遅ればせながら投下乙!
保守
934 :
通常の名無しさんの3倍:2009/11/20(金) 22:34:21 ID:N4s3wpZ4
下がりすぎた!
スレッドを緊急射出age!
保守
シンジのかわりに沙慈がのったら全く違和感なさそう
一期の匙ならシンジとは≒だな。しかし全く同じ結果にはならんだろう
というか、匙はルイスの存在もあるし
バイトして指輪買ってやろうというのもあるから大分違うと思うが
保守
>>937 >>938 新劇のシンジに近いかもな
使徒相手で自分に人類の存亡が掛かってるとしたら沙慈も戦うだろう
ルイスへの気持ちにブレが無いのもでかい
>>940 いや、正直アニメシンジとはやや前向きとは
シンジは自分の自信の無さや消極性だが
匙に関しては思想的に戦いはダメってのがあるからどうかね
化け物の使徒相手は兎も角カヲル君とか
バルディエルで詰みそうだ
SSが面白かったから思わず一気に読んじまったぜ
明日テストなのにどうしてくれるんだ寝腐さんよぉGJ!
お久しぶりです。大分間が開いてしまいましたがまた連載再開出来そうですとご報告レス
週末の夜に投下したいと思います
後、原作四話でシンジ脱走エピソードの部分が丸々カットになりそうなので
其処の分、何かリクエストがあれば書いてみようかと思います
リクエストされたキャラがアニメ四話時点位で何かしているエピソードを書く予定で
場合によっては原作アニメ六話以降に出演予定キャラのエピソードが早まるかも知れません
基本的にシンジ、レイ、リツコ、コーラサワー夫妻、新旧ロックオン、アニュー、リヴァイブ以外は大体対応出来る予定ですのでお気軽にどうぞ
リクエスト締め切りは次の次の投下予定です
投下楽しむにしてます!
そしてリクエストですがフェルトを所望する次第であります!
待ってました!
どう考えても暫く活躍シーンがなさそうなグラハムでお願いします。
ども。大分遅れましたorz
では今から投下します。5レス予定
刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
第参話後編「為すべき使命」
「なんで、こんな所に」
「サイボーグ! とっととあのガキ共を回収しろ!
パイロット聞こえるか! 下の連中には構うな。回収は済ませてやる! その機体だけは失うな!」
「フェルト! 今は目の前の敵に集中して!」
「……っ!?」
錯綜する思考の中、EVAと言う名の巨人が手を退ければ、其処には怯え震えている学生が三人も居た。
即座にデータは照合される。同じ学年、同じクラスの生徒だと判明しモニターには名前が出ている。
ルイス・ハレヴィ、沙慈・クロスロード、相田ケンスケ。名前から報告を受けていたクリスは
それらの意図する事が大体頭で繋がっていた。その思考を中断させる騒音。
正体はエヴァのリフトゲージと同じ機構でクリスティナの三輪バイクが搬送されていく際の駆動音。
山の入り口手前の近くの射出口にがきんっと大きな金属音を立て、そのまま放り出される。
これを登りあがらなければならないとなると中々苦労するが泣き言は言っていられない。
車輪を固定していた器具が外れるとフルスロットルでエンジンの吹かす。
まるで、世紀末の荒くれ者が乗る様な機体。エンジンが唸りを上げ、環境に明らかに悪そうな
煙を吐き出し、山道と獣道を直線で縦断する様に上がっていく。
「迎撃支援……は、当たるな。ちっ、あのガキ共ごとって訳にはいかんのか」
「サーシェス君。解っているが無駄に事を荒立てたくはない。その決断は此方がする」
「了解しました」
もし、此処が紛争地地帯であった場合、罪無き民間人の被害があっても
サーシェスは構うことなく作戦を続行していた。
だが、現実はパイロットは混乱したままろくに指示も聞けない状態。
これで、あの民間人ごと吹っ飛ばしたら余計に錯乱することは目に見えている。
おまけに保障だ人道だなどの戯言はどうとでも出来るがそれもそれで金と手間が掛かる。
組織としての立場の縛り、素人の運用、無駄な情報と配慮が歴戦の傭兵の判断を鈍らせていく。
それを見かねたのか指令の傍らに居た副指令の老人が声を張り上げた。
現場指揮官の懸念を一つ潰した事でサーシェスは目の前の事態に集中する。
そんなどたばたした事情を使徒が察してくれる筈も無く、上空を覆いかぶさる様に現れる巨体。
ゆらゆらと光の鞭をうねらせながらも暫く様子を見ていたのか、じっとりとした緊迫の時が続く。
その永遠とも思える時間がほんの一瞬過ぎた時、光の鞭の殴打に初号機の装甲へと叩き付ける。
まるで、庇うかの様にその攻撃を受けている。顔を護る様に手を掲げている姿は
中のパイロットの弱さを現す様でもあった。
「な、なんで、反撃しないの?」
「僕達がいるから上手く闘えないんだ」
「そんなあぁ」
「兎に角、安全な所……安全な所って何処!?」
少年と少女達は口々に声を張り上げつつも、抜けた腰を何とか元の位置に戻して立ち上がろうとする。
だが、それもままならない。光の鞭の攻撃がいつ自分達に飛んでくるかも解らない。
降りるべきか、登るべきかの判断も敵わず、ただ小動物の様に震えている。
やや、ヒステリック気味に叫ぶルイスの声がきんきんと男子二人の耳を貫いていく。
ケンスケの推測が通りフェルトは動くことが出来なかった。
EVAが下手に動けば踏み潰してしまうし、使徒の攻撃を集中させねばならない。
もし鞭をまともに下へと流れれば、人間など軽く蒸発させられてしまう。
EVAは口を閉じたまま苦痛の一つも漏らしていない様に見えているが
司令部の通信にはまるでSMショーの様な少女の悲鳴が響いている。
彼等ごと纏めて消し飛ばすか否かの判断を一任した冬月は
いつでもそのGOサインを出せる様にはしていたがそれでも気が気ではない。
緊迫した時を過ごしている中、草木を分け入って出てくる三輪の鉄の獣。
ライダースーツに身を包み、ヘルメットも被っているその人物は
まるで一つの生き物としての機械に組み込まれている様にも感じられた。
未来から来た殺人ロボットの様な威圧感のある姿であり、一瞬学生三人はソレを見て固まってしまう。
だが、声は厳しい口調ではあるが女性の声だったことから少年と少女達はそれが味方であると判断する。
「説明は後! 後ろに乗って! ココから離れるよ!」
「は、はい!」
「ルイスも早く!」
「あ、えっ……う、うん!」
クリスの掛け声に三人は乗り込みその場からすぐさま離れようとする。
フェルトの視界にもその様子が映り、安心したのも束の間。
使徒はその救助している人間達に向かって光の鞭を突き刺していく。
木の葉を焼きちらし、地面へと貫かれるそれはまるで大きな光の柱が山へと突き立てられたかの様に見えた。
えぐれる地面とそれを伝えていく衝撃は砂煙を巻き上げる。
男子二人は何とかそのバイクに乗り込んでおり、取っ手を掴んで身を振り落とされない様にしがみつく。
しかし、ルイス1人だけがその場に残されてしまう。
吹き飛ばされた衝撃とともに既にバイクは数メートル先の麓へと滑り落ちる様に
進んでおり、スピードも乗ってしまっていた。もう既にルイスがとても小さく見える程に離れている。
沙慈は既に離れている彼女をようやく視界に入れるとしばしその現実に絶句していた。
「ルイスッ! も、戻ってください!」
「バカ、そんな事したら僕達まで、いやでもそれでも」
「沙慈!」
「ダメよ! 相手はこっちに狙いを付けてる!」
「そんな! なら、僕は降りま――」
「バカなこと言わないで! こっちだって死人を増やしたくないのよ!」
クリスもその状況には混乱を隠せていなかった。今、Uターンしてあの開けた場所へ戻るべきか。
判断は非常に難しい。だが、今救助した二人が更に攻撃を受けて命を失っては元も子もない。
まず、二人を助けるべきだとクリスは判断し、一気に山を駆け下りる。
沙慈もその言葉にびくっと首を屈めるが、どんどんと離れていくルイスの影を見て涙を溢れさせていた。
ルイスは遠ざかっていく沙慈へと声を上げている中、使徒は残っているルイスへと狙いをつける。
目の前の初号機は片手間で倒せるという判断なのだろう。光の鞭はゆらゆらと狙いをつけ
泣き叫んでいるルイスへと狙いを付けて突き刺す。誰もが少女の命が散ったと思った瞬間だった。
「あああっ……っ!!!」
「私を護って……くれたの?」
「……早く乗って……持ち応えられない……っあつぅ……いぃ」
「これに乗れって言うの?!」
少女の小さな肉体を焼き焦がし、骨を溶かす筈だった光の鞭は今、初号機の手の平を貫通していた。
ばちばちという音、そして焼け焦げる匂いを辺りに立ち込める。
だが、それでもフェルトは必死の思いでそれを掴み続ける。
掌にも熱さと痛みがシンクロしている中、熱で装甲が剥けるている両手でその光の鞭を掴み続けていた。
ぐっぐっと突き入れる様に上下させる度に手に摩擦と熱が伝わり、激痛が脳髄へと響いてくる。
そんな中、EVAの首筋の部分が開けられて、プラグが半分ほどされている。
ルイスはそれの意図を何とか感じ取ったのか、多少迷った後駆け寄っていく。
使徒の攻撃により、地面へと半ばめり込んでいる初号機のエントリープラグへと乗り込んでいた。
「水!? い、息がぁ」
「……っ! シンクロ率が……時間がない……」
「勝手な事を……まぁ、良いっ! 一旦退避だ! 聞こえているかパイロット!」
ルイスがそのプラグを開けばそれが水中である事の驚愕、それに加えて
パイロットが目星をつけていた少年ではなく、自分とさほど年齢の違わない少女であることの衝撃。
混乱はルイスに沈黙と言う選択肢を本能的に与えてくれた。ここで彼是聞いて自らの延命を阻害すると言う判断。
しかし、その判断とは裏腹に遺物が混入した事により初号機のシンクロ率が右肩下がりで下がっていく。
プラグ内の映像も乱れていく。残り時間は2分をきっていた。通信からは撤退の命令が何度も下されている。
しかし、フェルトの耳にその言葉は届いていない。脳髄が焼き切れてしまう程の処理を重ねる。
バグやエラーは何回も発生している思考の中、いつの間にか自我はゆっくりと融けていく。
ルイスもフェルトの様子の変化に気付く。日本語で言う所の鬼気迫る何かを感じていたと思ったが
それが急にその気配を失せ、薄氷の様な透明感のある雰囲気へと代わる。
まるで其処に先ほどまで怯えすくみ続ける醜態を晒していたのと
同じ人物が居る事が認識出来ないほどの静けさと落ち着きを見せていた。
「ちょっと、なんか撤退って言って」
「その命令は聞けません」
「「はぁっ!?」」
「目標に対して、白兵戦闘を敢行。殲滅を図ります」
ルイスは後になって気掛かり程度に思い出すのだが、彼女の眼には一瞬フェルトの瞳の色の変化を感じられた。
結構なインパクトをもたらす事象ではあるのだがそれを持って余りある行動の決断と態度の変化。
通信先の男の声と少女の声はほぼ同タイミングで驚愕の声色へと変わっていた。
フェルトの駆るEVAは両手を掴んでいた光の鞭をそのまま相手ごとビルへと投げ飛ばす。
肩の拘束具からナイフを取り出し、手に持てばその刃は発光し、熱量を持ちはじめる。
ビルから起き上がる様に浮遊を始める使徒に対して、山をそのまま駆け下りてナイフの柄を
先ほど風穴を開けたEVAの手の甲で抑えたまま中央の光珠の部分に突き立てる。
使徒も負けじと光の鞭で腹部へとそれを突き刺し、貫通する。
本来なら痛みと絶叫で失神するほどの痛みが脳髄を駆け巡っている筈のフェルトだが
ソレに一切リアクションを取る事も無く刃を突き入れる。
唇をかみ締め、水中の中に血液が浮遊するのを見れば、ルイスは呼吸を止める為口を抑える。
純粋な畏怖がルイスの心理へと入り込み、拒絶と恐怖を相殺している。
自分と対して変わらない少女がこんな大きな巨人を動かし命を賭けて闘っている事もそうだが
何より先程から様子が明らかに違う。まるで、別人格だ。
「痛くないの?」
「痛覚は正常に機能しています」
「な、なんで」
「使徒を殲滅しなければ、人類が滅びるから。やるしかないの」
「人類って」
ルイスの口から漏れた疑問にフェルトは冷静に答える。
問いかけた本人はその呟き程の疑問に答えが返ってくる事に驚いていた。
数秒のやり取りだったが目の前の惨状とは違った冷静なやり取りとのギャップが混乱を塗り替える。
熱を持った刃を突き入れる事に専念している様に見えるが必死の作業を片手で済ませているかの様な発言。
実際はフェルトは蹲る様に腹部を片手で押さえながらも残ったもう片方の手はトリガーを前へと押し出している。
その言葉と態度の変化、自暴自棄とも取れる言葉にルイスは言葉を失い、誰とも知れない神に祈ることにした。
時間は後数秒しかない。倒せば終わる。倒せなければ命が終わる。
そんな状況で祈る事しか出来ないと判断できたのはフェルトの冷静な態度の影響だろうか。
まるで劣勢の激戦地へと運ばれる歩兵輸送車の様な空気が支配する狭いプラグ内。
お互いどちらか死ぬか解らないチキンレースに司令部もそれを沈痛な面持ちで見つめていた。
「失敗」
「ど、如何するのよ……貴女の勝手な判断で!」
「あの位置からだとこの機体を自爆をしても巻き込まれる。撤退は危険が大きい。
動きの鈍った相手を許して逃がしてくれるとは思えない。もし二人生き残る為ならコレがベスト。
最悪殲滅出来なくても、外部から自爆信号が来るか上手くいけば、回収される」
「自爆ってそんな……貴女、死んでもいいの?」
「私が死んでも代わりが居る………か……うっ」
EVAの電源が切れる。目の前の使徒は未だに健在だ。使徒もEVAの動きが無くなった事に気付く。
それは生命の停止としての沈黙なのか解らず、目の前の巨人から光の鞭を引き抜き数秒の対峙をする。
その間、非常電源で僅かに薄暗くなっているプラグの中でフェルトとルイスは会話を続けていた。
これ以上何もする事は出来ない。後は死ぬか生きるかは全て外部の状況と判断による。
諦めにも近い判断にルイスは怒る気力も無いのか
八つ当たり気味に声を振り絞って張り上げるがそれもいなされててしまう。
冷静に湧いた疑問。しばし、黙り込んだ後つぶやいた言葉を言いかけた後、気を失ってしまう。
それとほぼ同時、どしっと何か上から押し潰される様な感覚と重圧を感じさせる。
金属の軋む音とEVAの筋肉が痛めつけられる音がプラグの中にまで聞こえてきた。
ルイスはそれが使徒の攻撃の再開と感じ、自らの死を感じ取り意識を失っていく中
かすかに二人の少女は非常用無線の声が耳へと入ってきた。
「刹那・F・セイエイ。目標を殲滅する」
次回予告
ルイス・ハレヴィ。彼女は焦っていた。 転校してきた少年とその時期。
そして、先日起きていた軍の戦闘行為。それ等の全てが繋がり危機への連想を感じさせている。
確かめなければいけなかった事象が行動を前のめりにし、そして自らの無力さをかみ締める事になる。
第五使徒襲来の前に一体彼らに何があったのか?
次回、第四話前編「知られざる者達」
次回はちょっとドロドロでサービスーサービスー♪
という事で今回は以上です。ちょっとブランクが空いたので色々不安ですorz
次は今年中に一回投下出来るか最悪来年でしょうか。
>>944のリクエストは続行中。では、投下失礼しました
乙!
シンジは撃破できたけど、フェルトは駄目だったか。
最初のほうgdgdだったからなぁ……そして現れる主人公!
次も期待して待ってますぜ!
GJ!
久々の投下、お疲れ様でしたー
一気に読んだ!
GJ!
保守
少し話題振り。今のところリクエストはフェルトとグラハム一票ずつか
フェルトも展開上散々だがグラハムも一話で出たっきりだからどちらも気になるな
えーと、今夜九時投下予定です。
今回ちょっと次の話分のエピソードも混ぜて長めにしてみた結果が
見事に年内投下が出来ずすいませんorz
ども、珍しく時間に間に合ったorz
では、今から投下します。
刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
第四話前編「知られざる者達」
黒い人影が山の影から降ってくる。その人影の正体は実際高さ10mを軽く超える巨人の跳躍。
つま先に引っかかる木々は折れながらも、黒い巨人は停止した初号機の背中を踏みつける。
手に持つは巨大な剣。緑色の粒子を吹き散らしながらも使徒の頭部へと突き刺していく。
鰻を捌く為に打ち付けられた釘の様にその剣は使徒の頭に対して深々と貫通し
蒲焼の串の様に波打って、胴体の手前の方にも切り込みを入れる。
通常兵器に対して全く歯が立たなかった使徒の甲殻に対して
熱したナイフでバターを切る様に融けていく。黒い巨人EVA参号機が持つ剣は
滑らかな曲線を刀身に柄の先はケーブルがつながれており
参号機の背中のアンビリカブルケーブルの接続部分へと伸びていた。
光球の部分に突き刺していたナイフはそのまま刃の先から折れてしまい
初号機は衝撃に対してもそのまま膝を突くことなく、彫刻の様に其処にたたずんでいた。
「遅れました!」
「言い訳と謝罪はいい! 武装の説明を”簡潔に”!」
「参号機のGNドライヴから運用した
試作白兵兵装GNマゴロク・エクスターミネート・ソードのシリーズ1です」
「……よく噛まずに言えたな」
「名前が長い! もっと短く!」
「では、以後はGNマゴロックスで」
通信から聞こえてくる女性の声に悪態をつきながらも返事を返すサーシェス。
声の主は伊吹マヤであった。遠隔通信かそれとも移動中の所為か若干音声が乱れてはいたが
二人の通信会話を聞いて『え、変えちゃった良いの!?』という視線に
思わず振り替えざる終えなかった司令部の人間が約半数。
その動作をした数名が頬を僅かに赤らめつつも作業に戻っていく。
感嘆をもらす青葉を尻目に突き刺さったそれから逃れる様に後退する使徒。
引き裂かれた頭はまるで先割れスプーンの様になっており
その切り裂かれた肉の部分が時ゅくじゅくと膨張し、再生をしようとしている。
それを待たずして、丁度初号機との間に割り込む様に着地をする参号機。
使徒の頭部を貫通させた剣を左手で引き抜きつつも暫しの対峙。
「GNドライブから粒子と微振動を加えた白兵兵装です。威力は映像の通り。
参号機のGNドライヴにより内部電源の持続時間が飛躍的に延びましたが
この武装の展開中は以前の内部電源の持続時間と同等しか動けません。
また、試作段階なので本来の用途であるAテ――」
「其処でストップだ! 制限時間付きの武装ねぇ。まぁ、運用すりゃ良いんだろ!」
「説明は受けている。残り2分でけりをつける」
やはり省略することの出来なかった長ったらしい説明を途中で切り捨てて
参号機パイロットの刹那は僅かに通信を返した後、初号機の手を取る。
ぎぎっと関節が軋む音が聞こえそうに鳴っている初号機をそのまま右手で背負い込む様にして
投げる。
初号機は大の字をさかさまにした様な格好でそのまま使徒にぶつけられた。
光の鞭で応戦しようとするもその質量と速度に対処することも無く、弾き飛ばされる。
糸の切れた操り人形の様にずるりと使徒の前面から垂れ下がり、脳天から地面へと落ちる。
「初号機下方の緊急回避用の隔壁開放! 初号機を回収する!」
「D−5地区隔壁パージ! 初号機ケージ内で落下中!」
「よし、懸念は一個消えたな」
「救助した子とパイロット……大丈夫かなぁ?」
「んなこたぁ俺が知るか。命令違反の自己責任だ」
「……無茶をするな」
「勝てば問題ないと今は言っておくしかあるまい」
中のパイロットが最早どうなっているかは想像したくないほどの粗末な扱いを気にする節も無く
サーシェスの指示と同時に道路が割れる。頭から初号機は地下へと落下していった。
流石にどうかと思ったのか青葉が一言口に挟みそれをアリーが無責任な発言で返す。
浮遊する使徒にはあまり効果が無かったが、狙いは別にあった。
丁度初号機がズレ落ちて地面へと落ちるのと入れ替わる様に
剣をまっすぐに突き立てた参号機の突進。丁度初号機が落ちた穴の淵を蹴り上げて飛び掛り
初号機が既に傷を付けていたコアの皹を狙い済ましたかの様な一撃で貫く。
先ほどまでの苦戦が嘘の様なあっけない勝利に司令部は歓声を出すのも忘れ
殆どのものが呆然としていた。冬月は今後のコトヲを思う頭が痛い様ではあるのか
僅かに首を傾けて左右に振る。それのぼやきに返している司令の自己暗示の様な返答に
眉間に皺を寄せて黙り込んでいる。勝利の確信は喜ばしいがそれを差し引いても
余りある問題点が浮き彫りにはなっていた。
「目標の沈黙を確認。刹那君、そのまま使途の死骸を指定の場所に運んでくれ」
「了解した。GNマゴロックス発動解除」
「ふぅ……あーあー、くそ!」
「ま、負けるよりは良いと思うしか……ねぇ」
「わーってるよ! こりゃ、早めに作戦指揮官殿って奴に来てもらわねぇとダメだな。
小娘があそこまで使えんとは……おまけに新しい武装もアレじゃぁな」
「数分で終わらせろって言うのも厳しいですしね。で、それって葛城一尉ですか?
何とか口説き落として、再生治療に入らせたとは聞きましたが」
「いや、あれはすぐに使えそうにはないな。予備のご推薦をあたるしかねーか」
光の鞭も消えて、ただの木偶になった使徒。その巨体は悠然と立ち尽くしている。
流石に一度目の勝利とは違い、司令部の誰もが重い空気に飲まれていた。
幸い今回はまるまる相手の姿が残っているから分析などデータは取れるだろう。
指示通り、その巨体を担ぎ上げる様にして抱えていく参号機を最後にいったん映像は途切れた。
眼下の問題は兎にも角にも機体運用に尽きる。戦略的思考が無いという事は辛く
戦術的検知から見れば、対応出来るのがほぼ刹那だけと言う状況。
それは替えの利かない少年一人に全てに委ねているのと同意義であった。
ワンマンアーミーに賭けて良いのはフィクションの中だけの話だ。
誰もがこの綱渡りではダメだと言う危機感の渦中にあった。
アリーは苛立ちを隠せずに壁を蹴る。慰めの言葉すら火に油を注ぐ様で
青葉の言い回しもおっかなびっくり気味の声色であった。
現実は厳しい。殆ど良く解ってない今まで人類が扱った事が無いサイズの人型兵器を
16歳やそこらの子供達を乗せて運用する。
更に敵は此方も正体どころか形状や襲来時期すら不明な謎の未確認生命体。
これらに対応すると言うのは発想力の問題だ。尚且つ軍事的戦略を考慮できる人材は限られる。
「ところで、青葉君。民間人が被害にあったって聞いたけど」
「え? ああ、同じクラスの子らしい。相田ケンスケ、沙慈・クロスロード、ルイス・ハレヴィの三名。
まったく、避難警報はちゃんと出してたってのに。警備は何やってたんだ?」
「え? クロスロードにハレヴィ……それって」
「ぁん? サイボーグ女も知ってたみたいだがガッコでなんかあったのか?」
「ええ。ちょっと……はぁ。刹那君は大丈夫って言ってたのに」
「大抵、子供はそーいうもんだよ。報告じゃなくて願望と隠したい気持ちが強いのさ」
「自分が出来る前の予行練習させてる訳じゃねぇんだぞ? ちゃんとしとけよ」
「……っもう、他人事だと思って! まぁ、ちょっと帰ったら話してみます。
そもそも、誰が押し付けたんだと……」
通信越しに恐る恐るたずねるマヤに対して、青葉は程よい逃げ道と感じたのか
処理の手を一旦止めて通信を返す。お互いの苛立ちを他にぶつける様は酷く醜くくみえているのは
承知の上でもそれを吐き出さずには居られなかった。ちゃかす様な青葉の言葉に
サーシェスも無責任な言葉が追撃を許す。行き成り来た矛先に
場の状況があまり読めてなかったマヤはより重く受け止めてしまい、深刻さが顔に滲み出ていた。
―第五使徒シャムシェル襲来前日
詰め寄る校舎裏での問答を傍目から見るといかにも青春ドラマの一場面の様なシーンを彷彿とさせる。
残念ながら当人同士の会話は皆、たどたどしい英語とアラビア語、怒りで早口になってるスペイン語。
如何見ても海外の吹き替えられた日本ドラマどころか登場人物も白肌金髪の少女、やや栗毛色の少年に
褐色肌と黒髪でターバンを首元に巻いている少年と言う実に国際色豊かな面子で
そもそも、此処が本当に日本だという事が疑わしい程であった。
「刹那君。君、ネルフって所に行ってない?」
「……質問が何を言っているか解らない」
「惚けないでよ! 沙慈はアラビア語解るんだから!」
「俺の地方とは違う言葉みたいで。君の英語もスペイン訛りが強くて聞き取り辛い」
「なんですって!」
「……いや、ルイスの英語は確かに癖が強いし」
「沙慈! どっちの味方なのよ!?」
刹那が数分前にちょっと顔を貸して欲しいという有無の問答して、現場に着いた途端
この金髪の少女ルイス・ハレヴィのマシンガンの様なスペイン語に圧倒された後
隣に居た少し優しい雰囲気の少年沙慈・クロスロードのアラビア語通訳で話が進められていった。
刹那は何処でその情報を聞いてきたか解らない様子で首をかしげてわからない演技をしている。
ニュアンス的には演技力がどうのこうのというレベルではなく、そもそもお互い不慣れな共通言語で
会話をしているのでそれが嘘どころかどういう意図なのかすらよく解らない。
ルイスも途中から英語に切り替え始めたのだが本人はスペイン語の基盤が強いのか
沙慈も聞き取り辛い程の訛りが入っており、わざわざ沙慈が訳している程だ。
「あんな事件の直後に転校なんて怪しすぎるわ。天涯孤独なんていかにもありがちじゃない!」
「えーと、ほらこの事件のあった後引越してくるのは変だって」
「それは前に村が紛争で無くなったと。此処に着たのも日本の支援者の方の意向で」
「嘘っ! ネルフが子供を集めて実験やってるってのは沙慈の御姉さんが調べてたんだから!」
「過去形?」
「まぁ落ち着いてよ。ほら、人が見て………!?」
ルイス過激な発言は一種の排他性、差別を感じられる程だった。何か余程因縁があるのだろうか。
傍から見れば純粋に刹那が有色人種だからと言う理由だと疑いかねない程の剣幕であった。
本来、この手のシチュエーションなら男が食って掛かり、女がそれを止める様な流れなのだろうが
この場では全く逆であった。ルイスは手こそ出さないが酷い言いがかりを吹っ掛けまくっている。
刹那にとって軽いカルチャーショックでもあった。何をこの女は怒り狂っているのだろう?
疑問と疑念が耐えない中、ヒントを口に出すがそれにも疑問が付随されている。
取り合えず、何となく発音の箸から過去の話であるのはかろうじて推察できた。
そして、それとは全く同じ状況と時間軸において沙慈は全く別の衝撃を受けていた。
余りの剣幕に視線をそらしていたら、ふとその視界の中に人影が見えた。
生徒の誰かが二階の窓からその様子を眺めている。
不味いと思ったのかルイスを止めようとするが現実はそれの斜め上をいく。
「……ええぇっ!?」
「沙慈、何? 変な声出して」
「ちょ、ルイス伏せ……うわああっ!?」
沙慈の素っ頓狂な声に問い詰めていたルイスも手を止めて沙慈を見ると別の方向を眺めていた。
沙慈が見たのは自分達の様子を見ていた女子生徒が二階の窓を開けると其処から飛び降りた。
その時点で沙慈は軽く思考停止をする。
その女子生徒はそのまま膝を曲げ片手をついただけで地面へと着地。
砂煙を軽く上げた後、自分達の方へと駆け寄ってくる。片目に眼帯、更に左手は骨折しているのか
ギプスをつけたままだった。もうこの時点で訳がわからない。
古今東西怪我人は大人しくしているモノだ。だが、女子生徒の行動は止まらない。
駆け寄った後、左足を横に向けてブレーキをかけ、それを軸足に右足で後ろ回し蹴りを繰り出す。
狙いはルイスの頭部だ。沙慈はそれに気付き、ルイスを伏せさせようと突き飛ばす。
そして、狙いを定められていた女子生徒の足は沙慈の頭部へと打ち付けられて体を吹っ飛ばす。
音と砂煙を立てて沙慈は地面へとたたきつけられて、真っ白な制服が茶色に汚れていく。
ルイスはその一連の動きに口をパクパクとさせながらも事態を飲み込む事に時間を掛けていた。
「ちっ、外したわね。優しい彼氏さんだこと」
「お前は何をやっているんだ」
「あら。助けてやってるのに素っ気無いね」
「別に助けを求めてない」
「沙慈大丈夫!?」
「く、首が……う、うん。大丈夫かなぁ?」
悔しそうに舌打ちをする少女。沙慈もルイスもその人物は名前だけは知っていた。
刹那が転校する数日前に怪我で長期に休んでいた同じクラスの女子生徒ヒリング・ケア。
二人には交遊は無かったというか殆どの生徒と接点の無い彼女の登場は想定外だ。
その彼女に対し、素朴な疑問が突っ込みと同意義に等しくなっている刹那の言葉。
ルイスは倒れた沙慈に駆け寄って介抱をする中、三人はヒリングに視線を一斉に向ける。
首を抑えながらも沙慈は立ち上がる。ズボンについた砂煙を払いつつも
ルイスを落ち着かせようと少し強がってみせた。結構綺麗に入ったのかずきずきと痛みが続く。
湿布ではすまないかも?と思いつつも向けられた視線の矛先は
むしろ、何で疑問を思っているのか不思議そうな表情を見せている。
「ちょっと……えーと、ケアさん? 何なの!」
「ん? 喧嘩してたんでしょ? だから、その喧嘩買ってやってんのよ」
「「!?」」
「最初は見物してたんだけど、何時までも始まんないからさぁ。混ざった方が早いと思って。
しっかし、ひょろいボディガードね。あの位の蹴りで膝をつくなんて」
「療養はどうした」
「登校許可は明日からなんだけど、ちょっと用事を頼まれてね。
そしたら、面白い事になってるし、コレはもうボコりに混ざるしかないじゃない」
「そんな無茶をするから怪我の治りが遅いんだ。じっとしていろ」
「へーきへーき。足はもう治ってるし、手を使わない位が丁度良いハンデになるわ。
リハビリやんないと勘も鈍るしね。あ、それとも心配してくれてる?」
「それは俺の役割ではない」
「……ちょっとあんたら」
「知り合いみたいだね」
外国籍の人間とはいえ、人間として一般常識的を持っている沙慈とルイスにとって
ヒリングの言葉は一瞬受け入れがたいものであった。何処の蛮族だ。
言動に目を疑っている中、二人の驚愕をほぼ無視する形で刹那の方へと声を掛けている。
それにつられて刹那も素らしき先ほどの穏やかな言葉の調子から
言葉は冷淡かつ厳しい言葉遣いへと変わっていく。そんな変化を気にすることも無く
松葉杖とギプスから介抱された足首を地面に擦らせて柔軟体操をしているヒリング。
むしろ、飛び降りる前にやっておけと言わんばかりにジト目で睨みつける刹那。
沙慈とルイスの視線など何処吹く風か。和気藹々?と話す様子は
先ほどの常軌を逸した行動とのギャップも併せ持って話に入れる空気ではなかった。
ひそひそと会話によりコンセンサスを続けた後
二人の温度差のある会話に意を決して割り込む。
「あのね、あたし達は別に喧嘩をしたい訳じゃなくてちょっと聞きたい事が」
「喧嘩じゃないの? つまんなーい」
「つまんないって、そんな。いや、そういうのじゃなくてさ」
「で、何か知らないけど、なんで教えなきゃならないのよ? 何の義務? 誰の命令?」
「いや、義務は無いけど、僕達はその」
「なら話はお終い。こんなのに一々構って時間の無駄だわ。特に豚の態度が気に入らない」
「豚!?」
「あんたの事よ、雌豚。スペイン産だからイベリコ豚かしら? 良い血統なんだっけ?
ほら、スペイン語なら解るでしょ、イベリコ雌豚ちゃん」
「あんたねぇ……割って入って何言ってるのか解ってる?」
「あら、彼氏の前では猫被るの。豚が猫を被るって何の冗談?
ねぇ、男の影に隠れて猫も被って中身は豚とか最悪だと思わな〜い?」
会話に入るルイスに明らかに鬱陶しそうにヒリングは睨み返し、わざと話を遮って不平を漏らす。
一瞬その視線に怖気づきそうになるがそれでも引かないのを見れば
ヒリングは挑発的な文言をわざと混ぜる。AEU圏では豚という形容は肥満を指す事よりも
侮蔑として強いインパクトを与える。宗教認識が変わっていくとはいえ
年頃の少女には一瞬何を言っているか解らない程の衝撃。
それを更に煽るかの様にわざわざ言語を切り替えて追撃する。
拳を握り締め、今にも掴みかかりそうな程、目に見えて怒りの形相を見せるルイス。
沙慈が居なければ、もう既に乱闘が始まっていたかも知れない。
その様子をサディスティックな快感を感じつつヒリングは楽しげに腕を組みながら嘲笑う。
沙慈も刹那もスペイン語の習熟の関係から何を二人が話しているのはわからないが
トコトン険悪な状態になっているのは 誰の目に見えても解る。
刹那は手が出さない限り止めるつもりは端から無かったのだが
沙慈はそれでもおろおろと事態の悪化に対処するべく割って入るタイミングを探していた。
「喧嘩売ってんの?」
「喧嘩買うって最初に言ったでしょ?」
「あ、あのケアさん? さっきから何を言って」
「何かを強請っただけで得ようとする発想は柵に囲まれた家畜の豚と一緒って言ってやっただけよ。
あんたも彼氏ならちゃんとイベリコ雌豚の躾け位しといてくれない?」
「あ、いやその。ちょっとそれは」
「あんた、さっきから……あたし達はn」
「ピーピー鳴くな。うるさいのよ」
やや、ドスの聞いた声で言葉を返すルイスにヒリングはしれっとした態度で
ギプスをしていない方の手でくいっくいっと指を折り曲げて挑発する。
コレは不味いと思ったのかルイスが一歩出る前に沙慈が間に入ってヒリングへと問いかける。
少し残念そうな視線を向けながらも面倒臭そうに日本語に言語を切り替えて返すヒリングの答えた。
沙慈もある程度の口汚い言葉を想定していたがそれでも衝撃は大きかった。
動揺が言葉を濁している中、更に突っ掛かろうとするルイスが
出てきたところを見計らってヒリングはルイスの顔を掴む。
親指と人差し指が頬を掴んで少し顔を不細工にしつつも、薬指と小指が喉元に食い込ませる。
握力は女の細腕とは思えないほどの力でそれにも驚きを隠せない。なんというか色々規格外すぎて
さっきからルイスは驚かされっぱなしだった。
「豚の事情なんて興味ないの。どうしても何か知りたければ力尽くで聞き出してみたら?」
「その位にしておけ」
「えー、良い所なのに」
「……っ!」
「ルイス行こう。これじゃ話にならない」
「……沙慈!」
「喧嘩はダメだよ。刹那君も悪かったね。ケアさんもその……もうちょっと穏便にね?」
喉へと食い込む痛みを受けてルイスがヒリングへと反撃をする為に
手を伸ばそうとする前に刹那がヒリングの腕を掴む。
ヒリングが既にルイスの腹部に蹴りを入れる準備動作を見ていたからの行動だった。
そして、視線でそれを沙慈に促す。そのやり取りにヒリングが不平を漏らしている中
沙慈もルイスの肩を掴んで引き離すのと同時に手を離し男同士が合間に入ってけん制をする。
ルイスは暴言と行動に傷つけらた分を巻き返したいと視線で訴えていたが首を左右にふる。
刹那とヒリングに苦笑いを混ぜたまま頭を下げてルイスを連れて行く。
涙目に抗議をしたそうな顔をしたルイス。大きく口を開いて「バーk」と言いかけた瞬間
満面の笑顔でヒリングはギプスをしていない方の手で中指を立ててルイスへと向ける。
ソレを見てもう何かを言う気力も残っていないのかすごすごと苛立ちを隠せないまま帰っていった。
「あまり、感心しない。騒ぎを起こすなと言われている」
「これで学習するから良いのよ。こそこそ嗅ぎ回られても気分悪いしね。
あっちがあれ以上何か無茶すれば諜報部が止めるし……それともお友達になりたかったの?」
「いや。そうではないが」
「ならいいじゃん。無理する事は無いのよ。私達の仕事は別にあるでしょ?」
二人が見えなくなれば、殺気立っていたヒリングも棘が抜け、あっけらかんとした表情と態度で
刹那の方へと振り向く。そのギャップに驚くことも無く、刹那は憮然とした態度でいた。
しかし、続くヒリングの問いに僅かに考えた後の刹那の即答。
ヒリングは目に見えて非常識だが、そもそも自分がこの国の常識に当てはめて
正常かと問われれば間違いなく違うと言わざる終えない。
自分の立場を考えると下手に係わり合いを持つよりはと言う判断も出来る。
困惑したがそれが伺えない無表情のまま視線を泳がせている刹那を
にまにまと楽しげにヒリングは見ていた。その視線をどう受け止めて良いか解らない刹那は
顔を逸らして視線を泳がせている内にふと見知った人影が映る。
何処から見ていたか解らないが話しかけようか迷っていた雰囲気だった。
「どうした、フェルト・グレイス」
「あ、あの」
「あら、五番目(フィフス)。どしたの?」
「二人とも16:30の集合時間聞いてない? 予定変更になったって」
「あー。そーいや、それで迎えにきたんだっけ? ごめんごめん」
「それを先に言え!」
「今思い出したんだから仕方ないでしょー? じゃ今靴取ってくるから」
ヒリングに五番目(フィフス)と呼ばれた少女フェルト・グレイスに刹那がフルネームで尋ねると
やや弱弱しい口調で話し掛け近寄ってくる。原因は二人の空気もあるが「なんでまだ居るの?」
と言う事の方が強かった様で情報を確かめる様に二人に問えば、刹那は首を僅かに傾け
ヒリングは手をぱんっと叩いていかにも今思い出したという様子をアピールする。
その事を平謝りしながらも珍しく怒りを見せる刹那を相変らずニマニマと楽しげに観察した後
きびすを返して上履きのまま、昇降口へと向かうヒリング。僅かにため息を吐いたまま
ふと、なんでわざわざ人を使わせてきたのだろうという疑問。
かといって今から追いかけて見るのも何か釈然としないというか
また、当人の悪戯にまんまと引っかかりに行く様で躊躇われた。
「何やってたの? 携帯にも出ないから怒ってたよ」
「……原因は解った。問題ない」
「そ……そう」
「俺も鞄を取ってくる」
「解った。それじゃ校門で待ってるね」
フェルトの指摘にはっとした様子で携帯を見れば、マナーモードにしたままなのを忘れていた。
既に留守電とメールが10件近く入っている。それに気付かない程自分は
あのやり取りに、気を使っていたことに刹那は驚きを隠せず
苦々しい顔を僅かに見せた後、自己暗示をかける様に呟く。
フェルトもそれ以上突っ込むことは無く頷き返すがそれでも
この一件は諜報部からの報告は上がったおり、伊吹マヤが当人に尋ねた結果
今の様子とほぼ同じく「問題ない」との一言で終了。
それ以上話題に上がる事は襲撃の当日までなかった。
次回予告
フェルト・グレイス。EVAパイロットとして2年前の零号機起動実験後
何の準備も無く登録された少女は未だに自分の存在意義を見出せてはいなかった。
己の無力さは周知の上、それなのに何故自分が乗せられ続けているのか解らぬままに過ごす日々。
閉塞する気持ちを振り払う事も出来ない彼女の日常を変える事は出来るのだろうか?
第四話中編「逃げ出せぬ夜」
次回はちょっとまったり展開でサービスサービス♪
―あとがき
という事で今回エピソードを長めにしてきました。
次の話のエピソードを詰め込んだので次の更新はまぁ今月中位を目処に。
それとリクエストに関してはフェルトはそのまま4話エピソードに結構入るので
グラハム予定で色々と当初予定より先に出る人物が何名かいます。
後、最後に質問なんですが投下の無い間何か話のネタに出来る様に
簡単にプロットとか設定の小話をレスしようかと思うんですがそういうのはない方がいいですかね?
では、投下失礼しました。
私怨!
ここでヒリングか。意外といえば意外な人物の登場ですね。
しかし、なんというかいろいろと複線が…というか、
恩讐がやたらとややこしい人間関係がすごいですね。
なんというか、元ネタのシンジとトウジのシンプルな恩讐よりも凄いわ。
しかも、書いてる文としては日本語で統一してますけど、
飛び交う言葉はどこの国連ですかというぐらい、言語が多い事w
しかし、ヒリング…いくらイノベイト人種だからといって、
そこまでごくノーマルな人間様に喧嘩を売ってはいけませんw
中性設定とはいえ、一応君は女性よりの性格でしょうがww
あ、プロットの方は無しでいいですけど、設定話はいると思います。
現時点の人間関係とか整理した方が書きやすいと思いますし、
本家のエヴァよりも複雑な状況ですので、破綻がないように整理しながら進めるべきかと。
972 :
通常の名無しさんの3倍:2010/01/02(土) 07:43:36 ID:TZvMxaYu
イノベイドで思いついたが白鰻には量産型イノベイドか?
そして白鰻どもが一斉トランザムか。
975 :
通常の名無しさんの3倍:2010/01/03(日) 07:31:22 ID:Ky9h/q0F
>>973 そしてグラハム補完計画
ハム「私と補完されようではないか少年!さあ!さあ!」
刹那「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
sageろと言おうと思ったがテンプレには決まってないか
落ちそうな位置になる事もあるが基本sage進行が望ましいか?
まぁ、結構後ろだたし
基本はsageだろ
つーかそろそろ次スレの事を考えないといけなくね?
979 :
通常の名無しさんの3倍:2010/01/10(日) 13:28:28 ID:gn63DnOr
3人「何を願うの?」
刹那「エヴァ」
刹那なら言いかねん
エヴァのクロスとか懐かしい感じがしてしまうな。
実際、種の全盛期の頃は無かったんだっけ?
ありそうな雰囲気ではあるが新劇始まる前だったが