もしもシンではなくルナマリアが主役だったら 7

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1通常の名無しさんの3倍
その名の通り、ルナマリアが主人公の種・種死を考えるスレ。

過去スレ
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら 6
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1195948295/
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら 5
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1190550042/
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら 4
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1175342030/
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら3
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1174126769/
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら2
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1148128422/
初代スレ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1126446510/

まとめwiki
ttp://arte.wikiwiki.jp/

避難所
2ch小説総合避難所&SS
http://yy45.60.kg/nikoru/
2通常の名無しさんの3倍:2007/11/30(金) 22:18:44 ID:???

 ,.'´⌒⌒ヽ
(((Vノノ)ミ卯
 i、ー ゚ リb| |
⊂〈_∀__|ヽ
 /____U
   i_/ J

3通常の名無しさんの3倍:2007/11/30(金) 22:44:31 ID:???
>>1乙!
4通常の名無しさんの3倍:2007/11/30(金) 23:10:30 ID:???
>>1
乙であります!
5通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 00:14:49 ID:???
あ、アズラエルさんだ。
私が休憩室で休んでいると、アズラエルさんは私を見つけてこっちに歩いてきた。
「やあ。ルナマリアさん。今回はギガフロートの奪回ご苦労様でしたね」
「いえ。占拠していたのはジャンク屋だったんですね。ザフトと戦うより、よっぽど楽でしたよ」
「まぁ、彼らも被害者と言えば言えますか。今回はね、見事に裏切られましたよ。マルキオに。」
「私、ジャンク屋、嫌いなんですよね」
「おや。どうしてですか?」
「奴らを見てると、ヘリオポリスに居た時のごみ回収業者のジジイを思い出すんです。あ、ごめんなさい、ジジイ
なんて言葉使って」
「ははは」
アズラエルさんは、気にした様子もなく、愉快そうに笑った。
「いや、かまいませんよ。僕が小さい頃、ガキ大将の女の子がいましてね。彼女を思い出して懐かしい気持ちに
なりました。それで?」
「私がマンションの表に停めて置いた自転車を勝手に持って行こうとしたんですよ? 鍵二つも付けてたのに。
それを、廃品だと思ったと言い張って返そうとしないから、結局警察沙汰になっちゃった」
「それはとんだ目に遭いましたねぇ。……確かに、悪質なジャンク屋も多いですよ。海賊と兼職してるような、ね。
そこまで行かなくても意地汚いジャンク屋は多いですねぇ」
「ジャンク屋って、ううん、ジャンク屋を自称して、見つけた物をジャンクと見なせば物が手に入っちゃうんですよね?
 なんでそんな強い権利持ってるんですか?」
「痛い所を突かれましたねぇ。まぁ、ニュートロンジャマーのおかげでエネルギー不足になりましたからね。リサイクル
できる物はできるだけリサイクルしなくちゃならなくなったんですよ。そこをマルキオを始めとした所謂有識者にうまく
突かれて、大層な権利を認める事になってしまったんですよ。元々は彼らはスペースデブリ化した宇宙機器等が
本来の取扱品目であったりしたんですけどね。戦争が始まって荒稼ぎをしようとする者も増えましたね。
すみませんねぇ、地球連合がもっと力があれば……」
「そんな……アズラエルさんは頑張ってるじゃないですか」
「はは。そう言ってくれると助かります。まぁ、質の悪いジャンク屋が蔓延るのも今の内ですよ。戦争が終われば、
当然軍隊を治安回復に投入できますしね。現在のジャンク屋の権利を取り上げて登録制にして、本来のスペース
デブリの掃除屋に戻していこうと考えていますよ」
「早く、戦争が終わればいいですね。みんな、話してるんですよ。戦争が終わればああしようこうしようって」
「そうですね。頑張りましょう! お互いに」
「はい!」

6523:2007/12/01(土) 00:15:49 ID:???
オーブ行政府での会議の休憩中――
テレビではビクトリア奪還の特別報道番組が流されている。
スクリーンではザフトの捕虜の様子が流されていた。
画面が変わる。
あちこちで地面が掘り起こされている。見えてくるのは、早くも白骨化した部分を見せる、地球軍の軍服を
身につけた、遺体、また遺体。
ここで、過日のザフトのビクトリア基地奪取の際の地球軍兵虐殺の事実を重々しい口調でキャスターが伝える。
ザフトのまだ若い捕虜が、自らの行いを告白し涙ながらに悔いている様子が流される。
キャスターがあらためて虐殺された地球軍兵の冥福を祈る。
――再び画面が変わる。
一転してレポーターの明るい声が響く。
ビクトリア奪回で活躍した兵士が紹介されてゆく。
そしてカメラは黒い長髪の男性を映し出す。
『次にご紹介しましょう! オーブから馳せ参じた勇士、ロンド・ギナ・サハクさんです!』
ギナはにこやかにレポーターの質問に答えている。
「ふん、いい気なものだ。サハク家が勝手にモビルスーツを開発していたおかげでえらい損をした。
アズラエルとやりあうのは、なかなか楽なものではなかったのだぞ?」
ウズミが愚痴る。
「いいではないか。どうせいずれはわが国でもモビルスーツを開発しなければならなかったのだ。
金で時間を買ったと思えばよかろう」
しれっとした顔でお茶を啜りながらコトーが応じる。
「……まぁ、地球軍に対してオーブの貢献をそれとなく主張できて、よかったと前向きに思うべきでしょう。
兄者も、お茶をもう一杯どうかな」
ホムラが代表首長席からウズミに声をかける。
「ああ、もらおうか」
ホムラは立ち上がって自分の前に置かれたヤカンを持ち、給湯室へ行くと古いお茶葉を捨て大雑把に
新しいお茶の葉を入れ湯を注ぎ、しばらく待ち、ウズミの茶碗に注いだ。なにしろ機密保持のため雑用も
自分達でやらなければいけないのだ。
コトーがそのヤカンを取ると、自らの茶碗にお茶を注ぐ。そして隣の席へまわす。
「そう言えば、カガリ嬢とユウナ君、最近仲がよろしいようですな」
カガリとユウナは、本日一緒に軍の視察に行っている。
「若い者が仲いい事は善き事ですな」
ホムラが応じる。
「ユウナ君も、昔に比べるとずいぶん頼もしくなって来た様だ。国難がそうさせたのでしょうかな」
ウズミも応じる。
「いやぁ。この間のカガリ嬢の演説には感心しました。防衛戦が終わってからの国民への演説にも。
それに比べればユウナはまだまだです。しっかり鍛えてくだされ」
まんざらでもない顔でウナトが答える。
……退室していた者達もおいおい帰って来た。また長い会議が始まる。


7523:2007/12/01(土) 00:16:39 ID:???
マスドライバーを3つ確保した事により、地球軍では一気に宇宙へとの機運が高まった。
だが、アズラエルはカーペンタリア攻撃にこだわりを見せる。
「別に、攻略できなくてもいいんですよ。とにかく、パナマとオーブに現れたザフトの新型機が気になるんですよ。
カーペンタリアに一当たりして、奴らが出てこなければ、包囲の輪を締め付けるに留めましょう」
「もし、出てくればどうしましょうか?」
「決まってるじゃないですか。捕獲なり、撃破して残骸を分析するなり、するんですよ」

ギガフロートを奪還した私達アークエンジェル隊は、自分達の訓練の他に、次々に送られてくる新設モビルスーツ隊の
訓練にと忙しい日々を送っていた。
そんなある日、私達を訪ねて来た人がいた。
「やあ、アークエンジェル隊の諸君、元気かい?」
「あ、はい」
広報の人は、後ろに包帯を巻いた男の人を連れていた。
「この人は軍事ジャーナリストだそうでね。ちょっと取材に協力してくれんか?」
「ええ、いいですよ」
男の人は、笑顔で私達に握手を求めて来た。
「怪我、さなったんですか? 大丈夫ですか?」
「ああ。ザフトがオーブを攻めて来た時に、へまこいちゃってね。ありがとう」
彼はにっこり笑う。
「僕はジェス・リブルだ。よろしく! ようやく正式に取材できて嬉しいよ」
ジェス・リブル? なんか聞き覚えがあるような……?
――あ! 体が震える。サンディエゴのレストランで投げつけられた罵倒の言葉が蘇る。
「どうした?」
トールが心配そうに聞いてくる。
「あ……さ、サンディエゴの……」
それだけ言うのが精一杯だった。
「あ、ひょっとして、カリフォルニア日報の記事を見てくれたのか? 奇遇だなぁ。
君達が地方紙のちょうどあの日の記事を読んでいてくれたなんて! すごい偶然だ!」
私の様子に気づかぬ様子でジェス・リブルが近づいてくる。
「……や……来ないで!」
必死で彼の手を振り払う。
「この野郎!」
鈍い音がすると彼がよろめく。

8523:2007/12/01(土) 00:17:01 ID:???
眼鏡をかけた黒人の少年から突然殴られて、ジェス・リブルはよろめいた。
なんだ!? いきなり過ぎて、訳がわからない。
「お前が、あの記事を書いた奴か!」
「え?」
「お前がルナの事をコーディネイターだって写真入りで、でかでかと書いてくれたおかげで、
ルナがどんな目にあったと思ってるんだ!?」
「え? だって、真実だろ?」
「真実!? 真実がなによりも尊いとでも思ってるのか! 教えてやる! ルナがどんな目にあったのか!
 ルナは、サンディエゴの町であの記事を見た奴から、『コーディーの糞女』と罵られたんだぞ!」
なんだって!?
「俺は……俺は、ナチュラルとコーディネイターが協力してるのが嬉しくて……」
「それにしても、記事を書く時には、本人に了解を取ってからにすべきだったな。ルナマリアは、
コーディネイターと言う事を隠している訳じゃないが、おおっぴらに触れ回っている訳じゃない」
落ち着いた感じの青年が出て来て、眼鏡の少年の肩に手を置き、彼を静めるように数回叩いた。
「……その通りだ。 それに、盗撮みたいな真似しやがって」
「あ、あれは……俺は無名だから、基地の広報に申し込んでも許可が出なくてしかたなく……」
ジェスの言葉は、次第に小さくなって、消えた。
「……」
沈黙が、痛い。勇気を振り絞ってジェスは言葉を紡ぐ。
「で、でも! 今のままじゃいけないんだ! このままじゃナチュラルとコーディネイターの溝は埋まらない!
 積極的に真実を報道してこそ溝は埋まる! きっとナチュラルとコーディネイターが手を取り合って笑える日が来る!」
「また真実かよ! ルナの顔見て何も思わないのかよ! ルナは今泣いているんだ! あんたのしてる事はただの
パパラッチだ! パパラッチはパパラッチらしく芸能人でも追っかけてろよ!」
「――!」
ジェスは、今度こそ言葉を失った。
「行こうぜ」
アークエンジェル隊の皆が立ち去っていく。ジェスは一人取り残された。
「真実、か……」
ルナマリアの泣き顔が脳裏に浮かぶ。真実であろうと、弱者を傷つける報道になんの意味があるのか――
自分が今まで夢中で追いかけてきた『真実』が急に色褪せて感じられた。

9523:2007/12/01(土) 00:17:10 ID:???
翌日、広報センターに顔を出したジェスは思わぬ人物の訪問を受けた。
「こ、これはルナマリアさん! どうしたんです?」
「ちょっと……」
「とりあえず、あそこに座りましょう」
「では……」
部屋の窓際に置いてあるテーブルに向かい合って腰を下ろす。
「……」
「……」
沈黙が続く。ジェスは耐え切れなくなって口を開く。
「――申し訳なかった! 考え無しに記事にしてしまって。君を傷つけてしまった。すまない」
頭を下げ一気にしゃべった。ジェスは昨日から抱えてきた重い荷物を降ろせた気がした。
「ぁ……」
「俺は、報道する事でどんな事が起こるのか、それを考えなかった。考えて来なかった。単に自分の興味が向くままに
真実って奴を追いかけて来た。記事にして来た。これじゃあ、確かにそこらのカメラ小僧と変わらない。パパラッチと
言われても無理はない」
「ぁ、ありがとうございます……私は、私、ジェスさんの言う事にも肯ける所があるって言いたくて。ジェスさんの
言う通り、真実を知らせる事は、大切だと思います。私、コーディネイターって事知られたおかげで、そんな事
関係無いって言ってくれる大切な友達も出来て。……でも、私は弱いから、コーディネイターって事隠さないのが
精一杯……」
ルナマリアはうつむいた。
ジェスは釣られて彼女の視線の先を見る。そこにあるのは、傷だらけの手首――思わず息を呑む。
それに気づいたらしく、彼女は照れたように笑った。
「えへ。学校で、コーディネイターだっていじめられてた時に……自傷です。でも今は少しは強くなれたから、大丈夫」
ジェスの罪悪感がますます強くなる。
「いつか……ナチュラルもコーディネイターも関係なくなる日が来ますよね」
「ああ。ああ、きっといつか……」
「じゃあ、私そろそろ行かなきゃ。ジェスさん、世の中が良くなるような報道、頑張ってください。私も頑張るから」
ルナマリアはそう言うと、立ち上がってぺこりとお辞儀をして広報センターを出て行った。
ジェスは思った。今までは真実をそのまま伝えるのが最上と信じていた――だが違った。間違えていた。
間違えていたなら、直せばいい。
ジャーナリズムの基本は伝えることではなく弱者の訴えを代弁する事――大昔そんな主張をしていたジャーナリストが
いたな、とジェスは思う。確か今の東アジア共和国ニホン地区の……誰だっけ?
そうだ。弱い者を力づけられるような報道をしよう。傷ついた者が癒されるような報道をしよう。ジェスは心に誓う。
ジェス・リブルの新たな出発だった。
10523:2007/12/01(土) 00:18:43 ID:???
宇宙――
ロウ・ギュール一行はギガフロート建設の仕事を果たし、宇宙へ上がっていた。
新しく手に入れたホーム――リ・ホームと名づけられた生活の本拠地。それは元が地球軍のコーネリアス級だ。
以前のホームより格段に良くなっている。
「なぁ、マルキオ導師が指名手配されたって、ギガフロートが地球軍に接収されたってほんとかなぁ」
ロウがプロフェッサーにぼやく。
「残念ながら事実よ。それは」
「そうか。地球軍の野郎、汚い真似しやがって!」
「……それはどうかしら」
冷たいとも言えるような声でプロフェッサーが言う。
「え?」
「連合がギガフロート建設に莫大な出資をしていたのはどうやら事実みたいよ。連合がマスドライバーを作るために
マルキオ導師を利用したのか、マルキオ導師が民間用のマスドライバーを作るために連合を利用したのか……
それは私達外野の者じゃわからないわ。確かなのは、ギガフロートは連合の物になり、マルキオ導師は連合から
指名手配されてしまったと言う事だけ」
「……俺達ゃどうすりゃいいんだ?」
「幸い私達にはオーブに強いコネがあるわ。連合は、協力的なジャンク屋にはマスダライバー使用を融通してくれる
とも言っているしね。オーブに身元保証してもらえれば、ビクトリア、カグヤ、ギガフロートの3つのマスドライバーを
使えるようになって今までより便利になるかも」
「今までどおりでいいって事ですね」
リーアムがほっとしたようにため息をついた。
みんなの気が緩んだその時、アラートが響いた。
「あ、これは! 救難信号です」
「なんだって?」
「距離約2000、グリーン262、34マーク9ブラボーの地点です」
「ようし、行くかぁ! その船が壊れていたら商売になるしな! リ・ホーム全速前進!」
11523:2007/12/01(土) 00:20:29 ID:5OHKODam
続く。
ビクトリア奪回はよい宣伝材料になっているようです。
ジェス・リブル。やっとリアルに登場。
12通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 01:00:36 ID:???
乙です。
しかしロウを初めジャンク屋の諸君には、常識で考えれば「位置を突き止めることが出来ない民間用マスドライバー」なんてあり得ない
(利用したくても民間人にはどこにあるのか判らない)くらいの知恵は働かせて欲しいところですね
13通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 01:05:27 ID:???
それは設定が破綻しているだけじゃ……
14通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 01:30:05 ID:???



某ガイドライン風に言うと、
「自分の所有物が回収されるわけがない」と鍵を掛けて家の中に入ったルナマリアが、5分後ジャンク屋ともめていた。


15通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 01:32:31 ID:???
GJ!
ちょいっとジェス改心のくだりがはしょっている感もありますが、ですがジェスの性格を考えるとこんなあっさりしたのもむしろ有りなのかも。
Dアストレイは真面目に読んでいなかったので自信の無い意見でスンマセン。
16IF系SS統合の提案:2007/12/01(土) 01:52:46 ID:???
種系SSスレが軒並み落ちてきたため、IF系統SSスレの統合を試みています
身勝手なお誘いかもしれませんが、御検討の程よろしくお願いします。

【IF系】もし種・種死の○○が××だったら【統合】
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1196438301/
17通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 02:13:06 ID:???
統合すると、荒らしに極端に弱くなるぞ
ここはこのままで良い
18通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 02:55:52 ID:???
しかし前々スレは土曜日と言う事もあってか作品投下直後にdat、前スレは職人さんが作品を投下する間もなくレスも100行かずにdatだからなあ……
もう土曜日だしこのスレも100行かずにdat逝きの危険性があることを考えると一考に値すると思うのは自分だけだろうか?
19通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 03:06:30 ID:???
利点;スレ乱立荒らしによるDAT落ちに強いと思われる。
弱点:スレ単体を狙った荒らしには弱い。

とりあえずはこのスレで進めていって、何かあったときに考えればよいのではないかと。
20通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 07:50:14 ID:mLgKPutv
おはようあげ
21通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 11:33:20 ID:???
とりあえず、一日三回くらいの保守を行っていればなんとか維持できるんじゃね?
22通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 15:43:38 ID:???
忘れたの、私も保守なのよ。
23通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 18:58:47 ID:???
保守
24通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 19:05:01 ID:???
保守
25通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 20:16:37 ID:???
何という濃密な保守
26通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 20:58:09 ID:???
保守
27通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 22:45:44 ID:???
保守
28通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 23:27:00 ID:???
圧縮きたなー
29通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 23:31:10 ID:???
20:25:40にカキコがあったルナマリアを語るスレが落ちた。
30通常の名無しさんの3倍:2007/12/01(土) 23:47:59 ID:???
なんか落ち方おかしいよな。
どうなってんだこれ?
31通常の名無しさんの3倍:2007/12/02(日) 00:06:00 ID:???
怖いね。濃密な保守でよかった
32通常の名無しさんの3倍:2007/12/02(日) 09:03:21 ID:???
保守
33通常の名無しさんの3倍:2007/12/02(日) 12:40:35 ID:???
お昼補修。納豆と生シイタケ焼いたの。
CEの東アジアには納豆あるんだろうか
34通常の名無しさんの3倍:2007/12/02(日) 12:53:38 ID:???
冷たいメシを食うアジア的に非常識な人種も、そいつらの文化も全滅してるんじゃね?
35通常の名無しさんの3倍:2007/12/02(日) 15:49:44 ID:???
しばらく次スレ立てないでおく?>ルナスレ
36通常の名無しさんの3倍:2007/12/02(日) 17:19:46 ID:???
とりあえず保守
37通常の名無しさんの3倍:2007/12/02(日) 20:55:54 ID:???
hosyu
38通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 02:24:33 ID:???
保守
39通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 09:19:44 ID:???
保守
40通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 14:03:11 ID:???
hosyu
41通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 19:47:19 ID:???
保守
42通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 23:50:20 ID:???
hosyu
43通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 10:39:17 ID:???
保守
44通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 15:01:08 ID:???
保守
45通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 22:31:35 ID:???
落ちたかと思った。よかった。
46通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 09:48:04 ID:???
47通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 13:11:49 ID:???
ルナパルスの人、もう来ないのかなぁ…
48通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 20:21:15 ID:qO15ATNl
保守
49通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 22:55:26 ID:???
ルナマリア「議長、ノーマルスーツを着て下さいね」
50通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 12:43:06 ID:Aj+yYJOv
51通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 15:08:59 ID:???
外伝でもいいのなら?。
52通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 17:46:20 ID:???
新しい職人さんか!?書いて書いてー!
53通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 21:04:31 ID:???
ちょっとスランプ。ネタが欲しい。
54通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 01:54:15 ID:???
ドドドド
「おねえちゃん、どうしたの、そんな慌てて」
「メイリン…私、重要な情報を手に入れたわ」
ルナマリアは走って現れメイリンを物影に押し込み小さな声で話始めた
「もしかして敵の軍事技術?凄い!御手柄!」
「違うわよ!アスランさんが実はホモだったって情報よ!!」

55通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 03:47:14 ID:???
保守
56523:2007/12/08(土) 06:58:43 ID:???
ロンド・ギナ・サハクはビクトリア奪回から程なくして宇宙に上がり、オーブの宇宙ステーション「アメノミハシラ」を
拠点に宙域のザフト軍に対して通商破壊活動を行っていた。
「ふん! 他愛もない。新装備の訓練にもならんではないか」
その台詞を聞く人は誰もいない。その日、ギナは大胆にも一人でザフト軍を攻撃していた。
PO1――ゴールドフレームは外見が一変していた。
背部に装備された翼状のデバイス――ミラージュコロイド技術の応用で、接触した相手のバッテリーを強制放電
させ自機のエネルギーとして吸収できるマガノイクタチと言うオーブで開発した武器がある。
この装備により、現在のモビールスーツとは格段の稼働時間の長さを誇っている。
そのほかにネックガードなど細かい部分が改修されている。
「ん? あれは……これはこれは」
PO2――レッドフレームが、こちらに向かって来る。
『ゴールドフレームか!? ずいぶん形が変わっているじゃないか! なんでもかんでも壊しやがって!』
「ふん。私は地球軍だ。ザフトの軍艦を攻撃して何が悪い!」
「…くっ。もう相手に戦う意志などない! 救難ポッドまであんたは破壊している!」
「まだ相手は残っている! 2隻もな! 降伏もせず反撃してくるのだ! 攻撃を止める理由などない!」
「それにしたって、救難ポッドを! やめろ!」
「こちらは一人だ。一人で捕虜など取っていられる余裕なぞあるものか! ここで見逃せば彼らは程なく新たな
武器を手にこちらに襲い掛かってくる! 敵に情けを掛けて味方を殺せとでも言うか! 貴様は!」
「くっ。それでも俺は!」
ロウはビームライフルを撃つ。
「下賎な者が……所詮理解できぬか」
ギナはロウが撃ったビームライフルをシールドで軽く受け流すとマガノシラホコと言う、マガノイクタチに付属する
射出武器を射出する。
マガノシラホコはまるで2匹の生き物のようにレーッドフレームを襲い、ビームライフルとシールドを弾き飛ばす。
「――消えた!?」
P01が姿を消した。ロウが驚愕の叫び声を上げる。ガーベラストレートを抜き放ち、辺りの気配を探る。
「うわあぁぁ!」
「ふふふ。私はここだよ」
レッドフレームの後ろから、マガノクイタチがレードフレームを締め上げ、レッドフレームのバッテリーを強制放電させる!
「やらせないわ!」
「ん?」
ギナが見やると輸送船がこちらに突っ込んでくる。
「無駄な事を!」
攻盾システム「トリケロス改」のランサーダートを輸送船の艦橋目掛けて射出する。
「なにぃ!」
ギナは思わず叫んだ。輸送船は上部のアームを動かしてランサーダートの艦橋への直撃を避けたのだ。
「おのれ!」
ギナはビームライフルを連射する。
再び輸送船のアームが動きシールドのような物を展開する。それはビームをたやすく吸収した。
「ラミネート装甲か! 小ざかしい真似を!」
「隙有り!」
レッドフレームはなんとかマガノイクタチのあぎとから逃れるとカーベラストレートを振りかぶった。
「反撃行くぜえ! でやあぁぁ!」
57523:2007/12/08(土) 06:59:36 ID:???
「それは一度見た。効かぬ!」
ギナは一瞬の間左手でガーベラストレートを支えると、トリケロス改の硬化処理された刃をガーベラストレートに
思い切り横合いから叩き付けた!
ガーベラストレートは、一瞬その力に耐え……そして折れた。
「……嘘だろ? ガーベラストレートが折れるなんて……」
「これで終わりだな!」
「くそう、くそう。まだだ! まだ終わらんよ! だがどうする……どうしたらいいんだ……」

その時、近づいて来る一揆のもビルスーツがあった。
「――戦う気力がある限り、負けたとは言えない!」
「あ、あんたは!」
「ちっ。乱入者か。……なんと、PO3ではないか!」
「ロウ・ギュール。お前の信念を貫け! お前の作ったタクティカルアームズ! これを使え!」
タクティカルアームズ――それはロウ・ギュールがブルーフレームのために作ったラミネート装甲を持つ巨大な実体剣である。
「おっしゃあ!」
「虚仮脅しが! PO3共々葬ってやるわ!」
「この! もう止めてくれ! ゴールドフレームだって無意味な破壊は望んじゃいないはずだ!」
「なにをほざく! 先程私が言った事をちっとも理解していないではないか! やはりお前達ジャンク屋は下賎な
豚だ! その豚どもによって豚小屋のように汚された社会を、高貴な人間のための理想社会として建て直すのだっ!!」
「何が理想社会だっ! お前のすることは、世の人々を虐げ、冷酷に支配することではないか!!」
「私をよく知りもしないくせに言うわ!」
細身のカーベラストレートから大きな広刃のタクティカルアームズ……その取り回しには差異がある。慣れるまでの若干のタイムラグ。
ギナはその隙を見逃さず、トリケロス改をレッドフレームの左腕に叩き付けた!
レッドフレームの腕はちぎれ飛ぶ。
「これで終わりだ……!」
ギナはレッドフレームに止めを刺そうとした。
――! ギナはコクピットに衝撃を覚えた。見ると、PO3が横から組み付きPO1のコクピットにアーマーシュナイダーを突き刺そうとしていた。
「敵は倒せる時に倒す――それが傭兵のやり方だ――」
……あれ!?
珍しい事に劾は焦った。このアーマーシュナイダーはモビルスーツの装甲など、アストレイの装甲など容易く突き通すはず。それが――突き立たない。
とっさにギナはブルーフレームを振り払う。
「ふ……はははは! 無意味と思っていたPS装甲に助けられたか!」
その時、こちらに向かって来る戦艦があった。
「ロンド様! 無事ですか!」
「くっ! イズモ級まで出て来られては! ロウ・ギュール、悪運を祈る!」
劾はすばやくタクティカルアームズを回収すると、撤退して行った。
「ちぃ! すばやい奴!」

58523:2007/12/08(土) 07:00:24 ID:???
「もう止めて! ロウを殺さないで!」
「なんだ!?」
女の子の声がするとザフトのバクゥのようなモビルスーツが輸送艦から出て来た。そしてレッドフレームを守るかの様に立ちふさがる。
ふと。前にもこんな事があったような――既視感を感じる。
「興が削がれてしまったな……おい! ジャンク屋! 船の責任者は誰だ?」
「私、かしらね」
プロフェッサーが答える。
「そうか。さあ、選ばせてやろう。
1、ジャンク屋ギルドは地球軍とザフトの戦いに介入したばかりでなく一方的にザフト軍に肩入れをする行動を取った。
2、ジャンク屋ロウ・ギュール一味は地球軍とザフトの戦いに介入したばかりでなく一方的にザフト軍に肩入れをする行動を取った。
さあ、どちらで報告されたい?」
プロフェッサーは困り果てていた。
PO1――ゴールドフレームがおそらくオーブのマスドライバーの価値を上げるため、ギガフロートの破壊に来た事があった。
その時の様にゴールドフレームが謎の存在なら、戦闘してもなんとでも言い訳は立った。
だが、今やオーブは地球連合に組し、PO1ははっきりと地球軍であると言って戦闘をしていたのだ。ごまかしようがなかった。
プロフェッサーの額を冷や汗が流れる。
どっちにしろ私達は終わり、規則を破った犯罪人となるだろう。ジャンク屋ギルド全体を巻き込む事などできない。なら……
「に、2番を……」
「ふふ」
ギナは薄く笑った。
「3番目の道を教えてやろう」
「え!?」
「私に従え。そうすれば不問にしてやる。とりあえずは……ザフト艦も逃げたようだしな。そこらへんに漂っている救命ポッドを回収しろ。
助けたかったのだろう? アメノミハシラまで捕虜として連行して来い。逃げれば……わかっているな?」
プロフェッサーはうなづくしかなかった。

「馬鹿馬鹿馬鹿! ロウが死んじゃったらどうしようと思ったじゃない!」
「悪い、樹里。でも、俺ってつくづく悪運強いよなぁ。ははは……」
「笑い事じゃありませんよ!」
リーアムが珍しく怒っている。
「ジャンク屋ギルドは中立。その原則があるから権利も守られるんですよ? それを考え無しに戦いの中に飛び込んで!
 あなた一人の行動でジャンク屋ギルド全体に迷惑が掛かるんですよ? わかってるんですか?」
「うー、黙って見てられなくてさぁ。悪かったよ。反省してる」
「……『私に従え』って、どう言う意味かしらね」
「うーん、ジャンク屋廃業して部下になれ、とか?」
「もしそうならずいぶん高く評価されたものね、私達」
「なぁ、プロフェッサー。オーブのエリカ・シモンズさんとは知り合いなんだろ? なんとかならないのかよ」
「無理ね」
プロフェッサーはにべも無く断言した。
「彼女だってただのモビルスーツ開発主任なだけよ。立場があるし、やれる事にも限界があるわ。それに……
私の判断からすると、アメノミハシラに来いって事はゴールドフレームに乗っていたのは、オーブののサハク家の人間よ?
 エリカがどうにかできる相手じゃないわ」
「はぁ……命があっただけでもめっけもんよ。ロウ、これに懲りて考えなしに勢いで首突っ込むのやめてよね」
「そうですね。じゃあ、救命ポッド回収始めましょうか」
彼らは渋々作業に取り掛かった。


59523:2007/12/08(土) 07:00:36 ID:???
7月20日――地球軍は大洋州攻略作戦を発動する。オーブからカーペンタリア攻略部隊が出発、同時にマスドライバー
からいったん宇宙に上がったモビルスーツ部隊がオーストラリア大陸中央部への降下作戦を実施し、オーストラリア東・北岸の攻略を目指す。

「いよいよかぁ。カーペンタリアは地上のザフトの本拠地だろ? やっぱり抵抗厳しいだろうな」
休憩室にはパイロットが全員集まり、出動まで待機している。
「そうだな。でも、今の地球軍には勢いがあるからな。攻められる立場より気が楽だよ」
サイがトールに答える。
「もしかしたら、今回は戦わずに済むかも知れんぞ。ザフトの新型が出てこなければな」
「いつかは戦わなきゃいけないけどな」
そうなのだ。アークエンジェル隊とドミニオン隊は、カーペンタリア攻略には加わらない。
ザフトの新型モビルスーツ――ジャスティスとフリーダムの捕獲あるいは撃破が任務だ。
如何にザフトの新型であろうと、これだけの数に掛かられれば撃破出来ようと言う考えからだ。
アスラン……出てくるのかな。出てこなければいいけど。戦いたくないよ。

――ルナマリアの希望は叶えられた。
「そうですか。例のザフトの新型は出てきませんか……」
地球軍がカーペンタリア攻略作戦を発動してから二日目。
アズラエルはドミニオンでカーペンタリア攻撃の様子を観戦していた。
「は。しかし、ビームライフルを装備したザフトの新型モビルスーツと思われる物が少数ですが確認されています。ビクトリアで少数見られた物と一緒かと」
「見せてください」
「は!」
しばし、映し出された画面をアズラエルは見入った。
「……確かに新型のようですね。ストライクダガーよりも性能も良いようです」
「まぁ、ストライクダガーはあくまで量産までの期間短縮を優先させた簡易量産機ですから。ダガー(通称105ダガー)の
量産も進んでおりますし、ストライクダガーにつきましても現在ストライカーパックを使用可能な改良型、ダガーLの量産が始まっておりますので、その数が揃えば対応は出来る物と……」
「いいでしょう。見た所、オーブで確認された2機程の圧倒的なパワーは無いようですし、おそらく通常のバッテリー動力機でしょう。ああ、一応捕獲は心がけて置くように司令部に伝えてください」
「はっ」
「では、後は攻略艦隊司令部に任せてドミニオンとアークエンジェルは一旦オーブまで下がらせてください」
「はっ」

結局、私達は何にもせずにオーブに戻った。
アスランと戦わずに済んで、私はほっとした。
「これから俺達どうするんだろうな」
今まで訓練に回っていた、オーブに集まった地球軍のモビルスーツ部隊もカーペンタリア攻略に出撃して、私達は久しぶりに暇な時間を過ごしていた。
「ねぇ! ザフトがジブラルタルを放棄したって!」
ミューディーが休憩室に駆け込んで来た。
「ほんと!?」
「そうかぁ。これは、いよいよ次は宇宙かな」
「宇宙かぁ。私地球しか経験ないのよね。頼りにしてるわよ、ルナ」
そうか、そう言えばこの中で宇宙でモビルスーツ動かした事あるのって、私だけじゃん!
「ふふふ。宇宙に行っても、しばらくは特訓ね」

アークエンジェルが宇宙へ行く準備は着々と進んでいる。
ジェットストライカーは降ろされ、出力を強化されたエールストライカー改が積み込まれる。
今日は、フラガさん専用の新しいストライカー――ビームガンバレルストライカーが運ばれて来た。
スカイグラスパーも降ろされ、コスモグラスパーが積み込まれる。
そんなある日……
60523:2007/12/08(土) 07:02:55 ID:???
続く。

PS装甲のおかげでギナは助かりました。
ロウの悪運は健在なようです。
いよいよ宇宙へ行く準備が着々と。
61通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 07:42:19 ID:???
GJ!
ギナ生存で話はどう変わるのか。それとカーペンタリア陥落とジブラルタルの放棄の責任は誰がどうとるのか気になります。
はてさて食料の安定的な供給源を失ったプラントはどうなることやら。
次回もまた勝手に期待したいと思います。
62通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 10:25:02 ID:???
なんというか、劾が実にリアルだ…
63通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 11:18:26 ID:???
特に流れが変わっていなければ、この時点でブルーフレーム自身も操縦席周りのPS装甲化を完了しているよね?
で、その改造はオーブの工場で行われていて、ゴールドフレームは(とてもそうは見えないが)同型機でオーブ軍。
当然同じ改造は予想されそうだが。
……ここの劾はうっかりさんなのか? と思ったが、ひょっとして

オーブでのストライク大破がない→オーブでルージュが組み立てられず、PSの余剰材が出ない
→ブルーフレームにPS装甲が流用されないということかな?
64通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 12:42:21 ID:???
ブルーに使われる筈だったPS材がゴールドに流れているな・・・
そもそもここの劾はソキウスに敗北してないんじゃ?
だからブルーの強化が多少違う
65通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 12:53:47 ID:???
ああ、そうか。アズラエルさんがソキウスの待遇を改善してるものね
66通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 16:34:50 ID:???
シン「ステラがタバコを吸ってら………ぷ、くく」

レイ「(;^O^)」
ルナ「シン、酸素欠乏症に」
67通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 20:48:23 ID:???
保守
68通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 00:35:47 ID:???
保守
69通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 10:30:06 ID:???
70523:2007/12/09(日) 11:14:45 ID:???
保守がてら。

この世界ではソキウスの待遇改善により、焦って脱走するソキウスも出ず。ブルーとも戦っていません。

ロンド姉弟も別にカガリを暗殺しようとかしてないのでエリカはサハク派で変わらず(と言ってもサハクとアスハ史実より関係が改善されています。)
サハクはPS装甲技術を広げようなんて考えてないのでエリカも言いつけを守って技術流出させず。
PS装甲装備のプロトアストレイは今はP01のみです。
71通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 18:27:36 ID:0HBjwG20
なるほど保守
72通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 10:09:41 ID:???
73通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 10:22:41 ID:HcajSl7A
74通常の名無しさんの3倍:2007/12/12(水) 14:08:27 ID:???
75通常の名無しさんの3倍:2007/12/13(木) 16:58:21 ID:???
24時間以上レスがなかったけど落ちていないな。
76通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 10:27:25 ID:???
77523:2007/12/15(土) 00:10:53 ID:???
「ありがとうございます! 今日は私なんかのためにわざわざ……」
「なに、ジブラルタルの奪回祝勝会と、いよいよ宇宙へ出撃するための景気づけも兼ねていますからね。気にする
ことはありませんよ」
アズラエルさんが笑う。
今日は7月26日。私の誕生日だ。オーブの首都オロファトのヤラファトホテルでパーティが開かれている。
アズラエルさんは、誕生会はついでだと言うけれど、ステージの垂れ幕にはしっかりと『ルナマリア・ホーク中尉
誕生日おめでとう!』と書かれている。ちょっと恥ずかしい。
「そうそう。ルナマリアさんにプレゼントを用意してきたんですよ。三郎」
「はっ」
お付の人からアズラエルさんは小箱を渡された。なんだろう。
「……わぁ! きれいな赤!」
開かれた小箱の中には、1cm位の大きさの深紅の宝石のネックレスがあった。
「7月の誕生石のルビーですよ。それに……ルナマリアさん、こんな色好きでしょう?」
「はい! よくわかりますね」
「そりゃあ、モビルスーツとか服装とか見ればねぇ、ふふふ。このルビーはピジョンブラッドと言うんですよ。あまり
小さいと暗いだけの赤になってしまって価値が激減するのですが、3カラットもあればやはり見栄えがしますね。
オロファトの宝石店で見つけて買ったのですがなかなかいい物を揃えていました。さすがオーブですね。さあ、
つけてあげましょう」
「あ、お願いします」
私は後ろを向く。後ろからアズラエルさんの手がまわされ、胸元にルビーが置かれヒヤッとする感触。
「さあ、できました。見てみますか?」
「あ、はい」
私達は鏡のところまで歩いていった。
胸元で真紅の輝きを放つルビー……自分で言うのもなんだけど、似合ってる。
えへへ。顔がにやついてしまう。
「ありがとうございます! こんな素敵な物を!」
「ふふふ。喜んでもらえて嬉しいですよ。……では、一曲踊っていただけますか? レディ?」
「はい、喜んで!」

78523:2007/12/15(土) 00:11:16 ID:???
「あ、ルナ。今日はおめでとう!」
「カガリ! 来てくれたのね。ありがとう」
「まぁ、私は父の代理ってとこだな」
カガリは、髪をアップに結いグリーンのタイトなドレスを着ていた。
「……やっぱりカガリ、ドレス似合うわね。私はどう? 変じゃない?」
「変じゃないぞ。赤いドレスが、髪に合って綺麗だ。ネックレスもいいな」
「ネックレスは、さっきアズラエルさんがプレゼントしてくれたのよ」
「ふーん。私が見るところ、結構良い品だぞ。いい貰い物したな」
「そうなんだ? まぁアズラエルさんが直々に選んだんだから品物に間違いはないわよね。大事にしなきゃ。
ところで、カガリのお連れの方はどなた?」
カガリの後ろには、髪を肩まで伸ばした男性が私達の会話を微笑みながら聞いていた。
「ああ、私の従兄で、婚約者のユウナ・ロマ・セイランだ」
「よろしく! カガリが世話になったそうで。色々と活躍を聞いているよ。紅の戦乙女殿」
ユウナさんが手を差し出して来た。握手をする。
「セイラン家は大西洋連邦に知り合いが多くてな。アズラエル家とも昔から知り合いだそうだ。オーブが地球連合
に参加してから、色々と役に立ってくれている。……あ! ユウナ、この機会だ。ムルタ・アズラエルに紹介してくれ!
 顔繋ぎをしておきたい。直接知り合いになっておくに越した事はないからな」
「そりゃもう、カガリのためなら!」
「じゃあ、またな。ルナ」
「うん、頑張ってね、カガリ」
カガリとユウナさんはアズラエルさんの所へ歩いて行った。
うん。カガリ、頑張っているなぁ。ユウナさんも、カガリの事が本当に好きそう。よかった。

79523:2007/12/15(土) 00:11:40 ID:???
「よう、姉ちゃん。楽しんでるかい」
「あ、ダナさん」
ダナさんがグラス片手に話しかけてきた。顔がほんのりと赤くなってる。
「ここはいい酒が置いてあるねぇ。こんな酒が飲めるのも姉ちゃんのおかげだよ。誕生日おめでとさん」
「ふふ。私の誕生日はついでですってば。宇宙に行くのを前にした景気づけが目的のパーティですから、しっかり
鋭気を養ってくださいね」
「おう、しっかり養ってるよ。食い物もうまいしな。それにしても宇宙かぁ。わくわくするねぇ、宇宙なんて初めてだから」
そう言えば、ミューディーも言ってたな。宇宙は初めてだって。
「ひょっとして、アークエンジェルとドミニオンも併せて宇宙でモビルスーツ動かした事あるのって私だけ? 教え
きれるかなぁ、そんなにいっぱい」
「んー? 月にもモビルスーツ隊が編成されてるって話だろ。そいつらを教官にして教わればいいさ。姉ちゃん一人
で気張る事もないさ」
「そうか、そうですよね。ありがとうございます」
「なーに。お、また新しい料理が来た! じゃ、またちょっくら鋭気を養ってくらぁ」
後ろ手に手を振りながら、ダナさんは運ばれて来た料理の方にふらふら歩いて行った。

ん〜? ドミニオン、宇宙。なんか引っかかる。何か忘れてるような……
まぁいいか。大切な事ならその内思い出すだろうし。

「サイ、残念ね。フレイがいればあんなように踊れるのに」
「しょうがないさ。オーブはカーペンタリアに近すぎる」
私達の視線の向こうではミリィとトールが楽しそうに踊ってる。
フレイとはサイから連絡先を教えてもらってこの間電話してみた。フレイは宇宙から地球に降りた時、オーブ本土
には寄らずに大西洋連邦に帰ったと言う話だった。
マスドライバーがあってカーペンタリアにも近いオーブは危険だと言う判断だろう。
「そう言えばカズイ、アークエンジェルから降りなかったのね」
「そうだな。お前は降りてるかと思った」
「馬鹿にするなよ。みんなを置いて僕だけ軍を抜けられる訳ないじゃないか」
「馬鹿にした訳じゃないさ。お前は優しいからな。軍隊には向かないんじゃないかと思ってた」
「僕にだって、CICで座ってるぐらいできるさ。サイやトールやルナほど危険な訳じゃない。それに……安全だと思っ
てたオーブも結局攻められちゃうしさ。絶対に安全な所なんてこの世に存在しないじゃないか」
「そうね。……なんか、カズイ、きりっとして男らしくなったね。見違えた」
「そうだな。なんか逞しくなったな」
「よしてくれよ。照れるじゃないか」
カズイは顔を赤くして手を振る。
「ふふ」

80523:2007/12/15(土) 00:12:25 ID:???
もうそろそろ料理も出尽くし、帰る人も出始める頃、ふとアズラエルさんがテラスで風にあたってるのが目に入った。
――思い出した! どうして思い出さなかったんだろう……自分で経験した事じゃないからね、きっと。授業で習った
だけだったから……夢の世界の記憶。
私はアズラエルさんに駆け寄った。
「どうしたんです? そんな緊張した顔をして?」
「聞いてください。笑われるかもしれないけど、御伽噺のような、夢の話だけど、でも――!」
「落ち着いて。聞きましょう。なんですか?」
私は、かいつまんで夢の世界の事を話した。私にもう一つの人生の記憶がある事を。そして――
「ふーむ。すると、その夢の世界では、僕はヤキン・ドゥーエで戦死すると言う訳ですか」
「はい。どんな状況かまでは教わりませんでしたけど、夢の世界ではアズラエルさんはプラントの、コーディネイターの
敵の大物として有名でしたから、そのくらいは……笑いますよね? でも、思い出したら心配になって、それで……」
「笑いませんよ。ありがとう、心配してくれて」
アズラエルさんは微笑んだ。
「しかし、興味深い。平行世界、とでも言うのでしょうかね? 別の世界である事は確かなようですね、ルナマリアさんは
プラントではなくオーブに生まれているし。しかし、参考になる事は確かです。うーむ、ジェネシスですか? その戦略兵器は。
調査の必要がありそうですね」
「でも、この世界にはないかも知れませんよ? 無駄骨になるかも」
「大丈夫ですよ。相手がこう言う仕様の物を作っているか否かを探り出すのは、どんな物を開発してるかをあいまいに
探るより簡単なんです。しかも、そんなどでかい物ならね。作られていないならいないで安心できます。……僕は
やっぱりドミニオンと一緒に死んだのかな? くやしいな。結構愛着持ってるんですがね、あの艦に」
「んー、私がザフトに入ってた時はドミニオンって艦の名前聞いた事ないんですよね。あ、でも! アークエンジェルなら
戦った事あります! パワーアップもしてました」
「パワーアップですか?」
「ええ! 敵だったから細かくはわからないけど、ジェットストライカーを着けたストライクと同じ位高く飛べるんですよ。
思い出した時悔しかったなぁ。あれだけ高く飛べれば、アフリカからアラスカに行く時も楽に来れたのにって。
ザフトの水中モビルスーツに一方的に攻撃されてどんなに悔しかったか……あ! それからローエングリンも地上でも
発射可能なように、汚染が無いように改良されてました。地上の砲台に設置したりして……ザフトの艦にも搭載した
新型艦あったんですよ。実は私が配属された最新鋭艦だったんですけどね」
「面白いですね。研究させて見ましょう。うーむCE.73年ですか、2年もあればそんな事も可能なんですねぇ。
夢の世界では、アークエンジェルはどんな活躍をしたんですか?」
私は、知ってる限りの夢の世界でのヘリオポリス崩壊からのアークエンジェルの行動を話した。
「……ちょっと待ってください。三隻同盟ってのは何なんです!?」
「アークエンジェルは地球軍から脱走したみたいで……そのぅ、アラスカでザフトを誘い込んでサイクロプスで
壊滅させるための囮にさせられたのが切っ掛けらしいですけど……」
アズラエルさんの口元がひくついた。
「あったんですか? そう言う計画」
「……正直に言えば、ありましたよ。ユーラシアと東アジアの軍隊を囮にしたね。しかし、その世界の僕は何を
考えていたんだ? アークエンジェルと言う高性能な最新鋭艦を囮にするなんて。僕には理解できない――。
……なんでその計画が実行されずに終わったかわかりますか?」
「えーと、なんでですか?」
「ルナマリアさん、あなたのおかげですよ」
「私!?」
「ええ。あなたの活躍のおかげで、低軌道会戦で第八艦隊は勝利した。アルスター事務次官もハルバートン
提督も死なずに済んだ。結果、我が軍のモビルスーツの開発が夢の世界より進んだ。そして、ナチュラル用の
OSをルナマリアさんが早期に完成してくれたおかげでモビルスーツ隊の編成がスムーズに進んだ。サイクロプス
によるアラスカ本部の自爆と言う奇手に頼らずともザフトを撃退できる目算がついた――僕は神を信じたくなりましたよ。
あなたに夢の世界の記憶を与えた神をね――」
81523:2007/12/15(土) 00:12:43 ID:???
アズラエルさんは、真剣に私の話を聞いてくれた。夢の世界で再び戦争が始まった後――私がザフトで戦っていた
時の事も――。ロード・ジブリール――夢の世界での私達ザフトの一番の敵だった人。彼は、この世界でも存在
するようだ。過激すぎて苦労している、とアズラエルさんは苦笑していた。
「彼は真剣にコーディネイターを憎んでいるようですからねぇ。困った物です。ユニウス7への核攻撃もどうやら
裏で彼の差し金らしくてねぇ。人が作った物だと思って気楽に壊しやがって! いや、失礼……ジブリール家は
プラント建設にさほど関わっていなかったのですよ」
「アズラエルさんは、コーディネイターを、その、どう思っているんですか?」
「うーん、やっかみ半分って所ですねぇ。実は子供の頃コーディネイターに憧れていましてね? なんで自分を
コーディネイターにしてくれなかったのかと親を恨んだ事もありました。はは」
「コーディネイターになっても、幸せが約束される訳じゃないですよ」
「そうですね。失礼ながら、ルナマリアさんを知ってからコーディネイターに対するトラウマは消えました。それに、
ナチュナルの可能性を信じさせてくれる人も見つけましたし」
「どんな人ですか?」
「傭兵のサーペントテイルってご存知ですか?」
「あ、なんか聞いた事あります」
「優秀な傭兵グループですよ。何回か仕事を頼んだ事があるんですがね、ギガフロート建設の警備とか。その
メンバーにイライジャ・キールと言う男がいるんですよ」
「あ、ギガフロートの」
「彼はコーディネイターですが、免疫系しかいじってないそうです。それにも関わらず、努力の末サーペントテールの
一角を担うに相応しい実力者に成長しています。みんなサーペントテイルのエースの叢雲劾(ムラクモガイ)に
目が行っていますけどね、僕はイライジャ君に注目しているんですよ。それに、我が地球軍にもコーディネイター
に負けない活躍をしてくれている人達がいっぱい居ます。ジブラルタルで名を上げたジェーン・ヒューストン、
ビクトリアで活躍したエドワード・ハレルソン、それに地球連合軍カリフォルニア士官学校の教官だった、彼らを
鍛え上げたレナ・イメリア……。コーディネイターにも負けないナチュラルが居るって証明されれば……そうすれば
危険を犯して子供をコーディネイターにしようなんて誰も思わなくなるでしょうし、コーディネイターは出生率が
低いから自然と滅びます。僕はナチュラルの可能性を信じてるんですよ……人類はそのままでも前に進んで行けると……」
そうか。そんな人達がいるんだ。会ってみたいな。平和になったら、会って見よう。

82523:2007/12/15(土) 00:12:51 ID:???
「しかし、心配でしょう。妹さん、メイリンさんですか。もしこの世界にもいたら」
「ええ、でももしこの世界にメイリンがいても、向こうは私を知らないだろうし……無関係なんですよね、結局。夢の世界の
知り合いに拘るより、こちらの世界の家族、友達を大切にしたい……」
「夢の世界では……恋人とか、いたんですか?」
「……あは。いたんですよ」
「会いたかったり、しますか?」
「それが〜、笑っちゃうんですよ。その人オーブ出身だったんですけど、この間、こっちの世界でも会っちゃったんです!」
「……そ、そうなんですか」
アズラエルさんは、なぜかとてもショックを受けたような顔をした。
「でもね? 夢の世界じゃ、私より一歳年下だったのにこっちの世界じゃ、まだ10歳以下だったんですよー。
いくらなんでも恋愛対象外ですよ。私ショタコンじゃないし。それに彼には妹がいたはずなのに、こっちじゃ私と
同じくらいの年の姉がいるし。やっぱり、夢の世界とこの世界は違うんだなって思い知らされました」
「そうですか。ふぅ……」
アズラエルさんはため息をついた。
その後も話は弾んだ。結局、パーティが終わるまでアズラエルさんと話し込んでしまった。
私が乗った、そして敵にしたザフトの新型モビルスーツにはとても興味を示してくれた。そしてニュートロンジャマー
キャンセラーの存在を知ると、とても喜んでくれた。私が、技術までちゃんと習ってない事が……詳しく教えられない
事が悔しい、と言うと、確実に出来ると言う事がわかるだけで、非常に役立つと言ってくれた。
……今まではフラガさんに、予知夢と言う事で話しただけだったけど、アズラエルさんにはすべて話せて、
すっきりした。うん、やっぱり吐き出したかったんだ。もう一つの人生の記憶なんてね。アズラエルさんに荷物を
持ってもらったようで、楽になった気がする。
艦に帰る車の窓から入る夜風がとても気持ちよかった。
83523:2007/12/15(土) 00:17:52 ID:???
続く。

仮に、「紅の戦乙女」と言う題名をまとめサイトにつけてみました。
今回はパーティの回
ピジョンブラッドの3カラットのルビーは1500万円だそうです。宝くじでも当たらないものか。
カガリとユウナは頑張っているようです。
84通常の名無しさんの3倍:2007/12/15(土) 00:19:09 ID:???
GJ!
待っていたよ!
85通常の名無しさんの3倍:2007/12/15(土) 00:47:13 ID:???
GJ!
アズラエルが着々とフラグゲットしてるw
86通常の名無しさんの3倍:2007/12/15(土) 01:31:36 ID:???
GJ
87通常の名無しさんの3倍:2007/12/15(土) 21:57:23 ID:???
hosyu
88通常の名無しさんの3倍:2007/12/16(日) 06:31:59 ID:???
GJ
89通常の名無しさんの3倍:2007/12/16(日) 23:41:18 ID:???
乙保守。
90通常の名無しさんの3倍:2007/12/17(月) 11:09:44 ID:???
91通常の名無しさんの3倍:2007/12/19(水) 23:13:53 ID:???
レスがない・・・念のために保守しておく
92通常の名無しさんの3倍:2007/12/21(金) 07:04:39 ID:???
保守
93523:2007/12/22(土) 00:01:25 ID:???
「いよいよ見えてきましたね」
「ああ……」
宇宙を進むリ・ホームの前に、オーブの宇宙ステーション『アメノミハシラ』が姿を現し、次第に大きくなっていく。
「ザフトの捕虜達の様子はどうですか?」
「一人騒いだのがいたでしょう。彼にはおねんねしてもらっているわ。それより、そろそろアメノミハシラの管制と連絡しなくちゃね」
「ああ」
プロフェッサーに言われて、ロウはアメノミハシラの管制に連絡する。
「アメノミハシラ! こちらジャンク屋ロウ・ギュールだ。ザフトの捕虜を連れて来た。どうすりゃいい?」
『こちらアメノミハシラ。ロウ・ギュールか。話は聞いている。そのまま入港せよ。ユーコピー?』
「アイコピー」
リ・ホームは管制に従いアメノミハシラに入港した。
「うへぇ! なんだか兵隊さんが集まってきてらぁ。悪い事にならなきゃいいがなぁ」
「不安、ですねぇ」
リーアムも眉を潜める。
……ロウ達の心配は杞憂だった。集まってきた多くの兵隊達は、捕虜を受け取りに来たのだった。
「――さて! お疲れ様でしたね、あなた達」
残ったオーブの士官が言った。
「なーに。俺達はこれからどうすりゃいいんだ?」
「このアメノミハシラの責任者、ロンド・ミナ・サハク様がお待ちです。案内するように言われています」
「不安、ですねぇ」
リーアムはため息をついた。
「ははは! 大丈夫ですよ。心配しなくても。確かに迫力がある方達ですけどね、サハク様達は。さあ、カートに乗ってください」

94523:2007/12/22(土) 00:01:48 ID:???
ロウ達はカートに乗り港から居住区に入り、更に厳重に警備されたエリアへと入り、廊下を歩いて行く。
「この部屋です。どうぞ」
ドアが開く。
部屋の奥には背の高い黒い長髪の人物が二人、一人は椅子に座り、もう一人はその傍らに立っていた。
「……え、えーと」
雰囲気に呑まれてロウは舌がもつれる。
「ふふふ。アメノミハシラへようこそ、と言ったところかな。私はロンド・ミナ・サハクだ」
椅子に座った人物が口を開く。
「私が弟のロンド・ギナ・サハクだ。ロウ・ギュール、お前と戦った相手だ」
続いて立っていた人物も自己紹介をする。
「……あ、あの時のはあんただったのか! ……しかし、ほんとにそっくりだな、あんた達。どっちがどっちだか
わからねぇや。俺は……」
「よい」
自己紹介しようとしたロウを、ミナが遮る。
「お前達の事は調べさせてもらったよ。くくく。悪運に恵まれたジャンク屋か」
「い、いやあ。弟さんには見事に負けまして」
「ふふ。弟が命を取らない気になったと言うだけで、充分悪運が強い」
「そうか。あははは……」
「それで……私達をどうなさるおつもりかしら」
ロウに任せていると話が進まないと見たのだろう、プロフェッサーが口を挟む。
「さて……どうした物か」
ミナの傍らに立っていたギナがあごをさすりながら答える。
「面白そうな人材だと思ってな、とりあえず手元に置いて置こうと思ったのだが」
「……それだけですか!? それなら解放してくださいよー! ジャンク屋の仕事だってあるのに」
「うーん?」
ギナは樹里の方をちらりと見る。
「ジャンク屋か……いつまでも続けられる商売ではあるまい。お前達は幸運かも知れんぞ。私の配下になれるのだからな」
「――もうすぐ戦争も終わる。地球連合は現在のジャンク屋組合に与えた権利を大きすぎる物と考えている。戦争が終わり次第、
それを取り上げる方針だ。これは確定事項だ」
ミナがギナの発言を補足する。
「ジャンク屋の天下も終わりだ。廃業するにしろ、戦争前のようなデブリ掃除屋に戻るにしろ、オーブとのコネは無駄には
なるまい。確かに、悪運が強いな。お前達は」
「はー。わかりましたよ。とりあえずあんたらの手下をやりますよ。……じゃあ、休んでいいっすかね? 色々疲れて……」
「悪いが、休むのはイズモ――オーブの宇宙戦艦の中でにしてもらおうか」
ロウの願いはギナに素気無く断られる。
「私はこれから出かける。供をせよ」
「へいへい。どこに行くんで?」
「――月だ」


95523:2007/12/22(土) 00:02:12 ID:???
「ふーむ。ロウ達はとどめを刺されずにザフトの兵士を回収した後アメノミハシラへ向かったか……何か言いつけられでもしたかな?」
ロウ達の動きを知ると劾は感心したように言った。彼なりに心配して様子を伺っていたのだ。
「ああ、悪運の強さは健在のようだな」
イライジャも答える。
「一安心だ。な、風花」
「うん!」
「しかし、エリカ・シモンズにはなんと報告したものかな……ロンド・ギナ・サハク。態度は傲慢だが、言っている事は頷ける点がないでもない……」
「イライジャー! 仕事だー!」
そこへリード・ウェラーが部屋に駆け込んで来る。
「ほう、俺にか?」
「おう! なんとあのムルタ・アズラエル直々のご指名よ!」
「内容は?」
「オーブから、月基地へのシャトルが打ち上げられる。今回は、なにか特別な物でも打ち上げられるのか、軌道上の
打ち上げ予定宙点付近から月基地までの経路を念入りに哨戒してくれってさ。もちろん地球軍も哨戒はするだろうがな、
目立ちすぎる。念のためにって事だろう」
「わかった。油断しなきゃ楽な仕事だな。受けよう」
「でも、劾じゃなくてイライジャをご指名とは、やるわね!」
ロレッタがイライジャの背中を叩く。
「イライジャ、頑張ってるもんね!」
風花もはしゃぐ。
「ムルタ・アズラエルか……」
劾はちょっと考えこんだ。
「どうした?」
「あ、いや。なんでもない。しっかりやってくれ」
「ああ、もちろん!」


96523:2007/12/22(土) 00:02:36 ID:???
久しぶりの宇宙!
私達はオーブのカグヤマスドライバーから月基地への補給物資の護衛として打ち上げられる貨物シャトルと一緒に宇宙に上がった。
幸いザフトの妨害を受ける事もなくすんなり月のプトレマイオス基地に着いた。
地球からはアークエンジェルとドミニオンが上がり、そしてオーブの宇宙ステーション「アメノミハシラ」からも戦艦イズモが合流して来た。
「おお! マリュー・ラミアス! 元気そうだなぁ! 活躍は聞いておるぞ!」
あ! ハルバートン提督が早速駆けつけて来てくれた!
「ハルバートン提督こそ、よく宇宙で頑張っていてくれました。おかげでいよいよ反撃の時です!」
「おう! お、フラガ中佐! アラスカでの活躍は聞いておるぞ。モビルスーツ隊が活躍できたのも君の作戦案あっての事だったと聞く」
「いやぁ。皆が頑張ってくれたからですよ。ホーク中尉とか」
「おお、ホーク中尉もよくやってくれた! 地球軍のモビルスーツが早期に完成したのも君が作ったOSがあってこそだよ。礼を言わせてもらう」
「そんな……もう一度やれと言われてもたぶん出来ませんよ? ふふ」
ハルバートン提督は、ドミニオンの人達が降りて来ると、真っ先にアズラエルさんの所へ挨拶に行った。
「アズラエル理事、モビルスーツの開発には常日頃から尽力頂いているそうで。ありがとうございます」
「何、当然の事をしているまでです。モビルスーツの有用性は僕もしっかり理解していますからねぇ」
「理事の発案で新型モビルスーツも開発されたそうで。これからもよろしくお願いします……お、バジルール少佐! 立派になったなぁ……」
ハルバートン提督はそのままナタルさんとかとも話をしてる。
あ、今度はオーブ艦から人が降りてきた。
うわぁ、あの長髪の人、背が高いなぁ。あれ? もしかしたらビクトリア奪回のニュースで出て来た、サハク家のギナ様?
「あ、あんた、ルナマリア・ホークさん?」
「え? そうですけど」
オーブ艦から降りて来た赤いバンダナをした人が声をかけて来た。
「俺、ロウ・ギュールってんだ! いやーM1アストレイに乗せてもらったんだけどさ、あんたが作ったナチュラル用のOSに惚れちまって。
あんなに動かしやすいのは見た事がない! 会いたかったんだ! どんな人か。こんなに可愛い女の子だったなんて!」
「オーブの関係者ですか? よろしくお願いします。それから……オーブのM1アストレイのOSの作者については秘密にしてくださいね?
 地球軍にばれると困るんです」
私はにっこり笑った。
「あー。なんか事情がありそうだな。了解!」
「後ろ……女の子が睨んでますよ?」
「え? あー、樹里ってんだ。おい、何ふくれっ面してるんだよ」
「もうロウったら、鼻の下伸ばして! 知らない!」
樹里と言うらしい、ロウを睨んでた茶髪の外跳ねした髪の女の子は目に涙を滲ませて行ってしまった。
「お、おい! じゃあ、あんた、またな」
「女の子泣かせちゃだめよー!」
ロウは女の子を追いかけていった。

ひとまず基地の居住区画に落ち着く。今日はこのままお休みだ。1/6の重力が、うーん、ふわふわマシュマロみたいでいい感じ。
まーろまっしゅまろまろまっろーん♪ 私はいい気持ちで眠りについた。

97523:2007/12/22(土) 00:02:44 ID:???
翌日。アークエンジェルやドミニオンのみんなはプトレマイオス基地のモビルスーツ乗員から、宇宙でのモビルスーツ操縦の訓練を受けている。
オーブから来た人達は……何をしてるんだろう? 宇宙ステーションから来たから宇宙での訓練は必要ないだろうし。
私は一人、アクタイオン・インダストリー社の人の訪問を受けていた。
「……いや、私共もユーラシア連邦の依頼を受けて自社でモビルスーツの開発をしていたのですが、ユーラシア連邦は大西洋連邦の
ダガーシリーズの供与を受ける事に決定してしまい……」
「はい」
それで? 何が言いたいんだろう、この人達。
「悔しいのですよ! このままでは終われない! モビルスーツの開発も、大西洋連邦の技術も取り入れて自社独自で継続しています。
いずれあなたにも乗ってもらおうと思っていますが、今回は新しいストライカーパックの試験をして頂きたいのですよ」
「新しいストライカーパック?」
「ええ。実際に見てもらった方が早いでしょう」
私はアクタイオン・インダストリー社の格納庫に案内された。
「こ、これは……」
私は絶句した。
そこには、全長100mにも及ぶかと思われる一門の巨大なビーム砲――戦艦の主砲? がそこにあった。その両側にあるのはウェポンベイ?
 そして、数機付けられているあれはブースターユニット?
「どうです? このディープストライカーは」
アクタイオン・インダストリー社のカトキハジメ設計主任は自慢げに言った。
「ディープストライカー?」
「現在我が社で開発されているモビルスーツ、コードネームι(イオタ)の強化パーツとして作られた物ですが、ストライクにも、もちろん装着可能です。
その名の通り、莫大な加速力で敵陣深くに突入し、戦艦の主砲で一点突破を図るという強襲型のコンセプトです。艦船攻撃用の大型ビームサーベルも
装備されております。その他、ウェポンベイにはマイクロミサイルがたっぷりと詰まっており、モビルスーツの迎撃に威力を発揮する……予定です。
防御面でもパイロットの生残性を高めるため、我が社が誇る技術――アルミューレ・リュミエールを短時間ですがモビルスーツ本体前面に展開可能です!」
「アルミューレ・リュミエール?」
「ヘリオポリスに住んでいた事があるなら聞いた事があるでしょう? ほら、L3のアルテミス要塞の全方位光波防御帯ですよ。それを改良しまして
内側からの攻撃を可能にしております」」
「そんなにたくさんの武装、私一人で扱えるでしょうか?」
「心配はいりませんよ。ディープストライカーには、ι(イオタ)に搭載される予定の人工知能『ALICE』が搭載されています」
「ALICE?」
「ええ。Advanced Logistic&In-consequence Cognizing Equipmentの略です。これを生かした簡易ガンバレルも装備されています。
一般人でも充分扱えますよ。まぁ2次元的な挙動が限界ですがね、敵の意表を突ける点で効果が高いでしょう」
「でも……この大きさだとアークエンジェルに収容できませんね」
「はっはっは。まぁ、しょうがないですよ。それは。基地から発進させるか、戦艦の甲板から発進するかにしてください。
なにしろまだ試作段階の物なので、運用まではまだ手がまわらんのです」
「はぁ……」
私はなんとも言いようが無くそう言うしかなかった。


「地球軍もいよいよ宇宙で反撃ですか。でも、俺達、ザフトと戦う気は無いかんな。俺達は兵士じゃないんだ。それだけは言っておくぜ、ギナ様」
ロウは、それだけは譲れない、と言う様に力を込めて言う。
「ああ。別にジャンク屋のお前達を戦力に数えるほどオーブは落ちぶれてはいないぞ? まぁ暇だったら基地の見物でもM1アストレイの整備の手伝いでもしておけ」
「あー。はいはい、あ! 整備って言えば! ちょっと行きたい所があるんだが……」
「ああ、話は後にしろ。これから私は地球軍の幹部達と会議だ。その後聞いてやる」
ギナはロウ達を置いて会議に行ってしまった。
「……本当に、私達ギナ様の気まぐれで連れて来られたみたいねぇ」
プロフェッサーが嘆息する。
「みたいだな。まぁ、こうなったら思いっきり見物して回ろうぜ! ジャンク屋の俺達が地球軍の基地に来られるなんて滅多に無いからな!」
98523:2007/12/22(土) 00:05:18 ID:???
続く。

ロウ達とルナマリアの出会い。

ディープストライカー――ストライカーで検索してたら引っかかってきたので面白そうなので出してみました。
99通常の名無しさんの3倍:2007/12/22(土) 00:51:00 ID:???
GJ!


ディープストライカーをフォビドゥンに装備させるとディープフォビドゥンに・・・
いや、なんでもない
100通常の名無しさんの3倍:2007/12/22(土) 09:24:19 ID:???
ディープストライカーってちょっと…ミーティアが玩具に見えるぜ。電池が心配だけど
101通常の名無しさんの3倍:2007/12/22(土) 10:57:30 ID:???
GJ!
しかしストライカーパック装備したMSってよりMSがおまけに付いてくるって感じだな、ディープストライカーw
102通常の名無しさんの3倍:2007/12/22(土) 11:29:39 ID:???
まぁぶっちゃけデンドロビウムww
ザフトから畏怖の象徴になりそうだな。

鳳仙花の名が相応しそう……あれ?
103通常の名無しさんの3倍:2007/12/22(土) 12:16:55 ID:???
あっ設計主任がカトキハジメだ
104通常の名無しさんの3倍:2007/12/22(土) 13:07:38 ID:???
このディープストライカーにガンバレルストライカーの操縦席部分だけつければ
即席かつ強力無比な大型MAになりますね
デストロイを2年先取りじゃ
105通常の名無しさんの3倍:2007/12/24(月) 09:38:29 ID:???
保守
106通常の名無しさんの3倍:2007/12/24(月) 17:31:49 ID:???
ディープストライカーなんてビーム砲お化けをCEで…はっ! もしやユーラシアは既に核MSを?
107通常の名無しさんの3倍:2007/12/24(月) 20:54:07 ID:???
ユーラシアで思い出したがこっちのスパコディ=ルナなんだろうけど、
じゃあこっちのカナードは一体誰なんだ?
108通常の名無しさんの3倍:2007/12/24(月) 21:28:48 ID:???
スパコディの失敗作でいいんじゃね?
但し、ルナマリアがスパコディという訳ではなく、そんなものは結局創れませんでしたってオチで
109通常の名無しさんの3倍:2007/12/24(月) 21:48:00 ID:???
あまり先を読むとネタ潰しになりそうだ。でもこの世界のカナードがどんな人かの
伏線は既に張られているような気がする
110通常の名無しさんの3倍:2007/12/26(水) 23:28:34 ID:???
保守
111通常の名無しさんの3倍:2007/12/28(金) 06:59:29 ID:???
保守
112通常の名無しさんの3倍:2007/12/28(金) 19:53:36 ID:h7er1jAM
保守
113523:2007/12/29(土) 00:51:21 ID:???
「うぁー、疲れた!」
「よお! お疲れさん!」
ディープストライカーのテストを始めて数日。
ロウがテストが終わった頃を見計らって、声をかけて来た。
「ほんとにもうくたくたよー。ディープストライカーってGがきつくて」
「じゃあ、ちょっくら骨休みしないか?」
「え? 何かするの?」
「俺達これから、イズモでデブリ帯のグレイブヤードに行くんだが一緒に来るか?」
「へぇ! 技術者が移り住んだって言うコロニーね。そこに何しに行くの?」
「レッドフレームのガーベラストレートが折られちゃってね。打ち直しに行くんだ」
「面白そうね。ちょっと待ってて。カトキ主任に言って来る」
「来れそうか? 一週間以上かかるかも知れんぞ」
「テストは私一人で適当にやってるからね。融通が利くのよ。最悪みんなが訓練終わるまでに帰ればいいし」

私達はオーブの戦艦イズモに乗ってグレイブヤードに向かう。
「それにしても、何と戦ってガーベラストレート折られたの?」
グレイブヤードに着くまでしばらくかかるので、私達は休憩所でだべっている。
「ええ!? うーん……」
ロウは困った顔をして向かい側の席をちらりと見た。
視線の先には、黒い長髪の背の高い男性――オーブのサハク家のギナ様が座っている。
「ふふん。私がザフト艦隊を沈めまくっている時に、そこのジャンク屋がちょっかいをかけてきたのでな。返り討ちにしてやったのだ」
「え!? ロウ達ってジャンク屋だったの!? ジャンク屋って中立じゃなきゃいけないんでしょう!?」
「……ふふふ。その通りよ。不問にしてもらう代わりに当面ジャンク屋休業して、ギナ様の手伝いをしてるって訳。
ほんとにもう、この熱血馬鹿には困っちゃうわ」
プロフェッサーがしれっときつい事を言う。
「うう……反論できねぇ……」
「もう、プロフェッサーたら。ロウも反省してるんだしいじめないでくださいよ〜」
茶髪の子がロウをかばう。
あら? この間のロウを睨んでた子? もしかしてこの子……うふふ。

114523:2007/12/29(土) 00:51:52 ID:???
廊下でその子――山吹樹里と二人きりになった時、聞いてみた。
「ねぇ、あなた。ロウの事好きでしょう?」
「な、な、なんでわかるんですか〜〜〜!?」
うわぁ、顔がいきなり真っ赤になった。可愛い。
「だって、いつもロウの事心配そうに見てるし……私とロウが話してる時も心配そうに見てるでしょう? わかるわよ」
「うう……顔に出やすいんですかねぇ。サーペントテイルの風花ちゃんにも見抜かれちゃったし」
「でも、わからない朴念仁が一人いるようねぇ」
「ああ、どうしたらいいんでしょう? ルナマリアさん? 気づいてもほしいし、気づかれるのも怖いし……」
「私だったら、積極的にモーションかけるけど、人によるからね。樹里さん向きじゃないみたい。空気みたいになれば
いいんじゃないかな? いつも居て当たり前、居るとくつろげる存在に。そうしてたまに離れた時に寂しい思いをさせて
あなたの存在の大切さを思い知らせるのよ!」
「うう、頑張ります!」
ああ、他人の恋愛って楽しいなぁ。私の勘だけど、ロウと樹里の二人はそのうちくっつくんじゃないかな。自然に。

「蘊奥の爺さん、いるか!?」
グレイブヤードに着いた私達は、ロウを道案内にコロニーの奥へと入って行った。
「にゃ〜ん」
ロウの声が聞こえたのか、奥から赤いちゃんちゃんこ風の服を着た体長1メートル程の大柄な猫が出て来た。
「お、ブータ! 元気だったか?」
「にゃ!」
「ブータ?」
「ああ、蘊奥の爺さんの飼い猫だ」
「うにゃ〜ん!」
ブータは、ロウのズボンの裾を咥えると、通路の奥へ引っ張って行こうとする。
「ロウ、これって……」
「蘊奥の爺さんに何かあったのかも知れねえ! 急ぐぞ!」

115523:2007/12/29(土) 00:52:09 ID:???
「おい! 爺さん! しっかりしろ!」
私達が駆けつけると、畳の部屋に倒れているお爺さんをロウが抱きかかえていた。
「大丈夫!?」
「わからん! なぁ、ギナ様! イズモから医者を……」
「……ぅ……む」
「お、気がついたか! 爺さん!」
「……馬鹿もん! わしゃ寝てただけじゃ!」
「……でも、口から血が……」
「リンゴを食いすぎただけじゃ!」
「なんだ……驚かすなよ、爺さん」
ロウは気抜けしたようにへたりこんだ。
「今日はえらいにぎやかじゃな。何があった?」
「そうそう、それ! 実はガーベラストレートが折られちまってさ、直しに来たんだ」
「折られたじゃと? どんな使い方をしたんじゃ?」
「それが……振り下ろしたら片手で白刃取りみたいに止められて、そこを横殴りに一撃されて」
「ふーむ。片手でか。止められる様なお前の腕がまだまだ未熟だと言う事じゃ!」
「うう……」
ロウはうな垂れる。
「ご老人。部下の未熟さはお詫びしよう。ところで、直しついでに私にも一振り作ってもらえないだろうか?」
「む? おぬしは?」
「私はオーブのロンド・ギナ・サハクと言う者です。実は私の乗るモビルスーツは、このロウの乗る物と兄弟機とも言うべき
物でして。彼の機体で有効な装備は、私の機体にもきっと役に立ちましょう」
「打ってやってもいいが、本人の剣術の鍛錬も必要ぞ? 本人の肉体の動きの理解無くして日本刀は本来の威力を発揮できぬ」
「では、一つご教授頂きたく。強くなれる機会を逃したくはありませんからな」
「めずらしい。ギナ様が敬語だ……」
ロウがつぶやく。まぁ、ギナ様いつもはえらそーなしゃべり方だもんね。
「ルナ、お前はどうする? 作るか?」
「うーん、作ってもらえるなら、作ってもらおうかな」
「おーけー。地球にいた時、海の底から面白いレアメタル大量に引き上げたんだ。硬度もあるし靭性も大したもんだから、
今回はそれで作ろうかと思ってさ。大量にあるからいくらでも作れるぜ」
お爺さんがこちらを向く。じっと見つめられる。落ち着かないなー。
「こりゃ娘っ子。おぬし剣術の経験があるな」
「はい、うちの家族は日本文化が大好きで、剣術も小さい頃から習いました。空鈍流の奥伝まで許されております」
「ほほう、空鈍流とな。知らぬ流派じゃ。立ち会ってみたい。よいかの?」
「はい、かまいません」

116523:2007/12/29(土) 00:52:29 ID:???
皆は広い板の間に移動した。
ロウは二人の立会いに胸が躍るのを感じた。
ルナマリアは竹刀を受け取ると、青眼に構え目を閉じ、しばらく気息をととのえているようだった。ルナマリアの目が開く、
と同時にゆるゆると構えが変わっていく。
ロウの胸に衝撃が走った。ルナマリアの構えが想像を絶したものだったからである。ルナマリアの右手の竹刀は八双の
位置で天を指していたが、左腕は軽く前方に伸びて何かの舞の型に見えた――

「大丈夫か爺さん!」
ロウが駆け寄る。蘊奥は片膝をついて荒く呼吸をしている。
蘊奥さんは強い! 強かった! 空鈍流の秘剣村雨を持ってしても勝てなかった……自分でも信じられない。村雨は
無敵だと思っていたのに。
今、蘊奥さんが片膝ついているのは単にお年寄りで長い立ち合いに疲れたからに過ぎない。
「大事、ない……見事じゃ、ルナマリア殿。この年になってこんな物を見れるとは思わなかったわい。もう滅んでいくしか
ないと思っておった技術が若い者の中に生きておった……嬉しい事じゃ」
蘊奥は満足げに笑みを浮かべた。
「やる気が出たわい。ロウ! 刀を打つ用意をせい!」
「がってんだ!」
「私も立ち合わせて頂きたい」
「私も、手伝わせてください!」
「もちろんじゃ」
蘊奥は私達に向かってにっこり笑った。
「わしが持てるだけの知識を教えてやる」

丸々10日、かかって三振りのガーベラストレートが完成した。
「きれいねぇ」
「うむ」
「ああ、そうだ。きれいで、そして強い」
私とロウとギナ様は、それぞれのガーベラストレートを惚れ惚れと眺めていた。
蘊奥さんはちょっと疲れが見える。刀を打つ監督と、暇があれば私様に稽古をつけていたからだ。
「お茶入れました。一服しましょう。どうぞ」
「おお、すまんの」
茶碗に手をかけた時――警報が鳴った!
「む、侵入者じゃ!」
「不運な奴らだなー」
「そうね。私達が居る時に進入してくるなんて」
「ふふふ。試し切りをしてくれよう」
ギナ様の瞳が怪しく光る。
私達はそれぞれのモビルスーツに乗り込んだ。

117523:2007/12/29(土) 00:53:24 ID:???
侵入者達は、ゲイツに乗っていた。この時期でこの装備は……ザフトの正規軍!?
「一応警告するわ。死にたくなければ出て行きなさい」
私は警告した。
「うるさい! 我々のレアメタルをおとなしく渡せ! 横取りしたジャンク屋がここにいると情報が入っているのだ! 
言い逃れはできんぞ!」
返ってきたのは罵声だった。
「かまわん。ロウ! ルナマリア! やってしまえ!」
ギナ様が檄を飛ばす。
「がってん承知!」
「敵はザフトの新型よ! ビームライフルにビームクローを持ってるわ! 気をつけて!」

私は仲間に警告するとエールストライカーを吹かしてゲイツの群れに突っ込む!
ゲイツは同士討ちを怖れてビームライフルを撃てない!
刃が相手に垂直に当たるように……切る!
ゲイツの片腕がビームライフルを持ったままゴトリと落ちる。
すごい! ジンの重斬刀とは比べ物にならない!
ゲイツはビームクローを展開して来た。
でも、対ビームコーティングされたこの剣なら……!
ガーベラストレートはゲイツのビームクローのビームをシャワーに棒を当てたように切り裂き、そのままゲイツのシールドを、左腕を切り裂く。
「胴!」
深く踏み込んだ一撃は、ゲイツの上半身と下半身を真っ二つにする。
そのままの勢いで更に深く踏み込み……
「面!」
次のゲイツの真上からガーベラストレートを振り下ろす。
ゲイツは胴の部分まで左右に切り裂かれる。
残ったゲイツはとうとう逃げ出した――
「わははは、そっちはトラップエリアじゃ……ぅ……む……」
突然、蘊奥さんのジンが片膝を付いた。
「どうしたの? 大丈夫? 蘊奥さん!」
急いでジンのコクピットを開く。
蘊奥さんは胸を押さえて浅く早い呼吸を繰り返していた。
「畳の部屋に運びましょう! そおっと」
蘊奥さんの寝起きしている部屋にそっと抱えて連れて行く。
布団を敷いて寝かせる。
「ギナ様、お医者さんを……」
「うむ。樹里、イズモへ行って呼んで来てくれ」
「は、はい」
「無駄じゃ……」
「蘊奥さん! 気がついたのね!」
「ぅむ……寿命じゃよ。宇宙白血病じゃ。長年患っておってな。ついに死神に捕まってしもうたようじゃ」
「爺さん、そんな事言うなよ! すぐにまた元気になるって!」
白血病……そうか、あの歯茎からの出血……
「何、死神にもだいぶ待たせたからの。お釣りが来るくらいじゃて」
「しゃべるなって!」
「言わせてくれ……わしは滅び行く技術と共にここで朽ち果てて行くつもりじゃった。それが人生の最後になって
素晴らしい弟子を三人も持つ事ができた……わしは幸せ者じゃ」
「……」
118523:2007/12/29(土) 00:53:33 ID:???
私達……ロウ、ギナ様に私は頭をうな垂れる。
「縁がありついでに頼みがある」
「なんでしょうか? 蘊奥殿」
蘊奥さんのそばに片膝をつきギナ様が答える。
「ブータの事じゃ。あれももう年寄りじゃ。すまんが世話を……」
「するよ! するとも、爺さん!」
「ありがとう……」
私は綿に水を吸わせ、蘊奥さんの口元に当てる。でも、吸ってくれる様子が無い。
蘊奥さんは小さく、口を開いて何か言おうとする。
「…………遅かったじゃないか……佐々木……宮本……眞子様……佳子様…………」
蘊奥さんの意識はすでに混濁しているようだった。
がくりと、蘊奥さんの首が傾く。
「なんだって? 爺さん! 爺さん! 起きてくれよ! 爺さん!」
ギナ様が蘊奥さんの胸に耳をつけ、鼓動を、呼吸を確認する。
「ロウ。もう蘊奥殿は……静かに眠らせてやろう」
ギナ様が蘊奥さんの両手を胸の上で組み合わせる。
「う……うあぁぁぁーーー!」
ロウさんの慟哭の声が響いた。

蘊奥さんの遺体は、とりあえずイズモに運んで冷凍カプセルに入れられた。
「なぁ、ロウよ」
「なんでしょう、ギナ様」
「蘊奥殿が亡くなった以上、グレイブヤードは無人となる。侵入者に略奪され放題となるであろうな」
「そう、なるでしょうね」
「……ここで亡くなった技術者達の墓、技術データをオーブに移すと言うのはどうだ? そしてその技術を知りたい者が
現れれば、すぐに参考にできるようにすると言うのは……。死者を冒涜する事にはならんか?」
「とんでもない! いいアイデアですよ! それ!」
うん、きっと喜んでくれる!
「そうよね、ブータ?」
「にゃん!」
「……あれ? 気のせいかな?」
――特に差し許す―― と言う声が聞こえた気がした。
私の脳裏には、暖かな日差しがあたる青い海の見える丘で安らかに眠る蘊奥さんが思い浮かんだ。
119523:2007/12/29(土) 00:54:48 ID:???
続く

ちょっくら藤沢周平オマージュ
120通常の名無しさんの3倍:2007/12/29(土) 01:04:06 ID:???
121通常の名無しさんの3倍:2007/12/29(土) 01:26:08 ID:???
GJ!
122通常の名無しさんの1.3倍:2007/12/29(土) 04:41:53 ID:???
GJ!
合言葉は『ガンパレードマーチ!』
123通常の名無しさんの3倍:2007/12/29(土) 08:54:36 ID:???
空鈍流とはまた珍しい流儀を。ある意味MS向きなのかも知れませんが
124通常の名無しさんの3倍:2007/12/29(土) 11:22:16 ID:???
一直線上の技である空鈍流は、三次元の宇宙戦闘では役に立たない。
下手に刀を持ったことが死亡フラグにならなければ良いが…
125通常の名無しさんの3倍:2007/12/29(土) 12:10:03 ID:???
>佐々木……宮本……眞子様……佳子様
どんな交友関係ですかwww
126通常の名無しさんの3倍:2007/12/29(土) 21:42:14 ID:???
>>124
それ言っちゃうと地球上の大概の格闘技が役に立たないんじゃ。
127通常の名無しさんの3倍:2007/12/29(土) 21:47:02 ID:???
ルナマリア、直にその猫から首輪を貰うんだ!
128 【大吉】 【1842円】 :2008/01/01(火) 10:11:50 ID:???
おめ。
今年も保守
129通常の名無しさんの3倍:2008/01/01(火) 10:59:58 ID:LNPHAUib
 ∧ 〃 ∧
∩∋⌒⊥⌒∈∩
∪(開運招福)m

♪//♪//♪//♪//♪//♪
明けまして
おめでとうヾ(^▽^)ノ
今年も宜しくね(^^ゞ
♪//♪//♪//♪//♪//♪
130通常の名無しさんの3倍:2008/01/04(金) 12:01:26 ID:???
保守
131523:2008/01/04(金) 22:57:02 ID:???
私達が、グレイブヤードの技術データ、それからお墓をイズモへ移すのに3日掛かった。
ようやくプトレマイオス基地へ帰還の途につく。
「あ、そろそろブータに猫缶あげる時間だわ。ブーター!」
「にゃーん」
探すまでもなく、ブータが休憩室に入って来る。
「ほーら! おいしい猫缶よ。今度はヘルシーグルメ まぐろ とろみソース仕立て 白身魚入りよ」
容器に猫缶の中身を開けてやると、ブータはがつがつと食べだす。
「またたびもあるから食べ終わったらあげるからね」
「ルナ、もうすっかりブータ係だなぁ」
ロウが感心した様子で言う。
「楽しくって。だってずっとコロニーにいたでしょう? こんな風にずっと一つの動物と一緒にいるなんてなかったのよ。
コロニーじゃ人間以外の動物見た事もなかったわ。学校じゃ水槽で小魚飼ってたけど、それくらい」
「じゃあ、ブータはルナが引き取るか?」
「そうしたいけど、今は戦争中だからねぇ」
「じゃあ、ルナが落ち着くまで俺達が預かる。これでどうだ?」
「ありがとう!」
『……これは! ギナ様! 救難信号です!』
ブリッジのクルーから通信が入る。
「ん? ……救難信号? 助けるぜ! ギナ様!」
つくづくロウは困っている者を見つけると放っておけない性質なのだ。
「あ? いいだろう」
「じゃあ、私が行って来るわ!」
暇なのでロウ達としゃべっていた私は志願する。
「おう、頼むわ!」

132523:2008/01/04(金) 22:57:44 ID:???
「……救命ポッドじゃない。船ね」
近づいていくと、救命ポッドじゃないのがわかる。輸送船だ。エンジン付近をやられてる。近くに、モビルスーツがぷかぷか
浮いている。一瞬ぎょっとしたが、ハッチを開けて乗員が出てきたのでほっとする。落ち着いてよくみると、皆、頭部だけをやられてる。
「いったいどうしたの!?」
『わからねぇ! あっという間に襲われた! 積荷を取られた! 依頼主がまだ中にいる! 心配だ!』
「わかったわ。行きましょう」
近づくと格納庫辺りをぶち破られてる。海賊にでもやられたのかな?
モビルスーツの乗員と共に船内に入る。
「これは……モビルスーツ!」
格納庫に入ると、一体のモビルスーツが横たわっていた。
「でも頭がない。ゲイツ……に似ているわね。ザフト?」
「いや、あれは……蛇のマークのモビルスーツだった。確か、傭兵部隊サーペントテイル。なぜかこのモビルスーツの
頭だけ奪って行きやがったんだ」
私の疑問を勘違いしたのか、ずれた答えが返って来る。
「変なの。そう言えば、あなたたちも頭部だけ破壊されてたのよね? 頭を100個狩るとか誓いでも立ててんのかしら」
私は用心しながら居住区に入っていった。
「プレアの坊ちゃん! 無事ですかい!?」
私達はブリッジに入った。――! 人が倒れてる!
「大丈夫!? しっかりして! 何があったの?」
「……来て、くれたんですね……頼みます! ドレッドノートの頭部を取り戻さなければ……マルキオ様の遺志を……」
弱々しい声でその人は言った。
「ともかく、イズモに収容するわ。知ってる? オーブの戦艦で強いのよ。もう大丈夫だから!」
イズモが近づいて来る。私はその人と護衛のモビルスーツの人達、そして積荷の頭の無いモビルスーツをイズモに収容した。

133523:2008/01/04(金) 22:58:27 ID:???
「大丈夫ですか? 襲撃されたみたいなんです」
私は倒れていた人の様子をお医者様に聞いた。倒れていた人は、金髪巻き毛のかわいらしい子だ。
「うーん、特に外傷もないが……病気かの? なにやら弱っていたからとりあえず栄養剤を注射してみたが……
お、気がついたようだ」
「大丈夫? ここはイズモの中よ! もう安心だからね」
「ありがとうございます、助けてくれた人ですね? 大丈夫です。……僕はプレア・レヴェリーと言います」
「襲われていたのは海賊に?」
「……傭兵部隊のサーペントテイルに……」
「そう。あの人達が言っていたのは本当だったのね」
「ほう……私を殺そうとした奴だな」
ギナ様が口を挟む。その言葉にプレアさんはびくっとする。
「殺す……?」
「ああ。色々彼らとは因縁があってな。少年、彼らに狙われると言う事は、単なる海賊に襲われるのとは訳が違う。
理由の検討は付いているのか?」
「……ここは、オーブの船、ですよね?」
ちょっととまどって、慎重に、確かめるようにプレアさんは質問する。
「ああ。そして私はサハク家のロンド・ギナ・サハクだ。安心しろ。オーブの大抵の事なら顔が利く」
ほっとプレアさんが溜息をつく。
「秘密に願います」
「わかった。皆もいいな?」
「はい」
「了解!」
「……ザフトでは、ニュートロンジャマーの影響を打ち消す装置を開発していました」
「ほう、やはりな」
ギナ様は頷くと、先を促す。
「それをニュートロンジャマーキャンセラーと言います。完成したそれを組み込んだモビルスーツをドレッドノートと言います。
僕と一緒に収容された物です。元々テスト機だったドレッドノートは、テスト終了後にはバラバラのパーツに分解され、
核エンジンおよび機密パーツ以外は廃棄処分されるはずでしたが、地球の深刻なエネルギー不足を憂いたマルキオ様は
それを解決する為、僕にドレッドノートをオーブのウズミ様に渡すように頼まれたのです。ですが、肝心のニュートロンジャマーキャンセラーが
搭載されている頭部をサーペントテイルに奪われてしまったのです! 頼みます! どうかマルキオ様の遺志を無駄にしないために、
協力してください! 取り戻す事を!」
134523:2008/01/04(金) 22:58:47 ID:???
待て、マルキオの遺志と言ったか? 死んだのか? 彼は?」
「……多分。亡くなられました。殺されたんです」
――!
私達の間を目に見えない衝撃が走る。
「誰に殺されたのだ? 地球連合が彼を手配していたのは知っているな? 連合の手の者か?」
「……いえ、プラント評議会議長シーゲル・クラインにです」
――!
再び私達の間を目に見えない衝撃が走る。
「一体何が起こったのだ?」
「わからない……わからないんです……お二人はナチュラルとコーディネイターとの融和を図る同志で居られたはずなのに……
プラントでの隠れ家もシーゲルさんが手配してくれて。ただ、最後の日、クライン邸に出かけられる前、言い残されたんです。
時間までに戻らなければ、シーゲルさんに殺されたものと思って、速やかに脱出しドレッドノートをオーブに届けろと……
マルキオ様は、それきり戻って来られませんでした」
「……」
医務室を沈黙が支配した。

「いやー、びっくりしたなぁ!」
プレアさんはあの後ぐったりして、ドクターストップがかかり、私達はひとまず医務室から解散した。
「ほんとにねぇ。マルキオさん、よく見つからないなと思っていたら、プラントに逃げていたのね」
「ああ。プロフェッサーはどう思う?」
「仲間割れ、かしらね。でも、単純じゃ無さそうね」
「あ、ひょっとしたら!」
私は口に出す。
「シーゲルさんて地球にニュートロンジャマー打ち込んだ人よね? その効果を無駄にするような事をしようとしたマルキオさんが邪魔になったとか」
「うーん、そっかも知れねぇなぁ。しかし、ショックだよ。俺達マルキオ様に会った事あるんだぜ」
「確かに知り合いが死ぬのはショックよね」
「ああ……」
いったい何が起こったんだろう? 何かが、確実に起こっている……


135523:2008/01/04(金) 22:59:25 ID:???
プラント。アプリリウス――

『召集ラッパの元に
最後の戦闘準備は整った
間もなく全ての通りに
ザフトの旗がはためき
隷属の時は終わるのだ

旗を高く掲げよ!
堅固なる隊列を組み
ザフトは行進する
一糸乱れず確固たる歩みで
同志よ、反動勢力を撃ち
我らの隊列に魂を込めて進軍せよ!

旗を下げよ、死者の前に、瀕死の者に
ザフトの名に於いて堅く宣誓するのだ
来るべき時が来た
尊き犠牲には報復でもって応えると
その時こそ、あまねく祖国に
幸福と安泰が響き渡るだろう!』

パトリックは息子のアスランと、エザリア・ジュール、その息子のイザークを連れて港湾部へと向かっている。
車中にまで、士気高揚のための軍歌が聞こえてくる。
「やれやれ、私が議長だった時以上だな。この軍歌の流し様は」
「ジブラルタルも放棄して……カーペンタリアはまだ耐久しているようですが食料や物資の配給制度も始まり……
ジェネシスの方もより一層完成を早めるようにと発破を掛けられています。一体、ザラ議員の評議会議長解任はなんだったのかと……」
悔しそうにエザリアが応じる。
「所詮、この状況では誰が議長をやろうと出来る事は同じなのだ。連合と講和するにしても、地球にニュートロンジャマーを
打ち込んだシーゲルに対して優しくしてくれるとは思わんがな。それならいっそアイリーン・カナーバを議長にした方が講和に乗ってくる
可能性が高いと言うものだ」
車が港湾施設に着いた。四人は車を降りる。

136523:2008/01/04(金) 22:59:57 ID:???
「気にせず歩けよ、アスラン。慌てるそぶりを見せるな」
「はい、父上」
モビルスーツへの格納庫に向かう通路を四人は進む。
「しかし、本当に危険が迫っているのでしょうか?」
「エザリア、私を信じろ。私が『彼』の秘密を知ったと言う事は早晩『彼』に知れよう。そうなってからでは遅いのだ。
このままプラントにいれば、私と私の右腕の君は確実に消される……それだけの闇がプラントにあったという事だ」
「右腕……は、はい……」
エザリアは頬を染めた。
「おい、アスラン。貴様どこまで事情をわかっている? 俺はさっぱりだ」
アスランと共に先頭に立って歩いているイザークが小声でアスランに尋ねる。
「さぁ。とにかく父上がこのままプラントにいては危険だと判断したのだ。俺は父上を信頼している。それで十分だ」
「そうか。俺も母を信じるだけだ」
「ああ」
「しかし、シーゲルが議長に返り咲いてから、ラクス嬢がテレビによく出るようになったな」
パトリックが声を大きくして周囲に聞かせるように話題を振る。
「ええ。以前とは違って、我々ザフトの士気を鼓舞するような演説をされるようになりましたね」
「そうですわね。以前はテレビに出ても政治的な発言はしなかったのに」
「彼女もわかっているのでしょう。今がプラントにとって正念場だと」
「兵のための慰問のコンサートも頻繁に開かれているようですしね」
「アスラン、お前は最近はラクス嬢と会ってないのか?」
「ええ。軍務が忙しくて。コンサート一度くらいは見ておかないと次に会った時に悪いかな?」
137523:2008/01/04(金) 23:00:06 ID:???
いよいよ彼らは格納庫の扉の前に来た。
「こ、これはザラ前議長にジュール国防委員長! お揃いでどうなされたのですか?」
警備の兵が尋ねる。
「なに、最新鋭のモビルスーツを見物に来たのだよ」
普段と変わった様子など毛ほども見せずパトリックが応じる。
格納庫の扉が開かれる。
パトリックは堂々とした態度で中へと入って行く。
「では、イザーク君、エザリアを頼むぞ」
「はっ!」
「アスラン、行こうか」
「はい」
パトリックは近くの兵に歩んで行き、命令する。
「ジャスティスとフリーダムだが、私達が実際に乗って飛んでみたい。私達が乗り込んだらハッチを開けてくれ」
「え? ご自身で操縦するので?」
「息子達だよ。そのためにわざわざ連れて来たのだ」
「了解しました!」
パトリックとアスランはジャスティスに、エザリアとイザークはフリーダムに乗り込む。
「いいぞ。ハッチを開けてくれ」
――エアロックが開かれる。ジャスティスとフリーダムは宇宙に飛び出す!
「……ほほう。これがモビルスーツから見るコロニーの景色か。面白いな」
「父上、急がなくてよろしいので?」
「しばらくは近くを飛び回ってやらんと警戒されてしまう。徐々に離れるのだ」
「はい」
ジャスティスとフリーダムは、しばらくコロニーの周辺を飛び回りながら次第に距離を取り、それから一気に加速してプラントから離れる。

「おい、ジャスティスとフリーダム、いつのまにかあんなに離れちまったぞ!」
「ザラ議員! ジュール国防委員長! 何があったのですか? 離れすぎです!」
「事故か?」
「二機ともか? まさか!」
「しかし、万が一と言う事もある。救助に誰か出せ!」
事態が本部に上がり、警報が出されたのは、二機が既に充分プラントから離れた後だった……
138523:2008/01/04(金) 23:01:15 ID:???
続く。

プレア登場。

アスラン達の大脱走♪
139通常の名無しさんの3倍:2008/01/05(土) 01:33:04 ID:???
GJ!

……ってちょいまて。
シーゲル、お前一体どうしたんだ!?
140通常の名無しさんの3倍:2008/01/05(土) 01:49:34 ID:???


マルキオの死が偽装臭いな。
シーゲルの転向との関連もありそうだし。

そしてパトリックがアスラン連れて(ジュール母子のおまけ付きだが)亡命とはなんたる皮肉。
141通常の名無しさんの3倍:2008/01/05(土) 02:33:57 ID:???
あー、まだリストカッター続いてたんだ
流血気持ちイイとか、まごうことない変態的事実であることに変りはないのに
変態ではありません、それは普通ですとか抗弁してたしね
当然自分で試した経験なんだろ?>523氏どの
142通常の名無しさんの3倍:2008/01/05(土) 09:13:39 ID:???
冬だなあ……

リスカネタとはむしろ懐かしい。
143通常の名無しさんの3倍:2008/01/05(土) 13:23:10 ID:???
まぁ・・触れないほうがいいし
多少燃料があったほうがスレの保守もいらんし
かえって免疫がつく
144通常の名無しさんの3倍:2008/01/06(日) 20:19:37 ID:???
GJ!
ふと思ったが、この作品のラスボスは誰になるのだろうか?
そして、クルーゼに出番はやってくるのか?
145通常の名無しさんの3倍:2008/01/10(木) 20:19:19 ID:???
ほす
146523:2008/01/11(金) 20:46:26 ID:???
「ははは! パトリックが自ら核動力機で逃げ出したか! こいつは痛快だ!」
クルーゼは背を反らして高笑いを上げた。
が、この程度では到底クルーゼの歓喜は収まらない。腹筋が痙攣する。
「くははは……も、もう我慢できん!」
ソファに置いてあったりらっくまのクッションを抱え込むと床に倒れこんでうーうーと唸ってごろごろ転がりまくる。テーブルに
当たり置いてあったウイスキーの瓶、グラスが床に落ち、たちまち絨毯の上に水溜りを作っていく。気にせずクルーゼは床に
落ちたウイスキーの瓶を手に取ると直接瓶に口をつけてごくりと飲み、祝杯を掲げるかのように瓶を掲げる。
「これで……これでニュートロンジャマーキャンセラーがアズラエルに渡る! ざまを見ろ人類どもめ! もっと……もっと殺しあえ!」
――ノックの音がする。
「どうしました!? クルーゼ隊長! 何かあったのですか!?」
副官の声だ。
「なんでもないよ。ちょっとお誘いの手紙をもらってね、興奮してしまったようだ」
ふふふ、益々面白くなってきたじゃあないか、この世界は! ザラ派の私に果たして何が目的かな?
クルーゼはテーブルの上を見る。
そこには、とあるクライン派の著名な人物の名前で呼び出しの手紙が置かれていた。


147523:2008/01/11(金) 20:46:50 ID:???
「ずいぶんと、あなた達と過ごしちゃったなぁ。別れるのが名残惜しいくらい」
「ああ。俺もだ。だが、永の別れって訳じゃねぇ。イズモはプトレマイオス基地にいるし、会おうと思えばすぐ会えるさ」
「うん、そうよね」
「にゃー」
「お、ブータも挨拶に来たか?」
「にゃおん」
ブータは、ぶるるんと体を揺すると、器用に首輪を外した。外れた首輪を咥えて、こっちに持って来る。
「えーと? もしかして、くれるのかな?」
「ははは。ずいぶん気に入られたようじゃないか。もらっとけよ」
「じゃあ、せっかくだから、頂くね? ブータ!」
「にゃうん」
私が首輪を取ると、ブータは満足そうに鳴いた。
「首輪というよりも、ベルトに近いわね」
試しに自分のウェストに巻いてみる。けっこう、しっくり感がある♪
「へぇ、いいじゃないか。似合ってるぞ」
「そう? えへへ、ありがとね、ブータ」
もう一度ブータにお礼を言う。
……? なんだか身体が軽いような……? 気のせいかな?
「こんにちわ」
「あ、プレア! 調子はどう?」
「ええ、いいですよ」
プレアは時々胸を押さえて苦しそうに息を止めている事があった。プレアは大した事は無いと言うけれど、私はそれが心配だった。
ブータがプレアに近づき、手をぺろりと舐める。
「あなたとも、妙な縁だったけど……なんか他人のような気がしないわ。弟が出来たみたいで楽しかった」
「ええ、僕もねえさんが出来たみたいで嬉しかったです」
「時間が出来たら、また来るからね。あなたは取り返す物を取り返したらオーブに降りるのよね? オーブには私の家もあるの。
もし、行くあてがなければそこで暮らさない? あなたみたいないい子なら、両親もOKだと思うわ」
「え!?」
プレアはびっくりして目を見開いた。
「ふふ。よかったらって事よ」
私はプレアの頭の毛をなでた。
――!?
その時、世界が変わった――
148523:2008/01/11(金) 20:47:08 ID:???
まるで世界に私とプレアしかいないような、それでいて妙に知覚が広がったような、妙な感覚――
「プレア……あなたは……!?」
「……わかってしまうんですね。もしかしたらあなたも……ニュータイプかも知れない」
「ニュータイプ?」
「特殊な空間把握能力を持ってガンバレルなんかを操作できる人を、僕達はニュータイプと呼んでいます。ニュータイプ同士ではよく
こう言った精神の交感が起きるんです」
「すごいのね……こんな力が……」
「僕にもあなたがわかる。ずいぶん辛い思いをしてきたんですね。でも、それを乗り越えてあなたは今、強い」
「強くなんか、ないわよ」
「強いですよ。ちゃんと、上を見ている」
「私の辛さなんか、あなたに比べればなんでもないわよ。なぜ、あなたはそんなに強いの?」
「僕だって強くない。僕に残された時間は少ない。それならせめて後悔しないで死にたい。それだけです」
「月並みな言葉なんて言えない。でもあなたには生きて欲しい! プレア!」
叫んだ瞬間、急速な勢いで世界が戻る。
私はプレアの頭に手を当てたまま。目の前には、プレアの瞳があった。目が、離せない。手が離せない。離したらどこかに消えてしまいそうで。
……もし、望めば、あの精神の交感は起こるのだろうか?
私はプレアの宿命と気負いを知ってしまった。どうしようもなく分からされてしまったのだ、あの空間で。また、あの状態になったら、
耐え切れないかもしれない。
「にゃー」
ブータが体を擦り付けてくる。魔法は解けた。
「……あ、あれ、本当にあった事なのよね?」
もしあれが私の見た一瞬の幻覚だったら人にはまるで意味の通じない言葉を口に出す。
「……ええ。あんな風に、人はわかりあえるんです」
「他にもこんな人が?」
「ええ、僕の死んでしまった兄弟達……」
そうだ。プレアは失敗したクローン。プレアには常に死の影がまとわりついている。
「みんなあんな風に分かりあえたら、人類もきっと……よりよき道を辿れるかも知れないのに……」
「わかっても、理解しても、譲れないものも、あるわ。いくらあなたの命が長くないって思い知らされても私は嫌だ! プレアに死んでほしくない!」
「ありがとう……」
ブータが今度はプレアに体を擦り付ける。
私はプレアとブータをぎゅっと抱きしめた。
「いきなりどうしたんだ?」
さっぱり訳がわからないと言う目でロウが私達を見てた。


149523:2008/01/11(金) 20:47:30 ID:???
「よう、お帰り! ルナ」
「サイ! トール! しっかり訓練やってた?」
「もうばっちりさ! とりあえず宇宙での機動に心配はないね。何しろ上から一方的にやられないってのがいい」
「そうそう。ジェットストライカーだったルナにはわからないけだろうけどさ」
「私だって! ジェットストライカーになるまではどんなに悔しかったか……ディンとか……水中用モビルスーツとかさ」
「そうだったな」
「宇宙には、宇宙の怖さもあるのよ? 推進部が壊れて漂う羽目になったら、味方が見つけてくれなきゃ窒息死」
「地球だって、空飛べたって撃墜されりゃ墜落死だろ? それぞれの死に方があるってだけさ」
「俺は……ミリィが待ってるからな。絶対生きるのをあきらめないよ。救急キットにあるメルカトランフェラーゼを注射して、出来る限り生きるさ」
メルカトランフェラーゼ――宇宙では救急キットの中に含まれている。これを注射して、コクピット内を4℃に設定すると
代謝が抑えられて半コールドスリープ状態になり、酸素の消費量が減り長期間の生存が可能になるという。試した事ないけど。
「でも、今度は地球軍は攻める側だから、その点は気が楽よね。なにかあっても、きっと可能な限り探してくれる」
「そうだな。じゃあ、ルナ。模擬戦やろうか? 腕鈍っていないだろうな」
「失礼ね! じゃあ、あなた達の腕前がどれだけ上がったか試してあげるわ」
「そうだ、ドミニオンの連中に声かけて紅白戦やろうぜ」
「いいわね」

ドミニオン隊にお誘いを掛けたら喜んで乗ってきた。
――紅白戦が始まった。

合図と同時に5機の105ダガーが突っ込んで来る。
……手強いのが2機! 誰? ジョンさんやエイムズさんじゃない、ダナさん? でも、後もう一人いる!
「スウェン、ミューディー、シャムス! 俺達は第2期シリーズの3機に向かうぞ! 残りはそのままダガーを引き付けて耐久しろ!」
フラガさんの指示が飛ぶ。
「「はい!」」
「サイ、トール! 手強いのが2機いるわ! それは私とキャリーさんに任せて!」
「わかった!」
言ってる間にも相手は切り込んで来る。
模擬刀同士がぶつかる!
実戦なら、一旦引いてもいいけど、ここはフラガさんの指示通りに!
……この2機、連携がいい! 隙があれば後ろのデュエルダガー、バスターダガーの方を狙われる。
その度に、攻撃のチャンスを挫かれる。気が抜けない。
あ……なに? これは?
――相手の位置が、これからの行動が、感覚でわかる……?
今までたまにあったような、集中力が限界まで高まったような感覚とはまた違う感覚。
あ、一瞬、フラガさんと繋がったような……側面から迂回してるのがわかる。
一体何なの?
不思議に思いながら、時間が過ぎる。

150523:2008/01/11(金) 20:47:45 ID:???
『ピー!』
警告音が鳴る。
『シャニ機、撃墜されました』
『オルガ機、撃墜されました』
『クロト機、撃墜されました』
立て続けの報告。
「待たせたな、お嬢ちゃん!」
『七郎機、撃墜されました』
私の目の前の105ダガーが動きを止める。横方から105ダガーを撃墜したのは、フラガさんのビームガンバレルだった。
……紅白戦は、アークエンジェル隊の勝利で終わった。
「あんなのありかよー! あんな武器持って来られたらどうしようもないぜ」
クロトだ。
「違うな。俺が普通のエールパック付けててもお前らやられてたよ」
フラガさんが指摘する。
「お前ら、一機一機は強いが連携がなっちゃいない。それを見て取ったもんでな、そこを突破口にさせてもらった」
「あはは。その通り。こいつら、てんで統制が取れないでやんのよ。好き勝手にやらせとくしかなくってさぁ」
ダナが苦笑して答える。
「だってよー、戦闘になるとつい暴走しちまうんだよ」
「……でも、前よりかは暴走しなくなってきたんじゃないか? 俺ら? 最近減薬されてるし」
「でも、なんか前より覚醒感なくなってきたんだぜ? いいのかよ? なんだか弱くなった気分だぜ?」
「まぁ、アズラエルのおっさんがやってるんだ。かまわんて事だろう。その代わりってゆーかOSも付きっ切りで改良してるみたいだし」
そうか……アズラエルさん、この子達治療してくれてるんだ……よかった。

151523:2008/01/11(金) 20:47:52 ID:???
「強いですね。さすがです、ホーク中尉」
この通信は……私が戦っていた105ダガーから?
「あなたもね。手強かったわ。名前を聞かせてくれる?」
「私達はまだ顔を合わせてなかったですね。最近ドミニオンに配属されたものですから。私は七郎・ソキウスです。
隣で戦っていたのが十一郎・ソキウスです。どうぞよろしく」
「よろしくね。あなた達、兄弟?」
「そんなような物です」
「――おい! お前ら! 未確認飛行物体だ! 距離約2000、イエロー262、34マーク9チャーリー!」
会話はフラガさんの声で断ち切られた。
私達は一斉に警戒態勢に入る。
だんだん近づいてくる未確認飛行物体……あれは! ジャスティスにフリーダム!?
「近づいて来るモビルスーツ! 止まれ! 止まらなければ攻撃する!」
フラガさんが警告する。
2機のモビルスーツは速度を落とした。
『その赤いモビルスーツ、ルナマリアか!? 俺はアスラン・ザラだ! プトレマイオス基地の最高責任者と話がしたい!』
アスラン!?

「おい、どうするんだ?」
「基地の最高責任者って誰になるんだ?」
「名前しらねーぞー」
「馬鹿ねぇ。アズラエルさんがいるんだからアズラエルさんに繋げばいいじゃない?」
「そうだな。では、その2機、着いて来い。おかしな真似はするなよ?」
『了解』
私達は、ジャスティスとフリーダムの周囲を取り囲んで基地に帰還した。

「……はい。了解しました」
「なんて?」
私は七郎に聞いた。
「アズラエル様はお会いになるそうです。一行に知り合いがいるあなたに連れて来て欲しいと」
「わかったわ。護衛は……大丈夫かしら? アスランなら、変な事はしないと思うけど」
「大丈夫です。アズラエル様の護衛は、私のような者……次郎と三郎が務めております」
「ひょっとして、あなた達、コーディネイター?」
「ええ。あなたには話しても良いか……戦闘用コーディネイターと言うものです。一般のコーディネイターになど遅れは取りません」
「戦闘用……?」
「その話は後で。今は、案内を」
「う、うん」

「どうぞ。アズラエルさんがお会いになるそうです」
「うむ」
ジャスティスとフリーダムから出てきたのは、驚く事にパトリック・ザラ前プラント評議会議長に、エザリア・ジュール国防委員長だった。
いったいプラントに何があったの!?
152523:2008/01/11(金) 20:50:18 ID:???
続く。

このごろのクルーゼさん。ご機嫌です。

ブータの首輪をルナに渡しました。ステータスが上がるかは謎です♪

ルナ、ニュータイプに覚醒しました♪

ソキウスとの出会い。

そしてアスラン達がやってきました。
153通常の名無しさんの3倍:2008/01/11(金) 21:43:28 ID:???
ハイになるのは良いけど…りらっくまのクッションって…クルーゼ隊長、意外に
お茶目さん?
154通常の名無しさんの3倍:2008/01/17(木) 15:46:50 ID:???
保守
155523:2008/01/18(金) 20:31:19 ID:???
一体プラントに何が起こったと言うんだ? まぁいい。これからの会見でわかるだろう。
ドアが開く。アズラエルは立ち上がった。
開いた扉の向こうには、テレビなどで見知った顔、パトリック・ザラとエザリア・ジュールが立っていた。
「どうぞ、中へ。ああ、ルナマリアさん、ありがとうございました」
「いえ。では私はこれで」
扉が閉まる。
「ようこそ、と言うべきでしょうかね。パトリック・ザラ前プラント評議会議長に、エザリア・ジュール国防委員長、そして……」
「アスラン・ザラにイザーク・ジュール。私達の息子達だ」
「どうぞ、おかけになってください。こちらは……」
アズラエルは壁際のソファの後ろで立っている次郎と三郎を指し示す。
「僕の護衛です。お気になさらず」
「ああ、では座らせてもらおう」
四人が座るのを待って、アズラエルもソファに腰を下ろす。
「で、今回は何用で来られたんですか? まさか亡命?」
「……近いかな。プラントに対する責任感は1mmたりとも失ってはおらん。だが、命を狙われる危険が出てきたのだ」
「誰にです?」
「……シーゲル・クラインにだ」
「詳しく、聞かせてもらえますね?」
「無論、そのつもりだ」
パトリックは自身が探り出した秘密結社ターミナルとシーゲル・クラインとの関係について語った。
「ちょっとすぐには信じられませんねぇ。秘密結社、ですか」
「私も、すぐには信じられなかった。だが、証拠が出てきたのだ。まず、ユニウス7への核攻撃……」
ここで、パトリックは亡き妻の事を思い出したのか、目頭を押さえた。
「攻撃したのは無論そちらだ。だが、こちら側の防備がユニウス7周辺だけ故意に薄くされていた事が判明した。私が探り出した所、
その原因はシーゲルが直々に出した防備命令だった」
アズラエルは先を促すようにうなずいた。
「続いて地球上へのニュートロンジャマー投下だ。本来これは、遠隔操作によりスイッチのオンオフが出来ると説明されていた。
それを持って連合に交渉を迫ると聞かされていた。だが、実は試験段階で、ニュートロンジャマー自体の作用で遠隔操作が
出来ない事が判明していた……そのデータはシーゲルの所で握り潰されていた。試験の担当者は不審死を遂げていたため、
発覚しなかった」
「うーん。何かをシーゲルさんが企んでいる事は確かなようですが、一体、ターミナルの目的とはなんなんです?」
「難しい質問だ。一応地球圏を支配する事ではないかと想像しているが、あるいはもっと非論理的な目的かもしれん」
「わからないと言う事ですね。……ところで、ザフトでジェネシスって兵器、開発してます?」
「……掴んでおったか。確かに、開発している。強力なガンマ線で地球のオゾン層を破壊し、地上に被害を与えるものだ。
無論通常のガンマ線ビーム兵器としても使えるがね。私はこれをもって連合に妥協を迫るつもりだった」
「実際には使うつもりはなかったと?」
「ああ。旧世紀の冷戦時代の核と同じだよ。抑止力であってこそ意味がある。使ってしまえば終わりだ。なにしろプラントは
未だに食料を地球に頼っているのだ。地球が滅べばプラントも滅びる。だが、シーゲルは何をやるかわからん。奴の思考が読めんのだ……」
「教えてくださってありがとうございます。では、ぶっちゃけてお聞きしますが、貴方がここへ来た目的はなんですか? 
こちらに情報を教えてくれるためだけに来た訳じゃないでしょう?」
パトリックの顔が一瞬ゆがむ。
156523:2008/01/18(金) 20:31:59 ID:???
「……もはや、プラントに残された道は敗北か、地球人類全てを巻き込んだ心中しかない。どうかプラント市民に寛大な
条件で和睦を……そしてもう、CE63年のような、プラントのエネルギー事情を無視したような過大なノルマを課すような事は
止めて欲しい。それがきっかけでプラント内で独立論が声高に叫ばれ始めたのだから」
「……確か、その年はプラントエネルギー部門が故障したんでしたっけ。まぁ、こちらにもプラント運営に関して不手際が
あった事は認めましょう。……和睦ですか。プラント本土までザフトを押し込めた所で名目上講和、としてあげても構いませんけどね、
僕としては。プラント市民が武装を放棄してまともな労働者に戻ってくれればねぇ。ニュートロンジャマーによる被害なんて
天文学的な数値になるだろうし、とてもプラントに払えるとは思えない。締め上げすぎて新たなヒトラーを生む原因にもしたくない」
「おお……」
「でも、足りませんね。まだまだ。これまで貴方がしゃべってくれた事だけではとても、釣り合わない。持ってるんでしょう? 交渉材料?」
「……ニュートロンジャマーの効果を打ち消す装置、ニュートロンジャマーキャンセラーが、プラントでは開発されている」
「やっぱり開発されていましたか!」
「一つ、条件がある」
「なんです?」
「この技術を、軍事転用はしないで欲しい。例えば核ミサイル、核動力モビルスーツ……」
「まぁ、いいですけど? まずは各地のエネルギー事情の改善に使いたいですからねぇ。でも、その好転したエネルギーで兵器を生産して
戦場に送れば同じ事ですよ?」
「それはしょうがないでしょうな。ともかく、プラントには過敏すぎるほどの核アレルギーがあると理解頂きたい。どのような形であれ、
兵器として核を使われれば、それはプラントを皆殺しにする意思と取る者が多いでしょう。皆殺しになるならばいっそジェネシスを
撃ってしまえ――そうなる事を私は怖れる」
「わかりました。ザフトが核兵器を使わない限りこちらから先制して核兵器は使用しないと約束しましょう。では、データを渡して頂けますね?」
「……今までに貴方が言った言葉、信用してよろしいのですな?」
「僕は商人です。取引の信義は守りますよ」
アズラエルはにぃっと笑った。
「では……」
パトリックは懐からデータチップを取り出した。
「全てはここに……」
「確かに」
アズラエルは慎重にデータチップを受け取った。
「さて、これからのあなた方ですが。とりあえずは僕の家の別荘にでも隠れて頂こうと思うのですが、いかがです?」
「結構だ。場所は?」
「北アメリカ、スコットランドとありますね。ああ、この間オーブの小島も買いましたね。なかなかいい所ですよ、オーブは」
「では、オーブにお願いする。コーディネイターがいても目立たぬでしょうから」
「わかりました。それで……」
ここで、アズラエルはいたずらっぽく笑った。
「安全のために偽名を名乗って頂きたいのですが、どうします?」
157523:2008/01/18(金) 20:32:29 ID:???
「う……む、偽名か……。そうだな、パトリック・コーラサワーで」
「コーラサワー?」
「コーラサワー」
「おいしそうな名前ですね」
「なに、子供の頃に見たアニメの登場人物さ。確か『ガンダムOO』とか言ったかな」
「ふむ。機会があれば見てみましょう。ジュールさんはどうされます?」
「え、ええと……」
話を振られて口ごもるエザリアに、パトリックが口を挟んだ。
「エザリアは、私の妻と言う事でいいだろう。私達は家族と言う事で。それが一番自然だろう」
「つ、妻……?」
「嫌かね? エザリア?」
「い、いいえ! とんでもありません! それでかまいません!」
少女のように頬を赤らめてかぶりを振るエザリア。
それをイザークは複雑そうな、なんともいえない表情で見つめていた。
ふと、アスランと目が合う。
「兄弟かよ……」
イザークは小さくため息をついた。それを見てアスランが口を開く。
「イザークお、お兄ちゃん?」
「……貴様ー! 気持ち悪い呼び方をするな!」
「あはは。ごめんごめん」
「ぷ。ふふふ」
「ははは」
パトリックも、アズラエルも笑い出す。部屋は笑い声に包まれた。

158523:2008/01/18(金) 20:33:06 ID:???
「……そう。あなた達は地球軍が作り出した戦闘用コーディネイター……」
七郎から七郎達の素性を教えられた私は、気分が暗くなった。
「アズラエルさん、そんな事してたの……」
クロト達強化人間の事は、知ってたけど……
「ああ、勘違いしないでください。アズラエル様と自分達の年齢差を考えてください。私達が生まれた時、アズラエル様はほんの子供です。
これは、彼の父、ブールーノ・アズラエルが始めた事で、彼は事業としてそれを引き継いだに過ぎません」
「でも、ナチュラルに攻撃できないようにされてるんでしょう? もしナチュラルから攻撃されたらどうするのよ?」
一方的に攻撃されるしかないなんてひどすぎる!
「服従遺伝子ですか? ふふふ、そんな不完全な物、とっくに効果は切れてますよ。アズラエル様もご存知です。
でなければ、同じナチュラルからも攻撃される危険があるお立場と言うのに、我々を身近な護衛になど使いません」
「……服従遺伝子、効いてないの? なら、なんであなた達……」
「アズラエル様に従っているか、ですか? 洗脳が解けたからと言って、反抗するだけが取る道ではありません。
洗脳が解けたと言っても、ナチュラルのためになりたいと言う欲求は残っているのですよ。……アズラエル様は、
面白い方だ。ナンバーで呼ばれていた我々に名前を付けようと考える人など今までいなかった。我々は見守っているのですよ。
彼が世界のためになるか否かを」
「もし……ためにならないと判断したら?」
不安げな表情が出てしまったのだろうか、七朗は私を安心させるように微笑んだ。
「さぁて。遠くに逃げ出して高みの見物と言うのも一つの手ですが。どうせなら関った方が面白そうですね。身近にいれば
お互いに影響も与えられますし」
「そうよね。人が、間違っていたら、それを正せばいい……」
「私も一時悩んだ時期がありまして。そしたらある人に言われたんですよ。『なんのための耳だ口だ脳だ!! 人体は正しく使え!!』とね」
「正しく使え?」
どう言う事だろう? よく、わからない。
「わかりませんか。実は私もよくわからなかったです。そしたら、『口は、思いを伝えるために、頭は考えるためにある、耳は人の話を
聞くためにある。言葉にして伝えなきゃ伝わるもんか。伝えずにして『分かってもらおう』なんて、甘い!』ってね」
「あは。いい台詞ね」
確かに、確かに、言わずともわかってもらえるはず、と思うのは遠回りな場合もある。それより口に出して言ったほうが
わかってもらえることもある。
「逆も、言えるんです。相手の事をイメージだけでこうだと決め付けて何もしないのは、だめなんです。直接知らなきゃ、
わからない。叱られましたよ『知らない・知らなかったこと』は恥でも罪でもないが、『知ろうとしないこと』は大きな恥であり、
罪だと。で、思い切って当たってみたんです、アズラエル様に。そしたら思ったよりユニークな方だったので今に至ると」
「そう、あなた達自分の意思でアズラエルさんのそばにいるのね。なんか嬉しいな」
「……ふふふ。それは、あなたもアズラエル様に好意を持っているからでしょうね」
「え……やだ! 好意って!?」
ああ、なんで!? 顔が紅潮するのがわかる!
「ふふふ。好意と言うのは恋愛以外でも使いますよ?」
「……あ……もうっ! 七郎ったらいじわるね。……でも、ユニークな人ね、その人も」
「ええ、ユニークな変わり者でした」
「会ってみたいな。何て言うの? その人?」
「それが……名前は聞かず仕舞いで」
残念そうに七朗は言った。
「でも、縁があればいつかまた会えるでしょう。そう思わせる人でした。ああ、そうだ! 確か、連れていた犬の名前をマイフレンドと……」
「犬の名前がマイフレンド? ほんと、ユニーク」
「ええ、ユニークです」
そう言うと七朗は目を閉じ懐かしむようにかすかに微笑んだ。

159523:2008/01/18(金) 20:34:10 ID:???
「やあ、お嬢ちゃん」
「あ、フラガさん」
自室に戻ろうとすると、フラガさんがいた。
「驚いたよなぁ。いきなりザフトの大物が亡命だなんて」
「声が大きいですよ」
「はは。誰もいないさ、ここには。んー、お客さんのおかげで言いそびれちまったんだがなぁ」
「なんですか?」
「まー、なんと言うか。模擬戦の時、お嬢ちゃん何か感じなかったか?」
「――!」
「そんな顔するって事は、なにか感じたんだな?」
「あ、はい。その、フラガさんを……んー、何してるかが見てないのにわかるみたいな。フラガさんだけじゃない、他の
みんなの動きもです。これからどう動くかわかっちゃうような。今までにもすごい集中して、相手の動きを予測してってのは
ありましたけど、それとも違う感じなんですよね」
「そうか……お嬢ちゃん、俺の同類かもなぁ」
フラガさんはなんか嬉しそうだった。
「同類、ですか?」
「メビウス・ゼロ部隊ってあったろ」
「あ、はい」
「そこにはなぁ、ガンバレルを扱える特殊な空間把握能力を持つ奴ばかり集めた部隊でな、隊員同士でなんかいきなり
相手の事がわかっちまう、みたいな感じがよくあったんだ。模擬戦の時、いきなりお嬢ちゃんの事が見えた感覚がしてな、
念のために聞いてみたのさ」
「そっか、もしかしてプレアのオリジナルもそこに……」
「ん?」
あ、つい口に出ちゃった。フラガさんが怪訝な顔をしている。
「あ、いえ、ナチュラル、コーディネイター関係ないんだ?」
「みたいだな。お嬢ちゃん、ガンバレル使えるかも知れないぜ」
「ガンバレル……」
「ま、機会があったら試してみようや。引き出しがいっぱいあるに越した事はないからな」
ぽん、と私の肩を叩くとフラガさんは去って行った。
ガンバレルか……簡易なガンバレルはディープストライカーで試してみたけど、本式のガンバレル、私に使えるかな?
不安なような、楽しみなような。
160523:2008/01/18(金) 20:36:09 ID:???
続く。

ザラさんは「スペシャルで! 模擬戦で! 2000回!」の人になりましたw
161通常の名無しさんの3倍:2008/01/18(金) 20:44:01 ID:???
パトリック繋がりでコーラかよww
乙ww
162通常の名無しさんの3倍:2008/01/18(金) 20:50:25 ID:???
ちょ、ザラさんがコーラっすかwwwww

GJ……だと思うよ
163通常の名無しさんの3倍:2008/01/18(金) 21:29:22 ID:???
いつもいつもさり気なくネタを仕込んでいきおってー!
GJwww
164通常の名無しさんの3倍:2008/01/19(土) 00:42:32 ID:NN3VrT4p
ルナマリア嫌い
165通常の名無しさんの3倍:2008/01/22(火) 18:14:37 ID:???
ドラグーンの謎バリアってなにか設定されてましたか?
アカツキなんかタンホイザー防いでるんですが(^-^;
166通常の名無しさんの3倍:2008/01/22(火) 22:59:19 ID:???
唐突にドレッドノートが使用した時以来設定なんてない。
167通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 11:49:21 ID:???
>>165
エターナルフォースブリザードと基本的に一緒。
「アカツキ、ビームは効かない」見たいな感じです。
168通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 16:43:38 ID:???
ありがとうございました。アッシュ・グレイのいい救済方法ありますか? 出すつもりはなかったんですが色々知るとかわいそすぎて
169通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 21:35:05 ID:???
灰灰は殺人大好きのままきっちり最後を迎えてるのが華って気もするよ。
死んでようやく終われそうなヤツというかね。
170523:2008/01/23(水) 21:49:36 ID:???
ありがとうございます。そうですね。無理に幸福にさせようと思うと話がへちゃになるかもしれませんね。
171523:2008/01/25(金) 17:34:19 ID:???
アスラン達はオーブに降りる事になったと言う。
降りる前に、ちょっとアスラン達と会う事ができた。
「君がルナマリア君かね」
「あ。はい」
「息子がコペルニクスでは世話になったな。その後、色々あったが戦争だ。気に病まん事だ。君も息子も無事だったのだからな」
「はい」
「息子も君と話したがっている。短い時間だが、話すといい」
そう言ってザラさんはシャトルに向かって行った。
パトリック・ザラさん。正統的な軍人のような雰囲気の人だ。とてもエイプリール・クライシスを引き起こすような人には見えない。
ううん、アズラエルさんの話だと、黒幕はシーゲル・クラインだったのよね。
「貴様が赤いストライクのパイロットか」
……? 銀髪の人が話しかけて来た。顔に、傷跡が残っている。
「はい……大丈夫ですか? その傷?」
「ん? ふふ」
その人はちょっと皮肉そうに笑った。
「俺はイザーク・ジュールだ。この傷は、お前に付けられた傷だぞ」
「え!? あ……その、すみません」
「ははは。屈辱を晴らすまではと思って残しておいたんだがな。もう消そうと思う。意味が無くなったしな」
「ええ。その方が男前になりますよ」
「ふん。まあ、頑張れ。ここまで生き残ったんだ。やられるんじゃないぞ。そして戦争が終わったら昔話でもしようぜ」
「はい!」
最後に、アスランが話し掛けて来た。
「ルナ……」
「ほんの一ヶ月前は、こんな風に落ち着いて会えるなんて思わなかった」
「俺もだ。事態の急展開に驚いてる。」
「色々あったね」
「ああ……お前はまだ戦うんだな」
「……うん」
「相手がザフトだからな。頑張れとは言い辛いが、無事で……」
「うん、ありがとう」
アスランが手を差し出す。私もその手をしっかり握った。
「戦争が終わったら、きっと会おうね?」
「ああ。じゃあ、そろそろ行くよ」
「うん」
アスランは、シャトルの方へ去って行った。


172523:2008/01/25(金) 17:34:45 ID:???
さぁて! 気持ちを切り替えなくちゃ。今までのテストの遅れを取り戻さなきゃね!
私はディープストライカーのテストの日々に戻る。上の方の意向としては、できればボアズ攻略に使いたいのだそうだ。
私はディープストライカーが与えてくれる加速度が好きになっていた。
そんなある日……
「あれ? あれは……何か、近づいて来る」
アスラン達が飛び込んで来た時の事が頭をよぎる。
ザフト? まさかね。アスラン達が演習宙域に飛び込んで来たせいで、警戒網は広げられているのだ。もし、外部から
プトレマイオス基地に向かって来たとしたら、試験宙域に近づく前に哨戒線に引っかかってる。
――!
ビームが向かって来る!
あ、またあの時の感じ……ビームの軌跡が……わかる!
とっさにブースターを吹かして避ける。
敵? まさかと言う思いを抑えてアンノウンに向かう。相手の敵意は疑いないのだ。
――通信!?
『ルナマリア・ホークだな!?』
少女の声だった。
「そうよ! 何よ! いきなり攻撃なんかして! あなたは誰!?」
通信が入った事に少し安心してしまって私は答える。
『あなたが、成功した唯一のスーパーコーディネイターなんて認めない! 私はあなたを倒して私が成功体だと証明する!』
相手がビームライフルを構える! まずい、もう避けきれない! 通信が入った事で気を抜いた! 私の馬鹿!
「光を!」
とっさに私は叫ぶ。
『光が欲しい? 欲しいのなら、あげましょう!』
私の声に『ALICE』が答える。『アルミューレ・リュミエール』が機体の前面に展開される! アンノウンのビームが弾かれる!
『なにぃ!?』
アンノウンの少女の動揺した声が伝わってくる。
――どうする? ディープストライカーは格闘戦に不向きだ。ディープストライカーをパージする? それもだめ! 機動力が落ちてしまう。
なら!
「マイクロミサイル発射!」
ウェポンベイから三角柱が発射され、マイクロミサイルを周囲に乱射する! この飽和攻撃なら!
「――なによ、あれ!」
今度は私が動揺した。アンノウンが機体をまるっと全周を囲むように展開したのは、あれは――!
『これが本物のアルミューレ・リュミエールよ!』
勝誇ったような声が通信機から流れてくる。
「くっ」
簡易ガンバレル! なんとなく今までよりもスムーズに扱える気がする。アルミューレ・リュミエールの発生基部を狙う!
――避けられた。でも、これで隙ができた!
アンノウンからのビーム! 先読み出来る! 当たらない!
方向を微調整、そしてブースターで急加速してアンノウンのすぐ横をすれ違い、引き離す!
アンノウンは最後に大型ビームを放ってきたけど、この猛スピードのディープストライカーに当たるもんですか! 徐々に進路を
プトレマイオス基地の方へ修正して撤退する!
アンノウンは、さすがにこの速度に追っては来られかった。
みるみるうちに小さくなっていくアンノウン。
……基地に着くまで、私の頭は一つの事を考え続けていた。
しゃべり方は変わっているけど。ううん、違うけど、あの声は……
私は唇をぎりっと噛み締めた。
――メイリンだ。
173523:2008/01/25(金) 17:35:04 ID:???
基地へ戻って、襲撃された事を報告したら、大騒ぎになった。
それはそうだろう。アスラン達の侵入からこっち、警戒を強めていたのだ。それが――無駄だった事になる。
「大変でしたねぇ、ルナマリアさん」
アズラエルさんも、慌てて飛んで来てくれた。
「警戒を強化したのに、こんな……」
「警備の人達を責めないでください。実は……」
私は、報告の時に伏せていた事を話した。
「相手も、アルミューレ・リュミエールを展開したんです」
「それは……相手はユーラシアの者だったと?」
「戦闘記録を見てもらえばわかりますが、相手は『これが本物のアルミューレ・リュミエールだ』と言っていましたからおそらく。
報告の時には、大事になりそうなので伏せておきましたけど」
「……いや、いい判断です。確かに身内に敵が入り込んでいるなんて事がおおっぴらになったら大変だ。ひそかに憲兵を動かしますよ」
「お願いします。あと、一つ……」
「なんですか?」
「相手が、私の事を、成功した唯一のスーパーコーディネイターと呼んでいたんです。何の事だかわかりますか?」
「……あー、うーん……あ、そうだ! メンデルって知ってます? L4にあった実験コロニーなんですけどね。そこで行われていた
実験に確かそうした物がありましたよ。確か、コーディネイトしても母体で成長する過程で母体の影響を受けてしまうので、
人工子宮で理想的な環境を作りコーディネイトした結果を100%引き出す、と言ったような物でしたかね。スーパーと言うよりは
パーフェクトコーディネイターと呼んだ方がいいですかね。それが、あなただと?」
「ええ。そう呼んでいました。私……私の両親は? 私、メンデルで作られたの? 私……!?」
「……うーん、こう言っちゃ何ですがね、あまり気にしない事ですよ。あなたのご両親はあなたに愛情を注いでくれたんでしょう?
 なら、いいじゃないですか。もし本当の両親でなくとも。僕にとってもそうです。あなたがスーパーコーディネイターなんて
ご大層な物だろうとそうでなかろうと関係ありません。メンデルの連中は実験に狂って100%に拘ったようですが僕に言わせりゃ
90%も100%も大して変わりないですよ。それに計算外の事には喜びもあれば悲しみもあるんです。それが面白いんじゃありませんか」
「そう、ですよね。でも、あの子は違った。それに拘ってる……」
「あの子?」
「どうしよう!? アズラエルさん!? メイリンなの! メイリンの声だったの! メイリンが恨みの篭った声で私を襲って来るの! 
私を倒して成功体になるって!」
「落ち着いて、ルナマリアさん! メイリンって、あの、夢の世界の妹さんですね? ユーラシアの部隊を調査させましょう。あなたは、
自分の身を守る事に気を使ってください。いいですね?」
「はい……」
翌日から、ディープストライカーの試験には護衛が付く事になった。


174523:2008/01/25(金) 17:35:31 ID:???
「くそう! 私はあぁぁ! 認めない! 認めない! 奴よりも私が劣っているなど!」
「落ち着け! ディープストライカーの性能は君も知っているだろう? 逃げに持ち込まれたら追いつけない」
「そう、そうよね。私とした事が……」
「落ち着いた所で、君に通信が来ているが……ガルシア司令だ」
「いいわよ。出るわ。出して!」
マイルズ・ピスティスはコンソールを操作した。
『頑張っておるかね。メイリン・パルス』
「なんの用?」
『相変わらずつっけんどんだな。まぁいい。ルナマリア・ホークを狙うのはしばらく中止しろ』
「なぜ?」
『ふふふ、お前の機体のパワーアップによい情報があるのだ』
「なによ? 期待はしてないけど言ってみなさい」
『驚くぞ。ザフトの通信を解析していたところ、面白い命令をキャッチした。――核エンジン搭載モビルスーツを奪還せよとな!』
「……へえ、面白いじゃない!」
『当然それはニュートロンジャマーを無効化する装置の存在も意味する! それを手に入れれば私も……』
「あんたの事なんてどうでもいいわよ。今どこにあるかの情報はないの?」
『あるぞぉ! ケナフとか言う情報屋が売り込んで来てな。正確にはニュートロンジャマーを無効化する装置のありか、
と言う事になるか。信頼できるかわからんが、一応行ってみるがいい。座標を送る』
「了解した」
『しかし! 守っているのはあの名高いサーペントテイルだそうだぞ。お前に勝てるかな?』
「関係ないわ。私とハイペリオンならね!」
『そう願いたいものだ。私もあいつらには貸しがあってね。では幸運を祈るよ。くっくっ』
通信は切れた。
「信用するのか?」
「……罠だったら、噛み千切るまでよ。ちょうど基地近くで奴を襲っちゃって、憲兵が動いていると言うわ。
ほとぼり冷ますためにもちょうどいい!」


175523:2008/01/25(金) 17:35:39 ID:???
「ふむ。これはいったいどうしたものかなぁ」
劾は悩んでいた。
「確かになぁ。ドレッドノートを運んでいた連中はオーブの戦艦イズモに収容された。ところが! プトレマイオス基地には
ザフトの新型の核動力機が逃げ込んじまった。ニュートロンジャマーキャンセラーの技術は地球連合に渡ったと見ていい。
ドレッドノートの頭部を持っている意味はもうねえな」
リードが答える。
「アレは俺達が預かるのが今はベストだと思ったから奪ったのだが、こうも急速に事態が動くとはな……」
「しかし、ザフトから最新鋭の核動力機が二機も亡命なんて、プラントには何か起こっているぞ、劾」
「ああ。気になって調べさせてはいる」
ロレッタも心配気な顔をする。
「もし、地球軍の人達がアレを間違った方向に使ってしまったら……大変な事になるわね」
「ああ。俺達にできる事は、地球連合の上層部が愚かでない事を祈るだけだな」
「でもまぁドレッドノートの頭は返すしかないか。……ねぇ、返すって言っても、プレアさんは地球軍に保護されたって事でしょう?
 へたにプトレマイオス基地に近づいたら、拘束されかねないわ」
「アタシが行きます!」
「風花……」
「確かに、風っ花なら、危険には思われないかも知れねぇなぁ。ロウ・ギュール達は当の戦艦イズモにいるんだろう?
 彼らを頼って……なんとかなるかも知れねぇなぁ」
「任せて下さい! ちゃんと事情を説明して来ますから!」
風花は幼い顔を上気させ気負った顔で胸を叩いた。


『警戒! 警戒! アンノウンがそちらに向かっている!』
その日もディープストライカーのテストをしていた私達は、哨戒部隊の警報を受けた。
「……ほんとに、なんでこうも私が出動している時に限って闖入者が続くんだろう?」
「逆を言えば、あなたが出動している時は警戒態勢を上げるようにすれば効率的な運用が出来るでしょう」
「ふふ、七郎、それはいい考えだ」
「あはは」
105ダガーで護衛についてくれている七郎が真面目な声で冗談を飛ばす。
私と十一郎は笑う。
『アンノウンは小型艇の模様!』
「まぁ、とりあえず基地に引き返しますか?」
「そうですね」
アンノウンから通信があったのはその時だった。
『地球軍の皆さん、こちらに敵意はありません! アタシは傭兵の風花・アジャーです! オーブの戦艦イズモにいる
ロウ・ギュールさんに会いに来ました! 取次ぎをお願いします!』
176523:2008/01/25(金) 17:36:03 ID:???
続く。

メイリン登場!
177通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 19:28:01 ID:???
アスカさんちが姉弟になっていたのは、やはりこの伏線でしたか。
さて姉妹対決の行方やいかに?
178通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 22:47:45 ID:???
GJ!メイリンがカナードのポジションですか。


ところで話は変わるんだが、今月号のアストレイズにも設定だけちらっと出てきた「一族」はこの話では殆ど絡んでないんだな。
そのまんまじゃすごい癖のある破天荒な設定だけど上手く料理すれば結構面白い組織だと思うんだ、アストレイズによるとC.E.でのPMCの黒幕だったらしいし。
例えば政府首脳やブルコスないしはロゴスとの互いに互いを利用しあう権力闘争とかさ。
俺にはまず無理だが。
179通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 23:02:38 ID:???
「一族」って総てをこいつに押し付けられる設定なんだよな
そうだとすればつまんない世界なんだよな
ぶっちゃけ面白くないので勝手に自滅させたような印象しかない
180523:2008/01/26(土) 07:41:34 ID:???
一族……難しそうですが構想考えて見ます。無理だったらごめんなさい。

エターナルフースブリザード……検索して他の技とかも発祥を見てメッサ笑いましたw面白かったwww
181通常の名無しさんの3倍:2008/01/26(土) 20:28:08 ID:???
「一族」が本当に総ての黒幕だとすると、議長なんかもその掌で踊っていただけって事になる
それって何だか腹立たしくないか?
じゃあラクシズはどうだったの?って言われると、なんとも答えづらい
ラクシズが大暴れする頃に「一族」は勝手に滅んでしまったため、どこまで影響されていたのか判らない・・・
しかし裏設定のターミナルなんかは「一族」の匂いがプンプンするんだよな
182いつぞやの395:2008/01/26(土) 20:50:23 ID:???
気がついたらいつの間にか7スレ目orz
夏以降忙しくて、書いていたことすら忘れてたよ

前の続きから投下しやす
今までの話はwiki参照で
183いつぞやの395:2008/01/26(土) 20:53:01 ID:???
/ 4. 怒れる瞳

「すまない、待たせたな」
片手を挙げてブリーフィングルームに入室してきたドミトリエフ副官に、あたし達は起立して礼をとり、
「いえ、ユラ=レヴィチ。我々も今集まったところです」
レイがそう応じた。
「まず、アーモリー・ワン暫定司令部から入った報告によると、本艦に乗り込めなかった我が隊のパイロット、整備員らに死者はいないということだ」
「よかった……」
ドミトリエフ副官の言葉にあたしをはじめ、皆が胸をなでおろす。
「それでは改めて状況説明に入ろう。――カチュア」
「はい」
副官に随ってきた情報班のカチュアは頷き、端末を操作した。スクリーンに奪われた3機のセカンドステージが映る。
「強奪されたのはZGMF-X24S、31S、88S――コード名カオス、アビス、ガイアの3機です。奪取の手際や操作能力の高さから、犯人はコーディネイター、それもかなり訓練された者によるものと推定しています」
「正規パイロットが、なんてことはないわよね?」
「パイロットの3人は襲撃時に重傷を負ったという報告を受けています、ルナマリア」
正規パイロットの叛乱という可能性を消すその答えに、あたしは安堵を覚えた。
「犯行グループがどういったグループかは不明です。旧ザラ体制派などの反体制派の可能性……、機体そのもの、もしくはその利用を目的とした宙賊の可能性……、そして地球連合軍部隊の可能性」
カチュアが三つ目の可能性を口にした途端、室内の空気が張り詰めた。まるである程度の根拠を持ってその緊張を狙ったかのように、
「――これがボギー・ワン……犯行グループの母艦です」
スクリーンの映像が宇宙艦艇の解析画面に切り替わった。
「データベースには、これに該当する艦艇はありません。よって、詳細は一斉不明なアンノウンです。しかしながら――……」
カチュアの操作により、随所が拡大表示されていく。そんなことをしなくても、カチュアが何を言いたいのかはあたしでもわかった。
艦体先端部に設けられたMSデッキらしき構造物。
2連装高エネルギー収束火線砲ゴットフリート。
箱型をした――地球連合軍系のシルエット。
「このように、地球軍艦艇との類似点が多く見られます。情報班はこの艦を強襲機動特装艦の一種であると見ています」
カチュアは推測に過ぎませんが、と念を押したが、画面の端に強襲機動特装艦の代名詞アークエンジェル級が表示されると、いよいよその推測がかなり的を射ているように思えてならない。
「事実がどうであるか、お上がどう判断するかは後の話だ。今はこいつがザフトの庭を荒らして逃げたということだけを頭に入れておいてくれ」
ドミトリエフ副官が各々で色々考え込むパイロット達に対してそう口を挟む。
184いつぞやの395:2008/01/26(土) 20:55:00 ID:???
彼の言葉を合図にしたかのように、カチュアはスクリーンの映像をL4の宙域図に切り替え、
「現在ボギー・ワンはアヴァロン暗礁宙域を目指して逃走中であり、ミネルバが追いつくのは暗礁宙域手前になると想定されています」
矢印が伸びるのを見やりながら、カチュアは説明した。
「デブリの移動にもよりますが、接触からボギー・ワンが暗礁宙域内に逃げ込むまでの時間は多く見積もっても11分。アヴァロン宙域はL4暗礁の中でもオニール型コロニーの残骸が多く、逃げ込まれるとミネルバの戦闘能力は著しく低下します」
「11分……」
暗礁宙域に逃げ込む為に、敵はMSで時間を稼ぐだろう。基本的に、MSにはMSで当たる。とすれば、
「ボギー・ワンの搭載機は?」
それについて把握しておく必要があった。
「確認されているのは、これらです」
カチュアの言葉とともに映像が切り替わる。
「先ほどレイらが交戦したMS、MAはいずれも地球連合製と見て間違いありません。――これはGAT-01A型、いわゆる105ダガーのマイナーチェンジ機と思われます」
まず拡大されたのは、あの黒い105ダガーだった。続いてダガーと行動していたMAが拡大される。
「こちらはTS-MA4F、エグザス。今夏就役したばかりのMAで、MA2mod00の後継機です」
「メビウス・ゼロの? じゃあこいつがガンバレルを装備してたわけ?」
あたしの疑問に、やや呆れた風にショーンが口を開く。
「ルナマリア、気づいてなかったの?」
「てっきりダガーがストライカー装備してると思ってたわ……」
それだけ、あたしに余裕がなかったということなのだろうか。あたしは危機感を懐いた。
「また、我々よりも先に敵艦と交戦した部隊によれば、GAT-02L型を少なくとも3機確認しているとのことです」
地球連合軍の高性能機、新型MA、主力量産機――。嫌でも辿り着かざるを得ない答え。これが偽装なら、あまりにも手が込んでいる。
みんなが俯く中、平静にレイが口を開いた。
「再度のミラージュ・コロイド使用の可能性は?」
「え? あ……それはまず有り得ません。たとえ使用したとしても長時間の継続が出来ませんし、航行に必要なエネルギーも不足するはずです」
「そうか」
レイの言葉はそれだけだった。沈黙が訪れかけて、
「本作戦の重要さは今更語る必要はないと思う。全力で任務に取り掛かってくれ」
ドミトリエフ副官がそう締め括るのだった。
185いつぞやの395:2008/01/26(土) 20:56:19 ID:???
パイロットスーツから一度軍服に着替えると、あたしはデッキに戻る為にパイロットピットを通り抜けようとした。
その時、ショーンがあたしを呼び止める。
「――ルナマリア!」
「ん?」
「デイルが怪我したって……」
ショーンの横には後から合流した3人がいる。彼らから聞いたのだろう。
「――酷いの?」
あたしが訊くと、坊主頭のミネジが、
「脚をやられたらしい。程度は確認してないが――」
そう答えた。
「ヴィーノ達が運び出した時は元気に喚いてたな」
「それは……デイルらしいわね」
それならば命に関わるような怪我じゃないのだろう。安堵しつつ苦笑いの一つも浮かべてしまう。
「ジーナとフランツは?」
「どっちも無事さ。ジーナは機体トラブルで離脱。フランツは――まあ、なんだ」
ミネジがそこで説明を途切れさせる。カールとパーシヴァルが声を上げて笑い、ミネジもそれに加わる。ショーンが笑いを堪えつつ、
「瓦礫からザクを掘り出したはいいけど――コックピットまで登れなかったんだって」
教えてくれた。
必死にコックピットに登ろうとするフランツを想像して、状況に対して不謹慎ながら、微笑ましい気分になった。
コーディネイターとしては、フランツの体躯は太めの部類になるだろう。体力はあるし、白兵戦もMSの操縦も堅実で他人に後れを取ることはない。しかし、体系的に難しいことはやはりあるものだ。
「くくッ――奴の不幸は整備の連中がロープと滑車を持ってなかった事だな」
「ハンガーがやられてたから滑車を吊るす天井もなかったんだけどよ」
カールとパーシヴァルはそう言って更に笑った。
「ところでな、ルナマリア。一番最初に機体が稼動したのはショーンなんだが、結局出撃はレイと一緒になっちまったんだぜ」
「なっ、おい、ミネジ――」
「何やってたのよ、ショーンは?」
狼狽するショーンの狼狽と、あたしの問いかけが重なる。ミネジはショーンにウィンクし、
「お前のザクが潰れてて相当狼狽えていてな」
あたしにそう言った。
「へえ? あたし非番だったのに、心配してくれたんだ?」
「そ、そりゃあ、ルナマリアならすぐ駆け付けて乗ってるかも、って思ったし……」
「お気遣いどうも。街から戻ってくる時にはもう潰れてたそうよ」
「あ、そ、そっか。うん、無事でよかった」
どういう訳かショーンはどもりがちであった。なんだろう?
「無事と言えばな、ハーネンフース女史も無事だ。コロミナスはわからんが副官殿の言い方じゃ生きてはいるだろう」
ハーネンフース、コロミナスというのはどちらも特務隊から出向していたセイバーのパイロット候補のことだ。
「よかったのか、ルナマリア? 2人を差し置いてセイバーに乗っちまって」
「いいのよ。議長はいいって言ったんだから」
さり気なく議長と口にすると、4人は驚愕の色を見せた。ショーンが尋ねてくる。
「え? ルナマリア、デュランダル議長と話したの?」
「そうよ。頼めるかね、なんて言われちゃったわ」
うっひゃあ、すげぇ――驚嘆する彼らに優越感を感じながら、あたしはエレベーターホールを素通りした。まっすぐ行くと、ハンガーに繋がる。
「ハンガーに何か用事があるの?」
「ちょっとセイバーを触りに行くのよ」
答えると、あたしは片手を挙げて彼らと別れた。
186いつぞやの395:2008/01/26(土) 20:58:13 ID:???
型式ZGMF-X23S。
無重力下機動戦闘機、セカンドステージ第2――可変航空試作型――プラン第3号。
コード、セイバー。
OSはGeneration Unrestricted Network Drive Assault Module――無制限のネットワーク駆動世代の挑戦的モジュール。いわゆるガンダムシリーズの一種だ。
航空MSは主に直立のまま飛行可能な――つまりヘリコプター的に飛行する――いわゆる“天使型”と、戦闘機に変形することで飛行する可変機とに区分される。航空MSの第一号であるディンの流れを汲むザフトの航空MSは、基本的に前者の天使型が主流であった。
安定した滞空とトリッキーな運用が可能な天使型は、確かに大戦時の地球各地の戦線で地球軍に恐れられた。しかし――核動力のXシリーズは除く――天使型の天下は、地球軍の可変機レイダーの登場によって引っ繰り返される。
敗退に終わったとはいえ、八・八作戦に始まる地球軍のオセアニア侵攻戦におけるレイダー部隊の活躍は、今なおザフトのMSパイロットの間で恐怖を以って語り継がれていた。
けれども、そのレイダーとこのセイバー、どちらが高性能か、と言えば、セイバーである。鹵獲したレイダーの技術もふんだんに取り入れての設計であるのだから、そうでなくては困る。
強襲に重点を置いていたレイダーに対し、あくまで機動に重点を置いたセイバーは、その機動性であらゆるMSを圧倒していた。ガンバレルだろうがなんであろうが、そう簡単に捉えることは出来ないはずなのだ。ならば、
「やっぱり、問題は――」
パイロット――つまり、あたしにあるのだ。
他の二人の候補生だったなら、どうだろうか。例えばハーネンフースことシホさん。彼女のような本職のテストパイロットが操ったならば、強奪犯を取り逃がすことはなかったのではないだろうか。
軽く、自己嫌悪――あたしらしくもない。振り払うようにかぶりを振る。
その時、突然コンソールに影が落ちた。
「――ルナ」
「シン?どうかした?」
コックピット覗き込んできたシンが、
「あのザク、他所の見たいだけど……誰が乗ってたんだ? ルナなら知ってると思って」
そんな質問をあたしに投げかけた。
視線の先には、カガリ・ユラ・アスハと“アスラン”が乗ってきたザクがあった。
187いつぞやの395:2008/01/26(土) 21:01:03 ID:???
ミネルバはザフトの象徴として建造された艦である。単艦部隊の母艦としての能力も戦隊の旗艦としての機能もしっかりと備わっているが、その上でザフトらしい無駄もあった。艦隊旗艦としての機能である。
広い作戦指令室も、艦隊軍法会議の為の法廷も、過剰な数の会議室や事務室も、収容数が乗組員数を大きく上回る居住区もある。複数の高級士官室も用意されていた。現在カガリ達、そしてデュランダルに一室ずつあてがわれている。
カガリ達に貸し出された部屋に、デュランダルが訪れていた。
「このような事態に殿下を巻き込んでしまい、申し訳なく思います」
彼はカガリの頭部に巻かれた包帯を見、それから目を伏せた。
「今しがた部隊長と協議してきたのですが、その……重ね重ね申し訳ない。本艦はこのまま犯人の追撃を行います」
そう言ってデュランダルが頭を下げると、カガリの方が縮こまってしまう。
「いや、こちらこそすまない。このような時に艦に乗り込んでしまって…・・・」
「なんの」
彼女を気遣うようにそう言って、更にデュランダルは続ける。
「つきましては、殿下方にもお降り頂くことが出来ません。通信状況も悪く、お国許への連絡も遅れてしまいます」
「ああ……わかっている」
頷いたものの、オーブを取り巻く情勢は非常にデリケートである。カガリの顔には心配の色がありありと浮かんでいた。
それからデュランダルは、
「お詫びといっては何ですが、艦内をご案内致しましょう」
そう言って、レイ・ザ・バレルを護衛に選び、居住区周辺の主要なブロックを廻った。所々でデュランダル自らが説明を行う。やがて一行はそれまでとは違ってやや無機質な趣のエレベーターホールに辿り着いた。ここでも、デュランダルが口を開く。
「ここからMSデッキに上がります」
「――え?」
カガリもアレックスも、この言葉には驚いた。レイもややではあるが眉を顰めた。それらに構うことなく、
「MSデッキは艦のほぼ中央に位置するとお考え下さい。――どうぞ、殿下」
デュランダルの言葉は続く。困惑しながらも、カガリらは言われるエレベーターへ乗り込んだ。
「無論、搭載機数などはお教え出来ませんし、現在その定数が満たされている訳でもありません」
申し訳なさげなデュランダルの言葉に、カガリは曖昧に頷く。彼女にしてもアレックスにしても幾つかのMS搭載艦を知っており、大体の想像はできる。そんな情報の制限は大きな意味は持ち得ないのだ。
やがてエレベーターが開き、ホールに降り立ったデュランダルが、左側の通路へとカガリをいざなう。そこで初めてレイが口を開き、
「議長、左舷デッキには――」
セイバーがある、と言いかけるが、
「構わんよ、レイ」
デュランダルは手振りとともにそれを遮った。彼の導くままに、一行は左舷MSデッキのキャットウォークへ出た。広い、という感想を顔に出したカガリに対して、デュランダルが整備中のザクを指す。
「ご覧下さい。――殿下もお乗りになられたそうですね。現在のザフト軍主力艦載機、ZGMF-1000ザクです」
まったく責める風のないデュランダルの声に、逆にカガリやアレックスは不安を懐く。だがそんな意を介すことなく、デュランダルは続ける。
「試作機についての説明はご容赦いただきたい。――しかし、やはり殿下」
わざとか、それとも本気でか、その不安げな表情に気づくと、
「貴女のお気には召しませんかな?」
「ぁ――」
やや残念そうな音色で言う。
当のカガリは、不安とデッキの壮大さに気を取られ、デュランダルが何を意図したのかを一瞬理解できなかった。それから、
「……議長は嬉しそうだな。――兵器を説明することが」
やや、挑発的な言葉。
「嬉しい――……いえ、そのことが嬉しいというわけではありませんがね。しかし、これらはあの混乱と困難を乗り越え、みんなで懸命に頑張ってきたことの証です」
デュランダルはあくまで真摯な対応であった。そして、
「オーブの復興も目を見張るものがあり、盟友として喜ばしく、また羨ましく思っております。それに比べれば些細なことかもしれませんが、私たちもプラント国民としての誇りを回復し、これだけの力を手にすることができました」
これまでよりもより堂々と、そして誇らしげにそうカガリに告げる。それが、彼女の癪に障ったのだろうか――。
188いつぞやの395:2008/01/26(土) 21:03:26 ID:???
疑問に答えてあげると、シンは眉を顰めて確認してくる。
「オーブのアスハ……?」
どういう訳か、顔も赤みを帯び、表情もやや険しい。
「うん? えぇ、そうよ。それがどうかした?」
「いや、別に……なんでもないよ」
言ったシンの顔は、なんでもないという風な表情ではない。ただ、それを性急につつくのは却って不機嫌にさせるだけのことだ。気にしてない風を装って、あたしは、
「けど――聞いて驚け」
話題を変えようと身を乗り出し、顔を目一杯近づけようと――、
「うわっ!?」
――勢いをつけすぎた。
あたしが両手でハッチを掴み、シンが仰け反らなければ、危うく彼の顎に頭突きをかますところだった。慣性に従って大きく振られた脚がシンを直撃しなかっただけでもよしとしよう。
「ッ――危ないって!」
「あー、ごめんごめん」
批難してくるシンに誠心誠意謝りながら、なんとか姿勢を整える。それから、あたしは内緒話をするように、
「操縦してたのはアスラン・ザラかも」
声を落として囁いた。
「同乗してた護衛のことを、代表がそう呼んだのよ」
「そ、そうなんだ?」
「そうなのよ。……アスラン・ザラ、今はオーブにいるらしいって噂じゃない?」
「へ、へぇ……」
シンの顔が、まだほんのりと赤い。だが、表情は先ほどと比べて和らいでいる――というよりもやや緩んでる感じにも見える。目も伏せがちだ。
何かまずっただろうか、と考えて、
「まさか……」
と思い当たることがある。自室に戻っていない為、あたしが穿いているのはキュロットではなくミニだ。
「――また、見た?」
視線を逸らすシンの目が、如実にそれを肯定していた。
「とっても幸運だわねぇ?一日に二度までも……」
「ルナっ、念の為に訊いておきたいんだけどさ」
「……何よ?」
「ふ、不可抗力って言葉は知ってるよな?」
「その質問に何らかの意味があるの?」
シンが元通りになって安心しつつ、あたしは笑みを漏らしながら握り拳をシンに近づけていく。
それは、いつも通りの他愛の無いやりとりでの、あたしなりの気分転換のつもりだった。
189いつぞやの395:2008/01/26(土) 21:06:06 ID:???
上方――、キャットウォークから突如として響く声が、
「――力を手に入れた、か!」
その束の間の休息を破る。
声の主は、カガリ・ユラ・アスハだった。
「争いがなくならぬ故に力を必要とする……そう仰られたな、議長は?」
アスハ代表が、デュランダル議長に――言葉は悪いが――要は突っかかっているのだ。
「えぇ、殿下」
「本当にそう思われるのか?力が争いを呼ぶことだってあるだろうに」
「いいえ、殿下。2年前のことをよく思い出して頂きたい。対立が、力を呼び込んだはずです」
デュランダル議長はあくまで穏やかな口調で、諭すようにアスハ代表に応じている。それにしても、
「他国の軍艦の中でよくもまぁ……」
と思ってしまう。
「ねぇ? シン――」
シンを振り向いた時、その瞳はあたしを視界にも入れていないようだった。――なんて、怖い眼。
「ならば此度のことについてはどうお考えか? 3機の新型MSという力の為に被ったアーモリー市の……、貴国の被害は!? これは力が災いをもたらす典型的な――」
「さすがは――ッ」
二人の国家元首の対話を遮ったその声に、しん――と、場が静まり返った。傍で見ていて、ついさっきまで話していたあたしですら、すぐにはその声がシンのものだとは気づけなかった。
「さすが……綺麗事は、アスハの御家芸だなァッ!」
睨み上げるシンの紅い瞳の中で、何かが燃えているように見えた。反射的に声のした方を向いたのであろう、睨みつけられたアスハ代表の身体がびくりと怯える。
「ぇ――……?」
何がどうなっているのかわからなかった。いつも色んな言葉に過剰反応していたシンだが、いつもとは何かが違う。
そうか。一介のパイロットが国賓級のVIPに向かって罵声を浴びせたのか。――シンの何かを変えさせるほどの事を、そのVIPはやったというのだろうか。
でも、オーブのアスハといえばクライン派と結んで大戦を休戦にこぎつけた英雄。戦争
照れなどではない、怒りに染まった赤ら顔。その怒りが単なる義憤だなどとは、二年間シンを見てきたあたしには思えなかった。彼の怒りは、一体どこから湧き出ているのだろう。
「し、シ――」
「シン!」
あたしの呼びかけを跳ね除けるようにレイの鋭い叱咤がかかる。キャットウォークの方だ。
くるりと背を向けてパイロットピットの方へ向かうシンと、キャットウォークを飛び出して追うレイ。あたしはただ呆然とそれを見ていた。同じように呆然とした視線が、キャットウォークの上にもあった。

4 /
190いつぞやの395:2008/01/26(土) 21:09:52 ID:???
というわけで突然復帰した395ですた

>>523氏の良作の流れをぶった切ったけど大丈夫かな
スレ汚しでなければちょくちょくと続きを書いていこうと思うのだけど
191通常の名無しさんの3倍:2008/01/26(土) 21:26:26 ID:???
395さん復帰バンザイワーイo(⌒∇⌒o)三(o⌒∇⌒)oワーイ
早速wikiに登録しましたよ。
続き楽しみにしてます!
192通常の名無しさんの3倍:2008/01/27(日) 00:38:33 ID:???
復帰オメ!

……完璧に内容忘れてたw
193通常の名無しさんの3倍:2008/01/29(火) 19:06:19 ID:???
hosu
194523:2008/02/01(金) 17:44:04 ID:???
「ロウに? まぁ、本人に聞いてみますか」
私は戦艦イズモに連絡を取り、ロウを呼び出した。
「……という訳なのよ。子供のような声だったけど、知り合い?」
「ああ! 確かに風花はサーペントテイルの一員だ! 会った事あるぜ! 確かにまだ6歳の子供だぜ」
「サーペントテイルってプレアの船を襲った? って6歳!?」
「ああ、年齢の割りにしっかりしてるんだ。たいした子だぜ」
「そう。じゃあ、案内していいのね?」
「頼むわ。俺もサーペントテイルがなぜプレアの船を襲ったのか聞きたい」
私は警備隊に、風花・アジャーの艇をイズモに連れてくるよう伝えた。
私もディープストライカーをドックに入れると、イズモに向かう。
「ひっさしぶり!」
「おう、ひさしぶりだな、ルナ」
「風花さんは、もうすぐ来ると思うけど。プレアの調子はどう?」
その時、ちょうどプレアさんが顔を出した。
「おひさしぶりです。ルナマリアさん」
「ひさしぶり、プレア。……体の調子はどう?」
「ええ、おかげさまで。それで……これからサーペントテイルの人が来るんですよね? 僕も同席させて下さい」
「……確かに、プレアにはその権利あると思う。どう? ロウ?」
「そうだな。とりあえず、直に事情を説明してもらわなきゃプレアも納得いかんだろう。いいぜ」
『ホーク中尉、風花・アジャーの船をお連れしました』
ちょうど、警備兵から連絡が入る。
「ありがとう。今ハッチを開けさせるわ。……じゃあ、行きましょう」
「ああ」
私達は格納庫へ向かった。

ちょうど、風花・アジャーの乗った小型艇が収容されたところだった。
小型艇のハッチが開く。
「案内ありがとうございます。サーペントテイルの風花・アジャーです!」
きりっとした顔をして、小さな女の子が出てきた。
「確かに風花だ。ひさしぶりだなぁ」
「ロウさん!」
女の子の顔がぱっと明るくなり、ロウに駆け寄る。
「私は地球軍のルナマリア・ホークよ。ロウの知り合い。まぁ、ここじゃなんだし、部屋を用意してあるの。プレアさんが
待ってるわ。行きましょう。付いて来て」
「はい。ちゃんと、ご説明します!」

195523:2008/02/01(金) 17:44:53 ID:???
「あなたが、サーペントテイルの人ですか?」
風花さんを見た時、プレアは軽く驚いたような表情を見せた。
「これでも立派にサーペントテイルの一員です」
風花さんはちょっとむっとしたようだ。そんな表情も、風花さんの年齢ではなんともかわいらしいのだけど。
「まぁまぁ。驚くのも無理はないがな、風花はサーペントテイルの交渉やなんかきちんとやってんだ。しっかりしてんだぜ」
ロウがフォローする。
「そうですね。能力に年齢は関係ありませんか。では、聞かせてもらえますか? あなた達がなぜ僕を襲ったのかを」
プレアが顔を引き締めて風花さんに向き直る。
「はい、実は……」
「ああ、座って頂いて結構ですよ」
「はい。では失礼します。……依頼人の名前は明かせませんが、依頼があったんです。プレアさんが持っているニュートロン
ジャマーキャンセラーを奪取せよと」
「僕達はプラント評議会議長の庇護下にあったのに、その人には、そこまで掴まれていたと言う事ですか……理由は聞いていますか?」
「はい。今の段階で地球連合にニュートロンジャマーキャンセラーを渡すと、核兵器が復活される恐れがあるからと……でも、別ルートで
ニュートロンジャマーキャンセラーの技術は地球連合に渡ってしまったようですね」
「なんだって!?」
あ……私が口を挟む時間も無く、ロウ達がざわめき出す。しまったなぁ。
「もう、アタシ達が持っていても無意味なのでプレアさんに返還しようと思って、その前にこうして事情説明に来たんです……」
風花さんはすっと立ち上がった。
「プレアさん、ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
風花さんはプレアに向かって深々と頭を下げた。
196523:2008/02/01(金) 17:45:09 ID:???
「事情はわかりました。頭を上げてください、風花さん」
プレアは溜息をついた。
「そうですか……地球連合の手にはすでにニュートロンジャマーキャンセラーが……」
「まだ極秘事項よ? こんな形で漏れるとは思わなかったけど。ロウもいいわね?」
「ああ、他には漏らさねえよ。ルナは知ってたんだな?」
「まぁ、その場に立ち合わせちゃったしね」
「しかし驚いたな。ニュートロンジャマーキャンセラーか」
「マルキオ様はオーブのウズミ様なら軍事転用する事はないだろうと言っておられたのですが……無駄になりましたね。核ミサイルの復活
――ユニウスセブンの悲劇……ああ……そんな事にならなければよいのですが」
んー、ちょっと聞き捨てならない!
「あら? アズラエルさんだって、ニュートロンジャマーキャンセラーを軍事転用する気なんてないわよ?」
「「え?」」
プレアさんと風花さんの声が被った。
「もうっ。ずうっと先の事までは保証できないけどね? アズラエルさんが私に説明してくれたんだけど、製造には莫大なコストがかかる
上に材料も稀少なものが多いため、大量生産が不可能なんだって。まずは地上のエネルギー状態を改善する事を最優先にするそうよ
 たっくさんある核ミサイルに搭載なんて無駄遣いする訳無いじゃない? コロニー壊すってんならもっと楽な方法もあるし……」
思い出しちゃった。――そう。ヘリオポリスは、たった数機のモビルスーツの手で……
「アズラエルさんって以外に理性的なんですね。驚きました」
落ち込みそうになった私の耳に、プレアさんの声が入って来た。
「以外って〜。アズラエルさんは理性的な人よ? ユニウスセブンは一部の過激派の仕業らしいわ。ブルーコスモスって言っても
穏健派から過激派、色々な派閥や、ただブルーコスモスの名前を使っているテロリストから、色々あるのよ。アズラエルさんは
プラントを元のように使いたいって考えね。自分が建設したプラントが壊されて怒っていたほどよ?」
「アズラエルさんを誤解していたようですね。でも、よかった。そういう人で。人類はまだ捨てたもんじゃない……」
「色々、誤解があったようですね。すみませんでした」
もう一度風花さんは頭を下げる。
「いいんですよ、もう。でも、ドレッドノートの頭はちゃんと返してくださいね? ニュートロンジャマーキャンセラーの技術が地球連合に
既に渡っているとしても、僕は、ウズミ様に渡したいから」
「はい! お約束します!」
「ありがとう。これで心残りなく……」
「え?」
「あ、何でもありません。じゃあ、僕はこのままイズモにいます。よろしくお願いしますね」
「はい、すぐに連絡を取ります!」
風花さんは元気に手を振って去って行った。

197523:2008/02/01(金) 17:45:28 ID:???
「……う……ぐ……」
急に、プレアさんが胸に手を当てて苦しみだす。今までにも苦しそうな様子を見せる事はあったけど……! こんなひどいのは初めて!
「どうしたの!? 大丈夫!? お医者さんを!」
「はい! すぐに呼んで来ます!」
リーアムが慌てて駆け出していった。
「あ……大丈夫……もう、落ち着いてきました」
「ひょっとしてプレア、本当は重い病気なんじゃないのか?」
ロウが気遣わしげに問う。
「ええ。困った事に、治せない病気なんです。不治の病ってやつですね」
プレアさんは、透き通った微笑で告げた。
「なんだよ! なんとかなるって思わなきゃあ、なんとかなるもんもなんとかならんだろう」
「残念ながら……僕に残された時間は残り少ない」
プレアさんはかぶりを振った。
「僕は……失敗したクローンなんです。クローンニング技術が不完全な……」
「なんだって!?」
「告白させてください。僕はメンデルで作られ、それから色々あってマルキオ様の所に辿り着きました。前々から発作は始まっていて、
自分でも長くはないなと感じていたんです。でも、どうせならこの世に僕の生きた証を……なにか世の中のためになる事をしてから
死にたい。そう思っていました。マルキオ様は、それを与えてくれたんです……だから、あなた達には感謝しても足りない。あなた達には
話してもいいでしょう。ドレッドノートの頭部は広範囲型ニュートロンジャマーキャンセラーです。プトレマイオス基地に亡命したと言う
モビルスーツにつけられている物は、デチューンされ、そのモビルスーツしか効果の無い物でしょう。ドレッドノートのニュートロンジャマー
キャンセラーは通信の回復にも役に立つはずです。有効に役立ててください」
「プレア……」
ロウ達はそれきり言葉が継げず、俯く。
「私も告白するわ。私もメンデル生まれらしいの。あなたは言わば……私の弟よ。あなたは一人じゃない」
「――! ルナマリアさんが、ねえ、さん……?」
「そうよ。あなたがもしこの世からいなくなっても、私は絶対あなたを忘れない。約束するわ」
私はプレアを抱き締める手に力を込めた。
「ねえ、さん……ねえさん!」
プレアは私の胸に顔を埋めた。
私はプレアをぎゅっと抱きしめた。


198523:2008/02/01(金) 17:45:46 ID:???
「そう……わかったわ。引き続き情報を集めて頂戴」
『わかりました。では……』
地球連合軍特殊情報部長マティスは、部下が収集した情報を整理すると、取捨選択してアズラエルをはじめとする地球軍上層部に送る。
「ふぅ……」
マティスは憂いの篭ったため息をついた。
「結局ニュートロンジャマーキャンセラーはアズラエルに渡ったか……サーペントテイルに依頼したのが無駄になっちゃったわね。
まぁ、いいか。プラントに対して使われても。……地球に対して使われないように注意しておけばね。それよりも……問題はザフトの秘密兵器よね」
状況はさらに悪くなっていた。
パトリック・ザラの情報に比べて、ジェネシスは強化されているようだった。特に防御力。全体にPS装甲を張り巡らせ、核攻撃でも破壊できるかどうか。
そして……ジェネシスの目標として地球が予定されていると言う。
そんな事とんでもない! 人類絶滅だ!
……実は、マティスは表には知られていない裏の顔を持っていた。
人類を存続させると言う大目的のため、時には戦争すら画策する組織――人類の大多数に幸福を実感させると言う目的を持つ
その秘密組織の名を『一族』と言う。
マティスはその『一族』の党首だった。
当然、人類全体を思いやる責任感が強い。
だが、この状況に及んでは彼女にやれる事はそう多くは無かった。
この戦争は『一族』が引き起こした、そう、ちょっとした動乱に終わるはずだった。
まさか人口千万単位の集団が、人類を滅ぼす力を持つに至るなんて悪い冗談だ。
どこでどう間違ってしまったのだろう。
ちらり、と一枚のリストに目をやる。
マティスが『一族』党首になってから作らせた物だ。
『一族』の不利益になるかもしれない恐れのある者達――マティスは彼らを「イレギュラー」と名づけた。
これでは……「イレジュラー」達への対処は後回しになりそうね。それにしても……
マティスは「イレギュラー」リストの一番上を見る。そこにはシーゲル・クライン――と記されていた。
一体シーゲル・クラインは何を考えているの? このままでは人類絶滅よ?


199523:2008/02/01(金) 17:45:55 ID:???
「そうなの!? 風花、うまく言ったのね?」
『うん、うまくいったよ! 無事ロウ達に会えて、プレアさんにも会えた』
「よかった……」
『それからね、朗報があるの。地球連合のアズラエルさんも、ニュートロンジャマーキャンセラーを軍事転用する気無いって!』
「なに? 風花、それは本人から聞いたのか?」
劾が思わず口を挟む。
『ううん、でも、アズラエルさんから直接そう聞いてるって、ルナマリア・ホークってお姉ちゃんがそう言ってた』
「劾、ルナマリア・ホークって言えば地球軍のコーディネイターのエースだよな?」
「ああ、まぁアズラエルはオーブのロンド姉弟と接触があったりと単純なコーディネイター排斥論者では無い事は確かだが」
『ルナお姉ちゃん、ずいぶんとアズラエルさんと親しそうな口ぶりだったよ』
「男は女に弱いって事かな? くひひっ」
酒の小瓶をぐびりとやりながらリードが笑う。
「そうか……アズラエルが愚かでなかったのは喜ばしい事だな」
ふ……と劾は微笑む。
「じゃあ、あなたはそのままイズモにいなさい。こちらの船でドレッドノートの頭届けに行くから。識別信号伝えておいてね?」
『うん、わかった。じゃあまた後で!』

「結局、俺達のやった事は徒労になっちまったなぁ、劾」
「ああ、しかし、あの時点ではしょうがない事だった」
「みんな! 話してるとこ悪いけどこちらに近づいているモビルスーツがいるわ!」
ロレッタが警告の声を上げる。
「追っ手か!?」
「わからない。識別コードに反応しないわ」
「風花からはうまく言ったと連絡があった……とするとザフトか?」
「わからん。地球軍も一枚板ではない」
「どっちにしろこのままじゃ補足されるぞ、劾」
「ああ。アレを第三者に渡す訳にはいかない! 出るぞ、イライジャ!」
200523:2008/02/01(金) 17:48:51 ID:???
続く。

『一族』をこんな風にだしてみました。
マティスを男にしてみようとも思ったのですがイメージがオカマさんになってしまい、挫折。
201通常の名無しさんの3倍:2008/02/01(金) 20:28:36 ID:???
GJ!

マティスはこんなもんだろ
まだ男だとバレてないバージョンって所か
202通常の名無しさんの3倍:2008/02/01(金) 21:05:58 ID:???
ん、マティアスが兄でマティスが妹じゃなかったっけ?
203523:2008/02/01(金) 22:24:06 ID:???
です。女装を暴かれたマティアスが兄ですねー
なんかマティスが漫画より可愛い女性になっちゃいました。
204通常の名無しさんの3倍:2008/02/02(土) 00:46:39 ID:???
一族を出せ、と以前言った者ですが実にGJ!でした。

小競り合いで納める気だったのにどこをどう間違えたのか全面戦争に……アストレイは基本ザフト寄りなのでマティスの女性らしいところ、責任者らしいところがいい感じですね。
205通常の名無しさんの3倍:2008/02/05(火) 00:45:29 ID:???
保守
206通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 16:16:26 ID:???
人いないようだけど上げ
207通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 18:54:31 ID:psCZn4Sc
このレスを見たあなたは確実に交通事故に遭います



逃れる方法はただ一つ
↓このスレに行き
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1200885406/
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185616007/



アレンビーがいちばんかわいくてすごい



と書き込んでください。書き込まなければ確実に明日交通事故に遭いますよ
208523:2008/02/06(水) 19:06:39 ID:???
ではー。賑やかしに質問でも。

マリューさんって死んだアーマー乗りさんと結婚してたんでしょうか? それともまだ恋人だった?

基本的にコミックで出版されているだけの情報で書く気ではおりますが、現在の雑誌でのアストレイの世界状況(特に東アジア)、あらすじ教えてください。
209通常の名無しさんの3倍:2008/02/07(木) 09:16:55 ID:???
MA乗りは、確か婚約者だった筈。
210523:2008/02/07(木) 18:05:29 ID:???
ありがとー^^
211通常の名無しさんの3倍:2008/02/07(木) 21:43:19 ID:???
どうしてそういう重要な設定が本編で語られずに、殆ど知るものも居ない状態になっているんだろう・・・
212通常の名無しさんの3倍:2008/02/08(金) 13:36:18 ID:???
ペンダントを見つめながら気だるそうにベッドに横たわってるのだけで

彼女にMA乗りの婚約者がいて、さらに戦争で死んでしまって
MA乗りが大嫌いになった
なんて読み取れるはずないよな
213通常の名無しさんの3倍:2008/02/08(金) 15:12:15 ID:???
終盤のムウがマリューのペンダント見て「MA乗りだった?」とか言ってたシーンでかつての恋人がMAパイロットだという事は何となくわかったが・・・
その前にもオーブ侵攻戦編でムウにキスされた時に「MA乗りは嫌いです!」と言っている
何にせよ描写不足の感は否めんがね
214523:2008/02/08(金) 17:35:47 ID:???
劾とイライジャは宇宙船を守るように出撃した。劾は折りたたみ式の砲身を持つ大型ビームライフルを備えた、長距離
射撃用スナイパー・パックを選んで出撃する。
――劾は妙な感覚を感じていた。
「なんだ? この妙な存在感は?」
「劾、どうした、劾!」
「イライジャ気をつけろ! 相手はただのモビルスーツじゃない!」
「何!?」
その、モビルスーツが、見る見るうちに迫って来る。
「なんだ、貴様は?」
アンノウンモビルスーツはビームライフルを構えると言った。
『お前達、サーペントテイルよね? おとなしくニュートロンジャマーキャンセラーを渡しなさい』
イライジャは驚いた。
「――女か?」
「――なぜ知っているか知らんが、渡す事はできん!」
同じく驚きながらも劾は拒絶する。
『そう。ならば、消えうせろ!』
アンノウンはいきなりビームライフルを連射する!
「くそ! いきなり! 連射速度が速い!」
アンノウンからビームライフルを向けられた時から、測距を開始していた劾は狙い済ました一撃を放つ。
「――落ちろ!」
大型ビームライフルからビームが一直線にアンノウンに向かう。アンノウンはまぶしい光に包まれた。
「直撃だ!」
イライジャが歓呼の声を上げる。
「――いや、まだだ!」
「なにぃ!」
ビームライフルの光が消えたそこには、左腕に逆三角形の光の盾を構えたアンノウンが変わらず存在していた。
「何だ! あのシールドは!?」
『面白いわね。でもその強さ、生かしては置けないわ!』
宣言すると、アンノウンはビームライフルを連射しながら突っ込んで来た。
劾とイライジャの攻撃、それを妙な光の盾で捌きながら、アンノウンは二人を翻弄する。
215523:2008/02/08(金) 17:36:23 ID:???
「くそ、この装備では!」
――取り回しが利かん!
頭の中で悪態をつきながらスナイパー・パックを投棄し、劾はアンノウンに攻撃を続ける。
「……な、なんて速さだ! 二機の動きが追えん!」
イライジャは劣等感を刺激されていた。
「これでは援護も出来ん!」
それほどに劾とアンノウンの戦闘は速かった。
「――ちくしょう! 俺だって!」
イライジャは気持ちを奮い立たせると、アンノウンに立ち向かう。
「でやぁ!」
だがその一撃はやすやすかわされる。
『雑魚が! 引っ込んでなさい!』
アンノウンのビームライフルから突然何かが――!
射出されたビームナイフは、イライジャのジンの左腕にダメージを与えた。
「――うわ! ……レベルが違いすぎる……なんて無様なんだ、この俺は!」
再び劣等感がイライジャを襲う。
「イライジャ! 回り込め! 同時に挟んで攻めるぞ!」
「――了解!」
劾の言葉に気を取り直すとイライジャはアンノウンを挟んでブルーフレームと正対する位置につく。
『なるほど。よい攻め手ね――ならば見せてやるわ! ハイペリオンの輝きをね!』
アンノウンのパイロットの言葉と同時にアンノウンに変化が表れた。
背中に背負っていたウイングの様な物が肩に担ぎ上げられ、ランチャーを担いでいるように見える。そして――アンノウンは光の膜に包まれた。
「――! これは……」
『アルミューレ・リュミエール! モノフューズ光波シールド! ビームだろうが実体弾だろうがこいつを破る事は不可能よ!』
「くそ!」
劾とイライジャは光の膜に包まれたアンノウンを攻撃するが、アンノウンのパイロットの言葉どおり、光の膜で弾かれてしまう。
『ふん、無駄よ! 遊んでる暇はない! 決めさせてもらうわ!』
――!
「なにぃ!」
光波シールド……それは双方向からの攻撃を封じる筈。それが――アンノウンは光の膜の内部から一方的にこちらに攻撃を仕掛けてきている。
『これで終わりよ!』
アンノウンが肩に背負ったランチャーに光が集まり、放たれる! その先はブルーフレーム!
「劾ーーー!」

216523:2008/02/08(金) 17:36:45 ID:???
――頭部の左半分を持って行かれたものの、まだブルーフレームは存在していた。
『なにぃ!? ――くそう! 落ちろ! 落ちろ! 落ちろーーー!』
アンノウンが焦りを見せてビームライフルを連射する。
「なるほど『アルテミスの傘』か。光波防御帯をモビルスーツに応用したと言う訳だな」
冷静に劾は分析する。
その間にもイライジャは攻撃を続けている。
「くそう! 弾切れだ! どうする、劾!」
「確かめたい事がある――!」
劾はアンノウンに向かってブルーフレームを突っ込ませる。
「劾ーーー!」
劾は突っ込みながら見当違いの方向へ射撃をする。
『あはは! 何を――くっ!』
劾が狙ったのは、先ほど投棄したスナイパー・パックだった。アンノウンの至近でそれが爆発し、閃光を放つ。
『――無駄な事を……!』
「今だ!」
劾は耐ビームコーティングされたアーマーシュナイダーをアンノウンの光の膜に突き立てる!
「やはり……そうか!」
アーマーシュナイダーは何も通さないはずの光の膜を貫いた。だが、しばらくの間を置いて光の膜に耐え切れず崩壊する。
「イライジャ! 時間は十分稼いだ。撤退するぞ!」
「お、おう!」
『逃がすか』
――その時、アンノウンの光の膜が、消えた。
『こんなところで時間切れ!? 運のいい奴! 次に会ったら必ず仕留めるわ!』
アンノウンのパイロット――メイリン・パルスはつぶやいた。

『劾! 大丈夫なの!?』
「ああ」
劾とイライジャは無事宇宙船まで撤退した。
『時間を稼いでくれたおかげでこちらは無事よ』
『しかし、お前さんともあろう者がひどくやられたもんだな』
リードがブルーフレームのやられた頭部を見て言う。
『そんなにできる奴だったのか?』
「ああ。あのパイロット、俺と同じコーディネイターだ。しかも黒幕は……ユーラシア連邦だろう」
「そうか! あれは『アルテミスの傘』か!」
「そうだ、イライジャ。だが、大体の相手の能力はわかった。次は……負けん!」
「とは言え、さっさとドレッドノートの頭、返した方がよさそうだな」
「ああ、さあ、中に戻ろう。プトレマイオス基地まで急ぐぞ!」

217523:2008/02/08(金) 17:37:06 ID:???
『通信が来ております。サーペントテイルと名乗っています。風花さんをお呼びです』
「風花、サーペントテイルの船から連絡だってさ」
「はい、わかりました! ちょっと行って来ます」
風花さんは休憩室から出て行った。
すぐに戻って来た風花さんは慌てていた。
「サーペントテイルの船は、こちらに急行中です! でも途中でニュートロンジャマーキャンセラーを狙った何者かに襲撃されたそうです!」
「わかった。地球軍に話して警戒度を上げさせよう」
ギナ様は通信機に向かって指示し始める。
「……でも何者が……」
「わかりません、一機だけだったそうですが、劾のブルーフレームが損傷を受けて、イライジャのジンも損傷を受けたそうです」
「一機でか……」
「大丈夫だって! 地球軍も警戒してるんだしさぁ」
「そうよ。気を楽にして? ね? じゃあ、またサーペントテイルが着いたら呼んでよ」
「おう」
私は一旦イズモを後にした。


マティスのシーゲル・クラインを探ろうとする試みは続いていた。
だが……
『マティス様、これが最後の報告となるかかも知れません。シーゲル・クラインはああ人間ではありません! 彼の周囲を探るようになってから、
変な視線を感じじたり、突然奇妙な物音がが聞こえるようになああ、窓に!  窓に!!』
この報告を最後に、また一人プラントに潜り込んでいる『一族』が消息を絶っていた。
どう考えればいいの? シーゲル・クライン、あなたは……何者!?


218523:2008/02/08(金) 17:37:25 ID:???
程なく。サーペントテイルの皆さんがプトレマイオス基地に入港したと言う知らせを聞き、私は再びイズモへ急いだ。
イズモに着くと、そこは奇妙な緊張感に包まれていた。
「……どうしたの、ロウ?」
小声でロウに聞く。
「いや、サーペントテイルの連中も着いたばかりなんだが、なんかサーペントテイルの劾とギナ様が睨み合っちゃって……口が出せん雰囲気だ……」
その時、ギナ様が口を開いた。
「お前がP03のパイロットか。以前は世話になったな」
「……ああ……」
「で、今後も世話をしてくれるつもりなのかね?」
「……いや、とりあえずその予定は無い」
「ふ……」
ギナ様はにぃっと笑みを浮かべた。
「では、お前達に頼みたい事がある」
「……なんだ?」
「プレア・レヴェリーがオーブへ降り、ウズミにニュートロンジャマーキャンセラーを渡す。その護衛を頼みたい」
「了解した」
「……いいのか? 報酬も聞かずに即答して」
「あんたなら、つまらん値切りはしないだろうと信用しているよ」
「ふ……」
ギナ様は苦笑した。
「ところで、イライジャ・キールとやら。お前の乗機はジンだそうだな」
「あ、ああ。それが何か?」
突然話を振られたイライジャはどもりながら答える。
「ジンもいい加減古い機体だ。旧式化している。そろそろ新しい機体が欲しいのではないかな?」
「つまり?」
「報酬はM1アストレイの最新バージョン一機だ。ああ、それから損傷したP03、修理させよう」
思わぬ破格の報酬にサーペントテイルの面々は顔を見合わせる。
「いいんじゃねえか? ちょうどイライジャのジン壊れちまってるし」
「ああ……! 俺もM1アストレイなら文句は無い」
「よし。報酬の件、了解した」
「M1アストレイはすぐに渡せるが、修理は一旦、アメノミハシラに寄ってくれ。そこからシャトルでオーブに降りてもらう。
まぁ、M1アストレイの頭部でよければ、すぐやるが」
「ギナ様、すみません。僕のためにこんな……」
プレアが恐縮した顔をする。
「気にするな。お前のおかげでオーブはより優れたニュートロンジャマーキャンセラーを手に入れられるのだからな」
ギナは優しい声でプレアに語る。
病弱なプレアに対する気遣いだろうか。
ギナ様も最初に会った頃から比べれば丸くなったものだとロウは思う。蘊奥との出会いによるものか、プレアとの出会いによるものか……
ロウは、ギナが変わったのはロウに出会ってからではないかと、劾が興味深い視線を自分に向けている事に気がつかなかった。


219523:2008/02/08(金) 17:37:33 ID:???
「な、なんですって!?」
ガルシアは、上官の詰問を受けていた。
『だから言ったろう、ガルシア君。我が国は既にモビルスーツについてはストライクダガーの供与を大西洋連邦から受けている。
これは高度な政治的判断なのだよ。それになんだね? 君の特務部隊はよりによってプトレマイオス基地の近くで地球軍の味方を襲撃したらしいな』
「い、いえ! 決してそのような事は! 襲ったのは傭兵部隊で……」
『ふぅ……ガルシア君、地球軍の耳は役立たずではないよ? これ以上勝手な事をされては我がユーラシア連邦の不利益な事になるのだ。
はっきりした証拠が掴まれない内に、危険な火遊びはやめるのだな。いいね?』
そう言うと、通信は一方的に切られた。
「く、くそー! これもメイリンがのろのろしてるからだ! 奴を拘束しろ!」


月面プトレマイオス基地――
そこには毎日のように地球からの補給部隊が訪れ、ボアズ要塞攻略のための物資が着々と蓄えられていく。
その日も――
「うわあぁぁぁ!」
「敵だ! 敵襲だ!」
「なんだと!? レーダにも目視にも何も写っとらんかったぞ!」
「船を守れ! 守るんだー!」
補給部隊は突然の襲撃を受けた。
「相手は一機だぞ!」
「ぐわっ!」
「つ、強い!」
襲撃者は通常のモビルスーツより一回り大きなモビルスーツだった。
「くそ、道連れだ!」
一機の損傷を受けたストライクダガーがそのモビルスーツに組み付く――爆発!
「やったか!」
――だが。
「へへへ、ばーか!」
その襲撃してきたモビルスーツ――ザフトの開発中のモビルスーツ、リジェネレイトのパイロット――アッシュ・グレイは健在だった。
実はリジェネレイトはコクピットがバックパック部分に存在し、それ自体が「コア・ユニット」と呼ばれる1対のサブアームを持ったパーツに分離する。
「そんな部分やられたってどうって事無いぜ!」
近くに漂うコンテナからパーツが飛び出し、コア・ユニットと合体する。
リジェネレイトの人型部分は多数の予備が存在する使い捨てパーツに過ぎず、戦闘中この部分を破損しても新たなパーツ、
あるいは破損パーツから使用可能な部分を再構成してドッキングする事で、パーツの供給が続く限り何度でも機体を再構築する事が出来のだ。
リジェネレイトは完全復活した。
「ははは! 全部殺しまくってやるぜぇ!」
アッシュ・グレイは吼えた。
220523:2008/02/08(金) 17:41:55 ID:???
続く。

アッシュ・グレイ登場

質問スレにも書いたのですが、なんでケナフ・ルキーニはあんなにリジェネレイトを警戒したんでしょう?
ジェネシスαで加速したら、名前の元になった交換用予備部品コンテナが取り残されて(´・ω・`)ショボーン
なんて光景が頭に浮かんでしまいます。
221通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 11:17:34 ID:???
乙ー
アストレイはところどころに謎(というか表現不足)を残してってるよね


ところでwikiってパスワード制になったんだ?
222通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 11:21:50 ID:???
>>220
物凄いスピードでどこにでも飛んできて奇襲、多少壊れても気にしない
……と思ったんですが、帰るときの加速手段をどうするんだ?という時点で
詰まっちゃいましたw
それ以前に減速手段を持っていないと、あっという間に戦場を通り過ぎてしまいますね
(AMBACでは向きを変えることは出来ますが速度や進行方向を変えることは出来ません。
また、説明図に書かれているようにメインスラスターを後ろに向けて減速できるなら、
リジェネレイトのメインスラスターはジェネシスαによる加速に匹敵する推力を持っている
事になってしまいます)
223通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 11:42:10 ID:???
>>221
wikiは移転して>>1のまとめwikiになった。
224通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 16:27:56 ID:???
もう一度ジェネシスαを利用するのかも
角度的に無理ならば他のジェネシスを使う予定だったのかも知れない
砲台に改造されてもう無理だけど
225523:2008/02/09(土) 18:35:10 ID:???
うーん。ジェネシスαで加速設定はオミットした方が無難かな?

ケナフの出番が無くなるけどマティス書くの結構面白いし。
226通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 19:35:53 ID:???
ケナフがけいかいしたのって
リジェネレイトが自分の情報網に引っかからなかったからじゃなかったけ?
あと、ライトクロフトプロパルジョンは
ジェネシスレーザ照射→レーザー収束→専用スラスター内の専用推進剤に点火→大爆発→爆発を噴射力に
こんなシステムだったはず
いわば、核爆弾を使用しない核パルスエンジン的原理

で、このスラスターが噴射中に自分の機をAMBACでもって方向転換すんじゃない?
そもそもあれは元来拠点防衛用の機体コンセプトだし
最初のアマツ奇襲の場合は速度というよりミラコロが勝因だったはず

詳しくは漫画アストレイRの四巻がくわしい
227395:2008/02/10(日) 20:59:14 ID:???
遅筆をどうにかしたい年頃の俺orz
228395:2008/02/10(日) 20:59:48 ID:???
/ 5. シン

――マユのケータイっ!
彼女が叫ぶのと、林道に落ちた携帯電話が斜面の方に跳ねるのは同時だった。
マユがどれほどそれを大事にしているかを、シンは知っていた。旧世紀末の型を模した、流行――一種のルネッサンスとでも言うのだろうか――の携帯電話。そのメモリーの中には、数知れない写真が収められている。
もう少しで14歳になるシンは、やはり子供だった。マユを悲しませることは、彼にとって一番恥ずべき行為だったのである。
――シンッ!
父親が叫んだ時、既に彼は斜面を滑っていた。
シンは身軽だったから、携帯電話を拾ってすぐに追いつく自信があった。そのまま斜面を駆け下りて、港で合流する手もある。
木の根元で止まった携帯電話に、屈んで手を伸ばした瞬間、あらゆる音が消えたような感覚が、シンを襲った。
掴むと同時に、それまでにない程の爆音が彼を殴った。景色がぐるりと数回、大きく回った。
気がつくと、シンは焼け野原に横たわっていた。手をついて振り向くと、そこに林はない。大きく形を変えた山があるだけだった。
黒ずんだ土くれの中に、シンはわずかな肌色を見つける。それは腕だ。
――マユ。
口の中で呟きながら、彼はそれに近づいた。近づけば近づくほど、それがマユの腕だとわかり、そして、
――マユ?
そこにはマユの腕しかないことわかった。
何がなんだかわからなかった。
マユと一緒にいた両親も、近くにはいない。ただ、土に混じって、二つほど人の形を模ったような炭の塊があるだけだった。
シンは叫んだ。声にはならなかった。

そこで目を覚ます。
体中に汗をかいていた。息も荒い。上手く呼吸が出来ないようだ。
ベッドの横に置いたピンク色の携帯電話を胸に抱いて、ようやく彼は落ち着いた。
229395:2008/02/10(日) 21:02:46 ID:???
デュランダルはカガリに詫びた。
曰く、「申し訳ありません。彼が――オーブからの移住者なのですが――よもや、あのような事を言うなどとは……」
オーブからの移住者。その言葉がカガリの脳裏から離れない。
そのようなこと、果たしてありえるのか。綺麗事はお家芸――彼はそう言った。あからさまな侮蔑を込めて、だ。オーブの国民だった者が、父の施政の下で育ったであろう者が、そんなことを言うはずはないのに。
「色んな奴が、いるってことだよ」
アレックス・ディノはそう囁いた。彼女はこくりと頷く。納得の行かない表情であった。
先導するデュランダルは、エレベーターに二人を招きながら、
「きっと、何かしらの勘違いがあるのでしょう。赤い軍服を着たところで、まだ16の少年です」
言って、それから再び、
「それにしても、申し訳ありませんでした」
頭を下げた。
カガリは相変わらず、こくりと頷くだけだったが、
「ここからブリッジに上がります」
というデュランダルの言葉に、きょとんとした。
「もうじき戦闘になると思いますので、どうかこの艦の戦いを御覧戴きたい」
「何――!?」
カガリは目を丸くして声を上げた。アレックスも驚きを見せている。それは当然の反応だろう。しかし、デュランダルには一切拘る様子がなかった。
230チューボードーテイ ◆z.XUi1BRxc :2008/02/10(日) 21:05:39 ID:???
「ザクに不具合?」
エイブスの報告に、タリアは顔をしかめた。
『不具合って言いますか……まあ出せない、ってことはないんですがね。何分ニュー・ミレニアムの実戦参加はほんの一部の部隊に限り、それにしたってZGMF-Xやガンバレルを相手に戦った訳じゃあない』
「プログラムが追いついていない、ってことかしら?」
『端的に言えば、そうなりますな』
先ほどの戦闘に関しても、ザク2機とセカンドステージ2機が、MAとダガー1機ずつに撒かれてしまったほどである。
『筋がいいったって、この艦のパイロットは皆ヒヨッコです。ハーネンフースあたりがいればまだしも、そういう教官役すらいない。たとえバレルでも、経験を積まないとマニュアルで対応しきれるもんじゃあないでしょうな』
「そう……わかったわ、ありがとう」
より慎重に判断を下さなければならない、とタリアは溜息を吐いた。それから一つ思いついて、
「あ――エイブス」
再び受話器の向こうに声をかけた。
『は? なんでしょう、隊長?』
「インパルスとセイバーはどうなの?」
訊いてから、莫迦な質問をしてしまったとタリアは内心で舌打ちした。量産体制にあるザクのプログラムが追いついていないのなら、セカンドステージのそれなど尚更だろう。
『セカンドステージってのは、色々と特殊なもので……OSの学習能力自体は、ザクよりかはいいんですよ』
「そうなの? ――にしても、含んだ言い方ね」
エイブスの言い回しに引っかかって指摘すると、エイブスは苦笑いのようなものを漏らした。
『そりゃあね、隊長。OSの学習能力が高いってことは、パイロットは置いてけぼりを喰いかねない。ヒヨッコを支えられないOSも、OSの支えに対応できないヒヨッコも、問題としては大差ないようなもんでしょう』
「アグリコラのMS隊に任せるべきかしら?」
『そこは貴女の判断でしょう。まあ……一つ、参考程度にですが』
エイブスの声が、幾分か柔らかくなった気がして、タリアは興味を示した。
「何?」
『バレルの優秀かつ正確な乗りこなしに対して、アスカやホークは全然粗い。が、その分学習能力は高いんです。今はあれでもね』
「つまり……?」
『ヒヨッコには違いないが、適材は適所にいる――ってところですよ』
少し肩が軽くなった気がして、彼女は息を吐いた。
『気休めになりましたかね?』
「――エイブス整備班長、あなたはそういう一言が余計なのよ」
『こりゃあ、どうも』
エイブスの苦笑とともに、通話は終了した。狙いすましたかのように、CICからの報告がスピーカーから流れる。
『敵艦捕捉――セクター、オレンジ・アルファ!』
『距離13000!』
「本艦とボギー・ワンの交戦開始からアグリコラ参戦までの時間は?」
『推定450秒です!』
7分半。11分の交戦時間を考えれば、あまりに遅い。
これでは、プログラムがどうのと言っている場合ではない。パイロットの少年達には耐えてもらうしかなかった。
「――戦闘用意」
「はい! コンディション・レッドを発令!」
号令してから、アーサーが、
「隊長、シンの処置は保留でよかったんですか?」
やや心配そうに尋ねた。オーブの代表首長に暴言を吐いたという話だ。軍法会議ものではある。
「現状においてインパルスの戦力は欠かせないわ、アーサー。それに、あれは一朝一夕で乗りこなせるような機体ではないはずよ」
「そうですが、でも……」
「あちらは無断で他国のMSに乗り込んだわ。お相子にはできるでしょう?」
なおも心配そうな表情のままのアーサーを促して、タリアはCICに向かう。
231395:2008/02/10(日) 21:07:26 ID:???
エレベーターに乗り込もうとしたその時、背後で電子音が鳴り、ドアが開いた。それとともに男性の声が、
「グラディス隊長」
耳に入ってくる。デュランダルだ。背後にはどういう訳か件のカガリ・ユラ・アスハと、その随員も付き従っている。
「……何事ですの、閣下?」
「いいかな、隊長? オーブの方々にもブリッジに入っていただきたいのだが」
そのデュランダルの提案に、
「何ですって?」
タリアは眉をひそめた。
オーブの方々どころか、デュランダルにも自室で大人しくしておいて欲しかった。指揮官としても、タリア・グラディスとしても。
「知っての通り、代表は先の大戦で陣頭指揮もなさるなど、数多くの戦闘を経験された方だ」
「はあ……」
「そうした目から、是非ともこの艦の戦闘を見て頂きたくてね」
タリアは二人の国家元首の前であることも厭わず、露骨に嫌な顔をした。けれどもデュランダルは、あくまで柔らかい表情を浮かべたままである。
「――……わかりましたわ。ただし、議長閣下と雖も、戦闘中のCICへの入室はご遠慮いただきます」
それが精一杯の抵抗だった。
「わかっているよ、タリア。人気取りをする政治家にはなりたくないが、軍部に嫌われたくもないからね」
「私でなければ……」
思わず呟きかけて、タリアは口をつぐんだ。そして彼女は、そっぽを向くようにして顔の向きを変え、アーサーに呼びかけた。
「艦長」
「はい、隊長」
「指揮はあなたに一任します。こことCICの回線はオープンのままに。何かあったらすぐに連絡しなさい」
「え……隊長は?」
艦長ともあろうものが、不安なのだろう。何しろ議長や他国の代表が見ている中で、戦闘を指揮しなければならないのだ。
「ブリッジクルーだけを議長方と残すわけにはいかないでしょう?」
タリアの言葉に、アーサーは不承不承頷いた。
「副艦長、しっかりアーサーを補佐するように」
『了解です!』
CICのミサエが張り切って返事をした。
だが、正直タリアは不安であった。
アーサーの能力そのものには何ら問題はないし、それを補佐するミサエがしっかりしているとは言っても、どちらも大戦時は後方勤務である。ともに実戦経験は皆無に等しく、この難しい事態で戦闘を委任するには不安が残らないではない。
タリアの意を察したのだろう。隊長付副官のユーリー=レヴィチ・ドミトリエフが、
「小官がCICにつきましょうか?」
小声で提案したが、
「構わないわ。その辺りで不要な溝は作りたくないもの」
彼女はそれを却下した。
232395:2008/02/10(日) 21:07:55 ID:???
これまで省いてきたが、ここでミネルバの指揮中枢について軽く触れておきたい。
ミネルバには指揮系統が二つある。一つはアーサー・トライン艦長以下、艦の運用を担当するクルー。もう一つは、タリア・グラディス隊長の直属にあたるMS隊や保安部、情報班といった独立部署である。
現在これらが一丸となれている理由は、タリアとアーサーの力関係にあり、また、タリアからアーサーへのある程度の信頼にあった。戦闘指揮に関しても、艦そのものの行動に関して、タリアはアーサーに多くを任せている。
ミネルバの指揮中枢の所在は、CICとブリッジにあった。
従来のザフト軍艦は艦橋構造が堅牢な代わりに、CICとブリッジが一体化していた。それに対しミネルバは、無論従来艦よりも堅牢な艦橋を持ってはいるが、さらに堅牢な艦体中枢部に、エレベーターでブリッジと繋がるCIC――戦闘情報室が設置されている。
簡単に言えば、艦の運航を行うのがブリッジ、戦闘指揮を行うのがCICである。
ブリッジには操舵士、副操舵士、観測士ら航法班が詰めており、操舵室と言い換えても問題ない。また、戦隊司令部、艦隊司令部がこの艦に設置される際に司令官以下が乗り込むのもここである。これは効率を無視した一種の伝統だ。
CICには砲術班、管制班――つまりオペレーター――、情報班、通信班などが詰めており、不慮の事態に備えての副艦長の所定位置でもある。また、戦闘情報室とは言うが、平時も通信班が詰めていることから、艦、ひいては部隊の情報の中枢と言える。
なお、本章2話でブリッジクルーと表現した者は全てCICクルーであることをここで訂正しておく。
閑話休題。
233395:2008/02/10(日) 21:08:50 ID:???
戦闘開始の想定時間まで十分を切ろうとしていた。
『インパルス、右舷カタパルトデッキへ移動してください。セイバーはそのまま左舷デッキに進み、出撃準備』
『インパルス、了解』
「セイバー、了解」
メイリンの指示に従って、あたしは機を前進させた。
シンのインパルスも、今回は通常のカタパルト出撃だった。無論、特異な状況にない限りは、その方が効率的なのだ。ミネルバ級も、二番艦からはインパルス専用の中央カタパルト群に関して見直しが入ることだろう。
シンが右舷デッキで待機状態になる頃を見計らって、パイロットのスモールトーク回線で彼を呼び出した。本来はご法度だが、オペレーターさえ黙認すれば、幾らでも雑談というものは行えるのだ。
『何?』
「ん――まあ、その、ね」
いつも以上にシンの声がそっけなくて、あたしは言葉に詰まった。
「よかったじゃない、お咎めなしで」
『うん、まあね』
当然、とでも思っているような答え方だった。自分は間違っていない、という無意識の自己主張。アカデミー時代から――そして恐らくそれ以前から――どこか頑固なシンのそれは、本人の意思に関わらず友人を選んできた。
「なんで、あんなことやっちゃったのよ?」
『べ――』
「別に、は駄目」
『……』
出鼻を挫かれて、彼が明らかにむっとしたのがわかった。けれどもあたしは怯まない。
「ほうら、お姉さんに話して御覧なさい」
『……』
「ね?」
シンの溜息が聞こえる。根負けしてくれたのだろうか。
『昔――、ある国の話になるんだけど』
けれどもそれは、シン自身のことではなかった。
234395:2008/02/10(日) 21:10:01 ID:???
『オーブ解放作戦、知ってるだろ?』
「えぇ」
71年6月に決行された、大西洋連邦によるオーブ侵攻のことだ。
大戦も終盤の差し掛かり、地球連合――殊にMS開発によって連合内の主導権を確立した大西洋連邦は、中立国オーブを味方に引き入れることに躍起になっていた。オーブは独自にMS開発を進めており、それに関しては大西洋よりも一歩進んでいたのだ。
また、オーブには連合が失ったマスドライバーがあった。宇宙における反攻作戦を考えた時、連合はなんとしてもマスドライバーを手に入れたかったのだった。
これまでのらりくらりと中立を保ってきたオーブに対し、連合は侵攻をちらつかせながらという、脅迫じみた要求を行う。だが、その割に要求の内容は無理難題ではなかった。
マスドライバーの徴用と、相互の技術協力である。
当時、アラスカ戦の影響で既に地上の戦況は連合優勢へ傾いていた。けれども、アスハ家に支配されたオーブ政府は、要求を拒否し、連合軍艦隊を呼び寄せた。そして、武装解除勧告に応じず、ものの数日で全島を制圧されたのだ。
『アスハは、絶対中立という理念の為に、国民を捨てたんだ』
吐き捨てるように、シンは言った。
『国の将来の為じゃなく――為政者が、自己満足の為に国民を無理心中させたんだ』
当時オーブ国内で何があったかなど、あたしは知らない。戦闘の推移、地球軍の作戦の効率などを、教材として扱っただけだった。アスハ家に関しても、オーブとの友好を考えてか、はたまた地球連合との遺恨があってか、プラントではあまり悪く言われることはない。
『そんな奴が、今じゃ英雄扱いで、他国の国防に口を出してるのが許せない』
「……詳しいんだ、オーブのこと」
『そんなこと、ない』
見当はずれなあたしの相槌に、シンは力のこもった否定をした。肯定するのが心底嫌そうな、それでいて否定するのも辛そうな声音だった。
「けど、だからって、どうしてあんな首が飛びかねない真似したのよ?」
『別に……関係ないだろ、ルナには』
やはり、別に、だった。
ふと気がつく。彼の怒りは、義憤などではないと、あたしは先ほど感じたではないか。
「ねえ、シン。もしかして――」
言いかけたあたしの言葉を、コール音が遮った。呼び出しはCICのメイリン。時間的な余裕はまだあるはずだった。
「何よ、メイリン? スモールトークへの黙認不干渉は不文律――」
『事態が変わりました!』
「……何事?」
通信ウィンドウに現れたメイリンの顔は、緊張していた。声もただならぬものがある。
あたしは、事態は好ましくない方向へ変わったのだと確信した。
『ボギー・ワンがデブリ海に直進しました!』
つくづく破天荒な真似をするものだ――唖然として、あたしは言葉もなかった。

5 /
235395:2008/02/10(日) 21:14:00 ID:???
523氏の作品に比べて、どうにも地味になってしまうなあ

途中でおかしな名前になってるのはブラウザの機能と俺のうっかりのせいなので気にせず
236通常の名無しさんの3倍:2008/02/10(日) 23:24:43 ID:???
GJ!
コ、コテで検索かけたりなんかしてないんだからね!
237395:2008/02/11(月) 03:26:27 ID:???
別に俺が使ってたわけじゃないからいいんだけどな

ところでデスティニー時代を網羅した年表って作られてる?
手元には無印時代の年表しかなくて不便しているんだけど
238通常の名無しさんの3倍:2008/02/11(月) 05:39:04 ID:???
>395氏
更新乙です。
地味なんてとんでもない!
戦闘の舞台裏とかの話とか好きなので読んでいて楽しいですよ〜
ルナマリアinセイバーはツボなので、続きを期待しております!

ちょっと気になった点があったのでご報告。
句読点の『。』の後、もう少し改行する部分を多くした方がよろしいかと。
文章が長くなりすぎていて、少し読みづらいです。

種死の年表ですか〜
wikiでコズミック・イラで検索したら、それっぽいのは出てきたけど…
大まかなことしか書いてないし、これは年表じゃないかも。
力になれなくてすみません。

239通常の名無しさんの3倍:2008/02/11(月) 09:08:05 ID:???
>>235
地味じゃなく渋いと言っておきましょう
240通常の名無しさんの3倍:2008/02/11(月) 13:39:03 ID:???
種死の公式年表は、種の公式年表を早期に出して色々と自縛してしまった反省から公表してない

……という噂がある。
241395:2008/02/11(月) 17:18:50 ID:???
>>238
アドバイスありがとう
気をつけてみる

>>239
渋いって言うとちょっとかっこいいなw
やる気上がった

>>240
デスに関してはもう出しても問題なさそうに見えるんだけどなあ
まとめるのも面倒くさいのかな
242通常の名無しさんの3倍:2008/02/11(月) 22:10:10 ID:???
まあアストレイはまだ続いているし、映画版の先行きが怪しいのとか絡んでいるんだろ。
特に後者はいろいろとウワサは流れてはいるが公式発表がないわけだし。案外のろのろと作っているのかもしれん。
243通常の名無しさんの3倍:2008/02/12(火) 16:31:23 ID:???
アッシュは政治家の息子謀殺した時に殺人の快楽に目覚めたんかな?
謀殺したとかは断定されていなかったが。
244通常の名無しさんの3倍:2008/02/13(水) 09:48:49 ID:???
後日談にマーシャン出そうかなと思ってますが、種世界では火星への到達時間はどれくらいでしょう?
245523:2008/02/14(木) 18:37:07 ID:???
解決しました。半年だそうです。
246通常の名無しさんの3倍:2008/02/14(木) 20:12:56 ID:???
はええー
247523:2008/02/14(木) 20:19:22 ID:???
現在の技術で2.6年。
将来太陽風の代わりにビームを使う船を作って、所々にビーム発信基地を整備して、往復3ヶ月行けるかも、だそうです。
単独で燃料も積んだ船だとすると、すっごい早いですね、種の船。
248通常の名無しさんの3倍:2008/02/14(木) 23:43:52 ID:???
確かにジェネシスって加速装置もあるしな。そういう技術は確立してるんだろうな
249523:2008/02/15(金) 17:32:27 ID:???
「補給部隊との通信は?」
「依然途絶したままです。ギナ様」
「そうか――あれは何だ!?」
窓の外を、楔のような形の……大型モビルアーマーだろうか? すさまじい速度であっという間に通り過ぎて行った。
……その後、補給部隊が救難信号を発した地点にギナが辿り付いた時、発見できたのは残骸のみであった――

「くっくっく、今日も殺しまくったぜぇ!」
ギナが見た大型モビルアーマーらしき物――その中にアッシュ・グレイは居た。
そう、リジェネレイトはモビルスーツ形態とモビルアーマー形態が取れる可変型の……そして核動力機であった。
「ふふふ。今夜は気持ちよく眠れそうだ……」
彼は口を歪めて笑った。


「じゃあ、とりあえずブルーフレームは修理しなくても大丈夫なのね?」
「ああ。襲撃してきたアンノウン対策も兼ねて、セカンドL――タクティカル・アームズを使う。頭部もそれ専用に取り替えるからな」
「タクティカル・アームズ?」
プレアとドレッドノートはサーペントテイルの船に移される。私は、プレアが心配で劾さんに色々聞いてしまう。
「襲撃者は、アルテミスの光波防御帯の改良型を使ってきた。タクティカル・アームズはラミネート装甲された実体剣だ。そいつを貫ける」
「試したの?」
「ああ、耐ビームコーティングしたアーマーシュナイダーでな。もっともそいつは光波防御帯を貫いたものの、長さも足らず有効な攻撃が
出来なかった。耐え切れず短時間で崩壊したが、ラミネート装甲ならかなり持つ筈だ」
「そう……耐ビームコーティングね。ありがとう」
劾さんの言葉を聞いて私には一つメイリンへの対抗手段が思い浮かんだ。――ガーベラストレート。あれなら……
「なに……役に立てれば光栄だ。――そう言えば、君に聞きたい事があった。アズラエルを君はどう思う? ブルーコスモスの盟主と言うと、
俺のようなコーディネイターはつい身構えてしまうのだが」
「アズラエルさん? うーん、別におっかなくないわよ? そりゃ敵対する人にとっては怖いだろうけど。反コーディネイターって言っても
アズラエルさんの場合は、これ以上コーディネイターが増えないように、犯罪を犯したコーディネイターは隔離するようにって感じね。
知ってるかもしれないけど、地球上のコーディネイターを保護しようとしてるし……小さい頃、コーディネイターに憧れてたんだって。ふふ。
プラントに関しては反コーディネイターってより工場を労働者に乗っ取られた経営主の感覚で怒ってるし。私達コーディネイターにとって
普通に敵と言えるのはブルーコスモスじゃロード・ジブリールじゃないかしら。何かにつけて砂時計は全部ぶっ壊せ、コーディネイターは
皆殺しにしろって喚いて……アズラエルさん達プラントを正常な状態にしたい人達からは顰蹙を買っているそうよ?」
「ロード・ジブリールか。過激派だとは聞いている。ありがとう。色々事情がわかったよ」
「どういたしまして」

250523:2008/02/15(金) 17:32:51 ID:???
「メイリン」
ピスティスが強張った顔をしてメイリンに話しかけた。
「どうしたの? そんな硬い顔して」
「ガルシア司令から、あなたの拘束命令が出ております」
「なんですって!?」
「どうやらユーラシアの上の方に訓練中の地球軍モビルスーツを襲撃したのがばれたらしく、この特務部隊の解散も命
じられているとか。ハイペリオンの開発もとうとうストップが決まったそうです」
メイリンの顔は怒りのために紅潮した。
「……ふっざけないでよ! 今更やめろ!? 誰が止めてやるもんですか! 私は! ルナマリア・ホークを倒してスーパー
コーディネイターになるのよ! そのためには……」
メイリンはピスティスを見つめた。
「私は一人でもやるわよ。あなたは邪魔をする?」
「……いいえ。この特務部隊は、そもそも我がユーラシアが大西洋連邦に対抗せんとして作られた物。祖国が大西洋連邦の
膝下に入るなど我慢できない者ばかりです。あなたがその気なら、我々一同付いて行きますよ」
「……そう。じゃあ、すぐにアルテミスからの出航準備を! 邪魔をする者は今までの味方であっても撃つ!」

「な、なにが起こった!?」
突然の揺れにガルシアは副官に怒鳴った。
「オルテュギアが! 強引に出航を試みているようです!」
「なんだと!?」
その時、オルテュギアから通信が入った。
『あらあら、慌てちゃって』
「――メイリン! 貴様! 何をやっている! すぐさま艦を止め降りて来い!」
『ふふふ。私がそんな命令に従うと思って? 拘束命令まで出したそうじゃない。それで私はモルモットに戻れと?
 ――ふざけんじゃないわよ! 私はルナマリア・ホークを撃ち私が成功体だと証明するわ! 元々はあんたらが出した
命令かも知れない。でもね? もう私自身の目的になっているのよ。後悔するならそんな命令を出した自分を恨む事ね。
……で、シャッター開けて欲しいんだけど? なんならオルテュギアの艦砲でぶち破ってもいいのよ?』
「……わ、わかった、シャッターを開ける! これ以上基地を壊すな!」
『ふふふ。ありがと』
ぷちんと通信は切れた。
「……くそう、あのあま、いい気になりやがって! バルサムを呼べ! 追撃をかけるんだ!」
「はっ」

251523:2008/02/15(金) 17:33:12 ID:???
「うーん、どうしようかなぁ」
先ほどからロウは部屋の中を熊みたいにうろうろ回っている。見かねてリーアムが声をかける。
「どうしたんです? ロウ?」
「プレアの事だけどよー。……うしっ、決めた! 一緒にオーブに行くぞ!」
「なんです、急に」
「いやぁ、ほっとけないって言うか、心配だろ。ルナもかなり心配してる。ルナはここを離れられないから俺達が代わりに着いて行ってやるのさ!」
「あー、どうなんでしょう、ギナ様」
「まぁ、とりあえずやってもらう事も無いしな。いいだろう。本土に行って来い」
「やったー! さすがギナ様話が分かる!」
「やったー! ロウも来るのね!」
風花も嬉しそうだ。
「じゃあ、リ・ホームの準備しなきゃね〜♪ あ、エリカにお土産買って行こうかしら? プトレマイオス饅頭とか」
「プロフェッサー、何ですかそれは?」
「売店に売ってたのよ」
「また妙な物を……」
再び地球に向かう――ロウ達を妙な活気が包んだ。


「メイリン、アルテミスからモビルスーツの出撃を確認。ハイペリオン2号機と思われます」
「やっぱりね。黙って出してくれるとは思わなかったわ。出るわ。用意して!」
「はい!」
出撃したメイリンは追っ手と対峙する。
「おい、メイリン、さっさと投降しろよ」
「バルサムね。まさか今更そんな事をすると思う?」
「ふん、じゃあ失敗作のお前を倒して本当の撃墜マークを付けてやるだけだ! 行くぜ! 模擬戦で! 七機撃墜!
 エースの、『アルテミスの荒鷲』の攻撃を受けてみろ!」
パルサムはアルミューレ・リュミエールを展開するとビームサブマシンガンをメイリンのハイペリオンに向ける。
「馬鹿ね! いきなりアルミューレ・リュミエールを張る所が、所詮は模擬戦だけのお坊ちゃんよ! 同スペックの機体で
そんな戦い方で倒せると思って!? 時間切れを狙っても良いけど、時間がもったいないから真っ向から倒してあげる!
 人生の最後に先達の技を見せてあげるわ! アルミューレ・リュミエールにはこう言う使い方もあるのよ!」
メイリンもアルミューレ・リュミエールを展開し、パルサム機に突進する!
メイリンは徐々にアルミューレ・リュミエールの展開角度を変えて行く。
「見なさい! これがアルミューレ・ランスよ!」
槍状になったアルミューレ・リュミエールがバルサム機のアルミューレ・リュミエールを貫く!
「――うわあぁぁ!」
――それがバルサムの最後の声だった。
「ふふふ。ハイペリオン2号機、せっかくだから予備部品に使ってあげるわ。くくく」
静かになった空間でメイリンは一人笑った。


252523:2008/02/15(金) 17:33:30 ID:???
……アッシュ・グレイは目覚めるとコップに水を一杯飲んだ。
「くそう!」
寝る時には消えていた焦燥感がまた蘇っている。
「昨日あんなにぶち殺したって言うのに!」
アッシュ・グレイの事を人は血に飢えた獣と呼ぶ事もある。だが……彼とて最初からこうではなかった。
――彼は、幼い頃特殊な病気に罹っていた。同じ病気の仲の良い少女が居た。だが……彼女はある日突然いなくなった。
死んだと聞かされた。アッシュ・グレイ自身は運良く完治し、退院した。
しかし……ある時、患者仲間から聞き逃せない情報が入った。それは……あの仲の良かった少女が、ある大物政治家の
息子の臓器移植のために殺されたというのだ。
最初は疑った。だが……調べていくほどに真実だと思わざるを得なかった。
その政治家の息子はザフトに入ったと言う。アッシュ・グレイは迷わず、ザフトに志願し、彼と同じ部隊になるように工作し……
そして首尾よく彼を謀殺した。復讐を果たしたのだ。
しかし、アッシュ・グレイの心は満たされなかった。
敵を殺した時だけ、少し心が晴れるような気がした。だが、眠りに就いて翌朝起きると心の渇きは更に大きくなっていた。
彼は更に殺戮を求めた。
「まあいい……今日も殺しまくるか! ははは!」
哄笑が部屋の中に響く。その声はどこか悲しい響きを帯びていた。


「どうした、ハーネンフース」
「あ、サトー隊長」
休憩室で休んでいたシホ・ハーネンフースは立ち上がるとアナベル・サトーに向かって敬礼する。
シホはナスカ級高速戦闘艦ハーシェルのモビルスーツ隊の隊長。サトーは同じ艦のもう一つのモビルスーツ隊の隊長だ。
「ははは。あまり堅苦しくなるな」
サトーは自動販売機からパック飲料を取ると、シホと向かい合って座る。
「……すまんな。俺だけゲイツを受領してしまって」
「いえ……軍人は与えられた装備で全力を尽くすのみです」
この時期、ザフトの新型機ゲイツの配備はかなり進み、隊長機はほぼゲイツに替わっていた。だが……シホの乗機は
ビーム兵器試験機のシグーディープアームズのままだった。
露骨な懲罰措置と言えた。現在のハーネンフース隊。前の名前はジュール隊。隊長をイザーク・ジュールと言う。
「まぁ。イザークもなぁ……。まぁ、あまり気にするな。幸い俺達がしたような、奪われた新型機が戦場に投入もされていない
ようだからな。アスランもだが、親に一緒に逃げろと言われちゃ、断れんだろう。俺だって死んだ妻と娘が生きていて、戦争なんか
やめてどこかで静かに暮らそうと言われたら、ザフトなんか辞めちまうかも知れんよ?」
サトーはちょっとおどけた仕草をした。
シホは小さく笑った。
「まぁ、色々言う奴もいるだろうが、その時は俺の所に言って来い!」
「はい。ありがとうございます」
そのシホの姿に、サトーは娘の大きくなった姿を重ねた。なんとなく、似ているのだ。
出来る限り守ってやる。
サトーは心に誓った。


253523:2008/02/15(金) 17:33:38 ID:???
プレアはこれからリ・ホームに乗り込む。
護衛には、サーペントテイルの他にオーブの新型護衛艦ハツユキ級護衛艦が4隻付くそうだ。オーブも本気らしくて心強い。
「じゃあ、プレア……」
言葉はいらない。でも、言葉にしたい。
「ルナ、ねえさん……」
「オーブに行ったらちゃんと、ギナ様の紹介状使うのよ? 生活の面倒も、もし具合が悪くなった時もそれで大丈夫だから」
「ああ、遠慮なく使ってくれ。まぁ、ウズミが気を利かせて色々世話してくれるとは思うが」
「ギナ様にも、お世話になって……」
「なに、かまわんよ」
ギナ様が手を振る。
「ウズミ様にニュートロンジャマーキャンセラー渡したら、後はオーブでゆっくり体を休めるのよ?」
「わかっていますよ」
「絶対に……」
「ええ、また、会いましょう」
プレアが、そう言って名残惜しそうにリ・ホームに乗り込む。
私はストライクルージュに乗り込む。発進させる。
基地上空で、護衛艦と合流するまでの間だけでも……そばにいたい。

……プレアは無事護衛艦と合流を果たすと、アメノミハシラに向けて旅立っていった。
プレアと、また会えるだろうか? 私は嫌な予感を打ち消す。
絶対に、会うんだ!
……ピー……
通信?
『――ホーク中尉! 基地が襲撃された! 早く帰還を!』
なんですって!?


「一体どこなの!? ニュートロンジャマーキャンセラーは!? ――くそっまた雑魚が!」
メイリンは現れたストライクダガーを2射で片付ける。
彼女は困惑していた。プトレマイオス基地にザフトのニュートロンジャマーキャンセラー搭載機が亡命した事は確か。
てっきりその技術を使って核兵器を使用可能にしていると思ったのに……戦前からある核兵器保管庫――てっきりそこに
ニュートロンジャマーキャンセラーがあると踏んでいたのに、まるきり見当たらないのだ。
「――! 動くな! 動けば撃つ!」
逃げ惑う警備兵にビームサブマシンガンを突きつける。
「さあ、吐け! ニュートロンジャマーキャンセラーはどこ!?」
警備兵は怯えながら言った。
「し、知らない! そんな物見た事も無い! あ、あんたも見たろう! ここにそんな物は無い! 納得がいかなけりゃ
行くまで探せばいいさ!」
――! またストライクダガーが現れた。だが、核兵器に当たる事を恐れてか撃って来ない。
「くっ、時間が! これまでか!」
メイリンは一気に兵器庫から飛び出すと、壁の向こうに隠れたストライクダガーにビームナイフを突き刺して片付ける。
「脱出する!」
254523:2008/02/15(金) 17:35:49 ID:???
続く

アッシュは悲しい殺人者に。

シホ、サトー登場。
サトーのフルネーム捏造しました。まぁ、やってる事似てますし(笑)
255通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 20:00:17 ID:???


まあ、サトーはアナベルで良いよな。似たものだしw
256通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 20:03:51 ID:???
乙。バルサム、台詞は似てもコラ沢になれなかったか。
そして劾は劾でアズラエルにあんまり良い気持ちは持てんだろうなー。
257通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 20:07:12 ID:???
乙。
アナベルは女性の名前だが、ま、サトーは日系人みたいだからいいか。
258通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 20:28:06 ID:doWTABzt

コラ沢ならあの状況下でも生存しているような気が・・・
まさかね
259通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 22:28:28 ID:???
月面でしかもNJ下なら、核兵器に当たっても大して恐れる必要はないぜ!
なんて細かい揚げ足を取りましたが。いよいよメイリンと決戦ですかね
260通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 22:30:51 ID:???
放射性物質が飛び散ったら面倒かと
261通常の名無しさんの3倍:2008/02/16(土) 07:32:38 ID:???
アナベル・サトー吹いたw
262523:2008/02/17(日) 13:08:07 ID:???
モーガン・シュバリエってカナードと戦った時はまだ大西洋連邦に訓練交換士官と言う身分だったんでしょうか?
それとももうユーラシアに戻ってましたか?
263通常の名無しさんの3倍:2008/02/19(火) 16:13:42 ID:???
あいつって、ユーラシアから
エルアライメンの戦い以降に大西洋へ移籍したんじゃなかったか?
同じ連合軍だからって感じで

詳しい年号はwikiのコズミック・イラの項最下段リンクの年表に載ってるかも
たぶんCE70年4月1日以降グリマルディ以前くらい?
264523:2008/02/19(火) 19:54:11 ID:???
wikiより
C.E.70年5月30日、アフリカ戦線のエル・アラメインにおいてマーチン・ダコスタの所属するザフト軍重モビルスーツ、
ザウートの部隊を追い詰めるが、「砂漠の虎」アンドリュー・バルトフェルド率いるバクゥ部隊に大敗。戦いの主役が
モビルスーツに移ることを予感し、ユーラシア軍に進言するも却下される。再三の進言により、最終的にモビルスーツの
研究を開始していた大西洋連邦に訓練交換士官として配属されることとなった(これは殆ど厄介払いに近かった)。

だそうで。ユーラシアに戻ったという記述はないし、ガンバレルストライカー受け取ってるし、少なくとも終戦までは
大西洋でいい感じですね。
ありがとうございました。
265523:2008/02/22(金) 17:31:17 ID:???
私は急いでエールストライカーを吹かして基地に戻る。
基地上空で、前に私を襲ったアンノウンに似たモビルスーツを、ビームガンバレルストライカーを付けた105ダガーと
ストライクダガーが包囲していた。
フラガさん!? ……ううん、違う。
通信が入る。
『その色はホーク中尉か! 手出しは無用だ! ユーラシアの裏切り者はユーラシアの俺の手で片付ける!』
ユーラシア!? ここの基地でフラガさん以外にガンバレル使う人って……モーガン・シュバリエ大尉!
私は戦いの行方を見守る。
シュバリエ大尉は巧みにガンバレルを操りアンノウンを翻弄する。
あ! アンノウンがアリュミューレ・ リュミエールを全周展開する!
『くっ、これがアルテミスの傘を応用したと言う……少々厄介だな。お前らは撤退しろ!』
シュバリエ大尉の部下の人達が撤退して行く。
『なぁに、どんな物にも弱点はある! ……見えた! そこか!』
しばらく戸惑っていたシュバリエ大尉だけど、さすが歴戦の勇士、アリュミューレ・ リュミエールの発生装置に
ガンバレルで集中攻撃を加えようと……
避けられる!
あ……シュバリエ大尉がやられる光景が、脳裏に……
「シュバリエ大尉!」
――ストライカーを切り離して! 早く!――
『何!?』
……言葉より先に、心が走った。
シュバリエ大尉がストライカーを切り離す――
一瞬、遅れて、アンノウンからの大型ビームがストライカーを吹き飛ばす。
「シュバリエ大尉! 下がってください!」
『すまん! ホーク中尉、後を頼む!』
シュバリエ大尉は基地に撤退して行った。

266523:2008/02/22(金) 17:31:39 ID:???
アンノウンはアリュミューレ・ リュミエールの展開を止めるとこちらに向き直る。
『ルナマリア・ホーーーークーーーー!』
この声は――メイリン!
『さーあ、今度はあんたにアリュミューレ・ リュミエールは無いわよ? ひとりぼっちでどうする? 逃げ回れ! 怯えろ! 泣いて縋れ!』
「だ、れが! あんたなんかに!」
エールストライカーを吹かす。
「アリュミューレ・ リュミエールを全方位展開されなければ、あんたもシールドを構えた唯のモビルスーツに変わりは無い!」
私はエールストライカーが与えてくれる大推力でアンノウンを翻弄する。
「さあ、さっきの台詞は口だけだったの!? ――メイリン!」
『……な、なぜ貴様、私の名前を知っている!? くっ手配がここまで回っているのか? でも私はぁ! あんたに勝つ!!』
メイリンはアリュミューレ・ リュミエールを全方位展開した。
『これであんたは手も足も出ない! 行けー! フォルファントリー!』
――! 大出力のビーム砲が狙って来た。勝負を決めに来たわね!
あ……またあの感覚……動きが……わかる!
私はガーベラストレートを抜き放つ。
シュバリエ大尉のガンバレルははうまくかわされたけど、線で攻撃する剣なら!
アンノウンの射撃をかわしながらガーベラストレートでアリュミューレ・ リュミエールに切り込む!
『なにぃ!』
アリュミューレ・ リュミエールを切り裂くガーベラストレート――メイリンの驚いた声が聞こえる。
アンノウンの左肩から展開されたアリュミューレ・ リュミエールの発生装置のスティックを断ち切る!
一気に左側半分ほどのアリュミューレ・ リュミエールが消え去る。
「――見えた!」
スラスターを急加速、アンノウンの背後に回り込み、そのまま、残った中央と右側の展開装置を切り飛ばす!
慌ててこちらに向き直るアンノウン。だけど――!
「これで、終わりよ!」
アリュミューレ・ リュミエールが消え去りがら空きになったアンノウンの頭上から、ガーベラストレートで切り込む!
アンノウンの左腕を切り飛ばす!
「あんたは命は取らない! このまま基地に連行する! おとなしくしろ!」
メイリン……例え世界は違っても私の妹。話したい……
『くっそおおお! 私はここまでかああぁぁぁぁぁぅぇっ!』
あ……なに……メイリンの悲しみが……胸に……
涙が、溢れて来た。
――!
「あう!」
なに? この衝撃? あ、メビウス!
『パルス特務兵! 無事ですか!』
一群のメビウス隊が私に向かって攻撃してくる!
くっ! メイリンとの間に割ってくる! 引き裂かれてしまう。
『……ああ、無事だ。撤退する! ――覚えてろ! 次は倒す!』
「メイリン待って! ああ!」
隙を見せず攻撃するメビウスによってメイリンとの距離が広がっていく。
メビウスに護衛され離れていくメイリン。
――私達、このまま敵同士なの? あなたの悲しみ、癒してあげたいのに、お姉ちゃん何もできないの?


267523:2008/02/22(金) 17:31:59 ID:???
プレアとロウ達は無事にオーブ本土に着いた。
「調子はどうだ? プレア」
「はい。大丈夫です。……うーん?」
「どうしたんです? プレア?」
「どうしたものかと思って。マキキオ様の紹介状と、ギナ様の紹介状があるけど、マルキオ様の紹介状どうしましょう……」
「ああ、微妙だもんなぁ」
「……決めました。両方出します。僕はマルキオ様を信じているから」
「そうか、頑張れ!」

ウズミ・ナラ・アスハに面会を申し込んで程なく、面会許可が下りた知らせがやって来た。
「では、お連れ様はここでお待ちください」
「じゃあ、行ってきます!」
「しっかりやれよ!」
プレアはウズミの待つ応接間に入って行った。
「……これで、ミッションコンプリートだな」
劾はつぶやく。
「ああ、お疲れさん。何事もなくてよかったよな」
「ああ……」
「これからどうすんだ? お前さん達」
「傭兵は次の仕事を探すだけだ」
「アタシ、プレアが心配だなぁ……」
風花が心配そうにつぶやく。
「お? 風花、初恋か!?」
「ば……ばっかじゃないの!? そんなんじゃないわよ!」
「ははは、怒るなよ」
「……そうだな。オーブはいい土地だ。しばらく骨休みでもするか?」
「ほんと? 劾?」
「よかったわねー」
ロレッタが風花の頭をなでる。風花は嬉しそうに笑った。

268523:2008/02/22(金) 17:32:16 ID:???
「……以上です。この運んで来たニュートロンジャマーキャンセラー、どうか有効にお使いください」
「あいわかった」
ウズミはプレアに向かって微笑んだ。
「大変であったな。マルキオ殿の事は私も残念だ。マルキオ殿から、君の事をよろしく頼むと書かれている。住居などはさっそく
手配させよう。生活の事も心配はいらん。どうか、遠慮なく骨を休めて欲しい」
「ありがとうございます。もう一つ、頼みたい事があるのですが……」
「なんだね? 言ってみなさい」
「はい、ありがとうございます。それは……」

プレアはオノゴロ島の地下工廠に案内された。
「エリカ・シモンズ主任設計技師だ。君の役に立つだろう」
ウズミはプレアにシモンズを紹介した。
「プロフェッサーから聞いています。大変だったわね。それで、私に手伝ってもらいたいと言うのはどんな事かしら」
「はい。ザフトは核動力機を完成させました。その内戦場にも現れるでしょう。核動力機のパワーは段違いです。通常の
モビルスーツでは対抗できないでしょう。その時のために持ってきたモビルスーツ――ドレッドノートを完成させ、
贈りたい人がいるんです」
「大切な人なのね」

「ええ……僕の……姉です!」


269523:2008/02/22(金) 17:32:33 ID:???
「すまんかったなぁ、ホーク中尉。とんだ、みっともないところを見せてしまった」
基地に戻ると、シュバリエ大尉が話し掛けて来た。
「いえ。相手は強かったですから。装備も実力も、本当に」
「ハイペリオンと言うんだ、あのモビルスーツは。ユーラシアで開発していた」
そうか、あのアンノウン、ハイペリオンって言うんだ。
「しかし、ガンバレルを使える事がわかってから浮かれてしまっていたようだ。ガンバレルさえあればと……。気を引き締めんとな。
そう言えばフラガ中佐から聞いたが、君も素質があるらしいな」
「あは。どうも、そうらしいです」
「じゃあ、どうするかな? 明日は空いてるかな?」
「ディープストライカーのテストですけど、まぁ融通は利きます」
「よし、では明日は我が部隊で護衛をするから、ガンバレルのテストをしてみないか?」
「いいんですか!?」
「もちろん!」

翌日。私はガンバレルストライカーを付けて試験宙域にいる。
「ようし、じゃあ教えたとおりにやってみろ!」
「はい!」
意識を……広げる。宙域の全ての物を把握するように……感じる!
標的を感じる。あれを……意識すると、ガンバレルが標的の周囲から包み込むように、動く。
発射……標的が消滅するのがわかる。
「いいぞ! ホーク中尉! その調子だ!」
「はい!」
その日のテストは、上々の結果を示した。

とは言えガンバルストライカーがすぐに支給されるはずもなく。
私の担当もディーブストライカーに変わりは無く、遂にボアズ攻略の日を迎えた。


アッシュ・グレイは一通の命令書を手にしていた。
「はっ!? リジェネレイトでヤキン・ドゥーエ要塞防衛に参加せよ!? 俺みたいなテストパイロットと試験機を実戦に
投入するなんざ、ザフトも焼きが回ったもんだ。ザフトのお偉方は何やってやがんだ、馬鹿野郎共が!」
アッシュ・グレイはザフトの上層部を罵倒した。
「まぁ、いいか。通商破壊でこそこそちまちま敵をぶっ殺すより、大会戦で一気にぱーっと殺せば、すっかり気分も
晴れるかもなぁ! 殺して殺して殺しまくってやんよ!」


270523:2008/02/22(金) 17:32:40 ID:???
「いよいよだね」
「ええ。じゃあ、そろそろ私は一足先に行くわ」
「やっかいな新型兵器だよなぁ。まぁ頑張れ」
「ふぅ」
そろそろ配置点だ。私はアークエンジェルの外に出て、デッキに係留されているストライクルージュに近づく。
なぜ外に係留されているかと言うと、ディープストライカー付きだからだ。ほんとに厄介!
「お、嬢ちゃん。いよいよ出撃かい」
「ええ。マードックさん。ありがとう。整備大変だったでしょう」
「なーに、いいって事よ。どんなに技術が進んでもこれだけは変わらねえ。機械を作るやつ、整備するやつ、使うやつ、
人間の側が間違いを起こさなけりゃ機械も決して悪さしねえもんだ。嬢ちゃんもしっかりな」
「ええ!」
私はストイライクルージュに乗り込む。
アスラン達がプトレマイオス基地から去ってしばらくして、地球軍はいよいよボアズ攻略に取り掛かった。
この作戦で私に与えられた任務は、陽動、遊撃。要するにディープストライカーの実戦試験を兼ねて好きにやれと言う事だ。
いよいよ攻撃が始まる。
私も、行く!
ブースターに点火される。一気にかかるGは何度経験しても慣れない。
「うきゃーーーー!」
悲鳴上げてばかりはいられない。
「そろそろ、攻撃、しなきゃ!」
手近な戦艦に狙いを定める! 『ALICE』の補助のおかげで狙いを付けるのは楽だ。
一隻、撃沈!
爆発の余波を避けるために急角度で進路を変える。
混乱するザフト艦隊を尻目に、次の戦艦に狙いを定める! また撃沈!
『ピー!』
5隻撃沈した所でアラートが鳴る。
「エネルギー無くなるの早っ! もう、撃てないわね。ビームサーベルに切り替え!」
大型ビームサーベルが展開される。
「そろそろ、撤退しなきゃ、やばい!」
271523:2008/02/22(金) 17:33:36 ID:???
続く

モーガン・シュバリエ登場。
ようやくボアズ攻略戦開始です。
272通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 18:10:36 ID:???
GJ!
しかし何だ、最近人いねーなこのスレ……
273通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 21:26:02 ID:???
GJ!
実はまとめwikiで読みますた……
そういう人多いんじゃないかな
274通常の名無しさんの3倍:2008/02/24(日) 00:51:12 ID:???
いすぎても困るんじゃね?
523氏、395氏どちらもおもしろいです
続き楽しみにしてます!
275通常の名無しさんの3倍:2008/02/28(木) 13:18:47 ID:???
保守
276523:2008/02/29(金) 17:46:11 ID:???
「おー! 見事なもんだ。姉ちゃんやるなぁ」
ダナは呟いた。
ルナマリアの出撃はドミニオンでも確認されていた。ルナマリアの突入した地点からザフト艦隊の動揺が波のように
広がっていくのがわかる。
ハルバートン提督から指示が届く。
――その地点に向けて、一斉射撃の後、集中攻撃、突破せよ――
「行くぞ、お前ら!」
「わーってるって」
「うぜー」
っとにこいつらブーステッドマンは。ダナは苦笑する。
「了解」
「はい!」
反対にソキウス、そしてジョン、エイブズからは素直な返事が返ってくる。
ダナは出撃の命令を待った。

地球軍艦艇は、ハルバートンの指示通り、ルナマリアの突入した地点に向けて己の持つ最大の攻撃を放った。
主力となるネルソン級宇宙戦艦から大型ビーム砲、対宙魚雷が発射される。アガメムノン級からは225cm2連装高エネルギー
収束火線砲ゴットフリートMk.71、そして大型ミサイルが。最も小さなドレイク級宇宙護衛艦も対宙魚雷を放つ。
アークエンジェル級の2艦はもちろんローエングリン、ゴットフリート、バリアント、艦対艦ミサイルスレッジハマーを乱れ撃ちに撃つ。
すさまじいばかりのエネルギーの激流が狭い空間を支配する。
ザフトのナスカ級が、ローラシア級が、次々に飲み込まれ爆発し、自らもエネルギーの乱流に加わる。
地球軍は、ルナマリアの突入した穴を大きな破孔に拡大する事に成功した。

「よーし! カル・バヤン隊左翼を任す! キャリー隊は右翼だ!」
「「了解!」」
フラガはアークエンジェルのモビルスーツ隊を2小隊に編成していた。
第1小隊はフラガ、スウェン、ミューディー、シャムス。
第2小隊はルナ、キャリー、トール、サイ。
現在はルナがいないのでスウェンとキャリーにそれぞれの隊の指揮を任せてい、自らは総指揮を取っている。
アークエンジェル隊の横を、他の艦のモビルスーツ隊、モビルアーマー隊が追い抜いていく。
「ようし、俺達もGOだ!」
「「了解!」」
今、まさに地球軍の攻撃はボアズへと奔流の様な様相を見せていた。


277523:2008/02/29(金) 17:46:32 ID:???
アーネスト・キング――CE31年に大西洋連邦航空宇宙軍兵学校へ入校。卒業後、建設なったばかりの月面プトレマイオス基地に配属、
その後様々な勤務を経験し、大佐時代に48歳でパイロットの資格を取り、航空畑に入って宇宙母艦レキシントン艦長となる。
さらに航空宇宙軍大学校で学び、CE63年、この年起こったプラント技術者のサボタージュに対しモビルアーマー部隊を率い鎮圧、少将に昇進。
CE68年、大西洋連邦宇宙軍第三艦隊司令官、中将。CE70年2月、地球軍発足に伴い宇宙軍第七艦隊司令長官、大将。
上司からも部下からも嫌われやすい性格の持ち主だが、宇宙軍士官としての有能さは、彼を嫌う人々でさえ認めざるを得ないものである。
この日、彼はドミニオンが第七艦隊にいない事にほっとしていた。本来ならば、ボアズ攻略総指揮官である彼の直率艦隊である第七艦隊に
いる事が正しいのだろう。だが、彼はアズラエルが大嫌いである。もっとも彼が軍内に好意を持つ者が居るかと言うといないであろう。
彼が好意を持つ人間がいたとしたら、それは間違いなく女性だ。彼は女性、ギャンブル、酒に目がない上にだらしがなく歯止めが効かず、
パーティーでは淑女たちに露骨に嫌がられ同席を拒否されることしばしばで有名である。
そんな訳で、自分に命令される事が嫌いなキングは、横紙破りをされる恐れのあるアズラエルをハルバートンの第八艦隊に押し付ける事に
成功して上機嫌だった。ボアズ攻略も順調に進んでいる。だが、ザフトの抵抗もさすがに激しく、先鋒である第六、第八艦隊の損害も
無視できない物である。彼は、予備兵力である自分の第七艦隊を叩き付ける時期を慎重に検討していた。


278523:2008/02/29(金) 17:46:49 ID:???
マティスは無力感を感じていた。
今さっき地球軍上層部に最新の情報――ジェネシスの最終目標、地球――およびシーゲル・クラインの分析結果――人類絶滅を希求――を送った所だ。
しかし、この段階でそれらの情報がどれだけ役に立つだろう?
「それもこれも、シーゲル・クラインのせいだ!」
壁に貼られたシーゲル・クラインの写真にダーツを投げつける。
そう、この戦争は『一族』により計算され始められた戦争だったはず……それが、どこで狂ってしまったのだろう。
すべてはシーゲル・クラインだ。マティスはそう思った。
ニュートロンジャマー開発の裏には、彼の数々の技術的助言があったと言う。
そして、血のバレンタインの報復――プラント評議会では当初、当時の国防委員長ザラを初めとして限定的な地球への核攻撃案が支配的だったと言う。
それが……彼のごり押しにより万単位と言う馬鹿げた数のニュートロンジャマーの投下に変わった。
さらに、レーダーの効かないニュートロンジャマー下で猛威を振るっているモビルスーツの開発にも、彼は深く関わっているらしかった。
そう。今プラントがここまでの力を持ったのはまさしくシーゲル・クラインによる物と言っても過言ではない。
であるのに。まるで、行動が読めない。まるでプラントが滅びてもいいと言わんばかりの行動……
いや……認めたくなかっただけだ。彼は、人類の絶滅を希求している。集めた全ての情報がそう考えると、辻褄が合う。
一体なぜか……それは『一族』が総力をあげても掴めなかった。
ふと、マティスの胸に疑問が生じた。何故、シーゲル・クラインはここまでの幅広い能力があるのか? 元々専門は宇宙生命学や天文学だったはずだ。
それがニュートロンジャマーやモビルスーツなどまるで畑違いだ。如何にコーディネイターと言っても、頭脳的には記憶力、理解力が優れていると言うに過ぎない。
技術を進歩させるにはひらめきが大切だ。
それはナチュラルにもコーディネイターにも平等だ。母数が大きければ開発に向いた人材も多い。現に地球連合は緒戦ザフトのモビルスーツに圧倒されても、
ビーム兵器、独自のモビルスーツ開発、PS装甲、ミラージュコロイド、陽電子砲、ラミネート装甲と次々に新技術を開発し戦局をここまで挽回してきたのだ。
大昔の発明家が、『発明は1%のひらめきと99%の努力』と言ったが、その言葉は逆説的にいくら努力してもひらめきがなければだめ、と言う事を示している。
それが……ある時期から、シーゲル・クラインはまるで解答が予めわかっているかのように、次々とプラントの驚異的な技術発展を導いた。
その事をもっと疑問に思うべきだったかもしれない。
「でも、もう遅い。私にもう出来る事はない……」
情報では、ジェネシスの目標には確実に地球が含まれている。だが、ジェネシスを破壊しようにも……ジェネシスの装甲は起動時にはPS装甲を展開する。
通常PS装甲はビームなど高エネルギー兵器にはほぼ無力だが、ジェネシスはその超広大な装甲面積によりエネルギー許容量がモブルスーツのそれより
遥かに高いため、核では破壊不能、事に依ると陽電子砲ですら破壊は不可能かもしれない。
「彼らに、頼るしかないか……祈るしか……」
マティスの視線の先にはジェネシスを破壊できるかも知れないと、状況を打破出来るかも知れないと『一族』が結論した者達のリストがあった。
皮肉な事にその全員が、マティスが「イレギュラー」と呼ぶ、本来『一族』の不利益となると見做された人物達のリストに含まれていた。
「強すぎる力は不確定要素。人類を正しく導くには排除しなければならない。でも……今はその力を信じたい……」

279523:2008/02/29(金) 17:47:04 ID:???
「アズラエル様」
「なんだい?」
キングに厄介払いされた形のアズラエルはこちらもまた、清々とした気分だった。彼の方でもキングは嫌いだったのだ。
抜け目なく子飼いとも言えるサザーランド率いる部隊を第七艦隊へ送り込んでいたが。
「特殊情報部のマティス様から緊急通信です」
「わかった」
アズラエルは自分の前にあるコンソールを操作し、送られて来たデータを解凍、復元する。
「……ふぅん」
アズラエルは一瞥すると詰まらなそうな顔をした。
マティスからは、ザフトの切り札、最後のより所と思われるガンマ線レーザー砲『ジェネシス』の予想される目標――月面プトレマイオス基地。
最終目標――地球――が示されていた。
そして。シーゲル・クラインについての分析。理由はわからないが、人類の絶滅を望んでいる恐れ、大。
「いまさらですね。遅過ぎます。今からどうしろと? ザフトに時間を与えるだけだ。地球を狙われているならば、なおさら速やかにボアズ、
ヤキンドゥーエを攻略し、ジェネシスを破壊しなければ……。まぁ、プトレマイオス基地は最小限の人員を残して周辺宙域に退避しているように命令を。
それ以外変更は無しです」
そう。既に賽は投げられているのだ。

「マティス様、通信が入っております。話したいと……」
「何? 邪魔しないでと言っておいたはずよ?」
「そ、それが……すみません、直接話していただいた方が早いかと。お繋ぎします!」
――スクリーンには、凛々しい、と言ってよいだろう若い男性が現れた。
『久しぶりだね。マティス』
「……あなた! マティルダ!」
『僕をその名前で呼ぶな! ――今の僕は、サー・マティアスさ!』
それは……
『一族』には奇妙な掟があった。「党首は女性に限る」と言う物であった。
スクリーンに現れたのは、男装に凝り過ぎ、党首として相応しくないとして『一族』から放逐された、マティスの姉、マティルダであった。
「なんで、あなたが……今は何をしているの? ずっと心配していたのよ?」
『ああ、やっぱり子供の頃から教え込まれた事を生かすのが一番手っ取り早かったんでね、裏社会の情報屋みたいな事をやっているよ。
放逐されたと言っても『一族』の者達とは今も接触がある。……マティスの事は僕もいつも気にしていたよ。今回は愛しい妹が困っているのを
見ていられなくてね。出て来たというわけさ。ふふ……教えてやろうか? 僕が掴んだジェネシスの弱点!』

280523:2008/02/29(金) 17:47:25 ID:???
私は撤退路を検討する。
まっすぐ味方の艦隊に向かっても、へたすれば味方の攻撃に曝される。遠回りでも、ザフト艦隊の周辺部へ向かって進路を取る!
もう撃沈なんか狙わず、すれ違いざまに戦果も確認せずに斬り付けるだけ斬り付ける!
『ピピー!』
またアラートが鳴る。
う、ますますエネルギーが減ってる!
ビームサーベルの展開を長さ短めにする。艦船攻撃はもう終わりね。
ああ、もう! 主砲が完全にお荷物だわ! 主砲だけ切り離せたらいいのに!
……げ! 周辺部で、まだ地球軍の攻撃に余り曝されておず余裕があるのだろう。ザフトはモビルスーツ隊を繰り出して攻撃して来た。
ディープストライカーの前面はモビルスーツが7分、宇宙が3分だ!
遠くでマズルフラッシュの光がいくつも瞬く。弾道がディープストライカーを掠める!
「光を!」
『光が欲しい? 欲しいのなら、あげましょう!』
『ALICE』の声と共に、モノフェーズ光波防御シールド『アルミューレ・リュミエール』がストライクルージュの前面に展開される!
……!? これは? こんな機能聞いてない!
『アルミューレ・リュミエール』はまるで甲冑を着けた女性のような形をして、ストライクルージュ全体を包み込む。
まぁ、防御範囲が広がってるならそれでいいか。考えてる暇は、無い!
ウェポンベイ開放! 三角柱のコンテナが前方に射出され、更にそれからマイクロミサイルが射出される!
マイクロミサイルの乱射に遭い、混乱するザフトのモビルスーツ隊を突破!
……しばらくの後。すべての武装を撃ち尽くし、バリヤーを張るエネルギーも無い状態で、私はアークエンジェルに帰還した。

281523:2008/02/29(金) 17:47:33 ID:???
「うー……」
ディープストライカーを切り離し、私はアークエンジェルの格納庫に着艦した。
「おーい! お嬢ちゃん、大丈夫かー?」
「なんとかねー」
しばらくコクピットの中で休んでから、降りると艦内通話機でブリッジに繋いだ。
「ホーク中尉、ただいま帰還しました」
あ、マリューさんが出た。
「ご苦労様。味方は、無事ボアズに取り付く事に成功したわ。あなたはゆっくり休んで頂戴」
「はい」
部屋へ向かおうとすると、わくわくと言った感じでアクタイオン社の人達が駆けて来た。
「どうでした!? どうでした!? 地球軍はあなたが作った混乱に乗じて、ザフトの陣を突破したんですよ!」
「あは。そうなんだ……」
急に腹が立って来た。
「僥倖ですよ! そんなの! ……主砲は数発しか撃てないわ、ビームソードもすぐエネルギー切れになるわ、
バリヤーは5分しか持たないわ、欠点だらけよ! 私が帰って来れたのだってラッキーだったからよ! 危険すぎるわ!
 もっと稼働時間が長くならなければ、もうディープストライカーには乗りませんからね!」
「ええー?」
急にアクタイオン社の人達はしょんぼりとなった。
「……でも、でも! その欠点を直せば、また乗ってくれますね? ね?」
立ち直るの早っ。
「ま、まぁ、欠点がなくなればね……。そう言えば『アルミューレ・リュミエール』が女性の形を取ったけど、あれは何?」
「――! とうとう、目覚めたのか? アザゼルが!?」
「ほかに、ほかにどんな事が起こりました? アザゼル――いや、『ALICE』から何かルナマリアさんに働きかけはありませんでしたか? 
話し掛けて来たりとか?」
わぁ、っと、私の周りに人が群がる。
「いや、他には別に……。じゃあ、私、休みたいから」
強引にこの場を立ち去る。
アクタイオンの人達は、隕石だの珪素生命体がどうとか話してる。「よーし、仕切りなおしだー!」とか叫んでる人も居る。タフだ。

「そうか……ボアズに取り付いたか。これで一安心だな」
ハルバートンは戦況を聞いてため息をつく。そこに副官のホフマン大佐が駆けて来た。
「閣下! 総指揮官のキング大将から通信です」
「わかった。繋げ」
「はっ」
画面にキング大将の顔が映される。
「ハルバートン少将、君の第八艦隊を下がらせろ。第六艦隊も下がらせる。ボアズ攻略の仕上げは私の第七艦隊で行う」
「……はっ。了解しました」
「まさか手柄を取られる、などと考えてはいまいな? 個人の名声など、現代戦には不要だ。第七艦隊がまだ消耗してなく、
第六、第八は消耗しているから切り替えるだけだ」
冷たくキング大将が告げる。
「わかっております」
これだからこの人は。とハルバートンは思う。キング大将は有能なのは確かだが、人の気持ちを気にしない所がある。
だから、上からも下からも嫌われるのだ。
まぁ、いい。確かにボアズへの道を開くまでの戦闘で第八艦隊が消耗しているのも確かなのだ。休ませてもらおうか。
ハルバートンは艦隊に後退を指示した。
282523:2008/02/29(金) 17:56:45 ID:???
続く

オリキャラ登場。
アーネスト・キング。モデルは太平洋戦争のアメリカ海軍の方です。

マティアス登場。
男装の麗人にしちゃいました♪
二つ名を「土くれのフーケ」と(違)


ディープストライカー……ジェットコースターみたいな攻撃でしたが、バッテリー動力なのでこんなものではないかと。
クルーゼがモビルアーマー37機・戦艦6隻を撃破してネビュラ勲章を授与されてますのでなかなかの活躍と言ったところでしょうか。
核動力にすればミーティアよりもお役立ちかも。
アザゼル――「ARMS」です。「アリス」繋がりで遊んでみました。再登場の予定はありません。
283通常の名無しさんの3倍:2008/02/29(金) 20:17:29 ID:???
GJ!
ARMSネタに笑いマティアスの男装の麗人化にちょっと吹出しました
284通常の名無しさんの3倍:2008/02/29(金) 22:18:15 ID:???
GJ!
もうどこから突っ込んでいいのかわからんよw
285通常の名無しさんの3倍:2008/03/02(日) 07:15:49 ID:???
アクタイオン社には近寄らんほうが長生きできるかもわからんねw
286523:2008/03/03(月) 19:02:44 ID:???
CEの地球人口ってどんくらいなんでしょうか?
今が70億未満ですが、なにかソースありますか?
ない場合、CEではどれだけの人口養えると思いますか?
287通常の名無しさんの3倍:2008/03/03(月) 19:58:09 ID:???
宇宙世紀だと110億だったのが一週間戦争で半減だったなあ

住居コロニーの数を考慮して、85億か90億くらいじゃないかと思います
そこからエイプリルフールがどれだけ人口減らしたのかまでは検討つかないです
288通常の名無しさんの3倍:2008/03/03(月) 22:52:05 ID:???
百億がエイプリルフールクライシスで十億減ったって何処かで聞いた気がする。
289通常の名無しさんの3倍:2008/03/03(月) 22:57:16 ID:???
核分裂の原子炉メインに使ってた割には犠牲者少ないんだよな……
290通常の名無しさんの3倍:2008/03/03(月) 23:14:09 ID:???
ああ、地上の各国政府はよく頑張ったよ。滅亡してもおかしくない危機を良く乗り切った。
ザフトとの戦争なんて、その片手間でしかないのかも知れないな。
291523:2008/03/07(金) 18:04:42 ID:???
「じゃあ、ルナマリアさん、また!」
「ええ、この戦争が終わったらまた会いましょう」
第八艦隊が後退するのに伴って、アクタイオン社の人達は、ディープストライカーを持って、引き上げていった。
入れ替わりのように、アークエンジェルのモビルスーツ隊の帰還が伝えられる。
「お帰りなさい! みんな無事ね?」
「ああ! お嬢ちゃんも良くやった!」
「ちぇ! もうちょっとでボアズ攻略できたのになぁ!」
トールがぼやく。水を取り出して一気に飲み干す。興奮しているみたいだ。
「無理は禁物! へたして怪我でもしたら、悔しいでしょ? まぁ、のんびりしようぜ! 第七艦隊が攻め切れなきゃ、
また俺らの出番がやって来る」
フラガさんも水の入れ物を取る。
「トール! 無事だったのね!」
ミリィが飛び込んで来た。ミリィも休憩なんだろう。
「必ず帰って来るって約束したろ?」
「でもでも、いつもトールが出撃の時は心配なんだからね!」
ミリィがトールに飛びつく。トールはミリィの背中を優しくなでる。
あー。ご馳走様。

292523:2008/03/07(金) 18:05:18 ID:???
「キング大将、我が軍はすでにボアズの80%の区域を制圧しました!」
攻め手が第七艦隊に交代して1時間ほどもたった頃だろうか。報告が入る。
「ふふふ、圧倒的ではないか、我が軍は。我が艦もボアズに寄せろ。真っ先に入港してやるのだ」
「はっ」
第七艦隊旗艦ルーズベルトはボアズに砲撃を加えながら接近を始めた。

――同時刻ヤキン・ドゥーエ――
「ジェネシス照準、ボアズ!……本当によろしいのでしょうか? あそこではまだ我が将兵が戦っていると言うのに……」
「ボアズはどの道程なく落ちる。プラントを守るために必要な犠牲だ。我がザフト兵士達は喜んで納得してくれる者達
ばかりだよ。君は彼らの忠誠を疑うのかね?」
シーゲルは目に力を込めた。見つめられた防衛指揮官はびくっと体を震わすと、目をそらし、スクリーンに目をやる。
「いえ……では、発射用意! カウントダウン、始め!」
「10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…発射!!!」

あ……一瞬何かが私の体を走った。
「どうしたんだ? おい、ルナ!?」
「――だ、駄目よ、前へ進んじゃ駄目。光と人の渦がと、溶けていく。あ、あれは憎しみの光……」
「おい。おい? ルナ?」
「どうしたんだ? 一体?」
「変ねえ、どうしたの?」
「ぜ、全滅じゃないけど、ぜ、全滅じゃないけど……」

――アークエンジェル艦橋――
「なんなの? あの光は」
マリューは不吉なものを感じた。
「ボアズの方角ですな」
リーが顎を触りながら答える。
「一体何が?」
「すぐにメネラオスに問い合わせを!」
「はっ」

「ルーズベルトは、キング大将は出ないのか!」
ハルバートンは怒鳴った。
「は、まったく出ません! ルーズベルトの識別信号途絶!」
「ボアズの様子はどうか!? この混乱で逆撃されると第七艦隊は全滅するぞ!」
「ボアズからの反撃、ここから見た様子では皆無です。まるで誰もいなくなったかのような……」
「第七艦隊はボアズ攻略完了していたのか? もしやザフトはそれでやけくそで……」
「ボアズを攻略出来たとの報告も来ておりませんです」
「各艦から、先ほどの光はなんだと問い合わせが来ておりますが」
「後回しにしろ! 今は状況把握が先だ!」
副官のホフマン大佐も怒鳴る。
「第七艦隊で交信できる中で最上級者は誰だ?」
「……それも未だわからない状態です。どえらく混乱しとります」
「……」
ハルバートンはしばし考えた。
「よろしい。一旦本官が第七艦隊の指揮を取る! ボアズ近辺は危険だな。この宙域まで撤退せよと命令しろ!」
「はっ」
293523:2008/03/07(金) 18:05:42 ID:???
「第12分隊はサフランだけだ」
「シスコも被弾している」
「こちらは三隻ね。ずいぶん傷付いてるのがあるわ」
ハルバートンの元に第七艦隊の状況が集約されてくる。
「ずいぶん、やられているな」
「ずいぶんどころじゃありません。壊滅です」
「サザーランド大佐と連絡が付きました! 現段階で最上級者です!」
「ハールバートン少将、アズラエル理事から通信です」
「繋げ」
「はっ」
アズラエルの姿がスクリーンに映った。
『やあ、ハルバートン少将。第七艦隊は手荒くやられたようですね』
「はぁ。残存艦をこちらに撤退させているのですが、この様子では、1/4残ればいい方かと」
『ハルバートン少将、何にやられたか見当は付きますか?』
「おそらく、アズラエル理事からの情報にあったヤキン・ドゥーエ要塞のジェネシスかと」
『僕も同じ意見です。直ちに散開してヤキン・ドゥーエに進軍するべきと思いますがいかがでしょう? 特殊情報部の情報では
ザフトは数発は撃てるだけの核を保有しているとの事です。もし地球を撃たれたら人類滅亡です!』
「その通りですな。幸い、第二射までには時間がかかるそうですから、なんとしても急行させてジェネシスを破壊せねば!」
『その通りです! ハルバートン少将、第七艦隊の残存各艦はこの際護衛無しでプトレマイオス基地まで独行で撤退、
第六、第八艦隊はただちにヤキン・ドゥーエ攻略に向かうと言う事でいかがです?』
「了解しました。……ホフマン、第七艦隊残存艦には直接プトレマイオス基地に撤退するように伝達せよ。第六、第八艦隊は
これよりヤキン・ドゥーエ要塞、ジェネシス攻略にかかる!」
「第七艦隊、サザーランド大佐からです。我が隊被害少なし、ヤキン・ドゥーエ攻略に参加する、と」
ふ……とハルバートンは口をほころばせた。
「いいだろう。ただし待ってはやれんぞ。サザーランド大佐に被害の少ない艦をまとめさせ、後を追わせろ」
「はっ」

294523:2008/03/07(金) 18:06:09 ID:???
「くそう!」
アズラエルは壁を殴りつけた。
「理事、どうされたので?」
ナタルが気遣わしげに聞く。
「いや、ジェネシスを撃たれるんだったら核ミサイルもっと大量に配備しておくべきだったかなと思いましてね。ワシントンに
配備した分で足りますかねぇ? まぁいまさら言ってもしょうがないか。ワシントンから何か報告は?」
「問題はないようです」
「そうですか。こうなったら遠慮なく使わせてもらいましょう。核ミサイルを」
「アズラエル様。マティス様から、ジェネシスの弱点を掴んだと、通信が!」
「なんですって!? それで……いや、自分で見た方が早い」
アズラエルはコンソールを操作する。
「……ふぅむ。ジェネシスのPS装甲は一枚板じゃない。ジェネシス表面には少なくない数の作業用の開口部が存在する、か。
いけるかもしれませんね! そこを狙わせるんです! すぐにワシントン、それとアークエンジェルとイズモにも情報の伝達を!」


295523:2008/03/07(金) 18:06:29 ID:???
「我が忠勇なるザフト軍兵士達よ! 今や地球軍艦隊の半数が我がジェネシスによって宇宙に消えた。この輝きこそ我ら
ザフトの正義の証である! 決定的打撃を受けた地球軍にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である。
あえて言おう、カスであると! それら軟弱の集団がこのヤキン・ドゥーエを抜くことはできないと私は断言する。人類は、
我ら選ばれた優良種たるプラント国民に管理・運営されてはじめて永久に生き延びることができる。これ以上戦いつづけては
人類そのものの危機である。地球軍の無能なる者どもに思い知らせてやらねばならん、今こそ人類は明日の未来に向かって
立たねばならぬ時である、と!」

演説を終えて奥に引っ込んだシーゲルの耳に拍手の音が響いた。
ラウ・ル・クルーゼだった。
「なにかね」
「いや何、やけに熱が篭っていましたのでね。あの演説、本当にご自身で信じておられるのかと思いまして」
「何をいまさら」
シーゲルは手を振った。
「人類絶滅。それが私の望みだと言ったろう」
「初めて聞いた時には本気とは思いませんでした」
「なら、今なら信じられるだろう?」
シーゲルは傲然と笑った。
「ジェネシスの第二射でプトレマイオス基地を撃つ、そして後顧の憂いなく最大出力の第三射で地球を撃つ。めでたく人類滅亡だ!」
シーゲルは凄みのある笑みを浮かべて腕を広げた。
「それが君の望みでもある。違うかね?」
「そうですが、なぜか? と思うのですよ。私には人類を憎む理由がある。あなたは?」
「私にもあるのだよ。人類を憎む理由がね。……進化の枠から外れた奇形人類を! いや……なんでもない……」
「……まぁ、いいでしょう。あなたがそうお考えの限り、協力させていただきましょう」
「頼むぞ。ジェネシスの防衛がすべてなのだからな。だからお前にプロヴィデンスを託すのだ」
「了解いたしました! 最高評議会議長殿!」
クルーゼは見事な敬礼を見せるとシーゲルの前から去って行った。


296523:2008/03/07(金) 18:06:48 ID:???
「いい? 核ミサイルを装備したワシントンのピースメーカー隊がジェネシスを攻撃するわ。私達はなんとしてもその血路を
開かなきゃいけないの。ボアズと連戦で疲れているでしょうけど、皆、踏ん張って頂戴」
マリューさんが作戦を説明する。
「ああ、踏ん張ってやるぜぇ! 最後の戦いのために!」
フラガさんが声を張り上げる。
「最後の戦いのために!」
「戦いを終わらせるために!」
みんなが手を突き上げ、叫ぶ。
そうだ。これが最後の戦い。最後の戦いにしなきゃ。終わらせなきゃ! こんな戦い!
私はゼリー飲料を飲み干すとパイロットスーツに着替える。
「無事でな。一緒に行ってやれないのが残念だけど」
「ホントにね。無事で帰って来てね」
ミューディーがハグしてくれる。
そう、アークエンジェル隊で出撃するのは三人だけだ。アークエンジェル隊の最精鋭、フラガさんにキャリーさんと私。
トールとサイ、カル・バヤン隊のみんなは予備兵力として残る。
「うん、ちゃんと無事で帰ってくるわ!」
さあ、最後の戦い!
「ルナマリア・ホーク、ストライクルージュ、行きます!」

ザフト軍はヤキン・ドゥーエ前面に厚い陣を敷いていた。
私達はすぐ乱戦に持ち込まれる。
「くそ! みんなは無事なの?」
「俺は後ろにいるぞ」
フラガさんだ。
「後ろは任せろ!」
「隣は任せてもらおう」
キャリーさん!
「ええ! みんな、行方不明にならないでね! 帰ったら乾杯しましょう!」
「「OK!」」
みんな、一丸となってザフトの陣を突き進む!

297523:2008/03/07(金) 18:07:17 ID:???
「あう!」
何? 何事? ちゃんと注意してたのに!?
「おい! そこのメビウス! こっちは味方だ!」
キャリーさんが怒鳴る。
「う!」
キャリーさんがメビウスから攻撃を受けた!
「キャリーさん!」
「大丈夫だ! こいつら変だ! ザフトの偽装かもしれん!」
『ルナマリア・ホーーークーーー!』
あ! この声でわかった!――メイリンだ! なんて時に! いや、この乱戦になる時を狙っていたのだろう。
「みんな、気をつけて! こいつら敵よ! 前に私を襲ってきた奴!」
メビウスに紛れて、こちらに突進してくる、もう見慣れたアンノウン――ハイペリオン!
「モビルスーツは私に任せて! みんなはメビウスを!」
「「わかった!」」
『あんたを倒す!』
「――メイリンーーー!」
さまざまな思いを込めて私は叫んだ。
ここまで来たら……倒さなきゃいけないかもしれない!
『一気に決めてやるわ!』
メイリンはアルミューレ・リュミエールを展開した。
私はガーベラストレートを抜く!
298523:2008/03/07(金) 18:07:23 ID:???
『そう何度も! 同じ手に引っかかるか!』
メイリンは、アルミューレ・リュミエールの角度を調整し、ガーベラストレートに対して槍の様に形作った。
ああ……! ガーベラストレートが! ビームの槍の作る分厚いビーム層により、とうとう中ほどが崩壊して、折れた。
でも! 私はガーベラストレートが崩壊しそうになったのを見ると、左手でビームライフルを取る!
「いい手だったけど、抜かったわね! ガーベラストレートに気を取られすぎて、背中ががら空きよ!」
メイリンがアルミューレ・リュミエールを槍の様にした事で、逆にハイペリオンの防御がお留守になってる。
私はすばやくハイペリオンの背後に回りこみ、アルミューレ・リュミエール発生装置が出ているウイングバインダーを撃ち抜いた!
破壊されたウイングバインダーから盛大に放電が発生し、メイリンは体勢を崩す。
「さあ、もうあんたを守ってくれるアルミューレ・リュミエールは無いわよ!」
『くっそおおお!』
メイリンは両手にビームサブマシンガンを持って連射する。連射の速度はこちらより上だ。弾数が多い!
焦るな、集中しろ!
私はビームライフルを連射せず、ゆっくり狙って引き金を絞る――ハイペリオンの左腕のビームサブマシンガンが爆発する。
やった!
「――っつう!」
こっちも被弾した! エールストライカーに当たってしまった!
いきなり速度が落ちてしまう!
『ちゃーんす!』
メイリンは左手の壊れたビームサブマシンガンの残骸を手放すと、左手にビームナイフを構えて突っ込んで来る。その姿は無防備に見えた。
私はビームサーベルを抜く!
――!
「なに!?」
小さな衝撃で座席が少し揺れる。
ストライクルージュのビームサーベルはハイペリオンの左腕を断ち切った。
でも――ストライクルージュの左腕も失った。
左腕の付け根に深々とビームナイフが突き刺さり、付け根の間接部分が小さな爆発を起こして、ストライクルージュの左腕は取れてしまった。
そのビームナイフはハイペリオンの右腕のビームサブマシンガンから発射された物だ。こんなギミックが仕込まれているなんて!
私はとっさにスラスターを吹かすとハイペリオンを蹴り飛ばす! ビームサブマシンガンがハイペリオンの右手から離れる。
『あう!』
メイリンの声。だがメイリンはすぐ立ち直ると、右手にビームナイフを手に取りストライクルージュの左脚を切り飛ばす。
「負ける、もんですか!」
ハイペリオンの胴体を狙った私の斬撃はうまく避けられハイペリオンの左足を切り飛ばす。
『油断したわね!』
しまった! ビームサーベルを蹴り飛ばされた――!
ハイペリオンのビームナイフが迫る!
『これで終わりよ!』
「――まだよ!」
私は残った右手で、頭上に漂っていた、半分程に刀身の長さを減らしたガーベラストレートを掴むと、そのままハイペリオンに振り下ろした――!
299523:2008/03/07(金) 18:09:41 ID:???
続く。

とうとうソーラ・レイ……じゃなくてジェネシスが撃たれました。

姉妹対決第二ラウンドです。勝負の行方は――?
300通常の名無しさんの3倍:2008/03/07(金) 21:21:12 ID:???
GJ
って、シーゲルの演説がギレンの演説だし
301通常の名無しさんの3倍
GJ!
毎回毎回、無理してネタ仕込みやがってw