SEED DESTINYでSSを作るスレ12

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1通常の名無しさんの3倍
SEED及びSEED DESTINYはいい素材がいっぱいあるのに…それが生きていない!
または、ここでこうやってたら面白かったんじゃないか?
などを思ったことはありますか?
ここは、そんな人たちで理想の種及び種運命を生まれさせるスレ。
リライトでも話を変えても今の本編からの「もしも〜」や、
設定を生かした全く違うSEEDなどを書いてくれればいいです。
SEEDでの主人公を変えて作るなどもやれるのならば!

※職人さんは感想などをちゃんと聞きましょう。
特に「ここはこうすれば良いんじゃない?」と言うような言葉には出来るだけ従いましょう。
それこそがあなたを職人として成長させるのです。
職人さん、頑張ってください。みな応援しております。

前スレ
SEED DESTINYでSSを作るスレ10(実質11)
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1207007545/l50

SEED DESTINYでSSを作るスレまとめサイト
http://seedss.web.fc2.com/index.html
21:2008/07/01(火) 21:15:15 ID:???
前スレが落ちたので再びたてますた
3通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 01:01:17 ID:???
             _人人人人人人人人人人人人人人__
             >   ゆっくりしていってね!!!   <
         r´ ̄ ̄ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ ̄ ̄`ヽ
 /´  ̄ `ヽ、 i____CD__l/´ ̄`\  /´  ̄ `ヽl____獄____l/´  ̄ ` \
r   ___   rゝ、 ____,ノヽ   _  ソ  __   rゝ、 _____ノヽ  __   ヽ
l  ミ   ヽ/   __,,      ,,__ Y   `彡|ミ    Y 〆ヽノ    レ ヽ Y´   `彡 |
{ ミ     |  ´rェョ  ,-、 fエュ` l!   彡ル ミ   | rェij .,-、 fiエチ  l!     彡 }
ゝ ミ      }   ll!´`j l;;;;;;l {´゙リ {    ミ 人 ミ   |  l!´`j i;;;;;} {i´`リ |     ミ /
ヽ、 ` ー '' ~ f   `~´t __,`~´ リ ` ー ´ノ  ヽ `ー '{ ゝ`~ t __,`~´フ { ` ー ´ /
   ` ー- ‐"ヽ、    ヽ _ソ   ノ `ー‐‐´    ` ー ‐ヽ、ヽ  ヽ´_ノ   / ノ` ー‐ ''
         ` ー ─ -- ー''´               ` ー─ - 一 '' ´
4通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 12:44:03 ID:???
>>1乙です
落ちる前日に投下した10レスが全部無駄にorz
記憶を頼りにもう一度書き直します。ウンメイニハマケナイ
5通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 12:51:23 ID:???
>>4
ログ保存してるから貼っとく?
6通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 14:20:59 ID:???
>>5
ぜひお願いします!
7前スレから転載:2008/07/02(水) 21:33:00 ID:???
「あれが痛車って奴か?」「ほら、カメラさん撮って撮って!」
コミケ会場前は荒れている。
マスコミ、どこまでいい加減で身勝手なんだ、あんた達は!
「しかしオタクは本当に気持ち悪いな。汗だらけのデブがうようよいやがる。
エコキャンペーンやるより馬鹿なオタクを全滅させた方がよっぽど地球に優しそうだなw」
言い過ぎだ。
大声で言うものだから周りのオタク達がもの凄い不快そうな顔でマスコミを睨み付けている。
「おお怖っ!睨んでるよこいつらwさすが犯罪者予備群だなw」
だれかこいつを止めろ。


ステラ……でも、でも俺は
やっぱり君だけが 君がいなければ何も

『シン…目開けて』



『シンには大切な人達がちゃんといる
だから目を開けて、大切な人達をちゃんと見て』

大切な人達……………はっ!!

そう、ステラの言う通りだ。
シンには、まだ大切な物が残されている。
心を閉ざして瞳を閉じれば見えなくなってしまう
だけど瞳を開いてその存在を思い出せば思いが沸き上がる暖かな光。

そうだ……俺は 俺にはまだ

『シン…!』

仲間がいた…!!!
8前スレから転載:2008/07/02(水) 21:33:44 ID:???
「GNバスターソード……濃縮粒子放出!!」
エクシアの手に握られたバスターソードの中心がスライドし
内部に貯蔵濃縮されていた赤いGN粒子が一気に溢れ出す。
「はぁっ!!」
ズシャァッ!!ババババババアバッ!!!
強大なビーム性質を得たソードがストフリのビームシールドに叩き込まれる。
溢れるエネルギーはあまりにも膨大で強力なビームシールドもその力に耐え切れず

バッシューーーン!!!    バッガーーーーンズガラガンドゴッ!!!

シールドブレイク、ストフリは圧力に耐えきれず弾き飛ばされ
勢いよくエロアニメ制作会社の入っているビルに激突して小爆発を起こした。
「がっ!!ぐぅっ!!このやろ…」
「(貯蔵粒子には限りがある、一気に決める!)もう一撃っ!」
エクシアが再び剣を引っさげ飛びかかる。


そうだ 俺には仲間が セツナがいてくれた!!

『うん それに それだけじゃないよ 他にもシンの事を思って戦ってる人がいる
シンが目を開いてちゃんと見れば 大切な人はそこにいるよ』

ちくしょう!! 俺は 俺は何でこんな大切な事を一時でも忘れてたんだ!!
忘れちゃだめだろっ!!仲間なんだから!!!
大切な 仲間なんだから!!!
俺は!!…………馬鹿だっ
9前スレから転載:2008/07/02(水) 21:34:44 ID:???
「はぁっ!」
「二度も当たるかよっ!!」
ヒュッ!!
降り下ろされたバスターソードが空を斬る。
回避に専念したストフリには当てるどころか掠りもしない。
「くそっ!」
それでも諦めず追撃!何度も何度も剣を振るう。しかし
ヒュンッヒュンッ ヒュッ!!
最早一切当たらない、完全に攻撃を読まれて軽くあしらわれている。
「ワンパターンなんだよ!w」
「くそっ!当たれっ当たれぇー!!」
「ま、そんなデカいエモノ一本じゃどうにもならねぇよ……なっ!!」
ドガッッッ!!!
「ぐはあぁぁぁぁ!!!」
斬りかかるために接近し過ぎていたのが仇となった。
ストフリのレールガンを間近で腹へと撃ち込まれエクシアは機体の破片を派手にばら撒きながら吹き飛び
バッグシャドッゴー!!!
エロゲ会社のビルに突っ込んでエロゲ製作用のPCがショックで爆発してそれによってその場は激しく燃え上がった。
「セツナ君!!」「ばっ!大丈夫か!?」「ちょっと!何かすごく燃えてるよ!?」
燃え上がるエロゲ。
トリニティもエロゲを、じゃなくてセツナを心配している。
正しくはミハエルだけエロゲも心配している。
燃え上がるエロゲ、その中からエクシアがゆっくりと立ち上がった。無事のようだ。
しかし機体の胴体部は派手に粉砕され、セツナのいるコックピット辺りもかなり破損している。
飛び散った破片の一部がセツナの体に突き刺さり全身から血が流れている。
「うっ…(体……が)」

スーーーーーッ

立ち上がったと同時にバスターソードの濃縮貯蔵エネルギーが切れ、その大剣から強大な力が失われた。
決定打を失いエクシアはさらに窮地へと落とされる。
「(バスターソード………くっ)まだだ、まだ、戦える!」
10前スレから転載:2008/07/02(水) 21:35:25 ID:???
『立ち上がって シン
シンを大切に思ってくれる シンも大切に思ってる やさしい人達を守るために』

ステラ 俺…分かったよ 俺が今する事 したい事
立ち上がらなきゃ駄目な理由が!

『シン………うん!』

俺はあいつらを守りたい!大切な人達だから!
だから 俺はもう一度立ち上がるんだ 何度だって!


コミケ開場!

「危険ですので走らないで下さい!お願いします!」
係員が注意を呼びかける。しかし

「ぶっひゃっひゃーーー!!!新刊買いまくって転売!!」
「俺一番のりー!!」
「どけよお前ら!!」
係員の注意を無視した邪道横暴悪代官が扉が開くやいなや全力疾走した。
先頭が走れば後ろの人間も釣られて走る。
それが連鎖に連鎖を重ねて結局みんな走る事になる。
何度注意しても改善されない悲しい運命。
「(転売転売!!)」
転売屋、マナー守らないオタクを先頭に人の群はなだれ込んだ。
11前スレから転載:2008/07/02(水) 21:36:14 ID:???
ボロボロでもう勝ち目などあるはずもないのにエクシアはストフリに挑む事を止めない!
斬りかかり、交わされ、反撃を喰らってそれを何度も何度も繰り返す。
「(俺は倒れない!シンを、トリニティを、俺が……俺が!)大切な仲間がいる限り俺は負けない!!!」

コミケ会場
一番の人気ブースにマナー違反を犯した者達が到着した。
息を荒くして目を真っ赤に血走らせた亡者達が押し寄せる。だが
「何だ?誰もいないぞ!?」
「どうなってんだ!?」
「責任者どこだよ!?ふざけんなよ!!」
「何だこのでかい画面?」
転売屋やオタク達がざわめいていたその時
そこに設置されていたモニターに光が灯り、そこにある人物の姿が映し出された。

【この場所に開園からこんな短時間で人がやってくるという事は、どうやら私の望んだコミケにはならなかったようだ】

画面に映し出された人物、それは
「あ、この人……伝説のエロゲーマーアーサー・トライン!!」
「え!?この人が!?」
「コミケ引退した後行方不明になってたあの人か!?」
「居なくなっても誰も捜索願い出さなかったっていう」
12前スレから転載:2008/07/02(水) 21:37:12 ID:???
【オタクは未だ愚かで自分の得ばかりを考え、コミケを破滅に導こうとしている】

「おらぁっ!!」
「負けられない!負けられないんだぁー!!!」
グシャァ!!
エクシアの頭部がひしゃげる!
ガッ!!
最後の武器のバスターソードも弾き飛ばされてしまう!
「例え…例え全ての剣を失っても、この命が尽きない限り希望はあるんだ!!!
俺に、仲間を思う強い気持ちがあるのなら、絶対に!!!うおぁーーーーー!!!!!」

【というか、走るなって言ってるだろう!!いい加減にしろマナー違反達!!
普段部屋に引きこもって禄に運動もしないデブかガリガリばかりのくせにコミケの時だけスタートダッシュするな!!
転んで倒れてドミノ倒しになって怪我人出たらどうする!!コミケ潰れたらどうする!!
ここは戦場なんだぞ!!運が悪いと本当に潰されたり体悪くして死ぬ事だって十分可能性があるんだぞ!!
分かっているのか!!??
軍人になった私を見習え!!
コミケで具合悪くならないよう体鍛えるためだけに軍人になった私を!!
お前達はコミケを舐めているのかぁぁぁkそあjぽふぁ;あかあああああああああ!!!!!?????
……………はぁ…はぁ】


ステラ……俺は 行く!

『うん』

この世界で……俺は君を救うことが出来なかった だけど
必ず俺は運命を打ち破る! マルキオの運命を越えて 必ず
君を救う世界にたどり着いてみせる!

『シン…私も 私が幸せに生きられる 怖くない世界に行きたいって思ってる 願ってる
だけど 「救う」なら もう私 シンにしてもらったよ?』
13前スレから転載:2008/07/02(水) 21:38:05 ID:???
【……だが、私はまだオタクを信じ、力を託してみようと思う】


『生きられなかったけど 私の胸はやさしさでいっぱい
シンのくれた思いで 私の心は救われてるよ ずっと 前から』

ステラ……


【コミケは】


「おらぁおらおらおらぁっ!!!」
ズガドガガスズッガッドゴザギュッ!!!
サーベルで全身を滅多切りにされ、エクシアはもう完全にどうにもならない。
ただその身が砕かれ斬り裂かれて散り行くのみ。
「エクシア……だ……いやだ………俺は…負けたり…しな……ぐはぁ!」
「最高だな!ストフリの力は!
ガンダム、こいつはとんでもねぇ兵器だ。戦争のしがいがある!楽しくてたまんねぇよ!!w」
ズバッ!!
「があーっ!」
「てめぇらも本当は楽しくてたまんねぇから戦争してたんだろっ!?w」
「っ…違うっ!」


【オタクは】
14前スレから転載:2008/07/02(水) 21:38:55 ID:???
ズシャ!!
「がっ!……絶対に、絶対に違う!」
ズバァッ!!
「がああああっ!!!…っ…くっぅ
お、俺の、俺達の戦いは!!!」
「はっ、いい加減耳障りなんだよぉ!!
こいつで、止めだっ!!!」
ストフリのフルバースト!全砲門が輝く!


ステラ………ステラァーーーーーーーーーーーーー!!!!!好きだぁーーーーうあーーーーー!!!!!!!

【変わらなければならないのだから!!】

ギュアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
カーーーーーーーーーー!!!!!

パァーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
「っ!?なっ、何だと!!???」
フルバーストが唸った瞬間
瓦礫に覆われたその場が突如目映く果てしない閃光に溢れかえった。
光は全てを包み込み、その場の全ての者の視界は白一色となった。
「ぐぁっ!なんだこりゃあ!!目が!目が見えねぇー!!」
美しく輝く光。
それはやがて一点へと集束され一つの光となる。
「ぐっ……何だあれは?よく見えねぇ………あん?あれは………っ!?」
集まり輝く一点の光。
そこから何かが飛び出し、一瞬でアリーのもとまで到達した!
15前スレから転載:2008/07/02(水) 21:39:34 ID:???
ズバァーーーーー!!!
「なあぁぁぁぁぁぁ!?」
一瞬の、飛び出した物に反応した次の瞬間
ストフリの左腕が勢いよく斬り落とされた。
「な……くっ、何が起こった!?」

ドコドコドン チャッチャッチャラチャラ♪
ビュン!! ビュン!! ビュワーーーーッ!!!

ドコドコドン チャッチャッチャラチャラ♪
ヒュンヒュンヒュン!!! ギュアーーーーーン!!!

何かが、光輝く何かが
もの凄いスピードでストフリの周りを飛び回っている!
その早さは次元を越えている!肉眼でもレーダーでもその姿を捉える事が出来ない!
ドコドコドン チャッチャッチャラチャラ♪
「何だこの動きは!?……そこかっ!!」
放たれる一斉射撃。だが

チャラチャラチャラチャララーーーーーーーーーーーーーーーー♪♪♪
ヒュンヒュンヒュンッ!!!

全然当たらない!?掠りもしない!!
全く攻撃が効かず
ズバァー!!!
さらに後ろに周り込まれて左翼を一瞬の内に斬り落とされた!
「俺の背後をっ!!??」
ドガッ!!
「ぐあー!!!」
次元を超えし究極の閃光がストフリを地面へと叩き落とす!
16前スレから転載:2008/07/02(水) 21:40:12 ID:???
次元を超えし光は溢れるその輝きを空に降らせながらスピードを落とし止まる。
静止して分かるその姿、その機体。
呆気に取られて呆然としていたセツナはその機体の姿を捉えるとその名を呟いた。
「デスティニー…!?」
その光の正体、それは デスティニー!
ステラと共にバラバラに散ったはずの機体。

「大丈夫か!?セツナ!トリニティ!」

「っ!シン………シンか!?」
「シン君!」「おま……そいつは一体」「すごい光…綺麗!」

「無事で、良かった…………本当に!!」

「ああ。それで、その機体は?」

「…俺にも何がどうなってんのか分からない。ただ俺は………!?これはっ」
ディスプレイを見るといつの間にか知らない映像データが無理矢理流されていた。
その映像に映っているのは
「副艦長!!!????」
かつてミネルバにいた時に副艦長だった
前のコミケバトルの時に助太刀してくれた
あの、アーサー副艦長だった。

【シスターコンプレックスを有する者達よ!】

アーサーの真意、その思いが今シンへと伝えられる!
17通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 21:41:36 ID:???
>>6
これでおk?
18通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 23:36:14 ID:???
超ありがとうございました!
ゲーム機使って書いててログ残せなかったので助かりました。
残り数話、シリアスとギャグを分別せず書きます。
19通常の名無しさんの3倍:2008/07/05(土) 00:07:32 ID:???
>>18
がんがれ!!
20通常の名無しさんの3倍:2008/07/05(土) 19:00:40 ID:???
まとめサイト読むと懐かしいな
21通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 14:25:54 ID:???
強い思い、アーサーのオタクとしての全てを懸けた言葉が、シンに
そして
「うおっ!なんか俺の画面にも出てる!!」
ミハエルにも伝えられる。
全てのシスコン達に最後の望みが放たれる。
そう、アーサーはシスコンこそオタクを救う存在だと見極めたのだ。

【君達が私の意志を継ぐ者なのかは分からない
だが、私は最後の希望を
シスタープリンセス プレミアムファンディスクの全データを君達に託したいと思う!

君達が真のコミケを勝ち取るため
マナー改善のために戦い続ける事を祈る!

損得勘定のためではなく、自分の意志で 妹キャラと共に!】


「妹キャラ……!(マユ、ステラ!)」
シンは全てを悟った、その言葉の意味を、信じて愛して進むべきその光を!
「妹キャラ!(ネーナ!)」
ミハエルも悟った、その意志を、思いを!
二人だけじゃない!
世界の全てのシスコン達にアーサーの意志が伝わった!
そして、世界中の全てのシスコンの力
内に眠るSEED(妹 Sister・好色 Eroticism・熱望 Eagerness・妄想 Delusion)のファクターが覚醒した!

そしてシンは
遺伝子による身体の力のSEED 妹キャラへの思いによる心の力のSEEDという
二つの力を持つ奇跡の存在となった!
22通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 14:47:50 ID:???
「ぐっ、クソがっ!!どんな手品か知らねぇがっ!!」
ストフリが立ち上がりサーベルを握りながらデスティニーへと一瞬で飛びかかる。だが

シュン

「なっ…!」
ストフリがサーベルを振るうと同時にデスティニーが消えた。
煌めく残像と光を残して一瞬で!
デスティニー、それは最早ストフリがかなう存在ではない!

「はあぁぁぁぁぁ!!!!!」 シンの叫び!デスティニーの俊撃!シスコンの光!!!

ズバッズゴッドガッバギャギュグズギュー〜∞〜ドガッドッドーガー!!!!!!!

たった一秒で百億万もの攻撃がストフリへと加えられた!
「この俺が………嘘だ、嘘嘘嘘だぁーーーー!!!!!うあーーーーーーー!!!!!」
ちゅぼーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!
アリーがやられてしまった。
デスティニーの攻撃は空切り鋼断ち、最強の敵を一瞬でバラバラの木っ端微塵にしてみせた!

「俺は、俺は生きるよ!仲間と一緒に生きるよ!!マユーーーーー!!!ステラーーーーーー!!!」

これが妹キャラや仲間を愛する者の力だ!
23通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 15:09:49 ID:???
『まだだ、まだ終わりはせんよ!!!』
ストフリを倒して勝利と思いきや、超能力で響き渡ったマルキオの声と共に
バラバラの塵となったストフリが又しても光に包まれて、一瞬で復活した。
「クソ野郎が……俺は何度でも、何度でも、何度でも!蘇ってやるぅ!!!」
アリーは死なない。

「くそっ!こいつを倒す方法は無いのか!?」
不死身の敵のしつこさに唇を噛むシン。
が、その時

ピカーーーーーーー!!!

突如、エクシアの太陽炉
そしてマルキオの手に堕ちていた、残骸と化したOガンダムの太陽路が
緑色の優しい光を放ち出した。
Oガンダムの太陽路の光は集束してストフリへと浴びせられ
「ぐあっ!なんだこりゃ!う、動けねぇー!!」
ストフリの動きを完全に封じ込めた。
そして聞こえてくる、ドライヴからじいさんの声が。

〔GNドライヴを持つ者達よ〕

聞き覚えのあるその声にセツナとトリニティは目を見開く。
「この声は…!」
「イオリア…」「イオリアじじい!!」「イオリアおじいちゃま!?」
24通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 15:25:42 ID:???
〔現在GNドライヴを取り巻く状況は私が想定したどのパターンにも属さないものである
それゆえこの先の戦いは、GNドライヴを持つ君達に 全て委ねたいと思う
私が願うのは紛争根絶 それだけである
私の遺志と共に、GNドライヴの全能力を君達に託したいと思う
…………君達が悪意に溺れずその力を紛争根絶のために使う事を願う〕

「イオリア…」
イオリアの遺言が終わると共にエクシアの画面に隠されていたシステム
トランザムシステムの全データが映し出された。
エクシアは赤き光を放ちその究極の力、トランザムを発動する!

一方、Oガンダムの太陽路はマルキオの手に堕ちているはずなのだが
マルキオが幾ら電波で上手く操ろうとしても、もう完全に自由に出来なくなっていた。
太陽路のブラックボックスに隠されていたイオリアのプログラム
それは計画の異常を察知する他、太陽路が異常な改造、干渉等を受けた場合にそれに抵抗するシステムだ。
太陽路に異常な干渉を与えたマルキオ電波、電波を全開で使用しているストフリをイオリアシステムが阻害しているのだ。
以前シンとセツナが逃げる際にOガンダムが機能停止したのもこのプログラムが関係していた。
GNドライヴ、それは紛争根絶のために戦う者のみに力を与えるイオリアの思いそのものだった。
25通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 15:46:43 ID:???
「イオリア……お前の思い、確かに受け取った!
行くぞ、シン!」
「ああ!二人の力を合わせるぜ!」
デスティニーとエクシアがその身に光を纏って空高く舞い上がる!
デスティニーより対鑑刀アロンダイトを受け取ったエクシアは天空から超絶スピードで降下!
ズバァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!
ストフリに神速の一刀両断!
さらにあらゆる方向から凄まじい早さで連続斬撃を食らわせて木っ端微塵に!

そして天空のシン、デスティニー
「アリー・アル・サーシェス……今度こそ安らかに眠れ!
パルマフィオキィーナ!!!!!!!」

ドッグァーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

デスティニーの放った光はストフリの残骸を全て飲み込み
塵の何もかもを完全に消滅させて、アリーを安らかな眠りへと着かせた。

「……」
こうしてアリーとの運命の戦いは終わった。
宿敵アリーの最後を見詰めるセツナの気持ちは
セツナ本人も分からなかった。
ただ、それは喜びではなく切なさに似た何かだった。
アリー・アル・サーシェス
彼が戦争ばかりを求めるのは運命だったのだろうか?
だとしたら、この世界に救いなんて無い。
違う、きっと変えられる。
もしこの戦いが終わって新たな世界へと生まれ変わるのなら
今度は彼にも優しい世界で平和に生きて欲しい。
彼がその時望んでくれるなら。
26通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 16:00:40 ID:???
「ちょっと待て、こら」
ミハエルが不機嫌そうに呟く。
「シスタープリンセスの全データを託された俺が何もしない内に決着が着くとかあんまりだろ!」
「ミハエル、もう終わったんだ。余計な考えは捨てろ」「別にいいじゃんミハ兄〜。勝てたんだし」
「け、けどよぉ………なんつーか
(結局シスプリのファンディスクの全データを託すって何だったんだ?)」
アーサーは思いをシスコン達に託した。
だが、シスプリファンディスクのデータを全世界にばらまいただけだった。
シンの機体がデスティニーとなり復活したのはステラの思いのお陰だった。
アーサーは全然関係無かった。
あと、シンもミハエルもとっくの昔にシスプリファンディスクはプレイしてて
今更アーサーにデータを送られても意味は無かった。
ちなみにアーサーはエロゲマニアであって非エロのシスプリは全然詳しくなかった。

「行くぞ!決着だ!」
「ああ!」
トリニティ達を立ち寄ったコミケ会場の医療班に任せてマルキオの所へ向かうシンとセツナ。
もう強いマルキオマイスターは全部倒したから後はマルキオ本人を倒すだけだ。
電波の一番強い方へと向かい、そして
「ここは……メイド喫茶かよ!!」
「メイド喫茶……?(なんだこれは?何をする所なんだ?)」
二人がたどり着いたのは
メイド喫茶にゃんにゃんごろにゃんだった。
ここが最後の決着の場所か!?
27通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 16:23:28 ID:???
メイド喫茶に突入!

「いらっしゃいませ、ご主人様ぁ!にゃんにゃん♪
……………よく来たね、シン君、セツナ君」

「っ………(ごくり)」「……?」
猫耳を付けたマルキオに出迎えられたシンとセツナは凍り付いた。
意味が、何が起こったのか分からずその場に立ち止まって動けなくなった。

「どうした二人とも?
…………まさか、私のこの姿にドキッとしてしまったのかな?」

「……(んなわけねーだろ…)」「シン、メイド喫茶とはなんだ?」

「ふん、まあいい。
なんにせよここまで来れた事は褒めてやろう。
あのアリーを完全に倒すとは流石と言った所か。
だが、君達の戦いはここで終わりだ!」

「どういう意味だ!?」「シン、にゃんにゃん♪とはどういう意味なのか教えてくれ」

「忘れたかね?私は世界を繰り返させて来た張本人だよ!」

「はっ!!(ああ!)」「シン、メニューに載っているオムライスふーふーとはなんだ?」

「ここまで無駄な頑張りご苦労様だな!いい暇つぶしとなったよ!
さらばだ!
世界よ、再びやり直されろ!!!!!」

ぎゅわーーーーーーーーーーーー!!!!

マルキオの世界をやり直す力が発動した!
全てが次元の混沌の中に巻き込まれ、世界は今よりずっと前からやり直される!

「うわぁーーー!!!セ、セツナーー!!!」「シンー!!(メイド喫茶の意味を教えてくれ!)」

「さらば、運命に負けし者達。
新たな世界は少々電波で歪ませ
シン君はオノゴロで家族と一緒に死ぬ、セツナ君はOガンダムの助けが無く撃ち殺される、
そんな世界としよう!ふはははははははははぁ!!!」
シンとセツナの今までの戦いは全て無駄だったのか?
最終話へと続く 完
28通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 15:53:42 ID:???
種死 運命を超える者 最終話「破壊と再生」

世界のすべてが終わる。
「この世界」のすべてが巻き戻されて
世界は新たな色に染まるべく各々の原初へと回帰し再生する。
世界が終わり、世界が始まる…

『うぅ……お、俺は…負けたのか?』
再生する世界の中で「前の世界の」シンの心が「浮いて」いた。
あの日あの時の、家族を失ったオノゴロへと「シン」は戻る。
うっすらと残る記憶の屑が思い出す、マルキオとの戦い、その敗北、仲間の記憶。
『俺は……』

「父さん早く逃げないと!!」
「くそっ、なんでこっちで戦争なんか(軍施設はもっと向こうじゃないか!なんでこっちに)」
森の中を全速力で走る家族がいた。
シン、マユ、両親。
父親の「まだ大丈夫だろう」という甘い考えが避難の遅れを生み、家族は今まさに戦闘域であるこの場を走っていた。

『ああ!!なにやってるんだよ!早く!早く逃げろ!』
この世界の自分と家族に早く逃げろと叫ぶ。
しかし声は届かない。

「だ、大丈夫だ。地球軍の目標はあくまで軍の施設だ」
「ハァッハァッ!」
「大丈夫かマユ?まだ走れるか?」
「うん、大丈夫…っ……ありがと、お兄ちゃん」
「ほら、早く逃げましょう!マユもがんばって!」

『駄目だ!そっちじゃない!別の道を行かなきゃ駄目だ!違う!そっちは駄目だぁ!!』
何度必死に叫んでも家族に、あのシンに、前の世界の残り粕のシンの言葉は届かない。
このままではまた繰り返す、あの悲劇を。
いや、今度は家族だけではなくシンも…
29通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 16:08:52 ID:???
西暦の世界 

「ハッ……ハッ……」
殆どが瓦礫と化したその場所に彼はいた。
神の教えを信じ神のために戦う聖戦。
クルジスの少年兵セツナはその聖戦のために銃を取り駆けていた。だけど
「この世界に……神なんていないっ」
自分達は神のために戦う聖戦士で
神の加護が、神の正義が自分達を必ず勝利へと導いてくれるはず、それなのに
どうして仲間達はみんな殺されてしまった?どうしてこの国は滅びようとしている?どうして世界は………
セツナは、この世界に神なんていないと知った。
よりにもよってこんな時に、この状況で、この場所で。
もし神を盲信したままでいられたなら、例えこのまま撃たれて死んでも
教えのままにそれは幸福だと信じて死ねたかもしれない。
でも、神なんていないと知ったから、知ってしまったから…

『………』
前の世界の残り粕のセツナもシンと同じように新しい世界の自分を見ていた。
だがシンとは違い何も口にせず、ただこの世界の自分を見つめるだけだった。
すべてを諦めている?

いや、違う。その瞳に宿る光はまるで、何かを信じ待っているかのような…
30通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 21:01:05 ID:???
シンの言葉は届かず家族らはどんどん悲劇の場所へと近づいて行く。
マルキオの「今度はシンも家族と一緒に死ぬ」という言葉の事は既に頭に無かった。
自分が死ぬ死なないよりも、大切な家族がこのままでは死んでしまう
その事の方が何よりも大きな事だから。

『また繰り返すのかよ……あんな、あんな酷い……
守りたい!守りたいんだ!!
守りたい…………守りたいのにっ!!

駄目なのか?俺には無理なのか?
父さんや母さんを、可愛い妹を守る事を、俺には絶対出来ないのか!?
俺には……………ステラも』


『『シン!!』』


『っ…! ステラ…』

立ち塞がる運命に心が押し潰されそうになった時、彼女の声が聞こえたような気がした。
とても大切で優しい笑顔を見せてくれた
運命に届かない自分にそれでも心を救ってくれたと言ってくれた、本当に大切な……

『……まだだ、まだ、終わってなんかない!
あきらめるもんか!あきらめてやるもんか!
俺の心はまだ死んでなんかいない!俺の心はまだここに「いる!」
運命にこのまま負けてなんてやるもんか!運命なんて俺がぶち壊してやる!
俺は越えるんだ、運命を!
俺には大切な仲間…
セツナ、トリニティ、沢山の人達!
そして何よりも大切なステラがいつも心にいてくれるんだ!!
だから越えられるんだ!俺は、運命を超えてやる!!

うおおおおおおおおおおおお!!!!!
聞けえぇぇぇ!!マユー!!!父さん!!!母さん!!!………この世界の俺!!!
死ぬな!!そっちじゃない!!!変えるんだ!!!運命なんてふざけた道なんか変えるんだ!!!
俺の声を聞いてくれ!!!そっちじゃないんだ!!!
頼む、俺の声を聞いてくれぇ!!!生きる道を行ってくれぇー!!!!!』
31通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 21:19:06 ID:???
「あっ、マユのケータイ!」
マユの携帯が落っこち坂を転がっていく。
「そんなのいいからっ!」
「いやぁ!お兄ちゃんのぉ!!」
母親に腕を引っ張られてもマユは頑なに拒む。
兄に誕生日にプレゼントされた大切な携帯電話を置いていきたくないから。

そしてここでマルキオの力で歪められた運命が動き出す。

「いいから早く逃げよ、マユ!」
「お兄ちゃん…」
本来どの世界でもシンは携帯を拾いに行って、それでシンだけ爆風に飲み込まれず生きながらえ家族は皆死ぬのだが
この世界ではシンは携帯を拾いにいかなかった。
「次の誕生日にまた俺が買ってやるから!なっ?だから早く行こう?」
「でもぉ……グス」
「ほらっ!」
シンはぐずる妹を引っ張って走り出した。

『聞けって言ってんだろ!!
俺の馬鹿!!携帯拾いに行けよ!!!家族全員で行けよ!!!そうすれば助かるんだよ!!!
そっちへ行ったらっ      はっ!!!!!』

連合のMSカラミティとキラのフリーダムが砲撃体勢に!
このまま攻撃が放たれればものの数秒で惨劇が繰り返されてしまう!

『坂側に全員で飛び込めえっ!!!逃げてくれぇえええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!』
32通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 21:39:11 ID:???
「っ!」
その時、この世界のシンの心に自分自身の叫ぶ声が聞こえた。坂側へジャンプしろと。
そう、届いたのだ!
シンの全身全霊の叫びがこの世界のシンへと届いた!
だが
「父さん母さんマユ!そっちの坂に」

ズギュウウウウウウウウ!!!!!

『やぁめろおぉーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

遅かった。声が届くの遅すぎた。
家族らが逃げる間もなく二機のMSの攻撃は放たれ激突し
それによって生まれた巨大な爆発がこの世界のシンを、マユを、両親を飲み込んだ。
赤く燃え上がる炎は木々を焼き、その場を一瞬で地獄へと変えた。

『……………』
駄目、だったのか…
シンは言葉を失い燃え上がる炎をただ見ている事しか出来なかった。
声は届いた。けど
『俺の……俺の声があと少しでも早く届いてたら………っ』
間に合わなかった。
悔しい。あとちょっと、あとほんのちょっとだけでも早く届いていたなら運命に打ち勝てたというのに。
『……マユ』
運命に負けた…


「シン!!!!!」


『えっ?』
聞こえた気がした。聞こえるはずのない声が、よく知るあいつの声が。
聞こえた気がした。いや、聞こえた、確かに今。
燃え上がる炎のその先を、前の世界の残り粕シンがもう一度見る。そこには
33通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 22:01:37 ID:???
炎のカーテンに赤く照らされながら膝を突き
何かを優しく包むように両手を地面へと差し伸ばす一機のMSがいた。

『あ、あぁ…』

そのMSはとても見覚えがあって良い色をしていて
格好良くて優しい緑の光をいつも降らせていて
そして、とても大切な仲間が乗っていて!

「お前を お前を助けに来た!!
迎えに来た!シン!!!」

『セツナ………セツナ!!!
ガンダァアァァァァァァァァァム!!!!!!!!!!!!!!!!』

運命に負けんとした時、その運命を打ち破る一筋の光   それは 絆!!
どんなに辛い運命でも強い思い、大切な絆がそれを打ち破る!!
絆が奇跡、友情の奇跡を生み出すのだ!
次元を超えてセツナが、エクシアがシンのピンチに駆けつけてくれた!
エクシアが両手を避けるとそこにはこの世界のシンと家族がいた。無事だった。
絆が、絶対変わる事の無かった死の運命を打ち砕いてみせたんだ。

「行くぞシン!マルキオと最終決戦だ!」
セツナは地面にいるこの世界のシンにではなく
実体が無く心の残り滓となって漂う前の世界の、共に戦った仲間のシンに向けて言った。
姿は見えなくてもセツナには分かる!その思い、その絆で!

『ありがとう………ありがとうセツナ!!!セツナァァァァァァァァ!!!!!
お前が、お前こそが本当のガンダムだーーーーーーー!!!!!』

「いや違う 俺「達」が、俺「達」がガンダムだ!!!!!」

エクシアが激しい光を放ちすべてがそれに包まれる。
それはとても暖かく、愛と友情に溢れていた。

そう、それこそが運命を超える何よりも大切なものだった。
34通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 22:21:37 ID:???
西暦の世界

追いつめられ最早逃げる場所など無い幼きセツナ。
少年は神がいない事を知り、救いが無い事を知り、今敵の銃口の前でただ立ち尽くす事しか出来ないでいた。

前の世界の残り滓のセツナは何も言わずそれを見つめるている。
マルキオは「Oガンダムが助けに来ない世界」にすると言っていた。
このままでは幼き日の、この世界の自分は撃ち殺されてしまう。
なのに全く動じていない。何故?
それは
信じていたからだ。
セツナは最初から信じていた。だから慌てふためく必要も、絶望する必要も無かった。
そう、信じている。神なんかじゃないもっと大切なものを     絆を!

ズギャーンズギャーンズギャーンズギャーンズギャーンズギャーンズギャーン!!!!!

空より幾つもの閃光が舞い降りた。
その閃光はMS群をすべて貫き破壊した。
そう、セツナが信じて待っていたのは神でも正義の救世主でもなく

「助けに来たぜセツナ!!!!!」

『シン(信じていた…お前を!)』

最高の仲間であるシン!
次元を超えデスティニーを、運命を乗りこなし超越したシンがセツナのピンチに駆けつけた!
デスティニーの翼が激しく輝き、すべてを優しい光で包み込んで行く。

「行くぞセツナ!」

『ああ!最後の戦いだ!!!』

CEと西暦、二つの世界はデスティニーとエクシアの光で一杯になり、そして…
35通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 22:36:56 ID:???
「これで最後だ、マルキオ!!」
「俺達のガンダムは終わらない!」

光の果てにすべてが蘇った!
マルキオは確かに世界をやり直させたはず。
だが、マルキオの手によって変えられた世界は巻き戻り、再び前の世界
塗り変えられる前へとすべてが戻っている。メイド喫茶内に戻っている。

「馬鹿なっ!!!!!私の力で確かに世界はっ!!!!!」

「いくらお前がすごい力を持っていたって!」
「俺達の絆の前では、無意味だ!!」

マルキオの力を絆の力で打ち破った。
それ程までに二人の絆は強く絶対なものだったのだ。
もはやマルキオの超能力など二人には一切効かない!

「くっ!!だったら、ならばならば!!
私の最終兵器でお前達の身も心も滅ぼしてくれるわ!
出よ!肥満コレステロール号!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

メイド喫茶が真っ二つに割れた!?
地面が動いて穴が空き、どんどん広がっていく。
シンとセツナは急いで退避し、シンはデスティニーになりセツナはエクシアへと搭乗した。
二機は飛び立ちメイド喫茶を見下ろす。
メイド喫茶の下からは巨大なMSデストロイ、いや
肥満コレステロール号と改名された最凶の破壊者が上昇して来た。

「ふははははははは!!!私の肥満コレステロール号を前に消滅せよ!デスティニー!エクシア!」
36通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 22:47:20 ID:???
「デストロイ…」
かつてシンはこれに乗って多くの人を虐殺した。
ステラがこれに乗り結果、最悪の結末へと繋がる世界だってあった。
この機体はシンが超えなければならない物の一つ!
「シン、大丈夫だ。俺達なら!!」
「セツナ……ああっ!もちろんだぜ!!」
もう迷いなんて無い。今目の前の最後の相手を倒すだけだ。
「セツナ、助けに来てくれてありがとな。
もしお前が来てくれなかったら……」
「? 何を言っている?
助けに来てくれたのはお前の方だぞ?」
「え?何言ってんだよ?
お前がエクシアで助けに来てくれたんじゃないか。俺は助けには……」
「?」
「……」
「…???」
「いや、いいや
そんな事より今はあいつを全力で倒すぜ!」
「ああ、行くぞ!」
「……(どういう事だろ???)」

どちらが助けたかなんて理屈で考える必要なんて無い!
二人はお互いを思い助け合った!それだけだ!!!
行け、シン、セツナ!これが本当に本当の最後の戦いだ!!!
37通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 15:24:51 ID:???
アスランは何をしているんだろうか?
てか、奴が何かやらかしてそうな予感がw
38通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 02:25:41 ID:???
>>37
残念ながらアスランはラストの小ネタにしか絡まず終わります。今回は珍しく大人しいです。
今はマルキオのためにプラモ作るのに集中して
メイド喫茶の横でタオツーを肌色に塗って宇宙ティエレンのボンベ二つ胸に付けて
「ふう、なかなか難しいなオッパイフタツー」とかやってます。

続き

「肥満コレステロールよ、穿て!!」
ギュワーーーーーーーーー!!!!!

遂に始まったシン&セツナとマルキオの最終決戦。
いきなり肥満の口から極太の超ビームが吐き出されてデスティニーとエクシアを襲う。

「光の翼!!!」 ヴォワーーーー!!!
「トランザム!」 ブワァァァァ!!!
凄まじい極太のエネルギーを瞬時にかわす二機。
超高速の二機は即座に凄まじい早さで反撃、肥満へと突っ込む!
「喰らえ!パルマフィオキーナ!!」「貫けっ、アロンダイト!!」
デスティニーの手ビームが、エクシアのアロンダイトが肥満の本体に直接叩き込まれる! だが

バッジュゥーーーーーーン!!!!! ガギィィィンンンン!!!!!

「ぐあっ!!は、弾かれた!?」「剣が突き刺さらない……っ!!」
二機の攻撃が全く効いていない。
攻撃が弾かれ、二機は勢いよく吹っ飛ばされる。
確かにデストロイの防御力は高い。だが、この強固さは異常だ。
前のどの世界のデストロイよりも遙かに頑丈で桁違いの防御力だ。

「ふははははは!!!無駄よ、無駄よっ!
この肥満コレステロール号には
PS装甲とGN粒子複合Eカーボンの技術を融合させた新装甲、GPS装甲が使われておるのだ!!
お前達の攻撃など一撃も通りはしない!」

「くっ!さすが敵のボスだぜ!格が違う!」「………(GPS……カーナビが付いているのか)」
39通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 02:49:04 ID:???
「肥満コレステロール号こそ最強の機体よ!
西暦の世界より得た疑似太陽路による圧倒的力
今こそお前達の網膜に深く刻みつけてやろう!
喰らえ、GNプラズマアトミックビーム!!!!!」

バッコーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!

さっきの攻撃の百倍以上のエネルギーが放たれた!
肥満の口からおぞましい真っ赤な血の色をした粒子ビームが放射された。
そのエネルギーは二機へは直接向かわず
吐き出された瞬間に全包囲に満遍なく飛び散った。
「なんだこりゃあ!!!」「くっ!(まるで血の雪だ!)」
粒子はその場、その空、その領域を満遍なく埋め尽くし
デスティニーとエクシアは真っ赤な粒子の真っただ中に落とされた。

ギチギチギチギチ!!!

「ぁあっ!これはっ!」「エクシア!?」
赤い粒子の悪夢のような力が発揮される!
粒子がデスティニーとエクシアの全身に浸食。
浸食した粒子は機体に内在するあらゆるエネルギーを吸収し出し、二機を恐ろしい早さで朽ちさせる!
装甲は溶けて瓦解し、デュートリオンエネルギーもGNエネルギーもどんどん喰われてしまう。
二機とも永久機関を使っているためエネルギーが喰われても動けるが
攻撃や突発的な移動、ブーストにはある程度エネルギーを蓄えておく必要がる。
粒子はそれを根こそぎ奪うのだ。

「くくくくく、お前達の機体はのろのろと動くだけで精一杯の状態であろう。
もはや君達には肥満の攻撃を交わすスピードは得られまい。
ましてや攻撃等、パワーを出せぬお前達には不可能よ!」
40通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:08:01 ID:???
「くっダメだ…光の翼を出すエネルギーも無いっ」
永久機関から毎秒ごとに新しく作り出されるエネルギーのみしかもはや使えない。
機体のシステムを維持するだけでもその作られたエネルギーの大半を消費してしまっている状態では
敵に攻撃を仕掛けるために勢いよく飛び立つ事もビームシールドを張る事も困難。
「っ!トランザムが」
ヒュウウウウウウウン
粒子が底をついてエクシアのトランザムモードが解除されてしまった。

「哀れな二人よ、一撃で葬ってやろう………喰らえ!!」
肥満の胸に並んだ大型ビーム砲が発光、発射される!

ズギュウウウウウウウウ!!!!!

動けぬ二機にマルキオの凶悪な攻撃が降り注ぐ。

「ビームシールド!!!(少しだけでも出てくれっ!!)」「動け!エクシア!!うおーーー!!!」
この攻撃耐え難すぎる。圧倒的な力は二人を塵と化してしまうのか?
いや!

「ゴージャスGNフィールド!!!ふぉーーーー!!!!!!!」
41通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:20:38 ID:???
バシュバシュバシュシューーーーーーー!!!!!!!

金色の球体が突如デスティニーとエクシアの前へと飛来!
黄金の光が敵の強力なビームをすべて弾き飛ばした!

「大丈夫かね?シン君、セツナ君!」
黄金のジムタイプに乗ったその人物、彼こそが

「あの時の…!アレハンドロ・コーナー!」「監視者!」

「あの時君が私へと言ってくれた言葉……誰もが主役になれ、誰もが脇役となれる。
君の言葉を聞いて私は目が醒めた!私は主役のしがらみの呪縛から抜け出せた!!
私は君達こそ正しいと信じる!今こそ君達に手を貸そう!!」

キュワーーーーーーーーピュ!!!

アレハンドロのジム、アルヴァアロンの放った黄金の光が赤い粒子を一瞬で浄化した!
デスティニーとエクシアの粒子浸食が治まった!

「バカな!?一体どうやって」
マルキオも驚愕している。

「マルキオ、元々お前にGN技術を提供したのはこの私だ。
お前よりも一枚も二枚も詳しいこの私がお前如きの作った物、破れぬはずが無かろう!!!」

「おのれぇ〜!!!私の操り人形でしか無かった成金ボンボン風情が!!」

「ふん、そのような物言いだから技量が小さいのだよ!」

「貴様ぁ!!!」
42通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:48:33 ID:???
「これだけではない、見よ!」
アルヴァアロンが天空を指さす。
そこにはいつの間にか次元の切れ目が生み出されていて
そこから美しい光と共にたくさんのMS達が舞い降りて来た。

「やっと来れたよ、シン!」 フリーダム、キラさん!
「電波の壁を破るのに手間取ってしまいました。でも間に合ったのでいいでしょう」 ラクス!

「遅くなったな、セツナ!」 デュナメス、ロックオン!
「僕は留守番するって言ったんだけどね」 キュリオス、アレルヤ!
「なんて黒くて下品な巨大デブMSだ。その醜さ、万死に値する!」 ヴァーチェ、ティエリア!

「敢えて言おう!友情出演であると!」 カスタムフラッグ、知らない人!
「AEUのエース!パトリック・コーラサワーさまの登場だぁ!!」 イナクト(中古)、模擬戦の人だ!

CEと西暦の間の電波の壁は既に解除されていた!
ラクスの数ヶ月に渡る不眠不休の歌で電波を打破したのだ!
仲間達が二人のもとへ駆けつけてくれた! さらに!

「コミケ完勝したから来たよ!」 メイリン、同人誌売ってたのか?
「アルバイトに来ました。時給は500円からでお願いします」 カズィ、何を言ってるんだ!
「MGインパルスの出来は上々だよシン君」 クルーゼ、どうぶつの森の水やり終わったのか…レイはどうした?
「トイレを済ませてから来た」 スウェンらファントムペイン三人、トイレで爆発してたシャムスは大丈夫か?

「機体の修理が終わったぞシン君セツナ君!」「今度こそ俺も活躍するぜ!」「なんかみんな集まってるけど、お祭り?」
トリニティ、ケガは大丈夫か?

シンとセツナの最強で最高の仲間達が集結した!
43通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 04:04:26 ID:???
「みなさん!心を一つに!!」
ラクスのかけ声と共にみんなの機体から思いが、力が、一点へと集まって行く。
その大きな思いの力がラクスの頭上へと登り、新たな力を紡ぎ出す!
「ミーティア、GNアームズ、リフトオフ!!!」

カーーーーーーーー!!!!!!!

思いの力がラクスの手を借りて最強の装備、ミーティアとGNアームズに!
「さあ、シンさん、セツナさん!!」

「行くぞセツナ!ドッキングだ!!」「ああ!!」

ピューーーーー!
「うほっ!」
ドッキングと聞いてレイも大急ぎで駆けつけてきた。
「シン、セツナ、どっちでもいいから、やらないか?」

「頼むから今は真面目に頼む……」「…(何を、やるんだ?)」

デスティニー、ミーティア装備完了!
エクシア、GNアーマー装備完了!
二つの巨大装備はみんなの思いそのもの!
装備した瞬間に絶え間無い力が二機へと送られ
一瞬にして二機はフルパワーとなった。
エクシア、再びトランザムを発動!
ミーティアは思いの力によってその巨体を重力下でも浮かび上がらせている。
二人の運命を超える者の最強形態!!!
44通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 04:22:20 ID:???
シンとセツナ、二人の戦いの全てがこの一撃に込められる!
「俺達は運命には決して負けない!!俺達の絆は、どんな運命の壁も撃ち破る!!!」
「そうだ!俺達がっ」
シン、セツナ、そしてみんなの、全員の一斉攻撃!!!!!

「「「「「「「ガンダムだ!!!!!!!」」」」」」」

ズガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!

「ほぎゃーーーーーーーーーーーー!!!!!」
みんなの絆が、その力が!肥満の装甲を撃ち破った!
全ての力が一つとなって絶対の運命、その無限に連なる縛鎖を断ち切ったのだ!
肥満爆発! この戦い、シン達の勝利

「になんてさせてたまるかぁーーーーーー!!!!!」
マルキオ執念の超能力!
マルキオは自分が持つ電波エネルギーのその殆どをデスティニーへと撃ち放った!
「このすべてを凝縮した電波なら如何にお前といえど耐えられはしまい!!!」
最強の電波がシンを襲う!だが

「ヤタノカガミフィールド!!!」

バッシューーーーーーーーゥッ!!!!!!!

「ば、馬鹿なーーーーー!!!」
ここぞという時のために残していたヤタノカガミフィールドが最後の一撃に対して炸裂!
電波の塊は跳ね返され

ジュバアアアアアアアアアアアン!!!
「ほぎゃぎゃぎゃーーーーーーーーほげっー!!!」
マルキオは自分の電波で感電波して倒れてしまった。
「ほぎゃぁ………」
マルキオ完全戦闘不能。
シン達の、完全勝利だ!
45通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 04:37:21 ID:???
瓦礫の中で一人横たわるマルキオ。
シンとセツナは機体から降りて彼のもとへと歩み寄り、その前で止まった。
「………く…くく……く…君達の勝ちだ……おめでとう」

「……」「……」

「さあ…止めを刺したまえ……」

この戦いの元凶であるマルキオ。
この男に止めを刺せば次元を超えた長きに渡る戦いは決着を迎える。
後はラクスの手を借りて世界を
マルキオの息のかかっていない形でやり直せばいい。
電波による歪みが除かれた世界で各々が望んだ結果を紡ぎ出せるかは分からないが
少なくとも今マルキオを倒せば一つの戦いは終わるのだ。
けど、なぜだろう。
シンはマルキオに止めを刺す気持ちにはなれなかった。
瓦礫にぼろぼろになって横たわる彼を…

「なあ……」

「む…?」

「あんたは何でこんな事してたんだ?こんな、みんなが苦しむような…」

「それは………くくく、楽しいからだよ。
他人を痛めつけるのは楽しい。君になら分かるだろう?破壊者シン・アスカ君」

「……聞いた俺が馬鹿だったよ」
シンは拳銃を握るとマルキオへと向け、引き金に指を掛けた。
「俺はこの戦いを終わらせる、これで!」
46通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 04:51:01 ID:???
「銃を下ろせ、シン」
引き金を引く寸前、瓦礫の合間より
肌色のタオツーを持った男、アスラン・ザラがてくてくやって来た。

「アスラン…」

「お前はすぐ相手の言葉を鵜呑みにするな。挑発にもすぐ乗る。お前の悪い癖だ」

「いや、それはあんたもだろ…」

「マルキオ様………いや、様付けなんて心に壁を作るだけでよくないな。
マルキオ、最後くらい本当の気持ちを話てもいいんじゃないか?」
「アスラン…」
「ほら、さっき完成したティエレンオッパイフタツーをあげるから」
「いや、それはいらない…」

「本当の気持ち?それじゃあ、やっぱり…」

「……」

「あんたにはこれだけの事をする、するしかなくなる理由があったのか?」

「……っ」

「俺は今までの世界で何度も間違えたりどうにもならなくなった事があったから
どんな事にも何か理由があるんだって、身を持って知ってる。
だからあんたも…」

「お前達に………お前達に私の苦しみは分かるまい!」
47通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:11:10 ID:???
マルキオは倒れたまま感情を思い切り込めて言う。
「分かるか?お前達に!私の苦しみが!!!
私は生まれた時から、最初の世界の時から目が見えずにいた。
目が見えず、誰しも当たり前のようにしている事の殆どを生まれながらにして封じられていた…
私が自分自身で選んだのではなく、最初から変えようが無くあてがわれた「運命」だ!
何も出来ず座っているしか出来ない私…
それでも富と権力を持つからと、うじゃうじゃと疚しい奴ら共が周りに溢れ出す!
建前と偽りと欲望だけが私の周りを支配する!
逃げる事も出来ない!目が見えぬから!逃げる場所も分からぬ!見えぬから!
それが私が生まれながらにして刻まれた「運命」だ!!!
絶望の世界の中で私は自分の能力に気づいた。
この力さえ使えば世界を変えられる!目を開き、自由に生きられる!そう思った!
だが「運命」はこれだ!
何度世界をやり直しても私の目が見える事は一度も無かった!
他の事は限度はあれどたやすく変えられるというのに!これだけは叶わぬか!!!
これが運命だ!私の!!これが!!!
目が見えず、何も出来ず、欲望に支配されるのが私の変えようのない運命だったのだ!」

「……っ」

「だからもう止めたのだ!どうにもならぬから!
どうにもならぬなら、いっそすべてを支配して狂わしてくれる!!!
私だけではなく他の者も絶対の運命から抜け出せなくしてやる!!!
それが!!!それが私の運命だー!!!
変えようがない、変えられなかった私の運命だー!!!!!!!」

マルキオは今までずっと胸に秘めていた思いをすべて吐き出した。
彼もまたシンと同じ、運命という絶望に苛まれた一人の男だったのだ。
48通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:32:55 ID:???
「…だが
そんな絶望ばかりの運命の中にもささやかな光はあるものだな。
アスラン……お前だけはありのままの心で私に接してくれた。お前、一人だけは…」
「確かに、オッパイフタツーはタオツーのありのままの可能性から生まれたオリジナルプラモだ」
「いや…」

「………そうか」
シンは瞳を閉じてそう呟いた。
マルキオの戦い、その理由…

「さあ、そろそろ止めを刺してくれ…
私はもう疲れた。
私の存在を完全に消し去り、君達は新しい幸せな世界へと行くがいい………さあ!」

「………一緒に新しい世界に行こう」

「っ……………なぜ、だ?」

「正直俺はお前の事すごく腹立ってるし今までしてきた事は絶対許せないと思う。だけどそれでもあんたも一緒じゃなきゃダメだ」

「なぜ…」

「俺は、救われちゃいけない奴なんて絶対にいないと思うから!」

「……」

「どんなに間違えても手を取り合って、少しずつでも間違いを越えていければ
いつかきっとみんなが幸せになれると信じてるんだ。
あんたは悪党だ。だけど悪党だって絆を重ねればいつか変われると思う。
ていうか、間違った奴だからこそまだ間違ってない、間違いに気づいてない奴に
その事を教えていけると思うんだ。」

「どうして……こんな」

「それに、あんたの事誰も分かってやろうとしなかったっていうのも酷いしな。
何度も世界を繰り返したんだろ?
それでアスラン一人だけだったとか……あんまりじゃん」
49通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:50:33 ID:???
マルキオには分からなかった。
なぜこの男はこうまで自分の事を考えてくれるのか。
憎いだろう?痛めつけたいだろう?今までの世界の分の復習をしたいだろう?
なのになぜ?
それは、シンとマルキオはどこか似ているからなのかもしれない。
どちらも罪人、間違いを犯した事がある者。

「………もしかしたら俺はあんたを許して
自分が今までの世界でして来た事とかを少しでも薄めたいとか
身勝手な事考えてるだけなのかもしれない。
俺もあんたもやった事は許されない。
咎められなきゃいけない事なんだと思う。
だけど………それでも俺は…」

「そうか………君と私は、もしかしたら何も違わないのかもしれない」

キラがゆっくりと歩み寄り、マルキオとシンにやさしく語る。
「本当はみんなどこも違わないと思う。
君達も僕もラクスも、どこも違わない。みんな。
誰もみんな間違えて、みんな積み重ねていくんだと思う。
でも、だから明日があるんだと思う。
そして僕らは明日も間違えて、正して、また間違えて
少しずつ望んだ世界に近づいていくんじゃないかな?」

「キラさん…」

戦いは終わった。
もう誰も倒す必要なんて無い。誰も、戦う必要なんて無かった。
運命を超える事
それは過ちを重ねながらも手を取り合って生きていく人の生そのものなのかもしれない。
50通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 06:01:08 ID:???
「マルキオ、人の温もりが恋しいお前にぴったりの逸材がいるぞ!」
「え?」
ニコニコしながらガッツポーズをするアスラン。
ぴったりの逸材とは…

「うほっ、いいマルキオ!」
レイでした。

「え?え?」
意味が分からず?を繰り返す。
だが、すぐに意味を悟る。

「温もりが恋しいのならもっと早く言って欲しかったです。では、一緒にベッドに」
ずるずるずるずるずるずるずる
「何をする!?止めろ!止めてくれ!離せ!や、やめろー!!!!!」
抵抗虚しくマルキオはレイに連れられてベッドへ。
シンは鼻水を垂らしながら涙を流し、セツナは意味が分からないので他の人にどういう事か聞きまくっていた。

「お前達見てないで助けろー!!!」
「もしかして初めて?優しくするから大丈夫ですよ」

「やーーーーめーーーーろーーーー!!!!!!!!!!!!!」


「アッーーーーーーーーー!!!」

世界は    救われた。

種死 運命を超える者 終
エンディングへと続く
51通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 17:07:30 ID:???
最後はやはりギャグで締めるのなw
マルキオに合掌w
52通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 20:58:13 ID:???
「…………セツナ」
「シン…」

戦いは終わった。
コミケも終わり、世界は新たなる可能性を抱いて生まれ変わろうとしていた。
ラクスの力とマルキオの力が合わさり対消滅する事で、二人の超能力は永遠に消える事となる。
すべての人々は今までの世界での出来事を忘れ、新しい世界で生きていく。
それが、戦いの終わり…

「……今まで………今までありがとな」
「ああ………お前もな」

今までのすべての記憶が消える
それはシンとセツナも例外では無かった。
今まで二人で紡いできた大切な思い出…
それもすべて忘れてしまわねばならない。
そして、超能力が失われた新しい世界では、CEと西暦……二つの世界が交わる事は二度と無いだろう。
二人は永遠にその手を繋ぐ事が出来なくなる。
二人は永遠の別れを受け入れなければならなかったのだ。
53通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 21:14:28 ID:???
ラクスとマルキオは言っていた。
新しい世界がどんな世界になるのかは
世界が生まれ変わったその時まで誰も知ることが出来ない、と。
超能力を対消滅させて新しい世界を紡ぎ出す
それゆえにラクスにもマルキオにも新しい世界に影響を与える事は出来ない。
戦いがある世界になるのか、戦いの無い世界になるのか
誰にも分からない。
電波が消えたからと言ってすべてが上手く行くわけでもない。
ただ一つ分かっているのは
たとえどんな世界に行こうとも力一杯に自分を信じて未来を作るしかない、という事だった。

「どうしてかな……
あんなに頑張ってたどり着いたのに、いざこの時になると待って欲しくなる…」
「………」
シンは新しい世界に行く事を躊躇っていた。
確かに自分が望んだ事だ。
だけどそれでも
今までこの世界で繋いできた絆が消えてしまうのが怖くて、悲しくて
このままみんなでこの世界で未来に向かって生きていきたくなる。
実際、それも選べる。
マルキオとも和解した今、この世界でみんなで生きていく事を、全うして行く事を選べる。
ありのままの「今」を受け入れる事も決して間違っていないはずだ。
だけど、それでも新しい世界に行きたい理由だってある。
マユが、ステラが待っている。
まだ見ぬ無限の世界が待っている。
そして、ここに集まってくれたみんなには新しい世界に行く覚悟がある。
選ぼう、運命じゃない明日を信じて   自分の手で…
54通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 21:25:59 ID:???
「セツナ……………俺は忘れないよ!
みんなの事も……………お前の事も!
忘れる事が運命だって言うなら今度はその運命を超えてやる!
俺はみんなが大好きだ!だから大丈夫!俺は運命には負けないさっ!」
「………ああっ!俺も忘れない
お前と過ごした日々を、たくさんの絆を、全部持って生まれ変わる」
「俺達が」
「ガンダムだ………w」
「へへっ!w(お前の笑顔、見られてよかった!)」
「次の世界でもきっとまた会える。
もし会えないのなら、手紙を出そう。世界は遠くても思いは届くはずだ」
「うん、わかった!」

そして世界は光と闇を抱いて新たに生まれる時を迎える。
二つの超能力が互いを消し去り世界に新たな可能性を振り蒔いてく。
世界は輝きに包まれて新しい彼らの未来へ……………

「セツナ!!大好きだぁーーーーーーー!!!!!!!w」

「シン…………………ありがとうっ!」
55通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 21:47:41 ID:???
エンディングA「戦い続けて」(選ばれなかった未来エピローグ後の話)

俺はシン・アスカ。
数年前に起こった「クジラ戦争」で前線で戦ったMSのパイロットだ。
医者の先生によるとずっと記憶が混乱してたらしくて
ついこの間までは殆ど記憶喪失みたいな状態だったらしい。
自分でもその間の記憶が曖昧でよく分からないけど
俺が元に戻るまでずっとステラ達がついていてくれたのだけは覚えてる。
ステラ
彼女は色々複雑な事情があったんだけど
今は俺や仲間達と一緒に孤島で平和に暮らしている。
俺は
彼女を守りたくてずっと戦っていたんだ。

「シン!モグラグーンがフジツボにハマって抜けないの!手伝って!」
「グーンがハマるってどんだけでかいフジツボだよ!」
ステラが呼んでる、行かなくちゃ。

彼女の方へと俺はやれやれと思いながら歩き出した。
砂浜を潮風に吹かれながら歩くのは気持ちがいい。
太陽に照らされた浜辺に足跡を残しながら歩いていく。すると

「ちょっといいですか?」
「はい?」

ふと、こんな暑いのにやけに丈の長い服を着込んだ色白の男に声をかけられた。
彼は確か、ナチュラルとコーディネイターの調和のために活動してるとかいう
オーブ辺りでは割と有名なマルキオ導師だったか。
こんな何も無い島になぜ? 観光にでも来たのだろうか?
56通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 22:02:28 ID:???
「あの、何か?トイレなら民家に勝手に上がり込んで借りても問題無いですよ」
「………ふっ」
「???  なんですかぁ〜?」
「いえ……………手紙を、受け取ってもらえませんか?」
「手紙?」
「貴方宛です。受け取ってはもらえませんか?」
「はぁ、はい」

シンは一通の手紙を受け取った。
便箋には「シン・アスカへ」とだけ書かれていて、それ以外は何も記されていない。

「(手紙爆弾じゃないよな……?)えっと、なになに?」

〜シン・アスカへ〜

俺の名前はセツナ・F・セイエイ。
貴方が誰なのか、なぜ手紙を送ろうと思ったのかは分かりません。
ただ、貴方の名前がふと頭に浮かんで、なぜか手紙を書かなければならない気がしました。
貴方がどこにいるかも分からず、この手紙も宇宙の中に投げ捨てるように放ちました。
この手紙は誰にも読まれる事が無いと思いますが、もしシン・アスカ
あなたが受け取ってくれたのならどうかこれを読んでください。

この手紙を貴方が読んでいる頃、俺はもうこの世には
57通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 22:26:00 ID:???
武力による紛争の根絶。
俺は戦う事しか出来ず、今もまた戦いに身を投じようとしている。
なぜ世界は歪んでいるのか? その歪みはどこから来ているのか?
俺は、いつも考えていました。
なぜ人は争うのか? なぜ人には無意識の悪意というものがあるのか? なぜ傷つけあうのか?
なのになぜこうも、生きようとするのか?
私は貴方宛の手紙と同時にある女性へも手紙を書きました。
貴方達ならこの疑問に答えられるような気がしました。
戦う事しか出来ない俺とは違う、言葉によって人と人が分かりあえる道を選べるであろう貴方達なら。
俺はずっと答えを求め続けていました。
ずっと、見つけられないまま。

シン・アスカ   あなたに幸福な未来が訪れる事を切に願います。


「………セツナって、誰だ?」
「………」
シンには彼が誰なのか分からなかった。
「分からない…………けど」
急に、目の奥がとても熱くなって涙が溢れて来た。理由なんて分からない。
「なぜか分かんないけど、このセツナって人は絶対に死んでなんかないと思う!
なんでそう思うのか分かんないけど、けど……………なぜだかそんな気がするんだ」
「そう、ですね。そうなのかもしれませんね」
「………あの、よく分かんないけど、手紙ありがとうございました」
「…はい」

シンは丁寧にお辞儀をすると手紙をポケットに入れ
ゆっくりとまたモグラグーンがハマっている、ステラの待つ方へと歩き出した。
涙が溜められた赤い瞳で前を見ながら。

「大丈夫、貴方達ならまたきっと…いつか!」
マルキオは一人そう呟くと砂浜から去って行った。

その後シンは手紙を書いた。
なぜだか分からないけど書かなければいけないと思った。
セツナ   彼に送る短い言葉。
瓶に詰めて海へと放られたそれはどこへ行くのか     誰にも分からない。
58通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 22:43:47 ID:???
〜セツナ・F・セイエイへ〜

こんにちは、シン・アスカです。
貴方からの手紙はよく意味が分かりませんがこれだけは

貴方にも幸せな未来が訪れますように

もし出来たらちゃんと会って話がしたいです。
もしよかったらオーブのアスハ宛に一通お願いします。
代表とはちょっとした縁があって知り合いだったりします。
ではまた


西暦の世界

宇宙の中に散らばる星屑達。
その中の一つ、その中に彼らは居た。
怪しげなスーツを着た女性が二人、おっさんが一人。
そして、旧型のMSと真新しいMSが一機づつ。
彼らは戦い続ける、紛争根絶を実現するその日まで。

「こいつを使ってもマッチしなかった。エクシアの太陽炉でも上手く行くかどうか」
「世界を変える機体  ダブルオー ガンダム!」

それぞれの未来が、それぞれの戦いが続いていく。
決して希望を捨てずに、運命に立ち向かって!


00二期へと続く
59通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 23:13:29 ID:???
エンディングB「腐れましまろ」

「シン!お前が欲しがってたデスティニーガンダムのMGゲットしたぞん!!!」
「やったぁー!!これで光の翼がすごいぞぉー!」

ここはオーブ市のシン君のおうち。
お父さんのひろし(おもちゃデザイナー ペンネームはアリー・アル・サーシェス)がプレゼントを持って帰宅したぞ!

「お父さん、またキラ兄ちゃんがラクスにバイト代殆どお布施してた…」
「まああれも趣味っちゃ趣味だ!好きにさせてやるべ!」
「うん……(止めないの?)」
「それより久しぶりに父ちゃんとえむえすいんあくしょんでブブーンドドドゥしようぜ!」
「うん!
あ、そういえばフリーダムとジャスティスはアスラン兄ちゃんが改造するって持ってっちゃったままだ」
「お隣にアスラン君は元気だねぇ〜
つかあれは改造しなくていいんじゃ」
ピンポーン!
「シン……あそぼ」
おやおや、近所の一年生セツナ君が遊びに来たようです。

シン「いらっしゃい!」
セツ「エクシア……持ってきた」
アリ「おおう!粋だねぇ!セブンソード持ってるたぁいいよいいよぉっ!!!」
セツ「おじゃまします…」
アリ「よっしゃ!三人でブブブドドドゥ!で遊ぶぞ〜!!ひょう!!!」
セツ「ん…(こくり)」
シン「よーし!まっけないぞぉーぅ!!」

シンちゃんの家のマユの部屋
ステラ「シン君、キラさんやアスランさんがいないと元気だねぇ〜」
マユ「そういう兄なんですよー」
今日もアスカ家は平和です。

資産家マルキオさんのお宅
レイ「ご主人さま〜!僕、ご主人さまにならなにされても……(ぽっ)」
マルキオ「君………どこから入ったね?どこの小学校の子だね?」
レイ「うほっ!」
マルキオ「うぇ………(嫌な事思い出した)」

今日もちょっと腐りかけた子供達が元気にはしゃぐ
そんなましまろな世界です!

60通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 23:29:28 ID:???
読んでくれた方
本当にありがとうございました!

エンディングはA、Bあり
どちらも選ぶ事も片方選ぶ事もどちらも拒否する事もできます。
お好きなようにお選びください。

選ばれなかった未来終わった時にもう長編は書かないと言ったのに結局また書きました。
勢いだけで始めたのですぐにネタ切れになりましたが
シン達の戦いを中途半端で投げ出したくないのでやる気出して書き切りました。
シンとセツナのダブル主人公になった辺りからネタ切れも超えられて楽しく書けた気がします。

シンとセツナの未来に幸せがありますように。
61通常の名無しさんの3倍:2008/07/15(火) 17:20:23 ID:???
>>60
乙カレー!
俺はせっかくだからBエンドを選ぶぜ!!
62通常の名無しさんの3倍:2008/07/17(木) 13:05:49 ID:???
腐れましまろで短編キボン
63通常の名無しさんの3倍:2008/07/17(木) 20:30:56 ID:???
スマン。出し切っていてしばらく何も書けそうにないです。
他の職人さん帰って来ないかな……
64通常の名無しさんの3倍:2008/07/20(日) 06:56:16 ID:???
保守
65GWFシリーズ・種死+α:2008/07/20(日) 22:41:28 ID:???
ギャァァァァァァ!!!!!!!!!!


借りてたPHS(WindowsMobile5.0&無線LAN搭載機)のデータをパソコンに転送中にデータ吹っ飛んだ!!!!!

orz
せっかく退院したのに…。
せっかく書いたのに…。

更に悪い知らせ。
右手の小指から手首に向かってる骨折れました。
退院早々親と喧嘩して鉄製の机に対して親指が上にある状態で力一杯叩き付けたら痛みが引かない。
病院行ってレントゲン撮ったら折れてた…。
orzorz

もっと悪い知らせ。
入院費が掛かりすぎてレントゲン撮ったら金がなくなった。
痛み止めの薬貰う金が無かった。
orzorzorz

一番悪い知らせ。
その状態で日雇いバイト(今日)行ったら右手半分麻痺→右足半分麻痺→左足半分麻痺→左手半分麻痺。
orzorzorzorz

今、帰りの電車。
行きに原付で駅まで行ったけど帰れるかが問題。
行きの感覚では「15分の運転が限界かな?」だったけど今は右手きちんと握れない。
orzorzorzorzorz
66通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 12:47:38 ID:???
保守しとく
67通常の名無しさんの3倍:2008/07/25(金) 12:48:03 ID:???

68通常の名無しさんの3倍:2008/07/28(月) 23:34:41 ID:???
保守
69通常の名無しさんの3倍:2008/07/29(火) 21:27:06 ID:???
>>65
不幸話はそれくらいにしておきなさい
70GWFシリーズ・種死+種なのは ◆DidZGuUWlk :2008/07/30(水) 18:32:03 ID:???
>>69
了解、以後明るく行きます。

最近忙しくて書いてる暇無いのは確かです。
「種なのは」の作者が言うのは何だかと思いますが…。
5つ同時進行(怪我(更に両手親指腱鞘炎)治し・鬱治し・仕事準備の体力造り・種なのは・GWFシリーズ・種死+α)は流石に無茶だと思いますが、
無茶を通すのが俺の∞ジャスティス!

今後共に宜しくお願い致します。
m(_ _)m
71例の人:2008/07/31(木) 09:42:19 ID:???
突然現れたガンダム7機+見慣れない機体。
戸惑うザフト+連合軍&ロゴス。

タリア艦長がガンダム+グラハムカスタムオーバーフラッグカスタムUに通信を入れる。
タリア「そこのMS、どこから来たんですか!?」
グラハム「西暦2307年ですけど…?って、ガンダム!今日こそ落とす!」
刹那「俺がガンダムだ!」
ハイネ「いやいや、俺がガンダムだって!」
ロックオン「狙い撃つぜ!」
アレルヤ「いつもの事ながら敵が多いな…」
ティエリア「ヴァーチェ、目標を排除する」
ヨハン「ニーナ、バックアップを頼むぞ」
ミハエル「ソレスタルビーイングが本気だって事を思い知らせてやる!」
ニーナ「ヨハン兄、了解」
スローネドライからGN粒子が大量放出され、通信が遮断される。
ザフト+連合軍&ロゴスの通常電波通信ができなくなり混乱が始まる。
光通信でミネルバ陣はどうにか通信を確保したが連合&ロゴスは混乱中。
ミハエルはツヴァイのファング×12でミネルバ合同軍とロゴスのMSに対して攻撃を開始する。
グラハムはエクシアに対して攻撃を始める。
デュナメスはロゴス陣に攻撃を開始。
キュリオスは変形してビームサブマシンガンを撃ちながら両軍のMSを次々と撃破していく。
ヴァーチェはデュナメスと同様にロゴスへ攻撃を始める。

メイリンは新たに現れたMSに対して光通信を送り続ける
メイリン「所属不明機へ。この戦争の発端はロゴスです!こちらのMSには手を出さないで下さい!繰り返します!(以下略」

それにガンダムマイスター+αは気付き、光通信で答える。
ミハエル「戦争根絶の為ならしょうがねーな」
アレルヤ(半分ハレルヤ)「了解…、だけどもし嘘なら、即落とすよ?アハハ…」
グラハム「ガンダム、一時共同戦線だ。だが、これが終わったら決着を着けよう!」
刹那「エクシア、目標捕束。攻撃に移る」
ヨハン「ニーナ、撃つぞ。フォーメーション行くぞ」
ニーナ「了解、ヨハン兄!」
ティエリア「ヴァーチェ、GNバリア展開。行く」
ロックオン「ハロ、回避運動頼むぞ」
ハロ「リョウカイリョウカイ」
ガンダムマイスター+αの圧倒的な攻撃によりロゴス側のMSが大体片付いた時だった。
ヘブンズベースからデストロイが19機も出て来た。
ロックオンとティエリアが攻撃したものの、砲撃は弾かれた。
72例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/07/31(木) 14:02:06 ID:???
ロックオン「バリアか!?エクシア、出番だ」
ルナ「私達だって出来るわよ!物理斬撃でしょ?」
ロックオン「さっきから動き見てたが、無駄な動きが多い。撃墜されたくなければエクシアか変な背負い物してるガンダムに任せた方がいい」
ルナ「…レイ、エクスカリバー貸すわ」
レイ「おkおkwww」
ルナ「レイ…壊れてるみたいだからやっぱ止めるわ」
刹那「エクシア、トランザム発動!」

エクシアが赤く光りながらさっきの速度とは比べ物にならない程の速さでデストロイに接近。
GNソードを使いデストロイ1体を4秒で完全粉砕していく。
73例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/07/31(木) 14:04:50 ID:???
グラハム「…!後で勝負って言ったけど止めておこう…」


デュランダル議長がジブリール達ロゴスに対して通信を開く。
議長「ジブリール、決着は着いた。今ならまだ殺しはしないから出頭しなさい」

だが、デストロイ1体を4秒で粉砕されたのを目視した時点でジブリールのみシャトルで脱出していた。
行き先はオーブ。
他のロゴス関係者に気付かれない様に逃げていた。

ジブリールの居ないロゴスはすぐに降伏した。


これでヘブンズベース攻略戦は終結。
ザフト+連合軍の被害はガンダムマイスター+ロゴスの攻撃で2割程度撃墜された。

ガンダムマイスター達は、既に何処かへ行っていた。
グラハムだけがトランザムエクシアの性能の凄さを見せ付けられて放心状態でミネルバの近くに居た。
74例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/07/31(木) 14:05:24 ID:???
一応ここまで
75通常の名無しさんの3倍:2008/07/31(木) 15:53:18 ID:???
乙です!
グラハム弱気だな!w
76例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/07/31(木) 17:34:27 ID:???
ここの地点ではハムは弱気&暴走型にする予定です。
今後多分変わります。

てか、打つのに3日↑・投下は暇な時間。
その上左手打ちで打ちにくい打ちにくい。
頭の中はネタ満載。
例の人ですからきっと全力全壊なあの人(詳細設定は2期+αか?)とか乗ってる機体を馬に例える人とか手が燃え出すキングオブ人とか完全なゼロとか違うゼロとか本当に金属剥離の起こる15M級とか(ry
77通常の名無しさんの3倍:2008/08/02(土) 19:22:38 ID:???
保守
78通常の名無しさんの3倍:2008/08/05(火) 22:01:52 ID:???
保守
79通常の名無しさんの3倍:2008/08/07(木) 22:13:32 ID:???
保守
80例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/08/08(金) 07:45:32 ID:???
丁度マイスター達が現れた時にクライン派プラントのエターナルにプトレマイオスが突っ込んで大騒ぎ
そして、月の連合基地から遠く離れた誰も分からない場所の地下にヴェーダ&じじいが転送されて来ていた


ハム「面白い…それでこそガンダム!」
そう言いながら失神し、オバフラUは水中へ墜ちた。
タリア艦長「あのヘンテコMS鹵獲しなさい」
その命令でメイリンはルナに通信
ルナは海中から引き揚げ、オバフラUをミネルバへ運んだ

MSデッキにて
レイ「うはwwwwテラシールドホソスwwwこの世界のMSじゃないwwwっうぇwww」
ルナ「中の人はどんな人なのかしら…」
ハイネ「中の人など居ないっ!」
オバフラUのコックピットを開けてみたら血を吐いたグラハムが気絶していた。
「棺おk…じゃなくてストレッチャー!」
ヨウランが叫ぶ
ハムはそのまま医療室行き。3日寝込んだ
その間にオバフラUの解析作業が行われていた
ヴィーノ「こんな細い機体でよくあんなパワー出るよな」
ヨウラン「本当だよ…。やっぱ整備責任者が言ってた事は本当なんだろ?」
整備責任者は「爆弾とか無いか確認しながら解析作業してくれ」と「異世界から来た可能性が高い」
と言っていた
ヴィーノ「この世界は基本バッテリー。だけどこの機体には背中に変な物が付いてる」
ヨウラン「どうも、それがエンジンらしい…。あ゛ーレジェンドだけでも整備面倒なのにこいつの解析までやらにゃならんとは」
81例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/08/08(金) 07:47:01 ID:???
通勤途中だとこれが限界…
一応ここまで
82通常の名無しさんの3倍:2008/08/08(金) 14:14:24 ID:???
>異世界から来た可能性が高い

なんでだよw
乙!
83例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/08/08(金) 17:15:38 ID:???
あー、つけ忘れ。というか文章に説明入れ忘れ。
3日寝込んだ の後に…

ハイネやアーサーやメイリン。その他目撃者の情報を基に議長に連絡
アーサーとその他の談「いきなり現れた」
メイリンの証言「レーダーに反応したのは目視した瞬間」
ハイネ曰く「俺が呼んだ」
それを基に議論。議長はハイネの発言で平行世界からの転移と結論付けた
「赤服だから」と言うのは議長だけの秘密
異世界の技術はCEの技術を上回ってる所もあれば下回ってる所もある
プラントへ送ろうかとも考えたが時間的猶予が無いと言うことでミネルバで解析する事となった

「その間に」は脳内削除お願いします。



通勤中にPHSで書くと電池消耗死ぬ程禿しい。
今は帰りの電車内。昔のPHSで使っていたサブバッテリーで電源供給中。
無理したかもしれん。特に右手。
昨日、腱鞘炎部分を段ボールで切ってしまい、薬塗れない。
悲しいけど、これって戦争(PHSが壊れるか、自分が壊れるか)なのよね!
84通常の名無しさんの3倍:2008/08/10(日) 21:45:53 ID:???
hoshu
85例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/08/11(月) 17:36:19 ID:???
オバフラU等ガンダム以外の詳細設定分からんので勝手に解釈します。


ハムが寝てる間にハムの身体検査結果が出た。
ミネルバではその話がかなり噂になっていた。
ハイネ「ナチュラルwwとはなwww」
ルナ「ナチュラルであんな物動かすって凄い覚悟が必要よ…。一体何考えてるんだかね」
レイ「うはwwwwテラw自殺ww行為www」

オバフラUは完全に解体され、疑似GNドライヴがブラックボックスとして扱われている。
疑似GNドライヴがトンデモ出力な事だけ分かったがどういう構造かが分からないのだ。
出力を基にオバフラUの性能を算出した結果、ナチュラルでは絶対乗れない物体なことだけだ。
最大出力旋回時12G。コディネタでも持つか分からないパワー。
そんな物にハムは乗っていたという事で整備班もパイロットもブリッジクルーも医療班も驚愕していた。


一度ここまで。
86通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 20:40:19 ID:???
構造解析されてないんじゃエネルギー補給もできるかわからんし誰かの機体に載せて使ったら
しばらくして電池切れおこしてゴミになりそうだな<疑似太陽路
87例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/08/11(月) 21:27:23 ID:???
ミネルバ遅戦力のオバフラUです
予定では疑似太陽炉はプラントへ一度持っていきます
エターナルと物理衝突したプトレマイオスは(ry

OO系終わったら次は(自分の中で)本格始動したあっちのネタ入れます
カーt(略)やマガj(略)、レイ(略)やバr(略)が(ry
88通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 19:31:26 ID:???
すいません、種から数十年後とかを舞台にしたSSってここでよろしいでしょうか?
89通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 20:46:49 ID:???
>>88
おk
90通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 20:52:12 ID:???
>>88
期待!
9188:2008/08/13(水) 22:25:01 ID:???
とりあえず描いてみたいと思っていることは種死から100年後の話で
ほぼ舞台は宇宙、コーディネイターが中心になると思います。
基本的に種・種死の登場人物は出さない予定ですが子孫がいたり、伝承の形で触れるかもしれません。
ところで木星圏にスペースコロニーを設置したいと思うのですが、なかなか名前が思いつかないので
何かいい名前があれば教えていただければ幸いです。
92通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 23:37:45 ID:???
>>88
巧い事、木星にゆかりの在る名前が思いつかないなぁ。
『木星』からホルストなんていいかと思ったけど、あれは組曲の一部だし。
木星の環の名前からとるんなら、ハロとかゴサマーとかある。
9388:2008/08/14(木) 00:41:57 ID:???
なんとか第一話できました。文章力はあまり高くありませんが、ひまつぶしの気持ちで読んでください。


コズミック・イラ 143年
プラント最高評議会議長フリードリッヒが皇帝に即位し、プラント帝国の建国を宣言した。
彼は旧時代の腐敗を一掃したが、今度は民に重税を課し、人々を苦しめた。
そんな帝国を打倒するために木星のスペースコロニーにて共和主義者と旧ザフト駐留部隊を中心とした木星同盟が組織された。

そして、コズミック・イラ 173年、帝国領マティウス市のコロニー、マティウスツーにて、市民は重税に苦しみながらも懸命に生きようとしていた。
その中のひとつ、バーンスタイン一家の一人息子セシルは、貧しかったものの今の生活を十分幸せにだと感じていた。
しかし、彼に数奇な運命が待ち受けようとは知る由もなかったのである。



機動戦士ガンダムSEED Reborn 第1話
黎明 -Dawn-



「このユニウス産のジャポニカ米、いかがですか?」
「そうだなぁ…100万でどうだい?」
マティウスツーの貿易港にて、いつもある商取引の風景。
「次はアクタイオン・インダストリー社の最新鋭作業用モビルスーツはどうでしょうか?」
商船とは思えないほどの巨大な艦艇から、まるで巨人が洞窟から姿を現すかのようにモビルスーツが現れる。
しかも一機だけではない、さらに同型の機体が四機も現れる。
「おお、すごい!全部買った!!」
「商談成立ですな」
マティウスツーの商人たちがそれぞれ買った品物とともに港から立ち去っていく。
「よーし、野郎共!今から半日休暇だ!!
食事買い物なんでもよし!お前らの好きなようにしやがれ!!」
暗赤色の髪の男が意気揚々と宣言する。その言葉を聴いた部下たちは歓声をあげた。
その男の名はナギ・アスカ。近年急成長を遂げている中小貿易企業フォロ・ロマーノの若社長である。
「アスカ船長、わたし買い物行ってきますね!」
茶髪の少女が男に近づく。髪は肩まで伸びており、へそが見えるくらい丈の短いノースリーブとショートパンツといったファッションをしている。
「言っただろう、エステル。食事買い物なんでもよしってな。遠慮なく行って来な」
エステルはうれしそうに市街地へと駆け出していった。
「さてと、あいつからの伝言を待つか」
ナギは一言つぶやくと、船のほうに戻っていった。
94通常の名無しさんの3倍:2008/08/14(木) 00:43:16 ID:???
「おいセシル、見てみろよ。宇宙海賊が指名手配されてるぜ!」
「シメイテハイ!シメイテハイ!」
マティウスツーの市街地にてふたりの少年が壁に貼られた指名手配書を見つめていた。
その指名手配書には赤黒い髪の男が描かれていた。
「賞金一億だって、すごいね。ロック」
「もし捕まえたら一生遊んで暮らすことができるんだろうなぁ…」
「オクマンチョウジャ!オクマンチョウジャ!」
「ハロ、お前もあこがれの生活を夢見てるのか…なんたって俺たち市民はうまいもんも食えないしなぁ」
ハロ…ロックが手に持っている小さな緑色の球体のようなロボットは彼にとってセシルと並ぶかけがえの無い親友であった。
そしてセシルにとってもハロはロックと同じ友達だった。
「そろそろ行こうぜ、セシル」
「あ、待ってよ!ロック」

セシルが一生懸命ロックを追いかけていると、突然隣のブティックから出てきた人にぶつかり、転倒した。
「いてててて…」
セシルが転んだ痛みに耐えながら立ち上がると、そこには茶髪の女性がいた。
身長はセシルより数センチほど高く、年齢も3〜4歳ほど年上に見える。しかもやけに露出度の高い服を着ている。
「あ、ごめんなさい」
セシルは頭を下げながら謝った。
「ううん、いいのよ。それより怪我はなかった?」
「これくらい大丈夫ですよ…ははは」
セシルはちょっぴり照れながら頭をかく。
「おーい!セシルー!何やってんだよー!!」
「セシル!ハヤクコーイ!」
心配したロックが戻ってきたようだ。
「あ、ぼくこれから用があるんで…」
「あら、もう行っちゃうの?」
「さよなら!」
セシルはロックの方へ駆けていった。

「今のねえちゃん、すっげー美人だったよな」
「うん…そうだね…」
セシルとロックが先ほどあった女性のことを話題にしながら商店街を歩いている。
「なんだよお前、まさかホレちまったのか?」
「セシル!ホレタ!セシル!ホレタ!」
ハロがからかうように同調するが、セシルは顔を赤く染めながら横に振る。
「いやいや!そんなことないよ!!」
「やめとけよ…どうせ貧乏な俺たちにはあんな美人なんて高嶺の花だよ…
今の体制が変わらない限り…そこらの貧相な女の子と結婚するのがオチさ」
ロックが天井を見上げながらつぶやく。
「しっ…周りの人に聞かれたらどうするの!?もしかしたら怖い警察や軍隊につかまってしごかれるかもしれないよ」
「あっ、そうか。悪い悪い。…そういえばお前、今日13歳の誕生日だったよな。なぁ、俺もお前んちいっていいか?」
「うん、いいよ!」
「セシル!タンジョウビ!」
セシルとロックは商店街を出ると、家路についた。
9588:2008/08/14(木) 00:44:52 ID:???
「ただいま」
「お帰り、セシル。おや、今日はロック君も来てくれたのか」
二人を出向かえたのはセシルの父親である。彼はザフトのモビルスーツパイロットで、今日は息子セシルの誕生日のために有給休暇をとったのだった。
「まだ夕食まで時間があるから、遊んでなさい」
「あ、セシルの親父さん。モビルスーツシミュレータで遊んでいいですか!?」
「もちろんかまわないよ」
「やったー!じゃあセシル、シミュレータで遊ぼうぜ!!」
「うん!」
セシルとロックは地下室のシミュレータへと向かった。
「もうセシルも成人か…将来は私のようにモビルスーツのパイロットになるんだろうなぁ
そういえばやっておかなければならない仕事があったな…今のうちに片付けておくか」

「よっしゃ!ウィンダムVIを3機撃墜したぜ!!」
「やるなぁ…ようし、つぎはぼくの番だ!」
「うわぁ…ウィンダムVI3機に加えてネオデストロイも!?負けたぁ…」
「なあに、ただ運が良かっただけだよ」
二人はシミュレータに熱中していた。3DCGで描かれる敵機体はすべて地球連合軍の機体で、操縦するザフトのモビルスーツのデータは
インターネットを通じて最新の機体データを手に入れることが可能になっている。
今回二人が使用したのは三ヶ月前に配属されたばかりの最新鋭機ガゼル。量産機体ながら40年前の
セブンスステージシリーズのワンオフ機に匹敵するほどの性能を持っている。
「セシル!ロック君!夕食ができたからいらっしゃい」
「父さんが呼んでる、行こう」
セシルとロックは食卓へと向かった。

「ハッピバースデー、ディーア、セーシルー、ハッピバースデー、トゥーユー」
セシルはケーキに立ち並ぶ13本のろうそくを一気に吹き消した。この瞬間、セシルはコーディネイターの成人年齢に達したのである。
「セシル!オタンジョウビ!オメデト!」
ハロも飛び跳ねながらセシルの誕生日を祝福する。
「セシル、お前もこれで成人だ。一人の人間として考え、責任を持って行動しなくてはならないんだ」
「うん、わかってるよ、父さん」
「そうだセシル、誕生日プレゼントだ」
「うわぁ、ありがとう!父さん」
セシルは父から黄金に輝くペンダントをもらった。純金でできた装飾は照明の光を反射して美しく煌めいていた。

「ここだな、奴の家は」
住宅街の暗闇から3人の影がセシルの家を見つめる。
「奴は叛逆者だ、我らが皇帝のため葬り去らなければならない」
3つの影は暗闇から忍び寄るように躍り出た。
96通常の名無しさんの3倍:2008/08/14(木) 00:47:00 ID:???
「あー食った食った。こんなに食ったのは久しぶりだなぁ」
「うちは貧乏だしね。こんな機会めったに無いよ」
セシルとロックは後片付けに精を出している。しかし、ロックが謎の異音に気づく。
「おい、なんかカチャって音しなかったか?」
「聞こえなかったけど…」
その瞬間、激しい爆発音と閃光とともに二人は吹き飛ばされた。先ほどの異音は爆弾を設置した音だったのだ。
幸い二人に別状は無かったが、緊迫感を伴った父親の声が聞こえる。
「早く地下室に行くんだ!」
セシルとロックは一目散に地下室へと駆け込んだ。
父が地下室の鍵を閉めると、セシルにこう告げた。
「実は私は木星同盟のスパイだ。ザフトはその不審な電波をかぎつけ、我々を叛逆者として処分するつもりだ。
このままではみんな助からない。ここは私が食い止めるからディスプレイの裏のドアから逃げるんだ」
「そんな!父さん残して逃げられるわけないよ!!」
「お前はもう成人だ。成人となったからには自分で判断して、自分が最良と思った道を選ばなければならない。
今のままではみんな死ぬか、お前たちが生き残るかのどちらかしかないんだ」
「無理だよ…ぼくは父さんが好きなんだ…できっこないよ」
「親父さんの言うとおりだぜ、なんてったって俺たちには将来がある。その将来を無駄にすることはできないはずだよ」
セシルは立ったまま黙り込む。その間にも地下室のドアはチェーンソーで切り裂かれていく。
「…分かった。ぼく、逃げるよ。絶対に父さんの分も生きてみせる」
「よく決断してくれたな。さあ行け!」
セシルとロックは急いでディスプレイ裏のドアに入り込んだ。その瞬間、地下室の入り口はチェーンソーで完全にくりぬかれた。
「スコット・バーンスタイン。貴様を叛逆罪によりここで銃殺する」
父は息子の無事を祈りつつ静かに目を閉じた。そして、マシンガンの銃声とともに地下室の床に崩れ落ちた。

「ハァ…ハァ…」
ディスプレイ裏からは下水道に通じており、二人は一心不乱に走った。
長く走ったのか、息切れし始めている。
「…もう奴らも追ってこないだろ…そろそろ上のマンホールから出ようぜ」
「…う…うん」
二人が出た場所は、マティウスツーの市街地のど真ん中だった。突然出てきた二人の子供に通行人は驚きの表情を隠せない。
「これからどうしよう…もう帰る家もないしどこへ行けばいいのか分からない」
「そんなの、歩きながらゆっくり考えようぜ」
ロックが楽天的な表情で答える。セシルは首にかけたペンダントを握り締め、目から涙が零れ落ちる。
「父さん、もう今頃は天国にいるんだね…ぼく、悲しいよ」
「元気出せよセシル、悲しんだって人は生き返らないんだ」
「セシル!ゲンキダセ!」
ロックに付き添っていたハロもセシルを励ます。
「いたぞ!捕まえろ!!」
突然の大声に二人がおどろく。振り返ると先ほどの父を殺害したザフト軍兵がいた。
「やばい!逃げるぞ!!」
二人は再び一心不乱に走り出した。
9788:2008/08/14(木) 00:48:11 ID:???
気づくと二人は貿易港の埠頭にいた。すると、ロックが突然提案する。
「俺が奴らをおびき寄せるからお前は一人であの宇宙船に乗り込むんだ、いいな」
ロックが指差した先には巨大な商船があった。
「そんな!父さんを亡くしたのに君まで亡くしたくないよ!」
「なあに、俺は死なねぇ!絶対生き延びてみせる。心配するな。
だがお前だけでもこのコロニーから脱出させたいんだ。分かってくれよ」
「いやだ!ぼくを一人にしないで!!」
「そうだ。お前にこれをやるよ。誕生日プレゼント兼ねてな」
ロックはそう言うと、手元のハロを差し出した。
「そんな…ロック」
「俺はお前の親友だろ?だから俺は友達としてお前だけでも助けてあげたいんだ」
ロックが微笑むと、セシルは悲しげながらにうなずいた。
「…ロック、絶対に死なないでね。約束だよ」
「もちろんさ。俺に同じ言葉を言わせないでくれよ。
ああそうだハロ、何が何でもセシルを守ってくれ。いいな」
「ハロ!セシル!マモル!」
「さあ行くんだ!」
セシルはハロを抱え、巨大な宇宙船へと走り出した。
「おらぁ!ザフトのヘボ軍人ども!叛逆者の息子セシルはここにいるぜ!捕まえてみるもんなら捕まえてみな!!」
「いたぞ!捕らえ次第殺すんだ!!」
ザフトの軍兵たちは銃口をロックに向け、囲い込むようにして向かっていった。

幸いその商船は積荷の最中だった。セシルは人の目を盗んで、商船の倉庫の中へと忍び込んだ。
「なんとか忍び込めたけど、ロック…大丈夫かな…」
ロックの身を案じつつも、セシルは薄暗い光の中をさまよっていた。
すると、突然大きな金属のようなものにぶつかった。
「うわぁ…これは…」
見上げると、そこには巨大なモビルスーツの姿があった。
頭の部分は角のように生え立つ二本の黄色いアンテナ、人間の目のような複眼のカメラアイ、そして口の部分には二本の黒いスリットが入っている。
「これって…ひょっとして…」
そう、セシルには見覚えがある。遥か昔、世界を救ったあの伝説のモビルスーツにそっくりだったのだ。
すると、エンジンのような轟音が響き渡った…商船が発進したのだ。
セシルが安堵したそのつかの間、ハロも同時に悲鳴に近い声を出した。
「ロック!ロック!ロック…」
「ハ、ハロ!…まさかロックも…」
その刹那、セシルは悟った。ロックもザフトの手にかかり殺されたのだと…。
「そんな…ひどいよ…ロック……うわああああん!!!」
セシルは大粒の涙を零すとともに床に泣き崩れたのだった。
その時、セシルを乗せた商船はマティウスツーをすでに出たばかりであった。
9888:2008/08/14(木) 00:51:06 ID:???
帝都・アプリリウス…
かつての最高評議会のビルは取り壊され、代わりに皇帝の宮殿が建っていた。
煌びやかな内装に包まれたその部屋の玉座に座る一人の老人。その名は皇帝フリードリッヒ。
そこに白服を身を包んだザフトの軍人が、うやうやしく膝を付く。
「陛下、ご機嫌麗しゅうございます」
「ほう、オーガスバーグ隊長か。で、用件は何じゃ?」
シーザー・オーガスバーグ。その美麗な金髪に口元を覆ったマスクといった独特の外見を持つザフトの特務隊FAITHの一人。
そして彼は皇帝にとっても信頼のおける部下の一人でもあった。
「最近叛乱軍のスパイ活動が激しくなっております」
「フン、小賢しいハエどもが…。徹底的に蹴散らし、皆殺しにするのじゃ。
わしは全世界で唯一SEEDを所持しておる神人だ。その神の力で無力な民衆どもをひれ伏させてくれるわ」
「はっ!必ずや、奴らを根絶やしにしてご覧に入れましょう。では」
シーザーが立ち去ろうとすると、皇帝が声をかける。
「ところで、アウグ…」
「陛下、私はザフトの隊長、シーザー・オーガスバーグでございます」
シーザーはきっぱりと言うと、そのまま立ち去っていった。
「フン、まあよい」
皇帝はシーザーが去るまで、その後姿を見つめていた。
その後ろには、皇室の紋章である龍を象った黄金のレリーフが不気味に輝いていた。


第2話に続く。

以上です。読んでくれた方、お疲れ様でした。
まあプロットとしては帝国vs叛乱軍といったスターウォーズ以来のありきたりなやつですが、
物語の過程においてなるべくオリジナリティ出して生きたいと思っております。
とりあえず木星のスペースコロニーはホルストにしたいと思ってます。
なにか改善点でもあればご指南よろしくお願いします。
99通常の名無しさんの3倍:2008/08/14(木) 00:59:55 ID:???
>>Reborn
投下乙です。 丁度リアルタイム投下していたので、暇つぶしに読ませていただきました。

四十年前のセブンスシリーズには吹きましたが、フリードリヒ皇帝の小物臭が激しいです。
ザフト隊長の胡散臭さがばりばりでした。展開はこの早さでもよいでしょうが、

文章をもっと練ることが出来そうな気がします。「その」や「そして」を減らした文章に
為てみてはいかがでしょうか?

またの投下をお待ちしております。
10088:2008/08/14(木) 12:45:02 ID:???
とりあえず第2話できました。いよいよガンダムが活躍します。それではどうぞ。


数多の星の中を進む、ひとつの巨大な艦艇。
乗組員はみな陽気で、自由気まま。
船長は自らの集団に、太古の昔に栄えた広場の名を与え、自らの船には太古の昔に現れた偉大なる英雄の名を与えた。
その船の名は、ユリウス・カエサル…


機動戦士ガンダムSEED Reborn 第2話
風雲 -The rade of impulse-


「スパイからの通信によれば、この近辺に現れる予定です」
若い少女の声が艦橋にこだまする。
「よし、ミラージュコロイドを展開しろ」
指示したのは暗赤色の髪の男、名はナギ・アスカ。
彼は語らないものの、クルーの噂によればかつての大戦で活躍した英雄の孫らしい。
ナギは大のローマ史好きで、自分の船や集団の名前に古代ローマ由来の名称を好んで使用する。
そんな彼の愛艦、ユリウス・カエサル号もローマ史好きの彼らしいネーミングを与えられた宇宙船であった。
「ミラージュコロイド展開…100%、完了しました」
ユリウス・カエサルのオペレーターを務める少女、エステル・フローレンス。
彼女は商船のオペレーターであることを除けば、ファッションも気にする今時の女の子である。
「目標は捕捉できたか?」
ナギが尋ねると、男性のオペレーターが答えた。
「いえ、まだです。しっかし…ニュートロンジャマーさえなければレーダーで楽に捕捉できるのに…」
「まあいいじゃねぇか。そのおかげで核攻撃なんてもんがないんだからよ。気長にいこうぜ」
任務中らしからぬフランクな会話だが、それすら許される雰囲気がこの宇宙船にはある。
「それにしても…あたしたちがこんなことやっていいんでしょうか…なんか海賊みたいでやだなぁ」
「奴らの戦力を1でもそぎ落とすのが俺たちの役目だ。なんたって生産能力はこっちが劣るんだからな。
なあに、かつてエリザベス1世やナポレオンも使った由緒正しき戦法だ。俺たちが使っちゃいけない筋合いは無いさ」
ナギは艦橋に映し出される無数に輝く星を見つめていた。
10188:2008/08/14(木) 12:47:12 ID:???
「目標…捕捉しました!!」
男性のオペレーターが叫ぶ。漆黒の宇宙から艦艇らしき物体が接近してきた。
「あれは…ザフトの輸送艦!間違いありません!」
エステルがコンソールを叩き、データベースから艦艇の種類を割り出す。
「よし、陸上部隊、突入準備!」
ナギの指令が雷鳴のごとく艦内に響き渡る。
10分後には、宇宙船のハッチの前ににパワードスーツと重火器で武装された屈強な兵士100名がスタンバイしていた。
そうこうしているうちにザフトの輸送艦は秒を刻むごとに近づいてくる。
「目標、10km…5km…1km…」
「接舷しろ!」
ユリウス・カエサルの巨体が動き、ぶつかる。その衝撃は双方に伝わる。
「か、艦長!」
「何事だ!?」
ザフト輸送艦艦長は動揺した。今何が起きたのかを全く理解できないでいたのだ。
「突入!」
ナギの指令により輸送艦の壁がレーザーカッターによってくりぬかれ、兵士全員が敵艦内に突入する。
「艦長!艦内に武装した兵士多数!」
「な、なんだと!?戦闘準備だ!!」
「各員、戦闘態勢!!」
輸送艦のオペレーターにより戦闘態勢の指令がザフト兵全員に飛ぶ。
だが、突然艦内に戦闘とは違った異様な雰囲気が漂う。
輸送艦艦橋のクルーが次々と倒れていく。
「か…艦長…催眠ガス…です」
オペレーターは倒れた。しかし、艦長はまったく聞いていなかった。なぜなら彼も催眠ガスによって倒れたからだ。

輸送艦内のザフト兵全員が目を覚ましたとき、カーボンファイバー製のロープで縛られ、手錠をかけられていた。所持していた武器も自分のポケットから消えていた。
「やっとお目覚めになったか、ザフト諸君」
そこにいたのは、見覚えのある、暗赤色の髪の憎き奴。
「き…貴様!!キャプテン・インパルス!!」
「そう、俺は同盟軍私掠船船長、人呼んでキャプテン・インパルスだ。あんたらの届けるべき軍需物資及びモビルスーツは我々がいただいた」
キャプテン・インパルス…ナギ・アスカがザフト艦艇への私掠行為を行うときに使うコードネームである。
由来はナギの先祖が乗っていた伝説的なモビルスーツの名前とされるが、真相は定かではない。
「おのれ…」
「別にあんたらの命は奪いはしない。この艦の脱出用シャトルにぶちこんで首都に送り届けてやるさ。到着したときに麗しき皇帝陛下にでも許しを請うんだな」
「よし、こいつら全員シャトルにぶちこめ!」
陸上部隊のリーダーの指令でザフト兵全員がシャトルに詰め込まれ。そのシャトルは帝国首都アプリリウスを目指して飛んでいった。
「作戦成功だ!お前らよくやった!!」
強奪したザフト輸送艦の艦内でユリウス・カエサル号クルーの歓喜が響き渡る。
その時、通信機からエステルの緊迫した声が響く。
「船長!大変です!!ザフトのモビルスーツ小隊が接近!!」
「何だと!?こうしちゃいられねえ!!モビルスーツ発進準備だ!!」
10288:2008/08/14(木) 12:48:39 ID:???
「マティウス商人からの垂れ込みがあった。キャプテン・インパルスらしき人物が寄港してたとな。
とにかく奴らを探せ!必ず生け捕りにするのだ!!」
「ははっ」
ザフトの最新鋭量産型モビルスーツ・ガゼル1機と前世代機のゼノ9機からなるモビルスーツ小隊は
獲物を探す猛獣の群れのごとく、銀河の深遠をさまよっていた。
隊長機のガゼルに通信が入る。それは輸送船が何者かの襲撃を受けたとの情報である。
「きっと奴らに違いない。急ぐぞ!!」
モビルスーツの小隊は輸送船が襲撃されたポイントへと急行した。
一方、ユリウス・カエサル艦内。モビルスーツの出撃準備で慌しかった。
「奴らは10機の小部隊との情報だ。だが俺たちの所有機数の2倍…こりゃあ大変な仕事になりそうだ」
モビルスーツの格納庫へと向かう4人のパイロット、そして暗赤色の船長。
彼もまたモビルスーツのパイロットである。かつてはザフトレッドのエースパイロットとして活躍し、敵からは「死神」と呼ばれ恐れられていた。
「船長さんよお、あんたは船長らしく艦橋に居座ってりゃいいのに」
「俺だってモビルスーツパイロットとしての血が騒ぐのさ」

ナギたち5人のパイロットは格納庫にたどり着くと、そこでうずくまる少年の姿を発見した。
「何だいこりゃあ」
「何で格納庫にガキがいるんだい」
5つの人影に気づいた少年は、恐る恐る5人を見上げる。
「お前よお、なんでここに乗り込んでんだよ」
4人のパイロットが少年を取り囲むように近づく。
「セシルニチカヅクナ!セシルニチカヅクナ!」
「なんだいこの緑の玉っころ、こいつしゃべるぜ?」
「おい見ろよ、こいつ男の癖にペンダントなんかかけてやがる」
その様子を見ていたナギがついに口を開く。
「とにかく敵が迫ってるんだ。お前たちは早くモビルスーツに乗り込め。おいフリオニール、こいつを適当な部屋にぶち込んでおけ!」
フリオニールと呼ばれた男は強引に少年の手首をつかんだ。
「い、痛い!」
「悪いな坊ちゃん、うちらだって命かけてるんだからな、とにかくおとなしくしてもらおう」
少年はフリオニールに強引に連れて行かれた。
「………」
ナギは何も言わず、自分の愛機「リボーン」に乗り込んだ。
デザインはかつての英雄が乗ったモビルスーツに酷似した、2本のブレードアンテナ、複眼のカメラアイ、そして口部の黒いスリット。
基本武装はシールド、ビームガン、ビームサーベルとシンプルながらも、彼の技量に合わせられたチューンが施されており、まさにナギのための機体であった。
左肩には「03」の文字が刻まれており、3号機であることが伺える。
「よし、リボーン起動!」
ナギがスイッチを入れるとディスプレイには”G.U.N.D.A.M”の文字が映し出された。
他の4人が乗ったモビルスーツ「オシリス」はリボーンにスペックが劣るものの、量産性と整備性を重視した機体である。
4機のオシリスはリボーンに先駆けてカタパルトから発進していく。リボーンもカタパルトの発射位置につく。
「ナギ・アスカ、リボーン3号機、発進する!」
リボーンは火花を立てながらカタパルトを飛び立ち、数多の星の中を飛翔していった。
それと同時にフェイズシフト装甲も起動し、装甲の色がナギのパーソナルカラーである紫色へと変化した。
10388:2008/08/14(木) 12:49:57 ID:???
少年は男に連れられ、ある部屋に入れられた。
薄暗く、何も無い殺風景な部屋。
少年は暗闇の中で赤黒い髪の男を思い出した。それは少年が街で見た指名手配書の男に酷似していたのである。
「セシルゲンキダセ!セシルゲンキダセ!」
「あ、ありがとう…ハロ」
ハロと呼ばれる小型の球体型ロボットに励まされた少年、セシル・バーンスタインは一度に二人の親しい人を失い孤独感に苛まれていた。
悲しみたかった、泣きたかった、でも親友だった少年の言葉を思い出す。
「悲しんだところで、人が生き返るわけじゃない…か。ロック…君の言葉だったよね。
ぼくは…これからどうすればいいんだろう……」

「敵機発見!同盟軍の標準型モビルスーツ4機、そして正体不明の形式1機!」
「ふん、たかが5機で我々に挑もうというのか。まさしく多勢に無勢。この戦いは我々の勝利だ!
インパルスの首を皇帝陛下に献上する絶好の機会だぞ!!」
ザフトの隊長が高笑いをする。すでに勝ったかと言わんばかりの余裕さを示していた。
「とりあえず俺の指示通りにダミーを射出しろ」
ナギの指示と同時に、5機のモビルスーツからダミーが射出された。
「隊長!敵は全部で15機!右翼に10機!左翼に5機分かれた模様!!」
「待て!海賊ごときの規模で15機所有するのはおかしい。右翼はおそらくダミーだ。左翼に総攻撃をかける!」
ザフトのモビルスーツ隊は一斉に左翼に襲い掛かった。しかしそれこそダミーだった。
ナギら5機のモビルスーツはまず5体のダミーを9時方向に射出し、
自らも先に放たれたダミーについていくよう移動すると同時に、逆方向にダミーを5体射出したのだった。
「た、隊長!敵艦主砲の射程距離内です!!」
「しまった…奴らの狙いはこれか!!すぐに退避するのだ!!」
しかし、時既に遅かった。ユリウス・カエサルの船体から現れた主砲がザフトのモビルスーツをめがけ斉射された。
「う、うわああああ!!」
ザフトパイロットの悲鳴が通信回路を支配した。開戦前10機だった小隊は、隊長機ガゼルを含む3機に撃ち減らされていた。
「隊長!3時方向から敵襲!」
「ええい!迎え撃て!迎え撃つんだ!!」
隊長の怒号とともにザフトのモビルスーツは武器を構え、5機の敵部隊に戦いを挑む。
「オシリス4機は2機ずつのグループに別れ、敵機1機と交戦しろ」
オシリスは2つのグループに別れ、敵のゼノと交戦を開始した。
「くっ…今度は俺たちの方が”多勢に無勢”じゃねえか…」
オシリスとゼノはカタログスペック上はほぼ同等とされている。そのため、オシリス2機を同時に相手にしなければならない
ゼノのパイロットにとって非常に不利な戦いになってしまった。
ゼノが片方のオシリスに銃口を向けようとすると、もう片方のオシリスにビームサーベルで斬りかかられる。
こちらの方もビームサーベルで応戦しようとすると今度はまた片方のオシリスによるビーム攻撃を受ける。
2機の巧みな連携によってなすすべもなく翻弄されるゼノ。
突然、オレンジ色の閃光がほとばしった。片割れのゼノが撃破されたのだった。
その爆発の光に気づき、呆然とするゼノのパイロット。
旗色が悪いのは火を見るより明らかだったが、それでも”退却”の2文字が頭に浮かぶことはなかった。
隊長が命令しなかったのもあるが、パイロット自身が冷静さを失ってむしゃくしゃしていたのも一因であろう。
だが、そのつかの間、ゼノの腕部が破壊されたことに気づいた。片方のゼノを撃破したもう2機のオシリスによるビーム攻撃を受けたのである。
この時、ゼノのパイロットは冷静さを失うあまり、目に映る2機の敵機しか見えていなかった。
さらに4機のオシリスが四方八方からビームを斉射し、ゼノは蜂の巣のように撃ちぬかれた。
ゼノのパイロットは目の前が真っ白になり、何が起こったのかも理解できずにゼノの機体ごと肉体は散った。
104通常の名無しさんの3倍:2008/08/14(木) 12:53:44 ID:???
一方、リボーンとガゼルも交戦を開始した。その構図はまるで中世さながらの一対一の決闘のようだ。
「あの機体は…昔の大戦で世界を救った伝説のモビルスーツに似ている!
しかし、このガゼルはセブンスステージ級の性能を持つモビルスーツ、たとえ何であろうが私の敵ではない!!」
ガゼルがビームサーベルを抜き紫色のモビルスーツに襲い掛かる。しかし何度斬りつけてもかわされてしまう。
さらに意表をつく形でビームライフルを撃ったが、これも敵のシールドに弾かれてしまう。
突然、コンソールから部下の機体の反応が全て消えたことを告げられた。ゼノ2機は跡形もなく撃破されたのだ。
追い討ちをかけるかのように敵側から通信が入る。
「よう、ザフトの隊長さん。俺の顔を覚えてるか?」
隊長の顔が青ざめる。
「キャプテン・インパルス…いや、ナギ・アスカ!かつて敵から死神と恐れられた伝説のパイロット!!」
「ご名答だぜ隊長さん。だがもう残りはあんた1機だ。あんたの部下は俺の部下が全て料理した。
悪いことは言わん、降参しな。すれば命の保障はしてやる。しなけりゃ死神の鎌があんたの首を刈り取るぜ」
彼らしい表現で敵に投降を促す。
「ふざけるな!私とてザフトの誇り高き軍人!海賊風情に投降などしない!!」
隊長はいきり立ちながらガゼルにビームサーベルを構えさせナギの駆るリボーンに襲い掛かる。
しかし間一髪で攻撃をかわされ、逆にリボーンのビームサーベルがガゼルのコックピットを貫いた。
「うわああああっ!!こ…皇帝…陛下…万歳!!」
隊長の絶叫とともにガゼルは爆発四散した。
「敵軍殲滅。こちらの死傷者はありません」
エステルが告げた内容は、まさに完全勝利を示すものだった。ユリウス・カエサルの艦内に歓喜が沸きあがった。
「全機帰投せよ。これからホルストに向かう」
ナギの命令で5機のモビルスーツがユリウス・カエサルに収容されると、木星へ進路を向けた。
10588:2008/08/14(木) 12:55:45 ID:???
セシルはいまだに薄暗い部屋の中に閉じ込められていた。
今までに起こった出来事を必死に整理していた。不安そうにセシルを見つめるハロ。
「ぼくは帰る場所を失った。おまけに逃げ込んだ先は宇宙海賊の船…ぼくはどうすれば」
その時、鍵の音が聞こえ、明るい光が差し込んできた。
「おい坊主、出ろ。船長が聞きたいことがあるそうだ」
「……はい」
セシルは男についていった。ついた先は無数のモニターとコンソール、宇宙を映し出すスクリーン、そして数人の人間がいた。
セシルはあたりを見回すとどこで見覚えのある顔を見た。そう、それは昼間マティウスツー市街地のブティック前で出会った少女だったのだ。
そこに赤黒い髪の男が現れた。セシルは恐る恐る尋ねてみた。
「あ…あなたが、キャプテン・インパルス?」
「まあそうだな。ザフトにはその名で通ってる。だがまず質問したいのは俺のほうだ。お前、なんでこの船に入り込んだんだ?」
「ぼくはマティウスで父と友人を殺された。ぼく自身も殺されそうになった。だからやむなくこの船に逃げ込んだんだ」
「お前の父の名は何だ?」
「スコット。スコット・バーンスタイン。表向きはザフトのパイロットだったけど死ぬ間際に木星同盟のスパイだって言ってくれた」
「そうか…スコットさん、死んだんだな。お前も気の毒だったな」
「あなたは父さんの知り合いなの?じゃあ、父さんは、一体何をしてたの?」
「お前の親父さんは、俺たちにザフトの輸送艦の運行日時、そしてルートを教えてくれた。さらに軍の機密情報を漏らしてくれたんだ」
セシルは驚きを隠せなかった。父は海賊に情報を流していたのだった。では、彼らは一体何者…?
セシルがその旨の質問をしたとき、少女が教えてくれた。
「正確には同盟軍所属の私掠船よ。表向きは善良な貿易会社を装っているけどね。
またキャプテン・インパルスっていう名前も偽名で本名はナギ・アスカって言うの」
「おいおいエステル、ネタばらしするの早すぎだぜ」
ナギがあきれた顔でエステルを見つめる。
「あはは、ごめんなさい。そういえばあなたの名前、聞いてなかったわね。ぜひとも教えてほしいな」
「ぼくはセシル。セシル・バーンスタイン」
「ありがとう。あたしはエステル・フローレンスよ。よろしくね!」
こちらこそよろしく、と一瞥すると、セシルはナギの方に顔を向けた。
「あの、アスカさん。ぼくをこれからどうするんでしょうか?」
恐怖心半分で尋ねてみた。もしかしたら無事ですむ保障は無い。
「今木星のコロニー、ホルストに向かってるとこだ。そこで適当に仕事見つけて、寝床を見つけなよ。
俺たちは無差別殺人の凶悪犯集団ってわけじゃない、別にお前をとって食ったりしねえよ」
「あ…ありがとうございます」
セシルは船長の好意に感謝した。だが、ここである決心が芽生えていた。だめかもしれないと思い、勇気を振り絞って尋ねた。
10688:2008/08/14(木) 13:00:17 ID:???

「あの、よろしかったらぼく、ここで働いてもいいでしょうか?どうせ帰る場所もないし、モビルスーツの操縦なら誰よりも自信あります」
ナギの表情が変わる。明らかに難色を示したという感じの表情だった。
「モビルスーツのパイロット?殺された親父さんの仇討ちでもやりたいのか?やめとけ。頭に血がのぼって戦死するのがオチだ」
「仇討ちというわけではありません。たとえ仇を討ったところで死んだ人間が生き返るわけじゃない。
ぼくには居場所が欲しいんです。そんな居場所が、ここにあるような気がする」
「居場所…ねぇ」
ナギがさめた表情でつぶやくと、突然エステルの言葉が響き渡る。
「入れてあげましょうよ、船長。あたしだってまだ16歳の女の子だし、何より人数が多いほうが楽しいじゃない」
「そうですよ。もしかしたら見た目に似合わず意外と腕利きかもしれませんよ」
エステルに同調するように男性オペレーターも発言する。
「皆がそういうんなら仕方ない、好きにしな。だが一つ言っておく。
うちに入った時点でお前さんは同盟軍の一員だ。これからずっと帝国と戦わなきゃならない。それでもいいのか?」
「かまいません!ぼくは決めたんです」
「なら決まったな。今日からお前さんはユリウス・カエサルのクルーだ。がっかりさせないでくれよ、セシル」
「ありがとうございます!」
「セシル!ヨカッタネ!」
セシルは心から喜んだ。だがそれは彼にとって新たなる過酷な日常の始まりでもあった。


第3話に続く


以上です。第2話読んでくれた方、お疲れ様でした。
雰囲気としては「種+クロスボーンガンダム+スターウォーズ」な感じになると思います。
では、第1話に続き感想をお待ちしております。

余談ですが、北島選手、金メダルおめでとうございます。
107通常の名無しさんの3倍:2008/08/14(木) 16:53:38 ID:???
乙!おもしろい!
アスカ氏の声が渋いおっさんの声で再生される
108通常の名無しさんの3倍:2008/08/14(木) 23:47:00 ID:???
乙です。 スターウォーズは兎も角
クロスボーンな感じが出てるっすね。
10988:2008/08/15(金) 23:38:47 ID:???
第3話できました。それではどうぞ。


太陽系第4惑星、火星――居住圏を広げたプラントはここにもスペースコロニーを建設した。
現在は同盟領となっているが、とある宇宙海賊の本拠地となってから、住民はおびえていた。
海賊の鎮圧のため、木星から一個艦隊が向かっていた。
「フン、同盟軍の無能者どもめ。我々ブラック・フラッグの恐ろしさを思い知らしめてやる」
海賊船の薄暗いブリッジの中でスクリーンを見つめる男。その名はキッド。
「モビルスーツ、発進準備」
彼らの使うモビルスーツは全て他所から強奪した機体である。
「提督、敵艦からモビルスーツが発進しました」
「こちらもモビルスーツで迎撃させろ」
同盟軍提督ロバーツの指示で各艦艇から同盟軍のモビルスーツが飛び立つ。
数は同盟軍12機、海賊5機、数では同盟軍が優勢であった。
…交戦開始から数時間、同盟軍モビルスーツが敵機1機を鹵獲したとの情報が入った。
「よし、艦艇に収容しろ」
2機のモビルスーツが無力化した敵機を一番後方の戦艦に収容する。
「何?鹵獲されただと?」
海賊側のオペレーターの情報に歯軋りする船長。
「…ローエングリン、発射準備」
「全機、戦場から退避せよ!」
「撃てーい!!!」
海賊船の艦首から強烈な閃光がモビルスーツの群れをめがけて放たれた。
「奴ら!連合の武装を…うわあああ」
「回避間に合いません!!」
同盟軍のモビルスーツ・戦艦が、破壊の光につつまれていった。


機動戦士ガンダムSEED Reborn 第3話
初陣 -The new face boy-


木星圏に浮かぶスペースコロニー、ホルスト。
コズミック・イラ120年に竣工されたこのコロニーは現存しているものの中で最も新しい。
農業地区、商業地区、工業地区、厚生施設、娯楽施設、軍事施設を全て兼ねそろえたこのコロニーは、市というよりまさに小国家と呼ぶにふさわしかった。
今から20年前、帝国の圧政に対抗するため、ひとつの組織が立ち上がった。木星同盟(Jupiter Union)である。
帝国政府は国民に重税を課したが、首都圏から最も遠くにあるこのホルスト市の市民はシュードラのごとく蔑視され、最も重い税を課した。
市民は困窮した。中には首都圏への移住を試みる者も現れた。
この事態を打破するためザフト木星部隊司令官クロムウェルが帝国打倒を唱えると、民衆・軍部問わず熱狂した。
ホルスト内の帝国派は全員追放され、ここに木星同盟が成立した。
これが現在進行形で続いている同盟軍とザフトとの戦争の始まりであった。
11088:2008/08/15(金) 23:40:30 ID:???
コズミック・イラ173年 5月5日
ユリウス・カエサル号はホルスト・フォーの軍港に到着した。5日前、ザフト輸送艦に対する略奪作戦を成功させた彼らは、
敵の軍需物資、モビルスーツのみならず意外な土産を持ち帰っていた。
「アスカ君、どうやらかわいい新入りが入ったらしいな」
出迎えたのは同盟軍提督ドレイク。元ザフト駐留艦隊の提督で現在は同盟軍の艦隊を率いる男である。
「まあそのようなところですよ」
ナギ・アスカは苦笑交じりに答える。その”かわいい新入り”が二人の前に現れたのはすぐのことだった。
「船長、この人は?」
「彼は木星同盟軍艦隊を率いる男、ドレイク提督だ。お前も挨拶しなさい」
「初めまして。ぼくはセシル・バーンスタインといいます。どうかよろしくお願いします、提督」
「君がバーンスタイン君か。父親の件は残念だったね。まさか父親のことで入ったのかい?」
「いえ、父は関係ありません。自分自身の意思です」
「ははは、活躍を期待しているよ。そうだ、これから会議があるのでな、失礼する」
ドレイクはそう言うときびすを返し、立ち去っていった。
「お前も同盟に入ったからには指導者に会ったほうがいいだろう。付いてきな」
「は…はい」
セシルとナギは指導者のもとへと向かった。

「指導者クロムウェルのオフィスはホルスト・ワンにあるんだ」
ホルスト・ワン行きのシャトルに居座るセシルとナギ。
「クロムウェルさんって、どういう人でしょうか」
「ああ、元々ザフトのホルスト駐留部隊の司令官だった」
「何で彼は同盟を立ち上げたのでしょうか…」
「俺もよく知らんが、帝国の厳しい差別と税金で生活に困窮してたからじゃないかな」
「…そういえば、アスカさんって何歳ですか?」
「27だ。あと6ヵ月後に28になるがな」
「意外だな。もう30代いってると思ってた」
「何だよ。俺のことオッサンみたいに思ってたのかよ」
「あはは…」
二人の会話が弾む中、ホルスト・ワン到着を告げるアナウンスが鳴った。
「到着したみたいだな。さあ行こう」
セシルとナギはシャトル乗り場からタクシーに乗り換え、オフィスへと向かった。
11188:2008/08/15(金) 23:42:33 ID:???
「同盟軍のナギ・アスカだ。クロムウェル殿に面会をお願いしたい」
「はい、少しお待ちください」
到着先の高層ビルの受付でナギは面会できるかを聞いてみた。
受付の女性はしばらくお待ちくださいと言ったあと、なにやらせわしくコンソールを叩いた。
「彼も結構忙しいから、普通はアポイント取るんだがな。こっちも普通に仕事あるし、アポ取っても待ってる暇が無い」
ナギがセシルに語る。しばらくすると受付の女性が発言する。
「面会時間は5分程度ですが、よろしいでしょうか」
「ああ、かまわんよ」
ナギはセシルを連れて、オフィスのある25階へと上がった。
「ナギ・アスカ、入ります」
自動ドアが開いた先には、デスクに佇む男性の姿があった。
「アスカ君か、久しぶりだな。私も忙しいんで、要件は手短に頼む」
「はい、私のところの新入りの少年で、セシル・バーンスタインと言います。
この少年を会わせたくて、今回ここを訪れた所存にございます」
「セシル・バーンスタインです。よろしくお願いします」
セシルはクロムウェルを見上げた。年齢的には40代半ばといったところだろうか。
元軍人、というより初老の政治家のような印象を受けた。
「書類上君の待遇はアスカ君が雇った傭兵の扱いになるが、志を同じくする同志には違いない。君の将来に期待しよう、バーンスタイン君。
それでアスカ君、他に用件はあるか?」
「いえ、他には特にありません」
「分かった。訪れてくれてご苦労だった」

高層ビルを出た二人は先ほどのシャトルでホルスト・フォーに戻っていた。停泊中のユリウス・カエサルからの通信を受け取ったからである。
「今度うちのところにモビルスーツが3機入るってよ。その搬入作業に立ち会わなければならん」
「何でしょうね。オシリス…それともリボーンかな」
「それは行ってみてのお楽しみだな」
ところでセシルはオフィスにてクロムウェルが発した”傭兵”の言葉が気になっていた。
「あの、アスカさん。ぼくが傭兵ってどういうことでしょうか…」
「ああ、ユリウス・カエサルのクルーで正式な同盟軍の軍人は俺だけだ。他は俺が独自に雇った傭兵ということにしてる。
先日の私掠作戦のときの陸上部隊は同盟の正規兵っていう例外もあるけどな」
「一介の軍人がそんなことしていいんですか?」
「一応許可はもらっている。まあこれも”お国のために”ってことさ」
ユリウス・カエサルに到着すると、すでにモビルスーツの搬入作業は開始していた。茶髪の少女エステルが出迎えてくれた。
「船長、1機目はリボーンの7号機で、他の2機は新型モビルスーツの先行量産機です」
「リボーンはともかく、その先行量産機とやらをうちでテストしろ、ってことか」
モビルスーツの格納庫に入ると、3機の巨大なモビルスーツが聳え立っていた。
新しく入ったリボーンは既に所有しているナギ機と同一の外見だが、もう2機は頭部の上半分が水晶のように透き通っていた。
その2体の新型の足元から一人の男が現れ、2機を指差して説明する。
「あれは索敵に特化したモビルスーツ、ウジャトですよ。戦闘能力は大したことはありませんが、戦場での情報収集能力の強化にはつながるでしょうよ」
「なるほどね。解説ご苦労さん、フリオニール」
フリオニールはユリウス・カエサル所属のメカニックである。先の作戦では格納庫にいたセシルを邪魔にならないように部屋に閉じ込めたのだが、
本来はユリウス・カエサルに積載されたモビルスーツの整備が彼の仕事である。
「モビルスーツの搬入も終わったことだし、次の作戦があるまでゆっくりしようか」
ナギはひとまず解散を告げた。
11288:2008/08/15(金) 23:43:09 ID:???
軍港に浮かぶユリウス・カエサルの雄大な姿を見つめながら、セシルはベンチに座りながら近くの自販機で購入した缶ジュースを飲む。
あるクルーの話では元々純粋な商船だったのを私掠船としての活動のため武装化したとのこと。
ちなみに基本設計はナギのオーダーメイドにより100年前の伝説的戦艦アークエンジェルを参考に設計したという。
特にあの独特の艦橋はアークエンジェルそのもののデッドコピー、とまで言われている。
「ユリウス・カエサル…かぁ」
古代ローマの英雄の名を持つその宇宙船を、13歳の少年は静かに見つめる。
思えば、彼の運命はあの船に乗ったときから加速し始めた。親しい人を失い、今は私掠船の一員である。
「ねぇ、隣に座っていいかしら」
突然少女の声が聞こえた。振り返ってみるとそこにはエステルがいた。
セシルは少し間を置いて、どうぞと答えた。セシルから見て右隣にエステルが座る。
「お父さんもお友達も亡くして、寂しい?」
「もちろんです。でも、いつまでも寂しがってなんかいられない」
セシルは口は動けれど、彼女を直視できずにいた。
5日前、マティウスの市街で出会ったとき、「高嶺の花」と評したのは友人だったロックの弁であった。
たしかに彼女にはその言葉に恥じないほどの美貌をもっていた。
そんな彼女が今そばにいて親しげに話してくれていることが、少年にとって信じられなかったのである。
「さっきからそっぽ向いてるけど…恥ずかしがってるの?」
セシルははっとしてエステルのほうを振り向く。
「いえ…そんなことないですよ!」
「隠さなくてもいいのよ。なんたってあなたの顔、赤くなってるし」
「す…すみません。女の人とまともに話すの…初めてですから」
「うふうっ…うぶなのね、あなたって」
エステルがにっこりと微笑む。
「…そういえばクルーのみんなからはアイドルみたいな存在なんですってね。
かわいいな、とかエステルさんみたいな女の子彼女にできたらいいな、って話よく聞きますよ」
「そうなのよね。でもそれだけあたしのことを必要にしてくれてるってことだし、なんだかうれしいわね」
「そうなんだ…」
セシルは慣れてきたのか彼女を見ることに抵抗が無くなっていったが、それでも完全に恥じらいはなくなっていなかった。
会話する二人に男性が近づいてきた。彼はボルというモビルスーツのパイロットで、先日のモビルスーツ戦でオシリスに乗り戦果をあげた男だった。
「セシル…だったよな。船長がお前さんのモビルスーツの模擬戦を見たいんだとさ。俺と一緒に格納庫に来い」
「は、はい。エステルさん、またね!」
セシルはベンチから立ち、ボルと共にその場を去っていった。
「頑張ってね、セシル」
去り行く二人を、少女は眺めつつ見送った。
11388:2008/08/15(金) 23:43:49 ID:???
「船長、何の用でしょうか」
ボルに連れられてセシルが格納庫にたどり着くと、ナギと副船長エド・ティーチ、
そしてもう3人のオシリスパイロット、ベル、ブル、バルが待っていた。
「お前、モビルスーツの操縦に自信あるって言ってたよな」
到着早々ナギが口を開く。
「ええ」
「お前にこいつくれてやるから、とりあえず技量を見たい」
「こいつって、まさか」
突然格納庫の照明がつくと、そこには左肩に「07」の文字が描かれたリボーンの姿があった。先ほど搬入されたばかりの機体であった。
「ぼくに…リボーンに乗れと?」
「まあ、そういうこった。早速スーツに着替えてリボーンに乗って外に出てくれ。これから模擬戦を行う。おいボル、オシリスの発進準備をしろ」
「わかりました」「アイアイサー」
セシルと、若干遅れてボルが更衣室へと向かった。
「旦那、いいんですか?あんな若造に貴重なリボーンを。しかもあれまだ調整してないんですぜ?」
発言者のエド・ティーチはドワーフを思わせる低身長と豊かな黒い髭をもつ勇猛な副船長で、その風貌から”黒髭ティーチ”の異名を持つ。
「ああ、いいんだ。一応期待してるんだぜってメッセージも込めてる。
これからあいつの個性に合わせたチューンをしていけばいいんだし、下手に他人の機体を与えても相性が悪けりゃ意味が無い」
「そうですか。船長がそういうんなら仕方ないですな」
ナギは目を輝かせて格納庫に佇むリボーンを見つめていた。

スーツを身にまとったセシルがリボーンのコックピットに着席すると、ヘルメットを着用し、シートベルトを締める。
「えっと…スイッチはこれかな?」
セシルが起動スイッチを押すと、ディスプレイが点灯し、画面に"G.U.N.D.A.M"の文字が表示される。
通信機からナギの声が流れる。
「今回ビーム兵器は使用せず、ペイント弾と重斬刀で模擬戦を行う。いいな」
「はい!」
セシルは力強く返事すると、シミュレーターで培った操縦知識を総動員した。
「操縦系はザクに近いかな。おそらくザクと同じ要領で動かせるはずだ」
かつて実家にいたとき、シミュレーターの機体は一通り操縦している。
ザクは100年前のセカンドステージシリーズの機体だがもちろんデータは収録されており、操縦も経験していた。
その経験を思い出しながら、リボーンの操縦を試みる。リボーンはゆっくりながらも歩き始めた。
「動いた!」
セシルはわずかに感動しながらも、機体をカタパルトの発射位置へと移動させる。
「セシル・バーンスタイン、リボーン7号機、行きます!」
カタパルトからセシルを乗せたリボーンが放たれると、フェイズシフト装甲が起動し、リボーンの機体を真紅色に染めた。
11488:2008/08/15(金) 23:44:15 ID:???
「ではディスプレイに表示されるポイントまで移動してくれ」
再びナギの声が響く。ディスプレイに地図とポイントが表示された。
「建物は何も無いな。まさに模擬戦にうってつけの場所か」
セシルはつぶやくと、リボーンを移動させるよう操縦桿を動かした。
前方には1機のオシリスが先行しているのが目に見えた。
「相手は百戦錬磨のパイロットか…なんだか緊張するなぁ」
いつしか2機はポイントが示す地点に到着していた。

到着した場所は一面が草原に覆われており、隠れられる場所はどこにもない。
少なくとも障害物に隠れて敵の攻撃をやり過ごす、なんて戦法をとることは出来ないであろう。
ボルから通信が入る。
「坊主。模擬戦とはいえ、俺は容赦しない。お前も本気でかかってこい!」
「の、望むところです!」
セシルはやや強気に返事を返す。それは自分に気合を入れる意味合いもあった。
「では、始め!」
ナギの宣言とともに、ボルのオシリスがマシンガンを撃ちながら草原を疾走する。
セシルはとっさの反応でシールドを構えるよう操作し、ペイント弾をシールドで受け止める。ペイント弾の塗料がシールドを染める。
「次はどうくるか…白兵戦に移行するのか…それとも…」
緊張しながらオシリスの出方を伺っていると、オシリスはリボーンの足元を銃撃する。
命中はしなかったが、辺りに砂煙が巻き起こる。
「まさか…目くらまし!」
オシリスの奇策にセシルは動揺する。これではオシリスがどう動くのか全く予想できない。
「仕方ない…飛び上がろう」
セシルが足元のペダルを踏むと、リボーンのスラスターが噴射し、機体を宙に舞い上がらせる。
「もしかしたら、上空に上がったところを撃たれるかもしれない」
次の相手の行動を対空の銃撃と予想したセシルは、シールドを下側に構えさせる。
しかし、セシルが見たのは、重斬刀を構えてリボーンの上方に舞い上がったオシリスの姿だった。
「しまった!」
セシルは冷や汗をかきながら、急いでシールドをオシリスの方へと向ける。
重斬刀とシールドがぶつかり合い、重い音が響き渡る。重斬刀の一撃でシールドの上部が切れ込む。
「くっ…」
リボーンの落下と同時に射撃兵器装備のスイッチを押し、マシンガンをマニピュレーターに持たせる。
オシリスに照準を合わせ、トリガーを引いた。
だが、オシリスもシールドを構え、リボーンの銃撃をシールドで受け流す。
リボーンの着地と同時にマシンガンを構えなおす。一方オシリスも落下中にマシンガンに持ち替え、着地時にはすでにリボーンに銃口を向けていた。
「ハァ…ハァ…次はどう来るか…」
「坊主め、なかなか楽しめそうだな」
一瞬時間が止まったかのように、双方とも相手の出方を伺っている。
11588:2008/08/15(金) 23:44:47 ID:???
「ほほう、ボルの一撃を凌いだとはな」
「だが、まだまだこれからだぜ」
双眼鏡で戦いの様子を見つめるナギとティーチ。
「船長さんよ、俺たちにも双眼鏡くださいよ。せっかくの模擬戦が見れないじゃないすか」
後ろの3人のパイロットが不満を述べる。
「そんなに見たいならさっさと近くの売店で双眼鏡買ってくりゃいいだろ」
ナギがあきれて返事する。3人は仕方ないな、といった表情で走り去っていった。
「さあセシル、お前の自信の程、とくと見せてもらおうじゃねえか」
ナギは再び双眼鏡を構え、セシルの活躍を見守った。

「よし、今度はこっちから仕掛けよう」
セシルはシールドを前方に構え、オシリスに向かってリボーンを動かす。
「えっと、白兵戦用の兵装は…これかな」
ディスプレイ横のスイッチを押すと、リボーンはスカート脇の重斬刀を抜き、構える。
その間にもオシリスの銃撃を受けるが、全てシールドに弾かれ、その分塗料がシールドに付着する。
「行くぞ!!」
リボーンが重斬刀を振り上げ、オシリスに斬りかかる。オシリスも重斬刀を構え、リボーンを横になぎ払おうとする。
2本の重斬刀が激しくぶつかり、火花が散る。
続いてリボーンがフェンシングのようにオシリスめがけて突く。しかし、オシリスはそれを重斬刀で打ち払う。
「いったん間合いをとろう」
セシルは操縦桿を引き、リボーンを後退させる。
「なかなか隙を見せない…さすがはボルさん。だがこっちが隙を見せてはやられるだけだ」
オシリスはスラスターを吹かし飛び上がる。擬似太陽の光をオシリスの体が覆い隠し、皆既日食のように黒く見える。
リボーンはシールドで受け止めず回避行動を取る。オシリスは着地と同時に重斬刀の突きを見舞う。
「くっ!!」
リボーンが間一髪でかわす。僅かに刃がぶつかったような感覚をセシルは知覚する。
だが、この間にもセシルはリボーンの武装をマシンガンに持ち替えていた。一瞬ながらチャンスがめぐって来た、と彼は確信した。
「食らえ!!」
セシルは操縦桿のトリガーを引く。マシンガンからペイント弾の乱射が火を噴く。
弾はオシリスに命中した。右腕と右脚に数発、そしてわき腹にかすれるように一発。
「やった…」
セシルはこのとき、緊張がとけていた。そこにオシリスの体当たりをもらい、コックピットがゆれる。
「しまっ…うわああ」
リボーンは仰向けに倒れる。その激しい衝撃もコックピットに伝わってくる。
次にセシルが見たものは銃口をコックピットに向けるオシリスの姿だった。
「チェックメイトだ、坊主」
「そんな…負けた……」
「そこまで!2機とも帰投せよ」
ナギが模擬戦の終了を告げた。
11688:2008/08/15(金) 23:45:57 ID:???
セシルは落胆した表情でリボーンから降りた。
「意外といけたじゃないか。まさかボルのオシリスにペイント弾つけるなんてよ。
だが逆転されたってことは緊張の糸が切れちまったってことだな」
ナギがセシルの肩をぽんとたたく。
「はい…すみません」
「今回が模擬戦だったから良かったものの、実戦じゃお前は死んでた。
帰投命令を受けて船に収容されるまでがモビルスーツ戦だ。次はぬかるんじゃないぜ」
「わかってます」
落胆するセシルを横目に、ナギはその場を去っていく。
「見直したよ、セシル。お前小さくてもなかなかやる奴だな」
「ボルさん」
セシルは、ボルが初めて名前で呼んでくれたことに気がついた。
「そんなに落ち込むなって、お前は俺が認めた男なんだからさ。実戦では生き残れるよう努力しろよ」
「あ、ありがとうございます!」
「あばよ、セシル。おい、バル、ベル、ブル、酒飲みに行くぞ!!」
少年は去り行く4人を見送った。その表情にはいつもの明るさが戻っていた。

セシルはシャワーを浴び、私服に着替えて更衣室を出ると、そこにはエステルが立っていた。
「模擬戦ごくろうさま、セシル」
「あ、エステルさん」
「聞いたわ、あなたがボルさんのオシリスに傷をつけたんですって?」
「いや、あれはまぐれですよ。たまたま巡ってきたチャンスをつかんだだけです」
「もっと誇ってもいいのよ。あなたの武勲なんだから」
「ありがとう、エステルさん」
「それからセシル、ぜったいに死なないでね。約束よ…」
「は、はい…」
セシルは腹の音がなったような気がした。時計をみるとすでに夜7時を指していた。
「ねえセシル、お腹もすいてきたことだし…あたしと一緒に夕ご飯食べない?」
「あ、いいですね。ぼくもちょうどお腹すいたし」
「じゃ、行きましょ!」
二人はモビルスーツの格納庫を後にした。
「セシル!マッテヨー!!」
彼の死んだ親友の形見・ハロも二人の後を追って飛び跳ねていった。
11788:2008/08/15(金) 23:46:47 ID:???
一方、同盟軍の会議室では、隊長や提督クラスの士官が集って会議を開いていた。
「一つ目は、帝国領のアーモリー市にて要塞を建設している模様」
「ジェネシスは搭載しているのか?」
質問したのは元ザフト提督で現同盟軍提督ドレイク。
「もちろん。完成すればアーモリーは鉄壁の防御になるでしょう」
「帝国も手をこまねいてるわけではないってことか」
ドレイクは納得した表情でうなずく。
「で、次は?」
「同盟領の火星にて宇宙海賊の略奪行為が激化とのこと」
「あれか…ブラック・フラッグ……」
ブラック・フラッグとは近年同盟領にて猛威を振るう宇宙海賊団の名称である。
船長のキッドは主に火星のコロニーを荒らすことから、火竜キッド(キッド・ザ・サラマンダー)と呼ばれ恐れられている。
以前同盟軍の一個艦隊がブラック・フラッグの撲滅のため火星に派遣されたが、帰ってきたのは半壊状態の巡航艦一隻だけであった。
「奴らを静められるのは…彼しかいないでしょう」
「またナギ・アスカの出番、ということですな」

暗赤色の髪の船長は、ドレイク提督に呼び出されていた。
「何の用でしょうか、提督」
「アスカ君。ブラック・フラッグを知ってるか?」
「ええ、火星で猛威を振るう非情の宇宙海賊団。船長は火竜キッド」
「そのブラック・フラッグを君の部隊で鎮圧して欲しいのだ」
「なるほど、目には目を、海賊には海賊をってことですか」
「まあその通りだな。君たちならやってくれるとわたしは信じている。頼んだぞ」
「微力を尽くしてみましょう。ああそうだ、あれを貸してくれませんか?」
「あれってなんだ?」
「以前鹵獲したレイダーですよ。今回ちょっとそいつ使ってみようと思って」
「ああ、構わんよ」
「では!」
ナギは淡々と答えると、ドレイクのもとから去っていった。
11888:2008/08/15(金) 23:49:21 ID:???
翌朝、ユリウス・カエサル乗組員は軍港の埠頭に集められていた。
「おはよう、セシル。よく眠れた?」
「ええ、まあ。おかげさまで」
エステルが微笑みながらセシルに挨拶を交わす。
「副船長、今回なんかただならぬ空気ですな」
「今度の任務はそれほどの大物なんだろう。逆に今回の敵はおっかない奴だ、でも腕がなるぜと思って自分を奮い立たせなきゃな、フリオニール」
ティーチとフリオニールが腕を組みながら船長の出現を待つ。
「おはよう、乗組員諸君!!」
ナギ・アスカが大声を上げながら船員の前に現れた。
「今回の任務は宇宙海賊団ブラック・フラッグの壊滅とのことだ」
「ええっ!?あの海賊団を!!?上層部は俺たちに死にに行けってのかよ!!」
「あいつらにかかわったら命いくつあっても足りやしねえ!!」
ナギが告げた任務内容に乗組員からどよめきが響き渡る。
「ねえエステルさん、ブラック・フラッグって?」
「最近火星を荒らしてる悪名高い宇宙海賊よ。あたしたちが政府の犬なら、あっちは正真正銘のアウトローってとこかしらね」
「なるほど、相当ヤバそうな連中なんだろうなぁ」
エステルが答えてくれた疑問の回答にうなずくセシル。その間にもナギの演説が続く。
「まあこのまままっすぐいったら奴らに返り討ちにされるだろうな。だが俺はお前たちがブラック・フラッグのならず者どもを食ってくれることを期待してる。
一応策は考えてある。お前たちは絶対に奴らに飲み込まれるんじゃない、逆に飲み込んでやるんだ!!」
「そうだ!船長の言うとおりだ!!俺たちは誇り高き戦士だ!!」
ティーチが自慢の黒髭をたなびかせながら吼える。静かだった乗組員が次第に同調していく。
「うおおお!やってやるぞ!!ぶっ飛ばしてやる!!」
「俺たちは最強だ!今まで修羅場を潜り抜けてきた!!」
その様子をセシルとエステルが小声でささやきあう。
「なんだが、皆奮い立ったみたいね」
「エステルさんは怖くないんですか?相手は非情の海賊ですよ」
「そりゃあ怖いけど、あたしたちだって生き残らなきゃならないんだからいちいち怖がってなんかいられないわ」
「ふふ、良かった」
「よし!お前らよく言った!!これから出発するぞ!!さあユリウス・カエサルに乗るんだ!!」
ナギの絶叫に埠頭の熱狂は最高潮を極めた。そしてクルーたちがわれ先にと船に乗り込んでいった。

「全員乗船しました。いつでも発進できます」
ユリウス・カエサルのブリッジでは中央にナギ・アスカ、それを囲むようにティーチ、エステル、男性のオペレーターが着席している。
「ユリウス・カエサル、発進!」
ナギの指令とともに、ユリウス・カエサルがゆっくりと、だが確実に虚空へと舞い上がっていった。
「ハロ、絶対一緒に生き残ろうね。ロックに誓ったんだから」
「ハロ!ゼッタイ!イキノコル!」
船員室の一角では、セシルはハロと絶対に生還することを誓い合った。


第4話に続く


以上、第3話です。お疲れ様でした。第2話より時間かかっちゃいました。
実はGLAYの曲聴きながら構想練ってました。GLAYの曲は名曲ぞろいですね。
119例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/08/16(土) 03:30:58 ID:???
ぬわー!
俺より上手い人キター!

色々身体にガタ来てて、ここに寄る時間もナッシング。
でも、俺は俺の道を行きます。

正直「種なのは」の方は真面目にきちんと書かないと叩かれまくり。
息抜き+文章作成練習+何処までが笑える冗談か叩かれるかの確認 です…。
最近、物事が理論的過ぎて古い友人に会うと「昔の俺とは思えない程変わった」言われます。
そんなに変わったかな…。
120通常の名無しさんの3倍:2008/08/16(土) 08:59:26 ID:???
>>119
一人語りウザいです
121例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/08/16(土) 19:04:40 ID:???
注意します…。
ごめんなさい。
s(ry
12288:2008/08/16(土) 22:11:43 ID:???
ちょっとここでインターミッションを。
SEED Rebornキャラの名前の元ネタをちょっとだけ語っておこうと思います。
まずはセシル、名前はFF4の主人公、苗字は作曲家のレナード・バーンスタインから。
次はナギ…といきたいところですがストーリーにかかわるので今回は伏せておきます。
エステルは適当につけました。そういえばなんかのアニメにそんな感じの名前の人いたなぁ。
フリオニールはFF2の主人公、ティーチは実在の海賊エドワード・ティーチ、
ロックはFF6の泥棒さん、ドレイク提督は実在の海賊フランシス・ドレイク、
クロムウェルは実在の政治家オリバー・クロムウェル、キッドは実在の海賊ウィリアム・キッド、
シーザー・オーガスバーグはカエサルとドイツの都市アウグスブルクの英語読み、
バル・ベル・ボル・ブルはDQ8のモンスターバベルボブルから、
フリードリッヒはプロイセンのフリードリヒ大王から、
キッドの渾名サラマンダーはコブラの敵役からそれぞれ取りました。

それからちょっとした駄文を。
セシルとナギはトビアとキンケドゥのような関係になると思えばいいかと思います。
それからキャプテン・ハーロックに例えればセシル=台羽正、ナギ=ハーロック、エステル=有紀螢、ティーチ=ヤッタランのポジションだと思えばよろしいでしょう。

今後の構想として、C-3POポジションのキャラを出してみたいと思います。もちろんR2-D2はハロですw

長文になりましたが、これで失礼します。SEED Reborn第4話ご期待ください。
123通常の名無しさんの3倍:2008/08/17(日) 02:15:15 ID:???
>>122 投下乙。
名前ネタでssを書いてみる方が建設的かもしれません。

一応、
>>ザクは100年前のセカンドステージシリーズの機体だが
ザクはニューミレニアムシリーズなんであしからず。
本編の方は、話のテンポが良くてかったるい感じはしないけれど、
台詞の羅列が在るときは在る程度で区切って、間に地の文を
はさんでくれるとよみやすいかもしれないです。
124通常の名無しさんの3倍:2008/08/17(日) 02:26:51 ID:???
乙! 模擬戦面白かった!
セシルの赤リボーンはセイバーみたいなカラーリングなのかな?
125通常の名無しさんの3倍:2008/08/17(日) 16:17:54 ID:???
Rebornのオリジナルなノリが結構楽しいのであげ
12688:2008/08/17(日) 20:57:20 ID:???
第5話できました。それではどうぞ。


帝国領・アーモリー市
現在、要塞「ユグドラシル」の建造が進められており、もうすぐ完成に近づいていた。
「隊長、現在99%完成しております。もう少しです」
「完成の暁には同盟軍のネズミどもは迂闊に近づけなくなるであろう」
ザフト隊長、シーザー・オーガスバーグは
「実は本体は全て完成しております。建設中なのはエンジンですよ」
「エンジンだと?」
シーザーの脇に小太りの技術士官が現れる。
「ええ、これでユグドラシルは機動要塞となります。つまり基地とジェネシスを移動させることが可能になるのですよ」
「なるほど…」
普通、基地から戦闘部隊が出撃し、補給部隊によって軍需物資と食料が補給される。
しかし、部隊と基地との距離が長くなるほど時間がかかり、困難になっていく。
だが、このユグドラシルは基地そのものを動かすことができる、まさに革命的な戦略兵器なのだ。
「奴らは気づいてもアーモリーの護衛にしか思ってないだろう。だがそれは楽観というもの。このユグドラシルで必ずや叩き潰してくれる」
シーザーは不吉な笑みを浮かべていた。


機動戦士ガンダムSEED Reborn 第4話
襲撃 -Pirates meet pirates-


コズミック・イラ(C.E.)170年 ヤヌアリウス・ワン
ここの工場では、逮捕された叛逆者たちや同盟軍の捕虜、被差別地域の住民たちが奴隷として働かされていた。
監視人は鞭をふるい、奴隷への労働を促す。奴隷たちはどれほど疲れようと、休みの許可が出るまで働かされたのだ。
「そこまで!さっさと休憩室へ行け!!」
ほとんどの奴隷たちは無気力な顔であった。ただ一人を除いて。
休憩室では食事が出された。しかしそれは煮豆のスープという食事とはいえない貧相なものだった。
それでも奴隷たちにとっては空腹を満たす重要なものだった。
「えーん!お腹がすいたよう」
奴隷の中には子供もいる。彼らもまた、厳しい労働をさせられていたのだ。
「ほら、食べなよ」
男はお腹をすかす子供たちになけなしの食事を分けた。子供は喜んでそれを食べた。
「いいのかい?貴重な食事なんだよ」
「いいんだよ。子供は未来を担う貴重な存在なんだ」
男は済ました顔で席を立つ。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「うまかったか?」
「うん!だってお兄ちゃんがくれだご飯だもん」
「良かったな。じゃ、またな」
12788:2008/08/17(日) 20:57:56 ID:???
翌日、いつものように厳しい労働が始まった。
監視人の怒号を聞きながら黙々と作業する奴隷たち。
「何?病気で働けないだと!?」
「勘弁ください。あっしはもう高熱で…働くことはできません」
「そうやって仮病で休む気なんだろう。つべこべ言わず働け!!」
いきり立った監視人は鞭で奴隷をたたく。
しかし、いくら鞭でたたいても奴隷が動くことはなかった。隣の奴隷が口を開く。
「すいません、本当にこの人、病気なんですよ。休ませてあげてください」
「こいつは死亡扱いで焼却処分だ。さっさと持ち場にもどれ!!」
その様子を横目に昨日子供に食事を分けた男は思う。
(皇帝が帝国を建ててから、この国は悪くなってしまった…。民衆は飢え、子供の泣き声はやまず、貴族の高笑いが響く。
おれは、どうにかして自由の国をつくりたい。みんなの幸せを守るんだ…)

その夜、奴隷の休憩室では男が脱走の話をもちかけていた。
「そんな、無茶だよ。おれたち奴隷にはなにもできやしないんだ」
ほとんどの奴隷は無気力からか、誰も賛同しようとしない。
「このままではおれたちは野垂れ死にだ。自由をつかみたくないのかい!?」
「そりゃ自由にはなりたいけど…」
「今までこっそりと準備してきてある。おれを信用してくれ」
休憩室に無言が支配する。だが、一人の男が静寂を破る。
「わかった、おれの命、あんたに預けよう」
それをきっかけに、徐々に賛同の声がわきあがる。
「よし、では作戦を練ろう」

深夜、工場隣のザフト軍港にて、多数の人間が侵入する事件が起こった。同時に、工場では奴隷全員が消えたことが確認された。
「侵入者はおそらく脱走した奴隷どもだ。ひっとらえろ!!」
警備兵は全員、銃を構えて外に飛び出す。銃声が響き、一人の警備兵が倒れた。
奴隷の一人が別の警備兵の武装を奪っていたのだ。さらに倒れた警備兵の銃も奴隷に奪われる。
漆黒の軍港に銃声がこだまする。警備兵・奴隷問わず倒れ、あたりを血の大地に変えていく。
「よし、戦艦を奪うぞ!!」
奴隷たちは奪った銃で戦艦の守りを固めるザフト兵をなぎ倒し、次々へと艦内に乱入していく。
「奴らはシカン級戦艦を奪う気だ。絶対にさせるな!」
警備兵が銃撃し、奴隷の一グループが血まみれになって倒れていく。
「艦内は制圧した。急いで発進するぞ」
男はブリッジの操舵手用の座席に座り、戦艦を発進させた。
さらに戦艦の主砲が火を噴き、コロニーに穴を開けて強引に脱出した。
12888:2008/08/17(日) 20:58:32 ID:???
C.E.173年、5月7日。
海賊船ギャリー号の一室で、宇宙海賊ブラック・フラッグの団員が集まっていた。
「今回もコロニーを襲う。食糧と燃料、生活物資を根こそぎ奪取するんだ」
船長キッドが高らかに宣言する。
「しっかし毎回おれたちに襲われるなんて、あいつらもかわいそうな奴らだよなぁ」
船員の一人が笑う。
「おれたちは自由の民だ。誰にも束縛されない。おれたちはおれたちのやり方で生き延びる」

「ザラ市長、ブラック・フラッグが食糧と燃料、生活物資の引渡しを要求してます!」
市長のオフィスにて、青ざめた男が発言する。
「我々だって生活がかかっているんだ。絶対に引き渡すな」
市長フレデリック・ザラは徹底抗戦を指示した。

午後3時、海賊が揚陸を開始した。武装した海賊80名が食糧を求めて破壊の限りをつくした。
「海賊どもめ、今度ばかりは渡さんぞ!」
市民の一人がマシンガンを乱射するが、海賊の銃撃に斃される。
海賊がさらに進むと、一つの倉庫を見つけた。
「あったぞ!いただき!!」
倉庫の食糧が、全て海賊のコンテナに積み込まれる。
別の建物では、子供とその母親が海賊の前でうずくまっている。
「どうか、この子だけはお助けください」
「連れてけ!」
キッドの指示で母と子供は連行された。
午後6時、海賊は十分な物資を奪い、引き上げていった。
残されたのは、銃撃で荒れ果てた市街の無残な姿だった。
「してやられたか…」
フレデリック・ザラは口では落胆したが、その目には異様な光が漂っていた。

午後7時、ギャリー艦内では勝利の宴が催されていた。
「今日は酒が旨いぜ!」
ジョッキ一杯に満たされた酒を、とある海賊が豪快に飲み干す。
歌う者もいれば踊る者もあり、異様な熱気につつまれていた。
一方、連行された女子供がいる部屋でも、料理が振舞われた。
「ママー、お腹すいたよー」
「そんな、海賊の料理なんて」
「子供がお腹すかしてるだろうが、さっさと食わしてやれ」
キッドは子供と視線を合わせたが、子供は不思議と恐怖心をあらわすことはなく、逆に微笑んでいた。
「ありがとう、おじさん」
「しっかり食べて、大きくなるんだぞ」
キッドは微笑み返すと、その場を立ち去っていった。
12988:2008/08/17(日) 20:59:17 ID:???
もう一つの海賊を率いる、暗赤色の男は今、真っ白な空間の中にいた。暑くも寒くも無く、何も感じない不思議な空間だった。
辺りを見回しても、雪が積もったように一面真っ白だった。

ナギ…………

女性の声が聞こえた。また10代後半あたりの少女だろうか。

――― 誰か、誰かいるのか!?

ナギは声の主を見つけようと必死に頭を振る。

……き……なっ………ね………ナギ………う……しい……

振り向くとそこには赤い服を着た女性がいた。もやがかかって顔はよくわからないが、肩にかかった髪は赤い。
ナギにとってその赤い服は見覚えがある。ザフトレッドの制服だったのだ。

――― あんた、一体誰なんだ!?

女性に向かってナギが叫ぶ。

わ……る……りあ……なた………ば………ん………

女性の声は所々かすれて何を意味するのか、彼にとって理解することは難しかった。

――― 一体何を言ってるのか分からない、はっきり教えてくれ!

ナギは女性に向かって手を伸ばした。
130通常の名無しさんの3倍:2008/08/17(日) 21:00:05 ID:???
「ナギ様。お目覚めになりましたか?」
ナギの副官をつとめる人間型ロボット・セリヌンティアスが主人に声をかける。
寝ぼけた目でナギが見たものは見慣れたユリウス・カエサルのブリッジだった。
「船長、なんだかうなされてたみたいだけど…」
エステルが心配そうに声をかける。
「いや、なんでもない。大丈夫だ」
ナギは目をこすって宇宙の星々を見つめた。
現在私掠船ユリウス・カエサル号は木星同盟の意を受け、もう一つの宇宙海賊ブラック・フラッグ撲滅の任務中であった。
ユリウス・カエサルのクルーも広義では宇宙海賊ではあるが、政府に従い行動するいわば番犬であった。
今回対決するブラック・フラッグは、何者にも属さない、いわば本物の海賊と言うべき存在である。
突然ブリッジの入り口のドアが開く、そこから小さな玉のようなものが跳ねながら入ってくる。
「ハロ、だめよ!勝手にブリッジに入ってきちゃ」
振り向いたエステルが注意を促すが、ハロは馬の耳に念仏で当たりを跳ねる。
「ほっとけよ。まだ戦闘に入ったわけじゃないし、ロボットだってはしゃぎたいんだろうよ」
「せ、船長…」
ハロがセリヌンティアスの前に立ち止まる。どうやらセリヌンティアスに用があるようだ。
「おや、あなたもロボットですか。私はセリヌンティアス、ナギ様の副官を務めております。あなたは?」
「ハロ!ヨロシク!セリヌンティアス!」
「ハロですか。いい名前ですね」
ロボット同士、惹かれあうものがあるのだろう。どうやら意気投合したようだ。
「なんだか、戦闘前って雰囲気じゃないわね」
「こんな和やかムードな海賊なんて宇宙広しといえどもうちだけでしょうな」
「まあ、緊張がほぐれてよかったじゃねえか。なあティーチ」
ブリッジ内に笑い声が湧き上がった。そうしている内にもユリウス・カエサルは火星に近づいている。
「なあ、ハロ。お前の友達のセシルはどうした?」
「セシル!ヒルネ!」
「昼寝かよ。あいつもあいつで、相当気楽な奴だな」
「ふふっ。セシルったら、かわいい」
「そうしていられるのも今のうちでしょうな。作戦行動に入ったらそんな余裕も無くなる」
「そういうこったな。でもさしあたってはこのつかの間の平和を楽しもうぜ」
13188:2008/08/17(日) 21:00:28 ID:???
「船長、そろそろ火星に到着します」
ブリッジのスクリーンには小さいながらも赤い惑星が映し出されている。
「よし、さっそくウジャトに働いてもらうとするか。ウジャト全機、発進準備」
ウジャトは先日2機目のリボーンと同時に受領した新型機の先行量産型で、索敵・哨戒に特化した機能を持つ。
その分戦闘能力は胸部のCIWSのみと頼りないが、従来のモビルスーツを凌ぐ索敵能力を持つ。
カタパルトから射出された2機のウジャトがユリウス・カエサルに先行して火星へと向かう。
「さて、後はウジャトからの通信を待つだけだな」
ウジャトは新開発のセンサーを研ぎ澄まして、敵艦の居場所を探る。
「こいつ、従来のモビルスーツより索敵範囲が広いな」
「さすがは新開発。まさに最新鋭だな」
それぞれのパイロットが会話しながら火星に近づく。するとセンサーの反応を告げるアラートが鳴る。
「反応したぞ!フラッシュガンで船に知らせなければ」
ウジャトはリボーンのビームガンに似た形状の武装を装備する。先端は強力なライトであり、ストロボのような光の点滅で状況を味方に知らせることができる。
「フラッシュガン、点滅確認!敵艦を発見した模様!!」
「距離はどのくらいだ?」
「約3光秒です」
「ご苦労だった。戦闘用モビルスーツ発進準備。ティーチはおれに代わって船を指揮しろ」
「ははっ」
ナギは船長用の座席から立ち上がると、更衣室へと向かった。

モビルスーツ発進準備のアナウンスで目を覚まされ、寝ぼけ眼で更衣室に向かうセシル。
船内は無重力状態なので壁に移動用のレバーがついている。
「あ、セシルちゃん!」
途中で小さな少女に出会った。彼女はシロマという名前で、年齢は10歳。ユリウス・カエサル専属の船医ザイゼン・ラドクリフの娘である。
父親とともに負傷者の看護をしているのだが、今はいないので暇なのだろう。
「シロマ、ちゃん付けはやめてくれよな。ぼくそんなに幼くないんだし」
「何て呼んでも人の勝手だもん」
「あ、あのなぁ…」
「それよりセシルちゃん、モビルスーツに乗って戦うんだって?」
「うん、そうだけど」
「もし怪我したらあたしが面倒見てあげるね!」
「はは…期待してるよ」
「いってらっしゃーい!」
小さな少女に見送られ、セシルは更衣室に入る。
早急に着替えを済ませ、モビルスーツの格納庫に向かうと、同じく格納庫に向かうナギと出会った。
「よう、緊張してるか?」
「そりゃあ当たり前ですよ。初めての実戦ですから」
「とにかくお前もまだ10代だから無茶するなよ。ヤバくなったらすぐに着艦許可をもらうんだな」
「は、はい。わかりました」
二人は格納庫にたどり着いた。6機の巨大なモビルスーツが出迎えてくれる。
バル・ベル・ボル・ブルの”オシリス・カルテット”は既に愛機オシリスにそれぞれ乗り込み始めている。
セシル・ナギのリボーン乗りもコックピットに入り起動させる。ディスプレイに"G.U.N.D.A.M"の文字が表示されるのはリボーンだけの特徴だ。
6機のモビルスーツは次々と戦場へカタパルトから射出されていく。
「ナギ・アスカ、リボーン3号機、発進する」
「セシル・バーンスタイン、リボーン7号機、行きます」
遥か昔の英雄のモビルスーツを模した機体も、それぞれ戦場へと飛び出した。片方は紫色、もう片方は真紅色へと機体を染めて。
13288:2008/08/17(日) 21:01:47 ID:???
「船長、不審な宇宙船一隻と8機のモビルスーツを補足しました」
海賊船ギャリーの艦橋では、オペレーターが敵の襲来を告げていた。
「不審だけでは抽象的すぎて分からん、何者だ」
「艦艇の形状からするに、あれはユリウス・カエサル号と推測されます」
「キャプテン・インパルスか。海賊もどきが我々に戦いを挑もうというのか?」
キャプテン・インパルスの名は、ブラック・フラッグの団員にも伝わっている。
だが、彼らにとっては政府に従い、ザフトの艦艇しか襲わず、しかも捕虜を解放してしまう輩など偽者同然の認識であった。
「こちらもモビルスーツを全機出せ。クルーは全員戦闘態勢へ」
船長キッドの指示によって艦内の団員は慌しく動き始めた。
「野郎共、おれたちブラック・フラッグは自由の民だ。苦しい奴隷の日々から勝ち取った自由は、おれたち自身の手で守るんだ!」

「敵のモビルスーツの出撃を確認。全部で6機です」
「ご苦労だった。ウジャト全機は帰投せよ」
「こちら6機、敵も6機、機体の数では互角ってことか」
ウジャト2機が撤退し、代わってリボーン2機とオシリス4機の戦闘部隊が躍り出た。
「敵のモビルスーツ部隊に真正面から挑む。その後はおれの指示に従ってくれ」
5月9日、午後12時、2つの海賊が火星のラグランジュ点にて交戦を開始した。
火蓋を切って落としたのはギャリーの砲撃だった。
「ローエングリン、発射準備」
ギャリーの艦首が開き、ローエングリンの砲台が姿を現す。
ローエングリンは地球連合軍の一部の艦艇に装備された陽電子砲で、戦艦を一撃で粉砕する。
本来はザフトのシカン級戦艦であるギャリーの装備ではないが、無理やりとも言える改造によって搭載されたのだった。
ユリウス・カエサルのブリッジでは、緊迫が包む中ティーチが指令をくだした。
「敵のローエングリンがチャージし始めた。回避行動を取れ!!」
「撃てーい!!」
ローエングリンの光がユリウス・カエサルめがけて放たれる。
巨体が回避するよう動いたが、船体の一部がかするように当たり、小爆発を起こす。
「Cブロック破損!」
「ええい、放棄しろ。Cブロックの乗組員は別ブロックに退避するんだ!」
「Cブロックのクルーは別ブロックに退避してください」
エステルが艦内放送でクルーに退避を促す。
「こちらも反撃だ、タンホイザー発射準備」
ティーチの怒号にも似た指令が、タンホイザーの砲手に伝わる。
タンホイザーもザフトの一部の戦艦に装備されていた陽電子砲で、以前プラント商人から裏取引で購入した物を搭載した兵器である。
「しっかり狙い打てよ!奴らに一泡吹かせてやれ!!」
砲術長カイア・アッディンは砲手を激励する。
砲手のディスプレイでは、照準のポインタが敵の海賊船をぶれながらも合わせようと表示している。
「撃てぇ!!」
今度はユリウス・カエサルの砲台から閃光がほとばしる。ギャリーも回避行動を取り、わずかにかすり、小爆発を起こした。
「ここまでは大砲の打ち合いか。次はどう出る、ブラック・フラッグめ」
ティーチは腕を組み、艦橋のスクリーンを凝視した。
一方、医務室では、ローエングリンの一撃で負傷した乗組員を看護兵が懸命に看護していた。
「シロマ、包帯をたくさん持ってくるんだ。早く!」「は、はい!」
船医のザイゼンが娘のシロマに指示を下す。負傷した乗組員は苦しみに悶えながらも治療を待っていた。
「えっと、これでいいかな」
シロマは包帯を自分の腕に抱え込めるほど持って、ザイゼンのもとに忙しく駆け込んでいった。
「今楽にしてやるからな、待っててくれ」
ザイゼンは乗組員の傷に適切な処置を施していった。
13388:2008/08/17(日) 21:02:38 ID:???
一方、モビルスーツの戦闘は、ブラック・フラッグ側が押しているように見えた。
「こいつら、弱えぞ。このまま袋叩きだ!」
ブラック・フラッグのモビルスーツ部隊が陣容を広げ、包囲しかけたその時、敵側が一点をめがけて突進したのだった。
「う、うわあああ!!」
敵の勢いに押され、2つのグループに分断される。
「中央突破に成功した、このまま敵モビルスーツ部隊を各個撃破する」
リボーンとオシリスからなる6機の部隊は、猛スピードで片方の敵グループに攻撃を仕掛けた。
「今回はビームガンとビームサーベル…ここからは実戦なんだ」
セシルは射撃兵器装備のスイッチを押すと、真紅色のリボーンがマニピュレーターでビームガンを持つ。
ビームガンはビームライフルより射程距離は劣るが、速射性能では上回る。
リボーンの照準を鹵獲されたと思われるアビスに合わせ、トリガーを引く。
「食らえ!!」
リボーンのビームガンからビームがほとばしり、アビスの機体を貫く。
アビスもフェイズシフト装甲を採用した機体だが、ビーム攻撃には無力であった。
数本のビームがアビスのスラスターを貫き、小さな爆発を起こす。さらにオシリスの放ったビームがとどめと言わんばかりにアビスの背部を貫く。
「ぐわああああ」
アビスのパイロットは断末魔をあげ、機体の爆発に巻き込まれた。
さらにカオスも撃破され、残りはガイア1機となった。
6機のモビルスーツ部隊がとどめをさそうとした時、もう1グループの敵部隊が1体のMSに集中攻撃をかけた。
「くそっ、スラスターをやられた」
「バル、お前は戦場から退避しろ!」
「すまねえ、船長!」
こうしてバルのオシリスが戦場から離脱する。難を逃れたガイアは、急いで3機の敵グループに合流した。
「ひとまず仕切りなおしか。5対4でこちらが有利だが、まだ油断はできない」
セシルは息を呑み、操縦桿を握りなおした。
13488:2008/08/17(日) 21:03:32 ID:???
午後2時、ユリウス・カエサルとギャリーの距離はさらに近づいていた。
「ポンペイウス、撃てぇ!!」
ポンペイウスはユリウス・カエサルの主砲で、2門の高エネルギー収束火線砲である。
名前の由来は古代ローマ三頭政治を構成した政治家であると、名付け親のナギは語ったものだ。
ポンペイウスの2本のビームがギャリーに襲い掛かる。だがギャリーはすばやく回避する。
今度はギャリーの主砲が火を噴く。ユリウス・カエサルも紙一重で主砲の光をかわす。
「くっ…今のところ五分五分か」
「奴らもなかなかやるじゃないか」
片や黒髭の船長代理、片や火竜の異名を持つ船長はそれぞれ独語した。
モビルスーツ側でも戦闘は続いていた。その渦中をセシルのリボーンが飛翔する。
「よし、ビームサーベルで攻撃だ」
真紅のリボーンがビームサーベルを振り上げる。迎え撃つガイアもビームサーベルを構える。
2本のビームサーベルが激しくぶつかり合う。あらゆる角度から光の刃が乱舞し、当たっては弾かれる。
リボーンが離れ際にビームガンを放つ。ガイアはビームの乱射を驚異的なスピードで回避する。
次第に2機は遺棄されたと思われる宇宙船の残骸までたどり着く。ガイアがモビルアーマー形態に変形し、四本の脚で宇宙船の船舶の上に立つ。
「敵はモビルアーマー形態になったか。考えられるのは背部のビーム砲での射撃戦か、それともビームブレイドでの近接戦か」
ガイアが猛スピードで突進する。ビームブレイドの光がウイングを縁取る。
リボーンは飛び上がって突進をかわした。続けさまにビーム砲の対空砲撃が炸裂し、シールドに全て弾かれた。
するとガイアは急旋回し、飛び上がりモビルスーツ形態に変形。ビームサーベルを抜いてリボーンに襲い掛かった。
「速い!!」
ガイアの驚異的な機動力に驚きながらも、セシルは精一杯の回避行動を取る。ガイアの刃がリボーンの肩を掠め取る。
ガイアは再びモビルアーマー形態に変形し船舶に着地、その反動でジャンプし猛スピードでリボーンを襲う。
「くっ…これじゃ防戦一方だ」
ガイアのスピードに翻弄されるセシル。だが突破口はあるはずだ…セシルは戦闘に集中しながらも必死に考えた。
「これだ、この方法しかない!」
セシルの頭に閃きが訪れた。その間にもガイアはスピードを生かして巧みな攻撃を仕掛けてくる。
いつものようにガイアが船舶へと向かった。セシルはこの瞬間を逃さなかった。
「これでも食らえ!」
リボーンのビームガンが火を噴く。着地した足場を破壊され、ガイアはバランスを崩した。
「落ちろ!!」
リボーンはスラスターを噴射して突進し、ビームガンを乱射する。形勢をひっくり返されたガイアはビームに貫かれていく。
「とどめだ!!」
ビームガンの一閃がガイアのコックピットを貫き、爆発した。その衝撃で宇宙船が真っ二つに割れたようだった。
「ハァ…やった」
だが緊張を緩めることはできない。模擬戦での教訓から、すぐに気を入れなおし、新たなる戦場へと向かった。

「船長、このままでは危険です。撤退を」
オペレーターがキッドに撤退を求める。
「ここはしかたない、退くか。よし、撤退信号を出せ」
ギャリーから撤退信号が放たれ、生き残ったモビルスーツが帰投していく。
「奴らは撤退するようだ。追撃はするな」
ナギは追撃を禁じ、敵が去るのを確認してから帰投を指示した。
13588:2008/08/17(日) 21:04:30 ID:???
安全圏まで逃れたギャリー号の艦橋で、船長キッドは激しく叩いた。
「くそ…あいつらめ」
スクリーンを見つめ、キッドは歯軋りする。オペレーターが1機のモビルスーツの接近を報告する。
「あれは、以前敵に鹵獲されたレイダーです」
「念のためだ、通信回路を開け」
機体との通信回路が開かれると、そこには捕虜にされていた団員がいた。
「おかしら、おれですよ!釈放されたんです!」
「そうか、とりあえず着艦しろ」
ギャリーは用心深くもレイダーを迎え入れた。
「おかしら…おれ、会いたかった!」
「よく無事で帰れたな…良かった」
船長とレイダーに乗っていた団員はお互い抱き合った。
「おれも先ほどの戦いで疲れてるからな、とりあえずゆっくり休もう。いろいろ話したい」
キッドは釈放された団員の肩に腕を絡ませ、格納庫を後にした。
5月10日、午前0時。ほとんどの団員は寝静まっていた。船長、オペレーターとわずかの監視役を除いて。
その静寂が打ち破られたのはオペレーターがとある異変を告げてからであった。
「船長、システムの調子がなにやらおかしいんですが」
「なんだと?」
ディスプレイに表示される文字は文字化けを起こし、ウィンドウのフレームが歪んでいた。
「システム制御不能!コンソールは何も反応しません!」
「一体どうしたんだ!!」
突然照明が落ちた。すかさず非常灯が点灯する。
「おそらくコンピュータウィルスに感染したのだ!早くシステムをリカバリしろ!!」
キッドの怒号が鳴り響く。オペレーターたちは急いでコンピューター室へと向かう。
(まさか…あのレイダーがウィルスの発信源か?奴らは捕虜を返還すると見せかけてウィルスの発信装置を仕込んだのか)
その刹那、船体が大きく揺れる。キッドが艦橋の窓からあたりを見回すと、船体の隣にミラージュコロイド特有の空間の歪みを確認した。
「しまった…この非常事態に襲撃されるとは!」
空間の歪みから宇宙船が現れる。あのユリウス・カエサル号だったのだ。
各員に戦闘態勢を告げたいところだが、皆寝静まっており、さらにシステムダウンを起こしたため放送できない。
「おのれ…奴らめ」
このように奇襲されることは彼らにとって初めてだった。そのため、どう対処したらよいのか分からず混乱した。
13688:2008/08/17(日) 21:05:01 ID:???
「敵艦内に突入開始!」
レーザーカッターがギャリーの壁をくりぬき、大きい穴が開けられる。武装した船員が次々へとギャリー艦内に乱入する。
「キッドは生け捕りにしろ。わかったな」
ナギの指示で艦内に侵入した船員はキッドの居場所を捜索し始める。
道中発見した団員は捕縛していった。中には散発的な抵抗もあったが、多勢に無勢で終わった。
セシルとフリオニールも拳銃片手にギャリー艦内に侵入していた。
「この部屋は…」
二人は拳銃を構えて勢いよくドアを開ける。中には多数の女性の姿がいた。
「わたしたちは武器を所持しておりません。どうかお助けを」
「なんだいこりゃ。略奪した女かい?」
「さあ…、念のため捕縛しておきましょう」
二人は女性たちに手を上げるよう指示し、手錠とロープで縛り上げた。
「そういえば、わたしの息子がいない…」「わたしもよ!」
子供がいない…この部屋には子供がいたというのか…。セシルとフリオニールななにやら腑に落ちなかった。
「お願いです、子供たちを捜してください!」
敵艦の女性たちから頼まれ、二人は困惑した。彼女らが悲壮な表情をしているのが一目で分かった。
「子供たちを捜しましょう、フリオニールさん」
「敵とはいえ、母親は子供を心配するってことだな。一応捕縛はしてあるし、急いで捜そう」
13788:2008/08/17(日) 21:05:44 ID:???
一方、ナギは艦橋らしき部屋に入り込んでいた。そこには見覚えのある、一人の男がいた。
彼は出発の際、敵の資料を一通り目を通している。記憶にある資料の写真と男の顔が一致したのだ。
「あんたが…火竜キッド(キッド・ザ・サラマンダー)…」
「そうだが、おれを捕まえに来たのか」
「そういうわけだが、お前さんだって無抵抗で捕まる気は無いだろう。さっさと武器を構えな」
「フン、早急におれを捕縛しなかったことを後悔させてやるぜ。キャプテン・インパルス」
二人は銃を構え横に飛びながらトリガーを引く。お互いの銃口から弾が放たれ、壁に火花を散らす。
キッドが銃を連射する。ナギはすばやく段差に飛び込みやり過ごす。
今度はナギがキッドの姿を見つけるとすかさず発砲、キッドも障害物に身を隠す。
一瞬艦橋内が静寂につつまれる。ナギは神経を研ぎ澄ませ、次の相手の攻撃に備える。
障害物の上からキッドが身を乗り出し、ナギに奇襲をかける。
勝った、とキッドは確信した。トリガーを引こうとしたとき、ナギが身を空中で回転させ、回し蹴りで拳銃を叩き落とす。
「くっ…こいつ」
キッドもナギが拳銃を構えようとしたところに蹴りこみ、ナギの拳銃を遠くに飛ばす。
こうして二人の対決は拳での殴りあいに移行した。ナギがキッドの頬を殴ると、キッドもナギを殴り返す。
キッドが飛び蹴りを叩き込むと、ナギもキッドの首を掴み、ムエタイさながらの膝蹴りを返す。
今度はキッドがナギの背後に回り、腕で首を締め上げようとする。ナギは背負い投げの要領でキッドを投げ飛ばす。
一進一退の攻防を続けながらも、二人は次第に拳銃のある場所へと近づいてくる。
ナギの視界に拳銃が入る。取ろうとするとキッドがタックルで突き飛ばし、逆に拳銃を奪われた。
今度こそ勝った…キッドはにやりと笑い、拳銃をナギに構えようとした。
するとナギは近くにあった物体をキッドめがけて投げつけ、顔に直撃した。放たれた弾丸が空を切る。
すかさずナギがキッドの落とした拳銃を奪うと、悶絶するキッドに銃口を向けた。
「おれの勝ちだ、キッド」
ナギはキッドに言葉をかけつつ、トリガーに指をかける。キッドは向けられた銃口を見つめながらも語り始める。
「おれは…かつて帝国の奴隷だった。子供は飢え、病人は死人として処分され、地獄の世界だった」
キッドの語りに意外な表情をしながらも、ナギは用心して銃口を向け続ける。
「おれは思った。みんなのために、自由な世界を作ろうと。だから一緒に脱走して、ザフトの戦艦を奪い、海賊として生きた」
「だからと言って略奪された奴らは同じように飢えるんだぜ」
「おれは、略奪するとき、見つけた女子供は殺さずに連れ去った。子供を飢えさせたくなかったからな」
「そうやって義賊気取りか。おれにとっちゃ所詮義賊なんて偽善者に過ぎんがね」
「偽善者でもなんでもいい…おれは、おれのやり方で幸せを守りたかった。ただそれだけだ…」
二人は突然、多数の足音が艦橋に入り込んでくるのを感じた。敵でも味方でもない、多数の子供たちだったのだ。
「おじさんを殺さないで!」
子供たちがキッドに群がる。まるでキッドから銃弾を守るかのように。
「お前たち、やめろ。殺されたいのか」
「おじさんは優しい人なんだ、だから殺さないで」
「ぼくたちに何でも食べさせてくれるし、遊ばせてくれる」
ナギは困惑した。子供たちは確固たる表情でキッドの前に立ちはだかる。これでは拳銃を撃てない。
やむを得ずナギは拳銃をしまった。念のためもう一方の拳銃も回収した。
「今回は慕ってくれる子供たちに免じて、見逃してやるよ。うちの食糧も分け与えてやる」
「いいのか?おれたちは海賊だ、またコロニーを略奪するだろう。
それにお前さんも同盟軍の任務で来たんだろう、帰ったら疑われるかもしれない。それでもいいのか」
「いいんだ。子供たちがそれほど慕ってくれる、見直したよ。
とりあえず向こうには講和して二度と同盟領を襲わないと誓約したと報告しておく。だから金輪際火星と木星は襲わないでくれ、わかったな」
「すまない…おれたちのために」
13888:2008/08/17(日) 21:06:16 ID:???
ギャリー号が修復し、二つの海賊船の間に通信が行われた。
「頼みがあるんだ、うちが連れ去った女子供、引き取ってくれないか?」
「いいのか?お前さんを慕ってくれてるだろうに」
「何とか話はつけておく。それにいつでも海賊船に入れておくわけにはいかない」
30分後、ギャリー号から女子供を乗せたシャトルが発進し、ユリウス・カエサルに回収された。
「そういえば、キャプテン・インパルスって偽名なんだろ?本当の名前教えてくれ」
「ナギ・アスカだ」
「ありがとう。またどこかで会うかもな。あばよ、ナギ」
ギャリー号のエンジンが噴射し、火星を離れていった。
「船長、いいんですか?」
「責任はおれが取る。今は見逃してやろう。あいつらはあいつらの信念で生きてきた、正真正銘の海賊だ」
「船長がそういうのなら仕方ありませんな、ではホルストに帰還します」
「ああ、頼んだよ。ティーチ」
ユリウス・カエサルは反転し、木星へと進路を取った。

ホルストに帰還したナギ一行を待っていたのは、上司のドレイク提督の姿だった。
「アスカ君、お疲れ」
「申し訳ございません、殲滅はなりませんでした。ですが講和を結んで、二度と同盟領を襲わないと誓約させました」
「そうか、ご苦労だった。本来なら軍法会議になるところだが功績によって免じることにしたよ、安心したまえ」
「ありがとうございます」
ナギは上司に一礼した。

「セシルちゃん、お姉ちゃん、あたしたち生き残れたね。良かった」
セシル・エステル・シロマの10代組は生き残ったことを喜び合っていた。
「本当ね、一時は生き残れないかと思ってたわ。それにしてもセシル、今度はガイアを一騎打ちで撃破したんですって?すごいわ」
「いや、ただ運がよかっただけですよ」
「ねぇセシルちゃん。そのペンダント、きれいね」
シロマが小さな手で黄金に輝くペンダントを手に取る。
「ああ、これはお父さんの誕生日プレゼントで形見なんだ」
「シロマの言うとおりね。あたしもこんなペンダント、欲しいな」
一方、ハロとセリヌンティアスもお互いの生還を喜び合った。
「ハロ、生き残ることができましたね。いやぁ良かった」
「ハロ!イキノコッタ!ミンナ!イキノコッタ!」
ハロはうれしそうに飛び跳ねた。
13988:2008/08/17(日) 21:07:43 ID:???
火星のコロニーでは海賊の撃退の報で歓喜が沸き起こった。
市長のオフィスでは、フレデリック・ザラがなにやら悔しそうな表情をした。
「くそっ…余計なことをしおって…。海賊が襲えば襲うほど義捐金がわしの懐に入るものを」
フレデリックは海賊が襲うたびに木星から送られる義捐金を横領していた。
つまり彼にとって海賊は金の卵を産み落とす鶏であったのだ。
しかし、歓喜に沸きあがる彼らは知らなかった。巨大な物体が火星に近づいてくるのを。
「ユグドラシルの試運転と行こうか。ジェネシス発射準備」
ザフト隊長、シーザー・オーガスバーグは不敵な笑みを浮かべた。
要塞の巨大な砲口から閃光が放たれる、それはすぐさまに火星のコロニーを包み込む。
「なんだ、この光は…ぐわああああ」
フレデリック・ザラは何が起こったのがわからず光に包まれた。
コロニーからは多数の悲鳴が沸き起こり、人々は滅びの光によって次々と消し飛ばされていった。
撃たれたコロニーは爆発四散した。全住民の命とともに。
「上出来だ。このまま木星に向かう。奴らを根絶やしだ」
シーザーは大声で高笑いした。


第5話に続く


以上、第4話です。お疲れ様でした。
インターミッションでの予告どおりC-3POポジションのセリヌンティアスを出しました。
他にもいろいろ新キャラも追加しております。では第5話、ご期待ください。
14088:2008/08/17(日) 22:05:34 ID:???
すいません、>>126の五行目は
ザフト隊長シーザーオーガスバーグは誇らしげに豪語した。
にしてください。
141通常の名無しさんの3倍:2008/08/18(月) 03:13:03 ID:???
乙!
展開無理なく早くていいな。
武装が胸バルカンだけというのに惚れた<ウジャト
14288:2008/08/19(火) 02:18:45 ID:???
第5話できました。
そういえば第4話の冒頭が第5話できましたと誤表記してしまいました。お詫び申し上げます。



ホルスト・スリー。
人口のリゾート地として建設されたこのコロニーでは、3人の少年少女がつかの間の休息を楽しんでいた。
そこは人口の海岸で気温も30℃に設定されており、まるで南国のリゾートを思わせる。
「エステルお姉ちゃーん、えいっ」
「きゃっ、やったわね!」
水着姿のエステルとシロマは水を掛け合い、はしゃぎあっていた。
砂浜のシートの上で楽しそうな二人を遠目に見つめる、一人の少年。
「二人とも、楽しそうだなぁ。何にもすることなんてないや…はぁ」
セシルは仰向けになり、頭の裏で腕を組んで人工の青空を見つめる。
「ほら、セシルもいらっしゃい!」
「水が冷たくてきもちいいよ!」
二人の少女が腕を振って誘っているのが見えた。
「はぁ…女の子の水着姿なんて苦手だなぁ」
少年は仕方ないといった表情で重い腰を上げる。今まで見たことも無かった水着姿を見慣れるのは大変そうだ。


機動戦士ガンダムSEED Reborn 第5話
決意 -Cielo Estralledo-


同じくホルスト・スリーのとある酒場では、少年少女と船長を除くユリウス・カエサルのクルーが飲み比べをしていた。
「よーし、このおれがジョッキ一杯飲み干してやるぜ」
黒髭の副船長ティーチが豪快にジョッキ一杯のビールを飲み干す。アルコールの影響で紅潮しきっていた顔がさらに紅潮する。
「わたしだって負けてられんな」
船医ザイゼンがビールをゆっくりとだが確実に飲み干す。
「じゃあ今度はおれが!」
メカニックのフリオニールもジョッキに口をつける。飲み干したところで仰向けに倒れ、鈍い音が響く。
「フリオニールはリタイアか。ではおれが」
砲術長カイア・アッディンがジョッキ二杯を一気に飲み干す。
「やるなアッディン、おれだってまだまだいけるぞ」
ティーチはジョッキ三杯を一気に飲み干す。顔面はすでに林檎のように赤く染まっている。
笑い声が起こりながらも飲み比べはさらに続いていった。
14388:2008/08/19(火) 02:19:18 ID:???
エルスマン・ダイナーはホルストきっての名料理店といわれ、リゾート客でなくても料理の味目当てで来ることが多い。
窓ガラスに面した座席で、ナギは料理をオーダーすると考え事をしていた。
「あの夢…ただの夢じゃなかった。不思議な感じだった…」
先日の海賊討伐にて、睡眠中に見た夢について回想していた。
「あの女の人…一体誰なんだろう」
夢に出てきた赤いザフトの制服を着た女性…赤の他人という感じがしなかった。むしろ自分の身内のような、そんな思いがした。
「お客様、ご注文のエルスマン・チャーハン、お持ちしました」
ウェイターの声にはっとするナギ。
「明細書はここに置いておきますね」
「は、はい。どうぞ」
どうせ夢だ、大したことなんてない。そう開き直りながらナギはチャーハンに口をつけた。

「海遊び、結構楽しかったわねぇ。ね、シロマ」
「うん、とっても楽しかった!お姉ちゃん」
私服に着替えた3人の少年少女が海岸線の道路を歩いていた。
「ねぇセシルちゃん。お顔が赤くなって倒れちゃったけど、大丈夫?」
「う…ううん、何でもないよ」
「セシルって、女の子の水着姿を見るのは初めてだもの。慣れないのも仕方が無いわ」
倒れた原因を作った”戦犯”エステルとシロマがくすくすと笑いあう。
(はぁ…きつかった。でも大人になったら、次第に慣れるんだろうな)
セシルはため息をつきながらもそう自分に言い聞かせた。
一瞬、一人の影がエステルの傍を通り過ぎ、ぶつかった。
「きゃっ」
「大丈夫ですか、エステルさん」
「う、うん、大丈夫…」
エステルは異変が起こったことに気がついた。自分のハンドバッグが無くなっていたのだ。
「あ、あたしのバッグが無いわ!」
「まさか…」
三人は走り去った人間を見た。それは確かにエステルのバッグを片手に走り去ろうとしていたのだ
「待ちなさい!!」
エステルが怒った表情でバッグを盗んだ犯人を追いかける。残りの二人も走ってエステルを追いかける。
「まさか、ここでひったくりに会うなんて」
「そういえば、最近少年の犯罪グループが出没してるって、テレビで見た」
三人は必死で追いかけたが、惜しくも見失ってしまったようだ。
「エステルさん、警察に被害届を」
「言われなくても分かってるわよ」
エステルの怒りはまだ静まらなかった。
14488:2008/08/19(火) 02:20:14 ID:???
そこはひと気の無い道端、四人の少年のもとに一人の少年が加わった。
「おいシエロ、なんか収穫はあったか」
シエロと呼ばれた少年がハンドバッグを掲げる。
「ああ、どっかの女が持ってたやつだ」
「肝心の金はどうした?」
シエロがバッグを開け、財布を取り出す。
「すげぇ、結構札束あるぜ」
「久々の大収穫だな。でかしたぜシエロ」

セシルら三人は、警察の駐在所に立ち寄って、被害届を出していた。
「あたしのハンドバッグが盗まれたんです」
「そうか、気の毒に。最近少年グループによるひったくり被害が多発してるからな、気をつけてくれよ」
三人は足並みをそろえて駐在所を後にする。
「もう、何なのよ!あいつ!!」
「エ、エステルさん…」
「今度会ったら絶対にしめてやるわっ!」
「お姉ちゃん…こわい」
今だ収まらぬエステルの怒りに、シロマは不安げな表情だった。
「よう、セシル、エステル、シロマ。何かあったのか?」
三人は途中でナギと出会う。エステルが怒っていることにナギが気づく。
「おいおい、どうしてそんなに怒ってるんだ?エステル」
「ひったくり被害にあわされて怒らない人間がどこにいるんですか!」
「ひったくりにあっちまったのか。そりゃ残念だったな」
「残念どころじゃないです!!」
大人のナギを相手にしても、エステルは怒りを納めようとしなかった。
「警察に被害届を出したか?」
「ええ、もちろん」
返事したのはセシルだった。何か言ってエステルを不用意に刺激したくなかったである。
「海賊との戦いから帰ってきたのに、早々厄介なことになっちまったな」
ナギは片手で頭を抱えた。

その夜、薄暗い廃屋の中で他の少年四人が寝静まる中、シエロは一人考え事をしていた。
「おれは…伝説の英雄…アスラン・ザラの子孫だ」
アスラン・ザラとは、100年前の大戦にて世界を破滅から救った英雄の一人である。
彼は、そんな英雄の子孫であることを誇りにしていた。
思えば小さな頃、先祖の話を初めて聞かされたとき、子供ながらも感動したものだ。
「だが、親父は…そんなこともこれっぽっちも感じない、ろくでなしだ」
父親のフレデリックは火星のコロニーの市長を勤めていた。
だが彼は私腹を肥やすことにしか頭になく、母も、そして自分も蔑ろにされていた。
2年前、母が病気で他界したとき、父親はそんなことも気にしなかった。
シエロはそんな父が許せず、木星行きの宇宙船に不正に乗船、家出したのである。
「そんなおれも…今や不良か」
シエロは廃屋の屋根の穴から見える星空を眺め、やがて眠りについた。
14588:2008/08/19(火) 02:21:22 ID:???
翌日、エステルが何気なく街を歩いていると、ひったくりを働く少年の姿を見つけた。
「あの時の!」
昨日の出来事が走馬灯のごとくかけめぐり、エステルはすでに走り出していた。
「待ちなさい!今度こそ捕まえてやるわ!!」
「チッ、あいつ、昨日の女か」
少年も逃げ出し始めた。今度はエステルのほうが速く、少年に追いつくと飛び上がり、そのまま押し倒した。
「捕まえたわよ、観念しなさい」
「一体何なんだよ、女!」
「昨日あたしのバッグ盗んだでしょ?このまま警察に突き出してやるわ」
「そういうわけには行かないんでね」
少年は暴れだすと、エステルはその痛みで離してしまう。彼はその隙に再び逃げ出す。
「あっ、待って!絶対逃がさないんだから!!」
エステルも再び走り出した。
「こっちだ!」
四人の少年が犯人を誘導する。犯人の少年は四人のほうに向かう。
「いたぞ!捕まえろ!!」
誰かが通報したのか、警察官が現れた。
「ヤバい、サツだ」
五人はそのまま小路へと逃げ込んだ。
やがて小路を抜けると、そこにも警察官が待っていた。しかも前後から挟まれている。
「観念しろ、少年グループ」
絶体絶命かと思われたとき、四人の少年が正面の警察官を抑えた。
「シエロ、おれたちにかまわず逃げろ!」
「お前たちを放ってなんか…」
「いいから行け!!」
すまない、と思いながらもシエロは出せる限りのスピードで逃げた。
14688:2008/08/19(火) 02:21:53 ID:???
シエロはアジトを目指して走り続けた。すでに息も切らし始めている。
アジトへの入り口に達しようとしたとき、突然目の前に現れた男にぶつかった。
倒れたシエロが見上げると、その男は黒い豊かな無精髭を持っていた。
「お前が最近流行のひったくりか」
「ああ、そうだけど。さっさとどけよ、おっさん」
「反抗期の少年はこれだから困るんだ」
「どけってんだよ!」
シエロが男に向かっていくと、片腕で勢いよく投げ飛ばされる。
「なんだよ、やろうってのか」
「それよりも話聞けよ」
「うるせぇ!」
再びシエロが殴りかかるが、また片腕で投げ飛ばされる。
「お前、何で非行に走る」
「そんなの人の勝手だろ!」
三度シエロが殴りかかるが、またまた片腕で投げ飛ばされる。
「行動ってのには必ず動機があるんだがな」
「あんたの知ったこっちゃない!」
四度殴りかかっても、結果は同じだった。
「いいから教えてくれよ」
シエロは観念したのか、静かに口を開いた。
「おれの親父はろくでなしだった。母の死にも立ち会わなかった。おれは親父が憎い」
「だから非行に走ったのか?」
「そうだよ、悪いか!」
「違うな、お前は親父が憎んでいるんじゃない、やり場の無い自分に怒ってる、だから非行に走ったんだ」
「…………」
シエロは返答できなかった。図星をつかれたような、そんな感じがした。
「いいからおれにかかって来い。相手してやる」
「うおおおお!」
シエロが力を振り絞って男に殴りかかるがかわされ、逆に自分の頬に拳の一撃をもらい、倒される。
「お前の怒り、おれに全てぶつけて来い」
「うわああああ!」
シエロは怒りにまかせて男に拳をふるうが、全て交わされ、逆に男の拳をもらう。
「なぜだ、なぜなんだ」
シエロの顔は何発もの殴打で腫れ、無残な姿をさらしていた。
「もう終わりか?」
「おれは…伝説の英雄…アスラン・ザラの子孫だ!」
シエロは最後の力を振り絞り、拳を叩き込もうとする。だが男の会心の一撃が頬に直撃し、少年は無様になぎ倒される。
「そうか、お前さんは自分の先祖を誇りにしてたのか」
倒れたシエロの言葉は弱弱しかった。
「…そうだ。おれは先祖を誇りにしてた。だが親父はそんなのかけらもなかった。おれはそんなことが悔しかった」
「先祖は所詮先祖だ。子孫がずっと優秀であるはずはない」
「だけど、おれにとっては憧れだったんだ」
「そうか。お前さんはそこで一度自分が何をすべきか、考えるんだな。あばよ」
シエロは意識が遠のきながらも、聞いておきたいことがあった。
「あんた、名前は?」
「エド・ティーチ。ユリウス・カエサルの副船長だ」
シエロはその場で気絶した。
14788:2008/08/19(火) 02:22:49 ID:???
朝、シエロは昨日のティーチの言葉を思い出していた。
「自分が何をすべきか考えろ、か」
彼は捕まることを承知で市街地を歩いた。片手には何故か一昨日少女から盗んだハンドバッグを持っていた。
家電量販店のショーウィンドウで、テレビのニュースの内容に立ち止まった。
「昨日、火星のスペースコロニーにてザフトの新型要塞の攻撃を受け、破壊された模様」
「あ、あれは…親父のいたところじゃないか」
父親のコロニーは、ザフトによって跡形もなく破壊されていた。
――― 先祖は所詮先祖だ。子孫がずっと優秀であるはずはない。
昨日のティーチの言葉を再び思い出す。彼には何をすべきなのか、閃いたような気がした。
「分かった、分かったよ」
シエロは全身全霊をこめて走り出した。

シエロが向かったのは、軍港の埠頭だった。そこには、ユリウス・カエサルと大勢の人員がいた。
「船長!おれを仲間にいれてくれ!!」
「お前は…!?」
突然乱入してきた少年にナギは驚きの表情を隠せなかった。
「あいつ!あのひったくり!!」
エステルは感情を抑えきれず大声をあげる。
「おれは、シエロ・ザラ。アスラン・ザラの子孫だ」
アスラン・ザラといえば100年前の伝説の英雄。乗組員は誰もが驚愕した、もちろんエステルも。
(あの子が…アスラン・ザラの子孫ですって!?)
ナギはあまりにも唐突の出来事に困惑した。しばらく考えた後、口を開いた。
「今回は要塞破壊の任務だ。いきなり加入するには危険すぎる」
「おれはいままで先祖の残光を背負っていた。だが今は違う、おれはアスランの伝説を超える!!そのために戦うんだ!!」
ナギはあきれてものも言えなかったが、黒髭の副船長が助け舟をだした。
「船長、あいつは本物だ。なんたって昨日俺が拳で語ったからな」
「わかったよ、あいつをクルーにする。だがおれは面倒を見れない、責任はお前が持て」
「すまんな、船長」
ティーチは船長に礼を述べた。
「今日からシエロ・ザラはおれたちの仲間だ。さあみんな、ユリウス・カエサルに乗り込め!」
シエロは喜んだ。そこにエステルが近づいてくる。
「ちょっとシエロ、あたしのバッグ返しなさいよね」
「分かってるよ、ほら」
シエロは手元のハンドバッグをエステルに手渡した。
「それにしても不良少年のあなたがアスランの子孫だなんて、驚きね」
「悪いか?」
「あたしはエステル・フローレンスよ。とにかくアスランの子孫だからって、甘えないことね」
エステルはそう言うと、宇宙船のほうへ向かっていった。代わりに少年と黒髭の副船長が近づいてくる。
「ぼくはセシル・バーンスタイン。君が乗組員に志願するなんて驚きだよ」
「ああ、よろしくな、セシル」
「船長に言われたんでな、お前はおれが責任を持ってしごいてやる。覚悟しろよ」
「わかってる、ティーチ副船長」
三人はユリウス・カエサルへと向かっていった。
14888:2008/08/19(火) 02:27:54 ID:???
シエロは船内でいきなりナギに呼び出されていた。
「シエロって言ったな。おれはナギ・アスカだ。ちょっと話したいことがある」
「なんだよ、ナギ船長」
シエロは不良としての生活が長かったのか、目上の人に対しても敬語を使うことは無い。
「お前はたしかアスラン・ザラの子孫って言ってたよな」
「うん、そうだけど」
「おれの祖父はな、100年前の大戦でアスランと戦ったことがあると言ってたんだ」
「あんたのじいさんって…」
「ああ、名はシン、シン・アスカだ」
シエロは驚いた。先祖の因縁が、100年を越えて甦るのか…と思った。
「まあ先祖は敵同士だったかも知れないけど、今のおれたちは仲間だ。敵同士にならないようにしような。
多分おれの祖父やお前の先祖だって天国でそう思ってるはずだ」
「分かってる。絶対に先祖の轍は踏んだりしない、それが先祖を超える目標の一つだと思うんだ」
ナギとシエロは握手した。これから生死を共にする友として。

「敵の要塞の予測進路は木星に向かっております」
ユリウス・カエサルのブリッジにて、副官のロボット・セリヌンティアスが船長に説明する。
「コロニーが主砲の射程距離に入るまでの最短時間は?」
「今からだと約60時間と推測されます」
セリヌンティアスの声はロボットらしく、無機質的で淡々としている。
「今回は同盟軍艦隊も出撃している、とにかく60時間以内に要塞を無力化しよう」
ユリウス・カエサルは海賊の時以上の緊迫につつまれていた。敵は機動要塞を伴っている。
かつて経験したことの無い、激しい戦いになるであろうと、乗組員は思った。
新入りのシエロも、窓ガラスに映し出される美しい星界を眺めながら、つぶやいた。
「どんな敵が相手でも絶対に生き延びてみせる。そしてこのおれが新たな伝説となってやる…」

一方、要塞の背後からひっそりと追い続ける艦艇が一隻あった。
「おれたちは以前あいつらに助けられた。今度はおれたちが借りを返す番だ」
その船の名は、ギャリー。宇宙海賊ブラック・フラッグの船長キッドは、窓に映し出される要塞の後姿を見つめていた。


第6話に続く。


以上です。お疲れ様でした。種・種死ゆかりの固有名詞がいろいろと登場しました。
今回モビルスーツの活躍が無いのは、その分キャラを掘り下げたかったからです。
さて、同盟軍はいかにして要塞を打ち破るのか、乞うご期待ください。
14988:2008/08/19(火) 02:35:02 ID:???
ちょっと補足。
今回のサブタイトル「Cielo Estrellado」はスペイン語で「星界」「星空」を意味しています。
元ネタは鉄道の発車メロディの名前ですが、今回の新キャラシエロとかけています。
ご先祖様のアスランの名前はヘブライ語で「朝」という意味らしいです。
それに対し星空はすなわち夜。
つまりアスランが陽とするとシエロは陰、というような対比をつくりたかったというわけです。
150通常の名無しさんの3倍:2008/08/19(火) 03:28:40 ID:???
シロマたんの水着ハァハァ じゃなくて乙!GJです。
市長ザラはやっぱりアスランの子孫だったのか。
シエロは流石にMS乗れそうにないけど、状況によっては何か無茶しそうにも思える。

エルスマンチャーハンw
15188:2008/08/19(火) 23:49:35 ID:???
第6話できました。ユグドラシル戦は前後編の構成でいきたいと思います。


C.E.173年、5月15日――
一つの巨大な要塞と、それを護衛する6隻からなる艦隊が木星を目指していた。
そのうちの1隻の艦内にて、とある隊長が一人の男に指示していた。
「おそらく同盟軍の艦隊とともにキャプテン・インパルスの海賊団も現れるだろう。
そこでだ、今回は君にインパルスの暗殺をやってもらいたい」
インパルスが同盟軍の仲間であることは、同盟の捕虜からの尋問で判明したことだった。
本名を聞きだす前に死亡してしまい、不明であるものの、
海賊団壊滅のチャンスと見た隊長はインパルス暗殺計画を立てていたのである。
「ははっ、隊長。必ずやインパルスの首を差し出してごらんに入れましょう」
答えたのは、ロジャー・ダルトンという情報工作の専門家で、これまで参加した艦隊戦にて少なからず功績をたてた男である。
「期待しているぞ、ダルトン」
ユグドラシルが貴様の墓場だ、インパルス…隊長は不敵な笑みを立てた。


機動戦士ガンダムSEED Reborn 第6話
謀略 -Trojan horse-


「クロムウェル主席、敵の要塞がこちらに向かっているとのことだがどうなされるのか」
ホルスト・ワンの議会で、議員から質問を受けるクロムウェル。
「国民全員を、木星のガス・ラピュタに避難させる」
ガス・ラピュタとは木星の大気圏内に浮遊するガス田で、木星内に数箇所存在する。
ホルスト市は木星の資源採掘の前線基地で、いわゆる炭鉱都市としての性格をもつ。
しかしその後時代を経るにつれて農業地区や工業地区も充実し、小国家として十分機能するほどのインフラを備えていった。
「それは良いのですが、はたして国民全員避難できるかどうか…」
「とにかく事態は一刻を争う、早急に実行するとしよう」
各コロニーにて、貨物船への避難を呼びかける誘導員の声が響き渡った。
冷静に貨物船のドックに向かう民衆もいれば、パニックで殺到し、負傷者を発生させる民衆もあり、コロニーによってまちまちだった。
やがて、ホルストのコロニーから国民を乗せた貨物船が次々と木星に降下していく。
その様はさながら地表に降り注ぐ流星群のようであった。
一方、同盟軍艦隊も軍港を次々と飛び立っていった。
ドレイク提督は、旗艦ネブカドネザルにて自分の艦隊を指揮していた。
「同盟成立後の未曾有の危機か。さて、我々はこの試練を乗り越えられるかどうか…」
ドレイクは独語したが、声が小さかったのかブリッジのクルーには聞こえていなかった。
15288:2008/08/19(火) 23:50:27 ID:???
要塞ユグドラシルの内部にて、強大な兵器を得たザフトの兵士たちは士気が最高潮に達していたかに見えた。
その様子を、緑色のザフトの制服を着た一人の女性士官が見渡す。
「内部には潜入できたけど、コンピュータ室へはどこに行けばいいのやら」
彼女は正確にはザフトの士官ではない。名前はアウィルダ・ブロスナンといい、ザフトに潜入した同盟軍のスパイである。
潜入先のアーモリーにて要塞建設の情報を入手し、要塞配属となるよう情報を改ざんし、要塞内に侵入することが出来たのだった。
おそらく木星へと侵攻し、ジェネシスでコロニーを破壊するだろうと考えたアウィルダは、
せっかく要塞に潜入出来たのだから、せめて敵の内部から味方の利になるよう行動したいところだった。
「気分は一寸法師って感じね」
彼女が一寸法師なら、この巨大な機動要塞は鬼、同盟のコロニーは鬼に襲われる姫、
そういう風に例えられるだろう、と彼女は思った。
「それにしても、ナギ…元気にしているのかしら」
同じ同盟軍の士官であるナギ・アスカとアウィルダとは恋愛関係であるが、諜報の任務でもう一年も彼とは会っていない。
でも彼女は、いまだにナギを愛していた。
一年前、スパイとしての出発の前夜、二人きりで過ごした夜を思い出す。
「アウィルダ…やっぱり行ってしまうのかい?」
「仕方ないわ、これも任務だから」
ベッドに入ったナギとアウィルダが口をつけ、舌を絡ませあう。
「ザフトにバレたら、身包みはがされて首吊りにされるかもしれない。それでもいいのかい」
「わたしだって軍人なのよ、ナギ。それくらい覚悟はできてるわ…」
お互いの体がせめぎあい、息が荒くなる。それと同時に、一緒に味わってきた、いつもの感じがこみ上げてくる。
「そういえば、君の料理は誰よりも旨いな。しばらく食べられなくなるのが心残りだよ」
「フフッ、無事に帰れたら、いつでも振舞ってあげる」
二人は再び接吻を交わす。お互いいつまでも溺れていたい…そんな思いが部屋の熱気を充満させていった。
でも今は、敵の陣地の中。アウィルダは鬼から姫を救うよう、腹の中を突かなければならないのだ。
アウィルダはふと、天井を見上げる。そこには排気口のふたがあった。
「あそこからならいけそうね」
アウィルダは辺りを見回し、人が一人もいないことを確認して静かに排気口までよじ登り、ふたを開けて中に入った。
そんなアウィルダも、今ナギが戦場のさなかに到達しようとしていることを知る由も無かった。
15388:2008/08/19(火) 23:50:59 ID:???
同盟軍艦隊に先駆けて木星を飛び立ったユリウス・カエサル号の内部では、セシルとシロマ、そして新しく入ったシエロが、
スパロウズ・パニックで遊んでいた。作戦開始までは何をしてても自由なのがナギの方針である。
スパロウズ・パニックとはパーティー用の玩具で、樽を模した装置の中心に海賊のフィギュアが入っている。
ルールは樽の側面にある多数のスリットにプラスチック製のナイフ型プレートを差し込んで、
先にフィギュアを飛び出させてしまったプレイヤーの負けとなる。
「じゃ、ぼくの番…」
セシルは黄色いプレートを上段のスリットに差し込む。一瞬緊張が走ったが、フィギュアは飛び出なかった。
「次はあたしの番ね」
シロマが赤いプレートを下段のスリットに差し込んだが、フィギュアは飛び出ない。
「次はシエロの番…」
「なんでおれがこんなのやらなきゃなんないんだよ」
シエロは不満そうな表情をしていた。
「なんか仕事ないのかよ」
「だって仕事は作戦開始からだし、それまでは何をしててもいいってのが船長の方針だよ」
「たくさんいたほうが楽しいもんね、セシルちゃん」
シエロはあきれ、ため息をついた。
「はいはい、わかったよ。やればいいんでしょ」
シエロが青いプレートを手に取り、中段のスリットに差し込む。それでもフィギュアは飛び出さない。
「おいセシル、お前の番だぞ」
シエロが言ったとき、オシリス・カルテットの一人ボルが割り込んできた。
「おっ、お前ら。楽しそうなのやってるじゃないか」
「はい、スパロウズ・パニックっていうおもちゃで」
「おれにもちょっとやらせてくれよ」
「あ、ちょっと…」
ボルは白色のプレートをつまむと、上段のスリットに差し込んだ。すると、フィギュアが勢いよくとびだした。
「これって、おれの負けなのかい」
ボル以外の三人は、黙ってうなずいた。気まずそうな空気が蔓延したな、とボルは悟った。
「じゃ、おれはバルたち待たせてるんでな、あばよ」
ボルは一目散にその場から離れた。
「くっだらね、おれも離れさせてもらうぜ」
シエロが席から立ち上がると、部屋から出て行ってしまった。
「結局、二人になっちゃったね。シロマ」
「いいじゃない、セシルちゃん。またスパロウズ・パニックやろう」
15488:2008/08/19(火) 23:52:08 ID:???
一方、ブリッジでは些細な作戦が実行に移されていた。
「よし、ガラクタを発進させろ」
ユリウス・カエサルから戦闘機型のモビルアーマーが発進する。
下部には巨大なミサイルを搭載しており、無人で運転するように設定してある。
耐用年数を越えた軍のお下がりであるため、便宜上ガラクタと呼んでいる。
やがて、モビルアーマーが要塞をミサイルの射程距離内に収めると、立ち止まり、ミサイルを発射した。
ジェットノズルの上部につけられたフラッシュガンが点滅する。
「どうやら発射したようだ」
スクリーンに映し出される光の点滅が、ミサイルを発射したことをブリッジのクルーに知らせる。
「核には劣るものの、コロニーを一撃で半壊させる極低周波ミサイルだ。直撃すれば要塞とてひとたまりもないだろう」
ナギは遠くのモビルアーマーからの報告を待った。
ミサイルは要塞のセンサーに補足されていた。
「敵モビルアーマーからのミサイル攻撃!迎撃しますか」
「放っておけ、ユグドラシルからすれば蚊に刺されたも同然だ」
低周波ミサイルが要塞の外壁に直撃する。しかし、かすり傷ひとつもない。
モビルアーマーのフラッシュガンが再び点滅し始めた。
「やはりな、要塞はフェイズシフト装甲で守られているようだ」
「まさに鬼に金棒、勝算は少なそうですね」
セリヌンティアスがロボット特有の無機質な声で述べる。
「どうなさいますか?ナギ船長。木星が射程距離内に入るまであと48時間ですよ」
「さあな、今のところは星を眺めながら考えるさ」
突然、前方に遭難船が救助信号を発信していることをエステルが告げた。
「見逃すわけにもいくまい、救助しよう」
ナギはそう指示すると、遭難船に接舷し、手の空いたクルーが中の人を救助した。
乗組員はたった一人だったが、健康状態に問題はなさそうに見えた。
「もう丸二日食事を口にしてない、なんか食べさせてくれないか」
クルーのひとりが男を食堂へと連れて行った。
そこでは、多数のクルーが酒が注がれたジョッキを片手にどんちゃん騒ぎを起こしていた。
「よーし、飲め飲め」
「もう死んで飲めなくなっちまうかもしれねえんだ、今だけでも酒を味わっておこうぜ」
あるクルーが酒を飲もうとすると、同じような顔のクルーが脅かせ、口に含んだ酒を噴出す。
「げえっ、おれがもう一人いる」
そのクルーがあごの辺りを掴むと、分厚い皮のようなものがはがれ、本当の顔を出す。
「なんだよ、びっくりさせるなよ」
「ちょっとフェイスメーカーってやつで脅かしてみたくてね」
「それにしてもこのマスク、精巧に出来てるなぁ」
クルーは皆陽気なことだ、と男は思った。何かをたくらんでいるかのような不敵な笑みを浮かべて。
突然、後ろから肩をかけられる。
「あんたも助かったんだろ?生還祝いだ、一緒に飲もうぜ」
フリオニールが酒の注がれたジョッキを男に手渡す。
「いや、わたしはあんまり酒は…」「いいから飲めよ」
「じゃ、お言葉に甘えて」男は一気にジョッキ一杯の酒を飲み干した。
「いやぁ、旨いね。こんなに酒が旨いの久しぶりだ」
「そうだろ?もう一杯いけよ」フリオニールが二杯目を手渡す。男は今度は豪快に飲み干した。
「ああ旨かった。なんだか眠くなってきたなぁ…」
「もうおしまいかい?じゃあ寝てな」
「おやすみ…」
男はその場に突っ伏し、眠りに着いた。
15588:2008/08/19(火) 23:53:09 ID:???
ブリッジでは、ナギがぼーっと窓ガラスの星界を見つめている。そこに誰かが入ってくる。
「フリオニール、入ります」
「ああ、何か用か?フリオニール」
フリオニールがナギのそばに近づいた。
「ちょっと船内にゴキブリが入り込んでましてね、今大人しくさせたところですよ」
ナギが眉を吊り上げた。
「ザフトの暗殺者か」
「ええ、まあ。あの遭難した人、二日間何も食べてないって言ってましたが、ゴミ箱にはまだ新品の食糧が大量に捨てられてました。
おそらく船長とかを暗殺するために乗り込んできたのでしょう。とりあえず睡眠薬仕込んだ酒を飲ませましたがね」
「何時間くらい寝ていられる?」
「まあ、この戦闘が終わる頃には目を覚ますでしょうよ」
ここで、ナギが何かを閃いたようだ。
「そうだ、そいつをフェイスメーカーにかけてくれ。ちょっといいこと思いついたんでな」

一方、こちらはザフトの護衛艦隊。とある戦艦の艦橋で、以前暗殺を目論んだ隊長が報告を待っていた。
その戦艦に通信が入った。ロジャー・ダルトンからである。
「隊長、キャプテン・インパルスを暗殺いたしました。
ただいまより帰還したいところですが、船が故障しちゃったんで救助に来てください」
「そうか、わかった」
隊長はオペレーターに要塞にキャプテン・インパルス暗殺成功の報告とダルトンの救助の許可をとるように指示した。
要塞からは同盟艦隊が近づいているから速やかに救助するようにとの通信がとどいた。
「よし、ダルトンのところへ向かう」
一隻の戦艦が艦隊から離脱し、ダルトンの船に向かって発進した。
6時間後、ダルトンの船のところまでたどり着くと、隣には私掠船ユリウス・カエサルがうち捨てられていた。
「インパルスもこれで終わったか。とにかくダルトンを救出しろ」
ザフトの戦艦が接舷し、ハッチをあけると中から武装した兵士が銃を乱射しながら乱入してくる。
全くの無防備だったザフト兵はそのまま銃撃に斃れていく。
「隊長!艦内に敵侵入!」
「くっ、罠だったのか!総員迎え撃て!!」
ザフトの兵士が全員、中に侵入した敵の排除のために立ち上がるが、煙が蔓延し倒れていく。
「隊長…催眠ガスです」
「お、おのれ…」
隊長始め、ブリッジのクルー全員が意識を失った。
「あと36時間で射程距離に入ります、船長」
セリヌンティアスが残り時間をナギに告げる。
「今度はザフトのクルーに化け、要塞内に侵入し、フェイズシフト装甲を解除する」
「ナギ様、危険すぎます」
セリヌンティアスが単身潜入しようとするナギをとめようとする。
「どうせ36時間たったらおれたちの負けだ。危険なんてどうってことないさ」
ナギが済ました顔で返事を返すと、フリオニールが寄ってくる。
「船長、おれも同行します。子供の頃鬼ごっこが得意でしてね」
「いいだろう、だが今回は命がけの鬼ごっこだ」
「分かってますって」
ナギは、戦艦内部のクルーには全員ユリウス・カエサルに戻るように告げ、ティーチには同盟艦隊に加わるよう通信で指示した。
15688:2008/08/19(火) 23:55:56 ID:???
要塞ユグドラシル内では、アウィルダが見張りの兵士一人を麻酔銃で眠らせ、コンピュータ室に潜入した。
「とりあえずこの要塞の弱点を探らないと…」
アウィルダは忙しくコンソールを叩き始めた。画面にはさまざまな情報が表示される。
「あった、これだわ」
アウィルダは要塞がフェイズシフト装甲で守られていることを突き止め、装置の場所も割り出した。
「とにかく急いでフェイズシフトを解除しないと、同盟の勝機は無い」
彼女は再び排気口へと入っていった。排気口の中は狭く、暗いが文句は言っていられない。
突然、目の前に鼠が現れ、彼女は驚いてしまい、排気口の中を強く叩いてしまう。
下の部屋ではザフトの兵士たちが驚き、上を見上げる。
「誰かいるのか!」
(しまった…)
もはやこれまでか…とアウィルダは思った。
「なんだ、気のせいか」
兵士たちは何気ない表情で再びすわる。アウィルダはほっとした。
「待ってて、今フェイズシフトを解除しに行くわ」
アウィルダは再び、静かに前へと進み始めた。

要塞のオペレーター室では、先ほど救助に向かった戦艦から報告が入っていた。
「救助に向かいましたが、残党の奇襲を受け、残り2名しかいないとの報告です。
生存者も負傷しており、治療を受けたいとのことです」
「なんだと、最後の最後でしくじりおって。まあいい、怪我しているんだ、入れてやれ」
オペレーターは戦艦に入港の許可を出した。戦艦がユグドラシルの中に入っていく。
その戦艦の内部では、隊長に扮したナギ・アスカと生存者の兵士に扮したフリオニールが会話していた。
「いよいよっすね、緊張します」
「とにかく一発勝負だ、ぬかるんじゃねえぞ」

同盟軍艦隊は、要塞を肉眼で確認できるほどまでに接近していた。
「あれが、要塞ユグドラシル…」
ドレイク提督は窓ガラスの向こうに映る要塞に、息を呑んだ。
「そろそろですね、我々同盟の命運をかけた戦いが…」
「そうだな、我々はなんとしてでも要塞を破壊しなければならない」
同盟軍の艦艇は、どこもかしこも異様な緊迫感に包まれていた。

残り24時間、後世に「ユグドラシル戦役」と呼ばれる戦いが、今火蓋を切って落とされようとしていた。


第7話に続く。


以上です。お疲れ様でした。今回は前後編構成にするためかちょっと短いです。
SEED Rebornのまとめサイト作りました。
http://wiki.livedoor.jp/yotman3/d/%a5%c8%a5%c3%a5%d7%a5%da%a1%bc%a5%b8
人物紹介もあるのでキャラの絵を投稿したりなんなりしてください。ひそかに待ってますw
15788:2008/08/20(水) 02:25:28 ID:???
それとちょっと報告。
今週から私用で忙しくなるので執筆のペースが落ちるかもしれません。
その辺ご了承いただけたらうれしいです。
158通常の名無しさんの3倍:2008/08/20(水) 04:23:45 ID:???
乙! スパイ間抜け杉ワラタw
黒髭飛び出しが志望フラグっぽくて心配だ。

投下はそんなに急がなくて大丈夫です。
無理が出ないペースでどうぞ。(俺なんか2週間空けてた)
まとめサイトも乙! ゲーム機からだから絵投下は出来そうにないな。
159通常の名無しさんの3倍:2008/08/20(水) 05:35:58 ID:???
PCなんとか使えたんでシロマとシエロ描いときました。
電源いきなり落ちかねないんで落書き程度で。
160通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 23:14:32 ID:???
最近ガンダム熱が再燃したんで書いてみる、
はっきり言って低俗なパロディだけど、
楽しいものが書きたいんで、よかったら突っ込んでね。

富野アニメのパロディをSEEDでやるみたいな感じです。

161通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 23:22:24 ID:???
閃光のサイ

あらすじ
CE73年、キラ・ヤマトは戦いの果てに心を壊し、
アスラン・ザラはザフトに帰った。

ザフトの過激派によるプラント落とし、
「ブレイク・ザ・ワールド」により世界が混迷を極める中、
祖国であるオーブに帰ったサイ・アーガイルは、
新しいタイプのガンダム製造に携わっていた。

ザフト、連合、ファントム・ペイン、様々な思惑が重なる中、
サイはかつての戦争の後悔をリフレインしていく。

登場人物
サイ・アーガイル
アークエンジェルを降りた後はカレッジに復学し、
オーブの電子メーカーに就職していた。
その後エリカ・シモンズに誘われニュータイプ・ガンダムの開発に携わる。

フレイア
ファントム・ペインのエクステンデット。
フレイによく似た容貌を持つ。

バロン
ファントムペインのエクステンデット。
ラウ・ル・クルーゼの信奉者。
162通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 23:42:26 ID:???
>>161
オリキャラキターーーーーーー
163通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 00:21:22 ID:???
閃光のサイ 機体

GAS01 Ψガンダム
新型アストレイ計画を隠れ蓑に極秘で建造されたニュータイプガンダム。
本来はアストレイタイププサイなのだが、開発者の一人であるサイになぞらえ
もじってサイ・ガンダムの愛称で呼ばれている。
ストライクの戦いを間近で見てきたサイのアイデアが採用されており、
アストレイとは名ばかりの全くの別物。
シルエットはデュエルに近く、機動性を重視した空戦機となっている。


GAT-X305 ガストガンダム
「迅風」の名を持つガンダム。
イージスの改修機で、強力な推力と豊富な実弾兵器を持つ。
猛スピードで敵に接近、弾丸をばらまく一撃離脱戦法に特化した強襲機。
164通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 00:24:49 ID:???
>>162
オリキャラは極力出さないようにします。
16588:2008/08/23(土) 00:43:35 ID:???
ageをかねてSEED Rebornのセシル、ナギ、エステルのラフスケッチを掲載します。
http://image02.wiki.livedoor.jp/y/3/yotman3/3adeb506.jpg
http://image02.wiki.livedoor.jp/y/3/yotman3/adfb37a8d92440dd.jpg
http://image01.wiki.livedoor.jp/y/3/yotman3/1c173d4fec3506fe.jpg

それからケータイ小説版サイトもつくりました。こちらからどうぞ。
http://id52.fm-p.jp/266/seedreborn/

第7話はもうしばらくお待ちください。

>>160
期待!
166通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 01:01:03 ID:???
>>163
厨設定オリ機体キターーーーーーー
167通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 01:23:04 ID:???
折角の新参をいじめんなよ
168通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 02:40:01 ID:???
>>160
サイ主人公とは面白そうだ
頑張ってくれ
169通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 05:59:19 ID:???
>>160
Ψガンダムワラタw
サイの出番ときたら期待せずにはいられない。

>Rebo

GJ!
ちょっwアスカ氏、結構美形なのかw
シンに無精ヒゲ足しておっさんぽくした感じだと勝手に想像してた。
170通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 22:36:50 ID:???
久しぶりにここにきたら新作ですか。

>>163
CE世界ではガンダムの呼称は、戦後のエピソードとかで
紹介などがなければ「ガンダム」と付けるは不適切かも。

また、数は多くないがPS装甲MSが各陣営にある時代に
実弾兵器を充実させた理由は?
(163さんはビーム兵器非搭載とは言っていないけど)

ストライクをパクったルージュやアストレイを開発したオーブが
「MBF」や「ORB」でなく連合MSみたいな「GAS」で開発ということは、
大人の理由でまた連合の下請けをやってるのかな。
もしかしてサイは連合に出向や派遣?

他にもクルーゼを信奉するファントムペイン所属者とか
いろいろ勝手に想像してしまう。
期待して待ってます。
171160:2008/08/23(土) 23:45:25 ID:???

「僕に出来ないことが、君には出来るんだ…」
震えたまま、キラは言った。
「ごめん、サイ……僕は……僕はフレイをどうにもできなかった」

その言葉を残し、キラは何も言わなくなった。

時に、CE73年。
ザフトの過激派のユニウスセブン落とし、
後の「ブレイク・ザ・ワールド」の実行によって世界は混迷を極めていた。

1.「ニュータイプ・モビルスーツ」

「アーガイル様、ようこそいらっしゃいました、こちらへ……」
マルキオ導師の邸宅に着くなり、ラクス・クライン自らが出迎えてくれた。
戦後、ラクス・クラインはプラントに帰らず、キラの身の回りの世話をしながらここで生活しているとのことだ。
プロパガンダとして使われることをよしとしなかったのだといわれている。
しかし、眠るキラの傍に寄り添う彼女を見ると、それも口実のような気がした。

「アスラン・ザラがザフトに戻ったと」
「……ええ、私も聞きました、カガリ様から」

アスラン・ザラ。
プラント時代のキラの親友。
先のプラント落としを受けてザフトに戻り、事態の収拾に急いでいる。
だが、プラントと地球が再び戦火を交えるのがそう遠くないことは
誰が見ても明らかであった。

キラの眠る部屋へと通された。
「キラ、アーガイルさまが来てくださいましたよ」
白いベッドにグッタリと横たわるキラ。
眼は閉じられていて、顔に血の気は無い。
生きているのか少し疑いたくなるほどだ。ラクスはそっとキラの横に寄り添った。
こんな時だというのに、俺はフレイに看病されるかつてのキラの姿を思い出してしまっていた。
「キラ」
かける言葉も見つからず、名を呼んでみる。
……勿論、返事はなかった。

172160:2008/08/23(土) 23:47:30 ID:???
ヤキン・ドゥーエでの戦いに於いて、
キラはラウ・ル・クルーゼの駆るプロヴィデンスと戦い、辛くも勝利した。

しかし、その戦闘が終わった後、キラは正気を失っていた。

今思えば、限界だったのかもしれない。
自分が人の体から生まれた存在ではなく、
戦争の根底であるコーディネイター技術の権化ともいえる存在であること。
そして、フレイの死。

あの夜、キラが俺の腕を捻って俺からフレイを奪った日。
俺は何も出来なかった。
でも俺は、あの時、キラを殴ってやらなくちゃならなかった。
「自惚れるな」
とキラを殴らなくちゃならなかったのだ。

キラは自分がコーディネイターだから、何もかも一人で片付けようとした。
何もかも一人で。
ラクス・クラインにも、アスラン・ザラにもフレイのことは打ち明けてはいないようだった。

その結果がこれだ。
キラはフレイを亡くし、俺はフレイとキラを無くした。


婚約者を取られた嫉妬も、悔しさもあった。
あの時の俺はキラに守られているという負い目が俺があり、劣等感に駆られて自分がいやになった。
だけど、本当は、あのときキラを殴って叱り飛ばしてやるべきだったのだ。
それが俺の役目だった、俺はフレイとキラが暗い影に覆われていく様にも気づいていたのだから。

だって、俺は今でも友達なのだから。
17388 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:29:40 ID:???
>>160
乙。サイ人良すぎ。

今回からトリップつけます。では第7話どうぞ。


ユリウス・カエサルの格納庫では、決戦に向けて整備士が慌しく働いていた。
たまたま私服の状態で格納庫にやって来たセシルは、クレーンが砲塔を吊り下げて愛機のリボーンに持っていく光景を目のあたりにした。
その砲塔は腰部に装着され、代わりにビームガンとビームサーベルが取り外される。
他にも違いはあった。脹脛の部分にはミサイルポッドが左右対称につけられていた。
「すみません、一体リボーンに何をしているんですか?」
少年に尋ねられた整備士の一人が立ち止まり、急いでいるような表情で答えた。
「ああ。今リボーンをB装備に換装しているところだよ」
「B装備って?」
「射撃戦、対艦・対要塞戦用の装備さ。戦艦や要塞を打ち抜くために火力が強化される」
整備士の説明では戦艦の数で劣る同盟にとっての苦肉の策だという。
まず、オシリスをベースに火力を向上させた実験機を開発してデータを集め、制式機としてハトホルを量産。
ユリウス・カエサルにも出発前にハトホルが二機配備されている。
その後リボーン向けに、オシリス試験機やハトホルのデータから開発された火力強化型のオプションが用意された。
通称”B装備”と呼ばれるそれである。
先ほどのクレーンが今度は巨大なバズーカを吊り下げてリボーンに近づく。
「あのバズーカは?」
「あれがB装備の目玉さ。あれが直撃したらザフトの戦艦すらひとたまりもない」
「でもこんな重武装じゃ機動力が落ちそうですね」
セシルにとっては何気なく答えたつもりだが、整備士はいい加減にしてくれと言いたそうな表情だ。
「まあ、敵さんがそばに来ないことを祈るしかないな。おれは急いでるんだ、失礼」
整備士はその場を去っていった。セシルは変化したリボーンを見上げる。
「今回も生き残れるといいな。そのために力になってくれ、リボーン」


機動戦士ガンダムSEED Reborn 第7話
死闘 -Final combat of the Osiris-
17488 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:31:04 ID:???
10隻からなる同盟軍艦隊は、約1.5光秒の距離を置いて帝国軍艦隊と対峙していた。
帝国側は当初は6隻だったが、決戦を前に要塞から14隻の戦艦が出港し、全部で20隻に増強された。
20隻の戦艦に加えさらに要塞も相手にしなければならないため、圧倒的に同盟軍が不利であった。
そのため、帝国に対抗しうる火力の充実を求められた同盟軍は、モビルスーツの約3分の2を遠距離支援・対戦艦用のハトホルとし、
それらの護衛としてリボーン・オシリスからなる迎撃部隊を組織した。
艦隊の7割をしめる同盟軍の標準型戦艦ネブカドネザル級は7機のMSを積載できる母艦機能を備えている。
また、火力・防御力・機動力・通信能力をバランスよく備えた傑作艦とされ、提督の旗艦も全てこのタイプである。
1番艦ネブカドネザルはドレイク提督、4番艦グノーシスはデュゲトルーアン提督、
7番艦カデューシャスはネルソン提督の旗艦となっている。
残りの砲艦、ブラックパール級は艦首に大口径の陽電子破砕砲を装備し、対要塞攻撃に威力を発揮する。
ちなみにブラックパール級全艦がネルソン提督の指揮下にある。
ネブカドネザルの会議室では全ての提督が集っての作戦会議が行われていた。
「敵は全部で20隻、しかも要塞つきだ。帝国は本気で我々をつぶす気だろう」
「しかも敵艦隊は要塞の近くに布陣している。なんとかして敵艦隊を引きずり出さなければ」
同盟軍の提督たちはあせっていた。残り24時間で強大な敵軍を撃破しなければならない。その重圧は誰でも感じていた。
「ブラックパール級の陽電子砲の射程距離はどれくらいだ」
ドレイク提督が口を開く。会議室にいた技術士官の一人が答える。
「ネブカドネザル級の主砲の2.5倍程度です」
「そうか、わかった」
ドレイクが納得した表情でうなずくと、さらに発言を続ける。
「まずはネルソン提督の艦隊をブラックパール級の射程距離ぎりぎりまで近づけ、陽電子砲による一斉砲撃を行う。
それから敵艦とモビルスーツ部隊をひきつけて私とデュゲトルーアン提督の部隊で迎撃し、要塞攻撃にとりかかる」
デュゲトルーアン、ネルソンの両提督は納得した。彼らもドレイクとほぼ同じ戦術構想を描いていたからである。
突然会議室に入ってきた兵士がドレイク提督に報告する。
「ユリウス・カエサル号、ただいま合流いたしました」
「そうか、わたしの指揮下に入るよう指示してくれ」
ドレイクは兵士にそう告げ、退出させた。
「ユリウス・カエサルだと、あのパルチザンまがいなど何の戦力にもならん」
そう切り出したのはデュゲトルーアン提督である。彼は非正規の武力など何の価値にもならないとして見下していた。
「装備はネブカドネザルとほぼ同等だ。モビルスーツも充実して、しかも陽電子砲も装備している」
「ふん、改造したはりぼてなど認めたくないものですな」
デュゲトルーアンは一向に認めない様子だった。
「デュゲトルーアン提督、度が過ぎるぞ」
ネルソンがデュゲトルーアンを嗜めた。
「とにかく我々の兵力は敵にくらべ、相当劣っている。私掠船の1隻でも戦力になれば心強いものだ」
会議は終了した。要塞のジェネシスがコロニー群を射程にとらえるまで、あと23時間となった。
17588 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:32:45 ID:???
ユリウス・カエサルのブリッジでは、ドレイクの部下からの報告を受けていた。
「ドレイク提督の指揮下に入るのか、了解した」
答えたのはエド・ティーチである。黒い無精髭が特徴の彼は船長代理として船長用のシートに座っていた。
「ところで、ナギ・アスカ船長はどうなさった」
「要塞のフェイズシフトを解除するために潜入している」
ナギが不在であることに士官は驚いたが、さらに驚きを隠せなかったのは要塞がフェイズシフト装甲で守られていることだった。
「あの要塞がフェイズシフト装甲であるとは本当か」
「本当だ。低周波ミサイルを撃ち込んで確認した」
「わかった。ドレイク提督に報告しておく」
通信画面が切られ、スクリーンは元の状態に戻った。
「船長不在で大丈夫でしょうか…特にモビルスーツ隊が不安です」
エステルが不安な表情で黒髭の船長代理に問いかける。
「とにかくフェイズシフトを解除できたら我々の勝ちだ。それまでなんとかやるしかない」
ティーチは言ったが、茶髪の少女の不安はまだ消えなかった。
(セシル…どうか死なないで、お願い…)
数日前、模擬戦の後で少年に贈った言葉を、エステルは心の中でつぶやいた。

シエロ・ザラに初めて与えられた仕事は、CIWSの砲手だった。
これは、船に近づいた敵のMSやミサイルを迎撃するための機関砲で、近接防御の要である。
「いいか、やり方は単純、敵に照準を合わせて撃つんだ」
砲術長のカイア・アッディンが使い方を指導した。
地味な仕事だ、とシエロは思った。セシルのようにMSに乗って敵を倒したい、そっちのほうが格好いいではないか。
「ふん、モビルスーツに乗れるなんた甘いこと考えるな。なんたってお前は訓練などしてないからな。
それに砲手も敵を撃ち落せる立派な仕事だ」
まるでアッディンはシエロの心のうちを見抜いたかのような発言だった。少年は自分の本心を打ち明ける。
「だってモビルスーツに乗ったほうが格好いいだろ?」
「格好いいだと?おしめも取れない子供の考えだな。いいか、戦ってのは生きるか死ぬかだ。
おれたちは生き抜かなければならん。そのために自分の器量の範囲で生き抜くための仕事をする。
お前はまだモビルスーツの訓練もしてないんだ。訓練しない限り乗るなんて早い、わかったか」
砲術長の言葉は的確だった。シエロはついに反論する言葉を思いつかなかった。
「わかった、砲手やってみる」
絶対生き抜いてやる…シエロは操縦桿を握り締め、決意した。
17688 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:33:34 ID:???
医務室では船医のザイゼンと娘のシロマ、そして数人の看護師が準備していた。
父と娘は準備しながらひと時の会話をしていた。
「ねえパパ、あたしたち生き残れるのかな」
「心配するな、シロマ。我々は今まで幾度もピンチを乗り越えてきたんだ。絶対何とかなるさ」
父は不安にかられる娘を安心させようとした。
「クルーのみんなだって生き残りたいと願っている。そのためにも我々が医療という形で支えてあげるんだ」
「うん、あたし頑張る!」
シロマは気を入れなおした。もしクルーの中から負傷者が出てきて自分を必要としてくれている場合に怠けるわけにもいかないからだ。
突然お尻の当たりが疼いた感じを覚えた。明らかに便意だった。
「ちょっとトイレに行って来るね」
早く済ませるんだぞ、と声をかけ、父はトイレに行く娘を見送った。
シロマは急いで近くの女子トイレに行き、便意を済ませて外に出ると、そこにはエステルがいた。
彼女もシロマと同様にトイレで用を済ませていたのだ。
「あ、お姉ちゃん」
「あら、シロマ。奇遇ね」
シロマは6歳年上のエステルを気に入っていた。
美人で、優しくて面倒見の良い16歳の少女を10歳の少女はまるで実の姉のように慕っているのだ。
「お姉ちゃん、あたし決めたの。生き残るために看護頑張るって。
死ぬのは怖いしいやだけど、頑張ってけが人を治してあげれば絶対に生き延びれる気がするの」
シロマはまだ幼いが、その決意は大人のように固かった。
「えらいわね、シロマ。その調子でお仕事頑張ってね。大丈夫、あたしたちは絶対に生き残れるわよ」
エステルは微笑み、シロマの頭をなでた。
「あ、パパが早くしてって言ってたから医療室に戻るね」
シロマは手を振ってトイレを出て行った。
「10歳で戦場に出るなんて…大変なものね…」
つぶやくエステルの表情にはわずかに翳りが出ていた。

一方、要塞のドックでは、負傷した隊長と部下の2名を乗せた戦艦を迎え入れていた。
「トンプソン隊長、よくもご無事で」
ハッチから出てきた隊長と部下をザフトの士官が迎え入れる。
「奴らにしてやられた。何とか退治したがこのザマだ」
「右腕と左太ももを負傷しました」
二人の声はどことなく弱弱しかった。
「ただいま医療班をお呼びいたします」
士官は看護兵を呼ぼうとしたが、隊長に止められた。
「大丈夫だ、医療室へならなんとか自力でいける」
「え、よろしいのですか?」
「いいんだ。他の兵士の治療で忙しい看護兵の邪魔をしたくないからな」
「そうですか。どうかお気をつけて」
隊長は兵士の肩に腕をかけ、医療室へと向かった。
ある程度進んだところで、隊長は辺りを見回し、人は誰一人もいないことを確認した。
「よし、なんとか侵入できたようだ」
「これからどうするんですか?船長」
二人は小声で会話していた。彼らはザフトの兵士に扮装したナギ・アスカとフリオニールだった。
もちろん怪我しているのは演技で、傷跡も作り物だった。顔も元の隊長と兵士に似せた精巧なマスクをかぶっていたのだ。
「まずは何とかフェイズシフトの装置の場所を突き止めなければな」
「あと23時間ですね。急ぎましょう」
ナギとフリオニールは再び歩き出した。
17788 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:34:24 ID:???
20隻からなる帝国艦隊を指揮するのはサーハン提督である。
サーハンの旗艦のブリッジにモビルスーツ部隊の隊長、シーザー・オーガスバーグが現れた。
「何の用だ、オーガスバーグ」
サーハンはシーザーを見上げた。
口をマスクで覆っているが、その目と金髪は若々しさと、何よりも高貴さを感じさせた。
おそらく自分より20歳も若いだろう、とサーハンは思った。
「調子はどうだ、サーハン」
「まずまずだよ。何よりも戦力ではこちらが勝っている。何も恐れることは無い」
「かと言って油断すると大変なことになるぞ」
シーザーは鼻で笑った。余裕に浸るサーハンなど、彼にとってはばかばかしいことだった。
「我が艦隊は今までに一度も負けたことなど無い。今回もそうなる」
「なら今回も無敗で終わる保障はあるのだろうな」
「もちろんだとも。わたしに二言など無い。叛徒どもは壊滅し、太陽系は皇帝陛下のもと統一される。
そうだ、モビルスーツ部隊は君の管轄だったな。君らの手腕で奴らのモビルスーツ部隊を殲滅させるのだぞ」
「当たり前だとも。では失礼する」
シーザーはきびすを返し、ブリッジを後にした。
サーハンはシートから立ち上がり、大きな声をあげた。
「総員に告ぐ。6時間後、叛乱軍の艦隊と交戦する。その時が叛乱軍の最後となり、ユグドラシルのジェネシスが本拠地を焼きつくす。
さあ立ち上がれ。今こそ全宇宙に皇帝陛下の威光を示すときぞ!」
サーハンの演説は熱気を帯びていた。

要塞ユグドラシルに潜入した同盟のスパイ、アウィルダは天井の排気管の中にいた。
コンピュータ室でフェイズシフトの装置の情報を手に入れ、装置室へと向かっているところだった。
排気管はかなり長く、まるで永遠に続いているかのようだった。
「結構長いわね。急いで装置を解除しないと…」
このとき彼女は焦っていた。同盟の勝利に貢献したいがための使命感が彼女の焦りを呼んだのだろう。
この時、彼女は排気口の一つを通過しようとしていた。だが排気口が壊れていたことに彼女は気づかなかった。
「ああっ」
突然、床が崩れ落ちるような感覚を彼女は覚えた。
アウィルダの身体は重力のなすがままに、下へと落ちていき、床に強く身体を打ち付けた。
「アウィルダ・ブロスナン。なんでここにいる」
そこにはザフトの兵士が数人いた。彼らは天井の排気口から落ちてきたアウィルダを囲む。
「いえ…それはその…」
「貴様の持ち場はここではないはずだ。では一体なにをしている」
「そういえば要塞の出発前アウィルダ・ブロスナンなんて名前の兵士など聞いたことないな」
「見るからに怪しいな」
アウィルダの額に汗が滴り落ちる。
(くっ…こんな時に……)
自らが窮地に立たされているのは明らかだった。何とかしたいが、囲まれているこの状況では何もできなかった。
「さては貴様、叛乱軍のスパイだな」
ついに正体を感づかれてしまったようだ。顔に緊張の色が走る。
「その表情から察するに図星のようだな。一体何をたくらんでいる」
「…そんなこと言うわけないでしょ」
「貴様、立場を分かっているのか?」
兵士たちはいっせいに銃を構えた。銃口はどれもアウィルダに向けられている。
もう終わった、と彼女は思った。ふと思いを寄せている男の姿が脳裏に描かれた。
(ごめんなさい…ナギ。わたし、死んでしまうかもしれない…)
17888 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:35:12 ID:???
一方、要塞に潜入したナギとフリオニールはある部屋の前で立ち止まった。
その中にはザフトの兵士数人と女性の士官が一人いた。
どうやら兵士は女性を尋問しているようだった。
ナギは突然、女性の姿にはっとする。
「アウィルダ…なんでここに」
気づかれないよう声を大きくしなかったが、恋人が要塞に潜入していた事実に驚きを隠せなかった。
「せ、船長の彼女なんですか?あの人」
「ああ、そうだ」
ナギは狼狽を隠せなかった。しかもアウィルダは今にも殺されようとしていた。
「見殺しになんかできない。助けるぞ、フリオニール」
「は、はい」
ナギとフリオニールは静かに身を乗り出し、兵士めがけて麻酔銃を撃った。
命中した兵士は血を出さず、その場に崩れる。
「何者だ!」
二人は名を名乗る余裕もなく、麻酔銃を撃ち続けた。当たった兵士は次々と眠りに落ちていく。
兵士は発砲して応戦したが、二人はひらりと身をかわし、兵士に麻酔を打ち込んでいく。
アウィルダも隙を突いて兵士の拳銃を奪う。
兵士の一人が彼女の行動に気づき、銃口を向けようとしたが、すぐにナギの麻酔銃に眠らされた。
こうして部屋にいた兵士は全員眠りについた。ナギがマスクをはがし、アウィルダの元に近寄る。
「だ、大丈夫か、アウィルダ」
「ナギ、あなたなのね。会いたかった!」
アウィルダはナギを抱きしめた。
「ああ、でもお前、なんでここにいるんだ」
「この要塞はジェネシスでホルストを破壊しようとしてるのよ。でもフェイズシフト装甲で守られている。
だから戦艦の攻撃で破壊できるよう装置の電源を切ろうとしているとこなの。それにしてもあなたのほうこそ何でここにいるのよ」
なんと恋人も彼らと同じ目的で潜入していたのだった。ナギがアウィルダの質問に答えた。
「おれたちもお前と同じで、フェイズシフトを解除するためにここに乗り込んだ」
「そうなのね。とにかく装置の場所を見つけたの。こっちよ」
アウィルダはナギの身を離すと、先ほど落ちた排気口に入った。
ナギとフリオニールも彼女の後を追って、続けさまに排気口へと入っていった。
17988 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:36:07 ID:???
ユリウス・カエサルのもたらした要塞のフェイズシフト装甲の情報はドレイク提督のもとにも伝えられていた。
「そうか、やはりフェイズシフト装甲で守られているのか。とにかく今は要塞への攻撃をしないほうが良いな。
ネルソン提督に伝えろ。まずは敵艦隊を叩く。敵を陽電子砲の射程距離までひきつけ、打撃を与えるとな」
ネブカドネザルのオペレーターによって指令はネルソンのもとへと伝わった。
「よし。全艦前進」
ネルソン率いるブラックパール級の艦隊が躍り出て、他の艦隊も後に続く。
その様子は敵側にも察知されていた。
「サーハン提督、敵艦隊動き出しました」
「ひとまずは様子を見るのだ。相手の出方を伺うとしよう。
オーガスバーグに伝えろ、モビルスーツの発進準備をするようにとな」
サーハンは艦隊にたいしては待機を指示した。
3時間後、敵艦隊をブラックパール級の射程距離内に捕らえると、陽電子砲の発射準備を指令した。
「陽電子砲、発射準備」
ネルソンの指令がブラックパール級の砲手に伝わる。ディスプレイの照準が敵の戦艦に定められる。
「撃て!!」
陽電子砲の砲口から閃光がほとばしった。
三本の閃光は三隻の戦艦にそれぞれ直撃し、三つの火球が帝国艦隊の中に出来上がった。
「敵、戦艦の射程距離外から砲撃!」
「おのれ、奴らめ。モビルスーツ部隊を発進させろ!さらに全艦隊前進するのだ!」
残りの17隻の戦艦から、ガゼル、ゼノといったモビルスーツが次々と飛び立っていった。
シーザーの乗るガゼルは彼のパーソナルカラーである白色であり、ビームサーベルの代わりにビームランスを装備している。
さらに出力を通常のガゼルより30%強化されているが、その分扱いにくい機体となっている。
「さて、叛乱軍の実力をとくと拝見させてもらおうか」
シーザーは笑みを浮かべ、独語した。ガゼルの赤いモノアイが妖しく光った。
ザフトのMS部隊の出撃は同盟側にも察知されていた。
「敵モビルスーツ部隊出撃!」
ネブカドネザルのオペレーターがドレイクに告げる。
「こちらもモビルスーツで迎撃させろ」
こうして同盟軍の艦隊からもリボーン、オシリス、ハトホルが出撃していった。
ハトホルは両肩に対艦・対要塞用の大出力ビームキャノンを備え、火力を重視したMSである。
その分ビームサーベルを持たず、オシリスより機動力は落ちているので近接戦闘を苦手とする。
ハトホルはユリウス・カエサルにも二機配備されている。
ドレイクの命を受け、ユリウス・カエサルのMSパイロットたちは出撃の準備を整えていた。
今回ナギが不在であるため、バルが部隊長を代行している。
「セシル、いよいよだな」
ボルが13歳の少年パイロットに声をかける。
「ええ。同盟…いや、ぼくらの命運がかかってますからね」
二人はMSの格納庫にたどり着く。
「とにかくお前は要塞攻撃の切り札なんだ。なるべく力は温存するようにな」
「はい」
セシルとボルはそれぞれ愛機に乗り込み、カタパルトまで操縦した。
「セシル・バーンスタイン、リボーン7号機、行きます!」
火力重視に姿を変えたリボーンがカタパルトから射出され、PS装甲の起動によって機体を紅く染めた。
18088 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:37:20 ID:???
ジェネシスの射程距離到達まであと19時間、両軍のMS部隊は交戦を開始した。
まずハトホルのビームキャノンが一斉に火を噴いた。回避に間に合わなかった敵のゼノ数機が直撃をくらい、撃破される。
セシルのリボーンもビームバズーカの照準を敵のMSに合わせる。
「食らえ!」
ビームバズーカから太いビームが発射した。敵のゼノには直撃こそしなかったものの右脚をもぎ取った。
再びハトホルのビームキャノンが斉射され、敵に損害を与えた。
ビーム攻撃を免れた敵部隊は、近接戦を仕掛ける。
双方のビームライフルから放たれた多数の光線が交叉し、宇宙空間に虹模様を描く。
一機のゼノがビームサーベルでオシリスに襲い掛かるが、オシリスもビームサーベルで応戦する。
二本のビームがぶつかり、鍔迫り合いを起こす。
一方のリボーンがビームサーベルでゼノを一刀両断にし、もう一方のガゼルのビームライフルがオシリスを貫く。
セシルのリボーン7号機にもゼノが襲い掛かる。
「レールガンを食らえ!」
腰部のスカートに装着されたレールガンが火を噴く。一方は直撃し大破。もう一方はかわしたものの左腕を失った。
生き残ったもう一方のゼノがビームサーベルで襲い掛かる。
「くそっ、近づけさせるもんか!」
リボーンの頭部のCIWSが弾薬を乱射する。ゼノは横に回避しようとする。
「そこだっ!」
リボーンのビームガンの光線がゼノの胸を貫き、爆発した。
「こ…こいつ、強い!」
リボーン4号機を駆るパイロット、ダークライターは白いガゼルの性能に驚いていた。
リボーンの放つビームはその脅威の機動力により回避され、ビームサーベルで挑んでも今度はビームランスのリーチが行く手を阻む。
「ふん、所詮は伝説の機体を模した人形か。つまらん」
シーザーは自らの持つ高い操縦能力と機体性能で四方八方からビームランスの突きをリボーンに見舞う。
主導権は完全にシーザーのガゼルに握られ、翻弄されるダークライターのリボーン。
ダークライターのリボーンは、知らぬ間に背中からビームランスの刃を受け、爆発の光とともに散った。
「はぁ…これで8機目」
セシルはすでにゼノを8機撃破していた。機体のエネルギー残量も残り2分の1を切っていた。
「なんとかして、敵を撃ち減らさないと…」
すると、ものすごい速さで近づいてくるMSに少年は気づいた。それはシーザーの操縦する白いガゼルだった。
「あれは…ガゼル!でも他のとは雰囲気が違う」
「次はお前だ、紅い人形よ!」
ガゼルはビームランスを振り回し、勢いよくリボーンめがけて振り下ろす。
「くっ!」
セシルは回避行動を取った。リボーンはなんとか回避できたものの、自機の機動力の低下には不満を感じ得なかった。
ガゼルはすさまじい速さでビームランスの突きを見舞う。これも回避するものの肩の装甲がえぐられる。
今度はリボーンの脚部のミサイルポッドからミサイルが発射されるが、ガゼルは回避し、ビームランスで切り落とす。
そしてガゼルがすかさずビームランスで攻撃する。
「くそっ、速過ぎる!」
「なんてのろまな人形だ」
一方は焦った表情で、もう一方はすでに勝ったかのような表情で言った。
18188 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 01:38:10 ID:???
「セシル、助けに来たぞ!」
ボルの駆るオシリスのビームライフルから光線がほとばしり、白いガゼルへと飛んだが、回避された。
「ふん、鼠が一匹きたところでどうにもならん」
ガゼルのビームランスとオシリスのビームサーベルが鍔迫り合いを起こす。
その隙にリボーンのレールガンが火を噴くが回避される。
今度はオシリスのビームライフルがガゼルを撃つが、これも回避される。
だが、このときセシルはガゼルの行動曲線を読んでいた。
「食らえ!」
リボーンのビームバズーカから太いビームが発射した。
ガゼルは回避行動を取ろうとしたが、慣性がついてしまい方向転換に手間取り、ビームによって右手とビームランスを失った。
「ふん、のろまの癖になかなかやるじゃないか」
シーザーは不利と見ていったんガゼルを後退させた。
「逃がすか!」
セシルは退くガゼルに照準を合わせようとしていた。
だが彼は熱中するあまりリボーンのエネルギーの残り残量に気づいていなかった。
ディスプレイからフェイズシフトダウンの表示とともにアラートがなる。
「そんな、フェイズシフトダウン!?」
リボーンはその身体を灰色に変えていた。
セシルはあまりの突然の出来事に気を取られていて、近づいてくるミサイルに気がつかなかった。
「セシル!危ない!!」
通信機からボルの声が聞こえ、はっとするセシル。ミサイルはすでに目の前にせまっていた。
セシルは回避しようとしたが、間に合わず、機体に爆発を飾った。
「わあっ!!」
あまりの衝撃と熱に悲鳴をあげる少年。幸い撃破には至らなかったものの機体は中破した。
その様子はユリウス・カエサルのブリッジからも見えた。
「いやあっ!!」
その様子にエステルは悲鳴をあげた。同時に眼が涙ぐむ。
「そんな…セシル…うそでしょ」
少女は、自分の職務を忘れて一心不乱になっていた。
「うろたえるな!今は職務中なんだぞ!!」
ティーチの怒号が飛ぶ。その声にエステルは我に返る。
「リボーン、まだ生命反応があります」
オペレーターの男が告げた内容に少女は落ち着きを取り戻していた。
(お願い…セシル。何とか帰ってきて…)
今少女にできることは祈ることしかなかった。
18288:2008/08/24(日) 01:45:09 ID:???
投稿規制にひっかかって携帯から書き込んでます
ひとまず全部みたいかたはまとめサイトへお越しください
18388 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 03:30:43 ID:???
「セシル!応答しろ!!」
ボルが悲鳴交じりで叫ぶ。かろうじて生命反応はあるが、セシルは衝撃に耐え切れず気を失っていたのだ。
ヘルメットはひび割れ、額からは血が流れている。
最悪なことに5機のガゼルとゼノがリボーンに襲い掛かってくる。
「セシル!大丈夫か!?」
ブルのオシリスが救援に駆けつける。
だがオシリス2機では多勢に無勢、リボーンを守りきれるものではない。
「ブル、おれが奴らをひきつけるから、セシルを船に運ぶんだ!」
「ボル、お前!死ぬ気か!!」
「もう時間はない、いいから行くんだ!!」
ブルはやむを得ず、中破したリボーンを抱えてユリウス・カエサルへと飛び立っていった。
「ザフトのへぼモビルスーツどもめ、相手はこのおれだ!」
オシリスがビームライフルを乱射し、ゼノ一機を撃ち落す。
残り4機のMSがビームを撃ち、2本がかわされ、1本がシールドに、もう1本がオシリスの左脚に命中した。
「セシルは、セシルはまだか」
ボルは2機のMSを確認したが、まだ収容はされていない。
「うおおおおお!!」
ボルのオシリスがビームサーベルを抜き、ガゼルに襲い掛かる。ガゼルもビームサーベルを抜き、オシリスと斬りあいを演じる。
ゼノの援護射撃がオシリスに襲い掛かるが、オシリスはガゼルから間合いを取って回避する。
「セシルは!!」
再びボルは確認する、2つの機体はなんとかユリウス・カエサルに収容されたようだ。
「よかった…」
ボルが安心したつかの間、ガゼルのビームがオシリスの頭部に直撃し、頭部は大破する。
「しまった」
ボルが呻いた瞬間、4機のMSのビームサーベルはオシリスの機体を貫いた。
「セシル…そしてみんな…なんとか生き延びてくれ…」
ボルの身体は光に包まれた。そしてその光は劫火と化し、ボルを焼き尽くしていった。
18488 ◆ytmn3ZcTbM :2008/08/24(日) 03:33:10 ID:???
「ボル機…撃破されました」
エステルの悲鳴に近い声が、ユリウス・カエサルのブリッジにこだました。
「ボル…リボーンをかばって…」
ティーチは悔し紛れに言ったが、今は悼む暇など無い。
何とか勝利しなければ彼らに明日は無かったからだ。
一方、収容されたリボーンからはセシルが救出され、医務室に運ばれた。
「セシルちゃん!!」
迎えたのはシロマの悲鳴だった。
「まだ死んではいない。だが早く応急処置を施さなくてはならん」
ザイゼンはセシルの応急処置にとりかかった。
そんなユリウス・カエサルにもザフトのMSが数機近づいていた。
「CIWSで迎え撃て!」
ティーチの指令が砲手に伝わる。
「いよいよおれの出番か…絶対にやってやる」
シエロは操縦桿を握り、MSに狙いを定めた。
「この野郎!くたばりやがれ!!」
シエロは勢いよくトリガーを引いた。CIWSの機関砲から弾薬が乱射される。
だがMSは持ち前の身のこなしで回避する。
「当たれ!当たれ!!」
シエロは何度もトリガーを引いた。無数の弾薬が宙を舞い、空間を彩る。
やがて無数の弾薬の一発がゼノに直撃し、その機体を大破させた。
「やった…」
少年は初めて、人を殺した。不良時代は盗みですんだのに、なんか複雑な気分になった。
「いや、やってやる。絶対に生き残ってやる。これは戦争なんだ…」
シエロは気を入れなおし、決意新たに操縦桿を握った。

7時間後、同盟艦隊はコロニー近くまで退却した。帝国も消耗したためか後追いはせず様子見にとどまった。
同盟側の損害は戦艦3隻、帝国側の損害は戦艦8隻である。
コロニー群がジェネシスの射程圏内に入るまで残り12時間、戦いは最終局面へ入ろうとしていた。


第8話に続く。


なんとか書き込めました。
当初は第7話でユグドラシル戦に決着をつけようと思ったんですが予想以上に長くなってやむを得ず分割しました。
第8話でユグドラシル編は完結させる予定なのでご期待ください。
185通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 10:20:28 ID:???
保守
186通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 10:53:30 ID:???
ほす
187通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 11:04:42 ID:???
188通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 12:32:33 ID:???
捕手
189通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 20:49:00 ID:???
保守
190通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 21:20:41 ID:???
191通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 09:09:49 ID:???
保守
192通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 10:25:13 ID:???
保守
193通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 10:31:48 ID:???
194通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 13:02:55 ID:???
195通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 15:52:09 ID:???
保守
196通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 17:35:15 ID:???
>閃光サイ

乙!
なんて良いサイだ。期待

>リボン

乙! 投下早いな。
ボル、本当に志望フラグ立ってたのか……合掌
197通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 17:43:08 ID:???
保守
198通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 18:21:45 ID:???
ほっしゅっしゅ
199通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 18:48:11 ID:???
ほしゅ
200通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 21:11:34 ID:???
保守
201通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 21:21:49 ID:???
なんという密度の保守
202通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 21:42:24 ID:???
保守
203通常の名無しさんの3倍:2008/08/26(火) 19:29:17 ID:???
保守
204通常の名無しさんの3倍:2008/08/27(水) 00:58:37 ID:???
保守
205通常の名無しさんの3倍:2008/08/28(木) 17:10:01 ID:???
保守
206通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 00:43:30 ID:???
保守しとく
207通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 11:26:49 ID:???
期待して待機。
208通常の名無しさんの3倍:2008/09/01(月) 10:00:42 ID:???
さらに保守
209通常の名無しさんの3倍:2008/09/03(水) 22:37:52 ID:???
保守
210通常の名無しさんの3倍:2008/09/04(木) 22:27:04 ID:???
待機
211通常の名無しさんの3倍:2008/09/07(日) 19:03:27 ID:???
保守しとく
212通常の名無しさんの3倍:2008/09/09(火) 21:27:25 ID:???
213通常の名無しさんの3倍:2008/09/11(木) 00:27:59 ID:???
待機!
214通常の名無しさんの3倍:2008/09/13(土) 03:56:14 ID:???
誰もいない
踊るなら今のうち
215通常の名無しさんの3倍:2008/09/15(月) 22:11:35 ID:???
216 ◆DidZGuUWlk :2008/09/15(月) 22:46:23 ID:???
忘れ去られた人惨状

トリ付けずに密かに☆してる
217通常の名無しさんの3倍:2008/09/17(水) 23:26:39 ID:???
218通常の名無しさんの3倍:2008/09/19(金) 17:36:37 ID:???
保守
219通常の名無しさんの3倍:2008/09/22(月) 06:30:36 ID:???
保守
220通常の名無しさんの3倍:2008/09/24(水) 12:47:25 ID:???
保守
221通常の名無しさんの3倍:2008/09/26(金) 15:09:56 ID:???
保守
222通常の名無しさんの3倍:2008/09/28(日) 11:17:04 ID:???
保守!
22388 ◆ytmn3ZcTbM :2008/09/28(日) 17:42:31 ID:???
一ヶ月以上も開けてしまってすみません。
9月から用事で忙しいものでSS製作に手をつけられない状態です。
とにかく時間があれば書いていきたいと思っているので気長に待っていただければ幸いです。
224通常の名無しさんの3倍:2008/09/30(火) 17:33:26 ID:???
>>223
待ってるぜ!!
225通常の名無しさんの3倍:2008/10/01(水) 15:54:34 ID:???
>>223
よかった、やめてなかったんだな。
気長に待ってるよ。
22688 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:27:18 ID:???
1ヶ月以上も待たせてごめんなさい。やっと第8話出来ました。
ユグドラシル篇の完結篇です。それではどうぞ。

木星のコロニー近辺まで後退した同盟軍艦隊は再編を行っていた。
デュゲトルーアン艦隊は帝国の艦隊の攻撃にあい壊滅し、デュゲトルーアン提督は戦死。
残存した戦艦1隻はドレイク艦隊に合流した。また、そのドレイク艦隊も戦艦を1隻失っている。
幸いなことにネルソン艦隊は無事で済み、対要塞攻撃の戦力温存には成功した。
また、MSパイロットの戦死者はボル、ダークライターなどであり、名だたるパイロットを少なからず失った。
現在稼動可能なMSは28機にまで減っていた。リボーン・オシリスとハトホルの比率はちょうど1:1である。
セシルのリボーン7号機も中破し、セシル自身は一命を取り留めたが、ユリウス・カエサル(JC)の医務室で治療を受け、戦場に出られる体勢ではなかった。
その医務室に、あわてた様子で茶髪の少女エステルが駆け込んでくる。
「セシルッ!!」
戦況が小康状態になったこともあり、心配する気持ちを抑えられなかったのだろう。
だが、エステルが見たものは、包帯に巻かれ、酸素マスクをつけた少年の変わり果てた姿だった。
少女の眼から涙があふれる。
「大丈夫、彼は今意識を失っているだけだ」
セシルに付き添っていたザイゼンが告げる。
「本当に治るの?ザイゼンさん」
「今は応急処置を済ませたに過ぎない。本格的な治療はコロニーに帰ってからだな」
エステルはベッドの傍まで行き、自らの両手で屈んでセシルの包帯に巻かれた手を取る。
「良かった…本当に良かった」
溢れていた涙がこぼれ、頬を伝う。隣にいた6歳年下の少女が口を開く。
「お姉ちゃん、あたし信じてるから。セシルちゃんは絶対死なないって」
「そうよね…シロマ」
これで涙を拭いて、とシロマはハンカチをエステルに手渡す。ありがとう、と言いエステルは自分の涙を拭いた。


機動戦士ガンダムSEED Reborn 第8話
凱歌 -Requiem-
22788 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:28:04 ID:???
要塞ユグドラシル内ではナギ・アスカ、アウィルダ・ブロスナン、そしてフリオニールの三人が延々と続く排気管の中を進んでいた。
三人とも四つんばいになって進んでいるのでスピードが出せずにいた。
「アウィルダ、さっきの排気口からフェイズシフトのジェネレータまでの距離はどれくらいなんだ」
「たしか3キロくらいだったわ」
「えーっ、そんなに距離あるんですかぁ」
フリオニールが困惑した表情を見せる。
「こんな臭くて真っ暗な排気管を3キロもすすむなんて、おれ耐えられませんよ」
「いい大人が駄々こねるなよ」
ナギがあきれた顔で突っ込む。下は人気の無い何らかの薄暗い部屋に続く排気口だから、かすかに二人にもナギの表情を確認できた。
「そうだ、こんなこともあろうかとマッチ持ってきたんですよ」
フリオニールがマッチをこすりつけて点火する。
「よせ!空気が薄くなるだろ!!」
ナギが慌ててフリオニールのマッチを持った方の手をはたく。マッチの火が二人の手にあたる。
「あちっ!!」
フリオニールは熱さに耐えかねて思わずマッチを落としてしまった。
マッチは排気口の金網の隙間に吸い込まれるように落ちていった。
「ちょっと、二人とも何やってるの!」
アウィルダが二人を一喝する。
「まさかマッチを下に落とすなんて思わなかったから…」
「これでお縄頂戴になったら船長の責任ですからね」
「そもそもマッチなんて持ちだしたお前のほうがいけないだろうが」
二人の男が口論になりそうなところをアウィルダが制した。
「とにかく急いでジェネレータまで向かわないと…余計に時間との戦いになったわね」
「あとジェネシスの射程まで12時間だ、とにかく進むっきゃない」
三人は真っ暗な排気口の中を再び進み始めた。
フリオニールの落としたマッチはちょうど麻のような物体の上に落ちた。
マッチの火は確実に麻の方へと転移していたのであった。
22888 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:29:04 ID:???
ザフト艦隊提督サーハンの旗艦のブリッジでは、ガゼルを壊されたシーザーが会いに来ていた。
「ふん、ザフト最高のエースパイロットの割には自分の愛機を壊されたそうじゃないか」
「たまにはそういうこともあるさ」
シーザーは済ました顔で受け答える。サーハンが発言を続ける。
「奴らもなかなかしぶとい奴らだ。我らも少なからず損害をこうむった。
だが我らにはユグドラシルある限り敗れることは無い。奴らの終焉は確実に起こるのだ!」
「そうなるように頑張ってくれよ。ああそうだ、別の戦艦のガゼルを借りたいのだがいいかな」
現在彼の白いガゼルは修復作業中である。それまでに繋ぎとして別のガゼルを使いたい考えだった。
「構わんさ。用はそれだけか」
「ああ、それだけだ」
シーザーはブリッジから退出し、シャトルに乗って別のガゼルが使用可能な戦艦に乗り移った。
その戦艦での格納庫に入ると、ガゼルのパイロットがシーザーを出迎えた。
「連絡はすでに伝わっております。どうぞ、わたしのガゼルをお使いください」
パイロットが手をガゼルのほうに向ける。そのガゼルは基本色である緑色であった。
「愛機が使えないのだから仕方ない。背に腹は変えられぬ、か」
シーザーは低く独語した。
先ほどのブリッジではサーハンが何やら思いついたようだった。
「こちらとて先の戦闘で疲労している。全軍への休息と要塞から食料を補給するよう連絡するのだ」
サーハンの支持を受けたオペレーターは要塞への通信回路を開いた。
「補給係は直ちに食糧庫へ向かってください」
サーハンからの通信を受けた要塞側のオペレーターはすばやく指示を出した。
10名ほどの補給係のスタッフが食糧庫へ向かったが、全員とも異変に気づいていた。食糧庫の扉から煙が出ていたのだ。
「ま…まさか」
スタッフ全員に寒気が走った。煙が発生しているということは原因の予想が簡単につくからだ。
彼らは扉を開けた。その直後、彼らが見たものは、燃え盛る炎に包まれる食糧の無残な姿だった。
「そんな馬鹿な!まさか侵入者が!?」
スタッフは大慌てで侵入者検知用のボタンを押した。サイレンが要塞内をこだました。

「何!?侵入者だと!!?」
要塞司令官デントの表情は怒りに燃えていた。
「は…はい、ですが監視カメラの映像では食糧庫を開けようとする人物は一人も映っていませんでした」
「とにかく至急食糧庫を調査するのだ。何か手がかりがつかめるかもしれん」
デント司令官の指示で数十名ほどの調査係が組織され、食糧庫内に展開された。
彼らは隅々まで隈なく手がかりを調べていった。
調査係の一人トンヌラが、何か黒焦げた木の棒を発見した。
「これ、マッチですよ」
「何、マッチだと!すぐに司令官に報告せよ」
トンヌラは急いで司令室に向かい、デント司令官に報告をもたらした。
「火種はそのマッチだろう、おそらく侵入者が補給係に化けて残していったのだ。
前回食糧庫に入った補給係とその責任者は今すぐ処刑する」
デントの処刑発言にブリッジ内のクルーは全員驚いた。
「何を驚く、これも軍の綱紀を正すためなのだ」
30分後、担当した補給係とその責任者は全員処刑された。その中には第一に火種を発見したトンヌラも含まれていた。
22988 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:29:50 ID:???
要塞内の食糧が全滅したとの報告はサーハン艦隊にももたらされていた。
「くっ、叛乱軍め…小賢しい真似を」
サーハンは怒りに震えたが、同時に帝国軍の軍兵は全員飢えたまま戦わなくてはならないことを意味していた。
古来より補給の途絶えた軍隊が勝利した例は無かった。軍隊にとって補給は重要なファクターだからだ。
本国より補給部隊を呼び寄せることもできるが、それを行うにはあまりにも時間がかかりすぎる。
「だがジェネシスさえ射程距離内に入ればこっちの勝利だ、こちらが飢えようが奴らの勝利などありえない」
サーハンはブリッジの窓越しに敵の艦隊をにらみつけ、一秒ごとに怒りの炎をたぎらせていった。

一方、セシル負傷、ボル戦死の報はJCのクルーたちに衝撃を与えた。
JCのCIWS砲手を務めていたシエロも衝撃を隠せなかった。
彼は先ほど医務室で重症を負ったセシルを見舞ったばかりだった。
他のクルーと同じく、シエロもセシルが無残な姿で戻ってくるとは夢にも思っていなかった。
「ボルさんが死に、セシルも当面動けないし、このままじゃユリウス・カエサルが危ない」
彼は選挙区の行く末に憂いを感じていた。だが、今彼に与えられている仕事はCIWSの砲手だった。
シエロは紙コップを握りつぶし、ちくしょう!の声とともに紙コップを床にたたきつけた。
「確かに砲手も大切な仕事だけど…だがおれに出来ることはこんなんじゃないんだ…」
彼は休憩室の座席に腰を下ろし、考え事を始めた。
休憩室は沈黙に包まれ、時間が刻一刻と過ぎていく。
シエロは勢い良く立ち上がった。
「そうだ、あれがある!」
少年の眼は生き生きと輝いていた。

JCのブリッジではエステルが複雑な表情で入ってきた。それを心配したティーチが声をかける。
「どうしたんだエステル、坊やは大丈夫だっただろ?」
「確かに大丈夫だったけど…あんな姿…見たくなかった…」
エステルは席に着いたが、いまだ表情は複雑なままだった。
「でも、生きてて良かった」
「お前が元気出さなきゃ医務室でお寝んねしてる坊やだって良くならんぞ」
ティーチはもてる限りの表現でエステルを励ました。
今一人でも士気が下がってしまったら作戦行動に支障がでる。黒髭の副船長はどうしてもそれを避けたかった。
「はい、わかってます!」
エステルは気を取り直し、表情を変えた。重傷を負った少年のためにも頑張ろう、と決意を新たにした。

一人の盟友を失い、遺されたバル、ベル、ブルの三人は悲しみにくれていた。
「くそっ…ボルのやつ…早死にしやがって」
「もう一緒に酒も飲めねえってのかよ」
目を瞑りながらバルとベルはそれぞれ独語したが、ブルは目を開いた。
「あいつは、セシルのことをだれよりも認めていた…将来のために彼を守ったんだ」
「そんなことわかってるさ!」
バルが大声を上げた。今まで付き合いをともにした彼らにとって周知の事実であった。
「あいつはセシルに誇りを持っていた。そしてあいつはあいつなりの誇りを持って死んだ。
おれがボルでもセシルのためにしんがり役を引き受けていただろう」
ベルが言葉を発する。いつのまにか彼の表情は生き生きとしたものになっていた。
「だからおれたちはおれたちの誇りを持ってこの戦争に勝つ。
このまま悲しみにくれてお陀仏になっても天国のボルが浮かばれないだろうよ」
「やつらに教えてやろうぜ、たとえ腕一本なくなっても片腕と両脚が残ってるってな」
「絶対勝って、勝利を天国のあいつにささげよう!」
三人は拳をあわせて大声を上げた。そして格納庫へと走り出した。
23088 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:30:53 ID:???
ユグドラシルの射程圏内到達まであと9時間、部隊再編と休息を済ませた両軍は再度進軍した。
数の上では帝国軍の優勢なのは明らかだった。同盟軍は残り少ない戦力で勝利に導かなくてはならなかった。
「背後はコロニー群、まさに背水の陣か。とにかくこの一戦で同盟の命運が決まる」
ドレイク提督はそうつぶやくと、全艦のMSを全機出撃するよう指令した。
残存した4隻の戦艦、そしてJCからモビルスーツが次々と飛び立っていく。
JCからはバル・ベル・ブルの三人が搭乗するオシリスが飛び立っていった。
「よし、ボルの弔い合戦だ。奴らを一人でも多くビームの餌食にしてやるんだ」
一人の構成員を失ったオシリス・カルテット改めオシリス・トリオはなお士気が高かった。
死んだボルの敵討ちという意識が彼らにモチベーションを与えているのだろう。
30分後、両MS部隊は交戦した。双方から放たれたビームが交差し、宇宙空間を彩った。
5分後、バルが1機目のMSを撃破する。
「よし、1機目」
続けさまに彼らのオシリスは巧みな連係プレイでガゼルを撃破する。
帝国側もガゼルが1機のオシリスを撃破する。搭乗していたのはシーザー・オーガスバーグだった。
交戦開始から1時間、損害は帝国軍のほうが多かった。あきらかに帝国軍の動きが悪いように感じられた。
「あいつら、いつもの強さじゃないな。いったいどうしたんだ」
不審に思ったベルが独白する。
「とにかく残り戦力の少ないおれたちにとって逆転のチャンスだ」
ブルのオシリスはビームサーベルを構え、ゼノに斬りかかっていく。
「くっ、やはり飢えたままではきついか」
シーザーですら苦々しさを隠さずにはいられなかった。彼も同様に飢えていたが、持ち前の操縦技術でやっと凌げる状況だった。

排気管内を進むこと3時間、ナギら三人はさすがに疲労を感じるようになってきた。
「一体いつまで真っ暗な排気管を進むんですか、もう疲れましたよぉ」
「何弱音を吐いてるんだ、おれたちが頑張らなきゃ同盟は滅ぶんだぞ」
ナギは叱咤したが、彼とて疲労を感じずにはいられなかった。
「見て、光よ」
アウィルダが前方の光に気づいた。一同が進むとそこには排気口があった。
「こ、今度こそジェネレータのある部屋なんでしょうね…」
フリオニールの発言を尻目にナギとアウィルダは恐る恐る排気口を覗く。
そこはなんかの機械室で兵士が二人ほど見張っているようだった。
「こ、これよ。ついにジェネレータ室にたどり着いたのよ」
アウィルダは歓喜しながらも、敵に気づかれないよう小声で話した。
「よし、まだ麻酔銃は残ってるな。ひとまず見張りを眠らせよう」
ナギの小声とともにアウィルダが静かに排気口の金網を外し、ナギとフリオニールがそれぞれ見張りに麻酔銃を撃った。
「今だ、降りよう」
三人は続けさまに排気口から降り、ジェネレータ室に降り立った。
「いやぁ、久しぶりに新鮮な空気を吸えた」
フリオニールは深呼吸して部屋の空気を味わった。
「のんびりしてる暇は無い、爆弾を仕掛けるんだ」
三人はそれぞれ場所を分担して爆弾を仕掛けた。爆弾は当然巧妙な位置に仕掛けられた。
30分かけて、彼らは爆弾の設置を完了した。
「あとはリモコンのボタンを押すだけで爆発するわ。ひとまず排気口に戻って要塞の脱出ポッドまで向かいましょう」
「ええっ、また排気管の中を進むんですか?」
フリオニールは嫌がるような表情を見せた。
23188 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:31:37 ID:???
一方、ユリウス・カエサルの格納庫ではある異変が起きていた。ナギのリボーンが勝手に動き出したのだ。
「誰だ!勝手に乗ってるやつは!」
「よせ!早くリボーンから降りるんだ」
整備士たちの制止にも聞く耳を傾けず、リボーンは明らかにぎこちない動きでカタパルトへと向かっていった。
「副船長、大変です、リボーン3号機が勝手に動き出しています!」
「そんな馬鹿な」
一同は驚きの表情を隠せなかった。
「まさか、あの坊主が?エステル、医務室にTV電話をつなげ」
ティーチの指示を受けたエステルは直ちに医務室に回線をつないだ。
「セシルはまだ寝たままだ。そもそも動ける状態じゃない」
ブリッジからの応答に応じた医師ザイゼンはセシルの外出を否定した。
TV電話のカメラ越しにはベッドによこたわるマスクをつけた少年の姿があった。
「坊主じゃないのか…では一体誰が?」
ティーチが首をかしげると突然砲術長カイア・アッディンから連絡が入った。
「大変だ!シエロの奴がいねえ!!」
「な、何だと!!?」
ブリッジ内はさらに驚きに包まれた。
「おそらく、あのリボーンにシエロが…」
「エステル、シエロの馬鹿野郎を止めるんだ!」
「は、はい!」
エステルは急いでリボーンへの通信回路を開いた。
「シエロ、馬鹿なことはやめて!早くリボーンから降りなさい!!」
「うるせえ!自軍がピンチだってのにじっとしてられるか!!」
「でもあなたはまだモビルスーツの訓練もしてないのよ!それに操縦の難しい船長の機体に乗るなんて!」
「関係ないね!気合でなんとかなるさ!!」
シエロはエステルの説得に応じようとはしなかった。あろうことかシエロはリボーンのスラスターをふかしたのだった。
「いかん!カタパルトを閉鎖しろ!!」
だが、ティーチの指令もむなしくすでに手遅れだった。リボーンは勢い良く飛び立ち、スラスターの熱によってカタパルトは融解していた。
「くそっ、あの馬鹿」
ティーチは座席に拳をたたきつけた。
23288 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:32:34 ID:???
「来るならきやがれ、ザフトどもめ!!」
かろうじて移動とスラスターのふかし方がわかったものの、それ以外はまったく素人同然のシエロだった。
しかもパイロットスーツを着用しておらず、万一のことがあれば生存率は低い。
すると、前方に2機のゼノが接近してきた。2機ともビームライフルを構えている。
「て、敵だ。武器は…武器はないのか!」
シエロはコンソールを見たが、ボタンが多すぎてどれがどれなのかわからなかった。
当然シエロはフェイズシフトの起動など知る由もなく、敵の攻撃が一発でも当たれば大破は免れない。
「ええい、このスイッチだ!!」
シエロが偶然押したスイッチはビームライフル装備用のスイッチだった。
「やった、武器を装備できたぞ。くらえ!!」
シエロは操縦桿のトリガーを引いた。ビームライフルからビームが放たれるが、敵機にはかすりもしなかった。
「くそっ、当たれ!!」
敵機を狙いもせずそのままがむしゃらにトリガーを引き続けるが、いずれのビームも虚空を切った。
「なんだこいつ、狙いがでたらめすぎるぞ」
「こいつひょっとして新兵か?よし、やっちまおうぜ」
ゼノのパイロットは照準をリボーンに定める。
シエロの撃ち続けたビームライフルはついにエネルギー切れを起こしたのだった。
「エ…エネルギー切れ!?くそ、どうすれば」
シエロは何かいいボタンがないか必死に探し始めた。
一方、バルのオシリスはエネルギー補給のためJCに着艦していた。
「な、何だこりゃあ」
バルは融解したカタパルトの光景を目撃していた。幸い機能停止するほどの深刻なダメージは追っていなかった。
出迎えたのは緊迫した整備士の言葉だった。
「大変だ、バルさん。シエロの奴が勝手に船長のリボーンを!」
「な、何だと!?急いで連れ戻しにいく」
補給を済ませたバルのオシリスは再び宇宙へと飛び立った。
23388 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:33:23 ID:???
シエロは敵機から銃口を向けられていることに気が付いた。
「や、やられる!!」
シエロは操縦桿を横に倒す。同時に1機目のゼノからビームが放たれる。
「うわあああ!!」
あまりにも横深く倒しすぎたため、ピーキーな操縦性のリボーンでは急激なGがかかった。
「と…止まれ…」
シエロは操縦桿を元に戻す。リボーンは減速するも慣性がかかっておりすぐには止まらなかった。
だが、もう1機のゼノのパイロットはこの瞬間を逃さなかった。
「いただき!」
ゼノからビームが放たれる。そのビームはリボーンの左腕を貫通した。
「うあっ」
爆発の衝撃にコックピットがゆれ、シエロは衝撃に振り回される。
フェイズシフトを切っていたためか胸部の装甲は爆発の熱で融解していた。
「く…くそっ…」
シエロは思わずスイッチを押した。リボーンは右手でビームサーベルを握った。
「よし、とどめだ。ビームサーベルで一刀両断にしてやる」
2機のゼノはビームサーベルを構え、リボーンに襲い掛かる。
「お…おれはこんなところで死ぬのか…」
左腕を破壊され、さらに2対1での絶望的な状況の中、シエロは死を覚悟した。
ゼノのビームサーベルの刃がリボーンに迫り来る。
だがシエロはその刹那、自分の意識が何かに支配されるような感覚を覚えた。
すると、彼は無意識のうちに操縦桿とペダルを操作していた。
シエロが気づいた時には、リボーンの背後にはゼノの残骸が漂っていた。
「おれは一体どうしたってんだ。なんで敵の機体が破壊され…」
すると、リボーンが再びゆれ、今度は後ろに引っ張られる感覚を覚えた。
シエロが後ろを振り向くと、そこには1機のオシリスが背後から抱えていたのだ。
リボーンの無線から通信が入る。
「この馬鹿野郎!そんなに死にたいのか!!」
声の主はバルだった。彼はリボーンに乗ったシエロを連れ戻しにきたのだ。
「みんながピンチだってのに、一人黙ってられるか」
「とにかく言い訳は艦内で聞く。ひとまず船に戻るぞ」
23488 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 03:34:17 ID:???
ホルストがジェネシスの射程距離に入るまでついに1時間を切った。
兵数の少ない同盟軍と飢えた帝国軍の艦隊・MS戦は膠着状態に陥っていた。
「ふん、戦線が膠着状態になるにせよあと1時間で奴らの運命は終わる」
だがサーハン提督はすでに勝利を確信していた。
だが、突然背後から陽電子砲の光がザフトの戦艦を貫いたのだった。
「8時方向から敵襲!」
「な、何者だ!奴らの援軍なのか!?」
さらに陽電子砲の光が放たれ戦艦がもう1隻破壊された。
その正体は、ブラック・フラッグの海賊船ギャリー号だったのだ。
「海賊ブラック・フラッグ、只今参上!この間の借りを返しにきた!!」
船長キッドは座席から立ち上がりザフト艦隊への突進を指令した。
「あれは、ブラック・フラッグの海賊船です」
「ええい、モビルスーツ部隊の4分の1を仕向けてあの海賊を沈めろ!」
対同盟戦線から4分の1ほどのMS部隊が離脱し猛スピードで海賊船へと向かった。
「野郎ども、ブラック・フラッグ海賊団の真の恐ろしさを思い知らせてやるんだ!!」
ギャリー号のローエングリンが三度火を噴き、敵部隊数機が蒸発した。
さらにギャリー号の全砲塔がフル稼働し、次々とMSを撃ち落としていく。
「ローエングリン、撃てぇ!!」
ローエングリンの四度目の斉射は、ザフトの戦艦を貫いた。だがそれは艦隊の旗艦だったのだ。
「ぐわああああ!!て…帝国万歳!!」
旗艦の爆発とともにサーハンは宇宙の藻屑となった。
だが敵の艦隊・MS部隊もギャリー号を確実に傷つけていったのだ。
「Dブロック破損!」
「Fブロック破損!」
「ローエングリン破損!もう使用できません」
オペレーターの悲鳴がブリッジにこだまする。
「この船の命運はついた、もうおしまいだ」
副船長が悲壮感あふれる表情でキッドに尋ねるが、キッドは笑った。
「ならばあの要塞に進路をとる」
「まさか、船長…特攻を!?」
「そのまさかだ」
キッドの指示により、手負いのギャリー号は最大船速で要塞へと突進した。
「世界を…よろしく頼んだぜ…ナギ・アスカよ」
ギャリー号は要塞の外壁に突き刺さった。大爆発が要塞を飾り、大きな穴が開けられた。
23588 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 08:06:37 ID:???
その様子をティーチはJCのブリッジから眺めていた。
「あいつらは真の海賊だ。自由を掲げ、自由に従い、自由の元に死んだ」
ティーチは目を瞑り、ささやかな黙祷をささげた。
「あたしたちのために……ありがとう、キッド船長、ブラック・フラッグのみなさん」
エステルも小声で亡くなった彼らに感謝した。
ティーチはかっと目を開いた。
「フェイズシフト装甲は解除されたはずだ。タンホイザーと主砲を要塞めがけて連射するのだ!」
一方、ドレイクもその光景を見逃さなかった。
「攻撃が効いた!?今がチャンスだ。あと10分しかない。要塞攻撃部隊はすべてあの要塞に集中攻撃せよ!」
ブラックパール級全艦とハトホル全部隊は要塞に総攻撃をかけた。さらにJCのタンホイザーも要塞に向けて放たれる。
無数のビームの光が太い虹を描き、そのつど要塞を爆発で飾る。
だが要塞は以外に堅くなかなか爆発にいたらなかった。
ジェネシス発射まで残り1分を切った。同盟軍は未来のためにビームを撃ち続けた。
残存した帝国艦隊とMS部隊はすでに戦意を失い、エネルギーも切れ、同盟軍の猛攻をただ眺めるのみだった。
「あと10秒」
ジェネシスの砲口に膨大なエネルギーが集中する。
「これが最後のタンホイザーだ、くたばれザフトめ!」
ユリウス・カエサルのタンホイザーが最後の光を放つ。その光は今までよりも太く、激しく、そして美しく見えた。
陽電子の光の龍は、運命のカウントダウンとともに要塞に迫り、開けられたトンネルを潜り、炉心に食らい付いた。
「0!」
ユグドラシルは大爆発を起こした。その爆発はあたかも超新星のようにまぶしく、巨大なものだった。
「やった…やったんだわ…。あたしたち…勝ったんだわ!!」
エステルが歓喜の表情でマイク付きヘッドホンを宙に放り投げる。
「そうだとも!我々の大勝利だ!!」
ティーチの猛々しい歓声がブリッジ内に響く。その声は艦内放送を通じて全艦内に伝わり、クルー全員歓喜の熱狂を上げた。
「セシルちゃん、あたしたち勝ったのよ!今度も生き残れたのよ!」
医務室にてシロマは寝たきりのセシルに思わず抱きついた。
「こらシロマ、かれはまだ治ってないんだから安静にさせてあげなさい」
父のザイゼンはシロマのはしゃぎぶりを諭したのだった。
「ボル、仇はとったぜ」
バル・ベル。ブルはオシリスのコクピットから敵艦隊が撤退するのを確認できた。

「ふん、我々の大敗か……」
敗走するザフト艦隊のさなかで、生還したシーザーはつぶやいた。
この戦争で、ザフトは全兵力の6割を失った。このような歴史的な大敗は以前にも例が無かった。
シーザーは提督代行として艦隊の帰還を指揮していた。
「提督代理、進路はどちらへ?」
「もちろんアプリリウスに決まっているだろう」
作戦の失敗でなんらかの軽くは無い処罰は受けるだろう…シーザーは覚悟した。
23688 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/03(金) 08:09:00 ID:???
「…そういえば、船長は?」
ユリウス・カエサルのブリッジで、男のオペレーターが何気ない一言を放った。
「まだ帰ってきてないな…何の連絡もよこしやしない」
ティーチはスクリーンを眺めた。
「もしかして、戦火に巻き込まれたんじゃ…」
ブリッジのクルーたちに悪い予感が蔓延しはじめた。ナギが死んだ可能性が浮上しつつあったのだ。
「SOS信号を発信する宇宙船を確認、形状から察するに脱出用のポッドと推測されます」
男性オペレーターが状況を告げた。
「よし、ポッドを回収しろ」
ティーチの指示でポッドは回収された。そしてそのポッドから人が出てきた。
「ふぅ…ようやく帰れたぜ。やっぱり我が家が一番だな」
出てきたのは船長ナギ・アスカ、フリオニール、そしてアウィルダ・ブロスナンの三人だった。
「船長、よくご無事で…」
ブリッジから出迎えたエステルが接近する。
「当たり前だ、このおれたちが死ぬわけないだろ」
「でも結構大変だったんだよな。なんせ臭いわ真っ暗だわで」
フリオニールが苦労話を自慢した。
「何はともあれ、無事でよかった」
ティーチが安堵の表情で胸をなでおろす。
「ナギ、これでやっと二人で愛を育められるわね」
「ああそうだな。帝国の奴らも疲弊して当面戦争は起こせそうにないだろうしな」
ナギとアウィルダは微笑んだ。そして回りからも笑いが起こった。


To be continued. 第9話に続く。


以上、第9話でした。前回からブランクが開きすぎたせいか所々で設定忘れ気味になってるかもしれません。
次回は帝国内の描写をやろうと思います。投稿時期は都合により未定です。気を長くしてお待ちください。
237通常の名無しさんの3倍:2008/10/03(金) 18:13:24 ID:???
GJ!
やっぱりシエロ飛び出したかw 無意識種割れキタ
セットした爆弾は特攻と同時くらいに爆発したのかな?
食糧炎上ワラタw

忙しそうな中投下乙
23888 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 04:20:59 ID:???
昨日は休みだったので一日かけて第9話を完成させました。それではどうぞ。
今回はドイツ語が多用されてます。(といっても少しかじった程度ですが…)意味はgoogleなどで調べてください。


C.E.156年――――
雨の中を走行する一台の黒い車があった。
「坊ちゃま、今日の夕食は何にいたしますか」
車を運転する初老の男性が青年貴族に尋ねる。
「そうだな、カレーライスがいいな。大好物だしね」
青年は済ました顔で答える。
「坊ちゃま、仮にも帝国の貴族ともあろうお方がそんな庶民的な」
「なんだい、貴族が庶民的な食事をしちゃいけないのかい?」
「坊ちゃまがそこまで言うのでしたら、今日はカレーにいたしましょう」
青年が窓を覗く。するとあるものに気づき、初老の男に止めるように言った。
二人は車から降りて、先ほどの道端に行くと赤子が放置されていたのに気が付いた。
「これはひどい。生まれて間もない赤子を放置して雨にさらすとは」
「坊ちゃま、どうやら捨て子のようです」
「決めた、わたしの養子として育てることにしよう」
青年の決断に初老の男は驚いた。
「ぼ、坊ちゃま!見も知らずの捨て子を拾うなど!それにこのあいだ女児が生まれたばかりではありませんか!」
「だがせっかく生きるために生まれたのに放置されて餓死するのはあまりにもかわいそうだろう。
だから我が家で育てることにする。ん?なんか手紙がはさんであるぞ…わたしたちはもう駄目です。
どうか徳のある人、この子をわたしたちの代わりに育ててください。カール・ハビフィツモント…」
後日、ハビフィツモント夫妻の死体が見つかったという報道があり、青年を驚かせた。
青年はなにか思い当たる節があり、ハビフィツモントの家族構成を調査した。
「ハビフィツモント一家は夫はカール、妻はテレジア、夫の父がアドルフで夫の母がメイリン…。子供以外はみんな亡くなっている…か」
帰宅すると、彼は二つの乳幼児用ベッドのある部屋に向かった。ベッドには二人の赤子が眠っていた。
「クララ、そしてマリウス、仲良くするんだぞ…」


機動戦士ガンダムSEED Reborn
第9話 内憂 -Fur Ihre Augen nur-
23988 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 04:24:54 ID:???
C.E.173年6月――――
帝都アプリリウスでは軍人の処罰が行われた。
シーザー・オーガスバーグはFAITH剥奪の上オクトーベルの基地司令官に左遷させられ、ユグドラシルの機動要塞化を提案した技術士官は銃殺刑に処せられた。
皇帝フリードリッヒは以外にしぶとく抵抗する同盟に業を煮やしていた。
「奴らめ、ユグドラシルを破るとは…」
皇帝はバルコニーに出て、アプリリウスの市街を眺めていた。
居住地であるハプスブルク宮殿はバロック様式の建造物で、今まで現代的な街並みだったプラントに初めてできた近世ヨーロッパ風の建物である。
帝政初期には「プラント・ルネサンス」と呼ばれる建築様式の復古運動が起こり、貴族の邸宅のほとんどはバロック様式やゴシック様式などがほとんどであり、中には市街地を近世ヨーロッパの都市そのものに作り変えた貴族までいる。
「今すぐ制裁したいところだが我が軍も大変な損失をこうむった。今のところは泳がせておくことしかできぬか…。
それにしてもアウグストにはかわいそうなことをした。だが我が帝国のためにはやむを得ぬ」
一人の侍従が恭しく皇帝に近づく。
「陛下、ハインライン設計局局長ラルゴ殿が謁見を申し出ております」
「そうか、今すぐ行く」
皇帝は部屋の中に入り込んだ。

「ラルゴ局長、汝の用件は何だ」
謁見の間にて、ラルゴは皇帝に話しかけた。
「ははっ、例のモビルスーツの件、開発度70%に達しております」
「そうか、余の専用機だからな。余にふさわしい最強の機体を期待しておる」
「もちろんですとも。100年前の大戦で使われたロストテクノロジー”ドラグーンシステム”の復元に加え、
ある新システムの開発も進んでおります」
「その新システムとは何だ」
「ナノマシン理論による自動修復システムです」
「ほほう、ナカマツ博士の理論か。彼はナノマシン研究の第一人者と聞いておる」
皇帝は興味を示した。ナノマシンは現在もっとも注目されている技術だった。
もしナノマシンの技術を採用した兵器が実用化すれば、一気に軍事力は飛躍的に倍増すると目されている。
「ええ、たとえ腕を切られてもナノマシンにより機体を再構成する画期的なシステムです」
「完成を楽しみにしておるぞ」
皇帝と技術仕官の謁見は終了した。
24088 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 04:25:28 ID:???
プラント帝国首都アプリリウスはプラント建国以来の首都である。
共和制から帝政になった今も首都は変わらない。
変わったことと言えば大昔の大戦で活躍した英雄にちなんだ広場が作られたり、最高議会ビルがハプスブルク宮殿に建て替えられたりしたくらいだった。
プラントに無数にあるの広場の一つ、クライン広場は共和制時代の政治派閥クライン派を記念して作られた広場である。
ハプスブルク宮殿の正門から500メートル離れた距離に位置し、貴族階級などの待ち合わせなどに良く利用される場所となった。
「これが、”四英雄”の一人、ラクス・クラインの銅像ね」
噴水の中央にたたずむ巨大な女性の銅像。
それを見つめる緑色のドレスを身にまとった少女は貴族の令嬢を思わせるたたずまいをしていた。
「ええ、100年前、歌姫と呼ばれ国民に慕われていたそうです」
少女の隣にいる少年は真紅色の長髪を持ち、後頭部で髪を縛っていた。
「そして、何よりもコーディネイターとナチュラルの融和を実現した張本人」
「父のシーゲル・クライン氏の遺志をついでナチュラルとの交配を推進し、プラント国民の出生率低下を解決したとも聞きます」
昨今のプラントの発展と膨張はナチュラルとの婚姻によって出生率の増加したところが大きかった。その代わり能力は初期の世代より低下しているとされる。
そのため質の低い人材が少なからず社会に蔓延しC.E.100年代から140年代までの社会の混乱を招くことにもなった。
「そういえばクララ様、今日は皇帝陛下主催の舞踏会でしたね」
「マリウス、あなたは参加なさらないの?」
「ぼく…いやわたしは貴族ではありませんから参加資格が無いのです」
赤髪の少年、マリウス・ハビフィツモントはフェブラレンハーフェン伯爵家に仕える侍従である。
当主のエーリッヒと娘クララが今日は舞踏会に出席するためその護衛として正門まで同行している途中だった。
ちなみにマリウスとクララは同い年の17歳であった。
「…様付けや敬語などいい加減やめて」
「はい?」
「わたしたち、乳児のころから一緒に育ってきた仲でしょう?」
「ですが、わたしは平民の侍従、貴族のご令嬢たるあなたを呼び捨てするわけには…」
このとき、マリウスにはクララの真意がわからなかった。目上の者に礼儀を尽くすのは当たり前だと彼は考えていた。
なぜ彼女が様付けや敬語をやめるように言うのか、彼には理解できなかったのだった。
「エーリッヒ…コムト…ヒーア」
黄金色の小さな球体が跳ねる。フンデルトという名のロボットで、クララが10歳の頃に父から誕生日プレゼントとしてもらった物である。
「あ、お父様」
「クララ、マリウス、待たせたな」
エーリッヒ・フォン・フェブラレンハーフェンはフェブラリウス・ファイブの壮年領主で、今年で38歳になる。
20歳で父ヘルムートが亡くなったため伯爵家を相続し、18年にわたってフェブラリウス・ファイブを統治している。
「そろそろ舞踏会の時間ですね、伯爵」
赤い髪の侍従が主人に尋ねる。
「もうそんな時間か。じゃあ宮殿に行くとしようか」
「はい、お父様」
三人は広場をあとにした。噴水の中央に立つ銅像は彼らを見送るかのように、静かにたたずんでいた。
24188 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 04:26:13 ID:???
「では、わたしはクライン広場でお待ちしております」
「また後でね、マリウス」
正門前で見送る少年にクララは微笑を投げかけた。
「行こう、クララ」
父と娘が正門に入るのを確認すると、マリウスは先ほど来た道を引き返した。
「…クララ様、あなたほど美しいお方は今までに見たことが無い。だがぼくは一介の平民。階級の違う者同士が結ばれることなどありえない…」
知らないうちに本心を口に出してしまったことにマリウスは気づき、恥じた。彼は置かれている立場をわきまえていた。
どう逆立ちしても一度作られた階級の壁を越えることなどできない、この時彼はそう思っていた。
「マリウス…ヴァルテット…ビッテ!」
フンデルトが飛び跳ねながら追いかけてくる。マリウスがそれに気づき振り返る。
「あはは、ごめんよフンデルト」
マリウスは両手で黄金色の球体を抱えあげ、再び広場のほうへと歩き始めた。
夕日の橙色の光が辺りを包む中、少年は再びラクス・クラインの銅像とあいまみえる。
(ラクス・クライン…今わが国の民は政府の圧政で苦しんでいる。もしあなたが現代に生きていたらどうなされるのか…)
マリウスは心の中でつぶやいた。彼自身も政府のやり方にはそれなりの不満を持っている。
だが口に出して言えば何者かに聞きつけられ、通報されて投獄されるかもしれない。
「舞踏会が終わるのはたしか18時半ごろだったはず…今は17時、市街を散策して時間をつぶそう」
アプリリウスの現代的なビルが林立する市街は17時になっても活気に満ちていた。
勤務時間を終え帰宅するサラリーマン、道端で音楽を演奏する若者、ファーストフード店に群がる客の群れ、さまざまな人物模様が描かれていた。
「帝国の時代になっても、街の雰囲気は変わらないんだね」
小さい頃に見た子供用の図鑑に載っていた100年前のアプリリウスの市街とほとんど変わらないことを少年は確認した。
「すいません、今クイズ番組の企画で一般人を対象にした取材をしているんですが…」
テレビ関係者と思われる若い女性が近づいてくる。
「結構です。ぼくはそういうのは興味ないんで…」
マリウスは断り、再び街道を歩き始めた。
しばらくすると、前に4人組の少年のグループが現れる。
「おいお前、金だせよ、金!」
少年の手にはナイフが握られている。これが話に聞くかつあげか、とマリウスは思った。
「お前たちにだす金など無い」
すりぬけようとするマリウスを少年の一人が行く手を阻む。
「おいおい、シカトすんじゃねえよ」
その少年はへらへら笑っている。マリウスにとってとてつもなく不愉快だった。
「見るからに金もってそうな格好しやがって、金出さないと痛い目にあうぜ」
「そんなに欲しければ力ずくで持っていくんだな」
少年たちはマリウスの反応にいきり立った。
「生意気な奴め、お前らこいつボコボコにしようぜ!」
マリウスは手に持っていたフンデルトを地面に置く。
「フンデルト。ここは危ない、離れてろ」
「マリウス…ゼイエン…ジー…フォルジヒティッヒ…」
フンデルトは距離を置き、不安そうにマリウスを見守っていた。
24288 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 04:27:22 ID:???
ハプスブルク宮殿の大広間では、貴族たちの舞踏会が始まろうとしていた。
大広間は豪奢なシャンデリアが吊り下げられており、壁にはオーストリア皇帝フェルディナント一世を始め、歴史上の王の絵画が多数飾られている。この中に贋作は一つも無いとされている。損傷を防ぐためか絵画はガラスで防護されている。
皇帝フリードリッヒの席の隣では、プラント一の大貴族ジャン・ロベール・ド・アントワネット公爵が開始を待ちわびている。
クララの前に一人の青年が現れた。
彼の名はカルロスといい、ロレンソ・デ・スカラマンガ伯爵の息子である。
「フロイライン・フェブラレンハーフェン、あなたと踊れることができるなんて光栄だ」
「…よろしくお願いいたしますわ」
クララとカルロスは手を取り合った。カルロスは嬉々とした様子だったがクララはどこか不満げのあるような表情だった。
オーケストラの一団が音楽を奏ではじめ、貴族たちも音楽に合わせ踊り始めた。
クララとカルロスも、軽やかなステップで大広間を回る。
その様子を端で見ていたエーリッヒに中年の男が近づく。
「これはこれはフェブラレンハーフェン伯、久しぶりだな」
「…スカラマンガ伯」
スカラマンガ伯爵はディセンベル・シックスを治める領主である。彼は貴族の中でも農奴を相当ひどくこき使うなど、エーリッヒは余り良い印象を持っていない。
「ところで我が息子カルロスと君の娘はお似合いとは思わんかね」
「んまあ…そのようですな。だが…」
「だが?」
「あくまで決めるのは彼ら自身です」
スカラマンガは高笑いした。エーリッヒの言いたいことをすぐに見抜いたからである。
「恋愛感情など愚民の思考だよフェブラレンハーフェン伯、貴族にとって子息の婚姻はすべて当主が決める」
「ですが見も知らずの夫婦がうまくいくとは思いませぬ」
エーリッヒは舞踏に勤しむ貴族たちに視線を向けた。彼としては娘の意思を尊重したい考えだった。
「とにかく一考はしておきましょう。失礼」
一声かけ、エーリッヒはその場から離れた。話の途中で尿意を感じたからである。
「ふん、目障りな奴め。いつでも伯爵の地位にいられると思うなよ」
スカラマンガは低く笑った。彼もエーリッヒのことを気に入らなかったからである。
やがて日が沈み終了時刻の18時半を迎えた。皇帝フリードリッヒが高らかに声を上げる。
「今日も素晴らしい舞踏会であった。次回も同じかそれ以上になるよう期待しているぞ」
貴族たちが一斉に帝国万歳、皇帝万歳の声を上げる。たとえ本心でなくても形では言っておくのが常識であった。

「マ…マリウス!」
舞踏会を終えたエーリッヒとクララを迎えたのは服装を乱したマリウスだった。クララが驚きの声を上げる。
「伯爵、クララ様、お待ちしておりました」
「マリウス、一体何があったというの!?」
「…何でもありません」
クララは尋ねるが、マリウスはそっけない表情で答える。
「本当にそうなの?」
「本当です」
念を押してみたものの、同じ返事を返すマリウスであった。
「マリウスがそういうのだから本当だろう。とりあえずレストランに行って夕食をとろう」
エーリッヒたち三人とフンデルトはリムジンのところまで向かうため、待ち合わせ場所のクライン広場を後にした。
クライン広場の噴水はライトアップされ、ラクス・クラインの銅像を照らしていた。
一方アプリリウス市街では、マリウスを襲った少年グループが警察に連行されていた。彼らはひどい怪我を負っていた。
「あいつ…強え」
「…一体何なんだよあいつ」
彼らは全くといっていいほどマリウスに歯が立たなかった。
それもそのはず、マリウスはエーリッヒとクララを護るため幼少の頃から格闘技の手ほどきを受けていた。
今まで貴族でありながら、平民である自分を息子のように育ててくれたエーリッヒの恩に報いるためにも、彼には強くなる理由があったのである。
24388 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 04:28:18 ID:???
エーリッヒ・フォン・フェブラレンハーフェンの領地フェブラリウス・ファイブはフェブラリウスきっての貿易都市である。
そのため、現地ではフェブラレンハーフェン(フェブラリウスの港)と称される。フェブラレンハーフェンの家名もそこに由来する。
また、ザフトの軍事基地もフェブラレンハーフェンに置かれている。
エーリッヒは数少ない領民を大切にする領主であった。なるべく贅沢を避け、領民たちの負担を作らないよう心がけた。
そのため、フェブラレンハーフェンの領民は現領主を慕っている。
C.E.173年8月、フェブラレンハーフェンは真夏日を迎えていた。
エーリッヒの邸宅は父ヘルムートが皇帝フリードリッヒから下賜されたもので、壮麗なゴシック様式の建築物であった。
住人はエーリッヒとクララの他に、マリウスはじめ数人の侍従が住んでいた。
「坊ちゃま、今日も暑くなりそうですな」
フェブラレンハーフェン家の執事アルフレート・ゼバスティアン・クロイツフェルトは73歳に達する老人で、父ヘルムートの友人であった縁で執事として仕えるようになった。
ヘルムートの息子エーリッヒを自分の息子のように見守ってきた。また、マリウスの養育にもかかわっている。
「なんせ8月の真夏だからな。ところでアルフレート、いい加減坊ちゃまはやめてくれ」
「すみません、エーリッヒ様。つい昔からの癖で…」
「まあいい。…そういえば、マリウスを引き取ってからもう17年になるな」
エーリッヒが話題を変えた。
「あの時わたくしは反対しましたが、真面目で誠実な子にご成長なさいました。結果的に引き取って良かったと思っております」
「アルフレートの教育のおかげさ」
事実マリウスの面倒を最も良く見ていたのがアルフレートであることをエーリッヒは知っていた。
当のマリウスは現在、親友のルートヴィッヒ・ブルームハルトとともに乗馬を嗜んでいた。
「よし!ルートヴィッヒ、競争だ!」
「あっ、待てよマリウス!!」
その様子を木陰からクララが見守っている。
「あんなに真面目なマリウスが、なんて楽しそうな顔…」
それは、少年の無邪気な一面が垣間見えた瞬間だった。クララは何か心が和むような感じを覚えた。
やがて、二人はクララのもとに戻ってきた。馬から下りた二人の少年を少女は出迎えた。
「なかなか楽しめたみたいね、マリウス」
「ええ、馬に乗るのは好きですから」
マリウスの表情は清清しかった。
「それにしても、あんなあなたの笑顔を見るのは初めてだわ」
クララは思わず笑みがこぼれる。
「わたしが笑うの、そんなにおかしいですか?」
「いいえ、ただ心が和んだだけよ」
二人は思わず笑ってしまった。その間を、マリウスの友人が割り込む。
「マリウスは堅物そうに見えて楽しむべきところは楽しむ奴なんですよ。そうだろ?マリウス」
ルートヴィッヒもマリウスと同じ平民である。年齢はマリウスより1歳年上である。
マリウスが7歳のころに出会ってから交友関係を結ぶこととなった。
10年にわたる親交のため、貴族の前では見せなかったマリウスの意外な一面を彼は全て知っていた。
マリウスは腹の音が鳴ったような感じがした。そして空腹感がこみ上げてくるのが手に取るように感じた。
「そういえば、お腹すいたなぁ」
少女が笑顔でそれに応えた。
「そうね、早速お昼ご飯にしましょう。わたし、サンドイッチを作ってきたのよ」
「あ、ありがとう」
二人の少年は喜んだ。
244通常の名無しさんの3倍:2008/10/04(土) 04:31:20 ID:???
保守
24588 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 04:53:40 ID:???
「クララ様の作ったサンドイッチ、本当に美味しいなぁ」
「だよなぁ、お袋のサンドイッチより旨いよ」
マリウスとルートヴィッヒは喜んでサンドイッチを口にしていた。
「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいわ」
クララも二人の嬉々とした反応に喜びながらサンドイッチを食べる。
「なあ、もう一つ食べていいかな」
ルートヴィッヒがクララよりに置いてあったサンドイッチに手を伸ばす。
「よせよ、クララ様の分が無くなるだろ」
「いいのよ、遠慮しないでどんどん食べてちょうだいね」
少女は気前良く発言した。こうして残りのサンドイッチはほとんどルートヴィッヒの胃袋に収まったのだった。

昼食も過ぎ、ルートヴィッヒは草原に身を投げ出して昼寝をしていた。
突然、クララがマリウスに声をかける。
「ねえマリウス、わたしのこと、どう思っているの?」
「当たり前でしょう、あなたはわたしにとって護るべき人です」
いつもの済ました表情でマリウスは答えるが、クララはまだ納得しなかった。
「そうじゃなくて、あなたの本心が聞きたいの」
「ですから、わたしは…」
「本当はわたしのこと、好きなんでしょ?」
突然のクララの一言にマリウスは驚いた。慌ててマリウスは切り返す。
「そんな馬鹿な、わたしは一介の侍従です。貴族の令嬢に恋することなど…」
マリウスは明らかに頬を染めていた。それをクララは見逃さなかった。
「建前を並べても顔を見ればわかるわ、さあはっきりとおっしゃい」
「………」
マリウスは沈黙した。一瞬、辺りは沈黙に包まれる。少年にとって言うべきことを言うのに少なからず勇気が必要だった。
ただ勇気をためるのに時間を要した。数刻が過ぎ、やがてマリウスは口を開いた。
「……はい、好きです。あなたは誰よりも美しいお方、そんなあなたが好きだ。
………だけど、わたしは平民、あなたは貴族、所詮はかなわぬ恋なのです……」
マリウスの表情は悲壮なものに変わった。彼は現実をよくわきまえていた。だが少女の言葉はそれを否定したのだった。
「階級なんて関係ないわ!」
「…え?」
突拍子も無いクララの発言に驚くマリウス。少女は続けさまに言った。
「ねえマリウス、2ヶ月前の舞踏会の日、わたしが様付けと敬語はやめてって言ったの、覚えてる?」
「え、ええ」
「あなたのことが好きだから、恋人として接して欲しかったから言ったのよ。平民に落ちても構わない、あなたと結ばれたいの…」
クララは自分のマリウスに対する思いを全て打ち明けた。彼女にとってマリウスは唯一の同世代の人間だった。
そしてマリウスは侍従の形をとっていつも優しく接してくれた。そんな彼にクララはいつしか惹かれるようになっていた。
「でも、そんなこと…父君が許すかどうか」
「お父様はわたしの意志を尊重してくれている、きっと理解してくださるわ」
彼女は知っていた。父親は個人の意思を大切にしてくれる人間であると。
マリウスは、彼女の思いに応えたかのように、ありのままの自分を出したいと思うようになった。
そして、いままで心の中で禁じていたことをついに解禁することに決めたのだった。
「ありがとう、ぼくは君のことが好きだよ、クララ」
「ようやく、言ってくれたのね…嬉しい」
少年と少女は生涯初めての接吻を交わした。甘酸っぱい味がする、とマリウスは感じた。
24688 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/04(土) 05:06:52 ID:???
ディセンベル・シックス―ロレンソ・デ・スカラマンガの統治するコロニーでは、多くの農奴が過酷な労働を強いられていた。
「働け!働くのだ!!」
監視人が鞭を床に勢い良くたたきつける。農奴はいずれも疲労感を漂わせていた。
その様子を遠くからスカラマンガ親子が見ていた。
「見るがいいカルロス。領民とはああして扱うものだ」
「わかっております、父上」
ロレンソもカルロスも眼はあきらかに見下しているような感じだった。
「ところでカルロス、あの忌々しいフェブラレンハーフェンだが」
「クララを私の妻にしていただけるのですか?」
婚約の件だとカルロスは思い、尋ねたが、父の反応は意外なものだった。
「クララとの婚約はあきらめろ、カルロス」
「えっ、何故ですか」
「何故なら奴らを伯爵家の座から落とすためだ。一計を案じて、奴らに眼にものを見せ付けるつもりだ」
「そうですか、残念です」
カルロスにとって父の意思は絶対であった。カルロスは嫌でも納得せざるを得なかった。
ディセンベル・シックスのはずれにあるキリスト教会風の建物では老婆が貧しい平民の子供たちに物事を教えていた。
「はい、今日の授業はここまで」
「ありがとうございました!マザー・アンネ先生」
子供たちは帰宅した、マザー・アンネは一人の少女を呼び止める。
「マリアベル、忘れ物ですよ」
「あ、すみません」
マリアベルと呼ばれた少女は忘れ物をとりに老婆の方へと引き返していった。


Um fortgesetzt zu werden... 第10話に続く。


以上です。今回はちょっとベルばらチックになったかと思います(笑)
あまりラブロマンスは得意ではないのですが思い切って挑戦してみました。
第10話からは再び同盟側の描写になります。例により公開時期は未定ですので気長にお待ちください。
24788 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/05(日) 02:33:18 ID:???
補足です。第9話を若干修正・追補したので詳しくはまとめサイトをご覧ください。
ちなみに副題のFur Ihre Augen nurは英語でFor your eyes onlyです。
元ネタは007ユア・アイズ・オンリーから取っています。
ひとまずageます。
24888 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/05(日) 10:58:05 ID:???
あとブログ開設しました。
http://msgsr.blog.shinobi.jp/
興味がある方、覗いてください。
249通常の名無しさんの3倍:2008/10/05(日) 16:48:50 ID:???
GJ! こういうのもイイネェ!
帝国はまさに「帝国」って感じだな。
ナチュラルと融和、出生率改善→能力的格差問題とかなるほどと思った。

CE73段階で普遍性も上がってきてたドラシステム開発が途中で打ち切られたのは何かしら障害なりがあったせいかな。
当時のシステムを妨害出来る兵器が誕生して有用性が失われてたとかありそうだ。
25088 ◆ytmn3ZcTbM :2008/10/07(火) 23:36:19 ID:???
251通常の名無しさんの3倍:2008/10/08(水) 06:36:59 ID:???
乙々
252通常の名無しさんの3倍:2008/10/10(金) 23:40:17 ID:???
GJ
253通常の名無しさんの3倍:2008/10/12(日) 20:27:07 ID:???
保守!
254通常の名無しさんの3倍:2008/10/14(火) 15:08:26 ID:???

255通常の名無しさんの3倍:2008/10/16(木) 15:08:24 ID:???
保守
256通常の名無しさんの3倍:2008/10/18(土) 13:43:00 ID:???
保守
257通常の名無しさんの3倍:2008/10/20(月) 17:49:49 ID:???
ほしゅ
258通常の名無しさんの3倍:2008/10/22(水) 15:12:56 ID:???
保守!
259通常の名無しさんの3倍:2008/10/24(金) 17:59:59 ID:???
ほしゅ
260通常の名無しさんの3倍:2008/10/26(日) 10:14:40 ID:???
88 ◆ytmn3ZcTbM さん、生きてる?
261通常の名無しさんの3倍:2008/10/28(火) 15:10:35 ID:???
保守
262議論スレにて1001変更案を相談中:2008/10/30(木) 17:47:52 ID:???
263議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/02(日) 15:31:14 ID:???
過疎
264議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/06(木) 12:48:48 ID:???
保守!!
265議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/09(日) 11:29:15 ID:???
過疎
266議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/10(月) 17:45:59 ID:YbhcIP4A
人が少なくなってきた
嫌だ。このスレ死ぬの、ステラやだー!
と戯言が聞こえる

267通常の名無しさんの3倍:2008/11/12(水) 18:14:19 ID:???
保守
268通常の名無しさんの3倍:2008/11/14(金) 18:01:56 ID:???
保守!
269通常の名無しさんの3倍:2008/11/18(火) 17:50:34 ID:???
270通常の名無しさんの3倍:2008/11/23(日) 02:28:20 ID:???
保守
271通常の名無しさんの3倍:2008/11/24(月) 11:59:20 ID:???
超過疎
272通常の名無しさんの3倍:2008/11/26(水) 17:39:57 ID:???
保守!
273dsffdd:2008/11/26(水) 21:45:52 ID:???
fdsfdf
274通常の名無しさんの3倍:2008/11/26(水) 23:01:11 ID:???
光り輝くオレのマッソォ
275通常の名無しさんの3倍:2008/11/29(土) 18:04:04 ID:???
保守!
276通常の名無しさんの3倍:2008/12/01(月) 22:58:53 ID:???
保守
277通常の名無しさんの3倍:2008/12/05(金) 06:29:49 ID:???
保守
278通常の名無しさんの3倍:2008/12/07(日) 23:40:34 ID:???
保守
279通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 12:49:11 ID:???
保守!
280通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 03:26:05 ID:???
C.E.74・・・。
ギルバート・デュランダルを打倒した、ラクス・クラインによりプラントが統治される時代。
プラントの傀儡国家、オーブ連合首長国は地球連合を一つの国家へ昇格させようとした。
だが、これは裏を返せばオーブが地上の実権を握る事―つまりはプラントによる間接的な地球支配を意味していた。
これに反発する、東アジア共和国軍と赤道連合軍がオーブへ侵攻。
プラントの軍事介入を招く。
アフリカ統一機構、汎ムスリム会議なども参加したこの戦いは、結局プラント側の勝利に終わる。
既に国家の体を成しておらず、戦闘に参加しなかった大西洋連邦、ユーラシア連邦、それに中立のスカンジナビア連合王国、南アメリカ合衆国及び、プラント側のオーブ、大洋州連合などを除く地域がプラント統治下に置かれた。
プラント統治下で、東アジア共和国はいくつかの自治国家に解体された。
極東の東海自治共和国はその中の一国である。
この国家は自治共和国の中でも一際小さい。
事実上、旧世紀よりこの地に産業基盤をもつ巨大企業「FUJIYAMA」に与えられたに等しい。
これはプラント政府中枢への莫大な献金によって成し遂げられた。
かといって、FUJIYAMA側が親プラントかと言えば、それは全くの誤解である。
むしろ、彼らは反プラント組織に兵器を供給している。
自治国家というのはそのための隠れ蓑であった。
そして、その自治国家の工場群で製造されているのは―旧地球連合軍の主力MS、ウィンダム。
ザフト軍の主力MSは未だにザクであり、十分に対抗出来る。
だが、いずれ現れるであろう新型兵器に対抗するためのMSもすでに開発されていた。

その兵器こそ・・・後に地球の命運を背負う機体、「00ウィンダム」であった・・・。
281通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 03:48:11 ID:???
「はぁ・・・。さむい・・・」
季節は3月上旬。この国でも春の気配はもう、すぐそこまでやって来ているが、明け方はまだまだ冬のように肌寒い。
「シンは・・・まだかしら・・・」
口から白い息を吐きながら、そう一人呟くのは赤毛が印象的な少女。
彼はもう随分、明け方の凍りつくような寒さに耐えていた。
「わりい!なかなかコンビニが見つからなくて!」
駆け寄って来るのは、黒髪の少年。年の頃は少女と同い年くらいだろうか。
「もう!遅いよー!」
赤毛の少女は、抗議の声をあげる。だが、
「ほれ、コイツもあるから、さ」
「わぁ!」
少年が差し出したのは、湯気をもうもうと上げる、「おでん」だった。この島国特有の煮物である。
「あっちのベンチに座って食べようか」
「うん!」
少女はとろけるような笑みを浮かべ、小走りに目標へ向かう。
だが、その後に続く、黒髪の少年の顔に笑顔はない。それは、赤毛の少女だけでなく―周りの人間には決して見せない表情。
「ねぇ、シン、早く〜。冷めちゃうよ〜」
少女が振り向いた時には、そんな表情は消え失せ、彼の―「シン」の顔には、ただ笑みが浮かぶばかりだった。
少女は気づかない。いや、誰も、気づくことはないのだろう。
彼の本当の気持ちには。
282通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 04:21:45 ID:???
「ねえ・・・シンは、なにかわかった事はある?」
まだ熱々のおでんから目を離し、赤毛の少女は問う。
「いいや、こっちはさっぱりだ。メイリンは?」
シンは自嘲気味に首を横に振り、「メイリン」に問い返す。
「私も。やっぱり、伊達に財閥やってないわね。セキュリティがすごく堅いわ」
メイリン―そう呼ばれた彼女も、なにも収穫はないようだった。
「全く、無理難題を押し付けてくれるよ・・・」
シンはベンチに寄りかかり、ほとんど仰向けになった状態で、深いため息をつく。
白い息が、もうもうと舞い上がっていった。

彼らが、地球の東海自治共和国にある巨大企業「FUJIYAMA」の調査を命じられたのは、今から2週間ほど前の事だ。
シンは心底驚いた。
直前に、自分が宇宙海賊退治の任務に就くため、デブリベルト付近の軍事基地へ転属になると、アスラン・ザラ―現在のザフト軍総司令官に直接伝えられていたからだ。
その後、彼は現プラント最高評議会議長、ラクス・クラインに直々に呼び出された。
議長室へ入室すると、そこには何人かの赤服がいた。
さらに、長いこと顔を合わせていなかった、メイリン・ホークの姿も混じっているではないか。

「これで、全員揃いましたね」
ラクス・クラインがそう告げる。途端、部屋全体に張り詰めた空気が伝わる。
「本日、皆さんにお集まりいただいたのには、わけがあります」
これに関して、シンは驚かない。まあそんな事だろうと思っていた。しかし、理由は―?
「少々、厄介な事態が起きようとしています」
彼女は、こころなしか疲れているようにも見えた。
「東海自治共和国」という国家は皆さんご存知でしょうか?
東海自治共和国―最近成立した国だ。噂では、賄賂に目が眩んだ何人かの最高評議会議員が、その成立を手助けしたらしい。
「中にはご存知の方もいらっしゃるかと思いますが・・・その国を実質的に支配しているのは、「FUJIYAMA」という巨大企業なのです」
「FUJIYAMA」―シンも多少は聞きかじっている。
かつての世界大恐慌の際に、旧日本国の大企業が吸収や合併を繰り返した挙げ句の果てに、ドンと産み落とされた超巨大企業だ。
C.E.になっても勢力は衰えず、むしろ肥大化の一途を辿っていた。
前大戦を含め、地球連合の兵器はFUJIYAMA製だらけである。
283通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 04:59:01 ID:???
「FUJIYAMAはその莫大な資金力と製造力をもって、常に、地球の軍需産業において、重要な位置を占めて来ました。かつてのロゴスにも、FUJIYAMAの会長職の方がいたのです」
初耳である。ラクスはこうも続けた。
「デュランダル前議長の目が向けられたと知って、手入れ前に脱退し、身を隠したようですが・・・」
驚きの新事実だ。自分たちはロゴスを全滅させられなかった。
だが、それと今回の「厄介な事態」と、なんの繋がりがあるのか、まだ、シンにはわからない。
困惑しながらも、ラクスの言葉に耳を傾ける。
「彼が、突然表舞台に戻って来たのは、つい半年ほど前の事です。新社長就任式に、名誉会長として現れたのです」
それからだ、と彼女は続ける。
「最高評議会議員に対する、ロビー活動が激化しました。ちょうどその頃、私は地上におり、その動きを見張る事が出来ませんでした」
ラクスはややうなだれる。
だが、仕方ない。彼女は直々に地上で行われた、反プラント勢力との停戦会議へ出席していたのだから。
「私の不在時、何人かの最高評議会議員の方で話し合いをもたれていたようです。私が帰って参りました頃には、もう東海自治共和国の配置はほとんど確定していました」
謀られた―と気づいた時にはすでに遅かったのだ―。ラクスは更に続ける。
「FJIYAMAはそうして手に入れた東海自治共和国を隠れ蓑にし、次々と兵器を製造しては世界中にばらまいています。こんな事が許されるのでしょうか?彼らはまたしても戦火を拡大させようとしているのです・・・!」
シンは息をのむ。見こそしなかったが、まわりの連中も同様の思いだと感じ取れた。
「私は、なんとかFUJIYAMAの行動を止めようと裏工作を試みましたが・・・どれも駄目でした」
ここまで来れば、自分が呼ばれた意味もなんとなくわかる。
「そこで、あなた方にFUJIYAMAの内偵をお願いしたいのです。・・・つまりは―潜入操作、とも言いますが・・・」
彼女には敵が多い。最高評議会も、前回の選挙では随分メンバーが様変わりした。ラクスに好意的でない議員も少なくないのだ。
自分があまり身動きの取れない状況だからこそ、こうして、ほんの一部の信頼出来るメンバーを集めたのだと。
彼女が一番信頼しているキラ・ヤマトも、今はプラントにはいない。オーブにいるからだ。
「詳細は了承してくださった方にお伝えします。もし―」
だが、辞退する者は誰もいなかった―
284通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 05:42:46 ID:???
その後、シン一人だけは、議長室に残された。
なんだろう、俺、何かしたのか?と少々焦る。
「すみませんね・・・どうぞ、おかけください」
ラクスに椅子を勧められ、シンは慌てて辞退するが
「いいえ、固くならなくていいのですよ。今この部屋には、あなたと私しかいませんから、どうぞごゆっくりなさってくださいな」
と緩やかな口調だが、拒否を受け付けられず、半ば押し切られる。
仕方がない、とシンはラクスの向かい側に腰掛ける。
ふと、目の前の女性が目に入る。美人だ。長く整った睫毛、宝石のようにキラキラと輝く眼、くっきりとした鼻筋、ぽってりとした色、形ともにいい唇、ふんわりと柔らかそうな髪、笑み・・・彼女を構成するパーツには寸分の歪みもない。
などと恥ずかしい事を考えながら、シンは彼女に見とれていた。それはもう、周りに人がいたらドン引きするくらいには。
「・・・あの、どうかなさいましたか?」
とラクスが訪ねてくる。こころなしか頬が赤い―気がした。
「え?・・・・・あ!あぁ!す、すんません!!」
シンは今更ながら自分の醜態に気づき、飛び上がりかねない勢いで思わず叫ぶ。
「も、申し訳ありません!非礼をお許し下さい!」
今更ながら、改まった口調でシンは謝る。そりゃもう、必死に。
「ふふ、やっぱりあなたは、面白いお方ですわ」
ラクスは微笑む。今実際に目の前にいる彼女は、意外なほどに可愛らしいとも思う。
「さあ、お茶にしましょう。おくつろぎ下さいな♪」
ラクスは紅茶を淹れる。手慣れているのだろう、見事な手つきだ。
「どうぞ、契約栽培のダージリンティーですわ」
芳醇な香り―というのだろうか。
「美味しいです。自分は紅茶の事よくわかりませんが」
「えっとですね、この―」
気づけば、彼女と他愛ない世間話ばかりを、ずっとしていた。
―あれ?ラクスはなぜ自分をここに残したんだ・・・?と、ようやくながら考えた、ちょうどその時。
「申し訳ありませんが、ラクス様、お時間です」
とモニターごしに彼女を呼ぶのは、彼女の公設秘書こと、マーチン・ダコスタだ。
「あら、もうこんな時間ですの・・・」
ラクスは時計を、口惜しそうに唇を尖らしながら睨む。そんな仕草さえ、とても愛らしい。
「あ、自分もそろそろ集合の時間なんです」
そうだ。今日は訓練があった。
「そうですね、今日はもうお開きにしましょう。・・・とても楽しい一時でしたわ。また、ぜひお話しましょうね。」
285通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 06:20:31 ID:???
そう言い残すと、ラクスは部屋を出て行く。

結局、彼女は何のために自分と話をしたのか、いくら考えても、わからないままであった。


訓練―とは言っても、新米兵の監督が主だが―を終え、帰宅の途につく。
ちょうど建物を出たとき、声をかけられる。
「シンーっ!」
メイリンだ。昔はツインテールだったが、今は下ろしている。
「よう、久しぶりだな」
シンは手を挙げ、応える。
「やっ。私はずっと司令部勤務、シンは海賊狩りだもんね」
メイリンはとことこ駆け寄って来る。そんなに急がんでも・・・。
―シンはずっと、商船や民間機に害を与える宇宙海賊や、地球軍残党を排除していた。
最近、ようやく休暇が与えられ、このアプリリウス1へ帰還したのだ。
「さっきは驚いたなぁ、いきなりラクスさんに呼ばれたと思ったら」
「ああ、俺も正直驚いたよ」
シンも頷く。
そこで、立ち話もなんだから―と近くの有名カフェチェーン店に入る。
「ラクスさん、なんか思い詰めてたよね・・・」
メイリンはコーヒーにミルクと砂糖をドカドカ入れながら、シンに同意を求める。
「ああ、やっぱ政治の世界は色々大変なんだろうな」
そんなに砂糖を入れたら体に毒だろう、とメイリンを促すが「別に平気だもん」と拒絶される。
「私、さっきのお話を聞いてさ、俄然やる気になったわ。・・・司令部勤務は退屈だったし」
メイリンはシンに対して、女友達のようにフランクである。まあ、割と昔からの事だが・・・。
「ああ、多分、俺やお前だけじゃない。みんなそう思ったろうな・・・」
「んむ」
メイリンはドーナツをくわえながら同意する。おいおい、行儀が悪い、と注意する。
今度はさすがにやめた。
シンはふと、どことなくガラスの外へ目をやる。テレビで、アスランがなにかの記者会見を行っていた。
フラッシュが焚かれる度にデコがキラリと光る。シンは思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
そして、メイリンはデコを光らせるアスランを、なにやら複雑な面もちで眺める。
コーヒーが鼻から出そうになるのを、必死に堪えているシンには、彼女のそんな表情は見えない。
「FJIYAMA、か…」
誰ともなしに、呟いた。

シンを始めとする、潜入捜査員たちが、東日本自治共和国経由で東海自治共和国へ入国するのは、それから1週間後の出来事であった。
286通常の名無しさんの3倍:2008/12/12(金) 20:28:10 ID:???
>>280
「東海」って…
朝鮮みたいだな。
287例の人 ◆DidZGuUWlk :2008/12/14(日) 00:14:30 ID:???
腱鞘炎で作れず
消えて無くなったと思って下さい
288通常の名無しさんの3倍:2008/12/15(月) 21:52:20 ID:???
>>286
折れ的にはFJIYAMA社は朝鮮のパチモン企業だと思ってる。
289通常の名無しさんの3倍:2008/12/18(木) 06:24:01 ID:???
保守
290通常の名無しさんの3倍:2008/12/22(月) 17:36:13 ID:???
保守
291通常の名無しさんの3倍:2008/12/25(木) 17:35:07 ID:???
ほっしゅ
292通常の名無しさんの3倍:2008/12/27(土) 00:02:09 ID:???
test
293通常の名無しさんの3倍:2008/12/31(水) 09:42:57 ID:???
保守
294通常の名無しさんの3倍:2009/01/03(土) 22:10:51 ID:???
干す
295通常の名無しさんの3倍:2009/01/04(日) 03:24:55 ID:???
BS-i ガンダムSEED再放送本スレ
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1231003976/l50
296通常の名無しさんの3倍:2009/01/06(火) 22:56:33 ID:???
保守
297通常の名無しさんの3倍:2009/01/08(木) 23:47:51 ID:???
保守
298通常の名無しさんの3倍:2009/01/12(月) 11:52:05 ID:???
保守!
299通常の名無しさんの3倍:2009/01/15(木) 12:53:20 ID:???
保守
300通常の名無しさんの3倍:2009/01/18(日) 08:03:58 ID:???
300
301通常の名無しさんの3倍:2009/01/20(火) 21:33:29 ID:???
このスレは完結率が低いのが残念
302通常の名無しさんの3倍:2009/01/22(木) 11:03:23 ID:???
>>301
同じ作者による2作品だけだからね>完結作品
303通常の名無しさんの3倍:2009/01/22(木) 22:28:45 ID:???
勢いだけで書いちゃったっぽいあれかw
普通ちょこっと書いて飽きるだろうによく最後までモチベーション持ったもんだ
まとめサイト覗いてみると昔から完結少ないよな
304通常の名無しさんの3倍:2009/01/22(木) 22:31:53 ID:???
まあプロですら、意欲が続かなくなって未完で終わる作品なんて珍しくないしな
ましてや素人がヒマ潰しに書いてるだけの小説なんざ、そりゃ完結を期待する方が難しい
305通常の名無しさんの3倍:2009/01/25(日) 10:14:25 ID:???
保守
306通常の名無しさんの3倍:2009/01/27(火) 15:13:30 ID:???
保守!
307通常の名無しさんの3倍:2009/01/31(土) 13:08:32 ID:???
保守
308通常の名無しさんの3倍:2009/02/02(月) 09:38:28 ID:???
保守
309通常の名無しさんの3倍:2009/02/03(火) 02:25:25 ID:SpUq6McU
ふじょう
310通常の名無しさんの3倍:2009/02/05(木) 21:54:04 ID:???
保守
311通常の名無しさんの3倍:2009/02/07(土) 20:16:42 ID:???
保守
312通常の名無しさんの3倍:2009/02/09(月) 11:30:01 ID:???
保守
313通常の名無しさんの3倍:2009/02/11(水) 10:21:43 ID:???
保守
314通常の名無しさんの3倍:2009/02/14(土) 03:11:24 ID:???
保守
315通常の名無しさんの3倍:2009/02/15(日) 09:52:13 ID:???
保守
316通常の名無しさんの3倍:2009/02/16(月) 01:38:08 ID:???
とりあえず保守っておくけど。
新シャアガンダムでSSを作るスレあたりに変換したほうが
いいんじゃないのか、ここ。
まあ00でもSS少ないけど。
317通常の名無しさんの3倍:2009/02/17(火) 04:38:08 ID:RDQBz3kn
318通常の名無しさんの3倍:2009/02/17(火) 14:37:33 ID:???
>>316
確かに
映画来ればある程度活気戻ると思ってたけど全然やらないし
新シャアに当てはまるガンダム作品全般のがいいね
319通常の名無しさんの3倍:2009/02/19(木) 21:57:03 ID:???
保守
320通常の名無しさんの3倍:2009/02/21(土) 08:30:47 ID:???
保守
321通常の名無しさんの3倍:2009/02/25(水) 10:47:29 ID:???
保守
322通常の名無しさんの3倍:2009/03/01(日) 16:22:55 ID:???
保守
323通常の名無しさんの3倍:2009/03/04(水) 12:57:22 ID:???
保守
324通常の名無しさんの3倍:2009/03/06(金) 12:54:27 ID:???
325通常の名無しさんの3倍:2009/03/08(日) 13:03:00 ID:???
保守
326通常の名無しさんの3倍:2009/03/10(火) 07:56:06 ID:???
保守
327通常の名無しさんの3倍:2009/03/13(金) 23:08:40 ID:???
ほしゅ
328通常の名無しさんの3倍:2009/03/15(日) 08:32:42 ID:???
保守
329通常の名無しさんの3倍:2009/03/17(火) 21:52:01 ID:???
保守
330通常の名無しさんの3倍:2009/03/20(金) 21:27:08 ID:???
保守
331通常の名無しさんの3倍:2009/03/22(日) 11:11:55 ID:???
保守
332通常の名無しさんの3倍:2009/03/27(金) 23:25:43 ID:???
保守
333通常の名無しさんの3倍:2009/03/29(日) 07:10:52 ID:???
334通常の名無しさんの3倍:2009/03/31(火) 23:04:54 ID:???
保守
335通常の名無しさんの3倍:2009/04/02(木) 22:36:58 ID:???
保守
336通常の名無しさんの3倍:2009/04/06(月) 22:46:21 ID:???
保守
337通常の名無しさんの3倍:2009/04/09(木) 04:14:03 ID:StTsUOkS
ある日アスラン・ザラが目を覚ますと、隣に美少女が寝ていた。それは…

@カガリ・ユラ・アスハ >>338
Aメイリン・ホーク >>339
Bミーア・キャンベル >>340
C木星クジラ >>341
338通常の名無しさんの3倍:2009/04/14(火) 17:38:59 ID:???
ブレーンバスターを極められた
339通常の名無しさんの3倍:2009/04/17(金) 23:26:23 ID:???
保守
340通常の名無しさんの3倍:2009/04/22(水) 17:35:05 ID:???
ほしゅ
341通常の名無しさんの3倍:2009/04/24(金) 17:43:14 ID:???

342通常の名無しさんの3倍:2009/04/26(日) 09:50:12 ID:???
343通常の名無しさんの3倍:2009/04/28(火) 23:19:10 ID:???
保守
344通常の名無しさんの3倍:2009/04/30(木) 15:14:27 ID:???

345通常の名無しさんの3倍:2009/05/05(火) 21:52:54 ID:???
保守
346通常の名無しさんの3倍:2009/05/08(金) 22:17:20 ID:???
保守
347通常の名無しさんの3倍:2009/05/11(月) 15:19:45 ID:???
ほしゅ
348通常の名無しさんの3倍:2009/05/14(木) 13:05:14 ID:???
保守
349通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 15:16:38 ID:???
http://pksp.jp/asuka-or-shin/

これもいいのか?
350通常の名無しさんの3倍:2009/05/20(水) 21:35:29 ID:???
保守
351通常の名無しさんの3倍:2009/05/25(月) 22:26:18 ID:???
保守
352通常の名無しさんの3倍:2009/05/27(水) 21:54:28 ID:???
保守
353通常の名無しさんの3倍:2009/05/30(土) 21:29:06 ID:???
ほしゅ
354通常の名無しさんの3倍:2009/06/02(火) 15:25:03 ID:???
ほし
355通常の名無しさんの3倍:2009/06/04(木) 22:44:04 ID:???
保守
356通常の名無しさんの3倍:2009/06/07(日) 20:13:03 ID:???
保守
357通常の名無しさんの3倍:2009/06/11(木) 12:35:36 ID:???
過疎
358通常の名無しさんの3倍:2009/06/14(日) 15:15:43 ID:???
kaso
359通常の名無しさんの3倍:2009/06/28(日) 23:44:16 ID:???
るなまりあ
360通常の名無しさんの3倍:2009/06/30(火) 23:01:59 ID:???
age
361通常の名無しさんの3倍:2009/07/08(水) 22:02:09 ID:???
投下を数か月待つなど造作もない…。

職人さんたち、俺は待ってるぜ!

俺一人がこんなこと言ってても修造みたいであれだが、言いたかった。

遅筆でもいいから投下し続けてほしいぜ。
362通常の名無しさんの3倍
今このスレに職人は一人もいないんじゃ…
自分なんかROMだけだけど一年ぶりぐらいにこのスレ覗いたし