入確定。

ど う し て こ う な っ た。

 ではサヨウナラ。
699通常の名無しさんの3倍:2011/11/30(水) 22:38:54.92 ID:???
>>698
土曜日さん乙です!!
リジェネでしたか、自分の想像とは違っていたので驚きました(トリニティの誰かだと思ってました)w
彼にしてみれば、正にポルナレフの様な気分ですかねw

しかし冒頭の、「ファンだったゲーム」は某マスUだと分かりますが、他の「映画化されたドラマ」や「旦那がホモ発覚。妻が家事能力ゼロ」
というのは何なんでしょう?ww
700通常の名無しさんの3倍:2011/12/01(木) 22:38:39.87 ID:???
>>698
土曜日氏乙〜
捕虜はリジェネかw彼はこの先どうなるんだろうw
次回も期待してます!
701通常の名無しさんの3倍:2011/12/03(土) 20:52:04.40 ID:???
保守ワー
702通常の名無しさんの3倍:2011/12/05(月) 21:11:04.91 ID:???
保守ウー
703通常の名無しさんの3倍:2011/12/07(水) 21:45:48.68 ID:???
保守ワー
704通常の名無しさんの3倍:2011/12/09(金) 22:22:32.94 ID:???
保守ウー
705土曜日@スマホ:2011/12/11(日) 02:04:35.74 ID:???
次回は週明け辺りに。
706通常の名無しさんの3倍:2011/12/11(日) 09:41:31.50 ID:???
>>705
了解しました
707通常の名無しさんの3倍:2011/12/13(火) 21:29:19.69 ID:???
保守ワー
708土曜日@スマホ:2011/12/14(水) 21:05:21.64 ID:???
すんません、予定外の仕事の為に次回投下が少し遅れます。
まさに年末は地獄也。
709通常の名無しさんの3倍:2011/12/15(木) 22:12:16.35 ID:???
>>708
OKです
710名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/15(木) 23:59:14.75 ID:???
 赤い彗星。
この言葉を知らない若者は、日本にはほとんどいないだろう。
ガンダムを知らない者でも、その二つ名と、そう呼ばれるシャア・アズナブルというキャラクターくらいは知っている。
有名な人物には、有名な通り名が自然とつく。
サッカーで言うなら、ベッケンバウアーが『皇帝』で、ペレが『王様』、
野球なら長嶋茂雄が『ミスター』で、佐々木主浩が『大魔神』。
 そしてガンダム00の世界では、『不死身のコーラサワー』が鉄板。
……ほらそこ、何か言いたそうにしない。
反論は受け付けない。
受け付けないったら受け付けないんだったら、もう。

 ◆ ◆ ◆

「ほれ、とっとと行くぞ、オスニモ」
 デュオ・マックスウェルは前髪をかき上げつつ、背後でちんたらとした動作で歩く男に声をかけた。
その男は、ついさっきまでグースカと眠りこけており、
それを叩き起こして、皆の場所まで連れていくのが彼の今の役目である。
誰にだって出来る仕事に思えるが、実はさにあらず。
彼が所属する組織、プリベンターにおいて、その男の相手をする役がこれ程に似合うのもまた、彼以外にいない。
デュオは全力でそのことを否定するだろうが、残念ながら、これはもう事実である。
コーラを飲んだらゲップをするというくらいに。
「何だよ、オスニモって」
 で、デュオに声をかけられた『その男』こそ、この物語の主人公(のはず)、パトリック・コーラサワー。
イケメンで美人の嫁持ち、社会的には勝ち組だが、性格は非社会的な男である。
「俺はスペシャルで2000回で模擬戦、の略だ」
「は?」
「『オ』れは『ス』ペシャルで『ニ』せんかいで『モ』ぎせん」
「どーいう略し方だ」
「そーいう略し方だ」
 コーラサワーにはいくつか二つ名がある。
まずは『不死身のコーラサワー』。
AEU軍時代、腕は良いのだが何かしらとよく撃墜され、
しかしその都度、全くの無傷で前線に復帰することからつけられた。
ぶっちゃけアテツケであるが、コーラサワー本人はまんざらでもなかったらしい。
次に『幸せのコーラサワー』。
AEUでもかなりのエリートで、戦術予報士として超級の能力を持っていたパトリック・マネキンを伴侶として射止めちゃったことに由来する。
これは半分、いや九割がコーラサワーが自称で流した二つ名である。
次いで、『スペシャルエース』。
これもまた、コーラサワーが自称しており、周囲は特にそう呼んでいたわけではない。
生き方がとにかくあらゆる意味でスペシャルなので、本人ではなく周りがそう呼ぶ時は、かなりの揶揄が入っている。
711名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/16(金) 00:02:07.79 ID:???
「……オスニモのコーラサワー、なんて全然かっこよくないだろ」
「何だお前、自分がかっこいいとでも思ってるのか」
「俺はかっこいいだろ」
「どこが」
「全部だよ」
「あーはいはい、さすがはオスニモだわ」
「だからそう呼ぶなっての!」
 そもそも、こうやって半ば無理矢理に略して呼ばれるのは、大抵が良い意味ではない。
『尚既神断』とか『浦期僕馬』とか。
あれ、何か違う気もする。
まあいいか。
「喜べよ、新しく定着するかもしれないだろ」
「定着してたまるか!」
「ミレイナ辺りは喜んで使うかもな」
「冗談でもやめろ。あのデコ娘は本気でやりかねんだろ」
 厨二病という不治の病に嬉々として罹っているミレイナ・ヴァスティならやりかねんところではある。
オスニモ? 良いですぅ、あれれ何だか中世的な響きでもあるですぅ、
むむっピピピンアットマークと脳に閃いたですぅ、どこか地球ではない架空世界、
オスニモという王国があり、繁栄していたですが突然の破滅を迎えるですぅ、
謎の時空から現れた謎の魔王カッコ美男子で滅茶苦茶強いカッコトジが王国を乗っ取ろうとするですぅ、
それに対抗するために時の王子がカッコこれも美男子でちょっとヘタレカッコトジが十人の勇者を募り、
魔王の配下の四天王カッコどれもイケメンで強いカッコトジと戦うことになるですぅ、
四天王の下には八部衆カッコこれもイケメン揃いで一人だけブサメンがいるけどコイツが一番良い奴カッコトジがいて、
八部衆の下には十六翼将カッコこいつらもイケメンだけど何人か女が混ざってるですぅ、
中には僕っ娘や妖艶な美女、ロリっ娘がいて全方向射程オンカッコトジがいて、誰もが必殺技を持っていて、
この圧倒的なまでの戦力差をどう埋めるかが王子側のポイントですぅ、
王子側には劉基ばりの軍師役がいてですぅ、えっ軍師役なら諸葛孔明じゃないか、劉基なんて知らないですって、
ハッこれだからニワカは困るですぅ、孔明なんて所詮地方政権の宰相に過ぎん男で天下統一どころか、
そこに手をかけることも出来なかった男ですぅ(注:厨二病の人は『一番手に有名な人』を何故かこき下ろしたがる傾向にあります)、
それでですねってああもうやめとこう。
まあこれくら暴走しかねない。
あれ、かなり早い段階でコーラサワーからズレてる気もするが、まあいいや。
「略さんでいい。普通に俺はスペシャルで2000回で模擬戦なコーラサワーでいい」
「でも言いにくいだろ」
「バッカ、言いにくくても、それでも敢えて言うところに価値があるんだろ」
「砂粒程の価値だな」
 デュオは溜め息をついた。
自分がくだらない話を振ってしまったせいでもあるが、
これではコーラサワーをなかなか皆のところへ連れていけない。
しかも、先にコーラサワーに飯を食わせなければならないのだ。
ほれ、腹が減ってる状態でコーラサワーを連れていけば、ブーブー言うに決まってるから。
「やっぱりお前を連れていかない方がいいような気がするな」
「仲間外れにするつもりかよ」
「……でもどのみち、後で文句言うから同じなのか」
「お前、俺を不平屋みたいに」
「そんなごたいそうなもんじゃないだろ、お前は」
712名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/16(金) 00:06:19.38 ID:???
 実際、コーラサワーがいない方が色々と話は進む。
話は進むが、除けたら除けた分だけ、後になって始末が悪いのがコーラサワーという男でもある。
出来る限り手元において、コントロール出来る範囲内でコントロールした方が、被害が少ない。
とは言え、これをきちんと実践出来ているのは、コーラサワーの妻であるカティ・マネキン唯一人である。
デュオにも、プリベンターの現場リーダーであるサリィ・ポォにも完遂はほぼ不可能。
まあ、やっかいではないコーラサワーなんぞ、ハード事業から撤退したセ○と同じで、本来の姿ではないのも事実だが。
2001年3月31日はUSJ開園の日として覚えるべからず、○ガマニア絶望の日として覚えるべし。
創造は生命。
コーラサワーにとっては騒々しいのが生命。
「とにかく、カフェに行くから……。で、何を食う?」
「ステーキ」
「いきなりかよ」
「悪いのか」
「起きたばっかりでそんな重いもん、よく食えるな」
「じゃあサンドイッチとコーヒーでいい」
「落差の激しいこと」
 コーラサワーに飯を食わせ、皆のところに連れていく。
そして、『捕虜』を尋問する。
予想外の展開で確保した、『捕虜』という大きな駒をどう活かすか、それは、プリベンターの今後の活動に関わってくる。
いや、プリベンターだけではない。
転がり次第では、地球規模の話になる可能性も否定出来ない。
「ま、とっとと行こうぜ」
「あいよ」
 デュオはエレベーターの前で脚を止め、下の階に降りる為にボタンを押した。
しばらくしてドアが開き、デュオとコーラサワーはエレベーターの中に入った。
「迅速に食えよ」
「軍隊育ちだぞ、早食いなら自信がある」
「……いや、やっぱりある程度周りを気にして食え」
「はあ?」
「一応、他人がいるしな、カフェには」
 一分一秒で事態が変わるわけもない。
本気で急ぐなら、やっぱりコーラサワーなんぞはほっておかれるわけで、彼を参加させる分、まだ余裕があるということなのだ。
「コーヒーのおかわりは一杯までな」
「砂糖は何個まで、とか言うなよ」
「そこまでは言わん」
 
 だが、デュオ・マックスウェルは知る由もない。
彼らが乗ったエレベーターは下から来たのだが、そこに先程まで誰が乗っていたのかを。
今、二人が踏んでいるエレベーターの床、そこをつい数分前まで、『捕虜』が一人で踏んでいたのを。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
713名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/16(金) 00:09:20.83 ID:???
 体調不良で早めに出先から帰ってきたので投下しますコンバンハ。
浦期僕馬。
後任がロペスってどういうことだよ山本さーん!
あと、今更ながら「Frozen Teardrop」に少し目を通しました。
まあこの物語でクロス対象はあくまでEWまでということで。
 今月中にあと二回、最低でも一回の投下を目指します。ではサヨウナラ。




 今でもセガを信じてます。
創造は生命。
714通常の名無しさんの3倍:2011/12/16(金) 22:26:32.67 ID:???
>>713
土曜日さん乙!!
サターンとドリキャスは今でも持ってます!!

あと、リジェネは逃走した?
715通常の名無しさんの3倍:2011/12/17(土) 20:06:19.08 ID:???
>>713
土曜日氏、乙〜
コーラとデュオの掛け合いはやはり漫才みたいで良いですねw
リジェネは脱走したのかな?

土曜日氏には悪いかもしれませんが、セガは現在の様にソフトメーカーで有り続けて欲しいです
ハード関係無くセガのソフトが楽しめれば問題無いですし
716通常の名無しさんの3倍:2011/12/19(月) 23:00:26.97 ID:???
保守ウー
717通常の名無しさんの3倍:2011/12/21(水) 22:19:53.37 ID:???
保守ワー
718通常の名無しさんの3倍:2011/12/23(金) 19:52:30.94 ID:???
保守ウー
719通常の名無しさんの3倍:2011/12/25(日) 09:58:25.91 ID:???
保守ワー
720土曜日@スマホ:2011/12/26(月) 20:23:39.41 ID:???
やっぱり年内に二回は無理っぽいです。
大晦日までには投下します。
721通常の名無しさんの3倍:2011/12/27(火) 21:47:03.37 ID:???
>>720
待ってます!!
722通常の名無しさんの3倍:2011/12/29(木) 22:49:43.05 ID:???
保守ウー
723不定期って? 知らんがな:2011/12/31(土) 09:17:43.90 ID:???
そもそも、コーラサワーの存在ってなんぞというのはガンダム学会においては
重大かつ最大のテ−マである。
諸説あるが大きく分けて3つの学説が多数を形成している。
1.狂言廻し
2.稀代のサヴァイヴァー
3.神を倒せしもの「ラグナロック・ガイ」
1については同類にオレンジやマシュマーがいるが、彼らに比べて存在感がありすぎる
下手をいや打たなくても主人公を超越してしまうところがあることから、1は一部しか
見ていないといえるだろう。
2はあの不死身ともいえる帰還方法の数々や運の強さ、最後は(本筋ではエリート准将を射止める)
幸せそのものを体現している。
しかし、それにしては、サヴァイヴァーと呼ぶにしては禁欲的なところがまるっきりないこと、
あまりにもなにも考えてなくて、本来のイメージから遠い。
よって2も一部しかとらえてない。
3は最近でてきたもので、あの神がかり的な運の良さはあらゆる
幸福の女神を虜にしている何かを持っているとしかいいようがない。
彼は神をも超越し、倒せる存在であるというものである。
だが、その名称のもととなった岡崎つぐお氏の同名の主人公は、
同じ軍人ではあるものの、悲しみや絶望、怒りを一身に抱えた
ものであり、コーラサワーとは対極の存在と言っていい。
そうなると、コーラはコーラであり、天上天下唯我独尊といってもいい存在
としかいいようがない。
これからもコーラはコーラでありつづけるだろう。
__________________________________

お久しぶりでございます。m(__)m
今日は学術論文風に書いてみましたがいかがだったでしょうか。
土曜日氏の精力的な執筆には圧倒されますが、こちらはぎなぎなと
末席を汚しさせていただきます。
それでは皆様よいお年をお迎えください。
724名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/31(土) 21:43:58.86 ID:???
 新機動炭酸コーラサワー・年末スペシャル

【 絶  対  に  ツ  ッ  コ  ン  で  は  イ  ケ  な  い  プ  リ  ベ  ン  タ  ー 】


 ※特別編であり、本編とは一切合財全くどこにも全然本当に関係がございません。
725名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/31(土) 21:48:16.69 ID:???
 プリベンターは地球の平和を裏から守る組織である。
言わば隠密同心、死して屍拾う者無し、優秀な戦士のみが集う部隊なのだ。
その選ばれし者として、現在プリベンターに所属するのは、かつてOZを相手に敢然と立ち向かったガンダムパイロットの少年達、
そして旧ユニオンのMSWADのエース二人、同じく旧AEUのエース一人といった面々。
MS(モビルスーツ)が廃止された今も、操縦の技量だけなら、間違いなく世界最強と言えるだろう。
 だが、こういった組織に危険はつきもの。
いつ何時、不幸な事故に巻き込まれるかわからない。
その為、常に新戦力の獲得を図る必要がある。
だがそこは天下のプリベンター、生半可な人材では務まるはずもない。
プリベンター入隊には、非常に難度の高い試験が待ち構えているのだ―――


 ◆ ◆ ◆

「はじめまして。貴方が入隊希望の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)ね」
「は、はい」
 カチコチに固まっている入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)にチラと目をやると、
すぐにプリベンターの現場リーダー、サリィ・ポォはクリップボードに挟まれた書類に視線を落とした。
レディ・アンから回ってきた入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)の詳細なデータがそこに記されている。
一週間前にこの書類が回ってきてから、何度も目を通しているのでデータそのものは頭の中に入っている。
とは言え、やはり本人を前に置いて、データとの照合を行う必要がある。
 なお、サリィは今、眼鏡をかけている。
なお、彼女は特に視力が不自由ではない。
なお、眼鏡の角は尖っている。
「どこの軍にも属せず、私設部隊の一員としてOZに抵抗してきた、とあるけど、これは本当?」
「はい、小さな部隊ですけれど」
「ふーん……」
 サリィはボールペンの先っぽを、トントンとクリップボードで小突いた。
「レディから試験の話は聞いているわね?」
「はい」
「なら、よろしい」
「ですが……」
「ん? 何か質問が?」
 入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)はやや背中を曲げると、ハンカチを取り出し、頬の辺りを拭いた。
特に汗が出ていたわけではないが、やはり緊張しているのだろう。
「あの、試験についてなんですが」
「試験について?」
「ええと、『絶対にツッコンではいけない』とレディ・アン女史から言われまして……。どういう意味なんでしょう」
「……」
 キラリ、とサリィの眼鏡のレンズが光った。
同時にオデコも光ったようであるが、これは入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)の錯覚であったかもしれない。
「文字通りよ」
「文字通りって……」
「プリベンターはセカイのヘイワを守りアクとタタカウ組織です」
「それは存じております」
「その為、メンバーのパーソナルデータは公表されていません」
「え、でもガンダムパイロット達は有名……」
 入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)がそう言葉を返した、まさにその瞬間。
726名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/31(土) 21:52:07.88 ID:???
 ガ  ゴ  ン

彼の頭上から、大きなタライが落ちてきて、彼の頭頂部に大きな音を立ててヒットした。
「ぐわっ!」
「はい、マイナス1点」
「ぐぬおおおお……」
 頭を抱えて転げまわる入隊希望者○○○(お好きな名前をお入れ下さい)。
彼にとってはまさに予想しなかった一撃だった。
「こういう意味よ、『絶対にツッコンではいけない』というのは」
「な……なんですって?」
 入隊希望者○○○(お好きな名前をお入れ下さい)は呆然とした。
誰が思うものか、ツッコンだら上からタライが降ってくるなどと。
「プリベンターの任務は常に危険と隣り合わせです。不条理な場面にも何度も遭遇するでしょう」
「そ、それはそうでしょうけど」
「乗り切るためには、冷静さを保つことが大切。いちいち声に出して不満や不平、ツッコミを入れている暇などありません」
「いや、ですけれど」
「従って、入隊試験は『どのようなことにも声を出してツッコまない』です。キラリ」
「キラリって何で」
 
 ガ  ゴ  ン

「マイナス2点」
「ぐおおおお……」
 入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)、再度頭を抱える。
「つうか、天井にどんな仕掛けが……」

 ガ  ゴ  ン

「マイナス3点」
「……ううっ」
 これはヤバイ。
もう下手に喋ることが出来ないではないか。
早くも入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)、進退窮まった感じがある。
「ではまず、現在のメンバーの紹介から行います。キラリ」
「……」
 入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)は口をモゴモゴと動かしたが、何とかそれで留まった。
余計なツッコミを入れてはイケナイというのなら、黙っていれば良いだけの話。
耐えてやろうじゃないか、生半可な覚悟にプリベンターで働こうと思ったわけじゃないのだ。
「まず、グラハム・エーカー。彼はかつてユニオンの超エースでした」
「知っています。MSWADの隊長を務め、『グラハム・スペシャル』というMSの空中戦テクニックを創始した方ですね」
「よく知っているわね」
「有名ですから!」

 ガ  ゴ  ン
727通常の名無しさんの3倍:2011/12/31(土) 21:53:01.92 ID:???
>>723
乙です!!
良いお年を!!
728名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/31(土) 21:57:27.56 ID:???
「マイナス4点」
「ぐがが、がが。な、何故……」
「私はさっき言いました。『メンバーのパーソナルデータは公開されていません』と。キラリ」
「いやだって」

 ガ  ゴ  ン

「マイナス5点」
「……はい、か、勘違いだったみたいれふ」
「よろしい」
 進むも地獄、戻るも地獄、留まるも地獄。
プリベンターに入るということはこれほどまでに過酷なのか。
入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)の頭は、もうすでにライフがゼロに近い。
頭蓋骨が変形しないまでも、毛根死亡でジダンヘッドになりかねない。
「次に、パトリック・コーラサワー。元AEUのエースでした」
「……」
「彼の名前をどう思いますか?」
「……」
「どう思いますか?」
「……」
「 ど う 思 い ま す か ? 」
「……素晴らしい名前だと、思います」

 ガ  ゴ  ン

「マイナス6点」
「ふぐぐぐ……!」
「心無いお世辞もツッコミとみなします。キラリ」
「そ、そんな……」

 ガ  ゴ  ン
729名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/31(土) 21:58:40.81 ID:???
「マイナス7点」
「口ごたえもツッコミとみなします。キラリ」
 もうどうすりゃいいのか。
輸送艦一隻だけでラインハ○ト・フォン・ローエン○ラムとヤン・○ェンリーの共同軍五万隻と戦えと言っているようなもんである。
ガンダムで言うと迷いを捨てたシャ○・アズナブルのサザビーと最盛期のア○ロ・レイのνガンダムと旧ザクでガチバトル。
それすなわち、不可能。
「なお、マイナスポイントが10ごとを超える度に落ちてくるものがバージョンアップします」
「へ?」
 目が点になる入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)。
「最終的に100点になると」
「さ、最終的に100点になると?」
「メメントモリになります」
「へ」
 メメントモリとは、皆さんご存知、オービタルリングにある超巨大電子レーザー砲。
タライやケツバット、タイキック如きとは規模が違う。
「え、えええええ!?」
「言っておきますが、プリベンターに二言はありません。ヤルと言ったら必ずヤリます。キラリ」
「いや、ちょ、ま、それはおかし」

 ガ  ゴ  ン

「マイナス8点」
「へぐぐぐぐぐ……」
「速く立ちあがりなさい。素早い復帰もプリベンターのメンバーに必須です」
「……は、はい」
「さて、それではここで」
「こ、ここで?」
「その件のパトリック・コーラサワーに登場してもらいます」
「は?」
 再び入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)、目が点。
「はい、あちらのドアに注目」
「へ、え?」
 入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)がドアに顔を向けた瞬間。
勢いよくドアが開くと、旧AEUの軍服に身を包んだ一人の男が飛び出てきた。
「よう! 俺がAEUのスペシャルエース! 模擬戦で! 2000回で! 不死身のパトリック・コーラサワーだ!」
「お? あ? ど?」
 展開に全く着いていけていない入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)。
さっきから目が点が連続である。
そのうち悪魔合体でもするかもしれない。
730名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/31(土) 22:00:47.44 ID:???
「では今から、彼の自慢話を聞いてもらいます」
「へあっ?」
「さあ、ツッコミたい誘惑に耐えられるかしら? キラリ」
「え、え、え、え?」
「よっしゃいくぞウラナリビョウタンの若造!」
「あ、あ、あ、あ?」
「ちなみに、普段彼にツッコミを入れているプリベンターの某メンバーは、一日に約250回はツッコンでいます。キラリ」
「へあー!?」
「あれは俺がAEUにいた頃だった。そこで嫁さんと出会ったんだが、天才戦術予報士と呼ばれた人で……」
「す、すいませんっ! 辞退しますっ! も、もうプリベンターはいいですっ!」
「……そこで俺は答えたね、『はい、無いです!』と。だってそうだろう、世界の行く末より己の恋路が大切……」
「う、うわあ、ツッコミたい! 激しくツッコミたい!」
「さあ、耐えきれるかしら? キラリ」
「う、うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
 入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)は身をひるがえすと、一目散にドアに向かって駆けた。
逃げ出す為に。
が、そこはすでに固くロックされていることを、彼はすぐに知ることになる。

 ◆ ◆ ◆

 
「はじめまして。貴方が入社希望の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)ね」
「は、はい」
 カチコチに固まっている入社希望者の○○○(お好きな名前をおトイレ下さい)と目をやると、
すぐにマイスター運送の社長、スメラギ・李・ノリエガはクリップボードに挟まれた書類に視線を落とした。
フェルト・グレイスから回ってきた入隊希望者の○○○おすぎの兄はピーコと覚えて下さい)の詳細なデータがそこに記されている。
一週間前にこの書類が回ってきてから、何度も目を通しているのでデータそのものは頭の中に入っている。
とは言え、やはり本人を前に置いて、データとの照合を行う必要がある。
 なお、スメラギは今、眼鏡をかけている。
なお、彼女は特に視力が不自由ではない。
なお、眼鏡はサングラスである。
「どこの軍にも属せず、私設部隊の一員としてOZに抵抗してきた、プリベンターにも入隊希望を出したけど辞退した、とあるけど、これは本当?」
「はい」
「ふーん……」
 スメラギはボールペンの先っぽを、トントンとクリップボードで小突いた。
「プリベンターにはどうして入らなかったの?」
「いや、ええと、その、落ちまして……し、試験に」
「ああそう。で、フェルトから試験の話は聞いているわね?」
「はい」
「なら、よろしい。うちの入社試験は、絶対にツッコンでは―――」



 プリベンターとパトリック・コーラサワーと入隊希望者の○○○(お好きな名前をお入れ下さい)の心の旅は大晦日―――
731名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2011/12/31(土) 22:02:09.00 ID:???
不定期氏お疲れ様です。
では皆様、良いお年をお迎え下さい。




来年こそ終わることが出来たら良いなあ……。
732>>727:2011/12/31(土) 22:21:08.66 ID:???
>>731
土曜日さん乙です!!
あと、リロードを忘れて割り込んでしまいました、すみません!!

そう言えば、元ネタが現在放送中ですねw

良いお年を!!
733 【凶】 :2012/01/01(日) 11:52:38.35 ID:???
>>731
土曜日氏乙!!

そして、明けましておめでとう!!
734通常の名無しさんの3倍:2012/01/03(火) 12:00:01.19 ID:???
保守ワー
735通常の名無しさんの3倍:2012/01/05(木) 18:55:31.26 ID:???
保守ウー
736土曜日@スマホ:2012/01/07(土) 15:23:31.12 ID:???
明けましておめでとうございます。
次回は来週にて。
737通常の名無しさんの3倍:2012/01/07(土) 22:57:34.37 ID:???
>>736
あけおめ〜
738不定期って? 知らんがな:2012/01/09(月) 07:02:21.09 ID:???
おめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。
739土曜日@スマホ:2012/01/11(水) 00:49:05.01 ID:???
どうも。
どうやら配線が断線でもしたらしく、PCが「サーバが見つかりません」状態になってしまいました。
ルーターの認識はしており、かつ電話本体が繋がらないので、電源コードか電話線か何かが間違い無く壊れてます。
スマホから投下するわけにもいかないので、修理が終わるまで続きはお待ちください。
まことにすいません。
740通常の名無しさんの3倍:2012/01/11(水) 21:42:42.03 ID:???
>>739
了解しました、待ってます
741通常の名無しさんの3倍:2012/01/13(金) 21:33:48.15 ID:???



+記者「ばぐた」が嫌儲のスレをパクる→ハム速がおいしくアフィリエイト
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1326328648/


+記者「ばぐた」が嫌儲のスレをパクる→ハム速がおいしくアフィリエイト
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1326328648/


742通常の名無しさんの3倍:2012/01/15(日) 15:40:51.97 ID:???
保守ワー
743土曜日@スマホ:2012/01/15(日) 19:38:44.98 ID:???
今週末までには投下できそうです。遅れてすいません。
744通常の名無しさんの3倍:2012/01/15(日) 20:26:53.88 ID:???
>>743
お待ちしております
745通常の名無しさんの3倍:2012/01/17(火) 21:57:47.65 ID:???
保守ウー
746通常の名無しさんの3倍:2012/01/19(木) 21:46:54.47 ID:???
保守ワー
747通常の名無しさんの3倍:2012/01/21(土) 19:08:02.36 ID:???
保守ウー
748名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/01/21(土) 21:48:31.60 ID:???
 自ら動いて敵を討つは下策なり。
敵を動かして退かせることこそ上策とせよ。

 ……と、古の時代の軍師は言ったとか言わなかったとか。
戦況を打開するに、自らが積極的に動いて敵を駆逐するのが良い策ではなく、
敵が自滅するように仕向けることが良い策なのだ、ということらしい。
極端な話ではあるが、間違いでは決してない。
簡単に出来ることでもないが、敵を掌の上に乗せることこそが結局は「最上の勝利」を得るのに必要なのだ。

 ◆ ◆ ◆

「で、結局逃げられてるんじゃねーか!」
「落ちつけよオスニモ」
「オスニモつーな!」
「とにかくうるさいぞ、オスニモ」
「黙っていろ、オスニモ」
「何でもう定着してるんだよ!?」
 オスニモについては前々回辺りを参照のこと。
で、オスニモさんことパトリック・コーラサワーは只今絶賛激怒中。
何故ならば。
「捕虜に簡単に逃げられてどーすんだよ!」
 というわけであった。
や、オスニモ呼ばわりにもちょっと、いやかなり怒ってはいるが。
「おい、オイスター運送とやら! 説明しろ!」
「オイスターじゃなくてマイスターな」
「それに説明して理解出来るか? お前の頭で」
 容赦のないデュオ・マックスウェルと張五飛のツッコミ。
彼らを含め、プリベンターもマイスター運送もビリー・カタギリも絹江・クロスロードも、皆落ち着いている。
ギャーギャーと口から火を吹いているのはコーラサワーだけである。
「なあ、オッパイのねーちゃん!」
「えらく直接的な呼び方ねえ」
 無論、落ち着いていられるには理由がある。
「ねえ、本当にこの人はプリベンターのメンバーなの? サリィさん」
「認めたくないけど本当です」
「そう、レディ・アンもなかなか思い切ったことをしたわねえ」
 コーラサワーの噛みつきにも、マイスター運送の社長であるスメラギ・李・ノリエガは飄々とした様子。
彼女は30を少し越したぐらいで、コーラサワーより年下であるが、
やっぱりと言うか何と言うか、どちらが「大人」か、と問えば圧倒的にスメラギであると言わざるを得ない。
749名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/01/21(土) 21:51:29.03 ID:???
「何だ? オッパイのねーちゃんはレディ・アンと知り合いなのか?」
「そうよ」
「そうなのか」
「ついでに言えば、貴方の奥さんともね」
「へ」
 固まるコーラサワー。
「マジで?」
「マジで、よ」
 コーラサワーの妻は、かつてAEU軍で天才戦術予報士と呼ばれたカティ・マネキンさんである。
「……どういう関係」
「大学の同窓」
 再び固まるコーラサワー。
傍若無人な彼において、唯一と呼べる弱点が奥さんの存在。
怖いからではなく、その逆でベッタベタに惚れているから。
カティ・マネキンの言うことなら何でも信じる(カティが間違うことなんぞ滅多にないが)男、それがコーラサワーなのだ。
嫁さんを心の底から信じきる、と表現すればいかにも良夫に聞こえるが、実際はそーではないのは皆さんご存知の通り。
ま、カティが妻でいろんな意味で本当に良かったと言える。
「……それでは説明してくれ。どういうことなのか」
 声の調子がだだ下がりなコーラサワー。
嫁さんの知人、というお札はかなり彼に効いた様子。
無理もないが。
「えらくトーンが下がったなあ、この男」
「男はそういうもんだよな、ライル」
「えーっと兄さん、それはどういう意味だよ」
 そんなコーラサワーを見て、ボソボソと言葉を交わすマイスター運送のディランディ兄弟。
ロックオン一号ことニール・ディランディが言う通り、男ってのはそんなもんである。
嫁や恋人の同性の旧友には何故かかしこまってしまう。
特に惚れてりゃ惚れてる程に、「下手なことは出来ない」という心理が働いちゃうのだ。
「捕虜を逃がしたのは彼女、スメラギさんの発案よ」
 間を取り持つようにサリィが言葉を挟む。
こうでもしないと、なかなか話が進まない。
ここら辺りの呼吸は、コーラサワーとそれなりに付き合いがあるからこそである。
デュオが「コーラサワー取り扱い二級」なら、彼女は四級くらいか。
ちなみに一級はもちのロンで嫁さん。
「ある程度はサリィさんにも話したけど……プリベンターの皆さんの『敵』は、私達マイスター運送と関わりが深いのよ」
「で?」
「詳しく話すと長くなるけど、話した方が良いかしら?」
「……いや、手短に頼む」
「じゃ、ここは私を信じて任せて。以上」
「手短過ぎだろ、ってかそりゃ説明になってないだろオイ」
「だから、話すと長くなるから、物凄く簡潔にしてみたんだけれど」
「それでも短過ぎだ。全然わからんぞ」
「……長く話しても全然わからんくせに」
 最後の台詞はデュオのもの。
この言葉に、コーラサワーを除く全プリベンターのメンバーが小さく頷いた。
750名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/01/21(土) 21:54:34.00 ID:???
「もう少し説明すると、捕虜は逃げられたのではなくて、逃がしたのよ」
「逃が……した?」
「そう」
「何でだ? オッパイのねーちゃん」
「その呼び方をどうにかしてほしいけれど……。とにかく、その方が都合が良いからよ」
「都合が良い?」
「ね? ティエリア」
「ええ」
 スメラギの視線の先で、ティエリアと呼ばれた眼鏡をかけた人物がコクリと首を縦に動かす。
男性らしい服装をしているが、容姿は女性にも見える。
性別はどちらであれ、その美貌はどこか「人らしからぬ」印象を他者に与える。
「……」
 さすがのコーラサワーも、ティエリアをどう呼んだらいいかわからない感じである。
取りあえずは「女性ではない」と判断したらしいが、いつもの「あだ名呼び」が出てこないところを見ると、
さすがの彼も俄かにティエリアという人物を形容出来ないでいるらしい。
「せっかく手に入れた駒を、無策で手放すなど万死に値する行為」
「バンシー?」
 それは泣き声が不吉な妖精。
「きちんと『細工』はしてある」
「えーと、いや、その、だから結局どういう……」
「相手の『駒』がどう動くか、それがわかれば良い」
「いや、だからだな」
「そうすれば、こちらがうつべき手も自然と増える。そう、このティエリア・アーデが全てを見て―――」
「そして私、スメラギ・李・ノリエガが策を出す」
「おい、聞けよ二人とも」
 コーラサワー、完全おいてきぼり。
正味の話、スメラギからある程度の説明を受けた他のプリベンターメンバーだって、完全には理解しきれていない。
スメラギとティエリアが出した策を、一度聞いただけでそれなりに理解出来たのは、
この場にいる面子なら、ビリー・カタギリと刹那・F・セイエイくらいである
ビリーその天才性で、刹那はカンによって、だが。
「まあ、そういうことよ。ここは全面的に信じるしかないってこと」
「それで良いのかよ、オデコ姉ちゃん一号」
「良しとしておくのよ。無論、きちんとした説明はおいおいしてもらうけれど」
 サリィ・ポォにしても、マイスター運送に乗せられていると思わないでもない。
だが、それでもここは「乗っておく」べきだと彼女は判断した。
もちろん、主導権を完全にマイスター運送に、スメラギに渡すつもりはさらさら無いが……。
「だーっ、結局どうしたら良いんだよ! 俺は!」
「黙って働け、ってこった」
「黙ってられるか! 全然わからんのに!」
「おーいヒルデ、いつものようにやっちゃってくれ」
「な、おま、やめろ、何だその百人分くらい玉子焼きが作れそうな巨大フライパンは! ふぎゃー!」
 数秒後、大きな金属音が部屋中に響いた。
あの刹那が口を丸く開けて思わず驚くくらいの大きさで。

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅はフライパン―――
751名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/01/21(土) 21:55:45.47 ID:???
 コンバンハ。
改めて明けましておめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願い致します。

目標は年内完結、今度こそ絶対に……。
752通常の名無しさんの3倍:2012/01/21(土) 22:53:58.04 ID:???
>>751
土曜日さん乙!!
リジェネはわざと逃がしたのか、全ては作戦というわけですね

次回も楽しみにしてます!!
753通常の名無しさんの3倍:2012/01/23(月) 21:49:24.27 ID:???
>>751
土曜日氏乙〜

>目標は年内完結、今度こそ絶対に……。

頑張って!!
754通常の名無しさんの3倍:2012/01/25(水) 22:17:14.42 ID:???
保守ワー
755通常の名無しさんの3倍:2012/01/27(金) 23:11:53.83 ID:???
保守ウー
756通常の名無しさんの3倍:2012/01/29(日) 11:36:48.45 ID:???
保守ワー
757通常の名無しさんの3倍:2012/01/31(火) 22:12:16.38 ID:???
保守ウー
758通常の名無しさんの3倍:2012/02/02(木) 22:20:55.00 ID:???
保守ワー
759名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/02/03(金) 22:23:23.77 ID:???
次回は来週末までに投下します。
スマホがなんかアク禁に巻き込まれてます……。
760通常の名無しさんの3倍:2012/02/04(土) 22:33:12.21 ID:???
>>759
了解です
761通常の名無しさんの3倍:2012/02/06(月) 22:16:05.66 ID:???
保守ウー
762通常の名無しさんの3倍:2012/02/08(水) 22:29:41.43 ID:???
保守ワー
763名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/02/10(金) 19:46:42.87 ID:???
インフルエンザに罹ってしまった為、数日投下が遅れるかもしれません。
申し訳ありません。
764通常の名無しさんの3倍:2012/02/10(金) 19:49:31.30 ID:???
>>763
了解です
土曜氏さん、どうぞお大事に!
765通常の名無しさんの3倍:2012/02/10(金) 22:41:55.25 ID:???
>>763
お大事に…
最近流行ってますからねえ
766通常の名無しさんの3倍:2012/02/12(日) 11:58:09.76 ID:???
保守ウー
767通常の名無しさんの3倍:2012/02/14(火) 22:06:59.74 ID:???
保守ワー
768通常の名無しさんの3倍:2012/02/16(木) 22:26:03.84 ID:???
保守ウー
769名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/02/18(土) 22:14:51.31 ID:???
 戦争で一人の兵士が捕虜として敵軍に捕まった。
処刑を覚悟したその兵士だが、彼の前に現れた敵の司令官は彼にこう告げた。
縄を解くから好きにするが良い、と。
兵士は素直に喜んだ。
そして、次に悩んだ。
どうして敵はこのようなことをするのか。
寛容の精神からであろうか。
しかし、そうでないとしたら、裏があるはずである。
敵の陣から出た瞬間に、後ろから撃たれるかもしれない。
考え過ぎなのであろうか。
おとなしく、ここを去るべきなのだろうか。
だが、どう思いを巡らせようと、採るべき道は一つである。
このまま敵陣に留まることは選択肢に入らない。
ならば、逃げるしかない。
そう、逃げるしかないのだ。
言われた通りに。

 ◆ ◆ ◆

「おー、痛え」
「痛え、でよく済んだな、しかし」
 額の辺りをハンカチでさするパトリック・コーラサワーの隣で、
デュオ・マックスウェルは呆れたように呟いた。
つい先程、コーラサワーはゆうに百人分は玉子焼きが作れそうな大きさのフライパンで思いっきり頭をぶっ叩かれたのだ。
もちろん、ぶちかましたのはヒルデ・シュバイカーさんである。
で、普通の人なら昏倒するレベルの衝撃であったにも関わらず、
コーラサワーはタンコブひとつ作らず、こうして「痛い」で済んでいる。
この頑丈さは、最早人間の域を越えている。
コイツは人間ではなく、「コーラサワー」という人間に似た別の生き物なのではないか。
最近そう考えたりもするデュオである。
「しかしあのデコ娘、どこにあんな大きさのフライパンを隠してたんだ?」
「女には秘密が多いんだよ」
「何をわかったような口きいてやがる。女のことなら俺に知らないことはない」
「あーそうですかそうですか」
 正味の話、ヒルデのフライパンについてはデュオもあまりツッコむ気が起きない。
そういうもんだ、で済ませている。
理解出来ないことは悩まない、最近そう考えたりもするデュオである。
770名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/02/18(土) 22:16:15.77 ID:???
「……で、よ」
「何だよ」
「話の続きなんだがよ」
「だから何だよ」
「俺は何をすれば良いんだ?」
「知らん」
 マイスター運送のスメラギ・李・ノリエガとティエリア・アーデ。
この二人が策を仕掛けて、捕虜を逃がしたのは前回の通り。
プリベンターの現場リーダーであるサリィ・ポォがそれを認めている以上、デュオ達に何かしらの選択権は無い。
ただ事の推移を見守り、スメラギ達の策に動きがあった時に、それに対応するだけである。
主導権がこちら側に無いことにいささかの不満はあるが、
とにもかくにも、決まってしまったことに今更口出しすることも出来ない。
「あのオッパイがでかいねーちゃんの作戦てのは、成功するのか?」
「知らん」
「成功したとして、どういう風に俺達は動いたら良いんだ?」
「知らん」
「結局どうなるんだ」
「知らん」
「何だみつあみおさげ、知らん知らん知らんってお前はシラン星のシラン星人か!」
「わかんねーんだから知らんって言う他ねーだろ」
 むくれるコーラサワーだが、実際、彼の気持ちをデュオは理解出来ないでもない。
どうしたら良いか、はデュオ自身も理解していないからだ。
ただわかっていることは、敵にあのアリー・アル・サーシェスがいると思われる限り、
最後の局面でMS(ミカンスーツ)でのバトルは避けられない。
マイスター運送に戦闘力と言えるものが無い限り、敵にトドメを刺すのはプリベンターの役目である。
今回はビリー・カタギリも側にいることだし、メンテナンスで問題を抱えることはない。
「やる時には必ずやる、それだけさ」
「だからそのやる時って何時なんだよ」
「知らん」
「またそれか」
「どうしようもないだろ。その少ない脳味噌で何とか理解しろよ」
「少なくねーよ」
「ああそうかい」
 ヒイロ・ユイも張五飛も、カトル・ラバーバ・ウィナーもトロワ・バートンも、今のところ意見らしきものはサリィに出してはいない。
おそらく、デュオと同じ考えなのであろう。
五飛やヒイロがよくスメラギとティエリアにつっかかっていかなかったものだ、と思うが、
まあ怒ったところで済んでしまったものは仕方が無いわけで。
ただ、マイスター運送にずっとハンドルを渡しっぱなしにするわけにもいかない。
それはサリィが、そして何となればレディ・アンがどうにかするであろう。
771名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/02/18(土) 22:17:07.21 ID:???
「ま、もうちっとばかりあの運送屋連と親睦を深める必要があるかもな」
「親睦? パーティでもするのかよ」
「そーいう意味じゃねーよ。……それなりに知っておく必要がある、ってことさ」
「男どもについては知りたくねーな。オッパイのねーちゃんを始めとした女性連のことは知っておきたいが」
「おいコラ妻帯者だろお前、余計なことすんなよ」
「そーいう意味じゃねーよ。……スリーサイズくらいは別に知ってもかまわんだろ、ってことだ」
「だからそれが余計なことなんだよ。そんなの聞いたりしたらセクハラだぞ」
「ふっ、このスペシャル様を舐めるなよ。一目見ただけでスリーサイズなんぞすぐに測定出来るんだよ、俺は」
「どんな目だよ」
「ちなみにあのオッパイのねーちゃんのスリーサイズはなあ……」
「言わんでいいわい!」
 やっぱりコイツはコーラサワー星から来たコーラサワー星人に違いない。
そう思ったりするデュオであった。

 ◆ ◆ ◆

 目の前を、多くの人が通り過ぎていく。
薄い赤銅色の肌の者、白い肌の者、黒い肌の者。
人種は実に雑多だ。
 それだけ、この街が解放的で、平和であるということだ。
バザールの真ん中、小さな露店のベンチに座りながら、リジェネ・レジェッタはそう思った。
手にした陶製の容器からは、ほんのりと湯気が立っている。
その容器も、そして湯気の元である茶も安物ではあったが、不思議と不快な気持にはリジェネはならなかった。
さて、これからどうするべきか。
先程からその思案をしているのだが、なかなか良い案がまとまらない。
素直にこのまま、リボンズ達の所へ帰るべきか。
はたまた、このまま単独で行動するべきか。
それとも―――
 露店の奥から、一人の少女が出てきて、リジェネに茶のお代りを勧めてきた。
おそらく店主の娘なのであろうが、それを丁重に断りつつ、リジェネの思考は回転を続ける。
何故、マイスター運送とプリベンターは自分を解放したのか。
何の考えも無しに捕虜を解き放つわけがない。
絶対に、何かしらの裏がある。
772名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/02/18(土) 22:17:58.85 ID:???
 そしてもう一つ。
自分に解放を告げたあの人物。
自分の同異体、ティエリア・アーデ。
彼はイノベイター、同じ『存在』。
本来なら、リボンズ側にいてもおかしくないはずである。
彼の目的は何なのか。
「わからないことだらけ、というのがこれ程までに不安だとはね……」
 味方であるはずのリボンズ、その他のイノベイター達と脳量子波が繋がらない。
リボンズ側からシャットしており、これはリジェネにしてみれば、リボンズの裏切りに他ならない。
もっとも、リボンズは何かしらの言い訳を用意しているであろうが……。
「このまま帰る、というわけにはいかないね……」
 このままおめおめと戻れば、間違いなくイノベイター内で彼の立場は後退する。
リボンズの計画を乗っ取るどころではない、下手をすればこのミスを理由に彼に排除されるかもしれない。
トリニティ運送やASSを利用するという手もあるが、脳量子波による情報収集を行えない以上、
彼らを動かすだけの材料を手に入れることが出来ない。
となると道は一つしかない、独力で状況を打破し、自分のところに手綱を強引に引き寄せるしかない。
「そんなことが……いや」
 そんなことが可能なのか、と呟きかけて、リジェネは止めた。
もともと頼むべきは己の力ではないか、そう覚悟していたからこそ、
リボンズに従うのを良しとせず、計画の乗っ取りを考えたのではないのか。
ならばこそ、リボンズとのラインが切れた今は、ある意味絶好の機会なのではないか?
「やるだけ、か」
 リジェネは席から立ちあがった。
店主に代金を払うと、露店を出る。
捕虜になった際に金銭を没収されなかったのは幸いだった。
「見ているがいいさ、リボンズ。見ているがいいさ、マイスター運送」
 そのどちらにも策があろう。
だが、必ずその策を乗り越えて、勝ちを拾ってみせる。
「見ているがいいさ、プリベンター」
 頼るべきは自分のみ。
そして勝利を掴むに値する力を、自分は持っている。
持っているはずである。
このままどこかへ逃げる、という選択肢は無い。
あるわけがないのだ、リジェネ・レジェッタには。

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
773名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/02/18(土) 22:19:33.44 ID:???
 コンバンハ。
遅れまして申し訳ありませんでした。
皆様もインフルエンザにはご注意下さい。

スレって480KB越えたら保守レスがあっても時間で落ちるんでしたっけ?
もしそうなら続きは新スレが立ってからにしたほうが良いんでしょうか。
774通常の名無しさんの3倍:2012/02/19(日) 20:43:05.39 ID:???
>>773
土曜日さん乙です!!
インフルはもう大丈夫なんですか?

リジェネはやはり何かを企んでるようですね、でも自滅フラグに見えますw
775通常の名無しさんの3倍:2012/02/20(月) 21:57:07.30 ID:???
>>773
土曜日氏乙〜
回復されたようで何より

リジェネはどう見ても、自滅するようにしか見えないw
776通常の名無しさんの3倍:2012/02/22(水) 02:57:34.49 ID:???
保守ワー
777通常の名無しさんの3倍:2012/02/24(金) 02:34:27.76 ID:???
保守ウー
778通常の名無しさんの3倍:2012/02/26(日) 10:52:55.50 ID:???
保守ワー
779 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2012/02/28(火) 00:01:04.40 ID:???
コーラの炭酸割り
780通常の名無しさんの3倍:2012/02/28(火) 02:12:18.37 ID:???
ホットコーラ
781 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2012/02/28(火) 20:55:36.91 ID:???
パンツを脱ぎ
トイレに駆け込んだ。
リック・ドムもびっくりの速さだった。
つぶあんをまるまる5t食べた彼は、
くるしみを堪えていた。
・・・ 
ここのトイレくさっ!! 
おもいをつい声に出してしまう程のスペシャルな彼は、
ラードが好物だった。
サクッと用を足した彼は、
ワクワクしながら
あいするマネキンの元へ帰っていくのだった。
782通常の名無しさんの3倍:2012/02/29(水) 23:30:06.12 ID:???
>>781 基地外氏ね
783通常の名無しさんの3倍:2012/02/29(水) 23:31:14.27 ID:???
>>781 基地外氏ね
784通常の名無しさんの3倍:2012/03/01(木) 02:13:03.25 ID:???
触っちゃ駄目だよ
785通常の名無しさんの3倍:2012/03/01(木) 12:01:40.81 ID:???
縦読みくらいわかってあげようよ
とは思うけど、縦読みにも最低限の礼儀はあると思うわ
これはひどいもん
786通常の名無しさんの3倍:2012/03/01(木) 23:48:52.43 ID:???
続編が待ち遠しいわ
787通常の名無しさんの3倍:2012/03/03(土) 22:08:25.64 ID:???
保守ウー
788通常の名無しさんの3倍:2012/03/05(月) 23:23:57.51 ID:???
保守ワー
789名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/03/06(火) 19:13:05.32 ID:???
次は今週末か次週明け頃にて。
790通常の名無しさんの3倍:2012/03/07(水) 02:35:27.86 ID:???
>>789
了解です
791通常の名無しさんの3倍:2012/03/08(木) 16:36:46.90 ID:???




【社会】 「2ちゃんねる、ネットの健全性損なう」 警察、"アンタッチャブル"だった2ちゃんの元管理人や削除人、関係先強制捜査★12



http://uni.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1331190280/




792通常の名無しさんの3倍:2012/03/09(金) 02:53:28.10 ID:???
保守ウー
793通常の名無しさんの3倍:2012/03/11(日) 10:05:11.35 ID:???
ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、レディ・アンの中の人が…

ご冥福をお祈りいたします…
794名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/03/11(日) 22:24:20.59 ID:???
 石川や
 浜の真砂は
 尽くるとも
 世に盗人の
 種は尽くまじ


 安土桃山時代の大盗賊、石川五右衛門の辞世の句である。
 今ここで俺を処刑しようとも、そして浜の砂が無くなっても、この世から泥棒がいなくなるわけがない……。
とまあ、こんな意味である。
 一口に泥棒と言っても、物を盗むに至る経緯は盗人それぞれである。
生きる為に盗む、趣味の為に盗む、快楽の為に盗む。
だが結局、法に触れる時点でアウトである。
義賊という言葉もあるが、法制度から逸脱した行為を行う以上は、それは悪人なのだ。
己は悪人である、という自覚を持つか否かで、そこにダークヒーロー的な美学も生まれてくる。
例えばルパン三世(そしてその元ネタのアルセーヌ・ルパン)がそうであろう。

 アリー・アル・サーシェスは疑うことなく悪人である。
己の気の向くままにやりたい放題、悪事と言わば言うがいい、だからどうした、てなもんである。
密漁やらデパート襲撃やらやってるので、いささかスケールが小さい気がしないでもないが。
つーか本業は傭兵なんですけどね、この人。
 では、アリーの雇い主であるリボンズ・アルマークはどうか?
彼は悪人なのか?
答えは否であり、正。
何故なら、彼は未だ世界に対して何も成していないからである。
部下達にやらせていることは実際悪事なので、悪人の親玉とは言えるかもしれないが、
しかしそれは、彼の計画の序章に過ぎない。
彼は悪人であるのか、そうでないのか。
その結論は―――いずれ、時代が出すであろう。

 ◆ ◆ ◆
795名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/03/11(日) 22:25:44.66 ID:???
 薄暗い部屋の中、壁にかかった大きなモニターだけが、光をぼうっと発している。
普段ならそのモニターには、リボンズの趣味である昔のB級映画やドラマがかかっているのだが、今はそうではない。
「で、大将。どうすんだい?」
「僕の考えていることがわからないかい? アリー」
「残念だが俺は普通の人間なんでね。大将達みたいにどこでも何でも以心伝心、なんてのは出来ねえさ」
 リボンズ・アルマークとアリー・アル・サーシェス。
二人は向かい合って座っている。
基本、リボンズは自身の前に人を置かない。
それは、彼がアリーの言う通り、『大将』であるからだ。
リボンズを超越した者だけが、彼の前にいるべきなのだ。
アリーがこうしてリボンズと向かい合っているのは、アリーのことをリボンズがそれなりに認めているからである。
無論、「人間という種の中では」という但し書きがつくが。
「皮肉かい?」
「まさか」
「君は察しの良い人間だと思っているんだけどね」
「それこそ皮肉かい、大将?」
「まさか」
 リボンズは全ての生物を見下ろす。
また、そうあるべきだとリボンズ自身が思っている。
アリーのような男からすればそれは鼻につく思考であるはずだが、
不思議とこうして波長が合うのは、心の根底にあるものが近似しているからであろうか。
「いやさ、大切なお仲間が捕まったんだろ? もっと心配しているもんかと思ってさ」
「心配?」
 リボンズの言葉に、侮蔑に近い響きが混ざる。
「それとも、これも想定内ってことかい?」
「想定内という言葉は正しくないね」
「じゃあ、計画のうち、とでも言いなおすか」
「わかっているじゃあないか」
「そりゃどうも」
「やっぱり君は察しが良いよ」
「どうもどうも」
 アリーは笑うと、卓上のグラスを手に取り、中の液体を喉の奥に流し込んだ。
酒ではない。
スポーツドリンクのようだが、おそらくは古い銘柄の物なのだろう。
リボンズの趣味にあうような。
「……ソンナコト・アルケーの整備なんだけどね」
「うん?」
「万全かい?」
「ああ……」
 キラリ、とリボンズの瞳が金色に輝く。
それが何を意味しているのかを、アリーは知っている。
796名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/03/11(日) 22:27:03.38 ID:???
「何時だって暴れることが出来るぜ、大将」
「何よりだ」
 リボンズもまた、グラスに口をつけた。
しばらく、二人の間には無言の時が流れる。
「あと数日、いや、二、三日で―――」
「始まる、いや、始めるってかい?」
「実のところ、今すぐここで気味に命令しても良いんだけどね」
「ほう?」
「だけど、もう少しだけ万全を期したいのさ」
 そりゃまた慎重なこって、とアリーは返すと、肩を一つすくめてみせた。
ここに金ぴかマネージャーことアレハンドロ・コーナーがいたら、おそらく激怒していたことであろう。
貴様、私のマイエンジェルに不遜な態度をとるな、と。
「いや、大将。本当のところはもう始まってるんじゃねえのかい?」
「何でそう思うんだい?」
「ま、察しが良いらしいからねえ、俺は」
「ふふふ……」
 否定も肯定もせず、リボンズは笑った。
「とにかく、君にはきちんと指示を出す。必要な時に、ね」
「じゃあ、その必要な時とやらを待つとしますかね」
「ああ。命令は命令としてね」
「ふふん」
 グイッ、とアリーの口の端がつり上がった。
リボンズが言わんとしていることを理解したからだ。
と言うか、アリーはこれを確認するために、今、リボンズに会いに来たのだ。
命令は命令として。
つまり、命令以外の部分は好きにして良い。
そういう「お墨付き」が欲しかったのだ。
「休暇は終わりぬ、か。そう部下達に言っておくぜ」
「おや、とっくに終わっていただろう? 休暇は」
「違いない」
 アリーは立ちあがった。
もう、ここにいる理由はない。
駒は駒として、大将の差し手通りに動くだけである。
何かの弾みで盤上から飛び出してしまうかもしれないが、それは知ったことではない。
命令以外では好きに動けというのだから。
「君を信用しているよ、アリー・アル・サーシェス」
「俺も信用しているぜ、大将」
 わざとらしく一礼をしてみせると、アリーはゆっくりと部屋から退出していった。
リボンズの瞳はそれを追わなかった。
いつの間にか、その色は金色から元の色に戻っていた。



 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
797名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/03/11(日) 22:27:56.35 ID:???
 短いですがここまでです。
シリアス風味はいずれ来る大団円の為つーことで。
コーラさん大活躍の、ね。

 そして、レディ・アンの中の方のご冥福をお祈り致します。
個人的にはレディ・アン以外だとアウトロースターの鈴鹿が印象に残ってます。
798通常の名無しさんの3倍:2012/03/11(日) 22:55:57.35 ID:???
>>797
土曜日さん乙です!!
次回以降、何か大きな動きがありそうで、続きを楽しみにしてます

>レディ・アンの中の方
クレヨンしんちゃんのななこおねいさんも演じていましたね…
799通常の名無しさんの3倍:2012/03/13(火) 03:27:02.22 ID:???
>>797
土曜日氏乙〜

そろそろアリーが行動に移る頃かな?
次回も期待!!
800通常の名無しさんの3倍:2012/03/15(木) 02:17:30.14 ID:???
保守ワー
801通常の名無しさんの3倍:2012/03/17(土) 20:56:30.28 ID:???
第2次ZのPVでコーラさん出てたね、やられ役でw
本編と同様、カティのアロウズ離反イベントがあるだろうから、その時に味方になってくれるのかな?
802通常の名無しさんの3倍:2012/03/19(月) 22:46:16.96 ID:???
保守ウー
803通常の名無しさんの3倍:2012/03/20(火) 22:20:17.93 ID:???
良スレと見た
804通常の名無しさんの3倍:2012/03/22(木) 22:25:27.12 ID:???
保守ワー
805土曜日@スマホ:2012/03/23(金) 19:18:24.69 ID:???
次回は来週明け〜半ばくらいにはなんとか。
806通常の名無しさんの3倍:2012/03/24(土) 21:06:16.55 ID:???
>>805
待ってます
807通常の名無しさんの3倍:2012/03/26(月) 22:50:31.10 ID:???
保守ウー
808通常の名無しさんの3倍:2012/03/28(水) 22:25:21.36 ID:???
保守ワー
809名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/03/29(木) 22:28:12.87 ID:???
すんません、やはりと言うか何と言うか、
年度末の仕事に追われてしまい、もう少し遅れます
810通常の名無しさんの3倍:2012/03/30(金) 23:28:03.03 ID:???
>>809
了解しました!
811通常の名無しさんの3倍:2012/04/01(日) 18:44:18.76 ID:???
保守ウー
812通常の名無しさんの3倍:2012/04/03(火) 22:01:08.37 ID:???
保守ワー
813通常の名無しさんの3倍:2012/04/05(木) 21:47:00.10 ID:???
保守ウー
814通常の名無しさんの3倍:2012/04/07(土) 21:55:07.15 ID:???
保守ワー
815通常の名無しさんの3倍:2012/04/09(月) 21:39:44.25 ID:???
保守ウー
816名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/04/10(火) 01:45:01.67 ID:???
すいません、ホントすいません。
鬼のように仕事が忙しくて、もう少し遅れます。
817通常の名無しさんの3倍:2012/04/11(水) 21:45:03.30 ID:???
>>816
了解です
818通常の名無しさんの3倍:2012/04/13(金) 21:56:29.42 ID:???
保守ワー
819通常の名無しさんの3倍:2012/04/15(日) 10:55:48.77 ID:???
>>816
待ってます
820通常の名無しさんの3倍:2012/04/17(火) 22:17:49.78 ID:???
保守ウー
821通常の名無しさんの3倍:2012/04/19(木) 22:21:50.99 ID:???
保守ワー
822通常の名無しさんの3倍:2012/04/20(金) 14:00:11.34 ID:???
4月がどうしても忙しいなら、いっそGWあけまで休みということに
したらよくね?
823通常の名無しさんの3倍:2012/04/21(土) 19:49:17.94 ID:???
保守ウー
824通常の名無しさんの3倍:2012/04/23(月) 21:32:22.40 ID:???
再世編でコーラさんは仲間になるのかな?
825通常の名無しさんの3倍:2012/04/23(月) 21:45:07.84 ID:???
>>824
残念ながら操作不可、一度だけ味方NPCとして協力してくれる
ただ、シナリオでの扱いは格段に良くなった…というか破界篇がおかしかっただけだが
ゼクスに尊敬されるコーラサワーは必見
826824:2012/04/23(月) 21:59:20.82 ID:???
>>825
そうなのか、thx
827通常の名無しさんの3倍:2012/04/25(水) 21:43:44.97 ID:???
保守ワー
828通常の名無しさんの3倍:2012/04/27(金) 22:15:04.33 ID:???
保守ウー
829通常の名無しさんの3倍:2012/04/29(日) 14:44:19.53 ID:???
保守ワー
830名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/05/01(火) 01:00:19.49 ID:???
お疲れ様です。
遅れまくってて申し訳ありません。
ただの言い訳ですが、新年度になって異動・新任職員は一カ月は戦力として計算しない職場体制だったので、
残業はあるわ休日出勤はあるわまったく4月は地獄だったぜフゥーハハハー

で、GW中にやっと二日程まるっとした公休が取れましたので、投下できます。
規制に巻き込まれなければ大丈夫です。
ほんとすいませんでした!
831通常の名無しさんの3倍:2012/05/02(水) 22:18:29.18 ID:???
>>830
待ってます!!
832通常の名無しさんの3倍:2012/05/04(金) 19:33:54.38 ID:???
保守ウー
833名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/05/04(金) 23:29:29.72 ID:???
 犯人と刑事、どちらに分があるかって?
そんなの、現行犯でもない限り、犯人の方に決まっている。
刑事ががクリント・イーストウッドなら、M29を撃ちまくっていれば犯人が飛び出てくるだろう。
ピーター・フォークなら、犯人は些細なミスから自滅するだろう。
だが現実は違う。
追う側と追われる側、有利なのは追われる側だ。
追われる側はやろうと思えば、どこにだって逃げることが出来る。
追う方はそうはいかない、アテが無いと何も出来ない。
そのアテも、有力なのからそうでないのまで、ダイヤモンドから石っころまで様々だ。
犯人に紐を着けた、とそれを手繰って追い詰める。
しかし紐の先で辿りついたものは、実は枯れ木の枝だった、なんてことはザラなんだ。
 追う方と追われる方なら、追われる方が有利なんだ。
追う方は、手の中にあるアテをとにかく信じない、信じ切らない。
だが、捕まえることは絶対に出来ると信じる。
そういうことなんだ。

                 ―――とある刑事のインタビューより



 ◆ ◆ ◆

「で、結局どういうことなんだってばよ」
「何だそのどこかのマンガキャラみたいな言葉は」
「いや、だからあのオッパイのねーちゃんの策……」
「まだ言ってるのか、お前は」
 デュオ・マックスウェルは大きく溜め息をついた。
目の前で腕を組んで悩んでいる男、パトリック・コーラサワーに対して、『呆れ』の態度を全く隠さない。
コーラサワーとデュオの間にはおおよそ15年以上の年の差があるのだが、
デュオは特に畏まるような素振りは一切見せない。
「何時まで言ってるんだ」
「何時までも言うぞ、俺は」
「しつこい奴だな、アホの癖に」
「誰がアホなんだよ」
「お前だよ」
 この漫才にもなっていない漫才、二人が所属する組織、『プリベンター』の日常である。
事件があって出動している時以外、コーラサワーとデュオはこんな会話ばかりを繰り返している。
コーラサワーのボケは計算されていないボケであり、デュオのツッコミは心の底からの声である。
なお、二人は仲が良い親友というわけではない。
834名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/05/04(金) 23:31:15.41 ID:???
「ティエリアさんとスメラギさんを信じるですぅ!」
 と、そこにババアァンとマンガなら間違いなく擬音がつくような勢いで、一人の少女が二人の視界に飛び込んでくる。
横でまとめたロールパン状の髪が特徴の、ミレイナ・ヴァスティである。
コーラサワーとデュオが今どこに居るのかと言うと、彼らが宿泊しているホテルの一階にある、大きなカフェである。
マイスター運送のスメラギが動くまで特にすることが無いので、こうやって暇を潰しているわけだ。
ちなみに、どちらかがどちらを誘った結果の喫茶ではない。
コーラサワーがボケーとカフェに先にいたところに、デュオが後からやってきたのだ。
まあデュオは目敏くコーラサワーの姿を見つけ、他所の席に座ろうとしたわけだが、
こちらも何故か目敏くデュオを見つけたコーラサワーが、
「暇だからなんか喋ろうぜ」と自分のテーブルに無理矢理引っ張ってきたわけだ。
「スメラギさんは天才! ティエリアさんは明敏! お二人のやることに間違いはないですぅ!」
「大きく出たな、オデコ娘三号め」
「正味の話、運送会社の社長と社員で一生を過ごすお二人ではないですぅ。あ、ロイヤルミルクティーのホットを一つお願いしますですぅ」
 ミレイナは注文を取りに来たウェイトレスに素早く注文をすると、
隣のテーブルから椅子を引っ張ってきて、コーラサワーとデュオの間に座る。
間と言っても、直上から見れば、きれいな正三角形になるポジションなのだが。
「そう言えば、ミレイナは知り合いなんだよな」
「はいですぅ、私のパパがマイスター運送のお偉いさんなんですぅ」
「オデコ娘三号よお、お前があいつらを信じるのはまあわからんでもないが、俺達はそうじゃねーんだよ」
「達で括るな、達で」
 ウェイトレスがミレイナが注文したロイヤルミルクティーを運んでくる。 
ウェイトレスはさらりとコーラサワーの伝票に追加分を書き足したのをデュオは横目でちらりと確かめたが、
コーラサワーは全く気付いていないようだったので、黙っておいた。
「何だよみつあみおさげ、じゃあお前は運送屋の連中を信じるのか?」
「信じざるを得ない、というところだな」
「じゃあ同じだろうが」
「同じじゃねーっての」
 信じること、信じざるを得ないこと。
その二つの間には、大きな距離がある。
前者に条件は無いが、後者には条件があるからだ。
「うー、悲しいですぅ。もっとプリベンターの皆はマイスター運送の皆と仲良くなって欲しいですぅ」
「別に悪い連中とは思ってないけどな」
「本当ですかあ?」
 デュオはこくりと頷く。
悪いと思っているなら、こうやって共同戦線は張ったりしない。
それは、サリィ・ポォを始めとするプリベンターの他のメンバーも同様だろう。
835名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/05/04(金) 23:33:01.39 ID:???
「悪いが俺は信じてねーぞ」
「えーっ、スペシャルさんは人間不信な人ですかあ?」
「そーじゃねーよ」
「じゃあ、何なんですぅ?」
「おっぱいのねーちゃんと眼鏡おかっぱ、二人の作戦とやらをだよ」
「だーかーらー、お二人に間違いはないと」
「俺が信じるのは、俺自身と、そして嫁さんだけだ」
「……これはノロケと取ってよいんですかあ? デュオさん」
「さーね、俺にもわかんねー」
 肩を一つ竦めると、デュオはすっかり冷めてしまったブラックコーヒーを口に運んだ。
だが、コーラサワーが言った『二人の作戦を信じない』ことは、マイスター運送を『信じざるを得ない』ことに相反する。
マイスター運送を信じる大前提が、スメラギ・李・ノリエガとティエリア・アーデの作戦を『信じて動く』ことにあるのだ。
「うむむむ、難しいところですぅ」
「そーか? 至極簡単な話だろ」
「簡単な話だと思うなら、何度も俺に『なあ、どうなってんだ?』と聞いてくるなよ」
「だってそうだろ、信じた挙げ句にそれがスカだったらどうすんだよ?」
「そうならないように努力しろよ」
「どうやればいいかわからんから聞いてるんだろ」
「じゃあ『簡単な話』とかいう言葉で済まそうとするなよー」
 コーラサワーのこういうところが、デュオにはたまらなく『いいかげん』に思える。
まあ、コーラサワーの中では、何でもかんでも一本筋が通っているんだろうが。
「どもみちすぐにお二人のことを信じるようになりますぅ」
「何度も言わすなオデコ娘三号、俺が信じるのは」
「もういいって、最終的に嫁さんに話が行くだけなんだから」
「何だとみつあみおさげ、俺の嫁さんを、大佐を馬鹿にすんのかあ!」
「してない、いっこもしてない」
「はあ、ある意味幸せなのかもしれませんですぅ。これも愛の形の一つというわけですぅ」
「まあいつかお前にもわかる時が来るさ、オデコ娘三号。人を心から愛することの尊さをだな」
「今の嫁さんに出会う前まで、レディキラーだった奴の言葉とは思えんな」
「……私だってティエリアさんをゴニョゴニョ」
「ん? 何だオデコ娘三号?」
「わーわーわー、何でもないですぅ!」

 30代のおっさんと10代の少年少女。
奇妙なトライアングルがお喋りを交わす様を、たまたま近い席に座っている老婆が見やる。
ああ、何て仲が良さそうなんでしょう、という感じの笑顔で。
 この意味があるようで全く無意味な三人の会話は、カトル・ラバーバ・ウィナーが呼びにやってくるまで続くのであった。


 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――
836名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/05/04(金) 23:34:02.56 ID:???
 コンバンハ。
えらく間が空いてしまってすいません。
てか話が動いてねぇー、こりゃイカン。
 次回はスレの残り容量的に次スレになるでしょうか?
ではまた。
リアルタイム投稿ktkr
超乙です!
お体に気を付けて頑張ってください。
838通常の名無しさんの3倍:2012/05/05(土) 16:49:59.89 ID:???
>>836
乙であります!!
前回までの話が少しシリアス風味でしたが、今回の様なマッタリした話も良いですね
次回も楽しみに待ってます!!
839通常の名無しさんの3倍:2012/05/06(日) 19:56:05.18 ID:???
>>836
待ってました、乙です!!
今回の様なインターバル的な流れも好きです
次回も期待してます!!
840通常の名無しさんの3倍:2012/05/08(火) 21:30:39.93 ID:???
保守ウー
841通常の名無しさんの3倍:2012/05/10(木) 21:26:22.42 ID:???
保守ワー
842通常の名無しさんの3倍:2012/05/12(土) 20:32:03.02 ID:???
保守ウー
843通常の名無しさんの3倍:2012/05/14(月) 22:06:40.41 ID:???
保守ワー
844通常の名無しさんの3倍:2012/05/16(水) 22:10:55.36 ID:???
保守ウー
845通常の名無しさんの3倍:2012/05/18(金) 22:34:11.99 ID:???
保守ワー
846通常の名無しさんの3倍:2012/05/20(日) 11:01:01.27 ID:???
保守ウー
847通常の名無しさんの3倍:2012/05/22(火) 21:58:44.64 ID:???
保守ワー
848通常の名無しさんの3倍:2012/05/24(木) 21:51:55.33 ID:???
保守ウー
849通常の名無しさんの3倍:2012/05/26(土) 20:55:10.67 ID:???
保守ワー
850通常の名無しさんの3倍:2012/05/28(月) 21:28:54.34 ID:???
保守ウー
851通常の名無しさんの3倍:2012/05/30(水) 21:47:41.93 ID:???
保守ワー
852通常の名無しさんの3倍:2012/06/01(金) 22:02:16.36 ID:???
保守ウー
853名無しさん土曜日 ◆gLNd2xXs6c :2012/06/01(金) 22:57:29.40 ID:???
体調不良で少しぶっ倒れておりました。
ああ腰が痛え。

とりあえず新スレ立てられませんでした。
次スレに移ったらぼちぼち復帰します。
すんません。
854通常の名無しさんの3倍:2012/06/01(金) 23:18:48.28 ID:???
>>853
お大事に…

後、新スレ立てておきました

新機動炭酸コーラサワーW 模擬戦7戦目
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/shar/1338559722/l50


尚、テンプレが古いかもしれませんので、追加や変更などがあった場合は、修正お願いします
855通常の名無しさんの3倍:2012/06/03(日) 16:11:44.49 ID:???
保守ワー
856通常の名無しさんの3倍:2012/06/05(火) 23:08:09.53 ID:???
保守ウー
857通常の名無しさんの3倍:2012/06/07(木) 22:18:50.23 ID:???
保守ワー
858通常の名無しさんの3倍:2012/06/08(金) 23:37:43.74 ID:???
保守ウー
859通常の名無しさんの3倍:2012/06/12(火) 00:38:28.50 ID:tX3t10ng
860通常の名無しさんの3倍:2012/06/12(火) 11:45:55.48 ID:???
861通常の名無しさんの3倍:2012/06/13(水) 21:20:46.07 ID:???
862通常の名無しさんの3倍:2012/06/17(日) 20:19:22.88 ID:???
埋め
863通常の名無しさんの3倍:2012/06/19(火) 22:37:25.79 ID:???
埋め
864通常の名無しさんの3倍:2012/06/21(木) 21:26:40.61 ID:???
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865通常の名無しさんの3倍:2012/06/23(土) 18:44:53.59 ID:???
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866通常の名無しさんの3倍:2012/06/25(月) 22:35:36.23 ID:???
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867通常の名無しさんの3倍:2012/06/27(水) 22:05:52.74 ID:???
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868通常の名無しさんの3倍:2012/06/29(金) 22:05:51.20 ID:???
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869通常の名無しさんの3倍:2012/07/01(日) 15:37:39.86 ID:???
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870通常の名無しさんの3倍:2012/07/03(火) 21:48:41.32 ID:???
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872通常の名無しさんの3倍:2012/07/07(土) 19:39:18.29 ID:???
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874通常の名無しさんの3倍:2012/07/11(水) 22:25:26.70 ID:???
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875通常の名無しさんの3倍:2012/07/13(金) 21:49:45.15 ID:???
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876通常の名無しさんの3倍:2012/07/15(日) 13:20:53.73 ID:???
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877通常の名無しさんの3倍:2012/07/17(火) 21:44:14.17 ID:???
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878通常の名無しさんの3倍:2012/07/19(木) 22:24:50.49 ID:???
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879通常の名無しさんの3倍:2012/07/21(土) 21:16:30.66 ID:???
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880通常の名無しさんの3倍:2012/07/23(月) 21:41:36.04 ID:???
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881通常の名無しさんの3倍:2012/07/25(水) 22:11:26.39 ID:???
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882通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 22:19:43.29 ID:???
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884通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 23:03:38.62 ID:???
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885通常の名無しさんの3倍:2012/08/02(木) 22:15:45.06 ID:???
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886通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 20:08:54.10 ID:???
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887通常の名無しさんの3倍:2012/08/06(月) 22:13:19.66 ID:???
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888通常の名無しさんの3倍:2012/08/08(水) 22:04:20.54 ID:???
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889通常の名無しさんの3倍:2012/08/10(金) 23:15:19.31 ID:???
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890通常の名無しさんの3倍:2012/08/12(日) 20:01:22.66 ID:???
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891通常の名無しさんの3倍:2012/08/15(水) 22:25:17.04 ID:???
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892通常の名無しさんの3倍:2012/08/17(金) 21:19:01.48 ID:???
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893通常の名無しさんの3倍:2012/08/19(日) 18:17:58.84 ID:???
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894通常の名無しさんの3倍:2012/08/21(火) 21:53:15.56 ID:???
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896通常の名無しさんの3倍:2012/08/23(木) 22:26:11.84 ID:???
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897通常の名無しさんの3倍:2012/08/25(土) 20:12:27.75 ID:???
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899通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 22:01:18.67 ID:???
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900通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 22:52:27.45 ID:???
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901通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 18:19:57.18 ID:???
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902通常の名無しさんの3倍:2012/09/04(火) 20:36:17.84 ID:???
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903通常の名無しさんの3倍
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