)::::::::::::::::::::, ´ )::::::::::::::===彡::::::テ
(:::::::::::::::::// ヽ:::_:::::::::::::::::i l::::l:::::ハ二))
>:::::::,.' ′ | ):::::::::::::::l i:::i:::::(、二))
て::::/ ll l | !| {::::::::::::::::| l::i:::::::::ハ〈
しl | l | | | _!H‐'フ|/て::::::::::彡ミ::::::::( !l
l l l _L | |ノ rT´_ | (::::::::ミ彡::::::ィ l|l
ll ヽ ´ rr、 ヽ__ソ | l! {::l l::::;:::) | リ ローゼンメイデンの第五ドール真紅が
ハ v) l l | リ /::// | | 優雅に>>5ゲットなのだわ!
,' ハ 丶 リ ,| |//´ | | この指輪に誓いなさい!
| 〉 、 ` lレ' | h、 | |
l / || > - ィ 〃 | | l7 | |
ノ' |r j / rr、 〃 | | 〈 \ | |
/' ノl j/ _ト( ノ l ( \ | |
ヽヽ/ヽ j! > ´ / / ハ | |
え
>>1久アリス輪舞曲 私の主演作パクらないでよ!
>2りはプリキュア 2人から5人に変更?所詮、バンダイの販促員ね。
カードキャプター>3くら 奇声なんか発して、かわいいとでも思ってるの?
か>4まし 脚本家も視聴者も、想像以上に下劣ね!
おねがいマイメ>6ディ あの変な詩、とても聞くに堪えないわ。
エウレカ>7 視聴率1%割れなのに、どうして4クール続いたのかしら?
りりかるなの>8 下劣な雄豚どものオナペットにされてることに、そろそろ気付いたら?
お>9さまは魔法少女 淫乱なコスチューム着て、レディとして最低ね!
ガンダムSee>10 あのラクスとか言う電波女の声、誰かさんに似てほんと腹立つわ!
>11-1000は、お茶を入れて頂戴!
私を差し置いて最萌優勝だなんて、翠星石にはムカツクですぅ(WW
レイが男の名前で何が悪い!
>>1 出てくれば乙されるだけだって、なんでわからないんだあぁぁぁ!!
2重投稿スマソ・・・投稿されてないと思って・・orz
大きな
>>1乙がついたり消えたりしている……
今から投下しますが、今回と次回は完全にAA側のお話になっています。
ミネルバ側は一切出てこないので、読む際はお気をつけ下さい。
後、まとめwikiで前回分が二話に分けられていたので、今回は第三十一話にします。
やはり長過ぎたか……orz
第三十一話「戦いは誰の為に」
極秘にオーブヘ帰還していたアークエンジェルはその身を潜め、機を窺っていた。
そんな折、ザフトによってヘブンズベースが陥落した事実を知り、カガリ=ユラ=アスハは動き始める。
連合の影響力が弱まった今、政権をその手に戻すのは今しかなかった。
「それで、どうするつもりなんだ、カガリ?」
入り江の洞窟を改造したドックに格納されたアークエンジェルの甲板で仁王立ちしているカガリに話しかけたのはアスランだった。いつぞやの護衛の時の様にサングラスをかけている。
「……まずは直接アイツと話してみる」
「簡単には会えないぞ、当てはあるのか?」
アスランからはカガリの背後しか見えない。だが、苦い表情をしているであろう事は何となく分かった。
「……無い」
「そんな事だろうと思ったよ。ほら、カガリ」
アスランが懐から便箋に詰められた手紙を差し出す。カガリは振り返って怪訝そうな顔をする。
「何だ、これは?…私宛て……」
「街に買出しに出たミリアリアが受け取ったらしい。差出人を見てみろ、裏に書いてある」
アスランから便箋を受け取り、カガリはそれを裏に返す。そこの端っこに見覚えのある字体で名前が書いてある。
「ユウナ=ロマ=セイラン……」
「中身は見てないが、相手はこちらの動きはお見通しだったみたいだな。挑戦状だぞ、カガリ」
「……」
「爆発物の類の物は入っていない。安心して開けていい」
「ユウナはそんな姑息な手段は採らないよ」
便箋の封を開け、中に差し込まれていた手紙を取り出して一通り目を通す。
「……私に対する挑発だな」
「挑発?」
カガリは一言呟いてアスランに手紙を渡す。それを手に取り、アスランは手紙を読み始めた。
「もし君にもプライドがあるのなら話しを聞いてやってもいい?
……オーブの元首気取りか、ユウナ殿は」
「そう言うな、実際に今のオーブを纏めているのはアイツだ。私はその間駄々を捏ねてただけだったからな」
「で…受けるのか?」
「アスランの言いたい事も分かる、罠かも知れないんだろ?」
「冷静に見れるようになったな……」
「けど、私は受けるぞ。ここで行動を起こさなきゃ、私も何の為に世界中を廻ったのか分からないからな」
「う、受けるのか!?わざわざ相手の罠に掛かりに行くようなものだぞ!」
「だが、せっかく向こうから近付いてきてくれたんだ。この機会を逃すわけには行かない」
「しかし!」
「護衛にお前が付いて来れば問題ないだろ?」
「俺だけで何でも出来ると思うな!」
「ユウナの性格は良く知っているつもりだ。一応婚約者だからな」
「だからってカガリの言う事が当てになるか!」
「大丈夫、私はここで躓く事などしないから……
もう目を覚まさなきゃいけないって事、分かってる」
「カガリ……」
真っ直ぐと見つめるカガリの瞳にアスランは何も言えなくなる。腰に手を当てて深く息をついた。
「頑固だからな、カガリは……一度言い出したら聞かないものな」
「私をおっさんみたいに言うな!」
むくれるカガリを余所にアスランも覚悟を決める。
「俺が必ずカガリを守るから……」
「アス…ラン……」
穏やかな波はこれからオーブに起こる出来事の前兆なのか、不気味なほど静かだった。
それは嵐の前の静けさを象徴している様であった。
「カガリ!ルージュを貸し…て……?」
そこへ突然キラが飛び込んできた。しかし、何やら雰囲気のある二人を目にして固まってしまう。
「ご、ごめん!…じゃなかった、邪魔しないからカガリ…でもなくってルージュを貸して!」
キラは空気を読まずに慌ててカガリに要求する。
「キ、キラ…!な、何かあったのか?」
そんなキラに慌てて取り繕い、アスランが訊ねる。
「宇宙のエターナルが…ラクスが危ないんだ!だから行かなくちゃ!」
「誰にやられているんだ?」
「分からないけど、ザフトだって!」
「ザフト!?」
アークエンジェルに入ったエターナルからの通信は危機を告げるものだった。
メンデルに隠れていたエターナルであったが、ザフトの哨戒機に見つかってしまったのだ。
現在バルトフェルドが応戦してはいるが多勢に無勢、ピンチを切り抜けるには至らない。
アスランはそのキラからの報告を耳にして困惑する。ラクスを邪魔に思う人物は数多あれど、ザフトが表立ってラクスを襲うとは考えられなかった。
エターナルは元々ザフトの艦とはいえ、二年前それを強奪したのはラクスである事はザフトなら誰でも知っている事実である。制裁と捉えればそれまでであるが、それでもプラントのアイドルであるラクスを排除しようとするザフトの行為が信じられなかった。
(しかし……)
直ぐにアスランは考えを改めた。プラントはラクスの偽者を仕立て上げていたのを思い出したからだ。その偽者の彼女が何を意味するのか、推測の域になってしまうがあまり歓迎できるものではない。
推測で決め付けるのは良くないとは思いつつも、アスランの心のうちは激しく揺れていた。それでもまだ決定的な確証を得られたわけではない彼は、その事を表に出さないようにする。
「勘違いしているだけじゃないのか?」
「アスラン!?そんな事言ってる場合じゃないんだ!一刻も早く行かないと……」
「そうだ、アスラン。今は無駄な推測をしている場合じゃない、エターナルは現に攻撃を受けているんだ」
「しかし、エターナルが武装勢力によって奪取されたとザフトに思われていれば……第一オーブの元首がこんな事に関わっていたと知れたら大変だぞ!」
「私はこの件に関係ない。キラが勝手に飛び出して行っただけだ」
「カガリ!」
しれっと言い切るカガリ。それに対してアスランは意外そうな顔をする。
まさかカガリがこのような事を言うとは思わなかったからだ。
「カガリ!」
「貸すのは良いが、OSは私に合わせたままだぞ?」
「行く途中で書き換えるから、早く!」
「…分かった、ここには一基だけ大気圏離脱用のブースターが残っていたはずだ。それを使え」
「ありがとう、カガリ!」
「ラクスを頼むぞ!」
キラは急いで振り返ると手で合図して走り去って行った。
初リアルタイム
21 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/09(木) 18:20:45 ID:o/4RSGzM
「…軽率じゃないか?」
「お前はラクスを見殺しにしたいのか?一瞬の判断の遅れは致命的になり得るんだぞ」
「俺は…まだザフトも信じている……」
アスランがこれまでアークエンジェルと行動を共にしてきたのは、カガリが心配だったからである。あのままではカガリは二度とオーブには戻れないような気がしていた。
しかし、ここ最近は少しずつだがカガリにも気迫が戻ってきたように感じられていた。故に、アスランはカガリのことに一段落ついたらザフトに戻るつもりで居た。
アスランは未だ自分の生存をミネルバは知らないと思っていた。それならば、今まで怪我の治療で連絡が出来なかったとでも言えば自然に合流できるはずだと考えていた。
そして、その上でオーブとプラントの関係を何とかして行こうと画策していた。先ずはカガリがしかるべきポジションに戻ってから、というのがアスランの主張である。
しかし、実際にはキラのもたらした情報によってアスランの生存はザフトに伝わってたのだ。その事を知らないアスランは、既に自分の進むべき道が閉じかけている事に気付いていなかった。
この後に、アスランは最悪の形でミネルバの面々と再会することになる。
「そうだよな…お前にとってはプラントは故郷だもんな……」
「カガリも信じているが、プラントも信じたい……二年前で皆懲りたはずなんだって……」
「そうだな……」
「所で、エターナルは今何処に居るんだ?」
「ターミナルのファクトリーからの新型受け取りのためにメンデルに居る筈だ。あそこは前にも拠点として使ってたからな」
「ターミナル…ファクトリー?」
「ああ、ラクスに協力してくれているクライン派の秘密組織らしい。ただ、私は必要無いと思うのだが……」
大きすぎる力は争いを呼ぶ…それがカガリの持論であった。
かつてデュランダルに争いがあるから力が必要だと言われた事があったが、それこそ無限に続くメビウスリングの様なものだと今では考えていた。
力と力を衝突させれば、滅ぼされない為に又、力が必要になる…そうなれば争いの火種は決して燃え尽きる事など有り得ない。力の放棄こそが平和への道であると考えていた。
それは甘い考えであり、とても難しい問題である事は承知していたが、力で捻じ伏せるやり方では永遠に火種を消す事は出来ない。カガリは火に油を注ぐようなやり方を望んでいなかった。
「…ラクスの方はキラに任せる。ここからでは私は手が出せない。私は私の戦いをしに行く、付き合ってくれるな、アスラン」
「ああ……!」
意を決し、カガリとアスランはユウナの元へ向かう……
ブースターにしがみ付いて大気圏を抜け出したルージュはブースターから離れる。
移動する時間にキラはルージュのOSを弄り、自分に合わせたセッティングに変えていた。
ついでにフェイズシフトの設定も弄り、その外見は赤ではなくかつてのキラの愛機と同じのトリコロールカラーになっていた。
「僕に…出来るか……」
インパルスと戦って敗北した時以来のコックピットの感触。記憶の底に刷り込まれた敗北の記憶がレバーを握り締めるキラの腕を震わせる。
モニターに目を凝らすと、先の方で閃光がチラチラ目に入った。
「出来るか出来ないかじゃない…やらなくちゃ、僕が!」
ブーストレバーを握る右腕に左手を添え、何とか押さえつける。
「ラクスは、僕の痛みを分かってくれたんだ…だから、僕が助けなきゃ!」
気力を振り絞って恐怖を打ち払い、キラは一気にブーストを掛ける。
「行くぞ、ストライク!」
ブースターから離れ、伝説を築き上げたMSが再び咆哮を上げる。
そして、閃光の彼方のエターナルのブリッジでは、芳しくない状況にクルーは苦しい顔で応対していた。
「状況はどうなのですか?」
「右舷が手薄になっています…左舷の方は隊長が粘っていますが、このままではいずれ……」
ラクスの問いにダコスタが苦しげに応える。エターナルは困窮していた。
「何とかなりませんか?」
「ドムを出せればいいんですが、あれはまだ調整に時間が掛かります。とても戦闘できる状態ではありません」
「そうですか……このままではいずれ……」
ブリッジの窓からは一機のMSが多数を相手に苦しんでいるのが見えた。
「ぬぅ……!きつなぁ、これは!こう数が多いと、いくら僕でもねぇ……!」
何処からか調達してきたガイアを駆り、砂漠の虎が宇宙で吼える。
しかし空間戦ではその自慢のフットワークを活かせるMA形態は意味を為さない。
バルトフェルドはギリギリの所で持ち堪えているに過ぎなかった。
「まとめて掛かってくるだと!?」
ザクとグフが二機づつガイアに襲い掛かる。ビームライフルしか持たないガイアには対応しきれない数だ。
「僕もここまでかねぇ……!」
その時、別方向からのビームが四機を撃ち抜く。撃ち抜かれたMSは武器や四肢をもがれ、無力化した。
「地球の方から…誰だ!?」
バルトフェルドが目を向けると、そこからトリコロールカラーの派手なMSが接近していた。
「ストライク!?」
『無事ですか、バルトフェルドさん!』
「キラか!」
間一髪の所でキラが間に合った。そのままキラはビームライフルを連射して一機、二機と戦闘不能にして行く。
「キラ、お前はエターナルへ行け!」
『……!』
キラにはバルトフェルドの言っている意味が分かっていなかった。この困難な状況の中でエターナルへ行って何になるのだと思った。
先ずはこの危機を切り抜けること。その事だけを考えてエターナルを死守すべく応戦する。
「キラ……すみません、少し頼みます」
「分かりました!」
キラの到着にホッとする一方で、旧式のMSでやってきた事に不安を覚える。そして、何かを思い立ったラクスはシートを離れ、何処かへと向かう。
「くぅっ!」
キラは操縦の腕にかけては超一流であるが、一時代前のMSでやれる事には限界があった。
フリーダムに乗っていた時の様に上手く相手をいなす事が出来ない。
そうこうしている内にバルトフェルドのガイアが被弾して片腕を失う。
「バルトフェルドさん!」
『余所見をするな、キラ!』
一瞬気を取られたキラにグフのヒートロッドがストライクの右腕を引き千切る。
「うあっ!?」
続けて放たれたビームが左足を打ち壊す。ストライクに残されたものは頭部のバルカン砲とシールドのみになってしまった。
ザフト軍は殆ど無力化したストライクを無視して、エターナルに狙いを絞る。
「させないっ!」
ガナーザクがオルトロスをエターナルの横っ腹に狙いをつける。
それを素早く察知したキラがその間にストライクを滑り込ませた。
ザクのオルトロスから放たれた強力なビームをシールドで防ぐが、威力に負けてあっさりとシールドごと左腕をもぎ取られてしまう。
『キラ!いいからエターナルの格納庫へ急げ!このピンチを切り抜けるにはそれしかない!』
「でもっ!」
『ここで何もかも終わらせるつもりか!?彼女がお前に新しい剣を用意してくれてある!』
「……!」
『僕が持たせる!行け!』
バルトフェルドの説得に応じてキラはボロボロになったストライクをエターナルの中に滑り込ませる。
「さぁて…出来るだけ早くしてくれよ……!そう長くは持ちそうに無いんでね……!」
片腕を失ったガイアでかつてのザフトのエースが意地を見せる。
エターナルの格納庫に傷ついたストライクが投げ込まれる様に転がり込んでくる。
キラは急いでハッチを開き、外へ出た。
「キラ!」
「ラクス!」
キラの元へラクスがやって来る。無重力下の慣性で流れてくるラクスをキラがその身で受け止めた。
「キラ…貴方が来てくれるなんて……」
「それでラクス、この状況を打開する秘策って…!」
久しぶりに会えた喜びに浸りたいラクスと、それよりもバルトフェルドの為に一刻も早く戦線に復帰したいキラ…男と女の二人の感覚が少しずれる。
そんなキラをラクスは朴念仁だと思ったが、必死なその表情に自分の方こそ鈍いのだと気付いた。今は少しも気を緩める事の出来ない切迫した状況なのだ。
「あちらです…キラ……」
「あれは…フリー…ダム……?」
ラクスが指差す方向にはフェイズシフトの展開していない灰銀のMSが二人を見下ろしていた。それはフリーダムに似ていたが、細かい箇所に違いが見受けられる。
「これは新しい自由の翼。名を…ストライクフリーダムと名づけさせて頂きました……」
「ストライク…フリーダム……」
「キラ……」
ラクスは目を伏せる。
自分の命が狙われているとはいえ、本来ならこのように力に頼った防衛策はラクスの望むべき所では無かった。
そして、皆を巻き込み皆にそれを課す事が彼女にとって辛い事であった。
出来る事ならあのままオーブで何事も無く、平穏無事な生活を送りたかった。
かつてのプラントのアイドルはそうである事に疲れ、利用されるだけの自分を嫌っていた。
しかし、二年前に一度歩き出した道は決して後戻りできない道だった。その事がラクス自身に重く圧し掛かり、今も彼女にプレッシャーを与え続けている。
どんなに人々から慕われていても、彼女も唯の人間に過ぎないのである。
キラはラクスに触れてその事を知っていたから彼女に優しくする。
「分かってるよ、ラクス。でも、僕は行って来るよ、君やバルトフェルドさんを助けるために……」
「ごめんなさい…ごめんなさい…キラ……」
キラにしがみ付いたまま涙を零すラクスのおでこに軽く唇を当てて、キラはストライクフリーダムのコックピットへと向かう。
「ブリッジ、ハッチオープン!」
『ちょ、ちょっと待って!火線が集中しているから!』
「構いません、開けて下さい!」
『知らないよ!』
「すみません!ストライクフリーダム…行きます!」
エターナルのカタパルトからフェイズシフトを展開してストライクフリーダムが飛び出す。
バラエーナこそ無くなったが元のフリーダムよりも一回り大きくなった印象を受ける背中の八枚羽、腹部に新設された大型の砲門、目立つ黄金に輝く関節……印象こそフリーダムだが、更に一際目立つようになったその威容は敵にプレッシャーを与える。
『な、何だあれは!?フリーダムとでも言うのか!』
『何故このような所に…あれはミネルバが落としたのではなかったのか!?』
『ここに存在する以上はそういう事なのだろう…あれを先に仕留めるぞ!』
ザフトのパイロット達は突然のストライクフリーダムの登場に慌てふためく。撃墜報告があったとはいえ、フリーダムの記憶は未だ根強く神話として息づいている。
「来たか…キラ!」
『バルトフェルドさんはエターナルまで後退して下さい!ここは僕が突破します!』
「了解だ、頼んだぞ少年!」
ここまで持ち堪えてきたガイアは両足を失っていた。苦しい状況だったのだろう、バルトフェルドは済んでの所で命を拾ったのだ。
新型のフリーダムに乗り込んだキラは不思議な高揚感を得ていた。
確かに先程まではMSに乗って戦う事が怖かったはずである。しかし、ラクスの泣いている顔と、彼女の想いが込められたMSに乗った瞬間、キラは戦士に戻った。
二年前辛かった自分を慰めてくれて、今は逆に自身が苦しんでいるラクスを自分が守らなければならないという使命感がキラに気合を取り戻させていた。
『うわっ…早い!?』
『砲撃を奴に集中させろ!』
ザフトも必死に応戦するが、水を得た魚のキラはそれをものともしない。
たった一機のMSに次々とザフトのMSが無力化されていく。
『ぬぅ…グフ小隊を前に出せ!生け捕りにして集中攻撃だ!』
ほぼ壊滅状態のザフトはチームを組ませたグフを前面に出す。隊長が他のMSを散開させてキラの注意を引く。
「開いた!本命は……!」
周囲に目を凝らして当たりを付けようとするが、その前にグフのヒートロッドがストライクフリーダムの四肢を拘束する。
『よぅし、今だ!全機十字砲火を掛けろ!』
「……っ!」
その時、捕えられたストライクフリーダムの背中の八枚羽が一斉に射出される。
その八枚羽は自在に動き回り、位置を整えると一斉にビームを放った。
無線攻撃端末…ドラグーンだ。
『なっ…何ぃ!?』
ドラグーンからの一斉射撃は正確にストライクフリーダムを捕えるヒートロッドを切り離し、ついでに周囲に展開する他のMSをも無力化した。
「な…何だと!?あれだけ押していたわが軍が壊滅しただと!?馬鹿を申すな!」
「し、しかし…望遠カメラではアンノウンを残して味方のMSで動けるものはおりません!」
「ほ…本当にフリーダムだと言うのか……!」
離れた所から戦況を見つめていたザフトの母艦もその顛末に唯驚愕するしかなかった。
「艦を転進させろ!本国に戻ってこの事を報告せねばならん!」
『キラ、あの艦を逃がすわけには行かないぞ!奴等はプラントに戻って僕達の事を告げるつもりだ!』
「分かってます!」
キラはストライクフリーダムに加速を掛け、ザフトの艦を追いかける。
ある程度の所まで接近し、ストライクフリーダムの射程内に艦を据えた所でドラグーンを展開させ、その場に固定する。
「目標が大きくては動きを止めるのは難しいけれど、これだけあれば…当たれぇぇ!」
ストライクフリーダムの全ての砲門からの一斉射がザフトの艦に向けて放たれる。
それは正確に艦の砲門や推進装置を狙い撃ち、艦としての機能を停止させた。
「わたくしは…ずっとこのままなのでしょうか……」
ブリッジに戻らず、窓から見える暗い宇宙に目を細め、ラクスは呟く。
周囲から期待される自分とそれに応える自分。本当は何もしなければ周りの人々を巻き込むことなど無かったのだ。
そもそも行動を開始した理由となった出来事が正体不明のコーディネイターによる襲撃だが、それは自分が前大戦を終結に導いたプラントの歌姫で、有名人であった事が原因だと考えていた。プラントではラクスの名も、クラインの姓も大きな意味を孕んでいるからだ。
ならば二年前に行動を起こしたのは間違いだったのか…否、それならばプラントでアイドルなど気取ってしまった事が発端か…自分が生まれてしまった事が……
原因を突き詰めればキリが無い事は良く分かっている。行き着く先は世界を呪う事だけである。
周りの期待に応えれば応えるほど皆を巻き込んでしまうが、それは自分が本当に望む事ではないという矛盾が内なるラクスを悩ませていた。
気丈なラクスは周囲に気を遣わせまいと平静を装ってはいるが、唯一キラにだけは本心を覗かせる。
キラもそのラクスの心情を理解しており、その時は優しく微笑むのだ。
かつて自分が挫けそうな時にラクスがそうしてくれた様に、今はキラがラクスを支えている。
「キラ…わたくし、このままで宜しいのでしょうか……本当に…このまま進んでも……」
キラに甘えきれないラクスは誰も居ない場所で力無く呟く。そのか細い声はラクス以外存在しない空間に吸い込まれていく。
エターナルの無機質な機械音だけが返事をするでもなく、ただ鳴り響いていた……
〜つづく〜
更正フラグキター!・・・かな?
とにかくGJ!
流石に、電波ポエム垂れ流したりはしないだろうな
糞ピンクマジ死ね。
32 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/09(木) 19:16:17 ID:ox9FuLWJ
31 糞マジ死ね。
>>31 ほら見ろ煽るからラクシズ沸いたじゃないか
> その事を知らないアスランは、既に自分の進むべき道が閉じかけている事に気付いていなかった。
アスランカワイソスwww
せっかく更正フラグたちかけたのにキラとは縁が切れんのか?
GJ!
つーかラクシズはまたメンデルを乗っ取ってるのか・・・
ジョージグレン遺伝子見本サルベージ部隊は全滅してるんだろうなぁorz
キラよ・・・推進装置攻撃したら推進剤に引火して大爆発・・・って事態は考え付かんのかい
今の時点でも言いたいことがあるが、次回を読んでから言うことにする。
まぁ・・・アレだ。本編でも思ったが
「何でエターナルを持ち出したんだ?」
戦艦なんか持ち出してきたらケンカ売ってるようにしか見えないと思うのだが・・・
ラクスは民間人なのにザフトから技術盗んで勝手に兵器製造、私軍設立だもんなあ。
まあ待て
ラクソが嫌いという気持ちはわかるが(俺も嫌いだ)、
この時点ではエターナルを隠してた場所で息を潜めてたら
襲撃されただけだろ
まあそれ以前に隠しとくな、という話もあるけどw
ロゴスよかターミナルを打倒すべきだ
>この後に、アスランは最悪の形でミネルバの面々と再会することになる。
アスランやばいよやばい
アスラン、どんどん外堀埋められてるなぁ
いやまあ彼自身も自業自得っちゃそうなんですが
そしてついにラクス登場
彼女の言ってることはわかるんだが…孤児院で世捨て人になるのはどう考えても後戻りのしすぎです
ラクス理論でいうならプラントの議長を目指してないといかんだろ
後戻りしてはいけないところで後戻りして、後戻り出来るときにしないからなー
今回も二年前も、別に誰も立ち上がれラクスなんていってないと思うんだが…
余裕あるように見せてても所詮18の小娘
状況に流されてテンパってると考えればわからんでもない
だからと言って許せるようなもんでも無いが
>>39 おまいも少し待てw
AA側は次回もあるんだ。あの桃色汚物ラクソが不愉快極まりないのは俺も同じだが、
投下前の職人氏に余計なプレッシャーかけたらいかんぜ。
まずはGJ
それにしても、なんかアスランが
『例え俺を倒せてもお前にカミーユは倒せない』
なんていっていた頃がものすごく遠く感じる…
Zガンダムデスティニーの人はもう来ないのだろうか?
遅くなりましたがGJです。
ピンクさんは本編のせいでどうしてもイメージ悪くなってしまうんですが、キラも本編に比べかなり好感の持てるキャラだったので今後のピンクはかなり気になるな
アスランは…やっぱ隠者でミネルヴァ落としちゃうのかなぁ…
にしてもまとめサイトの更新凄いな
投下されてからまだ5時間なのにもう31話が・・・
GJ!!
だが、これでもし地上に降りミネルバと戦うのなら本編と変わらんよ…
黙ってよんどきゃイィんだよくそどもが
洗脳女より直情女にムカついたのは俺だけか?
まあ本編に比べれば自分を省みられるだけ マシにはなってるが あいかわらず他人を見下してるような言動もあるから 分からなくない。
第三十二話「オーブ討論戦」
エターナルがキラの活躍によって危機を脱した頃、カガリとアスランはユウナの元へ連れてこられていた。予めユウナがカガリの行動を見越し、部下に自分の下へ導くように指示していたのだ。
かつて大西洋連合との同盟を結ぶか否かを議論した会議室で、カガリとユウナは久方ぶりに対面する。
窓から差し込む沈みかけの夕日の光が眩しい時間だった。
「おかえり、カガリ。いい加減、気は晴れたかい?」
背を向けたままユウナがカガリに話しかける。しかし、それに反応したのはアスランだった。
「ユウナ殿、国家元首のカガリ=ユラ=アスハに対してその態度は無礼では無いですか?」
「ん……?ああ、誰かと思えばその声、カガリのボディーガードのアレックス=ディノ君…だったかな?」
「こちらを向いて謝罪して貰えますか?」
アスランの言葉にもユウナは振り返る素振りを見せない。
「ユウナ殿!」
「止せ、アレックス」
「代表!」
前に出ようとするアスランをカガリが制した。これまでとは逆である。
「分かっているじゃないか、カガリ。何て言ったって僕が君の我侭で元首不在になったこのオーブの穴を埋めてたんだからね、当然さ」
「その事に関して感謝を述べよう。良く私が居ない間オーブを纏めてくれた」
「どう致しまして…フフフ……」
ユウナが不敵に笑い声を零す。
「それで、これからは私が復帰し、この国を纏めていく。御苦労だったな」
「フフフ……」
「ユウナ殿!」
ユウナは笑っているだけで何も応えようとしない。その態度にアスランは痺れを切らす。
「代表が話をされているんだ、何か言ったらどうなんです!?」
「失敬…余りにも稚拙な話だったんでね……?笑いを堪える事が出来なかったんだよ」
「稚拙…!?」
「カガリ…その話、僕は受け入れるつもりなど毛頭無い。この国は僕等、セイラン家の統治の元、これから新たな歴史を築いていく事になる。アスハはもう必要ないんだよ」
「なっ!?」
慌てるアスランを尻目に、カガリは動じていなかった。寧ろ、ユウナを見つめたまま微動だにしない。
「何故ですユウナ殿!この国の元首は今でもカガリ=ユラ=アスハでしょう!そんな勝手に決めないで貰いたい!」
「責任を放棄した元首にこの国での居場所があると思っているのかい?ま、アスハに感化された愚民は支持するだろうがね…殆どの民衆は僕の言い分を支持するだろうよ?」
「そんなふざけた話があるものか!」
「さて…ふざけているのはどちらだろうね?」
「何だと……!」
ここでようやくユウナがカガリ達の方へ向き返る。その表情は憎たらしい位に余裕だった。
「国家元首が結婚式の最中に勝手に出て行ってしまったんだ。これがふざけた事でなくて何だと言うんだい?他の国の要人も招待していたし、オーブの面目は丸潰れだったんだよ。そこからリカバリーするのにどれだけ苦労した事か……」
「それは……!」
「キラ=ヤマト…彼の独断だったのだろう?」
「な…!それが分かっているなら何故!」
「彼の事も一応調べてはあるんだ。彼、カガリの弟さんだってねぇ…いや、お兄さんかな?まぁ、双子なんだからどちらでも構わないんだけどね。彼はオーブの片隅の孤児院で暮らしていたそうじゃないか、本物のプラントの歌姫と一緒に……」
(ユ…ユウナ殿は何処まで知っているんだ!?)
アスランはユウナの話に驚きを隠せない。
「遺伝子を弄って常人を超越する能力を持ったコーディネイター…その中でも更に技術の粋を集めて造られた究極のスーパーコーディネイター…それが彼、キラ=ヤマト……。羨ましいね、何でも出来てしまうなんて」
ユウナはゆっくりと歩き始める。理屈屋独特と言っていい動きだ。
「カガリは母体から普通にナチュラルとして生まれてきたみたいだけど…遺伝子の提供者は同じ人物なんだから二人は双子という事になっているようだね。
身内を大事にするのも良いが、だからこそ教育はきちんとして貰わなくちゃ?あんな良い所に住んでいてあんな事されちゃ堪んないんだよね。
彼が勝手にしたこととは言え、その責任はカガリにもあると思うよ」
「ユウナ殿…それは……!」
「少し話が逸れたけどね…とにかく、僕はカガリを認める気にはならない。国家元首としての責任の放棄は裏切りと同義だ。残念だったね……」
「くぅっ……」
アスランはこのようになってしまった事に関してキラを恨んだ。キラの勝手なカガリの連れ去りが今日のユウナの増長を招いたと思った。
「取り敢えず僕の言いたい事は以上だ。では、君の言い分を聞こうか……」
ユウナは部屋の端に置かれているソファに腰掛ける。スラリとした長い脚を組み、余裕の表情を浮かべている。
カガリはユウナの方を向き、話し始めた。
「……ユウナの主張は理解した。つまり、私がオーブの国家元首に相応しくないと言いたいわけだな?」
「フフ…元首様の前ではそんなにハッキリとは申せませんよ……」
(言ってるも同然じゃないか!)
アスランは歯噛みする。カガリを見下したユウナの態度が悔しかった。
「そうか…しかしな、私もお父様から受け継いだ元首の座だ。それをはいそうですかと、お前にくれてやれる程私は薄情ではない」
「ふむふむ…それで?」
「お前の主張は却下だ」
ユウナは微笑を浮かべたまま肩を竦める。
「なるほど、君はオーブを離れている間に強固な意志を身に付けた様だね?ただし、それは僕からしてみれば単なる傲慢だけどね。君に本当に必要だったのは反省だよ」
「何とでも言えばいい。お前は私の元首復帰を認めて以前と同じポジションに戻って私の手助けをしてくれればいいんだ」
「おやおや…カガリはどうやら独裁政権でも創るつもりなのかな?そんなのが中立の理念を掲げるのかい?そういうのって…ちゃんちゃらおかしいって言うのかな、この場合」
カガリを挑発するようなユウナの言葉。その言葉にアスランの表情は険しさを増すばかりであったが、カガリは涼しい顔をしていた。
ユウナはそんなカガリの表情を見て少しだけ彼女が変わったような気がしていた。
「……何か言いたそうだね、カガリ?」
「国民に不安を与えるのが政治家の仕事ではない」
「……?」
「国民に安心を与えるのが私たちの仕事だろう?なら、やはり大西洋連合との同盟締結は間違いだったと言える。結果、国民に不安を強制させていたからだ!」
「まだ分かってないね、君は?あの時に彼等と同盟を結んでいなかったら、それこそもっと大きな不安を国民に強いる事になっていたよ。…僕の判断は正しかった」
「しかし……!」
「そもそも、決議を下したのは元首である君だった……一国の主として責任はきちんと背負ってもらわなくちゃねぇ?君自身が納得してなかったからって、僕に責任を押し付けられても困るんだよ」
「だから、今からでも大西洋連合との同盟を白紙に戻してだな!」
「君は本気でそれを言っているのかい?今同盟を破棄すれば僕等の信用はガタ落ちだよ。しかも、逆上した相手は攻め込んでくるかもしれないし、そうなった場合、小さなこの国の国力じゃ守りきれない」
「う…確かに……」
「もっと落ち着いて考えなさい。君はいつも思いつきだけで行動する癖がある……弟君に連れ去られた時も、オーブが戦争に介入した時も、そしてわざわざ僕の誘いに乗ってきた今もね……」
カガリの言葉を受けてユウナは笑いで肩を揺らす。何処までも余裕のある仕草で内ポケットに手を入れる。
「ユウナ殿、それ以上は動かないで貰いたい!」
アスランの声に気付くと、ユウナはアスランに視線を移した。
そこには銃を構えるアスランの姿があった。
「ククク…物騒じゃないか、そんな物を取り出すなんて…」
「そちらも同じでしょう」
アスランは銃を構えたままゆっくりとユウナに近付く。
「さあ、その内ポケットにしまってある物をこちらに渡して頂きましょうか?」
「断る…と言ったら?」
「私に引鉄を引かせないで下さい」
ユウナは深く溜息をつくと、惜しそうにしまってある物を取り出す。
その物を出した瞬間、一瞬だけアスランは不意をつかれる。
「ハンカチ……!」
「紳士の嗜みだよ。汗は常に気にしていなくちゃね……高級品だ、大事にしてくれ給え」
ユウナは差し出されたアスランの左手に、親指と人差し指で摘まんだハンカチを乗せる。
為すがままに受け取ったアスランはそのまま振り向いてその場を離れる。
「その甘さ、ボディーガードとしては不適格だね!」
ユウナは突然脛に隠してあった銃を取り出し、カガリに狙いをつける。ハンカチは囮で、本命はアスランの隙が生まれるまで隠していたのだ。
しかし……
「うがっ!?」
響いた悲鳴はユウナのものだった。
アスランのサイレンサーの付いた銃がくぐもった音を出し、ユウナの銃だけを弾いていた。
「ユウナ殿、私を過小評価していたみたいですね。こんな引っ掛けに掛かるほど私は甘くないですよ」
手首を押さえ、膝を付くユウナを見下ろしてアスランがユウナの頭部に銃を突きつける。
「フフフ…僕の計算が甘かったって事か……」
「なぜこんな事をなさったのです?これでは貴方はただの人殺しだ」
「カガリは甘すぎるんだよ。君たちが甘やかしてばかりだから、僕が現実の厳しさを教えてやろうって思っただけさ」
「現実の厳しさ…?殺人をしようとして何をいけしゃあしゃあと!」
「止せ、アレックス」
引き金に掛けた指に力が入る。しかし、その時又してもカガリがアスランを窘める。
アスランはユウナに注意を払いながらもカガリの方を見た。
「何故です、代表!ユウナ殿は貴方を殺そうとしたんですよ!」
「私はここに殺し合いをしに来たのではない。あくまでも話し合いをしに来た事を忘れるな」
「しかし…!」
「武器を取り上げてしまえばまだ話し合いの余地は残っている。こんな脅迫めいたやり方で元首の座に返り咲いても意味は無い」
「……っ!」
アスランは不満そうにしていながらも震える手を収め、吹き飛んだユウナの銃を回収してカガリの元へ戻る。
「ククク…カガリ、僕に情けを掛けたつもりかい?」
「そうでは無い。私は何とかお前に認めてもらいたいだけだ」
「僕は何と言われても君を許すつもりは無いよ……君は器では無い…!」
「それを決めるのはお前ではない、この国の民だ」
「そんなもの、聞くまでも無いだろうね」
「聞いてみるまでは分からないだろ?」
「分かるさ……」
二人の意見は全く噛み合わない。元々の出発点からして対決の主張をしていたわけだから、当然といえば当然である。
しかし、初志貫徹が歩いている様なカガリに対し、物事を理論的に捉えるユウナのこの言動は不自然だった。
状況的には二対一で追い詰められているのにも拘らず、口から出てくる言葉は私怨とも取れるものだった。
「どうしても私を認めないつもりか?」
「当然だろう?君はこの国を裏切ったんだ」
「あれは…すまなかったと思っている、私の至らなさだ。だが…」
「なら、僕も君に問おう。カガリは僕をオーブの指導者には相応しくないと思っているかい?」
「大西洋連合と同盟を結んだまでは良かったとしよう。しかし、その後に理念を破って戦争に参加した時点で間違っていたと思う。オーブは三つの理念が根幹だ。それを破ったお前にその資格があるとは言えない」
「他に方法があったとでも言うのかい?」
「オーブが戦争に協力しなければならないような形の同盟は良くなかった筈だ。オーブの事を考えているならば、もっと限定的な協定を結ぶべきだった」
「フフ…彼等にそんな生温い言葉が通じると思ったのかい?」
「あの時は…確かに自信は無かった……けど、今なら分かってもらえるように言う事が出来る」
「言い切ったね、カガリ?それを証明する為に君は戻ってきた…そういう事なんだね?」
「そうだ」
「なら、君が自ら元首を辞退しない限り、僕の主張は通らないって事か……」
「そういう事になるな」
「そして、君は元首を辞退する気は無い」
「その通りだ」
「なるほど。そうか……残念だね」
ひざまついていたユウナがおもむろに立ち上がる。それを警戒したアスランが手にした銃に力を込める。
「僕はね…この国を守りたかったんだよ……そして、カガリにはこの国を守り切れないと思った」
ユウナは左手を掲げ、指を鳴らす。
「そうまで頑固だと…やはり死んでもらうしか無くなるかな」
カガリたちの後ろのドアから一斉にライフルを携えた十数人の兵士が入ってきて二人の周りを取り囲む。
「これは……」
「ユウナ殿…!最初からこうするつもりだったのか!」
アスランはユウナに対して激昂する。
「断って置くが、彼らは僕の思想に賛同してくれた同士さ。だから、何を言っても無駄だよ」
何丁もの銃口に囲まれ、二人は身動きが出来ない。正に絶体絶命だった。
「さて…これで僕を元首に認めてくれるかな、カガリ?」
「断る、と言ったら?」
「おや…僕の真似かい、カガリ?らしくないね……まぁ、分かっているとは思うけど、ここで彼もろとも死んでもらう事になるかな。国民には行方不明の間に不慮の事故で亡くなった、と伝えさせてもらうけど」
「貴様……!」
アスランが怒りで体を震わせる。それを挑発する様にユウナはククク、と笑う。
「さて、僕も暇じゃないんでね…この世のお別れに何か言い残したことはあるかい?」
アスランは怒りでそれどころでは無いが、カガリの方は落ち着いて口を開く。
「ここに来る前に、手紙を…遺して来た」
「カガリ!?」
突然の告白にアスランは驚く。
「手紙…?どんな内容なのかな?」
ユウナも少し怪訝そうに、だが努めて余裕のある表情でカガリに訊ねる。
「もし、万が一私が戻らなかった場合、犯人はユウナであるという旨の内容を、私の最も信頼出来る人物に預けてきた」
「ふぅん…保険ってやつか、信頼出来る人物ってキサカかな?まぁ、一応聞くけど、何時までに戻らなかった場合、それが有効になるんだい?」
「今夜七時までだ。それを過ぎた瞬間、アークエンジェルの回線を使って全世界に流す様に指示してある」
「七時…ねぇ……」
ユウナは窓の外に目を向けると、既に日は落ち、朱色とコバルトブルーのグラデーションの下でオーブの街の明りが灯っているのが見えた。
腕時計に目を移すと、時刻は既に午後六時を十五分程過ぎていた。
「ふむ…いつの間にかこんな時間になっていたのか……」
「その人物を探そうと思っても無駄だぞ。私とそいつ以外は誰も知らない事だからな」
「だろうね。彼の顔を見ればその位察しがつく。けど、僕がそれを信用すると思うのかい?」
「信用するかしないかはお前の勝手だ。七時になれば全てが分かる。ただし…後で後悔するなよ?」
「強気だね、カガリ…それを嘘か真か、決めるのは僕だと言う事だね?」
「嘘だと思うのなら今すぐこの場で私を殺すがいい。その場合、後で私を殺した事を後悔する事になるがな。だが、私の話を信用するのなら、今すぐにに私達を帰らせろ」
ユウナは横目でアスランの顔を見る。
アスランは豆鉄砲を食らった鳩の様に目を丸くさせている。
「彼を君と共に帰す理由が無いな」
「ユウナ、分かって居るだろう?アレックスを人質に取っても同じ事だ。私がその事を全世界に公表する」
「成る程ね、この時間にやって来たのはこう言う事だったんだね?なら、君の艦にお帰りなさい、カガリ。君をこれ以上ここに拘束しておくわけには行かなくなったみたいだからね」
「よ、宜しいのですか、ユウナ様!?」
「良いんだよ、行かせなさい」
「はっ……」
疑問をぶつけてくる兵士を制してカガリを部屋から退出させる。
「そうだ、カガリ。何故七時なんだい?」
去り際に投げかけられたユウナの質問にカガリが振り返る。
「夕食の時間だからだ。今日は皆で食べる夕食だからな、時間に遅れるわけにはいかない」
「フフ…成る程ね……大切な事だ」
カガリとアスランはユウナの元を去った。
残された兵士は困惑している。
「本当に宜しかったのでありますか?彼等の言う事など、どれ程の信憑性があるものでしょう?」
「そりゃあね、カガリの言っていた事は多分嘘だろうね」
ユウナの発言に護衛は驚愕の表情を浮かべる。
「そ、それが分かっておいでで帰したのですか!?」
「そうだよ。それにカガリの語った内容には穴がある」
「穴……?」
「もしカガリの言った事が本当だったとしても、あのままここに七時まで拘束しておき、手紙が公表されてから解放すればカガリは世紀の大嘘つきになる。
まさか真実にする為に自殺を図るなんて事はしないだろうし、このまま行方をくらませるなんて事も考えられないだろうしね……そうなれば、カガリは二度とオーブの元首になんて戻れないはずさ」
あっけらかんとした表情でユウナは応える。しかし、直ぐに口元を緩めて少し嬉し
そうに語り続ける。
「けどね、ああいう事を言うようになったって事は、カガリも少しは頭を使い始めたってことじゃないかな。内容は子供みたいな脅しだったけどね、あの場で咄嗟に思いついたんだろう」
「……わざわざお付き合いなさるユウナ様の意図が分かりかねます」
「カガリがああしなければ僕は本当に彼女を抹殺していたかもしれない。それでは困るんだよ」
「どういう事でしょうか」
「僕は本当はカガリを殺したくはないのさ。何たって僕のハニーだからね」
「……」
「ああ、ごめんごめん。それもあるんだけど、どうやら国を出ていた間に彼女も少しは変わったらしい。直接的な方法だけではなく、間接的な方法も考え始めた証拠だろう。それは少しは政治家らしくなったと捉えるべきだね」
「はぁ……」
「今までのやり方がまずかったって事に気付いたんじゃないかな?まだ良く分かってないみたいだけど、僕好みの方向に変わってきているようだ」
「では、ユウナ様は……」
「いいんだよ、これで。全ては僕の望むままさ……」
「本当にそれで宜しいのですか?」
「僕は余裕だよ」
ユウナは手首を慣らす様に回し、痛みが残ってない事を確認する。
「いい腕をしているようだね、アレックス君は…流石は英雄、アスラン=ザラだ。
……おい、夕食の準備をしてくれ給え」
「いえ、申し訳ございませんが、その前にご報告させて頂かねばならぬ事が御座います。先程、ロゴスのジブリール殿を乗せたチャーター機がこちらにご到着なさいました」
「ジブリール殿が?ヘブンズベースが落ちたと言うのは本当の事だったのか…それで、父上は何と?」
「はっ…ウナト様はこれを亡命と認め、この国に招き入れる所存の様です」
「父上は厄介者を受け入れると言うのか…面倒な事を……!」
「ジブリール殿はこの国に亡命されて、何を為さる御つもりなのでしょうか?」
護衛の言葉にユウナは手を顎に当てて少し考慮した後に応える。彼の目的を考えれば、オーブに入ったのは当然であった。
「狙いは宇宙に上がる為のマスドライバーだろう。月には例の物が用意されてる…ここから一気に戦局をひっくり返す一発逆転の切り札がね……」
「はぁ…それで、いかがなさいますか……?」
「僕は食事を先に取らせてもらうよ。食事は大事だからねぇ……君達には申し訳ないが、直ぐに全軍に警戒態勢を敷くように伝えてくれ給え。近いうちに戦闘になるかもしれないよ……!」
「かしこまりました、直ちに司令部の方にお伝えいたします」
「頼むよ……」
(父上…ロゴスの鎖、断ち切れなかったようだね……)
ユウナは背広を正すと、会議室を後にした。
アークエンジェルに帰還したカガリとアスランは、無事に戻ってきた事をクルーに歓迎される。
その夕食の席でアスランはカガリに疑問を訊ねていた。
「カガリ、あれは本当なのか?」
「ん?あれって何の事だ?」
とぼけるカガリにアスランが周りを気にして小声で話しかける。
「……遺書紛いの手紙の事だ」
「ああ、あれか?あれは唯のはったりだ」
「はったり!?」
急に声を上げるアスランに皆の視線が集中する。
「あ…いや、違うんです!ちょっと喉が渇いたなぁって……」
他のクルー達も間抜けではない。アスランの言葉が言い訳に過ぎないことは分かっていたが、若い男女の事である。察してそれ以上触れないように努める…勿論勘違いではあるが。
「何きょどってんだ、お前?」
「カガリ…!」
一応アスランは飲み物を取りに行く。戻ってきた所にカガリの容赦ない突込みがはいる。
「何って…あの場面でよくもあんな嘘がつけたな!」
「そうか?いや、確かに度胸がいったよな。私も良くやったと思う」
「褒めてるんじゃない!ユウナ殿が引かなかったらどうするつもりだったんだ!」
「別に根拠が無かったわけでは無いぞ。保証が無かったのも事実だけど……アイツは損得勘定で動くからな。ああ言えばあの場は何とかなると思っていた。犯罪者の烙印を押されてまでして私を排除する程突っ走った奴じゃないからな」
「だからと言ってあんな内容…嘘でもそんな事を言うんじゃない!」
小声で会話を続ける二人。
ややテンパリ気味のアスランと、いつものように自然体で話すカガリ…会話を聞き取るような無粋な事はしないまでも、他のクルーも気付かない振りをしてその二人のやり取りを微笑ましく思っていた。
しかし、会話の内容を知ってしまえばそれどころではなくなるだろう。
実際の所はユウナの情けによって見逃してもらったというのが実情だったのだ。
「何言ってんだ、そのお陰で助かったんだろう?感謝されても文句言われる筋合いは無いと思うがな」
「カガリが会いに行くって言ったからだろ!?俺はその前に忠告した!」
「う……それは…そうだな……」
「分かったらもうあんな無謀な事はしないと誓え!心臓に悪い!」
「ナチュラルの私の心臓が平気だったんだ、コーディネイターのお前の心臓がその位でへたる訳無いだろ?」
「そう言う問題じゃない!」
「ああもう、分かったよ!誓う、誓います!これでいいんだろ!」
最後に来てカガリの声が大きくなる。アスランのしつこさに苛立ったカガリが思わず声を荒げてしまった。
その様子に周囲のクルーの視線が一斉に二人に集中する。関心が無い振りをしていても、耳は二人の会話に傾けていたのだ。
野次馬根性とは厄介なもので、相手の迷惑を顧なくなってしまう。それは知を欲する人間の悲しい性で、幾度と無く誤解を招くきっかけになっていた。
「若いって良いな、アスラン?食事中も口説くか」
「あんまりカガリさんを困らせちゃ駄目よ?今は大事な時なんだから」
「キラがエターナルに行っているからって、その隙にモノにしようなんて不貞野郎だ」
一斉にやっかみを入れてくるクルー達。アスランはそんな周囲の言葉に顔を赤くして必死に自己弁護をするばかりである。
カガリは、そんな一部始終を見て笑っていた。
エターナル救助に向かったキラは無事に危機を乗り越えたとの報告もあり、アーク
エンジェルは今のところ平和そのものであった。
しかし、彼らはこれからオーブを舞台にして起こる出来事を知る由も無かった。
〜つづく〜
GJ!!
GJ!!!!
ユウナカッコヨス
GJ!
カガリが少しずつ本当に少しずつ成長してるのがわかるなw
しかし凸はもうダメかもわからんねw
GJ!
うおー、カガリがすげームカつくw
ユウナいいね、ウナトはあんまり変わらなさそうだが
アスラン、シンやレイやルナやカミーユからボロクソ言われるんだろうな
GJ!
しかしアスランの株が暴落する反面、ユウナの株が急上昇だな。
なんだかんだ言ってもカガリの事をしっかり考えているしw
>オーブは三つの理念が根幹だ。それを破ったお前にその資格があるとは言えない
戦場を闇雲に混乱させるおまえらはどーなのかと
自分の事は棚に上げるのは相変わらずだよなw まあ更なる成長に期待って所かな
ユウナが理念だけにも理屈だけにも走らずに
ちゃんと狡猾な政治家をやりつつ人情味も持ち合わせてるのは好印象だな。
〜本日の株の値動き〜
ユウナ……上昇
カガリ……微増
凸 ……順調に下降
GJ!GJ!
アスラン、ある意味ではもうキラクスより救いようがねーなー(汗
味方としては自覚のない裏切り常習犯、敵としては情けなさすぎなヘタレ
もはや彼のポジションはどこにも残っていない…
カガリはちょっとは成長の後が見れるが、所詮マイナス20が、マイナス10になったくらいだからなー
まだまだ政治に口を出すものとしては不快感が残るな
そして今回株を上げたユウナですが…よくアスハ家の影響が残りまくってるオーブであんな私兵団作れたな…
しかし大半の国民が自分を支持するといってるあたりはまだ甘いか?
理想という名の毒(別名アスハ)の力をちょっと甘く見すぎてる嫌いがあるし
転載御免
オーブが理念を破った、あるいは守りきれなかった時。
1、地球連合と協力してヘリオポリスでMSを開発した。
⇒他国の争いに介入せず、に違反。
2、ザフトのクルーゼ隊による攻撃でヘリオポリスが崩壊した
⇒ヘリオポリスを守りきれなかったので、他国の侵略を許さず、を貫けなかった。
その後のオーブはプラントに対し、報復措置などをとっておらず、
事実上の泣き寝入り状態。
3、オーブ軍人のキサカ一佐をカガリの護衛に任命し、北アフリカの
ゲリラ活動に参加させる。
⇒オーブ軍の兵士をゲリラとしてザフトと戦わせるのは、他国の争いに介入せず、
に違反。また国家元首の娘カガリがゲリラに参加するのも問題である。
4、無印種の中盤、ザフトの追撃部隊と戦闘中だったAAをかくまう。
⇒他国の争いに介入せず、に違反。
5、地球連合軍の侵攻を防ぎきれずにオーブ本土を占領される。
⇒他国の侵略を許さず、の理念を守りきれなかった。
6、オーブ国家元首の後継者カガリが参加する武装勢力が地球連合とザフトが
争いあうヤキン・ドゥーエの戦いに乱入。
⇒乱入した武装勢力の中にはキサカ一佐などオーブ正規軍の兵士が多数混じって
いるため、他国の争いに介入せず、に違反するおそれがある。
無印種だけでもこんなに理念に背いているな。ウズミの場合、故意に破ったと思われる
ケースがいくつかあるのに、なぜ最後まで理念を貫き通した立派な指導者と言われているのか
わからない。よほど周到な情報操作がされたとしか思えない展開だ。
後、連合による侵攻が予想された時点で国民を疎開させるべきなのに
それを怠った事も問題だな オノゴロ島は重要拠点だから民間人は
真っ先に逃がしてしかるべきだが連合の侵攻当日まで避難させてなかった
余程の電撃戦ならともかくあの状況で疎開させなかったのは無能と言われても文句は言えんよ
連合が不意打ちしたらもっとやばかった。
GJ!!
ユウナさんはなかなかのツンデレですね。
GJ!!
ウィキのアクセス見てたんだけど、カミーユ氏のSSが一番見られてるね。
↓アクセス多い順。変なプレッシャーなったらごめんwがんばってくださ
FrontPage
もしカミーユが種・種死の世界に来たら
種・種死の世界にXキャラがいたら
もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら
ガンダムSEED DESTINY小説まとめHPリンク集
Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第30話
もしシャアがC.E世界に来たら
Char-Seed_1_第14話
Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第31話
Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第29話
そういえば今回はアスラン株が暴落したけど、カガリを引き立てるためにわざと小物を演じた・・・って解釈もできるよね?
ってか、そうでも解釈しないと、こんな小物を仲間と思っていたミネルヴァ勢が不憫すぎる。
個人的に全員大暴落だったのだが悲しいところ
全然成長してねー
キラってなんだかんだいって自分の都合が悪い時は
逃げてる敵でも追っかけてって艦としての機能を破壊して
宇宙空間を漂流させるとかえげつないことするんですね。
ってか通信機器がいきてればあんまり意味ない行為にもおもえるけど
CEにはNJの所為で電波障害が・・・って設定がある
あれ?
ザフトの戦艦&クルー、死に向かって宇宙漂流?
>>84 俺もアスランどころか、カガリやユウナも「まるで成長していな(ry」と思った。
ユウナが原作よりましか〜なとは思うけど、揃いも揃って、言うこと為すことレベル低いのは相変わらず。
カミーユ氏も、「誰かが株を上げて、誰かが株を下げた」というふうに描いたんじゃなく、どちらかと言うと、
「アスランもカガリ(そして、ユウナも)グダグダだよ」という様子を再確認した場面だと思うのだけど……。
ユウナはなあ、一見政治家としては幾分まともな判断が出来ているように見えるが、カガリと関わっている
せいか、会談の内容が低レベルだったり、中途半端な甘さを見せているのが原点ポイントだと思う。
カガリが泣きついて誰かに頼ったりなんか言われたら泣いてうやむやにしようとしたり
考え無しに叫ぶだけじゃないんだぞ
子供並みとはいえブラフを使ったりしたんだぞ
成長してないというのはカガリを過大評価しすぎ
カガリに銃突き付けるのをためらわない兵士達とは、実はフリーダムにMSを
ダルマにされて不幸にも地面激突や水没の結果結局死んだパイロット達の同僚とか遺族、
あるいは九死に一生を得た本人達とかだったりして。
まあ少なくても少しは冷静になったよな
まだまだ一国の元首としてはダメダメだが
GJ!
アスラン、お前は本当にパトリック・ザラ(一応プラントの政治家だった)の息子なのか?
いや、だからこそと言うべきか。
ある意味カガリより直情馬鹿だな。
所詮蝙蝠か。
カガリはゴリラから原人辺りまで進化?したって感じかな。
アンマリ変わんないけどな。
ユウナはかなり良いけど、甘すぎるというか優しすぎるな。
まあカガリに国を任せるよりはユウナにやらせた方が100倍マシなんだけどね。
劇中で「オーブの理念」って出てくるけど、これってアスハだけが言い出した事なんじゃないのか?
他の奴らは納得してんのかな。
一部のキレイ事大好き人間しか受け入れそうにないし。
>>78 1に関しては公式ルートでの連合の申し込みは拒絶したけど、
サハク姉弟が独断で引き受けたので、仕方なく事後承諾という事だったかと。
2以降に関してはまさにその通り。
特に3だけど、パチルザン(民兵組織)だったらまだしも、
民間人と区別の付かない事から国際法違反であるゲリラに
カガリとキサカを送り込んだ事から、「テロ支援国家」に認定されて当然という。
やっぱダメダメだなウズミ。
>>92 つうかウズミはM1が量産開始された後に気付くなんて遅すぎる。
誰かも言ってたけど、兵器の共同開発自体は別に問題ないんじゃね?
スイス軍の兵器って全部自国製なの?
兵器の共同開発に関しては問題は無いよ。
問題なのは、それを戦時にやってしまったこと。
片方の勢力の戦力の著しい増強に手を貸した時点で、中立の立場は崩れたと見る。
>>91 「アスハ代表の中立宣言」はCE70年2月11日だな。
なんだ随分大事そうに中立云々掲げておいて実は日が浅いのか。
ウズミがあんなに理念の維持に拘ったのってさ、
あっさり中立撤回して自分のプライド傷つくの認めたくなかっただけじゃないの。
すまん「アスハ代表の中立宣言」はCE70年2月8日だった。
ラクス以上のカスだなカガリは
これじゃ強盗と変わらんぞ
100
MSの製作をモルゲンレーテに命令したのはウズミだったような・・・
サハクはモルゲンレーテに泣き付かれて色々裏工作して大西洋連合のMSデータを手に入れたとか・・・
まあ、登場人物が成長どころか退化や劣化して、叩いて埃しか出てこないTVの脚本叩いてもしかたないカト。
GJです
ユウナの「僕のハニーだからね」発言に思わずモニターの前で吹きました、冗談ぽくいっててもまだ結婚する気残ってたのですかと。
愚痴と講義(誤字ではない)の後に言ってると言うことは、カガリの成長を見込んでなのカナ?(愛されてますね)
カガリはようやく目が見えてきたカナ? 今後に期待。
アスラン、まずはシンとハイネとカミーユに修正うけて来よう、目が覚めて今やるべきことが見えると思う。
アスランは決して馬鹿じゃないんだけどあまりにも周りに流されすぎる
第三十三話「争いを呼ぶ国」
時間は遡り、ヘブンズベース攻略戦後のミネルバではロゴスの頭、ジブリールが逃走したとの報告が入っていた。
シンにとってみればやっと戦争が終結すると思っていた矢先の出来事である故に悔しさを滲ませる。
「そんな…これで…これでやっと戦争が終わると思ったのに…こんな事って……!」
「シン…大丈夫、大丈夫……」
状況が良く分かっていないまでも、シンの無念の表情を心配したステラがシンの手を優しく握る。
シンの無念は他の皆も同じであった。
「問題は何処に行ったかだが……」
息詰まる空気の中、発言をしたのはレイだ。おそらくシン以上に戦争の終結を望んでいたのが彼だったであろう。
しかし、冷静な彼は次の展開を考えて問題を提起する。
「分からないの?」
それに反応したのはルナマリアである。ハイネもそれに加わる。
「駄目だな。尋問を受けているロゴスの連中もいつの間にか逃げられていたらしく、何処へ逃げたのかは分からないらしい。諜報部の方でも追っているみたいだからじきに分かる事だと思うが、先回りは無理だな」
「そんな…それじゃあ敵が隠れるまで待ってなきゃいけないって事?」
「…そういう事になるな」
「かくれんぼじゃあるまいし……」
敵は分かっているのにそれを追えないジレンマが一同を焦らせる。
相手はジブリール一人であろうとも、窮鼠猫を噛むと言う諺もある。早めに手を打たねば何を仕出かすかわかったものではない。
「とにかく次で確実に仕留めなければこの戦争…いつまで続くか分からないぞ……」
珍しくレイが険しい表情で声を出す。その様子に、他の者も事態の困難さを実感する。
落ち込むシンはそんなメンバーから離れ、ステラに慰められながらMSデッキを後にした。
「どうしたカミーユ、そんな所にぼうっと突っ立って?」
「……いえ、何となく」
ミネルバのデッキに戻ったカミーユはΖガンダムの前に立ち、その姿を見上げていた。
「どうだ、新生Ζの初陣は?」
「…コックピットフレームに組み込んだミクロチップ…サイコフレームっていいましたよね?」
「ああ、あのコックピットのデータベースに拠ればな」
「あれ、何か不思議な感覚なんです。凄くしっくり来るっていうか何というか……」
「ふぅん…俺にはよくわからねぇんだが、特別な何かがあるって言うのか?」
「ええ、多分……前よりも戦場の感覚がシャープになるんです」
「お前、時々言ってることがわかんねぇぞ?」
「すみません…でも、感覚的な事なんで具体的には……」
「で、機体に不満はあるのか?」
「……特には…よく動きますしね……」
「なら、いいじゃねぇか。お前にとってオーパーツでも、利用できるものは利用しないとな。まだ決着がついた訳じゃないらしいからよ?」
「そう…ですね……」
ヴィーノに呼ばれ、マッドはその場を後にする。
(何だろう……僕に何かを伝えたがっているように感じる……)
カミーユはサイコ・フレームに残る感覚から、以前にサザビーを駆っていた人物を思い浮かべる。
サイコフレームがカミーユにもたらす感覚が、その人物の怨念のようにも感じられた。
ジブリールがヘブンズベースを去って数日ほど経過した頃、諜報部員からジブリールの潜伏先が報告される。
一同はミネルバのブリーフィングルームに集められた。
タリアは入り口付近の隅に陣取り、代わりに副長のアーサーが前に立っていた。
「今朝方、諜報部の方からプラントに報告があり、ロード=ジブリールの潜伏先が判明した」
ルナマリアが手を挙げる。アーサーは手に持った指揮棒でルナマリアを指す。
「それは何処なんですか?」
「…オーブ連合首長国だ」
その一言にシンは衝撃を受ける。二年前の悲劇が再び巻き起ころうとしている予感がしたからだ。
「そこでザフトはオーブにロード=ジブリールの引渡しを要求する作戦を展開することになった。その作戦に、このミネルバにも参加要請が…プラントのギルバート=デュランダル議長から正式にあった。諸君も厳しいだろうが、あと一息だから頑張って貰いたい」
「それで…オーブが戦場になるんですか?」
シンが立ち上がって訊ねる。
「万が一オーブがこちら側の要求を受け入れない場合は、実力行使も止むを得ないと判断されている。つまり、戦闘になるかもしれないということだ」
「……!」
シンの予感が確信に近付く。頭の中で吹き飛ばされる家族の光景が浮かんだ。
「オーブって中立国ですよね、仕掛けるんですか?」
急に立ち上がってカミーユが声を上げる。
「今は大西洋連合の同盟国だ」
「でも、攻め込むんでしょう?」
「万が一…だ。これは上層部の決定で、我々が軍人である以上、それには従わなければならない」
「万が一も何も、結局は脅しを掛けるって事でしょう?中立国相手にそんな事するなんて、ザフトの立場が悪くなるだけでしょう」
「…貴方はまるで最初から戦闘するのが目的みたいな言い草ね、カミーユ=ビダン?」
興奮するカミーユを制するように、今まで静観していたタリアが口を挟む。
他のクルー達も視線をカミーユに集中させている。
「僕達に参加要請があったって事は、デュランダル議長は最初からそうするつもりで居るんじゃないですか?」
「勘違いしないで、カミーユ。貴方がそこまで考える必要は無いわ」
「誤魔化さないで下さい、そういう事なんでしょう?」
「貴方は自分の立場がいまいち理解できていないようね?一介の兵士である貴方が上層部の考えに意見するなんて事はおこがましいのよ」
「現場の言い分だってあるでしょう?艦長はそれでいいんですか?」
「駒の一つに過ぎない私にどうこう言えるわけ無いでしょ?」
「嘘ですね、それ。僕には分かりますよ、本当は言いたい事が有るんでしょう?」
「いい加減になさい、カミーユ。これ以上駄々を捏ねるなら次の作戦から貴方を外すわよ。貴方は、この世界の人間ではないのだから……、それでも上に言いたい事があるのなら、頑張って早く偉くなる事ね」
「……」
カミーユはこれ以上は不利だと悟り、黙って着席して片手で頭を抱える。
「……宜しいか?では、作戦はこれより二十四時間後に開始される予定である。明朝七時より戦闘配置にて別命があるまで待機、以後は司令部の指示に従ってもらうことになる。他に何か質問が無いようならブリーフィングは以上、各員の奮闘を期待する!」
アーサーがブリーフィングルームを退室すると、一同もそれぞれ疎らに退室していく。
そんな中、ショックを引きずるシンは椅子から立ち上がれずに居た。ステラがそんなシンを心配して困惑している。
「シン…いいのか?」
シンに話しかけたのはカミーユだった。決別したとはいえ、オーブはシンにとって亡き家族と過ごした故郷である。
それを知っているカミーユがシンを心配して話し掛けた。
「カミーユ…あんたこそいいのか?この作戦、乗り気じゃないんだろ?」
「考えすぎかな……プラントはどうもオーブを目の仇にしているように感じるんだが……」
「議長が?」
「ああ、そんな感じがする……」
「別にそうなればそうなったで構わないさ。俺にとってオーブなんてどうなったって構わないしな」
「無理するな、シン。強がったって何も解決しないぞ」
「俺が強がっている?はっ、鈍いんだな、カミーユって!いいか、俺はオーブが憎くて憎くて堪らないんだ!寧ろ議長がそのつもりなら大歓迎さ!馬鹿なオーブが要求を断ってくれる事を祈っているよ!」
「そんなこと言って!本当にお前の故郷が燃えてしまったらそれこそ本当に後悔する事になるぞ!亡くなった家族の思い出まで自分で壊す気か!?」
「何だと……!」
「自分から破滅へ向かおうとするな!お前の望む平和はそんな物じゃないだろう!?」
「ウルサイ!俺の事何も分かってないカミーユに俺の気持ちが分かるものかよ!」
シンは怒鳴り声を上げるとその場を走り去って行ってしまった。困惑するステラも泣きそうになりながらシンの後を追って出て行く。
残されたカミーユにハイネが話しかけてきた。
「お前、ザフトの戦略に疑問を持っているのか?」
「……」
カミーユは沈黙を続ける。ハイネはそれを肯定の返事として捉えて続ける。
「それでは隊長の俺が困るんだがな?あの場で不信感を口にされたら士気に影響する。お前、次の作戦外れるか?」
「…自分でもよく分からないんだ……いや、ちょっとおかしいのかもしれない。ただ、今度の作戦、これからの展開に大きな影響を与えるような気がして……」
「兵士は黙って上の言う事を聞いて居ればいい。深く考えない事だ」
「もしかしたらザフトが負けることになっても……?」
「そうなったらそれが運命だったんだろ?勿論、最大限に抗って見るけどな、最初から負けることを前提に戦うやつなんて居ないぜ」
「……」
「最初からどんぱちしに行くわけじゃないんだ、もっと気楽に考えろよ。でなきゃ、本当に外すぜ?」
「分かった……」
異世界に紛れ込んである程度の時間が経過した事でこの世界の事情は何となく分かってきていたが、所詮は異邦人であるカミーユにとって理解しがたい事も多々有った。その食い違いがカミーユにとって歯痒いものである事は間違いなかった。
「本当はさ……」
「うん?」
ステラと二人で部屋に戻ったシンは、その胸の内をステラに語りだした。
「俺だって分かってるんだ…俺が…オーブを失いたくないって事……」
シンの告白をステラは優しく見守っていた。それがシンの心の余裕を作る。
「気持ちの何処かでオーブを憎む気持ちを否定しているんだ……あれだけ許せないって思ったアスハも…いや、完全に許したわけじゃないんだけど、でも、何かが違うんだ……」
まだハッキリとした答えが出ていないのか、シンは歯切れの悪い口調で話す。
側に寄り添うステラが、それを気にしない様子でいることが有難かった。
「あの…オーブを許せないって事は嘘じゃないんだけど、オーブがどうなっても良いって事は……嘘じゃないかもしれないけど…けど……俺は本当は…オーブを失いたくないって気持ちも…嘘じゃないかもしれない…」
シンは自分で何を言っているのか分からなくなっていた。
それでもステラは黙ってシンの言葉の破片を受け止めるように聞いていた。
「ごめん、ステラ…俺……本当は何をしたいんだろうな……」
「シン、それ見つける…それが本当にシンがしたいこと」
「でも、その答えを明日までに見つけなきゃなんないみたいなんだ……時間が無いんだよ…」
「大丈夫…シンなら分かる」
ステラは優しく微笑んでシンを励ます。
「見つかるかな…俺?」
「シン、目指したいもの、何?」
「俺の目指したいもの…?それは……」
戦争を終わらせて争いの無い世界を作る事……それは最初は自分の意志で見つけた目標だったと思っていたが、思い返してみればカミーユから薦められた目標だった気がする。
更に付け加えれば、戦争を無くすことは出来たとしても、その後の世界を形作るのは兵士である自分ではなくて為政者であるデュランダルの仕事である。
目標を持てたと思っていた自分の気持ちが勘違いである事に気付き、シンの頭の中は迷走の気配を見せ始める。
「俺のやりたい事…何だったんだろう……?俺、今まで自分の意思でやってきたと思っていたけど、本当は誰かの言葉に流されてきていただけなのかもしれない……」
「シン…ステラ連れて来てくれた時も誰かに言われてだったの…?」
ステラが眉尻を下げて悲しそうな顔を見せる。自分を助けてくれた事がシンの本当の気持ちではなかったのではないかと疑ってしまう。
シンはそれに気付く。
「それは違う…ステラを助けたのは俺がそうしたかったからだ……!」
つい最近の出来事なのに、オーブが次の舞台になった事で気が動転していたシンはそんな事すら忘れていた。気付かせてくれたのはステラだった。
まだ目標が定まったわけではないが、今言える事はまずジブリールを捕まえる事。彼が健在な限り、戦争が終結したとは言い切れない状況である事に変わりは無い。
目の前の現実を見つめる事しか手段が残されていないシンだが、この作戦の先に待っている結末がどの様な影響を与えるか、それを確かめてみない事には先に進めないと思った。
「自分のやりたい事を見つけるって難しい事なんだな……。でも、ステラを助けたのは俺が望んだ事だ。レイやカミーユが協力してくれた……艦長や他の皆も…」
「シン……」
「俺、まだ頑張ってみようと思う。オーブの事も含めて……」
シンの表情が少しすっきりしたようにステラには見えた。
そんなシンにステラは何となく微笑みかけた。
ザフトがオーブに対してジブリールの引渡しを要求する作戦が展開されている事は、オーブのユウナの耳にも入っていた。
「明日?それは本当かい?」
「はっ…情報に拠れば間違いないようです。現在、オーブの領海の外を囲うようにザフトの艦が展開しています」
「思ってたよりも急だね…ま、いつまでもあんな小物を追い回していたくない気持ちは分からないでもないけどね」
「彼らはオーブを攻撃するつもりでしょうか?」
「さあね、あのデュランダル議長って人物が好戦的でないことを祈るばかりだね」
「では、あの艦隊は…」
「こちらが要求を断った時の脅迫材料だろう。ジブリールを渡さなかった場合はそれを大義名分に攻め込んでくるつもりじゃないのかな?尤も、僕はそんなつもりは全く無いんだけどね」
「ジブリールを引き渡すのですか?ですが、それではウナト様のロゴスでの立場が……」
「先細りのロゴスの肩を持ったところで、損するばかりで得な事など何一つありゃしないよ。その位父上も分かっていらっしゃるだろう」
「はっ……」
「けど、万が一という事もある。軍の準備は予定通りにさせておいてくれ」
「了解です」
ユウナのウナトに対する読みは甘かった。
翌日、ザフトがオーブへジブリールの引渡しを要求してきた。しかし、それに応えたウナトの返事は"そんな人物は居ない"だったのだ。これまで世の中の裏側から牛耳ってきたロゴスのしがらみを、ウナトは振り切る事ができなかったのだ。
ジブリールの口車に乗せられ、予定を繰り上げてシャトルの打ち上げ準備を進めるウナト。
これには流石のユウナも頭を抱えてしまう。懸命な判断を下すと思っていた父、ウナトのこの行動を殆ど考慮しておらず、当初思い描いていたザフトの侵攻を逆手に取った計画が台無しになってしまったからだ。これでは世論を味方に付けることは出来ない。
そして、ユウナの予想通りにこれに反発したザフトは戦犯であるジブリールを匿ったとしてオーブを捜査する為に進軍を始める。オーブ側はこれを事実上の侵略とみなし、防衛の為にザフトとの交戦状態に入ってしまう。
二年前の悲劇が繰り返されてしまったのだ……
「ザフトがオーブに侵略を開始した!?そんな馬鹿な!本当なんですか、ラミアス艦長!」
アークエンジェルでザフトのオーブ侵略の報を聞いてアスランは声を上げる。
「オーブがジブリールの引渡しを拒否したらしいのよ……」
「カガリ……!」
「ユウナはそんな馬鹿なことは仕出かさないだろう。とすれば、拒否したのは父親のウナトか……」
「どうするんだ、カガリ!?」
「……出るしかないだろう。オーブは他国の侵略を許すわけには行かないんだ…ラミアス艦長、アークエンジェルを出してくれ!」
カガリがラミアスに出撃を要請する。それを待っていたと言わんばかりに即座にアークエンジェルの出航準備を開始する。
(デュランダル議長は一体何を考えているんだ……?これでは、唯の侵略みたいなものじゃないか!)
アスランは困惑していた。まさか、オーブが再び戦場になるとは思いもしなかったからだ。しかも相手はザフトである。
(ザフトは…こんなやり方は間違っている!)
ふと、デュランダルに言われた事を思い出す。それは、フェイスのバッジを受け取った時の事である。
《私も人間だ、間違う事はある。もしそうなった場合、君には私を止める為の力になって欲しい》
都合のよい考えだとは思う。アスランは自分にそんな権利や資格があるとは到底思えないだろう。しかも、力も無い。
今はそんな事を考えるのは止めておこうと思い、自室へと戻って行った。
そんな時、キサカとエリカが現れ、カガリを呼び止めた。
「何だ、キサカ?」
「カガリ、お前に見せたい物がある」
「……?後にしてくれ!」
「いや、これは今だからこそ見てもらわなければならない物だ。ついて来い、カガリ…ウズミ様の遺した物がお前を待っている」
「お父様が…!?」
カガリは、父ウズミの名前に反応して二周りほども上背のあるキサカを見上げた。
アークエンジェルのクルーが慌ただしく戦闘準備を進める中、カガリとキサカ、エリカはウズミの残した遺産のもとへ連れ立っていく。
一方、戦闘開始の合図を確認したミネルバは左翼の担当を任される事になった。
コンディションレッドが発令され、各員がMSに乗り込む。
「だから言ったんだ!最初からこうするつもりだったんだろ!」
「愚痴を零すなカミーユ!謹慎食らいたいか!」
駆けながら不満を口にするカミーユにハイネの叱責が飛ぶ。
「シン、行けるの?」
「大丈夫だ!」
心配したルナマリアがシンに訊ねるが、それを一蹴するように一言だけ発してシンはデスティニーに乗り込んだ。
「シン、ちょっと逞しくなったかしら?」
「ルナ、遅れるな!」
後ろからレジェンドに向かうレイが、シンの様子に足を止めてしまったルナマリアを注意する。
「はいはい……」
レイに注意され、不満そうな顔をしてルナマリアもコアスプレンダーのコックピットに飛び乗る。
彼女にとって今回の戦闘では重要な再会が待っていた。その再会の相手はミネルバクルー全員にとっても衝撃的なものとなる。
「本艦はこれより左翼の敵に取り掛かります。中央の主力に向かう左翼の敵部隊を迎撃しつつ、敵の本陣を崩します」
「了解です、艦長!」
ブリッジではタリアの指揮の下、クルーが戦闘態勢に入る。
その時、索敵のバートから報告が入る。
「艦長、左舷方向…我々の担当エリアにアークエンジェルの識別を確認しました!」
「やはり…オーブに戻っていたのね……司令部はそれが分かっていたようだけど……」
タリアは考え込む。前日の司令部からの通達ではアークエンジェルが出現した場合の相手をミネルバに任せると言ってきた。まるでアークエンジェルが出てくることを見越した上での判断のように感じられる。
(疑問は持つべきではないわね……)
タリアは前日にカミーユに言った自分の言葉を思い出す。
「司令部に通達、本艦のMS部隊の指揮権を全権ハイネに委譲、ミネルバはこのまま単艦での対アークエンジェル戦に移行します。総員対艦戦用意!」
「しかし、それではこちらの守りが……」
「ハイネは判断を間違えないわ!アークエンジェルが単艦で向かって来る限りは私たちだけで不沈艦を押さえるのよ!」
「りょ、了解です!」
ミネルバはMS部隊を吐き出した後、因縁の相手、アークエンジェルへと狙いを定める。相手のラミアスもタリアの考えが分かっていた。
それぞれ女性を頭に持つ二つの艦が、この戦場でも相対する事になった。
カガリ一行はオーブの地下にある格納庫にやって来ていた。
巨大な扉の前には誰かが遺したであろう、レリーフのような物がある。
《力はただ力。多くを望むのも愚かなれど、厭うのも又愚か》
亡き父の遺言にカガリの胸が詰まる。
「開けるわよ」
エリカが扉の封印を解き、鈍い音を発しながらゆっくりと開かれていく。
「これは……」
見上げるカガリの眼前には黄金に光り輝く一体のMSが静かに佇んでいた。
「アカツキ…黄金に輝く外見はあらゆるビームを弾き返す特殊装甲"ヤタノカガミ"によるもの」
「お父様がこんな物を……」
「アカツキの開発自体は前大戦の頃から行われていたわ。ただ、あの装甲の開発が遅れていたせいで完成したのは最近になってからだけど」
フラフラとカガリが前に歩み出る。
「カガリ…ウズミ様はこれを使う事は望んでおられなかった。しかし私は、今のこのオーブの危機を救う為にはこれを使わざるを得ないと思っている」
「……」
「どうしたカガリ?」
「また…お父様に裏切られた気分だ……」
「何?」
思いがけないカガリの言葉にキサカが眉を顰める。
「前にヘリオポリスでGの存在をこの目で確認した時もそうだった……。こんな物を作っているから戦争に巻き込まれるのだ!」
「カガリ、それは間違いだ。MSを作っていようといまいと、戦争はそれに関係なく周囲の物を巻き込んでいく…ウズミ様はオーブがそうなってしまった時の予備策の為にこれを用意していたのだ」
「開発に何年も掛るほどの力が必要だったのか!?」
「そうだ、我々のような小さな国は相手の兵器よりも高いスペックのMSが必要だったのだ」
「それで相手を慌てさせて…相手もまた更に強力な力を持ち出して…それじゃあメビウスリングの様にぐるぐる回っているだけだろ!」
「納得しなくても構わんが…今はオーブが再び戦場になっているのだ。先ずは目の前の現実を見つめるのが先だと思わないのか」
「くっ…!」
カガリが目を逸らし、苦渋の表情を覗かせる。
「時間が無いわよ!」
地下に居ても外の戦況を告げる爆発音が聞こえてくる。カガリに選択の時を迫っているかのようだった。
「……政権をユウナ達から取り戻す時が来たと思いたい……。私はその為にこのアカツキで出る!」
「決まったわね、早くして!戦況が芳しくないわ!」
「頼んだぞ、カガリ!オーブを二度も焼くわけには行かんのだ!」
タラップを駆け上がり、カガリはアカツキのコックピットへ飛び込む。
アカツキの動力系に火が入り、Gタイプのヘッドのツインアイが光る。
「アカツキ、出るぞ!」
バーニアを蒸かし、アカツキは暗い地下から光の溢れる地上に飛び出していった。
地上に飛び出したカガリは、既に本土にザフトの進入を許したオーブ軍の体たらくにヤキモキした。
「何をしているんだ、国防本部は!」
そこにアークエンジェルのムラサメ隊がカガリに合流して来た。
「状況は!?」
『御覧の通りです!敵の数が多く、オーブの守備隊だけでは守りきれません!』
「好き勝手にされて…お前達は私に付いて来い!本土に侵入した敵を押し返す!」
『はっ!了解です!』
三機のムラサメを伴い、派手な見栄えのアカツキが先陣を切る。その姿が目に付いたザフトの部隊がアカツキを目指して襲い掛かってきた。
「お前等…よくもオーブを!」
アカツキのビームライフルが火を噴く。
一時代前に開発されたMSとはいえ、性能では圧倒的な優位性を示す。カガリの射撃技術が大した事が無くとも、ディンやバビは撃墜されていく。
「ムラサメ隊は散開しろ!私が敵の注意を引き付ける!」
『なりません!貴方をここで失うような真似はさせません!』
その時、バビのビームライフルの集中攻撃がカガリのアカツキを直撃する。
「ああ!?カガリ様!」
ムラサメのパイロットが絶叫する中、しかしアカツキはそれを何事も無かったかのようにビームを弾き返す。アカツキの周りを固めていたムラサメはそれに巻き込まれそうになった。
「分かっただろ、邪魔なんだ!お前達に当てるつもりは無い!」
『はっ…!』
ムラサメ隊は言われたとおりに散開をする。カガリの心配は無い物と判断した。
そうして、カガリ達の快進撃が始まる。
「何だ、あの派手なMSは!?」
「オーブにあのような物は無い!…しかし、共に戦っているあのムラサメ隊は一体……?」
「ザフトと戦っている様だぞ?味方なのか?」
「まさか…カガリ様か……?」
「そ、そうだ…カガリ様だ…!カガリ様が戻ってきて下さったんだ!」
「みんな、あの金色を援護しろ!カガリ様だ!」
「よぅし!無法者のザフトを俺達の国から追い出すんだ!」
アカツキの存在に気付いた他のオーブ兵がカガリに呼応するように士気を上げる。
戦闘はアカツキの参戦より、徐々にオーブ側がザフトを追い返し始めた。
しかし、その時ミネルバのMS部隊がオーブ本土に侵入してきた。
先陣を切るのはデスティニー…シンだった。
「あれは…ザフトの新型!」
『カガリ様!新型の相手は我々がします!貴方は早く本部へ!ユウナ殿がいらっしゃる筈です!』
本土の防衛に当たっていた守備隊のM1アストレイがカガリのアカツキに近寄ってくる。
「お前達……一度はこの国を捨てた私を許してくれるのか?」
『当然です!我々もセイランのやり方にはついてい行けません!オーブの素晴らしい理念を捨て去る事など我々には出来んのです!』
「だが…無茶だ!あの新型が只者じゃない事位、見た目で分かる!お前達を無駄死にさせたくは無い!」
『失礼を承知で意見させてもらいます!貴方が今動かなければもっと多くのオーブの民の血が流されることになります!我々は最小限の犠牲なのです!』
別方向からの通信が入ってくる。もう一機のM1アストレイがやって来る。
「そんな…犠牲だなんて……!」
『ここで我々が敵を食い止める事がオーブを救う事に繋がると信じています!』
『行って下さい!…オーブでの戦闘…これで最後にしましょう……!』
「オーブを救う為に今は敢えて私に汚名を被れと……それしか無いという事か…!」
カガリはアカツキを方向転換させ、兵士達に背を向ける。
「すまない……!お前達の心…決して無駄にはしない……!」
しかし、その時デスティニーが信じられない速さでアカツキに肉薄した。
『そこの金色!味方を置いて逃げるのか!?』
「何っ!?」
デスティニーがビームライフルでアカツキを狙う。
それをかわしきれずに直撃を受けるが、特殊装甲がそれをリフレクションしてデスティニーにお返しする。
「なっ…ビームが弾かれた!?」
それを寸での所でかわしたシンであったが、アカツキは面食らっている間にも離れていく。
「なら…これでどうだ!」
今度は高エネルギー砲を構え、アカツキを狙う。
「くそ…しつこいっ!」
カガリはもう一度向きかえり、高エネルギー砲のビームをも弾き返した。
「これも!?ビームは効かないのか!?」
シンはそれすらもかわすが、純粋に戸惑っていた。ビームが効かないとなると後は
接近戦による直接攻撃しか手段が残されていない。
はじめて見る機体に、どのような仕掛けが施されているのか分からない現状で、迂闊に近寄るのは危険である。
しかし、明らかに指揮官機であろう金色のMSが背を向けて逃げる様は、シンの目には無責任に写っていた。
それに対する憤りが不安を上回ったシンは、アカツキの足を止める為にフラッシュエッジを投げつけて、接近する為の時間を作る。アロンダイトを構え、光の粒子を撒き散らして接近する。
「は、早い!」
「遅い!」
「カガリ様ぁ!」
振り下ろされる大剣はアカツキを捉えたが、その時、間に割ってはいったM1アストレイがアカツキの盾になり、真っ二つに切り裂かれた。
M1アストレイの爆発に巻き込まれぬように二機はシールドを構えたが、爆風でお互いの距離が引き離されてしまう。
「ああ!?…私を庇って……!」
「こ…こんな腰抜けを庇う事に何の意味があるって…!?自分の命まで賭けて……!」
二機の距離は開いてしまったが、機動力に勝るデスティニーはすぐさまアカツキに追い着く。
「くそっ…!振り切れないのか!?」
「お前のせいで死んだんだぞ!どうして…どうしてくれる!?」
シンにとってオーブに攻め込んだのは勿論ジブリールの捕獲の為である。無闇に敵を倒す必要は無いと思っていた。敵の抵抗を早めに潰してしまえばよい。
その為に指揮官機であるアカツキに狙いを定め、頭を潰す事によって被害を出来るだけ小さくしようと考えていた。
以前のようにオーブに対する感情が憎悪だけでは無くなっているシンは、それなのに無駄な撃墜をしてしまった事に少し戸惑っていた。
困惑するシンは逆上するようにアカツキに躍りかかる。
「んうぅぅ……!」
「落ちろぉぉぉっ!」
「やらせんぞ、侵略者め!」
しかし、又してもM1アストレイがアカツキを庇って胴体を切り離されて爆散する。
「はぁ……!?」
「なっ…!?また……」
カガリは自らの力不足を呪い、シンは目の前の現実が信じられずにいた。
「どうして……何でそんなに簡単にこいつの為に命を投げる!?おかしいじゃないか、絶対に!」
尚も逃げようとするアカツキに、シンはそのパイロットが誰であるかに興味を持ち、それを確認する為に接触を試みる。しつこく追いかけてくるデスティニーにカガリも抵抗するが、如何せんパイロットとしての技量に大きな差が有る為にあっさり捕まってしまう。
シンはカガリに呼びかける。
『誰だ、金色のパイロット!部下を盾にして逃げるなんて…それでも兵士か!?』
「……!この声…インパルスのパイロットだったシン=アスカって言う……!」
接触回線から聞こえてきた声にカガリは動揺する。同時にデスティニーのシンにも、聞こえてきたカガリの声に感情が沸き上がるのを感じた。
「お前…アスハ…オーブ国家元首……!」
『放せ!私は行かなければならないところがある!』
「何でお前がそんなものに乗っている…?どうして味方を盾にして自分だけ逃げようとしたぁ!?」
激昂するシンの大声がカガリの耳に痛かった。
「私は彼らにこの国の未来を託された!私にはすべき事があると、彼らに教えられた!」
『言訳だ!お前が奴等を殺したんだ!』
切れるか切れないかのギリギリのラインで収まっているシンの感情は不安定に揺れ動く。確かに力不足のカガリを庇って彼等は死んでしまったが、シンは自分でした事を全てカガリの責任にしようとしていた。
自らを正当化するようにアロンダイトを振り上げる。
『よ、止せ!』
「ウルサイっ!」
カガリの制止を無視し、デスティニーが振り下ろしたアロンダイトはアカツキの左腕を切り落す。
「はあぁぁぁっ!」
「やられる!」
続けざまにアカツキの胴体にアロンダイトが迫る。
しかし、カガリが覚悟したその時、上空からのビームがアロンダイトを破壊した。
「何っ!?」
シンが警告の鳴る方向に目をやると、そこには良く知っているが知らないMSがデスティニーを見下ろしていた。
「あれは…フリーダム……なのか……!?」
シンが呆気に取られている間にカガリはアカツキを司令部…ユウナの下に向かわせる。
信じられない光景を前に、シンはそれに気付く事も無く、やたらと偉そうに見えるストライクフリーダムを見つめていた。
〜つづく〜
GJ
GJ!!!!
GJ!
>>やたらと偉そうに見えるストライクフリーダム
噴いたw
カミーユが変だぁぁ
122 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/11(土) 18:20:48 ID:/bMkJRWd
GJ!!続きが楽しみだ。
>>121 NTだからな
たまに論理の過程をすっ飛ばして答えにたどり着くから視聴者・読者には分かりにくいことがある
GJ
カミーユはなんでいきなり暗黒面に行ってるんだ?
ちょっと展開が読めない
サザビーに残留するシャアの怨念に取り憑かれたんだよ
カミーユっていうのは特に常人には感じれない
神の視点というか観客側の視点を持ってるから
議長の企みが解ってしまうんじゃないか?
だからそれに苦悩してるのがΖの話でもあったし
>>125 サイコフレーム積んだことがマイナスになってしまったなw
こっからカミーユの行動はどうなっていくのかね…
議長側にずっといるとは思えないし
かと言ってAA組の偽善とは違うし
少しZAFTに疑問をもったシンと一緒にプラント内部から変えていこうとするんじゃないか?
>>129 それがベストだけど難しいよな
なんだかんだでカミーユもまだ18くらいの子供だし
オーブって同盟組んでザフトに攻撃仕掛けてるから交戦国なんじゃ?
Z当時でシャアが27……考えてみれば政治指導者としては若いんだよな
シロッコは幾つだったっけ?
>>132 シロッコは26歳
ハマーンは20歳
まあ富野もスポンサーの都合で若くしてるだけで
5歳から8歳足せば現実に近くなるとは言ってた
GJ!!
いいね。この先の読めない展開
カミーユがサイコフレームを通して
全人類と共鳴とかそういう流れになるんじゃないのか?
そのためのサイコフレーム持ってきたんだと思うし
ハイパー化だけならバイオセンサーでも構わなかったろうし
まあ多少強引だったがサイコフレームは確かに奇跡を見せるための
伏線だろうからな
GJ!!
しかし、やはり地上に降りてしまったか…
チラ裏だが
アークエンジェルは、この戦いに参戦せずに、宇宙にいるエターナルが、Zの本編ように白旗を掲げて…
ラクス・虎・キラがプラント本国へ行き、議長と会談するような展開を期待していたのだが…
スレ汚しゴメン!!
やはりアロンダイトは破壊される運命なのか
タリア死ね
>>やたらと偉そうに見えるストライクフリーダム
俺も吹いた
シンもNTの力に目覚めてるんだろうか?(w
あれかな、シンの直感からして、やっぱキラはストフリの中で
『もう油断はしない』
『この新しい力なら負けはしない』
『オーブは焼こうとする敵は僕が倒す』
とか考えてるんだろうか?
ラクスの心境を考えると、キラ最低男だな…
タリアとカミーユの問答が
踊る大捜査線ぽく感じた…
>>139 まあまあ。
確かに、タリアの態度は癪に障るが、彼女も上下の板ばさみで苦労してるんだよ。
中間管理職の悲哀ですがな。
第三十四話「憎しみの季節」
再び起こったオーブでの戦闘。それは次第に激しさを増していた。
その中で、突如現れたストライクフリーダムに、シンは動揺を隠せないでいた。
そして、次いでアークエンジェルと交戦するミネルバのブリッジに新たに上空から現れた物体の報告が入る。
「何が落ちてきたの!?」
「た…大気圏突入カプセルです!……中から何か出てきます!」
赤く、隕石を思わせる大気圏突入カプセルはやがてバラバラになり、中からは三機の黒いMSが姿を現す。
「宇宙からのザフトの増援は!?」
「待って下さい…情報が混乱しているようです……出ました!……全て…撃墜されています!」
「全て撃墜……!?そんな馬鹿な!」
『みんな気付いているか?空からお客さんだぜ』
ハイネからミネルバのパイロット全員に通信が入る。
「この感じ…迷惑な奴…フリーダムっていう奴が来たのか?あれで生きていたとは!」
カミーユがキラの存在を察知する。その時視界にアカツキが一瞬だけ入る。
「あれ、今の百式なのか?……宇宙から降りてきたのは……アングラの出版物で見た事がある…MS-09!一年戦争のMSが何で!?」
カミーユの目の前に信じられない現実が広がる。
フォルムが違うとはいえ、アカツキの金色の外見はカミーユに自分の世界でのMS"百式"を連想させる。更にはカミーユにとっては骨董品にしか見えないずんぐりとしたMS、ドムが三機降りて来たのだ。
「何なんだこれ……こうも僕の世界のMSだらけなんて……」
あまりの事にカミーユの思考が絡まる。しかし、Ζガンダムにそっくりなムラサメ、インパルスをはじめとする"G"と呼ばれるMSはどう見てもガンダムである。それにザクやグフ等、外観は違っても同じ名称のMSはいくらでもあった。
そんな事を思い出し、カミーユはドムも百式っぽいアカツキも今更の事と割り切り、頭の中を処理する。
「もう一機?」
ふと、カミーユは気付く。それまでの派手な登場の仕方の敵増援とは明らかに毛色の違う、おとなしい登場をするMSを見つけた。
その姿はハイネのセイバーよりもくすんだ赤で、間接はシルバーに塗られている。
しかしそれは戦闘に参加する事無く、アークエンジェルの方向へ向かって行った。
「何なんだ一体…!?」
『カミーユ!宇宙から降りてきた三機は俺とお前とルナマリアで対応するぞ!』
「レイは!?」
『シンの援護に向かわせた!』
「了解!ミネルバはどうなっている!?」
『友軍の艦から援護が出た!心配するな、デブ退治に行くぞ!』
ハイネはその外見からドムをデブと呼んだ。カミーユは安直だな、と内心で苦笑しつつ二人と共に三機のドムの元へ向かって行った。
「お前は俺が倒したはずだろ!何でまだ生きている!?」
咆哮を上げるシンがストライクフリーダムに躍り掛かる。カガリと出会った事、自分が倒したはずのキラがまた自分の前に現れた事がシンの心の余裕を奪っていた。
キラはデスティニーのビームライフルをかわし、敢えてビームサーベルによる接近戦を仕掛けた。アロンダイトを破壊した事で、接近戦におけるデスティニーの戦闘能力は落ちているだろうと踏んだのだ。
「応えろ!お前は俺の邪魔をする為にここに来たのか!?」
ストライクフリーダムのビームサーベルをフラッシュエッジで受け止め、シンはキラに問い掛ける。
「君は…インパルスの!」
シンの声を聞き、瞬間的にキラはデスティニーのフラッシュエッジを弾き、体当たりをかまして引き離した。前回のシンとの戦いで芽生えた潜在的な恐怖心が、直感的にシンを近づけてはいけないと反応した。
「んぐ…こいつぅ!」
シンはカミーユとの模擬戦で見せた高速機動攻撃を繰り出す。
キラは初めて遭遇する未知のMSの動きに戸惑った。
「残像…!?何処から……!」
虚を突かれたキラは動きを止めてしまう。そして、シンが攻撃してきたのはストライクフリーダムの背後からだった。
「くっ!」
キラはそれを何とかシールドで受け止めるが、直後に反対側の背後からビームが飛んでくる。
「くそっ!」
それにも対応したキラは流石といった所だろう。しかし、打開策が在る訳でもなかった。
「インパルスのパイロット…あの時よりも更に強くなっている!」
方々からの攻撃を何とか防いでいたキラだが、シンの成長に驚いていた。
「何がフリーダムだ!?俺の動きについてこれないお前の何処が自由だ!」
だが、ひたすら背後を狙うシンの攻撃は徐々にパターン化し、キラがそれに慣れるのに時間は殆ど必要としなかった。
「そこっ!」
見切られたシンの動きはキラの予測に引っ掛かり、待ち伏せして構えていたストライクフリーダムのビームライフルに捉えられる。
その攻撃をシンはギリギリで防御したが、背後狙いを繰り返した結果、それが習慣化して更なる待ち伏せを受ける。
「読まれてる…乗せられた!?」
シンは仕方なくオールレンジ機動を止め、ストライクフリーダムと向かい合う。
デスティニーの高速機動は機体だけでなく、パイロット自信にも大きな負担を掛ける。それ程長い間行っていたわけでもないのに、シンの体は思った以上に疲弊してしまった。
「く…少し気持ち悪い……!」
直角に曲がるようなデスティニーの動きは曲がる時に強烈な重圧をパイロットに与える。勿論、少しでもそれを緩和する為にコックピットシートにも仕掛けが施されているが、所詮は付け焼刃的なものでしかなかった。
胃の中を猛烈にシェイクされたシンは、多少の嘔吐感をもよおし、精神的にげんなりしていた。加えて、一番負担が掛っていたのは首だった。ストライクフリーダムの相手に、このコンディションでは絶望的に不利である。
「!?」
シンが一旦退こうかと思ったその瞬間、ストライクフリーダムを別方向からのビームの束が襲った。
ひらりと避けるストライクフリーダム、視線はビームを放った相手…レジェンドに向いていた。
『シン、動きを止めるな!奴が復活したというのなら、もう一度討つのが俺達の使命だ!』
「レイ!」
『コンビネーションで決着をつける!仕掛けろ、シン!』
「わ…分かった!」
不調を押してシンは再び高速機動を始める。一度は見切られた動きだが、今度はレイと二人掛りでの二面攻撃だ。
次々と入れ替わる二人の動きと常に角度を変える十字砲火に、キラは必死になって避け続けるしかなかった。
「く…!彼等の動き…手強い!」
ストライクフリーダムのコックピットの中で操作するキラの両手の動きは、最早人間のこなせる域を超えていた。思惟が弾け、二機のGに囲まれても決定的な打撃を受けないキラは驚異的であった。
しかし、其処から抜け出せないのも又、事実であった。
アークエンジェルのMSデッキで、先程の機体が崩れるように入り込んできた。
素人が操縦していたのであろう、あちこちに機体をぶつけ、機材が飛び散る様はちょっとした嵐の後になっていた。
その機体のハッチが開き、出てきた人物にアスラン=ザラは驚愕した。
「申し訳ありません……」
『マイド、マイド、ミトメタクナイ!』
「ラクス……!」
ピンクの派手なパイロットスーツに身を包み、かつてアスランが製作し、ラクスにあげたハロを伴って降りてくる。
「君が直接MSに乗って来るなんて……」
「キラに連れてきてもらいました」
ヘルメットを取り、パイロットスーツと同じ色の髪が柔らかく舞う。
「…これは、ジャスティスか……?」
「そうです」
「俺をこれに乗せる気か?」
「強制は致しません。ですが、これは貴方が乗るのに相応しいと思って持ってきました」
「ふざけた事を…俺はカガリがオーブに還る事には協力するが、君達の軍事行動には協力しないと言った。だから、この機体はバルトフェルドさんにでも預ければいいだろ。俺は戦いたくない……」
アスランは横を向いてラクスから視線を外す。しかし、ラクスはそれに構わずに続けた。
「貴方が何を思おうと貴方の自由です。しかし、貴方がカガリさんを守ろうと思っているのなら、このオーブを守る為に今は力が必要なのではないでしょうか?今のままでは、貴方は余りにも無力です」
「俺はザフトだ!同胞を敵に回してまでして戦いたくは無い……」
「そうではないのです。貴方がアスラン=ザラである為に、わたくしは今はこれに乗ることが正しい事と思っています。ここでジャスティスに乗らないという選択もあるでしょう。ですが、それではきっと後で後悔する事になると思います」
「…俺にカガリの為に同胞殺しをしろと言うのか…ラクス!」
「違います。カガリさんを救う為にこれに乗ったほうが良いと言っているのです。それが、貴方の為ににもなりましょう……」
「く……」
アスランの思考が廻る。仲間のザフトと大切なカガリ…二つの錘が天秤の上で拮抗する。
アスランは未だにミネルバに帰還することを諦めていない。カガリがオーブへ戻る事を見送った後に戻るつもりだったのだ。
しかし、今このインフィニットジャスティスで出て行けば、恐らくその望みは殆ど断ち切られてしまうであろう事は分かっていた。
戦力的に予断を許さないオーブの状況を考えると、それでもインフィニットジャスティスに乗らない訳にはいかないということも分かっていた。
「もしかしたら、俺はジャスティスに乗ったままザフトに戻ってしまうかもしれないぞ」
「それが貴方の意思であるなら構いません。ですが、それが貴方が本当に望む事では無いと信じております」
「……っ!」
眉間に皺を寄せるばかりでアスランは中々決意を固めない。
「…こうしている間にも、兵士達は戦い、その命を落とし続けています。アスラン=ザラはこのような時にもそうして頭を抱えているだけですか?見て見ぬ振りをしてやり過ごす事が貴方ですか?」
「口ではそう言えるがな……」
「考えてください、アスラン。ここでオーブを見捨てるのであるか救うのであるかを…そして、決めてください。貴方にはそれが出来るはずです…あの戦争で辛い経験をなさった貴方なら……」
「だが…俺は……」
「何かしたい時、何も出来なかったらそれが一番辛いよね……キラはそう言っていました」
「……」
ラクスがそう言い終えると、少し考慮した後に、アスランは無言のままインフィニットジャスティスの元へ向かう。そして、そのままコックピットに乗り込むと、ブリッジに発進の合図を呼びかけた。
「ブリッジ!アスラン=ザラがジャスティスで出る!発進のタイミングを教えてくれ!」
『え…!何が!?』
「アスラン=ザラがジャスティスで出る!発進のタイミングを教えてくれ!」
半ばやけくそに近いアスランの怒声に、応対に出たミリアリアも困惑する。
その事をラミアスに相談した所、それがラクスの意思でもある事を悟ったラミアスは許可を出す。
『了解、20秒後に前方の進路を開けるわ。出撃後はそのままキラの援護に向かって!』
「了解」
『カウント開始します!』
アークエンジェルのカタパルトハッチが開かれていく。その先にちらりとミネルバの姿が見えた。
アスランはそれを視界に入れることに罪悪感を抱き、目蓋を下ろす。
いつからこうなってしまったのだろうか。アスランは、アークエンジェルの面々に嫌悪感を抱きながらも憎みきれなかった。
それは単にアークエンジェルに長居しすぎただけではなく、元々潜在的に存在していたアスランの根幹にある気持ちがそうさせたのだろう。
拉致された形になったキラを憎みきれず、ラクスの言葉にもどこか気を許してしまう辺り、自分は二年前と一切変わっていない証拠だろうと思う。否、変わろうとして失敗したと言った方が良いかもしれない。
結局このような形でザフトを離れるのなら、最初からもっと素直にアークエンジェルに馴染んでおけば良かったとさえ思える。
それが最低な感情である事を分かっていながらも考えてしまうのは、自分が根っからのどうしようもない人間の証だろうと自嘲する。
しかし、オーブに侵攻してくるザフトはどうしても許せなかった。それはカガリに惚れてしまった故の悲しい性なのかもしれないが、それが自分なのだから仕方ないと自らに言い訳するしかない。
ふと、ミネルバの面々の顔が浮かんでくる。その記憶は、アスランの心に大きな負い目となって圧し掛かる。
『カウント5秒前!4、3、2、1…ジャスティスどうぞ!』
「アスラン=ザラ、ジャスティス出る!」
アスランは目を見開き、アークエンジェルより鶏冠のついたGが飛び出す。
目の前にはミネルバ…しかし、その攻撃はラミアスが上手く前方から逸らしていた為、アスランは難無くその場を抜ける。
新生ジャスティス…インフィニットジャスティスの初陣であった。
インフィニットジャスティスが飛び立って行った後、ラクスは誰にも見られない場所で深い溜息をついた。本音を言えば、アスランにMSを託すのは一か八かの賭けである事はキラから聞いていた。
しかし、それでも自分の成さねばならない役割はアスランにインフィニットジャスティスを託す事であると、これまでの自分の行動から解釈していた。
周囲の期待に応えるにはこうするしか道が無いとラクスは思う。
既に一本の道しか見えていないラクスは掛け離れていく自分の想いと行動に辟易し始めていた。
「結局、わたくしはこのような事しか出来ないのですね……」
『ワカサユエノアヤマチ!ワカサユエノアヤマチ!』
「ピンクちゃん……」
ピンクのハロの言う事が今のラクスには最も当てはまった言葉だろう。それに気付かずしてラクスの安住は無い事を、ピンクのハロは知っているかの様であった。
しかし、今のラクスにはその事に気付けない周囲からの期待を纏っている。その期待を脱ぎ捨てない限り、彼女はずっとこのままだろう。
それは、ラクスの人生の錘にしかならない。そして、その錘は少しずつラクスを押し潰していっている事に誰も気付いて居なかった。
オーブに加勢した三機のドムトルーパーのパイロット、ヒルダ、ヘルベルト、マーズは良く訓練された兵士だった。オーブ本土に侵攻してきたザフトのMS群を相手に、三機でのコンビネーションで獅子奮迅の活躍を見せる。
紅一点のヒルダを隊長に他の二人がサポートに回り、並み居る敵を寄せ付けない。
三位一体の攻撃"ジェットストリームアタック"は攻防一体の戦術で、一列に並んだドム三機は通りがかるだけで爆発の花火を打ち上げていった。
「ヘルベルト、マーズ!このまま一気に押し返すよ!」
ヒルダが高揚した声で二人に話しかける。
『ですが姐さん、これでは余りにも歯ごたえがありませんぜ?』
「馬鹿言ってんじゃないよヘルベルト!ここで手こずってたらラクス様の為にならないじゃないか!」
『そうですよ、ヘルベルト。私たちの目的はオーブからザフトを追い出す事。この戦闘は楽しむ為のものではない事は分かっているでしょう?』
ヘルベルトの発言にマーズが横槍を入れる。
「その通りだよ、マーズ!いいね、ヘルベルト、勝手な事はするんじゃないよ!」
『了解了解!姐さんに嫌われたくないですからね!』
「ふん、殊勝だね…今の言葉、忘れるんじゃないよ!」
『二人ともそこまでにしましょう。新手が来ましたよ!』
マーズが二人に警告する。
「おや…?あれは噂のミネルバとやらの……」
『へへっ、こいつは大物だ!姐さん、俺の願い、叶いそうですぜ!』
「いいだろう…ガス抜きの相手にしてやんな!」
『『了解!』』
三人の視線の先にはセイバー、インパルスそしてウェイブライダーがいた。
『相手も三機だ!俺達と奴等…どっちの連携が上かで勝負がつく!遅れを取るなよ!』
『了解!赤の実力、見せてやるんだから!』
「ドムが三機…油断は出来ないな!」
ハイネのセイバーを中心にインパルスとウェイブライダーが散開する。
空中戦の出来ないドムを相手にするならば、このまま空中から攻撃した方が有利である。
「ちっ…はしっこいね!敵が散開しているなら固まっているのは危険だ!こっちも散開するよ!」
ヒルダの号令と共に三機のドムはそれぞれの相手に向かって散開する。
マーズはカミーユへ、ヘルベルトはルナマリアへ、そしてヒルダはハイネの下へ向かっていった。
「何だ奴等!連携取らずに各個撃破するつもりか!?」
セイバーが向かってくるヒルダのドムに向かってプラズマ収束ビーム砲を放つ。
「はっ!見え見えなんだよ!くらいな!」
ホバー移動のドムは四輪車がドリフトをする様にスライドして手に持ったバズーカ砲からビームをセイバーに見舞う。
「下からご苦労さん!」
セイバーもそれを事も無げにかわす。
空中対地上では圧倒的にセイバーの方が有利であるが、それを感じさせないのはドムの運動性がホバーのお陰で思った以上に高いせいでもある。
それはルナマリアとヘルベルトとの対決にも同じ事が言えるが、如何せん射撃が苦手なルナマリアはドムの運動性の高さに、攻撃を当てられる気がしなかった。
「ちょこまかと鼠みたいに!何で見た目通りの動きじゃないのよ!」
苛立ちを見せるルナマリアだが、空中に陣取る利点を生かしてビームライフルを連射する。
「無駄無駄!そんなアバウトな狙いじゃ俺を捉える事など出来ないぜ!」
インパルスの射撃を嘲笑うかのごとく、ドムはその外見からは想像出来ない動きでルナマリアを翻弄する。
「そんな所に居ないでこっちに降りて来いよ!俺と遊ぼうぜ!」
挑発するようにドムが意味不明な無駄な動きをする。それはルナマリアを馬鹿にしている様で、不愉快な動きだった。
「あったまきた!そんなにやられたいなら、行ってやるわよ!」
挑発に乗ったルナマリアはインパルスにビームサーベルを引き抜かせ、ヘルベルトのドムに向かって突進する。
「まんまと乗ってきたか!それじゃ、こっちもお前に合わせてやるよ!」
ヘルベルトもドムにヒートサーベルを抜かせる。突進してくるインパルスに対して真っ向から挑もうとしていた。
しかし、インパルスは一撃をドムに防がれるとそのまま駆け抜けて再び空中に逃れた。
「こいつ…やる気あんのか!?」
ルナマリアの行為に怒りを顕わにするヘルベルト。それに対してルナマリアは彼よりも落ち着いていた。
「一々付き合ってあげられますかっての!あんたなんかこれで十分よ!あたしはさっさとあんた等を倒してアスランを探しに行くんだから!」
対峙するこの二人も決定的な勝敗が着きそうに無い。
そして、もう一組の対戦は膠着状態の二組とは違い、ウェイブライダーから変形を解いたΖガンダムがマーズのドムと同じ土俵で戦っていた。
「こいつが噂のΖガンダム……どの程度のものか見せてもらいましょうか」
バイザー越しの眼鏡が怪しく光る。
マーズはバズーカを放つ。カミーユはそれを事も無げにかわす。
「いい動きをしますね…ですが、ドムの動きに付いて来れますかね!」
ドムのモノアイが光り、Ζガンダムに正面を向けたままスライドを始める。
順次放たれるバズーカのビームを避ける為にΖガンダムは空中にジャンプする。
それを追いかけてドムもジャンプし、サーベルを引き抜いてΖガンダムに躍り掛かる。
カミーユはそれをシールドで防いだが、ドムの胸部にある砲門らしき穴にエネルギーがチャージされているのが目に入った。攻防一体のスクリーミングニンバスである。
「空中では身動きが取れまい!」
「目眩ビーム…違う!」
瞬時にカミーユは察知して、ウェイブライダーに変形して逃げる。
「ぬ…!逃がしましたか……!」
ドムはそのまま地上に降り立ち、Ζガンダムも変形を解いて離れた場所に降り立ってビームライフルを構える。
「厄介ですね、可変型は」
「ジブリールはまだ捕まらないのか?」
マーズを相手にしていてもカミーユが気に掛けるのは作戦の成否である。
オーブの抵抗を黙らせるのが一番の近道であると知りながらも、ジブリールがザフトによって捕えられればこの戦闘は終わる。それまでは出来るだけ敵を倒したくは無いと思っていた。
カミーユはドムの足元をビームライフルで狙う。
「当たりませんよ、それでは!」
マーズはホバーで簡単にかわすが、仕掛けてこないΖガンダムに違和感を覚えていた。
「何故仕掛けてこないのですか……余裕のつもりですか!」
舐められたと思ったマーズのドムは胸部の砲門からスクリーミングニンバスを放ってΖガンダムに突進する。それはバリアのようにドムの前面を包み、瓦礫を破壊しながら突っ込んで来る。
Ζガンダムがビームライフルを撃つが、それは弾かれてしまった。
「さあ、かわせますか!?」
「く…!」
ほぼ無敵状態のドムを相手にカミーユは逃げるしかない。ウェイブライダーに変形し、空中へと逃れる。
「又ですか…私も見くびられたものですね!」
ドムがその巨体に見合わぬ加速でスクリーミングニンバスを纏ってジャンプしてくる。カミーユもウェイブライダーに加速を掛けてかわすが、一度地上に着地したドムは再びジャンプして追いかけてくる。
「バッタかよこいつ!?」
「いつまで持ちますかね!」
逃げるカミーユと追いかけるマーズ…この両者も決着が付きそうにない。
三人がそうこうしている内に、ストライクフリーダムと抗戦するシンとレイの下にアークエンジェルからの増援が駆けつけてきた。
「ん…何だ、あれは?」
『レイ…見た事ないか、あれ……!』
ビームライフルを撃って邪魔をしてきた機体を見て二人が動きを止める。
「あれはジャスティス!アスラン……」
何とか持ち堪えていたキラはインフィニットジャスティスの介入に胸を撫で下ろす。デスティニーとレジェンドに攻撃したという事は、アスランはオーブの味方になってくれるという事だ。
苦戦していたキラにしてみれば、助け舟である。
『ミネルバのパイロット二名に告ぐ』
インフィニットジャスティスからデスティニーとレジェンドの回線に通信が入る。
「この声…アスラン……!」
「本当に生きていたか……」
『それに乗っているのはシンとレイだな?直ぐにオーブから撤退するようにタリア艦長に進言してくれ、お前達の行為は侵略そのものだ』
「アスラン=ザラ…その前にこちらの質問に答えてもらおう。何故貴方がそちら側の味方をするのか…」
『力尽くでジブリールを捕獲しようなどと考えるザフトに正義は無い。俺はそれを止めるために!』
「それがザフトを裏切った貴方の言い分か…」
『レ…レイ……』
動きを止めた四機のG。アスラン一人の介入でそこだけ戦闘が止まってしまった。
『お前達ザフトが間違った方向に進もうとしているから、それを正す為に俺はオーブの味方に付いた。ザフトの行為が平和に向かっているようには思えない』
「逆だな、アスラン=ザラ。ジブリールを匿うオーブこそ、この戦争を長引かせている原因と言える。自らの事を棚に上げて、こちらを悪く言うのは止めて貰おう」
『なら、お前達が正しいと言えるのか?ジブリールを渡さないからって力に頼って侵攻して来るザフトが正しいと言えるのか!』
『さっきから聞いてりゃ……!』
『!?』
レイとアスランの会話にシンが割り込んでくる。
「アスラン!あんた、そんな正しいだの間違ってるだの言う前に俺達に言う事があるだろ!?生きてたなら何でミネルバに戻って来なかったんだ!?」
『それは……!』
「答えろよ、アスラン=ザラ!このまま裏切り者として俺達と戦う気か!?」
『アスランはそうじゃなくて…!』
「フリーダムっ!お前は黙ってろ!」
『お…俺は……!』
覚悟は決めていたが、いざ裏切り者と言われるとアスランは黙ってしまう。彼が思っていた以上に精神的にズシリと来るものがあった。
「……アスラン、お前がこれ以上何も言わないのなら俺達はお前を裏切り者として処分する」
レジェンドがビームライフルをインフィニットジャスティスに向けて構える。
「させない!」
キラはその間にストライクフリーダムを滑り込ませた。
(フリーダム……キラ=ヤマト……!)
レイの表情が更に険しく変化する。
『シン、お前がアスランの処分をしろ。俺はフリーダムを排除する…!』
「レイ……」
『アスランはもう敵だ。奴がフリーダムの味方をする以上、奴はもうミネルバに戻る気は無い』
「……」
『いいな、奴は俺達を裏切ったのだ。信じていたお前の気持ちを裏切ったのだ。奴はアークエンジェルに捕まっていたのではない、進んで奴等の仲間に入ったんだ…今の仲間である俺達を見限って、昔の居心地の良い仲間の下へ逃げたのだ』
「アスラン…ザラ……!」
『その気持ちを奴にぶつけろ。邪魔をするフリーダムは俺が落とす。そして終わらせるのだ、戦争を!』
「アスラン=ザラァァァァッ!」
叫ぶが早いか、シンはアスランに対して躍り掛かった。体調不良も怒りで忘れる程シンは興奮していた。
「シン!?」
アスランは猛スピードで接近してくるデスティニーにビームライフルを放つ。
しかしそれをシンはあっさりかわすと、手にしたビームサーベルを躊躇無く振り下ろす。
「止めろ、シン!」
アスランはそれを脚部の爪先にあるビームサーベルで蹴り上げる。
「これ以上オーブを傷つけるな!ここはお前の故郷だろう!?」
シンは問いかけるアスランの声を無視して再度ビームサーベルを振り下ろす。
「関係有るかよ!?あんたが敵になった事とオーブが俺の故郷だって事が関係あるのかよ!」
『俺はお前が自分の故郷を傷つけるのを止めたい!』
「なら…今すぐにフリーダムを落とせよ!俺達の敵になるなよ!俺達を裏切っておいて勝手なことを言うんじゃない!」
『!?』
インフィニットジャスティスはデスティニーのビームサーベルをビームシールドで受けていたが、それを弾き飛ばしてビームサーベルの柄を取り出す。
インフィニットジャスティスのビームサーベルは他の一般のビームサーベルとは違い、二本の柄を連結し、その双方から刃が伸びる。
『言った筈だ!今のザフトの進む道が間違っているから、それにお前達が利用されているから…俺はそれを正したいだけだ!』
「都合のいい言い訳を…!そんな事決める権利があんたにあるのか!?あんたは正しいのかよ!」
『俺はザフトに復隊する時にデュランダル議長に抑止力になるように言われた!フェイスに任命されたのはその証だったんだ!』
自分は馬鹿だと思った。インフィニットジャスティスに乗って戦場に立った時点でそんな言い訳など通じるはずなど無いのに、それでも言ってしまった。
デュランダルの言葉を自分の都合のよい風に解釈し、自分の方が正しいのだと思い込みたかった。
半ばヤケクソで出てきてしまったとはいえ、言い訳でもしなければやってられない気分には違いない。
シンは、そんなアスランの気持ちが透けて見えているかのようにアスランの言葉を歯牙にもかけない。
「ふざけるな!ザフトを裏切って…一人の女をダメにして置いて、何が抑止力だ!あんたのやっている事は余計に問題を増やしているだけじゃないか!」
『女…!?』
「あんたが居なくなってルナがどれだけ苦しんだか…あんた分かってんのか!?」
『ルナマリア…しかし、俺にそんなつもりは無かった!』
「なら、何でもっと早くその事をルナに伝えなかったんだ!あんたがいつまでも曖昧な態度で居たから!」
『俺にそこまで責任は取れない!』
「この…無責任野郎ぉぉぉ!」
完全に頭に血が昇ったシンは、目の前のインフィニットジャスティスに無我夢中に攻め立てていく。
「……!この感じ…アスラン!?」
マーズと交戦中のカミーユがアスランの存在を感知する。
「止まった…?それが命取りですよ!」
サーベルで仕掛けるマーズだったが、そこをΖガンダムのグレネードランチャーに狙われる。
「む…!」
それをかわそうとしたが、弾頭に備えられたワイヤーがドムの腕に絡まる。捕えられたドムはΖガンダムに引っ張られ、態勢を崩す。
「何ですと!?」
「おとなしくしてろ!」
バランスを崩されたドムのランドセルをビームサーベルで破壊し、そのままワイヤーを切り離して放り投げると、カミーユは膠着する二人の下へ向かっていった。
その頃のハイネとルナマリアは、合流して二人でヒルダとヘルベルトを相手にしていた。そこへΖガンダムがやって来る。
「カミーユ!」
「やったのか、カミーユ!?」
二人がカミーユに問いかける。
「あれは…マーズがやられちまったってのかい!?」
『姐さん、慌てなさんな!レーダーに反応は残っている、死んじゃいないぜ!』
「止めは刺しちゃいないが…とにかく今はこいつ等を倒して……!」
『どうしたカミーユ?そんなに慌てて…』
「詳細は後だ!」
時間を焦るカミーユはヒルダとヘルベルトのドムに向かっていく。
『カミーユ、どうしたの!?』
「俺が知るかよ!」
ハイネとルナマリアもそれに続く。
『姐さん!』
「ちっ…!こっちはマーズが欠けてるってのに、二対三じゃこっちが不利だね……腹立たしいけどここは一旦退くよ!」
『了解!』
「マーズの回収、忘れるんじゃないよ!」
『合点でさぁ!』
三人が仕掛ける前にヒルダとヘルベルトは退いて行く。
「逃がすもんですか!」
『ルナマリア、追撃はいい!』
「カミーユ…何でさ!?」
『そうだ、どうしてだカミーユ?』
『二人とも俺に付いて来てくれ。俺の勘に間違いが無ければ…そこにアスランが居る!』
「!?」
ルナマリアの表情が一変する。
『何処なの、カミーユ!』
「こっちだ!ハイネも!」
『あ…あぁ!』
ハイネとルナマリアはカミーユの後について飛び立っていく。
そこで待ち受けるのは更なる修羅場であった。
〜つづく〜
GJ!
いよいよ次回は壮絶な修羅場ですな
戦闘シーンの描写がいいねぇ、やっぱ。GJ!
相変わらずラクソは腹が立つな。やってることはアス…いや蝙ズラ野郎の洗脳そのものだ。
なんか無性にカガリ以外の4馬鹿に腹が立つぜ…
投下乙
スカート付とか丁寧?なこと言わずにデブっておいおい、シンプルな。
このハロ(不穏当発言につき検閲削除しました)。
それより優柔不断の結果、最悪な決断=出撃しちゃったアスランはどうなるものやら。
死ぬより壮絶な修羅場になるのか……まあ撃墜されてミネルバにお帰りというのも悪くないがね。
次回を刮目して待つ。
GJ
カミーユとアスランの再会か
マジで面白そう
GJです
凄い今更なんだが
デストロイ戦でカミーユがハイパー化してオーラで攻撃を弾いたときのことを
ミネルバクルーはなんか不思議に思わないのかね?
戦闘データとか見て
ラクスが夜神月と重なった。出撃さした時なんてLに勝利した笑みが浮かんだw
洗脳というのは強力だな
>>159 あの時はΖも被弾したから戦闘データも残ってないんじゃない?
シンとキラしかあのカミーユの現象は見てないんだし
俺の考えではアスランがザフトに戻って内部改革すると思ってたが
読みが違ったかな
もしザフトを正すなら前議長の息子のアスランはなんだかんだで影響力があるから
内部改革も実現できると思ったが
カガリのことばっかになっちゃったな…
GJ!
今回ラクスに抱いた印象は詐欺師って感じだな。
意味がありそうな言葉を並べ立てて、思考を誘導すると。
でも、せいぜいアスランくらいにしか通用しなさそうだがw
>>157 >まあ撃墜されてミネルバにお帰りというのも悪くないがね
そんな事になったら、今度こそ銃殺だと思うぞ。
いくら民兵組織とはいえ二回目はあるまい。
カミーユがラクスをテレパスで論破してやって欲しいよ
その傲慢は人を家畜にすることだと
戦場にドンドコ戦力送り込んどいてまだ迷ってるって・・・
凸助に対する思考誘導はある意味見事
最後になったがGJ
誰か死ぬのは確実だろうが…意表をついてシンだったら伝説になるな。
GJ!
キラがちゃんと残像に驚いてたのが地味に嬉しい。
ドムドムバーガー達も、既にこの時点で原作よりキャラが立ってるし。
しかしいいところで続くねえ。
裏切り野郎キタ━━(゚∀゚)━━━!!
アスランって原作でも頭スカスカな奴なのか?
つ…アスランいや、もうやつは凸で十分だ…どうしちゃったんだよ?
カミーユとの出会いは何ももたらさなかったのかよ
ラクスは迷ってんなら参加すんなよ…半端もんが一番アブねえよ
ここまで描けるとは…職人様GJ
ラクソもふざけてるが、ハゲの裏切りはそれ以上にふざけてるな。
所詮、毛髪の量と知能の低さは連動するらしい。
アスラン、次でルナマリア達磨にしてAAにお持ち帰りしたりして…
このアスランは最終戦でカミーユの怒りに触れて、金縛りにされてやられると予想
優柔不断男…orz
>>170 貴様、デギン公王は年齢的に仕方ないにしても、アリアス・モマ中尉や
クラブ・エース殿に喧嘩売ろってのか?
>>171 同人アニメと逆か…ラストじゃ運命に斬りかかる洗脳アホ毛が、ミネルバの
寸胴からの叫びでフリーズしたとこを墜とされたりして…
174 :
170:2006/11/12(日) 20:40:07 ID:???
>>173 CE世界では、ということにしておいてくれorz
もう最後はカミーユの怒りで全員金縛りでいいよ
「カミーユ!カミーユ!」
頭に響く声にカミーユは意識を取り戻し始める。
「女性の声?知っている感じがする・・・」
そして見開かれる目に白い機体と見知らぬ宇宙が広がる・・・
第一話「未知なるそら」
「ここは・・・一体?」
自分はシロッコと戦っていたはずだ。そしてシロッコをたおしたはずだそ。
そこまで覚えていたがそこからの光に包まれてからの記憶がない。
「俺は一体?それに・・・」
カミーユは目の前の白い機体を見る。
「カミーユ気がついたのか?」
「ハマーン・カーン・・・決着をつけにきたのか?」
「いや・・・そのようなつもりはない。あの劇場跡でおまえに言われた言葉で考えさせられたからな」
「そうか・・・あなたとは戦いたくないと思っていた。よかった・・・。それより戦いはどうなったんだ?エゥーゴは?」
ハマーンが暫く沈黙して、口を開いた。
「カミーユ・・・ここはグリプスがあった地点ではない。それに・・・ここがどこなのかも・・・」
「そんな!!」
カミーユは周りを見るが、なるほど確かにここは自分がいた場所ではない。それにとてもあれだけの戦いをしていたのに
恐ろしいほど静かだった。
「とても静かだ・・・・・なに?」
「なんだ!」
カミーユとハマーンは宇宙を感じ取るが、いつもの宇宙の感じではない。
「カミーユ感じたか?」
「ああ・・・なにかしっくりこないものがあるけど・・・」
「とりあえずここがどこかわからない以上うかつな行動はできん」
「そうだな・・・ハマーン今は立場を忘れて協力しあうしかない」
「いいだろう。それしか方法はないようだからな」
「でもなぜあなたもここにいるんです?」
「私にもわからぬ。キュベレイでグワンバンに撤退する途中だったのだが・・・突然光に包まれて気がついたら
みしらぬ場所にいて、そしておまえもいたということだ」
「そうか・・・」
カミーユは改めて宇宙を見回す。自分とハマーンはいったいどうなってしまったのだ?一体なぜこんな場所に?
カミーユは自問自答を繰り返していつのまにか沈黙していた。そしてハマーンがゆっくり口を開けた。
「さてこれからどうするかだが・・・ん!?」
ハマーンは遠くで光る光景を目で捉える。
「あれは・・・戦闘の光りか?」
カミーユも目でその光を捉える。そしてその瞬間二人の頭に言葉が走る。
「はやくユニウスセブンを砕け!!」
「くそ!!なんでこんなところ敵が!!」
カミーユとハマーンの頭に色々な言葉が走る。そしてそのイメージも頭の中で鮮明に映し出される。
「これは・・・あの隕石が地球に落ちようとしているのか?」
「どうやらそのようだな・・・」
「いけない!!これ以上悲しみ増やしたら・・・」
カミーユはZガンダムをユニウスセブンにむける。
「カミーユ!行くのか?」
「あたりまえだ!これ以上悲しみを増やしちゃいけない!!今のあなたにならわかるはずだ!!」
ハマーンは暫く沈黙する。そして劇場跡でのカミーユの言葉を思い出す。
”本当に排除しなければならないのは、地球の重さと大きさを想像できない貴方達です!!”
カミーユの言葉聞いてから改めて水の星をみつめる。
「まったくそのとうりだな・・・今までの私は・・・」
ハマーンが再び沈黙し、そして・・・
「わかった。私も共にに行こう。おまえと共に!!」
「よし!!行くぞ!!」
カミーユのZガンダムと、ハマーンのキュベレイがユニウスセブンにむかって飛び立つ。
ユニウスセブンに向かいながらハマーンはシャアのことを考えていた。
「今ならおまえが、カミーユに期待していた理由がわかる気がするよ・・・。カミーユこそ真のニュータイプかもしれぬ・・・
私はお前に代わり、カミーユの歩む道を見守ろう・・・」
しかし、カミーユとハマーンは自分達が今どのような状況にいるか、理解できていなかった。異なる世界で、
刻の涙を止めるために、今、二人の戦いが始まる。コズミック・イラの世界を蒼と白き翼、二体のモビルスーツが駆け抜ける!!
とりあえず書いてみました。主人公はカミーユで、
ハマーンは共に歩む同士で相棒です。迷惑ならこれ以上
書きません。
継続するならトリップ付けたほうがいいんじゃね?
これはこれで読んでみたい希ガス
ワッフルワッフル
とりあえず誤字脱字には気を付けて。
後は最後まで貫き通した事には善も悪もないってブラボーな人が言ってた。
185 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/12(日) 22:36:50 ID:pvbfTZBZ
又新たな職人さんか!!自分的にわ続きがすごく気になるので
投稿まってます!!
駄ニメはピンクも凸もゴキラもムカつく事この上ないが、
カミーユ In C.E. 73氏のラクス、アスラン、キラならば
許せてしまう俺は、このスレでは異端か?
こう心理描写が巧みだと、状況に流されてしまった結果として
それなりに納得できるものがあるんだよ
だいたい自分の18歳の時の事を考えてみるとさ、
状況に流されず、正しき道を見極めての行動なんて
とてもじゃないけど出来なかったと思う
>>187 そうだね・・・18の頃なんてそんなはっきりと見極めるなんて無理さ
ただ、それを免罪符にしているから許せないよ、やつらを。
そして、そんなやつらを哂ってやるような者がいないのも問題なんだけどな
コーディって18だともうとっくに成人してるはずなんだろ?
それでいてあの体たらくなのはさすがにトサカに来るものがある。
いや免罪符にはしてないだろ
自分たちの行為を正当化してるわけじゃなく、
それ以前の段階の流されてる最中
だから後から反省するようなら充分に許せてしまう
誤解なきように言っておくと「カミーユ In C.E. 73氏の3人」
の話ね
駄ニメの三馬鹿+周囲の大人は許せん
>>189 15歳が成人って事から考えると現実世界なら23歳に相当だわな
23なんて全然ガキだよ、実際の所はさ
コディの15歳はあくまで肉体的・学力的には成人って感じだな。
ナチュラルだって戦国時代にゃ15で立派に成人ですよ。
精神的には戦国時代の15歳の方が大人だと思う。
まず、あいつらは色々勉強しないとな。
今回のカミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏の分、
凸やピンクのアレ過ぎさにかすんでいるが、
>「フリーダムっ!お前は黙ってろ!」 や
>「ふざけるな!ザフトを裏切って…一人の女をダメにして置いて、何が抑止力だ!あんたのやっている事は余計に問題を増やしているだけじゃないか!」
>『女…!?』
>「あんたが居なくなってルナがどれだけ苦しんだか…あんた分かってんのか!?」
>『ルナマリア…しかし、俺にそんなつもりは無かった!』
>「なら、何でもっと早くその事をルナに伝えなかったんだ!あんたがいつまでも曖昧な態度で居たから!」
>『俺にそこまで責任は取れない!』
>「この…無責任野郎ぉぉぉ!」
などなど、シンがちゃんと自分の感性で凸の寝返りを非難しているのも高ポイント。
レイに煽られた部分もあるとは言え、完全にそれだけでグフを撃墜した
TV版に比べれば雲泥の差と言っていい。
凸がクワトロみたいだな。
>>196 体位に誤れ!
大尉は少なくとも自分の頭で考え、自分の信じた道をゆく信念の持ち主だ。
あっちへフラフラこっちへフラフラした挙げ句、桃色汚物のキチガイ電波で洗脳されるような、
さしずめラクソ脳をした蝙ハゲとは比較するだけでも失礼だろw
カミーユが甘ちょれえええええええええええええええええええええ
ピンク汚物は本当に糞だな。
少し禿がかわいそうに思えてきた。
どっちも変わらん
マインドコントロールは防御は難しいからな
軟禁して説得とは某カルト宗教の手口じゃないでそうか
???
すまんがこのところの話の展開、というか物語の構造がよく分からん。
作者はアスランになにさせたいんだ?
強くなりすぎたミネルバサイドの相手をさせたい……のかも知れんが…………
ちょっと無理のある展開かなと思う。
いまだに作者の中のAAの立ち位置がみえん。
>>202 道化では?
自分で考えてる振りをして、ただ流されてるだけの。
>>177 以前ハマーン搭乗フラグがどっかで立った時、
「ハマーンは影響力ありすぎじゃねえ?」とか意見出てたケド
考えて見りゃ、種世界にはラクスという「影響力の大きすぎる電波娘」
がいるのだから、毒をもって毒を制するって感じで、
バランスが取れて丁度いいかもとか思い始めてたんで、結構展開が楽しみ。
>>203 そう見えるってのはOKでも、実際そうだったらちょっと……
カミーユ「ラクス・クライン、お前は生きてはいけない人間なんだ!ここからいなくなれぇっ!!」
バイザーがパリーンっと
余と君とたくさんだ! ガラガラピシャーン
最後のザフト軍を洗脳・金縛りのとき、カミーユはどんな反応をするのだろう
でもこの作者氏は意外と読者を(良い意味で)裏切ってるからなぁ
212 :
応龍:2006/11/13(月) 17:46:27 ID:A1lSgHJI
177GJ
ハマーんが来ましたか、続きが気になりますね。ハマーンとラクスやデュランダルとかの掛け合いがどうなるか?
続き楽しみにしてます
>>202 無理があるように見えるのは当然だと思います。
ぶっちゃけミネルバでのアスランの扱い方は間違っていました。
本当はアスランにはもっとカッコイイ役割をさせようと考えていましたが、それではパワーバランスがミネルバ
偏りすぎてしまう。
AAが強くなければ話が盛り上がらないし、つまらない。
そう思ったので、早めに離脱させてみたんですが、そしたら今度はミネルバと対立させる過程が難しくなった。
そして、そこに苦心していたらいつの間にかどうしようもないへたれになってしまっていました。
んで、何が言いたいかと言うと、アスランは自分の物語の構成の上で仕方なく犠牲になってもらったということで、決して彼が嫌いなわけでは無いと言う事です。
その点でアスランというキャラクターに期待を持たせてしまったのは非常に申し訳なく思いますorz
と、言い訳したところで投下させてもらいます↓
第三十五話「オーブに死す」
オーブの国防本部に辿り着いたカガリはユウナを捜していた。ユウナはそこにはおらず、カガリの帰還を喜ぶ兵達のみで、その行方は知れなかった。
カガリはその場を追い着いてきたキサカとソガに任せ、本部に居た兵士数人を伴ってユウナ捜索に出た。
「何処に逃げたユウナ……」
護衛の兵士が突き当たりを曲がると、その場で足を止めてしまった。
カガリは何事かと思い、角の先に顔を出すと、其処にはユウナとその護衛が銃を構えて待ち伏せしていた。
「ユウナ……」
「待っていたよ、カガリ。さぁ…第二ラウンドと行こうか」
ユウナは側にある部屋の扉を指差し、カガリを手招きする。
「一対一でやろう。お互い物騒な物は出しっこなしで純粋な話し合いをしようじゃないか」
「カガリ様!彼の言う事など聞いてはなりません!貴方を陥れる為の罠です!」
ユウナの提案を当たり前のようにカガリの護衛が拒む。
「疑うのも尤もだけど、僕はそんな事はしないよ。心配ならカガリに銃を持たせればいい。僕は手ぶらで行かせて貰うけどね」
そう言ってユウナは両手をヒラヒラさせて何も持っていないことをアピールする。
「信用できるものか、そちらの手は読めている!どうせ伏兵が紛れているのだろう!?」
「まさか…僕に同調してくれたのはここに居る彼等で全てさ。それ以上の隠し玉なんて用意できるはずもないじゃないか」
「それもブラフであろう!カガリ様を亡き者にせんと企んでいる事はすでに分かっておるのだ!」
「止さないか…最初から疑って掛っては何も進展がない」
カガリが前に出て興奮する護衛を諌める。
「しかし…カガリ様、万が一という事もあります。その万が一で貴方を失うわけにはいかんのです」
「……」
「それでも行くと仰るのならこの防弾チョッキを御付けになって下さい」
「だが…これではお前が万が一の時……」
「構いません。これが役に立つのなら私の命など捨ててしまっても構いません」
「心配しなくても大丈夫だよカガリ。おい」
ユウナが合図を掛けると、ユウナの護衛達は手にしていた銃火器を全て放る。
「さぁ、君の望む舞台は揃えたよ。後は君が返事をするだけだ」
「そんなもの決まっている。Yesだ」
「よろしい……」
カガリとユウナは部屋の中へ入っていく。
残されたカガリの護衛達は戸惑っていた。
「お、お前達…一体何が目的なのだ?ユウナ殿の目的は一体何なのだ!?」
「君等に教える必要は無い。ユウナ様とカガリ様の対談が終わった時にその答えが出る」
「……!」
「我々はここで待つのみ。君等も黙って待っているが良い」
残された護衛達は薄暗い通路で、唯黙って時が過ぎるのを待っていた。
「さて…先ずは誤解を解いておかなければならないね。ジブリールを引き渡さなかったのは父上の独断だ。僕は彼を渡しても良いと思っていた事を伝えておくよ」
「その位は分かっている。そんな事より聞きたいのはジブリールの行方だ。何処に彼を隠した?」
「さぁ?僕はジブリールとは会っていないからね…恐らく父上が匿っているのだろう」
「……」
カガリは疑いの眼差しでユウナを見つめる。カガリはユウナの言葉を信用していなかった。
「疑っているようだけどね、本当に僕は彼の行方が分からないんだ。ただ…」
「ただ?」
「この混乱に乗じてやる事は一つだろうね……」
「何だそれは?」
「マスドライバーによる宇宙への脱出…多分今頃父上がジブリールをシャトルに乗せている頃だろう」
「なっ…!それが分かっていて何故!?」
「マスドライバーへの通路は複数ある。加えて金で父上に抱き込まれた兵達も居る。一応指示は与えておいたけどね、直ぐには捕まえられないだろう」
「……」
「こんな状況なら、捕まえるだけならザフトの方が早いかもしれない。強攻策に出るくらいだから、余程ジブリールに会いたいようだね、デュランダル議長は……」
「随分と余裕だな?」
「そう見えるかい?まぁ、彼の事は彼にご執心のザフトの方々に任せるとして、そろそろ僕達の本題に入ろうか」
ユウナは部屋の真ん中に置いてある二脚の椅子の一つに腰掛ける。いつも通り長い足を組み、もう一脚に腰掛けるよう手でカガリに訴え掛ける。
「私はいい」
ユウナを信用し切れないカガリはユウナの厚意を拒否し、決して隙を見せないという意思表示をする。その様子にユウナは呆れたのか、肩を竦めて溜息をした。
「何度も言うようだけど、今日の僕は君を殺そうだなんて微塵も思っていない。君と僕…とことんまで話をしようと思っているのさ」
「どんな心境の変化だ?この短期間で、お前の気が変わったなどと信じられるはずも無い」
「辛辣だね…君を殺すつもりが無いのは本当さ。けど…君がオーブの国家元首に相応しくないという意見は変わらない」
それまでのユウナの目つきから一転、鋭い目つきへと変わる。それはカガリを圧倒する程のプレッシャーを孕んでいたが、カガリもここで引くわけには行かない。
そのユウナの視線に抵抗するようにカガリもユウナを睨み返した。
「前にも言ったが、私が国家元首に相応しいかどうかは国民が決める事だ。それをここで決める事はナンセンスだ」
「違うね…ここで君が国家元首に相応しくないと君自身が認める事には意味がある。僕がそれを然るべき場で証言し、それを国民に知らしめれば自ずと君の立場は僕等セイラン家に転がり込んでくる」
「お前やウナトに其処までの人望があるとは思えないな…それでは軍部が最初に疑いを掛けるぞ」
実際、オーブ軍の中ではこれまで主導してきたセイラン家に対する不信感が育ちつつあった。ロゴスが窮地に立たされ、大西洋連合と同盟を結んでいたオーブの立場が悪くなった事が軍部の不信感に拍車を掛けていた事は事実であった。
「フフ…言ってくれるじゃないか?けど、もしその証言が君自身の口から出た場合、どうなるだろうね?」
「同じだ。私がお前に言わされていると思われるだろう」
「所がだ、カガリ?その場合、果たして君の言う通りの結果になるだろうか?」
カガリの言う事にも一理ある。しかし、ユウナはそれでも何かあるかのように余裕を見せる。
「……どういう意味だ?」
「確かにこの国の民は君を絶大に支持している…一度はこの国をほったらかしにしたのにも関わらずだ」
「……」
やはりカガリはこのユウナの言葉には弱かった。一番嫌な所を突かれ、少し顔を顰める。
「その君を慕っている国民が君自身からの退陣表明を聞いた時、どの様な反応を示すだろうねぇ?」
「……」
「答えられないかい?それとも、答えたくないのかい?」
「……」
カガリの頭の中でユウナの質問に対する答えが引っ掛かっているのを感じた。
出掛かっているのだが出てこない、カガリは嫌な予感がしていた。
「何となくは分かっているようだね。いいだろう、先を教えてあげるよ」
ユウナは答えないカガリの表情から察し、続きを話し始める。
「勿論、最初は君に辞めて欲しくないという声が圧倒的に多いだろうね。中には君の言う通りに僕等の陰謀だと声高に叫ぶ者も居るだろう。けど、そのカガリの退陣表明が最終的にどの様な解釈をされるのか……
それはその時にならなければ分からない事だけれども、放置されたのにも関わらず君の事が大好きな国民は、きっとこう考えるだろうね……?」
《我々の事を一番に考えて下さるカガリ様は、オーブを放置した事に責任を感じて元首を辞退なさるのだろう。ならば、そのカガリ様の意見を尊重して、我々はそれを気持ち良く受け入れてやろうではないか!》
「なまじ君の事に理解を示しているばかりに、国民はこんな風に考えるんじゃないかな?君を慕う余りにその言葉を信じ、疑う事無くそれを受け入れる……なれば、僕等の下に元首の座が転がってくるよね」
「……」
「まぁ…流石にそこまで上手く行く事は無いと思うけど、こちらから工作員を紛れ込ませて上手く扇動すれば十分可能な事だろう。そうなれば君は用済みだ、もう一度僕のお嫁さんにでもなるかい?」
何も言えないカガリの様子に余裕を感じたのか、ユウナの言葉にカガリを挑発するような軽さが入り混じる。
「例え話だけどね、僕の正しさに気付いた国民はきっと支持してくれるだろうよ」
すっかりユウナのペースに持ち込まれたカガリは歯噛みする。カガリにはここから言い返す手札を持っていない。
「君は国家元首を辞退するべきだ。一番この国を大切にしなければならない君が、あろうことか弟に拉致され戦場に乱入しては混乱を撒き散らす。そしてその場でやる事といえば理念を振りかざす事だけ……
不愉快だったよ、僕は……」
「オーブを大事にしていないお前が言うな!」
カガリの行動を非難するユウナにカガリが強く反発する。最初に戦争参加の口火を切ったユウナだけには言われたくなかった。
「私にオーブの国家元首たる資格がないと言い放つなら、それはお前も同様だ!国民に戦争を強い、今もそのお陰でオーブが戦場になってしまっている……!確かに私がしてきた事は褒められたものじゃないが、お前が国家元首に相応しいなどと間違っても思わない!」
「なら、君は僕よりも自分の方が国家元首に相応しいと思っているのかい?それこそ思い上がりだよ、自分の器の大きさを自覚しなさい」
「私は…そこまで傲慢ではない!それこそお前の傲慢を止める為に私はお前に会いに来たんだ!…お前が私に器の大きさの自覚を促すのなら、私はお前の傲慢さの自覚を促す!」
「僕が傲慢だって…?ククク…冗談じゃない……!」
カガリに傲慢を指摘され、ユウナの声のトーンが下がる。
「カガリ…君は僕をそのような俗物だと思っていたのか?ロゴスが力を落として大西洋連合の影響力が弱まり、その時になってやっと戻ってきた君が僕の存在を認めない……それこそ君の方が傲慢じゃないか!」
「私はオーブ国家元首だ!」
「それが傲慢だと言うのだ、カガリ!」
ヒートアップする両者。互いに感情の琴線に触れ、その高揚する気持ちを抑える人物は存在しない。
二人は感情の赴くままに言葉を走らせ、本音をぶつけていく。
「僕がこれまでどれだけの貢献をしてきたと思っている?それを忘れた君が、僕を傲慢と言わしめるものは何だ!?」
「国民を蔑ろにする心だ!それはこのオーブという国を蔑ろにする事と同義だ!」
「僕が国民を蔑ろにしている?それは君の方じゃないか!不安定な立場にあったオーブを見捨てて長期に渡る元首の空位期間!そして、その不安定な時期に行った事といえばオーブの立場を悪戯に悪くする破天荒な行為…あの時は連合に従わなければ今頃この国は無かった!」
「お前の言っている事は国という機関を守りたいだけだ!私が言いたいのは国民を守る事だ!国があって国民が居るのではない…国民が居るからこそオーブという国が出来たのだ!そこを履き違えているお前に、私にとやかく言う権利など無い!」
腕を薙ぎ、激しくユウナに語り掛けるカガリ。
珍しく顔を紅潮させたユウナはその興奮を抑えきれずに遂に椅子から立ち上がる。
睨み合う両者は一歩も引かず、お互いの持論をぶつけていく。
ユウナとカガリが意見をぶつかり合わせている頃、ジブリールはウナトの導きの下、大気圏脱出用シャトルに乗り込んでいた。
「御苦労です、ウズミ殿。これで私はザフトに反撃の矢を放つことが出来る」
「いえ…その代わりですが、事が成就した際にはこの私の事、くれぐれもお忘れなきよう……」
「分かっていますよ」
ジブリールはシャトルに乗り込む。
ウナトはジブリールが宇宙で何をするのかを聞かされていた。ヘブンズベースを落とされ、窮地に立たされたジブリールであったが、それでもウナトが彼に協力するのには訳があった。
ジブリールは月に決戦兵器を用意している。
その詳細をジブリールから聞かされ、その威力に確信を持ったウナトはジブリールの口の上手さに乗せられ、オーブを戦場にしてしまったのだ。
先の幻想に目を奪われ、目の前の現実の見えないウナトは戦後の事を考え、少しでも自分の立場が有利になることばかり考えていた。
「状況を良く見て判断しろ!このシャトルを無事に宇宙へ上げるのだ!」
戦局が落ち着かない今、機を窺うようにしてジブリールはシャトルの中でひっそりと息を潜める……
その頃、シンとレイがキラとアスランと交戦している所へカミーユ達が辿り着く。
「赤いのがアスラン…レイはフリーダムか。援護は必要だな……ハイネ、俺はレイの援護につく!」
『頼む、任せた!』
Ζガンダムはフリーダムと交戦するレジェンドの援護に向かう。
「あれは……」
デスティニーと交戦するインフィニットジャスティスを確認したルナマリアは感情が高ぶるのを感じた。女の勘だろう、インフィニットジャスティスにはアスランが乗っているとルナマリアは直感した。
「シンどいてぇ!」
ビームサーベルで鍔迫り合いをする二人の間にインパルスが割り込んでくる。
「ルナ!?」
「インパルス…!ルナマリアなのか!?」
『アスランでしょ?それ、アスランなんでしょ!?』
インパルスがインフィニットジャスティスに組み付く。
「待てルナマリア!」
ハイネが追いかける。
「く…ルナマリア……セイバー!?オレンジショルダーのセイバー…あれはハイネか!」
視界の隅から近寄ってくるオレンジのショルダーアーマーのセイバーを見て、アスランはそれにハイネが乗っていると分かる。
「ルナ、離れろ!こいつはもう俺達の仲間じゃない!裏切り者だ!」
アスランとの戦いを阻害するルナマリアにシンが叫ぶ。
「待ってよシン!嘘よ、そんなの!アスランがあたし達を裏切るなんて…!」
『現実を見ろ!現にこいつはフリーダムと一緒に戦っているんだぞ!俺達の気持ちを、こいつは踏みにじったんだ!』
「嘘よね、アスラン!フリーダムを騙す為に味方の振りをしているだけよね!?」
シンの言葉が耳に入らないのか、ルナマリアは必死にアスランに呼び掛けた。
そこへ更にハイネのセイバーが乱入してくる。
「落ち着けルナマリア!アスラン、聞いているだろう!?ハイネだ!」
『ハイネ……!』
「アスラン!お前、絶対に戻って来るって俺に言ったじゃないか!ミネルバに戻ると…お前は遵守すると言った筈だ!」
『だがハイネ…この戦いにザフトの正義はあるのか?ジブリールを引き渡さなかっただけで一方的なこの侵攻にどれほどの正当性がある?俺はザフトがこの様な暴挙に出たときの為に……』
「だからって俺達と戦うのか!?それがお前の正義か!」
『俺だってハイネ達と戦いたくなど無かった!それでも、オーブが焼かれているこの現実を見てしまえばしょうがないじゃないか!この戦いにザフトとしての正義があるのか!?ハイネもフェイスならもっと自分で考えろ!』
『あんたの言ってる事はうそ臭いんだよ!』
ハイネの言葉を遮るようにシンがビームサーベルをインフィニットジャスティスに向ける。
「待てシン!まだ話は終わっちゃ居ない!」
『これ以上こいつと話すことなんかあるものか!』
『駄目よシン!』
『ルナ!邪魔するならどっか行ってろ!』
食い下がるルナマリアに苛立つシンはインパルスの腕を掴んで放り投げる。
『シン!』
アスランはその様に怒りを覚える。
「シン!厳罰物だぞ!」
『ハイネもうるさい!こいつは許しておいちゃいけないんだ!』
シンはインフィニットジャスティスに蹴りを入れて突き飛ばす。それをデスティニーが追いかける。
「シン…我を忘れているのか……!?」
シンが心配に思えてきたハイネはそれを食い止めるべくデスティニーを追う。
放り投げられたルナマリアも姿勢を立て直し、アスランに説得を試みる為に同じく二人を追う。
一方ハイネとルナマリアを導いてきたカミーユは、レイと共にストライクフリーダムの相手をしていた。
「キラ=ヤマトっ!」
レイが叫んで背部にマウントされたドラグーンを前面に向け、ビームの束を撃ち出す。キラはそれを宙返りしてかわすが、回避の隙を突いてΖガンダムがビームライフルを仕掛ける。キラはそれもビームシールドで防ぐが、反撃は出来ない。
カミーユがウェイブライダーで突っ込んで来る。
「そんな機体じゃ…!」
キラはΖガンダムの性能は殆ど把握していた。
以前デストロイとの交戦の折にキラはΖガンダムを破壊している。ストライクフリーダムに乗り換えたキラにとって、Ζガンダムは既に敵では無くなっていると思っていた。
「君から!」
おびき寄せるようにキラはクスィフィアスを放つ。
当てる気の無いキラの攻撃は当然の如く回避するカミーユだが、ある程度接近した所で変形を解き、ビームサーベルで躍り掛かろうとしたその瞬間、嫌な予感がカミーユの脳髄を駆け抜けた。
「その形態なら…当たる!」
「く……!」
MS形態のΖガンダムが空中で満足いく動きが出来ないのをいいことに、その隙を狙ってキラは腹部のカリドゥスを放つ。
しかし、事前に察知していたカミーユはそれをギリギリの所で回避した。
「何…!?」
『貰ったぞ、フリーダム!』
「!?」
カミーユにかわされた事にショックを受ける間も無くレイが背後からビームライフルを構える。だが、それに気付いたキラが超反応を見せ、後方に向けられたクスィフィアスがレジェンドを直撃する。
『くあ……っ!』
「レイ、下がってろ!」
カミーユがその間に再びビームサーベルで斬りかかる。
キラもビームサーベルを抜き、それに対応する。
パワーで圧倒的に勝るストライクフリーダムはΖガンダムを押す。
『そんなMSで無茶しないで下さい!貴方が相手では手加減できません!』
「こいつ……!」
キラの傲慢とも取れる台詞がカミーユの逆鱗に触れる。キラはシンを認めはしたが、MSの性能で圧倒的に劣るカミーユに対しては余裕を覗かせる。
カミーユは頭部のバルカンを放つが、フェイズシフトを装備するストライクフリーダムの装甲には傷一つ付けられなかった。
『無駄な抵抗はしないで!』
「無駄なものか!」
先程マーズのドムに片腕のグレネードランチャーを使ってしまったが、もう片方のは残っている。カミーユは至近距離でそれを放ち、弾頭に繋がったワイヤーがストライクフリーダムの右腕を絡め取った。
『なっ!?』
キラは反射的にクスィフィアスをΖガンダムの腹に向けたが、それに気付いたカミーユはストライクフリーダムの頭上に回り込むように回転する。Ζガンダムが背後を取るような形になったが、キラは力に任せてブーストを掛ける。
「うわっ!」
ストライクフリーダムのパワーに抗うだけの力の無いΖガンダムはそれに引っ張られるが、カミーユはサーベルを手放してビームライフルに持ち替える。
そのまま照準を合わせたが、それに気付いたキラが動きを止める。
引っ張られていたΖガンダムは慣性に流されしまい、ストライクフリーダムを追い越してたところで伸びきったワイヤーが切れ、明後日の方向へ放られる。
221 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/13(月) 18:18:39 ID:VXIFYlji
>>MSの性能で圧倒的に劣る
(゚Д゚)ハァ??
『これで!』
放られて態勢を崩しているΖガンダムに向けてビームライフルを構えたが、其処にレジェンドのビームライフルがストライクフリーダムを襲う。
『く…二対一じゃ……!』
レジェンドの一撃は逸れたが、複数の相手をしていたのでは分が悪いと感じたキラは先にΖガンダムを仕留めようとビームサーベルを構える。キラに取っては幸いな事に、Ζガンダムはまだ姿勢制御が終わっていない状況だった。
『カミーユ!』
「こっちを狙ってきた!」
レイがカミーユに警告を呼び掛けたが、凄まじいスピードでストライクフリーダムが迫っている。ビームサーベルを捨ててしまったΖガンダムではストライクフリーダムのビームサーベルを捌き切れない。
『貰った!』
「やるかよ!」
ビームサーベルを手放そうとも、Ζガンダムのビームライフルは銃剣にもなる。
銃口からサーベル状のビームが伸び、ストライクフリーダムのビームサーベルを受け止める。
『何で貴方は!?』
「お前なんかにやらせるか!」
鍔迫り合いをする両者はそのまま風に吹かれるようにじりじりと移動する。
「何でアスランを俺達から裏切らせた!最初からそうするつもりでアスランを攫ったのか!?」
『アスラン…!?違う!アスランは貴方達が間違っているから僕達に協力してくれたんだ!』
「そんな訳あるものか!そうやったお前の勝手な思い込みがアスランを惑わせたんだ!」
『貴方に…貴方に何が分かるって言うんだ!』
キラはΖガンダムの腹を蹴り上げようとしたが、両手で銃剣を支えるΖガンダムの左腕が丁度腹の辺りに位置し、ストライクフリーダムの蹴りはシールドに当たってしまう。それでも、その強烈な蹴りはΖガンダムを吹っ飛ばすのには十分な力を持っていた。
「力任せにガンガンと……!」
ストライクフリーダムの力押しにΖガンダムのパワーでは力不足だった。
しかし、サイコフレームを組み込んだことにより反応速度が飛躍的に向上したΖガンダムは、そんなストライクフリーダムとも互角に渡り合えるほどの可能性は秘めている。
やり様によってはΖガンダムでストライクフリーダムを倒す事も可能だが、戦闘フィールドが空戦である事が影響し、今の所はカミーユにとっては不利だった。
『カミーユ、奴の正面はこちらに任せろ!いくらカミーユでも新型のフリーダムは相手が悪い!俺のレジェンドならパワーは互角だ!』
レイがカミーユに提案する。
「だが、ドラグーンの使えないレジェンドでは……」
『俺が奴の注意を引き付ける…カミーユにはその穴を埋める為に俺の援護を頼みたい』
「分かった、無茶はするなよ!」
カミーユは迂回するようにレジェンドから離れてストライクフリーダムの動きを窺う。
「無茶はするさ…キラ=ヤマト、アイツだけは存在を許してはならない……!」
秘められたレイの決意が悲壮なまでの覚悟を打ち出す。キラに因縁を持つレイはキラを討つ事に執念を燃やす。
そんな時だった。一機のシャトルがマスドライバーから射出され、ブースターから大量の煙を吐いて上昇していくのが見えた。
その場に居た全員がそれにジブリールが搭乗していると直感した。
「あれは…!」
いち早くハイネがセイバーを変形させてシャトルを追いかける。
「あれを落とせば…戦争は終わる!」
シャトルの加速は速く、変形したセイバーでも正面に据えるのがやっとだった。
加えて邪魔をするウナトの私兵のMS達がハイネの攻撃を遅らせる。
「くそっ…邪魔しやがって!そんなに戦争が好きか、お前等は!?」
ハイネにとって手こずるほどの相手ではなかったが、お邪魔虫にかまけていた分、シャトルとの距離が開いてしまう。
それでも一縷の望みに賭けてビーム砲を撃つが、ぐんぐんと射程距離を外れていくシャトルに当てる事が出来ず、セイバーは大気圏内での限界高度に達した所でバランスを崩し、きりもみしながら墜落して行った。
「くっそぉぉぉぉぉぉっ!」
ジブリールを仕留め切れなかったハイネの無念の叫びが、密閉されたコックピットの中で響く……
「バート、状況は?」
「は、はい!ハイネ隊長がシャトルを追撃しましたが、敵の妨害に遭い、逃げられてしまいました……」
アークエンジェルと交戦するミネルバ内のクルーにもジブリールを取り逃がした事が報告される。
「みすみす逃がしたって言うの……!」
タリアは拳をアームレストに叩きつけ、悔しさを表現する。
「これ以上の戦闘は無意味ね…司令部に指示を仰いで!多分、撤退命令が出るわ!」
「はい……!」
メイリンが旗艦に通信を繋げる。
「撤退…ですか……」
「アーサー?」
「いえ…ここでもアークエンジェルを落とせないとなると、ザフトは彼等をこの先どうするつもりなのでしょう……」
「……」
今まで幾度と無く戦場で交戦してきたアークエンジェルに対し、ミネルバのクルーはいつしか執着心を抱くようになっていた。
タリアも例外ではなく、これからの展開が気になっていた。
「え…それ、本当なんですか!?」
少し間を空けてメイリンが驚きの声を上げる。
「どうしたの、メイリン?」
「艦長…それが…継戦です…!」
「え!?」
「司令部からの指示はこのまま戦闘を続行です!」
「何ですって!?」
メイリンからの報告にタリアは耳を疑う。
「どうしてなの、メイリン!?」
「待って下さい、繋げます!」
タリアの正面の大画面に司令官が映し出される。
『どうしたのかね、ミネルバ?』
「司令、ジブリールを取り逃がした今、オーブでの戦闘は無意味なはずです。何故戦闘続行なのでしょうか?」
『フン…この戦闘はジブリールを捕える事だけが目的ではない』
「どういうことでしょうか?これ以上オーブを攻め立てる理由が私には分かりません」
『君に教えるつもりは無いが、いいだろう。既に君にも分かっているとは思うが、君等の目の前の相手がその理由だよ。我々の行動を幾度と無く妨害したアークエンジェル…それを匿っていたというだけで十分ではないか』
以前、フリーダムを撃墜した戦闘でア−クエンジェルを見逃したのはこの時のためであった。
デュランダルの目的は自分の理想とする世界を構築する為に邪魔な障害を排除する事。その時になってオーブがデュランダルの意向に反対する事を予測し、そうなる前にオーブを無力化する事を以前から企んでいた。
そうするための理由付けの為にデュランダルは、何かとちょっかいを出してきたアークエンジェルを利用してオーブに侵攻する機会を窺っていたのだ。
結果としてジブリールがオーブに逃げ込んだのは偶然が重なっただけで、オーブを攻める事は当初からのデュランダルの計画に組み込まれていた。
『諸君らも因縁のある相手だ…不服は無かろう?』
「……了解しました」
『健闘を祈るよ』
気の無い言葉を送り、司令官からの通信は切れる。
「艦長……」
「動揺しないで。色々思う事はあるだろうけど、問題を抱えているオーブに原因があるのよ。…そう思いなさい……」
「はっ……!」
複雑な気持ちになりながらもミネルバは戦闘を続ける。
一方のアークエンジェルでもジブリールが脱出した事は確認されていた。
「ザフトは戦闘を止めないつもりなの……?」
「ラミアス艦長……」
「集中を切らさないで!目の前に居るミネルバは大物よ!」
苦しい状況が続く中、一人の男がアークエンジェルのブリッジを訪れる。
「おい、ちょっとやばいんじゃないか、これ?」
「あなた!」
やって来たのはキラに撃墜され、アークエンジェルの捕虜になったネオ=ロアノーク。間違いなくかつてのムウ=ラ=フラガなのだが、記憶を失っているらしく、当時の事は思い出せないで居た。
それをラミアスが知った時、恋仲であった彼女はその事実にショックを受け、意図的にネオを避けていた。
「手伝ってやろうか、俺?」
ネオがラミアスに語りかける。
しかし、ミリアリアがラミアスに気を遣って代わりに応える。
「ですが、フラガ少佐……」
「俺はネオ=ロアノーク、た・い・さ!」
「あ、ネオさん…ですが、格納庫にはスカイグラスパーの一機しか……」
「俺の腕があれば余裕だって!いいだろ、艦長さん?」
「……」
ネオの問いかけにラミアスは応えられない。じれったく思ったネオがラミアスを急かす。
「このまま沈みたくないだろ?それとも、俺が裏切るとでも思ってる?」
「そりゃあ…そうです……」
「心配すんなって!あんたみたいな美人さんを裏切るわけ無いでしょ?」
記憶を失ってもその軽い口調はムウであった時と同じだった。
その事がラミアスにとって辛い事だったが、同時に少し嬉しい事でもあった。
「でも…何で私たちの味方を……」
「俺はあの艦が嫌いなんだ。何度も苦渋を舐めさせられたからね」
「……分かりました。でも、貴方は逃げてください。貴方がこの戦闘に巻き込まれる理由がありません」
「そういうの、強がりって言うんだぜ?任せなよ、悪いようにはしないつもりだ。この状況を見れば苦しいって事、ハッキリと分かるんだぜ?」
「でも……」
「いいな、お嬢ちゃん、発進のタイミング、よろしく!」
「え…あっ……!」
言いたい事を言って勝手にネオは出て行ってしまった。
「ラミアス艦長……」
「好きに…させてあげて……」
戦闘が激しさを増す中、ラミアスは一人思い悩む。
MSデッキに下りてきたネオは、床にぽつんと置いてあるいかにも旧式な戦闘機を発見する。
「お!あれあれ!」
ネオはスカイグラスパーに駆け寄る。
しかし、そこをメカニックのマードックに見つかってしまった。
「あ、あんた!そんなポンコツで何をするつもりだ!?」
「ちゃんと許可は取ってあるよ!心配ならブリッジに繋げてみろよ!」
「そうじゃなくって、フラガ少佐!」
「俺はネオ=ロアノーク大佐だっつの!何度も言わせるんじゃねぇ!」
「自殺行為ですよ!?」
「見くびるなって!これでも連合のエースパイロットだぞ!」
「そりゃあそうですがね……!」
ファントムペインの指揮官を任されていたネオは確かにエースパイロットだった。
しかし、マードックが納得したのは、以前のムウが"エンデュミオンの鷹"と呼ばれた連合のエースパイロットでもあったからだ。
ネオは、そんな所も変わらず"ムウ"だった。
「あれ…これ……?」
スカイグラスパーのコックピットに飛び込んだ瞬間、ネオは妙な感覚を覚えた。
かつてこの戦闘機に乗って戦っていた記憶が、失われた記憶の中に息づいていたのだ。今はまだその事を思い出せないで居たが、ネオの中のムウの記憶は完全に消えていたわけではない証拠であった。
「何だよ、この懐かしさは…俺はこの機体を知っている……?いや…連合の機体だから当然か……?」
『ネオさん、準備は宜しいですか!?』
「あ…あぁ!大丈夫だ、いつでも出してくれ!」
『了解!』
「さて…行くか!」
アークエンジェルよりネオのスカイグラスパーが射出される。
記憶の定まらぬまま、ネオは連合にもたらされた運命に抗うかのように大空へ飛び立って行った。
激化の一途を辿る戦闘は、カガリとユウナの存在する場にもその影響を及ぼし始めていた。先程から爆音が徐々に近付いてきている。
その音が聞こえる度に足元が振動する。そして、その振動も時が経つに連れて大きくなってきている。天井に備え付けられているシャンデリアは、そのせいで既に床に叩きつけられていた。
「……ここもそろそろ危ない…僕達の話も…終わりにしようじゃないか……」
振動で落ちてきたシャンデリアは二人が挟む間に無残な姿を晒している。
破片が所々に散りばめられ、カガリに語り掛けるユウナの顔には細かい掠り傷が出来、そこから赤い血が滲んでいた。
そして、その髪の色に近い紫で小奇麗に纏められたスーツにも何ヶ所か刻まれている所があり、その中でも特に深く刻み込まれた左の腕はその鮮やかな紫を支配するまでに染められていた。普段のスマートなユウナからは決して想像し得ない程、その姿は無残なものだった。
「話を終わりにするって……お前、そんな怪我じゃ!」
一方のカガリにはユウナほどの被害は無い。手の甲や服の端々に破片が飛んできた跡は見受けられるが、事前に渡されていた防弾チョッキを着用していた為、大事には至っていない。
「フフ…その防弾チョッキは正解だったようだね……僕の方が見込みが甘かったようだ……」
>MSの性能で圧倒的に劣る
パワーで劣るの間違いじゃ無いか?
機体の大きさならストフリの方が大きかったような気がするし。
相当な痛みを伴っているのだろう。ユウナは鮮血に染まる左腕を右手で押さえながら息の上がった声で話す。その歪んだ顔にはユウナには似つかわしくない大粒の汗が流れている。
「そんな事はどうでもいい!それよりも早く治療を…!」
「それこそどうでもいい。今は君と僕…二人の話し合いが全てだ……!」
「そんな状態でまともに話し合いなど出来るものか!いいから私に掴まれ!医務室まで連れてってやる!」
カガリが歩み寄ろうとするが、ユウナは厳しい視線と大声でその歩みを止める。
「止めないか、カガリ!何度言ったら分かるんだい!?君は!この状況で!僕との決着を付けるべきなんだよ、分かるかい!?そうでなきゃ意味が無いんだよ!」
「どうしてそこまで拘る!?私には分からない!」
「……どの道この戦闘で僕等の立場は終わる……。いくら父上がジブリールを逃がした所で本気になったザフトが彼を捕まえられない事などあり得ない!そうなればジブリールを匿ってオーブで戦闘を巻き起こした僕等セイラン家は責任から逃れるすべは無い……
ただでさえ不信感を抱かれている僕らだからね…先程の君の言う通りさ…!」
ユウナは初めて弱気な言葉を発する。怪我を負っているせいだろうか、何故か気持ちが凄まじく萎えているような気がした。
今ユウナが話したとおり、実際にはセイラン家はあまり信用されていない。それでもユウナの思惑に賛同してくれた頭の柔らかい兵も居たが、少数だった。
これまでカガリに対して強気な発言をしてはいたが、それはただの強がりに過ぎなかったのだ。
「だから、今しかない……ここで君に責任を認めさせ、元首を辞退させる事で民衆にまだ僕等のやり方の方がマシだったと思わせる事が出来る……。セイラン家はまだ首の皮一枚で繋がっていられる……」
「……そんなに権力が大事か?お前は自分の私欲の為にそんなになってまでして権力にしがみ付くのか!?」
「私欲……?それは違う!……いや、違わないか……。そう、権力にしがみ付く事は僕の欲望だよ……」
「ユウナ…!そこまで堕ちたか……!」
ユウナは視線を落とす。カガリの言葉など聞いていないかのように虚ろな瞳をしていた。
「そうさ…欲望だ…!この国を…オーブをより良い国にしたいという僕の欲望だ!野望だ!願望だ!」
「!?」
ユウナの言の葉が加速する。堪えきれないユウナの想いが決壊したダムの様に溢れ出した。
「僕はこのオーブという国が大好きだ!ナチュラルだコーディネイターだとかに関係なく様々な人々がここで暮らしている!その国の代表の中にセイラン家がある…それが幼い頃からの僕の誇りだった!」
「……!」
「本当に良い国だったよね!?けど、それも二年前にあっさりと崩されてしまった!悔しかったよ…憎かった…侵攻してきた連合も、狙われていたアークエンジェルもそれに乗っていたコーディネイター、ナチュラルも…オーブが戦場になるのを許したウズミ様も……!」
「そ…それは……」
「そして最後にはあのマスドライバーを破壊し、当の本人はそのまま自爆……!馬鹿げている!自分だけ先に楽になって後の事は全て残された僕らに丸投げだ!悲しむ暇も無い……!残された人達の事を何も考えてなど居ない!」
「お父様はそんなつもりでは!」
「君とて同じだろう!…そうして僕等が事後処理に忙殺されている間に戦争は終わり、君がウズミ様の後を継いで元首になった……」
ユウナはカガリの言葉に遮られる事無く溜めていた己の本心を吐露していく。
最早全てを言い尽くすまでユウナの口は止まらない。
「僕は期待したよ…君のその力強い声がこれから先のオーブを導いていくかと思うと、それだけで僕の過去に対する憎しみは浄化されていく気がした……けど、期待外れだった!
君は自分の立場をちっとも分かっていない!自分の立場が分からないから世界情勢の裏側も見えてこない!だから君はあの時も理念を振りかざして大西洋連合との同盟にも反対したんだ!」
「だがそのせいで今、こうしてオーブが再び戦場になってしまったんじゃないか!?」
「結果として、だ!あの時の大西洋連合の立ち振る舞いを見ただろう!?あの場で同盟締結を無視したらどうなるか…今の君なら分かるだろう!?いくら素晴らしい理念でも、それだけで国は守れない!国を守る為には相手の裏を斯くしたたかさも必要なんだ!」
「お前は最初から大西洋連合に服従したわけじゃないのか!?」
「当然だろ!?オーブを戦争に巻き込んで…それだけで僕が終わらせるわけ無いじゃないか!?戦争が終わればまた元の時代に戻る…その時を出来るだけ小さな被害で迎えるための同盟のつもりだった!」
「お前は……!」
ユウナの息が大きく弾み、肩を激しく揺らし始める。満身創痍…その言葉が今のユウナにぴったりの言葉だった。
「……」
だが、ここまで話し終えて自らの無様な姿に疑問を持ったユウナは息を整える。
感情に任せて言葉を放り投げるのは自分らしくないと思った。
しかし、この様に惨憺たる有様になってカガリと対面する事で初めて沸き上がる気持ちを抑え切れなかった。
口調は抑えられるが、感情は拍車が掛るばかりである。
「……僕はね…君が好きだったんだよ……」
「な…何を……!?」
「いつでも前向きな姿勢、ハッキリと意思を伝える声、そして皆を引っ張るリーダーシップ……どれも僕が持ち得ないものだった……」
「いきなり何を言っている!?」
「無い物ねだりってね…異性には自分には無いものを求める傾向があるらしい……僕には君がとても輝いて見えていたんだよ……」
「……」
「君が僕の婚約者だと知った時、胸が詰るほど嬉しかった……君が弟君に攫われた時の結婚式なんてホント、天にも昇る気持ちだったよ……。だからこそ、余計に君が情けなかった……僕の気持ちを無視し、更に期待を裏切った事が……」
「ユウナ……」
「カガリ…君は僕に誓えるか?この国を…オーブをまた以前のような素晴らしい国に戻すと…皆が愛したこの国に平和を取り戻せると……僕に誓えるか?」
「それは……」
「今ここで、決めて欲しい……君が僕を否定するのなら、僕が君に聞きたいのはその誓いだけだ……」
「お前は私から元首の座を奪いたいんじゃなかったのか……?」
「ちょっと前までは本気で思ってた。でもね、冷静になったら何故か急に気付いちゃったんだよ…君を好きになった時点で、僕の運命は決まっていたって事に……だからかな、あの時嘘と分かっていながらも君をあっさり帰しちゃったのは……」
「でも、私を暗殺しようとしたのは……」
「流石にイラッと来る事はあるさ……僕は完璧な人間じゃないもの……」
思い返せば、ユウナはどんな時でも自分に厳しくしながらも甘かったような気がする。それは、きっと本当に自分の事を案じてくれていた故の気遣いなんだろうと気付いた。
「おかしいとは思った…私に接触を求めてきたのも、あの場であっさり引き下がったのも、今思えばそんな事する必要は無かった。本当に私をこの国から排除したかったのなら……」
「分かって貰おうなどとは思わないよ。君に銃を向けたのは事実だからね……ただ、情けない君に少しでもマシになって欲しかった…周りに甘えてばかりの君に目を覚まして欲しかったんだよ……」
「ユウナ……」
「さて…それなら僕に聞かせてくれないか……君の心からの決意を……!」
カガリは考え込む。勿論その答えは最初から決まりきった事だが、それを今のユウナにどんな声で伝えればいいか、それに自信が無かった。
その時、一際大きな爆音と振動が起こった。この部屋は最上階ではないが、真上の屋根に破壊されたMSの残骸が墜落したのだ。二人の居る部屋の天井からも小さな破片が落ちてくる。
「くぅ……!」
「さあ、早く僕に誓って見せておくれ……そうすれば、僕は君を許してあげられる……」
「そんな事言っても、この状況では!」
外で待機していた護衛たちの扉を叩く音が聞こえる。先程の衝撃で歪んだ扉が二人を閉じ込めてしまったようだ。けたたましい打撃音は扉を打ち破ろうと必死に体当たりをしているのだろう。
「君のオーブに対する気持ちはその程度なのかい?こんな揺れで口に出せないほど弱い決意なのかい?」
「うぅ……!」
「カガリ様ぁぁ!今お助けいたします!」
「銃だ!銃を使え!」
「馬鹿者!誤ってお二人に当たってしまったらどうするつもりだ!?」
「銃を使わずにブチ破るしかない!」
外から慌ただしい兵士達の声が聞こえる。
「カガリ、もう時間が無い…それとも、僕には誓えないのかい?」
「そんな事は無い!お前がオーブの事をどれだけ想っているかを、私は知った!」
「なら、聞かせてくれ……僕の憧れた君の力強い声で、それで僕は安心出来るんだ……」
差し迫ってくる時間の中、ユウナの言葉だけが時間を遅らせるようにゆっくりと紡がれる。その言葉が、アスランとも違う安心感と自信をカガリに与えた。
「分かった……!」
ユウナはカガリの声を聞くと、力の無い笑顔を見せた。痛覚で全身の力を奪われていたせいだろう。
しかし、それでもユウナの笑顔は不思議な穏やかさを醸し出していた。
もう、カガリに先程までの迷いは無い。
目元は引き締まり、真一文字に結んだ口元は凛々しさを醸し出す。ピンと背筋の伸びた姿勢は威風堂々とし、普段のカガリよりも一回り体格が大きくなった印象を与えた。
カガリの決意が固まる。
「私、カガリ=ユラ=アスハ、オーブ国家元首はここに宣言する!オーブに対する脅威を取り払い、必ずや元の平和な国にする事を…私の全てを懸けて……誓う!」
「……ありがとう…カガリ……」
ユウナがその場に崩れ落ちる。ずっと我慢していたのだろう、精神力のみで立っているのも最早限界であった。
「ユウナ!」
カガリが倒れたユウナに駆け寄ろうとした所で部屋の扉を破って護衛達が雪崩れ込んでくる。
「カガリ様、御無事で!?」
「ユウナ様は…あっ!?」
ユウナに同調していた護衛が倒れているユウナを発見した。
「早くアイツを医務室へ連れてってやってくれ!」
「何て無茶を……!おい、二人で抱えて至急医務室へ運べ!」
護衛達がユウナに近寄ろうとした時、ユウナは再び立ち上がった。
「もう、終わりだよ……」
「は……?」
ポツリと呟くユウナの真上から破片が落ちてきた。先程の衝撃で崩された上の階の瓦礫が天井を圧迫していたのだ。
「さようなら、カガリ。最後に僕の好きだった君の姿を見れて…良かったよ……」
「ユウナ……!?」
「さあ、行きなさい、カガリ。僕は君にこの国の未来を預けた……」
「ば…馬鹿な事を考えるな!私にはお前の力が必要だ!」
カガリの頬を涙が伝う。一方のユウナはその様子に微笑みながらも怪訝に思っていた。
「何故泣くんだい?君が勝者で僕が敗者…そうなることで君はこれから先、今までの責任を僕に押し付けて有利に国を纏めていけるようになる…もっと堂々としてなさい……」
「そんな…そんなことの為にお前は……!」
「言っただろう?オーブを守っていく為には相手の裏を斯く様なしたたかさが必要だって……君に欠けているのはその狡さなんだよ……君は優しすぎる……」
「駄目だユウナ!お前には私を導いて欲しいんだ!一人じゃ無理なんだよ!」
「…ありがとう、カガリ……でもね、やっぱり僕はここで消えた方が君の為には一番いいんだよ……。僕の想像するオーブの未来…いくら思い浮かべてみても、そこに僕の姿は無い……つまり、そういう事なんだ……」
「そんなの!お前の描いた勝手な空想で自分の命を捨てるのか!?私はそんなの絶対に許さない!」
「君の為には僕が負けたことを確実に知らしめる必要がある……。悪のセイラン家は正義のアスハに敗れた、という確かな事実が必要なんだよ……」
「違う!私はお前に勝ててなどいない!だから…」
「君がオーブを放置していたのは事実だ……。未熟な君がそこから一気に国を纏めるには、僕が君に負けたという結果が必要になる……」
「私はお前とこの国を再建したい!だから、馬鹿なことは止めて早くこっちへ来い!」
「……君は僕を許すつもりで居るみたいだけど、それはいけない考えだよ……君が新たに纏めていくオーブに、悪のセイラン家の長男である僕は居てはいけないのさ……国民の信用に関わるからね……」
「そんな事を考えて……!何でそこまで私の為に……」
「……全ては大好きな君の為に……」
こんな恥ずかしい事を口にする以上、自分も愚かなんだろうとユウナは思う。自分の死が最も効果的とはいえ、それ以外にも行方をくらませるという方法もあったのだ。
しかし、こうして自分の好きな女性の為に命を懸けて尽くす自分が心地良い。そして、その後の事を考えると、堪らなく自分が愛しく感じる。
(僕はカガリに呪われてたのかな……?でも、とても気持ちいい呪いだ……僕は幸せ者だろう……)
恐らく自分は変態なんだろうと思う。しかし、それで自分が満足するのだから、それでいいと思う。所詮、自分も感情の動物かと自嘲する。
ユウナに降り注ぐ破片はやがて大きな破片に変わっていった。
「ユウナァァ!」
「お止め下さいカガリ様!危険です!」
「くっ……ユウナ様……!」
「じゃあ、君たち…後は頼んだよ……」
必死にユウナを助けに行こうとするカガリを護衛達が懸命に押さえつける。
ユウナに従っていた護衛達は最後になるであろうユウナの姿をその目に焼き付けていた。
ユウナの上から落ちてくる破片は、既に瓦礫の雨に変わっていた。
「ユウナァァァァァっ!」
カガリは護衛に引き摺られる様に部屋を出された。
ユウナの護衛達も限界までユウナを見つめていたが、最後に彼に向けて敬礼をすると、その部屋を後にした。
崩れ落ちる部屋の中、ユウナは最後までスマートな自分の姿勢を崩さぬよう限界を超えて立ち尽くしていた。
ふと、今になって理解できた事が頭の中を駆け巡る。
「そうか…分かったぞ、ウズミ様の気持ち…」
瓦礫と埃が舞う中、ユウナはその言葉を残して姿を消した……
〜つづく〜
233 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/13(月) 18:32:39 ID:/ZkjsNf2
GJ
途中ノイズが入ったが乙
リアルタイムGJ
オーブに死す、とはこういう意味だったのか。
もうどこぞのヘタレ凸とは格が違い杉wwwww
カガリ、まじで縊り殺したい。
理念ばかりで自分の意見が全くないじゃないか。
こんな奴ごときにオーブを変えられるはずがない。
ま、所詮はラクシズだしなw
アスランがヘタレたのもカガリが理念馬鹿なのもユウナが死んだのも
全てラ ク ス と 愉 快 な 下 僕 達のせいだな、カミーユも言ってたし
オーブは連合と同盟組んで攻めてきた交戦国なのに凸もタリアも何迷ってんだか
これだけユウナが体を張って政治を説いたんだ。いくらカゴリでも一回り大きくなるだろうな。
恐らくラクシズから離れるんじゃまいか?
そうしたら正にラクシズはテロリスト集団となって、オーブ・プラント・連合から総攻撃で壊滅っとw
凸はもうね、ユウナと比較したらカガリの中にはいないでしょw次回、「凸、宇宙に死す」ってかw
グッジョブb
GJ!
ユウナの覚悟、オーブに対する想い、そしてカガリへの恋心・・・
泣いた、画面が歪んで見えるほどに
これでカガリが如何成長するのか楽しみです!
投下乙です。
一個の人間としてちゃんと描かれているユウナがいいね。
>>239 凸に見せ場などいらない。
故に、「凸、宇宙の片隅に隠居し数十年後誰にも見取られること無く死す」ぐらいでちょうどいいw
ユウナ・・・・かっこよかったぜ・・・
>>227 いちいち文句いうな
この世界ではΖは性能的には不利
それをカミーユのNT能力とサイコフレームでカバーという流れなんだし
機体の大きさもZのがやや大きい
GJです
途中で文句言ってるヤツがいたが
作者さんは自分の考える通り作ってください
ユウナ…見事な最後だよ
色んなスレを回ってるがユウナは大抵格好いいな
政治系キャラとしていい位置にいるのも理由なんだろうが
GJ!!!
ユウナが最後に言った本音は、無印時にオーブが攻められて落ちた後、連合と交渉して国を守ってきた者たちの本音だな。
ユウナがここまで漢を見せたんだ。
カガリは変わらないと祟られるだけでは済まんぞ。
たいていの種死SSではユウナはカッコいい気がするな。
本編ではああだったキャラをこうしたいっていうのはSSの醍醐味だから、
ユウナの引き立てかたは最高だった。作者さんGJ
>>243 スルーしたほうがいいよ
荒らしだよただの
うん?
性能はZ>>ストフリのはずなんだが。
テロとグルになってましてや代表がテロの言いなりになってる時点でオーブなんぞ信用できたもんじゃない
今気づいた。
ここはやはり新シャア板なんだ。
ユウナにかっこいい散り様を見た
それに比べてカガリは…キラもまだ相手を見下す癖が抜けてないし、
ネオはネオで苛々させられる
AAの毒電波はやはり凄いな
253 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/13(月) 20:18:12 ID:x1M41eRP
性能はZ>>ストフリ
これやると、嫁とやってること同じになるから逆転させたんじゃないの
少なくとも宇宙に出るまでは
ストフリ>>Z
なのは確かじゃねえ?
設定を無視する事の方が、嫁がやって事とかわ(ry
って言ったら、ラクシズ厨か荒らしにされるんだろうなw
ここで目を覚まさないようじゃ処置なしなので、きっとAA組と
一線を画して大人の対応をするようになってくれると思いたいが…
…しかしそうなると凸は完全に梯子を外されるという罠。どうなる?
ユウナは愛するカガリのためを想って『漢』を貫いた!
もし、カガリがラクスと結託して更なる災いを生むようなら
俺はカガリを許さないだろう。
できることなら、キラが泣きついたとしても
「心配するな。事が終わったら、わたしも一緒に死んでやる」
くらいの事は言ってもらいたい。
とりあえず、アスランは本気でカガリを支えたいと思うなら
ユウナの爪の垢を煎じて飲め!!文字通り「腹が膨れる」くらい
基本は
>>254で
一度中破したZは完全に直せなかったでいいじゃないか
個人的な欲としては
シン in UC0088
を続編としてやってもらいたい漏れがいる
スレタイ変わるが。
GJ!!
ユウナ良かった…
トダカの存在を無くした意味がやっと分かった。
ところで議長は、白なの?
まああれだ圧倒的って表現は無いだろうって事だろ
>性能
このSSでは違うんだろう。
別にそこまでこだわるところじゃないだろ。
職人さん、ユウナ共にお疲れさま
性能とかはどうでもいい。
職人の好きなようにやってくれ。
ガノタってのは設定厨であるから、指摘するのもしゃーないかもしれんがね。
GJ!
てか別に議長は悪くないだろ。戦争してんだから敵国を攻めるのは当然
タリア死ね
とりあえず全ての元凶はあのスーフリニートと桃色汚物だということはわかる
マジでウェーブライダーに貫かれろ
Ζって機体はグリプス戦役時でもそこまで突出した性能じゃないからな
終盤はΖを上回る機体ばかりになっていったわけだし
そのために試験的にバイオセンサー搭載して追従性を上げて
最後はカミーユの究極NT能力でオーラバトラーになったわけで
なんつーかさぁ…、作者氏が一所懸命キャラの内面描いて、
それぞれがそれぞれの事情で動いてる所を見せてるのに、
なんでお前らそんなに表面部分を感情論でラクシズ叩いてるんだ?
駄ニメの腐れ桃色汚物軍団と違って、ここのラクシズはきっと
最終的には読者にも納得できるような形でまとめてくれると、
俺はそう作者氏を信じてるよ
はたしてそうかな
そんな感じでプレッシャーをかけてもどうかと
適当にスルーしとけ
もともと、こんな奴らが湧いてでるのを覚悟の上で投下してるんだろ
荒らしの自演煽りの可能性も常に考慮に入れとくべきでしょ。
なんだかんだ言って、カガリ個人を信じていたのはユウナだけな気がする。
キラもカガリを信じていなかったから拉致したとも考えられるな。
ユウナ…男を見せてもらった
作者氏GJ
>>259 カミーユinC.E.氏はこのssのプロローグみたいのを書いていたぞ 関係ないことだけど
そういえば◆XdXnStWCJQ氏はどうしたのかな…ssの続き読みたい
>>268 その描写された事情に基づく行動が不愉快だと言ってる訳だが?
ラクソは自分のやらかしたことがどれだけ重大な罪にあたり、
どれだけ多くの人間が傷ついていってるかを顧みず、考えるのは周囲のごく一部。
そんな身勝手極まりない思考をもって死ねとか臓物をぶちまけろとか言ってるんだろ。
ニートはその人を見下した態度と行動が怒りを買ってるし、
ハゲに至ってはいうまでもない、負債に劣らぬ厚顔無恥な裏切りが反感を買ってるわけだ。
逆にカガリは描写のおかげで賛否両論ある状態にはなれただろ
まあ、オーブ軍部はウズミの娘だから信奉してるだけだしなあ。
キラやラクスもカガリが友人だからというだけ。
別に職人さんを叩いてないよ。
汚物を叩いてるだけ。
いい加減自分の意見に合わない奴を、ラクシズ厨や荒らし呼ばわりするのをやめてくれんかね。
ローカルあぼーん最強
職人さんGJ! ユウナの死は悲しくて、そして燃えました!!
ただ、これでカガリが成長するかというと・・・
理念バカ扱いされることの多い彼女だけど、少なくともアニメでは結構流されることが多いんだよね。
1:ミネルバでシンに非難されて凹んだ
2:理屈の上ではやむをえない判断とはいえ、連合との同盟を承諾した
3:ラクシズに誘拐された後、洗脳された
この時点では、ユウナに洗脳(こういう言い方は嫌だけど)された状態だけど、ラクシズにまた洗脳されないかと不安でならない。
安西先生・・・職人さん・・・カガリとラクシズの決別シーンが・・・欲しいです・・・
>275
ラクシズとその描写は別物だよ。
負債は、最低の連中を最低の描写で描いた。
ここの職人さんは、最低の連中(※)をかなり良い描写で描いている。
たとえ結末がラクシズ完勝でも、職人さんなら、それをバッドエンディングとして描いてくれると信じている。
※今回のカガリ成長の機会みたいに、最低ではなくなる可能性はあるけれど。
おまいら、ネガネガしすぎw
職人さん周りの声は気にしないで
自分の頭で描いてることを文章にしてくれればいいよ
ここではあんたが神なんだから
>>280 同感。ここのカガリがこの後、「オーブの理念と国民」を真剣(それこそ「本当」に
自分を犠牲にしてでも)に護る道を目指していくとすれば、先ずはジブリールの行方
の公開とセイラン家の断罪(ユウナの望みの遂行)を行うと共に、戦闘行為に対する
謝罪とラクシズ説得を同時に遂行せねばならない・・・・・・って前者はともかく、
後者が難題だな。
283 :
259:2006/11/13(月) 22:49:05 ID:???
>>274 いや、俺が言ってるのはシンをZZに放り込んで欲しいってことなんだが
このSSの続編という設定で。シン一人かどうかは職人さんのお好みで。
……過ぎた欲だろうか?
ごめん、俺的には違和感バリバリ……
画と曲が合わなすぎ
皆ガンダムが好きだから争ったりいがみ合ったりしちゃうんだろうか……。
二個目は最後以外はまあ見れる
一個目はひどいなw音とあってないし合体バンクを二回使ってるしw
そりゃそうだ
どうでもいい事で争う奴はあまり居ない
>>288 まぁそこら辺はしょうがいな
元がバンクだらけでトレースだらけだから
×まぁそこら辺はしょうがいな
○まぁそこら辺はしょうがないな
自爆してくる
昔見たディアッカ&イザーク版、種OPは神の出来だった
「お前の言っている事は国という機関を守りたいだけだ!
私が言いたいのは国民を守る事だ!国があって国民が居るのではない…
国民が居るからこそオーブという国が出来たのだ!そこを履き違えているお前に、私にとやかく言う権利など無い!」
まさかカガリからこの台詞が出るとは思わなかった。
カガリのレベルの低さがよく現れた台詞だったと思う。
アスランもまだ自分が理解できてないけど、カガリが今回のことで今後の展開にどう絡んでいくのか楽しみです。
アスランはなぁ……これでカガリがアスランの手を離れる成長を遂げたらアスランも変われるかな?
>>295 そのセリフ、カゴリとウズミだけには言う資格ないだろ、と思うのは俺だけ?
少なくとも国放り出したカガリが言っていい台詞じゃない罠
なんの突拍子もなく言うけどビームライフルサーベルはでるのかな?
でなかったっけ?
>「お前やウナトに其処までの人望があるとは思えないな…それでは軍部が最初に疑いを掛けるぞ」
なぜ軍部…?
軍との癒着が前提の政治って……カガリの思考レベルがよくわかるわ。
オーブってどれだけ北朝鮮なんだ?
原作でも軍人が政治家を私刑してるし…正しい描写だな
ユウナの為にもカガリがもっと世界を見渡せるようになるといいなぁと思ってる俺はここでは異端ですか?
そうなって欲しいという理想はあるけど、現実はいつだって残酷だ。
これで変わらなかったら、ユウナ完璧に無駄死にだな
カガリが真面目に元首たろうとすればするほど、今回の一件への対応は難しくなる。
結果的にAAの介入がジブリールの逃亡を手助けしたのは客観的な事実であり、
議長側がそれをプロパガンダとして強調したとき否定できるのかどうか。
よしんばその場は言い抜けたとしても、レクイエムのプラント6基虐殺があった場合
それさえもセイラン家の責任にする事ができるのだろうか?
しかもAAを正規軍扱いするなどと言い出した日には…
どう考えてもカガリの処理網力超越しきってますほん(ry
AAを正規軍にすることを宣言した時点で、オーブの理念とやらは完全に崩れる。
他国の争いに介入しまくって戦場を混乱させていたのは事実。どうしてもごまかしきれない。
又、それはユニウス条約で禁止されていた核動作MSを秘匿していた事を公然と認めることであり、
オーブの国際的信用が失墜し、テロ支援国家として認定されちゃうぞ。
大丈夫、次の戦場は宇宙だろうしZの本領が発揮できるヨ
そうなんだよね、カガリがまともな国家元首として理念と理屈と信念と知性を
持つとラクス達テロリズムの権化はどうやっても肯定しちゃいけないって、
わかっちゃうよな。
テロリストで自分が悪人だと思ってるヤツはいないと思う。
手段を問わなくなった肥大化した正義だと思うし。
まあ、説得してAA投降させるのが現実的だわな。
できるかどうかは別としてw
ユウナも甘すぎるが
それ以上にカガリ馬鹿すぎ
もう、オーブに核撃ち込んじゃえよ…
スマン、ユウナのあまりにも熱い死に様にヒートアップしてしまった。
俺も反省汁
しかし、ラクシズを肯定するにはカガリ強奪から始まる・・・
その前に、「フリーダム&エターナル強奪」もあるけど、
「自らの不明とによる暴走」とも言うべき不始末を省みて
自身を処する事ができるかだね。
ココのキラやラクスは元の駄ニメよりはマイルドだけど
正直、期待できないんだよなぁ・・・・・
ともあれ、この先どうなるかを割目して待つ
ユウナは甘すぎると言うより惚れた男の弱みと言うやつか
どんなにひどい恋愛対象でも惚れてしまって情が薄ければ
切り捨てれるんだろうが恋は理屈じゃないから深く愛してしまったんだろう
このSSのユウナは
とりあえずカガリは同盟を抜けてプラントと停戦しないとならないが
>>316 キラやラクスを止めるより100万倍は楽だと思うぞ
それすら出来ないようならカガリに未来は無いんじゃなかろうか?
ただ同盟って大西洋連邦との同盟じゃなく 地球の各国との同盟だからなあ BTWの被災者救済や復興に協力するためのものでもあったはず
>>269-297 それを身をもってカガリにわからせたのが、今回のユウナって事でFAっスか?
でもカガリの周りのアスハ信奉派の兵士がAA一派と対峙するカガリの足
引っ張ってラクスによる再洗脳を良しとしそうな。
ユウナ、無駄死にになりそうだな、なんか
そうなったらせめてセイラン派生き残り兵士には民主化運動でも起こしてもらいたい。
と言ってもユウナとて決して民主的では無いわけだが
それでも自分の頭で考えて自分の足で歩こうとした分立派だよ
>>321 オーブという国自体が民主的じゃなく、国民も自分たちの権利を求めてないからな。
権利など求めなくてもいいような素晴らしい国だったんだろうな、きっと長いこと。
ウズミはきっととても良い政治をしてきたんだよ。でも世界大戦の時代に入って
くると国の舵取りを間違ってしまったってことじゃないかな。
書き手が全部悪いでFA。
326 :
320:2006/11/14(火) 19:03:18 ID:???
いやいや
だから「カガリに見切りをつけて首長制度の否定」という意味でだったんだが。
まあ、書き方悪かった。
荒らすな
つーか漏れは、別にテロ屋ならテロ屋でも別にいいと思う訳。
実際WやG13なんか主人公テロ屋だし。
だけどこいつらは、絶対に自分の意思を曲げないポリシー持ってる(Wはちょっと怪しいが)。
ラクシズもあっちにふらふら、こっちにふらふらしてないで、
終始一貫したポリシーを持ってれば好感持てたかもしれんが。
例えば
大切な人(カガリ)が治める国だから、相手に正当性があろうと
そんなの関係ない。来る敵拒まず皆殺し。
とか
テロと知りつつ行動し、オーブとも手を組まないで
単独で議長を倒し、最後は機体を太陽へ 。
とか
ラクスが議長となった後でも、キラは和田乗り続けるだろうってあたりが叩かれるんだろうね。
Wみたいに機体を破棄するんじゃなくて、オーバースペック機を独占し続けるってあたりがね。
ラクスが世界統治しても皆が平和に幸せになりました、めでたしめでたしとか
モビルスーツという存在はなくなりましたとか、
ガンダムファイトでみんな熱血平和ですとか、
想像まったく出来ないんだが。
どこぞのSSの影響もあるけど、ラクスがおかしな世界を造って、
キラが和田より凄い機体に乗って反乱鎮圧するのが目に見えるようだ。
機体を破棄できないのは
結局人を信じることが出来ないからだな
なんか最終回で信じるみたいなこと行ってたけどw
335 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/14(火) 21:06:54 ID:eOTvRn6j
>>332 それはアブソリュートフリーダムのことを言ってるのか?
W5人組はガンダムなくても情報収集や破壊工作とか色々できるけど、
キラはストフリないと何もできないからからな。
種のときはなあ、まだ工学系のカレッジ(えっ大学生!?)だったんで
ハッキングとかOSいじくるのも個性だったんだけど、種死はなあ。
どうにも廃人(ニート)→花嫁強奪→ラクス傀儡→日記あさり
→なるだけ人を殺したくないような感じに見えて、戦艦、メサイア
ふっとばすとか、どうにも元主人公とは思えない妙な個性になあ…
そろそろ、このスレも「議論スレ」みたいなのが必要なんじゃないのか?
CCAスレではそれなりに成功してるみたいだし、何よりも荒れないで済む。
1・新シャア内
2・したらば避難所
どっちがいい?
>>331 確かにそれなら好感持てそうだけど
自分を悪と認めちゃうことだからな
ラクシズは絶対正義であって、
悪の心など一ミリたりとも持ち合わせてないのが
嫁のシナリオだからな
絶対正義なんて、文字だけの存在だろうに。
つか、人間の行為って必ず善悪兼ね備えてるもんだと思うんだが。
片一方照らせば反対は暗くなるし、誰かを助ければ誰かが損する。
これをどうこう出来るのは人間じゃ無理だろ。
自分の手の届く範囲が平和(勝手に手を伸ばしてくるが)ならいい、っつーラクシズも結構。
ただし、自分の手の届かない所ま面倒見なきゃならないのがカガリで。
本来この二者の利害って一致しないはずなんだかなぁ
>絶対正義
サ○ラ大戦w
>>331 ヒールにはヒールの格好良さがあるからね
ラクシズはヒーローにもヒールにも成れない
困ったちゃんだから嫌われるんだよなあw
>>341 自分の見識を深めて、手を届かせられる範囲を広げようと努力するのならわかるが
現時点の自分らの器量を絶対のものとして検証も自省もせず、逆に世界の方を
そっちに圧縮して掌握しようとする、否TVじゃヤッチマッタのがラクシズ……
最高NTのカミーユの超常現象がもっと見たいです。
カミーユ「本当に悪いのはオーブの理念に魂を引かれた人間たちだ」
お前もその仲間に入れてやるってんだよ
俺はお前ほど人を殺しちゃいない!
俺は人は殺さない! その怨念を殺すっ!
カミーユとショウの声って似てるよな
ショウは叫ぶと声が裏返る
スネ夫のママに呼ばれるとザマザマスになるんだ・・・
ラクシズにしても議長にしても盟主王にしても悪の美学が足りないよ。
どこぞの拳王や大魔王程とは言わんが、せめて孔明ぐらいの悪の美学が欲しいな。
それぞれ自分が悪だと思ってないから
美学はともかく筋を通して欲しかった
盟主王は筋を通してるぞ。
盟主王は普通の人だからなぁ
何か悪役っぽそうな台詞を吐いてはいるが
普通の人が核は持ってて嬉しいコレクションじゃないとか言うか?
特に信念もカリスマも無いって意味で普通の人という事では
>>363 軍板住人なめんな
世間的には‘普通の人’だぜ
カリスマがなかったらブルーコスモスの盟主なんてやってられませんよ
>>359 盟主はよくも悪くもナチュラルのため、ナチュラルの利益代表として、
終始一貫した、ナチュラル側から見ればかなり合理的判断に基づいた行動ができる、
過激とはいえ、種では数少ない常識人で、あまり善悪は考えない。
が、純粋にナチュラル側からすれば共感すら抱ける、合理主義者という点で人間臭い奴。
議長は結局は心の中では一人の女に固執し続けていた、これも極めて人間臭い奴だった。
それに比べてラクソは、単に周りに被害が出そうになったら違法な武装保有・武力行使をした挙げ句、
訳わからん電波垂れ流してニートを思うがままに操り、世界征服。
自分の欲望を、世界のためだ、などという美辞麗句で飾って、規範や秩序を守る意識は皆無。
人間臭いというより、単に本能のまま動いてるだけにしか見えない。単なる獣だな。
獣は無駄な美辞麗句は垂れ流さないし、生きること以外にその能力を使わない
ラクシズは明らかに人間の業そのもの
いい加減すれ違いの話題が多すぎ
まあ、あのままCEが続いたらだが、後世ラクシズの影響が薄れた時代にようやく正当な評価が下されるだろう
保守
投下がないが、規制かな?
374 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 02:50:46 ID:yGuyeSfp
まずはじめに。
x/lz6TqR1w氏の影響を受け、Z in SEEDのSSを書いてしまいました。
今回はプロローグとなりますが、設定の都合上原作から若干の変更があります。
具体的にはZのラストシーンでシロッコとの戦いの後にヤザンとの戦いがあること、またカミーユ版アクシズの軌跡みたいなものを描いていることです。
このような改変を不快に思う方はスルーしてください。
また次回以降になりますが、カミーユたちは無印種のオーブに身を寄せることになります。
原作はある程度の時間的推移を除いてほとんど改変することとなりますが(カミーユによって***が奪還されてしまうといった具合に)、極端なアンチラクスの方は見ないほうが無難かもしれません。
最後になりますが何しろガンダム系SSを書くのは始めてのことなので、設定上不備があるかもしれません。
教えていただければ次回以降反映させるよう努力します。
言い訳ばかりになってしまいましたが、ではこれより投下させてもらいます。
sageて鳥つけた方がいいぉ
376 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 03:11:20 ID:yGuyeSfp
プロローグ 奇跡
漆黒の闇の中に光がまた一つ生まれ、消えていった。
そして訪れる静寂。
人一人を飲み込んだ光の消えた後には、夢破れた天才の最後を惜しむかのごとく金色のMSの破片が煌いていた。
Zガンダムのコクピットの中で、カミーユ・ビダンは荒い息を吐いた。
パプティマス・シロッコの駆るジ・Oとの死闘。
争いは人の持つ業とでもいうのか。
より解り合える力を得たはずのニュータイプ同士がお互いを拒絶し、殺し合う。
それは死んでいった者たちの意思をも受け継いだ、決して交わることの無い二人の人としての在り様をぶつけ合った戦いだった。
ともかく死力を振り絞ったその戦いは、カミーユの肉体と精神を酷く消耗させていた。
最後にシロッコの放った悪意。
・・・貴様も地獄へ連れて行く。
その言葉が耳から離れることは無い。
いまだその肌は粟立ち、背筋は氷に貫かれたかのごとく強張っていた。
カミーユにはシロッコの怨念がこのコクピットの中に渦巻き、手足に纏わりついているように感じられる。
急激な嘔吐感がこみ上げてきて、バイザーを跳ね上げたカミーユは出撃前に飲んだ栄養ドリンクを全て吐き出してしまった。
ふわふわと形を変えながら漂っていた塊が、全天周囲モニターにぶつかり弾けた。
この宇宙に満ちているのはシロッコの残した悪意だけではなかった。
憎しみ・・・。
無念・・・。
嘆き・・・。
数え切れぬほどの負の感情が漂い、カミーユの意識の中に入り込んできた。
それは濁流のようにカミーユの自我を弄び、引き裂いていく。
バイオセンサーが散っていった全ての人の思念を明確に感じ取り、カミーユの心をゆっくりと押し潰していく。
ああああ・・・。
声にならない悲鳴がカミーユの口から漏れた。
無制限に取り込んだ死者の魂が、カミーユの身体の中で蠢く。
カミーユを通してZガンダムの全身から、黒い瘴気のように死んでいった者たちの怨念が立ち昇っていた。
・・・!
エマ・シーンの苦痛にあえぐイメージがカミーユの脳裏を過ぎる。
半壊し、デブリに横たわるMKU。
それを庇うようにラーディッシュは攻撃を受け、絶え間なく小爆発を起こしている。
・・・エマ中尉、ヘンケン艦長。
苦痛に歪む二人の顔、それに薄笑いを浮かべるヤザン・ゲーブルの顔が重なった。
親しい二人に迫りくる死の影が、束の間カミーユの意識を覚醒させた。
「やめろ!これ以上宇宙を哀しみで満たしちゃいけないんだ!」
カミーユの放つ慟哭が、いまだ小競り合いの続く戦場を切り裂いていった。
まさに心が爆発するかのような怒りにカミーユは駆られていた。
瘧のように震える指先でコントロール・レバーをきつく握り締め、思念を感じた方角にZガンダムを向ける。
ウェイブライダーに変形すると、スラスターのペダルを一気に床まで踏み込んだ。
弾けるように加速するZガンダム。
黒い憎悪の尾を引きながら、カミーユは哀しみに満ちた宇宙を駆け抜けていった。
出来れば設定だけじゃなく375の意見も反映させてください
378 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 03:57:09 ID:yGuyeSfp
・・・間に合った。カミーユの口から安堵の溜息が零れた。
ラーディッシュはいたる所で火災を引き起こしながらも、ハンムラビとバラス・アテネの攻撃になんとか持ちこたえていた。
すぐさま援護しようとMS形態にZガンダムを変形させた途端。
まるでカミーユの到着を待っていたかのごとく、ヤザンの駆るハンムラビが対空砲火をかわしつつ突っ込んでいく。
・・・ははは、死ねぇー!
カミーユの拡大した意識に高らかな笑い声が触れた。
「やめろぉぉぉ・・・!」
ブリッジを光の剣が貫き、紅蓮の花が花開いた。ヘンケン艦長をはじめ、ラーディッシュのクルーたちの思念がカミーユの中を突き抜けていく。
炎に身体を焼かれる苦痛。構造材に押し潰される鈍い痛み。真空中で血液が沸騰し、身体が弾け飛ぶ一瞬の激痛。
極限まで肥大化したカミーユのニュータイプ能力が、それらをまるで自分のことのように感じ取っていく。
呻き声すら出せず、麻痺するように全身を振るわせるカミーユ。
そんなカミーユの目の前でラーディッシュは巨大な火球に変わっていった。
極上の獲物が無防備に漂っているのに気付いたヤザンは、その顔に怪訝な表情を浮かべた。
銃口を向けても、Zガンダムは回避どころか身動き一つしようとはしない。同じようにそれに気付いたレコア・ロンドもまた困惑を隠せなかった。
「・・・カミーユ?」
「Zは俺の獲物だ。お前はとっととMKUを仕留めて来い!」
微かに戸惑いを見せながらも、レコアの乗るその場をヤザンに任せて離れていく。
知らず知らずのうちにヤザンの口から舌打ちが漏れた。戦争の最中、精神を病む者は大勢いる。
一年戦争時代から常に最前線に身を置いてきた彼もまた、そのような者たちを数多く見てきた一人だった。
それにしても今まで散々苦渋を舐めさせられてきたZガンダムとの決着が、まさかこのような形になろうとは・・・。
少々物足りないものを感じながらも、ヤザンはコクピットにフェダーインライフルの狙いを定めた。
「これで終わりだ、Z!」
放たれる強烈な殺気。その瞬間、ヤザンの心にカミーユの絶叫が飛び込んできた。
それはすでに限界を迎えていたカミーユの心が弾け飛んだ瞬間だった。理解不能な出来事に身体か硬直した。
目の前でZガンダムの身体から立ち昇っていた瘴気が、一気に膨れ上がる。
それはぶよぶよと蠢動しながら拡大し、暗黒の雲のように星々の光を覆い隠していった。
「なっ、何だ!」
通信機からレコアの短い悲鳴が聞こえたと同時に、バラス・アテネは無残に引き裂かれ爆発を起こした。
動物的とも言える彼のカンが、盛大にアラートを鳴り響かせていた。反射的に距離を取ろうとスラスターを吹かせる。
真空中なのに空気の鳴るような音が聞こえた。ハンムラビの右腕が肩からごっそりと引き千切られる。
漏れ出した推進剤にスラスターの炎が引火し、爆発が起きた。身体全体が軋むような衝撃。
それは通常ではありえないような加速をハンムラビに与えていた。
完全にコントロールを失い、破片を撒き散らしながら明後日の方角に飛んでいく。
猛烈なGにその顔を歪ませながら、ヤザンは強烈な精神力のみで目を見開いていた。
狭まった視界の中で何かが急速に大きくなっていく。爆発によって引き千切られたラーディッシュの残骸だった。
酷薄そうなその薄い口元に自嘲の笑みが浮かぶ。
「・・・くそったれ!」
その言葉を最後にヤザンの意識は途絶えた。
379 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 04:31:01 ID:yGuyeSfp
「ここで終わりにするか、それともまだ続けるか・・・。答えろ、シャア!」
破壊された戦艦の中に響く問い掛け。ここでもまた戦いは終わりを迎えようとしていた。
白い女性的なフォルムのMSが、四肢を失った金色のMSを見下ろしていた。
「そんな決定権がお前にあるのか?」
「・・・口の利き方には気をつけてもらおう!」
逃げ場も抵抗する手段すら失った絶望的な状況にも拘らず、通信機から流れ出る男の声はいつもの不遜さを隠していなかった。
キュベレイのコクピットシートに座るハマーン・カーンは、感傷を断ち切るべく軽くその瞳を閉じた。
すぐにその目は開かれ、そこにはいつもの冷酷な光が宿っている。
かつて彼女が愛し、その存在の全てを欲した男の命を絶つべくキュベレイはサーベルを振りかざす。
まさにそれを振り下ろそうとした瞬間、彼女の背筋を悪寒が走り抜けた。
「ダメだ、カミーユ!死者に心惹かれるな!」
開きっぱなしの通信機から予想だにしないシャアの叫び声が聞こえた。
・・・カミーユだと?
そこには以前お互いのニュータイプ能力を完全に開放した時に感じられた共感など、微塵も感じられなかった。
一方的な崩落にも似た精神の崩壊。ざらざらとした不快な感触だけが肌を滑り落ちていく。
「ハマーン様!」
「どうした?」
「僚機が次々と爆発していきます!あれは一体?」
彼女が一瞬気を逸らした隙に、成す術を失ったはずの百式が火花を飛ばす戦艦の動力部にバルカンを打ち込んだ。
誘爆を引き起こし、噴出す炎がハマーンの視界を奪う。
バランスを崩し姿勢制御に手間取るキュベレイの横を、シャアの乗る百式が爆発の衝撃に乗って飛ばされていった。
・・・悪運の強い奴め。
消えていった方角に一瞥を残し振り返ったハマーンの顔に、滅多に見られることの無い焦りが浮かんだ。
不快な感覚を引き起こしている場所を中心に、マラサイが、ネモが、ガザCが、敵味方関係なく引き裂かれ爆散していく。
・・・カミーユが引き起こしているのか、この現象を。
ハマーンは霞のように広がる黒い瘴気に目を凝らした。
ニュータイプの感覚を持ってしても見通せない、まるで空間的に不連続とでもいうべき場所がいくつも渦を巻いていた。
どうやらそれに触れることで、MSは次々と破壊されているようだ。
「全軍をこの宙域から撤退させよ、急げ!」
照明弾が打ち出され、恐慌をきたしていたアクシズ兵たちが堰を切ったように撤退を開始する。
その間にもガザCやゲルググキャノンが、空間の裂け目に捕まり爆ぜていく。
あれは・・・、シロッコ!
それまで膨れ上がる一方だった瘴気が、凝縮し形を変えた。頭のような物が生まれ、四肢が分かれた。
瘴気が人の形を纏おうと、本来ならそれが誰であるかなど解る筈もない。
しかし彼女のニュータイプとしての直感が、その闇に秘められた意思が宿敵の一人のものであると感じ取っていた。
「・・・ちいっ!」
腕が凄まじいばかりの勢いで向かってくるのを見て、ハマーンは舌打ちを一つ漏らしながら回避行動に移る。
キュベレイの足元を掠めるように、その腕は後方に流れた。
安堵したのも束の間、肘の部分がぶくぶくと膨れ上がり人の姿に変わると再びハマーンに迫った。
ハマーンの目に、その影は以前粛清の名の下に殺害した政敵の姿となって映る。
・・・かわせない。
一瞬のうちに判断を下したハマーンはビームガンを連続して打ち込むが、全てその表面を流れてしまった。
その瞳に限りない怨嗟の光を、その口元には地獄に引きずりこむ亡者の笑みを浮かべながら、まるで愛しい人を抱きしめるように瘴気はキュベレイを包み込んだ。
ハマーンの全身が悪寒に包まれる。悪意が彼女の中に進入しようと、その肌の上を這いずり回っている。
ドロドロとした闇が意識を覆った。闇の底に沈まぬよう必死で抗う。
しかし、もはや彼女にそれを押し止める術は無かった。
精神が、心が犯されていく。
ハマーンの口から高い悲鳴が零れた。
GJ!Zのラストですな
文章は読みやすくていいけど
>>375の言うとおりsageたほうがいいよ
まさかとは思うが携帯からじゃなかろーな?
>>376 ID:yGuyeSfp氏 GJです
できればコテや酉も付けてsageてくれれば言うことはないです
カミーユのNT能力が爆発してイデ発動みたいになってるとこがいいですね
細かいことなんですが
>バイオセンサーが散っていった全ての人の思念を明確に感じ取り
バイオセンサーはあくまでカミーユの脳波とΖを繋ぐための簡易サイコミュなので
バイオセンサー自体にはカミーユ以外の他の思念を取り込む力はありません
カミーユの精神が死者の意思取り込んだ結果バイオセンサーが奇跡を起したという設定ですね
あとバラスアテネではなくパラスアテネですね
細かい突っ込みしてすみません
続き期待しています
383 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 05:37:29 ID:yGuyeSfp
瘴気の中心でカミーユは憎悪の炎に身を焦がしていた。
行き場の無い憎しみがカミーユの精神を支配し、敵味方関係なく噴出していた。
また一機MSが引き裂かれ、光となって消えていった。断末魔の悲鳴が脳裏に直接流れ込んでくる。
カミーユの顔が歓喜に歪んだ。その虚ろな目には暗い光が宿っていた。
・・・いけない、憎しみに身を任せては。
それは突然カミーユの耳元に響いた。
包み込むような優しさ、それでいて凛とした強い意志を感じさせる声。カミーユを包み込んでいた瘴気が和らぐ。
歌が・・・、声が・・・、憎悪の炎を散り散りに吹きさらしていく。
・・・ラ・・・ラ?
穏やかな、それでいて周囲を取り巻く憎悪にも決してかき消されることの無い淡い光が、カミーユの眼前に降り立った。
程なくしてその光は、おぼろげな女性の姿に変わる。青い瞳、褐色の肌、漆黒の髪は両脇で団子状に纏められている。
彼女が現れると同時に、カミーユはその全てを理解していた。
・・・あなたがララァ。
彼女はやわらかい笑みを返した。
・・・そう、憎しみに流されてはダメ。あなたが傷つくことはあの人たちも望んではないはず。見て、あなたの周りを。
見渡すと、カミーユに寄り添うように淡い光がいくつも漂っていた。
・・・あなたは一人じゃない。カミーユだったらそれを感じられるはず。
目を凝らすとその光は懐かしい人たちへ変わっていった。
・・・フォウ、それにロザミー。
彼女たちばかりではない。カツやサラ、レコアさん・・・、味方だった人、敵としてカミーユの前に現れた人。
皆カミーユを優しく見守っていた。
・・・これからはいつもカミーユと一緒だよ。
フォウがその胸にカミーユの頭を優しく抱きとめ、ロザミーがじゃれ付くように身体を摺り寄せ笑い声を上げた。
涙がカミーユの頬を濡らしていた。泣き笑いのようなぎこちない笑みがその顔に浮かぶ。
いつの間にか心を苛む憎しみは霧散していた。
爆発の衝撃でほとんどのカメラが機能しなくなった盲目状態の中、シャアはカンのみで生き残っている姿勢制御バーニアを制御し機体を安定させた。
懐かしい匂い。この宇宙を濃密なララァの気配が満たしているのを感じる。
ハッチを空けたシャアの顔を淡い光が照らした。憎しみの渦の中心で、Zガンダムが包み込むような光を放っていた。
「暖かい・・・、これがカミーユの心」
徐々にその光は大きくなると、シロッコの思念を纏った瘴気全体を包み込んでいく。
・・・憎しみでこれ以上、この宇宙を汚しちゃいけないんだ!
カミーユの思いが伝わってくる。
数多のMSを破壊した空間の歪みが次第に大きくなり、宇宙を覆い尽くしていた憎しみという名の瘴気を飲み込んでいく。
「ララァが導いてくれたのか、カミーユを・・・」
口惜しげな呟きが零れた。
・・・何故これほど求めているのに、これほど願っているのに、私の前に現れてはくれないのだ、ララァ。
・・・大佐にはいつでも会えるから。
ララァの笑い声が木霊し、この宇宙に溶けるように消えていった。やがてZガンダムの発していた淡い光もまた消えた。
もうカミーユやハマーンの気配も、シロッコの残した悪意すら感じられない。
・・・行ってしまったのだな。
青白く光る地球がバイザーに映りこむ。目の前には今起こった事が全て幻想であるかのように、戦場跡が広がっていた。人の革新を見せてくれるはずだった少年は行ってしまった。残されたのはニュータイプの出来損ないの自分ただ一人。
シャアは取り残された悔しさに、その唇をずっと噛み締めていた。
〜続く
すみません。yGuyeSfpです。
2ちゃんねる初心者なもんでsageということを知りませんでした。
皆様、ご忠告ありがとうございます。これから気をつけます。
ハンムラビじゃなくハンブラビですがな
俺にはこの新たな職人はΖをちゃんと観てない気がする
設定やMSの間違いが多い
種よりの職人さんかな?
投降時間が異常に空いてるのはやはり携帯だから?
だとしたら凄い労力だな
あと、
×ロザミー
○ロザミィ
ですな。
種関係でも勘違いとかあるかも。資料をチェックすることをお勧めします。
それから、トリップの付け方を憶えてください。
全体としてはGJですんで、続き楽しみにしています。
色々と突っ込みたくなるな。
せめて改行はしておくれ。
ID:yGuyeSfp氏
あんまりキツイことは言いたくはないが
もう少しΖを観直してカミーユや他のキャラの特徴や設定を
頭にいれてから小説かいたほうがいいのでは?
個人的には面白いと思ったけど詰が甘いとこが多い気がした。
カミーユのキャラをつかめてないというか…
ちゃんとΖ観直して書けばもっといい作品になりそうなだけに惜しいです
キツイ言い方になってすみません
断言しよう。
近い内にこのスレは絶対荒れる。
>>391 カミーユのキャラはつかめてるけど
他のMSの名前間違いやキャラの名前の間違いに引きずられて
なんか違うと思ってしまうんじゃないか?
個人的には話の続きも気になるから
yGuyeSfp氏 は頑張ってくれ
もう少し設定を煮詰めたらもっとよくなると思う。
394 :
391:2006/11/17(金) 12:04:53 ID:???
>>392 なんでそう思ったの?
俺の言い方が不味かったかな?
荒れるぞと
言った本人
荒らしてた
とりあえず カミーユIn C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏のssは
もう終盤になってきたから荒れないで欲しい
ここまで頑張ってきたことが可哀想だ
>>394 アムロスレでオリ設定のSSが投下された事によって荒れたんだよ…
フレイスレなんて元々住人少なくて暴走したオリ設定のSSが凄いことになってる
カミーユIn C.E. 73氏のssが終了するまではあんまり他のssで荒れるのはカンベンして欲しい
>>398 あのスレはもう駄目に思える
荒らしがいるうちはまだ良いんだ
荒らしすらいなくなった状態、それは・・・・・・
>>400 まだだ、まだもう1本のSSに俺は期待してる!
フレイスレの名前を教えてください
フレイで検索かけりゃ良いんじゃないの
フレイとカミーユが出会ったら・・・・・・・・・
気が荒いもの同士なんかなりそう
yGuyeSfpです。たくさんのレスありがとうございました。
どうやら問題が多いようなので、撤退させていただくことにしました。
ご迷惑をおかけいたしました。
ただ今回、初めて掲示板に書き込むという経験をし非常にいい勉強になりました。
携帯から?というレスもありましたが、パソコンを使っていながら予想以上に時間がかかってしまった次第です。
見苦しいとのご指摘もありましたが、いくら詰めても消えない改行エラー、手直しどころかそれによってパート全てを書き直した部分もあり非常に苦労しました。
出社時間が迫っていたこともあり、書くことだけで手一杯で結局掲示板を見たのは全部投稿を終えた後という始末でした。
それによって最初にご指摘をいただいた375様、377様、380様、381様、382様にはレスを無視するような形になってしまい、心よりお詫び致します。
たくさんの間違いを指摘してくださった方々にも感謝しております。
慌てていたためとはいえロザミーには自分でも苦笑してしまいました。
恥ずかしい話ですがハンブラビにいたっては、最初にZを見た時からずっと勘違いをしておりました。
ガンダムにおいて第2の主人公といえるMSの名前の確認を怠ったことは、完全に私のミスです。
もう1度良くZを見直した方がよいという指摘もございましたが、その通りかもしれません。
自分は新説Zを見たことがありません。
それは解釈を変えてといった言葉が、再放送されていたZをわくわくしながら見ていた自分自身を否定されたかのように感じられたからです。
そんな自分がSSを書くこと事態無理があったのかな、と今は思っています。
バイオセンサーと死者の魂の関係については、指摘されるものと思っておりました。
映画においてNTの純粋な能力と変更されたのは知っていましたが、都合上テレビ版の定義を用いました。
ご存知とは思いますが、エマの最後の言葉「私の命を吸って。〜」の後バイオセンサーの話が続きました。
この台詞からZというハード的な比重が大きいとしました。
ハイパー化したカミーユはまさに無敵状態に近くなってしまうので、それを防ごうとしたわけです。
そしてバイオセンサーは今回の件でオーバーロードを起こし使用不能としたかったのです。
キャラクターイメージもテレビ版を参照させてもらいましたが、やはりガンダムは個人の持つイメージが強いため難しいですね。
最後となりましたが応援していただいた方ありがとうございました。
職人のXdXnStWCJQ様、x/lz6TqR1w様、これからもがんばってください。
では失礼します。
無印の時にキラもカミーユみたいのが居れば成長できたかもな
>>405 TV版でもバイオセンサーという言葉は出ないよ
小説ではでるけど
新訳Zは新訳Zで結構いいもんだよ俺もTV版も好きだけど
富野監督が健やかなカミーユを通して描く究極のNT像というものが見えるから
一度目を通しても損はないかと
>>405 逃げるな。
まず半年ROMるんだ。
半年後にスレが残ってたらよろしく。
第三十七話「ザフト撤退」
「く……!?」
未だストライクフリーダムと交戦するカミーユの頭に稲妻の様な感覚が奔る。何処かで知らない人の気配がカミーユの感覚を通り抜けていくのを感じた。
『どうした、カミーユ!?』
レイがストライクフリーダムの攻撃をかわしながら、動きを止めてしまったカミーユに問いかける。
「いや、何でもない…決着を!」
『ああ……!』
レイがドラグーンのビームの束を撃ち出す。
それをひらりとストライクフリーダムはかわすが、Ζガンダムのビームライフルも狙っている事は分かっていた。案の定狙ってきたΖガンダムのビームライフルをビームシールドで防ぐ。
「くそ……これじゃあ……!」
キラはこの二機を相手にしていたのでは埒があかないことを実感する。一気に打開するには頭を潰すしかない…そう思った。
「フリーダム!?」
「あいつ…何処へ行く気だ!?」
急に方向転換して凄まじいスピードで何処かへと飛び去ってしまうストライクフリーダム。奇怪な事に不審に思った二人もその後を追う。
『あんたがオーブに味方するのは何故だ!?あの馬鹿元首の為か!?』
「シン……!」
相変わらずデスティニーとインフィニットジャスティスは交戦を続ける。
その脇でルナマリアはハイスペックな二機の戦いに介入出来ないでいた。
「止めて!シンもアスランも!どうしてあたし達が戦わなくちゃならないの!?」
空しいルナマリアの叫びが響く。
「何故そんなにオーブを憎む!?」
『オーブだけが憎いんじゃない…俺はあんたが許せない!』
「それは…すまなかったと思っている!こんな形になってしまった事も…」
『いいや、あんたはそんな事は微塵も思っていない!あんた…いや、アークエンジェルの奴等はみんなそうさ!自分たちさえ良ければそれでいいと思っている…そして、それが世界の皆の意思だと勘違いしているんだ!そうだろ、アスラン!』
「そんな訳あるか!俺達は俺達の正義の為に戦っているに過ぎない!そういった傲慢とは無関係だ!」
『違うものか!そうでなきゃ、何回も裏切ったりなんかするもんか!』
怒れるシンは次々とアスランに追い込みを掛けて行く。押されるアスランもそれに負けじと反論するが、頭に血が上ったシンには生半可な説得は通じない。
そして、そう考えるアスランの思考は傲慢だった。
『止めてよシン!あたし達が間違っていたのよ!』
衝撃と共にシンの耳にルナマリアの声が聞こえてくる。インパルスがデスティニーに組み付いたのだ。
『あたし達がオーブに攻め込んだ事は間違いだったのよ!』
「放せルナ!お前の知っているアスラン=ザラはもう居ないんだ!目の前のこいつは…ただの敵だ!」
『違うわ!この人はアスランよ!』
「いい加減にしろ!いつまでもそんなんじゃ、ルナも敵に味方したと見なされちゃうぞ!」
シンはしがみ付くインパルスを突き放してデスティニーの高エネルギー砲をインパルスに向けた。
「ほ…本気なの…シン!?」
『嫌なら黙っていてくれ!ルナの感傷に惑わされたくない!』
『ルナマリア!』
デスティニーとインパルスの間にインフィニットジャスティスが割り込んでくる。
「あんた…一体何がしたいんだ、あんたは!?」
シンはコックピットの中で頭を抱える。
「ア…アスラン……」
『シン!俺を狙うのはいいが、その為に味方に銃を向けるのか!?』
インフィニットジャスティスもデスティニーに向けてビームライフルを構える。
『ルナマリア、君はここから離れていろ!シンは本気だ!』
「そんな…出来ないわ!やっとアスランに会えたのだから……」
『なら、俺と来い!ザフトに居れば、いずれ君のような考えを持った人間は殺される!』
「え……!?」
シンの耳に聞こえてくる微かな会話の声…彼はその内容を聞いてしまった。ふつふつと湧き上がる怒りの感情が汗となって顔の表面に表れる。
「アスラン!あんた、この期に及んで何言ってんだぁ!?これ以上ルナを惑わすなぁぁっ!」
限界まで引っ張られたゴムを放すようにデスティニーが飛び出す。手に握られたビームサーベルが大きく振りかぶられる。
「駄目ぇ!シン!」
インパルスがインフィニットジャスティスの前に躍り出る。
「くそっ!」
危険を感じたアスランはその更に前にインフィニットジャスティスを出した。
振り下ろされるデスティニーのビームサーベルはインフィニットジャスティスの右腕を切り取り、振り上げられたインフィニットジャスティスの爪先のビームサーベルはデスティニーの左腕を切り飛ばした。
「くそぉ…まだぁぁっ!」
「しまった…まだ右腕が残っている……!」
二人は更にもう一撃を見舞おうとしていた。その切っ先はお互いの致命傷になりえる部分を向いている。切り刻んだ瞬間、二人の命も消えてしまいそうなほどに切迫していた。
しかし、その時起こった洋上の閃光が二人の動きを寸前で止めた。
「何!?あれは……!」
「これは…キラか!?」
「状況確認!急げ!」
ミネルバのブリッジでもその爆発が何なのかを懸命に調べていた。
「アークエンジェルに対する警戒を解くのはまだよ!」
「映像出ます!」
「正面へ!……これは!?」
画面に映し出された映像は煙を上げて沈黙するザフトの旗艦だった。周囲を確認すると、そこから離れた空中に羽を広げたMSが一機佇んでいた。
「しまった……!」
「旗艦をやったのか!?」
追いすがってきたレイもカミーユもその様子に息を呑んだ。いくら万能なストライクフリーダムとはいえ、敵陣のど真ん中に侵入して旗艦を押さえるなど、とんでもない所業であった。
二人はその光景にストライクフリーダムに対する警戒をより一層強める。
これ程の兵器を野放しにしておいてはいけない…二人に共通の認識が生まれた。
「か…艦長……旗艦が!」
「とんでもないわね……現時刻を以て旗艦の撃沈を確認。全ザフト艦隊に通達、フェイス権限を発動し、指揮権をミネルバに移行します」
「は…はっ!」
「続いて全ザフト艦隊に発令、この戦闘に於けるこれ以上の作戦続行は被害を無駄に拡げるものと判断し、撤退命令を発令します。…アーサー」
「は…はいっ!撤退信号上げい!」
ミネルバから撤退を告げる信号弾が打ち上げられる。
「撤退……!?そんな、せっかくアスランを前にして……」
「くぅ…引き下がれるかぁ!」
シンはそれでも尚インフィニットジャスティスに飛び掛ろうとする。
『止めろシン!撤退無視は重罪だぞ!命令に従え!』
ハイネの声が聞こえた。サブモニターに目を向けるとセイバーが近寄ってきていた。
「ハイネ…けど、こいつは!」
『今のお前じゃ頭に血が上るばかりで何も解決しない!ここは俺の顔を立てると思って退いてくれ!ルナマリアもいいな!?』
『わ…私は……』
ルナマリアはハイネの命令に躊躇する。先程アスランに言われた言葉がルナマリアの決心を鈍らせていた。
『ルナマリア……?』
「く…ルナ……!ハイネ、ルナは俺が連れて帰る!」
シンはアスランとの戦闘を続行するか撤退するかの二択に迷っていたが、ルナマリアの様子を心配して、それを自分の言い訳にして撤退の選択をした。
「行くぞ、ルナ」
『シン……』
ルナマリアも迷っているのか、インパルスの腕を取って引いて行くデスティニーに抵抗するでもなく受け入れて戻って行った。
対峙するセイバーとインフィニットジャスティス…ハイネとアスラン。
ハイネは目の前のアスランに対して、怒りの感情は無かったが、かと言って彼の生存が喜ばしいとも思ってなかった。
敵になるぐらいなら、せめて死人は死人らしく死んでおけよ、と思うのは自分の傲慢だろうかと考える。
「お前との再会がこんな形になるとはな」
『ザフトは平和を叫びながら戦争ばかりしているじゃないか……』
「分かってないな、アスラン。ジブリールが健在な限り戦争が終わらんというのが俺たちの主張だ。邪魔するものは排除しなければならんだろう?」
『じゃあ、何故ジブリールが逃走した後も戦闘を続けた!?これがザフトの正義だとでも言うのか!』
「さあな?俺はザフト軍ミネルバ所属のMS部隊隊長だ。仕事をしているだけだ」
『仕事……』
「アスラン、今回は見逃してやるがな、もし万が一もう一度俺達の前に敵として現れたら…その時は容赦しないぜ……」
『ハイネ……』
そうアスランに低い声で告げると、ハイネはセイバーを変形させて飛び立って行った。これ以上は自分の感情の融通すら効かなくなりそうだったからだ。
かつての仲間の言葉がアスランに重く圧し掛かる。
ミネルバへ帰還するデスティニーとインパルス。そのコックピットの中で、シンとルナマリアは言葉を交わすでもなく沈黙を続けていた。
二人を襲う猛烈な虚脱感。それは紛れも無くアスランが裏切った事による弊害だった。
「ルナ……」
息苦しいこの間を何とかしようとシンは呼びかける。しかし、ルナマリアからの返事は無い。
シンは深く溜息をつき、ヘルメットを脱ぎ捨てる。
(こんな事になっちゃって…どうなるんだよ、これから……)
諦めに似た考えがシンを更に疲弊させる。それは、確実にシンを消耗させる。
そんな所へセイバーが追い着いてくる。そして、そのままMAの機首をデスティニーに接触させ、シンにだけ聞こえるように語り掛けてきた。
『シン、帰ってもルナマリアには話しかけるなよ?今のアイツは腫物と同じだ、そっとしておかなければお前も痛い思いをする事になる……』
「ハイネ……」
『人には放って置いて欲しい時がある。そんな時はな、誰の言葉も余計なお世話に聞こえるんだ』
「俺達、仲間なのに傷ついた仲間にすら何もしてあげられないのか……?」
『そうじゃない。放って置いてあげることが俺達に出来るアイツへの気遣いなんだ。それがアイツに一番優しい厚意だ』
「……」
『お前も今回は相当堪えている筈だ。お前はまず自分の事をケアしてあげろ。ステラでも誰でもいい、ゆっくり気持ちを落ち着かせるんだ』
「くぅ……」
シンはコックピットの中で涙を流した。
アスランの裏切り、それにくたびれたルナマリアに何もしてあげられない自らの無力、そして、ほどけそうだったオーブに対する憎しみの固結びがほどけなかった事……それら全てが重なり、シンの精神を疲弊させていた。
同じ頃、レイと共にミネルバへ帰還するカミーユは、先程感じた誰かの気配が気になっていた。
(誰なんだ、あれは……?でも、なんだろう…とても清々しい感じだった……)
歪んでいるようで真っ直ぐな感覚、そして全てをやり遂げたという達成感にも似た想いが駆け抜けた。それは、誰かを本気で愛していたからだろうとカミーユは勝手に解釈する。
そんな人間がオーブにも居たんだな、と思うと、果たしてジブリールを匿ったのは本当にオーブの意思であったのかという疑問が浮かんでくる。
(ファに…会いたいな……)
当てつけられたのか、カミーユは突然そんな事を考えた。彼にとって自分を一番理解してくれる人は恐らくファ=ユイリィだろう。それは、ニュータイプ同士の相互理解などではなく、もっと根本的で母性的なものだろう。
いつでも隣にいてくれる人というのはとても良いものだと思う。カミーユにとって、ファがそういう人物に当るのは間違いない事であろう。
オーブの戦いは、思った以上に皆の精神を疲弊させた。
しかし、時代の流れはそんな彼等を休ませるような事はしない。まるで試練を与えるように、一瞬の気の緩みも許されない状況へと突入していく……
ザフトの旗艦をキラが撃沈した事により、指揮権がミネルバのタリアへと移行したザフトはオーブより撤退した。
満身創痍のオーブは疲れきっていた。
官邸通路を歩くカガリはユウナ=ロマ=セイランの死を通じ、オーブへの想いをより一層確固たるものにしていた。その瞳にはもう涙は無い。
「ウナトはどうしている?」
ふと気になったカガリは、随伴するキサカにユウナの父親の事を訊ねた。
「分からない。シャトルの格納庫へ人をやったがそこも崩れたらしく、誰もそこには居なかった」
「行方不明か?」
「今はそうだ。だが、瓦礫の下から身元不明の遺体が何体か発見された。損傷が激しくて誰かまでは分からないが、恐らく……」
「そうか……アイツは、父親を憎んでいただろうか……」
「神のみぞ知る…ハウメアの導きがあればめぐり合えるだろうが。しかし、親子というのは常に共に有りたいものだ、彼らとて例外ではなかろう」
「そう…だよな……二人を一緒の墓に入れてやれ……天国で仲良く暮らせるように……」
「分かった」
「直ぐに会議を始めるぞ。明日には今回の件を含めた会見を開く。それと、プラントに打診しろ、ジブリールは月に居るとな」
カガリは一瞬視線を落としたが、直ぐに顔を上げ、そのまま会議室へ歩いていった。
それを見送るキサカはその背中を見て胸が張り裂けそうな思いになった。
「お前も相当辛いだろうに……それでも、オーブを守る為には止む無し…か……」
窓から見える風景は、先程までの激しい戦闘が嘘であったかのように静まり返っている。しかし、その景観は普段のオーブの姿とは随分とかけ離れた、煙上る戦場の爪痕だった。
「時代は何故あの子に厳しいか……誰も望んではいないだろうに……」
世が世ならば、活発なカガリはもっと溌剌としていられただろう。しかし、時代はカガリにそうなる事を望んでいなかった。
キサカの諦めにも似た声が空しいのは、喧騒の後の静か過ぎる雰囲気のせいだった。
ミネルバに帰還するパイロット達。コックピットから降りた彼等の表情は軒並み暗く、それがオーブでの戦闘の苦しさを物語っていた。
「シン……」
「止めとけ」
パイロット達の様子に心配になったヴィーノが話し掛けようとした所をマッドが止めた。若年のヴィーノと違い、人生経験を十分に積んで来たマッドはシン達の気持ちを察していた。
しかし、そんな中でもステラだけは特別と言ってよかった。シンに関しては彼女の癒しが必要だったからだ。
「シン……」
「ステラ…ごめん、今は休みたい……」
「あ……」
ステラを拒否するでもなく、かと言って許容するわけでもなく、シンはおぼつかない足取りでMSデッキを後にする。
皆、疲れていた。いつも調子の良いハイネですらその表情は暗い。
アスランの裏切りはそれ程にまで彼等を困憊させた。
ルナマリアは泣いていた。
アスランと敵と味方に分かれてしまった事が彼女の気持ちに迷いを生み、アスランの発言がどうにも出来ない葛藤を生み出していた。
その葛藤がやるせなく、どうしようもない事がルナマリアに混乱を与え、情緒が再び不安定になった彼女はとめどなく溢れてくる気持ちを抑え切れなかった。
ハイネは平静を装っていた。
しかし、その内心は複雑であった。アスランの裏切りに対して一番責任を感じていたのは他ならぬ彼自身だろう。かつてアスランに告げた言葉が、このような形で皮肉になって返ってきたのだ。
ハイネはもう決心しなければならなかった。
戦場でのアスランの言い分を聞く限り、彼は最早ザフトに戻る事は無い。言葉の責任を感じるハイネは、アスランに対してけじめをつけなければならなかった。
レイは眉間に皺を寄せる。
キラ=ヤマトの出現は予想外だった。しかし、彼にとっては不謹慎ながらも喜ばしい事だったのかもしれない。
自らの手で決着をつけることが出来る…それはレイが自身の存在に意味を持たせる事だったのだろう。
しかし、それも叶わなかった上、キラに負わされた屈辱は大きい。
自分が交戦していたのにも関わらず、それを振り切って旗艦を落とされたのはキラに負けたも同然である。それがレイには余計に腹立たしかった。
そして、カミーユは親指の爪を噛む。
サイコフレームのせいだろうか、今回のオーブでの戦闘は余りにも多くの人の想いが集中していた。それらがカミーユの感覚を刺激する度、心が揺れた。
平和を掲げながらもジブリール逃走後も戦闘を続けたのは、小さな疑問をカミーユに植えつける事となった。
戦局が終末への予感を見せる中、カミーユはこれから先に自分に何が出来るのかを考えていた。
〜つづく〜
GJ!
職人さん、いつもながらGJです。そしておかえりなさい!
GJです
カミーユが感じた波動ってラクス?
>420
やり遂げた想い、誰かを本気で愛していた想いなら、ユウナじゃないの?
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
GJ!!
>>421 やっぱそうか…
読み直してユウナろ気づいた
レスありがとう
GJです
ルナマリアにもカミーユの経験が活きそうだな
カミーユも憧れてたレコアが裏切って自分の敵になって苦しんだ経験があるし
カミーユならうまく話ができそう
425 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/18(土) 17:20:38 ID:SEyg1bVv
GJ!!
>>420 俺も一瞬ラクスかなと思ったが
>(誰なんだ、あれは……?でも、なんだろう…とても清々しい感じだった……)
>歪んでいるようで真っ直ぐな感覚、そして全てをやり遂げたという達成感にも似た想いが駆け抜けた。それは、誰かを本気で愛していたからだろうとカミーユは勝手に解釈する。
この清々しさ、達成感といった表現からユウナだと思われ
カミーユのセンサーが戦場全体の意思を感知してていいね
Z小説のカミーユは全身が感覚のセンサーであるという御大の文章を思い出した
お疲れ様です。
次回も楽しみにしています。
>(誰なんだ、あれは……?でも、なんだろう…とても清々しい感じだった……)
>歪んでいるようで真っ直ぐな感覚、そして全てをやり遂げたという達成感にも似た想いが駆け抜けた。
俺には最初からユウナしか思いつかなかった
俺最初旗艦を沈めて戦闘を終わらせたキラの思念かと思った。
ユウナであることに気づいて自分がいやになった。
待ってましたのGJ!
しかし色々と気がかりな話が。
1)撃沈された旗艦の乗員の安否は?またぞろシカタガナカッタウタセナイデ、か?
2)仮にルナがAAに寝返ったとして、そこで見せつけられるのは公私とも協力しあう
凸とカガリの姿ということに?アタシナンノタメニココニキタンダッケ…とか?
3)あるいは凸が帰還してみるとカガリが心入れ替えてAAと一線画してるとか?
オレモナンノタメニみねるばウラギッタンダッケ……とかとか…
>>431 旗艦は煙を上げてるという描写しか無いから、機関部へダメージ与えて
艦底に穴空けた、くらいじゃね?
>>432 しかしそれだと指揮系統を預かる人間は無事ということになり、
ミネルバに指揮権が渡る余地が無い罠。
まさか艦の通信機能のみを奪うなんてことがMSに出来る筈も無いし(テスタメントとかのウイルスを使えばまた話は別だが)、
恐らく最小限の犠牲とか言う理屈の元ブリッジを容赦なく潰したものと思われ。
>>433 いや艦底に穴空いたらそのうち沈むから避難せにゃならんだろ
まあキラは一度やむを得ず犠牲を出すと決めたら容赦ないからなー。
問題はその基準がその時の気分でコロコロ変わったり揺らいだりする所だが…
今回もGJです
ハイネは別に責任を感じる必要はないんだけどなぁ
どー考えてもアスランが全部悪いし
議長に疑問を持つカミーユ、さりとてアークエンジェルにも協力できない…最終的にどうなるのかさっぱり読めないですね
現時点では第三勢力も現れようがないし…カガリひきいるオーブの今後がやはり焦点でしょうか?
乙です!
だれかカミーユを支えてやれるやつはいないのか
このまままた壊れちゃったりして…
>>439 それがシンという存在なんじゃないかね
シンを見て自分を見てるみたいだし
第三十八話「獅子は吼える」
「カミーユ」
MSデッキからそれぞれが散っていく中、ハイネがカミーユを呼び止めた。
「何だ?」
「先に言って置くぞ、もしアスランが出て来ても、変な情けは掛けるなよ」
「しないよ。裏切りは裏切りだ、どんな理由があっても」
「ん……?」
意外とあっさりと受け止めるカミーユにハイネは逆に不意を突かれてしまった。
他の皆が動揺を続けている中で、カミーユに限って言えば達観している節がある。
「慣れたもんじゃないか?」
「慣れるかよ。でも、こんな事一々気にしてたら誰が正しいかなんて分からなくなっちゃうだろ?」
「経験、あるのか」
「……あぁ、男に走った人だったけどね。でも、戦争やってて気持ちが乾いて、それで情に走るのってあると思うんだ」
「ルナマリアが心配か?」
カミーユの言っている事は恐らくルナマリアのことだろうとハイネは察した。
つまり、ハイネはルナマリアがアスランを追いかけてザフトを抜ける可能性があると言っているのである。
しかし、そんなハイネの言葉にカミーユは眉を顰めて唸る。
「多分大丈夫じゃないかな?彼女にはここに情を傾ける相手が居るじゃないか」
「……?シンか?」
「シンにはステラが居る。そうじゃなくて、何も情を向ける相手ってのは異性だけじゃない」
「メイリンか」
理解したように指を鳴らしてハイネが頷く。
「ああ、ルナマリアも気付いているはずだ。妹の存在が、彼女にとってどれだけかけがえの無いものかって事が……」
一人っ子であったカミーユには兄弟を持つという感覚が分からない。しかし、グリプス戦役時にロザミィという妹が一時出来た事がある。
結果的にその関係は悲劇で終わってしまったが、僅かの間に感じたその感覚は、きっと本当の兄弟にも通じるものがあるのだろうと思う。
「そうだな…シンによればルナマリアが復活したのもメイリンのお陰だって話だったからな。なら、少しの間そっとしておけば自分で何とかできるか?」
「それはハイネの判断だろ?俺に聞くなよ……」
苦笑いをするカミーユ。レコア=ロンドを知っているとはいえ、ルナマリアは彼女ではない。
レコアに関してはクワトロがもっとしっかりしていれば良かった事であったが、ルナマリアはまた少し状況が違う。
だから、どうすれば良いかなどはカミーユには判断しかねるし、そこは隊長であるハイネに任せるのが一番だと思った。
「そうだな、俺が隊長だったな……」
アスランの事で少し苛立っていた自分がいることに気付いていなかったハイネは、頭を掻いて苦笑する。
「あまりアスランのことで神経質になるなよ?ミネルバを離れた事は…」
「事実だからな。…心配するなよ、俺はそんなに甘くは無い」
アスランの話にハイネの目が細くなる。
「もう一度言うが、アスランが出て来たら…絶対に容赦するなよ?」
「……あぁ」
不穏な空気を纏うハイネはそう告げると踵を返して戻って行った。
その後姿にカミーユは小さく溜息をついた。
会議が終わり、日が傾きかけた時間のオーブ官邸、カガリの部屋で一同は神妙な面持ちで机の上に置いてある一冊の古ぼけたノートを見つめていた。
「これがそうだと言うのか?」
「ええ、恐らく……」
カガリの問い掛けにラクスが応える。それでもカガリは怪訝な顔をするばかりである。
コンピューターが全盛の時代に手書きのノートは不自然だった。
しかも記されている内容も内容だ、重要な資料をこのような形で放置してあったというのも信用し辛い。
「デスティニープラン…か……本当にそんな事が可能なのか?」
ノートの内容はデスティニープランという新しい秩序をもたらす計画の要綱の様なものが記されていた。しかし、その構想自体、何年も前のものであるらしく、書いてある事項にもいくらか試行錯誤した感もある。
「このノートはわたくし達がメンデルで身を隠してた時に偶然にも発見したものです。遺伝子研究の盛んであった実験用コロニーですから、その可能性は十分にあるはずです」
「だが、現実問題どうするんだ?仮にこれがデュランダル議長の物であって、急にこんな事を言い出しても、それを世界がすんなり受け入れる訳が無い」
「…分かりません。しかし、彼が遺伝子工学に通じているのであるならば…その上で争いを無くそうと考えているのならば、この手段を採ると思います」
「……」
カガリは考え込む。
もしラクスの言う様にデュランダルがデスティニープランを発動しようと考えているのなら、その真意を問い質さなければならない。
しかし、現段階で分かっている事はこの古ぼけたノート一冊の記述のみである。しかも本人の物であるのかさえハッキリとしない。
デュランダルが強権を行使してからでも遅いが、確証を得られない今、動いても早過ぎる。
「本当だったら大変だわ。何とかしないと…」
「それは出来ない。理念がある限り、オーブは先制を打つことは出来ないのだ」
ラミアスが口を挟むが、それをキサカが嗜める。
「でも、先手を打たれちゃってからじゃ遅いんじゃないの?ほら、この間の戦闘だって、俺が居なかったら危なかったじゃん?」
「あなた…出てってすぐに被弾して逃げ帰って来たくせに良くもそんな事を言えるわね!」
「そ、それを言うなって……」
空気の読めない男、ネオ=ロアノークがラミアスに突っ込まれる。
「でも、確かにネオさんの言うとおりだよ。手遅れになる前に何とかしなきゃ、オーブだってただじゃ済まないかもしれない」
「キラ、私は今はまだ動けないと思うんだ。確かに手遅れになってからでは取り返しが付かないが、想像だけで動くのは愚か者のする事だと思う。私はもう愚か者にはなりたくない」
「手遅れになったら、それこそ愚か者だよ」
「私のやり方が甘いというのは分かっている。だが、下手に動けば唯でさえジブリールを逃がして不利な状況なのに、余計に不利になりかねない。
理念にも触れてしまうかもしれないし、それを知っている他の国の信用に関わる。何よりも、そこをデュランダル議長につけ込まれかねない」
「でも、それで国の人が救われるなら……」
いくら説明しても融通の効かないキラ。そんな弟に苛立ったのか、急に顔を強張らせて怒鳴る。
「私は国家元首だぞ!」
「カガリ……?」
「何でお前が決めようとするんだ!私の仕事だろう!」
「じゃあ、カガリはこの間みたいに攻められてからしか動かないって言うの?またオーブを火の海にしたいの?」
「だから、そうならない為にも無闇に刺激したくないと言っているんだ!」
「デュランダル議長だけじゃない、ジブリールだって何をするか分からないんだよ?」
「ジブリールはオーブに何もしやしない!不本意ながらもオーブは奴を助けたんだぞ!」
「そんなの何の保障にもなんないよ!あの人が義理や人情で動ける人だとは思わない!」
「奴は計算で動く!オーブを狙って何の得がある!?奴にも信用があるだろ!」
「けど…オーブが助かってもきっと何か良くない事が起こるかも知れないじゃないか!」
「ジブリールを逃がしたのは我々にも責任はあるんだぞ!」
「でもそれは!」
「世間は先の戦闘をそういう風に見ている!自分達だけ納得したって、それじゃあ意味は無い!」
「でも、僕が言っているのはオーブの事を思えばこそじゃないか!」
「今迂闊に動けば、それはザフトもジブリールも刺激する事になる!それが分からないのか?」
「カガリの言っている事は遅すぎるよ!カガリは本気でオーブの事を考えているの!?」
「ふざけるな!私達がダーダネルスやクレタでやってきた事はオーブの首を絞める行為だったんだぞ!それを反省せねばならんというのにお前はな!」
「僕達は戦いを止めに行っただけじゃないか!じゃあ、カガリはあのまま放っておいた方が良かったって言うの?それって、見捨てるって事じゃないか!」
「自分の行いも見えていない状況でやってしまったんだぞ、私達は!冷静になれキラ!あんな勝手な事をして…本来なら私達は罰を受けなきゃならんのだぞ!」
「でも…!」
「カガリの気持ちを汲んでやってくれ……」
姉弟喧嘩に発展した二人の口論に、アスランが横槍を入れて止める。
その言葉に二人は口を止めるが、睨み合ったままだった。
「カガリ、君は君の好きなようにすればいい。俺は君を信じてそれに協力するから……」
「アスラン……」
そう言うと表情を落とし、カガリは部屋を出て行ってしまった。
「カガリ…何をそんなに頑固になっているの……?」
「キラ、お前はもっとカガリに気を遣ってやれ。アイツは今、頑張っているんだ」
多少の不満を見せたキラに、アスランが注意を与えた。
「遺伝子によって一人一人の生き方を国が決める…ねぇ……?こんな作り話、誰が信じるってんだ?」
ネオはノートを取り上げて流し読みをしている。
「作り話で無かった場合、それは現実に起こり得る問題です。ですから、わたくし達はその真相を確かめる為にも行動を起こさなければなりません」
「でも、カガリさんは迷っているようだけど……」
ラクスの言葉にラミアスが問題を提起する。いくら彼等がやる気になったところで、カガリが決断を下さねば動く事は出来ない。
カガリがオーブの国家元首に返り咲いた事により、アークエンジェルとエターナルはオーブの監視下に置かれる事となったからだ。
彼等とて、勝手に動けばカガリの迷惑になることくらいは分かっている。
「カガリはこの間の戦闘で色んな人からオーブの未来を預かったと言っていた。そのプレッシャーから慎重になっているのだろう、暖かい目で見守っていて欲しい」
「キサカさん……」
キサカは一同に一礼して退室した。
「ふぅん…あのお嬢ちゃん、見た目よりもナイーブなのね」
「貴方!勝手に付いて来て…捕虜のくせに、言葉が過ぎるのではないですか?」
「いや、だって、あんな軍艦の中じゃ退屈すぎて……」
「黙ってて下さい!」
関係ないと思っているのか、軽はずみな言動を繰り返すネオにラミアスは苛立っていた。ヒステリックなラミアスの顔を見て、ネオは露骨に嫌そうな顔をする。
「……とにかく、何とかしてカガリを説得しないと…何かが起こってからでは遅いんだ」
「キラ…待ってやることは出来んのか?カガリを追い詰めても…」
「何とか出来ないかな、アスラン?」
「お…俺が!?」
「だって、カガリは僕の言う事なんて聞かないだろうし……」
「お願いします、アスラン」
「ラクス…君まで!」
「へぇ、君、あの嬢ちゃんとそう言う仲なんだ?」
遠巻きでラミアスに睨まれているネオが顔を緩ませて厭らしそうにアスランを見ていた。
「ちょっと待て、俺はそんな……!」
「じゃ、アスラン、やるだけやってみて」
「お、おい、キラ!」
こういう時のキラは図々しい。それにいつも振り回されていたのは苦労人のアスランだった。
それぞれ退室する中、取り残されたアスランは舌打ちをする。仕方なしにアスランはカガリを捜しに行動を開始する。
「おい、本当にアイツで大丈夫なのか?何かうろたえてたぞ」
「大丈夫ですわ。アスランはやるときはきちんとやる方です」
「あんたが言ってもねぇ……」
ラクスの言葉にネオは溜息を漏らす。
(こんな不思議ちゃんに言われてもな……何でそんなに自信たっぷりに言い切れるんだろうな?不思議ちゃんだからか?)
顎に手を当てて考えるネオにキラが話しかける。
「ラクスは、アスランの元婚約者だったんです。だから……」
「元婚約者?この不思…子が?」
「はい」
「え……ちょっと待てよ?あのアスランって奴とカガリってお嬢ちゃんが良い仲で、奴の元婚約者がこのラクスって子で、そのラクスと良い仲がお前で…お前とアスランは親友で……?」
「カガリさんも一応キラ君と双子の姉弟って事になるわ」
「えぇっ!?……複雑だなぁ」
ラミアスに付け足されてネオは更に驚く。
「どうなってんだ、お前等?あれか、綱渡りの様な恋愛がしたいって年頃なのか?」
「ネオ大佐!」
「かぁーったく!俺にこの美人艦長さんを落とせるテクニックを教えてくれよ、プレイボーイ君!後でいい本、やるからさぁ」
「い、いえ、僕は……」
迫ってくるネオの迫力にキラは両手を振って拒む。
「僕はそんなテクニックなんて……」
「何言ってんだよ、婚約者を落とすなんて並大抵の努力じゃできない事だぜ?それも親友から!是非、そのテクニックを俺にウゴっ!?」
「お止めなさい!尋問にかけますよ!」
キラに詰め寄るネオの耳をラミアスが摘み上げる。
「痛ててててえ!ほ、捕虜虐待でしょ、これ!」
「貴方みたいな自由な捕虜が居ますか!」
「で、でも、君と二人なら、尋問受けてもいいかな?」
「……マードック主任にやってもらいます」
「ええっ、あのおっさん!?男と二人きりは勘弁してくれぇ!せめてあのミリアリアっていう子と……」
ラミアスに耳を引っ張られてネオの声が遠くなっていく。そんな様子にキラとラクスは顔を合わせてクスクス、と笑った。
しかし、すぐにラクスは俯き、視線を落として考え事を始める。
「……どうしたの?」
覗き込むようにキラが訊ねる。ラクスはその行為を無神経だとは思うが、そんなキラの愚直な優しさは心地よかった。
「いえ……」
「あのラクスの偽者の事……?」
キラの問い掛けにラクスは黙って頷く。
「…わたくし、やはり名乗り出なければならないのでしょうか……」
「……」
「あの方はきっとそのせいで立場が危うくなってしまうのでは……」
「違うよラクス…君の名前を騙っているんだ。本物の君がそれを認めちゃうと、君が君で無くなってしまう。だから、君の為にも、デュランダル議長に利用されている彼女にとっても、これから君がすることは正しい事なんだ」
キラが励ましの言葉を掛けると、ラクスは歩き始める。それに続いてキラもラクスに合わせて歩み始めた。
これからラクスがする事、それはデュランダルの側に居る偽者の自分の告発である。それは、同時に彼女への非難と、自身が再び表舞台に出ることを示している。
「ですが、あの方はわたくしの代わりにプラントの方々を勇気付けてくださいました。例えそれがデュランダル議長の手の平の上であっても、そのステージでどれ程の方々が力を貰ったでしょう……。わたくしはその間、ただ平穏な毎日を送っているだけでした……」
「君が気にするのも分かるけど、僕が君の辛さを知っているから……」
「貴方の優しさに甘えるわたくしは、どれほど脆いのかと思い知らされました……。あの方はわたくしなんかよりもずっとかラクスに向いていらっしゃる……」
「思いつめないで、ラクス。例え君がプラントに残っていようとも、デュランダル議長が同じ事を企んだだろうし、そして君は同じ様にこうしてデュランダル議長を止めようとしただろうし……。
同じなんだよ、きっと、こうして僕等がここに居るのは変わらない運命と同じなんだよ」
「キラ……」
「僕が君を守る、そして本当の平和を手に入れるんだ」
「……」
時折ラクスは弱さを垣間見せる。
いくらカリスマを持った歌姫であろうと、所詮は齢二十歳にも満たぬ少女である。
こうしてキラと二人きりの時にだけ、ストレスを発散するように自己の内面を曝け出す。
キラはそれを受け止めてラクスを励ましてきた。
二年前はラクスがキラを、そして今はキラがラクスを……お互いが傷を舐め合ってバランスを保っていた。
その頃アスランはカガリを捜して邸内をうろついていた。
(俺は何でキラの言う事を一々聞いているんだ……?)
ふと、そんな事を考える。
昔から頼りない奴だとは思っていた。だから、色々と面倒を看たりもしてきた。
しかし、今の関係は、何となくキラにいいように利用されているようにしか思えない。
しかし、状況を考えれば、そんな考えを表に出すのは仲間内の輪を乱すことになってしまう。だから、アスランは我慢する。
「何処に行ったんだ、カガリは……?」
不自然に涼しい顔をしてアスランは捜し続ける。しかし、邸内を一通り捜してみたが見当たらない。
「アスラン君、どうしたのだ?」
何箇所かでうろつくアスランを見かけていたキサカが思わず声を掛けた。
「いや、カガリが何処に行ったのか御存知ですか?」
「……さあ、私には分からない。が、多分あそこではないだろうか」
「あそこ?」
「海の見える……慰霊碑の事だ」
「ありがとうございます!」
アスランは駆け足でそこへ向かう。
キサカはアスランにカガリの居場所を教えるべきか迷っていた。今はカガリを一人にさせておいて欲しかったからだ。
しかし、少しの遅れが致命的な遅れになるかもしれない状況で、どうしてもカガリを甘やかす気にはなれなかった。昔からカガリを知っているキサカは、そんな彼女を不憫に思い、溜息をつくばかりであった。
「彼が果たしてカガリの支えになれるだろうか……」
駆けて行くアスランの背中を見て、キサカは不安を感じていた。
夕凪が気持ちいい見晴らしの良い場所。
かつてシンがキラと邂逅した場所で、カガリは風に髪を玩ばれる中で佇んでいた。
水面に映える夕日がカガリを茜色に染める。
慰霊碑に供えられた献花は先の戦闘の影響か、殆どの花びらが飛び散ってしまっていて原型を留めていなかった。
「カガリ」
背中から聞こえてくる声にカガリは少しだけ反応した。だが、その声の主が誰であるのか分かっているのか、振り向く素振りを見せない。
「何の用だ、アスラン」
素っ気なく返事を返すカガリ。
「用が無ければ来ちゃいけないのか?」
突っかかるように言い返すアスラン。
「分かってる。私を説得しに来たのだろ?話を聞くよ」
「どうしたんだカガリ……」
様子の違うカガリにアスランは戸惑いの言葉しか出なかった。
少しの間を挟んでカガリがアスランの方に振り向いた。
「……すまん。けど、整理がつかないんだ……。オーブは守らなきゃならんし、それがアイツとの約束だ。私の不甲斐無い行動を考えれば、オーブの理念を守るという事は最後の私の信用材料だ……」
絞るような声にアスランは黙って聞いているしか出来なかった。
少しの間、二人を波の音が包む。
アスランから見て、丁度沈み行く太陽がカガリのシルエットと重なった頃、カガリが口を開いた。
「アスラン、私は今、精一杯なんだ。これからはもっときつくなると思う。だから……」
逆光でその表情を窺い知る事は出来ないが、その瞬間、アスランの目にはカガリの姿が近くでいてとても遠い場所に居る様に見えた。
「私はこの国を守る。その為の決断を今迫られている。それが私の使命だし、義務でもある。正直、若輩者の私にはそれ以外の事に気を回している余裕は無いんだ……だから、アスラン……」
そう言ってカガリは指に嵌めていた指輪を取り外す。それはかつてアスランがプラントの調査に向かうときにカガリにプレゼントした物だった。
それを丁寧に持ち、アスランに差し出した。
その日の最後に一際強く輝く太陽の光が指輪に反射し、それが指輪の涙のようにも見えた。
「これが……君の答えなのか……?」
「私は後悔していない。この国に育てられ、そして今この国の為に全精力を使って責任を負うことに、私は……誇りを持っている……!」
カガリの瞳はアスランの知らない瞳だった。つい先日まで知っていたカガリが今はまるで別人の様な顔つきに変わっている。
最早、自分の姿がカガリの瞳に映ることは無いと知った。
カガリの獅子の如く雄々しい形相から、先代のウズミが何故オーブの獅子と呼ばれていたのか、その理由を今になって知る。
それはアスランにはとてもじゃないが介入出来ないほどの力強さを秘めている。
アスランは、もうカガリの力にはなれないと思い知らされてしまった。
風が少し強くなり、波のうねりも荒くなる。それに合わせるかのように、太陽は水平線からその姿を消した。
岩にぶつかる波の音と水しぶきが、二人の物語の終わりを象徴するエンディングテーマのようで、アスランはそれがやたらと癪に聞こえていた。
その後、ラクス以外のアークエンジェルの面々はオーブに拘束されることとなった。これまでの様々な経緯を調査する為である。
しかし、それは再びアークエンジェルが勝手な真似をさせない為のカガリの処置だった。キラの言動を見た上でのカガリの判断だった。
〜つづく〜
リアルタイムGJ!!
凸、カガリに捨てられるwwwwwwww蝙蝠男に残るのは結局キラきゅんだけかwwwwwww
投下乙
カガリの決心はどう実を結ぶのやら、期待して良いのでしょうか。
それにしてもアスランはハシゴを外されつつけて、ついにここまで来てしまった。
作中での行動的には自業自得とはいえ、悲惨な奴よのう。
追伸、リアルタイム乙ってなんやねんと突っ込みたい、待ちかまえてたのかと、wの使用は節度を持てと、以下略
GJ!
カガリの措置が今後にどう響くのか気になるな。
ラクスは既にプラントに渡っちゃったのか?
しかしハイネも相当参ってるなぁ…大丈夫かミネルバ組
452 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/19(日) 17:33:31 ID:tozInF5k
GJ!!カガリがちゃんと成長している。
GJ!!!
ある意味、ラクシズは進退窮まったな。
オーブからの支援はもう得られないだろうし、残る手段は暴力で議長を倒してプラントを乗っ取る事くらいか。
それにしてもスパコディ様は一体に何様のつもりだ。
誰も君の意見なんて求めてないんだけどな。
GJ!!今回も楽しめたよ
>>450 そういう追伸荒れる原因になるからやめれ。スルーしろ
そりゃ一足飛びに成長したり、解決したりはできない。
だが、このカガリからは必死に「一人前になろう」という意識は見て取れる。
GJ。
いつもながらGJです。
アスランへ指輪を返したのは、恋人へだけじゃなく、弟や“旅の仲間”への私情との決別ですね。
新たなるオーブの獅子の静かなる咆哮、確かに聴きました。
それに引き換えラクシズは・・・もうどうしようもないですね。
特に、ネオが(ムウでなく)ネオのまま仲間入りしているあたり。
ネオ・ロアノーク大佐は、連合の軍人でブルコスの私兵。
せめてムウと同一人物であれば、「理屈はどうあれ、死んだと思っていた仲間だから情に流された」と弁護できるのに・・・
GJ!
カガリよく踏みこらえた!
あと問題はラクシズ一党ですね。
せめてこれ以前に完膚なきまでキラがカミーユに負けることで
スパコディ故の増長が粉砕され尽くして努力する方向にいっていれば
そこを起点にラクスなんかも過去に学んだりしてとかいう展開もあり得たんだけど。
できればカミーユを知るアスランが、今回の指輪の一件から成長して
そこからラクシズ一党に良い変化をもたらせてくれればイイのだけど。
無理かなやっぱ
GJ!
カガリの静かな成長と決意にジーンと来た。
今回の件でラクシズも考え直してくれればいいけど
梯子を外されて見当違いな方向に行きそうでもあるだよな
カガリは更正できそうな気配でよかったけど、キラ様はもうだめですね
自分の考えが絶対正しい、反対するカガリがおかしい、としか思ってないようだ
GJ!
カガリの成長は見ていて気持ちがいい反面、
たかが古ぼけた廃棄されたノート一冊から妄想広げた桃色汚物と、
桃色汚物の言うことを鵜呑みにし、具体的な根拠なく武力行使をけしかけようとするスーフリニートは
同人アニメ同様いつ見ても不愉快極まりないな。
さらなるカガリの成長に期待しまつ
GJ!!
カガリが良い方向に成長してますね!これもすべてユウナのおかげだ!!
原作同人のカガリは観てて腹立つけど、こっちはちゃんと考えたり苦悩してて好きになれる!
>>460 脚本家が腐女子なだけあって妄想力だけはズバ抜けてるなw
つうかDプラン発表すらされていない現時点で、一体どんな大義名分でラクスはプラントに攻め込めるんだよ?
ラクスが宇宙から偽ドム三匹はじめどこからともなく沸いて出た兵隊引き連れて
オーブに攻め込んでくる夢を見た。
GJです
しかし今回見てるとキラが諸悪の根源に見えてくるから不思議だ…
普通はラクスが全部考えて操作してる感じがするSSが多いからなぁ
カガリの決断は立派だったが、某スレみたくラクスとキラによるオーブ乗っ取りとかおきんだろうな?
まあ、そのためにはカガリを蹴落とさないといけないのでそれは流石に無理とは思うが…
しかしアスランが憐れだ…仲間を裏切って、恋人には決別されもはやいくところがない(w
だからといって誰も同情はしないでしょうが
>>462 ジブ取り逃がしたあともオーブを攻撃したから…とかじゃね?
まーそれにしたって議長の『ジブをかくまった以上敵性国家』って言い分のが筋は通ってるんだが
>>464 そこでルナマリアのザフト脱走→再会でいっそう傷を嘗めあう道化芝居に。
いっそ二人してどん底までやさぐれてバッタ型ガンダムを持ち出すとか
>>465 というか連合側なんだからとっくの昔にオーブは敵です。
GJ!!
>「え……ちょっと待てよ?あのアスランって奴とカガリってお嬢ちゃんが>良い仲で、奴の元婚約者がこのラクスって子で、そのラクスと良い仲がお>前で…お前とアスランは親友で……?」
>「カガリさんも一応キラ君と双子の姉弟って事になるわ」
>「えぇっ!?……複雑だなぁ」
ネオそれ視聴者の本音だから
GJ!
カガリが凄く成長して関心した。逆にキラはもう死んで良い
ニートのキラ様とやらは働いてる人間の心情なんてわかるわけないなw
>>466 そんなんで地獄見た気か?
他のライダーだとあいつらより地獄見たヤツいっぱい居るのに・・
舐めてんのかと
……いや〜?
カガリ更生してるか? 方向性がずれただけでキラとそう変わらんだろ。
不器用だからこそ、最初から性急な手段をとらず、一つ一つの問題を解決
していくカガリに好感持てますね。
諸兄が言うとおり確かにアスランは仲間を裏切り、更にカガリからも別れを言われた
が、カミーユ達と交わした記憶があるから、最悪のケースは回避できなくもない。
ただ、その場合キラとラクスを刺し違えてでも自分自ら討つことであるが。
カガリの決断を見たから望みはありそうだけどね・・・
>>464 漏れもそれ考えたwwwただ、こちらのオーブはキサカは一応まとも
(あっちのはニートの操り人形でトダカさんまで軽蔑する始末だし)で、
カガリも健在(クーデターなんぞ起こしても、国民がラクシズを支持しない
確立のほうが絶対的)なんで・・・・・・
AA脱走→エターナルと合流→第3ならぬ「第四勢力」設立(議長・ジブ・カガリ
の三すくみに対して)→葬送曲無視してプラント強襲
の流れになりそう。その際アスランがラクシズと袂を別ってオーブの戦闘指揮官
としてラクシズ討伐ならシンかカミーユに修正食らって収まるかな?wwwwww
>>472 「あっち」がどこだか教えて欲しいのです。
475 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/19(日) 23:06:58 ID:R0Ip0bNq
Xない?>>473
>>472 こっちのノイマンがあの桃色汚物どもなんぞのためにナタルが守ろうとしたAAを
動かさないことを心の底から願う
成長してるって書いてる人たち本当にそう思ってるのか?
カガリ状況読めてないじゃんwww
すさまじく後手に回ってるのに足元を見つめなおすって政治家としてどうよ?
そもそもキラがダメだからって対立したカガリが正しいわけでもないでしょ。
両方とも明後日向いてんだから。
なんというか……オーブ関係者全員ダメダメwww
0.1でも0よりはマシという事。
少なくとも軽挙妄動を慎むようになったのは大きな進歩だと思う。
まあ総合的にどうかというのはそれこそ次回以降で語られるんだろうから
判断もそれからという事に…
>>474-475 dです。
X-SEEDはあまりにも厨くs…肌に合わなかったので中途で挫折したんだわ。
そーいや、確かに、キラやラクスがキチガイじみてたなー。
成長してないって書いてる奴はカガリを過大評価し過ぎ
少なくともニートの言うがままにははらなくなったからバカゴリからバカガリに進化はしたと思う
つまりカゴリはようやくこれから血反吐吐きながら成長する下地がようやくできました、と
そう言う事で、おk?
483 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/20(月) 01:33:24 ID:12EUp8ES
おまえらのような奴(キラ、ラクス)がいるから!
みんなしんじゃうんだ!!
484 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/20(月) 01:50:18 ID:/vc+O4ej
ネオは救いようないな
シンとステラにあったらどんな言い訳するんだろう
>>477 議長のことは神視点でないと分からんだろ。
この作品アスランに関しては作者が扱いに困っているというのが大きいんじゃないか。
最近だったと思うけど、アスランを外に出さないとバランスが取れないような書き込みがあったように、
アスランの戦闘力で大きくバランスが崩れる(仕方ないからキラを強くしすぎる等)のが嫌なんだろう。
そういう意味ではこの作品のアスランは不憫だな。
逆に言えばアスランが決め手になりそうなわけだが。
もちろん、宇宙に出た後のカミーユが最大のジョーカーだろうけどね。
カミーユはNT能力で神視点を持ってるから
うまくいい方向に持っていけそう
だからミネルバ陣営に居ながらも議長に不信感を持ってるわけだ
軽はずみに飛び出したりしないけど
ハイネ辺りはそろそろ戦死するかもな…
よくがんばってきたけど
>しかし、今の関係は、何となくキラにいいように利用されているようにしか思えない。
むしろ「今頃気付いたのか!?」と、言いたいのは俺だけか?
まぁ本編は最後まで気付いてなさそうだったから、まだマシなのかも知れないが・・・
「俺はカガリの為にザフトと敵対する道を選んだんだ、お前達がどう言おうとも俺はカガリの決定に従う」
くらい言ってくれればまだ良かったのに
>>486 ザフトがオーブを潰したがっているってのはわかるだろ。
危険な敵対国家を潰そうとするのは当たり前じゃね?
オーブは韓国は北朝鮮みたいなもん。
>>493 ……まあ、種死開始時点でマジオーブが危険な敵体国家だと思ってたら
議長も生身でカガリに会いはしないよなという話。問題は種死開始後からの諸所のオーブの池沼行動だ。
>>494 うん。敵性国家認定された国のトップとしては情勢判断が遅いし行動がトンチンカン。
ザフトとロゴス、オーブの立ち位置を理解したうえでの行動とは思えないんだが……
カガリがトップに立った時点でオーブ側から停戦交渉を持ちかけるくらいすれば良かったのに
明らかに凸の扱いはミネルバより待遇が悪いじゃねぇか。
>>499 まあ仕方が無いな。
自分で突き進んだ道だ・・・
第三十九話「宇宙(ソラ)へ」
戦いが終わった翌日、再びオーブ国家元首の椅子に戻ったカガリはメディアを通して、全世界に向けて政見放送を展開していた。その顔には擦り傷を隠すための絆創膏が張られている。
『この様な顔でメディアに出ることをお許し下さい。先日の戦闘に撒き込まれた際に多少の怪我を負ってしまいました』
「よく言うぜ、ジブリールを匿ってたくせに」
「自業自得だろ、あの顔は」
カガリのザフトを牽制するような喋り出しに、放送でそれを見ていたミネルバのクルーはそう言い捨てた。
パイロット達もその様子は見ていた。
『先ず、長い間オーブの元首の座を空けていたことを陳謝致します。中継で御覧になっていた方々もいらっしゃるかと思いますが、あれは半ば事故の様なもので、私自身の意志で行ったわけではないと先に付け加えさせてもらいます』
いつものカガリの話し方とは違う丁寧なしゃべり。世界の人々に伝えるには、以前のような一つ間違えば乱暴に思われてしまうような話し方では駄目だとカガリは思っていた。
しかし、言い訳を先に付け加えるような物言いに反発を覚えるのはミネルバのクルーだけではなかった。
しかし、そのまま言い訳を続けると思われた矢先に、カガリは椅子から立ち上がり、机の前に出た。そうして全身をさらけ出す事で少しでも誠意を見せようと考えていた。
『その上で、謝罪します。拉致されたとはいえ、本来なら直ぐに無理にでも国に戻るべきでした。それをしなかったのは、私の不徳の致す所でした』
カガリが深々と頭を下げる。カメラの前で、カガリの体を隠すものは何も無い。
全身で反省を表現していた。
「おい、ちょっと長くないか?」
「別に普通だろ?家出してたみたいなものだったんだから」
「我侭は許されないのにねぇ」
ミネルバのクルーは冷たく言い放つ。それというのも、アークエンジェルには何度も作戦行動を邪魔されたことがあったからだ。
そして、長い謝罪の礼を終え、再び背筋を伸ばしたカガリは更に付け加える。
『あの時私を攫ったのは、私の知人でした』
全世界のモニターを眺めている人々は一斉にざわつき始めた。カガリの発言は身内による犯行を告発しているようなものだからだ。
カガリは続ける。
『彼等も当時は無知なるが故の行為でした。愚かであった事は否定できないでしょう。しかし、昨日のザフトの侵攻に対して彼等は体を張って抵抗してくれました。オーブの理念の一つは"他国の侵略を許さず"です』
何を言っているんだというのが観衆の気持ちだった。自分の国の理念を持ち出したところで、結果的にはジブリールを匿い、逃がしたことには変わりない。
そんな事を言っても、アークエンジェルは世論とは逆の行為を行ったに過ぎないのだ。
そんな空気を察知したのか、カガリは更に続けようと口を開く。
『皆様のお気持ちはよく分かりますが、それ以上にザフトの行為は…』
しかし、話しかけたところで放送に異変が起こった。画面が急に乱れ、次に映し出された時はデュランダルの姿があった。
『突然の無礼をお詫びいたします。プラント最高評議会議長のギルバート=デュランダルです』
モニターの前の民衆は更にざわめきを大きくする。
デュランダルがこのタイミングで割り込んできたのは、カガリがザフトに非難を飛び火させる前に消して置きたかったからだった。
『確かにアークエンジェルの面々は先のオーブでの戦いでオーブを守っていました。しかし、皆様はお忘れでしょうか?彼等はロゴスの頭目、ロード=ジブリールが潜伏していたオーブを守っていたのです。それが意味するものは平和への妨害といって良いでしょう。
私は先日も宣言いたしました、ロゴスを打倒する事で平和を取り戻すと……彼等はそれを妨害していたのです!』
デュランダルの言葉は正論だった。誰がどう考えても、指名手配されていたジブリールを庇うオーブに正義は無いと思った。
『確かに我がザフト軍の行いは少々乱暴であったのかもしれません。しかし、我々はオーブに対して、ジブリールの引渡しを再三要求いたしました。それなのに、オーブの出した答えはNOだったのです。
それ故、止む無く我々はオーブへと侵攻致しました。全てはジブリールを取り逃がさないようにする為だったのです』
デュランダルの言葉は民衆の心に吸い込まれるように溶け込んでいった。例えるならば、民衆はスポンジの体にされてしまった事になる。それだけデュランダルの言葉は受け入れやすかった。
『そして、結局ジブリールは取り逃がしてしまいました。彼の行く先はある程度特定できており、既に軍は動いておりますが、このままでは何を仕出かすか分からない状況にあります』
情報の提供元をオーブであるとは明かさなかった。それを言う事でオーブの立場を楽にしたくは無かったからだ。
仮にオーブが情報の提供元として名乗り出ても、ジブリールを逃がしたことには変わりないのだから、情報公開は当然の事として受け入れられるだろう。そして、それがオーブが有利になる材料には成り得ない。
一番厄介なのは、プラントがオーブのお陰でジブリールの居場所を判別出来たという事になることだ。それはオーブが名乗るよりも与える印象が違う。
自分で名乗らせる分にはでしゃばりと捉えられるだろうが、他人が公表する場合はその限りではない。
『そして、皆様に知っておいて貰いたいのは、この不安な状況を造り出したのがオーブの面々であり、恐怖の不沈艦として名を馳せた強力な戦力であるアークエンジェルであるのです!』
『その通りです』
語気を強めて言い放つデュランダルの言葉に同調して、新たに女性の声がした。
その声は余りにも有名な、プラントのアイドルの声だった。
姿を見せたのはラクス=クライン…その姿を借りたミーア=キャンベルだった。
『わたくしは、以前にアークエンジェルの方々と行動を共にしたことがありましたが、このような事をなさる方々ではございませんでした。わたくしは、今の彼等が信用できません』
デュランダルがラクスの替え玉として選んだミーア=キャンベルは、その声はラクス=クラインそのものと言って良いほどそっくりだった。ただ、彼女はその顔までは本人に似なかった。
ミーアは昔から声だけはラクスにそっくりと言われ、密かに歌手になる事を夢に見ていた。しかし、その容姿はハッキリ言ってしまえば地味、いくら歌が歌えようとも売れる要素は低かった。
そんなある日、デュランダルはミーアの噂を聞きつけ、彼女に接触した。それがミーアの転機の時だった。
デュランダルはミーアにラクスとして生きる事を提案する。
最初は彼女も戸惑ったが、歌手になる夢を捨てきれない彼女はその提案を受け入れ、顔の整形手術を受ける事を決意する。
長い間コンプレックスを持っていた自分の顔に別れを告げ、次にミーアが自分の顔を見た時、そこにはプラントのアイドルとして絶大な人気を誇るラクス=クラインの顔があった。
『アークエンジェル…ひいてはオーブの方々の行いは平和への冒涜であるとわたくしは主張いたします。デュランダル議長の仰っている通り、この戦争はロゴスの盟主でいらっしゃるロード=ジブリール様を捕えない限り終わらないのです。
それを妨害なさるオーブ……わたくしはもう一度主張いたします、オーブは平和への冒涜者であると!』
全世界に向け、平和への想いとそれに交えてオーブへの批判を説くミーア。その言葉はラクスの言葉として、名前による説得力が世界の人々の心を掌握していく。
それを脇で眺めながら、デュランダルは口元に笑みを浮かべた。
しかし……
『その者の言葉に踊らされてはなりません』
再び電波がジャックされる。
「あん…?どうなってんだ?」
「おい!これって……!?」
モニターに映る場面は再びカガリの政見放送の場に戻る。だが、その横に立っている人物が世界に混乱を巻き起こす。
「あ…あれ?あれって、ラクス=クラインだよ…な……?」
「ラクス=クラインが…二人……?」
「でも、何でオーブの国家元首の隣に居るんだ?」
ミネルバの中でも混乱が起こる。突然の事に全世界で混乱が巻き起こっていた。
『その者はわたくしの偽者です。わたくしが本当のラクス=クラインです』
声も同じ、顔も同じ。着ている衣装の違いと、体型に差があるため、区別は何とかできるが、こうして見比べて見なければどちらが本物かなど分からないであろう。
現に民衆は混乱しているし、こうしてラクスが表に出てくるまでは、真実を知るもの以外ではミーアが本物で通っていたのだ。
『わたくしの偽者を騙り、偽りで皆様を騙し続けていたデュランダル議長の言葉にどれ程の信憑性があると言えるでしょう?』
痛烈に批判するラクス。表情は穏やかであるが、声には勿論演技であるが、憤りが含まれていた。
ここでカガリがラクスを表に出したのはカガリの意思に拠るものだった。この場でミーアが偽者と認めさせることが出来れば、勢いをこちらに引き寄せる事が出来る。
それに、ラクスの言葉には不思議と人を惹き付ける力を持っている。切り札がこちらに居る以上、これを利用しない手は無い。カガリがラクスを拘束しなかったのは、この為であった。
そんなカガリが彼女に続いて口を開く。
『彼女が本物であるという証拠を提示するのは難しいですが、今の彼女の言葉をお聞き頂ければお分かりになると思います。そして、ザフトは彼女を利用して世界を支配し、このオーブを滅ぼそうと画策していたと私は主張します!』
突然のカガリの言葉。その言葉はデュランダルを激しく非難する内容だった。
妄言にしか聞こえないだろうが、最初にインパクトを与える為にはこれくらい大げさに言わなければ箔がつかない。
『その証拠はこの映像を見ていただければお分かりになると思います』
画面が変わり、一機のシャトルが宇宙に向かって飛び立っていくのが映されていた。戦闘記録らしく、若干不鮮明でブレも酷かったが、十分である。
『これはジブリールを乗せたシャトルが宇宙へ飛び立っていく時の映像をアークエンジェルが捉えたものです。残念ながらオーブの高官の中にロゴスのメンバーが含まれていたためにマスドライバーが占拠され、手を打つ事が出来ませんでした。
その人物についても戦闘中の事故によって既にこの世にはおりません。しかし、問題はその後にあったのです!』
映像が切り替わり、再びカガリとラクスが映し出される。
『先程のデュランダル議長の言葉では、今回の我が国侵攻の目的はロード=ジブリールの逮捕でした。更にはそれ以外に我が国に攻め込む理由は占領する以外に無いと先に明言しておきます。
それを踏まえた上で聞いてください、この映像の出来事が起こった後もザフトは戦闘を続けていたのです!』
更に語気を強め、力の入った目でカガリはカメラを睨んでいる。その目は、モニターを通じて見ている民衆にも伝わった。
『この行為が意図するものは一体何なのか……勘の良い皆さんには既にお分かりでしょう。そう……ザフトは最初から我が国を滅ぼす事を目的に侵攻してきたのです!ジブリールの逮捕など、ついでに過ぎなかったのです!』
『このような行いをするデュランダル議長…彼こそ平和への冒涜者であるとわたくしは主張いたします。それは、嘘で塗り固められた真実を隠す……卑怯な行為です』
ラクスの言葉は重みがあった。確かに似ているとはいえ、ミーアの言葉ではあれ程の重みは出せないであろう。
そんなミーアはまさかの本物出現に慌てふためき、焦りを浮かべて右往左往している。
そんな様子にデュランダルは一瞥して、画面の中のラクスに視線を移した。
「ここでやっと彼女のお出ましか……大分もったいぶってくれたものだ……。おい、準備は出来たか?」
「はっ、完了しました。いつでも行けます」
「うむ…ミーアはカメラの外へ」
ラクスが現れた瞬間こそ驚いたが、デュランダルは椅子に深く腰を埋め、ミーアを下がらせる。
「あ…あの、私……」
「気にしなくていい。君は暫く身を隠していたほうが良いな」
「え……?」
「大丈夫、すぐに自由になれる。もしもの時の場合に備えて護衛をつけよう……サラ」
デュランダルに呼ばれた女性が姿を現す。
「彼女が君を守ってくれる。君は安心してこの戦争が終わるまで身を隠しているがいい」
「あ…あ……」
まさか本物が出てくるとは思わなかったミーアは、突然のラクス本人の出現に狼狽していた。そんなミーアを護衛のサラが優しく肩を抱いて連れて行く。
「これで、また私の敵が増えたな……さて……」
デュランダルは片手を上げて合図を送る。それに技術スタッフが頷き、スイッチを入れる。
「お?何だこれ?」
「今度は画面が二つに割れたぞ」
「一つはオーブ、もう一つはプラントか……」
「これ…緊急で討論でもしようってことかな?」
民衆は余りの急展開に考えが追い着かなくなっていた。こうも矢継ぎ早に展開が入れ替わると、逆に考えるのが面倒くさくなってしまう。しかし、それを打開する為のデュランダルの仕掛けだった。
こうして持論をぶつけ合う対決の形なら、民衆は興味を持つからだ。いつでも人は戦いが好きなのである。
『お久しぶりです、姫』
デュランダルがカガリに向けて言葉を放つ。受ける彼女は不快感を示す。
『その"姫"というのは止めて頂きたい。私はオーブの国家元首で、代表なのです。
馬鹿にした表現で見下すのがそちらのやり方でしょうか?』
穏やかに話しかけたデュランダルに対するカガリの先制攻撃。こうして画面の中で世界の人々が見守る中でのやり取りにおいて、カガリの放った先制パンチは大きかった。
注目を集めているという事は下手な事は言えない。それ故、言葉は慎重に選ばなければならない。
その事を知っているはずのデュランダルがこのようなミスを犯したのは、単に彼が間抜けだったわけではなく、カガリの事を侮っていたからだ。
アーモリー・ワンでの彼女を知っているデュランダルにしてみれば、まさかこのようなところでカガリが攻撃に出るとは思わなかったからだ。
これには流石のデュランダルも不覚を認めるしかなかった。
『これは失礼しました、カガリ代表。謝罪と訂正をさせてもらいます』
素直に謝罪をするデュランダル。彼はどのような時でも柔軟な対応が出来る心構えが出来ていた。それは、彼自身が自らの感情のコントロールを完璧にこなせるという事である。
それは、為政者として様々な問題に立ち向かうのには非常に便利な特技だった。
ある時から彼はその術を身につけることを覚えたのだ。その事はタリアに感謝するべき事なのかもしれない。
『しかし、先程の代表のお言葉には間違いがあります。ですので、このような形でではありますが、貴方と直接話がしたく、こうさせて貰いました。ご迷惑でしたかな?』
『いえ…しかしデュランダル議長、どのような意図で私の政見放送を乗っ取ったのです?あれでは貴方が私の言葉を世界の人々に聞かせたくなかったというように思える。この放送を見ていた方々は貴方が事実を隠そうとしていたと思っております』
勢いに乗るカガリは早めに優劣を付けたいが為に更なる追い討ちをかける。
デュランダルにしてみれば、これすらもカガリの力量を考えれば意表を突かれる出来事である。
しかし、対応できないわけではなかった。内心の感情の乱れを表に出す事無く落ち着かせ、デュランダルは普段と変わらぬ表情で言葉を返す。
『あれが迷惑であったのなら、それは申し訳なく思います。しかし、あのまま代表が勘違いされたままお話を続けられたのであっては、プラントの信用に関わります。ですので、こうして直接話せる準備が整うまでの間に、あのような無粋な手段を採らせてもらいました』
あくまで落ち着いていて、それでいて全く怯む様子のないデュランダルにカガリは気圧された。彼女の予想では、先程の自分の攻撃で多少は言葉に詰まる彼を思い描いていたからだ。
しかし、その予想は全くの的外れで、自分が今相手にしている人物の度量の大きさを痛感する事になってしまった。
それでも、何とか平静を保ち、更なる攻撃を仕掛ける。
『議長がそう仰るなら先程の件は水に流す事にしましょう。そして、貴方の言う事も信用するとします。しかし、それならば彼女はどうなのです?今はそちらにいらっしゃらないようですが、こちらにいるラクス=クラインの偽者を仕立て上げた意味を教えていただきたい』
『何故です?彼女は立派にラクス=クラインの役割を果たしていました。何も問題ないはずです』
『冗談で済む問題でも無いでしょう。議長はプラントの…いや、世界中の人々を騙していたのです。それで何も問題が無いなどとは、口が裂けても言えないはずです』
『そちらに居るラクス=クラインが、ヤキン戦役を最後に急に消えてしまったのです。プラントには彼女ほど影響力を持った人物は存在しません。だからこそ、行方の分からない本人を捜すよりも、例え偽者でも皆の励ましになるのであれば何ら問題ないのではないですか?』
『だが、騙っていた事は事実ですよね?』
『それは認めます。しかし、表舞台から逃げた彼女と表舞台に引っ張り出されながらも健気に頑張り続け、挙句に偽者と非難された彼女…どちらが本物に見えるでしょうね?』
『そ…それは……』
追い詰めようと攻撃を仕掛けたつもりが、いつの間にか逆にそれを利用されて追い詰められている。カガリは言葉に詰まってしまう。
『わたくしの行為が逃げであるという非難は甘んじて受けます』
カガリの窮している表情を見て取ったラクスが二人の会話に割り込んでくる。
しかし、そこから反論できる術は持っていなかった。
ラクスは人心を集めるカリスマは持っていても、討論に使う弁論術は持ち合わせていなかった。
それでもラクスは少しでも勢いを取り戻させる為、デュランダルに論戦を挑む。
『ほぉ…貴方もお話しますか?』
『許されるのでしたら』
『構いません。どうぞ』
『ありがとうございます』
一呼吸置いてラクスは語りだす。
『この放送を聴いている方々は理解なさっているはずです。人々の自由とは戦争の中では決して見つけられないことを…そして、既にこの戦争は形骸に過ぎないという事も理解しておいでのはずです。
そう、戦う必要は無いのにわたくし達は戦っている……それは、とても悲しい事でしょう。
しかし、戦わねば守れぬもの、救えぬものがあるからわたくし達は戦っているとも言えるのです。だから、そのような時に、わたくし達は戦うのです。それこそが人に与えられた感情であり、自由であるのですから』
ラクスはデュランダルだけでなく、世界中の人々に対して語りだした。デュランダルとまともに話した所で勝てる見込みが無いと踏んだからだ。
だからこそ、ラクスは自らのカリスマを発揮して、デュランダルにではなく、世界の人々に訴えかけた。事実、彼女の言葉は人々の心を揺り動かした。
彼女が本物という証拠は無いが、それでもラクスの強烈な記憶のイメージが、人々の心を傾けさせたのだ。
そして、それは追い詰められた時の為のカガリが掛けた保険でもあった。
(やはり、ラクスを用意しておいて正解だったか)
ラクスを見て、自分に考える時間が出来た事を確信し、次なる一手を考える。
そんなカガリをちらりと横目で見て、ラクスは更に話を続ける。
自分に出来る事はカガリに時間を与える事であると承知していた。
『確かに戦いは何も生みません、全てを壊すだけです。しかし、戦う事で失われるはずのものが失われずに済む場合もあるのです。それは、感動的なことです。皆様にも、その事が良く分かるはずです。この二年で、二つも大きな戦争を経験している皆様には、この…』
『ラクス=クライン。私はその様な刹那的な感情を話しているのではないのです。人の感情は得てして自己中心的になり易い。それでは一時の正当性を得られても、本当の救いにはならないのですよ』
デュランダルが遂にラクスに話しかけてくる。本当ならこのような展開になった時点でラクスの役目は終わりとなるが、彼女も出来るだけ抗ってみようと決意し、会話にもっていく。
デュランダルにしてみれば、ラクスの一人相撲を止められればそれだけでいいのである。
『そうではありません。人の感情に刹那的な事などありはしないのです。それならば、居なくなってしまわれた人の事を想う気持ちは何なのでしょう?
果てしない喪失感を味わい、いくら生きても故人を偲ぶ気持ちは永遠です。デュランダル議長はそれすらも否定なさるおつもりですか?』
『記憶を失くせばその感情も無くなります。人は所詮その程度なのです。人類は、自らを過大評価したからこそ自我を強固にし続けてきたのです。それは傲慢となり、遂には我々"コーディネイター"という新たな種を誕生させるに至りました。
しかし、その結果はどうだったでしょう?元は同じ種族であったはずのナチュラルと争い、人類全体を巻き込んでいるではないですか。それは、感情に支配されてきた人類の結果なのです』
『違います。人は、その様な矮小で愚かな生き物ではないはずです。感情を持ち、理性を持ち、知恵を得たからこそ今まで生存してきたのです。そして、それはこれからも人が人たらしめて行く限り続いていくでしょう』
『それが人類の傲慢なのです。その証たる愚かな人類を貴方も知っていらっしゃるでしょう?』
『わたくしはその様な人物は知りません』
『いえ、ラクス=クライン…貴方は知っていなければおかしいのですよ。居たではないですか、戦争を続けさせようとしてオーブから逃げたロード=ジブリールが……。彼こそ人類が驕り過ぎた証拠となる人物です。貴方達はその人物を逃がしたのです』
『……』
ラクスは黙ってしまう。ジブリールの名前を出されれば流石に彼を庇う発言は出来ない。彼を庇う事は、ロゴスの支持に回ることに繋がってしまうからだ。
全世界がロゴスは敵だと認識する中では迂闊に発言する事は出来なかった。
『……確かに、ジブリールを逃がしたのはオーブのミスです』
再びカガリが発言する。考えが纏まったようだ。
『しかし、ジブリールを匿った張本人であるロゴスのメンバー…セイラン家ですが、彼等は既にこの世にはおりません。先の戦闘に於いて巻き込まれ、死亡いたしました』
『ほぉ……では、その責任は誰にあるのでしょうね?』
『勿論セイラン家です。私は、この場をお借りして報告させていただきます、先のジブリール逃走は、セイラン家の責任として現在調査中です』
『代表、それは少し遅いのではないですか?責任問題は早めに結果を出してもらわなければ、誰も納得できません』
『昨日の今日です。ザフトの侵攻を受け、荒れているオーブには難しい話です』
追及するデュランダルに対し、カガリは毅然と言い切る。ここで表情を変えてしまったら、なし崩し的に追い込まれていってしまう。
『ジブリールに関しては私の居ない間に行われた事です。私がいればジブリールの勝手を絶対に許しませんでした。そして、オーブを戦争に参加させ、ジブリールを匿い、逃がしたのはセイラン家の仕業であるというのは紛れも無い事実です。
結果的にオーブを戦場にしてしまった事を考えると、その前に無理にでも私に連絡を取って相談してくれれば良かったと思うのですが……』
『代表は拉致されていらっしゃいましたよね?その状態で連絡など取れたのですか?』
『どうやらセイラン家の長男は私達の行動は分かっていたみたいだったのです。断片的ではありますが、その証拠が出てきました。
しかし、それをしなかったのはきっと自らの座を明け渡したくないが故の行為だったのでしょう。残念ですが、欲に囚われていたとしか考えられません……』
『成る程……』
『因果応報…先の戦闘で彼等がこの世を去ったのは、彼等が悪であったが故ではないでしょうか。彼等のしてきた事を考えれば、それが彼等自身に返って来たとも思えるのです……』
カガリは涙を呑んだ。演技とはいえ、このような言い方はユウナに対して非常に心苦しい気持ちになる。本当は自分が一番いけなかったことはよく理解している分、余計に苦みばしった様に感じる。
しかし、だからと言ってここでその気持ちを表に出すような事はしない。命を懸けたユウナの最後の望みは、自分が悪役になることだったからだ。
それはカガリの将来を案じてくれた事。そして、カガリはそれを受けて何とか画面の中の相手に喰らい付いていかなければならない。
悲しい事だが、これが政治なんだと思って割り切らなければならない。ユウナに指摘されたしたたかさ…まだ多少の抵抗はあるが、やらなければならない。
慣れるまでの間だ、と自分を慰める。
『では、ジブリールを引き渡さなかったのは貴方が悪いのではなく、代行をなさっていたセイラン家の方々の責任であるというのが正式な発表であるのですね?』
『そういう事になります』
『しかし、それで納得しろと仰られても、世界の皆様は納得なさらないのではないですか?』
『それならば、セイラン家の代わりに何度でも私は謝罪します。申し訳ありませんでした』
おもむろに立ち上がり、深く頭を垂れるカガリ。その姿は見る者に悲壮感を与える。謝罪するのは当たり前だが、こうも何回も繰り返されれば、多少の情も沸く。
本当はデュランダルの言いたい事はそんな事ではなかったのだが、ここで更に追い詰めるような発言をしてしまってはデュランダルの印象が悪くなってしまう。
後々に発表するデスティニープランの事を考えれば、少しでも印象を崩したくないのがデュランダルの本音であった。
そして、断片的ではあるがその事を知っているカガリの狙いはそこにあった。
例え可能性に過ぎなかったとしても、牽制はしておく必要はある。
『いえ、分かりました。それをオーブの正式な発表としてプラント最高評議会は協議いたします』
『よろしくお願いします』
ここで追い詰めるわけにはかないが、すんなりと受け入れるわけにも行かない。ここはあくまで協議するという形でデュランダルは話題から逃げる。
カガリは顔を上げ、続ける。
『ただ、その後のことで私はそちらにお聞きしたい事があります。何故、ジブリールが逃走した後もオーブでの戦闘を続けたのです?
先程デュランダル議長はジブリールをかなり敵視していらっしゃったが、目的を果たせなかった以上、あれ以上の我が国での戦闘は無意味だったはずではないですか?』
『オーブは大西洋連合と同盟を結んでおられましたよね?それならば、オーブはプラントの交戦国と言えます。戦うのはある意味必然です』
『ですが、目的はあくまでジブリールの捕獲でしたよね?しかし、目的が逃走した後も戦闘を続けていらっしゃった……平和を標榜しておきながら随分と手荒な真似がお好きのようですね?』
カガリがデュランダルに再び噛み付く。それを、デュランダルは表情一つ変えないで聞いていた。
『ジブリール逃走後の戦闘…正当性があったとは言えないのではないですか?あれではザフトは単に戦争をしたがっている様にも見えます』
尚も攻め立てるカガリの言葉。デュランダルは言葉一つ発せずに黙って聞いていた。その様子は、デュランダルがカガリの言葉に押されている様に世界の人々には見えていた。
『何も仰らないという事は、正当性が無かったと認めるという事ですか?旗艦が撃沈して、自軍が不利になってやっと戦闘を停止したのはオーブ占領に失敗したからであると…』
『その前に代表。一つお聞きしたい事があります』
黙って聞いていたかと思うと、急にデュランダルがカガリの言葉に割り込んで発言する。
『この映像……今代表が仰った我が軍の旗艦が撃沈された時の写真です』
デュランダル側の画面に映し出されたのは静止画の映像。その中では、大量の煙を噴く戦艦と、それを見下ろす一体のMSが映されていた。
『そして、この端に映っているMSに焦点を移し、拡大してみましょう』
カメラがMSにズームし、その姿を鮮明にした。その姿に、世界はどよめき声を上げる。
『ご存知の方も多いと思います。フリーダムです』
どよめきがざわめきに変わる。
デュランダルがカガリの話を黙って聞いていたのは、カガリの口から旗艦撃沈の事を引き出させる為だった。
こうしてカウンター気味に出せば、カガリの勢いを殺す事が出来る。
『外観に多少の差異は見られますが、恐らくこれはフリーダムの後継機であると思われます。そして、これが本当のフリーダムです』
更に映像が切り替わり、今度はダーダネルスでの戦闘映像が流された。
『御覧の通り、フリーダムは我が軍のみならず、連合やオーブに対しても仕掛けています。その活躍たるや、単独で我が軍と連合軍を殲滅出来るほどの力を秘めていました』
画面がデュランダルに戻る。
『そのフリーダムを更に強力にしたMSをオーブは保有していたのです。私はこのようなMSを保有しているオーブに危機感を抱きました。故に、せめてフリーダムだけでも破壊しようと思い、戦闘の継続を命じたのです』
デュランダルの流した映像は、フリーダムの力の強大さを雄弁に物語った。人々は、その力に魅了される者も居たが、殆どは恐怖を抱かざるを得ない。
フリーダムは英雄としての側面を持ちながらも、反面では恐怖の対象でもあるのだ。
『代表、お分かりいただけるでしょうか?フリーダムを保有しているあなた方オーブは、中立を訴えながらも世界をその手に出来る力をお持ちになっているのです。そして、そのフリーダムが以前に傍若無人な振る舞いを犯していることをお忘れになってはいけません』
『その言い方は大袈裟過ぎます。たった一機のMSが戦局に与える影響など微々たる物でしょう』
『いいえ、油断は出来ません。事実あれだけの動きをするのです』
『しかし、アークエンジェルの行動は私の意志を反映させておりません。彼等は彼等で勝手に動いていたのです』
『問題はまだあります。フリーダムは元々ザフトのモノでした。しかし、二年前にそこのラクス=クラインによってあなた方に強奪されました。
本来ならば、ヤキン戦役が終わった後にザフトに返却されるべきものだったのです。ザフトは連合から奪ったバスターとデュエルは返却いたしました』
『……』
『先程もお伝えしたように、フリーダムは単機で一個艦隊を相手に出来るほど強力な兵器です。それを保有するという事は平和に対する脅威でしかありません。付け加えれば、フリーダムは本来ユニウス条約に違反する機体であったはずです』
『そ…それは……』
『先のヤキン戦役での破壊が報告されているフリーダムが何故修復されていたのかは知りませんが、いつまたフリーダムが暴走するかも分かりません。そうなってからでは遅いのです。だから、今のうちにフリーダムを処分するべきだと私は判断したのです』
デュランダルの視線は相変わらず穏やかに見える。しかし、相対しているカガリだけは突き刺すような鋭さを感じていた。
それは、相手を怯ませるには十分な力を持っている。しかし、カガリはここで屈するわけには行かない。必死に平静を装い、決して動揺を見せてはならないのだ。
『ユニウス条約は停戦条約故に、戦時中の現在には意味がありません。しかし、どう考えてもフリーダムは停戦中に修復したとしか思えないタイミングで出て来た……。
つまり、オーブが密かにフリーダムを回収、修復していたいう事になるのです。これは立派な条約違反ですよね?』
デュランダルの突き刺すような言葉に、カガリは窮したように見えた。しかし、目はまだ死んでいない。
『…デュランダル議長、何故フリーダムがオーブで修復されたと御思いなのですか?』
『代表が乗っていらっしゃったではありませんか?だから、そこからアークエンジェル共々オーブが隠してたと考えるのは当然であります』
『いえ、その理屈は通りません。私は突如現れたフリーダムに攫われたのです。それが何処から来たのか…本人達以外は誰も知るはずが無いのです』
『代表はお聞きになっていらっしゃらない……?』
『その通りです。私がわざわざ火種になり得るものを隠しておくわけがありません。以前にも議長にお話した筈です』
『……』
『そちらの勝手な推測で非難するのはフェアじゃありません。訂正していただきたい』
カガリのカウンターが決まった。確かにアークエンジェルが何処から出てきて、誰が修復したかなどは知りようが無い。
仮にラクス襲撃がデュランダルの仕業で、それによってフリーダムがオーブから出現したという事を公表しても、それではラクス襲撃の犯人がザフトであると認めることになってしまう。
それではデュランダルが一番避けたいイメージダウンに繋がってしまう。
どちらにしろ、デュランダルはカガリに一本取られてしまったのである。
『…確かに、代表の仰るとおりです。私も少々考えすぎていたようです、申し訳ありません』
素直に認めるデュランダル。しかし、非を認めたとはいえ、この素直な態度によって彼のイメージが崩れることは無い。観衆の中の印象はあくまで"物腰柔らかなデュランダル議長"なのである。
『さて、それならばもう一つお聞きしたい事がございます』
『何でしょう?』
『こちらの映像を御覧になって下さい』
そう言うと、デュランダル側のモニターが切り替わり、戦闘の映像が流れた。
『代表はこれの説明をどうつけますか?ダーダネルス、クレタの戦いで代表の姿が二回確認されております。代表は中立の理念をかざしておきながら、戦闘に介入するのはお好きのようですね?』
『あれも私の不徳です。それも認め、謝罪いたします。しかし、私自身はビームの一発も撃っておりません』
『オーブを大事になさる代表のお気持ちは、同じ国のトップを任されている私ですからよく分かります。言葉でその場を納めようとしていたのは若さ故として理解できます。しかし、フリーダムは大分好き勝手にしてくれたようですね?ザフトも相当の被害を受けました』
『……』
『アークエンジェルが代表を拉致し、自らの妄想の為に利用していたのは事実ですよね?お咎め無しですか?』
『…いえ、彼等は既に我々で拘束しております。正式な罪状はこれから調査していくうちに確定するでしょう』
『そうですか』
デュランダルにしてみれば、このカガリの処置に噛み付きたいところだが、放送は全世界に広がっている。処置が決定しているアークエンジェル問題について、これ以上無闇に追及しても印象を悪くするだけだと思い、言葉を飲み込んだ。
デュランダルに秘書が耳打ちをする。
『……ん、分かった。申し訳ありません代表、もっとお話をしていたいところでしたが、そろそろお時間のようです。いい話し合いが出来ましたね?またお会いしましょう』
不敵な笑みを浮かべてデュランダルはその席を後にした。
それに対してカガリは何とか表情を崩さないようにするのが精一杯だった。
放送終了後、ラクスはカガリに話しかける。かなり消耗していると感じたからだ。
「カガリさん……」
「見ろ、これ」
ラクスの顔の前に掌を突き出す。すると、そこには大量の汗がべっとりと付着していた。
「これは……」
「大変だよ、私はあのような化け物と戦わなければならないのだから」
「……」
「しかしラクス、私はツイてるかもしれないぞ」
「え?」
「あの会見で、本来ならばもっと私の立場は苦しくなる筈だった。しかし、デュランダル議長が出てきてくれたお陰で、五分とまでは行かないが少しは楽な立場に持ってこれた。油断してくれたデュランダル議長には感謝しなくてはな」
デュランダルがカガリの会見に乱入してきたのは、カガリを見くびっていたからだ。簡単にオーブの主張を切り崩し、自らのイメージアップに繋げられると思っていた。
しかし、想定外のカガリの粘りに、デュランダルの思惑はズレが生じた。
彼にしてみれば、この結果は予想外だったであろう。
「さて…これからが大変な事になるぞ……」
いくらユウナに触発されても、突然大きく変われるほどカガリは優秀な政治家ではない。彼女はまだ未熟だった。これから起こる出来事を想像できないのは、経験が圧倒的に不足しているからだ。
最初の一歩としては上出来でも、時代はその程度では許されない状況にあるのもまた、事実だった。
ミネルバのラウンジではどよめきが大きくなっていた。遂にデュランダルがミーアを偽者であると認めたのだ。
「なあ、レイ……デュランダル議長って…」
「お前は何も気にする必要は無い。ラクスが偽者であったとしても議長の仰るとおり、何の問題も無いのだ。問題は、今更になって本物がのこのこと出て来た事だ」
「でも、やっぱり嘘ついてたって事じゃ……」
「シン、デュランダル議長の仰っていた言葉が間違っているように聞こえたか?オーブの元首やラクスの行っていた事が正しいように聞こえたか?」
「いや…それは……」
シンはレイの声に言葉を詰まらせる。レイの迫力に負けたわけではないが、確かに彼の言うとおり、カガリやラクスの言う事が一方的に正しいとは思えなかった。
「いくらラクスであろうとも、本物の言っている事が常に正しいとは限らないのだ。今の放送では、議長の言う事の方が圧倒的に正しい」
「……」
このような言い回しをしてくるという事は、レイは恐らく全て最初から知っていたのだろう。そう考えると、シンは少しだけ二人に騙されていたような気分になる。
表情には出さなかったが、内心では複雑だった。
「まさか議長が偽者をお認めになるとはね」
ハイネは感服したように声を出す。それをカミーユは不思議に思った。
「あのラクスって言う子は、そんなに凄い存在なのか?」
「凄いなんてもんじゃないさ。その魅力といったら、世界中の人々が支持するくらい強力だぜ」
「じゃあ、それの偽者をでっち上げていたデュランダル議長は…」
「しかし、その上で言いくるめているように見えたな。俺は議長が怖いぜ」
デュランダルの手腕にハイネは舌を巻く。
「でも、デュランダル議長が一方的に正しいとはならなかった。それはどう見る?」
「そりゃあ、そうだろう。普通の人にしてみれば、戦争やってる奴はみんな悪者だ。そんな奴が自分は決定的に正しいなんて態度で表に出てみろ、思いっきりぶっ叩かれるぞ。
議長は正しさを見せたかったのではなく、プラントとオーブのどちらがマシかを示したかったように思えるな」
「確かに…オーブがジブリールを逃がした事には変わりない……じゃあ、ハイネはザフトも間違っている所があると思うのか?」
「……」
「ハイネ?」
「前にも言ったはずだぜ、俺達はそこまで気を回す必要は無い。命令を聞いていればいいだけだ」
釘を刺すハイネの言葉。しかし、直前に見せたハイネの表情は、何かを迷っているようにも見えた。
そんなハイネの言葉にカミーユは物思いに耽る。
(しかし、デュランダル議長の言葉には筋が通っているとはいえ、全てが本当の事だとは思えない……)
放送中のデュランダルの表情と言葉から何かを感じ取ったのか、ニュータイプとしての注意深さが本能的な警告を与えてくる。デュランダルを信じきってはいけないと警鐘を鳴らす。
そんな想いが頭を駆け巡る中、カミーユの中の不信感が広がりつつあるのを実感する。
その後、長きに渡る地球での作戦行動を終え、ミネルバは再び漆黒の星の海へと還って行く。逃走したジブリール追跡の為である。
〜つづく〜
GJ!
しかしカガリはキラを銃殺刑にできるのか?
GJ
物語りもいよいよ佳境に入ってきたな
舞台も宇宙に変わるし
カミーユのNT能力も本領発揮だな
GJ
明らかに原作よりはるかに面白い
519 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/20(月) 19:08:45 ID:LzOW2wx5
GJ!!確かにキラ達にわどんな罰がくだるんだ??
話の展開上ここでキラ達をいきなり処刑つーわけにもいかんだろうし、
脱走イベントとかあるんだろうが…キラとラクスが切れるような気がするのは漏れだけか?
よかったよ、議長対カガリ&桃色汚物の論戦。視聴者の内心を議長はよく代弁した。
(普通なら突っ込むのが当たり前のことを、そうさせない自称脚本家という無能同人作家が
最大の元凶の1つなんだが)
さて後はこれからのカガリの行動次第だな。
オーブが桃色汚物一派の人形にならず、まさにそのご立派な理念に基づいた行動ができるのか、
オーブが思い通りにならないとわかったとき、あの桃色汚物はどう動き、
それに対してザフトが、カミーユがどういった行動をするのか、楽しみだ。
あるいはジブリールとラクスが手を組むというウルトラCも有り得るだろうか?
長かったので、wikiでは二つに分けました。
ラクソm9(^Д^)プギャーーーッ
ラクス自身、自分はそんなに頭が回らないと自覚してる所に結構関心した
ここのラクスってそんなに悪い子じゃないと思う
周りから担がれまくって流されてるだけの、実はか弱い女の子って感じ
あくまでも「ここの」ラクスね
TVの桃色汚物とは別人だし
>>526 同意
TVの人とは別の道を歩み始めてると思う
キラはあれだがw
つたないところはあれどカガリも自分の足で歩き始めたか・・・
しかもラクスすら(というかその人気)を利用した
したたかさも見せ始めてるし
GJ!
世界の衆目の元での論戦、ぞくぞくしたよ。
今までは理念を振り回すだけだったカガリが、相手の力量を肌で感じ、恐れ、それでもなお食らいついたのは燃えた。ある意味、カガリにとってはこれが「初めての戦い」だったのかもしれない。
それに、相手のミスにすかさず付け込んだり、対抗するためのカード(本物のラクス)を用意したりと、交渉戦術もなかなかのものだった。
それに、議長も世界的政治家としての貫禄を見せ付けていた。
ラクスの聞こえだけは良い抽象論を、ただ却下して乱暴な印象を与えるのではなく、さりげなく誘導して現実論に引き戻すところは良かった。
また矢継ぎ早に自分の主張を補強する資料を提示し、相手を防戦一方に追い込むところも手馴れていたしね。
GJ。
でも、議長はエターナルのこと言ってなかったけど、
エターナルも元々はザフトの船なんだから、返すべきでは?
イザークも言ってたし「あれはザフトの船だ」って。
GJ!
論戦すげー、これぞ物語の中でのリアリティという奴ですね
ただまあ、あの論戦の結果から考えると、戦後オーブが勝者の立場にいてもいなくてもアークエンジェルの面々は罰しないといけないのは確定だよな
あの被害レベルから考えると最低でもキラは処刑せんはならんだろうし…
ラクスは…確かに自覚があるのはまだいいんだが、やっぱどうしても自分勝手さが見えるなぁ
なら最初の段階で身をひいとけよと思ってしまう
つーかラクスって最初から最後まで担がれたことってあったっけ?
ほぼ自分の意志でやってなかったか…あえていうならマルキオが担いだといえるが
>つーかラクスって最初から最後まで担がれたことってあったっけ?
種の時は親父の指示と、親父死んでからはその遺志を継いで、と考えられる
この話の場合はこれまで描写が少なかったので実際の所は不明
>>532 シーゲルが素性の知れないキラを連合軍の本部であるアラスカ基地に行かせるために、
穏健派壊滅の危険を無視してまでフリーダムをラクスに強奪させキラを乗せる意味が見つかりません。
親馬鹿なんだろ
>>530 エターナルはまだ表舞台に出てきてないからつっこめなかったんじゃね?
まー、ヤキン戦後のことを考えるとラクシズひいてはオーブが秘匿してるのは明白ではあるんだが
そーいやアークエンジェルの立場ってどうなんだろ?
ヤキン戦後には連合に返却しないといけないんじゃなかろうか
バスターとデュエルは返還されたんだったっけ?
>>536 らしいよ。
ブルデュエルとヴェルデバスターがそれぞれの改修した姿だという説もあるが…
いくらなんでもそりゃでき過ぎかな。
>この他スラスターの大型化、
>武装の追加により近接戦闘に特化したモビルスーツとして生まれ変わったデュエルは、
>新たにX1022ブルデュエルの制式名を与えられ、ファントムペイン専用機として納入された。
と、スタゲ公式のブルデュエルのところに書いてあるからそうなんじゃね?
スレ違いスマン
>531
いや、少なくとも現時点では処刑されないだろ。
デュランダルはストフリやAAを警戒しているが、だからこそオーブはそれを利用して牽制できる。「どうしても戦争を続けて追い詰めるなら、連中に恩赦を与えてオーブ軍に編入するぞ」ってね。
もちろん連中は犯罪者だから自由の身にはできないけど、裁判を長引かせたり懲役刑に処することはできる。
逆に、デュランダルがいなくなったら、ラクシズに利用価値はなくなる。そうするとセイラン家と同様の「オーブの理念を汚した者」だから、切り捨てるしかない。
Wスレじゃないか?
ジブの自作自演で孤児院襲撃→ネオがラクスを保護→ジブと会見って流れだったが。
>>540 てことはラクシズの処分はこの話が終了した後→本編中では描写されないって事か
カミーユと一緒にUCに飛ばされて連中が矯正される話とか出来そうだが…無理か
ラクシズになる前に矯正…再構成しかないのかねぇ。
処刑ルートも見てみたい気がするが。
544 :
523:2006/11/20(月) 22:02:08 ID:???
ああ、ハンバーグの作り方の話か。
うう、おっぱいハンバーグ・・・頭が痛い・・・うう・・・
(廿_廿) あれは酷いキチガイSSですよね。
(廿_廿) キチガイSSですか?
>>547 あの後殺人鬼が萌えキャラ化した上、異界主人公まで萌えキャラ化、新三馬鹿の男共は異常に好漢と化してしまったから判断に悩む…
うう…アウル…。・゚・(ノД`)・゚・。
>>541で興味を持ちフレイスレと思われるところを見てきた
( ゚Д゚)ポカーン…
タブを閉じた。
ん?素直にWスレの話だと思ったが、桃色とジブ公がつるむ噺って
フレイスレにもあるって事?
そろそろ他スレの話はいいだろ。
その辺の話はそろそろ本スレか紹介スレでひとつ。
ストフリ、インジャ、ドム作ったのプラント(ファクトリー)だという件について。
クライン派とかラクス教が出てくればこのスレもややっこしく(ry
プラントはファクトリーではない
ファクトリーは、ターミナルとタメを張る謎のテロリスト集団
プラント超えてるって、しかも条約完全無視。後付設定で核動力機は造ってない事なったけど。
あれ?じゃあストフリってどうなったの?
遅まきながらGJ!
キラ>ラクスの順番で更正すると思っていたけど逆になりそうな処に意表突かれた。
今回ようやく気付いたであろう「自分たちの正当性を護る事の重要性」のために
ストフリを放棄する必要性が出てきたわけだけど、果たしてどのような決断をするのか楽しみです。
別に無理に更正さする必要なんてないじゃん
それに更正した所で奴らが死刑にしてもお釣りがくるほどの罪を重ねてきたのは紛れもない事実だし
>540
いや、戦後っていってるんだが…
>>559 プラントや連合に引き渡されれば死刑にもなり得るだろうが
一応奴らはオーブへの亡命者扱いのはず
つまりカガリの胸先三寸というわけだ
てかさ一度くらいラクスとキラは修正されるなり
処分受けるなりすべきだろ
なんで種ってマンセーしかしないんだろ
ちゃんと償いはさせろよ福田
嫁はZZの脚本家の遠藤、鈴木のバカップルだな
やってることがまったく同じ
てかさ一度くらい負債は更迭されるなり
処分受けるなりすべきだろ
なんで種厨ってマンセーしかしないんだろ
ちゃんと償いはさせろよ磐梯
>>537-538 いや、ヴェルデとブルはノワール含めてアクタイオン・インダストリーが戦後
新規で作ったノックダウン品だ(オノゴロのモルゲン跡地からデータを入手したという
可能性アリ)HGの冊子に書いてあったから公式と採っても良いのでは?
スレ違いですまそ
第四十一話「終末の始まり」
全世界に混乱が広がっていた。本物のラクスの出現はそれだけインパクトが大きく、そしてそれがオーブに与する事に世界はどよめいていた。
そして、それを月のダイダロス基地に逃げ込んで眺めていたジブリールは自身の居場所がばれている事を匂わされ、焦って最終作戦を決行に移そうとしていた。このままでは折角ここまで逃げ延びた苦労が水泡に帰してしまう。
最終決戦兵器"レクイエム"……ジブリールが月で密かに用意していた反射衛星砲である。
それは幾つかのビーム偏向中継基地"ステーション"を介して、どの様な角度でも狙い撃ちが出来るという恐るべき兵器であった。
ジブリールはそれを利用し、月の裏側にあるレクイエムで正反対に位置するプラントの首都コロニー"アプリリウス"を狙撃しようと企んでいた。
「後悔するのだな、ギルバート=デュランダル。この私を怒らせた事をあの世で後悔するがいい」
ジブリールはレクイエムの発射準備に取り掛かった。
一方、ザフトの部隊が月に集結している中で、プラントのザフト守備隊の間では不審な動きをするコロニーの動きを察知していた。
「イザーク!」
「分かってる。出るぞ、ディアッカ!」
白服のイザーク=ジュールが佇む艦橋に緑服のディアッカ=エルスマンが飛び込んでくる。
昔からの腐れ縁の彼等には多くの言葉は必要としない。ディアッカの声色だけでそれが何を伝えようとしているのかを察知し、それに素早く反応してイザークは艦を出す。
「あれか……!」
報告のあった地点を目指し、MSの中で送られてきた映像を眺めるイザークは不思議な円筒形の物体を発見する。それが正しくレクイエムの第一中継基地"フォーレ"であった。
「各隊、発進を急げ!イザーク=ジュール、出るぞ!」
専用のグフに乗り、イザークは中継基地破壊の為に宇宙に躍り出る。
それを追いかける形でディアッカも彼専用のザクを駆って宇宙に飛び出した。
そして、ザフト侵攻前に準備を済ませたレクイエムは遂にその牙をプラントに向けて放つ。
レクイエムの一撃は鮮やかな光とは対照的な暗い宇宙を穿つ。ジブリールの悪意を乗せ、それは見る者全てに神々しさを勘違いさせるほどの輝きを持っていた。
幾つものステーションを経て凄まじい勢いでデュランダルの鎮座するアプリリウスへ向かう。
しかし、イザーク達の活躍によりフォーレの角度に誤差の生じたレクイエムの一撃はアプリリウスには直撃しなかった。しかし、惨事は他のプラントコロニー六基を宇宙の藻屑に変えた。
一瞬にして奪われた約150万もの人々の命。これを重く受け止めるデュランダルはザフトの部隊を緊急招集する。
ダイダロス基地をを制圧し、ジブリールの暴走を食い止める為にミネルバもその中に組み込まれる。
そして、その月へ向かう途中のミネルバの中、MSデッキへ向かおうとしていたカミーユは突然の吐き気をもよおしていた。
「ぐ…何だこれ……!あ…頭が……!」
吐き気だけではない、激しい頭痛も伴う。通路にうずくまり、必死に呼吸を整えようとする。
その額には大量の冷や汗が浮かび、顔色は青ざめていた。
「この…感覚……コロニーレーザーがサイド2を撃った時の……!」
似た感覚をカミーユは体験していた。それはグリプス戦役時代、ティターンズがコロニーを改造して造った巨大レーザー砲"グリプス2"によってサイド2の18バンチが沈んだ時に感じたものだった。
そして、その感覚は毒ガス作戦の時に感じたものとも似ている。
苦しみながら絶望に包まれ、無力なまま死んでいく人々の悲痛な叫びが、ニュータイプとして過剰に発達したカミーユの精神を直撃するのだ。
それは生身の体を持った人間が決して感じてはならない地獄の断末魔。カミーユは、そんな死の悲鳴を聞き続け、精神は汚染され続けていた。
「…は…はぁっ……!」
何とか顔を上げ、水分を補給しようと体を動かすが、思うように動かない。
「う……!」
嘔吐間をもよおし、慌てて口を手で押さえた。
何とか我慢できたが、何処かで体を落ち着かせなければどうにも出来ない。
「くぅ……」
「カミーユ?」
そこへ丁度通りかかったのはルナマリアだった。オーブでアスランと再開して落ち込んでいた彼女であったが、そこはもう以前の悩むだけの彼女ではない。自分で気を取り直し、整備士と次の作戦の為の打ち合わせをしようとMSデッキに向かう途中だった。
そこに、苦しむカミーユに遭遇したのだ。
「ど、どうしたの、カミーユ?具合悪いの?」
「……」
目を閉じ、ぐったりとするカミーユを見て、ルナマリアは尋常ではない症状であると認識する。
「ちょ、ちょっと待っててカミーユ!直ぐに先生を呼んでくるから!」
「ま…待ってくれ……水を……」
「水……?」
何を言い出すのかと思ったら、カミーユは水を自分に要求する。そんな場合じゃないでしょ、と言いたかったが、カミーユの視線に何も言えなかった。
「大丈夫だ…少し落ち着けば良くなる……」
「大丈夫には見えないけど……持病持ちなの?」
「…そんなところかな……」
微笑むカミーユ。しかし、持病を患っているのなら、それこそ医者に診せなければならない。
「どっちにしろ心配だわ。先生に診てもらった方が良いわよ」
「いや、もう大丈夫だ……」
時間の経過のせいか、思ったよりも早く体調が回復しているのが分かる。後は水を飲んでフレッシュさを補給すれば何とかなりそうだった。
まだ多少の頭痛は残っているが、ルナマリアを心配させまいと背筋を伸ばして回復をアピールする。
「本当に大丈夫?」
「あぁ、済まない。心配かけた」
「でも、さっきのカミーユ、普通じゃなかったけど……」
「今は大丈夫だろ?そんな事より、ルナマリアの方は良いのか?」
「あ、あたし?良いのかって…何が?」
カミーユが言いたいのは、ルナマリアの精神状態のことだった。レコアの裏切りを知っているだけに、ルナマリアも相当堪えているのではないかと思ったのだ。
自分とて、レコアに憧れを抱いていたりもした。
「アスランの…」
「言わないで……」
「敵としてまた出て来たら、その時はどうするんだ?」
「…まだ分かんないわ。でも、あたしはミネルバを離れたくない……」
「そうか……それ、多分良い事じゃないかな」
「え?」
何気ないカミーユの一言。そして、大した事でもない言葉。
しかし、その声に含まれる何かが、妙な説得力を持っているような気がした。何故か自分の核心を突かれた様な不思議な感覚。
「何で、カミーユはそう思うの?」
「ん?別に疑問に思うことじゃないだろ。仲間なんだから、艦を離れたくないって
言う事、嬉しい事じゃないか」
「……怪しい。カミーユって、きっと女たらしね」
「はぁ!?」
ここでも冴えるルナマリアの女の勘。ある意味ニュータイプ以上の勘の鋭さで、潜在的なカミーユの本質を見抜いた。確かにカミーユは色々な意味で恋多き少年だった。
エマ、レコアは年上の女性として、ファ、フォウは同年代のガールフレンドとして…それ以外にも細かな事を数えていけばそれこそ無数に存在している。
それは、他人の理解に優れるニュータイプとしての優しさが及ぼす影響のせいだろう。
ルナマリアがカミーユを"たらし"と言い放ったのは、そういうところに敏感に反応したからだった。
「はぁ…この艦、まともな男が居ないのねぇ……ハイネ位かしら、マシなの」
「何をいきなり納得してんだ?失礼なこと言って…俺は…」
「カミーユはスケベよ。シンと同じね」
「シンはスケベだけど!」
「似たもの同士、そっくりで良いじゃない?男はスケベな位で丁度いいって、マッドさんが言っていたわ」
「あの人は別だよ!」
「あ、そうだ。マッドさんで思い出したけど、あたしこれから打ち合わせに行くんだった。じゃ、カミーユ、お大事にね」
「ちょっと待てよ……」
引き止めようと声に出すが、思ったより大きな声は出せなかった。体調不良のせいではない、ルナマリアの何かがカミーユを本能的に制止したのだ。
ご機嫌そうにルナマリアはMSデッキへと向かっていく。
「…全く!」
居なくなってから急に強気になって不満を表に出すカミーユ。それは、ただ単に空しいだけだった……
レクイエム制圧の為、宇宙を航行するミネルバに司令が下る。
それはミネルバ単艦に拠る月にあるダイダロス基地の、ロゴスの最後の拠点の制圧であった。ミネルバが丁度月の近くに居た事で、それに目を付けたデュランダルが直接通信を送ってきたのだ。
先に動いていた他の主力部隊は中継基地の破壊に向かい、ダイダロス基地の戦力をある程度分散させる。その隙をミネルバに任せる事になった。
デュランダルはそれだけミネルバの戦力を大きく評価していた。
『君達も疲れていることは知っている。しかし、あのような物を放って置いてはいけない事は諸君らにも分かっている事と思う。もう一息、頑張ってもらいたい』
「……それが命令であるのなら我々はそれに従います」
『済まないな、タリア……』
「通信、切ります……」
短い会話を終え、タリアは通信を切った。
タリアはデュランダルの言葉には逆らえない。ステラの件で便宜を図ってもらった事もあるが、彼女はデュランダルに対して深い負い目を持っていた。
大人の彼女はそれを表に出すような事は決して無いが、それはタリアの心の中に深い釘が刺さる様に食い込んでいた。
かつてタリアとデュランダルは恋仲であり、将来を誓い合った仲でもあった。
タリアの頭の中に、今より少し若い自分とデュランダルの姿が浮かぶ。
思い出す場面はいつも別れの時ばかりであった。
そこでタリアはいつもデュランダルに貰った指輪を返す。それを寂しそうな表情で受け取るデュランダル。
やがてタリアは別の男に肩を抱かれて去っていき、残されたデュランダルだけが宵闇の支配する中で一人佇んでいた。タリアは振り返ってそれを見るが、何も言えない彼女はそのまま前を向き、男と共に歩いていった。
嫌いな訳ではなかった。寧ろデュランダルの事を一番愛していたのかもしれない。
しかし、そうであるが故にデュランダルとの間に子供を産めないと知った時、タリアの中でデュランダルに対する何かが終わった事を感じた。
いくらデュランダルを愛していようと、子供が産めなければ意味が無い…そう思ったタリアはデュランダルに別れを告げたのだ。
それを仕方ないとデュランダルは受け入れてくれたが、その事で彼を深く傷つけてしまった事をタリアは今でも申し訳なく思っている。
タリアには既に子供も居るが、それでも彼女が戦いに赴くのはデュランダルに対する贖罪の意味も含まれているのかもしれない。
「進路、月のダイダロス基地!続いてコンディションイエロー発令、各員は直ちに配置に就け!目標宙域に到達次第、レクイエム制圧作戦を展開する!」
今は過去を振り切るかのようにタリアが号令をかける。
MSデッキでは慌ただしくパイロット達やメカニック達が駆けずり回っている。
「タンホイザー着弾後、シン、レイ、カミーユは俺に続け!」
駆けながらハイネが叫ぶ。
「あたしは!?」
名前を呼ばれなかったルナマリアがハイネに訊ねた。
「ルナマリアはブラスト装備で俺からの合図があるまで待機!いいな、勝手な真似はするなよ?」
「え…そんな!あたしも戦えるわ!」
「ルナマリアにはダイダロスを直接叩いてもらいたい。それにはインパルスのブラスト装備が一番なんだ」
「だからって……」
「確実に叩く必要がある。俺達が梅雨払いをしておくからお前は完璧に仕事をこなす事を考えていろ」
「わ…分かったわ……」
ハイネはルナマリアにそう告げるとセイバーのコックピットに乗り込んだ。
『ハイネ、何でルナを……?砲撃なら俺のデスティニーだって…』
ルナマリアとの会話を聞いていたシンが通信でハイネに話しかける。わざわざ傷心のルナマリアに重要な役割を任せるハイネの思惑に疑問を持っていた。
「もう甘えさせてやれる時ではないという事さ」
『はぁ……?』
「この戦争はこれから佳境に入っていくだろう。だからな、ルナマリアに余計な事を考える余裕を無くさせたい」
『それは…分かるけど、でも、これでロゴスを叩き潰せば戦争は終わるじゃないか?』
「……まだオーブが残っている」
『オーブ……!?』
シンはハイネの言葉が信じられなかった。確かにザフトはオーブに侵攻したが、それはジブリールを引き渡さなかったからであって、まさか次の相手にはなるまいと考えていた。
ハイネは続ける。
「あのオーブ侵攻作戦、議長は本気だった。そして、あの放送を聴いている限り、次の矛先がオーブに向いてもおかしくは無い」
『け、けどハイネ!いくら何でもそれは考えすぎじゃないか!?それじゃあ議長が世界を征服したがっているみたいじゃないか!?』
「そうかも知れんな…あの放送の時、議長は人類の傲慢が争いを生んでいるって言ってたよな?それを踏まえた上で考えて見ろ、争いが起こらない世界ってどんな世界だと思う?」
『え……?』
シンはデュランダルの言葉を思い出す。確かにデュランダルは争いの無い世界の創造を目的としていた。
ディオキアでの会談の際にはわざわざナチュラルとコーディネイターの蟠りを用いたぐらいである、それを踏まえた上で本気で純粋な平和を望んでいた事は想像に難くない。
しかし、それが意味するものはシンが思い描いていた世界とは掛け離れたものだったのかもしれないと、今になって気付いた。
「完全な思想統一による支配された世界…これなら戦争なんて起こり得るわけ無いだろ?」
『確かにそうだけど……でもそれじゃあ人の意思は無視されることになる……俺はそんな世界を望んでは居ない!』
「お前がどう思おうが関係ないんだ。ただ、デュランダル議長はそれしか争いを無くす方法は無いと思っているとしたら……オーブは敵になるな」
『何でさ?』
「お前も分かっているだろ?オーブがそれを許さないからさ」
ハイネの言葉は推測の域を出ない事は分かっている。
しかし、わざわざ偽者のラクスを用意したり、ジブリールが逃亡したというのに戦闘を止めなかったりしたのが全てその為の布石であるとしたら、そう考えるとハイネの話にも妙なリアリティを感じる。
同じ"平和"という言葉でも、ハイネの言うデュランダルの考える世界とシンの考える世界は余りにも違いすぎる。
『なら…俺は……』
「済まない、迂闊だったな、こんな事を言うのは……。だが、これは単なる邪推に過ぎないし、デュランダル議長は俺達の想像だに出来ない構想があるのかもしれない」
『いや……』
「……忘れろ、シン。今はデュランダル議長を信じよう。まだ何も始まっちゃいないんだ……」
『本当にそれでいいのかな……?』
「いいんだ。いいな、忘れろよ?」
そう言ってハイネは通信を切った。シンもそうだが、ハイネもこれ以上この話を続けると余計な雑念が入り混じってしまう危険性を感じていた。
その時、音声のみで誰かの声が聞こえてきた。
『何故、今の話をシンにしたんだ?いつものハイネらしくないじゃないか』
「カミーユか……」
隣に立っているΖガンダムの腕がセイバーの腕に触れていた。接触回線による通信で音がすこぶる悪いが、それでもハイネは既に聞き慣れたその声がカミーユのものである事が分かっていた。
「盗み聞きとは恐れ入るが、俺らしくない…か……」
『済まない、聞かせてもらった』
「別にカミーユなら構わないがな……」
ハイネは一呼吸置いて続ける。
「お前にだけ白状するがな……俺はザフトに…いや、デュランダル議長に不信感を持っているのかも知れん」
『何を……!?』
「客観的に自己を見つめてみた結果だ。自分でも意外だったがな」
『でも、ハイネお前は……』
「確かに俺はザフトで、今まで軍の命令に従ってやってきた…何の疑問も持たないようにな。が、最近のザフトは何処かおかしい。まるで二年前の大戦末期の頃の様な狂気が渦巻いているような気がしてならないんだ」
ハイネはカミーユだけには隠し事が出来ないと感じていた。それはカミーユがニュータイプである事が原因としていたが、ハイネは知らず知らずの内にカミーユに対して警戒感に似た侮れなさを抱いていた。
カミーユは何もかもお見通し、その感性がハイネに心の内を吐露させていた。
『俺は二年前は知らないけど、いつも軍の命令にうるさいハイネがそう言うのだから、今という時がおかしいというのは分かる。だが、それをシンに言うなんて……』
「いや、お前も俺と同じ気持ちなんだろ?俺だって愚痴を零したい時はある。あとは……カミーユも感じていると思うが、この戦争の鍵を握っているのは多分アイツじゃないかって思ったんだ。アイツが最後の力になる…それがどちらの力になるかまでは分からんがな……」
『シンが裏切る可能性があると……?』
「否定はせんがな…お前なら分かるだろ?」
さも意味ありげな台詞をカミーユに投げつける。それに対してカミーユは苦笑いを浮かべたが、彼にもシンがどうなるかは判るはずもない。
ニュータイプは預言者では無いのだ。
「いいさ、それで……俺は俺が決めた役割を演じる事に決めた。それがどんな結末を迎えようと、俺は後悔しない事にする。まだどうするか決めてないけどな」
『そんなこと言っていいのか?』
「俺とお前だけの秘密だ。黙っててくれよ?」
『それはいいけど……』
会話の途中で艦内警報が鳴り響く。作戦宙域に到達したようだ。
「お前ならさ…何となく俺の気持ちを分かってくれると思ったのさ。……時間だ、掛かるぞ」
セイバーが出撃の為に移動を開始する。それと同時にセイバーとΖガンダムの接触部分が離れ、通信が切れる。
(疑いたくは無いが……)
遠巻きにレジェンドのコックピットの中で見つめるレイは、セイバーとΖガンダムが接触していたのを見ていた。
(何を話していたかは知らんが、報告だけはしておくべきか……?)
流石に会話までは聞こえていなかったが、それを咎める訳でもなく、レイは黙って疑いの目を向けるに留めていた……
〜つづく〜
GJ!
GJ!
ハイネ死亡フラグ成立か・・・orz
GJ!
ハイネは…いや、言うまい。何が起こるのかは見えてきたが…カミーユにとっては限界ギリギリだろうな…。
GJ
激しく続きが気になるな…
シンが最後の鍵になるかどういう感じになるんだろうか
ステラとシンの繋がりこそが相互理解しあえるという証明となり
それをカミーユのNT能力が人類全てに共振させるのかも
カミーユはTV版の方か…
だとしたらラクシズは葬り去られるだろうなw
決して他人を認めない桃色汚物とその最も忠実な人形スーフリニートはシロッコのように
ウェイブライダーに串刺しにされてくたばってほしいものだ
>>ラクシズは葬り去られるだろうなw
すまん素で書くが、この流れだとまったくもってそういう話にはならん気がするんだが?
カミーユはTV版の流れから種世界に来てるけど
シンとの出会いが確実に新訳化させてるのは見ればわかるだろ
希望を持ててるわけだし
ラクスがキラにゲフンゲフン
とにかくラクシズ側にもアレだ、もう一波乱あるだろ、嫁を卒倒させるような何かが
外れてたらただのホラ吹きか俺Orz
>>582 カミーユに足りなかったものってある意味仲間の触れ合いだったしな
それがあればTV版でも崩壊せんですんだろうし
いくらNT能力が過剰肥大しても
このまま行くと議長のハローワークプランが発動されるわけか
どうやっても運命プランは任意制で、結果も本人次第で強制力もないし
確実に未来を殺すとか思想統一なんて表現はあてはまらないのだがな
>>582 どうみてもTV版。
新訳とのカミーユとはかけ離れている。
どうでもいいがな。
>>587 新訳もTV版もカミーユは大差ないぞ
受けとめ方が少し違うだけで
もう少し見直したほうがいいよ
それはコミュニケーションとれてるこの世界に近い
まあ富野曰くカミーユは変わってない
ただ受けとめ方が半歩ずれただけだだからな
シンがステラを救えたというのは
カミーユにとってフォウやロザミアを救えたのと同義と考えてもいいからな
同じ過ちを繰り返さないようになってるし
あれでステラが死んでたらもうTV版まっしぐらだが
カミーユって破滅と究極の表裏一体みたいなNTだから
俺はTV版に近い感じがする。
相手の気をストレートに受けすぎてる。
体感する相手がいないのと、導いてくれる相手がいないから仕方ない気もするがね。
新訳も相手の気をストレートに受けすぎてるんだけどな
受け流してはいるけど
まあ新訳だTVだと言ってもしょうがないとは思う
カミーユはカミーユだし
この世界に来てまた経験をして成長してるわけだし
TV版でも新訳でもないカミーユなんじゃないか?
>導いてくれる相手
ぶっちゃけ新訳カミーユは誰にも導かれてないだろ
シャアをも否定してたし、自分で観察して自分で答えだしてるし
TV版でも新訳でもないと思う
聖訳カミーユ
新訳とTVの差は受けとめ方を変えたことによる学習の差らしいぞ禿が言うには
新訳のが学習ができてるんだとさ体感に辿り着けたのは学習できてるから
死者に引かれすぎずに現実世界の肉体が大切だと学習できてるから崩壊せんでよかったんだろ
こっちのカミーユは最後はどっちに転ぶのかね…
それもラストの楽しみってことにしとこうや
GJ!
いよいよ大詰めも近いな
まだTV版か新訳かはっきりしてないね
これからに期待!
TV版でも新約でもなく◆x/lz6TqR1w氏版のカミーユだろ?
結局のところ、議長のDP発表待ちかー
今までの複線具合からしてDP発表は間違いないと思うが…
この流れだとやはり強制力を持たせるのかな?
しかしシンにしろカミーユにしろ、最終的に裏切るとしてもラクシズがアレな以上
単独での行動にしかならんと思うが…やはりオーブが鍵なのか
観念に走った人間が現実から外れてしまうのは、
学生運動の末路を見てきた御禿からしたら当然の結末かもしれんな。
御禿が学生運動的思想集団にいいイメージ持ってないのは、
ザブングルのSOLTでわかってたつもりだが、
御禿自身に学生運動とのかかわりが原体験的にあったのは、
放映当時意識してみてなかったからΖの最終回はわけワカメだった。
ある意味、新約は御禿版のダグラムなのかもしれん。
青春と決別できたカミーユとできなかったカミーユの違い?
GJ!
カミーユin C.E.73単行本で出ないかなぁ。
絶対売れると思うんだけどなぁ。
そういう持ち上げはちょっとキモいな
>603
同じく!
単行本がダメなら
同人誌でもいい!
出たら買うぞ!
Gジェネ系の担当者に
この話見せて作って
もらいたいな…
ラストバトル気になるな。
カミーユVSキラはわかるとしてシンの相手がわからん。
アスランかレイ?
シンはレイかな?
アスランはルナマリアで。実力的には相手にならんけど、舌戦ならできる。
アスランの相手はハイネだろ、ちと苦しい戦いになりそうだが。
あくまで予想だが、カミーユはキラ倒した後にレイかアスランと戦うんじゃないかと予想。
シロッコハマーンがシャアとやって、その後カミーユ戦に突入した様に
アスランはハイネ&ルナになって欲しいな
まあそれまでにハイネが死なないかが問題だが・・・
今回でフラグ立ってる品・・・
カミーユがアスランの目の前でキラ撃破
↓
アスラン精神崩壊、溢れ出すキモイ
↓
カミーユ感応して精神崩壊
↓
そのままUCへ
>>603 俺もそう思う
サンライズに持っていってもいいよ
売れそうだし
そういやザフト公式では死亡扱いだったアスランがオーブでテロの一味として出てきてザフトと敵対して来たのは如何なものか。プラントはヤツの引き渡しは要求しないのか?
◆XdXnStWCJQ氏はもうこないのかな
楽しみに待ってるんだが・・・
おとといはラクスとタッグで何とか議長と渡り合ったが、ここのカガリは
テレビではついぞ考えもしなかった
『世間は、オーブがAAを手先に使ってジブを逃がしたと見ている』
という視点をわずかとはいえ持っている。
そこへ昨日のレクイエム大虐殺とくれば、心情的にはともかく対外的・政治的には
AA組に何らかの処分をしなければ示しがつかないのではないのだろうか。
過度なマンセーはキモいだけだから
やめたほうが・・・・・・・
このままいきなり議長発狂だの
ただのハローワークと代わらんDプランが
発狂してんじゃねえのて感じに設定変更だのされませんように
そうなったらここも終わり
展開の押し付けは迷惑だろ
四十話ってあった?
>>611 正気か? 本来ガンダムの2次創作は禁止事項。
そんな事したら任○堂やディ○ニーレベルで訴訟問題になる可能性があるんだぞ。
サイバーの同人ソフトがサンライズからの訴訟で販売停止になった事があるから
冗談じゃすまない事だけは覚えておいてくれ。
種キャラのキモイ面をウエーブライダーで突っ込んで、抹消してやりたい
MIAのメタス買ったけど結構かっこいいわ。
>>622 ヴァルキリーやおしかけの前例があるから大丈夫だと思うが
…ってなんかジャミトフとかガルシアみたいなのまでいる!?
活字だからいいとして、アニメになったら種並みの厨作品になりそうだw
>>616 先に言っておくと、その展開に近い感じになります。
とりあえず投下しときます↓
第四十二話「言葉は宇宙(ソラ)を飛んで」
ミネルバからのタンホイザーがダイダロス基地を焼き、それに慌てた基地から敵のMSが出撃してくる。その中に、まだ残っていたデストロイも数機含まれていた。
シンはヘブンズベースでの事を思い出したが、レクイエム発射という緊急事態が迫っている事もあり、力でそれを捻じ伏せていく。
「相も変わらず俺はこんな事をしている……させたのはあいつらだ……!」
言い訳をしなければやっていられない。シンは自分に言い聞かせるように独り言を呟きながらデストロイを破壊していく。
「シン、出すぎだ!俺達は敵をダイダロスから引き離せればいい!」
ハイネが叫ぶが、シンは聞こえていないのか、徐々に敵陣の深いところへ食い込んでいく。
『ハイネ、シンは俺に任せろ』
「レイ…しかし、あれは敵の奥だぞ?シンが戻るまで待った方が…」
『俺が連れ戻す。ハイネとカミーユは作戦通りに』
ハイネにそう告げるとレイはレジェンドをデスティニーの方向に向けて飛んでいった。
『行こう、ハイネ。ルナマリアの出撃を遅らせるわけにはいかない』
「カミーユも分かっているだろ!?レイはシンを自分の所に引き寄せようとしている!」
ハイネはレイの存在を警戒していた。デュランダルの意思に最も忠実であると思われるレイが、自分がキーパーソンに挙げたシンをデュランダルの側に取り込もうとしている事に懸念を抱いていた。
その事はカミーユにも引っ掛かる所があったのだろう、ハイネの言葉に納得しながらも言葉を返す。
『その事は俺にも分かる。けど、今は時間が無いだろ?』
「しかしな…後の事を考えると……」
『あんな物をのさばらせて置く訳には行かないじゃないか!あれは憎しみの光だ!』
カミーユがハイネに檄を飛ばす。
出撃前には吹っ切れたような台詞を出していたが、やはりハイネも人の子だろう。
どうやらシンとレイの動向が気になって仕方ないらしい。
『まだここでどうにかなる問題じゃない!それよりも今はレクイエムの方が先だ、議長の意志に振り回されるなよ?』
「そうだな…済まない、カミーユ……敵を手繰り寄せる!」
カミーユとハイネは連れ立って敵の目を引き付ける為に砲撃を放つ。
狙撃された敵MSは二機のMSに向かって攻撃を仕掛け、それを一手に引き受ける形になった二人は徐々に敵MSを引き寄せていった。
「こいつも、こいつも、こいつもぉっ!」
デスティニーは大剣アロンダイトを振り回し、ダイダロス基地の守備隊を一撃の下に粉砕していく。その様は、まるで一般大衆の中で凶器を振り回す危ない人と同じであった。
『シン、焦るな!俺達の役目は敵を倒す事じゃない、レクイエムの阻止だ!』
レイがドラグーンを放ってデスティニーを囲う敵を散らす。
「ここでもたついてちゃ、次の戦いに勝てないだろ!?」
シンはハイネの言葉を忘れられなかった。
この作戦の前、情緒が不安定なのはルナマリアだけではなく、シンもその一人だったのだ。二人のラクスの出現がシンの心の中に穴を空け、それがハイネの言葉によって拡げられていた。
混乱するシンは目の前の相手と、その先に居る敵を見据えている。それがシンに焦りを与えていた。
「先ずはロゴス、そして次はオーブだろ!?」
『……!』
興奮しているシンはレイにハイネとの会話の一端を話してしまう。レイはそれに動揺する事無く、しかし言葉は出てこなかった。
「やっぱりそうなんだな……!レイは議長の考えを知っているのか!?」
大半の敵をカミーユとハイネが引き付けた分、シンとレイの周りの敵は二人のコンビネーションによって殆ど無力化されていた。いくらザフトの最新鋭とはいえ、圧倒的である。
その中でシンはレイに核心に迫る質問を投げかける。
『知らないな。俺はザフトの命令に従って動いているだけだ。お前の思うような事実は知っていない』
「嘘だな……!一介の兵士が直接議長に口が利けるものか!」
シンは初めてデスティニーに乗ってカミーユと模擬戦をした時の事を思い出していた。あの時は不自然に思わなかったが、今になって思い返してみればどう考えてもおかしかった。
レイはデュランダルと親しすぎる。
この事実がどの様な意味を持つかというと、いくらシンでもその推測は容易であった。
「本当は議長の思っている事、知ってんだろ!?それで今まで俺を騙して利用して……!」
『何を勘違いしているのかは知らんが落ち着け、まだ作戦は継続中だ』
「世界を平和にするだなんて言って俺をその気にさせて…そんな気も無いくせに都合のいい事ばかり言って肝心の真実を隠して……!」
『何を言っている?』
「本当はレイは俺の事を馬鹿にしてるんだろ!それで都合よく俺を誘導して…それを裏でせせら笑って!」
『何を馬鹿な事を言っているのだ?そんな事は…』
「嘘をつくな!分かるんだよ、現にこうして俺が怒っているってのに、お前は全然動揺してないじゃないか!」
『お前が何を言っているか分からないからだろ?急に怒り出してどうしたのだ?』
「レイは俺を利用しているだけだろ!」
シンの頭の中は倒錯していた。オーブの事、アスランの事、デュランダルの事、それらがシンの精神的余裕を奪い、心の許容量を超えていた。
そんなシンの激情を止めるにはどうすればよいか、レイは自身の秘密を唐突に語りだす。
『聞け、シン!俺はある男のクローンだ!』
「それで…それで……え……?」
思いつくままにしゃべり倒していたシンだが、レイの意外な告白で我に返る。
しかし、シンにとってこの告白は衝撃的だった。
『俺はクローン人間だ。ある男に造られ、何体か居た実験体の中の一人だ』
「な……!」
『だが、クローンは欠陥を持っていて』
「ちょっと待ってくれ!俺はそんな……」
『テロメアが極端に短くてな、もう既に老いが始まっている…それを少しでも抑制する為に薬が必要なんだ』
シンの言葉に遮られる事無くレイは続ける。シンは戸惑うが、いつもと雰囲気の違うレイの語りを聴くことにした。
『薬の効き目も大分薄くなってきた……俺にはもうそんなに時間は残されていない。だから、俺が死ぬ前に俺はギルの創る世界を見たい。その為に俺はお前の協力が必要だと思ったまでなんだ』
「そ…そうか……レイ……けど、どうしてそんなに議長の事……?」
『…俺が物心付いた頃、既に俺はギルの下に居た。最初は分からなかったが、俺がクローンである事をギルに聞かされた時はショックだった。だが、そんな俺にもギルとラウは優しくしてくれた。テロメアが短くても、自然の摂理に反した存在の俺を許してくれたんだ。
だから、そんなギルの想いに俺は報いたい…恩返しがしたいんだ……!』
普段とは違う人間味のあるレイの言葉にシンは納得する。勿論、レイの話に偽りは無いが、シンはいつもはもっと機械的な事しかしゃべらないレイの珍しい一面に本質を見抜けないでいた。
ギャップの効果はシンの情に訴えかけ、その心を上手く掌握する。
「正直、俺には何が本当で何が嘘か分からないけど……」
『俺を否定したいのならそれでも構わない。だが、今はまだ俺が存在する事を認めていて欲しい。せめてギルが目的を果たすまでのもう少しの間だけ……』
レイが唐突に身の上話を始めたのは、シンの中の疑惑の芽を小さい内に摘んでおきたかったからだった。激情に身を任せがちなシンに落ち着きを取り戻させるには、その激情を超えるショッキングな話をするしかない。
それがレイにとって自分がクローンであるという告白だった。
レイにとって自分の存在が誰かに否定されようが何だろうがどうでも良かった。
寧ろ否定される事を望んでいる節もある。それは、彼が自分を自然の摂理に反する存在であると認識していたからでもある。
だから、シンに自分を容認してもらおうなどとは思っていないし、シンに伝える事で同情を得たいわけでもなかった。ただ、シンの心証を自分が望む方向に向かわせたかっただけ、レイもまたシンを重要な人物であると考えていた。
レイはシンに訴えかける。
『その為にはレクイエムを何とかしなければならない、そうしなければギルは死ぬ』
「分かった…やってみる……」
心の中で整理できていないシンであったが、目の前の現実からは目を逸らせない。
眼前の脅威を取り除く事が先ずやらなければならない事だった。
その頃カミーユとハイネは順調に敵をおびき寄せていた。
そんな時、ハイネは宇宙に出たカミーユとΖガンダムの真価を目の当たりにする。
動きが全く違う。
宇宙に出た事により戦闘フィールドの制約が無くなり、無駄にウェイブライダーに変形する必要が無くなったΖガンダムは面白いぐらいに攻撃を当てる。
相手のフィールドに合わせる必要が無い為に、攻撃に割ける時間が圧倒的に増えたからだ。
(空間戦になった途端にあれだ…カミーユの世界のパイロットは皆あんなに動くのか?)
ハイネの推測はあながち間違いではない。
この世界のMSと同じ様に、カミーユの暮らしていた世界のMSには一般的に基本兵装となるビームライフルとビームサーベルの装備が殆どである。副兵装としてバルカンやメガ粒子砲を装備しているMSもあるが、それはあくまで副次的なものであり、主力として使う場面はあまり無い。
加えてフリーダムのような複数の敵に対して驚異的な力を持ったMSが存在しない上、ミノフスキー粒子の影響でどうしても有視界戦になりがちであるが故に、MSのパイロットには俊敏な操縦が要求される。
更にこの世界のパイロットと決定的に違うのは、カミーユがニュータイプとして優れた資質を有しているという点である。ある程度相手の動きを感知することが出来るカミーユは、宇宙に出たことによってその感性に更に磨きが掛かる。
それは、この世界で言う"強い"という意味とは違った意味で強い。
Ζガンダムに敵が襲い掛かる。
数珠繋ぎのように並んで向かってくるウインダムを先ずビームライフルで牽制して散らし、火力を分散させる。
次に散開したウインダムが放ったビームをシールドと回避でいなし、正面の敵をバルカンで牽制しながら接近して銃剣で切り伏せる。
そして下に回り込んだウインダムの攻撃をバックステップで外し、明後日の方向を向きながらも放たれたグレネードランチャーで不意を突いて撃墜する。
その間の隙を突いてビームサーベルを片手に接近してきたウインダムのメインカメラをビームライフルで吹き飛ばし、そのまま背中を踏みつけてその後ろから接近してきたダガーLにビームサーベルを投げつけてコックピットに突き刺す。
これらの出来事がハイネが少し目を放した隙に行われ、再びΖガンダムに目を向けたハイネは驚く。
「こりゃあわざわざおびき寄せるなんて事しなくても良かったか……?」
ミネルバから寄せられる情報を聞き、敵戦力のダイダロス基地における空洞化をほぼ成し遂げた事に軽く辟易し、自らの指揮する部隊の力の強さに多少の恐怖感を覚えた。
シンもレイもカミーユも、他の一般兵とは比較にならない力を有している。
ハイネは彼等が敵でない事にホッとしていた。
『そろそろじゃないか、ハイネ?』
「ん……?」
『合図だよ!』
「お…そうか!」
『しっかりしてくれ、失敗は許されないんだからな!』
内心で気を緩めていたハイネはカミーユに叱咤される。ハイネは気を取り直してミネルバに通信を繋げる。
インパルスのコックピットの中、ルナマリアは必死に気持ちの整理をつけようと試みていた。アスランが死んだと思っていた時よりも、彼が裏切った事実の方がルナマリアにとっては複雑な問題であった。
アスランの放った言葉を心の中で反芻する。
《なら、俺と来い!ザフトに居れば、いずれ君のような考えを持った人間は殺される!》
「……!」
複雑である。聞こえもしない声に、ルナマリアはヘルメットの上から耳を塞ぐ意味の無い行為をする。
ルナマリアはアスランに初めて会った時から憧れを持っていた。それが時を重ねるにつれて恋愛感情に変わり、いつしかアスランを自分のモノにしたいと思うようになっていた。
しかし、それは遂に表に出す事は無く、クレタ島沖の戦いでアスランは消息を断った。そして次に彼が姿を現した時、彼はルナマリアの敵になった。
もう一度アスランの言葉を思い出す。
「何で……」
目をぎゅっと瞑り、首を横に振る。アスランの言葉はルナマリアにとって卑怯とも言える選択だった。
アスランに好意を抱いていたわけだから、当然彼と共に行きたかった気持ちはあった。しかし、ここまで苦楽を共にしてきた仲間を裏切れるわけもなく、何よりミネルバには妹のメイリンが居る。
かつて不甲斐無い自分を励まして勇気付けてくれたかけがえの無い妹を置いてミネルバを離れられるわけが無い。
(あたしにはメイリンが必要よ……あの子を置いて行くなんて……)
思い悩むルナマリアは頭を両手で抱える。
アスランの誘惑…彼自身にそのつもりが無いにせよ、それはルナマリアの心を傷付けた。オーブから撤退した時、インパルスの手を引くデスティニーに抵抗しなかったのは、その事で放心してしまったからであった。
ふと気付くと通信回線が開いていて、ルナマリアを眺めるメイリンの顔が映されていた。
「え……?」
『お姉ちゃん、大丈夫……?』
開口一番、メイリンがルナマリアの元気の無い様子に心配そうに語りかけた。
「あ、だ…大丈夫よ。来たの?」
『うん、出撃お願いね』
「分かったわ……!」
急に現実に引き戻された気分になり、ルナマリアは臨戦態勢のインパルスをカタパルトへ移動させる。
ブラストシルエットが装備され、カタパルトハッチがゆっくりと開き、目の前に広がる虚空を見つめるルナマリアは不思議な高揚感を得ていた。
そうなる事で、先程まで悩んでいたアスランの言葉に激しい怒りを覚える。
「あんたとメイリンを引き合いになんか……!」
口を固く結び、発進の際の重圧に備える。
それは同時にルナマリアの決意の表れでもあった。
一方、ハイネは無事にルナマリアが出撃した事を知る。
内心ではルナマリアはもしかしたら出撃を拒むのではないかと心配していたが、それが杞憂に終わった事に胸を撫で下ろす。
「ダイダロスの敵は全部こっちに来たのか!?」
ハイネがミネルバのメイリンに問いかける。
『いえ、まだ数機残っています!』
ハイネが周りの状況を見ると、カミーユはまだ敵と交戦していた。
ミネルバとの通信を切り、今度はシンに通信を繋げる。
「そっちはどうなった!?」
『こっちは片付け終わった!ルナは!?』
「今出した!終わったんなら、お前たちもダイダロスに向かってくれ!」
『了解!』
ハイネはシンとの通信を終え、後少し残っている敵に向かっていく。
「カミーユ、こちらはこのまま陽動を続行だ!ダイダロスを叩くまで俺達で持たせるぞ!」
『了解、ルナマリアは出したんだな!?』
「ああ!」
話しながらもハイネはウインダムをまた一機撃墜する。
カミーユもビームライフルで二機まとめて撃ち落した。
『上手く行くか、ルナマリアは……?』
「行くさ、シンとレイを向かわせた」
『あの二人が行くなら大丈夫か……』
「……」
今はまだ気にする事じゃないとハイネは自分に言い聞かせる。先を考えても、レクイエムが発射されてしまえば全ては無意味になる。
Ζガンダムとセイバーは背中合わせになる。
「レクイエムを沈黙させるまでは決して気を抜くなよ、カミーユ」
『分かってる。ハイネこそ…』
「俺は隊長だ、言われるまでも無い!」
残りの敵を相手にする為、二機は再び敵に躍りかかる。
出撃したルナマリアはダイダロス基地の近辺に到達する。先発隊が敵を上手く引き離してくれたお陰でここまでは容易に接近する事が出来た。
しかし問題はこの先、最低限の守備力は残したダイダロス基地を単機で叩かねばならない。いつ発射するとも知れないレクイエムに恐怖を感じつつも、腹を括ってルナマリアはダイダロス基地に仕掛ける。
「時間はまだ……!」
ダイダロス基地に残っていたウインダム五機を相手にブラストインパルスがケルベロスで攻撃する。しかし、パイロットとして射撃に弱点を持つルナマリアの攻撃は敵を散開させるだけで掠りもしない。
散開した五機のウインダムに余計に手強い布陣を取らせてしまった。
「やっぱり、あたしの腕じゃ当たってやれないっての!?」
こんな事ならもっと射撃訓練をして置けば良かったと、ルナマリアは後悔した。
単機のブラストインパルスを囲うようにウインダムが間合いを詰めてくる。ルナマリアは完全に囲まれる前に一旦後ろに退いた。
「く……!あたしだって当たってやれない!」
必死に機動性の低いブラスト装備でウインダムのビームライフルを回避する。
打つ手の無いルナマリアは徐々にダイダロス基地から追いやられて行ってしまう。
「このままじゃどんどん離れていっちゃう……!何でハイネはあたしにこの役を任せたの!?」
最も重要な役割を分担されたルナマリアは、今になって指示を出したハイネを恨んだ。適正は分かっている筈なのにこの役回りを任されたのは、ハイネの意地悪なのではないのかと疑ってしまう。
ルナマリアはハイネの真意に気付いていない。
「ハイネ…あたしに死んでもいいからレクイエムだけは止めろって事なの……!?」
疑問は疑惑を呼び、一度思い込んだらそれは誤解を呼び寄せる。
ミネルバのMS隊の中でもいまいち役に立っていないのではないかという実感を持っているルナマリアは、ハイネが自分を捨石にしたのではないかと勘繰ってしまう。
しかし、正確ではないにせよ、ハイネの意図はルナマリアの推測の対極に位置している。ハイネはルナマリアに自信を植え付け、ミネルバのMSパイロットであるという自覚を再認識させたかったのだ。
「いいわよ……ハイネがそのつもりなら、意地でも…死んだってレクイエムを止めてやるんだから!」
やけくそになったルナマリアは迫ってくるウインダム部隊の中にブラストインパルスを突撃させる。その唐突な行動に、ウインダムのパイロット達は虚を突かれて戸惑う。
ルナマリアはそんな事は露知らず、自分から囲まれていったウインダム部隊の中心で回転しながら背部のケルベロスを脇に抱えて乱射する。遠くから狙って当たらないなら、近くで適当に撃ってやる…そう考えていた。
本当ならこの行為は自殺行動に等しいのだが、半分キレかけているルナマリアのバッテリーの容量を無視した砲撃の結果が功を奏し、思っている以上の量のビームを乱射されたウインダム部隊は対応しきれずに壊滅した。
偶然が生んだ結果か、火事場の馬鹿力を発揮したルナマリアは呆然とする。
「何よ…当たったじゃない……」
ホッとするルナマリアであったが、すぐに気を取り直し、本命のダイダロス基地へ向かう。
しかし、その時ルナマリアは絶望に包まれた。
ダイダロス基地の守備隊を全滅させ、後はレクイエムのコントロールルームのあるダイダロス基地本体を叩けばいいだけと思っていたルナマリアだが、その眼前に今まで何処に隠れていたのか、デストロイが現れる。
「デストロイ…大きい……」
事がイージーに進むかと思われた矢先の出来事なだけにルナマリアは落胆する。
彼女はデストロイとの交戦経験が無い故に、その圧倒的な威容を見つめると喉下にナイフを突き付けられた気分になる。
「でも、あたしはこんなところでは……!」
覚悟を決める。
ブラストインパルスの特徴である背部のケルベロスを外し、少しでも装備重量を軽くする。何とか目の前のデストロイをやり過ごし、ダイダロス基地を破壊しなければアスランを問い詰める事も出来ないのだ。
「メイリンはあたしが守ってみせる……!」
大事な妹を思い浮かべ、それを気持ちの勢いに変換させる。レバーを固く握り締め、そのまま勢い良くスロットルを掛けた。
パーツを外した分、機体の姿勢制御バランスは崩れていたが、そのお陰で水準以上の機動力を発揮する。
「真っ直ぐ…進みなさい!」
ぶれるブラストインパルスの加速を必死に修正しながら、ルナマリアはデストロイを飛び越そうとスロットルレバーを離さない。
そんな、あちこちから姿勢制御用のアポジモーターを蒸かしながら向かってくるブラストインパルスにデストロイが攻撃を仕掛ける。
「くぅっ……!…まだ落ちないわ!」
何発かの攻撃を受け、ブラストインパルスの両腕と頭部が吹き飛んだが、気合を発してそれでもルナマリアは進む。
しかし、あと少しでデストロイを通り向けられると思った瞬間、サブモニターに映るデストロイの砲門がルナマリアの視線と合った。
ルナマリアは凍りつく。
時間の流れが遅く感じられ、徐々に火が灯るデストロイの砲門に恐怖した。
(駄目ッ!あたし、まだ死にたくない……!)
絶望が頭を支配する中、急に動き出した時間の中でルナマリアは変な振動を感知する。それと同時にサブモニターの景色からデストロイの砲門が消え、宇宙の星の輝きが高速で流れた。
「え……!?」
『大丈夫か、ルナ?』
妙に厭味のある声…しかし、ただの厭味声ではない。
「レイ!」
『勝手に死に急ぐな。ここまで来て結末を知らないのは損だ』
急いで駆けつけてきたレジェンドがブラストインパルスを後ろから抱えてデストロイの攻撃から逃がしてくれたのだ。片や一緒に駆けつけてきたデスティニーはアロンダイトを構えてデストロイ相手に戦っている。
レイの言葉は無愛想な言い方ではあるが、いつものような厭味には聞こえない。
純粋に自分の事を心配してくれたものだと分かる。
「でも、あたしの役目は……!」
『そんな損傷では無理だな…お前はミネルバへ戻れ。ここは俺達が引き受ける』
そうルナマリアに告げると、レジェンドはダイダロスに向かってバー二アを蒸かしていく。
「ま、待って!あたしはまだ出来る!」
慌ててレイを追いかけようとしたが、ルナマリアの耳に警告音が聞こえてくる。
「え…なによ、こんな時に……!」
警告の内容を確認し、ルナマリアは愕然とした。
先程ウインダムと交戦した時に後先考えずにケルベロスを乱射した結果、エネルギーが殆ど尽きかけてしまったのだ。加えて今のインパルスには腕もメインカメラも無い。二人と協力したところで足手纏いになるのは明白であった。
「なんで…なんであたしはいつもこうなのよ……!ちっとも役に立てないじゃない……!」
悔しさがルナマリアを責め立てる。肝心な所で足を引っ張る自分自身に苛立っていた。
「ええい!どういう事だ、何故奴等を落とせん!?」
ダイダロス基地のレクイエムコントロールルームでジブリールは劣勢に立たされている自軍の不甲斐無さに激怒していた。
「相手はたったの五機だろう!それなのに、その何倍もの戦力を有する我等が押されている……!何てザマだ!」
怒れるジブリールは近くのパネルに拳を叩きつける。レクイエムの最初の一発をアプリリウスに当てられなかった事が彼の運の尽きだった。
「軌道の修正作業は終わっているのだろう!?何故さっさと撃たんのだ!」
「第二射に必要なエネルギーがまだチャージできてません!もう暫く掛りそうなのです!」
「今はどの位なのだ!?」
「現在充填率60%です!」
「それだけあれば十分ではないか!」
「ですが、このままでは予定していた成果は得られません!」
「構わん、撃て!アプリリウスに…ギルバート=デュランダルに当てられさえすれば良い、撃て!」
額に冷や汗を浮かべ、飛び出さんばかりに目を剥くジブリールの表情は鬼のようであった。しかし、鬼のようであるとはいえ、力強さは微塵も感じられず、御伽噺に出てくる懲らしめられた鬼のそれであった。
ジブリールはここでレクイエムを失ってしまうと、彼の手段は全て尽きた事になってしまう。ヘブンズベースを失い、オーブからやっとの思いでダイダロス基地に辿り着いたジブリールにとっては、これが最後の望みだった。
それがたった一隻の軍艦によって脆くも崩されようとしている。
ジブリールが見続けた夢の終わりが近付いていた。
「私は脱出する!お前達はここでレクイエムの発射を続けろ!」
「なっ……!それは私たちを見捨てるという事ですか!?」
「うるさい!発射さえすれば私の勝ちだ!万が一に備えて避難するだけ……私に何かあれば諸君等に給料さえ払えないのだぞ!」
「で…ですが……!」
「いいな、勝手な行動は慎むのだ!諸君等は私の言った通りにレクイエムを発射させてれば良い、それで我々の勝利、我々の望む未来がやって来る!」
彼の目的は勝利ではなく戦争の継続によって利益を得ることだったが、この場を何とか言いくるめようと必死だった。利用できる言葉は何でも利用する、それがジブリールがこれまで遣り繰りしてきた処世術であった。
ジブリールは職員に一方的に指示を与え、そのまま脱出シャトルの下へ向かう。
ヘブンズベース、オーブに続き、三度目の逃走を試みようとしていた。
「ロゴスの盟主であるロード=ジブリールともあろう私が何たるザマだ……!」
悔しさに歯噛みするジブリールに余裕は無い。これまで何とか逃げ延びてきたが、これまでと違うのはその心境であった。
今までは次に用意してある手段があったため、ある程度の余裕を以って逃走していたが、今回は完全にネタ切れである。
ジブリールは必死に保身に奔っていた。
交戦を続けるシン達。
デスティニーがアロンダイトを振りかぶる。接近されてしまったデストロイは慌てて弾幕を張ろうとするが、その瞬間にデスティニーは残像を残して正面モニターの視界から消える。
デストロイのパイロットは急いでデスティニーの位置を確認し、正面から背後に移動したデスティニーに向けてビームを放とうとするが、そこからも姿を消し、再び位置確認を行おうとしたその時、既にデストロイは傾いていた。
定石通り、デストロイのウィークポイントを攻め、巨体を一撃で黙らせる為にレジェンドがコックピットをビームサーベルで貫く。
「行け、シン!」
ダイダロス基地の防衛機能は完全に停止している。シンがデストロイと交戦している間、レイはドラグーンでダイダロス基地周辺のトーチカを破壊していた。
そのレイがシンに止めを刺すよう告げる。
「う…うわぁぁぁぁ!?」
「く、来る!奴等が来る!」
遠くから接近する光る羽はさながら悪魔の羽に見えただろう。ダイダロス基地のレクイエムコントロールルームで職員達は迫り来るデスティニーに恐怖し、悲鳴を上げた。
「喰らえよ、お前らぁっ!」
プラントコロニーを沈められた怒りをその瞳に宿し、シンはデスティニーの持てる力を全て振り絞ってダイダロス基地に攻撃を仕掛ける。
右手ににアロンダイトを携え、左の腕には高エネルギー砲を構えさせる。
挨拶代わりと言わんばかりに放たれたその強力な一撃がダイダロス基地の外殻を直撃し、大きな爆発を起こす。
すぐにシンはデスティニーを接近させ、アロンダイトで所構わずに切り刻む。
時折パルマフィオキーナを織り交ぜ、デスティニーは次々とダイダロス基地の司令部を破壊していく。
夥しいまでの煙が立ちこめ、尚も暴れまわるデスティニーの姿も外からでは殆ど確認できない。時折顔を出すデスティニーの特徴的な羽の様なスラスターの光だけがその存在を確かにしている。
ダイダロス基地に最早基地としての機能は殆ど残されていなかった。
その時、一機のシャトルが鼠の様にそそくさと出て行く。
ジブリールの搭乗するシャトルであった。
「何て化物どもだ…やはりコーディネイター等と共存などできるはずも無い……!」
ギリギリのタイミングで逃げ出せたジブリールであったが、肝心のレクイエムの発射が行われる前にダイダロス基地を沈黙させられたのは彼にとって大きな誤算であった。
「く……!レクイエムを発射出来んとは……!」
その時、シャトルを大きな振動が襲った。
その揺れにジブリールは椅子から転げ落ちそうになるが、着用していたシートベルトのお陰で何とか踏み止まった。しかし、大きく揺さぶられたジブリールに締められたシートベルトが痛かった。
「何事だ!?」
大声で機長を怒鳴りつける。しかし、ジブリールが問い掛けても機長からはうろたえの声しか聞こえてこなかった。
仕方なしにジブリールはシートベルトを外し、コックピットへと向かう。
「な…何だと!?」
目の前の前面窓に広がるのは灰銀のMS。それはシャトルを包み込むように体で進行を押さえていた。
「ば…馬鹿な……!」
ジブリールは膝から崩れ落ちる。いくら往生際の悪い彼でも、この状況はもうどうしようもない事が分かっていた。
シャトルを捕まえているMS、フェイズシフトの切れたブラストインパルスのコックピットの中でルナマリアは必死にレイを呼んだ。
『早…!エ……ギー切れのインパル……は長くは持たないわ!』
レイの耳にノイズで聞き取り辛いルナマリアの声が聞こえてくる。
「ルナ……ミネルバに戻ったのではなかったのか!?」
レイもジブリールの逃走を警戒していたが、その場所は的外れだった。結果的にミネルバに戻れと言ったルナマリアがジブリールを捕えた。
(二度ある事は三度あるか……だが、しかしルナ…お前のそのインパルスでは……!)
急いでレイはルナマリアの下へ向かう。少し戻った所に彼等は居た。
「ルナ、何故あのままミネルバへ戻らなかった!?機体の状況が分かっているのか!?」
『お説教は後で聞いてあげるから、早く代わって!』
シャトルは徐々にインパルスからすり抜けようとしていた。
レイは慌ててそこへ近付く。
「あっ!」
ルナマリアは痛恨の声を上げる。レジェンドが辿り着く前に、ほんのタッチの差でシャトルはインパルスの妨害から脱出してしまう。
シャトルは尻尾を巻いてさっさと加速を掛けて逃げ出そうとしていた。
「逃がさん!」
レジェンドのバックパックからドラグーンが勢い良く射出される。
「次があると思うな、ロード=ジブリール!これで終わりだ!」
空間認識能力を持つレイの操るドラグーンは正確にシャトルとの相対距離を詰め、その八基の銃口をシャトルに向ける。
「ふ…ぬぅ!」
取り乱すジブリールに最早ロゴスの盟主としての威厳は無い。唇を震わせ、力に怯える唯の人間に成り下がっていた。
生への執着が人一倍強い彼は最後まで抵抗を続けようとしたが、彼が今まで踏みにじってきた人々の報いを受ける時が来たのだ。
ドラグーンから発せられた八条の光はシャトルを全方位から貫く。そして、エンジンに直撃したシャトルはそのジブリールの惨めな最後と共に、漆黒の宇宙の塵となった。
「お…終わった……?」
インパルスのコックピットの中で安堵の溜息を吐くルナマリア。しかし、サブモニターを見ると、ドラグーンも回収せずにレジェンドが急いで近寄ってきていた。
『…ナ!急いでチェストフライ……とレッグ……ヤーを分離させろ!』
「え、何レイ?説教はミネルバに帰ってからにしてよ……」
通信回線に不調をきたしたのか、レイの声が良く聞こえなかった。
『いいか……くコアスプレンダーを分離させろ!爆発が始まるぞ!』
ようやくレイの声が聞き取れた。
しかし、ルナマリアにとっては緊急事態であった。
「ば、爆発!?……きゃあっ!」
放心から我に返った瞬間だった。急に吹き飛んだ左肩の損傷部分で小さな爆発が起こる。
「早くパーツを切り離せ!」
レイは必死に呼び掛けるが、インパルスは分離する気配を見せない。
「どうした!……む!?」
そうこうしている内に右肩からも先程より大きな爆発が起こる。
コックピットの中でルナマリアは必死に分離操作を行っていた。
「どうして…何で受け付けないのよ!?ハッチ…これも駄目なの!?」
焦るルナマリアだが、何度操作を行ってもパネルに表示されるのはエラーの文字だけだった。それでも諦めずに操作を続けていたが、やがてパネルの画面も消えてしまう。遂に完全にバッテリーが切れたのだ。
「そ…そんな……!せっかく生き残れたのに…あたし、こんな状況で死んじゃうの……!?」
ルナマリアの頭の中にメイリンの笑顔が浮かぶ。せめて彼女だけは平和な世界を生きて欲しいと思った。
ここで朽ち果てる自分の分まで、メイリンに未来を預ける。
(貴方はきっと素敵な女性になれる…けど…お姉ちゃんの事、忘れないでね……)
ルナマリアの想いは宇宙を駆け、未だ陽動として戦闘を継続中のカミーユの下に届いた。カミーユのニュータイプとしての直感がサイコフレームの使い方を教え、Ζガンダムのコックピット周辺から緑の光を放ってカミーユの意思を運ぶ。
《諦めるな……!まだ、君は生きている……!》
「え…カミーユ……?」
カミーユの声がルナマリアに届く。
インパルスのバッテリーは既に尽きているので、それは通信回線による声ではない事は明らかである。
だが、それは幻聴の様に、しかし確実にルナマリアの耳に聞こえてきた。
《彼女を引っ張り出すんだ……!》
「こ、これは…カミーユの声なのか……!?くっ!」
側で狼狽していたレイにもカミーユの声が聞こえてきた。不思議な声だったが、それに構っている場合ではない事をレイは承知する。
すぐさまインパルスを掴み、何とかコアスプレンダーだけを取り出そうと力任せに引っ張る。
「く……中々外れん……!」
ルナマリアにできる事は残されていない。しかし、コックピットに伝わってくる振動は、明らかに爆発による振動だけではなかった。
直感でレジェンドがインパルスの上半身を引っ張っている事を知る。
「レイ…もういい!あたしはもう無理よ!」
《命は繋げるものだ……!断ち切るものじゃない……!》
「カミーユ…でも!」
何とかインパルスを力尽くで分離させようとするレイだが、インパルス自体のフレームに歪みがあるのか、レジェンドのパワーを以ってしても中々上手く行かない。
「まだだ……!……ぬぅっ!?」
躍起になって掴んでいたが、その時インパルスから今までの中で一番大きな爆発が起こった。その爆発でレジェンドのマニピュレーターが破壊され、爆風でインパルスから引き離されてしまった。
「ルナッ!?」
爆発の煙に視界を汚され、一瞬インパルスを見失う。咄嗟に機体のバランスを取り、インパルスのあった方向に目を向けた。
しかし、そこにはインパルスのレッグパーツだけが滑稽に漂っているだけだった。
「間に…合わなかったのか……」
レジェンドのコックピットの中、レイはルナマリアを救えなかった事に肩を落とし、顔を俯けた。
《後方斜め下40度……四時の方向だ……》
「……!」
ハッとしてレイは聞こえた通りの方角にレーダーを向ける。すると、そこには確かにデータに登録されている反応が点滅していた。
意外と近い。レイがレジェンドを少しその方向に向かわせると、すぐにその存在を確認出来た。
レイは安堵の表情を浮かべ、それを回収する為に更に接近していった。
(何とかなった……?)
ルナマリアは気絶しているのか、その感覚を感知することは出来ない。しかし、レイの安堵を感じられたカミーユはルナマリアが救われた事を暗に理解した。
『よし、カミーユ!引き上げだ!』
作戦成功の報告を受けたハイネからの通信が入る。
まだ残る敵に牽制のビームライフルを放ち、人差し指の第一関節からダミーバルーンを射出する。
二機はMAに変形してミネルバに帰還する……
〜つづく〜
GJGJGJ
カミーユすげー究極NTぶり
やっぱテレパシーは一番NT演出で好きだ
GJ
ZZのカミーユの声の回並に感動した
ルナが無事でほっとした〜!
役に立てないとか言ってるけど、あんた大手柄だよ!!!
GJ
ルナマリアが死ぬかと思ってハラハラしたぜ
カミーユの力に感動。いいよねこういうNTの本質的な能力って一番感動する。
憎しみじゃなく誰かを救うためにNT能力を使ってるカミーユがいい
投下乙!
ルナほんとに死ぬかと思ったよ
カミーユ超GJ
ルナがとうとう昇天かと思った。ハラハラさせやがって!
っとと、遅まきながらGJ
いきなり議長発狂とかさせるんじゃ嫁と変わらんな
649 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/23(木) 19:55:30 ID:IS/D/yzm
GJすぎだ!!でももうすぐ終わってしまうのが残念だ↓↓
650 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/23(木) 19:59:08 ID:L3DqC0A1
ssss
GJ
レイの告白がこのタイミングで来たか
GJ
カミーユのNTの能力をまともに感じたレイは
どうなっていくのかな
職員やシャトルの機長がカワイソス
ルナマリアの人間らしい葛藤が良いですねー
しかしこうなると原作のメイリンの薄情っぷりが逆に笑える(w
カミーユとハイネの親友というか戦友な関係がいい感じですが、どんどん死亡フラグがつまれているように見えてならない…
そしてついにルナマリアにもなんか扱いされたアスラン乙
裏切り者に洗脳者
ミネルバ、お先真っ暗だなw
来てたー!!
GJ
死にそうで死なないハイネとルナマリア
ホッとする一方死亡フラグ立ちまくっていつか起動してしまうんじゃないかとハラハラドキドキ
その代わり、カミーユ崩壊フラグが……
>>652 今回レイを救うのはカミーユだと思う
キラの説得は意味不明だったし
会話ですらなかったな
それでも僕は・・・!!
しか記憶に残ってない
「でも!」もあったかな。言ってる事わからんのは同じ。脚本手抜くなよ
精一杯であれ
種死最後まで見なかった私には、「でも!」と「それでも僕は・・・!」ではクルーゼ戦の台詞にしか聞こえんのですが。
ボキャブラリー・・・・ねえなあ。
>>662 素人以下の腐なんだからマトモな話求めるのは酷だ。
>>663-664 操り人形なんだからボキャブラリー求めるのも酷だ。
奴は自分の能力のほとんどを桃色汚物の言う通りにするためだけに使ってるんだからな。
これ以上のマトモなこと求めたら蝙蝠ハゲがジャスティスに乗って自爆テロしかけてくるぞw
イザークとカミーユを引き合わせたら面白いだろうなぁ
種時代に来ると反発するイザークしか思いつかん
ウォン・リー氏の事を思い出したりして・・・・
671 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/24(金) 22:42:00 ID:BamP5A0C
堅気になってたww
イアン・リー出番なし…
連合の中では数少ない名前を与えらたキャラクターだというのに。
ま、原作では一山幾らの背景キャラに格下げされていたから、仕方がないけどね。
第四十三話「対立」
ミネルバのシンとレイの船室の中、レイは自分の机からケースに入った薬を取り出していた。片手にはコップに入った水。レイは苦しそうな表情で薬を口に放り込むと、持っていたコップの中身を一気に飲み干した。
苦痛に歪むレイの表情を見てシンは戸惑いを浮かべていたが、やがて薬が効き始めたのかレイの表情に落ち着きが戻り、いつもの様に背筋を伸ばした。
「こういう事だ、シン……」
シンはレイに何と言ったらよいか分からなかった。レイの抱える問題は、自分の直面する問題状況とは余りにも掛け離れていた。
「俺はこの薬が無ければ生きられない体なんだ。…いや、もうこの薬では長くは持たないだろう、効いている時間も大分短くなった……」
「本当に……そうなのか……?」
シンはまだ信じられずにいた。これまでそんなレイの苦しみなど気付く事など無かった。
「だってお前、そんな素振り一度も……」
あった。
エクステンデットの研究施設に調査しに行った時、明らかに不自然なレイの急変を思い出した。
シンは顔色を変える。
「まさか…あの時のは……」
「そういう事だ」
視界がぼやける。レイの表情が上手く見て取れなかった。
「でもお前、何でそんな大事な事を言わなかったんだ……!?」
「お前達に気を遣わせたくなかったからな。特にお前やルナマリアの精神には細心の注意を払いたかった」
「それも議長の為か……?お前…そんな事で俺達が態度を変えると思ったのか?」
足が地に付いているかいないかの感覚が今のシンには分からない。目の前のレイですらその存在が果たして実在しているのかどうか判断出来ないほどだった。
しかし、それでも何とかレイの存在を認めようとシンは意識の淵で踏ん張る。
「俺達、仲間じゃないか?仲間は見捨てられないだろ?」
レイに語り掛ける言葉も、シンは自分に言い聞かせるように語る。何とかレイの実像を手繰り寄せたかった。
その意図を理解したのかしないのか、レイはそんな必死な表情のシンに向かって微笑んでみせる。
「お前のその純粋な気持ちは、未来に必要な意思だ。…その気持ちを忘れないなら、お前がどうなろうと俺は安心してお前に未来を預けられる」
「何言って……」
「俺は…俺の存在はこの時代が終わると同時に消える運命だ。この先の時代に俺の様な存在は害をもたらすだけで何の意味も持たない。だから…」
「分からない…分かりたくない、そんな理屈!一人でそんな事勝手に決めるな!クローンが何だ、レイはレイじゃないか!?ちゃんとした一個人の意思を持った……それなのに自分を機械の様に言うな!」
「人形は所詮人形…造られた存在である俺に、ましてや誰かのクローンである俺に確固たる意思は持ち合わせていない」
吐き捨てるようにシンに告げると、レイは船室を出て行った。残されたシンはただ呆然と立ち尽くす。
「勘違いするなよ…レイ……。俺たちと過ごした時間はレイだけのものじゃないのか…?なら、それとクローンである事は関係ないじゃないか……」
気障なシンからは想像出来ない細い声で、崩れるようにベッドに腰を下ろして頭を抱える。
この事を誰にも相談出来ないもどかしさがシンを追い詰めていた……
宇宙に浮かぶザフトの機動要塞メサイヤ…デュランダルの最後の切り札でもあるその中で、彼は遂に全世界に向けてデスティニープランの発動を公言する。
遺伝子情報からコンピューターが割り出した個人個人の適正に従って世界を運営するその計画に、世界は戸惑った。
各国がその答えを保留する中、カガリの居るオーブ首長国連合と、その友好国であるスカンジナビア王国は即拒否する意向を発表する。
「あれの発射はこちらでも出来るようにしてあるな?」
「はっ、解析班に確認を取らせた所、認証コードの解読に成功したと報告がありました」
「うむ……」
デスティニープランの発動に於いて、全世界の協力が必要であると考えていたデュランダルは、全世界の意思の統一の為の力を確保していた。
先の戦闘でミネルバが沈黙させたレクイエムである。
デュランダルはそれを接収し、再び使えるようにした彼は、先ず最初に不穏な動きを見せたアルザッヘル基地に向けて撃つ。意思を持たない無機質な光の筋が、月から地上へ向かってアルザッヘル基地を正確に狙撃し、破壊した。
その問答無用の凄惨な行為に世界は恐怖する。
「何て事を……!こんなやり方が許されるはずがない!」
デュランダルの行為に恐慌するカガリ。
「デュランダル議長と緊急の会談を開きたいと打診しろ!」
「は!」
カガリはデュランダルと直接話すことで解決を図ろうとする。
兵士がメサイヤへと通信を繋げた。
一方のメサイヤでは通信士がオーブからの通信を受信していた。
「議長、オーブのカガリ=ユラ=アスハ様から緊急の会談の要請が来ております」
「拒否しろ。無条件でデスティニープランに賛同しない限り会談は無いと伝えろ」
デュランダルはカガリの要求を無視してレクイエムの次の目標をオーブに定める。
「オーブに打診しろ。デスティニープランに賛同しない場合、このレクイエムをオーブに向けて撃つとな」
「了解いたしました」
メサイヤから送られてきた内容にカガリは戦慄する。レクイエムを向けられては話し合いどころではない。そもそもデスティニープランを受け入れなければ、話し合いも取り付く島は無かったのだ。
こうなる事はある意味必然であっただろう。
「受け入れるしか…無いのか……!」
カガリは唇を噛む。折角ユウナから任されても、結局は何も出来ない自らの無力さに絶望した。
力が無ければ身につければよいのだが、その時間は圧倒的に不足している。
「しかし、何でこんな急に……国民の避難はさせているな?」
「はっ。しかし、私から提案させて頂きます」
ソガがカガリに提案する。それは、オーブの理念を破る内容だった。
「何をするつもりなのだ?」
「我がオーブ艦隊をザフトに投降させましょう。その中にアークエンジェル、エターナル両艦を組み込ませればより確実です」
「投降?どういう事だ、デスティニープランを受け入れればそんな事しなくても済む筈だ」
「問題はレクイエムです」
「レクイエム…奇襲を掛けようと言うのか……」
「はい。理念に反する行為である事は承知しております。しかしながら、他の大西洋もユーラシアもデスティニープランに不満を持っているのは確かのはずです。ならば、レクイエムさえ何とかすれば道は開けるはずです」
「……」
カガリは考える。これまで大事にしてきた理念を捨てるという事は、自分の元首としての立場を放棄する事になる。
しかし、オーブの事を考えれば、理念など唯の言葉に過ぎないとも考えた。
「作戦後の私の処遇はどうなっても構いません。処刑も覚悟しております。しかし、このようなザフトの…」
「聞かせてくれ」
カガリの一言は、自らの国家元首としての立場が終わる事を示していた。
カガリは、この時の決断を一生忘れないようにと誓う。
「は……まず、同盟を結んでいる連合の各国家に連絡をし、連合艦隊を我が艦隊の進むルートに配置してもらいます。位置はなるべく近い方が良いでしょう」
「しかし、連合とてわざわざレクイエムに狙われるような行動は取りたくないだろう?」
「ですから、それはザフトに気取られないギリギリの位置取りが求められます。その辺は我々で調整を加えます」
「ん…そうか……それで?」
「次に、アークエンジェル、エターナルを含む我が艦隊を月のメサイヤまで投降する振りをさせて向かわせます。そして、そこを配置していた連合艦隊に攻撃する振りをしてもらいます」
「芝居をさせるのは議長の考えを私たちの本音から遠ざける為だとは分かる。そして、連合の戦力もレクイエムの攻略に加えたいのも理解できる。しかし、彼等は乗ってくるのか?」
「彼等もプラントの言いなりになる様な事は望んではいないでしょう。なので、そこは代表の腕の見せ所となります」
「だが、そこまでは良いとしてもアークエンジェルは…」
「この際使えるものは何でも使うべきです。強力な戦力であるアークエンジェルを遊ばせておくのはもったいないでしょう」
ここでまたアークエンジェルに頼らざるを得ないのは自分の無力さゆえだな、とカガリは自嘲する。しかし、失敗を許されない状況では仕方ないとも思う。
「……わかった。それで?」
「ギリギリまで接近した所で一気にレクイエムに奇襲を掛け、これを殲滅します。芝居をしてもらった連合艦隊もこの時点で戦闘に参加してもらい、共にレクイエム破壊を手伝ってもらいます」
「同盟がここで生きてくるか…連合との共同作業になるな。しかし、相手はあのデュランダル議長だ、こんな小芝居はすぐにバレると思うのだが意味はあるのか?」
「はい。しかし、我々がデスティニープランを受け入れると知れば、デュランダル議長は我々にコンタクトを求めてくるでしょう。そうなれば、カガリ様の交渉次第ではオーブ艦隊だけでもザフトの防衛線を抜けられる可能性が出てきます」
「どういうことだ?」
「オーブ艦隊は投降する艦隊です。自軍に投降してくる艦隊が攻撃を受けていれば、ザフトもそれを守る為に動くかもしれません」
「そうか、連合に芝居をさせる本当の目的はそれか!」
「その通りですが、単なる気休め程度に考えておくのが良いでしょう。カガリ様も仰ったとおり、相手はデュランダル議長ですから」
「そ、そうだな……」
「確率としてはザフトに気付かれる可能性の方が圧倒的に高いでしょう。その場合は強攻策になります。可能性としてはこちらの方が高いので、恐らくは月まで接近した後はスピード勝負となります。それ故、強力な戦力であるアークエンジェルとエターナルは外せません」
「戦力だけではないだろう?エターナルも加えるお前の本当の目的はラクスだ」
「……その通りです」
「気を遣わなくてもいい。私とて同じ事を考えていた」
「カガリ様……」
「直ぐに連絡を入れる。これ以上デュランダル議長の好きにはさせない」
カガリは同盟を結んでいる同盟各国に連絡を入れる。その提案に度肝を抜かれたが、デュランダルの横暴を許しておけない各国の代表は、そのカガリの提案に賛成する。
他の国の代表は分かっていた。どうせこの戦闘がオーブの勝利に終わったとしても、理念を破る事になるカガリは唯では済まないことを。その場合、戦後の主導権は連合が握る事となるだろう。
その逆に、例え敗北したとしてもカガリにそそのかされたとして責任を全て押し付けてしまえば良いのである。その後でデュランダルに従えば、最悪レクイエムの発射だけは免れられるだろうと踏んだのだ。
どちらにしろ、デスティニープランを受け入れるかレクイエムを撃たれるかの二択しかないのだ。ザフトと交戦中の連合は、カガリの提案を受け入れない理由が無かった。
そして、それはカガリが蒔いた捨て身の"餌"だった。
デュランダルはレクイエムを躊躇い無く撃った。
それは単に独裁者の様に従わない者を悪として切り捨てたわけではなく、デスティニープランという突飛な計画を世界に認めさせる為であった。
丁度良く接収できたレクイエムは、デスティニープラン成功の為には最も手っ取り早い手段だった。事を急ぐデュランダルは、今までの懐柔政策を放棄し、恐怖で世界を従わせることで自らの目的を達成させようとしていた。彼としては時間は出来るだけ掛けたくなかった。
更に、簡単には行かないだろうがレクイエムを突きつければオーブとて従わざるを得ないだろう。
これまでの路線を変更し、自らを悪に仕立て上げることによって、デスティニープランを成功させようとデュランダルは考えていた。
そして、デスティニープランには彼の思想の他にもう一つの本音が込められている。
「デュランダル議長、オーブがデスティニープランを受け入れるようです」
「何?」
突然の報告にデュランダルは疑問を感じざるを得ない。ある意味虚を突かれた彼は直ぐに罠の可能性を考慮した。
「オーブと繋げ。話がしたい」
「はっ」
カガリの元にデュランダルからの通信がやって来る。そのデュランダルの反応にカガリは内心でしめたと思った。会談を開かせれば、後は自分がうまくやるだけである。
『デスティニープランを受け入れていただけるようですね?』
「ええ」
『どのようなお考えで?』
「平和を築くには一番手っ取り早く、確実な方法です。同じ平和を目指す者としてデュランダル議長の案に賛成しただけです」
そんな事など微塵も思っていないカガリだが、表向きは賛同している風に見せなければ余計な警戒をさせてしまう。
本当なら"レクイエムを向けられてれば受け入れるしかないだろ!"くらいは言ってやりたい気分だったが、我慢した。ここで対立姿勢を強調すれば、警戒を与える事になってしまうだろう。
尤も、デュランダル自身もカガリのこの発言が心よりの言葉とは思わないだろう。
これは、少しでもデュランダルに考えさせる時間を与えるのが肝なのだ。
『それはありがたい。代表のような方に賛同していただければ、デスティニープランのいい宣伝になりましょう』
「私にその様な効果を期待されても困ります。私の信用は決して高くない。それで、一つ今までの経緯も含めて提案があります」
『提案…何でしょう?』
「この度議会で同盟を結んでいた大西洋連合と縁を切ることが決定しました。それで…」
『同盟の破棄、ですか。何故です?』
続きを喋りかけたカガリの発言を遮ってデュランダルが言葉を挟んでくる。少しでも疑問に思ったことは聞いておかなければ気が済まないのだろう。
しかし、そんな態度にもカガリは不満を出さず、必要以上に言葉を発しないように心掛けて口を開く。
「連合と同盟を結んでいる我々ではデュランダル議長もお嫌でしょう?同盟の破棄は心からプラントの意思に従う事の証明でもあります」
自分のキャラクターを考え、笑顔は見せないで置いた。ここで笑顔なんて見せてしまったら、逆に裏があるように思われてしまうだろう。
唯でさえ不審な行動を取っているのに、これ以上はこちらの意図が透けて見えてしまうかもしれないのだ。
『こちらにお気を遣って貰った訳ですね。これは失礼しました、お続け下さい』
「いえ、構いません。…それで、プラントとは今まで複雑な間柄でしたが、こちらから艦隊を投降させる事で全てを水に流していただきたいのです」
『投降ですか?』
「信用の証です。我がオーブ艦隊の一部、それと現在拘束中のアークエンジェルも一緒に向かわせます」
『それはアークエンジェルの処罰をこちらに任せて貰えると受け取って宜しいですね?』
「そうです」
『我々の心境を理解していただけて嬉しく思います。しかし、艦隊がこちらへ辿り着くまではレクイエムの狙いは外せません。それで宜しいでしょうか?』
デュランダルの言葉はカガリに対する牽制の意味を含んでいた。投降させるとはいえ、オーブは艦隊を向かわせてくる。それならば、用心の為にレクイエムはオーブから照準を外せない。
更には、何かを企んでいるならばこの一言でカガリが何かアクションを見せるのではないかと期待していたのもあった。
「…仕方ありません。その代わり…」
『承知しております、対価は何でしょう?』
あっさりとしたカガリの対応。本当に裏がないのか、それとも演技が上手くなったのか分からないが、カガリのリアクションはデュランダルの期待を裏切った。
「察していただけて助かります。この度の同盟破棄により、オーブは連合から恨みを買うでしょう」
『分かりました。ザフトはオーブをお守りします』
「ありがとうございます」
通信が切れる。途端にカガリは喉を掻き毟った。あのような他人を欺く言動は、彼女にとっては虫も好かん事だった。
それに、今の話し合いはオーブがプラントに屈服したという意味である。例え演技だとしても、気持ちのいいものではなかった。
「レクイエムの照準を外す事は出来なかったか……」
「いえ、カガリ様。恐らく火は入れいれてないでしょう。それだけでも作戦の成功率は飛躍的に高くなります」
「そうか?…そう上手く行くものか……」
「レクイエムのエネルギーチャージに時間が掛かることは、先のザフトによる攻略戦で証明済みです。それならば、作戦時間は延びます」
ソガの言葉はカガリを勇気付けるためのものだろう。それに気付いてか、カガリは少しだけ笑顔を見せた。
しかし、そのまま部屋を退室すると、表情を曇らせる。
「慣れないものだ…私は政治家には向いてないのかもな……」
自らを嘲笑う。先程のデュランダルとのやりとりでは、自分でもビックリするほどすらすらと言葉が出てきた。それが自分が汚れてしまった証と勘違いし、皮肉で誤魔化そうとしていた。
その直ぐ後に、今決定した事を伝える為にカガリはキラの居る拘束部屋を訪れていた。理念を破るという決意を決めた今の勢いが持続している間に、やることは済ませておかなければならない。
自分をまだ完全に信用し切れないカガリは、今の自分の気持ちが醒めて悩みださない前に伝えておく必要があった。悩んでからではキラ達の言葉に惑わされてしまうと思ったからだ。
そこは質素な部屋で、最低限の物意外は何も無い窮屈な部屋だった。
「何しに来たの、カガリ?」
いくらか不満げな視線で問い掛けるキラ。アスランも同じ部屋に容れられていたので、その視線も同時に受ける。
「お前たちをプラントに引き渡す事が決定した」
「……それは僕達を見捨てるって事?」
「待て、キラ」
普段は温厚なキラだが、強い言葉を投げ掛ける。ナチュラルとコーディネイターとはいえ、カガリはキラにとっては双子の姉である。この間の姉弟喧嘩の続きとも言わんばかりに食いかかった。
しかし、そんな恨めしげなキラをアスランが制する。
「カガリ、確かに俺達のやってきた事は愚かな事だったのかもしれない。しかし、その想いはお前も知っているだろ?」
「知っているさ」
「なら、何故……?プラントに俺達を引き渡すという事は、デュランダル議長に従うということになる。それはカガリの考えに背く事になるはずだ」
「待て。表向きはプラントに従う振りをするだけだ」
「…どういう事?」
カガリの説明に納得いかない二人。怪訝な顔をしてキラが再び問う。
「今障害になっているのはレクイエムだ。だからそれを破壊する事が出来れば、デュランダル議長に従う理由は無くなる。その為にお前たちを使いたい」
「そうだったのか…カガリ」
「ちょ、ちょっと待て!」
納得するキラとは逆に、慌てるアスラン。何かに気付いてカガリに詰め寄る。
「それ以上は私に近付くな、衛兵を呼ぶぞ」
「う……」
「アスランが何を言いたいのかは分かる。しかしな…」
「理念を破る事になるって言う事は、カガリが元首でなくなってしまうんだぞ!それで良いのか、お前は!オーブを守るのがお前の望みだったんじゃないのか!?」
「あ……!」
アスランの言葉に、キラはハッとした。その通りである。カガリの言っている事が実行されれば、カガリの掲げるオーブの理念は崩れ去る事になる。
それは即ち、カガリの最大の信用を失くす事に繋がってしまう。カガリはオーブの国家元首で居るのは難しくなるはずだ。
「カガリ!もっと他の方法を探そう!こんな事、やるべきじゃないよ!」
「時間が無いのだ。相手はレクイエムを使うと言ってきている」
「でも、それじゃあ…今までやって来た事は一体なんだったの?全てを無駄にするつもりなの、カガリは……?」
「キラ…そうではない」
「じゃあ、一体……」
「カガリ、何を考えているんだ?」
アスランの問い掛けにカガリは深呼吸してから応える。
「……ユウナに言われた事の本当の意味を今になって理解できたんだ。どんな理念も、結局は言葉に過ぎないって事が…こんな現実を突きつけられてようやく気付けた。私は、それを振り回すだけで何とかなると思っていたんだ……」
「カガリ……」
寂しそうに話すカガリは、二人の中のカガリとは違っていた。
そんな彼女の言葉は、以前よりも説得力に満ちているように思えた。
「しかし、結果は何の解決にもならなかった。それどころか、余計な混乱を撒き散らすだけだった。私にユウナを非難する権利など何処にも無かったんだ……」
ユウナの姿を思い出すと、今でも胸が苦しくなる。彼は最後まで自分の事を考えてくれていた。そして、自分はその事に最後になってやっとそれに気付く事が出来た。
もっと時間があれば、とも思う。しかし、失われた時間は既に手の届かない遥か後方にある事も、カガリには分かっていた。
「ユウナが何故連合に軍を提供していたのか、今なら理解できるよ。理念が通じない相手には、ああやって従うことも一つの選択肢として意味があるって事なんだ。
だから、私も今度それをやる」
「しかし、それではカガリは……」
「オーブを守る為なら私は何でもやる。例えお父様を裏切る事になっても、私はお父様の為に元首になったのではない。オーブの…私の大好きなこの国の為に私は元首になったんだ。だから、後悔はしない」
カガリの決意は二人を呑み込んだ。ここまで固い決意ならば、二人はもう何も言う事は無い。逆に感化された二人はカガリに協力する考えを持たされた。
「分かったよ。僕はカガリに協力する。それが君の為になるのなら、僕は精一杯頑張るよ」
「カガリ…君の気持ちは分かった……。俺に何処まで出来るか分からないが、キラと同じ気持ちだ」
そんな二人に笑顔を見せて、カガリは退室していった。
その帰り際の通路で、カガリは表情を落とす。
先程の二人への通告は、つまるところ死地へ行って来いという事なのだ。それは、今までの付き合いの長さを考えれば、彼等を欺いている事になるだろう。
しかし、ここで情けを掛けては政治にならない。時には冷徹に決断を下さなければならないことを彼女は学んだ。
使えるものを使わなければならない時に使わなければ、それは唯のお荷物になってしまうのだ。
自分がどんどん変わっていっている事が実感できる。今までが今までだっただけに、現在の自分の有様が信じられなかった。
しかし、これが終わればカガリは元首を辞退することを決意していた。そして、そこからは一からのスタートとなるだろう。理想の政治家を目指すのなら、そこからもう一度捜し始めればよい。
だから今は、力の無い自分なりに出来る方法でオーブを守らなければならないと、カガリは考えていた。
「次はラクスか……」
次の決戦、ラクス=クラインというカリスマを用意しなければ、あっという間に負けてしまうだろう。それだけ彼女の象徴としての影響力は凄まじく、そして魅力的だった。
デュランダルが何故わざわざ偽者を用意してまでその力を欲したのか、今なら理解できる。
しかし、先のデュランダルとの論戦でもそうだったが、またもや彼女を利用する事になる事をカガリは申し訳なく思っていた。
カガリも、ラクスが象徴として担がれる事を由としていないことは知っている。それでも、この緊急の事態ではそうしなければならない事を認めるしかない。
「すまないラクス…もう一度"戦乙女"になってくれ……」
懺悔のように呟く。彼女を変えたのは紛れもなくユウナの死だった。そして、そこから無理をして変わろうとした結果、今のように極端に冷徹になろうとしている。
頭の中の甘い考えを無理やり払拭し、鋭い目つきでラクスの部屋へと向かって行った。
一方のデュランダルは考えていた。
先程のカガリの提案、それが本気なのか裏があるのか決めかねていた。決定するには判断材料が少なすぎる。カガリの言葉は決して多くなかった。
「何かを企んでいるのは確かなんだろうが…彼女も嘘をつくのが上手くなった」
窓から外に広がる漆黒を眺めた。月面は太陽の光でハッキリと見えるのに、大気が無いのでその空は地球の様に青くない。きっと自分の気持ちと同じだろうと感じた。
「警戒はしなければならんな…勝つ為には……」
デュランダルの目的は勝つ事。全てはそこに集約される。それは、彼の人生における最大の目標であり、常に続けていかなければならない事なのだ。
思惑が宇宙に溢れ、対立していく。
そんな想いとは関係無しに、宇宙は決戦の前の静けさを保っていた……
〜つづく〜
あらゆる意味で終わったなここも
結局ラクシズだけ救われるのね…
ログ消そっと
GJ
キラが大人しすぎて、なんか不気味。
きっと最終戦で電波爆発なこと喚き散らして、またシンやカミーユ達に
叩き直されるんだろうなぁ・・・
>>682 >>683 議長マンセーがしたきゃ「白○長」の出てくるスレの過去ログでもあさってろ
こうなる事は連載途中で匂わせてあったろうが
あと>そして、デスティニープランには彼の思想の他にもう一つの本音が込められている。
まだこの先どうなるかわからんのに勝手にラクシズendになると決め付けるな
作者氏、気になさらず続けていただいて結構です。ここまで来たのだから最後まで思うがままやっちまってください。
>>673 なるほど、議長は大量破壊兵器使って内政干渉および世界制覇まがいのことを
目論むキャラだったのか・・・。ラクス達は、同類の嗅覚で危険性を
感じてたんだなw
いっそのこと毒を持って毒を制するってことで、暴れさせときゃ楽になっただろうにw
所詮二次創作。
こんなもんよ。
688 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/26(日) 18:22:58 ID:ewhnhlsV
GJの数少なすぎワロタ
期待しすぎって事でしょ
◆XdXnStWCJQ氏よ、戻って来てくれ…
投下、止めた方がいいっすかね?
ラストまでは出来てるけど、何か荒れそうだし
自分で判断汁
>>690 いや、いつもの恒例行事だから気にするな。
まぁ落ち着け。
まだあの桃色汚物一派が戦場に引き摺り出されることになったにすぎん。
少なくとも、レイの執念、ハイネの疑念、カミーユの動向などの問題がある。
別に議長マンセーしなくてもあの桃色汚物やゴキブリニートに蝙ハゲに制裁がくだされないと決まったわけじゃないんだ。
つーか、そもそも戦場に出てこないはずないだろ
出てこないでどうやって話進めるんだ
それとGJ
>>690 乙。まず、投下はやめるな。
あの自称脚本家の素人みたくラクシズマンセーにならないなら、
多少の揺れはあるが荒れはしまい。安心して投下汁
アンチラクシズばっかだから、この流れは仕方無いかと
>>690 最後まで見届けさせてくれぃ!
カミーユやミネルバ組がどんな行動取るかwktkしてるんだからw
読み手は好き勝手言うものだ。気にするな俺は(ry
ラストまで構想できてるなら書いたほうがいいでしょ。ここで終わらせたら後悔するよ
と、以前アンチ意見に耐えかねずラスト間際で中断したおれが言ってみる
本編と違ってカミーユがいるんだし何とかなるだろう、GJだ
カミーユの行く末を見届けたい。
自分で荒れるかもって言ってるって事は、もしかしたら…
てかアンチ共は今回の話のどこに食い付いてんだ?
そんなにラクシズ擁護のシーンあったか?
どうせカミーユがサイコフレームの共振で人の心の光を見せて終了なんだろうよ。
ラクシズ、オーブだけは救われるっと。
>>702 AAと永遠の復活、ラクシズの開放(名目は投降)ってとこだろ
あと議長
先ずはGJ
むしろ、一人の人間とMSだけで、世界を変えられる方が不自然だよ
変えにくい世界の中で足掻くからこそ、ドラマがある
やはりこうなったか
投下GJです。
馬鹿はスルーしてこれからも頑張ってください。
>698
X運命氏?
まあ燃えシーンもないし、議長発狂のエピソードとあってはGJしたくないのもわかるけど、この議長は本当にキャラが壊れたんだろうか?
>デュランダルの目的は勝つ事。全てはそこに集約される。それは、彼の人生における最大の目標であり、常に続けていかなければならない事なのだ。
って言うように、議長の目的は平和じゃなくて勝利、そのためには横暴にでも最終決戦に持ち込まざるを得ないのかもしれない。
・・・とはいえ、議長が事を急ぐ理由が見えない。政治家である以上、じりじりとオーブを包囲して干殺しにするのも一つの勝利だろう。
まさか、レイに新世界を見せてやろうと焦ってるのか?
今の時点ではGJできないけど、次回に期待してる。職人さん負けるな!
>>690 止めることないよ
どうせ現在のこのスレは◆x/lz6TqR1w氏一人のSSで続いてるんだし
荒れようが荒れなかろうが問題ない
713 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/26(日) 19:09:31 ID:1wAS2jO3
職人さん自信をもって投稿してください!!俺わ毎週この小説を楽しみに
していますしこんな凄い話を作れる職人さんを尊敬しています!!
遅くなりましたがGJ!!
>>712 だな
むしろ投下されなくなると、このスレの存在価値が無くなる
GJ!
せっかくここまで来たんですか最後まで突っ走って下さい!少なくとも自分は楽しませてもらってますよ!
>>708 他のキャラはいろいろ変わって議長だけ原作通りのラクシズ擁護としか
思えない行動のままで余計におかしんじゃあとでも思ったんだろう
やっぱり穏健派から武闘派への鞍替えは…
GJ!
楽しみにしてるんで最後まで続けて下さい!
>>716が大体言ってくれたけど、個人的には
引っかかってるのはそこかな。
原作どおりやるっていうなら、ユウナはカッコつけの
ヘタレボンボンじゃなけりゃいけない。
なのに、ユウナだけカガリに都合のいいように性格変えるって
なんじゃそりゃあ・・・とは思うなあ。
GJ!
目指しているものは変わっていないが、やり方が百八十度豹変。一体何を焦るのか議長。
自分も毎回楽しみにしてます。このまま止められてはほとんど生殺しですよ!
最後まで彼らの戦いを見届けさせてください!お願いします!
カミーユがいるから、他のキャラの性格が変わるのはわかる。
しかし、カミーユと関わっていないキャラの性格が変わるのは少し理解できないお。
たとえ糞みたいな終わり方になったとしても、ここまでやったのなら最後まで頑張れや
>>721 いや、ユウナはカミーユに関わって無くても全然違う人物になってるぞ
で、その時のSSはGJの嵐だったが・・・
つーか、作者氏よ。グダグタ言っているのは3名しか居ないぞ!?
その他は殆どが「GJ」じゃないか!
ここでアンタが生んだストーリーを便秘にしてしまう必要が何処にある?
電車男みたいな流れだがw、頑張れ。頑張ってくれよ!
>>723 議長も変えてくれると思った人が多かったんでは。
GJの数に何の価値があるかはおいといて、
>>725が思うように、議長も変わってくれるものだと思っていた。
これじゃは、議長一人を悪にしてラクシズのやってる事を正当化してるだけじゃないか。
作者氏GJ!
俺は最後まで投下してほしい。
今回の否定派はアンチラクシズっていうより、ただの荒らしな気がする。
そうか?まだラクシズがどうなるかはわからんぞ?
ラクシズが落とされて、カミーユ・ハイネ辺りが議長に牙を向く方向性もあるんじゃないか?
議長が悪だというなら、ここのカガリだって悪ということになるだろうし。
変な奴の意見など気にしないほうがいいだろう。
まぁ、このスレの住人なんてアンチラクシズのキモいマンセー組と空気のような奴しかいないから、
変なレスが付くのも仕方ないとは思うな。
てかとりあえず続きが読みたいんだが
731 :
727:2006/11/26(日) 19:51:45 ID:???
>今回の否定派はアンチラクシズっていうより、ただの荒らしな気がする。
スマン。極論すぎた。
この作者なら、議長の路線急変の裏も、しっかり書いてくれると思うんだけどなぁ。
最近の荒らしは熱心な読者へのなりすましの術を覚えたウィルス野郎が多いから要注意だ。
結末が思い通りにならないから叩く奴は精神年齢が低いと思いますが。
俺たちはカミーユ氏が書いてるものが読みたいだけだから
カミーユ氏が考えた答えなら俺は納得するよ
ここまで充分満足させてもらえたし
否定的な意見を荒らしと決め付けたら楽ですもんね^^
続きマダ?
てかもラストまで投下してください
それより容量やばいから
次スレもう立てるか?
739 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/26(日) 19:55:36 ID:1wAS2jO3
二次創作なんだしキャラが違っても別に良いだろうがそんな小さい事気にするな。
少なくとも俺わ楽しく読めればそれで良いと思ってる!!そして職人さんGJ!!
これぐらいで荒れてると言ってる奴は何なんだ?
マンセーも否定もおおいに結構じゃないか。
ここは2chだぞ。
勘違いしてる奴多すぎ。
>>725 議長をどういう風に変えて欲しかったんだろう。
確かにラクシズには何かしらの罰を与えて欲しいが、カミーユやシン、レイとの決戦無しに、
ただ単にラクシズはこれこれこう言った罰を受けましたでは詰まらんだろ。
そうなると、どうしてもデュランダルには原作通り、
悪役に成ってもらわなくちゃいけないんじゃない。
てか雑音気にしててもしょうがないと思う。
文句言ってる人も物語が終ってから言おうぜ
職人さんは気にせずに
議長の行動理由が不鮮明な所が不安を与える。
後のエピソードで、狂っているなら狂っているなりに説明を。
その内面に人間が居れば、良い。
で、嫁と同じ手法でいきなり発狂して悪人にしますたじゃな
気に入らなくなったんなら黙って読むのやめれば?いちいち被害者ヅラすんな。
>>741 さあねえ? ただ議長を自分の政策に従わないと民間人ごと
吹き飛ばす、ということをするような原作どおりのマジもんの基地外だったということに
しちゃうと、ラクスの言う事の方が正しかったってなるからじゃねーの。
ユウナよりデュランダルの危険性を読んでたことになるわけだし
>>740 >>742 そうだな
確かに否定もあって当然だしな
ただ否定的なヤシも結構だが楽しみにしてるヤシのことを考えないのはいただけない
作者氏のモチベが下がらんようにSSが終わってからやろうぜ
>>745 否定意見を聞きたくなかったら個人サイトでも作って引きこもってろw
職人さんはもうラストまで終ってるなら
雑音気にして変更とかしちゃあダメだと思う。
俺はあんたの意思の小説が読みたいし
今回のこれは、議長変貌の理由がまだわからないからじゃないかな。『何故か議長がおかしくなった』という印象が先に来てしまうのでは。
それと、読み手の我々は大なり小なり『自分が見てみたいシチュエーション』を職人さんに期待してしまってるんではないかと思う。
職人さんは自分なりの話を書いてくれてるのだから、我々の願望と違うからって文句を言うのはちょっと…。
あ、話の構成とか、『どう考えてもおかしい行動』とかに批判を加えるのは当然良いことだと思う。
と書こうと思ってたら既に様々な人に書かれてた。でも主張しとく。
職人さん、自分なりの話を書いて下さい。俺はそれが読みたくてここに来てます。
取り合えず頑張れ。
自分の思い通りに書けばいいと思う。
ラストスパートなんだから最後まで書けぬけてほしいです。
ここで方針転換とかしたら凸と同じ状態に・・・
とりあえずGJ!
>意思を持たない無機質な光の筋が、月から地上へ向かってアルザッヘル基地を正確に狙撃し、破壊した。
アルザッヘル基地って月の表側にあるんじゃなかったっけ?
議長変貌しない流れなら反抗してくる連合軍(核ミサイル使用)を多めに出して、それを全てレクイエムで皆殺しにすればよかったんじゃないか?
そしてそんな大量破壊兵器を何度も使う議長は間違ってるとかラクスに言わせて攻め込ませれば議長おかしくならなくても良いだろうし。
アンチラクシズな流れで行くならオーブとの話し合いを議長から持ちかけ、その話し合いの場に戦艦に乗ったラクスがくるとかでもいいような気がする。
>そして、デスティニープランには彼の思想の他にもう一つの本音が込められている。
↑がキーポイントの一つかもしれんし、更にひとつ気になるのは、キラアスはともかく
ラクスが、自分の頭と心でものを考え始めた(桃色電波から脱したともいえるが)
カガリの言うことを素直に聞くのだろうかという疑問が。
いずれにせよ今はとにかく待って、そして読むだけだ… 最 後 ま で 。
私は議長が逝ってる行動に出た件は、「本音」とか急いでる理由で納得させてくれると信じている。
っていうかどいつもこいつも、
すぐに騒ぎ過ぎなんだよ。
>>690 遅くなりましたがGJです。
自分はぜひ最後まで見たいです。まだどうなっていくか分からないキャラが多すぎなので
続きスゴク気になります。
>>753 自分もその1文が物凄く気になってた。多分議長もただの悪役では終わらないと思ふ。
また、0083スレの悲劇が繰り返されようとしているのか!?
>>757 あそこと違って、作者が自分でガソリンブチ撒く真似を
してないから大丈夫だと思う。
>>758 >>690でしていると思うが
ああ書けばどういう反応が返ってくるのか、馬鹿でもわかるだろ
本当に投稿する気がねえんなら、そのまま投稿止めるだろうしな
変なレスしちゃって申し訳ないです。
上手く言えませんが、最後まで続けます。
この先は最終章的な話に入って行きますが、ぶっちゃけ結構長いです。
議長に関しては、最後の方で濃い場面を用意してあります。そこで色々吐きます。
それまではなるべくミステリアスにして置こうと思って今回の形になったんですが、失敗だったみたいです。
やはり素人は難しい事を考えちゃいかん……orz
カミーユ氏いつも乙です
カミーユ氏の思いついた通りに書けばいいんですよ。
まわりを気にしてたらあとあと自分で納得できないまま
終わってしまいますよ。
ここは最後まで思いついたことを貫いてください。期待してますよ。
荒れている、というよりも
荒らしているやつがいる、といったほうが正しいかもしれん
読み手は自分が読んでて面白い物を求めてるんだから賛否両論はでるんだし
読み手がつまらないと考えたら離れるのは仕方がない。
でも、読み手に合わせすぎて作者が考えてる世界をぶち壊すのも違うと思う
何がいいたいかというと
カミーユ氏の作品を望んでる人もいるので最後まで駆け抜けてください。
おくればせながらGJ
まずはカガリの成長に乾杯。これならユウナも命を賭した意味もある。
ただ、まだまだ議長の相手はキツイだろうから心配。
んでラクシズ。やっぱオーブとしては頼らざる得ないでしょう。
とはいえ、
今回の場合は原作と違いカガリが自分で判断しないラクスの人形状態ではなく、あくまで、対等の協力者となっている点から、
とられる行動は同じになろうとも決して同じ結末にはなるまいと期待してます。
たとえ、同じ情勢に落ち着こうともその本質の部分では天と地ほどの開きがあるだろうと。
心配するな、
大丈夫だカミーユ氏。
自分の思うように
書けばいいさ。
完結してこそ小説だぜ?
最も、完結しない小説になれてきている自分が哀しいが
畜生!畜生!畜生!
一体どれだけ書きかけの小説を投げ出せば気が済むのだ!
議長が突然変わったという奴が多いみたいだが、そんなことはないだろ。
議長は最初から自己の研究者としての冷静な考察の末に導かれた最良の答えであるデスティニー・プランを実現させるために行動してたわけで、手段が強行的になったぐらいて突然変わったとか言うのはおかしいと思うぞw
いきなり強硬姿勢を採ることになった理由も、この作者ならちゃんと語ってくれそうだしな
>自らを悪に仕立て上げることによって、デスティニープランを成功させようとデュランダルは考えていた。
>そして、デスティニープランには彼の思想の他にもう一つの本音が込められている。
ココがポイントだな。
しかし最後に立っているのはラクシズどもではなく、シン・カミーユたちであると思いたい!
そういえば、うっかり忘れそうになるけどココのミーアは無事に終戦を迎えられそうかな?
wktk!!
ひたすらwktkだ!
『素材』『題材』共に揃った“未完成作品”に対して
二次創作の方々の感じ方も、言いまわし方も、終わり方も
固定形は無〜い。
カミーユ氏の味付けをwktkしてます。
第四十四話「カミーユの時間」
星が冷たく輝く宇宙で地球から旅立った人類が静かな無限空間で喧騒を起こす。
かつて人類は一つの種族だった。だが、やがて一部の人類は更なる自己の可能性を求めて自らを人工的に進化させた。
私は今、私の秘密を話そう
その人物の告白は、この言葉から始まった。
人工的進化を遂げた最初の人類…ファースト・コーディネイターのジョージ=グレンは、その存在が世間に認知されていない時期に初めてコーディネイターの存在を立証した。
その告白は世界を大きく揺るがし、その後ジョージ=グレンは何者かに暗殺されてしまう。
やがて遺伝子の操作によってジョージ=グレンの様に進化を遂げようとする者が増え、その人口は時間が経過する毎に数を増やしていった。
いつしか二つの人類には従来の通りに自然に生まれてくる者をナチュラル、遺伝子改造によって強化されて生まれてきた者をコーディネイターと呼ぶようになった。
ナチュラルはコーディネイターを妬み、コーディネイターはナチュラルを蔑んだ。
それが反目し合って反発を起こし、人類同士による戦争の歴史を綴り出した……
争いの歴史に終止符を打つためにデュランダルが用意した計画、ディスティニープランは、極端な言い方をすれば、人の運命を強制的に決め付けてそれに従って平和に暮らそうというものである。
もし、この計画がまかり通るなら、それは平穏な世界への第一歩となるだろう。そして、やがてデスティニープランが世界のシステムとして当たり前に馴染めば、人は他人を妬むような事はしなくなるだろう。
しかし、自由と引き換えに手に入れた平穏は、人から欲望という名の向上心を取り上げる事になる。それは人類の進化を止める事なのかもしれない。
それでも、憎しみを争いでしか晴らせない現在の愚かな人類にはこうする事が最も望ましいとデュランダルは考える。パトリック=ザラやラウ=ル=クルーゼを知っている彼は余計にそう思えたのかもしれない。
そして、彼自身、過去に運命を強く思い知らされた経験があった。それは自分の歴史の中で最も忌むべきもので、悲しい事だった。
デュランダルは寂しい人だった。
「投降してくるオーブ艦隊はどうなっている?」
「はい、あと数時間ほどでこのメサイヤの近くまで辿り着くものと思われます。中には報告通りアークエンジェルも居ります」
「結構だ」
「いえ、それだけではない様で…」
「それだけではない?」
眉を顰めて訊ねる。少ないのなら話は分かるが、逆に増えているのはいかがなものか。
「どういうことだ?」
「未確認情報ですが、どうやら艦隊の中にエターナルも含まれているようなのです」
「エターナル……」
デュランダルは呟くと、椅子に腰掛けた。
(ラクス=クラインを担ぎ出すか……しかし…)
「こちらに攻撃を仕掛けるにしてもオーブ艦隊だけでは対抗できないはずだが……何よりも理念を崩壊させては姫の立場は……」
顎に手を当てて考え込む。どう考えてもいきなりの投降は不自然極まりなかった。
攻撃してくるにしても数が少ないだろうし、何より攻めればカガリは元首のままで居られないだろう。
ところが、その予想を裏切る報告が入ってくる。
「報告いたします。投降するオーブ艦隊に連合の宇宙艦隊が攻撃を仕掛けています。どうやら同盟をオーブが一方的に破棄した事に対する報復行為のようですが…」
「…オーブ艦隊の損害はどうなっている?」
「まだ大きな被害は出ていないようです。連合もザフトの勢力圏に近いとあって手を出しあぐねていると思われます」
その言葉にデュランダルの目が光る。確証は無いが、先程の疑問が瞬時に納得の行く考えに変わった。
(成る程…まんまと劇を観賞させられたわけか……ならば、姫は覚悟を決めたわけだな)
疑い深いという事はいい事だとデュランダルは思う。
「全艦隊に戦闘配備を告げろ。敵はオーブ、連合の艦隊だ。レクイエムには決して近寄らせるなよ」
見抜かれたオーブの思惑。しかし、作戦は既に成っていた。ここまで近づければ、後は総力戦でレクイエムを破壊すれば良いだけである。
それを知っていながらも、デュランダルはこの戦いに勝利する事でデスティニープランを成功させる事が出来ると確信していた。
月面を舞台に、レクイエムを守るように機動要塞メサイヤ、そして月軌道にザフトの部隊が展開している。その中には当然ミネルバの姿もあった。
本格的な戦闘配備まではまだいくらか時間が残されている。その時間を、シンは身を強張らせて過ごしていた。
「宇宙って、冷たい感じ……だから皆で寒くないように一緒にコロニーに住むのかな?」
ステラの言葉にシンは顔を向ける。
(そんな感じ方、考えた事も無かった……)
決戦の前、緊張していたシンはステラの不思議な雰囲気にマッサージをされている気分になる。
窓の外は吸い込まれそうな黒。その中に幾つもの砂金のように輝く星が微かな暖か味を醸し出している。
それが余計に宇宙を寒そうに見せた。
「シンは戦いが終わったらどうするの?」
ステラが唐突に問い掛けてくる。
「え……?戦いが終わったら……?」
聞かれたシンは困った顔をして首を傾げる。戦争を終わらせる事ばかりを考えていて、その後の事は全くと言って良いほど考えていなかった。
「そうだなぁ……普通の暮らしに戻りたいかもな」
「ステラもシンと一緒に行ってもいい?」
「勿論だよ、ステラ。…一人じゃ寒いもんな」
「シン寒いの?なら、ステラがあったかいコーヒー持ってきてあげる!」
そう言ってステラは流れて行ってしまった。
「お、おいステラ……」
突飛なステラの行動にシンは手を伸ばしかけたが、すぐにステラの姿は見えなくなった。
「そういう事じゃないんだけどな……」
ステラの言動に微笑ましくなったシンは口元を緩めて軽く溜息をついた。
「何やってんだ、一人でニヤニヤして?」
「げっ…!カミーユ!」
通りがかったカミーユがシンの顔を見て怪訝そうな顔をしていた。
「またステラといちゃついてたんだろ?」
「止めろよ、そういう言い方!」
「怒るなって、別にお前を軽蔑してるわけじゃないんだぜ?」
「嘘だな、カミーユは寂しくて俺とステラに嫉妬してんだろ!」
「そんな子供かよ」
無重力の中でカミーユは巧みに体をコントロールして通路を流れる。シンを追い越した所で足を床につけた。
「お前が気負いすぎてるんじゃないかと思ってさ」
「余計なお世話だね!カミーユの方こそ、未だに元の世界に戻れる手段が見つかってないのに余裕だな?」
「焦っても仕方ないだろ?訳の分かんない事に躍起になったって解決できる保障はないんだから」
「そんな事言ってる場合じゃないだろ。次の戦いは死ぬかもしれないんだぞ」
「そうならない様に頑張るよ」
カミーユがシンの世界にやってきてザフトに参加し、ここまで来た。
思えば最初は分からない事だらけだった。
今でも分からない事はあるが、しかし少なくとも反発しあっていたシンとも仲間と呼べる関係になれた。
最初は自分がこの世界に介入する事でどうなってしまうか不安な事もあったが、シンにとってカミーユのフォウに当るステラが生きていた事は素直に嬉しかった。
それだけでカミーユがミネルバに乗った価値はあったのだ。
「それで、シンはどうするんだ?」
敢えて具体的に口に出さず、曖昧な言葉でシンに問い掛ける。
「どうするって…何を?」
シンもその意味を何となく理解していたが、ワザととぼけて見せた。少し考えれば意地の悪い質問である事に気付いて、カミーユの方から核心を引き出そうとする。
それをカミーユは分かってか、周囲を気にして人が居ない事を確認してから口を開く。
「デュランダル議長のやる事、シンは協力的なのか?」
「言うなよ……」
シンにも分かっている。
ディスティニープランの発動の為に、その意にそぐわない勢力をレクイエムの恫喝によって従わせる。既にアルザッヘル基地は撃たれ、その被害は甚大である。
だが、レイの手前もある。
自分の存在を賭けてでもデュランダルの理想に殉じようとするレイに、シンは同情を感じざるを得ない。
ならどうするか…その答えは未だにシンの中で見つかっていない。
「シン、コーヒー!」
シンにとって気まずい空気を壊してくれたのはカップを二つ持ったステラだった。
「俺は邪魔だな、それじゃ」
一言残してカミーユはその場を離れる。
「カミーユと何話してたの?」
コーヒーカップをシンに差し出してステラが訊ねる。
「別に…寂しいんだってさ、カミーユ」
「ふぅん……?」
誤魔化すようにシンは答えたが、ステラはそれを気にしない。
迫り来る時を、シンはゆっくりと待っていた……
シンと別れたカミーユはMSデッキにやってきていた。
決戦を前に整備士達が所狭しと行き交っている。最後の整備に余念の無い各員は汗と油に塗れて戦場さながらの空間を形成していた。
カミーユはマッドが整備しているΖガンダムの前にやって来る。
「マッドさん!」
「んぁ?」
胸部の排気口に首を突っ込んでいるマッドが気の抜けた返事をする。
「整備、手伝いますよ!」
「んんっ!?」
声を聞いてマッドが排気口から首を出して振り向く。Ζガンダムの足元を見て顔を顰めた。
「カミーユか!お前ぇの手なんか借りなくたってちゃんと整備してやるよ!」
「でも、大変そうじゃないですか?手伝います!」
「馬鹿たれ!パイロットは戦いに備えて休むのが仕事だろが!余計な気を回すんじゃねぇ!こっちはプロなんだ、アマチュアは黙ってろ!」
マッドは怒鳴ると再び排気口に首を突っ込む。
「万全の状態で送り出してやるからな、絶対に負けるんじゃねぇぞ!俺の誇りも込められてんだからなぁ!」
「……」
排気口の中からくぐもった声でマッドは話す。だが、それに返事をしないカミーユを不思議に思ってか、マッドの手が止まる。
「どうした、カミーユ?」
「いえ……」
職人気質なマッドでもカミーユが何か悩んでいるのが分かる。そんなカミーユに偉そうにも一つ講釈でも垂れてやるか、とマッドは話を続ける。
「……俺たちメカニックマンの仕事はな、戦場でパイロットが死なないようにMSをきちんと整備しておくのが仕事だ。それ以外にパイロットにしてやれることはねぇからよ、どうしても力が入っちまうんだ」
背を向けたままマッドは語る。
「けどよ、別に押し付けがましいことを言ってる訳じゃねぇんだ。ただ、お前等に生きて帰ってきて欲しい、それが叶えば俺たちの戦いは無駄では無かったって事になる。それが嬉しいんだよ」
「でも、僕は……」
「お前さんが何考えてるか知らねぇが、生きてさえ居ればいい。だから、お前さんはお前さんの思う通りに行動すればいい。それが俺達メカニックのプロフェッショナルな誇りに繋がるってもんだ。まぁ、細かい事情は抜きにした話ではあるがなぁ!」
そう言ってマッドは大声で笑う。彼らしい豪快な笑い方だった。
「戦ってるのはお前等だけじゃないんだぞ。けどな、実際に命を張るのはお前等だ。だから、お前等は実戦に疲れを残さないようにするのが使命なんだ。死んじまったら俺達も責任を感じちまうからよ。だから、とっととこんなむさ苦しい所を離れて休んでろ!」
「…分かりました、Ζの整備、よろしくお願いします!」
軽く頭を下げてカミーユはMSデッキを後にする。
「けっ、これだから勘の鈍い餓鬼は嫌いなんだ。恥ずかしい事言わせやがって……」
再びせっせと手を動かし始めたマッドは悪態をついたが、その表情は晴れやかであった。
MSデッキを出た所でカミーユはハイネと出くわす。
「何だお前、MSデッキに居たのか?」
「ああ、何か手伝おうと思って……」
カミーユの言葉を受けてハイネは血相を変える
「何言ってんだ、今は休むのがパイロットの仕事だろ?それなのに働きに行ってどうすんだよ!」
「同じ事をマッドさんに言われたよ。確かにそうだよな」
「気が逸ってんのか?なら、俺にちょっと付き合えよ」
ハイネがカミーユを誘う。
「付き合うって……?」
「いいから、俺の話に付き合えよ」
何か言いたそうなハイネに急かされるようにカミーユは人気の無い場所に連れてこられた。
「こんな所で話しって…何の話だ?」
「お前、ザフトを抜けていいぜ」
突然のハイネの言葉にカミーユは目を丸くした。
「な、何言ってんだハイネ!ここまで来て何故そんな事を……!」
「お前は元々ザフトとは関係無かったからな。今の赤服も暫定的なものだし、次の戦いは生き残れるか分からない」
「だからって……!」
「お前が議長に懐疑的になっているのは分かってる。なら、ザフトというしがらみを解いてやるから元の世界に戻る方法が見つかるまで何処かに身を隠して居ろよ」
「そんな事して……上には何て報告するんだ?」
「次の戦いで戦死したって事にしておく。勝手に殺して申し訳ないと思うが……」
「ハイネだって…議長に疑問を持っていたじゃないか?どうするんだ?」
「……俺は、俺の思う通りにやる。例えそれがザフトを裏切る事になっても、な」
「それで、いいのか……?」
ハイネが一つ息を大きく吐くと、少し顔を緩ませてカミーユに向き直る。
「皆、意思を持ってんだ。議長の言うデスティニープランって言うのはそれを徹底的に無視した方法である事は分かってるだろ?確かに平和にはなるけどよ、そこに人として生きていく意味は無い」
ハイネの声はどこか諦めに似た雰囲気がした。これまで信じてきたザフトの最終的な結論に内心でがっかりしていたからだろう。
「その上、逆らう者にはあんな物騒なもの突きつけて脅す始末だ。最初の一発はもう撃たれちまったしな……。そんなやり方、誰が見たっておかしいと思う」
「……なら、ハイネはオーブに付くのか?」
「それも違うな…あいつらはあいつらで何処かおかしい。やたらと非戦だなんだと喚いて置きながら、アークエンジェルの行動は矛盾している。そんな奴等の言う事なんて信用できると思うか?」
「じゃあ、一体……」
「俺はな、アイツが何かするんじゃないかって思ってんだ」
「アイツ……」
カミーユはレクイエム発射阻止作戦の前のハイネの言葉を思い出す。
しかし、レイの存在も気掛かりだったカミーユはそんなハイネの決断に不安を持った。
「けど、動かなかったらどうするんだ?保証は無いんだぞ?」
「関係ないな…どちらにしろ俺が議長を止める」
「……」
「表向きはザフトの味方さ。でも、頃合を見て俺は途中でザフトを抜ける。そしてレクイエムをぶっ壊して議長も説得する」
「一人で出来るのか?」
「シンが加わってくれれば心強いんだが、レイがどう動くか分からんからな……。けど、これを俺一人でこなせれば、今度は俺が英雄だぜ?プラントを守って議長の暴走も食い止める、これをチャンスと思わなければ男じゃないからな!」
不安を誤魔化す為だろうか、ハイネはいくらかおどけた調子で話す。恐らくカミーユを安心させたいが故の軽口だろう。
「だからな、この戦争の事は俺に任せろよ。お前までこんな事に付き合う必要は無い」
ハイネは真っ直ぐな瞳でカミーユに意思表示をする。
そんなハイネの決意は理解するが、カミーユもそんな言葉を受け入れるつもりは無かった。
「気を遣ってもらってありがたいけど、俺はミネルバを降りるつもりは無い。ここまで一緒に戦ってきたのに最後だけ除け者なんてずるいぜ?」
「お前……」
「俺の力だって必要だろ?相手にはフリーダムとアスランも居るんだ。ハイネだけじゃ不安だもんな」
「お前、人が気を遣ってやったってのにそんな事言うか、普通?」
「ハイネだけに気を遣わせるもんかよ」
カミーユにだって結末を知る権利がある。異邦人とて関係無いのだ。
ここまで来て脱落したくは無かった。
「死ぬかもしれないぞ?」
「何もしないまま運命に従うのは嫌だ。俺は俺の信念の下に行動する。ハイネと同じさ」
カミーユの言葉を聞いてハイネは呆れたように腰に手を当てて溜息をつく。だが、すぐに表情を戻してカミーユに握手を求めた。
「最後までよろしく頼むぜ、カミーユ!」
「ああ、こちらこそ!」
カミーユも差し出された手を握る。
がっちりと握手を交わす。
「じゃ、余計な事は考えずにしっかり休んどけよ」
「ああ」
ハイネは去って行った。そして、それと入れ違いになるようにルナマリアとレイがやって来た。カミーユは何事かと目を丸くさせる。
「カミーユ、ハイネと居たんだ?」
「あ、あぁ。何か用か?」
ルナマリアの視線が何かを見透かすようで少しだけカミーユは動揺してしまった。
どうもカミーユはルナマリアが苦手なのかも知れない。
「ね、カミーユってさ、エスパー?」
「はぁ!?」
「そうでしょ?」
「何言ってんだ?そんなわけ無いだろ」
呆れたようにカミーユは言う。突拍子も無いルナマリアの言葉に、顔を顰める。
「あたし、この間の作戦の時に聞いちゃったのよ」
「何を…」
「カミーユの声…通信も出来ないはずなのに、カミーユの声だけ聞こえたのよ?絶対エスパーでもなきゃ出来ない事でしょ」
「何を馬鹿なこと言っているんだ。戦闘前だぞ」
「いや、俺もカミーユに聞きたい。あの声は一体何なのだ?」
沈黙していたレイも訊ねてくる。
「レイまで…お前がそう言う事気にするか?」
「幻聴で済ますにはハッキリとしすぎていた。しかも、あのような場面で…」
「あたしが助かったのはレイのお陰だけど、レイもカミーユの声を聞いてたって言うのよ。吹っ飛ばされちゃったコアスプレンダーを見つけられたのも、カミーユが教えてくれたお陰だって」
詰め寄ってくる二人。
「別に…気にする事じゃないだろ?結果的に良ければそれで良いじゃないか」
「良くないわよ。これから大きな決戦だってのに、気になる事を残しては置けないわ。カミーユを幽霊と思いたくないのよ」
「疑問は残しておきたくない。カミーユを信頼しきるにはな」
「……」
ハッキリ言ってニュータイプの事を話して意味があるのかとも思った。カミーユはそんな事を考えて貝の様に口を噤むだけである。
「ハッキリしてよ、あたし達仲間じゃない?」
「…俺は」
ルナマリアの懇願するような声に、カミーユは観念する。
「何となく分かるんだ、人の心の叫びというか、何と言うか分からないけど。そういう力を持った人ってのが俺の世界にはたまに居るんだ」
「カミーユもその特別な人なの?」
「ニュータイプって呼ばれている。だから、その力がルナマリアとレイに話しかけたのかもしれない」
カミーユの話を聞いて二人は複雑な表情をする。最初から納得できるはずも無かったが、更にピンと来ない。
一方のカミーユは最初からほぼ諦めていた。こんな話をしたところで、自分の世界でだって一般的でないのだからこの反応は当然だと思った。
「何か…不思議な感じ……。まるで御伽噺の中の話みたい」
「にわかには信じられんし、納得できるわけも無いが…実際に聞こえたのは事実だ……」
「そりゃあ、俺自身が有り得ない存在だからだろ。俺は異世界から来たんだから…」
今まで忘れていたのか、そのカミーユの言葉を聞いて急に二人の顔が明るくなる。
そう、言われてみればピンと来ないのは当たり前なのだ。長い時間一緒に行動していたせいか、いつの間にかそのことを忘れていた。
異世界の事だと割り切れば、これ程納得しやすい事は無い。非常識に思えても、既に目の前に存在する男自体が非常識なのだ。テレパシーみたいな力を持っていても何ら不思議はない。
……二人はそう思うことにした。
「…何か急にどうでも良いって顔してるぞ……」
カミーユの突っ込みも意味は無い。二人はそれでいいと思ってしまったのだ。
「気にするなカミーユ。これで心置きなく戦える」
「頑張ろうね、カミーユ!」
去っていく二人。
「そういう完結の仕方、しますかね?」
二人の突然の納得の仕方に、カミーユは苦笑するしかなかった。ただ、この先ハイネと共に起こす事になるであろう行動を思い浮かべると、心苦しくなる。
大事な決戦の前に苦悩するのは良くない。出来るだけ気持ちを真っ直ぐに保つべきである。
そう心の中で呟き、カミーユは決戦の時を待った……
〜つづく〜
GJ!
一番乗りか?
GJです
やっぱカミーユが出るとこの小説は動き出すな
GJ
カミーユがいい意味で人同士を繋いでいってるな
これはUCでできなかったことをここでやってるのがいい
ニュータイプとかオールドタイプとかそういうのを超越してる感じ
GJ!
いよいよ決戦って感じだなぁ。カミーユやシンや議長も気になるが一番気になるのはハイネだ。
GJ!
はやく続きよみたい
GJ!!
こうして見ると実はハイネが一番のトリックスターなんじゃないかと思う。
原作だと見せ場も無くお亡くなりになった彼が輝く時が来たんだよきっと。
GJ!
だが、ハイネに死亡フラグ立ちまくり。
>>785 シン「人類って一つに繋がれるってだれかが言ったけど俺は信じる!そうだろカミーユ…」
ってラストだな
GJ
もう少しで終ると思うとなんか寂しい
GJ
>>792 同意だが、完結してくれるのは嬉しい
>>792,793
なんか原作より話延長する様な事言ってなかったっけか?>カミーユ In C.E. 73氏
>>794 話を延長するんじゃなくてこっから長いって意味だと思う。
GJ
>>795 原作で語られなかった部分を重厚に書くというところですかね。
GJですカミーユ氏
職人さんGJ
GJ!!
超展開が来そうだな
>>789 そこで、ハイネ隊ですよ。
オレンジショルダーは…
『 同 士 の 証 』
…
こりゃなぁ…
あのスレの言うとおりだな。
初代1氏はどこにいったんだよう。
>>800 ホント初代1氏はどうしちゃったんだろうか。
ところであのスレって何?
GJ!
いよいよ最終決戦に向かって話が動き出しましたね
どうか完結まで頑張ってください
ぐだぐだぐだぐだ文句言ってるヤツはなんなんだ?
こういうのは作者のモチ落とすだけだってわかんないのか?
だいたい、もう構想は完結してんだから、なに言っても一緒だろう
まぁ、某スレ潰したクソどもが流れ込んでいるのかもしれんが
いや、新シャア板には、自分が職人より偉いと思い込んでいる読者がけっこういるからな
そういう人間は、気に食わない展開になると、たたく、暴れる、ひどいもんだ
新シャアの職人は読者の奴隷とはよく言ったもんだよ
そんなに気に入らないなら、自分が書けばいいのにな
第四十五話「それぞれの戦い」
メサイヤの司令室で、デュランダルはモニターに囲まれた椅子に腰掛けていた。
周りには騒然たる数の職員がコンピューターの画面に向かって忙しそうにキーボードを打っている。その中の一人が、オーブ・連合艦隊の接近を知らせた。
メサイヤから全ザフト部隊に命令が下る。数多あるナスカ級やローラシア級戦艦から更に多くのMS群が飛び出してくる。
オーブ・連合軍はもう間近まで迫っており、部隊の展開も済んでいた。これまでとは比較にならない規模の戦闘を予感させる。
ザフトにとってはデスティニープランの発動の為の、オーブにとってはレクイエムを発射させない為の、どちらも背水の陣での戦いだった。
負けられないこの戦いは互いの威信を賭けた総力戦である。
最後の一滴まで振り絞る戦いの幕が、開こうとしていた。
ミネルバからも各MSが出撃する。
出撃した瞬間、各員は最高の仕上がりを見せた乗機に感動した。
マッドを中心としたメカニック達の労力を惜しまない頑張りの成果だった。
『ザフトの皆様は道を空けてください。レクイエムは、人の世にあってはならぬ兵器です。それを守るという事はどういう事か…よくお考えになって下さい』
ラクスからの全周波による通信が流れる。
その時、前方で光の筋と爆発の閃光が各パイロットの視界に入った。
「この声…戸惑いを感じる……」
聞こえてきたラクスの声にカミーユは何かを感じ取っていた。ラクスの声に含まれる感情が、複雑なものであることをカミーユはわかっているのだ。
しかし、ラクス自身もレクイエムを放って置いてはいけない事を感じていた。故に、こうしなければならない自分を嫌悪しながらも戦うしか彼女には出来なかった。
カガリの提案を拒否すれば全てが無駄になってしまうからだ。
『ラクスの言葉に反発したな!始まったぞ!』
ミネルバは前線よりも引いた中盤の配置を任されていた。戦闘は開始されているが、まだ敵の姿は見えない。
『前線の部隊が踏ん張っている、ミネルバの各員は敵がこちらに来るまでは堪えろよ!』
ハイネからの指示が伝わる。
「あたし達が行った方が持ち堪えられるんじゃないの?」
『俺たちはザフトの主力の一翼を担っている。先ずは前線に任せて、突破してきた敵部隊を確実に落とす!』
「ああ、成る程ね…了解!」
ルナマリアは逸っていた。あの閃光の向こうにアスランが居ると思うと気が急いてしょうがなかった。
しかし、その想いは以前の様にアスランを慕う余りに求めていたものではない。
無責任に感じる彼に対して彼女なりの決着をつけようとしていた。
その上、いつまでもアスランを引き摺って居たくないという気持ちがルナマリアの気を逸らせていた。
『ハイネ、MS部隊の指揮権は俺に委譲してもらうぞ』
まだオーブ軍が前線で食い止められている。そんな時にレイからハイネに通信が入った。
「……どういう事だ、レイ?」
『議長の意思だ、従ってもらうぞハイネ。シン、ルナマリア、カミーユもいいな?』
レイの通信が全員に行き渡る。
「え……どういうことだよ?タリア艦長からは何も無いんだぞ?」
『分かっているだろ、シン。俺が議長から直接言い渡されたってことが……』
「……そっか……」
シンとレイの会話を聞いてカミーユは顔を顰めていた。ハイネのセイバーの方に視線を移してみたが、沈黙したまま動こうとしない。
(……議長に先手を打たれたか?どうする、ハイネ?)
『ルナ、いつもの様な勝手な行動は控えろよ?この戦いは世界の未来が掛っているんだからな』
『分かってますよ』
レイが隊長らしくルナマリアに釘を刺すように注意を与える。そんなレイの態度に不満を感じたのか、ルナマリアは呆れたように返事をした。
閃光が徐々に近付いてきていた。先ず最初に前線を駆け抜けてきたのは三機編成のムラサメだった。
「来た…ハイネ!」
『う…何だ……?』
「ハイネ!?…敵が来てるんだぞ!」
『あ…済まない!』
直ぐに正気を取り戻し、セイバーは慌ててビームライフルを放ってムラサメを追いかける。だが、射撃の正確さがいつもよりも劣っているように見えた。
このままでは取り逃がしてしまう。
『カミーユはハイネのフォロー!俺とシンは残りの二機を叩く!ルナマリアは援護!』
「行くぞ、レイ!メイリン、周囲の部隊に通達、抜けてくる敵が居るぞ、警戒を!」
ザフトの中でも突出した性能を誇るデスティニーとレジェンドは簡単にムラサメを撃墜した。
一方のカミーユとハイネもΖガンダムのハイパーメガランチャーの狙撃でムラサメを撃墜していた。
「どうした、ハイネ?動きが鈍いじゃないか?」
通信で語り掛けたが、ハイネはそれを嫌って接触回線での通信を求めてくる。多少のノイズも混じってしまうが、内容が外に洩れる事は無い。
『先手を打たれた。議長は俺を信用していなかったみたいだな……』
「まさか…ハイネをミネルバに配属させたのは議長じゃないか?」
『最初はな……多分レイだ。アイツが何処かで俺に不審を持って議長に報告したのだろう。その結果が指揮官から平のパイロットに格下げとはね……』
「その程度で済んでよかったじゃないか?」
『そうさ。けど、そのお陰で少し戸惑っちまった!』
またもや抜けて来た敵部隊がやって来る。今度はM1アストレイとウインダムの混成部隊。それを確認するとハイネはセイバーで躍り掛かる。
どうやら先程は本当に少し戸惑っていただけのようで、今度はいつもの様に切れのある動きで一度に二機を撃墜する。
「心配は無いみたいだな」
Ζガンダムもハイパーメガランチャーを構え、ムラサメの射程距離外から狙撃をする。
「く……オーブか……!」
『おい、イザーク……』
ステーション・ワン付近ではイザーク率いるプラント守備隊が成り行きを見つめていた。
彼等も前大戦では最終的にアークエンジェル側についた。その事が彼等を複雑にさせていた。
『どうすんだよイザーク?相手はオーブだぜ?』
「馬鹿者!我らの使命はプラントを守る事だ!どうするもこうするも無い!」
『けどよ…ミリィだって乗ってるしなぁ……』
「女に現を抜かしてる場合か!あの男が又裏切ったのだぞ!俺達まで裏切るわけにはいかんだろうが!」
(アスランが裏切ってなかったらよかったのかよ?)
ディアッカは心の中でそう呟いた。口に出せばイザークは余計に五月蝿くなる事は分かっていたからだ。
「ディアッカ、奴が現れても手加減はするなよ?恥知らずには折檻だ!」
『分かってるって、俺だって頭にきてるんだ。けど、出てくるか?いくらなんでもこの場で出て来たら面の皮厚すぎだろ?』
「ふん、奴がそんな恥や外聞を気にする奴か?」
『気にするんじゃないか?』
「甘いなディアッカ、そんなものがあれば、何遍も裏切ったりはしないだろうが」
『さっすが隊長、厳しいねぇ!』
「真面目にやれ!戦闘は始まっておるのだぞ!」
不真面目なディアッカの態度にイザークは注意を与える。しかし、直ぐに冷静な顔つきをしてディアッカが話しかけてくる。
『だが、実際勝てるのか、俺達?相手はフリーダムとジャスティスだぜ?それに、オーブの新型の報告も入ってる』
「例の金色とザフトのアウトレットか……だが、守らねばならん!攻められているのはこちらなのだ!」
イザークが周囲を警戒しつつゴンドワナのブリッジにグフのマニピュレーターを接触させる。
「いいか、深い位置だからって油断は……」
イザークがそう言いかけた瞬間、十時方向から爆発の光が輝いた。
「な、何ッ!?」
『イザーク、敵だ!奴等、もうこんな所まで来てやがる!』
ハッとして爆発のあった方向に顔を向ける。ディアッカのガナーザクがバックでイザークのグフに接触する。
「何だと!?ブリッジ、何故気付かなかった!?」
『そ、それが……』
「索敵はしていたのか!?索敵班は寝てたのか!?」
『敵MSがこちらの網に掛る前にここまで接近してしまったのです!とてもじゃありませんが、速すぎて我々には捉えられません!』
「くぅ……!ミネルバは何をしておったのだ!?ジュール隊、掛るぞ!」
『了解!』
イザークの部隊は爆発のあった方向へ向かう。
すると其処には既に他の友軍が交戦中であった。戦っているのはデスティニー、レジェンドとストライクフリーダム、インフィニットジャスティスだった。
『シンはアスランを、俺がフリーダムをやる!ここを突破されれば俺たちの負けだ、しくじるなよ!』
レイが命令と共に檄を飛ばす。
「こんな無責任野郎を見逃すかよ!」
『ミネルバ隊、ジュール隊が援護する!各員は抜けてくるムラサメを食い止めろ、ディアッカは俺に続け!』
『了解、援護なら任せろよ!』
入り乱れるようにイザークとディアッカが乱入してくる。イザークはシンに、ディアッカはレイにそれぞれ援護に入る。
「覚悟しろ、アスラン=ザラ!」
デスティニーがインフィニットジャスティスに襲い掛かる。両の腕でしっかりと握り締められたアロンダイトを振りかぶり、インフィニットジャスティスの肩口に向けて体重の乗った一撃を振り下ろす。
「止せ、シン!」
イーゲルシュテルンで誤魔化しながらインフィニットジャスティスはデスティニーの攻撃を回避するが、シンは返す刃でインフィニットジャスティスの脚部を狙う。
「く……!」
それを爪先のビームサーベルで蹴り弾き、インフィニットジャスティスはバランスを崩したデスティニーから距離を置く。
「まだぁ!」
態勢が整っていない状態でもデスティニーは高エネルギー砲を構え、しかし、確実に照準を合わせたビームを放つ。
シンは無様な操縦しか出来なくとも、一級品の腕を持つパイロットと十分に渡り合える技術を持っていた。それはキラとの戦いでも証明されており、本人の意識しない所だった。
しかし、デスティニーとは違い、態勢に余裕のあったインフィニットジャスティスはデスティニーに突撃しながらそれをすり抜けるようにかわし、連結した両刃のビームサーベルを振り回してきた。
ただでさえバランスを崩していた姿勢から高エネルギー砲を放ったばかりに、シンはアスランの攻撃を回避出来ない。
「や、やられる!?」
『しっかりせんか!』
致命傷を与えるかと思われたインフィニットジャスティスの一撃だったが、その間に割り込んだのはヒートソードでビームサーベルを受け止めるイザークのグフだった。
「あ、あんたは!?」
『プラント守備隊隊長のイザーク=ジュールだ!しっかりしろ、デスティニーのパイロット、機体が泣くぞ!』
イザークはシンに檄を飛ばすとインフィニットジャスティスのビームサーベルを弾いた。
『久しぶりだなぁ、アスラン=ザラ!』
「こ、この声、イザーク!?」
『貴様はそこで…何をしておるのだぁぁ!』
急に叫び声を上げたかと思うと、突然イザークはヒートロッドをインフィニットジャスティスに向けてしならせる。
それをアスランはビームサーベルで切り払ったが、イザークは続けてソードを構えて突進してくる。
「お前も止せ、イザーク!もう議長の為に戦うのは止めるんだ!」
『痴れ者がぁ!偉そうに言うな!』
距離を詰めさせない為にアスランはビームライフルを構えるが、グフがばら撒く四連重突撃銃が邪魔で上手く照準を合わせられない。
仕方なしに四連重突撃銃を回避するに留めるが、ソードを振りかぶる為に撃つのを止めたグフの一瞬を突いてビームライフルを構える。
「イザーク!どうしても戦うと言うなら……なっ!?」
ビームライフルのトリガーを引こうとした時、デスティニーのビームライフルがそれを阻害する。
「シ…!」
叫ぶ間も無くグフのヒートソードが襲い掛かる。アスランはそれを展開したビームシールドで受け止めた。
「イザーク!」
『アスラン!二度も裏切った貴様を、俺は許さん!』
インフィニットジャスティスはチューンアップされたグフであろうとも、苦戦する程のものではない。いくらイザークのグフが搭乗者に合わせてチューニングされていようとも、インフィニットジャスティスは基本が全く別格だったからだ。
インフィニットジャスティスはキラのストライクフリーダムと同じく特別な機体で、それと肩を並べられるザフトのMSはデスティニーとレジェンドだけだった。
量産型のチューンアップ機とは住む世界が違うのだ。
だが、そんないかにも簡単に決着がつきそうな状況にあってもアスランは拳を振り上げられずにいた。今は敵とは言え、旧知の仲であるイザークと積極的に戦おうとは思えなかった。
二機は攻める側と受ける側に分かれて密着し、シンはそれに手を出せずにいた。
「お前はデュランダル議長の言っている事がおかしいと思わないのか!?あのラクスだって、偽者だって知っていたんだろ!?」
『貴様でもあるまいし、ラクス=クラインがどうであろうと俺には分からぬわ!それに、議長の言っている事がおかしかろうが俺はザフトだぞ!』
「それが分かってて……何故未だに議長の為に戦う!?世界が滅んでしまってもいいと言うのか!?」
『俺が守るのはプラントだ!議長の為では無い!』
「なら、イザーク!」
『……貴様はいつもそうだな、アスラン?そうやって奇麗事を並べて自分を正当化しようとする……だから俺はプラントに仇為す貴様を討とうと言うのだ!』
「くっ……!なら…俺もお前を討つ!」
お互いの持論が相容れないと分かると、アスランは力任せにイザークのグフを弾き飛ばす。
吹き飛ばされたイザークはアポジモーターを調節してバランスを立て直そうとするが、間髪いれずにビームサーベルを構えるインフィニットジャスティスが襲い掛かってくる。
「イザーク隊長、ここは俺に任せて!」
グフとインフィニットジャスティスが離れたのを見計らって、デスティニーが二機の間に介入しようと掌のパルマフィオキーナを前面に出して突っ込む。
「あんたはいい加減に自分の正義の間違いに気付けよ!」
『ここで邪魔をするのか、シン!?』
デスティニーはパルマフィオキーナでインフィニットジャスティスのマニピュレーターごと握りつぶそうと手を伸ばす。しかし、アスランは復帰してから一番の反応を見せ、デスティニーの攻撃を辛うじてかわした。
「こいつ!」
「くぅ…シンとイザークが相手では……!」
デスティニーはビームライフルを連射してインフィニットジャスティスを追い掛けて行く。
『俺はここを動けん!行け、デスティニーのパイロット!』
「シン=アスカです!」
イザークに促され、シンはアスランを追いかける。
デスティニーのスラスターから光の羽が展開され、あっという間に虚空の彼方へ消えていった。
「キラ=ヤマトだな!?」
レジェンドがドラグーンを展開してストライクフリーダムを囲う。
「あのMS…前にも見た事がある?」
展開されたドラグーン、そして同じ系統である事を印象付ける背部の大きなドラグーンのマウントパック。色合までも同じ灰色だった。
「キラ=ヤマト…貴様の存在は未来に悪害しかもたらさない……故にここで消えてもらう!」
展開されたレジェンドのドラグーンがストライクフリーダムに向かってビームを一斉射する。ストライクフリーダムはそれをロール回避とビームシールドの防御で何とか防いだ。
ドラグーンは長時間の独立稼動が出来ない為、一撃離脱の精神でレジェンドの背部に再びマウントされる。こうしてエネルギーを再びチャージするのだ。
「やっぱり、あの機体は……!」
ストライクフリーダムも八機のドラグーンを切り離し、お返しと言わんばかりにレジェンドに向けて囲うように展開させる。
しかし、レジェンドはストライクフリーダムのドラグーンの展開が終了する前にマウントされたドラグーンを様々な方向へ向かせ、拡散ビームの様に撃ち出した。
「なっ!?」
これにはキラも対応しきれず、一度展開したドラグーンを慌てて呼び戻す。
「ふ……ドラグーンの扱いは素人だな、キラ=ヤマト!……何!?」
これで形勢が自分に有利になったと思ったその矢先、戻って行ったストライクフリーダムのドラグーンはマウントされずに周囲に固定されている。
そして、ストライクフリーダムは二丁のビームライフルを両手に持ち、クスィフィアスを前面に向けている。
お決まりのポーズをとるストライクフリーダムを見て、レイは慌てて回避行動をとる。
「ぐぅ……!」
案の定の攻撃がストライクフリーダムから放たれる。以前のフリーダムの時とは比較にならない凄まじい攻撃だった。
レイはそんな無数のビームの嵐の中で、巧みにレジェンドを操って何とか回避を試みる。その数が余りにも多い為にかわしきれない攻撃も存在したが、それもビームシールドで防ぐ事が出来た。
「やはり、貴様のような人間は生かしておいてはいけない……!俺と共に滅ぶんだ、キラ=ヤマト!」
追いかけるレジェンドだったが、ストライクフリーダムはステーション・ワンの方向へ進路をとる。機動性ではストライクフリーダムに若干劣るレジェンドでは追い着くのが難しい。
だが、そんなストライクフリーダムの行く手を遮るようにオルトロスの一撃が横切った。
「誰!?」
『行かせるかよ、そんなもんで!レジェンドのパイロット、ディアッカ=エルスマンが入るぜ!』
キラが視線をビームの発射方向に移すと、そこにはディアッカのガナーザクがストライクフリーダムを狙っていた。ガナーザクから二撃目が撃たれる。
「あなたは!」
『キラだろ、お前?そう易々と行かせないってね!』
ストライクフリーダムはディアッカの放ったビームを避けてビームサーベルを引き抜く。鈍重そうなガナーザクならば、接近戦に持ち込んで一気に決めてやろうと思っていた。
「そうはさせないぞ、キラ=ヤマト!」
そこへ追い着いてきたレジェンドがビームサーベルでストライクフリーダムの行動の邪魔をする。鍔迫り合いのように拮抗する二機の側でディアッカはオルトロスの照準を正確に合わせる。
『レジェンドのパイロット、ちゃんとお前は外してやるからな!』
「援護感謝します!」
目の前のレジェンドと離れた所のガナーザクに囲まれ、キラはピンチを迎える。
「ディアッカさん!ミリアリアを放っておいてあなたは何をしているんですか!?」
何とかディアッカに分かって貰おうとキラは彼に呼びかける。過去には仲間として共に戦った事もある間柄故に理解してくれるだろうと思っていた。
『お前こそ何してんだよ?俺は仕事をしているだけだぜ?』
「それが世界を誤った方向に向かわせているんです!あなたのせいでミリアリアが傷付いているんですよ!」
『ふざけんな!被害者は俺の方だぞ!』
「言い訳は聞きたくありません!」
『テメェ、俺が振られたって事を知っていてワザと言ってんのかよ!?』
「えっ……?」
「おしゃべりとは余裕だな、キラ=ヤマト!」
気を取られているキラに気付き、レイはレジェンドのマウントされているドラグーンを全てストライクフリーダムに向ける。
「今生に別れを告げるがいい!」
「ぼ、僕は!」
咄嗟にキラはクスィフィアスを至近距離でレジェンドに直撃させる。衝撃の勢いもあってレジェンドはストライクフリーダムから離されてしまったが、それでもレイはドラグーンの一斉射を放つ。
しかし、そんな攻撃もストライクフリーダムのビームシールドに薙ぎ払われる様に弾かれてしまった。
その脇からディアッカのガナーザクがストライフリーダムを狙撃するが、それも簡単に避けられてしまう。
『やっぱ打つ手なしかよ!』
「えぇい、もう一度!」
レイは再びレジェンドのドラグーンを射出する。
「また……?」
キラもストライクフリーダムのドラグーンを射出する。
二機合わせて合計十六機のドラグーンが飛び交っている。レイとキラ、どちらの方がドラグーンを上手く扱えるかが勝負の肝だった。
ストライクフリーダムはドラグーンを切り離しても本体には豊富に固定兵装が残っているが、レジェンドの方はドラグーンが無くなれば残されている有効な武器は、基本装備のビームライフルとビームサーベルのみである。
故にここでのドラグーン合戦は決して負けるわけには行かなかった。
ストライクフリーダムは両手のビームライフルを連結させてそれをレジェンドに向けて撃つ。
レイはそれをかわすが、様々な角度からストライクフリーダムのドラグーンが狙っている為、自分のドラグーンのコントロールを兼任しながらの戦いは普通の何倍も神経を磨り減らす作業だった。
一方のキラは武装豊富なストライクフリーダムの為にレイよりは余裕が持てる。
もし、ドラグーンを破壊されてしまったとしても、本体の武装だけでも戦えるだけの戦闘力を秘めているからだ。
この状況で慌てる道理は無いが、しかしレジェンドのドラグーンの方が若干動きが良い。
「やはり、ドラグーンの性能はこちらの方が上のようだな!」
「僕の方がドラグーンを上手く扱えてない!?」
虫が飛び交うが如く飛び回る十六機のドラグーン達は、光の筋を放って幻想的な空間を形成する。その中でレジェンドの灰色のドラグーンは、ストライクフリーダムの青いドラグーンを凌駕する動きを見せている。
最初のうちはキラも本体による攻撃を積極的に仕掛けていたが、時間の経過と共に次第にドラグーンの制御の方に労力を注ぎ込まなければならない状況に陥る。
いくらキラが最強のパイロットであろうとも、初期型のドラグーンを実戦でいきなり鮮やかに使って見せたクルーゼと同じクローンであるレイにはドラグーンの使い合いでは敵わない。
『俺も忘れるなよ!』
狙い済まされた一撃が要所要所で挟まれる。ディアッカの正確な射撃は、連射こそ出来ないまでも、レイの相手をするキラにとっては脅威であった。
「焦りすぎたの!?…一旦退くしかないのか……!」
レイとディアッカのコンビネーションによる攻撃に堪えきれなくなったキラはドラグーンを回収してストライクフリーダムをステーション・ワンの側から撤退させる。
『俺はここまでだ、後はお前がしっかりやれよ!』
「了解です」
レイもドラグーンを回収し、逃げるストライクフリーダムを追いかけてその空域を離脱する。
『イザーク、こっちは何とか追い返す事が出来たぜ!』
「こちらもだ。正直、まだ言いたい事が腐るほどあったのだがな……」
『ミネルバに任せろよ、俺達はここで死守するのが任務だろ?』
「フン、違いない……が、お前に言われるとはな?」
『副官の役目だからな』
「ふっ、偉そうに……。補給に戻るぞ!」
イザークとディアッカは連れ立って母艦へ帰還していく。
二人は一先ず防衛する事が出来た事に安堵していた。
だが、直ぐにまた次の戦いに備えて気を引き締めなおす。気が抜けない戦場である事は分かっていた。
一方、カミーユとハイネはミネルバの付近で次々と突破してくるオーブ軍の相手に忙殺されそうになっていた。
「数が多い…前線は持ち堪えられないのか!?」
いくらオーブ・連合軍に勢いがあろうとも、前線を抜けてくる敵が多すぎる事にカミーユは不思議に感じていた。
「どうにも多過ぎる……あっちで何かあったか?」
ハイネもカミーユと同じ感想を抱いていた。ハイネはミネルバのメイリンに通信を繋げる。
「ミネルバ、前線の動きはキャッチできているのか!?」
『バートに繋ぎます!』
メイリンは索敵のバートにハイネとの直接回線を開く。
「どうなっている、バート!突破してくる敵が多過ぎるぞ!」
『確定情報ではありませんが、前線部隊でオーブ軍のMSが猛威を振るっているようなのです!』
「何?どういう事だ、フリーダムとジャスティス以外にそんな凄腕がいるって事なのか!?」
『暫定的な目撃情報になりますが、どうやら例の金色と新型の黒い奴が三機、合計四機の突出した性能のMSが猛威を振るっているようなのです!』
「金色と黒い奴……?あいつらか!」
ハイネはオーブ戦で出会った三機編成のドムを思い出す。金色の方は遭遇してなかった為に思い当たる節が無かったが、ドムの方は手強い相手だった事が印象に残っていた為に直ぐに思い当たった。
『あの三機が来ているのね!』
ルナマリアのインパルスが前線に向かおうとする。
「ルナマリアはミネルバを守れ!奴等は俺とカミーユで抑える!」
『何で!?あたしだって戦えるわ!ジブリールを捕まえたのよ!?』
「母艦を空にして行けるか!お前は帰ってくる場所を確保するのが任務だ、ミネルバを守ってくれ!」
『ハイネはもう隊長じゃないんでしょ?だったら!』
「それでミネルバが沈んだらどうする!お前の実力を見込んだ上での俺の判断で、俺はフェイスだ!従って貰うぞ!」
『……分かったわよ』
ルナマリアを何とか諌め、ハイネはカミーユに連絡を取る。
『聞いていたか、カミーユ!状況が変わった、俺達は前線の援護に出るぞ!』
「了解!」
『ミネルバ、俺とカミーユは前線の援護に向かう!レイにもその旨を伝えておいてくれ!』
『ミネルバ了解です!』
『よし、行くぞカミーユ!』
セイバーとΖガンダムはMAに変形して閃光が煌く前線に向けて飛び立っていく。
残されたルナマリアは不満そうにコックピットの中で戦場を見つめていた。
そんな中、ミネルバのブリッジでは新たな敵の接近を捉えていた。バートからタリアに報告がはいる。
「艦長、新たに突破してくる戦艦を確認!これは…アークエンジェルです!」
「来たわね……!ルナマリアに通達、アークエンジェル以外の敵は無視し、アークエンジェル討伐に力を注ぐように!…これよりミネルバは他の突破してくる敵を友軍に任せ、アークエンジェルの排除に全力を注ぎます、総員対艦戦用意!」
「了解、総員隊艦戦用意!」
アーサーがタリアの言葉を復唱する。
「マリク、指示を出した時以外の操舵はあなたに全てを一任します。状況を見誤らないように」
「はっ!」
「チェン、ルナマリアには当てないように」
「心得ています!」
「バート、メイリンはこちらに仕掛けてくるオーブのMSが居たら友軍の艦に連絡して援護を求めなさい」
「「了解です!」」
タリアはブリッジクルー一人一人に指示を与える。
「アーサー、あなたに一時的に私と同じ権限を与えます。必要と思ったら私に指示を仰がずに即座に命令を下しなさい」
「わ、私がですか!?」
「あなたも立派な指揮官よ、自信を持って」
タリアは子供に言い聞かせるようにアーサーに伝える。
「私一人の目ではアークエンジェルには勝てないわ。あなたの目も必要よ」
「……私に出来るでしょうか……」
アーサーは自信が無かった。それというのも、アーサー自信が艦長の器ではない事を自覚していたからだ。確かに彼は人の上に立つ人材ではないかもしれない。
しかし、そんなアーサーであっても、タリアは彼の優れた戦術眼の良さを知っている。だからぶっつけ本番のような形になってしまったけれども、彼にもう一人のミネルバのブレーンになる事を言い渡したのだ。
「あなたがあなたの力を引き出せればアークエンジェルだって落とせるわ。もっと自信を持ちなさい、私はあなたを高く評価しているのよ?」
「アークエンジェル接近!視認出来る距離に居ます!」
バートからの報告が時間が無い事を証明する。アーサーに愚図っている時間など無かった。
「分かりました、やります!」
「頼んだわよ」
アーサーは目に力を入れ、頭をフル回転させてアークエンジェルの映るモニターを睨む。
「ナイトハルト一番から七番を順次発射!」
「同時に回避行動を!ローエングリンの射線には決して入るな!」
タリアの指示に続いてアーサーも指示を出す。タリアの指示の穴をアーサーが埋める、理想の形を作っていた。
「それでいいわ、アーサー!」
「はっ!」
タリアはアーサーの存在を頼もしく思い、視線の先に居る宿敵に思いを馳せる。
彼女はここで長きに渡るアークエンジェルとの決着をつけようとしていた。
〜つづく〜
GJ!
アーサー君にはがんばって欲しいですね!
乙です
1番乗りかな?
さしずめ、乳対尻、バレルロール対エロゲの最終決戦だなwww
GJ!
僕らの見たかったジュール隊がここにいる!!ww
GJ!!
>『テメェ、俺が振られたって事を知っていてワザと言ってんのかよ!?』
ディアッカ・・・(´;ω;`)ウウッ
遺作と痔がすげーかっけぇぇぇぇ!!
アーサー頑張れ、やればできる子なんだから!
これ映像化してくれマジで。
遺作の口調に若干違和感があるが、GJ。
ドラグーン対決でキラを上回ったレイに感動。
>>827 おまえがどう思ってるのか知らんけど…割り切れよ
でないと死ぬぜ
なんでディアッカは振られたんだ?
ディアッカだから
>>827 別に本気で言ってるわけじゃないし。
いちいち噛み付くなよ。
大砲打ちすぎた。
見てる限り、年齢層は結構低いな
幼稚と言うかw
ハイハイ、荒らし乙
顔真っ赤p
GJです。
イザークとシンの掛け合いって始めて見た。
こちらのアーサーは、うっかりじゃないアーサー君ですね
成長が楽しみだw
>>827 荒らし氏ね
GJです
職人さんGJです
荒らしの声を気にしないでください
応援してます。
容量の関係でスレ立てしてきます
俺が嵐と呼ばれる日が来ようとは・・・・・・
まぁ、いいや。
職人さんBJです!
スルーしようなこういうヤツは
GJ
でも実際終盤だけどここから長そうだから楽しみです
GJ!
イザークとディアッカにまともっぷりに涙した
原作もこうであるべきだよなぁ…対比的に空気読めてなさすぎなキラアスがアホの子だが
しかし原作もそうだが、キラアスみてると、何でこんな奴らが世界最強クラスの能力もってるんだろ、と思うな…
乙
>>838 ここの奴等は、自分と意見が合わない奴はすべて荒らしだと思ってるから気にするな
遺作が微妙にサトーっぽいな
なんかイザークがそのうち石破天驚拳使いそうだと思った。なんとなく。
なにはともあれ乙
つーかさぁ、
>>827もスルーすりゃいいじゃん
感想にいちいちケチつけずにさ。今のスレの雰囲気考えろよ
そういうこと言ったら空気悪くなることぐらいわかってるだろうに
つかシンの家族の未来を奪ったキラとかカガリや他にも大人数の人の未来を奪ったラクスに人々の未来なんて使う資格があるか
>>849 しかたがないんだよ。
>>611みたいな真性のバカぁがいるからね。
>>620 が冗談だと思ってるのがいるし。
で、ホントに持ちこんだらここの職人さん宛てに数億単位の訴訟が行くことになる。
管理者側ならIP判るから個人の特定できるしね。
>>851 お前さ空気読めないって言われて嫌われてるだろ?
>>852 もうスルーしとけってモロに荒らしだろw
こんなんで数億円訴訟になるかw
同人誌とか同人ガンダム小説を販売してるわけなんだし
____
/ \ /\ キリッ
. / (ー) (ー)\
/ ⌒(__人__)⌒ \ で、ホントに持ちこんだらここの職人さん宛てに数億単位の訴訟が行くことになる。
| |r┬-| | 管理者側ならIP判るから個人の特定できるしね。
\ `ー'´ /
ノ \
/´ ヽ
| l \
ヽ -一''''''"~~``'ー--、 -一'''''''ー-、.
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
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ミ ミ ミ o゚((●)) ((●))゚o ミ ミ ミ
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| / / / |r┬-| | (⌒)/ / / // だっておwww
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| ノ | | | \ / ) /
ヽ / `ー'´ ヽ / /
| | l||l 从人 l||l l||l 从人 l||l
ヽ -一''''''"~~``'ー--、 -一'''''''ー-、
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
一つ
>>620につっこんでいいかい?
そのサイバーフォーミュラの同人ソフトな、
その後、サンライズの許可をもらってちゃんと販売できたぞ
いやぁ、それでもたかだか2chのSSが数億円訴訟になるんだな。知らんかったよw
叩きあい煽り合いの時が一番活き活きするようになりましたね
もう次スレたったのか、乙
原作通り遺作と痔が敵に回らなくてほっとした
この二人が敵に回ったらマジで厄介だもんな。原作じゃ空気だったが
何はともあれこれで戦力は7対6でこちらが有利だな
次回も期待してます
テラワロスwwwwwwwwwwwwwwwwww
とりあえずサンライズに通報してくるおwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
スルーしような
GJ!
イザーク、言いたい事の殆どは君が言ってくれた、乙だ!
初代スレからいるが…あの頃が懐かしい
>>829 確か、小説か何かに載ってたけど
ディアッカは本気だったみたい
で、すごく好きになっちゃって、過保護みたいになってたから振られたみたい
そもそも、あんな「教育上よろしくない」番組を
公共の電波を使って全国規模で垂れ流しながら、
訴訟沙汰にならない事の方が、俺はおかしいと思うがな
正直、負債のやったことは横領と評した方がいいと思う。
あんだけ金使って出来たのが「アレ」だからなぁ。
金を使えば名作ができると言うわけじゃないが、それなりの物を作ってもらわんとな。
そんなことこのスレに書かれても困る
おまいらなぁ1話3500万だぜ?
俺の年収250万だぜ!?
涙が・・・だ・・ぜ・?
全労働者が泣いた
でも年収と比較すんのは話違くね?
500KB
埋めようや
まだいけるか?
/!
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<<全てをやり直す そのための『V2』だ>> / /
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∠_zy´~0 ) /^/ 〔`7 /
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 ̄可 吉`\ ゝ、 ゞ Tー|二|J彡||^| ´〉 __/´
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