SEED及びSEED DESTINYはいい素材がいっぱいあるのに…それが生きていない!
または、ここでこうやってたら面白かったんじゃないか?
などを思ったことはありますか?
ここは、そんな人たちで理想の種及び種運命を生まれさせるスレ。
リライトでも話を変えても今の本編からの「もしも〜」や、
設定を生かした全く違うSEEDなどを書いてくれればいいです。
SEEDでの主人公を変えて作るなどもやれるのならば!
※職人さんは感想などをちゃんと聞きましょう。
特に「ここはこうすれば良いんじゃない?」と言うような言葉には出来るだけ従いましょう。
それこそがあなたを職人として成長させるのです。
職人さん、頑張ってください。みな応援しております
前スレ
SEED DESTINYでSSを作るスレ7
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1172142599/
容量一杯になってしまったので新スレ立てました。
スウェン話でシリアスに書き進める積もりが、途中でライブコンサート入れてしまい俺何がしたいんだろうorz
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「ミーア様とラクスが一緒に歌って踊ってるねぇ!」「いやっほーい!!」
ヒルダとマーズもライブ中継を見て楽しんでいる。
「ラクス・・もう呼び捨てか・・・あ、お帰りルナマリア、メイリン」
「ただいま・・・今日も最悪だった」
「・・・お姉ちゃん、もう嫌だよぉ」
「そんなにあれは嫌なのか・・・・・まあ、普通嫌だよな」
『今日も充実した一日でした』『ダルシムには天国だからなw』
「・・・地獄よ」
『ルナさん・・・でも最近あの人全然来ませんね』
「ハァ、ハァ」
二十回以上の出撃を終えても尚も連合の勢いは収まらず戦い続けるアスラン。
別の宙域で迎撃に当たっていたレイが途中から参戦し、何とか少しだけは休む時間が取れる。
アスランはアーサーが持って来てくれたチョコレート(中に玩具が入った玉子チョコの中から玩具だけ取り出した奴)とお茶を摂る。
「(何時になったら戦いは終わるんだ・・・こんな何も得る物が無い戦い。
いや、終わらないのか?終わらないから戦い続けているのか?
・・・前に同じような事を考えていた事がある気がする。
何で今まで忘れていたんだろう。
俺は何で・・)」
「アスラン大丈夫か?顔色が悪いぞ」
「え?いや、大丈夫だよアーサー。(何を無駄な事を考えていたんだ俺は?)
アーサーこそずっと働いていて大丈夫なのか?」
「アスランが頑張っている姿を見ていると疲れなんて吹き飛んでしまうよ」
「アーサー・・・俺も君さえ居ればずっと戦っていられる」
「でも、無理は禁物だぞ?」
「ああ、アスラン王国を作るその日まで俺は絶対に倒れないさ!」
混迷しすぎだ世界。
正にテラカオス状態
保守
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「ハァ・・ッハァ」
幾度と無く出撃を繰り返し疲労困憊のレイ。
単純な疲労だけでなく、老化した体に無理を強いた影響で激しい痛みが繰り返し襲って来る。
決して無理などしてはいけない体だが、それでも今はただ戦い続ける事しか選べないのだ。
「(きっと大丈夫、大丈夫だ。
議長ならこの状況も必ず打破出来るはずだ・・・アスランも、全てを知った上で今も我々の元に居るアスランなら、きっと!」
議長と共に計画した世界の先、
それが既に打ち砕かれ一寸先に何があるのか知る事がもう無い今でも、レイは議長が必ず世界を変えてくれると信じていた。
「議長を信じていれば・・・・信じるしか、俺には!」
「よかった・・・もう動けるようになったんだね」
オーブ列島の外れ、時代の流れから取り残された小さな島の古びた病院の廊下にソルとスウェン、二人は居た。
「・・・」
「色々、僕達が救助された時の事は島の人達に聞いたよ・・・・彼女の事も」
「・・」
「・・・君は情報が欲しくて僕達を助けに来てくれたんだったね。
でも、ごめん・・、その情報は連合じゃなくてオーブの方に先に渡る事になると思う。
さっきタロウさん、この島の人がオーブに連絡を入れて、事情を知って近い内に迎えを送るって・・」
「・・」
「ごめん」
「・・」
「如何して何も言ってくれないんだ?怒っているのかい?
自分の命を危険にしてまで情報を守ったのに、それを勝手に僕が・・」
「・・・」
「お願いだから、何か言ってくれ・・」
「・・・お前は、俺に他に言う事は無いのか?俺に、何か言いたい事は無いのか?」
「君、何を・・・」
「・・」
「・・・っ。セレーネを、セレーネを殺したのは君なのか?」
「・・・そうだ、俺が殺した」
がっ ソルの激しい拳がスウェンの青褪めた頬に叩き付けられた。
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殴られて廊下へと倒れ込むスウェン、それを歯を噛み締めて悔しそうな顔をしながら見下ろすソル。
「何で彼女を!何で彼女を殺す必要があるんだ!?
自分が助かるためか!?情報を持ち帰りながら自分も生きるためなのか!?
だったら何で彼女じゃなくて俺を殺さない!!!彼女じゃなくて、俺を殺せばよかったじゃないか!!!俺が死ねば!!」
「・・・そうだ・・それが悪かったんだ。
俺が死ねば、俺がそう言ったから・・・・だからあいつは自分で」
「!?」
「お前を気絶させて薬を打った後、あいつは俺の言う事を聞いて、自分には代謝を抑える薬を、俺には毒を打ったはずだった」
「・・」
「けど、実際に代謝を抑える薬を打たれたのは俺だった・・・。
あいつは俺を助けるために中身を入れ替えていた、俺に生きるための薬を打ったんだ。
そしてあいつは毒を打った。
ナチュラルには毒でもコーディネイターには何でもないそれを・・・」
「じゃあ、セレーネは・・」
「注射を打って俺が次第に意識を失って行く中、あいつは怯えもせずにただ俺の頭を撫でて微笑んでいた。
俺が奴の言葉と行動を鵜呑みにして死を覚悟している中、
あいつは一人で自分が死ぬ事を抱えて、何も知らない俺をにやさしくしてくれた・・・・・ごめんなさいと、言ったんだ」
「セレーネ・・・」
「・・あいつは死んだ・・・何も知らないでただ眠りに付いた俺を横にして、俺がしようとしていたように自分で自分を撃ったんだ。
俺を助けるために、死ぬと言っていた俺を死なせないために・・・・・あいつは自分を殺したんだ。
・・・・だから、俺が殺したんだ。
俺が死ぬと言ったからあいつは死んだ・・・・俺が、殺したんだ」
「そうだったのか・・・ごめん、殴ったりして。
・・でも、ならそれは君のせいじゃない、君が彼女を殺したんじゃないよ!」
「俺が殺したんだ。
そうでなくては、何が何だか分からない。
・・言わなければよかったんだ、俺が、死ぬとさえ言わなければ、そうすれば誰も死ななかった」
「そんな事!
君は僕達を助けるために」
「死んだんだ、あいつは・・・、それが全てだ」
「君・・」
機械のようなただの連合のパイロット、そうとしか思ってなかったソルには、今目の前で俯くスウェンが全く別の何かにすら見えた。
彼は、本気で自分の事を責めて、悔いている・・・ソルにはそれが分かった。
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「でも、それでも自分を責めるのは違うはずだ」
「・・」
「・・・セレーネはそういう人だから・・だから君が助かって彼女が君を助けたのが、きっと・・・・何だろう、何て言っていいのかな。
でも、君がそれを気に病むならせめて・・・彼女が君を助けようと思った気持ちだけはずっと忘れないで。
あと、これは僕の気持ちだけど、
君にはセレーネの分まで、と言ったら何だけど君には・・・セレーネの分まで笑って欲しい」
「・・」
「彼女の笑顔だけは忘れたくないしね」
ソルは窓から空を眺め、太陽の光が強くて今は見る事の出来ない星を思う。
宇宙のもっと奥、彼女との夢・・・それを胸にそっと閉まって、涼しい風がやさしく吹き付ける出口の方へと歩き出した。
「一つだけ・・いいか?」
「ん?」
「意識が無くなる中、最後にあいつに言われた事がある。
゛あの子をお願い゛・・・・・、何か思い当たる事は無いか?」
「・・あの子・・・・それはたぶん、401の事だと思うよ・・」
「401?」
「うん・・・実は」
ソルから語られる401の話と宇宙ステーションで目の当たりにした光景、スウェンはそれを聞き何かを抱き始める。
話が終わるとソルは再び出口へと歩き始め、そしてすぐに立ち止まり
「・・あ」
「?」
「えっと、ちゃんと言うの忘れてた。
・・僕達の事助けに来てくれてありがとう。あと、僕の命を助けてくれて、ありがとう!」
そう言ってソルは病院から去って行った。
「・・401、星・・・見せる」
「その話は本当かい?」
「え?何で?」
「いや、何で宇宙からわざわざ降りて来たのかなって思って」
離島から通信が来てオーブが迎えを出す事になったらしいと、仲間のホシノ達が話している所にやって来たサイ。
仲間達がそれについて雑談を続ける中、サイは顔色を変えてその場から去って行く。
「(まさか・・・こうなれば俺が始末するしか無い!)」
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「レイ・ザ・バレルに移動命令。
搭乗機のレジェンドと共にメサイアへとの指令が来ています」
「了解した(遂に動くのですね、ギル)」
移動を言い渡され単機メサイアへと向かうレイ。
度重なる戦闘によって衰退するザフトの防衛、時期が来れば押し負けるであろう現状、
事実上追い詰められた事によって議長は最強の兵器を使うのだろうと、レイは核心していた。
今の議長はもはや自由に移動する事も許されない。
「(分かっていますギル。
私に撃てと言うのですね?ギルが、絶対であるためにそれを阻む者を全て薙ぎ払えと言うのですね?
分かっています、分かってる、分かるよギル、俺はギルのために何でもするから、だから絶対に俺を・・)」
ギルのために、それだけのために動くレイ。
一人の大切な者のために全てを懸ける男が乗ったMSを、モニター越しに見詰める静かな瞳が。
「(時が来たか・・・じゃあ、こっちも動かせて貰おう)」
「そろそろかね」
「・・分かるんですか?」
「勘だよ、らしく無いがな。
だがわし・・私の経験から何となくな」
「しかし私には分かりません」
「ん?」
「ヤイカ達の事です。
譲れない思いがあるとて、同胞が大勢死ぬという事に何も感じないのでしょうか?」
「それは奴等しか知らぬ事よ。
まあ、それを誰が咎めようと問おうと奴等の行く道だけは変わる事は無かろう」
「・・そうですね、すみません」
「咎めたいと思えば咎めてよかろう。
それが不しか生まぬと知って尚自分の中に湧き上がる物を晴らしたいと思うならのお」
「いえ、私は・・」
「奴等もそうであるのだからのお」
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「普段あんまり動かないのに無理するから・・」
「あの状況では仕方ないですわ」
ライブが終わった後腰を痛めてしまってキラに湿布を張ってもらうラクス。
拒否して盛り上がってるのを台無しにしてしまってはいけないと、必死に踊り歌ったせいで体中疲れてもう動けない。
「でも」
「でも?」
「楽しかったですわw」
「んw」
お互い笑顔を見る事が今の二人には一番の事だった。
キラは湿布を張り終わって湿布臭のする手を洗うべく廊下へ。すると
「滅殺!瞬殺!ウヒュヒョーイ!」
ムウが叫んでいた。
五月蝿く叫ぶムウを、シンとミリアリアが必死に止めようとしている。
「おっさんうるせいよ!」「いい加減にしなさい!」
「ウヒョー!君達何言ってるんだよぉ!叫びたいから叫ぶ!それだけだろうがぁー!!」
「手が付けられない・・」「もう、ほっときましょう」
滅殺、瞬殺、うひょー・・・あれ?
前に何処かでこんな事言ってる人と会った事があるような気がする。
「如何したんだキラ?おっさんじーっと見て」
「え?いや、何でも無いよ」
「お?キラじゃねーか!
これから皆でスーパーナチュラルを見ようと思ってた所だ、一緒に見ないか?」
「スーパー・・・え?最高の・・ナチュラル?ムウさんそれは一体如何いう」
まさか、自分と同じような境遇の、それもナチュラルの人が?
「キラ・・・何となく何考えてるか分かるから言うけど、人じゃなくてドラマの名前だから」
「え?そうなのシン?」
「火曜日の深夜にステラの声とよく似た女の人が出るアニメの後にやってるんだ」
「あぁ・・そうなんだ」
「どうせなら一緒に見ようぜ。たまには何か楽しいの見てすっきりしたりさ・・」
「うん・・そうだね」
キラは誘いに乗ってムウの部屋へ。
シンとミリアリアと、そこに集まった休憩中のクルー達と、談笑しながらドラマを楽しんでキラの気持ちがまた少し軽くなった。
そうだ、難しい事ばかりじゃない、こうして一緒にただ笑い合う事も大切なんだ・・そうキラは思うのだった。
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「アスラン!」
「ん?如何したんだアーサー?」
何度目かの小規模部隊との戦闘を終えて後方のミネルバへと帰ろうとしたアスランに、アーサーから通信が入る。
「アスラン・・早く来てくれ」
「え?」
「アスラン助け・・」
「アーサー?アーサー!?如何したんだアーサー!?応答してくれ!アーサー!!!」
一体何が?
アスランは急いでミネルバへと戻り、開きっぱなしのカタパルト口から入って着艦、急いでデスティニーから降りる。すると
「これは一体・・」
クルー達が皆動かなくなっている。
気絶しているのか、眠っているのか、死んでいるのか、とにかく皆動かない。
「うっ・・・これは、催眠ガス?」
内部へ進んで行くと、色や状態から催眠ガスと思われる物が溢れていた。
「アーサー?ヨウラン?何所だ?」
ヘルメットのお陰でガスは効かないが視界が悪い。
必死に進むアスラン。
必死に進み抜けて廊下の一角を曲がった時
「・・・へ?」
「まずはヘブンズベースを。
その後は順次反抗する勢力を撃ってくれ」
「了解しました・・・あの、議長」
「此間はすまなかったね、レイ。
私も気が動転してしまって君に辛く当たってしまった。本当にすまなかった」
「いえ、その言葉だけで俺は・・・(ギル!やった!やっぱりギルは俺の事を見ていてくれる!信じてくれる!)」
やはりギルを信じていれば俺は大丈夫だ、そう確認したレイは議長の命令に従いメサイアの出撃準備へと掛かる。
そう、この最強の兵器で地球を直接攻撃してやるのだ。
地球にある程度近づかないと上手く目標を攻撃出来ない仕様らしいが、
この兵器の特殊な防御兵器を持ってすればそれも容易い。
メサイアには前大戦で使われたジェネシスを改良し、小型化、低威力化する代わりにミラーを必要としなくなったジェネシスJRが有る。
さらに防御システムはこちら側から解かない限り絶対に打ち破られない完全な仕様の゛傘゛が有る。
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「これは?」
「タコスです」
病院でぼんやりとしていたら、
緑髪の男と元気な少年に゛美味しい物をご馳走する゛と言われお呼ばれされてしまったスウェン。
目の前には目が覚めた時におっさんが食べていたタコスが色んな具材をのせられて並んでいた。
「確かスウェンさんでしたね。
私はオクラ・ホマミキサーで、こっちがヒコスケ・ホマミキサーです。
今日は私の奢りですので一杯食べて下さい」
「アンドリューさんの所のタコス美味しいんだよ!」
「・・・いや、
というかお前は、確か連合のエク
「召し上がれ!」
「いや・・だから」
「召・し・上・が・れ!」
「・・了解した」
オクラが顔をドアップにして迫って言うので仕方なく何も言わず食べる事にした。
「美味いな・・」
「でしょう?」
「それで何で連合の
「もっと食べていいですよ!」
スウェンはオクラに大量のタコスを口に詰め込まれ何も喋れなくなった。
オクラは別に連合のエクステンデッド云々を言われても平気だったが、何となく口に出されるのは嫌なので口を塞いだ。
「やはりシンは・・」
ファイルに書かれている文章を見て呟くサイ。
「だけど今はそれ所じゃない。
あの人からの指示を待つ暇は無いだろう。
なら、俺の判断で動くしか無いという事か・・・・・、いや、丁度良いのかもしれない。
奴等を始末しつつキラを・・」
GJ!!
>腰を痛めたラクス
>オクレの偽名(?)
吹いたww
これはすごいことになったw
オクレのオクラ・ホマミキサーは島で通ってる偽名(仮名)です。
少年の母親との養子縁組を進められてホマミキサーの名を貰ったけど、現在オーブがあの状況だから申請すら出来ていません。
現オーブ法律の正式な手続きを取ったら不成立の可能性が高いけど、ごたごたに便乗して上手く誤魔化せればあるいは。
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「どういう事だ!」
「いや、私に言われても・・・」「私達も何度も呼び掛けているのですが」
アスランが宇宙に上がったと聞いて憤怒し、
プラント付近の小ステーションからターミナルへと通信をして来たイザーク。
アスランの放送やオーブ侵攻の事やヘブンズベース攻略大失敗の事を、
牢屋に監禁してでも問い詰めたい、というかザフトに戻ってから連絡一つ遣さなかった事が許せないのだった。
それでこちらから今連絡を取ろうとしてるのだが。
「ミネルバとは通信が取れず、ねぇ。
まさか遣られてはいないとは思うけど、何かあったんじゃないか?」
炒飯を食べながら心配そうに言うディアッカ。
「アスランめ!
一体何をしているんだ!!」
『・・分かっていた事じゃないか。
大丈夫、大丈夫だ・・・あの者が居れば少なくとも、この先ずっと幸せで居る事が出来る、出来るんだ。
だから、だからそんな顔をしないでくれ・・・きっと向こうに着いてあの者と話し合えばそんな不安は消え去る。
だが・・・・・私は、本当にこれでよかったのか?
お前のその苦しみは、本当にこれで終わりに出来るのか?・・・・・頼む、これで良かったと、そういう事になってくれ!』
「メサイアの移動、確認しました」
「動き出したか。
月の方はどうなっている?奴は着いたのか?」
「いえ、まだ・・・あ、いえ、今到着したと電文が」
「そうかそうか、よし。
間に合わなければ私がここから指示を出して、とも思ったが・・やはり奴は私を裏切らない男よ」
ヘブンズベースで、巨大モニターに向かって影の帯びた笑みを浮かべるジブリール。
時は来た。
世界は乱れ、無数の資源と有力な人命は失われ自分達に歯向かう力を持つ者はもはや奴等のみとなり、メサイアが動く。
世界が枯渇したこの今こそ、月の神秘的な光に守られし、光を束ねた鎮魂歌が世界に流れる。
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「じゃあテメーも行くんだな・・」
「ああ」
オーブより迎えの艦が届き、島との別れの時が来たソル、そしてスウェン。
ストライクノワールは回収され(引き上げて島に持って来た者達とは金銭的やり取りをして丸く治め)、
そのパイロットであるスウェンも共にオーブへ行く事になった。
シャムスは猛烈に反対したが、スウェン自身が行くと決め、自ら名乗り出たのだ。
今オーブには連合の一部が来ており、
もし連合に送還された場合如何いう処分が下るか分からない。オーブ政府だって場合によっては自分を・・。
それでも、今のスウェンにはただここで閉じ篭っている事は選べなかった。
はっきりした気持ちや理由は無かったが、
彼の胸の一番深い所に何時までも残る、彼女の最後の言葉に突き動かされるようで。
「ま、お前みたいなのが如何なっても俺には関係無いけどな」
「・・・シャムス、迷惑を掛けた」
「は?何言ってんだお前?
行き成りらしくない事言うなよ、気持ち悪ぃ。
大体迷惑って、俺は暇だったからお前を引き摺り出して、余った勿体無い残飯をくれてやってただけだぜ。勘違いすんじゃねーぞ?」
「ああ」
「・・しっかし、何で俺達だけ易々生き残ってんだろうな。
負けたら終わり、そんな奴に限って負けても生きてるってんだから、性悪な神様ってのを信じたくもなるぜ」
「・・」
「今頃軍では俺達が居なくなった分を他の何かで埋めて、もう俺達は戻っても失敗した役立たずのお荷物なんだろうな。
・・・それでもこの島から出てくのかお前?」
「俺が・・この島に残って出来る事は何も無い・・」
「だけどよ・・」
「だが、この島を出てしたい事が、俺にはある」
「・・・・そうか。
なんだかな・・・もう、俺達はどんだけ見っとも無くても生きなきゃなんねーのかもな。
俺もお前もこうして遣りたい事があるんだからよ」
「やりたい事?」
「ああ・・・俺の遣りたい事、それは」
「それは?」
「自立出来てない糞おっさんを完全に立ち直らせて、その後俺一人で好き勝手に楽しんで生きたい!」
バルトフェルドはタコス店を経営しながらも未だにシャムスに生活を依存していた。
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「それじゃあ、行こうか」
「ああ」
艦の船出、ソルとスウェンは半壊したノワール、そしてセレーネの亡骸と思いを共に乗せて、
時代から取り残された小さな離島からオーブへ向けて出発して行った。
シャムスやオクラ達が手を振ってくれて、シャムスは大声で最後に
「お前なら大丈夫だ!!
あ、ミューディーに会ったらよろしく言っといてくれよー!」
力一杯叫んだ。
連合、ザフト両軍の戦力は疲弊し、地上も宇宙もお互い兵力は開戦時の半分以下となっていた。
地上で連合軍が圧倒してはいたが、あくまで統制の規模、戦力は目も当てられない程憔悴し切っていた。
恐らくこのままどちらかが勝利を収めたとしても、その後の世界に希望は殆ど無いだろう。
貧困は前の大戦時から既に深刻だった所をさらに悪化させ、大地は砕かれ兵器で汚染され、
地球はもはや人が平和に暮らせる星では無くなりつつあった。
それでも戦いは終わらない、誰も止める気は無い。
自分が気に入らない物を全て排除するまで人が完全に止まる事は無い、今の地球の姿はそう言っているようだった。
「あ、そこは僕がやります」
AAでは修理がほぼ終わってクルー達が最終調整に当たっていた。
その中にキラの姿があった。
まだ彼の心の中には不信感や蟠りがあったが、少しでも自分から自分の心を変えたくて一生懸命人々に接して行った。
疲れたり無理を感じる事もあったが、
それでも作業後にシンやミリアリアとお茶を飲んでいるとそんな物は吹き飛ぶような気がした。今日も最後にシンとお茶を飲む。
「そうだよね・・」
「ああ、やっぱりwiiのコントローラーはUSBで繋げる有線の奴、それか充電出来る奴も発売するべきなんだよ!
だってすぐに乾電池切れるから使い終わった電池が一杯になるし、
電池代が馬鹿にならないんだ」
「NJキャンセラーを搭載した゛半永久式コントローラー゛なんて話がネットに出てたけど、ちょっとそれは無理だろうしね」
「そういえば昔オーブの科学雑誌で゛全く新しい核エンジン!超小型動力を開発した鬼才現る!゛とかあって、
何でも特殊フィルターを搭載していて、
外部に悪影響を与えない上に外部からの干渉を受けないすごいのが出たとかあったぜ。
ペンネーム゛最強のコーディネイター゛とかいう阿呆がその理論を雑誌編集部に郵送で送って来たらしくて、
雑誌専属の科学者はそのシステムは正しいって解釈したんだけど、周りの科学者が否定して結局無しになったとか」
「そんなすごい小型エンジンが本当にあればコントローラーの電池切れに悩む必要無くなるねw
あ、お帰りトリィ」
ジェネシスJRじゃなくてJrです。JRは電車だ・・。
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「いや、私は聞いていないぞ?
一体誰があれを操作しているんだ?(私の邪魔をする阿呆等皆死んでしまえ)」
議員達に問われるも白を切る議長。
メサイアが動いている、今まさにプラント群の近くを通って地球に向けて動いている。
中にはレイ、議長の息の掛かった兵達が居て、地球を攻撃するべく動かしているのだ。
「貴方はもうお仕舞いです、ジブリール!
この議長が作り上げた最強の兵器で跡形も無く消し去ってあげましょう」
「きゃー!!」「地球に向かっているのか!?」「連合は何をしているんだ?早くあれを止めてくれー!」
地上で流される地球へ向かうメサイアの姿。
映像を流しているのは連合だ。
人々はメサイア移動のニュースで大騒ぎし、早く何とかしてくれと連合に訴え掛ける。
プラントの方では報道規制が行われているようで、市民にはこの事は知らされていない。
世界中の人々はメサイアが如何いった兵器なのか知っている。
ジブリールの放送で暴露されたメサイアの、新ジェネシスの存在と、それが如何いう兵器なのかというデータ。
人々は自分達にそれが撃たれると思い戦々恐々している。
早く止めなくてはならないが、月の連合軍にはそれに対して軍を動かすといった様子は一切見られない。
「メサイアが!?」
オーブでもこの緊急事態で騒ぎとなっていた。
「まだプラントの辺りらしいけど進路は確実に地球だってよ」
「あれってあれだろ?
前の戦争で地球に撃たれてたら人類滅亡とか言われてた奴」
「あれの縮小版だって話だけど、それでも撃たれれば只じゃ済まないぞ」
既に難民や支援隊らの間で大騒ぎとなり、カガリやラクスらも緊急対策会議をしている。
シンとキラも寝てる所から飛び起きて
「プラントは自分達じゃないって否定してるけど・・・でもあれは」
「・・・連合が黙ってあれを地球に近づけさせるとは思えないけど、心配だ」
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「連合が引いてる?何故だ!?」
今まで何度も起こっていた小規模戦闘がはたりと止み、連合が何故か殆ど全て月へと撤退して行く。
不審に思うザフト軍、しかしそれよりもさっき入ったメサイアが動いているという味方内の情報が気になる。
一体に何が起こっている?
「何故あれが動いているのだろう?(やれ!レイやれ!)
私はここに居るから動かせないしなぁ、如何してかなぁ?(全部奴等が悪いんだ!奴等が、邪魔をするから!!)
何とかして状況を確認したいが
(ジブリールも、従わない地球の阿呆共も、皆私の力の前にひれ伏すのだ!)
向かった部隊はまだメサイアに取り付けないのか?
(タリア、今は君に感謝しているよ。君に捨てられなかったら私はこんな事はしなかったからな!)
何としても止めなければ!
ロゴスに下っているとはいえ、地球の人々を無残に見捨てる事等出来ない!
(タリアの馬鹿め!自慢げに私に息子の写真を見せるな!嫌がらせか!?そんな物私は見たくないぞ!!!)
我々には全ての人を守る義務と責任があるのだ!
(ああ、何でレイは私にあんなに懐いているんだ?顔赤くして抱きつくな!気持ち悪いだろうがぁ!!!)」
議長の言葉と心は完全に分かれていた。
「(ジブリールなんか消えてしまえ!消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ・・消えてしまえーい!!!!!)」
ぴかっ
議長が心の中で強くそう思った瞬間、凄まじい閃光が溢れ、視界が眩いばかりの白光に。
「ま、まさか私の強い願いが超能力を開花・・・うおおおあああああ」
ちゅぼーーーーーーーーーーん
「何だ!?」「すごい光だった・・」「一体何が起こったんだ?」
中継を見ていた地上の人々、激しい光が溢れたと思ったら放送が中断され、画面には何も映らなくなっていた。
そして、プラントは
「・・・ギル?・・・・・は?・・へ?ふ、へ、ひぇえ!?」
光が晴れた中に浮かび上がった巨大な光体の塊、メサイア。
突如発生した超エネルギーに寸での所で反応し、強力なビームバリアを発生させてその超エネルギーを防ぎ切ったのだ。
その中でモニターを見詰めるレイ、その瞳に映るのはプラントの、
超エネルギーで撃ち抜かれて無残に散った残骸の海、議長が居たアプリリウスの残骸。
「ギ、ル・・・・あ、あ・・うぶぎゃあああああああ!!!!!」
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「ありがとうデュランダル、そして、さようならだ」
映像は来ないがジブリールは確信していた、我々の勝ちだと。
ワインを一口飲んで微笑み、鼻を鳴らした。
プラントは大惨事に見舞わられていた。
アプリリウスやヤヌアリウスが無残に破壊され、翳めたコロニー二機以外全て崩壊している。
メサイアは移動を止めてバリアを解き沈黙し、中の人々は半狂乱となって、
ある者はその場に倒れ付し、ある者はメサイアから急いで出て無事なコロニーの方へと向かい、そしてレイは
「・・・」
すべて失って呆然とモニターの前に座り込んでいた。
「上から連絡が有りました!プラントが・・・」
「!?」
ラクスらの元に上から連絡が入って状況が伝えられた。
連合の手回しなのか映像等は流されていないため、独自の方法で状況を確認するしかない。
シンやキラ達にも情報が伝えられ、言葉を失い立ち尽くす。
「じゃあ、その攻撃は連合の月基地から・・?」
「はい・・・今はまだ詳しい事は分かってはいませんが、何か途轍もなく強大な兵器が用いられたと思われます」
既に残存ザフト軍は非常体制となり、その圧倒的な敵脅威を排除するべく動こうとしていた。
調べによると先の超エネルギー攻撃は月の裏側から、
それも廃棄コロニーを中継点として何度も屈曲させて誘導された、月面ビーム砲だと分かった。
恐らく廃棄コロニーに仕込まれたのは超大型のゲシュマイディッヒ・パンツァーだ。
それによって自在に攻撃を仕掛ける悪魔の兵器、それがプラントの大勢の命を奪ったのだ。
残存ザフト軍は攻撃と救助両方に向かうが、
数が少なく指揮系統も乱れ、もはや一つの軍として機能出来なくなっていた。
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「何?メサイアを遣り損ねただと?」
ジブリールの元にメサイアを撃破し損ねたという情報が入った。
「メサイアの軌道に合わせて、あれとプラントを一緒に葬ろうとしたのが失敗だったか。
まあいい、外したというのならニ射目で確実に破壊してやればいいだけの事。
奴等はもう月基地を攻める程の力は残されていまい。
私が生み出した人類史上最強にして最高の兵器、レクイエムを持ってすれば全ての愚かな民衆は私に従うしか無いのだ!ははははは!!」
ビーム屈曲狙撃システムである廃棄コロニーを落すべく進軍するザフトの部隊。
せめてこれを破壊して時間稼ぎだけでもしなければ、もしニ射目を撃たれたら完全に終わりだ。
少ない戦力で廃棄コロニーまで辿り着いたザフト部隊、しかし
「馬鹿な奴等め!今度こそ終わりだ、宇宙の化け物共!!」「青き清浄なる世界のために!!」
既に護衛に付いていた連合軍の待ち伏せに遭い、
貧弱なザフトの部隊は大勢の連合軍の前に弄り殺しにあって消えて行った。
そして、他の廃棄コロニーに向かおうとしていたある部隊は
「何故お前達は・・・あ゛ー!!!」
「如何して、如何してだぁぁ!!!」
コロニーに辿り着く前に、何者かに襲撃に遭って全滅していた。
「これは!?」「嘘だろ・・」
ターミナルに移動して来たイザークとディアッカ。
着いて見るとターミナル中のシステム関連が全て全滅していた。
中に居た兵によると、突然全てのシステムが何か特殊なプログラムによって破壊され、機能しなくなったという。
「一体何が起こっているんだ!?」「これは流石に不味いぜ・・」
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「DSSDの人到着したってよ」「今はそれ所じゃねーよ!」
混乱の最中スカンジナビア駐留オーブへとソルとスウェンが到着したようだ。
「(来たか!)」
目を異様にぎら付かせたサイがごくりと唾を飲む。
「そんな事になっていたんですか!?」
現在の状況を聞いて飛び上がるソル。
カガリと一緒に兵達に連れられて、オーブの借り会議室の方へと向かって行く。
「でも、それも大変ですが、
私の持っている情報も合わせると、もっと大変な事になるかもしれない予感がします」
「・・・着いたら聞かせてもらおう、DSSDで貴方が得た重大な情報というのを」
「・・」
兵に連れられて軍キャンプ地域へと来たスウェン。
目の前には以前自分が撃破寸前まで追い込んだAAの姿があった。
「どうした?」
「いや、何でもない」
「連合の方に連絡はしたのだが、如何にもまだ返答が来ていないようだ。
暫くは監視付きの下この区画に居てもらう事になる」
「分かった・・」
スウェンは歩きながら近くの難民達を見詰めていた。
先のオーブ侵攻で家族や住む場所を奪われた、自分が奪ってしまった人達の姿を。
その姿はかつての自分と同じで、全てを奪い去られた悲しみが瞳を曇らせていた。
「俺が殺したのか・・・」
思わず呟くスウェン。
がっ どて
らしからずぼーっとしていて地面の飛び出た石に躓いて転んでしまった。すると
「大丈夫?」
近くに居た一人の男が手を差し伸べてくれた。
一瞬躊躇しながらもそれを頼りに立ち上がると、手を差し伸べてくれた男はスウェンに付いた土を払いながら微笑みを向けた。
「気を付けてね」
「あ、ああ・・」
男は友人らしき人物の姿を見ると手を軽く振りながら去って行った。
スウェンは彼の、キラの背中を見詰め、そして振り返り再び兵に連れられて歩き出した。
議長死んだーーーーーーーーーー?!
もう何がなにやら・・・・
先の予想がつかない
すっげー楽しみですよ、GJ!!
うわああああああああああああああああ
(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
この先どうなるのか楽しみだなw
スバラシイ
てかマトメ更新してないんすかorz
57
「別に行かなくてもいいと思うんだけど・・」
「でもちゃんと説明しないと」
シンとキラは二人でカガリの元へと行こうとしていた。
全裸事件の真相が有耶無耶というか、完全に二人が露出したかっただけという事になってしまっているので誤解を解きたい。
二人は兵達にカガリの居場所を聞いて会議室へと向かう。
「連絡が取れない・・くそ!」「アプリリウスの方は駄目だ。完全に崩壊しちまってる」
友軍達と連絡を取り合って何とか生き残った者達と体勢を立て直そうとするイザークとディアッカ。
しかし殆どの所と連絡が取れず、取れても何所も手一杯、身動きが取れない有様だ。
「聞こえるか?
こちらジュール隊、イザーク・ジュール。聞こえるなら応答しろ!」
「・・・あ・・・・た」
「おい!大丈夫なのか?・・・どうした!?」
「・・こちら、アシュマイ隊・・・・助・・け・・・奴等・・・・・・残った部隊・・・襲・・っ」
「おい!」
「・・・」
「応答しろ!アシュマイ隊!!」
途絶える会話、辺りを包む絶望的な状況、イザークは冷静であるよう意識しつつも内心既に一杯一杯だ。
「・・くそ」「イザーク・・」
「こちらステーション護衛部隊!これはどうなっているんだ!?何故何も情報・・・・ひっ!」「囲まれてる!駄目だ、数が多すぎる!」「ひあっ!」
混乱のさらに裏で暗躍する赤き無数の眼差し。
その眼差しは目の前の撃つべき敵を全て排除し、さらに真に撃つべき青き光に向けられる。
「もう後戻りは出来ん」「するつもりは無いですわ・・・・この日のために私達は」「パパ・・・僕頑張るから」
赤き眼差しを屠る無数の者達。
それらの面容は様々で、老人、婦女、子供、まるで全ての世代の縮図のような構成だった。
58
「すまない、ソル・ランジェ・・・ジュ・・・・えと、ソル何とか殿。
もう少しかかるようだ」
会議室へ向かってひたすら歩くカガリとソル。
二人は全然疲れていないが、逆にお付の兵達の方がへばっている。
スカンジナビア王国から借りた施設へと入り、冷たいコンクリートで出来た広い廊下を進んで行く。
中は少し入り組んでいて、所々に吹き抜けの開けた階段がある。
「中に入ったか・・・よし、行くぞ!」
カガリらが入った施設に駆け足で乗り込むサイ。
「この中か・・・急ぐぞ!
早くしないと会議が始まって話出来なくなる!」
サイの入った後に小走りでやってきたシンとキラ。
「では、彼は連合に送還される事になるんですか?」
「彼の情報は先にキサカから色々聞いている。
確かに心配ではあるが、彼自身がそれを望んでいる以上、我々がそれを止める事は出来ない」
スウェンの事が心配なソル。
彼は連合に戻った後如何なってしまうのだろう、やはり島から連れて来るべきでは無かったのかもしれない、と・・。
ソルが色々考えながら階段を登っていたその時
「誰だ!」
お付の兵が吹き抜けの階段の下方を見て叫んだ。
「如何した?」
「何者かが下に・・・・!!危ないカガリ様!!!」
パァンパァン
「ひっ!!」
「皆伏せろ!!」
下方より轟く銃声、弾が跳ねる音が自分達のすぐ近くで連続して響く。
そしてすぐに階段を物凄い速さで駆け上がる音が聞こえ、それと一緒に銃声が再び。
「お逃げ下さいカガリ様!!」「ソル殿も、早く!!」
謎の襲撃に逃げる事を余儀なくされる二人。
兵三人が階段の影に残り、一人がカガリとソルを連れて階段から外れて廊下を全力で走る。
ソルは必死に逃げながら、後で兵達の悲鳴と銃声が響くのを聞いた。
59
「・・逃がさない」
階段の踊り場で蹲る三人の兵を横に、ソル達が逃げた廊下の先を鋭く睨むサイ。
手には拳銃、頭には防弾ヘルメット、上着の下には防弾チョッキ、
一見コスプレにも見える自己流完全武装のサイが逃げた彼らを追う。
サイが駆け足で去って行った後、倒れていた兵達は
「ひいぃ!!!肩を弾かすった!死んじゃうよぅ!!」「こんな時に腰痛が・・・う、動けない!!」「顔が汚れて力が出ない・・不覚!」
各々に取っては重大な負傷を負ったが、全然無事だった。
「ハァハァ」
「如何すれば・・・如何すればいいんだ」
入り組んだ建物の中を出鱈目に逃げてしまったカガリとソル。
お付の兵は途中で、
不注意にも派手に転んでしまい
「私の事はいいから先にお逃げ下さい!
あ、でも、やっぱり見捨てていかれるのは・・・・あ!ちょっと!行っちゃうの!?見捨てて行っちゃうの!?くそー!アスハー!」
役立たずにも程がある退場をした。
二人は薄暗い部屋の中に隠れ、何とか遣り過ごそうと息を殺していたが
パァン 「出ておいで・・・」
「(ひぃっ!)」
「(怖い!!)」
パァン 「出ておいでよ・・・・・、そしたら命だけは取らないであげるからさぁ」
「(見つかったら殺される!!)」
「(セレーネ・・・僕はどうすれば)」
パァン 「出ておいで・・・出て来て・・・・出て来い・・・・・出て来いって言ってるだろおおおおお!!!」
パァン パンパンパァン パンパンパンパンパンパァン
「ひぃあああああ!!!」
「うひゃあーーー!!!」
「・・見つけたぁ!」
声が聞こえた方へゆっくりと近づき、闇の中でニタリと笑うサイ。
二人は完全に腰を抜かし、最早立ち上がって逃げる事等出来ない。
「くそ・・(お父様!アスラン!!)」
「うぅ・・(セレーネ!スウェン!!助けてリュウケンドー!!!)」
サイは二人を薄暗い中視認し、ソルに銃を向けてゆっくりと引き金を絞った。
「死ねぇ!!」
叫びと共に引き金が完全に絞られようとした、その時
「何してんだぼげっ!!!」
ドヒュ ボガッ
「うごぷっ!!」
後より突如放たれた回し蹴りがサイの即頭部を強打、握られていた銃が手から離れてどっかに飛んでってしまった。
「大丈夫か、カガリ!!」
60
「シン・・・シン!」
ぎりぎりの所で駆け付けたシンとキラ。
後を追って施設に入ったら銃声が何度も聞こえ、さらに兵達が重症?を負って倒れていたので急いで駆け付けたのだ。
「如何いう事なの、サイ?!
如何して君がその二人を!?」
「キラ・・」
「サイ、あんた・・・一体何考えてんだ!!」
「っ・・・・・う、うおおおおお!!!」
どがっ
「うあっ!」
「シン!
サ、サイ!待って!」
叫び出し、シンをタックルで押し倒して、物凄い早さでその場から逃げ出したサイ。
廊下を物凄い音を立てて爆走、発砲音に驚き上階から何事かと降りて来ていた人達の前を突っ切り、
階段を四段抜かしを駆使して下降、そのまま勢いよく駆け出して施設から全速力で逃げて行った。
「痛ってぇ・・・くそ、あいつ!
追うぞキラ!あいつを放っておけない!!」
「う、うん!!」
「ちょっ!お前何やってんだ!!」
爆走してAAの方までやって来たサイ。
パンとジュースで休憩中の兵達を蹴散らしてフリーダムに搭乗、起動してライフルを発射、ハッチを撃ち抜いてそこから脱出する。
行き成りのフリーダム起動、ハッチ撃破に、近くに居た人達は何事かと大騒ぎ、
飛翔するフリーダムと煙を上げるAAを見て皆一斉に声を上げて逃げて行く。只事じゃない。
非常事態にムラサメらが起動、フリーダムを取り押さえようとするが、
まだ逃げていない人達を巻き込みそうで思うように動けない。しかしサイは
「そんな機体で」
躊躇する事無く攻撃、ムラサメを撃ち抜いて近くに居た逃げる人々諸共消し去った。
下手に動けないムラサメを次々に撃破、辺りは火の海となった。
そしてそこにシンとキラが到着し
「やめるんだ、サイ!!
如何して君がそんな事をするんだ!!君は一体」
「キラ、俺と一緒に来い!」
「!!」
「お前はこんな所に居るべき人間じゃない。
お前は俺と共にあの人の下で世界を変えるべき人間なんだ」
「あんた何言って
「お前は黙れ!!
さあキラ、俺の話を聞くんだ。
俺はお前の事を誰よりも理解している、信じているんだ」
61
「サイ・・」
「キラ、俺はお前の出生の秘密を知っている。
お前がヒビキ博士の邪悪な研究によって無理矢理生み出された最高のコーディネイターだという事を」
「!?」
「上で聞いたんだ、俺が心から信じ、仕えている立派なあの人に。
俺は前の戦争の後あの人に出会った。
素晴らしかった、あの人は。
俺が思っていたこの世界の愚かさの数々を理解し、そして、それを全て消す術を俺に教えてくれた!」
「サイ、君は」
「キラ、お前も本当は分かっているんだろ?
いや、お前の方がよく分かっているんだろう?
この世界、この全ては間違っていると!愚か過ぎるんだと!腐っているんだと!
身勝手な欲望によって無理矢理生み出され、無理矢理その宿命を背負わされたお前なら分かるだろう!
今お前が居るこのオーブの愚かな者共も、
お前は本当は消したくて、
八つ裂きにしたくて堪らないんじゃないのか!?」
「分からない・・言ってる意味が分からないよ!サイ!」
「本当にか?
自分に嘘を付いた所でお前の苦しみが増すだけだぞ?
・・お前は戦争に巻き込まれた時からずっと理不尽な他人の欲望、不条理に苛まれ続けて来たはずだ。
お前が出来るから、するから、だからお前がやれと、
お前の気持ち等考えもしない愚かな奴等にずっと虐げられて来たんだろう?
お前は使えるから、
だから戦えと、ただ戦えと、そうやってずっと使われ続けてきたんじゃないか?
前の戦争だけじゃない、今も!
周りはお前に甘え、全てお前に押し付け、まるでお前がただの便利な機械かのように使っているじゃないか!
使うだけ使って後知らない、傷ついていても、悲しんでいても、そんな事は知らないと言わんばかりだ!
俺は知っているぞ、お前が悩み苦しんでいた事を!
俺はお前を守りたいと言っただろう?
許せないんだ!お前を道具のように使ってのうのうと生きる屑共を!お前は、一人の人間なんだ!
何も考えていない屑共だらけの今のお前の世界、お前はこのままそこにずっと居る積もりか?
嫌だろう!
そんな事は耐えられないだろう!
だから俺と一緒に来るんだ!
お前を俺が守るから!」
62
「サイ・・僕は」
「聞くなキラ!
あいつもアスランと同じだ、錯乱してる!!」
「黙れ、物事をよく知りもしない殺戮だけのSEEDを持つ者めが」
「SEED・・?」
「キラ、俺はお前の親友だ、誰よりもお前を信頼しているんだ。
逆に如何だ?
俺以外にお前を信じている人間は、今のお前の世界にどれだけいるんだ?
いないんじゃないのか?
皆お前を使う事だけが目的で、結局はそれ以外に何も無い、気持ちなんて無い、そうだろ!
お前はこんな所に居てはいけないんだ!
俺と一緒に世界を変えよう!そうしよう!
それとも・・・このまま終りもしない戦いの連鎖に延々と巻き込まれて、最後まで苦しんで生きるのか?
このままお前が戦っても何も変わらないんだぞ?
そしてまた、偽の平和が生まれたその中で、お前のような人間を再び生み出そうとする奴が出てくるんだぞ!
それでいいのか!?お前はいいのか!?
よくないだろ!!
だから俺と一緒に来るんだ!
そうすれば世界を間違いなく変える事が出来るんだ!
今お前の周りに居る愚かな屑共を捨てて、本当にお前を理解している俺の所に来るんだ!
さあ、キラ!!」
突き出されるフリーダムの手、キラに乗れと目の前に差し伸べられる。
「お前を利用するだけの腐った世界から飛び立つんだ、キラ!」
「あいつの言う事なんか聞くなキラ!」
「黙れ!」
「大体どうやって世界を変えるって言うんだ!!
出鱈目ばっか言ってたってキラを騙せたりしないぞ!」
「変えられるさ!
その証拠は既にお前達の目に映っただろう・・・・プラント、何故ああなったと思う?」
「!!」
「すぐに分かるさ・・・、さあキラ、俺と一緒に来るんだ!」
「サイ・・・・君の言う事は、すごく分かるよ」
「キラ・・」
「僕はいつも、必要な時だけ使われて、必要無い時は放っとかれてたから」
キラは遠くを見詰めるような目をしながら呟き、そして心の中で幼い日の事を思い出していた。
「キラ・・・(俺にだって言ってる事は分かってる・・キラがあいつの言ってる事で迷うのも)だけど!」
「サイ・・・だけど、だけど僕は君とは一緒に行けない!」
「な、何!?」
63
「僕は、それでも僕は!」
「それでも何だって言うんだ!?
お前の周りを囲むのはお前を使うだけの卑しい奴等ばかりなんだぞ!」
「それでも僕は、シンを、皆を信じたい!!」
「何!?」
「君が言ってる事も分かるよ・・・僕の心に君が言う物があるのも、本当だと思う。
だけど、僕は決めたんだ!
もう一度僕は皆を信じるって!
待つんじゃなくて、僕の方から皆を信じて、僕が僕自身でそんな物変えてみせるって、決めたんだ!」
「ぐっ、うぅ・・キラァ」
「あんた・・」
「シン、僕はシンを信じてる。
そして、これから皆を本当に信じて行ける様に、僕は成りたいんだ」
「キィラァ」
「それに、あと・・・こんな、何の罪もない人達を巻き込んで殺すような君を信用できない!
さっきの話も、世界を変えるって言うのがプラントをあんな風にしてしまう事だって言うなら、僕はそんな物信じない!」
「・・・く、け、くはははははははは!!」
「!?」
「はははは・・・、ふん!馬鹿め!
こっちが下手に出ていれば何を偉そうに!
俺と一緒に来ないというならいいさ。
ならそうやってお前は一生叶わない願いに苦しみ抜いて、そして死ね!」
サイは差し伸べていたフリーダムの手を動かし、キラに向かって叩き付けようと大きく振り上げた。しかし
「お前なんかにキラはやらせない!!!」
シンがキラを突き飛ばして飛び出し、敵う訳も無いMSの手を見上げながら仁王立ちになった。
すると、今まさに叩き付けられようとしていた手がぴたりと止まった。
「シン!!」
「・・やらせない、キラをやらせるもんか!」
「・・・ちっ」
サイは機体の手を引き戻し、そして、キラのすぐ近くからこちらを睨むシンをカメラ越しに睨み返して鼻を鳴らす。
「ふん・・・・・キラ、命拾いしたな・・(こいつを生かしておけという命令が無かったら諸共ビームで消してやれた所だが)」
フリーダムはスラスターを噴かせて空へと大きく飛翔、そしてサイは
「キラ、お前なんかを本気で信じる奴なんて居るわけ無いんだよ!
お前みたいな、
試験管の中で作られた肉人形なんかに!!」
捨て台詞を吐いてその場から去って行った。
「・・・っ」
「キラ・・」
「僕は大丈夫だよ、シン・・」
64
数刻後、サイは仲間達と合流、その助けによって宇宙へと上がって行った。
空へと上がるシャトル、その光を遠くから見詰める一人の男が居た。
「・・シャトルかな?
ふう、それにしても何時になったら会えるのかな・・・・・、弱気になっちゃ駄目だ、きっとまた会おうって約束したんだ!」
「見事な物だな」
ジブリールの元に届いた、プラントの崩壊した姿を映した映像。
それを肴に優雅にワインを飲む彼の下で猫が高級料理にむしゃぶり付いている。
「(民衆は何も知らないようだが、それならそれでヒーローのように振舞うのも悪くないな。
まあ、知れた所でメサイアを口実に出せば何も問題は無い。
反感を買った所で今さら何も怖く等無いしな。
最初からレクイエムで、逆らう者を黙らせ、コーディネイターを根絶やしにするつもりだったのだからな。
レクイエムで支配された世界で一体誰が私に逆らえるというんだ?
まあ、正義の味方に扮して馬鹿な民衆を操るのもそれはそれで面白いがな)」
全てを支配したという高揚感が彼の中に満ち、
今まさに彼は最高の一時を噛み締めていた。
「さて、そろそろ二射目が撃たれる頃だろう。
全く、奴には上手い具合に働いてもらえてありがたい限りだ。
この私が感謝させ覚えるのだからな。
どれ、祝いのメッセージでも奴に送ってやるとしようか」
「彼は僕の事を狙ったんだと思います。
恐らく彼は・・・」
難を逃れたソル。
AA周辺が大変な事になっていたために数刻待たされたが、
ある程度事態が落ち着いてやっとカガリ、重役らに情報を伝える事が出来る。
ソルの話が始まった。
65
「送信完了しました」
「うむ、ここから直接話せないのが残念だが、文に乗せて伝えるというのも紳士的と言うもの。
さて、奴にはとびっきりのプレゼントを用意しなくてはな。
奴が前から欲しがっていた・・・・・いや、世界を支配した後ではあんな物は必要無いだろう。
奴に自由にやらせてやればいいだけだな」
「レクイエム、発射された模様です」
「くくく、これでデュランダルが残したあの忌々しい兵器も消し去れば完全にお仕舞いだ。
レクイエムの脅しと、デュランダル、お前が残したプランの優秀な部分のみ、
そのノウハウを使って私が世界を完全に支配してやろう。
くくくくくく、ふふふふ、はははははははははははは!!!!!」
「そんな事が・・」
「・・・そう、つまりレクイエムは最初から!」
「さて、そろそろ次のワインを」
「っこ・・・これは」
「ん?如何した?」
「レクイエムの放たれた攻撃が・・・・・ここに!」
「・・?」
カッ ズギャーーーーーーーーーーーーン
撃たれた、ヘブンズベースは。
レクイエムより発射されし攻撃が直撃し、基地全域が完全に消滅した。
その様子をレクイエムコントロールルームのモニター越しに見る一人の男。
周りには撃ち殺された連合兵、そして彼らを殺した者達。
モニターに、今さっき届いた電文が映し出される。
「ありがとう、ジブリール、そして」
゛ありがとう、君の素晴らしい働きによって世界は完全に我々の物となった。
君は今後私の一番の部下として私と共に世界を支配して行く事になる。
君も世界の神の一人という事だ。
本当に素晴らしい、ありがとう、エロゲーマー゛
「さようならだ」
アーサーはジブリールからの最後の通信を表情一つ変えず流し読んだ。
選ばれなかった未来「裏切りの鎮魂歌(夢を覚まされたアスラン、SEEDを持つ者VS最果てを目指す者編)」終わり
GJ、オチに驚愕!
先の展開が激しく気になるw
混・沌!!
アーサーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
なんという展開
超展開ktkr
本編の種死よりも良い意味で混沌ってるなwww
アーサー艦長スレなんて面白いスレあったのか。漏れが考えるギャグストーリーの理想系がまさにあれだろうな。
必死にアーサーがスパイだと分からないよう頑張ってたんですが、もしかしてばればれだったでしょうか?
1
最初から全て彼の陰謀だった。
ザフトの重要機密の大量漏洩、インパルス完全廃止、議長のロゴス討伐放送時には既に避難済みだったロゴス幹部達、
ザフトコンピュータ内に仕掛けられた罠、新フリーダムとジャスティスの運送ルート漏洩、
オーブ戦の折ザフトが来る事を連合に教えなかった事による多大な被害、
ルナのPCに細工して彼女をスパイに仕立て上げた事、ザフトに対するスパイと見せ掛けてザフトと連合両方に対してスパイ活動。
ルナが連合に連れて行かれた事、あれもアーサーによる物だ。
休暇を取ってエロゲ買いに行くと見せ掛けて連合と連絡を取り合って暗躍、
ミネルバの駐留する基地に帰って来てすぐ、メイリンとミーアの事を聞き付け彼女らまで連合へ。
基地の一部の者に一度帰って来た所を見られているが、アスランを利用すれば上を欺く事くらいは容易かった。
アスランにはCE73エロゲイザーがあると騙して上手く利用し、アーサーは連合で更に闇を深めていたのだ。
ルナに憑いた霊がミネルバ内である物を見て『?』と思い、
連合基地でアーサーを見て゛なるほど、だからry゛と納得した物、それはMSのアクションモデルだ。
ミネルバ内にあったストライカーセット、あれはまだ商品化されていない、エールは有るけどソードやランチャーはまだだ。
オタク霊だから気付けた些細な事だが。
シンの携帯データのコピー、あれも偶然なんかじゃない、アーサーがシンを脅すために予め悪意を持ってコピーしていたのだ。
そしてルナが嫌々していた作業、それはアーサーが積んでいたエロゲのCG集めだ。
女の敵、全くだ。
アーサーの技術を持ってすればCGデータだけ抜き取るのは容易いが゛プレイして集めたCGじゃないと意味が無いんだ゛という
アーサーの拘りによってルナが犠牲になる事となった。
゛他人が集めたCGも意味無いだろう゛と突っ込みを入れてもアーサーは知らん顔だ。
ロゴスから貰っていた報酬は、最新、未発表、オリジナル等の超貴重エロゲだ。
ロゴスはそれを餌にアーサーを操れる、そう踏んでいたようだが・・・実際は違った。
アーサーはエロゲで完全に操られている振りをしていただけなのだ。
アーサーがジブリールに「あくまで最後の手段で。使われるとこちらの存在がばれる」と言っていた手段というのは、シンの妹エロゲの事だ。
゛ザフトが死んだ人間のエロゲを作っていた゛というザフト追い詰めに使える情報。
作ったのはアーサーだけど。
アスランと何時も一緒に居たのはアスランに付いていれば重要な情報を取り出しやすいからだ。
軽く騙して彼が持っている情報を引き出せる。
コンピュータ内の情報はアーサーの最高の技術で引き出し、議長らの言葉による情報はアスランから。
全てはアーサーの目論見通りだった。
世界を極限まで衰弱させ、連合とザフトを潰し合わせて共倒れ寸前まで招き、最後は勝ち残るジブリールを撃つだけ。
「ありがとう、ジブリール、そして・・・さようならだ」
真の戦いが今始まった。
種運命 選ばれなかった未来「明かされる真実(アスラン、キラの本当の気持ち、そして、シンVS星を見つめる者)」
2
「くそっ!」
暗闇の宇宙を月に向けて進むデスティー、アスラン。
進路には沢山のジンが居るが、一切攻撃はして来ない。
数刻前
「如何いう事だアーサー!」
ミネルバ内でアーサーに銃を突き付けられるアスラン。
「黙って私と一緒に来てくれアスラン」
「これはお前がやったのか!?何故こんな馬鹿な事を!!」
「何も考える必要なんて無いぞ。
私とアスランは大切な親友じゃないか。それだけで十分だろう?
さあ、一緒に」
「アーサー!!」
パァン
アスランが焦って銃を向け返そうとするとアーサーは空かさず発砲、
完全に外しての発砲だったがアスランは反応して身を翻し
「くっ」
廊下を駆けて全力でその場から逃げ出して行った。
アスランはデスティニーの元へ戻ると急いで乗り込み、機動してミネルバから脱出した。そして通信を開き
「アーサー!」
「アスラン、君は私と一緒に居る以外残されていないはずだ」
「何を言っている!
馬鹿な真似は止すんだ、アーサー!」
「ミネルバから出て何所へ行くんだ?
ターミナルへ行ってこの事を報告するのかい?」
「アーサー・・・今ならまだ俺の力で不問に出来る、だから!」
「行くといい。
だけど、もし如何にも出来ないようなら私がこれから行く場所、月へと来るといい。
その機体デスティニーに私が入れておいた特別な信号を発しながら進めば私の仲間から攻撃を受ける事は無いだろう」
「お前は・・連合のスパイなのか!?」
「・・・さあ」
「アーサー・・・・くそ!」
アスランは全力でその場から離脱、ターミナルへ向けて進んで行った。
そして、アスランがターミナルへ着く直前にレクイエムによってプラントは大破、
破滅の光を目の当たりにして焦ったアスランはターミナルに急いで近づき、そして愕然とする。
ターミナルからは光が消え、まるで廃棄ステーションのように暗闇に沈んでいた。
その後アスランはアーサーの言葉が気になり、ターミナル内部にもプラントの方にも行かず、
デスティニーに何時の間にか組み込まれていた信号を発しながら月基地へと向かうのだった。
途中二回目の光を目にした。
月に近づくとジンが寄って来て機体の四肢を使った合図を受けて誘導され、月の裏側へと案内されて行った。
「(ジン?何故ここにこれだけの数のジンが?ダガーも居るが・・・一体如何なっているんだ?)」
3
オーブはソルから明かされたDSSD、この戦争の真実によって震撼していた。
DSSDの内部で一部の者らが行っていた軍事開発計画、
パトリック派、反ナチュラルのコーディネイターと手を組んでいたという証拠の計画書、通信データ。
DSSDはブレイク・ザ・ワールドの犯人達の仲間と手を組み、
各所で同志を集め、MSを盗んで戦力を強化、さらにスパイを各所に送り込んで全ての情報を掌握していたのだ。
その中心に立ち全てを計画した男、
DSSDの一番偉い人物にして、最高の知識と技術を持つ人物、
白衣を纏い白髪ショートカットで髭が中途半端に切り揃えられた如何にも博士っぽい博士、クジラ博士。
計画書には細かい流れから何まで書かれていて、
その内容の殆どが実際にあった事と一致していた。
連合とザフトの潰し合い、世界枯渇、そして連合とザフト両方を潰した後の世界を自分達が支配するという計画。
アーサーの物は無いが、サイの事についてはデータがあった。
サイはクジラ博士の下で動く、オーブに対するスパイだった。
オーブ難民に対するDSSDの支援、データには何も無いが恐らくはクジラ博士が一枚噛んでいる。
一般職員の中にハカセの息の掛かった者を潜り込ませオーブを探ったり、サイとの橋渡しとしたのだろう。
ハカセとコーディネイターの陰謀。
レクイエムはアーサーの手の内に、連合はヘブンズベース、ロゴス、軍事力を失い、ザフトはプラント、最高評議員達、軍事力を失った。
両国ともトップに立って指示を出す者も、抗うための力も失っている。
そして
「メサイア、掌握完了しました」
メサイアにはパトリック派コーディネイター部隊が強襲し、内部は完全に彼らに制圧された。
「こいつは如何する?」
モニターの前で何も言わず座っているレイ。
全てを失って放心し、誰が何を言っても反応しない。
「放っておけ。
どうせ一人では何も出来ないだろう」
「ヤイカ、月の方も占領出来たようだ」
「そうか」
彼らを構成するのはパトリック派の前大戦からの兵士。
そして、ナチュラルに果てしなき憎しみの思いを持つ、元は銃も持った事の無いただの市民だったコーディネイター達。
前の戦争が終わって、ナチュラルへの復讐が出来ない事を悔やんだ数多くの者達、
彼らにパトリック派兵達は近づき協力、共に立ち上がる事を誓ったのだ。
表にしないよう水面下で少しずつ少しずつ仲間を集め、MSの技術を身に付けさせ、
一斉にナチュラルに復讐を果たす日を待っていたのだ。
彼らは幾つかの廃棄コロニーの一部を改造して拠点とし、一部の者達はそこで待機していた。
レクイエムでプラントが破壊される事を、彼らは知っていた。
知った上で自分達だけその難を逃れ、多くの同胞達を見殺し、いや、自分達の手で殺したのだ。
同胞を撃つ事に反対した仲間は全て殺された。
一人一人の思いは当然違うが、彼らは基本ナチュラルと共存を目指すようなコーディネイターは許さなかった。
そして、その考えを持つ同胞を庇う者も。
4
クジラ博士らに協力する者はDSSD職員の一部やコーディネイターだけではない。
ハカセの考えに賛同する者、そして、宇宙クジラ教の信者達。
宇宙クジラ教とは宇宙クジラの崇拝者、
宇宙の果てに居ると言われている宇宙クジラに世界を救ってもらおうと考える者達の集まりだ。
信者は地球、プラント両方に存在し、彼らもこの計画に加わっていた。
中には連合やオーブの信者も居り、ダガーやM1等を横流しする者もいる。
クジラ博士も信者の一人だ。
「クジラ博士・・・、本名は何ていうんだ?」
「アスハ代表、クジラ博士の本名はクジラ・ハカセです」
「は?」
「クジラ・ハカセという名前なんです。
生まれた時からそうなのか、自分で名前を変更したのか知りませんが本名はそうなんです」
「嘘を付くなぁ!!!」
「本当ですってば!!」
月は完全に占領されていた。
連合内部の宇宙クジラ崇拝者、予め示し合わせていた者達が一斉に内部で本性を表し、
ただの連合兵は皆殺されてしまった。
月掌握の知らせを聞いて潜伏していたジンが大勢月へと降り立ち、月はジンの惑星と化していた。
MSで抵抗した連合兵も居たが、宇宙クジラ崇拝者によって予め組み込まれていたプログラムで機体の制御を奪われ、消えて行った。
月の裏側にはミネルバが停泊し、クルーらはその中の脱出船に乱暴に押し込められていた。
アーサーはレクイエムコントロールルームできりっとした態度で仲間に指示を出している。
完璧な頭脳と指揮力を持つ、これが、真のアーサーの姿だ。
無事だったプラントのコロニー内部でもアーサーの仲間達は占領活動を進めていた。
残ったはいいが如何する事も出来ない市民達は黙って反ナチュラルコーディテイター部隊の言う事を聞くしかない。
残存ザフト軍が抵抗するも、圧倒的数の、数百ものジンの前に最新鋭の機体は次々落されて行く。
抵抗する者達は容赦なく撃ったが、投降する者、尻尾を巻いて逃げる者はそれぞれ受け入れ逃がした。
世界が自分達の手に落ちて行く様を、クジラ博士は暗闇の中で見詰めていた。
目の前のモニターには宇宙クジラ教のマスコットキャラ、スペースクジラちゃんの可愛いアイコンが並んでいる。
「容易い物だな。
後はオーブが如何するかだが、別に降伏等しなくても構わん。
可愛い可愛いクジラちゃんを食べる野蛮人が集まる国等滅んでしまえ」
博士はクジラが日常的に食べられているオーブを嫌っていた。
5
「今日はクジラ鍋だ!」
「やったねおじちゃん!」
「クジラ大好きです」
虎が持って来たクジラの肉で今日のホマミキサー家はクジラ鍋だ。
忙しくて離れていた少年の母親が今日は帰ってくるので奮発だ。
「クジラはやっぱり見るより食べないとねぇ〜!」
「毎日クジラでもいいなぁ〜!」
「クジラの刺身も食べてみたいですね」
「おう、オクラは粋だねぇ〜!」
クジラ祭りで場が沸いていると
「大変だオクラ!」
「シャムスさん!
丁度良かった、クジラを食べ易い大きさに切るのを手伝って下さい」
「それどころじゃねぇー!!
プラントとヘブンズベースが撃たれて大変なんだ!!」
全世界に向けて、今まさにアーサーの放送が流れていた。
映し出されるのはプラントとヘブンズベースの余りにも酷い惨状。
アーサーはこれらが月のレクイエムによる物だと説明、そしてこれから自分達に逆らう者は全て排除すると宣言した。
「これから皆さんには我々DSSDの配下に付いてもらいます。
我々が目指すのは、人をより遠くに、人をより永遠に、人をより良くする、そういう善良な事です。
我々によって絶対の統制についた世界は確実に秩序が溢れた平和な世界となるでしょう。
人々を苦しめる、権力を振りかざして自分達だけ裕福になる、そんな人間は全て排除します。
人々を全て平等にするのです。
決して誰も富まず、飢えず、全ての人々が均一に幸せに、そして一つの生命として人間の進化に全力を注ぐ、
生命として完全な、当たり前に取るべき道、それを我々が実践するのです。
無論我々も当然特別扱い等受けません、皆さんと同じく人を生かすため、人をより進化させるためだけに生きます。
さあ、皆さん、真の宇宙平和のために今こそ手を取り合って生きて行きましょう」
アーサーは最後に、しばらくの間各国に対応を検討する時間を与えると言い、放送を終えた。
「あいつら何を無茶苦茶言ってるんだ!」
激怒するカガリ。
「僕がもっと頑張ってレクイエムが撃たれる前に、連合やザフトにこの事を伝える事が出来ていれば・・」
ソルは何もかも自分は遅すぎたのだと後悔していた。
例え連合やザフトに知らせていても止められたかどうか分からない、それでも自分を責めていた。
「カガリ様、連合各国、それとザフト軍から協力の要請が来ております」
「もう連合だザフトだと遣り合ってる場合じゃないな。
皆で力を合せなければ世界は宇宙クジラに飲み込まれる!」
6
残り僅かとなった連合、ザフト軍はオーブへと協力を要請、
指揮系統や統制がままならないが、それでも何とかして立て直そうと各々動いている。
既に各所ではDSSDに降伏を宣言する所も出て来ており、
世界が如何流れるかはまだ分からない。
「・・」
セレーネの墓の前で目を瞑るスウェン。
墓と言ってもその土地に古くから伝わっている簡単な埋葬の仕方の物で、
土に埋めて土をかけて名前が彫られた石を適当に乗せたような物だ。
粗末にも見えるそれだったが、
戦火に焼かれて埋葬すらされない者達を大勢知っているスウェンには、その墓はとても立派に見えた。
「・・・任せろ」
スウェンは一言そう言い、墓を後にした。
胸に、何か大きな思いを持って。
「やっぱり来たね、アスラン。
アスランなら絶対私の所に来てくれると信じてたよ」
基地の中に入ってデスティニーから降り、
アーサーの元までザフトの軍服を来たザフトならざる者に案内されたアスラン。
「放送はデスティニーの中で聞いた・・。
アーサー、教えてくれ、君は一体何を考えているんだ?」
「放送で言った通りだよ?」
「そうじゃない!
君の目的は何だ!一体何を考えてあんな事をしたんだ!
答えろ・・答えろアーサー!!!」
「・・・そうだな、親友にはきちんと私の思いを伝えるべきだろうな。
分かったアスラン、全部アスランにきちんと説明するよ。
アスランは私の大切な親友だからね」
「アーサー・・(そうだ、どんなにおかしな事をしてもアーサーは俺の、俺の大切な友なんだ)」
7
アスランはデスティニーで月に向かう中、心の中で酷く錯乱していた。
アスランにとってアーサーは全てを投げ出してでも守りたいと思う大切な友だ。
彼が居なければアスランは、何も無くなってしまうのだ。
アーサーが居てくれたから今までどれだけ辛い事になっても生きて行けた。
アーサーが居てくれたから自分は自分でいられたのだ。
ミネルバを占領したアーサー、自分に向けて発砲したアーサー、頼む、頼むから全部何かの間違いであってくれ。
じゃないと自分は・・。
「私は最初から、アスラン、君を利用しようとしていたんだ」
「!?」
泣きそうになるアスラン。
「ミネルバのクルーについては色々調べてあった。
アスランが昔どんな人間だったかもね。
まあ、アスランそのものについては最初から色々知っていたんだけどね。
最初は、君を利用出来るか試してみただけだった。
君を適当に唆して、正直どうせ無理だろうと思いながらだったんだが、君は想像を絶する馬・・・じゃなくてすごい人物だった。
私が唆したら真っ先に実行、ルナマリアを負傷させた挙句インパルスを強制使用。
驚いたよ、こんな人間が居るなんて知らなかったからね。
上手く行ったのでそのまま君を発進させ、放置して逃げ出し、君一人が招いた事にしようとした。
あの時は正直君に対して感動してしまったよ。
本当にやるとは思わなかった、だから君が墜落した時余りに痛・・いや、悲しすぎて涙を流して敬礼を送ってしまったもんだ」
「あ・・ああ・・・(そんな、そんな嘘だ)」
「君はあれで死んだと思ったんだけど、驚く事に君は生きていた。
信じられなかったよ、生きていても生き恥・・・・じゃなくてあれだけの事故で生きてるなんて君はすごい人だなやっぱり。
その後私は君が使えると踏んで、君を取り込むためにいつも一緒に居て、君と仲良くなろうとした。
君はザフトの重要な情報をぺらぺらと話してくれて、君と一緒に居る事によって普通は入れない所も私は入れた」
「アーサー(聞きたくない、聞きたくないよ)」
「私は君を使って情報を得ようとしたと同時に、ミネルバ内部を君の行動によって無茶苦茶にしてやろうと考えた。
結果は、大成功だった。
君はフェイスの特権を使って乱暴に振る舞い、逆らう者は次々に排除して行った。
ミネルバ内外両方に対して君は最高の働きをしてくれた。
エロゲ強要でヨウランの精神に傷を与え、放送では特定の人物を陥れ、オーブを強襲して各勢力の戦力を疲弊させ、
私が仕組んで無実の罪だったルナマリアを撃破し、最後はヘブンズベースに侵攻して大幅にザフトを弱らせてくれた。
素晴らしい、アスランは本当に素晴らしいよ」
「う・・うぅ(俺は、俺は一体今まで何をしていたんだ)」
8
「何度か君を殺そうとも考えた。
赤くないデスティニー、覚えているだろう?
あの時コックピットから蹴り飛ばして落下死させようと思ったんだが、君は又しても軽傷だった。
妹エロゲによってシンを挑発する作戦も、激怒したシンと君が相打ち、もしくはどちらかが死んでくれればよかったんだけど」
「・・(ああああああああー!!!)」
「しかし次第に君を殺すよりも、ずっと私と一緒に居て欲しいという気持ちの方が強くなった。
君がザクを核爆発させると言った時、あのまま自爆させてデュランダル諸共消し去ってもよかったんだけど、
私自身の保身も当然あるが、君に死んで欲しくないという気持ちがあって君を止めるに至ったんだよ。
アスラン、私は君と毎日楽しく過ごした事によって君を、
とても大好きになってしまっていたんだ」
「アーサー・・」
「アスラン、ずっと君を騙していてごめん。
だけど、アスランを思う気持ちだけは嘘じゃないんだ、私はアスランの事が大好きだよ」
「・・でも、それじゃあ、アスラン王国は!?
一緒にアスラン王国を作ろうという話は嘘だったのか!?」
「嘘じゃないよ・・・聞いてくれ」
アーサーはアスランに自分がDSSDのクジラ博士の部下で、共に世界を変えるために頑張っていたんだと説明した。
自分達が目指す世界の概要や、方法も。
「平等とか放送では言ったが私達は別だ。
私は私の権限を持ってエロゲー王国を作ろうと思っている。エロゲのための国だ。
そしてアスラン、アスラン王国もそれとは別に作る事が出来るんだ。
エロゲー王国とアスラン王国、両方作ろう、そうしよう!」
「アーサー、そんな支配された世界じゃ・・・・・健全なエロゲは作られはしない!!!」
「健全なエロゲ、か」
「アーサー?」
「アスランは今のエロゲが健全だと思っているのか?」
「な、何を?!
だってアーサーはいつもエロゲを」
「あんな屑ゲーム私はちっとも愛して等いない!!!」
「!!」
「・・ちゃんとアスランには話すべきだな。
俺が何故今のエロゲを愛していない・・・憎んでいるかを!
何故俺が、コンピュータ技術にこれ程長けているかを!」
9
「エロゲを・・・憎んでいるのか?!君が!?」
「ああ、憎んでいるさ・・。
私は、生まれた時から両親や周りに最高である事を強要されて生きて来た。
最高の頭脳を持て、最高のエリートになれ、お前はそのためだけに生まれて来たのだと言われ続けて来た。
生まれてから一度も楽しいという感情は許されず、
毎日毎日辛く苦しいエリート教育だけを受け続けていた。
地獄だったよ、毎日勉強以外の時は何も無い部屋に閉じ込められて、
最高であるための事以外は許されず、外出も出来ず、他人と会話出来るのは勉強の時だけだ」
「そんな・・」
「私がこの年で副艦長にまでなれたのはそのお陰だ。
コンピュータを使う技術が人並み外れている事もね。
私は運命を呪った、しかし呪うその気持ちすら運命に支配されているようで悔しかった。
そんな地獄のような日々が二十年程続いたある時、私は一つの出会いをする事になった。
二十歳になった事である程度の自由度が与えられた時、私は地球へと降りた。
そこで出会ったのだ、エロゲと!
衝撃だった、自分が生まれて始めてしたエリート行為以外の行為、エロゲプレイ。
今までオナニー等した事無かった私が、私がだ!
その私がエロゲをプレイした途端ズボンを下ろして本能のままにオナニーをしまくったのだ!
最高の感覚だったよ、生まれて来て始めて感じた最高の快感、感動、幸せ!!!
私はエロゲによって幸せという感情を手に入れた。
その後私は隠れエロゲーマーとなってエロゲについて猛勉強、エロゲを買い漁って実家の金を使い込んでやった。
最高だったよ、今まで私を機械のように扱って来た親達が、財産が尽きた瞬間一斉に自殺した時は!
エロゲは教えてくれた、自分で何かして見せれば自分を縛る物等全て消せるんだって。
自由になった私はエロゲーマーをしながら軍人を真っ当、最高の人生を味わっていた。
ところが、そんな私の幸せが奪われる時が来た」
「それは一体!?」
10
「秋葉原だ!!」
「あ、秋葉原??!!!」
「私の事を救ってくれたエロゲ、
私はそんなエロゲの最も盛んな街と名高い、秋葉原に踏み入れてしまったのだ」
「何故そんな街が君の幸せを奪うんだ?
エロゲが最も盛んなんだろう?」
「そうだ、盛んで最先端、
だからそこへ行けば私はもっと楽しいエロゲが出来ると胸を躍らせて夢を見ながら行ったんだ。
ところがだ、そこへ着いて私は落胆した。エロゲが、陵辱されている!!!」
「何だって!?」
「私はエロゲが大好きだった、愛していた。
なのに、そのエロゲを秋葉原の連中は下らない欲望を叶えるためだけに利用していたんだよ!!
゛エロゲは有名な絵師と初回版で出しとけば取り合えず売れる゛と適当なシナリオのエロゲ乱発乱造!!
゛エロゲは金になる。低予算で馬鹿なオタクを騙して大儲けだぜ゛と金儲け第一でエロゲを蹂躙する禍々しい製作陣!!
゛あのエロゲ超良作だよなー。あっちは糞ゲー゛評価する事しか考えられない糞ゲーマー!!
゛あれ超売れてるよな。評判良いみたいだし俺も買ってみよう゛自分の感覚よりも他人の評価第一な人間失格オタク!!
゛オタクの経済効果を考慮してry゛批判してた癖に金になると分かった途端掌返す糞政府やマスコミ!!
他にも専門学校では規格化した萌えキャラ、萌えストーリーの製造法だ何だと脳味噌腐っている!!
ツンデレだとか妹ブームに流されるにわかファン糞オタク共!!
今までロリゲー作ってた癖に掌返してロリゲー規制する糞会社!!
オタク検定等というオタクの知識自慢オナニー心を利用した糞催し!!
限定版エロゲーを買い占めてオークションで高額で売りさばく糞転売屋!!
みんなみんな腐っているんだよ秋葉原は!!!
私の心を踏みにじった!
エロゲという一つの存在を蹂躙した!
今のエロゲを作る者と喜んでプレイする者はエロゲを冒涜したぁぁぁぁぁぁ!!!!!
だから私は決めたんだ!
私が世界を支配して真にエロゲを心から楽しめる世界を作るって!
私のアーサーと言う名、親が逸話から取って付けた王の名らしいけど、私は糞親の思い通りの王にはならない!
私は私とエロゲのためだけに王となるんだ!!
私は、エロゲイザーだ!!!」
「・・・(ごくり)」
11
「憎んでいるんだ、エロゲ、いや、エロゲを陵辱した今の世界を!!
さあアスラン、そんな糞世界とはおさらばして、一緒に新しい平和な世界を作ろう!」
「アーサー・・駄目だ、そんなんじゃ」
「アスラン!?」
「そんな劣等感や憎しみじゃ何も変えられない。
こんな兵器の脅しで作ったような世界はまやかしだ」
「・・自分の事を棚に上げて何言ってるんだ」
「!?」
「劣等感や憎しみで今まで戦っていたのはアスランだろう!!!」
「!!(そんな、俺は)」
「私と一緒に世界を支配するんだ!アスラン王国を作るんだ!」
「嫌だ!
俺が望んだのは子供達が俺ににこにこしながら群がって仲良く楽しく出来る、そんなアスラン王国だ!
無理矢理従えた子供達に群がられても嬉しくない!!」
「・・・・・何も分かってないな。
アスランは、友達居ないんだよ?」
「!!!!!」
「友達が一人も居ない、皆に嫌われている、誰も関わりたくない。
そんなアスランが無理矢理以外で人々に慕われる事なんて無い!」
「そんな事は!!」
「アスランは私以外誰も近くに居ない」
「・・・っ」
「ごめんよ、こんな事言いたくないけどアスランが強情だから・・。
ね?私しかいないんだよ?だからほら、ね?」
「・・嫌だ、俺はこんなのは嫌だぁ!!!」
「だったら、一人ぼっちのまま死ぬだけだな」
「!!」
パァン
「ぐっ!」
アーサーが発射した一発の銃弾。
アスランの胸に向けて発射されたそれは咄嗟に反応して避けようとした事によって、胸ではなく肩を貫通した。
「う、うあおぉぉああああ!!!」
アスランは叫びながら逃走、アーサーは仲間にアスランを殺すよう命令して後を追わせた。
「アスラン、本当は君の事は小惑星帯で勝手に意見された時からずっと気に入らなかったんだよ」
…
なんじゃこりゃあw
もう何が起こるか予測できねえw
テラカオス!!!
ちょwww話が終盤に入るにつれて纏まるどころかますます混沌ってるってどういうこと?wwwww
相変わらず先の読めないSSだw
誰が主人公かなんて関係無い話になって来ましたが、一応シンがオーブ、アスランがザフト、スウェンが連合の主人公です。
12
アスランが絶叫しながら逃走していた頃、世界には更なる多数の放送が流れていた。
「協力して宇宙クジラに遭いに行こう!
今DSSDに協力すれば宇宙クジラ会員証、宇宙クジラ寝巻き、宇宙クジラ教の支援が受け取れます!連絡はお早めに!
ウチュウ♪ウチュウ♪ウチュウクジラハイイクジラ〜♪
DSSDの提供でお送りしました」
「私はクジラ博士です。
我々は今こそ一つになって、一つの生命共同体として結束するべきなのです。
宇宙の遥か彼方に存在する宇宙クジラ、
彼らの元へと辿り着いて、愚かな我々人間は宇宙クジラの英知によって真の平和を手にする必要があるのです!
今こそ宇宙クジラ教に!」
「ご覧下さい!
我々宇宙クジラ教信者がプラントから解放した宇宙クジラの神々しい亡骸を!
拝むのです!宇宙クジラを拝むのです!」
世界中のあらゆるチャンネルに宇宙クジラ放送や宇宙クジラ番組が流れていた。
世界中の宇宙クジラ教信者が立ち上がり、世界中に宇宙クジラの真理を伝えるべく行動しているのだ。
クジラの群を温かく見守る教育番組がやっている、食べない苛めない捕獲しないクジラ保護協会のCMが流れてる、
宇宙クジラをテーマとしたアニメ゛クジラゲイザー゛がやっている、クジラ解体業者を襲撃したというニュースが流れている。
この事態にオーブは
「連合、ザフトの残存勢力との協力を決めた。
連合軍は現在体勢を立て直しつつ幾つかの場所に集結しているようだ。
宇宙ではDSSDの仲間と思われるジン部隊の強襲を交わしつつ、残存しているザフト軍が集結、
一部はオーブへの移動に移っているようだ。
我々も現在軍に非常体制を宣言し、
ラクス・クラインの協力の下、月の大量破壊兵器を排除する作戦の準備を始めている。
あの兵器のチャージサイクルや情報にある中継ステーションの移動時間が分からない以上、
我々は全力でこれに挑まねばならない!
如何か皆、私に力を!」
カガリの声に沸くオーブ兵達。
出来るだけ早く月面砲、もしくはステーションを破壊せねばオーブが危ない。
宇宙クジラ教が、DSSDが、反ナチュラル部隊が世界を狙っているのだ。
13
「ハァ・・ハァ」
追われながら何とかデスティニーの元まで辿り着こうとするアスラン。
基地の中を逃げてる内に(迷子になっている内に)通信室らしき所へ辿り着いていた。
「ここから救援を・・・・でも、何所に・・」
直接通信は出来そうにない、追っ手も近い、何とか電文を何処かへ送れれば・・・。
オーブ・・。
「・・」
オーブへ助けを求めるなんて、今さら出来る訳がない。
カガリを、キラを、シンを、自分は今まで彼らに・・。
今出来るのは・・
「2ちゃんねる・・・」
アスランは機器を弄り2ちゃんねるに接続、そして
゛アスラン・ザラ、助けて、月で殺される、これはネタじゃない、本当に助けが必要なんだ゛
そう書き込んで誰かが助けをくれる事を祈った。しかし、付いた即レスは無情にも
゛はいはいワロスワロス゛ ゛池沼乙www゛ ゛死ねよw゛ ゛漏れの肛門も助けが必要ですw゛ ゛たいへんだーたすけないとー゛
「くそっ!2ちゃんねるの住人なんて最低な奴ばかりだな本当に!!!」
アスランは諦めてその場を後にした。
そしてオーブ
「た、大変だ!!!」
小さいロボットを作って楽しむスレを見ていたキラがアスランの助けをキャッチ、急いで艦長達の元へ。
「ただの荒らしじゃないかしら?」
「絶対にアスランです!!
この文の書き方は絶対にアスランなんです!!助けに行かないと!!」
なかなか信じてもらえず悪戦苦闘、十数分言い合った末に何とか信じてもらえた。しかし
「・・・っ」
宇宙へ行くためのブースターを取り付けるために、キラがストライクのコックピットへ乗って移動させようとしたのだが、
コックピットに入った瞬間体中が震えてまともに動かせない。
「・・くそっ!
駄目だ、駄目なんだ!今動かせなきゃアスランが・・・くそっ!」
必死に震えを抑えようとしても駄目だ、これじゃ助けになんてとても行けない。
「こんな時に、僕は・・・・・何で・・・くっ」
自分が情けなくて堪らないキラ。
アスランが、大切な友が宇宙で助けを求めている、だから自分は絶対に行かなくては。
「行かなくちゃ、行かなくちゃ!!」
「無理するな」
「・・シン?」
「話は聞いた・・・アスランかよ。
キラ・・・・そんなにあいつの事助けたいのか?」
「うん・・」
「あんなに嫌な事ばかりされて、裏切ったあいつをか?」
「うん」
「・・・・・そっか。なら、俺があいつを助けに行く!」
14
パァンパァン 待ち伏せしていた連中の攻撃を掻い潜ってデスティニーのコックピットへと辿り着いたアスラン。
アーサーに撃たれた肩から血が溢れ激痛が走る。
それを堪えて、とにかく今は脱出する事だけを考えるしかない。
脱出して、何所へ行けばいいのか何て分からない。
ザフトがどうなっているか分からない、もう行く場所なんて本当に無いのかもしれない。
それでも今は逃げるんだ、このまま死んだりなんて絶対に嫌だから。
「絶対に・・」
『戻るんだ、アスラン』
「!?」
アスランの頭の中に響く声
『お前はもうあいつと一緒に居るしか無いんだ。
あいつと一緒に居た時のお前は本当に幸せそうだったじゃないか、誰よりも幸せだったじゃないか』
「何だ?誰だ!?止めろ!!俺はっ」
『お前を一人ぼっちになんてさせたくないんだ』
「うるさい!!
俺は嫌だ!あんな兵器で脅して皆に囲まれるような世界に行くのは、嫌なんだ!!」
『アスラン!』
「俺はそんなのは絶対に嫌なんだぁー!!」
叫びと共に飛び立つデスティニー。
漆黒の闇へ向かって基地から離れると、声は聞こえなくなった。
「ハァ・・ハァ・・・俺は、そんな物が欲しかったんじゃなくて・・俺は・・・・・ただ」
「ミネルバの仲間達を置いて自分だけ逃げるのかアスラン?」
「アーサー?!」
アーサーからの通信が入り顔を顰めるアスラン。
「本当に最低だなアスラン。
そんなんじゃ友達が出来ない訳だ」
「うるさい!!」
「君の子供の頃の学校の記録を見ると、他の子供達に馴染めず一人だけ孤立していたそうじゃないか」
「黙れ!!」
「友達なんていなかったんだろう?
いつも誰かに苛められ、軍に入ってからも孤立して、友達がいないお陰で勉強に集中出来て良かったなぁ」
「そんなの、お前だって!!」
「私は大人達に制限されていただけだ。
解放されてからは普通に他人と親しく付き合えている、君とは根本的に違う」
「違うものか!!」
「君はこれから一人で何所へ行くんだい?
行く場所なんか無いのに勢いだけで出ちゃって、これから宇宙で一人孤独死だろうなぁ」
「そんな事!!」
「君は一人だ、一人ぼっちなんだ、生まれた時から今死ぬ時までずっと孤独だったんだよ!
確かこう呼ばれてたんだっけ?カスラン!カスラン!!」
「やめろぉー!!」
「ほら、私の仲間達も皆言ってるよ、カスラン、カスランって。
君はカスランで、誰とも親しくなれないから、誰かにただ力を使われるだけの戦士でしかないんだよ。
私と一緒に居れば一人じゃないし、私が君を一番の戦士として使ってあげたのに」
「やめろぉ・・」
「カスラン!ほら、皆も!」カスランカスランカスランカスランカスランカスランカスランカスラン
「止めて・・止めてくれ・・・やめてくれーーーーーーーー!!!!!」
15
「イザークさん達とエターナルには既に連絡してあります。どうか、ご無事で」
「シン・・・お願い、アスランを助けてあげて」
「ラクス、キラ、任せろ!
あの馬鹿は俺が必ず連れて来るから!
そしてちゃんとあんたに謝らせてやるよ!!」
「アカツキブースター、発進どうぞ!」
「行きます!!!」
発進、ブースターで天空へと撃ち出されたアカツキはアスラン救出のために宇宙へ。
装甲を保護するために付け焼刃で周りに施された増加装甲を赤く染め、シンは大嫌いなあいつを救いに飛び立った。
「一発ぶん殴ってやるから絶対に、生きてろよ!!」
「くそっ!ちぃっ!」
必死に逃げるデスティニーの後を追う無数のジンやダガー。
既にダイダロス同様占領されていた他の月基地からも多数の機体が出撃し、アスランを撃つべくデスティニーへと群がって行く。
アスランは逃げるので精一杯で反撃出来ず、
そして肩の痛みが逃げる動作さえ危うくする。
無数の攻撃がデスティニーを襲い、当たらずも機体が激しく動いてアスランを揺らし、傷口からさらに血を溢れさせる。
意識が薄らいできて、最早アスランには如何する事も出来ない。
「(死ぬんだな、俺は・・・・・こんな死に方、嫌だなぁ・・・
キラ、シン、カガリ、俺は一体今まで何のために戦ってたんだろうな・・・・・今までして来た事の答えがこれか・・
俺は、馬鹿だった!
俺はただ、あのままで居るのが嫌だっただけなんだ。オーブであんな風に・・・・ぐっ!)」
後方より降り注ぐ攻撃をもう避けられない。
次々にビームが被弾してデスティニーを貫き、中でアスランは全てを失った瞳を浮かべて沈黙していた。
「・・俺が本当に欲しかったのは」
後方よりザムザザーが狙いを定めてビームを発射、極太のビームがデスティニーを飲み込むべく近付いて来る。
「シン・・キラ・・・ごめん」
「アスラーーーーーン!!!」
「!!??」
バシュウ
ビームが当たる寸前、何処かから振り投げられた黄金の盾がデスティニーの目の前へ、そしてビームを弾き飛ばした。
「・・・まさか」
そんな訳が無い。だってあいつが俺を助けに来る訳・・
「アスラン!大丈夫か!?」
「・・シン」
助けに来る訳が無い、そう思っていたあいつが、ここに居た。
自分が殺そうとした、貶めたあいつが。
「すごい数だな・・・(何だよこの大群!)っと、あんたは早く逃げろ!
回収してくれる艦が来てくれてるはずだ!」
「・・・お前、俺を何で」
「早くしろ!!死にたいのか!?こいつらは俺が何とかする!
・・・キラが、あいつがあんたを絶対に助けたいって言ってたから、だから来たんだ!それだけだ!早く行け!」
16
「・・」
無言で言われたとおり逃げるアスラン。
その場には黄金の装甲を全身に纏った一機のMSだけが残された。
背中にはエールが装備され、盾は、さっき投げた時にそのまま何処かへ飛んで行ってしまった。
無数の敵部隊が黄金のMSアカツキへとじりじりと接近し、そして一斉に襲い掛かった。
「ここから先は行かせないさ。俺が、守る!!」
「発射!」
ズギャーーーーーーーーーン
再び発射されたレクイエム、今度の目標は、秋葉原だ。
チュドーーーーーーーーーン
旧世紀にある国が存在した。
その国が無くなった後もその場にずっと存在し続け、数多のオタクが世界中から集まったオタクの聖地秋葉原。
その秋葉原が今まさに一瞬にして消滅した。
「くふふふふふ!!
見ろ!オタク共が塵のようだ!!」
聖地を焼き尽くされ喘ぎ苦しむオタク達の姿がモニターに映し出される。
「オタク共め・・・・、
しかし結局、各地でエロゲを買い漁ってルナマリアにCGを集めさせてるような自分も、奴等と同じオタクでしか無いのかもな・・。
自分が染まって行くのは分かっていた。
自分も結局クソゲーマーだったんだと・・・だからこそ許せないんだ!
消してやる、許せない全てを消してやる。
次はとらのあなだ!全世界のとらのあな支店を焼き払って愚かなオタク達を消し去ってやる!
ああ、ちゃんと反抗してる各国も確かめてそいつらも撃たないと、クジラ博士に怒られちゃうな」
アーサーが秋葉原を撃ってしまった事で世界中のオタクが蜂起、
DSSD、宇宙クジラ教側の人間、それと降伏した人間に対し、オタク達が一斉に暴動を起こしたのだ。
オタクの力は強大だ、全世界で大変な騒ぎになっている。
ラクス、ミーアの居るオーブがDSSDに反抗しているという話によってラクス、ミーアファンも立ち上がった。
大戦争、世界中でオタクと信者の命と誇りを懸けた戦いが開始だ。
兵器を使わない素手で殴り合う白兵戦だ。
ある意味それが一番恐ろしい戦いだ。
17
「奴等は何をやっている!
あの兵器でナチュラル共を抹殺するという約束で我々は協力したというのに!」
「そんなにすぐに出来はしないだろう」
「ですがもし嘘だったら!」
「それは無い。
奴の方も我々がメサイアを制圧した事は知っているはずだ。
もし裏切り等したら、絶対防御のこの兵器で接近されてジェネシスで自分達が焼かれると分かっているだろう。
今は待て、奴等が時間と共にナチュラルを滅ぼすまで」
「馬鹿もん!!何故そんなに連れてのこのこやって来た!!」
「しょうがないだろ!!
こんなに一杯一人じゃ無理だってば!!」
ラクスから連絡を受けてやって来たボルテール。
アスランを回収したまではいいが、シンが敵をわんさか連れてこっちにやって来て、今は戦える要員総出で迎撃だ。
「そういう時は一人で囮になって大気圏まで行け!そして気合で大気圏突破しろ!そうすれば上手く行った!!」
「ふざけんな!!この機体PS装甲じゃねーよ!!」
「気合だと言っている!!」
「喧嘩してる場合じゃないって」
「うるさいディアッカ!
ボルテール、何としてもエターナルと合流しろ!ここは俺達が引き受ける!」
シンのアカツキ、イザークの白グフ、ディアッカの黒ザク、そしてオレンジショルダーは同志の証、ハイネ隊ザク達が襲い来る敵を次々に撃破だ。
慌しい中いそいそと蓬饅頭とカステラを食べるソルとスウェン。
「連合の一部の部隊がスカンジナビアまで来るみたいだ。強奪した機体が如何とか色々あるみたいだけど」
「俺は?」
「状況が状況だから連合の方もオーブに一任するって。だから、たぶん君はもう自由なんだと思う」
「そうか・・」
「君はこれから如何する?」
「俺は出来るなら、やらせて欲しい事がある。あの女との約束もある・・・」
「・・・また、MSに乗って戦うの?」
「ああ・・。
俺は、やらなければならない事が、やりたい事がある、だから」
18
「うあぁ!!」
「その装甲じゃ無理だ!お前はボルテールの方へ行け!向こうも心配だ!」
「分かった!」
大量のジンのマシンガン攻撃の前ではアカツキは圧倒的に不利、シンは先行して逃げたボルテールに向かう。
「イザーク、流石の俺達でもこの数はやばいぜ?」
「馬鹿もん!
そんな根性ならあの餓鬼と一緒に先に行け!!」
「お前を置いて行けるかよ。
ま、何とか俺達でやってみようぜ?俺達なら、出来るだろ?」
「ふん、当たり前だ!
行くぞお前達!全力で奴等を薙ぎ払う!!!」
「おうよ!」「ハイネ隊の底力、見せてやるぜぃ!!」「西川の新曲を聞くまでは死なないぜ!」「オレンジショルダーは伊達じゃないぜよ!」
ボルテールを追うシン。
デブリが多く浮遊する宙域へと差し掛かり、周りには沢山のMSや戦艦の残骸が溢れる。
その合間を縫って進んでいたその時
ビュワーン
「!!」
バシュゥ
突如何処かから放たれた緑色のビームと思われる光がアカツキに命中し、
黄金の装甲に跳ね返されて掻き消えた。
「何だ?何所から!?」
「・・何という機体だ、ビームリングを易々と跳ね返して見せるとはのお」
「誰だ!?」
「ふっ」
ビュワーンビュワーン
緑色のビーム、それもカーブを描いているそれが、デブリの合間からすごい早さで連続して放たれて来た。
「くそ!何所だ!?何所に居るんだ!?」
微かに見えた敵機の影、それはものすごい速さでデブリ間を移動している。
「恐らくその機体は、唯一スターゲイザーに対抗出来る機体だろう」
「そこか!」
敵の動きを読んでライフルを発射。しかし
バシュゥ
「弾いた?!そんな、今のは・・当たる前にビームが」
「ふふ、よくぞ私の前に来てくれた。シン・アスカ君だね?」
「な、何で俺の事を?!」
「ふふふ、よく知っているよ、君自身が知らない君の力の秘密も。・・付いて来たまえ」
いったい、この職人様はどういう速度で書いてるんだw
岸部露伴並だぜwwww
ここの職人さんたちの作品ってどこか保管されてる場所ってあるのですか?
途中から知ったので最初から見てみたいのですが
このキラ・・・いいヤツだな・・・あんだけやられても凸のこと友達だと思ってるんだ・・
しっかしアレで分かるってのもなんだかなぁ・・・
ザラパパ愛情空回りだね
シンはよくマユの尊厳汚した凸助ける気になったな。
とりあえず凸は顔が愉快な形に変形したまま元に戻らなくなるまで
シンに殴られる程度の覚悟はしておいたほうがいい
>>67前スレの分は更新されてないみたいですが
>>3にあるまとめサイトで見れます。俺のは載ってなかったと思うが。
19
「何言ってんだあんた・・」
「知りたくはないのかね?
君の中で行き成り生まれる絶大な力、その理由、
何故君とキラ・ヤマト、アスラン・ザラ等の限られた者にしかその力が無いのか」
「キラ・・・アスラン!?
・・あの二人も俺と同じだって言うのかよ?」
「・・ふん」
謎の機体はさっきまで高速移動を止め、そして一つの方向へ向けて誘うように進み出した。
はっきりと姿を確認出来るようになった機体は真っ白で、
その周りに薄っすらと幾つもの緑色のリングが残像を残し、すぐに全て消えた。
「・・・一体何者なんだ」
シンは大丈夫だとは思うけどボルテールの方も気になるので付いて行くか迷ったが、
その意味深な言動に引かれて白い機体の後を付いて行ってしまった。
「何で、また生き残ったんだ・・?」
ボルテールの一室で治療を受け、ベッドで横になっているアスラン。
何故また自分が生き残ったのか、理解出来ない。
ラスティが死んで、ミゲルが死んで、ニコルが死んで・・・キラと殺しあったあの時も自分は生き残った。
その後も自分は人一倍敵を撃ち、沢山の人々の命を奪ったというのに、そんな自分が何時も必ず助かる。
カガリの言葉が浮かぶ。
゛逃げるな!!生きる方が・・・戦いだ!!!゛
「生き残るのは、戦えって事なのか?
俺はただの戦士でそれしか出来ないから、戦うためだけに生きろって事なのか?
死んで楽になるなって、ただ戦うためだけに生きろって、そういう事なのか?」
誰に問うでもなくアスランは一人呟き続けていた。
「これは・・」
キラの目の前に並ぶ二機のMS、ストライクフリーダムとインフィニットジャスティス。
力を合わせるに当たり、オーブと連合はお互い奪い合った物を返還する。(協力する間は目的のため互いに共有する)
連合からはフリーダムとジャスティス、オーブからはボギーワンもといガーディールー。
NJキャンセラーが損傷していたフリーダムは既に修理が完了。
全域対応に改修、
試験的に地上へ下ろされていた時に強奪されていたガーディールーは、オーブでの強化改修を受けた仕様で返還された。
オーブ戦の兵脱出時に用いられていなかったら置いてきぼりになって国ごと焼かれていただろう艦だ。
「これを、僕に?」
「そう仮定して作りました。
しかし、私はキラにこれを無理に宛がおうとは思っていません。
正直、これが返還された事でキラが無理を押して自分も戦おうとするのではと、不安になりました」
「・・」
「ジャスティスもアスランにと考えて作りましたが・・」
「まだ分からないけど、アスランが受け取ってくれると思っていてもいいんじゃないかな」
「でも、今のアスランには・・・」
「うん、そうも思うけどね。でも、アスランは・・・・・」
20
「まさかこんな形で戻って来る事になるとは」「なんだい?お前は不満かいヘルベルト?」「ミーア様居るってよ!」
「お姉ちゃん・・シンに会えるかな?」
「会えるわよ、きっと。
それよりも今はやっとあの地獄みたいなエロゲーから開放されて何よりよ。
あの馬鹿アーサー、代わりにやっといてって言ったきり全然来ないと思ったらあんな・・・。
もしかして私にやらせてた事忘れてたの?
っていうか全部無駄!?
そんなの冗談じゃないわよ!!」
『ルナさん落ち着いて・・』
『スカンジナビアじゃアイドルグッズなんて無いよなぁ』
『少尉はリアルアイドル本当に好きですね。私はそれよりもましまろの新作が気になりますよ』
『貧乳姫が居る所に来るのは気が引ける』『貧乳をボイーンとか言うような馬鹿が居るしな』
『スカンジナビアには西川のCDは無いのか?俺と声がそっくりで大好きなんだよ!』
『スティングが前に言ってたクジラってのが喰えるって本当かな?早く喰いてぇ!』
スカンジナビア王国へと向かう連合一行。
そこに待っているのは如何なる再開か。
「・・・(スウェン、生きててくれたのよね)」
ドムトルーパーズ、メイリン、ルナマリア、ニコル、ザムザザー少尉、ダルシム、ザムザザー部下二人、ハイネ、アウル、
そしてミューディーは、決戦のために皆が集うあの場所へ。
「本当によかったのか、オクラ?」
「はい、私も黙って見てるなんて出来ませんでしたから。それよりシャムスさんの方こそ」
「俺だって黙って糞みたいな奴等にのさばられるのは気に入らねぇんだよ。
何がウチュウクジラハイイクジラーだ。馬鹿じゃねーか?」
「クジラが食べられなくなるのは困りますね」
同じくスカンジナビアへ向かう島の一行。
「悪いな、俺達まで」「借りは利子付けないで返すから」
シャムス、ホマミキサー家全員、かつてオクラを襲撃した連合のアホ二人(現在無職)も駐留オーブへ。
世界の危機にシャムスとオクラも黙ってなんていられない、自分達も戦う力はある。
アホ二人と少年、母親は単にオーブへ行くだけだが。
「スウェンさんとまた会えますね」
「ああ(別れたばっかでな・・・・、ああ、あんな事最後に言うんじゃ無かった。顔を会わせ辛いだろ・・)」
タロウとモグラグーンは島に残った。
島を丸裸にするのが心配なのと、土竜は宇宙へ行けないから。
21
「バルトフェルドさんは来ませんでしたね」
「・・振られた女に会うのが怖いってよ。あの馬鹿は島でタコスでも食ってろ」
「そうですか・・・キラがアスランと仲が良い理由、少し分かったような気がします」
「少し・・・か。
無事だって連絡は来たけど、早くもう一度ちゃんと会って話したいよ、アスランと」
「今私に仰った事をアスランにもお話すればいいのではありませんか?」
「そのまま言うのはちょっと恥ずかしいかな」
白い機体を追って廃棄コロニーまでやって来たシン。
殆ど崩壊していて、レクイエムのステーションにも用いられなかったぼろぼろのコロニーだ。
内部に入って進むと奥に、何故かそこだけ新しいエアロック式の区画が現れ、
進んで行くと通過したゲートが次々閉じて行って、さらに奥に行った区画には空気が充満していた。
最深部に辿り着くとそこには小さな研究施設のような物が見え、
そこに白い機体から降りたパイロットらしき人物が待ち構えていた。
「・・・」
「降りて来たまえ。
大丈夫だ、何所にも狙撃兵等隠れては居らんよ」
シンは数秒考えて、そして警戒しつつアカツキから降りた。
「ようこそ、私の箱庭へ」
「あんた一体何者なんだ?
何で俺をこんな所に連れて来たんだ?」
「ふん、そんなの決まっておる、君を私の部下とするためだ」
「何を言ってるんだ!」
「君はSEEDを持つ者だからのお」
「ちゃんと答えろよ!」
「・・・・君は、何故自分にそのような力が、他を圧倒する力があるのか、考えた事はあるかね?」
「何だよ・・この力が何だって言うんだよ!?こんなのは別に、何も」
「スペリオルエボリューショナルエレメントディステンドファクター、その頭文字を取ってSEEDと読んでいる。
これは、人の進化の一端なのだよ」
「進化・・・何を、何を言ってるんだあんたはー!!」
22
「SEED、言うまでも無く君には分かるだろう、自分の中で突然爆発する何かを。
精神的、或いは肉体的に覚醒状態となり、
あらゆる能力が研ぎ澄まされ、脳の能力を普段の数倍以上も引き出す事が出来る」
「何であんたはそんな事を知っているんだ!?
それに何で俺の事を」
「それは、SEEDが遺伝子と深く関係のある物だからだ」
「!?」
「SEED、精神的肉体的に他を凌駕するその覚醒能力を持っているか如何かは遺伝子によって決まるのだよ。
私は動物学にも詳しいが遺伝子にも詳しくてね。
あのギルバート・デュランダルとも遺伝子学について共に学んだ事がある」
「議長が・・遺伝子を?」
「公にされたデスティニープランの事を考えればそう驚く事でも無いだろう。
奴は遺伝子による管理社会を目指していた。
そしてその世界の実現のために、遺伝子で選別した者を自分の世界の守り手としようとした。
それが君、シン・アスカ君という訳だ」
「・・・」
「君の遺伝子を調べるとそこにはSEEDの因子が見受けられてね、
デュランダルは君の力を遺伝子学から判断し、そして有効に活用しようとしたのだろう。
私が君を知っているのはザフトのデータを裏で入手していたからだ。
デュランダルの遺伝子に関する情報は特に興味があったしね」
「(議長は遺伝子で俺を・・)
でも、何で俺にそんな遺伝子があるんだ!?
だってコーディネイターは皆遺伝子操作されて生まれたんだから俺以外にももっと」
「コーディネイターだからSEEDを持つという訳では無いのだよ。
現にオーブの現代表、カガリ・ユラ・アスハもSEEDを持つ者である」
「なっ、カガリが!?」
「SEEDの発現は遺伝子操作で何とか出来る物では無い。
SEEDは、その遺伝子が代々受けてきたストレスによって引き起こされる物なのだ」
「ストレス・・?」
「遺伝子には自己保存のために、
強烈なストレスを受けると受けたその状況、衝撃に耐えられるよう情報を書き換える性質がある。
それはある程度まで進化した生物ならどんな生物だろうと持つ遺伝子の性質だ。
それによって生物は環境に適応し、生き残るために己を進化させて行く。
だが、人間にはそれを真っ当に行う能力が無くなってしまった。
道具の進化によって自己そのものを変化させなくてもよくなり、
命の危機が日常的で無くなる事により急激な適応が必要無くなり、
生物としての進化を止めてしまったのだ。
いや、進化する事が出来なくなってしまったのだ。
人は他の生物とは全く別の形態を取るようになってしまい、
最早同じ生物という枠組みで捉える事さえ困難になってしまったのだ。
そう、人はストレスによって自己を変える性質が極端に劣化、消滅してしまった生き物なのだよ」
「・・」
23
「来たまえ」
男に連れられて施設へと入ったシン、そこには数多くの遺伝子学のデータがあった。
沢山の画面に映し出される遺伝子についてのデータ、SEEDの因子についてのデータも。
「人はもう進化する事は無いと思われた。
しかし、私はその考えを覆す物を見つけてしまったのだよ。
SEEDだ。
遺伝子を細部まで細かく分析しコンピュータの中にその遺伝子から構成されるであろう人物の仮想体を作った。
幾つものパターンを試す中で私は異常な存在を見つけてしまった。
試す中で、様々な因子がある形式で揃うと特殊な能力が発現する事が分かってしまったのだ。
最初は信じられなかったよ。
しかし、他の科学者がSEEDについての論文を発表した事により私は確信した、SEEDは存在するのだと。
その科学者が調べていた被験体は論文を書き上げた時点で死亡していたが、
その者の意見に賛同する事によって私は被験体の遺伝子を譲ってもらう事が出来た。
自分のコンピュータにその遺伝子パターンを入力して、私は目を見開いた。
コンピュータが弾き出したその仮想体はSEEDを持っていたのだからね。
私はSEEDは絶対に存在すると確認した。
そして私はさらにSEEDについて研究を進め、
そして、SEEDの存在に絶望を抱く事になってしまったのだ」
「絶望?」
「SEEDを解析している内にある事実が浮かび上がったのだよ。
SEEDは遺伝子に限界まで蓄積されたストレスによる変化があって初めて発現するという事実だ。
ストレスを大量に受ける事で遺伝子は変化しようとする、
しかし人間はストレスを遺伝子に直接反映する性質をもう失ってしまっている、
そのため遺伝子にはストレスによる変化は起こらず、代わりにストレスを受けた証となる特殊な物質が蓄積されるのだ。
その物質は世代が変わっても引き継がれ、ストレスの情報は世代を重ねる内に限界へと近づいて行くのだ。
そして限界に達した時、
遺伝子は今まで抑えていた物を解放して今までとは違う、人間独自の進化を導くのだよ。
身体を直接変化させるのではなく、今ある力をより有効に活用しようとする進化。
進歩に近いとも取れるが、これは紛れも無く進化なのだよ。
そのストレス物質は人為的に精製、投入する事は不可能で、
完全に人の代の積み重ねによってのみ蓄積させられるのだよ。
如何いう組み合わせで遺伝子が交わるかによって進化までのスピードは変動し、
しかし確実に全ての遺伝子は人を進化させてしまうのだよ。
そう、未来の人間は全てSEEDを持つ者となる」
「人間全てがSEEDを・・」
24
「恐ろしいだろう?」
「な、何でだよ?
だって皆が色々出来るようになるって事だろう?」
「SEEDによる覚醒は人の感情を根こそぎ奪って行く」
「な・・何だって?」
「SEEDによって人は確かに今までよりも遥かに強い力を得る。
しかし、SEEDによって人が覚醒すると、
その者は覚醒している間、極端に感情に関する脳の情報伝達機能が抑えられ、麻痺した状態にまでなる事がある。
そして覚醒を繰り返す事で脳の感情に関する部分がダメージを受け、
やがては感情を全く持たない機械人形のような存在へと変貌してしまう事になるのだ」
「・・・そんな」
「その進行スピードも各々の遺伝子配列によって異なり、極端な者は一回の覚醒で感情を全て失うだろう。
そしてシン君、君も覚醒による感情の消滅スピードが早い者の一人なのだよ」
「・・嘘だ」
「感情を失うと場合にもよるが、
他人からの干渉を受け付けない、コントロール出来ない、
感情を失う前に認識していた敵を、自己の保護のためにただ排除し続ける殺戮生物となってしまうのだ」
「嘘だ・・俺はそんなの嫌だ」
「私が君を知りながらずっと取り込もうとして来なかったのは、君のSEEDが使い辛く、危険だったからだよ。
だから私はSEEDを持っていると確認していた他の二人、キラ・ヤマトとアスラン・ザラを取り込もうとしたのだ。
君の事は二人が使えなくなった時の予備として大して重要視もせず見ていたが、
まさか本当に君の力を使う事になるとはのお」
「嫌だぁぁぁぁぁ!!!!!」
「待ちなさい!」
「いや!放して!シンに会いに行くー!
ステラ、シンと一緒じゃなきゃいやー!」
「戦争が終わったらきっと会いに来てくれるから、ね?」
「いやー!戦争終わらない!ずっと続いてる!ずっとずっと続いてる!だからシンに会いに行くの!ステラ、シンの事守るの!!」
「お願い、お願いよ、今は大人しくして」
「シンー!!!」
「ステラちゃん・・
(あの子はもう来ない、絶対に来ない、でもステラちゃんはこんなにも・・・
会わせてあげたいけど、でも出来ないの)
25
「君が可哀想なのはそれだけではない。
SEEDには持つ者が各々に、激しいストレスや感情の爆発といったスイッチが必要なのだが、
君の中にあるSEEDの発動条件は、人を憎い、殺したいと思う気持ちなのだ」
「・・」
「そう、君という存在は人を攻撃する性質に特化されている。
身体能力もそれに優れ、覚醒しなくとも他をその圧倒的力で淘汰する事が出来るのだよ。
言うなれば君は、殺戮のSEEDを持つ者なのだ」
「・・・」
何も言い返せなかった。
見に覚えのありすぎる、全くその通りすぎる現実。
自分を阻む憎い存在を消したいと思った時にSEEDは発動し、
誰かを守りたいと願った時、その力は沈黙していた。
自分の優れた能力を使って沢山の人々を殺戮という狂気で葬り、それしか出来なかった。
全部抱えて、逃げずに立向かおうと決めていた自分が、
ただの゛ふり゛だったように思え、苦しくて仕方ない。
「何故感情を消すのか、
恐らくはストレスによる進化というのが原因だろう。
激しい苦しみによって自己を淘汰しないために、感情という自己を縛る因子を排除しようとしたのだ」
「・・」
「人はやがて全て感情を失い、ただ存在するだけの恐ろしい生物となってしまう。
それが私が見出した人間に対する絶望、人間を見限る理由だ。
私の名はクジラ・ハカセ、
この戦争の裏で糸を引き、何とかして人々を支配してこの絶望の未来から抜け出せるようにと考えた者だ。
宇宙クジラによって人を変え、絶望から逃れる道を選びし者よ」
「・・覚醒しなければ」
「む」
「覚醒しなければいいんじゃないか・・・そうすれば誰も」
「人は容易く激情を露とし、その力を振るって他を屈せようとする。
君の今までについての情報は持っている。
故に君の方がそれをよく分かっているのだと私は思うのだがね」
「俺は・・」
乙、シンがどんな答えを出すかが気になる!
あと、レイはどうなったんだろうか・・・?
クジラ・ハカセって本名なのか?w
保守!
そしてあいかわらずすごい勢いでSSが更新されてて吹いたwwwww
シンは運命と業への抗い、アスランは人の純粋な欲求、スウェンは子供の頃に失った夢をもう一度求める、
始めは特別意識してた訳じゃないですが書いてる内にそれぞれテーマが出来てきました。
レイは今の編中は出番無し、最終編で決着を着けるべき相手と戦います。
26
世界中から集まる反DSSDの同志達。
スカンジナビアの大地には様々な所属の人々が集まり、支配に抗うべく力を合わせる。そんな中
「カガリ様!
西部より武装した多数のMS部隊がこちらに向かっているとの情報です!
恐らくは我々の動きを知ったDSSD側に付く部隊かと!」
「くっ!やはり黙ってはいないか!
ムラサメ隊に発進準備を!それから連合、ザフトにも連絡!AAにも要請を!」
「はぁあ!?何でお前がこんな所に居るんだ!」
「大佐・・」
「スウェン、いやまあ、連合が合流してるんだったらお前が居ても不思議じゃないけどな、
MSを貸せとかそういう我侭を俺に言われても困るぜ?
敵が近づいてるんだ、お前に構っている暇は無いぞ」
「見た所オーブの戦力は厳しい。
少しでも戦力が必要だ」
「知らねーよ!どっか別の奴に言ってくれよ!
大体どの面下げて言ってるんだ?
お前は俺の言う事も聞かないで二度も俺を殺そうとしたろう。
駄目だ駄目だ!お前の言う事なんか
ごちん
「あいてぇ!」
「はいはい、貴方はさっさと出撃準備して。で、そこのDSSDの方と来た君、MSに乗れるの?」
「はい」
「じゃ乗って頂戴」
「おいおい!そんな勝手に決めていいのか、エリカさんよぉ?」
「只でさえ残り少なかったのに此間のごたごたで使える機体や戦える兵が大分減っちゃったのよ!
正直今の要員だけじゃ抑えられるか厳しいわ」
「だからってよぉ・・・
知ってるのか?こいつオーブ攻撃した時とかAA襲った時の連合兵だぜ?」
「だ・か・ら・何?
貴重な戦力には変わり無いでしょう?」
「んな」
「じゃ、君はAAに行って適当に機体貰って出撃準備して頂戴」
「は?・・・・いや、それは如何いう」
「私も忙しいの、後は自分でやって、じゃまたねー!」
エリカはいそいそと行ってしまった。
「んな適当な〜」
「・・了解した、適当に機体を貰って出撃準備をする」
「おいおい!」
「大佐・・・・鼻毛が出てるぞ」
「えっ!!!?」
ムウはAAに拾われたあの時からずっと鼻毛が出ていたが誰も教えてくれなかった。
27
「世界を救うためという事は、分かって貰えたと思うのだがね」
「・・」
又しても突きつけられる選択の時、シンはレイに選択を迫られたあの時のように、またどちらを選ぶか迷っていた。
「選びたまえ、人の取るべき正しき未来を」
もしハカセのしようとしている事が失敗すれば世界の人々はやがて全てが心無き者となり、人々は破滅する。
守りたい者も、思いも、自分も。
今自分が取るべき正しき道なんて、もしかしたら最初から決まっているのかもしれない。だけど
「・・あんたは、あんたは自分の遣り方で人を救えるって、本当に思ってるのか?」
「思っているよ。
人々を管理し、統制し、皆を一つの事だけに纏め、そして宇宙クジラの元へと辿り着く事が出来れば人は救われる」
「何で宇宙クジラなんて居るかどうかも分からない物を」
「居るさ!居るとも!私は信じている、だから知る!」
「・・じゃあもし、その宇宙クジラってのが見つからなかったら如何するんだ?
見つかってもあんたが考えるような物じゃなかったら?」
「見つからなければ見つかるまで探すまでよ。
我々がレクイエムで統制した世界では、人という一つの種として人類皆が共同体となり、
人という存在をより遠くの宇宙へと飛ばす事、人という種をより良き物にする事だけを目的とする。
人をより遠くへというDSSDの基本理念、
元々あったそれを私や同志達が更に人という種を考え昇華させる事で今に至った。
たとえ私が死ぬまでに宇宙クジラが見つからなくとも、その後の世界が永遠に宇宙クジラを求める。
宇宙クジラ、深宇宙を目指すという一つの目的だけに生きる事によって人は真の意味で共同化、平和となり、
今の代で内心それに賛同できぬ者が居ようとも、
宇宙クジラ教による全ての次世代児への徹底された教育によってゆくゆくは完全にそれだけが幸せだと知る人間で溢れかえる。
無論抵抗する者は全てレクイエムで抹殺する。
当然だ、人を幸せに、平和にする善行に対して歯向かうのだからのお。
宇宙クジラは人をその神の力で変える、愚かな行いが二度と出来ないように変える力があるのだ。
これは絶対、それは絶対の事だ。
君が心配するのは宇宙クジラがなかなか見つからなかったらという事だろう?
問題無い、見つかるまでの間は我々が正しい支配によって人々を破滅させないよう統制する。
これは人という種の存亡を掛けた事なのだよ。
分かるかね?
人が生きるか死ぬか、そういう事なのだよ」
「・・・あんたの言いたい事は分かったよ」
「ふむ」
28
「俺は・・・正直あんたの宇宙クジラが世界を救うとかいう話は、すげー下らないって思う」
「ぬっ」
あからさまに不愉快さを露にするハカセ。
「宇宙クジラなんて居るかどうか分からない物に縋るなんて馬鹿げてるよ。
そんな下らない事になんて俺は協力しようなんて思わない。
けど・・・それ以外はあんたの言う事、全部正しいと思う。
このままじゃ戦争は無く成らないし、放っておいたら皆SEEDを持つ者になって心が無くなっちゃう。
このまま戦い続ける世界なんかよりも、あんたの作る世界の方がずっと平和だと思う」
「ふふ・・」
「だけど!」
「!?」
「だけどあんたの遣り方が気に喰わない!!
力が無くちゃ世界を変えられないって、本気で戦争を無くしたいと思ったら絶対犠牲が出るんだって、俺だって思うさ!
だけど、だけどそれでも!
今苦しんでる人達の事を・・どうやっても見捨てる事なんて出来ないじゃないか!!」
「絶対に犠牲が出る、分かっているのだろう?
だったら何故そう考える?
未来の子供達を救うために今の人々を犠牲にしなければならない、連鎖を断ち切らねば成らない、分かるのだろう?」
「分かるさ!今何かしなかったら未来でずっとずっと沢山の人達が苦しみ続けるんだって!
だけど・・・未来の人達を救うために゛今゛の人達が泣かなきゃならないなんて、やっぱり間違ってる!!」
「単に君が皆が苦しむ姿を見て自身が苦しむのが辛いだけだろう?」
「そうさ!俺は嫌だ!
目の前で、今苦しんでる人達が居るのに見て見ぬ振りするなんて嫌だ!
だって(俺が泣かせてしまった、一人ぼっちにしてしまった人達は・・)今泣いてるんだ!!
世界中の人達は、何とかしたいのに、何とかしようって頑張ってるのに全然出来なくて、
自分が何も出来ないのが悔しくて、悲しくて・・今泣いてるんだぞ!!
人の心が無くなる未来に絶望するような、人の心を守りたいってあんたが何でそれが分からない!」
「ふん、私は人の心を守りたい等と言ってはおらん、
単に人の心が失われたら人という種の秩序が乱れると、それに絶望しただけだ。
個人の感情等という無意味かつ無駄な物等考慮するに値せん!
感情は種の進化を補助するための物であり、感情のために種を蔑ろにする等笑止千万!片腹痛いわい!!」
「あんたは!!」
「小僧めが、粋がりおって。
気持ちが如何のと言う前に自分を見たらどうだ?お前の手こそが今誰よりも醜く汚れているのだぞ?
そんなお前が人を如何のと笑わせる」
「それでも・・」
「それでも?
自覚を盾に我侭を通すような君に誰が救えるというのだね?
第一、君に救われたい等と思うような人間がこの世界の何所に存在する?
君のような破壊兵器で街を焼き、その責を誤魔化して人々の中にのこのこ戻ろうとするような愚か者等に。
全てを背負って事が終わったら責を取って死ぬ、
そんな身勝手でまさか誤魔化し戦っている訳ではなかろうな君は?」
「っ」
「よく考えてみたまえシン君。
君が揺れて選ぼうとしている道は、戦争だけの平和の永遠に来ない、SEEDによる破滅が決まった未来だ。
そして私が示す道は、戦争の無い平和の、SEEDの発現も遣りようによって抑えられる正しき未来だ。
君は、迷っている事自体おかしいのだよ」
29
自分は間違っている・・、シンの心が狭間で揺れる。
破滅が約束された道・・・たとえ゛今゛笑っていたとしても次の瞬間には涙に変わるかもしれない道、
シンの心が揺さぶられ、折れようとしたその時
゛ステラ、シン守る!゛
゛それでも僕は、シンを、皆を信じたい!゛
「・・・」
最初から、最初から答えなんて如何でもよかったのかもしれない。
最初から自分は誰が苦しもうが、何が起ころうが、絶対に変えられない、曲げられない物が一つあったのだから。
「さあ、共に世界を真の正しき姿へと導こうぞ。
大丈夫、君の心が失われないよう君の事は私が直々に管理する。
君がすべき事を指示しよう、君が望むべき考えをじっくり教えよう、さあ、私と一緒に」
「選べるかよ、あんたのそんな未来」
「ぬっ!?」
「俺は、あんたと一緒になんかならない!
あんたがどれだけ正しくても、本当にやりたい事意外やるもんか!」
「錯乱したか!?
意味不明な事を言った所で事実からは目を背けられんぞ」
「最初から・・俺は目を叛けてばっかりだったんだ。
だったら今さら正しくなんて生きてこうなんて思わない!俺は・・・欲しい物が一つだけ手に入ればそれでいい!!!」
「開き直ったか!!」
「そうだ!だからもうあんたと何て話すかよ!」
「だったら・・・・・お前達、始末しろ!」
「!!」
ハカセの合図で隠れていた兵達が出現、シンに向かって発砲する。
「くそやろう!!」
シンは素早い動きでそれを交わし急いでそこを脱出、アカツキへと飛び乗って起動する。
「・・・」
目の前の白い機体と施設、今撃てば確実に奴等を・・・、しかしシンは撃たず、エアロックを破壊しながらその場から去って行った。
「シン・アスカ、君は何て恐ろしい悪魔なんだ」
「追います!」
「いや、いい。
私が奴を始末しよう」
30
ただハカセの言う事が恐かっただけなのかもしれない。
自分で世界の全てはそんな物でしかないと思うのが、自分に他人から突きつけられる現実が。
でも、それでも心の奥底で何の偽りも無く信じられる、
ステラのあのやさしい笑顔、そしてキラの再び信じたいと願った思い。
ハカセを認めたくなんて無い、あの二人の思いや願う事を否定されたくない、
何より、あいつらを信じている自分を無くしたくなかった。
ゲートを次々突破して宇宙へ、そして一度だけ廃棄コロニーを振り見てその場から離れようとした。だが彼は逃がさない。
ビュワーン
バシュウ
「!!」
「逃がさんよ、シン・アスカ」
ゲートよりビームリングを飛ばしながら飛び出してきた白い機体、ハカセ、
シンを逃がすまいと猛スピードでシンに接近する。
「君は世界を如何する?如何したい?
このまま滅び行くのが運命とでも君は言うのかね?」
「あんた、人はSEEDを抑えられないみたいに言ったよな・・・・けど、俺はそんな風には思わない!」
「抑えられんさ!激情を露にするのだろう、人は」
「人は、そんな奴ばっかじゃない!!」
「ほう・・・・なるほど、確かにそうかもしれんな、認めよう。
しかしならば、君は抑えられない人間は見捨てて抑えられた者だけ残ればいいと、そう考えるのかね?」
「違う!!」
「違わんよ、君の言ってる事は結局切り捨てるという事だ。
私の考える世界も切り捨てられる人間は多々居るだろう。
抗う者、認められない者、他の可能性を探す者、それらを私は切り捨てる。
しかし君と私の考えでは根本的に違う物がある、それは未来が有るか無いかだ。
君の言う事は未来の無い物ばかりだな」
「・・っ!!」
「流石は鯨ちゃんを食べるような国に住んでいたような餓鬼だ、異常だよ君は!
頭の良い鯨ちゃんを食べるように、頭の良い、正しい人間と相反する、君は異常だ!」
「何が頭が良い鯨ちゃんだ!
頭が良いから鯨を食べちゃ駄目だって言うなら、馬鹿な奴はいくら死んでもいいって言いたいのかよあんたは!!」
「その通りだよ!
鯨ちゃんは賢く、そして可愛いから食べちゃ駄目なんだ!」
「可愛いから食べちゃ駄目だって言うなら、ブサイクな奴はいくら死んでもいいって言いたいのかよあんたは!!」
「その通りだよ!
ブサイクに生きる価値は無いし生きていられるだけで迷惑だ、公害だ!!!」
「あんたって人はー!!」
「小童が何を!!」
31
「あんたは人の気持ちが分からなくなってるんだ!」
「分かるさ、全て分析してパターン化出来ている」
「そんなんだからあんたは・・。
どんなに馬鹿でも、どんなにブサイクでも、人は生きているんだ、生きたいから!!
頭が良い奴から見てどんだけ下らない事してても、どんだけ馬鹿みたいな争いしてるように見えても、
そこには必ず沢山の大切な思いがあるんだ!だから戦ってるんだ皆!!」
何故かアスランの顔が浮かぶ・・。
「シン・アスカ、君は今まで君の我侭を受け入れてくれる甘い人物達に囲まれていたから、だからそこまで歪んでしまったのだね?
よかろう、今私が君を解放してやろう、己の業から、愚かなる柵から!!!」
俊足の白い機体が幾重にも発したビームリングを楕円系に歪ませアカツキへと連射する。
黄金の装甲がそれを幾つか弾き、
通常装甲の方は幾つか受けて切り裂かれる。
白い機体は全力で逃げるシンの後をぴったりと付いて行き、正確な攻撃で次々にアカツキの各部を切り刻んで行く。
「くっ!(何て動きだ・・本当にあれをあの爺さんが動かしてるのかよ?)」
アカツキの両手、右足の肘、膝関節を切断されて奪われ、
確実に追い詰められる。
「如何した、逃げているのは死にたくないからだろう?だったら覚醒したまえ」
「くっ!」
「何を躊躇っておる、私を殺したいと強く願うだけで君は逃げ延びる事が出来るかもしれんのだよ?」
「俺はぁ!!」
「無理矢理自分の心を偽るのは止めたまえ。
君は自分と意見の違う私を殺したいはずだ、八つ裂きにしたいはずだ。さあ、君の本性を見せたまえ」
何をやっているのだろう自分は。
レイの時も、ハカセの時も、相手が正しいと思いながら、自分が間違っていると思いながらそれに抗っている。
「俺って・・・何だよ」
結局自分が間違っていておかしいだけで、自分が欲しい物のために他人を傷付けられて、そんな自分は・・・
「俺は・・俺なんかが、俺みたいなのが居る世界は・・・」
「消えたまえ」
ビームリングが上半身と下半身の接点、そこに僅かに露出する非ヤタノカガミ部を狙ってスライドした。交わせなければ真っ二つ。
「俺なんかが居るから、世界はぁぁぁぁぁ!!!!!」
パァーン
「うあああああああ!!!」
激しい叫びと共にエールのスラスターが一気に吹き上がる。
ビームリングの狙いが外れて空を切り、アカツキが白い機体から一気に距離を取る。
「ふははははは!!!覚醒したか、馬鹿め!
如何だ?最高だろう!私を殺したいという憎しみで満ちるその感覚は!!」
「・・お前なんか憎んでない!」
「む?何を言っている。
その動き、お前は覚醒したのだろう?」
「ああ、したさ・・・殺したいって思ったら簡単に出来るんだ、こんな物・・・・」
気持ちが良い、苦しい思いが薄らいで殺したい奴の事を憎んでさえいればいいのだから、覚醒している間は。
「俺は・・・俺が憎い!!!
俺なんかが居るから世界は混乱するんだ!!!だから俺さえ死ねばいい!!俺が死ねばいい!!!」
32
「・・シン君、君は本当に異常者だったのだね」
「そんな事知るかよ・・・・俺が憎い、それだけだ・・」
「(まさか自分への憎しみで覚醒するとは、全く新しい事例だ。しかしこんな真似自己催眠も同然の・・異常な)
なるほど自分自身が憎い、君の可哀想ぶりは相当な者だね。自己催眠まで引き起こすとは」
「俺は・・あいつを、ステラだけを愛していられればそれでいい!!!」
「愛?・・・くくく、君は本当に可哀想な子供だよ。
自分を愛する事が出来ないような人間は如何有っても他人を愛せようはずが無いというのにのお」
「・・」
どんどん距離が付き離れるアカツキと白い機体。
白い機体はまるでわざとスピードを抑えているようにも見える。
「・・ある所に、百匹の兎を飼っている男が居た」
「!?」
「男は兎を愛情を込めて世話し、長い間幸せな時が続いた。
しかし、兎は全て死に絶え、男一人が取り残された。
男は神に祈った、自分の、人間の命一個で死んだ兎百匹を全てを生き返らせてくれと。
すると神が現れた、男は期待した。
ところが神はこう言った
「自分の命が兎百匹分もの価値があると思うようなお前の命には、
人間より兎が遥かに下等だと思っているようなお前の魂には、兎一匹分の命の価値も無い」
そして神は男に天罰を与え、命を奪った。
その後神は兎達の命を惜しみ、百匹全てを生き返らせた」
「・・」
「君はこの男が兎達を生き返らせたと思うかね?」
「・・」
「君はこの男を如何思うかね?」
シンは何も答えず遠く離れ、深い闇の押し寄せる遠く彼方へと消えて行った。
「ふむ、奴が今後戦い続け、暴走して仲間諸共消えるのも面白かろう」
その後、シンはボルテール、エターナルの元へと辿り着き、アスランが既に地上へ降ろされた事を知った。
しばらくするとイザークやディアッカらの無事が確認され知らされたが、シンは何も言わずベッドに震えながら横たわっていた。
「大丈夫だ・・・・まだ・・お願いだから!」
心を失う事への恐怖か、ハカセとのやり取りの事か、殺戮の事か、彼の今震える理由は誰も分からない。
33
AAの中のストライクフリーダムの前で立つスウェン。
「・・・」
変な感覚だった。
今居る艦を破壊した自分とその時の機体がここにある。
「フリーダム・・」
「如何したの?」
「・・・お前は」
「君、あの時の」
スウェンが転んだ時に手を差し伸べてくれた男、キラが再びスウェンの前に。
「この機体が如何かしたの?」
「俺は・・」
エリカに適当に機体貰って乗れと言われた事を伝えた。
「エリカさん・・そんな適当な」
「以前この機体でこの艦を半壊させた事がある。
出来れば、勝手の分かっているこれを使わせて欲しい」
「え?」
「・・」
「じゃあ君があの時これに乗っていた」
「・・」
「・・・そっか。
じゃあ、うん、これに乗って出撃準備して。艦長達には僕の方から連絡するから」
「・・・・何故簡単に了承する。
お前はこの艦のクルーじゃないのか?」
「え?僕はこの艦のクルーだけど・・・一応」
「俺はこの機体でこの艦を沈めようとした」
「うん、でも今はここへ向かってくる部隊を何とかしなきゃならないし」
「お前、俺の言葉が分かっているのか?」
沈まなかったとはいえあれだけのダメージ、大勢のクルーが・・。
「・・・戦争だから、だから命令で敵を撃とうとしたんじゃないの?」
「そうだ。だが」
「君は気にしてるんだね」
「違う、お前達が・・」
「ありがとう、気を使ってくれて」
「そうじゃない、そうじゃないんだ・・」
「本当は、僕がこれに乗って戦えればいいんだけど・・・今の僕には何の力も無くて」
「お前」
「君に今必要なら、皆を守ってくれるなら、どうかお願い、これを使って」
「お前は・・・何だ?」
「僕はキラだよ」
「・・・」
「君の名前は?」
「俺は・・・スウェンだ」
34
「到着しましたね」
駐留オーブへ到着したオクラ一行。
「何だか慌しいですね。
あ、そこのお兄さん達、何かあったんですか?」
「お前えぇ!!確かオーブでインパルス掻っ攫った馬鹿!!」
「(馬鹿・・)あ、いえ、はい、きっと別人です、それよりも何があったんです?」
「いや、別人て」
「何・が・あっ・たん・です?」
「・・えっと、実は」
駐留オーブへと降りたアスラン。
車輪の付いたベッドに固定されて引っ張られ、スカンジナビアの医療施設の方へ向かう。その途中
「アスラン!!!」
AAの横を通った時、キラが気付いて駆け寄って来た。
「キ・・・ラァ・・」
「アスラン!何でこんな」
げっそりと生気を感じない顔、包帯の巻かれた肩、傷はそれ程大した事は無いが出血が酷かったのだろう。
「キラ・・」
「アスラン?」
「俺・・・・必・・要・・と・・・・され・・・・・・かった・・・アーサー・・それ・・・・知って・・・」
「喋らないで、今はとにかく安静に出来る所に」
「キ・・・ラ・・・・・お前、怒・・・・・・・のか?」
「アスラン、今は眠って」
「・・・キラ」
「視認しました!
敵部隊は情報通りバクゥタイプが大多数の・・・・あれ?」
どがががががががどがーん
接近する敵部隊を荒野で待ち構えていたオーブ兵、敵が視認出来たと思ったら物凄い勢いで敵部隊が爆発した。
「これは一体」
「こちら地球連合軍第81独立機動歩兵群、オーブ軍応答されよ」
「あ・・ああ、援軍!!」
駐留オーブに迫るバクゥ、ケルベロスバクゥ、ガズウート部隊を壊滅させ到着した連合最強部隊、ミューディー率いるファントムペイン。
半壊して転がるケルベロルを踏み潰しブルデュエルが闊歩、
ウィンダムを駆るドムトルーパーズ、ルナマリア、その他連合兵も一緒だ。
「地獄の番犬は大人しく地獄に帰りなさい!」
35
「スウェン・カル・バヤン、ストライクフリーダム出撃準備完了」
「お前が居るのが納得行かねぇが、ま、俺の広い心で認めてやる!さ、行くぞAA!」
「大佐・・(こいつだけは気に入らない)」
「敵が来るなら俺達も加勢だ!」
「はい、シャムスさん!」
ぴんぽんぱんぽーん
「ん?」
゛防災オーブ、防災オーブよりお知らせします。
先程まで現区域を目指していた敵部隊は鎮圧しました。もう一度お知らせします。先程までry゛
「(何だ、この気の抜けた放送は・・・これではまるで火事の鎮火お知らせ)」
「スウェン・・」
「・・何ですか大佐」
「飯でも喰うか」
「・・・」
「敵が来ないなら俺達は休憩だ!」
「はい、シャムスさん!」
「着いた」
駐留オーブへ到着したファントムペインと元捕虜。
ドムトルーパーズは到着すると駆け足でラクス、ミーアを探しに行った。
「そこのおっさん、スウェンは、そっちで保護してるって言う連合のスウェン・カル・バヤンは何所に居るの?」
「おっさん何て言わないで下さい!
私はこれでもAAのムラサメ隊に属するですよ!イケヤさん、イケヤおじさまと言ってほしい」
「きもっ!」
「・・(ふっ、若い女性にきもいきもい言われるのは慣れているぞ!・・・まあ落ち込むけどな)彼ならAAの方にさっき」
「あんがと!(スウェン、やっとあんたに)」
駆け足でAAの方へと向かうミューディー、それを丁度見つけたシャムス。
「げっミューディー!!!(しまった!あいつ居るのか!?それじゃあ・・)」
オーブ戦の散り際の愛の告白を思い出す。
「うあああああああ!!!(恥ずかしくて顔向け出来ねぇー!!!)」
「楽しそうですねシャムスさん!如何したんです?」
「うるせぇ芝生頭!!」
「ぇえ!?」
乙!シンも色々と大変だな、キラもリハビリが必要みたいだし
あと、ルナとアスランが再会したら、どうなるのか楽しみだなw
オクレとシャムス、何げに良コンビだなw
36
「発射!」 ドギューン
「発射!」 ズギューン
「発射!」 バギューン
「発射!発射!発射!!!」 ドギャーーーーーン
レクイエムで手当たり次第にとらのあなを壊滅させるアーサー。
クジラ博士DSSDとしての目的を完全に忘れ、ひたすらオタクが蔓延る世界の聖地を粉砕している。
一時的な危機を脱したとはいえ月の砲口が何時こちらへ向けられるか分からないオーブ。
オーブ、連合、ザフトは連携を取りりつつ、宇宙への出撃準備を進める。
そんな忙しい中、カガリはアスランが如何しても心配で彼の元へ。
「アスラン・・」
「・・(そんな、哀れそうに見ないでくれ・・・・身が捩れそうだ・・)」
「何でお前がこんな風に・・・」
「・・」
「・・」
「何かしたかった・・・・、力に成りたかったんだ、本当は・・・」
「アスラン?」
「オーブでのあの頃・・カガリは重い責任を一人で背負って毎日死に物狂いで頑張って、
プラントでは皆次の時代のために前を向いて動いていて、
なのに自分は、世界をあんな風にしてしまった父の息子である俺は何も出来なくて、無力で・・・。
だから力を認めてくれた、俺をもう一度求めてくれた議長に、俺は付いて行こうと思ったんだ。
俺にも何か出来ると、出来る事をしたいと思ったから・・・。
でも、結局は俺の一人善がりで、誰の力にも成れなくて・・ただお前達を裏切ってしまっただけだった」
「・・裏切ってしまったのは私の方だ・・・・・私は!結婚しようとした・・」
「守りたかったんだろう?オーブを」
「うん・・・」
「分かっていたんだ、本当は。
でも、認められなかったんだ、俺には。
俺は・・・・俺だって、分かっていたけど、それでも我慢出来なかったんだ。
俺は、自分が゛いらない゛と思われるのが嫌だったんだ・・・・・恐かったんだ。
だから俺はお前の事を・・・」
「・・ごめん」
「俺もだ・・」
不思議な感覚だった、何故か今はカガリに素直な気持ちを伝える事が出来る。
何故今まであんなに素直になれなかったのだろう?
何故あんなにまで卑屈になっていたのだろう?
こんな風になって、相手が彼女だからか?
それとも・・・
37
「スウェン!!」
「ミューディー・・・お前、うおっ」
スウェンを見つけるなり駆け寄って抱きつくミューディー。
「本当に・・・死んだかと思ったじゃない!!」
「・・・何故、泣いているんだ?」
「馬鹿!泣いてなんかないわよ!ちょっと・・・・目に塵が入っただけよ」
「そうか、なら休め。
休憩をするならこっちに
ごちん
「うごっ!」
「っとに!・・・・・釣れない男よね、あんた」
「???」
二人がコント?をしていると向こうからムウがやって来て
「おーいスウェン、飯行くぞ飯!」
「大佐・・」「大佐!!」
「ん?なんだ、ミューディーも一緒か」
「大佐・・」
「ん?何だ?もしかして俺の事が気になってここまで来たのか?
悪いなミューディー、俺には既にマリューという愛する人が
ごちん
「うぴょっ!!」
「大佐てめー!!よくも私達を裏切ったわね!!」
「うお!何だ?
もしかして俺と戦って負けた事が悔しかったのか?
そうかそうか、それで僻んでいるのか。
MS戦で勝てないから生身で戦って勝とうとか考えてる訳か。ちっちゃいなぁおま
ごすっぼごっばきっ
「・・いや、いやいやいや・・・・俺が悪かった、悪かったから許して」
「ほんとむかつく奴ね!!
大体あの時はあんたが卑怯な不意打ちしたから負けたのよ!本気でやったらあんた何か瞬殺よ!!!」
「負け犬の遠吠え・・・ぷっ!」
「た〜い〜さ〜」
「あ、ごめっ
ばごーーーーーん
「(元気だな・・大佐もミューディーも)」
38
「よかった!また貴方達と会えて私も嬉しいわ!」
「あたいもミーア様と会えて嬉しいです!!」「うほほーい!ミーア様!俺も嬉しいです〜!」
ミーアと再会して浮かれまくるヒルダとマーズ。
その様子を遠くからヘルベルトとラクスが眺めている。
「ラクス様・・その、あの、何て言うか、あいつ等は・・・」
「皆さんミーアさんの事が大好きなんですね!よかったですわ!」
笑顔だが目が笑ってないラクス、ちょっと悲しそうな目だ。
さっき
「ヒルダさん!マーズさん!ヘルベルトさん!
よかった・・・・・生きていてくれたんですね!!」
「あん?ラクスかよ・・・ミーア様何所か知らないかい?」「何だよお前かよ・・・紛らわしい顔しやがって!ミーア様の顔真似するなよ」
「へ?」
掌返しての余りにも酷い扱い。
「(笑顔だけど・・本当は内心寂しいんだろうな)ラクス様、俺は・・俺だけは何時までもラクス様だけを信じていますよ」
「いえ、ヘルベルトさんもお気になさらずに、
どうぞミーアさんのファンクラブに入って下さいな」
「いや、俺は本当にラクス様の事を一番に思っていますから。
だから、その・・・・出来ればこの先もお傍で仕えさせてください」
「ヘルベルトさん・・」
「俺に出来るのは戦う事くらいで、
ボディーガードぐらいしか出来ませんが、俺一人でも一生懸命頑張りますから、どうか」
「・・・ありがとう、ヘルベルトさん」
そしてヘルベルトはラクスを守るボディーガードとなり、馬鹿二人から離反した。
「ミーアさまばんざーい!」「おっぱい様ばんざーい!」
「(今まで俺はあんなのの仲間だったのか・・・・・、ある意味あいつ等と離れられてよかった)
あ、そういえばあのサイとかいう奴は如何してますか?
実はあいつ俺達が戦ってた時様子がおかしくて、俺達のピンチにも全然助けにも入らずに・・」
「サイさんですか・・・・実は」
ラクスはサイの事をヘルベルトへと話した。
「なるほど・・・奴はスパイみたいな物だったんですね」
39
「お前無事だったんだな、スティング」
「いえ、オクラです。
・・・えっと、あなたは無事ではないようですが?」
ムウとオクラ(スティング)も再会。
ムウは顔がぼこぼこに腫れ上がり、自分で包帯を巻きながら話している。
「ここにバクゥ部隊が向かっていたようですが、もしかしてその迎撃戦で?」
「いや、これは人の醜い憎しみの結果だ。
俺は何も悪く無い、悪く無いはずなのに・・・」
「?」
「シンが宇宙へ?」
「はい。
上からの電文によると、もう時期こちらへ戻るとの事ですが。
彼が助けに向かった当のアスラン・ザラは既にこちらで保護してるのですが」
「アスラン!!!???」
「お姉ちゃん?」
「そう・・・アスランが・・・・・(ぶっ殺す!!!)」
「ソルさん・・・よかった、貴方が無事で」
「君達も・・・、他の皆は?」
独立した抵抗勢力と
博士DSSD、宇宙クジラ教、コーディネイター部隊の対立によって益々世界が二色に分かれ行く中、
DSSDより脱出した一部の職員が駐留オーブへとやってきていた。
「別々に分かれて逃げた仲間は分からない・・。
殆どの職員はあいつ等が恐くて宇宙クジラ教に協力して、
反抗した仲間の殆どは殺されたよ・・・・くそぅ!何であんな酷い事」
「ゲイザーは?
401はどうなったか分かるかい?」
「それは分からない。
でもシビリアンアストレイが武装強化されたというのだけは」
「アストレイが?・・・・クジラ博士、貴方は」
「所でセレーネは?
彼女も一緒だと思ったのだけど」
「・・セレーネは」
40
「サトー・・・・もうすぐ貴方と、貴方の愛する家族達の仇を取ります」
メサイアのコントロールルームで一人呟くヤイカ。
短い銀髪を右手で弄りながら左手には一枚の写真を持ち、それにはとても幸せそうな家族の姿が映されていた。
サトー、ユニウスセブンを落下させた張本人、
反ナチュラルの同志達から深く愛されていた男。
彼の弔いのため、ユニウスセブンで失われた大切な者達のため、絶対にナチュラルを滅ぼさなければならない。
ヤイカの白い肌は瞼の下だけ赤くなり、瞳は憎しみによって鋭く細められていた。
「パトリック・ザラ、貴方の取った真に正しい道、その自由と正義を我々が必ず!」
『・・』
無言でアスランの傍らに立つパトリック。
部屋にはようやく眠りに付いたアスランと、それを起こさないように静かに佇んでいるキラが居た。
「アスラン・・・きっとまた、ちゃんと話せるよね・・」
キラは小声でそう呟き去って行った。
パトリックはキラの背中を見送り、そしてアスランへと視線を落す。
『・・そうか』
「ぼいーん!」「やーん!ムウのえっちー!」
「・・・」
「ふはははは!マリューと居れば怪我なんて如何って事無いぜ!
ん?何だスティング?
俺達のラブラブっぷりに嫉妬してんのか?」
「してません・・・あと私はスティングじゃありません」
「そうかそうか!そんなに羨ましいか!
大丈夫だスティング!
お前、前は目付き超悪かったけど今は優しい感じだからな、その内彼女ぐらい出来るって!」
「(スティングって言うなって言ってるだろ・・・・・何なんだこの色ぼけクソップルは!?)そうですか・・・」
「こんな所に居たんですかムウさん!」
「おう、如何したキラ?」
「マードックさんが呼んだのに全然来ないって怒ってますよ」
「知るかんなもん!
今はスティングに、俺とマリューの温かい触れ合いを見せ付けている所だぞ、邪魔しないでもらおうか?」
「スティングじゃねーって言ってんだろうが・・・」
「あ、君はスティング!生きてたんだね!」
「〜〜〜てめーまで・・・くそ!スティングって呼ぶなっつってんだろーが!
いい加減にしねーと、てめーら纏めてMSの砲口に詰めて宇宙の彼方まで飛ばすぞこらぁ!!!」
「お兄ちゃーん!兵隊さん達の炊き出し手伝い行こうよー!」
「あ、ヒコスケくん!
は〜い!今すぐ行きますよー!!」
41
「何騒いでんの?」
オクラが少年と去った後、ミューディーとスウェンがキラとバカップルの元に。
「何でもない!
単にお前に殴られた所が痛くてしょうがないだけだ!」
「大佐がふざけてんのが悪いのよ」
「何をー!」
ムウとミューディーが喧嘩を始めた。その横でキラとスウェンは
「結局出撃は無かった」
「そうだね」
「無かった」
「そうだね」
「・・・」
「ん?如何したの?」
「いや、何でもない」
何かばつが悪そうに顔を逸らし頭を掻くスウェン。
「化粧し過ぎなんだよ!
油浮いてるぞお前!油取り紙に給料全部つぎ込んでるんだろ〜!」
「おやじ臭するあんたに言われたくないわよおっさん!
毎日お風呂入ってもあんたの臭いのは全然落ちないわよ!ば〜か!」
ムウとミューディーの喧嘩は段々変な方向へ。するとそこへ
「如何したんですか?」
ルナマリアが揉めてるのが気になって近づいて来た。
「ううん、ただの仲良しがする喧嘩だから気にしないで」
「どこがだよ!」「違うわよ!」「違うと思うが・・」「ムウが仲良しなのは私だけよ!」
ムウ、ミューディー、スウェン、マリューから総突っ込みされるキラ。
「あ、あれ?違うの!?」
キラが本気で驚いて声を上げていると、その横でルナがある者に気付いた。
「ほわーーーーー!!!」
「どうしたの?」
見える、ルナにだけ見える、ムウに付く、何か邪悪っぽいオーラがむんむん噴出す黒い影が。
「あ」
「あ?」
「悪霊退散!!」
「え?何が?」
「悪霊よ!
これ絶対悪霊でしょ!私には分かるわ!」
「何言ってるの?君、大丈夫?しっかりして!」
42
『僕達にも分かります!あれは間違いなく悪意を持った霊です!』
『以前見たアニメにもああいう邪悪っぽいのが有りました。間違いなくあれは悪霊です』
「や、やっぱり?
そうよね!私もそう思うもの!」
ニコルやダルシム達の言葉で確信したルナマリア、あれは悪霊だ。
力を持っているが故か、本能で分かる、除霊しなければ駄目だ。
「これを飲め」
「え?何?」
スウェンがルナへと栄養ドリンクを差し出す。
「疲れていると色々変な物が見えるらしい」
「疲れてないわよ!」
「僕、まだ知り合ったばかりだけど、もしよかったら悩んでる事話してもらえるかな?」
「病んでなんかないわよ!」
キラにまで心が疲れている人扱いされる。
「ええい!もう何でもいいわ!
ニコル!アウル!ハイネ!その他おまけ!私に悪霊を退治する力を貸して!!」
『え?・・・・えっと、如何すればいいのでしょう?』
『分かる訳ねーじゃん』
『連合の連中はダルシム以外どっか行ってるぜ?』
『少尉達は遊びに行きましたが』
「じゃあ駄目じゃん!!」
「君、本当に大丈夫?」
「うっさいわね!大丈夫よ!!(こうなったら適当にあのおっさんをぶん殴って霊を取り出すしか無いわね。
それで出てくるか知らないけどそれしか考え付かないし)」
ルナはムウの前までてくてくと歩いて近づくと、真正面から向き合ってにこりと笑った。
「ん?なんだい?もしかして俺に告白しちゃおうとか思っちゃったり何かして?
いやーもてる男は辛いなー!俺にはマリューという人が
ばきばきばきばきばきばきばきどごす
ムウを物凄い勢いでたこ殴りにし出したルナ。
「え?な、何やってるの!?」「・・・」「やれ!もっとやっちゃいなさい!」「ム、ムウー!!」
周りは止めに掛かったり、見てるだけだったり、もっとやれと喜んでたり。
「これは貴方のためなの!あなたのためなのよ!!」
「い゛い゛い゛た゛い゛ーや゛ーめ゛ーて゛ー」
「君!止めて!ムウさんが、ムウさんがー!」
5分後
「ぴょ、ぴよぴよ〜」
「なかなか出てこないわね」
「お願いだからもう止めてあげてー!!」
43
「・・大佐」
「誰だか知らないけどよくやってくれたわ!」
「ムウさん!しっかりして下さいムウさん!」
「私の、私のムウがー!!!」
殴り続けた果てに結局霊が取れないので一時中断したルナ、マリューは騒いではいたが全然助けようとはしなかった。
『ルナさん・・』
『ねえ、霊って体無いんだし殴るのは意味無いんじゃないのー?』
「あ、やっぱり?」
『俺の歌で浄化してみるか?』
『仮面ライダーにそんなのありましたな』
「ま・じ・め・に・考えろ!」
『あの、ルナさん・・・・霊にはやっぱり精神的な攻撃の方が効くと思うんですが』
「なるほど、さすがニコルね」
『精神攻撃なら私に良い考えがあります』
「ダルシム?」
ルナが霊と会話、傍から見ると一人でぶつぶつ言ってるようにしか見えないが。
「君、どうしてこんな事を」
「よせ・・あいつは錯乱している。あまり刺激しない方がいい」
キラがルナに話掛けようとしたがスウェンに止められた。
「よし、皆お願いね!」
ダルシムの作戦開始、ムウに取り憑いた霊を取り除くために、ルナに憑いた霊達(欠番あり)が力を合わせて立向かう。
『行くぞ悪霊!これでも喰らえ!・・・・・・・・・゛お兄ちゃ〜ん!早く早く〜!゛』
『(本当にこんな作戦で効くのでしょうか?・・・恥ずかしいです)
゛俺が戦っているのは義務とか使命なんかじゃない!俺は、人を愛しているから戦っているんだ!゛』
『゛僕、これでも女の子なんだよ?゛』
『゛おにいたまと一緒だと嬉しくてヒナぴょんぴょんしちゃう!゛』
『゛ああ〜ん!私火照っちゃって〜!゛』
「あ゛!ぐっ!うわああああああ!!!」
「ムウさん!?」
霊達の恥ずかしいセリフ攻撃で悪霊の精神が磨り減り、その影響でムウが暴れ出した。
全く知らなかったり、逆に熟知していれば大した攻撃ではないが、
゛その道゛を中途半端に知っている相手に対しては有効な攻撃だ。
「うあああああ!!!も、漏れるー!!」
「も、漏れちゃうんですかムウさん!?」
「うわあああああ!!」
ムウの叫びと共に憑いていた悪霊が退散、仮面を付けた謎の霊が頭上高く突き抜けて行った。
「や、やったー!」
「もう何が何だか分からないよ・・」
44
「ふう、皆ありがとう・・」
「な、何が?」
どぎまぎしながら言うキラ。
「いや、あなた達の事じゃなくて・・」
「よくやったわ!
丁度大佐をぼこぼこにしてやりたかった所なのよ!」
「ミューディー・・」
「え?何で私の名前知ってるの?」
「ちょっと・・・仮にも同じ艦でここまで来た仲間じゃないのよ・・」
「あんた・・・居たっけ?」
「(仮にもここへ付く前の戦闘で一緒に戦った仲間でしょうが・・)そりゃあちゃんと話した事は無かったけど・・・でもさぁ〜」
「私は如何でもいい奴の事なんて考えてる暇無かったのよ」
「如何でもいいって、ちょっと貴女!」
「ヒルダとマーズ、あの屑共のせいで資金が尽きて私への給料はカット、カット、カット!!!
おまけに借金多重債務の利子が大変な事になって余計な事考える暇無いわよ!!
分かる?私のこの気持ちが?
借金よ借金!!
私絶対に借金だけはしないって心に決めてたのにー!!!許せない馬鹿二人!!」
「た、大変ね・・」
「ヒルダさん達が生きているって連絡が来てたけど・・・元気にやってたんですね」
「元気にやってたんですね、じゃないわよ!
あの糞二人はもう知らないわ!
オーブに返すから後は面倒見てよ!!私もう嫌!!絶対嫌!!」
「・・・」
『ルナさん!あの人にまだ霊が憑いています!』
「え!?」
ぐったりとしているムウの方を見ると、オレンジ色の髪をした一人の男が佇んでいた。ニコルが声を掛けてみる。
『あのー、こんにちわ』
『ありゃあ?もしかして君達も僕と同じ幽霊?』
『はい、そうなんですが・・・・・あなたは?』
『僕はクロト、君はぁ?』
『あ、僕ニコルです。
ところであなたは如何してその人に?』
『僕が死んだ時たまたま近くに居たからくっ付いたんだよ。
ずっと表に出られなかったんだけど、このおじさんが別の霊でおかしくなってたお陰で最近は楽しく遊んでたんだ!』
『そうなんですか』
『でも何か飽きてきちゃったし・・・遊び相手が居ないとつまらないしさ〜』
『・・』
『君、僕の話聞いてくれるか〜い?』
『は、はい、どうぞどうぞ』
45
『僕は、僕はね?
ただ自由になりたかっただけなんだ』
『自由、ですか?』
『うん、僕はずっと変な奴等に変な事されて、ずっと自由じゃなかったんだよ〜。
だからね、死んだ時はすっごく自由で嬉しかったんだ〜』
『・・』
『でもね、自由になったらずっと誰も話聞いてくれなくて、全然何も触れないしつまんなかったんだ〜。
そうだ!君、僕のお友達になってよ!僕一人じゃつまんないんだよ!』
『クロトさん・・・・(この人は、きっとただ・・)あの、ルナさん・・・僕』
「いいわよ。今さら一人や二人増えた所で変わらないしね」
「さっきから何独り言言ってるの?大丈夫?」
「ほっといてよ・・」
『ルナさん・・ありがとうございます!』
『およ?』
『クロトさん、よかったら僕とお友達になってくれませんか?
それで僕達と一緒に居ましょう!そうすればきっとクロトさんも・・・』
『あ・・・・・やったぁ!』
その瞬間、クロトは笑顔と共に光に包まれ、そして
『ありがとうー!』
光の粒となって感謝の言葉と共に消えていった。
『クロト、さん・・・?』
「・・あ」
先程まで感じていたクロトの感覚は消え、そこにはただ空虚さだけが残された。
『・・・・・』
「・・・・・きっと、成仏してくれたのよ」
『・・・』
「きっとそうよ・・・だって、あの人最後すごく嬉しそうな笑顔だったもの」
『・・そうですね』
ニコルはそう呟き、一人離れて何所かへ行ってしまった。
「ニコル・・」
「君・・ニコルって」
ルナの呟きにキラが反応した。
「え?いや・・・・何でも、何でもないわよ!
それよりも、そのおっさんに憑いてた霊は全部消えたわ!これでもう大丈夫よ!」
「霊?」
「そう!何かすごく悪そうな霊が一人憑いてたの!」
「霊・・・あ、ムウさん!」
ムウがよろよろとしながら立ち上がる。
「俺は・・・今まで一体?
何か、得体の知れない物に突き動かされてたような・・・・・ああ!何だ!?今まで俺は何であんな変な事ばっか・・・。
はっ!す、すまないスウェン!すまないミューディー!!
そんなつもりじゃなかったんだ!
ああ・・・俺は如何して今までお前達に・・」
46
豹変したムウの態度、
正直信じられないが彼の態度を見るとミューディーもキラも霊の仕業だったのだと信じそうになる。
「でも霊のせいでおかしかったなら・・・じゃあマリューさんにも霊が!?」
「へ?私?」
「実はずっとおかしいと思ってたんです。
ムウさんもですけど、マリューさんも何だか変だって!
・・あの、もしよかったら」
「分かってる、そっちの人も除霊して変人から元に戻して欲しいのね?」
「はい!」
「任せて!よーし・・・・・・・・あれ?」
「どうしたの?」
「何も・・・憑いてないわよ?」
「え?そんなはずは・・・だってあんなに変わっちゃってたのに!」
一同の視線が全部マリューへと向けられる。
「マリュー、ひょっとしてお前、おかしくなった俺に合わせててくれたのか?
俺だけ変な目でみられたりしないよう、わざと」
「えっ!?えっと、そう!そうよ!実はそうなのよ〜!
ムウだけ奇異の目で見られてるなんて可哀想だもの!」
「そうだったんですか。
よかった・・・・本当におかしくなっちゃってるのかと思ってずっと心配してました」
「すまないマリュー、俺のせいで」
「ほほほほほほ!気にしないで!(・・・・・)」
マリューの作り笑いはとてもとても輝いていました。
「っで、さっきからそこに隠れてる奴、出て来なさい!」
「え?」
「何だ?誰か居るのか?」
ミューディーが近くにあるコンテナを睨んでいると、後から
「うおおおおおお!!!」
物凄い勢いでシャムスが飛び出し、ミューディー達から遠ざかるように全速力で逃げて行った。
「・・・シャムス?(え?嘘・・何で)」
「ミューディー、言い忘れていたがシャムスは生きている」
「は、はぁぁぁぁぁぁあああああ???!!!」
「今走って向こうへ行ったのはシャムスだ」
「ちょっ、ちょっとそれどうゆう・・・・・ああもう!訳分かんない!
こうなったら・・・こらー!待ちなさいシャムス!!ちゃんと私に説明しなさいよー!!」
ミューディーはシャムスをすごい剣幕で追い掛けて行った。
そして追いかけられているシャムスは
「嘘だろ!?追いかけてくるじゃねーか!!うあーーー!!来んな!来んじゃねーよばかー!!!」
顔を真っ赤にして逃げた。
>>93-103 GJ、このカオス感が最高!!
スウェンもギャグシーンに溶け込んでるしw
更新はえええええええええええええ!!!!!
超GJ!!!!!!!!!!!
それに比べておいらはorz
貴方の才能に嫉妬
自分では書くの早いとは思ってなかったんですが、早い方なんでしょうか?
シンに用意された幸せとも不幸とも取れるラストに辿り着きたい気持ちと、
同時進行の完全オリジナル話三つ(小説ではない)にも着手したいのがあって、自然と早くなってるのかもしれません。
47
「ひあーーー!!」
「待てって言ってんだろうがこらっ!!」
簡単に追いつかれて捕まってしまったシャムス。
恥ずかしさの余り、赤面して顔を背けてじたばた暴れる。
「何で逃げるのよ!!
せっかく・・・せっかく生きて会えたのに!!!」
「だっ、だって・・だってよぉ〜」
「この・・・馬鹿!」
ミューディーはそう言いながらシャムスを引き寄せ、そしてぎゅっと抱きしめた。
「ミューディー・・」
「馬鹿・・・ほんと・・死んだと思ってたんだから」
「・・・」
「生きてて・・・・よかったよぉ」
ミューディーは瞼に薄っすら涙を溜めながらシャムスの無事を心から喜ぶのだった。
「ニコル!」
『ルナさん・・』
一人去って行ったニコルを探し追って来たルナ。
他の霊は興味無さそうに、ルナから離れてぶらぶらしている。
『・・・クロトさん、居なくなっちゃいました』
「・・・」
『でも、やっぱり笑ってくれたのが嬉しかったんです・・・。だから、そんな風に思ってしまう僕は・・』
「・・ニコル!私ね・・・あの人が笑顔で消えて行く姿見て思ったんだ。
私が貴方達を見れるこの力は、きっと誰かを笑顔にするための物なんだって」
『・・ルナさん』
「ずっとこんな力嫌だって思ってたけど、出来るんだね!ああやって誰かを笑顔に!
だから・・・あんたがそんな顔しないでよ、ね?」
『・・・貴女は、何時も優しいですね』
「そう?」
『はい・・・いえ、時々怖い時もありますけど、でもやっぱり貴女は良い人です!
僕が一緒に居られたのが貴女で本当に良かった』
「何だかそういう風に言われると照れちゃうわね。
・・さ、いつまでも暗い顔してないで一緒に行くわよ!早くアスランに会って、そしてぶん殴ってやらなくちゃ!」
『あはは・・w、駄目ですよ、そんな乱暴しちゃぁ』
「だってアスランは・・・・・・ん〜〜〜もう!とにかく会ってみる!それから殴るか殺すか決めるわ!」
『殴るか殺すの二択ですか・・』
48
シャムスを連れてスウェン達の方へ戻り歩くューディー。
「・・あの、あのさ・・・あの時の事なんだけどよ」
「え?あ、うん、ええっと」
「お前がスウェンの事好きだってのは知ってるぜ・・・・、
俺もそれは仕方ねぇってずっと思ってたし、もう死んじまうと思ったからお前にあんな風に言ったんだし。
けど、けどよ、それでもやっぱ言ったからには答えが気になっちまうっていうか、よ?」
「・・・ごめん」
「あ・・あはははあはははははは!やっぱそうだよな!w
そうだよそうだよ・・」
「別にあんたの事嫌いじゃないし、私、あんたの事結構好きよ?」
「ミューディー・・」
「スウェンの事好き、か。
確かにそんな風に思ってたかな。
でも、今の私はそんな風に、っていうかそんな事考えたり出来ないって言うか、誰も好きになれないって言うか」
「じゃあおめー、スウェンの事は・・」
「なんていうか、好きなのか嫌いなのか分かんないわ。今は、それだけ!」
「そっか・・・」
「でも・・戦争が終わったら、その時は・・・」
「うっ」
『ルナさん?』
急に悪寒がしてびくりと体を振るわせるルナ。
『如何したんです?大丈夫ですか?』
「う、うん・・・ちょっと、嫌な感じが一杯・・・・・うっ」
『ルナさん!』
「大丈夫よ・・・・ただ、何だか霊の気配を一杯感じるっていうか、
ニコル達の気配も段々強く感じるようになってきたみたいな」
『霊を感じる力が強くなっているって事ですか?』
「たぶん・・。
(今まで感じなかった遠くでふらふらしてる霊の気配も段々感じるようになって来てる・・・。
誰かに取り憑いてる霊は近づかないと分からなかったのに・・。
もし、このまま強くなって行ったら私、戦場になんて)」
49
『やめろ、そんな事なんで、なんでそんな事が出来るんだ!』
歴史ある建物が立ち並ぶ都市を、巨大なMSデストロイが焼き続ける光景が目の前に広がる。
何の罪も無い、抵抗せず逃げ惑う人々を、巨大MSが手当たり次第に焼き払って行く。
『やめてくれー!もう誰も殺さないでくれー!
誰か!誰かあれを止めてくれ!じゃないと皆死んでしまう!』
声を荒げると、遠く影を落す雲海の狭間から、黄金のMSがデストロイに向かってやって来た。
『アカツキ!
そうだ!やってくれ!!そいつをその゛力゛で止めてくれ!!そいつは』
地上へ降り立ったアカツキ、ライフルを持ち、そして
『へ?違う!そうじゃない!撃たなきゃならないのは!!』
逃げ惑う人々をデストロイと同じように焼き始めた。
『やめろー!やめてくれー!!』
目の前で無残に散って行く無数の命、デストロイとアカツキの一方的な私刑。
『如何してこんな事・・如何して・・・誰が?』
アカツキのコックピットが開き、そしてその中から、シン・アスカが姿を表した。
『お・・れ?』
目の前に映るもう一人の自分はこちらを睨み、そして声を荒げる。
「何故俺にこんな事をさせる・・・」
『違う・・違うんだ、俺は・・』
「何故人々があんな死に方をしなきゃならないんだ!」
『俺だって、俺だって守りたくて・・』
「守りたかったのに!皆必死に生きてるのに!何でこんな事をさせるんだ!!」
『あ・・』
「お前だけは許さない!!」
気が付くと自分の周りには大勢の、体中を焼かれ、傷ついた人々が集まっていた。人々は自分を向いて
「ひどいよぉ・・・僕はただ普通にしていたかっただけなのに」
「娘が、娘が見つからないのぉ!!貴方、何所にあの子を隠したの!?」
「許さない!絶対に許さない!!お前だけは絶対に許さないぞ!!!」
『違う!
もうあんな事は・・・・・だから今度こそ俺はアカツキで皆を守って』
「一緒だろう、あの巨大MSも黄金のMSも、お前が乗っているのだから」
『・・・』
血まみれの手が伸び、自分の手や足に絡み付いてくる、引っ張ってくる。
「よくも取ったな・・・私達の大切な物を」
「絶対に許さない・・・・お前も、二度と大切な物を手に出来ないようにしてやる!!」
「もう二度と戻れないようにしてやる!」
『うあああああああああ!!!!!』
「っ!・・・・・ここは」
気が付くとシンはシートベルトを食い込ませながら椅子に座っていた。
「着きましたよ、スカンジナビアのオーブに」
「・・・夢(・・・・・いや、違う・・あれは夢なんかじゃない)」
50
「カガリ様!連合が独自に立案、実行した作戦が失敗したとの報告が!」
「何だと!?」
連合で行われた劣化量産バスター(見た目は同じ)連結超射程狙撃作戦が大失敗したらしい。
噂では作戦自体がDSSDのスパイによる罠が仕掛けられていたようだ。
最初から成功する訳も無い作戦を、スパイがデータを改竄する事によって成功するとし、行わせたのだ。
幸いパイロットは皆無事だったようだが、量産バスター大破、無駄な費用の消費で連合はさらに厳しくなった。
「装甲がPS装甲だったのが問題だったようです」
「フェイズシフト装甲に何か欠陥が!?」
「いえ、フェイズシフトじゃなくてプラスチック(PS)装甲です。コスト削減と、急遽量産のためにプラモデルと同じ素材を」
「・・・」
「君がスウェン君か」
「・・」
ソルから今までの話を聞いた脱出DSSD職員らがスウェンの所へやって来た。
「その・・・無理かもしれないけど、気にしないで。
セレーネさんは自分の命を犠牲にしても誰かを助けたいと思う、そんな強い人だったから、だから君は」
「俺は・・自分の命を犠牲にして他人を助ける事が強い人間のする事だとは思えない」
「・・」
「俺が弱かったから、俺のその分まで背負ってセレーネは死んだ・・それだけだ」
「・・・やっぱり君は悪い人じゃないみたいだ」
「・・・」
「君、その、聞いてくれるかい?
僕達とセレーネのDSSDで一緒に居た頃の話。
君には、聞いておいて欲しいと思って」
「・・・ああ」
スウェンは職員達から今まで知らなかったDSSDという組織の事、そしてセレーネという一人の女性の事を聞いた。
皆当時を懐かしむように話、そしてその思いと重さがスウェンの心に積み上がって行った。
誰からも愛されず、ただ戦う事だけに明け暮れた自分を救うために、
皆に愛された、ただ星を目指す事だけに明け暮れたあの女は死んだのだ。
セレーネの事を思う気持ちがスウェンの溶け始めた心を締め付けると同時に、
星を目指すというDSSDへも何かを感じていた。
51
青き大気と暗闇の宇宙の境界線、そこにそれはいた。
黒く噴出す憎しみを纏った、つい前まで一人の男に取り憑いて悪意を振りまいていた者。
その姿は邪悪そのものではあったが、
その闇の隙間、顔を覆う仮面の奥に隠れる瞳には純粋な願いと優しさが存在していた。
その瞳は遥か暗闇の彼方を見つめる。
もう一人の、悲しき宿命を背負いし者を。
バスター作戦に失敗した連合は焦り、今度は核ミサイルで一斉に攻撃する作戦を開始した。
オーブを通して協力しているザフト側はこれを知って深い不快感を露にしたが、
それくらいしか有効な攻撃が無いのも事実なため止めはしなかった。
オーブにも当然情報が入り、元サイの仲間達も
「大変だホシノ!早くテレビを点けてくれ!」
「コクシ・・・今俺はエルカザドを見てるんだ、後にしてくれ」
「それどころじゃない!」
無理矢理テレビを弄ってチャンネルを変えるとそこには
゛長距離移動も安全の洗練されたモデル!
一般向け偵察型ジン、好評発売中!伊達じゃないよ偵ジン!」
「確かに大変だ・・・すぐに買いに行かなくちゃ!!」
「これはCMだ!」
もう一度チャンネルを変えると全世界放送が映った。
地球軍がDSSDに核攻撃をしている光景が映っている。
これを流しているのはDSSDだ。
放たれた無数の核ミサイルは月に向けて一直線、しかし辿り着く前に全て撃破されている。
迎撃しているのは、ミーティアユニットを装備したフリーダムだ。
「こんな単調な攻撃が本気で通じると思ってるのか連合は?」
ミーティアを自在に使いこなし核を迎撃するサイ。
全ての攻撃はサイによって阻まれ、やがて全て撃ち尽くした連合は撤退して行った。
これによって何をどうやってもDSSDには敵わないと世界に知らしめたと同時に、
核を使った連合への批判も多少は出る。
どんな状況になっても核だけは駄目という人間は居るものだ。
52
「あれは・・・サイなのか?」
「たぶんな・・・・あの野郎、フリーダム奪ったまんま自分のにしてるのかよ」
「あのサイが・・」
「くそ!あいつの事結構好きだったんだけどな・・」
「ホシノ・・(何時も強がってるけど、本当はサイが居なくなって寂しいんだろうな)」
「俺がロリペド二次元コンプレックスの変態だって事、あいつだけは有りだって言ってくれたんだ。
生身の女に全く興味が無い、色物扱いされまくってる俺に。
俺は必ずあいつを連れ戻して、あの時の言葉が真実だったのか確かめたい!」
「・・(悪い奴ではないんだけどな・・)」
核攻撃を非難する人々の姿が全世界に放送される。(DSSD、宇宙クジラ教の工作)
歩き様にテレビを目にしたシンがそれを見て一人呟いた。
「ただのミサイルも核も結局同じ人を殺す兵器なのに何で核だとあんなに騒ぐんだろ・・・。
ただのミサイルで沢山人が死んでも知らん顔するのに・・。
(俺のアカツキと核も、結局何も違わない・・・・同じじゃないか)」
核が如何いう物で、何が違うのかは分かってる、でも、何かおかしい。
人々、もしかしたら自分への皮肉であろう言葉を吐いて、
シンはAAに向けて歩いていた。
「(誰が・・・・゛戦争゛なんて言葉作ったんだろ・・・そんな逃げるための言葉。
・・・・レイは、今如何してるんだろう?
きっと、あいつは死んでなんかない・・きっと!)」
憎しみと悲しみの狭間で枯れ行く瞳で空を見上げた。
「目標消滅しました」
「ちゃんとMSモデル工場は逸らして撃ったな?」
「はい、大丈夫です、工場は無事です」
「MSモデル工場は破壊する訳には行かないからな。
まだウィンダムやM1アストレイが生産されていない、破壊するのはそれらを入手してからだ」
「アーサー、クジラ博士より電文です」
「え?」
゛何をしておる、あんまり好き勝手遊んでおるならお前の代わりにサイをコントロールルームに送るぞ゛
「・・との事です」
「あちゃー、怒られちゃったよ、あははははは!」
「早く次の命令を出して下さい」
「あ、ごめんなさい!
じゃあ次は連合の現在活発な抵抗勢力を撃つ。
その後は反抗作戦のために各国と結束したというオーブを撃つ!」
「連射のし過ぎで砲口に多少ダメージが有りますが」
「そうか、じゃあまずはレクイエムの整備を。砲が壊れたら話にならないからな」
>>111番外編はどれも伏線的意味合いで書いてました。
追い詰められた連合、各所で暗躍するスパイ、後半の敵は宇宙にあるという辺り。
オクラ話はスティングの再出発であると同時にスウェンとDSSD、シャムスとミューディーの未来に繋げるために、
選べなかった過去はパトリックとのやり取りによる今後のアスランの心情の変化のためでした。
本編でも伏線をかなり意識してたんですが、あざとかったりセリフだけで意味不明な所も見直すと多いように感じる。
53
「皆の話聞いてくれたんだね」
食料のダンボールを一緒に運びながら話すソルとスウェン。
「あいつらに聞いた、セレーネが常に星を目指していた事を」
「僕と彼女は両親が星を目指してて、どっちも志半ばで亡くなって、
だからって訳じゃないけど僕は彼女とよく一緒に居た。
何所までも遠くの星に行きたいって、いつもそればっかり考えてた」
「お前の仲間、
セレーネの事よりもDSSDというか、星を目指す事への熱意ばかり多く語ってくれた」
「あはは・・・、皆聞いて欲しかったんだよ。
DSSDに居ると皆同じ事ばかり考えてるから同僚同士で会話しても何だか研究の事ばかりで。
でも、そうじゃない人にならもっと純粋な夢みたいな物を話す事が出来て嬉しくなるし、僕も同じかな」
「そうか・・」
「皆本当に星を目指したいって思ってる。
だから・・・今のこの状況が悲しくて仕方ないよ・・。
DSSDはクジラ博士に乗っ取られて純粋に星だけを目指す事は出来なくなってしまった。
放送では星を目指すみたいに言ってたけど、僕達はこんな支配された世界でそれがしたかったんじゃないし、
゛やらなきゃいけない事だからやる゛ってなっちゃうと全然違うと思うんだ。
でも、僕達には何の力も無いし、僕達は・・・・もう星を目指す事は出来ないのかな?」
「・・・・星か。
俺も、子供の頃に星を目指していた」
「君がかい?」
「ああ・・・ずっと忘れていたが、お前達と出会って思い出せた。
俺は子供の頃ただ漠然と星を見つめていた、星に関わりたかった。
星が好きで、星と、星を一緒に見てくれる者さえ居れば後は何もいらなかった。
俺の父親はロケットの開発責任者で、俺の憧れでもあった。
誕生日には望遠鏡をプレゼントしてくれて、一緒に星を見ていた」
「そんな君が何故軍人に?」
「テロに巻き込まれて父も母も死んだからだ。
一体何が目的のテロだったかは今となっては分からないが、そのせいで俺は連合の施設送りとなった。
そしてそこで徹底した訓練を受け、コーディネイターを殺すための軍人になった」
「・・そんな」
「過去に未練は無いし自分の境遇を不幸だとも思わない。ただ」
「ただ?」
「星を忘れてしまっていた事だけは後悔している」
54
「・・今はどう?
思い出したって言ったけど、そんな今君は星が好きかい?」
「好きだ、すごく。
だから忘れていた自分が許せない」
「そっか・・」
「401の事も聞いた・・」
「そう・・・、401・・スターゲイザー」
「お前の仲間にも聞いたが、分かり易い名前だ」
「そうかもねw
この名前・・考えたのは僕なんだ」
「お前が?」
「うん。僕が両親を失った後引き取ってくれたおじさんの言葉から考えた、大切な名前さ。
上を見て進め、横や下ばかり見てたら嫉妬したり怯えたりするから、って・・。
上を見る者、その向こうにある星を見る者・・・・スターゲイザー」
「そのおじさんというのは今は?」
「死んだ」
「!!」
「僕達が地上からスターゲイザーを運ぶ時に、反ナチュラルテロ組織から難民キャンプを守るために戦って・・・。
戦車でMSに立向かったって・・・、とっくに軍人なんて辞めてたのに。
それでも自分が出来る事をしたくて立向かったんだと思う。
ナチュラルだったけど僕がコーディネイターでも気にしなくて、僕に取って一番大切な・・」
「・・」
今までの自分、自分と違う者を厭い、排除してきた自分を思い返し、複雑な気持ちになるスウェン。
「ゲイザーはそんなおじさんの思いも乗せている。
それだけじゃない、沢山の人達の夢や希望を乗せてるんだ。もちろんセレーネの思いも。
そんな大切な機体にクジラ博士は戦闘プログラムをインプットしていた・・・、今頃如何なっているか分からない。
無人探査のためのAIに人を殺すためのデータを入力して・・・・皆の思いを踏みにじられた。
僕に、僕に少しでも戦う力が有ったなら絶対に取り戻して見せるのに!僕は・・無力だ」
「・・・そうか、なら」
「?」
「なら俺が、スターゲイザーを奴等から取り返して見せる」
「!・・・・・き、気持ちは嬉しいけど、でも」
「別にお前達のためじゃない、俺がしたい事だからだ。
俺はセレーネに最後、あの子を頼むと任せられた、
だから俺はゲイザーを取り返さなければならない・・・いや、如何しても取り返したい!」
「スウェン・・」
「あとDSSDも取り返す。
連合からはさじを投げられた身だ、
戦後は分からないが今何も行動に制限が無いなら、俺はそうしたい!
星を見たいなら待っていろ。俺がお前に、星を見せてやる」
55
「・・ありがとう。
でも、義務感とか使命感を感じてなら・・・」
「俺は俺が星を見たいだけだ。
ゲイザーを取り戻すなら宇宙へと上がる必要があるだろう、それだけだ。
DSSDを取り返すのも俺が星を見たいからだ、勘違いするな」
「君・・・嘘が下手だねw」
「何を言っている、俺は本当に・・」
「でも、なら、本当に君にお願いしようかな・・・」
「ソル・・」
スウェンにはセレーネを死なせてしまった事に対する負い目があり、義務や責任も確かに理由の一つだった。
が、一番の理由は紛れも無く言葉の通り、ただ星を見たい、星に近づきたいという物だった。
「シン!」
シンが戻った事を知って真っ先にやって来たカガリ。忙しい中又しても抜け出した。
「よかった、お前無事で」
「うん・・ありがと」
「会って早々済まないが私はすぐに戻らなければならない。
もっとお前とはちゃんと
「気にするなよ・・・・早く戻ってやれよ、お前を待ってる人達の所にさ」
「シン・・・」
「戦いになったら、俺があんたの力になるよ・・・・・俺は、力だけはあるからな」
「シン・・?
・・シン、お前に言う必要は無いとは分かってるけど・・・、力はただ力、それだけは忘れないでくれ」
「力はただ力だなんて、俺は思ってない・・」
「シン?」
「あんたのオヤジも遺言で同じ事言ってたけど、俺には力はただ力だなんて思えない。
力しか、それしか無い奴だっているんだ」
「いや、そうじゃなくて、私が言いたいのは力はただ力を持つ者が゛使う゛物だっていう・・」
「分かってるよ、あんたが言いたい事は・・・でも」
シンは顔を逸らし、疲れたように肩を落しながら去って行った。
「(シン・・・何かあったのか?)」
「カガリ様急いでください!」
「ああ、分かった・・」
GJ!ルナに異変が?シンに用意された結末というのも気になる
うは
最初がどんなあ展開だったかもうワカンネwwwwwwwwwww
簡単に説明すると展開は、シンがステラを守るためにデストロイ→アスラン達磨化しておかしくなる→シンがオーブで遺言を聞いて決意→
連合がオーブ侵攻してそこを横からザフトが攻撃→アスランが非人道的行為をしてシンの怒りを買って落される→
連合とザフトがアーサーの思惑通り潰し合いアスランも混乱ザフトも混乱→議長が自爆して後が無くなる→
議長がメサイア使おうとしたらレクイエムで撃たれる→ジブリールが勝利ワインを楽しもうとしたらアーサーに裏切られて撃たれる→
アーサーエロゲ王国確信→アスランがアーサーに騙されてた事を知って心に深い傷を負う→アスランを助けるためにシンが宇宙へ→
博士にSEED=もうだめぽと聞かされ苦悩する→クジラちゃん大好きとエロゲ王国に対抗してオーブ連合ザフトが協力体制→
シンは運命に勝てるか?アスランに友達は居るか?スウェンに夢を叶えられるか?、という展開です。
56
「二機共こっちに戻って来たのか」
ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを見上げて呟くヘルベルト。
そう、この二機はラクス様の命によって作られた最強の・・・あれ?
「つーかこれ元々はザフトのじゃ・・」
「退屈だな」
少し血色が良くなったかと思うとベッドの上でごろごろし出したアスラン。
「カガリ・・・キラ・・」
あれだけ迷惑をかけ傷つけたというのに未だに自分を見てくれる二人。
素直に受け取りたい、受け取りたいけど、
一人になって考えるとやはり二人を心の底から信じる事が出来ない。
それどころか何か裏があるんじゃないかと疑心暗鬼になる。
「結局こんな風になって俺は・・・・。
そうだな、こんな惨めな俺に優しくする人間なんて居る訳が無いじゃないか。
何を甘えていたんだ、俺は。
俺なんかを心の底から信じる奴なんて居る訳無い、利用しようとする奴しか近づいて来ないんじゃないか?
そうだ!きっとそうだ!
カガリもキラも傷ついた俺を見てチャンスだと思ったんだな!
精神的にも肉体的にも弱っている所を優しくして俺を上手く使おうとしてるんだな!
自分より下の俺を近くに置いて毎日優越感に浸ろうって事なんだな!
もう騙されないぞ俺はっ!!
お前達が悪いんだ!全部!全部世界が悪いんだ!
復讐だ!復讐してやる!!
どうせ俺は駄目だ!負け犬だ!プラントがあんなだから給料も無しだ!一文無しだ!
こうなったら引き篭もりになって今まで俺を馬鹿にして来た世界を利用してやる!働かない俺を世界が奉仕だ!
オーブが俺を養うんだ!ただ飯喰らいだ!食っちゃ寝食っちゃ寝で財政圧力だ!
戦争が始まる前の俺に逆戻りだ!役立たずだ!
今度は前より酷い!部屋に立て篭もりだ!一日中インターネットして食事は乾パンだ!
パンツは裏表前後で四日履くんだ!引き篭もりの常識だ!お風呂は一ヶ月は大丈夫だ!
57
蛇口は出しっぱなしだ!水の無駄使いだ!
止めたくても引き篭もってるから鍵が掛かってて入れないぞ!水道代が大変だ!
欲しくもないフィギュアを大量注文だ!オーブ政府宛てだ!
置き場所に困って゛ご自由にお取り下さい゛で国民に大盤振る舞いだ!マニアが大喜びだ!
俺を助けようとしなかった小型ロボットスレの奴等にも仕返しだ!
毎日5スレ分の荒らしで完全滅殺だ!規制されても俺の優秀な技術で即解除だ!
トリィの写真にキラの顔を合成して゛僕トリィ・ヤマト!みんなよろしく!゛という奴を世界中の掲示板にアップだ!嫌がらせだ!
ふはははははははは!どうだ皆、参ったか!ははははは・・・・・・・はは・・、俺は」
アスランから笑顔が消え、心底悲しそうな顔になり
「俺は、一体何を言っているんだ・・・そんな事したって」
瞳に涙を浮かべながらベッドに顔を埋めた。
自分が信じられない、他人も信じられない、何も信じたくない。だけど
「・・だけど、何であいつは」
アスランの心に自分を助けに来たシンの姿が浮かんだ。
自分を殺そうとする以外無いはずのあいつ、あいつに取って自分は一体何だ?自分に取ってあいつは何だ?
「ありがとう、ちゃんと無事に帰って来てくれて。アスランも連れて来てくれて」
「別に・・」
シンの到着を聞いてキラも急いでシンの所へやって来た。
アスランを連れ戻してくれた事、無事に帰って来てくれた事に、心から感謝を伝える。
「アスラン、今は怪我してて休んでるけど、もう少ししたらちゃんと話せると思う。君もアスランと
「別に・・・如何でもいいよ」
「シン?」
「アスランなんて如何でもいいよ、俺は・・・・仲間でも何でも無いんだ」
「・・如何したの?何かあったの?」
シンの明らかにおかしい様子にキラは心配そうに言う。
「何でもない・・。キラ・・・・・゛力゛はもう使っちゃ駄目だ・・・、使わなくちゃ如何にもならない時でも絶対に駄目だ」
「゛力゛・・・・・君、それって」
「上でDSSDの奴から聞いたんだ・・・あの力は使わない方がいいんだ、あんたは特に・・。
アスランにも、あんな奴如何でもいいけど、一応あんたから言っておいてくれ・・・・・。
あんたが、゛力゛を使う事なんて無いんだ・・・」
「・・・よく分からないけど、あの゛力゛は使っちゃ駄目なんだね。でも、それじゃあシンも」
「俺は・・」
「サイが君にSEEDを持つ者って言ってた。なら君は」
「俺は大丈夫だ、あんたとは遺伝子が違うんだ」
「遺伝子・・?」
「DSSDの奴が言ってたんだ・・・あんたの遺伝子じゃSEEDの力を使うと体に負担が掛かってよくないって。
特に強い力を持ってるあんたは負担が大きいって・・・・・だからもう使うな」
「・・・シン、君は?」
「俺は大丈夫だよ・・・・あんたが特別だって、それだけだから。
そりゃあ馬鹿みたいに使ってたらよくないけど、俺とアスランはあんたとは違うから・・・・・
あんたは特別だから・・・・・だから一番危ないあんたが気をつけろって、そう言いたいだけだよ!」
「・・・・・君、嘘ついてないよね?」
「嘘なんかつくかよ。あんたは他の奴と違う、特別な奴だって、それだけだから・・」
「そう・・なんだ」
シンとキラは互いに複雑な顔をしながら分かれて去って行った。゛あんたは特別゛、そんな言葉本当は使いたくなかった。けど・・
58
「おにいちゃん・・」
「・・・っ」
炊き出しの手伝いが終わって一休みしていたオクラとヒコスケがシンの姿を見つける。
そして、シンの瞳にオーブのあの少年の姿が映る。
「おにいちゃん・・・あの」
「・・ごめん」
「え?」
「・・・でも、終わらせるから・・・・・ちゃんと、終わらせてから消えるから」
「何言ってるの?
おにいちゃん、あの、あのね?・・・・・あの時はごめんなさい・・」
「何で謝るんだよ・・・君は何も悪い事なんかしてないだろ?」
「だって!あの時僕・・・おにいちゃんに酷い事言った・・」
「酷い事なんか言ってないよ・・」
「泣いてたもん、あの時のおにいちゃん・・・」
「・・・」
「おにいちゃんは本当は悪い事なんて出来ない人なんだよね?
大きいMSの話もきっと何か理由があったんだよね?」
「・・理由なんか無いよ・・・・ただ殺したいから殺したんだ。邪魔だから殺したんだ」
「嘘つきだよ・・」
「嘘なもんか・・・・・じゃなかったらあんな事出来る訳ないじゃないか・・・」
「・・・」
「ありがとう・・・俺なんかに気使ってくれて・・。
でも、俺が君のお父さんを殺したのも、皆を苦しめたのも本当だから・・・・それだけは忘れないで」
シンはそう言いながら少年の頭を軽く撫で、背を向けて歩き始める。オクラの姿を横目で見て
「あんた生きてたんだな・・・・・よかった」
「・・何方でしょうか?(こいつAAでの・・)
・・事情はよく分かりませんが、人間生きていれば何があっても変われますよ」
「・・・そんな事無いよ」
ぼそりと一言残し、シンはとぼとぼと去って行った。
「おにいちゃん・・」
「ヒコスケ君・・・あの人の事信じてますか?」
「え?・・・・うん」
「じゃあ大丈夫ですよ。
生きて信じてさえいれば、また話し合う事が出来ますから」
「うん・・」
「(そう・・・生きていれば変えられない事なんて無い。そうじゃなかったら、今の俺は居ないさ)」
59
「シン!」
歩き行く中、かつて共に戦い、笑いあった一人の少女と再会した。
「メイリン・・」
「シン、本当にシンなんだよね?」
「うん・・」
「よかったぁ・・・・ずっと心配してたから」
「心配?・・・何で俺を。
ザフトを裏切って、連合の味方して、散々人殺しまわった俺を何で?」
「・・・だって、シンは私達の仲間だよ!」
「散々勝手やった俺が・・?」
「でも・・・だってシンは本当は悪い事なんて出来ないって私知ってるもん!
事情があったんでしょ?
お姉ちゃんが幽霊さんから聞いたっていう話では、シンは私達を騙そうとした訳じゃないって」
「幽霊って・・・そんな嘘付いてまで言われても俺は」
「嘘じゃないよ!だってポルターガイスト見たもん!
ハイネさんが居るんだよ!ニコルさんっていう優しい人も!それから連合の良い人(?)達も!
皆お姉ちゃんと一緒に居る良い幽霊さん達よ?」
「はは・・」
批難する訳でもなく、こうやって自分に優しく接する者達が居る事がシンには重過ぎた。
いっそ大勢に囲まれて自分の罪を咎められた方が全然いい、
まるで当然のように仲間だとかまだ言われているのが辛かった。
「お姉ちゃんだってシンに会いたいって言ってたんだよ!」
「ルナも居るんだ・・・」
「ねえ、色々ちゃんと話そうよ。
そうすればまたミネルバに居た時の皆で一緒に・・・・そう!アスランさんも居るもん!
ハイネさんの霊も居るし、お姉ちゃんが居るし、レイも呼んで、そうすれば皆揃って」
「無理だよ・・・もう色々違うんだ。
ハイネは死んだし、アスランはあんなだし、俺もあの頃と全然違うんだ」
「だって・・・私達皆であんなに楽しかったのに」
「俺だって・・・あの頃に戻れたら戻りたいさ。
もし本当に全部やり直せるなら今すぐやり直したいよ・・・・・だけど、それは絶対に無理なんだ」
「だって・・・でも」
「・・大丈夫だよ、メイリン。
戻れなくても、これからあの時よりもずっと楽しい思い出を作って行けばいいんだから・・。
メイリンにはルナが居るし、これから会う奴等と幾らでも仲良くなって行けるんだから」
「シン・・」
「だから・・大丈夫だよ」
「・・・シンも居るんだよね?これから作る思い出にちゃんとシンも居るんだよね?」
「・・・」
シンは何も答えず去って行った。
60
゛ごめんなさい。
もう「戦場カメラマンなんて危ないから駄目だ!」なんて言いませんから許して下さい。
食べ放題の店でタッパー持参を店員にばらしたり贅肉が余ってるのを笑うのも止めます。許して〜゛
゛だめ!゛
「ふう」
ディアッカとの電文のやり取りをするミリアリア。
復縁を求めるディアッカだったがミリアリアはまだ許さないようだ。
「(まだまだ許さないんだから。これでもかってくらい後悔してからじゃないと駄目よ!)」
にやにやしているとイザークから電文が入った。
「イザーク・ジュール?アスラン・ザラ宛?何かしら?」
゛何の挨拶も無しに地球へ降りるとは如何いう事だ!
それに前のあの放送は如何いう訳だ!?
ヘブンズベース戦で敵前逃亡したというのは本当か!?
とにかく一度ちゃんと俺の話を聞け!こってり絞ってやる!分かっているのかこの女顔!゛
「・・・」
カタカタカタ
゛女顔とは褒め言葉か?
イザーク、君は変な髪形をしていたな。正直笑いを堪えるのが辛いが今もあの変なショートカットなのか?゛
「送信!」
ミリアリアはアスランの名前を語ってイザークへと電文を送信した。
「ヤキン戦でAAに一度だけ来た時にモニター越しに見たけど、あの人の髪型あんまりよね。あ、返信早いわね」
゛貴様〜〜〜〜〜〜!!!!!
こっちに上がって来い!貴様の腐った根性を叩き直してやる!!゛
「・・」
カタカタ
゛まずは君の髪型を叩き直した方がいいな。銀髪も手伝ってヘルメットにしか見えないから゛
「ミリアリア・・・状況が状況だからそうやって遊ぶのは・・」
「ノイマン!・・さん。えっと、すみません!」
「全く・・(艦長だけで十分だよ、駄目なのは)」
イザークから電文が返って来る。
゛貴様・・・次に戦場で会う時はせいぜい背中に気をつけるんだな゛
61
各員が慌しく働く中、悪霊から解き放たれたムウはスウェンらと共にMSのチェックをしていた。
「本当にこのまま俺でいいのか?」
「操縦にそれなりの順応性が必要だって話だからな。
今あれを最も上手く使えるのはたぶんお前だ。前の戦闘で実際に相手した俺が言ってるんだ、間違いない」
「・・・」
ストライクフリーダムはスウェンの機体とされ、AAのデータにもスウェン機として登録されている。
ムウにはストライクとカオス、ミューディーにはブルデュエルがある。
「で、俺は?」
「シャムス・・・・ムラサメは良い機体だ」
「は?」
「頑張って使いこなしてくれ」
「ふざけんなよ!何で俺だけ量産機なんだよ!!
スウェンの機体の横にあるインフィニットジャスティスって奴を俺のにしろよ!」
「これは゛もしかしたら乗るかも゛って奴が居るから駄目だそうだ。
我慢してムラサメ乗ってくれよ。な?」
「な?・・って、てめぇ」
「シャムスの機体なら私が手配しておいたわよ」
「ミューディー?本当か?」
「ええ、何でもプラスチックの・・・いや、えっと、バスター!
そう、バスターの量産型があるとかで、それにヴェルデの予備のパーツを付けた奴送ってくれるって」
「ありがてぇ!!
やったぜ!まさかまたヴェルデバスターに乗れるなんて、嬉しいぜミューディー!!」
「喜んでもらえてよかったわ(一応増加装甲付くんだし大丈夫よね)」
「よっしゃあ!!ファントムペイン復活だぜ!!」
修復されたノワールやアスランのデスティニーがあったのだが、
それも知らずシャムスはPS(プラスチック)装甲のヴェルデバスターに乗る事が確定した。
増加装甲はちゃんと通常装甲だからきっと大丈夫だ、と思いたい。
62
「見つけたわ!覚悟しなさい!」
アスランの居場所を聞いて遂に彼の元へ辿り着いたルナマリア。
手には炊き出し用のフライパンが握られ、それを構えながらじりじりと近づく。
『ルナさん流石にそれはちょっと・・』
「殺されかけたのよ私は!
本当ならMSでぺしゃんこにしてやりたいくらいだわ!」
アスランは寝ているようで全然動かず声も出さない。
『せめてちゃんと話を聞いてから・・』
「駄目よ、そんなんじゃ甘すぎるわ!
一度思いっ切り痛めつけて反省させないと駄目よ!」
『でもアスランはお父さんに操られてただけかもしれないですよ!』
「お父さんは本当は良い人かも?とか言ってた癖になによ!」
『逃げてー!アスラン下がってー!』
「ああもう!
とにかくきつーい一撃お見舞いしてあげるわ!!」
ベッドの横に立ってフライパンを振り上げるルナ、アスランを見下ろして一気に、と思った時
「・・・やだよぅ・・・・・苛めないで・・・・やめて・・おねがいだからもうやめてよ・・・・」
そう寝言を言いながらアスランの瞳から涙が零れた。
「・・・アスラン」
ルナの手が止まり、振り上げていたフライパンを下げる。
何で泣いているのだろう、苛めないでって如何いう夢を見ているのだろう。
ルナがアスランを見下ろして沈黙していたその時
「!」
背後に気配を感じて振り返ると、そこにはパトリックが佇んでいた。
『・・・』
「アスランの・・お父さん」
『アスランのお父さん!
あの、僕貴方にきちんと確かめたい事があって』
『・・話は別の場所で聞く。
生身の人間が居るとアスランがゆっくり休めない、こっちへ』
「・・分かったわ」
パトリックに連れられルナとニコルはアスランの居る部屋を後にした。
63
「整備完了しました」
「ありがとう。それじゃあそろそろ本格的に反抗勢力を撃つとしようか」
レクイエムの整備が終わり、アーサーは遂に地球各所の反抗勢力を撃ちに掛かる。
目標は多数あり、もちろんその中にはオーブも含まれている。
「(オーブはエロゲー技術がずば抜けている。
軍事技術が高いのはエロゲーの技術が高いからだという仮説も立てられた程だからな。
正直有能なエロゲー製作者や絵師が消える事は惜しいがどうせ今の世界のエロゲー関係者だ、消すべきだな。
新世界のエロゲ王国では今まで表舞台に出てこなかったプログラマーや絵師を取り上げる。
今まで溜まりに溜まっていた物を新世界で吐き出してもらおう。
そう、それが真世界で究極の幸せたるニューエロゲーを生み出すのだ!
彼等は必ずやエロゲの革新を起こせるだろう)」
アーサーの野望、ニューエロゲーによるエロゲの革新、ニューエロゲーマーの誕生、世界は新しいエロゲのために動き出す。
『やっぱりアスランの事を守ろうとしていたんですね・・』
パトリックからその真意を明かされるルナとニコル。
パトリックはか細い声で真実を喋っていた。
『ああ・・・守りたかった、ずっとずっと守りたかったんだ』
「でも何でアスランをあんな風にしたの?
あんな風になったお陰でアスランは周りから変な目で見られていたのよ?」
『それでも構わんと思ったからだ。
あいつが幸せになって、笑っている事が出来ればそれでいいと』
「どういう事?」
『パトリックさん・・あなたは前に僕に向かって゛アスランを苦しめる一人゛だと言いました。
あれは如何いう事ですか?」
『アスランは、ずっと我慢していたんだ。
たった一人でどんな時も、誰に対しても。
たった一人でだ・・・・・、助けてくれるはずの者が助けるべき時に助けてやらなかったから。
・・・君達は、どんなアスランがアスランだと思う?』
「え?どんなって・・・それは、もっと真面目で馬鹿な事とかしなくて、やさしくて」
『どんなアスランが・・。
パトリックさん、もしかして貴方が言いたいのは・・・』
『・・アスランはその゛真面目で馬鹿な事とかしない゛人間である事をずっと無理して、演じて生きていたのだ』
「・・無理して?」
『そうだ・・。
お前達は知らないだろう・・・・アスランの今までも、アスランの気持ちも。
゛そうでなければならないアスラン゛を求め、強要する側の人間には何も分かりはしない。
アスラン・・・アスランは小さい頃から・・』
漏れの読み取り速度より更新が速すぎるwswwww
全体的にキャラが濃くていいなww
ギャグとシリアスの間を行ったり来たりするのが不安定だと思ってたんですが、
最近はそれはそれで自分の作風なんだと思えて来ました。ドレッシングをいくら振り混ぜてもすぐにまた分離すると分かりました。
64
「アスラン・・」
アスランの様子を見に再びやって来たキラ。
心配そうな顔で見下ろしているとアスランの目がゆっくりと開く。
「キラ・・」
アスランはゆっくりと上半身を起こし、心配そうに自分を見下ろすキラを一瞬見て、すぐに目を逸らした。
「アスラン、よかった・・・君が無事で」
「・・・」
「ずっと君とちゃんと話せなくて、もう君と話せないんじゃないかって・・・・ずっと不安だったんだ。アスラン、僕は」
「放って置いてくれ・・・今はお前と何も話したくない」
見ないでくれ、自分をそうやって見下さないでくれ。
「アスラン・・・・・分かった・・・もう少し怪我がちゃんと治るまで待つよ・・」
「(そうじゃない・・)」
「でも一つだけ・・・。シンが、゛力゛を使っちゃ駄目だって君に言っておいてって。
僕自身よく分かってないんだけど、シンの言ってる事聞くと、君にも゛力゛があるって・・・。
前に聞いた事がある゛SEED゛って物だと思うんだけど・・・無暗に使うと体に悪い影響があるらしいんだ。だから君にその事伝えてって・・。
はっきり口に出しては言わなかったけどシン、君の事すごく心配してたんだと思う。
宇宙へ君を助けに行ってくれたのも彼だし、
前に僕が悩んでいた時にきっともう一度君と話せるって言ってくれたのも彼だったし、きっと本当は彼・・」
゛トリィ!゛
キラの言葉を割いてトリィが入って来た。
ぱたぱたと羽ばたきながら、アスランの頭の天辺へと降り立った。
「トリィか・・・まだ持ってたんだな。
俺があれだけお前を否定して、殺そうとまでしたのに」
「アスラン・・・やっぱり僕は!」
「何も聞きたくない」
「っ・・・うん、分かった・・・・・また、来るね」
そしてキラは去って行った。
寂しそうに瞳を潤ませながら、悲しみを顔に浮かべて。
゛トリィ!トットトトットオットット!!゛
生みの親に会えて嬉しいのか、アスランの頭で踊るトリィ。
「キラ・・・ふっ、久しぶりだな、トリィ。久しぶりに俺が整備してやろう・・」
カチリ
トリィを解体して整備し始めたアスラン。
その顔は嬉しそうでありながらも悲しみで満ちていて、まるで彼の今の心をそのまま映したかのような・・。
「・・・・あれ?何で・・、うぇ!?
そ、そうか・・・・・てっきりNJの影響を受けてると思ってたが・・・・・・・それについてはちゃんと計算してなかったからな・・・。
でも、こいつが動いてる事に何の疑いも無く、自分の傍に置いてるあいつは・・」
手を止め、分解されたトリィを見詰め、そして彼の事を思う。
「キラ・・・」
アスランはそう呟いた後ゆっくりと息を吐き、すぐにまたトリィを弄り始めた。そして数分後。
「付け焼刃だが・・・゛真のトリィ゛の完成だ・・」
彼が作ろうとしていた、本来の目的を達する事が出来るトリィが、即席改造ながらも完成した。
完成したが、今のアスランに゛本当の使い方゛をするつもりは無く、ただ未完成な自分の機体を完成させたかっただけだった。
65
ズギャーーーン
遂にレクイエムの標的となった各地の反抗勢力。
勢いがある所、明確に敵対している所から順に撃ち、反抗する者を次々に焼き払って行く。
連合はDSSDへと抗議し、アーサーがそれに対して答える。
「卑怯な!しばらく時間をやるというのは嘘だったのか!?」
「嘘ではない、選択のための時間を与えたのは本当だ。
我々が撃ったのは明確に反抗の選択を取った所だ。
選択のための時間は与えるが、選択し終わった後については何も言ってない。
反抗する者に対して攻撃する、当然だろう。
・・・君達も無理に抵抗するのは止めた方がいい、無駄死にはよくない」
「お前達が手伝う事は無い」
「だって、私達に出来るのはこんな事ぐらいですから・・」
スウェンらの出撃準備を手伝うDSSD職員。
何か手伝える事があったらやらせて欲しいと言い、各員システムの調整や物資の移動を手伝っていた。
「私達は戦争とかそういうの出来ませんけど、
それでもやっぱりこのまま支配されてしまうのは嫌ですから。
DSSDをこのまま悪用され続けないためにも、私達は私達で、あいつらと戦ってくれる貴方達の力に成りたいんです!
・・・すいません、こんなんで」
「謝る理由は無い」
「・・あの、ソルから聞いたんですが、DSSDと401を取り返すって言ったって本当ですか?」
「本当だ。俺が取り返す、必ず」
「401の事はソルに聞いて分かりますが、何でDSSDまで?」
「DSSDが星を目指しているからだ」
「星を目指してるから?」
「・・・俺の個人の理由だ」
スウェンは踵を返すとストライクフリーダムへと近づき、コックピットへと上がって行った。
「スウェンさん!」
「・・何だ?」
「・・・期待しちゃいますよ?私。
スウェンさんがまた星を見せてくれるって、期待しちゃいますからね?」
「・・・ああ」
DSSD職員の声にスウェンは微かに微笑んで答えた。
他のDSSD職員は何も彼に言わなかったが、内心彼にDSSDをどうにか救って欲しいと思っていた。
止めて欲しい、DSSDは戦争の道具なんかじゃなくて星を求めるための場所だから、と。
「レイ・ザ・バレル、そろそろ何か口にしなければ死んでしまうと思うが」
「・・」
メサイアの中、無言で放心状態で居続けるレイ。
ヤイカが気を使って飲み水や食べ物を与えるが、水は口にしても食べ物は全く摂らない。
「ただでさえ衰退している体だ、食べ物を摂った方がいい。
お前についてのデータを見たが・・・ナチュラルでもコーディネイターでもない、か。
せめて薬を取った方が良い、発作が起こるんじゃないのか?」
「・・・」
レイは何も語らない、ただ沈黙して、全てが失われた事に放心するだけだった。
66
パトリックから明かされる、真意とアスランの真実。
『あいつは小さい頃からいつも一人だった。
私はいつも仕事で全く構ってやる事が出来ず、そしてアスランには誰一人として友達と呼べる者が居なかった。
元々人見知りが激しく、誰かを傷つける事を恐れる優しい性格だったため、
自分から誰かの中に溶け込む事が出来なかったんだ。
そして、抵抗もしない性格でもあったため、苛めをする者達の標的となり、いつも苛められていた。
私はそれを知っていた。
知りながら、あいつが悩み苦しんでいるのを知っていながら、私は何もしてやる事が出来なかったんだ。
あいつが苛められる理由の一つに゛父親が偉い人間゛というのがあった。
もし私自身が手を出してしまったら、
゛偉い父親の特権に守られているだけ゛の者として、また別の形で苛められてしまうのではないかと、
そう思うと何も出来なかったのだ』
「そんなの・・・もしそうでも助けてあげるべきだったはずよ」
『ルナさん・・』
『・・確かにそうだったのかもしれないな。
アスランは苛められても、どれだけ否定されても、それでも決して逃げ出す事は無かった。
恐らく、私のためだろう・・・・・私の立場を気にして、苦しくても逃げ出して休む事すら出来なかったんだ。
そのせいでアスランは胸に苦痛や悲しみを溜め込み続けながら成長して行った。
何の希望も無いままに生きる事がどれだけ辛いか、私にも想像する事しか出来ないが・・。
やがてアスランとは時々ですら会う事が出来なくなり、私は文字通りあいつを蔑ろにしてしまった。
ナチュラルの核攻撃で妻が死んだ後ですら私はあいつに何も・・・。
自分を見てくれる者が居ない、自分を信じてくれる者が居ない、声を掛ける相手すら居ない、
あいつは一体どれだけ一人で苦しんだのだろう?
孤独な部屋で一体何を思っていたのだろう?
何もしてやらなかった・・いや、苦しめた張本人である私には分からない事なのかもしれない。
しかし、そんな絶望の中からあいつは這い上がった。
あいつはまるで全てをバネにしたかのように急激に成長し、あっという間に私の所まで来て見せたのだ。
嬉しかった・・・あいつが自分の力で這い上がって、あんなに立派になって・・。
こんなに嬉しい事は無い・・・・・私の大切な息子がこんなに強く逞しくなってくれたのだから。
褒めてやりたかった、よくやったと言ってやりたかった、だが出来なかった。
今まで散々放置しておきながら、今さら都合良く父親面なんてとても出来なかったのだ。
何よりあいつの力はあいつ自身が手に入れた、あいつの頑張りの全てだ。
私が寄り添う事でそれを汚したくなかったのだ・・。
そして戦争が始まり、あいつは戦った。
私に出来るのはあいつを絶対に死なせないために最高の機体を用意するくらいだけだった。
あいつが生き残れるならと、妻を死に追いやった核に私は手を染めた・・・。
あれは、結局はあいつへの裏切りでしかなかったのだろうか・・。
その頃の私は憎しみに駆られ、ただナチュラルを滅ぼす事だけを目的として戦争を動かしていた。
今思うとあの時の自分の姿は醜く腐り果てていたのだろうな。
だからアスランは離れて行ったのだろう・・・・私の過ちを感じ取って、私を止めるために。
でもあの時の私はそれが分からず、争い、果ては世界を滅ぼす寸前まで陥れてしまった。
・・・・・後に知った、私があいつを守るために渡した機体で、あいつが私の最後の憎しみを止めてくれたと」
67
「・・」『・・』
『戦争が終わりどれだけ時間が経ったのだろう。
次第に意識がはっきりとし、そして私は気付いた、アスランの傍に今自分は居るのだと。
死に、憎しみから解き放たれた私はアスランをただ見守るだけの者となった。
戦後、アスランはオーブでアスハの護衛となり、平穏な暮らしをしていた。
平穏ではあったが私は気付いていた、感じられた、アスランの中にあるもどかしさを。
周りが変わり進み行く中、あいつは自分だけ取り残され、何も出来ないままで居る事に耐え難い物を感じていたんだ。
私は何かしてやりたかった、励ましてやりたかった、しかし、全て遅かったのだ。
皮肉にも、アスランと何時でも一緒にいられるようになった今は、私自身があいつにしてやれる事は何も無くなっていたのだ。
当然だ、死んでいるのだから。
・・・・・手を差し伸べようと思えば出来た生きていた時に何かしてやるべきだったのだ。
死んでしまった後では何を思っても何も出来はせん・・。
後悔した・・・自分は一体何をやっていたのだろうと。
その後再び戦争が始まり、アスランは新たな議長より切っ掛けを貰う事によって動き出した。
そして゛力゛を得る事であいつの中のもどかしさが消えた。
しかし、軍に戻って゛力゛を得てもあいつの心は満たされはしなかった。
私は気付いた、あいつの心の奥底にある、無理矢理封じていた苦しみと悲しみを。
あいつは、ずっと無理をしていたのだ。
もっと早く気付くべきだったのだ・・・・・、あいつが急成長して私の所まで這い上がった事に、私は浮かれていたのだろう。
私の前まで来たあいつの性格が幼い日と違っていた事に何で気付かなかったのだろう・・・。
無理をし、怯える自分をしまい込み、苦痛を堪え理屈で誤魔化し、
それによって冷静さを保とうとしていた事に、何で私は気付かなかったのだろう。
・・お前達が見ていた、冷静で、愚直で、はきはきとしたアスランは・・・・幻だ!!
゛真っ当な人間゛を演じたアスランの無理矢理繕った姿だ!』
「そんな、あのアスランが演技だって言うの!?」
『僕にはそうは思えません!アスランは全然無理しているようになんて』
『それはそうだろう、あいつは自分を完全に偽る事で、偽っている事すらも忘れようとしたのだから・・」
「何でそんな事する必要があるのよ!」
『お前達には分かるまい・・・・゛優秀で良識の都合の良い人間゛にならなければ誰からも相手にされない者の気持ちは。
お前達のように普通に他人と接しつつ、他人の、自分に取って都合が良い所ばかり求める者にはな』
「・・・それは(確かに・・私はアスランのそういう所しか見てなかったけど・・・でもそれは別に)」
『だから゛苦しめる一人゛なんですか?』
『偽りのあいつが他人に都合が良いと思われれば思われる程、本当のあいつは追い遣られ苦しんで行く。
あいつは偽りの奥底で苦しんでいたのだ、゛都合が良い人間を演じないと見限られて捨てられる、一人になる゛と、ずっと』
「そんなの・・・勝手よ!
捨てられるのを恐れないで勇気を出して本当の自分で誰かと仲良くなるべきだったのよ!」
『・・・・・お前は本当に誰も居なくて誰も助けてはくれないのに、ひたすら苦しみだけは与えられる世界に居た事はあるのか?』
「無いけど、でもそんなのただの弱い人間よ!
自分を大事にする事だけに必死の人の考えよ!同情も出来ないわ!」」
『お前には絶対に分からない、直接あいつの心に触れた私にしか分からない。
一切の切っ掛けも思いも許されないような地獄は、お前達には分からない』
「っ」
『・・』
68
『再び゛力゛を得た後もあいつは苦しみ続けた。
オーブの一団はあいつの思いに反する行動を取り関係に亀裂が走り、
ミネルバでは言葉も碌に聞かず反抗するシン・アスカという子供が居た。
取り巻く状況が混乱し、あいつの真剣な思いは踏みにじられ、果てはキラ・ヤマトとの対峙。
大量破壊兵器を排除して殺戮を止めたいという思いが意味不明な身勝手によって踏みにじられた時、
アスランの中にある今まで溜め込んで来た劣等感の一片が噴出した。
その瞬間から今まで何も影響を与える事が出来なかった私が影響を与えられるようになった。
あいつの中の感情の爆発が、今まで遮っていた見えない壁をを破壊したのだろう。
その後私はアスランに徹底的に思いを送り、あいつの心の偽りを取り除こうとした』
「取り除こうとしたって・・・変な事言わせてただけじゃないの!」
『私はあくまであいつの心の枷を外しただけだ。
あいつが口にした、お前が不快に感じたであろう言葉の殆どはあいつ自身の本心だ』
「・・」
『無論、私の影響によって本心とは掛け離れた言動を取った事もある。
だが、殆どは紛れも無くあいつの本心だ。
私が枷を外した事によってアスランは子供の頃から溜め込んでいた物を一気に吐き出した。
純粋に楽しいと思える事を楽しみ、言いたい事を言い、自由にその力を振るった。
他人を遠慮したり怯えるような心は私が抑えた。
子供の頃の辛い記憶を癒すような自由な楽しい生き方をして欲しかったのだ。
時々苦手なお茶のせいで上手く影響を与えられない時があったが、
私はひたすらアスランが楽しく元気でいられる事だけを考えて影響を与え続けた』
『貴方はアスランにただ元気でいて欲しかったんですね』
『ああ・・・元気で居て欲しい、それだけだったのだ』
「親馬鹿が過ぎるわよ・・・・・けど、本当にアスランの事思ってたのね(遣り方は明らかに間違ってるように思えるけど)」
『影響を与えていた最中、アスランはアーサーという友を得た。
私は奴がアスランを利用しようとしているスパイなのだと気付いたが、それでも私は黙認した。
あいつが・・・あまりにも楽しそうだったからだ・・・・あんなに幸せそうなあいつは見た事が無い。
奴と一緒に居る事があいつに取って一番の幸せなのだと確信した。
たとえ奴が動いて軍を離反しても、アスランが奴に付いて行って共に幸せに生きれればと・・・。
だが、結局私の考えは間違いだった。
アスランは奴の誘いを断り、奴は最後アスランを徹底的に傷つけて別れた。
・・・・・最後に残ったのは傷ついた一人ぼっちのアスランだ。
私があいつを常に幸せで居させようと過剰に影響を与え過ぎた結果がこれだ・・。
ザフトでは軽蔑され、オーブにも戻る事は出来ても皆忌み嫌うのだろう・・・。
私は・・・あいつが幸せでさえ居てくれれば他は如何なってもいいとさえ思っていた。
なのに、如何して、私はあいつの全てを奪ってしまったのだろう・・・」
「まだ全部無くなってなんか無いんじゃない?」
『っ?』
『そうですよ・・・まだ、僕やルナさんが居ます』
「それにここの人達も、あれだけ無茶苦茶やったアスランを受け入れた図太い人達なら、ね?」
『・・・・・そうだな・・まだあいつは全てを失った訳じゃない。(あの、キラ・ヤマトも居る・・)
そう、信じたい・・・そうであってくれ』
69
「シン・・か」
お見舞いか、殺しに来たのか、アスランの部屋までやって来たシン。
微かに鋭い眼差しでアスランを見詰め、すぐに目を逸らす。
「・・・殺すなら早く殺せ」
「・・」
「俺を殺しに来たんだろう?・・・・お前の大切な妹を侮辱したこの俺を」
「・・・別に」
「殺してくれ・・・・今さら命乞いなんてする積もりは無い。
もう何も、未練なんて無いさ」
「・・殺したりなんかしないよ。
あんたみたいなの、殺すどころか殴る気も起きやしない」
「・・呆れられたか・・・そんなに」
「ああ・・」
「それは・・・・殺されるより辛い・・・俺には」
「・・・本当は」
「え?」
「本当は、ずっとあんたの事見てた。
上から物言われてるみたいでいらいらして、いっつもあんたに突っかかってたけど、本当はあんたの事いつも見てた」
「!!」
「言ってる事もちゃんと聞いてた。
・・・・あんたが正しいって認めるのが悔しくて否定してたけど、あんたの言ってた事全部正しいと思ってた。
今の俺で居られるのはあんたのお陰なんだ。
憎くて、許せなくて、ただ如何にも出来ない事に怒ってただけの俺が撃つって如何いう事か考えられるようになったのは、
戦うって事が如何いう事か自分で考えられるようになったのは、あんたのお陰なんだ」
「シン・・」
「俺がミネルバ離れてから後のあんたは別だけどな・・・」
「・・・」
「あんたが初めてだった。
他の教官や上の奴は俺にただ規律だとか上下だとかそればっかり言い張るだけだった・・・。
でもあんたは俺にそういうのだけじゃなくてちゃんと、撃つって事が如何いう事か教えてくれた。
目を逸らしてた事と向き合う切っ掛けを俺にくれた。あんたは俺にとって・・・・・」
「シン・・・・お前の成長はお前自身の゛力゛だ・・・俺はただ無意味な説教をしただけだ」
「・・・ふん」
シンは入ってきた時とは違う、何所か少し優しい目をして部屋を後にしようとした。
「シン」
「ん?」
「ミネルバの皆が・・・ヨウランや艦長が、裏切ったアーサーに捕まっている。
俺は自分が逃げ出す事だけで精一杯で見捨てて来てしまった・・・・・けどお前は・・」
「・・・分かってる」
シンは軽く頷きながら去って行った。
「(アスラン・・あんたは俺にとって師匠だよ・・・、頼りない師匠だけどな。・・・・・・やっぱり殴っておいた方がよかったか?)」
責めはしなかったがやっぱり妹を侮辱された事に対してものすごく怒っているシンだった。
ただ一度殴り始めたら動かなくなるまで、動かなくなっても殴り続けてしまう気がして出来なかった。
70
パトリックから話を聞き終わってニコルと二人武器コンテナにもたれかかって物思いに耽るルナ。
ふとコンテナから体を離し、ぴしりと立って何かを決意する。
「よし!」
ふらっ
「・・え?」
どさっ
急に体から力が抜けて倒れ込むルナ。
『ルナさん!?』
「あ・・れ?・・・・・私、何で」
訳が分からず目をきょろきょろ動かしていると
「っ!!」
ルナの目の前に行き成り、今まで見えてなかった沢山の人の姿が溢れる。
皆体が血まみれだったり、欠けていたり、下半身が無かったり。
「うっうぷ・・」
あまりのショックにルナは気を失ってしまった。
『如何したんですかルナさん!!一体何が・・・ルナさん!!!』
「ハイパーデュートリオンシステム、チェック完了。二機共問題無いです」
「ヤイカには俺の方から言っておく。
・・・この機体、これを使えば悪あがきをするナチュラル共を」
反ナチュラル部隊が所有する、ザフトより盗んだ二機の試験試作機。
盗んだ機体に最新鋭の核動力を搭載しており、同様の物がハカセのスターゲイザーにも搭載されている。
核により半永久的に機動し続ける事が出来る。
「で、どっちが俺の機体だ?」
「クレオの機体はそちらの、デスティニーインパルスです。
もう一機の方とは違い、元がデュートリオン式だったので核エンジン搭載に苦労しました」
「・・・サトー、俺がこの機体で屑共を薙ぎ払う!」
「クジラ博士、そろそろスターゲイザーの整備に戻って下さい。
エネルギー切れの心配が無いとはいえ、無意味に中空を漂られても」
「分かっておるわい。
(ふむ、スターゲイザーに問題は無いようだな。
これなら抵抗勢力を全て撃った後に、この機体を量産しても問題無かろう。
無人かつ無限稼動のAIMSの量産に成功すれば、全世界をそれらによって完全に管理する事が可能だ。
全く持って、これを開発してくれたセレーネ達に感謝しなくてはな。ふはははははは!)」
「如何したサイ?」
「いや、別に・・」
整備されるフリーダムを見詰めながらサイはぼーっとしていた。
「(もうここまで来たら絶対に引き返せないんだ・・・・世界は変わる、俺達が変える、そうだよな)」
71
空がすっかり暗くなり、星々が人々を包んでいた。
スウェンはセレーネの墓へと出向き、その前でただ立ち尽くしていた。
「スウェン」
「・・ソルか」
「君やっぱり・・・セレーネの事気にしてるのが一番の・・」
「違う・・・そうじゃない」
「・・」
「気にしていない、と言えば嘘になるが、ただ、ここに来たのは安心したかったからだ」
「え?」
「この女は・・・俺のよく知る人に似てたから。俺の母親に」
「そっか・・」
「・・」
スウェンはソルの横を何の曇も無い瞳をしながら通り抜け、星が包む暗闇を歩いて行った。
そして、どれくらい歩いたのか、星がよく見える岩場へと辿り着き、岩に座って輝く星を見上げた。
「・・・星、か」
空に広がる満天の星を見ていると、これから戦争で殺し合いをするなんてとても思えなくなる。
星は綺麗過ぎて、そして、もう星を一緒に見てくれる父親や母親は居ない。
「もう、星を一緒に見る者は・・・」
「星?」
びくっ
行き成り後から声がして、驚き振り返るとそこには、キラの姿があった。
「出撃までもう少しだと思うから呼びに来たんだけど、ごめん、驚かせちゃったね」
「いや・・」
「星、好きなの?」
「ああ」
「綺麗だよね・・・・戦争があるなんて思えなくなるくらい。誰かと一緒に見れたら最高かもね」
「・・・俺にはもう、一緒に見てくれる者はいない」
「・・そんな事無いと思うよ。ほら」
キラがそう言いながら指指した方向、駐留オーブのある方からランプを持ってどてどて走ってくる人影が二つ。
「君には仲間が居るから、彼等と見てもいいんじゃないかな?」
「シャムス、ミューディー・・」
シャムスとミューディーは息を切らせながらスウェン達の所へ辿り着き、物凄い疲れた様子でへたり込む。
「ちょ、ちょっと・・・出撃前だって言うのに何やってんのよ!」
「つ・・・疲れたぞ」
「・・・そうだな・・お前達と一緒に見ればよかったんだ。
いつかきっと・・・・戦いが終わったら。星は、逃げはしないのだから」
「何言ってんのよ一人で?」
「・・ミューディー、シャムス、もし無事に戻ってこれたら、その時は、一緒に星を見てくれ」
「・・・らしくねー事言うなぁ!w
ま、一つだけ言わせてもらうとだな・・・・・もし、じゃなくて、必ず帰って来るんだよ!」
「そうよ!」
「・・・そうだな」
仲良く話す三人を軽く笑みを浮かべながら見詰めるキラだった。
72
「大丈夫ですか?」
「あ・・」
倒れていた所をオクラに発見され、ベッドに移されて介抱されていたルナが目を覚ます。
「あれ・・私」
「コンテナの近くで倒れていたんです。
働き過ぎですか?ちゃんと休まないと倒れちゃいますよ」
「はあ・・」
ルナはぼーっとする頭をぽむぽむしながら辺りを見回すと、ニコル、そしてアウルの姿が目に付いた。
『ルナさん・・・大丈夫ですか?』
小声で「うん・・・ありがとう」
『体の調子が悪かったんですか?ごめんなさい、全然気付かなくて』
「ううん・・違うの。私、段々霊を感じる力が強くなってるみたいで・・・・さっきは一面に溢れる死んだ人の酷い・・・うぷ」
『ルナさん!』
「大丈夫・・・・でも、これでいよいよ不味くなったわ。
これだけ霊を敏感に感じ取れたら、戦場みたいな霊だらけになりそうな場所とてもじゃないけど行けないわ。
途中で失神して敵の的になるのが落ちよ・・・」
『・・おかしいですね。さっきルナさんが倒れた場所に霊の気配は感じなかったし、何も見えませんでしたよ?』
「残留思念とか、そういう感じの物かも・・・・・見た目綺麗なニコル達とは違って血まみれとか怪我とかすごかったし・・・」
『でも、そうなるとルナさんはもう軍人ではいられませんね』
「うん・・・ちょっと、いや、かなり悔しいけど。
・・・で、さっきからあんたは何してんのよ、アウル」
オクラの近くで色々なダンスをして見せてるアウル。当然オクラには見えない。
『いやー本当に全然気付いてもらえないんだなー。
僕スティングの仲間だったって言うのに、やっぱり気付いてもらえないんだなーってね・・・』
「アウル・・(そっか、この人アウルの・・・って事は強奪犯かい!)」
『スティング・・』
「・・・アウル、何か言いたい事があるなら私が
『へ?本当?じゃあ喜んでー!』
「ちょっ!違!あんたの言った事を私が伝え・・・あう」
アウルがルナに憑依してしまった。
「ではそろそろ私は持ち場に」
「ちょっと待ちなー!」
去ろうとするオクラをルナ、じゃなくてルナの姿をしたアウルが呼び止める。
「スティング・・・・コマネチ○コ!!」
コマネチしながら、近くにあったペットボトルを股間に当てるルナの体。
「・・・そうですか」
にっこりと満面の作り笑顔で去って行くオクラ。
アウルがルナから抜ける。
『ふう!これでスティングに伝える事はもう無いぜ!』
「・・・」
『ルナ・・さん?』
「除霊よ」
『へ?』
「こぉんの悪霊を除霊するわ!!!消えやがれ腐れ悪霊がぁ!!」
『ルナさーん!!』
73
「あれ?あの人何で名前・・・・まあいいか」
「アウル・・・今度やったら本当に」
『分かってるよー、ごめんってば!』
『でも、憑依とかやろうと思えば出来るんですね』
「やめて・・」
『いえ、しませんよ・・』
ルナがげっそりしていると向こうからキラがやって来た。そしてそれに憑いている
「霊!!」
力が強くなっているためか今まで見えなかった者も見える。
「あなた!あなたに霊が憑いてるわ!」
「え、ええ!?」
「(悪霊って感じでは無さそうね)ちょっと憑いてる貴方、何でこの人にくっ付いてるの?」
『俺は・・』
すぅ
「あひほ!」
再び憑依されるルナ。
『ルナさん!』
「・・・・あ、ああ・・体が。
そ、そうだ!キラ!キラー!俺だよ俺!分かるだろ?俺だって!」
「へ?」
目の前で豹変したルナ。
一見すると全然分からないが、何となくルナからあふれ出てくるオーラで別人なのだと分かる。
「(俺・・・ってまさか!)お・・・おれおれ詐欺!?」
「違うって!!俺だよ!トールだよ!!」
「トール!?」
かつてAAで共に暮らした、ヘリオポリスからの仲の良い友達、アスランに殺されたあのトールが今目の前に居る。
「キラ!サイを救ってやってくれ!あいつを止めてやってくれ!
あいつは、本当は世界を変える事なんて望んじゃいないんだ!
ただ自分に何の力も無かったのが悔しかっただけなんだ!何かしたかっただけなんだ!だから、頼む!」
言いたい事だけ言ってトールは出て行った。
そして、キラに頼んだ事によって成仏したのか、光の粒となって消えて行った。
「・・・トール?」
「え?あ、いや、私はトールじゃないわよ!」
「あ・・」
「あの・・・私もよく分からないんだけど・・えっと、あれ?今の人何所行っちゃったの!?」
「(トール・・そっか)・・・ありがとう」
「へ?」
キラはルナの前からいそいそと去って行った。
AAへと戻り、そしてストライクのコックピットへと入った。
やっぱり手が震えて前のようには動かせそうに無い。
「だけど・・・だけどやっぱり!」
無理だと分かっていても、やっぱり自分も戦わなければ、自分がサイを連れ戻さなきゃ行けないと強く思った。
それでもやっぱり体は言う事を聞いてはくれない・・。
ルナが「チ○コ!!」って言ってしまった。
ルナ、ガンガレww
新シャアでは、
此処を読むのが日課になっていることに気付くw
NHKで土曜日に本当に精巧な美しいCGの宇宙クジラが映ってた( ;゚Д゚)ソラトンデタ・・
74
何故こんな事になった?何故だ?何故だ?何故だ?
ギルは俺のような子供が生まれないようにするために、本当に世界を救うために戦っていたのに、
何故死ななければならない?おかしいだろう?
ギルが居なければ世界は破滅する、ギルが居なければ誰も救われない。
皆が苦しむと分かっていながら欺瞞に満ちた力を振りかざす者が勝ち残り、何故ギルが死ななければならないんだ?
ギルは救ってくれるのに、俺を救ってくれたのに、どうして?
ギル・・・・怖いよ・・ギルが居ない世界が怖いよ・・・・・この先もずっと続く、この苦しみばっかりの世界が怖いよ。
俺はもう救われない、俺のような子供がこの先生まれ続ける、悲しみは止まらず優しさが犠牲になる。
自由という曖昧な言葉を利用した者達が世界を食い物にし、影で涙を流す者の痛みは掻き消される。
こんな世界・・・こんな世界は!
「そうだ・・ギルの居なくなった世界に、もう価値は無いんだ・・・。
消さなければ・・・・人を救うために、俺が人を滅ぼさなければ・・。
一人残らず死ななければ、人は誰も救われない・・・・・悲しみが止まらない」
瞳に影色の光を映し出し、ゆっくりとレイは立ち上がった。
「そんな・・・サイがそんな事」
「うん・・」
夜の闇が益々濃くなる中、キラの元に一人の男がやって来ていた。
宇宙へと上がるシャトルを、それにサイが乗っているとも知らず見上げていた、彼に会おうとしていた男。
「俺・・・ずっとサイの事探してて・・・・戦争が終わったら必ず会おうって約束してて・・・・・なのに」
「・・」
「俺・・ちゃんと一人でも、少しでも強くなれるように頑張ったんだ・・・・・一人だけ逃げちゃったの、ずっと後悔してて。
サイにちゃんと言いたくてやっとここまで来たのに・・・どうして」
「・・・大丈夫だよ」
「え?」
「大丈夫・・・サイは、僕が必ず連れ戻して来るから。
サイはずっと僕達の事思っていてくれてるって、今はそう信じられるから・・・・・だから待ってて、僕が行くから」
「キラ・・・。俺も!今度は俺も一緒に行くよ!今度こそ俺が行かないと!」
「気持ちは分かるけど、お願い、ここで帰りを待てて」
「でも・・」
「・・・待っていてくれる人が居てくれた方が、僕もきっと強くいられるから」
「・・うん」
「それじゃ・・(・・・・ありがとう。これで僕はもう迷わずに行ける!たとえ体が駄目でも、思いは決まってるから!)」
もう迷いは無い、行きたい場所が、やりたい事はもう決まっている。
本当に戦えるかなんて分からないけど、それでもキラは宇宙へと行く事を決意した。
待っていてと言われた男の方は頷きはしたものの・・。
「キラ・・やっぱり俺も!」
出撃を前にする戦艦へとこっそり潜り込んだ。
75
「上で中継ステーションを監視して下さっている方達からの情報によればまだオーブを撃とうとする気配は無いようですが、
既に各地の反抗勢力狩りが行われているとの事です」
「協力関係にあった連合の幾つかの基地が壊滅させられたとの報告もある。
月面砲だけでなく地上のゲリラ部隊等も脅威だろう」
ラクス、カガリらは事態を把握しつつ作戦に向けて最終調整に入っていた。
地球の各都市ではゲリラ部隊、連合軍、宇宙クジラ教信者、オタクが入り乱れて大乱戦が勃発、
そして駐留オーブに向けては時折小部隊等が攻撃を仕掛けてくる。
オーブ、連合の量産機が迎撃に回っているが、その中に
「これ以上!」
ズギャーン
アカツキに乗って加勢するシンの姿があった。
これから宇宙へ行くというのに休みもせず、修理したばかりの機体で量産機と共にゲリラの相手をしている。
ランチャーストライカーを装備したアカツキで、迫るバクゥやジンを薙ぎ払う。
「動きが早いのが居る!
アスカ殿、ソードに換装して弾幕を抜けて来た犬っころを迎撃してくれ!」
「了解!
スカイグラスパー、ソードストライカーを!」
「了解した!・・・・・・・・・よし!投下!」
「・・・・・接続完了!
援護を頼む!一気に斬り倒してやる!うおぉぉぉ!!」
戦いに集中するシン。
まるで戦う事で何か辛い事を忘れようとするかのように、一心不乱に襲い来るゲリラを撃破する。
「長距離砲を装備したザクと思しきMSを確認!」
「くっ、ガナーか!?
後方のスカイグラスパー、ノワールストライカーを!
攻撃を交わしつつ突撃して長距離砲部隊を撃破する!」
『へえ、力が強くねぇ・・・・・、そっか』
「そっかって・・」
ミーアにくっ付いてるハイネを見つけて連れて行こうとしたのだが、ミーアから全然離れようとしないハイネ。
どうやらミーアが気にいったらしい。
『このお姫様と一緒に居れば色々音楽聞けるしな。まあ、俺の事は心配しないでくれ』
「あんたじゃなくてミーアさんが心配なのよ」
『だいじょーぶだっての!別に悪さする訳でも無いんだからよー、別にいいだろう?』
『ルナさん、ハイネさんがミーアさんに憑いていても大丈夫だと思いますし、とりあえず今は・・』
「ニコルがそう言うなら・・・まぁ。
ハイネ、絶対に変な事しちゃ駄目よ?」
『分かってるって』
「おいお前、さっきから何ミーア様覗き見しながらぶつぶつ言ってんだい?」「ストーカーかぁ〜?」
ヒルダとマーズが絡んでくる。
「別に・・・・じゃあ私はこれで」
「待ちな!ミーア様を覗き見といてただで帰ろうなんて思ってないだろうね?」「ああん?分かってんのかこらぁ?」
「(なにこいつら・・・)・・・ははは、それじゃー」
ルナはダッシュで逃げて行った。
「ちっ!怪しい奴だね!」「ストーカーだったら俺がただじゃおかねーぜ!さっ、馬鹿は放って置いて俺たちはミーア様を影から見守ろうぜ!」
ヒルダとマーズはミーアを四六時中影から見守っていた。
76
゛ラクス様の護衛として俺も宇宙クジラ教と戦って来ます。
もし自分が戻らなかった場合はぷるるんしずくさん、どうか貴方にこのサイトをお任せしたい所存です。
今まで本当にありがとうございます。
感謝感激、皆様と共にラクス様の事をゆったり語れた事は自分の宝です。
望むらくは、無事に帰ってまた皆さんとゆったり語れる事を。゛ 投稿者・ぷっちんちゃん さん
「ふう・・」
ラクス様ファンの集うHPに挨拶を書き終えたヘルベルト。
「きっと帰ってくるよ、みんな!」
「お兄ちゃん・・・絶対に帰って来てね!絶対、絶対だよ!!」
「はい、私は絶対帰って来ます。安心してクジラ鍋の準備をして待っていて下さいね」
宇宙へ旅立つオクラと、ヒコスケ達との別れの挨拶。
ヒコスケの母親や、かつてオクラを襲撃した阿呆二人も居る。
「オクラくん・・・・帰って来たら家族みんなで暮らしましょうね」
「はい!」
「この親子の事は俺達に任せろ。
これでも元連合軍人だからな・・・・・留守は安心しな!」
「はい、安心してお任せします!」
「お兄ちゃん・・」
「ヒコスケくん・・・・・帰って来たら、シンさんとお話しに行きましょう」
「・・・うん!」
「ヒコスケ達との別れは済んだのか?」
「シャムスさん・・・・いえ、別れではなく、行って来ますの挨拶をして来ました」
「同じじゃねーか」
「同じじゃないですよ〜」
「同じだろ」
「違いますー!」
「けっ・・・・まあとりあえず、俺が必ずただいまは言わせてやるから安心しな」
「シャムスさん・・・はい!」
「けっ・・・・・ん?
オクラ、お前髪の毛ちょっと伸びたんじゃねーか?」
「ん?そうでしょうか?」
枯れた大地に生えていた芝生は何時の間にか青々とした草原となっていた。
77
「・・・」
『自分と同じ二次元ロリコンが居て本当によかったと思います。
彼に憑いているだけでアニメが必ず見られる上に、彼が描いたロリキャラは最高ですから』
探し出したダルシムは変態ロリコンホシノに憑いていた。
類は友を呼ぶ、変態は確かに変態を呼んだ。
『ダルシムさん・・本当にホシノさんに憑いて一緒に戦場へ行く積もりなんですか?』
「私・・ここに残る積もりなんだけど、
あんた一人だけ戦場へ行かせるのは・・・その、ちょっと」
『大丈夫です、私もう死んでますから』
「・・」
『本当に大丈夫です・・・(ましまろのOVA最終巻を見た自分とホシノにはまず敵はいないですから)』
「もうそろそろ行くんだね」
「ああ」
各自が挨拶を済ませる中スウェンも、ソルやDSSD職員達と出撃前の会話をしていた。
「スウェン・・・どうか、絶対に無事で帰って来て」
「・・・」
「スウェン?」
「・・自分でも自分の気持ちがよく分からないが、最後だからお前達に言っておきたい」
「何?」
「・・・セレーネを死なせてしまって、本当にすまなかった。
俺に、あいつが犠牲になってまで生き残る価値があったか、今でも疑問に思う事がある。
だが、それでもあいつが救ってくれた命なら、
その命で生きて行けるなら、俺は星を目指したい。今の俺には、まだそれしかはっきりと言える事がない」
「スウェン・・」
「ここでこうしてお前達と関わっていて、自分ではよく分からない気持ちがずっと胸の中に渦巻いている。
分からない、分からないがもしかしたら・・・・・俺は、星を求めようとするお前達が、好き、なのかもしれない」
「・・」
「必ずDSSDを取り返す。
だから、その時もしよければ、帰って来たら俺もDSSDに・・」
「ああ!もちろんだよ!一緒に星を目指そう!」
「・・ありがとう」
「スウェン、星が君を守ってくれるさ・・・きっと!」
「ついに来たか!俺の、ヴェルデバスター!!」
「よかったねー」棒読み
遂にシャムスの目の前へと姿を表したヴェルデバスター。
大喜びのシャムスを複雑な顔をしてミューディーが見ている。早速シャムスが試乗。
「オリジナルと大差は無さそうだな。
ん?PS装甲のスイッチが無いな・・・・そうか、トランスフェイズ装甲って奴だからスイッチが無いんだな?」
「・・」
「ん?何だか動きが軽いな」
「き、きっと改良されてるんじゃないかなー(プラスチックだからよ・・)」
78
「ミューディー」
「大佐、何よ?」
「その、借金とかその、あれだな」
「・・・同情ならいらないわ」
「いや、そうじゃなくて、
その、今までのお詫びも兼ねて、帰って来たらお前の借金全部俺が払ってやろうかなって、な」
「何が目的なの?」
「いや、本当にただお詫びとして
「嘘よ!有り得ないわ!引き篭もりニートの屑が居る世の中でそんな都合が良い事なんてある訳無いじゃない!
目的は何?私の借金を返す振りしてもっと増やす気?騙されないわ!」
「世の中そんなに悪い奴ばかりじゃ
「悪い奴ばかりよ!あんたはあいつ等(ヒルダとマーズ)を知らないからそんな事言えるのよ!」
「(ミューディーが、詐欺に遭って全てが信じられなくなった人みたいな奴に・・)・・・まあ、帰ってから話そう」
戦いから帰還したシン。
一部の者達から「お前が出てどうする!」「これから宇宙に行くというのに、エース格のお前が疲れて如何する!」と怒られた。
説教の後、疲れた顔で飲み物を摂りながら座っていると白衣を着た一人の女性がシンの元へやって来た。
「シン・アスカ君ですね?」
「・・?なにか?」
「すぐに来て下さい、ステラちゃんが大変なんです!」
「ステラ・・・へ!?ス、ステラに何か!?」
「僕達何時までここに閉じ込められるんだろう?」
「ザフトの方は如何なってるんだろう?」
月基地の数室に纏めて幽閉されているミネルバクルー達。
部屋にある程度の設備が整っているとはいえずっと閉じ込められたままで、こうずっと幽閉されたままだとおかしくなりそうだ。
「誰か・・・誰か助けて」
「アーサー、今まで反抗していた所の一部が我々に降伏すると言って来ました」
「そうか、賢明な判断だ」
レクイエムによって次々に反抗勢力が撃たれた事により、まだ無事な反抗勢力の一部が恐れてDSSDに降伏した。
降伏した元反抗勢力がゲリラ部隊と協力する等、事態はアーサー達に取って有利な方向へ進んでいた。
「よし、次はオーブを撃つ。
中継ステーションの部隊に連絡してホールを所定の位置に移動させるんだ」
「了解しました」
79
「ここです!」
女に連れられてスカンジナビアの医療施設へと向かったシン。すると
「いや゛ーーー!!シンいない!!シン!!シンーーーーー!!!!」
部屋の中を無茶苦茶にし、取り押さえようとする看護士達を振り払って大暴れする、大泣きのステラが居た。
「シンー!!!どこいったの?シンー!」
ステラは泣きながらシンの名を呼び続けていた。
「ステラ・・」
「ずっと何とか押し止めようとしていたのですが・・・・それがいけなかったのかもしれません。
抑圧された気持ちが爆発して如何にも出来なくなってしまったのです」
「・・」
「ステラちゃんは貴方にずっと会いたがっていました。
でも、私共は貴方が会いに来る事は無いだろうと、会うべきではないだろうと考えて、
今までステラちゃんに我慢するよう言い聞かせて来ました。
ですが・・・それは間違いだったのかもしれません。
あの子に取っての貴方は、私達が考えるよりずっと大切な、掛け替えの無い存在だったんだと思います。
シン君・・・・どうか、あの子に声を聞かせてあげてくれませんか?」
「・・・ステラ」
シンはゆっくりとステラの居る病室へと歩み寄り、そしてステラに向けて声を掛けた。
「ステラ」
「うあ゛ーーー!!・・・・・・あ・・・?シン・・・・シン!?シンー!!!」
ステラはシンを見ると一瞬で笑顔になり、シンの胸へと思い切り飛び込んで来た。
「うわ!ス、ステラ・・」
「シンー!シンー!!」
「ステラ・・・・・会いに、来たよ」
「シン!ステラずっと会いたかったの!シンぜんぜんこないからずっと待ってたの!」
「ごめんね・・・全然来られなくて・・本当にごめんよ」
「ううん、いいの・・・だって今きれくれたの。シン私のところにきてくれた・・・・シン、大好き!」
「ステラ・・」
「シンずっとステラといっしょにいよう!ずっとここにいるの!みんなやさしいの!だからシンもいるの!」
「・・・・・ごめんステラ、俺はここには居られないんだ」
「・・どうして?」
「俺、これからやらなきゃいけない事があるんだ・・・だから」
「じゃあステラ待ってる!シンがやること終わるまで待ってるの!」
「ステラ?」
「だってシンきてくれたもん!ステラに会いにきてくれたもん!だからだいじょうぶ!シン終わるまでステラ待ってる!
だからシン・・・かえってきたらステラとずっといっしょにいて」
「ステラ・・・・・う、うん!分かったよステラ!
俺やる事終わったらちゃんとステラの所に帰って来るから、そしたら一緒に暮らそう!」
「うん!」
゛絶対に許さない・・・・お前も、二度と大切な物を手に出来ないようにしてやる!!゛
゛二度と戻れないようにしてやる!゛
「・・・(絶対に帰って来る・・・・・たとえ何があっても、必ず・・!)」
80
「中継ステーションに動きがあり、移動予測地点から計算すると次の目標はオーブだと、上から連絡がありました。
連合、ザフトの協力部隊がステーション移動の妨害に当たっているとの事ですが、恐らく抑え切れません」
深刻な面持ちで上からの情報を伝えるラクス。
遂にレクイエムの標的としてオーブが狙われたのだ。
「カガリ様、全軍の出撃準備完了しました!
連合の各基地の方も既に準備を終えて出撃し始めたとの事です!」
「分かった。オーブ全軍、宇宙へ出撃を開始する!各艦順次宇宙へと打ち上げる!」
「本当に大丈夫なの?だってキラ・・」
「心配しないで、ミリアリア。僕、もう大丈夫だから」
キラの何の曇も無い顔、それを見ていると本当に大丈夫なのだと思えてしまう。
「・・・無理だけはしないで」
「うん」
キラはAAの、ストライク(ルージュ)のパイロットとして搭乗する。
迷いは無い、どうしてもやりたい事がある。けど、一つだけ気になっている事があった。
アスランと、まだ何もちゃんと話せてない事・・。
出撃すると聞いて急いでAAの所まで戻って来たシン。
急いで乗り込もうとしたのだが呼び止められる。
「シン!」
「・・・ルナ」
「シン・・・・やっと会えたね・・。
ずっと、ちゃんと会って話しがしたかったの」
「ごめん・・もう行かなくちゃ」
「・・・っ!待って!」
シンの腕を痛いくらい握り締めて引き止める。
「ル、ルナ?」
「シン・・・・・貴方に、女の子の霊が憑いてる」
「・・へ?」
「その子・・もしかして」
「・・な、何言ってるんだよ?お、俺もう行くから」
「待っ・・・・うっ!」
急に膝を折って倒れ込むルナ。
「ルナ!?お、おい!如何したんだよルナ!?」
「・・・・」
「ルナ?」
「お兄・・ちゃん」
「え?」
シンに憑く少女、マユの霊がルナへと憑依した。
81
何故だか分からないけどシンには分かった。
ルナの中から溢れ出る懐かしい感じ、間違う訳の無い温もり、マユの存在を。
ルナの体に薄っすら重なって見える、大切な、大好きな妹の姿。
「マ・・ユ・・・マユ!?」
「お兄ちゃん・・」
「本当にマユなのか!?」
「・・・お兄ちゃん、どうして」
「マユー!俺、ずっとお前に・・・・・マユ、俺・・」
「どうしてお兄ちゃんが戦争をしているの?」
「・・・・・へ?」
「・・・ひどいよ」
「マ・・」
ルナの体は淡い光に包まれ、
そして、その中からマユの霊が抜け出て、光の粒となって消えて行った。
「・・・」
「あ・・・シン・・・・ごめん、私・・」
「・・ルナ、ありがとう」
「え?」
「マユに会わせてくれたんだね・・・」
「シン・・」
「本当に、ありがとう・・・・・これで俺は、もう何も恐れずに戦える」
「何言ってるの?シン?」
シンはポケットから形見の携帯を取り出し、ルナの手へと持たせた。
「これ・・・俺が持っていても仕方ないから・・もしよかったらルナが預かってて」
「ちょっ、シン」
「さよなら」
シンはAAの中へと消えて行った。
しばらくするとAAは宇宙へと向け打ち出され、地上には呆然と立ち尽くすルナが取り残された。
「・・・」
『ルナさん・・』
駐留オーブから次々に打ち上げられて行く戦艦達。
ガーディールーも打ち上げられ戦線に加わる。
ラクスは最後の艦で上がる予定で、宇宙へ上がった後はエターナルに移乗する予定だ。
高性能機はほぼ全てこの戦いに使われるが、インフィニットジャスティスだけは地上に残された。
名目上は手薄になった地上駐留オーブの防衛のため、らしいが、実際の理由は決めたラクスしか知らない。
各地の連合軍基地でも宇宙への出撃が開始され、
宇宙は今まさに最大の戦場へとなりつつあった。
世界の運命を決する最後の戦いが始まる。
勝つのは運命か、自由か、それとも純粋な欲求か。
焔は尽きない。
82
先発の一つであるAA。
宇宙へ上がりザフトらと合流して戦闘態勢を取る。
「そうか・・アスランは来なかったか」
「残念そうだな、イザーク」
「うるさいディアッカ!
ふん・・・戦場にも戻れない腰抜けに用は無い(アスラン・・)」
「ジュール隊長大変です!
ステーションを抑えられず、予想された位置までホールが!!」
「何!?」
「嘘だろ!?なんでこんなに早く!」
「ホールがオーブを撃てる位置に付いたそうよ!」
「艦長!前方に無数のMSを確認!これは・・・ジンです!」
「艦長!早く出撃させてくれ!」
「シン君!」
「このまま何も出来ないまま撃たれるなんて・・そんなのは絶対に嫌だ!」
「・・・分かったわ。
MS全機発進!前方の敵部隊を排除する!」
「了解!」
「全く馬鹿だなぁオーブは。
降伏さえすればエロゲを廃棄するだけで済んだのに」
「アーサー、ステーションのポジション問題ありません」
「じゃあ、すぐに発射!」
「装備はシラヌイを選択。アカツキ、シン機、発進どうぞ!」
「シン・アスカ、アカツキ、行きます!」
「続いてストライク発進準備。装備はオオワシを選択。ストライク、キラ機、発進どうぞ!・・・気を付けて」
「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」
「続いてストライクE発進準備。装備はノワールを選択。ストライクE、ムウ機、発進どうぞ!」
「ムウ・ラ・フラガ、ストライクノワール、行くぜ!」
AAより発進されるMS。
前方より迫り来る数十倍もの敵に向かって突き進む。
ムラサメ隊のゴウ、イケヤ、ニシザワらも出撃し、大量のジンを相手にする。
「・・くっ!」
相変わらず体が振るえるキラ、しかし以前のような激しい物ではなく、MSの操縦にも支障は無い。
「キラ、大丈夫か?無理だと思ったらすぐに下がるんだ!」
「大丈夫だよシン。
それよりも気を付けて、君の機体とジンのマシンガンは相性が悪過ぎる」
83
「超エネルギー体確認!
これは・・・月面砲が発射されました!」
「なんだって!?」
ズギューーーーーン
「早くステーションを!」
「駄目だ!間に合わない!!!」
ステーションを攻撃に向かおうとする協力部隊もAAも、まだステーション自体に辿り着いてさえいない。
レクイエムより発射されたビームは幾つものステーションを通過し、
そして、最後の一つを通って目標に向かって撃ち出された。
「やめろおおおおおおおお!!!」
ズギャーーーーーーーーーーン
砲撃は直撃し、着弾点にあった物は跡形も無く消滅した。
撃破が確認され、レクイエムコントロールに報告が入る。
「オーブ本島、直撃しました」
「ふははははは、やったぞ!
・・・・・オーブ本島?」
「はい」
「違う!今奴等が本拠地にしているのはスカンジナビアだ!」
「すみません、間違えました」
「・・まあ、間違えてしまったのなら仕方ないな。間違いは誰にでもある物だ。
まあ君もそう気を落さないで。
そうだ!元気付けも兼ねて今度君に私の作った同人誌゛ミラクルミズホちゃん゛をあげよう!」
「いりませんよ、そんな物。
正直オタクとか気持ち悪いですから、命令以外に声掛けない下さい」
「あ・・・ごめんね、そうだよね、オタク気持ち悪いよね、はは・・」
「シン君、撃たれたのはオーブ本島よ」
「オーブ本島?」
「よかったわ、スカンジナビアが撃たれたと思ってびっくりしちゃった」
「艦長・・・よくなんかないよ」
オーブ本島にはオーブを復興させようと頑張っていた人達が居た。
ただ復興の手助けがしたくて集まってくれた人も沢山居たのだ。
「くそっ!あいつら!」
「シン・・・・!シン、気を付けて!」
AA部隊はジンの大群に突っ込み本格的な戦闘が開始された。
何十ものマシンガン、バズーカがアカツキを襲い、シンはそれを死に物狂いで避ける。
「くっ、こいつら・・・・この!」
空間戦闘仕様装備シラヌイに装備されたドラグーンがシンの操作により展開、黄金のビットがジンの間を走り
「喰らえー!!」
無数のビームを発射して一気にジンを撃破する。
アーサーが悪党としての風格が・・・
だが、それが良いww
84
駐留オーブの方ではまだ艦の打ち上げが続いていた。
激しい爆音がひんやりとした空気を震わせ、難民キャンプで蹲る人々の耳へと喧しく届く。
打ち上げの轟音を聞きつけ建物から出て来たアスランの目に、夜の闇へと消えて行く艦達が映った。
「・・っ」
アスランは包帯を巻いた体で打ち上げ場の近くまで行き、そこでキラ達が既に宇宙へと出撃して行った事を知った。
「・・(行ったのか・・・でも、結局俺はまたこんな風に何も・・)」
「シン!」
「くそっ・・・こいつら!!」
ジンの連携攻撃によってAAらから一機だけ分散されてしまうアカツキ。
AAが十ならジンの数は百、持ちこたえられてるだけ奇跡の状況。
マシンガンの雨に追い立てられてアカツキだけどんどん航路を逸れる。
「シン君!」
「俺に構うな!!AAはこのまま中継コロニーに行くんだ!」
「駄目だ、君!その機体じゃ!」
「いいから行け、キラ!次撃たれてからじゃ遅いんだ!」
「シン!!」
「・・ラクス」
アスランはさ迷う中仮設MSハンガーで、まだ宇宙へ上がらずにいたラクスを見つけた。
ラクスは目の前にあるインフィニットジャスティスを見上げ、何か物思いに耽っているようだった。
アスランに気付いて顔を向ける。
「アスラン・・お体の方はもうよろしいのですか?」
「・・・君も行くのか?」
「はい」
「君が行って何になる・・・・君は存在そのものが皆に必要とされているんだ・・・、
ここで大人しくしているべきじゃないのか?」
「そうなのかもしれません。
ですが、私は宇宙へ行ってキラ達と共に戦おうと思います」
「何も出来ないのにか?」
「出来る事をします」
「何が出来るって言うんだ・・」
アスランは自分に向けての皮肉を込めて吐き捨てる。
もどかしさと無力さがアスランの心を苛み、いらいらが顔歪ませる。
「貴方はこれから如何成されるのですか?」
「どう・・?何を・・・、どうせ俺には何も出来ない」
「何も出来ない・・そう思うのなら、何故貴方は今ここへやって来たのですか?
気になったから、ではないのですか?」
「何が言いたい?」
「・・・」
85
後続の艦隊が次々合流し、各自中継ステーションに向かって進む同盟艦隊。
幾つかに分散したそれを、待ち構えていたコーディネイター部隊が迎撃する。
同盟ザフト軍とテログループの、コーディネイター同士の戦いも当然起こり、
各員複雑な心境で敵を撃つ。
月を乗っ取って手に入れたザムザザーやダガーを駆るコーディネイター部隊も居り、
同盟連合部隊と同型機同士でぶつかる光景もある。
同型機同士なため、たとえ信号を確認出来るとはいえ、味方内で如何しても誤射は出てしまう。
戦場はかなり混乱している。
ただ一つ言える事は、テロ部隊の方が圧倒的に数が多く優勢という事だった。
殆ど旧式とはいえ、千を優に超える超大量部隊は圧倒的だった。
「・・っ(くそっ!)」
苛立つアスラン。
ラクスを鋭い眼差しで睨み、そして横のジャスティスへと視線を移した。
「スーパージャスティスか・・」
「いえ、インフィニットジャスティスです・・」
「これは・・・俺が使う事を考えて君が作ったのか?」
「はい」
「っ・・・・、君も、俺は戦士でしか無いと、
ただ誰かの下に付いて使われるしかない道具なのだと、そう言いたいのか・・・?」
「・・・はい」
「くっ・・・」
「貴方がそう自分で思うのならきっとそうなのでしょう。
自分の役割はそうで、それしか出来ないのだと、自分で認めてしまったら人はそれしか出来ないのです。
・・けれど、だからこそ自分がそうでは無いと思う事が出来れば、人は何度でも変われるのです」
「!?」
「私は・・・これが自分の役割だと思ったからまたラクス・クラインとして表舞台へと出ようとした訳ではありません。
歌を歌う事も、今また戦場へと身を投じようとする事も、私が自分でそうしたいと思ったからなのです」
「・・」
「傷つき何かを失ったであろう今の貴方に、目の前のこの゛力゛は残酷でしかないでしょう。
私は、これを貴方にあてがおうとは正直思えません。ですが、キラは」
シンがアスランを助けに行き、
地上でキラと、フリーダムとジャスティスを目の前にして話していた時。
「まだ分からないけど、アスランが受け取ってくれると思っていてもいいんじゃないかな」
「でも、今のアスランには・・・」
「うん、そうも思うけどね。でも、アスランは・・・・・、
自分で何かしたいって思った時に何も出来ないとものすごく辛くなる人だから・・・。
アスランは自分で何とかしたい、誰かの力に成りたいって、
そうやって誰よりも進んで何かに立向かおうするから」
「キラ・・・・アスランの事、今も本当に信じているのですか?」
「うん」
「あれだけ傷付けられてもですか?」
「うん・・・、だって、あれはしょうがないよ・・・・・アスランもきっと一杯一杯だったんだと思う。
アスランて一つの事に真剣になっちゃうと回りが見えなくなって、すごい事しちゃうから」
「・・正直、私にはアスランを疑う心があります」
86
「うん・・・それはしょうがないと思う。
僕も、アスランは酷い事をしたって、それは本当に思うから。でも・・それでも僕はアスランを信じてるんだ」
「何故そこまでアスランを信じる事が出来るのですか?
幼い頃からのお友達だからですか?」
「友達・・・・そうかもね・・だからかな?
でも、ただの友達って言うには大切過ぎる友達って言うか・・・。
もしかしたら本当に心の底から信じている友達はアスランだけなのかもしれない」
「アスランが一番、と?」
「・・・・・僕には、小さい頃から回りに沢山の人が居たんだ。
皆僕が何でも上手く出来るからそれをすごいって言って、羨ましがって。
皆僕に力が有って、僕も力を貸すからすごく優しくしてくれてた。
けど、けどね・・・、僕はそれがあまり嬉しくなかったんだ。
僕の周りにはいつも人が居たけど、皆が見ていたのは僕の力ばかりだったんだ。
何か力が必要な時だけ呼び出されて、それが終わったら放って置かれて・・・一緒に楽しく何かしたりとか、そういうのは無くて。
同級生達も゛これやって゛、゛こういう風に君はして゛ってそればかりで、
僕も皆の事考えると断れなくて、いつも愛想笑いばかりしてて・・・。
こういう言い方はあれだけど、みんな僕に゛役割゛を押し付けてた。
便利だからね・・・僕の゛力゛は。
それは大きくなってからも変わらなかったよ」
「キラ・・・」
「でもアスランだけは違ったんだ。
アスランだけは心から一緒に笑い合う事が出来た、アスランだけは僕に゛力゛を求めなかったんだ。
いつも本当にただ、一緒に何か作って笑い合ったり泥まみれになって怒られたりして、本当に楽しかった。
皆僕に何でも作ってって色々持って来たけど、
アスランは逆に自分で色々作って僕にプレゼントしてくれて、作り方も一生懸命教えてくれてたんだ。
僕を対等に見ていてくれたのはアスランだけだったって、今思い返すとそう思うよ。
周りの人達は゛何も出来ないアスランを助けてあげてるんだね゛って言ってたけど、そんな事なかった。
本当に助けられていたのは僕の方だったから・・。
もしアスランが居なかったら、きっと僕は人が嫌いになって引き篭もりになっていたと思う。
アスランが居なかったら、ミリィ達と友達になる事も出来なかったと思う。
アスランは、僕の心に大切な物をくれた大切な友達なんだ。
・・・・・でも、アスランは僕の事嫌いになっちゃったのかな?
アスランに・・・僕は見下してる、利用してるだけだって言われた。
言われた時は全然意味が分からなかったけど、
一人になって考えてみると本当にそうなのかもしれないって思ったんだ。
アスランの言う通り、僕は他人を見下して思い上がってたのかもしれない。
アスランを見下して利用していたのかもしれない。
自分の事よく分かってなかったのかもしれない・・・。
でも、そうだとしても僕は、やっぱりアスランとこのまま別れたままなんて嫌なんだ。
僕がどんな人間で、アスランがどんな事を考えていても・・・・・一つだけ、絶対に変わらない気持ちがあるから。
僕は、僕はアスランが大好きだ!!!」
87
「キラァ・・」
さっきまでいらいらしてた顔が切なそうな表情へと変わるアスラン。
ずっと知らなかったキラの気持ち。
いつもキラの言葉ばかりに気を取られていて、彼の本当の思いを考える事すら出来なかった。
キラは、自分の事を見ていてくれたのだ。
「力はただ力です。
そして確かに、貴方は誰かに使われるだけの戦士なのかもしれませんが、
キラという大切な友がいつも思っていてくれる・・・・゛アスラン゛でしょう?
きっと、そういう事なのですよ」
「・・・」
「うあっ!」
「キラ君!やっぱり駄目よ!早く戻って!」
「早く戻れキラ!そんな動きじゃ落されるぞ!」
「ムウさん・・・・でも、シンが・・。
それに今戦わないとサイを止める事なんて・・・・・地球だって!
(あそこにはアスランが残っているんだ・・・絶対に撃たせるもんか!!)」
「粒子ビーム砲ジン・・・・駄目だ避けろキラ!!」
「(逃げちゃ駄目だ!)うおぉー!!!」
「キラ!?」
遠くよりストライクがビームを受ける姿見ていたシン。
ビームは、咄嗟に機体を傾けてバックパックのヤタノカガミで反射したようだが・・・
果たして粒子ビームに対してヤタノカガミは耐性があるのか?下手に反射して装甲に異常が出ないだろうか?
「キラ・・・うっ!」
他人の事を心配している暇は無い。
完全にジンに良い様に追い立てられて完全に敵の思惑通りだ。
単機で大量部隊に囲まれたら後は嬲殺しにされるだけだ。
「くそっ・・・こんな所で俺は」
SEEDを使えば、とも思ったが、如何しても使う事を躊躇ってしまう。
しかし今使わなければ生き残れそうにない。
「こんちきしょうが・・」
88
「・・・」
無言で暗闇の道をよたよたと進むアスラン。
キラが信じてくれている、それだけは分かった。けど・・・それでも自分は何も出来ない。
宛ても無く彷徨っていると向こうからルナマリアが来た。
「やっと見つけたわ・・」
「ルナマリアか・・」
「とりあえず・・・」
ぱぁん ぱしんぱしんぱしんばばばばばばばばばばばばばっばばばばばばばばっしん
ルナの平手が炸裂、アスランの頬を往復びんたしまくった。
「・・痛い」
「これで・・・許す積もりは全然無いけど、今は取り合えずこれで我慢してあげるわ
(後で賠償金請求したり地下室に監禁して数ヶ月拷問に掛けたりするけどね)」
「・・」
「アスラン・・・あなたに会わせたい人が居るの」
「・・今は放って置いてくれないか?
今さら俺に用がある奴なんて居ないだろう・・・・・、居たとしても俺を殺したいと言う奴くらいだろ」
「何卑屈になってるのよ。
まあ、とにかくこの人が言う事聞いて。・・・さ、入って」
「ルナマリア?何を言って・・」
アスランが鬱そうな顔をルナに向けると、何とルナの体の周りに変なオーラが沸き出ていた。
「ル・・・ルナマリア?
だ、大丈夫か?湯気が出ているぞ?」
「湯気じゃない!・・・って、っと、あ・・・・・・」
ルナの中に何かが入り込み、外に出る意識がルナと入れ替わる。
「ルナマリア?おい、大丈夫なのか?
氷枕持ってくるか?エアコンの効いた部屋で休むか?・・・・・・ルナマリア?」
「・・・・アスラン」
「え?」
「ずっと、お前と話がしたかった」
ルナに薄っすらと重なる男の影。
アスランの目に映る、よく知る人物の影。
アスランの父親、パトリックの影が目の前に浮かんだ。
89
「父・・上?」
震えるアスラン。
目の前に確かにそこに見えるのは、今亡き父親の、パトリックの姿だった。
「アスラン・・・すまなかった。
お前をこんなに苦しめてしまって」
「父上・・・え?な・・」
「小さい頃から何もしてやれず、お前が大きく立派になった後も重荷にしかなれなくて・・・。
お前に楽しく、笑っていて欲しかったのだ。
お前が幸せになれるのなら何でもすると・・・・・そう思っていたはずだった。
だが、結局はお前に辛い思いをさせただけで、お前をこんなにもぼろぼろにしてしまった」
「何を・・・・父上?何を言っているのですか?
父上!父上なんですよね!?」
「・・・・アスラン、私は悪い父親だった。
お前に何もしてやれなかった、お前の思いを裏切ってしまった。
誰の助けも無く、自身の力で這い上がったお前を・・・・私は汚してしまった。
私という存在があったせいでお前はそれを気負って、苦しんでいただろう?
私が愚かだったせいでお前は笑えなかったのだろう?
私は・・・・・・本当に愚かだった、本当にすまなかった・・・。
でも、これだけは信じて欲しい。
私はお前の幸せを願っていた・・・・・お前を、愛していた」
「そんな・・・父上」
「もう父上等と呼んではいけない。
私にお前の父親を名乗る資格は無いのだ・・。
・・・本当は、自分の力で立派に大きく強く育ったお前を、私の前までやって来てくれたお前を、
抱きしめてやりたかった、大手を振って喜んでやりたかった。
けど、ずっとお前を放置していた私には出来なかった・・・・・・私はお前の父親失格なのだからな。
都合良い時だけ父親面等出来なかった・・・。
何より、そのお前の力はお前の物だから・・・・・私が喜ぶ事で捻じ曲げてはいけない。
・・・・アスラン、本当に済まなかった・・・お前の母を守る事も、お前自身を守る事も出来なくて、本当にすまなかった。
どうか、私の事を全て捨てて、お前はお前として強く生きて欲しい」
「・・・違う、違うんです、父上!」
「アスラン?」
「俺が強くなれたのは!一人ぼっちでも這い上がって来れたのは!父上が居てくれたからなんです!!
傍に居なくても、父上がずっと上で待っていてくれるって信じていたから!
父上が何時か必ず俺を認めてくれると信じていたから!だから俺は一人でも負けずに生きて来れたんです!」
「アスラン・・」
「俺はただ・・・父上に褒めて欲しくて頑張ってたんです・・」
90
涙を滲ませて、今までずっと言いたかった事を父親へと伝えたアスラン。
涙が瞼に溜まり、溢れ出て頬を伝って行く。
「そうか・・・そうだったのか」
「父上・・・俺を・・僕を褒めて下さい。
父上・・・僕・・・・・立派になったでしょう?」
「・・・ああ!・・ひっく・・・・・そうだな・・・・お前は本当に立派になった。
お前は、本当によく頑張ったな!
偉いぞ、アスラン!・・・・・お前は・・・私の自慢の・・・・・とても大切な息子だ!」
「・・・ぐすっ・・・・・・父上!大好きです!」
「ああ・・・・・、よしよし」
パトリックはアスランの頭を優しく撫で、そしてにっこりと微笑んだ。
「アスラン、お前は強い、誰よりも、何よりもだ。
だけど、お前にだって出来ない事はある・・・・・・
だから力を貸してもらえ、お前の事を大切に思ってくれる仲間の力を。お前は、一人ではないのだからな」
「・・・はい!」
「アスラン・・・・・可愛い私の息子よ!」
「父上?」
辺りが激しい、しかし優しい光に包まれ、
そしてルナの体から淡い緑色の粒が天へと登り、消えて行った。
「父上・・・父上!!」
アスランはパトリックの抜け出た、ルナの体へと抱き付き涙を流す。
「・・・あ・・・・アスラン」
「父上!!父上ぇぇ!!!」
呼び続け涙を流すアスランに返事をしてくれる父はもう居ない。
「父上・・・父上ぇ」
「アスラン・・・」
ルナは抱き付き泣き続けるアスランの頭をそっと撫で、よしよしと背中を叩いてあげた。
「本当にすまなかった、ルナマリア・・・今まで本当に」
「貴方のお父さんの空回りのせいだもの・・・恨んでないわ(というのは嘘だけど・・・まあ、反省してるし)」
「いや、俺のせいだ・・・。
俺は確かに自分の意思で君を傷つけ、殺そうとしたんだ・・・・・俺は、君を裏切った」
「・・」
「君に何をされてもいいと思っている・・・・だけど」
「分かってるわよ・・・行きなさい」
「ルナマリア・・」
「仕返しは後にしてあげるから、さっさと行きなさい!アスラン・ザラ!」
「・・・・・ああ!」
91
何も無いと思っていた。
自分は何時も一人ぼっちの除け者なのだと。
でも違ったんだ、俺は一人じゃない、一人なんかじゃ決してない!
ずっと誰かに必要とされたくて、自分を見て欲しくて這いずり回っていたけど、
自分が本当に欲しかった物は何時も近くにあったんだ。
近すぎて気付かなかっただけど、本当はずっと前にもう手に入れていたのだ!
俺は、仲間が欲しかった!
俺と笑い合ってくれる仲間が!共に泣いてくれる仲間が!
俺は、それだけのために生きられる!!
いや、それだけのためにこそ生きたい!!
それがきっと・・・
゛トリィ!゛
「ん?あ、トリィか・・・・、
そうか、一緒に行ってくれるのか・・・・・分かった!お前の力を貸してくれ!!」
゛トットトトットトリリィー!゛
「ぐあっ!!!」
アカツキの腹部にマシンガンが数発当たって装甲表面が爆発、大きく揺さぶられてシンは吐きそうになる。
「くそ・・・くそぉ!!」
「ムウさん!!」
「うおっ!!」
「キラ君一端戻って!ムウもエネルギーが!」
「戻れって言ったって・・・・うあっ!」
「ムラサメ隊、ムウさんを援護して下さい!」
「キラ君!!」
「僕は・・・・こんな所で皆を死なせたくないっ!!!」
パァァァァン
「うおおおおおおお!!!」
キラのSEEDが発動、一気に機動力が増してジンを翻弄、素早いライフル攻撃で一気に十機を撃破する。
「やらせるもんかー!!!うおお!!うおおおおおおおおお!!!!!」
92
ラクスを乗せた最後の艦は既に打ち上げ済みだった、
インフィニットジャスティスだけは彼女の計らいによって残されていた。
それも、全て最初から読んでいたのか、単機で大気圏突破するための特殊ブースター装備状態で。
「・・・ジャスティス」
゛僕の心に大切な物をくれた大切な友達なんだ゛
゛さっさと行きなさい!アスラン・ザラ!゛
゛今の俺で居られるのはあんたのお陰なんだ゛
゛お前は、一人ではないのだからな゛
「俺は・・・」
゛僕はアスランが大好きだ!!゛
゛本当はあんたの事いつも見てた゛
゛アスラン・・・・・可愛い私の息子よ!゛
「X19Aインフィニットジャスティス、システム起動、発進どうぞ!」
「゛アスラン・ザラ゛だ!!ジャスティス、出る!!!」
誰にも阻む事の出来ない無限の正義が天空を貫いて飛び立った。
種運命 選ばれなかった未来「明かされる真実(アスラン、キラの本当の気持ち、そして、シンVS星を見つめる者)」終わり
やった!ずっと書きたかったアスラン復活をやっと書けたぞ!!こんなに嬉しい事は無い!
読んでくれる皆さんが居てくれるお陰です!アスランをありがとう!
書き切れもしないのに書くキャラ増やしまくって、オリキャラもただの変態化。
アニメで明かされなかった謎を解き明かすという目的で、SEEDの理由、宇宙クジラを盛り込んだのですが、
完全に超展開SF意外の何物でもなくなっていまいました。
終盤でギャグ要素を居れづらいですが、シリアスになり過ぎないよう書いて行こうと思います。
筆休め編「ホシを見つめる者」
ここはニューヨークの一角で、中途半端に廃れた中規模の街。
道路にはMSジャンキーやオタクホームレスが溢れ返り、不況の荒波に飲まれた人々が悲鳴を上げている。
そんな街の警察署、通称DSSD署。
「セレーネ署長!
痛いのなんて幻だよん!隊のスウェン警部がホシを追跡中との事です!すぐに僕も応援に!」
「待ってソル!
貴方にはもっと重要な任務が有るわ!」
「え?そ、それは一体」
「ビール切れたから箱買いしてきて〜。あっ、モルツよ、モルツ!」
「パシリデスカ・・」
「こちらスウェン。ホシは以前として街中心部へと向かっている」
「こちらシャムス。了解したぜ。すぐに先回りして例の店に行っている!」
「こちらミューディー。こっちでもホシを確認よ。西側から見失わないように追跡するわ!」
DSSDで最も優秀な部隊゛痛いのなんて幻だよん!゛のスウェン、シャムス、ミューディー。
現在違法物を所持しているという人物を監視し、物の取引現場を取り押さえようと考えている。
ホシは現在街中心部へと向かっており、そこには奴のよく行く店がある。
恐らくはそこが取引現場だ。
「こちらミューディー!大変よ!ホシが謎の人物と接触したわ!」
「こちらスウェン。すぐに確認する!」
「いや〜今日は良いお天気ですねー」
「そうですね〜はははははw」
「何を話しているのかしら?」
「恐らく例の物のディーラーか何かだろう。
こんな街中で堂々と打ち合わせをするとは、俺達警察を舐めているのだろう」
「許せないわ!くそっ!あんな下品そうに笑って・・・・きっと私達警察を嘲笑っているのね!」
「此間可愛い猫ちゃんが居ましてね〜。
名前はノワールちゃんと言って、これがまたスマートな黒猫ちゃんでしてね〜」
「うちの方も此間ブルちゃんという豚猫ちゃんを見ましたよ〜。隣の蟇蛙のヴェルデちゃんを丸呑みにしてましたよ〜」
「あははははw」
「恐ろしい・・・悪魔の笑みだ」
「あいつらの邪悪さが滲み出てるわね!」
「それじゃあまた今度、ヨウランさん」
「はいはい〜それでは〜」
「別れたな・・・恐らく今の会話だけで百億の金が動いたと見て間違い無いだろう」
「腐ってるわね、あいつら!」
ホシはそのままシャムスの待ち構えている店の方へと接近。そのまま店に直行か?
スウェンらがそう思っていた時
ひゅーーーーーーちゅどーん
「うわっ!何だ!?爆弾テロか!?それとも隕石落下か!?」
「違うわ!MSよ!MSがホシの居る所に落下したのよ!!」
MSとは全長五メートル程の人型飛行機で、この時代一家に一機は置いてある物だ。
「ホシは、下敷きにされたのか?」
「いいえ、ホシは残念ながら無事よ。落ちたMS、グーンはちょっと壊れてるみたい。操縦ミスでもしたのかしら?」
「流れるプールで遊ぶ用に開発されたMSを空中仕様で発売したりするからだ。販売会社に抗議の文を送ろう」
「あっ、ホシが動いたわ!」
ホシは墜落したグーンを気にしてちらちら振り返りながらも進み、そして例の店へと辿り着いた。
「入ったわ!」
「よし、シャムスより入電次第、突撃する!」
五分後
「大変だスウェン!ミューディー!早く来てくれ!!」
「シャムス!?」
「う、うわーーー!!」
「シャムス!!くそっ!あいつ等シャムスに危害を!!」
「急いで突入よ!」
シャムスの命の危険を感じてスウェンとミューディーが急いで突入。
扉を開けて銃を構えながら勢いよく入った時、二人の目に飛び込んで来たのは
「ほーら、ジブリールちゃ〜ん!ご飯ですよ〜!」
「レイちゃん!何度も言ってるけどオス猫相手に腰振っちゃいけません!ギルバートちゃんが嫌がってるでしょう!」
大量の猫を世話する店員とホシ、猫に群がられて身動きが取れないシャムスの姿があった。
「・・・よう、スウェン」
「シャムス・・・・・これは?」
「誤報だったみてーだ・・・・・そいつ、アーサー・トラインはただの猫オタクだ。エロゲーとは一切関係無いらしい。あっ!やめろ!引掻くな!」
「あれ?君達も猫ちゃんと遊びに来たんですか?」
「猫専門ペットショップ天国基地へようこそ〜!店長のサイ・アーガイルですー!」
「・・・帰るぞ」
「そうね・・」
「ちょっ!お前等!俺を置いて帰るなー!」
「こらっ!シャムスさんにまで腰振っちゃいけません!本当に困った子ね〜レイちゃんは!」
「こちらソル・・・・・道に迷って現在迷子です・・・至急救助を・・・。
助けて・・・・お酒なんて何所に売ってるか知らないよ〜、誰か迎えに来てよ〜」
任務失敗。
DSSDの損失、ソルを探しに行くのに使ったタクシー代、シャムスの怪我の治療費、スウェンらの張り込み中の食費 終わり
毎度乙です!
>SS本編
次回から最終決戦編か、取り敢えずMSとパイロットの組み合わせは現在のままかな?
>おまけ
冒頭のセレーネとソルのやりとりが、侑子と四月一日みたいで吹いたw
続きがあれば見たいな
あいかわらず速度が速すぎwwwwww
MSとパイロットの組み合わせは基本このままです。
酷い目に遭い過ぎの運命たんにシンやキラを乗せて、今度こそ活躍させてあげたかったんですが別の人が乗ります。
おまけは選ばれry終わったらゆっくり書いてみようかと。
1
アスラン・ザラ、それが俺だ。
俺はアスランであって、アスラン以外の何者にもなれない。
俺は確かにアーサーが言う通り、ただ誰かに使われるしか出来ない戦士なのかもしれないが、
この思だけは・・・仲間を思う激しい情熱だけは誰の物でもない!俺の物だ!!
俺は・・
「アスラン・ザラ!アスラン・ザラだぞ!!」
種運命 選ばれなかった未来「クジラ戦争(連合ザフトオーブ同盟、オタク達VS宇宙クジラ教、DSSD、反ナチュラル組織)」
エターナルへとやっと渡ったラクス。
各自と連絡を取り合い、各々複数の中継ステーション破壊へと動き出す。
「勝負を決めるの数でも早さでもありません、パワーと根性です!
愛しさと切なさと心強さがあればきっと道は開かれます!とりあえずそれくらいは心に持っていて下さい!
じゃないと死にます!」
ガーディールーからファントムペイン三人組、
エターナルからオクラとホシノ、コクシらが、MSに乗って出撃する。
ヒルダ、マーズ、ヘルベルトも出撃するが、ヘルベルトだけ違う機体だ。
「ミューディー・ホルクロフト、ブルデュエル、行くわ!」
「シャムス・コーザ、ヴェルデバスター、行くぜ!」
「スウェン・カル・バヤン、ストライクフリーダム、出る!」
「(ましまろは俺が守る!)ホシノ機、ムラサメ、出る!」「(サイ・・)コクシ機、ムラサメ、出る!」
「オクラ・ホマ・ミキサー、デスティニー、出撃します!」
「ミーア様親衛隊ヒルダ!」「同じくミーア様親衛隊マーズ!」「ピンクムラサメ!」「出撃!」「するよ!」
ピンク色に塗られ、全身にマジックで゛ミーア様大好き!゛と書かれた二機のムラサメが出撃、
ヘルベルトは呆れた様子でそれを見る。
「(あほか・・)こちらヘルベルト、ラクス様・・貴方は俺が守ります!
カオス、出撃する!」
「ミーティア、リフトオフ!」
ラクスの掛け声と共にエターナルよりミーティアユニットが分離、
フリーダムの翼、デスティニーの翼と武器ラックが上方へと可動し、ミーティアとの結合部へと収まって合体した。
「スウェンさん、オクラさん、お二方はミーティアの火力で手当たり次第道を阻む敵部隊を排除して下さい。
一番近いステーションに着き次第、総攻撃でそれを撃破します。
他のステーションへと向かう艦隊を察知して敵は幾らかばらけるとは思いますが、まず一番集まるのは我々の方でしょう。
どうか皆さん、死ぬ気で死なない程度に頑張って下さい!私も死ぬ気で指示をします!」
2
宇宙が史上最も混迷を深めている中、地上では益々力が強くなったルナが耐え切れず地下に閉じこもっていた。
ルナは暗い電灯が照らす地下廊下に座り込んでニコルと話していた。
「ずっとだんまりだったけど、アスランに何も言わなくて本当によかったの?
言ってくれれば私が伝えてあげたのに」
「いえ、いいんです」
「アスランと仲良かったんでしょう?」
「帰って来たら・・・アスランが帰って来たら、その時にお願いします」
「・・そういえば前に貴方の未練っていうか、望みの事聞こうと思ったけど、貴方の望みって何なの?」
「・・・ピアノ、ですね」
「ピアノ?」
「はい・・、アスランにちゃんとしたコンサートホールで僕の演奏を聴いて貰うのが、僕の望みです。
何時か聴いて貰いたいって話して、そのまま死んでしまいましたので・・・」
「そうだったの・・」
「(二次元幼女に萌えるのの何が悪いんだよ!!!)おうらあああ!!!」
ホシノのムラサメが迫るジンを物凄い勢いで撃破、一発も撃ち漏らさずライフルを放つ。
「(本物の幼女に手出してないんだから別にいいだろうがよおおお!!!)死ねやああ!!!」
思いの力が彼の能力を引き出しているのだ。
「(二次元規制したら本物に手を出す奴が出るって言ってるだろうが屑共があああああ!!!)負けるかああああ!!!」
心に溜まりに溜まった物を敵にぶちまけている。
その様子を仲間のコクシが驚いた様子で見ている。
「(すごい・・・きっと本当はサイの事を思っていて、その思いがホシノにこれ程の力を与えているんだ)よし、俺も!」
「(適当にタイトルで選んで有害図書指定とかふざけんな!!!
未成年が成年指定のエロ漫画を違反して持ってた事は不問かよ!!何のための成年指定だよ!!ふざけんなよ!!!)ばろおおお!!!」
ホシノは既にかなり錯乱している。
一方メサイアでは、限られた所ばかりレクイエムで攻撃している事を不審に思ったヤイカがクジラ博士へと通信を繋いでいた。
「クジラ・ハカセ、一体何をしている?
何故あんな如何でもいい所ばかり撃っているんだ?早くナチュラルを全て滅ぼせ!全てだ!」
「全て撃つとは言ってはおらんよ。
反抗勢力を叩いたり、無駄に増えた人口を減らして管理し易くはするが、全て滅ぼす気は無い」
「ふざけるな!話が違うぞ!!」
「君達もナチュラルを完全に支配する事が出来ればそれで満足だろう?
第一全て滅ぼしてしまったら戦後どうやって復興し、生き延びようと言うのだね?
コーディネイターだけで維持出来るとでも本気で考えているのかね?無理だよ、そんな物は。
コーディネイターは確かに優秀ではあるが、神ではないのだからな」
「ふざけるな!」
「ナチュラルを良い様に使ってやればいいだけの話だろう。
君達がナチュラルを支配し、利用する。
君達は恩恵を受け、ナチュラルは君達に必要な物を生産する、生きた機械となればいいだけだ。
憎きナチュラルを意のままに出来るのだぞ?」
「・・・そんな下らない事は如何でもいい。
我々が望むのはただ一つ、ナチュラルを全て滅ぼすと言う事だけだ。
お前達が遣らないのならば我々で勝手にやらせて貰う。
・・一応、お前達には感謝をしているし、我々も仲間だとも思っている。邪魔は、するなよ」
ヤイカは通信を切った。
「メサイアを動かすか・・・まあ良かろう。(場合によっては奴等には消えて貰うさ)」
3
「さらにジン二十機接近!・・艦長、これではもう!」
AAを囲む百機程の大量のジン。
既にシンの姿は見失い、キラとムウ、ムラサメ隊が死に物狂いで飛び回る。
「糞!邪魔だお前等ー!!」
ムウのノワールの四肢より撃ち出されるアンカーが手当たり次第に発射、数が多くて適当に撃っても当たるような状況だ。
圧倒的に振りな状況だが、ノワールは殆ど被弾せずに奮闘している。
「数だけいたってねっ!!」
両足爪先から発射されたアンカーが二機のジンを捕獲、蟹股に開かれた両足を激しく捻って振り回し、近くのジンにぶつけまくる。
「おらぁ!」
がっ
「ぬるぽ!」
がっ
「ムウ!危ない!」
「へ?」
ジンをぶんぶん振り回すのに夢中になっていたノワールに、遠方から極太の二連ビームが襲い掛かる。
「ひあっ!」
スラスターを噴かせて回避、ビームはワイヤーアンカーで捕獲されていたジン二機を飲み込んで通過して行った。
「あれは・・ザムザザーか!?」
「ムウ!ストライクの方のパワーが!!」
「何!?」
覚醒して素早い動きでジンを次々に撃ち落していたキラのストライクだったが、余りに撃ち過ぎたためにパワーが危険レベルに。
「戻ってキラ君!パワーが!」
「え?」
戦闘に集中していたキラはパワー残量に気付いていなかった。
マリューの声で我に戻って目の前の画面を見てみると丁度パワー切れになる所だった。
ピーーー
「しまった!」
ビュウゥゥゥン
PSダウンを起こすストライク。キラは急いでAAへと引き返そうとするが、ジンに囲まれて戻る事が出来ない。
キラの中に死の恐怖が湧き上がり、体中が激しく震え出す。
「あ・・あああ!!」
「キラ君!!」
「逃げろキラー!!」
身動き一つしないストライクに向けてジンのマシンガンが一斉に放たれた。
「う・・・うわーーー!!!」
キラが恐怖のあまりに声を上げたその時
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!」
突如響いた聞き覚えのある声と共に、レーダーに物凄い勢いでストライクへと接近する機体の反応が現れた。
「アスラングラップルスティンガー!!!」
ヒュバーーーン
突如出現した、全身を赤く染めた機体より発射されたアンカーがストライクを捕獲、
それに引かれてマシンガンが降り注ぐ宙域からストライクが引っ張り出された。
「大丈夫か!?」
「ア、アスラン・・?」
「ああ、そうだ・・・・・俺は、アスラン・ザラだ!!」
赤き剣を纏いし無限の正義アスラン・ザラがキラの眼前に降臨した。
4
「敵の数が多すぎる!AAは早く他の艦隊と合流するんだ!」
「ア、アスラン君?貴方・・」
「お前なんで」
「フラガ少佐、キラを早くAAに!」
アスランは救出したストライクをノワールへと預ける。
ストライクはマシンガンを寸での所で逃れたが、グラップルスティンガーがPS装甲が切れた装甲を挟んだために少しへこんでいる。
「アスラン・・・君、怪我は?」
「流石は俺の親友キラだな!俺の怪我を心配してくれるとは嬉しいぞ?
怪我の方はもう大丈夫だ。
ちゃんと正露丸を持って来ているから食中りも心配無いぞ?」
「・・・はい?」
「すごい数だな・・・しかし!このアスラン・ザラにはこれくらい日常茶飯事だぞ!
こいつらは俺に任せて、キラとフラガ少佐は整備を受けてくれ!」
「ちょ・・一人じゃ無茶だよ!」
「無茶を通してこそのアスラン・ザラだ!」
アスラン、インフィニットジャスイティスが機動、
大量のジン部隊に向かって一気に突撃する。
「アスラン!」
「行くぞお前達!」
パァァァァン アスランのSEEDが発動
「アスランビーーム!!」
ズババババババン
ジャスティスより凄まじい勢いで発射されたライフルビームが真正面のジン部隊を撃破。
アスランの超人的な空間゛想像゛能力によって後方に居るジンの位置も把握、
一発のビームが貫通して後方のジンを纏めて撃ち貫く。
「逃げろ!ザムザザーが!」
ザムザザーがジャスティスへと急接近、ビームを連射しながら突っ込んで来る。
「アスランブーメラン!!」
盾より取り外したシャイニングエッジビームブーメランを投合、ザムザザーの両前腕を切り裂いて破壊する。
「馬鹿な!?」
ジャスティス接近、ザムザザーのパイロットは焦って陽電子リフレクターを展開。
「アスラン・ザラにそんな小細工は通用しない。
ファテゥム突撃!喰らえ、アスランエターナルイフィニットフォーエバーインパルス!!!」
背部のリフター、ファテゥム01が切り離され変形展開、スラスターを全開してザムザザーへと突撃。
「ば、馬鹿なぁぁぁ!!!」
ががががががっちゅぼーーん
リフターが陽電子リフレクターを突き破って貫入、ザムザザーを貫いて大爆発させた。
「アスランダブルサーベル!」
腰部に装備された二本のサーベルを連結、ビームを展開して大量部隊へと身を投じた。
「アスランスパイラルソードクラッシュ!」
「アスランハイパーフォルティスビーム!」
「アスランクリムゾンスマッシュ!」
5
AAクルー達の目の前に広がるとんでもない、信じられない光景。
目の前のジンを片っ端から撃破し尽くし、さっきまでの絶対絶命が嘘のようになる。
ジン部隊の人々も驚愕している。
「馬鹿な・・・一分で、百機のジンが壊滅だと!?」
全滅、した上に殆どのジンは武装とスラスターを破壊されて達磨状態、中の人はまだ生きている。
「如何いう積もりだ!?
俺達は捕虜になる積りは無い!殺せ!!」
「君達の身柄は、このアスラン・ザラが責任を持って引き受けよう!」
「アスラン・・ザラだと?
貴様、まさかパトリック・ザラの息子の」
「そうだ!」
「パトリック・ザラの息子であるお前が何故俺達の邪魔をする!!俺達はパトリック・ザラの意思を継いで
「父上の言葉を利用しようとしても無駄だぞ?
確かに父上は許されない過ちを犯し、君達を激しく混乱させてしまっただろう。
しかし、だからこそ父上の息子である俺がその過ちを正す!!父上が犯した罪は俺が背負う!!!」
「それこそ過ちだ!パトリック・ザラの執った道こそ我々の
「君達が信じているパトリック・ザラの誇り高き息子である、このアスラン・ザラが君達を率いる!
大丈夫だ、君達には保険が降りるはずだ。
アヒルのCMの保険会社はアスラン王国のメイン保険会社になる予定だ。
君達はアスラン王国の国民として俺が受け入れるぞ?」
「ふざけるな!!」
「君達にアスラン王国のプロモーションビデオを無料でプレゼントしよう。
戦闘が終わって回収されるまでそれを見ていてくれ!きっと喜んで貰えるはずだ」
「な、何を・・・・うあっ!」
達磨になって身動きが取れないジンのコックピット内の映像が全てアスラン王国プロモーション映像化した。
アスランが強制的に送ったプログラムによって何を操作しようとも全部アスラン王国プロモーション。
゛今アスラン王国に入国すれば全員に漏れなくアスランお面が付いてくる!!゛ ゛DS用ソフト、アスラン王国〜君と育つ国〜新発売!゛
゛臨時ニュースです。アスラン王国では国民全員が漏れなく職業に就けるようです。嬉しいですね゛
゛あんた、自分がアスラン王国の国民じゃないからって本気で戦ってないんでしょう!゛ ゛アスラン株が高沸ry゛
゛アスラン王国に遊びに置いてよ!゛ ゛見ろ!アスランが天使のようだ!゛ ゛誰でも出来る!簡単自爆方を君だけに紹介!゛
゛今最もナウなヤング、アスラン・ザラを紹介〜「知ってる知ってる!アスラン・ザラって超格好良いよね!」゛
゛今年の流行語大賞は・・・「内部で核爆発させる」です!゛ ゛今一番人気のアニメ「アスランクエスト」とはアスランが七つのMSをry゛
「うわあああああああ!!」「ぎゃあああああ!!」「ああああああ!!」
「皆喜びの歓声を上げているな!
俺も急いで作った甲斐があったという訳だ!
ところでシンの様子が見られないが、シンはどこだ?」
「・・・シン君は、ジン部隊に分断されて逸れちゃったの(アスラン王国怖い・・)」
「何だって!?
それは大変だ!急いで助けに行かないと!!」
「ちょっ、ま
「待ってろシン!お前は俺が助けるぞ!!」
アスランはすごい早さで飛んで行ってしまった。
「・・アスラン君(あんた・・)」
後にはアスラン王国のプロモを無理矢理見せられて悶えるコーディネイター達と、ぽかとするAAクルー達が残された。
6
「メサイアを使うんですか・・?」
「!?」
ハカセとの通信を終えたヤイカに後ろから声を掛けて来たレイ。
「ナチュラルを滅ぼすために地球を攻撃するのでしょう・・?(こんな世界にもう未来は無い)」
「お前・・・」
「滅びた方がいい・・・確かにそうですね。
こんな世界、もう滅ぼす以外何も道は無いですよ・・(ギルの居ないこの世界に意味は無い。消えなければ!)」
「・・・」
「メサイアのシステムはよく分かっています・・・・協力しましょう」
「メサイアが、動いている!?」
「はい!」
ラクスの元に新たに送られて来たメサイア移動の情報。
メサイアには小型ジェネシス、ジェネシスJrが搭載されている。
もしやあれを使って反抗勢力を一掃する気なのか?それとも・・・。
「何をしようとしているのかまだ分かりませんが、
そちらも注意しつつ我々はこのままステーション破壊を続行します。とにかくあれを落さなければ話に成りません」
直接月面砲を叩ければ早いのだが、距離の問題と護衛のジン部隊の多さに近づく事は困難、
まずは地球を狙えなくするためにステーションを制圧するしかない。
「ロックオン・・・掃射!」
「当たって下さい!!」
ミーティアを装備したストライクフリーダムとデスティニーから放たれる無数の攻撃。
大量のジンやダガーといった敵部隊を一掃し、ステーションに向かって爆進する。
「シャムス、九時の方角だ」
「分かってるよ!行くぜー!!」
ヴェルデのライフルが連結、高エネルギーが放射されて接近途中の敵を一気に撃破した。
「この軽さたまんねーぜ!」
さくさく動く機体に快感を覚えるシャムス。
一方ミューディーははらはらしながら付き添っている。
「(当たったら大変!当たったら大変!とにかく接近されたら私が守らなくちゃ!)すごいわねーシャムス」
「三時の方角より複数の敵部隊を確認した。
俺とオクラは前方の敵を迎撃する。シャムス達は横からの攻撃に対し迎撃を頼む」
「任せろ!!」
「(ちょっ!駄目だってば!こら!前に出るなシャムス!)
待ってシャムス、ここは私が前へ出るわ。シャムスは後方から機体の特性を生かして援護して!」
「へっ!自分だけ良いとこ取りはずるいぜ!」
「(前出たらあんた死ぬから!!)いいから、私が前へ出るわ!」
7
反ナチュラル部隊がコントロール出来るコロニーの数は約十。
その内の幾つかを都合が良いようにならべて中継点としている。
現在同盟軍各部隊が目指しているステーションはニ箇所。
とりあえずその二箇所を破壊出来れば時間稼ぎにはなる。
基本的に固まって行動、一部の部隊は別ルートを使って進行している。
ジン部隊の方は月が特に多い意外は各所満遍なく存在し、進行してくる者を手当たり次第迎撃する。
「ネットサーフィンで鍛えた(?)空間認識能力を今こそ発揮する時だ!」
ヘルベルトのカオスよりドラグーンポッドが発射。
「ラクス様のために!!」
エターナルに近づこうとする敵を、使いこなされたポッドの正確な攻撃で排除する。
単に駐留オーブでドラグーンシステムに改良が施されていただけなのだが、
ヘルベルトはドラグーンが使いこなせるのはラクス様への思いのお陰なのだと信じていた。
「ん?そういえばヒルダとマーズは?」
さっきまで居たのに見当たらない。
見回してみると
「私達が死んだらミーア様を守る奴が居なくなるからね」「安全第一だ!」
ヒルダとマーズはエターナルの後方に隠れていた。
「何のために来たんだよお前達・・」
「じゃあ、行きます」
「サイ君に宇宙クジラの加護があらん事を!」
DSSDの宇宙ステーションで整備を受けていたサイが遂に出撃する。
「(やれる!やれるぞ!やれるんだ!)サイ・アーガイル、フリーダム、行きます!」
「発進確認。ミーティアユニット確認よし・・・合体どうぞ!」
「フリーダム、合体します!」
ガシーン
フリーダムがミーティアを装備、核の雨をも薙ぎ払う脅威の兵器が戦場へと突き進む。
ミーティア二機の大火力によって順調に突き進み、中継ステーションへと辿り着けたラクス達。
「中継ステーション、射程に入りました!」
「スウェンさんとオクラさんはビームソードでステーションを真っ二つにしてやって下さい。他の方は援護を!」
ステーションに近づくと護衛のジン部隊、その他ダガーやザムザザーと云った様々な機体が溢れ出て来た。
「(やばっ!シャムス超やばっ!)下がってシャムス!」
「はぁ!?あほか!今戦わないで何時戦うんだよ!」
思い切り前に出て行くシャムス。
ジンがヴェルデを標的にしてわらわらと群がって来る。
「(ほわーーーーー!!!!!)」
発狂しかけるミューディー、超特急でヴェルデの傍まで行って、攻撃を仕掛けてくるジン達を物凄い剣幕で倒し始める。
「あっち行け!!あっち行けー!!」
「ミューディー!?」
「うあ゛ーーー!!あんた達なんかにシャムスは撃たせないわ!!!」
「ミューディー・・・お、お前」
8
「シャムスは私が守る!!(やばい!超やばい!!糞やばい!!!ふわーーー!!)」
「(ミューディーがこんなに必死になって俺を守ってくれている・・・・・これは、愛!!?
そ、そうか・・・俺の思いが通じて、
それで俺を守るためにこんなに必死になってくれてるんだな?
そうかそうか・・、俺って超幸せ者じゃね?うひょー!!超幸せ!
そうだよな。
スウェンみたいなカカシ棒人間よりは断然俺みたいなハンサムマッチョの方が良いよな!
はっはー!気付くのが遅かったぜ!
これからはダンディーにサングラスでもかけてもっとアピールしちゃうか?
いやいや、それじゃあ格好良過ぎて狙いすぎって奴だよな!w
まあ、あれだ。
戦争が終わったら島に戻ってこいつと一緒に・・)」
シャムスの夢
「シャムちゃ〜ん!おっまたー!」
「おう!待ちわびたぜ!」
「今日のご飯はミューちゃん特製の糸瓜ステーキよ〜ん!」
「わーお!これはグラッチェだぜ〜!」
「いや〜ん!」
「ミューちゃん・・愛してるぜ!」
「シャムちゃん・・・好きよ!」
「ちゅ〜」
「ちゅ〜」
「ハァハァ・・」
「ちょっ!シャムス!何ぼけっとしてんのよ!!」
「あ、悪ぃ!」
「絶対にシャムスに攻撃を当てさせる訳には行かないわ!装甲プラスチックだし・・」
「・・・・・・は?」
「あ・・・やばっ」
「おい!!何だよそれ!!プラスチックって何だよ!!おいっ!」
ががっ
そうこうしてる内にジンのマシンガンが数発ヴェルデに当たった。
「え?・・・・・ふえぇぇぇぇええ!!!???」
シャムスが被弾部を見ると、弾が当たった太腿が思い切り崩れている。
「ちっ!やっぱりプラスチックはまずかったわね」
「あ゛〜!あ゛ーあ゛ー!ふざけんな!!何だよこれはよう!!!おい!ミューディー!!ミューディーーーーー!!!」
シャムスは泣き叫んだ。
9
「ハァ・・・ハァ・・」
AAからかなり離れた場所で、十数機程のジンに追われ続けているシン。
ドラグーンを駆使して迎撃しようとするのだが、
黄金の装甲に実弾が有効と知ったジン部隊が巧妙に弾幕を張り、ドラーグンを思うように飛ばす事が出来ない。
ドラグーンも本体と同じヤタノカガミ製で、マシンガンを数発喰らっただけで破壊されかねない。
アカツキには核エンジンが採用されているためエネルギー切れはしないが、
パイロットであるシンの体力がもう持ちそうに無い。
「(くっ・・・意識が・・)ここまでなのかよ・・」
ジンの激しい攻撃に対して休む間もなく回避運動し続けたため、心身共にぎりぎりだ。
「・・・ステラ」
シンが半ば諦め掛けたその時、
遠く彼方より赤く燃え滾る情熱の塊が超速で飛来した。
「シーーーーン!!!」
「っ・・・・へ?なっ!ア、アスラン!??」
「ジャスティスキーック!」
ぐしゃり
降臨したジャスティスの凄まじいキックがジンを直撃、機体を砕いて弾き飛ばした。
「とうっ!」
続け様のビームブーメランを投合、行き返り合わせて五機のジンを撃破する。
「大丈夫かシン!?生きているか?意識はあるか?俺への尊敬の念はちゃんと持っているか?」
「な、何言って・・・・・ていうか、何であんたが!」
「決まっている、お前が心配で堪らなかったからだ!」
「・・え?ぇぇぇええ!?」
「俺が来たからにはもう大丈夫だ。
これでも俺は最強のコーディネイターとして雑誌に投稿するくらいの逸材だからな!」
「最強の・・・・って、まさかあんたがあれの」
「こいつらがお前を苛めていたのか?お前達覚悟しろ!
このアスラン・ザラがお前達の捻じ曲がった根性を叩き直してやる!そしてアスラン王国の住人にしてやる!!」
ジャスティスダッシュ、高速で近づいて反応する暇も与えずサーベルで達磨化する。
「見ていろシン!」
連結サーベルとシャイニングエッジ大型ビームサーベルを展開、全てのジンを圧倒言う間に達磨にする。
「これが俺、アスラン王国の力だ!!」
「す、すげぇ・・・(すげぇ・・けど、何だ?アスランが何だか気持ち悪いぞ?)」
気持ち悪いなんて言ってはならない。
純粋で真っ直ぐで素直な、とても前向きで仲間思いの男。
精神状態によって最強にも最弱にも成り得る摩訶不思議な才能の持ち主。
そう、これこそが真のアスラン・ザラなのだ。
「お前が無事で居てくれて嬉しいぞ、シン!俺はお前の事が大好きだからな!」
「・・(一体今度は何を企んでるんだ!?罠か!?罠なのか!?)」
シンは、自分の事を大好きとか言うアスランに恐怖した。
「シン、コックピットの上の方にある蓋を開けるんだ。
そこには全MS共通で備え付けられている栄養補給元が入っている」
「?」
シンは恐る恐る言われた場所を開けてみた。すると
「どうだ?有っただろう、クノールカップスープと手動お湯沸かし機が!」
「え?何でこんなのあるの!?」
…凸すげぇ……
つーか、クジラ博士の種割れ理論ある意味壊してるよな…
憑き物のせいでおかしかったムウと違って
単に思考の方向がおかしいアスランだったけど
この活躍振りはすげぇ。
アスランをTV基準の普通のキャラに戻す予定だったのですが、
シリアスで書き始めたはずの本編をギャグ化させた張本人なので思い切って今のアスランにしました。
シンデストロイまでは何の救いも無いラストになる予定で書いてたけど、アスラン達磨の瞬間作者とシンの運命が変わりました。
残骸編「腐れましまろ」
怒らないで 怒らないで コミケさせてよ♪
ずかずか ニート達が やってくる♪ 気持ち悪い声が聞こえてくる♪
ずかずか 引き篭もりが やってくる♪ 汗ばんで酸っぱい香りがする♪
発電は核でいいね♪爆発しちゃおーう♪誘爆も当たり前だよね♪オタク達を 許してあげなさいー♪
怒らないで 怒らないで 委託させてね♪
オタクにしか分からない〜♪ アニメ!フィギュア!大晦日!(コミケ!)
拒まないで 拒まないで 家に居させてね♪
働く気の無い廃人ー♪ ヒキオタな男の子♪(ア、ス、ラン!アスラン! ニ、-、ト!アニオタ!)
「働く気はあるが、今は時じゃないんだと思うんだ」アスランの口癖がこれである。
二十一世紀日本のオーブ市。
悪乗りした市長がそう名付けたこの街に、可愛いマシュマロのような小学生達が集まる一軒家が佇んでいた。
今日もそこへとましまろ達が集まってくる。
「今日はアスラン遅いなぁー」
この子は飛鳥芯(アスカ・シン)くん、小学四年生で十歳の男の子だ。
少しつんつんしてるけど根は優しくて、妹の繭ちゃん四歳に対しては兄馬鹿だ。
「来なくてもいいんじゃないかな」
この子は山戸綺羅(ヤマト・キラ)くん、高校一年生で十六歳の男の子だ。
シンくんの親戚のお兄ちゃんで居候中、話は聞いてくれるけど時々冷たい言い方で人格否定してくる怖い子だ。
「お兄ちゃん・・・俺のジュース飲んじゃったの?」
「うん、すごく美味しそうだったから」
「酷いよお兄ちゃん!俺すっごく楽しみに取っておいたのにー!あれ俺のなんだよ!?」
「何を言ってるの?あれは親の金で買った物でしょ?何自分の物とか決め付けてるの?
自分で働いた事あるの?無いよね?
だったらそんな偉そうな口利いちゃいけないよ、見苦しいから」
「・・・うぅ・・・・・お兄ちゃんはいっつも俺をいじめるよぅ(涙目)」
「もう、キラお兄ちゃん!シンが可愛そうよ!」
キラを怒るのは頬九瑠菜真莉亜(ホーク・ルナマリア)ちゃん、小学五年生で十一歳の女の子だ。
しっかりした子で、いつも泣きそうになるシンくんを守る頼もしい元気っ子だ。
「ルナちゃん、こういうのは甘やかすと後の人生に多大な影響を与えるから」
「心を傷つける言葉だって多大な影響を与えるでしょう!」
「ミニスカートばかり履くスケベな女の子の癖に偉そうに言わないでよね。僕は間違って無いから」
「むっきー!」
「ルナちゃんもういいよ・・・・ありがと、いつも俺の事庇ってくれて」
「女の子に庇われてありがとうも糞も無いでしょ?
恥ずかしくないの?人生終わってない?正直兄としては心配で堪らないんだけど、分かってるの?
将来いじめで引き篭もりになって、一生僕が養うなんて嫌だからね?」
「う・・うぅ・・・えう」
「いい加減にしなさい!いじめてんのはお兄ちゃんじゃない!!」
「やめてよね。本気で喧嘩したら君達が僕に敵う訳無いんだから」
「大人気無いわよ!
大体あんたこそジュースくらい自分のお金で買いなさいよ!バイトしてるんでしょう?」
「嫌だよ、ジュースなんかにお金使うの」
「供螺陰楽巣(クライン・ラクス)とかいうインチキ宗教女に貢ぐよりは全然良いでしょ!」
「僕が稼いだ金を如何使おうが僕の勝手でしょ?ていうかラクスを詐欺師みたいに言うな!彼女は本物なんだぞ!」
「馬鹿じゃないの!?あんなのどう見たってインチキ詐欺師じゃない!」
「ラクスを馬鹿にするなー!」
「このー!」
「何をー!」
「あ、あの・・・喧嘩しないで・・ください」
シンが二人を止めるに止められず萎縮しまくっていると窓が開いて
「こんにちわ!今日も元気にアスラン・ザラだ」
隣の家の皿明日嵐(ザラ・アスラン)くん、二十歳の小学一年生が入って来た。
「アスラン、君、窓から入らないでって言ってるよね?」
「二階だけど俺の運動神経は抜群だから大丈夫だ、心配いらない」
「君の心配なんかしてないよ」
「アスラン聞いてよ!キラお兄ちゃんが今日も酷いのよ?」
「ははは、キラが酷くない時なんて無いじゃないか」
「おい、君」
「キラが行方不明になれば世界の半分の人は平和になるくらいだからな」
「言い過ぎだぞ、君」
「アスラン〜!俺、俺ね?じゅーちゅ・・ジュースが飲みたかったの・・・でもキラお兄ちゃんが飲んじゃったの」
「はっはー!ジュースくらい俺が買ってやるぞシン!」
「ほんと?わーい!アスラン大好きー!」
「アスランってば、本当にシンに甘いわね」
「可愛い俺の子分だからな!」
「アスラン、君、ニートの癖に何粋がってるの?
いくら善人ぶってもカスはカスなんだからあんまり調子に乗らないでよ」
「何を言っているんだ?俺程世界の役に立っている善人はいないぞ?
証拠に俺の部屋は自家発電で地球に優しいエコロジーだ」
「一戸建てで核発電する人の何所が善人なの?
地球に優しい以前に近所の人に優しく無いじゃないの」
「以前いた街で発電機二号の正義(ジャスティス)が核爆発してしまったが、きっとこの街では大丈夫だろう」
「最低だよ、君」
「地球への負担が最低のエコロジストだなんて褒めるなよキラ〜」
「・・」
「よし!これからメロン本sに同人誌を買いに行こう!
ほら、キラとルナも一緒に行くぞ!今日は奮発して表紙買い十冊だ!」
「だから親のお金でしょ?」
「何で私まで〜!?」
「シン、お前は恐らく律儀に夏休みの宿題をするだろうから無理に来いとは言わないが、よかったら一緒にどうだ?エロエロだぞ?」
「い、いいよ・・・俺は宿題するから」
「そうか。じゃっ、行って来マンボ〜!」
「つまんないよ」「寒い・・」
アスラン達が出かけてシンくん一人が残された。
「行っちゃった、よね?大丈夫だよね?」
シンくんは皆が出掛けた事を確認すると、机の一番上の引き出し、鍵の付いたそれを開け、
中から可愛い女の子のえっちっぽい表紙が飾る一冊の本を取り出した。
「い、いいよね?ちょっとだけ・・・ちょっとだけいいよね?」
以前アスランが゛自分だけ無職童貞引き篭もりなのも悲しいからシンも仲間になってもらおう゛と
エロ同人誌をシンに読ませようとした事があった。
ルナが偶然闖入してエロ本を見てしまい絶叫、ルナが近所のおばさんに泣き付いた事により事大は大事化、
何故か゛アスランが幼い女の子に悪戯しようとした゛事になって危うくアスランは逮捕されかけた。
その時のエロ同人、アスランは全部回収したと思っていたけど、一冊だけ忘れて帰ってしまったのだ。
シンはそれを見つけて思わず隠してしまった。
出来心だった、ちょっと興味があっただけだった、悪気は無かった。
小学生は空き地や森に捨ててあるエロ本をこっそり見てしまう。
何故か!?・・・・・エロいからさ。
皆だって資源ごみにエロ本が積んであったら思わず見ちゃうよね?
「・・ちょっとだけだもん」
シンが表紙をめくると行き成りおっぱいと股間を丸出しにした可愛い幼稚園児服の女の子が目に飛び込んで来た。
「うっ!・・・・・きゅ〜」
シンは余りの性的衝撃に気を失ってしまった。
数分後
「お・・おっぱい・・・・ど、どうしよう・・・・・こんなのいけないよぅ」
そう言いながらページを捲っているシン。
『お兄ちゃんだめぇ〜!おっぱいちゅっちゅしちゃやーなの!』
「う、うわあああああああ!!!」
シンの精神が崩壊しかねない、危険だ!
シン脳味噌が混乱でパーになりかけたその時
「おにいちゃん、なによんでるの?」
「ひぃっ!」
ドアの方から聞こえる、穢れを知らない純粋無垢な幼女の、愛しの妹の声。
エロ同人を見てどきどきしている現場を妹に見られてしまったのだ。
「あ・・ああ・・・」
「わあ!かわいいおんなのこ〜!」
「い、いやぁ〜!み、見ないで〜!」
「でもどうしておようふくきてないの?」
「ひっく・・えぐっ・・・うえぇ〜ん」
「どうしておちん○ん、おんなのこのおしっこするところにはいっちゃったの?」
「うがあ゛ー!!あ゛ー!!あ゛ー!!」
「あ、そうだ、アイスクリームあったんだ〜!食べて来よ〜っと!」
とててて
「・・」
マユが去って取り残されたシン、心は罅割れ、自分自身に失望した。
何故こんな事に?
理由を考える、何度も何度も考える・・・すると、次第に
「そうだ・・あいつが悪いんだ」
憎むべき相手を見つけて怒りの矛先をそこへと向ける。
「アスランが、アスランがこんな本持ってくるからー!!」
復讐だ、復讐してやる。シンはアスランへの復讐を心に近い、復讐のために準備を始める。
ジュースのペットボトルにお風呂の水、アスランが入ってくる二階の窓にゴキブリホイホイ、
何故か飛鳥家で夕食を食べて行くアスランに用意された茶碗に白絵の具を塗り塗り。
「ふっふっふっふ・・」
数時間後夕方、アスランが帰宅したと知ったシンは急いで階段を駆け降りて玄関に行き、アスランを罠に誘導すべく演技する。
「アスラン様、後夕飯まだでしたら是非家で食べて行って下さい」
「そうか、悪いな」
「(ふっふっふっふ)ではこちらに」
テーブルに用意された夕食、アスランの茶碗も置いてある。
アスランは自分で炊飯器から白米をよそり、自分の席、シンの隣に付いて食べる準備OKになる。
「では、いただきまーべらすえんたていんめんと!」
「いただきます(くっくっく)」
アスランが箸で白米を取り口へと運ぼうとする。
「(よし!食べちゃえ!絵の具ごはん食べちゃえ!)」シンの思いのままと思われたその時
「それにしても今日の出迎えは最高だったぞシン!どれ、俺がご飯を食べさせてあげよう」
「え?」
「ほら、あーん」
アスランの箸で挟まれた絵の具白米がシンの口元に。
「いや、いやいやいやいや、そんなご迷惑はかけられませんでござる!」
困惑するシン。
「遠慮するな!可愛い子分にこうやってご飯を食べさせるのも師匠の役目だ!」
何の悪気も無いアスラン、シンの口をこじ開けて絵の具ご飯を放り込む。
「う・・・うぎゃ〜!!」
食事後
「どうしたんだシン?お腹が痛いのか?」
「(アスランもあの後絵の具ご飯食べたのに何で俺だけ気分が悪くなるんだ?)うぅ・・」
「これを飲め!気分が良くなるぞ!」
「・・・へ?」
アスランから突きつけられる、シンが作ったお風呂の水ジュース。
「あの・・えっと」
「何?俺が飲ませてくれないといや〜!だって?全くシンは甘えん坊だな〜!よーし!飲ませてあげるぞ〜!」
「え?え?ぇえ!?」
飲風呂水後
「うぅ・・(俺もう駄目かもしれない)」
「具合悪そうだな、風邪でも引いたのか?熱いからって冷房ばかりでは体に悪いぞ?ほらベッドで休むんだ」
アスランに連れられてベッドの傍まで来たその時
がっ
アスランの足に躓いたシンが大きく横に倒れて、そして窓のすぐ下に設置して置いたホイホイに向かって顔が・・。
べちょ
「う・・・うわぁぁぁぁぁ!」
「シン?如何したシン!?」
シンに最大の悲劇、自分で仕掛けた罠が全て自分へと振りかかった。
さらにホイホイにはゴキブリが引っ掛かっていて、シンの頬に潰れたゴキブリの・・。
「あ゛ー!あ゛ー!!」
「シン!シーン!!」
終わり
今回は本編無しです。アスラン程シンに影響を与えるキャラは居ないと思う・・
・・・・・ネ申!!
続きがあったら読みたいww
まさかこれも本編に絡んでくるのか?
流石にこれは本編に絡められませんw続きは選ばれryが終わった後に・・・。
長編終わってもいないのに頭の中に別のギャグ話が沸いてくる・・、この癖が本編が混沌ギャグ化した原因かもしれません。
10
ステーションは破壊に取り掛かるラクス達。
フリーダム、デスティニーミーティアは群がる無数のジンを瞬殺して接近、
二機とも巨大な超エネルギービームソードを展開し、一気に斬り込んでステーションを破壊して行く。
「やめてよ!」
「!?」
ステーションを破壊するオクラに向かって、ジンに乗る内の一人、元専業主婦のキリコさんが話掛けて来た。
「やめてってば!何するの!?何するのよー!!あんた達なんでこんな事をするのよ!!」
「何でって・・・それは」
「地球に住む身勝手な人達が悪いのよ!?私の可愛い可愛い息子を殺したのが悪いのよ!?
何にもしてない沢山の人達を核ミサイルなんかで殺したのよ!?悪いのはナチュラルなのに何でこんな邪魔出来るの!?」
「死んで欲しく無いから・・・です。
地球に残して来た大切な人達を死なせたくない、守りたいからここへ来たんです」
「貴方はどっちなの?ナチュラル?コーディネイター?」
「私は」
「どっちでもいいけどね!!ナチュラルを滅ぼすのを邪魔する奴なんて皆一緒なんだから!」
「そんな・・・駄目です、そんな風に思って戦っちゃ」
「何よ!」
「そんな憎しみだけで戦っても何も残りはしません!」
「残るわよ!ナチュラルが全部死んで私達が残る!」
「貴女の心はどうなんですか?貴女自身の心には何が残ると言うのですか?
憎い人達を消したら大切な物が戻るんですか?終わった後に貴女達は笑っていられるんですか?」
「何よ!何なのよ!!うるさいうるさいうるさい!!!」
オクラの言葉を掻き消すようにキリコはマシンガンを連射、ミーティアの右アームの一部を集中攻撃で爆発させる。
「くっ!・・・いくら戦っても・・・・・思い出に帰る事は出来ないんですよ?」
「っ・・」
「いくら嫌いな人達が居無くなっても嫌な気持ちは消えないんですよ?」
「消えなくていい!殺したいって気持ちだけ如何にか出来れば・・・。ていうか、何なのよ貴方!なんなのよ!」
「私は・・私の大切な人を撃とうとするのを止めて欲しいだけです!
そんな、勝っても負けても不幸になってしまうような戦い・・・貴女は本当に望んでしているのですか?」
「うるさい!!貴方みたいな変な人には分からないわ・・・・大切な人が奪われた私の気持ちは!
・・戦うしか無いじゃない!だってこれしか出来ないんだもの!」
「本当にそれでいいんですか!?こんな風に、あの兵器を守るために死にそうな目にあってまで・・。
貴女の同胞までも撃ってしまったあの兵器を守って、貴女の心は痛んではいないのですか?」
「仕方ないじゃない!そうしないとナチュラルはもっとずっとこの先も私達を殺そうとするんだもの!
誰かが犠牲になってもやらないと変わらないんだもの!・・ひっく。
銃なんて本当は一生撃ちたくなんか無かったけど・・・・・う、撃つしか無いじゃないの!!」
「貴女・・」
荒げる声と一緒に何時の間にか泣いてるような声も混じって聞こえて来ていた。
「分かってるわよ・・・こんなのじゃ如何にもならないって。
こんな事・・・本当はしたくなんかないわよ・・・決まってるじゃない・・何よ・・・貴方・・人の気も知らないで綺麗事ばっか並べて・・・何よ!」
キリコはマシンガンを撃ち続ける。
攻撃に耐え切れずデスティニーミーティアはジェットを噴かして一端離脱、ステーションから離れる。
追いかけるキリコはマシンガンを出鱈目に連射、連射し過ぎて弾切れを起こし弾の補充をしようとする。
予備の弾を装填しようとするが付け焼刃の操作技術では上手く行かず、自棄になって弾の無くなったマシンガンを放棄した。
11
「何よ!何よっ!」
「・・(何わざわざ話しなんかしてんだ・・。分かってやる事なんて出来ないのに俺は・・・何説得しようだなんて思ってるんだ・・)」
デスティニーは高速で旋廻、再びミーティアへと向かって進む。
ジンは重斬刀を取り出すと旋廻して戻って来るジンに向かって突撃、デスティニー本体を目指して真正面にぶつかろうとする。
「し、死んじゃえー!」
「(自殺か!?)くっ・・」
このままぶつかればデスティニーに多少のダメージは与えられるが、結局PS装甲には大したダメージは無い。
むしろぶつかって来たジンが大ダメージを受けて爆発してしまうだろう。
「う・・ぅ・・・い、いやーっ!(死ぬ!?)」
土壇場になって恐怖で悲鳴を上げるキリコ。
ぶつかる!
キリコがそう心の中で叫んだ瞬間、ぎりぎりになった所でオクラはミーティアのスラスターを噴射、機体を大きく傾ける。
傾いた機体は大きく逸れ、ぶつかる寸前だったジンの横を通り過ぎた。
「・・あ、あれ?」
「バカヤロウ!!!」
「!?」
「ふざけんな!!自分から無駄死にするくらいなら戦場なんか出るんじゃねぇ!!!何が撃つしか無いだ・・・・びびってる奴がよ・・」
「・・」
「馬鹿じゃねーかよ、何も残らないの知ってて戦って、無駄死にして終わりって」
「何よ・・・何よぉ・・」
「生きてりゃ何か出来るって言うのによ・・」
「何が出来るって言うのよ!?」
「思い出せるじゃねーか・・・死んだ奴の事をよ・・」
「・・」
「大切だった奴の事もう二度と思ったり出来なくなるなんて悲しいじゃねーか・・」
オクラは遠い目をして心に、死んだ弟の事を浮かべながら言う。
「死んじまったら一体誰がそいつの事思い出してやるんだよ・・」
「・・・うるさい、うるさい!!もう聞きたくない!!」
ジンは剣を構えなおしてミーティアの後部に接近、ひ弱な剣で斬り掛かろうとする。
「やめろっ!」
「うるさーい!!」
ドンッ
斬り掛かろうとしたジンに大きな音と強い衝撃が響いた。
ミサイルがキリコの機体に直撃し、機体を激しい爆炎の中に飲み込んだ。
続け様に数発のミサイルがそこへと飲み込まれ、大きな爆発を生み、消えた。
「大丈夫かオクラ?」
「スウェンさん・・?」
「油断するな。
ジンと言っても数が尋常じゃない、行き成り後を取られる事だってある」
「はい・・・気をつけます」
「反対側は既に俺が切り裂いた。こちら側はまだ終わっていないのか?時間が無い、すぐに破壊する」
「はい・・」
「・・・如何した?」
「いえ・・・はい、急いで破壊しましょう」
オクラは目を細めながら頷いて答えた。
12
「さあ、美味しく頂いて元気になるんだ!」
「・・」
アスランに言われるがままに(やれと五月蝿いので)コックピット内でカップスープを作ったシン。
作戦中に食べる物だとは到底思えない・・。
「食べ終わるまで見張っているからちゃんと残さず食べるんだぞ?」
「いや、だから今は・・」
「食べるまでここから進ませないぞ?」
「(本当は邪魔しに来たのか?・・・いや、でもさっきは助かったし)いただきま
「敵だ!攻撃を避けろ!」
がっ
「ぶーーーっ!!!
あっ、あちーーーーーーー!!!ふぉあちゃちゃちゃちゃふぎゃーー!!」
ジャスティスに蹴り飛ばされて激しく揺れるアカツキ。
コックピット内であつあつのスープが派手に零れ、シンのパイロットスーツと地肌の隙間に注ぎ込まれる。
「うぎゃー!!」
「シン!!?攻撃が当たったのか!?くそ!よくもシンを!!」
マシンガンを撃ちながら現れた複数のジンにアスランは急接近し、シンを守るために己の力を目一杯使って全て達磨にする。
「くそっ・・・一体どれだけ数がいるんだ?」
「うぅ・・」
「大丈夫かシン!?怪我をしたのか!?」
「・・・いや、大丈夫だ」
「本当に大丈夫なのか?」
「うん・・」
シンは゛火傷した゛とか言ったらアスランがまた何か余計な事する気がして何も言わなかった。
「よし、これから俺とお前でミネルバのメンバーを助けに行く」
「・・え?」
「よし!付いて来いシン!」
「ちょっ!何言ってんだよ!
俺達だけで行くなんで無理だ!一端仲間と合流してから
「立ちはだかる者は俺が全て倒す!
お前は俺の背中を見詰めて青春の情熱を湧き上がらせるんだ!」
「何言ってんだよ!!」
「行くぞ!」
シンの言葉を聞かずに月の方へ向かって進み出すアスラン。
「アスラン!」
「俺の背中を見て強くなるんだ、シン!」
「ちょっと・・・待てよ!!」
どんどん行ってしまうアスランを放って置く事も出来ないので、シンはアスランの後を追う事にした。
「・・あんたって人は(この、馬鹿野郎ー!!)」
13
「メサイア、全システムオールグリーン」
「シールドを発生させながら前進する事は可能だ。問題はジェネシス発射時にシールドを解かなければならない所だろう」
「そうか」
メサイアの全システムを知り尽くしているレイより指示を受け、各員に指令を下すヤイカ。
レイはヤイカの隣へと立ち、まるで機械のように淡々と指示だけをする。
「ヤイカ・・ちょっと」
仲間に呼ばれてコントロールルームより廊下に出るヤイカ。
「ヤイカ・・・奴を本当に信用していいんですか?土壇場になって何かやらかされたらそれこそ・・」
「終わりだろうな」
「ヤイカ!」
「大丈夫だ・・・奴の顔を見れば分かる。奴は本気で地球を滅ぼしたがっている。
あの顔は、復讐を望んでいる顔だ。俺には・・俺にだからこそ分かる。
心配するな、少しでも妙な真似をしたらすぐに殺す」
「ステーションG、ホールに異常発生。このままでは最終的な狙いをつけられません」
「それは困ったな」
「アーサー、指令を」
「ううん・・・それじゃあ、ホールに居る敵部隊をレクイエムで撃つ。ステーションGはもう破棄して構わない」
「ステーションではヤイカ側の部隊が敵と交戦中のようですが?」
「一緒に撃つ。どうせステーションに居る部隊が敵の前に屈するのも時間の問題だろうし、どうせ死ぬのは一緒だから撃とう。
あ、あと、予備のステーションに付いてる部隊に連絡して移動させてくれ。HとJの二箇所だ」
「了解」
その頃AAは後から来た味方の艦隊と合流を果たす事が出来ていた。
ストライクらは整備を受け、キラ達も一時休憩をしている。
「アスランが・・・・アスランが来てくれた・・・(親友・・て言ってくれた)」
アスランが来てくれた、自分の事を助けてくれて親友とさえ言ってくれた。キラに取ってこれ程までに嬉しい事は他には無い。
「・・・アスラン」
キラがアスランの事で頭が一杯になっていると、モニター越しに艦長から声を掛けられる
「キラ君!」
「マリューさん?」
「他の艦の人達と話した結果、私達はこのままステーションに向かう事になったわ」
「え?で、でも、アスランとシンが・・」
「ええ・・でも今は本当に時間が無いの。
私達がステーションを破壊しなければ、今度こそ取り返しの付かない事になるわ・・・・ごめん、でもお願い、分かって頂戴」
「・・・(そんな・・アスランとシンを放って置くなんて)」
「(どうせあの二人が乗ってるのどっちも核動力だし大丈夫でしょー?)今はあの二人を信じて・・・お願い!」
「マリューさん・・」
「ステーションを落しましょう・・・・私達があの二人の帰る場所を守らなくちゃ。
大丈夫よ、あの二人なら、きっと・・・(でもやっぱり二機であの数は無謀だし・・可哀想なシン君とアスラン君。安らかに眠って!)」
「くっ・・・・くそぉーーー!!!」
キラはコックピットに拳を撃ち付けながら悔しそうに叫んだ。
やっと心が通じた(?)アスラン、そしてシンをを見捨てて行かなければいけない自分。
二人の元へ今すぐ駆けつけられない自分が悔しくて悔しくて仕方なかった。
「(アスラン・・シン・・、必ず無事でいて!!こっちは僕がすぐに何とかするから・・・・だから!)」
キラの中に今も恐怖はある。
しかし、アスランやシン、サイへの大きな思いが積み重なり、今はそれに屈する事なく立向かえる思いがあった。
14
「アスランサーベル!」
次々に襲い掛かる大量のジンを瞬殺達磨化して猛進するアスラン。
アカツキは後方からドラグーンによる支援をしているのだが、もはやアスラン一人でも十分進んでいけるようだ。
モニターに映る月がどんどん大きくなって行く。
「アスラン、MAだ!」「アスランブーメラン!」
「アスラン、三方向からジンが!」「アスランビーム!フォルティスビーム!アスランブーメラン!」
「アスラン、ビーム砲を持ったジンが五機も!」「アスラン全身バリアー!!」
ばばっ
ジャスティスが四肢を広げて大の字に。気合で耐えて見せるとでも言うのか?
「あほか!」
アカツキは棒立ち無防備なジャスティスの前へ急いで付き、
ジン部隊の放った五本のビームを全て跳ね返してアスランを守った。ジンは全て跳ね返されたビームで撃破された。
「ハァ・・ハァ・・」
「はっはっは!流石はシンだ。
俺の事が大好き過ぎて思わず俺の盾になってしまったんだな?嬉しいぞシン!
身を挺して守ろうとしてくれる者が俺の傍に居てくれるとは、俺は幸せ者だー!」
「(本当に幸せな頭だなっ・・・・・くそ!もしかして俺への嫌がらせなのか!?そうなのかアスラン!?)疲れた・・」
「何?疲れたのならコックピット下の薬箱に入っている栄養ドリン
「いや・・・もう本当に勘弁してくれ・・」
シンの精神力が無駄に削られた。
「シン!」
「だからもう!」
「違う!危ない!!」
バシュウ
ジャスティスが行き成りアカツキの右側に滑り込んで、それと同時に激しい音が響いた。
「なっ!」
「くぅっ!」
今の攻撃が通っていたらアカツキの両足の膝関節が切られていた。
暗闇の彼方より伸び放たれたビームの輪がアカツキを襲い、寸前の所でジャスティスがビームシールドで弾いたのだ。
「これは、まさか!?」
「何者だ!?」
二人が何も無いはずの暗闇を見つめると、人の目では捉える事が困難な程高速で移動し続ける白い何かが居た。
「あれは・・・・クジラ博士!!」
「クジラ博士!?」
シンが博士の名を叫ぶと、高速で移動していた白い物が急激に速度を落し、有り得ない程すぐに静止した。
「また会ったね、シン・アスカ君」
「あんたは!」
「シン、この老人が、あの?」
「そうだ・・クジラ博士だ。こいつは・・」
「うおおおおおお!お前がアーサーを俺に仕向けて純粋な俺の優しい心に傷を付けた悪の黒幕だな!?俺はお前を
「落ち着けアスラン・・」
「ほう、君がアスラン君か」
「違う!アスラン・ザラ!アスラン・ザラだ!」
「アスラン・ザラ君だね・・・・よかった、君に会えて嬉しいよ。君とは一度ゆっくり話しを
「アスラングラップルスティンガー!」
博士の声を無視してアスランが攻撃を仕掛ける。
15
すっ
「何!?」
グラップルスティンガーが外れた?
静止していた白い機体が一瞬でその空間から消えた。
「しゅ・・瞬間移動か!?相手はスーパーサイ
「後だ!!」
シンの声に即反応してジャスティスはビームシールドを構えながら後ろに振りかえった。
振り返った瞬間、何時の間にか移動していた白い機体が光の無数の輪に囲まれる光景が目に映り、
無数のビームリングがシールドに向けて一気に撃ち放たれて来た。
「くっ!」
「アスラン!・・・こいつ!」
アカツキのドラグーンが全展開、白い機体スターゲイザーの周りを取り囲んで一気にビームを撃ち出す。
「喰らえぇ!」
ばしゅっばしゅっばしゅしゅしゅっ ばしゅぅ
「な!?」
効いていない、全てのビーム攻撃が本体に辿り着く寸前に打ち消される。
「効かぬと分かっておるだろう?」
「くそっ!」
スターゲイザーは再び高速移動を始め、目視では全く捉えられなくなる。
「これは・・・ダウンフォースが効いているのか!?スリップストリームか?何て早さだ!」
「気をつけろアスラン!あいつはビームが効かない上にビームの輪を飛ばしてくる!」
「ビームが効かない・・・・形状化したサーベルは効くのか?」
「分からない・・・・けど、ビーム砲が効かない以上、サーベルで何とかするしか無い!」
「分かった・・・・俺が奴を倒す!」
「ちょ、アスラン!」
ゲイザーを倒すべく連結サーベルを携えてスラスターで一気に加速するアスラン。
幾ら肉眼で捉えられないとは言ってもレーダーには映る。
ファティムに搭載されたスラスターで更に加速し、ゲイザーと互角に渡り合おうとする。
「アスランサーベル!」
すかっ
アスランサーベルが思い切り空振った。
「この!」
すかっ
「アスランスパイラルスラッシュ!」
すかすかすか
「アスランブーメラン!」
すかっ
「逃げるな!」
「くっくっく、止めたまえ。黙って私の話を
「このっ!」
「だから無駄だと・・」
すっ
「ぬっ!?」
今まで外していたアスランサーベルがゲイザーの残像を翳めた。
「惜しい!」
「こやつ・・!!(まぐれか?)」
16
「アスランサーベル!」
すっ
「くっ!」
又しても残像を翳め、しかもさっきより正確だ。
「(すげぇ・・もしかして敵の動きを少しずつ掴んでいってるのか?・・・・・アスランは本当に凄腕のパイロットなんだ!)」
アスランの腕に思わず尊敬の眼差しを送ってしまうシン。
セイバー達磨、オーブ戦での糞みたいな戦いを経て、すっかりアスラン=あまり強く無いというイメージが定着していたシン。
しかし、宇宙での戦いでそれは覆され、今シンの中ではアスラン=無茶苦茶強いという事になっていた。
「これ程とは・・」
何時の間にか少し遅れつつも高速移動に付いていけるようになっているアスラン。
サーベルで何度も斬り掛かり、攻撃する毎に正確さが上がって行く。
「これくらい如何って事は無い!(そう・・・あの時に比べれば・・)」
昔アスランがキラと一緒にお祭りの縁日に行った時。
「あ、キラ君!げっ、ザラだ〜」
クラスの女子集団が、アスランとキラが二人で楽しんでる所に割り込んで来た。
女子達は何としても邪魔者アスランを排除しようと色々嫌味な言葉を掛けようとしたが、
あまり露骨にやるとキラに嫌われると思い、皆仕方なくアスラン同伴で縁日を回る事にした。
「あっ!金魚掬いしよう、アスラン!」
「うん」
アスランとキラで金魚掬いを開始した。
「よっと!またとれたー!」
「あっ・・・また網破けちゃったよぉ・・」
金魚を華麗に掬うキラ、網破けまくって何度もチャレンジするアスラン。
「きゃー!超じょうず〜!さすがキラ君!」「激やば!超格好良い!」「すっご〜い!」
ちやほやされるキラの横で必死に何度も金魚を掬おうとするアスラン。やっぱり出来ない。
「ザラ糞過ぎ〜!」「超金勿体無くない?馬鹿じゃないの〜?」「超ださ〜!」
「うぅ・・」
「つーか一匹も掬えないなんて超下手糞よね〜。あんた金魚掬うまでずっとそこに居なさい」
「えぇ!?」
「という訳で、キラ君こっちこっちー!」「あ〜ずるい〜!」「私もキラ君とデートしたいー!」
「え?あれ?あの・・・・あ・・あ〜〜〜」
女子達にずるずると引き摺られて人込みに消えて行くキラ。アスランは
「ひっく・・・うぅ・・・・・取れないよぉ〜」
女子に言われた事を律儀に守り、金魚を掬うまで動かない態勢となっていた。
途中金魚掬いのおじさんに゛いいから好きなの持って行きな・・・゛と言われたが断り、
自分の力で何とか取ろうと頑張った・・・・・頑張って五時間が経った。
五時間経った頃、浴衣を着たちっちゃな可愛い女の子が゛とれないの・・・?やりかたおしえてあげりゅ・・゛と加勢してくれて、
彼女の助けによって何とか無事家に帰る事が出来た。
帰る途中OLのお姉さんに゛君すっごく可愛いお顔してるわね〜ハァハァ、お姉さんのお家で良い事しない?゛と何かお誘いされたが、
新型の動力システム開発を早く帰ってやりたかったので断った。
その頃キラは無理矢理カラオケに連れてかれてオンチなラブソングを死ぬ程聞かされていた。
17
「(あの子・・・確か名前はル・・・・・何だったろう?思い出せない。゛ねらいはかんぺきよ!゛という可愛い声ははっきり憶えているんだが)
いや・・・今はそんな事考えている場合じゃないな。
とにかく俺には強力な狙いの力が備わっている、幾ら早く動いても無駄だ!」
スカンジナビア
「うー寒い!地下ってこんなに寒いのね・・。
そういえば、昔私金魚掬いとか射的とかすごく得意だったの。
あ〜あ、昔はあんなに狙いは完璧だったのに、何か軍人になってから下手糞になっちゃったみたい。砲撃当たんないし」
「射的とMSの砲撃は別では・・・・・、というか何故急にそんな事を?」
「ん〜何でだろう?」
地上では各地で激しい戦闘が行われ、駐留オーブにもまだまだどんどん敵が仕掛けてくる。
駐留オーブを守るため地上に残った部隊は今の所持ちこたえているが、長引けばかなり不利だ。
かつてオクラを襲った馬鹿二人もオーブ軍に加勢して戦ってくれてたりするが、やはり数は如何にもならない。
「えぇい!」
ミーティアのビームソードで切り裂かれるホール。
一回りするようにビームソードで切り裂き、中継ステーションを使い物にならなくした。
「ステーション、破壊成功しました。直ちにステーションより離脱、次の目標に向かいます」
「・・・!!ラクス様!駄目です!」
「え?」
「これは・・」
気が付くと、ステーションを撃破したラクス部隊を囲むように、大量のMSが集まっていた。
「貴様達・・逃がしはせん!」「ステーションの一つくらいくれてやる・・・・・代価はお前等の命だ」
コーディネイター部隊は途中ステーションが激しく攻撃されるのを見て防衛は無理と判断し、防衛第一の作戦を変更、
敵部隊を囲んで逃げられなくする作戦へと移っていた。
「ラクス様!」
「・・・蹴散らして次のステーションへと向かいます!」
「ええ!?」
「スウェンさん、オクラさん、次のステーションの方角に居る敵部隊を排除して下さい。一気に突破して振り切ります!」
「了解した」
「分かりました・・・けど、正直難しいと思います」
「難しいでしょうがやって下さい。でないと如何にも成りません」
「はい・・」
「各艦はスウェンさん達の後に続いて下さい。
MS隊は出来るだけ母艦から離れず、敵を近づけさせない事を第一に戦闘して下さい。
ミューディーさんとシャムスさんはスウェンさんとオクラさんの援護を」
「分かったわ!」
「嫌だ・・・」
「シャムス・・・・いや、まあ、そうね、危ないもんね・・・・・・・いや〜ごめんね」
「・・・」
「いや、本当にごめんね・・」
「・・やってやる」
「え?」
「やってやるよ!プラスチックだけど戦ってやる!生き抜いてやるさー!!!」
シャムスは涙目で戦う事を心に決めた。敵はMSでも自分でもない、ひ弱なプラスチック装甲だ。
シャムスwwww
シャムスがんばれー(棒読み)
18
「ジンが三十機程そちらに接近してます。危ないですよ」
「うるせーラクスババァ!分かってんだよー!!!うぅおおおおー!!」
陣形を組んで接近してくるジンをヴェルデが全砲門フル稼働で迎撃。
撃てるだけ撃つと言わんばかりに乱射しまくってジンを一掃する。
「やるわねシャムス!」
「うるせーばかやろう!!(涙目)
ミューディーの馬鹿!馬鹿!糞がぁ〜!俺の気持ちを踏み躙りやがって!!
プラスチックって、俺に死ねって、そう言いたいのかお前はよぉー!!」
「しょうがないじゃない!!
だって・・・プラスチックの奴しか無かったんだから・・・バスターは」
「だったらPS装甲で出来た別の機体取り寄せろよ!!」
「何よ!あんたがバスターの方が好きだと思ったからわざわざバスターにしたのに!」
「だからってプラスチックはねーだろ!!」
言い争いしてる暇は無い、またジンが大勢やって来たぞ。
「来るな!来るな〜!!」
半狂乱で迎撃しまくるシャムス。
しかしやっぱり敵の数が多過ぎなので撃ち漏らした敵が抜けて来て、マシンガンをプラスチックに向けて撃ってくる。
「うわ〜〜〜!!!」
マシンガンがプラスチックに当たる、削れる、装甲が弾け飛ぶ。
頭部にも弾が何発か当たったが、カメラを守るための増加装甲が弾いてくれた。
「あ、危なかった・・・・・カメラの増加装甲なんて邪魔なだけとか思ってたけど、これは助かるぜ」
シャムスは増加装甲の有難味を初めて感じた。
「シャムス危ない!!」
接近弾幕を抜けた一機のジンがヴェルデに接近、重斬刀を抜いて斬りかかって来る。
「来るなって言ってんじゃねーかぁ!!!」
シャムスは涙声で咆哮しながらバヨネットの銃剣を展開、接近して来たジンの剣を弾きつつ胸部にその刃を深々と突き刺す。
「俺は死なねぇ〜!!!」
銃剣で突き刺したままビーム砲を発射、ジンは弾け飛んで大きな爆発と共に跡形も無くなる。
「ま、まさか、こんなの意味ねーって思ってた銃剣が役に立つ時が来たなんて・・・」
シャムスは銃剣の有難味を初めて感じた。
シャムスは実は゛増加装甲なんて意味ねーよwこれ考えた奴馬鹿じゃねーの?w゛とヴェルデを馬鹿にしていた。
しかし今、彼はヴェルデを見直していた、尊敬していた、感動していた。
「ステーションを射程圏内に捉えました!」
「各自連携しつつステーションを撃破する!」
シャムスが種割れしそうな程ストレスを感じていた頃、AAらの艦隊もステーションの一つに突撃を開始していた。
キラのストライクは換装してノワールストライク、ムウのストライクEはランチャーを装備してランチャーストライクEとなっていた。
本人達は知らないがキラ達が今落そうとしているステーション、
これはレクイエムの砲撃を、ラクス達が今奮戦している所に流すのに使われる物で、
これを早く落さなければ次の砲撃でラクス達はやられてしまう事になる。
「チャージ五十%を越えました、アーサー」
「情報ではあそこにはエターナルが来てるようだな。
じゃあ、ラクス・クラインに消えて貰えるって事だな・・(貴重な貧乳姫が・・でも仕方が無い、仕方が無いんだ、撃たなければ)」
19
「援護するぜ、AA!」
「え?ディ・・・ディアッカ!!」
ステーション部隊と激突しようとする間際に、AAに接近してくる何隻かのザフト艦。
ジュール隊、ハイネ隊、その他達がAAらに合流だ。
「ミリアリア・・・やっと会え
ぷちっ
通信を聞かずに切るミリアリア。
「あ、行き成り謎の怪電波で通信が〜(棒読み)」
「ちょっとミリアリアさん!!何やってるの!?」
「(やっぱり駄目か)いえ、冗談です・・」
通信を繋ぎ直す。
「・・・ひっく・・・・ひっく」
繋ぎ直すと、ミリに通信を切られてめそめそ泣いているディアッカの顔がドアップで飛び込んで来た。
「ちょっ、何泣いてるのよ!」
「あ・・ミリアリア・・・だ、だってぇ〜」
「もう!こんな時に泣かないでよ!冗談よ冗談!」
ミリアリアこそこんな時に何やってんの・・・、ノイマンは心の中でそう呟いた。
「こちらジュール隊、イザーク・ジュール。AA、俺達もステーション破壊に協力する・・・・・で、アスランは、来てないんだったな・・」
「いいえ、さっき来てたわよ?」
「はぁ!?」
「でも一人でどこか行ってしまったの」
「・・・はぁ!?」
「アスラン君の事なんかより、ステーション護衛部隊が接近してるわ!迎撃よ!」
「(アスラン・・・・来ているのか・・・・・・そうかそうか・・・くっくっく)ふっふっふ・・・ふははは!!」
アスランが来ている、そう分かった途端イザークは上機嫌になる。
やった!これで・・
「(俺の髪型を馬鹿にした事への復讐が出来る!)」
イザークはアスラン(の名を語ったミリアリア)に馬鹿にされた事を物凄く根に持っていた。本来の目的を忘れるくらいに。
駐留オーブ国防本部
「カガリ様!宇宙クジラ教のゲリラ部隊が接近しています!」
「何だと!?」
「敵部隊はカガリ様のブロマイドを人質にしています!このままでは攻撃出来ません!」
「・・いや、攻撃しろよ」
宇宙クジラ教部隊
「隊長!このままでは海沿いに侵攻する事になります!」
「このルートが一番有効なのだ!」
「駄目です!この海にはクジラちゃんが一杯います!このまま海沿いで戦闘にでもなればクジラちゃんが巻き込まれ兼ねません!」
「・・・くっ!しょうがない!作戦を中止!!クジラちゃんが巻き込まれないルートから再度侵攻し直す!」
「了解しました!!」
オタクと宇宙クジラ教の都市部での抗争
「ネコミミモード!ネコミミモード!!」
「クジラちゃん萌えー!!クジラちゃん哺乳類!!クジラちゃんの肛門興奮!!!」
「クジラは食い物!!無駄に保護して増え過ぎて他の生き物が減ってる!その事を無視する馬鹿信者め!!」
「らきすたキモイ!!!ハルヒキモイ!!!ましまろなんてペドアニメ好きは人の屑!!!子供を食い物にする鬼畜生!!!」
「えこひいき!!他の生き物スルー!!!」
「犯罪者予備軍!!コミケ会場は即刻核で爆破すべき!!!」
20
「アスラン君、私の話を聞きたまえ」
「アスラン・ザラは赤い情熱だから止まりはしない!」
クジラ博士の言葉を一切聞かずにひたすら攻撃して追い詰めるアスラン。
「くっ・・・・・アスラン君、攻撃を止めたまえ」
「俺は赤だから赤信号は無視して進む!」
「アスラン君、もし止まってくれたら君の今乗っている機体のアクションモデルをプレゼントするよ?」
「何言ってんだあんた。アスランがそんな事で攻撃止める訳が」
「・・・・・分かった、攻撃するのを止めよう」
「えぇ!?何それうそアスラン!?」
驚愕するシン、開いた口が塞がらない。
「さあ、攻撃を止めたぞ?すぐにこの機体のモデルを作るんだ!」
「分かっているよ。
今すぐは無理だからそれは後に置いておくとして、取り合えず私の話を聞いてくれたまえ」
「分かった」
「アスラン!そんな奴の口車に乗っちゃ駄目だ!」
「大丈夫だシン、俺はアクションモデルの完成が半年後と言われても気長に待てる心の広さを持つ男だ」
「いや、そうじゃなくて・・」
「アスラン君、君はこうしてここまで来た訳だが、SEEDによる感情の消失は恐くは無かったのかね?
この大規模な戦闘だ、SEED無しでは戦い抜けん、それを分かって尚戦いを選んだのだろう?」
「SEED・・・感情?何を言っているんだ?」
「おや?君はシン君から何も聞かされてなかったのかね?くっくっく」
「?」
「(こいつ・・!)黙れ!・・アスラン、こいつの話なんか聞いちゃ駄目だ!」
「酷い人間だね、君は。
ちゃんと説明していないという事は、アスラン君が何も知らずSEEDを使い続けて破滅する事になっても構わないという事だね?」
「違う!」
「ふん、何が違うというのだね?事実を伝えなかった、それが全てだ。アスラン君、いいかね?SEEDというのは・・」
クジラハカセはアスランにSEEDについての全てを語る。
シンはハカセに攻撃しようと思えば出来るのだが、
今彼に攻撃したら口止めしているような、ハカセの言葉を認める事になるような気がして出来なかった。
流れ込む真実、力の代償の事、発現の理由、人の運命、シンが特に感情が消えるのが早い事、全てをアスランは聞いた。
「・・シンが」
「分かったかね?これが現実だ、これが運命だ、これが真実だ!
全ての人間は統一され、破滅の運命から逃れなければならない!
そう、君とて例外ではない、むしろ君こそが運命の中心なのだ。SEEDを持つ者なのだ!
さあ、誇り高き戦士アスランよ、我々と手を取り合い、破滅の運命から人々を真の意味で救うのだ!我々は真の正義の下に戦うのだ!」
「人の運命・・」
「アスラン・・」
「アスラン君、我々がやらねば人は終わりなのだ。
シン君、今からでも考え直すべきではないかね?人を信じるなどと下らない事を言っていては人は救えない、そうだろう?」
「・・・それは」
「シン君、私が正しいと君は分かっているはずだ。
いくら感情に任せても、君は逃れられない、自分を偽り切る事は出来ないのだよ」
「黙れ!」
「・・シン、よせ」
「アスラン!?」
「くっくっく、アスラン君は私の考えに賛同してくれるようだね」
21
「アスランキーック!」
「何!?」
ジャスティスがキックで突撃、ゲイザーは緊急回避。
「馬鹿な!?何を・・」
「そんな妄想で俺を騙そうとしても無駄だぞ!俺はお前を倒す!」
「何を言う!私の言っている事は本当だぞ!」
「お前がどれだけ難しい計算して導き出した答えかは知らないが、その計算は完全に間違っている!」
「何故だ!?何故そう言い切れる!」
「それは、俺がお前の言うSEEDの力という物を使っていても全然感情が薄くなったりしないからだ!」
「なにぃ!?」
「現に俺は今まさにSEEDの力を使っている!」
アスランは駆けつけてSEEDを発動した後、一切覚醒状態を切ってはいない、ずっと覚醒したままだ。
「ば、馬鹿な!!そんなはずは!!!
SEEDを発動しながら、そんな馬鹿そうに振舞えるはずは無い!!そんなはずは無いのだ!」
「俺の熱い友情の炎は消えたりしていない!!
だからお前の理論は間違いだ!お前の考えは間違いだ!」
「アスラン・・」
「シン、お前は感情が消えたりなんかしない。俺が保障する。
だってお前は、とても優しい俺の大切な仲間なんだからな。感情が消えるなんて絶対に無い!」
「馬鹿な・・・そ、そうだ!お前は他の奴と比べてSEEDによる感情の抑制が極端に小さいのだ!」
「SEEDは感情を抑える事で能力を上げるんじゃなかったのか?
さっきお前はそう言ったぞ?
俺は感情がそのままであるにも関わらず、普段の数倍もの力が出せている。
ここに来るまで百機以上のジンを無傷で全滅させて来たのが証拠だ。
つまり、お前の理論は破綻している、間違っているんだ」
「う、ううううう嘘だ!!私は間違ってなどいない!
シン・アスカ!お前は如何なんだ!?SEEDを発動すると感情が薄くなるのだろう?そうなのだろう?」
「それは・・」
「シン・アスカは感情が薄くなると実感している、それが証だ!
シン・アスカは私の言う通りSEEDで感情が抑えられると実感している!それが証拠!証拠なのだ!
シン・アスカは私の理論通り感情が無くなってただの猛獣となるのだ!!」
「シンはそんな事には成らない。俺はシンを信じている。
それに、もしシンの感情が本当に無くなってしまったとしても、俺が居る!俺の一声でシンは心を取り戻す!俺への尊敬心は絶対!!」
「アスラン・・あんた(俺の事そんなに思ってくれて・・・・・でも、尊敬心は絶対というのは無いよ・・)」
「人間はお前の計算通りに落ちぶれたりはしない!
人は強い!アスラン王国は強い!アスラン王国の国民となる人々はとても強い!人間は、強いんだ!!
人はその思いの強さで必ず平和を手に出来る!変われる!やり直す事が出来る!
人は思いだ、思いの強さなんだ!
思いが強ければ、たとえお前のSEEDの理論が正しかったとしても、そんな運命は変えて必ず平和を掴む事が出来る!
人を思う強さ、優しさ、愛!
人に愛する心がある限り、俺達の世界は決して崩れ去りはしないんだ!!」
「おのれぇ!!お前は敵だ!!アスラン・ザラ!!!」
「俺の無限の正義がお前の悪を討つ!!」
「アスラン・・・俺はあんたを信じる!!人は運命を越えられる!!」
「シン!俺達の力を見せてやるんだ!!!」
「ああ!!」
22
決裂して再び戦闘を開始した三人。
アカツキとジャスティスは双刃のサーベルで逃げ惑うゲイザーを追跡する。
ゲイザーのビームリングが追いかける二機を狙い撃ち、何とか近付けまいとしている。
「アスランサーベル!」「てえぇぃ!」
二機の同時攻撃がゲイザーを翳める。
「くそっ!逃げ足の早さははぐれメタル級なのか!?」
「くくくっ!消えれぇぇぇい!!」
ゲイザーが高速で避けながらビームリングを放つ。
バシュッ
ジャスティスに向かって放たれたリングをアカツキが黄金の機体を盾として受け、跳ね返す。
跳ね返ったビームは軌道を変えられて輪の形を崩し、ゲイザーの手前擦れ擦れをそのビームの一閃が通過する。
「ぬっ!(やはりあの機体厄介な!)」
「逃がすか!」
ジャスティスがゲイザーに向かって突撃を掛ける。
「馬鹿めが!」
突っ込んでくるジャスティス目掛けて無数のビームリングを展開放射、避けられないくらいの数の輪がジャスティスを襲う。
「これくらい!!」
高速で無数に撃ち出されるリングを神がかった動きで避けまくるアスラン。
「ふん、何時まで持つかね?」
「(アスラン!・・・何か、何か無いのか!?あの強力なビームの輪を打ち破る手段は!)」
「くっはははは!踊れ踊れぇーい!」
止む事の無いビームリングの連続攻撃、避けられる、避けられるけどずっとは無理だ。
「アスラン!・・・・そ、そうだ!確かこの機体のドラグーンには!」
シンは何かを思い出すとコックピットの機器を操作、ドラグーンのシステムを弄り出す。
「(理論上可能だって聞いただけだけど・・・出来か!?)ドラグーン・・・・・行けえぇ!!」
アカツキの黄金のドラグーンが全て射出され、ジャスティスとゲイザーの方へと一斉に飛んで行く。
「むっ?ふん、またそれか。無駄だと分からんのかのお?」
「守れぇぇぇぃぃ!!」
「!?」
射出されたドラグーンはゲイザーに向けてビーム砲を撃つと思いきやジャスティスの周りを囲むように展開され、
各砲塔の砲口からビームが放射、各ユニットがビームによって結ばれてジャスティスを囲む檻のようになる。そして
「なっ何ぃ!!?」
ゲイザーが放ったビームをことごとくドラグーンの檻ビームが弾く。
無数に射出されるビームリングは全てビームの檻、ビームバリアによって無効化され、ジャスティスに一切攻撃が通らない。
「アスラン今だ!」
「おおう!!」
バリアに守られたジャスティスがゲイザーに突撃、サーベルを振り回しながら斬り付けてゲイザーの右腕を一瞬で斬り裂いた。
「ふぬおぉっぉ!!(まさかゲイザーが!!)」
目を剥き出しにして驚愕するハカセ。
ゲイザーに一太刀浴びせる事等どんなMSも不可能なはずだった。
しかしアカツキの特殊兵装が不可能を打ち崩し、今確かにゲイザーの右腕を奪い去ったのだ。
23
「止めだ!」
「ふぬっ!」
ジャスティスの追撃の一閃が放たれたが、ゲイザーの素早い回避によって空振りになる。
ゲイザーは背部の円形スラスターから凄まじいまでのエネルギーを噴射して離脱、ジャスティスと一瞬で距離を取った。
「忌々しいアスラン・ザラめ!!」
「クジラ博士!
アーサーを使って俺を騙そうとした罪!思春期のシンを不安定にした罪!下らない妄想で世界を支配しようとする罪!
罪の塊のお前は俺が倒す!世界は俺が守る!!」
「戯言を!!
私の理論は間違って等いない!お前が特殊なのだ!お前がおかしい、狂っているのだ!!
私は世界を救う!お前達は、世界の敵として必ずや滅びるのだ!!!」
ハカセの叫びと共にゲイザーの背部の環状構造体から、白い靄のカーテンのような物が噴出される。
「必ずや・・お前達は滅びる!!」
ゲイザーは白いカーテンのような物を噴出しながら機体を反転、
背部スラスターからエネルギーを噴射して、ジャスティスらに背を向けて動き出した。
「逃げるのか!?」
背を向けて逃げ出したゲイザーをジャスティスとアカツキが猛スピードで追いかける。
「待てー!!」
ゲイザーにどんどん迫る二機。
後少しで追いつくかと思われたその時
「なっ、何だ!?」
突如ゲイザーが急激に速度を上げた。
速度は一気に追いかける二機のそれを上回り、更に加速して信じられないスピードを得た。
「スカイフィッシュの早さだ・・(ごくり)」
「な、何て早さだよこいつは!」
ゲイザーはたった数秒でジャスティスらの数倍のスピードを得て進み、あっという間に離れて見えなくなってしまった。
「・・」
「クジラ博士・・」
「シン、クジラ博士の計算は間違っている、だからお前は大丈夫だ」
「え?・・・・う、うん(アスラン・・)」
「俺は人を信じている。俺は人を愛しているからな」
「・・・アスラン、ごめん。俺、SEEDの事ちゃんとはっきり言わなくちゃいけないって分かってたのに、ちゃんと言えなくて」
「SEEDの事なんて気にする必要は無い、あれはクジラ博士の妄想だ」
「そうじゃない!そうじゃなくて・・・俺はあんたやキラにちゃんと言わなくちゃいけなかったんだ・・」
「シン、お前は頭が良くない」
「は?」
「過ぎた事を考えるよりも今したい事だけをひたすら思えばいい。その方がお前らしい」
「アスラン・・」
「月でヨウラン達が悪の組織に捕まっている。さあ、助けに行くぞ、シン!」
「・・・ああ!(アスラン・・あんたは何だかんだ言ってもやっぱり、いっつも俺にとって・・)」
24
「まさかゲイザーが負けるとは」
逃げたクジラ博士はゲイザーを修復すべくDSSDのステーションへと向かっていた。
あのまま戦いを続ける事は出来たが、
あそこでアスランとシンを無理に倒す必要は無かったし、万が一負けるという可能性も否定できなかったので逃げた。
逃げる際に放出された白い靄のカーテンのような物は、ゲイザーに搭載された特殊な推進システム、ヴォワチュール・リュミエール。
推進剤無しで外宇宙を探査するために作られたシステムで、
発生させた微粒子の膜で太陽風を受けて、それを推力にするという物だ。
既にスラスターによって得ていたスピードにこのシステムの加速が加わり、あの圧倒的なスピードを実現したのだ。
「私の理論は間違ってはいないはず・・・・アスラン・ザラ、一体何者なのだ!?」
「てえぇぇい!」「てやぁぁぁ!」
イザークの白いグフ、ディアッカの黒いブレイズザクファントム、
その二機のコンビネーション攻撃によってステーション護衛の部隊が次々落されて行く。
さらにオレンジショルダーは同士の証!ハイネ隊ザクウウォーリアーが千名に当たry
スカンジナビア地下シェルター
「皆大丈夫かしら・・・?」
体育座りをして戦っている皆の心配をするミーア。
その横で、誰も聞こえないがハイネが歌を歌っていた。
『絡み合うレスを〜伝えたいマジレスを〜♪ネタ釣りじゃ届かない〜♪゛釣れたよ!゛なんて〜誤魔化しの言葉じゃ〜♪』
オレンジショルダーな同志達の事はすっかり忘れて歌い耽っていた。
「当たれ!」「逃がすか!」
キラとムウも大量部隊を相手に奮闘。
キラはアスランの友情によって体の震えが殆ど納まり大活躍、ムウもAAにくっ付いてそこからランチャーを撃ちまくる。
「ぐはぁっ!」
「ディアッカ!!」
ディアッカがうっかり被弾してしまった。
武器を破壊されたため已むを得ず母艦に戻ろうとしたのだが、敵が入り乱れていて戻れない。
仕方なく一番近くの同盟艦、連合の戦艦に着艦させてもらう事に。
艦内に降り立ちコックピットから降りたディアッカは、壊れたザクを見上げて溜息をついた。
「はぁ・・・やっちまったぜ。
やらなきゃならないって時に俺は・・・・・・ん?あれは・・・バスター!?」
連合艦の中で目に入ったのはディアッカの嘗ての愛機、バスターだった。
「何でバスターがこんな所に・・(いや、元々連合のだからあっても不思議じゃないか)」
ディアッカはバスターを指差しながら連合のメカニックにあれは使えるのかと聞いてみた。
すると全然使えますと返答が返ってきてしまったので、ディアッカはそのバスターに乗って出る事にしてしまったのだ。
そう、そのバスターは・・・。
「ひゅー!こいつは懐かしいぜ!
ディアッカ・エルスマン、バスター、行くぜ!」
とっても軽いバスターでディアッカは大量の敵が居る戦場へと出て行った。
25
「ディアッカ!?何だその機体は!?」
「やったぜイザーク!バスターが偶然あったお陰でまだ戦えるぜ!」
がががっ
「あれ?」
うっかりジンのマシンガンを喰らってしまったバスター。
装甲が面白いくらい削れて砕け散っている。
「な、なんだこりゃ〜〜〜!!??」
「駄目よディアッカ!その機体じゃ!」
「ミリアリア!?」
「そのバスターはプラスチックで出来てるの!!コックピットになんか弾が当たったら死んじゃうわよ!!」
「う、嘘だろぉ!?」
嘘な訳が無い、現に装甲は思い切り破壊されている。
激しく動揺している所にジンが襲い掛かる。
「くそっ!」
バスターがジンに向かって迎撃のビーム砲、しかし発射されたのは激細の貧弱ビーム。
「なんじゃこりゃ〜!?」
「駄目よ!そのバスターのエネルギーは乾電池なのよ!!」
「そんな〜!?」
絶望するディアッカ。
しかし、発射された貧弱ビームはその見た目とは裏腹にジンを見事撃ち抜いた。
「あ、あ?一応効くのか?よ、よーし!」
ディアッカは二つのバレルを連結、合体させる事により一撃のパワーを少しでも引き上げようと試みる。
「ええい!」
高インパルス、いや、電池ゆえに中程度のインパルス砲が発射されて、ジン数機を纏めて撃ち抜いた。
「ディアッカ・・」
ミリアリアは口にこそ出さないが、内心ディアッカが心配ではらはらしていた。
ステーション攻撃の方は連合とザフトの同盟戦力が率先して行い、MSらはAAやジュール隊、ハイネ隊、オーブ部隊が引き受ける。
連携が上手く取れているため数で負けていても押されはしない。
むしろ元一般市民が大勢混じっているジン部隊らの方が押されている程だ。
ステーション破壊までもう少し。
「チャージ完了。アーサー、指示を」
「発射!」
「了解、発射します」
アーサーの指示によってレクイエムが即発射される。
スイッチを押すと月面砲に光が溢れ強大なエネルギーが放射、レクイエムの巨大ビームがフルパワーで撃ち出された。
26
「高エネルギー・・月面砲の発射を確認!」
「!?」
「もうすぐステーションの真ん中をビームが通過するぞ!!」
幸い皆ステーションの外側で戦っているため飲み込まれはしない。
しかし、キラ達は゛このままではスカンジナビア王国が撃たれる!間に合わなかったのか!?゛と苦悶を顔に浮かべている。
実際には既にラクスらが中継ステーションを一基落した事によって、今スカンジナビアが撃たれるという心配は無い。
代わりに、ラクスらがビーム砲の餌食となる事に・・。
「くそっ!間に合わなかった!?」
「イザーク・・・・くっ!諦めて堪るか!!」
「ディアッカ!?」
諦めるものか!、ディアッカはジンのマシンガンの雨を掻い潜りステーションに接近、敵に機体をぼろぼろにされながら連結ライフルでステーションを狙う。
「ディアッカー!!」
「やらせて堪るかーーー!!!」
ズギューーーーー
渾身の中インパルス砲がステーションに向けて放たれた。
これくらいの攻撃じゃステーションは破壊出来ない、そう思われたが
ずずずずっずっず
中インパルス砲が命中した瞬間、ステーションが大きく唸りを上げながら崩壊し、断裂し始めた。
「グゥレイト!!」
ステーション崩壊開始、それと同時にレクイエムの超エネルギーがホールを通過した。
通過したエネルギーは、曲がらない、次のホールの方へは向わず、何も無い宇宙の闇へと消えて行く。
既にホールのゲシュマイディッヒ・パンツァーは機能を停止している。ディアッカの諦めない思いの一撃が奇跡を起こしたのだ。
「やったぞディアッカ!・・・・ディアッカ!?」
イザークが機能停止したホールから視線を移すと、そこにはジン部隊の集中攻撃を受けて残骸となって行くバスターの姿が。
「貴様等!やめろー!!」
ディアッカを助けるべく向おうとするがこのままじゃ間に合わない。
「退いて!!」
「!!」
イザークの耳に響くミリアリアの声。
「ディアッカを死なせたりなんかしない!!」
ミリアリアは自分の座席から飛び出して、他の乗組員をその大きなお尻で吹っ飛ばして火気官制の座席に着き、
勝手に操作してローエングリンの発射体制に入らせる。
「ミリアリアさん!?何を!?」
「ディアッカー!!」
本当は今でも大好き彼の名を叫びながら、エネルギーチャージが中途半端のローエングリンを、発射。
中途半端ながらも高出力の陽電子砲が放たれ、バスターを攻撃しているジンの群を根こそぎ飲み込んだ。
「ハァ・・・ハァ・・」
息を荒げ、すとんと床へと座り込むミリアリア。
バスターは大破したがディアッカは怪我こそしたけれど無事で、イザークに引かれてAAの方へと戻って来た。
「ミリアリア・・・・・助かった・・ぜ」
「・・」
「ミリアリア?」
「・・・んとに!本当に死んじゃうかと思ったんだから!!」
「・・」
「ばか・・」
GJ!
アスラン、かっこいいよアスラン
壊れてるけどかっこいいよ、ホント
シャムスの「うるせーラクスババア!!」に吹いたw
ラクスはシャムスより年下なんだがねえw
27
「一気に駆け抜けます!」
ミーティア二機の連続掃射を経て突破口を切り開いたラクス達。
まだまだ迫り来る敵を後に、エターナルやガーディールーらは一気に前進、次のステーションへと向う。
「ヘルベルトさんは量産機部隊の指揮を取りつつ、追い掛けて来る敵部隊を迎撃して下さい」
「お任せを!」
元気一杯に返事するヘルベルト。
エターナルの後方に移動するとそこには
「やっぱりカップスープはクノールだね!」「美味しくて一気に飲んだら火傷しちまったぜ!」
「あはははは!」「ふひゃはははは!」
全く戦わず、備品のスープを飲んで寛いでいるヒルダとマーズが居た。
「こいつら・・(もう、放っておこう・・)」
ヘルベルトが呆れ返る最中、ラクスの方には別部隊の、メサイアを見張っていたザフトの仲間からの通信が入っていた。
「メサイアがシールドを展開して急速移動!?」
「はい、かなりの早さで移動しています」
「それで・・・地球に向けて進んでいるというのは本当なのですか?」
「進行方向は完全に地球に向けてです」
「(彼らには月面砲が既にある・・・。
ステーションが落された事であれを保険として地球に・・?それとも・・・)」
「ラクス様?」
「そちらは引き続きメサイアを監視、追尾して下さい。我々が今からそちらへ向います」
自分達も今からメサイアの方へ向うと言うラクス。
それを聞いたエターナルに同乗している虎の元部下ダコスタが、ラクスの言葉に対して意見する。
「そんな!駄目ですよそんなの!
せっかくステーションを破壊して時間を稼げてるのに、月に向わずにメサイアに向うなんて!
別のステーションが配置される前に、早く他の部隊と合流して月面砲を撃たなければ意味がありません!」
「分かっています。
しかし、メサイアの方も放っては置けません。
あれには新型のジェネシスが搭載されている上に、全方位を完全に防御出来るビームシールドが備わっています。
月面砲を落したとしても、あれが地球を射程に捉えられる位置まで動いてしまったら意味がありません。
・・・報告によるとメサイアはシールドを発生させながら移動しています。
誤算でした・・・・シールドを張りながら移動出来るなら、予め配置しておいた部隊では抑えられないでしょう。
あれを如何にかするには我々が行くしかありません」
「しかし、月の方は如何すれば・・」
「今ここにある艦隊を分断します。
エターナルとガーディールー、ミーティア部隊と一部の艦、MS隊はメサイアを破壊へ、
その他の艦、MS隊は別ルートを進行する友軍らと連絡を取り合い、力を集結させて月を撃ちに行ってもらいます」
「戦力は敵が圧倒しています!
全勢力を集結させてやっと月を突破出来るか如何かなのに、それを分断させるなんて!」
「それしか方法はありません。
片方だけ撃っても、もう片方が残っていたら地球に残された者達は終わりです。」
「でも!」
「これは命令です!
我々は不可能を可能にしなければ成らないのです!!でなければ皆終わりです!!」
ラクスにきっぱりと言い切られ何も言えなくなるダコスタ。
ラクスの命の下、戦力は大きく分断、
それぞれメサイアと月に進路を取って動き出した。
28
あと一本程ステーションを破壊して暫くの間、確実に地球を狙えなくする予定だったが、
メサイアの急速な移動によって予定変更、エターナルらと別れた艦隊は即月へと向う。
最終的に狙いを付けるステーションは破壊したとはいえ、予定のホールを全て破壊せず月に進路を取るのは危険だった。
再配置、照準まで稼げる時間が予定より短くなるからだ。
メサイアコントロールルーム
「そうか、敵部隊がこちらに・・」
「メサイアのシールドはあらゆる攻撃を防げますが、
万が一敵に群がられた場合、解いた瞬間集中攻撃を浴びる事になるためジェネシスを発射出来ません」
「分かっている。
・・・・敵には例の大型装備ミーティアが二機か」
「既に迎撃部隊の発進準備は出来ています。
敵が近づく前にシールドを一端切り、迎撃部隊をメサイアから一気に放出します」
「俺も出る。
クレオにもデスティニーインパルスの発進準備をさせろ」
「ヤイカ自ら出る積りですか!?駄目ですよ!指揮を執るべき者がそんな」
「上に立つ者は常に上に構えて、か・・・・・そんな考えを持っていては、先の敗北者と同じ道を辿る事になるよ。
俺は敗北者と同じ道は執らない、俺自身が戦って道を示す」
「ヤイカ・・」
「レイ・ザ・バレル、お前は如何する?」
コントロールルームの大型ディスプレイの前で佇むレイに声を掛ける。
するとレイはまるでロボットのような動きですーっと体をこちらに向け、無表情で首を横にふりふりした。
「そうか・・」
「ヤイカ、奴の機体は如何しますか?666Sレジェンド・・・あれ程の機体を遊ばせて置く手はありません」
「・・・レイ・ザ・バレル、あれは我々が使ってもいいのか?」
ヤイカが聞くとレイはやっぱり無表情のまま、機械的に首を横にふりふりした。
「駄目なようだ」
「(あんな奴の意向なんて無視すればいいのに)分かりました」
「・・んの」
「ん?何だ?」
レイが何か呟いた。
何と言ったのかヤイカが聞き返すと、レイは無表情のまま、しかし瞳に迸る憎悪を秘めながらはっきりと答えた。
「黄金のMSがメサイアへと近づいて来たら私に知らせて下さい。その機体は・・・・・私が排除します」
「・・分かった(何だ?この憎しみに満ちた目は)」
その後、ヤイカはMSが配置されたメサイアの一角へと行き、自分に用意された機体に乗って発進の時を迎えた。
「ユニウス落しからもう少しで一年・・・・・サトーよ、お前の望みは俺が叶える」
綺麗に揃った短い銀髪をヘルメットに押し込めながら呟くヤイカ。
「ナチュラルを捻り殺す、だな」
生やしっぱなしの汚い黒髪をヘルメットに押し込めながら呟くクレオ。
二人ともサトーの意思を継ぎ、ナチュラルを滅ぼす事だけのために、混迷する宇宙の闇へと身を投じようとしていた。
「サトーのした事は無駄ではなかった。それを俺が証明する」
「パトリック・ザラの執った道は正しかった。それを俺が証明してやる」
メサイアのシールドが解かれ、メサイアに取り付いていた反ナチュラル部隊のMSが出撃を開始した。
「コーディネイターの真の自由と正義のために・・・クレオ・パンドラー、デスティニーインパルス、出る!」
「サトー、貴方とその家族の墓、帰ったら必ず作ります・・・ヤイカ・ホノリス、プロヴィデンスザク、出撃する!」
二機の試験試作機が飛び立ち暗闇の宇宙を進む。
掲げた自由と正義のために。
29
メサイアから出撃する反ナチュラル部隊の光をモニター越しに見詰める、冷たく冷え切った瞳。
今のレイには目指すべき未来も無く、救いも無い。
未来を共に築いてくれるはずだった、世界を救ってくれるはずだった、大切な人はもう居ない。
「(来い・・・早く来い、シン・アスカ。
俺がお前を苦しめてやる、俺がお前の未来を奪ってやる!
俺の未来を選ばなかった代償、お前の未来で払って貰う!
必死に未来を掴もうとするお前の目の前で、お前の守ろうとした物を全て奪ってやる!
そうだ・・・お前が俺を選ばなかったからこんな事になったんだ。
お前が俺の手を跳ね除け、キラ・ヤマト達の元へと寝返ったのが全て悪かったんだ。
お前が悪い!お前が悪い!お前が悪い!!
お前が俺を選んでいたらきっと全ては上手く行っていたんだ・・。
だから裏切ったお前の未来を、俺が奪う!
真に優しい世界を拒んだのだから・・・・・優しさの欠片も無い、滅んだ世界を目の前にして泣き叫べ!そして死ね!)」
今、レイの行き場の無い思いは全てシンへと向いていた。
「月にアスラン王国の支店を出して宇宙兎をマスコットにしようと思う!」
よく分からない事を言いながら、とうとう月面まで到達して大量の敵部隊を相手にしているアスラン。
「(支店て・・アスラン王国は国じゃないのか?)無駄口叩いてる暇無いぞ!敵がこんなに!!!」
ジャスティスとアカツキを迎え撃つ数百のMS、MA部隊。
連合の強力なMS、MA、その他色々な所から集められた色んな陣営のMSが二機に襲い掛かる。
「お前の友情が俺を守っているから大丈夫だ!」
アカツキのドラグーンバリアによって守られたジャスティスは敵のど真ん中でその強大な力を大開放、
アカツキは後方でやっぱり援護に徹している。
こんな敵の本拠地に二機で突っ込んでしまったのはアスランのせいだが、
そんな中敵を蹴散らして進めているのもアスランのお陰なのだ。
「あれは・・・」
前方にシンのよく知る物が現れ、何か思い出し苦い顔をしながらアスランに注意を告げる。
「気をつけろアスラン!!あれは・・デストロイだ!!」
二機の行く手に待ち受けるは、シンが嘗て虐殺の限りを尽くす際に乗ったデストロイだった。
「あの時のMSだなシン?
ん?なんだ?五機もあるぞ?」
「五機!?・・そ、そんな。あれが五機も!?」
一機だけでも強大過ぎるあれがなんと五機も待ち構えていた。
シンの顔から血の気が引き、表情が強張って真っ青になる。
「だ・・駄目だアスラン!引き返そう!!」
「アスランにそんな巨体は通用しない!」
「アスラン!!」
シンの声を聞かずにデストロイへ向かって突っ走るアスラン。
「くらえ!アスランビーム!!」
バシュッ
効かない、アスランビームがデストロイのバリアに弾かれた。
「止めろアスラン!!無理だ・・無理だー!!!」
シンが幾ら叫んでもアスランは聞かない、ビームを撃ちながらどんどん接近して行く。
「アスラーーーン!!!」
「シン・・・見ていろーーー!!!」
「へ?アスラン!?」
30
ジャスティスに向けて攻撃し出したデストロイ、
強力な攻撃を仕掛けてくるそれに全く怖気ずく事無く突き進むアスラン。
「こんな力に、怯えるんじゃないっ!!!」
攻撃を凄まじいスピードで掻い潜り、
そして、デストロイの胸部へとシャイニングエッジビームサーベルを真正面から突き刺して見せるアスラン。
「こんな力に、怯えたら負けだ!!」
大爆発するデストロイ、その巨大な爆炎の中を突き抜けて別のデストロイへと更に突っ込んでいくジャスティス。
「俺達は、こんな物に負けるためにここまで来たんじゃない!!」
切り離され突撃し、デストロイのバリアを貫いて突っ込み巨体に風穴を開けるリフター。
「俺達は・・」
残りのデストロイに向けて勢い留まる事無く突っ込んでいくアスラン。
「愛している人達を守りたくてここまで来たんだーーー!!!」
デストロイがその力を発揮する前に、全てジャスティスの攻撃の前に撃沈大爆発した。
「アスラン・・」
「お前だってそうだろう。お前だって、守りたい何かがあってここまで来たんだろう!!
だったら、どんな力を相手にしても怖気ずくな!!逃げるなんて言っちゃいけない!!
俺達は恐れはしても、その恐ろしい何かに背を向けて逃げだしたりは絶対にしちゃいけないんだ!!」
「(どんな力を相手にしても・・)」
どんな力も、その言葉はシンの心の深い所にまで響いた。
どんな力も・・・・・自分自身の力さえもか。
「アスラン・・・俺、間違ってたよ」
「シン・・」
「行こうアスラン。俺達で、俺達の゛力゛で愛する者を守るんだ!」
「よく言ったシン!!それでこそお前だ!
よし!行くぞシン!俺とお前の力でアーサーやクジラ博士の野望を阻止するんだ!」
「ああ!!俺達ならきっと出来る!」
「行くぞぅ!!」
シンとアスランはモニター越しにガッツポーズをし合い、熱い友情と信頼に結ばれて、敵の群を突き進んで行った。
・・・もう、アスランは好きにやってくれ・・・
つーか、その突き抜けた心でレイを救ってくれいっ!!
ちょっと下過ぎるのであげ
カズイ
なぜだ!
なぜこんなネ申SSが書けるんだ!
GJですw!!
31
レクイエムコントロールルーム
「ステーションがまた落された?!」
驚いた顔をしながら素っ頓狂な声で叫ぶアーサー。
「知らせによればエターナル艦隊も無事のようです」
「数が多くても所詮ジンはジンか。あれだけ数が居るのにステーションを守れないとはな」
「敵部隊は一部を除き全て月へと進路を取っています。恐らくステーションの再配置前にここを叩こうという事かと思われます」
「・・・ステーションの再配置を急がせてくれ。
それと、現段階では使用されないステーションに配備されている部隊、その他もろもろを全て月に集結させるよう命令を」
「了解」
「(やはり、旧式MSが大半を占める上に、
パイロットの半分以上がニ、三年訓練を受けただけの元一般市民というのが問題か。最初から少し不安には思ってたけど・・・。
クジラ博士、貴方の予想では圧倒的に優勢との事でしたが、はっきり言ってこっちは本当に゛数だけ゛ですよ)」
「アーサー、月面部隊から緊急連絡!
異常に強い二機のMSが月面部隊の迎撃を全く物ともせず侵攻、こちらへ向かって来ているとの事です!」
「なにぃ!!?」
「一機は黄金のMS、もう一機は真っ赤なMSです!」
「(黄金・・・クジラ博士が交戦したという機体か)・・真っ赤なMS?・・・ま、まさか」
顔色を変え、目を見開いて固まるアーサー。
赤という色に異常に拘る一人の人物の姿が頭に浮かぶ。まさか、奴か?
「アーサー?」
「ク・・クジラ親衛部隊を準備させろ!
シビリアンアストレイ、ウチュウクジラカスタムを迎撃に向わせる!(まさか・・・・あれだけ痛めつけたのに復活出来る訳が・・)」
嫌な予感がするアーサーは月配置で最も強力な、宇宙クジラ親衛部隊を出撃させる。
その部隊は、貧弱なDSSDアストレイを強化改良して誕生させた宇宙クジラアストレイを駆る。
青と黒でクジラっぽく塗装され、武器は全てクジラに優しいエコロジービーム仕様だ。
「アストレイ部隊にはジンのマシンガンを持って行かせてくれ。
あの黄金の機体はビーム兵器を跳ね返すが実弾には非常に弱いという話だ」
月に攻め込むため次々に合流して行く同盟軍。
幾つかが合流に成功する中、別の幾つかは突如現れた強大な敵の前に全滅していた。
「見える・・敵が見える!」
サイだ、サイのミーティアフリーダムが数々の艦隊を単機で襲撃して壊滅させている。
「やっぱりキラがすごいんじゃなくてフリーダムがすごかったんだ。フリーダムに乗ってないキラだったら一瞬で倒せる!」
次々散って行く敵艦を眺めながら自分の強さに酔いしれるサイ。
圧倒的力を振るう快感が堪らない。高揚しているサイ、そこにクジラ博士から通信が入る。
「サイよ、お前はメサイアの方へと行け」
「え?何故です?」
「ヤイカらが勝手をしておる。地球全域を壊滅させるためにメサイアを動かしておる」
「なっ!」
「敵の方もそれを察知し、メサイアを止めに向かっている。
シールドがある限りメサイア本体は大丈夫であろうが、敵が張り付いていてはジェネシスを撃つ隙も作れん。
お前が行って今の内に邪魔な奴等を排除しておくのだ」
「ちょっと待って下さい!!
・・それは、ヤイカ達の地球を壊滅させるという行動を援護しろという事ですか!?
話が違います!俺は貴方の言う真の世界を」
「落ち着くのだ、サイ。誰も奴等のしようとしている事を手伝えとは言っておらんよ」
「では、一体・・」
32
「レクイエムの中継ステーションが二つ程落され、その隙に敵部隊が一気に月へ攻め込もうとしていると、さっき連絡が入った」
「!!」
「それ自体は私は心配していない。敵艦隊が幾ら足掻こうとも月を突破する事は不可能だ。
しかし、一つだけ危険に感じている物がある。
もしかしたらそれが月を攻略してしまうかもしれんのだ(アスラン・ザラ・・・奴の力は異常だ)」
「も、もしレクイエムが落されたら大変じゃないですか!!」
「そうだ・・・・レクエイムが落されたら我々は決め手を失う。
だから、もしそうなった時のために、何時でも我々がメサイアを操りジェネシスを撃てるようにして置く事が必要なのだよ」
「・・?
いや、その、言っている事は分かりますが、メサイアは今ヤイカ達の手中にあるんですよ?
俺がメサイアに行って群がる敵部隊を排除すれば確かにジェネシスは撃てるようになります。
しかし、そのジェネシスはヤイカらの手中です。
コントロールを奪おうにもシールドが邪魔でメサイア本体に取り付く事も出来ません。
一体どうやってメサイアを手に入れるというのです?
あいつらは俺達が地球壊滅をを望んでいない、止めようとすると知っていると思います。
こちらからどう言い包め様としても警戒してシールドを解除したりはしないでしょう。
もし俺達がシールドの解ける、ジェネシスを撃つ瞬間を近くで待ち構えよう物なら、
ジェネシスを使わず、シールドを発生させたままメサイアを地球に落して地上を焼き払おうとさえするでしょう。
あいつらはナチュラルを滅ぼすためなら迷わずに、
自分達の命を捨ててでも確実に滅ぼせる方法を取ると思います。
あいつらの反ナチュラル感情の異常さを教えてくれたのは貴方でしょう、クジラ博士?」
「分かっておる、奴等は決して我々にも隙を見せようとはせんだろう」
「だったら」
「・・・私のスターゲイザーにはメサイアのコントロールを遠隔掌握出来るプログラムが組み込まれている」
「!?」
「メサイアのシールドは知っての通り、レクエイムの直撃をも耐える強力なエネルギー体だが、通信を遮断する事は無い。つまり」
「外部からのデータ送信を受け付ける?!」
「そうだ。
つまり、ゲイザーからプログラムを送信し、それによってメサイアのあらゆるシステムを掌握する事が出来るという事だ」
「じゃあ、メサイアを掌握する事は可能なのですね?」
「ああ、全ては我々の手中よ」
「(やっぱりクジラ博士に付いて来たのは間違いじゃなかった!)
分かりました。そういう事なら、メサイアに向かって邪魔な敵部隊を排除して来ます!」
「うむ」
「では!」
サイは通信を切り、メサイアに向けて進み出した。
「そう、私の、そしてゲイザーの力を持ってすれば、全ての反抗者は無力も同然なのだよ。
・・・・アスラン・ザラ、奴以外は」
「うぎゃー!!」「うひゃふぁびゃー!!」「助けて!助けてー!」
完全に機体を破壊されず達磨にされて辛うじて生きている、アスランと戦い負けた人々。
生きてはいるが、達磨にされ待っているのは生き地獄という名の恐怖だった。
「ア、アスラン王国だー!!!」「アスラン王国が迫って来る!!!」「もうアスランやだー!!!」
アスラン王国のプロモーション映像が強制的に流されている。
悶絶、発狂、精神崩壊するパイロット達、中には耐え切れず画面に頭を突っ込んで流血する者が出るくらいである。
33
他の艦隊と合流を果たしたキラ達の艦隊。
ディアッカはAAに収容され、ミリアリアに優しくぽむぽむされている。
艦長やキラ達は合流した艦隊から、エターナルらがメサイアを止めるために少数でそっちへ向ったという事を知らされた。
それを聞いたキラはラクスが心配で堪らなくなる。
「ラクス・・」
アスランやシンの事も心配な所にラクスの危機が知らされ、キラの胃腸がストレスできりきり痛む。
心配そうな顔をするキラをモニター越しに見た艦長は、気を遣って声を掛ける。
「キラ君・・大丈夫よ」
「マリューさん・・」
「宇宙で死んでもそのまま宇宙葬って事で大丈夫よ」
「・・」
キラがどんよりと益々心配そうな顔になっていると、イザークがAAに向けて言い放った。
「AAはエターナルの方へ行け!」
「え?私達にメサイアの方へ行けと?」
「そうだ、馬鹿艦長」
「な、何ですって!?」
「こんな時に笑えない冗談をパイロットに向けて言う艦長は馬鹿だ!恥を知れ!
・・・と、そんな事よりも、とにかくAAはメサイアに向かってエターナルと一緒にメサイアを撃て!
あの要塞のシールドは月面砲の直撃を受けても耐えられたという話だ。
エターナル達だけじゃ如何にか出来るか分からない、お前達も加勢してやれ!」
「でも、月への攻撃は」
「そんな物はお前達が居なくてもやれる!」
「でも」
「ふん、自惚れるなよ!
お前達が居ないくらいで俺達や、これだけ沢山の同盟艦隊がやられるものか!いいからさっさと行け!!」
イザークが大声で言い放った時レーダーに、遠くを高速で横切る巨大な物体の反応が表れた。
「これは・・・・ミーティア!?」
ノイマンが驚きを顔に浮かべながらそう言う。それを聞いたキラも驚きを顔に浮かべる。
「(ミーティアって・・・・・まさか、それを使ってるのは!!)」
ミーティアはこちらへは向わず遠くを通過し、その進路は、メサイアへ向けての物だった。
「ミーティアと思われる機体はメサイア方面へと向かっています!艦長!」
「ラクスさん達の方に・・でも」
「行きましょう、艦長」
「キラ君!?」
真っ直ぐ前を見て、何かを覚悟したような顔で言うキラ。
行かなければならない、しっかり見開かれた目がまるでそう訴えかけているようだ。
「行きましょう・・」
「・・・分かったわ。AA、これよりエターナルの援護、メサイアの撃破のため、これよりこの宙域を離脱、メサイアへと向います!」
AAは進行方向を変え、他の艦隊から離脱してメサイアへ向けて進み出した。
その姿を目に焼き付けるように見詰め続けるイザーク。
「ディアッカの事は頼んだぞ、AA!
必ず、生き残って見せろよ!あしつき!!」
34
その頃、エターナルらはメサイアまであと少しという所で、
メサイアから先に出撃して待ち構えていた反ナチュラル部隊と遭遇していた。
「敵部隊接近!」
「(メサイアはシールドを張っている・・・やはり守り通して地球へと一気に)
スウェンさん、オクラさんは先頭を取りつつ迎撃を。
MS隊は各ミーティア、艦隊にそれぞれ付く形で戦闘を行って下さい。
シャムスさんは、そろそろプラスチックでは無理そうですので戻って下さい」
「今さら言うか〜?!
つーかてめー!俺の機体がプラスチックだって知ってて黙って戦わせてたんじゃねーだろうな!?」
「はい、そうです」
何の悪意も無い真っ直ぐな綺麗な瞳で言い切るラクス。
「ふざけんな!ふざけんなババア!」
「無駄口を叩いている暇はありません。ほら、敵が接近していますよ」
「ちっくしょーう!!」
シャムスは人間不信になりそうだった。
「量産機とは違う謎のMSが接近!」
「!?」
エターナルへと近付いて来る二機のMS。
そのパイロットの一人、ヤイカが、エターナルに向けて通信を開き言い放つ。
「裏切り歌姫よ。その罪、お前の命で償って貰うぞ!」
「あれは・・(ザフトから奪われていた試作機!)」
迫り来るデスティニーインパルスとプロヴィデンスザク。
その時、ヤイカの声に反応した一人の男が迫り来る敵機の前に躍り出た。
「てめぇ、ヤイカ!!!」
「くっ、お、お前は・・ホシノ」
「この野郎めが!まさか本気で地球をそれで撃つ積もりか!?」
「ふん、そうだ。これによってナチュラルは全て滅ぼすんだ!」
「ふざけんな!ナチュラルだからとか、そういうのは止めろって言ってんだろ!!」
「戯言を言う癖は直っていないようだな、ホシノ」
「てめぇ!!」
かつて共にザフトに居たホシノとヤイカ、その二人がぶつかる。
ムラサメとプロヴィデンスザクの撃ち合いが始まり、完全に二人の一騎打ちとなる。
「ホシノ!加勢する!」
「下がってろコクシ!こいつは俺がやる!」
コクシの援護を断るホシノ。
「ヤイカ、俺が奴を!」
「あいつは俺がやる。俺がやらなければ駄目だ」
クレオの援護を断るヤイカ。
どうしてもこの二人は一騎打ちで勝負を決めたかった。
「ナチュラルの傀儡に成り果てた裏切り者め!
コーディネイターの執れる道は一つしか無いと、何故分からない!!」
「人が執れる道は一つじゃない!
てめーの下らない妄執なんかで、俺の生き方にけち付けられてたまるかー!!」
35
「ふん!お前のような気持ち悪いロリコンオタクに話は通じないようだな!」
「てめぇ!!ロリコンを馬鹿にするなぁー!!」
「ロリコンは全生命共通の敵だ!!悪だ!塵だ!屑だ!べん毛虫だ!!
ロリコンは全ての悪の頂点に有り、そして、
そんなロリコンを喜ばせるロリエロゲーを作るナチュラルは邪悪そのものなんだ!」
「ロリコンは愛の形だ!
幼い少女を愛する純粋な思い、それがロリコンだ!!」
「違うさ、ロリコンに愛なんて物がある訳が無いんだ。
ロリコンは自分達が幼い体で興奮する事しか考えていない、相手の気持ち等一切考えない鬼畜なんだ!」
「そんな事!!」
「やっかいな塵だな、ロリコンは!」
「塵はお前だ!!」
「知れば誰もが叩くだろう、ロリコンは気持ち悪いと、ロリコンは死んでしまえばいいと!」
「うるせぇばかやろうがぁっ!!」
「故に許されない、お前という存在も!」
「俺はちゃんと女の子の気持ちも考えてるぞ!
妹が居たら毎日お風呂一緒に入って、布団で裸でスキンシップだってする!
頭だって撫でちゃうし、一緒に遊園地に遊びにだって行くんだー!!きっと大喜びだ!」
「気持ち悪いだけだ!そんなもの!」
「そんな訳ねーだろ!!」
ホシノはエターナルとコクシのムラサメの画面に自分の姿を映し出して問いかける。
「お前等だってそう思うよな?可愛いは正義、ロリコンは優しい善良なお兄ちゃんだよな?」
ホシノの問いかけにラクスとコクシは正直に答える。
「気持ち悪い・・・話掛けないで下さい」
「すまん、俺もちょっとお前は気持ち悪いと思う」
突きつけられる現実。
「お前等ーーー!!!裏切り者がぁー!!」
「ロリコンは死んだ方がいい生き物です。いえ、生き物と呼ぶ事さえ躊躇われます」
「ロリコンにだって人権はあるだろうがぁー!!」
「ロリコンは人ではありません、スペースデブリです。気持ち悪いロリコンは人権なんて無いのです。死んでもいい物です」
「ちくしょーーう!!!」
涙を流しながらホシノはムラサメを動かし、サーベルでエターナル艦首に斬り掛かろうとする。
「やめろ!!」
どごっ
コクシムラサメに蹴り飛ばされるホシノムラサメ。胴体がへこむ。
「うぅ・・」
「敵を間違えるな!今倒さなければならないのはあいつ等だ!」
「そ、そうだよな・・・。
くそう、ヤイカめ!卑怯な話術で俺達を仲間割れさせるなんて!
ロリコンの正義を語っただけなのにもうぼろぼろだぜ!」
「(馬鹿が・・)お前と話す事はもう無い!行くぞ!」
「このぉ!!」
二人の激しい戦いが続く。
このロリコンどもめ
黙れ、ロリコン
36
『頑張れホシノ!ロリコンの自由を掴み取るために勝ち残れ!』
ホシノは気付かないが、憑いて来たダルシムは必死に応援してくれていた。
同じましまろを愛する、ロリキャラを愛する同志として、思いの全てを彼へと懸けていた。
「秋葉原の変態め・・・始末する!」
気持ち悪いホシノを倒すため、ヤイカのプロヴィデンスザクが真の力を発揮する。
プロヴィデンスザクは、ザクにレジェンドのバックパック(レジェンドの物の試作タイプ)が付いたような機体だ。
ある程度普遍化されたドラグーンシステムが搭載され、ヤイカの操作でも十分その力を発揮する事が出来る。
「駆除してやる!」
プロヴィデンスザクから放たれた複数のビット兵器がムラサメの周りに展開され、ロリコンに向かって無数のビームを放ち始めた。
「くっ!ド、ドラグーンか!?」
あらゆる方向から引切り無しに放たれる攻撃。
ドラグーンシステムを持ってすれば大抵のMSは瞬殺される。だが
「何!?避けているだと!?」
ホシノは放たれるビーム砲を抜群の空間認識能力と勘で全て避けて見せる。
「甘いぜ!」
「馬鹿な・・この攻撃を、あんな完璧な動きで避け続けるとは」
「これくらい!(そうさ、これくらいの攻撃俺には大した事は無いんだ・・・)」
ホシノは学生の頃、授業中に音を消して携帯ゲームでギャルゲーをやっていた。
しかし不幸にもうっかり手が滑ってゲーム機の音量を最大にしてしまい、教室中にギャルゲーキャラの萌えボイスを轟かせてしまった。
それ以来他の生徒達から四六時中陰口や嫌がらせを受け、嘲笑された。
三百六十度あらゆる方向から゛気持ち悪い゛と言われ続けた結果、
三百六十度あらゆる方向に対し神経を集中させる能力を得たのだ。
「シスタープリンセルの雛子が俺の帰りを待って居るんだ!負けるかよ!!」
「これがオタクの力だと言うのか!?」
「オタクじゃない、゛ロリコン゛の力だ!!
コクシ、ヤイカは俺が引き受ける。お前はあのデスティニーに中途半端に似た機体をやれ!!」
「わ、分かった!」
コクシはクレオのデスティニーインパルスを攻撃しに回る。
「ヤイカ・・・秋葉原を撃たれた悲しみ、お前を倒す事で癒させて貰う!」
「犯罪者予備軍があぁぁぁ!!!」
「行くぞ、オクラ」「はい!・・・・うえぇぇぇい!!!」
ズギューーーン
エターナルらとは大分離れ、先にメサイアを射程圏内に収めたスウェンとオクラのミーティアが、
ビームシールドに守られたメサイアに向かって同時にフルバーストを叩き込む。しかし
「・・・っ、駄目か」「全く効いていませんよ!!」
ミーティアの火力でもシールドを撃ち破るのは無理。
ならばと、スウェンはシールドに向かって突撃、強引にシールドを突破しようと試みる。しかしそれも
「ぐわぁっ!」
「スウェンさん!!」
超圧のシールドに触れた瞬間機体が凄まじい力の抵抗で弾かれ、ミーティアのアーム先端が拉げ使い物にならなくなった。
「くっ」
「普通に突破は無理です!
・・そうだ!ビームシールドです!ナメクジには塩、ビームシールドにはビームシールドです!」
「(ナメクジ・・?)そうか、分かった」
ストライクフリーダムはミーティアとの連結を解除、
巨体を脱ぎ捨て、単機両腕のビームシールドを前面に向かって発生させながらメサイアのシールドへと突っ込んで行く。
37
「これなら」
シールドにぶつかりビーム同士が激しく抵抗し合う。
フリーダムはスラスターを全開にし、一気にシールドを突破しようと試みる。が
「ぐはぁ!」
「スウェンさん!!」
突破出来ない、フリーダムはメサイアのビームシールドに思い切り弾き飛ばされてしまった。
「くっ・・」
「そんな・・・じゃあ一体どうやってこれを突破すればいいんですか?!」
焦るオクラ、目の前の完璧な防御兵器に圧倒され、無数の敵が自分達を囲んでいる事も気付けないでいた。
「っ!オクラ!!」
「へ?」
オクラがはっとしてカメラを切り替えて確認すると回りには無数の敵が居た。
「しまっ」
ジン、ザク、グフの一斉攻撃がミーティアデスティニー、フリーダム、分離したミーティアに土砂降りのように降り注いだ。
「うあぁぁぁ!!!」
「あ゛ー!!!」
フリーダムのミーティアはジンのマシンガンで蜂の巣にされて大爆発、フリーダムは必死に攻撃を交わすもグフのビーム弾を数発浴びてしまう。
デスティニーは咄嗟にミーティアから分離、ミーティアを盾にするように機体下部に回り込み攻撃を防いだ。
デスティニーのミーティアはガナーザクのビーム砲をまともに受けて、風穴を開けられて大爆発、
デスティニーは大爆発に弾き飛ばされて中空を回転しながらメサイアのシールドの方に。
「がっ・・・・うわぁぁ!!!」
シールドに接触したデスティニーは更に弾き飛ばされ、敵のど真ん中まで回転しながら飛んで行った。
「終わりだな!間抜け!」
飛んで来た獲物を逃す訳も無く、コーディネイター部隊はにやにやしながらデスティニーに向けて攻撃しようとする。
ザクの砲口がデスティニーの腹を狙う。
「くっ(こんな・・・こんな所で俺が・・)」
「させるかっ!」
窮地に落されたオクラを黙って見殺しに出来る訳が無い、スウェンはフリーダムの両腕のライフルを撃ちまくりながら敵のど真ん中へ。
ジンらを次々に撃破しながらデスティニーの所まで辿り着き、寸での所でオクラへのビーム攻撃をシールドで弾いた。
「大丈夫か?」
「あ、はい・・・機体も私も大丈夫です!」
「そうか、よかった・・」
オクラは頭が少しふらふらしながらも操縦桿を握りなおしデスティニー機動、フリーダムと共に動き出す。
「こちらスウェン、
ラクス・クライン、ミーティアの火力では突破は無理だ、ミーティアも両方大破した。ビームシールドでも突破を試みたがそれも無理だ。
更に何時の間にか、さっきまで居なかったと思われる敵機が複数見受けられる。
恐らく別の宙域からここへ来た奴等の増援と思われる。
敵部隊は俺達が何とか抑える、お前達は何とかシールドを突破する方法を考えてくれ。頼む」
事態は最悪、シールドが突破出来ない上に敵はわらわら沸いてくる。
「スウェンさん、このままでは!」
「焦るな、オクラ。幾ら焦った所で事態は好転しない。
とにかく今は俺達で敵部隊を抑え、仲間が何か良い方法を思い付くまで持ちこたえさせる。
俺達は、こんな所で負ける訳には行かないんだ」
「・・はい!」
「幸い俺とお前の機体は他を圧倒している。考えている暇は無い、行くぞ!!」
冷静に、しかし確かな思いを静かに燃やすスウェンと共に、同じく絶対に負けられないオクラは敵部隊へと突っ込んで行った。
38
メサイアの周りで激闘を繰り広げる、同盟とコーディネイター部隊。
メサイアコントロールルームにはその様子が映し出されているが、今レイはそれを見ていなかった。
すぐに戻ると言い残してコントロールルームから出て行っていた。
レイは、廊下で壁に凭れながら苦しそうに呻いていた。
顔に脂汗を滲ませながら息を荒げ、ケースから薬を十錠程手に出すとむしゃぶり付くようにそれを口に入れ飲み込んだ。
「ハァ・・・ハァ・・(もうすぐ終わる、全て終わる。この苦しみも、人の苦しみも)」
レイは今、全ての人の苦しみを終わらせるため、人を絶滅させるべく戦っていた。
ヤイカらと共にナチュラルを全て滅ぼす、コーディネイターだけになる、
コーディネイターだけとなった世界では子供は更に生まれ難くなり、
コーディネイターだけの世界が数世代進めばいずれ完全に子供は生まれなくなる。それがレイの考えだ。
世界は荒れ果て、場合によっては子供云々言う前に、勝手に人は滅びるかもしれない。
地球がジェネシスを数発受ければ人間だけでなく、全ての生命が地球で生きられなくなるだろう。
生き場所はコロニーのみとなり、子供も生まれなくなった世界では、
もしかしたら自分のようなクローンが種の存続のために大量に作られるかもしれない。
それで沢山の子供達が苦しむ事になるのかもしれない。
でも、仕方ない、そうなっても仕方ないと考える。
クローンで種を存続させようとしても所詮悪あがき、すぐに限界が来て人は完全に消えるだろう。
そう、人は完全に消える事で誰も苦しまなくなる。
そこに行き着くまでの過程で沢山の子供達が苦しむ事になるだろう。
しかし、もうこの道しか無いのだ。
どれだけ遠回しになって、どれだけ苦しむ子供達が出る事になっても、
人の苦しみを消す方法はこれしか残されていないのだとレイは考える。だって、ギルは死んでしまったのだから・・・。
なら人に残された苦しみを完全に無くす方法は、人の滅亡以外無いじゃないか、そうしなければ終わらないじゃないか。
・・本当はこんな道を望んでなんかいない、選びたくはない。でも
「シン・・・俺に残されているのはこれだけなんだ・・・・・こうなったのは全てお前のせいなんだ。
だから殺す、全ての人の幸せを奪った代償を払って貰う」
レイは呼吸を整え、平静を装いながらコントロールルームへと戻って行った。
その頃シンとアスランは、突如現れたシビリアンアストレイの相手をしていた。
「アスランパンチ!」
精鋭のはずなのだがアスランの前では無力、最後の一気がジャスティスのパンチを受けて大破していた。
戦闘不能になったアストレイ、その他の機体がアスラン王国で絶叫していた。
アスランは軽く息を吐くと、すぐそこにあるダイダロス基地へと目を向ける。
「遂にアーサーとの決着の時か」
「アスラン・・・何でアーサーにそんなに拘るんだよ?騙されたとか言ってたけど一体何をされたんだ?」
「いじめられたんだ」
「はっ?」
「それよりも、これからアーサーと対決する前に俺の考えた作戦を聞いて欲しい」
「作戦?」
アスランはシンに、ミネルバクルー救出アーサー完全消滅作戦を説明した。
「そんなんで本当に上手く行くのか?大体、コントロールルームを一体如何やって」
「俺は自爆が好きなんだ」
「・・・まさか、あんたが内部に侵入して自爆する気かよ!!」
「いや、それが一番やりた・・・・確実な方法だが、今俺が戦闘不能になるのは問題だからな。別の方法を使うさ」
「別の・・?」
「とにかく作戦は分かったな?行くぞ!」
「ちょ、アスラン!」
39
ダイダロス基地から溢れ出る敵を瞬殺しつつ進むアスラン。
コントロールルームがあると思われる箇所へ近づく途中で、アスランは何故か何も無い方向にバルカンを撃った。
「アスランアトミック!」
バルカン発射口から飛び出る弾丸、何故か一発だけだ。
何か緑色をした、銃弾とは何所か違うようなそれは何処かへと飛んで行った。
「アスラン何やってんだよ?」
「何でもない、行くぞ!」
アスラン達は敵の群を抜けて基地中枢部近くへと辿り着いた。
「ここだな」
アスランが月に埋め込まれるように作られた基地を見て呟いていると行き成り通信が入って来た。
「ようこそ、圧倒的力を持つMS達」
「アーサー!!」
アスランの目の前に映し出されるアーサーの顔。アーサーは冷静な顔をしてアスランを見ている。
「まさか本当にアスランだったなんて驚きだなぁ」
「アーサーお前!よくも俺を!!」
「副艦長・・・本当にあんたが」
「おや、シンも一緒かぁ。久しぶりだなぁシン。どれ、歓迎の挨拶をしようかな」
パチン
アーサーが指を鳴らすと、前後右左上方のあらゆる所からMSがここへと接近してきて、
武器を構えながらアスラン達と少し距離を取って止まった。
「ここまで凄い勢いで来たらしいね。すごいすごい!やっぱりアスランとシンはスーパーエースだなぁ!
でも、これだけの数が居たら流石に如何にもならないよね?」
今まで相手した数等比にもならない、五百以上の大量のMSが回りを囲んでいる。
「これだけじゃないよ、まだ来る。
今こっちに他の宙域からMS隊が集まって来ていてね。呼べばもっともっと来るよ」
「アーサーきさ・・・・(そうじゃない、落ち着けアスラン・ザラ。本来の目的を思い出すんだ)
あ、えっと、いや〜アーサー久しぶり!元気?元気?元気寿司〜!」
「何言ってんだよアスラン!」
「うっさいシン!お前など死んでしまえ!」
「なっ!」
「それよりアーサー、俺実は今になってすごく後悔しているんだ。
お前という大切な友の言葉を聞かず俺は・・・本当に馬鹿な事をした、すまないと思っている」
「ふむふむ」
「だから、どうか俺を仲間にしてくれないか?
今さらこんな事言うのは虫が良すぎるとは思うが、どうか、頼む!」
「何言ってんだよアスラン!あんたまた俺の裏切る積りか!?」
「お前なんか最初から仲間じゃないんだよ!
ここまで一緒に来たのは、一人じゃここまで辿り着けないからだ!利用しただけだ馬鹿!」
「あんたって人はー!!」
「なるほど、やっぱりアスランは私と一緒に居る方が良いんだな!よーし分かった、アスランを私達の仲間にする!」
「ありがとうアーサー!」
「ちょっ!何勝手な事言ってんだよ!ふざけんなー!」
「アスランが居てくれると私も嬉しいよ!(強力な駒が増えて嬉しいよ)
此間は本当に悪い事をした。
アスランがあまりに聞かん坊だったからつい酷い事を言ってしまったんだ。あれは本音じゃない、私は何時でもアスランを信じているよ」
「わーい!大好きアーサー!」
「アスラン・・・くっそー!」
40
「ところでアーサー」
「何かなアスラン?」
「ミネルバのクルー達を解放して欲しいんだけど、駄目かな?かな?」
「ラミアス艦長達かい?」
「実はヨウランに゛地球のMS喫茶に連れて行ってやる゛と約束していたんだ。
出来ればシンにでも地球に連れて行かせて、戦争が終わった後に皆で楽しくアクションモデル遊びをしたいと思うんだけど、駄目かな?」
「なるほど。
分かった、とりあえずこの戦いが終わったらヨウラン達を地球に移動させよう」
「いや、実は今すぐじゃないと手に入らないモデルがあるらしいんだ。
だから先にヨウラン達を地球に送って、戻れない俺達の代わりに限定モデルを大人買いしてもらい、待っていてもらおうと思うんだ」
「なるほど・・・じゃあ仕方ないな。
あ、君達、ミネルバの皆を脱出艇にでも乗せて出しちゃって」
「ありがとうアーサー!よーし!地球に戻ったら那須ハイランドパークでMSの歴史を体験しながら遊ぶぞー!ぶーん!」
アーサーはあっさりとアスランの言う事を聞き入れてしまった。
アーサーは現代のオタクを猛烈に批判する人間だが、彼自身自覚する通り彼も立派な現代のオタクなのだ。
ゆえにオタク仲間から゛グッズを無くなる前に手に入れなくては!゛とか言われると否応無しに流されざるをえない。
それと、アーサーはアスランの事をすごく馬鹿だと見下していて、
彼の馬鹿そうな姿が、実は演技だったとは見抜けなかったのだ。
そう、アスランの言動は全て演技で、予めシンと打ち合わせしてあるものだ。
「ほら、あの船がそうだよ」
アーサーの命令で出された脱出艇が宙をさ迷う。
シンが脱出艇へと通信を開くと脱出艇側からヨウラン達の声が聞こえ、本当に乗っていると確認出来た。
シンが脱出艇を取りに近づこうとした時、アーサーがヨウランに声を掛けた。
「ヨウラン、アスランに感謝した方がいいぞぉ?
アスランがヨウランとMS喫茶に行く約束してなかったら解放しなかったからなぁ」
「え?アーサー、俺アスランとそんな約束してないよ?」
「何ぃ?」
ばれた!
嘘だとばれた瞬間、脱出艇の近くに居たダガーが船へと銃を向けた。
「させるかー!」
アカツキのドラグーンが展開、ダガーの銃から発せられたビームをドラグーンバリアがぎりぎり展開され弾いた。
さらにジャスティスが瞬突機動、グラップルスティンガーを射出して船を捕獲し、一気に引き寄せた。
引き寄せる途中でアンカーからぽろっと外れたが、アカツキがそれをキャッチ出来た。
「・・・嘘、だったのかぁ」
「アーサー・・・・ちっ!上手く行くと思ったのに。ヨウラン!余計な事を言うのは関心しないぞ?」
「無事かヨウラン!?」
「き・・気持ち悪い」
アンカーで勢い良く引き寄せられて中の人達がダメージを負ったが、とりあえず無事なようだ。
皆は助けられたが嘘がばれ、一気に窮地に落ちるシンとアスラン。
周りのMSは完全に警戒していて、集中砲火で瞬殺されそうな雰囲気だ。
41
「残念だよアスラン。
もし本当に私の元に戻っていたなら死なずに済んだのに。本当に残念だ」
「お前の仲間になんてなるものか!俺はアスラン・ザラだぞ!
お前みたいな人を道具としか見ない奴の仲間になんかなる訳が無い!」
「しかし、このままではアスランとシンはなぶり殺しだなぁ。
幾ら操縦技術が高くても、物理的に避けきれないような無数の攻撃は如何にも出来ないだろう?
どうかな?今からでも仲間になると言えば見逃してやらない事は無いけどぉ?」
おどけた言い方をするが底知れぬ恐怖を感じさせるアーサー。
「誰がお前なんかの!」
「あんたの手先になんかなるもんかー!」
「アスラン、今私の仲間になれば1/1アスランモデル、エクストラフィニッシュ仕様を君にプレゼントするよ?」
「馬鹿にすんな!アスランがそんな物に釣られて裏切る訳が・・・・・アスラン?」
「ど、どうしよう・・・モデルは欲しいし・・・・でも〜」
「迷ってるのかよorz」
「さあ如何するアスラン?エクストラフィニッシュだぞ〜?」
「くっ・・・俺は如何すればいいんだ!!」
「アスラン・・・・そんな事で悩んだりしないでくれよ・・・そんなんじゃ、俺は」
「シン?」
「俺、あんたの事ずっと疑ったりしてたけど・・・でも!
俺は駆けつけて来てくれたあんたの言葉を聞いて、あんたの戦ってる姿見て、
本当に心の底からあんたの事尊敬出来るようになったんだ!
あんたの事自信持ってすごい!って言えるようになったんだ!
そんなあんたがこんな所でそんな事で迷ったりしないでくれよ・・・。
じゃないと俺、どうすればいいか分からなくなるよ・・。あんたは俺に取って・・・・・師匠なんだよ」
師匠・・・
師匠師匠師匠師匠師匠師匠師匠師匠師匠師匠
「師匠・・」
アスランは目をくわっと見開いて画面に映るアーサーを指差して言う。
「邪悪王アーサー!!お前の悪の野望はこの俺が打ち砕く!」
「ぇえ!!???うそー!!!」
驚愕するアーサー。アスランモデルで釣れば絶対仲間に引き込めると思っていたのに完全にアスランは敵になっている。
確かに、アスランモデルエクストラフィニッシュを餌にすればアスランを引き込める可能性はあった。
しかし、シンの゛師匠゛という一言によってアーサーの目論見は完全に敗れ去った。
師匠、それは涎が出る魅惑の言葉。
アスランは師匠と呼ばれる事が超嬉しかったのだ。
というか、シンが師匠と呼びさえすれば何時でも味方になってくれていたくらいだ。
デストロイ戦、シンがアスランに師匠と言っていれば、アスランはシンの味方となってレイをぼこぼこにしてたであろう。
オーブ戦、シンがアスランに師匠と言っていれば、アスランは連合を一人で全滅させて、もちろんオーブを守ってくれただろう。
アスランにとって師匠とは最高の一声だった。
「シン、俺はお前の師匠だ。お前を悲しませたりはしない」
「アスラン・・」
「し、しかし、敵に回ると言うなら如何する気だい?これだけの数の敵、幾ら君でも本当に無理だろう?
ましてやレクエイムの破壊なんて無理も無理、完全に無理なんだよ!」
「ふっ、もう勝負はついている」
「何!?」
勝利を確信したと言わんばかりの意地悪そうな笑顔を向けるアスラン。
42
「もうお前の元に到着しているはずだ」
「な、なんだと!?」
゛トリィ!゛
コントロールルームに響き渡る一匹のロボット鳥の鳴き声。
何時の間にかトリィがアーサーが居る所までやって来ていたのだ。あの時の緑のバルカンの弾はトリィだった。
「なっ!こいつは一体!!」
「その機体はかつて俺が作った最強の機体だ。
宇宙空間を自在に飛行する能力を持ち(種最終回ED参照)、その小ささと形状はステルス性能にとても優れている。
そして、Nジャマーの影響を受けない最高の核エンジンを搭載している!!」
「な、なんだとーーー!!!!???」
「(そうか!アスランはこれでコントロールルームを破壊する積りだったのか!)すげーやアスラン!」
「師匠だ」
「あ、うん、師匠すごいすごい(でも・・・って事は、本当にキラに危ないもんプレゼントしてたのか!?)」
「トリィを内部で核爆発させる!!!」
「ば、馬鹿な!こんな小さな核ではせいぜい私を殺すくらいしか出来は・・」
「トリィの核はジャスティス百個分!」
「ええええええええぇぇぇぇぇえええ!!!!!????」
ぴかっ
トリィの体が光り、次の瞬間には巨大なエネルギーを思い切り放出する。
゛トリィーーー!!!゛
「フォンドゥヴァオゥー!!!!!」
ズドオーーーーーーーーーーーーーーーーーン
トリィが大爆発、物凄いエネルギーが溢れ返り基地の中を一瞬で爆破、激しい衝撃が月を揺らし、地面から激しい光が湧き出た。
「シン!俺の後ろに隠れろ!」
アスランはビームシールドを溢れ出る光りの方に向けながらアカツキを後に付かせ、核の爆発からシンを守った。
凄まじい光は大量のMS達を飲み込み、激しい光の後一際大きな爆発が起こって全てが消え去った。
「・・・シン、無事だな?」
「うん・・アスランも」
光りが納まり辺りを見ると、ダイダロス基地は完全に消滅、レクエイムも跡形もなくなっていた。
先程まで二人を囲んでいたMSの殆どは大破し、残ったMSも戦闘不能となっていた。
「アスラン・・すげぇや!」
「ふっ・・・そうだろう?w」
しばし二人は互いの顔を見て笑い合った。
「シン、お前はヨウラン達を仲間の艦まで連れて行け。そしてその後メサイアへ行くんだ」
「え?」
「こいつらは、俺がやる」
43
ダイダロス基地が爆発した事で何事かと、
同盟艦隊を迎撃するため集まりつつあった敵部隊が、一斉にこちらに近づいて来ていた。
「でも、アスラン!」
「俺の予想では如何なる機体を持ってしてもメサイアのシールドは突破出来ない。
でも、その機体、アカツキならシールドを突破出来るかもしれない」
「駄目だ!一人で置いてなんて行けない!」
「行くんだ。ヨウラン達を抱えたまま奴等と戦う気か?
・・・・心配するな、俺はアスラン・ザラだ。俺が足止めしている間に、行け!」
「くっ・・・アスラン・・アスラン!」
「師匠を信じろ。そして、お前は俺の可愛い弟子として、お前自身をやり抜け!・・・行け!シン・アスカ!!」
「う・・うおぉーーー!!!」
シンはアスランに背を向けて全速力で去って行った。
その後姿を見るアスランの目は師匠の目、いや、父親のような優しい目だった。
ジャスティスは核を防いだ時にかなりのダメージを負っていた。それをシンには言わない、気付かせなかった。
「シン・・・お前ならやれる。・・さて、お前達の相手は俺だ、行くぞぉ!!!」
迫り来る敵の中へ、傷だらけの赤き正義が身を投じて行った。
シンは月から離れ、途中で同盟艦にヨウラン達を預けた。
その際、既にレクエムは破壊され、もう無理してあそこへ辿り着く必要は無い事と、
でもアスランが居るから援軍を送ってほしいという事を伝えた。
シンは疲れた心と体のまま同盟艦隊を離れ再び進み出し、メサイアへと向かって行った。
「止めてみせる!(アスラン!俺が必ずやるよ!)」
レクイエムが無くなった事でクジラ博士側の陣営は混乱。
両軍月に集まっていたため必然的に大規模な戦闘が起こったが、
クジラ側のパイロット達はレクイエムを失った事で戦意を殺がれて、戦力が大幅にダウンしていた。
クジラ博士にもレクイエム撃破の報告が入る。
「予感が的中したか・・。(アスラン・ザラめ)しかしまたメサイアがある」
「スターゲイザー、修理完了しました」
「うむ、では艦の方の準備を急いでくれたまえ」
クジラ博士の目の前には、修理が完了して完全な状態となったスターゲイザー、
そして、巨大な翼を持つ大きな戦艦の姿が。
「戦場の女神であるお前は私に微笑んでくれるのかのお、ミネルバよ」
クジラ博士の目の前にある艦、それはかつてシンとアスランが乗っていたあのミネルバだった。
>トリィの核はジャスティス百個分!
ちょっっ!?
アーサーの最期に吹いたww
トリイを失ったキラがキレて暴れたりしたら、ちょっと楽しいかも
次回作はぜひホシノとサイを主役でやってくれ。
待っている。
40、×ラミアス艦長→○グラディス艦長
ジエッジ三巻のキラ紹介の「ミネルバと共に姿をry」のようなミス済みません。
39、×あんたまた俺の裏切る→○あんたまた俺の事を裏切る
富野がリメイクした種を見てみたい
このSSのキャラは皆好きだなw
選ばれなかった未来 番外編「再出発の時まで」
ああ、私は死んでしまったのか・・
あれだけ頑張ったのに、全てのエロゲーを救いたかったのに、私は負けてしまった。
エロゲー・・・・・そう、死んだ今なら全てを素直に見れる。
私はただエロゲーを楽しみたかったんだ。
他のオタク達が、今のエロゲーが悪かったんじゃない、
他人に流されて染まって行く自分を止められない自分、本当は弱い自分が全て悪かったんだ。
強くあれたならきっと自分から、自分の求めるエロゲを作ったり提案したり出来たはずなんだ。
力に頼らなくたって、本当にエロゲを愛し自分自身を信じる事が出来ていればきっと変えられたはずなんだ。
エロゲをもっと信じる事が出来ていれば、自分を信じる事が出来ていればこんな事にはならなかったはずだ。
死んでしまっては、自分が望むエロゲを作る事も望む事も出来ない。
そしてそれは、私が殺してしまった人々にも言える。
私が殺してしまった人々は、もう二度とエロゲをする事が出来ない、私が望んだエロゲを感じる事も出来ない。
地獄だ・・・
そうか、私は地獄に落ちたんだ。
アスランや大勢の人達を騙して利用して苦しめたから、エロゲを信じる事が出来なかったから、私は地獄に落ちたんだ。
ごめんよアスラン・・・・本当は私だって君と一緒に笑い合った日々はすごく大切で嬉しい物だったんだ。
ごめんよエロゲ・・・・もっとちゃんと私がエロゲを真正面から受け止めていられれば、強くあれたなら
・・・きっともっと楽しく、本当の意味で・・
『君の願い、感じました』
誰だ?一体誰が話しかけているんだ?
『君に、エロゲを見せてあげましょう』
へ?う、うわあぁあぁぁぁぁ!!!
『彼らの戦いが終わり再びエロゲが出来る程世界が安定するまで、しばし安らかなる眠りを。私は宇宙・・・』
まさか、あなたは・・
終わり・・?(エピローグへ続く)
44
ヤイカとホシノの戦いは続いていた。
「気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!!」
「そうやってロリコンを叩く人間が居るから世界は殺伐とするんだ!!」
「そんな訳無いだろーーー!!
ふん、ナチュラルに毒され過ぎたな、ホシノ。
しかしその毒もすぐに消える・・・・ジェネシスで地球全土を焼き払えば全て消える!!!」
「なっ!てめーやっぱりメサイアで地球を!」
彼らの目的が完全に地球壊滅だという事がホシノ、そしてラクス達に知れ渡る。
「彼らの目的は地球滅亡・・(あくまで脅しとして使用されるのかと思っていましたが、まさか完全に攻撃する積りとは)」
ラクスは顔が険しくなって、メサイアを睨みながら唇を噛んだ。
「ホシノさん!
貴方達ロリコンが気持ち悪いせいで彼らのような反ナチュラル思想の人間が生まれたのですよ!
如何責任を取るお積りですか!?」
「ちょっ!反ナチュラルとロリコンは全然関係無いだろう!!」
「いいえ、彼の言葉を聞いているとロリコンが世界を混乱させたという事がはっきりと分かります。
地球でロリコンゲームが繁栄した事により一部のコーディネイターが激怒して反乱に至ったのです。
幼い子供を食い物にする、その非人道性が善良な人々をテロリストにしてしまったのです。
ロリコンはあらゆる方面からの警告に従わず、エロゲーを作り続け、裏で違法動画を流し続け、世界を混沌に陥れたのです。
恥を知りなさい!屑外道!!」
「勝手な事を言うなぁ!!!何でもかんでもロリコンのせいにしやがって!!
・・・・・そうか、嫉みだな?
お前、自分がもうババアで人気もそろそろやべーから人気爆発の小さい女の子の事嫉んで、
女の子を支持する俺達の事気に入らなくてそんな事言ってんだろ!www
ババア手遅れ!wもうお肌の曲がり角突入!!!ww年増小じわ贅肉三段腹ーーーーー!!!!!wwwww」
「この馬鹿がぁーーー!!!」
「ぐはぁ!!」
暴走するホシノにカオスの蹴りを食らわすヘルベルト。
真剣な顔で、鼻息を荒くしながら彼はホシノへ言い放つ。
「ラクス様はまだ若い!若いんだ!!
確かにちょっと贅肉が目立って来たが全然可愛いらしいすばらしい方なんだ!!
お前・・・・・何かを愛する一人の男なら、俺の気持ちだって分かるだろう!!!」
「そ・・・そうだな・・・・すまねぇ、錯乱しちまったぜ。
そうだよな。幾らロリコンを否定されたからって他の奴を叩いたってしょうがないよな。
そうだ、何かを愛するその気持ちの美しさは皆同じはずだ!
幼女を愛しようが、ババアを愛しようが、人形を愛しようが、それは全て愛だ!誰にも否定する事なんて出来ないんだ!!」
「そうだ!
俺はラクス様を、お前は幼女を、それぞれ愛し守りぬくために、今目の前の敵を倒すんだ!!」
「おう!」
ホシノとヘルベルトが熱い絆で結ばれる光景をラクスは複雑な顔をして見ていた。
「ヘルベルトさん・・(私をお慕いしてくれるのは嬉しいですが、ロリコンと仲間になんてならないで下さい。あんな汚らわしいのと!)」
45
ホシノのムラサメとヘルベルトのカオスが協力して強敵ヤイカに攻撃し始めた。
ムラサメはライフルでちまちまと戦い、カオスはポッドを射出、
プロヴィデンスザクのドラグーンに対抗するようにオールレンジ攻撃で応戦する。
「ラクス様は撃たせない!!」
カオスがMA形態に変形して高速移動、すれ違い様にカリデゥスビーム砲を撃ち放つ。
「ちっ!」
ヤイカは溜まらず機体を高速で移動させて回避、そこにムラサメやポッドの追撃が撃ち込まれる。
「ぐわぁっ!」
「当たったぜ!」
プロヴィデンスザクの右足の一部に被弾、脚部スラスターが機能しなくなる。
「ロリコンの癖に・・・・・ふざけるなぁっ!!!」
ヤイカの怒号と共にドラグーンがフル機動、さっきまでとは比べ物にならない程素早く動き、
上から下から後から、ムラサメとカオスに凄まじいビーム攻撃を加える。
「くそっ!切れやがったか!?」
一方コクシはクレオのデスティニーインパルスと高速戦闘を展開し、
戦ってる内にエターナルらとは離れてスウェンらが戦っている周辺、シールドすれすれの所にまで移動していた。
オクラはデスティニーインパルスの姿を見つけると、コクシ援護のためにライフルを撃ちながら接近する。
「大丈夫ですか!?」
「正直俺のムラサメにはこいつは・・・・厳しすぎる!」
「この機体は私が!コクシさんは下がって私の援護を!」
「分かった!」
エターナル、その他艦の量産機部隊は、敵の量産機部隊と混戦していた。
コーディネイター部隊側は次々増援が到着し、量産機、スウェンらはその対応に追われる。
「(何か・・何か方法は・・・)」
何時までもこんな戦闘を続けていたらいずれ量産機達は全滅してしまうかもしれない。
しかし、ラクスには幾ら考えてもシールドを突破する方法が思いつかず、無情にも時だけが過ぎて行った。
そんな最悪の状況の所に、さらに状況を悪化させる者が現れる。
「ラクス様!八時の方角に巨大な・・・・これは、ミーティアが!!」
「なんですって!!?」
混沌の戦場にミーティアフリーダムに乗ったサイが現れたのだ。
フリーダムは同盟側の量産機達を射程に捉えるとマルチロック起動、複数の機体をロックして一気に全砲門を解放した。
ズギャーーーン
凄まじいビームとミサイルの荒らしが吹き荒れる。
放たれた攻撃が量産機を一瞬で粉砕し、沢山の爆発が戦場を照らし出した。
「あれはエターナル・・・・・始末する!」
大量の火器を乱射して量産機を排除しながらエターナルへと猛進するサイ。
「敵フリーダム、こちらへ向かって来ます!!ラクス様!!」
「迎撃を!!」
「駄目です!動きが早くて捉えられません!」
如何にも出来ない。
目の前でMS達が瞬殺され、敵となったフリーダムはどんどんこちらへと近づいてくる。
「ラクス・クライン、ボスのお前を俺が倒す!」
エターナルにロックを掛けるサイ。
赤い艦体を鋭い形相で睨み、そして、引き金に掛かる指に力を入れた。
46
「サイ!!」
「っ!?」
自分を呼ぶ声に引き金を引く寸前で指を止めてしまったサイ。
「その声は、ホシノ!?」
「やめろサイ!何でお前がこんな事しやがる!
お前言ったよな?俺がロリペド二次元大好きギャルゲーマーでも気にしない、むしろ支持するって!なのに何だこれは!?
こんな奴等の仲間になんかなりやがって!
こいつらは・・・ロリコンを抹殺しようとしているんだぞ!!」
「・・」
「なぁサイ・・・俺はお前の事を信じてるんだ。お前なら俺の趣味を分かってくれるって信じてるんだ。
なぁ・・・・あの時お前が言った事は嘘なのか?
違うよな?そうじゃないよな?お前はロリコンは居てもいいって思うよな?」
「・・」
「なっ?」
「えっと・・・・・あの時言った事は・・・・・・嘘だ」
「ほえ?」
「あの時は、アニメのTシャツを着て゛アニメキャラが作ったという設定で販売されてるクッキー゛を食べながらギャルゲーをしているお前が、
あまりにも可哀想で、惨めに見えたから思わず同情してあんな事言ってしまったんだ」
「そ、それじゃ・・」
「俺はロリコンは気持ち悪いと思ってる・・・・・ていうかホシノだって本当は自分の事気持ち悪いって思ってるんじゃないの?」
「そんな・・」
「もしかして自覚無いの・・?それは痛いよ」
「あ・・あ・・・あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!うあ゛ー!!!うお゛ーーーーーー!!!!!」
絶叫するホシノ。
サイだけは味方で居てくれると思ったのに、こんなのあんまりだ。
ホシノが発狂している中、ミーティアに向かって量産機達が攻撃を仕掛けて来ていた。
「くっ!油断したか」
「ホシノさんがサイさんの気を轢き付けて置いてくれたお陰で、MS隊の体制を立て直す時間が稼げました。
ロリコンにも使い道はあるという事ですわね(サイさんにまで拒絶されて惨めですね、ホシノさん)」
「あ゛・・・あ゛〜〜〜」
放心するホシノ。
動きが止まったムラサメにヤイカは集中攻撃を浴びせる。
翼が打ち抜かれ、盾も破壊され、スクラップ寸前のムラサメ。
カオスが急いで接近して放火の中から引っ張り出して助けた。
「しっかりしろ!ホシノ!ホシノー!!」
「俺・・も・・・・・だめ、ぽ」
47
ホシノは完全に現実を見失い、自分の中の精神世界へと堕ちていた。
「どうしてこんな事に・・・・・ちくしょう、ちくしょう!」
悔しさと悲しさで一杯で、もう立ち直れない、立ち直りたくない。
絶望の淵で倒れ込むホシノ、そんな彼へと優しい言葉を掛ける一人の男が現れた。
『泣かないで、泣かないでギャルゲーマー』
「え?」
『確かにロリコンは悲しくも大勢の人間に叩かれるだけの種なのかもしれない』
「君・・は」
『でも!君の中で萌え滾る魂の躍動はまだ死んではいないはずだ!!』
「!!」
『君の中で萌え滾るましまろへと思いは今も太陽より熱いはずだ!
そう、私達ロリコンは孤高の狼なんだ。
でもだから何時だって私達は自由になれる!強くなれる!萌える事が出来る!』
男の、ダルシムの熱い言葉が発せられると共に、この精神世界の空に沢山の奇跡が映し出された。
ギャルゲーだ、ギャルゲーの画面が心の天井へと映し出されたのだ。
それはホシノがまだやった事ない作品の物も含まれていた。
ダルシムの心にあるギャルゲーの思い出が強い思いによって投影されているのだ。
「あ・・ああ・・・こんなに、こんなにギャルゲーが」
『君は俺と同じ゛エロゲーよりもギャルゲーで純愛したい゛と強く願う純粋で愛情に満ちた人間だ。
負けてはいけない、負けてはいけない、君のような人が負けてはいけない!
・・・・・ずっと、辛かった。
死んでからギャルゲーやアニメが思うように見られなくて・・・・・自分は、ロリコンだから。ロリキャラが無いとおかしくなっちゃうから。
でも、君のお陰で私は救われた。君が居てくれたから私は死んで尚幸せになる事が出来た』
「でも、俺には他人の批判や苛めに耐える心の強さなんて無い・・・・ロリコンを続けていく自信が無い!」
『ロリコンである事に自信なんて必要無いさ。
ロリコンである事に理由なんて無い、ロリキャラが愛おしい、それだけで十分じゃないか!』
「俺はぁ・・」
『大丈夫、守るから。私の思いが、君を守るから』
優しい光りに包まれた全裸のダルシムがホシノに抱き付くように寄り添い、辺りが眩いばかりの光りに溢れる。
そしてその光りの中で、沢山のキャラ達がホシノに向けて呼び掛けていた。
『おにいたま!だいだいだーいすき!』
シスプリの雛子だ。12人の中で一番年齢低いキャラだ。
『にーにー!負けないで!』
ひぐらしの沙都子だ。この子を虐待から守るために戦う→にーにーありがとう、大好き!とかいう妄想を何度した事か。
『お兄ちゃん私のぱんつ取ったでしょう!』
ましまろの千佳だ。寝ている所に潜り込んで悪戯する妄想を何度した事か。
『がんばるですよー!』
サモンナイト3のマルルゥだ。子猫サイズの妖精のこの子を思って何度抜いた事か。
「そうだよな・・・・・萌えならある!俺は戦う!!」
48
゛気持ち悪いロリコンは人権なんて無いのです。死んでもいい物です゛ ゛君はキモオタのコーディネイターry゛
゛あいつ教室でギャルゲーしてたってよw゛ ゛キモイ゛ ゛死んでよね゛ ゛馬鹿じゃないのー?゛
゛プラントではロリキャラが重犯罪としてry゛ ゛あんた、自分がロリコンだからって本気で戦ってないんでしょう!゛
「もうあんな罵詈雑言なんかで迷わない!俺は、ロリゲーマーとして生きる!!」
パアァァァン
ホシノのSEEDが覚醒する。
今までキモオタ呼ばわりされて積み重なったストレスと、ロリキャラに対する感情の爆発、
そしてダルシムの同属を思う気持ちが、ホシノにSEEDを授けたのだ。
「うおーーー!!!」
カオスに引っ張られドラグーン攻撃から逃れていたムラサメが再び自分で動き出した。
「ヤイカ!!お前は、お前だけはー!!」
「ふんっ!」
襲い来るドラグーンをライフルで撃ち貫くホシノ。
「ロリキャラは規制させない!コミケを無くさせたりしない!」
「何を叫ぼうが今さら!」
「何を!」
「正義と信じ、不当だと逃げ!知らず、聞かず!その果てのロリ抹殺だ!もはや止める術等無い!!
そして滅ぶ、ロリは、滅ぶべくしてなぁ!!」
「そんな事、そんな、規制派の勝手な理屈!!」
「勝手なものか!」
「それしか知らないインテリがぁ!!」
「知らないさ!所詮人はロリコンを叩く事しか知らない!」
先端が対装甲仕様の物理スパイクドラグーンが突撃してムラサメの右腕を奪う。
「くっ!」
「叩かれるだけの愚を、重ねて来たのは誰だ!!お前とてその一つだろうが!!」
撃破されて漂っていた味方のジンから重斬刀を奪ってムラサメへと突っ込むヤイカ。
「それでも!」
ホシノは残った左手でサーベルを抜刀、プロヴィデンスザクへと真正面から突っ込む。
「守りたいロリキャラが居るんだーーーーー!!!!!」
二人は止まる事無く、互いに向かって剣を深々と突き刺した。
「らぁ!!」「ぬぅ!!」
ムラサメの胸部上方、プロヴィデンスザクの脇腹に、それぞれ剣が突き刺さった。
ビームサーベルはムラサメが胸部を破壊されたと同時にビーム刃が消え、重斬刀の方は刀身が砕けていた。
「・・・流石だな、ホシノ」
「ヤイカ・・」
ムラサメはコックピット部とは離れた場所を斬られていたが、プロヴィデンスザクの方はコックピット付近にまでビーム刃が斬り込み、
機器が拉げてコックピットハッチも開けられない状態になっていた。
そして、ヤイカはまじかに迫ったビームの熱量に中てられて、もはや息をする事も困難になっていた。
勝負は決した。ムラサメが離れようとした時、プロヴィデンスザクの腕が伸びてムラサメの胴体を抱き込み、逃げられなくして来た。
「てめっ!」
「・・どうやら・・・俺の、負けのようだ。だが、お前だけは・・・・やらせてもらう」
ヤイカは機体の自爆装置を起動、核爆発させてホシノ諸共焼かれる積りだ。
「俺が消えても・・ナチュラルは滅ぶ!
消えろー!!消えてしまえー!!ナチュラ・・・っ・・・・なんか、滅んでしまえー!!」
49
「こいつ、自爆する積りか!?くっそぅ!!(まだシスプリ2のCGを全部埋めてないのに死ねるかよ!!)」
脱出しようとするもがっちり密着して抱き抱えられていて逃げ出せないホシノ。
核爆発のタイムリミットが後二十秒余りになる。
「くっそー!!!」
如何にも成らないと思われたその時
「ホシノー!」
ヘルベルトがムラサメとプロヴィデンスザクに向かって突っ込んで来た。
「てえぇい!!」
ビームサーベルを抜いて、ムラサメを抱えている腕を切り裂く。ムラサメが解放される。
「邪魔を・・・するな!」
プロヴィデンスザクのドラグーンビームがカオスの四肢を翳める。
「お前も核爆発に巻き込ん・・・がはぁ!・・・・・っやる」
「核爆発・・・・・・なら!」
カオスはMA形態となり、プロヴィデンスザクへとクロウで噛み付いた。
「貴様・・何、を」
「ヘルベルト!?何を」
「俺に任せろ、ホシノ!」
カオスはプロヴィデンスザクを捕獲すると急発進、現宙域から外れ出した。
「お前まさか!死ぬ気か!?」
ヘルベルトから声は返って来ない。
「やめろー!!」
カオスは止まらず、敵機と共に闇の先へと進んで行く。
そして、突き進んだ果ての闇の中で、巨大な爆炎に飲み込まれて行った。
「ヘルベルトー!!!」
涙を流して叫ぶホシノ。
巨大な核の光りは消え去り、ホシノは一人取り残された。
「ヘルベルト・・・くそ・・くそっ」
「ホシノさん、早く戻って下さい!早く予備の機体に乗り換えて援護して下さい!ミーティアを抑え切れません!」
「うるせぇラクス!!ヘルベルトが死んじまったってのに!!」
「何を言っているんですか。早く貴方の目の前のヘルベルトさんを回収して戻って下さい!」
「なっ」
カメラを切り替えてムラサメの前方を見るとそこには、黒いパイロットスーツに身を包んだ一人の男が漂っていた。
ホシノは急いでその者を回収し、コックピットを開いて中に入れた。
「ふう・・・上手く脱出出来なかったら死んでたな」
「・・ヘルベルト、お前、生きてたんだな。生きて、いたんだな!」
「そりゃあお前さん、ラクス様を残してあんな奴と心中なんか出来ないだろう?」
「・・そうだな」
ホシノとヘルベルトはエターナルへ戻り、予備のムラサメにそれぞれ乗って再出撃する。
ミーティアフリーダムの方は量産機が一斉に攻撃を仕掛けて何とか進行を阻んでいるが、
次々にフルバーストが放たれて量産機達はどんどん減って行く。
エターナルはミーティアと出来るだけ離れようとするが、敵部隊が沸いて来て思うように移動出来ずに居た。
「おいババァ!平気か?」
沸いてくる敵部隊をミューディーと一緒に迎撃していたシャムスが、ミーティア出現を見てエターナル付近へと戻って来た。
「おい!あのシールド如何すんだよ!それにあのでかい奴も如何やって倒すんだよ!」
「分かりません、考え中です。とにかく接近してくるミーティアを迎撃して下さい(いやいや不味いかもしれません)」
×いやいや不味い○いよいよ不味い
50
サイが猛威を振るう中、ガーディールーの中で一人、勝手にMSに乗り込んで出撃しようとしている者が居た。
キラに残るよう言われたが、勝手に艦に乗り込んで付いて来てしまった者である。
「あ、あれ?何で動かないんだ?操作は間違ってないはずなのに」
必死に動かそうとするが全然上手く行かない。
「俺が行かなくちゃ駄目なのに・・・・くそっ!早く行かないと!」
「ミーティア接近!!」
量産機を蹴散らして、遂にエターナルの間近まで接近して来たミーティア。
「この野郎!!」
「こんな出鱈目に大きくったって!!」
ヴェルデとブルがエターナルの甲板上からビームを撃ちまくる。しかし当たらない。
「あれだけ大きいのに何てスピードなの!?」
「くそがっ!洒落にならねーぞこりゃ!」
ミーティアは回避運動をしつつ更に接近、ビームソードを発生させてエターナルを斬らんとアームを振り上げる。
「よせ、サイ!!」
「ホシノ・・。ふん、さっきは思わず攻撃を止めてしまったけど、今度は躊躇したりはしない」
「何でだよ!何でこんな事しやがるんだよ!俺やコクシはお前の仲間だろ!?
ロリコンOKが嘘だったのは悲しいけど、俺達が仲間だってのは本当じゃねーかよ!
それとも、俺達と仲良くしてたのはポーズだったって言うのか?お前は俺達を欺いてただけなのかよ!?」
「別にホシノ達を騙したかった訳じゃないし、俺はお前の事友達だとは思ってるよ。
だけど、そんな事よりも大切な事がある。だから俺はお前達と戦うんだ!」
「ふざけんな!地球滅ぼすのが大事だって言うのかよ!!」
「滅ぼす?違うよ、俺達は滅ぼすんじゃなくて変えるんだ」
「嘘付くな!!」
「嘘じゃないよ。そうだ、ホシノ達も俺達の仲間になりなよ。ホシノならクジラ博士の言う事が分かるはずだ」
「うるせぇ!!あんないかれたジジイの妄言なんか聞いてられっかよ!!」
「クジラ博士の悪口を言うなー!!」
ジェットをフル放射させたミーティアが急接近、両腕のビームソードを掲げてムラサメとエターナルを一度に斬り倒そうとする。
「喰らえーい!!」
「くそっ!避けろエターナル!!」
「無理です!!(助けてキラ!!)」
「止すんだー!!!」
サイがホシノらを斬り倒そうとした瞬間、誰かの声と共に二線のビームが到来、
振り上げられた両腕のアーム先端を撃ち破って爆散させた。
「なっ、何だ!?」
不意を突かれて驚くサイ。
後方をカメラで確認すると、そこには
「止めてくれサイ!!」
ノワールストライクに乗ったキラ、そしてAAとその仲間達が居た。
「AA・・・・ストライク・・・キラ!?」
「もう止めてくれ、サイ!」
道を違えた二人が今再び巡り合った。
「キラ?キラー!!」
キラが来てくれた事で超嬉しそうにぴょんぴょんするラクス。
自分で読み返して、悪のりし過ぎたと気づきましたorz
オタ心が暴走し過ぎて意味が分からない上に、
まだ倒れるはずじゃなかったヤイカが死んでしまった‥。
アホみたいに錯乱してしまって本当にすまん。
カオスすぎるwwだが、それがいいww
寝不足で話が浮かばず今日は一レスで
51
「キラ・・・・く、っくくく、くははははは!!」
「サイ・・」
「予想は一応してたけど、まさか本当にお前が来るとは思わなかったよ。
てっきり地球で引き篭もってるのかと思ってたが・・・・・俺を殺しに来るなんてね」
苦笑しながらキラを睨んで呟くサイ。
ストライクEのムウ、AAのクルーらがサイに向けて必死に言葉を投げ掛ける。
「サイ、お前!何でこんな事を!お前は俺達の仲間だったろう!そのお前が何で!!」
「サイ!お願い、もう止めて!」
ムウとミリアリアの声がサイに届く。しかし
「少佐、ミリィ、俺は変わったんだ」
「!?」「サイ!」
「変わったんだ、俺は変わったんだ。もう皆が知ってる俺じゃないんだ」
変わった、その言葉に対しキラは声を荒げる。
「違う!サイは何も変わってない!昔のままだ!」
「何故そう言い切れる。俺の事を何も知らないお前なんかが。
人の気持ちなんて分からない、人の姿をしてるだけの実験動物が、何を分かるって言うんだ?」
「僕は・・・誓ったんだ。
僕は必ず君を、サイを連れて帰るって、絶対にそうしてみせるって、誓ったんだ!
トールが教えてくれたんだ!君は何も変わっていない、今でも昔のままの優しい君だって、トールが教えてくれたんだ!」
「トールが・・・・・何を言ってるんだキラ。そんなお前の勝手な妄想・・」
「トールは君がそんな風にしている事を望んでいない、きっと悲しんでる!」
「黙れ!!」
「サイ、僕は今でも君の事を信じてるんだ。
僕は・・・・・君とまた一緒に笑い合えると信じてここまでやって来たんだ!」
「ふん・・・馬鹿馬鹿しい」
キラの言葉を嘲笑うサイ。拒絶しているサイ、それでも、キラ、ムウ、ミリ、AAクルー達は諦めず声を出す。
「サイ!」
「今からでも遅くない!馬鹿な真似をする奴等の味方なんて止めるんだ!」
「お願い止めてサイ!私達友達だったのに・・・・・こんな風に戦うなんて嫌よ!」
「サイ!俺達AA組は仲間じゃないか!」「お前と戦うなんて俺は嫌だ!」
サイを止めようとする、サイを信じたいと思うAAの仲間達。しかしそんな中
「もう無理ね。話聞いてないみたいだし攻撃よ!」
「マリューさん!何て事言うんです!!」
「早くメサイアを止めないと危険だわ!悲しいけどサイ君は変わってしまったの!撃って、キラ君!ほらムウも!」
一人空気を読まずサイへの攻撃を促すマリュー、それに激怒したミリアリア。
ドスッ
「ぐふっ」
ミリの拳でマリューさんは意識不明になってしまった。
「嘘よ、サイ!マリューさんは今ちょっと心が疲れてるの!私達はあんたの事信じてる!信じてるわよ!」
「・・」
52
横たわるマリューに代わって艦長席に座り、サイへ言葉を送り続けるミリアリア。
「サイ!」
「うるさい・・・俺はお前達の事なんか嫌いだ。特にキラ、お前の事がなぁ!!」
「!!」
ミーティアフリーダムがスラスターを全開して機動、
大きく弧を描いて旋廻し、キラ達の方目掛けて突っ込んで来た。
「クジラ博士の理想も分からないお前達は倒されるしか無いんだ!!」
ミーティアに搭載された無数のミサイル発射口が唸りを上げる。
何十ものミサイルが一斉に発射され、避ける間も無くキラ達を爆炎の中に飲み込んで行く。
「ぐわぁー!!」
「きゃー!!」
ミサイルの炎に焼かれるAA達。
それを目の当たりにしたラクスは目を見開き思わず声を上げる。
「キラ!!!」
パアァァァァァン
その瞬間、ラクスの中のSEEDが発動。
ラクスは自分の席から飛び出して火器コントーロールの人へ尻ドロップ。
「うひゃぁ〜!」
その人を尻で吹っ飛ばして空いた席に腰を下ろし、物凄い早さで機器を弄り始める。
「ラクス様!何を!?」
ダコスタの声を無視して機器を弄るラクス。
ラクスの操作によりエターナルから無数のミサイルが発射、ミーティアフリーダムへとそれが襲い掛かって行く。
「ちぃっ!」
無数のミサイルを回避するサイ。ブースターを噴かして上手く避けたと思ったのだが
ずがん
「がぁっ!」
巧妙に軌道を計算されて発射されたミサイルが、避けた、というより誘導されてしまったフリーダムへと次々に直撃して行く。
「キラ!キラァ!!」
キラの名を必死に叫ぶラクス。すると
「うっ・・・だ、大丈夫だよラクス」
「こ、こっちもなんとか無事よ」
キラとミリアリアの声が聞こえて来た。どうやら大丈夫のようだ。
「ラクス様御下がりください!」
どんけつされたクルーがラクスへと言うが、ラクスは退こうしない。
「大丈夫です。ここは私が受け持ちます」
「そ、そんな、駄目ですよ、ラクス様がこんな!そ、それにラクス様がここに座っていたら私は何も出来ないですよ!」
「では、貴方は私の席の方にでも座っていて下さい」
「ちょっ!」
「座り心地は良いはずです」
どんけつされたクルーはとぼとぼと言われるがままにラクスの席へと行き、そこに座ってみた。
「はは・・・座り心地最高だなぁ・・(ラクス様、あんた・・)」
背中に変な視線を受けながら、ラクスは機器を高速で操作してミーティアへと攻撃し続けていた。
53
「くそぉ!」
逃げても逃げても的確に飛び込んで来るミサイルに戸惑うサイ。
「サイ!」
キラは宙域を逃げまくるミーティアの方へと接近、ミーティアの進行方向、前面に移動して待ち構える。
「っ!?くそっ!邪魔だー!キラー!」
「サイー!!」
ミーティアは止まらずそのままストライクへと突撃、ストライクは擦れ擦れの所を避けて、二機は擦れ違う。
「えぇい!」
擦れ違って後方へと抜けて行くミーティアを背部カメラで確認したキラは、
ノワールストライカーに搭載されたアンカーを真後ろに射出、ミーティアの後部に突き刺して固定する。
「何!?キ、キラ、何を!?」
「止まるんだ、サイ!!」
リールを一気に巻き取り、その力によってストライクがミーティアへと引っ張られる。
ストライクはノワールストライカーのビームブレイドを抜きながらミーティアの後部へと接近、取り付くと同時に剣をミーティアに深々と突き刺す。
「くそっ!離れろ!離れろぉ!!」
突き刺した右ミサイルコンテナ部分が爆発、ストライクは爆発を背にミーティア前方、フリーダムの所まで移動し、
フリーダムに前から抱き付くようにしてへばり付いた。
「サイ!」
「キラ!」
フリーダムはストライクにへばり付かれたままブースターを噴かして動き続ける。
ストライクが取り付いた事によりラクスは攻撃を止める。
「何の積りだキラ!?」
「サイ!僕の話を聞いて!僕は本当にトールから聞いたんだ!」
「な、何を!?」
「君はこんな事本当は望んじゃいない、昔と何も変わらない・・・・僕達を思ってくれる優しい君だって!!」
「・・」
「僕は・・・君に突き放されて正直、君は変わってしまったんだって思った。
君は変わってしまって、もう優しい君じゃないんだって思ってた・・・・だから僕が君を救おうとか思ったりもした。
でも、今は違う!今の僕は本気で君の事を信じたいと思ってる!
君は今だって僕達の友達なんだって、僕は信じてる!
トールの声を聞いていなかったら僕は信じ切れなかったのかもしれないけど・・・・・でも!
それよりも何よりも、僕は今君を信じたいんだ!信じて行きたいんだ!それだけが僕の、今の全てなんだ!」
「・・信じたい、か」
「・・」
「・・・俺が何故、あの人、クジラ博士に付いて行こうとしたか、お前に分かるか?」
「え?」
「俺は嫌だったんだ。今のこの世界も、弱いままの自分も」
「サイ?」
「前の戦争で俺達は一緒になって戦った。
戦争なんて知らない俺達だったけど、皆一生懸命力を合わせて頑張った」
「うん・・」
「地球軍の裏切りとか、人の汚さとか色々見たけど、そういうのも全部戦争が終わりさえすれば・・・って俺は思ってた。
戦争さえ終われば、またヘリオポリスで暮らしていた時のように平和な世界で生きられるんだって。
でも、戦争が終わって戦いから解放された後に待っていたのは全然違う物だった」
54
宇宙の闇の中、鉄の塊に揺さぶられながらサイは言う。
「戦争が終わって家族と再会した後、待っていたのは地獄だった。
オーブ戦の当時、俺はアスハ代表の執った道は大変だけど間違っていない、正しい選択だって思っていた。
けど、現実を目の当たりにして俺の考えは変わった。
国から退避した国民達の生活は酷い有様で、何も分からずただ言われるがままに脱出した人々は地獄を見ていた。
皆言っていたよ、アスハの執った道は間違っていたってね。
報道では難民に支援の手が行き届いてるなんてあったけど、実際は一部の優遇された奴等ばかり良い思いをして、
その他の沢山の国民達が支援を殆ど受けられず飢えていたんだ。
・・・そもそも、全世界で戦争の影響があって、資金があっても食料確保が出来るか如何か分からない状況だったんだ。
脱出して、受け入れ先が決まっているからって、それでいいなんて事無かったんだ。
アスハが意地を張ったせいで沢山の人が苦しんだ、死んでいった!アスハの選択は間違っていたんだ!
・・・・・でも、それは仕方が無い事だと思ったよ。
気に入らないけど、仕方ない事だってね。
でも、オーブ政府のふざけた裏切りだけは許せなかった。
あれだけ意地を張り通して焼かれたオーブが、戦後恥ずかしげも無く地球軍から資金援助を受けて、裏に太いパイプを作り出した。
そして再び開戦した際、オーブは地球軍の仲間になって戦争をし出した。
何だそれ?何なんだよそれは!!
それじゃあ、あのオーブ戦は一体何だったんだ?あの時意地を張り通したせいで死んで行った人達は無駄死にって事なのか?
そんなんだったら最初から地球軍に味方してればよかったって話じゃないか!!!」
「サイ・・・君」
「・・・俺は前の戦争が終わった後オーブ軍に入っていた。
自分がずっと無力だったのが悔しくて、強くなりたいってずっと思ってたから。
本当は戦争とはもう関わりたくは無いって気持ちだったけどね・・・・・キラ、お前の事を考えるとそうせずにはいられなかったんだ」
「!?」
「覚えてるか?お前が俺の、俺のフレイを寝取った時の事を!
信じられない!信じていたのに!仲間だと思ってたのに!酷い!俺のフレイを奪うなんて!」
「いや、その、あれは」
「あの時の事がトラウマになって俺は強さへの執着を持ってしまったんだ!
゛やめてよね、本気で喧嘩したら君が僕に敵うはずないだろ?゛・・・・・なんて言われて、俺がどれだけ苦しんだかお前に分かるか!?
弱かったせいでフレイが奪われてしまった。
弱かったせいで俺は何時も惨めだった。
そうとしか考えられなくなってるんだよ!俺は!!夢にまで出てくる!毎日なぁ!!
お前が俺を見下したせいで俺の心はぼろぼろだ!
お前だ、お前の傲慢さが俺を戦後も軍人たらしめたんだ!」
「そんな・・」
「俺は軍人をしながらオーブや世界の悲惨さを目の当たりにし、今のままの世界じゃ駄目だと何時も思っていた。
そんな時、俺はDSSDの者に出会った。
ホシノやコクシ達と一緒に各国の救援活動をしていた時、身分を隠して諜報活動をしていたDSSDの一人と出会ったんだ。
俺がぽろっと世界への本音を漏らしたのがきっかけだ。
俺の思いを感じ取ったDSSDの彼は仲間へと報告し、俺を仲間へと引き込もうとして来た。
俺は彼に誘われ宇宙へと上がり、そこでクジラ博士と出会った。
そしてこの世界の愚かさと、それを救う方法を説かれ、それに感化された俺は彼らの仲間になる事を決意した。
彼の言っている事はどれも正しくて、俺は尊敬してしまったからな」
55
「人々を一つの考えに縛る事が正しい事なの!?
こうやって、兵器で脅して平和を作る事が本当に正しいって君は思うの!?」
「平和な世界を作るには力を使うしか無いんだ!
お前みたいに力を振るいながらもそれを誤魔化して、綺麗事で自分を着飾ろうとする奴には分からないんだよ!!」
「っ・・」
「オーブやお前達は皆平和を本気で目指そうとしない・・。
信じてる、何時かきっと、積み重ねれば・・・・そんな言い訳、何時までもついていられると思うな!!
はっきりとした未来への希望も示せないのに、クジラ博士の本気で平和を目指す考えを否定出来ると思うな!!
お前達の言う世界は全部誤魔化しだ!
お前みたいに力や機会を与えられた奴等だけが幸せになる世界なんて悪だ!
俺は、世界を本気で救うために戦っているんだ!!」
「サイ!!」
「いい加減・・・離れろよぉぉぉ!!!」
フリーダムがミーティアから分離、それと同時にストライクを突き飛ばして離れさせた。
「俺は・・・・ずっと弱い自分が嫌だった。だから頑張った!だからここまで強くなった!
お前の呪縛から抜け出したかったんだ!!」
「サイ・・・僕は君をそんなに」
「俺は、この力でお前を倒す!そして世界を変える!
お前達みたいな一部の者が笑っているような世界は俺が終わらせる!世界を真の平和にするのが俺の望みなんだよ!!!」
ミーティアを捨てて、フリーダムがサーベルを抜いてストライクへと迫る。
「キラ!お前に俺が撃てるのか?平和な世界を本気で目指している俺をお前は撃てるのか!?」
「僕は・・・」
ストライクがビームブレイドを抜き、構える。
「俺を撃ってまだ理不尽ばかりの世界を続ける積りか?」
「それでも・・・・・君の達の言う事が正しくても、僕は!それでも僕はオーブを、皆を失いたく無いんだ!!」
「くははははっはは!!流石、最高の作られた人形・・・・・・・・お前みたいなのは死ねぇ!!!」
ストライクとフリーダムが激突、互いの剣の枝同士をじりじりと押し付け合い、お互いの機体は光りを散しながら睨み合う。
キラとサイの思いは重ならず、弾きあってお互いを傷つけるしか無かった。
その頃、DSSDステーションではミネルバの発進を迎えていた。
メサイアへと向かい、そこでスターゲイザーからデータを送信、メサイアのコントロールを奪う。
そしてシールドを消滅させた所に引き連れたDSSD部隊を突入させ、一気にメサイアのテロ部隊を始末、内部を完全掌握する積りだ。
「(恐らく、迷いや疑念を一切持たず、
一つの強い感情で溢れかえる事によってSEEDのリスクを封殺する事が可能なのだろう。
その仮説ならアスラン・ザラのあれに説明が付く。
そして、シン・アスカは罪悪感や迷いが常に溢れており、SEEDのリスクを抑える事はほぼ不可能、という事か。
何にせよ私は間違ってはおらん。
たとえSEEDを強い感情によって抑えられるとしても、それが出来る人間など殆ど居ないはずだ。アスラン・ザラが特別なのだ)」
クジラ博士は改めて自分の考えの正しさを確認する。
クジラ博士の今考えていた仮説は実際正しかった。思いの強さによってSEEDによる感情の消失は抑えられる。
ホシノもロリキャラへの強い思いで感情への影響を抑えられていた。
クジラ博士のSEED理論は正しい。
ゆえに、罪を意識し背負う、未来を見ながらも心の奥底で過去を引き摺り続けるシンの感情は・・
56
「馬鹿な!ヤイカが死んだだと!?」
仲間からの報告でヤイカの死を知るクレオ。
「くっ・・・・そぉ・・・くそぉ・・くそぉ!くっそおぉぉぉぉ!!!」
自分達のリーダーであり、最も信頼出来るヤイカの死にクレオは怒りを爆発させる。
「こいつら・・・・・ぶち殺すぞぉ!!!」
怒りに燃え滾るクレオ。
怒りで力を増した事により、デスティニーインパルスはさっきまでとは比べ物にならない力を発揮する。
「消えちまいやがれぇー!!!」
デスティニーインパルスに搭載された二門の長射程砲が唸りを上げる。
凄まじい威力のビーム砲が交互に撃ち出され、ムラサメとデスティニーを追い詰めて行く。
「くっ!!これは・・・・これはぁ!!」
「何で急に・・・うっ!さっきまでとは動きが違います!」
スラスターを全開にして素早く動きながらビームを打ち出すデスティニーインパルスの猛攻。
コクシとオクラは避けるので精一杯だ。
「地球までの距離は余りありません!このままでは・・ラクス様、ラクス様?」
「・・(キラ・・)」
激しく火花を散らしてぶつかり合うストライクとフリーダム。
操縦技術はキラの方が上だが、機体の性能では圧倒的にフリーダムのが上だ。
「いい加減に消えろー!」
フリーダムのフルバーストが炸裂、キラはその瞬間SEEDを発動、放たれた攻撃を瞬時に避けて見せる。
「僕は君に撃たれたりしない!僕は、君を止めてみせる!
そしてもう一度君と話し合うんだ!戦場じゃない、何所かで!!」
「゛何所か゛なんてあるもんか!!そんな物ー!!」
フリーダムのレールガンが炸裂、ストライクは機体前面にまで可動させたノワールストライカーでそれを受けて防御、
レールガンの爆発の中を突っ切ってフリーダムにブレイドで斬りかかる。
「てえい!!」
「キラめぇ!!」
盾でブレイドを受けるフリーダム。
「例え・・・例え全て君の言う通りだとしても、僕は君を止めたい、絶対に止めたい!!」
「いい加減に・・!」
翼のバラエーナが展開、ストライクに向かってビームが放たれる。
ストライクはブレイドを激しく盾に打ち付けつつ機体を横に流し攻撃を回避、フリーダムから離れながらリニアガンを連続してぶつける。
「ぐう!!」
「僕はただ、君やミリアリア達と一緒にもう一度あの頃のように笑い会いたいだけなんだ!!」
「それが駄目だって何で分からないんだお前は!!」
「分かってるよ!!君の言ってる事は分かってる!!
それでも僕は君やクジラ博士の言う事を認める訳には行かないんだ!
だって・・・・・もし君達の言ってる事を受け入れてしまったら、僕達が一緒に過ごした、今までの全てが否定されてしまうから!!」
57
ストライクは機体を反転させながら背部アンカーを射出、それが盾ごとフリーダムの左腕をぐるぐる巻きにし固定、
そしてリールを全開で巻き取る操作をすると同時にノワールストライカーを分離、
分離したストライカーが一気にフリーダムまで到達して激しく激突する。
「がはぁっ!!」
「ミリアリア、エールストライカーを!!それからソードストライカーの対艦刀をリニアカタパルトで単体射出!!」
「了解!!」
ワイヤーが絡まってもがくフリーダムを背に、ストライクはAAの近くまで移動する。
「キラ!!お前は何所までも!!」
サーベルで邪魔なストライカーを破壊してフリーダムが自由に。
そしてすごい勢いでストライクに後から迫ろうとする。
「させるかぁ!」「こんにゃろぉー!!」「ええい!!」「フンガー!!」「はあぁ!」
ムウ、シャムス、ミューディー、ホシノ、ヘルベルトがそれを迎撃、一斉攻撃に堪らずフリーダムは身を翻して接近を止める。
「エールストライカー射出!」
射出されたエールをストライクが即座に装備、内蔵されたバッテリーによりエネルギーが一気に回復する。
そしてすぐにソードストライカーの対艦刀が射出され、ストライクはそれを受け取って再びフリーダムに向かって一直線に進み出す。
フリーダムはムウ達の一斉攻撃に気を取られ過ぎて引き返してきたストライクに注意を向けられず、簡単に接近を許してしまう。
「てやぁ!!」
「何!?」
対艦刀の一撃が振り下ろされる。
ガッ バババババ
ぎりぎりの所で盾で受けるフリーダム。
「サイ!僕は君を止める!!
僕のせいで君が傷ついて、それが今この戦いを生んでしまったのなら、僕自身がそれを止める!
どれだけ身勝手でも、僕はもう一度君と笑い合いたい!!」
「お前は・・・何でそこまでしつこく俺を」
「そんなの、仲間だからに決まってるじゃないか!
僕だけじゃない、ミリアリアだって!それにムウさんやマードックさん、ノイマンさん達だって皆君の事を!」
「そんなの・・!」
「皆君とこんな形じゃなくて、ちゃんと話せる場所で笑い会いたいんだ!」
「・・・俺だって」
「サイ」
「俺だってぇ!!皆と普通に笑ってられたら一番だと思ってるさ!!!
俺だって皆と昔みたいにただ一緒にいられたらどれだけいいかって思ってるさ!!!
でも俺はもう分かっちゃったんだよ!!そんな物は嘘の平和の中の事だったんだって!!だから選べなかったんだ!!
お前に分かるか!?俺の気持ちが!!」
「サイ・・君はやっぱり」
「今の俺はこういう風にしか出来ないんだよ!!!それくらい分かれよ!!察しろよ!
それでも・・・・・俺の友達だった奴なのかよ!!!」
顔を真っ赤にして叫ぶサイ。
目に少しだけ涙を溜め、目の前に映るキラを、必死の思いを抱きながら見詰める。
キラとサイがモニター越しに見詰め合っていたその時
「サイ!もう止めてくれぇ!」
58
サイの耳に響く懐かしい声。
思わずフリーダムをストライクから離れさせ、辺りをカメラで確認する。
すると、コーディネイター部隊と交戦中のガーディールーの近くに、不自然なふらふら移動をするダガーの姿があった。
ダガーはふらふらとこちらに向かって進んで来る。
「お前・・まさか」
「サイ!サイなんだろう?フリーダムを使ってるのはサイなんだろう?」
キラの耳にもダガーのパイロットの声が入り、その声にキラは思わず大声を上げる。
「カズィ!!!???何で!!!何で君がこんな所に!!
地球に残っててって言ったじゃないか!!」
「キラ!だって俺、如何してもサイの事が心配で!待ってるなんて出来なくて!」
かつて、前大戦で共にAAに居た友達のカズィ。
彼の登場でサイの心に大きな動揺が生まれる。
「カ、カズィ・・・・・ほ、本当にお前なのか!?」
「サイ!来たよ!俺の方から会いに来たよ!」
「あ・・・ああ・・」
「オーブでサイが俺を優しく送り出してくれた時の約束、守りに来たよ!
戦争が終わったらまた会おうって!・・・・・また戦争になっちゃって、ちょっと約束と違っちゃったけど。
でも、俺サイにずっと会いたくて・・・それで一杯頑張って強くなって、君に会いに来たんだ!」
「カ・・ズィ」
「前の戦争の後、俺、頑張ってMSに乗れるようになったんだ!
もし今度サイに会ったら、今度は逃げ出さずにサイとずっと一緒にいられるようにって!
オーブに行ったらサイが裏切ったなんて言われて・・・・・でも俺、そんなの信じてないから!」
「・・・そうか、カズィは俺と同じで戦争の後MSに乗れるように頑張ったのか・・(それも、俺が理由で・・)
そうか・・・・なんだ・・・そうなのか」
何かが抜けたかのように体をだらんとしながら上を向いて呟くサイ。
さっきまでクジラ博士の言葉が頭の中に一杯だったのに、カズィが現れた途端、急にそんな物は如何でもよくなった。
カズィの存在を感じたサイは、自分が結局何で世界に苛立っていたのか、本当は何が欲しかったのかに気付く。
酷い世界に苛立っていたのは、カズィ達との平和で楽しい、
何物にも代えられない世界が本当であって欲しいという思いが奥底にあったから。
輝かしい思い出の世界が好きだったからこそ、現実を見た時絶望して、変えたいと強く願ったのだ。
世界の全てを救いたいなんて大それた物じゃなくて本当はただ、思い出に少しでも近づきたい、守りたかっただけだ。
あまりに輝か過ぎる思い出が、現実を変えたいという衝動を強く生み出していたのだ。
本当に欲しい、取り戻したい思い出の日々を胸の奥底に潜ませて。
「サイ!俺!」
「っ!!逃げろカズィ!!!」
「へっ?」
カズィが後を見るとジンが自分に向かって銃を向けていた。
「ひやぁ!!」
「カズィー!!!!!」
ジンのマシンガンが放たれ、カズィの乗ったダガーの四肢をずたずたに撃ち砕いて行く。
「カズィーーーー!!!うおーーーーー!!!!!」
カズィが撃たれる姿にサイは我を忘れ、フリーダムをすぐさま急発進、カズィの下へと全速力で向う。
そしてライフルで、カズィを攻撃するジンを撃ち抜き、カズィのダガーを救った。
「カズィ!!カズィ!!!」
「サ・・・・サイ・・大丈夫だよ。ありがとう、俺の事助けてくれたんだね。やっぱりサイは俺達の仲間だ!」
「・・カズィ」
59
「貴様!裏切ったなぁ!!!」
味方を撃たれた、他のジンのパイロット達がフリーダムを睨み付ける。
「DSSDの奴は裏切った!パンパースが撃たれた!裏切り者を許すな!!!」
ジン部隊が一斉にフリーダムに襲い掛かる。
「サイ!!」
「カズィ逃げろ!!」
ジンから撃ち放たれるマシンガンや粒子ビームの雨を、カズィを庇って全てまともに受けてしまうフリーダム。
「うわぁぁぁ!!!」
全身ずたずたになるフリーダム。
それを見たキラやムウ達はサイを助けるためにジン部隊に攻撃する。
「サイはやらせない!!」
「カズィ!サイ!早く逃げろぉ!!」
大切な友を守るためにキラの力が全開する。
エールのスラスターを全開して、次々にジンを対艦刀で薙ぎ払う。
ムウのストライクEもランチャーを連射しまくって攻撃、ジンを片っ端から撃破した。
ホシノとヘルベルトがサイとカズィの機体へと接触し、半壊した二機を引っ張ってAAへ。
それをシャムスとミューディーの機体が必死に援護した。
キラらの奮戦によってサイとカズィは無事AAへと収容される。
コックピットから這い出るサイ。
「(俺、ここまで来て何やってんだろ・・・・・でも)」
自分は何をやっているんだろう、そんな気持ちも目の前に映る一人の男を見ると如何でもよくなる。
「サイ・・・俺、死ぬかと思ったよ!」
「ああ、俺もだ・・」
「あはは。・・・サイ、やっと会えた!」
「ああ、カズィ・・」
サイはカズィへと歩み寄り、そして、両腕で大切な友を思いっきり抱き締めた。
「カズィ・・・よかった。お前にもう一度会えて、本当によかった!!」
「俺もだよ、俺もだよ!!」
その頃、月付近では同盟艦体とクジラ、テロ組織部隊の本陣同士が激しい戦いを繰り広げていた。
クジラ、テロ組織側のパイロット達には
゛レクイエムが撃たれたが問題無い、メサイアがあれば計画は進められる゛
と、クジラ博士の命令でDSSDから電文が届いていた。
気後れさせないための電文だが、こんな文を送っても兵達の士気の低下は避けられない。
戦いはやや同盟軍側が優勢だった。
そんな中、シンを送り出して一人で敵の中へと身を投じていたアスランは。
「くそっ!アスランダブルサーベルが壊れた!おい、そこのジン!その剣を俺に寄越すんだ!」
「な、何すんだよぉぅ!!」
強引に敵ジンから重斬刀を奪い取るジャスティス。
奪い取った後そのジンを達磨にして、ジャスティスはまだまだ戦えると言わんばかりに他の敵へと仕掛けて行った。
ジャスティスは盾とサーベルトを失ってしまっているが、ビーム砲やビームブレイドでまだまだ戦っている。
「くそっ!体が疲れていて重い!確かコックピットの後に・・・・・あった!マサイの戦士だ!これを飲めばマサイ族の力でまだまだ戦える!」
60
まだまだ戦えるとアスランは言っているが、機体は物凄くぼろぼろで、段々敵を倒す速度も落ちて敵に囲まれて行く。
敵の攻撃も段々避け切れなくなり、機体の各部をビーム砲が翳める。
「くっ!マサイの戦士で元気になってもジャスティスの方がもうきついか!?」
アスランもいよいよ自分のピンチを自覚し始めたその時
「アスラーン!」
ババババババ
アスランを呼ぶ声と共に貧弱なビーム弾が飛来、ジャスティスを囲むジンを一気に撃破した。
攻撃の飛んで来た方向を見ると、そこにはかつてアーサーから逃げた時にぼろぼろの自分を収容したボルテールと、
白いグフ、オレンジショルダーを付けたザク部隊の姿があった。
「やっと見つけたぞアスラン!」
「この声・・イザークか!?」
「見つけたぞぉー!」
「かつて共に戦った大切な戦友の俺を救うために駆けつけてくれたのか!!嬉しいぞイザーク!」
「ふっふっふ・・・・・死ねーぃ!」
ばしばしばしばし
「ぐわー!」
喜んでいるアスランに向かって白グフが思い切りムチをびしばししている。
「イザーク隊長!何を!?」
オレンジショルダーの方達がイザークの乱心に驚き止めに掛かる。
「うおー!放せ!こいつだけは!こいつだけはー!」
「落ち着いて下さい!隊長!隊長ー!!」
アスランはミリアリアの悪戯のせいで激怒したイザークに思い切り攻撃されてしまった。
数分後何とか落ち着いたイザークは、渋々ジャスティスをボルテールへと収容させた。
「な、何でイザークが俺に攻撃を・・・?
ま、まさか、前の大戦の時にあいつの靴に間違って味噌汁を入れてしまったのが俺だとばれたのか!?」
「(地球までの距離はもうそうは無い。ラクス・クラインの方は何も打開策が打ち出せないで居るのか?)」
大量の敵を相手にしながら、流石にそろそろ不味いと焦り出すスウェン。
ラクス・クラインの方からは何も言って来ない、このままでは地球に到達される。
「くそっ!・・・・・!?あれは・・オクラ!!」
デスティニーインパルスに押されているオクラとコクシに気付くスウェン。
加勢したいが、次々溢れる大量の敵を自分が相手をしなければならないためそれは無理だ。
「くそっ!一体如何すれば!」
スウェンが苦しい状況に顔を顰めていたその時、ラクスからやっと通信が入った。
「スウェンさん!オクラさん!」
「シールドを突破する方法が思いついたのか!?」「今は通信を受けていられる状況ではありませんよー!」
「いえ、シールドの方は、まだ」
「もう時間が無い!」「余裕もありません!」
「はい、それは分かっています!
それはそれとして、スウェンさん、オクラさん、ストライクフリーダムとデスティニーの真の力を発動して下さい!」
「真の力・・・だと!?」
「はい。その二機の翼には強力な能力が備わっています!それを完全に解放するんです!!」
カズィ、頑張ったねカズィ…。
前に作者さんにカズィが出る予定はない
と言われて(´・ω・`)だったんだがよかったよ。
ちなみにガーディールーではなくガーティ・ルーが正しい名前だと思う。
もし艦名を出すことがあれば訂正をお願いします。
すげぇ
すげぇよ、作者さん!!!
GJ
キャラの多さもあってカズィ出すべきか迷ったのですが、実際出してみるとやっぱり出して正解だったと思います。
後日談でキラやサイと街中で再会というのも考えてましたが。
ガーティ・ルーの間違いスマン。途中まで゛ボギーワン゛が名前だと思ってた上に、連ザUで見た正式名を更に間違って読んでた。
61
ラクスから二機の真の性能について教えられるスウェンとオクラ。
ラクスの声に気を取られていた二人に、大量の敵の集中攻撃が襲い掛かる。
「スウェンさん!オクラさん!」
無数の放火が二人の居る宙空を焦がす。
淡い赤色の爆炎が二機を包み、その光景をテロ部隊のコーディネイター達は゛やったぞ!゛といった顔で見詰める。
爆炎の中から二機は姿を表さない、やられてしまったと思われた、その時
シュバーン ズバババババ
「なにぃ!?」「これは!?」「ぐわぁ!!」
小さくなって行く爆炎の中から、突如複数の青い欠片のような物が信じられない早さで飛び出し、
それがコーディネイター達に向かってビームを撃ち放った。
青い欠片は全く止まらず動き続け、次々にテロ部隊MSを撃破して行く。
「ば、馬鹿な!!これは・・・・・・・何っ!!!???」
クレオが謎の攻撃に驚きつつ晴れて行く爆炎を見詰めていると、何と炎が晴れた中に無傷の二機の姿があった。
「馬鹿な!攻撃は全て命中したはず・・・・・・くっ、ビームシールドで防ぎ切ったのか!!?」
無傷の二機を見て顔を顰めるクレオ。
無傷・・・・・いや、それだけじゃない。
「何だ・・?あのスラスターの異様な放出物は?」
二機の背部スラスターがさっきまでと明らかに違う。
ストライクフリーダムの翼は青い光り、デスティニーの翼は赤い光りを、それぞれ放出している。
放出される光は陽炎のように揺らぎ、まるで光の翼のようだ。
「まさかあれが、この機体にも搭載されていると言われる・・・・ソーラーセイル(太陽帆)か!?」
クレオの勘は当たっていた。
二機の放出する光の翼の正体はソーラセイル、
スタゲイザーのボワチュール・リュミエールと同系統の、太陽風を推力へと変える無限の可能性を秘めた新システムだ。
クレオのデスティニーインパルスにも搭載されているが、向こうの物の方が後に作られていて高性能だ。
「大丈夫か、オクラ」「はい、もちろんです!」
「なら、行くぞ!!」「・・・はい!!」
ラクスに教えによって、遂に二機の性能がフル発動、
ストライクフリーダムは翼の青い欠片、ドラグーンシステムを開放しながらソーラセイル全開、
デスティニーは己の残像を生成するミラージュコロイドを開放しながらソーラセイル全開、
全ての力を解放して群がる無数の敵を撃破し始めた。
「喰らえーい!!」
フリーダムのドラグーンが敵の群の合間を縫って瞬速展開、敵の死角を突いて次々にビームを撃ち放つ。
敵の集中攻撃をフリーダムは光の翼の超スピードによって回避、圧倒的スピードで敵を翻弄しながら両腕のライフルで敵を撃つ。
「やらせて貰います!!」
デスティニーは両肩に装備されたフラッシュエッジビームブーメランを両腕に握り、ビーム刃を全開にまで調整してサーベル化、
光の翼によるスピード、ミラージュコロイドによる残像、それらで敵を翻弄しながらすれ違い様に次々に敵を斬り裂いて行った。
62
「大丈夫かコクシ!」
「ホシノ!」
ミーティアフリーダムの脅威が去った事で、やっとコクシらの戦っているシールド擦れ擦れの乱戦域まで辿り着いたホシノや仲間達。
「サイはAAに収容された!無事だぞ!」
「サイが!?・・・・・サイは、結局サイは如何だったんだ?裏切った振りをしていたのか?それとも・・」
「そういう話は地球に帰ったらしてやる!今はとにかくこの場を何とかするぞ!」
「・・ああ、分かった!」
メサイアは動き続け、どんどん地球へと近づいて行く。
このまま行けばスカンジナビアは夜明けと共に巨大な炎の塊に焼かれる事になるだろう。
いや、スカンジナビアだけでは済まない、地球全土が灼熱の業火に焼かれる事になる。
群がるラクス達を抑えられずシールドを解除出来ない事で、メサイアコントロールルームの要員達は既にジェネシス使用を諦め、
地球に自分達諸共メサイアを落してナチュラル抹殺をする事を考えていた。
メサイアが落ちれば地球は間違いなく滅亡する。そして、それを止められる者は今この場所に居なかった。
地球へ近づくメサイアの姿を、地球軌道上で静かに見詰める一つの影が居た。
その影は自分の顔の仮面をゆっくりと外し素顔で、地球を滅ぼさんと迫るメサイアを見詰めていた。
その表情は笑っているようでもあり、悲しんでいるようでもあった。
『結局こうなっただろう・・・・・だから言っただろう、キラ・ヤマト。
レイ・・結局お前も私と同じ道を・・・』
「舐めんじゃねーぞぉ!!!」
「!!」
テロ部隊を一掃して行くデスティニーに、怒り叫びながら襲い掛かるクレオ。
オクラは、デスティニーインパルスから放たれた二線の高エネルギー砲を、複数の残像を残しつつ回避、
クレオが残像で戸惑っている所に、ビーム刃を短縮させてブーメランに戻したフラッシュエッジを投合、二門のエネルギー砲を双断した。
「ぐはぁっ!!て、てめえぇーーー!!!」
クレオは砲身を切断された長距離砲をバインダーから排除、取り外したそれを蹴っ飛ばしながら両腕のブーメランを抜き取り投合した。
「私は、こんな所で負ける訳には行かないんです!!」
襲い来るブーメランに怯む事無くオクラは長射程砲を展開、高エネルギーを放射して二基のブーメランを呑み込み爆散させた。
「この野郎!!てめぇは・・・・・負けろよぉーーー!!!」
デスティニーインパルスは背部の双大剣エクスカリバーを展開、スラスターを全開してデスティニーへと斬り掛かる。
「嫌です!!絶対に負けられない、負けられないです!!!」
デスティニーは残像を残して回避、エクスカリバーは実体の無い残像を斬り裂いてつんのめ返る。
オクラは対艦刀を展開、真後ろからデスティニーインパルスに向かって大剣を振り下ろした。しかし
「ナチュラル共なんかに・・・・・負けられる訳ねーだろうがぁぁぁぁぁ!!!!!」
クレオの叫びと共にデスティニーインパルスのデスティニーシルエットから凄まじいエネルギーが放出される。
激しい光がオクラの視界を包み、振り下ろされた剣には、手応えが無い。
光が晴れて目の前を見渡すと奴の姿は無く、はっとなって後を振り返ると
「死ねやあぁ!!」
二本のアロンダイトが同時に振り下ろされていた。
×二本のアロンダイトが○二本のエクスカリバーが
63
「ひぃっ!!」
オクラは機体を反転させつつ咄嗟にビームシールドを展開、
左手のシールドはエクスカリバーの攻撃をぎりぎり受け止めたが右手は間に合わず、エクスカリバーが右肩を付け根から思い切り切断した。
切り離された右腕は爆散し、握っていたアロンダイトと共に残骸と化した。
デスティニーインパルスはシールドに弾かれつつ後退、スラスターを噴かせて一端距離を取った。
「ハァ・・ハァ・・・・!?そ、それは!?」
オクラの目に映るデスティニーインパルスのさっきまでとは違う姿。
「けっ!ざまあみやがれ!
ミラージュコロイドとソーラセイルがお前達だけの物と思うなよ!!」
デスティニーインパルスの翼より放出される、デスティニーの物とそっくりの光の翼。
デスティニーインパルスもその力の全てを開放させて来たのだ。
「なぶり殺しにしてやるよ、お前は!!」
「くっ!」
「スター・・・ゲイザーが!?」
「これが本当なら、スターゲイザーを掌握出来れば何とか出来るはずです!」
サイが教えてくれた情報をスウェンへと伝えるラクス。
スターゲイザーにはメサイアをコントロールする力があり、それさえ手に入れられれば地球攻撃を阻止出来るらしい。
「スウェンさんはサイさんが使っていたミーティアを装備して、直ちにスターゲイザーの確保に向かって下さい。
ミーティアは半壊していますが十分使えるはずです。
DSSDステーションの位置、方角や機体の認識データはサイさんのフリーダムから入手して、既にそちらに送信してあります」
「(スターゲイザー・・・遂に!)しかし・・・今ここを離れるのは」
次々敵は増える中、ソーラーセイルを使用して一気に敵を蹴散らす事が出来る自機が抜けるのは大きい。
このまま敵が増え続ければ、ここに居る同盟軍は全て飲み込まれかねない。
各個体の力が強いとは言っても、これだけの長期戦で、敵の数が圧倒的では・・。
「このままここで敵部隊の迎撃を続けていても如何にも成りません。
サイさんの話では、このままではメサイアが地球に落される事もあり得ます。
突破するにはスターゲイザーの力が如何しても必要なのです。
メサイアの位置的に、恐らくスターゲイザーとDSSD部隊は既にこちらに向けて進んでいる事でしょう・・・・・メサイアを我が物にするために。
行ってください、スウェンさん!!地球を、我々の帰る場所を守るために!!」
「行って、スウェン!」
「キラ・・」
「さっさと行けよ。敵が益々増えてるみてーだけど、なんとかお前だけはここから出してやるからよ!」
「安心しなさい!あんたが居ないくらいで私達はやられたりしないわよ!」
「シャムス、ミューディー・・」
「ほら、さっさと行った行った!・・・・・頼んだぞ、スウェン!」
「大佐・・・・・分かった、了解した!
スウェン・カル・バヤン、スターゲイザー確保の任、引き受けた!!」
スターゲイザーを手に入れるべく行く事を決意したスウェン。
ストライクフリーダムはソーラーセイルを切りながらドラグーンを翼に戻し、半壊したミーティアを装着、
辺り一面を敵が囲んでいる中、味方の援護によって単機突撃、敵の攻撃を受けながらもなんとか群を突破した。
「(皆、無事でいてくれ)スターゲイザー、お前は絶対に俺が、奴等の手から!!」
64
「スウェンさんだけで行かせてよかったんですか?彼一人では・・」
スウェン一人では危険、ラクスに疑問を投げ掛けるダコスタ。
「ステーションの方角に向けてこの敵の群の中を突破させられるのは、ミーティアを装備した機体くらいでしょう。
あれは本体への被弾を防ぐアーマーにもなりますから」
「でも・・」
「正直、スウェンさんに抜けられたのは大きいです。
撃墜数よりも後から増えてくる敵の数の方が多いという状況です。これ以上、戦力は割けません。
スウェンさんがメサイアのコントロールデータを入手してこちらへ戻って来た時、我々が残っているかどうかも怪しい状況ですから」
「・・」
「死にやがれやぁー!!!」
「くぅっ!!」
お互いにソーラーセイルとミラージュコロイドを駆使しぶつかり合う、デスティニーインパルスとデスティニー。
片腕を失ったデスティニーは圧倒的に不利で、
ぴったり張り付いてエクスカリバーで斬り掛かって来るデスティニーインパルスの攻撃を、シールドで受ける事しか出来ない。
「お前等がヤイカを殺したぁ!!」
「ぐぅ!!」
「お前等が仲間を殺したぁ!!」
「ぐあぁっ!!」
「お前等が!!お前等が俺達の世界を踏み躙ったぁぁぁ!!!!!」
デスティニーインパルスは両腕を大きく開き、エクスカリバーが左右から挟み込むようにデスティニーを襲う。これではシールドで受け切れない。
「させるかー!!!」
デスティニーがエクスカリバーで切断される寸前、叫びと共に複数のミサイルがデスティニーインパルスの背中を直撃
「がぁっ!」
デスティニーインパルスは爆発で弾き飛ばされ、デスティニーは寸での所で救われた。
「コ、コクシさん!」
「済まない、この混戦でなかなか助けられなくて!」
「派手にやられてんじゃねーか!俺達が加勢するぜ!!」「俺も居るぜ!」
コクシ、そしてホシノ、ヘルベルトがオクラの援護に。
「みなさん・・・・ありがとうございます!」
デスティニーの下に三機のムラサメが集結、ムラサメ小隊が完成した。
「ちっ・・・量産機の塵屑の分際で俺の邪魔しやがって!!!いいぜ・・・・てめぇら纏めて皆殺してやんぞぉ!!うおーーー!!!」
更に怒りを爆発させたクレオ、光の翼を煌かせて全力でオクラらを討ちに行く。
「切れてやがるぜ!
俺達も行くぞ!コクシ!ヘルベルト!オクラ!全力合戦だぁー!!!(コミケ会場のようにー!!!)」
「ああ!!」「おう!!」「はい!!」
65
「メサイアまでは?」
「まだ少し掛かります。心配されなくても十分に間に合いますよ」
「うむ」
ミネルバを最後尾にメサイアへ向けて進軍する、DSSDのみで構成されたクジラ博士の精鋭部隊。
スターゲイザーでメサイアの移動とバリアを止め、この部隊が一気に制圧するという作戦だ。
ラクス艦体がしぶとく生き残っていた場合それらの相手もしなければならないが、所詮ぼろぼろの相手等恐くはない、
精鋭部隊、そしてスターゲイザーの圧倒的力の前では無力に等しい。
「宇宙クジラの輝かしい未来まであと少し」
クジラ博士がゲイザーのコックピットでそう呟いたその時
「これは・・・クジラ博士!」
「む?」
「先頭のMS隊が・・・全滅です!!」
「何だと!?」
「敵MSと思しき反応確認!光学映像・・・・・これは、ミーティアです!!
敵MS本体は・・データベース照合、ストライクフリーダムと思われます!」
DSSD部隊を強襲するスウェンのストライクフリーダム。
ミーティアの使える砲門全てを開放してフルバーストを叩き込み、DSSD部隊をあっという間に殲滅させた。
「クジラ博士!このままでは・・・・ひぃっ!!」
フリーダムがミネルバへと接近、DSSDのミネルバクルー達は一斉に慌てふためいて混乱する。
「ど、如何すれば!?博士?博士!?指示を!指示をー!!」
クジラ博士の声は返って来ない。
クルーは半狂乱となって必死に艦砲を発射、陽電子砲をチャージさせ、尚も接近するフリーダムに向けてその超砲口を開放する。
「来るなーーーーー!!!!!」
ズギャーーーーーーン
陽電子砲が放たれミーティアに直撃、巨大な爆発が起こってミーティアは飲み込まれた。
「や、やった・・」
光が晴れる。ミネルバクルーが冷や汗を垂らしながらにやりとしていると
ピピピピピピ
「え?」
ロックオンの警告を聞き、きょとんとした顔で辺りを見ると、ミネルバの斜め上前方すぐ近くにストライクフリーダムが。
「ぇ?ぇぇぇぇぇええええええ!!???」
クルーが目を剥き出しにして狂い叫ぶと同時にストライクフリーダムのフルバーストが発射、
爆発する危険が高い場所やMS出撃口付近は避け、ミネルバのあらゆる所を撃ち貫いた。
ミネルバは航行不能となり、その場に停止した。
「こちら地球連合軍大八十一独立機動軍ファントムペイン所属、スウェン・カル・バヤン。
そちらの所有する401FWスターゲイザーを即座に引き渡す事を要求する。
要求が呑まれない場合は帰艦を即刻排除する。繰り返す、そちらの所有する
シュバーーーン シュババババーーーン
「!?」
ミネルバの内部から突如発生する謎の緑の光。
それはミネルバの全身を内部から切り裂き、それによってミネルバは大爆発を起こした。
「な・・・・・何だ!?」
スウェンが目の前の光景に唖然としていると、ミネルバの爆発の中から一機の白い何か、MSが勢いよく飛び出して来た。
66
すごい早さで飛び出して来た白い機体は一瞬で静止し、ストライクフリーダムの真正面に位置し佇んだ。
全身を純白の白が包み、背中には惑星の輪を想像させる環状構造物、
ソル達から聞いていた姿と照らし合わせ、スウェンは核心する。
「これが、スターゲイザーか」
余りにも美しい白を纏うその機体、スウェンがそれに見惚れてしまっていると、行き成り誰かから通信が入って来た。
「なんて邪魔をしてくれたんだね」
「!?・・・・・貴様は?」
「これでは私一人でメサイアを止めに行かねばならないではないか」
「まさか、お前が」
「まあ、ゲイザーなら例え一機でも十分やり遂げられるがのお」
「クジラ博士!!」
「敵部隊尚も増加!」
「何とか持ち堪えて下さい!(スウェンさんが戻るまで持ち堪えられそうには・・・いえ!何としても生き残らなくては!)」
メサイアはどんどん地球へと接近し、あと一、二時間するかしないかで地球へ到達してしまう。
既に時は無く、ラクス艦体も増え続ける敵との連戦による消耗で窮地に陥っていた。
「キラとムウさんは補給に戻って!ビームを撃ち過ぎよ!!」
「でも、ミリアリア!」
「いいから戻って!PSダウンしてからじゃ襲いわ!
キラが抜けた穴はゴウさんとニシザワさんが、
ムウさんが抜けた穴はイケヤさんと・・・・・・ずっとエターナルの腹にくっ付いてるあんた達!変な色したムラサメ二機が埋めなさい!」
「変な色じゃない!ミーア様のラブリーカラーリングなんだよ!!」
「せっかく危ないからずっと隠れてたのに、あんたは人でなしだね!!」
「どっちがよ!!!」
艦長席のミリアリアは、ずっと隠れていたマーズとヒルダを叱責、何とか戦うよう言い聞かせた。
ピンク色のムラサメはとてもよく目立ってくれて、敵の良い的になってくれた。
「こいつら何で俺たちばっか狙うんだ!!」
「くそー!!あたしらがミーア様のお傍に置かれてるからって僻んでんのかい!!」
文句言いながらも奮闘する二人。奮闘するが
「あっ!一匹抜けられた!」
マーズが撃ち損じて一機のグフが楽々AAへ接近。AAの艦首に向けてグフのビーム弾が発射される。
「きゃあーーー!!」
悲鳴を上げるミリアリア。そんな・・・こんな馬鹿達のミスで死んじゃうなんて・・。
ミリが死を覚悟した、その時
「守れーい!!!」
聞き覚えのある声がミリアリアの耳に響く。
声と共に黄金に煌く数機のビットが飛来し、艦首の前でそれらがビームバリアを形成してグフのビーム弾を弾き切った。
攻撃を防ぎ切った黄金のビットはバリアを解いて散開、AAへと攻撃を仕掛けたグフにビームを放ってそれを撃破した。
「あ・・この声・・・・もしかして、シン!!」
映像を切り替えてAAの後方を映すと、そこには黄金の装甲を輝かせる一機のMS、シンのアカツキの姿があった。
「大丈夫かAA!?」
「シン!!あんた・・無事だったのね!!」
「ミリアリア?・・・・もちろんだ!」
67
メサイアコントロールルーム
「あれは・・・来たか」
モニターに映る黄金の機体を見ると、レイは椅子から立ち上がって廊下の方へと歩いて行った。
「レイ・ザ・バレル、どこへ行く気だ?」
「・・」
答えないレイを不審に思い、呼びかけた男は立ち上がって駆け寄る。
「おい、どこへ行くか言え。またトイレか?」
「・・」
「お前・・・不審な行動を取るようなら殺してもいいと言われてるんだ。だからちゃんと理由を・・・・・っ!?」
レイの顔を覗き込んで男は絶句した。
その顔はおぞましい程憎しみに染まり、まるでこの世の物とは思えない、悪魔のような形相だった。
「敵が近づいて来たから迎撃に向うだけだ・・・・・
あの黄金の機体は特別で、バリアを突破される恐れがあるのでな・・・・・・・理由は、これで十分だろ?」
「あ・・ああ」
レイは憎しみの込められた顔をしたまま、その場を歩き去って行った。
レイは廊下を音を立てて早歩きで進み、歩きながら薬を口に乱暴に押し込めていた。
薬を飲み込み、そして、悪魔のような顔をしながら口元に笑みを浮かべる。
「くっくくくく・・・・・く、くはははははは!!!」
アカツキによって守られたAAからは、補給を終えたストライクとストライクEが再出撃していた。
「ひっく・・・えぐっ・・・・よ、よかった・・本当によかった」
「泣くなよキラ・・」
シンの無事な姿を見て、アスランの無事も知らされ、キラは嬉しくて泣き出してしまっていた。
ずっと不安で心配で堪らなかったのだ。
「で、つまりスウェンが帰って来るまで持ち堪えてるしか無いって事なんだな?」
「あのシールドはどうやっても突破出来ないの。スターゲイザーのシステム掌握を使うしか」
「所で、何でミリアリアが艦長席に座ってるんだ?マリュー艦長は?」
「それは如何でもいいわよ」
「?・・・・・でもつまり、スウェンが間に合わなくちゃどうにも成らないって事だろ?」
「うん・・」
「ならやっぱり・・・・・俺が内部に侵入してメサイアを破壊するしか無い!」
「え?侵入って・・・・・ちょっと!シン!!」
アカツキはAAから離れてシールドの方へ接近、そこには無数の敵が混在し、無数の攻撃が自分を襲ってくる。
「くそう!!時間が無いんだ!」
シンはドラグーンを操作して自機の周りに展開、バリアを展開して自機をビームの檻で完全に囲い込む。
アカツキに向けられた攻撃は全てバリアが防ぎ、シンは一気にバリアまで到達する事が出来た。
「駄目よ!内部からバリアを解く以外それを破る方法は無いわ!」
「大丈夫だミリアリア・・・・・この機体、アカツキならシールドを突破出来る!」
アカツキはドラグーンを全てバックパックに戻す。そして、勢いをつけてシールドへと思い切り突っ込んで行った。
「シン!!!・・・・・・・え?」
ビームシールドで、弾かれない。
アカツキはビームシールドによって弾かれる事なく、容易くシールドを突破、シールドの内側へと抜ける事に成功した。
「アスラン、あんたの言う通りだったよ・・・・・・メサイア、俺が止める!!」
68
メサイア本体へと取り付くべくスラスターを噴かせるアカツキ。
巨大な隕石を改造して作られた巨大要塞、その入り口へと向おうとしたその時
「お前がこれに触るなぁーーー!!!」
「!?」
要塞の岸壁の合間より鈍色のビットが飛び出した。
それはアカツキを囲み込み、一斉にビームを撃ち付けた。
「くうっ!」
放たれたビームは全て黄金の装甲に弾かれ、様々な方向へと屈曲して消えて行った。
「何だ・・・今の声、まさか!?」
鈍色のビットは岸壁の隙間へと舞い戻り、そして、そこからビットと同じ色をした影色の機体が姿を表した。
かつてのオーブ戦で目にした影色の機体。
かつての友が乗っていた影色の機体。そう、それは・・・
「そんな・・・・・レイッ!!!」
悲痛な顔をして彼の名を叫ぶシン。
レイと呼ばれたかつての友、レイ・ザ・バレルが、シンの最後の敵として目の前に立ち塞がった。
メサイアから離れた、数多の残骸が散らばる宙域では、スウェンとクジラ博士が睨み合っていた。
「お前だけは許さない!DSSDを乗っ取り、ソルを、セレーネを!!」
「ふん、なるほど、裏切り者にあれこれ吹き込まれて私を討ちに来た愚か者という事か」
「黙れ!!」
「DSSDを乗っ取った・・・・ふん!馬鹿馬鹿しい!DSSDは元々私の者だ!」
「違う!DSSDは、遠くどこまでも散らばり輝く星々に少しでも近づこうとした者達の夢だ!」
「ファントムペインの殺戮人形如きが何を夢などと」
「黙れ!・・・・例え、例え俺がただの殺戮人形だとしても、この気持ち、星を見つめたいという夢だけは譲れない・・!!」
「くっくっく・・・・・・真っ直ぐだのお。
しかし、夢があるというのなら尚の事、私達に歯向かうべきではないのお。
どうかね?私に歯向かうのは止めて、私の仲間として真の世界平和を目指さんかね?君の夢は私が必ず叶えてあげようぞ?
世界を統一する者に付けば夢も叶え易くなるだろう・・・・・。さあ、君に確実な夢の実現と宇宙クジラの平和を見せてやろう」
「・・なら」
「むぅ?」
「なら俺は」
スウェンは顔を伏せゆっくりと息を吐き、そして、フリーダムのライフルをゲイザーの頭に真っ直ぐに向けながら言い放つ。
「お前に、星を見せてやる!」
種運命 選ばれなかった未来「クジラ戦争(連合ザフトオーブ同盟、オタク達VS宇宙クジラ教、DSSD、反ナチュラル組織)」終わり
シンがステラを返しに行ってネオ達に拘束されてから、あと少しで一年経つのか。丁度一年くらいで終わりそうです。
次で最終編ですが、各キャラのその後についてはエピローグでそれぞれ書いて行こうと思います。
とりあえずアスランのクライマックスは「トリィを内部で核爆発させる!!!」。
社会問題編「金は俺が稼ぐから」
「君は本当は、職安が好きだったんじゃないのか?だから今の自分が許せないんだろう?」
「そんなの・・違いますよ!」
シン(二十五歳無職)の父親は何時も、シンに向かって曖昧な言葉ばかり言う。それがどれだけシンを惑わしてるかも知らないで。
アスラン(五十歳無職)は無職であり、ずっとお嫁さんのメイリンに養ってもらって来た。彼女が甘すぎてアスランは駄目になった。
シンは悩んでいた、無職である事を。だから決意して就職をした。なのに・・
パシン 勝手に就職した事を何故か怒られ、アスランに平手打ちされるシン。
「くそ・・・殴りたいなら別に構いやしませんけどね!でも、俺は何も間違った事はしてませんよ!
俺が就職した事で家の家計は助かったんだ!」
バチン もう一発平手打ちが、さっきよりも強く放たれる。
「就職はヒーローごっこじゃない!自分だけの勝手な判断で就職するな!」
アスランは勝手に就職先に電話してシンの就職を無しにしてしまった。
それでもシンは諦めず、頑張って超一流の企業戦士となったのだ。そしてたんまりとお金を家に入れた。
「稼いで来ましたよ、あなたの分もね!w」
「う、うおーーー!!シーン!!!」
シンに殴りかかるアスラン。
「勝ち組になれてそんなに満足か!?自慢か!?」
「そうだって言ったらいけないんですか?金を稼いで喜んじゃいけないんですか?
それとも、俺がずっと無職で居ればよかったとでも言いたいんですかあんたはー!?」
「こいつ!」
「止めて下さいアスラン」
「レイ!?」
アスランの兄弟のレイおじさんがアスランを止める。
「シンは見事に一流企業に就職し、生活費を稼いだのです。賞賛はされても叱責されるのはおかしいです」
「うるさい!・・・俺が、シンより格下であっていいはずが無い!」
「はぁああ???www」
「シン!お前、何だその人を馬鹿にした態度は!!!」
「我々は民主主義国家の人間ですから、働いて立派になる事は何よりも正当性があります。
貴方のそれは八つ当たりで見苦しい。正直困ります・・」
アスランは耐え切れず家出、幼馴染がやってるという反国家テロ組織に身を寄せた。
そして、シンが就職している一流会社メサイアにテロ行為をした。
「あんたって人はー!!!」
「思い出せシン!お前は本当は、何が欲しかったんだ!!」
「いい加減にしろよあんたはー!!!」
「聞くなシン!アスランは既に少し錯乱している!」
収拾が付かなくなったので終了orz
もうすぐ終わっちゃうのか・・・寂しいな・・・
と思ったら・・・
あんた、最高だよ!!
社会問題編、父→凸 母→メイリン 息子→シン って何だよそりゃww
GJ!!次回から最終編か・・・
おまけの小話もまた良しw
1
皆疲れていた。
地球でも宇宙でも戦いは続き、誰もが苦しみと悲しみに包まれていた。
スカンジナビアには未だに大量の敵が迫り、疲れ果てた兵達がそれを迎え撃つ。
地球の各都市ではオタクと宇宙クジラ教信者が殴り合い、お互いにぼろぼろになっている。
プラントの残存コロニー内ではテロ部隊に対する反乱が起こり、内部を制圧していたテロ部隊と蜂起した一般市民が戦っている。
月周辺では同盟軍とテロ部隊の戦闘がまだまだ続き、お互いに命を奪い合っていた。
誰が勝っても未来は無い。
既に地球もプラントもぼろぼろで、誰が勝者となっても待っているのは過酷で残酷な現実だけだ。
星は傷付き過ぎた。
「シン・・」
シンから渡されたマユの携帯を握り締めて蹲るルナマリア。
地下に閉じ篭り、ただ戦いが終わるのを待ち続けている。
「お姉ちゃん!」
「メイリン・・・」
メイリンとミーアがルナの下へやって来た。
「どこにも居ないから心配したんだよ!・・・どこ行くかちゃんと言ってよ」
「ごめん・・」
「どうしたの?」
「別に・・・・・ちょっと、感じるだけ」
「?」
「人が死んでるのを・・感じるの。
ずっと上で・・・・すぐ上でも、沢山の人達がどんどん死んでる・・・まだまだ死んで行く」
「お姉ちゃん・・」
「皆嫌がってるのに、それでも殺し続けてる。誰も止めないから・・・・・皆死んで行く・・」
「私の歌は結局無駄だったのかな・・・。
戦争が早く終わるようにって歌い続けてた積りだったけど、私の歌は全部無駄だったのかな・・」
悲しそうに俯くミーア。
ルナはミーアの悲しそうな顔を見るとすっと立ち上がって、ミーアの頭に優しく手を乗せて言った。
「無駄じゃないわよ・・・きっと」
ルナはミーアの頭をぽむぽむしながら天井を見上げた。
「(シン・・アスラン・・・無駄なんかじゃ、無駄なんかじゃないよね・・・・絶対)」
天井のその先の、暗闇の星空はまだ明けない。
「そんな・・・・・レイッ!!!」
「お前に、星を見せてやる!」
種運命 選ばれなかった未来最終編「夜明けの焔(スウェンVSクジラ博士、そして、シンVSレイ)」
書いてる途中にPCが…出鼻挫かれたorz
まだ大丈夫だと思うけどPCが壊れそうな場合はゲーム機のwiiで書きます。
選ばれryだけは意地でも最後まで書ききってみせる!とりあえず今日は一話で
2
スウェンが放ったライフルの一閃を合図に、ストライクフリーダムとスターゲイザーの戦いが開始される。
「ふん」
ゲイザーは素立ちの格好のままスラスターを噴かせて、真横に高速移動してビームを回避。
そして残像を残す程のスピードで動いたにも関わらず、即座に完全静止してみせる。
「(この動きは・・)くっ」
「全く、大人しく私の仲間になればいいものを。君は夢を叶えたくないのかね?」
「貴様に宛がわれて叶える夢など俺はいらない!」
フリーダムは二丁のライフルを連結しつつ翼のドラグーンを展開、それと同時にソーラセイルを発動して光の翼を発生させた。
「セレーネの、ソル達の夢の機体、返して貰う!!」
青き残像を描きながらドラグーンが高速で展開、ゲイザーを四方から囲んで一斉にビームを撃ち突ける。
ゲイザーは先程とは違い、今度は四肢を動かしながら普通のMSの動きでビームを避けて行く。
普通の動き、しかしその動作には一切無駄が無く、全方向からの攻撃を全て避けてみせる。
「(何だ、この動き・・・全く無駄が無い)くっ!てぇぃ!!」
フリーダムは連結ライフルを両腕でしっかりと保持して狙いを定める。
計算され撃ち出されたドラグーンの攻撃によって思惑通りに誘導されたゲイザーに向けてロックオン、
ドラグーンによって動きを制限されたゲイザー、その背部のスラスターに向かって狙撃ビーム砲を発射する。
ズギューーン
集約されたエネルギーの一閃がゲイザーの背部スラスターに向けて発射、ゲイザーはそれを避ける動作も無く、
ビームはスウェンの狙い通り円形構造体基部へと突撃する。しかし
バッシューーーン
当たったと思った瞬間に激しい光の爆発のような物が起こった。
スウェンの視界は光によって覆われ、眩しくて何も見えなくなってしまう。
「何だ、この光は!?・・・・・まさか、本体に直撃してしまったのか・・!?」
ゲイザー本体にビームが直撃してしまったのかと焦るスウェン。
ゲイザーを破壊してしまったら意味が無い。
破壊してしまったら、メサイアを止める事も、セレーネへの誓いを果たす事も出来なくなってしまう。
額に汗を滲ませ顔を顰めながら、段々弱まる光を見詰めるスウェン。
光が小さくなり、その中心が視認出来るようになる。するとそこには
「何だ・・これは!?」
無数の緑色の光輪を自機の周りに展開し、全身の各部スリットを黄金に輝かせる、無傷のゲイザーの姿があった。
「馬鹿な・・攻撃は確かに当たったはずだ」
ゲイザーに損傷は一切無い、純白の装甲は美しく輝き、掠り傷一つ無かった。
スウェンは焦りながらもドラグーンでゲイザーを攻撃。しかし
バシューン
ビームが弾かれた。放たれた攻撃はゲイザーには達さず、直前で完全に打ち消されてしまった。
「くくくくく・・・・無駄じゃよ、この機体にはビームは一切通用しない」
「な、何だと・・?」
「くっくっく、このゲイザーは面白い機体でな。
惑星間航行のために作られた機体でありながら、その戦闘力は並の戦闘用MSを遥かに凌ぐ。
さらに、これには特殊な能力が備わっており、
自機の周りに特殊な量子フィールドを形成、それによって全てのビーム攻撃は無力と化すのだよ」
「(そんな、ビームが・・・・この機体では奴にレールガンしか使えないという事なのか!?)くうっ!」
3
ビームが効かない、レールガンでしかゲイザーにダメージを負わす事が出来ない、
ただでさえ捕獲という難しい行為をレールガンだけでなんて、無理だ。
「情報によれば君の乗っているその機体、ストライクフリーダムにもゲイザーと同類のシステムが備わっているようだが、
高機動に特化させて作られたためかゲイザーの物とは大分掛け離れているようだのお。
皮肉な物よのお、戦闘用に作られた物よりも、非戦闘用に作られたシステムの副作用の方が戦闘に向いているとは・・。
・・・・・・さて、そろそろ真面目に戦ってくれんかのお?」
「何!?」
「くっくっくっく、お前さんではないよ。
私が話しているのは・・・・・ゲイザー、遊んでおらずさっさとそいつを始末するのだ。データ収拾等今さら必要なかろうに」
「!?」
クジラ博士が声を上げた瞬間、ゲイザーのカメラがぎらりと光って行き成りスラスターを全開、
フリーダムに向かってビームリングを纏ったその機体を突撃させて来た。
「ぬふおぅ!!」
一瞬でフリーダムへと到達するゲイザー。
スウェンはゲイザーの一瞬の動きに反応して回避しようとしたが、余りの速さに避けきれず右足が緑の光の輪に接触、
一瞬で腿を切断され奪われてしまった。
「なっ・・くっ!!」
フリーダムはスラスターを全開して、全力でゲイザーから離れた。
「おやおや何を逃げておる。ゲイザーを奪い取るんじゃなかったのかね?」
「ハァ・・・ハァ・・・・お前」
「むぅ?」
「お前、まさか・・・ゲイザーを操縦しているのは」
「くっくっく、なんだね、気付いていなかったのかね?
そう、ゲイザーを操縦しているのは私ではない。操縦しているのはゲイザー自身、ゲイザーのAIユニットなのだよ」
そう、ゲイザーのこの動きはクジラ博士の操縦によるものではない、AIによるものだ。
スウェンはソル達から、クジラ博士がAIに戦闘データを読み込ませていたという話を聞いていた。
しかしまさか、そのAIが戦闘の行為そのものを遂行する物だとは思わなかった。
「このAIは私が入力した指示を独自に遂行、自分で考え自分で最善の行動をする事が出来る。
提示された指示を実行すると同時に搭乗者の言動、思考も汲み取り、
搭乗者、つまり私にとって最善となるであろう選択をしてくれるのだよ。
素晴らしいAIだろう?
まあ、ここまで素晴らしいAIとなったのも、私が様々なデータや戦闘パターンを入力したお陰な訳だがね」
「貴様・・・星を目指すためのAIによくも戦闘データなどを!!」
「ふん!作られた目的等知らんよ!
今は私のAI、私の目的を果たすための道具だ!」
「貴様ぁ!!」
「しかし、君は何故セレーネやソル等の味方をするのかね?あやつ等の味方をしても何にも成らんだろうに」
「セレーネは死ぬ間際にその機体、ゲイザーの事を俺に託した!
俺の命を救ってくれた、俺が殺してしまったあいつが、俺に託したんだ!!ゲイザーを止めてくれと!」
「ほう・・・つまり、セレーネへの罪滅ぼしのために、ゲイザーを使う私に歯向かうという事か。なんと馬鹿らしい」
「罪滅ぼし・・・・そうなのかもしれない。
だが、俺がここに居る一番の理由は罪滅ぼしなんかじゃない、夢だ!
セレーネの、ソル達の、そして俺の!共にある同じ夢への思いが俺をここまで連れて来たんだ!
俺は忘れていた夢のために、同じ夢を持つ者のために、今お前からゲイザーを取り返す!!」
4
「そんな・・・・何でレイがここに」
シールド内部に待ち構えていたレイを見て困惑するシン。
彼は無事で居てくれた、だけど、何でメサイアに居るのか?
「レ・・・っ!!」
話しかけ近づこうとしたシンに対し、レイはビームを撃って威嚇する。
「レ・・イ?」
「よく来たな、シン・アスカ。お前が来るのをずっと待っていた」
レジェンドはライフルをバックパックに収納すると両足からビームサーベルを抜刀、それを連結してジャベリンモードにした。
「お前に裏切られてから今まで、全てが面白いように狂って行った」
「レイ?え?何言ってるんだよ?
レイ、何で君がこんな所に居るんだ?今これは・・」
レジェンドはジャベリンを右腕に携え、そして、アカツキに向かってスラスターを全開した。
「全ての希望は断たれ、世界を救う術は一つを残し全て断たれて行った」
接近したレジェンドのビームジャベリンがアカツキを襲う。
アカツキは攻撃を交わし、たじろぎながら距離を取る。
「なっ、止めてくれレイ!!俺は・・」
「全てを断ち、全ての悪として存在する全ての敵、シン・アスカ!」
「!?」
「お前だけは許さない、お前だけは許さない・・・・・シン・アスカ、お前の存在だけは、許さない!!!」
「この感じ、奴なのか?」
シールドの外で、レイの存在を感知するムウ。
「キラ、奴が・・・・オーブ戦の時も感じた、クルーゼと同じ感じのする奴が、メサイアのシールドの中に居る!」
「・・・ムウさん、分かるんですね。やっぱり・・」
「キラ?」
キラは半透明のシールドの先の、アカツキと対峙するレジェンドを見て言う。
「ムウさん・・・・今アカツキと、シンと戦っているのは・・ラウ・ル・クルーゼと同じクローン・・・・・レイ・ザ・バレルという人なんです!」
「なっ・・・・クルーゼと同じ・・クローン!?」
「オーブ戦の時に彼が言ったんです。
自分は、最高のコーディネイターを生み出すための資金として作られた存在だって・・。
彼は、ラウ・ル・クルーゼと同じ、ムウさんのお父さんの・・・」
「そんな・・・・クルーゼ以外にも(親父・・・あんた一体どんだけ・・)」
信じられない事実に頭を抱えるムウ。
自分の父親の罪がまた一つ突き付けられて、変な罪悪感が心を苦しめる。
この嫌な思いに体を震わせていたその時、ムウはメサイアとは別の場所に゛あの感じ゛を感じ取った。
「っ!これは・・」
「ムウさん?」
「シールドの中の奴だけじゃない・・・・・感じる、向こうの方にも感じる!
まさか・・・・地球にもっと沢山の、親父のせいで苦しんでいる奴等が・・・・・うぅ、あぁぁあぁぁぁぁあ!!!!!」
「ムウさん!!」
叫び狂うムウ、彼が今゛感じた゛のは地球の方角。
ムウは地球に他のクローンが存在するのかと思ったようだが、実際は違った。
ムウが感じたのは地球の大気圏ぎりぎりに立ち尽くす一つの影、かつてムウに憑いていた霊の存在だった。
そう、その霊こそが・・
5
「てぇぇぇい!!」
ゲイザーを何としても動けなくすべく、無敵の敵の突撃から逃げながらもレールガンを撃ち放つフリーダム。
激しい電磁力によって加速された弾がゲイザーを狙うが、
背部円形構造体トーラスから吹き出る突発的エネルギーで超移動力を得ているゲイザーには掠りもしない。
トーラスは一瞬でその形態を変える事ができる特殊な構造を持ち、
素早く円形スラスターの向きを変える事で全方向に超移動をする事が出来る。
さらに全身の黄金のスリット、ソーラーセイルシステムのサブユニットが太陽風をキャッチし、さらなるスピードを与えている。
「くっくっく、君が夢に対して異常な執着がある事はよく分かった。
しかし、それならばやはり私と共にあるしか道は無いのだよ」
余裕そうな声でスウェンに話しかけるクジラ博士。
「何がだ!貴様と共にある必要等ある訳が無い!
ゲイザーを貴様から取り戻し、メサイアを止めればそれで終わる!」
何発撃ってもレールガンが当たらない事により、スウェンは一か八か変則攻撃を仕掛ける。
「当たれ!」
ビームが効かないのでそこら辺に放置していたドラグーンを再び機動、
一斉にゲイザーに突撃させて動きを封じようと試みる。しかし
「阿呆だのう」
ドラグーンが近づいた瞬間ゲイザーを囲むビームリングの本数が数倍に増えた。
そして、ゲイザーの周りを殆ど隙間なく犇いているビームリングにより、突撃したドラグーンは一瞬で全て細切れとなり爆発した。
「くっ・・・・くそう!!」
ドラグーン全滅、ビームは効かず、レールガンも当たらない。
それでも諦めずレールガンを撃ち突けるスウェン。
「全く、若い人間という物は諦めを知らなくて困る。どれ・・・ゲイザー、いい加減奴が諦められるようレールガンを受けてやれ」
クジラ博士の言葉を聞いたAIは彼の意図を理解、レールガンを避けるのを止めて静止する。
「なっ!止まった?!」
停止するゲイザー。
ゲイザーは回避行動をせず、レールガンが直撃コースで純白の機体へと飛び込んで行く。
ドッゴーーーン
レールガンがヒットした。しかし
「当たっ・・・・なぁ!?」
驚愕するスウェン。
確かにレールガンはヒットしたはずなのに、純白の機体は又しても無傷、一切ダメージを受けていない。
確かにレールガンは直撃コースだった、しかし、レールガンは機体には当たってはいなかった。
レールガンはゲイザーの周りを囲むビームリングに接触、機体に到達する前に爆発してしまっていたのだ。
「・・そ、そんな」
「くっくっく、分かったかな?このスターゲイザーの前ではビームだけではない、実体弾さえも無力なのだよ。
つまりこの機体には全ての攻撃が通用しない、ゲイザーこそ最強のMSなのだ!」
「くそっ・・俺は一体どうすれば!?」
6
全ての攻撃が効かない、そんな相手をどうやって捕獲すればいいんだ。
スウェンが絶望の淵に立たされていると、遠くから幾つかのジン部隊がこちらへやって来た。
「DSSDの奴だな?我々が加勢する!」
クジラ博士に加勢するというテロ部隊の一団。しかし
「ええい!貴様らの助け等要らぬわ!邪魔をするなー!」
「えっ!?」
テロ部隊を拒否するクジラ博士。
ハカセの意思を汲み取ったゲイザーはテロ部隊へと攻撃、無数のビームリングを放射して一瞬で十機程のジンを全て細切れにした。
「ふん、塵共めが」
「貴様、今の奴等は味方じゃないのか!?」
「味方?ふん。
あんな復讐心に駆られて動くだけの塵、私の仲間である訳が無かろうに。
あんな塵は使い捨てにするしか無い。まあ、使い捨てとしても最低の屑共だがのお」
「・・」
クジラ博士の言葉に、スウェンの胸の中に激しい怒りが沸き上がる。
今の自分は感情が稀薄、そう自分で思っているスウェンだが、今の彼は十分に感情が溢れる人間であった。
敵わない、そんな考え等吹き飛ばすクジラ博士への怒りが、スウェンの身に動き出す力を与える。
「貴様・・・・貴様なんかに、貴様なんかに負けてたまるかぁー!!!」
フリーダム機動、全身の武器を開放し、ゲイザーに向けて力の限り攻撃を叩き込む。
「むうっ!」
幾線もの攻撃がゲイザーに向けて降り注ぎ、全ての攻撃をゲイザーは弾き飛ばす。
打ち消したエネルギーにより起こる激しい閃光がお互いを照らし、包み込んだ。
「ゲイザーを」
フリーダムは両腕でサーベルを抜刀
「渡せぇーーー!!!!!」
ビーム刃を展開しながらスラスターを全開し、ゲイザーへと斬り掛かって行った。
サーベルを抜いて迫り来るフリーダムにゲイザーは反応、
自機の周りに展開される量子フィールドに歪みを与え、ビームリングを楕円形にして接近する敵機へと撃ち放つ。
フリーダムは放たれたビームリングをソーラーセイルの高速移動を駆使して回避、連続して放たれるそれを次々に避け、
ゲイザーの間近まで接近してサーベルを叩き込む。
「てえぇいやぁぁぁ!!!」
「くっ!!」
振られたサーベルに反応して即座に避けるゲイザー。
フリーダムから離れながらビームリングを撃ち出し、右脇のレールガンを切り裂いて行った。
「避けた!?・・そうか、ビームサーベルだけは!!」
サーベルならゲイザーにもダメージを与える事が出来る。
希望を掴んだスウェンは離れようとするゲイザーの後を追う。素早く動き、何とか接近出来ればきっと・・・
ズバン
「え?」
一瞬の隙を突いて放たれたビームリング、それはフリーダムの一部を切断し、奪って行った。
「な・・・・っ!?」
切られた、今の一撃によってフリーダムの左腕が切られてしまった。切断された腕は爆発し、サーベルと共に塵と化した。
そして更に
ズバン
右腕に向けてもビームリングが放たれた。腕を切られる事は無かったが、握っていたサーベルの基部に辺り、それを爆散させた。
「あ・・・・ああ!」
「さて、いよいよ如何するかね?くくくくくくw」
なにごとにも終わりがある……
このまま突っきってくれえええ!!!
7
「スウェン・・」
スカンジナビアの地下シェルターで、体育座りしながらスウェンを思うソル。
「(きっと、彼なら大丈夫だ・・・・・セレーネ、スウェンを守ってあげて)」
今や地上の殆どは戦場と化し、ソルに今出来るのは皆を信じる事だけ。
拳を握り締め祈っていると、隣でモラシム・ブートキャンプをしていた少女、ステラが声を掛けて来た。
「これ・・」
「ん?」
ステラがゆっくりと右手を差し出す。その手には、スカンジナビア限定おくらあいすまんじゅうが握られていた。
「これ、くれるのかい?」
「うん・・」
「ありがとう・・」
二人はモラシム・ブートキャンプをしながらあいすまんじゅうを食べる。
「もぐ・・・キュンキュンキュン〜モラシム〜プリティーロリリンゴ〜(シン・・・・はやくまた会いたい)」
アイスを食べ、モラシムソングを歌い踊りながら、シンの事を思うステラ。
「ラブリーラブリーヒゲがラブリー。もぐ・・・あ、これおいしい(スウェン、僕は君を信じてる)」
アイスを食べ、モラシムソングを歌い踊りながら、スウェンの事を思うソル。
シンとスウェンが最後の戦いに身を投じる中、ステラとソルはカロリーを摂取しながらカロリーを消費していた。
「・・」
沢山の人の死を感じて、ルナは一人黙り込んでいた。
ニコルはそんなルナが心配だが、掛ける言葉が見つからない。
『ルナさん・・』
『そう心配そうな顔するなよ』
『ハイネさん・・』
ミーアの横で腕を組んで立っていたハイネが声を掛けてくれた。
『戦争が終わればラクスとミーアの歌姫フェスティバルはまた開けるさ』
『いえ、それは別に心配してませんが・・・』
ニコルがうなだれていると、どこかへ行ったまま戻って来ないでいたザムザザーの三人がようやく帰って来た。
『いや〜外大変な事になってるぞ!遠くから見ただけだけど、守り切れるか微妙そうだ』
『守備軍は頑張っているのですが、敵の勢いが全く弱まらないのは不味いですね』
『宇宙クジラ教がここまで強力だとは予想外ですよ』
地上で戦闘を遠くから見ていた三人の話によると戦況は厳しいようで、
下手すると突破されてここも安全ではなくなりそうらしい。
『どうなるかまだ分からないが・・・・・・あれ?ダルシムはいないのか?』
『あ、えっと、ダルシムさんは』
ニコルはザムザザー少尉、そして皆にダルシムがホシノに憑いて行った事を言った。
『そうか・・・・ダルシムが』
『少尉さん・・・・大丈夫です。あのダルシムさんならきっと無事に帰って来ますよ!』
『・・そうだな。ダルシムだもんな(アニオタだもんな・・)・・・ところでさっきからあいつは何やってるんだ?』
ニコルは首を傾げながら少尉が指指した方を見てみると
『足開いて、股開いて、目を開いて、心を開く!』
モラシム・ブートキャンプをしているアウルの姿があった。
『アウルさん・・(何してるんですか・・)』
8
「アスラン・ザラだ!ジャスティス、出る!」
機体の応急処置を受けて再び出撃するアスラン。
スラッシュウィザードのビームアックスとザクのライフルを持ち、ジャスティスが再び戦場を舞う。
「イザーク」
「アスラン・・・・貴様」
「イザーク、あの時は本当に済まなかった、許してくれ(味噌汁はわざとじゃないんだ!)」
「何?(髪型を馬鹿にした事を謝るのか?)・・・・ま、まぁ、そうやって素直に謝るなら許してやらん事もないな」
「力を合わせて戦おう、イザーク!」
「ふん!まあ、今だけは一緒に戦ってやる!行くぞ!!」
共闘するアスランとイザーク。
迫る敵部隊をオレンジショルダーザクが一斉攻撃で打ち払い、
攻撃を避けて抜けて来た強敵をジャスティスと白グフが連携でしとめる。
鮮やかな連携で次々に敵を撃破する二人のコンビネーションは抜群であった。
「くっそう!!」
なんとか気持ちを持ち直し、迫る敵をキラ達と共に再び撃ち出したムウ。
シールドの中では、自分のせいで殺戮に手を染める事になり、その上約束すらも守ってやれなかったシンと、
クルーゼと同じ境遇の、父親の過ちによって苦しみ足掻いているレイが戦っている。
自分もあの場所に行かなければならない、行きたいと思うのに、
光り輝くシールドがそれを許してくれなかった。
「シン・・・ちくしょう!俺はあいつらに何もしてやれないのかよ!!」
「お前という存在が全てを狂わせたんだ!」
逃げ回るシンを追いかけ、ジャベリンで執拗に斬り掛かるレイ。
「全てを曝け出し、全てを託そうとした俺の手を、お前は跳ね除けた!!」
影色のドラグーンを展開、逃げ回るアカツキの間接を狙って突撃ビーム砲が放たれる。
「キラ・ヤマトという世界の悪意が生み出した存在に味方し、お前は優しい世界を拒否した!
お前こそは世界の真の敵!真の闇!真の悪意!!お前こそが真に消えなければならない世界の悪なんだ!!」
「レイ・・」
「・・メサイアは地球に落す」
「!?」
「血は焼かれ、地上の全ては滅び、果ては全ての人という存在が滅び去る!!」
「そんな・・・何で!!何でそんな事!!」
「人は滅びなければならない!!人を滅ぼす!俺が滅ぼす!!
お前には世界が滅び行く絶望を存分に味あわって貰う!!
目の前で大切な者達が消え行く様を見て絶望するがいい!!
お前は、誰よりも苦しみ、誰よりも絶望して死んで行かなければならない!!!」
9
「レイ・・・・俺が憎いのか?
あの時レイと一緒に行けなかった俺を恨んでるのか!?
・・俺を恨んでるって言うなら、それは当然だと思うよ・・・・・だけど、何で世界を滅ぼすなんて!」
「・・・・シン、見てみろ、シールドの外で戦う者達の姿を。
ザフトのMSに乗りお前の仲間達と戦っているのは、かつてユニウスセブンを落した者と、それに賛同する者達だ」
「!!」
「一体どれだけ居るのか・・・・・滑稽な者達だな。
撃たれたから許せないと撃ち返し、さらに撃ち返されるしか出来ない。
最低だな、人という存在は・・。
このメサイアを乗っ取った者達はナチュラルを滅ぼすためなら自分達の命が尽きる事も厭わない。
シールドの中に居る者達に至っては、シールドの外へ出れず確実に死ぬというのにそれが当然という具合だ。
自分達が死んだ後で何が残るか、誰が残されるのかも知らず、憎しみの限り戦う・・・愚かな物だな。
だが、だからこそ今こうして使ってやる事が出来る。
奴等の憎しみはメサイアを地球へと落してくれる。俺の望み通り、世界の終わりへと突き進んでくれる!」
「だから何でだよ!!何でレイが世界を滅ぼすなんて言うんだよ!
大体、これがこのまま落ちたら、レイだって無事じゃ済まないじゃないか!!」
「そう、このまま落ちれば俺は確実に死ぬ。
だが、それが何だと言う?
俺は遅かれ早かれ死んで行く、それはお前も知っている事だろう」
「だから何でそんな死ぬ必要があるんだ!!
幾ら命が限られてるからって・・・・何で自分から死に急ぐ必要があるんだ!!」
「別に死に急いでいる訳ではない。
俺はただお前を絶望させ、苦しみの中で死なせたいだけだ。
俺だけ死んだりはしない、お前も連れて行ってやる」
「っ・・」
「お前にメサイアを破壊させはしない。
これが落ちるまで俺がお前に付き添ってやろう。
・・さっき、何故世界を滅ぼすのかと聞いたな・・・・・お前を苦しめるためだ!!
何も守れず、目の前で大切な者が失われて絶望するお前を、俺が笑いながら見下ろしてやる!!
全部お前が原因だ!お前だ!お前の存在が全てを滅ぼすんだ!!」
「・・俺を苦しめるのが目的だって言うのかよ!?
デスティニープランで世界を変えたいって、優しい世界にしたいって言ってたレイが、そんな理由で世界を滅ぼすのかよ!!」
「そうだ、俺はお前への憎しみだけで世界を滅ぼす。
お前は黙って全てが失われるのを見ているんだ」
「レイ!!そんなの・・・駄目だ!!」
アカツキはレンジェンドを振り切り、ジェネシスJrの砲口へと突入する。
「シン!」
「俺を・・幾ら憎んでくれても構わない!
だけど!世界を、人々を滅ぼすなんて駄目だ!止める!!」
砲口内部を突き進むアカツキ。
レジェンドは後からビームを必死に撃つが当たらず、当たっても黄金の装甲が全て弾いてしまう。
10
「こんな物ーーー!!!」
砲口最深部まで到達したシンはドラグーンを全展開、一斉にビームを放出して砲基部を破壊した。
これで少なくともジェネシスが使われる事は無い。
シンが今度はメサイア本体を破壊にしに向おうとしたその時、追いついて来たレジェンドがジャベリンを片手に飛び掛って来た。
「シンー!!!」
「レイ!?」
大振りのビーム刃がアカツキに向かって振り払われる。
ジャベリンはシラヌイバックパックを斬り裂き、アカツキの背部を大爆発させる。アカツキは爆発の勢いを利用してレジェンドから離れる。
シラヌイが破壊された事により黄金のビットは信号謝絶、ドラグーンが全て使えなくなってしまった。
ドラグーンと、バックパックの推力を失ったアカツキに、レジェンドは容赦無く襲い掛かる。
「メサイアから離れろ!!
ギルを裏切ったお前が・・・・・これに触れる事は許されない!!!」
「っそー!!」
ジャベリンで斬り掛かるレジェンドにライフルを撃つアカツキ。
「そんな物!!」
アカツキの攻撃は外れ、ビームはレジェンドの背後へと流れて行く。
「やめろぉ!レイー!!」
「メサイアから離れろーーー!!!」
ジャベリンがアカツキの肩に向かって振り下ろされようとしたその時、
アカツキが撃ったビームが宙に漂う黄金のドラグーンにヒット、反射されて返って来たビームがレジェンドの左腿を貫いた。
「があぁっ!!」
脚部の爆発に激しく揺さぶられるレイ。
シンはその隙にスラスターを全開して離れ、今来た所を戻り始めた。
「(レイ・・・・くっ!
砲口から本体内部に続くだろう道は無かった・・・・・一端外に出て内部への入り口を・・・いや、まずは推進部を!!)」
衝撃に体を揺すられ咳き込みながら、去って行くアカツキの姿を睨むレイ。
レジェンドはビームスパイクドラグーンを飛ばして散らばる黄金のビットを全て突き壊すと、
ドラグーンをバックパックに戻してアカツキの後を追った。
「ムラサメトルネード!!」
デスティニーインパルスに向けて、戦闘機形態で回転しながらビームを叩き込むホシノムラサメ。
シールドの外ではオクラ、ホシノ、コクシ、ヘルベルトが、デスティニーインパルスを操るクレオと戦っていた。
三機のムラサメの高速連携攻撃がクレオの動きを封じ、そこへオクラのデスティニーが一撃離脱のサーベル攻撃を加える。
「くぅぅ!!こいつらー!!」
クレオは攻撃を避けつつスラスターを全開、離脱するデスティニーを後から叩き斬ろうとする。
「させっかぁー!!」「させない!」「やらせんよ!!」
三機のムラサメが前垂れ部のミサイルを一斉に発射、それが全てデスティニーインパルスの背部に命中する。
「がぁぁぁ!!!っくそがぁ!!」
衝撃に流される機体の体勢を立て直そうとするクレオ。しかし
「んっ!?何だよこれ・・・・ちくしょうが!いかれやがった!!」
デスティニーインパルスの大型スラスターの一部が機能しない、
ミサイルの集中攻撃による激しい衝撃によって内部に損傷が出てしまったのだ。
左の翼の方はダメージが深く、ソーラーセイルを安定して放出する事も出来なくなっていた。
「こいつらぁ・・いい加減、いい加減にしろやー!!!」
11
怒りが頂点にまで達したクレオ。
損傷して推力が低下したスラスターを全開し、さっきよりも遅いがそれでも十分の高速度で、
邪魔をするムラサメに向かって斬り掛かって行く。
「皆さん!逃げてください!!」
「大丈夫だオクラ!行くぞ、コクシ、ヘルベルト!」
ムラサメは逃げずに応戦。
三機のムラサメは戦闘機形態で突撃、デスティニーインパルスに真正面から攻撃を仕掛ける。
「馬鹿にすんなよぉぅてめぇいらぁー!!!」
ミラージュコロイド放出、光学残像を生み出しながらデスティニーインパルスは突撃してくるムラサメの前から姿を消す。
ホシノ達の前に複数の残像が浮かび、それが消えると目の前には何も無くなる。
「なっ!ど、どこ行きやがった!?」「上!?下か!?」「くっ!どこへ!?」
「後です!!」
オクラが位置を教えた時にはもう遅かった。
デスティニーインパルスは三機のムラサメの後に移動し、両腕のエクスカリバーを振り上げていた。
「ばっ!!しまっ」「くっ!!」「しまった!!」
エクスカリバーが叩き込まれる。
左右に位置していたホシノ機とヘルベルト機に、その刀身がめり込む。
「ホシノさん!!ヘルベルトさん!!」
斬り裂かれるその寸前、ホシノとヘルベルトは緊急脱出装置を発動、二人は椅子ごと機体から弾き出される。
二人が脱出後エクスカリバーは二機のムラサメを縦に斬り裂き、真っ二つにした。
ぴゅー
脱出した二人は勢いよく何所か、宇宙の遠く彼方へと消えて行った。
「ホシノー!!!ヘルベルトー!!!」
飛んで行ってしまった二人を見て泣き叫ぶコクシ。
「次はてめぇだー!!!」
「っ!?」
逃がさない、クレオはコクシのムラサメも撃破するべく後から接近する。
「させません!!!」
オクラは握っていたビームサーベルをブーメラン化して投合、
ムラサメすれすれを通過して、後ろのデスティニーインパルスにブーメランが到達する。
「なっ!!」
行き成り飛び出して来たブーメランに反応し切れないクレオ。
ビームブーメランはデスティニーインパルスの右腕を付け根から切断し、さらに右大型スラスターも切裂いた。
「これ以上やらせません・・・・・やらせて、たまるかよー!!!」
オクラの叫びと共にデスティニーはもう一つのブーメランを抜き取り、デスティニーインパルスに向かって接近しながら投合。
「くっ!!二度も喰らうかぁー!!!」
再びムラサメすれすれを通過して飛んで来たブーメランを今度は交わす。
「へっ!これくらいで・・・・・・ぐぇ、ぬあっ!?」
避け切ったと思っていた所に後からブーメランが襲い掛かり、左大型スラスターが切断された。
一投目のブーメランが戻って来て切り裂いたのだ。
「え、うっ、嘘だろ!?」
パニックになっているクレオ。そこにさらに戻って来たニ投目のブーメランが直撃、頭部を綺麗に切り取る。
「見えねぇ!!!くそっ!!くそっくそっく・・・ふぶあぁ!!???」
映像を断たれメインからサブカメラに切り替え映像が再び映し出された時、目の前には自機に接近し尽くしたデスティニーの姿があった。
「喰らえーーー!!!!!」
「ぐ、ぐわあああああああ!!!」
デスティニーの手ビーム、パルマフィオキーナが炸裂し、デスティニーインパルスの左腕を大爆破した。
12
デスティニーインパルスは爆発によって吹き飛ばされ、
衝撃で気絶したクレオを乗せたまま宇宙の闇の中へと流れ消えて行った。
「ハァハァ・・・・・大丈夫ですかコクシさん?」
「あ・・ああ、助かった。それよりもホシノとヘルベルトが」
椅子に座ったまま何所かへ飛んで行ってしまったホシノとヘルベルト。
辺りを見回しても当然見つけられず、二人は宇宙の闇の中に隠されてしまった。
「ホシノ・・・ホシノーーー!!!」
「二人とも・・・・(ちくしょう・・ちくしょーう!!!)」
戦闘はまだ続いている。
二人を探したかったが状況がそれを許さず、コクシとオクラは苦心しながらも補給のために味方の艦へと戻って行った。
「なあ、ミューディー・・・何時まで続くんだよ、これはよぉ!」
「知らないわよ・・・・ていうか無駄口叩いてる余裕なんて無いわよ・・」
あらゆる方向からメサイア付近に向けてジン等が集まっている。
シャムスやミューディー、そしてキラ達は、シールドの外でひたすら増え続ける敵と戦い続けていた。
今はスウェンとシンを信じて、迫り来る敵に耐えるしかない。
各機体は何度も補給を繰り返し、再出撃してはぼろぼろになっていた。
パイロット達の疲労は限界に達し、心身共にぼろぼろだった。
その頃月での大規模な戦闘はほぼ勝敗が決し、同盟軍が殆どの敵部隊を制圧していた。
数があるとはいえジンで、その上パイロットは殆ど一般人上がり、おまけにレクイエム撃破による動揺もあった。
士気の下がったジン部隊は次々に撃破され、殆どの部隊が全滅してしまっていた。
勝負が決したと判断した同盟軍はボルテールを含む一部の艦を、
今から送っても決着前に間に合うか分からないがメサイアに向わせた。
ナチュラルを滅ぼしたいと願った数多くの者達は死んで行った。
彼らの願いは、後はメサイアに託すのみ。
「何をする!!俺の機体に触れるな!!」
「マサイの戦士は一機毎に一個しか配備されてないんだ!」
ボルテールに収容されたジャスティスと白グフ。
アスランは整備中の白グフコックピットに入り込みマサイの戦士を取り出そうとしている。
イザークは勝手に自分の機体に触れようとするアスランを引っ張り、コックピットから投げ落とそうとしている。
「邪魔をするな!君をぶちたくなどない!」
「いい加減にしないとこっちがぶつぞ!!」
喧嘩する二人を放置し、オレンジショルダーの同志達は集まって皆で一緒にマサイの戦士を飲んでいた。
乙!モラシムブートキャンプに吹いたww
超オツ!
いつもバロスw!
13
「ぐっ・・・・うぅ」
無限の光の軌道を描く最強のMSスターゲイザー。
圧倒的その力を前にして、スウェンのストライクフリーダムはその身をずたずたに切り刻まれていた。
「ここまで諦めの悪い人間は見た事が無いよ・・・・・正直呆れてしまうのお」
フリーダムの全身はビームリングによって半壊し、
スウェンはバルカンを撃ちつつ片腕のビームシールドを張りながら、必死にゲイザーから逃げる事しか出来ないでいた。
「(くそっ・・時間が、時間が無い!けど、如何すれば奴を止められるんだ!?)ちいっ!」
無数に放たれるビームリングをビームシールドで必死に防ぎながら、打開策をなんとか考えようとする。
しかし、何も浮かばず、何も出来ない内にフリーダムの全身は防ぎきれない攻撃によって更に傷付く。
「もう退きたまえ。そろそろ私もメサイアへと向いたいのでな」
「嫌だ!貴様からスターゲイザーを取り戻すまで、俺は退かない!!」
「やれやれ・・・・・そんなに世界を滅ぼしたいのかの」
「何がだ!今のこの状況を作った貴様が何を言っている!!」
「それは誤解だよ君。私は世界を救うために戦っているのだよ」
「嘘を付くな!!」
「嘘ではないよ・・・・・私が行動しなければ世界は滅びる。それは本当の事だよ?
私が世界を支配しなければ、世界はSEEDによって破滅する。
君も、君の仲間も、全ての人が壊れて滅んで行く。
私はそれを止めたいだけなのだよ」
「SEED・・?何だそれは?何を言っている!」
「これを見たまえ」
クジラ博士はゲイザーから一方的に、SEEDに関する研究データをフリーダムへと送信した。
フリーダムのディスプレイには送りつけられたテキストデータや図面が表示され、スウェンはSEEDに関する事実を目にする。
「何だ?・・これは!?」
「これを見てもまだ私の邪魔をする気になれるかね?」
「・・・馬鹿な」
スウェンの中に流れ込んでくる、世界を破滅に陥れるSEEDという名の進化の現実。
SEEDによって人は感情を失い狂った生き物になる、それは全ての人に訪れる、今の世界のままでは人は滅亡する、
スウェンはSEEDという名の人の未来を突き付けられた。
「・・嘘だ、こんな事」
「嘘?本当にそう思うのかね?」
「・・」
「嘘だと思うのなら、それまでだろう。何も言わんよ。
しかし、君がただ目の前に突き付けられた現実を認めるのが怖いだけ・・・というのなら、
君はやはり私の仲間になる以外道は無いという事だ」
「嘘だ・・」
「我々はSEEDが人を飲み込む前に世界を支配して、確実に対処しようとしただけだ」
「嘘だ・・・」
「認めたくないだろうがこれが現実だ。私の邪魔をすると世界は滅ぶ」
「嘘だぁ!!!」
14
スラスターを全開してジェネシスの砲口から抜け出すアカツキ。
砲口から出て周りの光景を見渡すと、シールドの外では仲間達が益々増えた敵と死闘を繰り広げていた。
「皆・・・くっ!!(とにかく俺は、早くメサイアを止めなくちゃ!)」
アカツキはバックパックの無い本体のみの状態で、メサイアの推進部を破壊すべく進み出そうとする。しかし
「シン!!」
追って来たレジェンドがジェネシスの砲口から飛び出して来た。
「レイ!?」
レジェンドがジャベリンを振りながらアカツキへと飛び掛る。アカツキは攻撃を交わし、必死に距離を取ろうとする。
「逃がすものか!!」
絶対に逃がさない、レイは目の前の黄金の機体に全ての憎しみを向けながら執拗に迫る。
逃げても逃げてもジャベリンで襲い掛かられるアカツキ。
バックパックが無い事で推力に乏しく、盾はビーム刃を防げないヤタノカガミ製、
シンは繰り出される攻撃を死に物狂いで避けるしかない。
「くそぅ・・・レイッ!!」
「シン・アスカめがー!!!」
「あれは・・・!!」
シールド越しに追い込まれているアカツキの姿を目にするキラ。
何時の間にかアカツキのバックパックが無くなっており、見るからに押されている。
「くっ、シン!!
ミリアリア!シンが危ない!オオワシのバックパックをメサイアに向けて発射して!!」
「え?メサイアに向けてって・・シンの所まで飛ばすって事!?
無理よ!あそこに行く前に撃墜されるわ!」
「大丈夫!僕が何とかするから!だから早く!!シンが・・・・ああ!!シン!!!」
「ぐわぁっ!!!」
繰り出されるジャベリン攻撃を避け切れず、右胸部にビーム刃を浅く斬り込まれてしまうアカツキ。
斬られた部分が小爆発し、シンを激しく揺さぶる。
「まだ殺しはしない。動けなくして、そして、何も出来ない内にお前の全てを奪ってやる!」
レジェンドの凶刃がさらに襲う。
シンは揺られて頭をくらくらさせながらも必死に操縦桿を握り、激しく繰り出される追撃をなんとか避ける。
「レイ・・・・止めてくれ・・・止めてくれ!!・・俺は、レイと戦いたくなんかない!!!」
「何を・・・・・今まで散々身勝手な感情のままにその力を振るい続けて来たお前が、裏切り者のお前が何を今さら!!!
戦え!!俺と!!裏切ったお前が今までして来た事だろう!!
真にあるべき未来から外れ、幼稚な感情のままに我々の敵となったお前が、何故今さらそんな戯言を!!」
「俺は止めたいだけだ!!レイの敵になりたい訳じゃない!!」
「・・・その言葉が、どれだけ身勝手なのかも知らないで!!!」
15
「レイ・・」
「これ以上戯言はいい・・足掻け、本気で足掻いて見せろ!足掻いて足掻いて、その果てで絶望しろ!!」
「駄目だよ・・・・俺は、レイと本気で戦う事なんて出来ない!!だってレイは俺の・・・」
「シーーーン!!!」
「っ!?」
コックピット内に響き渡る声、驚きアカツキで振り向くと
「シン!!これを!!」
「キラ!!!あんた、何で!!!」
シールドの外を見るとそこには、オオワシを装備したストライクの、キラの姿があった。
ストライクの周りには沢山の敵が存在し、ストライクは敵の群を掻い潜ってシールドぎりぎりまでやって来ていた。
「何やってるのキラ!!!戻ってーー!!」
単機で突撃して行ったキラに必死に呼びかけるミリアリア。キラは聞かず、シンにオオワシを届けるために敵の群へ身を投じる。
「駄目だ、キラ!!敵が・・逃げろーーー!!!」
「シン・・・・・・・受け取れーーーーー!!!!!」
キラの叫びと共にストライクの背部からオオワシが分離、黄金のそれは飛行形態となって単機シールドへと突入した。
それと同時に群がる敵が一斉にストライクへ向けて攻撃、
無数の砲撃が一点を焼き、その場に激しい爆発を生み出した。
「っ・・・・・・ぁ、あぁ・・・キ、キラァーーーーー!!!!!」
爆炎の中に消えるストライクの、キラの姿を見て、シンは身を乗り出してシートベルトを軋ませながら絶叫する。
「キラ・・嘘・・・キラーーー!!!」
その光景にミリアリア、それにムウ達、そしてラクスが絶叫した。
「キラ・・・・・嘘・・・・・・・・そんな事は・・・・キラは、私の・・・・・・・・あ゛ーーーーー!!!!!」
「ラクス様!!!」
「あ゛ーーーーー!!!!!」
ラクスはエターナルの全砲門を開放し、キラに攻撃した機体達に向けて、
距離が離れていて当たりもしないのに無理矢理攻撃を放った。
「ギラ゛ーーーーー!!!!!ギラ゛ーーーーーーー!!!!!」
エターナルから滝のようにミサイルが放たれ、無茶苦茶に撃ち出されたそれは宙域に無数の爆発を生み出した。
キラが必死の思いで届けたオオワシは黄金の装甲によってシールドを突破、
アカツキの信号を確認するとそこまで全速力で飛び、バックパック形態となって背部へと合体した。
レイは合体の間一切攻撃をせず、その光景をただ見詰めていた。
「キ・・ラ」
オオワシを装備したアカツキ、その中でシンは目を向き出し、放心したようにコックピットに座っていた。
「く・・・くくっくくくくくく」
「・・・レ、イ?」
「くふふ・・・・くっ、くははははははははははははは!!!!!」
行き成り大声で笑い出すレイ。
「死んだか!wキラ・ヤマトは死んだか!!wくひゃはははははは!!!いいぞ、最高だ!!!」
「な・・・んだって?」
16
「いい様だな!!シン!お前が選んだキラ・ヤマトは今死んだぞ!!!」
「レイ・・な」
「やっと死んだ!!やっと消えた!!忌々しい最高のコーディネイターは消え去ったぞ!!最高だぁ!!!
どうだシン!!お前が選んだキラ・ヤマトは今死んだぞ!!やっと死んだぞ!!なかなか死ななかったあの屑がやっと死んだんだ!!!」
「レイ・・・キラが死んだのが・・・・そんなに嬉しいのかよ?」
「当然だ!!!あんな屑は死なない方がおかしい!!死んで当然だ!!!嬉しくない方がおかしいだろ!?
死んだ!!やった!死んだんだ!!キラ・ヤマトは死んだんだ!キラ・ヤマトは死んだんだ!!!」
「こんな・・」
「どうだシン?お前の仲間が死んだぞ?お前が選んだ最高のコーディネイターは死んだんだ!!
苦しいだろう!!!悲しいだろう!!!
それでいい!!!苦しめ!!そうやってお前は目の前で大切な者が消えて行くのを見ているんだ!!!
くはははははは!!!最高だな、お前の叫び声は!!!なかなか良い叫び声だったぞ!!」
「どうしてこんな事が・・」
「お前の大切な者は全て奪ってやる!!!お前の全てを俺が滅ぼしてやる!!!
メサイアを落して地球も焼き払ってやる!!
お前にメサイアは止められない、俺の手によって阻まれるからな!!!」
「・・してこんな事が、そんな事が」
「地球の全ても、お前が何よりも守ろうとしたあのエクステンデッドの少女も、俺が全て滅ぼしてやる!!!ぐひゃははははははは!!!!!」
ステ・・・ラ?
「死んでしまえ!!!みんなみんな死んでしまえ!!!あのステラとかいう少女も死ね!!ぼろぼろに焼かれて死んでしまえー!!!!!」
ステラを、殺す・・?
許さない、それだけは許さない・・・・それだけは
「許すもんくうあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
パアァァァァァァン
シンの中のSEEDが発動した。
レイへの怒りを、憎しみを、殺意を全て露にし、レイを殺したいと思う心によってシンのSEEDの力が完全に覚醒した。
覚醒と共にアカツキが動く。
ライフルにサーベル基部がジョイントされ銃剣となり、それをレジェンドへと向けながら全速力で突っ込んで行く。
「レイィーーー!!!」
「ええぇい!!!」
突き付けられる銃剣、レジェンドは両手のビームシールドでそれを受け、二機は激しく火花を散らせながら鬩ぎ合う。
「殺してやる!!!」
シンは悪魔のような形相でレイに言い放つ。
「殺してやる!!!お前なんか殺して!殺して!殺して!!殺してやる!!!!!」
「やっと本性を表したか、シン!!!そうだ!結局お前はそういう人間だ!!
真の優しい世界を選ぶ事も出来ない、
感情のままにその場その場の敵に殺戮の限りを尽くす事しか出来ない惨めで醜悪な残虐な悪魔だ!!!」
「黙れえぇぇーーー!!!!!」
17
「・・」
SEEDの全てを教えられたスウェン。何も言えず、ただその場に固まる。
「さあ、大人しく私の邪魔は止めたまえ。
私の仲間になって世界を救おう、世界のために生きて行こう。
君の夢を叶えるにはそれしかない。今君が私の仲間にならなければ君の夢は永遠に潰えてしまうのだよ?
世界がSEEDによって混乱したら君は夢どころでは無くなるだろう?」
「俺は・・」
「それに、流石にそろそろ行かなくてはメサイアを止められなくなってしまうぞ?
もうあんなに地球に近づいてしまっておる、手遅れになりかねん」
メサイアはあと一時間弱で地球に到達する所まで来ていた。
博士の言うとおりこのままでは手遅れになってしまう。
「メサイアをこのまま放置しては君も私も困るだろう?あの中の愚かな連中を止めなくてはならない。
さあ、いい加減退いてくれ、私の敵である理由は無いはずだ。
きっとセレーネも君に、私に協力しなさいと言うはずだよ?
彼女は私から離反したが、それは何も知らず無知であったがためだからのお。
きっと知っていれば私の味方をしてくれたはずだ」
ゲイザーはゆっくりとフリーダムへと近づき、退けと合図するように右腕を振る。
「・・」
「・・混乱してしまったのかね?まあ、無理も無かろうに。
まあよい、答えは後程聞かせて貰う。とにかく今はここを通して貰うよ?」
沈黙するスウェンとフリーダム、ゲイザーがフリーダムの横を素通りして行く。
「さて、随分遅れてしまったがまだ間に合うだろう」
ゲイザーはメサイアへ向うために背部円形スラスターを分割変形、一気に飛び去ろうとした、その時
「はぁっ!!」
「っな!?」
不意を突いてフリーダムが動いた。
漂っていたジンの残骸から奪ったマシンガンを手に取り、振り向きながら瞬時にゲイザーに向けて弾丸を撃ち放った。
「ぐはぁ!」
瞬時に反応したゲイザーだったが横に線を描いて連射された弾丸を避け切れず、
弾丸をトーラスにまともに受けてしまった。
分割されていた円形スラスターは両側共爆散し、機体に圧倒的スピードを与えていたそれは完全に壊れてしまった。
「きっききききき、貴様ぁぁ!!!」
「・・・知っていればセレーネは味方になっていただと?」
「なんて事をした!してくれた!!これではメサイアまで間に合わん!!
ええい!責任を取って貴様の機体がゲイザーを引っ張って行け!!早くだ!早くせぇぃ!!」
「セレーネ達を追い詰め、追い遣った貴様が何を言っている!!!
無知だと?教えてなかったのは貴様だろう!!
自分の考えが正しいと思っていたのなら何故本当の事を教えなかったんだ!?」
18
「教えても奴等のような人間は私に歯向かうだけだったからだ!」
「お前の言っている事は矛盾している!!」
「黙れ!!
頑固な屑や凡人はSEEDの危険性を理解出来ない、それを止めるための管理社会も認めようとしない!
自由という名の下らない欲望を守るために反抗する!
放送でSEEDについて口にしなかったのは言っても屑が無駄に反応するだけだったからだ!
言っても無駄だ!屑共には口で言っても無駄なのだ!だから力で支配しようとしたのだ!
何が悪い!?何故悪い!?
世界の事を碌に考えず、争いは嫌だと叫ぶだけ叫んで何もしない屑共よりも私の方が遥かに正しいというのに!!!
屑め!屑め!屑め!
お前もそうなのだろう!SEEDを知って尚反抗するお前は世界の敵なのだろう!!
そうなのだろう!私の邪魔をしているのは世界を滅ぼすためなのだな!!私を邪魔してメサイアを地球に落すのだな!!!」
「貴様・・(錯乱している・・?)」
「世界の敵め!許さん、許さんぞ貴様!!!!!」
クジラ博士の意思を汲み取り、フリーダムに向けてビームリングによる攻撃を開始するゲイザー。
フリーダムはソーラーセイルを全開してビームリングを避け、ゲイザーの横へ後へ周り込みながらマシンガンを撃ち突ける。
トーラスを失ってスピードを出せないゲイザーは避け切れず、マシンガンがいとも簡単に機体へと当たる。
「ふぐぅっ!!えぇい!」
マシンガン攻撃に耐え切れず、ゲイザーはビームリングを殆ど隙間が無い程大量に発生させる事で防御しようとする。しかし
「ぐはぁ!!」
攻撃が当たってしまう。
幾ら大量にビームリングを発生させても完全に回りをビームで埋め尽くすまでには至らない。
僅かに輪と輪の間に隙間が生じ、レールガンのような大口径の物ならまだしも、
マシンガンのような小口径の、それも連射の攻撃は流石に全て防ぎ切る事は出来ない。
ゲイザーはその純白の装甲に次々にマシンガンを受け、美しい機体がどんどん砕けて行く。
「SEED・・・・・お前が俺に見せたそれが全て、本当なのか嘘なのか俺には分からない。
もしかしたら全て正しく、人は近い将来全てSEEDを目覚めさせてしまうのかもしれない。
だが、たとえ全ての人がSEEDを持つ者となったとしても、
それで人が全ての感情を失ってしまうとは俺は思わない!!
貴様のデータに記されたSEEDを持つ者、キラ・ヤマト。俺は奴を知っている。
深く関わった訳でもない、奴の事をよく知っている訳でもない、
だが、奴と少しでも言葉を交し合えた俺だからこそ言える。
奴は心を失ってなんかいない、これからも失ったりなんかしないはずだ!
奴の声を、言葉を聞いて、俺はそう感じる」
19
「ファントムペインの人形が何を!!」
「人形・・確かに俺は人形だった。
いや、今も人形なのかもしれない。
が、人形であると同時に俺は心を持った人間だ!
どっちつかずの、あやふやなままの、自分でもよく分からない存在なのかもしれない。
けれど、それでも!少しでも俺に人としての感情があるのなら、俺はその感情に生きたい!!信じたい!!!」
「黙れ!!貴様みたいな地球を滅ぼす下郎
「滅ぼすものか!!・・・滅ぼしたい訳が無い!
地球には、こんな俺を待っていてくれる、信じていてくれる者達が、大切な人達が居るんだ!!
俺は、あいつらが居る場所を守りたい!そして、一緒に夢を叶えたい!だから今俺は戦っているんだ!!」
「守りたければ私に従えばよいだろう!!私は世界を確実に救う術を知っている!!」
「自分の意に沿わない者達を簡単に切り捨てる貴様が世界を救えるものか!!」
「救えるさ!!私はSEEDから世界を救う!!」
「貴様はSEEDに囚われ過ぎているんだ!!
SEEDに囚われ過ぎて、何よりも近くにあって何よりも感じられるはずの人の思いを忘れてしまっているんだ!!
だから人の行く末に絶望しか見出せないんだ!!!」
「計算し尽くし導き出した答えなのだ!!!人はこのままでは滅びるのだ!!
人の思いなどという脳内物質が作り出した幻想など入り込む余地は無いのだ!!
囚われているのは貴様だ!!思いという幻想に囚われているのだ貴様は!!!」
自機を守るのを止めて積極的に攻撃を仕掛け出すゲイザー。
ビームリングを幾重にも重ね撃ち、フリーダムの全身に向けて鋭いビーム刃を流し当てる。
フリーダムの全身はずたずたに切り刻まれ、ソーラーセイルを放出する翼も切り刻まれ、見る見る残骸と化して行く。
残骸に成り行きながらもマシンガンを必死に撃ち突け、ゲイザーの四肢を粉々に撃ち砕いて行く。
「はぁっ!!!」
「うぬぅっ!!!」
全身のヴォワチュールシステムサブユニットが撃ち崩されて、ゲイザーのビームリングの発生が不安定になって行く。
「(奴の機体・・・限界か!)てぇぇい!!」
チャンスと踏んで接近しようとするスウェン。しかし
「甘いわ!!」
「!?」
ズバァッ
「がっ・・」
フリーダムの胸部にビームリングが当たってしまった。
スウェンの居るコックピット部擦れ擦れを切り刻まれ、それによる衝撃その他がスウェンの身に襲った。
「ぐあぁ!!!」
マシンガンを手放しながら仰け反り流れ行くフリーダム。
スウェンは余りにも激しい衝撃を受けて気絶してしまった。
20
俺、は・・・・死んでしまったのか?
ここは、どこだ?
何も見えない、真っ暗だ・・・・・星も見えない
・・・・・・・そうか、死んだから何も無いばしょに居るのか
そうか・・・死ぬと真っ暗で星を見る事も出来ないのか
・・セレーネも、こんな何も無い所へ行ってしまったのだろうか?
嫌だな、こんなのは
星が無い・・星が無い暗闇なんて・・
俺は・・・・・小さい頃からそれだけでよかったのに
星さえあれば、星さえあればそれで・・・・・・・・星、見たいな、見たいよ、星が・・
『なら目を覚ましなさい』
え?誰だ・・・?
『星を見たいなら自分の目を開かなきゃ駄目。
自分で目を開いて、自分で目の前を確かめればきっと、誰でも星を見る事が出来るはずよ』
この声、もしかして・・
『そうね、私もそう思うわ。
だからスウェン、もう一度目を開いて、目の前を見て御覧なさい。
そうすればきっと、あなたの大好きな星が沢山見られるはずよ』
あ・・・そうか、二人は
「っ!・・・・セレーネ、お母さん」
目を覚まし天を見るとそこには、破損した機体の隙間から覗く無数の星々達が存在してくれていた。
星は優しい光を放ち、スウェンの瞳に無数の輝きを映してくれる。
「・・・俺は!」
「止めだぁ!!!」
ゲイザーの放つ光の軌道、ビームリングがフリーダムに止めを刺すべく放たれる。
「俺は・・・SEEDや世界だなんて大きすぎるもの今は如何でも・・・・ただ、俺は!」
フリーダムは流れ漂っていたジンの刀を掴むと大きく振りかぶり
「お前に星を見せてやるだけだぁーーー!!!!!」
全ての力と思いを乗せて思い切りゲイザーへと振り投げた。
投げられた刀は一直線にゲイザーへと突き進み、ビームリングの合間を突き抜け、
無数の星々の輝く闇を貫いてゲイザーの脇腹へと突き刺さった。
21
「ぐはぁっー!!!」
突き刺さった刀によって胸部側面外装甲が砕け、クジラ博士の体に拉げた金属の破片が突き刺さった。
ゲイザーは全身のサブユニットから全ての光を失い、周りを取り巻いていたビームリングも全て消え去った。
「スターゲイザー、確保する・・!!」
確保すべく光を失ったゲイザーに近づくフリーダム。
しかしその時、クジラ博士の叫びが響いた。
「ゲイザー!!!行け!!行けるだろう!!!命令だ!!
今すぐ太陽から離れて、宇宙の遥か遠くまで突き進んで行け!!最重要命令だ!!!行けー!!」
「何だと!?」
クジラ博士の命令を聞くと同時にゲイザーのメインカメラが発光、
脚部のブースターを全開して太陽とは逆の方へと勢いよく進み出した。
「貴様ぁ!!!」
「もう知らん!!知るものか!!滅べ!滅んでしまえ!!!
そんなに滅びたければ、そんなに争い続けたければ!
最後の一人になるまで、最後の一人になっても戦い続けろ!!!!!
お前達はそれしか出来ないのだからなぁ!!!
私の言葉も聞けない屑共は滅んでしまえーーーー!!!!!!!ふははははは!!
(宇宙クジラよ・・・・・今会いに行くぞ)ふはははは・・・ぐっ・・・・・・」
ゲイザーはクジラ博士の亡骸を乗せて宇宙の彼方を目指して進む。
スウェンはすぐに追いかけて止めようとしたが、フリーダムのスラスターが損傷していて追い付けず、
それでも無理矢理全開して追いかけようとしたら翼が自壊して爆発した。
「・・そんな、ゲイザーが・・・・・くっ〜〜〜そうっ!!!!!ふざけるなぁーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ゲイザーは遥か宇宙を目指し永遠の航行へ。
スウェンは半壊したフリーダムと共に星々の中に取り残され、ただひたすら叫ぶしか出来なかった。
叫ぶスウェンに星は何も言わず、ただ輝き優しく見守っていた。
キラー!!(つД`)
今回はギャグ無しのヘビーな展開だったなあ、もう少しで完結するのかな?
他の職人さんはいないのか?途中のままのあったと思うが。
まとめも更新しないし今の終わったらスレ終わっちゃうのだろうか
それなら!
俺がヘタレ文を書いてやる!
作文書くのが消防の頃から苦手というかできなかった。
漢字の書き取りがなけりゃ確実に1だったw
中度の自閉症だと発覚したのは3年前。
池沼手帳発行されたwww
今じゃ精障手帳も持ってる。
障害者の作業所で働いてるよ。
ついでに言うと携帯厨。
障害者割引で安く使ってる。
こんな人で良ければ…
家族殆ど精神病で一部は入院してて
家庭は常にカオスガンダムな引き篭もり人格障害ロリペドキモオタの俺にも書けたんだ、君にだってきっと書ける!
大切なのは゛書きたい物を書く!゛って事なんだきっと。
22
「レェィーーーーイ!!!!!」
「シィィーーーーン!!!!!」
激しくぶつかり傷付け合うシンとレイ。
お互いに憎しみの限りをぶつけ合い、かつての友である二人は全ての憎悪を刃に込めて殺し合う。
「お前だけは!!お前だけは許さない!!!」
殺意に突き動かされるシンはSEEDの力を全開し、己の心を物凄い勢いで燃え尽かせて行く。
殺意という名の感情を除いたシンの全ての思いが、
自分自身の生み出した゛力゛という名の業、焔によって焼き尽くされて行く。
「死ね!!死ね!!死ね!!死ねよーーー!!!」
今までとは比べ物にならない程の力の発現、最大の憎しみは最大の力を引き出し、
それが今までに無い急激な感情の消失を生み出していた。
「殺してやる!!!(ステラはやらせない!!!)」
「お前みたいな奴がいるから全てが狂うんだ!!!」
超接近戦で放たれるオオワシのプラズマビーム砲、
レジェンドは吹き飛ばされながらも二つのシールドで防ぎ切り、スパイクドラグーンを射出して反撃する。
「お前の裏切りは世界への裏切りだ!!お前の罪だ!!!」
スパイクドラグーンがアカツキに突撃する。
「黙れぇぇ!!!お前こそっ!!お前こそぉー!!!(皆を、ステラを奪おうとする奴がぁぁ!!!)」
盾の先端で殴り付けてドラグーンを弾き飛ばす。
一機目を弾いてすぐもう一方のスパイクドラグーンが襲い掛かり、黄金の盾を貫き爆散させた。
「ぐはっぁー!!」
「お前の罪は沢山の人々を苦しめた!!!
プランによって救われるはずだった人々は今も戦い続け、最早絶望しか無い!!」
スパイクドラグーンが更に本体を狙って飛び掛る。
「いい加減黙れえぇ!!!(皆をーーー!!!!!)」
アカツキはライフルからサーベルを取り外し、ライフルを投げ捨てると両刃のサーベルを分割、両腕に持ってビーム刃を形成、
飛び掛ってくる二機のドラグーンを双刃によって斬り裂き爆発させる。
「お前なんか!!お前なんかぁー!!!(皆を、皆・・・皆をやらせたりするもんかぁー!!!)」
「お前という殺戮の悪魔さえ居なければ!お前という存在さえ居なければ!!!
・・・・・お前は人殺しだ!それしか出来ない悪魔だ!!救いを求める人の思いを踏み躙る許されない悪だ!!!」
「黙れよおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
お前が死ねばいいんだ!!!死ね!!!ステラも皆もやらせない!!!お前だけ死ねよぉーーー!!!!!」
今更ですが
>>165、×ホマ・ミキサー○ホマミキサー
23
「あうあぁ゛ーーー!!!」
「ミューディー!!!ちっ!一端下がって補給を受けろー!!」
「あんたも早く補給を受けて!!アルカリ電池が切れる!」
「富士通乾電池だから大丈夫だ!
くそっ!!てめぇら!!!消えろ!!消えろ!!消えろー!!!」
シールドの外で絶望的な戦いを続けるシャムス達。
エターナル、ガーティ・ルー、AAらも既に多数の被弾を受けて半壊し、
MS隊に至っては半分以上が既に撃墜されてしまっていた。
最早仲間の死を思う暇も無い程攻め立てられ、何時全滅させられてもおかしくない状況となっていた。
「修理と補給ありがとうございます・・・・・守ってみせます!
(ホシノ、ヘルベルト、見ていてくれ!!)オクラ・ホマミキサー、デスティニー、出撃します!!」
デスティニーの応急処置と補給を受けたオクラが再び戦場へと出る。
もうこれ以上誰もやらせはしない、
デスティニーは光の翼を煌かせ、絶望の戦場へと突っ込んで行った。
地球が間近と迫り、滅亡へのカウントダウンが始まる。
「殺す!!殺す!!!(皆を守・・守る!!!)」
果てない憎しみでその力を振るうシン。
守るために、大切な者を無くさないために、それを奪おうとする者を殺す。
「殺す!!!殺すぅっ!!!!!(皆を、皆・・・・・あれ?)」
守るために。
「殺す・・・殺す!!!(皆って・・・・・誰だっけ?)」
守るために・・・それだけのために戦っていた。
なのに、何を守ろうとしていたのかも忘れて、何も見えなくなって行く。
「殺す・・殺す・・・(そんな・・・嘘だよ・・・・・そんな事無い・・・・そんな事無い!!!」
何を守りたかったのだろう。
「殺すぅ・・・殺すぅ!!!(・・・・あ・・・はは・・・・・あははははは・・・・・・・・何だ、俺・・・・分かってた積りなのに・・・・・そうか)」
何を守っていたのだろう。
「殺す!!殺す・・(俺はもう・・・・心・・・・ははっ・・・・・・・・でも・・どんなになっても)」
何を守れたのだろう。
「殺すっ!!!殺すー!!!!(どんなになっても、ステラだけは・・・ステラへの思いだけは忘れない!!!忘れるもんか!!!忘れたくない!!!)」
シンの心からステラへの思い以外の、殆ど全ての思いが消え去っていた。
キラ・・・覚えてる、けど、何であいつが死ぬと悲しかったんだろう?
アスラン・・・覚えてる、けど、何で俺はあいつの事いつも見てたんだっけ?
マユ・・・・・誰だそれ?そんな奴、いたっけ?
知らない、知らない、どうでもいい、何か沢山あった気がするけど、全部もうどうでもいいよ。
ステラ・・・・・待ってて、君を殺そうとする奴等も、君を悲しませる戦争も、全部俺がやっつけてやるから。
全部俺がやっつけて、二度と君が悲しんだりしないようにするから。
だから待ってて・・・・そして、俺ともう一度・・。
支援
24
思いも、記憶も、SEEDという゛力゛が・・・・いや、憎しみという゛力゛が奪って行く。
振るい敵を焼いた焔が己にも燃え移り、自分の心を焼き尽くして行く。
「もう終わりだ!!!貴様に俺は倒せはしない!!メサイアは止められない!!」
「・・」
「お前の大切な者は全て消え去れ!!!」
「・・・本当は」
憎しみに歪み切っていたシンの顔が急に緩み、力の無い、悲しそうな顔で呟き出す。
「本当は、選びたかった・・・・・レイの言う未来を」
「・・シ」
「レイの言う事は全部正しく思えて、俺、レイに付いて行って議長と一緒に世界を変えたかった・・」
光無き瞳に涙を溜めながら呟くシン。
「なぜ・・今になってそんな事を話す。
お前は俺の手を跳ね除けたんだぞ!?あの時お前は俺を拒絶したんだぞ!?
何故だ!!何故今になってそんな事を言う!!!
そう思っていたのなら何故俺と一緒に来なかったんだ!?」
「出来なかったんだ・・・・俺は、自分が死ぬと思っていたから」
「!?」
「連合に居た時変な薬飲まされて、ずっと体が痛くて、苦しくて・・・・・死ぬと思ってたんだ!!
ずっと飲んでないと死んじゃうような、裏切って飲めなくなったら死んじゃうような、そんな薬だと思ってたんだ!!
だから選べなかったんだ!!レイの、未来を・・。
死んでしまうと思ったから、レイの言う世界を守ってなんていけないと思ったから、だから選べなかったんだ!」
「シン・・・そんな」
「後になって死なないって分かったけど・・・でも、あの時はどうしてもレイを選べなかったんだ・・」
25
レイの顔から憎しみが消え去る。
シンも、レイも、その顔から憎しみを失い、ただ悲しそうな顔をして互いを見詰める。
シンは淡々と、どこか感情の篭らない声で言う。
「ごめん、レイ・・・・死なないって分かった後、その気になれば君の所へ行けたのに・・・」
「・・っ、あ・・シン」
「でも・・・やっぱり駄目だったかな。俺には、SEEDがあるから」
「SEED・・?」
「・・」
何も出来ず、ただ星々に包まれて漂う事しか出来ないスウェン。
地球と、自分の失敗のせいで止められないであろうメサイアを、焦燥し切った顔で見詰める。
守れなかった、皆の命も、セレーネとの約束も、みんな・・。
星さえあればそれでいいはずなのに、どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。
「皆・・・すまない・・」
地上では人々が叫び狂っていた。
間近に迫るメサイアの姿を見て、宇宙クジラ教もオタクも皆、どうなってしまうんだとパニックを起こしている。
落ちたら結局助かりはしないのに人々は地下シェルターに押し寄せる。
各地のMS戦は一部を除き中断され、皆宛ても無く逃げ回ったり呆然としていたりする。
「うおおおおおおお!!!」
デスティニーで無数の敵を薙ぎ払うオクラ。
依然止まる気配が無いメサイアを横目で見ながら、ひたすら今自分に出来る事、同盟艦隊防衛をする。
ムウもコクシもシャムスもミューディーも、皆戦っている。
どうなってしまうのか分からないという恐怖を必死に打ち払って、戦い続ける。
ラクスもひたすらミサイルを撃って戦う。もうそれしか出来ない。
ゴウ、イケヤ、ニシザワも必死にAAを守る。
ヒルダ、マーズは何時の間にか戦闘宙域から逃走、敵前逃亡をしていた。
「死にたくないんだ!」「死にたくない、撃たないで!」
26
「・・」
「・・だから今の俺はもう本当に、ただの殺戮者なのかもしれない。
分からないんだ・・もう。
今まで何を思っていたのか、何を感じて、何がどう感じられたのか、今の俺には分からないんだ」
SEEDと、今の心を失い掛けた自分について、全てレイへと打ち明けたシン。
「そうか・・・・そうなのか・・。
俺は・・・余りにも知らない事が多すぎた・・・・・」
「レイィ・・・・・くそぅ、どうして・・・どうしてこんな酷い事になっちゃったんだろう・・。
ひっく・・・皆一緒だったのに・・・あんなに・・っく・・・・・一緒だったのに・・、
皆でただ楽しくやって、一緒に笑って、馬鹿やって・・・・・なのに、どうしてこんな風になっちゃったんだろう・・」
搾り出すように、枯れ掛けた涙を溢れさせるシン。
僅かに残っている心で必死に思う。
こんなんじゃなかった、こんな風になるはずじゃなかったのに、
どうして自分は選び間違えてしまったのだろう。
もう届きはしない自分が選ばなかった、選ばれなかった未来はどれ程温かかったのだろう。
「レイも・・・どうしてそんな風に」
「・・・少なくとも、俺がこんな風になってしまったのはお前が原因だ」
「レイ・・」
「シン、俺は・・・お前の事が好きだった」
「レ・・」
「俺はお前の事を友なのだと、心の底から思っていた。
最初はお前の事を議長の駒として使おうとしていただけだった・・・・・だが、共に日々を過ごす内に俺は、
お前の事を何時の間にか好きになってしまっていた・・・友なのだと感じるようになってしまっていた。
お前だけは、全て信じられると思っていた・・・」
「レイ・・俺は」
「お前になら全てを任せられると思っていた。親友であるお前になら、俺の、命すらも・・」
「ひっく・・・・レイ・・・俺は・・・ぐすっ」
「ずっと恐かった・・・・・心の底で繋がり合う事が出来る相手など居なかったから。
議長の事を信じていても、心の奥底では何時も孤独だったから。
だからシン、俺はお前に一時でも救われていたんだと思う」
「レイィ・・ごめ・・・ごめんなさ・・・・・・うぐっ・・」
「シン・・・・・救って欲しかったよ、お前という大切な友に。
全てを救って欲しかった・・・・・人の未来も、議長の事も・・・・・・・俺の事も」
「俺・・なんて事を・・・・・レイの気持ち・・・を・・・・・・俺はぁ!」
「今さら言っても・・・全て、届かない運命だが」
27
「メサイアが・・」
目の前を地球に向かって落ちて行こうとするメサイア。
ラクス達は何も出来ず、ただ呆然と見ているしかなかった。
オクラはそれでも戦いを止めなかった。
ひらすら敵を、涙を流しながら撃ち破って行った。
「シン、俺はお前を憎んでいる。
それは変える事が出来ない物で、俺は永遠にお前への憎しみを捨て去れないだろう。
だが、それと同時に愛してもいる。
お前は俺に取ってただ唯一の友だった。
その思いは憎しみと同じく、永遠に変わらない、捨てられない思いだろう」
「・・」
「・・シン、共に行こう。全て終われば誰も苦しまない、誰も悲しまない。俺達が望んだ誰も苦しまない世界が・・・・・シン」
シンはアカツキのサーベルをレジェンドへと突き付ける。
涙を流し、体を振るわせながらレイへと言う。
「俺は・・・それでも俺は、ステラだけは見捨てられない」
「シン・・」
「ごめんよ・・レイ・・・・・俺にとってレイは大切な友達で、誰よりも大切な一番の親友だった」
「・・」
「でも・・・俺はステラだけは絶対に失いたくないんだ・・」
「・・・俺を、殺してでもか?」
「・・っ、ああ!」
「・・そうか」
見詰め合う二人、シンの瞳からは涙が零れ、それは少しずつ枯れて行く。
アカツキはスラスターを噴かせ、メサイアの推進部まで進もうとする。
しかし、レジェンドが立ちふさがり、先を決して通そうとしない。
「お願いだ・・・退いてくれ、レイ」
「嫌だよ・・・止めないで・・・・・メサイアを止めないで!」
「レイ・・」
レイは表情を崩し、悲しそうな顔で涙を流しながらシンへと訴える。
「嫌だよ・・・・地球を滅ぼさなくちゃ・・・嫌なんだ・・
人々が苦しみ続ける世界なんて嫌なんだよ・・・・・・お願いだよ・・・・・やめてよぉ・・・・・・・・最後の望みを消さないで」
「・・」
「メサイアを止めないで・・・・・・・全てを滅ぼさせて・・・・・
もう・・・・誰にも苦しんで欲しくないんだよぉ・・・・・・・・お願い・・・・全てを消させて・・・」
欝展開すぎるww
28
「駄目だよ・・俺はステラをどうしても」
「お願いだぁ!!・・・・・お願いだから・・・・人を」
「ステラを・・」
「もう誰にも泣いて欲しくないんだ・・」
「どうしても・・」
「苦しみを・・・・もう消させて・・」
「しても・・・」
「・・」
「・・」
無言で見詰め合う二人。
メサイアはシールドを解除し、全てのエネルギーを推力に当てて前進、
その巨体は地球の重力に完全に捉えられ、もう、誰にも止める事は出来なくなっていた。
シールドが解除されたメサイアに同盟軍は攻撃を加えるが、当然今さら何の意味も無かった。
大気圏へと突入するメサイア、その光景を呆然と見詰めるラクスやオクラ達。
何も出来ず滅び行く地球をただ見ているしか出来なかった。
全ての人がメサイアを見詰める中、
月の方角から同盟艦隊、ボルテールらがエターナルらへと接近して来ていた。
「(シンは止められなかったのか・・・!?)・・・なら俺が、内部で」
激しい大気摩擦によって発熱するメサイア、そしてアカツキとレジェンド。
「・・・・分かったよ・・・レイの言う通りにする」
「!?」
「もう止めようとなんかしない・・・・・レイの思う通り、これを地球に落すよ」
「シ・・ン・・・」
「俺だって・・・・・思いはレイと同じだったから・・・・・・道は違っちゃったけど、願ってる事は同じだから。
人を救いたい、もう誰にも苦しんで欲しくない・・・って」
「・・」
「・・」
「ふっ・・・ただ単に、もうメサイアを止められそうにないからそんな事言っているんじゃないのか?w」
「はは・・・・そうかもね・・w
ステラの事、本当に絶対に何が何でも救いたいって思ってた・・・・・・でも、もう駄目みたいだ・・」
「・・」
「・・・・レイの言う事・・・滅ぼせば誰も苦しまないっていうの・・・・・・・何よりもずっと正しかったらいいのに」
「シン・・」
「だって・・・・・どうやっても皆が幸せになれる世界が見つからなかったから・・・・・・・俺には届かなかったから」
「お前らしくないな・・・・いや、お前らしいのか?w」
「俺らしいってどんなだよ?w」
「ふふふふふw」
「はははははw・・・・・・はは・・・・・ごめんね、今まで一杯俺のせいで・・・でも、俺も一緒に行くから・・・・だから」
29
少しずつ燃えながら大気圏へと全身を投じようとして行くメサイア。
「・・・・・・シン」
「レイなら天国に行けるよ、絶対!w・・・・・俺は地獄だろうから・・・・その時は、天国でステラをお願い・・・」
「・・・・・」
「今まで本当にごめん・・・・あと、ありがとう!」
「・・・・・・・・っ!」
がっ
「えっ?」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
シンは、アカツキは、レジェンドに思い切り弾き飛ばされ、赤く燃え行くメサイアから吹き飛ばされた。
崩れ行くメサイアの残骸の間を、機体を激しく軋ませながら吹き飛ばされて行く。
「がっ!ぐあぁっ!・・・・レ・・レイ!!!」
「・・・・」
「何で!!」
「お前は生きろ・・・」
「!?」
「俺には未来は無いが、お前には、もしかしたら、お前なら正しき未来を作れるかもしれない・・」
「何言ってんだよ!!俺は未来なんて作れや・・」
「それでもいい・・・・お前に背負えなんて言わない・・・・・・・ただ、何よりもただ、俺はお前に生きて欲しい」
「レイ・・」
「お前は生きろ、あの少女を守って幸せに生きろ。
悲しみも、苦しみも、こんな酷い運命も、全て俺が連れて行くから、後の世界で・・・・・お前は幸せに生きろ」
「ふざけんな・・・・・待てよ!!!レイ!!おい!!何言ってんだよ!!!」
「守りたい者が居るんだろう?」
「違う!!もう俺は・・・・だって俺は、今はもうレイを!!!」
「シン・・」
「俺もレイと一緒に!!」
「もう誰も、俺を信じてくれる者はいないんだと思ってた・・・・・・・シン、俺を最後に選んでくれて、本当にありがとう。
こんなに嬉しい気持ちは初めてで・・・・・・・嬉しいと人は、涙を流すのだな」
ノイズが走り、ぶれる画面に映る、静かに涙を流し微笑むレイの姿。
シンは涙を流し、必死に操縦桿を握りレイの所まで引き返そうとするが、
激しい空圧と引力と残骸に阻まれて自由に動く事が出来ない。
「レイ!!!嫌だーーー!!!レイーーーーー!!!!!」
「シン・・・・・・・大好きだ!」
レイは最後に、笑顔でそう言った。
何時の間にかメサイアの表面からレジェンドの姿は消え、メサイアは火の塊となっていた。
30
「くそっ!!動け!!動けよーーー!!!なんで、なんで戻れないんだよーーーーー!!!!!」
顔を涙で濡らし、死に物狂いでレイの下へと行こうとするシン。
機体は重力に縛られ、装甲は大気に赤く焼かれ、みるみる残骸へと変わり行く。
激しい炎に焼かれ落ち行くアカツキの中で、シンは何度も何度も叫んでいた。
「くそー!!!くっそーーー!!!・・・・・へっ!?」
シンは声を止め凍り付いた。
気が付くと、自分の体の周りに沢山の死んだ人達が群がっていた。
全身にしがみ付き、まるでシンをレイの所へ行かせまいとするような。
「・・・ぁ・・・・」
朽ちた死者達は皆シンを睨み、こう呟く。
『お前だけはゆるさない・・・・・お前も連れて行ってやる』
「・・・・俺・・・は」
涙に濡れた目で死者達を見回す。
皆自分が苦しめた者達・・・。
シンが地球の方に目をやると・・
「・・・そんな」
地上には沢山の死者達が、地球を埋め尽くすようにいた。
皆自分を睨み、大声で叫んでいる。
『みんなみんなお前のせいだ』『皆死んだんだ・・お前のせいだ・・』『楽になれると思うなよ』
『大切な者は手にさせない・・』『永遠にさ迷い続けろ』
「うわあーーーーーーーーー!!!!!
くそっ!!くそぅ!!!
レイー!!レイーーーーー!!!!!」
叫んでも叫んでも届かない、もう二度と届かない。
燃え盛るメサイアはシンの叫びを打ち消し、そして、
大きな光を中心から放ち、激しい炎を上げながら空中で爆散した。
「うあ゛ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
アカツキは衝撃によって吹き飛ばされ、無数の残骸と共に落ちて行った。
スカンジナビアの夜明けと共に、焔に焼かれて堕ちて行った。
種運命 選ばれなかった未来最終編「夜明けの焔(スウェンVSクジラ博士、そして、シンVSレイ)」終わり
エピローグ シン編 「焔の代償(永遠の蜃気楼)」
クジラ戦争から三年。
地球の世界はメサイアの破片で多大な被害を受けながらも、未だに続いている。
世界にはまた、秩序と混沌が生まれていて、誰かが笑い、そして泣き続けている。
ここはオーブ列島の外れ、殆どの者が知らない旧時代の忘れ形見の小島。
戦争の被害が少なかったこの島には、半世紀以上前の建物が未だに残っている。
トロピカルな木々が生い茂り、ビーチには島の守り神モグラグーン様が今日も昼寝をしている。
ここは、平和な島だ。
「今日は水炊きにしようかな」
島の一角、ビーチに面した木造の家で一人晩ご飯の計画をしている少女が居た。
彼女の名はステラ。
戦争が終わって少し経った頃に島へとやって来た少女だ。
まだ十七歳だが、ある事情で体格が非常に良く、どう見ても完全に大人に見える。
来た頃は控えめで口数の少ない子だったが、島の人々と触れ合う内にとても明るくゆったりとした子になった。
今では島の頼れるお姉さんだ。
勤勉で素直なため色々仕事も覚え、知識も豊富になった。
今は一人で暮らしている。
近くに住んで居るホマミキサー家の人などがよく来るが、家では基本的に何時も一人だ。
「ニワトリにするべきか、ハトにするべきか、迷う」
「おーい!見つかったようですよー!」
「はい?あ、スティング。見つかったって何ですか?」
「オクラだって言ってんだろ!・・・・・まあいいや、それよりも島に来てるみたいなんだよ、あいつが」
「へ?」
「お前が探し続けてたあいつが!」
「・・・・じゃ、じゃあ!」
「ああ!・・・・・でも、素直に喜べないかもしれないぜ・・」
「・・・え?」
「ステラって言って金髪の子なんですよ。とっても可愛いんですけどね?
目は大きめで、とにかくステラて名前で金髪で、えーとそれから」
オクラに連れられて海岸に出てみると、そこにはモグラグーンに声を掛ける一人の男が居た。
「シン・・・」
ステラは一目見て分かった。
薄汚れた肌をぼろぼろの布で覆って佇む黒髪の男、彼はステラのずっと探していた人、シンだ。
行方不明となり、死んだとさえ言われていたシンが、今目の前にいる。
「シン・・・やっと会えた」
最愛の人とやっと会えて涙ぐむステラ。
シンはステラとオクラに気付くと振り向き、笑顔で声を掛けて来た。
「あの、ちょっとすみません。
人を探しているのですがご存知ありませんか?
ステラといって金髪で目が大きめの可愛い女の子なんですが」
「・・・・・シン、やっと会えたね。
私だよ、ステラ・・・・私がステラだよ!」
「っ!」
「びっくりしたよね?分かんないよね?髪の毛ちょっとだけ長くして、背だって伸びちゃったし。
でも、よかった・・・・・シン、私ずっとシンの事探し
「はっはっは!そっくりですね!
ああ、貴女もステラって名前なんですかー。これは偶然ですね」
「な・・・シン、私だよ?ステラだよ?」
「何言ってるんですか?w貴女があのステラな訳ないじゃないですかーw
ステラはもっと小さくて大人しくて、貴女とは全然違うんですよー?wあはははw」
「シン!信じて!私は本当に・・・・・っ!!」
ステラが顔を覗き込むとシンの瞳は、全く光の無い、赤く染まった異様な瞳だった。
「ステラどこに居るのかなぁ?
あ、ステラっていうのは僕の妹でしてね?小さい頃からずっと一緒で、何時も僕と」
シンの心は焼かれてしまっていた。
全てを焼き尽くされ、それでも忘れる事無く残されたのはステラへの思い。
必ずステラの下へ帰る、その思いだけがシンの中にあったのだ。
「・・・おい、お前!」
「やめてスティング・・」
「ステラ・・・・・だってよぉ」
「・・」
無言で首を振るステラ。
シンは海の方を見ると水面へと歩み寄り、ぼろぼろの布を風にはためかせながら呟いた。
「待っててステラ、すぐに君を見つけてあげるから。僕は必ず帰るから」
「・・・っ・・・・・シン・・・・ひっく・・・・う゛ぅ゛」
「僕は何所までも君を探しに行くから、君だけが僕の全てだから」
「・・どうして、こんな事に」
「僕が君を守るから」
黄昏色に染まり行く浜辺で、赤いオレンジに身を染めながらシンはステラを思う。
シンは沈み行く太陽を見詰め続ける。
背中に大切な人の視線を受けながら、二度と大切な者を映す事が出来ない、焔色の瞳で。
終わり
選ばれなかった未来本編完結しました!
こういう長編SSは初めてで途中行き詰ったりしたんですが無事完結出来ました。
読んで下さった皆さんのお陰です!ありがとうございました!!
同時進行だった全然関係無い萌え絵も無事描き上げたぞ!うp出来ないけど。
エピローグは各キャラ毎に書いて行こうと思います。
別のギャグ話も書きますが、長編は恐らく二度と書かないと思います。燃え尽きました。
ギャグがシリアスをぶち壊してましたが、シリアスも真剣に書いてました。
焦って最終編が短くなってしまいましたが、書きたい事は書けたと思います。
一番最初に考えた選ばれなかった未来の構想も短く纏めて書こうと思います。
何故あんな絶望話がギャグ化したのか・・・・・アスランのお陰だ。
エピローグシン話は永遠の蜃気楼で終わりじゃありません。
全てはアスランに掛かっている。
レイのエピローグもあります。
>>308 GJです
アスラン
エピローグ王国編に期待!
>>309 げっ
エピローグアスラン王国編に期待! だった
保守
>>308 GJ!!アスランがシンを救う事に期待してる
ルナと幽霊達がどうなったかも機になるしw
最後はギャグで締めて欲しいかも
>>308 お疲れさん。
できたらエピローグの中でいいので、メサイヤ落下後のCE世界が
オーブ・連合・プラントの詳しい様子を書いて欲しい。
まあ、疲弊しきった上での決戦だから
>>306くらいしか書くこともないかも。
今回の決戦でクジラ側に付いた多くのコーディネイター達のその後が気になる。
>何故あんな絶望話がギャグ化したのか・・・・・アスランのお陰だ。
俺にはエピローグの最後でアスラン王国に歩いていくあなたの後ろ姿が見えるよ。
世界の状態は各エピローグに少しずつ散りばめて書く予定です。
この作品、種死のOPやEDや挿入歌に合うように意識して書いてたんですが、合ってたでしょうか?
スペエディの歌詞は話作るのに大きく影響してました。シンは種死ED2、4や焔の扉に合わせて。
その他に各キャラにテーマを持って書いてました。
シンは妹と罪の意識、アスランは父と純粋さ、スウェンは母と夢、オクラは弟と再誕、
アーサーは趣味と同属嫌悪(ちょっと違うが)、キラは友情と自分の力、レイは救いと未来を。
半分ギャグなので重みとか全然感じられないかもしれないけど、テーマは結構本気で書いてました。
エピローグ レイ編 「自分の手で選んだ未来(選び取った未来)」
今日は調子が良い。
すっきりした感じがしてとても元気でいられそうだ。
あの戦争から二年半。
世界は変わらず混乱が絶えない。
あの時、俺が黙って地球を滅ぼしていれば苦しまなかったであろう人々が沢山いる。
俺の罪、俺のせいで苦しんでいると言ってもいいであろう・・・。
それでも選んでしまった自分がここにある以上、それから逃げる事は出来ない、逃げる気も無い。
俺の名前は、レイ・ザ・バレル。
かつてクジラ戦争で世界を滅ぼすべく戦ったMSのパイロット。罪深き生き残った一人の人。
あの時、もし彼が居なかったら、俺は・・・
「・・」
俺は急いでメサイアの中核へと向った。
シンを突き放した後、レジェンドで内部に侵入して、中心へと向かっていた。
俺が遣らねば成らないと思った。
俺があいつの、シンの未来を守らねばならないと。全て俺が連れて行くと。
俺は中核へと行くと、そこにあるNJキャンセラーの全システムを破壊した。
メサイアから核のエネルギーが消え、落ち行く要塞はただの星屑となった。
「あとは・・」
あとはレジェンドを内部で核爆発させればいい。
内部で自爆してメサイアを破壊し、地球へのダメージを少しでも軽減させるのだ。
レジェンドを核爆発させれば地上には汚染物質が降り注いでしまうだろう。
どの程度の影響が出るか分からないが、それによって誰かが苦しむのだろう。
それでも、俺はレジェンドを自爆させようと思った。
核爆発させなければメサイアを砕く事は出来ない、メサイアの動力だった大量の核を爆発させるよりは影響は少ない。
・・・・・・・・同じだな、結局俺も。
何かを守るために何かを犠牲にする。それが罪と知りながらも止めようとしない、愚かな人間・・。
「何をしている」
「・・・え?」
アスラン・・・・・ザラ!?
何故奴がここに居るんだ?
「こんな所で迷子になっているとは、君も意外とおっちょこちょいだったんだな」
何を言っている!お前が何故こんな所に。
「まあ何にせよ早くここから出るんだ。ここは危険だ」
「何を・・」
「メサイア内部でジャスティスを核爆発させる!!君は早く脱出しろ!」
「お前は・・・・・っ・・・・お前こそ脱出しろ・・・メサイアは、俺がレジェンドを自爆させて破壊する」
そうだ、お前こそ逃げろ、全て俺が終わらせる、だから・・
「何を言っている!!
今自分が何をしようとしているのか、お前、本当に分かっているのか!?」
「!?」
「俺の必殺技の自爆を真似しようとしているんだぞ!?頭大丈夫なのか!?」
何言ってるんだ?お前こそ頭大丈夫なのか?
「自爆は俺がしなければ意味が無いんだ。君は黙って俺に自爆の役を譲るんだ。いいな?」
「(馬鹿が・・)
嫌だ・・・・・・俺が死ぬ・・・俺がやるんだ。俺が全てを終わらせなければならない」
「ふざけるな!!君は俺を馬鹿にしているのか!?」
「死にたいんだ・・・・・全て連れて、死んでしまいたいんだ・・・だから」
「そうか、そんなに格好良く自爆したいのか。負けたよ・・君の熱意に」
「いや・・だから・・・」
「分かった、君のレジェンドを自爆させよう!!君の力だ!!
ただし、皆の下へ戻ったら゛アスランさんがレジェンドを自爆させたんです。アスランさんの手柄です゛と言うんだぞ?」
「・・」
「分かったな?分かったならこっちへ移れ」
ジャスティスはレジェンドに近づくとコックピットハッチを開けた。アスランが手を差し出して言う。
「早くレジェンドの自爆装置を起動させてこっちに来るんだ。さあ!」
本当に・・・・こいつは何を考えているか最後まで分からない。
ただの阿呆なんだろうか・・。
『行くな・・』
え?・・・・・この感じ、この声・・・・・まさか、ラウ!!
レイの目の前に黒い光が生まれ、影色のラウが姿を表す。ラウは首を横に振り行くなと言う。
『もう苦しむ事は無い・・・・一緒に行こう。私と一緒に、もう楽になろう・・』
ラウ・・・・・分かってるよ・・・うん、そうだね・・・・・行こう・・二人で一緒に。
「俺は死ぬよ・・・・・ここで楽になりたい。もう疲れたから・・・」
いいよね、これで・・・ラウ・・。
「逃げるな!!」
「!?」
・・・・え?
「生きる方が・・・・・戦いだ!!!」
・・・・・・・・・生きる方が
「っ・・・」
・・アスラン・・・・俺は楽になりたい、疲れたと言っているというのに・・・・・本当に人の話しを聞かない奴だな。でも・・
レイはゆっくりと指を動かし、自爆装置を作動させ、レジェンドのコックピットハッチを開いた。
そして中から飛び出し、アスランの待つジャスティスのコックピットへと飛び込んで行った。
アスランに受け止められ、そしてレジェンドの方を振り返ると
『・・・・・選ばなかったか』
ラウ・・
『そうだな・・・・・・・・お前は俺じゃない・・・・お前は、それでいい』
ラウはそう言うとにっこりと微笑み、黒い影をゆっくりと薄れさせながら消えて行った。
選ばなかったレイを見詰めながら、未練の闇を解き放ち、優しい光に包まれながら消えて行った。
全速力でメサイア中心部から離れて行くジャスティス。
その中でレイは無言で佇んでいた。そしてアスランは小声で
「・・レイ、君が自分の事を打ち明けた時の、あの時の約束を何だか有耶無耶にしてしまってすまなかった。
正直忘れていた。
(ホモ対象の議長も死んでしまったようだし・・)でも、せめて、君の命だけは守らせて欲しい・・」
「・・え?何か言いましたか・・・?」
「・・・・いや、何でもない」
ジャスティスは二人を乗せてメサイアを脱出する。
脱出しメサイアを振り返ると、巨大な要塞はレジェンドの核爆発によって内部から派手に崩壊した。
空中のそれは幾つにも砕け、その破片は大気に焼かれて炎上し、
大きな物以外は地上に着く前に燃え尽き、消えて行った。
地球には燃え尽きなかった幾つもの破片が降り注ぎ、各地で大きな被害が出ていった。
「地球救出!俺伝説に!!」
「・・シン(・・お前は)」
こうして俺は今も生きている。
後で聞いたが「生きる方が戦いだ」というのは、アスランが昔大切な人に言われた言葉なようだ。
大した事のない、ただの言葉。
だけど、俺にはとても重くて、とても大切な言葉・・。
戦後、アスランは人々を集めてアスラン王国を設立。
色々困難はあったが今こうしてこの国はしっかりと息づいている。
秋葉原跡地に出来たこの国だが、世界の各国に支店がある。秋葉原が本店らしい。
・・・・支店って・・・・店じゃなくて国だろう・・。突っ込んでも如何にもならないので誰も言わないが。
アスラン王国は
゛他国を侵略・・・したくはないなぁ、他国の侵略を許さ・・・・ない事もない、他国の争いに介入・・・・・するかもしれない゛
その理念というかキャッチフレーズに基づいて作られた国だ。
゛人は何をするか分からない、枠組みに押し込めないものだから基本的に何でもありだ゛
という法律の下に統制されたこの国は、出鱈目なのに何故か安定している。
基本的に枠組みに押し込めないが、衣食住は安定している。
デスティニープランを参考にした衣食住システムで、皆仕事を貰えるし食事も食べられない事はない。
仕事は向いている物を幾つか提示されて、その中から自由に選べるというシステムだ。
気に入らなければ申し入れも出来る。
食事は向いている食べ物が提示され、選んだ料理を無料で用意された食材から自分で作る。
基本的に何作っても自由ではあるが。
まあ、色々あるが゛全部守らなくちゃ駄目という明確なルールは無い゛気まぐれが通る国なのだ。
自分でもよく分からない国なのだが、俺は結構気に入っている。
この国には遺伝子医学の専門チームがあるのだが、そこでは俺の体の事についても扱われている。
俺の体を治す方法を見つけるために、アスランが医師に色々掛け合ってくれたらしい。
そのチームの研究によって俺の寿命を少しでも長く出来る薬ができた。
もっと寿命を長く出来るよう、別の視点での研究も今進行中らしい。
その研究が俺の寿命に間に合うかは分からないが、たとえ間に合わなくても俺は構わない。
アスラン・・・・俺は貴方に感謝している。
こうして少しでも長く生きられている今を、俺は心から嬉しく思う。
俺は、ずっと未来という物に囚われていた。未来ばかり見て、思い悩んでいた。
でも、今の俺は今を見て生きる事が出来る。今を大切にする事が出来る。ありがとう、アスラン。
シン、お前は行方不明らしいが、大丈夫だ。お前は必ず生きてどこかにいると信じている。
シン、お前に会って言いたい事があるんだ。
あの時、俺はお前が全ての原因だと言ったがあれは嘘だ。
行き場の無い思いを、お前を憎む事で如何にかしようとしただけだったんだ。
シン、もう一度お前と話したい。
今度はちゃんと話したい、銃を向け合わず、お互いをしっかりと見て。
シン、必ずお前の事を見つけるよ。
見つけたらちゃんと言おう、この胸にある温かな気持ちを、素直に言葉にして。
終わり
エピローグ カガリ編 「おとうさまぁあ!!(黄金の意思の末路)」
私はカガリだ。
一年前のクジラ戦争で多大な被害を被ったが、必ずや私達はオーブを復活させるぞ!
暫くの間はスカンジナビア王国にお世話になるが、オーブ本島は必ず復旧させる。レクエムですごい事になってるけどな・・。
各地の難民達が一杯集まって来ていてスカンジナビアも大忙しらしいが、私達も手を貸すぞ!居候だからな!
しかし、シンが行方不明というのは気掛かりだ。
あいつの事だから簡単に死んだりはしないと思うが・・。
大丈夫だ。
あいつの事はお父様が、お父様の残したというアカツキが守ってくれているはずだ。
スカンジナビアの廃棄物集積所で一人拳をぐっと握るカガリ。
「では代表さん、こっちの書類にもサインを」
「ああ、分かってい・・・・・る・・・・・・・・・はぁあああああ!????」
施設の職員に振りかえろうとした時、ゴミの山の中にある物を見つけてしまった。
「ア、アカツキが・・・ほわぁ!?」
ぼろぼろの、装甲が真っ黒のアカツキがゴミの山に埋もれている。
カガリが錯乱しながら職員に尋ねてみると
「ああ、あれはジャンク屋さんが持って来たんですよ。
何でも゛表面の金になりそうな金ぴかは取ったから後はいらない゛とか」
「くうぅぅぅそぉぉぉぉおうぅ!!!ジャンク屋めぇ!!!
そ、そうだ!これのパイロットは!?どうなったんだ!?」
「いや、私に聞かれましても・・・。
ジャンク屋さんは゛放置されていた゛とだけ言ってましたが」
「・・」
カガリがシンの事を考えて俯いていると
ぐしゃぐしゃぐしゃー
「あ゛ーーー!!!!!」
アカツキが新たに捨てられたゴミに完全に覆われ、最早ゴミそのものになってしまった。
「おとうさまぁあーーー!!!!!」
お父様の黄金の意思は埋もれてしまった。
その日カガリは自棄食いしようとしたが、食糧事情で出来なかった。
終わり
エピローグ キラ編 「僕は戦う(仲間と共に)」
「大丈夫か?」
「うん、ありがとうアスラン」
メサイアが砕けて数刻。
ほぼ全壊したストライクの、破壊を免れたコックピットの中で返事をするキラ。
乗ると大破する、でも何故か乗っている人は無事というストライクルール
(種、ストライクVSイージス、ムウ陽電子砲生還参照)によって奇跡的、いや、必然的に助かった。呪いの類と思われる。
回収されたキラはサイやカズィと会い、お互いの無事を喜び合った。
ラクスがキラを見るなり抱き付いて来て、人が見てるのに目一杯ちゅっちゅしていた。
エターナルらに群がっていたテロ部隊は同盟軍の増援に制圧され、戦いは一応の終わりを迎えた。
驚く事にアスランが宇宙に上がってから戦いが終わるまでに倒したMSの半分以上が、
中のパイロットが無事生き残っていた。
コックピットから助け出された彼らは一様に放心状態で、
コックピットの画面には゛お楽しみ頂けましたでしょうか?では、アスラン王国で会いましょう゛と映っていた。
アスラン王国、何それ?
地球に戻ってみると世界は荒れ果てていた。
大地は荒廃して、無事生き残れた人はクジラ戦争前の半分以下らしい。
キラはスカンジナビア王国でカガリやラクス達と復旧作業につく事になった。
無茶苦茶過ぎて最初は何をすれば分からなかった。
暫くは難民への食事の配給を手伝っていたが、すぐにキラは別の仕事が与えられた。
「止まれ!」
フリーダムに乗ったキラが敵を次々に撃つ。
スカンジナビアに集まるのは難民だけじゃない。
秩序が失われた世界では好き勝手に略奪しようとする者も出てくる。
キラは度々侵攻してくる賊軍を迎え撃つ任を与えられた。
ラクスや周りの者が勧めた訳ではない。むしろラクスは反対気味だった。
キラは自分の意思で皆を守る剣になる事を再び選んだのだ。
毎日のように襲い来る賊軍を撃ち続けるキラ。
こうある事をかつて嫌がっていたキラが何故?
キラがパイロットを続けて、クジラ戦争から三年後の今、キラは相変わらず戦い続けている。
サイと、カズィと一緒に。
「ストライクフリーダム、システム起動。行けるよ」
「その機体返しちゃって向こうは大丈夫なのかな?」
スウェンらからストライクフリーダムを返還され、キラはそれに乗って出撃する。
スウェンらの作った新宇宙探査組織の守りの要だったため、カズィはちょっと心配になる。
「大丈夫さ、きっと。彼らもこの一、二年で大分力をつけたようだし」
サイがフリーダムの機器を弄りながら言う。
「そうか・・・・・もう結構経つんだよね・・・」
キラは目を細めて、この数年の事を色々思い出すのだった。
アスラン王国・・・頑張ってねアスラン・・
レイ・・・・・今はアスラン王国の政府に居るらしいけど・・・もし今度会ったら僕は、何を言ってあげられるのだろうか?
今も彼への気持ちだけは整理が付かない
ラクス・・・・最近アイドル活動ばかりしてないかい・・・?
シン・・・・・・・・・・君は今どこに居るの?
僕に勇気をくれた君に、心から感謝の気持ちを伝えたいのに
キラは戦い続ける。
守りたい者が、失いたくない者があるから、ずっと戦い続けるのだと心に決めていた。
戦いたくない、それは消えない思い。
それでも戦うのは、戦いたくないという思いより何より、今ここに居る仲間達が自分の全てだからだ。
誰かに望まれたから戦うんじゃない、自分の思いがそれを望むから戦える。
世界は終わらない、争いはなくならない・・・・・なら、僕は戦い続ける。覚悟は、ある!
「皆、救援要請よ!AA出撃するわ!」
「了解ミリアリア!」
AA艦長ミリアリアの元気な声を聞いて気を引き締めるキラ。
「(大丈夫、僕は今、一人じゃないから!)」
「目標確認!敵はザクタイプよ!」
サイがフリーダムで、カズィがストライクノワールで出撃する。
゛敵゛は居る、戦いが始まる。
「(僕は、この道を生きる・・・・・僕は、戦い続ける!!!)キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!!」
終わらない明日へ、思いの青き翼が今日も行く。
終わり
キラ生きてたのかwレイも元気そうで何より
AAの艦長がミリィってことは、マリューは解雇された?ww
眠れないからテスト書き込み
'ガンダム+コーディネーターで特殊反応が出たら'
(時代設定:Seed2話辺り?)
キラはマリューにストライクのコックピットへ投げ込まれた。
マリューはストライクを何とか立ち上がらせたが動きがぎこちない。
「こんなOSで戦うなんて無茶だ!」
ジンが迫ってきた。マリューはPS装甲をオンにし、ジンのマシンガンを防いだ。
「どいてくださいっ!」
キラはマリューを押し退けてコックピットに座った。
その時だった。
キラがOSを改良しようとキーボードを叩き始めた瞬間、視覚がストライク頭部・腕の感覚がストライクの腕に伝わった。
指先まで全てがストライクとフィットした。
「こ、これは…」
「どうしたの!?ジンはすぐそばよ!」
「武器は…(アーマーシュナイダーとイーゲルシュテルンだ)」
キラの頭に直接、何かの'声'が流れた。
「なら、アーマーシュナイダーでっ!」
手にアーマーシュナイダーを持った時、また声が聞こえた。
「(胴体は避けろ。爆発でコロニーに損害が出る。頭部と腕部を狙え)」
「でえぇぇぇい!」
走り出した時に足に感覚が出た。
(このMSと僕は一体化してるのか?)
そう思いながら両手に持っているアーマーシュナイダーの右手を頭部に突き刺し、左手でジンの右腕の機能を沈黙化。
それでもジンは斬重刀を左手に持ち突進してきた。
手持ちの武器はイーゲルシュテルンのみ。
斬重刀が腹部に当たった時、キラ自身の腹部に軽い痛みが走った。
「このおぉぉぉぉ!」
イーゲルシュテルンで斬重刀を破壊。ジンは撤退した。
「(お前には才能がある。このまま戦え)」
「何で僕が…」
「キラ君だったわね。さっきから独り言が多いわよ」
「えっ?あの'声'聞こえてなかったんですか?」
「何の事?」
「…。(黙っておこう)」
>>322GJ!
パイロットに痛みが伝わるのって展開の仕方によってはリアルにもギャグにも思い切り使えそうだ。
単純にMSに意思があって、キラとストライクの友情とかあっても面白そうだなw
エピローグ ホシノ編 「二年越しの思い(次巻は三年後くらいだろうか)」
アスラン王国の一角にあるオタクショッピングモールでペド同人を買い漁るホシノ。
彼は二年半前のクジラ戦争で奇跡的に生き残ったパイロットの一人だ。
ムラサメから脱出して宇宙を漂っていた彼は、
気が付くと何故か地球の秋葉原跡地に倒れ込んでいたのだ。
「あの時あれに出会わなかったら・・・」
゛あれ゛に出会い、そして救われたホシノ。
宇宙空間を漂っていたホシノは突如眩しい七色の輝きに包まれた。
「何だ・・これは」
『貴方の願い、感じました』
不思議な声が響いてくる。
目の前は光に包まれていて何も見えない、眩し過ぎる。
『貴方の望んだ物はすぐそこに』
「誰だ!誰なんだお前は!?」
『さあ、行きなさい』
「う・・・うあーーーーー!!!」
気が付くと秋葉原、レクイエムに焼かれたその場所に横たわっていた。
半分灰になったもえたんのスタンドポップの横で目を覚ますと、周りには作業服を着たおっさんが一杯居た。
秋葉原で目を覚ましたのはクジラ戦争が終結してから半年後の事だった。
何故助かったのか分からない、目を覚ますまで自分はどうしていたのか分からない。
分からない事だらけだけど、とにかく助かったのだ。
目が覚めると世界は少し変わっていて、廃墟と化した秋葉原も復旧を開始していた。
すぐに、戦争の被害を受けなかった無傷のアニメイトに行くと、ましまろ五巻が発売していた。驚いた。
もう出ないかもしれないと思ってたのに、四巻から二年の月日を経て五巻が発売したのだ。
嬉しい、嬉しいよ、すごく嬉しいよ。
嬉しくて買ってすぐ男子トイレに直行して読み漁っていると、自分の背後から淡い光に包まれた影が姿を表した。
『自分にも是非読ませて下さい!』
「お前は・・」
『ましまろを見詰める者、ダルシムです!』
「お前は確か、あの時の・・・・・ああ!一緒に読もう!」
『うほっ!』
「同人誌も見よう!メロンブクスにも行くか?まんだらけでお宝同人誌を発掘しよう!そうしよう!」
『お供します!』
こうしてホシノとダルシムは二人で一緒にオタの道を歩いて行った。
後でダルシムに「俺を地球まで運んでくれたのはお前なのか?」と聞いたが、ダルシムは首を振った。「じゃあ、一体誰が俺を・・・」
自分を救ってくれた゛あれ゛は誰だったのだろう。二年経った今も時々ふと思い出し考える。
終わり
エピローグ クレオ編 「終わりの無い戦い(正義は我等に)」
俺の名前はクレオ・パンドラー。
かつてクジラ戦争で正義のために戦ったMSのパイロットだ。
コーディネイターの真の自由と正義のために戦った俺達は、裏切り者のクライン一派の妨害により敗北した。
俺はあの戦争で戦い傷つき意識を失い、宇宙をさ迷っていた。しかし
『貴方の願いは強い・・・・・貴方も行きなさい』
謎の存在の力によって俺は仲間の居る廃棄コロニーまで飛ばされ、この命を助けられた。
常識では考えられない力によって俺は救われた。
「もしかしたら、あれがDSSDの奴等の求めていた・・」
戦後数多くの仲間が、アスラン・ザラの作ったアスラン王国に行ってしまった。
アスラン王国に行く者に「何故だ!?」と、俺は尋ねた。
「アスラン王国を作るのです!アスラン王国なのです!アスラン王国で幸せになるのです!」
仲間の精神はどうにかされてしまっていた。
死んだ目でうわ言のように同じ言葉を繰り返すかつての仲間の姿は、心から悲しかった。
俺は諦めず、アスラン王国化していない仲間を探し続け、集結させた。
僅かに集まった仲間の数はかつての十分の一にも満たない。
それでも、仲間が少しでも居てくれて俺は本当に嬉しかった。
戦争終結から三年の今、俺達は地球から離れた複数の廃棄コロニーで細々と生活している。
集まった同志達ともう一度ナチュラルを滅ぼすための戦いを開始するため、何時か遣り遂げるため、共に生きる。
終りじゃない・・・・・ヤイカ、必ず俺達はもう一度戦争を起こしてみせる。ナチュラルを滅ぼしてみせる。
待っていろ、俺達が必ず真の自由と正義を・・
「ちょっと〜クレオ〜、お酒切れちゃった〜」
「・・・・てめぇは遠慮ってもんを知らねーのか?」
「逆らわないでよ!気分悪い!ばーか!ばーか!ばーーーか!!」
「・・(糞め!)」
こいつはマリュー・ラミアス。
俺達の敵であるオーブ側の人間で、今は俺達と手を組んでスパイ活動等をしている。
何でもナチュラルの仲間に人格否定されたのが気に食わなくて、それで俺達の側に付く事にしたらしい。
ナチュラルとは矮小な物だな。仲間同士でよくもまあ。
俺達は基本的にナチュラル全てが敵だが、現状ではこいつみたいなスパイが如何しても必要なので・・まあ、仕方が無い。
しかしだ・・・・こいつはとんでもなく酷い。
ただでさえ少ない資源を無駄に食い荒らす上に、常に酔っ払って罵声を吐いて来る。迷惑だ。
俺も随分変わったもんだ。
ヤイカ死後、俺は組織のトップとして仲間を指揮して来た。
色々やっている内に落ち着いて来たというか、だんだん自分がヤイカに似て来た気がしてならない。
自分の事は自分では分からない物だが・・。
まあとにかく、俺達はこれからもナチュラルを滅ぼすために戦い続けようと思う。
アスラン王国という厄介な国があるが・・あそこに敵対した所は大抵崩壊しているからな・・・下手に手は出せん。
「ちょっと〜クレオちゃ〜ん!私の替えのパンツどこ〜?もしかして盗んだ〜?」
「てめぇみてーなババァのパンツを盗る奴がいるかっ!!!」
「そう言いながら盗んでるんでしょ本当は。きも〜い!」
死ね!死んでしまえ!! 終わり
ちょっ魔乳あんた何やってんだよ
スパイっていうか、ただ飲んだくれてるだけのような気もするが
エピローグ ムウ編 「愛しき人を探して(マリュー行方不明)」
「そうか・・見つからないか」
マリューが失踪した。
捜索願も出して必死に探してるのだが、どうにも見つからない。
たまに見かけるという情報もあるのだが・・。
「マリュー・・」
クジラ戦争から3年、捜索願を出して一年半、ムウは毎日毎日仕事が終わると一人で情報収集に当たっていた。
マリューが自分の前から姿を消すなんてありえない。
だって、あんなに愛し合っていたのに・・。
ムウはマリューの写真を握り締めて今日も彼女を探す。
エピローグ マリュー編 「私が軍人を辞めた理由(さらばAA)」
「許せないわ!私が一番AAの事を分かっているのに!」
クジラ戦争から一年ちょっとの頃、マリューはAAの艦長の座を正式に奪われてしまった。
ミリアリア新艦長が抜群の指揮能力を持っていたためにマリューは副艦落ち、不満過ぎて猛烈に抗議した。
抗議が聞き入れてもらえなかったので矛先はミリアリアに向き、ストーカー行為、傷害未遂等色々やらかした。
色々やり過ぎた果てに裁判に負け、マリューはAAから離れ、一人傷心の旅へと出て行ってしまったのだ。
その旅先でパトリック派の者と出会い、その後スパイとして暗躍するようになった。
バーでクレオの仲間とウィスキーを一気飲みするマリュー。
「ノイマン死ね!何よ・・・・あの時はサイ君を攻撃するのが正しい選択でしょ?
何よ・・・・過ぎた話なのに掘り返してさ・・・・・・どうせ私は悪者よ!ふん!」
「の、飲みすぎじゃないか・・?」
「酒場で飲まないでどうするの!!あんたも飲みなさい!!」
「はぁ・・」
「サイ君に攻撃させようとしたからって私の事間違ってるとか言うのよ?間違ってるのはあんたらだっつーの!!!
ぼけっ!あほっ!馬鹿な連中!AAなんて艦沈んじゃえよ馬鹿!
ねぇ、あんたもそう思うんでしょ?ねぇ?思うんでしょ?ねぇってばぁ!!」
「ゆ、揺するな・・・・き、気持ち悪くなる・・・」
「元AAの仲間だったからって贔屓して説得しようとするなんてキラ君達は甘すぎるのよ!遊びじゃないのよ!!
ムウは優しいから分かるけど、きっとミリアリアさんやキラ君達の偽善ね!
仲間思いな自分達格好良いって、自分に酔ってたのよ!そうでしょ?ねぇ、そう思うでしょ?」
「う・・・・げろげろげ〜」
「うわっ、汚い!」
今はこんなマリューだが数年後、ムウと再会して立ち直る事になる。
立ち直ったマリューはクレオ達の存在をオーブ政府に暴露、それに激怒したクレオ達はオーブに攻撃を仕掛ける事になる。
そして、新たな戦いの引き金を引いたマリューは、ムウと一緒にオーブからとんずらしてアスラン王国で幸せに暮らしました。
「ムウ、私貴方と一緒になれて幸せよ!」
終わり