種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-07

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1通常の名無しさんの3倍
「新シャア板でガンダムWについて語るならここだ!」
「GガンやXが盛り上がってるから、Wも盛り上げて行こうぜ」
「職人さん常時募集中です」
「現在、SS連載中だ。荒れ防止のため「sage」進行を勧める。」
「荒らし・煽りはエレガントにスルーするのが基本だ。諸君らもエレガントな心を忘れないでくれたまえ」
「職人の作品投下中はレスを控えてくれ。職人も投下終了が分かりやすいよう配慮してくれるとありがたい」
「職人の作品に対して意見したいこともあるだろうが、単なる誹謗・中傷の類は控えたまえ」

「前スレはこちらになる。」
種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-06
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1167094107/

「こちらがまとめサイトになります。」
ttp://wctts.hp.infoseek.co.jp/
ttp://fhp.jp/GW-P/
http://wiki.livedoor.jp/arte5/d/FrontPage

「避難所はこちらだ。」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/1777/1161501957/l50

「タイトルロゴもあるんだ。」
ttp://wctts.hp.infoseek.co.jp/1-59-2/images/uzhseuwl10324710.gif
2通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 20:50:10 ID:???
>>1

スレッドあるんだが

種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-06
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1167094107/
3:2007/01/25(木) 20:53:55 ID:???
シクジッタ(汗

一回ブラウザのログ消してから読み直したら普通に読めたわ。
ちと削除依頼出してくる
4通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 23:27:46 ID:???
うっかりさんw
5通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 17:05:36 ID:???
うーん、今週SS投下されれば結構レスつくからそう遠くないうちに次スレ行きそうだが
使えるか?ココ?スレタイは普通で問題無いし
6通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 18:23:08 ID:???
まとめサイトの一つが使えなくなってるがな
7通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 08:46:39 ID:???
どうせなら次スレに使おう保守
8通常の名無しさんの3倍:2007/02/02(金) 00:59:10 ID:???
再利用のため保守
9通常の名無しさんの3倍:2007/02/02(金) 21:06:52 ID:???
ヒイロが気持ち悪いくらいはしゃいでいた。


ttp://www.youtube.com/watch?v=lVDXqPxar90


イサキが大漁だったらしい・・・
10通常の名無しさんの3倍:2007/02/06(火) 00:48:46 ID:???
保守
11通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 18:33:21 ID:???
そろそろこちらに移行か…?
12通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 01:51:26 ID:???
>>9
なんだこりゃwwwwww
13通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 08:51:19 ID:???
>>9
これ、モデリングデータすごいな
14通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 12:33:49 ID:???
>>9
ヒイロがここまではっちゃけるようになるとは―――
彼にとっては、このまま村で暮らしていたほうが幸せなのかもしれないな。
15通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 13:00:41 ID:???
>>9
モーション付けうま杉ww
16通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 00:13:59 ID:???
そうか、今週もW-DESTINYは投下されなかったか…待ってるぜ旦那!
17W-DESTINY ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/11(日) 07:32:45 ID:???
仕事で新しい作業が増えたから忙しい上に、頭がSS書きモードに切り替わらない。
なんかSS書いてると仕事のことを考え出して……
今の仕事が落ち着くのが3月末までなので、それまでは投下が厳しい状況です。
慣れなかったりで、下手したら伸びるかもしれないけど。

ただ28話はあと少しで完成だから、それだけでも出来たら投下しようと思います。
18通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 08:31:13 ID:???
生きてたーーー!!!!
お待ちしておりましたよ!!!!!
良いですよ良いですよ、いつまでも待ってますよ!!
19通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 08:37:07 ID:???
>>17
神登場!?
仕事キツいみたいっすね…体を壊さぬようお気をつけて。
20通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 10:01:22 ID:???
>>17
生きててヨカターヨ・゚・(ノД`)・゚・
無理せずマイペースですすめてください。
21通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 10:39:10 ID:???
>>17
良かった、もう来てくれないのかと思って…・ウゥッ゚・(ノД`)・゚・
気長に待ってますんで、仕事も執筆もW-DESTINY氏のペースで頑張ってください!
22通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 11:09:25 ID:???
W-DESTINY氏乙です

そういう事情とあらばいくらでも待ちますのでご無理なさらぬようry
23通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 16:31:57 ID:???
待ってれば続きが読める…こんなに嬉しい事はない…!!

ちうかどこも年度末で大変なんだなぁ。
体壊さんように気をつけてくりゃれーノシ
24通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 18:17:37 ID:???
よかった…
神は我々を見捨ていなかった…
25通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 18:50:15 ID:???
年度末に向けて新しい作業とか増やすのはどこも一緒だね。
大丈夫、待ちますからお体に気をつけて下さい。
26通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 23:08:47 ID:???
おぉ、W-DESTINY氏がお帰りになられたのか。

正月頃の一挙放送に触発され、前スレぐらいから何か書きたいな〜
と、思って色々考えてたんだけど、まだやっと設定が固まったぐらいだし、
W-DESTINY氏が復活するなら、別に急がないでも良いかなー。
27通常の名無しさんの3倍:2007/02/12(月) 00:07:34 ID:???
>>26
ここに神のたまごが。
28通常の名無しさんの3倍:2007/02/12(月) 02:32:30 ID:???
>>26
それは違う!急ぐべきなんだよそこは!
書きたいと思ったときが書き時なんだ!逃せば書きの神は去って行く!!

というのは冗談として、wktkして待ってるので是非よろしくw
29通常の名無しさんの3倍:2007/02/12(月) 08:02:35 ID:???
>>26
急がなくていいから書けたら読ませてw
3026:2007/02/12(月) 11:53:45 ID:???
いや、見切り発車で始めちゃうと、途中で詰まってそのまま停滞……
なんてこともあるだろうし、やっぱり書くからには、W-DESTINY氏みたく
予め最終話のプロットも出来てるぐらいが良いのかな〜って思ってたり。

それに、種ではなく種死世界にする予定だからW-DESTINY氏とネタとかキャラが
被らないように努力するのが結構辛いw
31通常の名無しさんの3倍:2007/02/12(月) 12:18:25 ID:???
>>30
そういえば昨日完結した某断罪ヘイトもオチまで考えてあったと言ってたな
32通常の名無しさんの3倍:2007/02/12(月) 16:41:13 ID:???
>>26
正直な所、個人的にキャラが被るのは構わないと思うよ。
結局の所、話の展開が被らなきゃ良いのさ。何処まで自分のオリジナリティを出せるかと言う方が問題さ。

W-D氏おかえりをお待ちしております。この先のクライマックスがどうなるのかワクワクするよ。

endlessdestiny氏はその独自の雰囲気によるストーリーテリングが良いですな。キャラの苦悩を伴う成長を見せて下さい。
3326:2007/02/13(火) 16:46:28 ID:???
前スレでちょっと出てるからここで改めて質問するけど、
SSにG-UNITのキャラって出していい?
一応、主要キャラとして大活躍の予定なんだけど……

後、TV版でガンダムチームを支援していたハワードが、
最終的にどうなったのか知ってる人がいたら教えてください。
wikiで調べても載ってなくて……TV版生存、漫画版死亡で良いのかな?
34通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 20:08:51 ID:???
>>33
G−UNITだとー!


お願いします、出してやってください。
ハワードはそれでおk。
35通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 20:56:13 ID:???
>>33
wktkして待ってます
36通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 21:22:39 ID:???
それは職人さん次第だ。
37通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 22:36:13 ID:???
>>33
G-UNITキャラ………
ブルム・ブロックスを活躍させることが
出来ればアナタは本当の神だ。
38通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 22:44:33 ID:???
さて新作に向けて予習しとくか

という事でG−UNITについて詳しく乗っけてるとこってない?
え?自分でググれ?こりゃまた失礼しました〜♪
39通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 22:48:08 ID:???
コミックジャパンを持ってたら神。
4026:2007/02/13(火) 23:21:29 ID:???
>>37
ロ、ロッシェ・ナトゥーノじゃダメですか。

いや、ブルムも搭乗機のレオンも大好きなんだけど、如何せん死んじゃったからなぁ。
う〜ん、どうしようかな、ブルムか……(クラーツは別にいいよねぇw
41通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 23:22:54 ID:???
>という事でG−UNITについて詳しく乗っけてるとこってない?

単行本買おうぜ
安いし
42通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 00:50:39 ID:???
1000:通常の名無しさんの3倍 :2007/02/13(火) 20:42:49 ID:??? [sage]
千ならグリープ最強


Gユニット人気だな
43通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 07:27:37 ID:???
昨日から今日の未明にかけて血のバレンタインがあった訳なんだが、某スレみたいにならないように俺達も少し考えてみないか?
些細な事でスレが終わってしまう事があるかも知れないぞ。
44通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 08:26:25 ID:???
>>41
いや、その単行本自体見つからないかと。

そもそもwikiで見た限り、単行本ですべてコンプリートできるわけでもないらしいし、
45通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 09:11:10 ID:???
連載時のボンボンを未だ保管してある俺勝ち組
スキャン出来ないのが実に残念だ
46通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 11:55:06 ID:???
G-UNITはアストレイと絡めるといいよ。機体設定とか本編と全然別物だし。外伝同士で絡んでるSSもかつて無いから斬新でいいかもしんない
47通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 12:32:48 ID:???
4826:2007/02/14(水) 14:49:26 ID:???
>>45
私も連載時ボンボン全部と、後はコミックスだね。
ときたがボンボンに来た当初から保管されてるから、ときたには困らないw

>>46
すまん、アストレイほとんどわからないんだ。
ゲームぐらいでしか、触れたことがない。

ただ考えてたんだけど、グリープとかだそうにも強すぎるんだよね。
ゼロとか、エピオンじゃ話にならないほど出力とかあるはずだし。
49通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 16:34:26 ID:???
個人的にはTVはTV同士、外伝は外伝同士の方が分かりやすいな。ぶっちゃけG-UNITとか分からんし…。アストレイもなんかGガンに次ぐような凄い奴いるらしいし
50通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 16:49:30 ID:???
>>48
設定のわりにたいして強くない気がするグリープ


ツインバスターかサテキャクラスの武装でもあれば納得できるんだが
51通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 16:50:20 ID:???
G-UNITは本編のW0やエピオンより強いっぽい明らかにオーバーテクノロジーな機体とか出てくるしな
ハイドラとかグリープとか…

アストレイも明らかにストフリより強い機体出てくるし
スーパーハイペリオンとかテスタメントとか…

そう見ると外伝同士類似点が多いな
52通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 16:52:44 ID:???
>>50
バスターメガ粒子砲ってツインバスターライフル並の威力じゃなかったか?
53通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 17:05:15 ID:???
グリープは最高で24km/sっていうおかしい速度も出るしMSCSも付いてるしゼロより強いと思うけど
こんな性能差があったらゼロシステムだって多分諦めるだろ
54通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 17:29:09 ID:???
ときた独自の設定は真に受けない方が良いと思う
話題に上がってるスペックの問題もそうだけど
ミノ粉ばら撒かれてるUC世界じゃないんだからバスター"メガ粒子砲"ってのはダメだろ
55通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 17:34:51 ID:???
だから同じときた同士外伝は外伝でやれと(ry
5626:2007/02/14(水) 17:40:09 ID:???
>>52
最終決戦時にいきなり追加装備された、ハイパーメガ粒子ランチャーは、
ピースミリオン級戦艦(と思われる)グランシャリオを一発で撃沈したけど、
バスターメガ粒子砲はメリクリウス・シュイヴァンのプラナイトDに、完全に
防がれてたから、そんなに強くないかと。
57通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 17:48:48 ID:???
ときたの考えるMSはいつも本編のMSより強いな

グリープにしろスーパーハイペリオンにしろテスタメントにしろ
今回のデルタアストレイは珍しくそんなに強くなかったのが逆に驚きだ
58通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 18:04:26 ID:???
>>48
あの時点じゃ出力設定なかったんだから当然だ。
59通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 20:04:46 ID:???
>>57
所詮、アストレイってことじゃね
60通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 20:09:01 ID:???
コミックジャパンのG−UNITが続いてたら展開いっしょだったのかな?
というか換装パターンがもっと欲しかった。
61通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 20:17:09 ID:???
まあ所詮たかがマイナーな外伝だした、いして人に知られないんだから厨設定決めたってと゛うでもいいだろ?って感じじゃないの?
62通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 20:20:01 ID:???
関係無いがジージェネであんまり強くなかったからそんな性能高いとはしらなかった
ゲームでもその程度の認識か…
6326:2007/02/14(水) 20:49:07 ID:???
一応、基本的なプロットは全話分組み上がりつつある。
前にも書いたとおり、アストレイは知らないので無理だけど、
ブルムはなんとか出せるかも知れない。
64通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 20:50:56 ID:???
>>62
∀があの弱さだから仕方ない
65通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 23:19:47 ID:???
俺もジージェネでしかしらないからそこまで大それた設定とは知らなかった

作ったが微妙な性能だからがっかりして速攻バラしたけど
66通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 23:58:26 ID:???
知ってる噂を二つ。ホントかどうかは知らんがね
1.ウイングゼロとグリープは同等の機体だと時田がブログだかコミックの後書きだかで語ったとか
2.Gジェネでヒゲが弱いのは製作者がヒゲ嫌いだからとか
67通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 23:59:48 ID:???
G-UNITの機体ってときたが考えたの?
68通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 02:05:14 ID:???
ハイドラがエピオンに対抗するためのMS
それと互角なグリープだからな
69通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 02:23:51 ID:???
>>53
そこで、ZEROが5人のGの科学者達に頼むんですよ!

エラーコード:E203 必要な部品が不足しています。
エラー解決の為の部品"PXS"を含むシステムを組み込んで下さい。




すみません、NANOHAスレに帰ります。。。
70通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 02:31:17 ID:3oJp9war
>>67
G-UNITはガンダムWの公式外伝。
話の筋はどうか知らんが、設定等は作者は関系なく、
用意されたものです。
71通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 06:24:12 ID:???
アストレイも設定考えてるのはときたじゃないでしょ。
72通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 07:39:24 ID:???
 気づいた時にはそこは自分が見知った戦場ではなかった。砂時計がいくつも浮かび、静かな宇宙に彼はいた。
 自分がいた戦場には、リーブラと呼ばれ宇宙要塞、そしてピースミリオンと呼ばれる巨大宇宙戦艦、資源衛星MO-IIがあった。
 そして何より仲間が存在した。
 俺は地球に降下するリーブラをゼロで撃破することを試み、これの撃破に成功し、それから視界が晴れて――そこから先の記憶が全く無い。
 ゼロを地球の手ごろな場所に隠すとまずは情報収集を始めた。何故か? この世界では、OZはおろか連合という組織さえ存在しないのだ。
 似たような組織ならばある、地球連合軍。しかし、中身は全く違う。それから一ヶ月が過ぎ、いい加減この世界に必要な地域を蓄えてきたところで――ある情報が一部の者達を震撼させた。
 それはたまたま、もはや日課となっている情報収集の際に手に入れた情報。
「ユニウス・セブンが安定軌道上を外れ、地球に向かって進路を取っている」
 この世界にも、コロニーは存在した。まるで砂時計のようなコロニー。その集合国家。プラント。”前大戦では、連合の一部の者達の強行により核攻撃をユニウス・セブンに受けた。後のバレンタインである。
 そして、プラント、いやザフトはその報復としてニュートロンジャマーを世界中にばら撒いた。死者は10億人を越すとも言われ、後のエイプリルフール・クライシスである。
 その後、開戦。とまぁ、先ほど話に出ていたユニウス・セブンが進路を変更しているのだ。少なくともこんな短期間では絶対に安定軌道上からは外れないはずなのに。
「だが、俺には何も出来ない……他世界のものである俺が……干渉してはならない……」
 もう、元の世界に戻れないのだから、いっそどうにでもなれ――半ばそんな気持ちにヒイロは陥っていた。
 そんな気持ちのヒイロのところに来客が。
「お邪魔するよ。あんた、最近こしてきたんだって?何だか陰気な顔してるねぇ……」
 隣家の17,8頃の若者だった。家に入り込んで勝手に椅子に座ってヒイロを見上げる。
「帰れ。勝手に家の中を――」
「嫌なこった。そんな死にそうな顔してる奴を放って置けるか。お前、悩んでるだろ。悩んでるときには、空を見上げてみるといいぜ」
「空……?」
「そう、空さ。空を見てると、自分はものすごくちっぽけな存在に思えてきて、逆に清清しい気分になっちまう」
 大げさに天井を見上げて伸びをした若者は、席を立って振り返り、
「じゃあな、俺は忙しいんだよ。お前みたいな奴いちいち気にかけてらんねぇ」
 勝手に入り込んできて、それは無いと思うヒイロ。若者は振り返って、
「参考になったかい? 少なくとも、さっきまでよりはいい顔してるぜ、あんた」
「……ああ、参考になった。あり、がとう……」
「どういたしまして。じゃあな」
「……ああ」
 若者が出て行く。空を見上げる、か。忙しくてそんなこと、全然しなかったな。
 家を出て空を見上げる。そして、この町を見渡す。考えてみれば皆心優しい人たちばかりだった。それが、脅威にさらされている。
「確かに戦争には干渉してはならない……だが、少なくともアレを止めることは出来るはずだ……」
 ヒイロは自ずと足を自分の愛機の眠る場所に向かって進める。

 ヒイロは知らないが、ヒイロが現れたと同時に、五つの発光物体が宇宙・プラント・地球に出現していた。
 それが自分の仲間たちであり――そのうちの一人は強敵手であることを彼はまだ知らない。

とりあえず一話の一部分を投稿。まだ構想段階にあるものを無理やり書いたから変な物になっちゃった…ヒイロとか台詞が難しい。
でも俺は後悔してない。
7326:2007/02/15(木) 14:47:21 ID:???
>>72
これタイトルとか決まってるの〜?
ヒイロが主役クラスって、このスレではないから結構新鮮。
74通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 19:46:03 ID:???
ぶっちゃけゼロ強すぎだからじゃね
例えばXはサテキャなければそこそこ強いMSでしかないし、サテキャも制限がわかりやすいから種世界でも負ける姿を想像しやすいが
Wは機体、パイロット、共に圧倒的過ぎる差があるから負ける姿が何一つ想像出来ない
75通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 20:00:15 ID:???
>>74
まあ博士達が「僕達の考えた最強のガンダムだじょー!」
ってなノリでできたガンダムだし



問題はそれを実現させてしまったとこだが
76通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 20:03:43 ID:???
>>75
まあ、5博士だからしかたがない。
しかし、このうえハワードいたらゼロはどうなっちまったんだろうか。
77通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 20:28:51 ID:???
WのGパイロット達て一騎当千と思われがちだが敵の物量作戦にはけっこう苦戦してるぞ
量産機10000機くらい投入すれば勝てるんでない
78通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 21:18:04 ID:???
量産機10000機投入して勝てないのは
月光蝶全開の∀&ターンXか気合全開のゴッド&マスターか嫁補正全開の和田くらいしかいないと思うぞ。
79通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 21:29:05 ID:???
キラ+和田+ミーティアは単機でメサイア防衛部隊を全滅させちゃったからなあ。
80通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 21:29:13 ID:???
ローリングバスターライフルを連発すればW0でもなんとかなる…と思う
8172:2007/02/15(木) 21:43:08 ID:???
一応Destiny Waltz(無難に)。
ヒイロが主役…かどうかは微妙なところだけど、当面はその方針になるやもしれん。
短いけどトロワパート。批評があったら何なりと、それは作者への餌にもなります。

「トロワ、今日も助かったよ! 給料は振り込んどくがいいか?」
 プラントの一角、都市街のサーカス団に彼――
 トロワ・バードンは属していた。今は一仕事終えて、テントの裏に椅子を並べて休んでいる。
「ああ、それで頼む。ところでなにやら町が騒がしいが……」
 トロワが尋ねると、サーカスの団長は怪訝そうな顔を浮かべて、何かを思い出したように話した。
「確かユニウス・セブンが安定軌道上から外れたとか言う噂話が出回っていた気が……」
 驚いたような表情を浮かべながら、自分の持っている情報が正しいということが分かり、内心ほっと溜め息をついた。
「本当か? それは大変だな。では、俺はここで失敬する」
「おう、今度もよろしく頼むよ」
 そういって、団長はサーカスのテントのほうに戻っていった。
 自分の喋り方まで変えたのには、理由があった。
 無口で、なにかあっても事務的な話方をしていればさすがに変な風に見られるからだった。
「しかし――情報通り、か。」
 リーブラが消滅したと同時に、視界がブラックアウトし、気づいたときにはこの世界にいたのだ。
 まさか自分と同じようにこの世界に飛ばされた者がいるなどとは思いもよらず、このサーカス団で働かせてもらっている。
 プラントの警備隊が丁度目を話したその瞬間にトロワはこの世界に来たのだ。その後、ヘビーアームズを手頃な場所に隠し、情報を集めている。
 この世界のMSの技術力は元居た世界のそれよりも格段に低い。
 当初はコレの所持者だといって、ザフトに入隊しようとも思ったが、その気も失せた。
「ユニウス・セブンは地球に直撃する。そして、世界は混迷の一途をたどる、か……予想が正しければ手を加えたものはコーディネーター。そこまで来れば……」
 トロワは直接ヘビーアームズで破砕作業の手伝いをしたい気持ちに駆られたが、それをするほど勇敢でもなければ無謀でもなかった。
 ふと、元居た世界にいる友人のことを思う。彼ならば、恐らく手伝っていただろう。それにより被害が減るのならば――
「カトル、お前はどうしている……?」
 一人呟くと、自分の寝床にしている場所に向かって足を進めた。
82通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 21:55:39 ID:???
W0以外、量産期がW世界基準となるが。
ガンダムの可能撃破数は意外と少ない。最大で50機程と考えられる。
それは強襲や奇襲がメインであるガンダムが殲滅可能な基地が小・中規模に限られるからである。
Endless Waltzで「残り約250機…一人50機の計算だ」という台詞があり
サーペントを約半分ほど撃墜した時点で戦闘不能となる。
不殺をしない場合では50機までの撃破可能と考えられる。
この考察では弾薬、エネルギーだけであり機体の反応速度や剛性は含まれていない。
種世界でも、一機あたりにかける弾薬及びエネルギーは変わらないものと思われる。
ガンダムは決して一騎当千の存在ではない。
そう見えるのは巧みな演出のためである。
どんなもんでしょ?
種世界では機体を早々破壊されることはないだろうけど、戦闘可能時間は変わらないと思う。
83通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 22:07:29 ID:???
GJ!出張日記のトロワが消えて行くぜ。
まださわりだから何とも言えんが面白そうだ。

>>82
雑談に夢中も良いが作品が投下されたら感想はつけようぜ?第2の添い遂げるスレにしたいのか?
84通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 22:12:33 ID:???
>>72氏GJ!
トロワはサーカスでは三回転半ひねりやってんのかな?
8582:2007/02/15(木) 22:16:24 ID:???
>>83
スマソ。更新したら投下されていてたorz

>>72
新連載&更新GJ!
新しい職人様応援しておりますよ〜!
頑張ってくだされ!
86通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 00:48:49 ID:???
新しい職人さんktkr!お疲れ様であります。

このスレ見てると家庭用連座2でWが暴れてる姿を想像してしまうから困る。
87通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 01:26:19 ID:???
Wの機体を連ザ風のコストに当てはめたら凄まじい事になりそうだなー

ゼロやエピオンとかコスト1000とか
88通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 01:44:26 ID:???
ただし二機ともデストロイ並のHPの上にビームライフルが核並の威力ですがよろしいか
89通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 01:55:52 ID:???
あと、ブースト最速・最長とかなー

小ビーム・マシンガン類無効とかは…無いよなぁ、さすがに
90通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 07:07:49 ID:???
ゲーム厨は住みかに戻ろうぜ?
91通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 08:42:46 ID:???
>>86-89
連ザとか、持ってない俺には分からん話題だぜ?
92通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 12:34:22 ID:???
エンドレスデュエルを発売日に買った俺が来ましたよ?
93通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 17:25:08 ID:???
ヘビーアームズが砲身で殴りかかって来るアレか
94通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 19:57:13 ID:???
>>83
そんなこと言ってるとスネ夫が来るだろーが!






俺は大歓迎だがな!
95通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 20:03:32 ID:???
>>92
エピオンが全身からエネルギー弾を発射するゲームですね?
96通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 20:37:11 ID:???
>>92
サンドロックがショテルブーメランするゲームでしたっけ?
97通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 20:47:47 ID:???
プラネットディフェンサーを投げつけて連続ヒットさせるゲームだよ
98通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 20:51:09 ID:???
ちがいます。
ヴァイエイトが「長い砲身にはこういう使い方もあるんだっ!!」って棍棒がわりに使うゲームです。
99通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 20:51:48 ID:???
ヴァイエイトが膝蹴りかますゲームですよ。
100通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 21:16:49 ID:???
デスサイズの無限コンボはやめましょう!
喧嘩の元です。
101endless destiny ◆26fvVAiDE. :2007/02/16(金) 21:25:15 ID:???
仕事が忙しくなって来たので今月は投下は無理そうです。申し訳ありません。

新職人様GJです。トロワのサーカス、良いですね。お互いに頑張りましょう。

10272:2007/02/16(金) 21:43:20 ID:???
>>101
いやはや、何て言えばいいのか…とりあえず、どうもです。無理をなさらないように。

そして、いやはや、幾多の感想のお言葉、感謝感激です。
ということで早速投稿。もちろん読みにくい点があれば何なりと。出来うる限り対処させていただきます。
しかし、ヒイロの言葉が少ないのはどうにも…。何か、想像出来ませぬ。

 自分の仲間が自分と同じジレンマに悩まされているのも露知らず、ヒイロは自らの愛機の下へと急いでいた。
 自分の犯すことが例えどれほど大それたことだろうと、この町の人々、この世界の人々が苦しく様を見たくはなかったのだ。
 いつの間にかに、この世界のことを好きになっていた。それなのに、気づかないようにしていた。気づきたくなかったのかもしれない。
 ここに来てまだ間もない頃、親身に助言をしてくれたり穴場のお店を教えてくれた23,4の若者。日用品を買いに行く時に笑顔でサービスし、少なからず世間話をした店主。
 腕は下手だが、時々家に新鮮な魚を持って一緒に食べたこともある釣りの好きな八百屋の店主。公園でぼーっとしていた自分に花をプレゼントしてくれた少女。
 精一杯に生きている彼らを、誰が苦しんでいる様を見て喜べるだろうか。
 向こうの世界の人々となんら変わらない。精一杯生きているのだ。
 そして、愛機の元へと走る彼の目の前で――ありえないことが起こった。地響きを立てて虚から出現した黒い巨人。
 元いた世界では搭乗者を要さない自立操縦の元動いていた殺戮兵器。

 「モビル・ドール」。そして――「ビルゴ」

「ビルゴが……何故……!?」
 ビルゴは森林の中央に堂々と立っていた。その眼光に光は無い。混乱するヒイロに、更なる追い討ちが待っていた。
 ヒイロを尻目にビルゴの眼光に光が点され、市街地の方へゆっくりと足を向ける。
 その時、ヒイロにはいつもは平然と撃破していたビルゴが――酷く巨大な悪魔に見えた。
 愛機の下へと全速力で駆ける。しかし少なくとも後二分は掛かる。起動に二分――ロックを厳重にしているせいだ――。その間にはビルゴは市街地に辿り着いてしまう。
 何をするかは解らないが、たとえ自重が軽くとも、あんな物が市街地に出て歩き回れば住人の顔色は恐怖色に染まる。
 もし、最悪の場合は――考えた瞬間、ヒイロは何か冷たい刃物のような物が首筋に当てられた気がした。
 巧妙にカモフラージュされた愛機を見つけ、コックピットのロックを外す。キーを打ち込み、それを認証してまた入力。ロックが外れると同時に、コックピットに滑り込み起動。
 姿勢を制御して無理やり機体を起こすと、市街地の方角を視界に納めた。

 ビルゴの足は遅く、今まさに市街地の方へと踏み入らんというところだった。ほっとして、機体を操作しビルゴの方に機体を向けようとして――目を疑った。
「馬鹿な……ッ!」
 なんともまぁ、ビルゴが転倒したのだ。気づいたときには機体を走らせていた。
 ビルゴは乱暴に起き上がると、今度は走り始めた。市街地の端の方に辿り着いて、何かを思い出したかのようにビームキャノンを構え――森林部に上体部を突っ込ませた。
 ウイングガンダムゼロが飛び蹴りをしたのだ。ビルゴは起き上がり、さしてダメージが無いかのように振舞い再びビームキャノンを構えた。
 ヒイロは全てを瞬時に分析し、ビームサーベルを抜くと機体を走らせた。ビームキャノンが発射される。その時は上空に。上空から一直線に降下してコックピットめがけて一刺し。
 ビルゴは糸の切れた操り人形のように膝を突いた。ほっとして外状況に目を走らせる。この世界に来た時から答えてはくれないゼロシステムを除けば、無傷だった。
「損害ゼロ。久々の戦闘に、して、は………………」
 ヒイロの言葉はそこで途切れた。目は見開かれ、口は開きっぱなしだった。
 目の前には――ビームキャノンが抉った町の傷跡だけがあった。
103通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 00:59:47 ID:???
ガンダム無双では東方不敗の弟子になるようだし、
いっそドモン並とは言わんがアレンビー並の身体能力と流派東方不敗にふさわしい暑さを持ったスーパーテロリストとして登場させてみるのも……
正直想像できんな
104通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 01:03:54 ID:???
ヒイロよりはごひのほうがいい
どっちにしろ想像できんが
105通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 06:18:17 ID:???
>>102
GJ!平和→戦争の混乱がよく分かって良いです。
出来れば、コメントと作品を分けて投下して貰えると読みやすくていいです。

>>103-104
お前ら消えろ。ゲーム厨は巣に帰れ。
106通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 06:42:21 ID:???
2chを勘違いしておるな
107通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 07:02:02 ID:???
無理が通れば道理が引っ込む。いやなら道理を通して見せろ
10872:2007/02/17(土) 12:42:03 ID:???
質問なんですがウイングゼロが単機で大気圏を離脱するシーンって存在しましたっけ?
記憶力が悪くて覚えていなくて…
109通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 13:00:15 ID:???
>>108
72氏>
単機での大気圏離脱シーンはありませんね。
宇宙に上がる際はHLVを使っていました。
テレビ最終回ではバード形体で大気圏から戻ってきたので
もしかした自力での大気圏突破も可能なのかもしれません。
燃料(推進剤)のことを考えてヒイロはHLVを選択していたのではないでしょうか。
11072:2007/02/17(土) 13:33:24 ID:???
お早い返信、どうもです。分かりました。そこんとこそれなりに工夫して頑張ってみます。
11172:2007/02/17(土) 13:40:53 ID:???
 何時までそうしていただろうか。ほんの一瞬が一分になり、やがて一時間、やがて一日と――
 ほとんど無意識のうちに膝をつかせてコックピットから飛び降り、素早く市街地に駆け込んだ。
 ちょうど、町の人々が集まっていた。辺りには人であったものや腕らしき物が四散していた。
 被爆現場にいた子供たちは泣き叫び、大人達はビームキャノンがえぐった場所を見つめて打ち震えていた。
「ヒイロ! 無事だったのか!」
 23,4の若者だ。ヒイロは彼にこの町についてまだ間もない頃世話になった。
「アイツがお前を見てないって言ってさ、お前の家に行こうとしてさ……あの光の巻き添えに……でも、お前が無事でよかったよ」
「な、に……?」
 ヒイロには最初どういう意味か分からなかった。
 だが、意味を理解した瞬間、ヒイロの中で何かが音を立てて崩れた気がした。
 彼の言うアイツとは、自分にこの世界がどういうものかを気づかせてくれた人物であり――彼の弟でもあった。
 いつも家の仲で遠目から眺めていた。街の子供たちと公園で駆けている姿を見ると、本当に二十歳を超えているのかどうか疑いたくなる兄に、面倒見がよく弟。
 そんな…馬鹿なことがあってたまるか。自分がもっと早く動いていれば――
「アイツ、本当にこの街が好きでさぁ、俺はここで永住だ! なんて言っててさ……それを……それを……あの黒いのは、悪魔かなんかなのかなぁ……」
 ようやく町の人々が正気に戻って、救助活動を始めていた。残骸に埋められた人々もいる。
「兄さんって呼んでくれてさ……畜生……」
 ヒイロはそっと離れた。自分がこの場にいてはいけない気がしたのだ。
 ゼロの下まで戻ると、機体を起動させて、ビルゴの残骸を抱えて機体を飛び立たせた。
 一刻も早くここ離れたかった。

 街から離れた海の上で、ゼロは佇んでいた。
 何時までそうしていたであろうか、ゼロは唐突に広大な海の上空から、ビルゴを手放すと同時に海へと降下していった。
 どうすればいいかわからなかった。あの声さえ聞こえなければ、このまま海に直面していたであろう。

 自分の名を呼ぶ声。少女の、呼ぶ声。

 ヒイロはとっさに瞑っていた目を見開き機体を急上昇させた。冷静になって、状況を分析する。
「ゼロを宇宙に上げたからといって、燃料の方の危険性もある……しかし、危険な賭けだが、やるしかない」
 ヒイロは機体をネオバード形態に変形させると、いまだ地球への落下コースを辿るユニウス・セブンに向けて発進させた。
 失敗する要因は多い。だが、今のヒイロにはそんなことどうでもよかった。
 地球への落下コースを辿るユニウス・セブンを消滅させることが出来るのならば。

 それを、離れたオーブ近海の島で見ていたキラは、思わず目を疑った。
 まるで鳥のような機体が宇宙(そら)に向かって飛んでいるように見えたのだ。
 しかし、それも一瞬。すぐに視界から消え失せてしまい、キラは疲れているのかな、と思った。
「どうかしましたか、キラ?」
 そんな様子を怪訝に思い、声を発した女性。
 キラは、我に返ったように、
「え? あ、ああ。気のせいかな、鳥が、宇宙(そら)に向かって飛んでいるように見えてさ……」
「まぁ、本当ですか?」
 女性は空を見上げ、必死に遠くを見ようとしている。
 キラは、苦笑しつつも、気のせいかと割り切って再び空を見上げた。
112通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 18:41:42 ID:???
>>111
GJ

敢えて我が儘を言うと投下の際はもっと文章量があると嬉しいです。
113通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 18:46:53 ID:???
GJ
どっちかっつーと量はこのままでもいいから
最後に「続く」とか入れて欲しい
レスしていいかどうか悩む
114通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 18:52:22 ID:???
GJ!
投下の分量は職人さんのお好きな様にして下さい。ワガママは言いません。
ただ、鳥なりタイトルを入れて貰えると嬉しいですね。
投下終了が分かるようにしてくれるともっと嬉しいです。
115通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 18:54:21 ID:???
GJだぜ!
あとはタイトルだな。
116Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/17(土) 19:58:11 ID:???
なるほど…文章量ですか…出来うる限り善処いたします。
なにぶん、書きながらですので投下がばらばらになってしまって…今後は、まとめてから投稿、といった形式にいたします。
トリップはこんな感じでしょうかね?
117通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 20:04:45 ID:???
>>116
おk

今後も楽しみにしていますノシ
118通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 20:05:10 ID:???
鳥はOK、出来れば話数もつけてくれたら嬉しいですね。
分量については気にしないで下さい。職人さんのスタイルがあるでしょうし。
119Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/17(土) 20:36:49 ID:???
分かりました。文章の途中にタイトルと話数を挟み込む形式でよろしいでしょうか?
120通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 20:38:52 ID:???
>>119
それで最後に「続く」って入れてくれればおk
楽しみにしてるぉw
121通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 20:45:46 ID:???
エンドレスデュエルの技で戦ったら神。
122Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/17(土) 20:55:48 ID:???
>>120了解しました。
123通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 21:12:15 ID:???
Endless Duel
ttp://www.youtube.com/watch?v=yKL2FfTFKgc
ttp://www.youtube.com/watch?v=rzj180C-R3o
MSが投げ技、エピオンがサマーソルトキックをwww
倒れた相手にも攻撃できるとは容赦ないゲームだ。
124通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 21:16:14 ID:???
>>123
懐かしいな…ってこれどうみてもガンダムファイトww
125W-DESTINY 28話 1/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 00:54:59 ID:???
「シン……アスカ?」
ステラは、目の前のMSのパイロットが名乗った名を口にする。すると自然に胸元に手が行っていた。
「え?……シン?」
パイロットスーツの下にあるペンダントから温もりが広がる。何かを思い出そうとしていると、マユの
声が入ってきた。
「このぉぉ! よくもノコノコと!」
そして、同時にデストロイの腕が飛んできて、目の前のMSは、それを避けるためにガイアの腕を放し、
距離を取った。
「あれがデストロイか……聞いてはいたけどホントにデカイな」
シンは腕を避けると、半端な覚悟では勝てないと気を引き締め、呼吸を整える。
「やってやる。制御してみせる!」
そう叫ぶと、あの時の感覚を引き出す。ルナやレイ、大切な者を失いたくない気持が起こす集中力。
リハビリと平行して、何時でも引き出せるように、同時に正気を保てるように訓練してきた。
そして、シンの中で何かが弾けた。その途端に熱と頭痛、そして狂気と呼べる感情が流れ込んでくる。
「くっ!……ふぅ〜……やはり、あの中に居るのか、マユ」
シンは、それが流れてくる方向、デストロイに再び視線を移す。だが、プラントでの訓練と違い、マユが
近くにいると感情の流れが強い。マユから流れてくる感情は相変わらず苦しみに満ちていて、シンを
狂気へと誘おうとしてくる。その激しい誘惑に耐えかねていると、傷付いたインパルスからルナの声が
聞こえてきた。
「シンなの?」
「ルナ?」
ルナの無事な声に安堵し、狂気が和らぐ。ステラがルナを殺すという最悪の事態を回避できた事に喜びを
感じ、ルナに離脱を促す。
「ルナ、その状態じゃ戦闘は無理だ。コアスプレンダーで戻れ」
「でも……」
「大丈夫。絶対に後ろから墜とされたりさせないから」
「えっと、そうじゃなくて……」
「急いで、ここは危険だ」
「……うん」
ルナは、助けてくれた事への感謝や再会の喜びを伝えたかったが、目の前にガイアが、ステラが居ると
思うと、何だか邪魔者のような気分になり、上手く言葉に表せなかった。
「気を付けてね」
「ああ、それと助かった。ありがとう」
「え?」
助けられたのは自分なのに、逆に感謝されて戸惑ってしまう。しかし、すでに離脱の準備を開始している
ため、聞き返すことも出来ずにその場を立ち去るしかなかった。
126W-DESTINY 28話 2/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 00:56:00 ID:???
「さてと……これなら何とかなる」
シンはルナの声が聞こえた時から狂気が和らぎ、あの力を自在に使えそうだとルナに感謝していた。
そして戦況を分析する。すぐ側にはステラが居る。ガイアを戦闘不能にして中のステラを連れ出すのは
容易だったが、問題はマユのデストロイだ。ゼクスとレイの2人と対峙しながら、その意識をこちらに、
シンと、それ以上にステラの方に向けている。
「そんな事、黙って見逃してくれないよな」
シンはマユから流れてくる感情の中から、僅かに温もりも感じていた。
「そんなにステラが大事なんだな」
自分がルナの声で正気を保てたように、マユもステラ達との出会いで狂気から抜け出したのだろう。
そんな、マユのステラに対する想いを感じ取り、マユの目の前でステラの捕獲は困難だと知る。
「だったら……」
シンは一足飛びにガイアの懐に入ると、ガイアの右肘を掴む。
「ステラ、ゴメン! 戦場を離脱してくれ!」
そう言って、そのままパルマフィオキーナを発射すると、ガイアの右腕を破壊する。
「え?」
ステラは優しい声が聞こえたと思ったら、腕を破壊されて恐怖する。
「これで戦闘の続行は無理だ! 下がってくれ!」
だが、続けて下がれと言ってくる声は優しく温かかった。何処かで聞いたことのある声。
それに事実、片腕で無理に戦うべきでも無かった。
何処で聞いたかを懸命に思い出そうとしながら、何故か敵に返事をして撤退する。
「う、うん……」
撤退を始めるガイアを見ながら、これでステラが殺す事も殺される事も無くなったと安堵する。
所詮は問題の先送りだが、物事には優先順位があった。ここで無理にステラを救出しようとしても、
マユに阻まれるだろうし、放ってくのは彼女自身も、また味方のザフト兵も危険だった。
そしてデストロイに集中する。まずはマユから抑えるために。その時、ガイアを傷つけた事に激怒
したマユが攻撃を開始してきた。
「よくも! よくもぉ!」
「隊長、レイ、ここは俺が引き受ける!」
デスティニーの翼を広げ上昇すると、デストロイから砲撃が飛んできた。
「シン、1人では」
「大丈夫だ!」
レイが援護を申し出るが、ここは1人でやるべきところだ。個人的な行為のためにも、デスティニーの
存在理由、象徴としての戦闘力を知らしめるためにも。
「マユ、悪いけど……そいつを破壊する!」
127W-DESTINY 28話 3/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 00:57:00 ID:???
「ふざけたこと言ってぇぇ!」
マユが怒りの声を上げながら、スーパースキュラを放つ。その太い光線がデスティニーを貫いた。
「―っ!……え?」
直撃したと思った瞬間、喜びと悲しみが入り混じった複雑な気持に支配される。だが、貫かれたはずの
デスティニーが消えると、すぐ隣に無傷のデスティニーが現れていた。
慌てて攻撃を再開するが、再び同じ現象が繰り返される。
「な、なんなの? そんな……残像!?」
残像を残しながら高速移動をする機体に戸惑うが、両腕をデスティニーの周りで旋回させ、ツォーンを
発射させる。
「これなら!」
デストロイの口部から放たれたビームは、旋回する腕に装備された陽電子リフレクターで反射され、
正面からの攻撃から、四方からの攻撃へと変化する。
「くっ!」
回避が間に合わないと判断したシンがビームシールドを展開させて攻撃を防ぐと、今度は掴みかからんと
指を広げ接近してくる。
「握り潰してやる!」
「させるか!」
シンは背中から細身の反りの無い片刃の長刀、アロンダイトを引き抜くと、両手に持って構える。
マユはその剣を見て嘲笑した。
「そんな細い剣で……まずは弾き飛ばしてやる!」
PS装甲の腕に陽電子リフレクターを展開させたまま、デスティニーにぶつけようとする。
この加速と重量なら、あんな細い剣は簡単に折れ、機体にもダメージを与えられると確信を持っていた。
「うぉぉぉぉぉ!」
だが、シンが気合と共に振り下ろした一閃でデストロイの腕が叩き潰されるように斬られる。
「え?」
破壊されるはずの無いものを壊され、マユは呆然とした声を上げた。
それは、すぐ側で見ていたゼクスとレイも同じだった。
「あれは……まさか?」
ゼクスは、その強度に心当たりがあった。そして、何故デストロイの対策が大丈夫なのか、誰があれを
デスティニーに取り付けたかを察した。
「04と同質の武器か?……それにしては」
加熱した様子は無いから、単純に強度で勝るガンダニュウム合金で叩き切ったのだろう。
「強引な武器だな。カトルらしくない」
ゼクスは反りの無い日本刀のような剣を見ながら率直な感想を呟いた。
128W-DESTINY 28話 4/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 00:57:59 ID:???
「隊長。アレは?」
「ビルゴの装甲で作った剣だろう。この世界の材質より遥かに丈夫な武器だ」
「あれか……PS装甲でも無理なのか」
レイの脳裏に、カオスとカラミティの攻撃に全く動じなかったビルゴの恐怖が蘇る。
「だが、あれでは……」
デストロイの巨体に目を移す。いくら強度があってもサイズから斬撃では効果的なダメージは与え辛い。
よって、コクピットか動力への刺突が望ましいが。
「それではパイロットが……シン、どうする気だ?」
もう1本の腕を破壊すると、シンはデストロイへと接近する。
「この! 消えろっ! 消えろぉぉ!」
マユは近づけさせまいと、ツォーンとスキュラを乱射するが、シンはビームシールドを展開させると、
真っ直ぐに突っ込んでくる。
「正面からだけならっ!」
デスティニーの正面にビームシールドを翳し、ビームの雨を防ぐとデストロイの懐に飛び込む。
「シン! お前、まさか!」
レイの目にはシンがデストロイを刺突するかに見えて、妹を殺す気かと慌てて止めようと考える。
だが、デスティニーはデストロイの足元に着地し、剣を振りかぶった。
「斬撃?」
レイはシンの行動の意味が分からず呆然とした。斬撃では効果的なダメージは与えられないはずだ。
「くそっ! こんな奴に!」
マユが怒りに任せて、デスティニーを踏み潰そうと足を上げる。がだ、その瞬間、デスティニーの持つ
剣が縦に開き、刃先に隙間が生まれた。
「リミッター解除!」
シンはデストロイが足を上げるより速く、アロンダイトの封印を解除する。
すると、開いた隙間から薄い緑色のビームが発生し、巨大な刃と化した。
「あの光!」
ゼクスが驚きの声を上げる。アロンダイトから生まれたビームの刃は、この世界の対艦刀が放つものとは
違う。この世界の剣の刃のように真っ直ぐでは無い。どこか荒々しく無骨な感じの乱れた薄い緑の光。
それは、ゼクスの良く知るMSが放つビームの刃に似ていた。
「04では無く、エピオンの剣と同タイプなのか!」
129W-DESTINY 28話 5/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 00:59:01 ID:???
ゼクスの言葉を肯定するように、アロンダイトから発生した光の刃は、その長さをデスティニーの2倍
以上の長さまで伸ばした。
「マユ! 怪我しないように気を付けろ!」
シンが、マユを気遣いながら横薙ぎに一閃させると、デストロイは両足の付け根から両断され、その巨体
が地面に仰向けに倒される。
「なっ?……」
地響きを立てて倒れたデストロイを見たザフト兵から、歓声が沸き起こる。
先程まで圧倒的な存在感を誇っていたデストロイの破壊はザフト軍の士気を上げ、同時に連合軍の士気を
激減させた。
元々、この戦闘はザフトが圧倒的に優勢だったのを、カオスとデストロイが何とか互角に持ち込んでいた
状態だった。しかし、両機が破壊された今、決着は付いたも同然だった。
そして士気の勢いが、すぐに戦闘に反映されると、各所で連合軍が押され始め戦線は崩壊し始めていた。
「終ったな……」
その様子を見ながらシンはデストロイに目を映す。四肢を破壊され身動きの出来なくなったデストロイは
先程までもがいていたが、すでに大人しくなっている。
戦局が決まった以上は、多少の我侭は許されている。以前のミネルバのパイロットの1人であれば、
ゼクスかタリアの許可が無い限りは、無理だったが、今はフェイスのため基本的に命令権があるのは
デュランダルだけだった。
「さてと、コクピットを降りるのは無謀だよな」
そして、マユをどうやって捕獲するかを考える。ステラだったらデスティニーから降りて、コクピットを
開ければ良いが、マユ相手だと自殺行為になる。
「元気だったのは良いけど……逞しくなりすぎだよな」
そうやって悩んでいると、突然デストロイが背中のパーツにある20門のビーム砲を発射した。
「な、何考えてる!?」
周りに敵がいない状態では無意味だと思われる行為だったが、そのビームの熱で周囲の氷が溶けて水蒸気
が発生すると、シンはマユの行動の意味を悟った。
「目暗ましか!?……だけど!」
シンは水蒸気で視界を奪われた中で、マユがコクピットを抜け出し、逃げ出している事がわかった。
今はデストロイの左肩部分……そこから飛び降り、地面に降り立った。
「そこだな!」
「え?」
マユは目の前をデスティニーが立ち塞がったのを見て驚愕する。水蒸気で見えないはずなのに、何故だと
悩んでいると、デスティニーから、その中のパイロットから流れ込んでくる感覚に気付き、理由を悟る。
「そうか、感覚を追って!」
「正解! マユ、一緒に来てもらう」
130W-DESTINY 28話 6/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:00:00 ID:???
シンの言葉にマユは一瞬だけ呆気に取られるが、すぐに拒絶する。
「断る! 誰がアンタなんかと!」
かつて苦しんでる自分を見捨てた事は忘れない。そしてミネルバで拒絶した事も忘れない。
「その辺は、後々話し合うとしてだ。今は大人しく掴まれ。そうしないと死んでしまうぞ!」
「ハン! ここで殺すって事かい? 好きにしな!」
妹のヒネタ考え方と喋り方にシンは頭を抑える。あの懐かしい笑顔と、美味しい料理を作ってくれた
可愛い妹の面影が無くなっている。
「なんで、そんな娘に……前は俺のお嫁さんになるって」
その言葉にマユの記憶が珍しく簡単に呼び出される。兄から流れ込んでくる感覚の所為か、容易に昔の
事が思い出される。
「言ったけど! ……最初は、お兄ちゃんがマユは他所にはやらない、俺の嫁にするって言ってたの!
 それで仕方なくOKしたんでしょうが!」
「そ、そうだっけ?……って、そうじゃ無くて! お前だけじゃ無い。ステラとスティングも強化された
影響で長くは生きられないんだ!」
「ああ、それ……つーか、誤魔化したろ?」
「違う違う! って、知ってたのか?」
「ジブに聞いてる……ステラは知らないだろうけど、マユは知ってるよ。スティングは分かんない」
「だったら!」
「で? 投降したらどうなるの?」
「こっちで治療する」
「……じゃあ、ザフト側では治療法が見つかったんだ?」
「ああ……え?」
「情報アリガト♪ お陰で心置きなくザフトを叩きのめせる。その後で、ゆっくり治療法の研究成果を
 奪わせてもらうね♪」
「ちょっと待て!」
「待たない。じゃね」
するとマユはデスティニーの脇を抜け、脱兎の様に走り去る。
「に、逃がすか!」
その後ろをデスティニーが追いかけ始めた。
「来んな変態! シスコン!」
「お前だってブラコンだろうが!」



131W-DESTINY 28話 7/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:01:03 ID:???
奇妙な兄妹の追いかけっこが起きている時、オーブの司令室となっている輸送機の中で、ユウナは憮然と
した表情で今後の事態を悩んでいた。
「まさか、アレがやられるなんて……オーブの科学力は何時の間にか、随分と取り残されたのかな?」
連合の切り札のはずのデストロイが、簡単に撃破されてしまった。破壊不可能と思われたデストロイを
倒すには、パイロットの疲弊を待つ戦法しか無いと思っていたのだが、どうやら認識が甘かったと認める
しか無かった。
「考えてみれば無敵の装甲なんて有史以来ありえないよな」
「だが、どうやって?」
キサカもデストロイを敵に回した場合の戦法はユウナと同じ方法しか思いつかなかった。
「そこまでは分かんないけどね。それよりも、これからさ」
ユウナの読みでは、連合は何かをオーブに要求してくるだろう。それを拒否するのは難しい。
しかし、当初の読み通り、この戦争はザフトの勝ちだと思っていた。
そのため、上手い負け方。どうやってザフトに降伏するかが重要になってくる。
「次に連合が要求してくるのは……カーペンタリアかな」
結局、その理由までは分からないが、連合は時間稼ぎをしたがっているのは明らかだ。
だが、アマギに声を掛けられ、その思考を中断させる。
「ユウナ様、連合が撤退を開始しました。我々にもです」
「撤退しろって?」
「は、はい……何か不信な点でも?」
「撤退を援護しろとは言ってこないの?」
「はい」
「不味いな……やはり、ここでは無く、別の場所で扱き使う気だな」
「ユウナ様?」
「ああ、ゴメン。撤退を開始しよう。大丈夫だね?」
「お任せください! 必ずや無事に…ん?」
「どうしたの?」
アマギが何事か話し込んでいると、驚いた表情でユウナに伝える。
「ユウナ様! アークエンジェルが現れました!」
「は?」
ユウナが愕然としながらモニターに目を移すと、そこにはアークエンジェルが映っていた。
そのオーブとは関りの深い戦艦の姿に呆然としながら呟く。
「何であれが……何しに来たの?」



132W-DESTINY 28話 8/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:02:07 ID:???
「ああ〜〜! もう! チョロチョロと!」
シンはマユの素早い動きに歯噛みした。何とかデスティニーの手に掴まえようとするのだが、力を
入れすぎてはマユを潰しかねない。しかし優しく掴まえようとして、ゆっくりと動かすと指の隙間など
から逃げ出してしまうのだ。
「どうすれば……ん?」
その時、デスティニーのコクピットに警告音が鳴り響く。
「な! 何でこんな時に!」
その警告音はシンの最大の任務を果たすべき相手が現れた事を伝えるものだった。
デスティニーに設置された最優先のターゲット、フリーダム、エターナル、そしてアークエンジェル。
それらが出現した事を知らせる警告音は、シンにマユの捕獲を諦めさせる。
「はぁ〜〜……マユ! お兄ちゃん、用事が出来たから……って、聞いちゃいないし」
後ろを振り向かず、一心に逃げ去る妹の姿に一抹の寂しさを抱え、シンはアークエンジェルに視線を
移す。
「アンタの所為で!」
シンは妹との時間を邪魔された怒りを込めて、アークエンジェルにデスティニーを向かわせた。




スティングは撤退を始める輸送機にカオスで入り込むと戦況を見つめる。そして、未だにステラとマユが
戻って来ないことに苛立ちを感じ始めていた。
「ネオ、援護に出るぞ!」
「待て、ガイアが戻ってきた」
ネオが言った通り、ガイアが輸送機の前まで来ていた。スティングは手を伸ばしてガイアの手を取り、
輸送機の中に収容する。
「ステラ、マユはどうなった!?……ステラ?」
デストロイの撃破は確認しているが、パイロットの安否は未だに不明だった。最後まで一緒にいたステラ
なら、何か知っているかと尋ねるが、ステラの様子がおかしい。
「あの声……思い出した……ディオキアの……シンの声……インパルスのパイロットの声」
震えながら何かに憑かれたかのように呟いている。そして、その単語を聞き取ったスティングの表情が
強張った。
「お前、知ってしまったのか?」
スティングは、ステラがアウルの仇と好きな相手が同一人物だと知ってしまった事に気付いた。



133W-DESTINY 28話 9/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:03:00 ID:???
「状況は?」
ラクスは戦場を見渡しながら、状況を確認する。
「連合は撤退を開始しています」
「そうですか」
ラクスは呟きながら、遅かったかと溜息を吐く。これでラクスの危惧するコーディネーターの支配する
世界が、また一歩近付いてしまった。
「連合の撤退を援護します」
こうなっては少しでも連合の被害を抑えるしか無いと判断した。
「了解しました。ビルゴを発進させます」
アークエンジェルからビルゴが出撃するのを見ながら、キラは自分もストライクフリーダムで待機する
ために、ブリッジを後にしようとすると、ラクスに呼び止められる。
「キラ……まさか?」
「フリーダムで待機する」
「そんな!」
「ラクス、僕は何のためにここにいるの?」
キラの唐突な質問にラクスは首を傾げた。ラクスにとってキラは側に居て欲しい相手であって、その気持
に一々理由などは無いのだから、そんな質問には答えようがない。
「万が一って事もあるからね。僕はMSで待機する」
「あ……キラ」
ラクスは何も言えないまま、キラを黙って見送るしか無かった。
「アレは来るのかな?」
キラはブリッジを出ると先日のアルトロンの事を思い出していた。まともに戦り合っても勝ち目は無い
だろうが、接近戦の武装しか持っていないようだし、牽制しながらアークエンジェルの脱出を促す事は
可能だと考える。
「ラクスは僕が守る」
ラクスは答えなかったが、自分がラクスの元にいられる理由は、ラクスを守る事が出来る戦士だからと
考えていた。
だから、ラクスを守るのは自分の使命であり、ビルゴなどには負けるわけにはいかなかった。



134W-DESTINY 28話 10/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:04:04 ID:???
シンがデスティニーをアークエンジェルに向けて進攻させると、4機のビルゴが発進していた。
かなりの強敵だが、あのMSを破壊出来るのはデスティニーしか無い。
「全機下がれ! そいつは俺がやる!」
シンはザフト全軍に向かって通信を入れる。先程特務隊と名乗っているので、ザフト軍は素直に従い道を
開けてくれる。
「な、何か恥ずかしいな……これじゃあ俺が偉い人みたいだ」
だが、その様子にシンは躊躇いを感じる。おそらくデュランダルが予定通り、自分を英雄として前面に
出し始めたら、さらに面映い気分になるだろう。
「ん? あれは……」
その時、上空からパラシュートを背負ったMSが降下しているのが目に入る。
「サンドロック! カトルが来たのか」
シンが降下前にデスティニーの最終チェックを受けた際に、カトルもアロンダイトのチェックをする為に
シンの乗ったデスティニーに搭乗していた。正確に言えば、カトルが搭乗するヴェステンフルス隊の
3番艦が、デスティニーの最終チェックのために近付いてきたのだ。
デスティニーが移動中に行った稼動、及び兵装チェックは、幾つかの不具合が見つかったため、カトルは
その修正をするのに労力を割いていた。
その間にシンが休憩をしているとデュオがやってきた。そこで彼から彼等の機体の説明とモビルドールの
ことを聞いた。カトルのMS、サンドロックは格納庫で見たし、さらに降下する際には、衛星軌道上で
待機するデュオ達の3機のガンダムも見ている。
「てっきり、3人の内の誰かだと思ってたけど」
彼等が衛星軌道上で待機していた目的は、戦場に現れたラクスが所有する残りのビルゴの破壊と、この機
に、ラクスへの増援を送るかもしれないクライン派の抑えのためだった。
普通なら、一仕事終えたばかりのカトルでなく、他の3人が降りてくるとは思っていた。
そこで、念のために確認をとろうと、サンドロックに通信を入れる。
「こちらシン、カトルなのか?」
「はい。そうですよ」
通信機から聞こえる温厚そうな人柄を思わせる声は、間違いなくカトルのものだった。
「何でお前が?」
「他の奴だと危ないからとハイネに頼まれまして……っと、こんな問答をしてる場合ではありませんよ」
「あ、悪い」
すでにアークエンジェルもサンドロックの存在に気付き、ビルゴを向かわせていた。もっとも、ビルゴが
サンドロックに向かうのはありがたいことではあった。
「それでは、いきます!」
カトルは一声気合を入れると、サンドロックのパラシュートを外し、眼下のビルゴに襲い掛かった。
135W-DESTINY 28話 11/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:05:00 ID:???
カトルは降下しながらヒートショテールを抜くと、一番手前にいたビルゴを切り裂いた。
ラクスは、それを見ながら、予想とは違う姿に戸惑いを感じていた。
「龍では無い? あれは?」
今回もアルトロンが来るのは覚悟していたが、違う機体のシルエットに驚きを覚える。
「ラクス・クライン! これ以上モビルドールを使わないで下さい!」
そして、そのMSから通信が入ってくる。龍のパイロットの苛烈さとは逆の優しい女性のような声。
しかし、その優しげな声とは反対に、その動きは豪快で、大きな蛮刀を振るい2機目のビルゴを破壊した。
「離れながら迎撃だ! バリアント、イーゲルシュテルン撃て!」
ダゴスタの指揮で、アークエンジェルはサンドロックから距離を取りながら攻撃を開始する。
「くっ!……さすがにこれでは」
カトルはビルゴのビームキャノンを優先的に避けているため、アークエンジェルの集中砲火を全ては
かわしきれずに、着弾の衝撃で体勢を崩してしまう。
「よし、今だ! ゴッドフリート撃て!」
そして、サンドロックに向け、ローエングリンに次ぐ威力を持ったゴッドフリートが発射された。
ダゴスタは直撃を確認したが、彼はサンドロックの装甲をビルゴと同じものだと想定していたので、
あれで破壊できるとは思っていなかった。
「手を休めるな! 続けてスレッジハマーを発射しろ!」
そして、対艦用のミサイル、スレッジハマーをMSに向けて発射させた。
「これなら……ビルゴを向かわせろ!」
スレッジハマーの直撃で、サンドロックが爆煙に隠れてしまう。だが、これほどの攻撃を与え続けたのだ。
ビルゴでも無事ではすまない威力のダメージを与えたと確信していた。
だが、煙の中から飛来した蛮刀がビルゴを突き刺さった事で、その予想が覆る。
「くっ…ビルゴより丈夫なのか! 攻撃を再開しろ!」
「あと1機!」
カトルがサンドロックの体勢を大きく崩しながら、もう1本のヒートショテールを投げつける。
しかし、その直前でアークエンジェルの砲撃が襲い掛かり、ヒートショテールの投擲の軌道が狂って、
目標を外れる。
「しまった!」
「よし! 奴は素手になったぞ!」
如何にサンドロックの防御力が優れていると言っても、ビルゴとアークエンジェルの集中砲火を受けては
ただでは済まない。
カトルは、落下したヒートショテールを取りに行かなければならないが、そうなっては空中のビルゴと
アークエンジェルに攻撃をするのが難しくなるのは目に見えていた。
136W-DESTINY 28話 12/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:06:00 ID:???
「ザフトのMSが1機、ビルゴに接近してきます!」
「ザフトの?」
ダゴスタはザフトの識別信号を発してるMSを見る。たしかにサイズから言ってビルゴや謎のMSと
異なりザフト製だと判断される。
「放っておけ! それよりも、あのMSだ!」
ダゴスタの中で、ビルゴとサンドロックらの戦闘に慣れ、ザフトや連合のMSを軽く見る気持が
知らないうちに生まれていた。
そして、アークエンジェルとビルゴの砲口が、一斉にサンドロックに向けられる。
それはシンにも確認されていた。
「こっちは無視かよ!」
シンは、降下中のサンドロックしか目に入っていないビルゴを見ながらアロンダイトを抜いた。
「そっちが、そういう態度なら……」
その時、アークエンジェルのカタパルトが開き始め、ダゴスタを動揺させる。
「何故勝手にカタパルトが!?」
「キラ様の指示だそうです」
「何で?」
「キラ様が出撃なさると」
その答えにダゴスタだけでは無く、ラクスも動揺する。
しかし次の瞬間、更なる衝撃が彼等を襲う事になる。
「……俺を無視した事、後悔するんだな!」
シンはアロンダイトのリミッターを解除し、ビームソードを展開すると、降下中のサンドロックに砲口を
向け、こちらに背中を見せるビルゴを背後から擦れ違いざまに両断した。
「……まったく最後まで無視かよ……ん?」
最後のビルゴを破壊したシンが降下中のサンドロックに手を貸そうと思っていると、アークエンジェル
から飛び出したMSに気付く。そして同時に、コクピットに最大攻撃目標が現れた事を知らせる警告音が
鳴った。
「あれは!」
シンの脳裏に、忘れられない光景が蘇る。焼け爛れた大地、ちぎれた小さな腕、その先の変わり果てた
家族の身体。そして空を飛翔する蒼い翼を持ったMS。
「アイツが……出てきたのか……フリーダム」
現れたMSは細部こそ異なるが、何度も夢に見たMSフリーダムに酷似したシルエットを持っていた。



137W-DESTINY 28話 13/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:07:03 ID:???
「ゴ〜ル♪」
マユは脱出する輸送機に走って駆け込むと、怪訝そうな顔のスティングに出迎えられた。
「どうしたの変な顔して、何かあった?」
マユは、スティングの怪訝そうな表情に首を傾げながら、何があったのか質問する。
「いや、あったと言えばあったんだが……お前の方こそ何だよ?」
「何が?」
「気付いてないのか? テメエ、嬉しそうだぞ」
スティングはマユのそんな表情を見たことが無かった。まるで遊びから帰ってきた子供の様な表情。
「え?」
そして、マユは呆気に取られる。自分では意識していなかった。
「そ、それは……」
だが、マユにとって、その事実は認めたくない事だった。そのため懸命に言い訳を考える。
スティングへのでは無く、自分のために。兄との触れ合いが楽しかったなどあってはならないのだ。
「そうだ!」
そして、兄に伝えられたエクステンデッドの治療方法をザフトが開発した事を思い出し、それを
伝えようとする。
「そ、それがね。え〜と……」
「何だよ?」
「う〜ん……これスティングに言っても良いのかな?」
「は?」
マユはエクステンデッドの寿命が短い事を知っているが、スティングが知っているかどうかは知らない。
だったら、言わない方が良いのかと悩んでいると、激しい感情が脳内に流れてきた。
「な、なに!?」
突然頭を抱えて蹲るマユに、スティングが慌てて声をかける。
「ど、どうした!?」
身体が震え、脂汗を滲ませている。その様子は明らかに何かに怯えている様子だった。
「何これ?……お、お兄ちゃん?」
マユの脳内に過去の記憶が蘇る。焼けた大地、ちぎれた自分の腕、息をしていない両親。
そして、泣くだけで自分を助けてくれずに去って行く兄。
「蒼い……翼!」
するとマユは毅然と立ち上がり、一点を見つめる。その強い眼差しは、すでに怯えの色は無く、怒りと
狂気が入り混じっていた。
「アイツが出たんだね……フリーダム!」



138W-DESTINY 28話 13/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:08:00 ID:???
キラはアークエンジェルを庇うようにデスティニーの前に立ち塞がると、ダゴスタに通信を入れる。
「撤退を始めてください」
「え?」
「そもそも、ビルゴが1機になった時点で撤退するべきでした。今回は、あのMSがたまたまビルゴを
 破壊できる武器を所持していたから助かりました。僕はてっきりアークエンジェルを攻撃するもの
 だと思いましたけど?」
「あ……も、申し訳……」
ダゴスタもキラの言い分が正しいと認めた。彼はザフトや連合のMSにはビルゴは破壊できないと
見下していたが、それなら母艦を破壊するのは当然の事では無いか。
自分はバルトフェルドの代わりにラクスを守らなければならないのに、最も重要な任務を忘れ、敵を
倒す事に意識を向けすぎたと反省した。
「だったら下がってさい! 敵は僕が引きつけますから!」
「了解しました。お気を付けて」
「……分かっています」
キラはラクスを崇める彼等を嫌いながらも、その善意までは否定出来なかった。基本的に、みんな好感を
持てる人ばかりなのだ。そのため、どうしても邪険に出来ずにいる。
「何でこうなるんだろうな」
自分の感情を持て余しながら、キラはアークエンジェルが下がるのを確認する。
そして、デスティニーを見つめた。
「何もしてこない?」
そして、サンドロックに視線を移す。すでに大地に降り立ち、その手には巨大な蛮刀が握られている。
そちらも警戒は緩めていなかったが、やはり何もしてこなかった。
そして、デスティニーがアロンダイトを収めるのが目に入った。
「攻撃の意思が無い?……わけは無いよね」
アロンダイトを収めた代わりに、ビームライフルを手にしたのを見てキラは苦笑を浮かべる。
ザフト軍が自分たちを見逃してくれるなど、虫の良い話は無いだろう。
「でも、僕にも譲れないものがある」
それはラクスの命。ラクスの意思。ラクスの全てを守るためなら、例え誰に罵られようと戦ってみせる。
その決意を込めて両腰からビームライフルを外すと、腰の後ろに回っていたレールガン、クスィフィアス
がサイドに回って戦闘体勢になる。
そして、真紅の翼から光を生みながら突進してくるMSがビームライフルの銃口を向けてきた。
キラも同様に2丁のビームライフルを構える。


139W-DESTINY 28話 15/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:08:59 ID:???
「シン、大丈夫ですか?」
シンの過去を知っているカトルは不安そうにシンに声をかける。考えてみれば、あの姿に動揺しない
訳が無い。
「ああ、大丈夫だ」
だがシンはカトルに力強い返事を返し、続けて大きく呼吸をする。
かつては夢に見続けて眠れない夜を過した事もあった。あの惨劇は今でも心に大きな傷を残している。
そして、マユが生きていた。そして自分に憎悪を向けている。
あの時、フリーダムが自分たち家族を撃ったから。
「違う、あれは俺の罪だ」
自分が弱かったから、あの時、マユに駆け寄っていれば良かったのだ。人に罪を擦り付けても意味は無い。
「これは復讐なんかじゃ無い。俺はマユに償わなければいけないんだ。そのためにも!」
シンはアロンダイトを収め、ビームライフルを手にする。
「フリーダム! いや、キラ・ヤマト! アンタを倒す!」
真紅の翼を広げ、フリーダムに向かう。そして射程に収めるとビームライフルの引き金を引いた。
「征くぞ!」
キラはビームの射線から機体をずらし、反撃のビームライフルを2丁同時に放つ。狙いは右腕と左足。
「悪いけど」
引き金を引いて、ビームが狙い通りに当たった事を確認する。
「これで……」
身を返そうとした瞬間、ビームに貫かれたデスティニーが消え、その横に無傷のデスティニーが現れた。
「……残像!?」
キラは舌打を打つと、もう1度ビームライフルを同じ様にに放つ。そして予想通り残像に当たり、別に
現れた瞬間にレールガンを放った。
「くっ!」
シンはレールガンの衝撃に軽く呻くと、反撃のビームライフルを打ち返す。
「くそっ! 埒が明かないか」
やはり避けられたのを見て舌打を打つと、左手にフラッシュエッジを抜いてビームライフルを放ちながら
接近を試みる。
キラも左手のビームライフルを収めると、代わりにビームサーベルを抜いて接近してくる。
お互いに、離れての撃ち合いではケリが付かないと判断していた。
そして、接近するにつれ、回避では間に合わないと判断したシンがビームシールドを展開しながら正面を
庇ってビームライフルを放つ。しかし、キラも右のビームシールドを展開して、さらに接近すると左手に
持ったビームサーベルをシールドを展開する左腕目掛けて一閃した。
140W-DESTINY 28話 16/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:09:58 ID:???
「このっ!」
シンは回避しながら、フラッシュエッジをサーベル状にして斬撃を振るう。
そうしながら、やはりキラはこちらの手足しか狙っていない事を確認していた。
「やはり慣れてる! それに比べこっちは……」
シンは相手の手足だけを狙う戦い方に慣れないが、キラは上手くそれをやっている。
キラは何時の間にか右手もビームサーベルに持ち替えていて、シンを圧倒してきた。
「くそぉ〜〜! さすが、不殺はアンタのお家芸だな!」
シンは一旦離れると、キラがサーベルを持っている内に、射撃戦での戦闘へと切り替えをはかり、背中の
長射程ビーム砲を展開させて放つ。
「避けろよ!」
その一撃はキラの回避力を念頭に入れたもので直撃コースを辿った。そして予想通りキラが回避したのを
確認しながら、右手のビームライフルを回避方向に放つ。
「これなら……って!」
だが、そのビームをキラはサーベルで弾くという離れ業で返すと、再び両手をビームライフルに持ち替え
シンがやったように時間差で、しかも3連射でビームライフルを放つ。
「こ、こいつ……」
シンは回避が間に合わないと見て、2発目以降をビームシールドで受け止めた。
「……これがアンタの戦い方かよ」
シンのキラに対する感想は最悪の性格の奴になった。自分の技量を見せ付けるように、難易度の高い方法
を使い、相手には出来ないだろうと思わせる事をやる。
さらに攻撃でも、こちらがやった以上の事をやってみせる。
腹立たしいが、同時に上手い方法だと感心もしていた。キラが相手を殺したくないという考えの持ち主
なら、そうやって実力を見せ付けて相手の戦意を奪う事が出来る。またプライドの高い人間ならバカに
されたと怒りで我を忘れ突進してしまうだろう。そうなった相手を倒すのは容易い。
「議長に感謝しないとな」
そして、以前の自分なら、この様な目に合わされたら冷静ではいられない。
それに悲壮感丸出しの人間なら、格上の相手だと相打ちを狙ってしまうだろう。
だが今は違う。事実は認めなくてはいけない。相手は自分より上なのだ。
「それならそれで、やりようはある!」
その上で勝つ方法を考える。幸いシンが乗っているのはデスティニーだ。デュランダルが設計に携わり、
今だ敵がその能力を知らないMS。
シンはビームライフルを腰に収め、無手のままで突進をかける。
「我を忘れた?」
141W-DESTINY 28話 17/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:11:09 ID:???
キラの目には無謀な突進に見える。今までにも興奮状態の相手が無謀な突進をしてきて、そうなった相手
を簡単に撃破したこともある。
しかし、素手になるのは初めてのことだった。
「だからって、いくらなんでも素手は?」
キラは不信感を持ちながらも、黙って見ているわけにもいかず、ビームライフルで迎撃を行う。
それに対するデスティニーは両腕を前で交差させると、ビームシールドを展開した。
「ビームシールドで突撃?」
キラが一瞬だけ動揺すると、デスティニーが両腕を思いっきり広げた。その時、手にはフラッシュエッジ
が持たれた事にキラは気付いた。
「ブーメラン?……くっ!」
だが、キラがそれに気付いた時には、デスティニーがアロンダイトを引き抜き、再びビームシールドを
展開させながら、更に接近してきた。
「これならぁぁ!」
シンが雄叫びを上げながら突進する。正面と両サイドの3方向からの同時攻撃、これなら避けようが
無いはず。
そしてストライクフリーダムが両手を大きく広げ、左右のフラッシュエッジにビームライフルの照準を
向け、引き金を引いた。
その一瞬の遅れで、シンはアロンダイトを頭部目掛けて振り下ろす。
それはシンにとって理想の展開。アロンダイトの一撃はストライクフリーダムの頭部を破壊するはず。
「え?」
だが、キラはフラッシュエッジを撃ち砕くとビームライフルを捨て真剣白刃取りでアロンダイトを
押さえ込んでいた。
「ウソだろ……っう!」
シンが一瞬だけ呆然とした間に、キラは右手でアロンダイト左方向に抑えながら回転すると、左手での
バックブローを打つように動く。だが、それはただのバックブローでは無く、回転している間にビーム
サーベルを手にした上での斬撃だった。
「このぉぉぉ!」
その首を両断せんと狙った一撃は、シンが慌てて後ろに下がった事で両断は避けたものの首筋にかすり、
装甲を大きく切り裂いた。
「モニターが!」
一瞬、モニターが消え、シンの背筋を冷やすが、再び点灯して安堵する。
「や、やばかった」
後方に下がりながら、息を整える。今の斬撃は人間の首だったら、大量の血が吹き出ているだろう。
シンは、自分のその姿を想像し、冷たい汗を流した。同時にキラの想像以上の戦闘力に戦慄を覚える。
「化け物かよ……」
142W-DESTINY 28話 18/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:12:08 ID:???
「あれも避けた?……彼はいったい」
一方、キラの方も普段とは勝手が違う事に戸惑っていた。先のフラッシュエッジを破壊した後の白刃取り
も、ビームライフルを収納した後にやりたかったのだが、予想より速い斬撃に対応するために、放棄する
しか無かった。その結果、相手がPS装甲のためレールガンが通用しない以上、有効な飛び道具を
無くしてしまった事になる。
いや、そんな事は無い。ストライクフリーダムには、デスティニーに通用する武器が内蔵されている。
「こうなったらパイロットが死んでしまうかもしれないけど……」
そして、その武器、カリドゥスの使用を考えた時、脳裏に呪いの言葉が蘇る。
――知れば誰もが願うだろう――
「ああっ!?」
身体が震え、冷たい汗が吹き出し始める。そして視界が歪み、吐き気がしてくる。
あの男の言葉。否定しようとした。しかし、結局は力で捻じ伏せるしか出来なかった。
力だけと言われた自分を否定しながら、力で応えるしか無かった。やはり、あの男の言葉は真実なのか?
「違う……それを肯定するわけにはいかないんだ」
――貴方はお優しいのですね――
そう言ってくれた人がいる。全てを捨ててまで自分の側にいる事を選んでくれた。
「ラクス……僕は……」
ここでクルーゼの言葉を認めるという事は、ラクスの言葉を否定することになる。
「絶対に殺さない! その上で君を守ってみせる!」
同じ轍は2度と踏むまいと心に決め、攻撃手段を練る。こちらに遠距離武器が無い以上は接近戦しか無い。
そして、相手の剣は対艦刀の類だ。破壊力はビルゴを破壊した事から、従来の対艦刀よりも遥かに上だ。
だが、対艦刀の欠点の取り回しの悪さは残っているはず。いや、通常の物より長いくらいだから
悪くなっててもおかしくは無い。
「それなら!」
キラはビームサーベルを右手に突進をかける。
「来た!?」
シンはストライクフリーダムの接近に気を引き締めると、アロンダイトを前に翳す。
「どうする気だ?」
シンがキラの行動に全神経を集中して、待ち構えるとストライクフリーダムが右手を上げ、斬撃の体勢に
入った。
「斬り合いなら!」
どちらかと言うと、撃ち合いよりも斬り合いを得意とするシンは、ストライクフリーダムとの斬り合いを
受けて立つ。
そして、接近するストライクフリーダムの頭部を目掛けて、斜め下から横薙ぎに払った。
143W-DESTINY 28話 18/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:13:04 ID:???
「もらった! えっ!?」
その斬撃は、例え敵が同時に斬撃を放っても、間合いに勝るアロンダイトなら、ストライクフリーダムの
腕ごと斬り飛ばすはずだった。
しかし、間合いギリギリでストライクフリーダムが急停止したため、空を切ることになった。
「懸かった!」
キラは自分の読みが勝った事に会心の声を上げながら、対艦刀を振り切った後に、最突進をかける。
いくら相手の武器が間合いも長くても、振り切った後に懐に入り込めば、今度はその間合いの長さが
仇となり、斬り返しが遅れてしまう。
キラも以前はストライクに搭乗していた時に対艦刀を使っていたため、その長所と短所を熟知していた。
そして、間合いに入り込みながら、デスティニーの両腕を切り裂く……
「なっ!?」
はずだったが、予想より速い、いや、ありえないスピードで斬り返しが始まり、こちらが、腕を斬る
間合いに入るよりも早く、剣が襲ってきた。
「これで!」
シンは、内心でガンダニュウム合金の軽さに舌を巻いていた。対艦刀の長さから言って、本来の材質なら
斬るつもりで振って空振りした後は体勢が崩れるはずだが、ガンダニュウム合金製の剣は、剣では無く
細い枝でも振るってるように取り扱えた。
そして、今度こそと思った斬撃は、
「―っ!……またかよ!」
咄嗟に右手のビームサーベルを捨てたストライクフリーダムが、右手を下に振り下ろし、左手を上げて
アロンダイトを挟み、再び白刃取りの要領で抑えていた。
「何て出鱈目な反射神経してるんだよ!?」
「こんな……事って」
キラは、咄嗟に抑える事に成功したものの、ビームサーベルを一本失い、もう後が無いと判断していた。
ここで仕留めなければ終わりだと、最後の攻撃に入る。
「決める!」
アロンダイトを抑えたまま、さらに間合いを詰めめて身体を密着させると、相手を押しながら素早く
アロンダイトを放すと、左手でデスティニーの右腕を持ち、右手にビームサーベルを握るとデスティニー
の背後から首を狩ろうと腕を廻す。
「させるかぁ!」
キラの行動を悟ったシンは、左手をアロンダイトから放し、背後に廻そうとするストライクフリーダムの
右腕を握ってサーベルが届くのを阻止した。
「くっ!」
「うぐっ!」
144W-DESTINY 28話 20/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:14:00 ID:???
互いに右手で相手の左手首を握った状態で対峙する。互いに有利な体勢に移ろうとするが、両機は互角の
パワーで膠着状態に陥ったまま睨みあう。
そして、シンとしては、コクピットの目の前にカリドゥスがあるため、相手がコクピットを狙わないと
知ってるとはいえ気が気では無かった。
「君はいったい?」
その時、接触回線でキラの声が入ってくる。優しそうな人の声だと思いながら、シンは強い意思で名乗り
をあげる。
「俺はシン! シン・アスカだ! キラ・ヤマト! アンタを倒してみせる!」
シンは、ここで決着をつけるべく左手のパルマフィオキーナを発動させる。
「これで……」
「なっ! そんな所に武器が!?」
掌から放たれたビームに右腕が破壊され、ついにキラは最後のビームサーベルも失った。
「……終わりだ!」
「くっ!」
ストライクフリーダムが頭部のバルカンを放つ。
「そんなものが!」
だがシンは意に介さなかった。バルカンではPS装甲に通じない。
シンとしては、追い詰められたキラがカリドゥスを放つ前に、止めのパルマフィオキーナを
ストライクフリーダムの頭部に放とうとする。
「何!? モニターが!」
だが、突然デスティニーのコクピット内で、モニターを始め、あらゆるセンサーが活動を止めて狼狽する。
「あ、あのバルカンが!?」
そして、その理由が先程放ったバルカンが、首の装甲の裂け目、先にキラの斬撃で切り裂かれた部分を
狙ったもので、頭部のセンサー類とコクピットを繋ぐ配線を破壊した事を悟った。
「そんなの……」
暗闇の中で、慌てながら操作して、ようやく予備モニターが生き返る。
その時は、すでにストライクフリーダムの姿は見えなくなっていた。
「……見逃してくれたのか?」
完全に無防備になっていた。その時の恐怖を思い返しながら、シンは自分が目指す相手に及ばない事を
噛み締めていた。



145W-DESTINY 28話 21/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:14:59 ID:???
「追ってこない……上手く行ったんだ」
キラは敵が追ってこない事を確認すると、ヘルメットを脱いで大きく息を吐いた。
「強かったな……シンって言ったかな?」
汗を拭いながら、先程まで戦っていたパイロットの事を考えた。どんな人間で何のために戦っているのか
様々な事に思いを馳せながら、彼の言葉から再び対峙することになるだろうと確信を抱いていた。
そして、次も上手く行くとは限らない。そもそも今回は一騎打ちになった事の方が不自然なのだ。
彼を相手にしながら、周りからも攻撃を受ければ、明らかに勝ち目は低かった。
「ラクス……どうにかならないかな?」
だが、それを言うわけにはいかない。自分がラクスと釣り合いが取れる人間である理由は強さしか
見当たらない。
そんな自分がラクスの側にいるには誰にも負けるわけにはいかないのだ。



「終ったの?」
マユは撤退する輸送機の中で、兄から流れる感情が消えたのを悟った。もしかしたらシンが死んだ可能性
もあるが、何となく生きてるだろうと感じていた。
「もう良いのか?」
先程から戸惑っていたスティングが、落ち着いたマユを見て声をかける。
「うん。心配かけてゴメン。ところでネオに伝えなくちゃいけない事があるんだけど」
「ああ、ネオなら……」
「どうしたの?」
言いよどむスティングの態度に不穏なものを感じ、緊張しながら尋ねる。
「ステラの記憶が戻った。今はゆりかごが無いからな、それでネオが宥めてる最中だ」
「記憶って、アウルの事?」
「……それだけじゃ無い」
「他に何かあるの?」
スティングは暫くの間、言い辛そうに黙っていたが、1つ溜息を吐くと一気に喋りきる。
「シンのディオキアでの記憶……それもアウルを殺したときのインパルスのパイロットの声も一緒にな」



146W-DESTINY 28話 22/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:15:55 ID:???
今回はステラもマユも確保するチャンスがあった。さらにキラも現れた。しかし、結果はキラを倒す
どころか、見逃してもらった形になり、ステラとマユは2人とも離脱してしまった。
「戦果ゼロかよ……」
シンはそう呟くと、ヘルメットを脱いで、それに頭を打ち付けた。勢い込んでプラントを出て、結局は
現実の困難さを見せ付けられただけに終った。
だが、分かっていた事だ。自分のやろうとしている事が容易でない事は。一度の失敗で諦めるわけには
いかない。少なくとも自分が生きていれば再度のチャンスが巡ってくるはずだ。
「……帰るか」
シンは、気持を切り替えるとサンドロックを探す。
「あそこか……カトル、ミネルバに戻るから一緒に行こうか」
シンはデスティニーをサンドロックに近付けながら通信を入れる。サンドロックには、飛行能力が無い
ためミネルバに行くのに苦労するだろうから、デスティニーが掴んで運ぶと提案した。
「助かります」
カトルは了承し、デスティニーの手を取ると、進路を任せた。
「アロンダイトを振ってた時も思ったけど、本当に軽いな」
「僕たちにはこれが普通なんですが……それにしても、惜しかったですね」
カトルが慰めるように語り掛けてきてシンは苦笑を漏らす。
「全然だろ。もう完敗ってやつさ……ちょっと不味いかな?」
デュランダルが新時代の象徴にと期待するデスティニーに泥を塗ったことを考えると、気持が滅入る。
「大丈夫ですよ。傍から見る分には、貴方が追い払ったように見えましたから」
「そうなの?」
「ええ、向うは片腕と武装を失っての撤退。貴方は見た目はダメージがありませんから」
「そうか……実際はセンサーがいかれて、攻撃はおろか回避だって難しい状態なんだがな」
「それが解る人は、あまりいませんよ。安心してください」
「一応は安心するか。どの道、リベンジマッチは挑まないとな……どう思う?」
カトルはシンの質問の意味が、彼がキラと再戦したときの予想を聞いてるのだと気付いた。
「……言いにくい事ですが、正直申し上げて、今の貴方ではキラには勝てません」
「やっぱりな」
「僕も驚きましたよ。ビルゴの戦闘データーは彼から取っていると判りましたし、そこから彼の動きを
 予想はしていたのですが、遥かに上でした」
「そう言えば、出る前にデュオが言ってたよ。所詮モビルドールは人形だってさ」
「そうだったんですか。確かに彼はヒイロとトロワのデーターが入ったモビルドールを1人で倒した
 実績があります」
147W-DESTINY 28話 23/23 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:16:58 ID:???
「その2人は強いのか?」
「強いですよ。僕たちの中でも1、2を争う腕です」
「ふ〜ん……」
だが、そう言われても実感が掴めないので生返事で返すしか無かった。
「ですが、ビルゴとキラの回避の差、あそこまで差は無かったと思います」
「多分、ビルゴの回避力が良くない理由って防御力を過信して、データーの入力が甘かったんじゃ?
 何と言っても、あの装甲だからな」
「そうかも知れませんね。おそらく攻撃、しかもコクピットを狙わない事に重点を置いたのでしょう」
「まあ、ビルゴに関しては、地上からは掃討したんだし、ここにある残骸を拾ったら、後はそっちに
 任せるよ」
「そうしてください。それよりも貴方はキラの事を」
「分かってるって」
そして、近付いてきたミネルバを見ながら胸が熱くなってきた。
「懐かしいですか?」
そんなシンの気持を見透かしたようにカトルが尋ねる。
「ああ。それに、俺がキラに勝るものがある事を思い出した」
今回はキラに負けたと言える。そして実力差はハッキリとした。それも向うの方が上という形で。
今回の戦闘は、キラがパルマフィオキーナの存在を知らなかったから良かったが、次はあんな使い方では
通用しないだろう。
だったら通用する戦い方を考えれば良いのだ。幸い自分には鍛えてくれる上官がいる。作戦を思いつく
友人がいる。
「キラ、アンタにはいないだろう?」
そう呟いた後、シンは近付いてきたミネルバに着艦を求める。
「こちらシン、ミネルバに着艦を要請する」
「了解、誘導を開始します」
その懐かしい声に、シンの顔に笑みが浮かぶ。
「メイリン」
「お帰りなさい、シン」
「ああ、ただいま」
帰ってきた者と待っていた者。カトルは、その声を聞きながら羨ましさを覚えた。
自分にも待っている人がいる。帰りたい場所がある。しかし今は帰る手段すら見つからないまま、異郷の
地で争いを見続けている。
そんな自分の立場に苦笑を浮かべると、懐かしき人々の顔を思い浮かべ、元の世界へ思いをはせた。

148W-DESTINY 28話 ◆K7Ld0w0CwU :2007/02/18(日) 01:17:55 ID:???
久しぶりの投下ですが、頭がテンパってる……何かしっくりしない。
脳が完全に仕事一色の状態だから、SS書きに集中出来ないっす。

予定では3月いっぱいで落ち着くはずなので、落ち着いたら続きを書き始めます。
……仕事が落ち着いたら頭の切り替えが出来るとは思うけど、もしかしたら長引く可能性もあるので
その時はゴメンナサイ。
149通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 01:19:32 ID:???
GJ!
150通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 01:19:57 ID:???
GJ!!
151通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 01:23:15 ID:???
GJゥゥゥ!!!!!
マッテテヨカタ………
オキテテヨカタ………
シンジテヨカタ………
神は見捨ててなかった。
シンがちゃんと主人公してるよ(泣)
いつまでもお待ちしてるので、
そちらのペースで頑張って下さい。
152260:2007/02/18(日) 01:31:48 ID:7+L5iJGg
W-DESTINY 最高!!!!
153通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 01:32:52 ID:???
GJ!!
154通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 02:00:26 ID:???
乙!待ってました!
やっぱシンはシスコンじゃないとなw
155通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 02:04:46 ID:???
GJ

濃厚な戦闘描写といい戦闘中の兄弟喧嘩といい…
お腹いっぱいでつ

シンは熱血さと冷静さを兼ね備えたましたな。


ごちそうさまでした。
156通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 03:08:31 ID:???
おかえりなさい!GJ!
たしかにキラの戦い方って性格悪いなwww
ダイダロス基地で戦うことになるとドラグーンも注意しなきゃいけないし、前途多難だけど頑張れシン!
相変わらずW-DESTINYのシンは応援したくなる主人公だわw
157通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 03:22:27 ID:???
GJ!GJ!GooooooooodJooooob!!


……ところでダ「ゴ」スタ君じゃなくてダ「コ」スタ君です。
158通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 04:17:09 ID:???
GJ!GJ!GJ!!!!!!!
シンもすごいがキラも強い!
こういう熱い展開が欲しかった!
ありがとう!
159通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 10:35:41 ID:???
キラもシンも頑張れ!と言いたくなる展開にGJ!!
アロンダイトがエピオンのビームソードを模してる展開にも燃えました
160通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 12:05:43 ID:???
「これじゃあ俺が偉い人みたいだ」って、お前今はフェイスだろ?
この上司にしてこの部下有りという感じがして良いんだがw
真性シスコンとかお家芸発言とかの、シンらしさがそのままなのが良かった。

戦術眼があったり、不殺解除しなかったりと、ここのキラはガチで強敵だな。
…やはり敵(かたき)役にこそ華は必要だよなぁ。
161通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 13:51:06 ID:???
一心不乱のGJを!!

……何故だろう、お嫁さん云々の流れで
田中理恵の声で
「二又(エッチなの)はいけないと思います!」
って幻聴が聞こえたのは?w

【ミーア自重しろ】
162通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 14:00:09 ID:???
GJ!!!!!!

シンもいいですがキラもいいですね。
本編キラって、実は自分の命が危なくなると平気で不殺解除して「仕方ないよね」とか
自分がやられると「本気じゃなかった」とか言うけど、このキラは言わないね
163通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 14:22:27 ID:???
次回のW-DESTINYではオーブに侵攻するザフト軍を前に
アスランとユウナの討論戦が再び見られそう。

春が楽しみだ。
164通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 15:10:03 ID:???
キテター!!
自分イキテテヨカッター!!
GJ!!

次回もwktkしながら待ってます。
165通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 15:42:39 ID:???
GJ!!
シンがこんなにも主人公してるよ。Wキャラの使い方も上手いし。
てか…マユかわいいよマユwww
166通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 17:40:52 ID:???
このSSのキラ達はW組のMSがEW仕様で助けられてるな。
167通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 17:54:09 ID:???
EW仕様は戦術が狭められた機体だからな
168通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 17:59:02 ID:???
GJ!!本編ではクソの役にも立たなかった残像とパルマがちゃんと生きてる…シンが運命のスペックをしっかりモノにしてるよ…!!
169Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/18(日) 19:55:56 ID:???
GJ!!!シンが輝いてるよぉ…運命が輝いてるよぉ…
GJ!GJ!GJです!!
170通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 21:16:21 ID:???
今このスレに気付いた
23話から先はどうやって読めば良いんだ・・・
171通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 21:23:14 ID:???
>>170
wiki逝けば読める
172通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 22:08:08 ID:???
>>171
読めたよありがとー
173通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 22:08:18 ID:???
GJ

キラがかっこいい―――
まぁ、ある意味キラにライバルができたようなものですからね。
男は競い合う相手がいてこそ輝くものなのだと再認。
親友となぁなぁの関係しか作り出せず、強敵に負けたら言い訳、
挙句の果てにはいMSがないと戦えないと言い出すようなやつとは違いますね。

―――ん? そうなるとシンは一人相撲?
いと哀れなり。
174通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 23:08:31 ID:???
GJです
相変わらず熱い展開にたまりません

追いかけるシンと、立ちはだかるキラ。この二人の実力差が絶妙なバランス
やっぱ強敵がいるからこそ主人公は輝くし、ライバルは超えるに相応しい強さと心意気をもってることが大切なんだとあらためて実感しました

まあ、なによりマユ可愛いよマユ(´ー`)
175通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 23:19:00 ID:???
蝶GJ!!
かつてここまで強敵として立ちはだかったキラがいただろうか
孤高の天才戦士VS努力と友情の戦士って構図はどうしてこうまで燃えるのだろう

次のインターミッションの回でのシン、アスラン、ゼクスの絡みが楽しみだ
勿論大穴(本命マユ対抗ステラ)ルナともね
176通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 01:09:17 ID:???
そういえばそうだ、シンの影に隠れてしまったがキラも相当熱くなってるな。
マジGJ
177通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 01:59:18 ID:???
ダコスタの扱いにワロスw
178通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 02:06:59 ID:???
そういや読んでて気になった。
×ダゴスタ
○ダコスタ
179通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 09:25:19 ID:???
ここのキラは納得できる強さを持っているからいいな。
シンとのライバル対決、今後を期待するぜ。
180通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 09:56:38 ID:???
ヒイロが漁師をしているのはパワーバランスの関係かな?

それはそれで面白い。
181通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 00:32:16 ID:???
>>180
萌えキャラ不足のためでは?

なんにせよSSGJ
182通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 01:01:00 ID:???
不殺の戦いってやつに嫌悪する人もいるけど
「なにがあろうともやり遂げる」のなら、そのキャラの魅力にもなり強さにもなる

本編のキラは危なくなると即座に路線変更するし、みっともない言い訳しまくり

このスレのキラは人形に嫉妬しつつも「自分の戦い」を曲げることなく信じる人のために戦う殉教者
こんなキラなら納得できる所もある
183W-SEED:2007/02/20(火) 04:01:19 ID:???
デュオとキラが公園のブランコに座りながら話をしている
 
「……」

マリューはキラに
「お前は来るな」
と言われたから少し離れた所からそれを見ていた

「…理解したぜ。つまりここは俺がいた世界とは違う世界なんだな」

「うん、だって…この世界の事何も知らないじゃない?
頭の良い僕が言うんだから間違いないよ。」

「…はぁ〜、何で俺ってこんなについてないのかねぇ」

「…ところで、デュオはもちろん行く当てとかないんだよね?」

「あ?…ああ」

「じゃあさ、僕と一緒にあの船に乗らない?」
キラが指指した方向から、なんとアークエンジェルが飛び出してきた!

「…仕方ねえか!その話乗ったぜ」

「そうこなくっちゃ♪」
184W-SEED:2007/02/20(火) 04:25:37 ID:???
なんやんかんやでアークエンジェルはキラとデュオとその他諸々を乗せて宇宙に出た。


場所変わってザフト艦
仮面を着けた男が口を開いた。男の名前はラウル.クルーゼ

「あの艦を追う方向で行きたいが、どう思う?」

白髪のおかっぱ頭の少年が最初に答えた。名前はイザーク.ジュール

「えっ、と…良いと思いますけど」

続いて金髪日焼けが言う。名前はディアッか.エルスマン

「はっ!!自分は反対であります!敵新型艦は全くの未知でありますが故に、援護を待ってから慎重に行くべきだと考えております!」

「…ふむ、キミ達はどう思うかね?…アスラン、ニコル」

緑髪の幼顔、ニコル.アマルフィがガムをくちゃくちゃ噛みながら答えた。
「ディアッかに一票」
続いて、青髪の少年アスラン.ザラが答えた。

「…あそこには会いたくない奴がいるから…ゴニョゴニョ」

「…よく聞こえんな。もう一回言ってもらえるかな?」

「あ、いや…ははは!どっちでも良いっす」

「…そうか。最後にヒイロ、キミはどう思う?」

壁にもたれかかる様にして話を聞いていた少年はゆっくりと口を開いた
「…俺は、任務に従うだけだ。作戦は任せる」



…to be contineud
185通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 05:13:47 ID:???
GJww朝からコーヒー吹いたww
最初からアスランに嫌われてるのかキラw
186通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 15:58:11 ID:???
GJ!
お前は来るな、てw
キラ面白いぜ
187通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 06:51:14 ID:???
乙です!
なんか、すごくお久しぶりのような気がします
188通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 14:38:19 ID:???
GJ!

ノリだけで楽しめる!
189Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 19:43:48 ID:???
 DESTENIY−WALTS 第2話
 
 一方その頃、ユニウス・セブンでの破砕作業は遅れていた。何故ならば破砕活動を妨害する謎の部隊の出現と、破砕活動に参加する予定のミネルバ隊が来ていないせいであった。
 ミネルバ隊が来ていない理由。それは前方に出現した三機のMSがミネルバの進行を妨げていたからである。
 黒い機体――モビル・ドールビルゴ――はありとあらゆる攻撃をはじき返す装甲を持ち、ビーム攻撃さえも機体の周囲に浮遊するぱっと見機雷の――プラネイトディフェンサー――バリア発生装置があるからだ。
 艦砲射撃さえも無効化してしまうこれに対し、タンホイザーで対応しようと考えたミネルバだが、そのすばしっこさになかなか照準が定められない。
「ちっくしょう! イキナリ攻撃してきて、そんな攻撃方法で、あんた達は何がしたいんだ!」
 だが、シンの言葉は無人のビルゴに届くことは無かった。
 だが、恐らくビルゴを見知っている者ならば、誰もが思うだろう。動きが妙なのだ。まるで、何かを忘れたかのような、ボロボロな動きだった。しかしそれでも、シン達赤服を圧倒する戦闘力を誇っていた。
『ちょっと、シン! もっと息合わせていかないと、倒せないわよ!』
『そうだぞ、少なくともこいつらを倒すには分が重過ぎる。一機一機慎重にいかねば――』
「分かってるよ! でも、そしたら他の機体に……ッ! 危ない、レイッ!!」
 ビルゴのビームキャノンがレイの乗るブレイズザクファントムを捉える。だがシンの言葉を聞いたレイはとっさに機体を退かせて、右腕を飲み込まれるに留める。
「ッ、助かった、シン」
 ミネルバの援護があるおかげでビルゴを抑えることは出来ているが、決定打は与えられない。それどころか、その圧倒的な火力で流れを断ち切っている。
「仕方が無いけれど、多少無理がある状況下でタンホイザーを起動させ――」
 その時、格納庫から緊急通信が入った。
『艦長! オーブの護衛が勝手にザクに!』
「ええっ!?」
 オーブ代表とタリア・グラディスの声が重なる。
 その時、今まで黙って戦況を見ていたギルバート・デュランダルが口を開いた。
「私が議長権限で特例として許可した。彼を行かせてはくれないだろうか? タリア」
 グラディス艦長とは言わずに、愛称でそう言ったデュランダル。
「ギル……しかし……いえ、何でもありません。彼を行かせてやって頂戴」
『はっ、はい!』
190Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 19:45:15 ID:???
『ザクウォーリア、発進どうぞ!』
「アレックス――いや、アスラン・ザラ、ザク、出るっ!」
 今何もしないでただのうのうと戦況を見守ることなんて――出来ない!
 そう強く決心したミネルバから発進したアスランは、ビーム突撃銃を構えてビルゴに乱射した。
「俺が時間を稼ぐ! その間にミネルバは照準を!」
『感謝する!』
 ビルゴはプラネイトディフェンサーを展開してこれを防ぐ、が後方からシンの乗るインパルスがビームライフルを放ち隙を作らせる。
 そこに立て続けにナイトハルトが襲い掛かり、アスランはビームトマホークで相手の隙を突くと、そのまま肩でタックルした。
 その一方でルナマリアはオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲をあまり動きが俊敏ではないビルゴに目掛けて放っていた。
 射撃の腕はよくないルナマリアだが、ビルゴはこちらがビーム攻撃を仕掛けたと判断するとすぐにあのバリアを展開してくれるので足止めが出来る、と踏んだのだろう。
 レイは左腕で上手くバランスを取りつつも、ファイヤビー誘導ミサイルを放って相手の足止めに専念していた。
 しかし、既に弾の消費が激しかった為すぐに弾が切れ、右手でビーム突撃銃を放つもビルゴはプラネイト・ディフェンサーを展開し迫ってくる。
 現在の分が切れたら例えカートリッジがあろうとしても弾倉を切り替えることは叶わない。
『レイはさがれ! このままじゃ落とされる!』
「すまない、シン!」
 レイが下がるということでビルゴが自由になり、次の獲物を求めて動き出す。
 ビルゴがアスランに狙いを定めたのかアスランの下へ急接近する。
 だが、ビルゴはそのままアスランを通り過ぎ――轟音と共にタンホイザーが発射され、アスランの攻撃でバランスを崩したビルゴを飲み込んでいく。
 後には、ビルゴの残骸だけ――かと思われた次の瞬間、皆の期待は絶望と共に裏切られることになる。
 ビルゴは健在していた。
 もう一機の飛び込んできたビルゴがプラネイトディフェンサーを展開したのだ。
 そしてそのままミネルバのブリッジに向けてビームキャノンを構え――たところでアスランがそのビルゴ目掛けて飛び蹴りを放とうとする。
 しかし、後方から放たれたビームキャノンを食らって右腕を失い、体制を崩したアスランはそこまで届かず、ビルゴがブリッジ目掛けてビームキャノンを放とうとチャージし――止まった。
 止まったのだ。一切の動作も。
 否、数瞬して、真っ二つに。少ししてアスランのザクの後方にいたビルゴも、胴体が二つに分かれた。
 思わず攻撃の手を休めたルナマリアにこれ好機と迫るビルゴ。接近しビームキャノンを構えて、だがしかし、それもいつの間にかに――真っ二つに。
 数秒して”それ”が姿を現した。
 両手には前大戦でフォビドゥンがもっていた鎌に酷似している――しかし、二つのビーム刃を展開する鎌を持ち、黒いマントを羽織る――Gがいた。死神のような、Gが。
191Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 19:46:28 ID:???
「ええい! ミネルバ隊は何をしている! 何時になったら……ッ!」
『確かに、この数は、洒落になんないでダローが、よっ』
 ところ変わってユニウス・セブンではイザーク・ジュエルとディアッカ・エルスマンの二人がメテオブレイカーを守っていた。
 ジンハイマニューバ2型八機をゲイツR一機、スラッシュザクファントム一機とガナーザクウォーリア一機で相手していたのだ。
 既に仲間の多くが撤退、もしくは撃破されていた。分散してはいるが、この分では他の仲間も危うい。
 そんな時、やっとメテオブレイカーの一つが作動した。立て続けに仲間のメテオブレイカーも作動する。
 三人で残りの数を四機に減らしたところで――残りの四機が撤退していく。代わりに三機。いかにも腕が良いといわんばかりの気迫だった。
「ふん! 受けて立とう! シホの方の部隊もも、少し心配ではあるがなっ!」
『いざ参る!』
 スラッシュザクファントムとジンハイマニューバ2型が激突するのを合図に、両陣営の機体が激突しあう。
 イザークの方は圧していたが、ゲイツRの方はやや圧され気味。ディアッカはガナーウィザードなので、格闘戦は苦手としているせいか、やや圧され、しかし腕のせいもあり互角、といったところだろう。
『つ、強い! しかし、とぉぅりゃぁぁああっ!!』
「来いッ!」
 ジンハイマニューバ2型が斬機刀をまっすぐこちらに向けて突進してくる。イザークはすんでのところでそれを回避すると、ビームアックスを振り下ろした。
 それは見事なまでに相手の機体の腰を両断していた。すぐさま機体を離れさせる。数瞬置いてからジンハイマニューバ2型が爆破した。
 ゲイツRは両腕を切り落とされていたが、どうやら勝ったようだ。ディアッカの方はというと。
 なんとオルトロスを相手に叩き付けて、そのまま蹴り飛ばしたらしい。砲身があらぬ方向に曲がっていたが、相手の機体はコックピットへの衝撃が激しかったらしくそのまま浮遊していた。
「よし、俺たちはこのまま破砕活動に……チッ、もうじき時間か!どうやらシホの部隊もメテオブレイカーの作動に成功したようだな。他にも未確認だがいくつか成功したらしいし……残念だが、撤退する!」
『へぇ? もう少し食い下がると思ったんだけど――』
「俺だって引き際ぐらいは分かる!」
『冗談だよ。そうむきになんな』
 そう言いつつも、内心は後悔の念に満ち溢れていた。それを一蹴して、撤退体制に入る。そこで彼は見た。
192Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 19:47:18 ID:???
 ――翼の生えた”G”を――
193Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 19:49:10 ID:???
「八機目撃破。まさかこうも妨害してくるとはな……」
 肉眼で確認されたのが失敗だった。こちらの性能を見るや否や、十数機で取り囲んだのだ。
 そこまで強くは無い。もといた世界ではこの者達よりも強いものがわんさかといた。しかし、この者達には――気迫があった。
『我らが同志の眠るこの墓標、落とさねば世界は変わらぬ! それをなぜこうもっ!』
 ……落としてどうなる? 
『軟弱なクラインの後継者共に騙され、ザフトは変わった! 何故気付かぬッ!』
 ……関係ない。俺は俺だ。
『我等コーディネーターにとって、パトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきものと!』
 ……知ったことではない。
 隊長機の気迫を感じつつも、十四機目を撃破。
 残り三機。
『応えよッ!』
 ややあって、ヒイロがその声に応えた。
「お前達は、そうやって血のバレンタイン以上の悲劇を繰り返そうとしている」
『こっ、子供ッ!?だが、しかし何をっ!』
「恨むなら勝手にしろ。だが、地球は関係ない。変えたければそれは連合に対して行え。地球ではなく!」
『ッ! しかし、現にナチュラルが――』
「お前達は自分達と同じものを増やそうとしているだけだ。悪意がないものでも、身内を災害で失くせば、コーディネーターのせいだと知れば、叫びたくもなる。銃を取りたくもなる」
『……だがっ!今更!』
 十六機目撃破。隊長機の気迫を感じながら、ビームサーベルを構える。
「……そうか、そういうことか。なら、俺はお前を殺さない」
『何ッ!?』
「お前は死に急いでいるだけだ。ただ単に同志達の下へ逝きたいと」
『……』
「だから、俺はお前を殺さない」
『待てッ! 確かにお前の言う通りかもしれない。ならば、せめて最後に戦ってくれ!』
「……一度だけ聞く。お前は勝つために、生きる為にそう言ったのか?」
『ああっ!』
「ならばその言葉……しかと聞き届けた」
 ヒイロと隊長機は互いに距離をとって、互いの得物を構えた。
 大気圏突入コースにに入りつつある状況下で、ヒイロはらしくない、と思った。
 刹那、両者の機体が弾き飛ぶ。両者の機体が入れ替わる。ヒイロの機体は無傷。しかし、隊長機の機体は――頭部がなかった。破壊されていた。
 隊長機は入れ替わりざまに、斬機刀を放った。相手のコックピットめがけて。しかしヒイロはそれを受け流し、ビームサーベルを頭部に突き刺した。
『見事ッ……情けは要らぬ。断ち切れ! 我の屍を乗り越えてゆけ!』
 ヒイロは、躊躇いが血に尋ねた。初めてだった。このような後味の悪さは。
「お前の……名は?」
『サトーだ……そなたは?』
「ヒイロ……ヒイロ・ユイだ」
『ヒイロ・ユイか……悔いは無い。やってくれ』
「……ああ」
 ヒイロは機体を動かして、隊長機……サトーの乗る機体に近付く。
 そして、躊躇わず一閃。
 最後のジンハイマニューバ2型は真っ二つになり、やがて爆散した。
 機体を翻して、ユニウス・セブンの最先端部を目指して機体を全速力で進ませる。
 ヒイロは気づいてはいなかったが、機体のダメージは蓄積されつつあった。向こうの世界での最後の戦いから今日まで、まともに整備をしたことが無かったからだ。だからこそ、簡単なチェックで済ませていたのが、仇になった。
194Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 19:50:38 ID:???
 最先端部まで辿り着くと、既に機体は高温にさらされていた。
 しかしその先――ユニウス・セブンの最先端部からやや離れた位置に体制を維持させれる。ツインバスター・ライフルを構えさせて、チャージさせる。
 狙いを定めようとするが、全く定まらない。おかしい。ヒイロは咄嗟にそう思った。
 それどころか、体制を維持させることも出来ない。肩部が火を吹き、腕部はがたがたと震えていた。
 そんな状況で、時間が残り少ないのを悟ったヒイロは無理な体勢からツイン・バスターライフルを発射。左腕は吹き飛び翼は装甲が剥げ、そのまま地球に――
 ユニウス・セブンは半分以上が光に飲み込まれたものの消滅はせず、そのまま共に地球へ――

 一足早く翼の生えたG――ウイングガンダムゼロはオーブ近海へ。ユニウス・セブンは分断された僅かな残骸を伴って地球中に――
 招かれざる来訪者とユニウス・セブンは地球へと降下していった――

続く
195Desteniy-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 19:54:35 ID:???
誤字修正
修正前 しかしその先――ユニウス・セブンの最先端部からやや離れた位置に体制を維持させれる。ツインバスター・ライフルを構えさせて、チャージさせる。
修正後 しかしその先――ユニウス・セブンの最先端部からやや離れた位置に体制を維持させ、ツインバスター・ライフルを構えてチャージする。
196通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 20:31:00 ID:???
どうでも良いんだけど
destinyね
197Destiny-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/21(水) 20:37:13 ID:???
あぁw恥ずかしい、こちらのミスです、申し訳ありませんm(__)m
198通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 23:48:02 ID:???
乙です!サトーとヒイロの一騎打ち燃えますた。続きを期待しております!
199通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 04:55:15 ID:???
GJ

戦闘描写がとてもヨカタ

ところで職人さんはイザークのセカンドネームも混同している予感

イザーク・ジュールが正解ジャマイカ?

ジュエルってデュエルとのリミックスみたいでry
ヒイロとデュオにビルゴが見参しているわけか
200通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 08:21:31 ID:???
デュオ「暗闇に紛れて俺、参上!」
201通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 11:40:13 ID:???
202通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 12:38:13 ID:???
>>200
レイ「俺はいつでもクライマックスだぜ!」
203通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 12:51:59 ID:???
声優ネタウザイ
204Destiny-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/23(金) 20:15:10 ID:???
あ、それは単なるミスです。申し訳ありませう
205通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 22:05:35 ID:???
>>201
パスわかんないです・・・。メル欄って、どこ見ればいいんでしょうか?
206通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 22:12:42 ID:???
声優オタ消えろ
207通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 23:18:23 ID:???
>>205
つ質問板
208通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 23:20:55 ID:???
>>201
こーいうもん(http://www.youtube.com/watch?v=lVDXqPxar90)を想像してて
がっかりした俺
209通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 00:12:18 ID:???
自分で作れb(ry
210通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 04:17:20 ID:???
>>208
それって全く面白くない
211通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 19:45:06 ID:???
エレガントウザイの次は声優ウザイか・・・

もうウザイって言えればなんでもいいのね
212通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 19:54:46 ID:???
はっきり言って声優ネタツマンネ。
213通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:00:16 ID:???
>>212
言いたいだけ?
214通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:22:35 ID:???
>>211
スルーせずにいちいち食いつくお前がウザイ
215通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:34:19 ID:???
>>214
自らスルーしろとは・・・

この粘着はどうにかならんのかね
216通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:37:17 ID:???
>>215
自分の荒らしを邪魔されるのが嫌なだけなんだよ
217通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:39:39 ID:???
我等が腐女子職人edたんと添い遂げる不真面目な片割れの文章が似てる件について
218通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:40:22 ID:???
オチスレから出てくるな
219通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:43:59 ID:???
ええじゃないかー
220通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 23:04:15 ID:???
まあ、確かに似てる所はあるかも知れんがな。取り合えず声優オタとスパ厨連れてヲチスレに帰れ
221通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 23:27:21 ID:???
>>220
とりあえずお前はスレ潰し工作をやめろ
222通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 01:12:56 ID:???
ed氏が今月の投下は無理と宣言していたレスが
目に入らない人がいるようで…
22326:2007/02/25(日) 04:20:26 ID:???
そろそろ、投下してもよさげな時期かな……?
224通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 04:35:10 ID:???
ぜひお願いしまーす!
225通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 04:38:50 ID:???
おk正座待機
226通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 09:41:40 ID:???
>>215-216
お前が工作員だろ。逐一反応すると見せかけてスレを荒らしたいだけの
227通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 10:39:53 ID:???
>>226
はいはいラクシズ工作員は出てってね
228通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 11:31:08 ID:???
添い遂げる不真面目な片割れがed氏と同一人物な件について
229通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 11:36:00 ID:???
ぶっちゃけどうでも良い…
230Destiny-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/25(日) 12:37:52 ID:???
最初からきちんと読み直してきて、流れが無茶苦茶なことに気がつきました。
各々の心理描写、戦闘シーンが適当だったりと…ヒイロの、街から海に行き、空に上がるまでの心境変化はおかしいとか、サトーの思惑の説明不足なども…ということで、いっぺんすべて書き直しいたします。
友人から助言を受けたりなどで、矛盾点などを無くす用にいたしますので再投稿は何時になるか…その時にPCが使えるかどうかすら怪しいものですが…
まことに申し訳ありません。
231通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 13:20:37 ID:???
>>230
正座して待ちます。
232通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 13:43:04 ID:???
PCが駄目なら携帯で投下すれば良いじゃない?
233Destiny-Walts ◆JESTW0zUfg :2007/02/25(日) 14:51:54 ID:???
>>232あ、その手がありましたか…どもです。では、もしPCが使えなくなった場合は携帯で投稿するという形式で…
何時投稿になるかは分かりませんが
234通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 17:04:11 ID:???
>>228
マジで?
235通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 17:10:16 ID:???
他スレでも振れまわってるみたいだけど、大した根拠のない話だよ
236通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 22:08:17 ID:???
>>223
投稿を期待してマツ
23726:2007/02/26(月) 01:14:23 ID:???
それでは、投下しよう。
23826:2007/02/26(月) 01:21:28 ID:???
「ウルカヌスが、消えた?」
 マリーメイア・バートンによる、真のオペレーション・メテオ終結から数日、戦いの疲
れを癒すガンダムチームに、プリベンターから不可解な報告が届いていた。その日は、偶々
『残ったガンダムをどうするか?』という話し合いをしており、カトルを中心に五人の意見
が出されていたのだが……
「消えたって、おいおい俺達は今、そう言う冗談は聴きたくない気分だぜ?」
緊張が走る室内で、デュオ・マックスウェルだけが極めて明るく、明るく振る舞おうと努力し、
報告者であるプリペンダーのサリィ・ポゥに詰め寄った。
「残念だけど、私もあんな事件の後、こんな冗談を言うほど意地の悪い性格はしてないつもりよ」
「つまり、誰かにウルカヌスが強奪された、ということか?」
 いち早く冷静を取り戻したトロワ・バートンがそう質問するが、サリィは首を振り、
「その可能性も含めて調査中……というしかないわね」
「どういうことだ?」
「それが……何ともおかしな話で……」
 サリィの話によると事の起こりはこうだ。
 元々廃棄資源衛星ウルカヌスは、カトル・ラバーバー・ウィナーによるガンダム廃棄計画に
よって太陽に送られたが、今回のマリーメイア動乱によって急遽戦力を必要としたガンダムチ
ームのため、やはりカトルの手によって再び地球圏へと帰還したものである。
 ガンダムが地球へ向けて発進した後は、とりあえずプリベンターの監視宙域に放置されてい
たのだが……
「マリーメイア一件の事後処理中に、そういえばウルカヌスはどうしましょうかって、プリベ
ンターの会議で議題に上がってね。とりあえず、直してまた太陽に送るにしても、今の状態を
知りたいからってプリベンターの巡洋艦が派遣されたの」
「それで?」
「そしたら、その宙域に着いてプリベンター巡洋艦からおかしな連絡が入って……『ウルカヌ
スが無い。消えてしまっている』って。まったく、驚いたわよ」
「そんなバカな、ウルカヌスは核融合炉が破壊されてますから、動けないはずです!」
 カトルは思わず声を荒げるが、無理もない事情がある。ウルカヌスは、元々とある事件の折
に発見された、OZの秘密工場を備えた衛星であり、その中には……
「誤認の可能性は?」
 今まで黙っていたヒイロ・ユイが、静かに口を開いた。
「私たちもそう思いたかったわ。でも、その報告を寄こしたのがね、プリベンターの技術部門
を総括してくれてる、ハワードなのよ」
「ハワード? あのピースミリオンのか? アロハシャツ来てる」
 発言したデュオを始め、ガンダムチームが何度も世話になっている技術屋ハワード。確かに
彼は、そんな冗談を言うタイプではなかった。
「それで、ハワードは具体的になんて言ってるんだ?」
「…………消えたわ」
「なに!?」
「連絡後すぐ、同じ宙域でプリベンター巡洋艦が、消えた」
 室内に衝撃が走った。
「撃墜されたのか?」
 五飛が、ポツリと、呟くように言う。その無神経な言葉に、デュオは一瞬睨み付けるが、
「違うわ。言葉通り、「消えた」のよ。影も形もなく、何処かにね」
「消えた……」
「だから、もしもの時のことを考えて、みんなにも伝えておこうと思って……」
 ウルカヌス内には、今だ多くの戦力が保持されている。それは、もうこの世に、宇宙であろ
うと地球であろうと、起動させてはいけない。そう言う代物だった。
23926:2007/02/26(月) 01:25:13 ID:???
「でも、僕たちのガンダムはもう……」
 カトルはチラリとヒイロを見る。
「ゼロ以外なら応急処置だけで動かすことは可能だ」
 ヒイロの乗るウイング・ゼロは、ほぼ大破に近い状態になっていた。他の四機はまだマシ
だが、いずれも今すぐに出撃できる状態ではない。
「どうせなら完全に修理したほうが良いだろう。ウルカヌスに収容されているアレは、この
前のサーペントより強力だ」
 トロワの意見に、デュオはやれやれと首を振る。
「折角最後の戦いにするつもりだったのによぉ……いやなことは続くもんだぜ」
「再びアレを使おうとする奴、そいつは悪だ」
 五飛は、そう断言する。
「サリィさん、僕らはこの通り今すぐにでることは出来ません。その間の事は……」
 カトルは、不安そうにサリィを見るが、サリィは笑って、
「安心して、みんなのガンダムが直るまではプリベンターが何とかするわ。今もその宙域に、
プリベンターの精鋭中の精鋭を派遣したから」
「プリベンター<風>って、やつかい?」
 デュオがからかい気味にいうが、サリィは首を振り、
「いいえ違うわ。プリベンター<ローゼンリッター>………薔薇の騎士よ」


 この世界、A.C.197年以降の戦いの歴史にガンダムを始めとしたモビルスーツの存在は確認
されていない。そして、同様にモビルドールもまた、その存在を遂に確認されることはなかった。
 そう、この世界では…………

              第1話『薔薇の騎士』



 プリベンター高速宇宙船の船内、操縦席には二人の男が座っていた。一人は、プリベンター
<ローゼンリッター>こと、ロッシェ・ナトゥーノ。もう一人は、民間資源コロニーMO-X所属の
<技術屋>オデルバーネット。先のMO-XとOZプライズを巡る事件で知り合った二人は、事件解決
後も度々顔を合わせる中であった。
 オデルは事件後、父の代から続くエンジン開発者の道を志し、その道の専門家であるハワードに
師事しており、今回、師が巻き込まれた事件を究明するため、ロッシェに同行をしていた。
「星を見ているのか、ロッシェ?」
「あぁ、星はいい……オデル、お前はそう思わないか?」
 ロッシェは、その中世の騎士のような服装で優雅にシートへ腰掛け、星々の海を眺めていた。
オデルはそんな、ロッシェにため息をつき、
「綺麗だとは思うが、私はお前ほど詩的な人間ではないさ」
「もっと、心に余裕を持て。心配なのはわかるが……」
 ロッシェはどこからともなく取り出した薔薇を一輪、ピッと投げ、
「過度の緊迫感や緊張は、人の判断を鈍らせると言うからな。まったく、お前ら兄弟は本当に対照
的だ。弟のほうは常に物事を前向きに考えているぞ?」
「それがアイツの良いところだ。私には、マネでない……」
「そういえば、最近はどうしてるんだ?」
「色々悩んでいるよ、前はモビルスーツの修理工になるのが夢だとか言ってたんが、この時代その
手の職種はほぼないからな……それこそ、お前たちのような職種でないと」
24026:2007/02/26(月) 01:27:59 ID:???
「フッ、プリベンターとてモビルスーツ戦力はそんなに保持していない。使えるのはこの前
ゼクスが使ったトールギスと、その女が乗るトーラス、そして……」
 ククッと、ロッシェは笑う。
「我が愛機だけだ」

 それから暫くして、プリベンター高速宇宙船は、問題のウルカヌス消失宙域まで来ていた。
そこは本当に何もなかった。周辺にコロニーはないし、衛星もない。だからこそ、カトルは
ウルカヌスをここに放置したのだが……
「……モビルスーツで出よう。万が一のこともある、このまま近づくのは危険だ」
「大丈夫か?」
「私が人形風情に後れを取るとでも?」
 不敵に笑い、ロッシェは後部モビルスーツ格納庫に向かった。そこには、前述のロッシェの
愛機が格納されている。
 リーオーをベースにカスタム化されたその機体は、頭部は西洋の兜のように角を生やし、肩
からはマントを纏い、特異な形のビームサーベルを腰に下げる、騎士であるロッシェの意向を
忠実に再現された機体となっていた。そして、その名は……
「ロッシェ・ナトゥーノ、レオス、出るぞ!」
 ハッチが開き、レオスはマントをはためかせながら宇宙へと飛び出した。

「付近に熱反応無し……レーダーにも、モニターにも衛星らしきものは発見できず、か。
レディ・アンから調査の依頼をされたときは絵空事を言うと思っていたが……」
『どうだロッシェ? こちらでは何も確認できないが』
「こちらもだ。もう少し中心部に行ってみる」
 ロッシェは、機体を動かし中心部へと進んでゆく。その後をゆっくりと、周囲の警戒をしな
がら付いてくる宇宙船。
「なんというのだったかな、こういうのを」
『なんだ?』
「私が以前、地上のローフフェラ財団本部にある図書室で、東洋の書物を読んでいたときだ。
東洋ではこんな風に突然ものが消えることに対し、面白い表現をしていた」
『ほう?』
「そう確か……神隠し、とか言ったか」
 その時、突然機体のモニターに異常が起きた。それまで映されていた映像が全て消え、けた
たましいノイズ塗れになった。
「なにっ、これは……」
 機体を動かそうと操作するが、一切受け付けなくなっている。
「オデル! オデル! くそっ、通信も出来ないのか!」
 呼びかけても、宇宙船との通信は遮断され、一向に繋がる気配がない。レオスは行動不能状
態になっていた。
「な、に?」
 それだけではない。今までノイズにまみれたモニターが、突如、白い光を映し出し、輝き始
めていた。
「これは……なんだ、なんだというのだ!?」

 そして、ロッシェ・ナトゥーノは、愛機レオスと共に、『この世界』から消えた。


24126:2007/02/26(月) 01:29:54 ID:???
 C.E73年、10月3日。
 100年単位安定軌道にあるはずだった、ユニウス・セブンが突如地球に向かって動き出
した。これは、現プラント政権に反感を持つ、ザフトの脱走兵によって編成された部隊が、
ナチュラルを殲滅せんとし行った、史上空前の規模のテロ行為だった。
 そして、今、ユニウス・セブンではテロリストとザフト軍による死闘が行われいた。
「我が娘のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!」
 部隊の隊長であるサトーが叫びながら、アスラン・ザラの乗るザクへと斬りかかった。
「娘?」
 アスランは困惑しつつ、シールドで受けきる。
「此処で無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と何故偽りの世界で笑うか! 貴様等は!」
「何を!」
「軟弱なクラインの後継者どもに騙されて、ザフトは変わってしまった! 何故気付かぬか
ッ!」
「くっ!」
 数の上ではミネルバ及び、ジュール隊がテロリストたちを圧倒していた。しかし、技量の
面では明らかに向こうが上手だった。
「こいつら……戦闘用タイプのコーディネーターかっ」
 現に、テロリストの部隊は数の差を補いながらも善戦している。このままでは、破砕作業
もままならない。
「我等コーディネーターにとって、パトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきもの!」
 サトーは叫ぶと、一気に機体を上昇させていった。アスランは彼の言葉を聞き、完全に硬
直してしまっている。
 サトーの機体を中心に、テロリストに機体が集まってゆく。
『隊長、我が方の被害が無視出来ないレベルに達しました』
「…………むぅ」
 部下の報告にサトーは眉を顰める。
『このまま、玉砕覚悟で特攻をかければ、何とかなるかも知れませんが……』
「いや、我々の目的を忘れてはならん。特攻などという行為で、軽々しく命を無駄にするな。
今日のところは引くのだ」
 サトーはそう決定を下し、すぐさま撤退をはじめた。
 それを見た、ミネルバ所属のパイロット、シン・アスカは、
「逃げるのか!? くそっ、逃がすものか!」
 逃亡しようとする、テロリストに追撃を試みようと機体を動かし、
『馬鹿者ッ!!!』
「うぁっ!?」
 強烈な一喝に、硬直してしまった。
『貴様の任務は我々の支援のはずだ。今は破砕作業に従事しろっ!』
 その声の主、ジュール隊隊長イザーク・ジュールは、偶然にもアスランとサトーの接触通
信を聴いてしまい、不機嫌になっていた。彼には今だ固まったまま動けないでいるアスランの気持ちが、よく分かった。
『全機、破砕作業を進めろ。今ならまだ十分間に合う』
24226:2007/02/26(月) 01:32:45 ID:???
「やれやれ……なんとか大丈夫そうだな」
 ミネルバのブリッジにて、撤退してゆくテロリストの一団を見ていたデュランダルは安
堵のため息をついた。
「はい、このまま破砕作業が無事に進めば、地球にはほんの僅かな欠片も落ちることはないでしょう」
 こちらも同じく安心したように、タリアが笑顔を作って言った。
「フフ、このままあれの、欠片一つでも落ちていたら、ブルーコスモス辺りがうるさそう
だからな。強引に開戦と言うことも……おっと、失礼。あまり代表には気持ちのいい話で
はありませんでしたね」
 デュランダルは同じくブリッジにて、事の経過を見守っていたカガリ・ユラ・アスハに、
軽く詫びる。しかし、カガリは首を振り、
「いや、議長の仰るとおり、ブルーコスモスとはそう言う側面を持つ連中だ……何はとも
あれ、あれが地球に落ちることが無くてよかった」
 ミネルバのモニター上に、メテオブレイカーで次々に破砕されるユニウス・セブンが映
し出されている。かつての悲劇の地であり、平和を誓い合ったはずの場所が、砕かれてゆ
く。ミネルバのブリッジは、粛然とした雰囲気になった。
 暫くそれを見つめた後、デュランダルが切り出した。
「代表、私は取り急ぎプラントに戻る必要があります。落下を防ぐことは出来ましたが、
なんの発表もしないわけにはいきませんし、そしてそれは出来るだけ早いほうが良い」
「それはそうだろうな」
「ですが、代表も自国のことがおありでしょうし、すぐにでもお戻りになりたいはずです。
そこで、といってはアレですが、よろしければこのミネルバでオーブに向かっては?」
 デュランダルの突然の申し出に、カガリだけでなく、ブリッジの面々も驚きの声を上げ
るが、察していたタリアはそれを制止、
「私は別に構いません」
 っと、クルーの行動を決定づける一言を発した。
「しかし、それでは議長が?」
「いや、このミネルバにはボルテールという宇宙艇がありますので、私はそれでプラントに
戻れます。しかし、オーブに戻るには大気圏から、地球に降下する必要があります。幸いこ
のミネルバは、大気圏下でも活動できる万能艦です。」
 カガリはデュランダルの破格とも言うべき申し出に考えを働かせる。デュランダルとしては、
今回の事件の当事者であるカガリに、地上で何かと便宜を図って貰いたいという思惑があるの
だろうが、カガリもまた一国の代表として、はいそうですかと行為を受け取るわけにも行かな
い、そこで……
「いや、そこまでして貰うわけにはいかない。ミネルバもまた、事後処理等で必要だろう。
わざわざ地球に降下させることはない」
「では、どうなさるのですか?」
「代わりと言ってはなんだが、破砕作業終了後、この艦を<アメノミシハラ>に向けて欲しい。
オーブ所有の宇宙ステーションだ」
「あぁ、あのロンド・ミナ・サハク氏が管理している……」
「あそこなら降下用シャトルぐらいあるだろう。あまり会いたいとは思わないが、こういう事
態だ、仕方ない」
「わかりました、そのように取りはからいます」
 デュランダルは、タリアにアイコンタクトを送り、タリアもそれを了承した。
24326:2007/02/26(月) 01:37:06 ID:???
 ボルテールに移乗したデュランダルは、長距離通信を飛ばし、プラントと連絡を取った。
「あぁ、私だ。これからそちらに戻る……あぁ、わかっている。勝手な行動を取って悪か
った。ところで、アーモリーワンの様子はどうだ?」
 アーモリーワンは、先日地球連合軍と思わしき部隊に襲撃された、プラントの軍事工廠
で戦闘によるかなりの被害を受けていた。
「私はすぐには戻れないからな……そうだ彼女を、『ラクス』を向かわせ……ほぅ、もう
行かせた? さすがに行動が早いな。あぁ、彼女が行けば動揺する市民をなだめることが
出来るだろう。私もなるべく早く戻るから、それまでよろしく頼む」
 通信を切り、デュランダルは息をついた。丁度ボルテールが発進する。
「しかし、未だに現プラント政権に不満を持つ輩もいるのか……私は、つくづく人気のな
い政治家だな、まったく」
 苦笑しながらも彼は砕かれ、破片とかしてゆくユニウス・セブンの残骸を、寂しげに見
つめていた。

 そして、その頃プラントでは、一台のシャトルが首都アプリリウスから、アーモリーワ
ンへと向かっていた。
「ねぇ〜……なんでわざわざあたしが、そんなところ行かなきゃ行けないの〜?」
 乗っているのは、議長のラクスこと、ミーア・キャンベル。
「いや、だからアーモリーワンにいる一般市民の動揺を防ぐために……」
「そんなの議長とかのお仕事でしょ〜? なんで、あたしが?」
 声が非常に似ているという理由でラクス・クラインの影武者的存在になった彼女だが、
その性格は年相応で、かつてのラクスが持っていた不思議なカリスマに欠けていた。
「あーぁ、折角ラクス様になったのに歌ったり踊ったりもしないで、被災地訪問だなん
て……意外に地味よね」
「ラクス様は、貴女ですよ。あまりそういった発言はお控え下さい」
「はいはい、わかってるわよ……」
 ミーアは不機嫌そうにシャトルの窓から外を見る。遠くに見える星が、何とも綺麗だった。
(あんな星みたいに、あたしも輝けると思ったからラクス様になったのに……これじゃ
あ、まるでただの)
 その時、シャトルに警報音が鳴り響いた。
「な、なによこれっ!?」
 ミーアのお着きが、シャトルに同乗している兵士に確認を取る。
「そ、それが、突然シャトルの前方にモビルスーツが」
「な、なんだと!」
 冗談ではない話だった。プラント付近にザフト軍以外のモビルスーツがいるとは思え
ないが、昨日の今日である。連合だったとしたら折角用意したラクスの身に危険が……
「ねぇ、どうなってるのよ?」
 ミーアが不安そうに声を上げるが、ふと、窓の外から、そのモビルスーツが目に入った。
ふわふわと、ただ宇宙に浮かぶだけのそのモビルスーツは、軍事知識に乏しいミーアであっ
ても、それがザフトのものでないことを告げていた。そして……
「あっ」
 一瞬だが、ミーアはそのモビルスーツに見とれてしまった。そのモビルスーツは、彼女が
今まで見たどんな機体よりも特異的で、優雅だった。
「……騎士?」

 これが、ミーア・キャンベルと、薔薇の騎士ロッシェ・ナトゥーノの、出会いの瞬間だった。

                                        つづく
244通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 01:37:48 ID:???
同じテロリスト繋がりということで、生まれて初めてこんな物作ってしまった。
反省はしていない。

ttp://upload.3deg.net/cgi-bin/uploadmovie/upload.cgi?mode=dl&file=85

keyはメル欄
24526:2007/02/26(月) 01:38:52 ID:???
まずはこんなところ。タイトルは未定ですが、メインキャラはWサイドから、
ロッシェ・ナトゥーノ。種死サイドから、ミーア・キャンベルとアスラン・ザラに
なる予定。
種死をなぞるようで、全然違う話になる予定です。

246通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 01:49:16 ID:???
待望のG-UNIT物GJ

LOブースターじゃないのか
まあバランス的には丁度いいよな。

………ブルムには期待して良いんですか?
247通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 01:59:07 ID:???
26氏GJ!
予想の斜め上を行く展開ですね。
続きを期待していますよ。
248通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 07:24:36 ID:???
ハイドラまだー?
249通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 08:57:40 ID:???
G-UNITはさっぱり判らん
今入手可能でいい資料ない?
250通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 09:37:22 ID:???
>>26GJ!
っていっても自分もG-UNITわからん。なんか面白そうだから
探してみよう…と思ったらAMAZONで買えるな。
251通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 11:16:17 ID:???
ボルテール(ヴォルテール?)って遺作隊のナスカ級なんだが
25226:2007/02/26(月) 12:48:42 ID:???
>>251
あれ、ミネルバからプラントに帰るとき、議長が乗った宇宙艇の名前、
それじゃなかったけ?
どこで、勘違いしたんだろ……
25326:2007/02/26(月) 13:00:20 ID:???
あ、違う、あのシーンはミネルバ艦載機で、イザークの旗艦「ボルテール」に
移乗したっていうシーンだった。自己解決、自己解決。
つーことは、あの宇宙艇に名前はないのか。
254通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 13:02:00 ID:???
26氏GJ

ミーアが活躍しそうなSSだ
255通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 19:36:27 ID:???
やはりG-UNITはマイナーか。
連載当時はわくわくしながら次のボンボンを待ったもんだぜ。
コミックジャパンは永遠に2話が来なかったが…
256通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 20:16:06 ID:???
>>26氏GJ!
G−UNITを初めて知ったのはたしかGジェネFだったなぁ
この後の展開がとても楽しみです
25726:2007/02/26(月) 22:48:26 ID:???
一応、2話目出来てるけど少し書きためてから公開してこうと思います。
ストック溜まり次第投下するので、よろしくです。
258通常の名無しさんの3倍:2007/02/27(火) 19:44:55 ID:???
>>227
お前が帰れラクシズ厨
259通常の名無しさんの3倍:2007/02/27(火) 22:45:32 ID:???
何この自演の嵐
260通常の名無しさんの3倍:2007/02/27(火) 23:07:30 ID:???
お前らはツンデレ腐女子職人edたんが投下しないからって自演するなよ
261通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 01:57:00 ID:???
雑音はスルーで
262通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 12:12:56 ID:???
こんなんじゃ職人さん投下してくれないよ。
263通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 12:17:59 ID:???
ところでW-SEED氏の作品がWikiにうpされてないので
前の部分が読めないのだが・・・・
264通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 12:23:02 ID:???
すまんが三人目っていう職人を引き取ってくれないか?
26526:2007/02/28(水) 13:22:51 ID:???
こっそり、真っ昼間に投下してみよう。
266運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:27:02 ID:???
 議長がミネルバを去った後も、ミネルバとジュール隊による破砕作業は続いた。テロリ
ストが早々引き上げてくれたこともあり、作業は思いのほか上手く進み、地球の引力圏に
はいる前に、完全に破砕することが出来た。
「よし、メテオブレイカーによる破砕作業はこの辺で良いだろう。後は本国から、破片を
回収する工作部隊を回させよう」
 ジュール隊隊長のイザークは、きびきびと指令を出した後、未だ魂が抜けたかのように
制止を続けるアスランのザクへと近づいていった。
「アスラン、おい、アスラン!」
 怒声とも思えるような声で、アスランに呼びかけるイザーク。
『……イザークか』
「そうだ、破砕作業は終了した。何をボケッと突っ立ている!」
『すまない、少し動揺してた』
「今のお前に戦場は無理だ。さっさとミネルバに戻れ」
 アスランは何か反論しようかとも思ったが、イザークの言うことは事実でもあったので、
やめた。確かに今の彼は戦場にはいられなかった。早く、ミネルバに、カガリの元に戻って、
パトリック・ザラの息子アスラン・ザラではない、アレックス・ディノに戻りたかった。

 ミネルバに帰還した『アレックス』に、ミネルバ所属のパイロット、ルナマリアが労いの
言葉をかけた。『アスラン』が戦闘で役に立ったかどうかは別としても、それぐらい礼儀だ
ろうと思ったからだ。しかし、彼はそれを無視して通り過ぎていった。
「なによあれ? 無視しちゃって」
 当然ルナは憤るが、レイがそれをなだめる。
「久々の実戦だったんだ……きっと身体に負担が掛かったに違いない」
「でも、一言ぐらい何か言うもんじゃないの?」
 彼が戦士アスラン・ザラだったなら、確かに答えていただろう。しかし、帰還した彼は、
護衛官アレックス・ディノだった。
「…………」
 シンはアスランの去った方向を、怪訝そうに、黙ってジッと見ていた。

 その後、<アメノミシハラ>に到着したミネルバは、そこでオーブ代表カガリ・ユラ・
アスハと、その護衛官アレックス・ディノを降ろして、プラントへと帰還していった。
カガリは、<アメノミシハラ>を管理する、ロンド・ミナ・サハクにオーブ帰還のための
シャトルを借り受けた。元々、家同士の仲が非常に悪く、さらにロンドが、カガリが尊敬
する亡き父、ウズミ・ナラ・アスハに対する侮蔑的発言をよく行っていたため、二人の面
会は極めて形式的で、感情の籠もらないものだった。
 しかし、それでも、建前は建前、二人は二言三言挨拶程度に会話をし、ロンドは「今回
のテロ行為に対して、オーブ本国は如何様に動くか?」と問うた。
 これに対しカガリは、「オーブが直接の被害に遭っていない、そして、地球上の主立っ
た諸国に被害が出ていないのであれば、私は特に積極的に動く気はない」と完結に答えた。
その答えにロンドが満足したのかはわからないが、ただ一言「そうか」とだけ答え、二人の
面会は終了した。
267運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:30:31 ID:???
「とは言ったものの、このまま平穏に物事が進むとも思えないよな」
 帰還用の降下シャトルで、カガリはアレックスと話す。
「あぁ、防げたとはいえ、ユニウス・セブンが落ちるところだったんだから……しかも首
謀者は……」
 アレックスは、テロリストの隊長と思われる男の発言を思い出し、眉を顰めた。
「コーディネイターか……大西洋連邦の大統領、ジョゼフ・コープランドはかなりの穏健
派だから、あそこは心配いらないと思うんだけど」
「あぁ、確か『プラントを含めてた地球圏統一国家の樹立』を公約にしていたんだったな」
「実際、良い政治家だとウナトも評価してるさ。まあ、アイツは連邦寄りな一面もあるが、
ただお世辞を言うような奴じゃない」
「しかし、大西洋連邦は大丈夫でも、連合単位で考えると……」
「ん? ……そうだな」
 ブールコスモス。
 アレックスとカガリが互いに考えた組織の存在は、確かに無視できないものだった。
「ブルーコスモスの現盟主、ロード・ジブリールは何かに付けてプラント批判、コーディ
ネイター蔑視をする男だからな……今回も何かというんだろうけど」
「議長は何か言ってたのか?」
 アレックスが戻る前にデュランダルはミネルバを去っており、会うことが出来なかった。
「ユニウス・セブンが落ちてたら、無理矢理開戦に持ち込まれていたかも……なんて、怖
いこと言ってたけど、特に心配はしてない様子だったな。連中だって、完全に防がれたテ
ロ行為を理由にじゃ、押し切れないと思ったんだろ」
「だといいんだがな……」



              第2話「戦士だった男」


 オーブへと帰還したカガリは、すぐに行政府へと向かった。そこには既に、ユウナ・ロマ
・セイランを始めとした現オーブ政権の議員たちが集まっており、カガリの帰りを今か今か
と待ちわびている様子でもあった。
「では、大西洋連邦は遺憾の意を唱えただけなのだな?」
「はい。それとジョゼフ大統領は早急な事件解決を望む、とも。これが会見の際の映像です」
 映像では、ジョゼフ・コープランドによる緊急会見が行われていたが、特別大事にするつ
もりはないようで、あくまで形式的な発言が目立った。しかも、遺憾の意を唱えてはいるが、
それと同じくテロを未然に防いだザフトへの感謝の意も行っており、ジョゼフが穏健派の筆
頭であることを示していた。
「この事も含めた上で、今度、連合内で和平に向けての会議が行われそうですが、これには
中立国である我が国は関係ありません」
 映像を消しながら、ウナトがそう発言した。
「うむ、そうだな。それで、もう一度確認するが各国に被害などは出ていないんだな?」
「それはもう。ユニウス・セブンの欠片一つ、地球には落ちてきませんでしたよ」
 ウナトの子であり、カガリの『婚約者』でもあるユウナ・ロマ・セイランが言う。
「大統領の発言が抑え目なのも、これといった被害が出ていないからですね。まあ、落とそ
うとしたのもコーディネイターであり、防いだのもコーディネイターですから、そこのとこ
ろは難しいのでしょうが……」
268運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:32:40 ID:???
 プラント内の内輪揉めと言ってしまえばそれで済むのかも知れないが、狙われたのはあ
くまで地球だ。プラントではない。そのことがまた、各国の対応を複雑にさせていた。
「代表、我がオーブとしましてはいかがするおつもりで?」
「あぁ、それは」
 カガリはロンドに言ったのと同じ説明をする。
「……まあ、今のところはそれが妥当でしょう。プラント側も事の経緯を細かく説明して
いますし、後はテロリストを逮捕するだけです」
 現在、プラントは全力を挙げて事件の究明と、テロリストの逮捕に専念しているという。
カガリが不可解だったのは、先のアーモリーワンへの襲撃事件について、プラントが何ら
発表をしないことだった。カガリも居合わせた人間として、あの事件が連合軍によるもの
と思っていたが、何故そのことを追求しないのか?
(事態悪化を防ぐためか? しかし、あの事とユニウスの一件は別問題だ。議長は一体何
を考えている?)
 カガリは悩むが、答えを出すことは出来なかった。
「代表、何か?」
 そんなカガリの様子に、ウナトが声をかけたが、
「いや、なんでもない。それより、オーブの方針を発表する会見についてだが」
「あぁ、その件については既にマスコミ各社に……」

 その頃プラントは、ごく一部のものだけに知らされた、衝撃の事件が起きていた。あの
ラクス・クラインが、未知のモビルスーツと遭遇し、これを救助したというものである。
無論、ラクスとはラクスに扮しているミーアのことだが、それを知る者が彼女をミーアと
呼ぶことはまず無い。
「なるほど、ラクスが……」
「はい、ラクス・クラインが漂流するモビルスーツと中のパイロットを見捨ててゆくなん
てするはずがない、と仰られまして」
「それは正しい判断だ。しかし……」
 デュランダルは渡された報告書を見て、ため息をつく。
「この未知のモビルスーツを救助したとあっては、宣伝にも使えないな」
 それはザフト及びプラントを揺るがせるような衝撃の事実が書かれた報告書だった。
ミーアがザフトに回収させたモビルスーツは、ザフト製・連合製ともにかけ離れたもの
であり、装甲に使われている材質も、動力源とされているものも、現在の科学技術では
到底実現できるものではなかった。
「パイロットが乗っていたというが、今どうしている?」
「今は、ラクス様が看ておられます」
「ラクスが?」
 自分の興味のあること意外には余り動こうとしない少女のことを思い出しつつ、デュ
ランダルは怪訝そうに聞く。
「えぇ、かなり興味がお有りのようで……まだ意識は目覚めておりませんが」
「ふむ……」
「変わった人物でしたよ。ノーマルスーツも着ずに、モビルスーツに乗っているのです
から。まあでも、コーディネイターだと思われますが」
「何か身分が確認できるものでも出てきたのかね?」
 いえ、そう言うわけでは、と部下はいいつつも、
「あれほどのたぐいまれな美貌の持ち主、ナチュラルのはずがありませんよ」
 笑ってそう答えた。
269運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:35:50 ID:???
 一方でオーブへと帰還したアレックスは、ある男を、アスラン・ザラとして訪ねていた。

『我等コーディネーターにとって、パトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきもの!』

 アスランは、ユニウス・セブンの一件で出会ったテロリストの発言に頭を悩ませていた。
パトリック・ザラ、それは彼の父親であり、かつてのプラント最高評議会議長であり、ザ
フトの総司令官だった偉大なる男。そして、憎しみの余り復讐鬼と化し、多くの同胞を巻
き込み死んでいった、愚かな男。
「未だにあの人の言葉を信じ、戦い続ける兵士がいる……それなのに俺は」

『貴様ぁっ! そんなところで何をやっている!』

 破砕作業の最中、イザークにいわれた言葉。そう、俺はこんなところで、祖国でもない
国で何をやっているのか?
「父上が正しかったとは今でも思えない、でも俺は父上を……」
 本当に、理解してやることが出来たのだろうか? 彼は彼なりに、プラントを愛し、家
族を愛し、妻を愛していた。俺がモビルスーツに乗って戦ったように、だ。
 やがてアスランは、海辺の屋敷へと車を走らせていた。
 会うのは何ヶ月振りになるだろうか? そんなに経っていないと思われたが、アスラン
には今回の訪問が、かなり久しぶりのように感じ、彼と会うのもまた、酷く懐かしく感じた。
「ラクス、彼はいるかい?」
 訪れたマルキオ邸。そこにはプラントのかつての歌姫、本物のラクス・クラインと、最
強の戦士と呼ばれた男が暮らしていた。
 ラクスはアスランの突然の訪問に、驚き、また喜びもしたが、『彼』に会いに来たとい
う事実を知ると顔を曇らせ、
「テラスの安楽椅子に……ここのところは毎日そこにいますわ」
「……そうか」
 彼女の口調から、彼とラクスの仲があまり上手くいっていないと感じたアスランだったが、
そのようなこと今は関係なかった。

「よぅ、キラ」
 キラ・ヤマト。かつて最強の戦士と呼ばれた前大戦の英雄。地球連合、オーブ、三隻同盟と
激闘の中を死ぬもの狂いで生き続けた彼は今、オーブにいる。
「…………アスラン」
 大戦後の彼は、一言で言えば『抜け殻』だった。何か大切なものを失ったかのように無気力
になり、さっさとオーブに隠遁してしまった。
(いや、実際にコイツは大切なものを失っている)
 アスランは、安楽椅子に腰掛けるキラの手が、ギュッと握られているのを見て、そう思った。
今の彼にかつての戦士の面影はどこにもない。彼は戦後、ザフトにフリーダムの返還を求めら
れたときも、猛反対するラクスを無視し、二つ返事で了承してしまった。
 彼は、極端に武器や兵器を嫌うようになった。
「久しぶり、かな。ゴメン、最後に会ったのがいつだか、憶えてないんだ」
 意外に明晰なその声は、しかしどこか頼りなく、覇気に欠けた。
「俺もだよ……なんだか、随分久しぶりで、懐かしい気もする」
 アスランはそう言うと、テラスにある椅子を持ってきて、キラの前に腰掛けた。
270運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:38:52 ID:???
「珍しいよね。今日は、どんな用?」
「ニュースで見てないか? ほら、例のユニウス・セブンの……」
「あぁ、あの事件」
 キラの声は、それがどこか遠い世界の、他人事のように感じさせた。実際キラにとって
は他人事なのだが、アスランは違った。
「実は俺、あの現場にいたんだ」
「君が?」
「破砕作業を手伝うためにね。近くの艦に、カガリもいた」
「モビルスーツに、乗ったの?」
 キラの声は、少しだけ、アスランでないとわからない『怯え』が含まれていた。
「……乗ったよ。それで、テロリストとも戦った」
 アスランは事の始まりから終わりまでを、キラに話した。キラは黙って聞き、相づちも
何も入れず、目を瞑っていた。
「ショックだったよ。父のこととか、血のバレンタインのこととか、未だに引きずってる
奴らが居るってことにさ」
「…………」
「復讐心なんて、俺は前の戦争と一緒に捨てた。でも、捨てきれない奴はまだいるんだ。
そう思ったら俺、悩んでな」
 そしてその復讐者たちの行動理念は、自分の父の言葉なのだ。他人事ではない。
「俺は今、こうしてオーブにいる。カガリの護衛官なんて役職を貰ってはいるが、それ
だって俺が何か努力して手に入れた訳じゃない。ただ、周りに流されただけだ」
 カガリには勿論感謝している。極秘裁判とはいえ、ザフトを追放された自分を拾って
くれたのはカガリだ。恩義も感じているし、好意も持っている。しかし、彼女とどうこ
うというのはあり得ない。彼女はオーブの代表であり、自分はただの護衛官。
 現に彼女は、来月にはユウナ・ロマ・セイランと正式に結婚するのだ。
 ユウナ自身は「カガリの気持ちが他を向いているうちは、結婚なんてあり得ない。僕が
彼女を振り向かせてから、始めてその資格が生まれるんだ」と言ってはいるが、婚約も結
婚も昔から決まっていたこと、ただ時期が延びるだけだろう。
「アスラン、僕はね……」
 一通り話し終え、物思い耽っていたアスランに、キラが呟くように口を開いた。
「僕は前の戦争で、周りに流されるままに戦い続け、その結果大切なものを失い続けた」
 一人は親友、もう一人は……握る手に力が入る。
「僕の戦いの動機は、復讐心じゃなかった。こんな言い方をするのは悪いけど、僕は血の
バレンタインでも、ヘリオポリスが崩壊したときも、戦い始める前に失ったものは何もな
いんだ」
 テロリストの男は娘を失い、アスランは母を失ってモビルスーツに乗った。
「だから僕は復讐心で戦う人間のことを、理解できない。いや、理解しようがないのかな、
僕にはそういった部分の感情が死んでしまったから」
 キラは、前大戦で最大の強敵とも言える男と一騎打ちをし、これに勝っていた。だが後に
知ったことだが、そのアスランの元上司でもあった男は、キラの一番大切なものを、奪っていた。
271運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:42:06 ID:???
「あの時、僕の中で何かが死んだ。彼に勝って、僕の最初で最後の復讐は終わったんだ」
「キラ……」
「君の悩んでることは、今の僕でも何となくわかる。でも、アスラン、僕は復讐者たちに
何か言える立場じゃないし、言うつもりもない。だけど……」
 一瞬だが、キラの目に、精気が籠もったような気がした。
「僕は戦いは否定するよ。人はもう戦っちゃいけない。もう兵器なんて捨てて、モビルス
ーツになんか乗るべきじゃないんだ」
「…………」
「人は血を流しすぎたよ……流しすぎたんだよ」
 いつの間にか開かれたキラの手の平には、女物の口紅があった……

 キラに別れを告げた後、アスランはもう一度ラクスに会った。アスランにとっては元婚
約者でもあるこの少女は、今もっとも複雑な立ち位置にいた。というのも、戦後の彼女は
全てを捨ててキラの元へ行った。キラを愛していたのだろう、少々無責任だとも思ったが、
彼女もキラと同じく、戦いに嫌気が差していたのだ。
 しかし、ここで一つの誤算が生じた。なんとキラ・ヤマトは別に、ラクス・クラインの
ことを愛してはいなかったのである。これにはアスランも驚いた。前大戦の時、何度かラ
クスと親密そうにしているキラを見ていたから、てっきりそうなのかと思ったのだが、キ
ラの心はずっと別の『少女』に向いていた。
 そして、その愛すべき少女はもう、この世にはいない……それでもキラは想い続け、贖
罪をし続けているという。守れなかった、大切な人に。
 だから今のラクスは、自分に振り向くことのない少年に甲斐甲斐しく世話を焼く、ある
意味哀れな少女だった。いつかは振り向いてくれると信じ、彼の悲しみを和らげることが
出来ると信じて……全てを捨ててきたというのに、結果が叶わぬ片思いとは、恋愛に疎い
アスランでも酷い話だと思ったが、キラに罪があるわけでもないし、非常に複雑だった。
「もうお帰りになるのですか?」
「あぁ、もう用は済んだよ」
「そうですか……」
 そんなこともあってか、アスランとラクスもまた、会話が少ない。ラクスにしてみれば、
アスランは一方的に振った男でもあるため、会話をする後ろめたさも少しあった。
 だが、しかし……
272運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:44:17 ID:???
「アスラン、何か悩んでいらっしゃるのですね」
「えっ?」
「貴方の顔を見れば、それぐらいわかります。そしてそれはキラに話した後も、解消されて
はいない」
 アスランは、相変わらず高い洞察力を持つラクスに驚いていた。彼女はこの隠遁生活の間
も、自分を見失ってはいないようだ。
「プラントも、地球も、そしてオーブも、また何か大きな事が起こりそうでね」
 アスランは内心、自分があのテロリストたちに逮捕されて欲しくないと思っていることに、
気付いた。
「……もし、仮に、の話ですが」
 ラクスの声に、アスランは少しばかり怪訝な顔になった。今のラクスの声には、どこか、
『期待』するような響きがあったからだ。
「仮に大きな戦いがまた起こるのだとして、私はまた表舞台に立つべきなのでしょうか?」
「それは…………」
 君は表舞台に戻りたいのか? と、アスランは聞くことが出来なかった。
「そうだな、その時は……」
 だから彼は、
「その役目を今度負うのは、」
 新たな決意を持って、
「俺なのかも知れない」
                                   つづく
273運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/02/28(水) 13:45:55 ID:???
どうも、26です。スットクが溜まってきたので投下。

第2話どうだったでしょうか?
うちのキラとラクスは、こんな感じの奴ら。
悩んでたタイトルなんですが、『運命の歌姫』と言うのしました。
この作品の歌姫が誰かは、まあ読んでのお楽しみ。
今回はロッシェ出てきませんでしたが、次回また出てきます。
尚、ブルム・ブロックスについてはなんとかしようとは思ってますが、
何分死人のため、どう登場させるか、悩んでます。
274通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 14:16:48 ID:???
素晴らしいです。
キラのフレイへの想いが、そしてラクスの切ない想いがとても哀しいですね。
どうなるのか分からないですけど、続きが非常に楽しみです。
275通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 21:30:08 ID:???
これはこれで楽しみだね、wktkして待ってます
276通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 21:38:09 ID:???
GJです!
どのキャラもしゃんとしてて良いよ。
G-UNITキャラは知らないけど、W系らしい人物とMSみたいで
種キャラ達とどう絡むのか素直に楽しみにしてる。
議長とミーアもどう動くのか読めなくてwktkだ。
277通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 01:32:03 ID:???
キラが切ないねえ…しかし抜殻であるがゆえに逆にある意味自我を保って
いられてるっぽいと言えなくもないのが皮肉というか。
しかしフリーダム返却に猛反対とか、表舞台への再起に意欲アリとか
本物ラクスの方は…いやこれも例えばキラが振り向いてくれない悲しみで
歪んだもの、とかいう事であればまだ理解できる範囲の話となるかな…?
278W-SEED:2007/03/01(木) 04:10:53 ID:???

「艦長!おやすみの所すみません!至急ブリッジに来て下さい!」
アークエンジェル、マリューの部屋に通信が入った。どうやらマリューは休憩で寝てたようだ
「…ん、どうしたの?」
寝惚け眼で答えるマリュー。素っぴんだ

「…うわ」
チャンドラはビックリした。素っぴんのマリューは思いの外酷いらしく「…うわ」と言っちゃうほどだ

「…?どうしたの?報告はしっかりとね」

「…あ!すみません!ブリッジで喧嘩が起きてるんです!キラとサイが…」

「…私じゃなく、ナタルにお願いできない?」
マリューはすっごい嫌そうな顔をして言った。キラが苦手なのだ

「…バジルール少尉はすでに止めに入ったんですが…、とりあえず来て下さい!」
チャンドラはマリューの言葉を待たずに通信を切った
「…あー、まぢ行きたくねー」
マリューはバッチリ化粧してからブリッジに向かって行った。
ブリッジに向かう途中に腕を押さえながら医務室に向かうナタルに会った。
ナタルは
「…艦長、腕にお気をつけ下さい」
と言い医務室に向かって行った。

マリューがブリッジに入った瞬間、凄惨な光景が目に入ってきた
キラがサイの腕を捻あげているのだ!
止めに入る者はことごとく腕を捻あげられて行く!そしてまたサイの腕を捻あげるのだ

「ちょっ、一体何があったのよ!?キラ君やめなさい!」

マリューはあとちょっとでサイの腕が折れると直感的に察知した。…そう、諸君が思ったようにニュータイプなのかもしれない。
279W-SEED:2007/03/01(木) 04:21:45 ID:???

「黙れ脳なし」

場を一瞬で凍らせる一言。マリューの心はズタズタだ
だが、引き下がる訳には行かない。なんてったってサイの腕が折れそうなのだ。

「ホワッ!ホワッ!マジやばい!マジやばい!ギブギブ!!」

サイはもうマジやばいのだ。意を決したマリューは無理矢理キラの腕をサイから離そうとした
…が、案の定マリューの腕が捻あげられてしまった
「ちょっイタタタタ!」
「お前の腕は…遠慮なく折る!」
キラが叫ぶ、マリューは恐怖する
あ、折られる。マリューが直感的に思った時警報がなった。
「レーダーに反応です!…これは!先刻のザフト艦です!」

「助かった…じゃなくて、振りきれそう!?」
「無理です!前方と後方を挟まれてます!」
「くっ!!…キラ君とデュオ君、フラガ大尉は各機体で待機!
各員戦闘準備よ!」

マリューが腕を抑えながら叫ぶ

「この前の艦ってことは…アスラン、追ってくるなんてバカじゃないの?」

キラはMSデッキへと歩いて行った。
サイは泣きながら医務室に向かって行った。
「…ところで、さっきのキラ君どうしてあんなに怒ってたの?」

「あぁ、何かサイがキラのベッドに悪戯でエロ本置いてたらしく、それを見たデュオがキラの事バカにしたんですよ。それでキラが怒って…」

「…サイ君、バカね」



…to be contineud
280通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 05:13:43 ID:???
このスレ活気出てきたな
職人さん達GJ!
281通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 15:24:21 ID:???
GJ!相変わらずキラブチ切れてるなw
つまんねーことでケンカするなw
282通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 16:01:52 ID:???
ちょっww面白すぎるw次回はディアッか達が出てくるのかww
職人さんGJ!
283通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 16:37:46 ID:???
>>「黙れ脳なし」
 テラワロタ。GJ!
284通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 16:51:06 ID:???
馬鹿にしたデュオはイの一番に逃げたんだろうな・・・
285通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 17:09:05 ID:???
向かって来ても普通に倒せるだろ
286通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 17:50:20 ID:???
このキラならわからんとか思っちゃう俺。
287通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 22:34:50 ID:???
腕捻あげられるデュオしか想像できねえww
288通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 23:17:28 ID:???
あの5人の中で運の悪さならピカ一だからな、2番君は
ほかの4人は捻られなくても、2番だけはなんか油断した隙に捻られそう
289通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 23:37:10 ID:???
>>「黙れ脳なし」
一瞬、ヘイトスレに紛れ込んだのかと思った。キラ様降臨かと・・・
290通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 23:43:06 ID:???
>>287
はいはいラクシズ厨は出てってね
291通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 00:04:27 ID:???
こいつぁケンコウのキラ以上だなw
ガンガレ凸超ガンガレ

こんな危険人物と一緒にいなきゃならないのを不運とみるべきか
敵に回らずにすんで珍しくラッキーとみるべきか……ww>2番
292通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 01:31:40 ID:???
>>288
デュオのやられっぷりは異常だよなww
それだけにヴァイエイト・メリクリウス戦は燃えたが。
293通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 02:34:58 ID:???
明らかにネタで言ってんだろ。ラクシズ廚に敏感になるなよ
スレが荒れる
294通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 03:28:09 ID:???
とりあえずワロタww
295運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:01:44 ID:???
投下します。
296運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:05:22 ID:???
「本気ですか? 大統領?」
 ブルーコスモス盟主ロード・ジブリールは、スクリーン越しに映る男、大西洋連邦大統
領ジョゼフ・コープランドと対峙していた。
「いや、正気と言い直すべきですかね、プラントとの相互理解のための和平会議? この
私に向かってそんなものに出席なされと、貴方はそういうのですか?」
 苦々しげに毒づくジブリールに、ジョゼフはやれやれと首を振る。
「ジブリール、議場での君の扱いは軍事関係者と言うことになる。君は連合軍のあの部隊の
トップとして……」
「勝手に話を進めて貰っては困る。私はまだ出席するとはいっていない!」
「いや、出席して貰う。君も連合に身を置く物ならば拒否はさせん」
 ジョゼフは、反戦派の筆頭、穏健派の鑑と言われる稀代の政治家で、大西洋連邦大統領と、
連合軍最高顧問を兼任する謂わば地球圏の実質的リーダーだった。
 彼は、その役職に就任した当初、世界各国で毎年消費されている『軍事費』を計算し、
その国一つ買えるかも知れないという『莫大な無駄遣い』を大々的に公表した。
 これは、彼なりの作戦の一環で、実質的な数字を見せることによって反戦や和平にイ
マイチピンと来ないであろう一般民衆の関心を買うことに成功していた。反戦や和平な
ど政治家が決めることと思っている民衆も、自分たちの支払っている税金が、軍事費削
減によって幾分か『マシ』になるかも知れないと聞けば、少しは耳を貸すようになる。
「私はこのまま、全世界で軍備の縮小が進められ、最終的に一般的な治安維持以外の兵
力が無くなることを期待している」
「フン、世迷い言を……そんなことが出来ると思っているんですか?」
「私の夢は、公約通りだ。その為にもこれからは軍事力などではなく、対話によって完
全な平和の道へと進まねばならん」
「コーディネイターどもと? 危険な発想ですな」
「君よりはマシだ……ジブリール、私は他人の主義主張にとやかく言いたいとは思わな
いが、君や君の仲間たちは少々異常だよ。君が今回私の元に送りつけてきた『意見書』
と、やらもだ」
 ジョゼフがなるべく会いたくもないようなこの男と、多忙な時間を割いて会話をして
いるのには事情があった。というのも、先のユニウス・セブンのテロ未遂事件について、
ブルーコスモス及び軍事複合大体ロゴスから意見書とは名ばかりの、命令書が届いたの
だ。その内容というのがまた驚きで、現プラント政権及びザフトの解体、地球側に被害
も出ていないのに莫大な額の補償金を要求、ジョゼフなどは項目の二つめを読む頃には
頭を抱えてしまった。こいつらに常識はあるのか? と。
「ジブリール、君は何か勘違いをしている。我々連合は、他国であるプラントの政権に
対して、何ら介入する権限など有りはしないのだ。内政干渉など、考えただけでも馬鹿
馬鹿しい」
「奴らが満足にコーディネイターどもを統率できないから、今回のような事件が起こっ
たのですぞ? これは謂わば、自衛のためですよ」
「拒否すれば戦争をすればいい、とでも言い出すんだろうな、君ならば」
「ブルーコスモスも、そしてロゴスも、全面的にバックアップいたしますぞ? その為
に奴らのような存在もいるのだ」
 ブルコースモス、そしてそのバックにいるロゴスの声をジョゼフが無視できないでい
るのは、彼が『戦争景気』によって誕生した軍需産業複合体だからである。
 一言で言ってしまえば『一番税金を払っている連中』であり、全てのメンバーが世界
経済の中枢にいる。会社で言えば大株主のような存在だ。
297運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:08:03 ID:???
「残念だが私にそんな気は毛頭無い。君らのように何でも武力で解決しようという考え方
の連中がいるから、戦争がなくならんのだ」
「…………」
「あの、故ムルタ・アズラエル氏も、最初は交渉から入ったものだぞ?」
 その名をジョゼフが口にした途端、ジブリールに異変が起きた。ワナワナと震え、歯ぎ
しりをする。
「死人の名など出さないで貰いたい!」
「その様子だと未だにブルーコスモスは迷走中のようだな。君ではアズラエル氏のように
自身の持つカリスマ性で信者を統率する、と言うことが出来ないらしい」
「私があの男に劣っているとでも言うのか!」
「極端なナチュラル原理主義者、コーディネイター根絶原理主義者である君よりは、幾分
かマシな男ではあったよ」
 事実、大統領になる以前、上院議員時代のジョゼフは、アズラエルにあまり悪い印象は
持っていなかった。彼は常に理知的で、打算で行動をしない、彼が自身の会社を放棄して
政治家にでもなっていれば、今頃大統領は彼だったかも知れない。
「ジブリール、私は今度の和平会議の議題として、ブルーコスモスとロゴス、そしてその
お抱え部隊である彼らの問題について話すつもりだ」
「なんですと!?」
「君は自信があるようだが、世界は常に変化し、進歩している。君ご自慢の部隊も、早々
に解散ということになるだろう」
「たいした自信ですな。大統領……」
「当たり前だ、私は大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドだからな」
 そして、時代を平和へと導く使命を持った男は、ジブリールとの通信を終えた。ジブリ
ールは、苛立ち紛れに酒の入ったグラスを床に叩き付けようかと思ったが、床に寝ころぶ
猫を見て、その手を止めた。そして暫く精神集中をした後、もう一度通信機のスイッチを
入れた。
「私だ、ファントムペインのネオ・ロアノーク大佐を呼べ」



            第3話「ファントムペイン」


 プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは、元々は遺伝子工学の研究を専門
とする学者から政治観に転向した男で、人並み以上に節度と常識を持っていると自他共に
いわれる男だった。プラント、と言うよりもコーディネイターが抱える遺伝子的な問題は
深刻で、最高評議会議長自らがその問題に率先して挑むという姿は、プラント市民にとっ
ては決して悪い物ではなかった。研究者としての実績もある。
 しかし、そんなコーディネイターのことを人一倍知り尽くしている男でも、受け入れが
たい現実というものは存在するらしい。
 それは人間誰しもが持つ固有の感情『嫉妬心』というものである。
298運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:10:10 ID:???
 人間自分より優れた存在、容姿にしろ頭脳にしろ、それを持ち得る存在に、自身の持つ
些細な優越感を崩され、劣等感を抱く。それは対抗心や、嫉妬心、果ては憎悪にまで変貌
するというが、デュランダルがこの時受けたのは、圧倒的なまでの敗北感による嫉妬だった。
「では、ロッシェ……君は本当に異世界から来たというのだね?」
 軍病院の一室、高級士官用の応接室にてギルバート・デュランダルは、先日議長のラク
スことミーア・キャンベルが救助した、謎のモビルスーツのパイロットと面会していた。
「あぁ、そうらしいな。俄には信じがたい話だが」
 優雅な口調で、紅茶のカップを口元に運ぶその姿は、気品に満ちていた。中世の貴族の
ような立ち振る舞いに、デュランダルは始終圧倒されていた。
「それはこちらの台詞だよ……しかし、あんなものを見せられれば、納得するしかないな」
「あんなもの、とは?」
「君のモビルスーツだよ。この世界の技術力ではとてもじゃないが作れる物じゃない」
 しかし、デュランダルを一番『驚愕』させたのはそんな事実ではなかった。彼にとっては
未知の技術に驚き、唖然とさせられている技術者たちよりも、目の前の『ナチュラル』であ
るロッシェに受けた衝撃のほうがずっと大きかった。
「おかしいなものだな、宇宙があり、地球があり、人もいるというのに歩んできた道はまる
で違うという……平行世界とはまた違うらしい」
 愉快そうに笑うロッシェには、今の境遇に対しての驚きや、動揺がほとんど見られなかっ
た。全く大した精神力だとデュランダルは思う。
(そしてこの容姿……こんな『人間』が異世界にはいるのか)
 氷のような美貌と、薔薇のような気高さを持つ男……黄金色の髪、端麗な鼻梁と唇、そし
て耳によく通る声が、彼を一種の芸術作品のようにも思わせた。
「危険だな……」
 ポソリと、デュランダルは呟いた。別に彼はコーディネイター原理主義者ではない。しか
し彼は、コーディネイターがナチュラルよりも優れているということを学術的観点で知って
いたし、またその事実は彼が密かに進めている『ある計画』にとって必要不可欠だった。
 だが目の前にいる青年はどうだろうか? 何ら遺伝詩的操作をしていないナチュラルであ
りながら、その容姿は完成されきっている。そして恐らくモビルスーツパイロットとしての
腕も……
「それで? 君はこれからどうするつもりなんだ?」
 デュランダルは自身の考えに溜息をつきながら、ロッシェに尋ねた。
「それを決める権利が私にあるのかな?」
 不敵な笑みで返してくるロッシェ。
「……私個人としては君の存在は余り歓迎できるものではないな。正直、天地がひっくり返
るどころの騒ぎではないよ」
「なら拘禁でもするか? それとも……」
 デュランダルもその先はわかっている。もっとも単純で、確実な方法がある。しかし、安
易にその方法をとることが、彼には正しくないようにも思えた。
 と、その時。
299運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:11:41 ID:???
「ロッシェ! ロッシェはここにいるの?」
 応接室の扉が勢いよく開き、ミーア・キャンベルが飛び込んできた。
「これは、これは……ミーア嬢ではありませんか」
 ロッシェはソファに腰掛けたまま、うやうやしく頭を下げる。
「ラクス、君がどうして……そして何故ロッシェが君の、その」
 デュランダルは突然のミーアの来訪と、ロッシェが彼女の元々の名前を知っている事実
に困惑した。が、当のミーアはけろりとして、
「だって、ラクス様のことを知らない異世界の男性に、ラクス様を名乗ったところで無意
味でしょ? 知らないんだから」
「それはまあ、そうだが……」
 確かにこの世界におけるラクス・クラインの影響力など、異世界の住人であるロッシェ
には皆無である。しかし、だからといってあっさり正体をばらすのもどうかとデュランダ
ルには思われた。
「それより、今日はお早いですね」
「仕事が早く終わったの。それであなたの病室に寄ったら、応接室で議長に会ってるって
言うんだもの」
 笑いあう二人の雰囲気に違和感を感じながら、デュランダルはロッシェの言葉からある
ことに気付いた。
「今日は? ラクス、君は毎日この病院に来てるのか?」
「そうですけど?」
 これまたけろりとした表情でいうミーア。ミーアは、ロッシェを助けたあの日以来、異
世界からの訪問者である彼に、色々な意味で興味津々だった。
「ラクス様としての活動はちゃんとやってますし、問題はないでしょ?」
「むぅ……それはそうだが」
 ラクスとしての活動と、その秘密さえ守ればプライベートにはなるべく干渉しない、と
いうのがデュランダルとミーアが交わした契約だった。
「それより、お話しはもう終わったの?」
 ミーアはロッシェに向き直る。
「さぁ? 私は議長の質問に答えているだけですから。あぁ、そういえばこれからの身の
振り方をどうするか、でしたか?」
 ロッシェは微笑を浮かべ、デュランダルを見る。その美しい笑みに、デュランダルは目
を逸らしたい衝動に駆られる。
「お互い知るべき事は山ほどある。とりえず、ロッシェ、君の言うことを信じるためにも
君がここの世界に来てしまった経緯等を、詳しく教えて貰いたいね」
「いいでしょう。時間はタップリある」
300運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:13:10 ID:???
 その頃、ユニウス・セブンでの破砕作業を終えて帰還したミネルバとジュール隊にそれ
ぞれ国防委員会からの次の指令が待っていた。ミネルバに対しては、当初の予定通り月軌
道への配備。進水式に関しては、予算の都合上改めてやるつもりはないようだった。
 そしてジュール隊への指令は先の事件を起こしたテロリストの捜索という物だった。
「捜索、でありますか?」
 その言い慣れぬ単語を、イザークは少々不快そうに口にする。
「君たちはあのテロリストどもと遭遇し、戦闘も行っている部隊だ。捜索任務というのは
確かに地味な仕事ではあるが、君も軍人である以上は拒否権はない」
 国防委員長は、端的に事実だけを述べる。
「しかし、この発見次第抹殺も許可するというのは……」
「行動は迅速かつ的確に。生死問わず、テロリストどもを始末できれば今回の一件は終わ
る。上はそう判断したのさ」
 イザークとて僅かな期間ではあるものの政治の世界にいたことがある人間だ。テロ行為
に対して国というのは、どんな方法でも早期解決を目指さなければ行けないと言うことぐ
らい知っている。しかし、イザークはなるたけテロリストは逮捕し、大々的に裁判にでも
かけたほうが良いのではないかとも思う。内々に処理しては帰って疑惑を生む。
(それとも、生きていられると困る事情でもあるのか?)
 イザークはこの可能性が決して低くはないと思った。いくらザフトの脱走兵とはいえ、
独自にカスタマイズされたモビルスーツを持ち、安価とはいえ大型フレアモーターを持ち
出してテロ行為走るなど、彼らだけで出来るとは思えない。故にバックに政治家や企業が
付いていたとしても、不思議ではない。
(だから裁判を恐れる。ボロを出させないために、か)
 しかし、イザークはそれ以上何も言うつもりはなかった。軍人に戻った以上、彼には政
治に対して発言をする権利などないのだ。
「ジュール隊、任務了解。直ちに出動します」
301運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:14:56 ID:???
 ロッシェは自分の事情を説明するに当たって、なるべくウルカヌスの件について触れな
いように心がけた。デュランダルがどう言った種類の人間であるか、まだ明確に見定めら
れない以上、あの存在を軽はずみに話すのは憚られた。
(この世界の技術力がどの程度かは知らんが、カスタムタイプのレオスに驚愕しているよ
うでは、アレの中身はもっと危険だ)
 例えデュランダルが善人であったとしても、欲や野心というのは人を変えてしまう。
そして、ロッシェはそれを身内からの裏切り行為という形で、よく知っていた。
「つまりこの世界に、君の他にも異世界から来たであろう人間がいると?」
 デュランダルはロッシェの話に愕然としていた。ロッシェのような人間がこの世界に複
数人来ているという事実は、彼にとっては無視できない事実だったのである。
「少なくとも私と行動を共にしていた男は来ている可能性が高い。そして私とそいつが行
方を追っていた男もまた……」
「その人も、ロッシェみたいな感じの人なの?」
 当然のようにその場に残っていたミーアが、そうロッシェに尋ねる。
「みたいな感じ、というと?」
「ロッシェみたいに、なんていうのか……そう、貴族的って言うか」
「貴族的も何も、私は貴族ですよ、ミーア嬢」
「えっ! そうなの?」
 デュランダルは頭を抱えたくなった。何が貴族だ馬鹿馬鹿しい。
が、そう思いつつも既に自分は、目の前の青年が異世界の皇帝陛下だと言われても納得し
てしまいそうなほど圧倒されまくっていた。
「まあ、財団が崩壊して以来飾りのような物ですが、爵位も持ってましたよ」
「じゃあ、その一緒にいたお友達も?」
 友達、自分にとってオデルは友達なのだろうか? ミーアの言葉に、そんなことを考え
たロッシェだったが、フッと笑うと、
「アイツは民間の技術屋です。今頃でどこで何をしているのか……」
 しかし、ロッシェはそんなに心配はしていなかった。時としてオデルの行動力は自分な
どの予想以上のものだからだ。……仮面にマントを羽織っていたときは、密かにそのセン
スを疑ったが。
「議長、行動の自由をいただけるのであれば、私は仲間を捜したい」
「むぅ……それは、しかし……」
 ロッシェの頼みに、デュランダルは眉を顰める。害意のある人間ではない、そんなこと
はこの会話の中から容易にわかることだ。しかし、行動の自由を与えるにしても、ある程
度の監視下に置いておく必要はある。こんな企画外れの容姿を持つナチュラルを、野放し
にしておくのは余りにも危険だ。
「こちらの条件を呑むのならば、ある程度自由は保障しよう」
「ほぅ……その条件とは?」
 ロッシェの瞳が探るように、ミーアの瞳が覗くように、デュランダルを見る。
「それは……」
302運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:16:39 ID:???
 ネオ・ロアノークは常に仮面を被っている男だ。人が仮面を被る理由は、顔を隠すため
であり、顔を隠す理由は様々だ。傷や火傷、跡の残る外的損傷を人に見せないため、醜い
容姿を隠すため、そして、他人に顔を知られてはいけないため。しかし、この時ネオの仮
面はいつもとは違った効果を発揮していた。もっともそれは、嫌いな上司からの嫌な命令
に対して、表情を隠す、というものだったが。
「お話の内容は分かりました……しかし、この作戦、本気で行うのですか?」
 ネオは、ジブリールから渡された、ある作戦の計画書に一通りの目を通すと、率直な感
想を漏らした。作戦自体は見事な物だと思う。とてもこの盟主が一人で考えたのだとは思
えないが、確かにこれならば成功率は高い。しかし……
「この作戦、成功した場合、また戦争が起こるのでは?」
「それがどうした? 我々は戦争をしたいのだ。コーディネイターどもと和平などとあり
得ん妄想を抱き続ける偽善者どもを排除し、宇宙にある砂時計を全て消滅させるためにな」
 それはある意味、ユニウス・セブンのテロリストと同じ発想と意見なのだが、ジブリール
はそんなことを知る由もない。
「なるほど、如何にもブルーコスモスとロゴスの考えそうなことです」
 タップリと皮肉を込めていってやったつもりだが、ジブリールは堪えた様子もなく不敵に
笑っている。ネオに元より拒否権がないことを知っているのだ。
「ファントムペインを総動員するとして、間に合うか?」
 ジブリールの問いに、ネオは嫌々ながらも計画書を捲り、
「ギリギリ、といったところですかね。まあ、宇宙はダイダロスにいるイアンに任せるとし
て……」
「地上の実働兵力は貴様とホアキンに任せる。必要な資材があればなんでもいえ」
「必要なのは資材ではなく人材ですよ、盟主」
 ネオは、苦々しげにそう言うと、すぐに細部の調整にはいるためジブリールとの協議を始
めた。所詮自分はこんな風にしか生きられないのだ。拾われた死に損ないは、拾ってくれた
飼い主に忠誠を尽くす。例えそいつがどんなに嫌な奴であっても、だ。
303運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:18:25 ID:???
 翌日、ジブリールは改めて大西洋連邦ジョゼフ・コープランドと通信による会話を交わ
し、和平会議へ正式に出席することを述べた。ジョゼフはこの心変わりを不審に思ったが、
自分から呼んでおいて怪しいから来るな、ともいえず、とりあえず形式的な感謝をし、通
信を終わらせた。
 通信後、ジブリールは笑いを堪えるのに必死だったという。彼はこの先起こるであろう
出来事と、始まる新たな時代に対して驚喜の笑い声を上げたくて、堪らなかった。
「いよいよだ。いよいよ、我らファントムペインが歴史の表舞台に立つときが来た」
 そして、憎らしきコーディネイターを、ザフトを、プラントを、今度こそ完全消滅させ
ることが出来る。
「アズラエル、私は貴様のような甘さは持たんぞ。貴様が怯え、震え、実行できなかった
作戦だろうと、勇気と冷酷さ持って実行してやる」
 この時、未だ世界は平和を維持することが出来ていた。それは大西洋連邦大統領ジョゼ
フコープランドを始めとした、地球連合内に広がりつつある反戦と和平を望む穏健派たち
の存在、オーブ代表カガリ・ユラ・アスハを始めとした中立国群の存在、そして今のとこ
ろは反戦派であるプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの存在が、その平和
の均衡を保つため、存在の大きさを見せていたからだ。

 それから数日後、プラント国防委員会諜報部が、驚くべき機密情報の入手に成功した。
それはあのブルーコスモスが、今回のテロ行為に対する『報復』を目的とした極秘総会を
開き、プラントに対してすぐにでも核攻撃を行うという内容であった。
304運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/02(金) 16:19:43 ID:???
以上、第3話。
ある意味で、この作品は次から大きく動いてゆく、
といった感じでしょうか?
現在第6話まで書き上がっていますが、書きためつつ、
小出し小出しで投下していこうかと思います。
次回は少々長くなるかも知れません。
305通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 16:23:30 ID:???
う、生まれてはじめてのリアルタイムだ。
ディ・モールトGJッ!!
長くなっても全然かまいません。楽しみにしてます。
ロッシェとミーアいいなぁ・・・・・・(*´ω`*)
306通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 16:25:30 ID:???
GJ!
議長はロッシェ相手に圧倒されっぱなしか。
307通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 16:56:58 ID:???
乙!
そしてブルムさーん!
308通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 17:08:53 ID:???
>>293
工作員乙
309通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 17:19:49 ID:???
この議長がヴァルダーに会ったら飲み込まれるな。
310通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 20:51:14 ID:???
「暗黒の破壊将軍」ってニックネームを聞くだけでも卒倒しそうだ。
311通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 06:41:12 ID:???
GJ

ギルを手玉に取るロッシェがカッコヨス
312通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 08:00:08 ID:???
コープランドとジブリのやり取りを見ると
彼も伊達に選挙の洗礼を受けていないねw
313通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 09:30:50 ID:???
ただジブリールはファントムペインじゃないけどな
314通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 09:56:22 ID:???
つーかジブリはPPの親玉だから、
盟主王がドミニオンを好き勝手に使っていたのと同義。

私兵です罠
315通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 10:01:15 ID:???
>>310
マジンガーに出てきそうな名前だな……あちらは暗黒大将軍だが。
316通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 10:10:09 ID:???
バスタードとか
317通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 10:13:00 ID:???
星屑の騎士団(スターダストナイツ)もなw
318通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 10:14:52 ID:???
歌姫の騎士団といい勝負じゃん
319通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 10:28:29 ID:???
歌ハゲの氣志團
320通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 10:31:56 ID:???
ここはやはり新生星屑の騎士団の結成を…
321運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/03(土) 11:27:16 ID:???
私の認識ではジブリールって、
ブルーコスモスの親玉で、ロゴス内で強い発言力があり、
私兵ファントムペインを意のままに操れる男って感じな
んだけど……違うの?(汗)
322通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 11:28:57 ID:???
>>321
そんなもんでいいと思う。他に分かってんのは金融関係の人だというだけだし。
323通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 11:43:07 ID:???
>「いよいよだ。いよいよ、我らファントムペインが歴史の表舞台に立つときが来た」
ここがおかしいと思ったんじゃない
324運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/03(土) 12:09:32 ID:???
>>323
あー、その台詞か……
んーっと……私の作品のコンセプトが関わってくるんだけど、
それ話しちゃおうとネタバレにもなるからなぁ……
一応、次の第4話で私の作品が何をやりたいのかは明確になる
んですけど、書き上がってるとはいえ昨日投下したばっかだ
しなぁ。
325通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 12:15:26 ID:???
まあいいじゃないか
キラの設定も多少変わってるんだし、本編と違う部分があってもそれはそれこれはこれって事で
326通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 16:25:33 ID:???
うんうん、おkおk
327通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 18:08:53 ID:???
ttp://zip.2chan.net/2/src/1172896812453.jpg
ウイングゼロすげー!!
328通常の名無しさんの3倍:2007/03/03(土) 19:25:21 ID:???
太陽系wwwwwwwwwwww
∀並にスゲーwwwwwwwwww
329通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 01:02:07 ID:???
wikiに登録されている作者さん以外で誰が書いてるか一覧が欲しいのだけど頼めるかな?
330通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 01:04:59 ID:???
連投失礼。今現在、現スレの>>237まで登録済み。
現スレの26氏はwikiに登録されている26氏とは別人でいいのかな?
このスレの26氏=運命の歌姫 ◆1gwURfmbQUさん?
331通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 01:37:30 ID:???
太陽系オワタ\(^o^)/
こりゃC.E.聖剣伝説も目じゃねぇぜ
332通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 03:31:25 ID:???
セルじゃないんだからw
333運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 04:41:26 ID:???
>>330
私はwikiの登録の仕方知らなかったので違います。
もう保管してくださった方がいるんですね。
でも、ちょっと、直したい誤字脱字があるんですが、
wikiに登録って、どうやるのでしょうか?
334運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 04:45:13 ID:???
と思ったら、保管はされてないのか(勘違い)
まあ、1,2,3話ともお恥ずかしいことに、
誤字脱字がちょっとあるので、私の方でも編集
出来れば……と思ってます。
335通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 04:58:16 ID:???
ライブドアID取って該当ページ上部の編集タブ押せばいいだけ。
編集終了したらそのページ下部の「保存する」ボタン押せば反映する。

個人情報出すの嫌がってID取りたがらない人とかは
ぶっちゃけ偽名使えばいいじゃないと時々思う
336通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 06:21:56 ID:???
>>335

今はID取らなくても登録作業に協力する事できるよ。
詳しくはwikiのTOPページにある編集方法の項目を見てちょ
337通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 10:20:54 ID:???
今は荒しがあった為にID取得しないと編集できないようになっています。
別の方法としてはtxtでもhtmlでもいいので修正した内容をUPロダ(トップページからいけます)に上げ、掲示板(これまたトップページから)で上書きするよう言って頂ければ編集しておきます。
っちなみに運命の歌姫さんの作品は夕方5時頃登録予定です。
338運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 14:58:48 ID:???
>>337
了解しました。
とりあえず、今日はこれから出掛けるので、
帰ってきてから、編集等については考えます。

後、第4話は、今日の夜にでも投下します。
339通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 15:02:20 ID:???
>>327
この設定でクロスさせたらエライことになるなwww
340運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:15:11 ID:???
帰宅。
投下します〜
341運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:18:41 ID:???
 プラント最高評議会は12名の評議員によって構成されている。議長、副議長、国防委
員長等の役職に就いている彼らは、プラント12の市から各一人ずつ互選制によって選ば
れたメンバーだ。最新のコンピューター技術の発達により個々の能力や実績から「政治
家としての適正」を判断された彼らは、時として本人の意思とは関係なくこの道にくる
べき事がもある。しかし、少なくとも最高評議会議長ギルバート・デュランダルは、自
身がくるべくしてこの道に入ったと思っている。
 彼は、自分が将来的に成立目指すある計画と、このプラント最高評議会の評議員選出
方法は似ていると思っていた。コンピューターによってその適正を判断され、その職に
就くというのは彼には願ってもないことだ。
「いずれ、政治家だけでなく他の職種もこのような形になってゆくだろうさ。最高評議
会、国のトップでさえこのような選出方法なのだから」
 これはデュランダルが、今のところもっとも信頼している被保護者である少年に語っ
たという言葉だが、確かにこのまま彼が最高評議会議長の座に居座り、計画を推し進め
ることが出来れば、それは可能だったであろう。故に彼は、他の議員たち以上に、自分
の地位と権力を愛していた。だからこそであろうか? 彼は自分の進退にも影響を及ぼ
すような重大な議題が議会に上がると、途端に慎重になった。
 世間ではそんなデュランダルの態度を、「常に沈着冷静で、軽はずみな決断と決定を
しない」と評価することもあれば「難局に対しての行動力に欠ける」と非難することも
あった。どちらもそれなりに理のある表現ではあったが、歴代の議長が必ずしも優れて
いたわけではないことを考えれば、デュランダルの評判はそれほど悪い物ではなかった。

 薄暗く窓一つ無い会議室は、ドーナツ上となっており、中央の円卓に最高評議会の委
員長クラスの議員たちがそれぞれ腰掛けている。
 この日の議題は、国防委員会より提出された、『ブルーコスモスによるプラントへの
核攻撃の可能性』についての対策についてであった。これは昨日、国防委員会の諜報部
が入手することに成功したブルーコスモスの最重要機密であり、近々行われるらしいブ
ルーコスモス全体総会の承認待ちという案件だった。
「では、ブルーコスモスは今すぐにでも我らプラントに対し核攻撃を行う、国防委員長
はそう仰るのか?」
 まず口火を切ったのは、デュランダルであった。形式上、議長がまず意見なり質問な
りをして会議を推し進めるのは最高評議会の通例であり、デュランダルが特別論戦派と
いうわけではない。
「少なくとも、彼らは我々に対する口実を欲しています。戦争か、攻撃か、そこに格好
の名目を手に入れた」
 国防委員長は、資料を広げながら溜息をついた。彼は昨日から今日の会議にかけてま
での時間を諜報部がもたらした情報の真実性、つまり裏付けを取ることに費やしており、
そしてその結果、「92%以上の確立で真実である」というものに頭を悩ませ続けていた。
「口実と言っても、ユニウス・セブンにおける一連のテロ騒動は防いだではないか!」
 女性議員の一人が、言いがかりだと言わんばかりな剣幕で発言するが、国防委員長は諦めたように首を振る。
342運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:21:39 ID:???
「彼らは政治家でもなければ軍人でもない、ただの主義者です。人の持つ常識とか良識に
は無縁の立ち位置にいるのですよ。まあ、少なからず残っていた見識が今まで彼らの行動
を抑えていたのでしょうが、今回我々がテロという弱みを見せてしまったが為に、そこに
つけ込もうと必死なのでしょう」
「それでブルーコスモスの連中が納得しても、地球の各国は? 一方的な攻撃を許すとい
うのか?」
「許しはしないでしょう。だからこそ彼らは極秘に事を進めている……そう、いつかの血
のバレンタインのように」
 国防委員長の、本人としては何気なく言ったつもりの一言が、議員たちをしんと静まり
返した。そうだ、ブルーコスモスはあの血のバレンタインを起こした連中だ。何をするか
などをわかったものではない。
「しかし、国防委員長、事態が急を要することはわかるが、君の対応策は少々強引ではな
いか? 衛星軌道上からブルーコスモスの総会が行われる連合軍基地に制圧部隊を送り、
これを逮捕または抹殺する、と言うのは」
 デュランダルは国防委員会が提出した作戦書を見ながら険しい表情で言う。しかし、国
防委員長はそれを制止、
「確かな情報を持ちながら、後手に回るというのですか? 議長、今また核を撃たれれば、
プラント市民の反戦意識は著しく低下しますぞ? ただでさえ、ユニウス条約への不満が
残っているのが現状です」
「プラント市民が、民意レベルで戦争を望むと? 我々はそこまで愚かでは……」
「だが、血のバレンタインの時は違った。市民は地球へ、ナチュラルへの報復を叫び、デ
モや集会を繰り返した。結果、当時の最高評議会は開戦を決意した、違いますか?」
 デュランダルはその反論に口をつぐんだ。それは事実であり、当時のプラントが民意に
よって動かされた結果でもあった。
「国防委員会としては、我々コーディネイター最大の驚異であるブルーコスモスを、これ
を機に一網打尽にしたいと思っております。テロ行為を名目に、プラントに対し核攻撃を
行おうとしている彼らこそテロリストではないか!」
 国防委員長の一際高い声に、会議室の議員たちは自己の決断を迫られ始めた。
 そして、国防委員会諜報部より新たな情報が来たのはこの時だった。連合軍の月基地ダ
イダロスに異変アリ。出撃準備をしている傾向にあるというのだ。
「……では、早急に議題を可決しましょうか?」
 それ見たことか、と言わんばかりの国防委員長の声に議員たちは早期議決することを決
定し、投票用のボタンにそれぞれ指を伸ばした。
 結果、過半数の議員が賛成を押した。評決の結果ザフトによるブルーコスモス総会への
制圧作戦が可決された。デュランダルはこの時、反対の票を入れていた。



              第4話「時代の変革」


343運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:24:19 ID:???
 月軌道に配備予定だったミネルバに、ブルーコスモス総会制圧の命が下ったのは最高評
議会の作戦決定から僅か14時間後のことだった。ただ降下部隊を降ろすよりも戦艦による
奇襲攻撃をかけ、敵の抵抗力を一気に殺ぐ、というのが国防委員会と軍部の狙いであっり、
ミネルバは大気圏突入が可能な最新鋭艦だ。
「グラディス艦長、君の艦のクルーは新進気鋭の若者たちが多いが、だからといって失敗
が許される任務ではない。心して作戦を実行してくれたまえ」
「わかっております。クルー一同、最善を尽くします」
 国防委員長から直接指令を受けたとき、タリアは彼が自分に余りよくない印象を持って
いるということに気付いた。面白くないのであろう、国防委員会と軍部が威信をかけて作
り上げた最新鋭艦の艦長を、女の自分に取られたのだから。取られた、と言うのは正確な
言い方ではないが、タリアが艦長になった裏には、ギルバート・デュランダル最高評議会
議長の後押しと推薦があったと言われ、事情を知る一部の者、国防委員長クラスともなれ
ば、余りいい気はしないのだ。
 しかし、迅速さが求められる今回の作戦に、足自慢でもある快速戦艦のミネルバは絶対
に必要であり、また能力も決して低いわけではないので、渋々の決断、といったころか。
「というわけで、ミネルバはこれより地球に向けて出発。衛星軌道上から艦を降下させ、
連合軍基地制圧の任務に当たります。何か質問は?」
 艦に戻ったタリアは、ブリーフィングルームにクルーを集め、今回の作戦内容を説明した。
「よろしいですか、艦長?」
「なに? レイ」
 モビルスーツパイロット、レイ・ザ・バレルが質疑の挙手をあげた。
「この度の作戦の重要性は理解できました。しかし、何故ミネルバだけなのですか?」
 レイの隣に座るシンは、もっともな質問だと思った。自分たちの力が足りないとは思わ
ないがこの作戦は絶対に失敗が許されないものだ。それをミネルバ一隻で、というのはい
ささか心細いのではないか?
「基地を制圧するにしても、もっと大部隊を投入すれば、より早く、確実に済むと思うの
ですが?」
「えぇ、確かにそうね。でもね、今回のブルーコスモスの総会はかなり極秘裏に進められ
ている物なの。それに対して大部隊を動かせば、向こうに察知される可能性がある、少な
くとも上はそう考えたようよ」
 隠密にことを進めろ、つまりはそう言いたいのだろう。
「ですが、艦長」
 同じくモビルスーツパイロット、ルナマリア・ホークが挙手と共に発言する。
「ミネルバは先の戦いで、その、モビルスーツパイロットを二人、失いました。補充員も
ないままでは、戦艦一隻にモビルスーツ3機で基地制圧をすることになります」
 レイの言いぐさではないが、戦いは数だとルナマリアは思っている。エースなどと呼ば
れてはいるが、自分たちは未だ実戦経験の少ない青二才の集団に過ぎない。
344運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:27:05 ID:???
「基地の規模がどれほどかはわかりませんが、基地である以上それなりの兵力を有してい
るはずでは?」
 プラントの命運が掛かった作戦である以上、多少のリスクを背負ってでも兵力を増強す
るべきだとルナマリアは言いたいのだ。
「それについては心配いらないわ」
 タリアはクルーの不安を取り払うべく、国防委員長より渡された制圧目標である基地の
資料を提示する。
「さすがに連中も極秘にことをすすめているだけあって、この通り基地は小さな物だし、
配備されているモビルスーツは微々たるものよ。我が隊だけでも十分に攻略できるわ」
 国防委員会も軍部も、実現不可能な作戦など立案しない。勝算があるからこそミネルバ
による単艦制圧にしているのだ。
「……上層部の認識はわかりました。しかし、この作戦項目に書かれている『ブルーコス
モスメンバー逃亡時の措置』については?」
 ルナマリアは、一応の納得をすると質問を変えた。この項目は、資料を読んでいた際に
シンと共に驚いた、驚愕とも言って良い内容だ。
「本項目には『ブルーコスモスのメンバーの逮捕に失敗し、逃亡の可能性が出た場合これ
の抹殺も許可する』とありますが?」
「えぇ、確かにそう書いてあるわね」
「しかし、ブルーコスモスは軍属も含めてはいますが基本的には民間団体です。裁判にも
かけず他国の軍隊である我々が、これを処刑する、と言うのは?」
 テロリストである以上、それも止むえないのかも知れないが、ルナマリアにはこの項目
が乱暴にも思えた。
「それに……」
 それまで機を見計らっていたシンが、ここで口を開いた。
「かえってこの事が、奴らに戦争の口実を与えるんじゃ?」
 シンの意外と当をえている意見に、クルーたちは静まりかえった。シンがまともな発言
をしたからではない。戦争という、嫌な響きに反応したのだ。
「奴らが口実を探して、今回のテロ騒動を利用してるって言うのなら、不用意に攻撃何か
したらそれこそ……」
「シン」
 言いかけのシンを、タリアが遮った。それ以上は無用な議論になるとわかっていたからだ。
「残念だけどこの作戦は、最高評議会で可決され、国防委員会から軍上層部へ直接下され
たものよ。今更撤回はあり得ないし、我々にその権利もない。事は政治の問題よ、何か意
見を言いたいのであれば、政治家でも目指す事ね」
「…………」
 シンは何も言わず、そのまま押し黙った。その後、作戦の事細かな詳細に移り、具体的
な実働作戦は衛星軌道上から降下したミネルバが、まず基地に一撃を与え、それをモビル
スーツ部隊で制圧するという、妥当な物になった。
345運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:29:54 ID:???
「ほらっ、シン」
「……ありがと」
 ブリーフィング終了後、休憩スペースでつまらなそうに座っているシンを見つけたルナ
マリアは、彼にドリンク渡し、隣に腰掛けた。
「珍しいじゃない。アンタがあそこまで積極的に艦長に意見するなんて」
 少々意地悪そうに彼の顔をのぞき込むルナマリア。その小悪魔的表情は、普通の男性で
あれば魅了されてしまうほどのものだったが、生憎とシンはその手のことに興味がなかった。
「別に。ただ思ったことをいっただけだよ……」
「ふーん」
「軍人なんて所詮は人殺しの職業、判ってはいるんだけど、どうもな」
 今回は、あの悪名高きブルーコスモスが相手ではあるが、彼らは一応は民間人だ。それ
を軍人である自分が攻撃し、場合によっては抹殺するというのは、気分の良い物ではない。
「でも、ブルーコスモスって言ったら、その……シンの」
「あぁ、仇の一つだ。前の戦争で地球連合がオーブに進行した際、その指揮を執っていた
のはブルーコスモスの前盟主だからな」
 ムルタ・アズラエル。シンがその存在を知ったのは彼が死んだ戦後だった。彼は地球連
合への強力を拒み続けるオーブに対し、幾度となく交渉を持ちかけたが、オーブの前代表
であるウズミ・ナラ・アスハは彼と語る舌を持ち合わせはしないとして、これを断固拒否。
遂に痺れを切らしたアズラエルは連合軍を動かし、オーブに進行した。これが前大戦のオ
ーブ解放作戦の真相である。そしてシンは、その作戦時にオーブにおり、両親と愛する妹
を失っていた。
「だけど、個人としての私怨を理由にして戦ったら、奴らと同レベルじゃないか」
「シン……」
「俺は軍人だ。軍人になった以上、個人的感情じゃなくて組織のために動く」
 シンが軍人の道に入ったのは、何も彼が戦災孤児で食うにも困る身分だったからではな
い。戦中も戦後も、シンの心は常に憎悪と復讐心が支配していた。妹を奪った戦争、オー
ブに攻めてきた連合、無謀な戦いをしたオーブ、妹と家族を撃ったモビルスーツ、彼の精
神はそれらに対する思いに蝕まれていた。このままではいけないと思った。このまま自制
心が崩壊すれば、自分は連合やオーブに対するテロリストか、よくてレジスタンスになっ
てしまうだろう。こんな自分に歯止めをかける方法はないか……あった。
 それがザフトへの志願という道だった。規律の厳しい軍隊に身を置くことで、自己の精
神を縛り、自己の意見や主張よりも、組織について常に考える。シンにとって、手っ取り
早く憎悪や復讐心を忘れるにはそれしかなかったのである。
 故にシンのアカデミー時代はとにかく凄かった。自分が戦闘向き、軍人向きのコーディ
ネイターでないことをシンはよく理解していたから、人の三倍は常に努力したし、三倍で
ダメなら五倍、五倍でもダメなら十倍努力するようにした。結果、彼はアカデミーを次席
卒業、文句なしでザフトレッド、赤服を着ることが出来るようになった。
「確かに俺は今回の作戦に不満を持ってる。それもルナが心配してたような作戦の成功と
かそういった類の物じゃない」
 相手が妹の仇であったとしても、民間人を手にかけるというのは、彼の理念に反した。
346運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:33:06 ID:???
しかし、これもまた軍隊という組織に身を置いた物の運命なのだろう。軍人は命令に従う
義務があるのだ。そして、その命令に意味を考えるのは、必ずしも軍人ではない。
「ねぇ、シン。この任務が終わったらさ……」
 深刻な顔で考え込むシンを見て、ルナマリアはニヤリと笑いかける。
「デートしない? 二人で、どっか遊びに行こうよ」
「デート!? ル、ルナ、い、いきなりなにを……」
 突然の、しかも『妹以外』の女の子から始めて誘われたデートの申し込みに、シンは面
食らったように赤面する。
「作戦が成功すれば休暇ぐらい出るでしょ?」
「そりゃ、出るだろうけど……」
「パーッとさ、嫌なこととか忘れて、遊べばいいのよ。シンはさ、少し物事を考え込む癖
があるわよ。それが悪い癖だとまでは言わないけど、それじゃ人生楽しくないって」
 ルナマリアの言っていることは正しかった。シンは、常に物事を一歩引いた立ち位置で、
客観的に見ようとしている。それはプラントのことだけではなく、地球やオーブといった、
仰々しくいえば宇宙全体についてとも思えた。彼の祖国はプラントではない。でも、今や
オーブでもない。そんなこともあってか、彼は親プラントとか、そう言った一部に偏った
思考とは無縁だった。そして、そんなシンの考え方を、ルナマリアは嫌いでなかった。
「それに何か目標があったほうが作戦もはかどるわよ? アタシみたいな可愛い娘とデー
トできるなんて、凄い励みにならない?」
「自分で可愛いとか言うなよ……」
「そう? 結構自信あるんだけど」
 そりゃ、アカデミー時代はそれなりに人気あったけど……とシンは思う。
 ルナマリアは、席次こそ首席のレイや次席のシンに劣るものの、ザフトレットになるだ
けの優秀さを持っており、学生時代はその容姿と共にかなりの人気であったことをシンは
記憶している。レイが女子人気を一手に集めていたのならば、ルナは本人の意思とは無関
係に男子人気を掌握していた。それがなんだって自分なんかと仲良くし、連むようになっ
たのかをシンは思い出せないが、ルナは彼にとって大切な友人だった。
「まあ、考えといてよ。勿論、返事は良いのを期待するけど」
「……あぁ、考えておくよ」
「アタシね、行ってみたいとこがあるんだぁー」
 楽しそうに笑うルナマリアを見て、シンも微笑んだ。こうやって、自分と一緒に笑える
友人を、俺は守っていかなきゃいけないんだ、と。

 その日、地球連合軍の基地で行われていたのは、大西洋連邦ジョゼフ・コープランドを
議長とするプラントとの和平について協議する、平和に向けての総会だった。出席者は主
に連合加盟国を中心とした反戦を唱える穏健派の政治家たちと軍人たちであり、ブルーコ
スモスの盟主など、もっともこの場に似つかわしくないと誰もが思っていた。
 しかし、いざ会議が始まってみると、ジョゼフ・コープランドは今まで暗黙の了解とし
てきた部分にズバズバと斬り込んでいくではないか。
「――このことからも、私は連合規模での軍備を見直し、それを最小限に縮小していきた
いと思っております。その為にはまず、連合軍をもっと透明性のある軍隊にする必要があ
り、かのファントムペインなる部隊も例外ではありません」
347運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:35:22 ID:???
 ファントムペイン。その名を聞いた政治家たちは一様に顔をしかめ、軍人たちは目を背
けようとした。近年、連合軍内部に台頭してきたこの部隊は、あのブルーコスモスの息が
掛かっており、ブルーコスモスのバックにいるといわれる軍需産業複合体ロゴスの資金力
を背景に、独自の指揮系統を持つ大規模な独立部隊になっていた。
「しかし、ジョゼフ大統領は軍備縮小を声高に唱えられるが、その為にはプラントにもザ
フトの規模縮小を求める必要があるのでは?」
 出席者の一人が当然のことである質問をする。
「無論私は、プラントにも同様の考えを提示するつもりだ。だからこそ我々がまず手本と
なり、軍備の縮小及び解体を進めねばならんのだ」
 そしてやがては兵力や兵器といったものを全廃できれば……と、ジョゼフは思っている。
私が生きているうちは無理でも、私の跡を継ぐ者が、私の志を継いでさえくれれば、公約
に掲げた『プラントも含めた地球圏統一政府の樹立』は可能になるはずだ。
 その為にも、ここ踏ん張りどころなのだ。今日を乗り切れば、世界はとりあえず連合だ
けでも軍備縮小、和平への道に加速するはずだ。
「しかしですなぁ、大統領閣下」
 ここで今まで黙って静観を決め込んでいたかに見える、ブルーコスモス盟主ロード・ジ
ブリールが口を開いた。その顔は、ジョゼフに対して幾分かの侮蔑と失笑を含んでいる。
「未だ我々はコーディネイターどもと手を取り合えるわけではないはずですよ。失敗に終
わったとはいえ、過日もコーディネイターによる地球に対するテロ行為があったではあり
ませんか。あのユニウス・セブンが落下していた場合の被害規模を計算したのですがね、
まったく途方ない結果でしたよ」
 ジブリールはコーディネイターという部分を強調しながら、コンソールを操作し、スク
リーンに予測計算された被害状況を提示して見せた。確かにそれは酷いものであり、仮に
欠片一つ落ちていたとしても、無視できない被害であった。
 総会出席者は息を呑むものもいれば、目を疑うものもいたが、壇上に上るジョゼフは冷
静だった。
「過ぎ去った事件に対して悲観的な過程を見せられても困るなジブリール。今現在地球に
ユニウス・セブンは欠片一つ落ちていない、これは紛れもない事実だ。ザフトが責任を持
ってテロリストを撃退してくれたというな」
「ですが、現実にコーディネイターどもに未だ我らに牙を剥く連中がいるのも事実。未だ
逮捕されていないのでそう? コーディネイターのテロリストどもは」
 確かにプラントは未だにテロリストの逮捕には至っていなかった。ザフトが派遣したジ
ュール隊は寝る間も惜しんで日夜捜索を続けているのだが、一向に成果が得られてはいないらしい。
348運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:38:11 ID:???
「プラントの市民や、ザフトの中に我々に不満を持つものがいるのは当然だろう」
 突然、ジョゼフはそう切り出した。
「いきなり何を言われるのです? まさかまた血のバレンタインを引き合いに出すのでは
ないでしょうな? あの一件はこちらもエイプリルフールクライシスで相応の……」
 反論するジブリールをジョゼフは手で制した。その顔には決意の色があった。
「これは一昨日、プラント側が極秘裏に公開したプラントの軍事工廠アーモリーワンで起
きたある事件に付いての映像だ」
 映像では、ザフトの最新鋭機がアーモリーワンを破壊して回る映像があった。
「この後、ザフトは機体を奪って逃走したテロリストに追っ手をだし、これと戦闘を行っ
たそうだ。これがその時の映像だ」
 議場に動揺が走った。ザフトのモビルスーツが戦っていたのは、紛れもない連合製モビ
ルスーツ、ダガーだったからである。
「つまり、この事件は連合軍が起こした物である可能性が非常に高い。しかも、その部隊
は一般の指揮系統には左右されず、戦艦とモビルスーツを持ち出すことが出来る、とても
優遇された存在だ」
 ジョゼフの目がいっそう鋭くなり、ジブリールを睨み付けた。
「フン、プラントの自作自演ということもあり得る」
「ほぅ、連合のダガーLをザフトが? それこそあり得ない話だろう」
 如何にも苦し紛れといった感じで毒づくジブリールと、冷静に彼を圧倒していくジョゼ
フ。議場にいる人間は、ジブリールの敗北と、ジョゼフの勝利を悟った。

 一方、基地の外ではファントムペインのネオ・ロアノーク大佐による作戦の最終チェッ
クが行われていた。
「シャトルの配置は全て完了しているな? あぁ、そうだ、その配置で良い」
 ネオはきびきびと指示を出しながら、今回の作戦に気乗りしない自分の心を紛らわせて
いる。
「ロアノーク大佐、パナマ派遣部隊から通信が入っております」
「スティングから? よし、繋いでくれ」
 恐らく作戦開始前の挨拶であろうが、もしかすれば部隊で何か問題が起こったのかも知
れない。決して仲の悪い三人ではないが、自分が居ないとまとまりを欠くこともある。
『よぅ、ネオ! そっちはどうだよ?』
 しかし、そんな心配は無用だったようで、通信機越しのスティングの声は至って気楽な
物だった。
349運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:39:47 ID:???
「こっちは滞りなく進んでいるよ。そっちはどうだ? 俺が居ないからって喧嘩でもして
るんじゃないだろうな?」
『ばーか、俺達だってもうガキじゃねぇんだ。そんなことしねぇよ。……まあでも強いて
言えば』
「何かあったのか?」
 ネオの仮面に隠れた表情が一瞬険しい物になるが、スティングは軽く笑って、
『ステラがお前に会えなくて寂しがってるぜ。ネオー、ネオー、ってな。帰ったらタップ
リ構ってやれよ?』
「フフ、ハハハッ! なんだ、そんなことか。判ってるよ、帰ってきたらステラをタップ
リ可愛がってやる。お前とアウルにもメシでも奢って」
『いっとくが、ステラにイヤらしいことはすんなよ、おっさん』
「おっさんじゃない! お前、なんてこといいやがる!」
『構ってやれっといったのに、可愛がってやると返すところが、おっさん臭いんだよ。し
かもエロ親父の部類だな』
「お、お前なぁ!」
 そんなやりとりが少し続いたが、決してこの二人の仲は悪くない。むしろ、ファントム
ペインの中でも良好な部類に入り、スティングたちはネオを慕っている。
『まあ、そういうわけでこっちは俺に任せろ。おっさんも、そっちで頑張れよ?』
「だから、おっさんじゃないと何度言えば――」
『じゃーなー、アウルが呼んでるわ』
 一方的にスティングに通信を切られ、ネオは少しの間憮然とした表情をしていた。まっ
たく自分は仮面を付けていたよかった。おっさんと連呼されて、結構傷ついているという
事実を、周りに悟られないのだから。
「さて……後は、ザフトの皆さんの到着を待つばかりだ。上手く餌は流したんだ、精々派
手に食らいついてくれないと困るぜ?」
350運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:40:52 ID:???
「皆さん、今度の事件を私は良い機会だと思っております」
 総会はいよいよ終盤を迎えていた。ジョゼフは最後の締めとして、熱弁を振るう。
「これからは地球もプラントも武器を捨て、対話による解決を目指す。それこそが平和へ
の大いなる一歩だと、私は確信しております!」
 議場から盛大な拍手が巻き起こる。あのジブリールでさえ拍手をしている。
 ジョゼフは満足しきっていた。時代は変わる、自分の理想、平和への道へと。時間は掛
かるかも知れない、しかし、それがなんだというのだ。時間をかけてえられる平和ほどあ
りがたい物はないではないか。
「皆さん、私は賛同してくださる皆さんを心から――」
 この時、ジョゼフはたった一つだけ、考え違いをしていた。
 確かに時代を変えることは可能だ。長い目で見て平和を作っていくことも、不可能では
ない。だが、世界を動かすにはもっと単純で、変革させるにはとても有効な手段があった。
それは、武力によるクーデターという物だった。

「……来たか!」
 宇宙より降下し、真っ直ぐとこちら向かってくる戦艦を確認したネオは、それが見知っ
た戦艦であることを知り苦笑した。
「つくづく縁があるらしいな……奴らとは」
「大佐、すぐに警報を出しますか?」
「いや、ギリギリまで待て……奴らに先に仕掛けされるんだ」
 その上で警報を流す。総会出席者は面食らって肝を冷やすだろう。
「ここまでは計画通り……後は時代が俺達を受け入れるかということだけだ」
 C.E73年10月末日。歴史は今、新たな時代を迎えようとしている。

                               つづく
351運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/04(日) 22:42:09 ID:???
第4話。
予定では今回で戦闘シーンまで持って行くつもりだったのですが、
予想以上に長くなったと感じたので、とりあえずはここまで。
この先の展開、このスレにいる皆さんはもう判っちゃったと思います。、
どうだったでしょうか?
今のところ全然活躍していないロッシェや、どこに行ったのかも定かではない
オデルですが、そのうち活躍予定なのでもうしばらくお待ち下さい。
352通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 22:43:12 ID:???
こ、これは流血へのシナリオ!?
GJ!
353通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 22:57:25 ID:???
GJ

コープランド大統領閣下の死亡フラグが強烈過ぎるw
彼がノベンタ元帥なわけだな

ジブリがトレーズでネオがレディ。

ミネルバ隊がテロリストのガンダムパイロット役と。

と言う事はシンが心ならずとも戦争への引き金を引いてしまう
ヒイロ役なわけですね!
続きが気になります
354通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 23:30:34 ID:???
GJ!
シンに特大のトラウマが出来そうな予感…
ガクブルしながら続きをまってます。
355通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 01:14:15 ID:???
あぁ〜、これはなぁ〜
ヒイロは自爆とか被害者家族のとこ行ったりしてたけど
シンは軍人だからそんなことできないしな……
356通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 03:00:09 ID:???
若者よ、早まるな...
357通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 06:52:20 ID:???
GJ!
しかしこの死亡フラグっぷりは・・・
大統領逃げて!超逃げて!
あぁでも、逃亡者は抹殺か・・・
358通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 07:37:38 ID:???
ハッ、早まるな、若者よ!
いやぁ、上手い上手い。これは実に上手い。GJです、
359通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 10:20:13 ID:???
しかしあくまで一テロリストに過ぎないW主人公ズはともかくとして、
国家の諜報機関だというのに騙され過ぎな無能っぷりと
シンですら想定出来ることを想像も出来ん最高評議会の無能っぷりがたまらんw
デスティニープランを全否定するわけじゃないが遺伝子で選別したの、
やっぱ拙かったんじゃない?と思っちゃうなww
360通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 10:29:59 ID:???
>>357
大統領には無限コンテナを持つパワードスーツがあるさ。
361通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 12:44:02 ID:???
テロに襲われる大統領といえばエアフォースワン
映画エアフォースワンみたいな大活躍してくれたら惚れる
362通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 12:58:53 ID:???
GJ!!
>>359
激しく同意!
デュランダルはDP云々以前に、こんなアホしか選別しないコンピュータを疑えよ。
363通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 13:43:47 ID:???
もしかしたら議長はこれをきっかけにDPの構想をボツにして新しいプランを考えたりして
364通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 14:17:40 ID:???
最高評議会の連中って、基本的にナチュ蔑視をいまだに強く持ってる典型的な高慢なエリートコーディだと思うんだよな
だから基本ナチュラルを舐めてるし、物事を自分達の都合良く運ぶもんだと考えてる節が見受けられる
シンはコーディの中でも唯一と言っていいほど、ナチュラルに対する偏見を全く持たない奴だから、かえって本質をとらえられたのかも
365通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 17:03:17 ID:???
>>364
シンが生まれながらのエリートじゃないのもあるけど、そこら辺はオーブで育ったお陰なんだろうな。
もう少し外交面に気を使えば、ナチュとコーディが共存している稀有な国として、
世界の目指すべき指標の一つにもなれただろうに、
自爆ショーなんてテロリストぐらいしか選択しちゃいけない選択を国家レベルでしちゃったからなぁ。
シンも絶望しちゃう筈だよ、ほんと。
366通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 17:59:02 ID:???
評議会の連中は仮に今回の事で戦争が起こっても『卑劣なナチュラル』に責任押し付けて終了な気がする。
367通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 18:23:17 ID:???
>>366
知識はあっても知恵が足りないのがプラント政界ということだ罠
368通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 19:58:08 ID:???
>>367
彼らは生粋の政治家じゃないからな、本業の片手間にやってるみたいなもんだ。
369通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 20:20:14 ID:???
>>368
そうだよな。プラント政界は遺伝子適性で選ばれるんだから
彼等が本業を持っているのは自然だよな。


考えて見たんだがプラントの諜報部は遺伝子適性関係あるのか?
ガチでオトリ情報に簡単に釣られる無能なんじゃね?
370通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 20:25:45 ID:???
>>365
そう言えば、ひとつ疑問に思ったんだけどさあ
シンってオーブの前は何処に住んでいたんだ?
総集編のPASTで「オーブに移り住んだ」って言ってるんだよね、シン
マユとの回想見るに、紅葉がある国で、しかも二人の年格好からすると、
戦争が起きるよりも然程離れてない時までそこに住んでたみたいなんだが
371通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 20:54:56 ID:???
にっぽーんじゃねーの?
372通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 20:56:36 ID:???
>>359
トレーズならともかくジブにしてやられるとはな…
Wにしたって五飛の情報元は偽の情報だと気づけたのに。
373通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 22:32:39 ID:???
GJ!!
まあまあ皆さん。
物語には踊らされる人たちも必要という事ですよ。
どっちにしろ、ピエロは踊り狂って舞台から落ち、必要な役者だけ残ります。
374通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 22:38:46 ID:???
トロワはきっと三回転半ひねりで戻ってきます。
375W-SEED:2007/03/06(火) 00:37:47 ID:???
キラがストライクのコックピットで調整を行っていると、通信が入った。
「よ〜う、キラ。まだ怒ってんのか?」

「…デュオ。何の用?僕、今忙しいんだけど」

「いや、特に用はないけどよ、ま、落とされない様に気を付けろよ」
「僕が落とされる訳ないだろ?デュオこそ油断してやられたりしないでよね」

「…ちぇっ、ハイハイ!!じゃあまたなぁ」

デュオは要らぬ心配したと思って、通信を切った
「ま、確かにアイツなら落とされる事はなさそうだな」

キラがコックピットで調整を続けていると、また通信が入った

「よう、ボウズ!調子はどうだ?」

「ムゥさん、ハイ!調子は最高っす!ムゥさんは調子どうすか?」
「お、頼もしいねぇ!俺も調子は良いぜ。
…俺よぉ、好きな女が故郷にいんだ」

「はぁ、そうなんすか…」

「あぁ、だからさっさとこんな戦争終わらして帰りてえよな!
俺は死なねえ、…お前も死ぬなよ」

「ちょwムゥさん、めちゃくちゃフラグ立ってますってばww」

そして、けたたましく鳴るサイレン
ミリアリアから通信が入る
「キラ!発進よ!」

「わかった!キラ.ヤマト!ストライク発進します!」

まずはキラのストライクが発進した
376W-SEED:2007/03/06(火) 00:41:26 ID:???

「よっしゃあ!行くぜ相棒!」

続いてデュオが発進

「ムゥ.ラ.フラガ!ゼロ!行くぜ!…なっ!?」

ゼロが発進した瞬間、なんとストライクによってゼロはキャッチされた!

「な、何すんだ!?キラ!!」

「悪いけど、ムゥさんは今回は出ないで下さい!絶対墜とされる気がします!」

「何言ってんだ!!俺は大丈夫だ!いいから離せ!!」

「…しょうがないな。て一いっ!!!」

「ぬぅあ!!?」

なんとストライクがゼロのバーニアにパンチしたのだ!それによりバーニアは壊れ、ムゥは戦場に出れなくなった
「ちくしょう!このアホッたれ!」

「すいません!今度エロ本あげます!とりあえず今回は艦で待機してて下さい!」

「…ちっ、約束だぞ!」
ゼロはストライクによってアークエンジェルに運ばれて行った

「おいおい!無理するな〜、お前!」

デュオがキラに通信をいれた

「死なれるよりは良いでしょ?」

「まぁ確かにそうだけどよ、
あぁ〜あ!やっぱりお前なんかについて来るんじゃなかったなぁ!アイツ以上に無茶やるぜ!」

「デュオ、無駄口叩いてないでよね!来たよ」

「敵さんのおでましか、へへっ!
オラオラぁ!死神と疫病神のお通りだぁ!」



…to be contineud
377W-SEED:2007/03/06(火) 02:00:29 ID:???
アークエンジェルに向かう、アスラン、ニコル、ディアッか、イザーク、ヒイロ達
アスランが沈痛な顔で皆に通信を入れた

「…皆、聞いておいて欲しい事があるんだ」
「…めんどくせえな、何だよ、アスラン?」
ニコルがガムをくっちゃくっちゃしながら聞き返す
「ストライクのパイロットいるだろ?…あれコーディネーターだから」
「え…何でコーディネーターが連合にいるの?」
「一応、知り合いなんだ…。だから、」

「…墜として欲しくないという事か?だが、コーディネーターといえども敵なら、墜とさない訳にはいかないと自分思うぞ」

「ディアッかに賛成」
「いや、そうじゃないんだ」

「…え、と、じゃあどういう事?」

「危険なヤツなんだ、…だから見掛けたら 絶 対 に墜とそう。
墜とされる前に」

「何をそんなに恐れているのか知らんが、了解した」

「…居たぞ」

ニコルが言うと同時に各機は散開
バスター、ブリッツはアークエンジェルへ
イージス、デュエルはストライクへ
そして…
「ウイングゼロ!?
おいおい!!とゆう事は、おい!お前ヒイロか!?」
378W-SEED:2007/03/06(火) 02:04:25 ID:???

「…デスサイズ!?
デュオか?…お前もこの世界に飛ばされて来たのか」

「お前も来てやがったのか!そして、ザフトの傭兵か。へへっ!立場は違うけど考える事は同じだな!」

「カトルやトロワは来ていないのか?」

「さぁな、でも俺達が来てるって事はアイツらも来てる可能性高いと思うぜ?」

「お前は連合を調べろ。俺はザフトを調べる。アイツらが来てるなら、そのどちらかにはいるだろう」

「了ー解!じゃあ俺達は適当にやってるか」
「…元々は関係ない世界だ。あまり派手に暴れるな」

デュオとヒイロが話をしている間にストライクはすでにイージス、デュエルと交戦していた。
「キ イ ィ ラ ア ァ ァ!!!墜 ち ろぉぉ!!!!」

イージスがキモイ形に変わってスキュラを発射した
ストライクはそれを軽々かわすが、避けた所にデュエルがビームライフルを撃ち込んでくる
「墜ちて下さい!」

「ちぃっ!」
それをシールドで防ぎ、ビームライフルをデュエルに撃ち返すが、避けられた。そして今度はイージスがキモイ形を解除してビームサーベルで斬りかかってきた。
キラもビームサーベルで応戦する

「くそっ!くそっ!くそっ!ここでやらなきゃ、ここでやらなきゃ!」

「ふふふ、やぁ、アスラン」

「!?(バレてる!?)」
「急に転校するなんて酷いじゃないか。僕達 親 友 だったじゃない?」

「や、やぁ!キラか!うわーすごい偶然だねこんな所で会うなんて!げ、元気してた?」
379W-SEED:2007/03/06(火) 02:11:43 ID:???
「まぁ、とりあえず武器おろそうよ。それから話そう」

「あ、あぁ、そうだな」
イージスがビームサーベルを納める

「スキあり!!」

それを見逃すキラではなかった!イージスがビームサーベルを納めた瞬間、イージスの四肢を一瞬で斬りさいた!流石キラだぜ!グゥレイトォ!




…to be contineud
380通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 02:13:32 ID:???
GJ
いじめっ子キラと、イジメられっ子アスランに噴いたwww
381通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 02:26:51 ID:???
戦力低下によって自分の身の危険が増すのも省みず、死亡フラグ立てた兄貴を
守ろうとするだなんて、キラってばホントに優しいなーwww

ところでヒイロさんがナチュラルにごひを忘れている件
382通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 02:44:11 ID:???
キラかっこいいwww
超GJ!!
383通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 11:28:34 ID:???
こんな外道なキラ見たことない……GJ!!!!!
384通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 14:41:04 ID:???
ぶっちゃけ「君は君だ!彼じゃない!」→「今だ!!」と対して変わらんけどなw
385運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:26:51 ID:???
投下します〜
386運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:30:14 ID:???
「艦長、地上表面、目標の基地が見えてきました!」
 降下を続けるミネルバの艦橋で、オペレーターのメイリン・ホークが報告をする。
「いよいよか……」
 タリアの副官であるアーサー・トラインが、来るべき戦いに眼を細め、シートから艦長
へ向き直った。
「艦長、予定通り有効射程に入り次第トリスタンの斉射、その後、地上用ミサイルパルジ
ファルで基地を牽制します」
「えぇ、よろしく頼むわ。初撃さえ成功すれば、流れはこちらが掴める。モビルスーツ隊
のほうも良いわね?」
 タリアは、既にモビルスーツに搭乗して待機中のパイロットたちに声をかける。
『えぇ、こちらは準備満タンですよ』
『最善を尽くします』
『…………』
 シンだけジッと黙っており、何も喋らない。タリアは何か言おうかとも思って、止めた。
どうも自分とシンはそりが合わない。軍人としても、部下としても、少々熱くなるところ
を除けば彼は優秀であり申し分はないのに、だ。シンがオーブからの移民者だからか? 
そうではないだろう、恐らく自分は彼の考え方が――
「艦長、間もなく有効射手に入ります!」
 アーサーの言葉に、タリアは自身の考えを取り払った。今は任務に集中すればいい、全
てはプラントの、議長のために。
「これよりミネルバは、地球連合軍基地の制圧作戦に入る。全砲門開放、トリスタン照準
…………撃てぇぇぇっ!!!」

 少し時間を戻して、場所はプラント。
 ロッシェが、自分にあてがわれた高級士官用官舎の一室で、着慣れぬ制服を整えていた。
「軍服を着るというのも久しぶりだが、赤とは……派手だな」
「そう? 結構、似合ってるわよ?」
 こちらは当然のように部屋のソファに腰掛けくつろいでいるミーア。
「なんたって元が良いもの。確かに白い方がもっと似合うと思うけど、あれは将官ようの
制服らしいから無理ね」
「まあ、緑よりはマシだと思っておこう……どうもあの色の制服は貧相だ」
「あら、緑服の人に失礼よ? 事実だけど」
 この時、どこぞで部下にお手製炒飯を振る舞っていた男がクシャミをした。
「でも、貴方が特務隊員になるなんて……議長も思いきったことをするのね」
「自分の目の届く範囲に私を置いて起きたいのだろう。妥当な判断だ」
「議長は、特務隊の解散も一時は考えていたそうよ? 平和な時代に、そんな不透明な直
属部隊は必要ないだろうって」
 ロッシェがデュランダルから行動の自由と引き替えに受けた条件は、特務隊フェイスへ
入ることだった。ある意味議長直属の部隊なので、ある程度自分の勝手と都合が効く、と
いうのが議長の言い分であったが、ロッシェはそれがかえって見え透いてるように思えた。
「しかし、議長は遅いな。約束の時間を既に30分以上も過ぎている」
「きっと、お忙しいのよ。それよりもこっちで一緒に紅茶でも飲みましょう」
 応接室での面会から数日、ロッシェはミーアに敬語を使うのを止めていた。それは、ミ
ーアが望んだことであり、ロッシェは女性の希望には添う男だった。
387運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:32:35 ID:???
「それにしても、不思議なものだ……異世界とやらに来たかと思えば、いつの間にかこん
な制服を着るようになって」
「人生なんて、何が起こるかわからないものよ……私がそうだもの」
 言って、ミーアは少し寂しげな表情になった。気付けば自分も、いつの間にかラクス・
クラインになっていた。周りに流されたとは思っていないし、決断したのは自分だが、今
の生活は彼女にとって不思議であり不可解でもあった。
「時々、鏡を見るとね、思うことがあるのよ。『貴女は誰?』って」
 私は誰、ではない。
「人なんて、変われば変わるものよ。昨日までのあたしが、今日のあたしと同じとは限ら
ない。ロッシェだって、きっとそうよ」
「……確かに、その通りかも知れないな」
 まだミーアには話していないが、ロッシェも過去色々な経験をしてきた男だ。振り返れ
ば、彼の人生もなかなか波乱に満ちているように思えた。
「ねぇ、ロッシェ、あたし、あなたの過去が知りたいわ。あなたは一体どんな人生を歩ん
できたのかしら?」
「それなりに色々あったさ……して面白い話でもないが聞きたいなら今度ゆっくり話そう」
 それから暫くして、デュランダルがロッシェの部屋を尋ねてきた。その顔には疲れの色
がありありと浮かんでおり、まるでこの部屋に逃げ込んできた感じですらあった。
「まったく、冗談じゃない。アーモリーワンへの襲撃、ユニウス・セブンのテロ、異世界
からの客人ときて、今度はプラントへの攻撃だ。何も私が議長のときにここまで連続して
事件が起こらなくても良いじゃないかっ」
 デュランダルを知る者が聞けば、彼でもこんな情けない声を出すのかと目を丸くしただ
ろうが、幸いロッシェはデュランダルとそれほど付き合いが長いわけではなかった。
「色々大変だったようですね……なにがあったのです?」
「あぁ、それは……いや、その……」
 あくまで好奇心から尋ねたロッシェに、デュランダルは事件の説明をしかけるが、途中
で口をつぐんだ。国家の最重要機密を彼に漏らして良いのだろうかと。
「議長、彼はもうフェイスですわよ? 議長直属、腹心にお話しできませんの?」
 議長が来た途端、ミーアは彼女がいうとことの「ラクス様口調」になった。
「……それもそうだな。君の意見も聞きたいし、わかった、話そう」
 それから議長は、今回の核攻撃騒ぎについて、自分の進退問題が掛かっているという部
分を省き、ロッシェに説明した。ロッシェは途中相づちを打ちながら、ミーアは実感の沸
かない政治の話に退屈しながら聞いていた。
「馬鹿な、それで軍を派遣したというのですか?」
「あぁ、議会で可決されたからね……」
 声に苛立ちを含んでいるロッシェの反応に、デュランダルは困惑気味に答える。ロッシ
ェは呆れたように首を振ると、
「すぐに命令を撤回するか、連れ戻すかしたほうが良い。これは罠だ」
「なんだって!?」
「私は、よく知っているんですよ……これによく似た作戦をね」



             第5話「歴史への台頭」


388運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:34:38 ID:???
 地球連合総会に対し、ザフト軍艦ミネルバが襲撃をしかけたのは、総会の議長役である
大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドの演説が終わり、総会出席者が総立ちで拍手を
送る、まさにその時であった。
「な、なにごとだっ!?」
 衝撃に揺れる議場の中、ジョゼフは冷静さを失わずに状況確認を行った。そして、それ
はジョゼフが予想だにしない答えでもあった。
「ザフトが、ザフトがこの基地に襲撃をかけてきましたっ!」
「なんだと? 馬鹿な、何かの間違いではないのか!」
 しかし、議場のスクリーンに映し出された光景、ザフトの新造艦と最新のモビルスーツ
が基地に僅かに配備された防衛部隊と戦う姿を目の当たりにすると、さすがのジョゼフも
息を呑んで立ちつくすしかなかった。
「大統領閣下、ひとまず脱出なされたほうがいいのではありませんか?」
「ジブリール!」
 いつの間にか壇上まで着ていたジブリールは、つまらなそうにジョゼフに意見する。
「こんな状況でも、まだコーディネイターどもと和平などと言われるのであれば、尚更
死ぬわけには行きますまい」
「皮肉はいい……しかし、もっともな意見でもある」
「シャトルを用意してあります。どうぞお早く」
 これが運命の分かれ道であることを、ジョゼフはまだ知らない。

 基地との外では、ミネルバのモビルスーツ部隊が、基地防衛部隊と死闘を繰り広げて
いた。基地に配備されているのは旧式のダガーや、よくてダガーLであり、これは和平
に向けて議論する会議に、モビルスーツは極力排除したいというジョゼフの意向の現れ
でもあったが、それを知る由もないミネルバは、
「情報通り、大した兵力ではないわね」
 という感想であったという。
 モビルスーツ部隊のほうも、似たような感じで、
「ブルーコスモスといっても最新鋭機を持ってる訳じゃないのか……」
 そんなことを考えながら戦闘を行っていた。
『シン、敵の一機は重武装タイプだ。ミネルバを狙われるな』
「わかってる、すぐに墜とす」
 シンは、インパルスを敵の一団に突っ込ませ、接近戦によるドッグファイトをしかけ
た。インパルスはビームサーベルを抜き放つと、旧式のダガーを次々に斬り倒す。運動
性が違いすぎた。
389運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:36:33 ID:???
「弱いな……そんなんじゃ俺は殺せないぞ」
 強襲型装備のダガーLがMk39低反動砲で砲撃をしかけてくる。それがどうした? こ
っちはVPS装甲だ。シンは正確な砲撃をしかけてくる敵に、構わず機体を突っ込ませた。
一見すると機体性能だけに頼った乱暴な戦い方に見えるが、攻撃を受けても向かってく
るというのは相対する敵にとってはかなり驚異的に映る。現にダガーLに乗っているパ
イロットは砲撃を物ともせず突っ込んでくるインパルスに恐れを成し、後退しようと機
体を動かしてしまった。
「遅いんだよ!」
 シンは敵の動揺を見て取り、機体を急加速させると一機にビームサーベルで貫いた。
至近距離での爆発が起こる、だが、インパルスは揺るがない。
「チッ、これならこの前のテロリストどものほうがまだ……」
 シンは戦いに高揚しすぎる。これは親友であるレイがことある事に言っていること
だが、戦い以外の場所では割と冷静な癖に、いざ戦いになると熱さで我を忘れるのが
シンだった。日頃ため込んでいる物も多いのだろう、彼の戦い方は苛烈だった。
「ん? あれは……シャトルか!」
 そして、その時は訪れた。インパルスのセンサーが今まさに基地から脱出するため、
飛び立とうとしているシャトルを発見した。レイとルナは他のモビルスーツを相手に
している。ならば自分が行くしかない!
「逃がすかぁぁぁぁぁっ!」
 シンは機体をシャトルに向けて突っ込ませる。それに乗っているのが、ブルーコス
モスのメンバーたちであることを信じて。

 飛び立つシャトルの中で総会出席者たちが一様に青い顔をしていた。事態が飲み込
めていない者がほとんどで、ジョゼフとて、それは例外ではなかった。
「私は諦めない……こんなことで和平への道が閉ざされたは思わん」
 確かに和平への道は閉ざされはしないだろう、閉ざされるのは別のものだ。そして
ジョゼフは閉ざされるその時まで、地球とプラントの平和について、考えていた。
「う、うわぁぁぁっ!」
 シャトルに乗っている誰かが叫んだ。ザフトのモビルスーツが一機、ビームサーベ
ル片手に飛び込んでくる。
「早まるなザフト、早まるな若者よ……私は君たちと――」
 ジョゼフ・コープランドの言葉は、最後まで発せられることは、永遠になかった。
390運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:38:40 ID:???
 シンは、僅かなためらいもなく、軍人として任務を遂行した。『逃亡』するブルーコス
モスのシャトルをビームサーベルで両断し、爆散させたのだ。
「ミネルバ、こちらインパルス、シン・アスカ。逃亡寸前のシャトルを破壊した」
『こちらミネルバ、了解した。レイとルナマリアも敵部隊を殲滅しつつある、シンもそち
らの援護に回ってくれ』
「シン・アスカ了解。すぐに援護に……なんだ? 上空からモビルスーツ? 増援か!」
 シンは、飛来するモビルスーツに向けてビームライフルの標準を固定するが、それは敵
ではなかった。真っ直ぐこちらに向かってくるその機体は、VPS装甲最硬のレッド。シンも
よく知るインパルスの兄弟機……
「ZGMF-X23S……セイバーだって!? 完成してたのか」
 その紛れもないザフトの機体は、ミネルバの前に浮遊し、
『ミネルバ及び所属のパイロットに次ぐ、ただちに戦闘を止めろ! 俺はザフト軍ハイネ・
ヴェステンフルス。議長からの特命を受けてやってきた。いいか、今すぐ戦闘をやめろ!』
 そう声高に叫んだ。
「戦闘を止めろですって? どういうこと?」
 タリアが怪訝そうな表情で問い返すが、ハイネはかなり興奮しているのか、怒鳴り散ら
すように、
『敵の情報は偽りだったんだ! いいか、俺らザフトも、そしてお前らも敵の作戦に踊ら
されて、連合の和平論者たちを一掃しちまったんだよ!』
「なんですって!? そ、そんな馬鹿な話が!」
『嘘だと思うなら、一般回線を開いてみろ!』
 そのやりとりを聞いてたシンは慌ててインパルスの一般回線を開いた。映像では悲壮感
漂う面持ちで演説をするジブリールの姿があった。
『今日我々は、大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランド氏の主導もと、プラント、しい
てはコーディネイターとの和平に向けての総会を行っていました。しかし、卑劣なるザフ
ト軍は、何の前触れもなくこれを襲撃し、ジョゼフ・コープランド氏を始めとする平和を
願う人々は殺されたのです!』
 シャトルを両断するインパルスの映像が映る。シンは自分の身体から血の気が引いてゆ
くのを実感した。
『我々はザフトを、プラントを、コーディネイターを許さない! 我らが平和の使徒ジョ
ゼフ・コープランドを奪ったその報い、その身で受けるがいい! 青き清浄なる世界のた
めにっ!』
 演説はそこで終わった。
 誰が見ても、どう見ても、ザフトに比があると思うだろう。
「そんな馬鹿な……こんな、こんなことが」
 シンはコクピット内で頭を抱えた。猛烈な嘔吐感が全身を駆けめぐる。殺した、殺して
しまった。平和を、平和を願っていた、なんの罪もない民間人を、
 自分が殺してしまった!!!!
「う、う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
 シンは、発狂した。
391運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:39:41 ID:???
「シン……! ねぇ、レイ、あたしたち……」
 発狂するシンの声が聞こえたのか、ルナマリアはレイに回線を繋いだ。
『一杯食わされた……で済む問題じゃないな。軍の命令とはいえ、俺達は民間人を虐殺し
たことになる』
「そんなのって!」
『どう弁解したところで、もうどうにもならん……しかし目下のところ、その話は後だ。
敵が来るぞ』
「えっ!?」
 レイに言われて、ルナマリアも気付いた。上空に物凄い数のモビルスーツ反応がある。
「これって……」
『どうやら敵は始めからこのつもりだったらしいな。この数を相手に切り抜けるのは難
しいぞ』
 言いながら、レイは考える。センサーの反応だけでも数十機のモビルスーツ部隊がこ
ちらに向かってきている。恐らく今度は先ほどまでの敵とは比べものにならないほどの
部隊が来る。
(さっきの演説をしていたのはブルーコスモスの盟主ロード・ジブリール……来るのは
ファントムペインか!)
392運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:41:27 ID:???
 地球連合軍パナマ宇宙港。
 ここは今、戦場になっていた。
「反乱だと? 一体どこの部隊だ!」
「判りません、ですが基地守備部隊は全滅させられました!」
「馬鹿な、このパナマには常時三十機以上のモビルスーツが警戒に当たっているんだぞ!」
 基地指令は悲鳴に近い声を上げ、状況確認を急いだ。司令室の大型スクリーンに基地全
体の様子を映し出す。
「こ、これは……!」
 画面には三機の特徴的なモビルスーツが、パナマ基地守備部隊を蹴散らしていた。
「この機体……奴ら、ファントムペインか!」
 画面上の三機、カオス、アビス、ガイアは三位一体のフォーメーションを取りながら、
前進し、向かい来るモビルスーツ部隊を蹴散らしていた。隊長代理を務めるスティング
は、モビルスーツを撃破しながらも、正確な指令を各個に飛ばす。
「ウィンダム隊は、空中からミサイル攻撃をしかけろ。間違ってもマスドライバーを傷
つけるなよ?」
『了解!』
「良い返事だ……そぉら、いけぇっ!」
 スティングの指示と共に、ジェットストライカー装備のウィンダム部隊が次々と基地
にミサイル攻撃をしかけてゆく。基地も対空砲で応戦するのだが、ジェットストライカ
ーのスピードについて行けてないのだ。
「アウル、ステラ、今のうちにモビルスーツ隊を全滅させるぞ!」
『ハイハイ』
『わかった』
 三位一体で進むスティングたちは、カオスが空中から敵モビルスーツ隊を威嚇、アビ
スの一斉射でこれを破壊し、残った敵をガイアが接近し、叩く。この三連撃の前に、パ
ナマを守備するモビルスーツたちは為す術無く敗れていった。
「己、ファントムペインがぁ!」
 守備部隊の隊長機がガイアに向かって斬りかかってゆく。部下を失い、既に自分一機
となった彼は、せめて一人でも多くの敵を倒したかった。
「……そんなんじゃダメ。全然ダメ」
 しかし、ガイアに乗るステラ・ルーシェは無情だった。隊長機の命をかけた一撃も、
あっさり防ぐと、MA形態になり、グリフォンブレードで機体を切り裂いた。
「弱い、ステラと戦うには、弱すぎる」
393運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:42:44 ID:???
 地球軍ビクトリア宇宙港。
 ここもまたファントムペインによる襲撃を受けていた。
「クーデターだと! ファントムペインめ、遂に化けの皮が剥がれたか!」
 自らモビルスーツに乗り込み応戦に出た基地司令官は、モビルスーツ部隊を指揮し、果
敢にもファントムペインに戦いを挑んだ。
『違うな……』
「!?」
 だが、それは無謀なる行為だったのだろう。彼はファントムペインを常々警戒してはい
たが、その実力までは理解していなかったのである。
『皮が剥がれたのではない、自ら脱ぎ捨てたんだ』
「き、貴様は!」
『時代は変わる、時代は俺達ファントムペインのものになるそうだ』
 まるで他人事のような呟き、そしてその呟きこそビクトリア基地司令官の聞いた、最後
の声だった。彼の乗るモビルスーツは、二本の対艦刀に両断された。
「こちら、スウェン・カル・バヤン。敵隊長機を破壊した」
394運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:43:43 ID:???
 地球軍アルザッヘル月基地。
 基地は、『突然現れた戦艦』の攻撃を受け、早くも窮地に陥っていた。
「ミラージュコロイド……ダイダロスのガーティールーか!」
 ガーティールーを始めとしたダイダロス所属の戦艦が、容赦ない砲撃をアルザッヘル基
地へとしかけてくる。集中的に艦艇の発射口を潰され、アルザッヘルはモビルスーツのみ
での対応に迫られた。
「スローターダガー隊、アルザッヘルのモビルスーツ部隊を蹴散らせ」
 部隊を指揮するガーティールー艦長イアン・リーは、冷静に指示を出し、艦をアルザッ
ヘル司令部へと向かわせる。
「偽の演習計画にあっさり騙されるとは……アルザッヘルの危機管理能力は低いな」
 過日、ザフト軍諜報部が確認したダイダロス基地での動きというのは、アルザッヘルに
向けての進行準備だったのだ。無論アルザッヘルに対しては演習という嘘の情報を伝えた
のだが、それを信じ切ったためにこうして奇襲を受けてしまった。
「敵がザフトだけだと思っているから、こうなるのだ」
「艦長、敵の抵抗が沈黙しつつあります」
「よし、六連装ゴットーフリート標準。目標敵基地司令部……撃てっ!」
 強力なガーティールーの主砲連射を前に、アルザッヘル基地司令部は一溜まりもな
く壊滅した。
395運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:45:27 ID:???
「パナマ、ビクトリア、アルザッヘル、それぞれ陥落しました」
 総会出席者のシャトルを囮に、優々と脱出したジブリールは、次々と制圧されてゆく連
合軍基地の名前を聞きながら、卑しくほくそ笑んでいた。
「後は、ガルンナハンとスエズ、ヘンブンズベースは今暫く掛かるかな?」
 その時、丁度スエズ基地陥落の報も入った。最早ジブリールは笑いが止まらなかった。
「なんだ、歯ごたえのない。ここまで順調に事が進むと、かえって怖いぐらいだ」
 実に簡単な作戦であった。
 まず、ザフトに対して虚偽の情報を流す。虚偽といっても、極めて真実味が高く、
秘匿性の高い情報を、如何にも「気付かぬうちに漏らしてしまった」という風に、
向こうに気付かせる。そして、これ見よがしにダイダロスの艦隊で陽動をかけ、ザ
フトを焦ら、それと同時に、こちらは地球連合軍の主要基地への襲撃計画を進める。
 ザフトが偽の情報に踊らされ、総会出席を始末すれば後は仕上げだ。全世界中継
にてザフトを断罪し、同じくして基地制圧指令を出す。混乱に常時、ファントムペ
インが連合軍の全体を制圧することが出来る……まったく、上手すぎる作戦だった。
「アズラエル……悔しかろう。お前に出来なかったことを、私はやってのけたのだ」
 今は亡き旧敵に、ジブリールはフッと笑いかける。それは勝利の笑みであった。
396運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:47:46 ID:???
「くっ、なんて数なの!」
 ルナマリアは、ザクの長距離砲を発射しながら苛立ち叫んだ。今彼女は途方もない数の
モビルスーツ部隊に襲われていた。
『無駄口を叩いている暇があるか!』
 レイの叱咤が飛ぶ。レイのほうはもっと大変だった。彼は『戦えなくなった』親友を守
りながら戦っているのだ。インパルスは、シン・アスカは戦意を完全に喪失していた。
「まずい、このままでは……ミネルバ、ミネルバ、撤退を要請する。これ以上は無理だ!」
 レイはビーム突撃銃を乱射しながら、ミネルバに回線を繋いだ。一方のミネルバも、次々
に飛来するモビルスーツ部隊に苦戦を強いられていた。
「撤退ですって?」
 タリアはレイの進言に驚いたが、クルーたちはこの絶望的状況にいくらかの希望を見出
した。そうだ、何もこのまま戦い続けることはない、撤退という選択もあるではないか。
「冗談じゃないわ! 言い様に敵に乗せられ、踊らされ、このままおめおめ逃げ帰れって
いうの?」
 だが、タリアには意地があった。彼女のプライドは今やズタズタで、このまま敵に一矢
報いることも出来ず逃げるなど、到底不可能だった。そんな艦長の心理を読んだのか、副
官のアーサーが冷静な意見を出す。
「しかし、艦長。依然として敵は増え続けています。このままではモビルスーツ隊は全滅
し、ミネルバも……」
「だったら何か策を考えなさい! 貴方は副官でしょう!」
 タリアは怒鳴り散らすと、ギリッと歯ぎしりをした。負けるわけにはいかない。女だて
ら艦長をやっているのだ、ここで負けなどすれば……
『艦長、俺も撤退に賛成しますよ』
 その時、それまでモビルスーツ撃破に勤しんでいたハイネが通信回線を開いてきた。
『あんたが面子やプライドに拘るのは勝手だが、あんたは軍人で、しかも艦長だ。自己威
信に部下を巻き込むな』
「他の部隊の人間が偉そうに!」
『艦長席に座ってるからって自分を偉いと勘違いしている人よりはマシだ』
 ダンッと、タリアは椅子を叩いた。誰がどう見ても、ハイネの言い分が正しかった。
「……タンホイザー起動」
「艦長!?」
「勘違いしないで、陽電子砲を敵の中心部に放ち、その隙にモビルスーツ隊を回収。全速
力でこの場を離脱します。ハイネ、悪いけど援護を頼むわ」
『任されましょう!』
 もうどうにもならなかった。ミネルバはただ、逃げるしかない。逃げて、逃げて、逃げ
切るしかないのだ。何故なら彼らは、民間人殺しの大罪人なのだから。

                               つづく
397運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/06(火) 16:49:49 ID:???
第5話です。
私の作品は、「種死世界で、Wの出来事が置き換えられないか?」
という思いつきから構想し始めたものです。
偶然にも、ファントムペインはOZに、ロゴスはロームフェラ財団に
似た性質を持っていると感じて、試行錯誤の上、置き換えてみまし
た。私の作品はWのキャラこそ出てきますが、どちらかと言えば、
「種死世界で、Wをやってみよう」という感じなのかも知れません。
クロススレですし、Wキャラの活躍がもっと見たい人にはあまり面
白くないかも知れませんが、こういう作品もある、という目で見て
いただけると幸いです。
398通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 17:04:36 ID:???
面白い試みだとは思う
ただ、話に無理が出そうな気がするのが不安材料
399通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 17:06:29 ID:???
GJ!
400通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 17:12:59 ID:???
おお、スウェンが登場している!
401通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 17:30:01 ID:???
スウェンが出るという事は、ジェスとかアグニスとかも出てくるのかな?
402通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 18:53:44 ID:???
作者にはあまり出てきて欲しくないな

とりあえずGJ!
403通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 19:02:32 ID:EO8a0YfM
GJ!!
ZAFTも評議会の連中も、『頭のいい馬鹿』らしく見事に踊ってくれましたが、
やはり、ジブリールの脚本と演出が光る一幕でした

「秘匿性の高い=真実」という思考に、技術はあっても経験や知恵に欠ける
コーディ特有の『素人臭さ』―ゴルゴ13で、欺瞞にかかって全滅したIRAの
ハッカーどもに通じる滑稽さ―が在って、実に愉しませて頂きました

<勝手に予告>
賢者達は奈落に落ち、愚かな女神と折れし勇者は罪に惑う
悲劇で喜劇な前座は終わり、騎士と歌姫の舞踏が始まる
『運命の歌姫』―舞い降りる騎士―

*あくまで、これは嘘予告であり、職人氏に対する要求はなんらありません
404通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 19:37:49 ID:???
GJ!
種自体、嫁が自分のお気に入りの品からパクッた継接ぎの物ですから、似ているのは当たり前と言うべきでしょうか…
ただ種には、パクリ元みたいに一本骨が通ってないから、かなり難しいですね。
頑張ってください!!

デュランダルはさらに時代の波に揉まれていく事でしょう。
まあ、幸運が無いわけでもないでしょうから、何とかなるとは思いますが。
今回の攻撃にも反対してますから、先見の明があることを他に示せた訳ですし。
とりあえず、心休まる暇無いであろう彼に幸あれ……

タリア君…無能だなぁ。
>「勘違いしないで、陽電子砲を敵の中心部に放ち、その隙にモビルスーツ隊を回収。全速
>力でこの場を離脱します。ハイネ、悪いけど援護を頼むわ」
いくらなんでもコレは拙いだろう。
既に悪役に認定されているからって、これはちょっと。
……アーサーが何気に有能っぽいから、彼に任せた方がいい気がする。

さて、地球を手に入れた(に近い)ジブリールはトレーズ様になれるでしょうか……
405通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 19:46:00 ID:???
GJ!!
ミネルバ隊、ザフト上層部が失態を隠すためのスケープゴートにされるかも……(独断でやったとか)
それが無かったとしても、ザフト内部じゃ憎まれるだろうなぁ。
406通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 20:03:29 ID:???
なんとなく桜多吾作のグレートマジンガーを思い出してきたよ…
クロスでここまで社会的苦境に追い込まれるミネルバ隊というのも珍しいな。
例えばX運命のオーブクーデターの場合、立場が苦しくても読み手が感情移入できる
道義的正当性がまだあったわけだが今回はそれすらも厳しい。
またW本編ならそれぞれ個々の才覚で道を切り開いていったがなまじ軍部隊単位だと
かえって身動きも取りにくいだろうしどうなる?
407通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 22:32:06 ID:???
GJ!
>「……タンホイザー起動」
この件で議長の頭痛の種がさらに増えそうな悪寒。
地上で陽電子砲は拙いでしょう。
ミネルバ隊はあらゆる意味で追い込まれそうだ。
408通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 23:42:07 ID:???
endless destiny氏2ch撤退のお知らせ。
詳しくは語るスレをどうぞ。
409通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 00:36:14 ID:???
ちょっと連合内部の対立情勢がよく分からんな
このクーデターはブルコス主義とは関係ないのか?
原作では、大西洋連邦と対立する親プラント派のユーラシアを
黙らせようとベルリン襲撃を行った図式があったけど
こっちの場合、アルザッヘルやパナマのブルコス主義者も
まとめて一掃しちゃったんじゃね?
アニメ以上に内部に敵作りすぎだろ・・・常識的に考えて・・・

410通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 01:57:24 ID:???
>>407
デス種ではきれいな陽電子砲になったんです。
411通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 01:57:42 ID:???
まぁリアルでもナチスが似たような事やったし。
412通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 02:07:47 ID:???
>>409
SSではこの時期のアルザッヘルやパナマがブルコスじゃないって設定なんだろ。
原作だって最初からブルコスが支配してたわけじゃないかもしれないし。
413通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 02:15:52 ID:???
ロッソとネロの登場マダー?
414通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 04:20:18 ID:???
>>408
語るスレってどこよ?
415通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 07:33:17 ID:???
新シャアのSSを語ろう その5
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1171717884/
416通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 07:58:29 ID:???
そうか……おやめになるのか。
まあ、荒れたからなぁ……
417通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 09:39:38 ID:???
マリューは無能だったけど、自分が無能なのを自覚してるし周囲の連中が優秀だったので、それに応えるべく頑張ってた
タリアは無能だが、周囲がそれ以上の無能ばかりなので、自分が優秀だと勘違いしてる
418通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 11:45:11 ID:???
つうかヒイロでさえあれだったんだ、シンでは再起不能間違いなしだな。
419通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 11:59:51 ID:???
>>409
その辺はWと同じなんじゃね?
OZの後ろにロームフェラがいて、彼らが自分達で直接時代を動かしたいがためにOZを蜂起させたように
ファントムペインやジブリールはロゴスの意向を受けてやったって感じじゃないか?
対立は確かに起こるだろうけど、多分連合軍とだけなんじゃないかな。
最初の宣伝段階で、民衆の意識操作は終ってるし、必要な所にはロゴスが根回ししてあるだろうし。
敵を作りすぎだ、ってのは賛成だがなw
Wと違う点は、ジブリールが何となく全て自分の力って思ってるぽい所か……
420通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 12:17:07 ID:???
>>409
明確にブルコス主義者だったのはダイダロスだろう。
421通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 14:42:23 ID:???
>>419
この職人さんは「種死世界で、Wをやってみよう」
でストーリーを作っているようなので、このままシン再起不能放置はないでしょ
ただ、復活までにはW-DESTINY以上に時間がかかるだろうが・・・
422通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 14:44:04 ID:???
ゼクス役は誰?
ネオでは役者不足
423通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 14:58:31 ID:???
中の人は一緒だけどな!
424通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 15:15:38 ID:???
まぁ中の人は某宗教団体の某アニメ映画で1人12役やったほどの剛の者だしな。
425通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 16:46:52 ID:???
国防委員長は退陣かなあ?
426通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 16:59:14 ID:???
そもそも、テロならともかくれっきとした国軍(建前上は軍じゃないそうだが)が、
自国と同等以上の規模の他国の軍事基地を、平時にいきなり強襲って、
どう考えても有り得ないと思うんだが・・・
仮にこれが情報通りロゴスのメンバーの会議だったとしても大問題だ。
427通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 17:23:12 ID:???
攻撃に賛成した者は責任を取って退陣、ってな感じが一番簡単だが、権力にしがみついてる奴がいるとするなら、そう簡単には事は運ばんだろうな。
つーか、彼ら疑問に思わなかったのかな?
自分達のやり口がブルーコスモスにそっくりだって事を。
428通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 17:39:50 ID:???
>>426
それどころか実際は、プラント正規軍が無断侵入して
和平派の大西洋連邦大統領及び地球各国の主要メンバーを皆殺しだからなあ。
429通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 17:54:24 ID:???
>>421
シンが復活までにとりそうな行動は
1、精神不安定なりながらも戦端が開いてしまったので戦う
2、自分のやったことが許せなく、プラントを捨てW原作のヒイロのように謝罪しに行く
3、重度の精神障害で病院逝き(何
ぐらいかな?
430通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 18:24:32 ID:???
シンはヒイロほど精神強そうじゃない上に
軍人の自分が平和主義の民間人虐殺ってもろに家族が死んだ時のトラウマに抵触した状態だからきついわな
431通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 18:27:38 ID:???
自殺未遂はするかも知れんな
432通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 18:34:10 ID:???
今の状況を一行で説明すると……ザフトは宣戦布告もせずに他国の基地に攻撃を仕掛けた、でいいのか?
433通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 19:48:39 ID:???
>>429
2は身軽に動けるヒイロと違って、敵対国の職業軍人で単独行動能力に乏しいシンでは無理だな。
434通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 20:03:30 ID:???
デュランダルがミリアルド、ジブリールがトレーズとすると、
リリーナがラクス、サンクキングダムがオーブになるのか?
435通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 20:07:07 ID:???
ミーアとロッシェの立ち位置が気になる
436通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 20:18:02 ID:???
イゼルローン要塞奪取で調子に乗って帝国領侵攻作戦などという愚行を
強行したものの、アムリッツァ会戦で完膚なきまでに叩き潰されて
退陣に追い込まれた同盟のサンフォード政権を髣髴とさせるな。
その際本来主戦派ながら作戦の無謀さを見越してわざと反対票を投じていた
トリューニヒトがまんまと権力を握ったように、今回のギルも政治生命を
拾った事になるわけだが、将兵も国民も手駒にしか考えないトリュ公と違って
ミネルバ隊に思惑や思い入れもあるだけに素直に喜べないか…どうすんのかね。
437通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 20:19:37 ID:???
なんせ和平会議に殴りこんで地球最強国家の国家元首殺したからなあ。
438通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 20:58:22 ID:???
最初から出番のあるミーアの方がリリーナ化しそうだと思うがな。ラクス?ドロシーじゃねえ。
439通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:03:03 ID:???
作者氏GJ!!!でした。

>>437
しかも言い訳のしようが無い形でな。
仮に「ブルーコスモスに嵌められた証拠」なんかを出したとしても「でも実際に殺したのはオメーらだろ」で終っちゃうし。

今回の件はプラントの「情報」に関する考え方の甘さが露呈した形になったな。
これを何とかしないとまた嵌められる事になる。(一朝一夕でどうにかできる事じゃないけどね)
440通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:09:21 ID:???
>>438
ラクスの場合ドロシーのような皮肉や嫌味とは違い
天然電波だからミーアとの対比が気になるな。
441通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:21:56 ID:???
て事はキラはカトルか
アヒャってストフリで暴れるわけだな



・・・いいかもしれない
442通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:23:57 ID:???
>>441
キラはアヒャってなくても大暴れな件について。
443通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:27:08 ID:???
カトル父=カガリ
で死亡すればピッタリだな
資金もMSの開発能力もありそうだし
444通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:30:10 ID:???
>>442
いや偽善者キラじゃなく、アヒャって見境なくぶち殺しまくるキラが見たい
無印種で地球降下直後のキラがそのままアヒャったようなのを
445通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:40:21 ID:???
とりあえずシンをはじめとしたミネルバ隊をプラントがどう扱うかが問題だよなあ。
446通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:40:26 ID:???
>>444
それをやる理由が奴には無い。
特殊学級部隊襲撃を理由にして見るのが頭に浮かんだが、無差別破壊をやる理由としては弱すぎるような気がする。
キラにとってフレイと同位置な存在が現れて、その子をカトルの親父みたいな理由で殺されたりしたら、納得できるような出来ないような……

まあ、俺らが決める事じゃないな。
妄想だけにしとこうぜ。
447通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:43:30 ID:???
このシンはさすが綺麗ごとはアスハのお家芸〜って言いそうにないな
もう自分もアスハの同類だって落ち込みそう
448446:2007/03/07(水) 21:46:34 ID:???
ごめんなさい。
上げてしまったOTZ
449通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:46:42 ID:???
おまいら運命の歌姫氏が描くエレガントなジブリタンに期待汁

ジブリにスポットが当たるSSはレアだからなぁ
450通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:52:28 ID:???
亡国のサンクキングダム⇒亡国のオーブ

理想をひたすら訴える点では、リリーナとカガリは立ち位置が似ているな。

むしろキラこそがゼクスっぽい

本編の比較をしてしまうとryだがそこの描写も期待
451通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:52:30 ID:???
>>446
ストフリにPXシステム搭載。
452通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 22:06:13 ID:???
>>451 ゼロシステムじゃないのか?
453通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 22:41:32 ID:???
シンは査問会ものか?でも正式な命令だしなあ。
454通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 22:42:55 ID:???
>>450
立ち位置だけだなw
片方は口だけ、もう片方は理想を現実に近づけるための行動・努力をしてる。

キラがゼクスってのはちょっと……
元々ゼクスがOZに入ったのって、復讐が目的だったわけでして。(元ネタがシャアだしね)
キラは今現在、復讐するような相手はいないぞ?
戦いや兵器を否定してるから、カトル的な位置にいるって言った方が、ある意味合ってると思うよ。

まあ、似ているっていてもキャラに関しては殆ど立ち位置だけだから。
職人氏がそれを元に新しい、そしてwktkするストーリーを組み上げてくれるさ。
455通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 22:46:49 ID:???
>>451
ガンダムユニットにPXシステムなんてのがあったと思う。
いまいち仕組みがよくわからんけど。
ただ、使いこなせない人が使うとわりと悲劇。
漫画の中では「寒い、寒いよ」なんて言って死んでいったパイロットがいたような記憶がちらりと。
456455:2007/03/07(水) 22:48:17 ID:???
失礼。
>>451じゃなくて>>452だった。
457通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 23:04:43 ID:???
PXシステムは強制種割れみたいなもんだと思われ
システムに対応してないバーネット兄弟以外が使用したから
精神崩壊した感じだったような
458通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 23:05:38 ID:???
制限時間ぶっちぎっちゃったんじゃなかったっけ。
459通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 09:25:01 ID:???
このバトルアサルトってので詳しい事知ってる人いない?
http://www.youtube.com/watch?v=ADwx0TFO38A
http://www.youtube.com/watch?v=pU4eHFQAAq8
460通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 10:56:43 ID:???
>>459

たぶん海外だけの発売だと思う
461通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 11:00:44 ID:???
462運命の歌姫 ◆9nFmr8.w9I :2007/03/08(木) 12:25:12 ID:???
さて、9話目も書き上がったし、こっそり昼間に投下するか。
463運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:27:09 ID:???
やば、トリップ打ち間違えた。
464運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:30:47 ID:???
 ……最終的な事件名を『ザフトによる地球連合和平総会襲撃事件』と平凡な呼称にする
こととした一連の事件は、ザフトによる総会襲撃の隙をついたファントムペインのクーデ
ターが全面成功したという結果に終わった。連合軍は、パナマ、ビクトリアを始めとした
宇宙港と、スエズ、ガルナハン、アルザッヘル等、重要な戦略基地をファントムペインに
奪われ、今や最高司令部を持つヘブンズベースを残すのみとなった。ヘブンズベースは現
在も抵抗を続けているが、陥落は時間の問題であろう。
 一方でプラントは、偽の情報に踊らされたとはいえ、大西洋連邦大統領ジョゼフ・コー
プランドを始めとした地球連合各国の平和論者を殺害してしまった。外交当局は総会出席
者のリストを全てチェックして青くなったという。出席者は誰も彼もが政治家や軍関係の
大物であり、ほとんどが親プラント派だったのである。
 取り返しの付かない失態を犯してしまったプラント最高評議会と軍部には、地球の各国
を始めとし、プラント市民からも激烈な非難と批判を浴びせられた。敵の偽情報を鵜呑み
にした国防委員会や、作戦を承認した最高評議会議員は、その怒りの矛先を一身に受け、
叩きのめされた。
「しかし、我々は敵にいいように利用されただけなのだ。現に地球ではファントムペイン
なる部隊の反乱が起きているし、一概に我々が悪いとは言えないのではないか」
 国防委員会には、委員長を始めとし、このように自己弁護をするものも居たが、
「利用されたのは事実だが、なんの罪もない人々を殺してしまい、自分たちが悪くないと
はどの口が言うのか。数十名に登る平和を目指す識者たちを皆殺しにし、残された遺族た
ちのことも考えず、利用されたのだから仕方ないと、お前らは本当に言い切るのか!」
 このように詰め寄られ、沈黙するしかなかった。ナチュラルの命など何とも思わない一
部の差別主義者以外は、なんの罪もない人々を殺してしまったという事実に、心が折れた
のである。
 プラント最高評議会メンバーは全員、辞表を提出した。しかし、この難局に政府のトッ
プを一度に全て辞めさせるわけにも行かないので、今回の作戦に反対票を投じた極少数の
議員は、その見識を認められ、最高評議会議長であるギルバート・デュランダルはこれま
で通りその役職に就くこととなった。
 デュランダルは自分の首が繋がった結果に対し喜び、不謹慎ながらも祝杯を挙げていた。
これで夢に一歩近づいた。暫定的な各委員長代理の人事を自ら行えば、最高評議会は自分
の意のままに動かしてゆくことが出来るであろう。
 ザフトでは、総司令官と他3名が辞任し、また、虚偽の情報を鵜呑みにした諜報部にも処
罰が下った。
 議長の命令で作戦中止を伝えにミネルバへ赴いたハイネは、カーペンタリア基地からプ
ラントに帰還し、正式に『ZGMF-X23S セイバー』のパイロットになった。元々、大気圏降
下が可能な高速機がセイバーしかなかったためにセイバーで現場に向かったのだが、ハイ
ネとしては良い意味で拾い物を得たと思っている。
 ミネルバの処遇についてはすぐに決定しなかった。
 実際に作戦を実行したのは彼らであるが、彼らは軍人として、上層部の命令を聞いただ
けに過ぎない。軍人である以上、上の命令は絶対であり、そのことで彼らを非難すること
は出来ない。情報の真意を見定めるのも、命令を下すのも、彼らではないのだから。
 デュランダルは、ミネルバに対し、「彼らは命令に忠実であり、それは軍人としてはあ
るべき姿だ。そのことで彼らを処罰するのは余りにも酷ではないか」と発言し、現場に駆
けつけたハイネも「あいつ等は軍人としての責務を全うしただけだ」と擁護した。
 いっぽうで、やはり実働部隊という事実もあり、非難や批判があることも無視できない。
しかし、裁かれるべきが彼らに命令を下した政治家や、軍上層部だというのならば、既に
処分は決定しており、これ以上の咎は必要ないようにも思えた。

465運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:32:32 ID:???
 処遇が定まらない間、ミネルバはカーペンタリア基地での謹慎ということになった。基
地内の移動であれば自由であったが、クルーやパイロットたちはなるべく艦内にいた。今
回の事件に対してのジャーナリズムの反応もそうであったが、彼らは味方であるザフト兵
からも『民間人殺しのミネルバ』と、白眼視されていたのだ。
 中にはミネルバを激昂し、時に慰める者も居たが、ザフトとプラント、しいてはコーディ
ネイター全体に泥を塗ったという言葉は、ミネルバクルーたちの気持ちを挫かせた。
 特に実際、総会出席者のシャトルを手にかけてしまったシン・アスカは酷く落ち込んで
おり、同室のレイが、彼をしばらく一人にしておいたほうが良いと部屋を一時移ったぐら
いである。もちろん、早まった行動を起こさせないように監視は付けていたが。
 そうしたレイの気遣いに、多少の落ち着きを取り戻したのか、シンは三日三晩部屋に籠
もった後、やっと外に出たのだが、ミネルバオペレーター、メイリン・ホークが久方ぶり
に外に出たシンと最初に遭遇した際に、その酷い有様に声もかけられなかったという。
 そうした状況が続く中、ミネルバの件は決定なきまま有耶無耶になって行く。
 何故ならば、ヘブンズベース攻略戦を展開していたファントムペインが、大胆な作戦で
遂に同基地を陥落させ、プラントに対しての宣戦布告を進めていたからである。



           第6話「ヘブンズベースを攻略せよ」


466運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:35:13 ID:???
 ヘブンズベースは、大西洋北部アイスランド島にある、地球連合軍最高司令部である。
前大戦で、統合最高司令部JOSH-Aを失った連合軍の新たな本拠地であり、そこに配備さ
れている兵力は他の基地とは比較にならないほど多い。その為、この基地を制圧するこ
とは一筋縄ではいかず、攻略には苦戦を強いられていた。
 これに対しファントムペインは、スペングラー級モビルスーツ搭載型強襲揚陸艦J.P.
ジョーンズを旗艦とした大部隊を編成。アイルランド島周辺をダニロフ級イージス艦で
囲み、これまでの基地と同じく、ジェットストライカー装備のウィンダム隊を主力とし
たモビルスーツ部隊による空からの攻撃でこれを制圧する作戦を立てた。連合軍のモビ
ルスーツは、未だに地上用ダガーが主力であり、空からの攻撃は極めて有効なものと思
われていた。
 既に他の基地の制圧を完了させた部隊も合流しており、実戦指揮はネオ・ロアノーク
大佐に一任された。

「さすがはヘブンズベース……見事な防衛網を張っている」
 旗艦J.P.ジョーンズで戦略図を見ながら、ネオは僅かに感嘆の声を上げた。ヘブンズ
ベースは付けいる隙のないモビルスーツ及び機甲部隊の布陣を敷いており、基地司令官
が決して無能ではないことを示していた。
「無能だったら嬉しかったんだがな……」
 ネオは作戦立案中にそんなことを呟いたという。そんな彼の呟きに、
「どうして? 戦うのが楽だから?」
 と、久しぶりに再会した彼に、これでもかというぐらいベッタリくっついてたステラ・
ルーシェが尋ねたが、彼は苦笑しながらこう答えたという。
「だって考えても見ろよ? 敵が無能なら、こちらが有能な分だけどちらも犠牲が少な
くて済むんだぞ? 無闇に血が流れるよりは、ずっと良い」
 そんなネオの、ある意味で軍人のあり方を否定するような発言は、ステラには難しく
て良く分からず、とりあえず「ネオは優しいことを言った」とだけ解釈した。ネオが実
際に優しい心根であるかどうか別として、彼が今回のクーデターで双方の流血を好んで
いなかったのは事実であったし、時代遅れの連合には潔く舞台から退場して貰いたいと
いう思いもあった。
467運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:37:37 ID:???
「地上にある施設は基地司令部と見せかけているだけのフェイクだ。本当の司令部はこの
辺り」
 ネオは、コンソールを操作し、アイルランド島にある山の一角を拡大する。
「この山の地下に司令部はある。山は要塞化されて対空砲台も数多く存在するが、ウィン
ダムの機動力ならば十分突破できるだろう」
 J.P.ジョーンズのブリーフィングルームには、ロアノーク隊とホアキン隊の主要メンバ
ーが集まっている。さすがにこの時だけはステラもスティングたちと共に、普通に椅子に
腰掛けていた。
「ウィンダム隊は、もっとも高い機動力を持っているカオスを隊長機とする。スティング、
お前が指揮を執れ」
「わーったよ!」
「ウィンダム隊による第一波攻撃の後、アビス率いる水中モビルスーツ部隊が敵水中モビ
ルスーツ部隊を蹴散らす。出来るな、アウル?」
「当然!」
 パナマでの大勝が嬉しかったのか、二人の戦意は著しく高まっていた。ステラは戦いや
勝利に高揚するという感情を知らないのでいつもと変わりはなかったが、スティングとア
ウルが嬉しそうだという事実に、自身も嬉しがっていた。
「敵水中モビルスーツ撃破後は、モビルスーツ搭載の強制揚陸艦を基地沿岸に叩き付け、
一気に制圧する。地上戦での主力部隊は、スウェンのストライクと、ミューディーのブル
デュエル、そしてステラのガイアだ。シャムスのヴェルデ・バスターはバスターダガー隊
と共に長距離からの支援攻撃に専念しろ」
 出来ればネオ自身も専用のウィンダムで出撃したかったが、精鋭たる彼らの足を引っ張
っては困る。今回は旗艦にてホアキンと共に静観するつもりであった。
「作戦内容は以上だが、何か質問は?」
 士官の一人が手を挙げた。
「作戦とはあまり関係ないのですが、技術部が今回の作戦に試作モビルアーマーのテスト
を兼ねた実戦導入の許可を求めています」
 近年、ファントムペインは積極的にモビルアーマーの開発を行っていた。これは謂わば
性能テストのようなもので、ストライカーパックにより各戦場に対応した装備を選択でき
るモビルスーツと、最初からあらゆる戦場を想定して作られモビルアーマーでは、どちら
がより有効なのか? というものである。もっとも、既存のモビルスーツを開発して作ら
れたウィンダムとは違い、一から作らねばならなかったモビルアーマーは開発が遅れ、こ
んなギリギリに完成したという経緯があった。
「ザムザザー、と言ったな、確か」
 ネオは呼び慣れぬモビルアーマーの名前を口にする。
「ダメだ、今回の作戦はファントムペインの今後を左右するものだ。それに試作モビルア
ーマーのテストなど加えられん」
 ネオはそう決定したが、内心でそのモビルアーマーに興味を持っていた。作戦が終わっ
た後にでも見に行ってみるかと、その時は気楽に、そう考えていた。
「ではこれより二時間後に作戦を決行する。各自、出撃準備に取りかかれ!」
 しかし、二時間後、出撃したファントムペインは完膚無きまでに敗北することとなる。
468運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:39:10 ID:???
 このヘブンズベース攻略戦の第一波が『失敗』した理由はいくつかある。それまでの勝
ち戦続きが将兵たちにの心に小さくはない油断を作っていたこと、パイロットたちにヘブ
ンズベースほどの大規模な要塞基地に対しての攻略経験が浅かったこと、それに対して連
合軍が死にものぐるいで絶対死守を敢行したこと、そしてヘブンズベースにファントムペ
インが持っていた情報にはない装備があったこと、などだ。
 ファントムペインのスティング・オークレーは、作戦通りにウィンダム隊を指揮し、敵
の対空砲火をかいくぐって敵基地司令部まで接近していた。ここまでは確かに作戦通りで
あり、後は基地司令部のある山に攻撃をすれば良いだけ、そのはずだった。
「なんだ? 山が……開閉している!? こんなもの、情報にはないぞ!」
 突然の事態にカオスに乗るスティングは少なからず動揺した。
 連合軍は、対空砲火では敵モビルスーツ部隊に対しての応戦は難しいと考え、極秘裏に
開発されていた要塞主砲による攻撃を試みたのだ。その名を対空掃討砲ニーベルングと言
った。
「フフン、ファントムペインの奴らめ、このヘブンズベースを墜とせるなどと本気で思っ
ているのか?」
 ヘブンズベース基地司令官は、司令部に近づきつつある敵モビルスーツ部隊の存在にも
まるで動揺せず、対空掃討砲の使用をいち早く決断した。
「蚊とんぼどもめ、思い知るがいい……ニーベルング発射!!!」
 ニーベルングは、その圧倒的な破壊力を持って発射された。元々はザフト軍の降下部隊
を殲滅するために作られたこの要塞主砲は、今まさにファントムペインの空中モビルスー
ツ部隊を、ほぼ全滅に近い形で粉砕した。
「くそっ、全機離脱だ!」
 スティングは発射されたニーベルングの莫大なエネルギー量に恐れ戦きながら、必死で
機体を反転、急速離脱させる。後ろでは次々とウィンダムが爆破、塵一つ残らず消滅して
ゆく。
(間に合うか!?)
 スティングは、久しぶりに死への恐怖を感じていた。

469運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:40:24 ID:???
「これは……」
 ネオはその悪夢に近い光景を旗艦から見ていた。すぐ隣ではホアキンが状況を確認しろ
と部下に怒鳴っている。
「カオスは……スティングは無事なのか!?」
 ネオはそう叫ぶと、部下にすぐにカオスの信号を確認させた。数秒後、カオスの信号を
無事確認することが出来た。
「カオスより入電、ウィンダム隊はほぼ全滅に近い状態にあるとのことです!」
「ぜ、全滅だと」
 ホアキンは血の気が引いたような声しか出せなかった。
「カオスよりさらに入電、我が機体の損傷も著しく、帰還を許可されたし、とのことです」
「帰還を許可する。水中部隊も一旦後退させろ、この状況でヘブンズベースを攻めるのは
無理だ……」
 ネオは苦々しげに呟くと、それ以上の作戦続行を断念した。これを機に敵が打って出て
くるかとも思ったが、敵はあくまで籠城策を取るつもりなのか、出撃の気配はなかった。
何はともあれ、ファントムペインは一連のクーデーター中に、初めての敗北を喫したので
ある。
470運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:43:52 ID:???
 帰還したカオスは、ニーベルングの直撃こそ回避できたが、砲撃の余波に機体を著しく
損傷させており、再出撃には相当の時間が掛かると思われた。ちなみにパイロットも軽傷
を負っており、医務室行きとなった。ネオとホアキンはこの事態に作戦の練り直しを要求
された。
「一筋縄ではいかないと思っていたがまさかここまでとは……」
そうホアキンが呟きながら、その日の作戦会議を終えた。ネオも同感であったが、素直に
賛同する気にはなれなかった。何故ならば、そんな事実が現れようとも、ファントムペイ
ンはヘブンズベースを攻略せねばならないのだ。その現実に溜息をつき、私室に戻ろうと
したネオに、技術士官が声をかけてきた。例のモビルアーマーの実戦テストをどうしても
行いたいというのだ。
「こんな状況下に何を……いや、まて」
 ネオは『モビルアーマー乗り』としての直感が、これは使えるのではないかと告げてい
ることに気付いた。
「そのモビルアーマー、私に見せて貰おうか?」
 彼の中にとても危険なひらめきが生まれていた。

「このザムザザーは、総重量526.45tと既存のモビルスーツを遙かに上回る重さですが、
各部に設置されたバーニアから大推力を得ることによって、高い飛行能力と機動性を有
しています」
 技術士官は、ザムザザーを遠隔操作し、その最大の武装、陽電子リフレクターを作動
させる。
「これが陽電子リフレクターか?」
 ネオは、発生する高出力フィールドに目を押さえながら尋ねる。
「はい、この陽電子リフレクターのリフレクション能力は、その名の通りです。例え陽
電子砲であっても完全に防ぐことが出来ます」
 技術士官は自信に満ちた声で熱弁を振るいつつ、リフレクターをリセットする。
「搭乗員は三名で、それぞれ行動指揮を執る機長、砲撃を担当する砲撃手、操縦及び格
闘を担当する操縦士になっています」
 蟹のような甲殻類を思わせるザムザザーのフォルムに、ネオは新たな可能性を感じて
いた。この機体ならば……!
「一つ聞くが、この機体は一人でも動かせるのか?」
「は? 一応、操縦は一人でも出来ますが、それだと砲撃等の攻撃オプションが使えま
せん。最低でも二人は必要ですが……」
「そうか、わかった。この機体の実戦導入を許可しよう」
「は、はい、ありがとうございますっ!」
 しかし、この技術士官の喜びは一瞬で消えることとなる。
「では、早速出撃準備に掛かろう。俺も仕度を済ませる」
「えっ?」
「聞こえなかったか? この機体で出撃するのだ、俺がな」
 仮面に隠れたネオの表情は、いつになく不敵なものだった。

471運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:46:15 ID:???
「ロアノーク大佐! これはどういうことですか!?」
 二十分後、既に発進体勢にあるザムザザーに回線を繋いだホアキンは、上官の真意を問い
ただした。彼としてはなんの相談もなかったことよりも、司令官自ら出撃するという事態へ
の驚きがあった。
「ホアキン、俺はこれよりこのザムザザーでヘブンズベースに特攻をかける!」
「特攻ですと!? 死ぬ気ですか!」
「死ぬ気でやらねばヘブンズベースは墜とせん! 俺が敵要塞主砲を破壊する。それを見計
らってモビルスーツ隊を出撃させろ!」
「大佐!!!」
 ホアキンは制止の声を上げるがそれを最後まで聞くネオではなかった。ザムザザーを発進
させ、対空掃討砲ニーベルングを破壊するため彼は出撃する。発進と同時に起こる加速によ
る凄まじい衝撃が彼を襲う。
「この感じ……やはり、モビルアーマーは良い……」
 かつての異名がそうさせるのか、ザムザザーの操縦席に座るネオの気持ちは高ぶっていた。
ネオは、自分がネオ・ロアノークと名乗るようになってから、自己の存在意義を戦場でしか
実感できない男だ。悲しきかな、口では戦いを嫌がりつつも、彼は戦場にいるときこそ、も
っとも活き活きとしている。
「基地の防衛システムがもう作動したか。夜襲備えをしていたな……しかし!」
 ザムザザーは向かい来る対空砲火の雨を巧みに避けると、敵基地司令部を一直線に目指し
た。
「な、なんだあの機体は!」
 ヘブンズーベース総司令部は、突然夜襲をかけてきた謎の機体に驚愕し、司令部に詰めて
いた指揮官たちは動揺しきっていた。夜襲の可能性は勿論あった。故にこのように備えもし
ておいた。だが、あの機体はなんだ。
「モビルアーマー……ファントムペインは、新型のモビルアーマーを開発していたのか!」
「敵モビルアーマー、尚も接近!」
「砲火を集中しろ! 敵を近づかせるな!」
 総司令部のある要塞化された山に露出するビーム砲台から、ザムザザーへと一斉砲撃が行
われる。とても全てを避けるなど無理だった。
「ここで試してみるか……陽電子リフレクター展開!」
 ネオは、ザムザザーのリフレクターを作動させる。ザムザザーはある意味で隙だらけなリ
フレクション姿勢へと移行する。
「前面のみの防御姿勢……盾としては正しい形だが、果たしてこれで――」
 ザムザザーのリフレクターに怒濤の勢いでビームが炸裂する。数十に及ぶビームの光りは、
突如空中で『制止』した、ザムザザーを確実に捕らえていたが、陽電子リフレクターはその
こと如くを弾き返した。
「ほぅ、なかなか使えるものだな!」
 その絶対防御の力にネオは歓喜の声を上げるが、防がれた方は堪ったものではなかった。
472運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:48:20 ID:???
「て、敵、モビルアーマー無傷! 再び、こちらに向かって前進を始めました!」
「要塞主砲を、ニーベルングを使え!」
「し、しかし、対空掃討砲ニーベルングは降下してくる敵には有効ですが、正面から向か
ってくる敵には……」
「構わん! ニーベルングをどうにかせぬ限り、その真下にあるこの司令部を制圧出来ぬ
事は奴らも知っているはずだ。山に取り付こうとした瞬間、あの蟹のデカブツを吹き飛ば
してくれる!」
 だが、要塞主砲を無力化することこそが、ネオの狙いであることを基地指令は理解して
いなかった。先ほどの一線で、敵のモビルスーツ部隊を一掃したこともあってか、ニーベ
ルングを使えば敵が怯み、撤退する可能性もあると考えていたのだ。
「いいか、ギリギリまで引きつけるのだ。ニーベルングならば、例え余波であっても敵の
破壊が可能だ! このヘブンズベースは我ら連合の最後の砦……何があっても陥落させる
わけにはいかんのだ!」
 山が割れ、対空掃討砲ニーベルングが露出する。もし、ザムザザーが正規の通り、パイ
ロット三人体制で出撃していれば、砲撃・射撃による目標破壊という方法が採れたはずだ
った。しかし、今このザムザザーを操縦しているのは、ネオ一人だ。
「後はこの機体と、陽電子リフレクターの性能を信じるのみ!」

「対空掃討砲ニーベルング、発射せよ!!!」
 そして、遂にニーベルングが発射された。要塞まで距離数十メートルに迫っていたザム
ザザーを破壊するため、驚異の一発が放たれたのだ。
「リフレクション姿勢で固定……いや」
 衝撃に揺れる機体を安定させながら、ネオはポツリと呟いた。
「この姿勢のまま、敵要塞内部に突っ込ませて貰う!」
 恐らく、ザムザザーに絶対の自信を持っていた技術士官であっても、このような選択は
しなかっただろうし、考えることすらなかっただろう。そもそも、陽電子リフレクターは
防御のためのシステムだ。それを展開したまま敵に突っ込む、『攻撃』を想定されて作ら
れてはいない。
「俺は死を恐れない……何故なら、一度死んでいるのだからな!」
 ニーベルングが巻き起こす破壊の力を機体に受けながら、ネオは叫ぶ。コクピットにも
伝わるその衝撃は、ネオの身体にもかなりの負担をかける。
 ピシリ、っと仮面に亀裂が入った。
「さぁ……この死に損ないを殺してみろ!!!!」
 ネオは、出撃前ホアキンに言ったとおり、ザムザザーでの特攻を敢行した。
473運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:49:36 ID:???
「敵モビルアーマーロスト……」
 たった一機を破壊するために発射されたニーベルングは、ザムザザーを完全に消滅させ
たかに見えた。
「連中の切り札があのモビルアーマーだと言うのなら、ファントムペインも恐れるに足ら
ず。今度は我らが打って出て……」
 その時、基地に衝撃が走った。
「!? 何事だ!!!」
「わ、わかりません! ニーベルングに異変が!」
 まさか、と基地司令官は叫んだ。そして、それと同時にある可能性に思い当たる。
「て、敵モビルアーマー、生きています! 生きて、ニーベルングに攻撃を!」
「な、何とかしろ!」
「無理です、ニーベルングに取り付かれては対処の仕様がありません!」
 ザムザザーは、ニーベルングを受けきっていた。無論、砲撃を一身に受けたわけではな
いのだが、並のモビルスーツならば一溜まりもない一撃でも破壊されず、超振動クローで
の接近攻撃を敢行していた。
「あれがエネルギー集中用の砲身か!」
 ネオは、ザムザザーの超振動クローでニーベルングの砲身を掴むと、力の限りこれを叩
き折った。エネルギーの残滓が散り、ザムザザーの機体を蝕む。ニーベルングは爆発寸前
であった。
「機体が、持たない。だが、これで……!」

474運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:51:21 ID:???
 ホアキンは要塞主砲の付近で爆発が起きたのを確認すると、モビルスーツ部隊に指示を
出し、ヘブンズベースに攻撃を開始した。ニーベルング破壊による衝撃はヘブンズベース
を守る兵士たちに少なからず動揺を与え、アウルの指揮する水中モビルスーツ部隊は瞬く
間に敵の水中モビルスーツ部隊を駆逐していった。
「さて、後はステラたちに頑張って貰うか!」
 陸上では、ファントムペインの強襲揚陸艦が沿岸に叩き付けられ、中から続々とモビル
スーツが現れる。この時、いの一番に先陣を切ったのがステラのガイアであり、
「ネオ、ネオ、ネオ! ネオを助ける!」
 少しでも早くネオを助けたいという想いからか、ステラは怒濤の勢いで敵モビルスーツ
を撃破し、それは普段、感情を表に出さないことで有名なストライクのパイロット、スウ
ェン・カル・バヤンが、
「凄いな……」
 と、思わず呟くほどだったという。
 しかし、ヘブンズベースを守備するモビルスーツ部隊も、ただやられていたわけではな
い。最終防衛戦であるヘブンズーベースの絶対死守を敢行する彼らは、死ぬもの狂いとも
言える抵抗をし、それは通常の兵士とは異なる教育をされてきたファントムペインの兵士
たちでも驚くものだった。
「悪足掻きを……するなぁっ!」
 ブルデュエルを駆るミューディーなどは、そうした敵であっても一撃の下に打ち倒す実
力を持っていたが、地上戦は次第に乱戦の兆しを見せていた。
「チッ、お前らいい加減時代遅れなんだよ!」
 シャムスのヴェルデ・バスターを始めとした、バスター・ダガー隊による集中砲火が浴
びせられる。ラミネート装甲を廃し、量産性に特化したダガーLには一溜まりもない一撃で
あったが、守備部隊の隊長は冷静に指示を出し、
「損傷の少ない機体でシールド防御をし、その隙間からビームライフルで応戦しろ!」
 こうして、バスターの攻撃をやり過ごした。ビームライフルによるピンポイント攻撃を
受けたバスター・ダガー隊は徐々にであるが後退して行く。
「まずいな……乱戦になれば、各個撃破の可能性も出てくる」
 スウェンは、こうした戦況に危機を憶えていた。敵の士気は高く、統率力も高い。そし
て何より、連係が良く取れている。
「ならば……敵の指揮系統を崩す」
 スウェンは、敵隊長機に的を絞り、対艦刀を引き抜き襲いかかった。

475運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:53:41 ID:???
「対空掃討砲ニーベルング、完全に沈黙……」
 一方で、ヘブンズベース基地司令部は酷い有様になっていた。真上にあるニーベルング
が破壊されたため、その衝撃で基地内部は通常電源から非常電源に切り替わり、壁には亀
裂が走るなど、いつ崩壊してもおかしくない状態であった。
「我が方のモビルスーツ隊は!?」
 基地指令は僅かな望みをかけて叫ぶが、
「だ、だめです、奮戦を続けていますが隊長機を墜とされ、散り散りに……」
 指揮系統さえ崩されてしまえば、一騎当千の実力を誇るファントムペインの敵ではなか
った。基地指令は敗北を悟った、悟ってはいた、しかし……
「何故だ、何故我々が、我々が負ける!」
 理解は出来ても、納得できないことはある。連合軍なのだ。この地球の大部分を統治す
る、地球連合軍なのだ。それが負けるなど、あって良いはずが……
「いい加減、お認め頂きたいものですな」
「な、何!?」
「歴史は今、革命の直中にある。役者は交代する、ということです」
 総司令部の出入り口に、ネオが立っていた。その手には、黒光りする拳銃が握られてい
る。
「ネオ・ロアノーク大佐……ファントムペインの人形部隊が何を偉そうに!」
「強すぎる人形は、使い方次第では牙も剥くと言うことですよ。ファントムペインがあな
た方連合の都合の良い戦闘集団だった時代は終わったのです」
「ぐっ……連合に取って代わるなど、認められるか!」
 基地指令は懐の銃を引き抜くが、ネオはすぐさまそれを撃ち落とした。
「自分たちの時代が終わったことぐらい、自分で察しろ!」
 その時、司令官の後ろに控えていた部下がネオに射撃した。ネオはこれを驚異的な反射
神経で避け、弾は彼の仮面を掠めた。
 ピシリ、っと仮面の亀裂が広がり、割れた。
「そ、その顔……貴様、まさか!」
 動揺が走った。割れた仮面、晒された素顔、それは彼らの良く知るものだった。
「エンデュミオンの……」
「捨てた名だ」
 ネオは間髪入れず、その場にいた全員を射殺した。
「作られた英雄など、もうどこにも居ない。居るのはどうしようもない、血塗られた戦士
だけだ……そうでしょう、王?」

 ヘブンズベースは陥落した。地球連合軍はこれにより、地球圏全ての軍事拠点を失い、
ファントムペインがそれに取って代わることとなった。そして、ファントムペインを操る
ブルーコスモスの盟主ロード・ジブリールはこの勢いに乗り、プラントに宣戦布告し、世
界は再び大戦へと突入してゆくこととなる。

                                 つづく
476運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/08(木) 12:55:08 ID:???
色々とパロっ気溢れる第6話。
何かもう、随分書いた気がするのに、まだ6話なんですね。
今回の話の元ネタは……様々。
ここから先は割と、種死の世界の出来事に添う形になると
思います。
前回説明足らずでしたが、何も種死の世界でW全49話を
再現するというわけではありません。どう説明したらいい
のか、種死世界の出来事にW的なアレンジを加えてゆくと
いうか……まんま、W的な内容(?)をしているのはこの
序盤と……まあ、後々判ります。

それにしても、>>436は凄いと思った。
477通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 12:59:56 ID:???
GJ
ネオがゼクスしているなwww
478通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 13:07:18 ID:???
このネオは記憶あるわけか
AA組が出てきた時の反応が楽しみだ
479通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 13:11:47 ID:???
蟹カッコイイヨ蟹!
ミネルバ組がどうなるかも期待。GJでした!
480通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 13:30:58 ID:???
GJ
ミネルバ隊ガンガレ
超ガンガレ
481通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 14:12:47 ID:???
GJ!
読んでいてわくわくしました。
482通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 14:36:19 ID:???
GJ!!!
ザムザザー、カッコイイ!!
見せ方が違うだけでこうも違うのかYO!
モビルアーマーをトールギスの様に使うなんて……ネオ、恐ろしい子!

ニーベルング=ノヴェンタ砲ですな。
確かあれも対空砲だったような?

>デュランダルは自分の首が繋がった結果に対し喜び、不謹慎ながらも祝杯を挙げていた。
議長は良くも悪くも普通の人なのかな?
祝杯を挙げるよりやるべき事が有るだろうに……
483通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 14:47:51 ID:???
>>482
まあDプランをプラントだけか地球規模でやる気かにもよるな。
484通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 14:57:32 ID:???
GJ
485通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 16:55:30 ID:???
GJ
『ザフトによる地球連合和平総会襲撃事件』ってどう政治的解決がおこなわれるのだろう?
奇襲による強襲作戦。宣戦布告もしてないし……
さすがに議員の辞職程度ではどうにもならないレベルだよね。
なによりコープランドが死んだのが致命的。

一番の問題は蟹カッコよすぎだよw
486通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 17:04:21 ID:???
ネオがゼクスポジションなら、意外なところでマリューがリリーナポジションというのも有り得る気がしてきた
487通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 17:08:38 ID:???
>>486
さすがにマリュー=リリーナは・・・
ピースミリオン時のノインとかじゃね?
488通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 17:12:11 ID:???
>>486
>>476






ミネルバ隊が荒らしてしまったこの種世界の現状から
物語がどういう展開をして行くのかが気になる。

ミネルバ隊がカーペンタリアにいるから
原作通りにガルナハン解放へ遠征するのかな?
489通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 17:18:17 ID:???
>>488
>原作通りにガルナハン解放へ遠征するのかな?
無理じゃね?
今回の件でこの隊のイメージが最悪になっちゃたし。(対外的なイメージね)
490通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 17:25:00 ID:???
>>489
ではミネルバ隊は遊兵化するのか。

大和ホテルじゃあるマイに


シンガンガレ超ガンガレ
491通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 18:18:13 ID:???
>>490
原作みたいな解放者としての使い方はもう不可能だな。
492通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 18:49:28 ID:lIpeb073
GJ!!
ネオが格好良い!
記憶を失っていないということは、『覚悟』をもって修羅の道を行って
いるわけですね
これなら、ゼクスと同位置を務められますね

議長は、祝杯挙げてるけど、そんな場合じゃない事わかってるんでしょうか?
ここまで追い込まれたプラントを背負い込む羽目になったということですよ

ミネルバは、もう捨て駒として激戦地をたらい回しにする他ないかも
493通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 19:37:27 ID:???
どう考えても各国のミネルバへの市民感情は最悪だよな。
494通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 19:49:11 ID:???
シンの状態は正に、針の筵だな。
だが、この逆境をはね除けて復活するのがいまから楽しみだぜ。
495通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 20:49:10 ID:???
GJ!
ネオ、スウェンを始め、ファントムペインが
ここまで格好良くなるとは思わなかった。
アウルがきちんと指揮できるわミューディーが強いわで
もうゾクゾクしてくる・・・
496通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 20:49:25 ID:???
>暫定的な各委員長代理の人事を自ら行えば、最高評議会は自分
>の意のままに動かしてゆくことが出来るであろう。

議長!さっそく自分のプランを否定するようなことをしてどうするんですか!?
497通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 20:57:44 ID:???
>>496
自分の周りにはイエスマンしかいない……
滅び逝く国家そのものじゃねwww
498通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 21:20:59 ID:???
待て!このスレの議長には何か秘策が…あるかなぁ?w
499通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 21:23:01 ID:???
まずは議長は選出に使ったコンピューターを疑うべきだろ。
500通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 21:47:42 ID:???
>>499
天才現る!
501通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 21:52:41 ID:???
きっとそのコンピューターはかつて「おカバさま(星新一)」問題を
解決したのと同じコンピューターなんだよ。
502通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 22:00:53 ID:???
>>501
星新一とはなかなか……
503通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 22:38:01 ID:???
データ出力はパンチコードのテープ式に違いないw
504通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 22:48:28 ID:???
このプラントからはどうしようもないダメぽ感を感じる…!
505通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 23:25:31 ID:???
>>499
確かにw
コンピュータにより選出された議員の過半数がアホって事が、今回の件で証明された訳だしな。

議長はこの件から自分のプランにも疑問を持ってもいいはずなんだが……
506通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 23:58:25 ID:???
しかし議長は気づきません
なぜなら議長もまた同じコンピュータに選ばれた存在だからです
507通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 00:01:56 ID:???
逆に考えるんだ
コンピュータで選出した最高の頭脳を持ってしても
まともな判断力をもった議員が半分以下しか集まらなかったと考えるんだ
508通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 00:31:04 ID:???
>501
プラントに住む住民は常に幸福であるべきであると考える
コンピュータ様だよ。
509通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 02:18:05 ID:???
或いは外見は超巨大仰々しいスパコンだが、中身は単なるコイントスだけとか…
510通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 03:12:41 ID:???
>>508
偏執狂なコンピュータか……アレはブラックジョークだからこそ良いんだけどな。
511通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 08:10:47 ID:???
>>505
罠の可能性に気づきもしない時点で評議会議員全員がアホです。
512通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 11:36:14 ID:???
流石にそれはねーだろと言いたいんだが、
種だとなんとなく納得しちまうんだよな。

……コーディって本当の激バカだし
513通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 16:51:07 ID:???
 馬鹿だとは思うけど、プラントに潜入してのMS奪取とか、元ザフトのテロリストがコロニー落とそうとしたりしてたときに、
ブルコス陣営がプラントに核攻撃しようとしてると情報がきたらアヒョるのも仕方ないような気も……
 もし冷静に状況を静観してたら、ここの有能ジブリならプラントを焚きつけるためにホントに核打ち込みそうだしw
 核ミサイルの準備しとけば、ダミー情報に真実味が出るし、プラントが動かなければ撃てば良いしト
514通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 20:50:54 ID:???
この議長はジブ以上の小物っぽさを感じるな。
原作と違っていい勝負になるかもしれん。
515通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 22:45:23 ID:???
議長がロゴス暴露演説なんかしたって受け入れてもらえなさそうだな。
516通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 23:00:41 ID:???
まあまあ。
確かにこの議長は小者っぽいが、根は善人みたいだから、あんまり無茶な事はしないだろう。
プランを実行するにしても、まず足元からやっていくさ。

俺としては、コーディネイターのコンピュータよりもウルカヌスの行方の方が気になるな。
あれは、結構やばいぞ。
517通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 23:02:06 ID:???
レオスごときであの反応だしなあ。
518通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 00:17:53 ID:???
誰が手に入れたとしても
「ちょwwwwww俺様最強wwwwwwwwww」
と己が新世界の神になったかの如く錯覚する姿が想像できる
519通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 10:49:18 ID:???
>>518
…一応キラは改心しているけど
ラクシズが回収しそうなフラグが立ってしまったってことか…?
あの連中だったら有り得そうで怖いし、連中の活動開始理由も出来てしまったからな
520通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 11:25:46 ID:Kq3m6utj
GJ!!
やはり仮面キャラは仮面が割れるシーンがたまらん

サリィ・ポゥ並の働きを見せるコニールが傷心のシンを助けるなんて事も有り得るかな
521運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:38:31 ID:???
今日はこれから出掛けるので早めに投下しておこう。
私も投下日とか決めた方が良いのかな……
522運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:40:50 ID:???
 ファントムペインという実働部隊で連合軍を壊滅させている間、ブルーコスモスの盟主
ロード・ジブリールはそれをただ黙ってみているわけではなかった。彼は大西洋連邦内部
の掌握に乗りだし、市民に訴え、煽り、その反戦意識を低下させ、主戦派を台頭させるこ
とに成功していた。今や議会の過半数は、ブルーコスモスの、それもジブリール寄りの信
者で埋まっている。
 政治体制が変われば、世論もまた考え方を変えてくる。世界各地ではファントムペイン
によるクーデーターが成功しつつあるというのに、市民レベルではそんなことは気にも止
めないのだ。支配体制がどう変わったところで、支配されることに慣れすぎた人々は、そ
れに異を唱えると言うことを忘れてしまっていた。ただでさえ、戦争の後である。過度の
重税や、徴兵、あらゆる物で疲弊しきっていた市民に、気にする余裕などなかったのかも
しれない。
 議会を掌握し、ブルーコスモスの主義者を大統領代行にすることに成功したジブリール
は、早急にプラントへの開戦準備に乗り出した。プラントが未だ先の事件で混乱している
ところを突いて、これを一気に倒すというのが狙いだったが、ジブリールの目論見は全て
成功したわけではなかった。まず第一に、ジブリールは旧連合の月基地アルザッヘルを橋
頭堡にプラントへ進行する計画を提示したのだが、アルザッヘルは「迅速にクーデターを
成功させる」という命令に忠実だったファントムペインのイアン・リー少佐によって、艦
艇発射口など重要な部分に酷い損傷を負っており、応急的な処置だけでもすくなからずの
時間を要した。この間にザフトは、テロリスト捜索の任務に当たっていたジュール隊を前
線に呼び戻すなど戦力の増加に努めていたが、その指揮系統は未だ混乱の一途を辿ってお
り、両軍は準備も備えも仕切れていない状態で開戦に突入しようとしていた。
 そんな時である。オーブ所属の宇宙ステーションアメノミシハラを管理する、オーブ影
の軍神ロンド・ミナ・サハクが、全世界に向けて声明を発信した。

        それは、『天空の宣言』と呼ばれるものだった。

 この天空の宣言は、「人類は他者の理想を妨げない限り己の信念に従うべきだ」という、
ロンドの考えを訴えたものであり、いかなる組織・国家であろうとも他者に主義・主張を
押し付けてはならないと説いた。また、ロンドは声明で、この天空の宣言に従うことを強
制することはなく、賛同したものにのみ無償の援助をすることを表明したのだ。
 これにに対し、旧連合に属していなかった南アメリカ合衆国や、ユーラシア西側地域な
どは高い関心を示していたが、大西洋連邦・プラントはこれを完全に無視し、オーブ本国
及び中立国は黙認の構えを取った。
523運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:44:40 ID:???
 この宣言が発信された際、二人の人物が、異なる見解でありながらも否定的な意見を
述べていた。
 一人は、ミーア・キャンベルとその声明を聞いていたロッシェ・ナトゥーノ。彼は、ロ
ンドを好奇の目で見ていたが、必ずしもその主張を正しいとは思っていなかった。ミーアは、
『他の女を興味深げに見ている彼』に対して、思うところがあったのか、「彼女に興味が
あるの?」と尋ねたが、ロッシェは険しい顔でこう答えたという。
「これではダメだな。確かに悪くない主張ではあるが、これではただこのロンドとか言う
女が独裁者になるだけだ」
「独裁者? どうしてそう言うことになるの?」
「弱者救済を否定する気はない。しかし、これが拡大すれば弱者は挙って彼女を頼り、強
者は彼女を恐れる。人はいつも、英雄や聖人の存在望む。そのほうが楽なのだ。自分たち
で努力せず、彼らに課された苦労を全て背負い込んでくれるのだから。特に無償で援助す
る、などと言われれば尚更だ」
「……なんか、よくわかんない」
「フフ、まあしかし、これだけは憶えておくといい。独裁者は何もその人が望んだから誕
生するわけじゃない。それを支持する人々によって、生まれ出る場合もある。そういった
意味では彼女を支持する人間たちの質が問われるわけだが……」
 と、ロッシェはここで言葉を切った。彼の言うことを必死で理解しようと頭を悩ませる
ミーアに、少し考える時間を上げようと思ったからである。
 そしてもう一人、地球のオーブでも、天空の宣言に否定的な見解を示す人物がいた。
そう、本当のラクス・クラインである。
「私は、この方の言うことに共感は出来ません」
「どうして?」
 厄介になっているマルキオ邸の居間で声明を聞いていたラクスとキラだったが、興味な
さげに聞いていたキラと違い、ラクスは真剣に聞いていた。
「組織や国家が、主義や主張を押しつけてはいけないというのは、まあオーブに厄介にな
っている私が言うのもアレですけど、概ね賛成できます。組織にしろ国家にしろ、人がい
てこそ成り立つもの、主体的な意思を持つものが集まり、国家を形成するのであれば尚更
です」
「うん、それで?」
 今のこの二人を良く知るものであれば、この二人が会話をしていることに若干の驚きを
憶えるかも知れない。しかし、この二人とて既に一年以上一つ屋根の下で暮らしており、
そもそも『片方が恋愛感情持たないだけで仲は悪くない』から、このように普通に会話を
することは可能なのだ。
「キラ、私は必ずしも人の持つ信念が正しいとは思えないのです」
「えっ? どうしてさ?」
「例えば金銭を受け取り人を殺すのと、信念の赴くままに人を殺すのなら、私はまだ金銭
で人を殺す方がマシだと思います」
「…………」
「金銭は、万人に共通の価値があります。服が買えます、食事が取れます、様々なことが
出来ます。でも、信念というものは、それを持つ当人しか通用しない価値しか持っていな
いのです。だから、私は信念のみで行動することを否定します」
 ラクスの言い分もまた、もっともではあった。キラはそれを聞いて心の底から惜しいと
感じていた。彼女の居るべき場所は、自分の側などではないのだ。魂の抜け殻の側ではな
く、彼女の見識や才幹は、もっと広い場所で示されるべきなのだと。
524運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:47:16 ID:???



              第7話「L5宙域会戦」


 地球からプラントへの宣戦布告が発せられた。C.E73年11月2日を持って、大西洋連邦
はユニウス条約を破棄し、プラントへ進軍することを表明したのだ。ある程度予想して
いたとはいえ、プラントの反応は様々であった。最高評議会議長ギルバート・デュラン
ダルは、突然の開戦宣言に対し、
「ブルーコスモスやファントムペインといった連中は、戦争が外交の一手段であること
を判っていない。まあ、この前の事件を起こした我々の言えたことでもないか……」
 攻めてくる以上は相応の対策を練らねばいけないわけだが、先の事件の影響で、最高
評議会は議長以外の委員長クラスの人材に不足を来しており、ザフトもまた首脳部が入
れ替わるなど、混乱期にあった。そんな中で、デュランダルは一人リーダーシップを見
せつけ、かつてパトリック・ザラがそうしたようにザフト軍の最高司令官顧問も兼任し、
最高評議会議員、ザフト軍人を叱咤、先導し、ある程度まで指揮系統を回復させること
に成功してた。
「やれやれ……私は一応反戦派なのに、気付けば戦争の準備をしている」
「心中察しますよ」
「私はロード・ジブリールを過小評価していたよ。まさか彼にこんな陰謀を企てて、実
行できるだけの才覚があるとは思ってもいなかった……」
 アプリリウスにある、最高評議会の議長室に詰めるデュランダルは、ロッシェの訪問
を受けていた。
「さて、そんなわけで一応は多忙の身なんだが……用件は?」
「何、単純なことです。私にも出撃許可を頂きたい」
「なんだって?」
 ロッシェの説明するところにはこうだった。確かに、議長の手腕によってザフト軍と
やらはある程度の統率性を取り戻しつつあるようだが、戦場という過度の緊迫感、緊張
感が支配する空間においてはそれも崩れる可能性が大いにある。幸い自分は戦場慣れし
てるし、この世界に機体相手に後れを取るとは思えない、ということだった。
「しかし、その機体が問題だと私は思う。私は技術者じゃないから不快には思わないが、
君の機体は強すぎる。それこそ、この世界最強といっていいほどにね。これでは両軍の
パワーバランスが崩れてしまうと思わんかね?」
「相手に気を使う必要がどこにあるのですか? まったく、変なところで律儀ですね……
まあ、いいでしょう」
 ならばと、ロッシェは次の案を提示した。こちらの判断で、プラントに危険が迫って
いると感じた場合のみ、出撃を許可して欲しいというものだった。
「……いいだろう。こちらとしても、今回の防衛に対し絶対の自信はない。もしもの時
は、君に任せよう」
 使わないに越したことはない、しかし、ロッシェの強さを見てみたいという好奇心も
デュランダルにはあった。元々が学者の出であるため、新しい物には目がないのだ。
525運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:49:28 ID:???
 一方、急遽応急処置を終えたアルザッヘルからは、ファントムペインのイアン・リー少
佐を指揮官とするプラント攻撃艦隊が出撃していた。急ごしらえに近い艦隊だったため、
その絶対数は必ずしも多いものではなかったが、イアンの軍人としての手腕が早期出撃を
成功させたのだ。
「プラントへはこの航路を通ってゆく。恐らく、ザフトとはL5宙域でぶつかることとなる
だろう」
 L5宙域はプラント本国にもっとも近い宙域である。前大戦の折に、ボアズ、ヤキンとい
った要塞を失っていたザフトにとって、L5宙域が最終防衛ラインであり、そこに軍を展開
するしかなかったのである。
 それを見越して、イアンは敢えて正面から堂々と艦隊を進める方針をとった。人は誰し
も敵にこそ策や奇策があると思いがちである。特にザフトは、自分たちの力に自信を持っ
ているが為に、「なんの策もなく正面から攻め込んでくるわけがない」と思い込んでしま
うだろう。そうした敵の心理を利用した、戦略や戦術とは違った心理戦だった。
526運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:51:03 ID:???
 かくして月基地を出撃したイアン・リー艦隊は、予定通りの航路を通り、プラントへの
進行を始めた。これを迎え撃たんとするザフトは、宇宙空母ゴンドワナを旗艦とし、イア
ンの予想通り、L5宙域に艦隊を布陣した。しかし、その布陣はお世辞にも綺麗とは言い難
く、また非戦略的であった。それでも、一応の部隊配置はされており、最前線たる位置に
はセイバーを駆るハイネ・ヴェステンフルスを隊長としたハイネ隊、その右翼にイザーク
・ジュールを隊長としたジュール隊、とにかく敵の進撃を阻めと言う大雑把な命令はハイ
ネやイザークを笑わしたが、笑ってばかりもいられない。
「前方には士気が高く勇猛な敵、後方は慌てふためく使えない上官……これで戦えってい
うんだから、命令するほうは楽で良いぜ」
 ハイネは出撃前にそんなことを呟いていたという。ハイネに言わせれば、今回の開戦ま
でに起こった一連の流れは、プラント、しいてはザフトという組織の体質にあると思う。
どいつもこいつも頭でっかちな奴ばかりで、自分を優秀だと思い込んでいるが為に、他人
に命令されるのを嫌う。その結果がこの体たらく、曖昧な指揮系統は組織を複雑化させ、
現場レベルでの混乱、暴走を来す。
「今の状態で勝つための戦いは不可能に近い。しかし、負けない戦いなら出来るはずだ。
俺以外の奴もこれを理解してるなら、そう難しい戦闘にはならないと思うが……」
 無理だろうな、とハイネは心の中で呟く。相手はナチュラルであり、こちらはコーディ
ネイターなのだ。自分たちのほうが優秀であり、向こうは下等な種族だと、本気で思って
いるのがザフトの大半なのである。
「精々負けないように、みっともなく頑張ってみるか!」
 ハイネはこの戦いにおける自分の重要性を改めて理解し、気を引き締めた。
527運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:53:11 ID:???
 L5宙域会戦の開始は、双方のモビルスーツ同士の激突という形で始まった。
 ザフト軍は、理路整然とした艦隊運動とモビルスーツ配備をしてきた敵に対し、我先に
と突出し、その陣形は大きく乱れた。攻撃指令もないままに攻撃し、敵の先陣に突っ込ん
だのである。
 ビームライフルやミサイル、バズーカ砲などで無茶苦茶に攻撃をするモビルスーツたち
のある意味での猛攻は、ファントムペインのモビルスーツ部隊を押す勢いになっていた。
「ダメだ、あんな攻撃の仕方じゃすぐに息が切れちまう!」
 しかし、それを見ていたハイネはこの猛攻が長く続かないことを早々に悟っていた。何
とかして突出した連中を連れ戻さなければ……
「なにっ!?」
 その時、奇妙な出来事が起きた。突出していたモビルスーツ部隊の猛攻に耐えきれなく
なったのか、攻撃を受け流そうとしていた敵の先方部隊に亀裂が入ったのである。亀裂は
徐々にであるが広がりつつあり、敵先陣を分断しつつあった。
「ほぅ……秩序ない攻撃というのも時には威力を発揮するものだな」
 ガーティールーのブリッジで、イアンは感慨深げに呟いた。最初は敵の無秩序振りに失
笑したが、こうなってくると笑ってもいられない。こちらの被害が増す前に対応をしなけ
ればならない。
「よし、敵の突出した部隊を艦隊の内部に引き込み、後方と遮断しろ」
「ですが、それでは我が方にも危険が」
「敵には統率性がない、艦砲射撃の有効範囲まで引き込んで、各個撃破するのだ」
 この作戦は成功した。敵の先方部隊を『撃破』したと思いこみ、さらに内部へと突出し
ていったザフトのモビルスーツ部隊は、いいように敵モビルスーツ部隊に振り回され、戦
艦の艦砲にそのことごとくを吹き飛ばされてしまった。
「お前らいい加減に戻れ! 全滅したいのか!」
 そうした戦場をセイバーで駆け抜けるハイネの怒声は、ザフト軍に幾分かの落ち着きを
取り戻させた。ハイネは突出した部隊を下がらせ、戦力の再編を考えたが、
「いまだ、後退する敵に猛攻をかけろ!」
 ファントムペインのモビルスーツ部隊は、待っていたと言わんばかりに攻撃を開始し、
後退するザフト軍の突出部隊を粉砕した。放たれたビームライフルの光りは、ザクやジン
を貫き、爆散させる。
「おいおい、敵の指揮官少し有能すぎるだろ!」
 あまりに見事な攻勢にハイネは舌を巻きながらも、予め用意しておいたガナー装備のザ
ク隊に敵の攻勢に対する防戦を指示した。長距離砲オルトロスは、その威力を十分に発揮
し、敵の勢いを一時的にではあるが殺いだ。
「いいか、俺達の任務はプラントの防衛だ! 敵に勝つことよりも、プラントを守ること
を第一に考えろ!」
 ハイネは、それからもモビルスーツ隊、時には艦隊にも指示をだし、常に最前線で奮戦
した。結果、敵モビルスーツを数十機、戦艦数隻を墜とす多大な戦果を上げた彼は、ザフ
ト軍、及びFAITH内部での名声を高めることとなった。
528運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:55:05 ID:???
 戦闘開始から5時間が過ぎようとしていた。ハイネの活躍によって五分五分の戦いが出
来るほど盛り返してきたザフト軍に、イアンは僅かな焦りを憶えていた。
「まずい……このまま戦闘が長期化すれば、補給の問題でこちらが不利だ」
 すぐ後ろにプラント本国が控えているザフト軍とは違い、ファントムペインは月基地か
らの補給部隊が命綱なのだが、今回急な出兵だったために、満足な物資を揃えることが出
来なかったのだ。
「故に混乱期にある敵を突いたのだが……戦場がかえって彼らに落ち着きを取り戻させる
結果になってしまったか」
 このまま行けば撤退もありえる。長期戦ではこちらが不利だ。かといって、これを打開
する有効な策は……
「艦長、盟主ロード・ジブリールより暗号通信が!」
「なに? スクリーンに映せ!」
 映し出された暗号文を見て、イアンは驚愕を覚えた。
「ダイダロスから、プラントへ向けて核攻撃隊を発進……初戦から核を使うというのか!」
 常識外の作戦と命令であった。イアンの艦隊にはこのまま『囮』として、ザフト軍を主
戦場に釘付けにしろと言うのだ。
「盟主……貴方という人はどこまで――」

「旧連合は、こんな単純且つ簡単なことも出来なかったのだ」
 地球の私邸にて戦況を『観戦』するジブリールは得意気であった。
「何も正攻法の戦いなどする必要はない。核ミサイルを一発撃つだけでいい。それだけの
ことを、躊躇う方がどうかしている」
 使えるものを使わないなど宝の持ち腐れであり、何よりユニウス条約は既に破棄されて
いる。迷う必要などどこにもない。そうジブリールは考えていた。
 本来であればこのような強引な作戦は、ネオ辺りが止めるべきなのであるが、彼は現在
艦隊を率いてザフト軍地上拠点の一つジブラルタル基地攻略へと出撃していたため留守で
あり、この作戦を知る由がなかった。ちなみに、ホアキンも艦隊を率いてザフト軍のカー
ペンタリア基地へと遠征していたが、彼は極端なナチュラル原理主義者であるため、この
作戦には反対しなかったであろう。
「さぁ、砂時計よ、華麗な花火を見せるが良い!」
529運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:56:29 ID:???
 その頃ロッシェは、ミーアと共に戦況を見つめていた。
「そろそろ頃合いか……」
 ロッシェがそう呟いたのは、奇しくもイアンの元にジブリールからの暗号通信が届いた
ときと同じだった。
「ロッシェ?」
 呟きと共に立ちあがった彼を不思議そうにミーアは見るが、ロッシェは軽く笑うと、
「ミーア、そろそろ私も出撃するときが来たようだ」
「えぇっ!? ロッシェも戦いに行くの?」
「あぁ、既に議長に許可は貰っている。問題はないさ」
「そういう問題じゃ……」
 ない、と言おうとしてミーアは口をつぐんだ。ロッシェが右の人差し指で、彼女の唇を
塞いだからだ。
「大丈夫だ。私は負けはしない。勝って、またここに戻ってくる」
 その自信に満ちあふれたロッシェの顔に、ミーアは言葉に出来ない安心感を憶えた。
「じゃあ……気をつけてね」
「当然だ」
 ロッシェは、レオスがある格納庫に向かうと、久方ぶりにそのコクピットへ入り、シー
トへと腰掛けた。
「私の読みが正しければ、敵は奇襲を仕掛けてくる……膠着しつつある戦況を大きく動か
すにはそれしかない」
 レオスを起動させ、各部をチェックする。どこにも異常はない、極めて正常だった。ロッ
シェはハッチを開けさせると、広がる宇宙空間と、遠くに映る戦場に眼を細めた。
「ロッシェ・ナトゥーノ、参る!」
530運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 11:57:54 ID:???
 極軌道の暗礁宙域を警戒していた長距離強行偵察複座型ジンが、その艦隊を発見したの
はロッシェが出撃する数分前であった。それは、ダイダロスより発進したアガメムノン級
宇宙母艦ネタニヤフを旗艦とした奇襲攻撃艦隊クルセイダーズ、ジブリールの名を受け出
撃した、核攻撃隊であった。
「極軌道哨戒機より入電。敵別働隊にマーク5型……核ミサイルを確認!?」
 その報告に、旗艦ゴンドワナの総司令室は揺れた。
「数は? どれほどの規模だ!」
「不明ですが、かなりの数のミサイルケースを確認したとの報告が……」
「各部隊に通達急げ! それと、この事を最高評議会に、早く!」
 報告されたところで、最高評議会とて反応は同じであった。常識知らずの連中だとは思っ
ていたが、いきなり核攻撃隊を差し向けるとは思っていなかったのである。
「ニュートロンスタンピーダーはどうなっているのだ?」
 デュランダルは部下に確認するが、
「可動は出来ますが、試作機故に成功の確率は……」
「なんでもいい! アレを一発でもプラントに当てるわけにはいかんのだ!」
 この時、デュランダルは自分がロッシェに出撃の許可を与えていたことをすっかり忘れ
ていた。彼がこの時していたは慌てふためく評議会議員たちをなだめることで、
「脱出だと? 脱出しても我々に逃げる場所などない。第一、君たちは市民を見捨てて逃
げるというのか!」
 デュランダルは知らなかったが、この時プラント市民には避難勧告すら出されてすらい
なかった。関係各所が先の事件の責任問題で混乱していたとはいえ、この事が後に、プラ
ント市民の主戦論を高めることとなった。
531運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 12:00:24 ID:???
「核攻撃隊……極軌道からだと!」
 全軍に、極軌道からの敵を迎撃せよという指示が出されたとき、ジュール隊は主戦場の
最前線にいた。
「じゃあ、こいつらは全て囮かよ!?」
 精鋭揃いとされるジュール隊であったが、既にプラントに近づきつつあるという核攻撃
隊の存在を知ったときは流石に焦った。
「おいおい、早くしないと俺達帰る家を無くしちまうぜ!」
 ディアッカはそう言いながら機体を極軌道に向かわせる、イザークもそれに続き、
「なんとしてもプラントを撃たせるわけにはいかない!」
 ちなみにハイネもこの通信を受けていたのだが、彼がザフト軍の司令塔的存在であると
看破したイアンによって五機ものモビルスーツをぶつけられていたために、核攻撃隊の迎
撃にいけなかったのである。そして、高速機であるセイバーが主戦場に釘付けにされたと
いう事実は、一気にプラントを絶体絶命のピンチに陥れた。既に主戦場から向かったので
は、対処できない位置にまで核攻撃隊は迫っていたのだ。
「そぉら行け! 今度こそ、蒼き清浄なる世界の為に!」
 核攻撃隊のウィンダムが核ミサイルを発射しようとする、まさにその時、
 一条の光が、ウィンダムの一機を貫いた。
「な、なんだ!」
 今まさに核ミサイルを発射しようとしていたウィンダムのパイロットは、突然進行方向
から受けた攻撃に、一瞬動きを止めてしまった。さらに数条の、ビームの光りがウィンダ
ム隊を襲った。
「一人やられたからといって棒立ちになるとは……情けない!」
 ロッシェはビームサーベルを抜き放つと、残ったウィンダム隊に襲いかかった。少しで
も早く、核ミサイル搭載機を全滅させる必要があった。
「しかし、いきなり核攻撃とは思い切ったことをする奴もいたものだ」
 核攻撃は、ロッシェのいたA.C.世界では余り馴染みのある行為ではなかった。A.C.世界
では大量破壊兵器よりもモビルスーツやビーム兵器の開発に力を入れており、その結果ミ
サイルなどの実弾装備は廃れていたのだ。
「トーラスカノンか、ドーバーガンでもあれば纏めて薙ぎ払うということも出来るのだが」
 無い物ねだりをしてもしょうがない。ロッシェはビームサーベルを振るい、動きの鈍い
ウィンダムを切り裂くと、今度は艦隊のほうに向かってゆく。
「墜ちろ!」
 C.E世界のとは比べものにならない威力のビームライフルが命中し、戦艦が次々に撃ち
落とされる。
「あ、あの機体はなんだ! ザフトの新型か!?」
 これまで見たこともない形のモビルスーツの出現に、核攻撃隊クルセイダーズ旗艦ネタ
ニヤフには動揺が走っていた。まさにあっという間だった。あっという間に核攻撃の第一
部隊が全滅させられたのだ。
「判りません……しかし、このままでは!」
「げ、迎撃だ! 対空砲火、それと通常装備のモビルスーツ部隊の発進を……!!!」
 指示を出したときには既に遅く、ブリッジのスクリーンにはビームサーベルを構え、突
き立てんとするレオスの姿が映し出されていた。
「こ、こんな馬鹿な――」
 そして、ロッシェは躊躇なくネタニヤフのブリッジを貫いた。
532運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 12:01:42 ID:???
 イザークとディアッカは、その光景を呆然と見ていることしかできなかった。手を出す
までもない、レオスは圧倒的な実力を彼らに見せつけていた。
「あんな機体、俺は知らんぞ……」
 クルセイダーズを全滅させ、その爆発の余波でマントをはためかせるレオスの姿には、
華麗という言葉がよく似合った。しかし、イザークはそんなレオスの姿が何とも不快だっ
た。イザークは悪い意味での自信家だった。なまじ実力がある分、自分よりも強いと感じ
る存在が許せないのだ。
「飾りだろうけどマントなんて付けちゃって……様になってるけど、パイロットはよっぽ
どのキザ野郎だぜ、ありゃ」
 ディアッカは呆れたようにレオスを見るが、レオスはすぐさま機体を反転、『主戦場』
とも『プラント』とも別の方向に向けて移動していった。
「あいつ……どこへいくつもりだ?」
「さぁ?」
 イザークは自分の中に沸き立つ不快感が、自分のプライドだけのことではないように思
えた。恐らく自分は、アレに乗るパイロットとはそりが合わないだろうと確信していた。
イザークはそんな会ってもいないロッシェのことを考えながら、苦々しげに主戦場に戻っ
た。少しでも多くの敵を撃墜し、自己の力を見せるために。
533運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 12:03:23 ID:???
 ロッシェが核攻撃隊を全滅させた後、主戦場に向かわなかった理由は単純だった。彼は
これ以上の戦闘継続は双方無駄であると思っていたし、ここは敵に潔く撤退して貰おうと
考えたのだ。
「敵の進軍航路から割り出した補給経路計算すると、この辺りのはずだが……」
 艦隊にしろなんにしろ、手っ取り早く撤退に追い込むには補給を立つことが一番だった。
兵士の士気がいくら高かろうと、弾薬がつき、エネルギーがなくなればモビルスーツも戦
艦も戦えない。食料等の問題はもっと深刻だ。
「古来より飢えた軍隊が勝利したことなどないのだ…………あれかっ!」
 アルザッヘル基地より、イアン艦隊に補給物資を届けるため進軍していた補給部隊を発
見したロッシェは、ビームサーベルを構え直し、それを討たんと飛びかかった。

「艦長、我が方の補給部隊が襲われました!」
 オペレーターの悲鳴のような声を聴いたとき、イアンはこの戦闘に勝ちはないことを悟
った。
「全滅したのか?」
 僅かな望みをかけて問うが、オペレーターは呆然としながら首を縦に振った。
「敵と思われるモビルスーツの襲撃をうけ……壊滅したとの報告が」
「……そうか」
 核攻撃隊が失敗した時点で、こちらの士気はかなり落ちたと思う。変わって向こうの士
気は、「核を討たれた」という事実に憤慨し、軒並み上がっているのだ。
「これ以上は消耗戦だ……撤退するしかあるまい」
 消耗戦をするにしても補給部隊を叩かれた以上、こちらが負けるのは目に見えていた。
元々手持ちの物資も多いわけではない、この辺りが引き際だろう。そして、恐らくは敵の
指揮官もそれに気付いているはずだ……
 イアンはこう考えたが、実際ザフトでこの事に気付いていたのは指揮官ではなかった。
534運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 12:05:10 ID:???
「敵が優秀か、最低でも有能ならそろそろ退くだろうな……」
 ハイネは既に終局に近い戦況を見つめ、呟いていた。自分に向かってきた五機のモビル
スーツを撃破したハイネは、各部隊、果ては戦艦の艦長からも指示を求められる、実質的
な指揮官になっていた。
「核攻撃隊をやった奴と、補給部隊をやった奴は恐らく同じ……議長の切り札か? ハッ、
あの人も面と声人気だけの政治家じゃないってことか」
 どんな奴だろう、とハイネは思った。少なくとも悪い奴ではないはずだ。ウマが合うか
どうかはともかく、一度会って、酒でも飲み交わしたいものだ。
「おっ……」
 ファントムペイン艦隊から、撤退を合図する信号弾が出された。そして、すぐにハイネ
の元に通信が入った。
『敵は撤退するようだが、我々はどうする?』
「それに合わせて退きましょう。士気が高まっているとはいえ、序盤に受けた傷が酷い。
追撃戦なんてもってのほかです」
 言いながら、ハイネは自分が通信している先を見て、苦笑し、呆れていた。宇宙空母ゴ
ンドワナ、いつから自分は旗艦の総司令部に意見が出来る幕僚になった? ハイネは通信
を終えると、荒々しくヘルメットを脱いだ。
「軍人の役目はここまでだ……投げられた手袋をどうするのか、お手並み拝見と行きまし
ょうか? デュランダル議長」

 ファントムペインの作戦名から、後に『フォックス・ノット・ノベンバー』と称される
こととなる、このL5宙域での会戦は、ファントムペインの撤退という形で幕を下りた。双
方それなりに被害を負っていたが、核攻撃隊と補給部隊を全滅されたことを除けば、ファ
ントムペイン側の損害率は、ザフト側のそれを下回っていたという。
 無論、そもそもの絶対数の差もあるが、ザフトが痛手を受けたのも事実であった。デュ
ランダルは早急に軍の再編成を急がせると共に、現在地球にてファントムペインの遠征艦
隊に包囲されているジブラルタル、カーペンタリア両基地への援軍派遣も決定した。
 そして、そんな慌ただしいプラントに友好国であるオーブから一人の使者がやってきた。
国の意思とは異なる想いをその胸の奥に秘めた男の名は、アレックス・ディノと言った。

                                  つづく
535運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/10(土) 12:06:43 ID:???
第7話です。
どうも私は戦闘シーンを書くのが苦手です。言い訳なんて
情けないですが、書いて行くうちに上達すれば……と思っ
てます。まあ、次は戦闘ないですけど。
そろそろ、アレが出てくるのかな。
536通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 12:11:44 ID:???
GJ

ロッシェが見事に美味しい所を掠ったなwww

ロッシェカコイイ

プラントの統帥機構はイタリア軍並のショボサだな
前線にいるハイネが全ての面倒を見るなんて大変だwww

ロッシェの大活躍にミーアがニヤニヤしながら出迎えそうだwww
537通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 12:46:25 ID:???
レオスが最強クラス??
ウルカヌス出てきたら種世界終わりじゃんwww
314機のビルゴがあるうえに、自動生産できちゃうし。
それにしてもコーディネーターはやっぱりバカですた…
538通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 13:11:45 ID:???
ラクスの意見がある意味すごいな。
反省したのか?
539通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 13:42:24 ID:???
この本物ラクスが本編通りの行動をしたら
誰かに裏拳で突っ込んで貰おう
540通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 13:52:21 ID:???
キラと色ボケしてない訳だから、キラを落とす策略練るうちに更正したのかと。
541通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 14:09:56 ID:???
それだ
542通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 14:12:58 ID:???
ロッシェもかっこいいが
そろそろシンを出して欲しい
543通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 14:20:02 ID:???
まずはブルムを。
544通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 14:31:11 ID:???
確かにミネルバは気になるが、マターリ待とうや。
展開の希望、押しつけは職人が困るだろう。
545通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 14:34:56 ID:???
>>536
11人以下のイタリア軍は最強だぜ?あと逃げ足もな!
546通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 15:08:50 ID:???
デュランダルよりラクスがまともに見えるクロスは始めてだw
547通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 15:13:31 ID:???
このラクスはテロしなさそうだな。
548通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 17:06:45 ID:???
GJ!!
要点を抑えるロッシェがカコイイ!!
本当はザフトが気付いて当然なんですけどね、つーか誰か気付けよw
敵の補給線が存在する事くらい、ちっと考えれば分かるだろうに……
参謀部とか機能してるのかな?

だが今回一番の驚きはラクスの考えだ。
現実に即した考えをもってんだな。
だったら、前回のような事しなきゃいいのに……OTZ
549通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 17:19:15 ID:???
>>548
ザフトに補給の概念はないんだろ。
それか旧日本軍並みに軽視してるか。
550通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 17:36:56 ID:???
此処にまで軍ヲタが……。お前らの存在がed氏の離脱を招いたんだ。失せろ。
551通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 17:55:57 ID:???
(*´Д`*)ロッシェ・・・
552通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 19:46:39 ID:???
Destiny-Walts◆JESTW0zUfg氏を見かけないね
553通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 19:51:46 ID:???
>>550
触るな危険

そう注意する人間が一番スレにとっては害
554通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 19:54:52 ID:???
誰かed氏が移転したサイト教えてくれないかな……
555通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 20:19:14 ID:???
>>550
この程度で軍オタかよw
てめーみたいのがいるから荒れるんだ、出て行け
556通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 20:31:23 ID:???
>>555
語るスレで醜態を晒したからって暴れるなよ三人目?
557通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 20:43:17 ID:???
両方出てけ!
558通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 20:49:52 ID:???
>>557
怒っちゃいやん
559通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 20:56:24 ID:???
以後、荒れるから
厨認定・ヲタ認定禁止
出て行け禁止
ウザイ禁止
暴れるのも禁止
560通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:00:03 ID:???
>>548
多分、キラが戦争嫌いになったのが原因だと思う。ラクスの変化。
キラが傷ついたのはなぜか、と言うことをキラに献身的に触れているうちに理解したんじゃないかな?

以前は戦争嫌いで信念の赴くままに(つか反戦感情か)武力行使に向かったけどね。
その結果、人を殺し、大切な人を失ったキラは深く傷ついた。
自分を同じような価値観を持っている、と思っていたキラがそうして傷ついたのを見て自分と他者の違い、と言うものを強く認識するようになったんだろう。
561通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:04:26 ID:???
ていうか、軍オタウザイとか抜かすならそもそもガンダムネタに触れるなよ。



一応ガンダムって戦争をテーマにした作品だぞ?
それにさわっといて軍事ネタ出てきて文句言うって……
頭悪すぎだろ。常識的に考えて。
562通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:09:50 ID:???
現実と絡めるからいけないのさ。
563通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:12:30 ID:???
>>560
なるへそ。
そういう解釈の仕方もあるか。
……ラクス、このままおとなしくしといてくれればいいんだが……
564通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:14:23 ID:???
>>563
それはリリーナにじっとしとけと言うようなもんだべ。
565通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:17:50 ID:???
「取り巻きの問題」がそのままラクスにも当て嵌まるからな。
他のSSでも祭り上げられてるパターンも結構多いし、
例の「過激派による孤児院襲撃イベント」もあるからね。
566通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:37:43 ID:???
ていうか、信念による戦いを否定するのはいいんだが…それならまず自分の反省をするべきじゃないのかなーラクス
だかた前対戦の私は間違っていたとは言わないあたりがなんか不安だ
567通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:39:21 ID:???
>>562
近未来SF戦争物、を名乗るガンダムというアニメを語る以上軍事ネタは切っても切れない存在
568通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:46:07 ID:???
>>567
それも一理あるけど
遊び心が無い人が脱線して
関係無い話題になりがちなのが問題なんだよな・・・
569通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:49:34 ID:???
シンやハイネを見ると、コーディでもまともな思考を持つ香具師がいることがわかる。

ただ、プラントという組織で見るとショボイよな。

優秀な個人がいても未熟な組織なら烏合の衆だな。
まるでイタリア軍の様に。

ロッシェ、シン、ハイネのザフト細腕繁昌記だな
570通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:51:16 ID:???
作品は面白いと思うんだが、どのSSでも職人さんが作品の後に出てくると萎える
571通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:51:56 ID:???
読む部分、見る部分がやはり個々で違うんだよ。
キャラやストーリーをじっくり読む人にとっては、
軍事ネタは飾りみたいなものだし、軍事ネタが好
きな人は、そっちのほうを話したいだろうし。

まあ、作品によってどちらを重視してるのかによるかな。
明らかに、キャラ・ストーリー重視の作品に軍事系のネタを
言われても困るだろうし……
572通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 21:56:22 ID:???
後書きくらいはいいだろうがよ…職人は奴隷じゃないんだ。
573通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:11:04 ID:???
>567
そういう野暮はおよしなさい。スーパーロボットで戦争したら、ぐらいの意味しかガンダムにはない訳で。
貴方は宇宙戦艦ヤマトにも軍事的見地を求めますか?そんなの野暮でしょ。
574通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:18:55 ID:???
>>570
お前が萎えるのなんざ知った事か。
職人諸氏をSSの自販機だとでも思ってんのか。
575通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:27:01 ID:???
現実とアニメを一緒にしちゃいかんよ。イタリア軍の事なんて関係ねーし。軍ヲタ、軍板におかえり。ここはお前の住む所じゃない。
ed氏が軍ヲタの超理論に振り回される前に逃げ出した気持ちが解るよ。
576通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:28:25 ID:???
>>571>>573
その話題をいつまでも引っ張る行為自体が「まて。それは孔明の罠だ(AA略
な常態なのでもう止めとけ。
577通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:31:53 ID:???
君たちはもう少し、このスレを学ぶ必要があるな…
578通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:35:00 ID:???
>>577先生ー。御教授お願いしますー
579通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:40:16 ID:???
「エレガントな心を忘れないでくれたまえ」
580通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:42:24 ID:???
>>578
× 教授
○ 教示
581通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 22:58:14 ID:???
俺は異世界からの客人である、ロッシェが種世界でいかに活躍するか。

ロッシェを拾ったミーアと、原作とは違う考えに至ったラクスとの対比。
原作とは一転した狡猾なジブリタン

忠実に軍務を遂行したのに、どん底に落とされたミネルバ隊がいかに復活するか。

そのMS隊パイロットのシンレイルナが活躍してくれればお腹いっぱいです。

正直プラント首脳部等刺身のツマ大根にすらならない

ロッシェとミネルバ隊の若いパイロットが絡んでくれたら嬉しい

でも、全ては職人氏のさじ加減で俺はそれを支持する。
582通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 23:03:01 ID:???
>>581
煽ってるようにしか見えない件について。

>正直プラント首脳部等刺身のツマ大根にすらならない
583通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 23:29:27 ID:???
>>566
確かにそれはヤバイかも。
キラは、前大戦において取った自分の行動自体を否定している節すらあるが、ラクスはそういったのが見られないからな。
彼女の言動から反省していると思いたいが、どうなんだろね?
584通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 23:32:08 ID:???
>>582
プラント首脳部は原作のジブリタン並の小者臭が漂っているからな

現場のキャラの奮闘やロッシェとミーアの絡みの方が面白い
585通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 23:34:37 ID:???
>>584
というか原作のプラント最高評議会は空気だった。
586通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 23:48:38 ID:???
ロッシェの今後の物語の立ち位置が気になる

貴族らしく歌姫のミーアの騎士を貫くのか
はたまたミネルバ隊に合流し戦士として若きパイロット達を導くのか。
587通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 23:55:37 ID:???
>>586
キャラクター的には前者を選びそう。
今回の出撃も、「騎士」としてミーアが住むプラントを守るためだった、と思う。
ミーアやウルカヌスの問題(まだ出てないが)以外には、積極的に関わるつもりは無いんじゃないかな?
588通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 23:57:52 ID:???
>>583
他人は他人、自分は自分
ラクス様の兵器は綺麗な兵器です、ラクス様の信念は綺麗な信念です
他人は否定するけど自分がやってることも同じことだって自覚できないってタイプの人は現実にもけっこういるから困る
589通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:02:57 ID:???
>>587
d

なるほどね。
と言うことはロッシェは露出自体がそんなに多くならないかもわからんね。

ハイネがミネルバ隊の兄貴分になるのかも知れん。

今回の投下の最後に登場したアレックスだが、原作同様の屑キャラ凸になってしまうのか、
それとも「ザフトのアスラン・ザラ」としてプラントに貢献するのかな?
590通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:06:32 ID:???
ラクスも結構歪んでる。
ラクスが「信念の赴くままに人を殺す」ことを
他者の理想を妨げないと思っているように書かれてるし、
信念より金銭が価値観としてマシってことは
将来の夢は「金になる職業」を選ぶべきだ考えてるように思える。
591通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:13:03 ID:???
>>589
ハイネがミネルバに行ったら、艦隊指揮に不安が出てくるな。
ザフト人材いねえなあ…
592通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:20:29 ID:???
ハイネがミネルバ隊に合流できなくても、何かしらのテコ入れがあるといいな。

トラウマを抱えた実戦経験の浅いパイロット達なんだから。

シンガンガレ超ガンガレ
593通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:21:58 ID:???
クルーゼみたいなのを使っていた段階でザフトの人材不足は深刻だったと思う
594通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:22:05 ID:???
>>592
重症からまさかの復活を遂げたマーレさんが配属されます。
595通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:24:03 ID:???
>>593
クルーゼさんはザフトの為に戦う立派な軍人ですよ
個人的にはちょっと厭世的な観点からモノを見るから誤解は受けやすいが、レイを立派に育て上げた立派な親ですよ
596通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:29:52 ID:???
>>590
これって元ネタ確か銀英伝だったかと。
597通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:37:03 ID:???
その通り。
598通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:40:51 ID:???
>>523
「カネはナチュが使おうがコーディが使おうが等価。
  他人にとっては無意味無関係な寝言戯言でしかない『信念』とやらに
  基づく殺しよりは金ずくのそれの方がまだなんぼかマシ…」

古郷!古郷聖司じゃないか!
しかしこの場合、もしも導師サマが「肉体の死を恐れるな魂の死を恐れよ」
などとのたもうたらラクスはその場で射殺できるのか……?
599通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:43:26 ID:???
それなんてヤン提督
600通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:43:32 ID:???
旗艦の総司令部が最前線の兵士に戦術レベルで意見を求めるとは、
こいつら仕事やるきあるのか?
601通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 00:55:51 ID:???
>>598
それもたいがいなセリフではある。
602通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 01:51:33 ID:???
銀英伝ネタいれすぎじゃねぇ?
603通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 01:56:31 ID:???
やっぱ、そうかな。
604通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 01:58:34 ID:???
文句だけは超一流の読者が多いな

楽しめないネタなら己の貴重な時間を割いてまで見なきゃいいのに
605通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 02:29:15 ID:???
>>556-604
自演乙
606通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 02:53:21 ID:???
あーあ、泣き出しちゃったよ
607通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 03:23:56 ID:???
>>573
それは間違いだよ、ガンダムである以上政治と軍事と若者の成長がストーリーの軸に組み込まれてるんだから
世界を語るのにそこが入ってこそガンダム
608通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 04:39:03 ID:???
NGワード【軍事】

前後に投下があったらそこだけ解除すれば無問題
609通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 05:07:15 ID:???
それではリーオーたんとチハたんとグーンたんを愛でる俺はどうすれば…
610通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 05:18:34 ID:???
>>609
兵器を扱う人間は嫌いですか?
611通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 05:55:13 ID:???
>>610
平気です
612通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 08:16:17 ID:???
>>607
でもここで語る必要ないよね?後勝手に決めない。
613通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 08:44:05 ID:???
*-警告-*
軍事、政治で難癖を付けてクロススレを潰す荒らしが流行ってます。
良識のある職人、ギャラリーの方はエレガントにスルーを願います。
614通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 11:21:47 ID:???
でも出来ないんだろうな・・・
615通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 11:36:19 ID:???
そうぼやかずにSSに登場するキャラの雑談でもしようぜ

その流れならスレの空気も良くなる
616通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 12:13:04 ID:???
W-Destinyはどこいった?
617通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 12:17:26 ID:???
彼は多分撤退したんだろうね。
618通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 12:19:14 ID:???
三月中は仕事が忙しいと言っていたがw

過去ログ嫁
619通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 14:46:24 ID:???
決算とか会計関係の仕事だと暇なんてない時期だもんな。
620通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 14:58:40 ID:???
そういや、ビルゴとかはガンダニュウムだから、C.E世界の兵器が効かないってのも分かるけど、
レオスを始めとしたリーオー系統はチタニュウム合金だろ?
やっぱ、C.E世界の兵器でも普通に倒せるのかな?
621通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 15:09:07 ID:???
多分な。
当れば何とかなるだろう、当れば。
622通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 16:13:08 ID:???
ガンダリウムもガンダニュウムも結局はチタン系合金じゃなかったっけ?
623通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 18:25:30 ID:???
重さが圧倒的に違う
Wに出て来るやつは発泡スチロールよりも軽い
しかもガンダム1体がガンダニュウムのムクで出来てたらという試算なので、マジで想像を絶する軽さ
風が吹けば飛んでくレベル
ボトムズのアーマードトルーパーとブースターとか抜きで力押しの相撲をしたら負けるくらい軽い
624通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 18:33:05 ID:???
>>552
確か自分の書いてるものが信じられなくなった(簡単に言えば下手糞に思えてきた?)とかで修行中じゃなかたけ?
慎重なお方だ。

ガンダリウムとかディマリウム?とかが同じ系統なのは知ってるけどガンダニュウムは違うんじゃなかったっけ?(ウィキでは分類されてる)
625通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 19:01:41 ID:???
>>622
違うよ。
ガンダニュウム合金の中にチタン系合金はあるだろうけどね。
626通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 19:07:37 ID:???
ガンダニュウムってガミラシュウムやイスカンダリュウムの仲間?
627通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 19:13:04 ID:???
>>626
それもちょっと違う。
定義としては「宇宙でのみ生成可能な特定の製法による特殊合金」類全般。
628通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 19:32:19 ID:???
んー、ネタがないよ、ネタが。
629通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 20:35:05 ID:???
>>624
d
630通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 20:51:08 ID:???
>>628
SSスレなんだから無理に雑談しなくて良い。
631運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:14:52 ID:???
投下〜。
632運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:18:01 ID:???
 一介の護衛官に過ぎないアレックス・ディノが、友好国への使者として派遣された理由
は、彼の本当の名、アスラン・ザラによるところが大きい。追放処分を受けたとはいえ、
未だ彼を英雄視するプラント市民は多く、その影響力は高かった。
 故にアレックスが、オーブ宰相であるウナト・エマ・セイランに呼び出されたときも、
薄々ではあるが話の内容に気付いていた。
「先のザフトによる事件以来、日に日にファントムペインとブルーコスモスの勢力は拡大
している。大西洋連邦など、瞬きするうちに皆が皆、主義者どもになってしまったよ」
 アスランを来客用ソファにかけさせ、自身も彼の前に座るウナトの顔には疲れの色があ
った。ウナトは大西洋連邦とも繋がりの深い政治家であったのだが、そんな彼すらも今回
の一件は寝耳に水だった。
「連中はヘブンズベースを落とした勢いでプラントに宣戦布告をするだろう」
「いきなり開戦、ですか?」
「そういう連中なのだ、ブルーコスモスというのは。奴らにあるのは一方的な主義主張だ
けだ。ジョゼフ・コープランドが生きていた頃は、彼が良く押さえつけていたのだが……」
 惜しい男を亡くした、とウナトは感じていた。選挙当初は彼の公約などから「理想ばか
りの青二才」と酷評していたが、振り返ってみれば歴代の大統領の中でもなかなかに良く
できた男だった。
 そう考えると、ウナトはこれからアレックスに頼む用事が、不要にも思えてきた。個人
的な感情が仮にでも優先されるならば、彼は現在のプラントに良い感情を持っていない。
しかし、個人の感情と国の対応は別であろう。国の上に立つものが個人的な感情で動き、
結果国を滅ぼした例は、歴史を振り返ればいくらでもある。
「では用件に移るが……君に我がオーブの使者として、プラントに行ってもらいたい」
「プラントに?」
 予想していたことだが、実際に口にされると、アレックスは自分が多少困惑しているこ
とに気付いた。
「これはまだ国民には発表していないのだが……大西洋連邦から、プラントとの戦争に対
するに当たって、各国へ連邦との同盟を締結するように呼びかけが……いや、呼びかけで
はないな、脅しがされているのだ」
「同盟とは、どういうものなんです?」
「旧連合加盟国は元より、非加盟の中立国にも共にプラントを倒すために協力をしろ、と
いう内容だよ。物資、軍事、両方でな」
「そんな!」
 戦争をするから同盟を結べなど、いつの時代の話だとアレックスは思った。これが何か
の災害の際の復興支援だとでも言われれば、まだ納得も行くが……
633運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:19:29 ID:???
「断れば敵対国と見なし攻撃も辞さない構えだ」
「オーブは、その同盟を結ぶと!?」
「相手はものの数週間で連合を壊滅に追い込んだ連中だ。逆らえばどうなるかなど、君に
も判るだろう?」
 声を荒げるアレックスに、ウナトは窘めるように言った。アレックスの気持ちは良く分
かる、しかし、怒ればどうにかなる問題はないのだ。
「だがこちらも中立国として、ある程度の節度は守りたい。その為にも君にはプラントの
デュランダル議長に、オーブの現状を説明して欲しい。君は幸い彼とも面識があるし、そ
の、なんだ……」
「アレックスじゃない俺としての影響力、ですか?」
「……そうだ。オーブに亡命し、名も変えた君に事を頼むのは酷だと思っているのだが」
 そうはいっても国のためである。少しでも相手に対して影響力の強い人間を送らなけれ
ば意味がない。デュランダルと面識があるのは他に代表のカガリだが、この情勢下にカガ
リがプラントになどいけるわけがない。ウナトやユウナも論外だ。だが、それ以下の人間
が行っても相手にされない可能性がある。ウナトとしては苦渋の決断であった。
「カガリは、いえ、代表はなんと仰られているのですか?」
 アレックスは複雑な表情を浮かべながら、ここ最近ろくに会うこともままならない少女
のことを考えた。
「代表は、あくまでオーブは中立国としての立場を、オーブの理念を貫きたいと思ってお
いでだ。お父上の志を継ぎたいのだろうが……それでは国がな」
 志を継ぐ……その一言はアレックスの内にある、アスラン・ザラとしての部分を強く打
った。彼もまた、父親のことで悩んでいた。
「私程度がどこまで出来るか判りませんが……行かせていただきます」
「そうか……行ってくれるか」
 ウナトはアレックスに手を差し出した。国の宰相が一介の護衛官と握手など前例のない
ことかも知れないが、アスランはその手をガッシリと握った。
634運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:20:58 ID:???



            第8話「志を継ぐもの 前編」


 オーブからの使者として、アレックスがプラントに向かったのは、L5宙域での会戦が
終了した翌日であった。途中通過したL5宙域付近では未だ戦闘後の後処理が終わってお
らず、漂うモビルスーツの残骸に、アレックスは初戦から凄まじい戦闘が繰り広げられ
ていたことを実感した。
「核も撃たれたというが……プラントが無事で良かった」
 追放されたとはいえ、祖国である。まだ家もあるし、友人もいる。居ないのは、そう、
家族だけだ。
「戦争はもう始まっている……議長はどう動く?」
 議長は、自分が会ったときの印象で言えば穏健派だ。兵器こそ否定はしなかったが、
戦いその物を肯定しているとも思えない。だが、国は彼の指図一つで動きはしない。恐
らく国民感情に押されて、徹底抗戦する羽目になるだろう。あまり戦争向きには思えな
いが大丈夫であろうか?
 アレックスはそんなことを考えていたが、彼は一つの大きな勘違いをしていた。デュ
ランダルという男は、決して穏健派でもなければ、主戦派でもない。彼の行動理念は、
彼が腹の底に抱える一大目標の実現であり、その為だけに最高評議会の議長の座に居座
っているのだ。故にデュランダルは、国民が主戦論を唱え、徹底抗戦を叫ぶなら、当然
そうする。彼が今まで穏健派と反戦を気取っていたのも、当時の世論の流れを読んだだ
けの話だ。
 つまり、アレックスは彼を買いかぶっていた。少なくとも、平和論者という意味では。
 そして、逆に政治家としての一面では、過小評価していたのである。
635運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:23:00 ID:???
 首都アプリリウスにて、デュランダル議長と面会を果たしたアレックスは、当初の予定
通りオーブの現状を話し、なるべく敵対しないで欲しい旨を伝えた。
「そうか……地球各国はそんな状況なのか」
 デュランダルはアレックスの話を聞いて初めて、地球各国に送られた連邦との同盟条約
について知ることが出来たのだが、それはやはりプラントを不利にするものであった。
「ですから議長、オーブについては……」
「ふむ……そうは言われてもね。これまで通りというわけにもいくまい。オーブはその軍
事的能力の高さもそうだが、我がザフトのカーペンタリア基地に近い」
 痛いところを突かれたとアレックスは思った。今回のオーブの申し出が、プラントには
何らメリットがなく、むしろデメリットすらあることをデュランダルは理解していたのだ。
「私がファントムペインなら、オーブを橋頭堡にカーペンタリアを攻めるだろう。国一つ
後ろに備えることが出来れば、補給面での問題はほぼ心配はない」
 故にプラントとしては、オーブが同盟条約の締結をすることを快く思えないし、自分た
ちを攻めてくるかも知れない相手に、便宜をはかるのは難しかった。
「まあ……一応、やれるだけのことはしてみるが、余り期待はせんでくれよ?」
 かといってここで突っぱねても、オーブが連邦との条約を結ばないとは考えづらく、ど
ちらにしても攻めてくる未来は変わらないだろう。故に、デュランダルは無難な落としど
ころとして、「努力はするが、期待するな」という回答をせざるを得なかった。
「後日、文書にして君に渡そう……判っていると思うが、こちらも色々と辛い立場でね。
核まで撃たれては、こちらとしても、もう戦争するしかないのだよ」
「しかし……それでは!」
「私がここで主戦派を宥めようとしても、私の首が飛ぶだけだ。無論、地位に執着するわ
けではないが、私の次に議長の座に着くのは市民の希望通り地球と戦争をする主戦派の政
治家だろう。そうなっては始末に負えない」
 デュランダルの物言いには幾分かの嘘が含まれていたが、アレックスは当然それに気付
くこともなかった。
636運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:25:06 ID:???
「ならば戦争をするにしても、上手い具合に落としどころなりを見つけて、また講和や停戦の
条約を……と行きたい所なんだが、相手が相手だからね」
「ブルーコスモスは、何か言ってきているのですか?」
「いや、ブルーコスモスもファントムペインも、プラントには何も言ってこないよ。彼らがし
てるのは地球でこの戦争の正当性を訴えることと、我々に対しての弾劾だけだね。まあ、彼ら
の目的は我々を滅ぼすことなのだから、当然と言えば当然か」
「滅ぼすなどと、そんなこと、本気で?」
「向こうはやる気のようだ。そして、不可能な話でもないだろう。我々が、何ら抵抗をしなけ
れば」
「…………」
「けれもど、我々とて死ねといわれて死ぬわけにも行かないし、大西洋連邦を手中に収めてい
るとはいえ、地球が全てブルーコスモスに染まったわけでもないだろう?」
 確かに、旧連合加盟国はともかく、非加盟国についてはこの時期、様々な対応を取っていた。
オーブのようにプラントに使者を送る国もあれば、強大すぎる敵に恐れを成して早々に条約を
締結した国もある。ただ唯一の例外としては、ユーラシア西側地域や、南アメリカ合衆国等の
旧連合の抑圧や支配を嫌った地域では、未だ続く混乱も相成ってか、明確な答えを定められな
いでいた。
「私はそういった国々を支援して、出来ればプラント側に引き込みたいのだ」
「引き込む?」
「そうだ、仮にブルーコスモスやファントムペインの連中に世界征服でもされたら、プラント
としては堪ったものじゃない。だから少しでも味方が欲しいのさ」
 そう難しい話ではないとデュランダルは思っている。国がダメでも、そこに住む人を動かす
ことは、恐らく出来る。特にユーラシア西側地域ならば、政治的お題目や、主義・主張などよ
り、肉やパンをくれる者のほうがよっぽどありがたいはずだ。
「つけ込むようだが……悪くない。となると、ガルナハン辺りが有効か?」
「議長?」
「あぁ、いや、こちらの話だ」
 思わず漏れた呟きをデュランダルが隠したとき、議長室に通信が入った。動揺する市民を、
一時的にも宥める放送の準備が出来た、ということだった。
「アレックス、君もここで見ると良い。政治家としてさして人気もない私の、無様な宣伝方
法を」
「これは……ラクス!?」
 そのテレビ映像に映る少女は、ラクス・クライン。ただし、偽物である。
637運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:27:42 ID:???
 その日、ミーア・キャンベルの『ラクス・クラインとしてのお仕事』は、先の戦闘で動
揺し、激発するかも知れない市民を宥めるためのテレビ放送だった。
「要するに〜、ラクス様っぽく、戦争はいけませーんって言えば良いんでしょ?」
 広報官から手渡された文面を暗記しながらミーアは言う。ラクスが文書片手に放送など
ありないと言うことで、彼女は基本的に自分の喋る内容を暗記していた。時にはカメラの
前に文面を提示してもらうこともあったが、流石に手慣れてきたこともあり、紙にして三
枚程度の内容なら彼女は優に暗記できるようになった。もっとも、たまにど忘れして、ア
ドリブを効かせることもあるが。
「――最高評議会は事態の収拾を図るため日夜努力を……開戦してからなに言ってんのよ」
 ミーアは政治のことは極力知らないフリをしている。元々興味もなかったし、ラクスを
「演じる」だけならば、それは不要だった。不要のはずなのだ。
(あたしは、ただラクス様を演じるだけじゃダメだと思うようになっている……?)
 少し前までの自分なら考えられないことであった。与えられた役割を、精一杯こなす、
それだけで十分だと思っていた。
(ダメ、ダメよ、変わったら、ラクス・クラインでいられなくなる)
 地位に執着するという意味では、デュランダルよりもミーアのほうが切実だった。

『――最高評議会は最悪の事態を避けるために日夜努力をしています。皆さん、どうぞお
気をしずめてください。私たちは前の戦争で、戦争の愚かさというものを学んだはずです。
かつて私たちは多くの血を流しました。流さねば、戦争は終わらなかったのです。C.E73年
11月……世界はまた戦争に突入しようとしています。しかし、これだけは皆様にも理解し
て欲しいのです。戦争が生み出すのは、悲しみだけしかないと言うことを。最高評議会を、
デュランダル議長を信じて、皆さん、私と共に平和を祈ってください』
 多少のアレンジは入っていたが、ミーアの扮するラクス・クラインの効果は一時的であ
るが高ぶるプラント市民の気持ちを抑えることに成功した。
 しかし、その放送を、自室で見ていたロッシェの反応は冷ややかだった。
「ミーア、この画面に映る貴女は、本当に貴女なのか?」
 ロッシェの目には、市民に訴えかけるミーアがかなり無理をしているように見えた。今
この画面に存在するのは、ミーアではない。しかし、彼女が成り代わっているラクスでも
ない。居るのは、他者の主張を、自己の意見として訴える、ただの人形だ。
「これが、こんなものが、貴女の役割……?」
 主義も主張も、意思すらもない。ロッシェに言わせれば、ミーアはデュランダル議長の
良い宣伝道具だった。
638運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:29:27 ID:???
「笑ってくれて構わんよ……私には、こんな小賢しい手しか思いつかなかった」
「偽物、ですか」
 アレックスは画面に映る姿を見つめる。似ているなんてものじゃない、多少体つきに差
違はあるようだが、瓜二つだった。
「ラクス・クライン、前大戦を終結に導いたプラントの歌姫。彼女が持つ影響力は、私な
どよりずっと上なのだ。昔から、王子様やお姫様の訴えには、人は耳を傾けるものだから
ね。下手な政治家が何かを言うより、ずっといい」
 群衆心理を利用した浅ましい手段だとはデュランダルは重々承知している。しているが、
自己の地位を堅牢なものにするためには、これが一番有効だったのだ。
「このことを、本当のラクスは? オーブにいる彼女は知っているのですか?」
「あぁ、勿論知っているとも」
「えっ!?」
 アレックスは、ラクスがこの事実を知っていることに驚いた。彼女は、自分にそんなこ
とを一言も言わなかった。
「当然だろう。姿形や名だけではない、存在その物を利用させてもらうのだ。隠したって
どうせバレることだし、ダメ元で本人にお願いしたのさ」
「それで、ラクスはなんと?」
「嫌がると思っていたんだが……まあ、実際快く思っていたかどうかは定かではないが、
了承してくれたよ」
「そんな……馬鹿な」
「私も驚いたよ。無理な相談だと思っていたしね。でも、ラクスはそれを認めた」
 当時、デュランダルの命を受けラクスと面会した使者に対し、ラクスはこう言ったとい
う。
「戦後、私は勝者としての責任を放棄して、オーブへやって参りました。そんな無責任な
私の存在を、今一度必要となさるのであればどうぞご自由にお使い下さい。私自身は、こ
こを離れられないのですから」
 離れられないと言うよりは、離れる気がなかっただけなのだが、こうしたラクスの了承
も得て、デュランダルはミーア・キャンベルを、正式にラクス・クラインとして世に出す
ことが出来たのだ。
639運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:32:00 ID:???
「だが、それももう限界だろう。彼女の力を持ってしても、戦争は避けられない。先ほど
も言ったが、核を撃たれたのだからね。アレは決定的だった」
 そして、ザフト軍は必ずしも敵の進行を難なく追い返したわけではない。これが向かい
来る敵をあっさり倒し、月に追い返してやったというのなら、プラントの市民はザフトの
強さを誇り、それで満足したかも知れない。しかし、現実にザフトの痛手も大きく、戦死
者も出た。そこに核ミサイルだ。これで戦うなと叫ぶのは、よっぽどの平和主義者だろう。
「しかし、しかし、それでも! プラントがこのまま報復に出れば、世界はまた!」
 それでもアレックスは、戦争を否定したかった。アレックスより以前の彼が、それを否
定しようと必死だった。
「アレックス……」
 デュランダルは、そんなアレックスに声をかけようとするが、
「俺は、俺は、アスラン・ザラです」
 アレックス・ディノは、この瞬間アスラン・ザラへと変わった。
「二年前、どうしようもないまでに戦争を拡大させ、愚かとしか言いようのない憎悪を世
界中に撒き散らした、あのパトリックの息子です」
 アスランとなった彼に驚きながらも、デュランダルは彼の言葉を聞き続ける。
「父の言葉が正しいと信じ、戦場を駈け、敵の命を奪い、友と殺し合い、間違いと気付い
ても何一つ止められず、全てを失って……」
「アスラン……」
「議長、戦争はなにも生み出しはしません。奪うばかりです。あのテロリストたちだって、
戦争が産んだです!」
「ユニウス・セブンのことかい? 彼らのことを君が気に病むことはない、彼らは自分た
ちの行動を正当化するための大儀を、亡きザラ議長の言葉に求めたに過ぎない」
「けど、大義名分になるような言葉を叫んだのは、父なんです! 俺の父が!」
 アスランはテロリストたちがどういった連中なのかは知らない。この平和な時代を再び
動乱に陥れたのは彼らだという見方も出来る。だが、彼らは、父の意思を、アスラン・ザ
ラの父親、パトリック・ザラの意志を継いで戦っているのだ。大義名分として利用してい
るにしても、振りかざしているのだとしても、彼らの気迫と、彼らの叫びには、アスラン
の胸に突き刺さるものがあった。
(そう、彼らには志があるんだ。父が掲げた、あのどうしようもない志が)
 自分が逃げた父から、自分が判ってやろうともしなかった父から、彼らは志を継いだと
いうのか? じゃあ、パトリック・ザラの呪縛から逃れるためにオーブへと亡命し、アレ
ックス・ディノという偽りの名で暮らすことを選んだ自分はなんだ? 息子の自分が放棄
したものを、受け継いだ戦士たちがいるというのに!
「…………アスラン、少し良いかな? 見せたいものがある」
 暫くして、アスランが落ち着きを取り戻したと感じたデュランダルは、アスランをとあ
る場所に連れて行った。
640運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:33:26 ID:???
「議長、ここはザフトの……?」
「まあ、いいから黙って着いてきてくれ」
 アプリリウスにある、ザフトの兵器開発区画へと連れてこられたアスランは、その空間
に、懐かしさを感じながらも、このような場所に自分を連れてきたデュランダルに困惑も
していた。
 そして、二人はその場所へと着いた。
「これは……まさか!」
 アスランはそこにある機体に驚愕を覚えた。それは彼のよく知る機体だった。フェイズ
シフトダウンをしているとはいえ、その姿形を忘れるわけがない。
「ZGMF-X09Aジャスティス。前大戦で君の搭乗機だったものだ」
「何故、これが……」
「戦後、フリーダム共々ザフトに返還された際、そのまま残して置いた物だ。ユニウス条
約前の戦中に作られた機体だから、ニュートロンジャマーキャンセラーも特に問題になら
なかった……もっとも、ユニウス条約は、既に破棄されてしまったがね」
 デュランダルの言葉を聞いているのか、アスランは呆然とジャスティスを見つめている。
前大戦で「父から託された機体」が、目の前にある。
(託された? 託された機体でザフトを裏切り、父親を見限ったのは誰だ?)
 アスランの心の中で、腹黒いものが渦巻いてゆく。
(お前は父親を見捨てた。父親が話を聞かないから、狂ってしまったと決めつけて、あろ
う事か敵対した。父親を倒すために)
 それはすぐに彼の心を満たす。
(それに比べて父親はどうだ? 彼は最後まで、お前に見捨てられようとも自分の信念を
貫いた。お前が最後に、父親の最期を看取った時、父親はお前になんと言った?)
 満たされ、尚も溢れるものは、次第に彼の身体を蝕む。
(彼はお前に、死に行く最後の力を振り絞って、願いを託した。しかし、お前はそれすら
も聞かなかった。その結果がこれだ)
 アスラン・ザラを蝕み尽くそうとしている黒いものは、彼のもう一つの部分を浸食する。
(父親の意思は、他の戦士たちが受け継ぎ、志を、信念を絶やさんと、今も戦っている。
お前は、そんなお前は、アスラン・ザラは、何をしている?)
 アレックス・ディノが、蝕まれる。
641運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:36:00 ID:???
「アスラン」
「えっ――」
 アスランは、自分が汗を掻いていることに気付いた。
「どうしたね? まさか、機体が残ってることがショックだったのかい?」
 予想外とも言うべきアスランの動揺に、デュランダルは困惑気味に彼を見ていた。
「い、いえ、そういうわけでは……」
「そうか? ならいいのだが……」
 二人は暫くジッと、その場に立ち、ジャスティスを見つめていた。アスランはかつての
愛機に、時折目を逸らしたくなる衝動に駆られ、デュランダルはそんなアスランを横目で
見ていた。
「アスラン、もう一度ジャスティスに乗る気はないか?」
「え?」
「私は、君にこの機体を託したい」
 託す……かつて、ジャスティスを託され、裏切った自分に。
「私に、ザフトに戻れと、復隊しろと仰るのですか?」
「有り体に言えば、そういうことになるのかな」
「…………」
「先ほども言ったことだが、今のプラントには味方が少ない。それなのにザフトは未だ先
の事件の影響を抜けきれないでいる。君は前大戦を生き抜き、また、パトリック・ザラの
過ちを知る男だ。もう一度ザフトのために、君が今できることをしてみないか?」
「俺が今、できること?」
 違う、とアスランは感じていた。俺に今、できることをするんじゃない、俺が今、しな
ければいけないことは――
「すぐに答えを出してくれとはいわん、難しいことだ。しかし、私は、いやプラントは、
君の力を必要としている」
 デュランダルとしては、この時期自分の手駒を少しでも増やしたいという思惑があった。
ラクスという虚像を利用しても、開戦と言うことになれば、もうさしたる効果も得られな
いだろう。ならば次は武力の時代だ。兵力が、武器が、兵士が物を言う。始めはFAITH
に所属するハイネ・ヴェステンフルスに目を付けた。だが、ハイネはなかなかの人格者で、
手駒とするには手に余るように思えたのだ。
 そこにアスランがやってきた。デュランダルにとって彼の持つ影響力と、戦士としての
実力は無視できないものがあった。駒は強く、扱いやすいものが望ましい。その点アスラ
ンは精神面の『脆さ』も含めて、打って付けだった。後は如何に引き込むかである。アス
ランとて自分を拾ってくれたオーブにいくらかの恩義は感じているはずだ。代表であるカ
ガリ・ユラ・アスハとの関係もある。
(そうだ、彼らと面会させる機会を作れば……)
 ザフトには確か、アスランの友人が何人か居たはずだ。彼らは良い揺さぶりになるだろ
う。デュランダルは、心の中で獲物を着実に手に入れる方法を考えなら、ほくそ笑んだ。

 アスランはこの時、デュランダルの思惑を全て看破してはいなかった。しかし、デュラ
ンダルの思惑とは裏腹に、アスランはあることを決断していた。
 この日、C.E73年11月3日。アスラン・ザラは、もう一人の自分、アレックス・ディノと
いう存在を、捨てた。

                                 つづく
642運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:37:32 ID:???
第8話。
さて、ちょっと書かれていたので、作者として触れときますが、
この作品は元ネタとして銀英伝ネタ確かに多いです。
理由は私が銀英伝大好きだから+ロッシェの声ネタ。
これをパロと取るか、パクリと取るかは読み手に任せます。
でもまあ、ちょっとあからさますぎる気もしてきたので、なん
とかしようかな……
643通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 15:40:05 ID:???
GJッ!!
いつもお疲れ様です。
644通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 15:40:36 ID:???
フリーダムはともかく、ジャスティスは消滅したのでは・・・
645通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 15:42:02 ID:???
正義ってジェネシス内部で自爆したんじゃなかったか?
646運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:46:02 ID:???
ゴメン、修正忘れてた。

返還された際、修理・改修したのを〜

って感じ。大して差違ないけど、まあ、このSSでは
残ってると言うことで勘弁して(汗
647通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 15:48:47 ID:???
予備パーツを組み上げた2号機という事にでもすればいいのに
648運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/12(月) 15:51:58 ID:???
>>647
う〜ん、その通りだ……
登録された際に書き直そうかな……orz
649通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 16:00:09 ID:???
GJ

正義に関しては予備パーツ組立でも
開発データを元にしたレプリカでもどちらでもよさ気

ロッシェが人形役に甘んじているミーアにー何かをさせそうな予感

物語次第では造反が有ったりして
650通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 16:00:52 ID:???
GJ!!
所々小者臭漂う議長、こういう議長も良いなぁ。
色々企んでるけど、なんか憎めない人だw
ミーアはロッシェが鍵ですな。
どう化けるかな?

凸とウナトの会話、コレかなりイイです。
凸がオーブからの使者としてプラントに行くには、この人に話を通さないとおかしいんですよね。
この使い方はマジでうまい!適材適所だ。
651通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 16:09:44 ID:???
>>648
GJ!
蝙蝠となるか英雄となるか分岐点ですな
652通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 16:21:22 ID:???
蝙蝠でも英雄でもなく操り人形なんじゃね?
653通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 16:24:24 ID:???
運命の歌姫氏のラクスは以外とまともだし
アスランもちゃんとザフト軍人として仕事をするかもわからんね

ロッシェガンガレ超ガンガレ

ギルがガルナハンの地名を出していたから
ミネルバ隊に汚名返上の機会があるかもしれんね
654通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 21:13:55 ID:???
ここで正義が出てくるとは……


では自由に誰が乗るんじゃろ。
655通常の名無しさんの3倍:2007/03/12(月) 21:38:24 ID:???
本編なら監督の分身たるキラが
彼が尊敬する脚本家星山さんに由来する「フリーダム」に乗るのに意味があったんだろうな。
656通常の名無しさんの3倍:2007/03/13(火) 22:52:41 ID:???
最近ここ見つけたんでGW-Pのパスが分からないんだが、誰か教えてくれないか?
657通常の名無しさんの3倍:2007/03/13(火) 23:07:25 ID:???
考えたら運命の歌姫の地球はユニウス7落ちてないからノーダメージなんだよな。
658通常の名無しさんの3倍:2007/03/14(水) 00:15:41 ID:???
戦争の発端が違う。
659通常の名無しさんの3倍:2007/03/14(水) 01:39:41 ID:???
>>656
SSの過去ログ読みたいならwiki逝け
660通常の名無しさんの3倍:2007/03/14(水) 07:01:52 ID:???
>>658
何言ってんだ?誰も発端について論じていないわけだが。
661通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 12:27:41 ID:???
もう少し、もう少し。
662通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 12:41:02 ID:???
そいや
663通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 15:39:21 ID:???
ロッシェまだかなぁ・・・
664運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 16:13:39 ID:???
5時には投下したい……
ここ数日、急な用事でてんやわんやしてた。
665運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:00:15 ID:???
さて、1時間遅れで投下します。
666運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:03:03 ID:???
 L5宙域会戦で、敵補給部隊を殲滅したロッシェが、プラントへと帰還しようとしてい
たときである。
「ん……なんだ、通信か。一体誰が……まて、通信だと?」
 ロッシェは、狭いコクピットで飛びつくようにモニターを確認する。通信など大した
ことではないように思えるが、ここは異世界なのだ。誰がどうして、このレオスに通信
を送ることが出来る?
「この信号……オデルではない……プリベンター巡洋艦か!」
 やはり、この世界に来ていたのだ。ロッシェは機体を反転させると、信号が送られて
食う方向へとレオスを急がせた。プラントへの帰還が遅れるが、戦闘自体が完全に終結
したわけではないし、言い訳はどうとでもなるだろう。それよりも今は、彼らとの合流
のほうが先決だ。
「オデルも来ているのなら、合流している可能性もある……」
 ロッシェは、彼なりにオデルのことが気がかりでもあった。

 信号が送られてきたのは、L5宙域から少し離れた小惑星群だった。大小様々な岩塊が、
行く手を遮る。しかし、センサーで確認すれば、奥に一隻の艦があることが確認できる。
 ロッシェは、注意深く機体を動かし、プリベンター巡洋艦へと近づき、無事に着艦し
た。
「こんなところに隠れていたとは……まったく、職人芸だな」
 巡洋艦の小さな格納庫に下りたロッシェは、その見慣れた風景にどこか懐かしさを憶
える。既に一ヵ月以上もこの世界にいるのだ。A.E世界への望郷の念が、少し出てきたの
かも知れない。
「よぅ、ロッシェ。やはりお前さんだったか」
 格納庫の入り口から、アロハシャツを着た老人がやってきた。
「ハワード、お前こそこの世界に来ていたのだな」
 かつてA.E世界で、全てのモビルスーツの原形となった機体をガンダムの技術者たち
と共に開発した、バーニア研究の専門家。今はオデルの師であり、プリベンター技術部
門を総括している。いや、していた、と言うべきか。
「あぁ、おかげさんでな。うっかり、変な場所に来てしまったよ……とりあえず場所を
変えよう。何もない艦だが、コーヒーぐらいは出せる」
 二人は、巡洋艦の簡易食堂へ向かった。さして広くもない艦内だが、ロッシェは歩き
ながらこの艦に整備が行き届いていることを感じていた。
 食堂に到着すると、ハワードは宣言通りコーヒーを入れ、二人はコーヒーを飲みなが
ら会話を始めた。
「お前さん、その制服からすると今はザフトにいるんだな?」
「ほぅ、よく知ってるな、この服がザフトのものだと」
「調べたのさ、この世界のことを。今までずっと調べていた。そして今も調べている」
 巡洋艦ごとこの世界に飛ばされたハワードと、数少ないクルーたちは、まずこの小惑
星群に艦を隠した後、ひたすら情報を集めた。異世界に来てしまったという事実には流
石のハワードも仰天したが、騒いでもどうにかなるわけじゃない。
「とりあえず、帰るにしても、当面いる以上はこの世界のことをある程度は知らんとや
っていけんからな」
「帰る? 我々がいた世界に帰る方法があるのか?」
「そら来たんだから、帰る方法だってあるさ……まあ、目下調査中だが」
「なんだ、そういうことか」
 一瞬でも希望を持ちかけたロッシェは落胆して肩を落とした。この世界に幾分か馴染
んできたとはいえ、ロッシェは永住する気はなかった。帰らねばならない理由もある。
667運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:04:50 ID:???
「空間や、磁場形成等は専門外なもんでなぁ。さすがに、もうしばらくは……」
 落胆するロッシェとは裏腹に、ハワードはそんなことを呟いていた。
「――? おい、なんだ、その空間だの磁場だのといった単語は」
「何って、だから帰る方法の調査だよ。大方の見当は付いてるんだが、どうにも機械工学
ばっかやってきたワシには難しい」
「なっ……か、帰る方法に見当が付いてる? どうしてそれを早くいわない!」
「言っただろう、来たんだから帰る方法もあると」
 ハワードは事も無げに言うが、ロッシェとしては希望が繋がったのだ。跳び上がらんば
かりの嬉しさだ。
「だったら、早く帰ろうではないか! なんの調査だ? 私も手伝って――」
「生憎、そう簡単にはいかんよ」
「何故だ?」
「さっきも言ったが、今回の異世界転移とも呼べる現象は、非常に高度な、お前さんなん
ぞには説明しても判らないような科学的な原因があるのだ」
 そして、とハワードは空になったコーヒーカップにコーヒーを注ぐ。
「ワシはそれの専門じゃない。努力はしているが、そう上手いこと帰れたりわせん」
「そういうことか……」
 ロッシェは再び落胆して、コーヒーを飲んだ。砂糖もミルクも入っていないコーヒーは
ロッシェには少し苦かった。
「ロッシェ、お前に連絡を取ったのは他でもない、お前を通じてプラントに助けを請いた
い」
「プラントに?」
「この一ヵ月と少し、ワシらはなんとか食いつないできた。長期の調査任務も想定してい
たから、食料も燃料もそれなりにあった。しかし、それももう限界じゃ」
 プリベンター巡洋艦は、今や最低限のエネルギーと食料で賄われているそうだ。となる
と、このコーヒー一杯もかなりの価値がある。
「それは別に構わないが……しかし、ハワード、連中が貴方の素性を知れば、その技術力
を利用する可能性があるぞ? いや、十中八九、技術提供を交換条件に持ちかけてくるだ
ろう」
 デュランダルはそういう男だ。奴は自分の周りにあるものなら、なんだって使う。意外
に計算高いとロッシェは思っていた。
「そこら辺は妥協するしかないだろう……どうせワシらはその内、帰るんだ」
「無責任な発言だな」
 ある意味でこの男もガンダムの開発者たちに近いのだから、こういう考えも仕方ないの
だろうが……ロッシェは溜息を付く。
「何、そんな心配することはない。この世界にはガンダニュウムすらないんだ、技術を提
供したところで、それが実現できるとも限らんだろう」
「今度は前向きな発言だな、まったく……」
 しかし、そうするしか方法はなさそうだ。ロッシェはハワードを、どうやってデュラン
ダルに紹介するかについて、悩み始めていた。
668運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:06:44 ID:???



             第9話「志を継ぐもの 中編」


 デュランダルとの会見を終え、その日泊まるホテルへと向かったアスランは思わぬ事態
に遭遇していた。
「交通規制?」
 何でもアプリリウス市内の交通管制システムに異常が出たため、回復まであらゆる交通
機関を全面的にストップする、とのことだった。戦後のプラントではこうしたことが良く
あった。戦争によって失われた人的資源、出生率が必ずしも高くないプラントにおいて、
ザフトを除いてほとんどの公的機関が慢性的に人手不足だった。
 しかも、先の事件の責任を取り、最高評議会の情報交通を担当する委員長が辞任してい
たため、組織的にも衰弱しきっているのだ。
「仕方ない……歩くか」
 アスランは、そこまでの代金をタクシーの運転手に払うと、夜のアプリリウス市内を歩
き出した。周囲では同じように交通機関のストップを受け、警察に文句を言っている者も
いれば、アスランのように諦めて歩いている者もいる。
「また戦争になれば、今よりもっと酷くなるな……」
 ただでさえ人が少ないのに、これで戦争が活発化すれば、人的資源はイヤでもザフトに
流れる。不思議なもので、軍隊組織というのはいくら人がいても溢れることは決してない。
しかし、その内の幾分かを外部に放出すると、たちまち組織が成り立たなくなるのだ。こ
れでは、プラントは遅かれ早かれ、社会管理の面で破綻を来す。
「命が消えるのは簡単だが、命を育つのには多くの時間が掛かる。プラントは、俺達コー
ディネイターは――!?」
 前方に、男が一人立っている。その無骨な佇まいと、顔にある傷から、男が一般人では
ないことをアスランに告げていた。
「アスラン・ザラですな?」
「――っ!?」
 その名を呼ばれ、アスランは身構えるが、男はそれを手で制止、
「話がある。出来ればご一緒願いたい」
「断る、と言ったら?」
「時間は取らせません。ただ、我々は貴方の意思が知りたい」
「意思? どういうことだ?」
「貴方の、パトリック・ザラの息子としての、意思です」
「!?」
 まさか、こいつは……。
 アスランは目の前にいる男、否、目の前にいる戦士を凝視する。
「お前は……ユニウスセブンの!」
「……それ以上は場所を変えましょう」
 アスランに、拒絶することは出来なかった。
669運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:08:43 ID:???
 男がアスランを連れてきたのは、なんのことはない、アプリリウスのどこにでもありそ
うな公園だった。アスランも知っている場所だったが、彼が最後に来たときと比べると、
幾分か寂れている。
「見なさい、この荒れようを。市民の憩いの場として、本来なら政府がキチンと管理しな
ければならい公園も、手が着かなくなって随分とたつ」
 ゴミ箱にはゴミで溢れかえり、噴水はもう何年も使用されていないのかのように汚れ、
花壇の花は枯れ、全体的にも酷い有様だった。
「戦後、我々があの戦争に『負けて』以来、プラントではこういう場所がいくつも出来た。
最高評議会はザフトやその他軍事施設に力を入れる一方で、こういった市民に必要な物に
対しての予算を可能な限り削った。知っていますか? あの軍事工廠アーモリーワンに一
体いくらの予算が注ぎ込まれたか?」
「いや……」
「そもそも戦争は終わったはずだ。それなのに何故あんな軍事工廠を新たに建設し、兵器
開発をザフトは続けるのか? 何故、市民の税金が戦う道具の為にまた使われるのか?」
「何が言いたいんだ、お前は!」
 アスランは思わず声を荒げた。厳格を思わせる男の声は、どこか亡き父に近い物があり、
アスランの耳を不快にさせた。
「私が言いたいのは、先の大戦は終わってなどいなかったと言うことです」
「何?」
「ユニウス条約が締結されてからも、ザフトは兵器開発を続け、市民はそれに税金を払い
続けた。何故でしょう? それは、まだ市民が先の敗戦に納得していないからですよ。ナ
チュラルどもめ、次こそは見ていろ、次こそは勝ってやる……プラントがこの一年に以上
もの間にしてきたのは、次の戦争の準備だ」
 アスランはそれを否定することが出来なかった。そもそも、かつてカガリと共にアーモ
リーワンを訪れたとき、彼らの訪問理由が正にそれだった。平和な時代に、プラントは何
故兵器を開発し、軍備拡張にはかるのか? また、争いを産むだろうと。
670運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:10:59 ID:???
「クライン派と呼ばれるシーゲル・クライン、ラクス・クラインの意志を継ぐものたちは
口では和平だ反戦だと言いながら、準備だけはしっかりしている……矛盾だと思いません
か?」
「…………」
「彼らが真に平和を訴えるのなら、この公園がこんなに荒れていて良いはずがない。戦災
保障を削減してまで、ザフトに費やしている今の最高評議会を、誰が信じられますか?」
「だから、立ったというのか」
「我々の戦いは終わってなどいない。先の敗戦は、クライン派が自己の権力を取り戻し、
高めるために、双方の戦いを無理矢理止めたのですよ」
 止められた戦いに、決着は付いていない。後味は悪く、蟠りも残る。
「お前は、俺に何を望む?」
「我々の指導者になっていただきたい」
「な、に?」
 衝撃がアスランを襲った。この自分に、パトリック・ザラを裏切り見捨てた自分に、
指導者になれと言うのか。
「貴方が前大戦で何をしたのかは、私も知っています。しかし、貴方がパトリック・
ザラの息子であるのは事実。お父上の願いを叶えるには、今からでも遅くはないと思
いますが?」
「本気で、言ってるのか」
「少なくとも、危険を冒して貴方に会いに来たのです。冗談など言えません。我々は
貴方にも継いで貰いたい。パトリック・ザラの志を」
 父の……志。
 その言葉はアスランの胸を強く打つ。しかし、彼の理性はまだ理解は出来ても、納
得はしていない。
「……出来るわけがない! ナチュラルを全て滅ぼすなんて、そんなことは無理だ!」
「いいや、出来る! 何故なら我々は力を手に入れた!」
 アスランは叫び、男もまた叫んだ。
(力……だって?)
 男の自信に満ちた叫びに、アスランは疑問を憶えた。男の所属する組織がどれほどの
規模かは知らないが、ザフトより多いということはないだろう。それなのに、ここまで
自信を持てるというのは、何故だ。
「一晩、時間を差し上げます。もし我々の指導者として、共に起ち上がってくれるのな
らば、ここに連絡を」
 男は、アスランに紙切れを差し出す。
「一晩……」
 アスランは、無意識にそれを受け取ってしまった。
「こういう事は、もっと時間を差し上げたいのだが……私も長くアプリリウスにはいら
れないのですよ」
 男はそういうと、アスランに背を向け、歩き出した。
「ま、待ってくれ、貴方の名は――」
 思わず声をかけたアスランに、男は背を向けたまま答える。
「サトーです。良いお返事を期待しています、アスラン・ザラ」
 軽く手を挙げ、男はそのまま去っていった。
 残されたアスランは、手渡された紙切れを握りながら、呆然と、立ちつくすしかなか
った。
671運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:12:41 ID:???
 やっと予約していたホテルへチェックインに出来たアスランは、最上階のレストランへ
と向かった。食欲があるとは言いづらかったが、食事込みでの予約だったため、用意され
ていたのだ。そして、用意されているものをキャンセルするほど、アスランは礼をかく男
ではなかった。
「ワインは、如何なさいましょうか?」
「あぁ……じゃあ、この68年物を頼む」
「かしこまりました」
 キチンと教育がなされたウェイターに注文をしながら、アスランはレストラン内を見回
していた。世間では戦争が始まろうとしているのに、こういった場所は、外界からは遮断
された、別世界に見える。
「まあ、レストランもないような世界ってほうが、おかしいか」
 ないよりは、あったほうがずっといい。それが、普通の世界というものだ。
「ん……あれは」
 アスランは、レストランに、「初対面だがよく知っている顔」を見つけた。

「ねえ、ロッシェ、ここのお料理美味しくないの?」
「ん? 別に、美味しいと思うが……」
「ウソ、だって全然食べてないじゃない」
 確かにロッシェの皿の上には、まだ料理が残っており、食が進んではいない。
「少し考え事をしていたんだ……」
「何か、昨日の出撃から帰ってきてから、ずっとそう。あたしが話しかけても上の空だし。
折角、ロッシェの活躍を祝ってのディナーなのにつまんな〜い!」
 ロッシェは、昨日の出撃において核攻撃隊及び敵補給部隊を全滅させるという大戦果を
挙げていた。デュランダルはロッシェのことを自分の秘蔵っ子だと紹介し、自身の宣伝に
最大限の利用をした。もっとも、レオスのことは出来る限り伏せてはいたが。
「もしかして、格好良く出撃したのに、帰りは道に迷ったの気にしてるの?」
 ロッシェは、プリベンター巡洋艦に寄った事実を今のところは伏せ、帰還が遅れた理由
を、道に迷ったと言うことにした。情けないことこの上ないが、異世界の住人である自分
には丁度良い言い訳だった。
「いや……そういうわけでもないさ」
 考えているのは、悩んでいるのはもっと別のこと。
672運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:13:39 ID:???
「そういや、ロッシェ。お前さん、もうオデルとは会ったのか?」
 プリベンター巡洋艦から出るときに、ハワードが思いだしたように言ってきた。
「なっ! オデルの居場所を知ってるのか!?」
「知ってるも何も、つい数日前までここにいたぞ」
「そういう大事なことは早く言え!」
 やはりオデルも来ていたのだ。しかし、宇宙船の姿は近くになかったし、もういないと
言うことなのだろうか?
「奴は地球に行ったよ」
「地球に?」
「あぁ、異世界の地球を見ておきたいといってな」
 異世界に来て、割とすぐにハワードと会うことの出来たオデルは、しばらくはハワード
たちと行動をしていたが、数日前に地球を見に行くために旅だったらしい。
「地球か……一人でか?」
「一人と、一体でな」
673運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:15:14 ID:???
「ロッシェ、ロッシェったら!」
 ミーアの声に、ロッシェは我に返った。
「なんだ?」
「なんだ、じゃないわよ。また、ボーッとしちゃって」
 オデルが地球にいるという事実は、ロッシェにとっては予想外だった。まあ、地球を見
ておきたいという気持ちはロッシェにもあるにはあるのだが……
「ミーアは地球に行ったことはあるか?」
「えっ、地球? ないけど……」
 ミーアは、生まれも育ちもプラントだ。彼女にとってナチュラルが住む地球は、怖い場
所、という認識だった。
「怖い? コーディネイターこそ、ナチュラルから恐れられてるのではないのか?」
 ロッシェはコーディネイターという存在をデュランダルから説明された際、それが如何
にナチュラル、つまりロッシェのような存在よりも優れているのかを説かれた。その為、
認識としてはコーディネイターのほうがナチュラルより何事においても勝っている種族で
あると思っていた。そしてそのことがナチュラルにある種の恐怖心理を与え、争いに発展
しているのだとも……
「大体はロッシェの言う通りよ……でも、この世に完璧な存在なんているわけない。あた
したちコーディネイターは常に何かしらの欠陥を持っているわ」
「欠陥……?」
「あたしなんてその典型的よ。何の取り柄もない、ただ声がちょっと『他人に似ていた』だ
け。それ以外は何が優れてるわけでもない……」
 必要とされていたのは、自分ではない。
「自分が何も出来ない落ちこぼれだって判ったとき、あたしは他人に、ラクス様になる道
を選んだ。だって、それ以外に道がなかったから」
 ロッシェは寂しげに語るミーアに、何も言わなかった。この世界の価値観をロッシェは
知らない。何か人より優れていなければ、落ちこぼれなのか? という疑問が頭を過ぎっ
てはいたが、コーディネイターがナチュラルより優れた存在として生まれる以上、特筆す
べきものがないというのは、確かに欠陥なのかも知れない。
674運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:16:13 ID:???
「あっ――」
 その時、ミーアは奥のテーブルで食事を取っている人物を見て、驚いた。
「どうした?」
「アスランだ……あそこにで食事してるの、アスラン・ザラよ」
「アスラン?」
 少し行儀が悪いかと思いつつも、ロッシェも椅子越しに振り返ってそのテーブルを見た。
一人の青年が黙々と食事を取っている。
「知り合いか?」
「知り合いも何も、婚約者よ」
 ミーアは、少々意地悪な笑みを浮かべながらロッシェに言った。ミーアの予想通り、ロッ
シェは面食らったように、ミーアを見ていた。
「フフッ、大丈夫、ラクス様の婚約者よ。確か戦後は、地球の中立国に亡命したとか聞いた
けど……なんでいるのかしら?」
「随分思い詰めた顔で食事を取っているな」
「ダイエット中なんじゃないの? あ、もしかしてメインに付いてくるアスパラが食べられ
ないとか」
 ミーアがアスランを観察していると、視線に気付いたのか、アスランもこちらに目を向け
た。
「わっ、目があった」
 慌ててロッシェの陰に隠れるミーア。
「別に隠れなくてもいいのではないか?」
 こちらを凝視しているアスランをチラ見しつつ、ロッシェが言う。
「そうなんだけど……なんか、アスランって――」
675運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:17:30 ID:???
 まさかラクスがいるとは思っていなかった。しかし、アスランは声をかけるべきかどう
か迷っていた。
(あれはラクスであって、ラクスじゃない……)
 一緒にいる男は誰だろうか? ザフトの軍服、しかも赤服を着ているが、アスランの知
っている顔ではない。ラクスの護衛か、それとも……?
「まあ、知らなくて当然か。一年以上もプラントには帰ってなかったんだ……」
 ザフトも様変わりしたのだろうか? したのだろう。イザークはいつの間にか白服にな
ったと言うし、ディアッカは対照的に緑服だ。しばらくいなかった間に、大きく変わって
しまった。
(しばらくいなかった、だって?)
 それじゃあ、まるで自分がプラントをちょっと留守にしていたみたいじゃないか。
 アスランは自分の考えに首を振りたかったが、アスランにとってやはり故郷はここなの
だ。亡命したオーブではない。プラントこそが……
(そして今の俺は、プラントのために戦いたいという思いが強い)
 果たしてそれが、どちら側について戦うのか、アスランは迷ってこそいたが、このまま
オーブに戻るのは何か違うような気がしてならない。
「えっ?」
 食事を終えたのか、席を立ったラクスがこちらに歩いてきた。その足取りは軽く、上品
さと言うよりは、女の子らしさが合った。
「アスラン・ザラ、ですわよね?」
「あっ、ああ……」
 見れば見るほど、目の前にいる少女はラクスだった。口調がどこかわざとらしいが、声
までこうも似ているとは……
676運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:19:03 ID:???
「お食事中ごめんなさい、どうしても挨拶をしてから帰りたくて」
「それは構わないが、えっと」
 彼女を何と呼ぶべきか焦ったアスランだったが、ミーアはそんな彼ににそっと耳打ちし、
「ミーアよ」
「ミーア?」
「そう、ミーア・キャンベル。それが私の本当の名前」
 ミーア・キャンベル……そう名乗った少女を、アスランは何とも言えな気持ちで見つめ
た。この子は自分の知っているラクスではない、ラクスではないのだが……
「本当に、そっくりだな……」
「声だけよ、似ているのは。後は全部、ラクス様のまがい物」
「まがい物?」
「作り物って言ったほうが、良いのかしら。まあ、それはいいとして」
 ミーアは口調をラクスに戻すとバックから一枚のチケットを取り出し、アスランに渡し
た。
「明日、このホテルの近くにあるホールでコンサートがあるんですのよ?」
「コンサート? 君の?」
「そうですわよ? それで、これがそのチケット。良かったら見に来て。アスランには本
物のラクス様のこととか、色々聞きたいし」
 そう言ってウインクすると、ミーアは連れの男のほうに戻っていった。連れの男は興味
深げにこちらを見ているが、その男もまたかなりの美形であり、正にコーディネイターと
いった感じであった。
「ミーア・キャンベル、か……」
 コンサートそれ自体に興味は無いが、アスランは一度ゆっくり彼女と話をしてみたいと
思った。明日は行きたい場所もあるし、少し顔を出すのもいいかもしれない。
「いや、それよりも俺にはすることがある」
 決断せねばならない。何を取って、何を捨てるのか、誰のために、何のために『アスラ
ン・ザラ』に戻るのかを。
 C.E73年11月……アスラン・ザラは自分の道を、まだ選んではない。

                                つづく
677運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/16(金) 18:20:00 ID:???
遅れましたが第9話。
何だかんだで後編まで続きます。
シンを早く再登場させたいのですが、彼はどんなに急いでも
次の次になると思います。もう少しお待ち下さい。
678通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 18:47:22 ID:???
GJ!
サトーの口ぶりからすると、どうもウルカヌスを手に入れたっぽいですな。
でもね、どうも「力」に眼を惑わされてるみたいだ。
たしかに、ウルカヌスに眠る「力」はこの世界に飾ればとてつもない物だけどねぇ。

再びフラフラするアスラン、この男につける薬が欲しい。
議長は監視くらいつけてるかもしれんというのに……
679通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 18:54:14 ID:???
GJ!
ですが、気になったことが一つ。
夜勤で一段落した戦争の戦勝国はどちらかと云えば
プラント側だったと思うのですが……。
680通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 19:19:09 ID:???
GJです
シンが「流血のシナリオ」のヒイロ的行動を取ったんだから、アスランがホワイトファングのミリアルド的ポジションになるのでは?と思えてきた。
681通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 19:33:14 ID:???
コーディの呪縛に捕われるプラント生まれのアスランと
それを否定する地球生まれのシンという対比かな?

職人さんGJ
682通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 19:41:49 ID:???
GJ!
プラントは国としてオワッとる気がするぞ。
まるで崩壊前の旧ソ連だ。
683通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 20:18:13 ID:???
GJ
ハワードがロッシェの為に一仕事してくれそうな予感

ロッシェはミーアの騎士としてもガンガレ


シン達ミネルバ隊の再登場をマターリお待ちしておりますです
684通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 21:04:58 ID:???
『正義』が全く相応しくない蝙蝠男乙wwwwwwwwwww

前回の話でもう少しマシな奴になると思ったが…
この男に力を与えることは、害悪以外の何者でもないな。
685通常の名無しさんの3倍:2007/03/16(金) 23:22:48 ID:???
凸のような男が「正義」の名を持つ機体に乗ってるのは、逆に正義という言葉の持つ欺瞞を端的に表してると思うよ
まあ嫁は凸にこそ「正義」の名は相応しいとかマジで思ってそうだが
686通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 01:11:25 ID:???
凸は揺らぐ事のない「正義」を持っていないから心が揺れ動く
だから「正義」という名の鎧を着ることで迷いを無くすんだ
687通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 12:13:09 ID:???
AE?

ACだろ
688通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 13:11:52 ID:???
あ、ホントだ。
689通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 20:13:01 ID:???
遅ればせながら運命の歌姫氏GJ。
内心はナチュのロッシェの方がコーディよりもパイロットとしても優れていると危惧しつつ
ロッシェに自分たちの方が優れていると説いて暗示を掛けてる議長にわろた。

どう考えてもCEとは比べ物にならない高Gの掛かる高機動MSを乗り回す
ACのエースパイロット連中の方が化け物です。
690通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 20:18:19 ID:???
コーディネーターが優秀www
よくてトレーズ派一般兵レベルだろう。
691通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 20:37:26 ID:???
>>690
 それだけ強ければ十分な気もする
692通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 20:39:25 ID:???
でもアレックスやミューラーよりは弱そうだな>コーディ
693通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 21:39:20 ID:???
>>690
じゃあ準ガンダムパイロットのルーナとソリスはどんなレベルよ。
…正規Gパイロットの戦闘力って一体。
694通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 21:42:15 ID:???
>>690
操縦技術が五分だとしても覚悟が違いすぎる。
695通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 21:42:29 ID:???
完璧超人のトレーズ閣下を頂点として
少なくとも身体能力に関しては奴等以上の人間となると
ガンダムファイターとかそんなレベルになってしまう
696通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 21:44:39 ID:???
>>694
コーディネーターがリーオーに乗っても、ビルゴIIは落とせそうにないよな。
697通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 22:03:42 ID:???
しかも連中は連携を否定してるし。
オリンピックやワールドカップに出場しても団体競技はダメダメだろうな。
698通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 22:10:57 ID:???
エピオンゼクス+ビルゴ三機VSアスランと愉快な仲間達

ゴメンなんか酷い事言いました、首吊ってきます。
699通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 22:14:27 ID:???
漫画版ではビルゴの戦闘システム弄って、リーオーに攻撃できないようにしてたけど、
アニメのほうはリーオーでビルゴとガチバトルしてるんだよな。
OZの兵士って、どれだけ凄いんだよ。
700通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 22:29:53 ID:???
戦闘能力トロそうなレディ・アンでさえちっぽけなコンパクト投げて遠くの窓割るくらいの強肩で
飛行機から落下する人間の頭部を性格に撃ち抜いて
ついでにMS操縦技術は五飛に匹敵してたしなあ
701通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 22:32:42 ID:???
>>699
EWの冒頭のリーオーは普通に動き良いよな。
702通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 22:56:29 ID:???
>>699
さすがに1対1で一般兵とビルゴが互角ってわけじゃないけどな。
小説によると、少しでも損傷したらすぐに修理に戻らせることで
損耗率を下げ、数の優位を保って常に多対一で挑むことで互角になれたらしい。
703通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 23:00:38 ID:???
>>702
種世界の兵士にはできない芸当だな。
まあ、ビームが見えないとか設定あったし、小説は小説で考えた方がいいかもしれないけど。
704通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 23:03:07 ID:???
>>702
さすがトレーズだな。見事な戦略だ。
でも、同じ事やったとしても種のMSじゃ傷一つ付けられないだろうなぁ。
705通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 23:09:00 ID:???
そもそも種の兵士にはこの戦術を実行するだけの力量がない。
連携無視のザフトもひどいが、棒立ちの連合はもっとひどいからなあ。
706通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 23:11:59 ID:???
>>705
だからストフリ等の機体が戦場動き回ってあたかも一騎当千の強さに見えるんだよな。
いや、実際に強いことは強いんだろうけど。
707通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 23:16:46 ID:???
スタゲ見る限りザフトも結構棒立ち属性持ちだな。
708通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 23:36:08 ID:???
キラはそりゃ強いけど、他のコーディネイターが強いって気がしない。
無印種でも結局地上から追い出されたから宇宙で最終戦闘したんだろ?
709通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 05:34:09 ID:???
>>698
イジメは良くない
地上限定でトラゴス3機くらいにしときなさい


もしくは海でキャンサーorパイシーズ
710通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 11:01:47 ID:???
AC世界の名無し達の奮戦の歴史

・ニューエドワーズ基地で、4機のガンダムを相手にしても最後まで制圧はされなかった
 (ノベンタ元帥達を殺られてしまったが)
・トーラス輸送計画で、死神+砂岩+マグアナック隊相手に膠着
 (レディ・アンの想像以上の被害は出てたけど)
・シンガポールで3機のガンダムを相手にしながら、砂岩を自爆に追い込む
 (死神と神龍、カトルは宇宙に上げてしまったが)
・サンクキングダム攻防戦で、ビルゴの群れを相手にノイン+名無し兵の「数で劣る状態で」
 カトル+マグアナック隊到着まで粘る (最終防衛ラインまで追い込まれていたが)
・EVE-WARでリーオー中心の部隊でビルゴU部隊相手に膠着
・EWで、相手が不殺だったとは言えガンダム3機+バカップルを沈黙させた
・その他、特攻でMDを道連れにして一矢報いた描写も複数

反則装甲ガンダニュウム合金製のスーパーロボット達を相手に
これだけ頑張ってるのは大した物だと思う。
…基本的に頭イカレな物量差(5vs250とか)があったけど。やはり戦いは数だよ兄貴。
711通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 11:20:41 ID:???
リーオーがビルゴを落としてるのって特攻以外無かったような気がしたんだが……
712通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 12:11:14 ID:???
>>710
A.C世界の一般兵SUGEEEEEEEEEEEEEEEE
ガンダムWってガンダムが無茶苦茶強い割りにピンチのイメージが多かったのは
名無し兵が頑張ってる描写が多かったからだったのか…
713通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 12:32:27 ID:???
AC世界の一般兵って歴代ガンダム有数の強さじゃないか?
そりゃ無茶設定なガンダムとかMSはあるがそれに負けずに奮闘して見せるその姿勢はガンダムには少ないと思うな
ACの一般兵に匹敵する強さを持っている一般兵の居るガンダムって何があるだろ?
714通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 12:45:33 ID:???
それに比べてCEの一般兵は…
715通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 14:39:37 ID:???
AC世界の軍隊
5機のガンダムを確認後、損害を受けながらも戦力分析を行う
戦力分析の情報を元に軍事作戦を立案、実行
実力排除が難しいなら搦め手で敵を無力化

あと普通に情報戦は行われてるね
716通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 15:15:11 ID:???
しゃーないじゃん
CEには負債に都合のいい連中しかいないんだから
717通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 17:33:00 ID:???
>>713
そりゃトレーズ閣下が指揮をすれば士気が大幅アップ。
これはクラウダに乗るXのコロニー革命軍ぐらいでないと難しいな。
718通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 18:00:19 ID:???
>>713
F91のクロスボーン・バンガードの練度なら…


あとデビルガンダム軍団
719通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 18:28:33 ID:???
>>718
デビルガンダム軍団は反則だろw
720運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 21:54:40 ID:???
投下します。
721運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 21:57:34 ID:???
 軍需産業複合体ロゴスは、各国の政府と密接に癒着し、軍部に強い発言力を持つ組織で
ある。ブルコースモスの盟主ロード・ジブリールを筆頭に、ルクス・コーラー、ブルーノ
・アズラエル、エルウィン・リッター、ラリー・マクウィリアムズ、セレスティン・グロ
ード、アダム・ヴァミリア、グラハム・ネレイス、ダンカン・L・モッケルバーグの9人の
幹部が頂点に立ち、ブルーコスモスとファントムペインの母体となり、世界各国を間接的
に支配している。
「ジブリール、我々が君に地位と権力を与えているのは、君の力をある程度評価している
からだ」
 その日、ブルーコスモスの盟主ロード・ジブリールは、彼が所属する組織ロゴスのメン
バーたちとモニター越しの会議を行っていた。議題は勿論、先のL5宙域での敗退について
である。
「無論この世に完璧な人間などいない。しかし、組織のトップに立つと言うことは、失敗
の許されない完璧さを求められているのだよ?」
「クーデターまでの手際の良さは認めよう。だが、その先はどうだ? プラントは未だ健
在で、逆に地球の各国は混乱している」
 ジブリールの手腕で大西洋連邦内部の掌握に成功はした。が、しかし、それ以外の各国
はクーデター騒ぎにおける混乱に晒されていた。国の指導者も、ザフトを利用したファン
トムペインの策略で失っている。
「世論の批判を無視して核攻撃隊まで使ってこの体たらく……君のシナリオはいつから喜
劇に変わった?」
「コーディネイターどもが恐ろしい新兵器でも持ち出してきたというのならともかく、連
中の宣伝を聞く限りではたった一機のモビルスーツに防がれたそうじゃないか」
「どう責任を取るんだね? 強引に開戦して、得られた物は何もない」
 ロゴスのメンバーがたたみ掛けるように発言をしてゆくが、ジブリールはジッと目を閉
じ黙って聞いている。
「ジブリール、黙ってないで何か言ったらどうかね? 次は奴らが攻めてくる、地球が戦
場になるのだぞ?」
 ジブリールは、目を開け、鋭い眼光をロゴスのメーンバーに向けた。
「それが何だというのです?」
 眼光如きに気圧されるロゴスのメンバーたちではなかったが、彼の声に幾分かの余裕が
あるのを感じ、一時的に押し黙った。
「敵が我々ファントムペインの核攻撃隊を全滅させた、なるほど、それは確かに事実です。
しかも敵は一機、一機ですよ? コーディネイターという化け物は、たった一機でこちら
の部隊を全滅させた。フ、皆様方が驚異に感じるのも無理はない」
 ジブリールは、巧みな話術で先の敗退をコーディネイターの驚異にすり替えてゆく。そ
してあたかも、彼らがコーディネイターの力を恐れ、開戦に踏み切ったジブリールを非難
しているようにする。
「別に奴らの力を恐れているわけではない。我らはこれからファントムペインがどのよう
な行動を取るのかと……」
 案の定、自分たちの心を見透かされたように感じ、彼らの勢いは止まる。
722運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 21:59:37 ID:???
「もちろん、戦うのですよ。地上が戦場になる? ザフトはこの地上にいくつも基地を持
っているのですよ? ここが戦場になるなんて当たり前のことを」
「むぅ……それは、その通りだが」
「徹底的に戦って、ザフトを、コーディネイターどもをこの地上から排除してしまいまし
ょう。そして、しかる後に再び宇宙に浮かぶ砂時計に攻めるのです」
「しかし、時間が掛かりそうだな」
 ザフトとて、宇宙からの援軍を送ってくるだろう。陣容も、兵力も、補給も、前大戦並、
いや、それ以上と言うこともあり得る。その物量と、高まる士気が衰えるまで、どれほど
の時間が掛かるのか……
「結構じゃないですか。長引けば長引くだけ、あなた方の懐は潤う」
 ジブリールの核心を突いた一言に、今度こそロゴスのメンバーたちは完全に押し黙った。
彼らロゴスがファントムペインの母体として支援するのは、詰まるところそれである。戦
争利益か、戦争利潤か、彼らが戦争をする目的など、所詮はその程度だ。
「まあ、私としてはそんなに長期戦をやるつもりはありませんがね。年内に終わるとは言
いませんが……そうですね、数ヶ月で終わらせて見せますよ」
 
 会議を終えたジブリールは部下を呼ぶと、ジブラルタル及びカーペンタリアに派遣して
いる遠征艦隊への通信を命じた。
「構うことはない、ジブラルタル、カーペンタリアにいる艦隊に攻撃を開始させろ。敵の
援軍が送られてくる前に両基地を叩くのだ」
 そうすればザフトはこの地上での拠点を失うことになる。拠点も為しに戦える軍隊など
存在しない、前大戦のように敵を宇宙に追い出せばいいのだ。
「まだ戦いは始まったばかりだ。そんな早く終わっては、面白味もないさ」
 ジブリールは笑うと、年代物のワインに口を付けた。
723運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:01:37 ID:???



            第10話「志を継ぐもの 後編」


 アスラン・ザラ……プラント最高評議会前議長パトリック・ザラの息子にして、ザフト
のトップエリート、ザフトレッドの英雄。
 輝かしい栄光と、名声、全てを手にするはずだったという、虚像。
 ナチュラルを滅ぼすため、殲滅戦に入った父と決別し、ザフトを裏切った裏切り者。
 そんな自分に、一体何が出来るのかと言う疑問。
「それでも、彼は俺を、アスラン・ザラを求めた」
 なら、その気持ちにどう答えるか、どのような答えを出すのか、彼はもう決めていた。
後は、決意と決断だけだ。
「カガリ……俺は」
 遠い国で、政務に追われているであろう少女の名を呟きながらアスランは思う。自分は
所詮、こういう生き方しかできないんだ、と。

 トントンッ

「来客、か?」
 アスランがこのホテルに泊まっていることを知っているのはデュランダル議長と、昨日
会ったミーア・キャンベルぐらいだ。議長はもちろん、彼女が来たとも思えないが……
 アスランは不審に思いながら、ドアの覗き穴から外を見て、
 慌てて扉を開けた。
「イザーク、それにディアッカじゃないか!」
 イザーク・ジュール、そしてディアッカ・エルスマン、前大戦で共に戦った仲間が目の
前にいる。
724運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:02:30 ID:???
「わざわざ尋ねてきてくれるなんて、よくここが……っておい!」
 いきなり、イザークはアスランの胸ぐらを掴み挙げた。
「アスラン、俺達がわざわざお前に会いに、ここに来たと思っているのか?」
「な、なに? ち、違うのか?」
「俺達はなぁ、今無茶苦茶忙しい! それなのに最高評議会の呼び出しくらって、何事か
と思えば貴様の護衛だと? 俺達を何だと思ってる!」
「ご、護衛?」
 そういえば外出を希望する際に護衛を付けるとは言われたが……
「イザークよせよ、今は他国の使者さんだぜ? 胸ぐら掴むなんて、国際問題だ」
 ディアッカが半ば強引に二人を引き離す。
「外出、希望してんだって?」
「あ、あぁ……」
「どこだ? ショッピングとか抜かしたら俺は帰るぞ!」
「そんなんじゃないさ……」
 アスランは、テーブルの上にあったサングラスを取り、それをかけながら答える。
「ただ、ニコルたちの墓にな」
 二人が、少しだけ息を呑んだ。
「こんな時でもないと、行けない場所だから……」
725運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:05:35 ID:???
 アプリリウス郊外の共同墓地、ここに先の大戦で死んでいった人々は眠っている。もっ
とも、その大半は墓石だけで中身はない。
「ラスティ、ミゲル、そしてニコル……」
 三人の友が、前大戦で散っていった。
「この墓が、後いくつ増えるんだろうな?」
「何?」
「戦争になれば、この墓はまだまだ増える。遺骨も、遺髪も、何もない墓が」
 沈黙が辺りを包んだ。アスランの言うことは正しい。しかし、イザークとディアッカは
軍人だ。軍人が、それに同意することは出来ない。
「アスラン……議長から聞いたぞ、復隊を求められてるそうだな」
「ん? ……あぁ、昨日言われたよ」
 薄々と感づいてはいた。何故この二人が、わざわざ前線から呼び戻され自分の護衛役に
回されたのか。デュランダル議長というのは、なかなかに計算高い。
「アスラン、お前は今どこにいる?」
「えっ?」
「俺達は前線にいる。俺達だけじゃない、多くのザフト兵がプラントのために戦って、ま
た犠牲が出た」
「この墓を見て、これがまた増えることに嘆くのならば……戻ってこい、アスラン」
 イザークは、強いまなざしでアスランを見た。
「色々あるだろうが、そんなものは俺が何とかしてやる。周りの目など気にせず、戦場で
功績を立てれば良いだけの話だ」
 実際、イザークやディアッカはそうして今の場所にいた。大戦後の彼らを見る目は決し
ていいものばかりではなかった。しかしそれを上回る功績や戦果を挙げれば、人の見る目
などすぐに変わる。
726運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:06:50 ID:???
「それほどの力……ただ、無駄にする気か?」
 アスランは、イザークがその実力を認める数少ない男だ。そんな男が、他国の中立国で、
ただこの戦争を見ているだけというのは、イザークには耐え難かった。
「プラントは昨日、積極的自衛権の行使を決定した。表向きは地球で現在包囲されている
ジブラルタルとカーペンタリアへの救援だが、すぐに戦渦は広がる」
「戦うしかないんだよ、俺達は。奴らが、戦いを止めない限りさ」
 だが、相手は戦いを止めるような奴らじゃない。ファントムペインを操るブルーコスモ
スは、コーディネイター排除を掲げる組織だ。核を兵器で撃ってくるような連中を、それ
こそ全滅でもさせない限り戦いは――
「……イザーク、ディアッカ」
 アスランは、一晩かけて出した答えを、この二人に言う決心を固めた。
「今から俺の考えを話す……もし、それが納得の出来ないと思うなら、俺を殴れ。いや、
場合によってはここで殺せ」
「殺せって、アスランお前!?」
 ディアッカが驚き、アスランに掴み寄ろうとするが、イザークがそれを制止、
「聞かせろ、お前の考えとやらを」
 真剣なアスランの表情に何かを見出したのか、イザークは不敵な笑みを浮かべた。
 そしてアスランは語り出す。彼の決意と決断を……
727運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:08:24 ID:???
「しょ、正気かよ、お前!?」
 アスランの考えを聞き終わったとき、ディアッカは思わず叫んでしまった。
「一時的にザフトに戻ったと見せかけて、また裏切るだって? お前、何考えてやがん
だ!」
 今度こそディアッカは、アスランの胸ぐらを掴み、その身体を揺さぶった。対照的に、
イザークは考え込むように黙っている。
「ナチュラルを倒し、プラントに真の平和をもたらすにはそれしかない」
「それじゃあ、前大戦のお前の親父さんと何も」
「言っただろう、俺は父の志を継ぐ……父の志を胸に戦う戦士たちがいるのに、息子で
ある俺が黙ってみているなんてこと、俺には出来ない」
 前大戦が終わっても、世界は何も変わらなかった。隙あらばコーディネイターを排除
しようとする地球側と、それを何とか凌ごうとするプラント。アスランは一年と少し中
立国で客観的に世界を見てきたつもりだが、世界は何一つ変わらなかった。
「俺の父が起こした戦争で、その父がもう居ないのなら、それを終わらせるのは俺の役
目だ。だから、俺は彼らに協力する」
「ほ、本気か……」
「冗談で言える事じゃない。少なくとも、覚悟は決めている」
 アスランはイザークを見る。先ほどから黙ったままのイザークだったが、目を見開き、
アスランとディアッカに歩み寄ってきた。
「アスラン、勝算はあるのか?」
「イザーク!?」
 アスランに怒鳴り散らすわけでもなく、冷静にそう問いただすイザークに、ディアッ
カは驚きの声を上げる。
「勝算なんて、なくても良いんだ。打算で行動する気はない、パトリック・ザラの息子
として、志を貫きたいだけだ」
「生き恥をさらしてでも貫くのが男の志か……」
「お前ら二人にだけは話しておきたかった。イザーク、俺を殺すか?」
 イザークは懐にある拳銃を取り出す。弾は勿論入っている。セーフティを解除すれば、
目の前の裏切り者を殺すことが出来る……しかし、
728通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:08:40 ID:4FXQcm+m

一、無能で働き者な文民どもの横槍で予算を削られまくっている
(CCAにおいて、アクシズ解体の予算を反故にされた事等)

二、官僚主義と腐敗によって、組織としては末期症状を起こしている

三、上記の理由等から機材の更新が蔑ろにされ、性能不利は何時もの事

こんな三重苦を背負って、錬度や士気に勝る相手と戦い続けてきた連邦一般兵も
十分凄いと思う
729運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:10:37 ID:???
「俺の母上は今、マティウスの病院、ベッドの上にいる」
「えっ?」
「前大戦終結後、母上は魂が抜け落ちたように、生きるということを辞めてしまわれた。
喋ることも、動くこともせず、病院のベッドで日々天井を見る毎日……」
 イザークの母親であるエザリア・ジュールは、アスランの父、パトリック・ザラとと
もに急進派の先方であった。最終決戦ではザフト軍を果敢に指揮していたが、クライン
派の銀たちが起こしたクーデターの際に失脚し、表舞台から姿を消した。
「今の母上は、生きる気力を無くした廃人だ。しかし、俺はそんな母上に元気になって
貰いたいと、最高評議会の平議員として頑張ったり、ザフト軍に復隊した後は白服にま
で上り詰めた……だが」
 最高評議会議員になったと報告をしたときも、白服に出世したと伝えに行ったときも、
エザリアは、イザークのことを見ることも、話すこともなかった。
「母上は未だに、前大戦に、決着の付かなかったあの戦争に魂を囚われている。貴様の
父上が死して魂が解放されたのとは違いな」
 彼の目もまた、決意に満ちていた。アスランと同じく、男が決断をした目だ。
「親の起こした戦争に決着を付け、終わらせるというのなら、それは俺も同じ事だ。お
前だけの問題じゃない」
「イ、イザーク……」
 彼の考えていることがわかってきたディアッカは、彼を止めるべきかどうか迷った。
しかし、ディアッカの両親は健在であり、彼自身は前大戦で友人や上官以外失った物が
何もなかった。そんな自分では口が挟めるはずがない。
「アスラン、貴様の考えに俺も乗ってやる」
「……いいのか?」
「お前だけに責任を押しつけていられるほど、俺は器量が小さくないつもりだ」
 イザークはそう言って、アスランに手を出しだした。アスランはその手を固く握り、
そして、ディアッカもその手を重ねてた。
730運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:13:03 ID:???
「ディアッカ?」
「二人より三人、だろ?」
「でもお前にはそうするだけの理由が……」
 ディアッカの父親、タッド・エルスマンは現役こそ引退しているが元は中立派の最高評
議会議員だ。つまり、ここでディアッカがアスランとイザークに同調すれば、彼は親を裏
切ることになる。
「親も大事だが……俺は親友二人を黙って見送ることは出来ないんだよ」
 重ねた手に、力が入る。
 アスランは二人の友情に、決意に、涙腺がゆるんだ。
「お話しは、終わりましたかな?」
 声は、突如響いた。
「!?」
 イザークが、声のする方向に拳銃を向けた。そこには、一人の男が、アスランのよく知
る男が立っていた。
「サトー……付けていたいのか」
「じゃあ、こいつがユニウス・セブンの!」
 サトーは一礼すると、三人に歩み寄ってきた。
「お返事を訊きに来ました、アスラン・ザラ」
 その鋭い眼差しに、アスランも同じく鋭い眼差しで返した。
「返事か……返事は……」
 アスランは空を見上げる。プラントの空は、未だ日が高く、青空が広がっていた。
「イエスだ。俺はお前たちの指導者になり、ナチュラルと戦う」
「それはありがたい……」
「しかし、いくつかの条件がある」
「条件?」
 アスランは、ただ指導者として立つ気はなかった。やるからには、世界を平和にしたい
のならば、徹底的にやる。
「一つめは、俺の他に、ここにいるイザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマンの参入
も認めること」
「それは構いません。味方が増えるのは我々に取っても嬉しいことだ」
「二つめは、この先の行動、軍事的、政治的問わず、全ての行動を俺に一任し、勝手な行
動を起こさないということ」
 さすがにその条件にはサトーは顔をしかめたが、アスランの能力の高さは知っているし、
反対する理由はない。
「いいでしょう、他にも何か?」
「三つめは……」
 アスランはその時、自分が居る場所が墓地だということを、今更ながら再確認した。
「場所を変えよう。死者が眠る場所で、血生臭い話はするもんじゃない」
 後一つ、行きたかった墓があるが……それはまた次の機会にも来れる。
「わかりました。ならば我々の本拠地にご案内しましょう」
「本拠地?」
「えぇ、我々の力と自信を、あなた方にご覧に入れよう」
731運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:14:23 ID:???
アプリリウスからアスランが出る際の名目はイザークが勝手に纏めた。先日の戦闘の被
害状況を知るべく査察をしたい、というのが表向き。さらに偽の裏情報として『ザフト
に復隊した際、すぐに動けるように現状を知っておきたいと言っている』との報告を議
長に流し、信用させた。
 しかし、アスランたちを乗せた小型シャトルが向かうのは先日の主戦場でも、ザフト
の施設でもない。
「ザフトの哨戒宙域から大きく外れて、随分と来たが……」
「こんな場所に何があるというのだ?」
 一時間ほどシャトルを飛ばしているが、何もない宇宙がそこに広がっている。
「しかし、こんな何もない場所に隠れていたとすれば、そりゃ見つからないわけだ」
 先日の戦闘前まで、テロリストの捜査をしていた身としては、何とも言えない気分の
ディアッカだった。
「ん? あれは……!」
「どうした、アス――!?」
 シャトルの進行方向に、巨大な、巨大すぎる岩塊があった。ちょっとした衛星ほどの
大きさがあるそれは、アスランたちが今までに見たことのない物だった。
「ようこそ、我らの城、ウルカヌスに」
 不敵に笑うサトーの声を聴きながら、アスランたちは呆然としていた。だが、その驚
きもすぐに吹っ飛ぶことになる。彼らは、さらに凄い物を、このウルカヌスで見るのだ
から。
732運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:16:07 ID:???
「ねぇ、ロッシェ、アスランは今日のコンサートにくるかしら?」
 夜にザフト兵士向けのコンサートを控えたミーアは、リハーサル等の準備をこなしなが
ら、楽屋でロッシェと話していた。
「チケットは渡したんだろう? 興味があって、議長の許可が下りたなら来るだろうさ」
「う〜ん、議長にそのこと伝えたらね、アスラン今アプリリウスにいないんだって」
「いない?」
 ロッシェは楽屋の花瓶に挿してある薔薇を一輪取りながら、問い返す。
「そっ、宇宙でこの前の戦場を見てるとか、ザフトの関連施設を見てるとか」
「しかし、奴は他国に亡命してるんだろう? 国の機密を見せて良いのか?」
「何かザフトに復隊するんだって。議長、そう言ってた」
 復隊……? ロッシェには、それが何とも虫のいい話に聞こえた。アスランが戦後に亡
命した理由はミーアか教えて貰った。この世界であったという大戦を止めるためにザフト
を裏切り、その罪から追放されたという。戦争を止めるという行為を否定するつもりはな
いが、裏切り者であることには変わりない、それをチャラにして復隊させるというのか?
「あっちいったり、こっちいったり、戻ってきたり……あたし、優柔不断な男は好きじゃ
ないんだけどな〜」
「アスランが優柔不断じゃなければ?」
「う〜ん、顔は良いけど……あたし、コーディは中身だと思う。顔なんていくらでも作れ
るし」
 ある種、自分への皮肉を込めながらミーアは言う。
「裏切り者、か」
 ロッシェは自身の経験からか、裏切りという行為が好きではなかった。元々、騎士道精
神を重んじていたこともあるが、彼にとって裏切り行為とは死よりも重いことだ。
 アスラン・ザラの裏切りの理由はともかく、亡命した国を捨てて戻って来るという行為
に、ロッシェが反発を覚えていた。その国に、彼の帰りを待つ人はいないのだろうか? 
自分勝手に物事を決めて、周りのことを忘れていなければいいのだが……
「フッ、私が気にする事じゃないか」
「ロッシェ?」
 そんなロッシェを不思議そうに見るミーア。ロッシェは手に持つ薔薇の一輪を、宙に投
げる。赤い薔薇は寸分の狂いもなく、花瓶へと挿さった。
733運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:17:56 ID:???
 その頃、優柔不断男と評されたアスラン・ザラは、イザーク・ジュール、ディアッカ・
エルスマンとともに、テロリストたちの本拠地、ウルカヌスに入っていた。
「こんな衛星、一体誰が?」
 岩塊をくり抜いて衛星を作ること自体はザフトでもやっている。だが、しかし、このウ
ルカヌスという衛星はザフトのそれとは明らかに違った。
「残念ながら、これを作ったのが誰かはわかりません」
「わからない?」
「信じて貰えるかどうか、これはある日突然我々の前に姿を現した。ワープでもしてきた、
というべきでしょうか?」
 サトーの話すところによると、ユニウス・セブンでのテロを計画していた彼らの前に、
このウルカヌスは突然現れたという。それまで玉砕覚悟でテロ行為に当たっていた彼らだ
ったが、このウルカヌスを調べたことで全てが変わった。
「我々は、これを天からの贈りものだなどとは思っていません。しかし、有効活用しない
手はないとも思いました」
 サトーは、アスランたちをウルカヌスの機関部と思わしき場所に連れて行った。そこで
は数人の技術者や整備と思われる男たちがせわしなく動き回っていた。
「彼らは我々の協力者です。我々と同じく、ナチュラルに強い恨みを持っている」
「ここは?」
 アスランは、技術者のことよりもこの機関部のほうが気になった。事故でもあったのか、
内部はかなり荒れていたが、それは見たこともないような機関だった。
「これはこの衛星の動力、核融合炉です」
「か、核融合だと!?」
 イザークが驚き、身を乗り出した。核融合炉は、未だこのC.E世界では実現できていない、
それこそSF世界の動力源だ。
「今は壊れており動作しませんが……技術者たちは直せると言ってます」
「馬鹿な……核融合など、そんな」
 声こそ上げなかったが、アスランとディアッカも気持ちは同じだった。核融合、宇宙がひ
っくり返ってもおかしくない機関が、目の前にある。
「これ直ったら、この衛星、ウルカヌスか? それが動くわけ?」
 ディアッカの問いに、サトーは頷き、
「えぇ、動きます。今のところは、ユニウス・セブンに用意していたフレアモーターを応用
して衛星を移動させています」
「フレアモーター……そうか、それを使ったのか」
 これだけの質量の衛星をどう移動させたのかと思っていたアスランだったが、その言葉に
納得した。
「さて、そろそろ移動しましょう。見せたい物は、我々の力はこれだけじゃない」
 そしてアスランたちは見ることになる。開けてはならない、禁断の扉の中を。
734運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:19:43 ID:???
 サトーが次にアスランたちを案内したのは、ウルカヌスの格納庫とも言うべき場所、そ
して、そこにあるモビルスーツの大軍だった。
「これは……」
 黄土色をしたボディと、巨大な肩。特異的なその姿は、この世界のどのモビルスーツに
も似ていない。頭部など、かなり特徴的に見えるがこの世界の基準で考えれば、特異的と
いってもいい。
「全部で314機あります」
「そんなに?」
 ザフト軍ほどではないが、なるほど確かに凄い数だ。
「材質は未知のものですが、その硬度は従来のモビルスーツとは比べものにならない硬さ
です。実弾は元より、ちょっとやそっとのビーム兵器すら弾きました」
「なっ、そんなことが!」
「それでいて重量は我々のモビルスーツと比べ十分の一程度……笑いましたよ。技術者の
報告を受けたときは」
 試しにサトーも自身のザクで斬りかかったり、実弾やビームでの攻撃を試したのだが…

「無傷でした。我々の兵器など、全く通用しなかった」
「…………」
 アスランたちは声も出なかった。本当にサトーの言うとおりなら、このモビルスーツは
間違いなく最強だ。
「しかも、これはモビルスーツですらなかった」
「なに? どういう意味だ?」
 サトーは目の前に広がる大軍を見ながら、自信に満ちた表情を浮かべている。
「無人機です。戦闘データを入力すれば、ひとりでに動いてくれる優れものですよ」
「無人機……」
 アスランはその無人機を見つめた。人を必要としない戦闘兵器、確かにこれなら……
「可動には至っていませんが、近いうちには必ずと、技術者たちは息巻いています……ど
うです? これが我々の力です。人員こそ不足していますが、我々には戦う力が、このビ
ルゴがある」
「ビルゴ?」
「このモビルスーツ、いえ、モビルドールの名前です。乙女座という意味らしいですが」
「モビルドール……人形のビルゴ、か」
 美しい名前だ、とても驚異的な力を持つ戦闘兵器の名前だとは思えない。
735運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:21:37 ID:???
「なぁ、あっちのは? こいつらと形が違うけど?」
 ディアッカが目ざとく見つけたそれは、格納庫の隅にあった。ビルゴとはまた形の違う
三機が、そこに佇んでいる。
「あれはモビルスーツ、有人機です。もっとも、素材も性能もビルゴ並ですが」
 サトーがそれに向かって歩き出したのを見て、三人も続く。
 その機体は、ビルゴとは色も形も異なる物だった。
 一機目は、白いカラーリングの機体で、背中にいくつもの円盤を付けている。
 二機目は、黒いカラーリングの機体で、両肩が巨大な円盤化しており、同じく巨大な砲
身と思われるものが二つもある。
 三機目は、前の二機と比べると簡素ではあったが、黒いカラーリングに、兜のような頭
部、右手には長い砲身の大砲を装備していた。
「この白い機体と、二つの砲身を持つ黒い機体は、メリクリウス・シュイヴァンとヴァイ
エイト・シュイヴァン、共に古代神話の神の名です」
「神……だと」
 イザークは、目の前に佇むメリクリウスを見る。白い機体は、ビルゴよりも力強そうで、
強そうである。
「そして、最後に……この黒い機体ですが、これはリーオーと言います。今、私が操縦テ
ストをしている機体です」
 それがかつて、異世界にその名を轟かせた、暗黒の破壊将軍という異名を持つ男の期待
であることを、サトーは知らない。
「動かせるのか?」
「自由自在とは言いませんが、後は慣れです。こちらの二機も動かそうと思えば、動かせ
ますよ。調べたところ、メリクリウスが防御と接近戦、ヴァイエイトが砲戦をメインに設
計された機体のようです」
 機体説明に、イザークとディアッカが僅かに反応した。
 アスランはさらに奥、三機の後ろに巨大なコンテナがあるのを発見した。大きさからい
って、モビルスーツが一つ入る程度のものだ。
736運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:23:06 ID:???
「あれは?」
「見ての通りコンテナです。何が入っているのか、我々では開けることが出来ないのです」
「ブラックボックス、というやつか」
 アスランはもう一度格納庫を見渡した。三百機以上の無人機と、三機の有人機。確かに
凄まじい、驚異ともいうべき力が、ここにはあった。
「あぁ、言い忘れてましたが、全ての機体が核融合で動いてます」
「モビルスーツサイズの核融合炉が、あるのか?」
 なんだか今日は驚きっぱなしだと感じつつも、アスランは言った。
「えぇ、それを参考にこのウルカヌスの核融合炉も直しているのですが……まだまだ時間
が掛かりそうです」
 暫く四人は、無言で格納庫を、ビルゴたちを見つめた。
 頃合いを見計らって、サトーはアスランに尋ねた。
「さて、こちらのカードはほとんど見せましたが、三つめの条件とは?」
 イザークとディアッカを同士と認め、主権を全てアスランに委譲する、これが今まで提
示された条件。アスランは後一つ、認めさせなければならない条件があった。
「一つ聞くが、このモビルドールたちを動かすまでに掛かる時間はどれぐらいだ?」
 すぐにでも動かせるのなら、あるいは三つめは必要ないかも知れないとも思うが……
「残念ながら一ヵ月以上は掛かるかと」
 一ヵ月以上、そんなに時間があるのであれば……
「三つめの条件、俺はザフトに復隊する」
「はっ? 復隊ですと?」
「そうだ、ザフトに復隊し、しばらくはザフト軍人として行動する」
「理解に苦しみますな……何故、我々の指導者として立つお方が、ザフトに復隊を?」
 それは……と、アスランは一瞬顔を伏せ、すぐに上げた。サトーは息を呑んだ。彼の、
アスラン・ザラの顔に、強烈な決意と、悪意を感じたからだ。
「現プラント政権を打破し、ザフトを乗っ取るためだ」

 この後、アプリリウスへと帰還したアスランは、残っていた用事を片付け、ザフトへ
の復隊を志願した。デュランダル議長は自信の説得と工作が成功したと思い、喜んでこ
れを迎えた。アレックス・ディノという偽りの存在は消滅し、英雄アスラン・ザラがこ
こに復活した。
 しかし、オーブを捨て、今またプラントを騙そうとする男が、果たして本当に英雄と
呼べるのであろうか? 後世がアスラン・ザラをどう評価するのか? それがこの戦い
の結果の先にあるのかは、まだ誰にもわからない。

                                 つづく
737運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/18(日) 22:24:48 ID:???
第10話です。
やっと、この作品に登場する全てのメインキャラが出たかな。
予想外に長くなりましたが、次からミネルバ、そしてシンが
再登場していきます。
なんですけど、ちょっと忙しくなりそうなんで、次の投下は
ちょっと未定。落ち着いたら投下していこうと思います。


しかし、このスレと明らかに関係ないレスにぶった切られるなんて orz
738通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:26:22 ID:???
えー!?あの凸がこんな決断を!!??
>強烈な決意と、悪意を感じたからだ。
これはアスランになれることを期待していいのか!
GJ!だ、これは読めなかった。
739通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:28:55 ID:???
GJっす!
ここのアスランはただの蝙蝠じゃないな…
国を乗っ取って見せようとするこの判断が吉と出るか凶と出るか期待してます
どうでもいいこと…ロッシュ…薔薇で花瓶を貫くとは凄いな
740通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:31:10 ID:???
GJ!!!
>薔薇で花瓶を貫く
ロッシュ>>>>>>>>>>>>>コーディネーターはガチ
741通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:34:15 ID:???
>>740
その書き方だと、バラで花瓶を突き刺したみたいだなwww
742通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:50:59 ID:???
>>728
割り込みマジ空気嫁

運命の歌姫氏GJ

アスランは共に歩んでくれる戦友がいてよかったねぇ
付き合いが浅くても同期の桜の威力は大きいな。
ミーアは単なるミーハーじゃなくて、一本筋を通しているのがとてもいい。
過酷な現実に見舞われそうな立ち位置だけに今後が楽しみだ。

ウルカヌスの武力凄すぎwww
正直パワーバランスが大きくザラ派に傾いているな。
ロッシェが、イヤでも戦いの矢面に立つしかなくなる状況が迫っているねw

ザラ派のクーデターが迫ると言うことは
ミネルバ隊は地球で孤立しそうだな。

ミネルバ隊ガンガレ超ガンガレ
743通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:56:09 ID:???
ブラックボックスはスコーピオ?ハイドラ?バーンプレオス?
744通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:57:59 ID:???
なんか最悪の事態に陥ってる気がするぞ。
アスランの中途半端な決意など、すぐにグラつくに決まっている。


サトーはよりにもよって
最も見せてはいけない者に見せてしまった気がする…
745通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 22:58:07 ID:???
>>738
アスランがザラ派の頭目になる説は最近の再構成スレでよく話題になってる
作者はそれの影響を受けているのかしらんが
746通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 23:09:46 ID:???
>>745
しかし、まさかそれを実行できる作者さんがいようとは…
誰が考えたって凸には集団の頭は無理にしか思えないもんなあ。
747通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 23:26:31 ID:???
軍事クーデターを考えたようだが、それは今すぐは無理っぽいのでザフトに戻る、という流だと感じたが、
たった一ヶ月でザフト政権をビルゴを使わずに盗るつもりなのか?
う〜ん、どんな手段なのか想像も出来んな・・・

ラクスだったら「私が今後は指導者となりますわ」と言えば
プラントのコーディ共は諸手を挙げて従うかも知れないがw
748通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 23:42:19 ID:???
>>743
ブルムが入ってるに決まってるじゃないか。
多分有り得ないけど。
749通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 23:52:15 ID:???
>>745
初めて知った。そんなんあるんだ。
750通常の名無しさんの3倍:2007/03/18(日) 23:59:01 ID:???
凸にはカリスマがなさすぎるのが問題だな。
もっともCEでカリスマある奴がいるかどうか怪しいし、ラクスのは理解不能の謎カリスマだけど。
751通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 00:02:01 ID:???
カリスマというのは本来は生まれつき有しているものではなく、結果を示し続け、実績を積み重ねることで後天的に身に付いていくもの
凸が真の指導者となれるかは、この先の奴の決断と行動にかかってくる

しかし、この流れでいくと、もしや種二次創作史上初とも言える凸がラスボスな展開にw
752通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 00:05:02 ID:???
キャラが別人になってるSSなんて珍しくもないがな
753通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 00:24:57 ID:???
>暗黒の破壊将軍という異名を持つ男の期待

変換ミスですな。
754通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 00:32:56 ID:???
あ、ホントだ。
755通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 00:48:42 ID:???
……デュオめ、何時の間にこんなプロモを
ttp://www.youtube.com/watch?v=oQJLzTm8eFw&NR
756通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 00:50:21 ID:???
>クライン派の銀たちが

ここもミスかな。
757通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 00:52:44 ID:???
意外とミスが多い……
しっかりチェックしないとダメだな。
758通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 01:04:05 ID:???
GJ!
アスラン、いや、凸と言った方がいいか。
どうしてお前は他から促されなければ動かないんだ?
つーかさ、少し考えろよ。
どうして、サトー達テロリストがお前を頭に据えたいのかを。
彼らが「アスラン・ザラ」という一個の人間を求めているのではない事を認識してるのか?
……テロリストや凸の免罪符にされるだけのパトリック・ザラが哀れでならんぜ。
759通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 09:29:02 ID:???
>デュランダル議長は自信の説得と工作

これもかな。
760通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 11:18:55 ID:???
しかしこの分だとファントムペインが弱すぎるような……
何か奥の手があるのかねぇ。
761通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 12:29:05 ID:???
そこは量産型デストロイとかだろ。
762通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 14:10:19 ID:???
ファントムペイン=OS
ロゴス=ロームフェラ
アスラン=ゼクス
サトー一派=ホワイトファング
現状こんなもん?
シンとキラの役回りがどうなるんだか気になる
763通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 14:52:10 ID:???
>>762

てことはカガリがリリーナポジションで将来的にはロゴスの会長?、白いドレス着て会見シチャッタリ?
764通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 14:57:15 ID:???
仮に亡国のオーブというシナリオがあるとすると、
キラがミネルバ隊と共闘することも有り得そう。
765通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 15:07:15 ID:???
「運命の歌姫」と作品名にあるように、ミーアとラクスの対比も見逃せ無いな。
アスラン達ザラ派がプラントを掌握したら、ミーアは神輿として担がれるか、
プラントから放り出される可能性もある。

慎ましく隠居しているラクスもザラ派が担ごうとする可能性がある。

ミーアとラクスの立ち位置の変化や、
ウルカヌスを掌握したザラ派の存在により、戦いの矢面にたたされるロッシェがシン達と共闘するか?

という妄想ができなくも無い。
766通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 15:30:55 ID:???
凸は知らず知らずのうちにWFッぽくなっていってる気がする
ザフトに所属しつつザラ派に組することまでももしかしたらカモフラージュで、
自分が絶対悪になることで地球とプラントを団結させようと思ってるとか・・・
767通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 15:46:19 ID:???
>>766
サトーのやっていることは、そのまんまカーンズだからな

凸が己を絶対悪と認識するかは微妙じゃないかな?

だって凸は、他人に惑わされずに確固たる信念を持っていたかというと微妙であり、
その場の状況に流される男だからさ。

サトーと接触したからこその決意であり、それがなければry

ただ、こいつのおかげでザラ派に抵抗するコーディが
ナチュに受け入れられる要素が出て来たのも確か。
768通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 15:54:23 ID:???
ただな、

ザラ派が未だに生きていて、それが未だに戦いの火種として燻っている。
彼らの戦いを本当の意味で終わらせなければならない。
それは、パトリックの息子である自分の義務だ。

そう言った事を考えている事だけは間違いない上に、
アスランがナチュラル絶滅を目論む事だけはありえないから、
自らを旗印にコーディー過激派を結集させて、ナチュラル過激派と最終決戦を行う。

っていう構想は彼の頭の中にあると思うんだよ。
Wファンとしては釈然としないものがあるかもしれないけど、
ネオとアスランが、ゼクスとトレーズの役回りなのかも。
769通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 17:19:46 ID:???
次スレの準備したほうが良いのかな。
770通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 17:29:22 ID:???
今420KBだから450KB越えた辺りがよさ気
771通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 17:44:34 ID:???
>>768
全は結局うやむやで停戦しちゃったからなあ。
772通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 20:38:03 ID:???
GJ!
……メリクリウスの力に魅了された遺作を粉砕するロッシェの姿が眼に浮かんだ。
蝙蝠君に関しては、形勢が悪くなったら技術を手土産にオーブに逃げ込むに314ビルゴ。
773通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 20:44:52 ID:???
>>772
違うなキラが出てきたらすぐにキラキラ言って寝返っちゃうよ、あの凸は。
774通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 20:48:21 ID:???
問題はリーオーのカスタム機程度でメリクリウスのカスタム機に勝てるのか。
ウィキペディアのリーオーの項目にレオスの説明があるんだけどポテンシャルが
トールギスに匹敵するってマジ?
775通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 20:51:53 ID:???
>>774
ウィキペディアはあてにならん。原作読むのが一番。
776通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 20:55:26 ID:???
>>775
いや、原作は読んでるんだよ。
でも、レオスって目立った活躍してないじゃん?
ジェミナス01と戦った後は、ロッシェが一時アクスレプオスに乗り換えて、
再びレオスに乗ったと思ったらクラーツのレオールに貫かれて終わりだし。
弱いとは思わないけど、トールギス並のポテンシャルはないだろと思って。
777通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 20:55:55 ID:???
GJ!
このSSの影響でEWに種キャラを当てはめてたりする俺ガイル
意外にクルーゼ=トレース前提で、大気圏突入時のシン(=ヒイロ)とキラ(=ゴヒ)の会話が当てはまって吹いたw
ヒイロ役はレイが適任かもしれんが
778通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 20:57:11 ID:???
>>776
じゃあ、ないだろ。ウィキペディアはだれでも書けるから明確な数値以外は信用できない。
779通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 21:28:12 ID:???
UNITに登場する機体は全部異常なスペックだからいいんじゃね
780通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 21:32:30 ID:???
G−UNIT連載時点じゃWの機体もあれぐらいの数値だと思って設定しただけだろ、別に異常じゃない。
EWで華麗に無視されただけ。
781通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 21:45:32 ID:???
>>713
亀だが、
つ【V2に水着で挑む姉ちゃん達】
782通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 21:50:14 ID:???
>>776
「(装甲以外は)トールギスに匹敵する」、って事にしておけ。
ぶっちゃけWの機体のジャンプ漫画的な「強さのインフレ」を深く考えたら負けだ。
783通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 21:52:35 ID:???
>>782
なるほど……まあ、ガンダム(といってもジェミナスだが)相手に一対一で秒殺されない
ってのを考えれば十分強いのかも。パイロットの腕もあるだろうけど。
784通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 22:01:49 ID:???
>>782
いくらなんでもそりゃない。
7851/2:2007/03/19(月) 22:58:55 ID:???
少女らが見た流星
「なにやってんですか!?アンタは。」
インパルスはサーベルで斬りつけたジンを蹴り落とす。
「まだ細かくしないと。」
「その状態じゃ無理ですよ。」
そういってインパルスとザクはミネルバに帰艦した。
アスランはコクピットからしばらく立ち上がれなかった。カガリの護衛はしていたが、MSには一年近く乗ってない。

―パトリック・ザラの執った道こそ唯一正しきものと―

ジンのパイロットが言った言葉がアスランの心を揺るがす。
その父上を俺は撃った。誰の命令でもなく?自分の正義で?本当にそうだったかのか?俺は…
急に意識がなくなっていった

ちょうどそのころ
流星に偽装した新兵器を地球に降下させ、ブルーコスモスの裏組織ロゴスの壊滅を目的とした
作戦名「オペレーション・メテオ」通称M作戦が発動していた。

…任務了解

ピッ ドゥシュー!!



コードネーム ヒイロ・ユイ
もともと名などない。任務遂行のため作られた人形だ。

「ついに来た…これが地球なんだ…」
思わず声に出してしまった。
俺は兵器になりきれていない。
人形に感情など。故にあのような失敗を犯してしまった。
そのために非常になる。
「各部異常なし。7分で作戦を開始する。」
7862/2:2007/03/19(月) 23:00:07 ID:???


通信が聞こえてきた。
パト…リッ…執った…唯…きものと
「…ザフトの新型艦か…」
と隣に降下中の巨大コロニーの残骸。
タ……イザーてぇー
艦から一本の光が発射されるが、あれではただ表面を焦がすだけだ。

ピッ
「任務変更了解。ただちに巨大コロニーを撃墜する。」
「目標相対速度01545。オートロックオン。降下障害物を取り除く。」

戦闘機から放たれるプラズマ粒子が巨大なコロニーを飲み込み、そして消し去った。

「ふ、はっはっはっは…」
何を笑っている俺は、冷静になれ。
目を瞑る。

またあの子の笑顔を思い出す。
「おれは」兵器になりきれてない。

「そんな、まさか。」
ミネルバクルー全員が息を込む。それもそのはず、ミネルバの陽電子砲でもわずかでしか破壊でき無かったものを
戦闘機が破壊したのだ。
「なんだ、あれは。」
カガリが睨み付けてきた。―強すぎる力はまた争いを呼ぶ―そんなことは奇麗事だ。カガリだってそんなことは分かっている。
だがあの威力を見せ付けてられて、黙ってはいられなかった。
「何か隠し事でも?議長。」
「いや、わがザフトにもあんな物は作れんよ。タリア」
一人の男が拳を強く握り締め震えていた。
「どうしました?ドーリアン外務次官。あれについて何かご存知でも?」
「…M作戦。それ以外は何も。」
と重い口を開いた

「リリーナ様。」
「リリーナ様はこれから何をなさるの?」
「ええ、これからお父様のお迎えにいきますわ。」
キラッと空がひかる
「流れ星ですわ。」
「綺麗ですわ、リリーナ様。」
「でも変ですね、今は夕方ですもの。」

この流星が今後の運命を大きく変えることを、少女はまだ知らない。

そして続きもしない

駄文ですみませんスルーを推奨する
787通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 23:02:30 ID:???
>>786
タイトルをつけて続きを書くんだ!
788通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 23:13:06 ID:???
>>785->>786
これはつまり……え〜と?
どういった趣旨のクロスなんだろ?
789通常の名無しさんの3倍:2007/03/19(月) 23:13:52 ID:???
>>788
種世界でオペレーションメテオだろう
790通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 00:04:25 ID:???
異世界からの乱入者としてW連中がいるのではなく、
元から種世界にW連中が居たものとしてifストーリーを描くわけだな。



Xで似たようなことをしようとしたことがあったけど、
どうしてもX並に悲惨な環境を生き抜いてきたという納得のいく設定が作れず断念したことがある、
難しいけどだからこそ上手くいけば安易な異世界物よりぐっと面白く出来ると思う。
791通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 00:07:31 ID:???
なるほど……
色々なネタを考えつく人がいるもんだ。
792通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 02:39:23 ID:???
ACのコロニー側の住民は低重力下での授産を可能にする為に遺伝子操作を行っている。
設定だけならコーディネーターだ。
だからある意味こういう話でも問題ない。
793通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 07:32:35 ID:???
>>792
>設定だけならコーディネーターだ。
それだと種世界のかなりの数の人間がコーディネイターな件について。
遺伝子治療という言葉がありますよ。
794通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 08:27:49 ID:???
>それだと種世界のかなりの数の人間がコーディネイターな件について

ん?
実際その通りだろ?
795通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 09:42:30 ID:???
>>792

>>ACのコロニー側の住民は低重力下での授産を可能にする為に遺伝子操作を行っている。

聞いた事ねえよカス捏造するな。

ACの世界は宇宙で暮らす母体の子宮に何らかの負担が掛かって出産に悪影響を及ぼす。
その為宇宙で暮らす者達の出産は試験管ベイビー法によって行われる。
カトルの姉ちゃん達がそのいい例。
コーディネーターとは関係ないだろうが
796通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 09:46:30 ID:???
>>795
カトルの姉ちゃんたちの時代には試験官ベビーはすでに廃れてたと思うけど。
797通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 09:51:04 ID:???
>>796

はぁ?
カトルの姉ちゃん達がその試験管で生まれた試験管ベイビーだろうが。
小説見ろ
798通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 10:02:33 ID:???
「試験管ベビーを作る際にわざわざ遺伝子をいじくられた可能性」
母体と切り離されて生まれ出る子供達に問題が発生しないよう、とか想像としては無くもない。

ただしカトルは違うから、そこが鍵になるとは思うが。
799通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 10:05:43 ID:???
小説だと試験官ベビーが一般的じゃないからカトルが家出したんだと思ったけど違った?
800通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 10:06:07 ID:???
「ACコロニーの大半」かどうかは知らんけど、カトルは遺伝子いじってあったはずだよな
801通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 10:10:18 ID:???
でも姉弟で母胎から生まれたのはカトルだけだよ。
802通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 10:43:41 ID:???
俺さあ、最初に設定見た時、カトルは
「女性しか産まれない家系で、跡継ぎにする為に男として育てられた女の子」
だと思って、ずっと信じてたんだよなぁ・・・
803通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 10:54:09 ID:???
>>800

その遺伝子いじったって設定どこに出てくるの?
804通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 10:57:24 ID:???
父親と冷戦状態だったが家出はして無い。マグアナック隊に誘拐されて実力で隊長に。


遺伝子いじくってあるのかは知らん。ソース不明。

でも、姉弟の中で唯一カトルが母胎から生まれたのは確実。それが原因で母が命落としてる。

ちなみに試験管での出産が義務付けられていたのは最初の頃。
A.C.100頃に克服できて、母胎からの第一世代が発生した。
しかし、宇宙開発当初から宇宙に居たウィナー家にはこの母胎異常が残っていて、
ウィナー家だけは試験管ベイビーで産んでいた。

ということらしい。Wの公式本の設定なんで信用できるかと。

でも、遺伝子いじくるには一旦受精卵の時点で外に出す必要があるから無理じゃないのかなあ?

両親が少しいじくっている場合もあるかもしれないけど(宇宙に対応するため)
大体コーディネイターの定義は優秀な遺伝子を組み込んだ人間だからね。
宇宙に適応するために遺伝子をいじってもコーディネイターじゃないと思う。

ちなみに某遺伝子操作の本の文

「遺伝子的素養が高いからといって、現実の能力が必ずしも優れているとは限らない」

育つ環境やトレーニング、本人の努力次第だということらしい。ニートには無理だな。努力が無い。

ちなみにWの奴らはこれを実践した奴らだと思われる。ヒイロとか環境がすごいもんな。
805通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 11:32:33 ID:???
>ニートには無理だな。努力が無い。
常識で考えたらそうなんだけどね・・・


ついでにシンは一応ザフトで努力している・・・けど
努力していない遺伝子的素養が高いからだけのニートに結局負けた・・・・
806通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 11:37:52 ID:???
>>804
体外受精は現実でもあるし
807通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 12:08:28 ID:???
>>804
>>遺伝子いじくってあるのかは知らん。ソース不明。

ハイ、ダウト
808通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 13:13:00 ID:???
シンはニートには勝ってる
シンが負けたのは凸
809通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 14:08:16 ID:Tq0gMDWA
>>804
試験管ベビーがウィナー家以外でも一般的だってソースは?
810通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 14:25:48 ID:???
>806

体外受精の描写は無かったが、そんときいじくった可能性はあるかも知れん。
けど、決定的な証拠が無い。状況証拠のみ。

>809

ガンダムWEPISODE ZERO(漫画)

なんでも尺の問題でアニメに入りきらなかったエピソードを漫画にしたものらしい。
トレーズとレイア・バートンの出会いとか、ヒイロに感情のままに行動しろと言った人間とか、
デュオがマックスウェルを名乗っているわけとか、マグアナック隊とカトルの出会いとか、
ナタクとウーフェイについてとか、傭兵時代のトロワとか描いてある。

元祖星の王子様がミリアルドってこともなww


てか、あれの負けた理由は嫁修正じゃないの?
811通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 15:01:56 ID:???
>>804じゃなくて>>807宛てだった
遺伝子操作してなくても>>804を見る限りだと試験管ベビーが一般的とは思えないんだが。
812通常の名無しさんの3倍:2007/03/20(火) 15:05:45 ID:???
>>811

エンドレスワルツ小説のカトルの過去話見ろ
813通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 00:32:21 ID:???
EWの小説って、漫画みたいに細かく設定刷り合わせてあったっけ?
814通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 00:34:41 ID:???
>>813
言っている意味がよく分らんぞ?
漫画ってエピソードゼロか?
815通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 01:01:00 ID:???
>>814
他にもBATTLEFIELD OF PACIFISTとかBLIND TARGETとかあるだろ
816通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 01:01:21 ID:???
小説はエピソードゼロやらブラインドターゲットの事まで語っていたりする
817通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 01:03:35 ID:???
>>815
BLIND TARGETはラジオドラマを漫画化したものだ。
818通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 01:11:17 ID:???
>>813
つうかEW小説はテレビやOVAの脚本家が直接書いてるわけだが。
819通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 01:49:53 ID:???
EW小説版が一番詳しく載ってるとオモ>過去話
つか小説は出せなかった裏込み設定のバーゲンセール状態だからなあ
結構ムリヤリ詰め込んでる上に絶対後付けだろコレ、みたいなとこもあるし
820通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 07:56:38 ID:???
>>813
つうか読んでからどうこう言いなさい。
821通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 13:13:37 ID:???
俺はEW小説版読んでデュオがすきになったなぁ・・・
悲惨過ぎるだろ。
まあ、デュオに限らず他の四人含む主要人物も過去に抱えきれない闇があるんだよな。
でも、それをバネにして生きてるのってやっぱり強いんだなと思った。
822通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 13:15:18 ID:???
>>820
読んでないから質問しただけ。
繋がってるなら読もうかなとは思った。
つうか文句言ったわけでもないのになんでそんな偉そうにされないかんのか。
823通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 13:19:14 ID:???
みんな過去に、誰かしら大切な人を失ってるんだよね。
ヒイロとデュオは育ての親、トロワは家族、カトルは母親、五飛は婚約者……
あぁ、でもカトルに関してはTV本編中に失った父と姉の存在が大きいのか。
824通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 14:42:31 ID:???
デュオは名前の由来が壮絶だよな。
俺の姿を〜もかなり重いセリフだし。
825通常の名無しさんの3倍:2007/03/21(水) 15:22:24 ID:???
そういや、wikiの登録されてる運命の歌姫の第8話だけど
間が抜けてるな。
826通常の名無しさんの3倍:2007/03/22(木) 13:46:48 ID:???
レスの流れツインバスターでぶち抜くけどヒイロとスウェンてにてね?

ヒイロ「・・・・」
スウェン「・・・・」

これだけで意気投合しそう
827通常の名無しさんの3倍:2007/03/22(木) 16:05:39 ID:???
やりやすくはあるだろうが意気投合はしないんじゃないの?
828通常の名無しさんの3倍:2007/03/22(木) 19:59:54 ID:???
ヒイロは自分の意思で行動しているが、スウェンは洗脳済みからな……
829通常の名無しさんの3倍:2007/03/22(木) 20:18:13 ID:???
でも、ルーナとかが教育されたコロニーの地下組織なんてのは、
ある意味でブルーコスモスのファントムペイン育成施設に似てるんじゃないか?
むしろ、こちらのほうが近いような・・・・・・
830通常の名無しさんの3倍:2007/03/22(木) 21:06:38 ID:???
ヒイロ「・・・(リリーナ)」
スウェン「・・・(セレーネ)」
831通常の名無しさんの3倍:2007/03/22(木) 22:02:31 ID:???
どっちも原典はキリコだな
832通常の名無しさんの3倍:2007/03/23(金) 00:16:39 ID:???
そのまた源流は市松(必殺仕置屋稼業)…と言ってみる
833運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 00:26:06 ID:???
今日の17時頃投下予定だけど、次スレのほうがいいのかな?
容量きつくなってきたし。
834通常の名無しさんの3倍:2007/03/23(金) 00:40:27 ID:???
今ぐらいのペースなら次スレに行かなくてもちょうど良いと思う
835運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 00:45:25 ID:???
了解。
では、17時頃に投下します。(もしかしたら、ずれ込むかも)
836運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:00:57 ID:???
昨晩、コテとトリ付けたままとあるアニメスレに書き込んで焦った……
というわけで、投下します。
837運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:05:06 ID:???
 イザーク・ジュールはその昔、ラクス・クラインの婚約者候補だった。
 彼は幼き日に会った少女に一目惚れをし、恋に落ち、心の底から愛していた。
 けれど、彼女は彼ではない男の婚約者になった。政略的な婚約であり、彼は納得が出来
なかった。自分の実力に自信を持っていた彼は、自尊心と恋心を酷く傷つけられた。
 故に彼はアスラン・ザラが大嫌いだった。同期のライバルでもあり、憎き恋敵でもある
男。
 そんなイザーク・ジュールが今のこの場にいるのは未練なのだろうか?
 事情を知るものからすれば、未練がましい男の姿に映るかも知れない。
 しかし、同僚のディアッカ・エルスマンに言わせれば、ただのアイドルオタクと変わら
ない、とのことである。

 歓声、歓声、大歓声……耳が痛くなるほどの声が、ホールには響いている。
 超満員のホール内は、ザフト兵と思われる男たちと、僅かな女性陣で埋め尽くされ、皆
が皆、ステージに立つ少女、ラクス・クラインを見ている。
「軍人向けのコンサートって言うから、しめやかなものかと思ってたけど……これじゃ、
普通のアイドルのコンサート変わらないじゃないか」
 アスランは、そんなホールの状態に半ば呆れてしまう。
「そうか? 軍人向けなんてこんなもんだよ。みんな色々ストレス溜まってるんだろうし。
うちの隊長とか見ろよ?」
 ディアッカが指さす方向、このコンサートホールの最前列にイザークはいた。傍目にも
恥ずかしくなるほど、彼は熱狂していた。
「イザーク、あんな奴だったか?」
 アスランとディアッカがいるのはVIP席。ミーアが昨晩アスランへと渡したチケットの席
で、周りには政府関係者や企業関係者の大物等、それなりの地位を持つものが、疎らであ
るが座っていた。
「んー、何だかんだで惚れてたからねぇ……この前のライブの時も、ジュール隊総出で応援
に行こうとか言いだして、隊の女の子に殴られたりしてたよ」
838運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:06:33 ID:???
「でも彼女は……その、知ってるんだろ?」
「あぁ、知ってるよ。俺とイザークはな。でも、アイツには関係ないんだよ、アイツが見
てきた彼女は、プラントの歌姫としてのラクスなんだから」
 それに、とディアッカは付け加える。
「何かかえって親しみがわくっていうか……純粋にアイドル活動されると、応援もしやす
いみたいだぜ? まあ、中には安っぽいアイドル化しているなんて言う奴もいるけどさ」
「確かに、以前の彼女なら考えられない光景だな」
 ウルカヌスからアプリリウスへと帰還したアスランたちは、ラクス・クラインのコンサ
ートに来ていた。イザークとディアッカがチケットを持っていたのには驚きだったが、コ
ンサートの内容にも驚いた。
「こういう活動、もう長いのか?」
「そうだな……半年前か、結構最近だったと思う。戦争の事後処理があらかた終わって、
デュランダル議長の体制が整ってからだな」
「なるほどな……」
 アスランは、VIP席を見渡し、隅に一人の男が腰掛けているのを発見した。ザフトの赤
服を着るその男は、昨日ミーアと一緒にいた人物である。
「ディアッカ、アイツを知ってるか?」
「ん? どいつ?」
「あの隅に腰掛けてる赤服だよ」
 ディアッカはアスランがあごで指す方を見る。
「……暗くてよく見えないけど、赤服エリートにあんな奴いたかな」
「昨日、ラクスと一緒にいたんだ」
「一緒に?」
「チケット渡されたレストランでな。二人で食事取ってたみたいなんだが」
「へぇ……イザークが聞いたら怒りそうな話だこと。言わないほう良いな」
 しかし、イザークの怒りは、この後爆発することになる。
 コンサート終了後、アスランと共に楽屋を訪問した時に、であるが。
839運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:08:20 ID:???
「まぁ、アスラン。来てくださったのね」
 アスランは、公演終了後のミーアを尋ねた。彼女に呼ばれていたことと、自身に余り時
間がなかったこともあってか、コンサート直後の歌姫という珍しいものが見れた。
「どうだったかしら? 今日のコンサートは」
「えっと、その……」
 アスランが感想に悩んでいると、着いてきていたイザークが彼を押しのけ、
「最高でしたッ!!! 今日も、本当に素晴らしい歌声で!!!」
 ミーアは、勢いよく感想を言う彼にキョトンとしつつ、
「貴方は……確か、ジュール隊の隊長さん? 良くコンサートに来てくださる」
「俺、いえ、自分をご存じで?」
「えぇ、ザフトの広報誌でお顔は何度も見ましたし、会場でお見かけすることが多くて」
「こ、光栄です!」
 ディアッカはそんなイザークの浮かれっぷりにこっそり溜息を付いた。我が隊長ながら
なんとも言えない姿である。
「あー、ラクスさん? アスランに用があるんじゃないの?」
 とりあえず、話を戻そうとディアッカは口を挟む。
「そうなのですけど……アスラン、お時間のほうは大丈夫?」
「実はこの後、議長と面会の約束が」
「では、それが終わったら、昨日のレストランでお食事でもしませんか? あの時も言い
ましたが、貴方には色々聞きたいことがありますし」
「わかりました。時間は――」
その時、楽屋の扉をノックする音が響いた。
「どうぞ〜」
 ミーアが言うと、扉がゆっくり開き、
「あっ――」
 VIP席で見かけた、赤服の男が入ってきた。見事な金髪を煌めかせながら、ゆっくりと
室内に入ってくる。
840運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:09:45 ID:???
「……お邪魔だったかな?」
 アスランたちを見つつ、男はミーアに問う。
「大丈夫よ。もう終わるとこだから。あぁ、そうだ」
 ミーアは、ロッシェに近づき、
「折角だから紹介しておきますわ。この方は、ザフト軍特務隊フェイス所属、ロッシェ・
ナトゥーノ。私の友人です」
「特務隊?」
「友人!?」
 イザークとディアッカが、それぞれ異なる部分に驚く。
「ミーア、その事は……」
「いいじゃないですか、隠すことはありませんわ。ロッシェは、この前の戦闘でも出撃し
たんですのよ? しかも、地球軍の核攻撃隊を全滅させるという大手柄を挙げて」
 あの時のモビルスーツのパイロットか! と、イザークは心の中で叫んだ。本当は大声
で叫びたかったが、『愛するラクス』の前で、そんな無礼なことは出来ない。
 一方で、あまり身分を明かしたくないロッシェのほうは、何とも言えない表情をしてお
り、そのことがまたイザークの嫌悪感を増幅させた。
(特務隊だかなんだか知らんが……気に食わん奴!!!)
 イザークは金髪美形のロッシェに完全に嫉妬していた。
841運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:11:44 ID:???



           第11話「戦士、復活」


「そうかアスラン、ザフトに復隊をしてくれるか」
 ギルバート・デュランダルは、上機嫌だった。念願の駒、アスラン・ザラが手に入った
という事実は、彼の地盤がより強固となった証だった。
「はい、どこまで出来るか判りませんが、これからは一ザフト兵士として……」
 なるべく謙虚さを出しながら答えるアスランだったが、デュランダルは笑うと、
「何を言ってるんだアスラン。君ほどの実力者を一般兵になどしておけないよ。君には前
大戦の英雄としてザフト軍を引っ張って貰いたいんだ」
「しかし、私は……」
「周囲の目が気になるかい? そんなこと、君が気にする必要はない」
 デュランダルは、小箱をアスランに渡す。そこには、フェイスの証が入っていた。
「議長、これはフェイスの」
「君にはそれだけの実力がある。そしてそれに見合うだけの行いと、働きをすれば、君は
またすぐに英雄だ」
 その為の手筈を、デュランダルは既に整えつつある。
「それで、君には近々行われる地球降下作戦に参加して貰いたい」
「降下作戦?」
「あぁ、現在地上ではジブラルタル基地とカーペンタリア基地が、敵軍に包囲されている。
ザフトはこれに対し、軌道上からモビルスーツ部隊を降下させる作戦をとる」
 上手く行けば基地の守備部隊と挟撃できるというのがザフト軍首脳部が立てた作戦だ。
842運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:13:13 ID:???
「ところでアスラン、復隊の件は嬉しいが、オーブのほうはどうする?」
「それは……」
 そう、そもそもアスランがプラントに赴いた理由はオーブの使者として、議長と面会す
るためだった。彼が軍に戻ると言うことは、即ちオーブに課せられた責務を、放棄するこ
とになる。
「ザフトに復隊する以上、どの面下げても帰れません……多分、この戦争が終わっても」
 終わる頃には、この世界はどうなっているのだろうか?
 ふと、アスランはそんなことを考えた。
「君がそう覚悟を決めているのなら、私からは何も言うまい。しかし、それだと親書の返
答をどうするかだが……」
 アスランが戻る戻らないに限らず、オーブへの返答はしなくてはならない。それは一国
家としての礼儀、というよりも常識だった。
「そうだ、ミネルバに行かせよう」
「ミネルバに?」
「あぁ、あの艦のグラディス艦長はアスハ代表とも面識があるし、初対面の人間が行くよ
りも効果的だろう」
「しかし、あの艦は……」
 ミネルバ隊が地球連合軍の基地を急襲し、ジョゼフ・コープランドを始めとした各国の
平和論者たちを抹殺した事件は、開戦という陰に隠れてはいるものの、記憶には新しい。
そんな立ち位置もままならぬような艦が使者として、それも現在条約締結問題で揺れるオ
ーブに行ったら……
 アスランは、そこではたと気付いた。
843運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:14:26 ID:???
「議長、お人が悪いですよ」
 デュランダルが浮かべる笑みを見て、アスランはミネルバを使者とした彼の思惑を察し
たのだ。
「今回の件で、プラントはなんのメリットもないのにオーブの言い分を飲むんだよ? こ
れぐらい意地悪をしたって、良いと思うがね」
 意地悪というより嫌がらせじゃないか……と、アスランは思った。
 つまり、デュランダルは対外的に印象の悪い、開戦の切欠にもなったミネルバという存
在をオーブに向かわせることで、オーブの他国に対するイメージを下げようというのだ。
親書の返答を持ってきたといわれれば、オーブはミネルバを入港させるしかないだろう。
そうなってくると、何故あんな艦を国に入れるのかと、国内・国外と批判が飛ぶ。
「まあ、それにミネルバをいつまでも謹慎処分のままにはしておけない。今回の作戦でも、
ミネルバには基地防衛に努めさせるつもりだ」
「確かにあれだけの艦とモビルスーツを使わない手はないと思いますが……その後は?」
「色々考えてはいるさ。まだ纏まっていないので何とも言えないが、ミネルバにはやって
しまったことの大きさの分だけ、働いて貰うことになるだろうね」
 それは恐らく過酷で、彼らにとって試練となるだろう。
 しかし、そうでもしない限り、彼らは永久に地球からもプラントからも白眼視されて生
きていくことになる。
「アスランはカーペンタリアの降下作戦に参加してくれ。ミネルバに親書の返答を渡すこ
とも出来るしね」
844運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:16:24 ID:???
 昨晩と同じホテル、同じレストランへとやってきたアスランは、約束通りラクス・クラ
インこと、ミーア・キャンベルと夕食を取ることとなった。
「ラクス様は、お肉とお魚どっちが好きだったのかしら? 周りに訊いても、誰も知らな
くて」
「ラクスに食べ物の好き嫌いはなかったと思うが……」
 一緒に食事を取っている、といっても主なのは料理ではなく会話だった。ミーアは、宣
言通り、アスランを質問攻めにしていた。
「それでも、特に好きだったものとかあるでしょ?」
 ある……のだろうか? いや、普通はあるはずだ。
 考えてみれば、婚約者といっても特に親しかったわけではない。たまに会ったり、食事
をしたりもしたが、何かを親密に話す、ということがアスランとラクスの間には無かった
ように思える。
(俺はそれほど彼女に信頼も信用もされていなかった、というわけだな)
 今更考えることでもないが、俺のような復讐心で軍隊入りした人間を、あのラクスが好
いていたとは思えない。自分にもう少し積極さがあれば良かったのかも知れないが、そん
な暇もなかった。
「そういえば!」
 ミーアが何かを思い出したように、パンッと両手を叩いた。
「ラクス様が持ってたアレ、アスランが作ったんでしょう?」
「アレ……?」
「え〜っと、ほら、丸いの!」
 丸いの……? というか、この娘、先ほどと少し口調が違うような……
「丸くて、ピンク色してて……なんか跳ねてて」
「あ、あぁ、ハロか。ハロね」
 何のことかと思ったが、いつだったかラクスに上げた球体型ロボットのことを言ってい
るらしい。思えば、自分がラクスにプレゼントして初めて喜ばれたのがハロだった。喜ば
れたという事実が嬉しくて、馬鹿の一つ覚えで何度も作り、プレゼントした記憶がある。
845運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:17:50 ID:???
「ハロって言うんだぁ……」
「アレがなんだって言うんだ?」
「ラクス様と言えばアレじゃない。可愛いマスコット、アレがないとちょっとね」
「そんなもんか?」
「そうよ、だって雑誌のインタビューとかで、今日あのロボットはお連れでないんですか?
 とか訊かれて、あたし困って……っと」
 ミーアは自分の口調が戻っていることに気付いて、軽く咳払いした。
「こ、困っておりますのよ」
 どうやら、饒舌になると口調を保てなくなる欠点があるらしい。まあ、アルコールが少し
入ってるせいもあるのだろうが……
「あんなんでよければ、作ってあげるよ」
「えっ、ホント、じゃない、本当ですか?」
「パーツさえあれば、一日もかからないよ。あれは単純な構造してるから」
 随分作っていないが、まあ忘れてはないだろう。調子に乗って数十個も作り、プレゼント
したのだから。
「アスランは優しいのね」
「優しい? 俺は、優しくなんかないよ」
 一欠片でも、俺に優しさが残っていたのなら、少なくともこの選択はしなかっただろうか
ら……
「私みたいに、みんなを騙してるよりは、ずっといいわ」
 ミーアの声は、女性の心理に鈍感なアスランにさえ、寂しげだと判るものだった。
「後悔、してるのか? ラクスになったこと、彼女の代役として生きていることを?」
「……はじめはね、あたし、歌手志望だったの。ううん、歌手って言うよりアイドル? 
歌は好きだったし、人に注目されるのも好きだった」
 まあ、ただの目立ちたがり屋だったんだけどね、とミーアは笑う。
846運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:19:49 ID:???
「でも、才能とかそういうのが全然なくて、事務所のオーディションも落ちまくり。そん
な時ね、評議会から、議長からお呼びが掛かったの」
「議長から?」
「プラントの娯楽産業の視察に来てたんだったかな……とにかく、何かの理由で偶然私の
歌声を聞いて……」
「ラクスにそっくりだと、思ったわけだ」
 ラクス・クラインのまがい物。いつかミーアがいった言葉。つまり今の彼女の姿、少な
くとも顔や髪は……
「思ってたデビューの仕方とは全然違ったけど、私は飛びついた。この機会を逃したら、
一生巡ってこないチャンスだと思って……不純な動機よね。でも、才能ない、何の取り柄
もない欠陥だらけのコーディのあたしは、そうするしかなかった」
 ロッシェ以外にはじめてぶちまける、ミーアの本音だった。
「ミーア・キャンベルのままのあたしだったら、誰にも必要とされない。でも、ラクス・
クラインなら、平和を訴える歌姫なら、人はあたしを必要としてくる、してくれたの」
「君は本当にそれで……」
「バカ見たいって思う? でも、あの時の私は、ラクス・クラインになることぐらいしか、
出来なかった。プラントから去ったラクス様の代わりを務める……それぐらいしか」
 そう、当時は単なる代わりのつもりだった。政治のことも、軍事のことも、世界のこと
も、何も考えず、原稿を読み、好きな歌を歌うだけの毎日。それだけのつもりだった。
 アスランは、ミーアの言葉に含まれる彼女の本音に、気づけなかった。
「あたしに比べれば、アスランは凄いわ。あたしみたいに自分のことばかり考えてる女と
違って、ちゃんとプラントのことを考えて、それでザフトに復隊するんだから」
「ミーア……」
 俺は、そんなもんじゃない。アスランはそう叫びたくなった。例え偽りでも、平和を歌
う彼女のほうが、俺なんかよりは世の中のためになるはずだ。
「……食べよう。食事が冷めてしまう」
「えっ? あ、そうね。食べましょう」
847運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:21:58 ID:???
 その頃ロッシェは、アスランとミーアが食事を取っているレストランの一階下にあるバ
ーに来ていた。カウンターで一人、静かに酒を飲んでいる。
「隣、いいか?」
 そんなロッシェに、ザフトの制服、ロッシェと同じ赤服を着た男が話しかけてきたのは、
飲み始めて間もない頃だった。
「席はそこら中が空いてると思うが?」
「アンタと飲みたいんだ。何なら奢るぜ」
 癖のあるオレンジ色の髪をした男だった。しかし、ロッシェはその初対面の男に好感が
持てた。
「変わった男だな……名は?」
「ハイネ・ヴェステンフルスだ。そっちは?」
「ロッシェ・ナトゥーノだ」
 それから二人は、一時間と少し、飲み明かした。ロッシェはハイネが信頼と信用に値す
る男だと判断したのか、自分が異世界から来たということ以外は、ほとんど喋った。
「そうか、あの時、プラントを救ってくれたのはお前だったのか」
「救ったなんて……私は軍人としての責務を全うしただけだ。そっちだってそうだろ?」
「俺? 俺は、死ぬ者狂いで戦ってただけさ。ここだけの話、身内が一番使えない連中だ
からな」
「何、一頭の羊に指揮されているライオンの群れより、一頭のライオンに指揮されている
羊の群れのほうが強い場合だってある。過信は良くないが、お前の才能はもっと誇って良
いはずだ」
 確かに、この時期ハイネはザフト軍首脳部から幕僚本部への転属の声が掛かっていた。
先の戦闘での戦果を考えれば十分にその資格はあったし、何よりハイネの能力は喉から手
が出るほど欲しかった。しかし、ハイネはそれをフェイス権限を駆使してはねのけた。
「今はまだ、時期尚早だと思うんだ。これから戦闘が激しくなるってのに、俺が前線から
離れるのはな」
「なるほど、後方から指揮するより、前線で兵士たちを先導したいと」
848運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:23:21 ID:???
「そんな大したもんじゃないが……俺みたいな存在が積極的に前に出てかないと、足並み
が揃わないんだ、ザフトってのは」
 おごり高ぶっているのは、政治家だけじゃない。軍人だって、同じことだ。
「俺は今度の降下作戦に参加する。行き先はジブラルタル、そっちは?」
「さぁ……恐らく、居残り組だろうな」
「プラントの防衛か……主戦場が地上に移るってのに、防衛も何もないと思うがな。上は
何考えてるんだか」
 ロッシェが地上に行けないのには、他の理由もあるのだが、それは話さない。
 それにハイネの言い分ももっともだった。主戦場が地上に移れば、敵とて地上戦に専念
するしかない。宇宙で行われるのは精々小競り合いだけだろうに。
「今度の作戦だってそうだ。遠征艦隊なんて無視して、敵の本拠地を先に叩けば良いんだ」
「乱暴な作戦だな」
「でも理にはかなってる。敵が地上におけるザフト軍の拠点を潰そうというのなら、こっ
ちが逆に敵の拠点を潰しちまえばいい」
 しかし、それは出来ない。ザフトの今回の出兵における政治的理由は積極的自衛権の行
使ということになっている。先がどうなるかなど判らないが、今のところ、こちらから進
んで攻勢には出られないのだ。
「まったく、困ったもんだぜ」
 ハイネがそうぼやいたとき、彼の通信機に連絡が入った。
「はい、こちら特務隊ハイネ・ヴェステンフルス……幕僚本部? はい、はい、判りまし
た、すぐに向かいます………………ハァ」
 通信を終えると、ハイネは大きな溜息を付き、そして起ち上がった。
「何かあったのか?」
「大したことじゃない。ただちょっと、地上のザフト軍基地への攻撃が開始された、それ
だけのことさ」
849運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:25:11 ID:???
 ジブラルタル及びカーペンタリアに派遣されたファントムペインの遠征艦隊に基地制圧
の命令が下されたとき、それぞれの艦隊司令官は異なる反応をしていた。
 カーペンタリア遠征艦隊を指揮するホアキンは、意気揚々と攻撃準備に入ったが、ジブ
ラルタル遠征艦隊を指揮するネオ・ロアノークは幾分か慎重で、また、気乗りもしてなか
った。
「もう一度訊くが、撤退命令じゃないんだな?」
「はい、ジブラルタル及びカーペンタリア遠征艦隊は、ただちに基地への攻撃を開始、こ
れを制圧せよとのことです」
 ネオは撤退命令が来ることを期待していた。何時宇宙から敵の援軍が降ってくるか判ら
ない状況なのだ。ここで攻撃をするほうがどうかしている。
「逆に降下部隊が降りてくる前に基地を制圧できれば……時間との戦いだなこりゃ」
 だが相手はザフトの地上における二大拠点の一つ、ジブラルタル基地なのだ。そう簡単
には落ちないだろう。
「しかも相手は防戦に徹してくる。何故なら、降下部隊という援軍が、確実に来るからだ。
そんな敵を如何に切り崩すべきか」
「ですが、命令は命令です」
「判ってるよ……さて、作戦会議をする必要があるな。みんなを集めてくれ」
「ハッ!」

 一方、遠く離れたカーペンタリア基地では、既にホアキンよる制圧作戦の準備が進めら
れつつあった。
「カーペンタリア基地を攻めるに当たって、我々は空からの攻撃という方法をとる。ザフ
ト軍の主力空中モビルスーツはディンだが、我が方のウィンダムのほうが性能は上だ。す
ぐに突破できれば、基地は落とせたも同然だ。幸い無能な敵は未だに基地周辺の防御を固
めるだけで打って出てはこない、これは勝機だ」
 ホアキンは今夜にもカーペンタリア基地への夜襲をかけると宣言した。特に異論も反論
もなかった。というよりも、ファントムペインは上官に異を唱えたりはしない、言われる
がままに戦う、そういう連中が多かった。
「確かに敵基地を落とせば、すぐに決着は付く。しかし、落とせなかったらどうする?」
 一人、スウェンだけがそう呟いたが、その呟きを聴いていた者は、誰もいなかった。
850運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:26:33 ID:???
 そして無能な敵と言われたカーペンタリア基地だが、それなりに慌ただしかった。眼前
には敵の遠征艦隊、それも大軍だ。宇宙では援軍が派遣されるつつあると言うが、何時来
るかは未だ連絡が来ない。故の混乱だった。
「ミネルバに作戦への参加指令が?」
 カーペンタリアの司令部へと呼び出しを受けたミネルバ艦長タリア・グラディスは、予
想外の指令に困惑していた。
「そうだ。近々行われる降下作戦に呼応して、我が基地も打って出るつもりだ。ミネルバ
もそれに参加して貰う」
「しかし、我が隊は……」
 任務なき謹慎期間は、ミネルバ隊の士気を著しく低下させていた。することも、やるこ
ともない生活を送っていた彼らにすぐ実戦がこなせるのだろうかと、タリアは不安を覚え
ていた。
「では、ミネルバ隊の諸君は友軍が戦うのを基地で見物でもしているつもりかね? それ
とも、上層部の命令はもう聞きたくないと?」
「そんなことは!」
「なら出撃準備に掛かりたまえ。謹慎中だったとはいえ、軍人であることもまた事実。良
かったではないか、戦場で死ぬのは軍人の本望だろう」
 実際に出撃しない基地指令が何を言うか!
 そう叫びたいのをタリアはジッと堪えた。所詮自分たちの扱いなど、この程度だ。
「負けるものですか!」
 ミネルバに戻る途中、タリアはそう言った。こんな逆境に負けているようでは、戦闘に
出てもすぐ負ける。そんなことは許されない、これ以上何か失敗や、失態を犯すわけにい
かないのだ。
 そこに、僅かな自己保身が含まれていることを、彼女は気付いていなかった。
851運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:28:15 ID:???
「というわけで、ミネルバには次の作戦への参加が命じられたわ。みんな思うところもあ
るでしょうけど、ここが踏ん張りどころよ。頑張りましょう」
 ミネルバのブリーフィングルームにて、タリアは作戦参加の命が下ったことを、非戦闘
員を除くクルーに説明していた。しかし、その中にシン・アスカの姿はない。
「レイ、シンはどうしたの? 何故いないの?」
 同室のレイに尋ねるが、レイは黙って首を振り、
「あいつはドクターストップです。とても戦闘に参加できる精神状態じゃありません」
 シン・アスカは、ここ数日間また部屋に隠りきりになっていた。先の作戦による精神的
ダメージが彼の心を閉ざしていた。軍医の見立てでは、戦線復帰はまだ掛かるとのことだ。
「弱ったわね……何とかならないの? インパルスはミネルバの重要な戦力なのよ?」
 ただでさえ、基地指令にあんなことを言われた後だ。インパルスを出撃させないと格好
が付かないではないか。
「そういわれましても……」
「戦場が精神を奮い立たせるかも知れないじゃない。ショック療法とかあるでしょ?」
 我ながら無茶を言ってると思っていたが、こんな状況で基地にパイロットの補充要員を
頼むことも出来ないし、第一インパルスは専用の訓練を受けてきたシンにしか操縦できな
い機体だ。シンでなければダメなのだ。
「艦長、ここで無理矢理出撃させてもすぐに墜とされるだけです。インパルスを失うわけ
にはいきません」
 アーサーが的確な意見を艦長に言う。押しが弱いと称されるこの男だが、たまにいう意
見がタリアの感情を上手く誘導していることに、ほとんどのクルーは気付いていなかった。
「判ったわ……じゃあ、みんな、インパルス無しの戦闘になるけど気を引き締めて――」
 その時、ブリーフィングルームの自動ドアが開いた。
 開いたドアには、赤服の少年が、立っている。
「シン……」
 レイがその名を、驚きとともに呟いた。他のクルーたちは、艦長のタリアを含め、驚き
で声が出ないでいた。
 制服に少ししわが出来ており、顔色も良いとは言えない、シャワーでも浴びてきたのか、
髪は、少し濡れていた。
 立ち直った風には見えない、しかし、生気はあった。
「シン・アスカ、遅れました」
 これが、数日ぶりに発した、シンの声だった。

                                  つづく
852運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/23(金) 17:29:36 ID:???
第11話。
とりあえずはこんなとこ。
最近、とある人物の搭乗機について悩んでます。
G-ユニットのキャラを使ってるんだし、やはり、
一体ぐらいはG-ユニットを出した方が良いです
かね? リーオーばっかじゃつまらないし。
853通常の名無しさんの3倍:2007/03/23(金) 18:19:44 ID:???
GJ

ザラ派が活動しだしたらそれに大きく傾くパワーバランスを少し是正する分には
G-ユニットが出るのは有りだと思います。

インターミッションが終わって再び話が動き出すな。

ミーアの話を聞いても取り敢えずはブレなかったアスランw
プラントに弓引く決意を内に秘めて、ミネルバ隊に降臨か。

西川隊長ガンガレ。プラントに居残るロッシェもガンガレ。

シンは再び立ち上がることができるか?
854通常の名無しさんの3倍:2007/03/23(金) 19:14:44 ID:???
GJ!!
タリアに一言。
>実際に出撃しない基地指令が何を言うか!
基地司令が出撃してどうする。
このおばさん、妙な劣等感さえなければそれなりに優秀だと思うのですが……
855通常の名無しさんの3倍:2007/03/23(金) 19:20:31 ID:???
>>854
だよなあw
まあ、所詮は民兵組織、指揮系統の重要性何ぞわかっとらんのだろう。
856通常の名無しさんの3倍:2007/03/23(金) 22:16:22 ID:???
乙です、機体で思い出したけどサトーがテストしてるリーオーってヴァルダー専用機なんだな
こちらの世界に来てる人物の関わりのあるG-ユニットといえば
ロッシェが乗ってたL.O.ブースターとオデルが乗ってたアスクレプオスか
857通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 08:53:57 ID:???
小手先の策に頼りまくってる小物議長も
コネに頼りまくってる無能艦長など
ど う で も い い

それよりもシンの行く末が心配だ
858通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 09:23:23 ID:???
ロッシェの活躍はまだまだ先っぽいな…
アスランはキラに会っても揺らがずに修羅の道を進めるのだろうか?
859通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 09:41:23 ID:???
ロッシェはザラ派蜂起の際のプラント防衛戦で活躍するも
数の力に抗しきれずに落ち延びると予想。
860通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 13:52:48 ID:???
マジでザフト人材いねえ!
861通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 21:00:09 ID:???
>>859
CE製MSじゃぁ、ちょっとやそっとの物量じゃやられないだろうけど、
やっぱわらわら群がるビルゴ相手にロッシェ一人じゃきついかな?
862通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 21:23:59 ID:???
Gユニットは高性能だけどロッシェじゃPXを扱えないのがネックだな
無理に使おうとすればクラーツのように暴走してしまうし
863通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 21:33:21 ID:???
>>861
いくらロッシェでも、ガンダムチームのような真似は流石に無理だろう。
ゼロシステムを介さずともそれなりに連携するMD数十機を、一機で殲滅させるような奴らと一緒にされると、その、なんだ、困る。
864通常の名無しさんの3倍:2007/03/24(土) 21:53:07 ID:???
ザラ派総帥になった際のアスランの乗機が楽しみ。
865通常の名無しさんの3倍:2007/03/25(日) 11:42:27 ID:???
>>858

キラのとこ戻ったら凸野郎決定
多少揺らいでも、道を突き進めたらアスラン・ズラ
揺らがずにいけたらアスラン・ザラ
866通常の名無しさんの3倍:2007/03/26(月) 09:42:11 ID:???
まあそれ以前にここのキラは抜け殻状態だから、アスランと会ってどうこう以前に
本人がどうなるかわからん
867通常の名無しさんの3倍:2007/03/26(月) 12:39:47 ID:???
抜け殻はシンだろ?
868通常の名無しさんの3倍:2007/03/26(月) 13:18:24 ID:???
>立ち直った風には見えない、しかし、生気はあった。
869通常の名無しさんの3倍:2007/03/27(火) 00:33:24 ID:???
W-SEED氏の投下はまだか!!
870通常の名無しさんの3倍:2007/03/27(火) 00:49:34 ID:???
気長に待つのが粋ってもんだろ?
871運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:00:12 ID:???
W-SEED氏じゃなくて、申し訳ないですが投下します。
872運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:02:03 ID:???
 降下作戦開始前、プラントでは作戦に参加するザフト兵を集めた『出撃式』なるものが
行われていた。
「諸君らの任務は、敵の攻撃を受け、必死で基地を守る同胞たちを救い出すことにある。
ことは迅速を要する為、心して掛かって欲しい!」
 壇上で演説するのは最高評議会議長のデュランダルであるが、迅速を要するのならさっ
さと出撃すればいいものをと、会場にいるハイネは思った。形式や建前というのは確かに
必要だが、
「時に馬鹿馬鹿しく感じるな」
 ハイネの呟きに、周囲に座っている者たちが反応を見せた。会場での私語は厳禁とされ
ているからだが、誰も注意はしなかった。発言の意図はともかく、彼らもこの式典が馬鹿
馬鹿しいものであると感じていたからだ。
「新進気鋭の新兵たちの中には、地球に降下するのは初めてだという者も多いだろう。し
かし、案ずることはない! 今日は君たちに、心強い味方を紹介しよう!」
 デュランダルの声とともに、舞台の隅から壇上に現れた男に、私語は厳禁の会場はざわ
めきに包まれた。デュランダル自身、その反応は予想済みだった。そもそも今回の式典は、
この男を紹介するために仕組んだのだ。
「彼を知っている者は、この会場にも多いと思う。そう、彼こそ前大戦終了の立役者にし
て、前々最高評議会議長パトリック・ザラの息子……ザフトの英雄アスラン・ザラだ!」
 デュランダルは『英雄』という部分を強調した。
「彼は戦後、ザフトを裏切った罪のためプラントを追放された。しかし、この度のプラン
トの危機を前に、再びザフトに戻り、プラントのために戦いたいと申し出たのだ」
 ざわめきはさらに増していた。戦後、アスラン・ザラがどういった処分を受けたかは一
般兵には知らされていなかったのだ。
 ある程度それを予想していたハイネは、複雑な表情で壇上のアスランを見ていた。
「彼に思うところある者も多いだろう。確かに彼はかつてザフトを裏切った、諸君らから
すれば裏切り者だ。しかし、考えてみて欲しい。もし彼がザフトを裏切らなかったら、前
回の戦争は終わっていたのだろうか? 私は、彼がラクスに軍事的な協力をしたからこそ、
前回の戦争はあんなにも早く終わることが出来たと思っている。出なければ、今頃は地球
側の核ミサイルと、こちらのジェネシスの応酬で、この宇宙は言いようのない惨状と化し
ていただろう」
873運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:04:03 ID:???
 結果論だとハイネは思った。デュランダル議長は戦争が終わり、平和が来たという結果
を持ってアスランの行いを正当化しようとしている。それがどれほど愚かしい行為か、議
長とアスラン・ザラは判っているのだろうか?
「平和を願い、プラントを守りたい意思は我らと同じだ! そして彼は、今またザフトの
同胞を救うために、降下作戦へ参加しようとしている……アスラン、みんなに挨拶を」
 デュランダルの言葉に、アスランが壇上の中央に立った。
「皆さん、議長からご紹介に預かりましたとおり、私は元ザフト軍特務隊所属、アスラン
・ザラです。生き恥さらし、戻って参りました」
 アスランはホールにいる兵士たちに頭を下げた。
「前回の大戦で、私はザフトを裏切りました……これは動かしようのない事実であり、そ
のことで皆さんが私を快く思わないのは当然です。あの時の私は、泥沼化する戦争を止め
るにはどうしたらいいのかと、必死でした」
 そう、アスランは必死だった。戦争を終わらせる、そんな大義名分を旗印にラクスやキ
ラとともに戦い、地球ともプラントとも敵対した。しかし、その結果がこれだ。世界は一
時的な平和こそ得られたが、何一つ変わりはしなかった。
「今こうして再び撃たれた核、私はそれを許すことが出来ない。だから、私はザフトへの
復隊を決意しました。プラントのために、ザフトのアスラン・ザラとして、戦いたいので
す。皆さん、よろしくお願いします!」
 アスランの挨拶という名の演説が終わり、会場からまばらの拍手が叩かれる。無論、こ
れは議長が仕込ませたサクラによる物だったが、他の兵士たちも、釣られて拍手をしてし
まう。集団心理とは、そんなものだ。
「とんだ茶番だな……こりゃ」
 ハイネは総立ちで拍手を送る兵士たちを後目に、会場から出ようとしていた。馬鹿馬鹿
しさここに極まると感じたからだ。
「議長は、アスランという駒を手に入れたようだが……果たしてどれだけの活躍をしてく
れるのやら」
 しかし、とハイネは考える。あのアスラン・ザラが、ただプラントが危険だからという
理由で復隊をするのだろうか? 何か別の思惑があるのではないか?
「面白いことになりそうだ」
 それが、後々自分も巻き込まれる衝撃の事態へ発展していく未来を、ハイネはまだ知る
由もなかった。
874運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:06:03 ID:???



       第12話「作戦名 スピア・オブ・トワイライト」


 ファントムペイン遠征艦隊による攻撃を受けた、ザフト軍ジブラルタル及びカーペンタ
リア両基地は、異なる抵抗の仕方をしていた。カーペンタリアの基地司令官は、降下部隊
がくるのを待って、一気に敵を叩くことを念頭に置き、基地周辺の防御を固める籠城作を
取っていた。故に、突然開始された攻撃に対して、積極的な反撃が出来ず、迎撃に専念す
ることとなった。
 しかし、一方ジブラルタル基地の司令官は、敵が積極的に攻撃を仕掛けてくることを考
慮し、降下部隊がくるのを待たずに基地の艦隊を出撃、カラブランカ沖に布陣させた。そ
こは、ザフトと連合軍が二度対峙した因縁の場所であるとともに、主戦場にするにはここ
しかないと判断したためである。
「敵の基地指令はやる気満々だな……ま、その方がこっちの都合は良いんだが」
 数十隻に上るボズゴルフ級潜水艦を前に、ネオは苦笑した。過去の戦いと同じく、水中
での戦闘がメインとなるだろう。確かにこちらの空中部隊を導入すれば、こちらが圧倒的
に有利だ。だが、いつ降下部隊が降りてくるかも判らない現状では、艦隊を守ることも考
えなくてはならない。
「というわけで、戦いは水中部隊に掛かってると言っても良い。よろしく頼むぞ、アウル」
「任せとけって。ザフトなんてすぐに片付けてやるよ」
 アウルの物言いは、若さ故の大言を吐いてると思えるが、そうではない。ファントムペ
インには勝算と、旧連合時代の実績がある。かつて、第二次カサブランカ沖海戦において、
フォビドゥン・ブルー及び量産機のディープ・フォビドゥンを大量投入した連合軍は、ザ
フトの水中型モビルスーツ、グーンとゾノを圧倒し、結果ザフトはジブラルタル基地を放
棄した。今回も同じようにすればいい、そう考えていたのだ。
「さて、それでは始めようか」
 だがしかし、昨日まで動いていた時計が、今日も動いているとは限らない。以前なら通
用した作戦が、今も通用するなど、誰が決めるのか? ネオは、その重要な一点を見落と
していた。
875運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:08:21 ID:???
「全艦、攻撃開始っ!!!」
 カーペンタリア遠征艦隊が、基地への夜襲を仕掛けていた。艦隊から発射された長距離
ミサイルが、基地を目指して突き進む。
「げ、迎撃せよ!」
 無論、基地とてそれを警戒していなかったわけではない。基地の海岸線沿いに、砲戦用
可変モビルスーツ、ガズウートを配備し、緊急時の迎撃に当たらせていた。火力重視の砲
戦用の力は遺憾なく発揮され、敵艦隊のミサイル攻撃のほとんどは着弾前に撃墜された。
「フン、守るだけで勝てると思うなよ。モビルスーツ隊を発進させろ!」
 ホアキンはすぐに指示をだし、空戦部隊及び水中部隊の発進命じた。ネオと違い彼は果
敢に攻めることで基地の早期攻略をすればいいと考えて、ほとんどのモビルスーツを導入
した。
「敵の降下部隊が来るよりも早く、基地を攻め落とすのだ!」
 この攻勢に対し、カーペンタリアの基地司令官は対応に迷った。当初の通り防御に徹す
か、積極的に反撃をするか、前者を選んで守りきれなかったら基地は終わりであるが、後
者を選ぶのにはもう遅すぎるとも思ったからだ。
 しかし、攻め込んでくる敵を前にしたとき、基地指令は動揺からか、
「は、反撃だ! ディン部隊と、ボズゴロフ級潜水艦を前に出せ! それと、ミネルバも
出撃させろ!」
 そんな基地指令の反応を知ってか知らずか、慌てて出撃してくる敵を目にしたストライ
クのスウェン・カル・バヤンは失笑し、
「反応が遅すぎる」
 そう呟いた。
「全機、敵空中部隊をぶっ潰せ!」
 この命令はバスターのシャムスのものであり、発進したジェットストライカー装備のウ
ィンダム隊は基地から出撃してくるディン部隊と衝突した。
「これが敵の空戦用モビルスーツなのか!?」
 ディンのパイロットたちは、話こそ聞いていたが、初めて目にするその機体に動揺を隠
せなかった。前大戦の当時こそ、空中戦はザフトが有利だった。戦いにおける制空権は飛
行能力を有するディンを持つザフトが握っており、幾度となく旧連合軍を破ってきた。だ
が時は流れ、地球側も空中戦が出来るモビルスーツを開発してきたのだ。これで今までザ
フトの持っていた優位感は一気に崩れたことになる。
876運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:09:27 ID:???
「敵には隊列もクソもねぇ、各個撃破だ!」
 シャムスのかけ声とともに、ウィンダム隊は次々とディンに襲いかかった。ディンは接近
戦武器を有さない射撃に特化したモビルスーツであったが、それも当たらなければ意味がな
い。
「こ、こいつら、速い!?」
 ジェットストライカーの予想以上の速度に、ディン部隊は圧倒された。ある機体はビーム
ライフルに貫かれ、また、ある機体はビームサーベルに斬られた。
「何をやっているのだ、我が方の部隊は!」
 そんな一方的な惨状にカーペンタリア基地司令官は叫び、
「何やってるのよ、味方の部隊は!」
 ミネルバ艦長、タリア・グラディスも叫んだ。
 両者共にスクリーンにて戦場の光景を見ており、基地指令は敵の強さに恐れ戦き、タリア
は味方の不甲斐なさへ苛立ちを憶えた。
「ミネルバ緊急発進! モビルスーツ隊も急がせて!」
 しかし、これは同時にチャンスだと思った。ここでピンチの味方をミネルバが救えば、味
方もこれまでのような目でミネルバを見れなくなるだろう。貸しを作るというのは、時とし
て重要なことだ。
「敵を基地に近づかせるな! 攻撃開始!」
 ミネルバは敵を押し戻すために、攻撃を開始した。
877運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:11:29 ID:???
 ジブラルタル遠征艦隊は思わぬ窮地に陥ってた。敵艦隊及び水中モビルスーツ部隊を撃
破するため出撃したアウル率いる水中部隊が思わぬ苦戦を強いられてるのだ。
「敵に水中用の新型があったとは……やばいな、これは」
 そう、ジブラルタル基地を出撃した艦隊は今回の戦闘に新型モビルスーツ、アッシュを
大量投入していた。水中用の新型として開発されたこのモビルスーツは、グーンやゾノで
は苦戦したディープ・フォビドゥンに対し善戦した。それどころか、徐々に押しつつもあ
り、水中戦は当初の予想が大幅に外れ、ザフト有利に進んでいた。
「くそっ、こいつら!」
 アビスを駆り、水中部隊を指揮するアウルは敵の新型に翻弄され、思うように戦えない
でいた。アッシュの性能は高かった。
「魚雷攻撃!? 潜水艦からか!」
 それに加えて、ザフトは潜水艦が艦隊の主力を務めている。アビスもディープ・フォビ
ドゥンもVPS装及び、トランフェイズ装甲であったが、水中では上手く機能しない。大型
の対艦魚雷が当たれば一溜まりもなかった。
「このままじゃ、負けるな……」
 ネオは戦況図を見ながら苦々しげに呟いた。このまま行けば確実に負ける……が、負け
るわけにはいかない。自分たちは所詮クーデター勢力なのだ、一介の戦闘に負ければそれ
は組織の綻び、亀裂となる。
「水中部隊を一旦下がらせて、戦力の再編を謀れ」
 危険な手段であった。確かにこのまま戦力を削られ壊滅するわけにはいかない。だが有
利なのは敵であり、ここで兵を下がらせると全面攻勢を誘うことになる。
「艦隊の魚雷で牽制をかけろ。全滅するよりはマシだ」
 それでもこれ以上の被害が広がるよりはと、ネオは決断した。
878運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:13:23 ID:???
「なんだあの機体は!」
 カーペンタリア基地は、激戦地となっていた。ファントムペインの空戦部隊は今尚敵の
ディン部隊を圧倒していたが、ミネルバとその搭載機が参戦したことで状況が変わった。
「運動性はこちらの方が上だ!」
 フォースシルエット装備のインパルスを駆るシン・アスカは、ウィンダム隊と激しい戦
闘を繰り広げていた。確かにウィンダムのジェットストライカーのスピードは高い、しか
し運動性能においてはインパルスに分があった。
 シンは、これまで引きこもっていたのが嘘のような活躍を見せていた。向かい来る敵を
倒し、撃破し、撃ち落とした。
「シン……なんて戦い方をしている」
 しかし、ザク・ファントムを駆るレイ・ザ・バレルはそんなシンの戦い振りに危険を感
じていた。確かに強い、強いとは思う。
「だが、あれは自分の身を顧みない戦い方だ……シン、お前は」
 レイは、シンが戦いという激動において自分の心を紛らわせようとしているのではと考
えた。そして、自分がこの戦いで死んでも一向に構わない、そう思っているのではと。
「不器用な奴だ」
 レイはシンを援護するため、グゥルの進路を変えた。機動性・運動性においてグゥルで
はジェットストライカーには敵わない。だが、それでも飛べるだけマシだった。

「たかが一機に翻弄されるとは情けない……ストライクを、スウェンをぶつけろ!」
 旗艦にて戦況を眺めるホアキンは、敵のエース機に対し、自軍最強の機体を叩き付ける
選択を取った。
「こちらストライク、了解。敵トリコロール機を叩く」
 インパルスのデータ自体は、ロアノーク隊と交戦記録がある。しかし、それがなんだと
いうのだ。敵の実力は、ぶつかってみてはじめてわかるものだ。
879運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:14:44 ID:???
 スウェンは二刀のフラガラッハ3ビームブレイドを構えると、インパルスへ向かった。
「あの機体、こいつらとは違う。隊長機か?」
 迫り来るストライクに他の機体とは違う圧力を感じ取ったのか、シンはインパルスのビ
ームライフルを斉射し、距離を取る。
 だが、そんな牽制が通じる相手ではなかった。
「速い、全部避けやがった!」
 ストライクの機動力はインパルス並であり、パイロットもまたエース級だ。
「良い反応をしている……だが」
 ビームサーベルを抜き放つインパルスに、ストライクは敢えて接近戦を挑んだ。C.E世
界のビームサーベルは鍔迫り合いは出来ない。
 だが、実体剣を含む対艦刀のフラガラッハならば話は別だ。PS処理を施してあることも
あり、その強度はモビルスーツをも叩き壊すことが出来る。
「ダァッ!!!」
 インパルスはストライクの素早い斬撃を避けきれず、シールドでそれを受けるが、フラ
ガラッハの威力の前に一瞬も持たず斬り落とされた。
「ぐっ、強い!」
 シンは、ビームライフルで牽制しながらストライクとの距離を取る。接近戦では向こう
に分がある。
「ソードシルエットが使えれば……」
 確かに接近戦を主体にして作られたソードシルエットならば、ストライクとも対等に渡
り合えるかも知れない。だが、ソードシルエットは大気圏での飛行能力を持ち合わせては
いない。
880運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:16:01 ID:???
『シン、大丈夫か!』
 その時、グゥルの乗ったレイのザク・ファントムから通信が入った。
「レイか? ハッ、これが大丈夫に見えるか!」
 ストライクから撃たれる連装リニアガアンを避けながら、ビームライフルで応
戦するインパルス。
『よし、援護する』
「ザクじゃ無理だ! それよりウィンダム隊を頼む」
『しかし!』
「このままじゃ、ディン隊が全滅するんだよ!」
 シンは、リニアガンを巧みに避け、ビームサーベルでストライクに斬りかかる。
が、これを予期していたスウェンは、その斬撃をあっさり交わすと、
「焦りすぎだ」
 両掌のアンカーランチャーを発射した。
「なに!?」
 機体の両腕をアンカーに絡め取られたインパルスは、そのままストライクに機
体ごと振り上げられ、
「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 海に叩き付けられた。
「墜ちろ」
 スウェンは、海に叩き込んだインパルスに、グレネードランチャー内蔵型ビー
ムライフルの標準を合わせ、175mmグレネードランチャーを発射した。
 その一発はインパルスに着弾し、爆発が巨大な水柱を作った。インパルスとて
VPS装甲であるから、これで倒すことは出来ないだろう。だが、パイロットはど
うか?
「水中部隊、敵のエース機を海中に落とした。そのまま、海中に釘付けにしろ」
 この時、スウェン・カル・バヤンの実力は、シン・アスカを確実に上回っていた。
881運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:17:43 ID:???
「月艦隊の牽制?」
 その頃、降下作戦の最終調整へと入っていたザフト軍で動きがあった。
「あぁ、そうだ。この前の戦闘の疲労が残っているとはいえ、敵がこちらをすんなり降下
させてくれるとは思えない。だから、君には月から来るであろう艦隊の足止めを頼みたい」
 デュランダル議長が、ロッシェに特命を出したのだ。この時期、議長はロッシェという
存在、レオスという機体に対して完全に開き直っており、自分の手元にあるのなら有効に
活用しようと考えていた。
「確かに降下部隊を襲われては堪ったものではないと思うが……私で良いのか?」
 しかし、ロッシェは自分が動くことに抵抗があった。この世界での肩書きこそ手に入れ
はしたが、部外者である自分がそこまで出張って良いのだろうかと。
「構わんよ。君の実力、遊ばせておくのは勿体ない」
 出し渋って、使い倦ねるよりはよっぽどいい。
「なら良いのだが……そうだ、一つ話しておきたいことがある」
「重要なことかい?」
「かなり、な」
 ロッシェは、ハワードたち技術者がこの世界に迷い込んできたことを簡潔に告げた。
「どうしてもっと早く言わないんだ。すぐに救助隊を派遣しよう」
「いや、この作戦終了後、私が直接行く。議長は受け入れ態勢を整えて欲しい」
「判った。しかし、君の他にも異世界の住人が来ていたとは……ふむ」
 デュランダルは、新たに舞い込んできた問題に頭を悩ませる。異世界の技術、何とも甘
美な響きだが……
「私の手には余るものばかりだな。ロッシェ、私は君と出会ってからつくづく自分が小物
だと思えるようになったよ」
「そう自分を卑下するものじゃない。貴方は良くやってるよ」
「どうかな。私は常に何かを利用して自分の地位を固めてきた。ラクス・クライン、アス
ラン・ザラ、そして今度は君だ。軽蔑してくれて良い」
 他社の功績を利用し、自らがのし上がる。デュランダルがしてきたのは、所詮その程度
のことだった。
「何故それをわざわざ私に?」
「人は誰しも、自分の心情を吐露したいことがあるのさ……弱音という奴だ」
「それはまた情けないことだ」
「手厳しいな……まあ、君には他人を信頼させる何かがあるのさ。ラクス、いや、ミーア
・キャンベルが君に色々話すのは、そんな君だからじゃないのかな」
882運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:19:54 ID:???
「敵の抵抗は根強いな……」
 ジブラルタ基地から出撃した艦隊は、以前ファントムペイン艦隊相手に有利な戦闘を勧
めていたが、未だに敵の士気は衰えず、抵抗も激しかった。
「先ほど敵は危険を冒して戦力を再編成しました。その為、行動の統率性が上がり、反撃
にも粘りが出てきています」
「なるほどな……そうなると、力押しの攻撃を続けていても無駄か」
 艦隊司令官は、水中部隊及び艦隊に攻防を重視した反包囲体制を取るように指示した。
「敵を攻め倦ねるというのなら、これ以上無理に攻めることはない。降下部隊が降りてく
るのを待てばいいのだ。こちらの損害を増やさず、ジワジワと敵戦力を削り取ろう」
 元々、ザフトが圧倒的有利な条件で戦っているのだ。そのことをジブラルタル基地の艦
隊司令官は良く分かっており、また、ファントムペイン艦隊を指揮するネオも承知してい
た。
「まずいな……敵さん、攻勢から守りに転じやがった」
「守り?」
「あぁ、こちらにある程度の損害を与えたと思ったんだろう。良い判断だ」
 ファントムペイン艦隊旗艦J.P.ジョーンズの艦橋において、艦隊司令官のネオ・ロアノ
ークと、部下であるステラ・ルーシェが話している。ステラは、ガイアのパイロットであ
るのだが、空も飛べず、海にも潜れないガイアは今回は出撃の機会がない。その為、ずっ
とネオにベッタリしているわけだが、周囲の艦橋要員からすれば司令官が椅子の上に腰掛
け、その膝の上にさらに年頃の女の子が抱きかかえられているという光景は、目を背けた
いものがあったという。
「さて、これに対し俺達ファントムペインはどう動くべきなのか……」
 一番良いのは援軍が来る前に撤退することである。そうすれば犠牲も少なくて済むし、
今後のことを考えても有益な方法だろう。しかし、彼らファントムペインの上に立つブ
ルーコスモスの盟主ロード・ジブリールは、ザフトに対しての軍事的勝利を望んでいる。
他のロゴスメンバーに対して面目を保ちたいのだろう。
「だが、面子や面目のために死……ッと!」
 ネオは慌てて言葉を切った。ステラが不思議そうにネオを見るが、他でもないステラ
を抱きかかえているから言葉を切ったのだ。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと噛んだだけだ」
 ブロックワード、忌まわしい束縛と暴走の言葉。
 刷り込みと洗脳、こんな古典的な方法を行うだけで、言葉を一言発するだけで、人に
ショックを与えることが出来る。ネオは、それが嫌いだった。
「カーペンタリアは今頃どうしているかな。俺達みたいに苦労してなきゃいいが」
 話を変えるようにネオは呟くが、この時カーペンタリア遠征艦隊が思わぬ危機に陥っ
ていたことを彼は知らなかった。
883運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:21:18 ID:???
「シンはどうなってるの!?」
「以前、海中で敵モビルスーツ部隊と交戦中です」
 カーペンタリアではミネルバ隊の参戦で覆しかけた戦況が、再びファントムペインに傾
いていた。ミネルバ最大の戦力たるインパルスが海中に叩き込まれ、今尚浮上できないで
いたのだ。
「このままでは敵部隊が基地に取り付きます!」
 苛烈さを増す敵の攻撃は、カーペンタリアを守備するモビルスーツ隊を確実に破壊し、
その戦力を削ぎ落としている。
「ッ……アーサー、タンホイザーの準備を!」
「艦長、しかしあれは」
「インパルスが動けない以上、敵を押し返すにはそれしかないわ」
 陽電子破砕砲タンホイザーはミネルバ最大の攻撃力を誇る大口径の陽電子砲だが、発
射時における微量な放射能汚染の危険性がある。現在までの改修でかなり低減こそされ
ているが、ここは味方の基地があるのだ。間違って味方に危害を与えるようなことにな
れば、取り返しが付かない。
「ミサイルとトリスタンだけじゃ、有効打にならない。それとも何か他に打開策がある
の?」
 だが、タリアの言うとおり有効な策がないのも事実だった。このままでは防衛戦は崩
れ、一気に基地を陥落されてしまう。その為にも敵の艦隊に対し、不用意に近づかせな
い一発が必要なのだ。
「……タンホイザー起動、繰り返す、タンホイザー起動。友軍に告ぐ、ミネルバはこれ
より艦首砲にて敵艦隊を薙ぎ払う。射線上に位置する味方は直ちに退避せよ!」
 アーサーは、的確な指示をだし、陽電子砲の発射態勢に移らせた。出来れば撃ちたく
ないのだが、彼とて死ぬのはゴメンだ。負けることと死ぬことは違う、どうも自分の上
官は負けることが即ち死に繋がると思っている節がある。まあ、立場的にも色々抱えて
いるのだろうが……
884運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:22:59 ID:???
 海中に落ちたシンは、ディープ・フォビドゥン隊による集中攻撃を受けていた。発射され
る数十発の魚雷に動きを封じられ、フォノンメーザー砲に装甲を薙がれた。このままでは如
何にインパルスといえど長くは持たないだろう。
「海中で使える武装がない以上、早く上に上がらないと行けないってのに……これじゃ」
 唯一使える武装といえば、対装甲ナイフぐらいだがそんものを振り回したところで勝てる
相手ではない。
「一瞬だ、一瞬でも攻撃に隙が出来れば一気に脱出できる」
 シンはその機会をうかがいつつ、今は攻撃を避けることに専念した。
 そして、意外と早くその機会は来た。
「ミネルバが陽電子砲を使う? 正気かよ!」
 納得は行かなかったが、チャンスでもあった。シンは攻撃を避けながら、インパルスを丁
度陽電子砲の射線軸の真下に移動させた。
「これで……」

「タンホイザー……撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
 発射された一発は、爆光とともに敵艦隊に突き進む。敵もまたミネルバが艦首砲を使うこ
とを知り回避の体制を取っていたが、いくつかの艦が避けきれずに撃沈した。
「地上で陽電子砲を使うとは……ザフトめ、地球のことを考えぬ宇宙人どもが!」
 ホアキンはいきり立って叫ぶが、叫んでばかりも居られない。今の一発で少なからず損害
が発生した。そこにつけ込まれないためにも、早急に艦隊を再編しなくてはならない。
「一発は一発だ……憶えていろ!」

 陽電子砲が真上を通り過ぎたとき、その余波で周囲に海面が爆発した。その振動と衝撃は
海中にまで伝わり、インパルスを包囲していたモビルスーツ部隊が僅かな乱れを見せる。そ
して、その乱れはシンにとっては十分な時間だった。インパルスはスラスターを全開にして
海中を脱出した。
「ミネルバ、こちらインパルス。デュートリオンビームを! それと予備のライフルとシー
ルドの用意!」
 自分はまだやれる。自分はまだ死ねない。自分はまだなんの答えも出していないのだから。
 シン・アスカの戦意は、まだ衰えていない。
885運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:24:11 ID:???
 降下作戦開始直前、アスランはその見送りに訪れたミーアに、ある物を渡していた。
≪Hello! Are You Ok?≫
 ピコピコと跳ねる球体上の身体に、真っ赤なボディ。何故か言語は英語であり、やたら
元気がいい。
「まぁ、これがハロですのね!」
 ミーアはそのアスランからのプレゼントを大事そうに両手の平に載せる。
「久しぶりだったけど、まあ作ってみると楽しいもんだよ」
 ラクスの持っているのとまんま同じ物を作っても良かったが、それじゃあ芸がないとア
スランは新しいのを作って見せた。もっとも、影武者たるミーアに持たせるのだから、芸
など気にしてはいけないのだが、アスランの悪い癖か、同じ物を作るのは微妙だったのだ。
「基本的にバッテリー式だから、充電すれば半永久的に動くよ。不具合があっても、そう
直してやることは出来ないと思うけど……」
 何せ地球とプラントだ。ちょっと直しに行くには遠すぎる距離だ。
「大丈夫! 大切にしますから!」
 そんなミーアの笑顔を最後に、アスランは懐かしの愛機のコクピットへと入った。その
瞬間、先ほどまでミーアに見せていた不器用な笑顔が、消える。
「イザークとディアッカが宇宙に残る。彼らがウルカヌスの解析と調査、モビルドールの
起動はやってくれる……俺はその間、地球で出来る限りザフトとファントムペインを引っ
かき回すとするか」
 不敵に笑うその顔は、悪意に満ちていた。

『作戦名、スピア・オブ・トワイライト……開始せよ!』

 宣言される、作戦開始の報。アスランは、笑みを消し、気を引き締め、ジャスティスを
起動させる。
「アスラン・ザラ……ジャスティス、発進する!」

                                  つづく
886運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:25:17 ID:???
第12話。
場面の切り替わりが多くて、少し読みにくかったかも知れません。
いよいよ、アスランが地球に降りるわけですが……
一応、この作品で彼はもっとも重要な位置にいます。
どういう選択を取り、どんな結果が待っているにしろ、他の作品と
はまた違った物をお見せできればと思ってます。

次回は、次スレに投下ですかね。
W-DESTINY氏もそろそろ再開なさるだろうし、私も頑張って書き続
けます。
887通常の名無しさんの3倍:2007/03/27(火) 18:27:13 ID:???
GJ!
シンは戦うことでふっきろうとしてるのかね?
あと、議長も一応自尊心あったんだな。
そしてアスランが出撃か、このアスランには期待したい。
ネロブリッツとロッソイージスマダー?
888通常の名無しさんの3倍:2007/03/27(火) 18:40:49 ID:???
>>874
籠城作→籠城策
カラブランカ→カサブランカ
ですので指摘しておきます
889運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU :2007/03/27(火) 18:52:13 ID:???
>>888
やっぱ一度印刷して赤入れしないと全部の誤字脱字は見つけられないね。
誤字脱字があると読み手が萎えるのは判ってるんだけど、どうも……
ともかく、指摘感謝。
890通常の名無しさんの3倍:2007/03/27(火) 18:52:42 ID:???
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891通常の名無しさんの3倍:2007/03/27(火) 18:53:28 ID:???
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892通常の名無しさんの3倍
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