スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらF 完結編
1 :
通常の名無しさんの3倍:
そんなことはない!私はアフリカでコーディネイターの砂漠の虎と
>>1乙してたんだぞ!
>>1乙
Kは今回イマイチだな……Wの神シナリオに期待してると肩透かし喰らうわ
Kガリだけは面白いよ
原作とキャラが違いすぎるw
原作と違うって
1 やめろアスハスレの悪崇覇さん
2 崖っぷちスレのカガリさん
3 囲むスレのカガリちん
どれに近いんだw
妙に凛々しいらしいから1かな
1は知能とルックスまで変わってるからなあ
その辺はそのまんまで男気だけ上がってる2だろw
書き忘れた
3をやるスパロボが出たら神w
やめろアスハスレはライバルの魔由羅さんが出て来たあたりから面白くなってきたな
個人的には次世代の凄まじいまでのカオスっぷりがたまらんかったがw
Kは悪い意味で二次創作欲を掻き立てる作品だな
特に主人公とヒロインが糞すぎる
Kで良かったのは、ユウナとミーアが生存したことと、ガウリ涙目ってことぐらいかな
あとはとことんどうでもいい内容だわ
ミストはヒョーゴより存在意義が無いオリだな
イスペイル様は良いキャラしてるけど
原作未見だと登場作品を勘違いしそうなキャラ
・種とコルベット
・ブレードとオーガス勢
・チャロンとイスペイル様←New!
主人公の名前はやる夫にしてたら妙に違和感が無いw
>>18 まだ18話だけど自分の意思が無い感じ
他人の意見にすぐ流される
Kで各国の防人、ダイナーやライナー、シスターとスピナーの出番無いのは知ってたけど
まさかジェットボーイすらハブられてるとは思わんかった
原作でジェットボーイのソニックアタック多用したり合体して空戦したりしてたのにな……orz
スクコマ2は出てたんだろうか?
確かあれにもダンナー出てたよね?
>>21 カズマみたいに邪気眼アピールとかしないのか?
>>22 スパコマ2ではジェットボーイは出てないよ
ゴーダンナーは遠距離は弱いが、接近戦では間違いなく最強
むしろ育ちすぎてあえて出撃メンバーからはずしてた
>>22 >各国の防人、ダイナーやライナー、シスターとスピナーの出番無いのは知ってたけど
今度こそエカテリーナとエリスの乳揺れ尻揺れに期待してたのに
スパロボK一周目でオリキャラの会話をすっ飛ばしたのは始めてだった
地球を守りたいとか言うんだが薄っぺらいというか空々しいというか言葉に深みをまるで感じない
自分的にはスパロボKの主人公はどっかの三流二次創作のテンプレ的な主人公だと思った
オリ機体も動力源はよくあるパイロットの感情で出力が変動するやつ何だが、主人公が敵の挑発にあっさりのって暴走しかけたと思ったら仲間から一言二言助言もらっただけでこれまたあっさり暴走終了。なんのカルタシスも感じられない。
なんというかネタにすらならない救いようがない主人公だった
正直オリジェネには絶対に出てきてほしくないオリキャラでしたな
今回のライター、ガウリになんぞ恨みでもw
ゲイナーの両親殺したのが許せないのか
アデット先生とくっついたのが妬ましいのか
>>28 恐らくは後者だ!
しかも本スレとかで今のところ、そのネタについて不満を述べてる奴が全くと言っていいほど見受けられないのが凄いな
だってリアルでも山田まりあとくっついてるんだぞ!
これ以上幸せにしてやる必要ないじゃないか
山田まりあ?
ガン×ソード最高の伊達男、カイジの兄貴は出た?
鮒のショウコを拾ってきたりするぞ
表面上は腰低く正社員と仲良くしてるけど
正社員がいない所になると
「この職場マジやべぇ、ろくな所じゃねえ、ていうかこの職場辞めよっかなマジで」
と仲間内だけだと態度変わる派遣社員
ミストさんはこんな感じ
これが全面的に心底ダメな奴なら、そういうキャラなんだと合点がいくが
普通に良い部分もあるからなおさら救いが無いように感じるタイプ
ミストはせめて中高生ぐらいの年齢ならまだ邪気眼で済んだような気もするw
年齢の割に子供過ぎるし、とても三つの惑星を渡り歩いてきた経験があるとは思えない
今回のオリで良いのは敵のイスなんたらくらいだな
まだ中盤の二十話で主人公・ヒロインイラネって感じだ
この後こいつらカッコいいシーンとかあるのか?
後カガリさん、あんたマードックさんも言ってたが成長し過ぎw
あと2〜3回ぐらいウジウジしたらラスボスにうおおおおおーっ!!するよ
>>39 「そうだ!皆星になってしまえ!!」
え?だって感情で力が変動するって言ったから
ミストさんのようなキャラに出会えて幸運だった
仇発見→突撃→説教→反省→仇発見→突撃→説教→反省→仇(ry
これほど安西先生に突っ込んで欲しい逸材は中々いない
Kでやっとルゥが来たのに引継ぎ無しっぽいのが怖くてダイバー改造出来ねぇ....
改造引き継ぎは無くても改造費用還元だってさ
だけどアニメーションやいっその事テンプレといっても良い死亡者復活の捏造復活はKは結構良い線行ってると思う
ファフナー組みの復活とかアニメ見た人間にすればどんなハッピーエンド?ッ手ヤツだしね
そしてどうでもいい話、Kのカットインで怖いのはヴァン>シン>その他って感じがするんだ
原作だと剣児も結構な邪悪顔してたが、スパロボだと明朗快活馬鹿キャラで通してたような
まあ、ダイナミックだしなぁ……。
でも新ゲの隼人の方がさらに邪悪顔だぞ? 初登場時の所業も含めればさらに……。
48 :
通常の名無しさんの3倍:2009/03/26(木) 01:23:30 ID:/JvHBqXU
掃き溜めのプリティヴァン等と呼ばれる事もあるが、ヴァンはそもそも復讐鬼だぜ?
カットインが怖いのは、そりゃあ当然だろうよ。
ここの職人方はKについてどう思ったんだろうか……
ミスト・空気・馬鹿・ウザイ
メガネ・ウザイ
ロリ・馬鹿・ウザイ・空気読めない
今回のオリジナルは大失敗な気がする
敵キャラは成功してる気がする
何と言うかネタのランスさん的な意味で
今回の仕様だとゴーダンナー鬼畜仕様だな
合体状態でかけた精神が分離状態でもかかるから一撃ではダンとかに譲るけど充分ヤバい
Rのシナリオより酷いの?
Kはシナリオが悪いというより、完璧と言ってもいいシナリオの完成度と主人公のキャラ立ちを誇るWがあるから・・・
どうしても比べてしまって、えーなんだよこいつ空気読めよとかうわうぜぇ!と感じる部分はあるなぁ。
Wが発売されてなかったらそこまで気にはならなかったんだけどねぇ・・・
あと。7話のヴァンの言動に凄まじい違和感を感じる。要約すると、
戦闘中→あんたらみたいな爺さん大好きだぜ当然助けるYO!
戦闘後→あんたらみたいな爺さんの説教なんぞ聞いてられっか!
という、戦闘中はヴァンは誰てめぇ状態だったな。
正直、戦闘中のセリフ書いたやつガンソ見てねぇだろ!?というかなんで縁の下の力任せをカットしてるんだよ!?
Wもオリがうざかったがな
でもミストさんに比べれば大した事は無いか
Wは色々ネタに走ってたしな
ガウルンに突っ込んでって堕とされるランスの生き様とか
そういえば前スレの投下分ってもう全部まとめサイトに反映されてる?
>>54 ていうかヴァンに限らず原作とはもはや別人に思えるキャラ多い気がする
オリキャラの駄目さといい
原作ファンを逆撫でする様なクロス・改変の下手さといい
今回のシナリオは過去最低候補
>>58 そりゃ今までのスパロボにも原作とは別人に改変されてたキャラもいくらかいたが
今回は何だかなあ・・・
今回の参戦面子、また別のスパロボで再参戦して欲しい
まあ評判の芳しくなかったJのデータを流用してWという名作ができたんだから
こんどはKのデータを流用して良い作品ができるんだと考えようや
…扱いがややこしい異世界組のガンソ・キンゲ・ゾイジェネはハブられる可能性があるが
ガイキングが超優遇されてたね
サコン先生が天才・美形で尚且つ何でもしちゃうから
余計に主人公達が霞む
俺は待ってるよ
エスカフローネが再びスパロボに来るのを
俺は待ってるよ
ヴァンドレットが参戦してガンソと絡むのを
Kまだなんだが、ガイキング・ザ・グレートとかフェイスオープンってちゃんと再現されてる?
ヴェスターヌさんは出るの?
バカゴリをキャラ改変するよりあっちを説得して指揮官にしたほうが無理ないのにw
>>65 されてるよ!
EN消費が馬鹿にならんがな!
四将軍と新四将軍も出る
あとガイキングは合体攻撃が多い
絶叫コースターアタックもある
でBGMはオープニングと発進するときの曲
あとグレート
でグレートはとんでもなく強い
燃費もEセーブにフル改造ボーナス付けてやっと通常のスーパー系並
ちなみに合体するとライバルの二機は自動的にそれぞれの魔竜に戻る
じゃあノーザが内臓ぶち抜いてダイヤに発破かけての
グレート合体とかも再現されてたりする?
>>70 内臓ってか鉄球だよな?
あるよー
リーさんの強制合体解除は無いが
ガイキング見てないと、リーさんの口から最初にシンの名前出たときは驚くだろうな
名前繋がりで弟分になったり
SSならそのまま並行世界の兄とか面白そう
拳法使うシン
>>72 いっそ名前繋がりで、ダイヤの兄弟子がシンってネタも有りかと思った
ただし炎の力や拳の資質においてはダイヤに劣るとかで
ピンクがプロイストと組めばピンク頭のキチガイどうしで面白いのにな
つかプロ子は勿体振った言い方をしないだけで独善っぷりはどこぞの電波と大して変わらん
そういや昔、シンが真龍ハイドロブレイザー使うAAあったな
>>78 IDにHEIWAが出るまでピンクを殴るスレだな
ラクシズアンチの勢いの強さを象徴するように大量のAAが作られてた
>>80 シンとガイキングのような何の関連性のないのは今ひとつ感心できなかった
あのスレの最高傑作は盟主のゴルディオン・ハンマーだよ
ゴルディマーグ役がMSがハンマー持ってるクロトw
真龍ハイドロブレイザーとシン流ハイドロブレイザーをかけたんじゃね?
亀レス
>>12 ついでに
ラクス&ミーア お搾りスレの流派ピンクコスモス師弟
ルナ シン調教スレのルナ様(withノレナたん)
ステラ 八頭身シンスレのブステラ
メイリン アスラン逃げろスレのストーカーメイリン
これでどうだw
>>83 収拾つかねえw
下二つはわからんが上二つはCEROに怒られるw
一つもわからん俺に解説を
そういやブシドーことグラハムもハラキリで死んだからこっちくるのかな
え、ハム死んじゃったの?
ハムはビリーと一緒にいたじゃないか
死んだのはビリーの叔父さんだろ
そういや、Kのシンは妹のいるキャラとの絡みが記憶に残ったなあ。
ファフナーの総士とかガンソのミハエルとか。
よもや宙と一緒にミハエルに妹について語るとは思わんだwww
>>85 カガリちん
.. ()
.. []
, "l" 、
(*゜◇゜)
流派ピンクコスモス 師匠
,〃.⌒ノノ
.i(((!´゙リ))
ノ リ.゚ ヮ゚ノl
(ΛV从`;∩と )
(ДTWノノ 人 Y
(,,,,(((,,,,......-=≡とと___ノ し' (_)
流派ピンクコスモス 弟子
,〃.⌒☆
イヤダァァァ!! .i(((!´゙リ))
ボスケテェェェェ!!!! 〃⌒`⌒ヽノ リ.゚ ヮ゚ノl
ボスケテェェェェ!!!! ((`')从ノ∩と )
(´Д`;ノノ 人 Y
(,,,,(((,,,,......-=≡とと___ノ し' (_)
ルナ様
(__
,r´ `ヽ
リ ノノ人,,)
ノ从゚ ヮ゚ノリっ
〃´ と~,, ~,,,ノ
(( )) )ヽ,,,/~)
(´Д`;Wじ'J
し し ⌒(_つ
ブステラ
,r"`⌒}ヽ ウェーイ
( 人ノ') }
从(゚ー゚ノ〈 i|
/( ((_) ズンズン
/⌒\ | 〃´ `ヽ⌒\
/ /\ | .| (( ))) iへ \
_ / / ゝ| |W;゚Д゚ノ \ \_
(_/ と⌒とmj__ノmっ \_):::
ストーカーメイリン
〃Y"⌒`Y"ヽ
( ((((`´))) )
ケキョキョキョキョ… .)从*`∀´ノl.(
>>92 でもその後の戦闘前会話で
「会いたくても妹と会えない奴はいるんだ!生きているうちは妹を大切にしろ!」
って言うのはジーンときたな。
チマチマ進めててやっと運命来たんだがEN消費はキツいけど今回バカ強いな運命……
移動力8有るからブースターとEN上昇ケイ付けて特攻仕様にしてるけどかなり使いやすい
個人的にミスト達の性格がアレなのはしょうがないと思った、だってあいつら
「同じ星の人間同士の戦争」=「御伽噺レベルの昔にあったらしい」
てことらしいし、人としての精神構造から違うんだなと感じたんだが。
同属で戦争してる地球人よりよっぽど優れてんだべ、精神が。
ロボゲ板じゃ、惑星アトリーム=北朝鮮説が出ていたな
2000年間戦争が無いはずなのになぜか暴動鎮圧の経験が豊富で
地球以上に大規模な防衛隊があった星
>>98 それはない
最近はスパロボ出るたびに組織的アンチが出るから怖いな…
今回だけはアンチになりたいよw
ロボゲ板から流れてきた荒らしが居るみたいだな
良い加減スレ違いだと気付けよ
333 それも名無しだ sage 2009/04/02(木) 19:43:33 ID:iEGQJi0W
ドンドンドン!
ジョシュア「誰だ?」
レイ「あんちゃんだよ。お前のあんちゃんだよ」
ジョシュア「ほんとに俺のあんちゃんか?」
レイ「ほんとにあんちゃんだよ」
ジョシュア「それじゃあ、俺の質問に答えてみろ。あれは兄さんのヴォルケインだ!どうしてシベ鉄なんかに!?」
レイ「オラ、つえーやつと会えてすっげーワックワクしてきたぞ!」
ジョシュア「やっぱり、アンちゃんじゃねー!」
ドンドンドン!
ジョシュア「誰だ?」
レイ「あんちゃんだよ。お前のあんちゃんだよ」
ジョシュア「ほんとに俺のあんちゃんか?」
レイ「ほんとにあんちゃんだよ」
ジョシュア「それじゃあ、俺の質問に答えてみろ。おまえなんかと組んで復讐したらエレナが汚れる!」
レイ「おまえ…おまえの復讐は随分優しいな」
ジョシュア「やっぱり、アンちゃんだ!」
ほす
104 :
通常の名無しさんの3倍:2009/04/06(月) 08:34:57 ID:CJ1VrcA1
ほす
規制解除確認と同時に、今日中にビアンSEED投下します。作中最強のチート機体登場ですぜ、旦那方。
投下予告キター!!
これは寝られない
チート機体?何がくるんだ?
スパロボ的チート機体=ボスボ○ット
ノーリスクで味方の気力上げ+小隊員全員のレベル上げができた
サルファのマイク13はある意味チートだったな
ファイアバルキリーがくるとな
レオの弟だななんとなく判る
核ミソ搭載ラーカイラム(愛・ブライト)だろう
まさかのディスRX×2
ディスてつを?
では投下します。
ビアンSEED 第八十話 鋼の救世主
眼前で猛威を振るうヴォルクルス分身体の放った宇宙の闇さえも塗り潰す極彩色を纏った魔力の波に、左右からビームカービンを撃ち掛けていたジンHM2型二機が撃墜されるのを黙視し、アクア・ケントルムは心の水面を怒りと悲しみで乱した。
その波紋が操縦にも影響を与えたのか、わずかに回避行動を鈍らせたサーベラスめがけて、次の獲物を見定めていたヴォルクルスが、その巨体からは信じられぬ素早さで襲いかかってきていた。
「っ!?」
メインモニターを埋める醜悪という言葉のみでは足らぬ威圧感を放ち、ヴォルクルスの振り上げた十メートル近い鉤爪の動きを必死の思いで追う。
サーベラスの左手のコーティングソードで必殺を期して振り下ろされた鉤爪と打ち合い、その表面を滑らせるようにして、鉤爪の軌道を狂わせた。万力を込めて握る操縦桿を震わせるヴォルクルスの膂力に、奥歯を砕かんばかりに噛み締める。
受け流しきるのを確認し、喉の奥から込み上げてきた安堵の息を吐き出すよりも早く、今度は鞭のようにしなりながら迫る触手の束を、撃ち落とさねばならなかった。
「この!」
生きているスラスターを全開にし、即座にヴォルクルスから距離を取ってラディカル・レールガンで牽制を試みるが、痛覚が無いのか、あっても然したる痛みにもならぬのか、ヴォルクルスは怯んだ様子もない。
核動力MSさえ上回る出力を現実のものとしたTEアブソーバーの火力を持ってしても、やはりヴォルクルスの細胞の再生速度の方が上だ。
生き残っていたザフトの部隊と連携を図って立て続けに攻撃を浴びせているものの、反撃によってこちらの手数は次々と減って行き、ヴォルクルスに与えた筈のダメージも癒えてきているのが見て取れた。
WRXとまでは言わぬが特機クラスの火力が、ヴォルクルスを倒しきるにはどうしても必要だ。
艦隊の主砲の集中砲火を浴びせる事でも代用は利くだろうが、ヴォルクルス以外にも無数に現れるデモンゴーレム達が雲霞の如く襲いかかり、こちらの思惑通りに行かせてはくれずにいる。
ザフトでルオゾールの軍勢と互角に戦えているのは、目下スーパー級エース二人を抱えるブランシュタイン隊や、プロヴィデンスのドラグーンによる無数の砲火を浴びせているラルフ・クオルドくらいのものだろう。
アズライガー撃破とAI1セカンド撃破までに被った被害が大きすぎたのだが、それを責める事が誰に出来ようか。アズライガーはまだしもAI1セカンドの出現などこの場にいた誰にとっても予想だにしなかったことであろう。
だからといってこちらの非運を嘆くわけにも行かない。こちらの価値の目がどんなに小さくともまだ生きている以上、諦めるには早過ぎる。そう思って、アクアは自分自身を激励したが、絶望という名の黒い手は、確かにアクアの心を握りしめつつあった。
再び放たれたスーパーソニックウェーブを、漂っていた戦艦の残骸を盾にして凌ぐが、ヴォルクルスの怨念を乗せた衝撃波にさらされた残骸は見る間に崩壊し、息つく間もなく消滅してしまう。
崩壊と引き換えにスーパーソニックウェーブを受けきった事だけは救いであったろう。続けて破壊の咆哮を挙げようとするヴォルクルスに気づき、とっさにラディカル・レールガンの照準をヴォルクルスの頭部に向ける。
白い能面の様なヴォルクルスの眉間に、電磁加速した弾丸が丸い穴を開け、ぶしゅりと青黒い血の球が数滴溢れだし、見る間に塞がった。細胞それ自体が持つ柔軟性が着弾の衝撃を吸収し、有効打と呼べるほどのダメージを与えられないのだ。
ヴォルクルスの爬虫類の様な下半身から延びる大鎌を持った足が、サーベラスを抱きかかえるように広げられ、一気に交差される。ただ破壊への衝動に駆られた行為には、対象の生命を奪う歓喜のみが込められている。
サーベラスの装甲ではあの一撃には耐えられない。かといって不可視かつ効果範囲が広大なあの攻撃は回避が難しい。ましてや、今のこの戦場にはあまたの機動兵器達の残骸が浮かび、即席のデブリ帯が構築されつつある。
運悪くアクアの居る場所は、デブリの密度が濃い場所だった。全力で回避行動に移っても、そこかしこに浮かぶデブリが邪魔になる。明確な言葉にならない罵りの言葉を吐き、それでもサーベラスに回避行動をとらせようと操縦桿を動かした。
深い皺を刻んでヴォルクルスを睨むアクアの瞳に、巨体をかすかに振るわせてスーパーソニックウェーブを放とうとしたヴォルクルスの横面を殴る特機の姿が映った。
ダブルオーからなんか来るんだな
赤色を主に随所に蒼と金の装甲を纏った特機、ガルムレイドだ。両肩のファングナックルの牙の隙間や各所からターミナスエナジーを噴出させ、頭部の普段は隠されている二つの目が露わになっていた。
ターミナスエナジーを最大にして突撃するバーニング・ブレイカーの一撃だ。燃え盛る炎の如く猛るエネルギーを纏った拳が、ヴォルクルスの頬肉を盛大に削り飛ばして口腔の内部の牙や舌が覗いている。
これまで何度か戦った因縁の相手に窮地を救われた事態に、アクアは動揺を覚えていた。
「地球連合の特機、どういうつもり?」
「命令だ。ザフトとDCに協力して、このわけのわからん連中を倒す」
まだ若い青年の声が返ってきた。ガルムレイドのパイロットのヒューゴ・メディオだ。殴り飛ばしたヴォルクルスの顔に、返す刀――ではなくて返す鋸とでも言うべきか、膝のサンダースピンエッジを叩きつけ、顔面を斜めに横断する斬痕を刻みこんだ。
苦痛を露わにして、巨体を身悶えさせるヴォルクルスから離れたガルムレイドは、休まず額に赤色の光を灯してブラッディ・レイを見舞う。サンダースピンエッジの切り傷と十字に交差して、赤色の光線が奔り、ヴォルクルスに明確なダメージを負わせた。
サーベラスやザフトの機体が塵が積もるように与えていたダメージの残りに、ガルムレイドの攻撃力が噛み合って、ようやく目に見えるだけのダメージが表出しただけなのだろう。
だが、それまで徒労としたか思えなかった攻撃が無駄ではなかった事と確証を得るには十分だった。それまで黒々とした負の感情が溜まりつつあった腹腔に、新たな活力が湧いてくるのを、アクアは感じ取っていた。
新たに見え始めた希望の光に気力を取り戻しながら、アクアは未だ苦痛に震えるヴォルクルスめがけて残るサーベラスの火器を向けた。この勢いのままにあの化け物を穴だらけにしてやるのだ。
「さっきまで傍観していて、その前は核ミサイルでプラントを攻撃しようとして置いて、貴方達ちょっと調子がいいんじゃない?」
「それもそうだがな。そっちだって地球を攻撃できる兵器を開発していただろう。それに今のこの状況で手を貸す事自体には文句はないだろう?」
「猫の手も借りたいのは本当だから、感謝はしてあげるわ。手を貸したんだから、あなた、きっちり最後まで協力しなさいよ!」
「分かっている!」
「私、アクア・ケントルムよ。何度か戦ったことあるわよね?」
「同じ機体だったか。おれはヒューゴ・メディオだ」
「いい名前ね。それじゃ、ヒューゴ、短い間だけど背中を預けるわよ」
「大した度胸だ。おれの背中も頼むぞ」
「任せておきなさい」
本気で命を取り合った相手だ。それをこの状況とはいえ手を取り合う様に戦い、まして背中を任せるとまで本気で言っている事に、アクアとヒューゴの二人は不思議な感覚を覚えていた。
ずっと前からこうして互いを信頼して戦ってきたような懐かしさを帯びた感覚。たしかに命をかけて数度戦ったこの上なく濃密な間柄ではある。仲間達を斃してきた敵に対して抱くべき憎しみ以上に信頼の思いが強いのはどうしてなのか。
その答えを出す事は出来なかったが、胸に在る信頼のままにアクアとヒューゴは長い時を共にし、心を通い合わせたパートナーの様に息の合った連係を取り、ヴォルクルスへと立ち向かっていった。
残存兵力において最少となった地球連合残存艦隊であったが、撃墜されたアズライガーを除く精鋭部隊が欠員なく残存していた事が幸いし、ヴォルクルス分身体を徐々に追い詰めていた。
地球連合WRXに加え、ジェネシスによって大量に発生した死者の思念を受けて戦線を離脱していた、アーウィン・ドースティンとグレース・ウリジンが戦線に復帰したのである。
ストライクノワールやロッソイージス、ブルデュエルといった連合系MSの最高峰クラスの列に、量産型ベルゲルミルやヴァルシオン改が再度加わったのだ。
周囲の宇宙空間を満たすルオゾールの瘴気は、いわゆるニュータイプ的な感受性に覚醒したグレースらにとって激しい悪寒を抱かせる毒めいたものではあったし、事実今も脳を内側か握られているような痛みが襲いかかってきている。
しかし事態の急激かつ破滅的な方向への変化に際し、不調を理由に黙ってはいられないとアーウィンとグレースは、間断なく襲い来る痛みや悪寒を精神力で抑え込み、自機の高い性能を余すことなくヴォルクルスに教えていた。
「ウリジン、ドースティン、無理はするなよ」
MS部隊の指揮を任されたカイが、体調の不良を押して出撃した二人に気遣いの言葉をかけた。
本調子でないパイロットを出撃させることは本意ではないが、二人のパイロットとしての技量と機体の性能、そして状況を鑑みれば何が何でも出撃してもらいたい二人なのも確かだった。
焼け石に水を掛ける作業の様なヴォルクルスとの戦闘に追い風を起こしてくれる存在であると、誰だって期待の一つもしている。
「そうしたいんですけど〜、無理でも無茶でもしないとちょっとまずいと思いますぅ〜」
「言い方はともかくグレースの言う通りです。キタムラ少佐、おれ達二人の事よりもあの化け物を倒す事が何よりも優先されるべき事でしょう」
「言ってくれるな、ヒヨッコが」
「できるヒヨッコのつもりですので」
「ドースティン、お前は大物になるよ」
「それはもう、私のダーリンですからぁ〜」
縦横無尽に飛翔するシックススレイブは高エネルギーを纏いながら高速で旋回し、ヴォルクルスの肉体をわずかずつではあるが削り裂く。
苦痛と怒りに震えるヴォルクルスに、アーウィンと完璧といっていい連携を取ってヴァルシオン改のクロスマッシャーがここぞとばかりに降り注ぐ。
見る見るうちにヴォルクルスのシルエットが歪な形に削られ、怯んだ隙を逃すわけもない戦巧者達からの追撃が加わる。
カイ・キタムラのデュエルカスタムにギリアム・イェーガーの、正確無比なビームライフルの連撃が、再生を試みようとする箇所めがけて次々と着弾し、再生を阻んでいる。
「シャニ、クロト、オルガ、おれに続け」
「は、言われるまでもねえ!!」
「そろそろ滅・殺!!」
「もう消えていいよ、お前」
ある意味息の合った掛声とタイミングで、オルガのカラミティが、クロトのレイダーが、シャニのフォビドゥンがそれぞれ持ちうる最大の火器を、ヴォルクルスへと浴びせかける。
焼け爛れた皮膚や蒸発した装甲の下にある粘液に塗れた肉も焼き貫きゆっくりと、しかし確実にヴォルクルスへ、ダメージを積み重ねて行く。
無造作に振るわれるヴォルクルスの鉤爪や鎌付きの触手をかわし、しなる鞭の様な尾を回避し、機体のエネルギーと残弾の許す限りの攻撃を加え続ける。
残存艦隊の指揮を預かるレフィーナがω特務艦隊以外の部隊に、デモンゴーレムやゾンビーMSの対処を命じたお陰で、ヴォルクルスに集中できているのも戦いを優位に進められる大きな要因だ。
潰された左目から毒々しい黒血を流すヴォルクルスが、ひときわ巨大なエネルギーを発生させている敵に気づき、視覚器官をそちらに向けた。
50メートル超の巨躯に相応しい長大な銃身を構えたWRXだ。WRX本体の核動力とメタルジェノサイダー形態へと変形したR−GUNパワードのエネルギーが、相乗効果で高まり、凶悪なまでのエネルギーが解き放たれるのを今か今かと待っている。
本能的にソレが自らにとって極めて危険なものであると察知したヴォルクルスが、他の機体から加えられる攻撃の一切を無視して、翼を大きく広げて飛翔した。
死を運ぶ不吉な影の様な邪神の目的が、切り札の一枚である事を察知して、スウェン、それにリュウセイやアヤが動いた。
TL105ダガーの背のコンテナから射出されたリッパーとストライクノワールの両手のビームライフルショーティー、連装リニアガンがヴォルクルスの移動に合わせて次々と命中してゆく。
「シャムス、ミューディー、ダナ、エミリオ、集中砲火を仕掛ける」
「オーケイ。こいつといい、さっきの化け物といい、余計な邪魔の所為でコーディネイター共の掃除ができなくなってんだ。その分のツケを払ってもらうぜ」
「見ていて気分が悪くなるのよね、こいつ。さっさと消しちゃいましょう」
シャムスのヴェルデバスター、ミューディーのブルデュエルが補給を終えて満載していた弾薬を全て吐き出す勢いでオレンジやグリーンの火線をヴォルクルスとの間に幾筋もつないだ。
両肩から生えていた捩じくれた角や、髑髏の様な文様を描いていた装甲が砕け、ひび割れてなお、ヴォルクルスは活動を停止せず、周囲にスーパーソニックウェーブを連続して放ち続けながらWRX目掛けて狂気の飛翔を続けていた。
「こんな冗談じみたこた、さっさと終わらせたいんでね。まあ、ここらで退場してくれや」
「終わりだ」
ダナのネロブリッツが高性能炸薬を内蔵した特注のランサーダートを、エミリオのロッソイージスが最大の火力を有するスキュラを打ち込む。
ヴォルクルスの首に突き刺さったランサーダートは即座に爆発を起こして内部からヴォルクルスの腐肉を吹き飛ばし、スキュラのエネルギーは下半身にある爬虫類に似た頭部の側面を貫いて、大きな赤い複眼二つに大穴を開けた。
「いい加減、しつこいんだよ。ここで終わっとけえ!」
この戦場で誰もが胸に抱く思いを叫び、上方からヴォルクルスめがけて彗星の如く飛翔するのは、リュウセイのヴァイクルだ。
テンザンとの因縁の対決を切り上げ、母艦に帰還して以来、その多数を相手にするのに適した武装を用いてAI1セカンド、ルオゾールの死霊軍団と激烈な戦いを繰り広げていた。
ヴァイクルの左右の装甲から斜め後方へと延びる光の翼を、迸る念動の力と共に唸らせて、ヴァイクルがヴォルクルスと交差する。
リュウセイの気迫が込められた光の翼は見事、ヴォルクルスの下半身のやや後ろ半分を縦に両断して見せた。ちょうど、上半身と下半身が接合している箇所の後ろ辺りになる。
尾と無数の節足に下半身の大部分を失ったヴォルクルスがバランスを失って数瞬動きを止めた。
おそらくは魔力を用いて宇宙空間での敏捷な挙動を可能としていたのだろうが、度重なるダメージと大きくバランスを失した事で、さしもの破壊の権化も自在に動き回る術をわずかな時間の間失っていた。
そのわずかな時間の間に、地球連合残存艦隊と交戦していたヴォルクルス分身体の命運を分かつ一撃を放たれる事となった。
エンジンの臨界近くまで高めた出力を秘めて、向けられるWRXの構えた砲口。ハイパー・ターミナス・バスター・キャノン――本来はハイパー・トロニウム・バスターキャノンと呼ばれるべき代物であった。
トロニウムという物質の危険性故に主動力を偽ったR−GUNパワードが変形した砲身を、光の速さで莫大なエネルギーが通過させる為のトリガーに、ムジカの指が添えられる。
「ムジカ様、トリガーをお預けいたします」
「はずすなよ、ムジカ。この一発で決めてやれ」
「分かってる。いくらぼくだって外したりしないよ!」
ジョージーとグレンの叱咤を受けて、手に握った汗の不快さを振り払ったムジカが、センターマークに捉えたヴォルクルスへと一際険しい視線を向けた。ごくりと、自分の喉から生唾を飲み込む音が聞こえた。
「いっけええええ!!! HTBキャノン!」
ムジカの細い指がWRXのトリガーを引き絞り、ローエングリンさえ上回るほどのエネルギーが解放を許され、忌わしき怨念の塊へと放たれる。
ジェネシスの輝きに比べればあまりにか細い光の軌跡であったが、その輝きの眩さ、見る者の魂を焼き尽くすかの様な神々しさはより圧倒的であった。
トロニウムを用いた場合のHTBキャノンよりも出力それ自体は低い数値であったが、ムジカやグレンらの気迫が物理的に作用したとでも言うのか、R−GUNパワードの機体のあちこちから悲鳴の様な軋みが聞こえてくる。
世界を呑みこむような洪水を束ねた様なターミナスエナジーの直撃を浴びたヴォルクルスの肉体が、即座に再生能力が追い付かないほどに破壊され消滅してゆく。WRXから延びた光の柱からわずかにはみ出ていた翼や尾も、TEの余波に晒されて崩壊していった。
エターナルを中心として部隊を再度編成したラクスらの軍勢は、後方へと下がっていたザフトの部隊と合流し、襲い来るルオゾールの死霊軍団との戦いに死力を振り絞っていた。
主力のまさに中核を担っていたスレードゲルミルが失われたが、その操者であった男の壮絶な最期は、残された者達の士気を否応にも高めている。
群れなす死霊のMS達やデモンゴーレムはキラやアスランの核動力機を筆頭に、疲労にこそ苛まれてはいるが、これまでの戦いを生き抜いた戦士達の剣や銃が迎え撃った。
だがその奮戦の様が災いしたか、ザフト・ノバラノソノ部隊へとヴォルクルス分身体が二体襲い掛かっていたのである。
キラが合流した際にローエングリンによってダメージを負っていたヴォルクルスに加えて、無傷に近いヴォルクルスが加わりスレードゲルミルという規格外戦力を喪失した以上、大規模火力によるヴォルクルスの撃破が著しく困難なのだ。
だがここで、一筋の光明が走った。HTEソードとTEBキャノンを装備したザフト製WRXの参戦である。すでにザフトの友軍と共に戦っていたヴォルクルスを仕留め、残る敵の掃討に動き回っていた所だ。
支援?
フリーダムの有する全火器を用いたハイマット・フルバーストと、ジャスティスの保有する火器の二重攻撃にヴォルクルスが足を止めたのを狙い、イザークの駆るWRXが振り上げたHTEソードがヴォルクルスの左肩を付け根から斬り飛ばした。
斬り飛ばされた腕をカーウァイのゲシュペンスト・タイプSの胸部から放たれたブラスターキャノンやアークエンジェルをはじめとした艦船からのミサイルや主砲が降り注いで吹き飛ばす。
さしものヴォルクルスの超再生能力を持ってしても、四肢一つをまるごと再生させるのは容易ではない様子で、瞬く間に再生する様子はない。もっとも、十分もせずに元通りになるのは確実と見て良い。
MSにはあり得ぬ再生能力は、先程のAI1でもそうだが散々見せつけられている所為でもはや苦笑い位しか浮かんでこない。
TEソードを一振りしたWRXの左右をジャスティスとバスター、ゲイツ火器運用試験型が並ぶ。ザフトの核動力機とは別の切り札として開発されていた機動兵器のパイロットに、かつての戦友が選ばれた事はアスラン達もラクスから聞かされている。
「このままあいつをぶつ切りにして追い込むのがよさそうだな」
「アスランか。そっちのバスターは」
「おれだよ。久しぶりだな、イザーク」
「ええい、アスランばかりかお前までラクス・クラインの側か。というか、貴様、あの時アークエンジェルに落とされてからどうしたらそこにいるんだ!?」
「そう言ったってなあ。おれだって捕虜になったと思ったらオーブに居て、そんでそのまま宇宙に上がって、ていう流れに任せていたらこうなったんだよ。おれにはどうしようもなかったんだって」
「貴様、なんだその言い訳がましい言葉は!」
「まあまあ、イザークもディアッカも、話をしたいというのはぼくも同じですけれど、今は目の前の敵をどうにかしないと」
「な、ニコル!? お前までそっちの側なのか」
「ぼくは自分の意思で、ですけれどね」
「〜〜〜まったく。かつてのクルーゼ隊に居た赤服のほとんどがザフトを離れるとは」
ヴォルクルスという脅威を前にしてもまだ言い足りないらしく口を開こうとしたイザークを、ある意味大物だなと思いながらアスランが遮った。
「そこまでだ。話ならこの戦いが終わってからいくらでも聞く。ニコルの言った通り、今はあの化け物をどうにかするのが先だ。イザーク、お前の機体が鍵だ。頼りにさせてもらうぞ」
「ふん、まあいい。旧クルーゼ隊赤服の力、とくと見せつけてやろうじゃないか。シホ、レイ、隊長、こいつらは元ザフトですが人間と腕は信頼できる奴です、おれが保証します」
「そう言われても、どうするんです? 隊長」
一応ヴィレッタに伺いを立てているあたり、イザークも少しは独断専行の傾向がおさまってきているのかもしれない。以前ならWRXに乗っている他の乗員の意見を聞く前に自分の意思を押し通していた所だろう。
こちらの都合を顧みずに勝手に盛り上がって話をしていたイザークと、かつてクルーゼ隊に籍を置いていた戦友たち(配属されたアカデミー卒業者が議員の息子達と言う事で有名だった)に、呆れていたルナマリアが、恐る恐るヴィレッタの顔色を伺った。
ヴィレッタが厳格な性格である事は十分に身に沁みている。さて時折妙に抜けていたり、天然めいた発言をしてこちらを驚かせる人だが、今回はどうだろうか。
「分かったわ。フォーメーションに関しては貴方に任せる。元同僚なら私が下手に口を出すよりはその方がいいでしょう」
「ええっ!?」
「あっさりと……」
「だろうな」
ヴィレッタのあんまりと言えばあんまりに簡単な了承の返事に、女性陣二人の驚きの声の中で、レイばかりは淡々とした返事を返した。
このヴィレッタの返事にイザークは我が意を得たとばかりに若い獣の様な笑みを浮かべる。口では文句を並べ立てていても、戦友たちの無事と再び肩を並べて戦える事に胸の内で喜びに震えているのだろう。
「援護は任せておきな」
「ぼくも援護に回ります。アスランとイザークは前衛を」
「ああ。イザーク、間違っておれを斬るなよ」
「ふん、お前こそ余所見をしておとされるような真似をするなよ。それに、お前達の機体は本元ザフトのものだからな。無傷で返せ」
「あ、バスターは地球連合のだけど?」
「それもついでに無傷にしておけ!」
「はいよ」
良くも悪くも自分達のペースらしい四人は、目の前にまで迫りつつあったヴォルクルスへと向き直る。
支援
砲撃戦向けの機体であるバスターで接近戦を挑む真似はせず腰の長物二つを構え、ジャスティスとフリーダムの武装を備えるゲイツ火器運用試験型も、クスフィアスやルプスビームライフルを構え、迫りくるヴォルクルスへ牽制を仕掛けはじめる。
背後からの援護射撃の中をジャスティスがWRXに先行する形で突出した。すでにアスランは全身の細胞一つ一つ活性化したかの様に鋭敏な感覚を覚えていた。
脳裏にイメージされた爆ぜ割れた種子が水面に起こした波紋が、四肢の隅々まで行き渡り自分の思考や知覚器官を一段上のモノに上げている。
ビームライフルを腰後ろ部にマウントして、ビームサーベルを両手に構えて一気にフットペダルを押し込みヴォルクルスへと肉薄する。
「先に仕掛けるぞ、イザーク」
「分かっている」
ドレイク級駆逐艦なら一噛みで真っ二つにしてしまうほど巨大なヴォルクルスの下半身の大顎が開き、ジャスティスを噛み砕く為に動きをあわせてきた。その口内へと後方からレールガンやビーム、ミサイルが次々と飛来して大小の爆発を生む。
痛痒を感じなかったようでヴォルクルスは怯んだ様子も見せなかったが、動きの鈍った隙を突いてジャスティスはヴォルクルスの左側面へと回り込み、二刀流のビームサーベルでわきわきと動く節くれ立った足をまとめて斬り飛ばしていった。
一つ切り落とす度に噴出する青、黒、緑と様々な色の体液に装甲越しにも吐き気を催しながら、ジャスティスを追い払おうと振るわれるその他の足や触手を回避し続けひたすら斬撃を加え続ける。
背後から弧を描いて振り下ろされた鎌をかわし、ヴォルクルス自身へと突き刺さったその鎌を半ばから斬りおとして、ヴォルクルスに突き刺さっている分を思い切り蹴り込んで、肉の中へと埋没させる。
改修を施したファトゥムに装備したミサイルを全て発射してさらにヴォルクルスに痛打を浴びせる。他のザフトのエース達が登場したジャスティスと比較しても圧倒的な戦闘能力は、やはりアスランの技量と与えられた別世界での戦闘経験に依る所が大きい。
ニコルやディアッカの援護射撃に合わせて背のフォルティスビームキャノンでヴォルクルスの顔面に穴をいくつも穿ち、十分に注意を引いた事を確認し友を呼ぶ。
「イザーク!」
「任せろ!」
振りかぶられたHTEソードがヴォルクルスの顔面から下半身までを縦に切り裂く。超弩級のエネルギーを収束し大剣状に固定したHTEソードの刀身は、溢れる膨大なエネルギーをもって斬り裂くのみならず周囲の細胞を消滅させる。
さらにその巨躯を蹴り飛ばして遠方に追いやりながら、左手のTEBキャノンの銃口を向けた。
最初に相手をしたヴォルクルス分身体との戦闘で一気に消滅まで持ち込まなければ手痛い消耗を強いられる事は身に沁みて分かっていたから、間を置かずに撃破まで行く腹積もりなのだ。
「人間の戦いにバケモノごときが手を出すな!!」
たとえ敵が神を名乗る存在であろうと、自分が背後に守る人々を傷つけようと言うのなら、容赦も躊躇もしない。そして放たれたイザークの激情を乗せたTEBキャノンの一撃が、宇宙に現れた邪神の分身のひとつを消滅させた。
すでに各軍の死霊軍団への対処は、ヴォルクルスの分身体には自軍の最精鋭部隊をぶつけ、それ以外の者達は雑兵の対応と割り振られている。
二体の内一体は彼ら元クルーゼ隊の面々が相手に、残る一体はキラやムウらが相手をしていたのではなく、一匹の剣鬼が死合っていた。
「殺ッ!!」
ヴォルクルスの頭部を過ぎ去った一陣の剣風。鍛え抜かれた鋼が体現した剣の技が、ぱっくりとその喉笛に一筋を刻み、瞬く間に様々な色の血玉が噴き出す。駆け抜けた鋼の剣士目掛け、ヴォルクルスの尾が跳ね上がって襲いかかった。
大型戦艦でもなければ一撃で粉砕される圧倒的な肉の質量に走る剣光。
ムラタの駆るガーリオン・カスタム無明の手に握られたシシオウブレードが、その根元までをヴォルクルスの尾に埋もれる。シシオウブレードに掛かる負荷を受け流し、刀身を捩じる動作と共に引き抜いて機体を回転させつつ回避する。
こちらを振り向くヴォルクルスの顔面目掛け再びテスラ・ドライブの光の粒子を散らしながら突撃し、包み込むように四方から迫ってくる鉤爪や触手をまるで大輪の花の様に閃いた剣閃で迎え撃った。
無明のシシオウブレードの刃圏に踏み込んだ爪も牙も触手も、視認できぬほどの超高速の斬撃の前に切裂かれ、血潮をしぶかせる。恐るべきはその斬撃のもたらした成果であった。
ムラタの技を十二分に体現した無明によって斬られた時、ヴォルクルスの細胞は再生する事無く斬られたまま、どろどろと血液を零しながら痛みに震えているのだ。
復活すれば世界が滅びると言わしめたヴォルクルスの再生能力さえ凌駕し、不死身とさえ思えるヴォルクルスの生命力を蹂躙するムラタの魔剣の冴え。もはや神さえ屠る域に達さんばかりの力量であった。
「神か。まだ斬った事が無かったのでな。楽しめるかと思ったが、そうでもない」
ひどくつまらなさげに呟きムラタは醒めた目でヴォルクルスを見た。巨体のあらゆる場所を自ら流した血潮で醜悪に彩り、憎悪を湛えた瞳でこちらを睨んでいる。
「これならばゼオルートやウォーダン、シンの方がまだマシか」
そう言う間も襲い来るヴォルクルスの魔手のことごとくを縦横無尽に翻るシシオウブレードで受けると同時に斬り裂き、ヴォルクルスにばかりダメージが積み重なってゆく。
肉を切り裂く音も骨を断つ音もなく、刃が星明かりを反射して煌めかせる光のみが、無明の周囲を彩る。
「人を斬り機を斬り神を斬り、残るは魔か仏か。フン、人を斬るのが一番性に合う」
終わらせるか。
機械的に作業を続ける感覚で、シシオウブレードを両手で握り直した。じり、とわずかに後退する様を見せたヴォルクルスめがけ、無明の全推力を生かし飛翔。
狙いは――
「御首、獲らせてもらうぞ。チェストオオオオ!」
これまでの最速を越えさらなる最速へ。迫りくる死の刃から逃れようとヴォルクルスの放ったスーパーソニックウェーブは音の速度をはるかに超えた刃の前に斬り裂かれ、ヴォルクルスの首は見事に刎ねられた。
胴から切り離された首がくるりくるりと慣性のままに回り踊る。再生を許されぬ傷を無数に負わされたヴォルクルスの肉体がわずかに痙攣してから動きを止める。魔性の生命力は神域に達した人間の剣技の前に滅びの道へと突き落とされていた。
シシオウブレードを構え直し、次の獲物を探そうとしたムラタの背筋に氷の針を突き立てられた様な感覚が走る。殺気だ。
ヴォルクルスののっぺらぼうのような顔面に溶けていた口が亀裂と共に開き、断末魔の悲鳴をスーパーソニックウェーブに変えて放とうとしている。
不可視の攻撃といえど、人間の限界を超えた領域に足をかけつつあるムラタの超直感とでも言うべき察知能力ならば、十分に回避し得る。無駄な足掻きと吐き捨てようとしたムラタは、しかし、無明に回避行動を取らせなかった。
無明の背後に航行不能に陥っていたネルソン級の姿があった。回避行動を取っても取らずとも、スーパーソニックウェーブの直撃を受けて轟沈するは間違いない。かつてのムラタであったならそのまま見捨てていただろう。
だが、なぜか、見捨てるという選択肢は選ばなかった。
蘊惱やロウ・ギュール、シン・アスカだったら、そうはしないだろうと、思ったからかもしれない。機体を盾にした所であのネルソン級を守れはすまい。いや、そも自らの命を盾にするなどという発想が愚か。
尋常な生を捨ててまで求めて来たのは何か。血反吐を吐き、骨を砕き、肉を割いてまで会得しようとしたものは何か。屍山血河を持って築いた道はどこへと通じる為のものであったか。
「斬る」
剣だ。もっと速くもっと軽くもっと重くもっと鋭くもっと、もっと、もっと、飽くなき欲求のままに歩み続けて、死んだ後でさえも同じ道を歩み続けてきた。
そうだ、剣だ。剣なのだ。それだけがこの無様で畜生になり下がった己の唯一誇れるもの。何者にも負けてはならぬ、劣ってはならぬ至高の輝きを放つモノ。
再び無明の機体が両肩に増設されたブースターや内蔵していたテスラ・ドライブの出力を最大にし、それらの呼吸をムラタの技量が調整し、最小の時間で最大速度へと加速する。
既に何度も斬った破壊の音波を斬る事も、邪神などと名乗る化け物を斬る事にも新たな感慨はない。
「貴様を斬るのはもう飽きた。疾く去ね」
ひと振り。上段に掲げた獅子王の振り下ろしがスーパーソニックウェーブの真っ二つに両断し、込められた破壊力も魔力も霧散させる。
ふた振りめ。振り下ろした刃を切り上げ、悔しげに顔を歪めるヴォルクルスの首を下方から縦に両断。内圧によって頭部の中身をゆっくりと露呈する邪神の首を、ムラタは石木を見つめる冷たい瞳で見つめた。
つ、と口の端から零れた赤い流れが、ムラタの針金を植えたような髭をゆっくりと濡らした。
「ち、おれもまだまだ、未熟ものか」
そう呟いたムラタの目は、背後から無明を貫くソードダガーLの握った対艦刀シュベルトゲベールが映っていた。ヴォルクルスがスーパーソニックウェーブを放つのと合わせて、周囲の撃墜機に死霊を取りつかせて潜めていたものだろう。
全霊を乗せた一撃に没入していたムラタを仕留める為に、ヴォルクルスが自らの滅びと引き換えにして隠していたのだ。斬り上げた獅子王の太刀を逆手に持ちかえて、右の脇を通してソードダガーLの心臓部を貫く。
ヴォルクルスの滅びと同時に操っていた魔力が消えたようで、そのままソードダガーLは動きを見せず、無明から離れていく。
「ふん、このような最期か。殺人剣にも活人剣にも道を選びきれぬおれには、似合いか」
無明の胸部と背部からばちばちと放電を散らしながら、ゆっくりと脱力するように四肢がだらりと伸びて行く。操り糸を斬られた人形の様だ。背筋の方から熱がどんどんと引いてゆく。シートは赤く濡れそぼっている事だろう。
「ゼオルート、ウォーダン、シン・アスカ……。もう一度、貴様らと心行くまで剣を交わしてみたかったがそれも叶わぬようだ。まあいい、修羅道にて亡者どもと戯れてくるか。しかし、守るために剣を振るうのも、くく、思ったよりは面白い」
無明のメインカメラが、漆黒の球体を映した。そこにネオ・ヴァルシオンとヒュッケバイン、そしてグルンガスト飛鳥が飲み込まれた瞬間を確かに見た。だが、それでもムラタはシンが死んだとは思えなかった。
あのウォーダンが魂を託した男が、無様な死に方をするなど誰にも許されまい。
「なあウォーダンよ、貴様の死に様、どうやらおれは笑えぬようだ。まあ良い、一度死んだ甲斐はあったからな」
どこか自嘲するように呟いて、ムラタは静かに瞼を閉じた。口の中の鉄の味は気にはならなかった。ああ、本当に、いい気分だ。
DC本土オノゴロ島の海辺を、一人の少女が歩いていた。早くに両親と死別し、記憶を失い、孤児院に引き取られてから適性があるからと軍に身を置いた少女であった。
オーブからDCへと主を変えた軍ではあったが、そのまま席を置き、来年には士官学校を卒業する。最初に教習用に登場した簡易型作業ロボット“ボスボロット”は、今では自分の手足の様に扱えるくらいにはなった。
潮風に、夜の闇を糸にしたような艶やかな黒髪をなでられ、そっと白い指で髪を抑えながら少女は空を見上げた。まぶたに焼き付いて離れそうにないくらい星の奇麗な夜だった。
わずかに涼しさを孕んだ風が肌に心地よい。星も月もきれいだった。ただそれに身惚れる様にして見上げ、とある一点になぜか注意を引かれた。
星の瞬きがひときわ美しいから?
なにか知っている星座を構成する星の一つだったから?
違う。なにか、そこに自分の運命を変えてしまう位とても大切な人がいる様な、そんな気がしたのだ。まるで白馬の王子様を待つ御伽噺のお姫様の様な気持で。
「怖くなるくらい、空がきれい」
やがて栄光の星の名を背負う事になる少女――セツコ・オハラは、シン・アスカが居る彼方の戦場を、その星色の瞳に映すように夜空を見上げ続けた。
地球のどことも知れぬ島で、両腕に鳥の翼を生やした女神の様な巨像の前に一人の美女が祈るように指を組み、眼を閉じたまま立っていた。
毛先に行くにつれ虹色を帯びる純金にも勝る黄金色の髪に、淡い笑みを浮かべた唇や閉じた瞼、鼻梁の配置は神に愛された者の手によるものであろう。
絵画の中の女神がそのまま飛び出て来たような神々しさを纏う美女の周囲を、新たに三つの影が埋めた。ゆうに数十メートルを超す巨躯の三種の獣の巨影であった。ワシ、サメ、ヒョウと地球上の動物達を模したシルエットだ。
美女がそれぞれの名を呼んだ。愛しさと親しみをこめ、詩を吟ずるように。
「優しいカナフ、気丈なケレン、無邪気なザナブ」
家族へと向ける優しげな声に、それぞれ獣の影達は母に向けるように優しい鳴き声で返事をした。
間違って地上に落ちてしまった天上世界の芸術品の様な神秘的な美しさと人間性を超越した雰囲気の中に、時折幼い印象を垣間見せる不可思議な美女は、眼を閉じたまま神託を受ける巫女の様に厳かに口を開く。
「今、この世界そのものが招いた守護者が災厄となってしまいました。その者を退ける為に私達も力を貸しましょう。災厄と対峙している彼らはいずれこの星の守護者となるべき正しい心と力を持った者達なのですから」
やがて地球の守護者として姿を現す事になるバラルの園の主、ナシム・ガンエデンは閉じていた瞼を開き、奇しくもセツコ同様にはるか頭上に広がる宇宙のある一点を見つめた。
ただ一つのぬくもりが、シンを深い眠りから呼び覚ました。ほとんど意識を失って朦朧とした状態でステラの焦燥に焦れた声がかすかに聞こえていたのを覚えている。
あの時一体何があったと言うのだろう。それに、今はあの体の細胞全てを引き裂くような痛みも、激しい喪失感もない。ひょっとして、死んでしまったのだろうか。
「おれ、は?」
「シン」
「ステラ?」
隣にステラがいた。ステラの右手がシンの左手を優しく握りしめている。この繋がれた手のぬくもりが、シンの意識に覚醒を促していたのだ。二人ともパイロットスーツ姿でヘルメットは被っていない。
いつもと変わらぬ無垢な笑みを浮かべるステラにつられて思わず笑い返しながら、シンは周囲を見回した。
記憶の中から失ったあの空間に似ていた。ただし色は灰色がかった銀で粘度の高い液体が常に流動しているようだ。その癖足元には地面を踏みしているのと等しい確かな質感がある。
「ここは、どこだろう」
「分からない。ヒュッケバインのブラックホールエンジンが暴走して飛鳥とヒュッケバインが飲み込まれちゃったの」
「え!? じゃあ、おれ達……」
死んでしまったのか、と、だいぶ快癒したとはいえ、まだブロックワードの後遺症が残るステラのいる前で口にしてはならない言葉を、シンが言うよりも早く二人にとってもっとも頼りになる男の声が聞こえてきた。
「かもしれんが、息もしていれば脈もある。生きたままなのかもしれんな」
「総帥」
「おとうさん」
シン達の背後から、青ざめた顔色は変わらぬが口元を濡らしていた筈の血痕が消えたビアンが姿を見せた。泣いた子供がさらに泣き出しそうな威圧感を伴う顔には、二人の無事を確認した安堵が垣間見えていた。
シンの手を握ったままビアンの方へと歩き出したステラにつられてシンも歩き、ブラックホールにのまれた筈の三人は再会した。
「二人とも無事で何よりだ。しかし。乗っていた筈の機体はなく、ここがどこかなのも分からぬのはいささか難儀だな。外ではまだ戦闘が続いている筈だ」
「それなら、ここにおれ達を呼び込んだ奴に聞けばいい」
「シン?」
「そこにいる奴、姿を見せたらどうだ!」
ステラとビアンにあった事でやや緩んでいたシンの顔が瞬時に戦士のそれへと変わり、飛鳥のコックピットに積んでいた木刀・阿修羅が右手に顕現する。物理法則よりも思念が世界を左右する空間であるらしい。
阿修羅の切っ先を背後に突きつけ、シンは呼吸と血流の流れを調整し、体内で気を練ると同時に七つのチャクラの内、自らの意思で稼働させる事の出来る四つのチャクラを回転させる。
体の下方から上方へ行くにつれより高純度化し、質を向上させるチャクラのエネルギーがシンの全細胞と精神を澄んだものに変える。ただ、シンには態度ほど戦闘の意思はなかった。
突きつけた阿修羅の切っ先の先から姿を現した少年の姿にどこかで見た様な感覚を覚えて、また向こうからも一切敵意が感じられなかったからだ。
銀の髪と華奢な体躯が目を引く少年――クォヴレー・ゴードンは、その素顔を露わにし、まっすぐにシンの瞳を見返しながら言葉を紡いだ。
「大したものだ。この空間で他者の気配を読む事はひどく難しい」
「……あんた、どこかで会ったか?」
「さてな。それよりお前達に何が起きているか伝えておこう。ビアン・ゾルダーク、お前ならすぐに理解できるだろう」
「む」
ここでクォヴレーは警戒の視線を向けてくるステラにちらっと眼をやった。得体の知れぬクォヴレーに警戒を抱いてはいるが、ビアンとシンが傍らにいるから、どうにも親犬の後ろに隠れた子犬位にしか見えない。
すこしだけ、クォヴレーの口元も緩んだようだ。
「かの徐のヒュッケバインが生み出したブラックホールを媒介にこの空間への扉を開いた。今この場にいるのはお前達の精神だと思ってくれ」
「おれ達の精神?」
「ああ。さて、お前達をここに呼んだのは、ヴォルクルスを斃すためだ。このままでは奴に地球が滅ぼされ、後に現れるだろう奴らに対処する事が出来ない。ヴォルクルス自身も強力だが、奴にはまだ届かない」
「あの化け物より強い奴がいるってのかよ!?」
「そうだ。ヴォルクルスもそしてお前も、あの世界にいる者達はすべて奴と『門』の向こうから現われる者に対抗するために呼び込まれたのだ」
「え、ビアン総帥が?」
ビアンは目を細め、クォヴレーの言葉を吟味する様に黙っていた。ステラやシンはクォヴレーの言う事に理解できず、きょとんとした眼を向けている。
「ならば、私のやろうとしてい事は都合が良かったか」
「そうだな。だが、それだけでは間に合わない事態になってしまった。呼びこんだ存在の力を世界が見誤ったと言うべきか」
「だったらおれ達に負けろって言うのか!」
「そうはいっていない。おれと、それと彼女達も手を貸してくれる」
シン達がクォヴレーの視線にあわせ、その隣に目を向けるときらきらと虹の様に美しい光の粒子と共に、美の女神の降臨かと思うほどに神々しい美女が姿を露わにした。
びし、とその姿を見て固まるシンの両眼をさっとステラの小さな手が覆った。
「シンは見ちゃダメ!」
「ええ、もったいな……」
と言ったのにはわけがある。ガンエデンの巫女たる美女は一糸まとわぬ姿だったからだ。美しさと艶とがこの上ない比率で構成されている乳房の先も、年齢の割に薄いブロンドの秘所も、惜しげもなく晒しているのだ。
これにステラが本能的に女としてまだ自分では勝てないと悟ったのか、シンの視界を封じたのである。その二人の様子にガンエデンはくすりと小さな笑いを零した。
「はじめまして。ですが自己紹介をしている時間もありません。私が貴方達に問うのは一つだけです。力を望みますか? ならば私と因果律の番人が力を貸しましょう。本来世界間の均衡を崩しかねぬ行為ではありますが、止むを得ないでしょう」
「力か、よかろう。私はそれを望む」
ビアンが重々しく頷く。その返事に、なかばじゃれついていたステラとシンも、表情を改めてクォヴレーとその隣のガンエデンを見つめた。
クォヴレーとガンエデンが同時に口を開き、彼らの背後にそれぞれ巨大な影が浮かびあがる。
冥府の底より現われた魔王の如き異形はクォヴレーの背後に。三体の獣を従えて、玉座に腰かけた天上世界の女神の様な威容はガンエデンの背後に。
「テフィリンの解放を……」
「唱えよ、テクラトュス」
「テクラトゥス……」
ビアンが、シンが、ステラが、ガンエデンが、クォヴレーが、その言葉を唱える。
「グラマトン」
そして、その世界は光と共に弾けた。
しえん
「ぬ?」
「この力は……」
「なんだ!? サイバスターが」
機体の全身にダメージを負った精霊憑依状態のサイバスターと、左腕を失ったネオ・グランゾン、そしてこの二機を追い詰めていた真ナグツァートが動きを止めた。一瞬の気の緩みも死につながる筈の戦闘状態であった三者が、皆等しくある一点に目を向ける。
彼ら三人のみではない。もと死者であったウェンディや、精霊との親和性を高められたサイレント・ウルブズのメンバー達、そして念動力の素養を持ったカーラ、ユウ、タスク、レオナ、リュウセイ、アヤ、クォヴレーと因縁のあるイングラムやヴィレッタ達が気付く。
ネオ・グランゾン、グルンガスト飛鳥、ヒュッケバインを呑みこんだ暗黒の子宮の中から現われようとしている何かに。
ヒュッケバインのエンジンによる暴走によって生じた疑似ブラックホールは、不自然な安定さを見せていた。三機を呑みこんだあとはそれ以上拡大する事も縮小する事もなく、ただそこにあり続けたのである。
斥力も引力も、いかなるエネルギーも発生させずどんな探査装置を持ってしてもなにも観測されていなかった。
見る事は出来ても存在していない筈のブラックホールの表面に、びしりとひびが入る。目にしたもの全ての耳に聞こえる様な大きな罅。直径百メートルほどに安定していたブラックホールの殻を内側から、腕が突き破ったのだ。
薄いガラス片の様に物質として安定したブラックホールの破片がパラパラと毀れ落ちる。殻の縁に手をかけて残る体を引き起こし、ソレが姿を現した。
光さえ逃げられる宇宙の奈落の底たる暗黒星の内側より生まれ落ちたのは、実に全高240メートル、頭頂高200メートル、重量9800トンを越す新たな姿を手に入れた大魔王であった。
57メートルを誇っていた真紅の巨躯を、冥府の銃神の漆黒と黄金、地球の守護者の純白を纏い、その姿はより有機的な印象を受けるものに変わっていた。
右手のディバイン・アームはディス・アストラナガンの持つZOサイズ、シンがウォーダンより受け継いだ斬艦刀を取り込み、左腕部のクロスマッシャーはヒュッケバインのブラックホールキャノンと融合している。
背から延びる巨大な翼はカナフとガンエデンのものだろう。右肩にはヒョウの頭部をした増加装甲、左肩にはサメの頭部を模した増加装甲が追加されている。
ネオ・ヴァルシオン、ナシム・ガンエデン、ディス・アストラナガン、カナフ、ケレン、ザナブ、グルンガスト飛鳥、ヒュッケバイン、その全てを集約した機神がそこに現れた。
ネオ・ヴァルシオンのシグナルロストを確認し、胸の中に無限に溢れる激情を堪えて、部隊の指揮を執っていたミナは、モニターに表示された機体名に息を飲んだ。
「ディス・ヴァルシオン……だと?」
というわけで
>>108さんの予想通りチート機体はボスボロットでした。
なお、シンたちの機体はベタベタな手ですが、ディストラナガンと融合しました。ただ出すからには予想を超えなければならんと開き直った関係で、最初考えていたものよりもはるかに強化された形で出現です。
メイン;ビアン、サブ;シン、ステラ、クォヴレー、カナフ、ザナブ、ケレンで精神コマンド七人分ですね。私はチートキャラを出したら、同等前後のチートキャラをもって叩き潰すという手法の人なので、こうなりますた。
もうちょっとだけ続いて、もうちょっと亡くなられることもいらっしゃいます。では、また次回。
チートと来たらDiSRXだろと思ったら遥か頭上と足下を過ぎていったんだぜ
おつでしたー。
なんかトンデモ機体出た。
…デザインを見てみたい。
あと、剣鬼さんの散り様がこれまた格好いい。
散るのは惜しいですが、実は生きてただったら台無しすぎるしなぁ。
次回かその次で種編完結?待っております。
なんだかわからんが、ボスロボットに乗るセツコさん似合いすぎてるんだぜ
ボスボロット…一応特機、だよなw
つかガンエデンの僕×3の精神コマンドって何があるんだろうかwww
ところでなんでウェンディいるん?テューディじゃね?
精神コマンドにイルイも追加ですね。あと、ウェンディとテューディは単純にミスです。あちゃー
イルイはサルファじゃどのルートでも生存確認されたから
この世界のイルイ?
最初からこの世界にいたとか
そして
根底は同じだが途中でスパロボ世界と種世界に分岐したという結末だな
ムラタの死にざまを読んで、「うしおととら」の凶羅の最期を思い出した
劇的なウォーダンの最期とは対照的な静かな最期がらしくて良い
総帥、ムラタ描くときの気合の入り方からして相当気に入ってたキャラだったろうに、キッチリ死なせるあたりは流石
ディス・ヴァルシオンはガンバスターと同サイズですか
圧倒的すぎて脳味噌沸騰しそうだw
ふと思ったんだけどこのまま行くとイルイはシンに拾われる妹ルートに行くのか、
それともビアンとミナに拾われて歳の離れた夫婦ルートに行くのかが気になるぜ
まだガンエデンだから、門を破壊した後に立ち塞がりそうな予感がしないでもない。
しかしヴォルクルス撃破すると残るスパロボ敵は今の所メイガス、ルイーナ、ヒヒョー+否定だっけ。
出てないのはA、J、64、、XO、K、Z、C3、SC2、RRR辺りのキャラか。
シャドウミラーは種世界を見てどう思うんだろうなぁ
もし(間違って)種世界に影鏡が来たら
書いてみるかw
戦争が続くのは良いが絶滅するまでやられちゃたまらねぇ!!
とヴィンちゃんがストレス溜めながら頑張って戦況をコントロールしようとする話……とか?
まるでジョジョスレのヴェルサスのようだなw
種世界は戦争するほど腐っていってる気がするwww
なんかすごくきれいなヴィンちゃんが見れそうだな……
まさかの正義のシャドウミラーとな!?
種編のラストでヴィンデルが
「どうして私たちはこんな世界に来てしまったんだろうな……」
とか言って終わりですね、わかります。
ピンク頭同士のレモンの頭の血管がストレスでブチ切れないか心配だ
ヴィンちゃん
「こんな殲滅戦争ばかり繰り返すような世界では
戦争での人類の保存と発展など望みようが無い」
レモン
「一度、目を覚まさせてあげないとどうにもなら
ないんじゃないかしら?裏からのコントロールを
受け付ける状態じゃないわよ、コレ」
ヴィンちゃん
「うむ……遺憾ながら、一たび戦争の終結を目指
さざるを得まい。その上で、地球連合を解体する。
イデオロギーの対立ならまだ扱いようもあるが、
既に”人が生きる為の方策”を廻る争いですらな
いのでは、な」
悪セル
「ふん、それでおれはどこから叩けばいい?」
ヴィンちゃん
「凸っぱげだ」
レモン
「桃電波よ」
悪セル
「どっちだよ」
○キオも叩かないとダメだな。
奴がいる限り第二第三のラクシズが生まれる。
アクセルとラミアをそれぞれ二つの軍に忍び込ませて
ウォーダンをラクシズに・・・デジャヴュがする
色んな場所でスカウトに東方西走するヴィンちゃんとか
オーブでシン達を拾った後育成してその傍らデュランダルやカナーバやミナ様と会談開いて出方を伺ったりとか
適当なコロニー手に入れて独自改造MS開発に着手してGジェネもどきやったりとか
確かにあれじゃあヴィンちゃんも闘争のコントロールとか言ってられんなwwwww
ちょっと何かあると暴発する世界だからなwww
今まで無かったのが不思議なぐらい活躍の余地が無いか影鏡inCEwww
ラクシズと手を組んだ影鏡は逆にラクシズがOG世界に来た話だったしな。
種本編でラクシズがやった事自体は影鏡に都合が良い気がせんでもない。
ジェネシスの破壊とかは結果論になるけど、
両方が滅びず、直ぐに継戦は出来ぬものの二年経たない内に新型兵器を開発出来るぐらいの国力を残して疲弊させ、
あげくの果てには停戦状態(=終戦してない、火種灯ったまま)に持ち込むという
ヴィンちゃんたちでもここまで上手くやれるかわからないレベルの諸行ですよ、しかもそれを全くの善意からやってる。
種死の方は評価しがたいが。
>>143 >戦争が続くのは良いが絶滅するまでやられちゃたまらねぇ!!
OG外伝でロリセルが修羅ども見てそう思ってたな
種世界は修羅界レベルかw
>>157 ラクシズのお陰でもなんでもないだろ、単に横殴りでジェネシス破壊しただけ。その後は完全に運任せ。
カナーバの頑張りがなければすぐに再戦でオワタだったぞ、裏じゃヤバいこと起こりまくりだし。
疲弊したのはラクシズ関係ないな。
>>159 あ、カナーバさんのおかげか。
すまん、超すまん。
そういや種死の頃カナーバさん何処にいたんだ?
そのカナーバにもラクシズの罪をクルーゼに擦りつけたという汚点が
罰として俺の年増雌奴隷
>>161 ユニウス条約の内容に不満があった市民からのクレームが凄くて退職したよ。
>>163 カナーバさんは俺と結婚を前提としたお付き合いをするんで
お前は声が同じコレで我慢しろ
つ リ゚◇゚ ル
>>163 では緑髪の未亡人は俺が嫁にもらっていきますね
ラクシズ自体が完全コントロール不可能な集団だからどうしようもない。
>>166 貴様、息子の戦死と夫の憤死で自失呆然の未亡人に何をする気だ
>>163 アンタ侵略スレのあの人かw
エリカからアイリーンに鞍替えしたのかw
141 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/12/25(月) 23:08:59 ID:???
このスレでエリカの罪について語るとこうなりますw
392 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/01/02(月) 13:11:27 ID:???
本来ならオーブはサハクの手に渡っていたのに(アストレ小説2巻参照)
カゴリ暗殺幇助を拒否したエリカが悪い
罰として旦那と別れて俺の愛人
20 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/04/21(金) 15:17:50 ID:???
オーブがアスハ王朝の愚政下にあるのはカガリ暗殺への協力を拒んだエリカのせい
罰として俺の年増雌奴隷にしたい
207 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/04/19(水) 01:20:11 ID:???
泣きじゃくる暇あったらさっさと首長の地位取り返せよと思った・・・
エリカ、素直にサハクの言うこと聞いてれば
211 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/04/19(水) 05:42:49 ID:???
>>207 オーブの害悪を除く千載一遇のチャンスをフイにした罰として
エリカは旦那と息子の前でリンカーン決定
806 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/11/11(土) 13:20:25 ID:???
エリカ=無能なカゴリが害悪であると決断したサハクの追っ手を騙してアスハに鞍替えした売女
こいつさえいなければ、種死のオーブはサハクの手でもっと平和だった。
808 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/11/11(土) 13:25:29 ID:???
>>806にお決まりのレスがつくかなw
813 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2006/11/11(土) 13:35:05 ID:???
>>808 誰もつけないようなので俺がやっておこう
>>806 罰としてエリカは旦那と子供の前で陵辱
Kガリさんに来てもらおう!
この隙にミナ様にアペトキシン4869を飲ませに行ってきますね
>>175はいい加減ラースエイレムを止めるべきだと思う。
なんで種は若い女キャラは叩かれて熟女ばかりハァハァされるんだw
178 :
通常の名無しさんの3倍:2009/04/10(金) 15:46:44 ID:nA7F9Qdm
>>175 今ふと思い出したが、まとめ倉庫の逆シンの所にロリっ子ミナの小ネタがあったな。
総帥の所のミナが幼女になったらDCがますます怪しい組織になるな
だが、やはり世界制服を狙う悪の軍事結社にはボンテージの似合う女幹部は必須だよな
レモン・ラミア然り、ミナ様然り。
つまり悪の軍事結社が世界を支配した折にはボンデージが制服か>世界制服
さすがに他所スレのみなたまを投入するのはまずいですよね。まあセツコを小さくした前例もありますけれども。では、ビアンSEED種編最終話投下します。
規制ひっかりりそうですので支援いただければ幸いです。
最終話 終わらない明日へ
それは異形であった。
それは魔物であった。
それは悪魔であった。
それは亡者であった。
それは生者であった。
それは魔であった。
それは聖であった。
それは神であった。
それは死であった。
それは命であった。
両肩を守る白い獣の首。背から延びている竜頭の様なパーツからは左右に六枚の翼が大きく広げられている。多くの人々が思い描いてきた天使の様な純白の翼と、天空を悠々と羽ばたく猛禽の翼、そして落とす翳が人々に不吉を齎す悪魔の背にこそ相応しい翼。
胸部を灰色がかった白い装甲で覆い、四肢や腰部の真紅の装甲に金色の装飾が成された黒金の鎧をさらに厚く鎧っている。右手に握る二百メートルに及ぶ長大な剣は、斬艦刀をベースにディバイン・アームとZOサイズを取り込んだものだ。
斬艦刀の青い刀身は銀色に変色し、長巻の様な長い柄はディバイン・アームとZOサイズが融合したもので、柄尻には十倍近く口径が巨大化したラアムショットガンが内蔵されている。
背から延びていたスタビライザーはケレンやザナブの尾と融合し、異様に太く巨大化し伝説の中で猛威を振るう竜の尾の様に太く長い。
ヴァルシオンタイプが有している四つのカメラアイの上に、緑に光るディス・アストラナガンのカメラアイが追加されていた。
四倍近い巨体へと変わったディス・ヴァルシオンは、超自然的な威圧感を纏い、戦場にいたすべてモノの達の意識を奪った。
それは真ナグツァートの出現の際に誰もが胸に抱いた理解できない存在への畏怖と、神や魔と言った超越的な存在への畏敬を、見る者達に等しく抱かせていた。
直径百メートルほどで安定していた疑似ブラックホールの中から二倍半近い巨躯を伴って生まれ落ちた機神は、ゆっくりと蒸発してゆく暗黒の子宮から立ち上がったまま、六つの瞳で真ナグツァートを睥睨した。
ヴァルシオン系列と思われる機体の識別信号が、ネオ・ヴァルシオンとグルンガスト飛鳥、ヒュッケバインの三機分をまとめて発している事に気づいたミナやスティング、アウル達が急いで通信を繋ごうとした。
家族も同然の三人が死んだと思っていただけに、生存を確認したいという欲求を覚えるのは当然の事だろう。
「シン、ステラ、総帥、そこにいるのか!?」
「返事しろよ、返事!」
「そんなに怒鳴らなくても聞こえてるって」
「スティング、アウル! シンもステラも無事だよ。おとうさんも一緒!」
「シンにステラか、無事なんだな」
「はああ〜、ビビらせんなよなぁ」
心の底から安堵した様子のスティングとアウルの返答に、くすりとステラは小さく笑った。動きを止めたナイトガーリオンとアカツキの近くに、ミナシオーネとその護衛であるフェアリオン三機が降り立つ。
ミナシオーネのコックピットに、口元を血で濡らしたビアンの顔が映った。蒼白の顔色は今すぐにでも病院に力づくで連れ込みたい衝動を覚えさせるが、負傷する前と変わらず強い光を湛えた瞳がそれを拒んでいた。
はっきりと安堵の息を吐き、かすかに緩んだ目元を引き締めて、ミナがビアンに声をかけた。
「ビアン、無事なのだな?」
「なんとかな」
「それはなによりだ。まったく、寿命が縮んだ思いをさせおって……。ところでその機体は何だ?」
「私にもよくは分からんのだ。科学者としては失格だが、原理は分からんが『使える』という代物でな」
「『使える』か。あの腐れバケモノを塵一つ残さず滅ぼせる程度には使えるのだろうな?」
「おそらくな」
「ならよい。いろいろと詳しい話は後で聞かせてもらおう。指揮系統はかろうじて生きている。100メートル級のヴォルクルスはすべて仕留めた。残りは細かい連中とあの大物だけだ」
ザフトWRX、連合WRX、無明、ガルムレイド、サーベラスらの活躍によりヴォルクルス分身体は全て撃破されている。残るはルオゾールの魔力がある限り無限に出現するデモンゴーレムや死霊の操るMS達だ。
ディス・ヴァルシオンの六つの瞳が真ナグツァートの視線と交差する。諸共に魔性の者達が崇める王か神のごとき威厳の衣を纏っていた。
ルオゾールが下賤、逸脱したと思っていた人間の生物的な本能が、一キロメートルを超す巨体を構成する全細胞に恐怖を伝え、慄き震えた。アレは、自分を滅ぼしうる敵だと。
それまでアストラルシフトと莫大な魔力に掘る魔術障壁という無敵の防御と、ヴォルクルスの無限再生細胞に支えられた耐久力、億万人を超す死者達の魂を糧とする持久力を兼ね備え、ネオ・グランゾンとサイバスターにわたりあっていた余裕は既に無かった。
まずい。単体ならばまだこちらに分があるかもしれないが、シュウとマサキに加えてあの機体が力を合わせて牙を剥かれたら――!!
「かああああ!!!」
真ナグツァートの巨体に開かれる六万の瞳、刻まれる五万の肉の割れ目、牙を剥く四万の口。ファントムビュレット、アストラルバスター合わせて十六万の死者の魂を媒介に放たれたおぞましき死霊魔術の連続攻撃。
その内の四割ほどを、シュウがワームスマッシャーで撃ち落とすが、それでも残る十万に及ぶ紫光の霊魂や六芒星の魔法陣がディス・ヴァルシオン目掛けて宇宙を飛んだ。
真ナグツァートとディス・ヴァルシオンを結ぶ直線に存在するすべての物質を、粉砕し、呪い殺す怨霊の奔流は、留まる事を知らなかった。
サイバスターの中のマサキが、ミナが、スティングが、アウルが、思わず目を見開き視界を埋め尽くす死者の苦痛の表情に心を縛られる中、シュウとディス・ヴァルシオンの搭乗者達はまるで恐れる風もなく死者の奔流を静かに見つめていた。
ビアンとシン、ステラはそれぞれ別のコックピットに居る。元から搭乗していたそれぞれの機体のコックピットと内装は変わっていないようだが、メインコントロールはネオ・ヴァルシオン部分に集中しているらしい。
その三人に、ディス・ヴァルシオンの他の搭乗者の声が聞こえた。内線と言うよりも直接脳内に響く精神感応に近い感覚であった。特に、肉体こそ衰弱死寸前ながらチャクラの回転により知覚能力の向上しているシンにはより鮮明に聞こえている。
その声は、どこか人間的な感情の豊さに乏しくはあったが、決して欠落した声ではなかった。ディス・アストラナガンの主クォヴレー・ゴードンはただただ、厳かに言葉を紡ぐ。
「ディス・レヴ、魂をあるべき輪廻の流れの中に戻せ」
ディス・ヴァルシオンの胸部を覆っていた白い装甲板が左右と下方に展開し、その奥に隠されていたネオ・ヴァルシオンの三つの球形のパーツが覗き、そのさらに奥に白く輝く光の塊があった。
かつてゼ・バルマリィ帝国宰相シヴァー・ゴッツォが試作した霊的動力機関ディス・レヴだ。その特徴は、死者の霊魂の力を借りて現界に強大無比な力を顕現する事。
おそらく誰よりもルオゾールこそがその光景に驚愕し、それまで確かに存在していた足もとが崩れ去ってゆく錯覚に襲われたに違いない。ディス・ヴァルシオンに群がっていった死霊が余すことなく姿を見せたディス・レヴへと吸い込まれ無力されて行くのだ。
「ばかな、我が身に食らった者達の魂まで」
それはディス・ヴァルシオンに向かっていった十万余の霊魂のみならず、シュウが撃ち落とした約六万の霊魂、宇宙に漂っていた戦死者の魂達、そして真ナグツァートの巨体からも無数の霊魂が淡く光を放ちながら零れ出し、吸いこまれ始めたのだ。
まっ暗闇にぽっと灯った蛍の光に似て、どこか悲しげな白い光を纏う霊魂達は全てがディス・レヴへと渦を巻きながら吸収され、その度に苦痛からの解放に対する感謝の思いを告げていった。
「きれい……」
「これは?」
それまで血の涙を流し自らに降りかかった不幸を叫び、自分とおなじ苦痛を知らぬ者はすべて敵だと呪詛を振りまいていた死者達が、いちようにして安らいだ笑みを浮かべている。
呪わしき怨嗟の頸木から解き放たれた彼らが昇天する様を、ステラとシンは見つめ続けた。
ルオゾールがエイプリール・フール・クライシス以前に、このコズミック・イラの世界に召喚されてから貪り続けたこの地球圏の死者達実に十億超の霊魂が、ディス・レヴによって本来あるべき輪廻の流れへと帰還したのであった。
死者の霊魂を力の供給源にしていたルオゾールは、その供給源を根底から奪われたのだ。同時に、ゾンビー化していたMS達も憑依していた死霊達が浄化された事により一切の動きを停止し、瞬く間に無力化する。
真ナグツァートの弱体化に加えてルオゾール率いる死霊軍団を無力化し戦死者の死霊化を阻止。ディス・レヴは単純に存在それ自体が、この異世界の邪神に対する極めて有効なものだった。
いや、そればかりか、ルオゾールが弄んでいた死者達の力がそっくりそのまま、とは行かぬがディス・レヴを介してディス・ヴァルシオンのモノとなっていたからだ。
自機の、言葉通り桁違いの出力にビアンの眉間が少なくない動きを示した。グランゾンと同等クラスの出力を誇っていたネオ・ヴァルシオンでさえ比較にならない。
ディス・レヴの起動以前からインフィニティシリンダーやガンエデン、クストースらを取り込んだ事で、正直信じ難い程のエネルギーを発生させていたが、ここにきてさらにそれが跳ね上がっている。
思念というものを扱う武術を学んだシンが、ディス・ヴァルシオンの力を増大させている者達が何かを直感的に理解し、同じ機体のどこかにいるであろうクォヴレーに問うた。
「あのヴォルクルスとかいう化け物と同じ事をしているのか?」
「死者の力を使っている点では同じだ。だが、ディス・レヴはあくまであるべき輪廻の流れに戻った死者達から、わずかに力を借りているに過ぎない。決して死せるもの達を束縛したり、苦しめるものではない」
「そうか。それなら良いけど、なんかすごく悪役に見える気がする」
「機体の外見も外見だからな」
もともとヴァルシオンが知的生命体に対して威圧感や恐怖を呼び起こさせるコンセプトを持って造られた機体であるし、融合したディス・アストラナガンも悪魔王などという畏怖を伴う称号を持った機体だ。
ましてや生ある者にとってはどうしようもなく死に対する、もっとも原始的な恐怖を呼び起こさせるディス・レヴを起動し、死者の霊魂を吸い取っているように見える状況は、誰が見ても正義の味方とは思ってくれまい。
そういった機微は分かるのか、クォヴレーはどこか苦笑するようにシンに同意した。やがて、ディス・レヴによって解放される魂が途切れるや、音もなく胸部の装甲が元通りに収まり、周囲に元の沈黙が戻る。
「これで奴の半永久的な力は失われた。だが気は抜くな。ヴォルクルスそのものとルオゾール自身が持つ魔力自体は変わらないし、アストラルシフトもいまだ健在だ」
「構わん。奴の魔力とやらの補充が無くなっただけでも雲泥の差よ。シン、ステラ、スティング、アウル、ミナ、奴を叩く。分子、否、原子すらももはや残さぬ。あの化け物を滅ぼし尽す。私に続け!!」
DC全軍とザフトにビアンの無事と、新たに出現した機体が味方である事を繰り返し通達していたミナや、ディス・レヴの起こした現象に呆気に囚われていたスティングとアウルがビアンの声に気を取り直し、おう、と威勢良く答えた。
ぶん、と手にした斬艦刀をひと振りし、テスラ・ドライブ、グラビコンシステム、さらに加えてガンエデンやクストースらの推進機関が一斉に火を噴き、ディス・ヴァルシオンが加速する。
遅れてアカツキ、ナイトガーリオン、ミナシオーネもテスラ・ドライブの翡翠色の粒子をまき散らして追従する。
目指すは残る最後の敵、真ナグツァート。向こうも同じ腹積もりらしく、ネオ・グランゾンとサイバスターとの戦闘を再開しながら、物質化しそうな殺意と共にこちらに意識を向けている。
存在そのものが反則と言っていいディス・ヴァルシオンの前に立ちはだかったのは、残っていたデモンゴーレムのおよそ半数、二百余りだ。スペースデブリが漂っている隕石から急きょ造り出した分も相当数含まれているだろう。
「シン!」
「はい!」
ビアンの声にシンが応じ、ディス・ヴァルシオンが振り上げた一刀は、まさしくシンが飛鳥に振るわせていた渾身の一刀そのものとなってデモンゴーレムの群れを割った。
もともとディバイン・アームの有していた衝撃波発生機構に、斬艦刀の電光石火を組み合わせたものであろう。振るった刃の軌跡をさらに十数倍の規模に拡大化したエネルギーが飛翔し、触れたデモンゴーレムを片っ端から斬り捨ててゆく。
「ステラ!」
「んっ」
二百の内百を斬り捨てた、シンの飛ぶ斬撃を逃れた残りのデモンゴーレムにディス・ヴァルシオンの左腕が動く。
トリガーはステラのヒュッケバインのものと同期していた。クロスマッシャーと融合したブラックホールキャノンの砲身内部に瞬く間に黒い渦を巻く球体が出現し、砲身の先で直径五十メートルほどに膨れ上がるや、唐突に消失する。
グランゾンのワームスマッシャーを元に装備していた空間歪曲及び転位機能によって、生み出したブラックホールは群れなすデモンゴーレムのど真ん中に出現し、瞬く間にデモンゴーレムを吸い込み、消滅してゆく。
射程距離内であれば如何なる障害も無視して指定した着弾点にブラックホールを転移させられるのだろう。斬艦刀を用いた近接戦闘ではシンが、ヒュッケバインの武装を用いる時は瞬時に二人にコントロールが移譲されるようだ。
瞬く間に殲滅されたデモンゴーレムはもとから戦力外と見ていたか、ルオゾールは動揺した様子はなく、その巨躯をくねらせてディス・ヴァルシオン目掛けて突進すると同時に、先端にいくつもの牙が生えそろえた口を備えた触手七百本を伸ばした。
「カナフ、ザナブ、ケレン」
「……!」
涼しげなナシムの声と共に、ディス・ヴァルシオンの一部と化した三体のクストースが同時に嘶きの声を高らかと響かせ、同時に両肩と六枚の翼の内の二枚が発光する。
カナフは炎を、ザナブは稲妻を、ケレンは水を生み出してディス・ヴァルシオンをコーティングした。それぞれのクストースが持つ最強の攻撃を同時に発生させ、さらにグラビコンシステムが重力の幕を上乗せする。
秒速三千メートルを超す速度で迫る真ナグツァートの触手を回避する動作は一切なしでそのまま突っ込み、素粒子レベルで強化処置を施したグランゾンの装甲も砕く触手の群れは、ディス・ヴァルシオンを包む四重の力場に触れるや悉く弾かれる。
本来なら逆に触手の方が触れる端から焼き潰されるなりする筈なのだが、触手自体もアストラルシフトの恩恵を受けているようで傷一つ付いてさえいない。
それを確認し、ビアンはいまだアストラルシフト破りが叶っていない事を確認する。
シンとステラは、防御と攻撃を同時に体現したはずのこちらに触れて一切ダメージの無い様子に動揺しているようだが、ビアンはそれをあえて無視し、ネオ・グランゾンに呼びかけた。
「シュウ!」
「準備は整っていますよ。アストラルエネルギーは先程から貯えておきましたからね。マサキ、サイバスターの調子はどうです? 精霊憑依を行っている状態ならアストラルシフトにも有効打を浴びせられるはずです」
「さっきは効かなかったじゃねえか」
そう文句は言いつつも、マサキもまたダメージを負ったサイバスターを操りながら、サイフィスとサイバスターとの一体化する感覚を強めてゆく。
サイバスターの機体にも対アストラルシフト破りの為の術式は施されているし、精霊憑依を行った状態でのサイバスターの持つ霊力はヴォルクルスの放つ魔力を破るのに大きな助けとなる。
「三機でかかれば、というわけですよ。ビアン博士、こちらはいつでも」
ネオ・グランゾンとサイバスターの準備が整っているのを確認したビアンが、即座に融合前にディバイン・アームに仕込んでいた慶雲鬼忍剣のプログラムを起動させる。分かってはいた事だが、前回に起動させていた時をさらに上回る想定威力だ。
これならば十分に真ナグツァートのアストラルシフトを打破し得るだろう。同時にクォヴレーとガンエデンの声が聞こえた。
「奴の死者の衣は剥がした。奴をこちら側の次元に引きずり込むのに、おれも力を貸す」
「貴方がただけでも十分とは思いますが、念には念を入れて」
「お前達が何者かは知らぬが、礼を言うべきだろうな」
「気にするな」
「必要があってしている事です」
二人の声が消えて、ビアンはシンとステラに移譲していたメインコントロールを戻し、プログラムを起動した斬艦刀を、急速に迫りくる真ナグツァートへと突きつける。
ネオ・グランゾンは胸部の装甲を展開してブラックホールクラスターを、サイバスターはアカシックバスターの発射態勢に入る。
既に二機からの同時攻撃を受けてもアストラルシフトに耐えきった実績からか、ルオゾールはディス・ヴァルシオンの破壊を目指し動いている。
クストース達の放っていた三種の攻撃をキャンセルし、斬艦刀を右下段に構えたディス・ヴァルシオンから、この場にいる強念者達へナシム・ガンエデンの思念が届く。
ヴァイクルを駆るリュウセイ、TL105ダガーのアヤ、ラーズアングリフ・レイブンのユウ、ランドグリーズ・レイブンのカーラ、ジガンスクードのタスク、ガーリムオン・カスタムTBのレオナ。
いずれも強力な念動力の素養を秘めた者達の脳裏に、水晶の鈴を鳴らしたように美しいナシムの声が響き渡る。
<私の声を聞く強念の者達よ>
「なんだ、この声?」
「え、女の人……」
<念じなさい。あの悪しき存在を斃すと言う意思を強く>
「念じるだけで斃せるなら誰も苦労はせん」
「それ位お安い御用だけど」
<願う事、祈る事、念じると言う事、それを現実のものとする力を貴方達は持っているのです。そう、無限力、絶対運命にさえ抗う事が出来るほどの。人の思いとはそれほどに強いのです>
「ここまで来たなら藁にだってなんにだって縋っても良い気分ね」
「へへ、それで少しでもなにかが良くなるってんなら構わないけどよ」
<では思い描いて下さい。貴方達が望む未来を。手にしたい願う幸福を。さあ、強き念の力を与えられた者達よ、念じなさい。そして地球を救うのです>
ナシム・ガンエデンという世界に二人しか存在しない完全なサイコドライバーの導きによって、すでにサイコドライバーに準ずるだけの力を身に付けつつある五人とややそれに劣る一人が、念じる。
最後の最後に立ちはだかった障害であるヴォルクルスを斃した後に望む世界を。平和な未来を。強く、強く、そうして生み出された思いを、ナシムが宿るガンエデンが増幅し世界に反映し、物理法則さえ変化させてゆく。
ディス・ヴァルシオンの百メートル手前で、自らの体を縛る不可思議な力にルオゾールが驚愕の表情を張り付け、真ナグツァートの動きが見えない鎖と杭によって封じられたように虚空に止められる。
いや、それどころか念の力だけでも陽炎のように揺らいでいた体が徐々に色を帯び、確たる質量を備えた存在へとシフトしてゆく。
「ば、ばかな神たる我が力が、人如きによって封じられるなどと……!?
「貴方は神などではありません。地球の守護神であるこの私もまた、特別な力を得たと言うだけでただの人間に過ぎません。だからこそわかるのです。貴方は自分の力に酔いしれて、想い上がっただけであると」
「貴様、貴様がビアン・ゾルダークに小賢しくも力を与え、我を縛るものか!」
「そして貴方を葬る剣のひと振りです。滅びなさい、人間でいる事を自ら辞め、人間でさえなくなった者よ」
「ぬがあああっ」
ルオゾールは自らを縛る念の鎖の一部を引きちぎり、蝙蝠に似た紫色の翼が大きく広げられるや、たちまち骨格と肉の構成を変えて巨大な鉤爪を備えた腕と変わり、ディス・ヴァルシオンへと振り下ろされる。
ディス・ヴァルシオンの内部のどこか、淡い白い光に包まれたガンエデンの中で祈るように指を組んでいたナシムが、閉じていた瞼を開き、すべての人々に慈愛を与える聖母の如き笑みを浮かべた。
「ガンエデンの祝福を」
どこまでも穏やかで優しいナシムの声と共に、ディス・ヴァルシオンの竜頭の様なパーツが巨大な腕と変わり、打ちつけられた腕を容易く受け止めて見せる。白い硬質の皮膚におおわれ鋭い爪を備えた腕は軽々と掴み止めている。
ゆっくりとその腕の間から、神々しさと途方もなく強大な力を併せ持っている事が見るだけで分かるものが顔を覗かせる。竜の頭部である。
もとは雄々しい翼が両手の代わりに生えている女神の彫像の様な姿をしていたガンエデンが、その最大の力を発する時、女神は幻想の世界に置いて最強の生物とされる竜へと姿を変える。
その竜へと変わったガンエデンの腕が、真ナグツァートの翼を受け止めているのだ。
「ぬおおお、は、放せえええ!?」
動揺を露わにするルオゾールへ、氷の国を支配する雪の女王でさえ身の内側から冷えてゆく感覚に襲われるほどに冷たい声が届く。先ほどまでの優越感は消え果て、ルオゾールは覆い隠せぬ恐怖と共に彼を見つめた。
「さて、ルオゾール。覚悟は良いですか」
「し、シュウ、様……」
いつのまにか恐れと共にシュウを様づけで呼んでいる事にさえ気付かぬまま、ルオゾールは人間であった頃にシュウに対して抱いていた恐怖を思い出していた。
片腕を失いつつも、その総身から放つ威圧感は変わらず、音もなく狭霧の様に立ち上る魔力はむしろより一層強くなっていた。
シュウとルオゾールの構図は、明らかに取るに足らぬモノを見下ろす王者と見下ろされる路傍の石のようであった。
やっぱこいつおっかねえな、と傍らのマサキは内心で思っていたが、それを口にする事は憚られた。すでにプラーナは十分に高まり、サイフィスの声は一刻も早くルオゾールと真ナグツァートを討つべしと告げている。
<私の声を聞く強念の者達よ>
「なんだ、この声?」
「え、女の人……」
<念じなさい。あの悪しき存在を斃すと言う意思を強く>
「念じるだけで斃せるなら誰も苦労はせん」
「それ位お安い御用だけど」
<願う事、祈る事、念じると言う事、それを現実のものとする力を貴方達は持っているのです。そう、無限力、絶対運命にさえ抗う事が出来るほどの。人の思いとはそれほどに強いのです>
「ここまで来たなら藁にだってなんにだって縋っても良い気分ね」
「へへ、それで少しでもなにかが良くなるってんなら構わないけどよ」
<では思い描いて下さい。貴方達が望む未来を。手にしたい願う幸福を。さあ、強き念の力を与えられた者達よ、念じなさい。そして地球を救うのです>
ナシム・ガンエデンという世界に二人しか存在しない完全なサイコドライバーの導きによって、すでにサイコドライバーに準ずるだけの力を身に付けつつある五人とややそれに劣る一人が、念じる。
最後の最後に立ちはだかった障害であるヴォルクルスを斃した後に望む世界を。平和な未来を。強く、強く、そうして生み出された思いを、ナシムが宿るガンエデンが増幅し世界に反映し、物理法則さえ変化させてゆく。
ディス・ヴァルシオンの百メートル手前で、自らの体を縛る不可思議な力にルオゾールが驚愕の表情を張り付け、真ナグツァートの動きが見えない鎖と杭によって封じられたように虚空に止められる。
いや、それどころか念の力だけでも陽炎のように揺らいでいた体が徐々に色を帯び、確たる質量を備えた存在へとシフトしてゆく。
「ば、ばかな神たる我が力が、人如きによって封じられるなどと……!?
「貴方は神などではありません。地球の守護神であるこの私もまた、特別な力を得たと言うだけでただの人間に過ぎません。だからこそわかるのです。貴方は自分の力に酔いしれて、想い上がっただけであると」
「貴様、貴様がビアン・ゾルダークに小賢しくも力を与え、我を縛るものか!」
「そして貴方を葬る剣のひと振りです。滅びなさい、人間でいる事を自ら辞め、人間でさえなくなった者よ」
「ぬがあああっ」
ルオゾールは自らを縛る念の鎖の一部を引きちぎり、蝙蝠に似た紫色の翼が大きく広げられるや、たちまち骨格と肉の構成を変えて巨大な鉤爪を備えた腕と変わり、ディス・ヴァルシオンへと振り下ろされる。
ディス・ヴァルシオンの内部のどこか、淡い白い光に包まれたガンエデンの中で祈るように指を組んでいたナシムが、閉じていた瞼を開き、すべての人々に慈愛を与える聖母の如き笑みを浮かべた。
「ガンエデンの祝福を」
どこまでも穏やかで優しいナシムの声と共に、ディス・ヴァルシオンの竜頭の様なパーツが巨大な腕と変わり、打ちつけられた腕を容易く受け止めて見せる。白い硬質の皮膚におおわれ鋭い爪を備えた腕は軽々と掴み止めている。
ゆっくりとその腕の間から、神々しさと途方もなく強大な力を併せ持っている事が見るだけで分かるものが顔を覗かせる。竜の頭部である。
もとは雄々しい翼が両手の代わりに生えている女神の彫像の様な姿をしていたガンエデンが、その最大の力を発する時、女神は幻想の世界に置いて最強の生物とされる竜へと姿を変える。
その竜へと変わったガンエデンの腕が、真ナグツァートの翼を受け止めているのだ。
「ぬおおお、は、放せえええ!?」
動揺を露わにするルオゾールへ、氷の国を支配する雪の女王でさえ身の内側から冷えてゆく感覚に襲われるほどに冷たい声が届く。先ほどまでの優越感は消え果て、ルオゾールは覆い隠せぬ恐怖と共に彼を見つめた。
「さて、ルオゾール。覚悟は良いですか」
「し、シュウ、様……」
いつのまにか恐れと共にシュウを様づけで呼んでいる事にさえ気付かぬまま、ルオゾールは人間であった頃にシュウに対して抱いていた恐怖を思い出していた。
片腕を失いつつも、その総身から放つ威圧感は変わらず、音もなく狭霧の様に立ち上る魔力はむしろより一層強くなっていた。
シュウとルオゾールの構図は、明らかに取るに足らぬモノを見下ろす王者と見下ろされる路傍の石のようであった。
やっぱこいつおっかねえな、と傍らのマサキは内心で思っていたが、それを口にする事は憚られた。すでにプラーナは十分に高まり、サイフィスの声は一刻も早くルオゾールと真ナグツァートを討つべしと告げている。
支援
うおw11氏もキタ――(゚∀゚)――!!
支援
ネオ・グランゾンが展開した胸部装甲の奥に存在する、かつて特異点を内包していたブラックボックスとなっていた内臓機関が剥き出しになり、あらゆる物質を呑みこみ捕えて離さぬ暗黒の牢獄を生み出す。
サイバスターはすでにサイバードへと姿を変え、前方の空間に炎によって描かれた魔法陣を展開している。
そして、ネオ・ヴァルシオンは右手に握る斬艦刀を振り上げ、鈍色に輝く刀身に破邪の呪文が明滅してゆく。
「おごおおおおおおおっ!?」
三者が放たんとする三つの攻撃が、自らの破滅に直結している事を悟ったルオゾールはスーパーソニックウェーブを放とうと巨体のあらゆる箇所に開いた口を、大きく開くも不可視の念の拘束が、念動フィールドへと変化し内側から外部への干渉を遮断する。
本来念動力を備えたパイロットが、専用のシステムを搭載した機体に乗る事によって発生させる防御の為の力場だが、それを対象を閉じ込める為にナシムが展開したのだろう。
「さあ、今度こそ貴方の不遜な自信の源の一つを払ってあげましょう。ブラックホールクラスター発射!」
「いっけえええ、アカシックバスター!」
「まずは我らと対等の立場に立ってもらおうかっ。偽神!」
ネオ・グランゾンの胸部から放たれたブラックホールが、サイバスターが変形した炎の不死鳥が、ディス・ヴァルシオンの振るった破邪の太刀が、真ナグツァートへと直撃してその無敵の防御を打ち破らんと猛り狂う。
必死の思いで破られてしまったアストラルシフトの再構築を行い、自分の命綱である魔術の防御を守ろうとするも、それを打ち破らんとする三機の破壊力の方がはるかに上回っている。
しかもアストラルシフトの再構築と維持に消費する魔力の補充源であった死霊達は、今やディス・ヴァルシオンの力となっている。
サイコドライバー達によって存在をこちら側の次元に固定されかけていた所に、これだけの負荷をかけられて尚アストラルシフトを維持する事は、人外の存在となったルオゾールをしても不可能な事だった。
ブラックホールクラスターの闇とアカシックバスターの炎、慶雲鬼忍剣の剣光が霧散した時、そこにはもはや陽炎の用に揺らぐ事の無い、確たる質量を備えてこちら側の次元に固定された真ナグツァートの姿があった。
「アストラルシフトを失った貴方がどれほどのものか試してあげますよ。ルオゾール」
「ぐ、ぐぐぐ。だが、まだ私にはヴォルクルスの力がある。貴様らを叩き潰す事など」
「造作もないと言いたいわけですか。では実践して御覧なさい」
まるで諭すようなシュウの言葉に、互いの関係が逆転している事が認め難く、ルオゾールが先程からガンエデンに受け止められている腕に力をこめ、このような事態を引き起こしたディス・ヴァルシオンを破壊せんと目論んだ。
「滅びの時です。招かれ人よ。テトラグラマトン……」
傍目にも数倍近い太さに巨大化した真ナグツァートの腕とガンエデンの掌との間に、突如網膜を焼き尽くすほどに強烈な光が生まれる。それこそまるで小さな太陽がそこに生まれたのかと思うほど苛烈な光だ。
その光は、瞬く間に腕の根元までを粉砕し、ヴォルクルスの細胞の再生能力も追いつかぬほどのダメージを真ナグツァートに刻みこむ。主たるガンエデンに続いて、カナフとケレンがテヒラー・レイ、ザナブがサンダー・ラアムを一斉に放つ。
真ナグツァートの全身を光と雷が彩って汚らわしい色彩に塗れた皮膚や羽毛の生えそろった蛇体のあちこちを弾き飛ばしている。
「ちいいいいっ」
死者の霊魂こそディス・レヴによって奪われたものの、ヴォルクルスとの融合によって飛躍的に増大したルオゾールの魔力それ自体は変わらない。全方位に魔力を破壊エネルギーへ変換した破壊の波を放射する。
淡い紫の色を帯びた魔力波は、それだけでもアガメムノン級戦闘空母も沈めるだけの破壊力を秘めていた。
ディス・ヴァルシオンの胸部装甲が展開し、内部の球形パーツが強く発光する。
「させぬ。メガ・グラビトンウェーブ!」
オリジナルヴァルシオンが装備していた重力操作による漆黒の嵐を巻き起こす武装だ。だが、ディス・アストラナガンやガンエデンとの融合、ヒュッケバインのブラックホールエンジンを取り込んだディス・ヴァルシオンが起こした現象は比べ物にならなかった。
低い音を立ててディス・ヴァルシオンの六つのカメラアイが赤く発光した時、機体を中心に渦を巻いて漆黒の嵐が巻き起こり、光の速さでルオゾールの魔力波と激突すると、コンマ一秒と掛からずに紫の波が漆黒の嵐に吸い込まれて消失したのだ。
ネオ・グランゾンのコックピットの中では、パワーアップしたメガ・グラビトンウェーブを計測していたシュウが感嘆の色を隠さずにいた。
「あの嵐全てが極小のブラックホールで形成されているようですね。しかも魔力さえも吸収する特性まで得ている。既存の物理法則を逸脱しているようですが、ネオ・ヴァルシオンに融合した何者かの力ですか、実に興味深い」
数十兆個の極小のブラックホールが形作るメガ・グラビトンウェーブの直撃に、ルオゾールは真ナグツァートを守るヴォルクルスの魔力障壁を最大限に展開し、なんとか耐え抜いていた。
「まだだ、神は不滅。永遠。かような事で滅びはせぬわ」
「そうは見えねえぜ、おっさん! くらええ、サイフラーッシュ!!」
敵味方の識別機能と広範囲への先制攻撃機能を備えるが故に脅威となるサイフラッシュも、単純な攻撃力はあまり高くはない。だが、今真ナグツァートの機体を浄化する光の激しさは、真ナグツァートの装甲をまるでハリボテと嘲笑うかの如く消滅させてゆく。
「サイフラッシュが、これほどの威力を!? サイフィス、二度ならず三度も我に抗うか!?」
「三度? なんだ? 昔にもサイバスターと戦った事があるのか」
マサキの疑問にサイフィスもルオゾールも答えはせず、真ナグツァートは大きく抉られた各所に、新たな肉の瘤をぼこぼこと泡立たせ、欠損を埋めてゆく。ある程度の防御を捨てて再生能力の向上を選んだのであろう。
その真ナグツァートの巨体に四方八方から無数のビームやミサイルが殺到し、アストラルシフトが破れた肉体に無数の小さな穴が開いてゆく。
「小虫どもめ、分身体を斃したのからといって調子に乗って」
「アストラルシフトを失った貴方など、図体が大きいだけの的。下等と断じた人間に痛みを与えられる気分はどうです? ルオゾール」
「シュウ・シラカワァ!!」
グランワームソードの一振りで、乱れ交う触手の群れを薙で斬り、グラビトロンカノンで圧殺したシュウが、どこまで冷たく、どこまで妖しい微笑と共にルオゾールに問いかける。
ぎりぎりと真ナグツァートの頭部に浮かんでいた二十メートルを越すルオゾールの顔は、この上ない侮辱にわなわなとふるえ、どこにでもいる人間のものと変わらぬ様になっていた。
その間も、ゲイツやダガーL、リオンをはじめとしたMSや、各軍の艦艇からの砲撃は絶え間なく降り注ぎ、真ナグツァートの巨体を削り続けている。
賢者の石とエクトプラズムに、ヴォルクルスの体細胞を取り込んだ機体は、それ自体が極めて優れた装甲であり、自然と纏う魔力障壁は容易く並みのMSの攻撃などと押しはしなかった。
だがそれでも絶望と恐怖に屈さずに戦い抜いた人々の思いが込められているようで、ルオゾールの精神を少しずつ削り、すり減らして行く。無力な人間、ただ糧となるべき人間と侮った者達の見せる絶望の淵での強さ。それが、ルオゾールをさらに追い詰める。
ドミニオンやゲヴェル、アークエンジェルのローエングリンの一斉放射が巨体に大穴を穿ち、ガルムレイドやサーベラスがターミナス・エナジーを利用した高純度の破壊エネルギーを叩きつける。
テューディ、リカルド、フェイルといった生前に多少なりともルオゾールと因縁のあった者達は、死した後の世界でなお続いたこの邪神と因果を断ち切る為にありったけのプラーナを燃焼させる。
地球連合、ザフト、DC、ノバラノソノ、あらゆる勢力の生ある者達全てが、邪悪に堕ちた魔神官の運命に終わりを告げようとしていた。
ディス・ヴァルシオンの出現と共に、因果律の番人の存在を感じ取っていたイングラムが、変形したR−GUNパワードの中で、これまで隠蔽していたR−GUNパワードのシンの力を覚醒させる為のパスワードを入力していた。
「ムジカ、グレン、ジョージー」
「なに、イングラム教官?」
「これからWRXの本当の切り札を開放する。機体制御と出力制御に細心の注意をはらえ。ターミナス・エナジーとは比較にならん」
「え? は、はい」
イングラムの言葉を十全に理解したわけではないだろうが、モニターの向こうのムジカは頷いてみせた。それを見てから、イングラムはパスワードの入力を再開する
支援
「ファイナルコード『SRXチーム』……。さあ、真の鼓動を刻め。トロニウム・エンジン解放」
それまで偽装されていたR−GUNパワードの本来の動力機関トロニウム・エンジンが、長い眠りから目覚めた獣の咆哮を挙げる。同時に、これまでの数倍近い出力を叩きだすWRXの状態に、イングラム以外の三人が驚きの声を隠せない。
「なんなのですか、これは!? 出力が五〇〇パーセントを超えている」
「『ハイパー・トロニウム・バスターキャノン』だぁ。トロニウムってなんだよ?」
「ムジカ、トリガーを預けるぞ」
「あ、は、はい」
グレンらの疑問の声は無視し、イングラムが常と変わらぬ冷静な声でムジカに声を掛ける。そのイングラムの声に導かれる様にして、ムジカは改めてHTBキャノンのトリガーに指を添える。
イングラムが秘匿していたこの武装について質問を重ねるよりも、今はこれだけの超エネルギーを誇る武装で討つべき敵がいる事は、言われるまでもなく分かっていたからだ。
この引き金を引けば、この戦いが終わるかもしれない。そう思えば、イングラムへのささやかな疑惑などどこかへと吹き飛んで行った。
だから、ムジカは普段なら羞恥心を覚える様な叫び声を上げて、思い切り引き金を引いた。イングラムへの疑念を忘れたいと言う衝動が強かったのかもしれないと、気づく事はなかった。
「行って、ハイパー・トロニウム・バスターキャノン!!」
巨大な砲身へと変形していたR−GUNパワードから、ヴォルクルス分身体を葬った時とは比較にならない巨大なエネルギーが、一直線に飛翔して真ナグツァートを貫いた。
クォヴレーの出現を感じ取り、真ナグツァートを滅ぼす好機を悟ったのはイングラムだけではない。映し鏡の存在とも呼べるヴィレッタもまた、同じようにザフトWRXのラストジョーカーを切る決断を下していた、
ただし、イングラムと違うのはこちらはイザーク達も知っていた切り札である事だろう。R−GUNパワードのシホと、WRXのイザークにWRXのラストジョーカーの使用を通達し、ファイナルロックであるヴィレッタのみが知っているパスワードを入力する。
「ファイナルコード『ガイアセイバーズ』。さあ、準備は整った。最後の引き金は貴方に委ねるわ、イザーク」
WRXが右手に握っていたR−GUNパワードの砲身部分が四方に広がり、そこにヴィレッタの乗ったR−SWORDパワードがコネクター部分を細かく変形させながら接続される。
R−ウェポン二機の合体によってより高出力の兵器となる、WRXの現時点におけるラストジョーカーであった。改めて二機の合体した巨大な剣とも砲とも見える武器をWRXの右手に握らせ、イザークはセンターマークの内側に真ナグツァートを捉える。
同時に、R−SWORDパワードの刀身部分が勢いよく回転をはじめ漏れ出したTEが翡翠色の渦を巻いてゆく。WRXとR−GUNパワードからも供給されるTEは、回転数が増すごとにより一層流出量を増し、WRXの右腕そのものがドリルになったかのようだ。
これぞWRX最強最大の一撃必殺兵器ハイパー・ターミナス・エナジー・スパイラルソード。天上天下念動螺旋剣とでもどこかの誰かだったなら名付けそうな武装に、ザフトの慣例にならい冠せられた神話に関する名は――
「これで終わりだぁ! エヌマ・エリシュ!!!」
アッシュールバニパルのニネヴェ図書館より発掘されたという、バビロニア神話の創世記叙事詩の名を与えられたHTESソードを勢いよく前方へと突き出し、最大回転数を維持していた刀身からは、竜巻の如きターミナス・エナジーが溢れだす。
本来のトロニウムのエネルギーを取り戻したHTBキャノンに負けず劣らず、恐るべき威力を秘めた翡翠の竜巻は、イザークの烈火の如き気迫を伴ってHTBキャノンに貫かれ悶えていた真ナグツァートを、反対側から抉ってその巨体を貫く。
図らずとも十字に交差する形で二機のWRXの最強最大最高兵装の攻撃を味わった真ナグツァートは、全長一二〇〇メートルを超す巨躯の後ろ半分を跡形もなく吹き飛ばされる。
蛇のようにくねっていた下半身を喪失し、消滅した下半身との境目であった箇所は、超エネルギーに晒された余波で今も焼け爛れる範囲を広げている。
漏れ出す苦痛の声もなく、眼を見開きぱくぱくと口を閉口しているルオゾールにかすかな慈悲の欠片も与える事はなく、ビアンはディス・ヴァルシオンのあらゆる兵装を開放した。
ディス・ヴァルシオンの背部装甲の一部が開くと、内部に収納されていた二十メートルほどの六つの物体が飛び立つ。それは、まるで拳銃になにか悪霊の様なものが取りついて
悪魔の翼を与えた様な物体だった。
ディス・ヴァルシオンの六つの眼の内額にある二つが、血によく似た色に輝いていた。
「お前はもう逃げられない。行け、ガン・スレイヴ」
ディス・アストラナガンがアストラナガンから受け継いだガン・ファミリアの事だ。形状それ自体変化はないが、ガン・スレイヴのサイズは明らかに巨大化し、銃口から射出されるエネルギー弾の破壊力も段違いに跳ね上がっている。
クォヴレーの思念を受けた銃神の使い魔達は次々と弾丸をまき散らして真ナグツァートに更なるダメージを重ねてゆく。
ナシムもまた竜から元の女神の姿へと戻したガンエデンの両腕から、マヴェットゴスペルと呼ばれる蒼白いエネルギー弾を次々と放ち、下僕たるカナフらもテヒラー・レイの弾幕をとぎらせる事はない。
ネオ・グランゾンも同時に最大65535の多目標を攻撃可能という能力を遺憾なく発揮し、ワームスマッシャーの雨を浴びせかけている。もはや真ナグツァートとの戦いは一方的な掃討へと変わりつつあった。
「ぬおおおおおお!!」
シンの咆哮と共に大上段に振り上げられた二百メートルを超す大斬艦刀とでも言うべき超ド級の大剣が、はるか音速を超えて振り下ろされ、直径百五十メートルを超す真ナグツァートの無数の触手の一つを叩き斬る。
さながらウォーダン・ユミルが乗り移ったかの如き、鬼神さえも怯むであろう怒涛の迫力。これが、今や七割まで棺桶に体を預けた少年の姿と誰が信じられよう。
全力を込めた一刀を振り下ろし、若干の隙が出来たディス・ヴァルシオンの背後から、残っていたデモンゴーレムと直径三メートルほどの無数の触手が襲いかかった。
純粋な破壊衝動の塊ともいえるヴォルクルスの体細胞が、ルオゾールの意識とは別に敵対するもの全てに対する攻撃行動を自動的に行っているのだ。
背後から襲い来たヴォルクルスの手先たちは、目も眩むような閃光と共に砕け散っていた。ディス・ヴァルシオンの右脇から大斬艦刀の柄尻が覗き、そこに開いた穴から無数のエネルギーが散弾となって放たれ、デモンゴーレムらを破壊したのだ。
本来ディス・アストラナガンの武装であるラアムショットガンだ。しかしその威力は本来のモノをはるかに上回っている。これ一発で宇宙怪獣の高速型をまとめて数十体は粉砕出来る事だろう。
もとよりディス・レヴとインフィニティシリンダーから供給される無限に近いエネルギーによって高い威力を誇る武装であったが、今は十億を越す死者達から力を借り、ガンエデンやネオ・ヴァルシオンとの融合で、驚くほど威力が上昇している。
本来の使い手たるクォヴレーでさえ少なからず目を見張る破壊力は、予想をはるかに越えてこの進化した大魔王の戦闘能力が高い事を証明していた。
冥府の銃神、地球の守護神、守護神の三体の下僕、真紅の大魔王、超闘士、凶津鳥……彼らの融合は確かに世界の存続それ自体を揺るがす途方もない存在を産み落としていた。
「ぜあああっ!」
振り下ろした大斬艦刀がシンの技量によって飛燕も斬り落とす精妙さで翻り、ディス・ヴァルシオンの周囲二百メートルに万物斬断の斬殺空間を形成する。
ディフレクトフィールドやGウォール、空間歪曲フィールドを展開するまでもなく大斬艦刀とそれを振るうシンの技量だけで絶対に近い領域が作られている。シンは恐るべき戦闘の才能を開花させつつあった。
ディス・ヴァルシオンを左右から押しつぶすべく、さらに巨大な鉄槌を模した腕が真ナグツァートから伸びた。左右からの挟撃、十分に対応できる。シンがひどくさえた思考で対応しようとしたとき、彼方から飛来したビームと影とが、その腕を弾き飛ばした。
一つはマガルガ。神代の時代に造られた守護神とそれを駆る姫巫女であるククル。
もう一つはラピエサージュ。複数の機動兵器のデータから生み出された継ぎ接ぎの巨人と、今と過去と失った記憶と今ある記憶との狭間で苦しむ少女オウカ。
かつてガームリオン・カスタム飛鳥を駆っていた時に戦った事のある強敵と、いつかであったなら救わねばと思っていた少女の出現に、シンとステラが大きく目を見開いた。
支援
「オウカおねえちゃん!」
「その声、ステラ!? その機体に乗っているの」
「うん、シンも一緒」
「シンも……」
O.Oランチャーで腕やデモンゴーレムを撃ち抜きながら、オウカは聞こえてきた声に驚きの顔を隠さない。すでにウォーダンからグルンガスト飛鳥に乗っているのがシンだと聞いて知ってはいたが、ステラがどの機体に乗っているかまでは知らなかったからだ。
一方でククルも、ウォーダンが斬艦刀を託した少年が生きている事に我知らず安堵していた。男女の情ではないが友情めいたものを抱いていたあの男が最後に選んだ少年の行く末を、見てみたいと心の何処かで望んでいたからだろう。
シンは顔を映さず声だけオウカと繋いだ。
「オウカさん」
「シン君、久しぶりね」
「はい。孤児院の皆が心配していましたよ。特にマサキ」
「マサキ? あの子が」
「ほら、噂をすれば」
とシンが言うとおり、ラピエサージュめがけてそう遠くない位置で真ナグツァートに攻撃を続けていたサイバスターが接近していた。
サイレント・ウルブズとはかかわりが薄かった為に思わず警戒しかけるオウカだが、開かれたウィンドウに見慣れた顔が映るや肩の力を抜いた。孤児院で特に世話を焼かされたやんちゃ坊主だったからだ。
無論、精霊憑依状態を維持したままのマサキだ。さぞやサイバスターの中が鍔まみれになっているに違いないくらいの勢いだ。サイフィスも眉を顰めている事だろう。
「ようやく見つけたぜ。オウカ、どうしてこんな所でそんなモンに乗っているか」
「それは私も同じよ。マサキ、その話は後にしましょう。それよりも先にしなければならない事があるのは、貴方も分かるでしょう?」
「〜〜ちっ、分かったよ。その代り、この化け物を倒したら絶対に話を聞かせろよ」
「ええ」
すっかり手綱を握られた弟と姉の構図がそこにあった。テューディがこの場にいたら別の方向に勘違いして嫉妬の炎を燃やしかねない。
ディス・ヴァルシオンの周囲を固めるアカツキとナイトガーリオンに、ラピエサージュとマガルガを加え、いよいよ真ナグツァートへ最後の一撃を加える時は近づいていた。
ぐずりぐずりと、秒瞬の間もおかずに加えられる攻撃は砂上の楼閣が崩れる様に真ナグツァートの巨体を破壊して行き、残る六百メートル余の肉体も端々から砕け散っていた。
「ばかな、ヴォルクルスの、破壊の神の力がこのような者共に……」
「そうやって、己の力を過信し過ぎる事が貴方の過ちですよ、ルオゾール」
「ひ、シュウ・シラカワ……」
「お前がこれまでしてきたことへの報いだ。大人しくあの世に行きな」
「マ、マサキ・アンドー」
「どうやら、我々の勝ちの様だな。ルオゾール」
「おのれ、ビアン・ゾルダークぅぅ……!!」
開かれたネオ・グランゾンの胸部装甲にブラックホールクラスターさえ凌駕する超絶の破壊の閃光が閃いた。アストラナガンと全力で戦った時、宇宙の半分が壊滅すると言わしめた力の一端が、顕現しようとしている。
「縮退砲……」
サイバスターの周囲に四つの光球が灯り、そこに風の精霊の力とマサキのプラーナが無限に集約される。高められた莫大なプラーナと風の力は空間さえ歪めるほどのエネルギーを蓄える。
「コスモ……!」
そして胸部装甲を展開して再びディス・レヴを露出したディス・ヴァルシオンがいた。内部から光を溢れだし、ディス・レヴが物理法則に介入し究極の攻撃手段の一つを発生させるべく稼働しはじめる。
ディス・ヴァルシオンのどこかで銀の髪を青い色に変えたクォヴレーが、静かに口を開く。時空間に干渉できるインフィニティシリンダーを備えるディス・アストラナガン最大の武器。いや、もはや武器とも呼べぬ領域の代物だろう。
「ディス・レヴ、オーバードライブ。さあ、回れインフィニティシリンダー。アイン・ソフ・オウル……」
三機の放つ光を前にもはや神の威厳もなく、魔性としての恐怖もなく、ルオゾールは震えていた。世界各地に万が一の事態に備え、ヴォルクルスの細胞を散らした事で、時を経ればまた蘇る事が出来るとはいえ、目の前に迫る破滅は恐怖以外の何物でもなかった。
「発射!!」
「……ノヴァ!!」
「デッドエンドシュート!!」
とある世界では一撃で星系を破壊し尽す縮退砲。次元の狭間に落とし込み無数の星々を叩きこんで対象を撃破するコスモノヴァ。そして時間逆光によって敵を存在しなかった時間にまで逆行させて消滅させるアイン・ソフ・オウル。
およそこの世界、この時点では考えうる最強の攻撃の三種が、真ナグツァートに直撃する。
縮退砲の一撃はあらゆる慈悲なく真ナグツァートの機体を粉砕し、コスモノヴァの清浄なる光は魔術障壁を突破し、アイン・ソフ・オウルは時間逆光という同種の能力を持たぬ限りは防御不可能な現象となって真ナグツァートの存在をなかった事にしてゆく。
真ナグツァート全体に罅が走り燃え尽きる寸前の炭の様にぼろぼろと崩壊が始まる。言葉にならぬ怨嗟に染まるルオゾールの顔へ、クォヴレーが判決を下す終末の天使のように冷酷に告げた。
「貴様がこの世界に巻いたヴォルクルスの種子もお前と同時に消失する。既に発生した事象は変わらんが、貴様とヴォルクルスという存在そのものはこの世界に存在しなかった状態まで還元される」
「ば、ばかな。では、我は完全に滅びると言うのか!?」
「それがお前の結末だ。因果地平の果てに消え去るがいい」
「そ、その、そのような事が認められるかあああああああ」
「!?」
滅び行くルオゾールの残る全魔力を乗せて、真ナグツァートが自分の残骸と化しつつある機体を用いて魔法陣を描く。自分自身を媒介にした魔法攻撃だ。
最大の攻撃を放った直後の三機が動けぬ代りに、アカツキ、ナイトガーリオン、ラピエサージュ、マガルガが動いた。
O.Oランチャーやビーム、ミサイル、マガルガの放った神通力を凝縮した光球が次々と命中するが、真ナグツァートの描く魔法陣は崩れる様子を見せない。それどころか魔法陣から溢れる莫大な狂気を伴う魔力の前に、立ちはだかった四機が弾かれる。
「■■■■■―――――■■■――――――!!!!!」
この世のものと思えぬ絶叫をまき散らしながら滅びの道連れにディス・ヴァルシオンを選んだルオゾールが、最後最後にその口元に笑みを浮かべる。自分一人が滅びるなど認められぬ。お前も、お前も地獄に落ちてゆけと、その笑みが語る。
その顔面にいち早く体制を立て直したラピエサージュが、O.Oランチャーや左腕ガトリングガン、Hスプリットミサイルを撃ち続ける。
少なからずルオゾールは苦痛の表情を浮かべるが、それでも魔法陣は乱れず、高まった魔力がディス・ヴァルシオンに放たれるのは時間の問題であった。
「あれは、アラドとゼオラの?」
驚きの声を挙げるクォヴレーの目は、無謀な突撃を行うラピエサージュを見つめていた。
「私の妹と弟と、その恩人を貴方などに傷つけさせはしません」
「小娘ェエエエ!?」
「オウカさん、ダメだ!」
「オウカお姉ちゃん!!」
「オウカ、やめろおおおお!?」
「オウカっ!」
シンとステラとマサキ、そしてククルの制止の声にオウカは透き通ってしまいそうなほど美しく儚い笑みを浮かべ、一度だけ振り返った。それだけだ。何も言わず、何も告げず、ラピエサージュを真ナグツァートの変じた魔法陣へと機体を突撃させた。
コックピット内のコンソールから秘匿されていたコードを打ち込む。DCで回収された時に外された筈の機能は、イーグレット・イフによって再装備されていた。
「コード“DTD”。塵は塵に。あの方たちを貴方などの道連れにする事はできません。その代り私が貴方に引導を渡してあげます」
支援
支援
200 :
通常の名無しさんの3倍:2009/04/10(金) 22:41:48 ID:PQy1b2V8
試演
シャーイン!
規制かかったかな?
続きは一時間後くらい?
やめろ、と誰もが口にするより早く、ラピエサージュの内側から溢れ出た苛烈な光と爆炎が、オウカとルオゾール、そして魔法陣を呑みこんだ。溢れる光と炎に飲み込まれながら、オウカは死にゆく自分が残して行く者達の事を思った。
いや、前にも同じ事をした気がする。誰だろう? いつだったろう? あの時も、私は。
「ああ、そうか。アラド、ゼオラ、ラトゥーニ……私は――」
失った過去の記憶と共に、自分がこの世界で得た過去と今が脳裏にフラッシュバックし、
そして置いて行ってしまう人々を思った。孤児院の皆、そしていま自分の最期を看取っている――
「シン、ステラ、マサキ、ククル……さよなら」
自分を姉と慕ってくれた孤児院の子供達の笑顔が瞼の裏にも描かかれて、オウカは涙を一粒零し、炎に焼かれながら呟いた。
「だめなお姉ちゃんで……ごめんね」
爆発してゆくラピエサージュを見て、シンとステラが叫ぶ。アウルとスティングが叫ぶ。マサキが叫ぶ。ククルが叫ぶ。それが、血を吐くような叫びが、あまりに痛ましくて、ビアンは即座にトリガーを引いた。
ラピエサージュの起こした爆発の向こうに崩れながらも輝く魔法陣へ、ディス・ヴァルシオンの左腕が突き出される。放たれるは
「これで終わりだ。クロスマッシャー!!」
青と赤の二重螺旋と共に白い光条が放たれる。ヴァルシオンタイプの象徴的な一撃が、オウカを犠牲にしてもなお未練がましく、存在しようとしているルオゾールの魔法陣を貫き破壊しつくした。
これまででも比較にならない多くの犠牲と引き換えに、ようやく、アズライガーから始まった強敵との戦いが終わりを迎えようとしていた。
引き剥がす様にして操縦桿から指を離し、ビアンが背もたれに体を預けた。ディス・ヴァルシオンからガンエデンとその下僕達、ディス・アストラナガンが分離し、それぞれが光の塊になると宇宙の何処かへと消えてゆく。
残されたのは、子を庇う様父親の様にネオ・ヴァルシオンに抱かれた大破状態の、ヒュッケバインとグルンガスト飛鳥だった。
オウカの死を前にして叫ぶシンの声が絶えていた。シンの身体状況が改善したわけではなかったのだ。ステラの泣き叫ぶ声は変わらず続いているのが、その無事を証明しているのは皮肉だろう。
だが、ビアンもそれは同じだ。瞼がひどく重たい。指先の感覚どころかすでに四肢の感覚がおぼろげだ。血を失いすぎたのだろう。体の中を流れる血液が全て氷水に変わった様に冷たい感覚ばかりが残っている。
ここでまだ死ぬわけには行かない。まだ、ビアンにはやる事があまりに残っていた。だが、それを理解してなおビアンは落ちてゆく瞼を止める事はできそうになかった。
その瞳に、宇宙で起きた死闘など知らぬ様子で青く輝く小さな星が映った。この宇宙から見れば砂漠の砂粒にも劣る様な小さな星。それでも数え切れぬほど多くの命が生きる偉大な星。
乾いた血で赤く汚れた口元を動かし、数言を呟いた。
「地球よ……お前は、美しい……」
それ以上言う事は出来ず、ビアンはゆっくりと眠る様にして瞼を閉じた。
「うっ」
ひどい頭痛と共に、意識が目覚めた。ぼやける視界の中に見慣れたディスプレイが映った。なぜ? 自分はあの時、二度目の死を受け入れたのではなかった。
夢だったのだろうかと、見まわすと、自分が身に着けているのが着慣れたオーブ軍のパイロットスーツである事に気づく。ならばあれはやはり夢ではなかったのだろう。
「ここは?」
ひょっとしたら三度目の生を与えられたのだろうかと、状況を把握しようと周囲を調べ。それを見つけた。
「ッ!!」
地球圏に出現したエアロゲイターの要塞ホワイトスターを巡る戦いは、激化していた。
エアロゲイターの次に出現した異星人インスペクターに占拠されたホワイトスターには、異次元の軍隊シャドウミラーがくみし、なぞの生命体アインストシリーズも姿を見せていた。
そのホワイトスターを巡る戦いに挑むのは地球連邦軍の最精鋭部隊ヒリュウ・ハガネ隊であった。たった二隻を母艦とする小規模部隊ながら、あらゆる高性能機や試作機、特機、超一流レベルのパイロットが集められた部隊は、連邦最強の呼び声も高い。
三つ巴の戦いが繰り広げられる中、小型のPTがシャドウミラーのPTに追い回されていた。女性的、しかも幼い十代初め頃の少女のスタイルを模したシルエットの機体で青いスカート状のリアアーマーや縦ロールの髪の様なキャノンを頭部に備えている。
半ば開発者の趣味を交えてテスラ・ライヒ研究所で開発されたフェアリオンだ。ビアンが夢にヒントを得て開発した極めて特異な機体のオリジナルである。青い超音速の妖精を駆るのは、ラトゥーニ・スゥボータ。オウカが何度も夢に見た血のつながらぬ妹だ。
地球連邦標準のパイロットスーツに身を包んだラトゥーニはコンビを組むシャイン王女を敵の追撃から庇った代償に、四機のエルアインスと呼ばれるPTに囲まれ、窮地に陥っていた。
被弾こそまだだが、高い能力と非人間あるが故の冷徹な連携行動を可能とする人造兵士の駆るエルアインスの包囲は隙がなく、いずれ撃墜されるのも時間の問題でしかなかった。
それぞれのエルアインスの構えたメガ・ビームライフルやG・レールガン、ツイン・ビームキャノンの砲口を向けられる。
すぐれたパイロットであるが故にこの攻撃を回避する事が不可能であると悟ったラトゥーニは、身を強張らせた。生命の危機は何度も、それこそ戦場に出る前のスクールの実験でも味わってきた。
でも今感じている死への恐怖は今までのモノよりもずっと強い。あのころよりもずっと、生きていたい理由が増えたからだろう。
エルアインスがトリガーを引く指さえ鮮明に見えた。自分の中でいちばん死にたくない理由を、思わず口に出していた。
「リュウセイ!!」
しかし、起きた爆発はフェアリオンが破壊されたためのものではなかった。彼方から飛来したビームと超高速の弾丸によって、四機のエルアインスは撃ち抜かれていた。
あのタイミングで自分のフォローに入れる味方はいなかった筈。
自分の命が助かった事に気づき茫然としたのも一瞬、ラトゥーニは周囲を見回して忘れる事の出来ない機体を見つけた。
忘れる筈が無い。スクールでいつも自分を庇い、守り、最後には命さえ捨ててくれた大切な家族の乗っていた機体を。記憶にあるものとは多少形を変えていたが、それは間違いなく
「ラピエ……サージュ」
コズミック・イラの追加された腰部のクスフィアス・レールガンや、背のウィングバインダーに内蔵されたリニアガンと、もともと持っていたO.Oランチャーによって、ほとんど同時にエルアインス四機を撃墜して見せたのだろう。
機体こそ忘れられぬものであったが、それを操るパイロットまでそうとは限らない。ラトゥーニはなんと言えばよいのか分からず、小さな口を開いては閉じていた。
「あ、あの」
「私の妹たちを傷つけようと言うものは」
「あ、ああ。オウカ、姉様……」
「スクールの長姉たるこの私が許しません」
そこには、常に妹たちを守り続けた姉の姿があった。
「シン、ステラ、マサキ、ククル……。貴方達がどうなったかは分かりません。ですが、貴方達なら決して負ける筈がないと信じています。ですから、私は今自分の出来る事をします」
支援
DC!! DC!! DC!! DC!! DC!! DC!! DC!! DC!!
割れんばかりにDCの呼び声が響いている。ヤキン・ドゥーエに参戦したあらゆる勢力の戦力が壊滅状態になったといっても過言ではない戦いの後、DC、地球連合、プラント間で休戦条約が締結され、一時の平和が訪れた。
だが、それは極めて短い“一時”である事は、どの陣営の者も知っていた。締結されたのは飽くまで休戦条約に過ぎず、終戦条約の締結すらされていないのだ。いわば、次の戦争の為の平和とさえ言えた。
この戦いで地球連合を構成する各国でも解体再統合の話題もあり、中立を謳っていた勢力なども、自らが着くべき勢力を見定め直す時期でもあった。
ザフト内部の分裂勢力でもあったノバラノソノの兵士の多くは、そのままカガリ・ユラ・アスハがラグランジュ2の宙域で起こした正統オーブ政府に亡命した。
首魁であったラクス・クラインは自らプラント政府に自首し、その処遇に関しては議会と世論ともに大きく荒れて、いまも自宅に軟禁状態のままが続いている。
シーゲル・クライン、パトリック・ザラ達旧最高評議会の議員の多くは辞職し、二度と政治の道から離れていた。
旧オーブのみを領土としていたDCはバン・バ・チュンが統合したアフリカ大陸、エドワード・ハレルソンとローレンス・シュミットが掌握した南アメリカ合衆国、そして赤道連合を傘下におさめて、東アジア共和国に匹敵する国力を持った巨大勢力へと成長していた。
青空の下、式典用に装飾を施されたMSがずらりと並ぶ中、DC所属の兵士達の万の歓声が轟く中に、クライ・ウルブズやサイレント・ウルブズの面々の顔触れもあった。
その中には、傍らにステラを伴い車椅子に乗ったシンもいた。
壇上に設けられたスピーチ用の席に、DC副総帥ロンド・ミナ・サハク、ロンド・ギナ・サハクを伴ってその男が立った。赤いコートの裾をたなびかせた、力強さに満ちた足取りだ。
手を挙げて兵士達の歓声を制し、辺りが静寂に満ちた事を確認してから、男は厳かに口を開いた。
「はじめまして諸君。いや、すでにまみえた事のある人もいるかな? 私がDC総帥ビアン・ゾルダークだ」
そして、ビアンは不敵に笑った。
ビアンSEED種編完結。ディバインSEEDDESTINYへ。
至らぬところばかりで本当申し訳ありませんでしたが、かくてビアンSEEDは最終回を迎えます。最終話のタイトルは原作に敬意を表して。
主人公であるビアン自身が第二次、第二次Gでもラスボスであった例に倣い、種運命編においてちょこちょこシリーズのラスボスが味方陣営になります。
それもお楽しみにね! では、これまでお付き合いくださった皆様に感謝を。ありがとうございました。
総帥乙ー。良い夢見させて貰いました。
オウカはあっちへ戻ったか……マサキ見た時のリアクションが気になるなw
そしてラスボス仲間フラグと聞いて否定さんをはじめ、
ヴィンちゃんや総代の出場を期待せずにはいられない。
イスペイル様とか。
お見事!
堪能させて頂きました
オウカえがったぁぁ。・゚・(ノ∀`)・゚・。
総帥氏GJです!
今回と前回の二話は久保・イルイ・セツコ好きの自分には堪らない展開でしたw
短いけどシンと久保の絡みもあったし、ステラは相変わらず可愛いし、イザークが油断補正EXの人になってるし、
ビアンもちゃんと決めてくれるしで本当に面白かったです!
次回のディバインSEEDDESTINYも楽しみにしてますw
投下乙でした!
これだけの大作を完結させたのは凄いとしか言い様が無い
しかもこれからがある意味真の戦いなんだよなあ
オウカは本人的にはハッピーエンドだけど、シン達には悲しみとなって残ってしまったな…
でも戦いがある以上、悲しみは避けては通れないし、ウォーダンの死と同様、オウカの事も尊い経験となるのかな
思えば、かなり前だなあ。オウカ姉さんの先を決める選択肢で争いが起きたのも。
けどアレなんだよ。
ラクスが自首ってだけで開いた口が塞がらないっつーか……
あんまり目立たない気がするけど総帥の話のラクスはまとも度数が高めだなあ と思った。
完結したところに水をさすようで申し訳ありませんが、
コードDTDは熱暴走による能力アップで
自爆はコードATAです。
うーむ……お腹いっぱい。
ごちそうさまでした。
お疲れ様でした。完結おめでとうございます。
インフィニティ・シリンダーではなく
ティプラーシリンダーでないとおかしいところがあるな。
ティプラー・シリンダーを利用した兵器が
インフィニティ・シリンダーだし
ゲーム本編でも回れインフィニティ・シリンダーって言ってるし
ゲームのセリフを重視したって事でいいんじゃない?
祝完結。
手持ちのログ漁ってみた限り、連載開始から2年弱ほどでしょうか。
長らくおつかれさまでした。
オウカは、そういやこのひとどう決着するんだ、と気になってましたが、一応悲劇ではない結末でほっとしたり。
帰ったことはクォヴレーがまた来たときにぽろっと教えてもらえるといいけど。
エネルギーを供給する装置としてはティプラーシリンダーが名称なんだし
>>184 >ディス・レヴの起動以前からインフィニティシリンダーやガンエデン、クストースらを取り込んだ事で、
>>194 > もとよりディス・レヴとインフィニティシリンダーから供給される無限に近いエネルギーによって高い威力を誇る武装であったが、
>>215 インフィニティー・シリンダーは中性子星を回して時間逆行させる兵器だから、ティプラー・シリンダーの駆動とは別の問題。
洗濯機を回しながら「回れ洗濯機」と言ってるようなものだよ。なんのおかしいところもない。
混同しそうになる面倒なセリフだけど、設定上ティンプラー・シリンダーは洗濯機にたとえるとフィンを回すモーターか、発電機辺りになるのかな。
読み返してみると誤字脱字が相変わらずあって、なんだかもう御免なさいとしか言えません。
謝罪ついでに予告編投下!
ディバイン SEED DESTINY 予告編
『マリオネット・メサイア / 揺れる心の錬金術師 / ORIGINAL SIN』
ゆらゆらと、穏やかな波間を漂っているような感覚だった。暖かい何かに包まれ、ぼう、と意識が霞んで、集中する事が出来ない。いや、集中しようと言う意思さえわき起こらない。
――私は?
私は、誰だ? 私は、何だ?
――レ……ビ。レビ・トーラー。
なんだ、これは? これは、名前か? これが、私の名前なのか?
――違う。私は、マイ。マイ・コバヤシだ。……レビではない。
そうだと理解する私がいる。そうではないと否定する私がいる。どちらが正しいのか分からず当惑する私がいる。レビとマイと、どちらが本当の私だ? どちらも私か? それともどちらも私ではないのか?
なぜ私は自分のなぜ自分の名前さえ知らない? ここは、どこで、私は何者なのだ?
風に揺らぐ霧のように定まらぬ私の意識は、唐突に溢れだした白い光に気づいた。誰かが私を呼んでいる。この己のことさえ分からず迷う私を導こうと言うのか?
私は眼を開いた。何かの液体の中で私は眠りについていたようだ。先ほどよりも意識ははっきりとしている。透明な液体の中であったが、呼吸は苦しくなかった。私はこの液体の中に、一糸纏わぬ姿でいたらしいが、羞恥の心はわかなかった。
それよりも、私は、私を見つめている視線に意識を向けていたからだ。液体を遮るガラス越しに無機質のレンズの様な瞳で私を見つめる者達がいた。三人。頭をすっぽりと仮面で隠した一人と、顔の上半分を仮面で隠した男女が二人。
雰囲気からして、顔を全て隠した者がこの三人の中で上位に位置する存在なのだろう。男が手に持った平たい板の様なものにあるスイッチの一つを押すのが見えた。途端に私の頭に電流を流されたような痛みが走る。
――っ!! 貴様、何をした!?
がは、と私の口から零れた空気が気泡となったごぼごぼと私の視界を遮る。おそらくは苦痛に染まっているであろう私の顔を、仮面の者達は変わらぬ無表情で見つめていた。
左手で頭を押さえ、仮面の者達に向かって右手を伸ばす私は、絶えず頭を襲う痛み故に仮面の者達の会話は聞こえなかった。
「お前はレビ、レビ・トーラーだ。お前もまた我らの因縁の糸に縛られた存在。今生はマイ・コバヤシではなくレビ・トーラーとして在るのだ。我が繰り糸に操られる者としてな」
どこかで見た様な既視感を覚える仮面が、私が意識を失う最後の瞬間に見たものだった。
私は私の創造主が作り出した静かな世界で、後は朽ち果てるだけだった。生物の持つ感情をノイズと言い切り、理想の生命にはそぐわないとして、現状のあらゆる生命を滅ぼし、自分が真に理想的な生命を生み出そうとした創造主は遂に倒れた。
あとは、この壊れゆく世界で、失敗作と呼ばれた私が運命を供にすれば終わりだ。それでも、そんな私を呼ぶ声がする。この空間に穿った穴から元の世界へ帰ろうとする彼らが、私を呼んでくれている。
けれど、私は行く事は出来ない。私は想像主と運命を共にする存在なのだから。でも、でも、誰かが小さな私の愚かなわがままを許してくれるのなら
「さよなら。今度生まれてきたら、その時は……きっとふたりの子供に……」
彼らが行く。さようなら。もう二度と会えない貴方達の未来が、素敵なものであると信じています。最後まで自分の名前を呼ぶ二人に、ありったけの感謝の想いが届く事を祈って、私は眼を閉じた。
けれど、私に終わりは訪れなかった。私が目を閉じてからどれほどの時が過ぎたのかは分からないが、私は消えてはいなかった。
自分が今も存在している事に疑問を抱きながら、私は状況を確認した。私の半身でもあるペルゼイン・リヒカイトが、何者かに囚われている。
場所は世界は変わらず生命の息吹の無い静寂な世界だった。でもそれもおかしい。あの世界は確かに消えていったはずなのに。
「なにが、起きたんですの?」
水晶の塊がぽつんぽつんと浮き、岩が円環状にいくつか配置されている以外には何もない世界で、ぺルゼインは元通りに修復を終えた姿を取り戻していた。
ぺルゼインには自分の損傷を治す力はあったけれど、創造主の消滅と運命を共にするのは私と同様で、このように完璧な形を取り戻す事はないはず。
「……あ、ああ」
そして私は見てしまった。ゆっくりと、私とぺルゼインに向かって迫ってくる巨大な影を。それは、彼らによって倒された筈の私の創造主。
確かに倒された筈の彼が、どうして傷一つない姿なのか、私には分からなかったけれど、一つだけはっきりとしている事があった。
創造主から延びた触手が、ぺルゼインと私を絡め取ってゆく。私は再び彼の操り人形となってしまうのだ。
「エクセレン、キョウスケ……」
私の頬を冷たい何かが流れたが、それが何なのか、名前さえ私は知らなかった。
私は自分でも知らないうちに吐いた溜息に、小さく驚いて口元に手をやった。私を生み出したデュミナス様の命令で、今私はディバイン・クルセイダーズの本拠地ヤラファス島の執政庁にいる。
ここには、地球圏を三分する巨大勢力の一つ、DCの総帥ビアン・ゾルダークがいて、その彼に遭うのが私の目的の一つなのです。デュミナス様は、そのビアンという人に接触し、彼に協力するようにと仰せになられました。
より厳密に言えば、私だけではなく、私の妹や弟の様な存在であるティスやラリアー達にも同様の命令が下されています。
ティスは地球連合を牛耳るブルーコスモスの新たな盟主ロード・ジブリールの下へ。
ラリアーはプラントの新たな最高評議会議長に就任したギルバート・デュランダルの下へ。
デュミナス様、いえ、デュミナス様の創造主であるクリティック様のご命令によるものなのですが、それぞれの勢力に私達を潜り込ませる事で地球圏の騒乱をコントロールするおつもりなのだと思います。
私は、本当の事を言えば戦いは好きではありません。誰かを傷つけるのは嫌だし、傷つけられるのも嫌。戦いになればティスやラリアーだって傷つくかもしれない。
けれどそんな事を言えるわけもないのです。デュミナス様は私を作ってくださった方で、クリティック様はそのデュミナス様をおつくりになられた方なのだから。私をこの世に産んでくださった方のご命令は命に代えても果たさなければならない。
私は、何十人目かになる護衛の兵士の人の首筋に向かって、ジャンプするのと同時に手刀を叩きこんだ。痛みは残るかもしれないが気絶するだけで済むはずなのですが……。
「あの……ごめんなさい」
そう謝りながら私はその部屋に足を踏み入れた。大きなデスクに、目標としていた人物、ビアン・ゾルダークが座っている。傍らにはDC副総帥ロンド・ミナ・サハクと、その護衛であるソキウスと呼ばれる人たち。
ビアン・ゾルダークは侵入者が私みたいな小さな子供の外見である事に驚いた様子だったけれど、すぐに私が何者なのか聞いてきました。
「なんの目的で私に会いに来たのかな?」
びく、と私は体が震えるのが分かった。データで見た時も思ったけれど、とても威圧的、というのでしょうか、戦闘能力で言えば私の方が上なのに、その迫力を前にして私の体は私の言う事を聞いてくれません。
ビアン総帥の隣にいるミナ副総帥の視線がまるでナイフの刃の様に私を刺し貫いているせいもあったでしょう。
すると、私が緊張に震えているのが分かったのか、ビアン総帥は目元を柔らかなものにして、語意を穏やかなものにして話しかけてきてくださいました。
「少し、言い方がきつかったかな? 安心しなさい。むやみに危害は加えないよ」
改めてビアン総帥のお顔を見ると、私の中の恐怖が嘘の様に消えていました。
臆病な私でも、この人は自分にひどいことをしないと一目で分かる様な、安心させてくれる雰囲気だったのです。
といっても、私がここまでDCの警備の方々に手荒な真似をしてきたのは確かな事ですし、ここではっきりと私が敵ではないとお伝えしないと、きっとひどい目にあってしまうと思ったので、私はつっかえそうになりながら一生懸命お話ししました。
「あの、私の主人から、ビアン総帥のお役に立つようにと言われて……」
「ふむ。ここまではどうやって来たのだね。警備の者達がいた筈だ」
「その、ごめんなさい。どうしても通していただけなかったので、乱暴な事をしてしまいました」
「ほう。鍛え抜いた兵士達だったのだがな。ここまで来られたと言う事が君と君の主人の能力を示す証拠でもあるか。それで、私にあってから何かするようにと指示は受けているのかね?」
「は、はい。あの、私も機動兵器を持っていますので、ビアン総帥の指示に従うようにと、あと、このデータを渡しなさいと言われています」
私は、ここに来る前に渡されたデータスティックをポケットから取り出して、ソキウスさんの一人に手渡しました。その中には、今の地球圏には未知の多くの技術が入力されています。
ラリアーやティスも私が持ち込んだものとは別のデータを、地球連合とプラントにもたらしているのです。クリティック様は、このデータをもとに彼らがどのようなモノを生み出し、戦争を起こし、どう発展させてゆくのかを知りたいそうなのです。
コンピューターウィルスの類が仕込まれていないか注意しているようで、すぐさまお確かめになる様な事はしませんでしたが、ビアン総帥は私に笑いかけて(それでもちょっと怖かったです)、私の協力を受け入れて下さいました。
これで、いいんですよね? デュミナス様……。
本編に続く。
00のキャラはどうすべか……。お邪魔しました。
祝、第一部完!乙でしたー!
そして早くも予告ががが
過ちさん達が各陣営引っ掻き回してきそうな上に、ユの字やアインストとかいきなりヤバすぎる面子w
この上でさらにあのクトゥルフな御方がラスボスとして控えてるんだから、相当洒落にならん規模になりそうですな
00勢は正直あまり原作に囚われずに総帥なりに伸び伸びとやってくれるのがベターだと思います
主人公の陣営がDCで仲間達の大半が原作における敵サイドのキャラで占められてるとか、そういう型破りな構成が総帥の持ち味だと思うんで
00、特に一期の頃は敵の方が魅力的な面子が揃ってたと思うから尚更
>>207 総代は確か、かつては理想的な騎士だったけど、長年の戦いで怨念が積もり積もって歪んでしまったんだっけ
イスペイル様はいいよな
もし来るならガズムとヴェリ姐もセットでお願いしたい
うわぁ……レビとアルフィミィの惨状を見る限り、あの時の選択肢は本当に重かったんだと思わざるを得ない。
批評家に記憶いじくられた過ちさん+デュミナス一家を含め救われて欲しいと願わざるを得ない。
ユーゼスが出るならイングラムも危ないだろうしなぁ……。
影も形も見えない影鏡やフューリー、ガディソード抜きにしても先が全く読めない。
00のキャラに関しては余り扱い悩むようならばっさり……も有りなんじゃないかと。
修羅王様方は来られるんですかね?
修羅勢はC3版だと、単体で一勢力築けるぞw
何しろフォルカ以外全員死亡な上、修羅王が気合いで次元移動可能な化物だし
あと顎髭が無いバージョンのドリル軍師が、何気にアルティスに一目置かれるぐらいの使い手
実際兄さんより軍師様のが強かったからな。
出番の順番的な物があるから仕方ないが
Kのオリキャラは敵のほうが好きな私がここにいます。ふと、思ったのですが、ガズムが仲間になったとしたら、あれですね、ファフナーとかバイオゾイドとかも作れちゃうのではないでしょうか。
ゾイドって/0までしか見ていなかったのですが、バイオゾイドが反則と耳にしたのですが、そんなにやばいんでしょうか? まあ、スパロボものなので弱体化なり何なりしてバランス調整しますけど。
ところでヴェリニーは、狐耳? 狼耳? それとも兎耳?
バイオゾイドが何がやばいかって言うと・・・
「通常攻撃無効」
これにつきますね・・・
特殊な鉱石で作った武器でなければ、ダメージが与えられないっていうチート設定です(´・ω・`)
>>229 設定上バイオゾイドの装甲であるバイオ装甲はメタルZi(通称リーオ)と呼ばれる鉱石製の
武器以外では破壊できないとされています。上記のリーオ武器での攻撃以外だと
装甲の継ぎ目(口腔等)を狙う、強い衝撃で内部フレームを壊す、雑魚限定で一定以上の熱量攻撃が弱点です
個人的には攻防どちらにも使えて柔軟性のあるEシールドの方がチートな気がしますがw
あと口開けてる時はそこも有効っていうロックマンの無駄に固い雑魚っぽい
実際、Kでもゲームシステム的にはともかく、ストーリー的にはザイリン率いる部隊にマジンガーやガイキングやジーグやダンが居る自軍が大苦戦して、ライガー来なかったら敗北する流れだったからな
二週目からはヴァンにガスガス輪切りにされまくってますが。うちの場合。
一週目でもゴオに蹴られたりヴァンやシンに斬られまくってたぞ
設定的には言い方が悪いかもしれないけど、PS装甲の上位版みたいなのだししゃあないんじゃない?
そういや結局、ヴァルシオン、グルンガスト、ヒュッケバインはどうなったんだ?
>>236 総帥の奴ならナシムとプロデューサーが居なくなった後に元に戻った
>>通称リーオー
……すまん、めっちゃやられ役に見えた
リーオーこそ量産MSの鏡
グッドデザインすぎるザクにはない「没個性という個性」がある
誰も突っ込まんから一応言っとくけどリーオな
Kって特異なロボット工学が大量に有るのに後継機に生かされてないのが悲惨さを増してる気がするんだ
ゴーダンナーやエルドラ、ガイキングの合体機構を研究して生かしてたらもっと真っ当な合体出来てたろうに……
Kの技術が流入?
つまり、オクレ兄さんがチェンジサイボーグして、スウェンとコンビ組んで「次はどいつだ!!」やるわけですね
ロンハー終わったら投下しまーす
正座してお待ちします。
祝砲でブラックホールキャノン撃ってやるぜ
「妹という存在」
シロガネの転移に遅れること数分、戦場へと到達したハガネとヒリュウ改とシン、ラミア、そしてギリアム・ゼンガー・レーツェルの旧教導隊の3人は合流した。
そしてラミア、ギリアムの口から真相の一部が語られることとなり、彼らの素性・正体を知りシンを含めてクルーの多くが驚き・戸惑いを覚えはしたものの、
ダイテツによる寛容な措置、同じくする目的、これまでにも旧DCにいたメンバーを受け入れてきた適応能力の高さと一部の人間のノリの良さが幸いして、ラミア・ギリアムはともに受け入れられた。
また、ここでは以前にも別世界から転移してきたのだということを明らかにしたシンという前例があったことも、ラミア・ギリアムの話が受け入れられやすくなった素地となっていたのであろう。
他方で、そのシンも異世界から飛ばされてきたなどという素っ頓狂なことを言う自分をなぜギリアムが早い段階で信用してくれたのかを理解していた。
ギリアム自身が他の世界から飛ばされてきたのであれば、なるほど合点がいく。
そして、常に敵との激しい戦闘に晒されていながらも温かく居心地のいい雰囲気に、アスラン・ザラとキラ・ヤマトに強制的に拉致されて以降、久しぶりに接してシンはようやく心に落ち着きが生まれつつあった。
そんな矢先のことであった。
「シン、ちょっといいかしら?」
女性にしてはやや低めな声に名前を呼ばれてシンが振り向く。そこにいた女性は頬擦りしたくなるような艶やかな肩とむしゃぶりつきたくなるような豊かさでありながらも、
かといって大き過ぎることのない絶妙なバランスを保っている胸元を惜しむことなく大胆に露出し、タイトなミニスカートを履いて膝上の瑞々しい腿肉を慈悲深く晒している。
彼女の名前はアヤ・コバヤシ。リュウセイやライの属するSRXチームの一員としてL5戦役を戦い抜いたパイロットであったが、
シンとしては拉致される以前にリュウセイに簡単に紹介されただけであまり会話をしたことがない相手であった…とはいえ以前リュウセイから、彼女が新西暦の世界でひょんなことから俗にいうイケメン俳優(藁)の
真似事をしていたレイの熱烈なファンであることを聞かされており、そういえばレイのサインを貰っておくよう頼まれていたことを今の今になって思い出していた。
「あ…すいません大尉、レイのサインですよね。後でもらってきますからちょっと待ってくれませんか?」
自分で言っておきながら、そんなことを言っている自分がシンにとっては奇妙な気がしていた。
ミネルバにいた頃には上官といえば艦長のタリア・グラディス、副長のアーサー・トライン、それにラクシズ又はそこにいるキラ・ヤマトに忠義を尽くすアスラン・ザラくらいのものであり、
彼らからそんなことを頼まれることなどほとんどなく、あるとすればアカデミーの同期であるヨウランやヴィーノから公然には放送できないような映像ディスクなどの貸し借りを頼まれていたくらいであった。
上官からの「頼まれごと」やそれに対応している自分、というのはどことなくくすぐったいと同時に何の根拠もないが、そんなやりとりをする自分が人の間でほんの少し大人になったのだろうか、とシンは脈絡もなく考えてしまう。
「それなら大丈夫よ。でもそれよりもあなたに知らせなければいけないことがあるの。私と一緒に来てくれるかしら?」
「は、はぁ…」
そう言われてシンはアヤの後に続いてある部屋、否、部屋があったとおぼしき場所に案内された。部屋があったとおぼしき、とはどういうことかというと、部屋の扉は失われて入り口がありあわせの資材で塞がれており、
その向こうは装甲材で補修がされてはいるものの、「部屋」というものは存在しないことは、ハガネ同様、戦場の最前線に居続けて敵の攻撃に晒され続けてきたミネルバとともに戦ってきたシンには容易に理解できた。
「!まさか…」
そして、すぐにその部屋が、レイがいた部屋であったということにシンは気付く。続けて、まさか自分のいない間の戦闘でハガネが被弾してそこにいたレイが…そんな最悪の想像がシンの頭の中を駆け巡る。
「ちょっと待って、シン!たぶんあなたが考えているようなことじゃないのよ!?」
「え?」
「でもね……あの………実はその…………」
よほど心配そうな蒼い顔を浮かべていたのであろう。シンの想像を無理矢理中断するかのような強い口調で、アヤはシンの意識を現実世界へと引き戻した。
とはいえ、レイが今現在ハガネにいないことに変わりはない。真相が言い出しがたく困ってしまい、うつむいて首を小さく左右に振りながらアヤはゆっくりとレイがハガネにいない理由―
アスラン・ザラらによって拉致されそうになったシンを助けるべく自らアカオニと呼ばれる機動兵器を呼び出してハガネから飛び出していき、捕獲されたシンを追って戦場から姿を消したことをアヤは告げた。
異世界に飛ばされるなどというあり得ない事態に遭いながらも、さらにCE世界ではラクシズ傘下の情報機関からはCEの聖剣伝説などと宣伝されるほどの強さを誇るキラ・ヤマトやその忠実なる走狗アスラン・ザラと
戦い、そして敗れながらも辛うじて生き延びて、せっかく再会できた戦友が姿を消した、という事実がシンに与える心理的ショックは小さからぬものがある。
しかも、異世界から来た人間でありながらもこの世界の中では実質的に連邦軍という大きな勢力の下で運良く保護されているシンとは違い、今のレイはそのような保護はない。
事情を知っているギリアムらが何かしら手を打って探してくれているのではないだろうか、という淡い期待がないわけではないが、それでも安否が心配されることは否定できない。
だがそのような心配とは矛盾するような安心材料もないわけではない。今現在、レイ・ザ・バレルの持っている力―アインストと呼ばれる正体不明の勢力との関係が疑われはするものの、
その指揮官機であるオリジナルのペルゼイン・リヒカイト、CE世界からの宿敵アスラン・ザラとその愛機インフィニットジャスティス、シャドウミラーのアクセル・アルマーとその近接戦専用特機ソウルゲインらと
互角以上の戦いを繰り広げてきた、アカオニと呼ばれる謎の機体を駆るレイ・ザ・バレルがそうやすやすとやられるなどとは考え難い、そんな期待もあった。
本当であれば自分も飛び出して探しに行きたいという気持ちもある。それは言うまでもない。
だが他方、現在の地球はインスペクターの侵攻を受けている真っ最中であると同時に、連邦軍とノイエDCによるオペレーション・プランタジネットが開始される直前でもある。
レイの安否は気になるものの、今は異星人との決戦に意識を集中しなければならないのだとシンは必死に自分に言い聞かせようとしていた。
そんなとき、シンの背後から小さい足音が徐々にこちらへと近付いてくる音が聞こえてきた。音の大きさからして小柄な者だろうとシンは思ったが、実際に振り向いてみると足音の正体はある意味想像以上のものだった。
「…………君…どうしてこんなところにいるの?」
そこにいたのはシンより頭1個分ほど低い背丈と薄紅色の髪が特徴といえば特徴の、まさに少女というべき幼さの女の子であった。
年のころでいえば亡き妹のマユほどかせいぜい少し上くらいであろうか。だがそこでシンはあることを思い出す。言うまでもなくシン達がいる場所はハガネ、つまり軍艦のど真ん中である。
そのような場所に亡き妹と同年代の女の子がいる光景、というのはあまりにも通常性を欠いているのではないだろうか。
そのため、シンはまず言葉が出てくるまでに10秒ほど目をパチパチと瞬きさせてから口を開いたのであった。
よくよく考えてみればラトゥーニという例外はいるが、シンの目には少なくとも目の前にいる少女はラトゥーニよりもよくいえば若い、思った通りにいえば幼いと映る。
他方、いきなりそんなことを言われた少女はビクッと体が動くとすぐにアヤの後ろに回りこみ、その影から警戒心を露わにしながらシンの頭の上から足の先までをゆっくりと見渡し、アヤの顔を見上げた。
「そういえばシンは会うの初めてだったわよね。この子は私の妹で、R−GUNのパイロットをしてるマイよ。よろしくね」
アインストの集団が伊豆基地を襲撃したときにはシンは別働隊やレイとともにアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトと戦っていたし、
その直後にシャドウミラーの襲撃を受けたせいで、シンはまだマイとの顔合わせを終えていなかったのである。
「へえ、大尉の妹でR−GUNの…パイロットお!?パイロットって、えぇ!?どうしてこんな子が…!?」「この子には私やリュウみたいな特別な力があるの。本当ならこんな小さな子を戦わせるべきじゃないのはわかってるんだけど…」
一瞬、ほんの一瞬ではあったがシンの頭の中には、CE世界で見た、あの忘れもしないエクステンデットの研究所跡の光景が蘇っていた。
この世界でもスクールという機関が連合と似たような非人道的研究を行っていたことは聞かされていたというのもある。このマイという少女も、もしかしたら…そんな想像がシンの頭の中を駆け巡り、
あの瞬間が、守ると約束した相手であったステラ・ルーシェが自らの腕の中で永遠の眠りについたときの映像がフラッシュバックする。
そして、シンのトラウマになっていると言っても過言ではないステラの最期がシンの中のリミッターを瞬間的に吹き飛ばした。
ましてや、小さな妹を戦場に立たせるなどということは、同じく妹がいた人間としてはシンの理解の範疇を大きく超えている。
シンが自分で気付いた時には時既に遅く、全身の毛が奮い立つような感覚を覚えながら、一気に目を大きく開いてアヤを腹の底からひねり出した大声で怒鳴りつけていた。
「じゃあなんでこんな小さな子を…自分の妹をPTなんかに乗せてるんだよ!?アンタ、正気か!?」
「!?……それは…でも今の私達にはそんな奇麗事を言っていられるような余裕は…」
アヤの言った1つの単語、「奇麗事」。これが一瞬で最大にまで達したシンの怒りを皮肉にも静める結果となった。追撃の言葉を紡ごうとしていたシンの口は硬直し、心拍数こそ高いままであるものの、
思考が急速に冷静さを取り戻し始めて両の目がゆっくりと空を泳ぎ始める。
奇麗事
ミネルバがアーモリー1から出航してすぐの頃、艦内でデュランダルに噛み付いていたカガリ・ユラ・アスハに対して
怒りを爆発させたシンが言った言葉こそが「さすが奇麗事はアスハのお家芸だな!」というものであった。
もちろん色々と状況・事情ともに大きく違いがあるため、同じように考えることは妥当とはいえないだろうが、
今現在この世界の地球がインスペクターという異星人の侵攻を受けていること、リュウセイと同じ力、つまり念動力という戦闘において大いに役に立つ特殊な能力を持っているのであろうことが、
シンをアヤの言うことにも幾分かやむを得ない部分があるのではないかと考えさせ始めてもいる。
「だからって……おかしいだろ…こんな子供を…」
カガリ・ユラ・アスハやアスラン・ザラなどとは異なり、責めきれきれない事情がある相手への言葉が、紡がれるほど鈍くなっていく。
実際に異星人の幹部クラスの機体とも戦闘をしたことは、インスペクターの脅威の大きさをシンに対して、線の言葉よりも強く、激しく感じさせていたことも、シンにこれ以上の追及をさせることを妨げていた。
さらにはスレードゲルミルやソウルゲインを擁するシャドウミラーや未だ正体が不明なアインストの侵略を受けつつある今の地球には念動力のような力を持つ人間は1人でも多く欲しいところであろう。
断じて小さな妹を戦わせるということがいいわけではない、大手を振って許せるというわけでもない。だがそれを一方的に断罪することは、今のシンにはできなかった。
そんな中、今までアヤの陰に隠れるようにしてシンの様子をうかがっていたマイが静かに話し始めた。
「いいんだ、私は自分の意思でアヤ達と一緒にいる。それに今は私の力が必要なこともわかってる…」
ある意味血塗られたといってもいい過去の記憶を失い、「姉」に寄り添うように生きているともいうべきこの少女は、アラドやラトゥーニらと徐々に打ち解けつつあるとはいえ、まだ人見知りをするところがある。
だが目の前にいる男が、自分が戦場に出ていることについて案じ、真剣に考えて姉と話をしていることは彼女にもわかることであり、少しは信用できると考えたシンに口を開いたのである。
一方、思いがけず話し始めた少女の言葉を聞いてシンは、彼女の意思が尊重されていることに幾分か安堵しつつも、戦いに身を置く子供がいるという現実に自身の無力さを感じていた。
そして、姉に寄り添うマイの姿を見て、自らも妹を持つ身であったシンはアヤとマイの姉妹が互いに互いを大事に思っているのだということも感じ取れていた。
するとシンは膝を曲げて視線をマイと同じところまで下げ、彼女の頭部に優しく掌を乗せる。
「…お姉ちゃんを大事にするんだぞ」
「うん」
「俺はシン・アスカ。よろしくな」
そう言って頭部に乗せていた手をマイに差し出すと、彼女も少し照れながら自らの手を差し出す。
だが、端から見れば異星人や謎の勢力の侵攻のせいで意図せず戦場に出ることになった悲劇の姉妹のようにも思える彼女らの、
暗く、辛く、そして間もなく明かされることとなる衝撃的な過去をシンはまだ知らなかった。
一方、場所は変わって覇王の居城エターナルでは、アスラン・ザラよりも一足早くシロガネから帰還したラピエサージュとそのパイロットのキラ・ヤマトが覇王とともに、ある客人を迎えようとしていた。
そして、エターナル内のブリーフィングルームで、他の椅子とは明らかに異なり軍艦内の備品とは思えぬ格調高さを帯びた椅子に腰を下ろして客人を待つ覇王と、傍らで静かに立っているキラ・ヤマトは、
自動扉の開く空気音がするとすぐに扉の方へと目をやって客人に視線を向ける。
入ってきたのは、鼻が多少高い老婆と、瑞々しい麗しの果実を胸部に2つ実らせた2人の若い女。そして老婆は言葉を発することなく覇王の正面に座り、2人の女は老婆の両脇を固める。
老婆の右隣で、銀色の髪を女性にしては短く切りそろえながら、そんな控えめな髪の量とは裏腹に暴力的ともいうべきほどに強く上着の布地を内側から圧迫しつつも、形を崩さない母なる果実を実らせているのは
ブロンゾ27―かつてはゼオラ・シュヴァイツァーと呼ばれ、今はハガネにいるアラド・バランガのパートナーであった女である。
左隣にいるのはゼオラとは対照的に艶のある黒髪を腰の辺りまで伸ばして淑女の香りを漂わせつつ、ゼオラほどではないものの、布地から乳肉上部を迫り出して自己主張をする果実を実らせた、
スクールの長姉であり、そして本来であればキラ・ヤマトが乗っているラピエサージュを駆るはずであったオウカ・ナギサ。
そして、老婆の正体は言うまでもなく、今より遥か遠き過去の時代、若かりし頃は…であったアースクレイドルのマッドサイエンティスト三人衆の一角であるアギラ・セトメである。
顔面皺だらけの老婆を挟んでいるとはいえ、1メートルほどしか離れていないところで実っているオレンジとグレープフルーツを目の前にして、その圧巻ともいうべき光景は
ほぼ完全な調整状況下にあり自我持たぬ存在に近いため周囲に事象に興味をほとんど示さないキラ・ヤマトの視線すらも奪っていた。
他方、来客が来ること自体にはさほど興味を示していなかった覇王であったが、天然育ちでありながらも見ているだけで濃厚な甘みを与える果実を目の当たりにして、一瞬だがわずかに目元が引きつる。
そして内心では調整されて生み出された存在である己への辛辣な皮肉なのかと感じ、無言を保ちつつも、おぞましき豊潤な果実に対して、全てを焼き尽くす地獄の業火の如き激しい憎しみをたぎらせていた。
とはいえ、覇王がそのような呪怨の言葉を口に出すことはない。覇王に付き従うコーディネーター達は、「平和の歌姫」という虚像を疑うことなく盲信し、信仰している。
原理こそ正確に把握されていないところではあるが、覇王の声が、歌が多くのコーディネーターを遺伝子のレベルで服従させる力を持ち、鋼の魂を持たぬ者は次々と徐々にその軍勢へと加わっていった。
自分達を優秀な新人類と信じるコーディネーター達でもなすことが困難なことをその抜群の行動力で成し遂げ、「平和の歌姫」という衣で人々の心を集め、揺り動かし、その声で率い、従わせる。
これこそ、20歳にも満たぬ、1人の人間がとある世界においては絶対的な力を以て、世界の征服を成し遂げさせた原動力ともいうべき、覇王の能力であった。
それ故、監視ビデオなども含め他の人間の目があるここでは覇王は内心を表出させることはしなかった。だが当然のことながらそのようなことはアギラ・セトメの知ったところではない。
「久しぶりじゃの、ラクス・クライン」
「ええ、お久しぶりです、アギラ・セトメ博士。ところで今日はどのようなご用件でこちらまで?」
「随分なご挨拶じゃないか。せっかく補給物資もろもろを持参してきたというのに」
そう言ったアギラは首を左右に動かして周囲を一通り見回して、その場所には覇王とキラ・ヤマト以外にエターナルの人員がいないことを確認する。
「おや、アスラン・ザラはどうしたのじゃ?もしかして『調整』中かの?」
「ええ、アスランは現在シロガネで機体の修復を待っている最中ですわ。プランタジネットまでにはこちらに合流することになっているはずです」
そう答える覇王の口元にはほのかな笑みが浮かんでこそいたが、その目には愛想笑いの1つも浮かんでいなかった。だが直後にまるでアギラを嘲笑うかのようにニヤリと笑みを浮かべる。
覇王にとってのアスラン・ザラは力こそ強大なパイロットでありながらも心が弱く、口先で御すことはそう難しいことではないため、外部的に何らかの措置を施すまでもない。
自分が直接いうだけでなく、キラ・ヤマトを通すことで容易く心を揺らがせて迷いを生じさせることができるし、そうした時にほんの少しだけ言葉をかけるだけで後は覇王の思う通りに動くし、
そのためであれば軍すらも容易く裏切るため、覇王にとってはキラ・ヤマトに対して行う「調整」措置などをアスラン・ザラに対して施す必要はないのである。
それに、他の人間の目がある可能性のある状況下で、何らかの疑問を生じさせかねないため、アギラとは異なり聖女のイメージによる権威付けを行っている覇王にとって
アギラの言葉は不愉快を通り越して危険なものですらあったと考えられたために、気分を害していた。
だがアギラの真の意図に気付くと、それが無駄に終わったのであろうことを知り、笑ったのである。
他方、これもまた当然のことながら、アギラが聞いたのは機体についてのことではない。アスラン・ザラという生身の人間について、彼女がオウカやゼオラにしているようなことを指してのことである。
新西暦の世界においてアスラン・ザラと最初に接触したアギラは、持ち前の技術を活かしてアスラン・ザラを調べた結果、彼にもスクールの人間と似たような繰り糸があることを知った。
そしてアギラは治療と称して軽い精神制御を施していたのだが、覇王の軍勢との合流後に覇王らの情報を知らせるように指示しておいたにもかかわらず、報告が上がってこないことから、
それを直接調べるために直々にエターナルへと乗り込んできた、というのが今回の真の狙いなのである。しかし、覇王の受け答えと表情を見ると、どうやら自分の意図はある程度見抜かれているのであることを察した。
なるほど、そうやすやすと思い通りにはいかないらしい、そう考えたアギラは軽くフンッと鼻で笑って体内に酸素を送り込む。
アギラの笑みの理由、それはやはり目の前にいる小娘が、小娘ながらアギラの好奇心をくすぐるに足る人物であったから、具体的にいえば、アギラ自身と似たような臭いを嗅ぎ取ったからである。
アギラの主な研究分野は、スクール時代から一貫して、薬物や精神制御をして心理的なトラウマまでをも利用して人間の心を弄繰り回し、戦争の道具となる兵士を作ることにある。
このような行動が一般人の倫理観や正義の観念からは離れていることはアギラ自身も理屈として理解はしている。だがアギラはその歩みをやめない。
己の研究を極みへと到達させるべく研究を重ね、そのためであれば一般人の考えるような倫理や規範などというものなどはアギラの中では大きく劣後するのである。
そして、そんな自分と同じような臭いをアギラは覇王から嗅ぎ取っていた。
まず決める、そしてやり通す
そのためであれば、世界のために、という目的のためにあらゆる手段が覇王の中においては正当化される。手段が法に触れたとしてもそれは覇王にとっては取るに足らない小事に過ぎない。
なぜなら、覇王にとっては己が世界のものであると同時に世界は己のものであり、先人と呼ばれる者どもが定めた法規範などは過去に遺物であり、覇王にとっては法ではなく、むしろ覇王自身が法だからである。
目的のために決めたことをやり通すべく、過去の人間が定めたような「一線」を超えることなどはなんということはなく、その過程で他者の命が失われようとも覇王にとっては些細なことなのである。
当然、周囲には幾分か心を痛めているかのような素振りを見せるものの、歩みを止めるようなことはない。覇王自身の中では仕方がない、の一言でカタがつく。
フリーダムやジャスティスのミーティアが巨大なビームサーベルで切り裂かれた戦艦が宇宙で輝く星の1つとなって、数多くの乗組員が宇宙の藻屑となったとしても、それは変わらない。
重要なのは周囲の人間に対して、いかなるポーズをして自らの権威や影響力を維持・強化していくかということなのである。
これらのことをアギラが知っているわけではないが、少なくともスクールのチルドレンやマシンナリーチルドレン以上にゲイムシステムに容易に適合したキラ・ヤマトを見ていれば、
アスラン・ザラから聞きだすことができた情報と総合して覇王が自分に近いメンタリティを持っていると認識できた。
彼女らは、己以外の命に対する執着が極めて弱く、奪い弄ぶことによって痛む、一般的には「良心」などと呼ばれることもある脆弱な心などは持ちあわせてはいないのである。
アギラにとっては、覇王は将来が「楽しみ」な逸材であるだけでなく、今の時点でも非常に面白い存在であるという認識があった。
無言のまま腹の探り合いを続ける覇王とアギラであったが、30秒ほどの沈黙の後、ブリーフィングルームにブリッジからの通信が入った。
「ラクス様、こちらに接近してくる機体があります」
現在日本で情報収集活動のためのコーヒーショップ経営に勤しんでいるバルトフェルドに代わってエターナルの艦長をしているダコスタが報告を行う。
「連邦軍ですか?」
「はい。周囲に展開している連邦軍艦隊はないことから、先日シャドウミラーのシロガネと交戦したハガネとヒリュウ改だと思われます」
「数は?」
「1機ですが、本体が来る前に増援が来る可能性があります」
そう言われて覇王は瞳を閉じて考え込む。手元の戦力はキラ・ヤマトがいるとはいえ、アスラン・ザラとインフィニットジャスティスを欠いており、ハガネ・ヒリュウ改という連邦軍内でも最強クラスの部隊である。
今の距離であればこのまま交戦を避けることは十分可能である。だが、それでは予定されているシロガネとの合流予定に支障が生じる可能性がある。
そうだとすると、このまま戦闘を開始すべきか。今接近中の1機と先行する増援部隊だけであれば、足の速い機体が幾つか程度であろうから、敵の数としてはそう多くはないであろう。
改修が完了したミーティアとラピエサージュがあることを考えれば、上手く立ち回ることで先遣隊と本体の合流前に敵機を奪えるチャンスすらあるかもしれない。そんなことを考えていると正面にいたアギラが口を開く。
「ハガネにはわしらも縁がある。アウルム1、ブロンゾ27、お前達の出番じゃ」
視線がアウルム1、ブロンゾ27つまりオウカとゼオラに向けられる。
「わかりました、母様」
「任務はわかっておるな?」
「はい……!ハガネにいるアラド・バランガを倒し、ラトを取り戻します」
ブロンゾ28と呼ばれていたアラドが戦闘中行方不明になったことをきっかけに受けたシングルとしての調整が完了したゼオラは何のためらいもなくアギラの命令に承服する。
既に彼女の中では、本来のパートナーであるアラド・バランガが、スクールの仲間であるラトゥーニを奪い、戦いを強制する憎むべき相手ということになっていたのである。
「助かりますわ、アギラ・セトメ博士。ではキラもお願いします。可能であれば敵機の鹵獲も」
「うん、わかったよ。じゃあ行ってくる」
「ええ、無事の帰還を待っていますわ」
内に隠された悪鬼羅刹の素顔を覆い隠す偽りの仮面に、コーディネーター達を惑わし従わせる魅惑の笑みを浮かべて覇王はキラを送り出す。
そんな覇王の笑顔を見てキラは心に強い支えを得て強く頷くと格納庫に向かって力強く駆け出して行った。
やがて自分に訪れる悲劇など全く知らずに…
さて、時は少し遡りハガネの格納庫の一角では先日、念願の特機を手に入れたシンが少し悩ましげな表情を浮かべてヴァイサーガをその足元から見上げていた。
「あらん、シン君。思春期の青少年が悩み事かしらん?ドロドロな話からグチャグチャな話までお姉さんが相談に乗ってあげるわよん」
「ちょっと少尉!それじゃほとんど同じじゃないですか!?」
「それにシンがそんなに進んだ展開にまで進める訳ないじゃないっスか」
後ろから聞こえてきた声の方向へシンが目を向けると、ブリットとエクセレン、それに加えてハガネに整備の応援に来ていたタスクがシンとヴァイサーガの元へ歩いてきていた。
「ええ、ヴァイサーガの飛び道具に列火刃ってクナイがあるんですけど、それが残り少なくて、換えをどうしようか考えてたんですよ」
レモン・ブロウニングの手引きとラミア・ラヴレスによる救出劇によってヴァイサーガを手に入れたシンであったが、機体データはレモンとラミア経由で手に入れることができ、整備に問題は生じなかったのだが、
消耗品でありながらも「向こう」の世界の機体の武装である列火刃の補充をハガネですることはできない。手に入れたデータから製造することができたとしても今すぐには手に入らない。
そのため、どうしたものであるかとシンは考え込んでいた。まさかザ○ト脅威の技術力が如くすぐさま換えの列火刃が使えることにはならないのであるから。
「そうねえ、水龍双爪にビーム発生器をつけて巨大なビームの爪が出るようにするってのはどうかしらん?いざというときはそれがビームの剣になるとかしたら相手も驚きだわ。
ついでに機体も黒と赤っぽくしちゃうとシン君の女運が急上昇するかもしれないわよん」
「ちょっと!そんな危ないネタはいらないですよ!」
「いや、ブリットが言うとどういうわけかはわからねえが説得力が全くねえな」
「っていうか、どうしてかわからないけど色んな意味で身の危険を感じるんですけど…」
「いいアイディアだと思ったのにぃ。武装の名前は水流爪牙・改って感じにして」
「だからそういう危ないネタはやめてくださいって!」
そんないつも通りのボケとツッコミが繰り広げられている中で、時折自分もツッコミを入れているとき、シンの視界に格納庫を走っていく人影が映った。
亡き妹のマユとさほど変わらないように見える歳格好と紅色の短い髪が一瞬であったが確認できたため、それが先日話をしたマイ・コバヤシであることはすぐにわかる。
そして、その表情は先日アヤとともに話をしたときの表情とは大きく異なり極めて厳しく、まるで別人のようであった。
そんなマイが、かなり急いで走っていく様子であったため、シンには何が起こったか若干の疑問が生まれた。そして、そのすぐ後に格納庫に振動と大きな物音が走る。
振動と音の正体はハンガーに固定されていた予備機の量産型ヒュッケバインMK−Uが起動したというものであったが、
そのヒュッケバインが置いてあったのは先ほどマイが走っていった方向である。
「マイ!?エクセレン少尉、あの機体って偵察任務の機体じゃないですよね?!」
「え、マイちゃんなの!?………もしかしたら何かあったのかもしれないわ。
シン君、艦長には私が報告するから、マイちゃんをヴァイサーガで追って」
「で、でも艦長の出撃許可を取らないと…」
「だからそれは私が取るから急いで!何かがあってからじゃ遅いのよ!」
「りょ、了解!」
「それからブリット君、タスク君、リュウセイ君たちにマイちゃんのことを!」
「わかりました!
「合点!」
エクセレンには漠然としたものではあったが不安に思うところがあった。
以前自分が気付かぬうちにヒリュウ改から出撃していたことがあった。
そのとき意識を取り戻したときはアインストの襲撃を受けたエクセレンとしては、
今のマイの不可解な動きを知って、何らの根拠もなかったがどこか嫌な予感がしていたのである。
一方、ヴァイサーガのコックピットで機体を起動させようとしていたシンの下に通信が入ってきた。 「シン!マイが出撃したって本当か!?」
「ああ、間違いない!」
「わかった、俺もR−1で追うぜ」
「なあリュウセイ、マイに何かあったのか?マイの表情、普通じゃなかったぞ」
「…ちょっとあってな」
「ちょっとって…」
「シンさん、マイが出撃したってホントッスか!?じゃあ俺も行きます!」
「私も行く…!」「アラド、それにラトゥーニも!」
シンは知らないのであるが、マイがハガネと合流してすぐに彼女と最初に親しくなったのが、歳も近いアラド、ラトゥーニらだったため、
彼らとしてもまだハガネに来て日が浅いマイのことを気にかけていたのである。
「リュウセイ、どうする?」
「ビルガーとフェアリオンなら大丈夫だろ。………シン、こっちの準備は終わったぜ」
「わかった。じゃあアラド、ラトゥーニ俺達は先に行くけど、マイが敵に遭遇してるかもしれないから、なるべく早く来てくれ」
そう言ってシンのヴァイサーガとリュウセイのR−1がハガネから出撃していった。
これから始まる激戦と予想することもなく… つづく
待ってました!! GJです!!
ただ、親分のラクシズ相手の『名乗り』が無かったのが残念。
『武神装甲ダイゼンガー』にてやるのでしょうか?
それをまとめにUPする際には、タイトルを毛筆・太字・フォント+3ぐらいで表記してほしいです。
是非。ええ、是非に。
遅くなりましたが、乙&GJ。
アギラとラクスが同じにほひかあ。年取ったらピンク色のアギラになるのかしらん?
しかしまあ、アスランは味方というかラクスからの評価もある意味酷評ですね。まさにアスランクオリティ。
バルトフェルドはもう二度とエターナルに戻らない方が幸せですねえ、これは。ではでは、また次回を楽しみにしています。
ディバイン SEED DESTINY
第0話 終わりの始まり
CE73。ヤキン・ドゥーエ戦役と呼ばれる戦争から一年と約半年の月日が流れた。
戦争終盤における決戦兵器ジェネシスと核ミサイルの応酬という地球連合、ザフト間での度し難い絶滅戦が行われた戦争は、異世界からの招かれ人の思惑を交え、戦争に参加した全勢力が壊滅的な損害を受けた事でなし崩し的に休戦となった。
CE72年に締結された休戦条約において、ザフトは地球上に確保した領土の内、ジブラルタルとカーペンタリアを除く地域から宇宙へと撤退し、地球連合もまた強引な手腕によって連合の傘下に加えた中立国などの再独立、自治を認める事となる。
しかし、CE72〜73に掛けて、地球上では小競り合いが絶える事はなかった。
旧オーブ連合首長国を母体とする軍事結社ディバイン・クルセイダーズ(DC)が、アフリカ大陸、南アメリカ大陸を新たな領土として併合し、これに迎合する形で赤道連合がDCの傘下へと加わる。
反地球連合勢力として、地球上における最大勢力となったDCの動向には、連合非参加国や、参加こそしているモノの決してその事態を甘んじて受けれ居ているわけではない国家の思惑などが絡み、地球連合を構成する大国にとって看過せざるものだった。
一挙に勢力が巨大化し、軍の再編や統合した地域への政策、また戦争終期におけるDC総帥ビアン・ゾルダークの負傷とあいまって、この間DCは積極的な軍事活動は行わず、自国の軍備強化と抱え込んだ多量の難民や飢えた国民への対策に奔走する事となる。
これにつけ込む形で地球連合軍も動きを見せたが、先の大戦における多量の死者と、今だ解決せざるエネルギー問題など彼らもまた至急迅速に解決すべき問題を多数抱え込み、迅速な行動には移れずにいた。
よって、勃発する戦闘はあくまでも小競り合い程度と呼べるもので、この一年余りはそれなりの緊張感が漂うものの、大規模な戦闘は行われずにいた。
しかし、徐々に復興が進みある程度の余裕が生まれると、やはり人は喉元を過ぎ去ったはずの熱を思い出し、一時忘却していた筈の事柄を思い出す。先の大戦では完全に着かなかった決着。
地球とザフト、DC。地球圏の覇権を握るのはどれか一勢力で良いと、どの勢力の者達も再び考え始めたのだ。
前大戦時、寡兵のDCが地球連合と渡り合ったのはザフトとの軍事同盟の他にも、テスラ・ドライブ、TC−OS、核融合ジェネレーターと言った超技術とそれらを用いた規格外の高性能機動兵器群を多数保有していたに他ならない。
これは、コズミック・イラと呼ばれる世界とは異なる別世界、ないしは別宇宙の死人達が揃って搭乗していた強力な機動兵器と共にCEへと転移し、その多くをDCが確保していた事。
またDC総帥ビアン自身が極めて優秀な科学者であった事が、DCに強力な兵器の数々が短期間で配備された大きな要因となる。
だが、戦争が終結し地球連合やザフトにもまたテスラ・ドライブなどの技術が流出し、異世界の死人達もDC以外の勢力に身を置く事によって、DCが独占していたと言ってもいい超技術の数々が広まり、DCとの技術水準の差を埋めていた。
それでもなお超頭脳を複数名確保していたDCの技術的優位は確かなもので、また一挙に増大した国力によって、その戦力の総合計も跳ね上がったのは事実であった。
埋められつつある技術力、埋める事の出来た国力。DCと地球連合、そしてザフト。三者の勢力図が塗り替えられる日がそう遠くはない事を、地球圏の誰もが、心のどこかでひしひしと感じていた。
*
ラグランジュ2(L2)と呼ばれる地球と月の引力の中和宙域に、小規模ではあるがコロニー国家と呼べるだけの力を持った国があった。
ビアンがクーデターを起こして政権を奪った旧オーブの、次期後継者であったカガリ・ユラ・アスハが、前大戦時の混乱の隙を突く形で樹立しいつのまにやら地球圏各国に国家と認めさせた正統オーブ政府である。
これには、ジン・ジャナハムを名乗る謎の人物の支援も大きかったと言う。
廃棄されていた旧式コロニーや、ザフトに壊滅させられたL4の生き残りの難民たちなどを集めた烏合の衆の誹りを受けても甘んじて受け入れる他ない集団ではあった。
しかし前大戦時に旧オーブのアスハ派の軍人や地球連合の脱走兵、傭兵、ザフトのクライン派の兵士達からなる武装集団『ノバラノソノ』の兵士達の多くが亡命と言う形で所属し、保有する戦力は決して侮れぬものがある。
国家としての体裁を整えるのにおよそ一年、それからの半年間は外交と軍備の強化にあてられていた。
いまもなお地球圏に漂うきな臭さを鋭敏に察知するだけの嗅覚を、政府代表であるカガリは、これまでの体験から会得していたのである。
父ウズミが根強いパイプを持っていた月の中立都市コペルニクスで、密かに新型機の開発を行わせ、またL2にある一つのコロニーを丸々兵器工廠として改造し、ノバラノソノが保有していた超技術から得られたデータをもとにした主力量産機の開発も並行して行わせていた。
すでに地球連合やザフトでは、DCから流出していたTC−OS、核融合ジェネレーター、テスラ・ドライブを標準装備した機体の開発と配備が行われ、旧式のバッテリー機は廃棄されるか、後方に回されるか、民間に売り払われていた。
オーブもまたカガリの肝煎りで大国の量産機に負けぬだけの高性能機の開発が行われている。戦力の大多数を旧ノバラノソノの参戦者達が持ち込んだ機体で構成していた状況であったが、L2の本国で開発した機体が早期にロールアウトしたため既に配備が進められていた。
オーブで実戦配備が進められている機体は二種存在する。
現在正統オーブ政府軍軍部の重鎮であるカーウァイ・ラウ准将(昇進した)の愛機ゲシュペンスト・タイプSと、戦死したオウカ・ナギサの機体ラピエサージュのデータバンクから得たデータを元に開発された機体だ。
名前をゲシュペンストMk−UM(Mass Prduct Model=量産型)。
高い汎用性と換装兵器による拡張性、また機体そのものの発展性から後続の機体の開発にも期待がもたれた傑作と言ってもいい。
もう一機種が、旧オーブが開発を進めていたM1の系列機ムラサメだ。
ラピエサージュのデータにあったビルトラプターという人型と戦闘機への可変機構を持つ機体に着目した開発陣が提案した機体で、原型となったビルドラプター同様に可変機構を有し、他国の量産機とは一線を画す機動性を持つ。
可変機構によってフレーム面での脆さや軽量装甲が問題視されたものの、これはEフィールドの装備によって解決されている。
また一部のエースや指揮官用に通信機能や、推進力などを強化した上位機種であるマサムネが存在している。現在はEフィールドの装備によるコスト高や可変機構の整備性の問題から、ゲシュペンストMk−UMが主力量産機として配備が進められている。
そして事件は、一部のエースの為の特殊な機体の開発が行われていたコペルニクスで起きた。中立都市と言う名目を隠れ蓑に、各勢力の陰謀渦巻くコペルニクスのとある工場区画で突如、高エネルギーが感知されるや、爆発炎上。
何者かが機動兵器による戦闘を行っているものと判断された。
この現場にもっとも早く到着したのが、コペルニクスで開発中の新型機のテストパイロットを務めていた正統オーブ政府宇宙軍所属の、キラ・ヤマト三尉とアレックス・ディノ二尉であった。
それぞれゲシュペンストMk−UMの開発の際に試作した機体に乗っていた。キラは機動性強化型のタイプR。アスランは出力や装甲強化型のタイプS。
爆発が生じた区画が、自国が密かに開発している新型機の付近とあり、急行した二名は、そこで対峙する二つの機影を認めたのである。
この一年ですっかり体に馴染んだオーブのパイロットスーツに身を包んだキラは、前方で揺れる紅蓮の炎の中で対峙する機体を観察した。片方は特機と呼べるほど巨大な機体で、すくなくともオーブで提案された機体の中に類似したものもなかった。
残る片方も、さして思い当たる節はなかったのだが、その両腕や両足を見てそれが見慣れたものである事に気づき、傍らのアレックスに声をかけた。
「アス……アレックス、あっちの小さい方は」
「ああ。あれはアルトアイゼンのパーツだ。強奪されたか、予備のパーツだとは思うが」
ゲシュペンストMk−Uとさして変わらぬサイズの機体の両手両足は、コペルニクスで秘密裏に開発されていた新型機の一つアルトアイゼンのものに相違なかった。
一般兵の為の主力量産機開発が本土で行われていたのに対し、このコペルニクスはごく一部のエースの為の機体の開発が行われていた。
オーブのみならず、地球連合やザフトでも、前の大戦において単機で戦況・戦局を覆す兵器が、複数存在した事実から、エースとの組み合わせによって圧倒的な戦闘能力を発揮する機体が求められたのである。
そうした事情からオーブが開発したのが、アレックス・ディノ専用機アルトアイゼンと、キラ・ヤマト専用機ヴァイスリッターの二機種だ。和名を冠するオーブ軍の傾向に反し独逸語名が冠せられているのはオリジナルへの敬意によるものとされている。
慣例に従っていたらアルトアイゼンはコテツ、ヴァイスリッターはシロキシと名付けられていたらしい。
どちらも相応の欠点を抱えつつもパイロットと機体の長所を生かした戦闘、及び連携が取れれば一個中隊相当の戦力と見ていいはずだ。実際には前大戦におけるアレックスとキラの戦果を鑑みればそれ以上の戦力とみる事もできるだろう。
いずれにせよ、ようやく組み立て終えたばかりと言うアルトアイゼンのパーツが目の前の機体に使われている事に、アレックスとキラは不審げな色を瞳に浮かべる。
どちらにせよ、早く目の前の二機を確保しないと他国の部隊やコペルニクスの事情を知らない者達に目撃されて、後々面倒な事になりかねない。
二人は素早く目くばせし、機体を炎の海の中へと進ませた。
開いた通信回線越しにどうやらそれぞれのパイロットがなにやら、問答を繰り広げているらしい。たまたま拾った声が揃って年若い少年少女のものである事に、アレックスとキラは気付いていた。といっても二人とてまだ十八歳の若者なのだが。
「そこの所属不明の機体。武装を解除して投降しろ」
念のため外部スピーカーも合わせて呼びかけたアレックスに今気づいた様で、巨大な機体の方がパイロットの苛立ちも伝わる様子で、右腕を崩れかけている天井に向けるや、巨大なビームを放って撃ち抜き、巨体からは想像できない俊敏さで開けた穴から脱出してゆく。
アルトアイゼンの手足を持った謎の機体も後を追おうとするが、特機モドキが脱出しざまに撃ってきたビームの回避に機体のバランスを崩し、立て直す間に取り逃がしてしまう。
挙動を見るに、どうも機体に乗った経験があまりないらしい。
逃した一機を堂々と追うわけにも行かず、さりとてこのままぐずぐずしているわけにも行かず、キラとアスランはそれぞれゲシュペンストMk−Uで残った謎の機体の前後を固めて、逃がさぬ布陣を敷いた。
アルトアイゼンもどきのパイロットも観念したのか、同行を請うアレックスに従う旨を伝えてきた。
多少の抵抗は止む無しと思っていたアレックスが思わず安堵の息を突くくらい、大人しく謎の機体はこちらに従って来た。工場の惨状にはとりあえず眼を瞑るとして。急いてこの場を去らなければならない。
とりあえず相手の名前くらいは聞いておくか、とアレックスは考えた。後で詳しい話を聞く事にはなるが、それ位は先に聞いておいて悪い訳もなし。
「おれはアレックス・ディノ。そっちがキラ・ヤマトだ。君と君の機体の名前くらいは教えて貰えるか?」
少しの間を置いて、モニターに開いたディスプレイに映し出された謎の機体のパイロットの顔にアレックスもキラも、小さく息を飲んだ。
まっすぐに伸びる極上の絹糸の様な髪は淡やかな桜の色を帯び、触れた指が心地よさに離れる事を拒絶しそうな褐色の肌、ともすれば氷の様に冷たく見える理知的な光を宿した瞳はどこか浮世離れした美しさであった。
まだ二十歳にもならぬと見えた少女の美貌は、すでにこの世を去ったある少女によく似ていた。
「この機体はフリッケライ・ガイスト。私はアリエイル、アリエイル・オーグです」
*
太陽系のもっとも外側に位置していた旧冥王星に、別宇宙に存在した始原文明エスの古代都市を模した巨大プラントが存在していた。その内部に設けられたいかにも豪勢な邸宅のリビングにいくつかの人影があった。
地球に降り注ぐ太陽光と全く同じ人工照明が柔らかく照らし出すリビングのソファの背に、やや行儀悪く腰掛けた少年が、リビングを後にしようとしている少年の背に声をかけた。
「ティエリア」
「なんだ? リジェネ・レジェッタ」
あるかなしかの笑みを浮かべ声をかけたリジェネと言う少年と、反対に能面のように無表情のティエリアという少年は、まるで鏡に映したように同じ顔立ちをしていた。
最高級のルビーを象眼したのかと見まごう瞳や、雪花石膏から二人といない名人が彫琢した芸術品の様に繊細で中世的な顔立ち。
紫の色を帯びた髪をストレートに伸ばして肩口で切りそろえているのがティエリア、癖のある方がリジェネだ。
他にはお互いに掛けた眼鏡のデザインくらいしか二人の外見で判別できる違いはない。一卵性の双生児であろうか。薄いピンクのカーディガンを羽織ったティエリアの無感情な瞳に射抜かれながら、リジェネは少し困った様に肩をすくめた。
「大変だね。いくらデュミナスの指示だからって、DCに行くなんてさ。デスピニスの手伝いをするんだって? 君、地球の重力は苦手だろ?」
「デュミナスの指示は絶対だ。デュミナス、ひいてはクリティックの理想を実現するために、私達イノベイターは生み出された。それは私達の試作タイプであるデスピニス達も同じだ。助力に向かうのに何の問題もない」
「君は真面目だね。まあ、GNドライブ搭載機までつけるんだ。デュミナスもよほどDCに関心があると見える。それとGN粒子の副作用を忘れてはいけない。戦場で負傷などしないように気を着けるんだよ。いくら抑制剤があるとは言ってもね」
「言われなくても分かっている。用件はそれだけか?」
「つれないなあ、君と僕はイノベイターの中でも兄弟の様なものなんだよ。心配をしてもいいだろう?」
「君の好きにすると良い。失礼する」
やや憮然とした声音を最後に背を向けてリビングを退出するティエリアに、リジェネはやれやれと溜息をついたようだった。兄の言う事に反発する弟に困っていると見えなくもない。
リジェネは、ソファの背もたれに腰かけたまま背後を振り返った。優雅に足を組みソファに深く腰掛けているもう一人の人物がいたのだ。
目に鮮やかな若草の色を写し取った髪に、少年とも青年とも取れる曖昧な年頃の顔立ちだ。ティエリアやリジェネとは異なる造作だが、彼もまた整い過ぎるほどに整った顔立ちをしている。
「君からは何も言わないのかい、リボンズ?」
「必要はないさ。ティエリアは自分の役割をよく理解してくれているよ。君こそ、ティエリア以外の皆の事を心配したらどうだい?」
「ふふ、そうだね。地球連合の所に行ったティスには、ヒリングとリヴァイヴ、プラントに行ったラリアーにはブリングとディヴァイン、それにユーラシアの反政府組織の所にはアニュー。ここも随分と寂しくなったものさ。
それにしても、良かったのかい? ティエリアとヴァーチェをDCの元に派遣して? DCの技術ならGNドライブの模倣位はやってのけるかもしれないよ」
「なに、すでにこちらの手のモノを潜り込ませているし、相応に手は打ってある。ヴァーチェの装甲くらいにしか彼らは触れられないよ」
穏やかな声のリボンズの返答に、リジェネは満足したのか、そうかいとだけ言ってティエリア同様にリビングを後にした。自分一人になったことを確認し、リボンズは一人独白する。
「やれやれ、リジェネもティエリア離れが出来ないようだね。さて、デュミナス、そしてクリティックの予測通り間もなく地球圏は戦禍に再び覆われる。その時こそ、ぼくらイノベイターの真価が問われる時だ」
そう呟くリボンズの瞳は金色に輝き、彼らがGNドライブと呼ぶ、赤い粒子をまき散らす動力機関の生産過程を映し出していた。それは、本来擬似GNドライブと呼ばれるべき代物であった。
「さてと、ヒリングやディヴァイン達にもはやくガデッサやガラッゾを送ってあげたい所だが、それももう少し先か。ふふ、これからどうなるか、すこし楽しみだね」
*
地球連合参加国内でも、やはり各国家間における軋轢と言うものは存在している。地球連合の盟主とでも呼ぶべき大西洋連邦に、極東地域を統べる東アジア共和国、ヨーロッパ一帯を統治するユーラシア連邦。
各国がそれぞれに独自のMS――この時代の三種の神器であるテスラ・ドライヴなどを搭載した新型の開発と配備を行っていた。それはやはり連合内部での、対プラント、対DCとの戦後の地球の覇権を握るのはどの国かと言う意識の表れもである。
東アジア共和国の北方、一年の多くを氷雪に閉ざされる地域に、その基地はあった。
一般的な軍の任務についている者には知らされない、いわば裏方に属する基地である。だが、それも今日この日までだ。苛烈な訓練に耐えた精鋭中の精鋭達が、長くつらかった訓練を乗り越え正式に部隊として発足した自分達に胸中で喜びをかみしめている。
配備された東アジア共和国の最新鋭機ティエレン(鉄人)のテストに出ていた五人が、一番最後に基地に帰投した。ティエレンは四角形のブロックを集めて人型にしたような、ちょっと見は武骨な機体で、ザフト系列機に似たモノアイを装備している。
おおよそ優雅さや軽快といった言葉とは無縁の機体に見える。しかし、如何にも重量感のあるその機体は、国民を守る堅牢さが感じられる。
DCで言うところのウルブズに相当する特殊部隊“頂武”の隊長であるセルゲイ・スミルノフ中佐は、各機のパイロットに機体から降りるよう命じた。ティエレンのコックピットは一般的なシートではなく立ったまま搭乗する立座型と一風変わった形を取っている。
セルゲイは顔面を完全にヘッドマウントディスプレイを外し、ティエレンのコックピットに横付けされた昇降機に移った。
暗緑色のパイロットスーツ越しにも鍛え抜いた筋肉と天与の体格とが見て取れる堂々とした立ち姿だ。指先からつま先まで程良い緊張感が満ちて、今この場で敵に奇襲を受けても冷静さを保ち、即座に反撃の手段を講じるだろう。
黒髪を綺麗に七三で分け、左半顔には痛々しい傷跡が走っている。この時代、十分に治せる範囲の傷跡であろうが、教訓としているのか、戒めなのかそのままにしているようだ。
すでに四十歳を過ぎながら、この新しい兵器であるMSに対して並みならぬ適性を見せ、共和国内でも五指に入る操縦技術を持つ傑物である。いかにも骨太と言った顔のつくりにある二つの瞳は、あくまでも理知的だ。
いささか近寄りがたい風貌ながら、精神は鉄でできた軍人の規範そのものと言った所か。
セルゲイは背後の部下達のティエレンを見た。正確に言うならば、この場の五機はいずれも通常のティエレンではない。
セルゲイが搭乗していたのはテスラ・ドライブ内臓の高機動パックを腰部に装備し、脚部にもジェット推進機構を組み込んだティエレン高機動型の、通信機能を強化した指揮官型だ。
残る五機は、いずれも共和国内で数えるほどしか生産されていないティエレンの最上位機であるティエレン・タオツーだ。
両肩のスラスター兼用の大型シールドや機体各所に増設されたスラスターによって通常のティエレンとは一線を画す機動性を持ち、通信情報処理機能も向上していて、頭部にはT字型のモノアイレールが追加されている。
コックピットもセルゲイの様なヘッドマウントディスプレイタイプではない全周囲モニターが採用されている。
ティエレンを大きく上回る共和国の最新鋭機だが、その分パイロットに掛かる負担もすさまじく、目下頂武に所属する四人の兵士が使用するのみに留まっている。
タオツーとは中国語で桃子という意味だが、文字通り桃色なのは一機だけで、他の三機は薄紅色の機体と、橙色が二機となっている。橙色の方は区別する為か右肩を金に塗ったものと左肩を灰色に近い銀に塗られている。
それぞれのタオツーから降りてきたパイロット達は、タオツー用の特殊なパイロットスーツに身を包んでいた。体のラインがはっきりと出るタイプで、それぞれやや蒸してきたヘルメットを小脇に抱えている。
驚いた事に、その四人はそれぞれが双子であるらしい。女性二人に男性二人の組み合わせなのだが、それぞれが全く同じ顔立ちをしている上に、体付きまで瓜二つだ。
女性は、濁りの無い銀の髪をまっすぐに伸ばし、前髪の部分は左右に編み込んでいる。まだ戦場に出るには早いと誰もが思う位に華奢だ。
二人共に鏡の様に綺麗な金色をしているが、一人は見つめられた相手が固まってしまいそうなほど険しく、もう一人は見つめる瞳の優しさにふっと肩の力を抜けるような眼差しだ。顔も形も一緒だが、柔と剛と相反した印象を受ける。
固い印象を受けるのがソーマ・ピーリス、穏やかな印象を受けるのマリー・パーファシーだ。桃色のタオツーがソーマ機で、薄紅色のタオツーがマリーの機体となる。
対して男の方も同じように正反対の印象を与える二人だった。緑がかった黒髪でそれぞれ右目と左目を隠している。ソーマやマリーよりも頭一つは高く、セルゲイ以上に鍛えぬいた体格だ。
両腋が閉まらないのは発達した上腕筋の所為だろう。右目を前髪で隠し、穏やかな印象を受けるのがアレルヤ・ハプティズム。反対に左目を前髪で隠し、今にも牙を剥いて獣も怯える殺気をまき散らしそうなのがハレルヤ・ハプティズム。
四名ともが、共和国内で秘密裏に行われていた非人道的な実験によって、人間の限界を超えた身体能力や特殊な能力を得た一種の強化人間、あるいは超人的存在”超兵”だ。今は超兵の研究機関が解体され、行き場の無くなった彼らをセルゲイが預かっている形だ。
支援
セルゲイから見れば四人共が戦場に出すには大なり小なり躊躇を覚える年若さだったが、共和国上層部が近いうちに戦争が再び勃発すると考えており、それに対抗する為に優れた能力を有する彼らを放っておく訳もない。
セルゲイにできるのは、自分の下に預かっている間は彼らが戦死する様な事が無いよう尽力する事くらいだろう。セルゲイは彼らの労をねぎらうべく、ゆっくりと歩き始めた。
*
ユーラシア連邦の支配地域であるヨーロッパの、旧オランダ王国地域を中心に反ユーラシア連邦政府に対する活動を行う軍事組織があった。
元は反政府活動と言ってもデモやマスメディアにおける活動のみ、テロなどには手を下さない組織であった。
しかしプラントとの開戦に前後してユーラシア連邦の一部の高官が一方的に武力を用いて、流血によって鎮圧活動を行った事や、大西洋連邦に唯々諾々と従う政府に対する反感が高まり、武力による抵抗を行うまでに至った。
これには強烈なカリスマを持ったある人物の台頭とそのある男が引き連れた謎の機動兵器群の戦力によるところが大きい。
”カタロン”と呼ばれる反政府組織は、ユーラシア連邦内における覇権争いに注意を向ける他国からの援助なども受けながら、日ごとユーラシア連邦の正規軍との小規模なMS戦を繰り広げていた。
今日もユーラシア連邦の有するダガーLとストライクダガーの混成部隊を相手に、カタロン所属のジンやストライクダガーが銃火を交えている。
なだらかな丘の続く遮蔽物の無い平原地帯を戦車部隊の援護を受けながら、ユーラシア軍のダガーLが整然と並んで錬度と兵器の質で劣るカタロンのMSを破壊してゆく。
カタロンには元軍人も多いが、もっとも新しい兵器であるMSの正規の訓練を受けたものがそう多くないのか、一機、また一機と数を減らして行く。
ほどなくカタロンの保有するMS部隊がすべて撃墜されるのも時間の問題かと思われた。三機一組で行動していたストライクダガーの胸部を、はるか遠方からのビームが貫いたのは、すでに歩兵などの掃討に移ろうかと言う時だった。
「な、どこからの!?」
「た、隊長っ」
驚く小隊長もまた正確にコックピットを撃ち抜いたビームによって蒸発し、残った最後の一人が他の部隊に救援を求めようと思い立つのと、三射目のビームがその一人を貫くのはほぼ同時だった。
ズシン、と重々しい音を立てて糸の切れた人形のように倒れ伏すストライクダガーをスコープ越しに確認し、彼方で膝立ちの姿勢で狙撃を行っていたM1アストレイが立ち上がる。
手に持っているのは本来M1Aが使用する、最大射程400kmを誇るビームライフルだ。それを地上用に調整し狙撃用に改良を加えたものを使って、見事に三機のストライクダガーを仕留めたのだろう。
コックピットの中で、地球連合のパイロットスーツに身を包んだ青年が、瞼に流れてきた汗を手の甲で乱暴に拭った。二十代半ば程の青年だ。北欧系なのか白い肌に彫の深い顔立ちで、やや癖の掛った茶色の髪をしている。
援護に駆けつけた味方が全機撃墜されているのを確認し、忌々しげに舌打ちを一つ付いてから、ほかの生き残りについて情報を得るべく通信機に荒げた声を叩きつける。
「アニュー、他に敵は?」
「大丈夫よ、ライル。カークス将軍のエウリードが間にあったから」
後方で待機しているアニュー・リターナーと通信で、他の救援は間に合った事を確認し、スナイパー使用のカスタマイズを施したM1のパイロット、ライル・ディランディはやれやれと溜息を吐いた。
カタロンのリーダーであるカークス・ザン・ヴァルハレビアの保有する専用機動兵器エウリードの戦闘能力は折り紙つきだ。あれならいま各国が配備している核融合ジェネレーター搭載機でも、容易く撃退できるだろう。
これならあとは追撃部隊の時間稼ぎをするだけで済むかと、ライルは程良く肩から力を抜いて背もたれに体を預けた。
「なあ、アニュー」
「なに? ライル」
ライルにとって今一番耳心地の良い声に、ライルはわけもなく笑みを浮かべた。カタロンに参加してから知り合った同年代の才媛の美女との関係は戦友以上恋人未満に落ち着いている。ライルとしてはもう少し深い関係になりたい所だ。
「この作戦が終わったら食事でもどうだ? 昔馴染みが新しく始めた店があってさ。招待されてるんだよ」
「もう、家に帰るまでが作戦よ、ライル」
「まあな。でもなにか御褒美があった方が生き残ってやろうって言う気になるだろう? そういうわけで、さ」
「仕方ないわねぇ」
そういって生徒の思わぬ告白に困る新任女教師の様な笑みを浮かべるアニューの顔が簡単に想像できて、ライルはもうひと押しかな、と手ごたえを感じた。カークスがエウリードを用いてユーラシアの部隊を敗走させたと連絡があったのは、それから更に三十分後の事であった。
*
カークス・ザン・ヴァルハレビア率いる反政府組織カタロンが、ユーラシア連邦正規軍と戦闘を終えたのと同日の事。ユーラシアに属するとある地方に、世界を見渡してもめったに見られぬほど豪華な屋敷が建っていた。
高い塀に囲まれ、切り取られた視界には警備の為に配置されたMSの姿が見える。
サー・マティアスと呼ばれる経歴性別そのほか一切が不明の人物が、この屋敷の主であった。
大理石の床も敷かれた絨毯も照らし出すシャンデリアも、廊下に並ぶ数々の展示品も、およそ目に着く全ての品が庶民とは、いや並みの大金持ちと呼ばれるたぐいの人種でも一生縁のない最上級の品ばかりである。
最初はその豪奢さに感心した来訪者も、同じようなものばかりが連続すると無感動になってしまいそうだ。
マティアスは三十代半ば頃の男性だ。黒い前髪で顔の右半分を隠す様にしているがなかなかのハンサムと言えるだろう。どこか女性めいた柔らかい所作が端々ににじむが、それも動作と外見から感じられる性別の違いに対する違和感よりは、品の良さへと繋がる。
深くソファに腰かけたマティアスは、それまで口に咥えていた象牙細工のキセルをはなし、招いた客に目を向けた。
吐いた煙が客に向かう様な事はない。もともと煙草と言うものは煙の味と香りを本人が楽しむものであり、その煙が他人に迷惑にならぬよう風向きを呼んで煙を吐く事が礼儀だ。
それ位の知識と作法は何世紀も前に廃れてしまったが、マティアスは身に着けているようだ。
とりあえずマティアスの煙草の煙の味を味合わずに済んだ招かれた客の内、背の高い方がマティアスに向かって口を開いた。纏う雰囲気は違うが顔立ちは驚くほどあのライル・ディランディに似ている。
「サー・マティアス、おれ達を呼び出した理由はなんだい? スポンサーのお呼びとあって大急ぎで駆けつけたんだがな」
「ふふ、ごめんなさいね、ロックオン。実は貴方達に折り入って頼みがあるの。ちょっと長い仕事になるわね」
マティアスの女口調には慣れているのか、ロックオンと呼ばれた青年と先程から黙ったままの少年は、沈黙をもってマティアスに先を促す。マティアスは人当たりの良い笑みを浮かべながら、秘密を暴露する瞬間に似た楽しさを覚えていた。
「今までいろんな仕事をこなしてきてくれた貴方達に折り入っての頼みと言うのはね、私が懇意にしている所の軍隊に助っ人に行って欲しいのよ」
「おれ達に軍人になれってのか?」
それまでどこか陽気の色を帯びていたロックオンの声がにわかに低くなる。黙ったままだった少年もかすかに眉を動かして納得のいかぬ事を暗に告げる。
「ちょっと違うわね。民間軍事会社からの出向と言う形でもいいし、善意の協力者という体裁を取ってもいいわ。向こうにはそういった前例もあるし、こちらの身元や素性を探らないという条件も飲んでもらっているしね」
「それで、おれ達にどこへ行けと言うんだ?」
支援
それまで黙っていた少年だ。くせ毛なのかあっちこっちに跳ねた黒髪に、まだまだ子供くささの抜けない顔立ちをしている。目鼻の高さや配置、やや褐色の肌から中東系の出身だろう。
長身のロックオンが傍らに立っているから余計に細い体が目立つ。しかしどこか幼ささえ残す風貌に反し、その目つきは鋭い。そう、生と死の境が曖昧な戦場を何度もくぐった戦士のそれだ。
「相変わらずクールな瞳ね、刹那。食べちゃいたいくらいだわ。ふふ、貴方達に向かって欲しいのは、DC――ディバイン・クルセイダーズよ。私、あそこのビアン総帥とはお友達なのよ」
「DCねえ、そいつはこれからまた大きな戦争が起きるってことかい?」
「そうかもしれないわねえ、ロックオン。どう、刹那、行ってくれるかしら? 機体は向こうが用意してくれるわよ」
「分かった。DCへの出向任務了解した。ロックオンはどうする?」
「はあ、まったく勝手に決めやがって……。まあいいさ、分かった。おれも行くよ。機体に関してはちょっと注文付けるぜ?」
「それ位は任せて起きなさい。貴方達好みの機体を用意させておくわ」
やれやれとロックオンは肩をすくめるが、刹那は何を考えているのか、鋭い瞳のままマティアスを見つめ返していた。
つづく。
アリエイル・オーグ(+フリッケライ・ガイスト) → オーブ。
ティエリア・アーデ(+ガンダムヴァーチェ) → DC。
セルゲイ・スミルノフ、ソーマ・ピーリス、マリー・パーファシー、アレルヤ・ハプティズム、ハレルヤ・ハプティズム → 東アジア共和国。
ライル・ディランディ、アニュー・リターナー、カークス・ザン・ヴァルハレビア(+エウリード) → カタロン。
ロックオン・ストラトス、刹那・F・セイエイ → DC。
デュミナス=ヴェーダ、クリティック=イオリア・シュヘンベルグ、と置き換えると分かりやすいかも。とりあえず00だと目下アレハレとソマーマリー。パパ熊が敵ですね。
ええっと、コーラは?
あと、グラハムは?
ハム、コーラ、ひろしのスーパー脇役三羽烏をお預けにするなんて
なんという鬼畜wwwwwww
まさかとは思うがひろし+ガウ☆るンなんてコンビ出してくるんじゃあ……
おつでしたー。てか早いよ!?
しばらくは勇者シリーズのほうがメインになるかと思ってたので、ちょいと驚きです。
00組は基本CEキャラなのかな。ロックオンだけは例外かもしれんけど。
それにしてもスタート地点が違いすぎてデスティニーの話がどう開幕するかさっぱりわかんねぇ。
うわぁ、種と00合わせて更にスパロボの各種灰汁をぶちこんだカオスなフラスコにw
これ処理し切れるんだろうかと不安になったりも。
コーラさんは出ていないがあの人と大佐はもう本編で清々しい程に幸せ謳歌してるので
出てこられるとむしろ不安な気分になりそうだ。
……だって種死で欧州と言えば伯林でデストローイ!じゃないか。
コーラさんならダガーLやウィンダムでも
デストロイと戦って生き残れるでしょ
それこそがコーラサワークオリティ
あれ?そういえばシンがミスターシュラドーになってハムがブシドーで?
せっさんはハムと因縁ででもシュラドーとも因縁ありそうで?
HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAワカリマセーンXD
ジン・ジャナハムって第二次Gネタですかw
ということは、正体はやっぱりあの人か。
デュミナスの部下三人の行く末が不安だし・・
デュナミスの方なら、あんまり心配ないんだけど
デュナミスは本名でRでもデュミナスだったか
どちらにせよ、Rの方か、OGの方かで大きく変わるからどちらなのかが気になる
>11氏
連載再開待ってたZE!
相変わらずおっぱいへの情熱に微塵も翳りがなくて安心したw
そう言えばマイが登場するのって、このスレ通しても初めてか?
総帥の方はレビが予告で出ただけだし
それにしても
>覇王の居城エターナル
既に「魔城ガッデム」とかそういうノリの響きに聴こえるw
>総帥
こっちも新展開始動・・・ってか早えー!?
思えば、ビアンSEEDの終盤あたりから種死編書きたくてウズウズしてる感じだったから、並々ならぬモチベーションがうかがえる
オウカが去ったオーブに、よく比較されるアリエイルが加入
そして期待されてた00勢の大量かつ大胆な投入方法に脱帽
この凄まじきフラスコがどういう化学変化を起こすのか完全に最早予想不能
>>273 確かビアンSEEDで、全員同じ世界から来たという描写があったはずだから、まずRの方で間違いないかと
OGの方だとデスピニスがいるのはあり得ないし
>>270 00終わるまでならそれで納得できるが、コーラさんEDで幸せの絶頂入っちゃったからさ。
不死身補正が切れないかと心配で心配で……あ、別人だから問題ないのか。
>>268 個人的にニールとアリーは来訪者の方がいいかな
志半ばで散ったニールと、二期になって明らかに水黒が持て余してドッチラケな扱いになったアリーに、こっちの世界で存分に活躍して欲しい
それに何と言っても、00が最高潮だったのは、この2人の対決の時だったと思うし
種死編とマイスターktkr
メインディッシュのハムコーラヒロシマダー(AA略
ちなみに覇王はきっと凸大好きですよ、
なんせテキトーなこと言えばすぐ言うこと聞くし戦闘力も高いですから
00の最高潮はやっぱり愛だろw
次点は阿修羅すら凌駕した存在でw
00の楽しみ方は多様だからな
ロックオンとアリーだって燃える奴もいればどうせテロリスト同士じゃねーかと思う奴もいるだろ
アレルヤはごひ族の匂いが激しくする。
ハブラレルヤの異名は伊達じゃないさ
う〜む00勢はボンズリだけ転移して残りのイノベイドを再生産したんかねぇ?
GNドライブは時間が足りなかったのか擬似の方か。でも粒子の特性を除いて純粋に動力としての
出力はプラズマジェネレーターorリアクターと同等かちょい下くらいの性能だしアドバンテージにはならんな
つーか劇場版製作決まってアムロ生存説自体が強いから
果たして転移なのかねえ
アレハレ、ソーマリーが別個のキャラな上に、まとめてセルゲイに引き取られてるのが地味に嬉しい
>>286 アレハレ兄弟ネタはネタスレに行けば結構見れるが
ソーマリーが姉妹のネタはかなり少ないからな
しかも、その四人が四人とも荒熊に引き取られてるのは初めてじゃね?
総帥は基本、全部盛りの人だから
>>283 合体加速でGNアーチャーを前線に運ぶ役に収まる姿が今から思い浮かびますw
色違いの機体が五機あるんだよな……
「ティエレンレッド! ピンク! シルバー! ゴールド! ブルー!
荒熊戦隊ティエレンジャー!!」
……ごめん、なんかこんな電波来た。
>>289 ハレルヤとソーマが超兵無双やってる後方で「お前はマリーだけ守っとけ!」とか言われそうで怖いw
それとも空気を読まずにアレマリがいちゃいちゃして
「「うっとうしいわ!!」」とかなるんじゃwwwww
デュミナスチルドレンの中で今のところ一番恵まれてるのはデスピニスっぽいな
DCには小さい子に甘いシンを始め似た感じの何人も居るし
ティスは常夏達と罵り合い漫才繰り広げるんだろうな
一方、プラントではラリアーが年頃の女性陣に可愛がられる横で、部隊の平均年齢がまた下がって凹むアクアの姿が
>>11氏
誰も突っ込んでないんで突っ込ませていただくと
>ビーム爪 ソードになる 赤と黒 女運 はもしかして逆シンのデスティニーIIですか?
そうなら確かにヤバいネタですなw
>>660氏
00勢がCEに……って言っても誰が別人か本人か分かりませんが、とにかく楽しみに待たせてもらいます!
それだったらこれまでも股間に注目なプランAとか社長令嬢とか危ないネタがあったぞ
ただ今回の「危ない」ネタってのは元ネタはたぶん先週の銀魂から来てる
まあ最近じゃ逆シンスレでもたまに覇王呼ばわりしてるのもいるからなw
オルガ「おい、次誰が先陣切る」
シャニ「敵しかいなーい」
クロト「お前がいけよ新入り」
ティス「普通そういうの年長がいくんじゃないの?」
オルガ「じゃあ俺がいくわ」
シャニ「わざーい、僕が行く」
クロト「邪、魔!俺が先だ!」
ティス「じゃあ私が先に出るわ」
常夏「どうぞどうぞ」
ティス「そこで退くのかよ!!」
他にもラリアーなんかは色々と着せ替えされてアイドルデビューなんかしちゃったり
整形無しのミーアとコンビ組んでデビューですねわかります。
整形なしでもあの歌唱力とあの胸あれば売り方次第では
スターになれるな
ラクスと声が一緒だと歌唱力関係なく歌手としては売り出しにくかろう
しゃべる時に意図的の声の調子変えてグラビア系とかで……
遅くなりましたが660氏、完結&新章開幕おめでとうございます
そして11氏の続きにワクテカしてます
ラスボスがこれからも味方に・・・と来て
SHO版の(比較的)綺麗なユーゼスが来るかと思ったら・・・こりゃどうやら無いですね
ヴィンデルはわりとすぐ仲間になりそうだけど
総代は・・・今際の闇に何を見たのか
ユキムラはどう考えたってあちこちの勢力と戦う方選ぶでしょうし
修羅はC3設定だったらほぼ全員来そうですね閃光と氷と納戸は仲間に加わりそうで
激震と変震とハート様は・・・敵・・・でしょうかね
イディクスが来たらイスペイルとヴェリニーはともかく、ガズムはゼナディーエのままだと頭痛どころか精神崩壊のピンチだし
そういやゼゼーナンって一応ラスボスだったこともありましたっけ
第四次で最後の選択を誤らなきゃラスボス
シュウと戦うを選ぶとかませ犬にw
まあぶっちゃけラスボスルートでも本人より周囲のライグゲイオスの群れの方が
厄介なんだがw
>>303 サンクス、そういえば四天王は来たけれどウェンドロいないな
正直来られてもゼゼーナン以上に困る気がするが
あとお供の方がウザいといえば
別スレのSSに出てるから忘れてたがダークブレインとか・・・”アッチ版”だと土壇場で結果的に助けになってくれそう
本家OGにもそのうちザンエル出るだろうか
そこでギルギルガンですよ
メキボスはまだ出てないよな
メキボスは死んでないからw
OGの方でもまず間違いなく生きてるだろうし
わざわざイルムが万丈役を務めてまで第三次を再現しといて
第四次/Fをスルーすることはないだろうな
他の魔装機神は出ないようだから
ミオの代わりに「世界の○理ショー」ネタ振るのはエク姉かタスクかw
ニルファの時に巨人の星ネタや岡崎ガンダムネタをやってた高倉さんでいいよw
18:30くらいから投下します。
ディバイン SEED DESTINY
第01話 SRW × SEEDDESTINY × OO
オーブ諸島のとある家のリビングで、最近大人気の特撮モノを熱心に見ている人影があった。小さい子は幼稚園児から大きなお友達までが熱烈に支持している番組だ。
社員数二十三人という小さな有限会社イディクスが、国営放送の日曜朝07:00〜07:30の時間枠で大絶賛放映中の『魔法少女マジカルレム☆』である。
ある日、魔法の国からやってきた狐のヴェリニーをひょんなことから助けた少女レムが、クリスタルハートの力を借りて、悪の天才魔法科学者イスペイルと、『クルスの欠片』と言う魔法の水晶を巡って戦うという典型的な魔法少女ものである。
いま、モニターの向こうでは主役のレムとイスペイルが作り出したヤガランデという巨大な機動兵器と激闘が繰り広げられている。
普段は小さな子狐の姿をしているヴェリニーが、クルスの欠片の力で獣耳としっぽの生えた妙齢の美女に変身して、クリシュナハートの力で魔道装甲ゼナディーエを纏ったレムと一緒に戦っていた。
ヴェリニーはその豊満な肢体を露出の多い服装で披露し、縦横無尽に飛び、跳ね、走ってはその乳房を魅惑的に揺らし、野性的な風貌と普段は短気で物騒な事も言うのに、時折見せる優しさにハマった人が多く高い人気を誇る。
レムは十歳前後の美少女が、死神か悪魔めいた禍々しい外見のゼナディーエを纏った際のギャップや、時折吐く強い毒舌が大ウケしている。
そんな魔法少女ものを熱心に見ているのは、アスカ家の長女マユ・アスカとその兄シン・アスカであった。
可愛い妹の見ているテレビ番組が気になり、朝方の時間が空いていた事も相まって、シンは初めてマジカルレムを視聴していた。今はぼんやりと頬杖をついてテレビを見ている。
ぼんやりとテレビを見ている様子からは、とてもDCで一、二を争う最強の機動兵器部隊のエースとは思えない。
前大戦時の最終決戦において、瀕死と言う言葉の見本と言うべき重傷を負った後遺症で、半年近く車椅子での生活を余儀なくされたものの、その後のリハビリと以前にも増して密度を増した修行で、以前よりも逞しさを増していた。
テレビ画面の中で、レムの放った必殺技がヤガランデを粉砕し、その爆発に巻き込まれてイスペイルが青空の彼方に吹き飛ぶと言うお約束のパターンで戦いの決着がついていた。
イスペイルが起こした騒動の後始末のシーンが流れ、EDまで見終えると、マユが顔を上げた。
「ん〜今日も面白かったぁ。お兄ちゃんもそう思うでしょ」
「そうだなぁ、でもレム役の子もマユとそんなに年は変わんないのにずいぶん乱暴なセリフを言うよな。マユは真似するなよ」
「はぁい。あ、そういえばお兄ちゃん」
「ん?」
「今日は早くから軍のお仕事があるんじゃなかったの? 新しい人が来るって言ってたよね?」
「……あ、やべ。すぐ行かなきゃ」
「もう、怒られても知らないよ〜!」
慌てて腰かけていた椅子に掛けていた軍服の上着を掴み取って、シンは玄関に向けて大急ぎで走った。乱暴に締めた玄関扉の向こうから、マユの呆れた声と、マジカルレムのEDソングがかすかに聞こえた。
*
オーブ諸島オノゴロ島の、とあるオフィス街にある雑居ビルに、有限会社イディクスはあった。社員総数二十三名。これには、タレントであるイスペイル、ヴェリニー、ガズムも含む。
ワンフロアを借り切った事務所は、こぢんまりとしていてどこか寂れた感がある。一応社長室とだけ名札を掛けた一室で、(有)イディクスのトップ三人が定例会議を行っていた。
リサイクルショップで購入したソファとテーブルに本棚と、すべて中古の品である辺りが台所事情の寂しさを物語っている。
ソファに腰掛けている巨漢がイスペイル。何と表現すればよいのか、金色の尖った歯は剥きだしで鼻から上は黒い一本角の形をしており、眼の辺りに赤い丸が二つ並んでいる。
古いSFに出てくるような昆虫人間を、サイボーグに改造したように体の表面に機械がいくつも露出している。ヴェリニーやレム役のガズムはほとんどテレビの中の格好とおなじだ。
「あーもう疲れた。ちょっと聞いてよ。あの国営放送のプロデューサー、私の事いやらしい目で見てくるのよ、ホント八つ裂きにしてやろうかと何度思ったと思う?」
「お前の格好が格好だからな」
「なによそれ、あんただってその格好で出歩いて何回警察のお世話になって、私達が迎えに行ったと思っているのよ。あんたに見た目の事でとやかく言われたくないわ」
「ぬぐ」
「下らん話はそこまでにしろ。イスペイル、資金はどの程度たまったのだ?」
愚痴を垂らすヴェリニーとイスペイルのやり取りに、ガズムが口を挟んだ。外見で言えば一番常識的で、立場も弱そうなものなのだが、二人が押し黙るほどの迫力を纏っている。口調から滲む威厳も、とても外見からは推し量れないものがある。
イディクスの面々はもともとは特定の外見をもたない存在で、とある条件を満たした別の生命体に憑依しその肉体を支配している。ガズムの外見と雰囲気や言葉遣いが一致しないのもそのせいだ。
ただ、ヴェリニーやイスペイルが生前の肉体共々こちらに来たのに対し、ガズムはやや事情が異なる。彼の場合、最後の瞬間は愛機ゼナディーエに憑依していたのだが、こちらに来た際にはその寸前まで使っていたレムという少女の外見をしていたのだ。
ガズムが調べた限りではレムの肉体そのものではなく外見を模倣しているだけとの事だが、なぜ受肉しているのかは謎だ。
さて、語るまでもないかもしれないが、このイディクスに所属する者達は皆、異世界からの来訪者である。イディクスとは彼らの所属していた組織の名前で、ヴェリニー、イスペイル、ガズムはそれぞれイディクスの幹部に相当する者たちだ。
何の因果か地球と呼ばれていた二つの星と関わった事で滅びたはずの彼らは、揃ってこのコズミック・イラの地球で目覚め、どういった経緯でか起業して日々の糧を得ているらしい。
「うむ、まあ必要な機材の七割方はこれでそろうだろう。問題はエネルギー源だ。私が開発したマイナスエネルギー収集装置は順調に稼働しているが、いかんせん規模が小さい所為で集められる量が少ない。
ゲートを開くエネルギーとして着目したはいいが、必要量を集めるのにはまだ時間がかかるな。前の戦争の終わりにほとんどを何者かに持っていかれたせいだろう」
「あのね、そんなんじゃル・コボル様のいる次元に何時帰還できるか分からないじゃない。ちゃんと自覚はあるの」
ばん、と強くテーブルを叩き、今にも噛みついてきそうな勢いでヒステリックに言い募るヴェリニーに及び腰になりながら、イスペイルが慌てて釈明を始めた。どうにも立場が弱いらしい。思わず座っていたソファの背もたれに抱きついている。実に情けない。
「わ、分かっている。だが、こちらにはタングラムがないのだ。そう簡単に別次元への扉が開けるものか。ただでさえ、こちらの宇宙には『欠片』が存在せず、我らの存在の密度を上げる事も出来ないのだ。できる手が限られていると、前にも話しただろう」
「んもう、だからっていつまでこんなお遊戯ごっこを続けるのよ。そりゃ、ゲート製造の為にいろいろと用立てなきゃいけないのはまだ分かるけど」
「仕方あるまい。戦時中のどさくさにまぎれて戸籍やらなんやらは誤魔化せたし、銀行の口座を書き換えて多少の資金は捻出できたが、それも既に勘付かれた痕跡がある。我々の異形の外見を誤魔化すにも、この仕事はうってつけだと思ったのだ」
実際のところ、人気を博しているのは事実である。二人のやり取りに、疲れた様にガズムが溜息を吐いた。
「いずれにせよ、ゼナディーエやエンダークの維持費もバカにならん。しばらくはこの稼業を続けて金を稼ぐほかあるまい」
この世界に来るに当たり、彼らの部下諸共に機体毎召喚されたようで、目下それらはイスペイルがおでんの屋台で一人酒を飲みながら愚痴を零していた時に懇意になった、とあるたこ焼き屋の主人に教えてもらった倉庫群にしまっている。
もちろんイディクスの技術を総動員した隠蔽工作も施してあり、今のところDCに気づかれた様子はない。もっとも、ヴォルクルスの襲来時は、付近に出現した事もあってかなり危険だったが。
「それに戦争になればマイナスエネルギーも集めやすくなる。確か、あの地球でも似たような歴史だったはずだ。そう遠くないうちにまた戦争になるだろう。イスペイル、一刻も早く次元を繋ぐゲートを完成させるのだ。全ては原初のル・コボル様に帰還する為に」
「……分かっているとも」
そう答えるイスペイルはどこか苦々しげだ。彼らイディクスとは、もともと惑星クルスと言う星の住人の意識が一つになったル・コボルという存在から派生している。
同胞との戦いに敗れたル・コボルは一種のエネルギー体となって生物に宿り、戦いの勝者たちはそれに気づかぬまま宇宙に広がっていた。イディクスとは、その『欠片』と呼ばれる分散したル・コボルを再び集め、一つになろうとする集団だ。
最も密度の濃い存在をル・コボルと呼称し、ガズムが次いで強大な力を持つ。イスペイルは三人の中で最も欠片の密度が薄く、ル・コボルの一部としての意識が薄いためか、自我が強く、自らと言う個の存続を企てている。
まあ、目論見が失敗して斃されて、晴れて仲良くこちらの世界に転移してきたのだが。
(少なくとも、ル・コボルに対抗できるだけの力を蓄えるまで、向こう側への帰還を遅らせねばなるまい。いや、そもそもあちらに戻る必要などないのだ。こちらの世界を支配してしまえばいい。とにかく、今は雌伏の時だな)
しかし、この世界の混迷の深さは、イスペイルを含め、イディクスの面々の想像を超えているものだった。それを彼らが痛感し、行動方針の転換を求められるのはいましばらく先の事である。
*
今も目を閉じれば鮮明に思い浮かべる事が出来る。
神を讃え、神の為に、神の御心のままに、すべては神のおぼしめし。その生命の死を持って神を礼賛せよ、と語りかける男の声。
今はまばらになった銃声の合間合間に、確かに聞こえてくる。ずしりとした重量が感じられる、手に持った機関銃を投げ捨ててしまいたい衝動に駆られていた。
舞い上がる砂煙には、仲間達の血の粒子が混じり、黄色から赤に変わるのも時間の問題なのではないだろうか。
精々が機関銃や、手榴弾位しか持たされていない少年兵達相手に、戦車やヘリまで持ち出すとはずいぶんと過大評価されているような気もする。
いや、だからこそ自分達は置き去りにされたのだ。勝ち目がないと悟った大人達が逃げる為の時間稼ぎ。
残された自分達の命全てを代価にする為に、『神の為に』と高らかに叫びながら、自分達に『神に捧ぐ聖戦』の戦い方を教えた大人達は逃亡している。
胸から下を吹き飛ばされて息絶えた仲間の手に握られたラジオから、繰り返し神の為に、神の為にという文言が続いている。
神の為に自分達の命を捧ぐのだと、戦いに赴く前に誇らしげに語りあっていた仲間達はすでにもの言わぬ肉の塊に変わり果てている。
大人用のジャケットは、小さな自分の体には合わず、走りまわるのにいちいち袖が絡んでうっとおしかった。がちゃがちゃと、予備の弾倉を吊るしたベルトが肩に食い込み、その痛みが自分が生きている事を認識させた。
砲撃で崩れた瓦礫の物陰に背を預けてずるずると座り込む。もう二度と立ち上がる事が出来なくなりそうなほど、体の細胞一つ一つが疲弊しきっていた。
一方的な蹂躙に怯える心が、先程から繰り返し聞こえてくるラジオの言葉に、意識せぬうちに口を突いていた。
「神は、いない」
肺が破れてしまいそうなほど呼吸が苦しい。荒い吐息が自分のものとは思えなかった。これまでの自分を、そして死んでいった仲間達を否定する言葉を口にしたと言うのに、まるで動揺はなかった。
理解してしまった。分かってしまった。こんな事を求めるものが、こんな事を許す者が、神などである筈が無い。自分達が口にし、聞かされてきた『神』という存在は、少なくともここにはいないのだ。
「神など、居は、しない……」
再び口を開いた時かすかなローター音が聞こえ、その方向に銃口を向けた先に鋼鉄の死神が居た。消音処置をはじめとしたステルス処理を徹底的に施された戦闘ヘリだ。ターレットが旋回し、二十ミリ機関砲が自分を捉える。
十歳かそこらの子供が跡形もなく消し飛ばされるには十分すぎる。オーバー・キルという奴だ。神はいなくとも死神はいる。なんとも皮肉な話だ。
たった一発、鉛の弾が発射されるだけで自分は死に、真っ赤なひき肉に変わるのには一秒と掛かるまい。
嫌だ。死にたくない。こんな所で、意味もなく、誰にも知られることなく、何かを成す事もなく、殺されてしまうのか?
「死にたく――」
ない、と言い終える前に迎えた筈の死は、頭上から降り注いだ光の矢が、戦闘ヘリを撃ち抜いて爆炎の花に変えた。
確定していたはずの死が、唐突に生に変わった事態に対応しきれず呆然とする自分の視界に、次々と放たれる光の矢に気づく。それはこの戦場、いや、一方的な狩場の狩人であった者達を次々と貫いていった。
やがて、動く者がいなくなったのか光の矢が絶えた。光の矢が降り注いだ天を仰いだ。背から血のように赤い、どこか禍々しい光の粒子を散布しあたかも紅の翼を背負った天使の様な人型が天に君臨していた。
背を向けていたそれがゆっくりとこちらを振り返る。右手にはライフル、左手にはシールド。人間の使用するそれらをスケールアップしたものを持った人型が、この場にいた者達に断罪を下した死天使の姿だった。
それを瞳に映したまま、時が止まった様に動けなかった。何も言葉を紡ぐ事が出来ない。先ほどまで死と争いに満ちていた戦場を、圧倒的な力で支配したその存在を前にして、類別できない感情が心を満たしている。
我知らず、両眼の端から零れた涙が頬を濡らした。
幼い自分を救ったその人型が、まだ存在する筈の無いMSと呼ばれる人型機動兵器であり、自分達を囮にした大人達が皆殺しにあったと知るのはそれからしばらく経ってからのことだった。
そして、前大戦であの日見た巨人と酷似したMSが、ガンダムと呼ばれている事を最近知った。
「刹那」
自分の名を呼ぶ声に、刹那・F・セイエイは振り返った。マティアスの用意したジェット機の席でいつの間にかまどろんでいたらしい。
自分を覚醒させたのが、ここ一年ほどよく組んでマティアスからの仕事をこなしているロックオンだと、確認するまでもなく理解して、刹那は隣席に目を移した。
ロックオンは少し変わっている。マティアスの紹介で初めて顔を合わせた時、まるで幽霊を見る様な眼でこちらを見て、何の反応もせずにいるとどこか寂しげに笑って、自己紹介しながら握手を求めてきた。
刹那は自分自身がおよそ愛想が良いとはいえぬ性分である事は分かっている。あの戦場を生き延びてから、他人に心を許したこともほとんどない。
頑なな刹那に、ロックオンはめげる事も飽きる事もせずに話しかけ、助け、気心の知れた仲間の様に接し続けてきた。今では、刹那もある程度の信頼を置いている。
「着いたぜ。オノゴロ島だ。あそこの地下ドックにおれ達の新しいお仲間がいるって話だ」
「ああ」
とそっけないことこの上ない刹那の返事に、ロックオンはやれやれとばかりに肩をすくめた。返事が返ってきただけ、前よりはマシとしておこう。
ロックオンは刹那がまた眼を瞑ったのを見てから、窓の外に広がる光景へ視線を移した。マティアスが用立ててくれた電子義眼は、生来のもの以上によく光景を映してくれている。
こちらに来たばかりの頃は右半分の視界が死んでいたが、今では以前同様、左右共に良好な視界が広がっている。
晴れ渡った青空に、綿飴を千切って浮かべたような雲。燦々と降り注ぐ陽光は万物に等しく降り注ぐ。
南国に位置するオーブ諸島は、麗らかな陽気に包まれ一年を通して過ごしやすい気候にある。前大戦中、二度に渡って戦場になったと言うオノゴロ島やヤラファス島は、いまはその時の戦火の爪痕から完全に癒えている。
幾万、幾十万もの人々が暮らす街並みを見下ろして、ロックオンは想う。
あの日、あの時、ソレスタルビーイングのロックオン・ストラトスである事よりも、ニール・ディランディとして復讐を選んだ戦いで死んだはずの自分が、どういうわけかパイロットスーツ姿のまま地球に居た不思議の謎は今も解けぬままだ。
だが、呼吸もしているし、腹も減れば眠くもなる。どうやら生きている事は確からしかった。そして、生きてみようかと思う理由もあった。
このコズミック・イラと言う世界も、自分が居た西暦の世界同様に争いの絶えぬ世界だった。いや、むしろより凄惨な世界だった。
前大戦では、何の誇張もなしに地球連合とザフトが、互いを滅ぼし合おうとするほどの戦いを行った世界。ナチュラルとコーディネイターと言う根深い差別問題。ナチュラル間でも大国同士の間に存在する対立意識。
そんな世界と、どう向き合うべきか。
最後のあの瞬間、ニール・ディランディである事を選んだ自分は、死んだ。変われなかったのだ。家族を奪ったテロへの憎しみに突き動かされ、テロを指示した張本人を前に自分がロックオン・ストラトスである事を忘れた。
だから、今度こそは“武力介入による紛争根絶”、それを目指す私設武装組織ソレスタルビーイングのガンダムマイスター、ロックオン・ストラトスとして。
たとえ共に戦うソレスタルビーイングの仲間はいなくとも、ガンダムが無くとも、ロックオン・ストラトスとして世界と向き合う。それが、ニール・ディランディの選んだ道だった。
「おっ、あれがDCの新型か」
ロックオンの眼に、オノゴロ島の軍事施設で整然と並ぶ機体が映った。
現在、DCは前大戦で主力としたエムリオンやガームリオンなどをはじめとするM1の生産ラインを流用した、AMとMSのキメラMSの生産をほぼ中止している。
ビアンの提案以前にある程度整っていた生産ラインを生かす形での間にあわせの色合いが強かったエムリオンらは、戦後の急速な国力の増大も相まって見直され、またDCの優位を確保していた各種技術の流出も鑑み、より高性能の新型機が求められたのだ。
エムリオンに用いていたリオンパーツの生産ラインはそのままリオンの生産に使われ、M1の生産ラインは一応、わずかにではあるが残されていたが、これは軍用ではなかった。
余ったM1の余剰パーツなどを四割ほど使った作業用非武装MSレイスタを、軍事会社モルゲンレーテの、ユン・セファンという若い社員が設計・開発し、DCはこれをジャンク屋ギルドや友好国などに提供している。
ジャンク屋ギルドなどではこのレイスタをさらに改造したシビリアンアストレイというタイプのMSも販売していた。
なお、作業用MSとして実に優秀な性能を誇るレイスタではあったが、DC本土ではあまり見かけない品である。
前大戦終期に開発されたボスボロットという準特機(疑問視する声が多い)が、作業用としてDC内部で広く普及しているためだ。
風呂・トイレ・キッチン完備で、ジャンクパーツから簡単に組み上げられる極めて優秀な生産性と整備性に、車の運転よりも簡単と言われるほどのある意味オーバーテクノロジーじみた操縦の簡便性が高く評価されているのだ。
さて、話を新型機について戻そう。求められた高性能機に提示された答えは、二つあった。
南アフリカ統一機構と北アフリカ共同体を統合し、DCの傘下に置いたバン・バ・チュンの部隊が用いていた新西暦世界の純生PTの、最新鋭機エルアインスが採用されたのである。
エルアインスは、WRXの原型となった新西暦世界の特機SRXを構成するR−1の量産型ともいえる機体だ。
高性能のテスラ・ドライブは勿論、近・中・遠と全距離に対応する武装と優れた基本性能、また性能に比して優れたコストパフォーマンスを持つ。加えて稼働中の機体もいくつかあったため、生産配備が容易だったのだ。
オノゴロ島の軍事設備で整然と並ぶ、エールストライカー装備のダガーLや105ダガーに似たエルアインスの列の隣に、もう一つの新型機があった。
真紅の機体色に、四つのカメラアイが覗く独特の頭部。丸みを帯びた装甲の胴を持ったもう一つの新型機アヘッドだ。
エルアインスが主力とした多数が生産されているのに対し、アヘッドはどちらかというと数々の新型装備の実験機としての色合いも強く、実験部隊や精鋭部隊に試験的に配備されている機体だ。
特徴的なのが、背から延びるドングリの様な円錐のパーツだろう。今だ数少ないアヘッドにのみ試験的に搭載されている動力機関“擬似GNドライヴ”だ。
旧冥王星に拠点を置くイノベイターのみが保有している筈の擬似GNドライヴを、どういった経緯によるものかDCは入手し、これを実用段階にまで持ち込んでいたのだ。
稼働中のアヘッドが背から零す赤いGN粒子に、ロックオンの瞳がにわかに鋭さを帯びる。
「マティアスの話じゃ、この世界にイオリアはいないはず。となると、あの擬似GNドライヴは、おれと同じような身の上の奴が持ち込んだ代物か? 何にしろ、因縁て奴かね」
忘れる筈がない。三大大国が合同演習と銘打って行った自分達ソレスタルビーイングのガンダム捕獲作戦で、窮地に陥った自分達を救った三機のガンダムが搭載していた擬似GNドライヴの紅の粒子を。
ソレスタルビーイングの裏切り者によって、三大大国に齎された擬似GNドライヴ搭載MSジンクス達が、宇宙の闇に煌めかせていた緋色の粒子を。
それを、死後もまた見る事になろうとは。二度目の人生も、やはり荒波の激しいものになりそうだ。
今はもう、相棒に任せたガンダムデュナメスはない。だが、この命と言う最大の武器が残っている。さて、DCがどんな組織か、中から見定めさせてもらおう、とロックオンは小さく口の中で誓いの様に呟いた。
滑走路に着陸したジェット機から降り、二人は私服姿のまま迎えにきたDCの兵士に連れられて、モルゲンレーテの地下ドックへと案内された。
いまも地球圏最強の呼び声の高いスペースノア級万能戦闘母艦や、グルンガストやネオ・ヴァルシオンと言った特機を開発し、この世界に産み落としてきたモルゲンレーテの地下ドックは広大で、忙しなく通路を行き交う者達も多い。
いかにも大切なものを隠していますよ、と暗に告げる厳重なセキュリティを越え、機動兵器運搬用の巨大エレベーターで地下深くへと降下してゆく。ロックオンの感覚で三分ほどエレベーターに乗っていると、ようやく停止して、目の前の重厚な扉が開いてゆく。
案内役の兵士に従ってそのまま進み、メンテナンスベッドに何機もの機体が寝かされた場所に案内される。ちょうど、ずらりと並んだ機体の足もとにロックオン達がいる。
見慣れぬ機体群の中に、見慣れた機体がある事に、ロックオンは思わず目を見張った。見間違える筈が無い。
ティエレンよりもなお巨大な四肢をもち、如何にも鈍重な外見にきわめて強力な火力を秘めた、ソレスタルビーイングが保有する四機のガンダムの一つ、ガンダムヴァーチェ。
西暦24世紀の世界で共に死線をくぐった仲間が使っていたガンダムが、ここにある事に、少なからずロックオンは狼狽した。まさか、ティエリアも自分同様に戦死してしまったと言うのだろうか。
歩みを止めたロックオンをいぶかしんで、刹那が声をかけて来た。ロックオンはその声に、ようやく自分がヴァーチェに見入っていた事に気づき、何もなかった風を装って再び歩き始めた。
案内された先にはDCの特殊部隊にのみ許される軍服を纏った団体が待っていた。その中にヴァーチェのパイロットであるティエリア・アーデの姿を認め、ロックオンはこちらの刹那と初めて対面した時を思い出していた。
ティエリアの瞳がこちらを認め、何の関心も見せずに逸らされる。それだけで、ロックオンはこのティエリアが自分の知っているティエリアではないと悟った。言いようのない寂しさの様なものが胸中を過ぎ去った。
もう、子供ではないが、少しくらい感傷に浸ってもいいだろう。そう、自分に言い訳をして、ロックオンをかすかな苦笑と引き換えに、自分が異邦人と言う孤独な存在であると改めて思い知らされた痛みを誤魔化した。
待っていた団体には少年少女が目立つ。前大戦時、DC最強を誇った特殊任務部隊にはそう言った者達が多かったとは聞いていたが、まさか、目の前の彼らがそうなのだろうか。
案内の兵が、待っていた髭面の男に敬礼して言葉を交わして、元来た道を戻って行った。髭面――クライ・ウルブズ機動兵器部隊隊長アルベロ・エスト少佐だ。
なお、アフリカや南アメリカ合衆国、赤道連合の併合に伴って軍のシステムも改編され、階級制度も変化している。
わずかに白いモノが髪に混じり始めてはいるが、全身から匂いたつほどの精気を滾らせ、それをコントロールする鉄の理性も伺える。私服姿のロックオンと刹那を、アルベロは値踏みするように頭から足まで見回した。
「良く来たな。お前達で最後だ。お前達は今日からDC特殊任務部隊クライ・ウルブズ預かりとなる。おれは機動兵器部隊隊長のアルベロ・エストだ」
「ロックオン・ストラトスだ。よろしく頼む」
「刹那・F・セイエイ」
マティアスの話では民間軍事会社からの出向と言う形で二人はDCに預けられるらしかった。ロックオンは、人のよさそうな笑みを浮かべてアルベロの後ろで整列している人影を見回した。
青い髪に、緑、金髪、黒と実にカラフルなメンバーがそろっている。しかも揃って二十歳にもなっていないようなものばかりだ。もっともそれはロックオンの傍らの刹那とてそうだ。
あまり人の事は言えんな、と苦笑しつつロックオンはアルベロと握手を交わした。いかにも軍人らしい、分厚く力強さを感じさせる手だった。
「お前達とは別に、もう二人、別のPMCから出向になっている二人がいる。そちらとも挨拶は済ませておけ」
「へえ、同業者さんか。なら、仲良くしないとな」
アルベロに促されて、ティエリアと、もう一人ロックオンのお腹位に頭のくる小柄な女の子が姿を見せた。ティエリアはともかく、これは予想外だったロックオンは、何の冗談だと眉をよせ、無関心を装っていた風の刹那もかすかに眉間に皺を寄せた。
「ティエリア・アーデだ」
「あの、デスピニス・デュミナスといいます。よ、よろしくお願いします」
ティエリアはともかく――それでも外見からして十五、六の少年だが――、その傍らのデスピニスに至っては、ロックオンは自分の目を疑った。どう見た所で十歳かそこらだろう。
縦にロールしている青い髪を止めているカチューシャも、身に纏っているちょっと風変わりなドレスも、少女の愛らしさを引き立てはすれども、戦支度と言うにはあまりに不足だ。
デスピニスはおずおずと、一歩引いた様子で刹那とロックオンにちょこんと頭を下げた。傍らのティエリアが、名前だけ告げて黙ったままなのと比べるとずいぶん違う。
ロックオンは、頭を下げるデスピニスに軽く手を挙げて返してから、険しい表情になってアルベロを睨みつけた。刹那も同じ気持ちらしく、剣呑な光が鋭い双眸に宿る。
「なあ、アルベロ少佐。いくらなんでもこれは冗談が過ぎないか? こう言ったらデスピニスには悪いが、こんな小さな子がどうしてこんな場所にいるんだ。仮にコーディネイターだとしても、限度っていうものがあるだろ」
「……」
アルベロは黙って答えない。少なくともその態度からアルベロも納得がいっているわけではないと言う事は分かるが、だからと言って答えが得られたわけではない。
特に刹那にとっては、かつての自分同様に洗脳されて兵士に仕立て上げられたのではないかという、ロックオン以上の不安と疑惑があった。もし、そうだと言うのなら、このDCという組織を許す事は出来ない。
三人の沈黙を破ったのは、デスピニスだ。おずおずと手を上げながら、小さな口からか細い声を出した。
「あ、あのロックオンさん、刹那さん」
「なんだい、デスピニス」
「そんなにアルベロ少佐を苛めないでください。DCの人達は何も悪くありません。よくしてもらっています。私が、ここにいるのは私がお願いしたからなんです。ですから……」
「君が?」
「はい。私の、大切な方にDCの皆さんにお役に立つようにと言われて」
人見知りが激しいのか気が弱いのか、時折つっかえそうになりながら、それでも必死な様子のデスピニスに、ロックオンは毒気が抜かれるよりもむしろ痛々しさを感じ、眉根を寄せた。
そう思う様に洗脳された例など、人類の歴史を紐解けば吐き気がするほど出てくるだろう。仮にデスピニスの意思でこの場にいるのだとしても、こんな小さな子の選択が絶対に正しいものだと言えるだろうか? 間違った選択をした時、それを正すのは大人の役目だ。
どうにも納得する様子を見せないロックオンと、無言ながらロックオンと同意見らしい刹那に、デスピニスはそれ以上言えずにスカートの裾を握ってもじもじとしてしまう。助け船は、意外にもティエリアが出した。
「貴方がどう捉えようと、私達の派遣はすでに決定している事だ。今さら変わる事ではない」
「なに?」
「そんなにデスピニスが戦場に立つ事が不安なら、貴方が彼女を守ったらどうだ? 幸い、貴方と同じ考えの者が、この部隊には多い」
「それはどういう事だ?」
と、これは刹那である。腰を落としてデスピニスと同じ目線になって、まっすぐに見つめながら聞いた。デスピニスは少し躊躇してから口を開いた。
「私が今日来た時に、皆さんがロックオンさんや刹那さんと同じことを言われたんです。私みたいな小さな子が、戦場に出るべきじゃないって」
「そうか」
少なくとも現場の面々は、上層部の判断に対し不服であるらしい。血の通った面子が揃っているようだ。刹那はまた腰を伸ばして、ティエリアを見つめた。ある世界では共に戦った仲間も、今は初めてであった他人だ。
「いいだろう。どうしてもデスピニスが戦場に立つなら、おれが守る」
「あ……」
刹那の言葉に、デスピニスが驚いた様に口を開いた。かすかに頬が赤いようなのは気のせいと言う事にしておこう。刹那の言葉を聞いて、ロックオンは困った様に頭を掻いた。
「だから、勝手に決めるなって前から言っているだろう、刹那。やれやれ、分かったよ。どうしてもデスピニスが戦場に出るってんなら、おれも守って見せるさ。おれと刹那がナイト役じゃあ、デスピニスは不満かもしれんがな。どうだい、お姫様?」
「え、あ、あの、ありがとうございます」
デスピニスは、恥じらうように眼を伏せながらまた頭を下げた。まだ小さいと言う事もあって、大人ばかりの周りに萎縮しているのかもしれない。まあ、それでも大人と言いきって良いのか判断に困る十代の方が多いのだが。
ティエリアが、眼鏡の位置を右の人差し指で調整しながら口を開いた。
「君達が五人目と六人目だ」
「何がだよ?」
「デスピニスを守ると言ったのがさ」
「なに?」
ティエリアがふっと鼻で笑う様にして呟いた言葉の中に出てきた数字に、ロックオンは先程から自分達のやり取りを見守っている少年兵達の数を数えた。一、二、三、四……なるほど。
「あそこの連中も全員同じことを言ったってわけか」
「そう言う事だ」
子供を戦場に出す事は気に入らないが、この場にいる連中は信じる価値はありそうだと、ロックオンは思った。刹那は、と隣を見るとまだ信じ切れていないのか瞳を向こうの連中に向けたままだ。
いがみ合い寄りは多少空気が柔らかくなった所で、アルベロがこの話題を切り上げた。ティエリアの言うとおり、現場が文句を言った所で上層部の判断が覆るわけでもない。
それに、アルベロはビアンからティエリアとデスピニスに対して警戒する様に、忠告も受けている。二人とも、決して外見通りの存在ではない、と。
「まだ納得はいっていないだろうが、そこまでにしてもらおう。他の連中の挨拶もまだ済んでおらんからな」
アルベロが顎をしゃくり、待っていたシン達が各々挨拶をしていった。
現在クライ・ウルブズに所属している筈のユウキ・ジェグナンや、リルカーラ・ボーグナイン、レオナ・ガーシュタイン、タスク・シングウジ、テンザン・ナカジマ、ジャン・キャリーは別任務に従事しているため、今回は顔を揃えてはいなかった。
よって、この場にいるのはアウル・ニーダ、スティング・オークレー、ステラ・ルーシェ、そして三人に比べてやや遅れて到着したシン・アスカの四人だ。
これにアルベロとロックオン、刹那、ティエリア、デスピニスを加えて機動兵器部隊は現在九名となる。だいたいクライ・ウルブズ結成当初の人数とそう変わらない。
DCとそのほか各国との技術格差が埋まったとはいえ、前大戦の戦績を考慮すれば、シン達五人だけでも三倍程度の戦力なら互角以上に戦えて当然の筈だ。
「おれはシン・アスカ、階級は三尉、よろしくな」
「ああ」
と、シンは刹那に対して差し出した手が握り返されず、仕方なく手を戻した。戦争に関わる職業とはいえ、同世代の仲間が出来てちょっとした喜びを抱いたのだが、なかなか気難しい仲間らしい。
先に挨拶をすませたティエリアにも同様の印象を覚えたが、とりあえず背中を安心して預けられる程度には信頼関係を素早く構築する必要があるだろう。
根が陽気な性質なのか、ロックオンがにこやかにあいさつを済ませて行く中で、ティエリアは一人、このオノゴロ島に来る時に見たアヘッドについて考えていた。
自分達イノベイターのみが持っている筈のGNドライヴをどうしてDCが保有しているのか、この疑問があったからだ。デュミナスの指示によるものか、それとも予測にないイレギュラーによるものか。
いずれにせよ、DCに身を置くと言う選択肢は、その疑惑の答えが出るまでは継続しなければなるまい。
*
ユーラシア連邦のとある軍事基地で華やかな式典が行われていた。東アジア共和国のティレン、大西洋連邦のフラッグ、そしてDCのエルアインスという新型MSに対抗するために開発したユーラシア連邦期待のMSのお披露目の場である。
MSの開発に先んじた大西洋連邦や、工業力と技術力では一歩先を行く東アジア共和国に遅れた形ではあるが、ユーラシアもついに独自の次世代MSの開発に成功したのである。
基本的に、ウィンダムと呼ばれる新型量産機が地球連合各国に配備され、それとは別に力ある国は独自のMSを保有しているのが現状だ。
たとえば、東アジア共和国ならウィンダムとティエレン、大西洋連邦ならウィンダムとフラッグが、主力の量産機となる。
ただ、地球連合参加国でも発言力の小さい国などはウィンダムさえ碌な数を確保できず、完全に型落ちとして扱われる前世代の機体を使用する他ない。
TC−OSや核融合ジェネレーター、テスラ・ドライブ搭載機の開発・生産は芳醇な資金と高い技術力が無ければ実現できないのだ。
ユーラシアの各軍需企業や軍や政府の高官達が見守る中で、国家の威信をかけて開発された新型機イナクトが、模擬弾を次々と現れるターゲットに命中させ、また仮想敵からの攻撃を軽やかにかわして、その性能を披露している。
腹部のドラム状フレームを中心に、か細い両手足を持ち一見すると華奢だが、それに見合う以上の機動性を持っている。また可変機構を搭載していて、特に空戦ではジェットストライカーやエールストライカーを装備したウィンダムを上回る性能を誇る。
薄い緑色のカラーリングに、一発のペイント弾の着弾も許さず、イナクトは十二分に次世代主力MSたる性能を見せつけていた。
しかし、今、式典が行われている上空から、この基地めがけて降下しつつある機影に気づいた者はまだいなかった。
大気圏を突破したその機体の中で、パイロットはゆっくりと舌で唇を舐めた。高揚した気分を紛らわす為の所作である。嬲り殺した敵の返り血で染めた様な真紅のパイロットスーツの奥の顔は、見たものの心胆を寒からしめる邪悪な笑みを浮かべている。
パイロットの目の前にホロスクリーンが開き、この仕事を依頼してきた得意先が顔を覗かせた。
『やあ、どうだい、調子は?』
「は、最高よ。こっちでも戦争がやれるんだからな。派手に花火上げてやるぜ」
『頼もしいね。ただやり過ぎには注意してほしいな。人的被害はほどほどにしておいてくれよ。生き証人がいないと困るからね』
「あいよ。ま、“ほどほど”にな」
『ふふ、ではよろしくお願いするよ』
「任せておきな」
そういって途切れた通信から目を離し、パイロットはメインモニターに映る式典の様子を見つめた。
「どういうわけだから知らねえが、こっちでもイナクトにティエレン、フラッグまでありやがる。おまけに大将までいるたあな。別人みたいだが……まあいいさ。ここが地獄だろうと異世界だろうと、おれはおれだ。楽しませてもらうぜ!!」
オレンジの色を帯びた紅の粒子を零す機体は、パイロット――アリー・アル・サーシェスの狂気的な闘争本能を反映するように一層加速し、動き回るイナクトめがけて飛翔した。
アリーを鋼鉄の子宮内に抱いた機体アルケーガンダムが基地に接近するにつれ、GN粒子によって発生した異常に基地が慌ただしさを増しだした。
そんな中を、悠々とアルケーはイナクトの前に降り立った。
細長く弧を描いた様な手足に、黒みを帯びた紅一色の機体。右手には盾と見まごうばかりの巨大なGNバスターソードを持ち、背からは絶えず血を噴霧するかのようにGN粒子を放出している。
アルケーに、イナクトのパイロットも気づき、イナクトのメインカメラをUNKNOWNへと向ける。
軍人にしては長い赤茶けた髪を持った男――パトリック・コーラサワーは、へ、とこのよきせぬトラブルを楽しむように笑い飛ばした。なかなかのハンサムだが、ガキ大将めいた子供っぽさがそこそこに滲んでいる。軍ではさぞかし問題児扱いしている事だろう。
「おいおい何処の機体だ? ザフトか、DCか? ま、どっちにしても他人様の領土に土足で踏み込んだんだ、ただで済むわけねぇよな?」
ゆっくりと目の前に着陸したアルケーが、こちらを見ようともせず立ったままなのを、コーラサワーは余裕の表れ、あるいはイナクトなど、ひいてはコーラサワーなど眼中にないと言われているようで頭に少し血を昇らせた。
「貴様。俺が誰だか分かってんのか? ユーラシア連邦のパトリック・コーラサワーだ。模擬戦でも負け知らずのスペシャル様なんだよ!」
抜き放ったビームサーベルを構え、コーラサワーは一気にイナクトを突撃させた。数歩走って加速させ、一気にテスラ・ドライブの出力を上げて急加速。なまなかなMSパイロットでは回避できない攻撃だ。
「知らねえとは言わせねえぞ」
「知らねえな、兄ちゃん」
に、とアリーが小さく笑った。同時にアルケーの四つのカメラアイが毒々しい赤色に光り、右手に握っていたGNバスターソードが無造作に斬りあげられる。アルケーの細腕では到底扱いきれぬと見えた大剣は、いとも容易くイナクトの左腕を斬り飛ばしていた。
「てめえ、分かってねえだろ!?」
振り上げられたGNバスターソードが、ひゅ、と風を斬る音と共に振り下ろされる。金属を断つ甲高い音が、一つ。同時に宙を舞うイナクトの右腕。
「おれは……スペシャルで……二千回で……模擬戦なんだよ!!」
「知るかよ、はーはっは!!」
心から楽しげな笑みを浮かべるアリーの声と共に、イナクトの頭部が無残にも斬りおとされて、背から倒れ込む。
ユーラシアの威信をかけて多額の開発費をつぎ込んだ機体が、得体の知れぬ謎のMSにいとも容易く葬られる様に、観客席のあちこちから悲鳴が聞こえた。
規制?
「大将が擬似GNドライヴとこっちの核融合は大して差がねえっていうからどんだけのもんかと思えば、は、なんてことはねえ。もっと歯応えのある奴はいねえのか、ええ、ユーラシアさんよぉ?」
そういうアリーの瞳は、ようやく出撃した警備部隊のウィンダムとダガーLの混成部隊を映していた。
「さあ、来な。ド派手な戦争の幕開けだあ!!」
ユーラシア連邦の新型MSイナクトが、謎のMS一機によって撃破され、警備に当たっていたMS二十機余りが全機撃墜された事件は、ほどなくして全世界に知れ渡り、世界により一層危険な暗雲を立ちこませることとなる。
新たな戦争の足音は、もうすぐそこまで迫っていた。
つづく。
というわけでソンナコトアル……げふんげふん、アルケーとパイロット登場のお話でした。以下は真マジンガーを見て思いついた冗談話です。
老人は、ずっと世界を憎んでいた。世界を嫌っていた。同時に世界を欲していた。自らの能力を知らしめし、世界をこの手に掴む能力の持ち主であると誰にも認めさせることを、心の底で求めている。
あるいは、心許せる友人が、たった一人でもこの老人に居たならば、違ったかもしれない。世界の覇権を手にする為の力を、世界の平和の為に活かせはしないかと考えたかもしれない。
人と人との出会いとは、それほどまでに人間の生涯に影響を与える事が、時折ある。では、この老人はもう手遅れなのだろうか……?
その答えが、今、やってきた。
暗闇に閉ざされた室内に、開かれたドアから一挙に光が洪水のように差し込み、老人を照らし出した。思わず目が眩むが、老人は手にした杖の先でドアを開いた人物を差し、腹の底まで響く声で問うた。
「貴様、何者だ!」
「貴方の頭脳を迎えにきた」
「何?」
徐々に光に慣れ始めた目で、ドアを開けた人物を老人は見た。その男の顔はよく知っていた。自分と同種とも呼べる存在であり、老人の望んだ事を先んじて行った男であった。すなわち、世界征服への第一歩を。
「ビアン・ゾルダーク!?」
「我々は貴方の頭脳を必要としているのだ。貴方の知識を、科学を、技術を!」
「わしが、必要だと?」
「そうだ。貴方はこの世界で唯一無二の頭脳。その能力を、DCは、いや私は欲しているのだよ、ドクターヘル」
手は差しのべられた。老人の能力を欲し、その技術を最大に生かせる場を提供できる男の手が。老人ドクターヘルは、その差しのべられた手を……。
おしまい。
乙!歴史は繰り返したか…きっとここでもコーラは猛威を振るってくれるはず!
>660氏
投下乙です。
いよいよ本格的に戦争再開の雰囲気が漂ってきて風雲急な世界ですが…最後に大いに吹いた。
地獄博士なにやってんのwww
デュミナスさんちの子かわいいとか不死身さんやたこ焼き親父ktkrとか思ってたら全部持ってかれたよ!
何はともあれ次回も楽しみにしております。
いくらアルケーといえど核融合炉とテスラドライブにTC-OSも採用して本家より数倍強化されてて
(潜在的には)スーパーエース級の炭酸の乗るイナクトをこんな簡単に落とせるか…?
まあ炭酸だからって言えばそれまでだがw
コーラwww
やはりこういう扱いか、まあコーラらしいが。
しかし、現時点だと疑似GNドライブの優位性が見いだせない。
基本的に無限のGNドライブと違い活動限界があるし、
有害なGN粒子をばらまく。
テスラドライブで飛行は可能だし、
核融合と大差ないならあえてこれを採用する所は少ないのでは?
>>325 出力としては核融合と大差無くともGN粒子の恩恵は受けれると思う
つまり核融合並の出力+防御力の底上げが図れる
00の設定を深く知らないから疑似だと意味がなかったらホントに何のために採用してるのか分からないけどな?
早くも続ききたぁああああ!!
オマケのヘルとかこの際出してくださいw
しかしイディクス・・・マジで来てるんですか、しかも雑兵の人らも
特性的にルイーナとの関わりが注目されますな
>>326 疑似GNドライブは、
1・活動時間が短い(OO世界の旧式機の方が活動時間は長い)
2・GN粒子が人体に有害(オリジナルは無害)
3・トランザム・ツインドライブが出来ない。(終盤には可能になった)
といった点がオリジナルGNドライブに劣る。そのため2期になってから
のジンクスやアヘッドは専用母艦での運用が必要になった。
出力は大差なくても、活動時間は核融合の方が長そう。
なんかブリッツみたいだな…やっぱ強襲・奇襲用なのか?
ん?まてよ…
擬似GNドライブは外部からエネルギーを供給されてGN粒子を生みだすぶっちゃけコンバーターだ。
ということはサブで核融合機関を積んでおけばかなりの活動延長と多少の出力UPができるのでは?
多少大型になるかもしれんがガデッサを参考に
・本体に核融合機関+コアファイターに擬似GNドライブって形式にすればOKだし
GNドライブって推進機関でもあったよね、たしか
動力部と推進機関兼ねられるってことで機体重量減らしたりすの空いた分武装増やしたりできるのじゃないかな。
核融合+テスラ+スラスター が一つのユニットでいけるのがGNと擬似GN
うん、コンパクト化技術だね、日本の町工場で作っててもおかしくないくらいに
333 :
通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 21:23:26 ID:9BnPB4V1
OOの終盤から来ているアルケーならトランザム対応に改修されている筈
+『こちら』のリボンズとも接触している以上、更なる強化改修が行われていると見た。
後、(擬似)GNドライヴの優位性としては、
1:ビーム用の粒子を電力で供給可能な点…他の機体のビームはあくまで荷電粒子だから弾切れの可能性もあるでしょう
2:電力を推進剤として転用可能…『現在』のテスラドライブではPIP(推進剤非依存推進)は不可能ですし
装甲強化(GN複合装甲)や防御フィールド(GNフィールド)は他の技術で代用可能だから優位性ではなし
この世界には、TEエンジンのような半永久機関、プラズマジェネレーターに代表される高出力機関もある以上…擬似でも脅威になるかもしれません。
余談……アルケーはスローネをガデッサと同じくヴェーダ内のガンダムの設計データを使われているので、擬似GNドライヴ自体が小型化・高性能化されています。
いっそ途中で疑似ツインドライブ化するってのも有りな気がするぜ>アルケー
なんかさ、マジンガーZ放映当時のコミックで惚れてた女を親友だと思ってた兜十蔵に
とられてやさぐれてたところを、以前サイボーグ技術で助けたブロッケンに煽られて
世界征服を始めるDr.ヘル前史ってのがあるらしいな。
それにしてもシンはビアンSEED最終回で車椅子だったから心配してたが、普通にピンピンしてて何よりだ
>>335 桜多吾作版だな
ちなみにATX氏がその設定でSS書いてる
凄く面白そうだったのだが、総帥以上にスケールのデカい構想の作品だった為に結局プロローグで頓挫してしまったけれど
これでもし戻って書き切ってくれたら奇跡、そしてその奇跡をまだ待ってる
総帥乙。
録音がやっぱりあっちの人で今のところ元の世界のソレスタルビーイングの裏切り者(イノベイター)側なティエリア有り、
同じくあっちから来たひろし有りでかなり大変そうな予感がしないでもなく。
イディクスの皆様はお疲れ様です。たこ焼き屋の旦那とのつながりとは予想外w
“門”から出てくるアレはル=コボルのアッパーバージョンっぽいですがどうなることやら。
そしてひろし。やはりひろし。
しかもやってる事が第一話の刹那と録音の行動のオマージュっぽい所が皮肉が利いている。
録音と刹那の二人との絡みが増えそうですが録音は今度こそ勝つことが出来るのか。
楽しみにしております。
……しかしDCのアヘッド、まさかいきなり死亡フラグ立てて死んだあの人がいるんでしょうか?
>>333 GN複合装甲は装甲の間にGN粒子通してるんだっけ?
だとすればPS装甲との複合も出来るかもしれない気がする。
特殊装甲2枚化できるなら結構危険かもしれない、消費が跳ね上がるだろうことは置いておいて。
>>338 それはジニンたんの事か!
まあ、おいおい思いっきり死亡フラグな台詞だなぁ…とは思ったが
ところで赤GN粒子が有害になるのは、ビーム粒子として出力を調整したときで、普通に撒いてる分には無害じゃなかったっけ
00の設定は二転三転しすぎてよく分からん。
>>334 アルケーのパワーアップ案その2
女性型のAIを搭載する
具体的に言うとアルファベット5文字の
まさかのMISAE
あ、でもアルケーも足癖悪いし……それはあり……か?
>>343 吹いたやないか
あと5文字のはシンの機体じゃね? 声的に
ヴァイオラ
>風呂・トイレ・キッチン完備で、ジャンクパーツから簡単に組み上げられる極めて優秀な生産性と整備性に、
車の運転よりも簡単と言われるほどのある意味オーバーテクノロジーじみた操縦の簡便性が高く評価されているのだ。
と、いうことは普通免許でもあれば誰でも動かせるのか?
一家に一ボスボロットか?
そしてバックホームは用なしか?
>>347 国外販売用のレイスタがあるから需要はあるんでね?
設計者8、制作ジャンク屋だったからジャンク屋が販売してるのかもしれないが。
バックホームはジェスの特注品だよ。
そういえばせっちゃんがまだだな
せっちゃんは最終決戦時にボスボロット運転してたからそろそろ出番が有りそうにも思える。
むしろトビーとチーフが何をしているのか気になるな。
死人にしろCE&00世界の住人にしろ、無印68話でバルゴラが有ったし。
……まぁ今回の話見るとエルアインスとの量産機トライアルで負けちゃったみたいだけど。
しかし、次の話辺りでシン達の乗機が登場しそうだなあ。
結局何になるんだろう。ブシッドかインパルスかが有力だったと思うけど……
354 :
設定マニア:2009/04/20(月) 19:14:31 ID:Ay50JKYa
>338
正確には装甲内に空洞を作って、そこにGNフィールドを発生させます>GN複合装甲
他にも、装甲表面に簡易的なGNフィールドを張ることで防御力を上げています(原作では装甲材その物はティエレンやフラッグと同じEカーボン)。
これが顕著なのはトランザム発動時、普段は視認できないGN粒子伝達経路や装甲表面に存在するGN粒子の密度が上がって、見えます(赤くなる)。
っていうか、ジニン大尉はアヘッドに似合っていますが…DC勢力圏の出身者には見えないのがネックですね。
案外、アルベロさんの搭乗機…死亡フラグやん。
>ひろし
読み返してみたら……CE&OO世界のひろし、Oガンダムに殺されてるよ(だから『あっち』のひろしが存在出来る訳ですが)
擬似GN機の対ガンダム用切り札の粒子霍乱手榴弾みたいなの使うとビーム食らわなくなる
けど自分達も装甲薄くなってフラッグとかイナクトにも致命弾食らう辺りが欠点だったな。
>>338 PS材はコーティング系と相性が悪いってか弾いちゃうんじゃないっけ?
電力OFF状態ならGN粒子で強化できるかもしれんが電力ONにすると弾いてしまって
装甲内部でGN粒子が暴れまわることになる気がする
イスペイルの相変わらずの萌えキャラっぷりが一番印象に残った俺はどうすればorz
>>353 しかし最大の問題はシンがオーブ所属だってことだ。
今はまだムラサメって可能性も有るかもよ?
>>337 頓挫ではなく充電中と言って欲しい
執筆期間より充電の方が長いだろと言うのはナシでw
>>357 インパルスの開発はザフトが入手したデータを元に開発したザフト側のストライクであるテスタメント、
あと合体システムのテスト機であるシルエットザクのデータを元に行ったと言う開発背景がある
現在混沌としてるこの世界じゃザフト、連合、DC,アメノミハシラの何処が開発しても可笑しくない状態
その上総帥にはオリジナルのRX-78-2やGP01、GP03、ZZとかのデータも有るからDC側が一番開発しやすい状態
ザフトに通常の、DCにステイメン似の機体が建造されていて……ってのも面白そうじゃね?
360 :
337:2009/04/21(火) 00:40:50 ID:???
>>358 マジっすか!?
そう言われちゃあ、いつまでも待ってますよ、いや本気で
ATX氏生きてた、よかったよかった。じっくり待ってます。
>>356 アレはビームコート系の塗料が駄目だと思ってたんだが
ならPS|普通の装甲|GNフィールド|普通の装甲と挟み込めば……
うん、手間かかるだけで大変そうだ。
>>357 今回の話読む限りM-1の量産ライン止めてエルアインス(とアヘッド)に移行してるらしいから
精々エルアインスじゃないかな。
Kガリオーブの方はゲシュペンストMk−U・Mとムラサメを配備してるらしいけど。
コーラサワーというと、ダブルオーにおける最大のギャグキャラであり、不死身であり、最終回で一番美味しいところを持っていった勝ち組。
ビアンSEEDでも活躍してくれると信じている。
世界のことなんて何一つ考えることはないと
何の躊躇もなく断言したのに00世界で1番の勝ち組だからなw
難しく考えなくても人は幸せになれるってことだな
運MAXの男且つあの世界では至極珍しい格上機体の撃墜数が多いっつー正に
神に愛された男だしなあ
録音兄さんや、アリーが来ているなら
アニューも来ていそうだな。
……うわぁおぅ
1期コーラサワーの戦果
連携したとはいえヴァーチェを捕獲直前まで追い込む
ジンクスでデュナメス半壊&相打ちながらナドレ撃破
2期コーラサワーの戦果
連携したとはいえジンクス3機でケルビムをギリギリまで追い込む
ジンクスでアヘッド秒殺
フツーにスゲーなwww
ネタキャラの色が濃すぎるがなんだかんだ言って、生存率の高さや功績を見れば模擬戦二千回のスペシャルは伊達じゃなかったんだよなぁwww
>>366 アニューはCEアニューがカタロンに居るから来てないと思われ
CEアニュー死亡後に来るって可能性も有るけど
ちなみにハムの戦果
1期 デュナメスにサーベル使わす&押し倒す
スローネ圧倒してオーバーテクノロジーのサーベル奪って腕切り落とす
エクシア撃破
2期 ブシッドでバーロー大佐とジュドー少佐を00から守る
単体ではトランザムが不完全な00を追い詰めたが斬る価値なし
2期ハムは00ばっか相手にしてるから戦果は微妙
ケルビムやアリオスとかとも戦ってれば変わったかもしれんが
こうして見れば見る程に如何にジンクスが1も3も優遇されて
アヘッドは性能に見合った活躍をしていないかが良く判る。
ジンクス→基本やられ役だがコーラ機大活躍
アヘッド→ズタボロのエクシアを嬲る以外基本やられ役。ブシッドはそれなり
コーラハムひろしの技量はだいたいのイメージでいうならα主人公組以上教導隊以下くらいかねえ
>>363 ガンダム対してもにもさっぱりした感情だったなwww
しっかし、こうして見ると、あれ?ハムいらなかったんじゃね?コーラだけでよかったんじゃね?と思ってしまうのがなんとも・・・
結果だけ見るとそう感じてしまうのは仕方ないことかもしれないんだけどねぇ・・・
まあ00キャラ全般に言えることだけど>ものすごく個性的だけどあとから見れば別にいなくてもよかったキャラ
好みの問題があろうが、打倒ガンダムに燃えるライバルポジションとしてハムは大事だと個人的には思う
ガンダムじゃない機体でガンダムと互角以上に戦ったり、良くも悪くも素敵な口上は見ていて面白かった
これはコーラサワーとはまた別の魅力でないかな、と。
それに戦闘シーンもよく動いてたから好印象
一期のハムさんは阿修羅をも〜の台詞が好き
普通にカッコいい台詞だけど小ネタもあっていい
ヒント:ヨハン兄さんの中の人の他のガンダムキャラ
だがブシドーは別に要らんかった。
CBのキャラからはどうでもいい奴としか見られてない、刹那にすら。
せっかくSDGFを意識したネタやったんだから
リジェネからティエリアに頑張れの一言も欲しかった
ティエリアもキャプテンみたくだんだんと柔らかくなってきたんだしさ
ブシドーは中途半端になってしまったのが残念でならない
それがブシドー失敗の最大の原因
匙ルイスのガキどものグダグタなんかいらんから
その分の尺をブシドーとコーラ&大佐に使って掘り下げて欲しかった
ブシドーの尺は代わりにアリーに使ったほうが良かったと思う。
マイスター4人中3人と因縁あるんだし、せっかくのキルケーが…
避難所へGO!
総帥来てたwwww
俺がサキガケだ(by刹那)
シンやっぱ全盛期に比べると実力落ちてたんだな
しかしトビーが知ってるシンって、Zでも前半の頃だよな
Z終了時のシンと、ビアンSEED最終戦時のシンってどっちが強いんだろ
片やカミーユと互角の力を持ち、ターンXの不意打ちに耐え、堕天翅だろうがゼラバイアだろうがブッ叩斬る、Z自軍でも最強の一角
片や念能力者でスーパーモード起動して星薙ぎまでブチかました剣士
ビアンSEEDのシンがAGITΩ、ZのシンはG−3X(氷川さん)みたいなもんじゃなかろうか。
>>384 Zのシンはリアル系で総帥のシンはスーパー系で能力に差異はあれども互角って感じかね?
う〜む、そろそろ迷い込んできた人ともとからいる人の区別が判らなくなってきた。
アルケーにサイフレとバイオセンサー搭載か…
アリーの意思は念能力者とNTの精神に良くなさそうだな。
相転移エンジンとディストーションフィールド積んでないだけマシだw
アリーマジ半端ねえ。けど、コーラだから全く心配無いのがイナクトクオリティ
っつーか相手が酷すぎて00一期1話より遥かに状況悪いやんwwwww
ハッ!?まさかあの会場にハムと主任がいるならハムがアリーのストーカーになるのか!
>>389 でもフラッグじゃあな……スペック差がありすぎて勝負にならん。
GNフラッグでも無理だろ。
かといってウインダムとかダガーに乗ったらハムじゃない。
いきなりマスラオでハムさんが現れても俺は驚かん。
先見の明が物凄いエイフマン教授がこっち来てたらトランザム開発できてるかもな〜
エイフマンってとりあえず疑似GNドライブとトランザムシステムに関しては気づいてたんだよな?
>>388 むしろIFSとエネルギーフィールド関係の方が不味い
イメージするだけで素人でも自在に機体が動き、
動力積んでないが故の超小型、高機動の機体群とかやられるぞ
覚醒ムネタケとエクスバリスが転移して来たら色んな意味でパワーバランス崩れるぞ
>>390 こっちの世界の技術で作られたフラッグなら、ミロンガ級の性能になってるんじゃね
エンド・ブレイカーの殺人機動に血を吐きながら耐えるハムが目に見えるようだ
ヒロシみたく00世界で死んだエイフマン教授がこっちに来てる可能性もあるよな
とすればフラッグ→トランザムマスラオになるのも早いかもしれんな
>>395 ヘタすっとツインドライブまでも搭載するやもしれん
00本編のリボガン超えるチート機だなwww
グラハム以外のオーバーフラッグスも全員死亡してるから出て来ても不思議じゃないな
CEのハムと一緒にトランザムフラッグス結成したら手強いかもしれん
>>386 避難所の感想スレのほうに来た人&CE生まれキャラ&処遇とかの変化してる種キャラまとめがあるので参照。
レス番441〜443。
グルンガストとかを受領したあたりまでの分なので中盤でとどまってるけど、その後は新しく登場したキャラは多くないので、
続きをさらっと読んでいくだけでも把握できるはず。
スパロボといったら?キャラ&機体辞典だよね、ってことですこしずつ作ってみようかな、とか。
自前でプレイしたのはMXPとAPだけなので詳しく書けないもののほうが多いけれども。
>後は新しく登場したキャラは多くないので、
いやいや、新シリーズ開始と同時に急増したじゃないか
まあ大抵は記述あるけど
クリティック側(イノベイター)
クリティック〜Wから流れてきた
デュミナスファミリー〜Rから流れてきた。断じてOG外伝ではない。
アリー〜00から流れてきた。こっちにアリーがいてもリボンズによって殺されていると思われる。
イノベイター+ティエリア〜死人ではなく、ヒヒョーと過ちさんが作ったと思われる。
……が、ここまでそっくりに作れるんだろうかとも思わんでもない。
連合(東アジア)
荒熊、ハレアレ、ソーマリーズ〜ティエレンジャー。CE世界の住人。分離済み。
連合(ユーラシア)
コーラ〜00で死んでないので間違いなくこちら産。
カタロン
カークス〜EXから流れてきたと思われる。
あにゅー〜こちら産。やっぱりイノベイターだと思われる。
録音弟〜こちら産。
オーブ(カガリちん)
アリエイル〜死人かどうか不明。アレスガイストと争っている以上、RRR世界ではなくこちらにやってきて本編開始か?
アレスガイストのアレ〜同じく死人かどうか不明。逃げた。
マティアス(ジェスとかと馴染み?)
刹那〜CE世界住人。やっぱり俺がガンダムだ。こちらのアリーが死んだことは知っていそうだが?
録音兄〜00から流れてきた男。義眼の性能は絶好調らしい。
今のところ00から流れてきたのが仇であるひろししかいない辺りが涙を誘う。
オーブ在住
イスペイル様と愉快なメンツ23人〜K世界から流れてきた。アンジェリカルートだと思われる。
エンダークとゼナディーエ他を隠匿中。
DSSD
フィリオ〜α世界から流れてきた。
三人娘〜CE世界住人。
その他
ゼブ〜第四次かFの敵対ルートだと思われる。
死亡
ウォーダン、ミッテ先生、ルオゾール&ヴォルクルス、盟主王、アギラとアードラー?
桜花(転移してOG2終盤に逆戻り)
今のところ大体こんな感じなのかね?
ムラタも忘れないであげて
そいえばモンデニャンコはまだ健在なんだっけか
ムラタ忘れてたぁ!インパクト強いのに死に際が余りにもあっさりしていたせいだろうか……。
ロレンツォは存命だったはず。
……そういやこの二人とナイトガーリオンだけOGはOGでも八房漫画のOGからの出演なんだよね。
まだ登場してないが、ネーナは来てるのか?
あと腹黒中華は?
オミットされました、と振りかけてここがいい男スレじゃないのに気が付いた
>>402 ムラタとモンテニャッコはゲームのOG外伝に出番あるじゃない。
>>403 トリニティ組はこっちに来てるのか、CE住人として登場するのかも不明だな
転移組だった場合は何処に拾われるかで運命がガラッと変わってきそうではある
あの3兄弟の死に様を考えるとソレビ関係とは組みたいとは考えないような……
けどそうなると組織的にはマティアスの雇われとか東アジアかユーラシアしか無いのか。
そういやここのティエリアの搭乗機ってまだヴァーチェだったよな? しかも擬似炉
そしてすでに開発されてるアヘッド…エイフマン教授が転移済みならトランザム搭載も秒読み段階…
CB勢マジでアドバンテージ残ってねーぞwww
今の所00組最強なのはアリーだよな間違いなく……
けどCE技術で作られてるならイナクトとかティエレンも原作程ガンダム相手に
有効打が与えられないって事も無いとは思うんだが。
こっちのCBは全機プロトンドライブ搭載
その上母体がデータベースだからW世界のテクノロジーを丸ごと有してるし、この世界で広まった技術も当然のごとく学習してるようだ
擬似炉だけならともかく、これだけ揃うと侮れない勢力になったと思う
スマン、誰かDS持ってない俺にデータベースとプロトンドライブって何なのか教えてくれないか
データベース:文明の知識だの何だの収集して残しとくよ!まあ収集したら後は用無しだから消えろ
元々は残すだけだったのが歪んでこんな感じに。
>>405 別物だよ!全然別物だよ!ここのムラタはあんなせこい真似しないよ!
>>411 プロトンドライブ自体は主人公機、母艦、敵の母艦、ライバル娘の機体などに積まれていた動力炉。
4つ搭載された終盤の機体だとシンクロン原理バリバリ使用したりソムニウムとかいう物質で自分の分身作ってみたりマジヤバい。
ってのは言い過ぎかもしれないが、まぁそれなりに優れた動力炉。
>>407 クリティックと今のところつながってるマティスの私兵になってる可能性もあると思う。
>>413の補足。
アリーがぶっぱしていたプラズマ・エクスキュージョンはWの主人公機の必殺技。
>>400 >カガリちん
その表記やめいw
字面見ただけであのアホ面思い出して腹痛いw
本論書き忘れたw
ゼブもCE世界の可能性ないか
元の世界でロンドベルなりと戦ってるなら単にお仕事以上の感情が
好悪問わずありそうだけど
このゼブはまるっきり第四次やFで初登場した時の人格だ
Wと言えばDC警備部隊の皆さん量産型ボンタ君着てるけどそこらへんデータベース的には気にならないんだろうか?
あとラムダドライバってデータベースは使って無かったよな?
ラムダドライバ自体はイノベと相性悪そうだし流石についてないよな……あ、アリーが居た
一瞬ラムダドライバで高層ビルの天辺に大雷凰チックに手組片足立ちする斬艦刀背負った機体を幻視した
>>416 .. ()
.. []
, "l" 、
(*゜◇゜)
アリーはガウルンの系統だから、普通にラムダドライバ使いこなしそうだしな
愛してるぜぇ〜、クルジスの餓鬼ぃ! とか言い出すのか
ところでCEハムはただのガンダム馬鹿になりそうな気がするのは俺だけだろうか?
右を向いても左を向いてもガンダムガンダムヒュッケバインなこの世界
特機とかも多いけどハムにとっては幸せな世界かも
抱きしめたいな、ガンダム!!
↓
就職する国によってはすぐに見れます乗れます
こんな状況だもんなあ
むしろ過去の戦闘映像見て
私はグラハム・エーカー!
君の剣技に心奪われた者だ!!
とか
抱きしめたいな、ヴァルシオン!!
とかなってたりして
読み返しててふと気になったんだけど、ウズミが臨時で仕事してた時に直談判してきたオーブ兵たちってどうなったんかな。
あの後ウズミが電話してたし、速攻で捕まったんだろうか?
あと現在ウズミはどういう扱いなんだろ。相変わらず軟禁されてんのかな?
>>424 ビアンが宇宙に上がった際に拘束は解かれて、普通に閣僚の一人として政務やってたし、現在もそのままだと思うよ
正統政府の方もカガリの成長を信じて任せるつもりみたいだし
>>423 ハムは是非シンと乙女座対決して欲しいわw
刹那のライバルはリボンズ1人いれば十分だと思うし
実際、原作だと刹那1人にハム、ひろし、リボンズと敵役が集中しすぎて前2人の扱いが蔑ろになったから
一方で敵側ではひろしが一人で色々絡んでたな
ロックオンの件でティエリアやライルと因縁があったのみならずネーナとも
ハムには抱きしめたいなと言ったデュナメスの後継機のケルビムや
脱ぐとやせるヴァーチェにも絡んで爆笑のコメントをしてほしかった
あれ、ハブラレルヤ…
>>406 転移組だった場合、ネーナだけにぃにぃずより5つも年食ってて奇妙なことになるな
それにあっちのネーナはアリーにレ(r
そんなエロ同人ありそうだな
CE世界に『来てから』の時間経過次第じゃないかな。
無印〜デスティニー間で二年経ってるし、種編に出てきた転移組の時点で大半CE70年かそれより前に来てるみたいだし。
最も早く来た転移キャラって誰だろう?
クリティックじゃないかなぁ。
一族と接触したり、デュミナス修復&記憶改竄したり、イノベイターこしらえたりしてるし。
特に3番目時間かかると思うんだが……。
ライか虎には是非特攻兵器型イノベイドについてコメントしてもらいたいものだw
00の問題点は真っ当な連中出すとどんなタイミングで味方にできるんだってとこだよな。
W以上に味方にし辛い組織だと思うんだが
前作のように共闘せざるを得ない連中相手の時しかないだろうな。
それもお互い殴りあって消耗した後に出てくるとか。
最も遅くてvsルイーナもしくはその後に戦う羽目になるかもしれないガンエデン辺りだろうか。
>>434 やっぱ宇宙鯨が攻めてきましたしかないな。
そろそろ宇宙鯨の正体について真面目に考える時か。
1.マクロス7のアレ
2.宇宙怪獣
3.擬態獣
4.インベーダー
辺りがとりあえずの候補?
1は夢があるけど、ぶっちゃけ心を通わせられる様な奴が居ない、ラクスやミーア
では役不足にも程がある。念動力に頼るしか…
2は正直来たら終わり、対抗手段ないよ……全長1000キロの母艦級とか圧倒的
な物量とか反則すぎる。
3や4もその場では勝っても泥沼化しそうだ
5.ラダム
も追加で。
6.百邪
6.真マジンガーの神々の魚っぽいやつ
7.「星間宇宙を渡るもの」ハスター
>>406 個人的にはCE住人のがいいなあトリニティは
そっちの方が綺麗なトリニティにする場合やりやすそうだし
>>442 ハスター呼ぶなよwwwただでさえ完璧パパンがクトゥルフっぽいのにwww
あのパパンって完全顕現したら歴代最強のボスか?
水木アニキより強いかな?
最強以前に宇宙が終わる。
>>444 完璧親父本体が降臨した時点で世界が発狂して崩壊する
父さんマジ魔王アザ・トゥース級のヤバさだ
自分でスピリチア補給できるようになったゲペルニッチがビビる相手だからな。
魔導探偵で白の王で旧神のロリコンがアップをはじめましたw
目が血走ってる……
やつは眷属ならともかく本物の旧支配者の本体にはなんのたち打ちもできんだろw
ロリコンが来ても違和感ないんだよなぁ〜、この世界。
>>450 太刀打ち出来なくても、傷ついても、何度でも、何度でも立ち向かうのがアイツさ。
>>451 ニャル様いても驚かんよね。
旧神ロリコンが来たらそこら中の女性に一緒にヘッブーンに行かなーい?
って聞いて回りそうだ
>>444 ちなみに種死初参戦のスクランブルコマンダー2のラスボスはアゾエーブと言いまして
ボタン一つ(かどうかともかく)で時空間構造体を破壊し混沌に還すというトンデモロボ
真聖ラーゼフォンを飲み屋で女の子に絡むように羽交い絞めにしたりアンタそれやり過ぎちゃいまっかって程にやりたい放題
ヒロイン二名の特攻が無ければ2発目で終わりだった
完璧親父が出たらどのように終焉を迎えるか分からんが、滅亡というレベルなら即座に見舞ってくれます
滅びの歌こと滅却の波動は歌う為にマクロスゼロの鳥の人の首を用いたが
OGならガンエデンの首を使うんだろうな・・・
ちなみにパイロットは元連邦の軍医、思えばスパロボのラスボスって体育会系より理数系の方が多い気がするな
>ニャル様いても驚かんよね。
1.痔 2.ヨウラン 3.エドワード=ハレルソン 4.イスペイル様 5.ユーゼス 6.ジャーダ
さぁ、誰だろうね・・・
7.全員
>>450 そいつらを封印する窮極の神剣にして神樹を扱いますからw
>>450 ナイアさんを確か4億体くらい封印してるぞw
ってか、最終的に邪神封印したのは九郎らしいし、なによりナイアさんが認める同格のものじゃん旧神はw
そういうことするからクトゥルーファンに叩かれたんだろうな
旧神とFSSのアマテラスは無敵じゃないと話がなりたたんのにw
(だからクロスさせずらい)
>FSSのアマテラスは無敵じゃないと話がなりたたんのに
第四次でブラッドテンプル倒されたことに怒ってるんだっけクリスはw
>>458 本当のクトゥルーファンはそんな事で怒ったりしない
なにしろ本家のラブクラフトが書いたクトゥルーはタンカーに激突されてフラついたり、
片田舎のショボくれた老人1人呪い殺すのがやっとの雑魚だから
ところでデモベといえば、ビアンSEEDの初期にレムリア等の艦首モジュールを製作してたが完成したのだろうか
>>461 言われて思い出して確認してきた
超圧縮重力場、レムリア・インパクト
超冷却機構、ハイパー・ボリア・ゼロドライブ
超空間歪曲機構、アトランティス・ストライク
がタマハガネ用
アカハガネの艦首モジュールは
超広域光波防御帯、エルダーサイン(サイズダウンの後イスマイルに搭載された)
多目的攻撃砲、シリウス・アロー
超弩級実体剣、艦式斬艦刀
タマハガネの特殊推進装置(多分実装済み)でクリティアスとティマイオス
さらにデュラクシール・レイに搭載されたクトゥグア
ついでにサイバスターのイタクァ
とりあえずスペースノア級を一通り映像で見てみたくなるなw
ディバイン SEED DESTINY 第03話 お客さんいらっしゃ〜い
トロヤステーションから飛び立つ三つの光を、ゼブは目敏く見つけ出した。緋色が二つ、銀色が一つ。星の海へと光の帆を広げて、人の夢を乗せて飛び立った船達だ。
「あーれがウェンドーロちゃんが言っていた恒星間航行船だな。あれだけのサイズでよくもまーあ、作ったーもんだ。けど残念、そーいつを壊すのが、お仕ー事っと」
シビリアンアストレイと交戦していたガロイカの幾分かの目標を、飛び立った三つの光に設定し、嗾ける。
「さて、どーこまで抵抗すーるかね?」
周辺に手回ししておいた足止め用の部隊や、情報工作は功を奏してDSSDの窮地に向かって来ている部隊が到着するのは事後だろう。もっとも、その中の一部隊だけ気になる連中がいるのが頭の痛い所だ。
「どーにもこいつーらが、こっちのロンド・ベルになりそーなんだよなー。やだねー、戦いたーくなーいねー」
念入りに配置したはずの足止め用の部隊が、冗談みたいに蹴散らされている。拾った命で、また途方もない貧乏くじを引いてしまった様な気がするのも、ゼブの気のせいばかりではあるまい。
ゲイオス=グルードではなく専用機であるオーグバリューであったなら、もっと肝を太くしていられるのだが。
*
加速状態から急旋回し、背後を取っていたガロイカのその背後へとベガリオンが踊りでた。ガロイカに搭載された高性能戦闘用人工知能を上回る技術は、プロジェクトTD専属パイロットの中でナンバー1の実力ならではだろう。
110mmGGキャノン――グラビティー・ガイダンスの名の通りに重力誘導された砲弾が、連続して火を噴き瞬く間にガロイカを穴だらけの鉄屑に変える。
右にも左にも上にも下にも前にも後ろにも、宇宙と言う無限の方向を持つ世界のあちらこちらから次々と現れるガロイカの機影が確認できてしまい、スレイは初の実戦に感じた確かな手ごたえを、あっという間に忘却した。
「ちっ、ちょこまかと動いて。シミュレーターの連合やザフトのMSよりもできるぞ、こいつら」
本来、プロジェクトTDによって生み出された機体はすべて非戦闘用なのだが、昨今の事情から自己防衛の為にもと武装が施されている。GGキャノンとGドライバーとその発展系や、CTM(戦術統合ミサイル)シリーズが主な武装となる。
ベガリオンに搭載されたCTM−09セイファートは対艦用ミサイルだから、CTM−07プロミネンスとCTM−05フレアディスがガロイカ相手には適当な選択肢だろう。
ベガリオンに搭載された兵装は全て実体系の兵装ばかりだ。この状況下ではステーションに戻って補給するのは難しい。
敵の数は数えただけでも二十や三十では下らないだろう。連合の駐留部隊や警備部隊も奮闘しているが、一対一どころか二対一でも怪しい戦いぶりだ。当てには出来まい。
「アイビス、落とされてはいないだろうな」
まだアルテリオンの信号は途絶えてはいない。ついでにスウェンの乗ったカリオンもだ。アイビスの事は色々と確執こそあったものの、その実力と最後まで残った根性は認めてはいるつもりだ。
とはいえ兄のように慕うフィリオが手がけたアルテリオンを預かっているのだから、無様な所を晒す事など断じて許すつもりはない。ついでにあの得体のしれない連合のパイロットもだ。
今でこそシートをベガリオンに置いているが、あのカリオンとてそれなりの愛着を持っている機体なのだ。塗装の剥げが一か所でもあったら文句どころでは済まさない。
スレイの心配と頭痛の種である二人は、スレイが思う以上に戦っていた。アルテリオンにはアイビス・ダグラスとコ・パイにツグミ・タカクラを乗せて、ドール・フィギュアとクルーズ・フィギュアへの可変機構を生かしてガロイカを一機ずつ確実に落としていた。
普段からフィリオの行為でスレイとアイビスの訓練風景や成績を見ていたスウェンが、アイビスのサポートを行った方がいいと判断した事も功を奏していた。
実機のカリオンに乗るのは初めてだったスウェンだが、前大戦という修羅場をくぐり抜けた経験は確かで、目の前の敵に集中してしまい別の敵に囲まれそうになるアイビスを的確にサポートしていた。
星の海を行く為の船に乗り、かつて幼いころに見た夢の残滓が胸の奥で疼いたが、スウェンはすでにその感情を心の深い場所へと沈めて、戦闘へと意識を切り替えていた。
初の実戦とあってぎこちない硬さを伴っていたアイビスだが、後部シートに座ったツグミからの激励もあって、アルテリオンという翼をうまく操っている。
ツグミとて実戦の恐怖を感じ取るのは初めての事だ。恐怖に震えもするし、アイビスを励ましているのだって、そうしていれば自分が感じている恐怖を紛らわせることができると言う意味もあった。
CTM−02スピキュールミサイルが、右上方から襲い来たガロイカを爆発させる。続けて正面に踊り込んできた別機が、特攻目的でアルテリオンの進路を塞いだ事をアイビスは咄嗟に理解する。
「私達の夢の邪魔はさせない!」
DFからCFへと変形し、一気に加速してガロイカの傍らをすれ違い急速なGに耐えながらその後方へとターンする。槍のように突き出したアルテリオンの砲身から、Gアクセルドライバーの加速した砲弾が、ガロイカの装甲へと吸い込まれる。
それとはまた別の爆発が、アルテリオンの上と下で発生した。一機のガロイカに集中している間に、別のガロイカに狙われていたようだ。集中力に関しては天与のものを持つが、多対一という状況の経験不足が、こう言う時に表に出てくる。
アルテリオンの傍らに紅色の流星が並ぶ。かつては白銀に染めて自分も駆っていたカリオンだ。今はあの、スウェンと言う銀髪の青年が乗っている筈だ。
「いい腕をしている。さっきのは気にするな、初めての実戦では仕方ない」
「え、あ、ありがとう」
意外なスウェンからの通信の内容に、アイビスは思わず礼を言ってしまった。この青年、褒めて育てるタイプらしい。スレイのベガリオンがクラスターミサイルでまとめて数機のガロイカを撃墜した影響で、若干の余裕が出来ているからだろう。
「このまま敵を掃討する。おれがフォローするから思った通りに動いてくれ」
「分かったよ」
「アイビス、スウェン中尉、南天から新たな敵影よ。気をつけて!」
「了解」
カリオンは核分裂炉を搭載したかつての愛機ストライクノワールと比べても、いっそ爽快なまでの速力や運動性の差をスウェンに体感させていた。プロジェクトTDの成果は驚くべきものだろう。だが同時にそれが懸念でもあった。
アルテリオンもベガリオンもカリオンも、オプションであるCTMシリーズを装備しただけでも優れた戦闘能力を発揮している。あの地球連合の軍部が、これだけのものを放ってはおかないだろう。
地球連合が動くとなれば、ザフトも見過ごしはいないだろうしプロジェクトTDに多大な出資をしているDCとてその事情は同じだ。DSSDも、もはや中立を維持する事は出来ないだろう。
「それ以前にこの場を生き残ってからか……」
スウェンには珍しく独り言を零した。
間断なく襲い来るガロイカの群れを相手に、時折スレイも交えた三機のコンビネーションで応戦し、ある程度アイビスやスレイ達も実戦に慣れて余裕が出てきた所で、二人に通信を入れてミューディーやシャムス達の支援行動に動く許可を求めた。
トロヤステーション駐留艦隊に回された装備はいかんせん二線級の代物ばかりだ。いくらシャムス達の技量が、今や連合最高レベルに名を連ねるほどになったとはいえこの敵の数と性能差では厳しいだろう。
スウェンはアイビス達の了解の返事を受けてから、カリオンの機首を奮闘しているネルソン級一隻とドレイク級二隻で構成された連合艦隊へと向けた。
艦隊の周囲でガロイカ相手に応戦しているダガーの数が少ない。一個中隊程が配備されていた筈だが、今はシャムスのバスターダガーとミューディーのデュエルダガーを加えて六機ほど。半数が撃墜されてしまったようだ。
落とされてしまった同僚たちの顔と記憶が一瞬で脳裏をよぎった。付き合いは長いと言えるほどのものではなかったが、悪い連中ではなかった。ぎり、と自分が噛み締めた奥歯の音にスウェンは気付かなかった。
シャムスのバスターダガーが巧みに構築した弾幕にためらいなく飛び込んでくるガロイカの群れが、二機三機と爆発して噴き上げた黒煙を割いて新たなガロイカがバスターダガーへと肉薄する。
ハリネズミかウニの様に尖ったパーツで構築されたガロイカの正面にある二門の砲身が、確かにバスターダガーを捉えた。
ガロイカのビームマシンガンなら、バスターダガーを穴だらけにするのはそう難しい事ではないだろう。シャムスは舌打ちし、バスターダガーに回避行動を取らせつつ肩の三連発のミサイルで撃墜を狙う。
白煙の尾を引いたミサイルはガロイカの撃ち始めたビームの前に全弾撃ち落とされたが、その隙にシャムスは350mmガンランチャーの照準内にガロイカを納め、引き金を引いた。
照準を定めるまでの速さは同様の処置を受けた御同輩の中でも抜きんでて速いという自負がある。はたせるかな、機体の中央に大穴をあけたガロイカがたちまち跡形もなく爆発する。
残弾と残っている友軍機の確認をしようと息を突いた所に、接近してくるDSSD所属の機体にシャムスは気づいた。スウェンが、良く見学に行っていた機体だ。カリオンとアルテリオン、それにベガリオンも一緒に付いてきたようだ。
「シャムス、ミューディー、無事か?」
「スウェン、無事なのね!」
「おいおい、なんでお前がその機体に乗っているんだよ。畑違いだろ」
「説明は後でする。これから援護に入る。カリオンで敵を攪乱する。その隙を逃すな」
「分かったわ」
「オッケー。そっちの二機も味方だな?」
「ああ」
言葉短く要点だけ告げて、スウェンはカリオンにT・ドットアレイで構築した光刃を形成させ、すれ違ったガロイカを真っ二つに切り裂いていた。四肢を持ち、重心移動などによって小回りの利くMSほどの機動性はないが、カリオンの速度は大きな武器になる。
プロジェクトTDの成果物である以上、カリオンらは宇宙船に分類されるのだろうが、この技術は、連合内で再度注目を浴びている次世代MAや戦艦への応用が上手く行けば、プラントに対して大きな技術的アドバンテージになるだろう。
とはいえそんな事は一兵士の考える事でもなければ意見出来る事でもない。三隻の艦船の方はいささか被弾しているようだが、まだ戦闘能力は維持している。やはりまとわりつく小うるさい蠅から片付けるべきだろう。
指令を出している機体が無いか先程からチェックし、DSSDや艦隊にも問い合わせてはいるが該当する敵影は見受けられず、目下は襲い来る敵を撃退する事しかできない。
カリオンの弾薬は残り半分ほど。戦闘慣れしているスウェンがなるべく節約を心がけてもこうなのだから、実戦に関しては初めてのアイビスやスレイの機体には残りの弾など望むべくもないだろう。
「スウェン中尉、アルテリオンの弾薬が底を尽きそうなんだ。一度補給に戻らないと」
「ベガリオンも同じだ。貴様はどうなんだ?」
「おれの方は残り56%と言った所だ。ステーションまで援護する。シャムス、ミューディー、少し離れるが、問題はあるか?」
「は、型落ちの量産機をあてがわれたからって、甞めんなよ? お前一人抜けたくらいでやられるほどやわじゃねえよ」
「むしろ、歯応えが足りないくらいよ。スウェンこそ、慣れない機体で困っているなら交替してあげてもいいのよ」
「そうか、なら任せるぞ」
決して状況が良いわけではないが、そういうシャムスとミューディーの言葉を信じて、スウェンはカリオンの機首を巡らせる。ガロイカの方も、増援のペースが落ちて来ているから、一斉に掛かってこられない限りは何とかシャムス達だけでも対応しきれるだろう。
そう頭で分かっていても不安の種は尽きないが、スウェンはカリオンでアイビス達を援護する事を殊に意識した。
トロヤステーションの指令所に戻ったフィリオはアイビスやスレイ達の活躍を見守りながら、矢継ぎ早に指示を出す局長達や保安部隊の隊長達、また地球連合で戦車隊の指揮を執っていたエドモンド・デュクロらと肩を並べていた。
デュクロは前大戦でカイ・キタムラやオルガ・サブナックらと共にカオシュンなどの攻略戦で肩を並べた戦車戦闘のエキスパートだ。無事戦後を迎え、現在はDSSDに身を置いている。
シビリアンアストレイや連合の部隊にチームTDの援護が加わり、状況は五分五分に近い所まで盛り返している。後は敵がどんな隠し札を持っているのか、持っていないのか。こちらの頼みの綱である周辺宙域からの救援はいつ到着するのかにかかっていた。
そんな中、姿の見えないセレーネにフィリオが気付いた。彼女なら最後の最後まで逃げださずに残っていそうなものだが、あるいは別の所にいるのか。そう訝しんだ時、とうのセレーネから連絡が入った。
長く綺麗な濃緑色の長髪を宇宙服に納めた姿に、フィリオのみならず局長達やデュクロ達は彼女が今いる場所がどこかを理解した。
閉鎖的な空間で見覚えのある場所がどこか、デュクロが驚きながら口にした。
「セレーネ、お前スターゲイザーのコックピットに居るのか!?」
スターゲイザーとは、プロジェクトTDと並びDSSDで推進されていた無人機による外宇宙探査用のMSとその制御をおこなうAIユニットの事だ。
DCから供与されたAI1のデータをもとに飛躍的にAIユニットの開発は進み、現在は無人探査用の教育を行う過程にある。
DCから供与されたAI1のデータをもとに飛躍的にAIユニットの開発は進み、現在は無人探査用の教育を行う過程にある。
AIユニットの収まる個所にオプションとして複座式の有人コックピットが換装できる。肝仁のAIユニットはまだあと五千時間ほどはMSの方のスターゲイザーに、パイロットが搭乗してAIスターゲイザーに学習を行わせる必要がある。
セレーネは、今そのAIユニットを引き抜いてコックピットを搭載したスターゲイザーに搭乗しているのだ。
「AIユニットは搬出しておいたから丁重に扱ってね。DCからの技術提供で大幅に学習が進んだけど、未完成なのだから」
「それも大事だが、出撃するつもりか!? スターゲイザーは探査用MSだぞ。それにいくらお前がコーディネイターだからってMSの操縦は」
「それなら大丈夫よ。ソルがいるもの」
「はは、ごめんね。エド」
「なっ」
申し訳なさそうに画面に顔をのぞかせたのは、短く切った金髪の少年だった。年の頃はまだ十代半ばを一つ二つ過ぎた程度だろう。デュクロの甥にあたるソル・リューネ・ランジュだ。セレーネ同様にコーディネイターでスターゲイザーの正パイロットも務めている。
ソルがスターゲイザーのパイロットを務め、セレーネがオペレーターとして座っているようだ。軍事用ではないためにスターゲイザーには特殊な技術による装備を施し、それらを活かし切れば軍の機体とも戦える可能性は、確かにある。
セレーネは一度言い出したら聞かない厄介な性質の持ち主だ。すでにこちらの許可を待たずに管制官達を説き伏せてスターゲイザーの出撃準備を整え終えているのだろう。今から手を回した所で止められまい。
こちらからできるのはすでに出撃している部隊に、スターゲイザーの事を伝える位だろう。カリオンを地球連合の兵士に貸し出したフィリオと言い、スターゲイザーで出撃しようとしているセレーネと言い、独断で動く人間が多い。
結局のところ止める事が出来ないという結論はすでに出ていて、だからこそ今のタイミングでセレーネも連絡してきたのだ。局長とデュクロが揃って頭を掻き毟るのを横目に、フィリオは苦笑してセレーネに話しかけた。
「セレーネ、ちょっといいかい」
「なに、フィリオ。貴方の事だから止めたりしないでしょう」
まあね、とフィリオは小さく笑った。この二人、DSSDの予算を二分するプロジェクトの筆頭同士という立場ながら、公私共に良き同僚、友人と言う関係にある。
そう言った関係ならいがみ合うのが普通だろうがそうなっていないのは、やはりフィリオの人徳の賜物だろうし、各勢力から供出された資金や多種の技術と相まって、DSSDが資金的にも技術的にも余裕があった事も大きいだろう。
「今からベガリオンとアルテリオンが補給に戻る。一緒に戻ってきたカリオンがいるから、スターゲイザーの出撃の援護をしてくれる。出撃後はカリオンと一緒に敵の撃退をお願いできるかい」
「分かったわ。シビリアンアストレイ用のビームガンを使うわよ。プラズマジェネレーターで動いているスターゲイザーなら、よっぽどの事が無い限りはエネルギー切れもないしね」
「もうすぐ救援の部隊も到着するから、あまり無理をしてはいけないよ。シリーズ77も、スターゲイザーもまだ、夢の階段へ足を伸ばしたばかりなのだから」
「その通りよ。私達は星の海へ飛び立ちたいんじゃない。飛び立つの。その為にDSSDとスターゲイザー、プロジェクトTDは存在しているのだから」
頼んだよ、と告げるフィリオに別れを告げてセレーナは指揮所との通信を切った。
もともとスターゲイザーにはNJCと核分裂炉の搭載が検討されていたが、核分裂炉以上の出力を持つプラズマジェネレーターのお陰で機体のエネルギーには計画当初の期待値よりも大幅に余裕ができている。
「それじゃあ、スターゲイザーを発進させます。いくよ、セレーネ」
「スターゲイザー発進します」
ベガリオンとアルテリオンの援護をしながら、ガロイカとのドッグファイトを演じていたスウェンに管制官からスターゲイザー発進の知らせが届いた。
すでにスレイとアイビスは補給に入っているから、スターゲイザーの発進口付近の敵をこちらに引きつければいいだろう。
「残弾は30%を切ったか。ソニックカッターをメインに使うしかないな」
プロジェクトTDと並び、DSSDで推進されている計画としてスウェンも興味を持っていたから、戦火乱れ舞う戦場に躍り出た白銀の機体が何と呼ばれているかすぐに分かった。
「スターゲイザー……。人が乗っているのか」
黄金に輝くラインが走る純白の装甲のボディにガンダムタイプと一部の人間が呼ぶ、デュアルアイとブレードアンテナを持った頭部だ。特徴的なのは背に負ったリング状のパーツだろう。あれが、スターゲイザーが星の海を旅する為の帆の役割を果たす。
「カリオン、聞こえるかしら? こちらスターゲイザーのセレーネ・マクグリフ」
「聞こえている。スウェン・カル・バヤンだ」
「これから敵を迎え撃ちます。そちらの状況は?」
「機体に損傷はない。ただ、アルテリオンとベガリオンが戻ったら補給に入らせてもらいたい。それまでは保たせる」
「了解したわ。ソル、エネルギー切れを気にしなくていいからって、無駄弾は撃たないでね」
「手厳しいね」
通信の向こうで、セレーネと同席しているソルの苦笑の声がかすかに聞こえた。あまり接点はないが、スウェンもセレーネの事なら知っている。
地球連合の駐留艦隊所属の人間と言う事で、DSSDの人間からは目の敵にされてはいたが、フィリオ同様に宇宙を目指す存在であるスターゲイザーの開発計画の主要人物と言う事で、少なからずスウェンの興味を引いていたからだ。
スターゲイザーに向けていた視線を動かし、接近してきたガロイカへと向ける。スターゲイザーの手にしているシビリアンアストレイ用のビームガンは低出力だから、一撃ではガロイカを撃墜できない。
運動性や機動性はともかく、火力をスターゲイザーに求めるのは酷だろう。あまり長引く前に救援が来てくれる事を切に願った方がよさそうだ。
スウェンのカリオンが先行し、横一列に並んだ四機のガロイカの左右の両端にGドライバーの狙いを着ける。右端の機体はかわしたが、左端の機体は回避が間に合わずに直撃を受け、横を飛んでいた味方を巻き込みながら爆発する。
味方の撃墜をまるで意に破壊さず、ガロイカが同時にカリオンめがけてビームマシンガンを乱射してくる。まるで生物の様に滑らかな動きでその弾幕をかわしつつ、発生させたソニックカッターで、衝突寸前まで肉薄したガロイカを横一文字に切り裂く。
機体を旋回させて残る一機を片付けようとした時、スターゲイザーが放ったビームが次々と着弾して、三発目で装甲を貫いた。戦闘のプロではないだろうが、そこそこにできた射撃だ。
「マクグリフ博士、ソル、このまま周囲の敵を迎え撃つ」
「了解」
スウェンに答えたのはソルだ。三発当ててようやく撃墜できたガロイカ相手に、ビームガン以外の火器が欲しいと、痛切にソルは思った。
実を言えばビームガン以外にもスターゲイザーには武器となり得るものはある。とはいえいささかエネルギーの消耗が激しいのが欠点だ。プラズマジェネレーターとはいえ多用すればどのような機能低下をもたらすか分からない。
生き残っている連合の部隊とシビリアンアストレイの部隊も、破壊されたステーションの残骸を盾にしながら、こちら側へと集結しはじめて残った戦力の集合を図っている。
一方。ガロイカが結構な数が落とされて、ゼブはあららと意外な苦戦に小さく驚いていた。ここに配備された部隊は旧式のものばかりという話だったし、人員も軍部の主流から外れた左遷組だから大したことはないと踏んだのだが、これは予想を外れた。
確かに機体は旧式なのだが、数人すこぶる腕の立つパイロットが混じっていたし出撃してきたシリーズ77の機体が高い戦闘能力を発揮している。
面倒なことだが自分が出張るしかないだろう。幸か不幸か目的としていたシリーズ77とスターゲイザーが出撃している。鹵獲する手間はかかるが、やるしかあるまい。
「や〜れやれ」
「っ、スターゲイザー、回避しろ」
「なんだ、指揮官機?」
人型に近いシルエットの新しい敵影からの砲撃を、スウェンからの警告で気付いてスターゲイザーが回避する。言うまでもないが、ゼブの駆るゲイオス=グルードだ。両肩に装備したダブルキャノンの砲撃だが、初撃は外すつもりだったのだろう。
手に持ったデュアルレーザーソードの切っ先をスターゲイザーに向けている。ゲイオス=グルードがまるで挑発しているかのようだ。
先ほどのガロイカの性能から考えても、この指揮官機らしい機体がどれほどの性能を持っているか判断が難しいと、スウェンは判断した。もっとも強敵である事は間違いあるまい。
ベガリオンとアルテリオンの補給が間もなく終わるだろうが、カリオンの方がGGキャノンとGドライバーがわずかにしか残っていない。あの指揮官機相手に補給に戻る余裕があるかどうか。
スウェンが判断に迷う間に、スターゲイザーがビームガンで牽制しながら仕掛けた。慎重なソルがセレーネに押し切られたと言った所か。ゲイオス=グルードは狙いの甘いビームガンを簡単にかわし、ランチャーミサイルで反撃を放つ。
ゲイオス=グルードの装甲ならビームガン程度なら十発や二十発当たった所で大したことはない。とはいえ、運動性や機動性ならカリオンやスターゲイザーはゲイオス=グルードを上回る。
ちょこまか動かれると面倒だから一撃で戦闘不能が翼を折るべきだ。ランチャーミサイルの間隙を縫う様にしてくぐりぬけたスターゲイザーに狙いを定め、ドライバーキャノンを直撃を避けた狙いで撃った。
砲口から高出力のドライバーキャノンが放たれるよりも早く、スウェンが撃ったGドライバーの超高加速弾頭がゲイオス=グルードに着弾する。ゼブは揺らいだ機体のバランスを取り直し、続けざまに撃たれたGGキャノンをかわした。
スウェンはカリオンに残っていたマルチトレースミサイルとホーミングミサイルを全弾吐きだして、ゲイオス=グルードをぐるりと囲い込む。
機体の向きを前方に据えたまま後方にスラスターを噴射して退きながら、ゲイオス=グルードがランチャーミサイルと、ダブルキャノンで追いすがるカリオンのミサイル群を撃ち落とす。
その隙を突いて、その背後に背に負ったリングを輝かせるスターゲイザーの姿があった。背に負ったリングに発生させた特殊な膜で高速で吹き荒れる太陽風を、特殊なシステムで変換して推力をソーラーセイルだ。
同時にスターゲイザーが幾重にも光の輪をその機体に纏い始めている。
「ヴォーワチュール・リュミーエール(VL)の副産物ってー奴ねえ。探査用MSが、そんな厄介なーもん装備ーしてどーすんだーか」
自機の背後に回り込むスターゲイザーの動きを見逃さず気付いていたゼブは振り向きざまにダブルキャノンをスターゲイザーへと見舞った。最悪、機体の残骸からでもデータは取れる。破壊も辞せずと判断を変えたのだ。
機体の腰部を貫く二条のビームは、展開したVLによって阻まれた。淡やかなVLの光がスターゲイザーの純白の装甲の表面で輝き、ビームの直撃を阻んだのだ。
ダブルキャノンを弾いたスターゲイザーはそのまま、光輪を放ちながら高速でゲイオス=グルードへと向かってくる。放たれる光の輪は凄まじい切断力を発揮して、浮遊していたガロイカやダガー、ステーションの残骸を真っ二つに切り裂いてゆく。
ゲイオス=グルードを輪切りにせんと迫る光の輪を、ゼブはほとんどをかわし、かわし切れぬいくつかはデュアルレーザーソードでことごとく受けて見せた。
「あの機体のパイロット、相当やるわね」
「でも、あの機体が指揮官機の筈だ。あいつさえ」
「わーるいねえ。こっちも手ー加減できーないんだわ」
VL発動の副産物である光の輪を一撃も受けずにかわし、受けるのはゲイオス=グルードの性能もさることながら、ゼブの力量があってこそだろう。
スターゲイザーと激しく交差するゲイオス=グルードの隙を突いて、スウェンがソニックカッターでまさしく彗星の如く突きかかるが、それさえもVLの光輪と同時に捌いて見せた。
スウェンとセレーネ達をゼブが引き受けた事で、残っていたDSSDの警備部隊や連合の艦隊は決め手を欠いて襲い来るガロイカの前に押され始めている。なんとかミューディーとシャムスが奮闘しているが、限界が訪れるのはそう遠い話ではないのは明らかだった。
スウェンが冷静に状況を分析し、こちらの分が悪いと判断した時だった。補給を終えたベガリオンとアルテリオンが勢いよく宇宙へと飛び出し、ゼブの援護に回ってきたガロイカをミサイルの連射でまとめて撃墜するのと、救援の部隊が間に合ったのは。
VLの光の輪をデュアルレーザーソードで受けていたゼブはタイムリミットに間に合わなかった事に気づき、大きく天を仰いだ。愛きょうのある垂れ目の顔に、心底参ったと言う色が浮かぶ。
「いーちばん来てほしくなーい連中が来たよ。まいったねえ、こりゃ」
ガロイカの群れを蹴散らしながら、急速で接近してくるのはDC特殊任務部隊クライ・ウルブズに間違いなかった。かつてスウェンやシャムス、ミューディーがω特務艦隊として幾度となく死闘を繰り広げ、ヤキン・ドゥーエ攻防戦では最終的に共闘した相手だった。
敵として何度と戦った事があるだけに、その実力を骨身にしみて理解しているスウェン達にしてみれば、敵対勢力ではあるものの救援に来てくれた相手と考えれば奇妙な安堵を覚えた。
ここに来るまで二十機近いガロイカを蜘蛛の子を散らすよう叩き潰してきたクライ・ウルブズは、すでに全艦載機が出撃して敵の掃討を行っている。
ティエリアのガンダムヴァーチェ、ロックオン・ストラトスのアヘッドスナイパーカスタム、刹那のサキガケ、アウルとステラのエルアインス、スティングのアカツキ、デンゼル、トビー、セツコのバルゴラに、アルベロのビルトシュバイン。
そして、シンの飛鳥インパルスだ。前大戦時に多用していた艦載モジュール・ムゲンシンボを装備したタマハガネが、衝撃砲や各所に搭載したレーザー砲塔、対空ミサイルを雨あられの如く撃ちながら、戦場のど真ん中を力づくで突破してきている。
新兵もいるが、残りの半数は前大戦を生き抜いた歴戦の猛者ぞろいとあって、連合駐留艦隊やDSSDの警備部隊とは一線を画す動きを見せている。その新兵とて本当にそうと言えるのはセツコだけだから、実質エースのみと言っていい部隊構成だ。
これはやはり相手が悪いかと、ゼブは判断して作戦の放棄と撤退を決断した。残ったガロイカとゲイオス=グルードで相手をするには、いささか厳しい敵戦力と言える。それでもまだ、相手に特機がいないだけ救いはあるが、慎重を期する事にした。
ガロイカとて生産コストと性能が高いレベルでつり合ったかなり優秀な兵器なのだが、クライ・ウルブズの連中を相手にするには、不安な戦力だ。
「かぁ〜、おまけにαとβまで戻ってきちゃったーねー。こりゃ逃ーげーるが勝ちだな」
ダブルキャノンとドライバーキャノンを連射してスターゲイザーとの距離を取り、残っていたガロイカにクライ・ウルブズの足止めを命じる。近海でのザフトや連合艦隊の足止めはうまく機能し、後三十分はこちらに来ないというのに頭抜けた突破力だ。
ゼブが死に、こちら側の世界に来る事になった最大の理由であるあのロンド・ベルの、こちら版があのDCの連中になりそうだ。
「早いうちに芽を摘ーんでおくに限るんだーけど、今はしゃーない、しゃーない」
撤退する動きを見せたゲイオス=グルードに気づいたのは、三機で小隊を組んでレイ・ピストルで弾幕を張っていたグローリー・スターのセツコだった。
アメノミハシラでシンと刹那の模擬戦を見学している最中に鳴り響いた警報は、DSSDからの救難信号をキャッチした為に鳴らされたものだったのだ。
それから最大戦速でトロヤステーションを目指し、妨害するアンノウンを薙ぎ払いながら辿り着いたと言うわけだ。
「チーフ、中尉、敵が退いていきます」
「おれ達が到着して形勢不利と見たか」
デンゼルは、初の実戦となるセツコをカバーしながら戦ってい自分達の位置とバルゴラの足では撤退の動きを見せ始めたゲイオス=グルードには追いつけそうにないと、素早く判断を下した。
アルテリオンやベガリオン、スターゲイザーが逃がしてなるものかと、斃された味方の仇を討つべく猛追するが、絶妙なタイミングで残っていたガロイカが進路を阻んでいた。引き際と引き方をよく心得た指揮官であると分かる。
「追いつけそうなのは、シンのインパルスくらいか」
トビーがそう言った時には既に、シンはゲイオス=グルードめがけて機体を動かしていた。アルベロから取り逃がすなと指示を受けたのと自分で判断を下したのは同時だった。
シンの飛鳥インパルスの足を止めるべく動くガロイカが、長距離からの精密な狙撃で撃ち抜かれる。
ロックオン用に調整されたアヘッドからの狙撃によるものだ。特別に誂られたGNオクスタンスナイパーライフルから、GN粒子を圧縮した高密度弾頭が一発一殺の無慈悲さでガロイカを撃ち落とす。
「ハロ、回避は任せるぞ」
「マカセトケ、マカセトケ」
「ロックオン・ストラトス、狙い撃つぜ」
マティアスからロックオンの要望を可能な限り叶えて欲しいと言う要請があったため、DCで調整されたアヘッドSCのコックピットには、かつてロックオンが搭乗していたガンダムデュナメス同様のシステムが搭載されている。
狙撃時には、実際のライフルのスコープに似たモジュールが使用され狙撃を得意とするロックオンが生身で撃つのと同じ感覚で引き金を引く事が出来る。
さらにもう一つ、先程ロックオンに受け答えしていた丸いオレンジ色のAIロボットだ。人間の目の様なREDを二つ備え、妙に愛嬌がある。とあるコーディネイターの少年が婚約者に贈ったペットロボットをサイズアップしたもの、ハロという。
ただ愛嬌があって簡単な会話機能を持った程度のペットロボではない。ロックオンが回避を任せると言ったように、回避・防御に専念すればロックオンが機体を操縦するのと同程度の能力を発揮する。
ロックオンがDCに要求したのはかつての相棒の再現だった。見事DCがロックオンの要求通りにハロを完成させて見せた。別世界で市販されていたハロのデータがあったことも幸いだった。
ロックオンの右手前の位置に収まったハロに回避行動を任せ狙撃に専念したロックオンは、次々と高精度の狙撃で一機ずつガロイカの数を減らして見せる。
「あーらあ、こーれはやばーいかなー」
本当にそう思っているのか怪しい調子でゼブは呟く。後方を映すカメラには猛追するインパルスの姿が映っていた。なんというか勢いのよさそうな機体だ。パイロットはさぞ血の気が有り余っている事だろう。
インパルスの機影だけではない。彼方から巨大な光の奔流がゲイオス=グルードめがけて迸ってくる。直撃すれば、ただでは済むまい。尋常ではない高エネルギーの塊だ。
「おわっと!? かー、やってくれるぜ」
「外したか。デュミナスのデータに無い機体……排除させてもらう」
圧縮粒子を開放した最大出力のGNバズーカの砲撃を回避したゲイオス=グルードに、隠さぬ敵意を向けてティエリアは穏便ならざる宣言を告げていた。
実の所、ゲイオス=グルードをはじめとした所謂『ゲスト』『インスペクター』と呼ばれる勢力の機体のほとんどのデータは、DCには存在する。
それをティエリアが知らないのは、デュミナスのハッキング能力を持ってしても突破できない魔術を織り交ぜた、世界で唯一の科学・魔術混合のセキュリティのお陰だ。
シュウ・シラカワやテューディ=ラスム=アンドーらの協力があって構築したオカルト混じりの技術は、DCに様々な面でアドバンテージを与えていた。
ゼブがヴァーチェの砲撃を回避して崩した機体のバランスを立て直した時、驚くべき事に目前にインパルスの姿があった。時間にしてわずか一瞬の間に見せた動きに、ゼブが思わず目を見開く。
刹那との模擬戦で機体の装甲越しに相手の呼吸・意識・気配の揺らぎを見抜き感じ取る感覚が、戻りつつあった。ゼブの意識のいわば『死角』を突き飛鳥インパルスの最大加速で突っ込んでいた。
左腰の鞘より抜き放つ獅子王の太刀。星の光を刀身に映して煌めかせ、血が凍るほどに冷たく妖しいまでに美しく。ゼブの背筋が凍えた。心臓を死人の様に冷たい何かに握り締められる感覚が体の内側に広がる。
「ちいっ!?」
シンの呼気と共に鯉口を切った獅子王の太刀が加速する。言葉にならぬ気合いの叫びと共に、白銀の太刀は抜き放たれた。
「――っ!!!」
シンは前大戦で負った傷が癒えてから初めてと言っていい会心の刃応えに、内心で小さく喝采を挙げる。振るった獅子王の刃は、とっさにゼブが打ち合せたデュアルレーザーソードを真っ二つに切り裂いていた。
「ぜあああっ!!」
振り抜いた刃を返し切っ先が小さな弧を描く。シシオウブレードの柄尻でゲイオス=グルードの左肩のダブルキャノンの砲身との接合部を正確に強打し破損させ、右肘を支点に腕を懐へ引く動作でシシオウブレードを滑らせる。
刃のみならず柄尻や鍔を使った打撃を組みこむのは、剣術なら大抵の流派でも見られるものだ。滑らせた刃が打撃の衝撃に揺らぐゲイオス=グルードの頭部を、丁度カメラの位置で横に真っ二つに切り裂く。
ゲイオス=グルードの重装甲をものともしない太刀筋の鋭さは、シンの体の奥にまで沁み込んだ剣士としての性が蘇りつつある事を意味している。一瞬でサブカメラに切り替わった事がどういう事を意味しているか悟り、ゼブは悪い冗談の様だと思った。
真ゲッターのゲッタートマホークや、ダイターン3のダイターンザンバーなどはともかく、たかがMSサイズの機体に斬られるとは、これは流石に予想だにしなかった。
即座にゲイオス=グルードの機体を動かして距離を取りつつ、生きている火器をインパルスに照準し一斉に放つ。
斬撃の後にできる一瞬の隙。かつてならそれを補う直感が働いたが、その働きがコンマ百分の一秒遅れた。飛鳥シルエットの左主翼の先端をドライバーキャノンがかすめ、わずかに変化した機体バランスを立て直す一瞬に、続けざまに砲火が集中する。
数秒生まれた隙に開いた距離を埋められぬと悟り、シンは苛立ちを噛み殺す。のけぞるような姿勢のインパルスの姿勢を立て直す間に、敵の指揮官機は構わず背を見せて逃げに入っている。
その背を狙ってロックオンとティエリア、それにデンゼルが各々の機体に搭載された遠距離攻撃用の武装のトリガーを引き続けるが、背中に目でもある様に――カメラはあるが――見事にかわして見せている。
機体性能もそうだが、パイロットも高い技量の持ち主である事はその事実だけでも分かる。シン達の新しい仲間であるロックオンとティエリアの腕前は確かなものなのだから。
「敵ながら潔いと言うかなんというか……」
呆れた様な感心した様なシンの呟きは、静寂を取り戻した宇宙に吸い込まれて消えた。
つづく。
序盤という事もありゼブはあっさりと撤退です。艦首モジュールもその内日の目は見ることでしょう。では、また次回で。おやすみなさい。
総帥GJ!!
相棒ハロをロックオンが入手とか色々感想あったがテューディ=ラスム=アンドーの一文に全部持ってかれたぜ!
…まさかマサキもうお父さんに…?
GJ!
もう入籍しとんかーいw
しかし・・・ウェンドロも案の定こっちに来たか
四天王はどうするのかしら、ここに来て敵に回るのも切ないなぁ
ん?そういやゲストは他にも・・・ゼゼー・・・なんだっけ
お前らそういうなよ、テューディさんは行き遅れ三十路寸前だったんだぞw
こっちの世界にもリューネがいる可能性もあるんだし、そりゃ婚期もあせるだろwww
660氏は僅かな文で巨大な爆弾を置いていくなw
一体最初はどっちから迫ったのかwktk
おつでしたー。
スタゲはもう打ち上がってVLが実働レベルに入ってるのかー。早いなぁ。
エドしかりシャムス&ミューディーしかり、マティアスとマティスしかり、原作みたいな死にかたは無いかなこれは。
というか、もともとがザフト資本(現在は中立)でコーディネーターの多いDSSDで幻痛組がやってけてるってよく考えたらすげぇ。
丸くなったもんだ。キタムラ少佐の教育の賜物ですか?
作者さん、乙でしたー。
確かにティーディが当たり前のように「アンドー」の姓を名乗っているところには驚きました。……今のところ同一人物の出会いらしきものは見当たらないので、こちらにビアンが居ないと思われる以上はリューネは出てこないんでしょうね。
こっちにリューネがいた場合
「DC総帥、17歳の少女をストーカー」というスキャンダルが
>>476 DSSDは連合傘下組織ですよ、公式設定が世界観破壊してるんじゃ?って不安になるくらいコーディ優遇してるんだよな連合
スペルが同じだったらソル・"リューネ"・ランジュを見て複雑な顔するんじゃないかな?
総帥乙です
インパでゲイオス・グルードを斬り裂くとはマジパネェなシン
しかしゼブにはまだオーグバリューが控えてるし、何より恐ろしいのはあの恐怖の親衛隊兵や強化兵共が、これや更に上位のライグ・ゲイオスに乗ってゾロゾロ出てくることだ……
ウェンドロもいるってことはバイオノイド兵を幾らでも増やせるだろうし、ゾヴォーグ連中だけでも地球がピンチだな
>>457 旧神といえばウルトラマンだよね。
さぁ、スパヒロからハヤタ隊員とダン隊員を召喚してガタノソアをボコる作業を
>>482 馬鹿野郎! 旧神のウルトラマンは未来永劫ただ一人、
グ リ ッ タ ー テ ィ ガ だ け だ !
>>483 ティガは旧支配者側から旧神にいたった珍しい例だよなー
他にそんなヤツはどっかの魔を断つ剣二号しかいないし。
ビアンSEED世界にリューネ(CE生まれ)がいたとしたら姓は違うだろうし
OG世界のリューネみたいなものすごい訓練とか受けてないだろうから普通の女の子なんだろうな
そういやバリー・ホーは登場してないがオミットされたのかな?いたらシンとか鍛えてもらえそうだが
>>479 いや、中立でしょ。
書籍とかで設定読んでもそうだし、スタゲ作中でも3話で言ってるし、ビアンSEEDシリーズでも前回の話でちゃんと中立って触れてるし。
とりあえず連合傘下て話は聞いたことがないですが。
>>485 火の魔装機神の搭乗かも、じゃなかったですかね。
随分前に誰かが提案してて、総帥さんもわりと“有り”っぽい意向だったみたいだけど。
正史だと東アジア戦で死んでしまうひとなので、実現してほしいとも思いますが。
バリー死んでたのか……MSのカメラアイ蹴り壊す無茶苦茶な人ではあったが。
まぁどっかで修羅連中と出会って一緒に鍛えてるのかもしれないぞ。
あ、いや、デスティニー開幕時点ではまだ死んでないっすよ?
ユニウス落ちたよりも後の、ライゴウガンダム(旧名東アジアガンダム)とか、アストレイグリーンフレームとか出てくる話。
デスティニー中期あたりだとは思いますが。
SEEDのころはきちんと何月何日って日付設定があったのにデスティニーになって割愛されちゃったのよね…。
>>486 そんなのただの建前。
DSSDは連合からの天下り機関ですが?
総帥、今回も楽しませていただきました〜個人的にスパロボ最強勢力だと思っている
ゲスト参戦!(ゼゼさん以外)わくわくです。
親衛隊とか強化兵とか…あ〜悪夢が蘇るオーラ斬りやらファンネルやらバシバシ
切り払い食らったな〜「踏み込みが足りん」とかあ〜やってられないんだZEってなった
な〜;;でも一番ショックだったのはオージェのシールド防御とビームコートの併用で
ヴェスバーを止められた事;;
Fは基本的にゲストとの戦い終わったら殆ど消化試合になるからな……
あいつら強すぎ
総帥キタw
飛鳥シルエットおっそろしいな…ゲイオスグルードが紙っぺらのようだ
つか先週と今日の電王編、電王編というよりもほぼ電王www
超電王ともども腹筋が崩壊するかとオモタ
>>489 連合傘下の中立組織なんだよ
たとえば日本赤十字、日本国に属してる中立組織だろあんな感じ
UCのアーリージブラルタルも連邦政府傘下の宇宙引越し公社って完全中立組織だったな
DSSDに関してはあんまり難しく考えすぎない方が良いんじゃね?
とりあえずビアンSEEDではプラント資本だが地球連合の天下り機関の側面も持つし、プラント、連合どちらにも技術提供は行われてるって書かれてるし
原作設定に突っ込みどころ=穴がある=ゆとりがある、つまり二次創作で扱いやすいと考えれば良いんだ
ディバイン SEED DESTINY 第04話 汝ら、何処より来りし異邦人か
指揮官機の撤退と同時にガロイカも全て撤退するか、鹵獲の危険を恐れて自爆している。敵影の消えたトロヤステーションで生き残ったシビリアンアストレイ隊や地球連合駐留艦隊、またクライ・ウルブズは戦闘態勢から救出作業へと移行していた。
人類の新たなフロンティアの最前線たるトロヤステーションは無残な破壊痕を晒し、撃墜されたMSの残骸が漂う中を縫う様にして動くDCの機体を眺めながら、タマハガネの艦橋でエペソ・ジュデッカ・ゴッツォ大佐は思案の海に沈んでいた。
エペソが生まれた新西暦世界で銀河列強に名を連ねたある勢力の使用していた兵器が、件のガロイカやゲイオス=グルードだった。
αナンバーズとゼ・バルマリィ帝国などの戦争の際に彼らの介入はなかったが、その後に戦い死したものかそれとも別世界での彼らか、あるいはこのコズミック・イラ世界の彼らなのか。
いずれにせよゼ・バルマリィ帝国と対等に渡り合う戦力と勢力、技術を持った高度の技術水準を持った星間文明だ。宇宙でも随一の闘争本能に恵まれた地球人ほど、技術の軍事応用の発想が豊かではない事がせめてもの救いだが。
最も厄介なのがこちらの世界の彼らである事だろう。別世界の敗残者であるならさほど戦力や人員に余裕はあるまいが、こちら側の彼らであるなら本星や支配星域からの潤沢な補給もあるだろう。
いずれにせよ、エペソがビアンらと協議して秘匿していたデータを開示し、対抗策を練っておくほかあるまい。戦闘データを見る限り、エペソが知っているものと大差ないのは不幸中の幸いだろうか。
「艦長」
「む、なにか」
いささか思案の海に深く潜り過ぎていたらしい。頬杖を突いていた姿勢から顔を上げ、エペソが声をかけて来たオペレーターに目を向けた。
「連合艦隊からですが……」
「救助作業が終了次第、退くと伝えておけ。それと貴官らの奮闘に敬意を、とな。作業の方はどうか」
「救助作業の七割は終了しています。各機を帰投させますか?」
「ふむ、それで構うまい。各機を収容し終えたのち、アメノミハシラに戻る。DSSDの処遇はギナやマイヤーらが決めようしな」
エペソの瞳がステーションに戻るアルテリオンやベガリオンらを一瞬だけ見つめ、すぐに離された。DSSDの平穏も今日でおしまいだろう。
DSSDは元はプラント資本の中立組織であったが、現在は連合の将官などの天下り先としての一面も併せ持ち、地球連合よりの中立組織ともいえる。
だが、これまた面倒な事に地球連合からすればコーディネイターを多数抱える危険な要素を孕んだ組織であり、プラントからすれば地球連合よりの危うい中立の組織となり、連合・プラントの双方から信用され得ぬ組織なのである。
ここに最近になってDCも加わったものだから、DSSDは名目さえあれば各勢力が自分達のモノへしようと、機会を虎視眈々と狙われているありさまだ。今回の未知の勢力による襲撃という事態は、恰好の機会となるだろう。
もはやDSSDの自立は叶うまい。むろんエペソは、DCがどのようにしてDSSDを吸収するか、その方法を頭の片隅で考えていた。
もっとも、立場上はあくまで特殊部隊の司令どまりなので、具体的な方策はアメノミハシラに常駐しているギナ副総帥やマイヤー宇宙軍総司令に任せればいい。
ある意味気楽な立場に、エペソはさてどうしたものかと小さく息を吐きながらシートに背を預けて、目を瞑った。
長い黒髪を収めたヘルメットを外し、少し蒸れた空気から解放されて、セツコは深く息を吸った。起立型メンテナンスベッドに収まり佇立しているバルゴラ三号機のコックピットの中だ。
バルゴラ胸部のハッチから水中を泳ぐようにして躍り出て、ふわりと風に煽られた天女の羽衣に揺らぐ黒髪を手で押さえながら、背後のバルゴラを仰ぎ見る。
珠の粒になった汗が浮かぶのを見て、セツコは自分の鼓動が少し激しくなっている事を自覚した。どっと溢れだした汗が全身を不快に覆ってゆく。
初めての実戦の緊張、無人機相手とはいえこちらの命が奪われるかもしれない恐怖の連続。モニターにかすかに映った光が当たればそれが自分の死につながると言う戦慄。
今さらになって渇きを覚える喉や震えを覚えはじめる膝に、セツコはようやく自分が生き残った事を自覚した。
「少尉、どうした?」
「チーフ、中尉」
DC製のパイロットスーツに身を包んだデンゼルとトビーだ。デンゼルは元の世界で一年戦争を戦い抜いたベテランだし、トビーもDrヘルの機械獣軍団などを相手に戦った経験があるから、肩に要らぬ力が入っている様子はない。
「なんでも……。いえ、すこし緊張して」
「無理もないな。とはいえ、良く動けていたと思うぞ。前評判通り丁寧な操縦技術だ。あれなら安心して傍で見ていられるからな」
「そうそう、セツコ次第でおれやチーフをあっという間に追い抜くかもしれないぜ」
「そんな、チーフや中尉に追いつくなんて、とても……」
遠慮がちというか自分に対して自信を持てない様子のセツコの肩を軽く叩いて労い、デンゼルは先に行くぞ、と床を蹴った。
「とりあえず今日はお疲れさん。甘いものでも食って休みな。アメノミハシラに戻ったらまたすぐプラントまで船旅だからな」
「はい」
去ってゆくトビーとデンゼルを見送って、セツコはもう一度バルゴラを見上げた。これから長いこと戦いの時を共にする相棒は、何も語らず沈黙のままそこに在るだけ。
「セツコさん?」
「きゃっ」
「きゃって、すいません。驚かせちゃいました?」
「シン君。あ、お疲れ様。さっきはカバーしてくれてありがとう」
「いいですよ。それにおれがいなくてもデンゼル大尉やトビー中尉が助けてくれましたよ」
飛鳥インパルスから降りたシンだ。こちらもまた前大戦を戦い抜いた経験からこれっぽっちも緊張した様子はなかった。むしろ赤い瞳にはセツコを気遣う色が浮かんでいる。
セツコが礼を言ったのはトロヤステーションに到着するまでの間の戦闘で、一度シンがセツコのカバーに入ったからだ。
現在のクライ・ウルブズの面子になってから初の戦闘であり、同時に倍近い数の敵との戦いでもあったために、いささか各員の連携に難がありそのツケがセツコに回ってしまったのだ。
セツコとシンは二人肩を並べて歩き出した。セツコとしては年下の(背も低い)シンに励まされるのが、すこし恥ずかしかったが実際一年程とはいえ修羅場をくぐったシンの胆力は、今のセツコには持ち得ないものだ。
「セツコさんやっぱり緊張しました? 初めての戦いの時はおれもそうでしたよ。頭に血が昇ってわけわかんなくて、周りの皆に助けてもらわなかったら今こうしていられなかったでしょうね」
「シン君は、オノゴロでの戦いが初めて?」
「はい。もう二年前になりますかね。本当、よく生き残ったと思います。たぶん、今日は神経が高ぶって眠れないですよ。おれ、そうでしたから」
「そっか。シン君の方が本当に先輩だね。助けてもらったし、アドバイスももらっているし」
「ああ、いや、そんな気にしないでもらった方がおれもやりやすいですよ。それに仲間なんですから助けるのは当たり前ですよ」
「ふふ、ありがとう」
「あはは」
微笑むセツコに、シンは頬をうっすらと赤くして照れを隠す為に頬を掻いた。セツコみたいなタイプと接するのは実に希少な経験で、シンには対処する為の経験値が圧倒的に足りなかった。
ステラの様なこちらが保護者として接するような経験ならあるのだが、相手が年上の美人のお姉さん、しかし軍属としての経歴ではこちらの方が先輩であったりと、開き直ればともかく妙な遠慮が残っているシンには、いまいちセツコとの接し方が掴めずにいた。
それぞれ着替えの為に分かれ、着替え終えてなんとなくセツコが出てくるのを待っていると、セツコの左右にちいちゃいのとわんこみたいなのがセットになって出てきた。
「ステラにデスピニス?」
ステラはシンの姿を見つけてにぱっとひまわりみたいに笑い、デスピニスはおずおずと頭を下げて会釈した。着替えている時にぱったり出くわしたらしい。
にこにこと笑うステラと、ちょっとくすぐったいような困ったような顔のセツコを見比べて、シンはステラがセツコと手を繋いでいるのに気づいた。
「懐かれました?」
「そうみたい」
ステラはミナやカーラ、レオナによく懐いていたし、セツコの様に優しくて包容力のあるタイプの女性に懐くのは、深く考えなくても当たり前のことかもしれない。
セツコは、突然出来た大きな妹というか可愛い犬みたいなステラにちょっと戸惑っているようだ。というか傍らのデスピニスといいとても軍艦の中とは思えぬ光景だ。シンもこんな空気には慣れたが、時折ここって軍隊だよなあ、と疑問には思うのである。
シンからしてこれなのだから、正規の教育を受け、ここの空気に初めて触れるセツコが戸惑うのも無理はない。
このまま立っていても仕方が無いので、四人そろって歩き始めた。前大戦終了後に大幅な改修が加えられたタマハガネの艦内には、頭がおかしいんじゃないのかと一部の者達から囁かれる施設が増設されていた。
所謂コンビニエンスストアである。一般の店舗と変わらぬ品揃えで長期任務に就くことの多い乗員たちの精神衛生を、考慮したものらしい。オーブ諸島で最大手のコンビニエンスチェーン店『ボン・マルチェ』の店舗スペースはおよそ100uほど。
結構なスペースだが、もともと恒星間脱出船としての機能も持っていたスペースノア級は、多少のスペースの増設はさして難しい事ではなかった。
店員は二人でDCの兵士が担当している。まだ若い二人で、シンと同い年か少し下くらいの少年少女兵だ。軍服の上に名札を付けたエプロン姿の少年に、シンが挨拶をした。
茶色の髪をおでこが覗くようにした髪型で、ちょっと間抜けっぽいと言うか、まあ愛きょうのある顔立ちの男の子だ。シンにとっては初対面の時から初めて会った気がしない相手で、今では仲のいい友人だ。
確認してはいないが、この年で兵役についているのだから二人ともコーディネイターなのだろう。
「よお、レントン。売れ行きはどうだ?」
「戦闘の後はやっぱりみんな買ってゆくよ。シンも何か買っていってよ」
「レントン、お客さんなんだよ。知り合いだからってきちんとしないとだめだよ。シン少尉も」
「いいって、エウレカ。おれ達の他には誰もいないしさ。変に畏まられるとおれも肩が凝るし。なあ、レントン」
レントンの隣のレジの少女が、レントンとシンを窘めた。レントン同様エプロン姿の、皮膚の下の血管が透き通って見えそうな位に白い肌に、鉱物の様なきらめきを持ったエメラルド色の髪をシンプルな髪留めで止めた女の子だ。
ちなみに、シンが少尉であるのに対しレントンが三等兵、エウレカが二等兵となる。ボン・マルチェの場合、補給と事務の部署の兼務という形式だ。戦時体制の特別措置で急きょ士官学校の卒業を繰り上げられた学徒兵の二人だ。
シンがレジに肘をついてレントンとくだらない話に耽っている間に、右手をステラ、左手をデスピニスと繋いだセツコが商品の棚を見て回っていた。
セツコは甘いものをうっとりしたような瞳で見て回り、ステラとデスピニスは色鮮やかなパッケージや見た事のない商品を見ているだけで楽しい様子だ。
そのうちに籠いっぱいに菓子を山盛りしたセツコがエウレカのレジに着いた。レントンと喋っていたシンが、セツコの買い物量にぎょっと目を見張った。
(ああ、三人分だからか)
「セツコ少尉、相変わらずたくさん買いますね。全部、一人で食べるんですよね?」
「ステラのこれ」
「あ、私も、一応これを……」
と二人が指さしたのは、山盛りのお菓子の中の小さなチョコ一つずつだ。後は全部セツコの買物らしい。
「セツコさん、ずいぶん食べるんですね? 何日分ですか?」
まあ女の人は甘いものは別腹って言うからなあ、と自分を納得させたシンにセツコが委縮した様子でか細い声で答えた。
「あの……一日分」
「………………ちゃんと、栄養のバランス考えないと体壊しますよ」
「うん。気を、付けます」
「セツコの部屋ね、お菓子でいっぱいなの」
「ステラちゃん!?」
「セツコさんは、甘いものをとても美味しそうに食べられます。見ているこっちも幸せな気分になる位」
「デスピニスちゃんも!」
ほの白い肌を見る間に赤くして慌てふためくセツコの姿に、背も低ければ年も下とどこか遠慮していたところのあるシンは、新鮮な印象を受けていた。
(セツコさん、結構可愛い人なんだなぁ、美人だし)
人間関係が良好なのは良いことだ。でも、と思いシンはセツコの傍らのデスピニスに目を向けた。
やはりデスピニスの様な子供が戦場に立つ事は、シンの精神に黒い影の様な物をこびり付かせていた。それはシンばかりではなくこの部隊に所属している者は皆そうだろう。
デスピニスの使用している特機らしい機体も、彼女らと同じように派遣されたスタッフだけが整備し、DCのスタッフは手を触れる事くらいしかできていない。これは、ティエリアの使用しているヴァーチェも同じ話だ。
今回の戦闘でティエリアやデスピニスも一級以上の腕前を持っている事は確認できた。むしろあの年齢であそこまで戦えたのだから、なにがしかの特殊訓練か強化措置が施されている事は間違いあるまい。
彼女が戦えると言う事実は、それを可能とする要因をシンに想起させて陰鬱とした気持ちにさせる。
シンの暗い影を背負った表情が気になったのか、デスピニスが気遣わしげにシンの顔を上目使いに見た。
愛らしいデスピニスの瞳が不安に揺れながら見つめてくる仕草は、抱きしめたいほどに可愛らしかったが、シンはなんでもないよとデスピニスの頭を撫でた。
愛妹マユにするように優しい仕草は、少し戸惑ったデスピニスにも受け入れられたようで、シンの手が動くのに任せていた。羨ましそうにデスピニスを見つめるステラの様子に、レントンとエウレカが顔を見合せて苦笑した。
「仲がいいな」
「アルベロ?」
「隊長」
上から、アルベロ、アルベロを振り返ったステラと、シンの順になる。
パイロットスーツ姿から軍服姿に着替えたアルベロが、シン達の後ろに立っていた。相変わらずいかにも軍人然とした体躯の持ち主だ。
鍛え抜いてはいるが、一向に肉がつかないシンとしては半分くらいはあの逞しさが欲しいと密かに思っている。
シンの場合は、筋肉が高密度で圧縮しているわけで、筋肉が肥大化するよりもより細くより強靭により柔軟になっている。ぎちぎちに詰め込まれたワイヤーの様な筋肉で構成されており、細身だが脱いだら凄いのである。
ビアンと並んでDC幹部連の強面組の一人であるアルベロは、いかんせんデスピニスらからすれば見るだけで怖い。顔が怖いのである。実に単純な事なので慣れない限りどうしても一歩引いてしまう。
というわけで、デスピニスは怯える様にしてセツコの宇宙空間でそれはどうなのか、というミニスカートの裾を掴み、その後ろに隠れている。アルベロは特に傷ついた風もなく、エウレカのレジで止まっている買い物かごを見た。
敬礼しようとするレントンとエウレカを手で制する。いちいちレジで上官相手に敬礼していては時間がかかるので、敬礼をしなくても不問に処されている。
セツコの胃袋に収まるであろうお菓子の量に驚いたのか、片眉がぴくんと動いた。それからおもむろに腰のポケットから財布を出し、カードをエウレカに差し出した。
「ここの支払いはおれが持とう」
「え、でも少佐」
「初陣を無事に生きて戻った祝いだ。それにしては少し安すぎるがな」
レジのスリットに差し込み清算を終えたカードをアルベロに返し、商品をレジ袋に入れる作業をしているエウレカとレントンが顔を見合せて、アルベロと話し始めたセツコやシン達の様子を見ながら小声で話し始めた。
「ねえ、エウレカ」
「なに、レントン?」
「アルベロ少佐達ってさ、こうして見ると……」
「見ると?」
「親子に見えない?」
レントンが言う通りに改めて話をしているアルベロ達を見まがら、う〜ん、とエウレカは考えてみる。
「アルベロ少佐がお父さんで、セツコ少尉が母親代わりの長女、ステラ少尉が甘えん坊の次女で、デスピニスが内気の三女、それでシン少尉が長男か……」
「見えない?」
「ちょっと見えるかも」
「だろう?」
エウレカとレントンにそんな風に見られているとは知らず、シン達五人は戦いの緊張を忘れたように談笑していた。どこかアットホームな雰囲気や自由さが、彼らの強さの源の一つなのだろう。
*
慌ただしく救助者の手当てとステーションの補修作業に勤しむトロヤステーションは、エアの流出や火災などが鎮静し、ステーション内に満ちた血の匂いもようやく拭いとれていた。
DCが軍事拠点であるアメノミハシラへ戻り、すでにその艦影は見る影もない。アルテリオンやベガリオン、スターゲイザーから降りたアイビス達はようやく迎えられた休息に浸っていた。
カフェテリアのテーブルにくたっと倒れ込んでいるアイビスの隣にスレイが座っていたが、流石に疲れたものか固く目を瞑って眉間を揉んでいた。表情もいささか険しいままだった。
そこにお皿にチーズケーキを持ったツグミがやってきた。厨房を借りて焼いたツグミ手作りのチーズケーキだ。味は、それまで死んだようにへたれこんでいたアイビスが勢いをよく顔を挙げた事からも分かる。
今にも皿ごとチーズケーキを食べそうな勢いのアイビスに、ツグミとスレイがそれぞれ呆れた様な感心した様な顔をした。こと甘いものに関して、アイビスの執着というか狩猟本能は凄まじい。
「アイビス、好きなだけ食べていいわよ。あんなに頑張ったんだからね。スレイにはこっちね」
アイビスの目の前に置いたワンホールのチーズケーキとは別に、自分とスレイの分用にととっておいたフルーツケーキを置いた。パックに入れた紅茶も三人分だ。
「すまない、チーフ」
「いいのよ。スレイもお疲れ様」
早速フォークを自分の口とチーズケーキの間で盛んに往復させはじめるアイビスの食べっぷりに、ある意味大物だなとスレイは嘆息した。自分はと言えば胃の方がいささかギブアップ気味だ。とてもじゃないがアイビスほど食べる気にはなれない。
至福の笑みを浮かべてにこにこ食べ続けるアイビスの様子に、なんだか疲れているのが馬鹿らしくなって、スレイは小さく笑って自分の分のケーキに手を伸ばした。
アイビスがチーズケーキを半分ほど食べ終えた頃、ふとスレイが口を開いた。DSSDの職員なら誰もが気にしている事柄についてだ。
「チーフ、何かフィリオ博士から話は聞いていないか。これから、私達がどうなるのか……」
「いいえ、なにも。局長や部長、博士達がずっと話し合いを続けてはいるけれど、答えは出ないままね。
私だけじゃ対処しきれない相手が出て来て、結局ステーションも警備部隊のMSも相当数を減らされたわ。どこかの勢力の庇護をうけないと、DSSD自体が危うい状況よ」
「地球連合、ザフト、DC、どの連中にも都合の良い口実を与えてしまったか」
「ええ……。残念だけれど、今の私達に中立を維持する力はないわ」
「地球連合の駐留艦隊の様子は?」
「あっちはあっちで、相当の被害が出ているからまだこちらにちょっかいを出す余裕はないみたいね」
「そうか。そういえばあの連合のパイロットは?」
カリオンを降りて、ひとしきり文句と、一応の礼を言ったスウェンの事を思い出して、なにげなくスレイがツグミに聞いてみた。少なくとも自分達より立場が上の人間だ。そういった情報が入るのもツグミの方が先だろう。
あっという間にワンホールの四分の三を食べたアイビスが顔を上げた。戦闘中色々と手助けしてもらった事もあり、スウェンの事は話題にのぼれば多少は気になるらしい。
「すごく助けてもらったけど、怪我とかはしていなかったよね?」
「ええ、彼はとくに負傷した様子はなかったわよ。カリオンを無断で彼に使わせた事に対して色々とお小言は貰ったけど、それだけよ。ただ、連合の方でどんな処分が加えられるかは分からないわね。
もともとここに回されている人達は、左遷されたりとか、退役寸前とか、そう言う人達ばかりだったらしいけれど、また僻地に飛ばされたりするのかしらね?」
「でもスウェン中尉は凄腕だと思うけど。初めてカリオンの実機に乗ったのに、何年も乗っていたみたいに乗りこなしていたよ? あれだけのパイロットを遊ばせておくなんてちょっと信じられない」
「う〜ん、たぶん軍の主流に外れたんじゃないかしら? あるいは派閥争いに巻き込まれたとか?」
「ふん、確かに世渡りの出来る正確ではあるまい、あの無愛想な面構えではな。まあ、あれだけの腕を腐らせるのはもったいないがな」
「へえ、スレイが褒めるなんて珍しいね」
何気ないアイビスのセリフに、ぴくっとスレイの愁眉が動いた。ぎぎぎと油を差し忘れたブリキ人形のように何処かぎこちない動きで、ぽややんとフォークを咥えているアイビスを振り返って睨む。
怒りの気配が陽炎のようにスレイの周囲で揺らいでいた。本人の烈火の様な気性がよく現われていた。ここまで来て地雷を踏んでしまった事に気づいたアイビスが怯んだ様子で、のけぞった。
「ああ、初めてカリオンに乗った奴が、私達がカリオンに乗った時と同じかそれ以上に動かして見せた事が悔しいほどにな。お前はそうは思わないのか、うん?」
「ええ、とそれはまあ、アストロノーツとして専門の訓練を受けてきたわけだから、いくら前大戦を戦い抜いたベテランとはいえあそこまでカリオンを動かすのを見たら、悔しいと言うか、そう言う気持ちはあるよ」
「だったら、お前はどうしてもっと悔しそうにはしない? 確かに奴の技量は大したものだ。だがな、私達はアルテリオンにベガリオンに乗る為に、長い時間厳しい訓練を受け、相応しいだけの努力をしてきたはずだぞ。それがっ」
「でもさ、あの人、スウェン中尉も星の海を目指しているんだよ。前に星空を見上げているあの人の目を見たけど、憧れる様に、夢を見るみたいに星を見ていた。
だからフィリオもカリオンをあの人に預けたり、色々とアストロノーツ用の訓練メニューを渡したり、機材を使わせてあげていたんだよ。ツグミもそれは知っていたんじゃないかな?」
「ええ、フィリオが彼にいろいろと都合してあげているのを知った時は猛反対したんだけど、私の言う事は聞いてくれなかったわ。スウェン中尉は、私達に一番必要なものを持っているってね」
「……アイビスと同じか」
スレイが、どこか拗ねたように口を尖らせてそっぽを向いた。実力ナンバー1であったスレイが、シリーズ77の集大成のキャプテンシートを持つアルテリオンのパイロットに選ばれなかった理由もまた、それだった。
フィリオ・プレスティが星の海を行くアストロノーツにとって、最も必要と考えるもの“夢”。決してあきらめず空に上がる事を願い続け実現させようと邁進する事が出来る。
それが、アイビス・ダグラスであり、スウェン・カル・バヤンもまた同じであるとフィリオは考えたのだ。
はあ〜っと深く溜息をつき、スレイは黙ってケーキにフォークを突き刺して、一息に口に放り込んだ。
普段なら決してしない下品な食べ方だが、構わずもぐもぐと口を動かし、アイビスが残していたチーズケーキにもぶすりとフォークを突き刺して、一気に口に放り込む。
「あ、ああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!??? すすすす、スレイ、わた、私私のチーズケーキ、ツグミの、手作りの」
「ふん、うだんしてふるおまえがはふい。ふぁいふぁい、ふでにほとんどらべていたふぁろうが」
「う、うううううぅぅ、ツグミぃ〜〜〜〜」
「はいはい、また焼いてあげるから涙を拭きなさい」
*
冥王星に在る始原文明エスのプラントを本拠地に置くザ・データベースらの指示によって、新たなる戦争の扉を開く為の下準備を任されたアリー・アル・サーシェスは、ユーラシア連邦の最新鋭機イナクトの披露式の襲撃以来あちこちを飛び回っていた。
西暦二十四世紀の世界に生きていた頃よりもはるかに強化されたアルケーガンダムは、目下敵無しと言っても過言ではなく、地球連合の保有する特機量産型ガルムレイドや主力量産機ウィンダムの部隊との交戦でも、傷一つなく勝利をおさめている。
今も旧フランス領にある軍事基地の一つに、適度に損害を与えた帰りだ。そろそろユーラシア連邦を叩くのは止めて、大西洋連邦か東アジア共和国に仕掛ける頃合いだろう。
ザフトの地上基地もターゲットに挙げられてはいるのだが地上の戦力は乏しく、あえてそれを削る必要もないとクライアントであるイノベイターのリーダー、リボンズ・アルマークは考えているらしい。
彼らが行動の指針を委ねるデュミナス、ひいてはクリティックの判断によるものだろうが、それはさしてアリーにとって興味を引く対象ではなかった。戦う場所が用意され、戦うための力が与えられ、そして自分はそれを最大限に利用して最高の快楽を得ている。
戦場の中にのみ漂うあの空気を吸い、吐きだしている瞬間にこそ、自分は本当に生きていると言えるのだ。だから、例えここが死後の世界だろうがそうでなかろうが、戦場があり、そこにこの自分がいる限り、自分は生きているのだ。
「さて、とユーラシアの下準備は次で終わりにするか……あぁ? ユーラシアの部隊か、捜索部隊の連中って所か。わざわざやられに来るとは、殊勝なこって」
航空形態に変形したイナクトの編隊に、スカイグラスパーが合わせて十五機ほど。遠方の地上にもバスターダガーや、ランチャーストライカーを装備したダガーLの姿が映る。
アルケー一機に対し、三十近い部隊を出撃させていたようだ。擬似GNドライブが放出するGN粒子の影響でレーダーや通信は正常に機能してはいまいから、単なる遭遇戦だろう。
生前の世界では、双方向通信装置を無数に用意して電波障害が発生した箇所に、GNドライブ搭載機が存在するという、GN粒子の特性を逆手に取った作戦を取られたが、こちらではまだGN粒子にそれほど着目されていないだろう。
それに、ニュートロンジャマーの影響でGN粒子を散布せずともかなりの電波障害が地球規模で発生している。今回の遭遇は偶発的なものだろう。
「それっぽっちの戦力でおれの相手をしなけりゃならんとはな。同情してやるよ!」
先手必勝! 向こうがこちらの機影を捉えたであろう頃合いを見計らい、左手首のGNハンドガンを連射する。先頭の指揮官仕様のイナクトはかわしたが、一機のイナクトが右半分を撃ち抜かれ、二機のスカイグラスパーが撃墜する。
「心からなぁっ!」
右肩部にジョイントしていたGNバスターソードをアルケーの右手に握り、遠方から放たれるアグニの砲火を軽々とかわし、こちらにビームライフルを連射してくるイナクトに機体を加速させる。
GN粒子とテスラ・ドライブの質量・慣性制御の相乗効果により、既存の機体をはるかに上回る運動性を見せるアルケーが、いとも容易くイナクトの上を取った。
「真っ二つだ!」
GNバスターソードが振り下ろされるその瞬間、イナクトはMS形態へと瞬時に変形し、左手でビームサーベルを抜き放ったGNバスターソードを受けて見せた。
アリーの居た世界で、イナクトやフラッグと言った機体は空中での可変は極めて高い技量が必要とされる機動であったが、こちらではイージスの様な複雑怪奇な可変機構搭載機が既に実用されている。
そのノウハウが活かされ、イナクトやフラッグの戦闘中での可変も容易に行える行為だった。ただし開発初期はその限りではなく、大西洋連邦のとあるエースパイロットのみが自在に変形を可能とし賞賛された。
「少しは骨のある奴が混じっていたか、楽しませろよ!?」
「てめえ、おれが誰だか言ってみろ!」
「なにっ?」
オープンチャンネルで聞こえてきたイナクトのパイロットのセリフに、アリーが眉根を寄せた。様々な相手と殺し合いをしてきたが、こんな台詞を言って来た相手は珍しい。
イナクトは鍔競り合ったGNバスターソードとビームサーベルをつっぱずして、至近距離からビームライフルを連射してきた。
装甲表面や内部に複合的にGN粒子を通して強度を増したアルケーの装甲といえど、プラズマジェネレーターを動力源とするイナクトのライフルは、無視できない火力を持っている。
「おれは、模擬戦不敗、二千回のスクランブルをこなしたユーラシア連邦のエース! パトリック・コーラサワー様だあ!!」
一旦距離を置いたアルケーめがけて機体を果敢にも突撃させ、ビームライフルとビームサーベルを巧妙に使い分けながら、連続攻撃を繰り出す。GNバスターソードと青白いイナクトのビームサーベルが打ち合う度にオレンジの火花が散り、互いの機体を彩っていた。
「やるなあ、ユーラシアのパイロット。だがよ、あんまりくっつきすぎて味方が援護出来てねえぞ?」
「こちとらお前には借りがある。スペシャルな感じでそいつを返すのが先だあ!」
「猪突猛進、いや自分勝手な奴かよ。いいぜ、勢いのある奴ほど殺し甲斐がある」
この時コーラサワーの心は怒りに震え、それをはるかに上回る喜びに震えていた。あの披露式で恥をかかせてくれやがった相手を、あの時と同じイナクトで倒し、屈辱を晴らして自分の実力がスペシャルだと示す機会が向こうからやって来たのだ。
コーラサワーの中で、すでにアルケーを斃す事は確定事項となっていた。イナクトのビームライフルの連射の間隙を縫って放たれたGNハンドガンの紅の光の矢を、左手のディフェンスロッドで防ぐ。
アンチビームコーティング処理済みのラミネート装甲製の防御ロッドだ。一瞬で敵機の銃口の角度から射線を予測し、着弾予測地点にロッドを回転させて防ぐ。さらに、コーラサワーがイナクトの左腕を絶妙に動かして角度を調整しGNハンドガンを悉く無効化する。
GNハンドガンでコーラサワーのイナクトの動きを止めながら、アリーは周囲の鉄製の蠅を叩き落とすために動いていた。
コーラサワーとの戦闘に集中していると見せかけ、不用意に近づいていたイナクトを振り向きざまのGNバスターソードの一振りで真っ二つにする。
「隙を見せれば、こう来るよなぁ」
「隙ありいいーーー!」
ビームサーベルを振り上げてアルケーの背後から襲い来るイナクトの動きは、アリーの予想通りのものだ。振り上げたそのイナクトの腕目掛け、アルケーの左足が閃いた。
「ところがぎっちょん!!」
「なにぃ!?」
アルケーの左足に閃いた真紅色のビームサーベルが一閃し、イナクトの左腕を斬りおとしてくるくるとビームサーベルを握った左腕が空中を舞う。
「まだだあ!」
「敢闘賞をくれてやるよ。いけや、ファング!」
アルケーのスカート状の腰部の装甲から、鮮血色のGN粒子をまき散らしながら十の槍頭が乱れ飛ぶ。
コーラサワーは咄嗟に周囲で乱れるGN粒子や視界をよぎる影からファングの軌道を読みとり、上下左右から襲い来るファングを、一つ二つ、三つ四つとかわしてみせた。口ばかりではなく、相応の実力を持った非凡なパイロットなのだ。
だがコーラサラーと共に出撃した他のパイロット達はコーラサワーほどの技量は持たず、残るファングとアルケーからの攻撃に一分と保たずに撃墜されて行く。
「こなくそぉ、おれは、パトリック・コーラサワーだ!」
「しつこいぜ。ユーラシアの兄ちゃん」
味方がことごとく倒れて行く光景に歯噛みしつつ、コーラサワーは高速で飛ぶファング一つずつを確実にとらえ、ライフルの連射で三基撃墜する。動きを見る限り、アルケーのパイロットがマニュアルで操作していると判断できた。
起動パターンは読み取りづらいが、その分パイロットへの負担は大きいはずだ。このまま粘って相手の疲労を待つか?
「守って勝つなんざ、おれらしくねえ!」
アルケーとファング合わせて八つのビーム攻撃を、急所を避けて最大限かわすが、イナクトの外装が次々と抉られてゆく。それでもなお反撃のビームライフルを放つコーラサワーの指は止まらない。
「粘るな。……なら、冥土の土産もくれてやる!」
イナクトの正面に躍り出たファングが、突如十倍近いサイズに巨大化した。突如モニターを埋めたファングの白銀の槍穂に、さしものコーラサワーも
「なんじゃそりゃあ!?」
驚きの声を上げ、回避行動の間にあわなかったイナクトの頭部が巨大化したファングに貫かれて粉砕し、だらんと四肢を力無く下げたイナクトが落下してゆく。
ファングの巨大化は、始原文明エスの持つ次元制御技術の一つ、並行宇宙間での一時的な質量保存の法則の回避によるものだ。あくまで一時的な措置だが、初見のものではまず対応できないだろう。
「さて、動いている連中はもういないか。あぁ? なんだこの速度は、ユーラシアの新型、まだありやがったか」
急速にアルケーめがけて接近してくる機影目掛けて、アリーはGNハンドガンを連射する。必要最低限の動きで迫るビームをかわした敵影から、反撃のビームが放たれた。彼方から迫る光条の出力に、アリーの目が動いた。
「なんだ、普通のビームじゃねえな? おもしれえが、あれはMAか?」
メビウスともグラスパータイプとも違うシルエットの敵に、アリーは興味深そうな色を瞳に浮かべた。リボンズの保有する情報ネットワークに端末を繋げ、該当する機体を検索する。
「メッサーラ? イナクトとおなじ可変機か。ってこたあMSにも変形しやがるな」
メッサーラの撃ってきたビームはメガ粒子砲という、一種の重金属粒子を加速させて射出するもののようだ。試作段階の機体というが、たまたまテスト中にこの戦闘と出くわしたと言った所か。
驚くべき推力で見る見るうちに接近し、アルケーとメッサーラが交差する。メッサーラの後部に、ほとんどその場で旋回したアルケーのGNハンドガンが、さらに前方からはファングの群れが襲い来る。
余知でもしないかぎりは回避不可の連続攻撃を、メッサーラはMA形態からMSへの変形で回避してメガ粒子砲とミサイルでファングを一掃し、さらに抜き放ったビームサーベルで、アルケーが突き込んだGNバスターソードの巨大な切っ先を捌く。
驚くべきパイロットの技量であった。アリーの目から見て驚嘆に値するが、だからこそ面白い。
「はっはあ、いいぜ。遊んでやる」
「部隊は全滅か、運が悪かったな」
そう呟くメッサーラのパイロットの口調は、自分が間に合わなかった事で全滅した部隊に対してと言うよりも、その先頭に居合わせる事の出来ず、アルケーの戦闘能力を見る事の出来なかった自分に対しての事の様だ。
テスラ・ドライブによってMS形態でも高い空戦能力と飛行能力を得たメッサーラが、背の大推力バーニアに備えたメガ粒子砲を撃ち、対するアルケーはGNハンドガンで反撃する。
一撃の破壊力はメガ粒子砲が圧倒するが、連射性能や取り回しの良さはGNハンドガンの方が上だ。すでにファングは搭載してあった分がすべて撃墜されているし、プラズマエクスキューションは、モーションに隙が大きく、その隙を見逃す相手ではあるまい。
アルケーに搭載されたバイオセンサーとサイコフレームを通じて発せられるアリーの思惟を受け、メッサーラのパイロットは不快気に整った微量に皺を刻み、苛立ちをかすかに交えた呟きを零した。
「奔流のような原始の闘争の感情、ヤザンと似て異なる心根の持ち主と言うわけか。手強いな」
DCから流出した技術やC.Eの技術を取り込み改修されたメッサーラだが、プロトンドライブをはじめメッサーラ以上に強化されたアルケーが、性能差を見せはじめ徐々に勝りはじめる。
パイロットとしての技量はおそらくはメッサーラのパイロットの方が上か、僅差といった所だろう。
メッサーラの振るうビームサーベルも、コズミック・イラで普及しているものとは違うようでかなりの出力を誇り、GNバスターソードをコーティングしているGN粒子が一合毎に大きく削がれて行く。
「野郎、妙な気配を纏っていやがる。それに機体もパイロットもいいもんじゃねえかっ!?」
「私の骨まで届く熱の様な重圧、貴様の存在は不快だな」
かわし切れぬメガ粒子砲の二射をGNバスターソードの腹で受けたアルケーが、一気に機体を押しこまれる。
「ち、こうなりゃトランザムを……」
GN粒子の残存量も考慮して一気に片付けるかと考えたその時、下方から放たれたビームライフルが、アルケーの装甲をかすめた。メッサーラのパイロットも、アリーも揃ってそちらに意識を向けた。
「ほう?」
「あのイナクトは」
MS形態から飛行形態へと変形したイナクトが、機首に装備したビームライフルを連射して迫ってきていた。そう、スペシャルなあの男。
「逆襲の、パトリック・コーラサワー様だあぁ!!」
「ち、余計な邪魔が入ったか。しかし頑丈な奴だ……」
興が殺がれた思いで、アリーはイナクトのライフルをかわし、メッサーラの動く気配をサイコミュで強化・増幅された危機察知能力が感じ取り、アルケーが神掛かりともいえる回避行動を見せる。
絶妙なタイミングで割って入ったコーラサワーの奇襲は、一撃も装甲を舐める事無くかわされ、続こうとしたメッサーラは遠方から迸ったビームに牽制された。
アリーがわざわざ交戦し続けていたのは、リボンズが手配した補給との合流ポイントの付近であったためだ。コーラサワーとメッサーラのパイロットの目に映ったのは、戦闘機と思しいシルエットだ。
細長い銃身のライフルが特徴的だ。スラスターから吹きこぼれるオレンジ色の粒子から擬似GNドライブ搭載機である事が分かる。
「MISAE、遅せえぞ」
「ショウガナイデショ、ショウガナイデショ。予定ポイントニコナカッタノハアナタデショ!」
ザ・データベースが開発したGNドライブ搭載機支援用のサポートメカGNディフェンサーだ。制御を担当するのは皮肉にもロックオン・ストラトスが相棒とした支援AIハロの同タイプだ。REDの形が斜めに吊り上がっているのが外見の違いだ。
「ち、口答えしやがる。ドッキングするぞ!」
「シカタナイワネ。GNディフェンサー、ドッキングモード、ドッキングモード」
GNディフェンサーから切り離されたロングプロトンライフルをアルケーの左手が握り、機体下部にあった青色の細長いGMミサイル内臓のスラスターがアルケーの両肩に装着され、GNディフェンサー本体はアルケーの背にドッキングする。
GNディフェンサーとのドッキングによってアルケーガンダムはスーパーアルケーガンダムとなる。航続距離や、耐久性、ジェネレーター、擬似GNドライブの粒子生産量なども増加する。
「Mk−Uとその支援機と同じ運用思想か?」
「なんだそのスペシャルな感じの装備はぁ!? ずりー、おれにも寄こせぇ!!」
「は、まとめて消し飛びな!」
最大出力のロングプロトンキャノンが、メッサーラとイナクトめがけ放たれる。青空さえも白く染め上げるほどの膨大な光の奔流が放たれ、直撃を受けた山肌をスプーンでプティングを削り取る様に抉り飛ばす。
最大出力で放てば、GNディフェンサーに内蔵した大容量GNコンデンサーの粒子を三分の一も消費する大食いだ。もっともプロトンドライブとの組み合わせによってプラズマエクスキューションなどの使用には支障なく、機体の性能が落ちる事もない。
リボンズから提案されたアルケーの強化案も、このスーパーアルケーだけでは終わらずまだまだある。これなら、元の世界に戻っても00ライザーやケルディムガンダムを相手にしても引けは取るまい。
もろひろし
やったぜ!!やっぱりこの世界ならイナクトやフラッグやティエレンでも
攻撃が完全に効かねえなんてケチな状況にはならん!!
コーラサワーがスペシャル過ぎて困るが、スペシャルなら仕方ない。これは先が楽しみ過ぎる。
「は、かわしやがった。イナクトは運がいい。メッサーラはパイロットがいい。くくっ、これから始まる大戦争で生き残れるか、楽しみだぜ。アーハッハッハッハッハ!!!」
「ウルサワイネ、シズカニシテヨ、シズカニシテヨ」
「お前、本当口悪いな。疑似人格プログラムが故障しているんじゃねえのか?」
「シツレイシチャウワ、シツレイシチャウワ」
「そろそろユーラシアともおさらばするか。GNドライブを使っているのはDCだけだ。どう言い繕おうが、“DCのGNドライブ搭載機”が各国の基地を襲撃したとあれば、否が応にもしたくなるよなあ、戦争? さっさと戦争になれってもんだぜ!」
放出するGN粒子によって空を血の赤に染めて去りゆくスーパーアルケーを見送る影が二つあった。メッサーラとイナクトだ。かろうじて回避しきり、機体に損傷を負わなかったメッサーラと違い、イナクトは下半身を破壊され無事なのは胴体の上部と右腕位だ。
MS形態に変形したメッサーラを地上へと降下させ、コックピットハッチを開いて姿を見せたのは青年士官だった。驚くべき事に多大なGの負荷がかかるメッサーラを、軍服姿で乗りこなしていたようだ。
ユーラシア連邦の軍服に身を包む男の名前はパプティマス・シロッコ大尉。前大戦のヤキン・ドゥーエ戦役で壊滅したある部隊の生き残りとしてユーラシア連邦に潜り込んだある勢力のスパイである。
開いたハッチに片足を掛けて、顎に手を添えて遠のくGN粒子を見ていたが、不意に落下したイナクトの方を見た。ドラム状のフレームを内側から蹴り開いて、パイロットが顔を出した所だった。
あれほど派手に被弾したと言うのに、いっさい負傷した様子はなく右手にヘルメットを持ってなんやかんやと去ったアルケーに文句を言っているようだ。
「ユニークなパイロットだ」
腕は確かだがな、とシロッコは少しばかり愉快な気分になっていた。
――つづく。
色々とはっちゃけました。コンビニの店員さんはどこかで見たことが歩きがする別人なので深く考えない方が吉です。シロッコについてはF完結編をプレイした人なら予想が着くことでしょう。
アルケーはこれからも強化され続けます。歴代ガンダムの軌跡をいくつかなぞる形で。
また、この調子で行けばシンセツもの含め通算百話投下まで後5,6話になります。勝手ながらそれを記念して皆さんの考えるオリジナル機体を募集させていただければ幸いです。
勝手ながら条件として
@セルゲイの後継機・ティエレン系列Aソーマの後継機・GNアーチャー系かタオツー系統Bコ−ラサワーの後継機なんでもよしCスティングの後継機・アカツキの強化タイプでもDC製の特機・PT・AM・MS・MAでも可
Dレオナの後継機PT・特機・AMのどれかE各勢力の試作機や実験機、エース専用機・後継機までの中継ぎ・搭乗希望パイロット(ビアン、シン、刹那を除く)
以上の条件で、このビアンSEEDから始った世界で作られるという環境を想定し、開発の経緯やスペックなどと一緒にご応募ください。@〜Dは終盤に、Eは内容によりけりですが中盤には登場します。ただし、中継ぎなので途中退場を御覚悟くださいませ。
ふるってご意見をくださいまし。では、おやすみなさい。
総帥GJ。とりあえずコーラさんすげえ。あのバイタリティと運に感動した。
折角だから俺はBを選ぶぜ!!!
本編ハムのようにジワジワとイナクトを強化してって欲しい。
目指せガンダム撃破って感じで
投下乙ー
んじゃ俺はCで
GJ!
アリー用のAIキターと思ったらALICEじゃないんかい!w
それにしても始原文明エスのチートぶりを改めて実感した
意外!それはシロッコ!
まさかの版権キャラ参戦か、と思ったが出自を考えると、ある意味OGキャラと言えるのか?ウーム・・・
募集機体は、とりあえず?Cをちょっと考えてみます
それじゃCでスティングはドラグーンも使えることだしサザビーとνを足して二で割ったような機体に
サイコMK2のリフレクタービットを足してアカツキと同じくビーム反射ができるようにしたゲテモノを提案しとく。
@圧倒的な装甲とパワー、ティエレン28号
総帥GJです
ところで
Eアウルの中継ぎ機体「ゴッグインパクト」
と言う発想が頭から離れないのですが
Bで量産機の極限の機体を見せて欲しい
投下、乙でしたー。
色々語りたい事はありますが――ここまでコーラ君に活躍してもらうと、バーローさんにも登場して欲しくなりますね。
Bで、GNドライブ装備のイナクト強化型・GNイナクト
なんていかがかと。
GNフラッグは対G装備がお粗末だったから、対G装備の強化と
武装をGN−X用のランスにした方がなんか良さそう。
OO未見だからコーラが活躍したって情報しか知らなかったが
ここまでやれる人間だったんだな…しかし模擬戦2000回って一体何年で2000回したのか…
投下乙でしたー
コーラさんマジぱねぇっす!ってことでBで。
コーラさんにはやはり量産機がいいかなー。
ここはあえてイナクトではなくCEの機体にGNドライブ付けたやつとか。
Eでアウルにアウル専用GNエムリオンRC(リターンズカスタム)
エムリオンを再設計して最新の技術を導入
あえて名前はそのままでベースにはムラサメを使い
アウルの癖に合わせた装備と調整でエムリオンマイスターの彼に
次期主力機のトライアル用のパイロットを任せた
なんかいろいろ可笑しいな
あれ、待てよ。コーラさんってユーラシア連邦のエースだよな。
つまり……
BハイペリオンガンダムGNカスタム なんてのも有りなのか?
@大ティエレン17号(自律稼動)
操縦者は半ズボン必須仕様
あ、これもアリか
つCスティングレイバーサス(デバステイター)
>>523 そんな事セルゲイがやったら過去の遺恨抜きでアンドレイが殺しに来るだろwwwwwww
レントンのコンビニがオープンしたと聞いてやってきました。
総帥乙です。
しかしコラ沢さんは相変わらずパネェ。
ザ・データベースのテクを存分に活かしてくるひろし(MISAEのおかげで名実ともにひろしですねおめでとう)
相手に存分に立ちまわった上で目立つ怪我も無しに生還とか流石スペシャル。
……コラ沢さんに随伴していた皆さんはお疲れ様でした、ご冥福をお祈りします。
だがひろしとヒヒョーの思惑通り、このままでは開戦か……大変だな。
そしてせっちゃんの甘党っぷりに噴いた、洒落にならないwww
選択肢はBで。
具体的に希望するならアドヴァンスド・ジンクスっぽいのなんですけど、
現時点ではザ・データベースかDCじゃないと無理でしょうからなー……。
一応ラスボスだけど乗ってるのが総帥の奴のパチモノで、やりかたによっては一撃で沈んだ人が出るとはw
あと@〜Eからは外れるのですが、
ヒュッケバイン系列の重力波砲とプロジェクトTDのAMに搭載されている重力加速砲を組み合わせたオクスタンっぽいもの
プラズマバックラーの代わりに腕部に装備して、Gテリトリーをピンポイントバリアパンチのように収束するもの
対ミーティア用に量産を考えて砲門を減らしたら、プチヒリュウぽくなったAMガンナーもどき
などなど機体じゃなく外付けの武装なら妄想がちらほらw
総帥GJ!
コーラサワーが模擬戦二千回不敗からスクランブル二千回に進化してやがる…
こいつ、前大戦時どんだけ出撃しやがったんだwwwww
回避すげぇwwwww
原作でも一応、コーラさんの2000回は模擬戦・スクランブル両方込みの戦歴だよ
DVD版だと台詞が修正されてて、小説版でも同様の記述がある
荒鷲とは違うのだよ荒鷲とは!
C何故か入手できた某惑星の機械生命体データから再現したデ●スティンガー
ボンズリさんガノタ説浮上
きっとデータベースの記録に残ってた戦史を見てる内にどっぷり嵌ってしまったに違いない
リジェネにミラージュコロイドとナノマシンと相手のパイロットと同調する
名付けて雷光のターンキャプテンガンダムをですね
>>531 ヒヒョーが相手にしたのは無印種ガン辺りまでだからねぇ。
むしろ過ち母さんがデータ出してリボンズを洗脳したと見るね。
過ちさん「これもまた過ち……」
>>532 キャプテンはティエリアだろw
リジェネが頑張れ〜って言うと拳部分がトランザムするとか
>>509 若干EでオリジナルGNドライブ搭載機を。
グラビコンシステム等の重力制御技術で木星の高重力環境を擬似再現することで
TDブランケット内蔵のCE製オリジナルGNドライブの開発に成功。ただし00世界の程の粒子供給量はない。
そのかわり擬似炉のように改良による出力上昇が容易になった。
こんな感じでちゃんと正常な粒子出す機体を希望します。
スパロボ界にはGガンよろしく人工重力発生装置もあるだろうし木星程度の重力は簡単に作れるよな、オリジナルドライブ出来るじゃない
実際サルファでやってるし。
つか総帥のお話でもヴァルシオンとかの武装だけでなく重力アンカーとか出てるっしょ。
Cフルファイヤー暁改
徐々に決定力不足に陥るアカツキの火力を徹底的に強化した改修機。
主兵装はグラビコン・システムを搭載し、グラビティ・フィールドを発生させることも可能な攻防一体兵器「メガ・グラビトンランチャー」
その他の固定武装として頭部パルスレーザー、肩部ビームガトリング、腰部マルチトレースミサイルコンテナ。
さらに置換可能な箇所は出来得る限りサイコフレームが使われ、ドラグーンの動作性並びに攻防力上昇も図られている。
MSの強化は、やはり「フル〜」とつかねば。
他勢力でも実現できそうだけどCになるのか
ドラグーンシステムの発展型でCE版ビットMSなドラグナーなんてのありですかね?
αやMX世界のデータもあることですし。
同じくCでヒュッケバインMK-VーE
紅と黒を基調にしたMK-Vのバリエーション機
小型の短刀二刀、大剣二本と弓形のレールガンがメイン武装で大型化した背部のポッドの中身は大量の剣型ビット
開発経緯はヒュッケバインMK-Vを開発するにあたって前大戦で多大な戦果を挙げるも
暁のヤタノカガミは余りにも金がかかり過ぎ、DCの財政に多大な負担を強いる為封印された
急遽スティングのの能力を生かせる機体が必要となった為、
建造計画が立っていたMK-Vの装備を改装したものである
真面目に中の人のキャラネタに走ってみた
Cで追加武装だけどヤタノカガミによる防御ビット
攻撃兵装はなくただ攻撃を受けて跳ね返す
敵の攻撃を跳ね返し味方の攻撃は反射して敵の意表を突くと
まぁリフレクタービットみたいな感じ
インパルスの新シルエットは駄目ですかね?
黒歴史増産会場はここですか?
プランAを誰も言い出さないとは・・・
B(ビアン)カイザーなんてのは…
余計な装備なんぞいらん
股間にビームサーベル一本ありゃ十分だ
股間にサーベルだと、プランAもそうだがGAT−110105を思い出す
股間に実体剣か、ビームサーベルか、それが問題だ
アカツキをフルアーマー化
フルアーマーアカツキ改とか
アカツキって確かストライク派生の機体だから前大戦時のままだときついと思うんだ
気違いレベルの釣り合わない費用対効果のヤタノカガミどうにかしないとDCが傾くぞ
>>550 実弾はPS装甲があるし盾にのみつけるとか?
でもとっくにビームシールドぐらい開発されてそうな気もするしなぁ…
ビームシールドよりも便利なEフィールドもあるし
装甲もTドットアレイ(テスラドライブを応用した構造材強化技術?)ってシロモノもあるよ
そういえばコキムラってここの作品に出てきたことあったっけ?
@太陽の使者・ティエレン28号(後継機は多分FX)外部からの無線操縦型(半ズボンはお好みで)
FXになったらティエレン17号やOXと合体してパワーアップできるぞ!
AGNタオツー→キャストオフ→クロックアップ可能なGNセイバー(当然剣は約束された勝利の(ry)
ちなみにこのシリーズはあと6機存在する、お約束的に。聖杯戦争はお好み(ry
BソルティックH102ブッシュマン(コーラつながり)魔改造仕様 原型留めてない気がするけど
Cオージェ(純金かどうかはおサイフまかせ)パワーアップしてオリジナルになるかは不明
D超惑星戦闘巨人ダイレオン
E思いつかない
これでどーだ
ゴミ箱を妊娠させるスレはここでしょうか。リクエストやる前に自分で書けばよろしいんじゃなくて?
暁に四枚羽のバックパック取り付けて
左腕に外付けハンドマシンキャノン取り付けて
最後にチェーンソー剣持たせて
暁直参仕様・・・後、頭にモノアイなヘルメットつけてみるとか
DorE(アルベロ機)
あれだけTR-1なネタをやったんですから、ヒュッケバイン系列をコアにした最終形態TR-6を出すのもありかと。
作中の自重しない総帥ならば試作と銘打って趣味に走ったパーツを設計してくれることでしょうw
ええぃ!BGMはDouble―actcionで、シンとレイが「俺達の必殺技! パートワン!!」とか叫ぶのはまだか!
まてまてロックオン兄弟も入れてやれw
あとついででヤザン(出たっけ?)もなwww
スウェンとクエルボも付けるぜ!
キンちゃん……
>>558 なんかそれってそのうち11氏がやりそうな件
>>558 最近のではカウンター蹴りの「行くぜ! 俺たちの超必殺技!!」とか
ぶっ刺したままフルチャージして爆散させるpart6とかなんだろうが、
後者はともかく前者は蹴り主体のヤツがゲシュmk-2しかいないからつらいな。
似せるなら隠者のように脛サーベルが望ましいが、凸のだしなぁ。
凸の場合はウェイクアップフィーバーだしな
>>563 貴様は大雷凰をディスったな!
OGにはまだ出てないが前身の雷凰は時系列的には完成しているハズだぜ
ディバイン SEED DESTINY 第05話 奪われるモノ 奪う者
ザ・データベース――かつて『智の記録者』と呼ばれた者達の一人、クリティックが冥王星に築き上げた本拠地である都市型プラントの、一面に強化ガラスを張った展望室に二つ人影があった。
床や壁は継ぎ目のない白い金属でおおわれ、家具や観葉植物らの類が一切配置されていない光景は、およそ人間の生活する場所とは思えない。あまりに寂しげな空間は、まともな精神の持ち主には一日とて居る事に耐えられぬ圧迫感を与えるだろう。
MSのビームの直撃にも耐える特殊な処理を施したガラスの向こうは、格納庫なのか広大な空間が広がり、四脚の下半身を持った250m超の巨躯を持った白亜の巨神スキエンティアが鎮座している。
右手に刀を帯び漆黒の衣装を纏い、左肩にはケープを羽織った壮年の男クリティックと、その背を見つめながらアリーやティエリアをはじめとした各地のイノベイター達からの報告を伝えている端麗な美貌の少年リボンズ・アルマークが、その展望室に居た。
この都市型プラント全域を含めても数えるほどしかいない生ある者たちの間には、互いの顔の下に研ぎ澄ました刃を隠しているような張り詰めた雰囲気が隠れていた。被造物と造物主でありながら両者の間には慈愛や友誼と言った好意的な感情が極めて乏しかった。
「アルケーの行動は予定通り、誤差の範囲内と言ったところでしょう、クリティック」
「デュミナスの予定通りか。だがDCで運用されているGNドライヴについては、なにか新しい報告はあったか?」
「いえ、ティエリアの報告以後デュミナスがセキュリティの突破を試みてはいますが、成功していないままです。既存の技術とは根本的に異なる概念が用いられているようで。おそらくは魔装機と同じ魔法技術の応用でしょう」
「デュミナスでも突破できんか。大西洋連邦、東アジア共和国、ユーラシア連邦、プラント、DCの状況も報告の通りか?」
「ええ、ユーラシア連邦でイナクトと同時に進行している魔装機計画、東アジア共和国でティエレンとは別に開発が進められているバルトール、大西洋連邦ではアードラー・コッホとアギラ・セトメによる新規プロジェクトと、接触を図っている勢力……」
「各国がそれぞれに来訪者を利用し始めたか。前大戦時にメンデルを離脱したイーグレット・イフと月軌道で確認できた次元震動については?」
「イーグレットの位置は確認しています。次元震動は現在巨大な質量の転移とまでは判明していますが、詳細な位置は不明です。DSSD所属のトロヤ・ステーションを襲撃したアンノウンとの関連性が考えられますが?」
「放っておいて構わん。いずれにせよ地球圏の戦乱が新たな開幕の時を迎えるのはまもない。他に報告事項は?」
「デュナメス、ケルディム、キュリオス、アリオス、エクシア、ガデッサ、ガラッゾ、順次ロールアウトの予定です。それぞれ地球圏に向けて輸送の手筈を進めています」
「了解した。下がれ」
「それでは」
胡乱気な光を瞳に湛えたままクリティックの背を一瞥し、リボンズは踵を返した部屋を後にした。リボンズの退出を確認し、クリティックは目の前にホログラフを展開して、かつてこの都市プラントの再建中に手に入れた異物を見た。
黄金の装甲を持ち、背には翼、胸部には青い六角形をなしたパーツがある。しかし、今クリティックの目に映る人型の全身は、大きな破壊痕を留めていた。かつて胸部に納めていた擬似GNドライヴは、今は研究・量産の為に外されてがらんどうだ。
機体名をアルヴァアロン。その強化パーツである黄金の巨大なエイの様な外装も、一応回収している。アルヴァアロンから回収した疑似GNドライヴと様々なデータは色々と役に立った。
しかし、DCでも擬似GNドライヴが使用されていると言う事は、同じモノを搭載した機体があちらでも回収されたか、あるいはかつて木星で取り逃がしたあの男の遺産があちらの手に渡ったか……。
いくつかの推測を立てたが、いずれ実証される事と割り切り、クリティックはホログラフを閉じた。
「面白いな。私の予想を外れた未来が始まっている。だがその全て、知るのは私だけでよい」
そう嘯くクリティックは知らない。自分達がいまだその影さえ踏むこと叶わぬ者達がこの宇宙で蠢いている事を。
DSSDへの救援に駆け付けたクライ・ウルブズがアメノミハシラに帰還した頃、同ステーションで彼らの帰りを待っていたビアン・ゾルダークは、アメノミハシラの司令室で副総帥ロンド・ギナ・サハクと共に定時報告を受け取っていた。
「ユーラシアを中心に、大西洋連邦領などでGNドライヴ搭載機による襲撃が相次いでいる、か。こちらのデータにない機体だな」
面白そうに告げるギナに、ビアンは同じような笑みを浮かべて答えた。二人の手元にはイナクトやウィンダムと交戦しているアルケーの姿を捉えた遠望映像が映し出されていた。
アルケーの姿はDC側でも実験中の疑似GNドライヴと他の動力機関との併用を、すでに実用段階まで持ち込んでいる組織が存在している事を証明している。
エペソの報告にあったゾヴォーク共和連合の出現とあいまって、人類同士の戦争のみに対する準備だけでは済まないだろう。
「ティエリア・アーデのガンダムヴァーチェも同様の代物だろう。ある程度はこちらへの情報の漏洩も承知の上で派遣したものに違いあるまい。不確定要素の強い我々を内部から調査する為の処置、か」
「ティエリアらを派遣してきたPMCはダミー会社だ。追跡調査をさせていたが、まるで尻尾が掴めん。となるとお互いの腹を探り合いながら使うしかないと言う事か。獅子身中の虫を飼う気分はどうだ? ビアン」
「さて、愉快な気分ではないが、いずれにせよ何時でも開戦できる様に準備を進めておけ。今度上がる狼煙は、前大戦の比ではないぞ」
「さればこそ、我らが世界の覇権を握る機会に恵まれよう。時勢を見誤まれば滅びるだろうが……」
この戦いの先に聖十字の旗が炎に焼かれるか、地球圏にはためくかは、それはビアンにも分からぬ事であった。
およそ考えうる限りの事態に備え無数の兵器や装備を開発し配備させてはいるが、それがどこまで通用するのか、また地球連合やプラント内でも異界の技術を取り込み始めている。
前の大戦よりも個々の兵器の質の差は埋まっているだろうから、今度の戦いは苦しいものになるに違いない。あるいは地球圏の全勢力を一つにまとめなければ対処できない敵の出現とてあり得る。
そのどちらにおいても最前線で戦うのは、ビアンの子供と言ってもいい年頃の少年少女たちだろう。感傷に浸った声で、ビアンはポツリと呟いた。
「また、シン達に頼る事になるな」
「そうなるな。あれらはもう戦士だ。無用な気づかいは過保護だぞ。それとも、お前の娘の代わりか?」
「そんなつもりはない、とは言い切れんがな」
そしてビアンは、しばし、今生の別れとなった実娘リューネの事を想い、固く口を閉ざした。
*
アメノミハシラで補給と補修を終えたタマハガネは、ビアンとその護衛達を乗せてラグランジュ1に建設された工廠コロニー・アーモリー1を目指し出航していた。
アーモリー1への船路の途中、例のDSSDを襲ったゲストの部隊が襲撃してこないとも限らないのだが、非公式の会見でもある為いらぬ警戒をザフトに抱かせぬ為には護衛を増やすわけにも行かず、結局単艦での船旅だ。
ただでさえ目立つスペースノア級を運用しているのに、今さら隠そうとする行為に何の意味があるのかと言われれば、さて答えに困るが。
それでもDC特製ステルスシェードやミラージュコロイドの実装でステルス能力に関しては完璧に近い。プラント側からの迎えの部隊と合流するまでは、ステルス機能を最大限に使用しているから滅多な事では襲撃は受けないだろう。
その船内では、アウルやスティング、ステラ、シン、ロックオンらが展望室でのんびりとしていた。今はグローリー・スターの三人とアルベロが警戒態勢に入っている。
レントンのコンビニで買ったドリンクやホットスナックをお腹に納めつつ、これから向かうアーモリー1や会談の内容について話の花を咲かせていた。
先に口を開いたのは、この世界の詳細な事情に疎いロックオンだった。
マティアスの下で働いている間に表と裏の事情は知っていたが、DCとプラントとの間でどんな盟約が結ばれているかは知らないし、アーモリー1にシンの乗機インパルスが関連しているという噂も耳にしたからだ。
「ところで、アーモリー1がどういうところか聞かされているのか、シン。お前さんのインパルスとなにかしら関係があるんだろ」
「えっと、確かインパルスがDCとザフトで共同開発しているんだけど、ザフトが開発しているのがアーモリー1で、多分、その成果の報告会とか発表をするんじゃないかな。あわせてプラントでも新型MSの宣伝も行うって報道関係に連絡行っているし」
「へえ、力を誇示して戦争の抑制を、ってところかねぇ?」
どこか物憂げにロックオンは言って、右手に持ったコーヒーを一口含んだ。ステラは二人の会話に興味が無いのか、もくもくとお菓子を口に運んでいた。セツコの買い物に付き合っているうちに買い食いする癖がついたのか、最近ではお菓子をよく持ち歩いている。
パック入りのレモンティーを口に運んでいたスティングが口を開いた。口にするのが明るい話題ではない為か、あまり愉快な様子ではない
「プラントにもDCの技術が流れているからな。核動力機が当たり前になったし、ソフトもハードも格段に性能が向上している。前の時みたいに性能の差で押し切る事は出来ないだろうさ。もっともいまのところは味方だけどな」
「まあねえ、プラントも連合も前の時に作ったスーパーロボットは敵に回したら手強いぜ。ガルムレイドと、WRXだっけ? あとテンザン大尉のとおんなじヴァイクル。あれの数揃えられた面倒くせえや」
アウルが口に出したのは、前大戦時すでに核融合ジェネレーターやプラズマジェネレーターを搭載していた機体で戦っていたシン達を相手に、同等以上に渡り合った相手だった。
最新の技術で強化されたそれらの機体の配備が進めば、多量の出血を求められるのは間違いない。国力の増大に伴い、DCでもビアン主導の下数々の特機をはじめとした規格外機動兵器などの開発が行われているが、それでも不安は残る。
「確か、DCの勢力が増した影響で大洋州連合政権が親プラントからDCよりになってきている影響で、プラントとの関係も微妙なんだろ? 今ザフトが地上に持っている拠点はジブラルタルとカーペンタリアだけだ。
へたすりゃカーペンタリアを失いかねないし、食料や地上資源の輸入を頼っている大洋州連合との関係が悪化するとなれば、プラントもDCにいい顔は出来ないよな。最悪の場合になったら、これからアーモリー1でお披露目される新型とも戦うってわけだ」
「いやな事言うなよ、ロックオン。おれらさあ、前大戦の時にザフトの連中と共闘したから顔見知りだっているんだぜ? 実力もおれら並みの連中だったし、戦場で対面なんてまじ勘弁」
「はは、悪いな、アウル。だけどな、DCが世界統一を標榜している以上、いずれプラントとも事を構えるのは間違いないんだ。嫌なのは分かるが、最悪の事態位は想定しておかないとな。分かるだろ?」
「そりゃあ、ロックオンの言う事も分かるけどさぁ」
苦い表情と声に変わるアウルを見て、それまでお菓子に夢中だったステラが隣のシンの顔を見上げた。なに? とシンはステラの瞳を見つめ返す。きらきらと光る瞳は、初めて会った時と変わらぬ愛らしさだった。
「ルナとも戦う事になるの? それは……いや」
「そう、だね。おれもルナやレイと戦うのは嫌だな。大丈夫だよ、ビアン総帥が上手くやってくれるさ」
ロックオンの言う事は確かで、DCとプラント間で戦端が開かれる可能性は決して低くはない。前大戦時は肩を並べなければ地球連合に対抗するのが難しい状況であったが故に、現実性の低い話題だったが、今は違う。
ステラの不安が我が事も同然に分かって、シンは本当にそうなってしまった時、自分が果たして戦う事が出来るかどうか分からなかった。
DCに加わる前も後も正規の軍人教育というものにあまり縁の無かったシンには、もしルナマリアやレイと敵対して戦場で相対した時、戦えと命じられても戦う事が出来るかどうか、答えを出す事は極めて微妙な問題だった。
仮に、二年ほど軍の教育を受けていたとしても、シンの生来の気性を鑑みれば、時に軍規よりも自分の感情に大きく流されて行動するのは間違いないだろう。
だから、答えの出ないシンは困った時にいつも救いの手を差し伸べてくれたビアンの名前を出して、ステラの問いから逃げた。ビアンに対して父性を求め、絶対的な信頼を寄せるステラにとって、その名前は無条件で信じられるものだったからだ。
シンは、その事を分かった上でビアンの名前を出した自分を、卑怯者だと恥じた。
シンとステラのみならず、アウルやスティングまで揃って渋面を浮かべる様子に、ロックオンはくすりと小さな笑いを零した。思った以上に自分の言葉は彼らを困らせてしまったようだ。
顔を知っている他人との戦いに躊躇する様子を、軍に所属しながらこうも表面に出すのは、シン達が若いからなのか、甘いからなのか、そのどちらのようにも思えた。
「あまり深く考えるなよ。まだ、プラントと戦うと決まったわけじゃないんだ」
そうフォローをいれるものの、優しい奴は戦争には向いていないとロックオンは思う。たとえば、生前の世界で同じガンダムマイスターとして活動していたアレルヤ・ハプティズムがそうだ。
ソレスタルビーイングの理念の下ガンダムを駆り、武力介入を行って数多の命を奪い続けても失われる命に悲しみを覚え続けた青年。かつてアレルヤが覚えた痛みを根絶する為に、心を切り裂く罪悪感や悲しみと共に戦い続けたアレルヤ。
力さえなければ、痛みさえ知らなければ、あの青年はソレスタルビーイングになど協力しなっただろうと思う。
多分、ステラやスティング達もおなじだ。シンを除いた三人は全て地球連合の人体実験の犠牲者たちだ。それをビアンに救われ、救われた命をビアンの為に、自分達の様な存在を生み出さない為に戦っている。
一般の家庭に育ったシンとて、前大戦時はオーブに住む家族を守りたいからと自分の手を血で汚し、退役が許可されたにもかかわらず今もDCに軍籍を置いている。
手を濡らす血に報いるためにはどうすればよいのか、まだ十六だと言うのに悩み続け、その答えが戦いの果てに在ると考えているのかもしれない。
先のトロヤ・ステーションで戦闘では、目の前の少年少女らの高い戦闘能力を目の当たりにして驚いたが、今は彼らの冷徹になりきれない精神にやるせないものを覚えていた。
戦争などなければ、MSの操縦桿を握る事も、より効率よく人を殺す術を教えこまされることなどなかったろうに。
そう、ニール・ディランディは思う。そして武力介入による紛争根絶を是としたロックオン・ストラトスは、この世界での紛争根絶――少なくとも地球圏の統合にはDCに協力する事は妥当なものだと判断している。
併合した各勢力との足並みを揃えるのにいささか苦労してはいるようだが、ナチュラル・コーディネイターを問わず人員を引きいれて国力の増大を狙い成功させ、これまでの常識を覆す数多の技術を有し、それらが反映された超高性能な兵器群の数々。
大西洋連邦や東アジア共和国、ユーラシア連邦間での不協和音が大きくなり始めた地球連合や、国力が乏しいプラントらに比べれば、世界の覇権に手を掛ける位置にかなり近いといえた。
もっとも、それは地球圏に潜む悪意の影を知らぬが故の判断ともいえた。コズミック・イラに生まれ育たざる無数の命が地球圏に息吹を潜めている事を知る者は、まだ少ないのだ。
今考えてもしょうがないけどさ、とアウルが零しながら、廊下の向こうから姿を覗かせたティエリアとデスピニスに気づいて声をかけた。ティエリアはあまり自室を出ずクルーとの交流も少ない。
というよりも誰かと連れだって出歩いている光景そのものが、珍しい事といえた。ティエリアは相変わらず感情が通っているとは思えぬ作り物の様な美貌を、ピクリとも動かさず、代わりに傍らのデスピニスが小さく頭を下げた。
「二人が一緒なんて珍しいな。デスピニスは何か飲むか食べる?」
「あの、結構です……。ありがとうございます」
いつもより少し優しい声のシンに、デスピニスは遠慮がちに断った。ティエリアはそのまま立ち去りたい様子だったが、それを目ざとく見つけたロックオンが引き留めた。生前でもなかなか手を焼かせるぼうやだったが、こちらでは幾分壁が厚い様な気がする。
「ティエリアもすぐに部屋に戻ろうとしないで、すこし話でもどうだ? この間の戦闘での連携とかでも、なんでもいいぜ。なんなら、好きな女性のタイプとかでもな」
「必要性が認められない」
「そう固いこと言うなよ」
眉間に深い皺を刻んで厳しい声を出すティエリアに、ロックオンはからかうように肩をすくめた。繰り出した軽いジャブは、予想以上に相手の癇に障ってしまったらしい。今度はもう少しティエリアが興味のありそうな話題に変えるとしよう。
「お前さん所の会社で、ザフトの新型MSについて何か情報は入っていないのかい? たとえば、シンのインパルスのザフトバージョンとか、さ」
「さあ? プラントの報道機関や一部のフリージャーナリストがすでに招待されているそうだ。彼らに聞いた方が早いのではないか」
「それじゃあ、現場に着くまでお預けも同然だな。まあ、アヘッドもエルアインスもいい機体だ。単純に性能で言ったら、滅多な事じゃ負けないだろうけどな。お前さん所の会社もこれからの状況に気をつけないと潰れちまうぞ」
「大きなお世話と言う言葉を知っているか? ロックオン・ストラトス」
「分かったよ」
わずかにむすっとした声音で告げるティエリアにロックオンは苦笑する様に詫びる。かすかではあるが、感情の動きが顔や声音に出ている。他人との間に壁を造るティエリアだが、コミュニケーション経験が足りない所為で良くも悪くも自分の感情を偽る事が下手だ。
ロックオンは、さして気にした素振りもなく肩を竦めたきりだった。これから長い付き合いになるのだろうから、気長にやるさ、とでも言った所か。
*
星明かり煌めく黒の帳に浮かぶ、白銀の砂時計が目視できる距離になり、やがてシン達にも呼び出しがかかった。警備の為にアーモリー1近海に出撃しているザフトの部隊を眺めながら、タマハガネはアーモリー1に接舷した。
滑る様にピタリとドックに収まるまでの過程は、クルーの錬度の高さを匂わせる。タラップを踏んで降りたビアンの周囲に、木刀“阿修羅”を紫染めの竹刀袋に納めたシンとステラ他護衛の兵が着く。その他のメンバーは万が一に備えて船内で待機中だ。
懐に銃器を忍ばせた護衛達と違い木刀のシンの姿はどうにも浮いていて、迎えのザフト兵やプラントの関係者からは奇妙な視線を集めていた。
その様子をタマハガネの艦橋の艦長席に座ったまま眺めていたエペソは、くくっと小さく笑った。そんな視線にすっかり慣れたシンは動揺した様子はないが、それを迎えたザフト側の動揺がおかしいのだ。
携帯サイズの高振動ブレードかヒートソードを隠していると勘ぐっているかもしれないが、中身が木刀だとわかったらさぞや呆れるだろう。まだ本調子とはいかなくともシンが振るえば、防弾ベスト位なら容易く貫通し斬り裂く木刀ではあるが。
シン達は砂時計型のプラントの中央部へ向かう昇降用のエレベーターに乗り、案内係の者が眼下に広がるプラント内部の光景の説明を始めるのを耳にしていた。食糧事情に危機感を覚えている筈のプラントにしては、何と言うかのどかな“自然的”な光景だ。
生産効率を重視した人工的な光景が広がっているわけでもなし、まあ、工廠コロニーなのだから当然と言われればそうだが、その割には施設ばかりと言うわけではなくそこらに森林や小さな湖さえある。
効率重視の艦橋でないのは居住者の精神衛生に気を使ったものかとも思われたが、あるいは調整されたコーディネイターの遺伝子の中に、人類発祥の地である地球への拭いがたい憧憬の様なものが刻まれていて、それがこのような光景を造らせているのかもしれない。
シンは、実はプラントって余裕あるのかなあと首を捻り、傍らのビアンの表情をのぞいてみた。はたして自軍の総帥はこの光景にどんな感慨を抱いているのだろう? と気になったのだが、表情を変えた様子はなかった。
瑣末な事と考えもしていなのか、それとも心中に思う所はあるが表に出してはいないだけなのか。いずれにせよ、この光景を破壊する未来にならない事を切に祈った。そうならないとは言い切れぬ事への不安が、黒々と胸の中に生まれていた。
やがて、ビアンとの会談の相手との面会になった。政界から身を引いたパトリック・ザラ前議長に変わり、新しくプラント最高評議会議長となったギルバート・デュランダルである。
黒髪を長く伸ばし、三十代半ば頃と思える白い顔立ちは穏やかさに満ちている。クライン派よりと目される政策をとってきた人物だが、その笑みの下に何を隠しているのか、今はまだ知る術が無い。
差し出された手をビアンが握り返し和やかな雰囲気で話を始めた。現在の友好的な関係が破綻しかねない要素こそあるが、表面上そのような事情を匂わせない二人を見て、シンはつくづく腹芸とか、政治の道には自分が向かないなと思う。
ザフトの新型主力量産機であるザクウォーリアや、砲戦MSであるザウートの後継機ガズヴートが、旧世代の機体に混じって並ぶ軍事施設の中を揃って歩き出す。
ザクとは違う新型MSと新造艦の進水式が執り行われる関係で、居並ぶMSに実弾は装填されていないだろう(ビーム関係の兵装はまた別かもしれないが)。
緑色の装甲を持った単眼の巨人達の足の間を歩きながら、シンはつぶさに周囲を観察していた。ザフトの新型MSに注意を向けているのが三分、どこかに潜んでいるかもしれない暗殺者に対する警戒が七分。
リハビリを終えた後に、勘を取り戻す為にゼオルート=ザン=ゼノサキスやもう一人の師匠とは別に、教えを乞うた戴天流剣法の成果もあって悪意に対する知覚能力は全盛期に近いレベルにまで戻っている。
七百メートル先からの狙撃位になら辛うじて反応できる程度だ。音の壁を越えて飛んでくる弾丸をはたき落とすのは無理だが、弾道を察知して回避したり、ビアンの盾になる位はできる。
ステラやそのほかの護衛達も、軍服の下に前大戦時のビアン暗殺未遂の際に使用したメカニック・ウェアを待機状態で着こんでいる。奥歯の上に被せたり爪の隙間に仕込んだスイッチを押せば百分の一秒で晒している頭部までカバーできる。
メカニック・ウェアの機能をフルに活用すれば、アーモリー1内部に常駐しているザフト兵を皆殺しにする事も決して不可能ではないはずだ。
シンやステラが周囲を警戒している間に、デュランダルとビアンは話題を共同開発したインパルスに変えていた。当のDC側のパイロットであるシンが同道していたからかもしれない。
「DCから供給された技術を応用してインパルスは革新的な機体となりました。ビアン総帥にお見せしても恥ずかしくない水準に達していると思います。開発スタッフの技術の結晶ですよ。さあ、これが我らのインパルスです」
「機体の外見そのものには手を加えらなかったようですな」
やがて奥まった場所に在る倉庫の中へと入り、厳重なセキュリティの先にザフトで開発されたインパルスが待っていた。
チェスト、レッグ、コアスプレンダーが既に合体してMSの形を成している状態だ、通す電圧によって色と強度が変化するVPS装甲は、今は灰色に染まり、搭載されたプラズマジェネレーターが停止状態である事が分かる。
外見上の変化は見られないが、背部に装備されるシルエットの方が見当たらない。飛鳥シルエットのみがロールアウトしているDCと違って数種類が完成している筈だし、集めた記者団には既に披露している。
実際にDC側にもその情報は入ってきている。プラントと招待されたジャーナリストの中に潜り込ませた諜報員からデータだけは得ている。ただしこれはあくまでビアンなどインパルスの開発に関わった者の目にだけしか触れていない。
パイロットであるシンがまだ具体的な仕様を知らないのは、実物を前にするよりも早く詳細を知らせて、いたずらに先入観や対抗意識を抱かせないほうがいいと判断された為だ。
ビアンがインパルスを眺め、技術スタッフに説明を受けている時、シンはインパルスの足もとに、ザフトの赤服姿がある事に気づいた。ザフトインパルスのパイロットであろう。
蒼白いウェーブヘアの女性だ。大きな瞳にきりりと引き締まった小さな唇。大粒の真珠の様に美しい瞳はビアンとデュランダルを前にいささか緊張しているように見えた。タイトスカート姿のザフトレッドに、シンとステラは見覚えがあった。
ビアンとデュランダルに敬礼するそのパイロットは、かつてサーベラスのパイロットとして活躍したアクア・ケントルムその人だった。あの恥ずかしいDFCスーツの犠牲者達の一人だった女性だ。
タイトスカートからすらりと伸びたストッキングを履いた足や、抑えきれない乳房に押し上げられた軍服姿がひどく新鮮、あるいは見慣れないものでシンとステラは一瞬誰だろう? と判断に困ったくらいだ。
後ろ姿はまだしも、体の前面は常にボンテージと水着を足して二で割ったようなDFCスーツであられもなく肌を晒していたから、露出が減って刺激のずいぶん薄らいだ姿のはずなのに却って美しさを際立たせていた。
アクアもシン達に気づいた様で、ちらりと視線を向けて小さく微笑んだ。すぐにデュランダルがビアンにアクアを紹介する。
「彼女が、インパルスのパイロットを務めるアクア・ケントルムです。ヤキン・ドゥーエ戦役を戦い抜いた勇士で、実に優秀なパイロットですよ」
「すでに正式にパイロットに? 他の機体も決まっているのですかな?」
「いえ、現在はインパルスのみです。ただ、他の機体に関しても現在テストパイロットを務めている者達が正式にパイロットとして任命するとは思いますが。そういえばDCのパイロットは?」
「正式な紹介はまだでしたな。我々DCのインパルスのパイロットは、彼です」
「シン・アスカ少尉です」
「若いな。今のザフトの兵士も若いものが多いが、君はいくつになるのかな? コーディネイターかね?」
「は、コーディネイターです。年は十六であります」
ちなみにアクアは二十五歳である。十歳近く離れている事実を突き付けられて、微妙に傷ついているのが、シンの視界の端に映っていた。相変わらず自分より年下のパイロットがいると地味に傷つくらしい。実に子供っぽい。
自軍のパイロットに無意識に精神的ダメージを与えるきっかけを作ったとは知らず、デュランダルは柔和な笑顔のままシンに質問を重ねた。
「すでに実戦は経験しているのかね?」
「はい。前大戦の地球連合のオーブ侵攻戦が初陣です」
「ほう、それはすごいな。では十分にベテランと呼べるわけか。インパルスのパイロットに選ばれるだけの事はあると言ったところかな」
「ありがとうございます」
口数少なく応答するシンの内心はひやひやものだった。どうにもこう言うお偉いさんとの会話に慣れていないのだ。ビアンとは近所の愉快なおじさんと言う初対面の印象がある為に、別に緊張する事もない。
今にもボロが出るのではないかと、表には出さずにびくびくしているシンは、はやくデュランダルとの会話が終わらないかな、とこっそりと、しかし強く願った。
*
新造艦の進水式に招かれたプラントのセレブリティや軍関係者、報道機関の人間がごった返すアーモリー1の居住区を、だらだらと練り歩く四つの人影があった。
周囲の賑わいになんの興味も見せずに歩き続ける彼らの向かう方向には、アーモリー1の軍事施設があった。その途中でアーモリー1に潜伏していた協力者と落ち合う予定だった。
道の向こうから走ってきたザフトの軍用ジープが、彼らの傍らで止った。緑服の女性が運転席で、人影達を迎えた。艶やかなピンク色の髪を長く伸ばした女性だ。
受精卵段階での遺伝子操作でいくらでも容姿を調整できる(完璧にではないが)コーディネイターでも、そうはいないくらい見事なスタイルの持ち主であった。
片腕で抱きとめられそうな位の細腰なのに、ほっそりとした首との間に存在する双房は子供の頭くらいあるのではないかと言う位大きく、ロケットのように突き出ていた。
ほっそりと長く美しい指が揃えられて敬礼の形を取って、猫科の動物を思わせる瞳がいたずらっぽくウィンクした。陽気な性分なのだろう。ウィンクされた方が思わず見惚れるほどに、陽気さと美貌との釣り合いが取れた仕草だった。
手早く四人が乗り込んだのを確認して、ジープがゆっくりと走り出す。軍帽から零れた髪を、ゆるやかになびかせながら運転手の女性が口を開いた。気やすい声の調子は、敵地の潜入にも対して重圧を感じていないようだった。
「チーム・ジェノバのセレーナ・レシタールよ。短い付き合いになるでしょうけどよろしくね。ところで、貴方達ってファントムペイン? 青き清浄なる世界って奴なわけ?」
「け、好きでやっているわけじゃねえよ」
四人の中で最年長と思しい金髪の青年が、苛立たしげに答えた。他の三人は沈黙を維持したままだ。貴族的な印象を見るものに抱かせる端麗な顔立ちだが、粗野な仕草の青年はセレーナの隣の助手席で足を組んで、今回の任務への不満を表情に出していた。
元地球連合最精鋭部隊“ω特務艦隊”所属のオルガ・サブナックである。スウェンらと同様に、新しくブルーコスモス盟主となったロード・ジブリールに、前盟主ムルタ・アズラエルの息のかかった人材として厭われ、捨て駒として各地を転戦してきた。
今回のアーモリー1潜入及び新型MS奪取にしても、失敗してもプラントの警備をかいくぐり一打を浴びせられればそれでよしと、オルガ達が生還しなくとも良しとされて命じられたのだ。
そのことを理解しているだけに、オルガは不平不満を隠そうともしない。幸か不幸か、今では薬物の摂取を必要とする期間が長期化し、潜入任務をこなせるほどに判断能力が戻っていたが、それ故に自分達が生死を厭わず利用される現状が理解できてしまった。
自分達だけでなく、レフィーナ・エンフィールド中佐やナタル・バジルール少佐、カイ・キタムラ少佐達も同様で、それぞれが本来属する国家に戻るか、戦略的に大した価値の無い場所に左遷されていると言う。
かつての仲間達が冷遇されている実情も知っている事が、オルガの精神に常に不快感を抱かせているのだ。
MSに乗って敵を思う様に蹂躙し、破壊する時に感じられる破壊の悦楽は相変わらずクソッタレた人生で数少ない楽しみではあり、これからそれを思う存分堪能できると知って居ても、不満の熾き火の方が暗く心中で燃えていた。
「おら、シャニ、クロト、いい加減ゲームと音楽を聴くのを止めやがれ。お膳立ての後に乗り込むだけだが、つまらねえミスはするんじゃねえぞ」
「うるせえ」
「……」
オルガ同様に今回の任務に乗り気でないクロトは携帯ゲーム機の電源を切ってポケットにしまうとすぐにそっぽを向いてしまう。シャニは閉じていた瞼を開いてオルガを睨みつけてから、しぶしぶとした様子でイヤホンを外した。
最近お気に入りの、ジャーマンメタル様式美をの流れをくみながら、メタルスラッシュの暴力性も兼ね備えた希代の技巧派グループ、TEPESの圧倒的で容赦のない音の暴力に身を委ねていたのに、つまらない現実に引き戻されてシャニもまた不満げだ。
そんな三人の様子に、セレーネは本当にこいつらで大丈夫なのかとふと不安になった。特に気になるのが、この三人と同行していた四人目だ。後部座席でクロトとシャニに挟まれて窮屈そうにしている十歳かそこらの女の子だ。
セレーナの髪よりも発色の明るいピンク色の髪を短く切りそろえて、愛らしいがそれ以上に体と心の奥から溢れんばかりの活力を輝かせた、溌剌とした印象を受ける女の子だ。独特な意匠の衣服を身につけて、どっかと椅子に座りこんでいる。
不平不満を表す様に唇を突き出している仕草がいかにも年相応に見えて、セレーナは笑いをこらえなければならなかった。ただ、この女の子が感じている不平や不満と言うのは、シャニやオルガ達が捨て駒の自分という立場に対して抱いているのとは違う様だった。
「何か、気に入らない事でもあったかしら、お嬢ちゃん?」
「別に、何でもないわよ。後、あたいはお嬢ちゃんじゃなくて、ティスよ。ティ・ス!」
「はいはい、分かったわよ。お嬢ちゃん」
「ティスだって言ってんでしょ」
「あらごめんあそばせ。ティスちゃん」
「まったく!」
単純なからかいに乗ってくるあたり、中身も外見とそう変わらないようだ。あるいはそう思わせる為の演技かもしれないが、いずれにせよ、こんな年端もいかない少女が危険な任務に同道しているのか、セレーナの理解の外だ。
知ろうとした所で、セレーナが得られる回答など、知る必要はないかそれに似た言葉でしかないだろうけれど。
セレーナの胸中は知らず、ティスは心の中でロード・ジブリールに対する愚痴を零していた。
デュミナスの命に従って様々なデータを持参して彼のもとを訪れたティスであったが、ジブリールからはその外見の所為で初対面から今に至るまで侮られ続け、与えられた立場が、ジブリールに疎まれて廃棄される寸前だったオルガらの監督役だった。
前盟主の匂いを徹底的になくしてしまおうとするジブリールが、臭いものに蓋を、とばかりに、あるいは都合の悪いものをまとめて監視しておくためにオルガ達とティスを一緒くたにしたのだ。
言う事は聞かないわ、文句ばっかり言ってくるわ、その癖機動兵器の操縦技術の腕は確かなオルガらの上司という立場に、ティスは赴任初日から怒り心頭の日々を送り続けていた。
あのジブ公め、あたいを何だと思っているのだ。デュミナス様に協力を命じられなかったら、あんな奴の言う事なんて聞かないで、キン○マ蹴り潰してやるのに。別行動中のリヴァイヴとヒリングがうらやましい……。
ティスが歯ぎしりの音を立てかけた時、目の前にザフトの基地のゲートが映った。さあ、そろそろお仕事の時間だ。
規制入った?
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ビアンとデュランダルが話をする傍ら、シンとステラは久方ぶりに再会したアクアと話しの花を咲かせていた。
周囲を憚って小声ではあったが見知った顔と出会えたお陰で、デュランダルとの会話で肩が凝る思いをしたシンには、リラックスする丁度いい機会になった。シンは、アクアの軍服姿を見てからこう言った。
「アクアさん、あのスーツはもう着ないんですか?」
「よくぞ聞いてくれたわ。前の戦いの時に、エルデ・ミッテが暴走した関係で彼女が開発したターミナス・アブソーバーとかの研究・開発計画が凍結されてね、私はお役御免になったのよ。
それから別の部隊でしばらくお世話になったんだけど、前大戦時での戦果を見込まれてインパルスのパイロットに抜擢されたってわけ」
「ターミナス・エナジーってたしかWRXでも使っていましたよね? レイやルナ達はどうしたんですか?」
「WRXチームは幸いと言うか、そのまま残っているわよ。時々メールで現況を報告とかしてくれるし、元気にやっているみたい。こことは違うどこかで新型の開発に従事しているそうよ。会えなくて、残念ね」
「はい」
「レイやルナに会えないの、さびしい」
ステラは相変わらず可愛いわねえ、とアクアが目尻を優しげに下げた時である。唐突に耳をつんざく爆音がアーモリー1を内部から震わせ、けたたましいアラームと戸惑う人々の怒声が飛び交い始めた。
シンは反射的にビアンの周囲へと駆けもどって竹刀袋から覗かせた阿修羅の柄を握る。ステラや他の護衛達もメカニック・ウェアのスイッチを何時でも押せる状態だ。
ビアンがことさら鋭い瞳でデュランダルを見て事態を問いただした。
「デュランダル議長、これは?」
「おそらくは、敵襲です」
初めて柔和な笑みを取り払い、デュランダルは険しい顔色を浮かべてそう告げた。また一つ、近くで大きな爆発の音がして、格納庫の中のスタッフが通信機で状況を問い合わせている。その会話の一部を、シンの耳は拾っていた。
「なに、ガイアとカオス、それにアビスが奪われた!? ばか野郎、なんで実弾を装填している! あれらは今回見せるだけだろうがっ」
アクアがパイロットを務めるザフトインパルス以外の新型機が三機、なにものかによって強奪されたのだと言う。デュランダルが側近たちと何事か言い交わしている間に、シンがビアンにその事を告げる。
「……そうか。おそらくは外にも敵が来ているな。デュランダル議長」
「なんでしょうか、ビアン総帥」
「港で待機している我々の部隊を動かしたいのですが、許可をいただけますかな?」
「それは……いえ、状況が状況です。仕方がありますまい。ですが、出来得る限りアーモリー1内での戦闘は控えていただけますか?」
「最大限善処しましょう」
「では、こちらへ。近くのシェルターで有害なガスが発生してしまった様で、いささか遠くはなりますが、安全な場所までお連れします」
「よろしくお願いする。シン、ステラ、頼りにするぞ」
「はい」
「うん」
デュランダルの案内の下、シン達が移動を始めたころ、アーモリー1では起動した三機の“G”が好き勝手に暴れ回っていた。オルガ達を事前に制圧しておいたGの格納庫まで送り届け、任務を終えたセレーナは無秩序に暴れるGの様子に半ばあきれていた。
「まるで癇癪を起した子供みたいね
「セレーナさん、そんな事を言っている暇があるなら早く退避しないと。体調達に合流しないと置いてけぼりにされますよ」
「分かっているわよ、エルマ。いちいちお小言を言っていると、舅みたいって言われるわよ」
「言わせているのはセレーナさんです」
向きをターンさせて、事前に決めていたポイントへとセレーナはジープを走らせた。先ほどまでオルガが座っていた助手席には、ペットロボットか何かと思しい物体が鎮座していた。
円錐状のボディの左右に涙滴の様な羽根が一枚ずつ。頭部は円盤に近い形をしており楕円のカメラアイと思しいパーツが二つあった。チーム・ジェノバに試験的に導入された最新の人工知能搭載のサポートメカのエルマだ。
今回の任務にあたり、ザフト側のネットワークへのアタックを担当しセキュリティを欺く役を無事務め果たしていた。
先ほどまではジープの荷台でシートを被されていたのだが、オルガらが機体のコクピットまで辿り着き暴れ始めたので、晴れて助手席に映る事が出来たのだ。
「あとの事は私達の任務外。外で待っているファントムペインの連中が勝手にやるはずね。エルマ、しっかり掴まっていなさい。落ちたら拾ってあげる余裕はないわよ」
「あんまり乱暴な運転はしないでくださいね」
一気にアクセルを踏み込まれて加速したジープの背後で、ひときわ巨大な爆炎の花がアーモリー1の人造の空を黒煙で染め上げていた。
つづく。
規制にひっかかりました。ちょっと遅くなりましたが残りの分です。また後継機などのアイディアたくさんありがとうございました。色々と検討して今後に反映させていただきたいと思います。
スパロボ学園マジネタかよwww
総帥乙です。
ますます空気が不穏なことになってますな。
ユーラシアの魔装機計画(カークスはカタロン側ですからまさか……ラセツ辺りか?)、
東アジアのバルトール(惨劇再び?)、そして生きてたのかよ爺婆コンビ!?
更にアルヴァトーレ+アルヴァアロンに“木星で取り逃がしたあの男”の遺産とか……
GN動力機も順次開発されてるようですが、これらがロックオンや刹那たちに手に渡ることがあるのか、
そして批評家は知っちゃいけない知識(SAN値的な意味で)を知ったらどうするんだろとか、
更に更に廃棄寸前とまで言われてるオルガたちや、α3では壊滅していたチーム・ジェノバの今後とか気になります。
次回も楽しみにしております。
……あ、アクアさんは水着脱却おめでとうございます。
おつでしたー。
ザフトTEA凍結かよ!、というMX好きの嘆き。イグナイトが…。
おあずけで済めばいいけど。凍結解除どころか既存機まで解体とかされんことを願います。
連合は…量産ガルムレイドが現役っぽいから比べればブレイズの望みはあるかな。
アクアinインパルスはブラスト愛用なのだろうか。…地獄の番犬的な意味で。
乙でしたー。
……前半の連中による、原作並みの死亡フラグ乱立に苦笑を浮かべてしまいました。
次回行われるだろう、二機のインパルスの共闘(?)を楽しみにしてますね。
OTUです
・・・やっぱ生きてたかアードラーと(見た目は)綺麗なアギラ
そしてヒヒョーとボンズリ
このクリティックは一週目でしたっけ二週目でしたっけ
どっちにしろ金事務の人と同じような末路を辿りそうな予感
それでもボンズリが仲間にとかは想像も出来ませんが
>>579 SAN値的にはまぁ多少数値の羅列が出鱈目になったりするんでしょう
しかし、ルイーナだけだと案外ヴォルクルスの眷属より生易しく感じますな
660氏の描写力の賜物というか、前期のヴォルクルスの与える絶望感は半端なかったですから
そういやイディクスの連中とか、下手すれば完璧さんに取り込まれるんじゃ・・・
続き楽しみに待ってますよー!
さりげなく戴天流剣法とか書いてあって噴きましたw
つまりシンはこれで生パルマ(電磁発勁)を撃てるようになったということかw
シンの三人目の師匠がタオローなのか豪軍なのかが気になるぜ(師匠にするには狂う前の豪軍の方が適してると思うけど)
ユーラシアの魔装機開発にしてるのってラ・ギアスで魔装機に脳みそ組み込んだ爺さんだったりしないかな?
あの爺さん、剣聖の脳みそのおかげで終盤はえらく強くなったんだよな……
まさかの戴天流剣法登場にワロタwニトロ+繋がりかwww
しかしあれって秘奥儀が確か超高速の連続突きだから
示現流よりの一撃必殺剣なシンではやや相性が悪い気もするなぁ
>>585 あぁ、ゼツいたねぇそういや。
>>586 そこはこう、月華の剣士のように剣質「力」「技」の切り替えが出来るんだよきっと。
なお両方の良いところ取ろうとする(「極」)と防御がおろそかになる。
>>586 ビアンSEEDの最終戦で斬殺空間とかやらかしてる時点で、剣に関してはもうナンデモアリな気がする
あれ、ユーラシアの魔装機開発計画って、ビアンSEEDでチラっと言ってたバルツフィーム王国と周辺諸国が開発してる云々ってヤツじゃないのか
>>585 だがゼツ爺さん来てるならガッツォーの中の人は生身で登場してほしいと思っちまう
是非ゲーム中じゃ見れなかった、剣の極み×2が背中を守り合うCE無双を…!
最近真マジンガーの「感じてnight」を聞いて見たが、このスレのシンには実に合っているのではないかと思った。
お前だけが最高のnight お前ならば出来る
如何なる絶望にも屈せず、ただ一振りの刀を持って真っ正面から打ち砕きそうだ。
ゼツが出るのは確定だろうね
他ならぬ総帥自身が以前に、種死編でガッツォー出すって言ってたし
「スーパーロボット大戦轟」の一巻だけ買ったんだが面白かった
星薙ぎの破り方とか、星薙ぎの下から斬り上げるバージョンの「天の型 逆雷」とか
上の方でレオナの機体募集してたけど、やっぱ元ネタがAOZだっただけに、ズィーガーリオン・ウーンドウォートで
レオナならサイコ・インレも普通に乗りこなせそうだし
つかインレとかクインリィになるとジガンよりも遥かにデカいなw
ディバイン SEED DESTINY 第06話 “運命”の開幕
OSを立ち上げ、強奪したザフトの新型MSが今すぐにでも戦闘可能な状態である事を確認し、オルガ・サブナックはかすかに口の端を吊り上げた。
「量子触媒反応スタート、パワーフロー良好。全兵装アクティブ、オールウェポンズフリー……システム、戦闘ステータスで起動。面倒臭えな、立ちあげたらちゃちゃっと動きやがれよ、グズが」
アーモリーワンに潜入していたチーム・ジェノバをはじめとした特殊部隊の面々によって、格納庫に待機していた整備士やパイロット達のほとんどは絶命し、かすかに息のある者も迅速な処置が行われなければ、すぐにもの言わぬ死体と変わるだろう。
コクピットに乗り込むまでの間に肺に流れ込んだ血と硝煙の匂いに、背筋が震えるほどの興奮を覚えていた。オルガだけでなくシャニやクロトも同じだろう。
ブーステッドマンとしての性能維持に必要なγ―グリフェプタンを摂取しても得られぬ快楽が、頭頂からつま先まで妖しい疼きとなって駆け巡っていた。
前大戦時から受けた処置によって戦闘能力を維持し、判断能力の回復、禁断症状の緩和と劇的に性能を上げていたオルガ達だったが、戦闘に身を置くことで得られる快楽だけは変わらなかった。
ω特務艦隊に所属し戦っていた時も、これだけは変わらなかった。引き金を引くたびにモニターの向こうの敵が吹き飛ぶ光景は、いつ見ても、記憶の中の光景を思い描くだけでも胸のすくような気持ちになる。
果敢に撃ちかけてきた敵のビームや銃弾、ミサイルをかわし、回避の間にあわぬ敵のコクピットめがけて大出力のビームを撃ちこんで、敵パイロットを蒸発させた手ごたえを感じた時には、喉の奥から笑い声が溢れそうになる。
勝てないと悟って怯えながら逃げ惑う敵を、背後から撃ち抜き、生への執着を嘲笑うように撃墜してゆくあの時間は例え様もない悦楽の時だ。
そして、これからはその楽しくて楽しくて仕方が無い時間の始まりなのだ。
クローラーを震わせ機体各所のロックが外れ、電源ケーブルが外れる。起動シークエンスを終えて、鉄灰色に染まっていた装甲が機体の起動と同時に鮮やかに変色し、オルガが乗り込んだMSガイアに漆黒の装いを与えていた。
最新鋭機に相応しく動力にはプラズマジェネレーター、他にもテスラ・ドライヴを搭載している。オルガのパーソナルデータをたっぷりと記録したデータディスクを挿入し、TC−OSの一部書き換えが終了する。
これでオルガの癖を把握したOSが――インスタントではあるが――完成だ。格納庫の屋根を突き破って立ち上がったガイアの首をめぐらせれば、それぞれ機体の強奪と起動を終えた他の二機が見えた。
モスグリーンの装甲を持ち、背部にドラム状の装備を二つ背負ったカオスにはクロト・ブエル。ネイビーブルーの機体色と両肩に曲線を描くバインダーを持ち、右手に長大な槍を握ったアビスにはシャニ・アンドラス。
全員が無事機体強奪を成功させたのを確認し、オルガは手近な施設の破壊を行おうとビームライフルの照準を定めようとして、ガイアの足もとで騒ぐ少女の声に気づいた。
現在オルガらが所属する第81独立機動群ファントムペインの主ロード・ジブリールが押し付けてきた、小さくもやかましい上司ティスだ。周囲に転がるザフト兵の死体に動じぬあたり、見た目通りの十歳に届くかどうかと言う少女ではない事が伺える。
「こら、ちゃんと足元見なさいよ! あたいを踏み潰すつもり!?」
うぜえ、とシャニの口癖を心の中で呟きつつも、オルガは相手にしなかったらもっと面倒臭いと言う事を思い出して、鬱陶しげに外部スピーカーをオンにした。
「わりーわりー、あんまりちいせえんでアリンコかと思ったんだよ」
「だーれがアリンコだ! いーい、あんたらはしばらくザフトのMSを相手にしてからアーモリーワンを脱出すんのよ、あたいはちょっと用事があるからこっからは別行動するからね!」
「ああ? 聞いてねえぞ」
「あんたらは下っ端だからいーの。大佐には言ってあるから、あんたらは迎えの船と合流したらしばらく大佐の言う事聞いてな。じゃあ、うまくやんのよ!!」
そう言うや否や、風を切る軽やかな身のこなしで瓦解しつつある格納庫から去りゆくティスは、あっという間に小さくなっていった。
「スカートめくれてっぞ! ……ちっ、色気のねえもん見せやがって。おい、シャニ、クロト、適当に暴れてずらかるぞ」
「ていうかもう暴れているし。指示出すのが遅いよ、バーカ」
「うぅらあああ」
「けっ、だったらおれもそうさせてもらうぜ」
ティスと会話している間にも、カオスとアビスは搭乗者の容赦のない破壊衝動に従順に従って、周囲を地獄絵図に変えていた。
水中戦闘を主眼に置きながら、過剰なまでの重火力を誇るアビスが、両肩のバインダーを開けば色鮮やかな光線が放たれて、事態に気づいたザフトのMSや基地施設を次々と貫いてゆく。
強襲用MSだというカオスは、特に施設破壊にはうってつけで、背のポッドから無数のファイヤーフライ誘導ミサイルを射出して、瞬く間に瓦礫の山と炎の海を造り出していた。
たちまちのうちに戦場の様相を呈した周囲には、有毒ガスの漏出や二次災害が頻発して、犠牲者の数を加速度的に増やしている。
モニターに溢れかえる爆発や炎を、濁った瞳に映してオルガは上空に現れたディンやジンへとガイアのビームライフルを向けて、喜びと共に引き金を引き続ける。
前大戦時に使用していたカラミティも当時では最上位機種のひとつだったが、奪ったばかりのガイアは、技術の進歩を感じさせる機体だった。
まるでオルガの意思を汲み取っているかのように機体が滑らかに駆動し、パイロットであるオルガを喜ばせるかの様に、次々と現れる敵を葬る。プラント守護の為、ザフトの旗の下で作り出された兄弟ともいえる機体が戦い合っていた。
「はっはあ、全部ぶっ壊してやる!!」
*
オルガらが暴れはじめた頃、会談に赴いたシン達DCの面々はデュランダルの誘導で艦船ドックへと向かい始めようとしていた。腰に差した木刀“阿修羅”の柄に手を添えていたシンに、ビアンが声をかけた。
「シン」
「はい」
「お前は船に戻ってインパルスに乗れ。ザフトの対応が間に合っていないようだ。ずいぶんと入念に計画されていたようだな。根深い所に内通者がいるか……」
「でも、総帥の護衛は」
「ステラ達で間に合うだろう。それなりの装備も持たせているからな。これから議長に我々の部隊を動かす許可を取る。奪われた新型をここで取り押さえねば厄介な事になるかもしれんな」
ビアンの言わんとしている事が分かり、シンの顔が強張る。先のDSSD襲撃事件だけでなく、各国で増強の一途をたどる軍事関係と言い、キナ臭さが匂いたち始めた世界だ。どんな事が、いったん幕を下ろした戦争劇の再開を告げる鐘となるか分からない。
またひとつ、鼓膜を震わせる爆音と共に黒い煙が立ち上り、上空を飛んでいたディン二機が、カオスのビームライフルによって瞬く間にコクピットを貫かれて爆散した。炎を纏った破片が巨大な弾丸の如く降り注ぎ、逃げ惑っていたザフト兵の幾人かを押しつぶす。
ごう、と燃え盛った豪火にシンの影が長く人造の大地に投げかけられた時、シンは眦を険しく引き締めて決断していた。
「ステラ、総帥の事を頼む。おれもすぐに戻るから」
「……うん。シンの分も守るから、はやく戻ってきてね」
「ああ。絶対に!」
短く力強く告げるシンに、ステラは淡く微笑み返した。ステラが好きなシンの顔の一つだった。この顔を見る度に胸の奥が熱くなって、シンの傍にいたい気持ちと傍にいられる事の嬉しさが強くなる。
そっとステラの頬を撫でてから、シンはもう一度ビアンの方へと振り返って互いに頷きあってから、踵をかえしてタマハガネが係留されている港口へと駆けだした。
途中タマハガネに連絡を入れて迎えを寄越させるが、それまでザフトの部隊が保つかどうかが問題だが、そればかりはシンにもどうしようもない。一刻一分一秒でも早く、シンはそれだけを念じてひたすら走り続けた。
シンの背が徐々に小さくなってゆくのを見届けてから、ビアンとステラは自分達を誘導するザフト兵へと向き直り、DCから選抜した護衛の者達に周囲を固まらせて移動を始める。
アクア・ケントルムはビアンとシンが会話している間にデュランダルにインパルス発進の許可を取り付けていて、パイロットスーツを身につける手間を惜しんで既にコクピットに乗りこんでいた。
シルエットを装備する為に母艦へ戻る余裕はないから、アンチビームコーティング処理を施したシールドとビームライフルだけを急いで調達し、OSを立ち上げる。
インパルスの特徴である分離合体システムの要因たるシルエットなしでの初実戦を迎えると言う事実は、かすかにアクアの胸に不安の種を植え付けていたが、それでもこのインパルスと他のカオス・ガイア・アビスは、一線を画す機体だ。
パイロットであるアクアの技量が圧倒的に劣っていない限りは少なくとも撃墜される見込みは低い。現在ザフトを構成する兵の多くが新兵である事実を考慮しても、前大戦の最終決戦を実力で生き抜いたアクアの技量は、ザフトのトップエース級だ。
その実力とインパルスの性能なら三対一でも戦い様はあるはず。ベルトを締めて体を固定したアクアは、ビアンやデュランダルが既に移動を開始したのを確認し、周囲のメカニック達に注意を呼びかけた。
「インパルスを動かすわ。危ないから下がっていて」
数歩歩かせて格納庫を飛び出し、有毒成分の混じった煙と爆発の炎で溢れかえる外へと飛び出ると同時に、破壊活動に勤しむガイア、アビス、カオスをモニターに捉える。捕縛しようと動くガズウートやシグーなどの旧世代機は、射的の的の様に落とされて行く。
核動力搭載型の新世代主力量産機ニューミレニアムシリーズの、ザクウォーリアでもなければ相手にもならないようだ。
「性能だけじゃないわね、やっぱり腕利きが乗っている」
前大戦時の主力機であったゲイツのマイナーチェンジ機のゲイツRが、胴を真っ二つにされる光景を目の当たりにし、美しい形の眉を顰めてアクアはビームライフルの照準をガイアに合わせる。
ビームライフルの銃口から迸った大出力のビームに、ガイアは良く反応しABC処理済みのシールドで受けるも、あまりの出力に機体の姿勢が崩れる。
機体の動力をコアスプレンダーと飛鳥シルエットに搭載したプラズマリアクター二基に頼るのに対し、ザフトで開発されたインパルスはコアスプレンダー、チェスト、レッグ、シルエットそれぞれにプラズマジェネレーターを装備する。
シルエットを装備していないが、計三基のプラズマジェネレーターが生み出す膨大なエネルギーは、ガイアをはじめとした他の三機の新型を凌駕する能力をインパルスに与えていた。
姿勢を崩したガイアめがけて、さらに追撃のビームらを見舞おうとして、アクアはトリガーに添えた指を止めた。そもそもビーム兵器は流れ弾での施設破壊の可能性が極めて高く、防衛側の立場にあるアクアがおいそれと連射して良い武器ではない。
演習レベルの低出力にすぐさまエネルギーを下げながら、新たな敵の姿に気づいたカオスとアビスが、インパルスへ連続してミサイルとビーム、レールガンの砲口を向け絶えることなく破壊の雨を降り注がせる。
ついでに施設の破壊も行えて、強奪者からすれば何ら躊躇う必要が無い事は分かるが、腹の底から湧きたつ苛立たしさは変わるわけもなく、アクアはかわし切れぬ攻撃をシールドで受け流し、CIWSと低出力に抑えたビームで足元を狙って反撃を試みる。
互いにテスラ・ドライヴ搭載機とあってその運動性や機動性は前大戦時からMSパイロットを務めていたアクアやオルガらからすれば、信じられないほど優れている。
ほんの数十秒ほどの攻防で、アクアは敵の技量が自分に勝るとも劣らないレベルである事を悟っていた。いや、むしろ同等以上と評すべきか。なまじ自分自身が優れたパイロットであるだけに、良く理解できた。
せめてもの救いは三機の連携が拙いレベルである事だろう。カイ・キタムラの鉄拳教育によって人並みの連携意識を痛みと引き換えに学習したオルガ・シャニ・クロトであったが、カイの元から離れるやその成果も薄らいでいた。
「おら、オルガ、かわせよ!」
「てめっ、もっと早く言えよ」
「おらぁああ!!」
「シャニィイ!?」
オルガがガイアのビームサーベルで斬り掛かり、インパルスがシールドで受けた時を狙い、クロトはカオスのビームライフルとポッドに内蔵されていたファイヤービーミサイルをまとめてはなっていた。
本当にぎりぎりのタイミングでオルガに退避を告げるクロトに明確な殺意を覚えつつ、オルガはかろうじてガイアにバックステップを踏ませて回避に成功する。
アクアの視界から、ガイアの影に隠れていたカオスの行動に、ガイアの回避行動から察知したアクアは咄嗟にフットペダルを踏みこみ、タイムラグなしにアクアの操縦に反応したインパルスは大きく跳躍し、足元の空間に生まれた爆発に飲み込まれるのを回避した。
バックステップを踏んだガイアを踏みつけて、アビスがランスの穂先をインパルスへと向けて突進してきたのだ。踏み台にされたオルガは、歯を剥いて怒りをあらわにしながらガイアを無事に着陸させる。
砲弾よろしく襲い来るアビスの構えた穂先を、克明にアクアの網膜を写し取り、機体各所のスラスターの繊細な操作と、機体の四肢を用いた重心移動による回避機動で角度を合わせたシールドで受けてランスを捌く。
数十トンを超す質量の衝突に空中で大きくバランスを崩されて、数瞬空中でインパルスが無様に手足を泳がせた。
「やってくれるじゃないっ!」
デュランダルやビアンらが既にこの場から避難してはいるらしい事が、せめてもの救いだろう。はやく頼りになる味方が来てほしいと、ガイアの一撃で頭部を撃ち抜かれたゲイツRが轟音と共に倒れ伏すのを見ながら、アクアは痛切に願った。
*
『C.E.7×年。10/24――
コズミック・イラ73年に勃発した地球圏統一戦争から数年、プラント及び地球連合との戦争を戦い抜き、ついに地球圏の覇権を握ったDCが誇る第十三特殊任務部隊“ハウリング・ウルブズ”所属エリック・パーフィガーがここに記す。
我が愛すべき鋼の戦友、ガーリオンとの苦しくも懐かしき戦いの日々に誓い、私、エリック・パーフィガーはこれから記す事が事実であると前もって記述しておく。
その日、私は世界規模の大戦からの復興が進み、友好国であるガリア王国に駐屯しているハウリング・ウルブズの母艦スペースノア級万能戦闘母艦第十三番艦アオガネの甲板で、眼下に広がる鈴蘭の平原を愛でていた。
夏が過ぎて、秋が頬に心地よい涼しい風を運び、高度一〇〇〇メートルの位置にある私の所まで鈴蘭の香りが届いているようだ。薫風が私の切り揃えたプラチナブロンドの髪をそよがせてゆく。
ヘルメットを膝の上に置き、私は同僚のリオンファイター達が着艦してゆく光景を見つめていた。翡翠の粒子をまき散らしながらかすかな音と主に着艦してゆく彼らの手際は見事と言う他ない。
兵隊崩れの盗賊もどきとなった地球連合の残党たちや、脱走兵達も多くは更生ないしは掃討が進んでいた。このユーラシア地域に残る敵対勢力ももはや我々の力がいるほどの者達は皆無と言っていい。
すでに外宇宙へと旅立った他のスペースノア級で構成された調査船団の方がよほど波乱に満ちた時間を過ごしているに違いない。つい数年前の動乱を経験したものからすれば、贅沢とも取れる退屈な時間と言うものを、私が意識した時であった。
アオガネの前方の空間に白く発光する球状の何かが突如出現したのである。それは待機状態の、アオガネの艦首モジュール、超弩級エーテル光刃“ゴルンノヴァ”に接触し、私がコクピットのハッチを占める間もなくアオガネを吸いこんでしまったのだ。
唐突に光の嵐に翻弄されながら飲み込まれたが、幸いにも私を含むアオガネの搭乗員達は気を失う事もなく眼前に広がる光景を、認識していた。
網膜を焼き潰そう様な光に耐えかねて閉じた瞼を開いた私を出迎えたのは、千切れ雲の浮かぶ青空であった。心なしか、ガリアの空よりも清澄な大気のように感じられた。思い切り息を吸えば、肺腑を満たす空気の清々しさを満喫できるだろう。
しかし問題は、空を行く我々の眼下に広がっていた地形が一変していた事だろう。ユーラシア大陸旧ドイツ国領に位置するガリア王国の空にあったはずの我々は今、四方を青い波に占められた大海の上を飛んでいるのである。
ほどなく艦長からの呼び出しが、私を待っていた。
さて、私の文を読んでいる方々には申し訳ないが、私は艦長や艦の主だった面々との会合の場面よりもこの数日後に私が出くわした運命について先んじて筆を進ませたいと思う。
今こうして書く間も、瞼に浮かぶあの出会いは私にとってあまりにも衝撃的であったからし、また、勝手ながら艦長達とのやり取りはほんの一、二行に要約しても問題が無いと私が判断したためだ。
こうして誰かに読まれる事を考慮して書きものに手を出しながら、私情を優先する私を、賢明なる読者諸氏に許して欲しいとは言わないが、謝罪の言葉だけは受け止めてくれるだろう。
さて、謎の現象に見舞われた我々ハウリング・ウルブズは、そうそうに現在位置する場所が地球上ではない事を確認した。
簡潔に主だった理由を記そう。今も地球をむしばむニュートロンジャマーが全く機能していなかったと言う事。夜間、我々に姿を見せた星達の配置が、地球の夜空に広がるそれらとはまったく異なっていた事。
他にも色々とあるのだが、それらはまた後に述べる機会があるので、ここでは割愛する。
艦長達と意見を交わし合い、我々が別世界に迷い込んでしまったと言う認め難い事実(なんとファンタジックな事であろう!)は、各部門の責任者や佐官以上の者達にのみ通達され、時期を見てクルー達に伝えると言う事に落ち着いた。
もっとも、現在我々が置かれている状況に不審を覚えている者達は多いだろうし、いずれクルー全員に事の仔細を伝えなければならない日は、すぐにやってくるだろうと言う予感が私にはあった。
行く宛てはないが、いつまでも洋上に留まるわけにも行かなかった我々は、偵察用装備を備えたリオンやガーリオンを、四方の偵察へと出撃させた。艦の直衛にはエルアインスを筆頭に、機動兵器部隊の半数十二機が残る。
不幸中の幸いと言うべきであろう、我々の位置から南南東300キロの位置に陸地が発見され、ひとまずアオガネは海面に降下し、その浜辺を目指す事となった。
沖合いに停泊したアオガネから、設営用の資材を満載した揚陸艇やホバークラフトに乗り込んだ上陸部隊が発進するのを私は上空に待機させたガーリオンの中から見守っていた。
無論、周囲への警戒は怠ってはいなかった。ガーリオンの右手に握らせたメガビームライフルを使用する機会が訪れない事を願う。施設を組み上げていく手際に感心しながら、私はその時、未知の世界に来た興奮に心躍らせていた事をここに告白しよう。
さて、周辺の警戒の担当時刻を過ぎて、アオガネに戻り宛がわれている士官用個室のベッドにもぐりこんでも興奮冷めやらぬ私は、眠れぬ一夜を過ごしてから充血した眼をそのままに内陸地への偵察の許可を求めに足を動かしていた。
艦内のクルー達の顔には隠してもわずかに滲む不安の色があったが、なに、私はそれ以上にこの世界への好奇心に充ち溢れていた。
おもえば幼少のみぎりから祖父母の膝の上で語られる幻想的な世界の物語に浸っていた事が、かような精神状態へと私を誘ったのであろうか。
私が具申した偵察行動はすぐに許可が下り、私は十日分の食料を詰め込んだ非常用のサバイバルパック片手に、長らく戦線を共に渡り歩いた純白のガーリオンのコクピットに座った。
DC系機動兵器の特徴である広いコクピットの空きスペースには、私の愛読しているジョスリン・ゴドウィン著“北極の神秘主義”、グスタフ・マイリンクの“西の窓の天使”“緑の顔”、英国の儀式魔術師S・L・メイザースの翻訳した“アブラ=メリン”“アルデマール”。
他にもケネス・グラントの“魔術の復活”、ルチオ・ダミアーニの“クシャの幻影”、H・P・プラヴァツキーの“シークレット・ドクトリン”、朝松某の“邪神帝国”、菊地某の“妖神グルメ”などが並ぶ。
私のオカルト趣味が昂じて収集した旧世紀の書物だ。データ化して保存したものも多いが、同時に私と親しくなる人間が少ない理由の一つだ。時に行きすぎてこの手の書物の収集に、血道をあげる私を気味悪がる人々を責めるつもりはない。
ガーリオンに高度三千メートルを時速300キロほどで飛行させていた時である。私はこの時の出会いを、棺の閉じる音を聞く時も忘れる事はないだろう。
燦々と降り注ぐ陽光に我がガーリオンがさぞや美しく映えている事だろうと悦に浸っていると、ガーリオンが生体反応を捉えた。かなり大きい。十メートル、いや十五メートルはあるだろうか?
気になった私はガーリオンの機首を生体反応のあった方へと向ける。メガビームライフルを使用するような事にならなければいいのだが……。
反応を捉えて二分、生体反応の主が私の眼に映った。ああ、何と言う事だろうか。翼長十五メートルに及ぶ蝙蝠に似た翼を生やした、巨大な爬虫類が飛翔しているではないか。一昨年友好条約を締結した恐竜帝国の兵士だろうか?
空飛ぶ青黒い鱗の連なりを持った爬虫類は幻想世界の王者“竜”に酷似していた。短い四肢の指先には人間の体など容易く引裂けそうな太く鋭い鉤爪が生えそろっている。
だがそれ以上に私の意識を奪ったのは、ガーリオンの左側を飛ぶドラゴン(正確には飛竜であると後に知る。ワイバーンは前足が無いから別種とすべきだろう)の長い首の付け根に人間の姿があった事だ。
ドラゴンのサイズと体形に合わせた手綱を握っているのは、青いスケイルアーマーに身を包んだ十二、三歳ほどの少女であった。短く切った赤い髪が兜の隙間からかすかに零れていた。
所謂ドラゴンライダー(あるいはナイト?)と言う奴だろうか。ガーリオンの姿に気づいたドラゴンが警戒の嘶きを上げ、ライダーもまた我が戦友の姿に気づき驚いている様子が明らかだ。
これが、我々ハウリング・ウルブズと異世界の住人との初めての……』
「レントン!!」
「のわぁ、な、何エウレカ?」
コンビニのレジの奥にある控室に備え付けのPCで、『DCがファンタジー世界に召喚されますた1スレ目』を読んでいたレントンは、レジにいる筈のエウレカが慌てた様子で控室の扉を開いたのに驚きの声を上げた。
「聞こえてなかったの? 第一級警戒態勢よ、早くコンビニを閉めるのを手伝って」
「ええっ!? あ、ほ、本当だ。何だ、戦闘なの?」
「分からない。でもアーモリーワンの内部でなにか問題が発生したみたいね」
「確かシンとステラも中に行ったんだよね。大丈夫かな」
「それも、分からないわ。今は私達にできる事をしましょう」
「そうだね、よし!」
PCの電源を切る暇も惜しみ、レントンはエウレカと一緒にコンビニ商品の片付けに動きだした。
*
アーモリーワン近海、ミラージュコロイドによるステルス効果の恩恵を受けた戦艦が、静かに息を潜めていた。特務艦ガーティ・ルーの艦橋で、時計を確認していた男がひどく軽い調子で号令した。
「よぉーし、行こう。ただし慎ましく、な」
おどけるように付け足した言葉に、くすりと小さく笑う声が少しだけ艦橋に零れた。ただしその男の傍らに控えた二人は一切反応を見せていない。男からの指令によって艦橋はにわかに活気づき、動き始める。
「ゴッドフリート一番二番、起動! ミサイル発射管一番から八番、コリントス装填……」
地球連合軍の軍服に身を包んだクルー達が、流れる様に各々の仕事を進めてゆく姿を、最初に号令を出した男が一目し、艦長席の隣に座してモニターを見つめていた。異様な風体の男であった。
顔の上半分を無機質の黒い金属のマスクで隠し、感情を表す瞳はガラスの向こうに隠れて見る事は叶わない。豊かな金髪が黒い軍服の上に流れ、顔の下半分の造作はこの男がそれなりのハンサムである事を伺わせた。
アーモリーワン内部で暴れ回っているオルガらを含めた部隊を率いる立場にある、ネオ・ロアノークという男だ。階級は大佐。軍内にその存在こそ知られているが、決して歓迎される事のない日陰の部隊の歯車の一つである。
ミラージュコロイドによって光学的に、またレーダーなどを用いた電子機器の捜索の眼からも、その巨体をくらましたガーティ・ルーは、すでに主砲の射程圏内にザフトのナスカ級や、港湾施設に繋留されているローラシア級などを捉えていた。
ヤキン・ドゥーエ戦役終結後に締結された条約で禁止されたミラージュコロイドを用いている以上、その所属を明らかにされてはならない部隊である事は自明の理だろう。
ガーティ・ルーの存在する空間にいかなる艦影も見て取れず反応しない、ザフトの艦隊を憐憫さえ込めて見つめ、ネオは新たな命令を下す。
「主砲照準、左舷ナスカ級。主砲発射と同時にミラージュコロイドを解除、機関最大。さて、これでようやく面白くなるぞ、艦長」
艦長席に座る元ω特務艦隊所属のイアン・リーが、謹厳そうな顔にかすかな笑みを浮かべた。アークエンジェル級の艦長席と比べて、このガーティ・ルーの椅子の座り心地も悪くないようだ。
「ゴッドフリート、てーー!」
225センチという大口径の連装ビームが、何もないはずの空間から放たれて標的とされたナスカ級は、何が起きたか理解するよりも早く機関部に直撃を受けて、一瞬の後に内部からの爆発によって虚空に四散する。
ガーティ・ルーのエンジンが低く唸りを上げ、虚空にスチール・ブルーの船体が浮かびあがる。その存在を表に晒せぬ、存在しない部隊である第81独立機動群“ファントムペイン”を、ゲシュペンスト・イェーガー――幽霊部隊と揶揄する者もいる。
ミラージュコロイドの解除によって露わになったガーティ・ルーは、主砲とミサイルを乱射しながらアーモリーワンの軍港目指して突進を始める。
可視光線をゆがめ、レーダー波を吸収するミラージュコロイドの解除と共に姿を現したガーティ・ルーに哨戒行動中のザフト艦やアーモリーワンの管制側が完全に虚を突かれたのは間違いない。
ガーティ・ルーのハッチから出撃したダガーLが、迎撃に現れたジン、シグー、ゲイツRを相手に戦火を交えはじめる。しかし先制を取った有利が、ガーティ・ルーの部隊に働き、現われたザフトのMSが撃墜される数の方が多い。
アーモリーワンの司令ブースでは、この近距離まで敵の接近に気付けなかった理由が、ユニウス条約で禁止されているミラージュコロイドである、と判断を下し騒然としていた。
ただでさえ自国のトップであるギルバート・デュランダル、さらにはDC総帥ビアン・ゾルダークまでがアーモリーワンにいるのだ。この二人に何かあったらプラントとDCの関係悪化どころかプラント存亡の危機にまで発展する可能性がある。
そうなる事で最も利益を得る存在を思い描き、司令が苛立ちまみれの声でオペレーターに矛先を向けた。
「地球軍か!?」
「熱紋ライブラリ照合――該当艦ありません」
データに存在しない未知の艦であると言う事だ。使用しているMSが連合系の者であるからと言って必ずしも、地球連合の部隊とは限らないが。船籍の推測すら不可能と言う事実に、新たな苛立ちを覚えながら新たに命令を下す。
「迎撃、船を出せ! MSもだ!!」
司令からの指示を受けて繋留されていたローラシア級艦が動きだし、ゆっくりとした動きで軍港内の司令ブースの前を横切ってゆく。先頭の艦が港口に差し掛かろうとした時、その目の前に二機のMSが現れた。
地球連合のダークダガーLだ。前大戦時終盤から戦線に投入されていた主力機である。その座をウィンダムに譲りつつあるとはいえ、まだ相当数が連合内の各部隊に配備されている。
ダガーLに漆黒の塗装を施したダークダガーLが、それぞれ手に持ったバズーカの砲口をローラシア級へと向ける。気付いた時には既に遅い。そんなタイミングであった。
狙いをつけられたローラシア級の艦長が、これまでかと諦めを噛み締める横を後方から放たれた数本のビームが走りぬけ、ダークダガーLのバズーカを握る腕の肩と頭部を貫いていた。
後に問題になりかねぬと理解しながらも、エペソが出撃を命じたロックオン・ストラトスのアヘッドSCからの狙撃である。アヘッドSCの横を抜けて飛び出た刹那のサキガケが、両手で握った大型のGNビームサーベルをダークダガーLへと閃かせる。
それぞれの胴を蹴り飛ばして港口から遠ざけ、姿勢を立て直す前に一機の胴を横に薙ぎ、残る一機の胸部を一息に貫く。バッテリー駆動の旧式MSであるダガータイプは、推進剤などに引火しない限りは爆発する事もない。
湾口近くでのMSの爆発を避けるために、サキガケのGNビームサーベルは精妙な剣の冴えを見せて、ダークダガーLの装甲を薄紙のように切り裂いていた。
「サキガケ、目標の駆逐を終了。これよりアンノウン機動兵器群との戦闘に移行する」
「許可する。ロックオン、ティエリア、刹那のバックアップを行え。アルベロ、グローリースターは本艦の直衛に」
「了解、ロックオン・ストラトス、目標を狙い撃つ」
ビアンの要請を受け、デュランダルがタマハガネの戦闘行為の許可を下ろしたのを受け、手早く部隊の展開の指示を行ったエペソである。あらかじめ待機させておいたクライ・ウルブズ各機に順次出撃を命じてゆく。
驚くべき速さで艦に戻ってきたシンに、スティングとアウルを同行させてアーモリーワンに向かわせ、残る部隊で外部の敵との戦闘を始める。タマハガネ自体は港口の最奥に位置しているから、出撃は遅れている。
デュミナスとリンクし、現在アーモリーワンを襲撃しているのがブルーコスモスの私兵であるファントムペインであると確認して、ティエリアはヴァーチェの持つGNバズーカの照準補正を自らずらした。
アーモリーワン内部に潜入したティスの回収は、ガーティ・ルーとは別の部隊が行うとはいえ、せっかくプラントから強奪した機体を奪い返されるのは上手くないし、ここでガーティ・ルーを轟沈させるわけにもゆかない。
「とはいえ、まったく無傷で帰すわけにも行かない。ある程度は覚悟してもらおう」
完全に不意を突かれた衝撃から立ち直り切れずにいるザフトの部隊に変わり、前面に出るDCの部隊の援護も併せて行いながら、ティエリアは突出している刹那のサキガケの方へとヴァーチェを向ける。
MA形態へと変形したガイアの、背に在るグリフォン2ビームブレイドの一撃をシールドで受けたものの、インパルスのバランスを崩された所をカオスの兵装ポッドから放たれたファイヤーフライ誘導ミサイルの直撃を受け、大地に仰向けに叩きつけられる。
VPS装甲の恩恵故に機体への損傷は微細なものだったが、思い切り叩き付けられた衝撃を受け、アクアは大きく視界を揺さぶられて肺の中の空気を吐きだした。それでも閉ざさなかった瞳に、アビスがビームランスの穂先を向けて突き刺そうと迫る姿が映る。
「!!」
下唇を噛み、喉の奥の悲鳴を噛み殺して機体を操作してその穂先をかわす。大きく抉られる大地を視界の端に映し、側転して立て起こした機体を後方へと下がらせる。
同時に腰部にあるフォールディングレイザー対装甲ナイフを左手逆握りで抜き放ち、ガイアのビームブレイドを受けた。フォールディングレイザーが赤熱し、溶解しながら切り裂かれる瞬間に放り捨てて、ガイアの横腹を蹴り飛ばした。
「くっ、このままじゃ」
そう遠くないうちに押し切られると戦っているアクア自身が痛感していた。フォールディングレイザーを投げ捨てたアクアが、肩のバインダーを開いてこちらに向けるアビスに気付いた。
MA−X223E三連装ビーム砲だ。左右合わせて六門のビームが襲いかかり、とっさにシールドの影に隠したインパルスの周囲をかすめて地上を焼いた。これまで奪われた三機を取り押さえるべく出撃した友軍機は、すでに十五機近くが撃墜されている。
インパルスとて、パイロットがアクアでなかったならば五分と保たずに撃墜されていた事だろう。防戦一方のまま、一方的に押し込まれるインパルスに対し、更なる波状攻撃を繰り出そうとしていたガイアらに目掛けて、アクアの左方からビームが走った。
サブモニターの一つに映しだされたのは、黒と緑のザクウォーリアだ。ジン系統のデザインを残し、モノアイや鎧武者めいたシルエットはアクアにとって見慣れたものだった。
インパルスのシルエットシステム同様にウィザードと呼ばれる数種類のバックパックの換装によって機体性能を拡張させる機体だ。基本性能も、前大戦時にザフトの決戦兵器であったフリーダムやジャスティスを上回る。
「ディアッカ、ニコル!」
「待たせて悪いね、こっから反撃と行こうじゃない」
ディアッカは軽い調子で呟きながら、機動性を飛躍的に向上させるブレイズウィザードを装備したザクウォーリアに正確な狙いを与えて、ビーム突撃銃をカオスめがけて連射する。
やや斜め上方から下方へ向けて放たれるため、かわされたビームは次々とアーモリーワンの大地に穴を穿って行く。
六つの銃身を束ねたハイドラビーム砲二門と、大型のビームアックスを装備したスラッシュザクウォーリアを操るニコルは、近似した白兵装備を持つアビスへとビームアックスで斬り掛かる。
「すいません、アクアさん。遅れた分は働いてお返しします」
二人とも前大戦でラクス・クライン、カガリ・ユラ・アスハ、マリュー・ラミアスらが中心となった勢力に与したザフトの裏切り者であった。
しかし議長に就任したデュランダルと前議長であったパトリック・ザラの計らいによって一般のザフト兵として席を置く事が許されていた。これには両名共に最高評議会評議員の子息である為に、政治的配慮があったとも言われる。
そればかりか、その豊富な経験と卓越した操縦技能を買われて新造艦ミネルバ所属のMS部隊の一員に選ばれていた。
今回のアーモリーワン襲撃が、まるで二年前にクルーゼ隊が行ったヘリオポリス襲撃事件の再現の様で、当時クルーゼ隊に所属し地球連合の開発していたMSを強奪したパイロットであったディアッカとニコルはそろって苦虫を潰した表情を浮かべていた。
「まったく嫌の事を思い出させるぜ。だけどな、だからこそみすみすそれを奪われるわけには行かないのさ。ニコル、こいつらに後れを取るなよ!」
「ディアッカこそ。ヘリオポリスの様な事にはさせませんよ」
「二人ともなんだか気合入っているわね。私もへこたれている場合じゃないわね!」
息を吹き返したアクアも合わせ、これまでの鬱憤を晴らすかの如く積極的な反撃に転じるインパルスらに、オルガ達が気迫で押されはじめる。
同時にアーモリーワン自体を震わせる振動と、タイムリミットに気づき、オルガは苛立ちを煮詰めた様な舌打ちを撃った。外では既にお迎えの連中が来ているようだ。自分達もさっさと引き上げないとまずい。
「おら、シャニ、クロト、引き上げるぞ。時間切れだ!」
「はあ!? うるせえ、こいつらぐずぐずにぶっ壊すまで下がれるかよ。逃げたきゃ、お前だけ逃げてろ」
「ぶっ殺す」
「口答えすんな、失敗したら後で何されるか分かってんだろうが。アードラーのくそ爺の顔を見てえのかよ! 言う事聞きやがれ」
「っくそ!」
「……ちっ」
若干のタイミングのずれはあるものの、三機が一斉に火器を発射し、踏み込めぬビームやミサイルの弾幕を形成して、プラントの外壁へと向かい動き出す。シャニのアビスが胸部のカリドゥス複相ビーム砲や、バインダーの三連装ビーム砲を放つ。
プラントの外壁を構成する自己修復ガラスは、容易くは穿つ事を許さぬ防護さを備えてはいたが、最新のプラズマジェネレーターから供給されるエネルギーを容赦なく浴びせられ続け、熱量に耐えかねて融け始めている。
三機の後を追ったアクア達を、ガイアとカオスが牽制する。単純な性能ならばザクウォーリアよりもガイアやカオスの方が上ではあったが、この場でのオルガらの目的は敵の殲滅ではなく機体の奪取だ。
無理にこの場に留まってせっかくの機体に傷をつけるわけにも行かない。
味方ごと敵を撃つ事に躊躇わなかったころと違い、自分達に課せられた役割と言うものを多少なりとも理解する能力を取り戻したオルガとクロトは、堅実な動きでディアッカ達からの攻撃を受け続けていた。
「やべえ、オルガ、新手だ。金ピカがいる」
「なに? あいつらか、あの手強い連中!」
アクア達も同時に気づいた。タマハガネから出撃したシンの飛鳥インパルスと、スティングのオオワシアカツキ、アウルのエルアインスの三機である。
スティングの搭乗しているアカツキは前大戦で最も目立ったMSの一つであり、その暁の所属していた部隊との苦戦の記憶が呼び起こされて、オルガとクロトは忌々しげに眉を寄せた。
最後の最後、あのわけのわからぬ人智を超えた化け物との戦いでは共闘した相手ではあったが、今の自分達の立場では矛を交える以外の選択肢が存在しない敵だ。しかも、とびきり厄介な戦闘能力を持った。
先頭を飛ぶ飛鳥インパルスが、左腰腰部に設えられたアタッチメントに取り付けたシシオウブレードの瀟洒な細工の施された鞘から白刃を抜き放つ。爆発的な推進力を生む飛鳥インパルスに続き、機動性を向上させるオオワシパックを装備したアカツキが続く。
「アクアさん、援護します!」
「シン、連中はプラントの外壁を破って外に逃げる気よ」
「今、プラントの外部に船籍不明の艦が奇襲を仕掛けてきています。たぶん、それがあいつらの迎えの船です」
「だったらなおさら外には逃がせないわね!」
アウルのエルアインスが、Gレールガンとオクスタンライフルをそれぞれの手に持ち、掩護の為に照準もそこそこに引き金を引く。三対三から、三対六へと一気に状況が悪化した事に、オルガとクロトは歯が軋むほど苦々しい表情を浮かべた。
新手が並みの連中であったらな、十機来ようが二十機来ようが敵ではないのだが、圧倒的な戦闘能力を誇ったあの連中となれば話は別だ。DCの最精鋭部隊が相手では、今の状況は非常に芳しくない。
ω特務艦隊で生死を共にしたかつての仲間達の顔がちらりと脳裏に浮かび、オルガは自分が弱くなったと強く意識した。
ガーティ・ルーのハッチから新たに飛び出した赤紫色のモビルアーマー“エグザス”のコクピットに、軍服姿のままで乗り込んでいたネオ・ロノークは、奇襲から立ち直り猛烈な反撃をしてくるザフトの部隊に手を焼かされていた。
前大戦で連合がまだMSを持たぬ頃、唯一互角の戦いができたメビウス・ゼロというMAの発展機だ。鮫を思わせる尖った機首から後部まで流線系のラインを描く胴に接続されていた四基のポッドは、ビーム砲とビーム刃を備えた特殊兵装だ。
全方位からの同時攻撃を可能とする機動兵装ポッドは、核動力を搭載した新しい主力MS相手でも高い有効性を発揮していたが、アーモリーワンの軍港からDCのMS部隊が姿を見せた途端に、一方的に押し込んでいたこちらのMS部隊が次々と撃墜されだしていた。
「おいおい、DCがなんでアーモリーワンにいるんだい? しかもあれは特殊部隊じゃないか。一番手強い相手と出くわすとは、とんだイレギュラーだっ!」
全方位から襲い来る機動兵装ポッドにてこずる様子こそ見せるが、一発の被弾もないクライ・ウルブズ各機に、ネオは口にした通り予想外の敵戦力にこちらの算段が大きく乱された事を認めざるを得なかった。
続く。
相変わらずスローペースで話が進みませんのぅ。ではでは、また次回で。しかし地獄博士はどうすべか。
>>605 乙です
スクコマ2のユキムラとかどうですか?>地獄博士ポジ
総帥乙です
常夏がカイ達と離されたせいで昔に立ち戻っちゃってる感じだなあ
痔とニコルはキラ達について行かずに復隊したのか
そして、いきなり何が始ったのかと思って吹いた、まさかのファンタジー世界編とかw
2レスも使ったこれはただのネタなのか、それとも伏線なのか、まるで先が読めない
GJ!
このネオは何者?
故あってこうなった本人か、はたまた…
ザフト版インパが何気にプラズマジェネレーター三基搭載とかトンデモで吹いたw
乙でしたー。
これからの展開が読めないことに煩悶しつつ、次回を楽しみにさせていただきます。
……さすがレントンと呼ぶべきなのだろうか。
おつでしたー。
あれ、このネオ、誰?ムゥじゃないよね…。
ユニウス条約はミラコロの使用禁止は正史どおりなのですね。核とかは全然制約かかってないみたいですが。
あと、ザクのスペックインフレぶり凄い。ゲイツ<正史ザク<量産メディウス<自由・正義<本作ザク、くらいのスペック順位かな。
>>606 スクコマ2ってオリ勢全員出そうと思えば出せそうな感じに思えますよね。
ラスボスは無論、教授さんもED〜そう経たない頃には亡くなっただろうし、主人公組は帰る前に寄り道とか引っ張り込まれたとかな感じで。
まあ、総帥がスクコマ2やってないと言うことも(ry
元々やった人少ないしね!
ゴルンノヴァってスレイヤーズだっけか?
総帥乙〜
なんつーか核搭載量産機もいるから最終決戦時の各勢力の戦力がえらいことになりそうだなw
総帥乙。
いきなり始まった某スレ風味の話に噴いたwww
ガリア王国って単語見て「ハルケギニアにでも召喚されましたか?」と思ったのは秘密だ。
しかしオルガたちは相変わらず死亡フラグ立てるわ、ティスは何しに行ったんだとか色々とまた不穏なことに。
要人誘拐ならわざわざここ選ばなくてもラリアーやデスピニス動けるだろうから可能性は少ないし。
……有るかわからないがセイバーでも強奪しに行ったのか?
後、インパルスは動力炉3つとかやり過ぎだと思います、えぇ。
プラント脅威の科学力ってレベルじゃないぞ!?
>>612 ロストユニバースから(世界観共通だけど)
あと
ネザード
ラグド・メゼギス
ボーディガー
ガルヴェイラ
そして
ダーク・スター
闇を撒く者・デュグラディグドゥ
が存在するものだと思われw
わかった!
EX編フラグ立ったんだ!
特機級の機体をも運用可能なプラズマジェネレーターを三基とかやり過ぎwww
プラズマリアクターとの違いはリミット解除の有無くらいしか違いがなかったりするんだぞアレ
>>614 そしてキラがレイ(エヴァのね)声のAI積んだ某戦闘封印艦で無双するってかw
総帥乙です!
いつも思ってたんだけど、総帥の書くステラは可愛過ぎて困るw
次回にある?飛鳥インパルスの活躍といつか来るシン、ステラ、セツコのトライアングラーを待ってますw
そうか、ここのシンもタマ狙われるようになるのかw
>>616 これはもしやデスティニーシルエットフラグではなかろうか。
外伝で「全部付けたら燃費悪過ぎwww使えねwww」とまで言われたアレも
ここまで出力上げたら燃費を気にすることなく使えるのでは。
……まー、ウェポンセレクトとか一々面倒くさい点はそのままだけど。
このネオは多分ムウとは別人なんだろうけど、ディアッカとニコルは戦後もオーブに与しなかったのか
まあ2人ともプラントに家族がいるし、ラクスも大人しく投降したし、
特にディアッカはWよろしくトール生存でミリアリアフラグ折れたから、この選択は妥当だな
しかし、そうすると正統オーブって、今どんな人材がいるんだろ
名前が出てきた面子以外だと、AAクルーやアスハ派、ダイテツ・ショーンあたりは引き続き参加してるとして、
特務部隊Xの連中はまだ契約してるのか不明だし、プレアはもしまだ生きてても多分戦える体じゃないだろうし、ククルに至ってはオウカもウォーダンも去った以上もはや正統オーブに与する理由が無いからなあ
エンジン一杯積めば最強じゃね?っていかにもプラント技術者らしい頭の悪さだな。
廃熱問題とかどうしてるんだろう。
これまで電力不足で長く戦えなかったけど今度はパワーがあり過ぎて長く動けません、なんて事になりそうな。
V1じゃなくてZZになっちゃったわけで、パーツの使い捨てなんてとても出来やしねえぞ。
元々パーツの使い捨てはシン独特の戦法で、それ以外ではそんな使い方してないからな
逆に考えると核動力を内蔵したことでボトムアタック等をかました時の威力は増加したな
コストパフォーマンス激悪だけどw OG世界でもプラズマジェネレーター搭載機は
さほど量産されてないし。ヒュッケ以降の機体とハロウィンプラン該当機のみかな?
簡易核爆弾www
保守
保守
ハーバー・ホッシュ
ディバイン SEED DESTINY 第07話 蠢く影
白銀の砂時計の様な形をした軍工廠コロニー、アーモリーワンの近海で今、赤紫の鮫の様な形をしたMAと深紅色のMS達が一瞬の光芒を幾重にも煌めかせ、閃光のタペストリーを織り描いていた。
アーモリーワンへ奇襲を仕掛けた謎の機動兵器部隊の隊長を務めるネオ・ロアノーク大佐の駆るMAエグザス。そしてエグザスへと斬り掛かる真紅の人造巨人はサキガケ。刹那・F・セイエイの駆る接近戦特化型の擬似GNドライヴ搭載型MSだ。
アーモリーワンを襲った謎のMSに対抗すべく、ザフトの警備部隊に先んじて出撃したDC特殊任務部隊クライ・ウルブズの各機は、ガーティ・ルーから出撃してきた敵性MS部隊を相手に猛烈な攻撃を仕掛けていた。
旧式に属するMSであるダガーLを主戦力とする敵部隊は、核動力ないしは同等以上の性能を誇るクライ・ウルブズMS部隊相手に劣勢に立たされていたが、その中で唯一対等に渡り合う戦力を備えていたのが、このエグザスであった。
エグザスが敵の要と判断した刹那は、速度では劣るが機動性・運動性では勝るサキガケの性能を持って、一挙に距離を詰めて斬り捨てんと攻め込むが、エグザスが有する四基のビームガンバレルが絶妙な連続攻撃を加え、後一歩が踏み込めずにいる。
サキガケ唯一の射撃兵装であるGNショートビームガンは、もともと牽制程度の性能しか持たないし、刹那自身がさほど射撃が得意ではないと言う事もあって、絶えず高速で動きまわるエグザスの残像に触れる事さえできない。
真正面から迫ってきたビームガンバレルの両脇に出力したビーム刃を右手一本で握り直した大型GNビームサーベルで受け流し、わずかな時間差を置いて背後上方から放たれたビームガンバレルからのビームを、脇差型のGNショートビームサーベルで受ける。
後方への危険信号に気づき、とっさに大型GNビームサーベルの柄から左手を放し、GNショートビームサーベルを逆手で抜き放ったのだ。わずかにGNショートビームサーベルの軌跡がそれていたら、ビームがサキガケの首の辺りを直撃していた。
シミュレーターでドラグーンやガンバレルを相手にした事はあったが、刹那が今敵対している相手の技量は、シミュレーターのものとは比べ物にならない。
接触してから十二分、ここまで刹那が生き残っていたのは、刹那自身の力量よりもサキガケの性能と、ロックオンの援護があればこそだった。
ビームガンバレルの攻撃を捌きこそしたものの、動きを止められたサキガケめがけて、エグザスの機体下部に備え付けられたレールガンが三連射され、一発は外れたが捻ったサキガケの機体の胴体と左肩に命中する。
大きく機体内部に走る振動に歯を食い縛って耐える刹那は、これ以上サキガケの動きを鈍らせたままでは危ういと、操縦桿を必死に動かして迫り来る四基のビームガンバレルの砲口から逃げる。
ビームガンバレルを囮に、エグザス本体の火器でサキガケを狙ったネオは、背筋を撫でる様な悪寒に従って機首を起こし、エグザスの下方から迸った幾筋かの光線を避けた。
「さっきから、邪魔をして!」
冷たい仮面の奥の瞳は、モニターの一つに映しだした機体を苛立った瞳で見つめた。長銃身のGNオクスタンスナイパーライフルを構え、メインカメラを覆う様にスライドしたスコープでエグザスを狙い撃つアヘッドスナイパーカスタムだ。
「ハズレタ、ハズレタ」
「いい勘をしていやがる」
ハロのからかう様な言葉に、ロックオンは言い返さずエグザスを追ってライフルの銃口を絶えず動かし続けた。
「すまない、ロックオン」
「いいって、それより気を抜くなよ。何度も戦いたい相手じゃないからな、ここで決着をつけるぞ」
「了解した」
言葉短かい刹那の返答を耳にしながら、ロックオンは周囲の戦況にも意識を裂いた。どうやら、気にする必要はなさそうだ。
ザフトの部隊が襲撃から立ち直り反撃を始めた事で、敵の部隊が文字通りの意味で壊滅する可能性も大きくなっている。
再びエグザスへと視線を戻す。外した時間は、一秒にも満つまい。その間に事態は動いた。ザフトでもDCでもない識別不明な多数の熱源反応が出現し、それらの約半数の機体が持つ背の砲が火を噴いたのだ。
無数のリニアカノンとミサイルが雨の如く降り注いで、ザフトの警備MSや艦艇に着弾し帯のように火の玉が連なる。ミラージュコロイドか高性能のステルスシステムを搭載したらしい新たな敵に、クライ・ウルブズ各員がかすかに息を呑む。
支援支援
緑色のブロックを集めて機体を構成した様な直線的なラインの機体だった。分厚いシールドを両肩に備え、脚部には地上を高速で走破する無限軌道、背には大口径のリニアカノンと多連装ミサイルポッドを備えていた。
繊細な電子機器を搭載し、キャノピーの奥にパイロットが鎮座する頭部やその巨躯の形状からして、DCとその支配地域の一つであるアフリカで、広く運用されている砲戦用機ランドグリーズに間違いなかった。
それだけではない。青い曲線を描く装甲に、赤いバイザーの奥にツインアイを隠したパーソナルトルーパー、量産型ゲシュペンストMk-Uも同時に出現していた。
タマハガネ艦橋で、突如二十機以上姿を見せたランドグリーズとゲシュペンストMk-Uに、タマハガネ艦橋のエペソとビルトシュバインのコクピットの中のアルベロが険しい色をそれぞれの顔に浮かべる。
「鹵獲機、というには数が多すぎるか? それともおれ達とおなじ来訪者か?」
「タマハガネをアーモリーワンの司令ブースの盾にせよ。新たに現れたランドグリーズはすべて敵であるとザフト側に通達。いらぬ誤解を抱かせるな」
ランドグリーズは高い砲戦能力に比して低コストで生産可能な優秀な兵器だ。鹵獲するなり開発データを盗用して自国の兵器にする可能性は十分にあるし、南アメリカ共和国などでもライセンス生産しているから、数を揃える事は不可能ではない。
ゲシュペンストMk-Uは現在正統オーブでのみ運用されている筈の機体だが、コズミック・イラとは異なるいくつかの世界で量産・開発されている機体だ。エペソやアルベロの様にこの世界を訪れた何者かが製造したものかもしれない。
敵として現われたランドグリーズやゲシュペンストMk-Uの所属を推測する事も結構だが、それ以上に今は敵として姿を見せた以上、相応にもてなす事が先だろう。エペソとアルベロは、友軍機の出現かと戸惑っていた各員に戦闘の続行を重ねて命令した。
エペソらからの指示を聞きながら、バルゴラ一号機を駆るデンゼルとバルゴラ二号機を操縦するトビーは、別の事にそれぞれ思考の一部を割いていた。
「チーフ、この状況、あの時と似ていますがどこまで同じですかね!?」
「アーモリーワンの襲撃は同じだが、おれ達を始め状況が異なるからな。それに、あのランドグリーズなどの増援はあの時はなかった」
ランドグリーズのリニアカノンの砲撃をかわし、バルゴラ一号機のガナリー・カーバーが運用を担当する、高出力ビーム砲レイ・ストレイターレットの反撃で撃墜し、デンゼルはトビーと生前経験したC.E.世界との相違を考えていた。
もともとデンゼルとトビーはU.C.0087年時の地球連邦軍に所属していた別世界の軍人だ。
それが反地球連邦政府組織であるエゥーゴとの戦闘の最中に発生した時空転移に巻き込まれ、この世界と酷似したC.E.73年の世界の、アーモリーワンへと転移した。そこではちょうど、今の様に新型MSの強奪事件が勃発していた。
行きがかり上ザフトに協力し、まもなく同じようにして転移してきたティターンズ、エゥーゴの艦隊との接触を得る事となった。その過程で経験した事態が、この世界でも同様に起こりうるとして、事前にビアンらに話は通していた。
ビアンがプラント政府に警戒心を抱かせると承知の上でタマハガネに搭乗し、アーモリーワンを訪れたのも、デンゼルらの経験した通りに新型MS強奪が起こる可能性を考慮した上での判断だ。
同時に主にジャンク屋ギルドが厳重に管理している筈のユニウスセブンの監視の為にも、部隊を派遣してある。ユニウスセブンに何か異常事態が生じるにせよ、それはコズミック・イラの世界が本来たどるはずだった場合とはなにかしら変化がある筈だ。
あのスチールブルーの戦艦や、赤紫色のMAなどはかつてデンゼルらが体験した事態でも遭遇した相手だが、ランドグリーズやゲシュペンストMk-Uなどの出現は、デンゼルが口にしたように起こらなかった事だ。
場合によっては、デンゼルとトビーがかつて遭遇したユニウスセブンの地上落下と言う事態よりも、悪い何かが進行しているのかもしれないし、またその逆の可能性も否定しきれない。
「いずれにせよ、まずはこの場を切り抜けてからだ。スター3、状況はどうだ?」
「こちらスター3、被弾なし、機体に損傷ありません」
「よし、上出来だ。ジェネレーターの温度に気を付けろ。この乱戦でオーバーヒートしたら目も当てられん」
「は、はい。……大丈夫です」
セツコの返答に若干の間があったのは、どうやら本当にデンゼルに言われたとおりにジェネレーターの温度を確認したからだろう。
素直なのは悪い事ではないのだが、戦闘中に自己判断で確認するならともかく、言われたからという理由で確認したのなら迂闊な行為だ。
セツコの操縦技術それ自体は、目を引くような反応や機動を見せるものではないが、危なげない丁寧な動作で、紙一重で避けるような事はしないし、なにより同じミスを繰り返す事がほとんどない。仮にあっても、二度目三度目は今のところない。
一度犯した失敗を二度としないようにと、何度も何度も反復し、訓練を重ねているからだろう。まだ実戦に出て日は浅いが、デンゼル達のみならずアルベロやシン、スティングらとのシミュレーターや模擬戦での経験が着実に実際の戦闘に反映されている。
アーモリーワンを襲った敵との戦闘が始まってから、デンゼルやトビーがセツコをフォローするような場面もほとんどなく、セツコの操縦技術が少しずつではあるが上達している事の表れであろう。
「チーフ、アーモリーワンが」
「内側から壊された? 奪われた新型が出てくるぞ」
アーモリーワンの自己修復ガラスをはじめとした複合外壁の一角が、内側から加えられた膨大な熱量に赤熱化し、グローリースターの面々の視線を集めながら、ついに内側から真空の宇宙が広がる外側へと弾けた。
飛び散るアーモリーワンの外壁の残骸に紛れて、ネイビーブルー、モスグリーン、ブラックとそれぞれに異なるカラーリングの三機のMSが飛び出してくる、いわずもがな、オルガらに奪われたカオス、ガイア、アビスである。
ザフトやクライ・ウルブズの不意を突くような形で混戦状態の外に出た三機は、一瞬動きを止めていたザフトのゲイツRやジンアサルトシュラウドらを目標に、手持ちの火器を容赦なくぶっ放して、ガーティ・ルー目掛けて機首を巡らしていた。
「予定より遅いじゃないの。手強い相手でもいたのか?」
刹那とロックオンを同時に相手取っているネオが、三人のリーダー格であるオルガと通信を繋いだ。オルガは、苦々しげに答えた。
「るせえ、四機目の新型がいるなんて聞いてねえぞ! DCとザフトで運用しているってのものなあ」
「なに?」
カオスとアビスがビームやレールガンを、自分達が開けた大穴めがけて撃っている事に気づき、ネオの視線がそちらへと動く。
カオスらが撃ちこんだビームの返礼か、爆炎の内側からガイアやカオスめがけて幾筋かの光条が、地から天へと逆しまに走る雷のように連続した。
「逃がすかよっ!」
爆炎を割いて姿を現したのはシシオウブレードを片手に握るシンの飛鳥インパルスと、シルエットを装備していない状態のアクアの駆るザフトインパルス。そしてニコルとディアッカのスラッシュザクウォーリアとブレイズザクウォーリアだ。
腕ききの乗る四機のMSの内、二機のインパルスの存在に気づきネオはオルガらが予定時刻に遅れた理由を悟った。
まさか、ザフトで開発されている新型MS“三機”が、実際は“四機”だったとは。しかもオルガの言葉を信じるなら、その四機目はDCとの関わり合いのある機体だと言う。なら、あれの見た目はMSでも中身はスーパーロボットだと思って対処したほうがいい。
オルガの声は続いて言った。
「ネオ、あっちの刀馬鹿の機体、グルンガスト野郎が乗ってやがる。あいつに近づくんじゃねえぞ!」
「前大戦で活躍した時代遅れのソードマンか。こりゃお前らがてこずるのも納得だ」
オルガの目はしっかりと、飛鳥インパルスの右肩に刻まれた飛鳥の二文字を捉えていた。メンデル・コロニーで交戦したガームリオン・カスタムや、ヤキン・ドゥーエ攻略戦で目にした特機の右肩にもあったあの二文字。
戦後、それらの機体のパイロットが同一人物であり、地球連合、ザフト、DCすべて含めた上で指折りの近接戦闘技能者であると聞かされていた。直接、対決した事はなかったが、戦闘の様子を直に目にした事もあり、その実力が侮れない事をオルガは理解していた。
オルガいわく刀馬鹿と直接対決し、言葉を交わしたこともあるシャニは、一人で突っかかる事もなく、あくまで敵として烈々とした攻撃を加えていた。勝手に突っ込んで返り討ちにされていないだけ前よりマシだ。
ブレイズザクウォーリアがブレイズウィザードから射出したミサイル群を、カオスのビームライフルの連射ですべて撃ち落としたクロトが今度はネオに声を荒げた。
「おい、ネオ、さっさと逃げるんじゃないのかよ。というかあの緑と青いの、味方なのかよ!」
「ああ、大事なおれ達の同志さ。間違えて落とすなよ」
クロトが水を向けたのは、ザフト・DCに散々に落とされていた友軍を援護する、ランドグリーズとゲシュペンストMk-Uの集団の事だ。彼らの出現を、クロトやオルガらは知らされてはいなかったのだろう。
仮面の奥の瞳にどのような色を浮かべたかは分からぬが、ネオもさして歓迎しているような素振りではなかった。
「出来れば連中の力を借りずにすませたかったんだがね。ぐっ!」
気を緩めたわけではないが、思わぬ近距離まで踏み込んでいたサキガケの一刀に、ビームガンバレルとエグザスを繋ぐ有線を二本切断され、慌ててネオは操縦桿を手早く操って距離を取り直す。
エグザスの後を追う様に走るアヘッドSCからのビームが、尾翼の端をかすめた。サキガケに気付くのが、コンマ五秒遅ければエグザスをちょうど真ん中のあたりで縦に二つにされ、さらにはビームに貫かれて確実に撃破されていた所だ。
機体を奪ってきた部下をねぎらう暇も与えてはくれないらしい、とネオは微苦笑を口の端に浮かべていた。
「きええええ!!!」
「がぁっ」
シンの喉から波涛の如く迸る示現流独特の気合と共に縦に振るわれた一刀が、ガイアの掲げた機動防盾よりも早く漆黒の左肩を捉えた。ヴァリアブルフェイズシフト――VPS装甲に阻まれたシシオウブレードが、火花を散らして弾かれる。
獅子王の一刀が、迅雷の苛烈さで走るも装甲を断つこと叶わず、引き戻した刃はVPS装甲の継ぎ目を狙い、ガイアの頸部へと切っ先を翻して糸のように細い一筋の光に変わった。
鍛え抜かれた獅子王の刃を半身になってガイアは避ける。
「何度も何度も、斬られてたまるかよ!」
「くそ、まだ呼吸が合わない」
至近距離からシンの駆る飛鳥インパルス目掛け、ガイアのビームライフルからビームが連続で放たれ、上半身をねじり首を傾けてかわし、放たれたビームは彼方の宇宙へと尾を引いてゆく。
くん、と身をかがめた飛鳥インパルスの右手が、オルガの視界から霞む。最盛期にはいまだ及ばずとも、並のエースクラスでは斬られてから斬られた事に気づく神速の斬撃である。
MSながらグルンガストタイプに使用されるTGCジョイントを採用して間接の耐久度を上げ、グルンガスト飛鳥にも採用していた数々の試験機能を搭載してシン専用機となった飛鳥インパルスは、この時代最高峰の追従性や運動性を誇る。
その飛鳥インパルスの性能が最大限再現したシンの一撃は、ガイアから見て左ひざから右肩へと抜ける軌跡で奔った。一筋の光がとおり過ぎ去ったあと、ガイアのビームライフルが銃身の半ばほどから斜めにずれ落ちる。
懐に飛び込んだ飛鳥インパルスの腹部へとガイアの右膝が動く。本来精密機器の塊であるMSで、どの部位にせよ直接打撃を加える事はパイロットとしては愚かな行為だ。物理的衝撃に対しては無敵に近いPS装甲だろうと、その内部の危機は繊細な電子機器なのだ。
マニュピレーターアームで相手を殴れば、五指を破損し手持ち火器の類は使えなくなるし、脚部で行えば地上での走行や宇宙空間でのAMBACに支障を来たす。伝播した衝撃がフレームを歪めて、傍目には損傷が無くとも内部に酷い損壊を被る事とてある。
その危険を冒してまでオルガに膝蹴りを敢行させたのは、目の前の敵に対してあらゆる攻撃手段を取らねば、こちらの命が失われると言う危機感の故であった。
しかし、そのガイアの右膝は、下方へとスラスターを動かして機体をスライド移動させた飛鳥インパルスにあっさりかわされる。
前大戦時に飛躍的に向上したシンの第六感による危機察知能力に加え、中国内家の武術を学んだ成果もここにきて発揮されていた。
中国内家拳法とは、呼吸、服気の調息によって丹田に満たした体内の気を、閉塞して飲み込み、練気を繰り返し、その気を四肢に巡らし常人には到る事不可能な深淵の領域へと人を高める武術大系の一つだ。
前大戦終了後のリハビリを終えてから、内家武術のひとつ戴天流剣法は短期間しか学ぶ事は出来なかったが、最初の師から学んだ念法と極めて似通った思想や修行法であったため、非常に良くシンに馴染んだ。
戴天流の師曰く、内家以外の者が攻撃を繰り出そうとした時、すでにその一撃の“意”は、攻撃よりも早く放たれており先んじて放たれた“意”の後を遅れて攻撃がやってくるという。
今のシンにとって、“意”から遅れてやってきた攻撃を払う事はさして難しい事ではない。
放たれる殺意の察知という点では、ニュータイプと呼ばれた宇宙の環境に適応した人類に似たものがある。ニュータイプと呼ばれた人種が先天的に備えているのに対し、戴天流の場合は血反吐を吐く鍛錬に依るものという違いはあったが。
くるりとスラスターの噴射と四肢の重心移動によってその場で前転した飛鳥インパルスの右足の踵がしたたかにガイアの頭部を叩き、頭部に積載した電子機器のいくつかに不具合が生じる。
機体バランスを崩したガイアめがけ、右手一本に握ったシシオウブレードを弓弦を引くように引き絞った飛鳥インパルスの腕が動いた。限界までたわめた鉄のバネが跳ねる様な勢いであった。
「じゃっ!」
「っそがあ!」
ガイアの頭部と胴を繋ぐ首めがけ放たれた刺突を、流石にオルガは生体CPUとして強化された能力とこれまでの戦闘経験を最大限に発揮し、ガイアの首を落とされる所を左半分を裂かれるに留め、機動防盾を杭の如く飛鳥インパルスの胴へと叩きつけた。
優れたGキャンセラーを始めとしたパイロット保護機能を持つ飛鳥インパルスだったが、衝撃を殺しきれずシンの全身を大きく揺さぶり、両者の距離が離れる。
体の内側をシェイクする振動を、呼吸と血流の操作、丹田に練り込む気で尋常なものに整え、シンは二秒ほどで揺れる視界を元の状態に戻した。一方のオルガは支障をきたしたメインカメラがサブに切り替わるまでの間、ガーティ・ルーへと機体を向けていた。
慣れないガイアで戦うには、危険の多い相手だ。オルガ達のアーモリーワン脱出を察知して、ゲシュペンストMk-Uやランドグリーズがこちらへの援護に動いている。それに乗じてガーティ・ルーまで後退するしかあるまい。
ガイアに背を向けさせるや、その前方を極太のビームが薙ぎ払っていった。驚きを噛み殺してビームの源を探れば、そこには先程までの姿とは大いに変わったザフトインパルスの姿があった。
それまで何も背負っていなかった背中に筒状のポッドと接続された長砲身を二本備えたバックパックが装着されていて、トリコロールだったカラーリングは胸部と肩が黒と暗緑色、四肢は白へと変わっている。
カラーリングの変化は背に負ったモジュールによって電気消費量が変化する為で、消費電力の最適化によるものだ。従来の相転移装甲(PS装甲)に対して可変相転位装甲(VPS装甲)と呼称されている。
ザフトのインパルスや、ガイアやカオス、アビスにも採用されている装甲だ。PS装甲に比べ通電電力次第で強度が増し、また稼働時間の延長が可能となる。もっとも核動力が一般化した昨今では稼働時間についてはあまり利点とはいえないかもしれない。
砲戦用モジュール“ブラストシルエット”に換装したブラストインパルスと呼称される状態だ。オルガがシンを相手にしている間にアクアがミネルバに要請し、ミネルバから射出された飛行ユニットから分離したモジュールが、インパルスの背部へと接続されたのだ。
「あの機体、換装して姿を変えるのか!? なにが新型だ、ストライクのパクリじゃねえかよ。ザフトの猿真似野郎どもがっ!」
地球連合がヘリオポリスで開発させていた五機のGの内ストライクに採用されていたストライカーシステムを、ザフト式に洗練し実用化させたものなのだろう。サーベラスでの操縦経験から、アクアは中・遠距離戦に高い適応性を持つ。
アーモリーワン内部では使用制限の多かったザフトインパルスの各モジュールや武装も、この状況でならさほど制限はない。
ブラストシルエットに搭載されている分も合わせ計四基のプラズマジェネレーターの出力調整に、大きく神経を削られながら、アクアはカオスとアビスへとケルベロス高エネルギー長射程砲二門の砲口を合わせる。
特機の運用も可能なプラズマジェネレーターを複数搭載しているのは、前大戦の最終決戦時に出現したAI1セカンド、ヴォルクルスとの戦いでザフトの有する機動兵器のほとんどが戦力足り得なかった事に対し、ザフトの技術陣が重大な危機感を抱いた事に起因する。
決戦を想定して開発された核動力機も、決定打を浴びせられる事は叶わず、DCが保有していた機動兵器によって勝ち得た勝利であったと言う印象が拭えなかったのだ。
ネオ・ヴァルシオンや精霊憑依状態のサイバスター、ネオ・グランゾンと言った単独で一勢力を壊滅し得る戦闘力を有していた規格外機動兵器がなければ、人類の命運が尽きていたのは明らかだった。
そのネオ・グランゾンやサイバスターさえも窮地に追いやった真ナグツァートを斃す決定打になった、ディス・ヴァルシオンの存在もまたザフト――ひいてはプラント政府に多大な危機感を与えたのである。
軍事同盟をこそ締結しているものの、世界征服を標榜しているDCがプラントと矛を交える可能性は低くなく、それに対抗する力がプラントにあるのかと自問すれば、その答えはNoとなる。
厳密にはネオ・グランゾンとパイロットであるシュウ・シラカワはDCに所属してはいないが、それでもシュウから多くの技術のノウハウは供与されているし、領土拡大を得ること叶わなかったプラントにとって、技術・国力に大きく溝を開けられているのが現状だ。
地球連合とザフトを同時に敵する事はDCにとって上策とはいえないだろうが、底の知れないDCの戦力なら、地球連合とザフトとの多面戦争を選択しないと誰に言い切れよう。
核動力を上回る高性能機の希望であったターミナスエナジーアブソーバーも、開発者であったエルデ・ミッテの反乱と言う事態に開発が凍結されてしまい、苦肉の策として光明が当てられた計画の一つが、核動力炉の複数搭載機であった。
インパルスの機体を三分割し分離合体機構を導入したのは、ダメージコントロールを容易にし、パイロットの安全性を確保しつつ、ウルトラ級エースに長時間戦線に出てもらうための措置だ。
と同時に、各機体構成箇所にプラズマジェネレーターを搭載し、DCや地球連合の特機に対抗する性能を得ようとした。
ザフトでもWRXなどの特機級の大型機動兵器を開発し、そちらに導入すべきでは、という意見もあったがそれをザフトに根付いているMS万能主義が阻害し、あくまでもMSという形に乗っ取った機体の開発にゴーサインが出されてしまった。
前大戦時にスレードゲルミルをはじめとした、ラクス・クラインと肩を並べた者達の特機や機体のデータがあったことは幸いだったろう。
それらのデータが新型機開発に活かされ、晴れてMSサイズで特機を打倒する事をコンセプトとした新型機の一号機としてインパルスはロールアウトした。
しかし、シルエットを装備すれば最大四基にもなるプラズマジェネレーターの搭載は、出力制御や搭載する機体のフレームをはじめとした各パーツの耐久性、廃熱処理などに大きな問題を残し、四基すべての出力を最大にすれば機体は三分と保たないのが実情だ。
コストパフォーマンスは劣悪、操縦性も出力制御があまりに困難な為これまた劣悪、性能も開発陣が求めた水準には達していないと散々な結果である。それでもカタログ通りのスペックなら、フリーダムやジャスティスが、可愛いと言うレベルなのだが。
もっとも求められた水準が、精霊憑依状態のサイバスターやネオ・グランゾンなのだから、そこまでの性能を要求するのはあまりに酷というものだろう。
欠陥機と言われればその烙印を消すのが難しいというか不可能なザフトインパルスは、パイロットであるアクアにターミナスエナジーの制御が楽に思えるほど繊細な作業を要求し、ケルベロス一発撃つだけでも、機体ステータスの変動が激しかった。
アクアもテスト段階では分かっていた、分かってはいたのだが、このインパルスは果たして実戦に投入して良かったものかどうかと疑念を持たざるを得ない。
テストパイロットとして選ばれた時はDFCスーツとさようならが出来ると言う喜びもあったが、実際乗ってみたら泣きたくなった。
なんだろうか、四基すべてのプラズマジェネレーターを稼働させてほんの四、五回戦闘に出たら胃潰瘍にでもなりそうな、このストレス過多な機体は。
実のところ、プラズマジェネレーターを一基のみ稼働させている状態の方が、もっとも性能を発揮できるというのが、アクアの感想だ。今もシルエットに換装時自動で四基起動するプラズマジェネレーターを、急いで三基カットした所だ。
自動起動の設定を、コアスプレンダー搭載分のみに設定しておいたはずなのに、メカニックが気を利かせたつもりで元に戻したのだろうか。
いや、ミネルバのMS技術スタッフリーダーのマッド・エイブスをはじめとした皆には、アクア自身がなんども頭を下げてお願いしていたから、設定を戻すような真似はしないだろう。
となると、DC総帥であると同時に天才科学者として名の知れたビアンのアーモリーワン訪問にいきこんだ、インパルスの開発陣が事前にチェックしてアクアの設定を元に戻したのかもしれない。
実際に乗る人間の事やMS運用方法の事など、碌に考えずに設計開発をしているに違いないと、アクアは心底プラント開発陣を呪った。
何度か地球連合の鹵獲機やDCの機体に乗る機会に恵まれたが、OSといい機体のコンセプトといい、なぜ他勢力は搭乗者に配慮した機体を開発しているのに、最初にMSを造り出したザフトはパイロットに優しくない機体を造る発想や技術に恵まれているのだろう?
637 :
通常の名無しさんの3倍:2009/05/24(日) 21:10:44 ID:Iq8EXHi1
支援
ただでさえザフトは保有する人員の数が少なく一人一人の兵士に対する負担が大きく、失った人員を補充する地力だって乏しいのだから、兵士の生存を優先する開発思想が主となってしかるべきだろうに。
愚痴を言っても仕方ないとアクアが気分を切り替えると、カオスの背からパージされた機動兵装ポッドが一斉に火を噴くのに気づき、アクアは慌ててブラストインパルスに回避行動を取らせる。
至近弾に機体を揺さぶられながら、デリュージー超高初速レール砲とファイヤーフライ誘導ミサイルを一斉に放って弾幕を形成し、動力炉を三基カットした事で格段に操縦性が増した機体を操り、爆炎の下方を回るように動かす。
爆炎の最大幅をくぐった時、目の前にビームランスを構えたアビスの姿があった。爆炎を隠れ蓑に接近して――と同じことを考えていたようだ。
ブラストインパルスの腰後部にあるデファイアントビームジャベリンを既に両手に握らせていたアクアは、躊躇う素振りもなくビームジャベリンをアビスのコクピットめがけて突きこんだ。
図らずして互いの捕獲と言う選択肢を放棄していたアクアとシャニは、互いのコクピットを目掛けて互いの獲物を繰り出し、ビームランスとビームジャベリンの穂先が衝突し、ビームランスは実体刃部分を、ビームジャベリンはビーム発生機を破損する。
カオスはディアッカとニコルが抑えてくれているはず。五つ、六つ年下の戦友たちを信じ、アクアはじゃじゃ馬どころではないブラストインパルスの手綱を握り、アビスとの戦闘に集中した。
*
「船籍不明の艦と敵ですか。取り押さえられますかな? デュランダル議長」
「無論、我がザフトの兵士達はその為に全力を賭してくれています。DCの方々のご協力に応えるためにも、捕えなければなりますまい」
艦長席の後部に設けられたオブザーバー席でそのような会話を交わすギルバート・デュランダル議長と、ビアン・ゾルダークDC総帥に、タリア・グラディスは艦橋に上げたくはなかったと五回目の愚痴を心中で零していた。
新型MS強奪さるの報告が進水式を控えた新造艦ミネルバに通達され、艦載予定であったインパルスが交戦状態にあると知り、急遽二機のザクウォーリアを発進させた時に幸か不幸か二人もの国家権力の頂点に位置する人物がミネルバへと避難してきてしまった。
二人の身柄の無事自体は喜ぶべきことなのだがその二人が折悪しく、まるで嫌がらせなのかと勘繰りたくなるように艦橋に同席しているのは艦を預かる身としては余計な口を挟まれるかもしれない上に、VIPの命の責任まで負わなければならないと遠慮したかった。
結局はオブザーバー席にデュランダルとビアン、ビアンの護衛であるステラを同席させてしまったが、今さらそれを言っても仕方がない。
オペレーターのメイリン・ホークからの報告で、DCからの援軍と奪われた新型MS達がアーモリーワンの外部へと移動した事を聞き、タリアは若干の躊躇を覚えないではなかったが、ミネルバで追撃する事を決めた。
戦闘になる事をデュランダルとビアンに尋ねたが、流石の胆力と言うべきなのか両者ともに落ち着いた様子でタリアの意思を尊重し、ミネルバの出撃を認めてくれた。
ビアンの傍らの少女が、分かっているのかいないのか、ぽやっとした顔をしていたのが、ささくれだつタリアにかすかな笑みを浮かべさせた。
コンディションレッドを発令し、全長350mの船体を誇るミネルバが進水式を迎えぬままに戦闘態勢を整える。ミネルバはこれまでザフトが建造してきたローラシア級や、ナスカ級、エターナルとはだいぶ意匠の異なる外見をしている。
ザフトの船と言うよりは、地球連合やオーブ系統の船に近い外見と言えるだろう。前大戦で獅子奮迅の活躍を見せたアークエンジェル級を参考にしていると言う意見が、兵達の間で流れたがタリアも心のどこかでは同意見だった。
ミネルバの前方へと突き出した馬蹄の様な船首の両脇に、弓のように湾曲した三角形の翼が広がる。グレイを主色とし船体下部や翼端は赤に塗り分けられている。
直線的なシルエットを描き、船体中央部にはカタパルトがあり、両舷にはMS発進用のハッチが見受けられる。
インパルスをはじめとしたセカンドシリーズに分類されるMSとの運用を前提に設計された新型艦だ。本格的な運用は宇宙を想定しているが、大気圏内でも運用可能で高い戦闘能力も有する。
艦長を務めるタリア・グラディスと副長であるアーサー・トラインは、前大戦時にザフトのトップエースであったエルザム・V・ブランシュタインの率いるブランシュタイン隊の母艦、エターナル級ウィクトリアの指揮を任された歴戦の猛者だ。
エルザムとその妻カトライア、実弟ライディースが謎の失踪を遂げた事で解散となった所を、これまでの戦績と能力を見込まれてザフトの威信をかけた新造艦ミネルバの艦長と副長と言うポストに収まっている。
予定通りならば進水式を迎えたのち月軌道艦隊に配属となるはずだったのだが、まるでヘリオポリスで起きたクルーゼ隊による地球連合のMS強奪をなぞる様な事態を迎え、処女航海へ半ば流されるような形で漕ぎ出す事になるとは。
まったく、何が起きるか分からないものだ。その言葉だけを口の中で呟き、タリアは手早く指示を飛ばした。すでに船体下のハッチが開き、ミネルバは宇宙空間へと初めてグレイの巨体を委ねていた。
「索敵急いで、インパルスとザクの位置は?」
艦長席のタリアから見て前方下部にずらっと並んで座るブリッジクルーの内、索敵担当のバートが応える。
「インディゴ五三、マーク二二ブラボーに不明艦一! 距離一五〇。ボギーワンです」
直後、モビルスーツ管制担当のメイリンが多少上ずった声で叫ぶ。
「ど、同一五七マーク八〇アルファに、DCインパルス、アカツキ、エルアインス、インパルス――アクア機、ザク――エルスマン機、アマルフィ機です。カオス、ガイア、アビスと交戦中」
「他の敵は?」
「ランドグリーズ十機、ゲシュペンストMk−U八機、ダガータイプ四機、更にデータベースにないモビルアーマーが一機、艦船はボギーワン一隻のみ確認」
「……ボギーワンを討つ。艦橋遮蔽、進路インディゴデルタ、加速二十パーセント、信号弾及びアンチビーム爆雷発射用意――アーサー、なにしているの!?」
艦橋がゆっくりと降下し、下階の戦闘指揮所へと直結する。最新鋭艦の機構をビアンに見せるのは多少問題が無い気がしないでもなかったが、タリアはデュランダルが黙っているのを黙認と解釈する事にした。
ビアンは、艦橋が移動する様を見て資料で見た異世界の戦艦であるラー・カイラム級の機構に似ているかと、感想を抱いていた。
タリアの近くでぼーっと突っ立っていたままのアーサーは、怒鳴りつけられると慌てて指示を出し始めた。スイッチが入ると普段とは別人のように的確な指示を出すようになるのだが、そのスイッチが入るのが遅いのはブランシュタイン隊の頃から変わらない。
「うあっは……はいっ! ランチャー一番から四番、ナイトハルト装填。トリスタン起動、一番、二番、照準ボギーワン!」
艦橋遮蔽システムは戦闘ステータスへの速やかな移行を可能とすると同時に船体突端に位置する無防備な艦橋を防護する機能でもあった。
スペースノア級なども艦橋が無防備に晒されているが、DCでは船体全体を保護するEフィールドとは別に、防護用の局所Eフィールドを何重にも発生させて対応している。
これが地球連合のアークエンジェル級になると、艦橋後部に設置された迎撃用のミサイルやイーゲルシュテルンで対応する事になる。割と無防備と言えるだろう。
次々と武装システムが起動していく中、タリアの背後のデュランダルが声をかけて来た。
「彼らを助けるのが先じゃないのか、艦長?」
タリアは少々うんざりしながら振り返る。モビルスーツ戦に移行している味方に対して艦砲をぶっ放して掩護するわけに行かない事くらい、分からないのだろうか。
しかし彼らを助ける為にボギーワンを撃つのだと告げようとしたタリアは、メインモニターに映る光景に気づいて口を噤んだ。
クライ・ウルブズ各機が敵MS部隊と交戦する中に、連装衝撃砲やミサイルを構わず連発しているタマハガネの姿が映っていたからだ。
後ろに目でもある様に艦砲をかわし戦闘を続行するDCのMSもMSだが、誤射も構わず撃ちまくる艦長の神経をタリアは疑った。
パイロット達を単なる消耗品とみているのか、それとも腕を信頼しているのか。エペソ本人に尋ねれば、若干の間の後に後者と言う答えが返ってくるだろう。
目前でこんな光景を見せられては、デュランダルがタリアにそう尋ねるのも無理はなかった。
単にDC側の方がいろいろな意味で――おそらくは悪い意味で――非常識なだけなのだが、そのDC総帥を目の前にしてデュランダルにDCが非常識なのだと言うわけにも行くまい。
ビアンに逆恨みめいた気持を抱きつつ、タリアは唇を開いた。何度かデュランダルと重ねた事のある肉感的な唇であった。
「そうですよ、だから母艦を撃つんです。敵を引き離すのが一番早いですから、この場合は」
ネオは、刹那とロックオンにビームガンバレル二基落とされながら、新たに出現した大型熱源が、ライトグレイの戦艦である事に気づいた。奪った新型が搭載されるはずだったザフトの新鋭艦だろう。
真っ向から渡り合うには今の状況は非常にまずい。ランドグリーズとゲシュペンストMk-Uの援軍があるとはいえ、続々とザフトの援軍が集まりはじめ、これ以上この場で戦闘を続ける事は自分達の首を絞める結果にしかならない。
「チッ……欲張り過ぎは元も子もなくすか」
潮時と言う言葉は今使うべきだろう。ネオはこれ以上時を浪費せずに、エグザスの機首を巡らして後退させる。
ビームガンバレルの全方位からの攻撃に対して驚異的な速さで対応し始めていた刹那や、同種の攻撃に経験のあるロックオンは突然背中を見せたエグザスに反応するのが遅れた。もともと速度ではMAの方がMSよりもはるかに速い。
あっという間に距離が開き、ロックオンが咄嗟にGNオクスタンスナイパーライフルの照準内にエグザスを捉える。
取った、とロックオンが確信と共に引き金を引くその寸前に、両腕を失ったランドグリーズが射線軸に割り込み、圧縮されたGN粒子がランドグリーズの腰部を貫いて爆散させた。ライフル型の専用コントローラーをロックオンが、苛立ち気に押し戻した。
「命に変えてでもかよ。意気込みはご大層だがな」
周囲の状況に目をやれば、カオスやガイアらも同様にランドグリーズやゲシュペンストMk-Uが盾となった事で逃げ切っていた。生き残りのダークダガーLも姿を消し、ランドグリーズなどを除く機体はすべてガーティ・ルーに戻ったようだ。
「あとはエペソ艦長とザフトの艦艇に任せるか。刹那、怪我はしていないか?」
「ああ。ロックオンは?」
「かすり傷の一つもないさ。DCの連中は全員無事だが、ザフトはかなりやられたな」
ザフトのお手並み拝見と、ロックオンはミネルバの動きを見守る事にした。
ランドグリーズやゲシュペンストMk-Uは捨て駒にするのか、収容する様子を見せずに回頭するガーティ・ルーが、ミネルバから放たれた複数のミサイルをイーゲルシュテルンで迎撃し、爆発したミサイルのあおりを食らってガーティ・ルーの船体が揺らぐ。
ブラストインパルスやディアッカらのザクウォーリアを収容したミネルバは、トリスタンや副砲イゾルデ、ミサイル発射管を休まず稼働させ、ガーティ・ルーの船体に穴を穿つべく互いの間にある空間を埋め尽くしていた。
足の速さではミネルバの方がわずかに上の様で、徐々に距離が詰まるその途中、ガーティ・ルーの両舷部にあるタンクがロックしていたアームごと切り離され、慣性のままにミネルバへと流れてゆく。
重量を軽減する為に切り離したのか? そう疑問を抱いたロックオンは、すぐに違和感を覚えた。ハロがコクピットのディスプレイに拡大した映像には、付き出した支柱の先に噴射口があり、基部の付近をタンクが取り巻いている。あれはまるで――
ミネルバの艦橋に座したタリアとロックオンがその物体か何であるかに思い至るのは、ほぼ同時のようだった。火線の絶えなかったミネルバが、唐突に対空砲をはじめとしたあらゆる火器の撃ち方を止めたのだ。
素早い判断と称賛に値するだろう。だが、それはわずかに遅かった。ミネルバの鼻っ面で、ガーティ・ルーの予備推進タンクが真っ白い光と共に炸裂し、乱気流に飲まれた木の葉のようにミネルバの船体が揺らぐ。
「あちらの方が一枚上手、か」
至近距離の爆発で大きく船体を揺らがせるミネルバを見つめながら、エペソが他人事のように呟いた。あの艦に搭乗している自軍の総帥の安否を気にせぬあたりが、この人造の将らしい。
オペレーターの報告に耳を傾ければ、あの爆発の隙を突いてボギーワンは反攻に出るのではなく、逃げの一手を選択していたようだ。船体重量が軽減したボギーワンは、見る見るうちに小さくなってゆく。
残されたランドグリーズやゲシュペンストMk-Uらもこの一瞬の騒ぎに乗じて、再びステルスシステムを再起動させたようで、鹵獲した機体を除いてすべてこの場から姿を消している。
水際立った手際のよさであった。錬度と装備の質の高さとが釣り合った敵の様だ。戦闘中のデータを手元のモニターに映し出しながら、エペソが鼻の付け根を右手の人差指でこつこつとタバするように叩いた。考え事をする時の癖だ。
「ランドグリーズにゲシュペンストを用いる部隊……後はコクピットにパイロットの姿が無ければ、あの者が告げた影の者達になるか。となればユニウスセブンを落とさんと目論むは必定だな」
おそらくミネルバはこのままあのボギーワンの追跡を優先するだろうが、さて同乗しているビアン達は下船出来るだろうか。
ランドグリーズらの増援が現れるまではこのまま自分達も同行してMS奪還に協力する事になる、とエペソは踏んでいたが、今はその考えを撤回しなければならないかと考えていた。
ユニウスセブンには十分な戦力を派遣したと思っていたが、見込みが甘かったかもしれない。
一方ミネルバでは、推進タンクの爆発の隙を突いて敵の攻撃が来るとした判断が誤りであった事を悟ったタリアが、苛立ちを隠さずにシートのアームレストを握りしめていた。
「やってくれるわ! こんな手で逃げようなんて」
「……だいぶ手強い相手の様だね」
背後から口をはさむデュランダルの声音が、決して楽観的なものではない事に気づきながら、タリアは睨みつけるようにデュランダルを振り返った。
「ならばなおのこと、逃がすわけにはいきません。そんな連中にあの機体が渡れば……」
「ああ……」
インパルスもそうだが、ザフトではMS一機当たりの性能を持てる技術の粋をつくして、性能を高める風潮に在り、対特機戦をも想定したインパルスのみならず奪われた三機も、文字通り一騎当千の性能を与えられている。
その機体が奪われて敵方に渡る事は、情報漏洩の危機のみならずパワーバランスの変化にもつながる危険性を孕んでいた。
「議長、いまからでは下船していただくこともできませんが、私はこのまま本艦がアレを追うべき、と判断します。ですがビアン総帥は……」
「ふむ。確かに私どもの問題にこれ以上ご助力いただくのも申し訳ない。ビアン総帥にはあちらの艦へお戻りいただいた方がよろしいでしょう。いかがですか?」
深刻な顔のまま、デュランダルは傍らのビアンへと眼差しを向ける。この破天荒な所のある男なら、このままDCに協力を申し出るかもしれないが、これ以上恥部とでも言うべき事態に他国の人間を関わらわせるわけにも行くまい。
顎髭を一撫でして、ビアンはエペソと同じようにユニウスセブンと奪われたガイア達を天秤にかけていた。どちらを優先すべきかは、考えるまでもないだろう。
「タマハガネから迎えを寄越させよう。お気づかい感謝する。では、私は貴方がたの健闘を祈ることとしよう」
「我々こそとんだ事態に巻き込んでしまい、なんとお詫びすればよいか」
「気にしないでいただきたい。一刻も早い事態の解決を心からお祈りする」
ユニウスセブンで起きる事態を事前に知っていなければ、このままクライ・ウルブズを同行させる判断を下したかもしれないが、そうもゆくまい。ビアンはあくまで丁重にデュランダルらに、下船する旨を伝えた。
ボギーワンを追跡する為にもあまり時間をかけるわけにも行かないから、すぐさまシンの飛鳥インパルスをはじめとした数機がミネルバへ着艦し、ビアンやステラをはじめとしたDCの関係者達をコクピットの中に収容する作業に移った。
飛鳥インパルスのコクピットの中に、ビアンとステラが乗り込む。わざわざ見送りにまでデュランダル議長が出向いている事に気づき、シンがヘルメットの奥で少なくない驚きを覚えた。
自分の座るシートの右側に腰を落ち着けたビアンに、シンが問うた。
「良かったんですか? このままミネルバと別行動に移って……」
「構わん。この程度の事態を収拾できぬようであれば、盟友と呼ぶ価値もあるまい」
「……分かりました。総帥、ステラ、しっかり掴まっていてください」
「うむ」
「うん」
シンが最後にミネルバから飛び立つと、アクアから電文が届いていた。“気をつけてね”と短いが、こちらを気遣っている事がシンには分かった。本当に、アクアやレイ、ルナマリア達と戦う様な事にならなければいいのに。
数分とかからずタマハガネに着艦し、最大戦速でボギーワンを追うミネルバの映像を見つめ、シンはあの船に乗るアクアの健闘を祈った。
そして、ビアンやエペソ、デンゼルらの危惧は現実のものとなり、この時、ユニウスセブンに派遣されていたDCの監視部隊は突然の奇襲を受け、壊滅していたのだった。
支援
もしかして容量足りない?
つづく。
申し訳ありません。最後の最後で引っかかりました。紛らわしい事をしてしまって本当にごめんなさい。
また、支援してくださった方々に感謝を、ありがとうございます。
ちなみに、私的には各勢力をギレンの野望風にすると、こんなイメージです。
・DC→ネオジオン(キャスバル)+エゥーゴ
・ザフト→正統・新生・ネオジオン発生後のジオン
・正統オーブ→技術レベルの高いデラーズフリート
・地球連合→地球連邦
・ザ・データベース→アクシズ
他にも色々な勢力がありますが、今のところメインはこれくらいでしょうか。ではご助言・ご忠告・ご感想お待ちしております。
ありがとうございました。
総帥乙でした
やはり来たか影鏡
とするとネオはWシリーズだったりするのかな
さて次スレの時期ですな
ちょっとやってみる
ZAFTヤバすぎるwww
動力最大4つをインパのあの大きさに積めたのは純粋に凄いと思うが、大事なことを忘れてる(´・ω・`)
まあ人材ない上に系譜2部後半で自軍のまともな新型がないジオンよか未来はあるか?
キュベとかガザはアクシズだからジオン軍とはまた違うよな。
しかしシンと飛鳥インパルスいいなぁ。出来るだけ長くこの組み合わせで続けて欲しいよ。
飛鳥インパルスがゲイオスグルードやらガイアを圧倒しているのに
比べて、アクアインパルスのピーキー振りと来たら……
ザフトマジやべえな
梅
誰かwikiに編集頼む
うpろだにうpしといたので編集ヨロ
埋め
梅干し
埋め
産め
膿め
,r‐、 , -、
! ヽ / }
ヽ、 ,! -─‐- 、{ ノ
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