【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】7

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1通常の名無しさんの3倍
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を、
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長、雑談所「所長」にも感謝の乙! をお願いします。
荒れ防止のため「sage」進行推奨

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁
スレ違いの話はほどほどに
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう

前スレ
【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】6
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1186425541/l50

まとめサイト
ttp://pksp.jp/10sig1co/
雑談所
ttp://pksp.jp/rookiechat/
2通常の名無しさんの3倍:2007/09/06(木) 23:34:31 ID:???
3通常の名無しさんの3倍:2007/09/07(金) 01:38:40 ID:???
まとめサイト2
ttp://pksp.jp/10sig-2co/
4通常の名無しさんの3倍:2007/09/08(土) 00:58:58 ID:???
十日町で捕手
5通常の名無しさんの3倍:2007/09/08(土) 03:30:11 ID:???
>>1乙!

>>3
一応テンプレのまとめ1から行けるのですが…
6通常の名無しさんの3倍:2007/09/08(土) 05:25:51 ID:???
>>5
まとめ1を経由せずに、直接行けた方が便利じゃないか。
7FAQ〜テンプレ案〜:2007/09/08(土) 15:09:48 ID:???
以下前スレより転載

〜スレについて〜

Q、新人ですが本当に投下して大丈夫ですか?
A、ようこそ、本当に投下しても大丈夫です。アドバイス、批評、感想がもらえます。
  ただし最初は辛目の評価が多いです。

Q、○○と種、種死のクロスなんだけど投下してもいい?
A、ノンジャンルスレなので大丈夫です。ただしノンジャンルスレなので、クロス元を
  知らない読者が居られることも理解してください。

Q、00(ダブルオー)のssなんだけど投下してもいい?
A、新シャアである限りノンジャンルなので大丈夫です。

Q、××スレがあるんだけれど、此処に移転して投下してもいい?
A、基本的に職人さんの自由です。移転元のスレに筋を通す事をお勧めします。
Q、△△スレが出来たんだけど、其処に移転して投下してもいい?
A、基本的に職人さんの自由です。移転先のスレに挨拶する事をお勧めします。

捕捉:新人スレは、他のスレが荒らされたあるいは落ちた場合の
   緊急避難先としても機能した事があります。

Q、○○さんの作品をまとめて読みたい
A、まとめサイトへどうぞ。
Q、○○さんのssは、××スレの範囲なんじゃない?
A、事情があって新人スレに投下している場合もあります。
Q、○○さんの作品が気に入らない。
A、スルー。

Q、読者(作者)と雑談したい。意見を聞きたい。
A、雑談所へどうぞ。

8FAQ〜テンプレ案〜:2007/09/08(土) 15:10:48 ID:???
〜投下の時に〜

Q、ssを書いて来ました。投下したいんだけど。
A、名前欄に作者のお名前とトリップ、本文にタイトルを書き、
  長編であれば第何話であるのかを書いた上で投下してください。

捕捉:ss本文以外は必須ではありませんが、タイトルは入れた方が良いです。

Q、短編です
A、名前欄に作者の名前(+鳥)、本文の最初にタイトル。

Q、長編です
A、名前欄に作者の名前+鳥、本文の最初にシリーズの題名と第○話+副題。
  あるいは
  名前欄にシリーズの題名+鳥、本文の最初に第○話+副題。

Q、私のssにはこんな設定が出てくる(予定)なのですが――
Q、私のssにはこんな人物が登場する(予定)なのですが――
Q、私のssはこんな作品とクロスしているのですが――
A、設定資料、人物紹介、クロス元の作品紹介はssの中で描写した方が良いです。

捕捉:話が長くなったので、登場人物を整理して紹介します。
   あるいは
   此処の説明を入れると話のテンポが悪くなるのでしませんでしたが実は――。
   という場合ならOKとされる"こともあります"。
   おそらく最善手は、人物紹介か設定披露の為に短編を一個書き上げる事です。

Q、投下制限を受けました(字数、改行)
A、四十八行、全角二千文字強が限界です。
  本文を適当に分割したうえで、名前欄か本文の最初に1/5、2/5、3/5……
  と番号を振って投下してください。
Q、投下制限を受けました(連投)
A、連続投下十回位が限界です。時間の経過か支援を待ってください。
Q、投下制限を受けました(時間)
A、投下の間隔は最低一分(六十秒)あかなくてはなりません。


このままじゃいろいろ問題があると思うので、修正宜しく。
9FAQ〜テンプレ案〜:2007/09/08(土) 15:12:21 ID:???
〜書く時に〜

Q、長い沈黙は…………………で表せるよな?
Q、―――――――――!!! とかでスピード感を出したい。
Q、空白行を十行位入れて、キャラの言葉に出来ない感情を行間に落とし込む!
A、三点リーダー『…』とダッシュ『―』は、基本的に偶数個ずつ連ねます。
  『……』、『――』という感じです。感嘆符「!」と疑問符「?」の後は
  一文字空白を入れます。
  そして記号や………………!! 空白行というものは――――――!!!







  作者が思う程には強調効果が無いので注意。

Q、じゃあ、何度も何度も何度も何度も何度も何度も言葉を繰り返して強調すれば?
A、同じ言葉を繰り返す事は、必ずしも意味や意見を強調しません。
  単独の表現を反復する事は語意や文意を強めないからです。
  言い換えれば、単調な描写はそれを反芻する読者の印象に残らないという事です。

Q、第○話、って書くとダサいと思う。
A、別に「PHASE−01」でも「第二地獄トロメア」でも「魔カルテ3」でも
  「同情できない四面楚歌」でも、読者が分かれば問題が無いです。
  逆に言うとそこでどれだけ凝っても「第○話」としか認識されてません。
  ただし長編では必要な情報でもあります。

Q、文章を書くコツは?
A、上手い人かエロイ人に聞いてください。

Q、改行で注意されます
A、大体四十文字強から五十文字弱が改行の目安だと言われております。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
↑のダッシュが全角四十文字、↓が全角五十文字です。読者の閲覧環境にもよります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 こんなのを書くのに一時間以上も掛かった。後は頼みます。なんか蛇足のところがありそうです。

前スレより写してきただけなので、誰かいいあいであがあったらかひつしゅうせいをおねがいします
10通常の名無しさんの3倍:2007/09/08(土) 15:14:47 ID:???
最後の一文、PCの調子がおかしくて変換する前に書き込んじまったorz

言うまでも無く正しくは以下。
>誰か良いアイデアがあったら加筆、修正をお願いします。
11attitude ◆Q/9haBmLcc :2007/09/08(土) 20:46:25 ID:???
 be too late

 “extra dry”1/4

「随分と貴方らしくない物言いですね」
 シンはキラの言葉に多少の戸惑いを覚える。
 キラという人物はは多少の問題があるものの、比較的穏やかな性格であると認識していたからだ。
「僕にだって複雑な事情があるのさ。君の様にね」
 キラはシンの問い掛けをはぐらかす様に答えると、一切れの紙片を差し出す。
「これは?」
「此所じゃこれ以上詳しい話が出来ないからね。後でこの店に来てくれないかい?」
 それには飲み屋らしき店名と住所が書かれている。
 シンは苦味の混じった笑みを浮かべて頭を掻いた。
「奢ってくれるのなら。安月給だからそうそう飲みには行けませんよ」
 シンの言葉にキラは笑いを堪える事が出来ずに吹き出してしまった。
 昔は鋭いナイフの様にギラギラしていた男が今では俗物的な男になっているのだから、それは仕方がないとも言える。
 時の流れは良くも悪くも人を変える。
 しかし、変わらない人間ほど性質が悪いものがない、ともキラは思う。
「ああ。僕が持つから安心しなよ。……じゃあ、待っているからね」
 背を向けて去って行くキラを形ばかりの敬礼と共に見送ると、シンは急いで帰り支度を始める。
「アスラン・ザラを殺す覚悟ね……。」
 かつての上官の事を思い出してみようとしたが、途中でそれをやめた。
 記憶を呼び起こす事は感傷を生み出す。組織の歯車となった男には必要のない物なのだ。
12attitude ◆Q/9haBmLcc :2007/09/08(土) 20:49:55 ID:???
 be too late

 “extra dry”2/4

「思ったよりも早かったね」
 薄暗い店でシンを出迎えたのはキラの穏やかな声だ。
「あんまりアンタを待たせる事は出来ないでしょう」
 シンはキラがいるカウンターに足を向けながら店内を観察する。
 質素な作りのテーブルが二つ、6人程が座れるであろうカウンター。
 部屋の隅にある観葉植物はイミテーションの様だ。
「何か飲むかい? 取り敢えずビール?」
 カウンター席の端に陣取っているキラは手にしたショットグラスを掲げている。
「アンタは何を飲んでいるんです?」
「ああ、これかい? マティーニさ。エクストラ・ドライのね。ベルモットのボトルが通過するだけのマティーニさ」
「案外スノッブなんですね。俺にはジンをシングルで。そうだな……タンカレーが良い」
 シンの言葉に反応してバーテンダーは氷を砕き始めた。
「酔う前に話をしておこうか」
「そうですね。なんでアスランは裏切ったんですか?」
 キラは手にしたマティーニを一息に飲み干す。
 先程の言葉とは矛盾しているが、シンはそれに対して指摘をしない。
 飲まなければ、酒の勢いを借りなければ出来ない話もあるという事を知っているならだ。
「彼は担ぎ上げられたのさ。言ってみればただの神輿だよ」
「神輿?」
「ああ、神輿さ。担ぎ上げたのはブレンデッドや廃棄コーディネーターと言った連中だよ」
 ブレンデッドとらコーディネーターとナチュラルとの交配で生まれたこの総称である。
 廃棄コーディネーターは遺伝子の調整に失敗し親から廃棄されたコーディネーターの事を指す。
 どちらも差別を受ける側の人種、つまり社会的弱者である。
「あの人らしいと言えばあの人らしい。……だから俺の部隊が適役だと?」
 シンは喉を鳴らして嘲る様に笑う。その顔には不快感がありありと見る事が出来る。
「君の部隊だからこそさ。同じ様な構成の部隊だからね。有り体に言えば、“夷を以て夷を制す”って奴だね」
 キラ辛辣な物言いはシンの精神を逆撫でするのに充分なものだ。
「そんな言い方をされたらやる気がなくなる。アンタ、俺に喧嘩を売ってるのか?」
「少しはね。正直に言えば僕は君が嫌いだからね」
13attitude ◆Q/9haBmLcc :2007/09/08(土) 20:53:00 ID:???
 be too late

 “extra dry”/

「気が合うな。俺もアンタが嫌いだ」
 シンの瞳が怒りで燃え始める。
「だけど君の能力は信用出来るものだ。だから、君の部隊をアスランに当てる。これは決定事項だよ」
 キラはグラスをカウンターに置く。
 バーテンダーはシンにジンを差し出すとグラスを手に取る。
 しかしシンはジンに手を伸ばさない。手にしたら最後、キラにジンを浴びせてしまうかもしれないからだ。
「褒められても嬉しくない。……本当の理由を教えてくれ」
「君の技量はアスランには及ばない。だけど、指揮官としてはアスランよりも上だからだよ。
ただでさえ扱いに困るブレンデッドやハーフをまとめあげているんだ。その能力は認める」
 キラはおかわりを頼むと更に言葉を続ける。シンはただその言葉に耳を傾ける。
「彼等の境遇には僕も同情する。僕だってしがらみがなければアスランに手を貸しただろうしね。
でもね、アスランのやっている事はただの反乱なんだよ。
ザフトと言う組織の中で、彼等の地位を向上させようとしている君の方が評価出来る。
この作戦に成功したら、ブレンデッドや廃棄コーディネーターの地位を向上させる法案が可決される事になっている」
 シンはジンの入ったグラスを手に取り弄ぶ。
「アンタなりでも筋を通してくれるのは嬉しいけど、期待されても困るだけだ。」
「責任は取りたくない?」
「いや、そうじゃない。俺の機体――グフじゃアスランのインフィニットジャスティスには勝てない」
 先の戦争後、シンにはガンダムタイプの機体は与えられていない。つい最近にザクからグフになったぐらいのものだ。
 ザフト上層部はプラントがラクス体制になって以降旧ミネルバクルーを冷遇してきたのだ。
「君にはガンダムタイプの機体が受領される事になっている。
旧型だけどそれで我慢してくれ。他の隊員にもそれなりの物が与えられる」
「旧型のガンダムタイプ?」
 シンはキラの言葉に喜色を明らかにする。
「ああ。君には因縁のある機体……ガイアだ」
「ガイア? ……ステラの!?」
「不満かい?」
 シンはグラスを傾けてジンを飲む。苦い、苦い味がする。
14attitude ◆Q/9haBmLcc :2007/09/08(土) 21:01:38 ID:???
 be too late

 “extra dry”4/4

「不満がないと言えば嘘になる。俺はデスティニーで勝てなかった人間だ」
 キラはふっと微笑み、バーテンダーが差出したマティーニに口を付ける。
「君一人だけが戦うんじゃないだろう。君が作り上げた部隊で戦うんだ。
アスランが幾ら強くても相手は烏合の衆だろう?」
 シンはグラスの中の氷を見つめる。照明が反射して光っている。
「随分と買いかぶってくれる。……判った。全力を尽くさせて貰う」
 キラは自分の物とシンのものを注文し、シンを真直ぐに見つめる。
「一つ聞きたい。アスランの事をどう思う?」
「あの人は変わってませんよ。子供のまま何一つ変わってない。だけど、俺やアンタみたいに窮屈じゃない。
自由に全てを捨てる事が出来る。ある意味、羨ましい」
「それは僕も同感だ。」
 バーテンダーがキラにマティーニ、シンにはジンを差し出す。
「遅ればせながら乾杯をしよう。……新たなる英雄シン・アスカの勝利と栄光の為に。そして君と初めて腹を割って話せたこの一時の為に」
「偉大なる英雄アスラン・ザラに敬意と弔意を。そしてアンタと腹を割って話せたこの一時の為に」
 キラはグラスを高く掲げる。シンも同じくグラスを掲げるキラの持つグラスに当てる。
 冷たく乾いた音が店内に響く。
「ああ、そうだ。アンタさっきマティーニについて講釈をたれていたけど、
アンタが飲んでるのは本当のエクストラ・ドライじゃない」
 キラはマティーニを飲み干しながらシンの言葉を興味深そうに聞く。
「本当のエクストラ・ドライはベルモットの味を想像しながらストレートのジンを飲む事だ。
そうだよな、マスター」
 バーテンダーは悪戯っぽい笑みを浮かべるシンの言葉に笑いながら頷く。
「……君に一本取られたみたいだね」

 薄暗い店内に二人の笑い声が響き、夜は更けていく。
 少しばかりの信頼関係を築いた二人のスノッブの夜はそうは簡単に終わらない。

15attitude ◆Q/9haBmLcc :2007/09/08(土) 21:05:49 ID:???
be too late第一話投下終了。
>>13は3/4を入れ間違えた。
珍妙な駄文を投下して申し訳ない。
16通常の名無しさんの3倍:2007/09/08(土) 22:47:28 ID:???
あてぃの人投下乙!
かなり大人なシンとキラがいいですね。
次回あたりにアスランも出てくるのかな?かなり楽しみです。
ははとか、とらとか誤字ありました。ちゃんと推敲してくださいw
GJです。
17通常の名無しさんの3倍:2007/09/08(土) 23:04:00 ID:???
>>attitude
 早速の投下乙です。
 まさかこの二人が酒を飲み交わす日が来るとは……
腹を割って話し合えたその一時に乾杯。お酒の話が分からないけれど
雰囲気は伝わったと思います。
 副題のつけ方も中々。
 推敲と改行が一、二箇所問題があったと思います。
 続きを楽しみに為ております。
18177:2007/09/09(日) 03:39:53 ID:???
機動戦士ガンダムSEED E

PHASE-02「蒼翼の天使」


中破したMSの前に転がる他のMSの残骸。そして、その後方で立ち尽くすもう1機のMS。
まるで悪夢を見ているかのような光景に、サクヤは唇を噛み締めながらも一番後方のMSに
通信を開いた。
「こちらエクスノート、ジュール隊所属サクヤ=ヤマトです!ジェイム、応答してくれ!」
「サクヤなの……?」
デスティニーの後方から接近してきた白いMS。そのパイロットが士官学校時代からの友人で
あった事がアリスの緊張の糸を一気に解いていた。
「アリス!無事なのか?」
「うん、私は……でも……でも隊長が……!」
瞳を潤ませ、声を震わせながら話すアリス。それを見てサクヤは唇をさらに強く噛む。
「……アリス、多分そこにいるもう1機がロアだよな?なら、ロアを連れて艦へ逃げろ!この
化け物は俺が相手しとくから!」
サクヤの言葉に一瞬アリスは躊躇うが、しばらくして無言のままコクリと頷いた。
悪魔を目の前にしてサクヤは背中に嫌な汗をかいているのを感じた。
シミュレーターでも実戦演習でも感じえない、敵からのプレッシャーというものを初めて直に
感じたからだった。
「おじさん……少し無茶な操縦するかもしんないからさ、頭打たないように気をつけといてよ」
「え……あ、ああわかった」
ヴィーノもまた初めてMSに乗って戦うことで感じる恐怖に臆していたが、サクヤの声を聞くと
何故かそれが和らいでいくのを感じた。
「……じゃあ、行くよ!」
サクヤの声と共に再び動き出したエクスノート。ヘッドバルカンを放ちながら、デスティニー
との距離を詰めて行く。両手にはビームナイフを構えている。
「おじさん!コイツ、ホントにナイフしか持ってないんだよね?」
念を押すようにサクヤは尋ねた。
「あぁ、エクスノートの初期装備は両大腿部に収納されてるアリエスだけだな」
あっさりと返すヴィーノ。だがサクヤは間髪入れずに次の問いを口にする。
「じゃあさ……あそこに落ちてるデカイ剣とかは拾って使えるの?」
モニターに映る大剣を一瞬指差すサクヤ。ヴィーノはその大剣を凝視した。
「あれはカプリコーンか?エクスノートは「ゾディアックシステム」に対応してるから可能で
はあるけど……まさかあれを拾いに行くのか?」
驚いた表情を浮かべるヴィーノを余所に、サクヤは黙って頷いていた。
19177:2007/09/09(日) 03:43:11 ID:???
「えっ……」
オペレーターのマリーネ=ホークは思わず声を漏らした。それは彼女……いや、グルヴェイグ
クルー全員にとってありえない出来事が起こったからだ。
「艦長!チェンバレン機が……ロストしました……!」
マリーネの言葉にクルー全員が耳を疑った。グルヴェイグの誇るエースパイロットが、進水式
という記念すべきはずの日に死んだと言うのだから無理はなかった。
「カーネルが……!議長、グルヴェイグを発進させます。本艦はデスティニーと思われるMSの
母艦の特定及び破壊を目的に動きます。申し訳ございませんがしばらくの間はこの艦にいて
もらうことになりますが、それでよろしいでしょうか?」
グルヴェイグ艦長のハル=ワーズワースがプラント最高評議会議長のラファエル=ランドール
に説明をする。ランドールは険しい表情を見せつつも、口を開いた。
「そうしてくれて構わないよ……敵の狙いが『G』なら、それを収容する艦が近くにいるのは
当然だろう。即刻、行動を開始してくれ」
「了解致しました……グルヴェイグ、発進準備!」
ハルとカーネルは士官学校時代の同期生だった。なので、カーネルの死はハルに深い悲しみを
与えたが、それを振り払うように彼女は声を張り上げた。
その直後だった。マリーネが再び声を上げる。
「新たな熱源確認、MSです!ライブラリにデータが登録されています……
ZGMF-X000E EX-NOUGHT……新型の『G』が起動しています!」
「『G』……!奪われたの!?」
ハルの頭には最悪のシナリオが浮かんでいた。だが、この後耳に入ってきた言葉は彼女の頭に
浮かぶシナリオを壊した。
「いいえ、デスティニーと戦闘中です!……アリス機から通信が入りました!繋げます!」
『こちらジェイム、アリス=オーウェルです!現在エリアDまで退避、半壊したロア機の収容
をお願いします!あと……メカニックにピスケスの準備を頼んで下さい!』
モニターに映ったアリスの瞳は潤んでいた。それに気付いたハルは、頭の中に最初に浮かんだ
言葉を消し、代わりに『G』について尋ねた。
「アリス!あの『G』には誰が乗っているの?」
『サクヤです……ジュール隊所属のサクヤ=ヤマトです!』
「どうやら味方が乗ってるみたいね……わかったわ、今すぐそっちに向かうわ!ピスケスに
ついてもメカニックには伝えておくわ……よく頑張ったわよ、アリス」
『G』が奪われていなかった事に一先ず安心したハルは、すぐに進路をエリアDに変えるよう
指示を出した。そしてアリスは、ハルの言葉に再び涙を流していた。
20177:2007/09/09(日) 03:44:57 ID:???
エリオルは自然と口元に歪な笑みを浮かべていた。探していた獲物が自ら寄って来る、今日の
自分はかなりツイている方なのじゃないのかとその時思っていた。
「あの白いのは、確かエクスノートって奴か……何故もう一機が来ないのかはわからないが、
おそらく君が来た方向にいるんだろうな!」
向かって来るエクスノートから放たれたバルカンなど気にも止めずに、デスティニーはパルマ
フィオキーナ0をエクスノートの方に向けて数発の光を放った。
「どこ狙ってるんだよ!」
放たれた数発の光を全て避けるエクスノート。そこから更に加速し、デスティニーの懐に潜り
込むと右手を上に大きく振った。
「速いっ!」
エリオルは驚きながらも、デスティニーを後退させながら飛ばして避ける。しかし、避けた先
には既にエクスノートが左手に持っていたアリエスが飛んできていた。エクスノートはそれを
投げてすぐにデスティニーが元いた場所を通過し、目的物へもう少しと迫っていた。
「チッ、それが狙いか!」
デスティニーは向かって来るアリエスを避けずに、エクスノートのいる方を向いて半身の姿勢
を取った。するとデスティニーの赤い翼は突如巨大な光を放出し、そしてエクスノートに向け
られてかざした右掌からは一発の光が放たれた。
「やられるかよ!」
カプリコーンを拾い上げたエクスノートはそれを大地に刺して軸にしながらデスティニーの方
に回転する。そして右手に残っていたアリエスを向かって来る光に対して投げつける。ビーム
の光とアリエスがぶつかった時、小さな爆発が起こり辺りが一瞬辺りは光で溢れた。

グルヴェイグのMSデッキでは大急ぎで作業が進められていた。アリスのジェイムには先程まで
付けられていたライブラが外され、代わりにジェイムの高さとさほど変わらない程の大きさの
砲門とエネルギータンクが2つずつ取り付けられていた。コクピットの中では、アリスが一人
押し黙ってキーボードを叩き続ける。
「なんでピスケスが……!」
ボロボロになったジェイムからようやく出てきたロアが思わず漏らした。その時、ロアの後ろ
から誰かがポンと頭を叩いた。
「お嬢ちゃんの意向だよ、敵の母艦と思われるヤツを見つけたらぶっ放すらしいぜ」
ロアが振り返ると、そこには色黒で筋肉質の男が立っていた。
「ヨウランさん……!やめさせて下さい!あれは重すぎます、もし敵に狙われたらアリスの命
の保障なんてないじゃないですか!」
「ああ、俺もそう言ったさ。でも、アイツは聞かなかったぜ……チェンバレンを殺したヤツを
絶対に生かして返さない、ってよ。後よ、お前のジェイム相当ボコボコだったから聞こえてな
いと思うけどよ、今あのデスティニーと戦ってるのはもう一人の親友さんらしいぜ」
それを聞いたロアは思わず目の色を変えた。サクヤが今、自分達が3人がかりで戦って倒す事
の出来なかった相手を、自分が尊敬してやまなかった人を殺した仇を一人で相手にしていると
言うのだから、それは当然と言えば当然だった。
21177:2007/09/09(日) 03:46:32 ID:???
「ヨウランさん……MSの予備ってありますか?」
ロアが静かに口を開いた。
「……ねぇな。試作型ジェイムはお前のヤツを修理する為にバラすつもりだからよ」
「なら、その試作型でいいんです!……サクヤも戦っててアリスも戦おうとしてるのに俺だけ
何もしないで指を咥えて待ってるなんて出来ないんだよ!……せめて、アリスが他の奴に邪魔
されないように守るぐらいの事が出来ればいいんだ!お願いします!」
ロアの必死の叫びに黙り込むヨウラン。しばらくして、額に添えていた右手をゆっくりとロア
の肩の上に乗せた。
「ちょっと待ってろ、今から少し弄って乗りやすくしてやる」
ロアの肩に乗せた右手を降ろし、ヨウランはその場を走って立ち去った。
ヨウランの後ろ姿をしばらく見てから、ロアはそのまま深く頭を下げていた。

光の薄れる先から現れる物体。それがエクスノートだと気づく前に、既にエリオルは回避行動
を取っていた。久しぶりに得た任務での高揚感に神経がより鋭く、敏感になっていたのだ。
「光の向こうから現れたお前は拾った大剣を振るう……だろ?」
半身になっていたデスティニーの僅か数十センチ手前にカプリコーンが振り下ろされる。後は
構えていた右掌を後ろからエクスノートの背に当てるだけだった。
「そんなギリギリで避けるのかよ……!」
サクヤもこれが必殺の一撃にならない事は理解していた。だが、仮に避けられても傷の一つや
二つくらいは負わす事が出来ると思っていた。しかし、その考えは甘かったのだ。
「おじさん、ゴメン……巻き込んじゃった」
死を覚悟してサクヤは呟く。相手との技量の差が大きかったとサクヤは考えていた。今思えば
簡単に避けてみせた数発のビームも、わざと避けれるように撃たれていたのだろう。何より、
自分の身体に流れているもう半分の血を何処かで過信していたのだ。そんな甘い考えでこんな
強敵に、それも初めて乗るMSで勝てるはずがなかったのだ。
そして、サクヤは思考を止めた。心の内に今は亡き母のことを強く思った。
(ゴメン母さん、思ってたより早く再会出来るみたい……)
だが、サクヤの心の願いは届く事はなかった。
デスティニーは背後から消えていた。だが、その代わりに無数の光が先程までデスティニーが
いた場所に降り注いだ。光の雨を辿ってサクヤは上空を見上げる。その姿を見てサクヤは言葉
を失った。
「なんでお前が……なんでお前がそこにいるんだよ!」
アーモリーワンの造られた空を飛ぶ蒼翼の天使は、サクヤが最も嫌う人間の愛機だった。
ZGMF-X30A/Dディバインフリーダム――サクヤの実の父で2年前に突如姿を消した
キラ=ヤマトの専用機がそこにはいた。
22177:2007/09/09(日) 03:48:12 ID:???
モニターに映る新たな敵にエリオルは舌打ちをした。流石に任務を成し遂げる瞬間を二度も
邪魔されようとは考えてもいなかったからだ。
「……何故フリーダムが動いてる?奴は地球に居るはずだろ!」
思わず声を荒げたエリオル、だがそんな彼に容赦なくDフリーダムはビームライフルを放ち
ながら接近してきた。デスティニーも放たれた全てのビームを回避しながらDフリーダムと
の距離を縮めていき、右掌に光を集めていた。
「喰らえっ!」
パルマフィオキーナ0がDフリーダムのコクピットを抉ろうとする。だが、Dフリーダムは
それよりも早くデスティニーをビームサーベルで斬り払った。しかし、そのデスティニーは
爆発することもなく薄れていくだけだった。本物のデスティニーは既にDフリーダムの背後
で右掌を構えていた。
「所詮は専用機、いくら性能が良くてもそのパイロット以外じゃ乗りこなせる訳がない!」
デスティニーの右掌から光が放たれる。しかし、その光はDフリーダムを前にして淡いピンク
の壁のような物体に弾かれた。
「……光波防御体か?そういえばそんな厄介なモノも積んでたな」
エリオルが苦々しげに呟いた、その時だった。アーモリーワンが突如大きく揺れた。
『少佐、時間です……退路を作ったので帰還して下さい』
アーモリーワンの外壁に大きな穴が開いていた。そして、そこから1機のMAが現れた。
「フランチェスカか……随分と派手な登場シーンだな」
真っ青な航空機型のMAを見てエリオルは言った。そして右掌から光を数発Dフリーダムに
放ってから赤い翼を大きく広げ、その場から飛び去った。それを追おうとDフリーダムが翼
を広げたが、それを邪魔するように今度はMAから大きな2つの光が放たれた。
「フリーダムのパイロット、君とは今度会った時に決着をつけよう……その時まで首を長く
して待っているよ!」
Dフリーダムの周囲を再び淡いピンクの光が包み、迫っていた2本の光がかき消された時に
は既にデスティニーはアーモリーワンから消えていた。また、青いMAもDフリーダムを一時
足止め出来た事を確認すると、漆黒の空へ消えようとしていた。

目の前で繰り広げられた戦いをただ呆然と見つめてたサクヤとヴィーノ。その沈黙を破るかの
ように始まったアーモリーワンの崩壊により、状況は一変した。
『エクスノートのパイロット、聞こえているか?』
突如通信が入る、相手はフリーダムだった。
「……あ、はい!聞こえています!」
ヘルメット越しから見える顔と、自分の頭の中に残っている父の声とは似ても似つかない声に
一瞬サクヤは安堵していた。サクヤの返答を聞いた男は、再び口を開いた。
『聞こえているようだな、用件は一度しか言わないからよく聞いておけ。俺は奴らを追う、
お前は一度母艦に戻って装備を整えて来い。以上だ』
「母艦って……?」
『グルヴェイグのことだ。それからもう一つだけ……血に助けられたな、ヤマト』
言い終えてすぐに男は通信を切った。男の言葉を聞いたサクヤは、しばらくの間押し黙った
まま両拳を強く握り締めていた。
23177:2007/09/09(日) 03:53:10 ID:???
投下終了です、前回から随分と時間が経ってしまってスミマセン。
今回は、前回の時にアドバイスを受けた改行を特に注意して書いたのですがどうだったでしょうか?

2週に1回は投下出来るよう努力するのでよろしくお願いします。
24通常の名無しさんの3倍:2007/09/09(日) 13:00:59 ID:???
>>23
ただの「177」だと後で他の人と混同するかもしれないので
トリップなり付けて貰えるとありがたい。
25通常の名無しさんの3倍:2007/09/09(日) 15:57:56 ID:???
>>SEED E
 全体の印象:横方向にすっきりとして読みやすくなりました。
改行に特に気をつけたと言うだけあって、読む時に改行で感じた
ストレスは殆どありません。なので贅沢を言うと、調整できる範囲で、
文の区切れを使って改行してみてください。

 他に気付いたところは二点。

 先ず一つ、段落の最初に体言止めが多いと感じました。
それはそれでSEED Eさんの文章にリズムをつけている様でしたが、
使いすぎの印象を持ちました。

 次、矢張りオリジナル単語が多くて混乱します。
 全てのオリジナル要素を等分に扱うと全ての印象が薄くなるので、
誰か一人に集中して描写を掘り下げ、その人の視点を通して
他のキャラクターを掘り下げてみては如何でしょうか。

 戦闘シーンは互いに緊張感を抱く程度の力量といい感じです。、
急に助けが来ましたが、今回は第一話と言う事で良いと思います。。
26種甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/09(日) 16:57:21 ID:???
 一回表 前編 1/2

 試合開始を告げるサイレンをかき消す様に耳を劈く乾いた音が響くと、
白球は甲子園のスタンドを超えて遥か彼方へと消えていった。
「そんな……僕のミラージュコロイドボールが……」
 渾身の力を込めた一球を軽々と運ばれたニコルはマウンド上で膝をついた。
 絶対的な自信のある、消える魔球ミラージュコロイドボールを捉えられたのだから仕方無いとも言える。

「夏子はんに愛を込めて!」
 特大の本塁打、しかも先頭打者本塁打を打ってダイヤモンドをゆっくりと回っている岩鬼の顔には、いつもと違い喜びの色はない。 
 愛する女性の姿が見えないからだ。夏子を探す為に客席に目がいっている。

 特大の一発に意気の上がる水島連合軍とは対照的に、CEオールスターズは意気が消沈している。
 しかし、ただ一人だけ生きた目をしている人間がいた。
 それはディアッカだ。彼はニコルが先発という時点でこうなるという事は予想していたのだ。
 彼はこの試合が決った時点でドカベン、大甲子園、あぶさんをブックオフで揃えていた。
 因みにイザークはなんと孫六とわたるがぴゅん、アスランはリトル巨人君でニコルはタッチを揃えていた。

 ニコルは砂漠の甲子園にしておくべきだったと後悔しつつ、一球の重みという物をその身に深く刻んだ。

27種甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/09(日) 17:01:10 ID:???
 一回表 前編 2/2

 ベンチでは監督のクルーゼが苦虫を噛み潰している。
 ニコルがいきなり捕まるとは思わなかった。このまま崩れてしまうだろう。
 しかし、次のピッチャーのまだ肩が出来ていない。ニコルには何とか踏ん張って貰わないとまずい。

「二番、セカンド殿馬君」
 アナウンスが響き、殿馬がバッターボックスに入る。
 しかし、ニコルはまだショックから回復していない。

 キャッチャーのレイは悩んでいる。今のニコルでは非力な殿馬にすら長打を打たれかねないのだ。それに秘打の存在も怖い。
 嫌な流れを断ち切りたいし、続くクリーンナップ、特に山田の前にランナーは置きたくはないのだ。

「ニコル、ボールを寄越せ!」
 ディアッカの声がマウンド上のニコルの耳に入る。
 理由は分からないけどディアッカがボールを求めている。
 混乱した頭でもそれだけは理解出来たニコルはディアッカにボールを渡した。

 ボールを受け取ったディアッカは二塁を踏み、塁審にアピールする。
「アウト!」
 塁審の右手が高々と上がる。
「なんやてーっ!」
 なんと、岩鬼は二塁を踏み忘れていたのだ。岩鬼の咆哮が虚しく響く。

 ニコルの瞳に再び生気が戻る。
「しまっていこー!」
「オーッ!」
 CEナインはニコルの掛け声に元気良く応じる。
 嫌な流れは断ち切れた。ニコルはディアッカに頭を下げると打者に集中する。

「……やっぱりあいつは馬鹿づら」
 溜め息混じりの殿馬の呟きは正に正鵠を得ていた。

続く
28種甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/09(日) 17:09:34 ID:???
一回表前編1/2のラストの砂漠の甲子園は砂漠の野球部ですね。
素で間違えてしまいました。
29通常の名無しさんの3倍:2007/09/09(日) 22:36:36 ID:???
>>種甲子園
 投下乙です。
 ギャグにしては少しテンションが低めだったかな、とも思います。
種キャラがどういうスタンスでどんな世界に紛れ込んだのか、
そういったところが説明は必要なくとも描写が必要だったかと思います。
30機動戦史ガンダムSEED 32話 1/10:2007/09/09(日) 23:23:35 ID:???

 C・E77年オーブ連合首長国<ホワイト・ヒル>代表首長府兼総司令部――代表府執務室――

 オーブ代表首長を務めるカガリ・ユラ・アスハは、自分の執務室のデスクで専用
パーソナル・コンピューターのモニターを凝視していた。
 これで何度、その画面に映った”プロジェクト”概要を読み直したのだろうか?何度も
読み直し、見落としがないのを確認すると彼女の口から溜息がもれる。そして、デスクを
挟んで向こう側へと視線を戻すと、
 
 「いいわ、全て承認します。これでいきましょう」

 「ありがとうございます」
 
 と、力強い声で目の前に立つ男に向かって、承認を与えた。目の前の男の方とはいうと、
特に緊張した様子もなく予め代表の答えを予測したように素っ気無く答えた。その答えに
満足したようにカガリは、口元に苦笑をたたえながらも話を続ける。

 「ジャンジャンやって頂戴。サイ」

 「――実はもう、準備は整っていたんです。後は代表のご許可だけというのが現状でして――」 

 カガリはそれを聞いて笑い出した。

 「――そう?あとやることは、ミナ達と詳細を詰めることくらい?」

 「ま、そんなもんです。ですが、元々ロンドと私とで企んだ”陰謀”ですからね」

 特に問題もなく滞ることもないでしょうと 代表府首席補佐官サイ・アーガイルはこちらも笑いながら話す。
そこでカガリは笑いを収めると、一瞬だけ憂鬱そうな表情を浮かべた。
 
 「……亡くなられたお父様達が、この事を知ったら怒るでしょうね」

 自分達がやろうとしている事は、父ウズミの”理想”と真っ向から対立することだ。

 ”他国に侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入せず”

 既に自分は、その”理想”とやらが、”妄想”の類だと言うことが理解可能な大人となっていた。
この動乱の真っ只中の時代で、そのような絵空事がまかり通るなど有り得ない。歴史の巨大な
うねりから”オーブ”を護る為に”力”こそが必要なのだ。
31機動戦史ガンダムSEED 32話 2/10:2007/09/09(日) 23:30:38 ID:???

 ――国は今、”冷徹な強権”と護り、撃って出る”力”を欲している。その為に私達は……。

 「一言で言えば私達は”死の商人”になるてわけよね?」

 「”ロゴス”のような軍産複合体を組織する――。兵器を開発し、売りつけ、
その収益で国を建て直す。何ら矛盾していませんよ」

 「――責任は全て私が取るから、貴方は何も心配せずにあなたの仕事を遂行して……」

 「……後悔しておいでですか?」

 「いいえ――」

 ラクス・クライン達と決別をした日から、後悔という無意味な行為を止めた。
自分はオーブの国家代表なのだ。先ずは最初にオーブの国益と国民の安全を護らねばならない。
他のことなどは後回しでいい。 

 「……私は自分がどれだけ無能なのか、というのをよく知っている……」

 ヤキン大戦やメサイア戦役を経て、自分が行ってきた愚劣な行動を思い出す、結局、自分は
ラクスの傀儡に過ぎず、オーブはそれに利用されていただけなのだ。ラクス・クライン一派、通称”ラクシズ”は、
地球圏を荒らし、掻き乱すだけ掻き乱している最中だ。ユーラシア大陸で泥沼の戦いを続けている。
”火薬庫”は火が放たれたまま、各地へと飛び火し、戦いの狼煙は更に増え続けているのだ。
 
 サイは、無言でそのカガリの様子を見守っている。天井を見ながら、カガリは話を続けた。 

 「――有能な人材を抜擢し、その人物を信頼して、彼らが働き易い環境を整え、最後まで一切を任せること。
それと途中で余計な口出しをしない事……そして彼らの仕事に対して最後に責任を取ること……」
 
 子供にでも出来ることよね。とカガリはサイの方へと笑顔を向けた。
その笑顔を見ながら、サイは厳粛な表情でカガリを見つめ直すと、片膝をついた。

 「――代表。貴女にお仕え出来ることができて、私は改めて誇りに思いますよ」

 「えっ……?」

 突然のサイのその行動にカガリは戸惑った。

32機動戦史ガンダムSEED 32話 3/10:2007/09/09(日) 23:35:14 ID:???
 
 「――非才で徳もなき身ながらも、これからもこのサイ・アーガイル、オーブの為、
そして、アスハ代表の為に微力を尽くす所存――」

サイはまるで古典劇で出てくる騎士のように、跪き仰々しい台詞回しを並べた。 

 「もう、ふざけないで……!」
 
 サイの意外な行動に驚きながら、カガリは、これも彼一流の洒落っ気だと気がついた。
 
 「あはははっ――。らしくありませんでしたか?」

 サイは笑いながら、カガリに謝すると、

 「逆よ――誇りに思うのは、私の方」
 
 「……」

 カガリは真剣な顔でサイに向かって語りかける。

 「――貴方の様に優れた人物に仕えてもらっているのだから……。あなたやミナ、
キサカにも見放されないように努力する。どうかこれからも、私の力になって欲しい……。
あなたの功にどう酬いてやれば良いのか、未だにわからないのだけれども……」

 「はっ――」

 カガリは、いったん信頼した部下に対して、全てを委ね、決して疑うような真似はしなかった。
それがどれだけ巨大な美点であるのか、少々の欠点など全く問題にならないほどの、
長所であることをサイは知っていた。

 
33機動戦史ガンダムSEED 32話 4/10:2007/09/09(日) 23:37:10 ID:???


 =============================

スティニツと握手を交わした後、サイ・アーガイルは自分に与えられた席に着き、
円卓上のテーブルの全ての席が埋まる事になった。ロンド・ミナはぐるりと周りを見渡し、
一同の顔触れを改めて確認すると、

 「……皆揃ったようですな。では、議事の進行は私が取らせて頂く。よろしいか?」

 と会議の開始宣言した。一同は無言で頷く。そして、ロンド・ミナも全員の同意を得たのを
確認して再び口を開いた。

 「――さまざまな問題や多くの犠牲もありましたが、我々は今回、アクタイオン・インダストリー社を
陣営に引き入れたことによって無事にユーラシア連邦への経済界へ介入可能な有力拠点を得ることができました……」
 
 今、ロンド・ミナが唱えている”財団”を構成する経済機構の最大の利益収率を占めるのは、軍需産業である。
一言で言えば”死の商人”ともいうべきだろうか?勿論、一般の人々から見れば忌むべき存在である。

  戦後の状況を簡単に説明すると、ラクシズの暴走によって勃発した”メサイア戦役”は
何ら収集も着かぬまま終局を迎えることと相成った。戦後の地球圏全体は僅かな火の気で発火し、
大爆発をする”火薬庫”という形容が似合う始末だったのだ。
 
 後世の歴史学者達は、C・E70年代前半は、云わば精神異常者や疾患者達による
軍事力を背景にした迷走と暴走。
 そして、続くC・E70年代後半からは、”ラクス教”ともいうべき異常な武装テロ組織の
狂信による宗派の”聖戦”とは名ばかりの闇雲な侵略行為による混迷と動乱の時代と位置づけられている。
 
 地球連合強国の有力な一翼を担う”大西洋連邦”はブルーコスモスの狂信者によって
上層部は汚染され、ユーラシア連邦もそれに引きずられる形となって人類史の史上で最も
短期間の内に2度の大規模な大戦を起こすという愚を冒している。

 そして、ラクス・クラインの”暴走”も留まることも知らずに、世界のあちこちの火種に火を
つけ続けていた。側にある”火薬庫”を無視し続けて。
 ラクスらの暴走によって世界各地であがった火柱は、無論のこと”火薬庫”を巻き込み大爆発をしてゆく。

 これを消す手段にラクス・クラインはいつもの手で、戦場へと強制介入。
力づくで消火作業を続けることになる。
 それはあたかも、猛火に対して液体燃料やダイナマイトで消火作業をする行為であったのだ。

34機動戦史ガンダムSEED 32話 5/10:2007/09/09(日) 23:39:24 ID:???
 
 軍需産業――。軍産複合体とは、軍部と軍需産業とが結びつき、政府に
大きな影響を及ぼしている体制をさしている。
 
 だが同時に”人”が社会というシステムを構築した瞬間から誕生し、もはや
切っても切れない存在として君臨してきたのものでもあるのだ。
 更には軍需産業の常としてに日々の生活に欠かせない日常品をも扱っている。

 片や死をもたらす兵器を生産し、片や人々の日々の糧を生み出す。
矛盾しているようで矛盾していない。人々は口ではその武器を忌み嫌いながらも、
自衛の名の元に自らの手に彼等が作り上げた武器を携える。

 それを一概に否定できないところも、また悲しむべき結果であろう。
このように誰でも、口先では幾らでも奇麗事は言えるのだ。
 
 大義名分の名の元にラクス・クラインは、自分たちを美しい言葉で
飾りたてるが、彼女達のしていることは、結局は武力による敵対勢力の壊滅であった。

 現在地球圏に於ける混乱は未曾有の状態にある。ギルバート・デュランダルが危惧し、
警鐘を鳴らした状態にあるのだ。
 
 そう、世界はまさに”火薬庫”ともいうべき存在と化している。
 
 キラ・ヤマトが安っぽいヒロイズムのごとくの”覚悟がある”発言は、当初、ラクシズ信者以外にも、
それなりの希望と期待感を抱かせたが、結果ご覧の通りである。

 彼の安く貧相な”覚悟”とやらは、この動乱に対して何ら消化剤代わりにもならず、
却って火に油を注いだような結果をもたらしていた。

 このようにC・E70年代半ばの世界情勢は、動乱の時代の真っ只中にある。
特にユーラシア・ヨーロッパ地域では、勃発している内乱の渦中にある各国や
独自の軍閥或いは地域での私兵集団――。
35機動戦史ガンダムSEED 32話 6/10:2007/09/09(日) 23:41:30 ID:???

 どの陣営でも、手持ちの武器や兵器の配備に大きな関心を持っている。
 
 特に軍需複合体企業連が開発した最新型で尚且つ大量に配備が可能な兵器は、
喉から手が出るほど求められていたのだ。
 かつての”地球連合”が強大だったのは、大量の最新型兵器を配備できる
圧倒的な生産力を誇っていたからである。
 
 無論、現在でもそれは変わっていない。数というものが、質を上回るのは時代を
問わずに変わらない自明の理というべきものである。
 
 ことに戦いにおいて相手よりも多くの兵数を揃える事は、軍事的視点から見ても
ごく常識の事であり、少数の兵で大軍を撃ち破るなど、妄想の域を出ない馬鹿げた思想である。

 一時期、モビルスーツが台頭し、妄想癖がある武装テロ集団の手によって行われた
時期もあったが、それは、もはや過去の妄想に過ぎない。

 時代が変わった背景には、新型”ニュートロン・ジャマー・キャンセラー”の完成によって
兵器の運用方法が再び変化の兆しを見せたことである。
 
 地上及び、宇宙での戦闘においてモビルスーツという人型という戦闘には、
最も不向きであり、不合理で甚だ脆く、更には生産性が低い機動兵器よりも、
高い機動力と圧倒的な装甲、更に”ビームバリアー”と呼ばれる強固な防御能力。
そして高い攻撃力を誇る”モビルアーマー”と呼ばれた搭載型機動戦闘艇が、
再び新たな時代の兵器として君臨し始めていた。

 そして、防御の要である”ビームバリアー”の最新技術は、開発の大本でもある
”アクタイオン・インダストリー社”によってほぼ独占状態にあった。
 
 元々 ”ビームバリアー”自体が莫大なエネルギーを喰う為に機動兵器の
搭載には最低限、核動力エンジンが一基は搭載されなければならない。

 だが、肝心の核エンジンが今まで”ニュートロン・ジャマー”によって
使用不可となっていたのだ。バッテリィ型エンジンではビームバリアーを
展開させれば数分で可動限界が訪れてしまう。
36機動戦史ガンダムSEED 32話 7/10:2007/09/09(日) 23:44:55 ID:???

 その為に機動兵器に搭載するメリットがない、という答えが常識となって
いたのだ。しかし、新型の搭載型のニュートロン・ジャマー・キャンセラーの
登場が兵器の構造を一変させた。
 
 新型NJCは、一般的に使用するには未だに効果範囲が狭く、更には
価格的に見ても庶民が手軽に購入できる代物でもなく、大規模な原子力発電にも
不向きであり、国家規模でのエネルギー不足解消は殆ど見込めない。

 しかし、新型の名が示すように今までの電波妨害を完全に解消するという、
戦場で画期的で大きな効果を上げることが可能となったのだ。

 今まで副作用として電波が阻害されるため、ニュートロンジャマー影響下では
電波を利用した長距離通信や携帯電話は使用不可能となり、レーダーも撹乱され、
自然、戦闘中での通信も困難になるケースが多かった。それが解消されたのだ。

 例としては、核動力モビルスーツの特権であった「マルチロックオンシステム」などが挙げられる。
ニュートロンジャマー影響下で特権的な攻撃能力を誇っていたが、新型NJCの登場で
もはや完全に意味を無くしたのだ。
 逆に「マルチロックオンシステム」で一機で多数を撃破するなどは、
今では、ただの笑い話にしかならないのだ。
 
これは現在では、機動兵器の搭乗者ならば誰でも手軽に使えるシステムとして、
どの機動兵器にも搭載されている。
 ミサイル、ビーム兵器等の主に”威嚇用”としてしか意味がなさなくなったが。

 各国の軍事関係者を狂乱した。しかも庶民には手が出ないが、軍事的視点
から見たら安価で生産性が極めて高い。軍事開発者にとっては、正に夢の発明品であったのだ。

 この開発には、崩壊したアズラエル財閥からの技術流出とか、ロゴス崩壊時に完成し、
隠滅しようとしていたところ、一部の暴徒によって持ち出されたとか、ラクシズのターミナルが
裏から流したなど、様々な憶測が生まれていた。

 事実は不明である。しかし、確かに存在し手軽に使用可能な軍事技術が存在する
という事実。それがあれば十分でなのだ。
37機動戦史ガンダムSEED 32話 8/10:2007/09/09(日) 23:46:07 ID:???

 地球圏各地の有力な軍は、こぞって新型NJCを量産し最新型機動兵器”モビルアーマー”
を初めとして核エンジンで稼動する兵器へと搭載しているのが現状である

 ――”ニュートロン・ジャマー”もはや、戦闘の何ら妨げにもならない――

 そう、この事実だけで十分なのである。世界の兵器思想の認識を塗り替えるのに十分な理由であった。

 「これまで諸兄の協力に対して心より感謝の意を表します。これからも我々の理想の実現の為、
更なる発展の為にも是非とも力をお貸し頂きたい……では」

 完璧な空調で管理された室内に、ロンド・ミナの何ら感情のこもらない渇いた声が響く。
彼女の美辞麗句とは、裏腹に室内にいる男女は全員、信頼や友愛などで結ばれた関係ではないが、
ある意味それより遥かに強固な”利”という世界共通の価値認識で強く結ばれている。

 キラ・ヤマトが語ったという内実が伴わない”欲”ともまた違い、ラクス・クラインが述べる”理想”という
薄っぺらな上辺だけの奇麗事ともまた違う。

 資本が利潤や剰余価値を生む社会システムである資本主義社会である。
そして、ここにいる者たちは、それがもたらす利による”欲望”によって繋がっていた。
まさに”欲望”こそが常に”世界”を動かしてきたのだ。

 ロンド・ミナは開会の挨拶を終えると、右隣に席に視線を移す。そこには
現アクタイオン・インダストリー社の会長である、初老の男が座っていた。
男は、ロンドの視線に頷くと口を開く。

 「アクタイオン・インダストリー社・会長であるルイ・トライドであります。
この度は、私如きを”財団”のメンバーとして名を連なさせていただき、何たる名誉――。
皆様に心からお礼を申し上げます。そして、これからは末永く良しなにお付き合いの程を……」

 彼の顔は上気し、誇らしげに輝いていた。メサイア戦役前までは、単なる三流軍需企業の社長で
あった自分が”今ロゴス”とも囁かれている”財団”の大幹部の一人として名を連ねた事は、
この上も無い誇らしいことである。

 以前はロゴスの会合に参加する機会があったが、大幹部であるアズラエル財閥の
先代当主アズラエル老や現当主であったムルタ・アズラエルなどは、自分をチンピラ程度にしか
認識せず、小馬鹿にしきった態度に、自分は屈辱に身を震わせていたものだった。
38機動戦史ガンダムSEED 32話 9/10:2007/09/09(日) 23:47:30 ID:???
 
 だが、現在の立場は見事に逆転し、アズラエル財閥は”ロゴス狩り”の暴徒によってアズラエル一族は
根こそぎ滅ぼされ、財閥も既に解体しハイエナ達によって食い荒らされ、以前の栄光を取り戻す事はもはや無い。

 自社は今こそ企業経営権は”財団”握られる事になってはいるが、基本的に財団は内部干渉を行わない。
その代わりに企業は財団内で”最新鋭技術”を無償提供を行う。
 無論、見返りとして”財団”は開発元へ莫大な援助を行い、それは実質的な自社の利益として還元されるのだ。

 そして、今や”アクタイオン・インダストリー”の名は国際的な軍需産業の企業として燦々と輝いている。
更には自分は”財団”幹部として君臨する事となった。笑いは止まらない。

 その様子をサイ・アーガイルはというと、自分の席で冷めた目で見続けていた。
”財団”が、いつまでも彼に甘い汁を吸わせ続けるとでも思っているのだろうか。

 自分たちは、利さえあれば、舐めろといえば相手の靴の裏も舐めるし、
逆に、何ら利をもたらさないものは、親であろうとも売り飛ばす。
 
 ふと脳裡にある言葉が浮かんだ。

 『――大陽は遥か中天にあっても、いずれは沈むこととなる』

 古代の人が呟いていた言葉だったか?確かに真理だろう、とサイ・アーガイルは思う。
 
 いずれは、没落なり滅亡なりが誰しにも必ず訪れるのだ。それが無いなどと、
信じている輩は、現在でもローマ帝国が存在していると信じていることだろう。

 そのローマ帝国は『パックス・ロマーナ』によって繁栄の絶頂期へと到達するが、
登れるところにまで登りつめた帝国は、やがて中天に達した太陽のように斜陽の季節を迎えることになる。

 このような厳然とした歴史的事実があるようにサイ・アーガイル自身は、国家や組織に対して、
何ら夢や幻想を抱いておらず、明確すぎるほどの定命論者で、一度は滅んだ国家や組織を
元通りに再興する行為など、歴史に逆行する類だという意見の持ち主だ。

 
39機動戦史ガンダムSEED 32話 10/10:2007/09/09(日) 23:50:44 ID:???
 
 彼の故国の指導者であったウズミ前代表の”オーブ連合首長国”は、
彼が自らの美学に酔い、”陶酔自殺”した瞬間に滅び去った、と
サイ・アーガイル割り切っている。
 
 その滅亡のプロセスを幸か不幸か分からないが、自分は体験している。

 人間は痛い目を見た時に、過去の歴史と教訓を学ぼうとするが、
サイ・アーガイルは10代の半ばにして、これでもか、というほどに
人生の挫折を何度も味わされた。それは、”敗北”より苦い体験だった。

  自分自身が、かつて所有していた価値観が無意味のものであり、
半端な優しさなど罪悪だと理解した時、彼は少年時代と決別し、
現実の価値観と世の不条理な理を是とする立派な”ひねくれ者”となった。

 その”ひねくれ者”は政治家となり、国家の中枢を掌握し、時代に
適合した軍人としての天分にも恵まれ、軍のトップにも登りつめた。
現代表に信頼されている。当時のオーブに人材がいなかったという大きな理由もあったが。

 時代のながれも理由の一つであえおう。もし、これがモビルスーツが
活躍していた時代ならば、自分は一介のオペレーター程度の扱いしかされずに、
軍事的才能なぞは、周りから認められない存在であっただろう。

 はたから見れば”人生の勝ち組み”として他人から妬まれようになるのは、
本人としても甚だ不本意なものだった。自分ほど人生設計が狂った人間は
そうそう、いないのではないか?とも思う。
 だが、挫折が自分自身を昇華し、今の自分の成長へと繋がっていった事は
ある意味で不幸中の幸いだった……ろう。と今では思い込むことにしていた。

 その自分が、カガリ・ユラ・アスハの下で共に作り上げた”国家”は名称こそ”オーブ”だが、
内実は完全に違うものとなっている。

 いずれオーブは”連合首長”という半端な名称も名実と共に消え、新国家”オーブ”として
資本主義と強固な中央集権体制を確立し、再び訪れた宇宙時代の”帝国主義”
の列強の一つとして、植民地経営や権益争いの舞台へと移行した”太陽系”に
君臨することとなろう。女王が統治した古の”大英帝国”のように。

 

>>続く



 四季のない場所で育った僕には、この国の春夏秋冬は日々の移ろいを如実に感じさせてくれる、
大きな要素の一つだ。スペースコロニーでは環境調整のために雨が降ることもあるが、四季の変
化は基本的にない。せいぜいリゾートコロニーに常夏を求めに行くか、逆に雪原で雪まみれになっ
て転げまわるかのどちらかだった。太平洋の真ん中にあるオーブ首長国連邦は赤道近くらしい熱
帯気候で、年中薄着で過ごせるほど暖かい。もしあそこに雪が降るとすれば、それは核の冬の到
来を意味するだろう。残念ながら過去には、その雪が降ってしまった時代もあったようだが。
 前世紀に盛んに環境問題が叫ばれ、地球温暖化に歯止めをかけようと各国が二酸化炭素など
の温室効果ガスの削減に取り組んだ結果、80年程前には気温上昇にストップがかかった。同時
期に石油もほぼ枯渇し、代替エネルギーへの転換が劇的に進んだことも主な要因として挙げられ
る。とはいえ、そこまでに地球の平均気温は7.2℃も上がってしまい、20世紀初頭の気温に戻る
には300年はかかるだろうと言われた。しかしその試算は核戦争までは想定していなかったようで、
再構築戦争が終結した頃には、戦争開始前と比べて平均気温は10.5℃低下した。世界中のあら
ゆる戦線で使われた戦略・戦術核の影響で、成層圏に大量のエアロゾルが滞留し、日光を遮った
影響だ。ついこの前まで自分たちの繁栄の代償として温暖化対策を論じていた人類が、今度は全
球凍結の事態に怯える羽目になったのは皮肉としか言いようがない。もちろん、それまで温暖化に
何とか適応しようとしてきた生態系もめちゃくちゃに破壊され、正確な数字はわからないが数十万種
の生物種が絶滅したと言われている。食糧生産量も激減し、戦後の各国の戦災復興は、壊滅した生
態系を立て直すことから始めなければならなかった。
 僕の住むマンションの空調は全室標準サービスのうちで、自室のコンソールで温度や湿度などを
自由に調整できた。朝に目が覚めて、刺すような冷気に悶々としながらベッドの中で何度も寝返りを
うち、30分経ってからようやく一大決心をしたかのようにベッドから起き出す、というようなことはしな
くて済んだ。もちろん電力は全てマンションの自家発電(風力発電・熱電/太陽電池複合パネル)で
まかなっているので電気代を気にする必要もない。冬らしい冬というものにまるで縁のなかった僕と
してはありがたいことだが、一足外に出るとその寒さに身を削られるような思いをしなければならなく
なるので、極力寒さに慣れるよう室温は低めに設定している。ここに来て生まれて初めて風邪を引き
二日間頭痛と倦怠感に悩まされたときは、自分の環境への適応力がこうも弱かったとは、果たして
自分は本当にコーディネーターなのかと我が身を疑ったものだ。やはり身体の抵抗力は環境にもま
れて育つものであるらしい。
 のそのそとベッドから起き出てクローゼットからブルーストライプのシャツとスラックスを取り出
し着替える。脱いだ寝巻きはベッドの上に放り投げ、シャツのボタンをはめながらブラインドを開
けた。空は厚く雲が立ち込めていて、冬らしい灰色にくすんでいる。昨夜の天気予報では今日の
首都圏は午前中は雪になる、と伝えていた。リニアは問題ないだろうが、飛行機は幾分ダイヤ
に乱れがあるかもしれない、とも。ハルカは今日からNYへ出張で、朝10時20分のFAL便で発つと
言っていたが、昨日このニュースを聞いたときには頭を抱えていた。しかし今のところ雪がちらつく
風でもないので、これなら予定通り出立できそうだ。
 部屋を出て食堂に出ると、ハルカは食卓に朝食を並べてタブレットモニタを眺めていた。服は黒の
ピンストライプのパンツと白い幅広の襟のブラウスに着替えていた。日本人離れした容姿でスツー
ルの上で足を組んで佇む姿は、ファッション雑誌の中からそのまま飛び出てきたような洗練され
た印象を受ける。惜しむらくはまだ顔が『すっぴん』なところだ。
「おはよう、今朝の天気はなんとか持ちそうじゃない」
「そうね、雪の降らないうちに出たいけど予約した飛行機を早めるのも面倒くさいし、どのみち会議は
明日だし。それまでに向こうに着けばそれでいいわ」
「昨日と違ってずいぶん気楽じゃないか」
「今朝届いたメールでマネージャーに『どうせ僕らはおまけだ、今回ばかりはいてもいなくてもかま
わん』って言われちゃってね。だから明日の準備はあまりない。なるほど公開できる情報は少ない
し、そもそも私たちが出席することが場違いな会議でもあるから」
 場違いとはよく言ったものだ。日本IAIの社運を賭けた、いやグループ全社の命運を左右しかね
ない一大プロジェクトの責任者と、その広報担当者が説明責任を果たさずにいていいものなのか。
ただし社内の多くの重役たちは、プロジェクトの存在を覚えているか怪しいが。
「じゃあなんで君たちまで今日から連れて行こうとするんだろうね、あの社長は」
「会議でそれなりに説明を求められる場面もありそうだからじゃない。表向き地味なプロジェクトの
体裁を取っているけど、多少は興味を引くでしょ。社長一人でもかまわないけど、やはりどうにも
格好が悪いから。私たちの桧舞台は明後日ね」
「上には面と向かって言えないけれど仲間内ではこっそり井戸端会議、ということかい。修学旅行
前の中学生みたいだ」
「悪巧みなんて大抵はそういうものよ。重役同士の形式ばった晩餐会の後、行きつけのラーメン屋
の屋台の下で世間話のついでに買収計画を持ち上げる、なんてのもままある。チャンネルは多い
ほうがいい」
 今朝のニュースが羅列されたタブレットモニタを流し読みしながら彼女は言った。食卓のガラスの
下に映るテレビにも聞き耳を立てているようで、ときどきチラチラと画面を見ている。左手にモニタ、
右手にコーヒーカップと朝から忙しい限りだ。食事もトーストを二かじりしたのと、レタスとマッシュポ
テトのサラダを多少つついただけで、自分で用意しておいてどんな有様だと思わず顔をしかめてし
まう。しかもこれが毎朝なのだからたまらない。
 僕はトースターに6枚切りを放り込み、それが焼けるのを待つ間に洗面所で顔を洗って髪をとかし、
再び食堂へ戻ってくるとトーストがうまい具合に焼きあがった。ハルカはコーヒーカップをフォークに
持ち替え、食べるのか食べないのかわからないような仕草でサラダをつつきながら、タブレットモニ
タに見入っている。大抵の場合、最後には食べ残して「育ち盛りの君はもっと食べなきゃいけないよ」
というありがたい文句をつけて僕に朝食の残りを押し付ける。幸い不味くて食べられないような食事
を出されたことは未だにないので喜んで食べるが、さすがにこれはどうかと思ってしまう。当人の健
康もともかく、お腹は空かないのだろうか?
 僕がマーガリンを塗っている間にハルカは席を立ち、結局いつもどおりの文句とともに残り物を僕
に押し付けて、洗面所へメイクをしに行ってしまった。食事を作るのは彼女の担当で、食事の跡片付
けは僕の担当。まさか、皿の上を「きれいにすること」という意味で僕に押し付けているのだろうか?
そんな気がしてならない。
 馬鹿馬鹿しいと思いつつも、そんなことを考える自分が可笑しかった。この前まではこんなことは
思いもしなかった、ただ淡々と残り物を平らげるだけだった。自分もこの生活に慣れてきたのかもし
れない。もう日本に来てから半年になる、心にも余裕ができてきたのだろう。
「アキラ、ちょっと私の部屋から化粧箱持ってきて、いまいちアイラインが決まらない」
 唐突に、洗面所からハルカが叫んだ。
「家の中でくらい本名で呼んでくれないかな。『ア』が余計だ」
「壁に耳有り障子に目有り、って言うでしょう。それはいいから早く、デスクの上にあるから」
「わかりました、わかりましたよ」
 レタスを突き刺していたフォークを皿に置いて席を立ち、彼女の部屋へと向かった。雑誌やハード
コピーの散乱している僕の部屋と違って、小奇麗に片付いている部屋だ。部屋の隅にある書斎用の
デスクの上に、愛用の飴色をしたコーチのトートバッグが置いてある。どうもこの中らしい。案の定、
開けてみると薄桃色の化粧箱があった。
 ハルカにこれを渡すと、「ありがと」ときっぱり言っていそいそとリキッドを取り出し、再び鏡に向かい
始めた。一朝事があれば世間の矢面に立つ広報という立場もあるのだろうが、女って大変だ。
 僕は食卓に戻って、そそくさと残ったサラダとトーストを胃袋に収め、皿やコップなどを食洗機に入
れた。食堂の窓から見える空はあいかわらず雲が立ち込めているだけで、雪のちらつく気配はない。
なんとか職場に着くまでは持って欲しい、奥多摩の研究所はすでに大雪かもしれないが。
 具にもつかない些細なことだが、そんな心配が浮かぶのも、今の生活に慣れてきている証拠なの
だろう。僕の生活は、半年前からガラリと変わってしまった。それに続いて、僕の内面も変化してき
ている。
 環境によって得られる経験はさまざまだが、ずっと同じ環境に留まれば同じような経験を重ね、や
がてそこに最適化していくだろう。だが長い人生の中で、ドラスティックに周囲の環境が変わり、自分
に変化を促すときがある。そこで人間は今まで重ねた経験と知識を総動員して、自分を新たに作り変
える。100%常に同じではいられない。環境に適応するため自分にオーバーライトを重ね、洗練し
ていくのだ。
 今の僕は、一介の工科大学生ではなく、地球連合やオーブの軍人でもなく、日本のサラリーマンを
している。
 『キラ・ヤマト』としてでなく、『深浪遥』の弟の『深浪明』の名前で。
 最寄駅の荻窪までは歩いてたったの5、6分で、リニアも5分に一本は必ずあった。駅前の一等地の
マンションを会社で買い上げて、そこを格安で社宅として利用させてもらっているのだから、ありがたい
ことこの上ない。遥曰く「外資系の会社なんてこんなもの」なのだそうだが。
 外は身を切るような寒さだが、朝の通勤時間帯だけあって人通りは多い。そびえたつビルに並ぶ色鮮
やかなネオン、ファストフードを始めとする幾多の飲食店、物件情報をディスプレイした不動産屋、雑貨、
アパレル、書店。都内駅前の街並みはオーブのそれと大差はない。駅は無数の人々を飲み込み、また
吐き出し続けている。心臓のようなものだ。都市の活性を高めるため、人間を循環させている。
 駅前のバスステーションは、駅の構内同様通勤客で溢れていた。それを横目に歩いていると、思い出
したように遥が言った。
「そういえば君は、NYは行ったことはあるの?」
「いや、北米すら一度も行ったことがない」
「宇宙住まいだと地球に下りてくることすらまばらなのかしら。一度行ってみるといいわよ、何かと楽しい」
「例えば?」
「博物館と美術館は素晴らしいし、交通の便もいいし、物価も東京ほど高くない。観光スポットには事欠か
ないと思う」
「なら、ガイドが欲しいな」
「私は高いわよ?」
「誰も君に頼むとは言っていない」
「そもそも長期の休暇があるかどうかも怪しいしね」
 はるか遠い先の旅行計画を話し合っているうちに改札を抜け、ホームへと出た。乗るのは同じ中央線だ
が、彼女と僕は東西逆方向になる。
「じゃあ私は行くわ。何かめぼしいお土産があったら買ってくる」
「遥のセンスに期待しているよ、気をつけて」
「明も」
 彼女は踵を返し、小柄のトラベルケースを引きながらエスカレーターを上がっていった。
 中央線はこちらの下り列車が先着だった。ずらっと居並ぶ列車待ちの列の先頭にいた僕は、リニアへ
乗り込むなり反対側の窓へ位置を取った。意識したわけではないが、向かいのホームに目をやると、人
ごみの中で遥の姿を見つけた。彼女のほうも僕に気付いたようで、僕のほうを向いて胸の辺りで小さく手
を振ってくれた。満員の車内で押されながら何とか応えようと手を振るが、ひどい込み具合で申し訳程度
にしか動かせず、気付いてもらえたかどうか怪しい。
 リニアがゆっくりと動き出す。次第に遥の姿が遠くなる。これから数日会うことがないと思うといつになく
寂しく、しばらくのあいだ、後ろに流れてゆくホームを見つめていた。
 荻窪から奥多摩駅までは1時間強、そこからバスで15分ほどのところに、日本IAI奥多摩技術開発研
究所はあった。予想どおりの降雪で、駅舎から出ると道路は一面融雪ヒーターで水浸しだった。遠く望む
秩父の山々は白く雪化粧しているのに、家の屋根や道路の雪はきれいに消えている光景は、いつ見て
も違和感を覚える。僕が写真や映像などの2次媒体に影響されすぎているからかもしれない。
 奥多摩湖をはじめ風光明媚なこの土地に、我が社が研究所を持っているのには少々言い難い事情が
ある。何年か前に奥多摩市が『多摩テクノポリス』と銘打って自治体主導で企業誘致を進めたが、交通
の便が悪いのと、地元住民が観光産業に悪影響を与えるという理由で署名運動を展開し、大企業は言う
に及ばず中小企業もほとんどの企業がイメージダウンを嫌って、工場建設を断念した。そこへ2年前に
日本IAIが目をつけ、学術研究施設なら汚染問題も少なく、なおかつ町のイメージアップにも繋がる、と
言い口説き、売れ残っていた大量の区画を二束三文で買い付けた。結果92000坪にも及ぶ広大な土
地に、研究棟5棟、整備施設1棟、管理事務所や食堂、コンビニ、宿泊施設など大小16にも及ぶ施設
を建設し、当初は「本当に研究施設だけなのか」との疑惑も囁かれたそうだ。実際のところは、当時ただの
輸入代行会社に過ぎなかった日本IAIが国内で生産するメリットはなく、近隣のアジア社から輸入したほう
がトータルコストにおいてまったく有利だった。むしろこの研究所を建設することさえ、グループ他社から
「市場規模の小さい日本でそんな大規模な研究施設を作って何を始める気だ」と嘲笑さえ聞こえてきた。
御曹司社長の気まぐれ、などもよく聞かれたそうだ。以上は全て遥からの受け売りだが、この研究所の
実体を見ればそんな社内の雑音は一度に吹き飛んでしまうだろう。
 バスに乗り込み車内の後ろに席を取った。車内の人はまばらで、僕以外にも数人、IAIの社章をつけて
いる人が乗っている。まもなくバスは走り出し、一路研究所のほうへと向かう。車窓からはときおりIAIの
文字が躍るホログラフィ広告が見える。
 INTERNATIONAL AIROSPACE INDUSTRY Corp.頭文字を取ってIAI。航空・宇宙産業にお
いて世界のトップシェアを誇る一大コングロマリット。主な製品は旅客・貨物・軍事用のシャトルや航空機、
宇宙用の作業機械、モビルアーマー、近年ホットな分野としてはモビルスーツがある。連合国のほとん
どで使用されている「ダガー」シリーズは、この会社の開発によるものだ。異業種にも広範に進出しており、
旅行代理店やホテル業、運輸、通信関連、保険、ファンド、変わったところでは教育ビジネスもやっている。
 かつて連合軍と刃を交えた身としては複雑な気分で、自分が軍需産業の一翼を担っていると思うと心底
この仕事が嫌になることもある。ましてや、オーブにとっては仮想敵国の、大西洋連邦の軍需産業のトップ
だ、気が滅入らないほうがおかしい。だが、軍需と民需は表裏一体、ということも今の僕には理解できる。
戦争という極限状態で高い信頼性を発揮したものが、民間用に転用されて人々の生活の重要な部分を占
めている、という例は枚挙に暇がない。今でこそ空気や水と同然のWWWも、元は200年前の米国で基地
間通信手段として開発されたARPAネットが技術的基礎となっている。初期の非ノイマン型コンピュータも、
大砲の弾道計算用に作られたものだ。直近の例としては、かつて僕が駆ったGAT―X105が、今では作
業用MSの開発に大変な貢献を果たしている。挙げればきりがない。今手がけている技術も、いずれは人
の幸福のために使われる日が来る。そう信じなければ、僕たち技術者たちは報われないだろう。殺人の手
伝いをしたくて研究をしているわけではない。
 そんな不安が払拭できないのも、この日本法人の社長のせいだろう。彼の名前はムルタ・アズラエル。
2年前の大戦でプラントに向けて核攻撃を行い、3機のガンダムで僕たちを殺そうとした、反コーディネー
ター組織ブルーコスモスの前代表。奇跡的に生き残った彼が、全ての公職から去り社内でも左遷される
かのように日本法人の社長の座に着いたのは、大戦終結からほどなくしてのことだ。実際に会ってみると、
以前ほど先鋭化した印象は受けなかった。むしろその逆で、数年来の知己のように親しげに話し掛けてき
てくれた。あの戦争で、彼も何か得るところがあったのかもしれない。だがそれが何であれ、やはり心から
気を許すことはできない。悪魔は天使の顔をしているものだ
 バスが会社の前のバス停に止まった。バス停は研究所の敷地内に4箇所あり、僕がいつも降りるのは
東側のバス停だ。幸い雪はもうやんでいたが、会社の前は例によって水浸しで、側溝からは雪解け水が
流れてゆく音が轟々と聞こえてくる。ゆるい傾斜のついたアスファルトの道の上を、雪を溶かした水が小川
のように流れてゆく。周囲は融雪ヒーターのおかげで霧が立ち込めていて、胸先三寸のはずの玄関すら
見えない。水を跳ねないように道の端を歩いて、玄関へと入った。
 玄関横の守衛室にいるジョニーさんは、僕の顔を見るといつも人のよさそうな笑顔で「おう」と手を挙げてく
れる。詳しくは知らないが30過ぎぐらいだろうか、IAIの警備員としてここに常駐している。本来なら手荷物
を彼に渡して中身をじろじろ見られるのだが、手ぶらで来ている僕にはその必要がない。以前は受けていた
ボディチェックも最近はされなくなった。あまり気分のいいものではないので、嬉しい職務怠慢ではある。
 軽く会釈してあいさつした後、虹彩と指紋と声紋を合わせた厳重なセキュリティチェックを受け、館内に入っ
た。ここからあと3回も同じようなセキュリティをパスしなければならない。
 この研究所のセキュリティは傍から見れば人権侵害ではないかと思われるほど厳重なもので、これらの
バイオメトリクスはどこでも当たり前のように設置されている。個人用コンピュータやモバイル端末の持ち込
み禁止は言うに及ばず、メモ帳一枚やボールペン一本の持込すら制限される。研究所内にもプリンタの類は
ほとんどない。ハードコピーの持ち出しには、この研究所の所長でもある西条プロジェクトマネージャーの
認可が必要だった。所内情報は全て電子化され、さらにそれらを繋ぐネットワークは外部から物理的に遮
蔽されていた。ここで外と連絡をつけることができるのは、所内LANと隔絶された低機能なPCと電話くらい
なものだ。施設周辺にはいくつもの監視カメラが設置され、上空には所内全体を見下ろすドローンが常時滞
空している。所内の監視カメラの数は星の数ほどあるのではないか。
 幾人かの同僚たちとすれ違い2度目のセキュリティをくぐった後で、自販機コーナーでコーヒーを買うのが
僕の日課となっている。一人先客がいた。材料開発部の富士田主任だ。キャッシュセンサーにカードをかざ
して、自販機の前で指をぐるぐる回している。ひどい仏頂面で、目の下には大きな隈ができている。どういう
理由か知らないが、昨日は徹夜だったらしい。
「主任、おはようございます。眠そうですね」
「深浪弟か、おはよう。眠いだけならいいが、今日は寒い」
 遥が所内のほとんどに顔を知られているせいで、普段僕は苗字の次に『弟』をつけて呼ばれることが多
かった。彼女のほうも僕が来る前は深浪だけでよかったのが、『深浪姉』と呼ばれるようになったそうだ。呼
ぶほうは面倒だが、呼ばれる本人はそんなに悪い気はしない。どうやらそれは遥も同じらしい。なお、僕の
名前が偽名であることは、所内のほぼ全員が知っている。
 主任は身体をもぞもぞと揺すりながら、指をあるボタンに向けては違うボタンに飛んでいる。まだどれにし
ようか決めかねているようだ。
「今朝も雪でしたからね、でも日中は降らないって話でしたよ」
「いや、そっちじゃない」
「所内ですか?エアコンが壊れているようには思えませんけど」
「俺の懐だよ」
 ようやくブルーマウンテンに決めると、ほどなくしてカップに注がれたコーヒーが出てきた。僕はいつもレ
ギュラーの砂糖抜きと決めている。主任がカップを取り出したのに続いてカードをかざし、ボタンを押した。
 聞けば、昨夜は我らがOS開発部の伊槌主任と、エンジン設計部の河林主任、基礎設計部の秋田主任
と四人で宿舎の娯楽室で徹マンをして、大負けを食ったそうだ。
「最初はよかったんだよ、四暗刻とか来てさ。でも3局目から全然ダメ」
「レートはいくらだったんです」
「テンピンだった。6万負けた」
 僕がコーヒーをすする横で、富士田主任はがっくりと肩を落とした。さすがに堪えた様子に見えるが、悪
いとは思っていても自然と顔が緩んでしまう。あの広い娯楽室で真夜中に、四十男が四人で雀卓を囲ん
でヒートしている様は、なんとも言えずシュールだ。
「伊槌主任たちはそんなに強いんですか?うちじゃあまり話題が出ませんよ」
「昨日一番勝ったのは河林だよ、あいつの引きの強さは異常だ。伊槌はまあまあだったかな。6局目に国
士無双であがったときは3人とも目を丸くしたが」
「そりゃ主任にツキが回ってこなかったんです、きっと。また次は回ってきますよ」
「麻雀ってのはツキだけじゃないんだ、効率なんだよ。役の最大化を目指して一番効率よく牌を切る。運は
その次だな」
「わかってるんじゃないですか」
「わかってるだけでできるなら、ここまで負けたりしない」
 じゃあ今日もがんばれよ、と僕の肩を叩いて、ふらつく足で主任はその場を後にした。今日一日の苦労
が思いやられる。僕も半分まで飲みかけたコーヒーカップを持って、第2OS開発室へ向かった。今日も概
ね、いつもの通りの日常が始まりそうだ。

 開発室は60平米ほどの広さで、個人用のデスクと会議机がある以外は、これといった事務用品はなかっ
た。デスクに置かれたPCやタブレットモニタくらいだ。今はもう開発は一段落して再度のデバッグ作業に取
り掛かっている。これまでのハードスケジュールの反動で、たまった有給休暇を使って長期休暇を取ってい
る社員も多い。第2開発室で今日出勤してきているのは、少ない有給を使い切った僕一人だ。
 PCを立ち上げメールをチェックする。今日は別段これといって重要な連絡はない。送られてきたメールの
タイトルは『遅めの新年会のお知らせ』や、『子猫あげます』など。JGEMプロジェクト実験機『GAT―Y01』
の完成にようやく漕ぎ着けたおかげで、所内全体が一息ついている感じだ。
 JGEMとは、JOINT GRESSORIAL EQUIPMENT MULTI―PURPOSEの頭文字を取ったもので、
日本語に訳すと『統合多目的装脚機械』という意味になる。手っ取り早く言えば、次世代のモビルスーツの
開発計画名だ。その略語から『Japanese GEM(日本の宝石)』とあだ名され、書類には勾玉が描かれて
いる。計画名が示す通り、陸海空宇宙と全天候において稼動可能で、かつ軍用にとどまらず建築や交通な
ど、さまざまな用途に対応するモビルスーツの開発を目指している。
 最初に遥からこのプロジェクトを聞かされたとき、参加する気はまったくなかった。IAIのモビルスーツ開発
計画と聞けば、誰もが軍用を作っていると思うだろうし、事実最初にロールアウトする予定の機体は軍用だっ
た。「僕は就職先まで硝煙の匂いがするようなところを選ぶ気はない」と皮肉っぽく答えた。
 だが、プロジェクトの参加メンバーリストを渡されたとき、僕は目を見張った。そこには、たかだか2年程度
で(不可抗力とはいえ)カレッジを中退してしまった僕でさえ、その高名を知っている科学者や技術者たちが
きら星のごとく名を連ねていた。言わば現代科学のドリームチームだ。特に目を引いたのはOS開発部の伊
槌主任で、カレッジでカトウ教授に師事していたとき、幾度となく主任の研究論文を読んだ。情報工学の学会
で、一度だけ遠目に見たこともあった。もっとも当時はまだIAIには在籍しておらず、MITメディアラボの准教
授だったが。
 研究内容は主に脳神経パルスを利用したユニバーサルインターフェイスの開発というもので、自動車の運
転からテレビのスイッチまで何でも思考一つで操作できるようにしてしまう、という魔法みたいなシステムの
研究だった。もちろん外科的手術などは一切なしで。専用のイスに座った被験者が、ディスプレイに映る3D
CGのダンサーに自在にブレイクダンスを踊らせるデモには腰を抜かしたものだ。
僕に話が来たのはそのOS開発部からで、まさに渡りに舟だった。長期にわたり実戦でモビルスーツのOS
に携わった経験を買われたのと、X105のOSのカスタマイズを高評価されたためだ。当時、生き残るために
は必死で取り組まざるをえなかったが、それがこんなところで評価を受けるとは思いもよらなかった。兵器開
発への後ろめたさはどうしても拭えなかったが、このプロジェクトへの興味のほうが、最後には勝った。遥か
らリクルートの話があった翌日、僕は彼女を通してアポイントメントを取ってアズラエル社長の下へ出向き、
契約書にサインした。
 思えば僕の実父、ユーレン・ヒビキも、似たような葛藤の中で研究を続けていたのかもしれない。果たして
クローンやスーパーコーディネーターは、人類の幸福に繋がる技術なのか、と。生命倫理は遺伝子工学と
は切っても切れない問題だ。科学の発展のためとはいえ、それは人の心の鎖で繋がれているべきだ。
 いや、もしかするとそんな鎖など引きちぎって、真理の探究へと邁進していたのかもしれない。本来は僕の
叔母であるカリダ母さんから聞いた話では、父は生粋の科学者だったそうだ。科学者が技術者と異なる最
大の要素は、真理を追い求める姿勢だ。それが役に立とうと立つまいと、たとえ世間から後ろ指をさされ神
から天罰を与えられようとも、研究対象の解明へと突き進む。そうして得られた知識が、社会に与える影響
など問題ではない。その知識の存在こそ至高で、社会性や倫理観など取るに足りない些細なことだ。
 この二つのジレンマに答えはない。科学の探求は人類の発展に不可欠だが、その全てが人の幸福に繋が
るとは限らない。しかしそうして多大な犠牲を払って得た知識から、血みどろのブレークスルーが生まれるこ
ともある。ならば僕は、人の幸福に繋がる技術者でありたい。毒と薬は紙一重というが、技術者としては薬に
使われることを願うばかりだ。
 ともあれ、危険な領域にあえて踏み込むという意味においては、僕も父も変わらない。やはり血は争えない、
ということだろうか。
 メールフォームを閉じて開発ツール『PowerQ』を起動し、ASURAのソースコードをロードする。PowerQ
は伊槌主任がMITに在籍していた頃に開発した、量子コンピュータ用のシステム開発ツールだ。開発ツール
としてはごく標準的なものだが、主任のおかげでかなり充実したライブラリを備えている。これがなければこ
こまで開発ペースが早まることはなかっただろう。
 ここ第2開発室では主にコンパイラの作成や変数設定、デバッグなどを担当しているが、本来的にASURA
はOSだけで完結しているシステムではない。OSのエンジンやコアシステムなどと平行して、専用インター
フェイスの開発が第1開発室で行われていた。アウトラインを第1が定め開発し、それを第2がテストして第1
へ送り返す、だいたいそのような開発体制で、1年半でここまで漕ぎ着けた。どちらかと言えば自分でプログ
ラムを一から書くよりは、人の作ったものを弄り倒すほうが得意だった僕にとって、この配置は理に適ってい
た。自分ではどれだけ役に立てたかはわからないが、一週間近い徹夜や時折の仕様変更は別にして、仕事
自体はやりがいに溢れ、とても楽しいものだった。なにしろ大変な紆余曲折を経て、たなぼたとはいえ学生時
代の夢がかなったのだから。
 『ASURA(アシュラ)』は伊槌主任がMIT時代から研究していた成果の集大成で、モビルスーツの全操作
を思考コントロールできる、統合管理システムだ。名前は三面六臂の仏教の守護神、阿修羅から取ってい
る。三面六臂の活躍を願ってのことだそうだが、その名前に恥じない極めて高い操作性を備えている。大ま
かに言えば、コクピット内に備えられたレーザースキャナーが頭部表面から発生する微細な脳波を読み取
り、それを実行命令に変換して機体の動作に反映する、という仕組みだ。ただし普通、搭乗時にはヘルメット
を着用するので、スキャニング機能を備えた専用のヘルメットも用意されている。コクピットにまでスキャナ
を配置した理由は、自動車や航空機など他のマシンへの適用も見据えてのデータ収集とプレゼンテーショ
ンのためだ。
 従来機のOSの場合、マニピュレータの操作や姿勢制御などに部分的に採用しているが、信頼性や脳波
解析の問題からシステム全体には適用できなかった。それを地道なサンプリングと解析システムの改良で
克服し、実用レベルにまで昇華させたのがASURAである。現在モビルスーツのOSは、操作は複雑だが
自由度の高いコーディネーター用のザフト製OSと、数々の動作が自動化されたナチュラル用OSの二つの
規格があり、概してザフト製OSのほうが高いポテンシャルを発揮すると言われているが、ASURAはこの
コーディネーターとナチュラルの差を完全に埋めてしまうだろう。最初は少し戸惑いを覚えるが、使いこな
せばザフト製OSなど比較にならない運動性を発揮できる。
 このシステム一つとっても驚愕に値するだけの技術革新だが、GAT―Y01は他にも各分野で革命的な
実装技術が目白押しだった。電磁偏向技術ゲシュマイディッヒ・パンツァーを応用した世界初のレーザー
核融合エンジン『FR―01』、さらにそこから派生した核融合推進システム『Direct Fusion Thrust』、
フェイズシフト材料並みの強度・剛性とその五分の一の重量、そして約8000℃の耐熱温度を誇る金属
炭素材料、駆動系から油圧式を徹底的に廃して軽量化し、代わりに人口筋肉繊維とリニアモーターを採
用したリニアフレーム、小型量産化された量子トランシーバー……。
 全体像を知るのはチームの中でもほんの一握りで、僕にもいくつの新技術が実装されているのか詳しい
ことはわからない。大げさな言い方をすれば、年間取得特許の数でギネス記録更新は確実だろう。ただど
の技術一つとっても、その開発史でドキュメンタリー番組が作れるほどに十分なインパクトと将来性を備え
ていた。このモビルスーツの開発は、確実に世界を変える。そんな確信が僕にはあった。
 これらを一機のモビルスーツに全て搭載しようという発案は、西条プロジェクトマネージャーからだった。
モビルスーツは現在最も先進的なマシンシステムであり、社会に対する訴求力は極めて高い、という理由
からだ。なるほどマーケティングの観点からすれば、これほどわかりやすい広告塔もない。それもあって、
エクステリアは空力を考慮しながらもスタイリッシュなデザインにまとめられた。カラーリングは全身黒を基
調にシックなイメージで彩色された。完成した機体のシルエットは緩やかなカーブを描いた美しいエアロ
フォルムを象っている。
 つい昨日、完成したばかりのこの実験機はいくつかのパーツにばらされて、この研究所を送り出されてい
った。明日、遥も出席する予定のゼネラルマネージャー会議のあと、一部のエグゼクティブとゲストにこれ
を披露するためだ。昼食後にいよいよ出発するということでパーツを載せた3台のトレーラーの前に所員全
員が集まり、感極まった河林主任が音頭を取って、万歳三唱をして出発を祝った。並々ならぬ苦労を重ね
てきたせいか、その場で泣き出す人も多かった。実験機はその後成田へ向かい、今日にも空輸されてジョー
ジア州ラグランジの研究所へ届けられることになっている。
 プレゼンテーションへの出席者の名前は守秘義務があるとのことで遥も教えてはくれなかったが、研究
所からは責任者の西条マネージャーの他に伊槌主任と河林主任が組み立てや整備のために、他数人の
スタッフとともに同行することになっている。主任二人は昨夜の徹マン明けなので、飛行機の中ではぐっす
り眠れることだろう。特に大勝ちした河林主任はいい夢が見られるに違いない。小遣いもたんまり儲けたこ
とだし、豪勢な土産も買ってきてくれるだろうか?
 昨日までの出来事を思い返しているうちに、ソースコードのロードが終わった。さしものIBM製の最新型
汎用量子コンピュータ『BLUE QUANTUM』とはいえ、30エクサバイトものデータロードには多少の時間
がかかる。量子CPU自体の速さは電光石火だが、メモリの動作まではそうはいかない。8192ビットのデー
タバスを持ってしても、量子CPUの処理速度にはなかなか追いつかない。50年前ほどに量子コンピュータ
が実用化されてから、業界はこのデバイスギャップを未だに埋められないでいる。もっとも普通のプログラ
ムを走らせるぶんには、そんな問題はまったく気にならないが。
 時計はもう10時の時針を指していた。そろそろ本腰を入れなければならない。今日中に画像認識プログ
ラムのデバッグを半分は終わらせたい。僕は大きく伸びをしてから、コンソールを開いてデバッガを立ち上
げた。

以下後編へ続く。
50通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 02:28:36 ID:???
>>次波
 投下乙。
 最初に目に飛び込んできた文字の量と密度に驚き、
トリップに感動し(何処で見つけてきたんですか?)、舞台に吹いた。何と言う近未来日本。
 誰もが思うだろう! 「これガンダムじゃなくてもいいじゃん」と!
 随所にちりばめられた近未来SFのガジェットにおなか一坏です。
 雰囲気としては全部映画ですが「アイ=ロボット」や「マイノリティ=レポート」の当たりを
思い浮かべました。
 正直名詞に少し気を配れば、元ネタが種だと気付かれずにオリジナルロボット路線を
歩む事が出来そうな完成度でした。文章に問題点は見当たりません。推敲を重ねられた
ことだろうと思います。
 しかし読者を圧殺するかのような文章の密度は、正直目が疲れるのです。
紙媒体と違ってPCのディスプレイであるとご理解下さい。
 というか空白行を空けてくれ。頼む。

 ssとしての問題点は、大量の文をストーリーの進行ではなく、
設定の描写にあてているところでしょうか。シナリオの進行方向に向けて
ほぼ直角に文章を書いてる感じですね。動きは後半に期待。
 TVアニメなら最初にプレゼンテーションの場面を出して、そこで
強奪されるなりAIが暴走するなり宇宙人が襲来するなりするのでしょうが、
投下第一話の前編に此処までのシーンを保ってきたことで次波さんの
方向性は定まっていると思います。

 しかしまあ、上で戦史さんが政治の話を投下した後にこれまた濃い
経済と技術の話が来ました。これが新人スレの懐かと驚いております

>>戦史
 投下乙です。
 理念、理想と現実の暮らし、どちらを取らねばならないかで後者を取ると言う選択。
理念に殉教した父親を見たカガリが取りえる道は一つしかなかったということでしょうか。
 それをサイへ丸投げ出来る辺りが為政者として成長したと言う事なのでしょう。

 オーブの歩んできた道が少しずつ明かされて来ました(その引っ張り方が上手だと思います)。
 が、そろそろ勢力図に混乱してきたので、大まかな組織を紹介する表みたいな物が
欲しいと今回始めて思いました。

 お二方ともGJでした。続きを楽しみに為ております。
51通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 07:24:38 ID:???
ASURA……グリ○ォン?
52通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 11:54:27 ID:???
そうなるとアキラはシャフトエンタープライズジャパンの社員?
53週刊新人スレ:2007/09/10(月) 19:06:06 ID:???
新作大挙襲来増ページ特集号(1/2)

 荒廃した町並みを死へ向かって歩く少女。だがたった一発の銃声、それが彼女の命運を大きく変える。
機動戦士ガンダムSEED異聞 〜REVENGE WERWOLF GIRL
>>291-296

 ユニウス7を止める為出撃するシン。一方クサナギへと移動するカガリ達。その随員とルナマリアの会話……。 
SEED『†』 
>>299-304

 虚空を漂う名も無きパイロットは、死を目前に何を思う……。SEED『†』の作者が送る傑作短編!
独言
>>307-308

 傷ついた心と体。そのミツキの目の前に夢の橋は再び架かる・・・。少女シリーズ第3弾、此処に堂々の完結!
少女は砂漠を走る!
>>309-313

 ザクレロの性能でMSを翻弄するマリュー。だがそのころアークエンジェルは直縁のムゥを引き離され……。
機動戦士ザクレロSEED
>>315-323

 演習を終えたシン・アスカ。彼に”悪い知らせ”をもたらしたのは白服を身にまとったキラ・ヤマトだった。
be too late
>>327-328 7>>11-14

 今更聞けない? ならば教えましょう!
【教えて! エロイ人!!】〜新人として投下を目指すキミに〜
>>333-336,342-346
54週刊新人スレ:2007/09/10(月) 19:07:32 ID:???
新作大挙襲来増ページ特集号(2/2)

 デスティニーの圧倒的な技量がエクスノートを駆るサクヤを押し潰そうとする時、彼を救ったのは……!?
機動戦士ガンダムSEED E
>>18-22

 水島連合軍いきなりの先頭打者ホームラン! CEASに打つ手は!? こんなノリも新人スレならでは、です!
種甲子園
>>26-27

 カガリの後押しを得て、サイは遂に円卓へと着く。彼女に変わり、旧体制の”理念”と正面から対決する為に……!
機動戦史ガンダムSEED 
>>30-39

 世界のトップシェアを誇る一大コングロマリットIAI。その社員、深浪明は姉を気遣い、空模様を気にする……。
タイトル未定
>>40-49


新人職人必読、新人スレよいこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
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>>7-9
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お知らせ
※は前スレのレス番です。
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。

編集後記
何故か今週大漁、嬉しい悲鳴。今回は3時間かかりましたorz。
弐国氏お疲れ様でした。次回作も期待してます。
前スレと二部構成にしようと思ったら埋められてしまった……。
そんな訳でアティチュード氏のみ使い勝手が悪いかも。すいませんです。
55週刊新人スレ:2007/09/10(月) 19:14:35 ID:???
編集後記2
あぁ書き忘れ。まとめの中の人へ
雑談所にあった弐国氏の『少女3部作』の語呂がかっこよかったので
若干改変してパクらせて頂きました。
やったモン勝ちという事でお許しをww
56通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 19:43:53 ID:???
>>種甲子園
投下乙
行くんだな? 9回まで。状況によっては延長戦まで
水島連合という事はドリームボールの彼女やのんべのおじさんやら出てくるのか・・・
ま、ともあれ期待して待つ


>>戦史
投下乙
あなたの書くカガリは実は、テレビ板カガリの正常進化した姿かも知れない
などと妄想が溢れてくる今日この頃
遂に局面の戦いからいろんな意味での全面戦争になるのかね


>>タイトル未定
超大作投下乙
今回は状況説明のみに終始してしまったが引き込まれるものはある
次回どう話が動くのか、楽しみに待つ

タイトルを入れよう。編集長にタイトル未定でかかれてしまったぞ。勿体ない
それについてはきっとまとめの人も困ると思うので
文章周りについては上の人とほぼ感想は同じ
たとえ専ブラであっても見難いものは見難いので
その辺の改良を考えて貰うとありがたい
文章量も相まって見る前にリタイヤする人が出るとこれは素直に勿体ない
あともう少し状況説明は簡潔に出来るかも知れないと思うが
それは好みの範疇だろうな

57赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/10(月) 21:24:21 ID:???
 突進して来る軍用ジープのエンジンは火を上げながら最後の走行の進路を彼等へと取る。
 運転席からは血を噴出す水芸を披露しながらもローストされていく死体が乗っている。
 それに向けられて吐き出された50口径のマグナム弾は左前輪を撃ち抜いていく。
 S&Wシリーズと思われる大型拳銃はその黒金の銃身をまっすぐにその車へと向けられた。
 女はあまりの反動で酷使すれば手首を傷めてしまうほどの重量と威力を誇る
 ろくに狙いを定める事すらままならない対戦車、装甲車用”ハンドガン”で狙撃に成功した。
 ジープは今までまっすぐに進んでいた進行方向がその凶弾によって
 左へと方向を変えられ、トレーラーハウスの近くの木へと激突する。
 その弾丸を放った張本人であるムルタ=アズラエルのボディーガード
 ”アスカ”と呼ばれた女はすぐにVIPの安全を確保に当たった。
 アズラエルも、またその信頼するボディーガードの的確な判断で
 無傷のままで居ることを確認すればホット胸を撫で下ろしつつも、爆発の熱を蒸し暑そうに自らを手で扇いでいる。
 まだ、近くの木に当たった車は運転手と共にその前方の席を押しつぶされながらも火を燃え滾らせていた。

「的確な判断感謝します」
「仕事ですから。無事で何よりです」
「全く、自動車爆弾で自爆テロですか?たかが、一回戦争に負けた位で弱い人達ですね」
「いえ、アズラエル様。之はテロですが自動車爆弾ではなかった様で――しまった!」

 次の瞬間、アズラエルに向けられるのは軍用ライフル。
 俗に言う突撃銃と言う分類に値するアサルトライフルと呼ばれる銃が
 口径5.56mmの弾丸を一分に900発撃たれる速度で放っていった。
 狙いは全く定まっては居なかったが取り合えず数撃ちゃ当たると言わんばかりの銃撃。
 弾丸を連射かつ取り回しの良い様にと言うスタイルで設計されてテストと実践を重ねられた銃だ。
 構え方かそれに見合う握力と反動に耐えられる体さえあれば近距離でも十分に致命傷へと昇華する。
 その、銃口が向けられた刹那、彼の二つ目の予想外の出来事は起こる。
 それは弾丸に対し仁王立ちで受け止める女性の背中が全てを物語っていた。

      機動戦士ガンダムSEED異聞 
             〜REVENGE WERWOLF GIRL
      -01howl 「WOLF girl meets mercantile of DEATH」
58通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 21:25:36 ID:???
 およそ食らった弾丸は腹部と胸部を主に撃たれていた。幸い、頭部、脚、腕への被害は無し。
 鉄の拳のラッシュを食らったかの様に内蔵は傷む。血反吐を吐きそうになるがそのまま飲み込んでしまった。
 幸運にも、防弾チョッキを貫通して致命傷になった傷は確認されない。
 いや、私自身が気付いていないだけか? まぁ、そんな事はどうでもいい。
 今はあのイカレタ少女への対処が先決だ。あれが危険だというのは気配でも経験上の判断でも明確だ。
 アイツを殺さなけれ、アズラエル様に殺されるかもしくはそれに準ずる酷い行為を行われるだろう。
 先ほどの銃の撃ち方を見ても素人が丸出しで今も反動で体が倒れそうになっているがそれも演技か?
 健康状態や精神面も良好には見えない上、行き成り銃撃した事から話し合いや交渉が通じるとは思えない。
 考えられる結論は戦災被害者の自棄になった子供の抵抗。ならば、この私が対処が出来ない筈が無い。
 私は自らの拳で頬を殴り意識を取り戻す。肩で息をしながらも相手に銃撃をする――外れた。
 やはり、朦朧とした意識の中では命中率が著しく低下する様だ。
 まして、あのハンドガンではただでさえ肩への負担がかなり大きい。
 この満身創痍の体ではそう何発も打てないだろう。他に武器は無いのか?
 先ほど、サブマシンガンを捨てたことを悔やまれる。落ち着け、”アスカ”! お前は誰だ?
 ブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルのボディガード。
 この星の為に命を掛けても良いと思える男を守る鋼の女だ。
 あんな、牝の野良犬一匹に何を怯える?恐れるな!
 何時もの様に牙を立てて喉元を一撃で仕留めれば良いではないか。

「ぐっ、んんぅかはっ……アズラエル様。今の内に……警護を呼んで下さい。
 この…野……良犬は私が始末し…ふぅっ」
「解りました。死なないで下さいよ。貴女にはお金を掛けているんですから」
「――か……つは……聞い――ると……なんか――ば」

 アズラエル氏のトレーラーへの避難を確認。アノ程度の銃なら恐らく中に居れば安心だ。
 あのイカレタ少女は何かをぼそぼそと言っているがそんなことは私の知った事ではない。
 残りの弾丸を全て撃ちつくす様に私は少女の足と手を止める。
 数を撃てば当たる可能性もある。まして、あの威力のある凶弾でひるまない者が居る筈は
 ――無いと私は勝手に穿っていた事になった。あまりの現実に僅かに目がかすむ。
 少女は微動だにしない。耳をやられているのか? それとももはや意識が無いのか?
 本日二回目の後悔を私がする事になる。今の連射で両手が痺れて動かない。
 口からも血の鉄の匂いが充満し始めて思わず吐瀉物と一緒に吐き出してしまう。
 袖で口元を拭いながらも睨みを利かせる目は相手を離さない。この娘から一瞬足りとも目を離してはいけない。
 本能の全てがそう自分に囁き掛けている。目を離した瞬間に次の銃撃が浴びせかけれると。
59通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 21:26:42 ID:???
「ち、野良犬無勢が……お前の様な奴がどうこうして良いお方ではないんだよ」
「……だからあいつが……誰だと……聞いているん…だぁ!!!」
「吼えるな雑種が! 今、黙らせてやる!」

 まだ、痺れの残る手で懐からナイフを取り出してそれを口に咥える。
 意識を引き締ませる様にぐっと柄を奥歯で噛み締めながらも姿勢を僅かに下げて相手を見据える。
 相手は軍用ライフルとはいえ、無駄うちをしていてあまり弾も残っていないだろう。
 ただ、此処で下手に距離を取ってはまぐれで頭にでも当たったらそれで全てが終わる。
 ならば、どうすれば良いか? 私だから出来る事がやれば良い。
 弾丸も恐れず、痛みに逆らい動くこの体。命散ってでも目標を殺害する強固な意志。
 だからこそ、なればこそ、此処で酷使せずに何時使うか。自分の気持ちと体を奮い立たせる。
 姿勢が低くしたまま、両腕で頭をガードしたまま、私は少女に対して駆け出していく。
 もはや、動かぬ両腕ならそんなモノは盾にしてしまった方が良い。
 最終目標は彼女を排除する事で彼が無事ならば良いのだ。
 弾丸の雨が容赦もする余地も無く私に降り注ぐ。腕や腹に何発も食らうがもう今更だ。
 左足の膝に一発貰ってしまった。コレ位で止まるほど私は柔でない。
 私は倒れこむ前に右足で思いっきり踏み込んで少女へと飛び掛る。
 そのまま押し倒し共倒れになる私と少女。例え、どんな狂人だろうと所詮はただの人間の小娘一人。
 体重とのしかかった衝撃で相手を押し倒した後は口に咥えたナイフで少女の肩を突き刺す。
 悲鳴と共にまだ、少女に痛感や意識があったことに驚くが、仕事は確実に進めていく。
 もはや半分意識の無い肘を相手の腕へと叩き付ける。しめた! 少女の手から銃が離れていく。
 後は相手の喉にこの刃を――!!

「ンゥッ――かっ――ひぅっ――あふ、ら………こぅがぁあ!」

 少女はコーディネイターだったのだろうか? 喉をやられた。
 正確に言うとナチュラルの人間の力とは思えない力で喉元部分のを噛み千切られた。
 まるで肉食獣が獲物を殺す様にその人間でも固い部位に相当する歯を用いて
 筋肉の無い喉笛に食いつかれ肉を持っていかれてひゅーひゅーっと其処から息が漏れる。
 声を発することも出来ずに私は相手の顔に血を吐きかける様にナイフと共にその口から嗚咽と
 言葉にならない声を発し続ける。無駄だとは解っている。ただ、叫ばずにはいられなかった。
 薄れ逝く意識の中でトレーラーから出てくる彼の靴音と吐息が僅かに耳元に残る。
 嗚呼、イヤだ。こんな無様な姿は見せたくない。あの人だけには、大好きなあの人だけには。
 何年ぶりかに行使している泣くという行為と羞恥心が私の死に様に後悔を刻んでいった。

「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼アあっ・嗚呼ガがガッ!!」
「アスカ! 警護と救護を……アスカ? アスカァアーーーーー!?」
60赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/10(月) 21:27:51 ID:???

 心の其処から悔しいと思ったのは何年振りでしょうかね。
 彼女はね、そう”アスカ”はね。もうちょっとで完成するところだったんですよ。
 強化人工心肺、人造筋肉と薬剤投与、強化骨格の移植、痛みを克服する為の脳内麻薬の調整。
 コーディネイターなぞと言う天性の運に縋っただけのまやかしとは違う人としての進化。
 ブーステッドマンのMSパイロットとは違ったベクトル、人として人を超える存在への挑戦。
 彼女はとても優秀でした。薬物依存も最小限に抑えられており、テスト中の備品より従順。
 逆らわず、屈せず、諦めず、迷わず、後悔をすぐに学習し次に繋げる。
 それを、それを……このドコの馬の骨とも知れず、ボロを来た小娘一人に台無しにされた。
 怒るなと言う方が無理があると言う事なんですよ。神すら止めることは許しません。
 僕の思考は今全ての知恵を搾り出してこのボロ雑巾の雌犬に罵倒を浴びせかけています。
 また、ですか。また”コーディネイター”ですか。貴方達は何時もそうだ。
 天性の素質が云々と語り腐り、ろくな努力も筋も通さずに欲しいモノを赤ん坊の様にせがむ。
 此方が日々培ってきた努力も何もかもぶち壊して奪っていく。だから、あいつ等は嫌いなんだ。

「死ね! この野良犬が! 死んで詫びろ! 彼女に幾ら……金と時間を掛けたと!」
「……アイツは…誰だと」
「黙れ! お前に質問する権利など、否、生存する権利なぞない! 詫びろ! 命を乞え!
 謝れ! 泣け! ただでは殺さない。まだ、死んだ方が良かったと確実に後悔させてやる!」

 僕は血まみれで段々と息と意識が薄れていく彼女をずっと抱き締めて、最後をその腕の中で看取った。
 青い高い金を出して仕立てさせたスーツは彼女の血を染めて朱へと色を濁していく。
 否、彼女の血で色が濁る訳が無い。濁っているのはあの雌犬の血。
 汚らわしいコーディネイターの血だ。遺伝子を弄くって自己満足の命を生み出した化け物ドモの。
 彼女が最後の遺言も聞くことは出来ずに冷たくなった彼女をただ見る事しか出来なかった。
 感情が坩堝の様に心を掻き乱しながらも、煮え返っていく怒りはその小娘へと向けられる。
 何で、お前が生きているんだ? お前の様な居ても居なくても良い命が何故そこで息をする?
 僕は金を出して買った上等な靴で小娘の腹を何度も蹴り上げていく。
 血で汚れる。全く高かったんだぞ、この靴は。ただ、お前が僕に買った怒りはその数億倍の値がはっている。
 純粋に人……否、ヒトモドキの雌犬に此処まで怒りが沸いたのは初めてだ。
 コレでもレディーファーストで、女性には優しい人間だと思っていたんですがね。
61赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/10(月) 21:29:15 ID:???
「アズラエル様……その、死んでしまいます。民間人ですし」
「君は馬鹿か? 僕のボディーガード。背中を預けられる唯一の存在を殺したんですよ?
 そんな人物が普通な訳無いじゃないですか。きっと工作員か何かですよ」
「そ、それはそうですが、しかしマスコミが五月蝿くなりますよ。こんな所でされ続けたら騒ぎになります」
「……解りましたよ。一旦艦に戻ります。探索も今日中に何も出なかったら次の作戦に移る様に伝えて下さい」
「はっ、解りました。失礼します」

 水を挿す軍人の言葉。怒りは醒めぬがそれでも少し冷静になれた様でした。
 全く、僕もまだまだに盟主としての自覚が足りないという事みたいですね。
 そうですよ。ただ、痛め付けるなんてのは蛮人のやる事です。取り乱し過ぎましたね、恥かしい。
 上に立つモノは上に立って下々にあれこれやらせるのが定石です。自らの手足を汚してなんになる。
 僕はその雌犬の髪を掴んで車へと放り込むとそのまま来た軍艦へと乗り込みます。
 途中、何度この雌犬を海に沈めてやろうかと歯軋りをしたが其処まで
 温いやり方が出来る程、僕の中に優しさは残っていませんでした。
 軍艦に戻れば車に降りて雌犬の髪の毛を掴んでそのままずるずると引き摺っていく。
 途中、兵士共が驚く表情をすれ違い様に何度も見えていました。
 まぁ、文句など言わせるつもりは毛頭無かったですがね。
 さぞ、兵士達には異様な光景と移ったのでしょう。血まみれのブランドスーツで少女を運ぶ男。
 ちょっとしたサイコパスか変質者かレイプ魔か……いえいえ、僕はやりませんよ。”僕”はね。
 目的の扉を開けた其処には先ほどまで身悶えていた中、投薬を済ませて落ち着かせた三人が居ました。
 まるで、餌を待っていた家畜の様に瞬時に僕へと目を合わせて一人は飛び掛る様に此方へと駆け寄ってくる。

「おっさん! 幾ら何でも焦らし過ぎだぜ!」
「そうだよ! 僕なんかは死ぬかと思ったよ! シャニなんて完全に逝っちゃってたし」
「あ”?……誰が逝ったって?」
「ソレは君達が時間を食ってるからいけないんですよ。まぁ、そうですね。
 初陣と言う事でまぁ、帳消しにしてあげましょう。まぁ、コレを見て下さい」
「って、おっさん。その格好どうした……は? なんだこの汚ねぇのは?」
62赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/10(月) 21:30:20 ID:???
 パイロットの一人オルガ・ザブナックは私が部屋に来ると同時に胸元を掴みながらも文句を連ねる様とするが
 その手に着いた血の匂いに思わず手を離す。自分の手にも血が着いてしまいそれを汚そうに拭っている。
 パイロットの一人、クロト・ブエルは同じく抗議をしているがオルガの血で汚れた手を見るや否や
 一瞬たじろいで僕の手の先へと視線を向けている。そして、行きつく先は手に持っていた雌犬の髪の毛。
 最後の一人、シャニ・アンドラスは最初から手の先の雌犬を見てじっと観察を続けていた。
 僕はそのままずた袋を放り込む様に雌犬に部屋の真ん中へと転がせば、皆の視線は集中する。
 クロトはその血塗れのけがれた姿に一瞬眉を潜めながらも僕の顔をちらちらと見る。
 まぁ、何だかんだと言って彼は一番子供でしたね。一瞬理解出来ない様子でした。
 オルガはその言わんと事を推察しているのか、ずっと顎に手を置いたまま考え込んでいる。
 シャニは全く動じることなく、じとりっとした視線をずっとその雌犬へと観察を続けている。
 しばし、三人のリアクションへの観察を済ませた後、僕は満面の笑みでそれに応えていく。
 ああ、なんて優しいんでしょうか僕は。失敗したとはいえ、健闘した兵士へと労いの品を送る。
 怒りの昇華をそのまま備品への士気の向上へと繋げる。我ながら完璧です。

「ちょっとした御褒美です。殺す以外は好きにして良いですよ」
「女がプレゼントってどんな鬼畜趣味だよ。それなんてエロゲ?」
「おっさん、プレゼントってのはもうちょっと身奇麗にしておくもんだぜ。
 まぁ、どんな経緯かしらねぇけど、たまには良いモンくれるじゃねぇか」
「女……おんな?……どうするの? コレ。喰うの?」
「カニバニズム趣味があったとは驚きですね。好きにして良いと言った筈ですよ?」
「つまり、犯っても良いって事だよな? 女って事はそーいう事も御褒美って事か?」
「ええ。出来るだけ苦しませてくれれば幸いですが、手段は問いません。ご自由に」

――その時の彼の表情は正に冷たい修羅と自分以外に向けられる慈悲を重ね見て
             『「死の天使(アズラエル)だ」』
――息を切らしボロボロになった彼女は血で滲んだその眼でそう彼を印象付けた

 Next to -00.5howl 「Scenery seen from bottom of pool of blood.」
63赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/10(月) 21:33:31 ID:???
以上。一応、指摘どおり文章を整えてみたのですが…うーん、改行と一人称難しいですねorz
後、質問があったので答えます。題名に関してですがhowlでしたね。すいません。
一応コレはプロローグが後2話(ほんとは後一話だったんですが)続く予定です。−2から始まって0、1へと続く予定です。
では、失礼しました。
64種甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/10(月) 21:38:35 ID:???
 一回表・中編 1/2

 殿馬一人。その名をニコルは知っている。但し、球児としてではなくピアニストとしてではあるが。
 小柄であるが故に、手が小さくてある音を出すのに指を伸ばしても届かないという
ハンディキャップを乗り越える為に、指の付根を切るという手術を敢行したの男。
 ピアニストにとって指は大切なものだ。怪我をしない様、傷付けない様にするのが普通だ。
 しかし、彼はピアノを弾く為に手にメスを入れたという。
 ニコルはその話を聞き、殿馬のピアノに対する想いに感動すらした事がある。
 その男が目の前に立っている。
 もしこの場がピアノの発表会ならばどれだけ幸せだっただろうか。
 ピアニストとして互いを高め合う事の出来る良い友人になれたとも思う。
 ニコルはロージンバックを手にして滑り止めをして地面に落とす。白い粉が煙の様に舞い踊る。
 レイの出したサインは外角低めでボールを一つ分外したストレート。
 ボールから入って様子を見るという事だろう。
 大きく振りかぶってモーションに入り、地面スレスレに低い位置でボールを放つ。
 ニコルの投球モーションはアンダースローだ。別命サブマリンとも言う。
 コントロールがつけやすく、軟投派が好んで使う。
 ニコルは体格に恵まれておらず、球威球速がない。故にこれを選んだのだ。
「ボール!」
 アンパイアの声が響く。
 殿馬はつり玉には手を出してこない。ボールが見えている様だ。
 次にレイが要求したのは膝元に落ちるカーブだ。しかもギリギリストライクという難しいものだ。
「スットライク!」
 ボールカウント1─1。まだ遊び球が使える。
 殿馬はチックタックとリズムを取っている。
 レイの要求は外して抜いたインハイ。打たれても抜いた分ファールになる算段だ。
「ボール!」
 殿馬は動かずにリズムを取るだけ。ニコルは不気味な感じがする。
 狙い球が読めないのは怖い。ミラージュコロイドボールは多投出来ないから使えない。
 レイはアウトローギリギリで速い球を求める。内角の後の外角、遅い球の後の速球はセオリー通りだ。
「ボール!」
 狙い過ぎた為か、ナチュラルにシュートしたのか外れる。
 1─3。厳しいカウントだ。四球は避けたい。レイは思い切ってど真ん中を求める。
65種甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/10(月) 21:52:07 ID:???
 一回表 2/2

 どんな打者にも必ず打ち損じがある。極道くんや東海の竜にだってある。
 魂を込めた一球ならばそうは簡単に打たれない。
 ニコルは一呼吸おいてロージンバックを手にして丁寧に滑り止めをする。
 そして、殿馬を良く見てからモーションに入った。
「ボール!」
 一つの物事を極めた人間には相応の迫力がある。それは殿馬も然り。
 不良が集まる吉良高校の番格、南海権佐をして“明訓組のヒットマン”と言わしめた殿馬の迫力に負けて思わず外してしまったのだ。
「秘打・カンショウ!」
 殿馬はそう言い放ち一塁へと進む。
 ニコルはその言葉の真意が判らずにマウンドから殿馬に近寄った。
「何処がカンショウなんですか?」
「打つばかりが秘打じゃねえづら」
 カンショウとは観賞だったのだ。ニコルはずっこけてしまう。
 この人には敵わないな、とぼやきつつ次のバッターを迎える。

「三番・センター微笑君」
 微笑三太郎はしっかりと足場を固めてから構える。
 四球の後には必ずストライクが欲しいのが投手の心理だ。
 三太郎もそれを狙っている。しかし、岩鬼に投じられたあの球は自分では打てない。 岩鬼に投げてからは一球も投げていないという事は投げるのに負担が掛かるという事だろう。
 それならば、三太郎に出来る事はただ一つだ。
 バットを長く持ち、大きく構える。

「ストライク!」
 ニコルはクスリと笑みを浮かべる。三太郎はただのストレートを大降りして倒れ込んでいる。
 バットとボールの差が哀れになるくらいに大きい。まさにキリキリ舞いだ。
 失いかけた自信が蘇って来る。三太郎には悪いが、これは安全パイだと思ってしまう。
「ストライク!」
 二球目も同様。気を良くしてテンポ良く三球目を投げた。
 これにも三太郎は倒れ込み、ヘルメットがあらぬ方向に飛んでいる。
 ニコルはガッツポーズを決めてバックに振り向く。
「審判!」
 三太郎の叫び声が聞こえる。しかし今のニコルには負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
「インターフェイス。テイクワンベース!」
 審判のコールにニコルは振り向く。
 これが三太郎の狙いだったのだ。大振りもバットの長さも全て計算ずく。
 キャッチャーミットにバットを当てて打撃妨害で出塁するのが狙いだったのだ。
 これぞニッコリ笑って人を斬る。微笑三太郎の面目躍如である。

続く
66 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/10(月) 22:03:37 ID:???
全然ガンダムじゃありません。MSなんか絶対に出てきません。
本当にすみません許して下さい。
取り敢えずコールドにならなければ9回までいきます。
ムコ殿は勿論出します。ドリームボールの人は微妙ですがにょほほほほの人は出ません。

次回は試合開始前を投下しようかなと思います。

>>まとめの人
タイトルの変更をお願いします。
新シャア板の大甲子園でお願いしますだーよ。

すいません判る人は皆無でしょうが九郎さんの物真似をしてしまいました許して下さい。
67 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/10(月) 22:27:26 ID:???
すみません一回表中編でした。
68通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 23:52:02 ID:???
>>赤頭巾
 投下乙です。
 狼だから赤頭巾なのか。ようやく分かりました。頭が固くなってきている今日この頃。
 てっきり重要人物だと思い込んでいたボディーガードアスカが即死したのに
驚きました。意表をつかれましたが、本当に殺してよかったんですかこの人?

 登場人物それぞれの狂気がある感じです。
 しかし、その感情というか意識の動きが性急すぎて不自然な感じも受けます。
ぼろぼろになった少女がアズ公を見て「死の天使だ」と思う辺りは特にです。
 正気は正気、狂気は狂気で統一感が欲しいです。

 この構成であれば一編通してアズラエルの一人称でも良かったのでは?
 説明したい設定が存在する場合は、それを知って居る人に視点を合わせて
描写と共に小出しにするのがいいと思います。例えばアスカさんは改造人間で、
普通の人なら反動が激しくて撃てない拳銃を操っていたり、普通の人なら
痛くて動けない怪我を負っても戦闘してました。
 その時にアスカさん視点で「自分は○○という改造を受けて居るから大丈夫」と描写する。
そうでなければ、彼女の死後にアズラエルが叫ぶ「彼女に幾ら掛かったと思ってるんだ!」
の一言だけで読者は「ああ、アスカさんは改造人間なんだな」と納得します。
 設定は物語を合理化するためのアイテムであって主題じゃない場合が多いので、
一応その辺りを注意してみてください。

 氏の書こうとして居るものは好き嫌いが激しい物になるでしょうから注意です。

 文章に勢いはあるのですが、勢いをつけようとして躓いているようなところが
幾つか見られると思います。書いたものを自分で読み直して、文章で引っかかる
所を潰してください。結構添削できそうな場所があります。

>>種甲子園
 投下乙。
 (上との)雰囲気の違いに吹きました。流石新人スレ。00が来たらどうなる事やら。
 試合終了まで行けばこれはこれで良いと思います。
 元ネタ全然分かんないですが、お手柔らかに全力疾走してください。
69 ◆MATdmc66EY :2007/09/11(火) 01:17:10 ID:???
「何故お前が」
 カガリは苛立ちを隠せなかった。
 ただでさえ愛するアスランに裏切られカガリは傷ついていた。
 さらに、そのことに拍車をかけるようなバルトフェルドの裏切りだ。
 彼女が苛立ちを感じるのも無理のない話だった。
「何故か。逆に尋ねるが何故だと思う?」
 バルトフェルドの瞳が怪しく光る。
 彼はキラとの戦いで片目を失い隻眼となっている。
「そんなの知るか。私に分かるはずないだろう」
 カガリのその発言にバルトフェルドはキョトンとしたような瞳になる。
 それから片手で頭を抱えた。
 勿論もう片方の手は依然として銃を握っている。
 彼の腕なら目を瞑ってでも自分を殺せることはカガリは理解していた。
 故に隙を見せたとしても下手な行動は出来ない。
 そもそも、兵士に囲まれた状況で下手な行動をとるほど彼女ももう子供ではなかった。
 昔の彼女なら勇猛果敢と書いて無謀と呼ぶ行動をしたであろう。
 彼女も少しは成長して大人になったということだ。
 あくまでもほんの少しであり、他人から見たら危なっかしいことこの上ないのだが……。
 バルトフェルドはそんなカガリに溜め息をつく。
「結局のところ僕が求めていたのは平和なんだよ。平和を手に入れるのには君達では不可能だと判断を下した。
ああ、勘違いしないでくれたまえ。君達が平和を願っていることは僕もアスランも重々に承知している。
だけどね、無能は罪だ。君達には政治の才能がないんだよ」
 冷たく突き放すようにバルトフェルドは語る。
 その瞳は深い悲しみを帯びていた。
 カガリはバルトフェルドのその言葉に胸を痛めた。
 確かに彼女には政治の才能はない。
 かつてウナトやユウナにも指摘されたし、 彼女自身がそれを一番理解していた。
 やることなすこと全てが空回りして、周りがフォローするだけで手一杯であった。
 そして、それを間近で見てきたのは誰だろう?
 彼女の手助けをし、共に歩んできたものは誰であろう?
70 ◆MATdmc66EY :2007/09/11(火) 01:18:45 ID:???
 答えは言うまでもない。
 アスラン・ザラである。
 彼はオーブを出ていく時にカガリに何も言わなかった。
 何も言わずただ失望したような冷たい目線を彼女に与えるだけだった。
 ただ、その中には怒りという感情はない。
 何故なら、アスランはカガリに期待していないから。
 期待してないものに怒りを感じることはない。

 むしろ、アスランはその結果を生み出してしまった自分自身に怒りを向けているようだった。
 そして、その時のアスランの表情は今でも彼女の心に深く刻まれている。
 カガリはもう一度バルトフェルドのことを見ようとする。
 だが、あの時のアスランの表情そっくりで彼女には直視することは出来なかった。
 カガリは悔しさと自分への苛立ちから拳を強く握りしめた。
 爪が肉に食い込んで血がポタリと滴り落ちる。
 それはさながら涙のようだった。
「まあ、良いさ。ともあれ君達の負けだ。今頃アスランにやられているだろう」
「………っ!」
 ムゥ・ラ・フラガはアスラン・ザラと交戦中だ。
 実力にはっきりとした差があるためにフラガがアスランに勝てる可能性は限り無く低かった。
 ここが宇宙でシラヌイ装備ならいざしらず、ドラグーンを持たないオオワシ装備でアスランとの実力差を埋められるわけがない。
 カガリにはアカツキがアスランの手によりバラバラにされる姿が安易に想像出来た。
「まあ、君のことは殺しはしないから安心してくれていい
僕らは命を奪いに来たわけじゃないからね。
と、おしゃべりはここまでだ。君には人質らしく振る舞って貰わないとね。……連行しろ」
 バルトフェルドの言葉通りに兵士達はカガリを連れていく。
 その中にはカガリが知っている兵も何人かいた。
 そのことに驚くと同時に自分の不甲斐なさを嘆く。
 国家反逆は大罪だ。死刑は免れないだろう。
 彼女の元を離れたのにはそれなりの理由があるのは安易に想像が出来る。
 つまり、裏切るには裏切るだけの理由があるということだ。
 カガリが部屋を出ると、一人残ったバルトフェルドは窓の方に歩いていった。
 窓を開けると潮風が入ってくる。
 暖かい潮風は本来ならブルーな気分も払ってくれるものだろう。
 けれど、彼の気分は一向に晴れない。
 憂いの瞳は海を眺めるだけだった。
 荒れた海の流れは波乱を予感させた。
71 ◆MATdmc66EY :2007/09/11(火) 01:20:05 ID:???
 何度目かの衝突が起こる。
 放つ光刃はアスランにより軽くいなされる。
 片腕で良くやるものだ、とフラガは感心していた。
 そんなことを考えていると、フラガの身に穿つ蹴りが放たれる。
 とっさに後ろに下がることで蹴りは空を斬る。
 フラガはビームライフルを構えると、アスランに連射する。
 シールドを無くしたセイバーはビームライフルをかすりながらも避けていく。
 MA形態に移行し、一気にアカツキを振り払った。
 フラガは標準を合わせようとするが、縦横無尽に動き回るセイバーに翻弄される。
 そのまま旋回をし、セイバーはMA形態のままアカツキに突撃した。
 ビームライフルを放つも虚しく、音速で突撃するセイバーの質量をアカツキは受け止めることとなる。
 当然、セイバーの質量を受け止める術などアカツキにはない。
 フラガは衝撃とともに吹き飛ばされた。
 堕ちかける意識──ナチュラルであるフラガにMAの突撃を耐えられる道理はない。
 だが、彼が倒れたら誰がオーブを守る?
 誰がアスランを止められる?
 否だ。誰も止めることは出来ない。
 彼が倒れた場合アスランの侵攻を止めるのは不可能だ。
 彼が愛するものさえも守れない。
──認めねぇ。俺は……不可能を可能にする男だ。
 ふつふつとフラガの闘志が湧き出す。
 海面に落ちる直前に彼の意識は目覚めた。
 すぐさま、ブーストを噴射して浮き上がる。
 再び浮上するオーブの希望……その姿を見てオーブ兵達は言葉を失う。
「何ぼさっとしてる! 俺達がやられたら誰がオーブを守るんだ」
 オーブ兵達はフラガから喝を入れられる。
 彼らはその言葉に静かに頷く。
 希望を得たものは強いものだ。オーブ兵達は連携をして、ネオザフトに襲いかかる。
元々ネオザフトは、急増の部隊だ。
 またコーディネーターであるザフト兵も多いため、連携を軽視するものも多い。
 そこが彼らの穴だ。オーブ兵達の連携の前にネオザフトの強者達はなすすべもなくやられていく。
72 ◆MATdmc66EY :2007/09/11(火) 01:22:52 ID:???
 指揮官機のグフは四方向から次々とビームライフルを撃たれ撃墜した。
 周りにいるディンやバビ、ウィンダムはどれも助けには入らない。
 いや、どれも助けに入れないというのが正しいか。
 どのMSもオーブ兵の連携の前に苦戦を強いられていた。
「形成逆転だな」
「…………」
 フラガの通信にアスランは無言のままだった。
 まるで、そんなことは初めから興味がないと言っているようにフラガには感じられた。
 フラガは嫌悪感を露わにして、舌打ちする。
「……まあ、良い。さあ、終わりにするぜ」
 そう言って切りかかった。
 オーブ兵達からは援護の射撃が飛ぶ。
 セイバーの体が揺れる。
 刹那、セイバーの体が弾けた。
 ブーストを噴射して、右に飛んだのである。
 だが、フラガはそれを予想していた。
 一閃が疾る。セイバーのビームサーベルとぶつかり合う。
 アカツキは追撃のため左手でビームライフルを放った。
 セイバーが後ろに下がるのをフラガは確認すると、すぐさま切りかかる。
 ぶつかり合う両者──両手を使えるアカツキはサーベルを持ち替えることで息つく暇もない連撃を見舞っていく。
 セイバーは片腕でアカツキの猛攻を凌いでいくが、それにも限度はあった。
 反応が遅れ、セイバーの体をビームサーベルがかすめる。
 とっさに後ろに下がるセイバー──そこが勝機だった。
 ブーストをかけ、セイバーに接近する。
 フラガは勝利を確信していた。
「後ろだ」
 不意にアスランが声をかけた。
 アラーム音が鳴り響く。何だとセンサーを見るとアカツキの体に大きな衝撃が走る。
 右腕が切断され、ビームサーベルごと海へと落下していった。
 それに気づいた次の瞬間、左腕も切断された。
 まるで、バターのようだとフラガは自嘲した。
「久しぶりだな……ネオ……」
 フラガにとってそれはどこかで聞いたことのある声だった。
 何度も何度も悪夢に見た消せぬ罪だ。
 忘却の彼方に消したくても消すことが出来ない彼自身が犯してしまった罪の声だ。
 勘違いであってくれと願いつつフラガは振り返る。
73 ◆MATdmc66EY :2007/09/11(火) 01:29:10 ID:???
 フラガの目に映るは緑を基調としたMSの姿である。
 改造されオリジナルのものとは多少異なる点があるが、間違いなくそれはカオスであった。
「スティング……」
 自然とフラガはそう呟く。
 「よぉネオ、元気だったか?オレは元気だったぜ」
 フラガの予感は的中した。
 スティングが彼の元に通信をかけたのである。
 呆然とするフラガを後目にビームサーベルがアカツキへと迫る。
「あの世でステラとスティングに謝れよ」
 フラガの返答を聞く前に、刃はコクピットを貫いた。
 フラガはその身を炎に焼かれ、意識が遠くなっていく。
「ステラ、アウル……スティング……」
 ……すまない、フラガがそう言う前にコクピットは爆発を起こした。
 パイロットを失ったアカツキは海へと堕ちていく。
 オーブ兵達は信じられないものでも見るようにその様子をじっと見つめていた。
「くくくっ……はははははははっ!」
 スティングの笑い声がカオスの中で響いていた。
 その名の通り混沌とした空気が辺りに立ちこめていた。
 そんな中、アスランの元に通信が入る。
「ザラ指令、首長官邸の占領完了いたしました」
「ご苦労、すぐに私も向かう」
 ネオザフト兵からの通信が切れる。
「カガリ・ユラ・アスハは既に我らネオザフトの手に落ちた。
終わりだ。お前達の希望は潰えた。降伏するなら命までは取らない……諦めろ」
 アスランの言葉に誰も返答することはなかった。
 しかし、誰も襲いかかってはこない。
 ただ彼らは、絶望の表情を浮かべるだけだった。
 動くことすらせずに、何かに縛られたようにずっと……。
 だからであろうか。
 誰一人として、アスランがオーブ本土に上がるのを止めようとするものはいなかった。
 オーブは敗北した。力と心──その2つの面において敗北したのである。

続く
74 ◆MATdmc66EY :2007/09/11(火) 01:31:39 ID:???
構成……ミスりましたね。
意見の通り、オーブが敗北したことは言及すべきでなかったと思いました。
一応今回はムゥに視点をあて戦闘をさせてみました。

では
75通常の名無しさんの3倍:2007/09/11(火) 01:37:02 ID:???
>「あの世でステラとスティングに謝れよ」

ステラとアウルの誤表記でしょうか?
何にせよ乙です
76通常の名無しさんの3倍:2007/09/11(火) 01:39:40 ID:???
>>「形成逆転だな」→「形勢逆転だな」
逆アスという人はww
77 ◆MATdmc66EY :2007/09/11(火) 02:12:06 ID:???
3回も推敲したのに…………。
78通常の名無しさんの3倍:2007/09/11(火) 02:29:17 ID:???
>>逆アス
 投下乙です。
 始めに謝っておきますと、最初に誤字脱字を探してしまいました。
読者としては少々汚れてしまったのかも知れません。

 構成がすっきりしてかなり読みやすくなったとは思います。
負けの分かって居る戦でしたが、ムゥの働きで一度は形成じゃなくて
形勢を逆転し、再度スティングの登場によってムゥが落される、と。
 まさかスティング復活ムゥ死亡とは思わなかったので予想を裏切る
積もりで居たのなら成功。シナリオはかなり面白いです。


 文章についてですが、一つ一つの文を簡潔にしようとして他の文との
連携が悪くなっているところがいくつがあると思いました。

 片腕で良くやるものだ、とフラガは感心していた。
 そんなことを考えていると、フラガの身に穿つ蹴りが放たれる。
 とっさに後ろに下がることで蹴りは空を斬る。
 フラガはビームライフルを構えると、アスランに連射する。

 片腕でよくここまで捌くものだ――ムゥが感心していると、斬撃の合間を縫って
セイバーが動いた。咄嗟に退いたアカツキの眼前で、峻烈な蹴撃が空を切る。
「腕が駄目なら脚、流石はアスラン=ザラと言ったところか!」
 ムゥは真紅の機体へビームライフルの照準を合わせると、油断なく引き金を引いた。

 エディタを使わないやっつけですが、短い時間経過の中に動作を連ねる事で
スピード感が出ると思います。あと、パイロットと機体の区別に注意。巨大化フラガと
ハイパー化アスランが戦闘しているのを想像しました。

 文章は書けば書くほど良くなって行くと思いますので、続きを楽しみに待っております。 


>>種甲子園
 さっきまとめを見てきましたが、タイトルが凄い事になってますよ。
アレでよかったのですか? アレはアレでも中々面白いとは思いますが。
79通常の名無しさんの3倍:2007/09/11(火) 07:17:01 ID:???
>>大甲子園
三太郎wwwインターフェアかよwww
物凄く水島新司的だ。
ニコルと山田の対決を期待してる。
一回コールドは無しね。

>>逆アス
誤字よりも話の展開に燃えた。
でも、スティング生存ならその説明をしておくべきだったのね。
80通常の名無しさんの3倍:2007/09/11(火) 09:10:18 ID:???
>>WERWOLF
これでプロローグならば本編はかなりハードな事になりそう
つーか次回予告が小数点以下に・・・w

台詞回しと地の文が多少ブレてる様に見える
アズラエル自体のキャラは掴んでいる様に見えるのでちょっと勿体ない
人称のブレは自身で自覚している様なので次回以降期待
もっと細かい所は上の人が書いてるので参考に
前回と比べて一気に読みやすくなった
構成以外にも気を使う事が多くて大変だと思うが頑張れ


>>種甲子園
投下乙
なんという水島漫画な展開、しかも三太郎・・・
けれど種側のキャラが立って・・・、いやこれからかww
コアな読者へ向け今後も宜しく
まとめの中の人は諧謔(かいぎゃく)を解する風流人なのか、ただのバカ真面目な人なのかwww


>>逆襲
投下乙
タイトル、入れ忘れてない?
フラガ対アスラン、戦況の主従の逆転、再逆転がなかなか良かった
カガリと虎の会話にも何か驚く仕掛けを仕込んでみても良かったな

どんどん引き込まれる構成とスピード感は流石。あんたの持ち味だな
スティング登場シーンはもっと特別な演出があっての良いんでは?
最後のオーブ兵の反応は、MSの動きの描写にした方が良い様な気もするが
まぁいつも通り個人の好みの範疇かも知れない

あと、老婆心ながらもう一つ
きっとあんたの場合は良くも悪くも、投下毎に誤字誤用を鵜の目鷹の目で探されていると自覚した方が良い
けれど、それはそれだけじっくり目を通す人が多いという証左でもある
ならばどうするか。次回投下も期待して待つ
81Exploration of Personality ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/11(火) 22:31:34 ID:???
 “game over”

 数えるのが嫌になる程、何度も見た言葉が画面上に現れる。
 ゲームをやっていて、スコアがカンストする前にわざとやられるのが僕の習慣だ。
 無限ループするゲームだからクリアーなんて出来ないし、カンストするのは何となく嫌だ。
 カンストしちゃえばそこで終わっちゃう気がするからね。
 やり込んだゲームだから何を今更って事もあるし。
 続けても弾を避けて攻撃するだけのルーティンワークになるだけさ。

 たまにはシューティング以外のゲームをやりたくなる事もある。
 例えば広大なスケールでやり込み要素たっぷりの大作RPG、硬派で檄ムズの歴史SLGとか。
 マルチエンディングヒロイン選り取り見取りのギャルゲーは……どうでもいい。そういうのは多分オルガ向けだ。
 流れるメロディーに合わせてリズミカルにボタンを押すだけの音ゲーもどうでもいい。シャニがやってればいい。
 僕はシューティング以外のゲームには手を出さない。
 クリアーする前に僕の人生がgame overになるかも知れないからね。
 でも、それ以上にリセットすればやり直せるのが嫌だ。
 シナリオというレールの上を走ってるけど僕より自由なのが嫌だ。

 僕だって自由が欲しい。望んでこんな体になったんじゃない。
 リセットすれば大丈夫な奴等が羨ましいし憎たらしい。
 僕だって何度自分をリセットしようと思ったのか解らない。
 リセットしたら別の僕になって一から再スタート……なんて事は絶対にないからしなかったけどね。

「だっせえ! やられてやがんのこのバカ! 俺にやらせてみろよ!」
「……お前、ヘタクソ」

 後ろから二人が覗いていたみたいだ。
 いつもならこんな事ないのにどんな風の吹き回しなんだか。
「じゃあ、やってれば? 後で泣いても僕は知らないよ?」

 たまにはこんな風に騒ぐのも悪くはない。どーせ直ぐ飽きるだろうし。
 飽きたら飽きたでいつもと同じになるだけさ。

 死ぬまで続く変わらない退屈な日常……。そんなに悪くないかも知れない。
 何はともあれ生きてるんだからね。命あっての物種って奴さ。
 今度、三人で出来るゲームを探してみよう。一番ゲームが上手いのは僕なんだって証明しよう。

続く
はじめに そして謝辞

私の手元に一枚の写真があります。
写真に写っている少女は手入れの行き届いた碧の黒髪を風に靡かせて、はにかみがちにこちらへと微笑んでいます。
滑らかな象牙色の肌に可愛らしく浮かんだ雀斑は彼女の純粋さを表すかのように
輝いていて、私の目にはとても魅力的に映ります。
シンプルなタンクトップとデニムのボトムスから伸びる手足は伸びやかで
大変健康的に見えます。
彼女の名前はミーア・キャンベル。
私の名を騙りギルバート・デュランダル議長の悪事に加担した悪女として、
あなた方の記憶に残っているかも知れません。
ですが、私は彼女を嫌いにはなれないのです。寧ろ友達になりたかったとすら思うのです。
彼女の自分の野心を隠さずに前向きに生きる姿は私達女性の新しいライフスタイルを
提案するものですし、彼女が抱えていた孤独や不安は誰しもが少なからず持って
いるものです。
私が実際に彼女と出会ったきっかけは偶然では無く必然だと思っています。
あの時彼女は私を庇い凶弾に倒れましたが、その前にお話する事が出来ました。
彼女の魂の叫びが私の心に伝わりお互いに分かり合えたのです。
早く出会えていたならば親友になれた事でしょう。私は彼女が大好きです。彼女が悪く言われているのを聞く度に私の心が痛みます。
彼女は私達に素敵な歌を残しました。
「EMOTION」と名付けられたその歌には彼女の全てが詰まっています。
歌う事の喜びや悲しみ、彼女の抱いている感情が伝わってきて、私の心を揺さぶります。
私は落ち込む事があるとその歌を聞いて元気を貰います。

私は彼女の名誉を回復する為にこの本━━ミーア・キャンベル 愛と悲しみの歌姫━━
の執筆を始めました。
彼女の過去に触れる事は難しく執筆は難航しましたが、私の友人であるミリアリア
・アーガイル女史と御夫君であるサイ・アーガイル氏の助力によりこの本を
無事に出版出来ました。彼らがいなければこの本を出版する事は出来なかったでしょう。
私に数多の困難に振り返った時には励まして下さいました。心より感謝申し上げます。

そして、この本を手に取ってくれたあなたにも感謝をしています。本当にありがとうございます。
━━あなたにささやかな愛情が降り注ぎますように━━


ラクス・クライン
第一話 

ラクスは原稿用紙の最後にある「ラクス・クライン」の文字を頬杖をついてじっと
見つめていた。
直すべきか直さないべきか。
時折憂鬱そうに溜め息をついては眉間にシワを寄せて百面相をする。
感情に任せて「クライン」の文字を消したくなるが、なかなか決心が付かないでいる。
ラクスは苗字が変わる事に不安を感じてはいない。だが、プロポーズをされては
いないのに、自分の気持ちだけが先走っているようで、心の整理が付かないのだ。
ラクスは立ち上がり出窓の方へと向かった。窓の向こうには穏やかに波打つ海と
満天に輝く星と青白く光を放つ月があった。
窓を開けると風が入り込んで来る。部屋の中に汐の香りが漂った。
プラントにいた頃には感じられなかった感覚と景色。ラクスは今地上にいるのだと
実感出来るように思えて、思わずクスリと笑ってしまった。
「ミーアさん、あなたが描いた夢はきっとこの空のようなものだったのでしょうね」
腕の中で儚く消えていった命を慈しむように、ラクスはそっと呟いた。
「一体誰と話しているんだい?」
声に気付きラクスは振り向こうとしたが、その前に声の持ち主に後ろから抱き締められた。
「君が空を見つめている間に原稿を読ませて貰ったよ」
優しい温もりが背中越しに伝わってくる。ラクスは安心したかのように身を預けた。
「まだ完成しただけではありませんわ。悩んでいる箇所があるのです」
嬉しい事や悲しい事、些細な悩み事や他愛の無い話を彼はきちんと聞いてくれる。
きっと今なら自分の気持ちを素直に打ち明けられるとラクスは思った。━━けれど、怖い。
女の子から積極的にプロポーズを申し込んだりするのは破廉恥だと思われかねないし、
第一彼とは関係を結んでなどはいないのだ。
沈黙が流れる。ラクスの意識は時折耳元に吹きかけられる彼の息遣いに向かっていた。
暖かくて、ちょっぴり恥ずかしくて。ラクスは切なくなって俯いた。彼はそんな
ラクスをからかうように喉を鳴らして笑った。
「私は真剣に悩んでいるのですわ。からかわないで下さいな」
ラクスはつられて笑いそうになりつつも堪え、彼の手に自分の手を重ね合わせた。
「からかってなどはいないさ。悩んでいる姿も可愛いなと思っていたんだ」
可愛いと言われて有頂天になる程純粋ではないが、彼に言われるのはやはり嬉しいとラクスは思った。
「……で、どんな事を悩んでいたんだ? いつもの君なら話してくれるのに」
「内緒ですわ。女の子には幾つも秘密があるものですわよ」
男と女の間に南アルプスよりも高い山やマリアナ海溝よりも深い溝があると云う事を
ラクスは自身の人生経験から嫌と云う程に実感している。
「確かにそうだな。じゃ、俺は君の秘密を当ててみようか。そうだな……本の売れ行きとか?」
「違いますわ。私はベストセラー作家ではありませんもの。それに本を出版出来る事自体が奇跡みたいなものでしょう?」
ラクスは本の売れ行き等心配していない。あのミーア・キャンベルの評伝と云うだけでも
話題性があるし、ましてや著者がラクスであれば非常にセンセーショナルであろう。
「じゃ、これからの生活について不安だとか?」
彼の腕が先程よりも更に強くラクスを抱き締めて来た。きっとラクスを励まそうと
しているのだろう。
「近いのですが、微妙に外れてますわね。あなたがいてくれるだけで、私は
幸せですもの。不安に感じたりはしませんわ。そうでしょう?」
ラクスは目を細め微笑みを浮かべた。振り返って彼の顔を見つめようかと思ったが
今この瞬間をもっと楽しみたいと思い振り返くのを止めた。 「他ならぬ君にそういう風に言われるとは光栄だな。けれど、それが違うのならば
なんだろう?」
声のトーンから彼の困惑する顔が容易に想像できて、ラクスはクスクスと笑い声を漏らした。
プラントで議長職に就いていた頃には感じる事の出来なかった充足感が胸にこみ上げて
ラクスの頬に涙が一粒伝った。それは彼の手の甲にぽとりと落ちた。
「……泣いているのか?」
「悲しいから泣いているのではありませんわ。嬉しい時にも涙は零れるものですもの。
今が幸せ。本当に幸せ……」
彼の言葉をラクスは即座に否定した。彼の体温を感じる事が出来る今この瞬間を
ラクスは愛おしいものだと思った。
再び沈黙が流れる。きっと彼も同じ気持ちなのだろうとラクスは思った。不慣れな
職務に追われる事も、一人きりの部屋で孤独を感じる事も無く、自分を一人の女の子として
扱ってくれる彼がいる。ラクスは彼に身を任せるように寄りかかった。
潮騒の音が遠く聴こえる。窓から見える夜空は相変わらず星が瞬いている。
「俺も幸せだ、ラクス。君がいて、俺がいて。これ以上の幸せを望んだら罰が当たって
しまいそうだ。……そろそろ窓を閉めようか。夜風に当たりすぎるのは体に悪い」
「もう少しだけ待って下さいな。こうしていたいのです」
甘えるような口調でラクスは呟いた。背中を預けられる存在があるのは嬉しいと思った。
「仕方ないな。今日は君が本を書き上げたから特別だ。俺も君の秘密を言い当てなければならないからな」
「では、あなたが私の秘密を当てたら窓を閉めましょう」
何の変哲もない他愛の無いお喋り。プラントにいた時にラクスの心に覆っていた

澱の様なものがすうっと溶けていき、新しく生まれ変わって行くような気がした。
「では君の鼾が煩い事か?それとも案外寝相が悪い事とか?」
「違いますわ。私は鼾は掻きませんし寝相だって悪くありません! 第一私と
あなたはそんな事が解るような関係にはまだなっていないでしょう?」
━━地雷を踏んでしまった。
ラクスは彼が言葉に詰まっているのに気付き思わず唇を噛み締めた。
どちらがプラトニックな関係を望んだのかは覚えてはいないし、それ以前にお互いに
そんな関係でいる事に甘んじている節があった。ラクスは一歩踏み出してしまえば壊れてしまう
様な、そんな予感がしていたのだ。
「……窓を閉めますわね。寒くなって来ましたものね」
彼の腕からするりと抜け出しラクスは窓に手を伸ばし閉めようとした。だが出来なかった。
彼がラクスの肩を力強く掴んだのだ。ラクスは思わず彼の方へと振り返った。
彼の射るような視線はラクスへと鋭く向かっておりラクスは一瞬息を飲みたじろいだ。
ラクスは彼のこのような表情を見たことがなかった。いつもの彼は優しい眼差しをラクスに
向けていて、ちょっとしたジョークでラクスを笑わせてくれたというのに。
「君の悩みは前書きの署名だ。クラインと云う苗字を使うべきかどうか悩んでいた。
君が溜め息をつきながら『クライン』の文字を見つめている姿が見えたから、直ぐに
ピーンと来た。違うか、ラクス・クライン?」
物静かでしかし力強い口調だった。ラクスは正解を言い当てられどう反応すれば
良いか解らなかった。自分がプロポーズされたいと願っていたのを知られた事が
恥ずかしかった。
思考回路はショート寸前でただ彼を見つめる事しか出来なかった。
どれ位経っただろう。ラクスは生唾を飲み込んだ。
「グゥレイトゥ、流石ですわね」
彼はラクスの言葉を聞き、幾ばくかの間を置いて笑い始めた。ラクスも吊られて笑った。
笑いが収まった後ラクスは再ひ口を開いた。
「あなたが教えてくれたのですわ、その言葉」
投下終了です。
携帯からの投下なので改行がおかしいと思います。すみません。
87通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 21:48:05 ID:???
戦闘描写のないSSって糞だね。
汚臭が漂っていて不快だ。
88通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 22:14:06 ID:???
ま・・・まさか・・・ヤツが来たのか
ゴクリ
89新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/12(水) 22:16:48 ID:???
すみません戦闘描写なんてする気がありません出来ません
90通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 22:17:31 ID:???
>>88
奴ってだあれ?
谷津の事?
91通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 22:19:39 ID:???
>>90
新シャア住人の肉奴隷で3の字が付くアレ
92通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 22:21:58 ID:???
>>91
フレイ?
93通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 22:24:16 ID:???
>>92
テメーは俺を怒らせた。違う奴だ。悔い改めろ
94通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 22:33:39 ID:???
>>91
>肉奴隷

変なペニスケース付けた奴となんかやりたかねぇ('A`)
95通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 22:35:18 ID:???
>>94
それ以前の問題だと思うがw
96河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/09/12(水) 23:10:52 ID:???
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜

第10話 「指輪 −ぎわく−」(前編)
(1/6)


『……以上。質問は──きっと山ほどあるだろうから、班ごとにまとめて提出してもらえると
助かるわ。それでは各班長、各員のスケジュールの見直しをよろしく。解散』
 スピーカーからタリアの声が途絶えた。
 行くべき処は分かっている。やるべき事が山積していることも。
 しかしシンは、パイロットスーツを着替えるどころか、立ち上がる事さえ出来なかった。

 シンにはわからない。
 激怒するべきか、号泣するべきか、それとも嘲笑するべきなのかも。
 ただ悪い夢だとしか思えなかった。
 あの女とまた行動を共にする事になるだなんて。しかも今度はあの男も一緒だなんて。

 ソファに座り込み背もたれに体を預けて天井を見上げていたら、自然と笑い声が漏れてきた。
 どうやら笑い出したい気持ちが一番強いらしい。
(そうだよな。こんな状況、冗談だと思わなければやってらんないよな……)
 そんなことを考えていたら、ルナマリアの声が聞こえた。

「シン……」
 声の方を見ると、気遣うような顔でこちらを見ているルナマリアと視線が合った。
 その向こう側、出入り口に近い場所にはレイがやはりこちらを見ている。
 世話焼きのルナマリアだけでなくレイにまで心配を掛けているのかと思うと、シンの中に
少々気恥ずかしいような情けないような気持ちが湧いて来た。

「やってらんないよな……」
 シンが呟くとルナマリアが何かを言いかけて、しかし黙する。
「やってらんないけど……やらなきゃしょうがないよな」
 そう声に出しながら、勢いよくソファから身体を起こして立ち上がる。
「待たせて悪い。行こうか」
 二人に向かってそう言うと、ルナマリアにもレイにも微かに笑顔が戻った。
97河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/09/12(水) 23:15:48 ID:???
(2/7)


  ◆ ◆ ◆

 ルナマリア達が艦の外に出ると、そこにいた全員の視線が彼女らに集まった。
「遅れてすみませんっ」
「いいのよ。これからは気をつけて」
 しかし、そう言うタリアの目は言葉ほど優しくはない。後から艦長室へ呼び出されるのは間違い
なさそうだ。
 ルナマリアは内心で嘆息した。

 気を取り直してぐるっとその場を見渡すと、そこにはミネルバ艦長タリア・グラディス、
アークエンジェル艦長マリュー・ラミアス、オーブの代表首長カガリ・ユラ・アスハ、それにあの
「英雄」キラ・ヤマト。
 錚々たる顔触れの勢揃いにルナマリアはなんとなく萎縮してしまう。
 だが、その脇にいるよく見慣れた顔に驚いた。しかも結構平然としている風だ。
「メイリン。あんた、こんなところで何やってんのよ?」
「何って、アークエンジェルのMSとブリッジ見学へ行くに決まってるじゃない」
「なんであんたが?」
「あたし、MS管制だもん」
 そう言って憤慨するメイリンをなだめつつ、ルナマリアはここにいる筈のもう一人を目で探す。
 しかし、アスランの姿はない。

「隊長は?」
 ルナマリアはできるだけさりげなく聞いてみた。何か勘繰られでもしたら厄介だ。
「アスランさんなら、エイブス主任と作業内容について打ち合わせだって」
 心なし残念そうにメイリンが答える。
「ふーん。そうなんだ」
 再びさりげなさを装って相槌を打ってから、アスランには今更アークエンジェルの見学など
必要ないことに思い至った。

「お待たせいたしました。これで全員揃いましたわ」
 タリアが声を掛け、一同はアークエンジェルに移動する。
 先頭は艦長達。その後ろにキラとカガリ。ルナマリアとメイリンが続き、レイとシンが最後尾だ。
 歩きながら見るアークエンジェルの艦内は、やはりミネルバとは微妙に違っている。
 それが各艦の個性なのか、それともザフト艦と地球連合軍艦の違いなのかはルナマリアには
分からない。
98河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/09/12(水) 23:17:35 ID:???
(3/7)

 ルナマリアはふと腕をつつかれている感触に気づいた。
 そちらを見ると隣を歩くメイリンが声に出さずにルナマリアに何かを話しかけた。口の動きは、
う、い、あ、のようだ。
(浮き輪? スイカ?)
 姉の疑問を感じ取ったのか、メイリンはルナマリアの左手の指をつついた後、視線をカガリに
転じた。
(代表の左手……?)
 示されたままにカガリの左手を見たルナマリアは、その薬指に赤い石の指輪が輝いているのに
気が付いた。
(あ、なるほど。指輪、ね)
 ようやくメイリンの言いたいことを理解したルナマリアは、妹の観察眼になんとなく感心する。
(我が妹ながら流石よね〜。って、こういう状況でそういうとこ見てるのってどうよ、とも言える?
 ってか、ああいうところに目が行かないあたしって女としてどうよ、っていう方が問題……?)
 微妙な問題に悩みながらも、思わずカガリの指輪をまじまじと見つめてしまう。
(赤い石ってことは、ルビーかな? でも国家元首の持ち物にしては、小振りじゃない?)
 芸能人の婚約発表などで披露される指輪は、小指の爪ほどもありそうな大きなダイヤモンドが
ついていたりする。
 しかしカガリのそれは、彼女の立場にしては小さすぎる気がした。
(あ、でも、有名な宝石とかで小さくてもものすごく高価だったりするのかも。真っ赤なダイヤとか)
 ルナマリアも制服を改造してしまう程おしゃれに関心があったりもするのだが、さすがに宝石の
知識には乏しい。
 赤いダイヤがあるのかすら分からなかったが、取りあえずそういうことで自分を納得させる。


 一同が最初に着いたのはMSデッキ上部のキャットウォークだった。
 デッキでは十名程の整備員が忙しげに走り回っている。
 時々指示を飛ばす大きな男声が聞こえてくる。
 エイブス主任を彷彿とさせるその声に、ルナマリアはなんとなく親近感のようなものを覚えた。

 デッキ内には四機のMSがあった。
 所々に赤を使った黄色のMSと同型の臙脂とくすんだ白のMS、その後ろにはPS装甲らしい
暗灰色のMSが二機。
 黄色と白の二機は、多分オーブ軍のムラサメだろう。
 通電している時の装甲の色が分からないのではっきりはしないが、後ろの二機のシルエットにも
確かに見覚えがある。
 記憶の糸を手繰っているルナマリアの肩にいきなり誰かがぶつかってきた。
 振り向きながら文句を言いかけたルナマリアは、彼女にぶつかったシンの蒼白な顔色に言葉を
呑み込んだ。
「──フリーダム……」
 シンの呟いたその名が、ルナマリアの記憶と一致した。
99河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/09/12(水) 23:18:56 ID:???
(4/7)

「まさかっ」
 まるでルナマリアの頭の中を覗いたかのように、彼女が思っているそのままを声に出したのは
タリアだった。
「あれは、前大戦で破壊された筈でしょうっ!? しかもあれは確か核エンジンでは?」
 タリアの言葉にアークエンジェルの三人は一様に気まずい表情で目を伏せる。
 だがその中で唯一人、マリューだけが顔を上げた。
「何もかもおっしゃる通りですわ。あれは、ZGMF-X10A フリーダム。多分現存する唯一の核搭載機です」
 その場が重い沈黙で満たされる。

 それを破ったのは、ルナマリアのすぐ後ろで聞こえた靴音だった。
「シン、どこへ行くの!?」
「すいません、艦長。気分が悪いんでミネルバへ戻って、医務室行きます」
 タリアに返答し、シンはそのまま靴音高くその場を去る。
(ったく……。あれのどこが「気分が悪い」態度なのよ……)
 ルナマリアは頭を抱えたくなった。多分、艦長も同じ気持ちだろう。
(ま、「気分が悪い」のは確かみたいだけど)
 体調が悪いのではなく、心情が悪いのだろうが「『気分』が悪い」のには変わりない。
 正直シンの気持ちも分からなくはない。ルナマリア自身もどう対応していいのか困惑しているのだ。
 いや、違う。
 ルナマリアとシンとでは、オーブやフリーダムに対する気持ちがまったく違う事をルナマリアは
知っている。
 きっとシンの心中はルナマリアが想像する以上に荒れ狂っているのだろう。
 しかし、初っ端からこれでは先が思いやられる。
 そんなことを考えていたルナマリアは、ふとレイと目が合った。
 レイが、やれやれ、といったように肩をすくめるのを見て、ルナマリアは今後の気苦労の半分は
彼に分け与えることを決心した。

 そんなルナマリアの耳にタリアの声が響く。
「……これが今ここにあるということは、オーブはユニウス条約に違反していた、と、そういうこと
ですか? アスハ代表」
100河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/09/12(水) 23:20:05 ID:???
(5/7)


  ◇ ◇ ◇

「オーブは、ユニウス条約に違反していた、と、そういうことですか? アスハ代表」
 タリアの厳しい視線がカガリに向けられる。
 キラはそれが自分に向けられているわけでもないのに、思わず彼女の顔から視線を外してしまう。


 フリーダムの復元にキラもカガリも関わってはいない。
 先の大戦中、クライン派が持ち出したフリーダムの設計書。それをターミナル経由で受け取ったのは
ラクスとバルトフェルドだった。
 彼らはそれをアークエンジェルの修復に当たっていたモルゲンレーテのエリカ・シモンズの許へと
持ち込んだ。
 そして、カガリにもキラにも内密にフリーダムの復元を依頼したのだ。
 今にして思えば、彼らに先見の明があったのだと言えるのかもしれない。
 しかし、当時はユニウス条約締結の直後だ。
 もしもそれが公になれば、カガリの責任となるのは確実だった。
 渋るエリカを復元に携わらせたのは、ラクスの説得とエリカ自身の技術者としての好奇心だったの
だろう。
 そうして、フリーダムは甦った。
 極秘裏に。再び目覚める日の来ないことを願われながら。


 本音を言えばキラにはそれが本当に正しかったのかどうか分からない。
 結果的にこうして再び戦端が開かれてしまったから、更にそれに「ラクス」と「オーブ」が関わって
いるから、これで良かったと思えるのだと思っている。
 同じ事が他国で行われていたなら、きっと今のタリアと同じように憤慨していたに違いない。
「いいえ、それは違います。アスハ代表は何も」
「ラミアス艦長」
 カガリを庇うマリューをカガリ自身が遮った。
「国内での事はすべて私の責任だ。知らなかったから、では、すまないだろう?」

 そう言うカガリの瞳を見たキラは、かつてウズミを糾弾していた頃の彼女を思い出した。
 五機のGを開発していたヘリオポリス。
 その事実を知ったカガリは、父ウズミを裏切り者と罵った。
 ウズミはそれを知らなかったのだ、と取り成そうとしたエリカに向かってカガリは言った。
『国の最高責任者が知らなかったと言ったところで、それも罪だ』
 と。
101河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/09/12(水) 23:21:09 ID:???
(6/7)

 カガリはタリアだけでなく、後ろの金髪の少年と赤毛の少女達にも視線を向けた。
「確かにあれは、ユニウス条約に反している機体だ。だが今は戦時下で、あれは有用な戦力だ。
 プラントの方々の核に対する感情も知っているつもりだ。けれど、あれを──あの力を行使する事を
許してはいただけないだろうか?」
 タリアはほんの少しだけ考える素振りを見せた後、逆にカガリに質問する。
「議長はこの事は?」
「無論議長にはお話してある。しかし、実際にフリーダムと共に闘うのはこのミネルバだ。
 だからグラディス艦長やクルーの皆にそれを許して欲しいと思っている。だが……」
 カガリが黒髪の少年が去って行った方向を憂慮の面持ちで見つめた。
──あの黒髪の少年、「気分が悪い」と言っていたけれど大丈夫だろうか? そんな事を考えながら、
キラもまた少年の去った方へ視線を転じた。
「色々と大事な時だというのに……」
 タリアもまた苦い顔でカガリの視線を追いかけた。
 その台詞にミネルバの少年少女三人が目配せを交わす。

 やがておずおずと口を開いたのは、短い赤毛の少女だった。
「あの……艦長」
 少女はチラチラと何度もキラを見ながら言いにくそうに続けた。
「フリーダムは……シンにとって仇なんだそうです。その……シンの家族を殺した機体だって……」
「「えぇっ!?」」
 驚愕の二重奏はタリアとマリューの声だ。キラ自身は声すら出ない。

 キラはカガリが辛そうに目を伏せてはいるが、驚いてはいない様子に気づいた。
「カガリは知ってたの?」
「え? だってお前……」
 キラが問いかけると、カガリはしばしキラに訝しげな表情を向ける。
 だが、ふと何かに得心したような顔をした後、言葉を続けた。
「あ、いや、詳しいことは聞いていないが……。『家族の仇だ』って言うのを聞いたことがある」
「そう……なんだ……」
 キラは目の前が暗くなるようなショックを受けた。
 突然何かに頭を殴られたような、心臓が痛くなるような、うまく呼吸ができなくなるような、
そんな感覚を感じた。
「どういうことなの? ルナマリア」
「はいっ。私も詳しくはないのでありますが、連合のオーブ侵攻の際に避難途中だったシンのご両親と
妹が爆撃を受けて亡くなって……。それで、それを撃ったのがフリーダムらしいとの事でありますっ」
 キラの眼前でタリアが詰問調に問い、ルナマリアと呼ばれた短い赤毛の少女が鯱張って答えるので
さえ、遠くで交わしている会話のように聞こえる。
102河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/09/12(水) 23:22:37 ID:???
(7/7)


 キラはこれまでに、キラに近しい人を殺されたという人物三人に会っている。
 仲間ニコルを殺されたアスラン。恋人アイシャと部隊員、自身の身体の一部をも喪ったバルト
フェルド。そしてその部下、ダコスタ。
 そして、そのすべてにキラは許されていた。
『戦争なのだから』
 言葉を変え、表現を変えて、結局はその一言でキラは許されてきた。

 キラはヘリオポリスでやむを得ずとは言えストライクに乗るようになって以来、数え切れない
くらいのMSを落としてきた。
 沈めた戦艦の数も両手では足りないだろう。
 千を優に超える数の死に直接関わってきたキラだが、その死についての責任や後悔を考えたのは
最初のうちだけだ。
 いつしかそれを考えなくなり……やがて、慣れた。
 戦争だから。自分が戦わなければ大事な人達を守れないから。だから仕方がない。
 相手もまた軍人で。自分たちを殺そうという意思を持っていて。だから、仕方がない。
 そう自分を納得させてきた。

 そうして他人に許され、自分を許してきたキラを「仇」と呼ぶ者が現れた。
 キラが奪った命は、軍人でも敵ですらない民間人のもの。しかもキラが守るべきオーブの。

 キラの意識が真っ黒に塗りつぶされてゆく。
 音も、光も、キラから失われてゆく。
──ラクス……。
 キラは声にならない声で少女の名を呼ぶ。今はもういない少女の名を。
──ごめん……。
 暗闇の中に残るのは、ただ悔過の想いだけ。
 守れなかった少女達へ、敵として戦った軍人達へ、黒髪の少年の家族へ、そしてまだ知らない
誰かへの。

 そして。
 キラから意識の欠片が落ちて行く……。
103通常の名無しさんの3倍:2007/09/13(木) 21:12:58 ID:???
>>河弥
投下乙、GJ。批評やアドバイスは他の人に任せた。
キラはどうなんのかな?
104弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/09/13(木) 23:02:12 ID:???
女神と天使 〜少女は砂漠を走る! Master's side〜 (1/9) 
Goddess =女神の託宣=

「サトー隊長も、あなたのような優秀なパイロットが居てくれると心強いって言ってたのにね。そうそう、それに
公社の総務まで簡単に抱き込んじゃうなんて、若いのに大したもんだって褒めてたわよ?」
 彼女はそう言いながらガウンを羽織っただけで頭にタオルを巻いてリビングへとやってくる。
「そう言っていただけたのは嬉しいですが、命令では仕方がありません。どうして急に地上でテストがやりたくなった
のかは知る由もないですが、予定では一週間前後でまた空に上がれるから、全体的な計画にも影響はないかと。
命令自体も工廠と委員会の技術部からで怪しい所はないですしね。って、ねぇさん。またそんな格好でウロウロと。
子供ですか、あなたは……」

 僕の自室、シャワーを貸せと言って突然現れた彼女はごく普通にシャワーを浴びて、ごく普通に僕のガウンを
羽織ると、勝手に冷蔵庫から出してきたドリンクを片手にソファでくつろいでいる。
「どうせわたしとあなたしか居ないもの。気を使う意味なんか無いでしょ? 今更わたしの裸なんて見て嬉しい?」
「シャワーぐらい自分の家に帰って浴びたらどうですか……」
 だってココの方が近かったのだもの。それに世の中気を使ってばかり、姉さんは疲れたのよ。
彼女はそう言うと少し笑ってドリンクに口を付ける。
 きっと口には出さないが、組織の為に『イヤな仕事』をしてきたのだろう。
何も言わずとも、玄関で目を合わせなかった態度とシャワーの長さはそれを雄弁に物語る。

「ねぇ、約束覚えてるよね? 姉さんとあなた、ずーっと姉弟だって。ずーっと、ずーっと一緒だって。
生まれ変わったら、あなたは一人っ子だからこんどは三人姉弟よ?」
「なんですか急に……。も、勿論覚えてますよ? けど、そろそろ服を着てくれないと忘れそうです」
「忘れてくれればわたしが恋人になってあげられるんだだけどね♪ いい男なのにモテ無いものなー、キミは。
でもわたしはちょっと訳あり商品だからねぇ。なーんてね。きゃはは……」
 ドリンクだと思ったのはどうやらビールだった様だ。少なくとも普段、こんなたちの悪い冗談を言う人ではない。
だからアルコールの類はキチンと隠しておいたのに。人の部屋の冷蔵庫の構造を知り尽くしている。全く……。
 ねぇさん、と言ったが彼女とは生物学上も戸籍上も繋がりはない。
彼女は友人の姉、正確には故人となってしまった友人の姉で更には元婚約者。なのである。
105弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/09/13(木) 23:03:59 ID:???
女神と天使 〜少女は砂漠を走る! Master's side〜 (2/9) 
Goddess =女神の託宣=

 彼とはアカデミー在籍当時からのつき合いで、僕が赤い制服に袖を通し、
自ら志願して連合との小競り合いの絶えない危険地域へ配置された時にも一緒の部隊だった。
 ある日いつもの定期パトロール中『事故』があった。誰が何を言おうと公式記録にはそれしか記載はない。
いずれにしろ彼のサンドベージュのジンはあっさり落とされパイロット共々二度と母艦へ帰ってくる事はなかった。
僕が『血のバレンタイン』で両親を失う数日前の事だ。
 本格的な開戦前の出来事だったので年金は減額される旨の話を聞いた。僕は唇を噛む事しか出来なかった。
 その後の戦争を乗り切れた理由に、無二の親友だった彼の遺品をせめて僕の手で家族の元へ届けたい。
という思いがあった事は否定しない。両親の遺品など何一つ無かった僕のセンチメンタリズムかも知れないが。

 俗に言うヤキンドゥーエ戦役が終わり、特務隊所属であった僕は人より時間はかかったものの無罪判決を
受けた。もっともザラ議長とクルーゼ隊長が死んでしまったのを良い事に、大概の事を二人に押しつけて、
特にワカモノの範疇に含まれる者達にはかなり軽い処分で対応が成されたと言うのは否めまい。
彼の『歌姫の船団』に参加していた者達でも、望めばザフトへの復帰を認めたほどだ。
ならばザラ議長の直接命令など受けたこともない僕などは、どれほどの罪になろうか。と言う話ではある。


 真っ赤な礼装制服で花束と遺品の入った箱を持った僕は、彼の家の玄関で初めて彼女と出会った。
はかなさとオトナの色香を感じさせる彼女は、多少ふらつく足下で僕をリビングまで案内した。
『ユニウスで母を、戦争で弟と、そして父まで失いました。わたしにはもう何もありません』
 そう言うと彼女は糸が切れた様に床に泣き崩れた。
今より幾分若かった僕には、オトナの雰囲気を漂わす彼女の頽(くずお)れる様は、
あまりに凄惨な光景に写った。肩に手をかける事さえ憚(はばか)られる程に。
だから、何時までもリビングの入り口で箱と花束を持ったまま、震える彼女の背中をただ見つめていた。

 境遇の似通った僕と彼女、二人が特別な関係になるのにさして時間は必要ではなかった。
何もない空っぽな僕等は互いを支えとし、互いに足らない部分を補完出来ると信じた。
 だが半年の後、遺伝子上の理由から婚姻統制に引っ掛かり一緒になる事は出来ない事がわかった。
更にその検査の途上で、彼女は子供を宿す事が医学上ほぼ不可能である事も同時に発覚した。
 彼女は再び僕の前で半狂乱で泣き崩れる。勿論、法律上も生物学的にも何かと方法はあったのだが、
彼女はそれらを全て否定し、拒否した。自然で、普通であること。自身も遺伝子を操作された存在、
コーディネーターである彼女が何故かそれを必要以上に、誤解を恐れずに言えば狂信的に求めたからだ。
 僕は一緒にいるだけで良かったのだが、既に言葉さえ信じない彼女にはそれを伝える術はなかった。

 その後。ただの会社員だったはずの彼女はいつの間にか反政府組織へのパイプを作り、
そこでの活動に身を窶していった。
そして赤い服を継続して着用する事を認められた僕もその活動へと身を挺していく。
当時の僕はただ彼女の役に立ちたかったが故に、何も考えずに旧ザラ派の工作活動へと情熱を傾けた。
 後に眼にした国防委員会の極秘資料では、僕の名前は旧ザラ派の要注意人物として登録されていた。
どうせ旧特務隊で汚れ仕事をしていたのだ。この期に及んで評価など気にする必要はない。
当時の僕は半ば本気でそう思っていたし、『但し活動の気配なし』の注意書きにはむしろ腹を立てたほどだ。
だが、旧特務隊であったが故に経歴が既に汚れている事のみは、僕がどう捉えようが変わりようがなかった。
106弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/09/13(木) 23:05:11 ID:???
女神と天使 〜少女は砂漠を走る! Master's side〜 (3/9) 
Goddess =女神の託宣=

「数はだいたいOKだそうよ? 足りない分はあとは何とかするってさ」
「そうですか。まぁ、あと2,3台なら何とかなりそうです。必要なら言ってくれと伝えて下さい」

 政治的なイデオロギーなどそもそも無い僕だ。
両親の、彼の仇を取る為なのか。ねぇさんの為なのか。
 いつの間にか、組織内でも上位に位置していた僕には活動の理由がいつでも不足していた。
ナチュラルの生死など僕にはどうでも良かったが、しかしそれは端から見た所で誰にもわかろう筈はなかった。
 唯一わかってくれるはずのねぇさんの瞳は既に復讐のフィルターで覆われ、僕の顔など見ては居なかった。
二人で青臭い夢を語ったあの頃の彼女のはにかんだ笑顔は、”最期の日”までもう見ることはないのだろうか。
だが彼女にしても、何に対しての復讐であるのかは、きっともうわからないだろう。
 彼女の復讐の相手。それは強いて言えば運命だろうか。果たしてそれに復讐する方法など、有るだろうか。


 かつての婚約者は本当の姉弟のように暮らそうと宣言し、今や二人の暮らしはその通りに成されている。
ねぇさんはソファの上でモニターをボンヤリ眺めて居る。ガウンを羽織った彼女の、細く官能的なうなじを見ながら
僕の思考はいつも通りにループしていく……。

 女神の下ろす託宣、それを忠実に実行する神官。僕の役回りはここ暫くそれ以外の何者でもなかった。
 そして女神は託宣を下ろしたのだ。地上に住む人間を殲滅せよ、と。
 ならば神官はそれに従うが必然……か。
107弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/09/13(木) 23:14:15 ID:???
女神と天使 〜少女は砂漠を走る! Master's side〜
次回予告
『Angel  =直線莫迦の天使=』

すいません専ブラか回線の調子がおかしいので残りは明日以降投下します。
取りあえず今回分以上です。ではまた
108lunatic love:2007/09/13(木) 23:50:34 ID:???
 “獣のサーカス”

 目が覚めるとひとりぼっちだった。ベッドにいるのは私だけ。誰かの体温を感じる事は出来ない。
 少しだけ淋しくなる。たった一人でいるという事が苦痛にも思える。
 アイツは私の元から去って行った。私よりもプラントを選んだのだ。仕方無いと言えば仕方無いのだろうが、私は不満を覚える。
 アイツが私を裏切ったのだとは思わない。私がアイツの心の中に入る事が出来なかっただけの話なのだ。
 ただ、自分自身に腹が立つ。女性としての魅力がない自分が嫌いだ。
 彼を色仕掛けでどうこうしようとは思わなかったが、私の魅力のなさが彼が私から離れて行った理由の一つにはなるだろう。
 悲しい事に彼がいなくなってから、私は一人遊びが上手くなってしまった。
 指使いだけが上達して、満足するまで慰める。そして、自己嫌悪に陥る。
 毎晩それの繰り返しだ。

 彼の変わりがいない訳でもない。一応、許婚とやらがいる。
 でも、私はそいつには私の体を触らせたくない。そいつは私ではなく、私の立場を求めている。
  私よりも有能で、世間という物を知っているから、そいつに全てを任せたらどんなに楽だろうか、とも思う。
 でも、私を求めないから、何一つ与えてやる心算はない。与える事を想像するだけで吐き気がする。
 夢を見させて無様を見せてやるだけだ。
 そう思ってみると笑いが込み上げて来る。
 愉快、実に愉快だ。私を求めれば全てを与えてやったのに、私ではなく私の立場を望んだから滅びる奴がいる。
 獅子の娘は姫ではなく、人を喰らう獣。聖人君子などではない。
 私という獣の業は夜の帳よりも深いのだ。
 獣の花婿は鋭い牙を持つ獣だけがなれる。飼い慣らされた家畜では不十分だ。

 そう言えば一人面白い男がいた。私に牙を剥いた、雪の様に白い肌で夕日の様に紅い瞳の獣がいた。
 彼にだったら、もし彼が私を求めるのであれば全てをくれてやろう。
 体が疼き始める。血潮が熱く滾る。
 指が私の意思に反してはしたないリズムを刻み始める。
 獣は獣を求める。それは感情ではなくて原始の本能であり衝動だ。
109 ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/13(木) 23:53:44 ID:???
酉付け忘れ。
微妙にエロいですね。すみません。
lunaticはこんな方向で色々書いていこうかな、と思います。
110通常の名無しさんの3倍:2007/09/14(金) 12:49:03 ID:???
>>河弥
キラ、壊れた?
この先どう展開するのか楽しみ
読めねー

>>弐国
出番ほんのちょっとのお姉さんにこんなに深い設定が
本編では完全無欠のエリートだったエディさんが可哀想な人に思えて来た

>>ルナチック
掛け値無しにエロイです
厨房時代なら一撃KOです
111通常の名無しさんの3倍:2007/09/14(金) 19:53:23 ID:???
>>歌姫
投下乙
本の前書きから始まって、ゆっくりと時間が流れる展開
色々書こうと思ったが最期のオチが協力過ぎw

――ではなくて罫線を使ってる? ━━
ワザとならばともかく、ちょっと見た目が美しくない
オレの環境ではダッシュと入れると変換してくれるが。
空白があまり入らないが読みづらく思わないのは
1行が短い事もあるが文体が大きいのかも知れないな

>>彼女
投下乙
遂に河弥オリジナル展開になったな
チラ裏で既に誰かが書いてたが、ホーク姉妹の指輪に対する会話がなかなか効いてる
ユニウス条約違反に対するカガリの反応はむしろ自然に見える。流石
『彼女』の居ないキラをどう修理するのか含め、次回投下にも期待

>>砂漠 師匠側
投下乙
上の人と同様の感想、ちょい役にこんなディープな設定があるとは・・・
本編に入れ込んでしまえば良かったのではないかと思うが
もしかするとそれが某所で言ってたベッドシーンになるのか?
専ブラ、回線のお早い復旧を祈念する

>>lunatic
投下乙
今回はあんたにしてはあっさりしていると思う
細かい分析は出来る人に任せてオレは表面上から

エロティックな部分については無くても成立するのではないかな
もっともそれ(キャラと行為のギャップ)が書きたかったのかも知れないが
それと前回、タイトルの事をちょっと書いたが
シリーズとして展開するならば前回書いた事は忘れて欲しい
exよりは個人的にlunaticの展開に期待する
 廊下側のドアの窓がぱっと明るくなるのに気付いて、手元の時計を見た。たった今5時
を回ったところだ。部屋の窓から見える空はもう薄暗くて、無機的な街頭の明かりが差し
込んでくる。もう1月の終わりだが、相変わらず夜が来るのは早い。自然に囲まれたこの
研究所では、夜になるとフクロウの泣き声が聞こえる。この辺りに生息するフクロウ目は
何種類かいるようで、以前第2OSの同僚のドーキンスさんが職場に暗視望遠鏡を持って
きて、杉の木の枝で羽を休めるモミヤマフクロウの姿を見せてくれた。聞けばこの研究所
に赴任してから、バードウォッチングが趣味になったそうだ。ホウホウというかわいらしい
泣き声とは裏腹に、意外と図体は大きかった。その晩はお目にかかることはできなかった
が他にもトラフズクやアオバズクなどもいるらしい。砂漠が広がるアリゾナ出身の彼が、
ここに来て野鳥に熱を上げるのも無理からぬことかもしれない。彼だけではない、世界
的に手つかずの自然が失われている現在、日本の森は原初の生態系をとどめている一
種奇跡的な場所で、休日になればドライブや釣りに出かける社員も少なくない。なにより
奥多摩の山々は根詰めてディスプレイに向かいすぎた目を休めてくれる。

 もう一時間もすれば終業で、ここまでで画像認識プログラムのデバッグは半分弱終わった。
今のところアルゴリズムの変更を要するようなバグは見つかっていない。ASURAにおい
て補佐的な役割を果たすこのプログラムの開発は主に僕の担当で、大学時代の研究テーマ
とも重なる部分が多く、比較的楽に仕事を進めることができた。

 さて、もう一踏ん張りか、と首を回してストレッチの真似事をする。首の間接がパキパキ
と固い音を立てる。肩こりもひどい。鉛を肩に乗せているようだ。長時間のデスクワーク
を強いられるプログラマーの宿命とも言える。これならNYに遊びに行く前に、国内の温泉
に行きたい。いろんな薬や治療法が雑誌やテレビに紹介されているが、やっぱり湯治が
一番いい。

 再び姿勢を戻してトラックボールを動かしながら、ふと今日の夕食のことを思い出した。
今日から遥はいないのだ、帰っても夕食を作る人はいない。いや正確には、僕以外にい
ない。正直なところ、料理はあまり得意ではない。オーブの孤児院でオムレツを作らされて、
焦がしはしなかったもののスクランブルエッグのように形が崩れてしまい、ラクスやカガリ
に笑われたものだ。

 何を食べよう?家に帰れば7時半、そこから着替えたりシャワーを浴びたりして、8時
くらいになるか。ラーメン屋やファストフードの類でもかまわないが、あまり胃にもたれる
ようなものを食べる気分じゃない。昼に食堂で食べた、タルタルソースのたっぷりかかった
鳥南蛮がまだ胃に残っているせいだろう。遥の家庭料理は煮物や酢の物などの野菜中心で、
曰く「外食とのバランスを取るため」だそうだが、たしかに外に出れば肉や魚ばかり食べて
いる。おかげで家に帰れば(二人の帰宅時間がずれ過ぎない限り)大概はもたれた胃に
優しいヘルシーな食事にありつくことができた。だが今日はそうはいかない。この時期で、
野菜をたくさん取れそうで簡単な料理といえば鍋か?たしかにスープの素と具材があれば
料理音痴の僕でもできる。一人でつつく鍋ほど侘しいものもないが。
 料理に一人鍋と連想すると、自然とオーブへの郷愁が湧き上がってきた。日本に来て
からというもの、一日でも故国を思い出さない日はない。静かな潮騒の音を聞きながら、
彼らと過ごした幸せな日々。あの深い藍色のマリンブルーと、水平線まで続くスカイブルー
に挟まれた景色は、今もまぶたに焼き付いている。

目を瞑れば、オーブの面々が鮮やかに蘇る。カガリやアスラン、ミリアリア、マリュー艦長に
バルトフェルド艦長、フラガ大尉、アークエンジェルのクルーたち。みんなかけがえのない、
僕の友人。

そして、ラクス・クライン。世界でたった一人の、愛しい存在。オーブからはるか5000kmの
彼方にいても、それは変わらない。叶うならば、彼女も僕と同じ想いでいて欲しい。たとえ、
不朽の愛など虚しい幻だったとしても。

 『人間は、一人で生きているわけではないのよ』

 遥の言葉が胸に去来する。それは人を頼るということを言っているのではない。人に対して
自分は何ができるか、ということだ。受動的でなく、能動的に。他者との関係性の中で状況を
冷静に俯瞰し、自分に可能な最善の手段を講じる。それが互いにかみ合うことで信頼関係を
築いてゆく。馴れ合いではない。もっとタフで、血の通った、したたかな関係。初めて日本を
訪れたとき、僕はそのことを痛切に思い知らされた。僕はもっと強くならなければならない。
今のままでは――――。

 インナースペースを電話の音が打ち破った。LEDランプは外線が点滅していた。ここに
電話をかけてくるのは大抵内線で、第1OSの人か、警備のジョニーさんくらいだ。電話の
ディスプレイには見たことのない番号が映っている。もう終業も近いというのに、いったい
誰の用事なのだろう。どうせ野暮用だろうとたかをくくって、受話器を上げた。

「はいこちら第2OS」
「深浪君か、僕だ、アズラエル」

 声を聞いて、わずかに緊張が走った。この部署に社長から直々に電話がかかってくるのは、
かつてなかったことだ。第1OSには開発責任者である伊槌主任がいるのでたまにかかって
くることもあったようだが、開発において補佐的な役割を果たす第2はそういう誉れとは無縁
の部署だった。ただ、遥が社長とはNY本社にいたころからの付き合いだそうで、彼女から
僕のことをいろいろ聞いているらしく、彼のほうでは僕を贔屓目に見てくれていた。遥と同伴
で個人的に食事に誘われたことも何度かあった。未だに信用はできないが、彼への嫌悪感
は以前ほどではなくなっていた。

「ちょうどよかった、まさに君に用がある」
「お疲れ様です、社長。珍しいですね、まさか忘れ物を届けて欲しいなんて言いませんよね。
もうNYに着いたんですか」
「ああ、僕は無事に到着した。だが機体がまだだ」

 明らかに、声には焦りの色が混じっていた。何か問題があったようだ。現時点では、それ
が僕とどういう関係があるのかはわからないが。
「輸送機が出るのは今日の昼からでしょう、今ごろは太平洋の上をのんびり飛んでいるんじゃ
ないですか」
「それならいいんだが、どうもそうではないようでね」
「というと?」

 彼は電話の先で一呼吸置いた。

「その部屋は今、君の他に誰かいるか」
「いえ、僕だけです」
「結構。今から話すことは口外無用だ、心して聞いて欲しい。日本時間で午後3時に成田を飛び
立ったC205型輸送機『カーゴ04』は、離陸して約1時間後に航路を変更して引き返し、今は小笠
原沖、北東60キロの位置を飛行している。衛星からの情報ではそうだ」
「まさか、ハイジャック?」
「その可能性が高い。現在に至るも無線の呼びかけにも応えず沈黙を続けている。輸送機は
航路を南に取っている。おそらく目的地は、大洋州連合のどこかだ」

 全身に戦慄が走った。危うく受話器を落としそうになるところだった。なんということだ、大洋州
連合にはザフトの地上最大の基地、カーペンタリアがある。そこでなくとも、酔狂でオーストラリア
大陸を飛び越して南極までは行くまい。ハイジャック犯がどこに与しているかは明らかだった。
そして、この連絡が僕に来たということは――――。

「何か止める手段はないんですか、まず軍に出撃要請をしましょう」
「それを頼むために君に連絡をとった。どうか君が出撃して欲しい、ストライクフリーダムで」

 予想通りの言葉がきた。ふうっ、と一つため息をついて、僕は言った。

「共和国軍に要請するべきです、なんで僕が出る必要があるんですか」
「それはできない。わかっているはずだ、この計画は極秘だ。極秘のくせに強奪されていれば
世話はない、という議論はこの際なしだ。JGEMプロジェクトは共和国軍の技術研究本部日本
支部の支援を受けてはいるが、それを盾に正規軍を動かせば、それだけで情報機関やマスコミ
にかぎつけられる。ザフトがこの事件に絡んでいるとなると、事が露見すれば外交問題に発展する」
「もうすでになっているでしょう、どこの軍が裏で糸を引いているかは明らかだ」
「だが、これが秘密裏のうちに失敗すれば話は別だ。ザフトのほうでも強奪作戦の失敗を表
沙汰にすることはあるまい。こちらとしても、奪還できればそれでよし、最悪撃墜したとしても
内々で処理できる。機体はまた作りなおせばいい」

 向こうにも相応に事情があるのは理解できるが、いささか腹が立ってきた。この人は建前が多すぎる。

「あくまで水面下で処理したい、ということですか。危機管理のやり方としては誉められたものでは
ありませんね。JGEMプロジェクトに後ろ暗い部分があるのは重々承知していますが、ここぞという
ときの経営責任者でしょう。事ここに至って保身など考えるのは見苦しい。あなたが先頭に立って
この事実を公表し、公的な支援を仰ぐべきです。それで外交問題になったとしても、計画で培った
技術が失われるわけではない。当たり前のことだが、この件で非があるのは明らかにザフトのほう
だ。堂々としていればいい」

 一介の社員の分をわきまえない、失礼な物言いだな、と自分でも思った。だがヒートアップした
頭は自制の鍵をはずしていた。せっかくの関係修復も、これで全てふいになったかもしれない。
だが、言うべきことを言わないで、後で割を食うのはごめんだ。
 僕の言葉を受けてから、社長の語気には焦りに加えて怒りが混じった。

「いいか、この事件はそんなまともな理屈で処理できる問題じゃない。外交問題の先には何がある
かわかって言っているのか」
「さてね。そこはそれ、共和国や大西洋連邦の外交手腕の問われるところでしょうね」
「ふざけている場合じゃない。君はもう忘れたのか、2年前の大戦のターニングポイントだった、
ヘリオポリスでのXナンバー強奪事件のことを。ついこの前終わった戦争の引き金もアーモリー
ワンでのセカンドステージ強奪事件だ。毎度おなじみ戦争開始の狼煙だよ。それとも君は、また
血で血を洗う世界大戦でも始めたいのか」

 そう言われて、はっとした。身体に電気ショックが流れたような感じだった。忘れたのか、と言われて
初めて気付く。もちろん忘れたわけではない。それは心の隅に、いつも暗い影を落としていた。言い
知れない恐怖を植え付けた、コロニーの残骸と無数の死体。偶然ストライクに乗ったがために向け
られた、銃口、切っ先、激しい殺意。

 忘れたかったのだ。あの凄惨な事件を忘却の彼方に押し込みたかった。僕から平穏な日常を奪い、
戦火に身を投じさせた、あの事件を。僕はヘリオポリスでの出来事を、無意識に頭の中から消そうと
していた。

「幸いなことに、照会したところ君のストライクフリーダムは公式にはオーブの所属からは抹消されて
いる。現在は完全に所属不明機だ。オーブの影が事件にちらつくことになるかもしれないが、せいぜい
君の行方不明が報じられる程度ですむだろう。所属不明機が突然太平洋上に現れ、IAIの輸送機と
接触、輸送機は墜落し、所属不明機は消息を断つ。日本IAIは、当該機はニュートロンジャマーの
電波障害の影響で運航コースを外れたため、接触事故を起こした可能性があると発表。周辺各国は
事件との関係を否定している。墜落した輸送機の機体は発見できなかった。筋書きとしてはこんなところだ」

 ずいぶん強引な筋書きのようにも思えたが、それこそ水面下で握り潰してしまうのかもしれない。
輸送機の引き上げはIAI保有の引き上げ船にでもやらせるのだろう。少なくともこれなら、機密情報は
何とか守られる。あとは僕の気持ち次第だ。

 アズラエル社長がまくし立てる中、僕は言葉を失い電話の先で黙っていた。胸の中では激しい葛藤と
混乱、そして恐怖が渦巻いている。いくら戦争回避のためとはいえ、こんな正義のない不正規作戦など、
僕は関わりたくない。目には目を、毒には毒を。決して日の当たることのない暗闘。そんなものなど僕に
は関係ない。

 ヘリオポリスでの恐怖が蘇る。2年前の大戦が終わった後、僕はずっとそのPTSD(心的外傷後ストレス
障害)に悩まされ続けていた。今このとき突然、ザフトのコマンドが襲ってくるかもしれない。今そこで笑っ
ている無二の親友のアスランが、僕に銃口を向けるかもしれない。事件に関すること全てに過剰に反応
するようになった僕は、ひどい脅迫観念にとらわれた。悪夢を見るのはもうたくさんだった。

「他に、時間的な問題と、戦力的な問題もある。現在の輸送機の速度だと、あと6時間ほどで大洋州連合
の領空に達する。要撃機なら公海上に出た辺りで追いつけるが、もしそこで合流に来たモビルスーツに
迎撃されれば手の打ちようがない。あらゆる事態に対応できるのは、君のストライクフリーダムだけだ」

 目まぐるしく錯綜する頭の中をなんとか落ち着けながら、僕は弱弱しい声で答えた。

「ウィンダムでは今から飛ばしても追いつけない、と」
「そういうことだ」
 数瞬、会話が途切れた。電話の先で重苦しい空気が流れる。恐慌状態はまだ続いている。暑くもない
のに汗が首筋を伝う。全身の震えが止まらない。誰もいない職場に、受話器のカタカタという音が響く。
答えは目の前にあるのに、それを認める勇気はとてもではないが出てこない。
 それまでと変わって、社長は穏やかな口調で続けた。

「残念だが、現状では君に頼るしか手がない。君が戦争を嫌うのはわかる。僕も軍事に手を染めて長い
が、やらなくていい戦争ならやらないに越したことはない。だがね、現実は争いに満ちているんだ。コー
ディネーターとナチュラルの対立だけではない。民族紛争、国家間格差、宗派対立、領土問題、エトセ
トラエトセトラ。旧約聖書のカインとアベルの話を思い出すといい、人間が二人いるだけで、大なり小なり
対立はある。相手に敵意がある以上、僕らも相応の手段を取らなければならない。対話で解決できる
ならそうするべきだ。だが今はもう、そのレベルをとうに通り越してしまっている」
「どうしても、僕でなければいけませんか」
「無理強いはしたくないが、どうしても頼みたい。せっかく君とは和解できそうな気がしてきたところで、
こんなことを頼むのは僕としても辛い。だが、君の大切なものを守るため、と思って引き受けてくれない
だろうか。僕も心は同じだ、家族に等しい800人の日本IAI社員の生活を守る義務がある。そのためにも、
僕には間違った選択はできない。君に依頼することが、僕はベストだと判断した」

 その言葉で、急に震えが止まった。頭の中のカオスが、霧が晴れるようにクリアになる。そうだ、今日
の僕は言われてばかりだ。僕は今、この状況に対して最善を尽くさなければならない。遥の言葉の通り
だ。『人間は、一人で生きているのではない』。

 アズラエル社長は自社の社員と、国家、ひいては世界のために最善を尽くすため、僕を説得しようとして
いる。何より僕にも守るものがある。ヘリオポリスの惨劇の悪夢よりも、オーブが再び戦火に焼かれる恐
怖のほうが、何万倍も恐ろしい。愛しい彼らを守らなければならない。利害は一致した。
 無意識に、左手の拳を握り締めていた。さっきまでとは違う、はっきりした声で答えた。

「わかりました、できる限りのことはやりましょう。直ちに地下格納庫へ向かいます」
「すまない、恩に着る」
「では時間もないことですし、急ぎますのでこれで失礼します」

 さあ、覚悟は決まった。次は行動する番だ。受話器を置こうとすると、スピーカーから「待て」と大声が聞こえてきた。

「なんです、まだ何か」
「ああ、いろいろ作戦内容の詳細を伝えたいが、時間もない。そこに内線用のインカムはあるかね」

 所内の電話には作業の効率化を図るため、ハンズフリーのワイヤレスヘッドセットが付属していた。
通信可能範囲は所内全域。通信はここの独自規格に沿った量子暗号プロトコルで行われるため、
盗聴するのはまず不可能な代物だった。

「あります、少し待ってください――――今着けました」

 耳掛けタイプのマイク一体型骨振動イヤフォンは、大きな声を出さないでもしっかり相手に聞こえ、
相手の声も聞き取りやすいのが強みだ。技術自体は大昔にできたものらしいが、今は片耳にかける
だけのサイズにまで小型化されていた。

「了解、じゃあともかくも、まずは格納庫へ急いでくれ」

 勢いよくドアを開け、僕は部屋を飛び出した。深浪明の時間はひとまず終わりだ。たった今から僕は、キラ・ヤマトに戻る。
 研究棟の外へ出た。コートを開発室に置いてきてしまったため、ひんやりした外気を直に感じたが、
火照った身体には心地いい。風のない空は厚く雲が立ち込めていて、月明かりも見えない。明かりは
所内を照らす街灯だけだ。
 地下格納庫へ通じる整備棟はここから500mほどのところにあった。今は1分1秒の時間も惜しい。
僕は走った。

「さて、まず目標に接触する前に、本州の防空圏をどうやって抜けるかだが」

 耳元のイヤフォンから、再びアズラエル社長の声が聞こえてきた。

「ストライクフリーダムには、アクティブステルスが搭載されているな」
「ええ、こっちに来てから改良されています。実質RCS(レーダー断面積)はパチンコ球くらい、だそうです」

 ZGMF-X20A『ストライクフリーダム』は8ヶ月前にロールアウトしてから、すでに2回のマイナーチェンジを
行っている。ともにこの研究所に来てからのもので、主に電子戦や大気圏内戦闘へ対応する装備への仕様
変更・改良が施された。アクティブステルス機能もその一つで、入射してきたレーダー波を解析し同位相の
電波を発生させて相殺することで、相手のレーダーへ探知されないようにする機能だった。

 世界中にニュートロンジャマーが撃ち込まれた影響でレーダーなどの電波探知機はほとんど役に立たなく
なってしまったが、ニュートロンジャマーキャンセラーの登場と大出力レーダーの採用で以前の防空網は
回復しつつあった。しかしこの恩恵を一番喜んだのは、電波阻害で航空管制に頭を悩ませていた旅客・
運輸などの航空関係者だ。もちろんIAIもその一つであったことは言うまでもない。

「ならひとまずレーダーに引っかかる心配はいらないわけだ。一応、念のため入間の基地司令には僕
から連絡しておく。あそこの基地司令にはいくらか貸しもある」
「あとは目視で発見されるのを防がないといけませんが、さすがにミラージュコロイドまでは装備していませんよ」
「装甲のフェイズシフトを切ればいい。そして高高度飛行。30000m以上は高度を取れ」

 なるほど、フェイズシフトダウンした状態なら、ロービジリティ塗装と変わらない。30000mもの高度を飛ぶ
モビルスーツを、夜間に発見できる者はそういないだろう。フェイズシフトオンは公海上に出てからでも遅く
はない。しかし今度は、別の問題が頭をもたげた。

「あまり高度を取りすぎると、今度は衛星に発見される恐れがあります。雲にまぎれて飛ぶことも不可能で
はないが、どこで途切れるかわからない」
「フム。たしか、偵察衛星は連合国もザフトもこの前の戦争で全部叩き落されて、現在共和国は配備が間に
あった大西洋連邦の衛星情報を一時的に提供してもらっている。今のところザフトの衛星は確認されてい
ない。NRO(国家偵察局)には顔が利くから、そのレベルで情報をブロックしてもらうよう頼んでみよう。NRO
はうちのお得意様だからな」 

 さすがはIAIの御曹司、コネの広さは伊達ではない。いつもならそれは嫌悪の対象だが、このときばかりは
ありがたかった。
 息を切らして整備棟の入り口へとたどり着く。例によって生体認証をパスして、入り口横の『関係者以外
立ち入り禁止』のドアの前に立つ。再びチェック、認証。ドアを開ければ、地下格納庫へと続く直通エレベー
ターがある。ボタンを押してエレベーターのドアを開け、それに乗った。

「輸送機の現在位置と速度は?」
「現在小笠原沖東北東10キロ、毎時600キロで飛行中。あと1時間もすれば領空を抜ける。詳しい位置は、
衛星とのデータリンクで確認するといい」
 エレベーターが速度を落とす。普段なら意識しないが身体がわずかに重くなる。これからこの何倍もの
Gが、身体にかかる。空を飛ぶこと自体はどちらかと言えば好きだった。あの加速Gの感覚は懐かしい。
 まもなくエレベーターは止まり、再びドアが開いた。左右に伸びた廊下の右方に、ロッカールームがあった。
そこには僕のパイロットスーツも収められている。

「わかっているとは思うが、一応念のため輸送機には警告を入れてくれ。次いで威嚇射撃、最後に撃墜だ。
帰投要領は行きと同じでかまわない。ブリーフィングにしては大雑把だが、伝えることは以上だ。何か質問
はあるかね」
「ありません。これから着替えるので、ここらで電話も切ります」
「そうか。重ね重ね言うが本当にすまない。このミッションが終われば特別ボーナスでも出そう」
「いりませんよ。でも強いて言うなら」
「何かね」
「僕の家の近くで、サラダのうまい店を紹介してください。野菜が食べたい」

 突飛なリクエストが出たせいか、電話の先でかすかに笑う声が聞こえた。少し緊張が緩んだのか、彼は
笑いをこらえるように続けた。

「なんだねそれは。欲のない注文だが、僕には難問だな。荻窪にはあまり詳しくない」
「僕のミッションに比べればわけもないことでしょう、期待していますよ」

 真新しいステンレスのドアを開ける。室内の照明が自動点灯する。地下格納庫に出入りするスタッフは
ほとんどいないため、リノリウムの床にも足跡はなく、このロッカールームもあまり使われたことはない。
室内はしんと静まり返っている。

「素直にボーナスを受け取ってくれたほうが僕としては気楽なんだが、いいだろう。ただしいつになるかは
わからないぞ、僕も忙しい身だからな」
「できれば帰ってくるまでに探しておいてください。今夜の夕食、遥がいないから何か考えなきゃいけないので」
「帰ってくる頃にはもう店も閉まっていることだと思うがね」

 これは一本取られた。我ながら思いつきにしてはいいアイディアだと思ったのに。どうもこれは、当初の
予定通り一人で鍋をつつく羽目になりそうだ。

「そうか、じゃあ仕方ないな。ではこの辺で」
「くれぐれもよろしく頼む、グッドラック、キラ・ヤマト」

 彼は僕の本名を言って送り出してくれた。彼は最初からキラ・ヤマトを頼ってきたのだ、と思った。サラリー
マン研究員の深浪明ではない。ストライクフリーダムのパイロットとしての僕を。

 いや、彼には深浪明もキラ・ヤマトも変わらないのかもしれない。それは記号的な問題だ。深浪明がスト
ライクフリーダムを操縦してはいけない道理はない。だが、僕の中ではそこにははっきりした線引きが為され
ている。非日常を戦うのは、いつもキラ・ヤマトだ。
 僕のロッカーの鍵に8桁の暗証番号を打ち込み、タッチセンサーに指静脈を読み取らせる。スチール製の
扉を開けると、きれいにたたまれたパイロットスーツと、その上に乗せられたヘルメットが置かれていた。
オーブ軍の制式品だった。

 にわかに過去への感慨が沸き起こるが、それに浸っている暇はない。上着を脱ぎ捨てネクタイを取り、子供
の着替えのように脱いだ服をひっ散らかして着替えを急ぐ。パイロットスーツはツナギ式になっているので、
背広と違って着る手間はかからない。

 すみやかに着替えを済ませ、ヘルメットを小脇に抱えて部屋を出た。格納庫へは廊下を渡って奥の扉
だった。急がねばと思った矢先、口の中がカラカラに乾いていることに気付いた。汗もかき、息もまだ切れ
ている。ここは少し落ち着くべきだ。ミッション前にこの有様では、成功するはずのものも成功しない。

 僕はロッカールームに戻ってロッカーに押し込んだ上着から財布を取り出し、部屋の中の自販機でスポーツ
ドリンクを買った。ペットボトルの蓋を開け、一気に半分ほどを飲んだ。身体に水分が蘇る。もう300年も続く
大ベストセラーの飲料ベンダーの商品だった。味は嫌いではないが、飽きが来やすい。ゲータレードのほう
が好きだ。

 半分を残して蓋を閉め、それも持って再び僕は部屋を出た。奥の扉の前まで歩き、そこで格納庫への入場の
最終認証を受けた。虹彩、指紋、声紋、社員コード。ポーンと音が鳴り、認証完了。重々しい対爆扉が、轟音を
立てて開いた。

 かなりの広さのある空間だった。バスケットコートがゆうに8面は取れる。そんな中に、整備デッキや充電用
ケーブルなどが所狭しと備え付けられている。全てモビルスーツサイズ。場内中央には、巨大なモビルスーツ
用エレベーターもある。天井までは30mほどあり、そこから地表まで続くエレベーター路には三層の分厚い
隔壁があった。それらの隔壁を開口しながら、エレベーターが地表に出るまでには75秒かかる。地の底深く
作られたこの格納庫はメガトン級の核攻撃が直撃しても大丈夫だそうで、いざというときにここは4000人を収容
できる核シェルターとしても利用できる。だが普段ここに住んでいるのは人間ではない、モビルスーツだ。
そこは巨人たちの家だった。

 機数は3機あった。手前2機は実験用に持ってこられたGAT-04『ウィンダム』。制式仕様の頭部はどことなく
ストライクを思わせたが、これらには実験装備が満載されていてグロテスクな顔に変わってしまっている。古い
サイバーパンク映画に出てきそうなメカニカルな顔だ。整備員の間では『プレデター』とあだ名されていた。それ
に比べればストライクフリーダムはまだスマートな顔をしている。一番奥のハンガーに、それは立っていた。

 整備用タラップを駆け上がり、コクピットを開いた。シートに着き、マスターシステムスイッチをオン。コクピット
内の全天周モニターが明るくなる。G.U.N.D.A.M.Complex OS起動。全システムのオンラインを確認。OSに機上
チェックを自動で実行させる。エンジン始動、機体各部へのパワーフロー正常。原子炉臨界。搭載武装を確認
したあと、アーマメントセイフティのロックを解除。

 所内の自動管制システムとコンタクト。ハンガーのタラップが横に収まってゆく。飲みかけのドリンクの蓋を開け、
それを飲み干してからペットボトルを下に放り投げる。我ながら行儀が悪い。
 コクピットハッチを閉じ、ロック。ヘルメットをかぶり、機体をエレベーターまで進ませる。サスペンションのおかげ
であまり振動を感じないがそれでも、動き始めた、という感慨はある。エレベーターの位置に止まり、管制に上昇
をコール。オレンジの回転灯が回り始め、巨大な床が持ち上がる。しばらくエンジンをアイドリング。隔壁が次々
と開き、また閉じてゆく。

 エレベーターが上がる間にアクティブステルスを設定、次いでオートアーマーフェイズシフトをオフにする。航空
管制衛星にデータリンク。目標は現在、北緯26.401、東経142.120を毎時580キロで南に飛行中。航法システムに
最適コースを計算させる。しばらくすると正面の景色が、上から徐々に森に変わってゆく。エレベーターが止まった。

 管制に離陸クリアランスをコール。間もなくクリアランスを得る。一つ大きく深呼吸をする。頭の中で最後の
スイッチが入る。スティックを引き、スロットルをMAX、アフターバーナー点火。

 凄まじい加速Gとともに、ストライクフリーダムは離陸した。ノズル全開、ただちに急速上昇。身体が強くシートに
押し付けられるが、さほどではない。目指すは30000mの高空。

 幾層もの雲を突き抜け、あっという間に雲海の上に出た。スティックを戻して姿勢を安定させ、クルージングに
入る。今夜は満月だった。眼下に広がる雲海が月明かりに照らされて、幻想的な景色を作り出している。

 ストライクフリーダムの推進システムはDSSD(深宇宙探査機構)で開発されたソーラーセイルからスピンオフした
もので、いわば自己照射型レーザー推進とでもいうものだった。スラスターに設置されたレーザー発振機に主に
水を中心とした推進剤を投入し、それを爆発させて推進力を得る、というライトクラフトの一種だ。本来ならばレー
ザー発振機を外部に頼るところを、このシステムは自己内蔵していた。

 ストライクフリーダムを研究所に置くときに、僕は一つ注文をつけた。「絶対にこの機体を解析しないこと」。保管
場所に困っていたとはいえ、オーブの軍事機密が漏洩するのは避けたかった。だが、それを聞いた西条マネー
ジャーはにべもなく言った。「その機体の技術的立地を、我々はすでに2年前に通過している」。疑わしく思ったの
は最初だけで、あとは目を丸くするばかりだ。あそこではこの機体は時代遅れだった。

 それでも現行機の中で、ストライクフリーダムが未だ最強の部類に入ることは間違いはない。堅牢な機体構成、
同時多目標攻撃力、高速機動性能、作戦行動時間、どれを取っても群を抜いていた。量産性を犠牲にしてワン
オフ機体に仕上げただけのことはある。しかしそのために整備性はかなり劣悪で、部品もかなりの数が特注だった。
ただでさえザフト規格の部品が多いので、日本に来てから、整備のために必要な部品は性能を落とさない程度
に別規格のものに交換された。おかげで整備員の点検もしやすくなり、今日のようなスクランブルにも対応でき
たというわけだ。

 巡航コースに沿ったあと、目標を確認する。あれからそれほど動いてはいない、しかも速度が時速480kmに
落ちている。なぜだかはわからないが、これなら1時間で追いつけるかもしれない。高度は40000mまで上昇し
ている。再びアフターバーナーに点火。最大巡航。後ろに流れてゆく雲が速くなる。衝撃波が機体を揺らす。
 機体は音速を超えた。
 雲がなくなり、代わって暗い外洋が眼下に広がる。もう小笠原諸島の手前まで来た。レーダーは、もう目標の
機影を至近に捉えている。装甲のフェイズシフトをオン。

 どう考えてもおかしかった。目標はこの空域を旋回して留まっている。追撃の可能性があるので一秒でも早く
領空から出たいはずなのに、この輸送機はそうしない。どこかに艦船か潜水艦か、または水中モビルスーツで
も接近していて、積荷を投下するのを待っているのだろうか?ともかくこれで何者かと交戦する可能性は高く
なった。

 幸いなことに、背部に搭載されたEQFU-3X2スーパードラグーンは、大気圏内でも使用可能なように推力を
強化され、姿勢制御バーニアも増設されていた。以前は大気圏内ではデッドウェイトと思っていた標準装備が
使えるようになったのは大きなアドバンテージだ。これで敵部隊に囲まれても応戦できる。

 元々ストライクフリーダムは型番の上二文字(ZG=Zero Gravity)が示す通り、宇宙用だ。大気圏内では十分
な機動性を発揮できない。でもそれは敵とて同様だ、空中戦でこの機体と互角に張り合えるのは、兄弟機の
ZGMF-X19Aインフィニティッドジャスティスと、ザフトのZGMF-X42Aデスティニーしかいない。

 速度をM0.8まで落とし、高度9000mまで降下。輸送機を目視確認。少し文句を考えたあと、民間用航空無線の
周波数帯で、僕は呼びかけた。

「カーゴ04、こちらブルー01。貴機は予定コースを大幅に外れている。速やかに予定コースに戻られたし。
繰り返す、貴機は予定コースを大幅に外れている。速やかに予定コースに戻られたし。勧告に従わない場合
警告射撃を行う」

 案の定、返答はない。仕方がない、とシステムのマスターアームをオン。FCSが全天周モニタに半透明の
ウェポンセレクタを表示させ、そこに搭載武装が並ぶ。頭部機関砲を選択。輸送機右側へサイトを合わせ、
一瞬だけトリガーを引いた。

 曳光弾が引く火線が、輸送機の右翼を掠める。反応はない。輸送機は沈黙したままだ。

「カーゴ04、繰り返す、速やかに予定コースへ戻られたし。次の攻撃は外さないぞ」

 虚しいだけの警告だった。本当に誰か乗っているのか、と思うほど無反応だ。乗員全員がハイジャックに
関わっているのか、それとも邪魔な乗員は容赦なく殺してしまったか。今さらながら怒りが湧き起こる。

 再び攻撃準備、機関砲のサイトを右エンジンに合わせる。さすがに胴体部に当てて爆発したら、中にいる
人間はひとたまりもないだろう。敵とはいえ、できれば殺したくはない。墜落する前に脱出用パラシュートで
出ることができれば、生き残れる可能性もあるだろう。それに生き残っている乗員がいるなら、何とかして助
けてやりたい。
122通常の名無しさんの3倍:2007/09/14(金) 23:38:46 ID:???
自分で支援してみる
 しかしまさにトリガーを引こうとしたそのとき、異変が起こった。照準内に捉えていた右エンジンが、爆発
したのだ。推力が低下し、輸送機は降下を開始。エンジンからは炎が赤い舌を這わせ、煙がもうもうと
立ち上がる。

「カーゴ04、何が起きた、応答しろカーゴ04」

 相変わらず応答はない。そして返事の代わりに左エンジンも火を噴いた。降下速度がさらに速くなる。
エンジンには自動消火装置がついているはずだが、作動する様子はない。もはや輸送機は墜落を待つ
のみだった。泡を食った僕は、輸送機の下腹へ機体を滑り込ませ、輸送機を支えることを考えた。速やか
に下へ潜り、ストライクフリーダムの腕を胴体部に組み付かせる。こんなことで何とかなるかどうかは
わからない、だがやらないよりはマシだ。

 スロットルを全開に叩き込む。エンジンの回転数が一気に上がり、背中から伝わる振動が大きくなる。
高度は4600mで安定。輸送機は姿勢を水平に戻し機体の降下は何とか止まる。だが、このままいつま
でも支えられ続けるわけではない。しかも下は海だ、着陸もできそうにない。

 まさか追撃を振り切れないと思って自爆するつもりか。可能性はある。墜落させたあと他部隊が水中で
回収する、という段取りなのかもしれない。それならますます落とすわけにはいかない。

 どうする、と頭の中は対処法を探してフル回転する。その間にも燃料は減り続ける。いつまでも全開
飛行は続けられない。どうすればいい、どこか軟着陸できる場所はないか、小さな島でいい、わずかな
平地があれば――――。

 突然輸送機に新たな振動があった。またどこか爆発したか、と思ったが爆発音はない。かわりに胴体
後部の積み込みハッチが、ゆっくりと開いていくのが見えた。積荷を海中投棄する気か?それともそこ
から脱出するつもりか?脱出するならしてくれ、いくらかでもリスクが減る。そう思った。

 だが、ハッチから現れたものは、完全に予想を覆すものだった。GAT-Y01だ、完全に組み上がった
状態の。頭からゆっくりと海へ向かって落ちてゆく。それはスローモーションがかかっているようにさえ
見えた。月明かりを受けて黒く輝く機体は優雅で美しいが、まるで悪魔が生まれ出るようだった。

「なんであれがそこから出てくる」

 思わず僕はコクピットの中で叫んでいた。そしてそれは――――ノズルから炎を放ち、大きく翼を広げて
羽ばたき始めた。
124 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/14(金) 23:54:06 ID:???
ひとまず以上です、最後は携帯から送ったので鳥つけ忘れました。
長すぎて中編が出来てしまいました、すみません。
後編も出来上がってますが同じくらいボリュームがあります……

迷惑でなければ、また今夜にでも。


あと大沢在昌は考えときますw
個人的には藤原伊織が好きですが。
125通常の名無しさんの3倍:2007/09/15(土) 01:28:31 ID:???
>>Exploration
 投下乙です。
 Exploration〜は読後の余韻に浸れますね。上手く感想がかけませんので此処まで。

>>歌姫
 投下乙です。
 ミーアが感じていただろう深刻なコンプレックスを理解していないラクスが
本気で恐かった。死後にこんな事されたら死ねる……あれ?
 でもグゥレイトゥで空気が緩和されました。やはり冥台詞と言う事か。
 ――を入力するのが面倒臭ければ、「だ」か何かで変換できるようにしてみては?
意外と快適です。

>>河弥
 投下乙です。
 オリジナル展開が深まってきて、期待感が高まっています。
シンよりもキラの方が傷が深い辺りにラクスの(いない)効果が出ているとおもいました。
 GJ。

>>弐国
 投下乙です。
 「砂漠を走る!」ではいまいち影の薄かった姉さんですがまさかこんな過去があったとは。
婚約までしておいて「姉弟になりましょう」で蛇の生殺しを味わったエディは年上に懲りて
ミツキに手を出した……と。成る程。
GJは専ブラの調子が直り、エディと姉さんのベッドシーンが描かれた時に。
ちなみに私はギコナビです。

>>lunatic
 投下乙です。これはエロイ……だがそれがいい。
 明言はされていませんが、この人はひょっとしてカガリですか?

>>次波
 投下乙です。タイトルつけましょう。
 ストフリが飛ぶ辺りの描写が緻密で単純に手間をかけているとは思います。
細かすぎる位です……数値を出しているあたり。
 これ以上はかなり長くなりそうなんでチラ裏に書くべきか……。

 そういえばテンプレは無修正でよかったんだろうか? 夜中に書いたから
余計な事を書き加えていた気がするのだけれど。

「キラ君、そこら辺にしておきたまえ。その輸送機はもはや無人だ」

 聞き覚えのある声から通信が入る。普通の航空無線や軍用無線ではない、量子通信だ。通信プロトコル
はTQCバージョン1.13。研究所で使われている最新のものだった。

「早く輸送機から離れたまえ。燃料がもったいないだろう」
「西条マネージャー、なんであなたが」
「なに、ちょっとした老婆心でね。それにこんなところで君に死なれると予定が狂う」

 即座に輸送機の胴体から手を離し、スロットルを絞る。機体を真下へ振り向かせて降下、続けて緩やかに上昇。
高度6000mまで来て、上昇を停止、機体を休める。輸送機は再びゆっくりと降下を始める。GAT-Y01も高度を上げ、
今はこちらとほぼ同高度に滞空していた。

「予定とはどういうことです、何の予定です」
「これから行われる、プレゼンテーションのことだよ」
「プレゼンテーションだ?冗談もほどほどに――――まさか」
「そのまさかだ」

 通信先の声の主が変わった。つい2時間前まで、研究所で聞いていた声だった。

「アズラエル社長、あなたまでどうして」
「どうしてもこうしてもない、西条君がプレゼンテーションのためと言ったろう。君はまんまと僕の口車に乗って
くれた。感謝している」

 彼の口調には寸刻前のそれと違い、嘲りの色が混じっていた。心の中で、にわかに怒りの炎が燃え始める。
今はそれを抑えつつ、僕は続けた。

「どういうことか説明してもらえるんでしょうね」
「いいだろう。これから君には実験用モビルスーツGAT-Y01『ヴェスパタイン』との処女飛行兼実戦テストの
アグレッサーになってもらう」
「ヴェスパタイン?」
「あのモビルスーツのペットネームだ。そうそう、ここまでのハイジャック騒ぎは全部嘘だから安心したまえ。
だがあの輸送機には誰も乗っていない、というのは本当だ。オートパイロットで操縦されている」

 ヴェスパタイン。英語の形容詞で意味は『日暮れの、夜行性の』。転じて日没や、夜行動物などの意味でも
使われる。全身が黒に彩られたGAT-Y01にはふさわしいかもしれない。いつの間に名前なんかつけたんだ、
誰がつけた。しかし今はそんなことはどうでもいい。

「そんなことをやらせるために僕をここまでおびき出したんですか」
「仕方ないだろう、ああでも言わないと君はテストに参加してくれそうになかった。サラダのうまい店、は傑作
だったな。後ろで聞いていた西条君が笑いをこらえるのに必死だった」
「実戦テストと言いましたね、どこまでやる気です」
「そりゃあもちろん、ストライクフリーダムを撃墜するまでだよ。もちろんヴェスパタインが撃墜される可能性
もあるが、それは君の腕次第だな」
「それは僕を殺す、という意味ですか」
「そうだ」
 即答だった。彼はそれが当たり前のように答えた、僕を殺す、と。怒気が一気に沸点まで上昇する。彼らの
あまりの傍若無人さに、身体中が怒りに震えた。

「ふざけるな、あなたの勝手な都合で殺されてたまるか。今どこにいる、叩き出してやる」
「そう、その意気だ。それぐらいファイトを燃やしてくれないと、テストにならない」

 西条マネージャーがせせら笑う。それにアズラエル社長が続く。

「僕たちはそこからずいぶん離れた船の上で、君を見ている。ミラージュコロイド装備の観測用ドローンが
そこにはうようよしているから、ストライクフリーダムの動きも逐一わかるというわけだ。そういえばもうすぐ
輸送機も落ちそうだな」

 言われて眼下の輸送機に目を向けた。もう影が海面に映っていた。次の瞬間、激突。巨大な水柱があが
る。轟音とともに両翼がバラバラになり、胴体が真っ二つに折れる。目を覆いたくなるような、陰惨な末路。

「ではもう一つ、君のモチベーションを高める材料を提供しよう。紹介したい人がいる」

 また声の主が変わった。トーンの低い、しわがれた男の声だった。

「初めまして。大西洋連邦軍統合参謀本部、第8部長のクリフォード・ヒューズだ。主に軍の編成や評価を
担当している」
「大西洋連邦のお偉いさんが、僕に何の用だ」
「これはまだ極秘事項なのだが、君にはその青写真を提供しよう。戦術データリンクを開きたまえ」

 量子通信でファイルが送られてくる。最初のページには『TOP SECRET』とある。何かの計画書のようだ。
読み進めていって、僕は息を呑んだ。その内容は悪意に満ちていた。

「これは、オーブへの侵攻計画書か!」
「そうだ、オペレーション・デイブレイク。まだ骨子は決まっていないが、この作戦にはGAT-Y01を元にした
量産機を投入しようと考えている。機数はそうだな、100機から120機は欲しい。しかしここであれを撃墜す
れば、開発は大幅に遅れることだろう。君もオーブに逃げ帰れて、この作戦を伝えることもできる」

 今まで日本にいた自分を呪った。まさか、自分がオーブを破滅へ向かわせる手伝いをしているとは。これ
はもう、どう償っても償いきれない大罪だった。何が深浪明だ、何がサラリーマン研究員だ。実のところは
ただの売国奴ではないか。しかし八つ裂きにされる前にやることがある。何としてもここであれを撃墜しなけ
ればならない。そしてオーブに戻り、ラクスたちにこの事を伝えなければならない。その後は粛々と、壁の
前に立とう。

「あなたたちは悪魔だ。いや、それ以上だ。邪悪の塊だ」
「何とでも言いたまえ、どのみち君はもう用済みだ。それに、君には最初からこのために開発計画に参加
してもらっていたようなものだ」
 冷ややかな声で西条マネージャーが言う。
「僕らにとって幸いだったのは、君がストライクフリーダムを持ってきてくれたことだ。現行機の中でもトップ
クラスの戦闘能力を持つあれは、新型機の評価を得る上ではいい比較材料だ。なおかつ、このような席で
プレゼンテーションを行う際にはいい見世物になる」
「我が軍のブルーズ(ブルーエンジェルス)を知っているだろう、あれのアクロバットは見事だが、実戦ほど
見ていて面白いものはない。今回は楽しく見物させてもらうよ」
 自分への怒りと、彼らへの怒りで身体が爆発しそうだ。悔しさのあまり歯がギリギリと音を立てる。これ
ほど他人に殺意を覚えたことも、かつてなかった。

「さて、そろそろお話はお開きだ。最後に君にヴェスパタインのパイロットを紹介しよう」

 アズラエル社長が言った後、通信が切り替わった。

「こんばんはキラ。しばらく見ないうちに、ずいぶんな心境の変化のようね」

 声を聞いた瞬間、もう何もかも否定したくなった。今のこの状況はなんだ、悪い夢を僕は見ているのか。
神様とやらが本当にいるのなら、今このときは僕に背を向けて見ない振りでもしているのか。日本に来て
から最も信頼を寄せていた彼女が、これから僕を殺しにかかるなんて。

「なんで君が、そのモビルスーツに乗っているんだ」
「それはこのプレゼンの責任者が、私だからよ。私はJGEMプロジェクトの広報責任者、顧客に適切な
情報開示をしなければならない」
「そんな答えは――――」
「あまりお客様を待たせちゃ悪いわ。キラ、データリンクを開いて。君はヴェスパタインの全スペックは知ら
なかったわよね。フェアじゃないから、今からその概略を送る。2分の時間をあげるから、有効に使いなさい」

 慌ててデータリンクを開き、ファイルを受け取る。怒りと悔しさと絶望で、目から涙が溢れてモニターも
よく見えない。涙を拭いながら、必死に敵機の情報を読み取る。しかし、それを知れば知るほど、絶望は
より深くなっていく。なぜ遥がヴェスパタインに乗れるのかはわからない。だが彼女の技術が未知数に
しても、この性能差は一体なんだ。撃墜できるものならやってみろと言う辺り、彼女も腕に相当の自信が
あるのだろう。すると、ストライクフリーダムと僕の組み合わせが、相手のそれを上回れるかは怪しい。

「2分経ったわ。開始のゴングが欲しいわね、マネージャー、頼めます?」
「かまわんよ。深浪君、準備はいいかい?」
「いつでも」
「キラ君はどうかね?」
「勝手に鳴らせ、下衆野郎」
「カーン」

 イカサマ勝負が始まった。
 開始直後、敵機は左方向へ90度旋廻上昇、それを目掛けてストライクフリーダムはズーム上昇。レーダー
モードをスーパーサーチへ。ドッグファイトモード、オン。三次元ランチャーコントローラ、スタンバイ。敵機は
そのまま続けて大G旋廻。追撃をかわして後ろを取ろうとする。こちらは8Gで引き起こし一気に急上昇、
機体を翻してターゲット上方からオーバーヘッドアタック。ビームライフルを三射撃、敵機回避機動。初撃
はうまくかわされた、反応は鋭い。そのままストライクフリーダムは急降下、敵機上後方300mへ占位。
リアタック、トリガーを引く。敵機、左へ回避。レールガンがそれを捉え、ボアサイト、射撃。敵機は回避機動
に続けてロール。これもかわされた。

 機動中のヴェスパタインの機体周辺には、進行方向に円錐状の白い空気の膜が見える。ゲシュマイディッヒ・
パンツァーの応用で薄いビームバリアを形成し、空気抵抗を減殺しているのだ。さらにはそのビームバリア
を収縮させ、局所的なビームシールドとしても使うことが可能らしい。ほとんど推力だけで飛んでいるストラ
イクフリーダムにとってこの差は大きかった。

 敵機は機首上げ、6G上昇で駆け上がり途中で機体をひねって向きを変え、僕を追ってくる。ストライク
フリーダムはそのまま急旋回、敵側方へ回り込む。それに反応して敵機旋廻、互いに回り込む形になった
ところで、敵のノズルから出る炎が、突然向きを変えた。

 その瞬間、慌てて機体をダイブ。ストライクフリーダムの頭の上を、赤い光の線がなぎ払った。敵の腕部
レーザーガンだった。ダイブから機首を起こして右へ旋廻上昇。上昇中、次々と襲い来るレーザーが機体
を掠める。まるで無限遠のレーザーカッターだ。姿勢制御バーニアで機体を左右に蛇行させながら、必死
にかわす。Gがきつい。

 あやうく真っ二つにされるところだった。あの時、高速機動中のヴェスパタインが突然向きを変えられたの
は空力性能に加えて、背部の三次元ベクタードノズルのおかげだ。通常モビルスーツは足の裏にマウント
されたスラスターを推力偏向用として使うことができる。ヴェスパタインはそれに加えて、メインスラスターの
ノズルまでかなりの範囲で偏向可能だった。ストライクフリーダムの両翼のスラスターもその機能はあるが、
ひどく大型化しているため抵抗が大きく、そんな芸当はできない。今、機速は互いに音速を超えている。
普通のモビルスーツがこんな状態で無理に機首を横に向ければ、衝撃波をまともにくらってフレームが
歪むところだ。さらに遥のセンスも高い。どこで腕を上げたのか知らないが、かなりの技量だった。

 同高度まで上昇しきって、敵機の後ろ600mに占位。敵機は右60度旋廻降下。ストライクフリーダムはそれ
を追撃。敵機は増速してこちらを引き離そうとするが、スロットルを上げ、これに食らいつく。機速が一気に
M1.8まで上がる。

 脳裏に遥と過ごした半年間が蘇る。僕は遥を、一つ屋根の下の家族として信頼していた。だが遥は僕をどう
見ていたのか。彼女にとって、僕はただのモルモットに過ぎなかったのか。聞かずにはいられなかった。

「遥は、僕を何のためらいもなく撃てるのか。僕は未だに信じられない」
「まさか今さら、君は私を撃てない、なんて言いだすんじゃないでしょうね」
「じゃあ君は平気で撃てるんだな、それなら僕にも覚悟が――――」
「一つ忠告。君には、戦闘中に敵パイロットとおしゃべりする趣味があるのかしら?死にたがっているように
見えるわよ。生き残りたかったら、もっと戦闘に集中することね」
 声は普段の遥から想像がつかないほど冷淡だった。今の遥はもはや僕の知っている遥ではない。忠告は、
僕の質問への一つの答えと受け取った。最後まで残っていたわずかな未練が消え、頭の中で怒りが弾け、
アドレナリンが脳に充満する。あの『SEED』と呼ばれる感覚が身体中に満ちてくる。もう容赦はしない。

 機動兵装ウィングからドラグーンを全基射出、Mk-1からMk-8まで各基展開。8基のドラグーンが敵方へ向け
て猛然とダッシュ。立体画像の3次元ランチャーコントローラがモニタに半透明表示される。続けて、機動兵装
ウィングがサブスラスターとしての機能を発揮し始める。Gリミッタ解除。最大機動が可能になる。

 敵機バレルロール、ストライクフリーダムもそれに続く。後方占位は変わらない。ドラグーンは最大速度で
敵機に迫る。Mk-1、Mk-5が先行、他もそれに続けて追撃。先行する2基が後方300mまで接近、敵機自動ロック
オン、射撃。敵機は横滑りでそれを回避、そして7Gで急速に機首を上げループ、ストライクフリーダムの後ろに
食いつこうとする。Mk-4、Mk-7、Mk-8の3基がバーニアを噴かせて急速反転、上方でループ中の敵を狙い撃つ。
またしても敵のノズルが素早く左へ向き、この攻撃を回避。右後方1500mに付かれる。左右に機体を振りながら、
敵のロックオンをかわす。

 後ろを取ったくらいでいい気になるなよ。FCSから複列位相ビーム砲を選択、チャージ開始。加えてビーム
ライフル2丁を連結、これで一撃の威力が大幅に増す。ドラグーンはMk-1、2、5、6の4基が敵機を追撃中、
残りは自機に戻してチャージ。見かけの上では挟み撃ちの形になった。

 スティックを思い切り引きペダルを踏み、スラスターノズルを大きく上向きへ。身体を殴りつける強烈なGに歯を
食いしばり、逆上がりをするように瞬時に視界の上下前後が逆になる。逆さ状態で敵機とヘッドオン。ターゲット、
ボアサイト。トリガーを引いた。

 強烈な光条が目の前をほとばしる。ストライクフリーダムの武装の中でも、腹部の複列位相ビーム砲は最大の
威力を持つ。しかし敵機はこれに素早く反応、ダイブでかわされる。ここまでは予測の範囲だ、すでに射撃体勢に
あったビームライフルがヴェスパタインを捉えている。同時に敵後方のドラグーン4基も自動ロックオン。強敵だった
が、ここまでだ。今まで謀った報いを受けるがいい。

 一斉に火線が敵機の頭上に向かう。それは必殺の攻撃のはずだった。だが――――。

 敵の周囲を包んでいた空気の層が着弾前に縮退、機体上面にビームシールドを形成した。ビームはまるで吸い
込まれるように、そのシールドによってかき消される。もちろん敵は無傷だ。思わず舌打ちを鳴らす。

 しかし敵機は空力用のバリアを解除したことで、急激に速度を落とした。それを見逃さず、こちらも急降下、敵に
肉薄する。ドラグーンは全基回収。敵は再びバリアを形成して増速、急速離脱。スピードの伸びが凄い。核融合推進
『Direct Fusion Thrust』の加速性能は折り紙つきで、推力重量比が高いのもあいまってその加速力はストライク
フリーダムの比ではない。間もなく音速を突破、近接攻撃のチャンスは失われてしまった。
 眼下の太平洋には、もう小笠原諸島の母島が見えていた。いつの間にかこんなところまで飛んできてしまった
ようだ。ここにはかつて東アジア共和国の軍事基地があったが、再構築戦争で核攻撃を受けて壊滅、地形も
すっかり変わってしまい、周辺の小島は消え失せてしまった。放射能汚染も進み、現在ここに住んでいる人は
いない。荒涼とした風景が広がるだけだ。

 もしあの侵攻計画が実行に移されれば、オーブもこの島のようになるだろう。到底看過できるものではない。
なんとしても僕はここで、あれを撃墜しなければならない。スティックを握る手に力が入る。

 追撃の手は緩めない。今度はこちらが後ろを取った。チャージが完了し、再びドラグーン展開。敵機は速度を
保ちながら左右に振れている。ドラグーンが敵へ向かって突撃。敵は機首を上げた。

 それはまさしく電光石火だった。ヴェスパタインのノズルが上を向いたかと思うと、あっという間に頭上で宙返りを
行いオーバーシュートされた。完全に出し抜かれた僕は、スティックを倒してスロットルを全開にし、パワーダイブ。
しかしドラグーンは追従しきれず、逃げ遅れた4基がレーザーで撃墜されてしまった。

 背筋が液体窒素に触れたように凍りつく。あれはクルビットだ、推力偏向能力をフルに使い、極めて小さい
宙返りを打ちわずかに停止、そして失速せずに水平飛行に戻る、ポストストール機動。戦闘機であれをやるのは
何度か見たことがあるが、モビルスーツでは前代未聞だった。原理上、追撃されているときに行えば相対速度の
差で後ろを取れるが、有効性は怪しいと言われる。それを実戦で超音速機動中に、だ。神業と言うほかはない。

 恐怖に駆られている暇はなかった。ロックオン警報、後方に10機、高速熱源。短距離空対空高速ミサイル。
あのミサイルは対フェイズシフト装甲用・高熱量型だ、ビームシールドで防げば爆炎で装甲まで溶かされる。
この状況では撃墜するしか手はない。

 アフターバーナー点火、一気に海面へ向かって急降下。ミサイルとの相対距離を詰められる時間を稼ぐ。
高度計が猛烈な勢いでカウントを下げる。十分に加速した後、スロットルを絞る。降下は自由落下にまかせて
バーニアで上へと振り向き、頭部CIWSとドラグーンで自動迎撃。機関砲が唸りをあげ、ミサイルの弾頭目掛けて
火線が伸びる。

 CIWSの残弾が空になるも海面衝突寸前で何とか間にあい、爆風が頭上で吹き荒れる。衝突を避けるため
スラスターを始動、海面すれすれを背面飛行、水しぶきがあがる。ようやくかわしきった、とわずかに安堵したが、
甘かった。敵機急速接近のアラートが出ると同時に、バリアで爆風を切り裂いてヴェスパタインが突撃してきた。

 ビームサーベルを抜く暇もなく組み付かれ、そのまま加速しストライクフリーダムは前方の母島の丘へと押し
込まれた。敵は地上への激突を避けるため、ご丁寧に離れ際にキックまで入れて離脱。強烈な衝撃とともに、
荒地の上へ叩き付けられる。同時に追ってきたドラグーンも地面に激突し、これで8基全てが破壊されてしまった。

 OSが自己損傷チェック。左主翼の第1アクチュエータに異常、第2に切り替え。右主翼のアクチュエータは全滅、
パワーフローカット。腰部右レールガンのリニアモーター破損、これもパワーフローカット。ビームライフルは衝突
のときに跳ね飛ばされて、既にない。フェイズシフト装甲のおかげで機体フレームやエンジンには大きな損傷は
なかったが、主翼の片方が死んだのは痛い。再び空戦を行えば勝ち目は薄い。残る武装はレールガン一門と
ビームサーベル2本、腹部複列位相ビーム砲のみだった。
 立ち上がり、敵機を見据える。距離300m、未だ一回の被弾もなく、悠然とした姿でそこに立っている。月明かりが
美しいシルエットを映し出すが、今は悪魔そのものに見える。右マニピュレータの手のひらを返して、人差し指で
わざとらしく手招きをした。遊ばれている。

 生き残った腰部左レールガンをサイティング。一発射撃すると、敵は右へ跳んだ。その方向へこちらも突撃、FCSは
近接戦闘モードへ。両方のビームサーベルを抜き、敵機に肉薄。敵のサイドを取り、右のサーベルを振りかぶった。

 敵が急停止し、自機の右腕を掴まれたのはわかった。その後突然機体が中に浮き、景色が一回転した。
凄まじい金属の断裂音のあと、再び地面へ激突。機体を揺さぶる衝撃と同時に、けたたましいアラームが
コクピット内に鳴り響いた。OSの機体情報は、右腕全損を伝えていた。モニタから、敵がストライクフリーダムの
右腕を無造作に投げ捨てるのが見えた。

 一体何が起こったのか、すぐには把握できなかった。そうだ、敵に掴まれたあと投げ飛ばされ、右腕の肩関節が
可動範囲外にまで曲げられたため機体重量の生み出すモーメントに耐え切れなくなり、疲労断裂を起こしたのだ。
さしものフェイズシフト材料で作られたフレームもこれには形無しだった。まるで柔術か合気道だ。ASURAの高い
機体制御能力を、遥は自在に使いこなしていた。

 ここは離脱して距離を取らなければ、やられる。近接戦闘では勝てない。本能的にそう感じ、空へと逃げる。そもそも
ストライクフリーダムは射撃戦へ特化した機体だ、兄弟機のインフィニティッドジャスティスとは違う。

 地上から赤い光条が次々と飛んでくる。回避機動を取るが、右主翼が動かないためにかわしきれない。右足へ被弾、
次に左主翼をレーザーカッターで切断された。メインスラスターにも直撃、推力が急激に下がり、失速寸前。エンジン
緊急停止。続けて左足も脛から下を切られた。エンジンを再始動させている暇はない。撃墜の危機が迫る。

 敵機がこちらへ向かってくる、とどめを刺す気だろう。脱出装置はストライクフリーダムには付いていなかった。
どのみち脱出したところで、レーザーで身を焼かれるだけだ。

 なんでこんなに諦めが早いのだろう、全てに絶望したからか。国を裏切り、友を裏切り、愛する人も裏切った。新しく
手に入れた全てには裏切られた。当然の報いだと思う。遥が言った、『死にたがっている』というのは正鵠を得ているのだろう。
未練が残るか残らないかの違いに過ぎない。

 ラクスの笑顔が目に浮かぶ。もう謝る言葉も思いつかない。僕の犯した罪を知って、思い切り罵倒してくれればいい。
僕は君に愛される資格のない、情けない男だ。だが願うことが許されるなら、生き抜いて欲しい。幸せに天寿を全うして
欲しい。僕にはもう――――。
「キラ、まだ生きてる?」

 突然、遥の声がコクピットに響いた。何だ今さら、僕の遺言でも聞いてくれるのか。それとも命乞いを聞いて笑いたいのか。

「――――言い残すことなら何もない。さっさととどめを刺せばいい」
「そうじゃない。私は君を助けたい、今すぐコクピットから飛びなさい」

 彼女の声は必死だった。だが、それで何度騙されたかわからない。この土壇場での助命の言葉など、信用できるはずがなかった。

「何を言うかと思えば、どこまで僕を馬鹿にするつもりだ。あれだけ裏切ったのにまだ騙し足りないのか」
「違うわ、他の全てが嘘でも、これだけは本当よ、信じて」
「君の何を信じろっていうんだ、嘘の塊じゃないか。なら君の存在も、あのプロジェクトも、オーブへの攻撃も全部虚構に
なってしまえばいい。嘘は嘘らしく、早く消え失せろ」

 それまでのやり口を否定するようなあまりに無責任な言葉に、僕は激昂した。コクピットの中が全て怒気に満たされる
かのような、激しい怒りが迸る。怒りに任せて拳をコンソールに叩きつける。しかし僕の罵倒にかまわず、必死の声で遥は続けた。

「半年前に君が私の家に住むことになったとき、素直に嬉しかったわ。私に一人、家族ができた、って。それは必要に
迫られてのことかもしれないけど、私にとっては大きな幸せだった。一緒に食卓を囲んで、一緒にテレビを見て、一緒
に世間話ができて。でもここで君を失えば、私はまた一人ぼっちになってしまう。朝起きておはようを言う相手も、ごはん
を一緒に食べることも、何もかもなくなってしまう。もうそんなのは嫌よ、私は君を失いたくない。
私を一人にしないで、キラ・ヤマト!」

 反射的に、右手はコクピットハッチのオープンボタンを押していた。この期に及んで僕は何をしているんだ、と自問しながら。
矛盾している自分の行動に、何とか理由をつけようとする。さっきの遥の言葉が信用できるのか――――できない。これは
僕の、生き残りたいという本能からの行動だ。

 ――――いや、やはり最後に遥を信じたくなったからだ。僕はどこまでも甘い男だ、なら最後まで馬鹿を通してやる。
ここで機体の爆発に巻き込まれるのも、騙されて身体をレーザーで焼かれるのも、どちらも死ぬには変わりない。なら
最後の瞬間まで僕は遥を信じてみよう。彼女の僕を失いたくない、という言葉を。不思議とさっきまでの怒りはもう、どこか
へ消えていた。

 ハッチが開いて、眼下の海を見据える。強烈な風がコクピットの中へ吹き込む。機体は高速で落下中、目の前で
ヴェスパタインが並んで降下している。もはや一刻の猶予もない。入り口に足をかけ、覚悟を決める。僕はダイブした。

 落下しながら振り向くと、ヴェスパタインの右腕がまばゆい光に包まれるのが見えた。それはストライクフリーダムの頭部を
捉え、首を切り裂いた。そして光の刃は流れるように右足に移動し、ヴェスパタインは脚を上げ、身体をひねった。

 一閃。後ろ回し蹴りを包んだ光の刃は、ストライクフリーダムの胴を横真っ二つに切り裂いた。機体は分解して落ちてゆく。
やがて、自動自爆装置が作動、機体は爆炎に包まれる。愛機の壮絶な最後だった。

 爆風のショックが空気を走り、それは僕の身体を直撃した。海面に向かって見えないハエ叩きで殴りつけられるような、
強烈な衝撃。全身を痛みが走り、声にならない呻きをあげる。脳震盪も起こしたようだ、何も考えられなくなる。このまま撃た
れれば楽に死ねるんだろうな、と自嘲気味に思う。意識を保っていられない、眼が閉じようとする。意識を失う直前、黒い影が
月の光を遮ったのがわかった。そうか、お前は悪魔で、僕を地獄に迎えに来たんだな。最後にそう思い、そこで僕の意識は
途切れた。
 意識が戻ったのは、固いベッドの上だった。目をあけようとするが、光がまぶしくてなかなかあけられない。焦点も合わない。
それでもしばらくすると、ぼんやりと定まってベージュの天井が見えた。ここはどこだ、地獄か、この世か。間違っても天国
じゃないだろう。身体を動かそうとすると全身に痛みが走り、思わず呻く。どうやら全身に打撲を負っているようだ、だが五体
満足という身体の感覚はあった。身体があるということは、僕はまだ死んではいないらしい。

「あら、気が付いた?」

 かすかに女性の声が聞こえた。まだ頭の中は混乱したままで、何が起きてどうして僕がここにいるのか、整理がつかない。
記憶もあやふやだった。最後に覚えているのは爆風が僕を襲ったらしいことだ。しかしそれは、何の爆風だ?

 声の主は遥だということに気付く。僕は声にならない声で、彼女に聞いた。

「ここは、どこ?」
「『日南貿易』っていうダミー会社の所有している大型貨物船の、医務室。まだ動かないほうがいいわよ、全治2週間の打撲らしいから」

 全治2週間。2週間たてばこの痛みからも開放されるのかと思い、その数字はひどいのか軽いのか、とさらに自問した。
まあ、実際は1週間もすればだいぶ楽になるだろう、今でも無理すれば動かせないことはない。そう思って首を横に向けた。

 いたっ、と苦悶の言葉が口をついて出た。だが、思っていたほどの痛みでもない。寝違えたときに比べればまだマシだ。
視線の先に、黒のピンストライプのスーツを着た、遥が足を揃えて丸椅子に座っているのが見えた。お気に入りのマックス
マーラのパンツスーツだ。彼女は心配そうな表情で、僕の顔を覗き込んでいる。

 それで全て思い出した。僕はアズラエル社長たちに騙されてGAT-Y01『ヴェスパタイン』と交戦し、撃墜された。そして
こうしてここで寝ているということは、遥が僕を助けてくれたということだ。彼女は、最後に嘘はつかなかった。

「どうもその顔だと、今の状況を理解したようね。安心なさい、君は殺されたりしない。それどころか今までの身分も
そのまま。社長やマネージャーたちが言ったことも全部嘘、オーブへの侵攻計画なんてありえないわ」
「本当かい、それ?」
「信じなさい、西条マネージャーがわざわざ今回のために大芝居を打ったのよ。ちょっと過剰演出だったけど。詳しい
説明は、あとで社長からあると思う」

 にわかには信じられなかったが、ひとまずここは遥を信用してみよう、と思った。もちろん聞きたいことも山ほどあるが、
検証できる材料が今はないし、何より身体がこの有様では何もできない。この遥も、朝に駅で見送った遥と同じに見えた。
さっきまで死闘を演じた相手とは別人のようだ。
「ところで、君は社長に『サラダのおいしいお店を紹介しろ』っていうリクエストを出したらしいわね」

 半分笑い声で遥は言った。

「そんな馬鹿みたいなこと、僕は言ったかな」
「とぼけても無駄よ、私も社長の後ろで電話を聞いていたんだから。で、お店のものじゃないんだけど」

 そう言って彼女は、部屋に置かれた冷蔵庫から何かを取り出した。ステンレスのボウルのようだ、上にはラップが被せてある。

「これ、ここの食堂にあった有り合わせのもので作ったの。食べられるかしら?なんなら私が食べさせてあげようか」

 ラップを取って、ボウルの中を僕のほうへ向けた。中はレタスやキュウリ、トマトなどの入ったグリーンサラダだった。
甘酸っぱいシーザードレッシングの匂いが、鼻腔を刺激する。思えば夕方から口に入れたのは、スポーツドリンク一本
だけだった。遥の後ろの壁にかけられた時計の針は、一時を回っていた。まだ胃の中にチキン南蛮が残っている気が
したが、いい加減小腹も空いた。

「いや、無理してでも自分で食べる。赤ちゃんじゃあるまいし」

 強がりを言って、と困った顔をして彼女はボウルの中のフォークを差し出した。全身に走る痛みに耐えながら起き
上がり、それを受け取る。次いでサラダボウルも。フォークをレタスに突き刺し、口に運ぶ。もしゃもしゃという咀嚼音
が頭に響く。

「お味はいかが?」
「いつもと変わらない。でもたぶん、社長が紹介してくれる店よりはおいしいかな」

 そう答えると、遥は朗らかに笑った。
136通常の名無しさんの3倍:2007/09/15(土) 21:20:46 ID:???
C
137通常の名無しさんの3倍:2007/09/15(土) 21:26:38 ID:???
俺、この話はディスプレイじゃなくて紙面で読みたいな
同人とか出さないの?
138 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/15(土) 21:35:37 ID:???
以上です。長々と駄文を失礼しました。
後編は神林先生と鳴海先生を意識してみましたが、見事に失敗しておりますw
まだまだ文章力が足りないようです…
大沢先生のときはもっと推敲を重ねるようにしますw

タイトル決まりません。
中二病な話を書いているくせに、気の利いたタイトルを思いつきません。
次回までには考えておきます。

>>125
たしかに細かいですね…すみません。
しかも数字はかなりちゃらんぽらんに設定しています。
見る人が見ればすぐウソがばれるでしょうw

>>137
昔、FLASH媒体とかで映像化したいとCG学んでたこともあったさ、でも挫折した
俺オワタ\(^o^)/
139hate and war ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/16(日) 00:33:10 ID:???
“少年 A”

 親父は小さな町工場の社長だった。額から汗水流して油だらけになるまで仕事をしていた親父は俺の誇りだった。
 MSを作る機械の部品を作る仕事を取って来て、嬉しそうに顔を綻ばせていたのを覚えている。
 その仕事で会社は潤って社員にボーナスを出したところで全てが終わった。
 どこぞの阿呆がご高説を一席ぶってくれたお陰で、親父はロゴスとやらの関係者だとか言われた。
 間抜けな連中が群れをなしてやって来て親父の工場はわやになった。
 耳を塞ぎたくなる様な罵声、骨が砕けて肉が潰れる音、真っ赤なぼろ雑巾みたいになっちまった親父。
 淫らな嬌声、汚ならしい水音、何十人もの男に乱暴されるお袋と姉ちゃん。
 泣き叫ぶ俺、下卑た笑いを浮かべて後ろから俺を貫く変態ども。
 全てがその日に終わった。
 親父は自分が作り出した血の池で溺れて土左衞門になって、それを見たお袋と姉ちゃんは梁から吊した紐にぶら下がって遠い国へと旅立った。
 俺だけが一人残された。世界が俺の家族を皆殺した。世界が俺の運命をぶち壊した。
 世界が俺に喧嘩を売るなら上等だ。その喧嘩、買ってやる。
 お代は俺の生命。
 俺が世界を潰すのが先か、世界が俺を潰すのが先か。
 答えなんていらねえ。俺はこの身が八つ裂きにされても世界を潰してやる。

 だけど俺みたいな若造がイキがってみたところで所詮は負け犬の遠吠え。
 あの手この手で悪巧みを企んだけれどそれだけで終わった。
 俺の知らぬ間に世界という舞台に立つ主人公は阿呆からズベ公になっていた。
 仇を取る心算が阿呆は間抜けにも自滅していた。

 阿呆が消えても喝采を送る気にもならない三文芝居が舞台の上で続いている。
 気に入らない。全てが気に入らない。
 俺の家族が死んだのに、世界が続いているのが気に入らない。
 憎悪で気が触れそうなのに、変わる事なく世界が続いているのが気に入らない。
 阿呆にとどめをさせなかった自分が気に入らない。
 自分自信が気に入らない。
 仕方無い。腹を括って首を括るか。
 死んで鬼となって世界を呪い潰す。ついでに阿呆も地獄でもう二、三回潰す。
 そうすれば少しはこの憂さもすこしは晴れるだろうよ。

 all over with him.
140 ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/16(日) 00:35:39 ID:???
急にヘイト物を書きたくなったので書いてみた。
毎度毎度の事ながら血迷ってますね、自分。
141通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 00:51:18 ID:???
>>HATE
これもシリーズ化すんの?ちょっと期待してみる。
貴方のSSの独特の雰囲気は結構好みw
病んでる人間の描写は純粋に凄いと思います。
142通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 01:31:01 ID:???
>>次波
 投下乙です。
 タイトルがついていないので脳内では次波と読んでおります。
 ストフリとオリMSの戦闘シーンに雪風チックな表現を感じたのはその所為ですか。
てっきりストフリのAIがオリMSに自分を移植して自爆→排出されたキラ廃人まで行くのかと……

 純粋に文章の上手さ、分量の充実はすごいと思います。

 「俺MS強い」が鼻につく感じです。キラ+ストフリを倒すのに只「強い最新技術」を
持って来る辺りはどうかと思います。まあ私の好みではないと言うだけですが。

 プロットが練りこまれていて推敲も重ねられているのは何となく分かるのですが、
とても細かく書かれているので細かいところが気になります。
社員を騙して戦闘させて撃破して怪我をさせて看病すると言うのはどんなプレイだ? とか。
勝てないと悟ったキラが核炉を爆発させたらどうするんだ、とか。
自動自爆装置でも核炉の放射性物質が漏れてるよな、とか。

 キラを騙さなければならなかった事情については次で説明があるんでしょうが、
続きを期待しております。

>>hate
 投下乙です。短い中で起承転結が良く纏まっていると思います。
 こういう狂気染みた話は短編だからこそ読める感じ。種世界でのどこかでは
確実にこんな事がおきているだろうと思います。
 個人的には「腹を括って首を括るか」がツボ。
 シリーズ化する積もりがあるのなら是非読みたいです。
143通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 05:55:27 ID:???
Cってしえんの事か! 今ようやく分かった!
144通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 10:30:02 ID:???
精緻な描写に基づく裏づけがあるなら、オリMSが原作キャラを倒してもかまわないと思うのは俺だけか
145通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 11:02:28 ID:???
>>144
それは嗜好によるだろ。
俺MS最強!が好きな人は許せるだろうし、俺MSイラネ!な人は許せないだろうし。
まあ、俺は俺MS最強!なのは嫌いだけどね。
題名無し氏は文章力もあって緻密な描写で凄いとは思うけど、本音を言えば

俺MS最強!に説得力持たせようと必死だなwwwww

になる。
「そうだな、あの時はラクス・クラインがショービズの世界に本気で殴り込みを掛けて来たと
思ったね。正直彼女はここオーブでの評価は高くはなかったからな。『プラントの歌姫』と
言われても我々にとってはお嬢さん芸にしか見えなかった。だってそうだろ? 確かに
彼女は声質は良い物を持ってはいたが、歌姫を名乗るには声量が圧倒的に不足していたし、
似通った楽曲を歌うばかりで耳の肥えたオーブの連中はラクス・クラインの魅力が理解不能だった。
……例えば彼女がオーケストラをバックに第九を歌えると思うかい?『魔笛』や『椿姫』の
アリアが歌いこなせると思うかい?あの声量ではオーケストラの迫力に飲み込まれてしまう
だろうし、第一彼女にはあの高音域は出せないだろう。
ミーア・キャンベルがラクス・クラインとして表舞台に立った時、プラントでは安っぽい
アイドルに堕落したと揶揄されたが、オーブでは違った。彼女が方向性−−女の子が持つ
キュートさやコケティッシュさを売りにして、大衆に分かり易いポップスを歌う−−を
打ち出した事は非常に好意的に評価された。彼女の実力を考えると、あれが最善策だったろう。
まさに黒船といっても過言では無かったね。」

(オーブ在住ルポライターA氏の発言)

初期のミーア・キャンベルはプラントでの支持は少なかった。プラントではラクス・
クラインと言えば「シーゲル・クラインの娘」のイメージが先行しており、
ミーア・キャンベルの打ち出したキュート&セクシー路線は、良識ある人々にしてみれば
下世話な物にしか見えなかったのだろう。
しかしオーブでは違った。ぬるま湯状態で周りからちやほやされるだけだった少女が
自分の身の丈にあったポップスを歌い、若く健康的な肢体をアピールしたという事実を冷静に
判断していた。
ミーア・キャンベルの魅力や能力をいち早く見抜いた彼等は彼女を「プラントの
歌姫」ならぬ「プラントの黒船」と呼んだ。
プラントとオーブの国民性の違いが如実に現れたエピソードであるが、ミーア・キャンベルには
それはは誇らしい結果であっただろう。閉鎖的なプラントではなく地球から人気が
出た彼女はザフトへの慰問活動を繰り返す事でプラントへ逆輸入したが、彼女の価値を
押し上げる結果となっていった。
余談ではあるがオーブでは黒船に対抗する為にカガリ・ユラ・アスハを歌手デビュー
させる計画があったらしい。即座に頓挫したとの事だが。
147通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 11:19:28 ID:???
>>145
あれだよ、同人と思えば「何痛いこと書いてるんだコイツw」ってなるんだけど、
普通の一般書籍と思えば「名実ともに前作否定から始まるのか、なるほど」となる。

俺は後者のテイストっぽいと思うので嫌いではない。
第二話

彼――ディアッカ・エルスマンは無造作に後頭部を掻きあげ深々と溜息をついた。
「確かにそうだったな。『グゥレイトゥ』は俺が教えたんだったっけ」
「あの時の事は今でも覚えていますわ。絶対に忘れません、二人の馴れ初めみたいな
物ですもの。あの言葉があったから、私は頑張って来れたのです。」
ラクスはディアッカの頭を掻く仕草が好きだ。くたびれたようにのっそりとした感じが
人間味に溢れていて年相応に思えて好ましいと思っている。
「そう言われちまうと照れるな。さあ、窓を閉めてリビングに行こう。夕飯の下拵えは
出来ている。後は炒めるだけだから直ぐに食べれる」
「炒飯を?私はこの間の鮭炒飯がお気に入りですわね。鮭の塩気が程良く効いていて
絶品でしたわ。葉唐辛子炒飯は味がちょっとイマイチでしたけれど。」
窓を閉め終えたディアッカはラクスの肩を優しく抱きリビングへとエスコートした。
ラクスは彼の肩に頭を乗せて甘えるように上目使いにディアッカを見つめた。
「葉唐辛子は確かに失敗だった。お願いだから忘れてくれ……今日は海老炒飯だ。
新鮮なブラックタイガーが手に入ったんだ。今日のは自信作だから君の口に合う筈さ」リビングに着くや否や当たり前のように自然な仕草で椅子を引くディアッカの姿に、
ラクスは口を開いた。
「いつも思っているのですが、あなたはどうしてこんなに優しいのですか?」
「俺が優しい?俺はレディファーストを心掛けているだけさ。俺はどちらかと云うと
狡猾で残忍な性格なんだぜ?」
狡猾で残忍! ラクスにはディアッカがそのようには見えなかった。ラクスが知っている
ディアッカは優しくて面白くてちょっぴり抜けた所がある愛すべき人間だった。
吹き出したラクスの姿を見て、ディアッカはやれやれといった風に腕を広げ小さく首を振った。
「ラクスも知っている筈だろう。俺だってザフトの赤服だったんだ。それなりに戦果を
あげたし、幾つもの戦闘を生き抜いてきたんだぜ。」
自信満々に胸を張るディアッカの姿は堂々としていた。だがラクスはそんな話よりも
もっと楽しい話――次の週末で行われるマルキオハウスでのチャリティーイベントの事や
来月の頭に招待されたアーガイル夫妻宅でのホームパーティーの事――をしたかった。
ディアッカはラクスの表情を見て空気を読んだのかダイニングへと向かった。ラクスはディアッカの背中を見つめつつ表情を綻ばせた。
普段なら食事の支度は二人でするのだが炒飯の時に限っては別で、ディアッカはラクスを
ダイニングに入れさせはしなかった。ラクスはディアッカに炒飯の作り方を教わりたかったが、
ディアッカは炒飯は俺の仕事だと言って聞かなかったのだ。ラクスは後片付けも自分で
するならと渋々許可した。
ダイニングから香ばしい香りと共に食材を炒める豪快な音が聞こえて来る。ディアッカが
言うには炒飯は短期決戦らしい。この音が聞こえて来れば完成は後少しだ。ラクスは
人差し指でテーブルをトントンと叩きながらディアッカを待った。
食材を炒める音が止み、ディアッカが現れた。今日のエプロンは緑地に白のオーソドックスな
唐草模様だった。三角巾の白とディアッカの肌の色が映えていて、ラクスは思わず目を細めた。
唐草模様は先日ラクスがプレゼントしたエプロンの一つで、他にはペイズリーと
ドットの柄の物がある。それらは全て緑地に白の物で、ラクスはディアッカのかつての
愛機であるバスターをイメージしてセレクトしたのだ。
――懐かしい色だな。
プレゼントした時に顔をクシャクシャにして嬉しそうに喜んだディアッカの姿を
ラクスは今でも覚えている。
ザフトには未練なんて一欠片もないとディアッカは口癖の様に言っていたが、ラクスは
ディアッカがバスターには愛着があるのだろうと思っている。ディアッカが一枚の
写真を財布に入れているのを知っているからだ。ラクスは偶然見てしまったのだが、
そこには誇らしげに腕を組み頼もしげにバスターを見上げるディアッカの姿が映っていた。
ラクスはその写真を見て声を殺して泣いた。ディアッカはパイロットとしてザフトに
残留していればいつの日にかバスタータイプのMSに乗る機会があったかも知れないのに
その機会を永遠に奪ってしまったのだとラクスは自分を責めた。
せめてものお詫びにとプレゼントしたバスター色のエプロンを喜んだディアッカの
姿を見て、胸の痛みが和らいだのだ。
プラントにいた頃のラクスならバスターをプレゼント出来るだけの財力も政治力もあった。
だがそれをしてしまえば以前の過ちを繰り返す事になる。ディアッカも喜びはしないだろう。
「さあ、炒飯が出来たぜ。」
ディアッカの言葉にラクスは我に返った。ラクスはディアッカが持っているトレイに載っている
ラクスはトレイ炒飯を取りテーブルに配膳した。美味しそうな香りが鼻腔をくすぐった。
「今日のスープはかき玉汁だ。さっぱりして美味しいぞ」
スープボウルの中でわかめと玉子が楽しそうに泳いでいる。ラクスがスープボウルを取ると
ディアッカはダイニングへと戻って行った。後片付けを先にするのだろう。
ラクスは中華鍋から床に飛んだ油を這いつくばって丹念に拭き取っているディアッカの
姿を見て助言した事がある。
――床には新聞紙を引いておけば油を床に飛ばなくて済むから掃除は楽ですわ。
そうそう、壁やガス台のの周りはラップ。汚さない事が掃除を簡単にするコツですわね。
ダイニングからガサゴソと新聞紙を丸める音が聞こえて来る。続いて鍋を洗う音。
暫くしてエプロンで手を拭きながらディアッカが現れた。
「お待たせ。炒飯が冷めちまわない内に食べよう」
ディアッカが椅子に座ったのを確認して、ラクスは胸の前で両手を胸の前で合わせた。
「いただきます」
二人の声が重なる。幸せとはこんな小さな事でも感じられるのだとラクスは思った。
まずは炒飯を一口食べた。ブラックタイガーの食感と風味が口の中に広がる。
「本当に美味しいですわね。海老がプリプリしていますわ。まさにグゥレイトゥって感じですわ」
「そう言えば、今度のマルキオハウスのチャリティーで何をやるんだ?」
炒飯を完食しナプキンで口を拭いていたラクスに、ディアッカが尋ねて来た。
「私は歌ですわ。子供向けにシューベルトの野ばらとエリザベートの私だけにと言う歌を披露アカペラでするのですわ。最後に集まった人
みんなでサウンドオブミュージックを合唱しようと思っています。あなたは日舞ですわよね?」
「ああ、藤娘なら分かり易いからそれにしようと思っている。でそのエリザベートってのは
どんな話なんだ? ……とお茶を頼む。渋めが良いな」
ラクスはテーブルの上にある急須に茶葉を多めに入れ、続いてポットのお湯を急須に注いだ。
「エリザベートはハプスブルク家最後の皇妃エリザベートの数奇な運命を題材にした
ミュージカルですわ……はい、お茶が入りましたよ」
ラクスはディアッカになみなみとお茶の注がれた湯呑みを差し出した。
「ああ、ありがとう……で、君は大学はどうするんだ?オーブではアカデミーの学歴は考慮
されないから、俺は大検を取って大学に行くつもりだ。日舞は能や狂言や歌舞伎に
通じるものがあるから、文学部に行こうと俺は思っている。日本文学を学びたいんだ」
ディアッカは二人が大学を卒業する為の学費と生活費を賄う位の預金をザフト在籍時に貯えていた。
ラクスは財産の大半をキラ・ヤマトに差し押さえられており、今では身に付けている
貴金属位しか資産と呼べるような物はなかった。「愛と悲しみの歌姫」の印税が
入るまでは質素な生活をしようと思っていた。
「私は前に行った通り短大で良いですわ」
「本当に良いのか?君は音大で本格的に声楽を学びたいと言っていたじゃないか」
ディアッカは悲しそうにラクスに視線を走らせた。
「音大はお金が掛かりますわ。ピアノを用意しなければなりませんし、楽譜やら何やらで
凄い事になりますわ。」
ラクスはディアッカの優しさにつけ込んで甘え続ける事はしたくなかった。
ディアッカは不意に立ち上がりラクスの元へと歩み寄るとラクスの華奢な肩を力強く掴んだ。
「金なら心配は要らないと言っているだろう。俺は君が君のしたい事をして欲しいんだ。
それとも俺じゃアイツと比べて役者不足なのか? 答えてくれ、ラクス・クライン!」
ディアッカの語調の激しさにラクスは何も言えなかった。ディアッカはラクスの表情を見て
一歩後ずさった。
「すまない、興奮したりして。だが、俺は君の遠慮する姿は見たくないんだ」
肩を落とししょげているディアッカの姿を見て、ラクスはそっとディアッカの頬に触れた。
「私は遠慮などしていませんわ。私は保育士になりたいのです。本格的な歌の勉強は
出来ませんが、子供相手に歌を歌う事が出来ますし、子供達に歌う事の楽しさを教えたいのです」
ディアッカの頬は微かに濡れていた。ラクスはディアッカを励ますように言葉を繋げた。
「歌は趣味で続けようと思っています。学校の合唱団に入ったり、市民合唱団にも
入るつもりですわ。ソロで歌うよりも、みんなでハーモニーを奏でたいのです。
あなたは私に色々な可能性を下さいました。あなたが役者不足ならば、全ての殿方が
役者不足になってしまいますわ。そうしたら誰も嫁に貰ってなど下さいませんわね」
ディアッカは袖口で涙を拭い、顔を上げラクスの顔を見つめた。瞳は深い色を呈していた。
「目を閉じて左手を出してくれないか」
ディアッカの言葉にラクスは素直に従った。薬指に冷たい感触がした。思わず目を開けると
そこには大粒の真珠が柔らかい光を放っていた。
「君の書いた本をラクス・エルスマンとして出版して欲しい」
投下終了しました。筆力の無さ故短編になると思いますが、もう暫くお付き合い下さいませ。


>>147
雑談を遮るように投下をしてしまった形になり、大変申し訳ありませんでした。
以後このような事にならないよう気をつけます。
153通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 11:33:33 ID:???
>>152
いや、こちらこそ申し訳ありません
リロードしておくべきでした、ご迷惑をおかけしました
154通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 11:51:11 ID:???
>>歌姫
登場するのがディアッカとラクスの二人だから、彼女、彼でいった方が文章がすっきりとするような気がしたね。

取り敢えず黒んぼとピンク電波の二人の共演に驚愕した。凄いね、びっくりだね。

>>147
2ちゃんの同人SSを一般書籍に思ってしまうアンタの頭の快晴っぷりに拍手。
凄いね、びっくりだね。
155新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/16(日) 12:23:58 ID:???
試合開始前

 高野連は揺れていた。
 奨学金・特待生問題や裏金問題を始めプロ野球の人気低迷などで若年層の野球離れは止まる事を知らない。
 ハンカチ王子フィーバーでやや回復した様にもみえるが、所詮一過性のものでありスポーツと言えば野球と答えが返ってくるまでではない。
 アマが栄えればプロが栄え、プロが栄えればアマが栄える。
 しかし今現在プロの人気は陰っている。
 スター選手の海外流出、改悪されていくドラフト制等が原因としてあげる事が出来るが、一番はスターの不在である。

 種・種死も揺れていた。
 ギアス・なのは等の人気に押され、今秋から始まる00次第では歴史から抹殺される可能性もある。
 劇場版も未だいつ出来上がるのかも分からず、ファンが急速に離れている。
 スパロボで人気のテコ入れをしても振るわず、人気は風前の灯火である。

 両者が秘密裏に行なった会合の結果、野球漫画の最高峰と言われる水島新司作品と種・種死勢とのエキシビジョンマッチの開催が決定した。
 場所は高校球児の憧れの場所・甲子園である。
 特別救済措置として現役プロ及び引退したプロ野球選手の参加も認められた。 双方の人気回復に向けての花火となる事になるだろう。


 時は流れ今は始球式。
 ピッチャーを勤めるのは伝説のサウスポー、藤村甲子園である。
 因みにキャッチャーは藤村の要望で水島連合軍のコーチである豆タンこと岩風五郎になった。
 スタンドを埋め尽くす種厨には全く分からないが、伝説のバッテリーが今ここに復活したのだ。

「とっととトイレスタイルせんかい!……いくでえ、豆タン!」
「はいな、あんさん!」
 豆タンは感涙に咽んでいた。うちの人が二度と立てないと言われたマウンドに立っている。それだけてあては満足だす。
 涙で視界が歪み満足に前が見えないが、豆タンは感動していた。
 
 肘を壊して引退した藤村はかつての様な気迫を持ってマウンドに雄々しく立っている。
「こいや、藤の村ぁーっ!」
「やかましい!わいの球、打てるもんなら打ってみい!」
 岩鬼の怒声が響く。藤村の怒声が木霊する。
「ぬおおおおりゃぁぁっ!」
 クロール投法と呼ばれるダイナミックなモーションから放たれた一球は砂煙を上げて空気との摩擦熱で煙をあげる。
 岩鬼の豪快なスイングが一閃し、ズバァーンといかした音が響くいた。
156新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/16(日) 12:26:23 ID:???
「藤村はん。やっぱあんさんは偉大に投手におます。プロで待っていておくんなさい」 岩鬼は素直に頭を垂れ藤村に敬意を表す。
「はっぱーっ! 引退したわいを目指してなにをけつかねる! プロにはわい以上のピッチャーがゴロゴロおる! そいつらを目指さんかい!」
藤村は豆タンの肩に手を置きゆったりと水島連合軍ベンチに歩いて行く。
「あんさん……あては、あては……」
「わいらがここにおったら試合が始まらん。試合はスムーズにやらなアカン。元巨人軍の堀内さんかてそう言うてる」
「はいな、あんさん」
 去って行く二人にわずかながらにいる水島厨が盛大な拍手を送った。
そしてスタメン発表。

水島連合軍
監督・水原勇気

@岩鬼正美  三
A殿馬一人  二
B微笑三太郎 中
C山田太郎  捕
D犬飼武蔵  一
E坂田三吉  左
F犬神了   右
G真田一球  遊
H不知火守  投

CEAS

監督・クルーゼ
@アスラン  遊
Aディアッカ 中
Bイザーク  左
Cムウ    二
Dスティング 三
Eキラ    一
Fレイ    捕
Gシン    右
Hニコル   投
である。
157新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/16(日) 12:30:35 ID:???
「なんであぶがスタメンじゃないんや」
 居酒屋・大虎では店の親父が怒声を上げている。
「せやかてなぁ、親父。よう考えてみい、あぶかてお遊びよりもペナントを大事にするやろ」
 ボンこと枡幸久太郎が混ぜっ返す。
「じゃったらトラが選ばれんのがおかしいわい」
「そら監督の水原かてメッツに欲しいもんを使うやろ。トラはあぶの息子やさかい。親父、酒や」
 ボンは皮肉な笑みを浮かべる。
「そうですねぇ、トラ君だったら代表に選ばれない方がおかしいですからねぇ。何らかの理由があると思いますよ」
 先生こと中島潔は酒をチビチビとあおりながら呟く。
「やかましい店やなぁ。外まで聞こえとるで」
 ガラガラと扉が開き、話題になっている男、景浦景虎が入って来た。
「トラ、お前はなんで選手に選ばれなかったんや?」
 ボンはコップを片手に酒臭い息を吐く。
「ボン君。トラ君には理由は解らないでしょう」
 先生は穏やかな笑みを浮かべてトラを見る。
 先生は思う。時の流れは早いものだな。ついこの前までは子供だったのに、今はもう立派なドラフト候補の高校生だ、と。
「俺は辞退したんや。俺は山田達と一緒に戦いたいんやない。山田達と勝負したいんや」
 そう言うトラの表情には静かなる闘志が浮かんでいる。
「流石はワシの孫や!」
親父は誇らしげに胸を張る。
「ホントは違うやろ。山田に癖を見抜かれるのが嫌だからやろ。パ・リーグのピッチャーはオールスターはセ・リーグよりも野村はんとの戦いやって言うてたからなぁ」
「混ぜっ返すな、ボン! 俺は本気で話してるんや!」
 トラは怒りを露にしてボンを睨みつける。
「ボン、代金二倍やでぇ」
 親父もボンを睨つける。が、二人に睨みつけられてもボンは関係なしに酒を煽る。
「そういや、店の前に面白い男がいたで。おい、入ってこんかい!」
 トラが店の外に呼び掛けると、扉が開き一人の男が入って来た。
 顔面に大きな傷があり、隻眼。ある種の威圧感を漂わせている。
「大虎、か。砂漠の虎と呼ばれた僕にぴったりの名前だな。……この店にはコーヒーはあるかい?」
 男の名はアンドリュー・バルドフェルド。まさに大虎に砂漠の虎来襲である。
 
158新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/16(日) 12:33:21 ID:???
投下終了。
大ボーンヘッド発見。ジャックルしてしまいました。
ディアッカとムウの守備位置が逆ですね。
申し訳ありません。
159通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 12:42:08 ID:???
ドカベンktkrwww
毎度のことながら着眼点が素晴らしい、ナインの気迫も伝わってくる。
次回にも期待。
160通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 12:49:03 ID:???
>>159
ドカベンネタ?。男どアホウ甲子園とあぶさんだろうが。
161通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 12:52:24 ID:???
大虎ktkrwwwww
コアなファン以外ついてけねえよwwwww
代打景浦の物干し竿と酒しぶきに激しく期待wwwww
162通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 12:54:06 ID:???
>>160
>>159は意味不明の感想で職人のモチベーションを下げようとする三■目のやり方だよ。
スルーしなきゃだめだよ。
163通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 12:56:29 ID:???
……。
どれが三■■のレスなのか、手に取るように解る気がするのは俺だけか?
164通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 12:58:13 ID:???
>>163
三■目自演乙www
とっとと巣に帰れよwww
165通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 13:05:04 ID:???
>>164
ここは新人スレ。
三■目に構うなよ。
職人諸氏に失礼だろ。
166通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 13:05:32 ID:???
いいから君たち、騙るスレに帰るよ
ここは汚していい場所じゃない
167SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 13:20:08 ID:???
17/

 均整のとれた肉体が無重力を飛び、銀髪と白服が空調の生む風にたなびいた。
照明に照らされる端正な相貌は唯一、その眉間の間をくっきりと傷跡が走っている。
 戦艦ヴォルテールの属するヴォルテール隊の隊長、イザーク=ジュールである。
 自身の駆る白いザクファントムをやり過ごし、向かった先はノーマルのザクウォーリアであった。
実用一辺倒な暗色の宇宙用迷彩を施された装甲、その左肩部に一輪の鳳仙花が慎ましく咲いている。
 出撃寸前のザクウォーリアに取り付くと、閉じたハッチを叩いてパイロットへと呼びかけた。
分厚い正面装甲が上下に開き、中から赤い人影が覗く。エリートの証、赤いパイロットスーツだ。
たおやかな肩から安産型の腰にかけて、変化に富んだ豊かなラインが女性を主張している。
『隊長……?』
 黒髪をメットの中に押し込んだパイロットは遮光バイザーを上げて返事したのは、
MS部隊のまとめ役にして、ヴォルテール隊副官のシホ=ハーネンフースだ。

 “鳳仙花”の二つ名を持つシホは、怪訝な顔をイザークに向けた。ユニウス7に展開中である
MS部隊のまとめ役を仰せつかった彼女に、本来イザークが直接伝令を行う道理は無い。
「ブレイズウィザードをつけてゆけ。七番が調整を終わっている」
 コクピットに上半身を乗り入れ、額同士をこすりつける程の距離でイザークは短くと告げた。
 赤服の彼女は命令の理解に時間は掛けるまい。僅かな沈黙――逡巡の時間は、
その意図を理解する為に使われた。
「……この件、ユニウス7の落下が人為的なものだと?」
 イザークの言わんとする事を察したシホが、メットの通信機能をカットした。
「ああ。五時間前、作業内容の監視に中央から背広組が一人来ただろう。情報管理局の奴だ」
「"ターミナル"の……ええ、陰気な中年男ですよね? 私もじろじろと見られました」
「そいつだ」
 人間観察を仕事にするような連中の人を値踏みする視線にシホはむしろ、生理的な嫌悪感を
感じたようだ。イザークですら皮膚を剥がされて視察されたような間隔に陥ったのだから、
女性のシホにしてみれば視姦された気分だろう。
「さっき中央に向けて通した通信を、ヘルマンに盗聴させた」
「盗聴……大丈夫ですか?」
 プラント情報管理局『ターミナル』の目は何処に光って居るのかも分からない。

「電子的な証拠は残さん。未だ作業を開始してもいないのに、破砕の成功率をどう
見積もっていたか分かるか? 二パーセントだ! 子供の使いではあるまいに」
 モビルスーツの一個中隊規模で邪魔が入るのでなければこの評価は在り得ない。
『情報部は何かを掴んでいるんですね――?』
「確実ではないが予想はつく……今は説明できる状況ではないが、な。
とにかく破砕作業を妨害される事だけは避けなくてはならん」
 それはユニウス7に潜んで居るかもしれない敵にも、そしてターミナルの男にもだ。
情報部がユニウス7に敵は居ないと言えばそれは居ない事になる。そして管理局の男は
場合によっては破砕作業を中止させる権限を持っている。
168SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 13:21:12 ID:???
18/

「ライフルを持って行っても良いですか? 出来れば二丁」
「シールドの裏に付けろ、アタッチメントは流用できるはずだ。なるべく目立たんようにな。
文句を付けられるだけでも作業が遅れる可能性がある」
 それでも規模の不明な敵に対して充分な備えがあるとは言えない。ユニウス7の軌道を
変えるほどの作業がMSによって成されていたならば。
 メテオブレイカーが一つ壊れるたびに、作業モビルスーツの一機が失われるごとに、
時間的余裕はゼロへ、そしてマイナスへと転じるだろう。
 一個小隊を作業班の護衛に回したいが、情報部の説得に時間をかけては破砕が間に合わなくなる。
「作業を管理しつつ周囲に睨みを利かせてくれ、情報部に文句を言わせないためのブレイズだ」
 本当はガナーかスラッシュを着せたいが、大砲は目立つ。

「無視しませんか?」
 役所仕事に付き合う暇も必要も無いのだと言いたいらしい。
「いや、丁重にもてなした上で作業はこちらの勝手に進めさせてもらおう。
何時邪魔が入るかも分からんし、素人に口出しされる事だけは避けなくてはな」
 背広を着た人間が軍人を止める、そうした権利は存在しないよりは多分存在する方が良い。
 実際に行使されては困る現場が存在するだけだ。
「成る程……ユニウス7まで降りて作業の様子を視察していただくわけですね!
もちろん破砕作業の終了まで現場に残ってもらう、と……」
「墜死体を作ってどうする」
「……それでは、ヴォルテールの主機関でも見学していただきますか?
ニュートロン=ストッパーをミリ秒だけカットすれば丁度良い具合に――」
「焼死体も却下だ!」
「…………分かりました。不本意ですが、隊長のためならば美人局の一度や二度」
「社会的抹殺も無しだ――!」
 一体何を分かればそういう発想が出てくるのだろうか? 男女の間には、ナチュラルと
コーディネーターを越えた溝があるように感じる。

「隊長もいい加減にわがままですね。いったいどんな風に抹殺すれば納得……」
「抹殺が無しだと言っているのだ。大体だな、縁(えん)も縁(ゆかり)も恨み憎しみも
ない奴をすぐさま殺しに掛かるやつがあるか――!」
 波長の合わない相手に対しては途端に過激な思考になる副官だった。
 ともすれば既成事実(犯罪)の後で「殺っちゃいましたー、てへッ」とか言いかねない
副官はイザークの正論に鼻白んだ様子で、
「軍隊は皆で仲良く人殺しをするところでしょう?」
とまで言ってきた。
「何か嫌なことでもあったのか?」
 つい聞いてしまったのが間違いだったのかもしれない。
169SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 13:22:35 ID:???
19/

「それがですね――」
 昨晩の夢見が悪かったのだそうだ。
「夢の中で、何故かディアッカ=エルスマン……あの裏切り者がいけしゃあしゃあとザフトに
復帰していたんですよ。しかも有ろう事か、緑服まで降格された癖に赤服の私を差し置いて
ジュール隊の副官を気取って居るんです、アレはどういうことなんですか、隊長!」
「いや……それを今の俺に言われてもな、仕方が無いとは思わんか?」
 冷静沈着を売りにする副官の、唐突過ぎる爆発だった。

「しかし現実にだ、ディアッカは地球に降りてしまったんだぞ?
シホ……お前が不安に思う事は何も無い筈だ」
 ラクス=クラインが強奪した“エターナル”と共にのしをつけて返還されたディアッカだが、
結局ザフトには残り辛かったのかナチュラルの女を追ってプラントを去った。
「地球に降りて"しまった"……? あの裏切り者に、ザフトに残っていて欲しかったんですか?
それともあの裏切り者が女の尻を追いかけたのがご不満ですか? 追いかける尻が欲しいのでしたら、
隊長は私のお尻を追いかけては如何でしょうか!?」 
「年頃の女が、あまりしりしりと連発するのは少しはした――」
「いいえ、それだけではありません」
 路傍の石以下に完全無視。イザークは自分が本当に隊長なのか如何か心配になった。
「その夢の中で私は何をしていたかと言えば、何故だか隊長、完全な背景と化して黙っていたんです。
台詞が無かったんです。夢の中で、おおよそ一年もですよ? ……目を逸らさないで下さい隊長!
隊長と裏切り者が『ディアッカァ――!』とか『イザークゥ……!』とか、延々と二人きりで位相空間が
目に見えるアンリミテッドな結界を展開している背後で、静けさが岩に染み入る程一言も無しです! 
目が覚めた後どれだけ怖かったか、分かりますか、想像できますか、理解できますか隊長!?」
 いや、今のお前の方が充分に怖い。
 歴戦のパイロットにして最前線に立つ部隊の隊長が、副官の放つ怨念に気おされていた。

「奴は地球に降りたと言っても、まだ月に一度くらい手紙が届く程度の付き合いは残って居るんだ。
それにだな、人の上に立つ赤服が、他人の親友をあまり悪し様にいうのは――」
 一般論で封じ込めようとした。
「――隊長はGAT−X103とYFX−200と、どちらが大事だというんですか!」
「落ち着けシホォ――!」
 無理だった。
 ちなみにバスターと、シグーのビーム兵器運用試験型の型番である。
「其処は普通『仕事と私とどちらが大事なんですか?』じゃないのか」
170SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 13:24:18 ID:???
「いいえ、もしもその場合に隊長が『折角だから俺はディアッカを選ぶぜ』等と
言おうものなら、隊長を撃ち殺して私は逃げます」
 一緒に死ぬんじゃないのか。
「……一緒に死んで欲しいんですか?」
 目が冷えている口だけ満面の笑顔が本当に怖いです、母上。
「お義母様……じゃない、エザリア元議員に心の中で助けを求めないで下さいよ。
それでも白服ですか? 隊長ですか? 男ですか? イザーク=ジュールですか?」
 イザークを認めて近づいてきたヘルマン副通信士が、シホの異様な声を聴いて踵を返した。
「おい、ヘルマン……逃げるな! アプリリウスの人事局に連絡を入れろ、
一体何処のどいつがシホを赤服に為たのかが是非知りたい、今すぐにだ!」
「ああ、私の赤服を脱がしたいわけですね……どうぞ、直接脱がされるのでしたら本望です!」
「そうかそうか、一世紀以上も使い古された決まり文句を使うときが、とうとう俺にも
やってきたようだな! いいか? 言うぞ?」
 深呼吸は大声の為に。
『寝 言 は 寝 て 言 え !』

 呼吸を乱して見つめ合う……とだけ書けば色気のある話だが、実際の方向は真逆を向いていた。
 そこでやっと、イザークはシホが化粧をして居る殊に気付く。
「シホ……疲れてるんだな」「ええ……まあ、少しだけ」
 急激にクールダウンしてため息をついたシホの目は、腐った魚よりも死んでいる。
「アーモリー・ワンに居た赤服が三人も揃って、あんなに不甲斐ないとは思いもよりませんでした。
セカンドシリーズを奪われ運用されたとはいえ、たかだか戦艦の一隻を取り逃がすとは――!」
 情報収集と警戒の為に、殆ど寝ていない日が続いて居るシホだった。
「う……そうだな。だが、相手が新型の戦艦であったならば、もしかしたら取り逃す事だって
あるかも知れないぞ?」
「まさか! 赤服ならば、対等以下の戦力くらい制圧してしかるべきですよ、イザーク隊長」
「いや……まあ」
 あんまり強く反論が出来ないイザークであった。実体験的に。

「まあとにかく落ち着け。休暇が取れたなら何でもおごってやるから」
「副官を食べ物で釣ろうと……まあいいでしょう。金欠で困っていたところです」
 赤服の給料は決して安く無い筈だが、一体何に使ったのか。
「隊長の評伝を出版しようと思ったら発禁処分を喰らいまして少々借金が……どうやら
軍機に引っかかったようです」
 ああもうどこから指摘したらよいものか。壮絶な脱力感がイザークの全身を襲った。
「まあとにかくだ。現状の問題はユニウス7、次に妨害者。その順位は変わらん」
 再び上げた面は一部隊の隊長にふさわしい迫力を備えていた。
「若し何か出てきた時には、身を持って作業班を守って欲しい」
『了解!』
 場合によっては攻撃に身をさらして死ね、という命令に、シホは笑顔で答えた。
「……すまんが、シホ。無理を言う」
『私に出来る事であればなんでも言って下さい……なんといったって、貴方の副官なのですから』
171SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 13:26:07 ID:???
21/

 発進して行くザクウォーリアを見送るイザークの表情は苦々しい。
血の出るほど握り締めた拳が、心中に響くもの同じ大きさで軋んだ音を立てた。
「すまん、シホ。情報部に信頼が無いのは、間違いなくおれの力不足なのだ!」
 信用できる部下だからこそ言えないような事もある。
 恨み言などは特にそうだ。
 真情をぶち撒けたくなるような時に、自然と話題を振ってくれたような友人は皆ザフトを去った。
色黒の顔に飄々と笑みを浮かべる男が居るだけで、どれだけ気が楽になった事だろうか。
「……」
 今はここにいない者を頼っても仕方ない。
 友を護るためにも、万全を越えた働きが必要だった。
 少しでも被害を抑えなければ――そう考えたところで、自然と笑みが零れる。
「被害をおさえる……か。いつの間にか随分と気弱になってしまったものだな。
ザフトの護り、ヴォルテール隊の隊長、イザーク=ジュールともあろうものが――!」
 自嘲を籠めた怒りを抑え、イザークは艦橋に向かった。
 ――何かが起こる。
 止めるには遅く、起こる状況への最善手を模索する以外に無い。

 一人拳を握り締めて弱音を吐くイザークの元に、緑服の青年が近寄ってきた。年の頃は二十台の半ば。
蜂蜜色の髪を刈り上げて帽子で隠す彼はへルマンという副通信士――兼副オペレイター兼索敵手である。
副ばかりなのは要するに忙しい所、人手の足りないところへと臨機応変の名の下に放り込まれるからだ。
「何だ、ヘルマン――!?」
「ミネルバから、発進した連絡艇の進路を保全して欲しいとの連絡です」
 例の要人ですよ、と付け加えた顔は、ふとすればイザークよりも若々しく見える。
 イザークが心労を溜めている所為で老けているだけ、とも言える。
「ふん、邪魔にならない範囲で放っておけ。護衛のMSをつける余裕は無い」
 ザフトにMAが少ないのは、MSが平時における重要な労働力であるからだ。
メテオインパクトのような宇宙的災害において危険な作業を熟し得るパイロットと機体を、
たまたま戦場に送り込んだに過ぎないというのが実情で、非戦時下でのMSのイメージは
巨大なドリルと溶接機械を携えたCEのとび職である。

「ええ、オーブ国籍の戦闘空母――クサナギだそうです――に行くと言う事で、
安全な迂回コースを送っておきました」
 態度は軽いが口は固く、仕事が早い事でイザークの信頼を得ているヘルマンだった。
何故だか時間的余裕を与えるほどに失敗を重ねるので、常時多忙になるよう
シフトを組んでいる。
「ああ、ところでヘルマン。娘にプレゼントするぬいぐるみの色は決めたか?」
「白い猫の奴をあげようかと……しかし値段が張るんですよ。給料上げてください、隊長」
「……考えておくからしっかり働けよ」
 おどけてぬいぐるみの話をする口調とは裏腹に、眼光は次第に鋭く尖っていった。
 白い猫――ミネルバ側もユニウス7の移動が人為的なものだとは伝えられていない。
ギルバート=デュランダル議長が乗って居るにも関わらず、だ。
 ――議長にも情報を伝えられないような原因がミネルバに乗っている?
172SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 13:27:08 ID:???
22/22

「他には――?」
「それがですね……連絡艇に乗っている方々の事で――」
「アスハ代表だろう。俺とオーブ、因縁が無いわけではないが、今はどうでも良い。
 まさか事件に巻き込んだ事について、謝罪と賠償を求めている訳ではないだろう。
「そんなわけありませんよ。問題は要人警護に当たっている随員でしてね」
 ヘルマンは人差し指と中指に挟んだ三枚の顔写真をイザークに示した。
「……これは!」
 二枚目にかつての戦友を発見し絶句したイザークは、直様置かれた状況を理解する。
「隊長に見せようかと迷いはしたんですが……余計でしたかね?」
「いや……待て、ヘルマン!」
 立ち去ろうとしたヘルマンを呼び止め、声を潜めて幾つかの命令を下した。
「艦橋には行くなよ。通信室を使って連絡を取れ……マムシに気付かれないようにな」
「はッ――!」
 堂に入った敬礼を交わし、ヘルマンは艦底方向へと走った。

「クッ――!」
 角を蹴って曲がるヘルマンが見えなくなると、イザークは渾身の力で壁に拳を打ちつけた。
普段は部下の修正に使われる鋼の拳に痛みは走ったが、合成素材の壁にはひびが入る。
 ミネルバにも、ユニウス7を落そうとしているだろう存在の情報は行っていない。
 それを先ほどのヘルマンとの会話で確認した。
 疑問は一点だ。何故間に合うかどうかも分からないミネルバにまで、情報を隠したのか。
「……アスラン!」
 その解――疑惑を確信へと変える一枚をヘルマンが持って来たのだ。
「ヴォルテールとミネルバ、共通項は元ザラ派の子息が乗っていると言う事だ。
俺とお前は未だにプラントから疑われているのだぞ、テロの可能性がある因子だとな!」

 ――落ち着け、打てるだけの策は講じなければ。
 艦橋ではイザークの指示を待つ部下と、陰気な背広組の男が待ち受けて居ることだろう。
 イザークが勝手にマムシと渾名した監査役の男は、他ならぬイザークの監視に来たのだ。
旧ザラ派の筆頭であったエザリア=ジュールの息子を。
「実行犯はザラ派残党か! でなければ情報は滞りなく届き、蛮行は阻止出来ていた! 
恨みます……愚息はこの一生で初めて、貴方の事を恨みますよ、母上――!」

 表面上は冷静を取り戻し、その実烈火を内に秘めて、イザークは艦橋へと向かった。
僅かな味方が待っていて、多くの敵が潜んで居るその場所では、己自信ですら完璧には
ザフトの味方となりえない。ならばせめて内なる敵、自身の弱気と怖れは叩き潰さねば。
「この件が終わったら、愚痴ぐらいは聞けよ……ディアッカ」
173SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 13:28:53 ID:???
投下終了です。
174通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 14:17:10 ID:???
>>173
45氏GJ!!面白かったw
シホとイザークのやり取り、そしてシホの見た夢に思いっきり笑わせていただきましたww
45氏の描くキャラが大好きです。次回投下楽しみに待ってます!

175通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 14:27:18 ID:???
GJですいい性格をしたキャラが多いなあ
176通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 15:24:09 ID:???
>>173
派生作品は見てないんだけど、シホってこんなキャラなの?
あのイザークがもてあまし気味なところが良いですね。
177通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 15:26:35 ID:???
シホ自重wwwwwww
>>176
ここまでオモロイキャラではない。
178『空』   ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 15:57:33 ID:???

 事件の数日前――飛行試験

 上昇を続けるシャトルの白煙を、キラはムラサメのコックピットで追っていた。
 既に音の壁を突破し、希薄な大気を裂いて進むムラサメのコックピットは、
力任せに空気抵抗を突き破るエンジンの高振動が伝わるだけだ。
 キラの黒い瞳はシャトルの向かったその先、宇宙に浮かぶ人口の大地、
巨大なプラントの姿をモニターの中に探す。
 既に手を伸ばせば届くほど宇宙に近く、視界の半分以上を真空に続く暗闇が覆っていた。
気を抜けば天に向かって落ちて行きそうなほど、キラの目に見える空は暗く、深い。
 やがて今の位置からはL5――プラントのある宙域が見えない事に気付いた。
「静かだな……」
 時折アラームが鳴る。それが聞こえるという事が、機内の静けさを示していた。
『やっぱりおじさんの声が聞こえなきゃあ、心細くなってくるのかい、坊主?』
「そんなのじゃないです、坊主は止めて下さいよ、一尉」
『飲みに付き合うか、模擬戦でおじさんに勝つか。
どちらにしろ"大人の階段"を昇ってねえ餓鬼には、坊主で十分だな』
 独言に通信を返してきたミゾグチ一尉と、お決まりの会話を交わす。
『ま、暇なら女の子の口説き方や、哲学について考えるこったな』
「くどき文句はともかく、哲学なんて考えていたんですね」
『おお、後輩に語って聞かせるためにな』
 どうも聞いて欲しそうだったので、質問してやる。
『いいか坊主、空の戦場を去るパイロットには二種類在る。空に帰る奴と、陸に帰る奴だ。
負けたパイロットは垂直に墜ち、勝ったパイロットは水平に飛び去って行く。
二人のパイロットが残す残煙は、墜ちたパイロットの為に十字の墓標となる――』
 一尉の語った言葉が、果たして上等な哲学なのか、キラには判断がつかなかった。
きっと重力に引き寄せられないパイロットになれ、と言いたいのだろう。
 ――哲学、か。
 言葉を反芻しながら、頭上に広がる暗黒に目をやった。丸みのある地球に縁取られた奈落。
地に墜ちることがなければ、いつか自分はこの暗黒へ囚われるかもしれない。
「"深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ"」
『ニーチェかい、坊主?』
 ミゾグチに答えず、キラは宇宙から目を逸らす様に眼下に広がる地上を見た。
見覚えの在る形の島が見える。ラクスはあの島から、毎日空を見て祈りをささげているそうだ。
 人が空を見上げるのは、空にいる何かに自分を見守って欲しいからなのだろう。
だが空はその果てに、人を誘い込む暗闇を抱えている。
「帰投します」
 ならば自分は空に在ってラクスを見守り、彼女に代わって深淵を覗き込むものになってやろう。
その想いを胸に秘めて、キラはムラサメの機首を巡らせた。
17945  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/16(日) 16:00:33 ID:???
 今は亡き向上スレに投下した作品第二弾。再利用が多くてすいません。
 それから一応、今回の『†』投下分も第十二話です。>>まとめ管理人様。
編集長も管理人様も、細かい仕事有り難うございます。
180通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 16:22:59 ID:???
>>大甲子園
 投下乙です。
 なんていうメタな世界観……スタンドを埋め尽す種厨、僅かながら居る水島厨って。
つまり観客=読者=新シャア住人。水島作品は良く分かり……全く分かりませんが、
楽しく読ませて貰っております。
181新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/09/16(日) 18:07:04 ID:???
 ニュートロンジャマーキャンセラーが起動され、搭載された動力路が機体にエネルギーを送り出す。
 その一連の動作は人の心臓が全身に血液を送り出すのに似ていた。
 OSの最終確認。火気管制システムの最終調整。センサーの最終調整。駆動系統の最終調整。反応速度の──
 幾多のチェックをスティングが終えると、薄暗いコックピットのスクリーンにメインカメラが捉えた光景が映し出された。
 森林。ヘブンズベースの第四模擬戦場だ。
 ちらちらと白銀の雪も降っている。よく見れば森林も僅かながら雪を纏っていた。

 ──静かだ。
 模擬戦開始を今か今かと待ちわびているアンチカオスの内部で、スティングは漠然と思った。
 模擬戦開始まで後三分弱。それまでこの機体の中に居なければならないと思うと、嫌になってくる。

 ジョージはあの時──二日前──実弾を使用した模擬戦をスティングに申し込んできたのだ。
 つまり──この機体に搭載された二丁の拳銃型ビーム兵器の使用も可、ということである。
 そのため当然死の危険性も高くなるので中止になるはずが……
 なんと珍しいことに、あの血色の悪いブルーコスモスの盟主ロード・ジブリールが許可したのだ。
 エクステンテッドと退役将校の模擬戦を。最初は何の風の吹き回しかと思ったが、
 何てことはない。ただの興だろう。
 若い猫が老いた鼠を食らう興。

 ──そうだ。
 喩え以前より衰えていようと、この差が埋まってたまるか……!
 貴様の身を引き裂き、跡形もなく蒸発させてやる……!

 今まではなかった、そんなどす黒い殺意と憎悪が彼の胸中を駆け巡りだした。
 それらの思いに身を任せ、時を待たずして機体を動かしてしまおうとスティングが考えた直後、

 戦闘開始を指すアラームがコックピット内に鳴り響いた。


 広大なヘブンズベース、その司令施設がある山中の地下、
 核ミサイルすら防ぐ巨大なシェルターに護られるかのように覆われたそこ──
 VIPのみが入れるモニタールームにロゴス幹部三名とロード・ジブリールはいた。
 染み一つない赤絨毯、西欧の各地から取り寄せた工芸品の数々、色とりどりの花瓶はその場にはとても不似合いである。
 白髪が混じった中国人の老人が向かい側の席、
 ワイン片手にモニターを見つめているジブリールに不慣れな英語で声をかけた。
「よぃのかずぃブリール? エクスゥ03は切り札ダッたはぅずだが?」
 ジブリールはそのたどたどしい英語を理解するのに時間がかかったのか、若干間を空けてその問いに答えた。
 その血色の悪い顔が少し侮蔑の色を含んでいるのは、気のせいだろうか。
「良いのですよ。あれはまだ未熟な猫です。熟成した虎と戦わせれば何かを掴むことでしょうし……」
「ならいいが……」
 その言葉に満足したのか、ジブリールは再びモニターに目を向けた。
 映像には巨大な膝装甲──兵装複合陽電子防壁──と巨大なウイングストライカーを装備したアンチカオスの姿が映し出されている。
 ジブリールにつられて他一同がモニターに目を凝らす。と、それを見計らったようにジブリールが口を開いた。
「賭けをしませんか。どちらが勝つかに……私はアルメタ退役大佐が勝つに十ダラーとウィンダム九機」
 その内容にあるものは驚き、またあるものは怪訝そうに眉を顰めた。
「ずぅぶんと気前が良いな……なルぁ私はエクスぃに十ダラーとつい先日ロォールアゥトしたばかりの試作品を三機賭けョう。
 東アジアは連中に肩入れしてしむぅてィルかラな」
 先ほどの中国の老人がたどたどしい英語でそれに応えると、やはりジブリールは血色の悪い顔に侮蔑の色を含ませながら笑った。
182新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/09/16(日) 18:09:49 ID:???
 笑って、咳払いしてから言った。
「ふふ……っほん。確かに宝の持ち腐れですからな……賢明な判断です。
 しかし、例の大災害で東アジアは戻るやもしれませよ。今頃穏健派のミハイルも慌てているでしょうな」

せめて、夢の中だけは
第十六話 単純構造の機械は直りやすい 前


 ネオ・ロアノークは酒場のカウンターでひどく悩んでいた。
 不用意にスカイグラスパーを飛ばしてきたはいいが、肝心の地球軍では自分がMIAになっていたのだ。
 戻るわけにもいかないし、かと言って金もない。災難ここに極まるのである。
「はぁ……マスター、水おかわり頼む。腹壊したくないからぬるめで」
 マスターと呼ばれたカウンターの向こう側の鋭い隻眼をもつ老人は、きらりと目を光らせて口を開いた。
「さっきからため息ついてはただ水飲んでため息ついてはただ水飲んで……
 大災害が起きたとしってもふぅんで終わらして。たく……」

 口うるさいマスターが口にした大災害とは同時多発テロのことだ。ついさっきおんぼろテレビに中継映像が映った。
 各所各所の被害はそこまでではないにしろ、被害者総数ウン十万人らしい。
 だが、そんなことで正義感に燃えるほどネオは広い心を持っていなかった。
「ったく……おまえさん、元軍人だったら傭兵でもやったらどうだ。
 今じゃ自衛のために傭兵にウン十万払う奴もいるそうだぞ。
 あそこのオロールは閉所恐怖症だが、その白兵能力たるや恐ろしいものがある」
 とくとくと慣れた手つきで水をグラスに注ぎ、テーブルで愉快そうに談話している一団に指差しながら言った。
 その後ご丁寧にグラスに氷を入れ、ネオの目の前に置いてマスターがどうぞ、と不機嫌な声で告げる。
「機体がない。人脈もない。金も、整備だって──」
 グラスを手に取り、顔をしかめながら言うネオの話を遮って、マスターは一つの酒場の隅っこのテーブルを指さした。
 一人ホットミルクを飲んでいる少年が座っていた。小柄で気弱そうな印象を覚える。 酷く気落ちしているようにも見えた。
 あの顔、どこかで見たことがあるか──?
「あそこでホットミルクを飲んでるチビ助がいるだろう。M1を持っとる。その代わり操縦が出来ないらしい」
 なるほど、つまり自分とは正反対ということだ。で、このマスターは何が言いたい?
 そんなネオの疑念を察してか、マスターは腕を組んで答えた。
「組んだらどうだ。それにおまいさん、ここがどこだか忘れたか?」
「ん? 古びた酒場、じゃないのか?」
「万屋の集う場所だよ。有り体に言って、ギルドだ」
 ギルド。こんなものがあったとは。
 万屋とは東方の言葉で何でも屋の意味だ。確かに噂自体は聞いたことがあったが……
 そう言えば傭兵と同じカテゴライズされていたかもしれない。
 などと考えたネオは、しっかりと冷えたおかわり八杯目の水をぐいっと飲み干し、
「それもいいが、やっぱエレガントな可愛娘ちゃんとよろしくやりたいもんだねぇ。
 あのお手伝いの娘、アスカちゃんとかっぬぁ!? ………………」
 言ったネオが、マスターの拳骨を食らって沈黙した。
183新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/09/16(日) 18:10:49 ID:???


 黄昏の宇宙。漆黒の宇宙。暗黒の宇宙。孤独の宇宙。蒼輝(あお)の宇宙。死の宇宙。無の宇宙。
 この目の前に広がる雄大な宇宙には、一番何が合うのだろうか。展望室の窓ガラスに見入りながらラクスは自問する。

 ──多分、何も合わないだろう。ラクスは自答した。
 合うもの、合わないもの、それは人の数だけある。価値観というやつだ。
 その中の一つだけを一番合う、と位置付けるのは到底無理なことで、傲慢な行いだ。
 だから、この同時多発テロも同じことで、当事者からしてみればおそらく正義なのだ。
 かつての自分たちがそうであったように。
 だが、果たしてこの行いに何の意味が? 何の目的が? 何の思想が?
 彼らはこの百数十万の亡骸を積み重ねることに何も感じていないのだろうか。
 ──解らない。

 「解らないのなら、解ろうと努力すりゃあいんじゃないか?」
 窓ガラスに映る宇宙を眺めていたラクスに声を後ろから声をかけたのは、隻眼の男、
 アンドリュー・バルトフェルドその人だった。
 この艦は調べものとプラントの内情に気を配り、工作員の育成等をしているだけなので、恐らく暇を持て余していたのだろう。
 手に持った漫画本とハンバーガーが似合ってない、思わずラクスは苦笑した。
「あらあら、わたくしったら言葉に出してしまったのですね。気をつけないといけませんわ」
「まぁ一概には言えんがね。さておき困ったな。折角の計画が総崩れだ。情報量も悲しいがプラントほどじゃない」
 これまた苦笑しつつ彼が言った。覇気がないのはあの事件のせいだろう。
「計画の遂行は断念せざるおえませんわ……本腰になったと思ったらこれですもの。
 ターミナル内でも反対が多いのに、これでは……
 ミハイルさんに西ユーラシアの事件を機に穏健派を煽って頂いたのに、顔向けできません」
「確かにな。ユニウスセブンの落下と続いて百十万人以上の死者負傷者を出しちまったんだ。
 東アジア共和国は同盟を取りやめにするらしいし、ユーラシアの離反部隊の一部は里帰りしているそうだ」
 沈痛な面持ちで語り、ため息をつく彼を見やり、やはり沈痛な面持ちのラクスがそれに続いてため息をついた。
「……なんのためのロゴスの実態の公表だったのでしょう……
 ただでさえ暴動は多発しているというのに、このままでは鎮圧すら間に合わずただいたずらに被害を広めただけで……
 せめて協力できれば……あ!」
 そこで彼女は閃いた。恐らく以前までの自分なら一蹴するであろう考えを、実行に移そうと考えてしまった。
「どうした?」
 バルトフェルドの怪訝そうな声に、ラクスは満面の笑みを浮かべて答えることが出きると確信する自分に驚きながら、
「会いに行きましょう! ″ギルバート・デュランダル議長″に!」
184新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/09/16(日) 18:12:07 ID:???
 水中を巡航速度で進むアークエンジェル内部、格納庫。
 そこにフリーダムはあった。尤も装甲が磨り減り、重要な部分が欠落していたり固定武装のほとんどを失ってはいたが。
 駆動も、あくまで最小限のことは、できる。今は艦内なので手を握ったり開いたりするだけだ。
 だが屋外でもまだジンのほうがいい機動を取るであろう。それほどまでにフリーダムは傷ついていた。
「坊主、フリーダムの修理はどうするんでぃ?」
 フリーダムの様子を見守っていたマードックが声をかける。
 修理、とはいえ、オーブにはまだ早いし、変えの機体もない。ムラサメなんかには乗れっこない。
 これはけじめだ。フリーダムの中でキラは目を瞑り、考える。
 もし再び戦う事態になって、再びあの機体が敵だったとして、もし強くなっていたとして、
ムラサメで勝てるか? 自分の腕で勝てるか? 仲間を守れるか? 無理だろう。だが、フリーダムの修理は間に合わない。
 戦わないのが一番いいのだろうが……
「とりあえず、機体の固定を入念にお願いします! それとさっきの戦闘データの解析も頼みます!」
「分かった!」
 開放したコックピットハッチから身を乗り出し、マードックに伝えるとキラは再び潜り込んだ。
 キラも人間だ。悔しいという念もある。機体はところどころ迫るところがあるとはいえ、こちらのほうが圧倒的に有利だったのだ。
 それをああまでやってのけるパイロットに慄き、同時に嫉妬していた。
 だから訓練する。特訓する。頑張る。
「……むぅ……」
 ――次は、負けない。

 そもそも勝ちも負けもないのだが、その一切をキラは捨て置くことに決めた。


 一方、その慄かれ、嫉妬されていたパイロットであるシンはというと――


 ミネルバではなくジブラルタルの割り当てられた部屋で不貞寝していた。
 あれから幾分かはマシになったがろくに外に出ようともしない。会話もしない。来客も無視する。
 つまり、やる気が起きないのだ。どうしようもない。
 妹のような感情を抱いていた人を守れず、尊敬していた人は死に――自棄になっていた。
「……腹減ったな……」
 だというのに、やはり人間の体は素直で三大欲求である食欲には抗えない。もう何日も食事を採ってない。
 部屋には特別そういった食事などは用意されていない。食堂に行くしかないのだ。
「……いくか」
 のろのろとベッドの上から立ち上がり、着替えて玄関に向かい歩き出す。
 玄関のドアを開け、突然襲った照明に目を瞬かせながら――
「やぁシン」
 もうしばらく会っていないサイから声がかけられた。



第十七話 単純構造の機械は直りやすい 後 に続く
185新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/09/16(日) 18:16:34 ID:???
手違いで量膨大or執筆が間に合わないと言う失態に……
序盤は携帯で書いていたから携帯で書こうと思ったんですが、ペースが……
一番難しいのがラクス。性格が掴めなくて自爆して性格改変に……申し訳ありません。

通知表は予定が変わりまして、十月に。携帯のほうは現在親と交渉中で。
ではでは……
186通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 19:39:23 ID:???
>>新人
 投下乙です。まだ携帯を取り上げられては居なかったようで何よりです。
無邪気なラクスの悪巧みが怖いなあ。ムラサメなんかには乗れっこないなんて
いっているキラが情けねえ……でも人間っぽくていい感じ。
 原作のままに書いたらヘイトとすら呼ばれるラクス一味。多少の性格破壊は
仕方ないと思います。通知表は前後期制に移行したから秋休みの後にってこと
でしょうかね。交渉が上手く行く事を祈っています。
 続きを期待しております。
187我が子へ ◆MATdmc66EY :2007/09/16(日) 22:09:57 ID:???
 俺、シン・アスカは幸せだった。
 大切な人……守るべき人と結婚をして、子供まで授かったんだ。
 コーディネーター同士の出生率は異様なまでに低い。
 そんな中、子供を授かったのは奇跡と呼ぶに等しいことだ。
 妻──ルナマリアはいつか生まれてくる子供を優しく撫でていた。
 特に話すこともなく、生まれてくる子の名前は決まった。
 男の子だったらレイ、女の子だったらステラ……どちらも俺が守れなかったもの
名前だ。
 俺はいつか生まれてくる我が子のために歌を歌った。
 嗚呼、我が子よ。健やかに育つことを祈る。
 ふと、ルナマリアと目が合った。
 俺たちはニコリと微笑み合い、キスをする。
 幸せすぎる日常を噛み締めながら、俺はその幸せに溺れていた。
 だが、幸せというのは儚いものだ。
 神は俺が幸せになるのを許さなかったのだろうか?
 ルナマリアは死んだ。お腹の子供と一緒に階段から滑り落ちた。
 悲しかった。本当にどうしようもないくらい悲しかった。
 ……けど、出ないんだ。凄く悲しいのに……本当に泣きそうなくらい悲しいのに出ないんだ涙が。
 笑うことしか出来なかった。笑って、笑って、笑ってやった。
 天の神すらも笑い飛ばしてやった。
 ああ、そうかい。人殺しは幸せにはなれないってことか。
 その日以来俺は堕落した。
 何も出来なかったことが、また何も守れなかったことが今度こそ俺を壊した。
 元々俺は女兵士どもからは人気があった。
 だから、出始めに女に溺れた。甘い言葉を囁き、ちょっと、弱いところを見せればすぐに堕ちる。
 女の甘美な声に包まれながら俺は眠り続けた。
 キラさんやアスランは心配していたようだが、何も言うことはなかった。 いや何も言えなかったと
いうのが正しいのだろう。
 彼らに俺を責められる道理があるはずがないからだ。
 だが、こんな生活送っても虚しさが拭えるわけじゃない。
188我が子へ ◆MATdmc66EY :2007/09/16(日) 22:11:44 ID:???
 女を抱いても、酒を飲んでも思い浮かぶのはルナマリアのことばかりだ。
 そして、生まれることすらも出来なかった我が子だ。
 何が守るだ。 何も出来なかった愚かな自分……虫酸が走る。
 そもそも、何故俺は生きている。 何のために生きている。
 意味のない生を重ねても辛いだけ、空虚なだけだ。
 得るものなどない。
 ──嗚呼、何だ死ねば良いんじゃないか。
 それに気づくと涙が溢れ出した。
 二年間止まっていた俺の心がようやく動き出したようだ。
 そう、死ねば良い。
 こんな簡単なことにも気づかないなんて俺はなんて愚かだったんだ。
 拳銃を取り出し、自分の額に重ねる。
 遺書なんて要らない。 そんなものは未練があるものが書くものだ。
 俺に未練などはなかった。
 安全トリガーをゆっくりと外す。 何いつもと同じだ……いつも人を殺めているよ
うにやれば良いだけだ。
 引き金を引く。 乾いた音が部屋に響いた。
 ──マユ、ステラ、レイ、ルナ……今逝くよ。君たちが待っている世界に……俺も……向かう……か
ら。光溢れる世界に……これからも……ずっと……いっ…………。
 その日一人の英雄が死んだ。
189 ◆MATdmc66EY :2007/09/16(日) 22:13:51 ID:???
逆襲のアスランを書いている途中に何故か浮かんできた話。
一人称文体も書きたかったので書いてみました。
……さて、逆襲のアスランの続きを書く作業に戻らないと。では
190通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 22:44:47 ID:???
投下乙。
191通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 07:31:40 ID:???
>>189
投下乙です。

アンタはホントに誰かさんの影響受けてるのな。
話の展開やらオチがかなり似てると思ったよ。
安全トリガーじゃなくて安全装置の様な気がする。間違ってたら俺は大恥。
短編書くなら瞬発力をつけよう。それが足りないと思う。
192通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 14:39:11 ID:???
>>愛と悲しみの歌姫
 遅ればせながら投下乙です。
 登場人物を二人に絞って描写を深めて居るので、独得の雰囲気が
出ていてとてもよいと思いました。どこか演劇的な空気に引き込まれて
しまいます。
 ディアッカとラクスのカップルが珍しいですが、上手い事纏まるのを
期待しております。
193通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 17:05:55 ID:???
>>タイトル未定
投下乙
なるほど、何処かで見たと思ったが空戦シーンは雪風だったか・・・わざとやれる力量は流石

必要な表現と省略して良い表現が混在していると思う
せっかく硬質で繊細な表現が出来るのだから取捨択一がハッキリすればもっと読みやすい
ちょっとアズラエルとキラの台詞回しに違和感
西条マネージャーはもしかすると居ないでもお話成立するかなと思う
あとのシナリオもあるだろうけどアズラエルが無線に出るならキャラは絞った方が良いのでは
個人的にはキラが敗戦後に 『自殺出来ない環境』 を作ってしまった方が分かり易かったと思う
それならば社長のキャラと相まってプレイと言い切るのも容易いのではないかと

フリーダムの扱いについてもきっちりプロットの組んでありそうなあんただからあえて書く
超機密兵器が『一般企業』の地下に仕舞ってある事
それから上の人が言う様にあっさり負けた理由も匂わす程度は必要だろう
まぁ一個めは原作だってそうだと言われればそうなのだけれど
これだけの字数を書くのは大変だと思うが次回投下も期待して待つ

>>hate and war
投下乙
あんたの書くものは根底に全て狂気が潜んでいる
そしてシリーズ毎に各々違った狂気を取り出してみせる。流石

>>歌姫
投下乙
前段のラクスクライン評がなかなか効いてる
話を最終的に何処に持っていきたいのか見えないので次回も期待

>>甲子園
投下乙
なんて強引な設定! しかも虎が全く違和感なく水島キャラに染まっている・・・
次回もさぼらず投下する様に

>>SEED『†』 
投下乙
今度はシホを持ってきたか。女性キャラを書かせたら右に出るものはないな
ユニウスは再作戦の裏読みも流石あんただ
前にも言った気がするが公式裏設定がこれでも違和感がない。流石
194通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 17:12:03 ID:???
>>新人
投下乙
ネオに今後何をやらせるのか気になる。シナリオはまだ大きく動かないのか

ちょっと文章が荒い。携帯云々はあまり読んでる方には関係ない
それとギャグとシリアス、さじ加減を間違えばどっちつかずの詰まらないものになる。今、かなり危ういと思う

>>我が子へ
投下乙
題材がそもそも悲惨な以上、ほっておいても悲惨な話。だからどう見せるかが問題
どんでん返しを考えるか、それとも深く心理描写をするか。今回はちょっとアレだ
某氏の影響云々は、俺はまぁそんな事もあるだろうと言っておく
195通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 18:31:15 ID:???
メストと逆アスの関係

exの偽りのヒロインと逆アス二話のラストに同じ言葉(神のみぞ知る)が使われている。
因みに偽りのヒロイン投下直後?に逆アス二話は投下されている。

逆アスが女難スレに投下した短編がメストのlunaticに似ている。(設定、話の展開等)

逆アスが新人スレに投下した短編に対してメストが「パクりたい」と発言。
196通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 20:36:13 ID:???
>>我が子へ
 投下乙です。
 書きたい内容は分かりますし、悲惨さも伝わってきました。

 此処からは個人的見解です。
 短編に使う時間は 書く<推敲 です、場面を一つに(この場合はシンの自殺)
決めたら、後はその場面を文章で掘り下げるだけなので言葉の取捨選択が肝。
書かなくても読者に分かる事は書かない。

>>どちらも俺が守れなかったもの名前だ。
→どちらも俺が守れなかった者の名前だ。

 文章力を上げるのならば短編、というのは良く言われておりますので、
次の短編も(もちろん逆アスの続きも)心待ちに為ております。
197通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 20:38:02 ID:???
今チラ裏で気付きましたが、チラ裏は酉が反映されません。
酉漏れしてますので注意! >>職人さん
198通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 21:14:45 ID:???
>>我が子へ

短編という物は短期決戦。陸上競技でいうと短距離走なので瞬発力が一番大事。
必要の無い事には一切触れず、文章をコンパクトに纏める事が必要。
例えば、コーディネーターの出生率云々は書かなくても大丈夫かも。

説明をしたり、場面や心情を変化させる時に、小道具を使ってワンクッションおいてみるのも良いかも。
例えば、ルナマリアの写真を見てお腹が大きくなっているという事で妊娠を匂わせたり、
ベビー用品を部屋に置いておく事で生まれる筈だった子供が生まれるのを楽しみにしていたという事を表したり。

ラストはもっと素っ気ない方が良いかも。
心情を語らせないで、描写するのは引き金を引いた事だけにして、後は読者の想像に任せてみたり。
心情を入れるなら引き金を引く前の方が効果的だったかも。
ラストが決ってるなら逆算して書いてみるのも一つの手。
慣れると文章にメリハリを付ける事が出来るかも。

取り敢えず気を付ける事は文章を無駄に長くしない事、使う言葉のチョイス、話の展開。

本編の続きと共に短編の続きも期待しています。
199 ◆MATdmc66EY :2007/09/17(月) 21:26:35 ID:???
>>197
言われて気づきました。
次回更新時に酉変えますのでこれ以降この酉は破棄します。
この酉で書き込みしてる人がいても私ではないということをここで宣言します。
では
200通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 21:27:44 ID:???
>>199
おk。テンプレの雑談所に『酉は反映されません』追加かな。
201通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 21:31:50 ID:???
>>200
追加した方が良いな。
202赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:21:59 ID:???
 女と言うのは俺は嫌いだ。言って置くがゲイって訳でもねえし、犯りたい欲求が消えた訳じゃねぇ。
 ただ、あいつ等の思考、着地点の無い会話、やっかみなど諸々のしがらみが面倒なのだ。
 野次馬根性と噂好きの習性ってのは軍隊に入っても強制されるもんではないらしい。
 あの雌犬が来てから俺達……正確には俺(オルガ・ザブナック)のみやたらと声を掛けられる。
 一人(クロト・ブエル)はイヤホンを着けてシューティングばかりやっている。
 一人(シャニ・アンドラス)はヘッドフォンとアイマスクつけて、爆音聞いて悦に入ってトリップしてやがる。
 そうなると残される読書家な俺だけが、声を掛け易いというのは馬鹿な俺でも解る。
 だが、そんな状況証拠的な推察よりも俺にとっては本を読む”ペース”が大事なのだ。
 本をろくに読まない連中には理解されないのだろうが、本を読む俺にとっては大切なことだ。
 活字を一つ一つなぞり、飲み込んでいくのは一種の食事と一緒で本と言うのはフルコースと一緒。
 それを前菜を目の前にで声を掛けられ、メインの肉を噛んでる最中に肩を叩かれ
 デザートの甘い余韻を愉しんでる所をぶち壊される。気分は最悪だ。いっそ、殺してやろうか?
 
「貴方達、アノ子の事ちゃんと世話して上げてられるの?」
「そうよ? 女の子はデリケートなんだから。それにアノ年じゃ生理とかもあるだろうし」

 俺達は飼育係か何かか? ふざけるのはその面だけにしてくれ。
 この間で手前等がケダモノ同然で俺たちを見てた癖にどういう掌返しだ。
 また、艦の女将校や兵士やらが俺の食事の邪魔をする。
 俺はそれを睨み返すがあいつ等の欲求は恐怖に勝るらしい。
 たまたま、雌一匹が転がり込んできただけでなんだこの周りの変わり様は?
 何かに付けて俺達を介してあの雌犬のことで話し掛けてくる。俺達に興味がある訳じゃない。
 やれ下着がどーだ、やれ髪の毛や肌の手入れがどーだ、やれ傷を付けるなうんたらかんたらと。
 ただ、結局はそんな回りくどい事で相手に干渉しようと様子を見ながらも聞きたい事は決まっている。
 女達はなよなよくねくねと自分達の言葉で煙に巻きながら、俺達がぽろりと吐く言葉待っている。

「ああ、そうそう。生理と言えばちゃんとアノ子の生理が止まったら報告しなさいよ?」
「そーよ。毎晩ドタバタとやってるなら出来てるかもしれないし。ほんと可哀想な子ね」
203赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:23:32 ID:???
 また、その話題か。そう、結局はこの女どもが興味があるのが俺たちがあの雌犬ど”どう遊んでるか?”だ。
 無論、艦の男達も男でニヤニヤした顔でこっちを見てる時もある。年を食うと皆ポルノしか頭にねぇんだろうか?
 戦艦なんて閉鎖された環境、軍隊の士気の為の乳繰り合うのを禁止されるってんで溜まってんのは解る。
 だが、俺たちは見世物でもポルノ男優でもねぇ。ただ闘う為だけのモルモットだ。
 それがあの雌犬が来たからって、なんで女どものオカズの為にサービスしなきゃならねえんだ。
 そんなの自給自足でやるか、そこいらの男と適当に宜しくやってれば良いだろうが。
 第一、この質問は極めて俺達には不利な話だ。答えた言葉はあくまでコレから咲く話の種にしかならない。
 激しくやってと言えば、ケダモノだ何だとはやし立てて淫猥なネタを引きずり出そうとする。
 優しくやってると言っても意外な紳士らしさに感心する中、気があるんじゃないかと勘違いをし出す。
 または、”建前でしょ?このケダモノ”と嘲笑うって結局は自分たちが納得する答えに料理して持ち帰る。

「俺の読んだ本には可哀想な奴の定義ってのが載ってたぜ?
 ――自分が可哀想だと思い込んで周りの可哀想を軽んじる奴
 ――可哀想だ可哀想だと言いながら何もせずに最後まで可哀想に死ぬ奴
 ――そんな奴等を見て、可哀想だと哀れみながら、自分の不幸を誤魔化す可哀想な奴」
「!?……意外と博識なのね」
「時間は糞余ってるからその分本は読んでるからな。で期待に沿うつもりはねぇ。
 どうしてもそういうのが聞きたいなら薬持ってきな。 シッシッ」

 全てを見透かした様な言葉に驚いた女どもに軽く手で払いのける様に相手を追い払えば
 俺は唯一の楽しみである本を再び読み進める。遠くからは残念がる男や女どもの声も聞こえた。
 結局の所あれだ。女達……否、コレは此処に居る奴全員に言えるだろう。
 賢い俺達などあいつ等は望んでいないのだ。馬鹿で好戦的で始末に追えない傍若無人さ。
 薬だけで唯一言う事を聞き入れるどうしょうもない野性味丸出しのケダモノ達。
 今、俺の膝の上にその頭とぼさぼさの髪の毛を散らせながらも寝こけて居る雌犬も同じ様なもの。
 ケダモノの檻に入れられて、見世物の様に喰われ弄ばれながらそれでも生き延びている。
 決して助けはせずにその悲劇と官能的なシチュエーションを箸でつついて楽しみたい。
 そういう”キャラクター付け”をさせられているのだ。

      機動戦士ガンダムSEED異聞 
             〜REVENGE WERWOLF GIRL
      -00.5howl 「Scenery seen from bottom of pool of blood.」
204赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:24:43 ID:???
 水に打たれる音の中に意識はかすかに回復していく。鼻や口の奥底にこびり付く苦々しい味と匂い。
 肩や腹に激痛を感じながらもかすかにシャンプーの甘い香りが僅かに鼻につく。
 湯煎したチョコレートの様になっていた思考が徐々に固まり、周りの状況を確認しようとする。
 見えた壁とホースと蛇口を見るからに此処が狭く仕切られたシャワールームだと認識した。
 上から天の恵みの様に降り注がれる水は体の泥や血や匂いを洗い流し、惑ろむ意識の霞を晴らしていく。
 ふと、それで胃の中から何かが噎せ返る様に喉元を焚き付けてくる。
 そのまま、口を開けば胃から逆流してくる吐瀉物が床にぶちまけられた。
 御飯の残骸らしき茶色の液体や赤い血の色、そして何やら白い液体も混じってくる。白いのは何だろう?
 そんな事を思っていると頭皮に触れていた自分以外の指の感触が離れていく。

「お前……汚い」
 
 上を向くと大きな黒い影。まるで聳え立つ壁の様に最初は見えていたが
 それが徐々に生白い肌の少年だとわかってくる。しかも裸だ。
 ほの暗さを感じる鋭い目付きはまるで幽霊を連想させ、癖のついた緑の髪の毛がそれを助長する。
 両手には泡がついており慌てて引き抜いた所為か、長い黒髪が絡みついてる。
 自分の髪の毛を洗っていてくれたのだろうか? まて、ちょっと待て。
 今、少年だったよな? 立っていたのは。少年と言う事は男だ。生物学上”♂”。
 そして、落ち着け俺。俺はなんだ? そうだ、女だ。男性器も着いてないし胸もある。
 ちゃんと初潮も迎えたし、その時はお祝いもあった。周囲からもきちんと女として認識されている。
 体を良く見る。うん。シャワールームと言う事はあれだ。衣服を全く纏っていない状況。
 つまり、裸。二文字で言えば全裸。裸と全裸の語彙的な違いを問われても説明できないが正にそんな状況。
 さて、全裸、全裸、裸。そんな”女”の自分が目の前に”男”が居る。取るべき行動は一つだ。
 
「目が覚めた?」
「え、あんただ……きゃあああああああああああああ!?」
「!!! お前、五月蝿い!」 
「キャっ……いっつぅっーーーー!!」
205赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:26:45 ID:???
 おかしい。俺は極めて女として正常なリアクションを取った筈だ。普通は悲鳴と行動が正解な筈だ。
 大抵は悲鳴で駆けつけて誰かが助けに来るなりとかそういう展開を望んでの行動だ。
 それなのにその悲鳴に逆に少年は予想外と言った感じのリアクションで怯えて、そのまま顔を蹴り上げられる。
 シャワールームの壁へと頭を叩き付けられて脳味噌が揺さぶられていく。
 再び意識が融解しそうになる中、ペタペタと近付く足音が何とか保っている意識の中、耳に響いていくる。
 がらりっと開かれるシャワールームの扉。その先に立つ二人の人影が見えてくる。
 背が高く肌が白いが筋肉質の体の少年とやや肌が黒い背の低い少年の姿が見えた。
 唯一の救いは三人ともちゃんと腰にタオルを巻いていた事位だ。正に最後の無花果の葉。
 それはもう下も丸出しだった日には俺の頭の中は混乱でぐっちゃぐちゃになっていただろう。

「シャニ!女洗うのに何時まで時間かかってんだ! うるせぇぞ!」
「まさか、隠れてやってたんじゃないだろうね? 全く、しれっとした顔して何考えてんだか」
「髪長い、洗うの大変、目が覚めた。……そしたら、叫んだ。五月蝿いから蹴った」

 待て、其処の二人。要点は其処なのか? 違うだろう? 良く見ろ、こっちを。
 壁に頭を叩きつけられて蹲っている女に対してのフォローは無しなのか? どんな放置プレイだ。
 傍に立っていた少年は端的かつ最小限の言葉で成り行きを説明する。否定する余地の無い事実である。
 だけど、少年が言う様な起きた事象的な問題ではなくその意識的なズレに対して
 是正を願いたい気持で一杯で何度でも叫びたいのだがその力も出無い有様だった。
 俺の意識は再びフェードアウトしていく。畜生、次起きた時は誰かきちんと説明しやがれ。
 最後にそう心の中で絶叫し悔しさを思い残しまま再び意識は闇に堕ちる。



 次に目が覚めた時には硬いベットの上だった。頭の方から何やら暖かい風と機械の稼動音が聞こえる。
 頭を持ち上げようとしたら上から顔をむんずっと手で押さえつけられた。小さい手だったが力はとても強い。
 段々と息苦しくなってきたので手足をばたつかせてみても全く動かす気配が無い。
 仕方ないのでギブアップを示す様にベットを何度も手で叩き付けるが状況は未だに変わらず。
 何やら遠くからげらげらと笑い声が聞こえてくる。あれは死神かそれとも天に召す為の天使達の笑い声か?
 後者である事を願いたいが、あんな悪趣味な声質では天国の天使共の質が落ちたものだと思う。
206赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:28:48 ID:???
「シャニ、その位にしてやれよ。その女死んじゃうよ?」
「まだ、髪が乾いてない」
「自分でやれるだろ。どけてやれ」
「……解った」

 遣り取りの後、ようやく手がどけられることにより気道の再確保を体が自動的に行ってくれる。
 俺は跳ね返る様に飛び起きれば、顔を赤くしながらもぜーはーと呼吸を整えていく。
 加減を知らないのかこいつ等は?と直感的文句を思いついたのだがそれより確認すべき事項がある。
 自分の体と手足を良く見る。今度は病院の人体ドックの患者が受ける様な布切れが着せられていた。
 それにほっと胸を撫で下ろし、ようやく周囲の状況が確認出来た。うむ。これで一安心だ。
 狭い部屋。微妙に揺れているからきっと船の中なんだろうか?
 目の前、先ほど意識を失う前に全裸の私の前に半裸(と言っても明らかに裸の部分は多かったが)
 だった少年たちが服を着て座って居る。ぼやけた視界の中だったが意識とともに相手が細かく認識し始める。
 背の高い方はやや薄い黄緑、褐色の背の小さいほうはオレンジの髪だった。中々カラフルな面子だ。
 後ろを振り向けば、自分の長い髪の毛を丁寧に櫛でとかしながらも
 まるで人形遊びをする様にタオルの上に広げてドライヤーを掛けていた人物。
 最初に傍に居た白肌の少年だった。相変わらず幽霊みたいな表情をしている。
 どうやら、私を窒息死にしかけた手はこの少年のモノだったらしい。

「し、死ぬかと思った」
「お前、死んでない方がおかしいぞ。マジで」
「コレだからコーディネイターってのはねぇ」
「……まだ半乾き」

 少年二人は何を今更っと言った顔をしながらも呆れた口調で愚痴を零していく。
 後ろからとんとんっと肩を叩かれた。ドライヤーとタオルを渡す少年。
 会話からして続きは自分でと言う事を暗に言いたいらしい。随分口数が少ない印象を与える。
 言われたとおり髪を触ってみれば確かにまだ髪は湿っている。軽く頷きを返しながらもソレを受け取る。
 いや……ちょっと、待て? つまり、まだ髪が乾くまでしか時間が経っていないという事になる。
 ならば、俺はシャワールームからこの部屋に運ばれる際体を拭かれてこの服を着せられたという事になる。
 それが即ち何を意味するかと言うとその間に体は見られるわ、体は触られるわで…えーと、それはつまり

「あんた達、裸見たって言うか触った?」
「ん? ああ、そりゃな。お前意外とスタイル良いんだな。最初汚かったから驚いた」
「女の体ってあーなってんだね。僕、映像や画像でしか見た事なかったよ」
「……飯」
207赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:31:18 ID:???
 死にたい。と言うかもうお嫁にいけない。耳元まで真赤にしながらもそのままベットへと蹲る。
 ああ、お父さんお母さん、それにアノ子にどうやって顔を合わせたら良いんだろう。
 しかも、何か背の高い方は汚いとか普通に言うし。汚いってなんだよ汚いって!
 そんなこっちの悩みを他所にドライヤーを掛けていた少年はすっと何やらパックを目の前へと差し出す。
 えーと、ゼリー飲料にも見えるがコレはあれか? 軍人が食べるレーションとか言う食事だろうか。
 つまり、喰えと言いたいのか? こんな人生最大の羞恥に耐えなければいけない状況で飯を喉に通せと。
 受け取る事も無く蹲っていると、ちぃっと面倒くさそうな舌打ちが後ろから聞こえる。
 ずいっと引っ張り上げられる髪の毛。大きく視界が広げられて、痛みと共に姿勢を正される。
 まだ乾き切っていないその髪は相手にべっちょりとくっついていく中
 レーションの封を切られればそれを口元に押し込ませる。俺は何時、人権を失効してしまったんだろうか?

「面倒くせぇな。さっさと喰え」
「そうそう、君に聞きたい事があったからこう世話をしてる事を自覚して欲しいね」
「げほっ。不味……ん、聞きたいこと?」
「そうだ……あの女。……アスカを如何殺った?」
「……え?」

 俺はそのゼリー飲料らしき食べ物を口に含みながらも少年たちの言葉に首を傾げていく。
 アスカを殺った?と自分の脳がそのワードを海馬をへと働き掛けた時
 まるでダムが決壊したかの様に情報とその時の情景が一気に流れ込んできた。
 思い出されるのは凄惨な町並み、自分に話しかけてきた連合の兵士二名の顔。
 その声と銃声のまま全ての記憶が走馬灯の様に脳裏に刻まれていく。
 そう、俺は殺してしまったのだ。人を。……人間を。そう、3人も!
 先ほどまでの半分冗談交じりだった空気と意識が一瞬に冷たい牢獄へと変わっていく。
 あれは何だったんだろうか? 意識は確かにあった思考は定かではないが全てを記憶してるという事は
 それらに意志や一定の思考プロセスがあったという事だ。つまり自意識の元の行動。
 と言う事はそれを全て行ったのは”俺”なのか? ”俺”の何らかの意識があれを引き起こしたと?
 となると俺は何なんだろうか? 今までずっと普通の人生を送ってきたと思う。
 家族が居て、学校に通い、友達と話して和気藹々と過ごしてきた。
 悩みや壁も人並みにはあったのだと思う。家族の仲が良いと言うのを聞いたことがある位しか目立つ事は無い。
 けれど、それで満足してなかったというのか? 俺の中の狂気が、あんな大立ち回りをしたいと?
 考えると自分の手足がわなわなと震えてきながらも存在自体が怖くなってくる。
 誰だ? 俺の中に誰か別の俺が居るのか? 自分の影が急に襲い掛かる様な恐怖を感じていた。
208赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:34:12 ID:???
「後はあんまし、覚えてない。何かがどばっとはじけた感じがしたけど」
「はぁ?……何それ」
「はじけるって爆弾かなんかか? 芸術は爆発だと言ってた奴が居たが」
「いや、違うは……そのイメージは」

 頭の中であの時の様子の思考をシュミレートしなおしてみる。
 何かきっかけだったかは良く覚えていない。ただ、全てどーでも良くなっていた時。
 音が鳴って、それに気付いて、それを見上げて、何かが見えて、そして”弾けた”
 そう、爆弾とか発砲とかそんな危なっかしいものじゃない。
 何か新しいモノを感じさせる伊吹と言うか産声と言うか爆誕って奴なんだろうか?
 って、爆誕じゃ爆発みたいじゃないか。うーん、違うんだよな。
 確かに狂気の様相を呈していたと言ったが俺はソレに恐怖しながらもどこか懐かしさを感じていた。
 イメージは”もっと温かくて”けど”ほの暗い”んだけど、砕けたってネガティブなイメージじゃない。
 ガリガリと自分の髪の毛を掻きながらもそれに見合ったワードを知ってる言語の中から引きずり出していく。
 すると、自然にあるワードとイメージが頭の中から手繰り寄せられていく。ぱんっと大きく両手を合わせて叩けば
 それが合図の様に脳の中が一瞬でその色に変わってイメージが鮮明化されていった。

「そう……種! 種が割れたんだ」
「何だ……ソレ?」
「種って割れるのか?」
「実が割れて種を飛ばす植物はあるが種が割れて人格変わるなんてしらねぇぞ。
 発芽したってのならそりゃ外皮はわれるけどよ」
「……オルガって無駄に博識だよね」
「クロトと違ってゲームばっかやってねぇからな。お前等も本を読めば良いんだよ。」
「キキ……カジリ?」
「おお、シャニも言葉知ってるな。 別に本読まなくたって知識は入るんだよ! この本の蟲!」
「何だとこの糞が!? てめぇなんざゲーム中毒じゃねぇか!」
「……うざぁい」

 それぞれが互いの名前を言い合いながらも先ほどまで興味が自分に向いてた男達は
 それに飽きたかの様に二人は取っ組み合いを始める。
 自分のこと以外に思考を使う余裕と罵倒しあう遣り取りもあって名前がようやく一致した。
 この背の高いオールバックがオルガ。背の低い子供っぽい顔の奴がクロト。
 そして、今俺の後ろで髪を弄りながらも耳元でうざぁっいとか息を吹き掛けて俺を赤面させているのがシャニ。
209赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:38:14 ID:???
 名前が解るとそれぞれの個人に対して一個一個むかついてくる点が鮮明になってくると共に苛立ちが増す。
 シャニは何だか人を人形扱いだし、オルガは汚いだのなんだの散々だし、クロトはさっきの裸云々の発言。
 畜生、俺に人権や主導権があれば……いや、権利だけあってもこいつ等は聞きそうにない。
 やっぱりしつけとかってのは地位や力で……力? 何かこんな事をさっき思った様な気がする。
 そんなことをぼぅっと考えながらも二人の取っ組み合いはひと段落着いた様子で再び俺に視線が集まる。

「まぁ、良い。んで、取り合えずこいつどーすっか」
「……そういや、名前は?」
「名前? ……あれ、名前……名前・・・・・・え、嘘!? いや、ちょっと待……どういう」
「どうした?」

 頭の中で霧の中を何回手を突っ込んでも当たる事の無い感触。
 ジタバタと闇雲に動かしても何もなくて、掴めるのは断片的な記憶のみ。
 想い出の中の家族たちも誰も俺の名前を呼んでくれては居なかったか。否、思い出自体あまり覚えていない。
 そう、解らないんだ。考えても思い出そうとしても何かを手がかりに探そうとしても
 おぼろげな記憶はかき回しても空を掴む様に感触は無く、最古の記憶は爆風とあの”機体”だけだ。
 それ以外は……あの狂った時以外のことは何もかも記憶の景色から消えてしまった。
 記号化された事実と凶器、血溜まりの中から覆いかぶさる女性の顔を仰いだ空だけは瞼を閉じればすぐに見える。
 
「思い出せない。まさか、コレって」
「記憶……喪……失?」

「「……ダッセーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」

「それ、リアクション違うだろ!」

       Next to -00.3howl 「New land where gravity and human nature are lacked」
210赤頭巾 ◆sZZy4smj4M :2007/09/18(火) 03:41:25 ID:???
以上投下分終了です。
えーと、常夏3人がフリーダム過ぎて話が長引くわ!
シンが何か予想以上に温かくなっちゃうわ色々予定外が多過ぎました。
おまけでプロローグが更に刻みそうです。下手したら更に桁下がるかもorz
では、何か無駄に長くなって失礼しました。
211週刊新人スレ:2007/09/18(火) 18:09:25 ID:???
行楽シーズンも関係無しに引きこもるぞ特別増ページ号(1/2)

 アズラエルへ突進するジープ、打ちかけられるアサルトライフル。全てを自らの体を張って止めた"彼女"は反撃に転ずる!
機動戦士ガンダムSEED異聞〜REVENGE WERWOLF GIRL
>>57-62,202-209

 CEオールスターVS水島連合軍。双方のギョーカイの複雑な事情を背負って今、始球式が始まる……!
新シャア板の大甲子園
>>64-65,155-157

 バルトフェルトとの会話に肩を落とすカガリ。一方優勢な筈のアスランは苦境に立たされていた。その彼を救うのは……!
逆襲のアスラン
>>69-73

 僕はシューティングゲーム以外はやらないし、カンスト前にワザとやられる事にしている。その理由は……。
Exploration of Personality
>>81

 ――愛と悲しみの歌姫――。書き終えた原稿を前に悩むラクス。その彼女に声をかけるのは……。
「愛と悲しみの歌姫」に纏わる物語
>>82-85,146-151

 アークエンジェルへと歩を進めるミネルバクルー達。その彼らをMSデッキで待つフリーダムを目にしたシンは……。
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
>>96-102

 墜ちていく僕の女神。僕はただそれを見つめる事しか出来なかった……。『少女は砂漠を走る!』を師匠こと、エディ視点で再構成。
女神と天使 〜少女は砂漠を走る! Master's side〜
>>104-106

 一人きりのベッドの上、少女の獣の本性は徐々に目を覚まし……。愛に纏わる狂気を浮き彫りにするシリーズ第二弾!
lunatic love
>>108

 彼は緊急事態の報にキラ・ヤマトとしてフリーダムを起動させる。その彼が対峙した最新鋭機を駆るのは意外な人物だった!!
タイトル未定
>>112-121,123,126-135

 親父は小さな町工場の社長だった……。普通の人々が見たロゴス討伐の真実! 戦争の怒りと悲しみを抉り出す新シリーズ!!
hate and war
>>139
212週刊新人スレ:2007/09/18(火) 18:11:19 ID:???
行楽シーズンも関係無しに引きこもるぞ特別増ページ号(2/2)

 ユニウスの状況、自らの置かれた立場。シホとの、ヘルマンとの会話で全てが切迫している事を再認識したイザークは……。 
SEED『†』 
>>167-172
 今は無き向上スレに投下された短編を新人スレにて復刻。地味に人気なミゾグチ一尉に萌えろ!
『空』
>>178

 ジブリールの見守る中スティング対老人の模擬戦が始まる。そのころ宇宙では、満を持してラクス・クラインが動こうとしていた。
せめて、夢の中だけは
>>181-184

 幸せの絶頂から突き落とされるシン。その彼が最期に取る行動は……。新人スレ期待の大人気ルーキーが放つ初短編。
我が子へ
>>187-188


 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
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>>7-9

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お知らせ
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。

業務連絡
まとめの中の人、雑談所所長、及び住人の皆さんへ。
三次職人としてちょっとだけテンプレ弄ってるんですが、出来上がったら雑談所に貼って良いでしょうか。
たぶん作ってくれたのはまとめの中の人ですよね? 非常に乙です。
みんなで手をかければすごく良くなると思うので、是非みんなにも弄って貰いたいんです。
だからといって今、本スレに貼るのは違う気がするので。
明日かなり遠方に出張なんでインターネット使えるかどうかもわかんないですが。

編集後記
何故か今週も大漁、職人の皆様お疲れ様です。そして俺も乙。
もう300k越えてるって、凄いねぇ……。
ところで某所での対決、明らかに俺の負けですね。
はい、モチロン直接対決は避けましたが何か……? orz。
213雑談所所長:2007/09/18(火) 21:49:28 ID:???
最近まとめサイトをランキングサイトに参加させたらどうかというメールが沢山届いています。
その件について皆様の意見をお聞きしたいので雑談所に作った議論用スレに御意見をお願いします。
214通常の名無しさんの3倍:2007/09/18(火) 22:53:37 ID:???
>>赤頭巾さん投下乙。
これはとてもフリーダムな常夏ですね。スプラッタハードアクションが
スプラッタハードフルコメディになった感じ。続きが楽しみです。

>>編集長乙。
最近投下の量が多くて大変ですね。いつもいつもGJです。
テンプレ弄り……やってみましょうか。

>>雑談所所長乙。
なんか雑談所のボリュームが上がってて驚いた。
215新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/18(火) 23:13:07 ID:???
一回表・後編

「四番、キャッチャー山田君」
 アナウンスが流れ、山田太郎はバッターボックスに向かう。そして、一回スイングしてから打席に入る。
 入念に足場を均し、ニコルに一例してから構えた。

 ニコルは山田を見ると、汗が全身から吹き出してくる様な感覚を受ける。
 ポケットからハンカチを取り出して汗を拭った。

 山田の構えには一部の隙もなく、何処へ投げようがスタンドに運ばれてしまう様な気がする。
 しかし、ニコルには消える魔球・ミラージュコロイド・ボールがある。
 ランナーを無視してバッター勝負に徹すれば、抑える事も可能だ。
 ニコルはそう思いつつレイの出すサインを見ると、思わずずっこけてしまいそうになった。
 レイはサインなど出さずに立ち上がり、敬遠を要求したのだ。
 1アウト一、二塁。打者は高校生最強スラッガーである山田太郎。敬遠でもおかしくはない。
 しかし、ピッチャーというものは理屈理論では割り切る事の出来ないプライドというものがある。
 ニコルは情けなくて涙を溢れさせてしまう。
 悔しいが、敬遠に従わなければならない。
「ボール」
 主審がコールすると、観客席から野次が飛んで来る。
「あんなデブ相手に逃げるならキラきゅんをピッチャーにしなさいよ!勿論女房役はアスランで♪ キャーッ!」
「ここはやっぱりシンをキャッチャーにしてピッチャーアスランで。萌えるわぁ」
 野次は観客席からだけではなく、味方からも飛んで来る。
「ナチュラル風情に敬遠とはな! 恥を知れキョシヌケェェッ!」

 しかしニコルは要求どおりに敬遠をする。
「ボール!」
 どんどんと野次はひどくなり、甲子園は異様な熱気に包まれる。
「山田ー、振れ、振れーっ!」
 エキサイトしているのは不知火だ。彼はピッチャーとして、敬遠というものを許せない性格をしているのだ。
 観客に、敵に、仲間にさえも罵倒され、ニコルはもはや誰一人僕に味方をするものはいないのかも知れないと思い始めた。
 しかし、その時――!
「お前らやめろ!敬遠だって立派な作戦じゃないか!それにピッチャーだって辛いんだ!」
 一人の男の血を吐く様な叫びで野次が止まる。

 誰なのか知らないけれど、僕の気持ちを分かってくれる人がいる。だったら僕はまだ戦える!

 折れかかったニコルの心は、PH装甲並の強度を取り戻した。
216新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/18(火) 23:22:44 ID:???
「あれは……江川学院の中!」
 水島厨達がざわめき始める。
 そう。彼の名は中。江川学院のエースで、かつて明訓と対戦した時に、山田を五打席連続敬遠した事がある男だ。
 敬遠をする事の悔しさ、情けなさを誰よりも知っている男である。
 中の迫力に観客の野次は止まった。
「ボール!……ボール!フォアボール!」
 フォアボールとなり山田は一塁に進塁する。
 山田はニコルを非難する事なくゆっくりと歩いて行く。
 1アウト満塁。一打で大量得点のチャンスでありピンチである。
 ニコルは流れる汗と涙を拭い、次のバッターを待つ。
 バッターは犬飼三兄弟の二男、武蔵である。
 殺人野球と言われた土佐丸高校の中心人物の一人であり、巨漢でパワーを誇るスラッガーだ。
 レイは真ん中から内に食い込むカーブを要求する。
 その巨体故に内角を打つのはかなり難しいだろうし、力任せの雑なバッティングをする雰囲気を漂わせている。
 三振狙いではなく、打たせて取るピッチングでダブルプレーを狙うべきとの考えだ。 ニコルは頷いてモーションに入り振りかぶった。
 すると、三塁走者の殿馬が走り、武蔵がバントの構えをする。
 スクイズだ。しかし、全く警戒していなかった為に内野の守備位置は定位置であり、前身守備ではない。このままでは失点してしまう。
 ニコルは握りを変えてミラージュコロイドボールを投げた。
 武蔵は消える魔球に驚きを隠せなかったが、どうにかバットに当てた。
 ボールは小フライとなり一塁線に上がる。
 ファーストのキラは一塁についたまま動いていない。
 ニコルはボールに向かい飛び付く。
「アウト!」
 落とさずに捕球をすると本塁に殿馬が滑り込んでいるのが見えた。
 しかし、一塁走者の山田がドタドタと帰塁しているのが見える。
 ご苦労様、と思いつつキラにボールを投げた。
「スリー・アウト! チェンジ!」
 審判の声と共にCEASはベンチへと戻った。
 しかし不意に観客がどよめき始める。
 スコアボードが
 一二三四五六七八九 計
水1         1
種          0
となっていたのだ。
 抗議の為にクルーゼが飛び出し、ニコルは失意の為にうなだれる。
 ナインは驚きのあまり立ちすくんでいる。ディアッカは呆然と呟く。
「これはまさか……ルールブックの盲点の一点なのか!?」
217新シャア板の大甲子園 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/18(火) 23:24:07 ID:???
投下終了づら。
218通常の名無しさんの3倍:2007/09/18(火) 23:27:26 ID:???
>>大甲子園投下乙。
キング=クリムゾン! 一回裏から七回裏までの時間は消し飛ぶ!
な風に見えてますぜ?
219 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/18(火) 23:34:38 ID:???
べらんめぇ!PH装甲じゃなくてPS装甲じゃねえか!

すみません徳川家康の真似をしてしまいました。
220通常の名無しさんの3倍:2007/09/19(水) 09:34:24 ID:???
もはやネタ元がわからなく・・・ww
221通常の名無しさんの3倍:2007/09/19(水) 19:29:32 ID:???
いきなり盲点の一点かよwww
もうちょっと野球のルールに詳しくない人の為にプレーの説明があった方が良かったな。
取り敢えず中にふいたwww
222通常の名無しさんの3倍:2007/09/19(水) 19:33:11 ID:???
>>217
クロスにかこつけて種キャラを貶めている様にしか思えない。
まるでエデン野郎だ。
223通常の名無しさんの3倍:2007/09/19(水) 20:43:19 ID:???
>>217
お前総合女難スレで801ネタ投下してる奴だろ
いい加減にしないと潰すぞ
224通常の名無しさんの3倍:2007/09/19(水) 21:32:07 ID:???
>>217
ここまで来たらとことん暴走しちまえwwwwwwOO始まったらそっちに客とられっから
一気にリビドーに任せて書き下ろして最後までスパートでおk!スレ番跳んでもキニスンナ
225SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/20(木) 02:22:52 ID:???
23/

 ――戦艦ミネルバ 艦橋

「ルナマリア=ホーク、スタンバイ入りました。二十秒後に発進いけます」
 妙にスカートを気にしていた姉に疑問を感じつつ、メイリンは報告を上げた。
更衣室に入った時に、何故か赤い顔でミニスカートの裾を押さえていたので、
監視カメラの映像を拡大して『恥じらい』という名前で保存しておいた。
 勿論、整備班に後で売り払うためである……オペレイターの危険手当は安い。
ささやかな副業が後ろでふんぞり返っている議長にばれないよう、細心の注意を払った。

「直にザクで、先行しているインパルスの後を追わせて……赤いザクは三割早いのでしょう?」
「デブリ帯の話でしょうがね。操縦の上手さについて追随を許さないのは確かです」
 訓練所時代の伝説であり、決して事実では無いが真実の一端を含んでいる。
「ゲイツとザクは待機。警戒を密に……各員傾注」
 艦長の声は、さほど大きくはなくとも艦橋の隅々まで届く。
「ヴォルテール隊がユニウス7に先行し、既に破砕作業を開始しています。
本艦の任務はこれの掩護――さし当たって作業部隊の人手は足りているらしいから、
仕事は付近の警備と作業中に故障した機体、及び資材の運搬が主です」
 いざとなればフライヤーに物を括りつけてでも機材を送ることの出来るインパルスと、
射撃武器を持たない限り当代随一の操縦技量を持つルナマリアのチームが直接支援に
当たることとなっている。

 メイリンの手元で、格納庫からの連絡回線が開いた音がする。
「あら……艦長、整備班から連絡です。素体のみで出撃したインパルスの為に、
特別装備の使用をテストを兼ねて認めて欲しい、と」
「何……何なのコレ?」
「ドカタシルエット……? 一体なんだいそれは?」
「修理中のシルエットに代わって用意した整備班の自信作――だそうです。
手製のマニュアルが付属しています」
 アーサー副長の疑問に答え、ヴィーノが送ってきたシルエットの性能諸元を表示して見せた。
 ファイル名は『第二次亥号改造計画』。亥号なるアナクロなコードネームを割り振られ、
両肩から巨大なドリルが突き出したインパルスの奇抜な"完成予想図"が表紙を飾っていた。
「と言う事は第一次があったわけか、全く知らなかった――!」
 副長が新たなるシルエット――半壊したフォースシルエットに整備班が適当な自作武装を
取り付けて再生させた代物――のデータを眺めて居る間、手持ち無沙汰なメイリンは
マニキュアの仕上がりを確認していた。濃い目のピンクは、左の小指に少しムラがある。
226SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/20(木) 02:24:00 ID:???
24/

 データ表をめくっていたアーサーが怪訝な顔でつぶやいた。
「追加武装……"深遠なる紅き螺旋"と"最果ての蒼き聖釘"…………は?」
 それぞれの武装名称横に"ディープエンド・クリムゾン・スパイラル"、
"ハイエンド・ブルー・スティンガー"なる安直な振り仮名が振られていた。
「内実は単なる装備式のドリルとつるはしにこのネーミングは一体……!?」
「そういう名前を付けたい年頃なのよ。良いから送って上げなさい」
 底知れぬ懐の深さを見せる艦長タリアだった。

「ところでメイリン、一つ聞きたいのだけれど……"超級業炎穿雷地獄"ってなんて読むの?」
「"メギド"……だそうです。通電ワイヤーアンカーと火炎放射器の複合兵器ですね」
 気がつけば、艦橋の女性クルーが笑いを堪えている。冷静沈着が白服をきたようなタリアも、
メイリンがよく見れば帽子を押さえる手が少し震えていた。
「しかし全く、最近の武装は凝った名前をつけるものですなあ……」
 素直に感心したのはアーサーだけで、他の男性クルーは歯を食い縛り"何か"に耐えていた。

「……? 議長、どこかお加減が悪いのですか?」
 タリアは、こめかみから汗を流しているプラントの議長に問う。
「いや、なに……人は誰しも隠しておきたい記憶を何処かに抱えて居るものなのだよ」
 遮蔽された艦橋の天井を眺めながら、議長は語り始めた。
「胸に抱えた燻るもの、爆発しそうな魂を記した一冊のノート……」
 ――天井の染みでも数えて居るのかしら? メイリンは不思議に思った。
「それは例えば実家にある自分の机の奧に残っていて、里帰りの日何気なく手に取った後、
どうしようもなく消せない過去の痛みを思い出させるのだ……」
 ぐぅ……! 操舵手のマリクが何故か苦しそうに胸を押さえた。

「認めたくないものだよ……若さゆえの過ちというものは」
 何時しか男性クルー全員がデュランダル議長に向き直り、厳かな語りを静聴している。
 議長がとてつもなく重要な台詞を、果てしなく如何でもいい場面で使ってしまった気がしてならい。

 デュランダルが――立ち上がる。
「だがしかし! 一度過ちを認めそれを乗り越えたとき、人はこうまでも素晴らしい物を
作り上げる事が出来るのだ。考えても見て欲しい、我々がいま当然のものとして暮らしている
プラントという大地ですら、黎明にあっては多くの失笑を買った妄想の産物だったのだ」
 議長を凝視する索敵手バートの見開かれた両眼から、熱い涙が滝のように零れた。
227SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/20(木) 02:25:04 ID:???
25/

「この場にも幾人か胸に走る痛みを抱えて居るものがあるだろう、私の胸も痛んでいる!
だが――恥ずかしながら、私も認めよう……この痛みはかつての過ちを認め、それと向き合い、
そして乗り越えた者達が現に存在するという事への憧憬の痛みだと!」
 おおお……! 議長が拳を握り締め断言した瞬間、火器担当のチェンが感嘆の声を洩らした。

「いま、この私と痛みを共にする諸君――! これは宇宙(そら)に残る勇気を知る為の痛みだ。
そして痛みを知るものはそれを恐れてはならない、絶やしてもならない」
 ――な、何? 議長の背後に……!?
 その瞬間、メイリンですらデュランダルの背に後光が差すのを幻視した。

「そして諸君、これは必ずしも我々プラントのコーディネーターだけが持つ物ではない。
あの青い星に住む多くのナチュラルにもまた、同じ痛みと――勇気を持つ者達が居る!」
 腕を振ったデュランダルの言葉によって、ブリッジクルー(男性限定)の間に電流が走った。
全てのクルー(男)がモニターに映る地球を見、そしてデュランダルの言葉を待つ。

「宇宙と地球、プラントと連合、そしてナチュラルとコーディネーター……。
我々と彼等の間には友好を妨げる深い溝があり、理解を阻む高い壁がある。
だが我々と彼らは同じ痛みを知るものだ……同じ勇気を知るものだ。
どうか諸君、いまこの瞬間だけは全ての隔たりを越え、まだ見ぬ志を同じくする者達を
救うために全力を尽くして欲しい!」
「「「――ハッ――!!」」」
 何度リハーサルを重ねてもこうはいかないというほどに一分の狂いも無く、
クルー(♂)の敬礼が重なった。
 流れを唖然と見守っていたメイリン含む女性クルーも慌てて敬礼を行う……一人を除いて。

「それでメイリン、その……ドカタシルエットだけれど、操縦系統に問題は無いの?」
 ミネルバ艦長タリア=グラディス、雰囲気に流されない女であった。ドカタと口にする瞬間も
嫌そうな表情はするが、口調には出さないあたりに克己心の発露を感じた。
「グラディス艦長、君だって幼い頃は魔法を使いたいと思っていたのではないのかね?」
「ええ、デュランダル議長……憧れていた主人公が交通事故で死ぬまでは」
「……そうか……」
 静かに、目線だけで冷たいやり取りを交わしている。
 ギルバート=デュランダルとタリア=グラディス、二人の間には年齢や地位を越えた、
終わりの見えぬ男女の垣が横たわって居るようであった。
228SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/20(木) 02:26:20 ID:???
26/

「音声認識です……」
 マニュアルから操作方法を読み取ったメイリンは、果たしてこの二人のにらみ合いを
邪魔していいものかと、恐る恐る伺いを立てた。
「……何?」
「ですから、武装の使用方法が音声認識です。声の大きさでモーションやドリルの回転数を
調整する方式のようで……何これ、各種武器に二つずつ必殺モーションを採用?」
「ふむ……画期的な操縦方法ではないかね?」
「議長は黙っていて下さい。……メイリン、もしも貴方がこの機体に乗せられたなら戦える?」
「死を選択します――」
 即答した。

「そうね、操縦方法をノーマルに戻せるのはマッド班長最後の良心……と。
いいわメイリン、シルエットの射出を認めます。ただしモードはノーマル」
「はい――!」
「パイロット本人の希望も聞いてみてはどうかね、グラディス艦長?」
 食い下がる議長に、タリアは振り返る事すらなく答える。
「……音声認識……」
 地獄から這い上がる鬼のような声だ、メイリンはそう思った。
「センチメートル単位の精細な作業を要求されるMSコントロールに、声の音量を用いる? 
コンマ秒の反応が要求される戦場において、モーションを指示終わるまで動作が開始しない?
猛烈なGの掛かるコクピットで舌を噛む様な台詞を吐けと?」
 あくまで考え方そのものが巫山戯ているとは言わずに、
「……ナンセンスです」
 タリア艦長は指摘した。

「しかし……ならば本当に射出を認めても良いのですか?」
 心配したアーサーの台詞だ。
「基盤になったフォースの機動力だけでも、素体よりはインパルスの能力は上昇するでしょう。
一度認めた事を覆すのも薦められないし、武装を使うかどうかはシンが考える事よ」
 ただし、とタリアは付け加える。
「貴重な整備員の時間とミネルバの資材をつぎ込んだのは明らかだわ。関わったメカニックは
全員一ヶ月の減棒、首謀者は二ヶ月の減棒よ。大して効果は無いでしょうけれど」
 厳しく見えて権限の抑制が全く無いという、放任極まりないタリアの"処罰"だった。
「どうせヨウランとヴィーノ、あの二人が関わって居るんでしょうけれどね」
 タリアは忌々しげに吐き捨てた。
229SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/20(木) 02:27:27 ID:???
27/

「艦長……」
「今度は何――?」
 一国一城の主だけあって、自分の感情を把握してコントロールするのは簡単らしい。
続くメイリンの報告に答えるタリアの雰囲気は、全くの平常に戻っていた。
「ザクのレイ=ザ=バレルが出撃の許可を求めて居ます。護衛任務は艦の外で行いたい、と」
「理由は――? いえ、いいわ。モニターにレイを出して」
 MSは動力のバッテリー依存という特性上、艦を直接護衛する場合は艦内待機が多い。
艦外のMSによるノイズを排除した方が、艦のセンサーによる索敵が為やすい事も理由である。

『理由は……在りません。強いて言うならば敵の気配がすると言う事です』
 モニターに表れた金髪の美青年は、出撃の理由が"無い"事をあっさり認めた。
チェンとバートが目線を交わして首を捻る。
『先程――シンが出撃した瞬間から、何者かに見られている気配を感じるのです。索敵データにも
目を通しましたが、敵が潜んで居るという情報は認められませんでした……艦長』
「いいわ――ザクとゲイツの出撃を認めます」
「……艦長?」軽やかに出撃を許可したタリアに向けて、アーサーは怪訝な表情を向けた。
「武装の選択も自由。ただし、必ず攻撃を受ける前に敵を発見する事……いいわね?」
『了解しました……有り難う御座います!』

「艦長、パイロット一人の"嫌な予感"程度で出撃を認めては――!」
 レイの顔がモニターから消えると同時に、アーサーが叫ぶ。
「実戦を経験したパイロットの言う事よ。私はその感覚を育てて欲しいの……レイ自身の手でね。
その上でデイルも付けた――暴走をするとしても抑えてくれるわ」
 部下の成長を望む一人の軍人として話すタリアは、何処と無く母親の雰囲気を漂わせていた。
「それに笑ってもいいけれど……私もね、先刻から戦争の気配を感じて居るの。
いまさら、ミネルバが落下寸前のユニウス7に近づいて、何も起きないという方がおかしいわ」
 言い切ったタリアの壮絶な笑みは、艦橋の空気を凍りつかせるのに充分だった。

 やがて第二艦橋から上がった報告をメイリンは伝える。
「レイ機、デイル機が両舷にスタンバイ完了。何時でも発進どうぞ……ってあれ?」
「何だ――!?」過敏にも思える副長の反応。
「ザクとゲイツが……カタパルトを使用せずに発進してゆきます」
 メイリンも首を捻る、レイとデイルの不可解な行動に、タリアは一人納得しているようだ。
「宇宙に隠れた……ミネルバのセンサーにすら映らない敵へ先制攻撃を掛けようというのね」
 楽しくてたまらないといった風の笑みを浮かべつつ、艦長帽の位置を正した。
230SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/20(木) 02:28:28 ID:???
28/

 目を凝らしてみても、モニターの漆黒に変化は無かった。
「それで、何をするつもりなんだバレル? ゲイツのバッシブセンサーを全開にしたが、
お前の言う方角には影一つ見えない……元々からして距離が遠すぎるんだ」
 ゲイツRの操縦席に収まるデイルはそろそろ声を荒げそうだった。レイは「戦気を感じた」
と言うが、センサーの充実したミネルバから距離を離せば刻一刻とバッテリーをすり減らす。
 出撃する合理性は無いといえた。
『敵が我々と同じレベルでステルスを行っていれば見えません。静かに……デイル』
「有線でしか繋いでいるのに、静かにしろと言われてもな……」
 収束されたレーダー波を当てない限り、NJの影響下でステルス状態のMSは発見出来ない。
民間機程度のセンサーであれば、直接接触するまで気付かれない自信がある。
 しかるに、僚機ザクのパイロットであるレイ=ザ=バレルは、
『心が乱れれば、敵に気配を悟られるかも知れません』ときた。

 ――こいつらは曲者ぞろいだ。赤を着るには変人でなければいかんのか?
 浮かび上がった疑問は、幾つかの実例を鑑みるに、如何にも正解でありそうな気がした。
 理不尽なほど格闘に強く、不合理なほど射撃に弱いルナマリア。
 能力にムラはあるが、状況への即応に優れ成長速度の早いシン。
 極めつけはレイだ。攻防両面、射撃格闘双方に高い完成度を誇る三人組の要。
普段は理屈を重視するくせに、いざとなると理解不能な感覚で動き始める。この冷静沈着を
売りとするザフトレッドの才能に、デイルは期待を通り越して恐怖感を抱きつつあった。

『……居た……!』
「嘘をつくなレイ……何も映っていない事はこっちのデータリンクで分かっているぞ。
何も見えない宙域に向かって"オルトロス"をどうする積もりだ――!?」
 デイルの驚きを他所に、ブレイズウィザードを装着した白いザクファントムは
曳航してきたガナーウィザード付属の大砲を虚空に向けて構えた。
『冬の夜……霜の降りるように……』
 レイは独言を呟いている。それは射撃の心得という奴だった。
「真顔で冗談を言うのは悪い癖だと、シンにも良く言われて居るだろうが!」
そしてトリガー。放たれたビームは瞬時に虚空を駆け抜け――爆発を起した。
「な……!」
『こちらの狙いに気付かなかったか……手応えは在った。しかし死んではいないな』
「おい、バレル――! 何をしたのか答えろ!」
『敵が居たので狙撃を行いました。爆発を確認、一応大破はさせたようです』
 激高寸前のデイルに向かって、レイは至極当然の事のように答える。
 ――当然? いや違う、敵が居ると分かった事に説明が出来ないだけだ!
 自分とっても言葉にならない感覚を他人に理解して貰うより、本能に従って母艦を守り、
敵を撃墜する事を優先した、只それだけの事なのだろう。
231SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/20(木) 02:29:41 ID:???
29/29

『すいません、デイル。説明を為ていては奴らの攻撃に間に合わないと思ったので――』
「……俺は何時の間にオカルトが通用する世界に踏み込んだんだ?」
 まだ、ヤシガニの化け物を相手にして居る方がマシだと思えた。
「それで、一応大破はさせたと。本当に敵なんだろうな? 斥候中の味方だったら洒落にならんぞ?」
『ええ、確実に敵です……ですが、母艦ではなかったようです――!』
「……?」
 新鋭機のザクが先に捉え、ゲイツが一拍遅れた。アラート……敵機接近のサイン。

 鈍い衝撃と共にザクとゲイツRとの距離が広がり、伸びきった通信ワイヤーが千切れる。
『来ます……デイルはそのままステルスで――!』
 ゲイツRを軽く蹴飛ばしたザクから最後の有線通信が入ると同時に、モニターの中で
敵機を表す光点が三つに分裂し、同時に熱紋判定が敵を特定した。
「これは……!」
 驚きっぱなしのデイルの視界――モニターを光が埋めた。ザクの居た位置を正確に狙って
放たれた三条のビームは、機動砲台による多方向同時攻撃だ。
 圧倒的な加速力で接近しながらこの攻撃を成し得る機体は只一つ。
「カオス……だと!?」
『そうだ、もしも奴が……ボギーワンがこの宙域に来ているのならば、
お前だけは足留めを為なくてはならない!』
 レイが、付近全域に向けて信号を発しながら叫んだ。その通信と危険を伝える信号は
間近に迫ったユニウス7と、そこで作業中のヴォルテール隊全てがキャッチしたはずだ。

 身を隠すゲイツの前面モニターには今や、凍りついた大地が大きく映し出されて居る。
 そしてパイロット殺しの加速で旋回を終えた深緑の魔獣が、対を成すドラグーンと共に
第二撃の体勢に入る。霊感など持たないデイルにも、カオスの放つ威圧感が怒りに
燃えて居ることだけは、はっきりと理解できた。
『カオス……お前は此処で磔だ――!』

 ザクとカオスが放つ光条が乱舞し、光の縞模様を成す。
 モニターを縦横に走るビーム。デイルの目にはまるで、今にも落ちてゆきそうなユニウス7が
千々に切り裂かれたようも見えた。


第十二話 了
232短編 ◆Q/9haBmLcc :2007/09/20(木) 21:07:09 ID:???
 coffee breaK

 珈琲。それは琥珀色の魅惑の宇宙。
 ほろ苦く芳醇な味わいは人生そのものであると言える。
 焙煎を失敗してえぐみがでる時もあるがそれもまた一興。
 人生という物は思い通りにならないという事を教えてくれる。
 ミルクや砂糖をいれるのは邪道ではあるけれど、マーブル模様を描き混じり合う様は目を楽しませてくれる。
 そして香ばしい香り。疲れを癒し一時の安らぎを与えてくれる。
 眠気覚ましにも丁度良い。書類整理で眠気を感じた時に飲む珈琲は格別だ。
 五臓六腑に染み渡り、眠気を吹き飛ばした活力を与えてくれる。
 味覚、視覚、嗅覚を楽しませてくれる珈琲はまさに神秘的で奇跡の飲み物だ。
 故に、僕は珈琲を愛する。僕ほど珈琲を愛する人間はこの世界にそうは沢山いないだろう。
「隊長、敵襲です!」
 ダコスタ君が物凄い剣幕で現れる。そんなに急いで何処に行くと言うのかね。
「おっと、ダコスタ君。急ぐのは良いが珈琲に唾を飛ばしてくれるなよ? 軍法裁判ものだぞ」
「隊長〜っ!」
 ダコスタ君は情けない声を出して顔色を赤くしたり青くしたりしている。
 それに黄色が加わればまるで信号機だ。全く以て惜しい。
 ダコスタ君は情けない声を出して顔色を赤くしたり青くしたりしている。
 それに黄色が加わればまるで信号機だ。全く以て惜しい。
「ダコスタ君、準備は出来ているかい?」
「隊長の命令があればいつでも出れます!」
 流石はダコスタ君。良い仕事をしている。彼がいるからこそ僕は珈琲を楽しむ事が出来るというもの。
「ダコスタ君、今度指揮を執ってみるかね? たまには僕に楽をさせてはくれないか?」
「隊長は十分に楽をしているでしょう! 自分はこれ以上仕事をさせられたら胃に穴が空いてしまいます!」
 珈琲を飲み過ぎて胃に穴が空くのは構わないが、仕事のやり過ぎで胃に穴が空いたら大変だ。
「これ以上の冗談は君の健康の為にやめておこう。それでは、行くぞ」
「お願いしますよ隊長! 今度は遊ばないで下さいよ? 頼みますからね!」
 安心したまえダコスタ君。僕は仕事はしっかりとこなす。それが違いの分かる大人の男というものだよ。
233 ◆Q/9haBmLcc :2007/09/20(木) 21:08:54 ID:???
筆が進まないので今は無き向上スレに投下した物をリライトして投下。
234lunatic love ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/20(木) 21:59:18 ID:???
“the anniversary of a person's death”

 ふと、思い出した。今日はあの娘の命日だ。
 今の今まで忘れていたけれど、確かにあの娘の命日だ。
 あの娘の事を思い出すとなんだか苦い記憶が蘇ってくる。
 あの娘が原因で疎遠になった仲間がいるし、結局の所俺はフラれてしまったのだから良い思い出ではない。
 だけど、思い出の善し悪しじゃなくて思い出してしまったのだから何かをしなければならないとは思う。
 花を捧げる? 俺は彼女の好きな花を知らないから却下。
 慰霊碑にでも行ってみる? 今からだと帰りが遅くなるから却下。
 アルバムやらなんやらから彼女の写真を取り出して見てみる? 一番簡単で手っ取り早いからそれに決定だ。
 探せば色々出て来た。隠し撮りした写真や書きかけのラブレターが結構ある。
 若気のいたりと言えるものが色々ある物だ。
 逆に言えば、良くこんなものが残っているとも思う。
 必要無いものを後生大事に残しておいてあるとは、我ながら女々しい野郎だな、思ってしまう。
 無用の長物を見ていると、思い出が鮮明になってくる。嫌な思い出ばかりだけれど。
 そう言えば、俺の腕を捻り上げたアイツは元気だろうか。
 風の噂だとプラントに渡ったとか渡らないとか。多分、行動に筋が通って無いのは変わっていないだろう。
 三つ子の魂百まで、なんていう諺もある。
 さて、この無用の長物をどうしようか。残しておいても良いけどなんだか癪に触るし困ったものだ。
 そうだ。いっその事、火にくべて燃やしてしまおう。
 線香代わりに燃やしてしまえば思い出す事もないだろう。
 思い出したのが命日だったから、思い立ったが吉日だ。
 善は急げと新聞紙とライターを持ち出して庭で火を着けた。
 一枚一枚火にくべて灰にする。風が無いから煙は真直ぐに天に登っていく。
 なんだか涙が出て来た。煙りが目に染みた訳じゃない。多分、俺は彼女に心底惚れていたのだろう。
 心の傷が鈍く痛み出す。
 まあ、なんだ。罰が当たる訳でもないから彼女の冥福ぐらいは祝ってやろう。
 さよなら、俺はお前の事が好きだったよ。
235lunatic love ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/20(木) 22:01:01 ID:???
書いていたら何がなんだか分からなくなってしまったけど投下してみたり。
236通常の名無しさんの3倍:2007/09/21(金) 15:58:04 ID:???
>>coffee break 投下乙です。
 違いの分かる大人を気取ってる虎が渋い。虎と蛸の雰囲気は
なんだか良く出てる感じがしました。
 珈琲の呑みすぎであっても、胃に穴が空いたら大変だってば。
 一箇所、コピペのミスかなにかで重複があるのですが、演出上の
表現なのか如何かが分からないので、そこらへんを教えて欲しいです。

>>lunatic love 投下乙です。
 今度はサイですか。時期的には種死の後でしょうかね。
 種でキラとは和解していたと思うんですが、フレイを護りきれなかったことや、
キラが奇妙な経路を辿ってプラント入りした辺りの複雑な感情があるのかな、と
深読みしてしまいました。
 一人称で、腕を捻じったキラの事を思い出すことでサイだと分からせたり、
情報の出し方がとても上手だと思いました。短編では重要ですよね。
 後は言葉のチョイス。
>>思い出したのが命日だったから、思い立ったが吉日だ。
この一行が何故かツボでした。言葉の使いかたが上手いなあ、と。

続きを期待しております。
237常連さんの後で気が引けるのですが:2007/09/21(金) 17:08:27 ID:???
『幻』

「新型のMS戦シミュレータ?」
「そうなんだ。ザフト脅威の科学力って奴で、被弾の衝撃や加減速のGまで完全再現だとよ」
「あいかわらず、プラントは恐ろしい国ですねぇ」
 苦いだけだと思っていたはずの、アンドリュー・バルトフェルドお手製ブレンドコーヒーが、
どういうわけか最近おいしく飲めるようになった。そんな自分を、毒されているな
――と思っているのは、当代最強を謳われるMS乗り、キラ・ヤマトである。

 コーヒーの香りを全身に染み付かせた男がカップと共に持ってきたのは、ザフト軍が
平時におけるMS戦訓練のために開発した模擬戦シミュレーターの広告だった。
「なに言ってんだ、いまはお前もその恐ろしい国の軍隊に身を置いてるんだぞ?
 ……と、使われてる技術はどうでもいいんだよ。俺はな、お前を誘いにきたんだ」
 せっかくだから、自分たちもそのシミュレーターとやらをやってみないか――
と言うのである。まるで、新しいゲームが稼動し始めたからゲームセンターに行こうと
友達に声をかける子供のようではないか。

「いやですよ、なんで休みの日までMSで戦わなきゃならないんです。広告の煽り文にある、
 『実戦のような緊張感』なんて味わいたくありません」
「おや、少年! いくら強いからといって、訓練を怠ってはいかんよ? 卓越したセンスも
 磨くことを忘れれば、容易に曇ってしまうものだからな。さあ、立ちたまえ!」
 いそいそと制服を身に着けながら、キラは慨嘆する。
「あんまりだ。ザフトの白服には、たまの休日を好きに過ごす自由もないのか。
 自由なのは機体の名前だけじゃないか。いっそ僕も仮面をつけて……」
 少年の漏らす不平の呟きなどでは、宇宙の虎を止めることなど不可能であった。
ともかく、男二人、新型シミュレーターを試しに行くこととなったのだ。

「……嫌気がさすくらいリアルですね、これ」
 キラの視界には宇宙が広がっていた。
 その全てが、ザフトの変人技術者たちの汗と涙と脳汁の結晶たる模擬戦体験マシン
『Imit』が作り出した虚像である。
238通常の名無しさんの3倍:2007/09/21(金) 17:12:26 ID:???
 彼が座すコックピットの作り自体は、ザフト製MSの一般的なものと同一に調整されている。
ただ、あらゆるモニターに映る映像は精巧きわまるCGであり、計器類が示す各々の値は
自機として設定されている機体の情報に――この場合はZGMF-X20A ストライクフリーダムに――
基づくデータ上のものでしかない。
 ただ、人間の「これは虚構だ」という理性を圧倒するには、充分すぎる代物だった。

「本当に加速のGを感じるなんて……しかも、僕はそれを少しも不自然だと感じていない」
 この分では、被弾の揺れが伝わるというのも本当だろう。本物と変わらぬ、
星の見えない宇宙を飛び回る感覚を全身に感じながら、思わずキラは笑っていた。
「どうだ。そろそろ敵のデータを出すか」
「そうですね」
 バルトフェルドの声でようやく模擬戦のことを思い出した彼は、戦闘開始の
コマンドを選択した。途端に、レーダーマップに光点がいくつも現れる。
 モニターのほうへ目をやると、はるか遠くに機影が浮かんでいた。いずれも
ストライクフリーダムの射程内だったが、すでに回避運動を取り始めている。
 機種はまちまちで、ダガーLやザクシリーズが無秩序に並べられていた。
「敵機は数々の戦闘データをフィードバックした行動パターンをとる。ただのAIとは思うな」
 バルトフェルドの声は、半分聞こえていなかった。そのとき既に、キラは機体の
性能を限界まで引き出すべく、静かに目を閉じ『例の感覚』を呼び起こしている
最中だったのだ。

 イメージ。宇宙のように黒い水面に、一粒の種が落ちる。
 それが弾けて光となり、同心円状の波紋が深淵を覆っていく――。
「過去のパッチワークに、今の僕は負けませんよ」
 ラクスがくれた機体は最高だ。まるで自分の身体のように動く。ストライクフリーダムに
乗ってよりこちら、僕は負けるどころか傷の一筋だって負ってはいない……。

 知らず知らずのうちに、慢心があったかもしれない。まさに疑いようのない強さゆえに、
キラは自分でそれを感じることができなかった。
 ドラグーンが敵の陣形を押し包むように虚空を舞い、微細に射線軸をずらした
幾重もの十字砲火が、暗黒のキャンバスに光の格子模様を描き出す。
 コックピットを傷つけられた機体はゼロ。少し時間を置いて、実質的な継戦能力を
失ったと判断された仮想敵機が、虚構の宇宙からかき消されていった。

<続く>
239237-238:2007/09/21(金) 17:17:10 ID:???
短編ですので、次の投下ぐらいで終わります。
素人が思いつきで書きましたので、アドバイスなどあればお願いします。
240通常の名無しさんの3倍:2007/09/21(金) 18:05:07 ID:???
>>幻
投下乙です。日常(?)の一風景という雰囲気で、短編としてはもう一ひねり
欲しいですかね。長編の繋ぎシーンに感じました。文章がとてもすっきりして
読み易いので、後編でどう落すのかが楽しみです。
241通常の名無しさんの3倍:2007/09/21(金) 19:25:02 ID:???
>>coffee
GJ!大人っぽいアダルティな文章でカッコいい!

>>lunatic
今回の投下で気が付いたけど貴方の短編シリーズって貴方なりの箱庭系だったんですね。
悲しいけど優しい何かを描いていた高畑さんとは違って、
悲しさや怒りの中に存在する狂気を描いている事に貴方の個性を感じました。
上の人も言ってるけど、情報の扱い方が上手いと思いました。
そっと匂わせる程度の情報の出し方と詩的で独特な言葉の選び方、リズミカルな文章が
貴方のSSを読んだ後に感じる不思議な雰囲気を生み出しているのだと思います。

>>幻
読みやすいスッキリとした文章は好みです。
欲を言えば、貴方なりの個性を出して欲しかったです。
次回投下を楽しみにしています。
242短編劇場・全力種死 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/21(金) 21:24:23 ID:???
「うぉーっ! ラクス様ぁーっ!」
「キャーッ! ラクス様ーぁっ!」
 黄色い歓声が喧しい。幾らラクス・クラインのコンサートだからとても、みんな弾け過ぎだ。
 艦長は苦虫を噛み潰した様な、忌々しそうな顔をしている。人一人位括り殺してしまいそうなオーラを漂わせている。
その視線の先で副艦長が頭を激しく振ってノリノリでポゴを踊っている。
 全く、何を考えているのだろうか。
 いい歳をした、ある程度の社会的地位がある人間があんな事をして恥ずかしくないのだろうか。
 艦長のあの顔も納得出来てしまう。
 常識を疑ってしまう。

 ――いや、ちょっと待て。
 副艦長は世間の常識というちっぽけな物差しではなく、自分の物差しで行動しているのではないだろうか。
 世間体や立場などを超越して、常識というものに根底から叛旗を翻しているのではないだろうか。
 ――なんてこった!俺はいつから常識や人の目を気にする様なちっぽけな人間になってしまったのだろう!
 向こう見ずなのは若者の特権であるのに、少々歳のいった副艦長に遥か先を行かれるとは!
 とてつもなく大きい敗北感を感じてしまう。
 しかし、まだまだ逆転のチャンスはある。いや、チャンスが無くても作り出す!
 俺は有象無象をかき分けて副艦長の隣りへと進む。
「L・O・V・E! ラブリー! ラクス!」
 俺は喉が潰れる程の大声で叫んで、しゃがんでは立つという動作を繰り返す。
 俺のその行動に、副艦長は怪訝そうに尋ねてくる。
「シン、何やってるんだ?」
 俺は出来る限りに大胆不敵な笑いを浮かべて副艦長を見る。
「何って分からないんですか? ウェーブですよ。良く見てくださいよ! 心の眼で! 大観衆のウェーブが見えるでしょう!?」
 副艦長は俺の言葉に驚愕の表情を浮かべる。そして俺の真似を始める。
 俺に副艦長が続くと、だんだんとウェーブが大きくなっていく。
 そして、この場にいる全ての人間がウェーブに参加していく。勿論、艦長とて例外では無い。
 ――勝った! 俺のやる気パルスが全ての人間に伝わった!
 この場をしているのはラクス・クラインじゃなくて、このシン・アスカだ!
 心地よい充足感と満足感が俺を包み込む。

 ――明日はどっちだ
243 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/21(金) 21:25:32 ID:???
島本的なやる気パルスを感じたので投下。
244 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/21(金) 22:31:15 ID:???
誤字訂正。

×ラクス・クラインのコンサートだとても

○ラクス・クラインのコンサートだといっても

です。
245GSNT:第2話『Set Free(前)』1/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:03:49 ID:???
 我が目を疑う光景だった。照準は確実に戦艦アークエンジェルを捉えていた。今しがた
あの艦に向けて撃ったのは本来対要塞用に使用される陽電子砲だ、一隻の戦艦を撃沈する
にはあまりある破壊力を持っている。あれを防ぎえる兵装は現在この世界にはない。なの
になぜ、決死の覚悟で挑んだとはいえ、モビルスーツ一機にああもあっさりと防がれて
しまうのか?完全に物理法則を無視している。何かの怪奇現象か、トリックか、敵の新型
装備でもあったのか?常軌を逸した現象の前に、僕はただ立ち尽くすしかなかった。

「あなたの負けです」

 敵艦は反撃を試みた。陽電子砲だ。操舵士はそこの敗北主義者が勝手に逃がしてしまっ
たがために今ここにはいない。このままでは直撃を受ける。慌てて手元のPCから艦内の
制御システムに介入、取り舵いっぱい、回避運動を取ろうとする。間にあうか、間にあわ
ないか。艦体の動きは思った以上に鈍い、まるで人生の末まで達観したゾウガメのようだ。
巨大な光の奔流が高速で迫ってくる。避けきれない。こんなのは間違いだ、僕が負ける
はずがない。勝利の女神はいつも僕とともにあった。今もそのはずだ。あんな不条理が
許されて、僕がこの場で死ぬのはそれこそ不条理極まりない。視界が全て光に飲み込まれる。
敗北が決定的になる。死にたくない、僕にはまだ――――。

 絶叫とともに飛び起きると、そこはいつもの執務室だった。微笑を絶やさない天使が
迎えてくれる天国でもなければ、宇宙戦艦『ドミニオン』のブリッジでもない。背中や首筋
が嫌な汗でびっしょりと濡れている。時計の針は12時を少し回ったところだ。つくづく夢
でよかったと安堵しながら、ハンカチを取り出して額の汗を拭った。

「また、あの夢か」

 久しくなかったが、ときどきこうして夢に見ることがある。2年前に九死に一生を得た、
戦艦ドミニオンでの身も凍るような体験。あの時敵艦の撃った陽電子砲はわずかに艦体
を逸れ、僕はかろうじて生き残った。横には僕の命令に背いたナタル・バジルール艦長が
胸を抑えて倒れていた。僕が撃ったのだ、怒りに我を忘れて、自分の銃で。
 
 アークエンジェルの放った陽電子砲が艦橋をかすめたあと、僕は我に返った。すると
どうだ、あろうことか艦長以外は全員脱出艇で逃げ出して艦長は僕と一緒に自殺を図ろう
としたありさまだ。僕がこの戦艦の運用に詳しいはずもなく、この場を切り抜けるには絶対
にバジルール艦長の協力が必要だった。だが死を覚悟してまで僕の命令に背いた彼女を
説得するのは容易ではなかった。問答を繰り返した挙句、『ここで助かったら僕は何でも
する、ブルーコスモスの盟主だってやめてやる』という安直な取引に彼女は応じた。呆れ顔
で『命の代わりとしてはずいぶん軽いものを選んだものだな』と言われたが意に介さず、
必死に操艦を彼女から聞き続けた。不可解にも敵艦は沈黙を続け、ドミニオンを追うような
素振りを見せなかった。もちろん彼女に応急手当をしたのは言うまでもない。包帯を巻き
止血剤を投与し人工呼吸器を口に当て何とか彼女のバイタルが下がらないように気を
配ってはいたが、ようやく自軍の後方に着いた時には彼女の意識はなかった。近くの艦船に
緊急連絡を取り救護班を呼び、すぐに手術室に担ぎ込まれて緊急手術が行われた。前線の
軍医らしく相当手荒い手術だったらしいが何とか一命を取り留め、彼女は息を吹き返した。
全治6ヶ月の重傷だった。
246GSNT:第2話『Set Free(前)』2/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:04:56 ID:???
 戦後、そんなバジルール艦長の様態など当然無視して彼女は軍法会議にかけられた。
車椅子にミイラ状態という彼女の姿は見るからに痛々しかったが、もちろんそんなことで
量刑を軽くする判事ではなかった。当然死刑に処されるはずの罪だったが、彼女は幸いにも
中尉へ降格、禁固6ヶ月という極めて軽い刑で済んだ。無理やり僕がとびきり腕っこきの
弁護士をバジルール艦長につけたのと、地球軍の上層部に彼女の減刑を掛け合ったためだ。
彼女は軍の医療刑務所へ収容された。彼女とはそれきりで一切連絡がないが、風の噂では
地球軍を除隊したと聞いた。あんな軍隊生活が骨身に染みている女性が外に出て何をして
いるのだろうと思わないでもないが、案外と家庭でも持って慎ましい生活をしているのかも
しれない。もちろん僕の顔など二度と見たくもないだろう。

 一方僕はというと、彼女との約束を守ってブルーコスモスの代表を辞任した。切羽詰った
土壇場での口約束なのでうやむやにして反故にする手もあったが、あの巨大な光の恐怖
が身に刻み込まれていた自分には、命の恩人である彼女を無碍に扱うことはできなかった。
彼女のせいで起こった失態だが、生き残れたのも彼女のおかげだ。だが辞任の理由は
それだけではない。

 帰国後、なんとか無事に帰ってこれたことを報告しに、NYのマンハッタン近くにある
SLEEPY HOLLOW墓地を訪れた。アズラエル家の墓は代々この場所で、有名なところでは
他にクライスラー家やロックフェラー家の墓もここにある。高祖に花をささげ今回の事の顛末
を語ったあと、帰り道を歩いていると我が家のより少しだけ質素な墓の前で足を止めた。
19世紀の偉大な鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーだった。墓はきれいに掃除されており、
まだ真新しい花が前に飾られていた。財団は今でも健在でカーネギー・ホールにはたまに
オペラを見に行くし、カーネギー・メロン大学の卒業者も我が社には多数いる。ここに墓が
あること自体は知っていたが、あまり気にしたことはなかったな、と思って墓標の前へと歩を
進めた。

 墓標の碑文を読んだとき、稲妻が走るように身体中に痺れを覚えた。『Here lies a man
who was able to surround himself with men far cleverer than himself.』"自らに勝る才人を
伴う術を知る者ここに眠る"。当時の自分にとってこの言葉は衝撃的だった。聞いたことが
ないわけではない、ビジネスの世界では至言として伝えられる一句だ。だがこの時ほど
僕にその未来まで透徹したかのような意味を示したことは、かつてなかった。

 自分は今まで、なんと愚かなことをしていたのだろう。ブルーコスモスの盟主としてコー
ディネーターの排斥に辣腕を振るって早幾年、環境保護の御旗を掲げてコーディネーター
と戦うのが社会正義だと信じてきた。少年時代、コーディネーターの少年と些細なことで
喧嘩をして派手に打ち負かされ、それをコンプレックスに闘争への執念を燃やしてきた。
だが今だからこそわかる、それは大きな間違いだった。自分のつまらないエゴを捨て、
彼と友人になればよかったのだ。たしか今はなきフォード・モータースの祖、ヘンリー・
フォードも同じようなことを言っていた。何も彼らと同じになろうとする必要はない、彼らを従え、
その能力を存分に発揮させる術を身に付ければいい。今さら存在しているものを消してしまう
のは不経済の極みだ。自然に反しているのならいずれ勝手に滅びて消えるだろう、
ダーウィニズムの自然淘汰の原則によって。だが現に彼らはこうして存在している、
ならば我々は、彼らに手を差し伸べ助力を請おうではないか。
247GSNT:第2話『Set Free(前)』3/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:07:22 ID:???
 こうして未だ色あせぬ鉄鋼王の助言に感謝を捧げた次の日、僕はブルーコスモスの幹部
会へ代表辞任を伝え、同時に脱会届も提出した。ついで巨大産業複合体『ロゴス』のメンバー
も辞した。国防産業連合の理事も、先の大戦での不始末のために引責辞任という形で
始末をつけた。およそあらゆる機関や団体などから身を引いた僕に残ったのは、IAIシニア・
バイス・プレジデント兼COO(Chief Operating Officer、最高執行責任者)という肩書きだけ
だった。『経営者は経営しなければならない』、かつて国際通信を基盤に一大帝国を築いた
国際電信電話会社・ITTの伝説的経営者、ハロルド・ジェニーンの言葉だ。僕は今まで、
経営することすら忘れていた。原点に立ち戻らねばならなかった。

 しかし一口にコーディネーターと手を組むといっても、事はそう簡単ではなかった。第一、
大西洋連邦は入国審査時に遺伝子証明書の提出を義務付けていたし、社内での風当たり
もかなりのものだった。それはそうだ、ついこの間までエグゼクティブの一人がブルーコスモス
の代表をやっているような会社だ、コーディネーターへのアレルギーは一朝一夕に改善される
ようなものではなかった。かといって、ソキウスのような洗脳済みのコーディネーターではだめ
だ、戦争においては用を成すがビジネスにおいてはあんな人間味のない連中では使い物に
ならない。

 しだいに僕は海外出向を考えるようになった。本社では思うような人事を行えないし、
いっそどこかの子会社の社長にでもなってそこで自分の好きなように経営をしてみたかっ
た。ロゴスの存在もかなり鬱陶しい、いやあれは害悪といったほうが良かった。かれこれ
ここ30年ほど、ロゴスの笛の音に踊らされて毎年何かしらの戦争行為に我が社は介入し、
戦争経済に首までどっぷりと浸かっていた。戦争が終われば特需が消え、その失った需要
をすぐまた新たな戦争で埋め合わせるという馬鹿げた論理がロゴスの元老院を支配してい
た。地球軍の戦費は政府予算を圧迫し、財務省の友人たちからは、次年の予算請求の時期
が来ると決まって悲鳴が聞こえてきた。政府の国債発行額は毎年過去最高を更新し、プラ
イマリーバランスは崩れ、税率はつり上がり、社会保障予算は削られた。およそ健全な経
済モデルとは言いがたい。我が国だけではない、ユーラシア連邦も、東アジア共和国も、
どこの国もそうだった。元老院の老人たちは何かの妄想にとらわれているか、怨霊にでも
取り付かれているかのようだった。いっそロゴス(論理)をパトス(感情)に改名したらどう
か、と思ったことも一度や二度ではない。

 日本IAIに目をつけたのはそういう時期だった。当時この子会社の経営状況は低迷して
おり、年間売上はグループ全社のわずか1%程度だった。対して同じアジアは香港にある
IAIアジアは毎年グループ売上中30%超の巨額の売上を叩き出し、PER(株価収益率)も
10から15%の伸びを示すなど高成績を収めていた。日本IAIが東南アジア方面の支社の
コントローラーとしての機能を持つはずだったのが、社内の調整不足でIAIアジアが以前に
引き続いて東南アジア方面を抑え、日本IAIに分を横取りされるのを嫌ったためにこのような
事態になってしまった。結局日本はわずかな国内需要を頼みにする輸入代理店のような
存在に堕し、もはや撤退は時間の問題かと言われていた。
248GSNT:第2話『Set Free(前)』4/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:08:35 ID:???
 しかしあえて、僕はここのてこ入れという口実で子会社社長として出向したい旨を取締役会
に提出した。エグゼクティブたちからは気でも狂ったのかと言われたが、勝算はあった。
機能不全に陥っている日本IAIの本来の役割を回復させると同時に、あそこを我が社の
技術開発の拠点にしてしまおうというのがその理由だった。狂人扱いの次に来たのは失笑
だった。CTO(Chief Technical Officer、最高技術責任者)からは忠告と助言という婉曲な
表現の言葉で罵倒された。しかし最後には、本社の上位ポストが一つ空くから出世待ち
の人間が喜ぶだろうという社内のパワーゲームのおかげで、僕の日本出向は承認された。
かくして僕はシニア・バイス・プレジデントからプレジデントに『降格』した。

 そうして日本にやってきたのがちょうど今から2年前、大戦終結から8ヶ月ほど経った
ころだ。着任して即座に立ち上げたJGEMプロジェクトが先日ようやく一つ実を結び、完成
のお披露目に政府関係者を何人か呼んで戦技フライトを行った、それも実弾使用で、
アグレッサーは本気で。深浪明――――キラ・ヤマトには悪いことをした。本気にさせるため
とはいえ、あれは少々芝居がかかりすぎていた。それにまだ約束は果たされていない。
サラダのうまい店か。都内に範囲を広げれば、いくつか馴染みの店を知っているが。

 かの日、プレゼンテーションが終わりゲストといくらか談笑を交えたあと、控え室に戻ると
広報の深浪遥から彼の意識が戻ったと聞いて僕たちはすぐに医務室に駆けつけた。『僕たち』
というのは僕に加えて計画総責任者の西条と開発責任者兼OS開発部主任の伊槌、
エンジン開発部主任の河林の四人だ。キラ・ヤマトはベッドの端に腰掛けて調理用のボウル
に入れられたままのサラダを食べている途中だった。部屋に入ってきた僕らを見るなり
顔は険しく憮然とした表情になり、鋭く僕らを睨みつけた。首はサポーターで固定されて
全身包帯巻きの彼だったが、眼光の鋭さは常日頃の彼からは到底想像のつかない、厳しい
ものだった。

 僕ら4人は横一列に並び、彼へ向かって同時に頭を垂れた。すまなかった、という一言
とともに。しばらく頭を下げたまま硬直していると、彼は一つため息をついて「いつまでそのまま
でいる気です、それじゃこっちも話ができない」と言った。ようやく顔をあげると彼の表情から
怒りは消えていたが、かわりに『いい大人が雁首揃えて何をやっているんだ』とでも言うような
呆れ返った表情になっていた。

 そこから先は延々と西条が説明した。もともと今回のプレゼンテーションのアイディア
は彼の発案で、大西洋連邦軍の次期主力モビルスーツ開発計画のコンペティション参加に
あたり、国防総省高官へ先に売り込んでおこうというのが彼の狙いだった。

 開発計画名はJGAM(Joint Gressorial Armament for Multi-task)。日本語訳は『統合多
任務対応装脚兵装』、略称は我が社の計画と一字違いになる。先の戦争において、地球軍
に配備したばかりの新型主力モビルスーツ『ウィンダム』の惨憺たる結果を受けて、大西
洋連邦軍でも早急に次世代機の開発に迫られ、つい二ヶ月前に選考委員会が発足したばか
りの計画だった。我々のほうも売り込み先を大西洋連邦に絞ってはいたが、本計画が立ち
上がったことで他社とのコンペティションを勝ち抜く必要が出てきた。
249GSNT:第2話『Set Free(前)』5/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:09:48 ID:???
 他方、国防総省において例のZGMF-X20A『ストライクフリーダム』への関心は高く、たとえ
生産性を無視したワンオフのスペシャルチューンであろうともあの機体の性能を一目見て
みたい、という幹部は多かった。今回出席していただいたヒューズ部長もその一人で、
彼はJGAM計画の選考委員も勤めていた。ならば、プレゼンテーションで穴掘りや射的の
類やアクロバットをやらせるのも面白くない、ストライクフリーダムとの模擬戦をやろう、
と言い出したのが西条だった。

 ストライクフリーダムが現在日本にあるという情報は東アジア共和国内でも特A級の極秘
事項で、なおかつ軍関係の施設にあるとかえって目立つということで、我が社の研究所に
保管されることになった。キラ・ヤマトが自分の目の届かないところに置かれて軍事利用さ
れるのを嫌ったせいもある(もちろん研究所の職員たちには重大な守秘義務が課せられた)。
だから、ストライクフリーダムの『ハードウェア』はいつでも動かせる状態にあった。問題は
『ソフトウェア』、つまりパイロット本人だ。現役最高のモビルスーツパイロットと称される彼が
戦闘を嫌うのはかなりの矛盾だが、まともに模擬戦をやると言っても彼はそれこそ梃子でも
動かないだろう。そういうわけで、我々は一計を案じた。だがそれだけなら、普通の模擬戦
だけで十分と思われる。我々にはストライクフリーダムを破壊する理由があった。

 現在、彼はオーブから日本に『亡命』する形でやってきている。しかも極秘裏に、だ。
どうやら昨年プラント政府が提唱した『遺伝的職業適性に関する国際条約』通称デスティニー
プランの可否についてオーブの内輪で一悶着あったらしいが、詳しい事情を本人は語り
たがらないのでわからない。それ以来彼はオーブからICPOを通して国際指名手配されて
いるお尋ね者で、それを匿っている我々も相当なリスクを背負っている。そのリスク軽減
のために、ストライクフリーダムを撃破することで偽装死亡工作を考えた。

 当初、僕の考えでは単純な模擬戦を計画していたが、このような偽装工作までには考え
が至らなかった。同席していた遥も同様だ。だが計画総責任者の西条がこの偽装工作を
思いつき、計画の変更を迫った。当然我々は反対した。たしかに成功すればキラ・ヤマトの
身はより安全になるし我々としてもリスクヘッジできるが、一歩間違えば唯一無二の貴重
な人材を失うことになる。そんな危険な計画は到底承認できない。しかし、西条は冷たく
言い放った。

「だって死に物狂いで戦ってもらわなきゃ正確に性能評価できないじゃありませんか」

 確かに一理あった。かつては自分もそれをやってきた身なのでそのことはよくわかって
いた。だがキラ・ヤマトは消耗していい人材ではない、そういうのはせいぜい強化人間
風情を言うのだ。2時間に渡ってさんざんやりあい怒鳴りあい最後には押し切られ、もし
キラ・ヤマトが死亡したら西条が全責任を負う、ということで落ち着いた。「なに心配いり
ませんよ、もし死んじゃっても代わりの心当たりは何人かいますから」と他人事のように
言って西条は席を立った。僕は残った遥にくれぐれもキラ・ヤマトをよろしく頼む、と
繰り返し懇願した。彼女は「彼を死なせたりはしません、そうなればなにより私が困ります」
と約束してくれた。
250GSNT:第2話『Set Free(前)』6/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:10:52 ID:???
 死亡の証拠は回収したストライクフリーダムの残骸と、捏造した稼動記録データを提出
することにした。シナリオは、ストライクフリーダムは領空侵犯のうえ付近を飛行中の輸送機
に異常接近したので、やむなく撃墜された、ということになった。データを記録する
ブラックボックスは頭部に収められており、一度それを取り出し封印を解いて解析し、
まったく同じものを二つ用意した。一つは開封したものと取り替えて元に戻すためのもの、
これが戦闘後に回収されたもので、もう一つは偽装データを入れたものだ。データは
ストライクフリーダムと東アジア共和国空軍ウィンダム部隊との交戦をCGで捏造したもので、
西条曰く『まず他では見られないスペクタクルアクション超大作』なのだそうだが、ウィンダムが
ストライクフリーダムを撃破するさまを見て、実機もこれだけ活躍できればどんなに心休まる
ことか、といささか癪に障る内容であった。これの外装は回収物と瓜二つのダメージド加工を
施された。出撃前に機体のパーツは保管しておいた改修前のオリジナルのものに磨耗処理を
加えて全て取り替えられた。なお、コクピット本体を含む胴体部は、いまだ未到の小笠原海溝の
大深度海底へと沈められた。これで遺体の問題はクリアになった。他にも共和国軍情報本部
日本支部の協力もあったり、輸送機にもさまざまな工作が仕掛けられた。

 事の真相を聞いてキラ・ヤマトは我々に食い掛かってくるかと思っていたが、意外にも
彼はうつむいたまま黙ってしまった。どうにか理解してくれたかと安堵したが、同時に心
苦しくもあった。遥の話では、彼は故国に恋人や両親を残してきているらしい。彼の訃報
を聞いた彼らがどんな想いをするかは想像に難くない。

 しばらく重い雰囲気のまま沈黙が流れ、彼はまた大きくため息をついた後、口を開いた。

「一時はあなた方に殺されかかった身ですからとても礼を言う気にはなれませんが、理解は
しました。もう済んだことだ、今さら議論しても仕方がありません。で、この先僕はどうなるんです」

 ずいぶん彼もドライになったものだ、どうやら我が社の、いや日本の空気に馴染んで
きたらしい。あまり素っ気無いのも頂けないが、人間ときには前に進むために割り切ること
も必要だ。ただしあまり若い頃からこうだと先が思いやられるが。

 そこからの説明は僕が代わった。これからも引き続き当社で働いて欲しいこと、それと
プログラマーとしての職務に加えて、実験機『ヴェスパタイン』のテストパイロットを
やってほしいことを伝えた。遥は普段の広報業務の量が莫大で、とてもテストパイロット
などできるような余裕がない、というのがその理由だった。このテストパイロットを引き受け
れば、同時に実験機の全ての技術情報へのアクセス権も手に入る、というおまけつきだ。
最初彼は怪訝そうな顔をして我々を疑っていたが、実戦をやるようなことは決してない
ということを説明すると、快く承諾してくれた。ただし、「もう騙し討ちみたいな真似だけは
止めてくださいね」と釘を刺された。我々は再度平謝りをせねばならなかった。
251GSNT:第2話『Set Free(前)』7/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:12:32 ID:???
 だいたいの説明が終わり彼も理解してくれたようなのでそろそろ退散するかというところで、
キラ・ヤマトは二人の主任に声をかけた。伊槌と河林は研究所に残った富士田、秋田の四人
と他整備員とともに、本社地下ハンガーで昨晩から早朝までぶっ通しでヴェスパタインの
組立作業を行っており、そのあとも機体の調整やらモニタリングやらで二人はもう40時間
近くも寝ていなかった。目の下には大きな隈が張っており顔はやつれきっていた。キラ・
ヤマトはどうやら富士田からそれを『徹夜麻雀』のためと説明されていたらしく、「河林主任が
豪勢なNY土産を買ってきてくれるって期待していたんですけどね」などと言ったから二人は
困惑しきりだった。事情を説明すると、彼は富士田までグルだったことに舌を巻き、主任二人
は帰りしだい富士田に銀座でビールを奢らせると息巻いていた。ただし後にわかったことだが、
富士田が河林に麻雀でカモにされたこと自体は以前実際にあったらしい。

 あとはほぼ西条の描いた筋書き通りに事が進んだ。日本政府の航空事故調査委員会は
輸送機の墜落を交戦中の事故として認定し、オーブ政府への機体残骸の引渡しとともにキラ・
ヤマトの国際手配は取り下げられた。水深6000mの深さまで機体の胴体が捜索されたが
見つからず、この状況ではさすがに生きてはいまい、ということで死亡届が出された。偽装
工作は最後まで見破られることはなかった。

 これでキラ・ヤマトの存在は公的には完全に消滅したことになる。あとに残ったのは、
深浪明というまったく別の個人だけだ。終わってみればやけにあっさりと片付いてしまった
感がある。プレゼンテーションにおけるゲストたちへの感触も上々で、これなら次期主力は
我が社でほぼ決まりだろう、というお墨付きも頂いた。食えない連中なので鵜呑みにする
わけではないが、ひとまずファーストインプレッションは好感触に終わった。

 改めて西条の手腕に驚くとともに、やはりあの男は危険だと再認識させられた。歳は36歳、
商社やヘッドハンティング会社、大手ゼネコンなど多分野を渡り歩いたあと我が社に入社した。
性格は陽気で楽天家だが、その反面冷淡で計算高く野心家らしくもある。前職での評価は
どこの会社においても上々で、特に技術系専門職のヘッドハントにおいては常に営業成績が
トップクラスだったと身元調査では報告されている。事実、本計画において外部から招聘した
科学者・技術者はほとんど彼が口説き落としてきた者ばかりだ。企画立案力も高く調整能力や
リスクマネジメントの能力もある。プロジェクトリーダーとしての実務能力においては非の打ち
所がなかった。ただし、心の底では何を考えているのかわからない部分がある。キラ・ヤマト
の扱いにしてもそうだ、野心的に過ぎる。しかしそれを言えば、僕も同じ穴の狢かもしれない。
NY本社からの付き合いである懐刀の深浪遥を広報に据えたのは、彼を監視させる意味も
あった。広報という計画全体の情報管理を行う立場ゆえ、西条も彼女の目の届かないところ
でこそこそと動き回ることはできないはずだ、という打算からだった。

 ともあれ、彼のおかげでここまで計画が滞りなく進んできたのは間違いない。僕の人選
は正しかった、今のところは。あとはこのまま僕の心配が取り越し苦労であることを祈る
だけだ。
252GSNT:第2話『Set Free(前)』8/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:13:59 ID:???
 デスクの上のタブレットモニタを見やる。画面には、JGEMプロジェクトの2号機と3号機
の仕様が映し出されている。当初からこの計画は3機の実験機の開発を予定しており、1号機
からそれぞれ『Lightning』『Swallow』『Moonlight』のコードネームが与えられていた。来週に
は2号機『Swallow』がロールアウトする。1号機と2号機のテストパイロットは深浪明が兼任
する予定だ。ここ一週間、彼はASURAに慣れるためにシミュレーターと日々格闘中らしい。
3号機に関しては仕様が他2機と違って若干特殊なため、現在専任のテストパイロットの
選定に入っている。

 明日には午前中は経営会議、午後からは奥多摩へ、その2号機と3号機の開発の進捗状況
を視察に行く予定が入っている。もう2月も終わるが、第一四半期(1〜3月)の業績予想は
上方修正できそうだ。昨年のユニウスセブン落下事件、通称『ブレイク・ザ・ワールド
(BTW)』や戦災の復興事業で前年に引き続き航空需要やモビルスーツの需要が急拡大して
おり、前年比ベースで3%程度の増収が見込まれている。同時に、ここのところビジネス客・
観光客の出入国も増えており、航空各社からの受注件数も増えてきている。中型旅客機
858型はコストパフォーマンスとその安全性において他社の同クラス機に対して勝っており、
世界的に安全が重視されるなか営業においては大きなアドバンテージとなっている。ここで
エアバスの後塵を拝するようなことになってはならない。

 BTWに関して言えば、古典SFで言われるような地球規模での壊滅的な被害はなかった。
スペースデブリや隕石落下の危険性は以前から指摘されており、各国はミサイル防衛
システム、特にターミナルフェーズ(再突入段階)の防衛システムを転用した超高速レールガン
などの隕石迎撃システムの研究開発に余念がなかった。突入時に一個当たり直径10m程度
まで破砕された効果もあって、それは見事実戦で役目を果たしほとんどの迎撃に成功した。
しかし迎撃範囲外に落着したもの(そのほとんどが洋上だった)もあり、沿岸部において
津波の被害を被った場所は多かった。日本では主に東北地方が甚大な被害を受けたため、
政府が災害復興援助などの支援措置を取ったほか、建設業界やNPO団体などが支援活動を
行っている。

 そういう特需もあって今のところ我が日本IAIは増益を続けているが、災害復興という一時
の夢に踊らされてはいけない。一時的な好業績をあげることなら、特需などなくともほとんど
どんな経営者にでもできる。我が会社の目下一番の目標は、業績向上をこのまま維持し
続けることなのだから。
253GSNT:第2話『Set Free(前)』9/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:15:05 ID:???
 経営構想としては、まだIAIが手をつけていないような分野へ進出して多角化を始め、
それの成功を持って本社へ逆提案するような形が望ましかった。日本IAIが社内での
キャスティングボードを握るためもあるが、近年全社的にIAIの業績は低迷とは言えない
までも停滞しており、新たな分野への進出と技術革新を持ってその活性を高める狙いが
あった。そのためのJGEMプロジェクトでもある。あれの成果は電力ビジネスや通信
ビジネスなど、多くのスピンオフが期待できる。

 もちろん問題もあった。IAIアジアはいまだに東南アジア方面の縄張りを手放したがらず、
再三にわたる交渉も今のところ不調だ。全社の連結ベースで見れば結局のところ同じなの
だが、東南アジアのシェアはアジア社が開拓してきたので相応のプライドがあるのも理解
できる。なんとか向こうの面子を立てる形で解決を図りたいが、例えば我々が国内で成功
させたノウハウをアジア社に持ち込むという手段で協調する手もある。ともあれ、まずは
足元固めが先決だ。国内事業を磐石にしなければならない。

 そこまで思い返して、いや、それよりもまず目先の問題があったな、と自嘲気味に思った。
激務が続いてもう5日も家に帰っていない。風光明媚な日本に来て、どうせなら、ということ
で武蔵野の閑静なマンションに居を構えたのがまずかった。やはり職住近接は重要だ、
おかげで会社の近所にあるホテルがほとんどセカンドホームと化している。明日も朝の
8時には出社しなければならない。日本には社長出勤などという言葉があるそうだが、
およそ僕の知っている限りの『まともな』経営者の中でそれをしている人物はいない。
遅くに出社できるのは、たいてい経営に興味を失い部下に丸投げして遊び呆けているか、
経営悪化でそれを立て直す術も知らない愚か者のどちらかだ。そういう経営者は早晩
取締役会で罷免されるだろう。

 僕も罷免決議を受けないように英気を養うためさっさと帰って寝なければな、とデスク
の上の書類をまとめ、それをすみに積んだ。デスクの上や周囲はおびただしい枚数の
ファイルやハードコピーで雑然としており、たまに秘書のナタリー・クラールから「もしお客
様がここにいらっしゃったら卒倒しますよ」と叱られる。自分でもあまり誉められたもの
ではないと自覚はしているが、これらは全て今手がけている業務に必要なもので、机の
どこにどの書類やファイルがあるか、全て把握していた。いちいちPCの多階層フォルダの
中を捜したり、彼女の手を煩わせてファイルを書庫から引っ張ってくるよりはずっと早い。
作業スペースはせいぜい物書きができてノートPCを置ける広さがあれば十分だった。
254GSNT:第2話『Set Free(前)』10/10 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/21(金) 23:16:36 ID:???
 会社から退出するのは今日は僕が最後だった。部屋にロックをかけ、フロアのセキュ
リティをセットしてエレベーターに乗る。ここは西新宿2丁目、新宿イースタシアビル120階。
我が社はここをワンフロア間借りしていて、エレベーターでオフィスと地上を行き来する
のに1分程度の時間を要する。これならまだいいほうで、NYのミッドタウンに威容を誇る
某ビルなどは最上階まで5分もかかる。『あれはエレベーターの中で女性を口説くため
に長いのだ』などというジョークまで飛び出す始末だ。もちろん実行した試しはない。

 ビルの入り口を出て振り返ると、まだ明かりが煌々と照っているフロアがいくつかある。
あそこでは今どんな計画や業務が進められているのだろう。我が社も学ぶところがある
ならば、と興味を引くところではある。エグゼクティブ同士での会合には事欠かないが、
他会社の生の現場となると覗ける機会はあまりない。視察に行くと何かしら通達が来ていて
気合が入っていたりする。アポイントメントを取らずに社員に紛れてこっそり見たい。

 もし我が社の社長室の明かりを見て、そんなことを考えてくれる人間がいたなら光栄だ。
大反対するであろうナタリーや広報部を押し切って、あの氾濫しきった社長室を、胸を
張ってお見せしよう。『これが私の仕事術だ』と。もっとも今日ばかりは、不覚にも眠り
こけてしまっていたが。



以下、後編へ続く。
255通常の名無しさんの3倍:2007/09/21(金) 23:30:44 ID:???
後書き、書きたいでしょ?
C
256通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 00:07:22 ID:???
>>255
C乙です、ありがとうございます。

相変わらずクソ長いです。すみません。
名前決まりましたが変えるかも知れません。すみません。
仮題、って入れときゃよかった。すみません。
257通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 00:08:10 ID:Qps8z7sn
職人諸氏投下乙。
感想は今度書かせてくれ、今はage。
258通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 01:14:17 ID:???
GSNT……

1、逆(G)襲(S)のニュー(N)タイプ(T)
2、ゴマ(G)すって(S)ねっとり(N)タロイモ(T)
3、ガンダムを(G)素早く(S)懐かしむ(N)鳥山明の(T)団。

さあどれだ!?

 とにかく投下乙です。これまた長いですねえ、しかも後半あるし。
題名(仮題?)をつけたのと色々在った突っ込み所に収拾をつけたのはGJ。
 土壇場の口約束をあっさり信じるナタル姉さんにオイオイwと思ったのと、
それを律義に護ってしまうアズ公にほんのりしました。

 そうか……ああいうプレイだったんですか。

 文章を書くことに関する能力は非常に高いと思いますので、問題は
何を書くかの取捨選択だろうと思います。十個の情報に十の分量を
一ずつかけて描写すると、どれを覚えておけば良いのかわかんなくなります。
 情報が十個あったら、物語の進行に必要な三つくらいに絞り、優先順位をつけて
重要度が分かり易いようにすべきでは無いかと……個人的意見ですが。

 文の量を考えれば、驚異的な更新ペースだと思います。続きを期待してます。
259通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 06:07:06 ID:???
>>GSNT
投下乙。
分量は凄いね。情報の詰め込み過ぎの賜物だね。
文章力については言う事なし。でも、文章を魅せるセンスに欠けていると思う。

>>全力種死
シンが島本和彦的になってるwww
260GSNT:第2話『Set Free(後)』1/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:28:10 ID:???
 翌朝の経営幹部会議で発表された、国内の各ブロックから上げられてきた数字は経営陣
にとって概ね満足いくものだった。我々は3月初めのIR(Investor Relations、投資家向け広報)
で第1四半期の決算予想を3%上方修正することに決定した。第2四半期からは建設用
モビルスーツ部門にて、主に大手が対象になる直接販売から中小向けのリースやレンタル
などの間接販売に重点を置く営業戦略も承認された。

 会議は11時過ぎには終わり、社長室に戻るともうナタリーが出かける準備を整えていた。
彼女は僕に必要な資料を揃え、会議中にかかってきた社外からの電話やメールのリストを
渡してくれた。

「今のところ緊急を要する用件はありません。予定通り出発できそうです」
「それはまことに重畳。じゃあ、さっそく行こうか」

 僕はドレッサーから通勤用のバーバリー・プローサムのトレンチコートを取り出して羽織り、
彼女と一緒にオフィスを出てエレベーターに乗った。

 車の運転は主にナタリーの仕事だった。本国と違ってこちらは左側通行なので僕は最初
戸惑ったが、彼女にとってはなんでもなかったようだ。初日から手馴れた手つきでハンドルを
回していた。女性に運転させるのはいささか気が引けたが、専任の運転手を雇う気はなかった。
社員数800人の小さな子会社にそんなものは不要だったし、何より車内はナタリーと僕の
二人だけになれる空間だった。これは猥談のようなやましい意味でなく、外部に聞かれる
心配がないというセキュリティ上の意味だ。

 彼女は手際よくハンドルを切りながら口を開いた。

「そういえばこの前、うちの部長が例の話を聞いたって言っていましたよ。まずは一号機
のロールアウトおめでとう、とのことです」
「そりゃありがたいな。ラングレー(CIAの俗称)は何か言ってきたのか?」
「そのまま計画の進行に尽力して欲しい、と。従来通りですね」
「言われなくてもやるさ。こっちは社運がかかっている」
「せっかく苦労して手に入れた開発資金ですものね。最初にあの話を聞いたときは私も
びっくりしましたけど。なんてことを考えているのかしらこの人は、って」
「そりゃこっちも必死だよ、バレたら僕が殺される」

 当時のスリルを思い出して、窓の先の天を仰いだ。ロゴスには感謝しなければならない。
JGEMプロジェクトの開発資金は、元をたどれば全てロゴスの運営資金であったからだ。
組織の壊滅後、その一部を僕が引き継いだ。いや、我々がそのように仕組んだ、というのが
正しい。組織の壊滅から遺産の奪取まで。
261GSNT:第2話『Set Free(後)』2/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:29:17 ID:???
 末期的な経済環境を打破するためにはロゴスの壊滅は必須だった。加えて、莫大な
開発費を要するJGEMプロジェクトの資金を確保するため、連中の運用資金から頂いて
しまおう、とも考えた。しかし僕一人の力では如何ともし難かった。そこで、当時ロゴスの
悪影響を憂慮していたCIAと手を組むことにした。本来的に世界中の政府を食いつぶそう
とするロゴスと、国益を優先するCIAを始めとする我が国の情報機関は対立関係にあり、
おかげでロゴスは自前で情報機関を持たなければならなかった。いや、地球連合軍自体が
ロゴスのためにあったと言ってもいい。地球連合の常設軍の予算という大義名分の元に
加盟国から拠出金を集め、それで戦争にかまけて自社を潤わせていたのだから、政府として
は面白いはずがなかった。

 ギルバート・デュランダルがプラント議長に就任した直後、プラントの情報機関がロゴスに
ついて嗅ぎまわり始めた、という情報が入った。これは我々にとって願ったり叶ったりで、
複数の筋から徐々にロゴスについての情報をプラント側に流してやった。我々のかわりに
ロゴスへ正面切って戦ってくれるのだから、ありがたい限りだ。彼らはロゴスのメンバーや
組織構成について詳細な情報を手に入れ、のちにこれを世界に公開するに至り、
組織を武力で壊滅させた。もちろんリークするにあたり僕のロゴスでの情報は全て抹消され、
たとえ関連性を示したくても決定的な証拠は挙がらないようにさせた。ただ、収賄や
国家反逆罪や機密情報漏洩などで捕まったロゴスのメンバーたちの立件で連邦検察は
大忙しで、難しい案件にまで手がまわらなかったのも僕に手錠がかからなかった理由の一つ
ではある。何しろ検察の本丸はコープランド現職大統領で、僕にかまけている暇など
なかった。それとCIAからの多少の口添えも功を奏した。

 組織の全貌が世に知れてからが我々の正念場だった。当時、ロゴスは全世界の経済を
人質に取ったも同然だった。ロゴスは世界中の国債や大手銀行の口座、株式、投資ファンド
やその他各種有価証券の形で巨額の資金を投じており、もし組織が世間に晒されるような
ことがあれば、それを全て引き上げる、と各国政府を脅迫していた。その額はE$(アースダラー)
換算で約30兆E$。数百年にわたって運用し金が金を生み続けてきた末に、この天文学的
金額へと成り果てた。これだけの資金が一斉に市場から消えれば、世界経済は完全に
破綻する。プラントがそういう事情を汲んでやっていたのかどうかは知らないが、我々は
あらゆる手段を用いてこれを食い止めねばならなかった。

 僕が提供した情報で、ロゴスの資金がどの金融機関にどれだけあるか、というのは事前
に把握できていた。そこで我々は世界中の各金融機関にいるエージェントへ指令を出し、
Xデーが来るのを待った。ロゴスが世に明かされたその日に、連中はただちに資金を別の
口座へ移そうとした。だがオーダーを受けた我々のエージェントがそこで騙し取り、別名義
の口座へ送金した。続いて矢継ぎ早にロゴスの指定口座と以前の口座を財務省が凍結し、
海外の金融当局にも協力を要請し同様の措置を取った。そのときのジブリールの顔と
いったらなかっただろう。奴がロゴスの資金管理団体の責任者だったのだから。しかし奴も
馬鹿ではないから(最後のほうは自棄酒で麻薬入りのワインと幻覚剤に溺れて本当に馬鹿
になっていたらしいが)、このタイミングでなければ、資金奪取に気付かれた可能性は高い。
262GSNT:第2話『Set Free(後)』3/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:30:41 ID:???
 さて、資金を引き上げられた金融市場は大暴落し、ダウ平均株価は一時1987年のブラック
マンデー以上の30%もの猛烈な下げを記録した。それを横目に我々は何をやっていたか
というと、こちらも猛烈な勢いでダミー会社を通じて架空取引を行いオフショアの口座から
口座へと次々資金を移送させていた。典型的なマネーロンダリング手法だ。資金はネットの
中で世界を何周かしたあと、最後に仕込みの入ったオンラインカジノを通して量子コンピュータ
の力をフルに発揮させ数兆回に及ぶゲームを行い資金洗浄を終え、ロゴスが引き上げた
元の金融機関へと戻された。これらの資金の流れを辿るには永久に近い時間が必要になる。
資金を取り戻したファンドマネジャーたちは暴落した各種有価証券や為替を一気に買い戻し、
銀行も預金準備金が底をついて破綻するようなことは免れた。結局その日のダウ平均は
前日比215E$高で引け、その日の金融市場の乱高下と事の顛末から、『ゴールデンストーム』
と呼ばれた。世界経済への懸念から個人投資家が狼狽売りをして暴落し、それが実体経済
には関係ないと踏んだ機関投資家が買い支えたため、と一般には説明されている。裏帳簿
での不正会計やインサイダー取引などの問題でロゴス関連企業の株価は軒並み下がったが、
実際の業績とは乖離した問題だったのでどれも倒産までには至らなかった。世界経済の牽引
役だった戦争は、戦災復興へバトンを渡し、その役目を終えた。

 かくして、世界はロゴスの手から解放された。ジブリールの乗ったシャトルはオーブ上空
で撃墜され、ほとんどのメンバーも死亡したか、逮捕された。IAIグループの会長であり、
父であるブルーノ・アズラエルもオーブで亡くなった。地下シェルターに避難していたところ
を攻撃され、生き埋めになったまま死亡したそうだ。遺骸は本国に送還され、もれなく我が
家の墓地へと埋葬された。戦争経済に狂った父だったが、せめて最後は見取ってやりた
かった。許してほしいとは言わない、だがあなたが継いできた会社は必ず守る。棺の前で
そう語り、父の死を悼んだ。

 資金はほぼ全てがCIAの手に渡り、僕には情報提供料として現金資産の中から1兆E$
が渡された。彼らは引き続きロゴスと同じ手法で資金を運用していくつもりらしい。予算が
非公開の情報機関ならではだ。ヘンリー・エヴァンズ局長が言うには、「我々はロゴスの
ようにはならない、そうなればいずれ我々も同じ目にあう」だ、そうだ。一方、こちらの
得た資金も同様に信用できるいくつかのファンドへ投資し、その運用益をオフショアへ
登記申請したダミー会社を通じてプロジェクトの資金口座へと送金させることにした。
これで我々の開発資金の問題も解決した。

 CIAはしかし、これで戦いが終わったとは考えていない。エージェントたちの動きはいまだ
活発で、今回得た資金も次なるフェイズへの足がかりに過ぎない。何をしようとしているか
まではわからないが、少なくとも今までのようなホットウォーではない。表に出ることのない
諜報活動や非正規戦、情報戦が彼らの仕事だ。我が社も無関係ではいられない。JGEM
プロジェクトには彼らも一枚噛んでいるからだ。東アジア共和国情報本部・日本支部は
相当にCIAに汚染されており、本プロジェクトの存在すらも本部に情報を上げていない。
どうやら我々もすでに、新たな戦いへの駒として組み込まれているらしい。ロゴスからの
解放は、戦いからの解放と同義ではなかった。
263GSNT:第2話『Set Free(後)』4/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:31:48 ID:???
 僕の心配をよそに、バックミラーで僕の表情を伺いながら、嬉しそうに彼女は続けた。

「でも社長があそこでロゴスの資金情報を提供してくれなかったら、今ごろ私はここには
いないですよ」
「おだてても君の給料があがるわけじゃないぞ」
「本当のことを言ったまでです。あれが成功していなかったら私のささやかな給料や貯金
なんてハイパーインフレで紙くず同然になってしまう。感謝してますよ、一市民として」
「まあ君に誉められるだけの価値はあった、と思っておこう。一市民で感謝してくれるの
は君くらいのものだ、何しろ誰にも言えないし、おかげで自慢もできん」

 肩をすくめて言った。もちろん自慢などする気もないが、世界中の人間のほとんどは事の
真相を知らないのだろうな、と思う。もし知ってしまったら今度は金融機関の信用問題に
関わる。無知は幸福とはよく言ったものだ。

 あまりおだてられて利のない話ばかり続けるのもなんなので、僕は話題を変えた。

「そういえば最近変わったことはあったかい、妙な電話があったとか、怪しいアクセスが
あったとか」
「いつもとさほど変わりませんが、相変わらず共和国軍情報本部からの不正アクセスは
多いですね。気付かれてはいないようですけど」
「だといいがね。プラントは?」
「プラントはこちらには見向きもしません。むしろ本社やラングレーやフォートミード
(NSA、国家安全保障局の俗称)のほうへ注意が向いているようです」

 ナタリーの声はいつも快活で明瞭だった。以前から、情報機関の人間というのは怜悧な
人間が多いのだろう、と思っていた僕の先入観は彼女によって見事に打ち砕かれた。
もちろんそれは好ましいことではある。だが、そのギャップを考えると笑いがこみ上げてくる。

「社長、何を考えているんです?思い出し笑いなんて気持ち悪いですよ」
「いや失礼、君みたいな女性がラングレーにいたのかと思うと、やはりあそこが面白くて
しょうがなくってね。人材の見本市だな」

 それで彼女は少しむくれた様子だ。バックミラーを通してわかる。

「ラングレーにもプレイボーイやプレイガールはいますよ、堅物も多いけど。オタクなんて
掃いて捨てるほどいる。皆スキルは高いけど人格的には変人ばかり。私が変人だって
言ってるんじゃないんですよ?」
「それじゃまるでどこかの研究所みたいだな」

 互いに笑った。多少スタンダードからはみ出しているくらいが、優秀な人間としては
ちょうどいいのかもしれない。彼女はああいうが、あれで少し世間とずれたところもある。
いや、人のことは言えないか。
264GSNT:第2話『Set Free(後)』5/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:33:10 ID:???
 ナタリー・クラールは27歳、CIAのカウンター・インテリジェンス(防諜部)の部員で、
今回の僕の出向に伴い防諜のスキルを買われて秘書として同行してもらった。JGEMプロ
ジェクトにおいて軍事機密を扱う以上、諜報対策は万全にしなければならなかった。対人・
対電子両方に長けていて、日本に通じている人物が必要だった。そこで日本担当の中から
スタンフォード大学出身で情報工学を専攻していた彼女が選ばれた。日本に来てからの
彼女の最初の仕事は、本社の情報システム構築と、社内の防諜対策だった。少し巻き髪の
金髪とアングロサクソンらしい碧眼の持ち主で、かっちりしたテーラードジャケットを自然
に着こなす彼女は、秘書としての見栄えもいい。

 このナタリー・クラールと、深浪遥は僕にとってチェスのクイーンのような存在だった。
日本の将棋で言えば遥が『飛車』でナタリーは『角』か。性格も対照的で、本社にいた頃
の前任者である遥が『静』とすれば彼女は『動』の女性だった。秘書時代の遥はマシーン
のような正確さで仕事をこなしていたが、ナタリーの仕事にはめりはりがある。しかし
二人ともいざと言うときには動くし、落ち着く。活発か冷静か、は心の芯のところでの違い
なのだろう。

 そうこうしているうちに研究所へと着いた。山々はまだ雪が深く、ときおり枝から雪の
ずり落ちる音が聞こえる。門の正面まで来るとナンバープレートに埋め込まれたチップの
情報認証で門扉が自動的に開き、敷地の中へと車が入ってゆく。時計は12時半に差し
掛かるところで、ちょうど昼休みの最中だ。場内の外には誰もおらず、事務室の窓からも
人の影は見えない。

「この様子だと今ごろみんな食堂ですね」
「そうだな、僕らも何か食べていくか」

 車を降りて玄関を抜けると、僕らは一路食堂へ向かった。

 ドアの30mくらい手前から、食堂の中の歓声や悲鳴や絶叫が聞こえてきた。これでは
まるで動物園だ。昼休みだからかもしれないが、なにやらいつも以上に騒がしい。

「今日、昼間からサッカーか何かの国際試合でもあったか?」
「あるわけないでしょう、どうしたんでしょうね」
265GSNT:第2話『Set Free(後)』6/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:34:30 ID:???
 ドアを開けるとそこには整備員から研究員から食堂のコックたちまで、社員たちが大挙
して食堂の壁はめ込み型大型テレビモニターの前に人だかりを作っていた。大きさは映画
館のスクリーンほどもある大きなものだが、大型施設用に近年は比較的安く導入できる
ようになっていた。人だかりの中には飲み物やポップコーンのカップを持つ者、定食をつつ
きながら声を張り上げる者、なにやらチケットらしいものを握り締めて祈る者、さながら
競馬場の様相を呈していた。そしてそのモニターの中では、競馬ではなく別のゲームが
行われていた。

 モニターの中に青が一面に広がっている。まもなく画面右から、ブルーとブラックの
ブルースプリンター迷彩の機体が飛び出してきた。GAT-Y02『フリーダム』。ペットネー
ムは深浪明が決めた。そしてもう一機、青空を黒く切り取ったような漆黒の機体が先行
している。こちらがヴェスパタイン。ヴェスパタインは機体左に華麗にインメルマルターン、
すれ違いざまにレーザーがフリーダムを襲うが機首を下げて最小機動でかわし、ヴェス
パタインに続いてターンする。ヴェスパタインは右方向へ旋廻降下、追撃中のフリーダムは
増速、右30度旋廻。フリーダムは斜め上部からロックオン、FCSから武装選択。

 フリーダムのバックパックにある、八基のビーム発振ユニットがせり出す。直後にそれが
次々と火を噴き、八本の光条が時間差でヴェスパタインに向かって曲射される。かつて
フォビドゥンに搭載されていた、誘導プラズマビーム砲の改良版だ。空力用のバリア形成
に使うゲシュマイディッヒ・パンツァーを応用して、ビームを自在に曲射でき360度の射界を
得ている。ヴェスパタインのノズルの光が大きくなり急加速、次々と襲い来るビームを
かわしてゆく。10Gで急速に機首を起こしてバーチカルロール、今度はフリーダムの後ろを取った。

 2号機GAT-Y02は格闘戦能力に秀でた1号機と違い、一撃離脱型の戦法を得意としていた。
そのためにエンジンは高速巡航性を高めたマイナーチェンジバージョンのFR-01Bを搭載して
いる。1号機譲りの高い運動性能や機動能力はあるが、どちらかといえば中遠距離での
撃ち合いのほうが分があった。今の状況は、うまくクロスレンジに持ち込まれていて旗色が悪い。

 人ごみの後ろでチケットを握り締めてヒートアップしている伊槌を見つけた。僕が来ていること
には全く気付いていない。試しに声をかけてみる。

「どうだね、勝てそうかね」
「どうだろうねぇ、私は今回弟のほうに賭けたんだけどちょっとこのままじゃ――――え、社長?」

 間の抜けた顔だった。僕の顔を見るなり目が点になってしまっている。これはこれでおもしろい。
横ではナタリーが口元を抑えて笑いをこらえている。
266GSNT:第2話『Set Free(後)』7/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:36:00 ID:???
 僕たちは人ごみの中から彼を引っ張り出し、周囲に気付かれないように声を潜めて聞いた。

「何の騒ぎだ、これは」
「いや、軽いゲームですよ。戦っているのはもう誰だかお分かりでしょうが」
「あの二人か」
「そうです――――深浪弟もかなりASURAと『Swallow』に慣れてきたんですが、姉が
『それでも私のレベルに到達するまであと半年はかかるでしょうね』なんて挑発したらしくて、
それで弟が昼休みにこの前の『お礼』もかねてリベンジを果たす、と言い出しまして。
おかげでこの姉弟喧嘩です」

 あいかわらず彼も乗せられやすい性格だ。たぶん、明のモチベーションを上げるために
遥が挑発したんだろう。ともかくも動機がなんであれ熱心なのは好ましい。
 声の上擦る伊槌に向かって僕は質問を続けた。

「実戦で戦うのは嫌でもシミュレーターならいいのか」
「弟曰く、こんなのはゲームと変わらない、だそうです」
「彼もずいぶんげんきんだな。しかし、賭けをまとめたのは彼らじゃないだろう。胴元は誰だ」
「ほら、あそこで半券を数えてますよ」

 伊槌が指差した先には、食堂の後ろでにやにやしながらチケットを数える、サラ金業者のような
顔をした男が座っていた。西条だった。大方の予想はついていたが、外れてほしかった。この食堂は
大型会議室としても使えるため、シミュレーターの画面をバイパスさせることもできたが、こんな
使い方は想定していなかった。ここの職員全員には所内情報の守秘義務があるので、機密が固い
ことだけがせめてもの救いか。

「キャッシュでやっているんじゃないだろうな」
「まさか、ここの食堂の食券です。外来者用のチケットがあるでしょう、あれですよ」

 実のところ、ここには外来者はほとんど来ない。ただ、一日一食分の計算で社員は自由
にここで食事を取れるが、それ以上は食堂の自販機で食券を買う必要があった。一枚買えば
一食に限り特に食事の制限はない。ここの食堂の味は他社のそれと比較しても上のレベルに
あると思うが、そういう理由も手伝ってこの食券が金融商品としての価値を為している、と聞いた
ことはあった。しかしこんな使い方をされているとは思ってもみなかった。ふと、こんな現金
代替物を使ってマネーロンダリングをする手もあるな、と具にもつかない冗談が頭をよぎった。
267GSNT:第2話『Set Free(後)』8/8 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:37:19 ID:???
「事情はわかった。ちょっと待っていてくれ」

 僕は部屋の隅の食券売り場へ行き、非接触のマネーカードをリーダーにかざして
2枚発行のボタンを押してから、少し考えてもう2枚買った。それを持って二人のところへ
戻り、うち2枚をナタリーに渡した。

「これはナタリー、君の分。2枚あるから両方賭けるなり一枚で食事を食べるなり好きに
するといい」
「まさか、社長もやるんですか」
「当たり前だ、久しく馬券も買っていない。背負って楽しいリスクなら背負ってみるのが
僕の身上でね」

 呆気に取られた様子で、彼女は頭を抱えた。呆れられるのにはもう慣れている。再び
僕は伊槌に聞いた。

「倍率はいくらだ」
「姉が2倍で弟が5倍です」
「じゃあ、姉に賭ける、2枚。弟に賭けてあとで遥に知れたらお冠だから」

 横で食券を眺めているナタリーに、君はどうする、と聞いてみた。すると彼女はしょう
がない、とでも言うような顔をして答えた。

「じゃあ、弟さんに1枚。ランチも確実に食べたいし、どうせなら勝ったときに倍率が高い
ほうが、嬉しいじゃないですか」

 それが本当の理由ではないだろう、とすぐに気付いた。彼女はどうやら、前任者に少し
ライバル心を持っているらしい。折に触れては遥の秘書時代の話を聞いてくる。嫌いでは
ないのだろうが、二人の意地の張り合いというのも見てみたい気もする。

 そんな察しはおくびにも出さず、僕は彼女から食券を一枚受け取った。その三枚を持って、
僕は西条のいる席へと向かった。僕に気付いて顔を上げた彼は、チケットを札束のように
めくりながら、いらっしゃいませ、と冗談めかして挨拶した。

「お早いお着きでしたね。ナイスタイミングじゃないですか、今まさに世紀の大決闘中ですよ」
「聞いたよ、またお前は悪巧みをしているらしいな。でも面白そうだ、僕も混ぜろ」

 3枚の食券を僕が差し出すと、彼は低く笑った。
268 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/22(土) 20:47:27 ID:???
これで第二話校了でございます、二日連続で空気読まずにすいません。
ロンダリングはもっと綺麗にやれると思うのですが、俺の弱いオツムでは
これぐらいしか思いつきませんでしたorz

>>258
取捨選択ですか……難しいです。次回の仕込みも書いたりしているので。
今回の主題は『ロゴス撲滅の裏方』と、『経営者としてのアズラエル』でした。
でもたしかに不要な表現もチラホラ見られるので、そこらへんをシェイプ
していきたいですね。

>>259
詰め込みすぎだなんてそんな、まだこんなのでは薄いくらいです。
魅せるセンスは絶望的にないです、悩んでいます……。
三島大先生みたいなきれいな文章が書きたいが、この手の話には親和性がないw
っても言い訳ですね、すみません。いろいろ読んで精進します。
269通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 22:35:48 ID:???
>>GSNT
投下乙。
俺の批評は俺の嗜好に依るものだと断りを入れておく。
文章は決して下手ではないとは思う。文章に深みはあるんだが引き付けられる物が無い。極論すれば面白味が欠けている。
句読点の打ち方が気になる所がある。
必要のない説明や描写が多い。削るべき所は削った方が良い。
長文を書く才能は称賛に値するが、長ければ良いというものでもない。
まずはセンスを磨こう。話はそれからだ。
270通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 22:51:44 ID:???
>>GSNT氏
これでまだ薄いとか言ってるけど、これ以上詰めると「小説」ではなく
「論文」や「説明文」になっちゃうよ(笑

ちょっとだけお節介。
セリフの後の人物描写はセリフを言った人ではなく、話してる相手や話しかけた相手
の方を先に入れるように構成すると人物が動き出すよ。
んで、描写もその人の背景や歴史より先に表情や仕草を入れるともっと会話がはずむよん。

良い物持ってるんだからガンガってくれ、応援してるぜ!
271通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 23:02:46 ID:???
>>268 とりあえずは投下乙。
>>259は情報の掘り下げが足りないのに設定だけが延々と羅列
されて居る事を言っているんだと思う。

ニレス目の内容は、議長の宣言で生じた混乱に乗じ、資産を掠め取った、
三レス目は、そのあと混乱が起きてそれを収拾した、だろ。

問題はその頃アズがどんな奴とどんな風に会話しながら動いていたか、だ。
たったニレスで消化してしまった説明は、本来それだけで
一個の物語になったはずなのに、掘り下げが浅すぎる。

ニ、三レス目みたいな内容を、"その頃を思い出して呑んでる人たちの会話"にできないか?
行動と反応と感想でキャラクタの個性が出せるし、会話の端々に伏線を巡らすことも出来る。

読んでる人は結構居るんだから、説明文で終わるのは勿体無いぜ。
読み物としては、七、八レス目がそれ以外の全部よりも面白かった。
272通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 23:53:40 ID:???
>>GSNT
説明に終止しているからテンポが良くないんだろうね。
説明に説明を積み重ねているから無駄に文章が長くなってる感じ。
必要な物と不必要な物の区別が出来て無いんだろうね。
本を読んだり文章を書けばセンスが上がるという訳じゃないよ。
センスは天性の物だけど、磨けばそれなりに光るから頑張って。
273hate and war ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/23(日) 07:35:41 ID:???
“the son and the moom”

 現実と虚構が織り成す世界。それを夢という。
 往々にして願望を具現化させて微かに心を癒す事もあるけれど、甘い願望は厳しい現実に打ちのめされる。
 そして、俺は毎晩毎晩同じ夢を見る。
 妻であったルナマリアが嬰児を胸に抱いてあやしている。穏やかで柔和な笑顔で幸せそうにしている。
 俺が近付くと彼女は悲しそうな顔で首を振り、嬰児は泣き出す。
 そして二人は闇に溶け込む様に消えて、俺が一人取り残された処で夢が覚める。
 その時決って俺は泣いている。妻と生まれる事の出来なかった我が子の事を想いっては涙を流し嗚咽する。
 現実は残酷だ。
 妻の陣痛が始まったので病院に連れて行こうとしたのだけれど、
ベッドが開いていなかったりだとか医師が不足しているだとかで拒絶されてタライ回しにされた。
 十三件目に向かって信号待ちをしていた時、ルナは苦しみながら冷たくなった。
 最愛の人間が苦しんでいたのに、何も出来なかった自分が、助ける事の出来なかった自分の無力が憎らしかった。
 ただ一人取り残された俺は悲しみを癒す為に酒に溺れていった。
 最初は良かった。酒を浴びる程飲めば全てを忘れる事が出来た。
 だけど最近は飲めば飲む程眼が冴え、酔う事すら出来なくなってきている。
 そんな時は決って憎悪の言葉を吐いている。
 自分自身、医療機関、俺を残していった二人、全てに対して癇癪を起した子供の様に泣き叫んでは暴れ狂い、
喚き散して手当たり次第に物を壁に向かって投げ付けている。
 でも、それは今日で終わりだ。 
 子供の為に二人で選んだ哺乳瓶を、俺は感情の荒れ狂うままににルナの遺影に投げ付けようとしたからだ。それは許される事じゃない。
 ただ一人取り残されたからと行って悲しみに明け暮れた罪を贖わなければならない。
 考えてみれば俺は昔から成長をしていない。マユを、ステラを失った時から全く進歩していない。
 自分自身の馬鹿さ加減に涙が出て来る。
 護身用の拳銃を手にし、断層に弾丸が入っているか確認し、安全装置を確認して撃鉄をゆっくりと上げる。
 銃口を口に咥えた所でゆっくりと眼を閉じた。
 ごめん、みんな。俺はみんなのいる所には行けない。
 俺は地獄に落ちるだろう。

 all over with him.
274 ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/23(日) 07:38:49 ID:???
逆襲のアスラン氏、本当に申し訳ありません。色々とパクってしまいました。
275通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 09:33:08 ID:???
地名や人名に漢字が使われてると種SSじゃないような感じがするね。
276通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 12:54:29 ID:???
>>メスト
色々やり過ぎ。
『オマージュ』はまぁ良いだろうが
時事ネタも要らないし全く同じ展開をなぞる必要も無いのでは?
ついでに言えばタイトルも意味無し。サブタイトルは良いにしてもね

言葉は悪いがあんまりにもお手軽に『でっちあげた』風に見える
読後に嫌悪感のみを感じせたいならば成功だろうが
277通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 16:42:43 ID:???
タイトルはクラッシュの名曲から拝借しただけじゃね?
278通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 16:50:20 ID:???
だからサブタイトルは良いにしても、って話じゃないかな
279通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 16:59:59 ID:???
サブタイはハスキングビーの the sun and the moonから拝借だろ。sunをsonに変えて息子、moonは月だからルナ。
タイトルはクラッシュの hate and warだろ。ヘイトだからヘイト物って事だろうな。
今回の投下はちょっとアレだけどな。
280通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 18:22:36 ID:???
バンキ
北鮮柔道女。
281通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:52:52 ID:???
アンケートの結果次第では職人さんがたもオリ小説投下してくれるんだろうか。
282通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:56:01 ID:???
>>281
さあな。そもそもオリジナルSSを書いている職人なんているのか?
283通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 21:59:00 ID:???
>>282
メストさんとかメストさんとかメストさんとかメストさんとかメストさんとかかな。
284通常の名無しさんの3倍:2007/09/23(日) 22:05:33 ID:???
edとか種蒔きもそうじゃね?てか固有名詞とか出さなければそれっぽく見えるような気もするが
285通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 07:59:54 ID:???
メストさんがどんなオリジナルを書いてるのか気になる
286lunatic love ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/24(月) 20:53:52 ID:???
“can't fail”

 光の奔流が迫って来た。
 私は動く事もせずにその光を見つめている。
 口の中に血の味が広がる。呼吸する事すら辛い。しかし、もうそんな事に苦しむ事もなくなるだろう。
 靄がかかった様に霞む視界の端でアズラエルが狂った様に叫んでいる。

 思えば可哀相な人だ。
 何故彼がコーディネーターに対して激しい憎悪を抱いているのかを私は知らない。
 しかし、偏狭な迄にコーディネーターの殲滅に拘るからには、それなりの理由があるという事は容易く想像出来る。
 私はその歪んで病んでしまった彼の精神に深い哀れみを感じる。

 人は役者、世界は劇場。人生は喜劇にして悲劇。
 運命という歌劇の幕が降り始める。アンコールもなければカーテンコールもない。
 喝采のない漆黒の暗闇の中、寂しく終劇を迎えるのだ。 私の人生が悲劇なのか喜劇なのかは解らない。
 いや、多分イタリアの歌劇だろう。あれの結末は血腥いものが多く、血塗れの私には相応しい。
 そういえば学生の時、トスカを見て涙ぐんで友人達囃立てられた事があった。
 愛に生き、恋に生きる事に憧れもしたけれど、やはり私には似合わなかった様だ。

 不意にアズラエルの叫びが狂気染みた笑いに変った。迫り来る死の恐怖に精神が絶え切れなくなったのだろう。
 それに対しては申し訳なく思う。私がもっと有能であり、彼を上手く補佐出来ていればこのような結果にはならなかったのだから。
 それは艦長としての責務を果たす事も出来たとは言えない。

 音すらも聞こえなくなり、痛みも感じなくなって不快だった血の味もしなくなった。
 ぼやけた視界に家族の姿が見える。
 故郷の家族は元気だろうか。私が此所で死ぬ事で何か不都合が起きないだろうか。
 それだけが気掛かりだ。

 光の奔流に包み込まれて私の肢体が焼尽くされる。

 ――運命の幕が閉じられた。
287 ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/24(月) 20:55:17 ID:???
投下終了。
288週刊新人スレ:2007/09/25(火) 20:10:10 ID:???
 ニコル対山田! 意を決するニコルにレイが要求したボールとは!?
新シャア板の大甲子園
>>215-216

 ユニウスの破砕作業援護に出撃するルナマリア達。一方何者かの気配を感じたレイは自身の出撃を要請する。
SEED『†』 
>>225-231

 珈琲の香りをこよなく愛する漢の元へ青ざめた副官が飛び込んでくる……。傑作短編のリライトを新人スレで。
coffee breaK
>>232

 今日はあの娘の命日だ。ふと思い出した”俺”は……。日常の愛と狂気を切り取る人気短編シリーズ2編。
lunatic love
>>234,286

 ザフト最新鋭の模擬戦体験マシン『Imit』。そのコクピットに座った当代最強パイロットは……。
『幻』
>>237-238

 ラクス・クラインのコンサート会場で、不機嫌そうな艦長とノリノリの副長を見比べるシンは遂に……!
短編劇場・全力種死
>>242

 戦艦ドミニオンに巨大な光の奔流が迫る! アズラエルを今も苦しめる悪夢の真相とは。
GSNT
>>245-254,260-267

 毎夜同じ夢にうなされ、暴れ狂い、最期に行き着く所は……。シリーズ最新作は某氏へのオマージュ短編。
hate and war
>>273

 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
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>>1,7-9

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お知らせ
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。

編集後記
まとめの中の人、所長とも色々乙です。
289ウンメイノカケラ scene-4 1/2:2007/09/25(火) 21:23:11 ID:???
 箱庭の空、紙飛行機

 一年が過ぎ、私は月日を指折り数える事を止めた。
 日々をあるがままに生きて、過去を顧みる事と未来に想いを馳せる事を止めたから。
 一日として同じ日は無く、流れていく今という時を大事に生きる事にしたのだ。
 星は流れ、季節は巡り、人は移ろう。時代は変わるのか変わらないのか分からない。
 私は閉鎖された箱庭の住人。私の世界は狭いが不快ではない。それよりも外の世界の果てしない広さが怖い。

 ある日、店は賑やかだった。偉い人の婚礼があるらしい。
 オーナーが今日は稼ぎになりそうもないから店を休みにしたそうだ。
 私は店の女性達と共にTVで婚礼の中継を見る事にした。
 ブラウン管の中の花嫁は高価そうな衣装を身に纏い、とても綺麗に着飾られている。
「いつかこんな服を着てみたい」
「早く良い人を見つけて幸せになりたい」
 女性達は羨ましそうに話している。
 勿論、私だって羨ましい。分相応では無いのかも知れないけれど、純白の花嫁衣装には憬れてしまう。
 しかし、花嫁の暗く濁った瞳が棘の様に私の心に引っ掛かった。
 何故幸せな筈の花嫁があんな瞳をしているのだろうか。綺麗に着飾り、なにが不満だと言うのだろうか。
 私は彼女の瞳を見つけたが、答えは返ってこない。
 憶測に過ぎないが、彼女もまた運命を砕かれていたのかも知れない。
 TVの説明によれば、彼女は先の戦争で親を失い、その後を継いでこの国の国家元首になったらしい。
 彼女の双肩にはオーブという未来が掛かっている。その重さは人の運命を引き裂く事など容易いだろう。

 彼女もまた箱庭の住人なのだ。
290ウンメイノカケラ scene-4 2/2:2007/09/25(火) 21:24:34 ID:???
 私は中継の途中で席を離れ、自室に戻った。
 私の部屋は質素なものであるが綺麗に片付けてある。
 装飾品等は少ない。去年のアズラエルの命日に彼を偲んで買った哀しい音色のオルゴールがあるくらいなものだ。
 それと、便箋。これは家族の命日に買った。手紙を書く為に用意したのだ。
 毎日の生活の中で起きた事、思った事を二通、亡き家族とアズラエルの為にしたためている。
 出す訳でもなく、たとえ出したとしても届く事の無い手紙を書く事は非常に馬鹿馬鹿しい事かも知れない。
 しかし、手紙を書く事が唯一の接点であり、繋がる事の出来る絆だと思う。

 窓を開けると、あの日の様に目に染みる程青い空が広がっている。
 私は悪戯心を起こし、紙飛行機を折った。兄に習ったとてもよく飛ぶ紙飛行機だ。
 窓から外に向けて飛ばそうとすると、何かが綺麗な軌跡を描いて飛んでいるのが見えた。
 それに負けない様に紙飛行機を飛ばすと、空高く、宙を描いて飛んでいった。
 何処までも、私の代わりに果てしない世界へ飛んで行け。
 太陽は明るく眩しいけれど
、次第に雲に覆われて行く。
 ――あの花嫁は笑っているだろうか。
291 ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/25(火) 21:29:19 ID:???
師匠の遺稿、テロップを纏めた物を元に、友人達と校正した物を弟子である私が投下させて頂きました。

292 ◆6Pgs2aAa4k :2007/09/25(火) 21:33:55 ID:???
>>まとめの人
すみません。>>286はlunatic loveじゃなくてExploration of Personalityでした。
訂正をお願いします。
293通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 13:50:49 ID:???
>>hate and war、exploration〜
投下乙です。

the son and the moon
 どこか構成に手を抜いた感じです。時事ネタを、もっと普遍的で
説得力のある事件にすべきでは。

can’t fall
 歌劇を見て涙ぐみ、責任感の強い苦労性の艦長殿に敬礼。
 一瞬の走馬灯に近い心情描写なので、書く場面をビームが発射されて
当たるまでの一瞬か、ビームが当たって体が焼き尽くされるまでの一瞬に
絞った方が、瞬発力、余韻の面でやりやすかったのでは無いかと思います。
 それも貴方の文の味なのでしょうが、ビームが当たってからがあっさりと
終わりすぎていて読後の余韻を少し妨げるカタチになってました。

ウンメイノカケラ
 訥々と語られるマユの心情描写がたまらない余韻を残します。
 他にもありましたら是非読みたいものです。

>>編集長
 相変わらずの良い煽り、投下乙です。よゐこのお約束w
 
それからちょいと亀ですが>>全力種死
 考えてる事のテンションと、やってる事の重要性との差に吹きました。
なんなんだこのアグレッシブなシンは。二人ウェーブと心の眼が個人的にツボ。
本当にザフトの明日はどっちなんでしょうね。GJ。
294 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/26(水) 14:15:54 ID:???
なぜかハイペースで進んだおかげで3話が書き上がったんですが…
今晩あたりに投下してもいいスか?またクソ長いですが。
295通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 14:47:50 ID:???
まだ容量あるから大丈夫でしょ。
296通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 19:35:30 ID:???
人によりけりだろうが俺の場合はクソ長いと読む気が失せるなww
297GSNT第3話『Sunriser@』1/3 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/26(水) 21:03:16 ID:???
 頭の中によくわからない、不快な刺激が連続している。刺激に反応して暗い闇の底から
這い上がってきた意識は、最悪な目覚めを僕に強制する。怒りと不快感に支配された脳は、
僕の身体に原因を止めろと指令を出す。しかし鈍重な身体はなかなか言うことを聞かず、
すぐ手を伸ばせば届くところにさえ動こうとしない。脳と身体がしばらく争ったあとようやく
意見が一致して、怒りに任せて頭上のスイッチをぶっ叩く。そうして僕を悩ます目覚まし
は鳴くのをやめてくれたが、今朝の苦痛はそれだけでは終わらない。

 頭の中の不快は一向に収まらず、身体の倦怠感もひどい。吐き気すらする。服は前の
日のカッターシャツにスラックスのままなので寝心地も悪かった。つまりは、典型的な二日
酔いだ。枕に顔を突っ伏したまま唸る。症状の治まる気配はない。もうだめだ、耐えられ
ない。勢いをつけて一大決心をしたかのように起き出したが、足は思うようには運んでく
れない。

「おはよう」
「ええ、おはよう」

 食堂に出て顔を合わせた遥は、今日もいつもの調子だ。とっくに着替えを済ませてパン
をかじりながらニュースを見ている。二日酔いの僕には見向きもせずに、熱心に。僕は千
鳥足でふらつきながら食器棚から大きめのタンブラーを取り出し、キッチンに向かう。頭が
鉛を詰め込んだように重い。水がほしい。

「明、二日酔い?」
「見りゃわかるでしょう」
「なら水じゃなくて、冷蔵庫にポカリスエットがある。それを飲んだほうがいいわよ」

 こっちに目もくれずに遥が言う。彼女の言うとおり冷蔵庫を開けると、よく冷えたブル
ーのパッケージのボトルを見つけた。

「スポーツドリンクのほうが身体の吸収は早いから、血中のアセトアルデヒド濃度を下げ
てくれる。飲み屋の雑学。覚えておくとスナックの女の子にもてるかも」
「からかうなよ、向こうもそれくらい承知だろ」

 こちらに背中を向けているので顔はわからないが、声は笑っていた。それを尻目に、
僕はタンブラーにポカリスエットを注ぎ、一気に飲み干す。いくらか頭の中がしゃっきり
してくる。
298GSNT第3話『Sunriser@』2/3 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/26(水) 21:05:36 ID:???
「つれないわね、他にもいろんな雑学あるわよ。教えてあげようか」
「今度ね。ごはん食べたら僕は寝る」

 ポカリスエットをもう一杯注いで、それを持ってテーブルに着く。目の前の皿には、目
玉焼きとボイルドキャベツ、焼いたウインナーソーセージ。そういえばトーストを焼いて
なかったな、と思って顔を上げると、遥がうらめしそうに目を細めてこちらを見ていた。

「なんだい、まだ他に二日酔い治療の妙薬でもあるの」
「……君さ、昨日約束したよね」
「どんな」
「今日、私の買い物の荷物持ちをやるっていう約束」

 言われた途端はっとした。それ見たことか、と遥が大きくため息をつく。
 あれは昨日の昼休み、ASURAのシミュレーター訓練も三週間が過ぎ、実機テストも
始まり自信を得て、再び遥との模擬戦を申し込んだ。彼女は余裕の笑みを浮かべて
「どうせなら私たちも何か賭けましょ。ちょうど明日は休みだから、買い物の荷物持ちに
なってくれれば嬉しいな」と提案され、僕は一週間分のリビングの掃除を賭けた。結果は
6分44秒で僕がベイルアウト。ヴェスパタインの機動は前にもまして冴えわたっていた。
今度こそはと臥薪嘗胆を込めて挑んだ僕は、悔しさを通り越して茫然自失だった。

「できれば、お昼からにしていただきたいんですが」
「だめ、せっかくの休日がもったいない。9時には家を出たい」
「9時って、あと一時間しかないじゃないか」
「じゃあ大負けに負けて10時。せっかく昨晩ベッドまで運んでいろいろ介抱してあげたの
に、なんにも効果がないんじゃ無駄骨だったわ」

 遥はさも残念そうに肩をすくめた。昨晩、と言われて初めて昨晩の記憶がないことに
気がついた。なんとなく夕方に同僚たちと渋谷に遊びに行ったのまでは覚えている。しかし
そこから何をしたのか記憶にない。

「ごめん、全然覚えてない。よかったら後学のため教えていただけませんか」

 かしこまって大げさに頭を下げた。ここは低姿勢を貫くべきだ、どうやら明らかにこちらに
非があるらしい。頼みを受けた彼女は変な動物でも見るような顔をしたが、僕の態度が
おかしかったらしく、口元を笑わせて話しはじめた。
299GSNT第3話『Sunriser@』3/3 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/26(水) 21:07:27 ID:???
「昨晩2時ごろだったかしら、玄関のチャイムが鳴るから出てみたら、第2OSのシェール
くんが君の肩を担いでいるじゃないの。聞けば、道玄坂のダーツバーで昼間に懲りずに
罰ゲーム付きダーツやって、スタンダードクリケットで8戦して6回最下位。一回負ける
ごとにショットグラスでウォッカ一気飲みで、店員の制止を無理やり振り切ってそれを六回
もやったものだから千鳥足もいいとこで、這々の体でここまでたどり着いたって」
「……さっぱり記憶にないな」
「でしょうね。半分寝てたもの。それで二人でなんとかベッドまで運んでポカリスエット
を飲ませて、わざわざ無針注射でビタミンと肝機能促進のミックス剤を打ってあげて、そ
うして寝かしつけたのよ。今日になって二日酔いなんて言われたら困るから。でも結局ダ
メだったみたい。月曜日に出社したらシェールくんにお礼言いなさいよ」

 我ながらなんとも情けない話だ。そういえばダーツらしいことをやっていたのは記憶に
ある。さっぱり狙ったところに入らずに、アウトボードを連発していた。シェール先輩は
僕より3つ上の22歳、インド人とイギリス人のハーフで、故郷のロンドンでソフトダーツ
を覚えたらしい。機械的な腕の振りで正確に的を射抜く彼を真似して投げるが、力の加減
が難しくてなかなか思う位置には当たってくれない。

僕は再び遥に向きなおし、「迷惑かけました、このとおり」と頭を下げた。しかし彼女は
意に介さず、

「なに所帯じみたこと言ってるの、私が困るからって説明したでしょう。今日の買い物に
付き合ってくれれば、それでいいのよ」

とさっきの約束を持ち出してきた。これはもう断るわけにはいかなくなった。しかし二日
酔いだけはなんとかしたい、こんな状態で陽の下を歩けば倒れそうだ。僕はぐったりと
肩を落として言った。

「オーケー、頑張りますよ。ところで、こんな状態の僕を連れて歩きたくはないでしょう、
何かいい方法ない?」
「迎え酒――――というのは冗談で、頭痛がするのなら頭痛薬があるし、吐き気には制吐剤も
あるけど一回吐いたほうが早いでしょ、本来の用途と違う薬だし。あとはシャワーでも浴びて、
水分と食事を取ればそれでなんとか」

 遥は少し自信なげな様子だったが、ここは素直に従ってみよう、と思った。いやそもそも、
二日酔いへの特効薬なんて聞いたこともない。彼女の言に何度もうなずいたあと、
いまだよろめく身体を引きずりながらバスルームへと向かった。
300 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/26(水) 21:12:56 ID:???
一回目投下終了。

>>295-296
あーざすwww
たしかにあまり長いのはいろいろご批判を食らっていたので、
分量を細切れにわけて日刊ベースくらいで投下していきます。
301通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 21:26:21 ID:???
ウンメイノカケラがまた読めて嬉しい。
メストさんはまだまだ高畑さんには及ばないな。師匠を超えられる様に頑張って欲しい。

>>300
分量よりも無駄な部分が無駄に長いから読みにくい。
話の本筋よりも本筋に関わりのない部分が長過ぎると思う。
302短編劇場・全力種死 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/26(水) 21:38:37 ID:???
 急に目の前に飛び出して来た女の子にぶつかってしまった。彼女は今、倒れようとしている。
 俺はその子を助けようと一歩足を踏み出した。
 ――ちょっと待て!
 俺は女の子を助けようとしている。しかし、そこに下心がないと言えるだろうか。
 善人を気取って助けて何らかの役得を得ようと思わなかっただろうか?
 しかし、ブランドの金髪でコケティッシュな魅力に溢れる女の子に下心を抱かないのは非常に失礼だと言えないだろうか。
 間違いなく失礼な事だろう。可愛い子に反応しないという事は俺自身の沽券にも関わってくる。
 ――いや、ちょっと待て! ヨウランも一緒にいる事だし、このまま放っておいて倒れた拍子に見えるかも知れないスカートの中のパンチラという聖域を見た方が良くないだろうか。
 これならば一挙両得。俺もヨウランも楽しむ事が出来るはずだ。我ながら良案だと思ってしまう。
 ――ちょっと待て!
 彼女が倒れそうになっているのは俺にぶつかったからだ。それなのに俺は一体何を考えているんだ?
 ――なんてこった!
 いつから俺は女の腐った様な男に成り下がってしまったのだろう。
  目の前に助けなければならない人がいるならば、どんな困難が待ち受けようと助けるのが男ではないだろうか?
 男の行動は一事が万事。後悔しない様にしなければならない。

 俺の取るべき行動はただ一つ!

「大丈夫?」
 俺は後ろから女の子を抱きとめた。
 たまたま軟らかい胸を掴んでしまったけど、狙ってやった訳じゃない。いわゆる一つの偶然の産物だ。
 無事に女の子を助ける事が出来たけど、彼女は俺に礼を言わずに去って行った。
 しかしそれでも構わない。俺は礼をして欲しかった訳じゃないからだ。
 俺は男として女の子を助けなければ一生後悔するから助けたのだ。
「……胸、掴んだな、おまえ」
 ヨウランが汚物を見る様な目で俺を見つめている。
「こーの、ラッキースケベ!」
 更に俺を嘲る様に罵倒してくる。
 ……言いたいだけ言えば良い。俺は俺に恥ずかしくない行動をしただけだ。
 この世界全てを敵に回そうとも、俺だけは俺の味方をする!

 ――明日はどっちだ


 でも軟らかかったなぁ。癖になりそうな感触だったなあ。
303通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 22:28:16 ID:???
>>300
長台詞の多用のせいか「渡る世間は鬼ばかり」を連想しました。
人物が台詞を言っている時の描写がなされていないので、キャラが立っていないように思いました。
ピン子やえなりは台詞を言いながら動いたり視線を動かしたりしていますよ。
オリキャラの個性がなかなか伝わって来ないので読むのが退屈でした。
読点の使い方も小学校の作文を読んでいるようで失笑してしまいました。
あなた、三島が好きなんですよね?本当に好きなんですか?
三島は文章が巧いのに……三島が可哀想……
304通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 22:46:57 ID:???
>>302
その短時間でそれだけものを考えられるって何モンだシンwww

もっとやれwwwww
305通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 22:51:12 ID:???
>>300
登場人物の行動を長々と説明しているだけだから無駄な部分が多いと言われるんじゃないかな。
きちんと描写すれば面白くなりそうだとは思うよ。
306通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 22:59:27 ID:???
>>ウンメイ
投下乙
とにもかくにも投下に至ったこと、それ自体に乙だ
色々ご苦労様と言っておく

>>GSNT
投下乙
第三話を何処に持っていきたいのか見えないので次回も期待
今までペースから行けば20レス前後かw 次は話が動くだろうか。日刊とは新聞連載なみだなww

内容がキチンと有った上で筆がやたらに速いのは非常な美点
もっと磨け! きっと誰も太刀打ち出来ないぞ
内容は三島云々以外の部分は上の人とほぼ同じ感想。状況説明と長台詞は気を付けないと読み手が飽きてしまう
全ての台詞に蘊蓄を入れ込んで支持されるのは京極夏彦くらいなモンだ
純文学でなくてSSであると言う大前提を忘れてはいけない
そして忘れては行けない前提条件
いくら偉そうなことを書こうが此処での客は俺も含めて、3行以上は目が読むことを拒否する種厨だwww
状況説明部分はまだまだ削れる余地がある。出来上がっているようなので
推敲時点で多少冗長だと思った表現はもっとシンプルにしみてはどうか
それと個人的にはキラの台詞回しが回を増す事に気になる。これはわざとやってるかも知れないが

>>全力
あんたが何処へ行きたいのか、もはや俺にはさっぱり・・・www
307 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/26(水) 23:08:21 ID:???
>>306
ヘキサゴンで喩えると上地雄輔のポジションかな?
全力疾走する空回りに憬れるわぁ。
308通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 23:24:32 ID:???
>>300
主人公は二日酔いなんですよね?本当に?
二日酔いなのにペラペラ話をする人に平然と対応しているから、自分には二日酔いの人には
全く見えませんでした。
普通なら二日酔いで頭が痛い時にペラペラ喋られても、頭の痛みに気持ちが行っているから
雑音にしか感じないだろうし、不快に感じるのではないでしょうか?
日本名、日本の地名でリアリティを出そうとしていると思うのですが、登場人物の行動に
リアリティが無いので薄っぺらい内容のSSになっているのだと思います。
読点の使い方も良くないと思います。それは人に教えて貰うものでは無いので、
センスを磨いててみては如何でしょうか。
309通常の名無しさんの3倍:2007/09/26(水) 23:39:53 ID:???
>>302
三島と比べちゃダメだろ常考
三島とか太宰とかあの辺は神がかってるw
あのようには誰も書けないし書いてないのは本人も理解してるだろ

>>300
個人的には、日常描写や行動描写が充実しているのは好ましい
だが、行動に感情があまり付随していないのがまずい(一人称の難しいところだが)
全体としてはもっとシャープな書き方ができるように思う
もっと言葉を選んで簡潔に書くこと
310通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 00:49:31 ID:???
>>306
>3行以上は目が読むことを拒否する種厨だwww

なんて失礼な!
自慢じゃないが5行ぐらいだったら何とかなる自信が有るぞ!!
萌え要素が絡めば10行ぐらいは大丈夫だと思う
成長したな、オレ

>>307
ニッチマーケット全開wwww
311通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 00:55:29 ID:???
エロが関われば何十行もいけるおいらが通りますよ。ミツキが関われば何百(ry
312通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 02:07:02 ID:???
>>GNST
 投下乙です。
 ちょっと長くなりますので注意、以下はあくまで個人的見解ですので、
気に障ったら読み飛ばしてください。

 なんとか人物を動かそうとした努力の跡は随所に見られますが、
まだ情報の選別が甘い感じです。

 地の文で「」を使うときは気をつけてください。数文字程度なら直接「」でも
いいでしょうが、それ以上だと間接的に台詞の内容を描写した方がいいです。

 簡単に名前付きのキャラクターを増やそうとすると死ねます。
 まだ、メインキャラの姉さんや西条がキャラ立ちしきっていない状態です。
 シェール君の説明が明らかに『プロフィール』でした。ちょいと厳しく書きますと、
シェール君は22歳のインド、イギリスハーフ。ロンドンでダーツを覚えた。
第二十S所属。だから何? です。その人と何をやったか、だけが重要です。

 長台詞が単なる説明で、そこに姉さんの個性も意見も含まれていないから、
別に地の文でも変わらない。長台詞が許されるのは以下の場合です。
 それが苦にならない媒体(小説、ドラマCD、アニメ)である。
 キャラが固まって居るので、台詞だけで口調、行動までもが想像できる。
 台詞がキャラクタの個性を表している。
 テンションに任せて立て板に水でひたすら話している(殆ど一呼吸)。
 長台詞の長さそのものがギャグの領域(問い詰め)。
 台詞が長くなったならば、間に行動描写や相槌を挟んで一呼吸置きましょう。

 次にシナリオについてですが、何故オリMSとオリキャラがあんなに強い必要が
あるのか全く分かりません。「敵がもっと強いから」らしいですが、同じ事です。
最新技術てんこもりで超凄いおねーさんがのってますからw という強さの説明が
聞きたいのではないのであしからず。姉さんが裏切って、キラが旧式のストフリで
なんとかオリMSを落そうとする、なら話が分かるんですが。

>>全力種死
 投下乙です。
 最初、一単語だけ専ブラのNGに引っかかってたので何事だ? と思ってブラウザを
開いて読んだら、夜中に大声出して笑ってしまいました。全力だとラッキースケベの一シーンを
あそこまで膨らませられるのか。もう明日がどっちでもいいので、突っ走ってください。
 GJでした。
313通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 16:48:11 ID:???
必要のあるシナリオしか書けないんだったらSS成り立たないでしょ……。
基本、誰でも「書きたいものを書く」というところからスタートしてる。
その範囲内で面白くするためのアドバイスならともかく、話の筋そのものに
干渉するのは読者のやることじゃない。
314通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 17:32:13 ID:???
わり、個人的見解ってあったな
失礼した>>312
315GSNT第3話『SunriserA』1/3 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/27(木) 19:40:22 ID:???
 一時間くらいするとどうにか二日酔いも収まり、僕たちは予定通りの時間に家を出た。マンションの
ロビーの前を通ったとき、共用施設の薬剤自動調合機が目に入った。本来コーディネーターは遺伝的に
アルコールの分解速度が早いが、薬に頼ってもまだ二日酔いとは、どれだけ自制を失っていたのかと
自分を疑ってしまう。

 玄関を出てそのまま外に歩いていこうとすると、遥が「そっちじゃない」と呼び止めた。彼女は駐車場の
ほうへ足を向けていた。普段あまり車を使わないので癖になっているようだ。

「いくらなんでも、家まで荷物を持たせて歩かせるほど鬼じゃない」
「でも店から店を廻るのにいちいち車に乗るわけじゃないよね」
「だから君が必要なんでしょう、おわかりかしら?」

 いたずらっぽい笑顔で遥は言う。セカンドバッグを弄びながら、きれいな姿勢で揚々と駐車場へ歩いて
ゆく。僕はその後ろを追いかけた。

 地下モータープールのエレベーター前で少し待つと、滑らかな車体が上がってきた。遥がドア
ハンドルを握って『みなみはるか』と言うとロックが外れ、二人して車内に乗り込む。バッグを後部座席
に置いてハンドルを握りブレーキペダルを踏み、イグニッションを押すと電源が入る。車は静かに
走り出す。

 ふと、この車のデザインのことが気になった。かなり昔の車種のレプリカだが、中身は現在普及して
いる燃料電池車と変わらない。しかしそれほど今の車とかけ離れたデザインとは思えなかった。

「この車、たしか200年くらい前のでしょう?」
「そうよ、レクサスiS。まだメーカーの社名がトヨタだったころの」
「クラシックだとは思うけど、今の車とそれほど変わらないような」
「デザインのことを言っているのなら、そうね。今らしい流線型のセダン」
「どうしてそんなに変化がない?おかしいじゃないか、200年もいっしょなんてさ」

 彼女は道なりにハンドルを切りながら言った。

「人間の美意識って、大方の人はある程度の範囲に収まっていると思うの。自動車はだいたいこういう形、
っていうテンプレートが私たちの頭の中にあって、そこからかけ離れたデザインの車は市場に否定されて
しまうのよ。それを停滞と呼ぶか王道と呼ぶかは別問題だけど」

 表情もなく、語り口は確信を得ている風だった。僕はその意見に、そこはかとない違和感を覚えた。
316GSNT第3話『SunriserA』2/3 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/27(木) 19:41:29 ID:???
 まもなく国道に出ると、遥は車を自動運行帯に入れた。モードを切り替え目的地を表参道近辺の駐車場の
一つに設定し、自動運転に入る。ハンドルから両手を離して遥は大きく伸びをした。昨日までの疲れが
抜けきらないのは彼女も同じのようだ。先の話題が気になっていた僕は、落ち着いたのを見計らって
切り出した。

「さっきの話、僕が昔いたプラントじゃこことはずいぶん違う車が走っていたし、着ている服も違う
ようなデザインが多かったように思うんだけど」
「それはそうよ、環境が違うもの」
「環境が変わるとセンスも変わる、ってこと?」

 少し興が乗った様子で、遥は微笑して答えた。

「センスよりも先に社会的要求がくる。例えば現代の婦人服は20世紀始めの女性の社会進出に伴って、
シャネルたちが機能性を追求して考え出したデザインが元になる。それが次第にトレンドになって、
イメージ形成に影響していったの。それと同様にプラントの人たちも宇宙への進出に伴って、宇宙で
暮らしやすいようなデザインを考えているんじゃないかしら」

 そう言いながら遥は膝の上で手を組んだ。疑問にはいつも誠実に答えてくれるのが彼女の美点だった。
なるほど、と当時着ていた服を思い返す。

「言われてみれば、縫い目がなかったりUVカット素材や制電素材が使われてたりしてたな」
「対して、地球に住んでいる人たちは今の服で問題ないから、情報の飽和している現代では革命的な
社会構造の変化がない限りデザインが突拍子もないものになることはない。モードやサイケやコンサバ
なんかの流行の循環があるくらい」
「プラントにもそういうのがあったかな?……色気づく前の話だから定かでないけど、たしかにあった
ような気がする」
「これは服飾文化論なんかの範疇ね。住環境や経済情勢、技術革新、社会情勢に従って服や車の
デザインも変わってゆく。面白いわよね」

 思わず唸った。違和感は払拭された、環境適応のためか。そういえばアスランの変わった形のスポーツ
カーもプラント製だった。宇宙に出て70年も経てば、服や車に限らず全てにおいてデザインアプローチも
変わってこようというものだ。
317GSNT第3話『SunriserA』3/3 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/27(木) 19:42:32 ID:???
 だが今度は別の違和感を覚えた。宇宙生まれの僕は地球生まれの彼女と、それほど違っているの
だろうか?

 横目でちらりと遥のほうを見る。ラクスは美人だったが、遥には彼女とは違う艶めかしさがあった。
なんとも形容しがたい、存在そのものが醸し出すような艶。いまだ短い人生だが、見知った女性の
中では特異なタイプだった。

 だが僕とは、それ以上の何かが違う。服装や性差や年齢差ではなく、人格的な要素だ。品性や佇まい
など、意識しなければ気づかないほど自然と身体にまとう独特の空気。高潔という言葉が適当なのか
もしれないが、それだけで表せるものでもない。ちょうどさまざまな楽器の音が調和してハーモニーを
奏でるような、そんな複合的なバックボーンがあるように感じる。

「そんな顔して私を見て、何か新しい発見でもあった?」

 怪訝な顔をして遥はこっちを見た。気付けば僕は、彼女の顔をまじまじと見つめていた。気恥ずかしさが
こみ上げてきて、窓の外へと視線を移した。

「別に。ただのファッションチェックさ」

 あんまり適当な答えだったので、遥に笑われた。それを無視してぼんやり外を眺めると、窓の後ろに
流れてゆく人々はそう僕と大きな差はないように見える。やはり僕の思い過ごしだろうか。目を凝らして
見ることも必要かもしれない。

「君にチェックされてたら、私はダサい女になってしまうかも」
「ひどい言い草だな。じゃあ何のために買い物に付き合え、なんて言ってきたんだ」
「荷物持ち。あとはそうね、不健康な休日を過ごす弟をなんとか外に引っ張り出すための口実、って
ところかしら」

 笑いを含んだ声で遥は言い、僕の頭を軽くぽんぽん、と叩いた。まるでペットを外に連れ出すように、
嬉しそうに。

 やれやれと肩をすくめて、僕は前に向き直った。彼女が不健康といったのは、休みの日には決まって
僕が部屋に篭ってPCいじりやゲームに没頭しているからだ。迷惑と取るか感謝と取るか。ひとまず今は
感謝しておこう、たまには違う休日の過ごし方もいいかもしれない。

 しかし僕と遥のかすかな違いは心にしこりを残した。ときどき彼女に感じるあの雰囲気はいったい
どこから来るのか。たぶんさっきの地球と宇宙の違いではないだろう、少なくともオーブには彼女の
ようなタイプはいなかった。それがわからないのは、僕に観察眼が足りないせいかもしれないが。
318 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/27(木) 19:54:08 ID:???
毎晩懲りずに投下しております、ご迷惑おかけしております。
非常な反響をいただき恐悦至極です、胃の痛い思いもしておりますがw
遠慮せずどんどんぶっ叩いてくださいw
掻い摘んでお返事を。

>>306
毎回ありがとうございます。
筆が早いのは最初から最後までもうプロットと設定が決まっているからでして、
それに沿って書いているからに過ぎません。たぶんそれやってないと全然ダメだと思います。
それで、国語力の向上を目指して皆さんに揉んで頂きたいのです。

薀蓄入れたいんですけどねぇ…今回はけっこう削りました。
まだ多い、との突っ込みも入りそうですが。
キラの台詞回しは今回ので多少触れるかもしれません。後の推敲次第ですね。

>>312
気に障るなんてとんでもない、超ありがたいです。
的確なご指摘ありがとうございます。
まともに文法の勉強なんてしたことがないので、大変感激しております。

あのオリMSとオリキャラが異常に強いのは確信犯的な部分もありまして、
どれだけやったらどれだけ嫌悪されるか、というのも計っております。
たぶんこれから先も「俺TUEEEEE!」がたまにあると思います。
遠慮せず存分に文句を言っていただけるとありがたいですね。
319通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 20:21:13 ID:???
>>GSNT
まずは投下乙。
格段に読みやすくなっているとは思う。

さて、此所からは俺の一人よがりの批評だ。
蘊蓄を入れるよりはキャラクターの服装等を描写すべきではないか?
蘊蓄を入れるのは良い事だが、肝心の描写がおざなりになっているぞ。
ブランドの蘊蓄を入れるなら唐突に入れるのではなく、キャラの服装を描写してからそれを話の話題として入れた方が自然な流れになるんじゃないか?

キャラクターの行動指針が見えてこない。何故そうするのかという事くらいは匂わせた方が良い。

一応言っておくが、種世界は化石燃料は枯渇しているぞ。
ガソリンを燃料にする車は動かせん。

更なる精進を期待する。
320 ◆SEEDuhvP7. :2007/09/27(木) 20:28:35 ID:???
>>319
>キャラクターの服装

最初詳細に書いていましたが、ここでも嫌われるかと思って削りました…orz
何をもって行動したいのかは確かに曖昧ですね、気をつけます。

なお、現在期待されている燃料電池は化石燃料では動きません。
基本は水素と酸素、メタンですね。
321全力種死 ◆rMWwpy0i7Q :2007/09/27(木) 21:13:05 ID:???
 いきなりアスランに殴られて吹っ飛ばされた。口の中が切れたのか、鉄臭い味がする。
 アスランは何やら訳の解らない能書きを垂れている。何を考えているのだろうか?
 そんな事は解りきっている。手柄を立てた俺に嫉妬しているのに違いない。
 俺は口から流れる血を服の袖で拭いながら出来る限り大胆不敵な笑いを浮かべた。
「男の嫉妬はみっともないですよ?」
「何を言っているんだ、お前は!」
 アスランは俺の言葉に大きく目を見開く。
「俺が大手柄を立てたが悔しいからって……ねぇ?」
 俺の迫力に負けたのか、アスランは押し黙る。
 ――勝った!
 俺はアスラン・ザラという前大戦の英雄を圧倒したのだ!
 これはフリーダムを倒した事よりも嬉しい。アスランと立場が逆転する日も遠くはないだろう。
 何かをやり遂げた充実感が俺を包み込む。俺はやれば出来る男なのだ。
 しかし、アスランの様子がおかしい。負け犬の目をしていない。ギラギラと力強く輝いている。
 更に大胆不敵な笑みを浮かべて俺を指差してきた。「俺がお前に嫉妬……? 逆だぞ、シン。お前は俺に嫉妬をしなければならない筈だ」 何を言っているんだろうか、この人は? 考えが表情から読み取る事が出来ない。
「お前がキラを倒した事は認めよう。しかし、俺は自分の父親を越えるという偉業を成し遂げた男だ!」

 ――なんてこった! それは盲点だった!
 父親越え。それは男が漢になる為の細大の試練。アスランは既にその試練を乗り越えていたのか!?
 俺は驚愕のあまりに膝から崩れ落ちそうになった。しかし、ここで膝を突いたら俺は負けを認める事になる。
 全身に力を入れてどうにか踏ん張り、アスランを見ると奴は勝ち誇った笑顔で俺を見下している。
 ――これは逆境だ!
 俺は頭をフル回転させて反論を考えるが、全く浮かばない。それならば!
「それはそれ……これはこれだ! 俺は超えるべき父親を無くした……。つまり、俺は死んだ父親の背中を追いかけて無限大に進化する定めを背負っている男なんだ!」
 踏ん反り返ってミネルバの全てに響く程の高笑いをすると、アスランも俺に負けじと踏ん反り返って高笑いをする。

 ――明日はどっちだ。


「艦長、良いんですか、あれ?」
「仕方無いわよ……あの二人はとんでもない事をしでかしてしまったんだから……
 “若い時は増長もよし!”」
322通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 21:16:55 ID:???
>>GSNT
 投下乙です。以下、私見。

 環境うんぬんの話は練りこまれていて、面白かったです。
 ですが、一つつっこませて欲しいことがあります。
 遺伝子操作を行った人類が誕生して宇宙に暮らして居ることと、ザフトのNJ投下で
地球の人口が一割減ったのは「革命的な社会構造の変化」を生まなかったのですか?

 書き方が大分眼に優しくなってきました。続きも期待です。

 キャラクタの方向性が未だ見えてこない感じです。前回で姉さんがお酒の
雑学を披露した時に、作中設定はお姉さんの雑学を通じて明かしていくのかと
思ったものですが。薀蓄キャラクターに為てしまって、事情を良く分かっていない人と
絡ませれば設定の公開が楽になりますよ。

 >>服装
 情報量が嫌われているのではなく、情報同士の連携が無い(若しくは薄い)ので
読むのが疲れるんです。会話内容とリンクしていれば、余程ディープな話題では
無い限り大丈夫かと思います。

 凄まじい投下スピード、重ねて乙です。

>>313
 確かに、話の筋に口を出すべきでは在りませんでした。

>>全力種死
 感想書いていたら投下されてて吹きました。アスラン、お前もかww
とにかく投下乙です。
 >>――これは逆境だ!
 なんていう島本展開。甲子園も頑張ってくださいね。
323通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 21:19:54 ID:???
>>GSNT
描写と説明を履き違えていないか?アンタのはただの説明であって描写じゃない

>>全力
笑い過ぎて腹が痛くてコメント出来ねえwwwww
324通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 21:30:11 ID:???
お二方投下乙。
アンタら全力で間違った方向に突っ走り過ぎwwwww

>>GSNT
上の人も言ってるけど蘊蓄よりもキャラの行動指針を書くべきだろ。
アンタの間違いは書くべき事の比重を知らん事。
服装について突っ込むと、アンタの言い様だと二日連続で同じ服を着てる事になるぞ。それだと嫌われるのが普通。
>>全力
アンタはこのまま突っ走ってくれ。
ハイテンションで読者を無視する展開に在りし日の高畑さんを思い出す。
325SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/27(木) 21:59:35 ID:???
 月明かりの下で珈琲を

 オーブ代表首長府所有のセーフハウス。
 津波によって削り取られた海岸線から潮風が吹き付けてくるテラスに人影があった。
まだ若い少年だ。小さな樽に腰を下ろし、膝の上に乗せた端末を何やら操作している。
 照明の落された部屋から月明かりの下へ、ナイトガウンを羽織った少女が現れた。
「――まだ起きていましたの? キラ」
「ラクスか、何の用?」
 答えぬラクスの手には虎印の珈琲カップが握られていた。芳香が風に乗ってキラに届く。
習慣的な動作で受け取りつつも、キラの顔にはげんなりとした表情が浮かぶ。
「……カフェインの致死量ってどのくらいだったっけ?」
 飲まなければラクスも差し入れの主も納得しないだろう。大人しく苦味のある液体を口に含んだ。
 焙煎の深いマンデリンの苦味とコスタリカ産の豆が放つ酸味がブレンドの妙によって
互いに引き立ち、すっきりとした旨味を後に残す。
 満面の笑顔で豆を煎る自称珈琲通の顔が頭に浮かんだ。
 夜風に当たるうちに体が冷えていたのだろう。熱い液体を飲み下すと芯から温まってくる。

「美味しいけど問題は量だよ。珈琲が関わると急に大人気が無くなるよね、あの人」
「心安らかに珈琲を楽しめる世界。あの方はその為に戦っておられるそうですわ」
「モカの産地にユニウスを落したのは万死に値するって言ってたな。やりすぎだよ」
 腰掛けている樽を一回だけ叩いた。BLUE MOUNTAINと印が焼かれている。
「キラは何をしていたのですか?」
 画面を覗き込もうとするラクスから隠すように端末の電源を落した。
「あ……いやちょっとメールチェックをしてたんだ。軍機というか個人的な興味というか……」
「……女性ですの?」
 ラクスの大きな瞳が猫科の狩猟動物の如く拡大した。
 夜の暗さも相まって怖い。

「いやその……DSSDのマクグリフ博士だよ! VL系技術のレポートについて感想を送ったんだ。
量子磁場の斥力方程式や並進多弦粒子の予測操作を八咫装甲に応用できないかなって!」
「ぶい……える? やた……? 聞いたことがありませんわ」
 専門用語の羅列で混乱させることに成功して一息つく。理系に疎くて助かった。
「それにしても今のは驚いたよ。瞳孔が開いてる感じだった」
「――ふふっ! 随分練習しましたわ。キラが余り来てくれませんでしたから」
 島暮らしはそんなに暇だったかと、端末を閉じながらキラは同情した。
 温くなった珈琲を一口すする。
「二人きりでしたら……幾らでも時間を潰すやり方がありますのに」 
 思わずむせてラクスを凝視したキラへ向けて、ラクスが艶かしい視線を返してきた。
「ねえ、キラ……?」
 耳朶を打つ甘い囁きが脳髄に染み入り、キラは理性が緩やかに蕩けていくのを自覚した。
 海風にたなびく前髪――柔らかな月光が少女の笑顔に淡い陰影を落している。 
「お体が冷えますわ。中に入りましょう」
 ふらふらと少女について部屋に入ると軽やかな音をたててドアが閉じた。
 人影が消えたテラスには空になった珈琲カップが二つ、潮風を浴び月に照らされながら、
朝まで忘れ去られていた。
326SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/09/27(木) 22:03:54 ID:???
 今は無き向上スレに投下したものの……しつこいですね、あと一個だけあります。
 書き下ろしが一つあるのですが、それはオマージュ作品なので、職チラで
逆アスさんの返事待ち。

 この後の場面は省略されましたので、皆様各自脳内で補完して下さい。
327通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 22:13:14 ID:???
>>†
投下乙。
珈琲の匂いと潮風の香りがする様な気がしました。
この後の展開は
Oh,yeah……I'm coming!
みたいな感じだと勝手に思ってます。
328通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 22:33:35 ID:???
>>日刊GSNT
投下乙
謙遜することはない。筆が速いのは誇って良いぞ

細かい所は上の方の人達を参考に
服装云々についてはチラ裏に書いた通りそのままやったなら
きっとまたウザがられると思う

それと存分に文句を言えと言うのでオリキャラオリMSについて一つ
SEEDのSSである以上逃げられないお約束がある
キラ+ストフリが基本的に手を付けられない程強いと言うこと
ギャグであれヘイトであれ、これより強くなるなら説明が必要
この先の流れの中で20話ぐらいに。と思っているならアマイと言わざるを得ない
読者はそんなに我慢強く無い。早晩、結局ただの俺tueeee系か、もういいや、となるぞ?

>>日刊全力
こちらも毎夜投下乙
艦長、間違ってるよ艦長・・・

>>月明かり
投下乙
それもあんただったか・・・
以外と色々書けるんだな、ちょっと関心

>>327
洋ピンのイメージなのかよ!!

・・・想像したら萎えた。謝罪と賠償を要求するニダ
329通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 23:09:05 ID:???
>>GSNT
描写と説明の違いは御存知ですか?
貴方は服装を描写するとしたら、きっと読チラにある格好をしていると書くのでしょうね。
それだけでは説明だとも気付きもせずに 、淡々と蘊蓄を垂れ流すのでしょうね。
せっかくの一人称なのですから、遥さんの格好を見てどう思ったか、どんなリアクションを
起こしたか迄主人公視点で描写してみれば良いかと思います。
貴方は主人公に内面を饒舌なまでに説明させていても感情の流れまでは描写していないので、
一人称の罠に陥っているように見受けられます。
感情を感じさせない乾いた文体とスノッブな会話から西村しのぶを連想しましたが、
如何せんセンスが無さ過ぎて失笑してしまいました。
前の方も仰ってますが、2日連続で同じ服を着るような男性は女性にとって軽蔑の対象です。
そうそう、黒ワンピと言っても生地やら形やら色々あるんですよ。
でも一番気になったのはシャネルです。ココ・シャネルと表記した方が宜しいのでは?
330通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 23:48:23 ID:???
新スレ立ちました。
以降職人さんの投下はこちらへ。

【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】8
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1190903643/l50

それから現在雑談所テンプレスレにて、SS職人に加えて絵師の方を呼べないか
と言う話をしております。
雑談所に行かない方も忌憚無きご意見を。

実際来てくれるかどうかは別にして、個人的見解は賛成に一票、です。
331通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 00:10:21 ID:???
現在440キロバイトですか。スレの速さを考えたら早過ぎはしないですね、
スレ立て乙です。

絵師の方が来るかどうかは兎も角、呼ぶだけはやっても良いでしょう。
OOが始まったら、意外と人が来るかも知れませんし。
332通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 02:12:34 ID:???
>>GSNT氏
かなり苦心されたようで、お疲れ様です。
頑張りついでに。
物事や人物の描写が説明になっているのは上でも書かれていますが
気になるのはその後のウンチクですね。
これが悪いわけではないですが、使い所が間違ってる気がします。
例えば遥に説明させたいならキラには素直に関心「だけ」してもらったほうが
話がわかりやすくなったり、次の質問をさせやすいのです。

冗談で「俺は3行以上読まない」とか誰かに書かれてしまってますが
つまりは「説明は必要ねぇ」って事でしょうね(笑)
333通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 02:16:16 ID:???
>>330
スレ立て乙!
いつもの人かな? 俺も協力して一票!
334通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 18:41:34 ID:???
どしたんだ新人? 酉バレしたんか?
何か嫌な事あったんか?
335通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 18:43:21 ID:???
酉ばれして、それが例えばデモンベインとかだったから
おまえレベル低いな、だと思う。
336通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 18:52:45 ID:???
ためしてみろと言ってんのかw
337 ◆/azPrlrakY :2007/09/28(金) 18:55:27 ID:???
テスト
338通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 18:58:37 ID:???
三■目が叩かれ過ぎて新人のトリを見つけて暴れてるんじゃね?
339 ◆hSf7/IYafA :2007/09/28(金) 18:59:16 ID:???
俺もてす
340通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 20:08:32 ID:???
結局の所、メストさんは自分のサイトとリンクしてくれるのかな?
341通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 21:35:33 ID:???
雑談所から一部改変して持ってきました


【ドキドキ】新人職人がいろいろ書いてみる【ハラハラ】

新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を!
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長、雑談所「所長」にも感謝の乙! をお願いします。

また、イラストを描いてみたい絵師の卵の方や造形職人も歓迎します。
投下宣言の上雑談所『○○スレ』までどうぞ。

・「sage」進行でおねがいします。
・SS作者及びイラスト制作者には敬意を忘れずに。煽り荒らしはスルー。
・本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁 。
・スレ違いの雑談はほどほどに
・本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう

===========================
Q○
新人絵師だけどどうすればいいの?

A○
本スレでこれから投下しマース宣言

雑談所に投下(若しくはURL貼り付け)

本スレ、雑談所で作品を肴に一杯

こんな流れでお願いします

===========================

こんな感じで良いんですかね?
342通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 21:51:07 ID:???
俺は良いと思うよ
雑談所に絵師専用の投下場所必要になるね
343通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 23:17:37 ID:???
Q11 の辺りかな? 以降は一個ずつ番号をずらすと言う事で
いいんじゃないでしょうか。
八スレ目は試験運用ですな。
344通常の名無しさんの3倍:2007/09/29(土) 02:27:39 ID:???
>>全職人さん
すいませんがもう一度。

『投下作品1レスが1200文字以内の場合、まとめではちょうど1ページに収まります』
『1200文字を超えるとまとめでは2ページに分割させていただきます』
ただそれだけの事なんです。
決してまとめで1ページに収めるために1200文字で書いてくれではありません。
1レス何文字でも構いません。

投下された職人さんは頃合いを見計らって、ご自分のページを確認願います。
例えば、内容や重要なシーンによって一気に読んでもらいたい箇所が有るとします。
10行目から20行目まで一気に読んでほしいシーンなのに、
まとめで見たらあろう事か15行目で分割されていた。
そんな時はまとめ宛てにスレや雑談所に21行目で分割してくれ等連絡下さい。

紛らわしい言い方をしていて申し訳ありませんでした。
345通常の名無しさんの3倍:2007/09/29(土) 14:10:06 ID:???
>>まとめの中の人ですか?
346まとめ:2007/09/29(土) 20:35:48 ID:???
>>345
はい?
347通常の名無しさんの3倍:2007/09/29(土) 21:33:09 ID:???
  そして記号や………………!! 空白行というものは――――――!!!







  作者が思う程には強調効果が無いので注意。


いつもこれで笑ってしまう俺。
348通常の名無しさんの3倍:2007/09/29(土) 21:34:34 ID:???
いつもってのは、このスレを見るたびにってことな。
349通常の名無しさんの3倍:2007/09/30(日) 00:13:53 ID:???
気持ちはわかるw
350ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 08:52:56 ID:???
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351ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 08:53:59 ID:???
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352ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 08:56:03 ID:???
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353ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 08:57:12 ID:???
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354ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 09:00:42 ID:???
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355ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 09:01:43 ID:???
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356ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 09:02:54 ID:???
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357ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 09:03:55 ID:???
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358ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 09:04:55 ID:???
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359ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 09:07:09 ID:???
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360ラウ・ル・クルーゼ:2007/09/30(日) 09:19:52 ID:???
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