もしもシンではなくルナマリアが主役だったら 5

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1通常の名無しさんの3倍
その名の通り、ルナマリアが主人公の種死を考えるスレ。

前スレ
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら 4
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1175342030/

過去スレ
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら3
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1174126769/
もしもシンではなくルナマリアが主役だったら2
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1148128422/
初代スレ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1126446510/

まとめwiki
ttp://wiki.livedoor.jp/arte5/d/FrontPage
2通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:26:02 ID:???
>>1
何だあの埋め荒らしは・・・
3通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:29:01 ID:???
>>1
確かにアレは一体……
4通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:37:26 ID:???
もしシャアがC.E世界に来たら
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1161501559/

ここも被害にあっとる。なんなんだ?
5通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:43:43 ID:???
ブランド鍋を騙った荒らしなのは分かるが・・・集団で埋めてるのかね?
6通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:43:44 ID:???
クレしんスレも埋められた
7通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:48:00 ID:???
アムドラスレとエヴァスレ?も埋められた
少し前だが阿部スレも埋められたな
8通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 22:03:12 ID:???
まあ次スレが立ってるみたいだし隠者ね?また来るようなら次スレ建てるだけだし
9通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 22:08:40 ID:???
500kb近くなって過疎ってるスレだと涌いてくるな。
まともな板なら規制されるんだろうが、まぁ隔離板だしな(自嘲)
10通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 08:10:35 ID:???
…NGに引っかかってたので、気づかなかった。
危ないところだったな。

あと、あの手の梅荒らしは一応対処可能だぜ。
「削除整理」板では反応なしのつぶてだが
「2ch規制議論」板に個スレを立てたら、普通に運営が対応してくれる。
というか、別のスレを荒らしてたヤツがアク禁になってた。

とはいえ、個スレ立てるにはレス数がまだ少ないけどな。
1スレに対し100レス超えたら報告の価値はありか。

あと、他スレの埋め荒らしもまとめて報告すれば、今の状態でも報告可能かな?
11523:2007/09/24(月) 14:20:41 ID:???
「暑い……暑い……」
「デンギル先生、氷持って来た!」
「よし、腋の下、股などの動脈が集中する部分にあてて冷してくれ」
「大丈夫でしょうか? ルナ、意識が朦朧としているみたいで」
「うーむ。熱中症の一種じゃろうからな。身体を冷却して、水分とミネラルを補給すれば大丈夫じゃろう」
「よかったー」
「さあ、みんなも寝なさい。」



あ、ここは……医務室のベッド……
「気がついたかの? お嬢ちゃん」
「あ、デンギル先生。あたし……」
「お前さんは熱中症でぶっ倒れておったんじゃよ」
「さ、これを飲みなさい」
「あ、……これ、スポーツドリンク?
「経口補水塩と言ってな、医療用に、脱水症状の時なんかに使う物じゃよ」
「……んぐんぐ……! おいしい! もう一杯!」
「ほいよ。しっかり飲みなされ。……もうこれは必要ないかな」
デンギル先生がちょうど終わりかけた輸液のパックを仕舞う。
「先生……私、眠い」
「もう少し、寝ときなさい」
「はい」
私はうとうとと眠りについた。

「うん、もう大丈夫! ご飯も普通に食べれるし!」
「よかったー!」
「心配したぜまったく」
「やっぱり試作品のカタログスペックは信頼しちゃだめねー。あやうく死ぬところだったわ」
こうして夕飯を食べているルナマリアの様子を見ていると、まったく昨日は意識不明で寝込んでいた人とは思えない。
カズイはストライクのコクピットが何℃になっていたか知っていた。
自分じゃ死んでいたかもな……
コーディネイターのルナマリアに軽い嫉妬心を覚えた。
でも、ルナマリアも死にかけたんだよな。ルナマリアが俺達の内一番危険な事は確かだ。
カズイは軽い自己嫌悪感をコップの水と共に飲み干した。

12523:2007/09/24(月) 14:21:36 ID:???
私は夕飯を食べた後、格納庫に顔を出した。
「やあ、お嬢ちゃん、具合はもういいのかい?」
格納庫では、フラガさんとマードックさんと数人の整備の人、そして見知らぬ人私くらい? の年齢の人がスカイグラスパーに掛かりきりになっていた。
「ええ、お陰様で!」
「そりゃよかった。みんな心配していたんですぜ」
その時、見知らぬ人が私に話し掛けてきた。
「ルナマリア少尉ですね。僕はメネラオスから転任してきたジョブ・ジョン少尉です。よろしく」
「新しく配属された人!? 頼もしいわ。よろしくお願いします!」
そうかー。ずっとフラガさんと二人だけで戦ってきたけど、嬉しい!
「そういや、お嬢ちゃんの予知夢、当たったなぁ。見事にアフリカだぜ」
「……すみません。私のために……」
「いや、ストライクを失ったら意味無いからなぁ。これからも妙な夢見たら言ってくれよ」
「……はい」
「さーて少佐、弾薬も積み込んだし、ここでやれる事はこんなもんですぜ。後は実際に飛ばしてみねぇと」
「う、ふぁーあ……そうだなぁ。お嬢ちゃんも元気になったし、明日は移動するかもしれんからなぁ。とっと仕上げたいところだが……」
「――! そうなんだよね。ここは地上なんだ。じゃ、私、ちょっと地上用に設定いじってみます」
「そうか。じゃあ俺は寝るわ」
「はい。私はしっかり寝ちゃいましたから」
フラガさんとジョンさんは出て行った。
「マードックさんは? 寝ないんですか?」
「せっかくですからね、付き合いますよ」
「ありがとう!」

結局マードックさんをそれほど付き合せずに済んだ。地上用の大まかな設定はすぐ出来たけど、細かい設定は、やっぱり実際に動かしてみないとわからなかったのだ。
「じゃ、マードックさん、お休みなさい」
「お嬢ちゃんも、お休み」
いい月夜だなぁ。
窓から見える夜空にロマンチックな気持ちになりながら、私にあてがわれた個室に入り、寝ようとした時、警報が鳴った!
『第二戦闘配備発令! 繰り返す! 第二戦争配備発令!』
更衣室へ走る間に警戒度が上がる!
『第一戦闘配備発令! 機関始動! フラガ少佐、ホーク少尉は、搭乗機にてスタンバイ!』
手早くスーツを着ると、格納庫へ走る!
「状況は!?」
コクピットに乗るとミリィに尋ねる。
『今の所ザフト戦闘ヘリが3機確認されているわ!』
「戦闘ヘリ、そう……」
なら、それほど心配はないかな?
フラガさんのスカイグラスパーが発進していく。

13523:2007/09/24(月) 14:22:33 ID:???
『大変だ! 砂丘の向こうにはザフトの四足歩行のモビルスーツまでいやがるぜ! 5機だ!』
なんですって!
ジョンさんのスカイグラスパーも発艦していく。
私にもとうとう発進命令が出た。
『ストライク発進! 敵モビルスーツを排除せよ! 重力に気を付けろよ!』
「はい!」
5機も……うまく、いくかな。
『カタパルト、接続。APU、オンライン。ランチャーストライカー、スタンバイ。火器、パワーフロー、正常。進路クリアー。ストライク、発進どうぞ!』
「ルナマリア・ホーク、ストライク、出るわよ!」

ストライクはカタパルトから飛び立った!
さすが地球! 重力ですぐに沈み込む。着地するとずるっと滑る。
ああ、やっぱり微調整しないとだめか。
「砂漠だから接地圧が逃げるのね。逃げる圧力を想定し、摩擦係数は砂の粒状性をマイナス20に設定!」
これで、動かしやすくなった!
――! 敵モビルスーツが! バクゥ!?
バクゥは素早い動きで迫って来る!
一機が体当たりして来る! とっさに私はバルカン砲のスイッチを入れる!
ガガガガガ! バルカン砲の弾丸がバクゥの装甲を貫いてゆく! 一機、撃破!
それを見たバクゥはストライクを遠巻きにする。ミサイルが撃たれる。
やられるもんですか!
スラスターを吹かしてジャンプするとアグニを発射!
当たらない……こんな事ならエールストライカーで出ればよかった!
あ、上空から! ザフトの戦闘ヘリを排除したスカイグラスパーが攻撃に加わる!
突然の上空からの銃撃に、一瞬バクゥの足が止まる!
そこ! アグニは見事にバクゥを貫いた。
だが……それからバクゥは足を決して止めず、ストライクを翻弄する。
だめだ、アグニ、当たらない……
突然、南西の方向に光の矢が走る! 何!?
アークエンジェルの近くに、着弾!
砲撃!? どこから!?
『南西20キロの地点と推定!』
『俺が行って、レーザーデジネーター照射する。それを目標に、ミサイルを撃ち込め!』
フラガさん!
――また、南西の方角から光の矢が! やらせない!
14523:2007/09/24(月) 14:23:28 ID:???
急に頭の中がクリアになる――
……邪魔よ!……
バルカン砲で弾幕射撃! スラスターを吹かしてジャンプ!
砂塵が立ち込める。だが、この時の私には相手がどこから出てくるかわかる気がした。
「そこ!」
ストライクのパンチは見事にバクゥを捕らえ! 更に上空へと弾き飛ばされたバクゥは南西からの砲撃に当たって爆発する!
ストライク、着地!
「次はぁぁーー!」
上空に向けてアグニを連射する!
「はぁ、はぁ、はぁ、……」
私は、気がつけばアークエンジェルに向かう砲弾全てをアグニで叩き落していた。
でも、だいぶアグニ使っちゃったな……パワーダウンが近い!
――! バクゥが、また向かって来る!
もうアグニは撃てない。
バクゥの残り2機! バルカン砲で牽制するも……いつまで持つ?
ジョン少尉から通信が入る。
『ホーク少尉、フラガ少佐が戻るまで踏ん張れ、そしたら2機で牽制する。その隙にアークエンジェルへ戻れ!』
「はい!」

その時、あれは……バギー!? バギーが、バクゥ目掛けて攻撃を仕掛けている!
――! 一両のバギーがストライクに近づいて来ると、これは接触回線!
『そこのモビルスーツのパイロット! 死にたくなければ、こちらに指示に従え! そのポイントにトラップがある! そこまでバクゥを誘き寄せるんだ!』
……信じてみよう!
私はスラスターを吹かしながらそのポイントへ向かう。バクゥもその後を追って来る!
さあ、ポイントへ誘導したわよ! 何が起こるの?
――突如爆音が響き、誘き寄せたポイントがバクゥを巻き込みながら崩落していく!
ふぅ。なんとか、助かったか……

「なんとか助かったようね」
アークエンジェル艦橋でも、同じような言葉がつぶやかれていた。
ザフトが残存部隊をまとめ撤退して行ったのはジョン少尉が確認している。
「フラガ少佐より入電です」
「なんと?」
「敵母艦を発見するも、攻撃を断念。敵母艦はレセップス!」
「レセップス!?」
マリューの声に緊張が混じる。
「繰り返す、敵母艦は、レセップス! これより帰投する。以上です!」
「レセップスとは?」
訝しげにナタルが尋ねる。
「アンドリュー・バルトフェルドの母艦だわ。敵は、砂漠の虎と言うことね」


15523:2007/09/24(月) 14:24:18 ID:???
「味方、と判断されますか?」
謎のバギー達は、ザフトのモビルスーツを撃退した後もそこに留まっていた。
マリューは決断する。
「銃口は向けられてないわね。ともかく、話してみましょう。その気はあるようだから。上手く転べばいろいろと助かるわ。後はお願い。はぁ……」
でも、気は抜けない。エレベーターの陰には狙撃兵を配置する。
「やれやれ……こっちのお客さんも、一癖ありそうだな。俺、これはあんまり得意じゃないんだけどね」
フラガはホルスターを叩きながら言う。
まぁ! 戦闘機に乗るとエースなのに。
「うふ」
マリューの緊張が少し解けた。

「助けていただいた、とお礼を言うべき何でしょうかね。地球軍第8艦隊、マリュー・ラミアスです」
「第8艦隊か。めずらしくザフトに勝ったらしいな。おめでとさん」
「どうも」
そう。勝ったのね。ハルバートン提督も無事なようね。
マリューは上官の無事を喜んだ。
「俺達は明けの砂漠だ。俺はサイーブ・アシュマン。礼なんざ要らんが、分かってんだろ? 別にあんた方を助けた訳じゃない」
「……」
「はん! こっちもこっちの敵を討ったまででねぇ」
「砂漠の虎相手に、ずっとこんな事を?」
「あんたの顔はどっかで見たことあるなぁ」
「ムウ・ラ・フラガだ。この辺に、知り合いは居ないがね」
「エンディミオンの鷹とこんなところで会えるとはよぉ」
「――!」
「情報もいろいろとお持ちのようね。私達のことも?」
「地球軍の新型特装艦アークエンジェルだろ。クルーゼ隊に追われて、地球へ逃げてきた。そんで、あれが……」
「X-105。ストライクと呼ばれる、地球軍の新型機動兵器のプロトタイプだ」
金髪の少年が後を引き取って続けた。
この子? どこかで?
マリューは記憶を辿った。が、出て来ない。
気のせいか……
「さてと、お互い何者だか分かってめでたしってとこだがな、こっちとしちゃぁ、そんな厄の種に降ってこられてビックリしてんだ。
こんなとこに降りちまったのは事故なんだろうが、あんた達がこれからどうするつもりなのか、そいつを聞きたいと思ってね」
「力になっていただけるのかしら?」
「へ! 話そうってんなら、まずは銃を下ろしてくれ。あれのパイロットも」
「……ふぅ……分かりました。ホーク少尉、降りてきて」
「ああっ!」
金髪の少年が叫ぶ。
「ああ? あれがパイロット? まだガキじゃねぇか。ほんとかよ……」
他のレジスタンスも叫ぶ。
無理もないわね。
マリューの罪悪感が、強くなる。
「あぁ……ぁぁ……お前……」
……? 金髪の少年がルナマリアさんに近づく。何?
「あぁー! あなたは!」
ルナマリアが、叫んだ。

16523:2007/09/24(月) 14:25:06 ID:???
「あぁー! あなたは! やっぱり!」
私は駆け寄って来た金髪の少女を見つめる。
間違いない、カガリ様だ!
「お前……お前が何故あんなものに乗っている!?」
「あなたこそ、何やってんですか! こんな所で!?」
「あ、ちょっとお前、待て!」
「待ちません!」
私はカガリ様の手を引いて物陰に連れ込んだ。
「カガリ様? なーに、やってるんですか!? こんな所で?」
「『様』はいらないと言ったろう……ずっと心配していた。お前は無事にシェルターに入れただろうかと」
「それが入れなくって。左のシェルターはもう扉しかなくって……成り行きでアークエンジェルに乗る事になって、
成り行きでストライクを操縦してます。カガリは?」
「ヘリオポリスを脱出した後、考えたんだ。私の視野は狭い。もっと大きな世界を知りたいと。そしたら、お父様がここを紹介してくれた」
「それでこれですか!? わかってるんですか? レジスタンスなんて言うと聞こえはいいですけどね、ゲリラは問答無用で殺されても文句言えないんですよ? 
それにカガリがレジスタンスに加わっているなんて知れたら……オーブも巻き込まれるんですよ?」
「その点なら心配ない。お父様は、もしそんな事になれば、私は病死した事にして見捨てる。だそうだ」
あっさり、カガリは言う。でもそれが為政者としての厳しさと言う物なのだろう。
「カガリの正体は、何人に知られているんですか?」
「サイ―ブだけだ。お父様の古い知り合いだそうだ。あと、お父様が付けてくれた護衛が一人。キサカ一佐だ」
ふぅ。世界を広く知る事が、なんでザフトと戦う事になったのやら。
「ザフトは非道い。お前もこれを聞けば考えが変わるぞ」
声を潜めてカガリが語った事は、衝撃的な事だった。
「3日前、ビクトリアが陥落した」
「え!」
「驚くのはこれからだ。ザフトは捕虜を取らず、降伏した者も殺害したらしい」
「――そんな!」
「歴然としたコルシカ条約違反だ!」
「でも、そんな情報、どうやって知ったの?」

「――ビクトリア付近の部族の者が、太鼓通信で伝えて来おった。……馬鹿にするなよ? 意外なほど正確で早いぞ」
あ、サイーブ、さん? だっけ? こちらに顔を出して言った。
「もう話は終わったか? カガリ」
「あ、ああ、大体」
「こちらのお嬢ちゃんは? 知り合いか?」
「ああ、ヘリオポリスで知り合ったんだ。私の正体も知ってる」
「そうか。言うまでもないが、カガリの正体が知られる事がないようにな」
「はい」
「じゃあ、しばらくの間よろしくな。俺達はアークエンジェルと協力する事になった」
「そうなんですか!」
こうしてアークエンジェルはレジスタンスの隠れ場所に行く事となった。

17523:2007/09/24(月) 14:26:00 ID:???
「ご苦労だったな」
着いた所では、テントや洞穴を利用してアジトが作られていた。こんな所によく……
「ここに住んでる訳じゃないぞ」
カガリが言う。
「ここは、前線基地だ。皆家は街にある。……まだ焼かれてなけりゃな」
「街?」
「タッシル、ムーラン、バナディーヤから来てる奴も居る。私達は、そんな街の有志の一団だ」
……向こうにみんながいる。
声が聞こえてくる……

「はぁ……レジスタンスの基地に居るなんて……なんか、話がどんどん変な方向へ行ってる気がする……」
「はぁ……砂漠だなんてさ……あ〜ぁこんな事ならあん時、残るなんて言うんじゃなかったよ」
「これから……どうなるんだろうね……私達……」
……私の、せいかな。
ぼりっ。久しぶりにデパスを取り出し、齧る。

「どうしたんだ? ルナ」
「ううん、なんでもない、カガリ。……みんな、ここにいたの?」
「ルナ! そう言えば、この子は? レジスタンスの子に知り合いなんていたの?」
「やだな。みんなも一緒だったじゃない。カト―教授のお客さんだった子よ」
「ええー!? でも、そう言えば……」
「でも、なんでこの子がこんな所でレジスタンスやってるんだ?」
「カガリにも、色々事情があるのよ」
「そうか、カガリって言うのか」
「ああ、よろしくな」
やばい! 色々ばれない内に引き上げようっと。
「じゃ、私モビルスーツの調整があるから。さ、カガリも向こうに用があるんでしょう?」
「あぁ、じゃあ、またな、みんな」

18523:2007/09/24(月) 14:27:02 ID:???
「そらぁザフトの勢力圏と言ったって、こんな土地だ。砂漠中に軍隊が居るわけじゃぁねぇがな。だが、3日前にビクトリア宇宙港が
落とされちまってからこっち、奴等の勢いは強い」
「ビクトリアが?」
マリューは驚いた。確か一回は撃退したはず……場合によっては頼ろうと思っていたのに。
「3日前?」
「あ〜らら」
「ここ、アフリカ共同体は元々、プラント寄りだ。頑張ってた南部の、南アフリカ統一機構も、遂に地球軍に見捨てられちまったんだ。
ラインは日に日に変わっていくぜ?」
「そんな中で頑張るねぇ、あんたらは」
「……」
「俺達から見りゃぁ、ザフトも、地球軍も、同じだ。どっちも支配し、奪いにやって来るだけだ」
「あっ……」
「……だが、地球軍がましだと思うのはな、あんたらは、少なくとも投降した兵を殺害したりはせんだろう?」
「え、ええ。個人的にそのような犯罪を犯してしまう者はいるでしょうが」
「だが、ザフトは軍全体でそれをやりやがった。投降した者も残らず殺害した。ビクトリア大虐殺よ」
「何て事……」
ザフト――Zodiac Alliance of Freedom Treaty=自由条約黄道同盟。結局彼らはまともな軍隊ではないのだった。
建前上はあくまでも政治結社。旧世紀にナチスドイツが保有していた突撃隊に近いのかもしれない。
そんな物に、まともに振舞え、と言っても無駄な話かも知れない。コルシカ条約を教えられてすらいないかもしれないのだ。
マリューは歯軋りをして戦友の悲劇を噛み締めた。
「それにエイプリルフール・クライシスだ。ここいらは一応親プラントが強い地域だった。にも係らず、ニュートロンジャマーをぶち込まれた。
砂漠の虎は今の所いい子にしているようだがな、到底信用できんさ。……あの船は、大気圏内ではどうなんだ?」
「そう、高度は取れない」
「山脈が越えられねぇってんなら、あとはジブラルタルを突破するか……」
「この戦力で? 無茶言うなよ」
「……んー。頑張って紅海へ抜けて、インド洋から太平洋へ出るっきゃねぇな」
「太平洋……」
「地中海北岸を目指してユーラシアの勢力圏内に辿り付く訳には行かないのでしょうか?」
「地中海は残念ながらザフトのバスタブになってる。途中で撃沈されるのが落ちさね」
「……そうですか。紅海から太平洋、補給路の確保無しに、一気にいける距離ではありませんね」
地中海艦隊がザフト軍に敗北したのはマリューも聞いていた。無理は出来ない。
「大洋州連合は完全にザフトの勢力圏だろ? 赤道連合はまだ中立か?」
「おいおい、気が早ぇな。もうそんなとこに心配か?」
「ん?」
「ここ! バナディーヤにはレセップスが居るんだぜ?」
「あ……頑張って抜けてって、そういうこと?」
「……はぁ……」

「おー、また何やってんだ?」
私がストライクの調整をしていると、マードックさんが顔を出した。
「昨夜の戦闘の時、接地圧弄ったんで、その調整とかですよ」
「ほぉー、なるほどねー。便利なパイロットだよなぁ、お前って。なんか俄然やる気じゃねぇかよ! ホーク少尉。はっはっはっはっは」
私はさっきのみんなの言葉を思い出していた。
私が巻き込んだも同然だもん。私がみんなを守らなくちゃ……
最近、私は自室に居るよりコクピットで過ごす事が多くなっていた……


19523:2007/09/24(月) 14:27:59 ID:???
夜になって私はアークエンジェルの外へ連れ出された。食事は外で取れ、との事だ。
ミリィ達もそうだ。気分転換、させようとしてくれているのかな?
こうしてぼーっと火を眺めていると、キャンプみたいだ。
カガリも私の向かい側でぼーっと火を眺めている。アフメドって子が色々話し掛けてる。
「……ごめんね、ミリィ」
「え、なに? ルナ?」
「私が残ったせいでみんなも巻き込んじゃって」
「やだなぁ。昼間の事気にしてるの? みんな自分で選んで自分で決めたんだから。気にする事ないよ」
「……ありがとう」
私はミリィの肩にそっと頭を寄せた。

――! 警笛がなる!
「どうした!」
サイーブさんが叫ぶ。
「空が燃えてる!」
「ううっ!」
「タッシルの方向だ!」
のんびりしていた空気が一変した。
カガリの話なら、タッシルに家がある人もいるはず!
私達は顔を見合わせると、マリューさん達の所へ走った。


「どうした!」
「空が燃えてる!」
「ううっ!」
「タッシルの方向だ!」
「くっそー! 駄目だ、通じん!」
「急げ! 弾薬を早く!」
「まいったなぁ……お袋は病気で寝てんだよ!」
「街がやられた!?」
「早く乗れ! モタモタすんな!」
「急いで戻るぞ!急げ! 早く!」
「サイーブ!」
「半分はここに残れと言っているんだ! 落ち着け! 別働隊が居るかもしれん」
せっかくのんびり和んでいたのに!
マリューは舌打ちする。事態は急変した。
アークエンジェルの皆が指示を求めてマリューの元へと集まって来る。
「どう思います?」
マリューはフラガに尋ねた。
「んー……、砂漠の虎は残虐非道、なんて話は聞かないけどなぁ。でも、俺も彼とは知り合いじゃないしね。どうする?俺達も、行くか?」
「アークエンジェルは動かない方がいいでしょう。確かに、別働隊の心配もあります。少佐、行っていただきます?」
「あ? 俺?」
「スカイグラスパーが、一番速いでしょ?」
「だわねぇ。んじゃ、行って来るわ」
「出来るのはあくまで救援です! バギーでも、医師と誰かを行かせますから!」
マリューは振り向く。皆が、指示を待っている。彼女の責任感は高まる。
「総員! 直ちに帰投! 警戒態勢を取る!」
「「はい!」」
20523:2007/09/24(月) 14:28:41 ID:???


私はコクピットで待機を命じられた。タッシルへの攻撃は囮かも知れないからだ。
状況が伝わってくる。タッシルの人達は無事らしい。
焼かれたのは弾薬に食糧に家……ニュートロンジャマーで地球の人達をじわじわ苦しめるシーゲル・クライン。
クライン派らしいやり口だ。
即効性でなければ良しとでも思ってるのかしら?
……! レジスタンスの人達が、ザフトを追撃したらしい。馬鹿な事を! 無駄死にしたいの!?
『ルナ! ストライク、発進願います!』
「了解」
『APU起動。カタパルト、接続。ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカー、スタンバイ。システム、オールグリーン。
進路クリアー。ストライク、どうぞ!』
こんな馬鹿らしい戦いで死にたくないな、と思った。

敵は3機。一機は動けない。まず、あれから。……!?
「静止目標なのに、逸れた? そうか、砂漠の熱対流で……ジョン少尉! 砂漠の熱対流に注意してください! 逸れます」
『了解!』
私は熱対流をパラメータに入れ、再び撃った。よし、撃破!
着地。
バクゥはミサイルを山のように撃って来る!
PS装甲を信じて! 私はエールストライカーの追加ブースターも吹かし、身を低くして遮二無二突進する。上はジョン少尉が押さえてくれる!
ストライクのビームサーベルは見事にバクゥの脚部を断ち切った。動けなくなったバクゥへ上空からアグニが放たれ止めを刺す。
残ったバクゥは撤退を開始した。
そう簡単に逃がさない!
「ジョン少尉!」
『ああ!』
以心伝心! ジョン少尉が上からアグニで牽制する。鼻先にアグニをぶち込まれて、ジャンプして後退するバクゥ……
「そこ!」
ビームライフルのビームは見事にバクゥを貫いた――
「だいぶ追いかけて来てしまったわ。撤退しましょう」
『了解』

21523:2007/09/24(月) 14:28:52 ID:???
私が先ほどの戦場に戻ると、そこかしこに破壊されたバギーが散らかっていた。そして、死体。
――アフメド! 先ほどまで私達に陽気な姿を見せていた彼も、動かぬ骸となって横たわっていた。
「……死にたいんですか?」
私は我慢できず言った。
「ぅ……」
「こんなところで……なんの意味もないじゃないですか! 気持ちだけで……一体何が守れるって言うんです!」
戦いの去った戦場に、すすり泣きが満ちた。

男達は粛々とキャンプに引き上げて来た。
「カガリ!」
キャンプにカガリを見つけると、私は駆け寄った。
「カガリ、無事だったのね。よかった」
「……アフメド、死んだんだってな」
「ええ」
カガリは俯いていた。
「止めても、止まってくれなかった」
「しょうがないわよ。それが彼らの選択なら」
「私は、卑怯かな? アフメドが出て行った時、こんなつまらない事で死ぬ訳には行かない、と思ってしまったんだ」
「卑怯じゃ、ないわよ。死んだ彼らにも言い分はあるでしょう。でも、あなたはこんな所で死んじゃだめ!」
「……私も、思ったんだ。ここでは死ねない、と」
「そうよ。カガリはこんな所で死なないで。そして、このくそったれな世界を何とかして頂戴」
「できるかな?」
「力を貸すわ」
「ちょっと、胸を貸してくれ」
そう言うと、カガリは私の胸にすがり付いてきた。
「……ぅ……えぐ……ぃ……」
私は泣き出したカガリの頭を優しく撫でた。
22523:2007/09/24(月) 14:32:11 ID:???
オリキャラ登場しました。メネラオスからのお人はジョブ・ジョン氏。
ファーストガンダムから頂きました。
この名前は目立たせないぞと言う意志の現れですw
地味に活躍してもらうつもりです。
23通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 17:42:37 ID:???
GJ!連休バンザイw
24通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 19:11:42 ID:???
歴史がいいほう(まだマシな方)に進んでるなあw
25523:2007/09/28(金) 17:48:10 ID:???
「じゃぁ、4時間後だな」
「気を付けろ」
「分かってる。そっちこそな。アル・ジャイリーってのは、気の抜けない奴なんだ」
「ホーク少っぃ……た、頼んだぞ……」
「はい」
「行くぞ!」
「ああ」
「じゃあ、私達も行きましょ、カガリ」
「ああ」
ナタルさんやサイーブさんは、物資の調達、私とカガリはバナディーヤの町に買出しに来た。
買出しと言ってもたいした物じゃない。私の気分を晴らさせてくれようと言うのだろう。
そして、サイーブさんやキサカさんからすれば私はたった一人カガリの正体を知っている。ついでに、と思ったんだろうな。
「でも、ほんとにここが虎の本拠地? 随分賑やかで、平和そうね」
「ふん! 付いて来い」
「え?」
「平和そうに見えたって、そんなものは見せかけだ」
「あぁ…!」
カガリが指し示すその向こうには、城砦のように陸上戦艦レセップスがそびえ立っていた。
「あれが、この街の本当の支配者だ。逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ」


26523:2007/09/28(金) 17:48:58 ID:???
「あーあぁ……たっくもう……こんなもん持ち込んでよぉ……何だってコックピットで寝泊まりしなきゃ、なんねぇんだよぉ……」
マードックはぼやいた。ストライクのコクピットがこんな事になっているとは。
「でも……いつからそんな……」
「さぁ……? けど、地球に降りてからじゃないの? それまで……そんな余裕なかったでしょ?」
「それにしても迂闊だったわ。パイロットとしてあまりにも優秀なものだからつい、正規の訓練も何も受けてない子供だということを私は……」
マリューは俯いた。
あの子を、決して二度と傷つけまいと誓ったのに、私は……
「君だけの、責任じゃないさ。俺も同じだ。いつでも信じられないほどの働きをしてきたからなぁ、必死だったんだろうに……
また、いつ攻撃があるか分からない。そしたら、自分が頑張って艦を守らなきゃならない。そう思い詰めて、追い込んでっちまったんだろうなぁ……自分を……」
「解消法に、心当たりは? 先輩でしょ?」
「え? ……あ……ん〜、あまり……参考にならないかも……」
マリューはピーンと来た。女関係だろう。思わず声がきつくなるのを自覚した。
「のようですわねぇ。取り敢えず、今日の外出で少しは気分が変わるといいんですけど!」
「……はぁ……いいよねぇ若者は……!」


「これでだいたい揃ったな。後は飯食って帰るだけか」
「お待たせねー」
「何、これ?」
「ドネルケバブさ! あー、疲れたし腹も減った。ほら、お前も食えよ。このチリソースを掛けてぇ……」
「あーいや待ったぁ! ちょっと待ったぁ! ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ! このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろうがぁ」
「ああ?」
突然、派手なアロハシャツにサングラスの目立つ男が声をかけて来る。
こんな所でいきなり親しそうに話し掛けて来る奴って、大抵なにか企んでるのよね。
あ・や・し・い!
「いや、常識というよりも……もっとこう、んー……そう! ヨーグルトソースを掛けないなんて、この料理に対する冒涜だよ!」
「なんなんだお前は!」
「あぁ……!」
あ、カガリはその男に従わず、思いっきりチリソースをかけた。
「見ず知らずの男に、私の食べ方にとやかく言われる筋合いはない!ハグッ……」
「あーーーなんという……」
私はその男の観察を終えた。とりあえず敵意はなさそうだ。でも、監視されている感じが……?
どこから? 私は気づかれないように周囲に気を配る。
「っんまーーーーいーーー! ほぅらルナも! ケバブにはチリソースが当たり前だ!」
「だぁぁ待ちたまえ! 彼女まで邪道に堕とす気か!?」
「何をするんだ! 引っ込んでろ!」
「君こそ何をする! ええい!この!」
「ぬぅぅぅ!」
「あ!」
「なんて事を!」
「え? あ〜〜〜!」
気がつくと私のケバブには盛大にチリソースとヨーグルトがかけられてしまっていた。

27523:2007/09/28(金) 17:49:49 ID:???
「いや〜悪かったねぇ〜」
「……ええ……まぁ……ミックスもなかなか……」
しょうがないから余計な分を落としながら食べる。
「しかし、何ぼんやりしてたんだ? ルナ」
カガリが聞いて来る。私は小声で答えた。
「気をつけて。私達、監視されてるわ」
「なんだって!」
カガリが叫ぶのと同時だった。
「伏せろ!」
アロハの男はテーブルをひっくり返すと、懐から銃を取り出し撃ち出した!
「うわぁ!」
「カガリ、伏せて!」
私はカガリの頭を抱えて地面に伏せる。
「無事か君達!」
「な、なんなんだ一体……」
「死ね! コーディネイター! 宇宙の化け物め!」
「青き清浄なる世界の為に!」
「ブルーコスモスか!」
「構わん! 全て排除しろ!」
気がつくと、私達の座っていた周囲のテーブルから男達が銃を取り出し、襲って来た男達に応戦している。
「うっっ!」
あ、壁の影から、こっちが狙われている!
目の前には転がって来た銃が! やるしかない!
(銃のせいじゃない。君はトリガーを引く瞬間に手首を捻る癖がある。だから着弾が散ってしまうんだ)
ふいに言葉が脳裏を過ぎる。
そうね、アスラン。あなたに言われた事がないけど言われた記憶がある言葉……
「うわぁ!」
見事命中!
「よし! 終わったか!?」
「隊長! 御無事で!」
襲い掛かってきたブルーコスモスを撃退していた警備兵の一人が、こちらへやって来る。
「ああ! 私は平気だ。彼女のおかげでな」
「「ぁ……アンドリュー・バルトフェルド……」」
サングラスを取ったアロハの男を見て、期せずして、私とカガリの声がだぶった。

「さ、どうぞ〜」
「いえ……私達はほんとにもう……」
私達は、なんとアンドリュー・バルトフェルドの車に乗せられ、彼が宿舎にしているらしい宮殿のような建物に連れて来られてしまった。
「いやいや〜、お茶を台無しにした上に助けてもらって、彼女なんか服グチャグチャじゃないの。
それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね?僕としては」
これからどうなるんだろう。私はともかくカガリは!? なんとか無事に帰してあげないと……
そんな私の不安を見抜いたのか、ふ、とバルトフェルドは笑った。

28523:2007/09/28(金) 17:51:12 ID:???
「こっちだ」
「ぁ!」
もう逃げられない……覚悟を決めた私達の前に、一人の女性が姿を現した。バルトフェルドに負けず劣らず妙な格好だ。
「この子ですの? アンディ」
「ああ。アイシャ、彼女をどうにかしてやってくれ。チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ」
「あらあら〜、ケバブねー」
「ぁ……ぅーん……」
「さ、いらっしゃい?」
「カ、カガリ……」
え、こんな状態で離れるなんて!
そんな私を宥める様にアイシャと言う名前らしい女性が言う。
「大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて」
「おーい! 君はこっちだ」
私は呼ばれるまま、日が差し込む大きな部屋へと入った。

「僕はコーヒーには、いささか自信があってねぇ」
「はぁ……」
「まぁ掛けたまえよ。くつろいでくれ。んっ」
……まな板の上の鯉、か。私はソファに座った。
「エヴィデンス01。実物を見た事は?」
「いえ、あ……」
私、見た事がある! 確かアプリリウス1で、大きな鯨石を誰かと見ていた!
私、プラントになんか言った事ないのに!
「見た事、あるかも……とっても大きくて、でも手で触れる位近くまで寄れた気がする」
「そうか。何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える?」
混乱する私をよそに、バルトフェルドは質問してくる。
「……羽根を除けば、鯨っぽいですね」
「これどう見ても羽根じゃない?普通鯨には羽根はないだろう」
「え……まぁ……あでも、それは外宇宙から来た、地球外生物の存在証拠ってことですから……」
「僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ」
「……じゃぁ、何ならいいんですか?」
「ん〜〜…、何ならと言われても困るが……、ところで、どう? コーヒーの方は」
「……よくわかりません」
「あ、君にはまだ分からんかなぁ、大人の味は」
資源コロニーのヘリオポリスでは、本物のコーヒーなんて贅沢品だ。私はコーヒーと言えばインスタントコーヒーしか飲んだ事がなかった。
おいしいと、言った方がよかっただろうか。でもこの相手には媚びる事はやめておいた方がいい気がした。
「本物のコーヒー、飲んだの初めてなんです」
「そうか? ぜひ好きになって欲しいものだねぇ。楽しいぞぉ」
バルトフェルドは、そう言うと自分もカップを手に取った。
「ん。キリマンジャロを増やしてみたがなかなか。ま、楽しくも厄介な存在だよねぇ、これも」
「……厄介、ですか? コーヒーが?」
「違ーう! 君はボケの才能があるねぇ。エヴィデンス01の事だよ」
そう言うとバルトフェルドは大げさに仰け反って見せた。
「こんなもの見つけちゃったから、希望って言うか、可能性が出てきちゃった訳だし」
「ぁぁ?」
「人はまだもっと先まで行ける、ってさ。この戦争の一番の根っ子だ」
「昔から良くある、植民地の独立戦争じゃないんですか?」
29523:2007/09/28(金) 17:52:23 ID:???
「それは……」
その時、さっきの女性がカガリを連れて入って来た。
「アンディー」
「おやおや!」
「ぁぁ……」
「あーほら。もう」
尻込みするカガリを押すアイシャさん。
「ああ……」
カガリは、なんと言うのだろう。髪をアップにして、身体に巻きつくような緑の、フリルが斜めに付いたドレスを着ていた。
「……綺麗ねぇ、カガリ」
「ドレスもよく似合うねぇ。と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ」
――! カガリの正体、ばれている!?
「勝手に言ってろ!」
「しゃべらなきゃ完璧」
「そう言うお前こそ、ほんとに砂漠の虎か? 何で人にこんなドレスを着せたりする? これも毎度のお遊びの一つか!」
「カガリ! 落ち着きなさい」
たしなめるけど、カガリは止まらない。
「ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」
「変装してヘラヘラ街で遊んでみたり、住民は逃がして街だけ焼いてみたり。ってことさ」
「いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ」
「くっ!ふざけるな!」
「君も死んだ方がマシなクチかね?」
「……ぁ……」
「そっちの彼女、君はどう思ってんの?」
「え?」
「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては」
「……」
やっぱり、ばれてた……
「お前どうしてそれを!」
「はっはっはっは。あまり真っ直ぐすぎるのも問題だぞ。戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなねぇ。
ならどうやって勝ち負けを決める?」
「そんなもの、どちらもこれ以上はやりたくないと思えば、に決まってるじゃないですか」
「片方が、もう止めたくても片方は止めたくない。どうすればいい?」
「……どう……」
「敵である者を、全て滅ぼすまで続けるかね?」
「あっ!」
バルトフェルドが、机の引出しから銃を出すとこちらに突きつけ……!
――私も隠しておいた銃をスカートに隠したホルスターから取り出し突きつける!
私は立ち上がるとカガリを背中にかばう。
「銃を仕舞って。私、ヘタなのよ。どこに弾が飛んで行くかわからない」
「……ははは。ヘタな事を脅しに使われるとはねぇ。君がヘタだとは思わないが、ま、いいでしょう」
バルトフェルドは銃を仕舞った。
「しかし、暴れるのは止めた方が賢明だなぁ。いくら君がバーサーカーでも、暴れて無事にここから脱出できるもんか」
そうかも知れない。でもなんとかカガリは無事に脱出させないと……
「ここに居るのはみんな君と同じ、コーディネイターなんだからなねぇ」
「え!?」
「……」
30523:2007/09/28(金) 17:52:55 ID:???
「お……お前……コーディネイターだったのか?」
「なんだ……カガリわかってると思ってた」
「君の戦闘を二回見た。砂漠の接地圧、熱対流のパラメーター。君は同胞の中でも、かなり優秀な方らしいな。
あのパイロットをナチュラルだと言われて素直に信じるほど、私は呑気ではない」
「……」
「君が何故同胞と敵対する道を選んだかは知らんが、あのモビルスーツのパイロットである以上、私と君は、敵同士だと言うことだな?」
「……地上のコーディネイターを、考えに入れずに無思慮にニュートロンジャマーをばら撒きまくりながら同胞!? 
自分に都合がいい時だけ同胞扱いしないで欲しいわね! 私の同胞はと言われればオーブ国民以外ないわ!」
「ルナ……」
「ふふ。やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねぇ」
「……ビクトリアのように? 少なくとも地球軍はそんな事はしない!」
「む……血のバレンタインはどう考える?」
「脅し、でしょう。プラントを何度も滅ぼせる程の核を保有しているにも拘らず、わざわざ試験プラントに一発しか使用しなかったのよ? 
地球軍にプラントを滅ぼす気があればとっくにその時に滅びているわ」
「……それは、プラントの防備に穴があったからだ」
「対して、勝手に同胞と呼ぶ地球在住コーディネイターをも巻き込んでの無差別虐殺をするプラント。その結果、裏切ったのは自分達なのに、
なぜあなた達の言う地球の同胞に恨まれるのかさえ理解できず裏切り者扱いするの!?」
「……やれやれ。舌戦では分が悪いようだねぇ。ま、今日の君は命の恩人だし、ここは戦場ではない。帰りたまえ。話せて楽しかったよ。
よかったかどうかは分からんがねぇ。また戦場でな」
さっきの女性が出て来て扉を開ける。
「ああ、そのドレスはあげるよ。ささやかなお詫びだ」
「誰がいるか! 私の服を寄越せ!」
「もらっときなさいよ、カガリ」
つい、口を出してしまった。だって、このドレスを着たカガリはとても素敵で、なんと言うか、もったいなかったのだ。
「ははは。君はバーサーカーなだけじゃない、柔軟性もあるようだなぁ」
バルトフェルドはおかしそうにくっくっくと笑った。アイシャさんも笑っている。
「君にも見繕って上げたいが時間がない。これをあげよう」
バルトフェルドさんはいくつかの袋を私にくれた。
「これは?」
「コーヒー豆さ。銘柄は袋に書いてある。ぜひ同好の士になってもらいたいものだねぇ。宇宙じゃ贅沢品で、こんな物に凝る奴なんて少なくてね」
そう言ったバルトフェルドさんの顔がさびしそうに見えたのは気のせいだったろうか。

31523:2007/09/28(金) 17:53:11 ID:???
「ねぇカガリ」
待ち合わせの場所まで車で送られて行く時、ドレスが入った紙袋を抱えてるカガリに聞いてみた。不安だったのだ。
「私がコーディネイターだって知って、どう思った?」
「ルナは、ルナだろう」
怒ったようにカガリは言った。
「私はナチュラルだから、コーディネイターだからと言って態度を変えないぞ。むしろ、ルナには済まない。コーディネイターだから、
モビルスーツが操縦できるからと言って、ずいぶん無理をさせられたろう。それもオーブに力がないせいだ。済まない」
「……ありがとう。私、コーディネイターだからって結構嫌な目に遭って来たから……」
涙が出てきた。
「……泣くな……いや。ま、いいか。肩を貸してやる。この前と逆だな」
ありがたくカガリの肩に頭を埋めた。
「……でも、カガリも鈍いわね。今時モビルスーツを操縦できるのはまだまだコーディネイターくらいよ」
「言ったな。その元気があれば大丈夫だ」
「ふふふ」
「ははは」
助手席の兵士が、何事かとこちらに振り向いた。それを見てまた二人で顔を見合わせて笑ってしまった。
通り過ぎて行くバナディーヤの街は、先ほどの騒ぎなんかなかったみたいに賑やかだった。そんな風に逞しく、私もなりたい。
32523:2007/09/28(金) 17:59:41 ID:???
うーん。虎とルナマリア。なかなかうまい問答にならなかった気がします。

ジェス・リブル。種死アストレイしか読んでないのでよくわかりません。
報道がプラント側(ラクス側?)に有利に偏ってるとか聞きますけどどんなもんでしょうか?
33通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 18:28:40 ID:???
>>32
朝日新聞みたいなもん
34通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 20:41:40 ID:???
GJ!

プラントの理論は地球側から見ると無理が多いですからねえ。問答を巧く収めるのは難しいと思いますよ。
そもそも種の元ネタの一年戦争は、一週間戦争、ルウム戦争ではジオンが勝ったもののレビルの脱出でその後の停戦協定がまとまらず、その結果として地球侵攻に踏み切ったと見ることも出来ます。
しかしヤキン戦役は地球軍が戦争をおっぱじめたのに戦争の前半からザフトが地球に侵攻するというかなり不思議な状況(歴史を見れば皆無ではないでしょうが)なので一体ザフトは何を考えているのかと。
35通常の名無しさんの3倍:2007/09/29(土) 21:10:57 ID:???
そうなんですよねー。プラントが何を思って戦争を仕掛けたのか、あんな戦争の仕方したのか、
色々情報集めて常識で検討すると泥沼に踏み込む感じです。
36通常の名無しさんの3倍:2007/10/01(月) 20:00:28 ID:???
>>33
そんな言い方は止めろ、アストレイファンとして不愉快だ
37通常の名無しさんの3倍:2007/10/01(月) 20:51:25 ID:???
不愉快なら偏ってないことを示せばいいんだぜ?
38通常の名無しさんの3倍:2007/10/03(水) 02:43:09 ID:???
保守
39523:2007/10/04(木) 18:09:02 ID:???
そろそろ頃合だろう。マリューは思った。ザフトの戦力も、ここ何回かの戦闘で目減りしている。今仕掛けなければ、
ジブラルタルからの補給で砂漠の虎の戦力は元に戻ってしまうだろう。
「この辺りは、廃坑の空洞だらけだ。こっちには俺達が仕掛けた地雷原がある。戦場にしようってんならこの辺だろう。
向こうもそう考えてくるだろうし。せっかく仕掛けた地雷を使わねぇって手はねぇ」
サイーブが広げた地図を指し示す。
「本当にそれでいいのか?俺達はともかく、あんたらの装備じゃぁ被害はかなり出るぞ」
「虎に従い、奴の下で、奴等のために働けば、確かに俺達にも平穏な暮らしは約束されるんだろうよ。バナディーヤのようにな」
サイーブは思う。だが、と。家畜のような暮らしになんの価値があるものか! 明日の保証があるものか!
「女達からはそうしようって声も聞こえる。だが、支配者の手はきまぐれだ。何百年、俺達の一族がそれに泣いてきたと思う?」
「ぅ……」
「支配はされない、そしてしない。俺達が望むのはそれだけだ。虎に押さえられた東の鉱区を取り戻せば、それも叶うだろう。
へぇ……。こっちはあんたらの力を借りようってんだ。それでいいだろう、変な気遣いは無用だ」
「おーけー、分かった。艦長?」
「ぁ……分かりました。では、レセップス突破作戦へのご協力、喜んでお請け致します」
「ああ」


「なんでザウートなんて寄こすかねぇ、ジブラルタルの連中は。バクゥは品切れか?」
バルトフェルドはぼやいた。
バクゥの代わりがザウートなんて屁の突っ張りにもなりゃしない。だいたいスエズ攻略戦で地球軍のリニアガンダンク部隊に
散々にやられた機体じゃないか。
「はぁ……これ以上は回せないと言うことで……。その埋め合わせのつもりですかねぇ。あの二人は」
「かえって邪魔なだけのような気がするけどなぁ、宇宙戦の経験しかないんじゃぁ」
「エリート部隊ですからねぇ」
「大体クルーゼ隊ってのが気に入らん。僕はあいつが嫌いでね」
ザラにアマルフィか。とんだお坊ちゃんのお守りを押し付けられたな。
まぁ、会って見るとしようか。
バルトフェルドは踵を返した。

「うわっ!」
突然吹いてきた砂の混じった風にアスランとニコルは声を上げてしまった。
「なんですかこれは……酷い所ですね」
「砂漠はその身で知ってこそってねぇ。ようこそレセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルドだ」
やはり、あまり使い物になりそうにないなぁと、心の中で思いながら、バルトフェルドは二人に歓迎の言葉を述べた。
なんたって、評議会議員の息子だものな。
「クルーゼ隊、アスラン・ザラです」
「同じく、ニコル・アマルフィです」
「宇宙から大変だったなぁ。歓迎するよ」
「ありがとうございます。足付きの動きは?」
「あの船なら、ここから南東へ180kmの地点、レジスタンスの基地にいるよ。無人偵察機を飛ばしてある。映像を見るかね?」
「……」
バルトフェルドは二人の機体を見る。なるほど。
「なるほど、同系統の機体だな。あいつとよく似ている」
だが、こいつらに、あのストライク程の活躍が出来るかな? 皮肉めいた気持ちで心の中でつぶやいた。
「バルトフェルド隊長は、既に連合のモビルスーツと交戦されたと聞きましたが」
「ああそうだな。僕もクルーゼ隊を笑えんよ」
バルトフェルドは自嘲気味に言うと口を歪めた。
40523:2007/10/04(木) 18:09:45 ID:???


「これをアフメドが?」
「ああ、あんたにもらって欲しいんだよ。ほんとは加工してから渡すつもりだったらしいけどねぇ」
「……」
「ほんとに男達は戦争、戦争って、自分からどんどん死にたがる。あんたは、死んじゃいけないよ」
「……おばさん……」
カガリは思った。少し前の自分なら、今も、自分でバギーに乗って戦いに行ったろう。
でも今は……死ねないな。私は国に帰ってやる事があるから。
カガリは祈った。戦に出かける男達ができるだけ多く戻ってくるように……
そして、ルナマリアが無事で戻ってくるようにと。

とうとう、アークエンジェルはレセップスを突破するために動き出した。
「はぁ……」
もうすぐ戦いか。砂漠の虎はきっと来る。
「なんだ遅いなぁ。早く食えよ。ほら、これも」
「え! あ、あの……」
「ん〜。やっぱ、現地調達のもんは旨いねぇ」
「フラガさん……まだ食べるんですか?」
「俺達はこれから戦いに行くんだぜ?食っとかなきゃ、力でないでしょ。ほら、ソースはヨーグルトのが旨いぞぉ」
「ぁぁ!」
「ん?」
「いえ……虎もそう言ってたから。ヨーグルトのが旨いって」
「ぁ……んー!味の分かる男だな。ハグゥ。けど、敵の事なんか知らない方がいいんだ。早く忘れちまえ」
「え?」
「これから、命のやり取りをしようって相手の事なんか、知ってたってやりにくいだけだろ」
「そうですね。知らなきゃ良かった」
でも……プラントの……ザフトの人の考え方もわかった。穏健だと言う砂漠の虎でさえ、ナチュラルへの蔑視が、コーディネイター、
ううん。プラントのコーディネイター中心的な考えが滲み出ている。そんな相手に負ける訳にはいかない!
――! 爆音と衝撃が響く!
「あぁ!」
「なんだ!? 爆発か!?」
「始まったの!?」
フラガさんが艦内通話機に走る。
「ブリッジ! どうした!?」
『レジスタンスの地雷原がやられました!』
『総員、第一戦闘配備! 繰り返す! 総員、第一戦闘配備!』
私とフラガさんは顔を見合すと、格納庫へ向かった。
「連中には悪いが、レジスタンスの戦力なんぞはっきり言って当てにならん。お嬢ちゃんも踏ん張れよ。まぁ、最近のお前さんなら、
心配ないとは思うけどな」
「ええ。頑張るわ」

41523:2007/10/04(木) 18:10:53 ID:???
「あ! レ、レーダーに…!」
「え!?」
「レーダーに敵機とおぼしき影。撹乱酷く数、補足不能。1時半の方向です!」
「その後方に、大型の熱量2。敵空母、及び駆逐艦と思われます!」
とうとう本腰入れて来たわね。マリューは眦を決した。
「対空、対艦、対モビルスーツ戦闘、迎撃開始!」
「ストライク、スカイグラスパー、発進!」

「スカイグラスパー1号、フラガ機、発進位置へ。進路クリアー、フラガ機、どうぞ! スカイグラスパー2号、ジョン機、発進位置へ。
進路クリアー、ジョン機、どうぞ!」
次々にスカイグラスパーは飛び立っていく。次は、私!
「APU起動。カタパルト、接続。ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカー、スタンバイ。システム、オールグリーン。
続いてストライク、どうぞ!」
「ルナマリア・ホーク、行きます!」

ストライクがカタパルトから飛び立つと、いきなり戦闘ヘリがストライクの進路を塞いだ! ストライクはシールドで防ぎ、
イーゲルシュテルンで反撃、撃墜する。
それを見てマリューは決断する。数多く居る戦闘ヘリにスカイグラスパーとストライクが拘束されれば、負ける。
「スカイグラスパー及びストライクは敵艦及び敵モビルスーツの撃破に専念せよ!」
「よろしいのですか!?」
ナタルが声を上げる。マリューは毅然と答える。
「戦闘ヘリの攻撃ぐらい、防いで見せなさい! そのくらいの攻撃で、この艦は沈みはしないわ!」

『ひょー。言うねぇ。じゃ、ちょっくら敵艦に行って来るわ。お嬢ちゃんとジョン少尉は対モビルスーツと艦の護衛に当たれ!』
「「はい!」」

「……バクゥは何機居るの? 3、4……5機ね!」
『突出している奴を叩くぞ! 上は押さえる!』
「はい!」
……! バクゥの口のあたり……あれはビームサーベルだわ! 新型ね! 気をつけないと……
バクゥはこの前のように私を遠巻きにせず、積極的に進んでぶつかって来ようと言う感じが見て取れる。
やはりビームサーベルが装備されたせいね。でもそんな付け焼刃の攻撃!
ジョン少尉がキャノン砲と機関砲で地上を牽制する。
私はそのすぐ後を飛び、横合いからレールガン装備のバクゥの背中にビームサーベルを突き立てる!
レジスタンスのバギーがバクゥに蹴飛ばされる! あんたの相手は私よ!
ビームライフルを装備し撃つ――! ミサイルポッドに命中!
――! 横合いからバクゥが飛び掛ってきた!
「そんな、付け焼刃の、接近戦なんかでぇ! やられるもんですか!」
ビームライフルを手放し、背中を地面に付けて、両手を振りかぶりビームサーベルでバクゥの正中心線を斬る!
「次! 敵は、敵はどこ!?」

42523:2007/10/04(木) 18:11:42 ID:???
「ECM、及びECCM強度、17%上がります!
「バリアント砲身温度、危険域に近づきつつあります」
「艦長! ローエングリンの使用許可を!」
「駄目よ!あれは地表への汚染被害が大きすぎるわ! バリアントの出力と、チャージサイクルで対応して!」
「しかし……」
「命令です!」
「……了解しました」

フラガは隙を狙っていた。アークエンジェルは戦闘ヘリに敵空母、駆逐艦。ルナマリアとジョンはバクゥと共に、
多数の相手を相手にしている。早く自分が楽にしてやらねば……
だが、敵はザウートを艦上に上げて砲台代わりにしてやがる。火力は侮れない。着実に少しずつ火力を奪って
いくしかない状況に焦れていた。
「ちまちまと! ザウートを片付けていくのは面倒だねぇ!」
……!一瞬、偶然ながらぽっかり開いた空間が出来た。
「くぉぉぉぉ!」
フラガはすかさずそこにアグニをぶち込んだ!

「機関区に被弾!速力50%にダウン!」
「消火急げ! 転進して残骸の影に入るんだ!」
駆逐艦が速力を急速に落とすのを確認すると、フラガはレセップスへと向かった。

「なんて強力な砲だ!」
レセップスでは、ダコスタがアグニの威力に驚いていた。だが、彼らも何の用意もなくこの戦いに臨んだ訳ではなかった。
「間もなく、ヘンリーカーターが配置に付く! 持ち堪えろ!」

「うわぁ!」
突然襲った衝撃にアークエンジェルの乗員は悲鳴を上げる。
「6時の方向に艦影! 敵艦です!」
「なんですって!?」
「もう一隻? 伏せていたのか!」

「アークエンジェルが! あ!」
バクゥを片付け、アークエンジェルの救援に向かおうとする私を一機の黄色のカラーリングをされたモビルスーツが遮った!
『君の相手は私だよ、奇妙なパイロット君』
「……! 虎か!」
まるで虎のようなモビルスーツだ。
いよいよ出て来た。私の胸に緊張が走る。
『アークエンジェルの救援には僕が行く! 君はこのモビルスーツを!』
「はい!」
ジョン少尉のスカイグラスパーはアークエンジェルの方へと去って行く。

43523:2007/10/04(木) 18:12:26 ID:???
私はビームライフルで牽制する。虎は易々と避ける。
「やっぱりだめね」
私はビームサーベルを抜き放つと向かって来る虎に突進! 虎は……跳んだ!?
しまった! ジョン少尉はいないんだ!
「くっ」
辛うじて左側のウイングを切り裂いた!
よろめいた私に素早く虎が襲い掛かる。
今度は!? 下!
虎の高速で回転するクローラーがシールドを弾き飛ばす! ストライクの本体にまでクローラーが迫りガリガリと音を立てる! 
バクゥ5機と戦った後のこれで、このままじゃパワーが……!

「ヘルダート、コリントス、てぇ!」
「フラガ少佐から入電! レセップス艦上にイージスとブリッツ!」
「なんだと? こ、これは……レセップスの甲板上にイージスとブリッツを確認!」
「なに?」
「スラスター全開! 上昇! ゴットフリートの射線が取れない!」
「やってます! しかし、船体が何かに引っかかってて……」
衝撃が襲う!
「うわぁ!」
『アークエンジェル! 高度を上げろ!』
「ジョン少尉!? 船体が何かに引っかかってて上昇出来ないの!」
『……荒っぽいですけど、我慢してくださいよ!」
再び衝撃が襲う。
「きゃぁ!」
「うわ……外れた?」
「面舵60度! ナタル!」
「ゴットフリート、照準!」

「第4、第9区画消失!第3区画大破!」
「火災発生! 機関、及び振動モーター停止!」
「くっそー!」
レセップスに再び衝撃が走る。
「今度はなんだ!?」
「敵の支援機、ビートリーをやった奴です!」
「このままでは……隊長ーーー!」

44523:2007/10/04(木) 18:12:42 ID:???
ダコスタからの悲鳴のような報告を、バルトフェルド穏やかな心持で聞いた。
自分はやるべき事はやったのだ……
死力を尽くして戦いあった。もはや結果などどうでもいい。
「ダコスタ君」
『は、はい!』
「退艦命令を出せ!」
『隊長……』
「勝敗は決した。残存兵をまとめてバナディーヤに引き揚げ、ジブラルタルと連絡を取れ!」
『隊長……!』
「君も脱出しろ。アイシャ」
「そんなことするくらいなら、死んだ方がマシね」
「君もバカだな」
「なんとでも」
「では、付き合ってくれ!」
後は、自分が戦士として戦い抜くだけ……バルトフェルドは高揚していた。

「バルトフェルドさん!」
まだ、向かって来るの? 残った敵艦は後退し始めたと言うのに。
『まだだぞ! お嬢ちゃん!』
「もう止めて下さい! 勝負は付きました! 降伏を!」
『言ったはずだぞ! 戦争には明確な終わりのルールなどないと! 片方が戦いを止めなかったらどうするのかと!』
「くっ、バルトフェルドさん! ああ!」

残った虎のウイングを切り裂き、そしてストライクのビームサーベルの光が消えた。
フェイズシフトダウン――!
『戦うしかなかろう。互いに敵である限り! どちらかが滅びるまでな!』
「そんな考えしかできないから、あなたは――!」
頭がクリアになる――
頭の中が高速で計算し始める。
逃げる? 無駄無駄無駄! 戦うしかない!
残った武器は……初めてこのストライクに乗った時の事を思い出す。
エールストライカーをパージ! 身軽になる!
そしてアーマーシュナイダー!
私は虎に駆けて行く! ジャンプ! こちらを切り裂こうとする虎の頭を踏みつけ! 虎の背中にアーマーシュナイダーを、
ストライクの体重をかけて突き立てる!
ストライクはジャンプした勢いのまま後方に肩から転がり……
虎は……止まった? 虎モビルスーツのビームサーベルの光が消え、ぴくりともしない。
あ! 虎モビルスーツが、アーマーシュナイダーを突き刺した背中が大きく爆発した。
「はぁはぁはぁ……」
勝った、のね。
後味は、苦かった。
やっぱり、命のやり取りをする相手の事なんか、知ったってやりにくいだけ……
ふと、戦闘中に飛び込んできた通信がふいに蘇る。
(レセップス艦上にイージスとブリッツ!)
アスラン……やっぱり私、あなたとやりあいたくなんてないよ。
私はデパスを口にほおりこんだ。
45523:2007/10/04(木) 18:15:42 ID:???
続く。

ジョブ・ジョン君、地味に活躍してます。

ジェス・リブル、根はいい人みたいですね。もうちょっと考えが深まればなおいいかもしれません。
46通常の名無しさんの3倍:2007/10/04(木) 19:03:58 ID:???
GJ!
今回はお坊ちゃん達の銭湯描写は無いみたいですね?それとも延長戦かな?(そりゃないか)
47通常の名無しさんの3倍:2007/10/04(木) 23:08:53 ID:???
GJ!

イージスとブリッツは幸か不幸か砂の中に沈む醜態は演じなかったようですね。
48通常の名無しさんの3倍:2007/10/05(金) 00:23:21 ID:???
姿を消したブリッツの足跡と砂埃がしっかり見えているとか
MA形態に変形したイージスが飛べずにボテッと落ちるとか
49523:2007/10/06(土) 18:41:46 ID:???
「ああぁー! お月様だぁ!! おおーー!」
みんなが外で騒いでいる。
戦いが終わった夜。昼間の激戦が嘘のように、砂漠に綺麗な月が浮かんだ。
今夜は祝いの夜だ。そして……鎮魂の夜。
サイーブとマリュー、ナタル、フラガはテントの一つで祝杯をあげる。
「明けの砂漠に!」
「勝ち取った、未来に!」
「じゃあそういうことで!」
イスラム教徒が多いここらへんも再構築戦争終結辺りからお酒に寛容になったらしい。と言うより、かつて中世に
イスラム教が持っていた寛容さを取り戻したと言ったところだろうか。
「ゴホッゴホッゴホッ!」
ナタルがむせている。お酒、弱いのか? それに比べてこっちは……フラガは横を見る。
対照的に、マリューさんはゴクゴクと喉を鳴らして一気に杯を干した。
「プハーーー! おいしいわねぇ!」
「はっはっはっは」
「でも、まだ大変だなぁ、あんた達も。虎が居なくなったって、ザフトは居なくなったわけじゃない。奴等は鉱山が
欲しいんだろ? すぐ、次が来るぜ?」
「その時はまた、戦う。戦い続けるさ! 俺達は。俺達を虐げようとする奴等とな!」
「父さん! 戦士を送る祈りをするって、長老が」
「ん」

「アジブ・シャムセリム、アフメド・エルフォズル、アル・ガウアリ、シュタイン・オーファ、ファムドム・ボンナ、
ステファン・リンドベルガ、ロワジ・アサド……」
長老が、散って行った者達の名前を読み上げる。アフメドの名前も呼ばれた。
「戦い続ける、か」
空に向かって放たれる銃を見ながらフラガさんがつぶやいた。
あの先に、アフメドはいるんだろうか?
「ドバン・タルコフ、ハルファ・ピンラード、ムサル・パラファ……」
みんなの魂が安らぎますように……私は祈る。
戦士を送る祈りは続く……


50523:2007/10/06(土) 18:42:39 ID:???
「だから私を連れて行けと言っている! あんた達よりは情勢に詳しいし、補給の問題やら何やらあった時には、
力になってやれるしな」
「……でも……」
マリューは困惑していた。レジスタンスの少女が、同行を申し出たのだ。
「無論、アラスカまで行こうってんじゃないし、地球軍に入るつもりもないが、今は必要だろ?」
カガリは、インド洋から太平洋に出てアラスカを目指す、と言うアークエンジェルの計画を聞いた時、アークエンジェルに
同乗しようと決めていた。もちろん、オーブの近くに着けば下ろしてもらうつもりだった。
カガリは自分で体験したかったのだ。ルナマリアに志願を決意させた地球軍を、その訳を。
「君が、かい?」
「ぁいや……だからその……いろんな助けがだ!」
「助けって言われても……」
「女神様ね」
フラガは、カガリの事を勝利の女神だ、と言ったサイーブの事を思い出した。どうやらこの子にはなにかあるらしい。
「んー……ともかく、私はアークエンジェルと共に行くぞ! もう決めたからな!」
そう言うと、カガリはマリュー達の前を去って行った。
「……で、あの子、ほんとは何者なの?」
どうやら護衛として一緒に乗り込むつもりらしいキサカにフラガは尋ねた。
「……」
返って来たのは、沈黙だけだった。



「海だ! 海に出たぞー!」
「ほんとか!」
「ひさしぶりー!」
みんな、窓に駆け寄る。
『非番の者は、デッキに上がる事を許可します』
艦内放送が流れた。
「ひゃっほー! 行こうぜ! みんな」

「あーーー! 気持ちいいぃ!」
ミリィが叫ぶ。
いい潮風が吹いてくる。
やっぱり海は懐かしいなぁ。
私も思い切り深呼吸する。
「地球の海ぃ! すんげー久しぶりー!」
トールも叫ぶ。
「「あっはっはっ」」
「でもやっぱ、なんか変な感じ」
「そっか、カズイは海初めてか」
「うん」
「ヘリオポリス生まれだったもんなぁ」
「砂漠にも驚いたけどさぁ、何かこっちのが怖いなぁ。深いとこは凄く深いんだろ?」
「ああ」
「怪獣が居るかもよぉ?」
「ええ!?」
脅かすミリィ。ほんとに怯えるカズイ。それを見て、またみんなで笑った。
51523:2007/10/06(土) 18:43:35 ID:???
「しかし呆れたものだな、地球軍も。アラスカまで自力で来いと言っておいて、補給も寄こさないとはな。水や食料なら
どうにかなるだろうが、戦闘は極力避けるのが、賢明だろうな。汎ムスリム会議も未だ中立だ」
キサカは、ユーラシア大陸沿岸には近寄らず、インド洋の真ん中を行く案を提案した。
マリューはキサカを少し睨む。
「……ふぅ。なにしろザフトの支配地域に降下したのが想定外でしたので。このような状況では本部と連絡も取れませんし。
連絡が取れればきっと……」
本部と連絡が取れれば、必ず支援を送ってくれる。そのような意味合いを含ませて、マリューは言った。
「だが、インド洋のど真ん中を行くと言うのは、こちらにとっても厳しいぞ。何かあった場合には、逃げ込める場所もない」
ナタルが懸念を口にする。
「ザフトは、領土拡大戦をやっているわけではないんだ。海洋の真ん中は、一番手薄だ。あとは運だな」
開き直ったようにキサカが口にする。
「了解しました」
マリューは決断した。
「沿岸には監視の目があるでしょう。アークエンジェルはインド洋のど真ん中を行きます!」


「レ、レーダーに反応!」
「ぇ?」
「また民間機とかじゃないのか? ……早い!」
「これは! 攪乱酷く、特定できませんが、これは民間機ではありません!」
「総員、第二戦闘配備! 機種特定急いで!」
マリューの若干安心していた気分は一発で吹っ飛んだ。
そうだ。ここはアデン湾。ザフトのスエズ基地からも近い。カーペンタリア=スエズ=ジブラルタルを結ぶ交通の要所だ。
見張られていてもおかしくない。
「ライブラリー照合……」
「ザフト軍、大気圏内用モビルスーツ、ディンと思われます!」
「ん……総員、第一戦闘配備! フラガ少佐、ジョン少尉、ホーク少尉は搭乗機へ!」
「艦長! ストライクは……」
「空も飛べなけりゃ泳げもしないってことくらい知ってるわ。でも、なんとかしなきゃ……砲台代わりにはなるわ!」
「く……」
「ディン接近! 10時、4時の方向です!」
「ミサイル発射管、7番から10番、ウォンバット装填! てぇ! イーゲルシュテルン起動!」

「スカイグラスパー1号、発進位置へ。スカイグラスパー、フラガ機。進路クリアー。発進どうぞ!」
スカイグラスパーが発進して行く。
ディンは三次元機動能力や旋回性は高いけど、フラガさんやジョンさんはスカイグラスパーの高速を生かして牽制している。
よかった。これなら私の出る幕もなさそう……! 艦が、離水している!?

52523:2007/10/06(土) 18:44:18 ID:???
「あ?ソナーに感あり。4、いや2」
「なに?」
「このスピード……推進音……モビルスーツです!」
「なんだと!? 水中用モビルスーツ……」
「ソナーに突発音! 今度は魚雷です!」
「回避!」
「間に合いません!」
「くっ! 推力最大! 離水!」
「くっ……」

「水中用モビルスーツだ、お嬢ちゃん! 撃てるか!」
「やってみます」
ビームライフルを三連射。外れ。逆に、ザフトの水中用モビルスーツ――グーンはこちらに向けてミサイルのような物を
飛ばしてくる。このままじゃあ、一方的にやられるだけ!
「駄目……ここからじゃあ。マードックさん!」
「なんだぁ!」
「第8艦隊からの補給にバズーカがありましたよね?」
「あー? あったがどうした?」
「用意して下さい。海に降ります!」
「降りる!? 降りるたって! ストライクはな……!」
「分かってます! でも、なんとかしなきゃ!」
また! ミサイルがグーンから撃たれる。大した威力じゃない物の、癪に障る。

バズーカを装備して出ると、グーンは海上に頭を出してフォノンメーザー砲を撃とうとしている。
させない!
(落ちるなよ、落ちても助けてやれない)
(意地悪ね)
頭の中で、声がする。まただ。
「でも! そんな事言ってられないのよ!」
今は頭の声を無視!
スラスターを吹かしてグーンの上に移動すると、バズーカを撃つ!
大きな水しぶきが上がる。やったの?
まだ水しぶきが収まらないまま、 ストライクは海に沈んだ。
いた! さすがにやられてないか。
グーンは魚雷を放ってくる。
そんな物にやられない!
こちらもバズーカを放つ。
――! 体当たりで来た!
バズーカを離しそうになって慌ててしっかり握る。
今度は後ろから!?
とっさに後ろから体当たりしてきたグーンのふちに手をかけ、つかまると思い切ってバズーカを捨て、アーマーシュナイダーを
取り出す! グーンの体表面を突き刺し切り裂く!
動かなくなったグーンから手を離すとグーンはしばらく進み、爆発した。

53523:2007/10/06(土) 18:44:53 ID:???
もう一機は?
前方から高速魚雷を放って来る。当たってしまう! ストライクの周囲で連続して爆発する!
あ、アーマーシュナイダーを落としてしまった!
チャンスと見たのか、グーンは体当たりをしてくる。
「なめんじゃないわよ! 格闘戦も出来ないモビルスーツが!」
私は、もう一つのアーマーシュナイダーを取り出し、グーンの頭に突き立て! グズグズと切り裂いてゆく!
身を横に捻って離れると、そいつも爆発した。
海から上がると、ディンは、一機を失い撤退したとの事だった。
そう言えば、なんで私ディンとかグーンとかザフトのモビルスーツの事わかっちゃうんだろう。
守護霊様が教えてくれるのかな。
私はもう、考えても無駄な事は悩まないようにしていた。


「潜水母艦……と言うこと?」
「うん……いくらなんでも、カーペンタリアから直接は無理だ。こっちだって動いてんだしさ。ギリギリ来て戦えたって、
帰れないからなぁ」
「ディンも、スエズからでも無理ですわよね」
「洋上艦や航空機なら、いくらなんでも見逃さないだろうけど、水中はこっちも慣れてないからねぇ」
そうなのだ。マリューは思う。アークエンジェルは元々宇宙用で、大気圏内航行能力はあるものの、それは付け足し
みたいな物だ。
それほど高空は飛べない、最も強力な兵器ローエングリンは地上の汚染に配慮して使えない。艦体下面の武装の
貧弱さ。ソナーすらも最初は付いていなかったのだ。バナディーヤでザフトの物を非正規に補給できなければどうなっていたか。
マリューは頭が痛かった。
「今度来たら、そっちも叩かないと。下手すりゃずっと追い回されるぜ」
「ですわねぇ……しかし……」
「ガンバガンバ!」
「うわっと」
また悩みのスパイラルに落ち込もうとした時、いきなりフラガに背中を叩かれた!
「どうにかなるよー。なるべく浅い海の上行くようにしてさぁ。これまでだって、どうにかなってきたんだから」
「まーた根拠なくそんなこと!」
「それが励ましってもんでしょ」
「あっ……」
「あはははは」
「もう……うふ……」
ありがとう。
マリューは心の中でフラガに礼を言う。
貴方のおかげで悩みも軽くなるわ。


54523:2007/10/06(土) 18:45:35 ID:???
「やっぱ駄目かなぁ」
「だって、目的地アラスカだぜ? オーブへ寄るなんて、遠回りになるだけじゃないか」
「大体寄ってどうすんの? 私達今は軍人よ? 作戦行動中は除隊できないって言われたじゃない」
「でもこんな予定じゃなかったじゃないか! アラスカへ降りるだけだって……だったらって僕もさぁ!」
「戦争には相手があるんだ。しょうがないだろ!」
「サイ……」
「カズイ、ルナの前で今みたいな事言うなよ? 一時はコクピットで寝泊りするぐらいに気にしてんだ。
俺達を巻き込んじまったってさぁ!」
カガリは立ち上がって食堂を出た。
「カガリ!」
キサカが慌てて追いかけて来る。
艦長の所にでも行ってオーブに寄れと言うとでも思ったか?
カガリは苦笑した。
「分かっている。何も言うな。私は何も言ってないぞ」
「なら、いいですが」
「そりゃ、何かあれば、と思ってはいるが」
「カガリ!」
「しょうがないだろ? いきさつも分かってはいるが、この船とあいつは沈めちゃいけないって、どうしてもそんな気が
するんだから……」
「んー……」
「きっとハウメアのお導きなんだろ? うん。あ、や! ルナ」
「あ、カガリ。食事済んだの?」
「うん、ルナはこれからか?」
「うん。士官になったんだからって、暇な時間あると艦長さん達に色々教わってるのよ」
「そうか、大変だな」
「結構面白いわよ」
「そうか? じゃあ地球軍を除隊したらオーブ軍に来い。優遇するぞ」
「あはは。じゃね!」




55523:2007/10/06(土) 18:45:47 ID:???
「アスラン! クルーゼ隊は第二ブリーフィングルームに集合ですって」
「ああ」
アスランとニコルが部屋に入ると、イザークが大声を上げていた。
「お願いします隊長! あいつを追わせて下さい!」
「イザーク、感情的になりすぎだぞ」
「ですが……」
「失礼します!」
「ぁ、ふん!」
「よう、お久しぶり」
「足付きがデータを持ってアラスカに入るのは、なんとしても阻止せねばならん。だがそれは既にカーペンタリアの
任務となっている」
「我々の仕事です隊長! あいつは最期まで我々の手で!」
「私も同じ気持ちです隊長!」
「ディアッカ……」
ニコルが呟く。
「ふん! 俺もね、散々屈辱を味合わされたんだよ」
そうだな。イザークとディアッカは二度もあいつにやられている。いや、やられているのは俺も同じか。
アスランは嘆く。
ルナ、ルナ、何でお前はそこまで、ザフトのエースに目を付けられるまでに強くなっちまったんだ。
「無論私とて、想いは同じだ。スピットブレイクの準備もあるため、私は動けんが……。そうまで言うなら君達だけで
やってみるかね?」
「はい!」
「ではイザーク、ディアッカ、ニコル、アスランで隊を結成し、指揮は……そうだな……アスラン、君に任せよう」
「え!?」
「うっ!」
「カーペンタリアで母艦を受領できるよう手配せよ。直ちに移動準備にかかれ!」
「うっ……うっ……」
すごい目付きでイザークがこちらを睨んでいる。
そんなに俺の下に入るのが嫌か?
アスランは少し傷ついた。
「隊長……私が?」
「色々と因縁のある船だ。難しいとは思うが、君に期待する。アスラン」
「ザラ隊ね……」
「ふん!お手並み拝見と行こうじゃない」
(ストライク……討たねば次に討たれるのは君かもしれんぞ)
ルナ……俺は今度会ったら討つとまで言ったのに、あいつは、それでも俺と戦いたくないと言った……
アスランの顔が一瞬苦渋に満ちた。

56523:2007/10/06(土) 18:53:38 ID:???
続く
OO放映開始記念

本文にも書きましたが種死の化け物と化したアークエンジェルじゃなくこの頃のアークエンジェルってほんとに地球上じゃ使い辛いです。
色々ルートも検討したのですが、結局史実のままのコース取りとなっちゃいました。
ブルーフレームのような水中戦装備もありませんしストライクも水中戦大変です。

>>46,47
ニコルにアスランは優等生なので真面目に陸上戦艦の上で砲台やってました。おかげで史実のイザーク、ディアッカのようなみっともない事には
ならずにすみました。

>>48
おおう! それはおもしろそうな案! 考え付かなかった自分が憎い。
57通常の名無しさんの3倍:2007/10/06(土) 18:58:06 ID:???
おお、GJ!
今回はあまり変更は無いようですね。
OOの放送も始まりましたが引き続きがんばってください。
58523:2007/10/07(日) 09:22:50 ID:???
「ソナーに感。7時の方向。モビルスーツです」
「間違いないか?」
「数は?」
「音紋照合、グーン2、それと、不明1ですが、間違いありません!」
「このインド洋上でしつこい! 総員、第一戦闘配備!」
『総員、第一戦闘配備! 繰り返す! 総員、第一戦闘配備!』
「魚雷接近!弾数8!」
「離水! 上昇!」
「くっ……くっ!」
「底部イーゲルシュテルン、迎撃開始! バリアント、照準、てぇ!」

また離水した! この前の、水中用モビルスーツ?
私は格納庫に走った。バズーカが役に立たなかった事で、私も考えた事があった。
「ソードストライカーで?」
「はい! ビームを切れば、実験として使えますから!」
「分かった!」
どのくらい役に立つかはわからない。でも、アーマーシュナイダーと合わせれば3つの武器になる。
それにロケットアンカーも!

「少佐、頼みます!」
「オーケー。CIC、敵母艦の予測位置は?」
「痕跡から割り出した、予測データを送ります!」
「了解! じゃ、ジョン少尉、さ〜と行って奴らの母艦、やっつけようぜ」
「はっ!」
「スカイグラスパー1号、フラガ機、発進位置へ!」
「出るぞ!」
「ジョン機発進、どうぞ!」
「出ます!」
「ストライク、どうぞ!」
「ルナマリア・ホーク、出るわよ!」
スラスターを吹かして飛び立つ! 海上に顔を出したグーン目掛けて私は海に飛び込んだ!

「どうにか足を止めないと…あ! うっ!」
対艦刀を構えたものの、また、魚雷攻撃に押されてる!
あ、あれはゾノ! 格闘戦も可能な水陸両用モビルスーツ!
ロケットアンカー射出! ……簡単に弾かれる。
「うっ」
なんてパワーなの!?
突っ込んできたゾノに、完全に押されてる。

59523:2007/10/07(日) 09:23:44 ID:???
「回避しつつロール20!」
「グーンを取り付かせるな!バリアント、てぇ!」

「うわぁ!」
衝撃で艦が揺れる。
取り付かれたか……ナタルは焦る。グーンは何の邪魔も無くこちらにミサイルを撃ち込んできている。
「ストライクは? 何をしている!」
「えぇい! 上部の砲の射線が取れれば!」
「ぅぅ……ノイマン少尉! 一度でいい、アークエンジェルをバレルロールさせて!」
「えぇ!?」
「艦長!」
「ゴットフリートの射線を取る。一度で当ててよ、ナタル」
「ぁ! ……分かりました」
「ノイマン少尉! やれるわね?」
「はい!」
『本艦はこれより、360度バレルロールを行う。総員、衝撃に備えよ。繰り返す!本艦はこれより、バレルロールを行う!」
「グーン2機、来ます!」
「ゴットフリート照準、いいわね!」
「行きますよ? くっ!」
……ゴットフリートは見事、グーンを撃ち抜いた!

「ええーーい!」
海上で起こった爆発に乗じて私はゾノに対艦刀を突き刺した。でも!? ゾノは止まらない。
クローに抱え込まれ、押し付けられる!
フォノンメーザーの砲口が光る。
「こんな至近距離で!? やられてたまるもんですか!」
両手でアーマーシュナイダーを取り出し! 突き刺す! 突き刺す!
クローの力が弱まった!
「あっちへ行っちゃえ!」
ゾノを蹴飛ばす。一瞬の後、爆発。
「はぁはぁはぁ……。この所ずっとあなたに助けられてばかりね」
アーマーシュナイダーを見つめる。
ありがとう。


60523:2007/10/07(日) 09:24:26 ID:???
幸い敵の襲撃がない日が続く。
私は毎日マリューさん、フラガさん、ナタルさんから交代で講義を受けた。
「もうお嬢ちゃんにはわかってると思うがぁ、色々教える事はあるが、とりあえず生き残る事を考えろ。
……生き残ってさえいれば、やり直すのも、続きを楽しむのも、どちらも出来るからなぁ」
「はい」
「俺が『エンデュミオンの鷹』なんて異名をもらっちまったのは、地球軍上層部がエンデュミオン・クレーターでの惨敗を糊塗するためだが、
それにしたって生き残ればこそだからなぁ。俺はあぶないと思ったらガンバレルのスラスターを一まとめにして、すたこらさっさと逃げたもんだ」
「ふふ。コーヒー、いかがですか」
「……お、インスタントじゃない本格的なのはうまいねぇ。バナディーヤで仕入れたのか?」
「虎に、お土産にもらったんですよ」
「アンドリュー・バルトフェルドか」
「ちゃんと飲んであげないと成仏しなさそうで……ふふ。お蔭で最近コーヒーの味がわかるようになってきました」

「私は、お前に戦争のやり方を教える。だがそれは、殺し方を教えているのではない。お前が生き残るために教えるのだ。
一人の学兵への教育と、それに与える装備の値段を考えれば、お前が一生働いても払えない額がかかる。
で、あれば、まずは無駄遣いしないことが、戦争に勝つ基本だ。死なないで粘る事が、国とお前自身とが得をする訳だ。
自己犠牲の精神は大切だが、むやみに使うな。あっさり死なれたら後が困る。国が求めるのはしぶとい兵だ……」

「ふぅ、ここまでにしましょうか。」
マリューさんが教本を閉じる。
「コーヒーどうぞ」
「ありがとう。頂くわ」
マリューさんは微笑んだ。
「それにしても、あなたは本当に飲み込みが早いわね。他の皆も驚いていたわ」
「ありがとうございます」
「コーディネイター、だからかしらねぇ。あらごめんなさい。他意はないのよ?」
「ええ。わかってます。不思議ですね。自分でも昔からこんな事……軍人やってたような気が気がするんです」
「フラガ少佐が言っていた、あなたの夢って物?」
「ええ、夢でも、学校で軍事教練したり、授業受けたりしてる事があります」
「そう……でも、それが今のあなたを助けているとしたら、むやみに悩まず、素直にありがたがった方がいいわ」
「はい。最近は開き直って、そうしてます」
「うん。いいわね。じゃ、そろそろ再開しましょうか……」


61523:2007/10/07(日) 09:25:09 ID:???
「や! ルナ」
「あ、カガリ」
私が休憩室で休んでいるとカガリがやって来た。
「なんにもなくて暇じゃない?」
「そんな事ないぞ。色々艦をうろつくだけでも面白い」
「そう。このままずっと何もなければいいのにね」
「だが、赤道連合の範囲に近づけば、島もいっぱいあるし、カーペンタリアにも近づく。ザフトは必ず仕掛けて来るぞ」
「そうよねぇ。……ねぇ、アラスカに行く途中、オーブには寄れないのかなぁ」
「お前もそう思うか。みんな――お前の友達もそう言ってた」
「やっぱり、みんなもそう思うよね」
両親は、ハルバートン提督から無事だって知らされたけど、もう長い間会ってない気がする。さみしい。
「オーブは一応中立だからなぁ。でも、いざと言う時は私の名前を出してでも入ろうと思ってるけどな」
「それ、まずいんじゃない? 何かあったら見捨てるって言われてるんでしょう?」
「うーん、そうか。じゃ、どうすればいい」
「ヘリオポリスの避難民を乗せています――とか?」
「それがいいかもな。オーブは領海に不審船が近づくとマスコミも飛んで来るんだ。無視できないだろう」
うんうんとカガリは納得したようだった。
「うまく行くかな? まぁ行かない様ならカガリの名前出せばいいか」
「話は変わるんだけどさ」
カガリが、上目遣いで話してきた。
「なあに?」
「私がオーブに戻っても、友達でいてくれるよな? 私は、同年代の友人なんていなかったから……」
不安げな顔でカガリは言う。
「馬鹿ね! 前にカガリが言ったでしょう? ルナはルナだって。カガリはカガリよ」
「よかった」
ほっとしたようにカガリが笑う。あ、なんとなく涙ぐんでる。
う〜、可愛い!
ハグしちゃう!
「ル、ルナ!?」
「大丈夫、大丈夫よ。大丈夫だから。大丈夫。大丈夫」
「……落ち着くな〜」
「でしょ。不安な時、お母さんによくやってもらったんだ」
「よし、私もやってやる」
「え?」
カガリの手が私の背中に回される。
「よしよし。大丈夫だ。大丈夫だから。大丈夫だ。大丈夫……」
「ふふ。安心する」
いたわる気持ちが嬉しくて、キスを交わすより身体は暖かい。このまま少しカガリに甘えていよう……


62523:2007/10/07(日) 09:25:44 ID:???
マラッカ海峡――スエズ運河・パナマ運河と並び世界のシーレーンの中でも最重要な場所である。
「とうとうここまで来れたわね。結局インド洋では一度襲撃を受けただけ……インド洋のど真ん中を行くと言う判断が
当たってよかったわ」
マリューは感慨深そうに溜息をつく。
「ほんとだねぇ。お蔭でしばらくのんびりできたよ」
「ああ、そうだな」
キサカは感情の揺らぎを見せずに答える。
本当にこの男は何者なのだろう。マリューは改めて思う。ただのレジスタンスではないわね。訓練された軍人?
「でも、結局、赤道連合からの補給要請は断られてしまったわね」
「ええ……。ですが、この海峡の通行許可を得られただけでも幸運と思わねばなりません」
ナタルが前向きに言う。
「今後の進路はどうすればいいかしら?」
「ボルネオ島、ミンダナオ島の間を抜け、ニューギニア島の北部を通りウェーク島に出る航路が良いと思います。
カオシュンとカーペンタリアの勢力圏内ギリギリを通過する事になりますが、現状ではこれ以上のルートは無いかと思われます」
「そうね、その航路で良いわ。後は補給の問題ね……オーブからの返答は?」
「ダメです、未だ返答ありません」
「どちらにしろ、もう後戻りは出来ません。オーブと交渉を行いつつ前進しましょう」
「ああ、ザフトにやられていざと言う時はかまわずオーブ領海内へ突進しても構わんだろう。例え艦が沈められたとしても命だけは助かる」
キサカが断言する。
オーブの関係者かしら? そうなら、いざと言う時は彼に表に出てもらうべきかしら。ここらへんで補給が受けられなければ、
後2・3回襲撃を受ければ艦があぶない……。マリューはオーブ政府との交渉が気がかりだった。


63523:2007/10/07(日) 09:26:26 ID:???
海峡の中程に差し掛かった時だった。
「レーダーに反応! 1時の方向に艦影です!」
「ライブラリ照合確認! ボズゴロフ級潜水母艦です!」
「くっ……伏せられていたか!?」
「確かに『中立』のようね、赤道連合も……。総員、第一戦闘配置!」
『総員、第一戦闘配置! 総員、第一戦闘配置!』
「フラガ少佐!」
「なんだぁ?」
「幸い、今回は潜水母艦が最初から姿を現してくれています。この前と同じように、最優先で撃沈を!」
「おーけー!」
フラガは駆け出して行った。
「レーダーに反応! 前方にディンと思われる反応が3!」
「ソナーに感! これは……音紋照合、グーン8!」
「これはこれは。盛大に歓迎してくれるわね」
「艦長! フラガ少佐かジョン少尉を本艦の護衛に当たらせた方がよいのでは?」
「だめよ! まず潜水母艦を叩かなければ、この海峡を突破する事はできないわ! 二人が潜水母艦を撃沈して戻るまで、
なんとしてでも耐えるのよ!」
「了解しました!」

離水する感覚……また敵に水中用モビルスーツが?
水中戦ではいつもぎりぎりの戦いだった。私は不安だった。でも、今デパスを飲む訳に行かない。鈍くなるから。
胃が痛くなったような気がする……
不安を抱えながら私は走った。
「エールを装備して! エールを!」
コクピットに乗り込むと、私は叫んだ。
「エールでいいのかい? お嬢ちゃん」
「エールだって、滑空くらいは出来ます!」
「わかった」
正直、海には入りたくなかったのだ。空から狙撃できればその方が……
「APU起動。カタパルト、接続。ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカー、スタンバイ。
システム、オールグリーン。ストライク、どうぞ!」
「ルナマリア・ホーク、出ます!」

いるいる! ひょこひょこと海面にグーンが顔を出している。
ミサイルを絶え間なくアークエンジェルに撃ち込んでいる。
スラスターを吹かして横から狙う! 一機撃破!
グーンの内3機がこちらへ向かってミサイルを放って来る! 何発か当たってしまう。
やばい! スラスターを吹かしてアークエンジェルに着艦する。もう一度、ジャンプ!

64523:2007/10/07(日) 09:26:36 ID:???
潜水母艦に向かうフラガとジョンは、ディン3機に行く手を阻まれた。
「くっそー! このままじゃアークエンジェルがやられちまう!」
「どうします!?」
「まず一機、なんとか片付けよう! 一旦離脱して襲え! 後は俺がやる!」
「はい!」
圧倒的に速度に勝るスカイグラスパーがディンを振り切るのは容易だ。そしてターンしてジョンはディンに突っ込む!
旋回性に優れたディンがジョンの攻撃を避けるのは簡単だった。だが、避けた所にフラガ機からのアグニが撃たれる! 
機体の半分を失い、ディンは海面へと落ちて行った。
そのままの速度でフラガはディンを振り切り潜水母艦に突っ込む。アグニと同時に対艦ミサイルが放たれる!
「ひゃっほー!」
アグニと対艦ミサイルで開いた破孔から怒涛のように海水が流れ込み、潜水母艦は海面下に没していった。


「ストライクはだめか」
次々と撃ち込まれるミサイルに傷ついてゆく船体。ナタルの頬を冷や汗が流れる。
「グーン一機、撃破しましたが、以後は……」
「グーンの半分の攻撃を引き付けてくれているのですもの、意味はあるわ」
また着弾だ。艦が揺れる。グーンが7機もいてはこの前のように360度バレルロールを行う訳にも行かない。
マリューは焦れた。……白波が立っている。あれは岩礁? 浅瀬に繋がっている。
数多くの岩礁と浅瀬――マラッカ海峡を難所としている原因――
「そうだわ! 浅瀬に、浅瀬に上がって!」
「浅瀬に、ですか?」
「グーンは陸上でも行動できますよ?」
「いいから早く!」
アークエンジェルは一面に白波が立っている岩礁地帯へと突っ込んだ。
グーンも浅瀬に上がって来る。ミサイルの撃ち込みは、止まない。

「チャーンス!」
私はグーンが浅瀬に上がって行くのを見た。あそこなら!
エールストライカーを吹かし、グーンに突っ込む! ビームサーベルを抜き放つ!
「まず一機!」
少しだけ海面に突き出た岩礁を蹴り次へ向かう。
「2機!」
残ったグーンは慌てて海中へ戻ろうとする。
「させないわ!」
ビームライフルを3射。立て続けにグーンが爆発する。
「海から出れば、あんた達なんてこんな物よ!」
残ったグーンは海中に2機。どうしよう。ソードストライカーに替えて来ようか?
その時キーンと言う飛行音と共にスカイグラスパーがやって来た!
「やった!」
グーンが海面に顔を出した時、スカイグラスパーのキャノンとアグニが突き刺さる。
海面には、グーンの破壊された跡が浮かんで来た……
65523:2007/10/07(日) 09:30:19 ID:???
続く

今回は、テレビ本編ではスルーされてたマラッカ海峡の戦いを書いてみました。
66通常の名無しさんの3倍:2007/10/07(日) 19:26:44 ID:???
おお、二日に渡ってお疲れ様です。そしてこれまたGJな内容でした。
確かにマラッカは現実世界でも海賊が多い場所なのでここで襲撃を仕掛けるのはありえますね。
赤道連合がプラントに対して押しが弱いのはそれはそれで気になりますが、まあアークエンジェルも通したので赤道連合はサイド6に近い中立概念を持っているのでしょう。
しかし自国の領内での交戦中に艦隊が出てこなかったのは流石に問題では。
個人的にはNジャマーの影響で貧困に悩み軍艦を襲う地元海賊というのがしっくりくるかと思うのですがどうでしょうか。え?それはそれで外交的な問題になるって?

それとキサカの正体についてマリューが考えていますが、その中の選択肢に「退役」軍人が入るかと。

なんだか文句や注文が多くなってしまいましたが、マラッカ海峡という地形を利用したエピソードということで面白い一回でした。
ではまた勝手に次回をwktkさせていただきます。
67523:2007/10/08(月) 13:41:11 ID:???
マラッカ海峡を越えてからは、みんなぴりぴりしていた。
なにしろカーペンタリアが近いのだ。
オーブ政府は相変わらずアークエンジェルの入港を拒否しているらしい。でもいい。身一つでもオーブに辿り着ければ……
『総員、第一戦闘配置! 総員、第一戦闘配置!』
捕まったか! こんなオーブを目の前にして!

「ソナーは? ソナーに感はないの?」
「今回は、ないようです。助かった!」
マラッカ海峡でグーンに散々な目に遭わされた為つい口に出てしまったようだ。
「気を引き締めて!」
今のアークエンジェルは、マラッカ海峡でやられた被害のため、最大速度が出せない。
「艦長!」
「なに!?」
「この反応は、イージス、ブリッツ、デュエル、バスターです!」
「なんですって!?」

「APU起動。カタパルト、接続。ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカー、スタンバイ。システム、
オールグリーン。ストライク、どうぞ!」
私が発進すると、フラガさんとジョンさんが戦闘に入っていた。
奪われたXナンバーはグゥルに乗っている。
バスターはまた姿が変わっている。元の、砲を両脇に抱え込む射撃方式に戻っている。撃っているのはどうやら大型レールガンらしい。
デュエルはこの前と同じね。
「みんな! グゥルを狙って! 本体を実体弾で狙っても相手はPS装甲よ!」
『おう!』
『了解!』
バスター……実体弾だけなら!
私はエールストライカーを吹かすとハイジャンプした。

「うわぁ!」
ディアッカは悲鳴を上げた。
「なんでお前は、いつも出て来るなり俺に突っ込んで来るんだよ!」
PS装甲に実体弾を撃つ無駄さは彼が一番知っている。
つい、レールガンを撃つ手が緩み、逃げる体勢になる。
だが、彼は間違っていた。実体弾であっても衝撃は与えられる。撃ち続けてストライクの体勢を崩すべきだったのだ。
ストライクには高空飛行能力はないのだから。
「またかよーーー!」
片脚を斬られながら、バスターは海面へと落ちて行った。

「やった!」
見ていたアークエンジェルクルーは歓声を上げる。
「回避!」
「「うわぁ!」」
「バリアント、ウォンバット、てぇ! 気を抜くな! お前達!」

68523:2007/10/08(月) 13:42:00 ID:???
「何をやっているディアッカ! アスラン! さっさと船の足を止めろ!」
「分かっている!」
「くっ!」
「イザーク! 一人で出過ぎるな!」
「五月蠅い!」
「エンジンを狙うんだ。ニコル! 左から回り込め!」
「はい!」
こいつさえ沈めれば! アスランは思った。そうすれば、ルナだって戦うのを止める!

「 はっうっ!」
「イーゲルシュテルン、4番5番、被弾!」
「損害率25%を超えました」
「イージス、ブリッツ、接近!」
「ウォンバット照準! グゥルを狙うんだ!」
「えぇ? グゥル……ですか?」
「モビルスーツが乗って飛んでいるあれだよ!」
「あ! ぁはい!」
「てぇ!」
「うっうぅ……くっそー!こんなところまで追いかけてくるなんて、あいつら!」
「ううー……」


「下がれアスラン! こいつは俺が!」
「イザーク! 迂闊に!」
――! ほら見ろ!
アスランは心の中で叫ぶ。イザークは、グゥルから落とされる。
ルナは強い! 強いんだぞ!
アークエンジェルに取り付こうとしたデュエルは、すぐに飛んで来たストライクによって片腕を切り落とされ、海の中へ蹴り落とされていた。
「ニコル! ストライクの飛行能力はグゥル程高くない! ストライクの届かない所から攻撃するんだ!」
「わかりました! アスラン!」


『皆様、御覧いただいている映像は、今、まさにこの瞬間、我が国の領海から、わずか20kmのの地点で行われている戦闘の模様です。
政府は、不測の事態に備え、既に軍の出動を命じ、緊急首長会議を招集しました。また、カーペンタリアのザフト軍本部、
及びパナマの地球軍本部へ強く抗議し、早急な事態の収拾、両軍の近海からの退去を求めています……』
「ウズミ様」
「許可なく、領海に近づく武装艦に対する我が軍の措置に、例外はありますまい。ホムラ代表」
「はぁ……しかし……」
どうする気だ兄者。ホムラは思った。サイーブ教授が伝えて来た話だと、あの艦には姪が……カガリが乗っているのだぞ。
「テレビ中継はあまりありがたくないと思いますがな」
そんなホムラの気遣いを無視するようにウズミが言った。


69523:2007/10/08(月) 13:42:44 ID:???
「領海線上に、オーブ艦隊!」
「なに!?」
「あっ!助けに来てくれたの?」
トール達の声が弾む。だが、マリューの言葉がすぐにそれを打ち消した。
「領海に寄り過ぎてるわ! 取り舵15!」
「え!?」
「しかし!」
「これ以上寄ったら、撃たれるわよ」
「そんな……」
ヘリオプリス組に失望が走る。
「オーブは友軍ではないのよ? 平時ならまだしも、この状況では……」
「構うことはない!」
「ぇ?」
カガリが、艦橋に飛び込んで来た。
「このまま領海へ突っ込め! オーブには私が話す! 早く!」
「カガリさん……」
「展開中のオーブ艦隊より、入電!」
『接近中の地球軍艦艇、及び、ザフト軍に通告する。貴官等はオーブ連合首長国の領域に接近中である。
速やかに進路を変更されたい。我が国は武装した船舶、及び、航空機、モビルスーツ等の、事前協議なき
領域への侵入を一切認めない。速やかに転進せよ!』
「うぅ……」
『繰り返す。速やかに進路を変更せよ!』
「くっ……」
『この警告は最後通達である。本艦隊は転進が認められない場合、貴官等に対して発砲する権限を有している』
「くっ!」
「攻撃って……俺達も? そんなぁ……」
「何が中立だよ。アークエンジェルはオーブ製だぜ?」
「構わん! このまま領海へ向かえ!」
再びカガリが叫ぶ。
「ぁ……」
「マイクを寄越せ! 全周波数帯で発信しろ! 取材のヘリにも聞こえるようにな!」
「カガリの言う通りにしてやってくれ」
「キサカさん……わかったわ。全周波数帯で発信!」
「この状況を見ていて! よくそんなことが言えるな! アークエンジェルは今からオーブの領海に入る! だが攻撃はするな!」
『な!?なんだお前は!』
「お前こそなんだ! お前では判断できんと言うなら行政府へ繋げ! ウズミ・ナラ・アスハを呼べ! この艦には、
ヘリオポリスの避難民が乗っているんだぞ! 政府は自国民を見捨てるのか!?」
『そのような言い逃れを! 仮に真実であったとしても、何の確証も無しにそんな言葉に従えるものではないわ!』
「貴様ぁ! うっ!」
「うっ! くっ!」
イージスとブリッツからの攻撃がアークエンジェルを襲う。

「ご心配なく、ってね! 領海になんて入れさせませんよ! その前に決める!」
「ニコル! オーブ艦に当たる! 回り込むんだ!」
「しかたないですね!」

70523:2007/10/08(月) 13:43:21 ID:???
「うわぁ!」
「あっ……うっ!」
「ああ!」
「あ!」
「1番2番エンジン被弾! 48から55ブロックまで隔壁閉鎖!」
「推力が落ちます! 高度、維持できません!」
「これでは、領海に落ちても仕方あるまい」
キサカが落ち着いた声で告げる。
「ぇ?」
「ぁ!」
「心配は要らん。第二護衛艦軍の砲手は優秀だ。上手くやるさ」
「……分かりました。オーブ領海へ突っ込んで!」

「警告に従わない貴官等に対し、我が国は是より自衛権を行使するものとする」
「くっ……どうします? アスラン?」
「一旦引こう、ニコル」
「ディアッカとイザークはどうしますか?」
「ボズゴロフに任せる」

ボズゴロフは海面に顔を出して待っていた。
「手荒くやられたようだな」
「ええ、現状では潜水は、不可能です。ですが、間もなく復旧する予定です」
「そうか、デュエルとバスターの救助をよろしく頼む。」

「さて、とんだ茶番だが、致し方ありますまい。公式発表の文章は……」
ウズミは秘書に促した。
「既に草稿の第二案が」
「いいでしょう。そちらはお任せする。あの船と、モルゲンレーテには私が」
「は!」
「どうにもやっかいなものだ、あの船は」
他の首長から声が上がる。
「今更言っても、仕方ありますまい」
オーブの亀裂を徒にあきらかにする言葉に、ウズミは少しいらついた。


『指示に従い、船をドックに入れよ』
先導艦に従い、アークエンジェルはゆるゆると進んでいった。
「オノゴロは、軍とモルゲンレーテの島だ。衛星からでも、ここを伺うことは出来ない」
「そろそろ貴方も、正体を明かしていただけるのかしら?」
「オーブ陸軍、第21特殊空挺部隊、レドニル・キサカ一佐だ。これでもアスハ家の、カガリ・ユラ・アスハ嬢の護衛でね」
「……そう。彼女が。我々はこの措置を、どう受け取ったらよろしいのでしょうか?」
「それは、これから会われる人物に、直接聞かれる方がよろしかろう。オーブの獅子、ウズミ・ナラ・アスハ様にな」


71523:2007/10/08(月) 13:44:40 ID:???
「こんなふうにオーブに来るなんてなぁ」
「ね、さ。こういう場合どうなんの? やっぱ降りたり、って出来ないのかな?」
カズイは弱気な表情を浮かべて言った。
「降りるって……」
「いや、作戦行動中は除隊できないってのは知ってるよ。けどさぁ、休暇とか……」
「可能性ゼロ。とは言わないがね。どのみち、船を修理する時間も必要だし」
ノイマンが、カズイの言葉を否定した。
「ですよねぇ」
「でもまぁ、ここは難しい国でねぇ。こうして入国させてくれただけでも、けっこう驚きものだからな。
オーブ側次第ってところさ。それは、艦長達が戻らないと、分からんよ」
「父さんや母さん……居るんだもんね」
「会いたいか?」
「ぁー……」
「ん……」
「会えるといいな」


「御承知の通り、我がオーブは中立だ」
ウズミはマリュー達に言った。
「はい」
「公式には貴艦は我が軍に追われ、領海から離脱したということになっておる」
「はい」
「助けて下さったのは、まさか、お嬢様が乗っていたから、ではないですよね」
「国の命運と甘ったれたバカ娘一人の命、秤に掛けるとお思いか?」
「失礼、致しました」
「そうであったならいっそ、分かりやすくて良いがな。ヘリオポリスの件、巻き込まれ、志願兵となったというこの国の子供達。
戦場での聞き及ぶ、Xナンバーの活躍。人命のみ救い、あの船とモビルスーツは、このまま沈めてしまった方が良いのではないかと、
大分迷った。今でもこれで良かったものなのか分からん」
「申し訳ありません。ヘリオポリスや子供達のこと、私などが申し上げる言葉ではありませんが、一個人としては、
本当に申し訳なく思っております」
「よい。あれはこちらにも非のあること。国の内部の問題でもあるのでな。我等が中立を保つのは、ナチュラル、コーディネイター、
どちらも敵としたくないからだ。ま、力無くば、その意志を押し通すことも出来ず、だからといって力を持てば、それもまた狙われる。
軍人である君等には、要らぬ話だろうがな」
「ウズミ様のお言葉も分かります。ですが、我々は……」
「ともあれ、こちらも貴艦を沈めなかった最大の訳のお話せねばならん。ストライクの、これまでの戦闘データと、
パイロットであるコーディネイター、ルナマリア・ホークの、モルゲンレーテへの技術協力を我が国は希望している」
「ぁぁ……」
「叶えば、こちらもかなりの便宜を、貴艦に図れることとなろう」
「ウズミ様!それは……」
「……」
「……電話を、お借りできますか?」
72523:2007/10/08(月) 13:44:51 ID:???
「電話だと?」
「ええ。オーブなら、海中ケーブルでアメリカ大陸まで繋がっているはずです。我々からはなんとも」
「表立って交渉するなら、私が最初から地球軍本部と交渉しておるわ!」
「愚直と言われましょうとも、本部に問い合わせできる状況なのですからそうしたい、と私は考えます」
「確かに愚直だな」
ウズミは苦笑するしかなかった。
「……わかった。連絡するがいい。向こうも安心するだろう」
「申し訳ありません。ありがとうございます」


「艦長、アラスカからはなんと?」
マリューがJOSH-Aとの交信を終えて帰ってくると、待ちかねたようにナタルが尋ねた。
「それが……最低限の修理で、高度と速度さえ出せるようになれば出港せよと……。
ストライクの戦闘データはオーブに渡してやれとの事です。ルナマリア・ホークに関しても時間が許す限り、協力させてもよいと」
「最低限の修理で出港とは……俺達に沈めって事?」
「フラガ少佐!」
「迎えは、護衛は来るそうです。今日中に編成するとの事です」
「そうか……やれやれだな」
「これで一安心できますね」
ナタルがほっと溜息をつく。
「後は……会わせてあげたいですわね。ルナマリアさん達を、ご両親に」
「そうですね」
ナタルが気遣わしげな表情を見せた。
73523:2007/10/08(月) 13:50:27 ID:???
続く

>>66
確かに現実世界でも最も頻繁に海賊が出没するのがマラッカ海峡。
CE世界の混乱した状況ならなおさら出そうですね。
うう。絡めて見たかった。


という訳で今回は「運命の電話」でした。
アラスカと連絡が取れた事でどう変わって行くのか!? 乞うご期待。
74通常の名無しさんの3倍:2007/10/09(火) 19:36:42 ID:???
おお、三日連続とはこりゃまた凄い。
作家様の筆の速さに嫉妬。そしてGJ!
75通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 20:00:28 ID:???
保守
76通常の名無しさんの3倍:2007/10/11(木) 22:46:33 ID:???
hosyu
77通常の名無しさんの3倍:2007/10/12(金) 20:20:43 ID:???
落ちすぎ
明日dat落ちするのは確実なので上げ保守
78523:2007/10/13(土) 07:00:43 ID:???
『第6作業班は、13番デッキより作業を開始して下さい』
『機関区、及び外装修理班は、第7ブースで待機』
「驚きました。もう作業に掛かってくれるとは」
「ああ。それは本当にありがたいと思うが」
「おはよう」
「おはようございます、艦長」
「御苦労様です」
「既にモルゲンレーテからの技師達が到着し、修理作業に掛かっております」
「そう。ありがたい事だわ。ヘリオポリス組は?」
「は、すでに集めてあります。」

「家族に?」
マリューさんが、家族に会える事を伝えると、ヘリオポリス組の皆の顔が紅潮した。
「ええ。状況が状況だから、家にも帰してあげられないし、短い時間だけど、明日午後、軍本部での面会が許可されました」
皆大騒ぎになった。
「あーー」
「わーいやったー!」
サイ やったよかった!」
「トール、どうしよう!」
「どうしようってミリィ、今から泣くなよ。」
「だって嬉しくって…会えるのよ?」
「元気かなぁ?」
「細かい予定は明日通達……ちょっと、聞きなさい!」
私は……ちょっと複雑だった。なんで私をコーディネイターにしたのか。前々から思っていた疑問。それが心に淀んでいた。

「ホークご夫妻、ですな?」
「ウズミ様……二度とお目に掛からないという約束でしたのに……」
「運命の悪戯か、子供等が出会ってしまったのです。致し方ありますまい」
「……う……ぅ……。どんな事態になろうと、絶対に私達があの子に真実を話すことはありません」
「姉妹の事も。ですな?」
「可哀相な気もしますが、その方がルナの為です。全ては最初のお約束通りに……ウズミ様にこうしてお目に掛かるのも、
これが本当に最後でしょう」
「わかりました。しかし、知らぬというのも怖ろしい気がします。現に、子供達は知らぬまま、出会ってしまった」
「因縁めいて考えるのは止めましょう。私達が動揺すれば、子供達にも伝わります」
「わかりました。さあ、会って来なさい。ルナマリアさんは、だいぶ頑張ってきたようだ」
「はい……」

79523:2007/10/13(土) 07:01:44 ID:???
「「あぁー!」」
「「あぁ!」」
「カズイ!」
「トール!」
「母さん!父さん!」
「母さん!」
「カズイ!」
「トール! うっううう……」
「父さん!」
「ミリィ!」
「よく無事で……」
「うん……」
「サイ!」
「よく頑張ったな」
「父さん、母さん!」
皆、家族と会えて嬉しそうだ。でも、私の両親は?……どこにもいない。
私が暗い想像をしていると、部屋の扉が開いた。
「ルナ!」
「パパ! ママ!」
「遅くなってごめんなさいね、ウズミ様とちょっとお話をしていたのよ」
「よく、頑張っているようだな」
ママが私を抱きしめる……安心する。
最近思っていた、どうして私をコーディネイターにしたのかなんて、どうでもいいや。今は、この暖かさを感じていたい。
「まぁ、ルナ!」
「え?」
「この傷は?」
あ……!
「一回だけ、切っちゃった。でも、もう切らないよ。自信、ある」
「そう……離れていても、ママはいつもあなたのそばにいるからね」
「うん……ありがとう」

「はぁ、もう時間なんて……」
「仕方ないよ……」
「カズイ、船はいつまでここに居るんだ?」
「数日らしいよ」
「ミリィ、どうしてお前が行かなきゃならないの?」
「しょうがないわよ。志願しちゃったんだもん……」
「サイ、お前が決めたことならば仕方ないが……」
「大丈夫だよ。父さん」

親子の対面は、長いようで短かった。
もっと話したい事いっぱいあったのに。でも、いい。私は絶対帰ってくるんだ。両親の元へ。

80523:2007/10/13(土) 07:02:40 ID:???
「こっち! あなたにに見て貰いたいのは」
その後、私はカガリと一緒に格納庫のような場所に案内された。
「ぁぁ!」
これは、モビルスーツ!
「これを、オーブはどうするつもりなんですか?」
「これはオーブの守りだ。お前も知っているだろ? オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。そして、他国の争いに
介入しない。その意志を貫く為の力さ」
「でも、カガリ様の言うことは事実よ。だから、私達はあれをもっと強くしたいの。貴方のストライクの様にね」
「え!?」
その日一日、私はオーブのモビルスーツ――M1アストレイのサポートOSの作業に没頭した。でも、私の目から見ると、
やっぱり基礎OSが不完全だ。ナチュラル用だと言うけどこんなもので本当に戦闘ができるのだろうか? 
これなら私が組み上げた奴の方が……

「目下の情勢の最大の不安材料は、パナマだ。ザフトに大規模作戦有りという噂のおかげで、カーペンタリアの
動きは、かなり慌ただしい」
キサカが、現状を完結に説明する。
「どの程度まで分かっているのですか?」
「さぁな。オーブも難しい立場にある。情報は欲しいが、薮蛇はごめんでね。だが、アラスカに向かおうという君等には、
かえって好都合だろう」
「万一追撃があったとしても、北回帰線を超えれば、すぐにアラスカの防空圏ですからね。奴等もそこまでは、
深追いしてこないでしょう」
ノイマン少尉が言う。確かにそうだろう。マリューも納得する。そこまで行ってしまえば、いくらザフトとて簡単に手はだせないはずだ。
心配なのは……
「ここまで追ってきた例の部隊の動向は?」
「昨日から、オーブ近海に艦影はない」
「引き揚げた、と?」
「また外交筋では、かなりのやり取りがあったようだからな。そう思いたいところだが」
「アスハ前代表は当時、この艦とモビルスーツのことはご存知なかったという噂は、……本当ですか?」
「バジルール中尉……」
なにをわざわざ……とマリューは思う。だが、地球連合とオーブは手を組んでいたのになにをいまさら……と
言う思いはアークエンゲルクルーの中にも多いだろう。
「確かに、前代表の知らなかった事さ。一部の閣僚が大西洋連邦の圧力に屈して、独断で行ったことだ。
モルゲンレーテとの癒着も発覚した。オーブの陣営を明らかにするべき、と言う者達の言い分も分かるのだがな、
そうして巻き込まれれば、火の粉を被るのは国民だ。ヘリオポリスの様にな」
「ぁ……」
「それだけはしたくないと、ウズミ様は無茶を承知で今も踏ん張っておられるのさ。君等の目には、甘く見えるかもしれんがな」
「いえ……」
81523:2007/10/13(土) 07:03:27 ID:???
口ではそう言ったが、マリューは懸念を感じていた。旧世紀のスイスのように周囲から中立国と認められているのではなく、
ただオーブが中立を宣言しているだけ。そんな物はいざとなったら第二次世界大戦のベルギーのように簡単に破られて
しまうのではないのだろうか? 中立を守ると言うその信念自体が国民に被害を生んでしまうのではないのだろうか? 
マリューは憂慮した。アークエンジェルのヘリオポリス組のためにも。
「修理の状況は?」
「明日中には、と連絡を受けております」
「あと少しだな。頑張れよ」
「キサカ一佐!」
「ん?」
「本当にいろいろと、ありがとうございました」
「いや、こちらも助けてもらった。既に家族はないが、私はタッシルの生まれでね」
「ぁ……」
「一時の勝利に意味はない。とは分かってはいても、見てしまえば見過ごすことも出来なくてな。暴れん坊の
家出娘を、ようやく連れ帰ることも出来た。こちらこそ、礼を言うよ」


もうオーブに入ってから3日目。修理の方も大体終わったらしい。明日、出港だそうだ。
カガリがいきなり、アークエンジェルへやって来た。
「おーい、みんなー」
「あ、カガリ」
「でも、カガリがお姫様だったとはねぇ」
「お姫様って言うな! 今までどおりカガリでいいんだ、カガリで」
「おーけー、カガリ」
「本当はもっと、万全に修理してやりたいんだがな。アラスカ本部の命令なら仕方ない」
「気持ちだけで、充分よ」
あ! 私は思いついた事があった。
「カガリ、ちょっと待ってて!」

私は、私室から戻って来るとカガリの手に小さなチップを何枚か滑り込ませた。
「これは」
私はカガリの耳元で言った。
「ストライクの基礎OSにサポートOS。それからいざ私がいなくなった時のためにって作ってた、ナチュラル用の
基礎OSよ。ストライクの物だから、M1アストレイでどこまで使えるかわからないけど、私の判断じゃずっとましよ」
「いいのか? こんな事して?」
「いいのよ。カガリの手柄にして頂戴」
「お前……」
カガリは涙を拭った。
「わかった! 必ず役に立てて見せる! ルナも、無事でいろよ」
「うん! 私、結構しぶといから」
カガリは艦を降りると名残惜しそうに手を振っていた。
次に会えるのはいつだろう? 全てが終わってからかな……


82523:2007/10/13(土) 07:03:51 ID:???
「注水始め!」
「注水始めー!」
アークエンジェルのドックに水が注ぎ込まれていく。
「オーブ軍より通達。周辺に艦影なし。発進は定刻通り」
「了解したと伝えて」
「護衛艦が出てくれるんですか?」
「隠れ蓑になってくれようってんだろ? 艦数が多い方が特定しにくいし、データなら後でいくらでも誤魔化しが効くからな」

「 間もなく領海線です」
「周辺に敵影なし」
「警戒は厳に! 艦隊離脱後、離水、最大戦速」
「艦隊旗艦より入電。我是ヨリ帰投セリ。貴官ノ健闘ヲ祈ル」
「エスコートを感謝する、と返信を」

オーブ艦隊は帰って行く。
「心細いなぁ」
すぐ愚痴、弱気が出ると言ったらカズイだ。やっぱり、この子は戦争には向いてない。アラスカで降りられればいいけど。
かと言って、サイやトール達が戦争に向いてるとも私は言えない。艦橋にいるから冷静になれている部分も多いのだろう。
サイやトールは、度々、モビルスーツの操縦に興味を示す。私が組み込んだナチュラル用のシミュレーションを面白がってやっている。
本当は、みんなアラスカで降りてくれた方が気が楽だ、とも思う。でも、そうなったらそうなったで、寂しがるんだろうな、私は。

83523:2007/10/13(土) 07:05:03 ID:???
翌日深夜、人目のない海岸に半漁人のような格好で4人の人影が海から上がってきた。
「クルーゼ隊、アスラン・ザラだ」
「ようこそ、平和の国へ」
彼らは誰にも知られずに、オーブへ潜入を果たした。

「見事に平穏ですね。街中は」
「ああ。つい先日自国の領海であれだけの騒ぎがあったって言うのに」
「中立国だからですかねぇ?」
「平和の国、か」
「おおっと。お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
ディアッカが、小さな少女とぶつかっていた。
「ほら、ディアッカ、前を見てないから。大丈夫? なんて名前かな?」
「エルって言うの」
「エルちゃんか、いい名前だね。ずっとここに住んでいるの? なにか、最近変わった事なかった? 
知らない船が入って来たとか?」
それは、ニコルが小さな子供を通じて情報を得ようと言う行為だったかもしれない。だが、返ってきた返事に
彼らは言葉を失った。
「ううん、エルはヘリオポリスにいたんだよ。ザフトの奴ら、ひどいんだ。ヘリオポリスをめちゃくちゃにして。
それからもひどいんだ。私のお船、何度も何度も襲って来て……」
「……そうか」
彼らは、改めて思い知らされたのだ。もし、成功していたならと。もし宇宙でアークエンジェルを撃沈する事に
成功していたら、この子も殺していた……。
相手が見えなかったならば、さほど気にはしなかったろう。だが、その相手がが目の前にいる。
アスラン達は居心地の悪さを感じた。
「でもね! ルナお姉ちゃんが助けてくれたの! いつも!」
「ルナお姉ちゃん? まさかそいつがモビルスーツのパイロット……」
イザークが反応した。
「うん、避難民のお姉ちゃんで、モビルスーツも操縦できるんだよ!」
「……なんてこった。俺らは素人の女にきりきりまいさせられていたのかよ」
ディアッカが天を仰ぐ。
「エルちゃんねぇ、心残りがあるんだぁ」
「ふーん、なんだい?」
「だいはちかんたいでお船から離れる時、きちんとルナお姉ちゃんにお礼言えなかったの。お兄ちゃん達、
ルナお姉ちゃん知らない?」
「いいや。だが、会ったら、伝えておいてやるよ」
「ほんと? きっとだよ?」
手を振って向こうに駆けて行くエル。脇から出てきて、エルの頭を撫でているのはおそらく母親だろう。
ニコルがぽつりと言った。
「……パイロットが避難民なら、もう足付きを降りましたよね」
「わかんねぇなぁ。バルトフェルド隊長もモラシム隊長もやられた。そんなパイロットがぽんと配属されるかな?」
「そう、ですよね……」
「ニコル、やらなきゃ、こっちがやられるんだ!」
「アスラン、泣いて……?」
「違う!」
アスラン達は無言で歩き続けた。
84523:2007/10/13(土) 07:10:15 ID:???
続く

M1アストレイはルナの作ったOSで完成する事に。
アスランはルナマリアとはすれ違い出会いませんでした。
代わりにエルちゃんとの出会い。
85通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 12:13:00 ID:???
>>84
GJ!!!!!
86通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 13:57:17 ID:???
>>77
新参乙
dat落ちは最終書き込み時間からどれだけ経過したかで判定されるんだよ
87通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 16:34:49 ID:???
圧縮もそうだっけ?
88通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 16:35:50 ID:???
そだーよ。

とりあえず今のペースでも
2〜3日に最低1レスあれば持つんじゃないかな?
89通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 18:43:36 ID:???
甘いな
そういわれて落ちたスレがどれだけあるのやら……
600台は危険信号だ
新スレが乱立したらサヨナラだ
90通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 18:58:27 ID:???
放送日なんか特に怖いからな。
何が起こるか分からん。
コーラが死んだ日には追悼が物凄い立ちそうだし
91通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 19:00:00 ID:???
とりあえず一日一保守を
お奨めします。
92通常の名無しさんの3倍:2007/10/14(日) 19:13:39 ID:???
保守
93通常の名無しさんの3倍:2007/10/15(月) 00:21:51 ID:???
ちょいと前に700少しスレあったがしばらくしてから見たら600台くらいだったかな。
で、今690越えてるって事はそろそろ危ないってことだよね?
94通常の名無しさんの3倍:2007/10/15(月) 02:16:56 ID:???
690は死亡直前
即座に上げ保守すべし
最終書き込み時間云々とぬかしてる連中は現実を知らん
95通常の名無しさんの3倍:2007/10/15(月) 12:26:13 ID:ybrw+NOD
あげ
96通常の名無しさんの3倍:2007/10/15(月) 13:03:33 ID:LxDpj1Jm
デストロイは倒せない
97通常の名無しさんの3倍:2007/10/16(火) 23:51:15 ID:7mNpbUgs
あげ
98523:2007/10/17(水) 20:19:40 ID:???
アスラン達は軍港を始め、一般人が行ける所は隈なく廻った。だが……アークエンジェルは影の形もなかった。
「そりゃぁ軍港に堂々とあるとは思っちゃいないけどさぁ」
「あのクラスの船だ。そう易々と隠せるとは……」
「まさかぁ、ほんとに居ないなんてことはないよねぇ。どうする?」
「欲しいのは確証だ。ここに居るなら居る。居ないなら居ない。軍港にモルゲンレーテ、海側の警戒は、驚くほど
厳しいんだ。なんとか、中から探るしかないだろ」
「確かに厄介な国の様だ。ここはっ!」
「はぁ……モルゲンレーテを張るしかないか」
「モルゲンレーテ?」
「足付きはあれだけの被害を受けている。もしいるならば絶対修理するはずだ。物資の搬入の様子その他から
当たりをつけるしかない!」


その頃モルゲンレーテ地下――
「アサギ、マユラ、ジュリ! どうだ?」
「すごい! すごいですよ! カガリ様! まともに動きます!」
オーブのM1アストレイのテストパイロットの3人娘は歓声を上げている。
「そうか……よかった!」
「あーあ。ロウの所にわざわざ忍び込んだの、無駄だったなぁ」
ジュリがため息をつく。
「ロウ?」
「ロウ・ギュール。MBF-P02――レッドフレームを手に入れたジャンク屋ですよ、カガリ様。彼はナチュラルなので、
動かしているOSを手に入れようとジュリが接触したのですが……」
M1アストレイの主任設計技師エリカ・シモンズが説明する。
「多少は動かしやすくなったけど結局使い物にならなかったのよね〜」
「実は、ロウ・ギュールの一行、今日オーブに到着したんですよ。会ってみます?」
その時、廊下を歩いてくる足音がした。
「ははは! ジャンク屋はだめで、ヘリオポリスの避難民の者が作ったら一発でOKか! こいつは愉快だ! 
オーブには広く人材が眠っている事を意味する。喜ばしい事だ。下賎なジャンク屋などに頼る事などない」
99523:2007/10/17(水) 20:20:26 ID:???
「ロンド様!」
エリカが振り向く。
「ロンド……? ……なんだギナか」
さすがにオーブの五大氏族同士、幼い頃から知っているだけある。カガリは即座に相手の素性を当てる。
現れた男。それはロンド・ギナ・サハクだった。彼は、オーブの五大氏族族長のひとりコトー・サハクの養子である。
ロンド・ミナ・サハクと言う彼にそっくりな外見の姉がいる。
元来サハク家はオーブ五大氏族の中でも歴代軍事を司ってきた家柄で、言わば平和と中立を謳うオーブの
国家理念と相反する裏の顔的な存在である。その所為か常に政の表舞台に立ち国家の象徴として君臨する
アスハ家には批判的な見方をする者の多い氏族ではあるが、ロンド姉弟は取分けその傾向が顕著で元首である
ウズミに対しても公然とその統治方針に対する批判を口にする程だ。
「久しぶりだな。カガリ。放蕩娘が帰って来たか」
「なにを!?」
「家出して、世の中を見て何か考えが変わったかね? 例えばウズミの中立政策に対して」
「……まぁいい。お父様の言う事は、夢だな。美しい夢。だが、それを他国の思惑に寄らずして自力で実現する
ためにはオーブは世界の覇権を握れるくらいの国力がなければ無理だろう」
「ほう」
そこまでは辿り着いたか。ギナは感心した。なにしろ彼らロンド姉弟が密かに抱いている野望――それはオーブに
よる世界の制覇――そして優れた者による大衆の支配なのである。
「まぁ、とりあえずは合格かな」
「なにが合格なんだ!」
突っかかるカガリを、もう用は終わったとでも言うように無視して、ギナはエリカに告げる。
「あのP02のパイロットか。興味がある。M1アストレイに乗せてみろ」

「うひょー! すげえ! 動かしやすい!」
ロウ・ギュールは有頂天になっていた。何しろ秘密基地のような地下の工場案内され、ずらりと並ぶオーブの
秘密兵器に乗せてくれると言うのだ。少年のような部分を残しているロウが喜ばないはずがない。
そして、実際に乗ってみたら、その動かしやすさはレッドフレームと段違いだ。今まではレッドフレームに試験的に
搭載されているナチュラル用OSと、『8(はち)』――ロウが宇宙空間を漂流していた宇宙戦闘機から発見した
オーパーツのような人工知能搭載コンピュータの助けを得て操縦していたが、これなら自分ひとりでもコーディネイターと
同様に操縦できる! と彼は思った。
「でしょー!? オーブにもすごい人がいるでしょ? ヘリオポリス崩壊の時から今までのたった3ヶ月で作っちゃったって言うのよ?」
ロウが座っている座席の後ろからジュリが我が事のように自慢げに言う。
「なぁ。会ってみてえなぁ、そいつに。どんな奴なんだ?」
「残念ね」
スピーカーからエリカ・シモンズの声が流れる。
「一日違いで、オーブから出発しちゃった所よ。16歳のかわいらしいお嬢さんだったけど」
「へー。そいつは残念だなぁ」
「ロウ! 鼻の下が伸びてる!」
「いててて!」
ジェラシーを感じたのだろう、ジュリが後ろからロウをつねる。潜入任務の時から、ジュリはロウが気に入っているようだ。
「なぁ、シモンズ主任。頼み事があるんだけど」
「何かしら?」
「このOS、ぜひレッドフレームのOSの改良の参考にさせてくれ!」
「あら、あなたは立派にP02を操縦してるじゃない?」
「まぁ、そうなんだが……ちょっと……8(はち)頼りの所があったり……ごにょごにょ」
「……いいわ」
「本当か!? サンキュー!」
「その代わり、ちょっとM1アストレイと模擬戦をしてほしいのよ。運動性を見たいの。レッドフレームに乗り換えてくれない?」
100523:2007/10/17(水) 20:22:08 ID:???

「お前もやるか?」
ギナはカガリに声をかける。
「んーん……」
カガリはちょっと考え込んだ。
「いいや。ギナと違って、私が乗れても大した事はないからな」
「ほう?」
めずらしい事もあるものだ、とギナは首を傾げる。昔ならこう言う事には真っ先に首を突っ込んできたのに。
「ルナマリアから言われたんだ。この世の中をよくするために、あなたは上で頑張れ、私は現場で頑張るから……って。
私が今しなきゃいけない事は、モビルスーツの操縦じゃない」
ルナマリア……あの天才プログラマーか。ギナはちょっと嫉妬を感じた。二人の関係にだろうか? それとも、カガリが自分より
少し先を行ってるように感じたからか。
「では、そこで見ておけ。私のダンスをな」
ルナマリア・ホークか……オーブ出身の連合のエースパイロット――不思議と、彼女と戦いたいと言う思いは起こらなかった。
天才プログラマーと言う第一印象からだろうか? 彼女は自分にとってダンスの相手ではなくダンスの演出家、振付師、あるいは
服のデザイナー、仕立て屋に思えたのである。
だが、これから戦う相手は違う。自分に土をつけた男――見極めねばなるまい。その実力を。


……勝負は付いた。
終始ギナが押し気味に試合を運び、レッドフレームが実体剣を抜き押し返した物の、ギナはそれを白刃取りして
奪い、逆に切りつけ、とうとうレッドフレームは倒れた。
「まるで素人のダンスだったな。殺す価値もない。こんな男……」
P02のコクピットが開いて、ロウ・ギュールが現れた。
「やあ! あんたやるなぁ! まさかガーベラ・ストレートを受け止められるとは思っていなかったぜ!」
屈託のない笑顔。ギナはちょっとむっとした。
「お前は! 戦いに負けて悔しくないのか!? 恥ずかしいと思わないのか!?」
「別に――だって俺はプロのジャンク屋だぜ? あんたはプロのパイロットだろ? 戦いで勝つのは当たり前じゃないか!」
ふいに、カガリにルナマリアが言ったと言う言葉が蘇る。
『あなたは上で頑張れ、私は現場で頑張るから』
ギナはまるで、自分に言われてるかのように感じた。
五大氏族の息子たる身が自らパイロットとして戦いたいと望むのは、本道から外れた我侭だと言うのか?
「それよりあんたの機体――早くメンテした方がいいぜ。無理な体勢でガーベラ・ストレートを振ったろ? モーター類が
過負荷で悲鳴を上げてるのが聞こえるぜ。俺のレッドフレームはOSからチューンしてあるから大丈夫だが」
「む?」
確かに腕にアラート表示が出ている。ガーベラ・ストレートと言うらしい実体剣を取り落とす。
「……メカを見る目は確かなようだな。ジャンク屋がやっていけなくなったらオーブに来い。雇ってやるぞ」
言い捨てると、ギナは模擬戦場を後にした。


101523:2007/10/17(水) 20:23:18 ID:???
オーブを出て2日も過ぎた頃だろうか? ちょうどマーシャル諸島をすぎた辺りだ。
「レーダーに感! これは! F-7Dスピアヘッドです! 数、10機!」
「味方か!」
「とうとう来たのね……」
『こちら空母ジョージ・ウォーカー・ブッシュ所属航空部隊。貴艦を護衛します』
10機のスピアヘッド中隊は、2機ずつ小隊を組んで5つに分かれて全包囲からの敵の襲来を警戒している。
「感謝する、と返信を」
「はっ!」
それから1時間後。
「レーダーに感あり!」
「スピアヘッドは!?」
「位置、変わりません!」
「これは……友軍です! ラジエダ級護衛艦5隻!」
北進を続けるアークエンジェルに、護衛艦が5隻近づいて来た。
『こちらパスカルメイジ艦長、ミサキ少佐です。本部からの命令により貴艦を護衛します』
「了解しました。護衛を感謝します」
『それから貴艦に対する指示も預かっています』
「なんでしょう?」
『モビルスーツのパイロットと協力して、ナチュラル用OSを火急に作ってくれとの事です。モビルスーツは
大分生産されていますが、OSがどうもうまく行かないようです』
「はっ。わかりました」

「……と言う訳でね、せっかくのんびり出来る所を悪いけど、お願いできないかしら」
私は、マリューさんにナチュラル用OSの制作を頼まれたのだった。
「……こんな事もあろうかと……」
「え?」
「ナチュラル用基礎OSなら、もう組んであります! ストライクの中に! シミュレーターの中にも移植してあります」
「きゃー♪ なんて子なの?」
マリューさんに抱きしめられた。
「じゃあ、早速乗せてみましょう。フラガ少佐や、ヘリオポリス組にも暇そうな顔しているのもいるし」

「えー、俺が乗るの? 俺はアーマー乗りだぜぇ?」
「時代は変わっていくんですよ。フラガ少佐。範を示す意味でも、どうか」
「しょうがねぇなぁ」
フラガはおずおずと乗り込んだ。
ルナマリアも下で手を組んでどきどきのご様子だ。
「お? お? おおー!」
ストライクは、格納庫の中を一歩一歩、スムーズに歩いている。
「やったなぁ! お嬢ちゃん! 自分で歩いてみても、俺が護衛してたパイロット候補生の動きよりだいぶましに
歩いてるって事がわかるぜ!」
やったぁ! と声を上げてルナマリアはガッツポーズを作った。

102523:2007/10/17(水) 20:23:27 ID:???
「次、次俺!」
「いや、俺だ!」
「しょうがねぇなぁ。じゃんけん」
「やった! 勝った!」
その後はサイとトールが争うようにして順番で乗り込んだ。
「おお! 初めて乗るにしちゃあ、ずいぶん動きが滑らかじゃねぇか!」
マードックさんが驚いたように言う。
「へへ。俺ら、ナチュラル用OS組み込んだシミュレーターでさんざんやりましたからね」
「なに? お嬢ちゃん、そんな事までやってたのか?」
へへ。と笑う私。
「これなら、微調整程度で済みますわね」
「そうですね。幸いな事です。訓練もやらせましょう。……ルナマリア。お前を軍に誘った事、間違ってはいなかったようだな」
ナタルさんはにっこりと笑った。

念の為にとOS構築をやっておいたおかげで、私は空母護衛群本体と合流する時ものんびり見物できた。アークエンジェルは、
旗艦のジョージ・W・ブッシュの右に占位した。
きっと、旗艦の人達もアークエンジェルが見たいんだろう。

「どうです? ストライクの動きを見せちゃあ?」
「そうですわね。慣熟訓練も兼ねて」
まず私が、エールストライカーで艦の周りを飛び回った。周りの船は甲板が鈴なり状態で、みんな声を上げているのがわかる。
次は、フラガさんだ。スラスターを慎重に使い、空母の甲板に降り立った。
『現在乗っているフラガ少佐はナチュラルです』
放送が流れると、どよめきが起こった。

「どうじゃな、お前さん。お前さん以外の者がモビルスーツを扱えるようになって寂しいんじゃないのかね」
「あ、デンギル先生。あー。んー。寂しいと言えば、寂しいです」
「正直じゃな。いい事じゃ。いいか。あんた自分の役割を取られたように感じているかも知れん。自分の存在価値が減ったような
気がしているかも知れん。じゃが、それは間違いじゃ。前にも言ったが戦争はいつか終わる。その時に自分が何をやりたいのかが大切じゃ。
お前さんはたまたま兵士をやっとるが、本質は違う。一個人のルナマリア・ホークじゃ。兵士のルナマリア・ホークじゃない。それを忘れなさんなよ」
「はい……」

それから五日程度の航海で、アラスカ本部に着いた。
4月3日か。こんなに早くアラスカに着けたなんて。オーブで徹底的に修理していたら、まだオーブにいたかも知れない。もし、オーブにいたら、
上陸許可が出たのかもなぁ。それを考えると残念。でも、うん、ザフトに用意周到に網を張られてせっかく修理したのが無駄になっていたかも。
アークエンジェルはすぐに修理ドッグへ入り、ストライクも基地内工廠に移動した。
「電磁流体ソケット摩耗が酷いな」
「駆動系はどこもかしこもですよ」
「限界ギリギリで、機体が悲鳴上げてるようだぜ」
ストライクを見ている技師さん達が色々言っている。
頑張ってくれたもんね。ごめんね。そしてありがとう。
103523:2007/10/17(水) 20:24:58 ID:???
続く。

アストレイからギナ様とロウ・ギュール登場。

そしてアークエンジェルは無事アラスカに到着!
104通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 20:48:51 ID:???
悪いけど致命的な間違いが一つある、M1の模擬戦で戦ってたのはミナ様だ
あんたのオリジナルならそれで良いかもしれんが
105通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 20:52:29 ID:???
GJ!そして乙!
さて、アストレイ組のこの描写、物語はどのように変わっていくのかな?
ストライクも消耗が激しいようだけれど、これはIWSP的なパックへの布石なのか…wktk
106通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 20:59:50 ID:???
>>104
ミナかギナかは言及されてないけどね・・・
右分けがミナ様だよね?乗る前は左分けの絵があるけれど、乗っている絵では右分けになっているんだよな・・・
107通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 21:56:20 ID:???
アストレイなブログでミナっていってたような
108523:2007/10/19(金) 17:38:18 ID:???
「えぇー! 私が中尉!?」
私が昇進をナタルさんから告げられたのは、翌日だった。
「本当だ。クルーゼ隊と渡り合い、アークエンジェルを守り、砂漠の虎を倒した。未確認情報だが、インド洋で破ったのは
『紅海の鯱』の異名を持つマルコ・モラシムらしい。昇進するに十分な戦果だ」
「実感湧かないですねぇ」
「お前だけじゃないぞ。フラガ少佐も中佐に昇進。さらに、パイロットになる意思を示した事だし、サイ、トールは
少尉に昇進だ。その他のヘリオポリス組も二等兵から一等兵になる」
「わぁ。すごいですねぇ」
「……こうやって会えるのも、次はいつかな」
ナタルさんは寂しそうに言う。
「え?」
「転属命令が出ている。大掛かりだぞ。私にフラガ少佐、ジョン少尉、ルナマリアにそれからお前の友達のサイと
トールもだ」
「そんなに……ナタルさんはどこに?」
「ああ、新造艦の艦長らしい。少佐に昇進もさせてもらったよ。ルナマリアの余禄かな。ふふ」
「私達は、どこに?」
「なんでも量産だけはしていたモビルスーツががいきなり使い物になった物だから、フラガ少佐、いや、昇進して
中佐か。を隊長にして、教導隊を作るらしい。ルナマリア、お前も、サイとトールもそこに行くらしい。
あ、ジョン少尉だけは別だな。新設されたモビルスーツ隊に配属だそうだ」
「そうですか……」
「そう時化た顔をするな。軍と言う物は案外狭い。またすぐ会えるかも知れんぞ」
「はい。ナタルさんもお元気で」
「ああ。ルナマリアもな」

109523:2007/10/19(金) 17:39:06 ID:???
その日の夜、アークエンジェルクルーでちょっとしたお別れ会をやった。
さすがに修理中のアークエンジェルでやる訳にもいかなかった。豪勢にアラスカのレストランを借り切った。
店のキャパシティで、全員と言う訳にも行かなかったけど、ヘリオポリスからのみんなと、ジョンさんが出席。
そんなお金あるんですか? とフラガさんに聞いたら、
「使う機会もなかったんだから、溜まってるよ。気にすんな」
と答えが返ってきた。甘えちゃおう。
……そう言えば、私もお給料出てるんだよねぇ。ここで使おうとしても、アラスカ名物……思いつかない。
サーモンぐらいしか。
確かにこりゃ、お金溜まりそうね。
パーティは、マリューさんの発声で始まった。
マリューさんも寂しいだろうな。フラガさんもナタルさんもいなくなって。
私は、ミリィと別れちゃうけど、まだサイやトール。それにフラガさんもいる。
「ルナちゃ〜ん」
あ、マリューさんが絡んで来た。もう出来上がってる?
「あなたと離れ離れになるなんて、寂しいわ〜」
「そんなー。そう離れるわけでもないんだし。ナタルさんこそ、一人ぼっちで転属ですよ」
「ナタルは優秀だからいいのよ〜。いい? つまりこの焼き鳥のようなものよ。この肉が私で、ネギがナタル。
わかる?」
「さっぱりわかりません!」
「だからあんたは馬鹿なのよ〜」
「はいはい。お水、飲みましょうね」
「う……甘ーい! お酒じゃない。お酒はどこ? お酒……」
マリューさんはふらふらと行ってしまった。
代わりに、ナタルさんがやって来た。
「やれやれ。ここまで乱れる人だとは思っていなかったな」
「マリューさんの事ですか? 寂しいんですよ、きっと。みんなと離れ離れになって」
「私も寂しいぞ。少人数でやってきた期間が長いせいかな? 結構、辛い」
「でも、いきなり少佐になって艦長ですよ。評価されてるんですよ」
「でも、誰も知らないメンバーの所に飛び込んで行くと言うのも、怖いぞ」
「ナタルさんでも、そうなんですか」
「そりゃそうだ。結構昔から内気でな。ルールがあるならそれに従えばいいが、それに外れた行動を取られると、
混乱してしまう。だんだん慣れては行くが」
ナタルさんも結構酔ってる。こんなに打ち解けた話を聞いたのは初めてだ。
「だから、ルナマリア。お前は頑張れよ。お前は私が持った部下の中で一番出来がいい!」
「はい」
お別れ会は、順次お開きになった。
フラガさんはナタルさんを送って行くようだった。

110523:2007/10/19(金) 17:41:33 ID:???
「俺さぁ、やっぱり、ミリィの存在が大きいと思うのよね」
酔っ払ったトールが言う。
「はいはい。ご馳走様」
「俺なんか〜フレイを置いてー、戦争やってるんだぜ」
サイも、やっぱり酔っ払ってる。
「フレイって言えば、今オーブにいるの? それとも大西洋連邦?」
「大西洋連邦にいるってさー。オーブにいた時連絡取ったんだ。ルナお姉さまによろしくってさ」
「あはは」
最初は敬遠されてたみたいなのにね。なにがどうなったんだか。
「指導隊ってさ、教えて歩くんだろ? できるかなぁ。俺に」
「出来るわよ。私の作ったOSのシミュレーション、みっちりやったでしょう?」
「頑張るよ、俺。頑張るからさぁ」
酔っ払い二人を部屋に放り込むのは、結構骨だった。

異動翌日。私達に与えられたのは、私とフラガさんにストライクの改造型。改造点はなんでも、モルゲンレーテ社
から提供された技術を組み込み、強化型バッテリーユニットである「パワーエクステンダー」の搭載によりエネルギー
変換効率が向上し、機体の稼働時間が大幅に延長されている点。そしてもう一つ。エールストライカーを付けなくても、
両腰のアーマー上部に常時ビームサーベルを装備した事で、ランチャーストライカーを付けていても、接近戦に
対処できる点だろう。
トールはデュエルの量産機だ。デュエルダガーと呼ばれていて、フォルテストラと呼ばれる追加装甲、スラスター、
それに右肩部のリニアキャノンや左肩部のミサイルランチャー等が付いている。
サイはバスターの量産型にあたるバスターダガーだ。両肩のミサイルポッドはバスターの6連装から3連装に
変更されているが、腕の部分のハードポイントにビームサーベルを搭載することもできる。これは明らかに
バスターとストライクとの戦訓のおかげだろう。……すぐ落とされていたものね、バスター。
私の手でサポートOSまで完成されていたストライクと違って、デュエルダガーやバスターダガーはサポートOSは
これからだ。私達の訓練で、直す所が決まるのだと言う。
「でも、電圧を強くする事でPS装甲の耐久力が上がるなんて……今まではなんでやらなかったんでしょうか?」
私の横で、カラーリングが赤主体に変化した私のストライクを見上げているフラガさんに尋ねた。
「今までは、バッテリーの問題があったからなぁ。必要十分な強度があれば、わざわざ稼働時間を短くしてまで、
電圧を高める真似はしないだろう」
「でも、少しだけど、ビームに対しても耐久力上がってるんですよね?」
「ああ、だそうだ。ほんとにほんの少しだそうだけどな」
「もっと赤くする事はできますか?」
整備員さんに聞くと、多少稼働時間が短くなるが大丈夫と答えが返ってきた。
そして、実際に真紅に発色するストライク。
「じゃあ、バッテリーに余裕があるんだし、私はこの設定で行きます。そうね、赤だから……これからあなたの
名前はストライクルージュよ!」

111523:2007/10/19(金) 17:42:12 ID:???
フラガ指導隊には、サイとトール以外に三人の人が入って来た。
「スウェン・カル・バヤン少尉だ」
「ミューディー・ホルクロフト少尉よ」
「シャムス・コーザ少尉だ」
若い! 一番年長のスウェンさんでさえ私より一歳上なだけだ。
スウェンさんは105ダガー、ミューディーさんはデュエルダガー、シャムスさんはバスダーダガーが乗機だ。
新しく来た3人は、フラガさんと握手する時、なんとなく嬉しそうに見えた。そりゃそうだよね。フラガさん英雄だもん。
でも……私と握手する時はみんなむっつりしていた。
「コーディネイターはお嫌いですか?」
私は聞いてみた。自分でも、強くなったと思う。昔なら、泣いて、リストカットしていたかもしれない。
「ええ、嫌いよ」
ミューディーと名乗った女が、感情を見せない顔で言った。
「そうか。好悪の感情は人それぞれだ。今ここではとやかくは言わん。だが、俺達はチームだ。チームの連携を
乱すような事は許さん」
フラガさんが、ぴしりと言ってくれた。
「それから、この隊の副長はルナマリアだ。一番モビルスーツの経験がある。きちんと言う事聞けよ。さもなきゃ
死んでも知らんぞ」
男二人は頷く。
「はーい」
ミューディーさんは仕方なさそうな顔で気のなさそうな返事をした。

私はまず新しく来た3人と訓練した。
強い! さすが指導隊に回されてくるだけあるわ。でも、ここで舐められたらたまらない。私はちょっと本気を出した。
シャムスさんなんかは本気で悔しがっていた。
私は3人に良かった点、悪かった点を教えた。そう。ただ私が勝つだけじゃだめなんだ。皆が、それぞれ人に
教えられるくらいにうまくならないと。

112523:2007/10/19(金) 17:42:49 ID:???
「いくわよぅ」
「手加減。手加減」
フラガさんと私が戦った後、サイとトールの相手をする。フラガさんは他の部署の人達と効率的なモビルスーツ戦術を
検討すると言う事で、途中で抜けた。
……ま、最初から全力出すわけにもいかないものね
それなりにサイとトールの相手をしてやった。でも、いくら105ダガーを基に高い柔軟性を持つと言っても砲撃戦用機と
ストライクとじゃ相性が悪い。トールのデュエルダガーがストライクに比較的善戦したと言う感じだ。
「でもわかってる? 私達は巡回指導を行わなきゃいけないのよ? 早く強くならないと」
「まだまだ指導なんてがらじゃないけどなぁ」
「もう、明日から指導の予定入ってるわよ」
「えひゃー!」
「なぁ、ザフトでビーム兵器持ってるのってXナンバーだけだよな?」
サイが私に質問する。
「わからないわよー。技術はすぐに取り入れられるものだから。砂漠で、最初は持ってなかったのに、ビームサーベル搭載の
バクゥすぐに出してきたじゃない。……あ! ビーム兵器、あったわ。ザフトにも。ほら、ヘリオポリスでアークエンジェルが襲われた時、
ジンが抱えてきた奴。確か……バルルス改特火重粒子砲とか言う大仰な名前だったわ。でも、威力はビームコーティングシールドで
簡単に防げちゃう位だから。こっちのビームライフルの方が威力強いかも。取り回しやすいし。」
「そうか。バスターにはシールドないんだ。前に出ないように気をつけないとな」
「その代わり、バスターダガーにはラミネート装甲あるじゃない」
「PS装甲もそうかなぁ。俺のデュエルダガーのリニアガンじゃ役に立たなくなっちゃうって事?」
トールが心配そうに言う。
「そーんな事ないわよ。PS装甲であっても、実弾兵器の着弾時の衝撃までは消せないわ。現に、私が最初に
ストライク乗った時、ザフトの重突撃機銃の衝撃、結構あったもん。それにミサイルの衝撃も」
「そうかー。安心したよ」
「機体が無事でも、中の人が気絶しちゃえばどうしようもないものね。だから、ダガーにはPS装甲は使われていないのかも? 
壊れる事で衝撃を吸収するように?」
「じゃあ、そろそろ再開しよう。次は2対1でいいか?」
サイが言う。
「えー。フラガさんとも戦って疲れてるのに。女の子に優しくないなぁ」
「たまには善戦しておかないと、精神が萎縮するからね〜。へへ」

113523:2007/10/19(金) 17:42:59 ID:???
「ちょっと待てー!」
何事?
「は! 指導隊の宿営地に侵入しようとした者が居るのです」
「ああ! ゲイツ博士!」
侵入者は、私がナチュラル用OSを納入した時に立ち会った、ビル・ゲイツ博士だった。
「どうしたって言うんです?」
「ルナマリア君! 君は実戦部隊になんかいちゃいけない! 君の納入したOSは完璧だ! 君を失う事は人類の
損失だ!」
「はいはい。ちゃんと許可取ってから来て下さいね。ここは軍機地域なんですから」
ゲイツ博士は引きずられて行った。
でも……そんなに期待されても困るのよね。あの時は、最初から答えがわかってるようにプログラムを組めたけど、
今、他のプログラムを組めと言われても同じようにできる自信は無い。

スウェン達が、いつも耳にイヤホンを当てているのはちょっと話題になった。三人揃って音楽好きと言う事かも知れないが。
フラガが問いただすと、スウェンは顔をしかめながら素直にイヤホンを渡してきた。
「なんだこりゃ!?」
フラガが大声を上げる。
「お前ら……どんな育ち方をしてきたんだ?」
「それを言う事は許可されておりません」
スウェンはすげなく答える事を拒む。
「だいたい想像付くけどな。ブルーコスモス絡みの施設ででも育ったか? コーディネイターと一緒に行動する事になって、
洗脳を解いている最中か」
「答えられません」
スウェンの顔が強張る。
「まぁ、早いとこ洗脳解いてくれよな。チームのためにも」
そう言うとフラガはスウェンにイヤホンを返した。

「一体、なんだったんですか?」
私はフラガさんに聞いた。
「ん〜。まー、あんまり気持ちのいい話じゃないよ?」
「私はチームの副長です」
「そう言われちまうとなぁ」
フラガさんはしぶりながらも答えてくれた。スウェンさんが渡したイヤホンからは、
『地球連合に属するコーディネイターは信頼できる戦友だ』
とか言う言葉が延々と音楽に乗って繰り返されていたそうだ。
「あいつら、おそらく孤児だな。ブルーコスモスが運営する養護施設の中に、子供の頃から反コーデイネイターの洗脳をして、
戦闘訓練を施す施設があると聞く」
「そんな非人道的な事!?」
「噂だが、確証は高いよ」
「私はどうすれば……」
「今までどおりでいいんじゃないか? ほら、フレイって子がいたろ? 最後には仲良くなれたじゃないか」
フレイ……フレイのような関係に、なれるのかな? あの3人と。
114523:2007/10/19(金) 17:46:22 ID:???
続く。

ルナにはやっぱり赤だよね!と言うわけで新しい機体はストライクルージュになりました♪
それも、史実のルージュより鮮やかな赤。

スターゲイザーから3人登場。
アークエンジェルからだいぶん人が離れました。
115通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 18:38:35 ID:???
このスレ意外にもシャムス好き多いだろw
116通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 18:54:31 ID:???
GJ!
スタゲからファントムペイン三人組登場ですか。スタゲでも彼らがこの頃何をやっていたのかは殆ど明かされていないので面白そうです。

ルナとムウの新しい機体はPS装甲搭載機のようなのでストライクと105ダガーを足して二で割った機体と見てよいのでしょうか。あとバスターダガーの登場(ひょっとしたらロングダガーも)はもっと遅かったような記憶も(バスターダガーは11月頃だったか?)。
まあそれぞれの試作モデルだと解釈すれば問題ないのですが、ここは試作型105ダガーに適当なストライカーパックを付けた方が公式設定を考えると違和感が無いような気もします。

話自体はテンポ良く進んでいて、これまた面白い一回だったのでそういった点での「荒さ」が目立つのが少々残念な回でした。非常に「辛い」感想になってしまいましたがこれに気を落とさず、次回以降もまたがんばってください。
117通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 19:04:33 ID:???
なあ、Wikiに登録したの誰だ?
523氏じゃなくて872氏のとこに登録されてる気がするんだが
編集方法わからんのよ
118523:2007/10/19(金) 20:46:11 ID:???
感想ありがとうございます^^
地球軍のモビルスーツはハルバートン提督とアルスター事務次官のプッシュにより多少開発スピードが上がっていると言う想定です。
もっとも文中にあるようにデュエルダガーもバスターダガーも完全には完成していないと言う設定です。

「パワーエクステンダー」――オーブは当然ハルバートン提督とアルスター事務次官生存の恩恵を受けていないのですが、
ストライクルージュにしたいがためにちょっと無理やり出しました^^;

wiki、指摘ありがとうございます。
872氏の19話はとりあえず空白にしておきました。
119通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 21:29:04 ID:???
なるほど、確かにそういう設定でしたね。
しかしせっかくルナマリアが種死本編での記憶を持っているのですから、注釈としての意味合いを込めてルナマリアに違和感を感じさせるのはどうでしょうか。
例えば「この時期にこんなに多くの種類のMSがあるのは奇妙だ、と声がしたような気がする」と感じで。
120通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 21:42:04 ID:???
いや、この時期のルナマリアは軍属でもなんでもなかった筈だから、連合のMS事情にそこまで詳しくないだろ・・・・・・
しかしザフト側のMSに関しては別かも
とくに「ゲイツの次」の量産型MSが登場したら……
やっぱ連合に対抗して開発時期が早まる?
121通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 22:42:03 ID:???
>>120
ゲイツの次だとゲイツRとかハイマニュ2型とかだろ?
ほぼ武装換え機だからあんまり脅威に感じないなあ。

そもそもゲイツやディンも種死期でもバリバリ現役だし
122通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 23:25:12 ID:???
「ゲイツの次」はニューミレニアムシリーズという頭悪そうなネーミングのアレだろう……
123通常の名無しさんの3倍:2007/10/20(土) 02:20:00 ID:???
そもそも73年なのになんでニューミレニアムやねん、と。
124通常の名無しさんの3倍:2007/10/20(土) 08:25:32 ID:???
実は西暦が民間では根強く使われていたとか
125通常の名無しさんの3倍:2007/10/20(土) 15:15:19 ID:???
サウザンド=ミレニアムってことじゃね?
126通常の名無しさんの3倍:2007/10/20(土) 15:20:37 ID:???
実は遊戯王が流行してるんじゃね?
127通常の名無しさんの3倍:2007/10/20(土) 17:32:01 ID:???
単なる形式名だろw 
128通常の名無しさんの3倍:2007/10/20(土) 18:11:02 ID:???
設計者がニューミ・レニアム氏だったんですよ
129523:2007/10/20(土) 23:59:40 ID:???
第1モビルスーツ隊……その名の通り、地球軍で最初に編成されたモビルスーツ部隊だ。
今日はそこへの教育に来ている。
「じゃあ、ギャバン隊長はルナマリア中尉から指導してもらってくれ」
「ん? お前さんがやるんじゃないのか?」
第1モビルスーツ隊のギャバン・グーニー隊長はいぶかしがる。
「正直、自分より彼女の方が腕前は上でね」
フラガさんは肩をすくめる。
「そうかい。じゃ、一つ見せてもらおうかな」
私はギャバン隊長の席の後ろに座った。
隊長機と言っても、ストライクダガーだ。第1モビルスーツ隊は全部そう。と言うより、新設されたモビルスーツ隊は
全部。フラガ教導隊が特別なのだ。
うん、しっくりくる。フラガ教導隊はいくら新型機の実験隊も兼ねていると言っても種類が多すぎて……
朝、教導隊のモビルスーツを見るたびに、地球軍にこの時期にこんなに多くの種類のモビルスーツがあったっけ?
 と妙な違和感を感じてしまうのはなんでだろう。夢のように消えてしまいそうで不安になる。
ううん、埒も無い事考えないの! 今は指導に集中しなきゃ!

130523:2007/10/21(日) 00:00:02 ID:???
「そうそう、いい感じ」
「あったりまえよぉ」
「あ、そこは無理に動かさないで! モーションが組み込んであるからそれに任せて!」
「う、なんか気持ち悪い」
「変な動かし方するからですよ。歩く時はオートに任せておけばいいのに」
「これでも、OSがへちゃな頃から動かしてきたんだぜ」
「ええ、だいぶ筋はいいですよ」
「そおかぁ? へへ」
こうやって、技能が向上して、無事に生き残ればいいな。ギャバン隊長もみんなも。

自分達の技能向上と他部隊への教育で2週間が過ぎた。
「フラガさん、私達、だいぶ強くなりましたよね?」
「ああ。しかしアーマー乗りとしては空が飛べないのが不安だよ。飛行ができるストライカーパックを開発してくれと
上申しておいたが」
「そうなんですよねー。今までの戦いも、ストライクが空を飛べたらどれだけ楽だったか。あ、後苦労したって言えば
海中! 海中用のストライカーなんてできませんかね?」
「海中は、それ専用のモビルスーツを作るらしいぞ」
「そうなんですか。その方がいいかも知れませんね。……それにしても、ストライクダガー、どんどん新しい部隊が
送られてきますね」
「ああ。ザフトが近々大きな作戦を立てているらしい。噂ではパナマのマスドライバーの破壊と言う話だが」
「……ぅ……」
……あ。久しぶりに頭の中に淡々と文章を語る声が……
少し、思い出した。この男の人の声……これは、教室で先生が教科書を読んでいる声だ。
だめだ。先生の顔に靄がかかっていて、思い出せない。
『オペレーション・スピットブレイク――ヤキン・ドゥーエ戦役に終止符を打つべくプラント最高評議会において可決された作戦だ。
宇宙から大規模な攻撃部隊を地上の地球連合軍側の拠点に降下させ拠点を制圧するという強襲作戦だった。
この作戦の前にプラントは地球と宇宙の行き来を可能とするマスドライバーを持つ地上拠点のほとんどを掌握して
おり、地球連合軍のもとに残されていた宇宙港はパナマ基地だけとなっていた。このため、その最後の宇宙港を
奪取することで地球連合軍の宇宙と地上の戦力を分断し、地球連合軍を地上に封じ込めることが可能になるとして、
パナマ基地攻略を目標としてオペレーション・スピットブレイクは立案、可決された。 しかしパナマ基地の攻略という
計画は表向きのもので、実際には地球連合軍最高司令部が存在するアラスカを強襲することが真の目的であった。
オペレーション・スピットブレイクがコズミック・イラ71年5月5日に発動されると、同時に全軍に対し攻撃目標の変更が
通達され、パナマ攻撃のために集結していた部隊はその進路をアラスカ地球連合軍統合最高司令部へと変更した。
72時間後ザフト軍はこの作戦に降下部隊及び地上部隊の大半を注ぎ込み、アラスカ基地の防衛線を次々と突破して
中心部へと迫った……』

131523:2007/10/21(日) 00:00:21 ID:???
「おい、どうした? お嬢ちゃん。具合でも悪いか?」
「……ザフトが、来るわ! パナマじゃない! ここに来るわ! 5月上旬、おそらく8日……」
「なんだって!? 例の、予知って奴か?」
「ええ、そう。多分、当たるわ。当たらなくても、警戒だけはしておいた方がいいかも」
「……わかった。お嬢ちゃんの勘は当たるからな。5月までに、主なモビルスーツ部隊、戦車隊、航空隊も合わせて
大規模な防衛訓練を行うよう、計画立ててくるわ」
「お願いします」

一週間かけて、フラガが主導したJOSH-A防衛計画もだいぶ固められた。基本は、ザウートや水陸両用モビルスーツの
ようにリニアガンタンク部隊で対処できる物は、スエズで実証されたようにリニアガンタンク部隊で対処する。
ディンのように飛行ができるモビルスーツにはスピアヘッド、スカイグラスパー隊で対処する。ディンに対して、戦闘機隊は
決して無力な存在ではない。これにはザフトのモビルスーツとスカイグラスパーで戦い続けたフラガの発言が大きく影響した。
そしてどうしても対処できないザフトのモビルスーツ隊には、こちらのモビルスーツ隊をぶつける。なにしろ地球軍のモビルスーツ隊は
結成されたばかりだ。全兵種が一丸となって当たらなければならない。そしてフラガのその方針は、未だ存在するモビルスーツに
懐疑的な高級将校、そしてリニアガンタンク部隊、航空部隊の自尊心も満足させる物だったのである。
そして5月1日を期して行われた大演習では、ひとまず地球軍首脳部を満足させる結果となった。
懸念としてモビルスーツが補給に戻る距離が長い地点がある事が指摘されたが、その方面には修理なったアークエンジェルを
配置する事が決められた。

アラスカの地下で、深刻な顔をして将官達が話し合っていた。
「オペレーション・スピットブレイク。ここまで戦力が揃えば、サイクロプスなど使わなくとも良いのでは?」
「ここまでの戦力を揃えておいて、自爆なぞいい物笑いだ」
「サイクロプスは、ユーラシアの力を削ぐと言う目的もある」
「前から言うように、私はそれには反対だ」
「おやおや、ユーラシアは信頼できる味方だとおっしゃる」
「そういう訳ではない! プラントと言う敵がある以上、それに力を注ぐべきだといっとるのだ!」
「ぅふふふ。貴方はハルバートン派だから。しかし、戦争に勝つには汚い手も使わねばならぬ事、おわかりでしょう」
「まぁまぁ。しかし、今JOSH-A防衛策を立てて取りまとめに動いているのはあの『エンデュミオンの鷹』だと言うではないか。
さすがだな」
「まぁ、モビルスーツ開発はハルバートン少将以外に、今では大西洋連邦のアルスター事務次官も強力に推進するようになったからな。
せいぜい良い結果を出して欲しい物だ。見事防いで見せれば我等の心証も上がる」
「しかし、演習でよい結果が出たからと言ってそれを鵜呑みにするわけにもいかん。兵器は実践でプルーフされてこそだからな」
「では、やはり念のために用意だけはしておくか」
「「異議なし」」

132523:2007/10/21(日) 00:00:29 ID:???
『総員、第一戦闘配備! 繰り返す! 第一戦闘配備! これは演習にあらず!』
基地に、警報が鳴り響いた。
「やっておいて良かったですね。大演習」
「ほんとぉ! さすが『エンデュミオンの鷹』って感じ?」
「いや。ははは」
シャムスさんとミューディさんがフラガさんに話し掛ける。
スウェンさんは黙々と出撃準備をする。
「頑張ろうぜ、ルナ」
「ええ!」
サイとトールが着替えに行った。
私も行こう。
私は嬉しかった。今まで一人で、ううん、フラガさんやジョンさんの支援はあったけど、モビルスーツは私一人で……いつも怖かったんだ。
でも! 今度は違う! 仲間がいる!

私達フラガ指導隊は本部近くに待機していた。
――! 救援要請が入った!
「フラガ指導隊、出撃するぞ!」
「「おおーー!」」
133523:2007/10/21(日) 00:02:45 ID:???
続く。

第一モビルスーツ隊の隊長さん、名前はターンエーから。
テレビではパナマで出てきた地球軍初のモビルスーツ隊の隊長さんになんとなく顔が似てたのでもらいました。

いよいよアラスカ防衛戦開始です。
134通常の名無しさんの3倍:2007/10/21(日) 00:20:31 ID:kjdsc8s7
リアルタイムGJ! 
135通常の名無しさんの3倍:2007/10/21(日) 02:40:22 ID:???
ギャバン・グーニーktkr!
核動力のMS奪おうとして爆発起こして死にそうな気がするのはオレだけかwww
136通常の名無しさんの3倍:2007/10/21(日) 18:30:16 ID:???
GJ!
137523:2007/10/22(月) 20:06:24 ID:???
救援要請地点では、ザウートとリニアガンタンクの戦いにバクゥが乱入し、暴れまわっていた。
「これ以上、勝手をさせるもんですか!」
私はエールストライカーを吹かすと突っ込んだ。
「私がかき回すから、その間に各自射撃を!」
「了解」
……ミューディー? 彼女はデュエルダガーのフォルテストラ装備を拒否し、機敏に戦っていた。
「ミューディー! ひとりで突っ込まないで!」
「こっちは任せた! お嬢ちゃん! 好きなようにやれ!」
フラガさんがミューディーの隣りで戦い始める。
「中佐! 航空支援を頼みましょう!」
「こんな混戦の中でか?」
「爆撃してもらおうってわけじゃありません! バクゥが飛べなくなればいいんです!」
「わかった!」
程なくしてスピアヘッドの編隊が来る。そしてバクゥに上空から銃撃を加える。
――! 今! 私はジャンプすると上空からすくんでいるバクゥの背中を撃つ! ミサイルポッドが弾ける。 
急降下してリニアガン装備のバクゥをビームサーベルで突き刺す。
メンバーのみんなも、一気にバクゥを駆逐してゆく。
『フラガ教導隊、助かったぜ』
リニアガンタンクから通信が入る。
「あんたは?」
『エドモンド・デュクロ少佐だ。ここの小隊を預かっている』
「覚えとくよ。またいつでも呼んでくれ!」

一旦本部に戻ったものの、すぐに救援要請が来た。
今度は海辺だ。格闘性能がある水陸用モビルスーツに苦戦しているらしい。
……ゾノだ! 私も苦戦した。
救援地点に行って見るとそんな不安も吹き飛んだ。確かに陸上でも機敏に動けるみたいだけど、バクゥに比べれば
どうと言う事もない! でも数が、多いどころではなかった。これは苦戦する訳だわ。
「航空支援を要請する。皆、一旦下がれ!」
フラガさんから指示が飛ぶ。
スピアヘッドの編隊が来る。爆撃。岸辺を満遍なく叩く。海へ戻ろうとした物も、水中爆発効果で被害が出ている
事だろう。
「ようし、ザフトの奴らを海へ追い落とせ!」
グーンは、砲撃にまかせていいよね。
私はゾノを狙う。
「インド洋でのお返しよ!」
こちらを狙うクローごと切払う。
フラガさんと私、スウェンさんとミューディーの攻撃で、ゾノは駆逐された。私達は一旦下がる。
サイ達とリニアガンタンク部隊が残ったグーンに砲撃を浴びせる。
これで、ここも片が着いたかな?

138523:2007/10/22(月) 20:07:00 ID:???
「ちくしょー! なんだこりゃー!」
「聞いてないぞ! 地球軍にモビルスーツがいるなんて!」
そう言っている間にも、地球軍のモビルスーツは統制の取れた動きで射撃して来る。それを切り抜けても、
ビームサーベルの刃がジンを襲う。それはジンの重斬刀の刃も簡単に切り裂き、アンチビームシールドを
持たないジンにとっては分の悪い戦いだった。
それでも優勢に立つ局面もあるのだが、しばらくたつと、どうやら手だれを集めたらしい、様々な機体が混在した
モビルスーツの小部隊が駆けつけ、押し戻されてしまう……
ザフトの兵士に焦りが広がっていった。

私が行ける! と思ったのは、いつだったろう。
相変わらず救援要請で忙しいけど、手ごたえが違ってきている。このままやっていればしのげる、と言うように。
「お嬢ちゃん!」
「マードックさん!」
補給のためにアークエンジェルに寄った。久しぶりだ。
ここで、生活していたんだよねぇ。懐かしい。
「無事なようで何よりだ。しっかり整備してやっから、休んどきな」
「ありがとう!」

「ふーん、ここが中尉の古巣って訳?」
ミューディーが話しかけてきた。
「ええ、そうよ。いい艦でしょう?」
「艦、配属された事ないから。ずっと地面の上ばかりだったわ。あはは。でも、いい艦ね」
そう言うと、艦のスタッフに話しかけに行った。
ちょっと、エキセントリックな子だ。他のスウェンさんやシャムスさんのように、用が無ければ話しかけられないのも
辛いけど。でも、ミューディーの場合は、親しく話しかけてくれるけど、なにか投げやりな、心にぽっかり穴が空いた
様な感じを受けるのだ。私に何が出来るだろう……そこまで考えて、首を振った。医者でもないのに、そんな事。

私の勘は当たった。もう何度目の救援要請かなんてわからないけど、敵が、前に進んで来なくなったのだ。
いや、ゆっくりとだけど後退している!
「気を引き締めろ!」
フラガさんから叱咤の声が飛ぶ。
「まだ何があるかわからんぞ!」
シャムスさんが突進する。
「ちくしょう! お前ら空の悪魔なんて! 逃がす物か!」
「シャムス少尉、出過ぎです! 戦列を保って!」
「うるさい!」
「命令です!」
撤退するザフト軍。殿軍を志願したのだろう、シグー。おそらく上級者の腕前は、まだモビルスーツに乗って
間もないシャムスでなんとかなるものではなかった。たくみにシャムスのビームサーベルを避け、重斬刀を
叩き込む。
バスターダガーがよろける!
――! スラスターを吹かし、両者の間に飛び込む! 振り下ろされた重斬刀の衝撃がシールドを伝わってくる。
私は更にエールストライカーのスラスターも吹かし、相手を押し込む! 倒れた相手にビームサーベルを突き刺す。
……それが、アラスカで私が倒した最後の相手だった。

139523:2007/10/22(月) 20:07:37 ID:???
「やれやれ、勝ってしまったよ」
「勝って、嬉しくないのですかな?」
「元々この作戦はザフト軍の大半を誘い込み、一気に片を付ける作戦だった」
「それが、ザフトにそれなりの損害を与えたとは言え、撤退を許してしまった」
「その分、我々の被害も小さいと思いますが」
「まぁまぁ。ともあれ、地球軍製のモビルスーツの有効性は確認されたのだ」
「その通り。アルスター事務次官殿もお喜びだろう」
「ハルバートンの顔を思い浮かべると癪だがな」
「おいおい、ここにもハルバートン派はおるのだぞ。うふふふぅ」
「とにかく、今回の功労者も、ムウ・ラ・フラガ中佐でよいですな」
「ああ。まさか、我らのモビルスーツのお披露目の功労者をコーディネイターの小娘にする訳にもいくまいよ」
「では、フラガ教導隊全体を功労者として称える、でよいですな」
「「異議なし」」

「しかし、二度目の勲功章をもらうとはなぁ」
「ふふ、フラガさん、あちこちまわって作戦立てて、この戦い勝ったのフラガさんのおかげじゃないですか」
「お嬢ちゃんも銀星勲章おめでとさん」
そう、私達フラガ教導隊は全員が叙勲されたのだ。軍が発行している新聞にも出てる。
「へー。ルナの事は、ヘリオポリスからフラガ中佐に付き従い支えた一の部下、だって」
トールが新聞を読む。
私も読むと、ヘリオポリスからストライクを操縦していたのはフラガさんみたいな微妙な書き方をしていた。
私の事は、トールが言った程度しか書かれていない。私がコーディネイターな事も触れていない。少し、ほっとした。
サイとトールも、ヘリオポリスからの部下と言うことになっている。気になっていたスウェンさん達の経歴も、
あまり書かれていなかった。軍学校で顕著な成績を上げ教導隊に抜擢された……くらいだ。

140523:2007/10/22(月) 20:08:13 ID:???
アラスカの町は、それなりに被害を受けていたけど、早くも飲食娯楽関係は復活しているようだ。
フラガ教導隊のみんなで祝杯を揚げる事になった。
「よお! フラガ教導隊!」
「お? 今日は助かったぜ! ありがとよ!」
基地を歩くと、街を歩くと、そこかしこから、声が掛けられる。
フラガさん、有名だものね。私達も適当に手を上げながらそれに答える。
ミューディーが言う。
「シャムスはねー、ビリヤードが得意なのよー」
「お、いいねー。じゃ、プールバーでも行くか?」
フラガさんの鶴の一声で、シャムスさん馴染みのプールバーへ行った。
「じゃ、私カルアミルク」
「私はブラッディマリーねー」
私とミューディーは早速お酒を頼んだ。
「ソルティドッグを」
スウェンさんも頼む。
「おい、いいのかよ、お酒なんて頼んじゃって」
「サイ、固い事言うなよ! 今日ぐらいはいいんじゃないの?」
トールは飲みたそうだ。
「そうそう、飲んじゃいなよー」
ミューディーが誘う。
「じゃあ、なにか飲みやすい物を」
「はいよ!」
マスターが出してきたのはスクリュードライバーだった。
ビリヤード台ではシャムスさんとフラガさんがゲームをしている。ビリヤードはさっぱりなのでわからないが、
どうやらシャムスさんが勝ったようだ。
「シャムスー! ルナがビリヤードまったく知らないみたいよー」
え? ちょっとミューディー!
「しょうがないなぁ」
むっつりした顔でシャムスさんが言う。
「教えてやるから来い」

「いいか? ビリヤードはメンタルスポーツのひとつとされ、個人の体格差・体力差による依存度は比較的小さい。
まず落ち着いた気持ちで玉をまっすぐに突けるようになれ」
「はい!」
「チョークを付けるのも忘れるなよ。チョークを全くつけないとキューミスが増える」
「はい!」
言われるままに、玉を突き、ポケットに玉を落とす。
「そうそう、やるじゃないか」
初めて、シャムスさんが私に笑いかけた。ビリヤードを覚えた事より、それが嬉しかった。
「おいおい、スクリュードライバーがいくら飲みやすいからってこんなに飲んじまって!」
え?
フラガさんの声で振り返ると、サイとトールが潰れていた。
スウェンさんはくっくっくと笑っていた。

141523:2007/10/22(月) 20:08:45 ID:???
「料理がたべたーい!」
ミューディーの一言で、河岸を変えることになった。
サイとトールはフラガさんとスウェンさんが担いで行く。
入ったレストランでは、もう人が一杯いて、向こうから声を掛けてきた。
「フラガ教導隊の皆さんで?」
「ああ、そうだが、席は空いてるかい?」
「おーい! お前ら席詰めろ! フラガ教導隊のお出ましだ!」
「「おおー!」」
「……ん、何?」
サイが目を覚ます。
「う、気持ち悪い」
「あんなに酒飲むからだ。さあ、ここに座って水でもたっぷり飲んどけ。じゃないと明日が辛いぞ」
フラガさんがサイとトールを座らせる。
「さあ、お嬢ちゃん達はこっちだ」
「あ、ありがとうございます」
私とミューディーは偉い人らしい人の横に座らされた。
「隊長ずるいっすよー」
「ははは、役得役得。そう言えば、俺の名前しらんだろう」
「あ、ええ」
「エドモンド・デュクロだ。あんたらに救援に来てもらったリニアガンタンク部隊の隊長だ」
「ああ、そう言えば、聞いたような気も……」
「ははは、今日は激戦だったからなぁ。さあ、料理はまだまだ来るぞ。食べて食べて」
「あ、はい、ありがとうございます」
さすがJOSH-A近郊でやってるレストランだ。おいしい! ミューディーもおいしー! と言いながら食べている。
「しかし、君らのような若者を戦争に出さなきゃならんとはなぁ」
デュクロさんは沈痛な面持ちで言う。
「……でも、きっとすぐ終わりますよ。プラントって人口少ないんでしょう?」
「そうだな。……お嬢ちゃんは、戦争が終わったらどうしたい?」
「え?」
デンギル先生にも聞かれた事だ。でも、私はどうしたいんだろう?
142523:2007/10/22(月) 20:08:57 ID:???
「すぐに答えられないのは、思いつかないからかな? だとしたら、不幸な事だ」
「……」
「俺はなぁ、戦争が終わったら、除隊して、DSSDに行こうと思っているんだ」
「DSSD?」
「深宇宙探査開発機構さ」
「どうしてそこに行こうと思ってるんですか」
「とりあえず上を見ておこうかなってさ。ほら 横を見ると誰かに嫉妬して自分も欲しくなるだろ? 下を見ると今の
自分で助けてあげられる人がいて、彼らに必要とされてりゃ気持ちはいいけど、もしも自分よりも弱い者が
いなかったらって思う。その時自分は何をやるんだろうって。だから、上を向いてる自分を確認しておこうと思ってね」
「私は、下を向いてばかりです。戦争があるから、みんな私を必要としてくれるって。ストライクに……モビルスーツに
依存してる……。私、コーディネイターなんです」
「そうか。俺の甥もコーディネイターさ。でも、今地上に残っているコーディネイターな事を幸せに思うべきだな」
「どうして、ですか?」
「プラントの奴らは、周り中同じコーディネイターだらけで、何かくじければ、何かあれば自分達は新人類だ、
ナチュラル共とは違うんだって、そっちの方に流れやすい」
「……」
「今地上にいるコーディネイターは、そんな所に逃げれない。そんな考えをすれば、周り中が敵になる。
克服するチャンスを与えられたと思うべきだ」
「克服する、チャンス……」
デュクロさんとの会話は、私の心に強い印象を残した。
上を向け、か。
ヘリオポリスから始まって、初めて私は本気に戦後を考え出した。
143523:2007/10/22(月) 20:11:09 ID:???
続く。

戦いより飲み会の方が分量多くなってしまった。

スターゲイザーよりエドモンド・デュクロ氏登場。
こういうおじさん好きです。
144通常の名無しさんの3倍:2007/10/22(月) 21:36:02 ID:???
GJ!
自分もデュクロ氏は大好きです。渋いキャラに中田譲治氏の渋い声がまたなんとも。
こういうイデオロギーや感情に染まらず、かつ客観的な視点を持っている人は自分が思うに種シリーズでは案外貴重な方だと思うので巧い配役だと思います。
145523:2007/10/25(木) 17:58:54 ID:???
「うひょー! 島だぜ! これを人間が作ったとはなぁ」
陸上戦艦レセップスを修理した、ロウ・ギュール一行の移動基地「ホーム」は人口島ギガフロートへと到着した。
……モルゲンレーテでレッドフレームの改修を行い、OSの改良も行ったロウは、新しく付けたフライトユニットの
試験飛行も兼ねてオーブの小島に住むと言うマルキオ導師を訪ねた。なんでも頼みたい事があると言う。
それが、マスドライバーを備えたギガフロート建設への協力の依頼だった。
マルキオ導師は連合にもザフトにも顔が利き、ジャンク屋組合にとっては創設者の一人と言ってよい。申し分の
無い依頼だ。ロウは一も二も無く承諾した。

「気に食わんな」
オーブのある邸宅の一室で、長髪の男が口を開いた。
「気に食わん。こんな物が出来ればカグヤ・マスドライバーの価値は減じてしまうではないか」
「では、どうする?」
こちらも長髪の、しかし女性が問う。
「ギガフロートを完成する前に破壊する」
「簡単に言うな」
「ほら、この間アズラエルが寄こしてくれた技術があったろう」
「ミラージュ・コロイドか? しかし一機で大丈夫か? 連合にやったのが我らだと知られてもいかんのだぞ」
「私を誰だと思っている。ロンド・ギナ・サハクだぞ」
「……まぁ、いい」
女の声が少し笑いを含んだ物に変わる。
「PO1を預けよう。やってみるがいい、弟よ」


146523:2007/10/25(木) 17:59:36 ID:???
アラスカ防衛戦から10日程経って、アラスカ戦の跡もだいぶ片付いた頃、私達は新たな命令を受けた。
私達フラガ教導隊が次に受けた命令はなんと! アークエンジェルへの乗り組みだった。
パナマへ向かう地球軍初のモビルスーツ部隊である第1モビルスーツ隊の護衛を命じられたのだ。
彼らは、パナマで編成されつつあると言うモビルスーツ隊の教導隊としての役割も期待されて、パナマに赴く。
「またよろしく頼むぜ!」
ギャバン隊長が挨拶に来た。
「こちらこそ。パナマの奴らはまだひよっこだ。お互いしっかり教育してやろうぜ」
「ああ!」
そしてギャバン隊長は少し戸惑って言った。
「お嬢ちゃんを、ちょっと借りてもいいですかね?」
「ルナですか? 彼女がよければ」
「はぁ。いいですけど」
隊長は、私を物陰へ誘った。
「なぁ、お嬢ちゃん。結婚してくれ! 一目ぼれなんだ!」
「……ええ!?」
私は絶句した。
「いきなりだと思うか?」
「いきなりですよ!」
「今時は何でもいきなりだよ。敵の出現も、エネルギー不足も、命のおしまいもな。だから、俺は後悔はしたくない」
「でも……私は……私、コーデーネイターですよ」
「関係ないさ。そんな事。返事は今でなくてもいいんだ。じゃ!」
ギャバン隊長は去って行った。
どうしよう。私、好きな人がいる訳じゃないけど、でも……

147523:2007/10/25(木) 18:00:14 ID:???
「トール!」
アークエンジェルに乗り込むと、ミリィが駆けて来る。
「ミリィ!」
トールも駆け寄ってミリィを抱き締める。
「また、無事なトールを見られるなんて……」
「な、泣くなよ」
「熱いねーお二人さん」
「ミューディー、邪魔しないの!」
「はいはい。休憩室はどこ?」
「あ、案内するわ」

「ここよ」
休憩室には、誰もいなかった。
「ここの自動販売機の飲み物は自由に飲めるから」
「ありがとさん」
ミューディーはグレープフルーツジュースを取り出した。
「ねぇ、中尉さん?」
「なに?」
「人を好きになった事ってある?」
「あるような、ないような……」
アスラン……仲良かったけど、あれを好きって言うんだろうか?
……なんか引っかかる。抱きあってキスまでした人がいたような……
目が。目が浮かんでくる。真っ赤な、鋭い眼光をした目。夢に出てくる人? でも、夢に出てくる人は、顔はわからない
けど夢の中で私はまるで弟のように感じてた。こたえが出ないようで、もどかしい。もやもやする。
でも、今までそんな人に会ったかな? 気のせいよね。
「あたしはないんだぁ。あたしがこれから言う事誰にも言わないでよ?」
「うん、言わない」
「あたしは孤児で、小さい頃から施設で軍事教練ばかりで、そんな暇なかったし……」
やっぱり。 フラガさんの推測は正しかった。
「でもね、さっきのようなの見せ付けられちゃうと、こう、あたしの心の中にぽっかり穴が空いた気がするのよ」
「……」
「いつもは賑やかにしてるのにさぁ、ふっと、全て空しくなっちゃうんだよね」
「ミューディー!」
私はたまらなくなってミューディーを抱き締めた。
「ちょっと、中尉……」
「大丈夫、大丈夫よ。大丈夫だから」
いつかカガリにやったように、ミューディーの背中を撫ぜた。
「不思議……なんか安心する」
「ミューディー……」
しばらく私達は抱き合っていた。
ミューディーが静かに身体を離す。
「ふふ、今日は中尉にみっともないとこ見られちゃった」
ミューディーの頬には、涙の跡が残っていた。
「これから、明るいミューディーにもどりまーす!」
軽く敬礼すると、ミューディーは休憩室を出て掛けていった。

148523:2007/10/25(木) 18:00:49 ID:???
「ルナー! どこに行ってたのよ」
格納庫に戻るとミリィがやって来た。
「あら、トールとのせっかくの再開、お邪魔しちゃ悪いかと思って」
「ルナもそういう事言うの?」
ミリィの頬が膨れる。
「ごめんごめん。会いたかったわ! ミリィ!」
「私も! ルナ!」
私達は手を広げてハグしあった。
「いっぱい、話したい事あるんだけど、何から話していいかわからないわ」
「私も。教導隊に入ってから色々あったの」
あ、そうだ。思いついた事があった。
「ねぇ、ミリィとトールって、結婚とか、そう言う話、してる?」
「ぶっ」
ミリィが吹き出す。
「け、結婚!?」
「した事、ないのね」
「だって、私達まだ16歳よ!?」
「だよねぇ」
「何かあったの? そんな事突然言うって事は?」
「……プロポーズ、されちゃった」
「えええぇぇ!」
さすがに驚くよねぇ。
「誰によ!?」
「ミリィの知らない人。モビルスーツ隊の隊長よ」
「いい人そう?」
「うん。いい人そう」
「……ルナって好きな人いないよね? じゃあ、試しに付き合ってみたら」
「付き合うかー。ミリィと遊んでた方が気楽だなぁ」
「お子様なんだー」
「なによー。自分は彼氏がいるからってえらそうにー」
でも、そうね。試しに付き合ってもいいかも知れない。戦争が終わったら。

戦争が終わったら、付き合ってみてもいい。その事を伝えたら、ギャバン隊長は大喜びしていた。
絶対、生き延びてやると言ってウインクした。
本当に、無事に生き残って欲しい。自分の知り合いが死ぬのは、いやだ。

149523:2007/10/25(木) 18:01:23 ID:???
「ルナ、何してるの?」
「うん、ちょっとね、お守り作ってるの。協力してよ」
「うん、いいけど、どうやるの?」
「この赤い糸で一針ずつ縫って結び目作るの。本当は千人にやってもらうんだけど」
「千人!? アークエンジェルにはそんなにいないわよ」
「うん、残りは私がやるわ。要は、気持ちよ」


「な、何だ!? 何が起こっているんだ!?」
ロウ・ギュールはギガフロート各所で起こる爆発に慌てふためいた。
「マルキオ導師、こちらへ!」
山吹樹里がマルキオ導師を安全な所に案内しようとするが、彼は動かずじっとして耳をすませているようだ。
そして叫ぶ。
「ロウさん! あちらです! あちらに私の知らないモビルスーツの足音が!」
「なんだって?」
ロウは、マルキオの指差した方向に目を凝らす。が、何も見えない。
「何もいませんよ」
「しかし! 感じるのです!」
「しかたねえな」
ロウはマルキオの指指した方向に向かってビームライフルを撃つ。
――と、霧が晴れるように、奇妙な形のシールドを構えた漆黒のモビルスーツが姿を現した。
「な、なんだぁ! アストレイみてぇな、いや、ちょっと違うか」
その漆黒のモビルスーツはいきなり走り出すとレッドフレームに向かって右腕を装着された盾ごと振り下ろす。
振り下ろされた瞬間、ビームサーベルの刃が出現するのをロウは見た。
「うわっと――あぶねぇ!……消えた? どこだ!?」
ロウはガーベラ・ストレートを抜き、辺りの気配を探る。
――! 後ろに突然漆黒のモビルスーツが現れ、レッドフレームを締め上げる。
「くっ、後ろだったのかよ。おい! お前は何者だ! なんでこんな事をする!?」
返事はなかった。レッドフレームがガーベラストレートを取り落とすと、漆黒のモビルスーツは足払いをかけ、
転がるレッドフレームの四肢にビームライフルを打ち込む。

150523:2007/10/25(木) 18:01:33 ID:???
「ふ、他愛もない」
ギナは一人ごちた。
「さあ、止めだ」
右腕を上げコクピットに狙いを付ける。
「やめてー!」
「うん?」
赤毛の女の子が、倒れこんだレッドフレームのコクピットに立って、コクピットを守るかのように手を広げる。
「興が削がれると言うに……まぁいい。一緒に死ね!」
あらためてギナは狙いを付ける。
――! 衝撃がPO1を揺らす!
「うぅ!」
なんだ? 手早くモニターをチェックする。海中からミサイル攻撃を受けている!
「くそう! 邪魔しおって!」
ギナは海中に飛び込んだ。
「これは……PO3か!」
海中用の装備を身につけているようだが、自分で開発した物だ。すぐにわかる。
PO3はスーパーキャビテーティング魚雷を撃ってくる。スケイルシステムによって水中の機動性もPO3の方が上だ。
「く、ここまでか。まぁいい。あれだけ壊せばもはやギガフロートの崩壊は止められまい」
ギナはすばやく判断を下すと撤退して行った。

「もう! ロウったら! 心配したんだから!」
崩壊寸前だったギガフロートの応急処置が済み、一安心した安心感からか、樹里がロウの胸をポンポン叩く。
「悪い悪い。しかし、今回はあんたらに助けられたぜ!」
ロウは劾の方を振り向くと礼を言う。
「なに。ギガフロート建設の護衛が俺達の任務だからな。礼を言われる事でもない」
「でも、このギガフロートが完成したら、狙う者は多いでしょうね」
「ああ、連合にザフト。どっちも狙ってくるだろう」
劾は妙な顔をした。なにしろ彼にギガフロート建設の護衛を頼んだのは連合なのだ。
「心配には及びません」
マルキオ導師が言った。
「このギガフロートは移動可能でもあるのです。戦時中で監視衛星が使えない現在、正確な位置などつかめませんよ。
このマスドライバーは、戦争に関係ない民間専用のマスドライバーとして使用したいと思っています」
感銘を受けたようにロウがうなづく。
まぁ、いいか。劾は無責任に思った。
俺が受けた仕事はギガフロート建設の護衛だ。ミッションコンプリートだ。余計な事に首を突っ込みたくない。
うん。余分な苦労などごめんだ。料金は前金でもらってある事だし。
劾は、マルキオ導師の話を聞かなかった事にした。
151523:2007/10/25(木) 18:03:32 ID:???
続く。

劾登場。漫画のシーンをこんな風に解釈してみました。
152通常の名無しさんの3倍:2007/10/25(木) 20:02:16 ID:???
GJ!
アストレイ天はブルコスからの技術協力を受けて製造ですか。
ギガフロート絡みの双方の腹の探りあい、騙しあいは連載の都合もあってかあまり触れられていなかったように記憶しているのでそこらへんの後日談みたいなものがあればまた面白いと思いますが、どうでしょうか。
153通常の名無しさんの3倍:2007/10/25(木) 21:46:28 ID:???
GJ!
というか、さようならギャバンw
154通常の名無しさんの3倍:2007/10/25(木) 23:26:40 ID:???
死亡フラグ確認!
155通常の名無しさんの3倍:2007/10/25(木) 23:39:38 ID:???
パナマは……グングニールによる大虐殺が有ったんだっけか。
ギャバン……。
156523:2007/10/27(土) 11:59:34 ID:???
「よく来た、アスラン」
「はっ、父上」
「なんだ、それは」
「失礼致しました! ザラ議長閣下!」
「状況は認識しているな? やはり、地球軍のモビルスーツ、侮るべきではなかった。短時日で実戦配備してくるとは……」
「……」
「クラインら穏健派も騒いでおる。もう、失敗はできん。パナマのマスドライバーをなんとしても破壊するのだ! 
アラスカで失敗しようとパナマを叩く事が出来ればオペレーション・ウロボロスの目的は達成できる!」
アスランは、父の焦りを感じていた。そして、それにも関わらず父の心の底に自信があるように感じる。
なぜだろう?
「お前は、パナマのマスドライバーの破壊と、地球軍パナマ司令部の破壊をやってもらおう」
「隊を持つのでありますか?」
「いや、単機でやってもらう」
「……単機とは!?」
「お前は工廠でX09Aジャスティスを受領し、準備が終わり次第任務に就くのだ。ジャスティスはそれが可能な機体だ。
ニュートンジャマー・キャンセラーを搭載した核動力機なのだ!」
「……ニュートロンジャマー・キャンセラー!? そんな……何故そんなものを! プラントは全ての核を放棄すると……」
「勝つ為に必要となったのだ! あのエネルギーが。お前の任務は重大だぞ。心して掛かれ!」
アスランは敬礼し、踵を返した。
「アスラン……」
後ろから声が掛かる。
「は。なんでしょう?」
「真に信頼できる者は少ない。だからお前に核動力機を託すのだ。頼むぞ」
アスランは、やや弱気な父の声に統治者としての悲哀を見た。
せめて自分が父を楽にしてやらねば……
「わかりました。ご安心下さい。アスランは信頼を裏切りません! ……父上!」
アスランは意識して『父上』と言った。
「頼むぞ……」
パトリックも、息子の言葉に何かを感じたのだろう。もう言い直しを求めるなどと言う無粋なことはしなかった。


6日ばかりの航海で私達はパナマ基地に着いた。
アメリカ大陸の西沿岸を航海した事もあって、のんびり安心した航海だった。
シャムスさんは、なんでビリヤード台がないんだとぶつくさ言ってた。
元々宇宙艦だもん、しょうがないよね。

「君がホーク中尉かね」
廊下を歩いていると、声をかけられた。
「はい、そうですけど……」
声をかけてきた人は、大尉の階級章だった。この艦で大尉って事は――
「私はこの艦の副長のイアン・リー大尉だ」
やっぱり!
「君の事はアルスター事務次官からよろしくと頼まれている。私も期待しているよ」
そう言うとイアンさんは去って行った。
嬉しい。アルスターさん、ちゃんと私の事気にかけてくれているんだ。
イアン・リー大尉は、ナタルさんより物静かだけど、冷静な所がナタルさんに似ている。冷静に、マリューさんを補佐している。
いいコンビなんだろうな。
157523:2007/10/27(土) 12:00:16 ID:???
「ギャバン隊長!」
パナマ基地に降りたギャバン隊長を見つけて声をかけた。
「おお、お嬢ちゃん!」
「これ! 持ってて」
「これは、なんだい?」
「千人針って言って、オーブに伝わる武運長久のお守りなの。お腹に巻いたり、帽子に縫いつけたりするらしいわ」
「……ありがとう! 俺は今猛烈に感動している!」
情が移るって、こう言うのかな。なんか、ギャバン隊長が微笑ましく感じた。

それから一週間ばかりは、また新しい地球軍のモビルスーツ部隊の教育に頑張った。
そんな中、コーディネイターでありながら地球軍で戦っているというジャン・キャリー少尉と言う人に会った。
『煌めく凶星J』とも呼ばれているすごい人だ。
「やぁ。地球軍に私以外にコーディネイターの兵士がいるとは聞いていたが、君のような少女がそうだったとはね」
「お会いできて光栄です!」
「何、ナチュナルでも扱えるモビルスーツもできたと言う事だし、私もそろそろお払い箱だよ」
「そんな事ありませんよ!」
「いや、部隊で疎まれているのを感じるんだよ。最近ね。なに、軍を辞めたら、また元の工学博士に戻ればいい」
「……私は、恵まれてるんでしょうか? 一緒に戦う度に、ナチュラルとの垣根が無くなっていく気がしてるんです」
「恵まれているのかもな。あるいは、私の戦い方に問題があるのかもしれない」
「?」
「私は、プラントでも暮らしていたからね。敵の戦闘力のみを奪う戦い方を旨としている」
「――! それって、すごい腕前じゃないですか!」
「君は、プラントに知り合いはいないのかい?」
私は俯く。
「……います。その人、ザフトに入ってて、私と戦う事になっちゃって……」
「それは、辛いな。軍を辞めようと思った事は?」
「地球軍にも友達がいるんです。だから、今は、私が戦わなくちゃって」
「……戦争が早く終わって、無事だといいな。プラントの友人も、地球の友人も」
「はい……」

「おーおー。コーディネイターが御揃いで」
「コーネル隊長!」
キャリーさんと話していると、目つきの悪い将校が入って来た。
「やっぱりコーディネイター同士は気が合うのかねぇ? ん?」
何? この嫌味な言い方?
「隊長、そのような言い方は!」
「ん〜? 私はただ聞いただけだよ? それとも何かやましい事でもあるのかね?」
やっぱり、嫌な奴!
「ところでお嬢さん、君は敵と戦う時、ちゃんととどめを刺しているかね?」
「はあ? 少なくとも相手が降伏するか戦闘能力を奪ったと確信できるまでは攻撃してますけど」
「はははぁ! こいつはいい! キャリー少尉、このお嬢さんはお前よりよっぽど戦争がわかっておいでだぞ!」
「……」
「お前も少しは見習えよ? 敵に情けかけて中途半端な攻撃してるから逆襲されて怪我なんぞするんだよ」
そう、キャリーさんに声をかけると、コーネル隊長は出て行った。
「あの人が隊長? 苦労するわね。キャリーさんも」
「はは……あの人の言ってる事も、わかるんだけどね……」
キャリーさんは気弱に笑った。
158523:2007/10/27(土) 12:00:57 ID:???
ザフト軍がパナマに攻撃を仕掛けてきたのは次の日だった。
アークエンジェル隊――実質フラガ教導隊はアラスカと同じように援護に当たる。
だけど、だんだん、救援を呼ばれる時間が間遠になり、アラスカと同じように、このまま守れるかな? と私は思い始めていた。

「なんだ? あいつは?」
ギャバンは、空中から落ちて来る『何か』を見つけ思わず口を開けた。
「わかりません、空中から落ちてきて……」
「ギャバン隊長! ザフトの奴ら、あれを目指しています!」
「何かしらねえが、邪魔すりゃいい事がありそうだな! 行くぞ!」

ギャバン達がその機械に辿り着いた時は、一機のジンがテンキーのような物を操作していた。
「戦場で敵に後ろを見せるってのは油断だぜ! そらよ!」
ギャバンはジンの背中を袈裟懸けにする。
「く、くそう……だが、もう遅い! 低脳の地上の猿など滅びてしまえ……」
ジンは崩れ落ちた。
「なんだぁ? こいつは? カウンターが……おい! とにかくこいつを壊した方が良さそうだ!」
ギャバンはその機械に向かって射撃を始める。
――その時、衝撃が、走った。

「何が起こったの!?」
「わかりません! 本部、各部隊との通信途絶! 強力な電磁パルスの発生が確認されています! まるで地上で
ローエングリンを発射したような!」
「そう……核……まさかね」
マリューは何が起こったのか思い悩んだ。
「無人偵察機を本部、マスドライバー方面に出して!」
『艦長! 私を偵察に出してください! 第1モビルスーツ隊なら、先ほど救援したばかりで、至近です!』
「……わかりました。ではホーク中尉、アーガイル少尉、ケーニヒ少尉、偵察に向かってください。報告は密に!」
「はい!」

私が目的地点に着いた時、ザフトのジンが2機向かって来た。
私は一機を切り払う。残りの一機は、トールとサイの砲撃を受けて爆発した。

159523:2007/10/27(土) 12:01:38 ID:???
そこには、トラックが停まっていた。そして、地球軍兵の死体の群れ……何が起こったの!?
あれは――! 第一モビルスーツ隊の!
「エイムズさん! ジョンさん! 大丈夫ですか!」
「その声はホーク中尉か!? 大丈夫だ! だいぶやられちまったが……ザフトの奴ら、降伏をした奴に銃撃をしてきたんだ!」
「何が起こったの!? ギャバン隊長は!?」
「何しろ突然機体が動かなくなっちまった! 隊長は、コクピットを開けて、手を上げた所を撃たれた! ジンの機銃で!」
「……ギャバン隊長!」
『ルナ、どうする?』
サイから通信が入る。
「……この人達を保護して、アークエンジェルまで戻りましょう。……あなた達、トラックに乗って!」
生き残りの兵がトラックの荷台に乗る。……十人もいるかどうか。
「サイ、トラック、頼むわ!」
『わかった!』
サイがトラックを持ち、私達はアークエンジェル目掛けて走る。
途中で、ディンが私達を見つけて銃撃して来る!
やらせない!
ハイジャンプしてディンを撫で切りする。
――! あれは!
ディンを片付けた私を見つけたのか、一機の赤いモビルスーツが飛行してこちらにやってくる!
――ジャスティス。アスランの乗機……そんな言葉が脳裏を過ぎる。
「私が防ぐ! サイとトールはアークエンジェルに行って!」
『無事でな! ルナ!』
『後で必ず!』
赤いモビルスーツは地上に降りると、私と相対する。
『ルナか!?』
「アスラン!?」
やっぱり!
「アスラン! これは一体どう言う事よ!? 降伏した兵を虐殺するのが、ザフトのやり方なの!? ビクトリアでも、パナマでも!」
『……くっ。行け!』
「え!?」
『いいから行け! 俺が受けた命令はマスドライバーの破壊と地上本部の破壊だ!』
「……ありがとう、アスラン……」
160523:2007/10/27(土) 12:01:54 ID:???
『……そういえば、俺達がオーブに寄った時、アークエンジェルの避難民だったと言うエルと言う子どもに会った』
「え?」
『ルナお姉ちゃんにありがとうと伝えてくれと』
「そう。ありがとう……」
『これで約束が果たせた。ディンに見つからないように行け』
「わかったわ」
エールストライカーを使用せず、地上をひた走る。
ジャスティス……ザフトはディンの他にも次々に飛行ができるモビルスーツを開発している。悔しい。
戦闘の場所らしい場所を見つける度に叫んだ。
「誰か生存者はいないの!?」
返事は無かった。
あ、あれは白いロングダガー! キャリーさん!
「キャリーさん! 無事ですか!?」
その声に答えて、白いロングダガーから人が降りてきた。
キャリーさん!
「無事だったの!?」
「ああ、お嬢ちゃんか。なんとか無事だよ。何が起こったんだ? 突然機体が動かなくなっちまった」
「よかった! ザフト、降伏した兵も皆殺しにしてるから心配していたんです!」
「なんだって!?」
「こちらのコクピットに乗ってください!」
「ああ、わかった」


161523:2007/10/27(土) 12:02:05 ID:???
無事アークエンジェルに到着した時には、ほっとした。
アークエンジェルが、私達の到着を待っていたかのように最大戦速でパナマを離脱すると聞いた時には唖然とした。

「艦長、どうしてなんです!?」
「これ以上、私達がパナマにいる意味はないわ」
怒鳴り込んだ私に、無人偵察機が送ってきた、マスドライバーとパナマ本部が崩壊した映像が示された。
降伏した兵隊さん達が撃たれる光景も……
続いて、リニアガンタンク部隊が何発弾丸を送り込もうと、平気な顔をして現れ、駆逐する一機のモビルスーツが画面に映った。
ジャスティス――アスランだ!
「これ以上ここに留まると、アークエンジェルも危険なのよ」
「……わかりました」


「これは……これは……非道な!」
ジャン・キャリーは歯軋りしていた。
彼の目の前には、降伏した地球軍兵がザフトの銃撃で殺されていく光景が映し出されていた。
その中にはコーネル隊長も――そして同じ部隊の仲間も含まれていた。
「許せん。許せんぞ! ザフト軍!」
コーネル隊長は嫌味な奴で、反りが合わずとうてい好きになれなかったが、このような死に方をしていい訳ではない。
ジャンは憎しみを広げないための不殺と言う自分の行動を汚され裏切られたかのように感じていた。
不殺についてはあれこれ嫌味も言われもしたが、少なくとも一旦捕虜になった物を虐殺など地球軍はしなかった。
それに対してザフトはなんだ……!?
除隊などと言う考えはすっかり彼の頭から消えていた。残ったのは、ザフトに対する純粋な怒り……


「ギャバン隊長……」
落ち込んでいる所に、第一モビルスーツ隊のジョンさんがやって来た。
「ルナ中尉、ギャバン隊長は、中尉からもらったお守りを、それは嬉しがっていました」
「……せっかく作ったお守りも、効かなきゃ同じよ……」
「中尉……」
「ごめん。でも、今はそっとしておいて」
「……わかりました」

パナマから離脱して行くデッキから私は叫んだ。
「ギャバーン!」
答えは、返って来なかった。
162523:2007/10/27(土) 12:04:40 ID:???
続く。

パナマ陥落。
ええ、見事な死亡フラグでした。ギャバン合掌。
登場させた時、名前思いついた時から、こうしようかなと思ってたんだったり(^^ゞ

ギガフロートのネタはそのうちまた使いたいなと思ってます。
163523:2007/10/27(土) 12:10:38 ID:???
あ、何か今トラブルでまとめページ編集できないみたいですね。
164通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 15:46:38 ID:???
GJ!
うわあ……ギャバン隊長、オリジナルよりも死に方が悲惨だ。
ザフトの無統制ぶりをまじまじと見せ付けられたジャンはどうなる事やら。

ではまた次回もwktkさせていただきましょう。
165通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 17:46:45 ID:???
私たち善良小市民なホークhosyuシスターズ!
ネタの乏しいこのスレをhosyuしてあげるわ!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
             (__   hosyu
 〃Y "⌒`Y"ヽ  ,r´  `ヽ  hosyu
 (  (( (`´))) ) (,,人ヽヽ!リ  hosyu
  )从゚ ヮ゚∩(( ∩リ ゚ ヮ゚ノ从 hosyu
  (つ_^=) 丿  ヽ( (!^=⊂)
   く/L_ゝ      く/L_ゝ
    し(_)     (_)J
166523:2007/10/28(日) 18:49:53 ID:Vgt4iqeT
保守がてら補足。
第一モビルスーツ隊のエイムズ、ジョンはターンエーでスエサイド部隊員だった人名です。
ちょうど名前が一緒なのでアークエンジェルの応援要員だったジョブ・ジョン氏は第一モビルスーツ隊に
転属した事に……地味にパナマの虐殺から生き残りました。
167523:2007/10/31(水) 18:39:22 ID:???
アークエンジェルはカリフォルニアのポイント・ロマ海軍基地に寄航した。
そこで中尉に昇進したキャリーさんも加えて、アークエンジェル隊が再結成された。
「じゃあ、エイムズさん達も、元気で」
「ああ、お嬢ちゃんもな」
第一モビルスーツ隊の生き残り――エイムズさん、ジョンさん達はこちらへ向かっていると言うアークエンジェルの
姉妹艦、ドミニオンのモビルスーツ隊に異動するそうだ。
「聞いた!? ドミニオンの艦長はナタルさんだって!」
「ほんと!?」
ミリィが教えてくれた。
「そうかぁ、ナタル中尉がねぇ」
「なんか、心強いね」
「うん!」
「アークエンジェル級が揃い踏みか」
そして……アークエンジェル隊に下された命令は――ビクトリア奪回!
それから忘れちゃいけない。アークエンジェル隊にまわされてきた新装備が一つ。ジェットストライカー――! 空飛ぶ翼!


「何たる様だこれは! アラスカが防衛に成功しても、パナマを落とされてはなんの意味もないはないか!」
「パナマポートの補給路が断たれれば、月基地は早々に干上がる! それでは反攻作戦どころではないぞ!」
「ビクトリア奪還作戦の立案を急がせてはおるが……無傷でマスドライバーを取り戻すとなると、やはり容易にはいかぬ」
大西洋連邦の要職者による会議は、パナマのマスドライバー崩壊の報を受けて怒号が支配した。
「オーブは……オーブはどうなっておる!」
「再三徴用要請はしておるが、頑固者のウズミ・ナラ・アスハめ! どうあっても首を縦に振らん」
「おや? 中立だから、ですか?いけませんねぇそれは。皆命を懸けて戦っているというのに。人類の敵と」
アズラエルが口を出した。ここにアズラエルが居ると言う事そのものが、ブルーコスモスの影響力を示している。
「アズラエル、そういう言い方はやめてもらえんかね。我々はブルーコスモスではない」
「これは失礼致しました。しかしまた、何だって皆様この期におよんでそんな理屈を振り回しているような国を、優しく
認めてやっているんです? もう中立だのなんだのと、言ってる場合じゃないでしょう」
「オーブとて、歴とした主権国家の一つなんだ。仕方あるまい」
「地球の一国家であるのなら、オーブだって連合に協力すべきですよ。違いますか?」
「ぅぅ……」
「なんでしたら僕の方で、オーブとの交渉、お引き受けしましょうか?」
「なんだと?」
「今はともかくマスドライバーが必要なんでしょ? 早急に。どちらかが、或いは両方か」
「それはそうだが……」
「皆様にはビクトリアの作戦があるんだし、分担した方が効率いいでしょう」
「ぁぁ……」
「もしかしたら、あれのテストも出来るかもしれませんしね」
「あの機体を使うつもりかね君は……」
「それは向こうの出方次第ですけど。そのアスハさんとやらが噂通りの頑固者なら、ちょっと、
凄いことになるかもしれませんねぇ」


168523:2007/10/31(水) 18:40:03 ID:???
「でもさぁ、ワン・アースアピール出されたろ? オーブ、どうすんだろ」
みんなでしゃべっていると、トールが言う。
そう、6月に入ってから地球連合から中立各国に連合への加入要求が行われたと言う話だ。そして、
オーブはそれを拒否している。
私は最近また声を聞いた。そして夢を見た。
どう考えればいいのだろう。声は地球軍によるオーブ侵攻を告げていた。
……でも夢では。私はザフトとしてオーブを攻めていた。
どう考えればいいの!?
「このままだと、オーブは地球軍に攻められちゃうかも知れない」
「サイ、そんな無茶な!?」
「だって、地球軍はパナマを失って、マスドライバー一つもないんだぜ? 地球に残ってるマスドライバーは三つ。
ビクトリアとオーブとカオシュンだ。カオシュンはカーペンタリアに近い」
「オーブの方が、近いわよ」
「オーブはまだザフトの占領下にないからね。余計に魅力的だろう。オーブが手に入ればカーペンタリアへの
牽制にもなる」
「オーブも、なんだよ。モビルスーツとか戦艦とか作らせて置いてさぁ、今更だよ」
「カガリがいるわ。あの子、ザフト嫌いだから、もしかしたらウズミ様を説得してくれるかもしれない」
「……でも、そうなると、今度はザフトが攻めるかもな。せっかく地球軍のマスドライバーをゼロにしたんだからな」
「カーペンタリアのすぐそばだしね」
私達は無言になってしまった。

169523:2007/10/31(水) 18:40:52 ID:???
「なるようになるわよ」
翌日の外出日、サンディエゴの町へ繰り出す私達。
いつまでも暗いヘリオポリス組を見てミューディーが軽く言う。
「でも、志願した時はこんな事になるなんて思わなかった……」
「そうよね、だってモビルスーツや戦艦をこっそり作らせるくらい仲が良かったって事でしょ?」
「そうだよなー。作戦行動中で辞める訳にも行かない」
ミリィとトールがぼやく。
「国際情勢は複雑怪奇ってね。さあ、今日は楽しもうよ」
ミューディーなりに気を使ってくれてるのだろう。
「そうよね。なるようにしかならないんだ。楽しめる時は、楽しもう?」
「ん、そうね」
私達はまずシーワールドへ行った。
シャチのショーShamu Rocks。
シャムー(シャチ)は結構リズム感がいい。トレーナーのお兄さん,お姉さんも踊りまくり。ギターのお兄さんも
ノリノリ!
大音量のロックのなかでのシャムーの演技が冴えている。観客の子供も踊りながら観てたりして、可愛いい。
「こんなに復興できてるなんてね」
「あたし、こんなの見るの初めて!」
ミューディーとシャムスははしゃいでいる。スウェンさんも静かに楽しんでいるようだ。身体がリズムを取っている。
それからアシカとカワウソのショーを見た。シャムーのショーをパロディしてるみたいで笑える〜! それからペンギンと直に触れ合えるスペースに行った! かわい〜!
……気が付いたら、日が落ち始めていた。
「Seaport Village通って行こうぜ」
シャムスが言った。なんでも、夕暮れ時はデートスポットになるそうだ。
小物を売る店やレストランが並ぶ。店には大した物は置いてないけど、散策するにはいい雰囲気だ。トールと
ミリィは二人の世界に入っちゃってる。
私達は、湾岸に突き出た景色のいいシーフードレストランで夕食を取った。
うーん、今日はいい気分転換になったな。
「おい、あれ……」
ん? なんか、周りから見られてる?
「けっ。コーディーの糞女が一丁前にお楽しみかい」
隣の恰幅のいい男が言う。
なに!? なに!? 私は頭が真っ白になった。
170523:2007/10/31(水) 18:41:10 ID:???
「おいおい。止めとけよ」
連れらしい髭の男性が太った男をたしなめる。そしてこちらに謝って来た。
「軍人さん達ご苦労さん。どうもすまんね。すっかりあいつ酔っちまってて。ほら、あんたらの事、新聞に出てるぜ」
髭の男性が新聞を放り投げてきた。
そこには、いったいどうやって撮られたのか、フラガ教導隊のメンバーが写真入りで紹介されていた。
そして――私の写真は特別大きく『地球軍で活躍するコーディネイター!』と、でかでかとキャプションが付いていた。
「おい、大丈夫か?」
シャムスが声をかけて来た。
「う、うん」
「思い切りショックを受けている顔だぞ」
「だいじょぶ。……いったい誰がこんな事……」
震える手で記事を読み進む。
「ジェス・リブルって奴か……」
顔をしかめながら記事の末尾を指差しシャムスが言う。
ジェス・リブル――それが記事を書いたジャーナリストの名前だった。
「悪気はないみたいだが、無神経だな」
私達は黙りがちに基地へ帰った。
基地に帰ると、私の気持ちを明るくする知らせが待っていた。


171523:2007/10/31(水) 18:42:43 ID:???
常夏の国オーブ――
政庁の会議室では熱戦が繰り広げられていた。
「お父様! この期に及んでは、もはや躊躇っている時ではありません!」
カガリは叫んだ。
会議は紛糾していた。なにしろ実質的代表首長の親子が論争しているのだ。
「お前には戦争の根を学べと言ったはずだ! アフリカまで言って、何を学んできた!」
ウズミはつい、公然の秘密、と言う物まで公式の場で言ってしまう。
「ザフトの非道をです!」
父の叱責に屈せず、カガリは言う。
「元々、今回の戦争はザフトに非があったのです! 旧来の植民地独立戦争ではありません! プラントは、
元々理事国が建設した物です! そして一定の自治、武装さえも認められていた! 父上は、モルゲンレーテ社の
社員が、自分達は独立国だと主張し始めたらどうするおつもりですか?」
「一定の自治とは、どうしてそう思うのだ! プラント側は弾圧されていたと主張しているぞ」
「有名な、婚姻統制がそうです! 更に彼らの我々には理解し がたいコンピューター任せの選挙制度。これらは
皆戦争前から導入されています。自治権なくして、どうしてそのような制度が取れるのか!?」
「ザフトの建軍もそうじゃな。彼らが言うほど弾圧されていたならば、そもそもそのような事すら不可能なはず」
コトー・サハクはどうやらカガリを応援する事に決めたようだ。
「先月のプラントの情報誌の記事では、プラントでは牛鍋が流行りだそうですな」
ウナト・エマ・セイランもさりげなくカガリの主張に沿った発言をする。
息子の婚約者、と言う事だけではないだろう。
「大洋州は親プラントですからな」
「地球の人々は食べるのに事欠く人々も多いのに……」
それに賛同する声が上がる。
カガリはそれらの声をバックに言う。
「……お父様、今回の戦争は、戦争であって戦争ではありません。ザフトと言う犯罪者に如何に対するか、
それが求められているのです。地球上の国々に! 犯罪者がいて、みんなで自警団を組んでいる時に、
家訓だからと言って参加せずにいれば、どう思われるでしょうか?」
「うむ。ザフトの非道と言うが、血のバレンタインはどう考える」
「ザフトが強調する血のバレンタインは、地球連合の対プラント宣戦布告後です。それに、宇宙では、核はただ
威力の大きな爆弾と言うに過ぎません。宇宙放射線が常に降り注いでいるのですから」
「続けよ」
ウズミは言った。最初は、娘がただ感情的に対ザフトに論陣を張っているのだと思っていた。だが、なかなか
言うではないか。これなら。オーブの次代は安泰かもしれない。……確実に次の世代は育っている。それを
頼もしく思うと同時に少し寂しさも感じた。
「更に。血のバレンタインからエイプリルフールクライシスまで二ヶ月も無いのです。そのため開戦前から
地上侵攻のためにニュートロンジャマーを量産してた疑惑、BC兵器工場との嫌疑がかかっていたユニウス7を
対連合世論喚起の生贄にした疑惑があります。ユニウス7攻撃は、正式な承認によるものではなく一部の者に
よって引き起こされている事はご存知でしょう。狙うなら中枢であるアプリリウスの筈なのに、何故か政治的には
影響の少ない農業コロニーを狙っている。核を使うなら、圧倒的大火力で反撃の余地が無いほど徹底的に叩くのが
セオリーなのに、 何故か半端な攻撃に留まり、反撃の機会を許している」
一気に言ったカガリはここで息を継いだ。
「それは、想像に過ぎんな」
「確かにそれは認めます。しかし例えそれがただの疑惑だったとしても、ニュートロンジャマーキャンセラーの
地球への散布は非人道的な大量破壊兵器の無差別な使用であって、ユニウス7核攻撃への報復としては
到底正当化できません。ザフトは他のコロニーに対して攻撃を行い、大量の一般人の居るコロニーを大量に
破壊し多くの人々の命を奪ったくせに自分達は条約違反のコロニー一基の被害で地球人口の一割を死に
至らしめた……」
172523:2007/10/31(水) 18:43:18 ID:???
ウズミは眼を閉じカガリの主張を聞いていた。その様子からは、何を考えているのかわからない。
……ユウナ・ロマ・セイラン――カガリの許婚は、呆然としていた。子供だ子供だと思っていたカガリが、
理路整然とした説得力のある発言で会議を主導している。
カガリから目が、離せない。頬が紅潮しているのがわかる。やばい。やばいぞユウナ。本気で惹かれちまった。
くそうっ! ユウナは悔しさを感じた。さすが五大氏族って事か? いや、認めない。認めてなんぞやるものか!
家格による物だなどと。認めてしまったら、一生カガリに追いつけないじゃないか!
ユウナは決意した。セイラン家の力でなく。絶対に、実力で、カガリの夫には僕がふさわしいと言わせて見せる!
なってみせる! カガリにふさわしい男に!
――カガリの演説?は終盤に入っていた。
「それに! すでにオーブには、地球軍として戦争に参加している者もいるのです! それがオーブのために
なると信じて!」
言うまでも無く、ルナマリア達ヘリオポリス組の事だった。
カガリは、極論すればルナマリアを祖国が裏切らないために今、父を相手に戦っているのだった。
「もうよい」
ウズミは手を上げカガリの発言を止めると、口を開いた――。


「そうですか。赤道連合も、スカンジナビア王国そしてオーブも地球連合に参加を表明して来ましたか」
アズラエルは面白そうに言った。
「せっかくこれから最後通牒を突きつけようと準備していたのに、無駄になりましたねぇ。まぁ手間が省けたから良しとしましょう」
アズラエルは数枚の書きかけた原稿をごみ箱に放り込んだ。
「それはよかったですが、あれのテストが、できなくなりましたねぇ」
「いえ、そうでもないようで」
「なんです?」
いぶかしげにアズラエルは秘書に問う。
「オーブが、予想されるザフトからの攻撃に対する防衛に対して協力を要請して来ました」
「早速ですねぇ。ま、いいでしょう。ザフトが攻撃して来るなら……いや、必ずして来ますか。あのパナマで
見られたザフトの新型機相手にテストするとしましょう。そうそう。アルスター事務次官お気に入りのアークエンジェル。
まだカリフォルニアですね? ドミニオンと一緒にオーブ防衛に参加させましょう。オーブ出身の者がいるようですし
気合も入るでしょう」
「はっ」
秘書は、アズラエルの命令を形にすべく出て行った。
アズラエルは、オーブを攻めなくて済む事に内心ほっとしている自分を感じていた。アルスター事務次官が
知らせてきたオーブ出身のストライクのパイロット。
「ルナマリアとか言ったか……」
似ている。彼女――マリアはアズラエルより年上で、名前に似合わずガキ大将だった。アズラエルも、彼女のせいで
散々な目にあった。だが、それが嫌でなかったのは何故だろう。
その彼女もS2型インフルエンザであっけなく死んでしまった。
それ以降アズラエルは心の奥の宮殿に女性を住まわせた事はなかった。
「誕生日も7月26日……まるで生まれ変わりのような……ははは。馬鹿な」
アズラエルは自嘲した。
「まだまだ甘いな、僕も……」
173523:2007/10/31(水) 18:43:26 ID:???



(「人なんてあっけないよなぁ」)
(「ああ……」)
(「先日まで元気だったのにさ。お嬢……。S2インフルエンザって怖いよね」)
(「……そういえば、さ。なんでお嬢の事お嬢って呼ぶようになったんだっけ?」)
(「覚えてなかったのか? ムルタ? お嬢をお嬢って呼ぶようになったのは、お前が原因じゃないか」)
(「え……? 僕が原因?」)
(「お前、鈍かったからなぁ。お嬢がお前の事好きだったのも知らないだろ」)
(「嘘だろ!? お嬢が僕の事……」)
(「お嬢はムルタが関わるとコロっと態度が変わってたからね。ばればれだったよ」)



(「やったー! あたしの勝ちね! んー、じゃあ、今度は『お嬢様と下僕』ごっこ!)
(「なんだそりゃ。なぁ、アルベール、アンドレア?」)
(「きいぃー! なによ! ちゃんと言う事聞きなさいよ? ムルタ! なんか飲み物買ってきなさい!」)
(「嫌だね。めんどくさい。誰がお前の言う事なんか」)
(「じゃんけんに負けたんだから当然でしょ!? じゃないと背骨折る」)
(「そ、それは止めてくれ」)
(「じゃあ、まず呼び方からね。『お嬢様』。ほら呼んでみなさい」)
(「お嬢!」)
(「何よそれ! ちゃんとお嬢様って呼びなさいよ」)
(「お前なんかお嬢で充分だ!」)
……そうか、思い出した。

アズラエルは目を覚ました。
懐かしい、夢を見た。
「涙? はは」
知らずに泣いていたらしい。でも、不思議と心は満たされていた。
たとえ夢でも、S2インフルエンザで死んじまったお前らに会えるなんてな。

「お目覚めでございますか」
「……ああ、今起きた」
「ザフトによる近時日のオーブ侵攻はほぼ確定的です。それから、カリフォルニアのポイント・ロマ海軍基地に
第4洋上艦隊が集結を完了いたしました。ドミニオンも到着いたしました。例のあれも一緒です。アークエンジェル
の準備も整っております」
「そうか」
とだけ、アズラエルは言った。
お嬢……これから、君じゃないけど、君によく似た人の故郷を守ってあげるよ。
ブーステッドマンに戦闘用コーディネイター……僕今がしている事を君が知ったら、君は僕を嫌うだろうね。
でも君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる。
174523:2007/10/31(水) 18:45:29 ID:???
続く。
カガリ久々に登場。
ユウナ、アズラエル登場。
オーブは無傷で連合に。
175通常の名無しさんの3倍:2007/10/31(水) 19:20:09 ID:???
おいおいニュートロンジャマーキャンセラーを散布しちゃダメだろ
要訂正

GJ
176523:2007/10/31(水) 19:29:58 ID:???
うわぁ! 指摘ありがとうございます。
171 43行目
×「確かにそれは認めます。しかし例えそれがただの疑惑だったとしても、ニュートロンジャマーキャンセラーの
○「確かにそれは認めます。しかし例えそれがただの疑惑だったとしても、ニュートロンジャマーの
に訂正です。

wiki直して置きました。
177通常の名無しさんの3倍:2007/10/31(水) 19:39:31 ID:???
GJ!
ジェスの記事云々はシャムスよりも仲の良いミューディか冷徹なスウェンの方が合っているかも、と個人的に思いましたが、まあシャムスもスタゲとは変わっている点を強調したいのならそのままでもよいでしょう。
あとカガリが理路整然とした発言をしているのは新シャア板でのイメージとかけ離れすぎていて違和感が。ユウナにも発言させた方が会議としてもバランスがいいかなーと思ったり。

しかしアズラエルの過去を描くなど連合好きな自分としては嬉しいところもあり、次回もまたwktkさせていただきます。
178523:2007/11/02(金) 20:52:50 ID:???
「おーい、ルナ! 暇なら模擬戦しないか?」
「いいわよ。シャムス! なんならサイとか誘って二対二にする?」
「いや、今回は接近戦の腕を磨きたいからな。一対一でいい」
「おーけー!」
シャムスは、私がパナマでギャバンを亡くしてから、私が一人で居ると気を使ってよく声をかけてくれる。
シャムス達ともすっかり仲が良くなったなぁ。最初に会った時には仏頂面だったのに、今はこうして笑顔を向けてくれる。嬉しい。
休憩室を出る時、スウェンが何かいじってるのが目に入った。
「なあに、それ?」
「……ああ、星座板だ。今夜の星座を調べてたんだ」
「スウェンは星が好きだものな」
そう、スウェンは星が好きだ。私物で望遠鏡も持ち込んでいる。
「今夜はどんな星座が見えるの?」
「……白鳥座とかヘルクレス座とかだな……星ならベガ、デネブ、アルタイルの夏の大三角形とか。よかったら一緒に見るか?」
「うん、見たい!」

夜、デッキにスウェンの望遠鏡を持ち出して天文観測と洒落込んだ。
スウェンの望遠鏡は反射式の本格的なやつだ。
「今の時間なら……ほら」
スウェンが望遠鏡を南の方に向け角度とか調整してくれる。
「うわぁ……!」
覗き込んだ先には、天の川のいっぱいの星空を背景に、メノウの玉のような球体が浮かんでいた。
「木星だ」
「……ここに、ツィオルコフスキーが行ったのよね……」
「ああ」
「木星か……人間はもうそこまで行ったんだな」
シャムスが呟く。
「はい、シャムス」
シャムスに場所を譲る。
「おう……おー!」
シャムスも感嘆の声を上げる。その後ろでわくわくしながらトール達が順番を待っている。
満天の星空を振り仰ぐ。
「怖いくらいにきれいね」
そっとミューディーが寄り添ってくる。
「うん」
本当に、こんな夜空を見ていると人間同士で争っているのが馬鹿らしくなる。
戦争、早く終わればいいのに……

179523:2007/11/02(金) 20:53:37 ID:???
私達がオーブ防衛のために南下する前日、ナタルさん始めドミニオンの幹部、そして国防産業連合理事、
ブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルさんの訪問を受けた。
なんでも、アズラエルさんもアークエンジェルの姉妹艦、ドミニオンでオーブまで行くらしい。
なんでアズラエルさんのような立場の人が、そんな事をするのかわからない。
スウェンさん達とはすでに顔見知りみたいで、会話を交わしていた。
「君達の活躍は聞いています。僕も誇らしいですよ。頑張ってくださいよ」
「はっ」
「あなたが『エンデュミオンの鷹』ですか。お目にかかれて光栄ですよ」
「は。こちらこそ」
フラガさんの次にアズラエルさんは、私の前に来た。しばらく私を見つめている。妙な沈黙だった。
「ルナマリアさん、戦争が終わるまで死なないでくださいね。絶対に」
そう言うと、サイたちの方へ歩いていった。なんだったんだろう?

「おねえちゃーん、よろしくね〜」
ん?
「俺? 俺はクロト・ブエル。地球軍の新型機、レイダーのパイロットさぁ」
「そう。よろしくね?」
「へへ。俺達が来たからにはおねえちゃんの出番は無いぜ!」
「ふふ」
「あー! 馬鹿にしてやがんの! 気にくわねぇ」
「あらら。頼もしいなって思っただけよ」
「ふ、ふーん。そう言う事にしといてやる」
「俺はオルガ・サブナックだ。行くぞお前ら」
「俺がまだだ」
「早くしろよ」
「シャニ・アンドラスだ。じゃあな」
最後に、イヤホンを首にかけた人が自己紹介して、ドミニオンのパイロットらしい3人は去って行った。
癖の強そうな人達だったなぁ。ナタルさんも苦労してそう。
「よぉ、姉ちゃん」
え?
「ドミニオンのモビルスーツ隊のパイロットのダナ・スニップだ。よろしくな!」
「あ、まだパイロットいたんだ。よろしくね?」
「あんなブーステッドマンと一緒にするなよ」
「ブーステッドマン?」
180523:2007/11/02(金) 20:53:56 ID:???
私が聞き返すと、
「ダナ」
スウェンさんが静かな口調で止めた。
「おおっといけねぇ。なぁ、姉ちゃん。姉ちゃんはヘリオポリスの避難民だったんだって? よく除隊せずにいるよな?」
「色々あってね」
「ふふふ。俺は、君と俺は同類なんじゃないかって思ってよぉ」
「同類?」
「そ。同類。戦闘に魅入られちまった同類。じゃなきゃ自由を愛する俺が軍隊なんて居てやるものかよ」
戦闘に魅入られた? 依存は、してるかもしれない。でも! いつか、ううん。この戦争が終わればそんな事終わる! 終わらせる!
「お、図星? 嬉しいねぇ」
黙ってる私を見て、肯定と受け取ったのかダナさんが口を綻ばせる。
「……私は戦闘になんか依存しません! しないようにしてます。勝てば確かにみんな誉めてくれるし嬉しいけど、だって、
いつか戦争は終わるんですよ?」
私は、デンギル先生に言われた事をダナさんにぶつけてみた。
「俺だって依存なんかしてねえよ。戦争が終わる? 結構! そんときゃそん時。軍隊おん出て自由な暮らしってやつをするさぁ。
それを思うと戦争が終わるのが楽しみだね。じゃ、おい。エミリオ、黙ってんなよ」
「エミリオ・ブロデリックだ」
ダナさんの後ろにいた神経質そうな顔の人は、それだけ言うとぷいと向こうへ行ってしまった。
「あ、おいエミリオ! しょうがねぇなぁ。じゃまたな! 姉ちゃん」
「エミリオ……俺はあいつが嫌いだ」
え? スウェンさんが珍しく感情のこもった声で呟く。
「上官の命令を無視して敵を虐殺した……俺はそんな奴は嫌いだ。俺はあんな風にはならない!」


181523:2007/11/02(金) 20:54:20 ID:???
「第一防衛線、突破されました」
「第6特化中隊、交信途絶!」

オーブが地球連合に組した事が発表された日から程なくして、オーブはザフトの攻撃を受けた。
カガリはじりじりしながら国防本部に座っていた。だんだんすり減らされていくオーブの戦力。
本当に良かったのか? 自分のせいでオーブは地球連合に組した。だが、他の道はなかったのか? 
いや、あくまで地球連合の要求を突っぱねても、地球連合と関係が悪くなっただけだ。それなら、
今まで協力関係にあった地球連合と組んだ方がなんの関係も無いザフトと組むより100倍いい……
カガリの思考は堂々巡りをしていた。
「カガリ、少し落ち着け」
「はい、父上!」
ふと、ユウナが目に留まった。青ざめた顔をしながら、それでも腕組みをしてしっかりと戦況図を睨んで、
時々傍らの士官と真剣な顔をして会話を交わしている。
そうだ、弱虫のユウナでさえ気張っている。自分もしっかりしなければ。
「もはや、賽は投げられたのだ。防衛の命令を出した後は、もはや地球軍の援軍を待つしかない。
彼らもまさかオーブを放っておかぬだろうしな」
「はい!」
「学べ! この場にいて、学べるほどよきことは無いぞ」
「はい!」

182523:2007/11/02(金) 20:54:39 ID:???
オーブをとうとう視界に捕らえた! 懐かしい故郷。でも、今そこは戦場で……
私とフラガさん、スウェンさんは一足先にジェットストライカーでアークエンジェルから飛び立つ。
サイ達は直接アークエンジェルでマスドライバーのあるカグヤ島に突入すると言う。
「じゃ、ちょっくら行って来るわ」
「後を頼むわね」
「おう、任せとけ!」
「じゃあ、ルナマリア・ホーク、行きます!」
今度は負けない! 地を這って逃げることしかできなかったパナマとは違う!

『おねえちゃーん!』
え?
レイダー……って事は、確かクロト・ブエル? 背中にカラミティを乗せてる。
『ははははは! 先行くねー!』
『馬鹿野郎! むやみにスピードあげんじゃねぇ! 落ちるだろうが!』
『うっせーよ!』
『……先行くぞ』
その後から、あれはフォビドゥンか。
『あー、シャニ! ずるいぞ!』
レイダーとフォビドゥンは追いつ追われつしながらカグヤ島目指して進む。
『俺達も負けられんな』
「ええ!」
私達もジェットストライカーを吹かした!

カグヤ島には、たくさんのザフト軍が取り付いていた。
『味方が上陸する隙間を作る! 海岸掃除だ!』
「「はい!」」
ミサイルポッドからミサイルを放ち、飛んでいるディンを、グゥルを撃墜!
続いて空対地ミサイルを投下!
ミサイルは見事に海岸に取り付いているザフトのモビルスーツの真ん中で炸裂した!
スピアヘッドとスカイグラスパーの編隊が空中で戦闘に入る。
『よーし! 相手が混乱している内に叩くぞ!』
「「はい!」」
海岸でのろのろ歩いてるザフトの水中モビルスーツに向かう。
片っ端からビームライフルで撃つ! 撃つ! 撃つ!
『君達は地球軍か!? 助かった!』
オーブ軍から通信だ。
「まーかせて!」
私はひとしきり海岸のザフト軍を駆逐すると、また空へ舞い戻る。
目に付く端から、ディンを、グゥルを墜とす!
そこへ待ちに待っていた援軍がやって来る!
次々にカグヤ島上空へとたどり着く大西洋連邦の軍用超大型長距離輸送機C-10ギャラクシーなどから、
次々に地球軍のモビルスーツがパラシュート降下する!

183523:2007/11/02(金) 20:54:47 ID:???
とうとうアークエンジェルはカグヤ島の海岸に乗り上げた。
「行くぞ!」
「「はい!」」
フラガ中佐がいないので、アークエンジェル隊の指揮は先ごろ中尉に昇進したキャリー中尉が取る。
サイとトールは少し心細かった。フラガ中佐もルナもいないのだ。
「トール・ケーニヒ、デュエルダガー、行きます!」
「サイ・アーガイル、バスターダガー、行きます!」

「こんな形でオーブに帰って来るなんてなぁ」
「私語は慎め! ここは戦場だ!」
「は、はい!」
「ザフト軍モビルスーツ確認。相手の前衛は私とミューディー少尉で叩く。残りは任せる」
「「はい!」」
サイとトール、シャムスは後方のザフト軍モビルスーツに照準を合わせ、砲撃を開始する。
混乱した所にキャリーとミューディーが突っ込む。
「――す、すごい! ルナもすごいと思ってたけどこの人は別格だ!」
思わずサイが呟く。
「さすが異名持ちって事か……」
トールも呟く。
キャリーは、流れるような動きで一瞬も止まる事無く相手の攻撃を避け、攻撃ではほとんど一撃で相手の
コクピットを潰し、鬼人のように暴れまわっていた。
「砲撃止め! みんな突っ込んで来い! 私がフォローしてやる! 実戦は最大の訓練だぞ!」
「うおぉー!」
そのキャリーの言葉に、まずシャムスがビームサーベルを取り出し真っ先に突っ込む。
「うひー」
サイとトールもそれに続く……
程なくして付近のザフト軍は駆逐された。
「ザフト軍はマスドライバーの破壊が目的のはずだ! 防衛する。行くぞ!」
「「はい!」」
サイとトールのキャリーへの感情は強い信頼へと変わっていた。
彼らの戦いは続く。
184523:2007/11/02(金) 21:00:03 ID:???
続く。
自分の中ではスターゲイザー組の中ではルナマリアはミューディーの次にシャムスと親しいです。
描写不足だったなと思ったので、彼らとの点景を入れてみました。

デルタアストレイからダナとエミリオ登場。漫画の単行本とwikiしか見てないので人物描写がずれてるかも知れませんがご容赦を。

ジャン・キャリー、不殺を解除です。強いです。
185通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 00:05:37 ID:???
GJ!
この辺が改変される話だとやはりアスカ一家の安否が気がかりな…
あと
>デルタアストレイからダナとエミリオ登場。
>漫画の単行本とwikiしか見てないので人物描写がずれてるかも知れませんがご容赦を。

つうかそれら以外の資料自体あるんですかと。
186523:2007/11/03(土) 01:22:40 ID:???
wikiだと、エミリオはダナと一緒に捕まって、ジェスにインタビュー受けてるらしいのですが、
漫画だと二人ともやられて終わってるだけなんですよ。媒体はなんなのかわからんです。
まだ雑誌だけだったりすると見れてないです。
187通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 11:16:18 ID:???
漫画(ダムAのΔアストレイ)でやられた後に捕まってる。
模型誌(電穂)でその後のインタビューがある。
この後片方が脱走して、もう片方に撃破される。
188通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 23:50:18 ID:???
GJ!
それとage
189通常の名無しさんの3倍:2007/11/04(日) 15:59:33 ID:F1eaGaHA
あげ
190通常の名無しさんの3倍:2007/11/06(火) 18:55:50 ID:9joRmYGy
あげ
191通常の名無しさんの3倍:2007/11/06(火) 18:57:37 ID:G2SNQYGV
192通常の名無しさんの3倍:2007/11/07(水) 17:48:35 ID:gb98C9z3
ほっしゅ
193通常の名無しさんの3倍:2007/11/08(木) 17:34:36 ID:tdC/9Ot2
age
194523:2007/11/09(金) 08:38:54 ID:???
『軌道上から5つの降下物体を確認! 気をつけろ!』
オーブ軍から知らせが入った。
あ……唐突に頭の中に先生の声が――
『グングニール――この兵器は強力な電磁パルス(EMP)を発生させ、電子部品だけを破壊する兵器だ。
C.E.71年5月25日のパナマ攻略戦で使用された。このザフト軍兵器に利用されている「EMP」つまり
「Electomagnetic Pulse=電磁衝撃波」は電離層の乱れを引き起こし、通信や精密機器等を使用不能にする。
使用側であるザフト製兵器(MSを含む)がEMP対策を万全に施していたのに対し、地球連合製兵器(MSを含む)
及び施設が一応、施しているものの、強力すぎて対抗しきれず使用不能になり、パナマ基地陥落の最大の
理由となった。なおこの兵器により、基地にあったマスドライバーもEMPに対し無防備であったため破壊された――』
「こいつだわ! パナマが陥落した原因は! 強力なEMP兵器よ! 破壊して! ザフト軍をそいつに近づけさせないで!」
「わかった!」
『わかった!』
『わかった!』
オーブ軍からも地球軍からも応答がある。

まず一つ! 空中で、私とフラガさん、スウェンさんで仕留めた。
『墜ちたのはあそこだ! 行くぞ!』
「「はい!」」
ザフトのディンが! 向かっている。
スピードなら、負けない!
ビームサーベルを抜き、ディンを切り裂く。
『行け! お嬢ちゃん』
「はい!」
私はグングニールの近くに舞い降りると、ビームライフルで撃った。爆発。
ひとつづつ、オーブ軍、地球軍が破壊したと報告が入る。
後ひとつ!

『うわー! あ、あれは赤い悪魔だ!』
『誰か! 誰か来てくれ! 救援を!』
私達に救援要請が入ったのはその時だった。
『ちょうど、残るひとつが落ちた所だ。行くぞ!』
「「はい!」」

195523:2007/11/09(金) 08:39:38 ID:???
「アスラン! 残りの四つはやられたようですけど、この一つだけでも、マスドライバーは効果範囲に入るはずです!」
「ああ、ニコル! しかし、こいつらしつこい! なかなか近づけん! なんとか破壊されないうちに突破しないと……」
地上の地球軍のモビルスーツはじりじりグングニールに近づいていく。
「行きますよ! フルバースト!」
ニコルのフリーダムのフルバーストの一撃で5機を超える敵のモビルスーツが撃破される。だが、地球軍は雲霞のように
湧いて来る。
相手もここが勝負どころとわかっているのだろう。撃ち上げられてくるビームがまるでシャワーのようだ。
――! 飛んで来る物がある。あれは地球軍の新型機か!?
ニコルはビーム砲をそちらに向ける。
「ああ! ビームが!?」
「どうした!? ニコル?」
「あのモビルスーツに撃ったビームが曲がりました! 気をつけてください! アスラン!」
「ああ。あ! あれは鳥か? いや違う、モビルアーマーだ!」
『お前の相手はこっちだよ! あはあは』
鳥の形状をしたそのモビルアーマーは、背中からバスタータイプのモビルスーツを降ろすと、こちらに向けて何かを放ってきた!
「あはぁ、こ、これは鉄球か!?」
『ちっ、外しやがった。もう一回行くぜおらー! 滅殺!』
「なんて攻撃を! くっ、こいつら、強い!」
そう言っている間にも、下からバスタータイプのモビルスーツがビーム砲を連射してくる。
「アスラン! あれはストライクじゃ?」
「何!?」
アスランが見ると、確かにパナマで見覚えのある、赤いストライクを含めた3機のモビルスーツが飛行してくる。
「くっ。ルナマリアか!?」
そのストライクは真っ直ぐグングニールを目指して降下して行く。
「やらせませんよ! フルバースト!」
だが、ストライクは急激な機動をして躱す。
『あはは! お前の相手はこっちだー!』
「くっ。しつこいですね!」
ニコルはレールガンを撃とうとするが、そのモビルスーツは強大な推力を生かしてフリーダムの上へと移動する。
「これでは……ビームしか使えない! 厄介な!」
隙を見て素早くビーム砲を撃つが、相手も素早く対応して背部の装甲を被る。
「うわぁ!」
「どうした! ニコル!?」
「ビームをこちらの方向に曲げられて……廃熱板をやられました」
爆発音がする。とうとう最後のグングニールもやられたようだ。
「この調子じゃ、俺達だけでマスドライバーを破壊するのは無理だ! ストライクが攻撃に参加してくる前に引くぞ!」
「……仕方ありませんね。せっかく期待されて核動力機を託されたのに、悔しいです」
「いくら核動力でも、質は量が無限に増えれば潰されると言う事だろう。俺も悔しいが、仕方がない!」

アスランだろうジャスティスと、ザフトの砲撃戦用のモビルスーツ――フリーダムと言う名前が頭に浮かんで来た――は、
私達が最後のグングニールを破壊すると、撤退して行った。
「あの子達、強いね」
「ああ。追っていったがあの分なら、心配はいらんだろう」
最後のグングニールを破壊して程なく、ザフトは撤退を始めた。
「撤退する所を叩くぞ! ここでしっかり叩いておけば、オーブも当分は安全だ」
「「はい!」」

196523:2007/11/09(金) 08:40:20 ID:???
――! ジャスティス! フリーダム!
とうとう海岸まで敵を追い詰めると、そこには紅白ニ機の機体が暴れまわっていた。ザフトの潜水母艦を潰そうと、
スピアヘッドが次々に飛んで来るけど、次々に落とされている。
フリーダムのビーム砲2門、レールガン2門のフルバースト、ジャスティスの針ねずみのような火器の射撃は容易に近づけない。
「行くぞ! お前ら!」
「「はい!」」
あの子達は……? いない――! やられたの? まさか!?
フリーダムは引き続き潜水母艦の護衛に当たるようで、ジャスティスだけがこちらに突っ込んできた。
くっ、パワーが違う! ビームサーベルで攻撃を仕掛けるものの、ジャスティスもビームサーベルを抜き、打ち合う。
押しやられる!
「お前らコーディネイターを相手に何をちんたらやっている! さっさと殲滅しろ!」
え? 見知らぬストライク、いいえ、あれはジェットストライカーを付けた105ダガーがビームライフルを撃ちながら突っ込んでくる!
ジャスティスはすっと一気に私から離れた。そしてブーメランを投擲した。それは突っ込んできた105ダガーの背中を
襲い……真っ二つにされた105ダガーは海岸に落ちて行った。
「エミリオの馬鹿が。逸りやがって」
スウェンさんが呟くのが聞こえた。
どうやらザフトの潜水母艦が収容を終え撤退を開始したようだ。フリーダムとジャスティスが海上へと飛び去って行く。
「深追いは、やめとくか」
フラガさんがぽつりと言った。


「いやいや、お見事でした。流石ですな、サザーランド大佐」
「いえぇ、ストライクダガーは良い出来ですよ。オーブでアズラエル様が苦戦されたのは、お伺いした、予期せぬ機体のせいでしょう」
「まだまだ課題も多くてねぇ。こっちも。しかしよもや、カラミティ、フォビドゥン、レイダーで、ああまで手こずるとは思わなかった」
「さすがはプラントの技術力、と言う事でしょうか」
「どちらにしろあれは何とかしなきゃねぇ。手に入れられるかな」
「それでご自身でカーペンタリアへと?」
「ああ、カーペンタリア、そこで出て来なきゃ宇宙へ上がってプラントを叩けば、防衛のために必ず出てくるでしょう? 
あの二つの機体もしかしたら、核エネルギー、使ってるんじゃないかと思ってさ」
「なんですと!?」
「確証はないけど。でもあれだけのパワー、従来のものでは不可能だ」
「ニュートロンジャマーも、コーディネイターの作ったものですからなぁ。確かに奴等なら、それを無効にするものの開発も
可能でしょうが、それが本当なら由々しき事態ですな」
「おいおい、国防産業理事の僕の目を疑うのかい?」
「いえ……そのようなことは……」
「大体我々は弱い生き物なんだからさ。強い牙を持つ奴は、ちゃんと閉じこめておくか、繋いでおくかしないと危ないからさぁ」
「宇宙に野放しにした挙げ句、これでは、ですな」
「頑張って退治してくるよ。僕も」

197523:2007/11/09(金) 08:41:07 ID:???
「しかし、さすが『煌めく凶星「J」』ですね!」
アークエンジェルへ帰還する道すがら、トールはキャリーに声をかけた。
「感心しました。本当にお強いですね」
サイも、ため息と共に感嘆の言葉を掛ける。
「本当にさぁ。ほとんど一撃で倒してるんだもんねぇ」
ミューディーも感心したように言う。
「なに……」
だが、キャリーはちょっと困惑したような、不本意そうな声で応じる。
「どうせ殺すなら、できるだけ苦しませずにと思っているだけだ……」
その驕らぬ態度に、トール達は一層尊敬の念を新たにした。

アークエンジェルは、僚艦ドミニオンとさほど距離を置かずに海岸に乗り上げていた。
私は、アークエンジェルに降りる前にドミニオンに着艦した。
海岸で見かけなかった、あの子達の事が気になったからだ。
「あ、ホーク中尉! ご無事で!」
エイムズさんが話し掛けて来た。
「そうよ。あの子達は無事?」
「あの子達?」
「そう、確かクロトとか、オルガとか、シャニとか言ってた」
「あー。あの妙な子達かー」
「知ってるの!? 無事?」
「彼らは無事ですよ」
後ろから声が掛かった。
「アズラエルさん!」
「あなたもご無事なようですね。よかった」
そう言うとアズラエルさんは微笑んだ。
「よかった……ジャ……いえ、ザフトの新型機ニ機と戦っていたはずなのに姿が見えなくなっていたから、心配していたんです」
「そうですか」
……? アズラエルさんの顔が歪む。
「……まぁ、いいか」
「え?」
「来なさい。こちらだ」
私はアズラエルさんに着いて行った。
向こうから呻き声が聞こえて来る。声の元へ向けて私は走った。
198523:2007/11/09(金) 08:41:15 ID:???
そこでは、あの子達が頭を抱えてごろごろ転がりまくって呻いていた。
「これは!」
「貴方達、ルナマリアさんが貴方達の事を心配してわざわざ見に来てくれましたよ」
その声に、3人が頭を上げる。
「よ、よお、おねーちゃん」
クロトがなんとかと言った様子で返事をした。
「どうしたんです? これは? どこか怪我でも!?」
「いや……時間切れさぁ……くっ」
「アズラエルさん、時間切れって……?」
「この子達には、コーディネイターに対抗するために、常人をはるかに超える能力を引き出す薬が与えられています。その薬の禁断症状ですよ」
「そんな、事って、まるで麻薬じゃないですか……!」
きっとなってアズラエルさんを振り向くと、そこには、泣いているような表情のアズラエルさんがいた。
「勝つために必要だったんです。家は伝統的に反コーディネイターでしてね。こんな研究も昔からやっているんですよ」
なら、なんで貴方はそんな、泣いているような顔をしているの?
気がつくと、私はアズラエルさんの頬に手を当てていた。
「なっ! なにを!」
アズラエルさんは後ずさった。
「ごめんなさい。なんだか泣いているように見えたものだから」
「泣いている!? 僕が? はは!」
「アズラエルさん……この子達を元に戻す研究はやってないんですか?」
「そんなもの、やってませんよ」
「じゃあ、やってください。戦争は、地球の国のほとんど全てが地球連合に参加しているんだから、もうすぐ戦争は終わるのでしょ?」
「小さな小競り合いは、いつの世もありますよ」
「そうしたってこんな……!」
「大人の世の中は汚い物ですよ。そして、汚い事をしなけりゃ成し遂げられない事もあるんです」
悄然とした私を、アズラエルさんはストライクルージュの所まで送ってくれた。

やっぱり嫌われたかな。ははは。なんでわざわざ、露悪的な事をしてしまったんだろう。
アズラエルは自嘲する。
肩を落として歩く彼女を抱きしめてやりたくなる。
だが、自分にはその資格はないのだ。こんな汚れた手をした奴に、資格なんてあるものか!
……そうか。それをはっきり自覚するために、こんな事をしたのか。
「じゃあ……送って頂いてありがとうございます」
その俯いた暗い顔を見て、つい、言ってしまった。
「検討してみますよ」
「え?」
「彼らの治療法の研究、検討してみますよ。まぁ薬物依存の治療法にも応用できるでしょうしね」
「ほんとですか!?」
検討する――どうとでも取れる言葉だと言うのに。
ああ、ルナマリア。なんてまぶしい顔で君は――
「ありがとうございます!」
いいさ。その笑顔を見れただけで僕は。
199523:2007/11/09(金) 08:43:54 ID:???
続く。
ジャスティス、フリーダムお目見え。
200通常の名無しさんの3倍:2007/11/09(金) 08:48:33 ID:???
GJ!
やはり盟主王とはいえども人の子、美人の笑顔の前には叶いません。
201通常の名無しさんの3倍:2007/11/10(土) 11:42:42 ID:6Rg96cWD
あげ
202通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 07:06:49 ID:TFsi7aeQ
あげ
203通常の名無しさんの3倍:2007/11/13(火) 17:34:58 ID:Q5vdTj5A
age
204通常の名無しさんの3倍:2007/11/14(水) 07:03:55 ID:???
保守
205通常の名無しさんの3倍:2007/11/14(水) 12:47:07 ID:???
ho
206通常の名無しさんの3倍:2007/11/16(金) 10:30:22 ID:???
hosyu
207523:2007/11/16(金) 21:05:21 ID:???
「なんとか防げたようだな……」
オーブ国防本部では安堵のため息と歓喜の歓声が空間を満たしていた。
「では、私は地球軍幹部と会見をして来る。後を頼むぞ」
ウズミが立ち上がる。それをきっかけに、周囲は戦闘の後始末への奇妙な活気溢れた行動へと移って行った。
「では、ユウナ様、私はカグヤ島へ向かいます」
「待ってくれ、僕も行くよ」
「……戦闘の後と言うのは結構ひどい状況ですぞ?」
「現場と言う物も知っておかなきゃねぇ。君らだって現場も知らない者に命令されるのは嫌だろう?」
「確かに」
その士官は微笑んだ。
「では、行きましょうか」
「待て! ユウナ、私も行く」
カガリも立ち上がる。
「カガリ……いや、君には君の仕事がある」
「え?」
「ウズミ様は地球軍の人達と話し合いが合って忙しい。オーブの国民は戦闘が終わったとは言えまだまだ不安だろう。
ホムラ様と一緒に安心させるのが、君の仕事だ」
「ユウナ……」
「僕や他の氏族の者じゃだめだ。アスハ家の君にしか出来ない、君の仕事だ。いいね?」
「……わかったよ。ま、安全だろうと思うが気をつけてな。私の代わりにしっかり現場を見てきてくれ」
「ああ。カガリもしっかりな」
二人は国防本部から出て行った。それぞれの仕事に向かって。


208523:2007/11/16(金) 21:06:09 ID:???
「ようこそオーブへ。アズラエル殿。今回のご助力、感謝いたします」
ヤラファス島にある行政府を訪れたアズラエルに、慇懃な口調でウズミは言った。
「まったくですよ。貴方がもう少し頑固でなければ、こちらの戦力ももっと早く送り込めたんですがねぇ」
皮肉な口調でアズラエルも応じる。
「何事にも、頃合と言う物があるのですよ。早すぎれば攻め落とされていたでしょう。パナマのように」
「ふ。まぁいいでしょう。プラントへの反撃。全面的に協力していただけるのですよね?」
「オーブも腹を括りましたからな。しかし、ブルーコスモス盟主としての貴方に申し上げたい」
「なんです?」
「オーブは、ナチュナルとコーディネイターの共存と言う方針は変えませんぞ」
「ああ、ああ。いいですよ、それは。大西洋連合にもコーディネイターがいない訳じゃありませんからねぇ。
地球上には人口比率こそ少ない物の、実数では2千万人以上、プラント以上のコーディネイターが住んでいるんですよ?
 ちゃんとした心根を持ったコーディネイターなら、それはもう空の悪魔共とは別に扱いますよ」
「空の悪魔か……そう言って相手を蔑視する事は正常な判断を妨げますぞ」
「おや、お気に召さない? じゃあ、言い直しましょうか。プラントの奴らと」
「できれば、彼らと落としどころを見つけるなり何なりして、早く平和になってほしい物ですがね」
「平和! 僕も望んでいますよ。早く平和にしたいとねぇ」
「で、あれば、プラントの独立。認めてやっても良いのでは」
「残念ですが地球連合は、一遍しっかりとプラントを叩き潰さねば危険、と考えていますよ」
「あなたも、でしょう?」
「まぁ、そうですねぇ。なにしろ自分が出資したプラントを乗っ取られたんですよ? 誰が黙って明け渡しますか。
テロリストに交渉は不要なんですよ」
「しかし……彼らは不安だったのですよ。食料の自給率0と言うのは。地球にいる人にはわからんそうですよ。
補給路が宇宙と言う心細さは。宇宙海賊と言う存在もある。何か事あれば飢える、と言うのは彼らにとって我々が
推し量る以上の恐怖だったのでしょう。何しろ彼らはコーディネイターだ。いざと言う時に切り捨てられるかもしれないと……」
「そう言う時は治安維持と食糧供給の確保を理事国の責任で行うことを求めるべきでしょう?
 ヘリオポリスがプラントと同様の要求を一回でもしましたか? 考えてみてください。オーブのどこかの街、コロニーが
プラントと同じことを言って独自軍隊の保持を認めるよう要求したら、政府はどう対応するでしょうか? 普通拒否しますよね。
そして政府の拒否を無視してその町が武装を進めたらどうなるでしょう? さらに武装解除を求めて派遣された警官隊を
返り討ちにしたら……」
「もう、和平の機会はないのでしょうか?」
「国連が存在していた時に、コペルニクスでこちらが出すはずだった条件、『武装解除すれば一切の罪は問わない』
これを彼らが飲んでいてくれればねぇ。話はそこで終わったんですが」
「もし。もし彼らが今それを飲んだらどうします?」
「武装解除ですか? まぁ、まずは自治権は剥奪ですねぇ。ずいぶん彼らに辛い物になるでしょうね。こちらの出す条件は。
彼らはそれだけの事をしてしまった」
「そうですか……」
ウズミはため息を吐いた。それは徒労感の篭ったため息だった。だが、そのため息には自分の国民に犠牲を強いらずに
すんだ、と言う安心感も確かに込められていたのである。
209523:2007/11/16(金) 21:06:52 ID:???
「まぁ、過酷に過ぎる事を要求するつもりはないですよ」
新たな同盟者に気を使ったのだろう、アズラエルが言った。
「我々は歴史を知っていますからね。ヒトラーが出現するような真似は、しません」
「わかりました。この話はそこまでにしましょう。ところで……」
オーブの政治家としての顔に戻ってウズミが言う。
「プラントへの反撃、協力はしますがそれなりの代価は払ってもらいますよ」
「いいでしょう」
アズラエルも応じる。そしていたずらっぽい笑みを浮かべて言った。
「ところで……連合のモビルスーツの技術、盗用しましたね?」
「な……!」
「いやぁ、サーペントテイルと言う有名な傭兵グールプ、知っているでしょう? それにジャンク屋のロウ・ギュール。
ちょうどヘリオポリス崩壊時にザフトのモビルスーツとはとうていかけ離れた形態のモビルスーツを手に入れたって
言うから調べさせたんですよ。そしたら……ヘリオポリスで作られていたGにそっくり。オーブのモビールスーツ、
M1アストレイもこれまたGにそっくりですし。代価、払ってもらえますね?」
「む……む、いいでしょう! では、具体的な条件を詰めましょう……」
負けられん! オーブの利益のためにも!
相手が一筋縄ではいかない交渉相手と知ってウズミも必死で弁舌を振るい始めた。
彼らの交渉はこれからが本番だった。


私達には、オーブ本土への上陸が許された。
マリュー艦長が配慮してくれて、ヘリオポリス組は真っ先に上陸!
ザフトの攻撃がカグヤ島に集中していた事もあって、街はいつもの日常を取り戻していた。
『……今回のザフトの攻撃による民間人の死傷者は、政府の命令を破りカグヤ島に潜入していた大西洋連邦国籍の
ジャーナリスト、ジェス・リブルさん一ヶ月の軽傷一人で、当局は回復を待って取調べを……』
ビルの壁面のテレビでニュースをやってる。
「そっか。オーブの民間人、死ななかったんだ」
「よかったな」
「うん、よかった。俺達、オーブを守りきったんだよな?」
「ええ、立派よ! トールもみんなも」
ミリィが誇らしげに言う。
そう言えば、ジャスティスに撃墜された105ダガー。スウェンさんに聞いたら、やっぱりエミリオさんだそうだ。
冷酷な奴だったから、気にする事はない。自分も嫌いだった、とスウェンさんは言ったけど、でも、やっぱりショックだろうな。知り合いが死んで。
実際に顔を合わせた人が死ぬのは、やっぱり嫌だ。ギャバンを思い出してしまう。
「じゃあ、久しぶりに自分の家まで帰って来ようぜ」
「うん、じゃあ、基地でまた!」
私は駆け出す。自分の家に! 見知った通りを走る。あの角を曲がればもうすぐ……。ここだ! 私の家! ベルを鳴らす。鍵が外れる音がする。
私はドアを開ける。
「――ただいま!」


210523:2007/11/16(金) 21:07:38 ID:???
ビクトリア宇宙港――C.E.70年3月8日、71年2月13日の2度にわたりザフト地上軍から攻略を受け、
奪われた地――ビクトリア大虐殺の悲劇の地。そこに、再び地球軍の姿があった。
「どうやら向こうも迎撃準備は完了しているようだな」
「は!」
「大西洋連邦は、オーブのマスドライバーを無事に手に入れたらしい。我々も負けてはおれんぞ」
「その事ですが、ザフトがマスドライバーの自爆を企むのではないかと心配です」
「それほど心配はいらんよ。どうやらザフトは自分のやった事――虐殺をやりかえされるのが怖いらしい。
現地住民の情報では、宇宙へ撤退する準備が進んでいるようだ」
「大西洋連邦からは、パナマ、そしてオーブでザフトがEPM兵器を使用したとの情報が来ております。油断は禁物です」
「そうだな。機動上から落下して来る物体があれば、最優先で叩くように、命令しておけ」
「は!」

「調子はどうだ?」
ロンド・ギナ・サハクは自分の下につけられた部下に尋ねた。
「調子? いいぜぇ」
エドワード・ハレルソンが答える。彼は南アメリカ出身の軍人だ。
「「問題ありません」」
四郎、六郎、七郎、十一郎(といちろう)、十三郎(とうざぶろう)と言ったソキウス――地球連合に作られた
戦闘用コーディネイターも答える。彼らはアズラエルから一時的にロンド姉弟に預けられている。
本来は譲渡されるはずだったのだが、はっきりとした証拠はつかまれていないものの、ギガフロート建設の際の
襲撃者の様子をサーペントテイルから聞いたアズラエルがロンド姉弟に疑念を持ち、譲渡を取りやめたと言うのも、
彼らの知らない裏事情である。
彼らの東アジアニホン地区、そしてオーブでも付けられるような名前は、最近付けられた。少し前までは
フォー、シックス、セブンと言った味も素気もない名前で呼ばれていたのだが、ふらりとムルタ・アズラエルが施設に
立ち寄り、名付けていった。ソキウス達は今までのようなもろに数字の名前ではなく、人名らしい名前を付けられた事を
素直に喜んでいる。
彼らの機体はエドワードと四郎が、カラミティの派生機、ソードカラミティ。七郎と十一郎がカラミティ、十三郎は
レイダーの制式仕様機だ。
ギナ自身はオーブがヘリオポリスで開発していたアストレイゴールドフレーム改修機に乗っている。ギガフロート襲撃時より
一番大きく変化した所はどのような交渉をしたものか、アズラエルからPS装甲の技術を与えられ、バイタルエリアなど一部が
PS装甲化している所だろう。全身ではない。だが、ギナはまったく不安に思っていなかった。ミラージュコロイドもあるし
当たらなければよい、と考えている。自信家である。他に左前腕部にツムハノタチと名づけたPS装甲化する鉤爪が付いた事、
腰にビームサーベルが装備された事くらいだろうか。

轟音が遠くから聞こえて来る。ギナのモビルスーツによって拡大された視力は空の片隅に飛行機の群れを捕らえる。
おそらく奪回されたスエズ基地から発進したユーラシアのTu-99戦略爆撃機だろう。
「時間どおりだな」
しばらく待つうちにTu-99は頭上に達し、ザフトのモビルスーツの到達し得ない高空から爆弾を投下し始めた。
NJの影響下にあっても、ジャイロ、加速度計を使った慣性誘導は可能だ。ぶれが大きくなるが。
爆弾を投下し終えると、Tu-99は大きく旋回して帰って行った。
「うひょー! 敵さん大混乱だね〜!」
エドワードが歓声を上げる。
敵の陣地のあちこちで、大爆発が起こっていた。
「爆発が終わったら、出るぞ」
「おう」「「了解しました」」
「くくく。私とダンスを踊れる者がいるかな?」
ギナの目は不吉に輝いていた。
211523:2007/11/16(金) 21:08:20 ID:???


「もう、帰ってしまうのねぇ」
「そうだな。今度はたっぷり休暇取って来い」
「うん、今度来る時は、ゆっくり来るわ」
久しぶりのママの手料理、おいしかった。
きちんと掃除されている私の部屋。嬉しかった。
「ママ、今度来る時は、私、退役してるかも」
「まぁまぁ、そうなったら嬉しいわねぇ。今は毎日心配だもの。毎日、神様とご先祖様にルナの無事をお祈りしているのよ?」
その気持ちが嬉しい。私もしてこう。
まずは神様。神棚の前でニ礼ニ拍手。次にご先祖様。お仏壇にはお線香を上げて、両手の手と手のしわを合わせて、しあわせ。
後ろで、パパとママも手を合わせていた。
「じゃあ、行って来ます!」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
ママは玄関に立った私に切り火を切る。
名残惜しいけど、もう行かなきゃ。振り向くと、パパとママは玄関の前に立ってこちらを見ていた。
きっと私が見えなくなるまでそうしているのだろう。
……ちょっと、涙が出た。

基地への帰り道、繁華街を通った。あ、りらっくまのクッション! クレーンゲームの中に入っていた。
まだ、時間あるよね?
……取れない。
「お姉ちゃんへただなぁ」
え!? 聞き覚えのあるこの声は……振り向くとそこには赤い目をした10歳くらいの少年がいた。
「シン!」
思わず声が出ていた。
「なんだぁ? どっかでお姉ちゃんに会ったっけ?」
シン! シン・アスカ!
頭が……痛い。
その少年に手を伸ばす。手と手が触れ合う――
「大丈夫かよ、お姉ちゃん?」
ああ、聞き覚えのあるその声。背中に当てられた手から伝わる熱。
――あふれる。流れ込んで来る。私の身体に隠されたもう一つの私の記憶。夢に出てきた断片的な記憶が繋がる。
その膨大な、私が今まで生きて来た量と同じくらいの量の記憶が頭の中に展開されていく――
こみ上げる想いに耐え切れず私は眼を閉じた。
212523:2007/11/16(金) 21:08:28 ID:???
「ちょっとあなた、大丈夫?」
少年の後ろにいたフレイよりちょっと年下くらいの少女が私を気遣うように問い掛ける。
「弟の、知り合いですか? あ、私、マユ・アスカって言います」
マユ! シンの妹! でも今、なんて言った!? シンの事、弟って言った?
「あ、私は、ルナマリア・ホークです。シン君に、とってもよく似た人を知ってるもので、つい」
「へぇ。その人の名前はなんて言うんですか?」
「シン・アスカって言うんです」
「……まぁ!」
マユちゃんはあんぐりと口を開けた。
「名前まで一緒なんて!」
「でも、私の知っているシンは16歳ですけど」
そうなんだ。確信する。ここは、やっぱり私のもう一つの人生の記憶――夢の世界とは違うんだ。
「うふふ。お兄さんなんだ」
「でもさあ。お姉ちゃんも、ルナお姉ちゃんも声がそっくりだなぁ」
シンが、口を挟む。
「目を閉じて聞いてると、どっちがどっちかわからないや」
「……そうなの? 自分じゃわからないのよね。自分の声は骨を伝わる音を聞いているから。でも、そうなんだ?
 私ってこんな声なんだ? 不思議ですね。なんか、ルナマリアさんには縁を感じます」
あ、そう言えば!
「シン君。この間オーブが攻められた時、ご家族に怪我とかした人はいない?」
「いないよ。みんなちゃんと避難してたもん」
よかった――
(シン。私、シンとシンの家族を守ったよ……)
夢の世界のシンに向けて心の中で呟く。
シン。あなたを愛したから私は私になれた。その顔、その声。私がずっと探してきた、こたえ。
……でも、目の前の少年は、私の愛したシンじゃない。違うんだ。心が痛いけど。
「じゃあね。私、そろそろ行かなきゃ。お姉さんと仲良くね」
「ん。これ、あげる」
「え?」
差し出されたのは、りらっくまのクッション。
「お姉ちゃんへただからさぁ。取ったのやるよ」
自慢気に言うシン。……だめだ。許されなくても一度だけ。
「な、なんだよお姉ちゃん」
私は、シンをぎゅっっと抱きしめた。
頬に伝わる涙が、ずっと求めていた、こたえ。でも、もうお別れしなくちゃ。
「ありがとう」


「サザーランド大佐、カーペンタリア攻略のために、ニューギニア島のこのあたりに基地を作りたいのですが」
副官が地図を指し示す。
「ああ、ウェワクか。いいだろう……にしても、この地域は貧乏らしいな。職もなくその日の生活にも事欠く住民が多いらしい」
「では、慰撫工作の一環として仕事を与えてはどうでしょう?」
「そうだな。雑用の他、少々効率が悪いが基地の建築も少し手伝ってもらおう。協力して大事を成し遂げれば、
兵と現地住民の結束も固くなろうというものだ」
「反連合のゲリラやテロリストの攻撃も懸念されます。フェンスを張り、武装した兵を警備に立てましょう」
この会話が後にある事件の解決につながる事を、彼らは知らなかった。
213523:2007/11/16(金) 21:16:07 ID:PUm0LoS5
続く。
今回は色々展開がありました。

ユウナ――初期のきりっとしたユウナが好きです。
ウズミとアズラエルの交渉――技術の盗用がばれてしまいました。ウズミには必死になってもらいましょう。
ジェス・リブル――今回も名前だけ登場。

そしていよいよ連合軍のビクトリア奪還戦が始まります。
アズラエルはソキウスの名前を付け直しました。
そして――ルナと、この世界のシンとの出会い、記憶の取り戻し?

最後の段落は、種死で意味不明だった「人力での基地建設!」をこんなような理由ならどうか?と書いてみました。
214通常の名無しさんの3倍:2007/11/16(金) 22:15:02 ID:???
GJ!

ちょっぴりシンマユスレのオマージュ入ってる?
215通常の名無しさんの3倍:2007/11/17(土) 01:50:03 ID:???
GJ!
何なんだそのコミカルなソキウスは。
216523:2007/11/18(日) 00:59:28 ID:mPZI/xkP
保守がてらレス

>>214
そんなスレがあったですか!

自分が兄妹逆にしたのは
・自分の中のもう一つの記憶はあくまで今いる世界とは別世界の出来事と割り切らせる。
・シンとの恋を終わらせる。
・マユが同年代にして中の人ネタをやりやすくする(笑)
などの理由でした。


>>215
面白いでしょう♪ 日本名にしようと思ったヒントは山本五十六でした。
日本って数字だけでも立派に名前になるんですよね。
一応検索して、十一朗も十三朗も実際にある名前だと確認して使いました。
後、自分で見やすい、入力しやすいと言う理由も(笑)
217通常の名無しさんの3倍:2007/11/18(日) 12:29:03 ID:???


あるんだねぇ、そんな名前。
218通常の名無しさんの3倍:2007/11/19(月) 14:48:25 ID:g/Ga2p2n
保守
219通常の名無しさんの3倍:2007/11/20(火) 17:08:07 ID:???
>>216
確かに原作とどこか差別化しないと変則的な逆行物にも見えますからねえ。
それと保守。
220通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 15:33:06 ID:JQ+jvi9P
保守
221通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 17:55:10 ID:???
よ〜し、お父さんエッチなガンダム期待しちゃうぞ!
222通常の名無しさんの3倍:2007/11/21(水) 20:00:01 ID:XSBcXL9C
毎日保守が必要かな
223通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 10:19:38 ID:ClSQiBhg
保守
224通常の名無しさんの3倍:2007/11/22(木) 10:34:38 ID:???
保守
225通常の名無しさんの3倍
hosyu