1 :
通常の名無しさんの3倍:
まあ、マユを主人公にすると―― (パート1 710より)
1.子供だけど赤服。努力と才能と、周りのサポートで頑張る努力型の主人公という前作との差別化。
2.1.と付随して周りのキャラが主人公を面倒見ているので戦艦内の人間関係の描写が濃密になる。
3.種持ちとはいえ、決して天才ではないので時には失敗する。その挫折を乗り越えるクライシスと成長ドラマが主軸になる。
4.才能はあるとはいえ、子供。故に戦争というものを多角的に見えない。戦争の現実を直視することにより、視聴者にも問い掛けることができる。
5.戦争で家族を失った遺族側の視点で前作への問題提起。それにより改めて遺伝子操作やそれに伴う差別問題を浮き彫りにできる。
6.5.に並んで国家と国民の有り方、理想と現実。そして、享受できる平穏と犠牲となる存在、為政者の義務、前線で戦う兵士の悲哀などを生々しく描写できる。
7.死んだと思っていた兄との対面、思想の違いによる対立を生む戦争の悲劇。そして、マユという妹から一人の人間としての成長を描ける。
――こんな感じで激動の時代に巻き込まれた一人の人間とそれを取り巻く環境の変動を主軸にしたドラマが描けて面白いんだよね。
シンよりさらに人間的に未熟な分、周りの人間の意見を聞く――色々な視点・意見を知る――ことにより、
現実はそう単純なものではないってことが演出できるわけで。
新スレ乙〜!
otu
小津
乙
新スレオツです〜
ゲンのAAを作ってみたんだが・・・どうかな?
((_
〃´ `ヽ
i .( (( ))ノ
W▼_ゝ▼)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ /_____
\/____/
即死回避レスってするべき?
まだ大丈夫だろうけど
「あ、ごめん。俺その日無理だわ。」
仕事関係の書類を届けに来たアキラが言った。
今日はハイネ隊は仕事らしくラクス・クラインの仕事があるミーア以外全員出勤しているらしい。
「えー?」
マユが不満そうに声を上げる。
ここは玄関で部屋では届いた書類に一同(ステラとマユは戦力外)が一斉に取り掛かっている。
「他の・・・皆は・・・?」
「どうだろ?今皆は某聖上みたいに書類に追われてるからメールはやめといたほうがいいんじゃないかな?
ゼロが某侍大将と化してるから皆休む暇ないよ。」
アキラがため息をつきながら説明をする。
「じゃあ・・・・なんでアキラは・・・・ここにいるの?」
「・・・・・・・・・・戦力外通知をされました。」
アキラは喋る、聞く、読むは問題は無いのだが英語に関して『書く』というのだけはだめなのだ。
長年日本語以外にほとんど触れなかった彼はとにかく単語のミスが多い。
そりゃ熊のぷーさんくらい誤字が多い。ぶっちゃけ日本語で書いてもらってアスランが訳したほうが早い。
「だからあちこちに書類とどけてるの?チャリで。」
扉の向こうにママチャリが見える。
「うるさいなぁ!!」
「バイクとか・・・車は?」
「車は免許もってないしバイクは親父のしかないんだよ!!」
「ビンボー。」
「金持ちか・・・?!俺を貶めるのはいつだって権力者なんだな?!ちくしょー!!
俺のジャプニケ学習帖復「ふくしゅう」にマユ・アスカを追加だーー!!」
うわーんと泣きながらアキラは去っていく。
天国のトールが「お前あんだけ感動的に説得したのにまだ色んな復讐あきらめないのかよ」って冷たく突っ込んでるに違いない。
「ふ、これだから貧乏人は困りますわね・・・・。」
マユの気分はすっかり縦ロールである。
「マユ・・・ステラ浴衣買いに行きたい・・・・。」
「あ、そうだねー。ルナお姉ちゃん達さそって買いにいこうか。」
マユとステラはほのぼのと会話する。
ーーーーーそのころの男性陣ーーーーーー
「むちゃくちゃやってたツケがこんな時にまわってくるのかよ・・・・・。」
アウルが手書きの書類を整理しながら言う。
「・・・・OSの改良くらいいいじゃねぇか・・。もうプラントも認める俺の機体なのに・・・。」
兵装ポッドを使いやすくするため改良したOSについての報告書を書くスティング。
シンハロに教えてもらいながら必死にやったので報告書を書くのも四苦八苦だ。
「げ・・・・。経費水増ししてたのバレちまった。ジブリールのおっさんの金使いまくってた時の癖だなー。」
ネオがぽつりととんでもないことを言う。おっさんがおっさんって言うあたりだ。
「仕方ないだろう・・・この仕事は。くそっ、ギルの奴。なんだこのファイル名。『夏休みの友』?」
コーディネイター組はパソコンでデータ系の処理に当たっている。
『レイ、計算系はこっちまわしてくれ。』
シンハロがパソコンに自分をつないで物凄い速さで処理をしていく。
この後マユ達と浴衣を買いに行こうと誘おうと計画していたのに飛んだ邪魔が入った。
「ちくしょー!!この後マユとステラと浴衣を買いに行こうと思ってたのにー!」
叫ぶシン。思考回路が同じ事にシンハロが舌打ちする。
「・・・・・・・・・墓参りを昨日のうちに行っておいて良かった。」
アスランがため息と共にもう慣れた始末書を書き上げていく。
シンハロとシンの物凄い気迫によって物凄い速さで作業は進められた。
しかしその後、ステラとマユの「女の子達で浴衣買いにいってくるねー。」宣言によって処理速度が格段に落ちたのであった。
マユトレイ、投下いきます。
今回の話は特殊で、同じ事件を二つの視点から別々に書いています。
具体的に言うと
>>13-20と
>>21-26で分かれています。
まとめサイトに載せる際は視点ごとに分けてくださるとありがたいです。
13 :
1/8:2006/08/10(木) 22:52:21 ID:???
――あの時に、僕の人生は一度終わったんだと思う。
まだ全部遠い国や宇宙での出来事だったはずの戦争で家族も――妹も何もかもを失った
僕は、プラントに行くことを決めた。
それでも、たった一つの区切りを決めていた。プラントに行くのは、九月――つまり、
二ヶ月待とうと。その間に、遺体が見つからなかった妹を探すんだ。有り得ない願望だと
言われて当然の考えだけど――もしかすれば、どこかで妹は生きているかもしれないじゃ
ないか。
そうして、僕は毎日のようにオーブ国内を走り回った。役所に、孤児院に、オーブ国外
へ出る交通機関に――妹の手がかりを求めて。
だけど、何もなかった。何も見つからなかった。だから、諦めざるを得なかった。
妹は――マユは死んだのだと。
SEED DESTINY ASTRAY M 第六話 「見えない相手」 Side of Shin
14 :
2/8:2006/08/10(木) 22:53:10 ID:???
俺は、どことなく緊張していた。
当然といえば当然か。これでアカデミー生としての実習はこれで最後。この実習の結果
次第では新型機のパイロットとして働けるという。ふざけてやる気なんて欠片も起きない。
『シン、硬くなりすぎだ。あまり気張っていてはいい結果は出ない』
『そうそう。シンなら普通にやってればできるでしょ?』
「ああ――うん。ありがとう、レイ、ルナ」
二人の同期生からの通信に、多少苦笑しながら答えた。ルナはともかく、同じく新型の
候補生であるレイが激励するのはおかしいだろうに。まあ、理由は分かっている。レイは
競争するにあたって、同じスタートラインに立っての競争でなければ納得しない。簡潔に
言えば、かなり几帳面で真面目な性格なのだ。
『では、実習を開始する。
シンは12時方向、ルナマリアは7時方向、レイは4時方向へ向かえ。
デブリ帯のどこかに的が置いてあります。できるだけ多くの的を発見、破壊しろ。
ダミーとして模擬機雷も設置されている。死亡事故が多発しているので注意するように』
「了解」
艦からの指示に従って乗機――スラッシュザクウォーリアをデブリ帯に突っ込ませる。
新兵の訓練にこんな最新鋭の機体が割り当てられた理由は知らないが、教官によると俺が
新型機の候補生だから技術などを最大限に活かせる機体を割り当てたのだろう、という事
だった。実際、レイもザクだがルナはゲイツRだ。だけど……違う噂も流れていた。
――曰く、最近起こっている事故は実は連合の仕業であり、警戒した軍上層部が新型の
候補生だけでも生き延びられるようにザクを割り当てた、と。
「……って、何考えてるんだ、俺」
新型機のパイロットになれるかどうかが懸かってる実習なのに、なんで急にこんな事を
考えているんだ?そう思い、その噂を頭から振り払おうとしても……なぜか違和感の様な
物がどこかにある。
「くそ、なんなんだ?」
思わず、機体を停止させて周囲をサーチしていた。レーダー、モニター、あらゆる手段
を使って周囲を探索する。その瞬間だった。
何も無い前方にいきなり熱源が現れて、そこから走った光が乗ってきた艦のブリッジを
撃ち抜いたのは。
呆然としていたのは数秒。敵の存在を思い出し、慌てて機体の位置をずらす。急に動き
出したのが功を奏したか、こっちを狙ってきた次弾は外れた。
自分を狙ってきた……その事実で、俺は逆にいつものペースを取り戻せた。どこにいる
か分からない、だけど間違いなくどこかにいる相手に怒りを覚える。
「ふざけんなよ……また戦争がしたいのか、お前達はッ!」
15 :
3/8:2006/08/10(木) 22:54:44 ID:???
機体のOSを操作し、熱紋センサーを呼び出す。多分、相手が見えないのはミラージュ
コロイドで隠れているからだろう。その赤外線の透過を防げない性質を利用する。
ビームが発射された時起こる熱を目標に、今姿の見えない相手を探しだす。だけど狙い
はそれだけではない。相手のビームライフルは、かなりの射程距離を誇っているらしい。
なら発射の前後に相当なエネルギーを、そして熱を生み出すはずだ。なら、熱による温度
差でライフルの形や向きを見抜いてしまえば、撃つ方向を見抜き、避けられるはずだ。
予想通り、前方には細長い形の熱源があった。さっきの射撃の余熱かそれとももう一発
撃ってくるためのエネルギーチャージか。細長い熱の先端を銃口と仮定し、そこに機体を
合わせないように動かす。瞬間そこから光が走り、何も無い空間をビームが飛んでいった。
「……よし、いけるぞ!」
確信した。やっぱり、この作戦で間違いない。機体を一気に突っ込ませようとした、
その瞬間。
『シン、一人で先走るな!』
「レイ!?」
レイからの通信に慌てて指を止めた。目の前の敵に夢中で、仲間のことを忘れていた。
だけど、この通信はいい機会だ。隠れている相手への対策を伝えないと。
しかし、レイは俺が喋るより早く口を開いていた。
『戦える状況じゃない! 退くぞ!』
「何言ってんだよ! 対策ならちょうど……」
『そうじゃない、さっきの一撃が乗ってきた艦の動力部が貫いたんだ!』
「なっ!?」
唖然とした。
さっきの射撃は俺じゃなく、艦のとどめを狙って撃った射撃だったのか――
そんな俺の考えに気づいているのかいないのか、レイは畳みかけるように続ける。
『艦は爆発してしまった上、更に悪いことに近くにいたルナマリアの機体が損傷を受けて
しまっている。これ以上損害が出る前に退くぞ!』
「……!」
ふざけるな。これだけ好き勝手やられて退けるかよ。
俺はそう言おうとしたが、また前方の熱源の温度が上がり出すのを見て慌てて言う内容
を変えた。
「レイ、また撃ってくる! ルナの機体は損傷してるんだよな? ルナのカバー頼む!」
『分かった、お前も早く退け!』
「俺はあいつを墜とす!」
『何を言っている! 俺達はまだ正規兵では……』
「あんな奴、見逃しておけるか!」
レイからの通信を打ち切って、機体をずらす。さっきより機体の近くをビームが飛んで
いった。さっき完全に外れたのは、艦への攻撃を兼ねていたからということか。だからと
いって今更退く気には全くならない。隠れて何人も人を殺すような奴を許す気は全く無い。
16 :
4/8:2006/08/10(木) 22:55:43 ID:???
幸い、相手のビームライフルは連射が利かないようだ。当たり前といえば当たり前か。
狙撃型のライフルである以上、連射性能は自然に犠牲となる。それを利用して接近する。
光の帯が何回も機体を掠め装甲のあちこちに焦げた痕が残ったが、やられる前にこちらの
射程距離に入れた。ザクの標準装備であるビーム突撃銃を連射しようとした瞬間、熱源は
移動し始める。しかしモビルスーツの行う複雑な機動ではなく、単純な一方向への動きだ。
「……捨てたのか?」
それに答えるかのようにモニターに長い銃身を持つライフルが現れた。ミラージュコロ
イドの範囲外に出たからだろう。つまり機体そのものはまだ動いていないか、別の方向へ
動いている。
だけど、動いたならバーニアの熱が残っているはずだ。それが無い。つまりライフルは、
機体が動いているのかと思わせるための囮。
「こんな安い罠に引っかかるかよ!」
捨てられるまでライフルがあっただろう場所へビームを撃ち込む。それは、まだそこに
留まっている敵に命中する。
――はずだった。
ザクが発した緑の光は、何の変化も見せずただ何も無い宇宙を走って消える。
俺が戸惑うより先に、敵が撃ってきたビームがザクの右足を貫いていた。
「!?」
思わずパニックになりかけたが、ビームが残した熱を辿って撃ってきたと思われる位置
にシールドを向けた。同時に、ビームコーティングが当たったビームを弾く。そのビーム
は、さっきのビームから少し離れた位置から来ていた。
「どういうことだよ……バーニアを使わないで宇宙で動けるのか!?」
その後も敵のビームは間断無く襲ってきた。さっき捨てた物とは別のライフルらしく、
威力も射程距離も連射性能もそこそこの性能らしい。この距離ではこれ以上なく厄介だ。
幸い相手の移動速度はあまり長くないらしく、今まで撃ってきた場所を参考にシールドを
向けていれば致命傷は防げる。だけど、シールドで覆っていない部分を狙われてしまえば
打つ手はない。機体の各所が削られていく。
「くそ……どうする……」
額に冷や汗が走る。
相手は真空・無重力という宇宙の特性を利用して慣性で動いているのかとも思ったが、
それは今までにビームが飛んできた方向を確認して間違いだと分かった。相手は明らかに
多方向へ動いているし、動ける。移動速度があまりないため、撃ってくる位置にそれほど
ばらつきがないのが救いだけど、かといって当てられるほど遅いわけでもない……
「……待てよ」
17 :
5/8:2006/08/10(木) 22:56:34 ID:???
とっさに一つの案が思い浮かんだ。どんな移動手段にせよ、位置にばらつきがないなら。
「これしか……ない!」
肩ごとシールドを前面に押し出しつつ、撃たれた方向へ進む。もちろん、相手が黙って
見ているはずはない。更に敵が放ったビームにザクの左足が持っていかれ、バランサーが
悲鳴をあげたが気にしてはいられない。案のためには、こちらのもう一つの武器、背部の
ハイドラ・ガトリングビーム砲の射程内に入らなければ駄目だ。
「ここだっ!」
射程内に入ると同時にガトリングビーム砲を起動する。狙いは最後に撃ってきた位置の
周辺全体。更に突撃銃も加えて、手当たり次第に乱射した。撃ったビームのうち、一つが
何もない空間で小さな爆発を起こす。この程度では墜ちていないだろうが……
「そこか!」
位置は分かった。
全ての射撃をそこへ集中する。しかし、それより先に相手はそこから逃れていた。なぜ
分かったか、その理由は簡単だ。敵はミラージュコロイドを解除してバーニアで移動して
いた。これ以上は無理だと悟ったらしい。
ミラージュコロイドを解除したことで、敵の姿をやっと確認できた。OSがすぐに敵の
名前を導き出す。NダガーN。ブリッツに似た外見で、核駆動かつミラージュコロイドを
装備しているというユニウス条約に真っ向から違反している機体。データによると手足に
アンカーが内蔵されているらしいから、バーニアを使わずに移動できるのも納得だ。
「そんな機体まで使いやがって……絶対に追いつめてやる!」
叫ぶと同時に更に前進。元々スラッシュは近接用の武装で、その上相手は核駆動だ。
長期戦になればこっちのバッテリーが持たない。もちろん、長引かせればこっちの援軍が
来るだろう。だけど、それは相手も分かっているはずだ。中途半端な距離で戦えば相手は
逃げる。援軍を待つ余裕はない。
どうやら相手も短期決戦で俺を墜とすことに決めたらしい。右手のシールドらしき物に
内蔵されたビームライフルを放ちながら左腕で抜刀したのは、日本刀のような実体剣。
ビームサーベルが無くそんな物しか使えないという点では、NダガーNは真正面からの
格闘戦向きと思えない。
「……それなのに抜刀して、格闘戦に持ち込みたがってるってことは」
よほどの自信があるのか、それとも……なめられているのか。どっちにせよやることは
同じだ。墜とす!
ガトリングビーム砲で牽制しながら背部のファルクスG7・ビームアックスを外し、
構える。これはスラッシュウィザードのメインとも言える武器で、その出力は、対ビーム
コーティングシールドでも両断できるほど。リーチも長く、相手の実体剣に負けることは
無いはずだ。
18 :
6/8:2006/08/10(木) 22:57:39 ID:???
先に攻撃を開始したのは相手だった。一気に距離を詰め実体剣を振り下ろしてくる。
だけど、こっちの見立てが正しければ回避する必要も無い。振り下ろした剣に合わせ、
ビームアックスを振り上げる。予想通り、NダガーNは武器のぶつかり合いを避けて後退
した。やはり相手の剣はこっちの刃には耐えられないらしい。
「よしっ、勝てる!」
どういうつもりで格闘戦を挑んだか知らないが、チャンスを逃すつもりはなかった。
一気に決めに入る。振り上げたビームアックスを今度は前進しながら一気に振り下ろす。
NダガーNは後退して右腕のライフルを向けようとしたが、ガトリングビーム砲による
攻撃でそれを妨害する。盾と銃が一体化している以上盾で防御させるように仕向ければ、
銃がこちらを向くことはない。
ここに来て、スラッシュザクウォーリアの優位性は決定的だった。アックスによる斬撃
は相手の剣に対する防御になるし、ガトリングビーム砲はライフルへの防御を兼ねている。
だからこっちは防御を考えずに攻撃を繰り返しているだけでいい。その証拠に少しずつ、
だけど着実にNダガーNの損傷は増えている。そしてついにビームアックスの刃は相手の
盾を断ち切った。
「終わりだ!」
相手の右腕自体は無事だったが、それでもNダガーNの場合これはビームライフルを
失ったということと同じだ。だが勝利を確信してビームアックスで再び斬りつけた数秒後、
戦況は覆された。
アックスを振ったと同時に、機体のバランスが崩れる。何が起きたか理解できない。
NダガーNのアンカーがビームアックスの柄に巻き付けられていて、それを引っ張られた
という事に気付いた時には既にアックスの柄はNダガーNが右手に持った実体剣によって
断ち切られていた。
「……え」
NダガーNが最初に剣を左手で抜いたのは右腕には盾があって持てないから。盾が破壊
された以上、右手に剣を持たない理由は確かに無い。そしてもう一本、左手で持っている
実体剣はどこを狙うか?――考えるまでもない。
死の予兆に頭の中が真っ白になる中で……俺の頭に浮かんだのは一つのイメージだった。
水面に『種』が落ち、そして割れる――
とっさに右腰のグレネードを投げ……いや、右手にグレネードを掴ませるやいなや、
敵が突きだして来た実体剣の前へ差し出した、の方が正しい。結果、グレネードはザクの
右手ごと敵の実体剣を吹き飛ばしていた。もう少し遅ければ、コックピットを貫かれて
いたに違いない。それでも……状況が好転したとは言えなかった。
「くそ、右手なしじゃトマホークが使えない……!」
ザクの左肩にあるシールドには、ビームトマホークが入っている。当然、それは右手で
取り出すように作られている。左手でそれを取り出すのは至難の業だ。相手にはまだ剣が
あるのに……!
19 :
7/8:2006/08/10(木) 22:58:27 ID:???
そう考える間にも、敵は右腕の実体剣で斬りかかってくる。なんとかシールドで防ぐ。
しかし、相手は左腕に付いている鉤爪も振りかざしてきた。もう右腕は無い。さっきの
ようにはできない。
「お前なんかに……やられてたまるかーーっ!」
叫ぶと同時に、ガトリングビーム砲を起動した。砲自体の可動範囲が狭いため射角も
大して広くないが、それでもこの姿勢なら命中するはず……!
なぜか分からないが、相手の反応が止まった。ビームが左腕に命中する。だが、肝心の
右腕が残ってる……!
とっさにザクの左手にグレネードを握らせたが、相手はあっさり後退した。そのまま
退き始める。
「逃がすかよ!」
再びガトリングビーム砲を起動する。いや、しようとした。しかしOSからアラート。
バッテリーが既にビーム一発さえ撃てないほどのレッドゾーンになっている。
「……くそ」
相手はそのままミラージュコロイドを展開し、消えていった。
20 :
8/8:2006/08/10(木) 22:59:14 ID:???
あの後、俺やレイ、ルナは救援にきた艦(ヴォルテールとかいう)に拾われた。
回収された後は起こったことを詳しく説明する羽目になり、そうとう疲れた。もっとも、
その艦にいる隊員も軍本部に同じことをする羽目になるんだから、おあいこか。
一通り終わって、俺はさっきの戦いをふと思い出していた。
「何であの時止まったんだ、あいつ」
最後。こっちが撃つより先に鉤爪を突き刺すことができたかもしれない。それなのに、
相手は止まった。何か内部機構に問題でもあったんだろうか。
どうでもいいといえばどうでもいい話だ。だけど、何となく気になる。気にしなくては
いけないような気がする。
「おい、シン。ジュール隊長から伝言だ。軍本部から連絡が来たらしい」
「え、ああ。分かった」
結局、考えはそこで打ち切りになった。
――なぜか、妹の――マユの携帯が鳴っている気がした。
21 :
1/6:2006/08/10(木) 23:00:02 ID:???
「ずいぶん扱き使ってくれるよね、あの女」
私は乗機、NダガーN――ミラージュコロイドとニュートロンジャマーキャンセラーを
搭載する連合トップレベルの性能を誇る量産機――のコックピット内で呟いた。モニター
に映るのは、真っ暗な空間と漂う大量のデブリ、そして任務のために特別に装備している
ビームスナイパーライフルだけ。そう、ここは宇宙だ。
今までユーラシア地方を中心に連合と戦っていた私だったが、マティスの命令で今度は
ザフトに手を出すことになった。受けた命令は、「アカデミー卒業寸前のザフトの新兵を
訓練中に『事故死』させること」。それに従って今まで二回ほどザフトの艦を沈めてきた。
……もちろん、沈む艦から脱出するライフポッドも。
「……気分が悪いわ」
もっとも、考えに耽っている余裕は無い。今回の目標がやってきたし、物思いに沈んだ
ところで罪が晴れるわけでもない。任務を始めよう。
今まで行ってきたようにスナイパーライフルを構える。ミラージュコロイドを散布し、
スラスターを着火していない以上、レーダーに探知されることはない。そして、この距離
ならミラージュコロイドデテクターの範囲外だ。レーダーで相手をもう一度確認して、
少し舌打ちした。
「……ちょっと面倒かな」
今回の目標であるナスカ級の艦からモビルスーツが出ている。警戒しているんだろうか。
艦に一緒に搭載されていれば一回の狙撃で終わるのだけど、艦を潰した後モビルスーツを
撃つ必要がありそうだ。
更に悪いことにモビルスーツは三方向に散り、そのうちの一機がこっちに向かってきた。
機種はスラッシュザクウォーリア。
「やれやれ、ね」
手間が増えたことに、思わずため息を吐いた。
――こっちへ来るモビルスーツに乗っているのが誰か、なんてことは欠片も考えず。
SEED DESTINY ASTRAY M 第六話 「見えない相手」 Side of Mayu
22 :
2/6:2006/08/10(木) 23:01:09 ID:???
こちらに向かっている一機。悪いことにこっちにまっすぐ向かってきているが、位置を
知られた訳ではないらしい。敵に気づいているにしてはあまりにも無防備すぎる動きだ。
それでも、このまま接近させてしまえば気づく可能性が出てくるのも確か。
「このライフルなら、うまくやればあの機体ごとブリッジも撃ち抜けるはずよね……」
シールドや動力部などに当たってしまえば対ビームコーティングや爆発のエネルギーで
ビームの威力が落ちてブリッジまで届かなくなってしまうだろうけど、コックピットなど
を貫けば問題はないはずだ。
ブリッジに照準を合わせたまま、こちらへ来るザクを待ち構える。ザクが照準に入って
きた瞬間に撃つ。単純明快な作戦だ。しかしその作戦は失敗した。ザクが途中で止まって
しまったのだ。そのまま頭部、つまりメインカメラを左右に振っている。
「……私に気づいた?」
何かを探している動作をしている、ということはまだ位置を分かっていないが、何かが
いると気づいたということ。このままでは位置までばれるかもしれないし、そもそもこれ
じゃ照準内に入ってくれそうにない。待っていても不利になるだけだ。
心の中で少し謝ってから、スナイパーライフルのトリガーを引く。既に照準は合わせて
あったので、綺麗にビームがナスカ級のブリッジを貫いた。できれば動力部も一緒に撃ち
抜きたかった(任務は「生存者を出さないこと」なので艦を完全に爆発させる必要がある。
気分が悪いけど)。もう一度撃ってそれで動力部を撃ち抜くしかない。ただ……
「あのザクが先か。相当近づかれてるし」
次弾をチャージしながらザクに照準を合わせる。急な事態の展開に驚いているらしく、
相手は動きが止まっている。チャンスだ。チャージ完了とほぼ同時に、発射。しかし、
寸前で避けられてしまった。
「どういうこと? 相手は私が見えないはずなのに……運がいいだけ?」
ミラージュコロイドテデクターが搭載されているとしても、それで分かるのは「ミラー
ジュコロイドを使っている機体がいる」ことだけで位置は分からない。私としては相手が
避けた理由は幸運ぐらいしか思い浮かばなかった。
理由が分からない以上、そのまま撃っていくしかない。ただ、相手の進路を予測して、
悪魔が囁いた。
「嫌な方法だけど……これぐらいしかない。ごめんね」
ナスカ級の動力部に照準を合わせる。さっきと同じ、一回の射撃で両方を撃ち抜く作戦。
避けたのが偶然なら、今度の狙撃で終わり。もし避けられても艦を墜とせる。
相手も今回は止まらない。照準に入ったところでトリガーを引く。しかし、避けられた
(正確には、トリガーを引く寸前に照準から外れた)。どうやら、何らかの方法で見られて
いるみたいだ。――もっとも、艦の動力部には当たってうまく爆発けれど。
さすがに母艦が爆発したとなれば、相手も躊躇せざるを得ない。動きが止まる。その間、
こっちも黙っているなんてことはもちろんない。スナイパーライフルのエネルギーを充填、
照準を合わせ、撃つ。人間心理の弱みを突く最悪な手段だ。気分が悪いけど……だから
こそ効果は高い。――しかし、相手は見事に避けた。
23 :
3/6:2006/08/10(木) 23:01:57 ID:???
「これも避けるって、どういうこと!?」
思わず大声を出していた。一瞬、ミラージュコロイドが誤作動でも起こしているのか、
なんて考えが頭をよぎる。だけどそれならナスカ級もこちらに気づいているはず。つまり
あのザクだけが何かの装備か技術で避けているということ。……厄介だ。
その後も狙撃を続けたが、相手は寸前で避けていく。機体を掠めこそしているものの、
大した損傷にはなっていない。そろそろ相手の射程距離だ。まずい。
もう一回撃とうとして、警告が入った。スナイパーライフルの廃熱が追いついていない。
これじゃ当分撃つこともできない……
「……熱」
そこでやっと、閃いた。そうか、熱だ。
「ミラージュコロイドは赤外線の透過を防げない。だからこのライフルの熱を探知すれば」
位置は簡単に分かる。下手をすれば攻撃のタイミングや方向さえ分かるかもしれない。
……もっと早く気づくべきだった。相手はもう射程距離に入っている。
ともかく、スナイパーライフルがお荷物と化しているのは確実だ。迷わず捨てる。囮の
役割は……無理か。ミラージュコロイドの有効範囲は広くない。しばらくすればライフル
だけが漂う姿がまる見えになる。
さて、どうやって移動するか。答えは簡単だ。相手が熱を頼りにして探っている以上、
バーニアを使って移動するわけにはいかない。そんなことをすればバーニアの熱で簡単に
位置を見抜かれ、ミラージュコロイドの意味が全く無い。もっとも、それに対する策は
NダガーNに準備されていた。
機体各所からアンカーを射出、周辺のデブリ(できるだけ大きい物)に突き刺していく。
後はそれを巻き取っていけば、熱を残さずに移動できる。私の考えが正しいなら、これで
相手は私を見失うはずだ。
答えはすぐに出た。相手は私がアンカーで移動する前にいた位置にビームを乱射した。
やはり、見失っている。
「見逃がさない!」
素早く右手の攻盾システム・シルトゲヴェールに装着された高エネルギーブラスターを
相手に向ける。ただ、バーニアが使えないこと、機体各所がアンカーでデブリと繋がって
いることが影響し、狙いが付けづらい。なんとか放ったものの、コックピットから逸れて
ザクの右足に当たった。
「ああもう、時間がないのに!」
あまり手間取ってしまえば、ザフトの増援部隊が来てしまう。それに、まだ他も機体は
いる。爆発に巻き込まれて損傷したのか艦の近くで待機しているだけで戦闘も後退もする
気配は無いけれど墜とさなくてはいけないのに変わりはない。一機だけに手間取っている
余裕はない。
アンカーで移動しながらもブラスターを連射していく。だけどシールドで防がれたり、
避けられたりと結果は思わしくない。NダガーNが撃ったビームの熱を元に位置の検討を
付けているんだろう。こっちに攻撃を当てられるほどの正確な位置は分からなくても防ぐ
くらいならできるということか。
24 :
4/6:2006/08/10(木) 23:02:48 ID:???
私が思わず撤退を考え出した瞬間、突然相手が突っ込んできた。どうやら相手は絶対に
ここで私を逃がしたくないらしい。だけど……
「隙だらけよっ!」
ブラスターを連射する。相手の正確な位置も分からずに突っ込んでくるなんて無謀だ。
ビームの奔流が何本も走り、相手の左足を奪い去る。そのまま、一気にとどめに入ろうと
した瞬間に相手が止まった。
驚く私をよそに、相手は背部の砲を起動する。今の前進は、突っ込むためじゃなく……
「砲の射程距離に入るため――!?」
とっさに回避運動をとる。しかし、アンカーによる運動では、周辺一帯にばらまかれた
ビームを避けきれなかった。相手の砲が連射性の高いガトリングビーム砲なら尚更だ。
なんとかシルトゲヴェールで防ぐも、全体にばらまく感じだった攻撃が一転NダガーNに
集中し始めた。ビームが遮られたことで位置がばれたのだ。
「……っ!」
文句の付けようのない、完璧なミラージュコロイド破りだ。諦めて普通に戦うしかない。
ミラージュコロイドを解除、バーニアで移動する。今までとは比較にならない高機動で
攻撃を避けた。相手が一気に前進してくるのを見て、こちらも左腕で腰に装着されている
対装甲刀を抜く。日本刀のような形状だけど、これはアーマーシュナイダーの改良型。
ガーベラストレートのような見事な切れ味はない。それでも上手くやれば敵を両断する
ぐらいはできる。
刀を振り上げ、斬りつける。しかし相手がビームアックスで迎撃しようとするのを見て、
素早く刀を引いた。対装甲刀にせよシルトゲヴェールにせよ、相手の巨大なビームの斧を
受ければ切断されてしまう。相手もまたこちらの剣も盾も破れると分かっているらしい。
そのまま一気に反撃に転じてきた。回避しつつ、機会を伺う。
スラッシュザクウォーリア……近接用の装備をしている相手にこの刀で接近戦を挑む、
というのは一見無謀に見えるかもしれない。だけど、NダガーNの武器は刀だけじゃない。
そして、ついにその武器を使うときがきた。
ザクのビームアックスがNダガーNの右腕を掠める。シルトゲヴェールの接着面が綺麗
に分かれ、腕から外れた。これでもうブラスターも盾も無いけど、代償としては十分だ。
右腕自体は無事なんだから問題はない。もう、仕込みは済んでいる。
「そこよ!」
相手が斬り返してくるより速く、左腕を引く。その掌からはアンカーが延びて、ビーム
アックスの柄に絡まっていた。相手のバランスは崩れ、アックスは違う方向へ逸れる。
素早く右腕でもう一本の対装甲刀を抜き、アックスの柄を断ち切った。同時に、左腕に
持っている刀をコックピット目がけて突き出す。ザクのシールドは左肩に付いている。
こちらの左から、つまり相手の右から突き出した対装甲刀に防御は間に合わないはず!
しかし、相手はシールドの代わりに右腕を出してきた。しかも、ハンドグレネードを
持って。ザクの右手ごと対装甲刀が吹き飛ぶ。
「なっ……そんな無茶苦茶な手段で!?」
25 :
5/6:2006/08/10(木) 23:04:13 ID:???
思わず叫んだが、状況がよくなるわけでもない。それどころか、悪くなった。
レーダーの端に反応。艦1。敵の増援……タイムアウトだ。
「ああ、もう!」
せめてこいつだけでも墜とそうと右腕にある対装甲刀で斬りかかる。しかし、あっさり
とシールドで防がれた。だけど、まだだ。左腕のハーケンファウスト――単純に言うと
手の甲に付いてる格闘用の大きな爪――がある。それを相手に突き刺そうと瞬間、相手の
声が接触通信で聞こえた。
『お前なんかに……やられてたまるかーーっ!』
「え……!?」
思わず動きが止まる。いきなり大声が聞こえたことに驚いたのでも内容に驚いたのでも
ない。
私は、この声を知っている――
私の――NダガーNの動きが止まっていた。それは、完全に隙だった。
ガトリングビーム砲の弾が、左腕に直撃する。
「きゃあ!?」
機体が揺さぶられ、バランスが崩れる。それで、現実に意識が戻った。
急いでバランスを戻し、バーニアを噴かす。戦うためじゃない、逃げるため。そのまま
ミラージュコロイドを展開する。
ちらりとザクを見た。相手はもう弾切れらしい。ガトリングビーム砲が空回りしている。
だけど……そんなことを確認するために見たんじゃなかった。
「あの声――兄さん、なの?」
26 :
6/6:2006/08/10(木) 23:05:00 ID:???
帰還した私は、盛大な叱責を受けた。任務を失敗したんだから当然か。
それでも、ザフトに対する破壊工作担当のチームから外されることはなかった。
――これが幸運なのか、不運なのか、私には分からない。
私がザフトに兄さんがいるのか確認するには、任務を行いながらでしかできない。私は
監視されているからだ。だけど、あれが本当に兄さんなら、私は――。
「くっ……!」
自分の立場をこれほど呪った日は――無い。
投下終了。舞台は宇宙へと変わり、話もどんどん進みます。
今まで一人称でやってきたので、今更三人称に変えるわけにもいかずこんな手段を取りましたが……疲れた……
>>27 乙、こちら401です。まとめサイトは見たけどもっとよくチェックしてれば…
パクリみたいでスマソ。話の筋は別物なので2話目以降書くなら題名変えます
>>今まで一人称でやってきたので、今更三人称に変えるわけにもいかず
こんな手段を取りましたが……疲れた……
第一部は一人称で第二部から三人称にしてもいいとオモ
>>PP作者氏
コープランドの登場でプレイヤー(権力者)は一通り出揃った感。
誰も彼も、ちゃんと考えて悩んで生きてるのが世界情勢なんだよな。
本編は馬鹿と既知外しかいないから困る
>やめてよね、当たり前じゃないか
キラサン…コレナマホウソウ…
>>マユトレイ氏
知らぬところで兄妹対決。声に反応したということは、このマユはちゃんと記憶があるんだ
(ごっちゃになっててすみません)
相変わらず大人っぽい語り口が素敵
>>401氏
マユ種がいくつもあるのなら、マユトレイが二つあったっていいじゃない
((_
〃´ `ヽ
i .( (( ))ノ
W▼_ゝ▼)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ /_____
\/____/
マユおまえの、活躍の場所は俺が保守する。
すごく…変態チックに見えます…そのAA…
赤い人っぽいから?
バイザーというかグラサンがいかがわしさを飛躍的に向上させているなw
〃´ ̄ヽ
l 从ノハ )
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ
_(ノ(__つ/ ̄ ̄ ̄/__
\/___/
>>30 私が活躍するということは、作品によっては
お兄ちゃんの命に危険が及ぶということだよ。
ここは賑やかでいいよね……
単発設定小話 「ストライク、再び」天空のキラ(嘲笑)編B
〜応戦中のガイアとドム〜
バルトフェルド「っくそ!こいつら数が多すぎだ」
ヘルベルト「まったくだぜ!なにやってんだ!?ヒルダとマーズは?」
〜20機以上のザクやグフがガイアとドムに襲い掛かる〜
〜エターナル内MSデッキ〜
ヒルダ「ドムトルーパー、ヒルダ! でるよっ!!」
マーズ「マーズ機出る」
〜エターナルから射出される2機のドルトルーパー〜
ヒルダ「マーズ!将軍とヘルベルトは後回しだ。エターナル正面に出る」
マーズ「ああ?どういうことだ!?」
ヒルダ「MSはおとりさ!やつら直接エターナルを狙ってくるよ!」
マーズ「・・・わかった」
〜エターナル正面に回るヒルダとマーズ〜
ダコスタ「・・・!!正面、敵船熱源確認!直接こっちを狙うつもりか!?」
ヒルダ「ダコスタ!わかってんだろうね!」
ダコスタ「わかってますよ!・・・回避運動!あわせて防御シールドへエネルギーを回せ!」
ヒルダ「マーズ。ビームシールド最大展開でどれくらいもつ?」
マーズ「・・・いいたかないけどな、一瞬はじけるぐらいだぞ?」
ヒルダ「一瞬はじければいい。後はダコスタがなんとかするだろ・・・」
ダコスタ「敵艦、主砲きます!全員衝撃にそなえろ!」
〜ザフト、ナスカ級から主砲が放たれる〜
ヒルダ「まったく!!マーズ!シールド最大出力!」
マーズ「ああ!・・・っておい、ヒルダ!あれ!?」
ヒルダ「ああ?・・・ストライク!!」
〜エターナル下方からブースターをつけたストライクが迫る〜
ラクス「いけません!キラっ!」
バルトフェルド「ストライクだとぅ!・・・キラ・・・まさか!?」
キラ「・・・ラクスー!!」
〜ブースターを切り捨て、エターナル正面にまわり盾を構えるストライク〜
キラ「エターナルを沈めさせやしないよっ!!」
〜ストライクの構えた盾に敵のビームが照射される〜
キラ「・・・っぐぅぅ・・・・・・」
ラクス「キラ!!」
〜ビームをはじいたときの衝撃でぼろぼろになったストライク〜
〜後で「2分で25機〜」といわされるザフトの艦長〜
あごひげの艦長「な・・・防いだとゆうのか!?・・・まあいい、こちらが数では優位なのだからな!」
〜ストライクをエターナル内へもっていくドム〜
マーズ「おい!キラ・ヤマト!生きてんのか!?」
キラ「はい!大丈夫です!エターナルは?」
マーズ「お前さんのおかげでな。傷ひとつないさ!」
完 ・・・・・・話の都合上、「2分で25機」の前に2話ぐらいはさむことにしますた。
「なんかさ…」
マユはソフィアの夕食メニューを見てやや呆れ顔を見せた。
「何?」
ソフィアは豊かな金色の髪を揺らしてマユを見返す。
ヘルメス艦内食堂の片隅に設置されたテーブルで二人の少女が向かい合っていた。
彼女たちは半日前に知り合ったばかりだ。直接に顔をあわせたのは半時間前である。
それだからまだお互いのことをよく知らない。戦闘中の無線でのやりとりがある種の
好意を抱かせていたとはいえ、マユにとってソフィアは未知の存在だった。
それだからマユはあえて積極的に訊ねてみることにした。食事に誘ったのも彼女の方である。
「サラダばっかり…」
マユは自分のハンバーグとソフィアの食事を見比べてやや申し訳なさそうな面持ちである。
しかしソフィアは黙って胡麻ドレッシングのついたレタスをフォークで口に運んだ。
そしてすました顔でそれを噛み砕いて嚥下するとようやく言葉を返した。
「おいしいよ? それに美容にいいから」
美容。マユは余り気にかけたことがない言葉だった。マユはがさつな性格ではなかった
から身だしなみ等にはそれなりに気を使っていた。しかし軍属という身分に持ち前の容姿も
手伝ってそんな考えが頭に浮かんだことさえほとんどない。
「へえ…」
マユは純粋に感心の声を上げる。自分と同じ年頃の少女がそんなことにまで気を回して
いること自体が素直に驚きだった。ましてやソフィアはファントムペインである。
「何か、すごい…」
悪戯っぽく笑うマユにソフィアは肩をすくめて微笑んだ。
マユはソフィアが柑橘系の香水をつけていることに気がついていた。最初はてっきり
蜜柑を食べたのだとばかり思っていたのだけれども。
(大人っぽいな…私もあと何年かしたら…)
マユは心中にそんな感慨に耽りつつハンバーグを切り分けた。
一応、当面の間は行動を共にすることになる仲間である。割と好ましい相手だったのは
僥倖であった。
あとでサイにもこのことを話して安心させてあげよう、とマユは思う。オーブから
付き添って来てくれたサイ=アーガイルは食事も少なく、いつも暗い顔をしている。
そう。二人の少女パイロットが団欒しているときにもサイは非常に困った事態に直面
していたのである。
「二日ほど前に撮影されたものだそうです」
会議室で連合士官から差し出された写真にサイは眩暈を覚えた。
「我が艦ヘルメスと同じように、公宙域に展開していた艦が撮影したものです」
その写真にはフリーダムが写っている。フリーダムは前体戦の終了時、平和の象徴
としてザフトからオーブに贈られたMSだ。
ヘルメスが出航して間もなく多くのコーディネータがオーブから逃げ出したことは
知っていた。カガリもそれに紛れて母国を脱出し亡命政府を作ったらしい。
そのときには遊覧船になっていたアークエンジェル等が利用されたのだったが
その中にはフリーダムもまた展示されていたという。
サイは机上の写真を眺めつつ、あえて冷静を装って問い返した。
「それで…」
カガリの亡命政府は地球のザフト軍基地カーペンタリアに置かれている。こんな宇宙に
フリーダム一機だけがいるのは不自然な話だった。
「これを撮影した僚艦はMSの大半が中破、艦体にも打撃を受けて地球へ降りたそうです」
サイは連合士官の説明を冷や汗を浮かべて聞いていた。士官はひたすら淡々と言葉を続ける。
「まあ、幸い死傷者は少なかったですがな。パイロットの一人によるとコックピットを
狙うのを避けているらしいですが」
サイは表情を取り繕いつつそれを聞く。しかし動悸がしていた。
「オーブ亡命政府付の准将キラ=ヤマトと名乗ったそうです」
その瞬間、サイは頭を棍棒で殴られたような感覚に襲われた。
キラ。前大戦後、一年間は情緒安定剤を常用していた。今でも完全に回復したとは
いえないだろう。そんな体でどうする気だ? おそらくはキラの立場も自分やマユと似た
ようなものだろう。同盟国に対する点数稼ぎの生贄。
しかし連合士官は憐れな彼らに容赦の無い注文をつけた。
「今後のターゲットはフリーダムです。あなた方に責任を取っていただきたい」
(最悪だ!)
サイは卒倒した振りをして倒れたい気分になった。
夕食後、サイの部屋を訊ねると案の定に彼は辛気臭い顔でコーヒーを啜っていた。
心労で頬のこけたサイはマユにもコーヒーを入れてくれた。マユはそのコーヒー
カップを両手で持って小さな椅子に向き合って腰掛ける。
マユが何から話すか迷っていたとき、サイがおもむろに口を開いた。
「マユちゃん。君はどうして戦うの?」
その唐突な問いかけにマユは怪訝な顔をした。
「どうして急にそんなことを?」
「もし苦しかったら、逃げてもいいと思うんだ」
サイは暗澹たる表情でそう告げる。前にも何回か言った事がある。
マユはやや茶化すように答えた。
「逃げ場があったらとっくにそうしてますよ」
マユはサイ個人に恨みがあるわけではなかったがどうしても険のある言い方に
なりがちだった。愚痴の言える相手が他にいないからだ。
気まずい沈黙があった。
「実は」
サイが猫背でコーヒーを啜りながら再び口を開く。
「フリーダムとやりあうことになりそうなんだ」
「へえ?」
マユは気の無い返事をした。フリーダムがオーブの所有物になっていたこと、
コーディネータたちが脱出した際に持ち出したことも知っている。
サイはさらに淡々と告げた。その表情には諦めの心境が表れている。
「あいつはコックピットを狙わない。だからマユちゃんも本気でやりあう必要
なんてないんだ。適当に撃って適当にやられておけば十分だ。それで義理は立つ」
マユは無意識に三白眼でサイを睨んだ。
「無気力なんですね?」
サイは首を左右に振る。
「そんなことはないさ。でもコーディの君が同じコーディと戦うのも普通に考えりゃ
おかしな話だし。君はもう十分やってくれたと思うんだよ。
最初から撃墜されちゃアレかもしれないが、二回目で相手がフリーダムなら問題ないさ」
「私に手抜きしろと?」
マユは不機嫌な顔を見せる。生来の負けず嫌いな性格は兄と同じだ。サイは割りと
落ち着き払って言葉をつなぐ。
「こんなMS戦の勝ち負けだけで戦争が決まるなら二年前の惨劇は無かったろうよ。
上手に逃げるのも一つの処世術なんだ」
そんなことを言うサイの脳裏に旧友カズイのことが浮かぶ。彼は年甲斐もなく思い出
に耽った。その眼差しは遠い。彼もまた前大戦で魂を失った人間なのである。
そんな彼にマユは逆に提案した。彼女はサイなどより頭の回転は速い。
「負けても同じことかもしれませんよ? どうせすぐ新しいMSで出ることになるんで
しょうし。出来るだけ長くフリーダム相手の戦いを引き延ばしたほうが良いんじゃ
ありませんか」
サイは少し驚いた顔をする。
「それだな」
マユはソファから立ち上がる。冗談のつもりで言ったことを真に受けられて憮然とした
思いを抱いたからだ。彼女にとって経過や理由がどうあれ、味方が戦っているのに
自分だけ手を抜くというやり方には同意しかねるものがある。
真面目な性格に年頃に潔癖さが彼女にそんな不快感を抱かせているのだった。
「なあ、マユちゃん」
サイは部屋を出ようとするマユの背中に言った。
「嫌なら逃げてもいいんだぜ?」
マユは眉間にしわを寄せて振り返る。
「バカ」
そう言い捨ててドアを閉じた。彼女とて自分が逃げたらサイが只ですまない
ことくらいは十分に知っている。
マユにとって一番我慢がならないのはサイの諦めきったような目だった。
第二話「アーガイル氏の憂鬱」完
単発設定小話 「いちゃつく前に・・・」天空のキラ(笑殺)編C
〜ずたぼろのルージュ〜
キラ「ごっほ・・・うぇ・・・・・」
マーズ「・・・・・・お前が・・・キラ・・・ヤマトか?まだ子供じゃないか・・・」
キラ「これでも18歳ですよ」
マーズ「ああ・・・すまん。どうでもいいことだな。・・・いけるな?」
キラ「はいっ!」
マーズ「よし、じゃデッキへ急げ!そこに新たなお前の剣がある!」
〜ハッチへかけてゆくキラ〜
マーズ「・・・あれがスーパーコーディネイターか」
〜デッキへの廊下〜
ラクス「キラ!・・・大丈夫・・・なのですね?」
キラ「ラクス!君の方こそ・・・無事なんだね。よかった・・・」
ラクス「それにしても・・・あんな無茶をするなんて・・・無理なことはともかく、無茶はしないでと・・・」
キラ「うん。でもちゃんと戻ってきただろ?」
ラクス「・・・もう、そんなことをいっているのではありません」
〜プイっと顔をそらすラクス〜
ラクス「キラだって不死身ではないのですから・・・」
キラ「・・・心配かけてごめん」
〜ラクスの背を包むように手を回すキラ〜
キラ「・・・ラクス、新しい剣まで案内してくれるかい?」
ラクス「・・・ええ、もちろん。・・・・・・また私がキラに剣を渡さねばならないのですね・・・」
キラ「・・・君がいるから・・・・・・僕はまだ剣を振るっていられるんだ」
ラクス「キラ・・・・・・」
〜新たな剣が鎮座するデッキへ入るキラとラクス〜
キラ「・・・ドラグーンシステム・・・・・・ちゃんと使えるかな?」
ラクス「もちろんですわ・・・あれを落としたことがあるのは・・・キラだけ。逆もまたしかり、ですわ」
〜にっこりと最大限の笑みをキラに投げかけるラクス〜
キラ「・・・うん。さ、ラクスはブリッジへもどって。早く出て行かないとバルトフェルドさんに怒られちゃうからね」
ラクス「はいっ!」
〜デッキにキラを残し立ち去るラクス〜
キラ「・・・ラクス・・・・・・あの話は本当なのかい?・・・・・・」
〜新たな剣へ乗り込むキラ〜
キラ「CPC設定完了。ニューラルリンケージ。イオン濃度正常。メタ運動野パラメータ更新。原子炉臨界。パワーフロー正常。全システムオールグリーン。ストライクフリーダム、システム起動。・・・キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
〜ブリッジに戻ったラクス〜
ダコスタ「ラクス様!・・・キラ君が・・・・・・」
ラクス「ええ、わかってますわ。逃げるのはここまで!敵艦正面へエターナルを向かいなおしなさい。ストライクフリーダムを援護します!」
ダコスタ「了解!機体反転、体制オメガスリーへ移行。こちらブリッジだ、全員持ち場につけぇ!!」
ラクス「・・・ダコスタさん、その位置が板についてきましたわね」
ダコスタ「・・・はぁ」
〜戦闘体制に移るエターナル〜
ラクス「・・・弾幕薄いですよ、なにをやっているのですか!・・・・・・どうですか?」
ダコスタ「え・・・いや、ラクス様もその・・・板についておられております・・・よ」
〜ダコスタに微笑みかけるラクス〜
ラクス「ふふ、一度言ってみたかったのですわ」
完 ・・・・・・天空のキラ編Dへ続く
お二方とも投下乙です
>デスティニーW作者様
なんだかサイが老成してますねw
>単発作者様
ブライトさん……
単発設定小話 「2分で25機」天空のキラ(冷笑)編D
〜既に戦闘中のバルトフェルド他2名〜
バルトフェルド「キラァー!気合入れていけよ!」
キラ「バルトフェルドさん!・・・了解しました!」
〜そんなこんなでドラグーンを展開するストライクフリーダム(長い!以下ストフリ)〜
キラ「<キュピーン>当たれぇっー!!」
〜ストフリが展開している8基の端末が次々にザクやらグフやらを仕留めていく〜
ヒルダ「・・・これが・・・キラ・ヤマトかい・・・っすごいねぇ!」
ヘルベルト「はは・・・こいつは驚いた。ほとんど訓練してないのに・・・ここまで操れるのか」
バルトフェルド「あらあら・・・俺とヘルベルトの苦戦してたのはなんだったのかねぇ?」
〜再びストフリ〜
キラ「マルチロックオン・・・いけぇっー!!」
〜フルバーストをかますストフリ、被害をうけるナスカ級〜
あごひげ艦長「・・・そん、な・・・2分で25機のザクとグフが・・・全滅だと!?」
〜エターナル〜
ラクス「キラ・・・」
ダコスタ「・・・すっげぇ。・・・・・・!?熱源?・・・隊長!ナスカ級がもう一隻近づいてきます!」
バルトフェルド「なんだと!?」
〜迫りくるナスカ級〜
男B「どうする?」
男A「いくにきまってるだろう!あれは、エターナルはザフトの船だ!今度こそ返してもらう!」
男B「あ、やっぱり。でも、キラ・ヤマトと砂漠の虎、黒っぽい三連星。・・・そしてラクス・クライン」
女「やっぱりヒルダ教官たちはクライン派でしたね・・・」
男B「でもよ、お前たちだって議長の案に諸手を上げて賛成じゃないんだろ?」
女「私には偉い人のことはよくわかりません。それよりも目の前の敵は倒さないと・・・」
男A「そうだな。・・・ディアッカ、お前は無理しないでいいぞ。前の戦いのことがあるしな」
ディアッカ「・・・その申し出、うれしいけどな。俺はお前の部下だぜ。隊長の言うことにはきっちり従うぜ。イザーク」
イザーク「相手は強敵だ。でも、逃げるわけにはいかん。やつらを素直に地上に降ろすな!行くぞ、ディアッカ、シホ!」
シホ「了解っ!」
イザーク「副長!艦を任せる!俺たちはMSで出る」
副長「了解いたしました」
〜廊下を駆ける三人〜
ディアッカ「・・・ところでイザーク」
イザーク「なんだ?」
ディアッカ「途中にあったわっかはよかったのか?」
イザーク「まだ何かよくわかってない。それに本部へは連絡済だからな、勝手に調査してくれるだろ」
ディアッカ「そう・・・か。な〜んか嫌な感じだぜ。あのわっか」
イザーク「そんなことよりも、敵はあいつらだ!油断するなよ。・・・俺とシホが頭下げてアサルト仕様のグフとザクにしてもらえたんだから」
ディアッカ「そうそう、それ!お前のグフ・・・まぁ俺のザクはよしとしよう。でも、なんでシホが強力な試作機なんだよ?」
イザーク「・・・あいつはもともとテストパイロットだからな。俺たちよりも試作機特有のバグに強いからなんだとさ」
ディアッカ「ふ〜ん。俺たちも結構修羅場踏んでるとおもうんだけどなぁ・・・」
シホ「試作機と運用機を一緒にしないでください!ディアッカさん!」
ディアッカ「わかったわかった。お前はだれよりも上手く試作機を扱えることを認めるよ。・・・そんなに怒んなよ」
完 ・・・・・・天空のキラ編Eへ続く
>>45 種死と同じ顔と言われようと、鮒は鮒で好き
でも801は嫌い
これって贅沢?
最終話を見る限りでは贅沢としか
平井も種描いてからめっきり目がでかくなっちゃって・・・
リヴァやスクライドの頃に戻ってくれ
単発の方は何処までが真剣で何処までがギャグなのか分からなくなることがある
まあ、それはともかく原作でも屈指の駄エピソードを遺作隊と絡めて期待持てるようにしてくれたのが嬉しい
いつの間にか次スレになっていたんだね
50 :
舞踏の人:2006/08/15(火) 11:24:11 ID:???
運命の舞踏15話投下します
潮騒の音を乗せる風が、戯れるように髪をかき回し、あっという間に逃げ去っていく。
カガリは空いている右手で黄金色の髪を押さえながら、僅かに目を眇めた。
左手に、純白の大輪花ひしめく花束を携え、彼女は風の吹いてくる方へと歩みを進める。
海の方角へ。 海岸線の際に建てられた、石碑を目指して。
「――おや、こんな所で会うなんて、運命的だねマイスィート♪」
……着いたそこには既に、見知りの先客がいた。
顔の造作は十分に美男の範疇だというのに、道化めいた抑揚で間の抜けた台詞を口にするせいか、
限りなく三枚目に近い二枚目半の雰囲気纏う青年が、へらりと笑顔を浮かべながら、立ち尽くすカガリへと手を振る。
そんな彼の手にもまた、彼女と同じように花束が提げられていた。
「ユウナ…お前もよくここに来るのか?」
「暇がある時に、散歩がてらね」
「しっかし、こんな所に真っ赤なバラなんて持ってくるか? 普通」
「まーまー、いいじゃないか綺麗なんだからさっ。
それに、たまにはいつもと違うような花を見たいと思うよ、僕はね」
石碑の前に、白いカサブランカの花束を捧げ置いたカガリへ笑いかけながら
ユウナは、華やかな色彩をかき集めたかのような派手な花束を、その隣に供える。
……二人が訪れた場所。 かつて、マスドライバー施設『カグヤ』が存在していた地。
そこに建てられた、二年前の本土侵攻によって犠牲となった人々の魂を祭る慰霊碑だった。
「私もよく、ここに来るんだ。
ここはお父様と最後に会った場所だから…」
「そして、お亡くなりになられた場所でもあるね。
……でも今日は、ウズミ様の死を嘆きに来たわけじゃあないよね?」
「お前の居場所を聞いたら、ここだって言われたからな。
でも、参ったのはついでという訳ではない。 父上や、ここに眠る人々にも聞いてもらいたかったからだ」
慰霊碑の前にひざまずき、黙祷を捧げていた娘は、頭上からかけられた声に立ち上がる。
そして、先ほどからずっとこちらを見つめてくるユウナへと向き合い、真っ直ぐ眼差しを重ね合わせた。
「あの時のお前の問い、自分なりに答えを出してきた。 どうか私の話を聞いてくれ、ユウナ」
彼女が導き出したオーブの方針…
連合にもプラントにも膝折ることなく、中立の意思を示す国家らと手を携え合い、新たな勢力を打ち立てること。
四日前の首長会議でその考えを皆に伝えた時、答えを出していない問題点を暴き出したのは、目の前にいるユウナだった。
彼の指摘の影響で、会議はその場で収まることなく、結論は次回へ持ち越すという結果に終わった。
――だが、彼女はユウナのした事に対して恨みを覚えるようなことはなかった。
彼の言葉で、自分の中で解決出来ていない問題があることを、
それを乗り越えないことには、首長たちを納得させるほどの説得力を示せないことを、彼女は理解した。
自分が歩もうと決めた道に立ち塞がった、過去の幻影。
オーブとアスハ家が掲げ続けた、中立国家の志を背負ったまま、焔の中に消えた父親の姿。
彼の遺志を打ち捨てることが出来ず、思い悩んだカガリは、父親の弟である叔父のホムラに相談した。
そして、ホムラとの対話を通して自分の為すべきことを再確認した彼女は
これまでのオーブの行動理念であった、他国の戦争に関わらぬという思想を捨てる道を選ぶ。
…その後、彼女はオーブの首長一人一人の元を訪ね歩いた。
自分の考えを事細かに説明し、時間をかけ、相手が納得するまで意見を交わす。
彼らと対談する過程の中で、連合の傘下に入ることを拒む首長が少なからずいる事を、カガリは知った。
かつて本土に攻め入ってきた国家に対して、不信感を拭えるほどの月日が経っていないのだから。
…かといって、中立の姿勢を貫くのは不可能に近いという事も、彼らは二年前に身をもって思い知らされている。
首長の中には、カガリの示した方針を王道と讃え、大いに賛同を示す者もいた。
同盟を組む国家の少なさと、互いの距離が離れている事から相互共助が上手くいくのかと、慎重な姿勢を示す者もいた。
二日かけて、カガリは会議の参加した人々の元を訪ね、説得した。
彼ら全員から、支持の確約を得れたわけではなかったが、
誰も皆、自分の言葉に傾聴し、興味を持って意見を返してくれた事に、彼女は確かな手ごたえを感じていた。
――そして、二度目の会議を翌日に控えた今日。 彼女は最後に、最初の意見してきた者の元を訪れた。
「……なあ、ユウナ。 お前はあの時、私を試したんだよな?
問題をうやむやにしたまま、話を進めようとした私を、わざとつまづかせたんだろう?」
二日前、叔父との対話から導き出した己の考えを、一葉残さず全て告白したカガリは
最後にポツリと、限りなく確信に近い疑問の言葉を青年へと向ける。
「皆が集う前で、私の抱いていた迷いを見抜き糾弾したのは、
私の覚悟を試し……逃げ道を塞いで追い込むためだったんだろう? 迷いから目を背けさせないために」
「何言ってんだいカガリ。 可愛い君に、僕がそんな酷い真似をするわけないでしょ。
逃げ道は、ちゃんと用意してあったんだよ? 全て僕に任せなさい、絶対守ってあげるから…って言ったじゃない」
「選ぶはずのない道なんて、無いも同然だろ」
能天気に笑いながら、甘い言葉を口にするユウナに対し、カガリは片眉を跳ね上げながら憮然と呟く。
怒ったような素振りを見せる彼女を、まあまあとなだめる青年。
「大体は君の推測通りだよ。 あの時僕は、わざと問題を指摘することで君を試した。
アスハ家が掲げてきた…そして、ウズミ叔父様が命を賭して貫いた中立国家の理念を、本当に捨てられるのか、ね。
父は僕の行動を、君の動きを挫くために行ったものだと思ったのか、ずいぶん褒めちぎってたけど……本当の意図は違う。
君が肝心な場所で転んだりしないように、障害になりそうな問題を先に教えたんだ。
――とはいえ、僕はその危険性を伝えただけで、問題を取り除く事自体は君に任せたけどさ」
ユウナはカガリから視線を外し慰霊碑を、その向こうに大きく広がる海原へと顔を向ける。
いつの間にか彼の横顔から笑顔は消え、凪の海のように鎮まり返る真摯な表情が映っていた。
「僕はね、カガリのことを愛してるよ。 人となりも思想も、目指している理想も全てね。
事を荒立てたくないから、表面上は父上に従っていたけど、本心では君の考えに賛同していた。
…今回の事件は、オーブの指導者としての君の正念場だった。
だから、皆から信頼を得られるよう、不安を取り除いた上で覚悟を持って立ち向かってもらいたくて、ああ言ったんだ」
「……一体いつから知っていたんだ? 私が新たな同盟を作る動きに参加していた事を…」
「ああ、それね? 君のパソコンを覗かせてもらったからさ♪
スカンジナビア国王陛下や首相殿、赤道連合代表殿らとのメールのやり取りを見れば、君の行動を理解出来たよ」
「お、お前っっ!! そんなことやってたのか?!!」
「ああん、そんなに怒らないでくれよカガリぃぃ〜〜。
確かにちょっと倫理的に問題あるけどさぁ。 君を愛するが故に取った行動なんだから。
婚約者なんだから、君の考えを深く理解しておく必要があると思ってね♪ どうか寛大な心で許してくれないかなぁ」
彼が、プライバシー侵害とも呼べる行動をしていた事実を知ったカガリは、
顔を紅潮させ、怒鳴り声を上げて相手へと詰め寄る。
迫られたユウナはといえば、またいつものへらへら笑いに戻り、怒りを露わにする少女をなだめにかかる。
うう、と犬のように唸り声を上げて歯を食いしばっていたカガリだったが
ろくに反省の様子を見せない青年に呆れてきたのか、やがて脱力したように肩を落とし、溜息をついた。
「まあいい。 …そんなことよりも、聞きたいことがある。
――ユウナ、率直に聞く。 お前は、私の考えをどういう風に評価している?」
俯いたまま一度頭を振ったあと、再び顔を上げたカガリは、傍らに立つ男を見つめながら、問いを紡いだ。
…それこそが、彼の元を訪れた一番の理由。
考えを見直すきっかけを与えてくれたユウナに、今の自分を認めてもらわねばならないと、彼女は考えていた。
明日の会議に向けて、一人でも味方が欲しいという理由もあったが、
それ以上に、彼に認めてもらうことで、
問題を乗り越えた達成感と、自らの考えに対する自信を得たいという思いがあった。
琥珀色の、真剣な眼差しを受け止めるように見つめ返していたユウナは
顎元に手をやりながら、ふうむと一つ息を付く。
「若干、楽観的予測や理想論が入ってるトコあるから、及第点には少し辛いけど…いいんじゃないのかな?」
「そうか……。
では、私の考えに、臣下として付き従うほどの価値はあるか?」
「あるよ。 ――でもそれは、今の所は、ってだけだ」
どういう意味だ、と。 カガリは訝しげに目を細めながら、聞き返す。
「今いくら悩もうが、名案を思いつこうが…結局はまだ、机上の空論に過ぎないってことだよ。
いざ事態が動き出せば、予定通りに進むことは、まずないだろうね。
ましてや、自国だけじゃなくて同盟国も守らなきゃいけないんだから、上手く事が運べるわけがないでしょ」
口の端を釣り上げながら、ユウナはおどけたように肩をすくめた。
茶化しているとしか思えない仕草を添えた辛辣な言葉に、娘は激情に顔を赤く染めたが
ぽん、と頭の上に手を置かれ、思わず返す言葉を引っ込めてしまう。
「……それだけ、大変なことなんだよ。君の選んだ道は。
同盟を組むという事は、いわば身内を増やすことなんだ。何があっても守らなければならないモノをね。
そりゃあもう、途方もなく大きくて深い懐を要求されるし、知恵も度胸もハッタリも必要だ。
――もう、女の子だからって言い訳出来ない。 今度こそ、君は腹を括らなければならない。
こんな大事を言い出したからには、国の全てを責任持って背負い続けなければならないんだから」
「…分かってるさ。 元よりそのつもりだ。 そんな口実で逃げたりなんてするもんか。
いくら状況が悪化しようが、他人に押し付けようなんてつもりはない!
へばろうが、ぶっ倒れてしまおうが、私は責務を投げ出したりするような事はしない!!」
くしゃりと掻き混ぜられた前髪の隙間から覗く、暁色の眼差しは射貫かんばかりに力強く。
固い決意の篭められた表情を浮かべながら、カガリは宣誓するかのように声高に叫んだ。
唇を真一文字に引き縛りながら見上げてくる彼女を、驚きの表情で見つめていたユウナだったが、
やがて目を閉じ、喉元に張り詰めていた空気を抜くように静かな息を吐くと、
「いい返事だ。 その言葉、信じるよ。
僕も及ばずながら手を貸そうじゃないか。愛しき君の理想に」
にんまりと。 顔いっぱいに満足そうな笑顔を広げながら、ユウナは誓いの言葉を口にした。
「――以上を持ちまして、本会議を終了させていただきます」
進行役を務める男が発した締めくくりの言葉に、
議場に集う者らの間から漏れた、安堵の息や雑談の声、椅子を引き、席を立つ音が辺りを満たす。
続々と退出していく人々の群の中、悠然たる足取りで扉へと向かうカガリ。
彼女の姿を見とめたユウナも、そばへと駆け寄ろうと急いで席を立つ。
既に議場から出ていったカガリを追い、扉をくぐろうとしたところで彼はふと足を止め、振り返る。
……愕然とした表情のまま深くうな垂れ、いまだ席に座り続けている己の父親の姿。
それを背中越しに見ていたのは数秒のことで。 向き直ったユウナは、彼を置いて議場を後にした。
「よかったねカガリ。 君の努力が実ったじゃあないか」
「何言ってんだ。 私はただ、話をしに回ることしかしてないぞ」
廊下を歩いているところに追いついてきた、ユウナがかけてきた言葉に、
カガリは素っ気ない口調で返事をしたが、その横顔には微かに笑顔が浮かんでいる。
――慰霊碑前でのやりとりの翌日。
カガリが帰還してから二度目の、オーブ行政府での閣議。
今回の閣議では、前回結論に至らなかったオーブの今後の方針……
宰相であるウナトが訴える、世界安全保障条約加盟。 カガリが訴える、中立国間の新たな同盟結成。
どちらの方針を支持するかという選択が、オーブの政治を担う首長たちに委ねられていた。
集う者誰もが、緊張の面持ちを見せる中開かれた二度目の閣議。
その結果は、最初の閣議からは考えられないようなものだった。
三日前は、カガリが突然言い出した中立国家同盟の話に、驚きと戸惑いを露わにしていた首長たち。
肯定的な意思を示す者は一人もなく、その時カガリはひどく落ち込んだものだった。
――ところが、今回行われた採決では。
提案者であるカガリとウナト、そしてユウナ以外の、参加者全員がカガリの案を支持する。
思いもよらぬ不利な状況に、ウナトは焦り、声を荒げて熱心に人々へ訴えかけたが
隣で静観していた息子のユウナまでもが、突然カガリの考えに賛成する意を示すと、引きつった顔で言葉を詰まらせた。
予定していたシナリオを完全に壊され、弁舌も揮わなくなったウナトは
周囲の人間と自分の息子の説得に頷きこそしなかったが、それ以上自分の案を押す気力もないようだった。
…結果、対立意見を掲げるウナトを除いてではあったが
残る首長ら全員から支持を受けたカガリの提案は、正式に可決された。
「しかし……お前大丈夫なのか? 父親の考えに反対するなんて」
執務室に戻ったカガリはデスクチェアに腰を下ろしながら、続いて入室してきたユウナを見て、言う。
採決の時、カガリの意見に対して多くの手が挙げられていた時、
そして、自分の息子までもがその中に加わっている光景を見た瞬間の、ウナトの形相は相当凄まじいものだった。
耳の先から禿頭の天辺まで真っ赤に染め上げ、顔中しわくちゃにしながら歯を食いしばり、
身を微かに震わしているその姿は、彼の怒りの激しさを如実に表していた。
…もっとも、それを見たカガリは怒りに気圧されるどころか、達磨のような姿を前に笑いを堪えていたのだが。
しかし、息子であるユウナは、父親に対してどういう感情を抱いているのだろうか?
気がかりに思ったカガリは、問いを投げかけた相手の顔をまじまじと観察する。
「なーに言ってんだいカガリ。
愛するハニーのために選んだ道なんだ。 どんな障害が立ちはだかろうが、僕を止められやしないよ♪」
「阿呆か」
歯の浮くような軽口に、パチンとウィンクを添えて。
笑顔で応じるユウナへと、カガリは溜息をそのまま声にしたような、力ないツッコミをすかさず入れた。
「……って断言出来たらカッコ良かったんだけどね。 本当は不安なんだ。
僕は常日頃、父上の言う事を聞く良い子、って姿勢を貫いてきたからね。
多分、父上はとても怒ってるだろうね……家に帰ったら、何されるか分かったもんじゃない」
「っ?! お前それでいいのか!!?」
へらへらと暢気に笑っていた青年は、不意に悲しげにまなじりを下げながら、そう言った。
彼の表情と、語った内容から事態の重大さに気付いたカガリは、怒り混じりの驚愕の表情を見せる。
なにせ――幼い頃には既に母は亡く、男手一つで育ててくれた父も亡くした彼女にとって、
家族はかけがえのない…争ったり仲違うような悲しい事など、あってはならないモノだったのだから。
「もちろん、良くはないさ。 出来ることなら、父上に嫌われたくないしね…。
でも、だからと言って父上の考えには賛成するような事は出来ない。
――まっ、何とか説得してみせるよ。 頑固な人だから、どれだけ時間がかかるか分からないけどね」
大丈夫大丈夫、と。 にっこり微笑んで見せながら言う彼に、
それ以上突っ込んで言う事も出来ず、カガリは口を閉ざし、憮然とした表情を浮かべた。
会話の合間、僅かに生まれた沈黙。 そこにすかさず滑り込んできた、扉をノックする音。
何用だ、とカガリが言葉を投げるとアスランの声が返ってくる。 セイラン家の家人が、ユウナを訪ねてきたと。
一体どうしたのだろう、と。 怪訝げに首を捻るカガリの隣で、ユウナは笑いながら、来たかと言う。
「失礼致します。 ユウナ様、御言い付けの品をお持ちいたしました」
「ああ、ご苦労様。 この事は父上には内密にするようにね?」
「かしこまりました」
アスランを伴って入室してきたセイラン家の使用人は、携えてきた大きな紙袋をユウナへと手渡し
二、三言、会話を交わしてから恭しく一礼し、退出していく。
「なあ、ユウナ。 それなんなんだ?」
彼らのやり取りを黙って見ていたカガリは、興味津々の様子で身を乗り出し、ユウナの手元を覗き込む。
口にこそ出さないが、カガリのそばに控えているアスランもそれが気になるのか、同じようにじっと見てくる。
「これかい? これはねぇ、ちょっと頼んで家から持ってきてもらったんだけど…
僕って、枕や寝巻きが変わると寝付きにくくなるタチなんだ」
そう言いながら彼が取り出したのは、パジャマ数着にナイトキャップ。更に抱き枕。
出てきた物の意味を理解できなかったカガリは、ぽかあんと口を開けて目を瞬かせていたが、
彼の意図を察したらしいアスランは、嫌そうな表情を隠しきれず、眉根をしかめさせながら呻く。
「ユウナ様、まさか――」
「父があの様子だ。 僕、家に帰れなくて困ってるんだ。
だからカガリ、落ち着くまで君の屋敷に泊めてくれないかい?」
んふふ、と楽しそうな含み笑いを添えながらのユウナの言葉に、アスランは呆れかえった。
図々しいにもほどがある…寝床が無ければホテルにでも滞在すればいいのに。金が無いわけでもなし。
そんな考えとともに、彼の胸中はずきりと疼く。
恐らくそれは、カガリに近づくユウナに対する敵対心だったのだろうが――アスランはそれに気付けず。
とにかく、浮かんだ考えを提案し、彼の行動を阻止しようと口を開いたのだが
「ああ、そのくらいの事ならお安い御用だ!
そもそも、私に付き合ってくれたからこうなったんだしな。ゆっくり滞在してくれ」
小気味いいほどの快諾に先を越され、アスランは唖然とした表情のまま、がくりと肩を落とした。
「マユー!聞いて聞いて! 良いニュースだよー!!」
「あれ、どうしたのメイリン姉ちゃん? まだ勤務中じゃ…」
ルナマリアと相部屋の自室で、ベッドの上に寝そべりながら雑誌をめくっていたマユ。
パタパタと靴音を鳴らしながら、忙しく駆け込んできたキャンディーヘアの少女を、きょとんとした瞳で見る。
「あのねっ、オーブが…安全保障条約に加盟する話を蹴って、他の国と連名で戦争反対を宣言したんだって!」
「えっ?!」
メイリンの言葉に、マユは驚きのあまりベッドから飛び起きる。
信じられない、といった様子で口開きっぱなしの彼女に、メイリンはいっぱいの笑顔浮かべながら抱きついた。
「さっき入ったばかりの情報だったんだけど、副長がマユにすぐ伝えてきなさい、って休憩くれたの!
マユ、ほんとよかったね! オーブと戦わずに済むんだよ。故郷の人たちと戦わずに済むんだよっ」
喜びに満ちた声で、よかったねと繰り返し言いながら、マユの身体を強く抱き締めてくるメイリン。
緑色の制服を通して伝わってくる、温もりと柔らかさに包まれながら、マユはぼんやりと考えていた。
――戦争反対って…オーブが再び、中立の立場を宣言したってことなんだろうか。
あの人は父親と同じ事を繰り返すんだろうか……あるいは、違う道筋を征こうとしているのだろうか。
本当にそれで、プラントとオーブが争う可能性は無くなるんだろうか。
……いや、そもそも。 私はオーブの事をどう思っているのか、それすらもよく分からない。
もう我が家も、家族すらも存在しない祖国なんて捨ててきたつもりだったのに…
未だに、その存在に心を揺り動かされるのは何故だろう。
色んな疑問がぽつぽつと浮かんだが、問いかける相手もなく、突き詰めて考えるほどの執着も無く。
生まれては弾けて消える思考の泡を抱えながら、少女は黙していた。
…考えていて、彼女に分かったことはたった一つだけ。
自分を心配していてくれて、我が事のように喜んでくれるメイリンの心と体温が、
このうえなく心地良くて、かけがえのないものだと感じたことぐらい。
――それだけでマユは、十分幸せだった。
「ありがと、メイリン姉ちゃん」
「明日になったら上陸許可が下りるんだってさ。
そしたら、みんなで遊びに行こ! 買い物も行きたいから案内してね?」
「うん、任せて!」
難しいことは、正直よく分からない。
これからどんな風に事態が転がっていくのか、どのように巻き込まれていくのか見当も付かない。
だからマユは、ただ一つだけ願った。 明日が、みんなと一緒に笑って楽しく過ごせる、良き日でありますようにと。
オーブが世界安全保障条約機構に対して、開戦反対宣言を発した翌日。
閣議の直後から、オーブ行政府は国内外への対応や折衝などの業務に追われる忙しさに見舞われていた。
昼夜問わず灯りの途切れる事は無く、帰宅することも十分に就寝することすらも叶わないほどの大騒動。
代表であるカガリも、もちろんその例に漏れることなく、僅かな仮眠と山積みの執務を繰り返していた。
彼女に、ボディーガード兼私設秘書として雇われている“アレックス・ディノ”ことアスラン・ザラは
あちこちから届けられる書類を区分けしたり運んだり、ひっきりなしに鳴る電話の対応をしたりなど、雑務に忙殺されていた。
時折、首長たちと難しい面持ちで言葉を交わしているカガリを心配し、その横顔をちらちらと窺いながら。
…そんな彼の元に、知り合いからの一本の電話が届く。
「何? バルトフェルドから連絡?」
「ああ、なんだか大事な話らしい。 出来ればカガリにも来て欲しいとのことだったんだが」
執務の小休止の合間に、知人から掛かってきた電話の内容を、カガリへとそっと耳打ちするアスラン。
ティーカップを口元に運びかけていた娘は手を止めて、ふうむと唸る。
「今ここを空けるわけにはいかない…皆を不安にさせてしまうからな。
すまないが、お前が聞いてきてくれないか? アスラン」
「分かった。 来れない旨は俺から伝えとくよ」
「それと、話が終わったら速やかに屋敷に帰るように。
お前、ここんとこ満足に寝てないだろうからな。 二日ほど休んでこい」
「なっ……カガリ?!」
ふわと柔らかな笑みを浮かべながら、命令調で告げてきた内容に、アスランは驚きの声を上げた。
行政府に詰めている彼女を差し置いて、自分だけ休むなんてとんでもないと、青年は訴えたが
「いーから休め! お前の本業は私のボディーガードだろう?
もしもの時に、役に立たないようじゃあ困るからな!」
ばしりと肩を叩きながら、強い語調で言い切られればそれ以上食い下がることも出来ず、
そして彼女の言う事ももっともだ、と思ったアスランは渋々ながらも頷き、知人の元へ向かうべく、部屋を退出していった。
車を走らせ、アスランが向かったのは、オノゴロ島にあるアスハ家所有の別邸。
海に臨む断崖のそば、眼下の青とコントラストを織り成す、白塗りの屋敷に着いた彼を迎えたのは二人の男女だった。
「いらっしゃい。 ご無沙汰ね、アスラン君」
「よお、アスラン。 上では大層面倒な事に巻き込まれていたらしいな?」
「…お久しぶりです。 マリューさん、バルトフェルドさん」
ドアをくぐり、入室してきたアスランへと彼らは声をかけてくる。
一人は、艶やかにウェイブ描く栗髪と、豊満さとしなやかさを兼ね備えた体躯が印象的な女性。
もう一人は、奇抜な色彩のアロハシャツを着た…それ以上に、大きな傷を伴う隻眼と、常に手放さない杖が目を引く男性。
どちらも個性的で、アスランより一回り近く年長の人物であったが、
二年前の戦争において、時には敵として時には味方として、共に戦場を駆け抜けた戦友の間柄だった。
「忙しい所すまんな、呼びつけて。
……で、現状はどうなんだ? 開戦反対宣言を出してから、やっこさんの動きはあったのかい?」
ソファーに座ったアスランの前に、無骨な手がマグカップを置いていく。 中身は間違いなくコーヒーだろう。
目の前に置かれる前から、バルトフェルドがキッチンに入っていく前から……むしろ屋敷に入る前から分かってた事だ。
それにしても、前々から感じていたが、このマグカップの意匠はなんとかならないのだろうか、とアスランは思う。
全面に引かれた黄色と黒の横縞は目が疲れるし、描かれている虎の顔はなんともリアルで、愛嬌の欠片もない。
だが、それを言ったら怒られそうな予感がして――とりあえず、コーヒーを一口啜ってから、青年は問いに答えた。
「カガリは、戦争の抑止力になればと思って、同じ考えの国家と手を組んで宣言を出したんですが…
しかしそれでも、強硬派の国家の意思は頑なで、プラントに対して開戦する方針に変わりは無いようです」
「ユニウス条約で調停役を務めた、スカンジナビア王国も一緒に反対しているってのになあ。
よっぽど大戦争を起こしたいようだな。 その、世界安全保障条約機構ってのは」
名前が聞いて呆れる、と。 大きな嘆息交じりに呟くバルトフェルド。
彼の隣に座るマリューもまた同じ思いなのか、眉をひそめて浮かない表情を見せている。
――カガリの目論見だった、大西洋連邦ら開戦派に対する牽制は、残念ながら効を為さなかった。
オーブ、スカンジナビア王国、赤道連合が連名で開戦反対宣言を出したにも関わらず
セレネの悲劇を掲げながら、プラントとの決戦を訴える大西洋連邦の弁舌は衰えることなかった。
何よりも――国々は恐れていた。
二年前、戦争参加を拒み、非協力的姿勢を示したオーブに対して、容赦無く攻め入った大西洋連邦の事を。
「…けれど、まだ希望はあると、カガリは言っていました。
別の勢力を作ることで、世界安全保障条約を良しとしない考えの国家が、動きやすいように支援出来ると。
たった一国で、地球連合に歯向かうような無謀な事なんて、そうそう出来やしない。
しかし、既に同じ思想の国が対抗勢力を作っていれば、抗おうとする動きも出てくるだろう…と」
「なるほどね。 確かに、旗印が有るか無いかでは、大きな違いだからな。
賛同国家が増えれば、開戦派も迂闊に動けなくなる。事が穏便に済む可能性も出てくるな」
青年の説明に、バルトフェルドは顎元に手を当てながら、神妙な面持ちで深く頷いた。
「――あの。 それで、話ってのは一体…」
「おお、すまんすまん。すっかり忘れてた。
例の調べについてなんだが、一つ進展があった……こいつを見てくれ」
アスランから切り出された言葉に顔を上げた男は、一つ膝を打ちながら笑い、
シャツの胸ポケットから取り出した一片の紙を、青年の前に差し出した。
受け取った紙切れは、一枚の写真。
大勢の人間が整然と並び作った人垣と、その前を悠然たる足取りで歩み行く数人の人物が映っている。
そう説明するだけなら普通の光景だが――そこに居る全員が、物々しい軍服姿だという所が異様な点だった。
軍の式典会場を写した物だろうか…推測しながら、アスランは手にした写真を見つめていたが
不意にその顔が、驚愕のカタチに引きつった。
――彼の目に止まったモノ。 それは親友によく似た青年の横顔だった。
「これはっ…?!」
「…見ての通りよ。
少し、雰囲気が違うように思えるけど……キラ君に間違いないわ」
「一体、何処に居たんですか?!」
白い将官服を纏う、中年や老年の男たちの傍らに侍るようにして立つ青年を、凝視していたアスランは
顔を跳ね上げ、問い詰める勢いでマリューへと身を乗り出し、問いを投げかける。
…写真の中で、すぐそばにいる老紳士に向けて控えめな笑顔を見せている、自分と変わらない年頃の男。
ぎりぎり肩に触れるくらいに伸ばされた焦茶の短髪に、甘めの端正な顔立ちの中で輝く紫電の瞳。
経過した時が変化させたのか、記憶している姿とは微妙に違うものも――その姿はまさしく、キラ・ヤマトだった。
「一ヶ月前、キャリフォルニアで行われた、大西洋連邦軍の式典で撮影されたものよ。
ミリアリアさんが手に入れてきてくれたの。 彼女の先輩が撮ってきたんですって」
「そんなっ……キラ…なんでこんな所に居るんだ…?」
「それだけじゃない。 服を見てみろ……そいつは将官用だ。
一年前に失踪したあいつが、一体どういう経緯を辿ればそれを纏うことが出来るんだ? そいつが問題だ」
それこそ、苦虫を口いっぱい噛み潰したかのような厳しい表情で、バルトフェルドが放った一言に
アスランは言葉を失い、写真の中で涼やかに笑う親友の姿を、呆然と眺めるばかりだった。
キラ・ヤマト――それはかつて、『ストライク』と呼ばれる純白のMSを操り、幾多の戦場を駆け抜けた少年兵士の名前。
のちに、地球・プラント間の戦争を止めたいという、プラントの歌姫ラクス・クラインの志に共感し、
アスランたちと共に、第三の勢力『三隻同盟』として地球連合軍及びザフト軍に対して立ち向かった人物でもあった。
彼は、コーディネーターから見ても常軌を逸したレベルの戦闘力と、ザフト最新鋭MS『フリーダム』を持ってして、
地球連合軍の切り札であった核ミサイル攻撃を阻止するなど、戦争終結のために奮戦した…言わば英雄と呼ばれる存在だった。
終戦後、キラは生き別れの姉弟であるカガリが治めるオーブへと、三隻同盟のメンバーと共に亡命し、
かつて世話になった事のあるマルキオ導師の元に、ラクスと共に身を落ち着かせていた。
元々民間人であったにも関わらず戦争に巻き込まれ、戦うことを余儀なくされていた少年の精神は磨耗しきっていると、
心を癒すためには、安らかな休息が必要だろうという導師の厚意を受け、キラは彼の所有する孤児院に居候していた。
――そんな彼が、突然姿を消したのは、一年前にオーブで起きたブルーコスモスによるテロ事件の直後だった。
運悪く現場近くへ、ラクスと一緒に買い物に出ていたために事件に巻き込まれたキラ。
幸い、大した怪我をせずに済んだのだが……三日後、前触れもなく入院先の病院から姿を消した。
書置き一つ残さずに、何人に対しても伝言どころか、失踪を匂わす言葉すら残さずに
戦時中から、幾度となく心を支えてくれた少女。 恋人のような間柄だったラクスを置き去りにしてまで――。
「写真に写っている人物の詳細までは、まだ分からないとのことだった。
だが、判明した事もある。 彼はどうも、隣にいる老人と一緒に写っている場面が多いらしい。
もしかすると、この爺さんの側近じゃあないのかなって話なんだが……」
「でも、この人…大西洋連邦内では重鎮中の重鎮よ?
カール・アウグスト元帥。 前世紀から連なる有力一族の家長…そして、ブルーコスモスの一員」
不可解だ、という文字を顔いっぱいに描きながら、マリューは唸る。
「ザフトでも、以前から警戒されていた人物でな。 上の仲間に情報を集めてもらった。
軍内部のブルーコスモスメンバーとしては、真っ先に名前が挙げられるぐらい有名な人物さ。
…だが、他の者とは少々毛色が違っていてな。コーディネーター殲滅を良しとしない、穏健派に属していたらしい。
そのため、以前は前盟主の不況を買い、中枢から遠ざけられてたらしいが…
大勢のブルーコスモスメンバーが戦死した大戦後、混乱に乗じてブルーコスモスの長老格へと登り詰めている。
家柄もさることながら、当人自身の人望も相当高くてな。 軍内部には幅広く、彼のシンパが存在している。
それこそ、大統領ですら顔色伺ってヘコヘコしなきゃならんような相手さ」
「そんな人の所に……どうしてキラが居るんですか」
「――分からん。
だがまあ、復讐を狙っていると考えるのが妥当だろう。あのテロの首謀者はブルーコスモスだったからな。
組織の中枢部に潜り込み、内部から潰そうと考えているんじゃないのかと、俺は予想するね」
ぐいとカップを呷り、飲み干してからバルトフェルドは答える。
彼は自信ありげな口調で推測を口にしていたが、
隣に座るマリューは、その言葉に対してゆるりと首を横に振りながら、うかない表情で呟いた。
「…そうかしら。 私は、キラ君がそんな小細工が出来るなんて思えないわ。
ましてや、敵対していた組織に入り込んで…媚びへつらうような真似を続けるなんてありえない」
「その『ありえない』を変えるのが『憎しみ』って感情だよ。
とりあえず、この情報の真偽についてはミリアリアが探ると言ってきた。
彼は本当にキラなのか、もしもキラならば何を目的としているのか……確かめたいとな」
「無茶しないように、と念は押しておいたけど……彼女、深入りする性格だから心配だわ」
膝の上に置いたマグカップを両手で包みながら、物憂げに俯くマリュー。
かつて、マリューが艦長を務めていた戦艦『アークエンジェル』でオペレーターをしていた少女、ミリアリア・ハウ――
終戦後、戦争の悲惨さを広く世にしらしめるべく、戦場ジャーナリストの道を選んだ彼女。
仲間だった少女が、トラブルに巻き込まれかねない場所で働いている事を、マリューはいつも心配していた。
「そうですね…軍部の人間、それもブルーコスモスの幹部に関わるとなると、相当の危険を伴う。
彼女に伝えておいて下さい。 あまり深入りしないようにと。
ある程度の確証が得られれば、オーブの情報機関を使って調査する事も出来るからと…」
「ええ、伝えておくわ。
…で、どうするのアスラン君? この事はカガリさんに伝えるの?」
「――いえ、しばらく時間を置きます。 今は多忙な状況ですし。
まだ確証を得ていない情報を伝えても、彼女の心を無闇に揺るがすだけですから」
マリューからの問いかけに、アスランは少し考え込んだ後、そう答える。
確かに彼女は、行方不明になった双子の弟、キラの事をずっと案じていた。
生きているという情報を知れば、きっと大喜びすることだろう。
…だが、今の彼女は世界間で起ころうとしている戦争を阻止することに、心血を注いでいる。
そんな状況でこの情報を――キラが大西洋連邦軍に居るかもしれないという事を言えば、彼女は酷く戸惑うことだろう。
カガリが、どんな思いでキラを捜していたか。 常にそばにいたアスランは、胸が締め付けられるほど知っていた。
だが、国家を背負い、今まさに立ち上がった彼女の心を揺るがす事だけは、絶対に許されないと。
後悔と懺悔の念の入り混じった、泣き笑うような表情を力なく刻みながら、アスランは言った。
「今日はそろそろ、おいとまさせていただきます。 カガリからはしばらく休めと言われているんで。
……明日には、ラクスの所へ行ってきます。ここの所、全然顔出していませんでしたし」
「ああ、そうしてやってくれ。 彼女も喜ぶだろう」
二人の男女に見送られ、屋敷を後にしたアスランは、潮風に乱される髪を掻き上げながら、空を仰いだ。
黄昏時の雲は、夕日に照らされ桃色に縁取られ、本来の色である白と、青みがかった影に彩られている。
淡い色合いのトリコロールカラーに染まる雲の群と、朱色の糸と金糸で織り上げたような海の果てを眺めながら
様々な感情と思考でいっぱいの胸にとりあえず蓋をし、自分の車へと歩みを向けていった。
明日は朝一番に、真白い薔薇の花束を買いに行こう。 彼女の愛した花を持って行こう、と思いながら。
70 :
あとがき:2006/08/15(火) 11:49:20 ID:???
長いよっ!色々詰め込んでいったら際限なく長くなってったよオーブ編!!絶叫中です舞踏の人です。
…とりあえずキモ可愛いユウナは書いていてものっそい楽しいです。本編でも熱烈にウォッチングしてました。
こっちではカガリにゾッコンな彼ですが、こうなる経緯を書いていないのでちょっと違和感があるかもしれません…。
彼と彼女の昔については、いずれ閑話あたりで補完予定です。 いつになるかは不明ですが。
ちなみに、虎さん愛用のマグカップは某猛虎の旗を想像して頂けると分かりやすいかと思われます。
まさか六甲おろしを歌うような人間ではないかと思いますが…(ぉ
次回はラクスについてと大西洋連邦側の動きについて語ります
リアルタイムで読ませてもらった。乙&GJです。
虎カップに吹いたwww
どんな趣味してんだw
虎たちとの会話に出てきた爺様は5話に出てきた
艦隊に居た観閲官を勤めた人物です
リアルタイムで読めてついてます。
舞踏GJ!
キモ可愛いユウナいい味出てますね。
今後の動き、めちゃ楽しみです。
ありゃ、ラクス生きてんの?
単発設定小話 「たまには活躍させてやらないと・・・」天空のキラ(失笑)編E
〜エターナルに向かってくる敵影〜
バルトフェルド「3機か・・・まぁなんとかなるだろ」
ヒルダ「あれはあたしたちがもらうよ!坊やばかりに戦わせるわけにはいかないからねぇ」
ヘルベルト「・・・グフとザクか・・・、ありゃアサルトウィザード積んでるなぁ」
マーズ「ザクのほうはバスターパックもおまけしてあるぜ・・・・・・って、おい!ありゃドムじゃないか!?」
バルトフェルド「ドムだとぅ!?・・・あれはお前たちの3機だけじゃなかったのか?」
マーズ「・・・のはずだったんですけどね。どこで作ってんだか・・・・・・」
ヒルダ「まぁいいさ。はやいとこ撃退しようじゃないか。いくよ、マーズ!ヘルベルト!」
マーズ&ヘルベルト「了解」
〜ジュール隊〜
イザーク「まったく!あごひげは不甲斐ないな!我々が来るまで持ちこたえられんとはっ!」
ディアッカ「そう責めてやるなよ。まさかフリーダムの新型?がでてくるとは思わなかったんだろ?」
イザーク「それだ!なんなんだ!あのMSはっ!それに・・・あの装備・・・クルーゼ隊長が使っていたやつと同じじゃないか」
シホ「隊長!あと15秒で射程圏内に入ります」
イザーク「ふん、一応勧告はしておいてやるか。・・・我々はザフト軍ジュール隊だ!戦闘解除し投降しろ!」
〜バルトフェルドたち〜
バルトフェルド「!イザーク・ジュールだと!?」
ダコスタ「・・・隊長!」
バルトフェルド「・・・・・・まったく真面目なことだな。ダコスタ、もたもたしている場合じゃないからな!幸いこちらが有利。・・・とりあえず脅してやれ。それが駄目なら実力行使だ」
ダコスタ「了解。・・・こちらエターナル。ジュール隊、我々の邪魔はしないでもらいたい。プラントを、世界を憂えているのは同じなら・・・」
〜ジュール隊〜
ディアッカ「・・・だそうだ。イザーク?」
イザーク「やはり駄目だな・・・ディアッカ、アサルト装備展開準備!数的不利は埋められんからな!一体ずつ仕留める!」
ディアッカ「了解。誰から仕留めるぅ?」
イザーク「あの赤いガイア、たぶん砂漠の虎だろう。あれからだ!」
ディアッカ&シホ「了解!」
〜ガイアに襲い掛かるイザークたち〜
バルトフェルド「っと俺からかよ!ったく、近頃のガキは生意気だな。・・・よっ!」
キラ「バルトフェルドさん!」
〜すぐにフォローに入るストフリ〜
ヒルダ「っち。将軍を助ける!マーズ、ヘルベルト!敵のドムを止めな!!攻撃力を低下させる!」
マーズ「・・・ドムにのっているのはシホだな。グフがイザーク、ザクがディアッカだろう」
ヘルベルト「なんでそんなことわかんだよ!?」
マーズ「試作機はテストパイロットをしたことがある奴じゃないと上手く扱えないことが多い、だからシホ。格闘戦が得意なグフはイザーク。バスターパックのザクがディアッカだな。」
ヘルベルト「ひゅー・・・さすがだねぇ」
マーズ「馬鹿言ってないで行くぞ。油断してたらこっちが食われちまうからな」
ヘルベルト「わかったよ。じゃ、はやいとこ嬢ちゃんを止めて、イザークたちの相手をしてやろうっと」
〜シホのドムに襲い掛かるマーズとヘルベルト〜
完 ・・・・・・天空のキラFへ続く
単発設定小話 「数的不利」天空のキラ(笑劇)F
〜シホの襲い掛かる男二人(ヤラシイヒョウゲンダナ…)~
シホ「前衛と後衛のポジション取り・・・マーズさんとヘルベルトさんね。相手に不足はないっ!そこっ!」
マーズ「おっと・・・さすがといったところか・・・でも、俺たち二人じゃ相手が悪かったな」
ヘルベルト「マーズ!御託並べてないで早くどけよ!お前、前衛なんだぞっ!」
マーズ「ああ・・・悪い悪い」
ヘルベルト「ったく」
シホ「・・・私・・・弄ばれている!?」
〜バルトフェルドに襲い掛かるイザークとディアッカ〜
イザーク「ディアッカァッ!わかってるな!?今だぁ!」
ディアッカ「はいよぅ!」
〜ガイアを目掛けて光線が放たれる〜
バルトフェルド「速い!?・・・動きに無駄がないってことか。さすがヤキンを潜り抜けたパイロットってことかぁ?」
キラ「バルトフェルドさん!」
バルトフェルド「おう、キラ!ドラグーンの調子はどうだ?」
キラ「いいですね。思ってたより使いやすいですよ」
バルトフェルド「・・・そうか。じゃぁシステムを切り替えて戦ってみろ。そっちが本当のドラグーンだ!」
キラ「システムを切り替えて?」
バルトフェルド「切り替えてみればわかる!それを使いこなせれば、もう誰もお前には勝てんさ!」
キラ「・・・はい。システム切り替え、ウイング解除、AからEまでオールコントロール、FGHはサポートモード。」
イザーク「!?っち、ディアッカ!フリーダムがくるぞ。動き続けて回避しろ!とまるんじゃないぞ!」
ディアッカ「わかってるってゆーの!?お前こそ捕らえられるんじゃないぞ!」
〜ストフリのドラグーン端末がグフとザクを追いかける〜
キラ「っぐ・・・これはガンポッドよりも扱いが・・・・・・」
ディアッカ「ん・・・動きが?イザーク!」
イザーク「わかってる!次いくぞー!!」
〜気合の入るイザークにヒルダが迫る〜
ヒルダ「調子にのるんじゃないよ!ガキどもが!」
イザーク「なっ。下からだとっ!?」
ディアッカ「イザーク!!正面だっ避けろぉー!!」
〜グフの正面をストフリのドラグーン端末が捕捉する〜
キラ「捕らえた!」
〜ドラグーン先端から光が放たれる〜
イザーク「!!しまっ・・・・・・」
キラ「え!?」
イザーク「・・・外れた?」
〜グフの正面に紫に輝く光の幕が張られている〜
イザーク「・・・・・・ビームシールド?」
キラ「これは!?・・・一体どこから・・・・・・<ピキュィーン>上!?」
〜ストフリとグフの頭上から急速に迫る黒い物体〜
キラ「これは・・・黒い・・・ミーティア?」
女「あれが・・・キラ・ヤマトね・・・・・・」
完 ・・・・・・次回「翔る闇」天空のキラ(笑止)終章へ続く
「ネオー。焼きそば買ってー。」
「俺りんご飴ー。」
「金魚釣りしたいー。」
「お前ら俺にねだるな!!自分の金で買えーー!!」
ネオに怒鳴られ頬を膨らませるステラ、アウル、マユ。
ここはとある商店街。夜店がずらーっと並んでいる。マユ達の姿はもちろん浴衣。
「・・・メイリン、お金貸しなさい。あのくじ引きやってくるわ。」
「お姉ちゃんやめてよ、男の子向けのアニメの奴だよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「あっ?!ミーア?!いっちゃだめだよ!!お姉ちゃんも付いて行かないでー!!」
○ャンプ中心のくじ引きに引かれていく二人。
「アキラ残念だったねー。」
カルマが口の周りに青海苔の付いたまま話す。
「この季節、実家の和菓子屋が忙しいって言ってた。特に今年はオーブからの移民者が多いからだって。」
ゼロが輪投げで取った大きいビニール製のハンマーを持ちながら答える。
「あのさぁ・・・?どうして和菓子屋が混むの?」
キースが生ビール片手に聞く。
「日本のお盆だな。オーブにもあったよ。先祖の霊が帰ってくる時期なんだ。」
そうアスランが射的でとった安っぽい小型扇風機を使いながら言う。
「そんなことよりカルマ、たこ焼きくれ。」
ジョーの魔の手からたこ焼きを死守する、カルマジョーは諦めず何度も攻める。
そしてその好きに後ろからグレイシア、横からハイネがたこ焼きを奪取する。
「あぁっ!!」
「油断大敵だぜ・・・。」
「それいつもステラに後ろから驚かされている背後がら空きのハイネに言われたくないセリフよね。」
青海苔とソースのついた口からカッコイイセリフを吐くハイネにグレイシアが冷たくつっこむ。
そこへスティングが向かってくる。
「大判焼きの店ないか?メイリン達が食べたいって。」
「ん?・・あ、そこにあるぞ。」
アスランの言葉に一同はゾロゾロと移動をする。
「すいませーん。カスタード10個とこしあん13個。」
「多っ?!」
聞き覚えのある声で突っ込みが入る。
その声に一同は沈黙する。
『・・・・・・・・お前こんな所で何してんだよ。』
「・・・・・・・・家の手伝い?」
そう呟いたのは髪をポニーテールに結び、眼鏡ではなくコンタクトのアキラだった。
「お前実家の和菓子屋の手伝いじゃなかったのかよ?」
「いやね、親父達に今日だけ祭りに行かせてくれって頼んだらね。
いいよって言われたんだよ。うん。そしてらさぁ・・・。
ただし屋台で目標金額稼ぐまで駄目って言われて・・・・・・・。」
泣き始めるアキラ。ちょっとしょっぱい大判焼きになりそうだ。
「なんで・・・・なんで俺ばっか・・・・・・。」
ちょっと黒いオーラまで出始める。今度はどんな最狂な性格になるのだろう?
「ちょ・・・・アキラ!!だったら私が手伝ってあげるわ!!」
軽くトラウマがあるルナマリアは大急ぎでフォローした。
「はーい、寄ってってくださいねーv」
そう言って手を振るのはミーアの舞台衣装を着たルナマリアだ。
ルナマリアの手伝い、それは要するにコスプレで客引きだ。
これでもルナマリアはプローポーションが良い。腐ってもコーディだ。
まぁ、顔もかわいい。腐ってもコーディだ。
ついでにアホ毛だ。これはあんまり関係ない。ただの乙女レーダーだ。
そんなかんだで多いに客が集まってきた。
「お姉ちゃんが善行を・・・・。」
『いや、メイリン。よく観察しろ。』
涙ぐむメイリンにシンハロが冷たく告げる。
もちろん女性であるルナマリアに惹かれてくるのは男性である。
大体彼女とではなく友達づれの若い男性も多い。
要するに、妄想し放題、生ものパーティ。これがルナマリアクオリティ。
「・・・・・・・・お姉ちゃん・・・・。」
「気にするな・・・、俺は気にしない・・・・。」
沈痛な面持ちで悲しみの涙を流すメイリンの肩を叩くレイ。
「ステラも来たから私も・・・・・・。」
「「「『やめなさい。』」」」」」
対抗意識を燃やしたマユの言葉は全員に一斉に否定された。
ほのぼのさん乙!
ちゃっかりハイネ隊も夏祭りきてるwww
マユのミーアコスってスク水に巻きタオルした小学生みたいだろうな…
単発設定小話 「翔る闇」天空のキラ(笑止)編 終章
〜ヒルダのドムに向けて、ビームシールドを形成していた端末からビームが放たれ被弾する〜
ヒルダ「ぐわっ!・・・っく、いったいなんだっていうのさ!?」
マーズ「ヒルダっ!」
キラ「・・・三つの端末でシールドを作っているの?・・・!バルトフェルドさんっ!」
〜無数のビームがあらゆる方向からガイア、ドム、ストフリに襲い掛かる〜
バルトフェルド「っこいつは!?・・・ミーティアだと・・・・・・」
ヘルベルト「将軍!黒い奴がエターナルに突進していくぜっ!」
バルトフェルド「なにっ!」
キラ「ラクスー!!」
〜エターナルへ進行方向を変えた黒いミーティアに向かいドラグーンを放つストフリ〜
女「!?っち。簡単にはやられてくれないのね・・・」
〜ストフリのドラグーンの攻撃を形成した二つのビームシールドで防ぐ黒いミーティア〜
女「ふふ・・・反応が遅い。スーパーコーディネイターといえどもまだ慣れていないようね」
〜黒いミーティアの介入により体制を整えるイザークたち〜
イザーク「っは!あの黒い奴、敵か味方か!?」
ディアッカ「お前を助けたんだから味方だろ?」
シホ「隊長!緊急回線で通信きます!」
イザーク「黒い奴からか!?」
〜イザークたちのコックピット内に女の声が響く〜
女「ジュール隊ね!?こちら特務隊所属、サラ・ビギンズです。直ちにこの戦域から離脱しなさい」
イザーク「!・・・なんだとっ!敵前逃亡しろってゆうのかっ!特務隊といえども違う部隊に命令をくだす権限はない!」
サラ「あります!レベルセブンの暗号文書を送ります、議会からの命令です。その内容を速やかに実行しなさい」
イザーク「レベルセブンの暗号だと!?」
シホ「!これは・・・」
ディアッカ「ありゃ、結局あのわっかの調査は俺たちがするのかよ・・・」
イザーク「っく・・・納得できん!いまやつらを見逃せば後々にザフトの災厄となるに決まっている!」
サラ「・・・だまらっしゃい!そんなセリフはあんたが議長になってから口にだしなっ!」
イザーク「くぅ〜・・・ええぇいっ!ディアッカ、シホ。撤退するぞ!」
ディアッカ「・・・了解」
〜引き上げるジュール隊〜
〜バルトフェルドたち〜
バルトフェルド「まだ油断するんじゃないぞっ!?まだ、あの黒いミーティアが残ってるからな」
ヒルダ「将軍!後ろだよっ!」
キラ「バルトフェルドさん!」
〜ストフリのビームシールドでガイアをかばうストフリ〜
キラ「そこっ!!」
〜猛スピードで駆け回る黒いミーティアに全ドラグーン端末を差し向けるキラ〜
サラ「そんな操作のものがあたるわけもないっ!」
〜ストフリの雨のような攻撃を全て防いだ黒いミーティア〜
キラ「!!・・・全部防いだってゆうの!?」
サラ「・・・私も離脱させてもらいますよ。・・・さぁ、あなた方の運命を見せてごらんさい!」
〜戦域を突っ切っていく黒いミーティア〜
天空のキラ編 完
サラ強え〜!
黒いミーティアって、中の機体は何なんだろう
> サラ強え〜!
サルゲッチュミリオンモンキーズのコマーシャル思い出して麦茶噴いた
サラ!サラ!サラ!サラ!最強!最強!最強!サイキョー!!
サラ!サラ!サラ!サラ!反撃!反撃!反撃!ハンゲキ!!
(by大槻ケンジ)
浮上
85 :
264:2006/08/17(木) 20:45:33 ID:???
只今より投下します。
――機動戦士ガンダムSEED Destiny 灼熱の咎、凍える枷――
PHASE5:灼熱の咎、凍える枷(前編)
86 :
1/10:2006/08/17(木) 20:47:35 ID:???
地球衛星軌道上に停泊した連合艦隊が密集陣形を取り、その艦首を輪郭が見え始めた
ユニウスセブンへ向ける。艦底を照らす蒼白い地球光が、4つの巨大な影を浮かび上がらせる。
「提督、更に1隻、軌道上に上がってきます。『ソロネ』です」
「定刻通りか。良い腕だな、イアン=リー」
連合艦隊提督はその皺の刻まれた表情を綻ばせ、ブリッジのメインスクリーンを見遣る。
「しかし、何とか間に合いましたね。ザフトから笑われずに済みましたよ」
「フン、本来ならばこの1.5倍の戦力で臨む予定だったのだ。来期の選挙で
頭が回らん連中が邪魔立てしたのよ」
地球圏未曾有の危機に際し、連合が差し向けたのはわずか4隻の艦だった。
改ネルソン級、ドレイク級2隻ずつから成るこの機動部隊は、まさに連合の腰の重さ
を一身に背負わされた形となった。
「……ともかく、作戦には3時間以上割けん。メテオブレイカーで複数の縦穴を作り、
ミストラルが13基のB4弾頭を仕掛け、脱出、起爆……保てば良いがな」
「計算上、1時間もの余裕があります。何か問題が?」
「アーモリーワンの事件があったろう…プラントは詳細を明かしておらんが」
「それが、ユニウスと関係があるのですか?」
問いを重ねる若い副官見習いに、提督はブルドッグのような顔をしかめた。
「今回はな、少尉。ザフト側からローラシア級2隻、ナスカ級1隻に加え、あの新造艦
ミネルバまで参加しているのだよ」
「それは…っ」
「あの虎の子をな……まあ良い、全艦に打電。出かけるぞ」
「ハ…!」
通信コンソールを操作する士官を横目に、提督はしかめ面のまま禁煙ガムを噛み締めた。
87 :
2/10:2006/08/17(木) 20:49:22 ID:???
蒼光の中、アークエンジェル級3番艦ソロネはリング状の大型ブースターを切り離す。
火花と共に焼け焦げた金属が弾かれ、漆黒の輪天使は後部ウィングを展開。力強い噴射炎と共に
1Gを振り切って安定軌道に乗った。高出力スラスターを搭載し、大型化した『前脚』
からも翼が伸びて行く。更に推力を上げ、巡航速度に達していた他の艦船に軽々と追いついた。
「リー少佐、旗艦から発光信号です。『漏らすなよ』と」
「……いい加減、士官学校の話題を持ち出すのは止めて頂きたいものだ」
制帽のズレを直した艦長イアン=リーは、礼儀を損なわない程度に最大限の不快感を示す。
直後、ガスが抜ける音と共にブリッジのドアが開いた。
88 :
3/10:2006/08/17(木) 20:50:49 ID:???
「リー、怖がり……?」
「なに? リーお前、ちびった事あるの?」
「答える義務はありません」
入ってきたネオとファントムペインの面々に、イアンは溜息をつく。
「何だよつれないな。俺の『引き』で出世できた癖にぃ」
「パテントの問題が解決していないピーキーチューンの最新鋭艦に乗せられ、二階級特進のうえ
艦長の椅子に座らされ、加えて配属されたモビルスーツ隊のパイロットは半年前から記憶編集
の最適化を施されていない強化人間。この状況を出世と言えるものかな? スティング君」
「え、何で俺に振るんスか? いや、御愁傷様ですけど……俺達も何度ネオに……」
「そうだったな。お互い、頑張っていこう……」
「……好き勝手言ってやがるとこ悪いが、リー。例のシステムは大丈夫か?」
苦労人同士で慰め合う2人に、口元をヒクつかせるネオ。
「ランゼンエミッターですか? あれ自体は問題ありません。何時でも動かせます」
「ほう、そりゃ良い。いよいよコードXXがザク並になる」
低く笑うネオに、アウルが疑問の声を上げた。
「なに? その、何とかエミッターって」
「データベースにありました」
応えたのはネオではなく、マリアだった。
「艦で生んだエネルギーをマイクロウェーブに変換し、受容機を搭載したMSへ常時送電する
システムです。コロイド技術によってエネルギーロスを軽減し、MSの長期活動を可能とします」
マリアの解説に苦い表情で頷くイアン。
「そう。ザフトからデュートリオン送電システムの技術盗用として訴えられている」
「ちなみに、ブリッツMkUの特殊TP装甲もザフトのVPS装甲を盗用したものとの指摘を
受けています。訴訟は終わっていません」
「……いや、その」
ブリッジ要員とファントムペインからの視線にたじろぎ、ネオが後ずさる。
「こ、細かい問題はだな、ゴリ押しした例のムラサキクチビルに言っ……」
ネオの言葉は、ブリッジに響き渡る警報に掻き消された。
「か、艦長!!」
「何事か!」
「ザフト艦ミネルバより入電! ユニウスセブンにMSを多数確認!先行部隊との
交戦状態に入った模様です!」
「何だと……敵機は判別しているのか!」
「ジン、シグーなど……全てザフト製だそうです!」
「……!」
オペレーターからもたらされた報告は既に連合艦隊に通達され、そして、彼らに一つの
疑念を植えつけた。
「ザフトは……本当に『友軍』なのだろうな……?」
イアンの呟きは、重石でも飲んだかのようだった。
89 :
4/10:2006/08/17(木) 20:52:37 ID:???
ユニウスセブンの先行偵察にあたっていたサトー隊は、今やその数を3機にまで減らしていた。
「隊員は、全て脱出できたか!」
『ハッ! 残るは我々のみです!』
「よしお前達も離脱しろ! 此処は私が食い止める!」
出力低下を示すレッドアラートがヘルメットのバイザーを染める中、サトーはモニターの端に
貼り付けた写真に目をやる。穏やかそうな女性に抱かれた、幼い少女が映っていた。
『小隊長!?』
「勘違いするな! 直ぐに私も逃げる! だからさっさと離脱せんか!」
左のショルダーアーマーを砕かれ、モノアイに皹の入ったサトーのジンハイマニューバU型が、
エネルギー残量の少なくなったビームカービンで牽制射撃する。
ユニウス内部の大地に着弾した光熱の矢が弾け、近づいてきていたジンとゲイツを退かせた。
「行け! 義務を……果たせッ!」
『……申し訳ありません!』
部下の乗った2機が飛び去り、ユニウスセブンの外へ脱出するのを確認した後、
汗に濡れたサトーは大きく息を吐く。真横に走った古傷が機内灯に照らされた。
脱出させた部下には貴重な情報を預けている。ユニウスセブンに取り付けられていた
フレアモーターは全て焼き切れていた事。構造体の加速が予測を上回っていた事。そして―
「この加速……セカンドシリーズの、ガイア……だな」
ユニウスの護衛に、アーモリーワンから奪取された新型3機が加わっている事。
レーダーから顔を上げたサトーは、物資搬入口だった通路の枝道からやってくる多数の
MSに備え、カービンの残弾を確認した。
「させるものか……」
機体を其処に入り込ませ、カービンを左手に持ち替え、斬機刀を抜き放つ。
「我が娘の眠るこの『墓標』を! 新たな戦争の火種になど!」
1機のジンが枝道から身体を出した瞬間、マシンガンを持ったその右腕を一射で弾き飛ばす。
間髪入れずにそのジンへ飛び掛り、斬機刀を残った左腕の付け根に深く突き入れる。
焼けた火花と推進剤の残滓と共に、機能を失ったジンの左腕がシールドを手放した。
「させる、ものか……!!」
ペダルを踏み込み、両腕のもげたジンを暗がりから迫るガイアに向けて蹴飛ばす。しかし、
「うおっ!?」
直後、そのジンがマシンガンとビームライフルによって蜂の巣となり大爆発を起こした。
「躊躇が、無い…ぬかった!」
通路を満たす爆圧に吹き飛ばされる中、爆風を突き破ったMA形態のガイアが迫る。
背中の翼部分でビーム刃が起動した。
90 :
5/10:2006/08/17(木) 20:55:11 ID:???
不安定な姿勢のまま、狭い通路の壁を蹴って接近するガイアに対してサトーが出来たのは、
ビームカービンを撃ち尽くし、刀を突き出す事だけだった。
しかし、撃ち出された二筋のビームは壁面を穿つに終わる。
「ジンのようにはいかんか! 機動性も、速度も……!」
そのまま胴体と左足を押さえつけられて倒される。機体各所のカメラが潰され、サブモニターが
死んだ。エネルギーの無くなったカービンが通路の奥へと流れていく。
ガイアの背部に搭載された二連装ビーム砲がサトー機に狙いを付け、その咆口を睨む
サトーの目が見開かれた。
「く……っ!」
刹那、ビームの乱射がガイアを跳び下がらせ、他の敵機を枝道に隠れさせた。
それが納まった後、間髪入れず太い真紅の光槍が通路の奥まで貫き、眩い光と共に通路を
炎で染め上げる。
「っ……味方!?」
左腕でコクピットを庇わせつつ、衝撃に頭を振って機体を起こさせると同時に、
スラッシュウィザードを装備したライトブルーのザクファントムと、長銃身のビーム砲を
抱えたザクウォーリアがサトー機を庇うように降り立つ。
『こちらジュール隊! 無事か!?』
聞こえてきた通信に、サトーは顔を上げた。
「イザーク=ジュール! 私の部下は……!」
『問題ない。連合艦隊にもデータを転送した! ユニウスの解体作業は始まっている!』
「そうか……」
『脱出しろ!』
「済まない」
斬機刀を鞘に納め、サトー機は床を蹴った。効きが悪くなった操縦桿を倒し、残り僅かな推進剤を
使ってユニウスの外へ流れていく。先程の写真にもう一度目をやった。
「……済まない」
視界の真中に浮かぶナスカ級の艦影が、微かにぼやけた。
『作業チームをやらせるわけにはいかない! 道を切り開く! 付いてこいディアッカ!』
『はいはい、何時も付いてきてるだろ?』
体勢を立て直すMAガイアに、大型ビームアックスを上段に構えたイザーク機が立ちはだかる。
オルトロスの砲口をビーム光でギラつかせたディアッカ機が、枝道に隠れたその他を威嚇した。
『ザフトを嘗めるな! テロリスト共ッ!!』
91 :
6/10:2006/08/17(木) 20:57:08 ID:???
『こちらポイントK8、配置についた。作業開始する』
『ポイントA6、配置についた。作業開始する』
「急げ! グズグズすると、割れても間に合わん!! クソ、デカブツが……」
2機がかりでメテオブレイカーをセットして掘削を始めるミストラルを護衛するダガーLの
パイロットは、ユニウスセブンに着地した時よりも確実に近づいている地球に舌打ちした。
「この一大事だっつーのに、上の連中はウィンダム1機寄越さん。大気圏で全部燃え尽きちまう
とでも思ってんのか!?」
『大方、我々ともう一度戦争する気じゃないのか』
「あぁ?」
ザフト側の作業を護衛するゲイツRの女性パイロットが通信を繋いでくる。
『このユニウスを中途半端な形で落とし、地球に被害を出せば開戦の口実に出来るだろう。
セカンドシリーズやザフト製MSが敵機になっている事は確認済み。お前達ナチュラルの
気運を高めるには充分だ』
コーディネイター特有の、パーツが均整取れて並ぶ作り物めいた美形に、男は再び舌打ちする。
「俺らが、そんなに単純そうに見えるかい? 『宇宙の化物』さんよ」
『推論を言ったまでだ』
休戦から2年が経ち、ザフト、地球連合双方が戦争に慣れてきた。引き金を引くのに
最早憎しみは要らず、人殺しがより職業的に、事務的に処理されつつあった。
「パナマで好き勝手された事は、今でも覚えてるぜ」
『私もこの場所で両親を失った。だから、MSなどに乗っている』
ダガーLのバイザーとゲイツRのモノアイが交錯し、次の瞬間の互いにビームライフルを
向け合った。
「避けなっ! コーディネイター!」
『かわせよ、ナチュラル!』
そして光条二筋。ダガーLが岩陰から顔を出したゲイツの頭部を、ゲイツRがミストラルを
狙ったシグーの右肩を撃ち砕く。
「一緒くたに墜とされないよう、気をつけるんだな!」
『留意する』
ダガーLの背部インジケーターが灯り、重厚な無反動砲が両肩に下りた。 ゲイツRの両腰で
レールガンが跳ね上がり、先端の照準機と単眼が輝く。
その両機の相対的上方を、イーゲルシュテルンで弾幕を張るソロネが凄まじい速度で
飛んで行った。瞬きするほぼ一瞬で視界を過ぎ去り、撃墜されたらしいMSの残骸が雨のように
ユニウス表面へ『降り注いだ』。
「な、んだあれ……艦、なのか?」
92 :
7/10:2006/08/17(木) 20:59:58 ID:???
『スゲーな。艦つーかデカいMAだ……』
「陽電子砲をオミットした分、余剰エネルギーを推進機関に回せます。豪華客船に使われる
ショックアブゾーバーを採用していますので、乗っても死にませんよ!」
ベルトで身体を固定した艦長席で、イアンがモニターに叫ぶ。推進機関の轟音は戦闘機並だ。
暴れ馬。戦闘機動に入ったソロネを喩えるにこれほど相応しい表現は無いだろう。間違えて
泥酔した娼婦を乗せてしまったユニコーンのように、両脚のスラスターによって巨大な艦体が
縦横に振れる。
その最高速度は並の量産機では追い付けず、PS装甲、耐電磁処理によって強化された
『正面装甲』の耐久力はザフト、連合両軍の中においてトップクラス。生半可な障害であれば
艦首前面に起動させた弱収束の超大型ビームサーベルと質量で薙ぎ倒す。
上下前後左右から襲い掛かる加速Gは最高性能のショックアブゾーバーでも殺しきれず、艦の
内装はまるで一昔前の宇宙船。側面、後方を守る為に増設された砲塔群が狂ったように
機銃弾と速射ビームを吐き散らかす。
艦体の随所にMSの繋留器具が取り付けられており、ファントムペインのMSがそれぞれの
持ち場で近づく敵機を迎え撃っていた。
「MSを打ち出すカタパルトが使えないんですよ!? 前に突出する為に造られた艦なんです。
設計に口を出したらしいジブリール卿には『乗ってみろ』と申し上げたい!」
『……お、おい大丈夫かお前ら! 吹っ飛ばされてないか!?』
『す、すてら……なんか、キラキラしてる……』
『ネオ、俺当分ジェットコースター良いや……』
『そ、速度自体は大丈夫なんだが、自分で操縦できないのがちょっと』
『問題ありません』
『凄ぇなマリア……い、良いか! 現場に着き次第、俺もエグザスで出る!
ザフトのMS隊がいるから撃つんじゃないぞ! って、ちょ、リー! 壁ぇ!』
「強度的に問題ありません。突入します! バリアント! ゴッドフリート!!
直接照準で構わん!
撃ちまくれ!ビームフェンスの出力から目を離すな! 挽肉になりたくなければな!!」
骨伝導フォン越しにイアンが怒鳴りつける。ソロネの各部装甲からレールガンと
エネルギー収束火線砲が突き出し、眼前の岩壁に破壊の奔流を叩き付ける。
艦首に纏う緋色の輝きが弾け、電光と共に衝角を為す。
『待て、リー! 俺が悪かった!』
「突入!!」
ネオの悲鳴を引きずって、機関を全開にしたソロネの艦首が脆くなった壁を焼き、砕き、
打ち貫いた。
93 :
8/10:2006/08/17(木) 21:01:50 ID:???
『出過ぎるな、シン。 ポッドにやられるぞ』
「大丈夫だ! カオスはインパルスで止める! レイとルナは周りの相手を!」
ミネルバのMS隊は苦戦していた。敵機を潰しながら通路を進み、エネルギーと残弾を消耗した
所で奪われたセカンドシリーズの『カオス』と接敵、交戦状態に陥ったのだ。
「くっそおぉ! 何でこんなにザフト機が湧いて出るんだよ!」
『……定期パトロールは、週に一度ユニウス表面を調査していた。パイロットの事を
考えても、これらが配置されてから3日も経っていないだろう。しかし……』
『それにしてもこんな大部隊……無理よ。絶対何処かに引っ掛かってた筈!』
スラッシュウィザードを装備したルナマリアの赤いザクが、ビームガトリングの掃射で
敵を追い散らす。
『其処は、俺にも解らない……解っている事は、このまま戦い続けても状況は悪化するばかり
という事だ』
「だが、俺達が少しでも敵を減らさないと……作業班が!」
フォールシルエットを装備したインパルスが加速する。化学精製工場跡、まるで墓標のように
折れ曲がった柱が立ち並ぶ中、深緑色のカオスへ迫る。
『シン! 冷静に!』
「冷静になんてなってられるか!時間も!……ッ!?」
焦燥感で我を忘れかけたシンは、己の迂闊さに気付いた。カオスの右肩に装着されていた
ポッドが、無い。
カオスのライフルが光った瞬間、強引な機動で柱に機体を擦らせながらかわす。しかし
続くアラートが背筋を凍らせる。
「上!」
頭上に放たれ、獲物を待っていたポッドがインパルスに狙いを合わせた瞬間、
ソロネの巨体が天井を崩落させながらポッドを弾き飛ばし、反対側の壁に激突した。
イアン=リーの下した判断はある意味で適切かつシンプルなものだった。
MSを発進させ後方で待機という基本スタンスが取れない以上、前に出るしかない。
そして前に出るからには、的として狙われる。ユニウス表面の侵入路を探して
MSを降ろしている間に、側面と後方から集中砲火を受けて沈む。
ならば1秒でも速く目的地へと辿り着き、比較的安全な場所を確保するしかない。
シンプルにしてロジカル。しかしロジックは人を幸福にしない。
「各員……っまだ吐くな! ハッチ開け、エグザスを出す! 大佐!!」
『……ぁあ?』
「御武運を!」
『あぁ……』
「対空銃座を支援モードに設定…し、っむ……PS装甲、再調整急げ!」
指示を終え、イアンは真っ青な表情でシート脇の袋をひったくった。
94 :
9/10:2006/08/17(木) 21:06:27 ID:???
『ザフトと通信を共有する。友軍を撃つなよ!』
スティングの言葉の直後、停泊したソロネの後部ハッチが開いてエグザスが出撃する。
デュエルMkUがカオスを追うべく飛び出した。他の3機は、援護射撃で遮蔽物に隠れた
残敵を掃討するべく向かっていく。
『マリア! モビルポッドに気をつけろ!』
「了解。ネオ、援護をお願いします」
マリアの言葉が終わらぬ後に、柱を縫って飛ぶエグザスからビーム刃を展開した
ガンバレルが展開される。射出された4つの攻撃端末が時間差でカオスの周囲を飛び交い、
ポッドを放つ暇を与えない。
「……」
大柄なビームアサルトライフルを構えさせ、カオスに狙いをつける。蒼穹色の瞳に
三角のロックオンマーカーが映り込み、トリガーを引いた。
1発2発と回避され、3発目がガンバレルに足止めされた所で脇を掠める。
MAに変形したカオスがスラスターを全開させ、ガンバレルを振り切った。
「速い……っ」
レーダー上で霞む光点に眉を寄せた直後、マリアは反射的にレバーを倒す。
デュエルが右に跳ね、さっきまで居た場所をカリドゥス改の高出力ビームが抉った。
岩片が溶けて、一際大きな爆発を起こす。化学プラントに残留していた可燃物質の引火だろう。
「後ろ……相対的上方……!」
爆発で煽られたデュエルを制御しつつ、マリアは射撃がきた方向へ機体を向けた。
MSに戻ったカオスが素早く方向転換し、ライフルを2連射。盾で受け止め、内側の放熱ダクト
が白煙を噴き出した。間髪入れずに再び変形して上方を飛び回るカオス。
「2発で放熱限界を超えた……何て、威力。これでは……」
『マリア、下がれ!』
ネオとマリアの2人が同時に結論に達する。厳しい、と。しかし下がる暇を与えまいと、
カオスが真上に飛び込んだ。脚部ビームブレードを伸ばし、獲物を引き裂かんと急降下する。
2機の中間をインパルスのビーム射撃が貫いたのは、その時だった。
『レイ、上に空いた大穴にミネルバを呼んでくれ! デュートリオン送電で持ち直す!
ウィザードも交換しないとまずいだろ!?』
『そうだな。ルナマリアはガナーに換装しろ。開いた場所から狙い撃て』
『射撃、苦手なのよね……っ!』
白いブレイズザクが、ソロネが開けた破孔へ信号弾を上げる。
脱出させまいと立ち塞がるゲイツ目掛け、ルナ機が突っ込んだ。ビームアックスでフェイントを
掛け、突き出されたビームサーベルをかわしざま、ショルダータックルで跳ね飛ばした。
95 :
10/10:2006/08/17(木) 21:07:53 ID:???
「そろそろ打ち止めか? しっかし気色悪い連中……」
最後のジンが連装ロケットによって頭、腕、腹部の中身を吐き出し崩れ落ちる様を一瞥し、
スティングは苛立たしげにコンソールを叩く。レーダー感度を上げて索敵を再開した。
此処にやってくるまで、撃墜した敵機は10を越える。だがその全ての挙動に、スティングを
含むファントムペインの面々、そしてネオは違和感を覚えていた。
「シミュレーターの延長で戦ってみましたって感じか。課外授業気分で」
互いの命が掛かっている筈の戦闘だというのに、ザフトの旧式達はまるでマニュアルに書かれた
機動パターンを試すような回避、攻撃を繰り返してきた。さして苦も無く撃墜できはしたが、
アウルは更なる違和感に気付いていた。
『それだけじゃないよ。ダメージ食らったり仲間がやられる度にパターンが変わってた。ほら、
シミュレーターの実戦モードLv6みたいな感じ?』
『それに……誰も、逃げなかった。助かりそうなのもあったのに……』
僅かに怯えを孕んだステラの声に、スティングの苛立ちは募っていった。
「こいつら、まさか…… ッもう1機! 近いぞ!」
スティングのその叫びと共に、3機が遮蔽物に使っていた柱が爆砕した。
連装ビームの青白い閃光が幾つもの柱を撃ち抜き、炎の尖塔へと変える。
続いて紅の光が地面を削り、気化した大地が無音の爆発を起こした。
ブリッツMkUのグレイプニルが吹き飛ばされ、バスターMkUの右肩のロケットポッドに岩欠が
突き刺さって大破する。残弾が無かったのは不幸中の幸いだった。
『障害物関係無しか! どういう火力だよ!?』
「敵機……データにない! じゃあ、ザフトの新型!?」
炎と粉塵が納まった後、其処に悠然と立つのは海洋色のセカンドシリーズ、
ZGMF-X31Sアビス。
まるで反撃がないと見切っているかのようにスラスターを噴かして機体を浮かせ、
ツインアイを暗闇に灯らせる。
「何? こっち全機に……マルチロック!?」
そして再び砲撃。全身のビーム砲を順繰りに撃つ『斉射』ではなく、同時砲撃。
猛禽のように飛び回っているカオスに上方面を抑えられたままなので、ファントムペインは
逃げ回る事しか出来ない。
「マルチロックに同時砲撃か! ふざけた真似しやがって! この……」
何とか機を掴もうと周辺地図を呼び出しかけたスティングの脳裏に、訓練時代に見せられた
戦闘映像が去来した。
「え……?」
アビスの蒼いショルダーアーマーが翼のように展開し、光が集まる。
「フリーダム……キラ=ヤマト……?」
96 :
264:2006/08/17(木) 21:10:51 ID:???
投下以上です。ユニウスセブン編は前、中、後の3つに分ける予定です
264さんGJ!!
ユニウス落下阻止側のサトーもかっこいいな
その一方で戦場に踊りこむまでにゲロゲロなソロネ一同が心配だwww
>>264様乙!!
最初混乱したけど、サトーさんユニウスセブン落下を阻止する側に回ってるのね
戦艦で高速戦闘ってのは斬新でいいなw でもこんなゲロゲロな戦艦には乗り込みたくない…w
リーがめちゃめちゃ元気良いのも良い感じ! ネオとのコンビも面白いしw
展開的には、ラクシズが敵なんだろうか? あまり無い内容なので期待大!
単発設定小話 「黄金の意思?」
〜アカツキ島、キラが宇宙へ飛んでいった後で〜
カガリ「・・・代わりって、なんだよ」
キサカ「カガリ!・・・ああ、ここにいたか」
カガリ「キサカ。キラならもういっちゃったぞ」
キサカ「エターナルはキラに任せておけば大丈夫だろう。それよりも、問題はこっちにある」
カガリ「オーブ・・・か」
キサカ「セイラン家はロード・ジブリールを匿い、ザフトはいよいよオーブへ侵攻を開始した」
カガリ「・・・くそっ!!なんとかならないのかっ!このままここで見ているくらいなら、国と一緒にこの身も焼かれたほうがマシだ!!」
キサカ「そういうことだ。こっちへ来い。お前に見せるものがある」
カガリ「見せるものだと!?」
〜キサカに地下深くへ連れて行かれるカガリ〜
カガリ「キサカ、私に見せたいものってなんなんだ?」
キサカ「この扉の奥だ。さ、中に入るがいい」
カガリ「・・・こ、これは・・・・・・」
〜息を呑むカガリの後ろから声がかけられる〜
エリカ「これがルージュの代わり。・・・あなたのお父上が残された最後の遺産」
カガリ「・・・お父様が!?」
エリカ「そう。そしてこれがあなたへの最後の言葉」
〜手に持っている電子ファイルのパネルを操作するエリカ〜
(ウズミ「カガリ・・・もしもお前が力を欲する日来たれば、その希求に応えて私はこれを贈ろう。
教えられなかったことは多くある。が、お前が学ぼうとさえすれば、それは必ずや、お前を愛し、
支えてくれる人々から受け取ることができるだろう。ゆえに、私はただ一つ、これのみを贈る。
力はただ力、多く望むのも愚かなれど、むやみと厭うのもまた愚か。守るための剣、今必要ならばこれをとれ。
道のまま、お前が定めた成すべきことを成すためならば・・・。が、真に願うは、お前がこれを聞く日の後のことだ。
今、この扉を開けしお前には届かぬ願いかもしれないが・・・・どうか幸せに生きろ、カガリ。」)
カガリ「・・・うっ・・・おどうざまぁぁ・・・・・・」
〜その場に崩れ落ちるカガリ〜
キサカ「・・・カガリ・・・・・・」
エリカ「ハイ、ハイ、ハイ、、だから泣くのはいいけど、その前にあなたの言葉を聞かせて欲しいの。」
カガリ「・・・シモンズ主任?」
エリカ「いかにいまだに影響が大きいとはいえ、ウズミ様はもうこの世にはいない人よ。・・・今のオーブの代表は誰?」
キサカ「主任・・・・・・」
エリカ「ウナト・エマ・セイランでもない、ロンド・ミナ・サハクでもない。・・・あなたなのよ、カガリ・ユラ・アスハ」
カガリ「・・・もちろん。私が今もオーブの代表だ。譲った覚えはないからな」
エリカ「うん。いい返事だわ。・・・だから、あなたの言葉でオーブの理念を今一度唱えなさい。・・・・・・でないとこのアカツキはわたさないわよ!?」
〜カガリにやさしく笑いかけるエリカ〜
カガリ「・・・他国を侵略せず・他国(から)の侵略を許さず・他国(同士)の争いに介入しない・・・か。うん、約束する」
キサカ「・・・・・・」
カガリ「取り戻したら、必ずお前たちに与えてやる。・・・・・・だから、だから今はその力を私に・・・・・・」
〜エリカたちを見回すカガリ〜
エリカ「・・・・・・これがアカツキの始動キーよ。さぁ、行ってらっしゃい」
〜軽く頷き鍵を受け取るカガリ。そして、あわただしくなるアカツキ島地下施設〜
〜アカツキに乗り込むカガリ〜
カガリ「カガリ・ユラ・アスハ、アカツキ、発進する!」
完 ・・・・・・とりあえずここで第三部は終了。第四部はオーブ攻防戦からとなります。
単発設定小話 「りふれいん」第三部総纏め
鼓の音「ポン、ポン、ポンポンポンポンポンポン。・・・ポンッ」
幕の引く音「ザァァー」
〜定式幕が舞台袖に引かれてゆく〜
アーサー「コンッ。さぁ〜いかがでしたでしょうか悲喜交々の第三部。兄と対面を果たしたマユ。わかっていたとはいえ
シンと死別したステラ、そして宇宙へあがるシンとスティングらガーティ・ルーの面々。相も変わらず独立愚連隊
のアークエンジェルにネオ・ロアノークとして生きていたムウ・ラ・フラガの合流とぉ・・・ここまでが第三部前編」
マユ「・・・・・・副長・・・なにやってんの?」
ルナマリア「やめなさい、マユ。一人で悦に入ってるんだから・・・」
アーサー「ちょっとちょっと、お嬢さん方。見るってぇいうんなら、売店で水あめ買っておくんなさいよ」
ルナマリア「・・・それは紙芝居でしょ?ま〜ったく、適当な知識で変なことしたがるんだから」
マユ「・・・紙芝居・・・って?水あめって?」
ルナマリア「紙芝居ってゆうのは古代のアニメーションの走りよ。マユ。で、これが水あめね」
〜いつの間にか手に持っている水あめをマユに渡すルナマリア〜
ルナマリア「ほらこれをね、棒でこねくり回すのよ」
アーサー「・・・コホンッ。二人お楽しみのところ申し訳ありやせんがね。・・・続き、やらせてもらってもよござんすかね?」
ルナマリア「えっ・・・ああ、どうぞどうぞ」
〜座布団に座りなおすアーサー〜
アーサー「・・・うほんっ、さて気を取り直しまして。デストロイを撃退し勢いにのるザフト軍、そしてデュランダルはついに
胸に抱いていた野望を口にする。・・・デスティニープラン、その詳細は語らぬがなにやら不気味なそのプラン。
そしてデュランダルはアークエンジェルの殲滅をミネルバに命じ、ついにマユは積年の夢、キラ・ヤマトを打ち砕く!
しかしして、それはアスランとメイリンの脱走劇を引き起こし、ミーアはデュランダルのもとにとどまった。と、これが中編」
〜アーサーが喋ってる間中、水あめをこねくり回すのに没頭していたマユとルナマリア〜
マユ「・・・あっ、なんか色が・・・」
ルナマリア「で、目で楽しんだところでなめるわけよ。・・・ん〜甘っい!」
アーサー「あの〜次、最後なんでね。ビシット締めさせてもらえますか?」
ルナマリア「はいはい・・・どうぞ」
〜アーサーに目を合わせることなく促すルナマリア〜
アーサー「カツッ。さっ、仰天展開の後編。生きていたキラ・ヤマトはエターナルの危機知り宇宙へあがり、新しい剣を手にする。
翼に装着されたドラグーン8基を操り、たった2分で25機ものザクやらグフやらを宇宙に散らす。さらには、こちらも新たな
MSに乗り込み久々の登場となるジュール隊の面々。そして姿を現す黒いミーティア。さあさあ!いよいよ終盤第四部。
マユとシンの行方は?デュランダルの野望は成就するのか?はたまたキラ・ヤマトたちに阻まれるか!?
ベシッ!それは次回からのお楽しみ。これにて第三部総纏めは終わりにございまする〜」
鼓の音「ポン、ポン、ポンポンポンポンポンポン。・・・ポンッ」
幕の引く音「ザァァー」
〜定式幕が舞台袖から引かれ、舞台が綴じられる〜
〜第四部ちょこっとダイジェスト〜
〜崩れ始めるメサイアの中〜
デュランダル「そうか・・・君がエクステンデッドか」
〜コペルニクス、ラクス・クラインを前にして〜
ミーア「私がラクス・クラインよっ!・・・あんたなんか・・・あんたが偽者よっ!!死ねぇっ!」
〜ぼろぼろのアプレンティスのコックピットにて〜
シン「はぁはぁはぁ・・・・・・あのMS・・・インパルスだよな?」
完
一日に一レスがないと不安なんで保守
〃´ ̄ヽ
l 从ノハ )
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ
_(ノ(__つ/ ̄ ̄ ̄/__
\/___/
マユ自ら保守するの!
>>100 こういう総集編なら見てみたかったw
負債は総集編するにしてもセンスが無さすぎだぜ、非グゥレイトォ
「いやー、ほんと助かったよルナ。」
「お礼は今度のキョンイベントでね。」
嫌な会話をしながらアキラと浴衣に着替えたルナマリアが歩いている。
その他の皆は多少げんなりしながらもアキラがお礼にくれた大判焼きを頬張っている。
「・・・・・・・?そういやジョー、今日何も買ってないね。どうしたの?」
カルマがチーズの入った大判焼きを食べながら聞く。
「・・いや、ちょっと食欲がなくて・・・。」
その言葉に全員怪訝な顔をする。
ジョーは常に極限状態だったせいか食べ物に関しては意地汚い。
味とかどうでもいいから量、食えるだけくれ。そう言う人間だ。
だから食欲がないなんてことはありえないのだ。
「おい・・・病院・・・・・・・。」
そうハイネが言いかけたとたん急に人ごみがさらにざわつく。
「・・なんだ・・?」
そのとたん、ざわつきをさらに抑えた大声が響く。
「ジョォォォォラインンンンン!かぁぁぁくぅぅぅごぉぉぉぉぉぉぉ!!」
手のひらから光が出そうな叫び声。
そしてその場にいた全員が逃げる。
するとそこには何やら怒りに燃えた目をした完全武装のイザークがいた。
なんか後ろの篭に大量の武器を詰め込んで弁慶みたいだ。
「くぅぅうぅらぁぁぁぁぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!」
ジョーに向けてイザークが何か投げつける。
それを近くにいたマユがとっさに浴衣の裾からトンファーを出しそれを跳ね返す。
「きゃぁっ!!!」
跳ね返した物体の重さにマユの体に衝撃がいく。
後ろに倒れそうだったマユをシンが支える。
「マユ!!大丈夫か?!」
「つっ・・・・・大丈夫だけど・・・・・。」
マユが顔をゆがめながら答える。
飛んできた物、それは西洋剣だった。
「・・・・・・・・・・・・某王様の宝庫?」
アキラがぼけるが誰も突っ込まない。
そう、イザーク・ジュールはこの剣を高速で投げつけたのだ。
正直言って重い。しかも投げにくい。
「ジュール隊長・・、彼があの時うちのチームにいれば・・・・・。」
「レイ何憧れの目で見てんの?!」
目を輝かせながらイザークを見るレイにアウルが突っ込む。
「おい、にいちゃん。何をした。」
カルマが声を低くしながらジョーに聞く。
「・・・・こないださ、エザリアに呼ばれてジュール邸に行ったんだ。」
ジョーが無表情に答える。
「見られた?」
ゼロが顔を暗くしながら聞く。
「おう、キスしながら服脱がせる所をばっちし。」
表情を変えずにばっちし、の所で親指を立てながら答えるジョー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・流れる沈黙。
「総員・・・・・退却ーーーーー!!」
アスランの叫びと共に一斉に全員で駆け出した
「皆・・・武器持ってないか・・・っ?!」
走りながらアスランが聞く。
「拳銃は・・・・っ使えないでしょ・・・・・・!!」
額に汗を浮かべたグレイシアが答える。
「て・・・・・鉄パイプか何かあれば・・・・!」
「私も・・・っ!!」
レイとミーアが答える。
『俺は素手で大丈夫だけど?』
メイリンを背負ったシンハロがなんでもない風に言う。
「あっ!!メイリンお姉ちゃんずるい!!」
「俺も乗せろよシンハロ!!」
『メイリンは非戦闘員だからしょうがないだろ!!』
ぎゃーぎゃーとまた喧嘩が始まる。
「お前らーーー!!」
ハイネに怒鳴られ喧嘩は収まる。
「ぜぇはぁっ・・・ぜぇはっ・・・と、とにかく!!!作戦会議!!集合場所は花火を見る予定だった神社の裏!
全員・・・散開・・・アキラとレイは足止め!!」
「なんでさ?!」
「・・・・・・・・訴えてやる。」
ハイネが息を切らしながら叫ぶ、きっと誰を足止めにするかは適当にいったに違いない。
その指示通りにそれぞれがばらばらに分かれる。
背の高いシンハロは路地に逃げ込み、その他は人ごみに紛れる。
アキラとレイだけ取り残される。
「じゃぁぁぁぁまぁぁぁおぉぉぉぉぉすぅぅぅるぅぅぅなぁぁぁぁぁぁ!!」
イザークの叫び声と共にバットが飛んでくる。
「くっ!!」
アキラはそれを懐から出した鉄の塊のような物で跳ね返す。
バットを跳ね返してからそれを開く。それは鉄扇だった。
「私は小物を片付けながら相手に近づく、レイは大物を。」
声が普段より低くなり口調はもの静かになる。
「解かっている。・・・・・・たくっ、ハイネもいい加減うぜぇなぁ・・。」
レイがバットを拾った途端、目つきが変わる。
髪をゴムで止め、前髪はピンで邪魔にならないようにとめる。
手に持った金属バットで肩を叩く。
正直精神を病んでいるんじゃないだろうかと思うくらいの変貌振りにイザークがちょっとびびる。
「行くぞ!!」
「おーけい。」
アキラの声に気だるそうにレイが答え、次の瞬間二人は地を蹴った。
ほのぼのマユデスがゲームになったらMSのゲームじゃないよ、生身で「マユデスBASARA」に
なるに違いない。ほのぼのです。
夏祭りだけどこんなオチ。
これから暴走イザークVSマユデスメンバーの戦いが始まります。そんなに長くないけど。
下手したらMS戦より肉弾戦の方が描写が多いんじゃないんだろうか・・・この話。
それでは。
追伸。
アキラの性格変更能力で『今日はだーれだ?』のクイズが出来る気がしてきた。
ここでイザークが来るとは思わんかったwww
西洋剣を高速でブン投げるって凄いなww
16スレ目 107,108,109の続き
第四十六話
アイリーンや多くの評議会メンバーとザフトの大戦力を伴って、移動要塞メサイアは 地球へと進路をとる。地球への大規模降下作戦の急場の拠点となるために。
同時刻、プラントのニュース。アイリーンは力強く訴える、デュランダル暗殺犯が連合軍特務隊のゲン・ヘーアンなる人物であり、地球の敵意が明らかになった、自分は先の激戦で負傷し、長期療養中のマユ・アスカに代わり、戦って平和を勝ち取ることを宣言した。
エターナルのブリッジでそのニュースを見たキラは一抹の不安を覚える。バルドフェルドから惚けるな、と渇を入れられる。横目にそれを眺めたラクスは、改めてエターナルが向かう廃コロニーを見つめた。
エターナルの挙動を電子の地図上で見るネオ。この先は一応プラントの領内と語ったリー。同時に、先に結んだ密約で賊が出没することが容認された宙域でもある、とネオは言葉をつなぐ。
廃コロニーの宇宙港。ラクスとキラはミリアリアに挨拶し、手持ちのケースをミリアリアに渡した。そして、傍らのミーアには握手、ミーアはそれに応じつつ、死んだと聞かされたから死ぬ気で頑張ったのに、と嘆いてみせた。
ラクスは欺いたことを謝罪し、続いて、ミーアが立派にやってくれたから今日まで生き長らえた、と感謝した。同じくキラもミーアに感謝の言葉を送った。ラクスとキラ、並んだ二人の雰囲気を察して、ミーアはやってられない、とむくれた。
和む三人とは別に、ケースの中の資料を改めながら、ミリアリアはこんなことを呟く。
ジブリール家が、言ってみれば昔からの貴族で、その家が毎晩催すパーティーの中でロゴスの始まりとも言える人間の繋がりが形成された。そして現当主、ロード・ジブリールはロゴスの名誉党員である。これ以外に付け加えることはあるか、とラクスに尋ねる。
資格を保持していただけの歴代当主と違い、現当主はロゴスの活動に積極的に参加した。戦後すぐ、ブルーコスモスの盟主に納まり、ロゴスを説き伏せて月基地の大規模な再建に尽力し、ジェネシスの影に怯える連合寄りの月中立都市住人の地球移住にも貢献した。
退去した住人に代わり入ってきたのは、表向き、戦争で家族や帰る場所を無くした孤児、母子など。しかし、実際に移り住んだ人間は、エクステンデッドの素体や、復讐を動機にブルーコスモスに参加した者達、こうして月都市は、反プラント分子の巣窟になった。
ラクスは、デュランダル暗殺犯・ゲンにも触れる。ゲンの公式な記録は三点、ゲンが連合に籍を置いていること、前大戦中にオーブで戦死者の一人だったこと、戦後に月からそれを撤回したとこと。それ以外、ゲンに関する記録はない。
そして、ラクスは最後の資料を手渡した。数点の写真と設計図。両方に目を通したミリアリアは嫌な顔をした。レクイエム、膨大な熱量のビームと、その軌道を変える衛星を用いてプラントを狙い撃つ戦略兵器、いや、虐殺の道具。
ミリアリアは頭を振り、何人死んだ、と聞く。月に降りた者は全員、と答えたラクス。ミリアリアはしっかりこの情報を受けとり、プラントに戻ることを約束。ラクスもミーアをオーブに送り届けることを約束した。しかし、ミーアには寝耳に水だった。
これがエザリアの協力を得る条件だった、そうミリアリアは切り出した。エザリアが逃亡者や死人を当てにする程、今のプラントは当てにできない。この情報にしても怪文書として扱われるのが落ち。だから、これを有効に活用できる人間に、誰かが直接届けないといけない。
今にも泣きそうなミーアに、ミリアリアは大丈夫と優しく諭し、オーブで落ち合うことを約束した。そこに飛び込んできたバルドフェルドは、外部との接触が断たれていることを告げ、敵が、ファントム・ペインが来ると断言した。
蒼いジャスティス達を引き連れデスティニーを駆るネオは、リー、スティング、アウルから獲物の反応はない、と通信を受けた直後、出港するエターナルとミーティアFr(フリーダム)を発見した。
ミーティアFrの中でキラは、蒼いジャスティスの中心にいるデスティニーを凝視する。あれにマユの兄が乗っている、そう呟いた。
デスティニー率いる一群、ミーティアFrの両方が火気を構える。しかし、先制はラクスの、相手に武器を収めろという訴えだった。デスティニーからビームの返答、蒼いジャスティス等も倣う。露骨な問答無用に、ミーティアFrは厚い弾幕でエターナルを護る。
砲火と敵意が渦巻く中、ラクスは怖じず、尚も訴える。この戦争は、相手を殺し尽くすしか終わりの見出せない所に行き着こうとしている。ネオは、今度は言葉で答えた、我等の雇い主は宇宙開拓時代から宇宙百年戦争時代への移行を熱望している、と。
ラクスは激した、全人類の半分を戦争で殺すつもりか。ネオは事もなげに言う、もっと死ぬだろうな。そこまでわかっているのなら何故、とラクスは問わずにはいられない。
平和の中では、莫大な維持費を必要とするエクステンデッドは処分される、復讐者はその怒りを黙殺される、故に我等ファントム・ペイン、決して平和の犠牲にはならない。
その言葉に強い衝撃を受けるキラ。しかし、同時に、ラクスもネオと同じだけの強さを以て、その悪意を挫くことを宣言する。ネオは改めて部下に命令する、皆殺しにせよ、と。
蒼いジャスティス達が全ての火器を展開し、一斉射の構えを見せる。しかし、ミーティアFrのミサイルが、ビームが、相手に狙いを定めさせず、かつ足並みを乱し、機動力を伴った巨体は縦横無尽に戦場を駆け抜けた。
両陣営、同じ驚きを感じていた。ミーティアFrの奔放な動きは、エターナルの守備を放棄した動き。ブリッジはキラを諌めようとするが、ラクスがそれを止める。
片や、ネオは納得している。ミーティアFrの荒々しい動きに対処するため、エターナルの包囲が徐々に歪に、かつ遠巻きになっている。となると、自分の行動も決まってくる。蒼いジャスティス等が下がる中、デスティニーはエターナルに向かって飛ぶ。
その瞬間、デスティニーは孤立した。キラは、即座にミーティアFrでデスティニーを追いつつ、その火力を全体から単体へ切り替え、放った。そのビームやミサイルは、デスティニー本体ではなく、その周囲、いわば避けた先、全てに殺到した。
ミラージュコロイドを使う意味さえない状況で、ネオはあえて、猛追してくるミーティアFrを迎え撃つ。ミーティアFrが対艦ビームソードを振り被る。デスティニーはアロンダイトを抜く。真っ向から切り結び、アロンダイトは、ソードごとミーティアを一刀両断にした。
が、フリーダムはその直前、分離して逃れた。ミーティアの爆発。デスティニーはそれに巻き込まれまいとビームシールドを張る。その間、高速で飛び出したフリーダムは、エターナルを足場にして、強引に真逆の方向、デスティニーの方向に跳ぶ。
この動きに、蒼いジャスティスのエクステンデッド等は驚愕した。フリーダムはビームサーベルを構え、デスティニーの無防備な背中から刺突。
フリーダムのビームサーベルは、深々と根元まで押し込まれた。だが、デスティニーが背中に回した掌は、サーベルの放つビームを易々と弾いていた。この時、ネオはキラに語りかける、これをかわした直後の至近距離から、一斉射で仕留めるつもりだったのか、と。
デスティニーの手が、サーベルごとフリーダムの手を握り潰し、そのままフリーダムを投げ捨てる。そして、デスティニーは、フリーダムにはビームシールドを構え、エターナルにはビームライフルを構えた。
キラは息を呑み、フリーダムはエターナルへと飛んだ。蒼いジャスティスのビームを潜り抜け、エターナルのブリッジをデスティニーが撃ったビームとの間に、辛うじてフリーダムのシールドが滑り込む。止めた、キラが確信した直後、ビームはシールドを貫通した。
わずかに着弾点が逸れたビームの一撃は、エターナルのブリッジを吹き飛ばし、ラクスを外へ。フリーダムの残った片腕は、ラクスに届いた。コックピット、キラは傷ついたラクスを抱きとめる。
しかし、エターナルは直後の猛攻で戦闘能力を奪われ、Stフリーダムや∞ジャスティスが率いる一部隊も間近に迫る。そんなキラの腕の中から、本物のラクスとミリアリアのためにもう少し逃げ回ってくれ、とミーアは頼み込み。キラは従った。
それを見取って、ミーアはマユに呼び掛ける、こんな自分でもあの人と同じ天国にいけるだろうか、と。キラは、すぐに何とかするからしっかりしろ、と励ました。
ベッドの上に横たわり、虚ろな目をしたマユがいる狭い部屋に、アビーは訪れた。アビーはほとんど手の付けられていない食事に目をやり、ちゃんと食べるように言った。暗い眼差しのマユは、アビーに自分を殺してくれるように頼んだ。アビーは拒否した。
なら、危険を冒してまで会いに来なくていい、兄のことが露見した以上、自分はもう終わり、とマユは言う。アビーはそれでも励ますが、マユは、家族を犠牲にしてまで拾った命で散々人を殺したからバチが当たった、と返した。
アビーは、マユの手を握り、何でもいいからやり残したことを思い出すように言った。マユは何の抑揚もなく答える、コーディネーターを皆殺しにしたい、代わりにナチュラルを幾ら殺しても気が晴れなかったから、と。
一瞬、呆けてしまったアビー。しかし、すぐに己を取り戻し、マユのその願いを叶える約束をした。そして、耳元で誓う、マユを決して、平和の犠牲にさせない、と。
色さえも失ったフリーダムの中で、物言わぬミーアを抱いたキラの目に、ザフトの基地が見える。すると、その基地から、キラが見たこともない三機のMSが出撃し、発砲。キラは回線を開くが、通信は妨害されていた。驚愕するキラ、警告もなしに攻撃された訳を理解した。
なす術もなくビームを射掛けられる最中、コックピットの中でキラは訴え続ける。だが、フリーダムは、三機のMSのビームサーベルに貫かれ、程なく爆発した。
ガーディ・ルーのブリッジ。人知れず顛末を見取ったリーは、闇雲に逃げていただけか、と吐き捨てた。
ミーア「……いい歌、次、これ歌お…ぅ……」
>種マユ
いやもう、脳内が「一体コレどうなるんだー!?」で埋め尽くされまくり。
あまりの展開に我もビックリ。
とにかく次をワクテカしながら、いやガクブルしながら待ってます。
しかし、「決して平和の犠牲にはならない」のくだりは重いっすね。
キラ死亡!?マユが完全ラウ化!?
一体どうなるんだ!
相変わらず予想も出来ない展開に固唾飲みまくりです!
連合が連合らしく数で押してきている所もイイなあ
…しかし、少々分かりづらいところがあったのですが、キラがコクピットに入れたのはラクス?ミーア?
前後に両方の名前が出てるのでちょと分かりづらかったです…
「う〜〜」
キラはベッドに身を投げたままでうめいていた。頭には布団を被り全身冷や汗びっしょり
である。机上には抗欝剤の小瓶が転がっていた。
休眠中、またフレイの夢を見た。獣のようになって何度も交わったあのころの夢だ。
(もっとも戦後一年間、キラは戦争のトラウマから今更ながらにEDになっていたのだが)
今のキラ=ヤマトのストレスは二年前に砂漠で戦っていたころを遥かに凌駕していた。
友人の命どころか一国の運命が彼の肩にかかってきているのだから当然だろう。
しかもエターナルに乗っていたときのような一個人としての戦士ではなく「准将」
である。彼自身は少佐でも十分すぎると抗弁したのだが聞き入れられなかった。
同じザフトに協力するにしても「少佐」と「准将」では重みがまったく違う。
実際のところカーペンタリアのオーブ亡命政府(首長カガリ)の戦力は限られており
派遣できる戦力はキラとフリーダムくらいしかなかった。キラ自身もそのことは
分かっていたから已む無く引き受けたのである。
「ラ、クス…」
キラは自分を抱きしめてくれた人の名を呼んだ。しかし彼女は遥かなるカーペンタリア。
そして彼は某プラントのドック内、戦艦の中だった。漠たる宇宙空間が二人を引き離して
いた。姉のカガリもここにはいない。
「ラクス…助けて…」
キラ自身はそれほど強い人間ではない。ただ弱いなりに頑張ってきただけだった。
しかし非常にもアラームがなる。それは呼び出しの不吉なる知らせ。次の出撃が決まった
のだろうか。
「もう、いやだ…」
しかし泣き言を言っても逃げ場は無い。キラはベッドから起き上がると向精神薬を飲んで
ブリーフィングルームへと向かう。一人だけながら一応はお供を連れて。
「ヤマト准将」
オーブから付き添ってきたダコスタが心配そうな顔で呼びかける。
「体調が優れないのなら…」
キラは引きつった微笑を浮かべて首を振った。
「大丈夫、気にしないで」
しかし彼の目の下には薄いクマが出来ている。
ダコスタは思った。もう、そろそろ限界かもしれないぞ、と。もう何度か戦場に出て
ファントムペインの工作部隊を倒す戦果を挙げた。アリバイとして十分とはいえない
までもここで「体調不良」を主張しても悪くは取られないだろう。
キラの役目はザフト圏内でのテロ防止に協力することとが八割、人質に近い役目が二割
である。
「大丈夫だから…」
キラは何も聞かれていないのに呟くように言った。その視線は宙を彷徨っている。
(こりゃ本格的にやばいぞ…)
ダコスタの苦悩は深まるばかりである。バルドフェルト隊長も無茶を言ってくれる。
ダコスタの役目はキラの護衛と情報収集。しかし情報を収集したりキラの身を守ること
は出来ても心の問題まではどうしようもない。
ここにきて一週間ほど過ぎてからキラは特に憔悴していっているように見える。
(隊長はデリカシーが足りないんだよ…)
心臓に毛が生えたようなバルドフェルトは何でも自分を基準に判断してしまうところが
あった。そのことでダコスタは今までにも結構苦労してきたのである。
町を焼いたときさえ「フ、野宿か。ヒッピー生活で反省してもらおう」とか抜かしていた。
バルドフェルトは若いころ(十代前半!)ヒッチハイクで地球を一周したそうだ。
野宿や狩りは当たり前で密航や逆強盗(襲ってきた奴を逆に恐喝する)もお手の物。
コーヒーを飲んでくつろぎながらそんな話を延々と聞かされたことを思い出す。ヒッピー
村での乱痴気騒ぎくらいならまだいい。ザフトの上官をぶちのめした話も許そう。しかし
歌手だったアイシャを口説きに行って警備員に撃たれそうになった件などは心臓に悪い。
未発見の古代遺跡を発見して進入、記念に石造の頭をへし折って持ち出してきたことは
文化財に対する冒涜だろう。
話し手の性格からして何割かはホラ話も混じっているのだろうし話術は凡人の比ではない。
その点を考慮しても実際にやった人間にしか分からないようなことまで詳細に語るのである。
そんなバルドフェルトにダコスタのような小市民の気持ちがわかるはずもない。
(ああ、もう、ラクス嬢がいてくれたら…こっちまで気がめいってくる…)
しかしラクスはオーブ亡命政府の広報要員としてカーペンタリアにいる必要があったし
逆にプラントに帰ればそのままザフトにいいように利用される恐れもある。
(いっそ慰安婦でも頼むか?)
そんな捨て鉢な考えがダコスタの頭をよぎる。彼自身、胃潰瘍になりそうなまでに
ストレスを溜め込んでいたし、オーブ時代の彼女に振られて早半年である。
美男子で「准将」のキラ相手なら適当な女は見つからなくもないだろう。しかし
問題はそいつが味方とは限らないことである。それにキラ自身が真面目な人間だから
浮気をすればラクスのことでかえって気に病んでさらにノイローゼになる恐れもある。
キラ自身も自覚はある様子だったからまさかフレイのときの再現にはならないだろう
がそれでも余計なリスクは冒すべきではない。
ダコスタは握った拳を震わせた。裏家業の情報収集と整理の作業で睡眠不足のことも
あって見開いた目は充血している。
このごろダコスタは時おり叫びだしたいような衝動に駆られるのだった。
キラの足取りは心なしか朦朧としている。大事な人間を守りたいという意志の力だけで
辛うじて自我を保っている様子だった。もともと彼は戦闘向きの性格をしていないし
名誉欲なども希薄である。
そういうわけでオーブから派遣された二人はかなり悲惨な精神状態に追い込まれていた。
キラは既に鬱病だったがダコスタの苦悩もまた尽きるところが無い。
しかしそんな状況に変化が現れるとは思いもよらなかった。しかもそれは追い討ちに
近かったかもしれない。ブリーフィングルームでキラとダコスタを待っていたのは
最悪の事態だった。
オーブが連合と手を組んでミネルバを襲うという情報。
「申し訳ありません!」
ダコスタは何が申し訳ないのか自分でもよく分からないながら深々と頭を下げた。
本当は何か大声で叫びたかっただけなのかもしれない。
あるいは半ば逆上して血迷ったのかもしれなかった。
「いや、別にそういうつもりでお知らせしたのでは…」
逆に困惑したザフトの艦長は済まなさそうに頭を掻く。
ダコスタは肩で息をしながら顔を引きつらせていた。
キラが思わぬことを言い出す。
「止めなくちゃ…僕たちも、僕たちも地球に戻ろう!」
目を丸くするダコスタにキラは凛とした口調で告げた。
「デブリ帯を突っ切ればすぐだし、途中でファントムペインの連中も全部片付ければいい」
デブリ帯に敵の工作艦が複数隠れているらしいことは既に知られていた。
驚いた艦長が「よろしいのですか」と尋ねる。その反応は理由がないことではない。
キラのこれまでの持論は「敵の掃討よりも航路の安全確保」であり無用な殺生は避けたい
というのが基本的な姿勢だったからだ。
しかしそのときのキラは違っていた。
そう。彼の中ではすでに何かが変わってしまっていた。
「僕が行って、全部やっつける…!!」
そう呟いたキラの目は完全に据わっていた。 <第三話へ続く>
デスティニーW作者氏乙!
しかし、否定的な意見を言わせてもらって悪いけど…内容が非常に把握しづらい気がする。
謎を作っておくことは作品に魅力を持たせるいい要素なんだが、謎が多すぎて、なおかつその影響でキャラの行動が無茶苦茶に見えると逆効果になると思う。
唐突過ぎたり、語られる内容が小出しし過ぎてる感があるので、正直愛着が湧かない感じだ。
特に気になるのはオーブ亡命政府というくだり。
これに至る経緯がほとんど語られてない上に、愛国心の塊みたいなカガリが国を捨てるという内容に、ちょっと首を傾げる。
そこらへんも納得行くような説明がされれば、他の作品にない特徴ということで面白くなりそうなんだけどな…
余計な言葉だったらスマソ
「私、もうすぐおばあさんになるんだよ」
ファントムペインの少女はそう言った。
ファントムペイン艦ヘルメス内のマユの部屋。すでに灯は消され、薄闇の中で二人の
少女が睦み合っている。マユのベッドに潜り込んだソフィアは小さく笑った。
「綺麗な肌ね、羨ましい…」
ソフィアはマユのむき出しの肩を撫でながら耳元に羨む様に囁いた。毛布の下で
ソフィアはマユを愛撫し続ける。マユは巧みな手つきですでに半ば裸にされていた。
「綺麗な髪。私と違ってあんなに綺麗な色」
マユを後から抱きしめ、その首筋に舌を這わせるソフィア。マユはびくりとして
抗弁する。そんなことをされるのは初めてでマユはかなり動転していた。
「そ、ソフィアちゃんだって綺麗な金色じゃない」
「色素が薄いだけよ。でき損ないのコピーだもの」
ソフィアはそう呟くとマユの肩に軽く歯を立てる。マユは状況が全く飲み込めず
辛うじてこう言った。
「どうして、こんな…」
ソフィアはその問いかけに答えない。かわりにこんな風に囁く。
「マユちゃん、綺麗な花嫁さんになれるね? それでずっと家族と幸せに暮らすん
でしょうね」
ソフィアがマユの部屋に来たのはついさっきだ。「一緒に寝ていい?」とソフィアが
言ったから「うん」と答えた。それがこんなことになるとは思ってもみなかった。
マユがソフィアに偉大たのとは別の意味の好意をソフィアは持ったとでもいうのか。
しかしソフィアは意外な言葉を吐いた。
「ねぇ、マユちゃん。私、嫉妬してるんだよ?」
「え?」
マユは驚きの声を上げる。ソフィアの歯が首筋に食い込んでくる。
「痛い!」
小さな悲鳴を上げたときにはもう、ソフィアの力は緩んでいた。そして温かく湿った
舌で滲み出したマユの血を舐めている。
(これがファントムペイン…ランスイル(長い爪を持つ<吸血鬼>)のパイロット…)
動悸が、する。ソフィアの滑らかな掌がマユの腹に触れた。
「私には未来なんてないから…あなたのことが妬ましくて仕方ないの…」
ソフィアの手はマユのパジャマを握っている。
普通の少女なら怯えて声も出なかったかもしれない。しかしマユは違っていた。
「分からないよ、未来なんて…」
小さな、しかし強い口調だった。
「お父さんもお母さんも戦争で死んじゃって、弟だってずっと意識が戻らないし…
お兄ちゃんはザフトだから…私…いつか、お兄ちゃんを…」
マユの言葉は次第に途切れがちになる。それはこれから起こる出来事への不安。
ソフィアは少し驚いたようだった。体を密着させているマユはその気配を敏感に
感じ取る。マユは自分に言い聞かせるように言った。
「でも…私は、絶対諦めないから…だから…ソフィアちゃんも…」
ソフィアが泣いていた。マユの背中にしがみついて泣いていた。
背中から直に伝わってくる嗚咽やパジャマに沁みてくる涙にマユは胸が苦しくなる。
ずっと泣きたかった。でも、もうどうやって泣いたらいいのか分からない。
<補章ここまでです>
第2話が少なかったもので後半のつもりで書きました(ちなみに0話と1話がセットです)。
+α部分はマユを出したかったので(やりすぎかもしれないから+αなんですけどw)
>>118氏
慌てて話を広げすぎたかもしれません(ついでに誤植スマソ)。
多分次あたりで導入部分が終わって内容がタイトルに結びつきます(書ければですが(汗))。
そのときに前半にでも状況の解説を入れたいと思いますが
こういう突っ込みいれてくれると参考になります、dです。
>109,110,111の続き
第四十七話
人気のない所で倒れこむミリアリア。傷口を押さえつつも、そこから体の力が抜けていくことを実感する。しかし、ミリアリアは満足していた。
敵は、自分の情報撹乱のために完全にラクスを見失った。だから、囮の自分にここまで必死に食い付いてきた。ラクスは今頃プラントの勢力圏に入っている。あとはエザリアが上手くやってくれる、マユも協力して、きっと混沌の種を取り除いてくれる。
そして、ミリアリアはミーアとディアッカを思い、ごめんね、と呟き、目を閉じた。
プラントのニュース。これは二時間前の映像と断りを入れて、メサイヤから発進したザフトの第一陣がヘブンズ・ゲートに降下する、一大降下作戦の模様が映し出された。
同じく、現在飛び込んできた映像。プラント本国にて、ザクを引き連れたレジェンドが、繁華街上空を低い高度で飛ぶ。そして、白服を着たマユがコックピットから身を乗り出して、全快した自分はこのまま降下作戦に参加すると明言。市民達はこの演出に熱狂した。
レジェンドは人の多い所を低空で飛行し、宇宙港に市民を詰め掛けさせ、市民達に宇宙へ出るのを見守らせた。後、こちらの追跡を振り切り、消息を絶った。エザリアを欠いたまま始まるメサイヤでのプラント最高評議会で、アイリーン等はマユ脱走の顛末を聞く。
今すぐ指名手配にしよう。理由はどうする。子供のすることに一々説明はいらない。それは良くない、ゲンとの関係を公にしよう。それではマユがプラントを見捨てたことになる。こちらの足元を見た上でのあの脱走だ、ここで目にもの見せないでどうする。
アイリーンは、現在遂行中の降下作戦に比べればマユの脱走は小事、それ故にこのことは公開せず、捕縛次第、秘密裏に処分することを提案し、決定とした。
宇宙、デブリ帯。アビーは用意してあった燃料をレジェンドに補給し、マユも自身の栄養補給。アビーがコックピットに戻ってすぐ、レジェンドは飛ぶ。ずっと無口なマユに、アビーは自分の権限では組織の呼称も明かせないと前置きしてから、語り始める。
前大戦の時、ナチュラルと仲良くなろうと努力してコーディネーターに爪弾きにされてコーディネーター嫌いのコーディネーターになった自分を受け入れてくれた人達だから、マユも受け入れてくれる、何より、コーディネ−ターより優しい人達ばかりだ、と。
マユの脳裏にステラの傷跡が過ぎる。そして、レジェンドの瞳に、廃コロニーが映った。
本国の防衛隊に組み込まれたマユの元部下達は、テレビで知った突然のマユ解放と、それについて自分達に何の音沙汰もないことを議題にして議論を始めた。
ディアッカはそれに参加せず、傍らのイザークに、マユのことで抗議し過ぎて謹慎を食らったアビーも安心しているかな、と語りかける。イザークは曖昧に返事し、その後、フリーダムの動力は何かと尋ね返した。ディアッカは「核」と即答。
藪から棒な質問の理由を、ディアッカは聞き返した。イザークは、地上に一機だけバッテリー式のフリーダムがあるとマユが語ったのを思い出した、と答えた。ディアッカは初耳の新型フリーダムを燃費が悪そうだ、で片付けた。
イザークは今、その続きを思い出す。
今戦争中、宇宙でしか活動していなかったこの隊の隊員で、「核動力」のフリーダムといった人がいる。万が一、バッテリー式のことを知っていて口走った言葉なら、その人はオーブと内通しているか、新たにフリーダムを造った連中と内通しているかもしれない。
イザークは考えすぎと言い、マユも概ね同意し、だからイザークにだけ打ち明けた。
その時のことをイザークは、身の丈を超えた多くの不安を抱えたマユが生んだ疑心暗鬼と考え、自分がマユにとって信頼に足る人物になろうと、密かに誓いを立てた。しかし、今のニュースを見て、自分がマユを信じていなかったことを思い知らされた。
小さなノートに目を通すネオに、マユが来た、というリーの通信が入る。ネオはノートを閉じ、レジェンドの方を見やる。
廃コロニーの中、レジェンドが降り立ったのは、黒いフリーダムや蒼いジャスティス等が居並び、その中心にStフリーダムと∞ジャスティス、そして、デスティニーが立つ所。出迎えとしてレジェンドの前に立ったのはネオ一人、あとは全員、MSの中。
一足先にアビーが降りる。ネオは難事をやり遂げたアビーを労った後、降りずにその様子を見下ろすマユに向けて、読んでいたノートを掲げる。これが戦利品であり、ミリアリアのノートであること告げ、その中の一文を聞かせる。
「全てを憎んでいると少女は告白した。しかし、私は知っている。仲間が全て死んだと聞かされた時の少女の絶望は、古い悪友の慰めさえも必要としたあの時の哀惜は、全て仲間を思うが故。その確かな繋がりの前では、憎悪など些細な揺らめきでしかないだろう」
そして、ネオは苛烈に問う、今のマユにとってミネルバは何だ。マユは大きく息を吐き、胸を張り、不敵に笑って、家族、と返答、そしてレジェンドに飛び込んだ。ネオは即座に敵と判断、攻撃を指示した。
黒いフリーダムの砲撃が交差する。レジェンドは一瞬早く飛び上がって逃れるも、蒼いジャスティスがそれを追う。ほぼ真下から迫る敵、レジェンドはドラグーンと共にビームを撃ち込む。蒼いジャスティスの接近を阻むが、その間に空中で黒いフリーダムに四方を囲まれた。
全フリーダムとジャスティスの、一点を狙う一斉射撃。空は閃光に染まる。
この時、スティングとアウルは地面に逃れたレジェンドを見逃さなかった。間髪入れずに飛び出すレジェンドの前に回り込んだStフリーダム、∞ジャスティス。両機はドラグーンを、ファトゥム01を分離する。が、レジェンドは構わず突っ込んできた。
追突の瞬間、三機は同時にシールドを構えた。Stフリーダムと∞ジャスティスは左右に弾かれ、レジェンドはそこを一気に抜けた。その先に佇むのは、デスティニー。
レジェンドはドラグーンを展開。だが、デスティニーが光の翼を羽ばたくと、ドラグーンは明後日の方向に飛んでいった。ミラージュ・コロイドはドラグーンの操作や索敵に干渉し、無力化した。しかし、それでも、レジェンドは突っ込む。デスティニーも応じる。
レジェンドはビームジャベリンに手を掛けるが、デスティニーの踏み込みの方が速く、先に掌が伸びる。ジャベリンは抜かない、代わりにレジェンドはデスティニーの掌にビームシールドを押し付けた。だが、デスティニーの掌からの一撃は、そのビームシールドでさえも貫いた。
デスティニーに容易く押し返され、ビームに右肩を根元から抉られたレジェンド。さらにファトゥム01に両足を切り飛ばされ、ドラグーンが頭部とバックパックを破壊、残った胴体部分にビームの火傷を刻み込む。そして、レジェンドは仰向けに倒れた。
コックピットの中、マユは血を吐き続けていた。意識が朦朧とする。黒いフリーダムや蒼いジャスティスがドーム状に自分を取り囲む光景は、ますます意識を遠退かせる。死を前にして、マユは、インパルスの中で死ねないことを、未練に思った。
その時、空の一角が穿たれ、そこから真っ赤な流れ星のような物が三つ入ってくるのを、マユは見た。その三つ流星は数多くのビームを弾きながら、レジェンド目掛けてやってくる。近づかれてマユは、三つの流星の正体が全身をビームのようなもので覆ったMSと認識した。
直後、ファントム・ペインの囲みの中から鮮やかにレジェンドを攫った三つの流星、ドム・トルーパー。言われるままレジェンドからドムに乗り移ったマユが、そこでヒルダと再会したのも束の間、奥の方へ倒れ込んで、そのまま眠った。
一気に囲いを抜けたドム三機、その中でヒルダのドムは追撃の一群の鼻先に半壊したレジェンドを投げ込む。そして、ヒルダがマユに代わって礼と別れの言葉を送った後、ドムのビームでレジェンドを撃ち抜き、爆散、追撃の出鼻を挫く。
絶対に逃がすなと叫ぶネオ、それに応えるアウル、スティング等のエクステンデッド達。何が何でも逃げ切ると叫ぶヒルダに、マーズとヘルベルトは応えた。
オーブ、マスドライバー。宇宙に出るための準備を着々と進めるオーブとザフトのスタッフ。その一角で、アックスとその部下、さらにレイとルナ、そしてステラを、敬礼で迎える、タリア以下ミネルバ・クルー、マリュー、トダカ。
そこにやってきたユウナは、カガリからマスドライバー使用の黙認を取り付けたと全員に報告、あとの責任は全部自分が持つし、戦後処理はその手腕でロゴスにも一目置かれたカガリが上手くやってくれるから、君達は思う存分やってくれ、と軽く発破を掛ける。
すると、マリューは今回のユウナの行動が意外だったと正直な感想を述べる。ユウナは少し申し訳なさそうに答える、前戦後ロゴスと接触したくて、ジブリールに、オーブで回収したフリーダムを手土産にしたことに責任を感じている、と。
すると、アレックスはこんなことを語り始める。フェイスとして降下作戦を独自に助けるという建前で出る自分達に、ザフト地上軍司令部はこう言った、英雄になってこい、と。そうすれば全て帳消しになる、とも言った
さる施設の中で、スタッフ総出で傷ついたドムの面倒を見る。それを見守るヒルダ、マーズ、ヘルベルトの三人に、バルドフェルドはコーヒーを振舞った。
ベッドの上で意識を取り戻したマユは、傍らのキラにここがどこかと尋ねる。ジャンク・ギルド、ザフトの基地に戻っていたら間違いなく攻撃されていたから、とキラは答える。
マユは釈然としない、それではヒルダ達が試作MSを持ち出して脱走した疑いが掛かる。ヒルダや、彼等に付いてきた多くの基地の人間達は、全て納得した上でやったこと、ともキラは言った。
その後でキラから、マユに会わせたい人がいる、と切り出して小箱を手渡した。中には一束の桃色の髪、マユはそれをミーアと呼んだ。キラは、損傷が酷くて保存ができない時間も長かったから、それだけしか残せなかった、と語り、黙り込んだ。
マユはミーアの遺髪を手にとって、頬に寄せた。
マユ「貴女のこと、大嫌いだけど、貴女に会えて、良かった」
>マユ種氏
マユはなぜ無謀な敵陣突入を試みたんだろう?
キラは相変わらずの不死身っぷりで一安心。
>デスティニーW氏
キ 「やめてよね、近づかないでって…言ってるだろぉぉぉ!?」
シ 「ちっくしょぉぉぉぉぉお!!」
イ 「弱い奴が戦うな!民間人がぁぁぁ!」
ル 「必ず戻ってくるわ…だって、シンはこのミネルバの子だもの」
カ 「全世界の皆さんに申し上げます。私、カガリ・ユラ・アスハは本日をもって地球連合の代表となりました」
ア 「あいつが死ねば、世界国家も、この偽りの平和も消し去ることができる…カガリ、キミを討つ」
後悔はしていない
>デスティニーW氏
虎の昔話に惚れた
>デスティニ―W
ダコスタ君はやっぱり心労がお似合いだね!
何かキラがとっても生々しくて好感持てるのは何故だろうか。
単発設定小話 「帰還者」オーブ攻防編@
〜オーブを攻め立てるザフト軍に合流するために急ぐミネルバ〜
ルナマリア「また戻ってきちゃったわね」
マユ「うん・・・・・・」
ルナマリア「マユ・・・無理しなくてもいいのよ」
〜伏せ気味の顔を横に振るマユ〜
マユ「ううん。無理してない。私、オーブも嫌いだもの。・・・いこ、ルナ姉ちゃん」
〜きびすを返しMSデッキへ歩き出すマユ〜
ルナマリア「・・・・・・これで戦いが終息すればいいのだけれど」
〜その頃、防戦一方のオーブに対し自己主張するカガリ〜
カガリ「私はカガリ・ユラ・アスハだ!代行者は誰がやっているっ!」
〜突然の通信に戦場が一瞬止まる〜
オーブ司令室「!!こ、これは・・・カガリさま?」
ユウナ「えぇい!ほら、マイクをよこせっ!」
〜通信士のマイクを奪い取るユウナ〜
ユウナ「ん〜カガリィ!僕だよ!僕、ユウナ・ロマ・セイランが代行だよぉん!助けに来てくれたんだねぇ!」
カガリ「ユウナ!?・・・そうか。お前が代行か・・・。オーブ司令室にいる者たちへ告げる」
ユウナ「・・・ん?」
カガリ「私がオーブの代表だと今も思っているのなら・・・ユウナ・ロマ・セイランを捕らえろ!」
ユウナ「え・・・なに?なにを言っているんだい?・・・おわっ!」
〜司令室の暇をもてあそんでいるオーブの人たちがいっせいにユウナに襲い掛かる〜
ユウナ「おぉぉうっ!こらっ!・・・っく、なにを・・・グェ・・・」
暇な人A「こいつ!親の七光りのくせに!」
暇な人B「変な喋り方しやがって!能無しがっ!」
暇な人C「なんか知らんけど、とりあえず殴っちゃる!」
〜ぼこぼこにされ腕を後ろに回されるユウナ〜
カガリ「・・・よし。キサカ!わが国を・・・オーブを侵略させるな!」
〜アカツキとムラサメ隊が戦域へ突入していく〜
〜もうまもなく合流するミネルバ〜
ルナマリア「・・・・・・あら、カガリ代表が出てきたわね」
マユ「あいつっ!性懲りもなく!」
〜ダッシュでデスティニーのコックピットに乗り込むマユ〜
レイ「・・・マユ、一人で出て行くなよ」
マユ「だったらレイも急いでよ!・・・あいつも海に沈めてやるんだからっ!」
〜デスティニーを起動させるマユ〜
マユ「デスティニー、マユ・アスカ。行きます!」
レイ「レジェンド、レイ・ザ・バレル出るぞ」
〜発進するデスティニーとレジェンド〜
ルナマリア「あ、ちょっと!まだ発進許可でてないわよ!?」
〜ブリッジでこめかみをひくつかせるタリア〜
タリア「・・・・・・いや、いいのよ。別に・・・あの子たちもフェイスなんだから・・・・・・私の威厳も地に落ちたものね」
アーサー「いや艦長の威厳はまだまだこんなものじゃありませんよ!私は艦長のことを!」
タリア「あら、ありがとうアーサー。・・・でも今おもわず扉を開けちゃったのはあなたよね?」
アーサー「フォンドゥヴァオゥ!」
完
>122,123,124の続き
第四十八話
ジャンク・ギルド。マユを見舞いに来たヒルダは、マユが眠っている間にキラがアークエンジェル合流のために発ったことを報せる。そんなに長い時間、自分は寝ていたのか、と尋ねるマユに、ヒルダはゆっくり休めと言うに留める。
直後、マユは少量の血を吐く。マユは、確かに休まないと体はもたないと自覚した上で、戦争を終わらすためなら、どんな無茶でもする、そう言って憚らなかった。
プラント、エザリアの邸宅。湿っぽく紅茶を囲むエザリアとラクス。黙々と資料を読んだエザリアは、降下作戦に最後まで反対したために自分は発言力を奪われ、また、マユもいない今、国民に強く訴える方法はない、つまり手遅れ、とラクスに語った。
ミーアを、ミリアリアを、バルドフェルドを、そしてキラを、囮として使い捨ててまでここにきたラクスは、ひどく落ち込んだ。本当にただの女の子だから接触しなかったマユの不在がために、最後の最後で全てが頓挫するとは思わなかった。
月連合基地の司令部。メサイヤより発進した降下部隊第四陣が地球に降下したのを確認。
地球の連合大統領は降下部隊を易々と素通りさせるジブリールに猛抗議、当のジブリールは聞き流し、これが作戦であると説明して、一方的に切り上げた。
ジブリールは傍らのネオに語る、マユになら、新時代の到来を告げる歴史的引き金を譲ってもよかった、と。マユなら、その前に自分達を暗殺するための引き金を迷わず引くだろう、とネオは素っ気無く答える。
ジブリールは、平和だった頃のオーブに戻りたいと泣き喚いていたマユを知っている、と漏らした。ネオは、その時にマユは進むべき道を定めたのだろう、と言った。それを受け、ジブリールは過剰に悲しみを滲ませ、マユに宣戦布告をする。
そして、レクイエムは放たれた。
月より放たれた超エネルギーのビームは、反射衛星を経由し続けながら方向を変え、プラントのコロニーを数基、破壊した。
メサイヤでもレクイエムの挙動を察知したが、アイリーンを始め、多くの人間が事実を理解しきれていない。そして、レクイエムの二発目は護衛艦隊の半数以上を飲み込んで、メサイヤに直撃した。
メサイヤの防護フィールドで辛うじて絶命を免れたアイリーン。しかし、メサイヤの機能は徹底的に破壊し尽くされ、絶命を免れなかった者も多く、中は地獄絵図になった。
プラント市民は頭上を横切った凄まじい光を目撃し、それがもたらした結果に恐怖した。泣く者、喚く者、嘆く者、許しを請う者、そういった市民達を前に、全てのメディアがラクスの姿を映し出した。
画面の中のラクスは、自分がミーア・キャンベルという偽者であることを語った。そして、地上の統治支配で現地のナチュラルと仲良くしているコーディネーターのことや、生まれ故郷のオーブ人の人の好さを訴え、みんなで一緒に地上へ逃げようと呼び掛けた。
市民の奇行が一瞬だけ止んだ。そこに切り込むように、ザフトのプラント防衛隊や公職員が率先して市民を誘導する。一部の市民はそれに触発され、プラントからの脱出を図る。また、その行為はさらなる広がりを見せ、プラント市民の大避難が始まった。
部下から上々の報告をエザリアは聞き、ラクスにこの調子で頼む、とも言った。ラクスは胸が痛んだ。
月基地。初運転にして連続発射したレクイエムの総点検に多くの人員が駆り出される。このため、次の発射までにかなりの時間を要するが、ジブリールはこの結果に満足していた。両方を一気に叩かなければ、市民の避難と軍人の反撃の機会を与えてしまうから。
しかし、プラント本国は市民の避難が始まっている。この迅速な対応に、ジブリールは仕掛けた保険が有効に機能すると確信しながらも、急遽、レクイエムの第三射を命令した。
宇宙にて、プラント市民総退去という前代未聞の避難劇の中で、人一倍、気を吐いて臨むイザークとディアッカ等、ジュール隊。
彼等は、こちらに近付いてくる機影を察知する。それはドミニオン四隻と黒いミーティアFr。ドミニオンからも黒いフリーダムの発進を確認。さらに後方に連合戦力もいる。
コーディネーターを殺し尽くそうとする徹底した布陣を前に、ザクや戦艦も並ぶ。そして、ザフト戦艦と黒いフリーダムは一斉に撃ち合っていた。次の瞬間、イザークとディアッカは弾幕の多くが正確にザフト戦力を撃ち抜いていく黒いミーティアFrに戦慄した。
黒いミーティアFrのコックピット、複座で凄まじい処理速度で敵の索敵と行動予測を行うアビー。それは高い命中率という形で反映された。
黒いミーティアFr。あれがエターナルにあった物と理解し、それがプラント市民の命を奪っていることに対して、ラクスは深い絶望を覚える。さらに後続の連合戦力と同規模の一群も接近、増援の増援に、間近で戦況を見守るプラント市民も、絶望に沈んだ。
その時、新たに現れた一群の、ある者の宣言が、この宙域、全ての者に伝わった。自分達はこの空前絶後の虐殺を止めるために参上した義勇団である、凶行に加担する者も良心に従って退くのなら見逃す、残る者は全て討ち倒す。発信者、マユ・アスカ。
プラントの市民が、ザフトの軍人が、歓喜に包まれた。
月基地。まだ抵抗を見せるプラント、そこにレクイエム第三射、準備完了の報告を受けたジブリールは、即座に発射を命じた。連続で反射衛星を経由し、最後の一点を経由する直前、最後の反射衛星の反応が消え、レクイエムの一撃も虚空に消える。
何事か、と叫ぶジブリールに、オーブ艦隊が反射衛星を破壊した、という報告。どうやって反射衛星の正確な位置を知ったのだ、ジブリールはその疑問を口にしていた。
その只中で、ネオは大画面のモニターの一つに目を配り、混戦のプラントに近付く一つの機影を見つける。そして、規模と速度から、それが強襲艦と推理した。
イザークやディアッカのザクが、ヒルダ達のドムが、バルドフェルドの、マユのM1アストレイが、ザフトが、義勇団が奮戦し、市民達の応援し、祈る。しかし、黒いフリーダムは、黒いミーティアFrは、その砲火で多くの命を奪っていく、戦う者も、そうでない者も。
イザークとディアッカは黒いミーティアに突っかける。が、その行動はアビーの予測通りだった。黒いミーティアFrの先手は、ディアッカのザクを狙い撃って攻撃能力を奪い、イザークのザクに押し寄せた弾幕の波に攻撃力と機動力をもっていかれた。
仕留められることを覚悟したイザーク。だが、トドメの一撃が届く前に、マユのM1アストレイがイザークのザクを抱いて、飛ぶ。しかし、行く手を黒いフリーダムとドミニオンが、来た道を黒いミーティアFrが阻む。
その時、遠くから届いた戦艦の主砲がドミニオンに直撃し、沈む。同時に、凄まじい火力が黒いフリーダムを振り払い、黒いミーティアFrは何者かのオールレンジ攻撃に晒された。敵が土壇場にきっちり間に合わせてきたことに、アビーは怒りを滲ませる。
マユのM1アストレイに取り付いたガイアは、二人の離脱に手を貸す。ステラに大丈夫か、と聞かれたマユは、思ってもみなかったステラの声に驚いて生返事で答える。その時、マユに早く愛機に乗り換えろ、というレイとルナの催促の通信が入り、カオスとアビスが擦れ違った。
見えてきたミネルバ。メイリンの着艦の案内。続いてタリアから黒いミーティアFr撃墜を命令される、そして、インパルスは直してある、と言い添えた。
ミネルバへと身を躍らせる黒いミーティアFr。敵の馬鹿げた火力と、精度の高い行動予測にレイもルナも面食らう。その時、マユからの通信、上手くいけば黒いミーティアFrを初手で仕留められるかもしれない、だから一旦退いて、と。
失敗はちゃんとフォローする、と答えたレイ。次いでルナは、牽制のためにアビスでビームをばら撒く。その直後、ミネルバより、最初からMS状態のインパルスが飛び立つ。そのスピードからアビーはフォースと予想、そして行動予測、詰みの一手までを計算する。
高い機動性で黒いミーティアFrのミサイルと収束ビームを次々かわすインパルス。しかし、それこそがアビーの誘導、黒いミーティアFrは一つのルートを取らされたインパルスの前に回り込み、対艦ビームソードを叩き込んだ。
次の瞬間、対艦ビームソードと真っ向からぶつかる、ソード・インパルスの対艦刀。そうして鍔迫り合う中、インパルスは右肩からブラストの長距離ビーム砲を取り、黒いミーティアFrの鼻先に構え、引き金を引いた。アビーは、光の中に消えた。
月。ネオはジブリールに、レクイエムの四発目にはどうしても長い時間を要することを理由に、プラント本国に送った部隊の撤退を進言した。ネオの進言を受け入れたジブリール、しかし、彼は怒りに震えていた。
レイやルナ、他にも多くのクルーが集まって見守る中、右肩に長距離ビーム砲、左肩に対艦刀を装備した、フォースのようなインパルスがミネルバに着艦した。
インパルスから皆の前に降りて、マユはヘルメットを取る。その時、クルーは驚いて沈黙し、ステラは思わずマユをネオと呼んでしまった。マユは、長かった髪をばっさり切り落としていた。
そんな中、マユはインパルスを修理、改造してくれた人物が誰かと尋ねる。一歩前に出たのはヴィーノとヨウラン。マユは二人の前まで行き、優しく微笑んだ。後、ヘルメットで二人を思い切り殴り飛ばした。
対艦刀を振るだけで腕は壊れ、長距離ビーム砲は10メートル先も狙えず、挙げ句に分離もできない、インパルスをよくもこうまで……。マユは、心底怒っていた。
取り押さえようと飛び出すレイとルナ、ステラも手伝えと言われるがオロオロするのみ、ヴィーノもヨウランも腰を抜かして這って逃げる、まだ殴り足りないとマユは暴れる、メイリンは形見の携帯電話を握ったまま、固まっていた。
メイリン「返すの、もう少し後のほうがいいかな……」
>マユ種の人
アビータン in 黒フリーダム+ミィーティア。
キャラの薄さゆえにツンデレとか色々と好き勝手に弄られてきたけどこれは流石に初?
ていうかアビー怖いよアビー。
怒涛の展開にもう何が何やらのてんてこ舞い。
何が起こるか想像がつかないので下手な予想は止めて素直にラスト数話を楽しみたい所存。
あと、ミネルバクルーと一緒にいるマユというのは無条件で和む。
思えば仲間のいる種運命主人公を描くというのはこのスレにおける始めの目的の一つでしたなあ…
>131
マユ種に・・・マユ種のマユに・・・「ほのぼの」様が降りてきておられる・・・ザクグフゲルググ
単発設定小話 「手を取り合って・・・」オーブ攻防編A
〜すったもんだでアカツキに襲い掛かるデスティニー〜
マユ「まったく!さすが頭の悪い人よね!そんな趣味の悪いMS出してくるなんてさっ!!」
カガリ「くぅ・・・新型!?」
〜アカツキの腕を切り落とすデスティニー〜
〜そのちょっと前、オーブのはるか上空で〜
キラ「・・・ラクス・・・本当に大丈夫かい?」
ラクス「ええ、キラ。私はあなたの手を握っているだけでよいのでしょう?」
キラ「・・・そうだけど」
バルトフェルド「キラ。油断するなよ。あの黒いミーティアみたいのが地上にもいるかもしれんしな」
キラ「ええ、わかってます。・・・バルトフェルドさんたちも気をつけて」
バルトフェルド「ああ・・・。そうだ、時間をおいてヒルダたちも下ろすからな。着地点のマーキングを忘れるなよ」
キラ「はい。バルトフェルドさん」
ラクス「では行ってまいりますわ、バルトフェルド隊長。あとは頼みましたよ。・・・キラ、参りましょう。カガリさん達が首を長くして待っていますよ」
〜地上へ落下してゆくいバリュートの内側でインフィニットジャスティス(長い!以下、インジャ)を抱えこむストフリ〜
〜アカツキ島、地下施設。アークエンジェル、ブリッジ〜
マリュー「やっと修理が終わったわね・・・」
ムウ「・・・で、俺を自由にしちゃっていいわけ?まだどっちつかずなんだけど」
マリュー「記憶が戻っていないようだし、それに・・・」
ムウ「それに?」
マリュー「あなたにスカイグラスパーを差し上げます。これで・・・この戦域から離脱してください」
ムウ「っておいおい!そんな俺だけ安全なところに逃げろっていうのか!?」
マリュー「・・・それはあなたにまかせます。・・・・・・もし、もし私たちを援護してくれるというのなら、私たちはそれを拒みません」
ムウ「・・・・・・本気・・・なんだな」
〜うつむくムウに困り顔で笑いかけるマリュー〜
マリュー「大丈夫。あなたは不可能を可能にする男でしょ?・・・私は信じているわ」
ムウ「そうか・・・・・・。正直なところ俺もまだネオ・ロアノークであるしムウ・ラ・フラガでもあるしな・・・・・・この飛行機はもらっておくよ」
マリュー「・・・よかったわ。ちゃんともらってもらえて」
ムウ「・・・・・・ほんじゃ、邪魔にならないうちに出て行かせてもらおうか」
マリュー「・・・元気でね」
ムウ「・・・・・・ああ」
〜ブリッジを出て行くムウ〜
〜まだまだ交戦中のアカツキとデスティニー〜
カガリ「おぅ!・・・くぅぅ・・・っと、はぁはぁはぁ・・・もう少し、こんなところで!」
マユ「狙われたくなかったら、そんな派手なMSに乗らなきゃいいのにさ!・・・えぇいっ!うるさいカトンボがっ!!」
〜アカツキを守ろうとするムラサメ隊をアロンダイドで切り裂くデスティニー〜
イケヤ「がぁ!」
ニシザワ「ごぉう!」
ゴウ「ぐへぇっ!」
キサカ「!イケヤ!ニシザワ!ゴウ!!」
マユ「っちぃ!3機しかやれなかった!!」
カガリ「こいつ!!キサカ!どけぇー!!」
続(←まとめ人さん、細かい修正ありがとう!) ・・・・・・次回「自由と正義/罪と罰」オーブ攻防編Bへ続く。
>>96 ちょいと亀になってしまいましたが、GJ!!
表現とか言い回しとかなんちゅうか、個人的にツボでした。
これからも楽しみにさせていただきます
久しぶりに来てみたら怒涛のマユ種で吹いた
やっぱ面白いわ、うん。ダークな雰囲気が独特でいいよね
>129,130,131の続き
第四十九話
ミネルバの格納庫。新生インパルスの中で眠るマユに、毛布を掛けるルナ、傍らにはレイ。ルナは、三機のシルエットの使えるパーツで無理やり修繕したインパルスを見やり、何にしてもマユとインパルスが一緒なら勝てる気がする、と口にする。レイも同意する。
そんなご利益はないよ、とマユが答えた。起こしたことを詫びるルナ。もう起きるつもりだった、で済ませるマユに、レイは疑問をぶつける、どうしてコーディネーターのために戦えるのか、と。マユは少し困った顔をしてから、目の前の二人を抱きしめた。
出会ってすぐ、命を大事にしろと怒って、自分達で護ろうと言ってくれた、ルナとレイを死なせたくないと思った。それが始まり、ミネルバの皆を大好きになれたのも、他人の死に無頓着でなくなったのも、全部。
レイとルナ、二人で、マユを抱きしめた。
月基地。ネオは、リーやアウルやスティングを始めに整列するファントム・ペインの兵士達の前に姿を現し、状況を伝える。
プラントから、地球へ向かう避難民と月攻撃のザフト、この二つの船団が出航した。メサイヤ付近ではアレックスが護衛艦隊の残存戦力を纏め上げ、ユウナ率いるオーブ艦隊と合流。我々が最初に迎え撃つのは、この混成軍になる。
連中がプラントの戦力到着を待たないのは、避難民のため、せめて我々だけでもここに足止めしておきたいという思惑からだ。だが、我々の現状も好くない。正規の連合宇宙軍はこちらの出動要請に消極的で、ヘブンズゲートの両軍は睨み合ったまま動かなくなった。
ネオは語る。諸君等が体感している通り、次の戦いは我々ファントム・ペインと、大きい意味でそれ以外の人間達の、生存を賭けた戦いになる。そして、命令を伝える、レクイエムを死守し、敵対する全てのモノを滅ぼせ、我等の時代を勝ち取るのだ。
月に迫るオーブ・ザフトの混成軍に向かって、ドミニオンやガーディ・ルーが来襲。それ等の艦より、黒いフリーダム、蒼いジャスティス、Stフリーダム、∞ジャスティス、デスティニーが出る。
ユウナの号令でオーブ艦隊は応戦。アスランがセイバーに乗って飛び立つと共に、ザフト艦隊からMSが展開。アークエンジェル、キラは遠くのラクスを想い、不可能を可能にしてくると呟き、青く染まったエール・ストライク・ルージュで出撃した。
避難民の船団の中、ラクスは、カガリに届けてほしいと、マユから手渡された小箱を眺める。中には、桃色と、黒色の、二束の髪。辛い役回りばかり、これはミーアを死なせた罰なのだろうか。
そう悩むラクスに声が掛けられる、同じく不安に押し潰されそうなプラント市民を和ますために、ミーアとしてステージに立つ。
月付近。ファントム・ペインの凄まじい攻勢に、劣勢の混成軍。その只中でムラサメ隊の決死の突撃が敵陣の中央に綻びを生む。トダカの指摘を受けたユウナの指示の下、オーブ艦隊は前進し、敵陣中央に穴を作る。月までの道が拓いた。
まさにその時、ミネルバとプラントから駆けつけた援軍もすぐそこに。勢いづく混成軍だが、タリアは敵が中央にできた穴を広げる方向に動いていることに気付き、急ぎ全軍に月からの攻撃への注意を呼び掛けた。
その直後、レクイエムの一撃は戦場を通過。ユウナの乗るクサナギ共々、オーブ艦隊の多くを飲み込んだ。恐怖の走る混成軍を突っ切って、ミネルバはレクイエムの一撃が通過してできた敵も味方も一機もいない空間を一気に駆け抜ける。
第二射を恐れないミネルバの行動に両軍は仰天。だが、アークエンジェルはこれに習う。リーは逸早くミネルバ追撃を指示。デスティニーと∞ジャスティスも追撃。しかし、Stフリーダムはその移動をアレックス、イザーク、ディアッカに阻まれた。
マリューは、先陣を切るミネルバとそれに詰め寄るガーディ・ルーの図抜けた速さに歯痒い思いをした。アークエンジェルの戦力では追撃する黒いフリーダムと蒼いジャスティスを牽制するのが精一杯。だから、キラを単独で、ミネルバ援護に行くよう命令した。
横に並んだガーディ・ルーとミネルバは激しく撃ち合い、互いに攻撃を受けながらも月基地との距離を縮めていく。そして、ミネルバからの一撃はガーディ・ルーの足を奪った。
それでも食い下がろうとするリーに、ネオは一時退却を命じ、デスティニーと∞ジャスティスはガーディ・ルーを追い抜く。そして、月からも基地防衛隊のMSが出撃する。
先程の撃ち合いの損害で、進めばミネルバでの帰還は不可能になると知らされたタリアは、ミネルバで特攻を仕掛ける旨をクルーに伝えた。
ミネルバから、無傷のインパルス、アビス、カオス、ガイア、ドム三機が出撃すると共に、ミネルバを襲う月防衛隊からの砲火を、三機のドムが盾となり、四機のガンダムが銃となり、ミネルバの進路を確保し、ミネルバはその中を突き進む。
慌ただしいミネルバの中、ブリッジでは、メイリンが一人でもある程度は艦を操縦できるための調整を終えた。タリアはアーサーに、避難民の中に自分の子供がおり、母がどれだけ身勝手な女だったのかを伝えて欲しいと頼み、改めてクルーに退避を命じる。
ついに追い付いたデスティニーと∞ジャスティス。後続を顧みないミネルバの突出に特攻の意思を読み取ったネオ。それを受け、アウルは一気に仕留めると息巻く。ネオは、ここから仕掛けることを告げ、両機は一気に動いた。
ファトゥム01に乗った∞ジャスティスが飛び出し、デスティニーはその場で高エネルギービーム砲を構える。デスティニーの狙いがミネルバに定まった時、そのデスティニーを狙うビームが一閃、瞬時にかわしたデスティニー、ストライクも追い付いた。
後方の異常を察しつつも、アウルは攻撃を続行。月まで間近に迫る全速のミネルバに、∞ジャスティスはみるみる距離を詰めていく。
∞ジャスティスより離れ、ミネルバのかわしきれない勢いでファトゥム01が迫る。ドム三機は最大出力の防御フィールドで受け止め、圧し合う。が、ファトゥム01と同等のスピードの∞ジャスティスは一気にそれらを飛び越え、ミネルバに切り掛かる。
反応の遅れたレイとルナに代わり、それを阻んだのはガイアの体当たりだった。その時のもつれの中で、アウルはステラの存在を認識し、戸惑いを生む。まさにその刹那、インパルスは二本のビームサーベルで∞ジャスティスを刺し貫いた。
ガイアは∞ジャスティスに手を伸ばす。しかし、インパルスに腕を引かれて届かない。∞ジャスティス、核爆発。ステラは絶叫し、マユは会食の続きは地獄で、と言った。
ネオは、その爆発でアウルの死を知る。そして、デスティニーの掌部ビーム砲を警戒しながら戦うキラのストライクに、デスティニーの蹴りが決まる。ネオはコックピットを潰した感触もそこそこに、ミネルバへと意識を向ける。
特攻を仕掛けるミネルバ。しかし、その行く手はレクイエム発射口から外れている。防衛隊はレクイエムを最優先で護り、ミネルバへの攻撃は弱い方だ。この時、これがミネルバ側の計算通りなら、という仮定を立てたネオに、特攻で撃ち抜く標的が見えた。
ミネルバは、広大な月基地の一角に体をぶつけた。地表を突き破り、地下施設に半分ほど突き刺さった状態で止まった。タリアは館内に通信、エイブスはそれを待っていた。タリアの号令の下、手動で、主砲・タンホイザーは放たれた。
月基地地下の司令部が激しく揺れた。ジブリールは状況説明を命じる。特攻したミネルバの距離マイナスで撃った主砲は、地下に複数設置されたエネルギー供給施設で最大の物を破壊、これによりレクイエムの発射が大幅に遅れる、と。
歯噛みするジブリール。しかし、宿敵の決死の一撃が供給施設破壊という幸運を呼び込んだ、と思い直し、外からの脅威に対し、レクイエム防衛により力を入れろ、と厳命した。
ミネルバの作った大穴の中で、蒼いジャスティス等を相手に大立ち回りを演じるドム三機の中心に、デスティニーはわざわざ降り立った。ドムは防御フィールドを展開しつつ、仕掛ける。次の瞬間、デスティニーの周囲は『闇』に包まれた。
ヒルダは斬られた感覚を受けた後、『闇』を一閃して晴らしたデスティニーのアロンダイトを収める後ろ姿を見る。ミラージュコロイドで周囲の光を弾き、レーダーも目視も利かない『闇』を作り出す、このMSが化け物であることを、改めて理解した。
ネオは矢張り陽動と確信し、デスティニーが飛び立つ。直後、ドムは爆ぜた。
ミネルバから飛び立った小型の脱出艇はアビスとカオスを伴って戦場から少し離れた場所を移動していた。生き残ったクルー達がうな垂れる中で、アーサーは、自分達はまだマユ救出を成功させないといけない、と気を吐いた。クルーは、少し持ち直した。
そして、彼等を救助するため、脱出艇の前方からアークエンジェルが来る。次の瞬間、一筋のビーム光がアークエンジェルの片足をもぎ取った。驚きに包まれる一同、Stフリーダムはそこに降臨した。
ミネルバに続いて月に雪崩れ込む混成軍と、基地防衛に総力を注ぐファントム・ペインが混戦する最中、デスティニーは人気のない地下通路を行く。その先で通路を塞ぐようにガイアが立つ。そして、コックピットを開き、ステラは生身の自分を晒した。
ミネルバが正確にエネルギー供給施設を破壊できるほど基地の内部に精通していた理由を、ネオは静かに受け止めた。その上で、ネオはステラに戦場に戻ってきた理由を尋ねた。護りたい人がたくさんいる、でも戦争が続けば自分一人で護りきれないから。
そして、ステラはネオに、エクステンデッドの自分が平和の中でも生きていられたこと訴え、さらに皆に今すぐ戦うことを止めるように言って欲しい、とも訴えた。
ネオはアウルのこと口にする。ステラは、マユを許すことはできないと断った上で、それでもネオやスティングやリー艦長や皆に死んでほしくないから。
ネオは、デスティニーの掌に光を蓄えさせ、それをガイアに向けて放った。
ネオ「マユは、この先か……」
うむ、淡々とした書き口で紡がれるハードな戦場こそマユ種の真骨頂よ。
いよいよクライマックスか、楽しみにしてます。
次々とキャラが死んでいきますなー。
こういう展開でのキャラの死、というのは悲壮感が漂っていい感じだと思います。
あ、次で第50話ってことは、最終回なのか!?
マユ種の運命はまさしく最強MSだな
つかキラもさりげなく死んでるのね
投下スタイルの問題で、死の瞬間に何を思ったかとか、
SSの重要な面の一つのキャラの考えの補完が端折られてたり、
生きてるのか死んだのかわかりにくいのは残念だけどね。
146 :
264:2006/08/24(木) 19:03:36 ID:???
ただいまから投下します
――機動戦士ガンダムSEED Destiny 灼熱の咎、凍える枷――
PHASE6:灼熱の咎、凍える枷(中編)
147 :
1/10:2006/08/24(木) 19:05:06 ID:???
太平洋の雲上、月光の下、澄み切った闇夜をジブリールの自家用ジェットが飛んでいく。装甲板を
随所に貼り付け、各部に可動式のスラスターを装備したその機体はモビルアーマーと大差ない。
機内には量子通信設備が置かれ、何時いかなる状況でも市場へのアクセスが可能である。
最低限の生活に必要な家具が詰め込まれ、居住性は最悪の一言。しかし随行させられる秘書は
ともかく、ジブリールにとって住み心地はまるで問題でない。
「なに…コスト!? この地球存亡の危機においてコストのお話ですか?!」
口角泡を飛ばしかねない勢いでまくし立てるジブリールに、モニター越しの
ジョセフ=コープマン大統領は慌てて言い直した。
『い、いや、シェルターと非常キットには適切な価格があるのではないかと…』
「あなたのビジネスパートナーであり『親友』でもあるこの私を信じられないと?」
『そうではなく! だ、大体、プラント寄りの国家まで援助する余力は!』
「ご冗談を。地球連合を代表する大西洋連邦、大統領閣下のお言葉とは思えませんな」
鼻で笑った後、インスタント食品のカップに熱湯を注ぎつつジブリールが
ふんぞり返った。
「経済の力でプラントの機先を制する。当然の戦略でしょう?……来年の選挙を期に、
政界から身を引かれる決意をなさった、というなら話は別ですが?」
口調は丁寧だが敬意の欠片もないジブリールの脅迫に、恰幅の良いコープマンの表情が
一気に青ざめる。
『解った……解りました。直ぐにサインして、其方へ送ります。今すぐ!』
「……確認致しました。お買い上げ有難うございます。素晴らしい御英断です閣下!
まさに地球連合こそ、人類を導く強く優れたリーダーに相応しく……」
『くそ……MSより高価なシェルターだと……くっ!』
「我ら『ロゴス』も微力ながら国際社会への貢献を果たす事が出来、これに勝る幸福は…
あ、切ったな」
怒りに歪むコープマンの顔が硬直し、画面がブラックアウトするのを見たジブリールが、
溜息混じりにプラスチックのフォークでヌードルを巻き取る。
「良い歳して財布の中身を誤魔化すからだ。武器だけ売ってやるとでも思っていたのか?」
「ジブリール卿、間も無くオーブに到着致します」
「もうそんな時間!? ああ、昼食が……」
「……今は真夜中ですが」
「良いのだよ昼食で。最後に食べたのが朝だから。それより、君も準備したまえ」
ジブリールは立ち上がり、後ろにかけてあったレインコートを掴む。
「オーブのセイラン家との会見だからな。……傘は止めておけ。『下』は嵐だ」
148 :
2/10:2006/08/24(木) 19:06:25 ID:???
横殴りの暴風が吹き付けてくるオーブ上空で、シュライクを背負ったM1アストレイが避難民を
誘導している。ヘリの飛べないこの悪天候下で安定したホバリングをやってのけ、かつ地上の
監視が出来るのは、限られた、経験を積んだエースパイロットのみ。否、例外はいた。
「36号線で混雑が発生してます! 橋の傍の合流地点です!」
『何だと!?そっちのシェルターに余裕は無い! 放送で伝えた!』
「情報が入り乱れてるんですよ! きっとデマも飛び交ってる!」
慣れぬ機体に手間取りながら、キラは灰色の海に浮かぶ、群島を繋いだ白い橋を見下ろす。
その瞳に浮かぶのは憔悴感。ユウナ=ロマ=セイランの要請を受けてM1に乗り込んだ際、
他のパイロットから聞かされていたからだ。国民を全て収容するだけのシェルターは無い。
人口の3%は運任せになる、と。
「助けるんだ……少しでも!」
車のテールランプが溶岩のように連なり、その脇を小さい人々が通り抜けていく。
見間違えようのない桃色の髪が一瞬垣間見えた。小さな子供の手を引いている。
キラの喉が震えた。
「ラクス! そっちは……!」
外部音声で呼びかけようとし、寸での所で思い止まる。自分は今、オーブ軍の一員として
見做されているといって良い。この状況下で彼女個人を呼び止めればパニックが起きる。
「くっ……! 僕も……あそこに居るべきなのに!!」
コンソールに拳を叩き付ける。
「どうしてユニウスが…! どうして僕はこんな所で……っいや!!」
唇を噛み締めつつ、キラはスピーカーのスイッチを入れて録音メッセージを流す。
『速度を一定に保ってください。シェルターは充分な数があります。落ち着いて……』
吐き気さえ催してくる。MSに乗るのが上手いだけの自分に、果たして何が出来るのだ?
「少しでも多く、少しでも……ッ!?」
背筋を寒気が駆け上がる。戦場で敵にロックされた時のような不快感と恐怖が鳩尾の辺りに
滲み、拡がる。
「何だ、これは……なにが……」
息苦しい。視線は橋に張り付いたまま。その時、空が光り稲光が走った。咄嗟に操縦桿を
倒して急降下し、機体を橋へと飛ばすキラ。
嵐と過剰な交通量で微妙に歪んでいた橋の一端を落雷が直撃する。最悪のタイミングで
加えられた一撃は、老朽化した合金製のワイヤーを数本焼き切った。橋全体が大きく波打つ。
次の瞬間に予測され得た最悪の破局は、しかし、訪れなかった。
149 :
3/10:2006/08/24(木) 19:08:36 ID:???
「こちらキラ=ヤマト! 第3大橋で重大なトラブルが発生! 応援を求めます!」
M1の両腕が、ワイヤーが外れた場所をしっかりと支える。ミリ単位の機体制御でシュライクの
ローターが唸りを上げ、絶妙な調節によって機体を宙に『固定』させた。
膝上まで海に浸かった事によって襲ってくる揺れは、ペダルを踏みしめて耐える。
外部音声のスイッチを入れた。
『大丈夫……大丈夫です! 今の内に渡って下さい! 足を止めないで! 車からは降りて!』
胸の奥を絶望が支配する。大丈夫でない事は、キラ自身が良く解っている。
MS1機のパワーで、そう何時までも橋の一箇所を支えていられるわけがない。結果は見えている。
僚機は位置的に間に合わない。ただでさえ少ない人員をオーブ全土に拡散させているのだ。
ユニウスセブンが落ちてくるという情報だけで起こったこの混乱は、既に全世界に蔓延している。
どうしようもない。その言葉が人々に圧し掛かっていた。
「ダメだ……パワーが、足りない……っぅ」
濁った雨水がツインアイの溝を伝って涙のように滴り落ちる。杖に縋るように操縦桿を握り締め、
コクピットの中のキラもまた悔し涙を流す。もう3分も保たないだろう。メインモニターの端に、
親を探して泣く子が見えた。人の波に押し倒される老人が見えた。
シュライクの唸りが悲鳴に変わり始める。ローターが白熱し、叩き付ける豪雨に白煙を噴く。
機体が僅かに傾いだ。その僅かな揺れは橋に伝わり、悲鳴があちこちで上がる。
あと僅かでその悲鳴が絶叫へと変わるだろう。
「耐えろっ……耐えなきゃ……『また』死んじゃうんだぞおぉっ!」
出力が限界を超え、腕部モーターにパワーが届かなくなる。泣きじゃくる
キラの視線が、レーダーの光点に落ちた。ほぼ同時に、音が聞こえた。
吹き荒れる風の音を掻き消す、ジェットエンジンの力強い咆哮が。
橋を捧げ持ったまま海中に没しかけるM1の傍らに、高機動フライトユニット
『ジェットストライカーパック』を装備したダガーLが滑り込み、代わりに橋を押さえる。
後続の3機もそれに続き、計4機が橋のそれぞれの部分を支え直した。揺れが収まる。
国際救難チャンネルが開かれた。
『……シワギ、カシワギ!! 艦に戻ってリペアキットを持って来いッ!!一番でかいサイズだ!
柱が梱包されてる奴だぞ! おいそこのM1! 一旦陸に上がれ! 沈んじまう!』
「……?」
泣き濡れた顔のまま、キラは背部カメラの映像を呼び出す。
イージス艦を軸に据え、ジェットパックを装備したダガーLが上空を護衛する輸送艦隊が、
荒れ狂う波を蹴立てて近づいていた。
150 :
4/10:2006/08/24(木) 19:10:58 ID:???
『キラ君! キラ君よね!?』
「ラミアス……さん?」
涙を乱暴に拭うキラ。パワーダウンしたシュライクを再起動させ、騙し騙し海面を滑る。
浅瀬に脚部を取られ、M1はへたり込むように機能を一時停止、セルフメンテナンスモードに
入った。その傍に旧型の貨物船がやってくる。マリューが運用する民間船だ。
『此処にいる人を、反対側の島まで送らなくちゃならないの! 手伝える!?』
「でも、シェルターはもう無いんじゃ……」
『持ってきてくれたのよ、地球連合が! 今突貫作業で設置してるわ!』
「連合軍が?」
2年前に大挙して押し寄せ、オーブ軍と激戦を繰り広げた彼らが何故? その疑問は当然
浮かんだが、気にしている余裕も無い。
しかし、統制の取れない民間人はそう上手くいかなかった。
「何で連合軍が!」
「まさかこの時を狙って……」
「オーブから出ていけ!」
何者かが投げつけた空き缶が、橋を支えるダガーLのバイザーに当たった。
『っああくそ! 解っちゃいたがメンドくせー! 2、3人ミンチにして黙らせるか!?』
「そんな、やめてください! 絶対にっ!」
毒づく連合兵に悲鳴じみた声を上げるキラ。しかし彼にどうにか出来る事でもない。
時間は浪費され、状況が刻一刻と悪化していく。と、その時。
「――皆様」
パニック寸前だった100を超す人々は、嵐が止んだ錯覚すら覚えた。
子供から離れた一人の女性が、缶を投げつけられたダガーLの前に立つ。目の粗い、すり抜けて
しまいそうな安全フェンスに背中を預け、両腕を大きく開いて注目を集めた。
汚れた安物のワンピースは橋の金具にでも引っ掛けたか裾が破れ、桃色の髪は潮風と海水の
飛沫で酷い有様。暴れた避難民に殴られたか、唇の端が切れて赤が滲む。
しかし、それでも尚。
「皆様。わたくし達は、今此処で命を散らすべきではありません」
その場にいる全ての人々の意識は、ラクス=クラインに集中した。
風に煽られた髪が深蒼の片目を覆い隠す。
「此処に集まった全ての方々は、今、皆様を救おうとなさっています。過去、未来は
わたくしには解りません。けれども今この瞬間だけは解ります。この連合の方々は、
わたくし様を救う為に危険を冒していらっしゃいます」
歌姫として、苛烈なまでのトレーニングを受けたラクスの声量はオペラ歌手に匹敵する。
拡声器無しで橋に揺られる人々全てに、喚き声ではない淡々とした、しかし腹の底に響く
声が伝わっていった。
「ですから皆様、どうか、どうか落ち着いて、避難の指示に従って下さい。
今を生き延びましょう。再び大切な人と笑い合う為に」
151 :
5/10:2006/08/24(木) 19:13:38 ID:???
先程まで興奮し、混乱し、錯乱しかけていた群集が、ラクスのその言葉によって鎮静化する。
そして、歩き出した。渋滞で立ち往生していた車から降り、橋の中間で二手に別れ、粛々と。
通り過ぎる人々がラクスを見る目には信頼があった。敬意と解釈しても良い。
「やめて……」
胸を押さえ、聞かれぬような小声で呟く。双眸に自己への嫌悪を湛え、
ラクスは身震いした。
昔から、こうだ。自分が意思を込めて言葉を紡げば、人々はそれに従う。
間違った事を言ったつもりは無いけれども、それでも、これは異常だ。
今の自分には何の権威も無い、ただの飲食店のパートなのだから。
「わたくしを、そんな風に見ないで……」
幼い頃から自覚し、ちょっとした便利な道具としか考えて来なかった自分の『素質』は、今や
得体の知れない醜悪な怪物となってラクス自身を蝕んでいた。
確信がある。あのままプラントに留まっていれば、何時か自分は過ちを犯し、人々を惑わし、
破滅の道へと突き進ませていただろう。誰も自分を正す事が出来ないのだから。
世界はあなたの物、あなたは世界の物。
憎悪と恐怖と羨望と愛情を込めた母親の言葉が、ラクスの心に氷の棘となって食い込んでいた。
「お母様、違います……わたくしは……」
吹き付ける風も海水の飛沫が、うねる雷雲が何処か遠い。
「わたくし、は……」
システムを復旧させたM1が立ち上がるのを見つつ、ラクスは再び子供の手を取り、逃げるように
群集の中へ消えていった。
「ロゴスの力がどんな物か解る良い機会だったろう? ユウナ」
「そーですね。『買物』が間に合って良かった」
オーブ行政府屋上に設置されたエアポートに、レインコートを着た親子が立ち、
間も無く降りてくるジブリールの自家用ジェットを待ち構える。
海上に展開された連合艦隊を見下ろすユウナ=ロマ=セイランは低い笑い声を上げた。
「全世界規模で彼らの力が働いているようです。諸国家に『特別価格』で援助物資を
押し売ってるとか」
「世界を裏で操るというのは与太話では無い。今後世界を制するのは彼らのような
商人だろう。金儲けの機会を見逃さん、ロード=ジブリールのような……」
「カガリが、それを理解してくれると良いんですが」
「ご理解を得られなければ、『事故』に遭って頂くかもしれんな」
「困るなあ、もう」
父ウナト=エマ=セイランに苦笑し、ユウナはジェットエンジンの音に顔を上げた。
オーブ五大氏族、セイラン家。アスハの補佐として甘んじてきた一族の力が今、
暗がりの中で鎌首をもたげていた。
152 :
6/10:2006/08/24(木) 19:17:00 ID:???
ソロネがユニウスに空けた大穴に艦底を覗かせたミネルバ。下部のCIWSでカオスとアビスを
牽制する。いかに堅牢なPS装甲といえど衝撃を吸収する事は出来ない。更に言えば、
PS装甲の施されていないセンサー部分や関節への被弾は致命的だ。実弾無効と銘打っては
いるが、機銃掃射に対してはどの道、回避あるいは防御行動を取る他ない。
2機は穴の縁、あるいはその数を大分減らした遮蔽物の影に隠れる。其処をファントムペインと、
補給を終えたミネルバのMS隊が追い詰める。状況は確実に好転し始めていた。
『良いぞ! これなら仕留められる!』
イージスMkUの高エネルギーライフルから放たれたビームを受けたアビスのショルダーアーマー
が高熱でしなり、開閉機構が壊れて半開きとなる。飛び交うエグザスのガンバレルがビーム刃を
灯してその周囲を飛び交う。誘導ワイヤーが光を弾いて輝いた。
胸部ビーム砲に光が集まるも、高初速で放たれたランサーダートが砲口に突き込まれかけ、
慌てて無理な回避機動を取る。
『させない……!』
重砲撃機体ゆえに大振りな動きを強いられるアビスを、機動性に優れたエグザス、イージスMkU、
ブリッツMkUが、縦横無尽に飛び回る事で強みを発揮するカオスを、『面』の攻撃に長けた
バスターMkUと汎用型のデュエルMkU、そしてミネルバの部隊がそれぞれ
分断し各個撃破する。
スティングとレイの目論みはこれまでの所、完全に近い形で上手くいっていた。
『チッ……しぶとい! 大体、何でエネルギー切れを起こさないんだ?』
『ザフトのセカンドシリーズには、インパルスと同じシステムが備わっている。
ただ、デュートリオンとは違うようだが……』
『何とかしろってんだ! 元々お前らのもんだろ!?』
何処までも冷静なレイにスティングが噛み付く。
援護の無い、チームワークもない2機はしかし、見事としか言いようの無い巧みな機動で
直撃を避け続けていた。本来ならば、とうの昔に撃墜出来ている。
そしてスティングの心配事はそれだけではない。
『マリア! そっちの状況はどうだ!』
『……』
『マリア!!』
『あっ……依然、変化ありません……』
『頼むぞ、おい……』
ミネルバのMS隊と接触して以来、心此処に在らずといったマリアの様子に、
スティングは行儀悪く舌打ちした。
『どうしたんだよ、マリア……』
『運命の人に出会ったとか』
『私語は謹んでくれるかな、大佐!?』
『了解、小隊長♪』
小さく敬礼してみせるネオに、スティングは眉間に皺を寄せつつ気を吐いた。
153 :
7/10:2006/08/24(木) 19:19:16 ID:???
信じられない。
体内に埋め込まれた制御チップが無ければ半狂乱になっていただろう。
目の前で、インパルスと呼ばれるMSに乗って戦っている男の名前はシン=アスカであり、
声も、あの時と殆ど変わっていない。しかし、そんな筈は無いのだ。
「どうして……? お兄ちゃん……は、私が……殺し……イヤ……!」
自分の身勝手さで死んだ筈だ。転がった携帯電話を拾ってくれと駄々を捏ねた所為で。
『罪の証左』を眼前に示された事でチップが機能不全を起こし、『マリア』は『マユ』に還る。
モニターに映された数字が読み取れない。ロックオンマーカーが見えない。トリガーが
引けない。操縦桿が固い。ペダルが重い。
『ちょっ……マリア!!』
アウルの声が聞こえ、棒立ちとなったデュエルMkUにカオスが迫った。
新緑の機体がモニター一杯に広がり、高エネルギーライフルの銃口が深淵を覗かせる。
閃光、衝撃。弾き飛ばされたデュエルMkUが壁に機体を打ちつける。
目の前に自分を庇ったインパルスの背中が見えた。フォースシルエットの右半分を融解させられ、
左目を高熱で白濁させたシンの乗るMSが、カオスの前に立ちはだかる。
『……インパルスのバッテリーは、デュートリオンで回復してる。機体の調子が悪いなら、
アンタは無理せずそっちの艦に戻ってくれ。此処は大丈夫だ』
「あ……」
嫌味の無い、気遣いと気負い故に紡がれるシンの言葉に、マリアの意識がクールダウンしていく。
自分は何だ? 疲れて歩けない弱く小さい『オンナノコ』のままか? 違う。
エクステンデッドだ。兵器だ。兵器とは? 理不尽な暴力から、大切な人を護る為の
道具。
ならば。
ならば、やる事はひとつだ。
「申し訳ありません、シン。ですが、問題ありません」
チップが再起動し、『マユ』は『マリア』を鎧う。再び襲い掛かろうとしたカオスの足元を
ルナマリア機のオルトロスが削り取った。
『射撃は苦手だけどねえ、自分の立場くらい、わきまえてるわ!』
高出力ビーム砲の役割は的に当てるばかりではない。何時狙われるか解らないという恐怖、
プレッシャーを、有効射程内の敵に与え続ける事が出来る。
格闘戦に長けるルナマリアにとって、『脅し』は得意分野だ。
援護射撃を受け、デュエルMkUが前に出る。アサルトライフルにグレネードを装填し、
赤いツインアイが瞬いた。
『行きます』
154 :
8/10:2006/08/24(木) 19:21:50 ID:???
レイ機の両肩が開き、ファイアビーミサイルが放たれる。大部分をかわし、一部を盾で受け止める
カオス。PS装甲ならではの耐久力は、しかし最早問題ではない。
『ほら、そこぉ!』
『逃がさないわよ、この泥棒っ!』
障害物から半身出したバスターMkUの脚部ロケットポッドが、出力を絞ったオルトロスが
カオスの周囲で弾け、回避を余儀なくされる。
『……!』
追いやられたカオス。それに狙いをつけるのはデュエルMkU。ビームアサルトライフルの
連射がカオスの顔面、右足のビームブレイドを焼き潰す。高エネルギーライフルを撃ち返すも、
センサー系の集まった頭部をやられた以上、精度は極めて低い。軽く身を捻らせるだけで
避けるデュエルMkU。
機体性能と操縦技術で補える物量差など、タカが知れているのだ。
『うおおおぉっ!』
被弾しつつ攻撃を振り切ろうとするカオスの正面にインパルスが飛び込む。
抜き放ったビームサーベルを袈裟懸けに叩き付けた。
カオスもサーベルを抜いたが、渾身の力で振り下ろされた一撃に弾かれる。右肩から腰に
かけて浅く切り裂かれ、破損各部から火花が散った。傷口周辺の装甲がグレーに変色する。
『よし、出力が落ちてる!』
『駄目です、シン』
マリアの声が、嵩にかかって追撃しようとしたインパルスを踏みとどまらせた。
中破しながらもMAに変形したカオスが、スラスターを全開してインパルス
を突き飛ばす。その鼻先に2基の機動兵装ポッドを残して。
『うおぁっ!?』
『ネオ! ……くっ』
エグザスを体当たりで押し退けたアビスが、全く同じタイミングでカオスに追いつく。
破損した両肩のショルダーアーマーが無理矢理押し開かれ、連合、ザフトの8機をチャージ光が
照らし出す。
『ロアノーク大佐! 本艦の影へ!』
『ちっ! 奴ら……』
狙いをつけないビームの乱射がユニウス内部で荒れ狂い、兵装ポッドから放たれたミサイルの
奔流が炎の渦で内壁を焼き尽くす。もしシンがそのまま前に出ていれば、アビスとカオスの
一斉射撃を一身に受けて大破していただろう。
大爆発が収まった後、デュエルMkUが表面の焼け爛れたシールドを下ろし、
インパルスがストラップ部分だけになったそれを投げ捨てる。
2機に庇われたその他には、幸いにも重大な損害が出なかった。
カオスとアビスの姿は既に無い。離脱したのだ。
『……たった2機で8機の包囲網を破るとはな。大した物だ』
『カオスの方、ポッドには慣れてなかったみたいだけどな。ま、俺のガンバレルと比べちゃ
可哀想か?』
155 :
9/10:2006/08/24(木) 19:24:42 ID:???
『その紫色の物体も生き残ったようで、何よりだ』
『……言ってくれるねえ、白い坊主くん』
『ケンカすんなよ、オイ』
スティングが仲裁に入ろうとした時、通信モニターにイアンが映し出された。
『連合、ザフト双方に伝達。B4弾頭の設置作業は完了。200秒後の起爆に備え、大至急
ユニウスセブン内部、及び表面より離脱せよ、との事です』
その通信に、皆が無意識の内に安堵の息を漏らした。
『なあ、リー。セカンドシリーズってもう1機いなかったか? ガイアとか…』
『此方にも情報が入った。ザフトのジュール隊がガイアと交戦していたが、離脱されたらしい』
レイが代わりに答える。
『ちなみに、双方の犠牲者はゼロだそうだ。作戦は、完全に成功したようだな』
完全に成功。その言葉に眉間に皺を寄せるスティング。確かに結果だけ見ればそうだ。しかし、
納得は出来かねる。タイミングの良すぎるセカンドシリーズの撤退といい、ザフト旧式MSの
余りに稚拙な動きといい、『勝った』というより『勝たされた』感は否めない。
ミネルバが離脱した破孔からソロネが浮かび上がり、MS隊が後に続いた。
「ん?」
イージスMkUのセンサーが何かを拾い、スティングがサブモニターに視線を移す。
「ミラージュコロイド・ディテクター……? 消えた…誤作動かよ。新装備はこれだからな…」
ガイア、アビス、カオスを収容した不可視の戦艦が、身を横たえていた岩肌から
ゆっくりと離陸する。慣性に任せ、滑り出すようにユニウスセブンに空いた亀裂から宇宙へと
抜けていった。
『全機、ユニウスセブンからの離脱を確認。B4弾頭、起爆準備完了』
「何よりだ。30秒後に起爆する」
連合艦隊提督は、予想以上の出来に胸を撫で下ろしていた。ザフトからの最新情報もさる事
ながら、ミネルバチームの強行軍とソロネの大立ち回りによる陽動が無ければ
間違いなく犠牲者が出ていただろう。今回は幸運に恵まれた。
「ザフトと共闘など可能なのかと疑問だったが……面倒事も無し、か。死者が出なかった
お陰だな」
『起爆します!』
ユニウスセブンの表面に幾つもの亀裂が走り、其処から閃光が弾けた。
156 :
10/10:2006/08/24(木) 19:28:23 ID:???
通常、スペースコロニーなど巨大な人工天体には、パージポイントと呼ばれる箇所が存在する。
大規模な修理、増改築あるいは破棄の際に無用な手間を省く為、ある一箇所を正しい手順で
破壊すると、各接合部が自動的に外されて、部品単位にバラバラになるのだ。
資源のリサイクルを効率的に進める為の機能でもある。
核ミサイルによる破壊と、それに伴う劣化が進んでいたユニウスセブンだったが、正確な
構造データがザフトのサトー隊によってもたらされた為に、作業の遅延は発生しなかった。
半分になった砂時計の表層に亀裂が走り、幾何学パターンを描きながら剥離。
まるで数万年の年月が一瞬で過ぎ去るかのように崩れていく。
デブリの殆どは地球を反れ、そうでない物も全て燃え尽きるか、飛石のように
地球の重力から跳ね飛ばされるサイズだ。
先の戦争の始まりとなったその墓標の終焉を見送る人々の心情は、様々である。
ダガーLのパイロットが、細切れになっていくそれに目を伏せて敬礼を送った。
ゲイツRのパイロットが、其処で永遠の別れを告げた両親の名を囁く。
ナスカ級のブリッジオペレーターは、これで良い、と自分に言い聞かせた。
「…………飛散物の影響が納まり次第、全機を収容。地球へ帰還する」
デブリ群が艦体にぶつかる音を聞きながら、イアンは敬礼を終える。
「死者を優先し生者を蔑ろにする事は出来ん。……他の手段を取れなかった事は、遺憾だが……」
『ユニウスのコア・モジュール、健在です!』
その報告に両軍が震撼する。制帽を被り直そうとしたイアンの手から、それが零れ落ちた。
「……なに?」
『減速もしていません! さ、作戦は……っ失……』
「黙れ!! ……MS隊を外部ハーネスに固定しろ! エグザスは収容!」
恐慌状態に陥りかけた部下を一喝し、無理矢理正気に戻らせる。
無数のデブリの中に、それは見えた。元の3分の1ほどのサイズまで落ちた
ユニウスが、ゆっくりと回転をかけながら地球へ向かっていく。幾分スリムになったその
残骸は、古代の攻城兵器である破城槌を想像させた。
「原因は何だ!?」
『弾頭の1つが不発だった模様です! しかし……しかし有り得ません!』
『リー、追いかけよう』
何時もの如く飄々としたネオの言葉がブリッジに響く。顔を上げたイアンが帽子を拾い、
何時もの如く目深に被り直す。
『直前の点検はした。弾頭自体は生きてる筈だ。追いかけよう。追いかけてって、カチ割ろうぜ』
「仰るまでもありません。ソロネ、最大戦速!」
メインエンジンが爆発したかのような閃光が迸り、ソロネはデブリを蹴散らしながら
ユニウスへ食らい付いていった。
157 :
264:2006/08/24(木) 19:29:17 ID:???
以上です。
ユニウス編は次回で最後の予定です。
>138,139,140の続き
最終話
ヴェサリウスの格納庫。壊れたザクとセイバーを前に、イザークは自分を適当にあしらっただけのStフリーダムへの雪辱に燃える。ディアッカは、生きて還れただけでも有り難いと諭す。アスランは、あの強敵を無傷で行かせたのが口惜しかった。
Stフリーダムのドラグーンを交えた一斉射撃は、アークエンジェルを散々痛めつけ、ムラサメを次々落としていく。脱出艇を庇いながら戦うルナは、激しい撃ち合いの中で徐々にアビスの武装を削られていった。
しかし、レイは違った。Stフリーダム本体の攻撃に対応し、ドラグーンの攻撃を読みきり、変形したカオスで一気に距離を詰める。スティング、一斉射はまだしも、敵は何故ここまでドラグーンに対処できる。レイは生まれて初めて、自分がクローンであることに感謝した。
そしてMSに変形したカオスはStフリーダムを飛び越え、背中から羽交い絞めにした。正面にビームシールドを張れず、使用できる武器も制限されたStフリーダム。レイはルナに、自分ごとStフリーダムを撃ち抜くように言った。
スティングはドラグーンを操作、レイもガンバレルを展開。ドラグーンをガンバレルが脅かし、脱出艇や、ルナのアビスを護った。しかし、自分の護りを捨ててまで。
早く撃てと急かすレイ。引き金に手を掛けたルナ。ドラグーンの猛攻に耐えるカオス。お互いを狙い、胸部の発射口にビームを蓄えるアビスとStフリーダム。そして、ルナは引き金から指を外した、どうしても撃てなかった。
Stフリーダムの胸部から、ビームが放たれた。その瞬間、アビスを押しのけ、ストライクが割って入った、が、受け止めたシールド諸共、爆発。ルナは息を呑む。
その爆煙を裂いて、真紅に染まったストライクが現れる。コックピットも剥き出しに、ひび割れた装甲から紅の粒子を放出しつつ、最大出力でビームサーベルを抜刀。
身動きの取れない二機を、一閃。切り裂かれたStフリーダム、そしてカオスは、触れる直前に、ストライクがその光の刃を消していた。
生き残ったことに戸惑うレイに、スティングから、爆発するから離れろ、と通信が入った。その言葉に従うレイ。程なくして、Stフリーダムから『核』の火が上がった。
ジブリールは現状を問う。混戦模様ではあるが、自軍の優位は動かない。避難民の船団はどうか、自国の勢力圏の領土、他にオーブにも多く降りようとしている。レクイエムはどうか、発射に要する時間は増えたが発射そのものに問題はない。
ジブリールはレクイエムの攻撃目標をオーブに定める。戦争終結に向けて立ち回るカガリとオーブを焼き払い、次の戦争への狼煙とするために。
その時、作業用MSの進入口を突き破り、インパルスがレクイエムの中に飛び込んできた。ジブリールと司令部の人間は晴天の霹靂にうたれた。まさにその直後、同じ場所からデスティニーが飛び出した、マユは大して驚きもしなかった。
司令部はレクイエム発射を中断し、応援のMSを呼ぼうとするが、ジブリールは両方止める。レクイエム発射までの時間を稼ぐことが敵の狙い、足手まといになりかねない応援を送るより、ここはネオに任せ、他の侵入者が入らないようにしろ、と厳重に言い渡した。
そして、レクイエムの底にインパルスとデスティニーが降り立った。
ネオから。ここでは手持ちの飛び道具は使えない、どれもが威力がありすぎてレクイエムの機能を奪いかねない、と語り、デスティニーは自身のビームライフルを握り潰す。だから、この手で直接インパルスを撃ち抜く、そう宣言した。
マユから。こちらは撃ち放題で、そちらは対艦武装でレクイエムに致命打を与えさせないためにこれ以上距離を離せない、そう言いつつ、マユはインパルスにビームライフルを構えさせる。が、そのビームライフルをデスティニーに向けて放り投げた。
デスティニーは飛び出し、ビームライフルを叩き払う。同時に、インパルスはバーニアの噴射を絡めた踏み切りで、一瞬にしてデスティニーの目前に。ビームサーベルを予想し、受け止めようと構えるデスティニーに、インパルスの掌がそっと触れた。
インパルス、全身で留めるために右足を踏み出した状態でバーニアを噴射、その時に発生した推進力は触れた掌を伝い、デスティニーを吹き飛ばした。
遠ざかるデスティニー、マユはインパルスを右肩の長距離ビーム砲へと手を伸ばすが、デスティニーの輪郭がぶれるのも見逃さなかった。咄嗟に、インパルスはバルカンをばら撒く。すぐそこの何もない空間が弾丸を弾いた後、デスティニーは現れた。
デスティニーが連続して繰り出す両掌、それら全てをインパルスの両腕は叩き落し、内一つを手に取り、デスティニーの腕を引き込みながら、相手を背負い、投げる。
叩きつけられることを忌避したネオの執念は、デスティニーを宙へと逃げさせる。しかし、マユはそれも織り込み済み、インパルスは即座に追い付いた。宙で組み付かれたデスティニーは、インパルスと共に錐揉みながらレクイエムの底に落ちていく。
落下速度と同時に回転速度が速まる。その回転からインパルスは弾かれ、大きい動作で勢いを殺しながら軽やかに着地。一方、その回転と落下の速度を落としながら、デスティニーは緩やかに着地。二機のMSは、互いに見詰め合う。
マユは、自分から回転を速めて遠心力で以てインパルスを振りほどく、という脱出方法に呆れていた。尤も、ネオに言わせれば、逃げ回ってレクイエム破壊の機会を窺わずに自分を仕留めに来たマユに呆れていた。マユに言わせれば、倒した方が早い、だった。
徒手空拳でか、というネオの問いにマユは肯定で答える。合体機能を排除してまで全体を補強したインパルスなら、共に学んだ全ての技を駆使できる、とも答えた。
あくまで決着を望むマユに、ネオは、デスティニーが機密保持のため、ダメージ等で機能停止した際、強制的に核の自爆機能が作動することを告げた。マユは妙に納得して、それぐらいやりそうだ、で片付けた。それを受け、ネオは苦笑した。
酷く傷ついたアークエンジェル。怪我のために意識不明で医務室に搬送されるキラ、付き添うレイ、ルナ、メイリン。格納庫では、ヴィーノ、ヨウラン、マードックがアビス、カオス、ストライクの修理に匙を投げた。
ブリッジ。マリューは、レクイエム破壊後のマユ救出を諦め、このまま戦場を離脱するよう提案したアーサーの意思を、今一度確認をする。アーサーは頷く。混成軍の攻勢の波が引いていると見たマリューは、今度もマユが戻ってこない覚悟をした。
レクイエムの底。激しく繰り出されるデスティニーの手刀、インパルスは両腕で受け流す。デスティニーはもう片方の掌を押し付けるが、インパルスは懐に潜り込んで回避しつつ掌を添える。同時に、デスティニーはバーニアを噴射、全身でインパルスを弾き返した。
マユは思う。性能に甘えていない、インパルスを遥かに凌ぐパワーも空回りさせず、的確に捻じ込んでくる。一度でも捌き方を間違えれば、そのパワーで、やられる。
よろめくインパルス。飛び出して掌を繰り出すデスティニーだが、バーニアを絡めて飛び退くインパルスはデスティニーの一撃を綺麗にかわす。そして飛び込み返したインパルスの脛で打つ蹴りは、デスティニーの腹部に直撃した。
ネオは思う。地面の蹴り方が巧い、こと地上戦に限れば、確実にデスティニーを凌ぐ瞬発力と機動力だ。一瞬でも気を抜けば、数多の必殺『技』で、やられる。
蹴りを受けたデスティニー。しかし、その瞬間、デスティニーもインパルスの胸部に手刀を叩き込み、両者、大きく体勢を崩した。
マユとネオ。神経をすり減らしながら、一度のミスも許されない命のやり取りを、生き残った肉親同士で行う、家族を奪った戦争を続けるために、ただ利用し尽くすコーディネーターのために。そんなに、ファントム・ペインが、ミネルバが、大切か。
転倒をさけるため、二機とも手を付き、同じ動作で、同時に、並んで、側転。両機の足が頂点に差し掛かった瞬間、インパルスは倒立状態から渦巻く回転、開脚した足が、無防備なデスティニーの胴体に再度直撃した。
辛うじて間に合った受身から体制を整えるデスティニー。ネオは追撃を懸念してビームシールドを張る。その動作のわずかな間にインパルスが行ったことは、手も届くデスティニーとの至近距離で、長距離ビーム砲の早撃ちを決めることだった。
高出力のビームを受け止めさせられたデスティニー、このままでは強烈なビームの炸裂が発生すると直感したネオは、咄嗟にビームシールドの下から掌部ビーム砲で眼前のビームの塊を撃ち抜き、さらにビームシールド越しにそれを打ち払った。
炸裂から逃れるために少し距離を置いていたマユは、瞬く間に霧散し、全ての光の粒子が昇って消える様を見せ付けられた。インパルスは砲身の熔けた長距離ビーム砲を投げ捨て、対艦刀を抜き、デスティニーに突っ込む。
ネオは、この時を待っていた、こちらが迎撃に回るこの時を。アロンダイトを抜きつつ、ミラージュコロイド高濃度散布、デスティニーから『闇』が広がった。『闇』に飛び込むインパルスの中で、マユは、目を閉じた。
直後、『闇』は十字に切り裂かれた。そこに現れた光景は、対艦刀を振り下ろしたインパルス、アロンダイトを横に振り切ったデスティニー、そして折れた一振の大剣の刃は宙を舞い、レクイエムの底に突き刺さる。折られたのは、アロンダイト。
ネオは戦慄する。こちらの横切りが読まれていたとしても、目視もレーダーも利かない『闇』の中で、マユは正確にアロンダイトを狙って対艦刀を振り下ろし、斬った。
折れたアロンダイトを手放し、振り返ったデスティニー。インパルスも同様に向き直るが、対艦刀を握る右腕から火花が散り、対艦刀はその手から滑り落ちた。ネオが見逃す筈もなかった。
次の瞬間、デスティニーは地面を蹴ると同時にバーニアを噴射、自身を一気に最高速まで持っていく。事ここに至って、自分の技術を盗まれたマユは、次のデスティニーの一撃はかわせないと悟った。デスティニーの手が、インパルスの胴体を掴み、光を蓄える。
しかし、ネオは、あまりに軽い手応えに戸惑った。勢いに押されたインパルスがふわりと浮いた後、ほんの少しバーニアを焚く。くるりと3/4回転、真横に働いていた凄まじい勢いはデスティニー諸共、真下へ。さらに、インパルスの左拳はデスティニーの胸元に触れる。
デスティニーが、自身の勢いで強かに地面に叩き付けられる瞬間、インパルスもフルバーニア。ありったけの力が集約した左拳は、それ自身を砕きながらもデスティニーの胸を貫き、レクイエムの底に突き刺さる。そして、インパルスとデスティニーは、『色』を失った。
目の前の出来事に、司令部一同は硬直し、各人崩れ落ちていく。しかし、ジブリールは逸早く行動に移り、踵を返して司令部から出て行った。
体中が痛む中、ネオは、インパルスの腕が自分を外れていることに驚いていた。その時、マユからの通信が入る。激しく何かを吐いた後で、兄にステラと長生きするように言った。
ネオは気付いた、デスティニーの掌はインパルスを掴んだままで、光を孕んだままだった。止めようとするネオ、しかし、デスティニーは操作を受け付けず、最期のビームを放った後、そのままデスティニーの火は落ちた。
真っ暗なコックピットの中で、ネオはうな垂れる。再び火の入ったデスティニー、それは自爆のための再起動だった。この時、生き返ったモニターに映ったのは、『色』を取り戻したインパルスが、威力の激減した掌部ビーム砲を見事に耐え切った姿だった。
その後、再び『色』を失ったインパルスの体は崩れていき、上半身だけが前のめりに倒れた。そして、むき出しになったコアスプレンダーは下半身より飛び立ちレクイエムの中を上昇していった。その時。ネオは確かに見た、マユが終始、気を失っていたところを。
ジブリールは停泊していたガーディ・ルーに駆け込み、今すぐ地球に向けて出航するよう命令した。まだ味方が戦っている、とリーは意見するが、ジブリールは取り合わない。
その時、司令部のネオから、全軍に向けての通信が入った。エネルギーが臨界に達したレクイエムの中でデスティニーが自爆する、被害の範囲は月基地全域に及び、ファントム・ペインの敗北で終わる。だが、生きたい者は迷わず逃げろ、我々は平和の中でも生きられる。
攻撃を止めたファントム・ペインの戦艦、MSは、次々に月へと降りていった。混成軍は、その光景に戸惑った。
その様子をガーディ・ルーのモニターで見たジブリールは、改めて地球に行くことを命じ、より完璧なエクステンデッドを造って必ず再起する、と吐き捨てた。リーは銃を構えた、エクステンデッドはもういいでしょう、そう呟いてすぐ、ジブリールを射殺した。
地下司令部。ネオは仮面を外した。そして、インパルスに何か言おうとした。レクイエムのエネルギー臨界到達と、デスティニーの自爆が重なった。月基地は、地下も、地上も、何もかも、光に飲み込まれた。
コアスプレンダーの激しい揺れで、マユは目覚めた。生きていて、外にいて、コアスプレンダーに乗っている、訳が分からない。しかし、下の有様、赤く、鈍く、輝く月面を見て、戦争が終わったことだけはわかった。同時に、これは自分がやったこと、とも。
すると、自動操縦のコアスプレンダーに、頭部を失ったガイアが並ぶ。コックピットを開放し、身を乗り出すステラ。マユも、コックピットを開けた。そこに飛び込むステラ、マユはしっかり抱いて、受け止める。
ステラもマユを抱きしめて、そして、嗚咽混じりにマユのことは大嫌いで絶対に許さないと言ってから、マユの胸で泣いた。マユは、何もしなかった。
マユはふと、形見の携帯電話を手に取る。メールが一件、ステラを頼む。そして、アークエンジェルが見えてきた。通信から皆が口々に、マユへと呼び掛ける。マユは皆の声を聞きながら思う、自動操縦の行き先でアークエンジェルを設定したことは一度もないのに、と。
そうして、マユの頬に一筋の涙が伝った。
マユ「さようなら、お兄ちゃん。さようなら……、……さようなら、イン……パルス」
マユ種、完走おつです。
このスレの元祖(だっけ?)が最終話とは、いろいろ感慨深いものがあります。
マユ種さま、遂に最終回を迎えられました。
いままで楽しませていただいてありがとうございました。
数日後に、完結作品の所に置かせていただきます。
完結、おめでとうございます。堪能させていただきました。
最終回……ネオの通信の後MSが月へと降りていく、という部分が、ファントムペインの性質を
これ以上ないというほど表しているようで、前の『平和の犠牲には……』とも重なりなんとも印象的でした。
「いやー、どうするべ。」
しゃくしゃく。
「はふはふ・・・・・・・とりあえずレイ達がもどってきてからだな。」
ぱくぱく。
「あ、ハイネ。お好み焼き一口ちょうだい。」
もぐもぐ。
「ミーアちゃん、じゃがバタあげるからラムネ一口ちょーだーい。」
もっきゅもっきゅ。
「あ、ステラ別に良いわよ、私もういらないから残ったラムネ全部上げる。」
「何やっているか汝らぁぁぁぁぁぁ!!」
大きな声が響く。
「我らがさんざん追いかけられている間になにやってやがりますかなのかしら?!」
声の方向にはなにやら物騒な剣をもったアキラがいた。
散々武装を変えていろんな性格に変わったせいかアキラの口調が一定していない。
後ろからぼろぼろになったレイも歩いてきた。
「おー、おつかれ。ラムネ買ってあるよ。」
「「そんなんで納得するかぁぁぁ!!」」
ハイネのまるっきり他人事なセリフに二人は怒鳴る。
『つーか「かしら」ってことはバイオリンで戦ったのか。』
「がんばったわねー。」
シンハロとルナマリアがくじであたったモデルガンを見ながら言う。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!で、作戦はどうなったんだ?!」
レイが叫ぶとマユがあっさり答えた。
「うん、とりあえずレイ兄ちゃんたちを生贄にすればあの剣とかなくなるかなーっと思って。」
「この外道っ!!外道戦記っ!!げんしけん!!ホスト部!!」
「つーか、あの武器全然なくならないんだけど!!あやうく背中から剣が生える所だったし!!」
二人は相変わらず適当な考えに突っ込む。
「ほら、そんなのしてる間に来るぞ!!」
遠くから響いてくるドモンボイス。
「む、ならば・・・!いけ!ミーア!!」
「了解!!」
そう言ってミーアは浴衣に手を書けバッと脱ぐ。
男性陣の誰もが淡い期待を抱いた次の瞬間。
「はーい☆みなさーん、ラクス・クラインでーすv」
いつものラクスの格好をしたミーアがいた。いつのまにかカツラもしっかり着けている。
男性陣がちょっとがっかりである。
どこからともなく赤いハロが飛び出てきて軽快なメロディを奏ではじめる。
そして神社の境内にいくと歌い始めた。
次の瞬間、一気に人が集まってきた。
「はーい、おさないでくださーい。サイン会はこの後でーす。」
「はいはーい、お兄さん鞄の中に何ビデオカメラしこんでるのかなー?裏まできてねー?」
「サインは専用の色紙をお買い求めの上お願いしまーす。」
気がつくとなにやらハイネ隊の面々はすでにスタッフと化している。しかもヒーローショーのようにせこい。
ラ・ク・ス!!ラ・ク・ス!!うぉぉぉーーーーー!!
なにやら老若男女とわない客層の中にやけに濃い集団。
その中に輝く銀髪のおかっぱ。
「「「「「「いつのまに?!」」」」」」」
全員驚くがアスランが納得した顔で呟く。
「そうか、イザークは超ドレッドノート級を超えるラクスのファン・・・・・!!
例えミーアだと解かっていても・・一年間の活動休止の反動で・・・ノってしまうのか・・・!!」
心底くだらない理由で時間を稼いだ一同は話し合いをはじめる。
「とりあえず・・・・、避難するならどこだ?」
スティングが話す。
「とにかく・・・安全で、見つかりにくそうな場所だろ?どこだ?」
ネオがそう言うとシンハロはマユを見ながら行った。
『・・・・マユ、あそこしかない。』
マユもそれにうなずきながら答える。
「・・・・・・あそこだね・・。」
【たーまやー!!】
ここはとある基地(シンハロ所有、表向きはザフトのだからその他のMSもある)。
しばらく雨は降らない予報なのでマユデスMS達は外で整備されていた。
しかも今日は花火大会。とっても幸運である。
【いやぁ・・、風流ですなぁ・・・。】
【うむ、これこそ夏といった感じだな。】
【かーぎやー!!たーまやー!!さーかなやー!!】
それぞれの反応で喜ぶいんぱるすズ。
【そこのディンちゃん?何て名前?!何処所属?よかったらさー、あとで俺に・・・・・】
【あーにーうぅぅぅぅえーーーーーーーーー!!】
最終兵器兄妹は仲良く喧嘩をしている。
【あーもー、うるせーうるせー。静かに花火くらいは見ろよ。】
【まったく・・・・・・。】
そういいながら二人でだるそうにアビスとMkUは花火を見る。それでも楽しそうだ。
【ガイアー?みなくていいのかー?】
【ガイア様ー?】
【いいんですのー?】
スティングと兵装ポッド娘がガイアに話しかける。
しかしガイアは山のように大きな物体に話しかけている。
【ねー、いっしょにみようよー。】
【・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。】
大きな物体・・・・・・、改造デストロイ『デメテル』は答えない。
【ねーえー?】
ガイアが話しかける。
山のように大きい、といったがそれはあくまで物質面の話であり、MSの見ている彼女ではない。
人間の視覚で言えばデメテルは小学校中学年くらいの少女であり、全身に包帯や怪我の治療の跡がある、そんな容姿だ。
ちなみに今の様子を説明するとあのデストロイの傘の部分をすっぽり被ってその中に引きこもっている。
【や。】
傘の中から声がする
【でめちゃん・・・?】
ガイアが心配そうに呟く。
【ぱぱがくるまでまってる。】
そうデメテルが呟く、『ぱぱ』とはもちろんシンハロのことだ。
【・・・・・・・・・きゃうぅぅぅぅ・・・。】
こればっかりはガイアもしょうがない。
シンハロはMSよりも人間よりの機械だ。自分達が彼に干渉することはあまりできない。
すると、何やら入り口の方が騒がしい。
「おい!!まさか・・・・!!」
「確かに・・・・すっごく安全・・・・・。」
『だろー?いざとなったらデスティニーで逃げて良いから。』
「おい!?つまりしばらく俺にMSの中で過ごせってことかよ?!」
「大丈夫、デスティニーのOSにこないだDMCいれたから!始めから兄貴使い放題だよ!!」
「そう言う問題じゃないだろぉぉぉぉぉ!!」
するとなにやら自分達のパイロットがやんややんやとこちらへやってくる。
『デスティニー、ごめん、今日ジョー止めさせてv』
シンハロがそういいながらディスティニーのハッチを開く。
【え?!一体いままでどう言う展開があったのだ?!ハロ殿?!え?!有無を言わさず?!】
そう言っていたが、デスティニーの中にジョーが放り込まれる。
「じゃぁ、心配だからシンハロついててあげてね。コンセントがあれば大丈夫でしょ?」
『えぇっ?!俺も?!』
マユに命令させられてしかたなくシンハロもそこに残った。
【ぱぱ・・・、きょうはおとまり?】
傘からひょこっと顔をのぞかせてデメテルは聞く。
『ん・・?あぁ、今日はずっとここにいるようだなぁ・・・・・。』
【そっか・・・・・。】
そう言うとデメテルは傘からでて空を見る。そこには沢山の花火が打ち上げられていた。
『きょうはなぁ・・、デスティニーの中にいるパパの友達が命を狙われているんだ。
だからなデメテル。もし銀髪のおかっぱがきたら遠慮なく追い返すように!』
【いえす、だでぃ!!】
シンハロの言葉にびしっっと手を上げながら答えるデメテル。
【・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がう。】
自分がいくら説得しても出てこなかったデメテルがあっさりでてきてガイアは不満顔である。
【まけないもん・・・・・まけないもん・・・・・・っ!!】
ガイアはそう言ってから空に向かって雄たけびを上げるのであった。
(な・・・・・なんだ?シンハロの奴・・・・何としゃべってるんだ?)
ちなみにデスティニーの中にいたジョーは機械の視点など持っているはずもなく、シンハロがずっと何かと会話しているのにずっと恐怖していた。
完結おめでとうございます。そして乙です。
最後まで本当に楽しませていただきました。
ありがとうございます。
でもやっぱセリフが欲しいwww
台詞ありでリメイクしてほしいかもとは思ったがw
ま、これが氏の持ち味だし。
最初から見ていたけど、ついに完走ですね。おめでとうございます。
大胆かつ斬新なアレンジ、息もつかせぬ展開にただ翻弄されるばかりでありました。
お疲れ様でした。とても、面白かったです。
マユデス垂れ流してる痴呆は空気嫁。
マユ種、完結おめでとうございます。
気を失ったマユをアークエンジェルまで運んだのはインパルスの『意思』というべきものなのか…
マユとインパルス、一人と一機の絆に感動した。
>>264氏
無敵でも全能でもないキララク萌え。前作主人公はやっぱこのくらいがいい。
マリアは背格好変える位だから記憶も無くしてると勝手に思ってたんだが…
>>マユ種氏
怒濤のクライマックス投下でもう誰が死んだのかわからないくらい混乱してる。
文字だけが頼りのSSスレに動画のシナリオを流したようなもので、読者の想像力を試す
挑戦的な作品だったと思う。あと物理攻撃で壊れないはずのPS装甲にも。
しかし再会した妹を容赦なく攻撃する兄と、ついに兄を討つに至ったマユの心情、
脱出を潔しとせず、独り司令室で滅びの瞬間を見守った選択については、最終決戦が兄妹対決で
こういう決着をさせるために、噛み砕いて説得力を持たせて欲しい気持ちが半分。
いっぽう丁度良かったと思う気持ちも半分。長い間本当に乙でした。
なんか最近豊作で嬉しいなw
>>264氏
乙!
これからの展開にwktkしながら待ってます!
>>マユ種氏
皆も言ってるけど本当におめ。
一つの作品が終わるって結構感慨深いものがあるな。
>>ほのぼの氏
俺このMSたち好きだなぁw
なんか本当にほのぼのするわwww
マユ種さん乙でした!
淡々とした描写とたまに入る台詞が自分はいいと思いました。
>>マユ種氏
乙です。終盤の絶望的で息もつかせぬ展開本当に楽しませていただきました。
キラが生きてたことにビックリです。
完結おめでとうございます。
>マユ種の人
祝、完結!
乙でありオメデトウ御座います。
一年ほど前、沈みかけていたスレの中で貴方の連載が始まって、全てが始まったような気が。
淡々とした語り口ながら情念に溢れたストーリー、魅力ある形で活躍するキャラ、MS。
毎回本当に楽しく読ませてもらいました。
ああもう、きちんと完結するのは嬉しいけれど終わってしまうのは悲しい。
とにかくお疲れ様でした!
>マユ種
このスレ第一弾の作品がとうとう完結とは感慨深い
最後のレクイエム中心部での格闘戦が映像で見たいぐらいすげえ
180 :
318:2006/08/26(土) 05:35:15 ID:???
単発設定小話 「自由と正義/罪と罰 part1」オーブ攻防編B
〜アカツキを圧倒するデスティニー〜
マユ「今さらなにをやる気になってるんだか!?・・・沈みなさい!!」
カガリ「私はっ!」
マユ「まともに戦えない人がMSなんかに乗ってるんじゃないわよ!死ねぇっ!!」
〜アカツキのコックピットを切りつけようとするデスティニーのアロンダイトの切っ先を一筋の光が掠める〜
カガリ「っぎゃ!!・・・・・・?」
マユ「なっ!?・・・・・・なに?・・・8枚の・・・翼?」
〜上空に目をやるマユ〜
キラ「カガリっ!大丈夫!?」
カガリ「っ・・・キラか!?」
〜アカツキをかばうように間に入るストフリ〜
キラ「カガリ!下がってなよ。君にはまだやるべきことがある!」
カガリ「あ・・・ああ。わかった。頼んだぞ、キラ!」
〜さっさと退散するアカツキ。その場に残るストフリとデスティニー〜
〜信じられない顔をするマユ〜
マユ「・・・え!?・・・・・・フリー・・・ダム?そんな・・・そんなわけない!あの時・・・手ごたえはあったはず。いや・・・違う機体か?・・・・・・でも、でもこの感覚!!」
キラ「駄目だよ!止まってちゃ!・・・君みたいな子が・・・戦争に駆り出されるなんて・・・そんなの駄目だよ!」
〜デスティニーを牽制し、ザフトを切り崩しに取り掛かるストフリ〜
マユ「きゃっ!・・・っく私いまとまってた!?・・・・・・駄目よマユ!相手はあのキラ・ヤマト。生きていたのならもう一回同じことするだけよ!」
〜ミネルバ〜
タリア「あれは・・・フリーダムよね?」
アーサー「・・・そう・・・見えますね」
アビー「・・・該当MSありません。敵新型MSだと思われます!・・・艦長、インパルスが発進許可を求めてます」
タリア「あ・・・忘れてた。インパルス発進許可します!っとアビー、その前にルナマリアを呼び出してちょうだい」
アビー「はい。・・・通信開きます」
〜ブリッジのモニターにルナマリアの顔が別ウインドウで映される〜
タリア「ルナマリア、あなたに1つ命令を与えます」
ルナマリア「はい、なんでしょうか?」
タリア「おそらく、これから戦況は混沌としてくるわ。あの新型のフリーダムらしきMS、それにアークエンジェルもおそらく時機に現れるでしょう」
ルナマリア「はい」
タリア「私の推測でしかないけど、ジブリールがたぶん宇宙へ脱出するわ。だからあなたは遠巻きで戦争に参加するだけで、シャトルの発射を見張っていて欲しい」
アーサー「艦長、本当にジブリールはオーブにいるでしょうか?」
タリア「たぶんね。ロゴスの一員であるジブリールが宇宙へあがるにはオーブのセイラン家を頼るしかないわ。そして彼は宇宙へ必ず上がる」
アーサー「しかし、宇宙へ行ってどうするのでしょう?」
タリア「月にでも向かうつもりでしょう。あそこにはまだ連合の基地があるもの。・・・っで、というわけだからルナマリア、わかったわね?」
ルナマリア「・・・了解!」
タリア「・・・悪いわね、ルナマリア」
アビー「インパルス、コアスプレンダー発進どうぞ」
ルナマリア「インパルス、ルナマリア。行くわよ!」
〜コアスプレンダー、チェスト、レッグと発進し合体するインパルス〜
続 ・・・・・・「自由と正義/罪と罰 part2」へ続く。
細部はともかく、大筋は原作通りに進んでるのな・・・>単発
大きく異なる点は、黒ミーティアを駆るサラと、宇宙にいるシンの存在か
単発設定小話 「自由と正義/罪と罰 step2」オーブ攻防編C
〜徐々に盛り返してくるオーブ〜
キサカ「ムラサメ2機、カガリを司令部まで護衛しろ!オーブ司令部!聞こえているな!?機能回復したら代表の受け入れ準備に取り掛かれ!」
〜キサカの怒声で機能回復に奔走するオーブ本司令部の仕官たち〜
〜牽制しあうストフリとデスティニー。ヒートアップしていくマユ〜
キラ「っく・・・あのMS、すごいパワーだ。でもここは譲れない!」
マユ「こんのぉっ!あんたの生命力はゴキブリ並みね!・・・<シュパーン>・・・・・・えっ!?」
〜デスティニーのインフォメーションディスプレイの映像が切り替わり音声がコックピット内に流れる〜
音声ガイド「心身状態のエモーショナルシステム起動条件クリア確認。システムを起動させますか?」
マユ「な・・・なにこれ?この声・・・ミーア姉ちゃん!?」
音声ガイド「このシステムはエネルギーの消費量が供給量を上回るためエネルギー残量に注意してください」
マユ「なんかわかんないけど・・・エモーショナルシステム起動許可!」
音声ガイド「システム起動許可を確認しました。エモーショナルシステムへようこそ!」
〜音声ガイドが終わると同時にデスティニーの脈動を始める〜
マユ「!?すごい・・・・・・これなら!」
キラ「!!あのMS・・・なんだ・・・・・・ぼやけて見える?」
マユ「いくわよ、デスティニー!!」
〜残像を残しつつストフリに迫るデスティニー〜
キラ「っぐ・・・さっきよりもパワーが!?・・・・・・カガリは、まだ着かないの?」
マユ「はぁーっ!!・・・よくもそこまで自由気ままに生きてくれる!それが罪だってことに気づかないのっ!!」
〜そんなこんなでMSポッドが宇宙から投下されてきている〜
ヒルダ「たくっ!!今度こそ暴れまわってやるからねっ!!」
マーズ「わかったわかった。でも海に落ちてくれるなよ!?」
ヘルベルト「やっとコンビネーションがつかえそうだな!?」
〜オーブへ降り立ち、ザフト軍を蹴散らしにかかるドムトルーパー3機〜
〜その頃のアークエンジェル〜
アスラン「・・・ジャスティス・・・・・・か」
ラクス「アスラン。お久しぶりですわ」
アスラン「ラクス・・・・・・まさかお前がこれで戦うわけじゃあるまい?」
〜アスランの顔をじっとみつめて口を開くラクス〜
ラクス「・・・それでもいいのですが。アスラン、あなたがこれを必要としているのなら。このジャスティスはあなたに預けてもいいのですよ」
アスラン「・・・そんなの・・・俺が乗るしかないじゃないか。ここには俺しか乗れる奴なんかいないじゃないか・・・・・・」
〜顔を伏せ、手に持っているヘルメットを見つめるラクス〜
ラクス「・・・ねぇアスラン。あなたは何のために戦っているのですか?誰のために戦っているのですか?」
アスラン「何のためって・・・そりゃ平和のためだろ?・・・誰のためかは・・・・・・わかんないけどさ・・・・・・」
ラクス「平和のために戦う・・・それは矛盾してますわ。戦いがないから平和なのでしょう?・・・アスラン、あなたにジャスティスをお渡しいたします」
アスラン「え?」
ラクス「悩んで、悩み抜いて答えを探してください。・・・その先に・・・あなたの求めるものがきっとあるはずです」
〜なんか知らんが無理無理にジャスティスに乗らされる傷も癒えきっていないアスラン〜
続 ・・・・・・「自由と正義/罪と罰 step3」へ続く。
〃´ ̄ヽ
l 从ノハ )
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ
_(ノ(__つ/ ̄ ̄ ̄/__
\/___/
マユ種作者様、完結おめでとう。
他の作者様も、完結めざしてがんばれ。
本編での設定の矛盾をデスティニーのオリジナル機能という解釈にするとは…
しかもこれでキラinストフリを圧倒しているという描写も中々良いですね。
マユ種連載当初からいましたが、なんか感慨深いですね…。
というか、こういったスレでしかも長編が完結したのを始めてみました(笑
何はともあれお疲れ様でした&たいへん楽しませていただきました。
マユトレイ、投下行きます。
今までは本編やアストレイの流れを変更しないでも成り立つ話でしたが、
今回からは流れや設定を一部変更していきいます。
187 :
1/7:2006/08/27(日) 21:06:47 ID:???
兄さんの声を聞いて、数ヶ月。私は、あれ以来兄さんの手がかりを掴めてはいない。
当然と言えば当然か。私の任務はあれ以来「新型機の調査・破壊」になった。
例えば、砲台を内部に潜ませている隕石……つまり罠を輸送する。
例えば、廃コロニーへの細工をし、その崩壊で内部に逃げ込んだ新型機を破壊する。
例えば、スパイから情報を得た後、機密保持のため抹殺する。
そう言ったことで必要なのは機体やそれが通るルートについての情報で、ザフトの兵士
についての情報なんて得られるはずがない。新型機のパイロットについての情報くらいは
得られるかも知れないけど、そもそも、たかだか16歳の新兵が新型機に乗るはずもない。
だいたい聞き間違いかも知れないじゃない。
――そう、思ってた。
SEED DESTINY ASTRAY M 第七話 「衝撃」
普段は無骨であり派手な装飾――もっとも爆発や命のやりとりは地味とは言えないけど
――に彩られることのない軍の基地が、どこかお祭りのような雰囲気に包まれている。
ここはプラントのコロニーの一つ、アーモリーワン。今日ここで行われるのは、新型の
モビルスーツのパイロットの披露。今週中には新型戦艦・ミネルバの進水式も控えている。
新型は本来なら、私達が破壊して置かなくてはいけない機体。しかし、それは二回とも
ジャーナリストの乗る民間機とインパルスによって失敗した。今日失敗すれば,もう機会
は無い。そして私の今回の任務は,来賓のふりをして潜入すること。……なんだけど。
その任務をするために与えられたのが,今私が着ている服。まるでフランス人形とかが
着ていそうな真っ白い服,いやドレス。私だって女の子だから,可愛い格好はしてみたい。
とは言っても今まで任務用に地味な服ばかり着ていたせいで、なんとなく違和感がある。
もちろんこのドレスだって色々な隠し機能はあるし、デザインも悪くないと思うけど……
「……駄目だ、こんなこと考えてる場合じゃないっていうのに」
考えを振り切って招待状を提示、手荷物検査を受ける。あっさりパスして通過。当然か。
「手荷物には」おかしな物はない。金属探知器を通過してそれで終わり。まあ、招待状を
持っているような人間を詳しく調べる必要はないということか。
「……偽物だけどね、この招待状」
呟きは誰にも聞こえない。兵士が運転する車に乗せられて、敷地内の会場へ送られる。
任務は――新型機の正式パイロットの抹殺。
188 :
2/7:2006/08/27(日) 21:08:00 ID:???
華やかなパーティ会場。私の着ているドレスに負けず劣らずの綺麗な格好をしている人
ばかりだ。だからといっても私のドレスは惨めな訳でなく、上手く周りの平均的レベルに
とけ込んで、目立っていない。やたら色んな服を持っているだけあってマティスのセンス
は決して悪いものではないらしい。
「……さて」
胸に手を当てる。見た目には分からないが、そこには絶縁体を巻かれたマシンピストル
(機関拳銃)がある。例えドレスの上から触っても、脱いでドレスを見せても分からない。
内側に隠しポケットと触感をごまかすパッドがあるからだ。私に胸がないから隠せるわけ
じゃない、断じて!
改めて周りを見渡す。着飾った女性の姿は珍しくないけど、さすがに私ぐらいの年齢の
人はいないだろう。まあプラントでは15歳でもう成人らしいし、そもそも他のスカウト
(マティスの部下の総称のこと。それぞれナンバーを割り振られていて、私は1185)は
私以上にこの場にふさわしくない顔の人間が多いけど。顔面ペイントとか。
「まあ、結構背は高いほうだから2,3歳はごまかせるかな……」
オーブにいたころは小さい方だったけど、この二年間、馬鹿みたいに運動したせいで、
だいぶ伸びた。二年前の兄さんよりも高くなってると思う。でも、兄さんも成長してるか。
そんな感傷に浸っている自分に気付いて、辟易した。人殺しをするにしては暢気過ぎだ。
「……平和ボケかしら」
こんな場所に来ておかしくなってるかもしれない……それともあの声を聞いた時から?
多少ヤケ気味にグラスに口を付けた。中にあるのはもちろん、アルコール。……苦い。
そんな事をしてもちっとも気は晴れなかったが、代わりに人目を引き付けたらしい。
「こんにちは、お嬢さん。一緒に飲んでもよろしいですか?」
「……は?」
目の前には、金髪に黒いアゴヒゲを持つ20代半ばぐらいの男がいた。……いわゆる、
ナンパって奴だろうか。こんな場所で?
私は返事よりも真っ先に追い払う方法を考えたが、幸いこいつの仲間らしい、蒼い髪に
金髪のメッシュを入れた青年の乱入でそれを実行せずに済んだ。
「何やってんだよ? そんな小さな子まで声をかける事はないだろ」
「おいおい、それでもジャーナリストか? この子はどう見ても18から19歳ってとこだ。
体つきもそうだが、何より雰囲気が落ち着いてる。どこが小さな子だ?」
「そうかぁ? 無理に背伸びした子供っぽい感じだけど。多分15歳くらいだな」
「いーや、それはお前の勘違いだ、ジェス。ですよね、お嬢さん?」
目の前の光景に笑い出したくなるところだったけど、こらえる。代わりにすました顔で
言ってやった。
「私は15歳ですよ、ナンパ男さん?」
「……それは失礼を」
「ほらな、言った通りだろカイト」
189 :
3/7:2006/08/27(日) 21:09:08 ID:???
「……カイト?」
私の口からそんな言葉が漏れた。
蒼い髪の青年――ジェスだっけ?――の言葉。このナンパ男とは当然面識がないけど、
カイトっていう名前ならよく知ってる。もしかして、このナンパ男は……
「……カイト・マディガン?」
カイト・マディガン。『サーカス』の中で唯一、正規の手段――1vs5の戦いに勝つ――
を使って『サーカス』を抜けた人間。その実力は最強レベルといっていい。こんな所で
遭うとは思わなかったし……こんなナンパ男だとも思わなかった。だから、思わずこんな
事を呟いていた。
「……ちょっと待った、お嬢さん。どうしてまだ言ってない名字まで出てくる?」
「……あ」
「オレの名前を知ってる、ってわけか?」
どうやら、ちゃんと聞いていたらしい。その表情も、さっきまでのようなふざけたもの
じゃない。この威圧感、ああ、なるほど――確かに彼は本物のカイト・マディガンだ。
「おい、何でそんな殺気立つんだカイト? たまたま知ってただけかもしれないだろ」
「簡単なことだ。オレの名前をたまたま知っているような奴は大抵裏の人間さ、ジェス。
この会場で俺の名字は一度も言ってないし、知る機会もない……何者だ、お嬢さん」
「……」
――ミスったな。
迂闊だった。この調子じゃ、そうそう逃がしてくれなさそうだ。どうする?時間的には
そろそろ新型のパイロットが壇上に上がる時間。強硬手段でいこうか……?だけど先に、
横から声が聞こえた。
「どうしたの、ジェス? そろそろ発表よ」
「ああ、ベルか? カイトが……」
ジェスがそれに応対する。カイトもほんの少しだけど、注意がそっちに移った。重心を
後ろに移す。すぐに動けるように。ちらり、と時計を見る。確かに、発表が始まる時間だ。
そして、その演出も。
――パチリと、会場のライトが全て消えた。
素早く後ろに跳ぶ。二足目で左。急に暗転したから、カイトは目が慣れていない。横に
注意が少しいっていたのだから尚更。そのまま闇にまぎれて移動する。足音もできるだけ
殺して。
「あ、おい!?」
「ちょっと、静かにしてくれる? これから発表が……」
探し出そうと動くカイトを、さっきの女の人が止めた。ツイてる。そうしている間にも、
私は動く。会場の出口前まで来て、私は息を吐いた。
190 :
4/7:2006/08/27(日) 21:10:04 ID:???
『みなさまに我がザフトが誇るMSセカンドシリーズのパイロットをご紹介します!』
壇上で立っている、司会らしい男が唯一光っているライトの光の中で喋っている。
……もう奪われてるんだけどね、それ。
『ZGMF-X56Sインパルスのパイロットは……』
ドレスの中に手を入れた。腕時計からはシグナルが鳴っている。アウル達は成功した。
後は私の仕事だ。MS格納庫からのアラートなり爆発音なりが伝わり会場が浮き足だった
瞬間。その瞬間に……撃つ。
『シン・アスカ! 続きまして、ZGMF-X31Sアビスの……』
闇に隠れたまま、マシンピストルを構えて――
「……え?」
そこに立っていたのは
紛れもなく
黒い髪と赤い目の
私の兄だった。
『マーレ・ストロード! そして……』
私の手にあるマシンピストル。誰を撃つの? 新型機のパイロットを? 兄さんを?
――光るライトが少しずつ増えていく。まるでタイムリミットを示すように。
以前の宇宙の戦闘。私のNダガーNと戦ったスラッシュザクウォーリア。
――処分される仲間。『サーカス』では使えない戦闘人形に意義はない。
平和だった国にいた私の家族に――お兄ちゃんに、死を告げる機械の天使。
――会場に警報が鳴り響く。アビスとかが奪われたのが伝わったんだろう。
それは、正真正銘のタイムリミットを示す音――
銃声が、響いた。
191 :
5/7:2006/08/27(日) 21:11:09 ID:???
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
あちこちで爆発が起き混乱する基地内を走る。爆発を起こしているのはカオス・ガイア
・アビスの三機。……もっとも、混乱を起こした一因は私にある。
白いドレスはまだ綺麗なまま、手にあるのはマシンピストル。そして後ろには私を追う
ザフト兵。これくらい不釣り合いな組み合わせはない。
――あれで、正しかったの?
警報が鳴った瞬間、染みついた癖がとっさに体を動かしていた。撃ったのは……兄さん
以外の壇上にいた人間。私に兄さんが撃てるはずがない。
――だけど、兄さんの前で兄さんの仲間を殺したのには変わりない。
なら撃てないで任務を放棄すればよかったのか。マティスのことだから、私の兄さんが
インパルスのパイロットだなんてすぐに分かる。いや、下手をすれば分かっていて敢えて
私にやらせたのかもしれない。そんな状況下で任務を放棄なんてすれば、マティスは私を
役立たずとして迷いなく処分するだろう。
いっそザフトに、兄さんに助けを求める?――問題外だ。兄さんまで危険に晒すなんて。
――じゃあ、自分の行動を正しいとなんで言えない?
「駄目だ、こんなん、じゃ」
この状況下で迷ってる暇なんてないのに。それなのに、思考はどこまでも堂々めぐりを
続けていて。落ち着かないと……!
銃弾をかいくぐって目の前にあった建物に滑り込む。扉に鍵は掛かっていない……いや、
近くで爆発があったんだろう、扉は吹き飛んでいた。天井まで崩れていたら入れなかった
だろう、運がいい……んだろうか。
「……ともかく進もう」
一部の電源が落ちているのか、ライトが付いていない暗い廊下を走る。まるで、私の
今の気分みたいだ。本当、おかしなことになった……。
――死んだと思っていた兄さんが実は生きていて。
――私にそれを殺す命令が下される。
「……本当に。おかしなことになった」
呟いて、足を止めた。
どうやらここは格納庫……それもゴミ捨て場に近い感じで、さっきの扉は裏口みたいな
ものだったらしい。目の前には広い空間と大量のよくわからない部品、そして左には正規
の入り口らしい車もそのまま通れるだろう大きな扉がある。更に、もう一つ。右には厳重
そうな大きな扉が。その扉の前でザフト兵士が操作をしていた。少しずつだけど扉が開い
ていく。後ろからは追っ手、前には開く扉。迷っている状況じゃない。
マシンピストルを構えて、走る。相手はこっちを振り向いたけど、もう遅い。このまま
撃てば、それで終わり――
192 :
6/7:2006/08/27(日) 21:11:54 ID:???
――また、兄さんの仲間を殺すの?
思わず、私の指が止まる。その隙に、相手は拳銃を抜いていた。やっと私の指が動いた。
ただし撃ったのは……相手の拳銃。
「……くっ!」
相手が怯んだ隙に急接近、マシンピストルで顎を殴りつけて意識を綺麗に刈り取った。
でも死んではいない……なんで、今さらこんなことを。
「……散々今まで撃ってきたのに」
理由は分かり切ってる。兄さんを目にして、昔を思い出して、完全に迷いが出てきてる。
生きるためと理由をつけてやってきた事に、それが正しいのか自信が持てなくなってる。
だけど、迷っている暇はなさそうだった。後ろから足音。そろそろ追いつかれる!
扉の間をくぐって、すぐに端末を操作、閉める。内側から閉めるだけなら、キーや暗号
無しでもできた。もっとも開けることはやっぱりできないみたいだから、閉じこめられた
かもしれない。
扉に背をかけて座り込んだ。正直、もう……疲れた。頭の中は混乱していて、ドレスで走り続けて体にも負担がかかっている。
ぼんやりと周りを見る。モビルスーツが大量に並んでいた……それも見たことのない物
ばかり。多分試作品の類だろう。ここの前に部品がゴミみたいに散乱していた所を見ると、多分実戦に投入はできないかする必要がない物の集まりだ。証拠に、整備士の姿がない。
「……動かせる、かな」
動かせれば、簡単にこのコロニーを脱出できる。……本当は密かに搬入したシャトルを
使う予定だったけど、会場を出た後は考え無しで走ったせいで全然違う方向であるこんな
ところまで来てしまった。今さら行けない。だけど……
「脱出して、どうする……?」
戻って、それでザフトと戦えと命令されたら、私はできるんだろうか。……兄さんと、
戦えるのか。
じゃあ脱走する?……散々私が損害を与えたザフトが助けてくれる保証がないのに、
連合を敵に回す?
「駄目だな、私……迷ってばかりだ」
兄さんを巻き込みたくないなら、脱走して一人で戦って死ねばいいのに……中途半端に
自分の命や兄さんに執着しているから結論が出ない。……臆病者だ、私は。
ため息を吐いて立ち上がった。少し休んだおかげで落ち着けたおかげで、戻るにせよ、
脱走するにせよモビルスーツがあった方がいいと気付いた。少し迷った後、薄いグレーの
機体に乗り込んだ。起動してデータを見ると、予想通りフェイズシフトだ。
「ZGMF-YX21Rプロトセイバー……この機体もガンダムなんだ」
193 :
7/7:2006/08/27(日) 21:12:47 ID:???
Generation Unrestricted Network Drive Assault Moduleだからテスタメントとは違う
けど、略すとガンダムなのには違いない。PS装甲に電流が流れ始め、装甲は黒を基調に
白いラインが浮かぶというまるで『サーカス』の的みたいな色に変わった。可変機で更に
試作機だから変形の時パーツがどうなるか確認するためなんだろうけど……皮肉だ。
「……ともかく外に出よう」
一瞬格納庫を爆破しようとも思ったが、その必要はないらしい。どうやら宇宙専用の
機体もここにあるらしく、直接宇宙に出られるハッチがある。そこをサーベルで切断して
出ればいい。暴れるところを見られないのだから、ザフトのふりをして脱出することも
簡単だ。これならできるだけ交戦をしないですむ。
「……そのあとどうするかは決まってないけど」
何をやるにせよ、迷っていれば失敗する確率が増える。死にたくないなら進むしかない。
それでも、ほんの少しだけ私は止まってレーダーを見ていた。
「……兄さん」
格納庫の中だから、レーダーの感知は悪い。それでも、ぼんやりながらもとらえていた。
――ZGMF-X56S/β、ソードインパルス
位置は遠い。兄さんがこちらへ来ることも――通信を入れることもないだろう。逆も、
あり得ない。きっと兄さんが許してもザフト軍が私を詰問するだろうから。今会っても、
悲しませるだけだ。
――そう、理屈では分かっていても。
――レーダー上のただの電子信号を見つめてしまう私はおかしいだろうか?
投下終了。
Dアストレイと比べるとアビスとかが奪われるタイミングやプロトセイバー関連の設定が変更してあります。
それにしてもやっと本編一話か……
195 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/27(日) 22:03:16 ID:RGCqz1GB
〃´ ̄ヽ
l 从ノハ )
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ
_(ノ(__つ/ ̄ ̄ ̄/__
\/___/
そろそろ、下の方なのでageますね。
dat落ちは最終書き込み時間
ヌルーしないとゲンが来るぞ
ゲンたん(*´Д`)
隻腕まd(パーン
隻腕madaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
「マユ!レイ!ようやく休みが取れたよ!!」
そういって部屋に飛び込んできたのはギルバート・デュランダル。
いつもの木星帰りみたいなも薄汚れており、もうボロボロである。
どうやら必死こいて仕事を終わらせかえってきたらしい。
「「ふーん。」」
興味なさげに呟く二人の子供。二人とも正方形に近いゲーム機で遊んでいる。
「明日は何処へ行こうか?遊園地?それとも買い物・・・・・・。」
「ギル、明日俺達は仕事が入ったんですけど。」
目を輝かせて語るギルバートにレイが冷たく告げる。
ショックを受けたのか隅っこでいじいじといじけるデュランダル。
それを見たシンハロが思わず告げる。
『あの、じゃあ次の任務。議長も行きますか?特に俺達から離れなければ危険な任務じゃありませんし。』
そう言って家事をやっていたシンハロが議長に聞く。
すると議長は泣くのをやめてシンハロを見つめる。
「シンハロォォォ!!お前だけわぁぁぁ!!」
飛びつくギルバート。
『とりあえず気持ち悪いんで引っ付かないでくれます?』
やっぱり駄目なのであった。
なんか炎天下の中、デブからガリ、眼鏡の女性からかなりの美人まで。様々な人種がそこにはいる。
ここはプラントでなく、とある宇宙ステーションの中である。
「きゃー!マユちゃんったらかわいい!頑張ってつくったかいがあったわーv」
そうグレイシア興奮しながら言う。
「本当?!うれしいなぁ♪私昔っからセーラーに憧れてて♪」
マユがおどけながら言う。
二人の格好を説明しよう。
グレイシアの服はかなりスリットの入ったレザーのスカートにベルトを組み合わせたような上着。
手には死神のような大きな赤い鎌。
マユは胸元に赤いリボンのある青色のセーラー服に髪は黄色のリボンで止めてある。
『マユ、あのダンス踊れる?』
シンハロは髪色の設定を黒に変え、髪型をハリネズミのようにし、上は袖の無いハイネック、下はごっついブーツに動きやすそうなズボン。後ろには巨大な剣を持っている。
「ステラなのー!」
「・・・・・・俺の女の子の服なんでしょ?」
「私声マネもできるわよ?乳酸菌とってるぅ?」
カルマとステラ、ミーアはアンティークドールのような服装だ。
ステラはピンクを基調とした服で頭にはおっきいレースのリボンが。
カルマは少年の人形の格好だろうか?シルクハットを被った青い服で大きいはさみをもっている。
ミーアは銀髪のカツラに黒いドレス。背中には黒い羽が生えている。
「・・・・・・アウル、俺目隠しで前見えないんだけど。」
「・・・・・・・知るか!」
真っ黒い衣装に赤いアイマスクをしたネオ。ちょーどりる。
髪の毛を金髪に染めて白と黒のストリートファッションをしたアウル。夏休み、終わっちゃうね。
「・・・・・・・・・え?何?俺ホモなの?」
「いや、俺達のキャラは猟奇殺人者らしいから安心だ。」
「ちっとも安心できねぇ!!」
スティングも髪を黒に染め、ファーの付いたジャケットに迷彩柄のTシャツ、鉄パイプを持っている。
レイは赤のファスナーの付いているパーカーで前を大きく開けておりその中には何も着ていない。
どうやらシールと思われるタトゥーが体に張り付いている。
手には鉄爪が装備されており腰のベルトには大量のドッグタグが吊るされている。
「ふふふ・・・、レイのタトゥーシール徹夜で作ってよかった。」
「お姉ちゃん、私の衣装もどうにかならない?」
ルナマリアは髪を黒く染めて青い男子用のブレザーの制服を着ている、
対照的にメイリンはボンテージのような衣装で黒いトカゲのようなしっぽに緑と白の色違いの羽がある。
「カルマそういやアキラとハイネとシンは?」
「えー?なんか同人誌出してるからそこにいるらしいよ?ハイネとシンはなんか賭けやって負けたから手伝いだって。」
髪の毛を下ろしてルナマリアと同じデザインの制服を着ているジョー。
それとは反対に毛先を跳ねさせてトリコロールのジャージを着ているキース。
「・・・・・・・・・・・。」
「小物までばっちりアキラに借りてきたのか?ゼロ。」
ゼロは髪の毛をみつあみにして赤と黒のオートマチックと銀色のリボルバーを持っている。
一方アスランは黒と白のストライプのハイネック(袖なしへそだし)の上に白いYシャツを着ている。
首のところでリボンで止めてある。
「待ってくれ、これは何の任務だい?」
そうギルバートは言った。彼は髪をきられ短くなった髪をさらに茶髪にそめており,
黄色いYシャツにだらしなく垂れさがった(仕様)茶色いカーディガンを着ていた。
『だから会場の警備ですってば。』
「ここはナチュラル・コーディ関係ないですからね。連合、ザフト、オーブからそれぞれそう言う趣味の隊員を集めて
警備を任せてるんです。」
「俺達はとばっちりみたいなものですけどね。」
「レイヤーに紛れてたり普通にスタッフしてたり色々な分担があるんだそうですよー。」
「・・・・・・私のは何の格好なんだい?」
ぺらぺら言うメンバーに議長がぼそっっと聞く。
『・・・・・・・えーっと。』
「議長のキャラは最終兵器で読書が趣味。ですが小動物のような一面をもった落ち着きのあるナイスガイです。」
ルナマリアが解説をする。ある意味間違っていはいない。
『・・・・・・誰だよ、議長にあの格好させたやつ・・・・。まずばれないからいいけど・・・・。』
シンハロがため息をついた。
するとそこでアスランが手を叩いて雑談をやめさせる。
「はい、じゃあ今回の任務を説明するぞ。
今回は会場の警備、各自それぞれに分かれて見回りをしてもらう。
・・・・・あとの説明はルナマリア、頼む。」
「はいはーい。」
そう言ってアスランの立っていた場所にルナマリアが立つ。
「まず熱いので全員タオルと凍った飲み物は忘れない事。
コスプレの撮影を頼まれたらどうするかは自己判断で。コスプレネームも考えておきなさい。
スケブを頼む時はきちんと本をかうのよ?
同人便箋はあんまり使うことをおすすめしないわ。
差し入れにあんまり重いものや痛みやすいものはだめ。入浴剤とか結構喜ばれるわよ?
コスプレを撮りたいとおもったらきちんと相手に許可を取ること。
最近はお子様の盗撮が増えてるから見つけたら容赦なくしばきなさい。
あと誰かこのメーカーのトコ並んで限定のグッズセット買ってきて。」
((((((うわぁ・・・・・・・・・・・・・。))))))
ぶっちゃけどうでもいい常識をルナマリアが並べたてる。みんなドン引き。
「・・・・・えー、それでは各自、自分達が騒ぎを起さないように!解散!」
アスランがそう言って皆はばらばらに散った。
子安と人形と蔵人しか分からない!
銀さましか分からん
議長は何なんだろう?
ギルティとローゼンとハルヒ?まぁ3分の2以上分かったからいいや・・・って良くねぇ!
レイは鉄爪とタトゥーでバルログかと思った…
ドールしかわからん…
ほのぼのマユって確かトンファー持ちだったよな?
だったら、赤に金のラインのチャイナっぽい服に黒いスパッツ
背中にでかい白いリボンなんてどうだろうか?
>>211 それなんてエロゲ?(わかってて聞いてるよもちろん)
単発設定小話 「自由と正義/罪と罰 part3」オーブ攻防編D
〜アークエンジェルから発進するインジャ〜
アスラン「・・・俺はまだ・・・・・・くっ!アスラン・ザラ、ジャスティス出るぞ!」
〜インジャの発進を見守るメイリン〜
メイリン「ラクス・・・さま?・・・アスランさんは、大丈夫でしょうか?」
ラクス「アスランは・・・ちょっと気を使いすぎで優柔不断なところもありますが・・・」
メイリン「・・・・・・」
〜メイリンに笑いかけながら〜
ラクス「でも、それを吹っ切ったときはキラよりも強いですわ。・・・だから私は彼を信じていたい」
メイリン「・・・そうですね」
ラクス「メイリンさんでしたわね?・・・アスランを、宜しく頼みましたよ?」
メイリン「えっ!?・・・いや、そんな・・・・・・。私とアスランさんはそんな関係じゃ・・・・・・」
〜笑みしか返さないラクス。頬を桜色に染め、苦笑するメイリン〜
ラクス「ところで、メイリンさん」
〜一瞬の瞬き後に真剣な顔になりメイリンを見つめるラクス〜
メイリン「・・・はい?」
ラクス「ここでの戦いはおそらくオーブが勝つでしょう。・・・まぁ勝ってもらわねば私たちが困るのですが・・・」
メイリン「そう・・・ですよねぇ」
ラクス「メイリンさんはこの戦いの後はどうなさるおつもりですか?」
メイリン「・・・私は・・・アスランさんのなさることを少しでもお手伝いできれば、と思います。・・・その先は・・・わかりませんけど」
ラクス「そうですか。・・・ザフトを抜け出したことについては・・・どうお考えですか?」
メイリン「・・・・・・ラクス様って結構直球でものをお尋ねになるんですね」
ラクス「今は・・・戦時中ですから、あまり遠まわしの言い方はしないようにしています。・・・で、どうなのですか?」
メイリン「私は・・・ずいぶんと自分勝手なことをしたんだと反省してます。けど・・・」
ラクス「けど・・・?」
〜首を少し傾けるラクス〜
メイリン「後悔はしてません。・・・そりゃあ、お姉ちゃんやミネルバのみんなに謝らなければとは思いますが」
ラクス「・・・」
〜瞳に涙を浮かべるメイリン〜
メイリン「・・・・・・ほんと、私自分勝手ですよね。・・・私はそんな自分が嫌い。だから他の人もあまり好きになれなかった・・・」
ラクス「その逆もあるのですよ、メイリンさん。他人を好きになれば、人は自分を好きになろうと努力をするはずです」
メイリン「ラクス様・・・」
ラクス「アスランを好きなのなら、近いところに居た方が良いでしょう。そのほうがより自分が好きになるのが早くなりますわ」
〜メイリンの背中に腕を回し抱きしめるラクス〜
ラクス「オーブの次は宇宙で最後の戦いが待ってます。・・・メイリンさん。エターナルで私のお手伝いをしてくださいませんか?」
メイリン「・・・ラクス様・・・・・・。はい、私・・・私、ラクス様をお手伝いさせていただきます・・・」
〜ラクスの胸で泣きぶせむメイリン〜
〜その頃、デスティニーとレジェンドを見つけマユに叫ぶアスラン〜
アスラン「マユ!レイ!・・・・・・目を覚ませ!・・・お前たちは・・・議長がなにを言っていたのかわかっているはずだ!!」
レイ「・・・その声!?・・・生きていたか!アスラン・ザラァー!!・・・議長に逆らうなど愚かな人間のすることだっ!」
〜インジャに迫り、ビームを連射するレジェンド〜
レイ「まったく、ご苦労なことですねアスラン!・・・あなたには私が罰して差し上げますよ!裏切りものがっ!!」
続 ・・・・・・次回「私を踏み台にした!?(仮)」オーブ攻防編E
214 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 03:31:41 ID:yfYBqUaQ
イイ(>w<b
「えっとー、あとはぁ・・・・・このサークル!」
『マユ、ごめん。おれアキラのとこ寄って来たいんだけど。』
シンハロがそう言ってマユを引っ張る。
「確かお兄ちゃんとハイネお兄ちゃんも手伝ってるんだよね?」
『あぁ・・・・、たしかあそこ・・・・・・・。』
アキラのサークルスペースは何やら閑散としている。
「・・・・・?人気ないの?」
『いや、違う。』
そこには本もグッズもなくあるのは『完売しました。』という看板。
「え・・・・・?」
「あ!!!マユー!!!」
そう言って飛びついてきたシンにマユはアッパーをかます。
シンの格好は上はハイネックのノースリーブだが下はどこかの民族衣装のようだ。
『なんだ・・・、お前ボロボロおぼろ豆腐かよ。』
「な・・なんだよ?ボロボロおぼろ豆腐って・・・。俺はアキラにこの格好で売ってくれって頼まれただけだぞ・・・。」
シンハロの哀れみを含んだ言葉にちょっとビビりながら返答するシン。
「ハイネお兄ちゃんは?」
「ハイネならなんか好きな声優の舞台イベントがあるとか言ってさぼった。」
マユの問いにいらついた声でシンは答える。それで散々苦労したらしい。
「シンー!!って・・・、マユちゃんにシンハロ、来てたのか?」
奥のほうで何やら整理していたアキラがこちらに来た。
「はい、これ今日のバイト代。ハイネこなかったからその分も入ってるから。」
アキラの格好はYシャツズボンに赤い女物の着物を羽織った姿だ。腰には日本刀がある。
アキラは茶封筒をシンに渡した。
「え・・・?いいのか?!おれ賭けで負けたのに・・・・。」
「いーっていーって。ハイネがサボったせいで大変な目に逢わせちゃったからそのおわび。ステラにプレゼントでも買ってやれよ。」
「あ・・・・ありがとう!!」
そう言うなりシンは着替えず飛び出していった。
「おおう・・、あの馬鹿っぷりはまさにボロボロだなぁ・・・。」
アキラが満足そうに笑う。
『シスコンだしなぁ・・・。』
シンハロがそう言ってため息をつく。
ふとマユを見ているとなにやら不満そうな顔をしている。
『・・・・・・?どうした、マユ?』
シンハロが聞くとマユは呟いた。
「・・・・・・なんかむかつく。」
「『え?』」
アキラとシンハロはすっとんきょうな顔をした。
「だって・・・ちょっと前までは私のことをストーカーみたいにつけまわして気持ち悪いくらいベタベタしてきて
いっつもニヤニヤしてたのに・・・最近はステラばっかで・・・・・・・・・・。」
その瞬間、アキラとシンハロの背後にベタフラが。
「お・・・、おい!シンハロ!!ミーアにクロス着せてもらってこい!槍が降る!!むしろ隕石がおちる!」
『あ・・・・あぁ!!俺水瓶座のがいいな!』
「じゃあ俺山羊座で!つーかシンハロ!お前むしろ鋼鉄だろ?!小宇宙あるのかよ?!」
『あ・・・そうだ!隕石が落ちるならルナマリアよんで来たほうが・・・!』
「お前がなんとかしろよ!そのキャラのクラス1stだったろ?!」
二人でぎゃーぎゃーこの世の終わりみたいに叫びだす。
「あ・・・・・あんたらってひとわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
マユの咆哮が響いた。
「おおっ・・・・!やばいやばい逃走ー!!」
『あ!逃げるなー?!つーかサークルスペースどうするんだよー?!』
「両隣知り合いだからー!すみませんお願いしますー!!」
『つーか俺をおいて逃げるなぁぁぁぁ!!』
シンハロの叫び虚しくアキラは光るかぜ追い越す早さで人ごみの中を走っていく。
「死刑!死刑!死刑っ!」
『あーもー!何で剣なんて使うやつにコスプレしたんだ!つーか斧使いって少なくね?!
とにかく落ち着けマユ!リミットブレイクするはずなのは俺だ!』
そのあと、暴れていた所をアスランに見つかり二人はとっても怒られた。
コスプレクイズのヒント。
その1:マユとルナマリアのキャラは同じ名前。
その2:アウルのキャラは著作権的にやばい。
その3:キースは猫。猫キャラで男。
その4:シンハロは声優ネタ。
その5:ゼロのキャラも声優ネタ。ゼロの中の人はGジェネのキャストを思い出して。
その6:ゼロのキャラとアスランのキャラは親子
その7:議長、レイ、スティングのキャラは同じ作品。スティングのセリフに注目。
218 :
単発屋:2006/09/01(金) 00:49:36 ID:???
ほのぼのさん、かぶせて投下してごめんなさい。(先に謝っときます)
眠いのでレスつく前ですが投下させてください。ゴメンナサイ。
単発設定小話 「青き清浄なる世界のために」オーブ攻防編E
〜デスティニーとレジェンドに圧倒されつつあるストフリとインジャ〜
マユ「アスランさんっ!?・・・!?っちぃ!!余所見はさせてくれないのね!」
レイ「マユ!アスランは俺に任せろ!お前はそのMSに専念しろ!!」
マユ「了解!!」
〜デスティニーとレジェンドは善戦しているものの、実は旗艦が沈んでホントは不利になりつつあるザフト軍〜
タリア「・・・アーサー!旗艦を呼び出しなさい!!個々にやってたんじゃ埒があかないわ!!」
アーサー「はいぃっ・・・!!艦長ぅ!旗艦が・・・既に沈められたようです!!」
タリア「なっ・・・」
〜絶句するタリア〜
タリア「なんでそんな大事なことを見逃しているのっ!!じゃ、今旗艦はどの船なの!?」
アーサー「・・・・・・・所属と優先順位でいくと・・・わが艦が今現在の旗艦です・・・・・・」
タリア「・・・・・・元気がいいのはマユとレイだけってことね」
〜その頃、月へ脱出するためのシャトルへ案内されているジブリール〜
ジブリール「ほう、君たちもがんばっているようじゃないか?」
ウナト「ジブリール卿、お急ぎください。カガリ・ユラ・アスハが司令部を奪還した模様です」
ジブリール「その前に、君のとこのレーザー通信機を使わせてもらいたいんだがね」
ウナト「通信機ですか?」
ジブリール「念のために今後のことを月の連中に送っておこうと思ってね」
ウナト「・・・わかりました。ですが、急いでください。あと10分後には出発しますからね」
ジブリール「まとめてあるから送信するだけだよ・・・で、月はでているか?」
ウナト「衛星を中継していきますから、月が見えてなくても大丈夫です!」
ジブリール「・・・なんだ、つまらんな。じゃ、これを送っておいてくれたまえ」
側近「はっ。」
ウナト「じゃ、シャトルに乗り込みますよ?」
ジブリール「わかったわかった」
〜で、宇宙に向かって戦場を突っ切っていく1機のシャトル〜
〜シャトルに気づくルナマリア〜
ルナマリア「!!・・・でたっ、あれね!!」
〜飛び立つシャトルに追いすがるインパルス〜
ルナマリア「堕ちなさいっ!!それにジブリールが乗ってんのはわかってんのよ!!」
〜シャトルに向けてビームを放つインパルス〜
シャトルパイロット「!!下からMSがつけてきているぞ!」
ウナト「なんだと!?・・・もっと速くならんのか!?」
ジブリール「・・・あのMS。・・・いや、彼の妹じゃないな・・・・・つまらん」
ウナト「ジブリール卿、必ずあのMSは振り切ってみせますから。どうぞご安心を」
ジブリール「ああ、もちろん。信用しているよ?ウナト・エマ・セイラン。・・・青き清浄なる世界のために」
〜必死でシャトルを狙い続けるインパルス〜
ルナマリア「くっそぉ〜!!あたりなさーい!・・・やった!!」
〜爆散するシャトル〜
〜ミネルバ〜
タリア「・・・なんとか最低限のことはできたわね。アーサー、全軍へ通達!わが軍は撤退する!!」
アーサー「了解しました!!全軍へ通達・・・・・・・って、えぇぇえぇっー!!」
オーブ攻防編完 ・・・・・・ドムの活躍の場が作れませんでした。もう一回チャンスがあるので、そのときに作れればと思います。
マユ=涼宮嬢
ルナ=藤岡
シンハロ=ザックス
しか分からん…。人形とGGのも一応分かったが。
難易度高くないっすか今回。
シャトル爆発ってことは…ジブリんもぬこ様もあっけなく退場?!
っていうか視覚情報ならともかく文章でとなると正直かなり特徴的な部分を挙げないと分からんて
書いた奴自身でないかぎりはな
「死刑!死刑!死刑!」
これはバチカンの大司教ですかエイメン
>>217 ぬこキャラで男と聞いてシャミセンしか思いつかない俺
((_ 〃´⌒ヽ
〃´ `ヽ ( ((从 l
i .( (( ))ノ リ(゚ヮ ゚ ! 人
ノ リ ´_ゝ`ノ / ⌒i プ"
/ \ / | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ .| |
__(__ニつ/ /_| |____
\/____/ (u ⊃
~●~
〃´ ̄ヽ
l 从ノハ )
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ
_(ノ(__つ/ ̄ ̄ ̄/__
\/___/
シンハロとマユのつもりです・・・。
単発設定小話 「志半ばで・・・」
■ユウナ編
〜拘束され連れて行かれるユウナ〜
ユウナ「・・・なんで・・・なんで僕がこんな目にあわないといけないんだよぉう・・・」
兵士A「なにか言いましたか?」
ユウナ「・・・っち。なぁんでもないよ。・・・パ・・・父さんはどうした?」
兵士B「行方不明ですよ。・・・!おい、やばいぞ。あれっ!」
〜兵士が指差す上空から、被弾したムラサメが墜落してくる〜
兵士A「げっ。に、逃げろぉー!!」
〜蜘蛛の子を散らすように逃げるオーブ兵たち。その場に残されるユウナ〜
ユウナ「え?・・・ちょっ・・お前たち、僕を置いてくなよっ!・・・って、わぁっーー!!」
〜ムラサメの下敷きになったユウナ〜
■レイとマユ
〜ブリッジへ足早に向かうマユとレイ〜
マユ「タリア艦長っ!!・・・なんで!?なんで撤退なんですかっ!!」
レイ「・・・・・・私も今の判断にはちょっと疑問を持ちます」
〜落ち着いた目で二人を眺めるタリア〜
タリア「・・・あのままで敗退で終わると判断したから撤退命令をだしたのよ」
マユ「・・・もうちょっと時間をくれれば!!絶対勝てましたよっ!!」
タリア「・・・勝ったわよ。この戦いはね。あれ以上の戦闘は無駄に兵を失うだけ。そうしたら勝利もなにもないでしょう!」
マユ「勝ったって・・・・・?」
タリア「そうよ。そもそもの目的は八割方達成したのだから勝利といっていいでしょう」
レイ「ジブリールか・・・」
タリア「そう。だから、もうここには用は無いということね。わかったら早く着替えてきなさい。宇宙に戻るわよ」
マユ「・・・・・・っち」
〜来たときと同じように足早にブリッジを立ち去るマユ〜
■ぬこたん(オーブへわたる前に秘書官に預けていたのを覚えていたかな?)
ぬこたん「!!ぬぉぉおぁ〜!」
〜秘書官の腕の中で暴れるぬこたん〜
秘書官「ちょっと。なに?どうしたっていうの?イブリス!?」
ぬこたん「ぬぉ・・・ぬおぉぉ〜」
〜狼の遠吠えのように鳴き続けるぬこたん〜
秘書官「ちょっと、暴れないでよ。もう!・・・ジブリール様が恋しいの!?」
ぬこたん「ぬぉ。・・・ぬぉぉお〜ぬぉ〜」
秘書官「だから暴れないでよ。ジブリール様の身になにかおきたわけじゃあるまいし!」
ぬこたん「ぬぉ〜・・・・・・」
■月面ダイダロス基地
シン「・・・オーブが勝ったのか?」
スティング「おい、シン!エンジンのマッチングテストだってさ!」
シン「ああ、今行く」
スティング「テストが終わったあとに緊急ミーティングだってよ。リー艦長が言ってたぜ」
シン「・・・ふ〜ん。また連合分裂の話じゃないのか?」
完 ・・・・・・次回より「二人のラクス編」。
>>222 同じようなキャラは探せばいくらでもいる
一行でさらっと流されると難しいな
~●~ <保守
〃´ ̄ヽ
l 从ノハ )
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ
_(ノ(__つ/ ̄ ̄ ̄/__
\/___/
Wスレのマユが最高にイっちゃっているぜ
単発設定小話 「モニター越しで」二人のラクス編@
〜声明をTV演説で出すカガリ〜
カガリ「んっん・・・ゴホン。えー・・・かくがくしかじかであり、先日のデュランダル議長が発表されていた戦争のない世界、
それは政治に携わるものとしても、一個人としても望むことです。しかし・・・」
〜TVにノイズが走り、ノイズがきえて現れたのはカガリではなくミーアが映っている〜
ミーア「・・・みなさん、私はプラントのラクス・クラインです。・・・あーだこーだ云々・・・・・・」
〜アークエンジェル〜
マリュー「う〜ん・・・ずいぶんとまぁ・・・」
ムウ「目のやり場に困る格好だなぁ?」
マリュー「・・・あなたという人は・・・・・・記憶が完全に戻ってきていなくてもそんなことばかりに!」
ムウ「おいおい、素直に感想言っただけだぜ?」
マリュー「・・・ったく。戻ってきてくれてちょっとはまともになってるかと思いましたが・・・」
ムウ「・・・なっ?以前より20%増しでかっこよくなってるだろ?」
ムウ「・・・こいつはぁ・・・・・・」
〜こめかみを押さえるマリュー〜
〜ミネルバ〜
タリア「・・・・・・ギルバート・・・・・・あなたという人はっ!!」
〜リフレッシュコーナーでたむろってるクルーたち〜
ヨウラン「お?ラクス・クラインがオーブの会見放送をジャックしてるぞ」
ヴィーノ「ああ?・・・本当だ。やっぱオーブのちんくしゃなんかより全然イケてるねぇ」
〜部屋で中継を見ていたマユとルナマリア〜
マユ「!・・・ミーア姉ちゃん!?・・・・・・なんか・・・顔色がよくないなぁ」
ルナマリア「ミーア?・・・って誰よ?どっからどう見てもラクス・クラインじゃない」
〜「しまった!」という顔をするマユ〜
マユ「・・・隠す意味もあんまりないような気もするから・・・・・・ルナ姉ちゃんには教えてあげるわ」
ルナマリア「なんのことぉ?」
マユ「絶対、絶対他の人にはいっちゃ駄目だよ?・・・いまプラントの声明文読んでる人ね・・・ラクス・クラインじゃないの。ミーア・キャンベルっていうのよ」
〜瞬きを繰り返すルナマリア〜
ルナマリア「えっ・・・?ミーア・・・キャンベル?え?・・・でもあの顔、あの髪の色、あの声・・・どっからみてもラクスじゃないの?」
マユ「・・・顔は整形、髪は染めてるのよ。・・・声は・・・・・・地声ね。・・・ミーア姉ちゃんは・・・・・・・私と同じ、オーブ難民よ」
ルナマリア「・・・仮にあれが偽者だとして・・・・・・じゃ、じゃあ本物のラクス・クラインはどこに居るのよ!?」
マユ「・・・・・・それは・・・」
〜マユが口を開きかけたときにまたモニターにノイズが走る〜
ルナマリア「あら、またノイズが・・・・・・!?」
マユ「あ・・・」
〜ノイズがなくなると衣装と髪飾りがさっきと違うピンクの髪の女が映っていた〜
マユ「・・・まさか・・・・・・ルナ姉ちゃ!?」
ルナマリア「・・・・・・ラ、ラクス・・・ク・・・ライン?」
〜モニターに映った女が喋りだす〜
女「彼女の言葉に踊らされてはなりません・・・私はラクス・クラインと申します」
続 ・・・・・・次回「ミーア」二人のラクス編A
>>231 俺はああいったのも大好きだ
だもあれは脇役だからこそ映えるマユだけどな
234 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/05(火) 13:38:44 ID:jsfnS1ym
保守ぬるぽ
>>234 〈,.'⌒ | ii 保守ガッ!よ!
'´ , `´ ヽ i !
i イノノ)))) i !, *
| リ#゚ヮノl!l i |_∧’.:' ,
ノ ⊂)夭iつ l,l |#´Д`)∴; ←
>>234 ( (( く/_ノ_i_ j とノ ’;、`
ヽノ / / 〈 '
(_(__)
「ゲンー、かわいい漫画の本かったのーv」
「そうかぁv良かったなーvステラv」
「・・・・・・・このはさみであの二人の赤い糸切りたくなってきた。」
「あら奇遇ねぇ、私もよ・・・・・。」
目の前でラブラブ空間を繰り広げる二人をげんなりとした顔で見るカルマとミーア。
「しかもハイネさぼりですってぇ・・・?見てなさい、帰ってきたらゴールドクロス着せてザフト基地マラソンなんだからぁ・・・。」
「その罰はどうかと思うよ、あとハイネにクロス着せたいだけでしょ?」
「とにかくうちの男子には全員いつか着せるわ。ミーア・キャンベルの名にかけて。」
「うわぁ、俺何座着せられるんだろう。」
めらめらとオーラ・・・・もとい小宇宙を燃やすミーアにさらにげんなりするカルマ。
「え・・・?いまから試着する?トラックで持ってこさせたから。」
「あの脅威のコレクションを?!」
カルマがガクガクと震えだす。
「当然じゃなぁい、だってサイズも完璧に男物にしちゃったから皆に着てもらうしかないもの。」
カルマはさらに震える。逃げないと、ここから逃げないと・・・・・。
瞬間、突然悲鳴が上がった。
「何?!」
見るとなにやら仮面を付けた男が女性を抱えて攫っている。
「ミーア!ステラ!シン!」
カルマはメンバーの名前を呼びながら男を追いかける。
もちろん残りのメンバーも送れず追いかけた。
「どきなさいっ!!」
ミーアが翼から折りたたみタイプの長刀を取り出す。
それが本物の刃物であるのに気づいた人々は次々に逃げていく。
「ステラ達悪者みたい・・・・。」
「大丈夫、悪者でも人気はでるのよっ!!」
ステラの言葉に威勢良くミーアは答える。
「くそっ!皆、俺が食い止めるぞ!!」
シンは腰に装備していた二本の剣を抜き、義足を全力でつかって跳躍する。
「?!」
犯人は突然目の前に降り立った男にひるんだ。
「その人を放せ、そうすれば手荒なまねはしない。」
シンが冷酷な目で剣を構えながら言うと男は突然拳銃を懐からだし女性に突きつけた。
「動くなっ・・・!動いたらこの女を・・・。」
「なんなのかしらぁ・・・?」
興奮しながらまくし立てていた男は首にあたるひやりとした感触にその言葉をとめた。
視線を周囲に移すとピンクの服をきた少女が拳銃を、青い服を着た青年がナイフを構えていた。
そして今彼をに後ろから首に刃物を突きつけているのは漆黒のドレスの少女だった。
「ねぇ・・・、こんなのよりわたしと遊びましょぉ・・・・。」
まるで恋人に甘えるように、だが殺気は隠さずに黒の少女は語り続ける。
だが、男はそのプレッシャーに負ける前に鎖に絡め取られた。
「あら。」
先ほどとは一点して間抜けな声をあげる黒の少女。
男は緊張から解き放たれて気絶した。
「ミーアちゃん!ふざけすぎよ!」
巨大な鎌をネオに持たせて自分の武器の鎖を構えたグレイシアがミーアを叱る。
「だって・・・・、つい役者根性で・・・・・。」
「うそおっしゃい!ものっすごくノリノリだったわよ?!」
ガミガミと怒るグレイシアに正座をして聞くミーア。ギャラリーの目が痛い。
「あ!皆!!」
向こうからマユ達が走ってきた。
シンハロは片方の肩に別の不審者、もう片方にアスランを抱えてきている。
「うわー、すごい。無傷だー。どうやって捕まえたの?」
カルマが感心したように言う。つまりハイネ隊ではこういう場合必ず怪我をしているということか。
「簡単だよ・・・・。」
マユはニヒルに笑いながら言う。
「女性向けサークルの多い所だったからシンハロにアスランお兄ちゃん襲わせてその場を大混乱させてから確保。」
「「「「「うわぁ。」」」」」
アスランは突然の自体に耐えかねてポックリ言ったらしい。
「いやー、シンハロのセリフがあまーい!!のよ。いやぁ、主人ながらいつあんなのを何処で覚えてきたのか・・・・。」
でも私アス受けはちょっと・・・・・と興奮しながら言うマユ。
「うーん・・・やっ・・・・やめろっ・・・キラぁ・・・え?!何?!触手?!」
ベーコンレタスな悪夢にアスランはうなされ続ける。頑張れ。
シンハロもげんなりとした表情をしている。どこまでやらされたのだろう。
「それにしてもこいつら何が目的なんだ?」
アイマスクを外したネオが思わず呟く。
「今、カルマが聞き出してるって。」
なにか五円玉を紐で吊るしたものを揺らしたり謎の機械で犯人二人を尋問している。
「いや、聞き出すっていうより洗脳だろ。心理学者って怖いな。」
『お前あとで全国の心理学者の方々にあやまっとけよ、カルマ。』
そろそろ奇声を上げ始めそうな犯人二人を哀れみの目でみるダブルシン。
「皆ー!!」
すると向こうからメイリンが走ってくる。
殺伐とした文芸部室にいるメイド服少女のような癒し効果だ。
「メイちゃーん、犯人が洗脳でシンハロが夜王でミーアちゃんが悪女なのー。」
「はぁ・・はぁ・・、何か・・・良くわからないけど・・・・・・。」
メイリンが息を荒くしながら言う。
非戦闘員である彼女は体力もないし何より背中の翼と尻尾が重い。
「と・・、とにかく大変なの!!お姉ちゃん達が殺されちゃう!」
>>231 ヒントきぼんぬ
WスレでぐぐったらW(ダブルユー)と羽ガンダムがヒットしますた
>やめろっ・・・キラぁ・・・
アスランwwおまwwwww
>>238 この板でWで検索してマユが出てきそうなスレッドタイトルを探すのだ。
予め言っておくが本当にコワレキャラだぞ?
ヾ'~^ヽ~ノ~ゝ
ミ~' _、ソリ
ヽY ,_ノメノ
. 〃´ ̄ヽ つ
l 从ノハ))
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ <虎の首、獲ったどぉぉぉ!!
(ノ( O┬
≡◎-ヽJ┴◎
これか
>>240thx
全部読んできた。ある意味姉妹スレ.? なかなか面白い。
それにしてもスレの伸び方が異常www
まったり保守
~●~ <保守
〃´ ̄ヽ
l 从ノハ )
ノ_ノ ゚ ヮ゚)ハ
_(ノ(__つ/ ̄ ̄ ̄/__
\/___/
単発設定小話 「ミーア」二人のラクス編A
〜本物のラクス登場でおたおたするミーア〜
ミーア「・・・え?・・・ちょっと、なに?・・・本物のラクス・・・クライン?」
タケダ「ゲッ!・・・・・・ホンモンがでてきよったでぇ〜・・・」
〜本物のラクスが淡々とデュランダル批判をしているなか、ミーアの醜態が同時に放送されている〜
デュランダル「・・・まさか・・・・・っくっく・・・ここで出てくるとはね。・・・やるじゃないか、ラクス・クライン。
この場は君にくれてやろうじゃないか。・・・おい!あの醜態をいつまでさらすつもりだ!早く回線を切れ!」
〜デュランダルの放送中止の命令がミーアのいるスタジオに告げられる〜
AD「・・・え、はい、はい。・・・わかりました!・・・・・・タケダさん!放送中止と命令が!」
〜眉間にしわを寄せ真剣な顔をしているタケダ〜
タケダ「・・・放送は続行や!主回線をこっちにもう一度回してもらえまっか?」
AD「え?いや、しかし・・・議長から・・・・・・」
タケダ「お願いやっ!・・・ここがあん娘の正念場や!ホンモンになれれるかどうかの瀬戸際やでぇっ!」
〜ミーアに喋れとジェスチャーを送るタケダ〜
AD「でもですねぇ!・・・ほら、彼女もすっかりあたふたしてるじゃないですかっ!!」
タケダ「うっさい!ええから、はよせんかいっ!んなら5秒後に主回線まわしてやっ!!・・・いくでぇー!!」
AD「あ、あんた・・・鬼かっ!?」
〜本物のラクス・クラインがもっともらしいことをいってる途中、再びモニターにノイズが走る。キューを振るタケダ〜
ミーア「えっと・・・えへへ。・・・もう一人私が出てきてちょっとびっくりしていますが・・・・・・。皆さん、私の言葉も聞いてください。
・・・先ほど私にそっくりな方がおっしゃっていましたが、それはまったく違います。そのような誤った認識、間違った知識で
は真実を図り知ることなどできようもありません。われわれプラントはそのようなことを押し付けたいわけでもなく、まして
や戦争などしたいわけではありません。なのに、なぜ?あの方々は・・・頭ごなしに否定するようなことをおっしゃるので
しょうか?・・・・・・」
〜うつむき押し黙るミーア。ごくりとつばをのみこむタケダ〜
ミーア「・・・なぜ?・・・うっう・・・・・・なんであなたが出てくるの?・・・ねぇ?なんで今頃のこのことしゃしゃりでてくるのよ?
自分の偽者がでてくるのが許せないから?・・・私を笑いものにするためにでてきたの?ねぇ・・・ねぇ・・・なんでっ!
なんで今になってでてくんのよっ、ラクス・クラインっ!!」
〜顔を上げるミーア〜
ミーア「私がなにをしたってゆうのよ!あんたが、あんたがいつまでたっても表に出てこないから。プラントに戻ってこないから
私があんたの代わりをやってあげてたってゆうのにっ!!今頃になってでてくるなんて!!もっと早く出てきていれば、
私なんかよりよっぽど世界の役に立っただろうにっ!もうっ、一体今の今までなにしてたのよ!?衣装の準備?髪の
お手入れ?それともエステにでも行っていたのかしら!?そのピンクの髪、白い肌。私なんかとは全然違う。・・・・・・
偽者の私なんか足元にも及ばないほど素敵なものをもっているとゆうのに!?・・・ねぇ?なにがしたいの?なにをした
いの?そんなに自由に生きていけないのが嫌なの?それとも戦いが好きなの?そうよね、戦いがすきじゃなきゃこんな
戦火を拡大させるような発言なんてできないものね!もうっ本当に・・・本当に腹が立つほどうらやましいわね!
私があなたに近づくためにどんなに努力したきたかわかってんの!?・・・・・・ええ、私は偽者のラクス・クラインよ!
あんたのファンで声がそっくりで歌がちょっと上手いってだけで選ばれた・・・与えられた役割をどんなに苦労してしている
ことか!あんたになんか、わかんないわよね!?・・・ええ、顔は整形してあんたに近づけたんだし、髪だってピンクに染
めてるのよ!?それにこんな露出の高い服なんか着ちゃってさ・・・。そんなときにまさか本物のラクス・クラインがでてく
るなんてね。しかもオーブにいたなんて。・・・私はもともとプラントの住人じゃないってことも知らないんでしょう?私は
先の戦争で両親をなくしてプラントに来たオーブ難民なのよっ!そう・・・私は本物のラクス・クラインじゃない!・・・
私の名前は、ミーア。ミーア・キャンベル!!」
〜ミーアの映像は切れ、モニターにはポカンとした顔のカガリとラクスの顔が映っている〜
続 ・・・・・・二人のラクス編Bへ続く。
247 :
舞踏の人:2006/09/08(金) 05:18:12 ID:???
運命の舞踏 16話投下します
――そこは、海に臨む高級ホテルの最上階。
絶景のオーシャンビューを売り文句としている、ロイヤルスイートルーム。そこで彼は、灯りも点けずに佇んでいた。
…もっとも、時刻は早朝なので、照明を必要とはしなかっただろう。
四方のうち一面のほとんどを占める、巨大な硝子越しに見える海の照り返しだけでも、それなりに明るかったから。
青い光にくり抜かれる調度品の影に囲まれながら、細いシルエットの青年は影絵の世界の中で喋りだす。
「ねえ、これは流石に予定外過ぎませんか?
ホント、困りもんですよ。 ここの担当官殿とセイラン家は、一体何をやってたんですか?」
『――確かに、予期せぬ由々しき事態ではある。 だが、現時点では計画に変更は無い。
コープランドについても、アーディッツや軍部の者たちを使って『言い聞かせて』いる最中だよ』
ケイの手にする受話器から聞こえる、海の彼方からの主人の声は不機嫌そのものといったところだ。
自分に向けられているものでは無いとはいえ、聞いていて気分の良いものではないが、
彼が怒るのも当然だろうなと思いながら、ケイは表情だけで苦笑しながら、風景映す硝子板に背を預ける。
……折角、自分たちが苦心して考え、お膳立てした戦争だというのに、
世界中に広がる開戦ムードを無視して、他国に呼びかけ、連名で開戦反対宣言を行ったオーブ。
それを抑えられなかったオーブの宰相と、この地域を操作する担当だった男に対して、心底怒りを覚えているのだろう。
もっとも、その思いはケイとて同じで。
自ら出向いてまで細工を仕掛けた作戦で生まれたチャンスを、見事に潰した無能な男たちを侮蔑していた。
「それで、いかが致します?
盟主殿の命とあらば、『黒き鉄風』なり『幻肢痛』を呼び寄せて、
オーブの上層部がちゃあんと言う事を聞いてくれるよう、お手伝い致しますけど?」
『いいや、君が出張ることはない。 担当官とセイランに任せておけ。
…彼らが、チャンスをくれと言ってきているのでな。 もう少しだけ任せておくつもりだ』
へえ、と。 電話相手の意外な返答に、ケイは大げさに驚きの声を上げる。
背中に朝日の光を受け、影に沈む貌の中でもなお煌く、紫水晶の瞳をすぃと眇めながら、彼は言った。
「ジブリールさんってホント寛大ですね。
僕だったらすぐに廃棄しちゃいますよ。無能なヒトなんて、いらないモノですし」
『…君はもう少し、言動をオブラートに包むという事を覚えた方がいいぞ。
こういう世界は、多少非力な人材に対しても寛大でなければならんのだよ。以前の功績や、義理人情を加味してね』
「あははっ、あまり共感出来ないお話ですね!
やっぱり僕には、組織のエライ人なんて地位は肌に合わないようです。 永久就職なんて到底無理だなあ」
朗らかに、無邪気に。 ケイは明るい笑い声を立てながら、心底可笑しげに背を丸めて腹を抱える。
天衣無縫に、思うが侭に言葉綴る彼の声を聞く電話相手は、僅かに溜息をついたようだった。
『…ともかく、そちらの情勢を気に病む必要はない。 君も早々に用事を済ませ、戻ってきたまえ。
オーダーを受けていた機体、つい先日仕上がったとの報告が来ている。
一刻も早く弄ってみたいだろう? OS等は一切触ってないそうだから、好きに調整するといい』
「あー、それを聞くと速やかに帰らなければいけませんね。
分かりました。 今日の夜までには、こちらを発つ予定にします。
それと、少しお聞きしたいんですけど…閣下は何か仰られてましたか? 僕の事で…」
『昨日、私の所に訪ねてきたよ。 サボリ魔の側近が来ていないか、とね。
特務を与えた、と言ったら苦笑いしながら了承してくれたよ』
「すみません、フォローしていただいて。
――それじゃあ、所用を済ませてきたいので、この辺で失礼します」
数言、会話を交わした後に電話を置いた青年は、
そばのソファーに引っ掛けていた黒のレザージャケットを掴み、ドアへと向かい歩いていきながら袖を通す。
スイートルームを出て、入り口の脇に控えていたスーツ姿の男へと声をかける。
「頼んでいた花束、準備出来てる?」
「はい。ただいまお持ちいたします」
恭しく一礼して、別室へと入っていった男は
ほどなくして、両手で抱えるほどの大きな花束を持って戻ってくる。
限りなく淡い桃色の包み紙を、目に鮮やかなピンクのリボンで豪奢に飾り立てた花束。
その中に包まれているのは、上品な真白の薔薇。 他の草花は一切添えられていない。
差し出されたそれを大事そうな手つきで受け取り、香りを楽しむようにしばし顔を寄せてから、
「ご苦労。 じゃあ、ちょっと出かけてくるね。
それと、護衛は必要ないから。 火急の用事があった時だけ連絡してね」
くだけた口調でそう告げるなり、花束を携えてさっさと出て行こうとする。
そんな彼に追いすがるように走り寄った男は、血相を変えて声をかける。
「お待ちください閣下! せめて一人なりと、護衛をお付けください!」
「それじゃあ用事が済ませれないんだ。
後をつけてくるのもダメだよ? 大人しく僕の帰りを待ってるように! …これは命令」
くるり、後ろを振り返ったケイは己の部下へと立てた人差し指を突きつけ、念を押すように左右に揺らした。
突きつけられた指に、表情筋を強張らせた男は……主には逆らえないと思いながら、ためらいがちにはい、と応じる。
それに気を良くしたのか、にっこり微笑んで頷いたケイは、背を向けてエレベーターへと歩いていった。
困惑と畏怖の感情を半々に面に表しながら、男は若き上司の姿を立ち尽くしたまま見送るばかりだった。
――それより過ぎること数刻。
駐車場に乗りつけられたスポーツカー。 開かれたドアから姿を見せた藍髪の青年。
助手席に置いていた物を手にし、車から降りたアスランは、目前に建つ大きな建造物へと足を向ける。
そこは、オーブに在住する世界に名の知れた名士、マルキオ導師の寄付によって設立された慈善病院だった。
大勢の人々が出入りするエントランスへ踏み入る直前、ふとアスランは自分の手元へと視線を落す。
何十本もの桃色の薔薇を束ねたブーケ。 それは早朝から数件の花屋を巡った末に、購入した物。
それは、彼の求めていた花と違うものなのだが……何処に当たっても置いてなかったため、妥協した結果こうなった。
早くから取り寄せておけば、手に入ったかもしれないと。 少し惜しむように、眉を下げながら内心で思う。
受付カウンターで、IDカードを見せながら受付嬢に耳打ちすれば、
少し経ってから現れた係員の男性が、何枚ものカードキーを青年へと手渡す。
…後は勝手知ったるもので、記憶している通りの道順を辿りながら、病院の奥へと進んでいく。
受診者はおろか、出歩く入院患者の姿すら見えない廊下を歩き、ロックされた扉をカードキーで開け、更に進む。
道中で出会う警備員に会釈しながら、三度ドアを開いた末に辿り着いた、一室の病室。
最後のカードをリーダーに噛ませ、アスランはその部屋へと入った。
…そこは、他の病室よりもやや大きめの、個人用病室。
外壁に隙間無く囲まれる、閉ざされた箱庭を望む窓は開かれ、吹き込んでくる風でカーテンが揺れている。
窓際近くに置かれたシングルベッド。 アスランは足音を立てないよう、静かにそこへ歩み寄っていった。
清潔感のある真っ白いシーツ。 しわ一つ無く整えられたその上で、陽光を受けて煌く桃色の髪。
腰まで伸ばされた見事な直髪を、三つ編みに纏めて横に流している年若い娘。
色白の肌の中、頬と唇を愛らしい薄紅色に染めながら目を閉じているその姿は、眠っているようにしか見えない。
――しかし、思う。
ずっと目を覚まさない彼女が過ごしている時間を、はたして睡眠と言っていいものだろうかと。
前回見たそれと、全く変化の無い娘の姿を、哀しみ含んだ眼差しで見つめていたアスランは、
そっと彼女のそばに顔を近づけ、小さく言の葉を耳元へと落す。
「ただいま、ラクス」
彼の呼びかけに、返事はない。
それどころか指一つ、まぶたすら微動させない……しかしアスランは、一瞬悲しそうな微笑を浮かべたきり
何事もなかったかのように彼女のそばを離れ、持参してきた花束を床頭台に置く。
…反応が無いことなんて、今更落胆することでもない。
――なにせ彼女は、ここ一年近く、一度たりとも目覚めたことがないのだから。
病床上の娘、ラクスは原因不明の――おそらくは頭部に被った怪我から起因するであろう昏睡状態にあった。
彼女がこうなるきっかけとなった事件…それは一年前、オーブの市街地で起きたテロ事件だった。
――繁華街と、その中にあるショッピングセンターをターゲットとした、連続爆破テロ。
ラクスは孤児院の子ども数人、そしてキラを連れ立って買い物に出かけていた時に、それは起きた。
幸い、彼女らは爆破された建物の入り口に居たため、
子どもたちの怪我はほとんど無く、キラも軽い外傷を受けただけで済んだ。
しかしラクスは、爆発と共に降り注いできたコンクリートの破片から、
キラや子どもたちを守ろうと身をていして庇い、重傷を負ったのだ。
すぐに病院に担ぎ込まれたラクスは、なんとか一命を取り留めたものも、
傷が癒えたにも関わらず、彼女は一向に目を覚まさなかった……一般的に言う『植物状態』だ。
後に、爆破テロの実行者として、ブルーコスモスに連なる組織が犯行声明を出したことから、
もしかすると、ラクス個人が狙われたかもしれないということで、彼女はこの病院に収容されることになった。
彼女の親友であり戦友であるオーブ代表、カガリの命により、部外者を近づけないよう厳重な警備を敷いた状態で。
持ってきた薔薇がしおれないうちに飾っておこうと、花瓶を求めて部屋中を見回していたその時。
アスランは、窓際に置かれた真っ白い花束の存在に気付き、不審そうに首を傾げながらそちらに近づいていく。
…誰か先客が居たのだろうか。 そう思いながら花束に手を伸ばした瞬間、彼の表情が固まる。
「これはまさか……ホワイトシンフォニー?」
手に取った花束をまじまじと見つめながら、アスランはぽつりと呟く。
薄桃色の包装紙に包まれた白薔薇……花びらの生え際が薄く青色に染まっているのを見とめ、
自分の頭に浮かんだ品種の特徴と合致することから、間違いないと確信を抱いた。
これは、今朝彼が探し求めていた品種の薔薇だった。
元々プラントで作られた品種なため、地球ではなかなか入手しにくい花なのだが……
いや、そんな事は問題ではない。 重要なのは――彼女の元にこの花が置いていった意図だ。
「ラクスがこの花を好きだと…知ってる上で置いていったのか? 一体誰が……」
ホワイトシンフォニー…かつてラクスが初舞台で立ったコンサートホールと同じ名前で、彼女が愛していた花。
元婚約者だったアスランは、何度かプレゼントしたことがあったので覚えていたのだが、
彼女がこの薔薇を好むということを知る人間は、ごく親しい身内ぐらいしか居ないはずだ。
まさか、と。 アスランの口から無意識に言葉が零れる。
一人だけ心当たりがあった。 以前、彼女に何を贈ったら喜ぶだろうかと、顔を赤らめながら聞いてきた少年。
だがしかし、彼は今、行方も知れない人間だ。 ましてやこの厳重警備の中、どうやったら入ってこれるのか…。
花束を手にしながら、困惑を露わにした表情のまま考えを巡らせていたアスランだったが、
ふと、真白の花弁の中に埋もれる一片のカードの存在に気付き、取り出して文面に視線を走らせた。
『君がいつでも目覚められるように、世界を作り変えてくるよ。
君を傷付けたモノは、君をいじめるモノは、全部殺しておくから、安心してね。
深い哀しみに沈む君の心を慰め、癒すために、鎮魂歌を奏でるよ――待っててね、ラクス』
文字を辿り終える頃には、アスランの瞳は大きく見開かれ、カードを持つ手はじわりと汗ばんでいる。
詠うように綴られた、深い愛情と物騒な言葉を含んだ内容を見ながら、彼は自分の予想に確信を抱く。
二日前の自分なら信じられなかっただろうが――昨日のバルトフェルドたちとの会話があればこそ、納得出来る。
まるで鉛の塊を飲み込んだかのように、胸が急に重苦しくなるのを実感しながら
アスランは、ベッドに横たわる眠り姫へと視線を流す。
「流石にこれは、黙っておくわけには行かなくなったな…」
重々しく呟いた青年の顔には、苦渋の色が陰落とすように浮かんでいた。
所変わって、オーブ軍港に停泊中のミネルバでは。
昨日から発令されている、上陸許可付きの休暇を満喫すべく、
多くの乗組員が軍服を脱ぎ捨て私服を纏い、一様に明るい表情を見せながら昇降口前のエントランスに集っている。
親しい者同士で連れ立って行くのだろうか。 寄り集まり、ガイドブックを覗き込んでいるグループもちらほら存在していた。
その中、赤毛の少女が二人、きょろきょろと周りを見渡しながら突っ立っている。
「あれー? お姉ちゃん、マユは来てないの?」
「私も探してるとこなのよねー。 あの子ったら何処行っちゃったのかしら。
ショッピングは昨日済ませたし、今日は名物料理の食べ歩きにでも行こうと思ってたのにー」
メイリンの問いかけに答えながら、ルナマリアは腰に両手を当ててふくれっ面を見せる。
ガイドブックよりは現地に住んでいたマユの案内を望んでいたらしく、当てが外れたと溜息一つ付いて。
「マユなら、朝早くに出かけて行ったよ。
アスハ代表のお屋敷から連絡があって、お迎えの車に乗ってった」
「えっ、そうだったの? 昨日はそんなこと言ってなかったのに…」
立ち尽くす二人へと近づいてきた、同じく私服姿のアゼルの言葉に、メイリンは驚きの声を上げる。
僕も今朝聞いたばかりなんだ、と言いながら赤毛の少年はこくりと頷いた。
彼の話を聞きながら、ルナマリアは口をへの字に曲げて困惑の表情浮かべながら。
「でも、アスハの屋敷って……大丈夫かしら、あの子。
こないだ初めて会った時、すごい勢いで突っかかってたじゃない」
「そういえばそうだよね……もしお屋敷で暴れたりでもしたら大事だよね…」
「大丈夫だよ。 マユはもうあんな事しないって」
深刻そうに言葉を交わす二人へ、少年はふるふると首を振りながらマユを擁護する発言をするが、
それでも彼女らの表情は明るむことなく、なおもヒソヒソと心配そうに話し合っていた。
そんなに説得力無いのかしらんと、アゼルはしょんぼり俯きながら肩を落とした。
「――あ、艦長! ご苦労様です!!」
「これから街へ行くのね? 気をつけて行ってらっしゃい」
「はい! それでは失礼します!!」
ミネルバが停泊している埠頭、そこでオーブから派遣された造船技師と打ち合わせをしていたタリアは、
船から降り、出入ゲートへ向かう最中だった若いクルーと言葉を交わしていた。
楽しみな様子で表情を輝かせながら去っていった、部下たちの背中を見送る彼女の口元に、自然と笑みが刻まれる。
「若い乗組員が多い艦なんですね、ミネルバって」
作業帽を目深に被る技師が、手にしたクリップボードをタッチペンで操作しながら言葉をかけてきた。
帽子の下から覗く豊かな髪と、作業着を纏いながらも柔らかな曲線描く身体、そして声から、女性であることが分かる。
「…何せ、まだ出来たばかりの艦だから。 本当は、進水式すらまだ済ませてないの」
「その割には、もう歴戦を重ねてきたって風格ですわね」
「短い間に色々ありすぎたから。 ただでさえでも現場慣れしていない新兵たちは、大変だったと思うわ。
だから、せめて今のうちに十分息抜きをさせてあげないとね」
遠く向こう、既にクルーたちがくぐったであろうゲートを眺めながら、タリアは表情を緩めてそう言った。
つられるように同じ方向を見ていた女性技師は、そんなタリアの横顔を見ながら言葉をかける。
「グラディスさんも大変でしょう。
ああいう若い子は特に、育成やメンタル面についても気を配らなければならないでしょうし」
「ええ、まあそうね。 幸い、熟練したクルーも多いから、そっちの方にもある程度は任せておけるのだけど」
「実は私も、突然若い部下を大勢任された時がありました。
しかも困ったことに、素人同然でこちらの常識が通じない事もたびたびあって、随分手を焼かされましたね。
――でも、彼らが手を離れてしまった今では、良い経験だったと思えます。
なにせ彼らは、私たちが持っている常識の範疇を、勢いだけで軽々と飛び越えていくんですから。
そんな彼らに私は何度も驚かされ…助けられてました。今でも、かけがえのない仲間だと思っています」
耳の横に下ろされた髪が海風に揺れるのを抑えながら、タリアへと語る女性技師の顔は、
遠い昔を思い起こしているかように穏やかで、子どもを見守る親のような慈愛に満ちていた。
「私も、貴方と同じような事を感じたことがあるわ。
…今は実家に預けているのだけど、私には子どもがいてね。
小さな赤ん坊を育てていく日常ですら、いつも意外性に満ちていて、刺激的な日々だったわ。
まだクルーとは、一ヶ月ぐらいの付き合いだけど……いつかは貴方たちのようになれるかしら」
「なれますよ、きっと。 グラディスさんのような良い艦長さんでしたら」
「ふふ。ありがとね、ベルネスさん」
「さあて、それじゃあ大事な艦とクルーを護るために、しっかり修理しておきましょうか。
…船底部分は、外壁の穴を塞ぐだけでは不十分かもしれないので、
熱で劣化した箇所を含めて、いっそのこと総取替えしようかと考えているんですけど――」
「そうしてもらえると助かるわ。
カーペンタリアに着くまで海上航行になりそうだから、途中で船底に穴が開かないように、万全を期したいわ」
出会ったばかりの女性たちは、まるで数年来の友人だったかのように楽しげな笑顔を向け合い、
和やかな雰囲気の中、ミネルバの修理についての打ち合わせを再開した。
支援
一方、ルナマリアたちから過剰な心配を向けられていたマユは。
姉妹から物騒者な扱いをされていることもつゆ知らず、目の前に置かれたティーサーバーへと、おずおずと手を伸ばしていた。
広いソファーの上にも関わらず、縮こまるように身を狭めてマユが座っているのは
部屋の内装の豪華さと、同室している人物のあまりに忙しそうな様子に、圧倒されてだった。
カガリ自身から、今日会えないだろうかという申し出の電話がかかってきたのが、今朝の早朝。
慌ててクローゼットの中を引っかき回し、一番品の良さそうな私服を探し出してから、
丁度のタイミングで迎えに来た、アスハ家の使用人が運転する車に乗って、屋敷に着いたのが今から二時間前。
しかし、急な仕事が入ったとのことで、すまないが少し待っていてくれとカガリに言われ、
彼女の仕事場である執務室のソファーで、お茶を頂きながらもなんとも気まずい時間を、今の今まで過ごしてきたのだった。
ティーカップに注いだ、今日で五杯目の紅茶をなるべく音を立てないように啜りながらマユは、
入れ代わり立ち代わり現れる人々に対して、指示を出している金髪の娘を、ちらちらと窺い見ていた。
自分よりも一回りも二回りも年上に見える男ばかりだというのに、堂々とした様子で会話する姿に、感嘆を覚えながら。
……やがて、最後の一人から報告を受け、それに対する指示を伝え終わった後。
小さく一言付け足して彼を下がらせるとデスクから立ち、マユの向かい側に置かれたソファーに腰を下ろした。
「すまないマユ。 随分と長い間待たせてしまったな」
「いえ、大丈夫です。 ……まだ、忙しいんですね」
「まあな。 だが、これでも一段落着いた所だ。
一人を除く首長らから、私の案への支持を確約してもらったからな。ひとまず国内は安定した」
そう答えながら、カガリはお茶菓子として添えられていたクッキーの皿へと手を伸ばし、
一度に三枚も口に放り込み、ザックザックとさも美味そうな様子で豪快に咀嚼している。
…仕事で疲れて、甘い物が欲しかったのかしらんと。 微かに首を傾けながら、マユは心中で思う。
「国外に関しては……お前も知ってる通りだ。 我が国はスカンジナビア王国に赤道連合…
そして後で名乗りを上げてくれた大洋州連合、南アメリカ合衆国と共同で、開戦反対宣言を発した。
あとは、他国の動向待ちだ。 出来ることなら、こちらに賛同してくれるとありがたいんだがな」
両手を膝の上で組み、疲れたように背もたれへと身を預けながら、カガリは言う。
ふ、と息をつきつつ瞑目する娘を見つめながら、マユは何を言うべきか分からないまま、黙っていた。
ご苦労様、ってのは陳腐な気がする。 良かったですね、というのも何処かしっくりこないと思いながら。
どう話を切り出そうか考えを巡らせていたマユを――いつの間にか黄昏色の双眸が見つめていた。
「まあ、詳しい事はいずれ話そうか。 それよりは本題に入ろう。
――私に言いたい事とか、聞きたい事があるんだろう?
部屋の近くにいる者は席を外すよう、先ほど命じておいたから、遠慮なく話してくれていいぞ」
ニッと口の端を上げながら、気さくな様子で微笑みかけてきた娘の態度に、
少し気のほぐれたマユは、自分の頭の中にあった言葉を、確かめるようにゆっくりと口にし始めた。
「じゃあ……フリーダムの事を教えててもらえませんか?
セレネの騒ぎの直前に話した時から、聞きたかったんです。 …あたしの家族を奪った仇の事を」
「……知りたいのは居場所か? だが、それを知ってどうするつもりだ?」
「……そこまではまだ考えてません。けど、大切な家族を奪った人が、どんな人間なのか知りたいです。
――叶う事なら、一度でいいから会いたいです。 その時に何をしでかすかは、自分でも分かりませんけど」
問いかけを問いかけで返され、一瞬言葉に詰まったが、
マユは正直に自分の感情を吐露する。 つらつらと、流れるように一息に。
テーブルの上に両肘を突き、組んだ両手を口元に当てていたカガリの、明るい色の瞳がふるりと揺れた。
その原因が、僅かに滲んだ涙だとマユが気付く前に、彼女は吐息混じりに言葉を紡いだ。
「残念ながら、私はお前を納得させるほどの答えを持ち合わせていない。
私が知りたいぐらいなんだよ――アイツが何処にいるのか、なんて」
「…いないんですか?」
「ああ。 フリーダムのパイロット…私の弟、キラは一年前から行方知れずなんだ」
「弟? ……確か、アスハ家には代表の他に子どもはおられないはずじゃ」
「そこらへんは少々ややこしい所なんだがな。 だがアイツは正真正銘血の繋がった肉親だ」
瞳細め、ほのかに笑った彼女。 懐かしむような、寂しさ混じりの笑顔で。
そんな表情を前に、どう言っていいのか――これ以上追求していいものかと迷ったマユは、
ティーカップに伸ばしかけていた手を止め、そろそろと引っ込めて膝の上で握り、困り顔をする。
「…そんな顔するなよ。 もし見つかったら、お前にも知らせるからさ。
出来れば喧嘩沙汰は勘弁してほしいが、まあビンタの十回や二十回ぐらいなら許可してやっても……」
こちらを気にしてか、笑みを快活なものへと変えて、カガリは軽口を言ったが、
話している途中、不意に飛び込んできたノックの音に話を止め、入れ、と短く告げる。
…話の腰を折られたからか、あるいは人払いをしたのにも関わらずの来室に腹が立ったのか、いささか不機嫌そうに。
入室許可を聞いてから動いたのかどうかあやふやなほど、間髪入れず勢い良く開かれる扉。
「カガリ、大変だ! ラクスの病室に侵入された形跡があった!
しかも来たのはキラのようだ…花束とメッセージカードを残して―――」
「あっ、あああ阿呆かお前わぁぁぁああっっっ!!!!!」
飛び込んでくるなり、大声でまくし立てたのはアスラン。
その声を掻き消さんばかりに、更に大声で叫びを上げたのはカガリ。
双方の声の余韻が消え、なんとも気まずい沈黙が部屋の中を満たしだした頃。
ソファーの上で所在なさげにしているマユは、強張ってる双方の顔を見比べながら、小さく呟いた。
「あの、やっぱり、聞かなかったことには……出来ませんよね?」
「すまない、その――言い訳みたいな言い方だが、彼女がカガリの陰に隠れていて、見えなくて、つい」
「みたい、じゃなくてまんま言い訳じゃないか、それ」
両腕を組んで仁王立ちする娘の前で、弁解している青年が彼女よりも小さく見えるのは、本当に気のせいだろうか。
ガックリうなだれるアスランへと向けられる、橙色の苛烈な視線は一向に和らぐ気配がない。
無理もないだろう――彼の言ってしまった事はあまりに重大で、
部外者であるマユに、決して伝えてはいけないような内容だったのだから。
「……ええと、あたし、どうしたらいいんでしょう…」
聞きたくて聞いたわけじゃないのに。そこでうなだれてる人が勝手に言ったのに。
大変な事態に巻き込まれてしまったマユは、心底から自分の不幸を嘆いていた。
少女の言葉に気付き、そちらを見た二人は困ったように表情を曇らせ……やがてカガリが、そばへと歩み寄る。
「不可抗力で聞いてしまったんだ、仕方ない。 咎めやしないさ。
――ただ、悪いが協力はしてもらわなきゃいけない。 絶対に口外されてはならない事だからな。
さっきの話を誰にも言わないと、誓えるな?」
静かなのに、有無を言わさぬ強さを秘めた眼差しに捉えられながら、マユははい、と頷き答えた。
「なら、ちゃんと説明しておこうか。 事の重大さが分かれば、そうそう口は軽くならないだろう。
お前も付いてきてくれ、マユ。 一緒にあの子の所へ見舞いへ行こう」
「見舞い……ですか?」
「アスラン、これから出かける事を皆に伝えてくれ。 あと、車の用意も」
カガリが手短に指示を伝えると、アスランはこくりと頷き、
壁掛けの受話器を取り、何処かへと連絡の電話を入れ始めた。
普段、カガリが移動に使っている公用車では少々目立ちすぎるだろう、という懸念から
三人は行政府の別の車に乗って、オノゴロ郊外にある病院へと向かった。
車中、ほとんど言葉を交わさない二人に囲まれ、マユは居心地の悪さを感じながら口を噤んでいた。
現在持っているたった一つの情報、アスランが洩らした言葉を頭の中で反復させながら。
病院に入ってから、人通りの少ない通路をどんどん突き進んでいく二人の背中に追いすがりながら、
マユはきょろきょろと周囲を観察しながら、思う。
人目から隠れるように位置するこの閉鎖病棟は、
いわゆるタイミング良く急病を患った政治家とかが入院する場所かしらんと。
不意に、通路の途中で彼らの足取りが止まる。 道すがらであった警備員と、カガリが言葉を交わしていた。
「……一体、どんな方法を使ってここまで入ってきたんだ、侵入者は。
カードロックされたゲートも、監視カメラもたんまりと設置してあるというのに」
「侵入したと思われる時間帯も、我々は監視を続けていたのですが……その時は一切異変がありませんでした。
アレックスさんから連絡を受けてから、管理システムに記録されていたログをさらったところ、
システムに、外部からアクセスされたらしき形跡がありました。
どうやらそれで扉のロックを解除し、監視カメラの映像を差し替えたと思われます」
「……聞けば聞くほどアイツらしいな。
仕事中呼び止めてすまなかった。手間を取らせたな」
申し訳なさそうな顔で事の顛末を語る警備員の男へと、
カガリはひらりと手を振ってから、彼の前を歩き去っていった。
歩き出した彼女に置いていかれないよう、マユは小走りでそばへと寄っていく。
「代表、アイツってのは……?」
「お前の会いたがってた人間だよ」
肩越しに振り返り、そう答えた娘の顔には笑みのようなものが浮かんでいた。
喜んでるのか怒っているのかも分からないほど、複雑に感情の入り混じった笑顔が。
言葉を続けようかどうか、しり込みして迷っている間に、
マユたちは廊下の突き当たり……一つの病室のドアの前に着いていた。
「繰り返し言うが、ここでの事は何人に対してであろうと、他言しないように。 頼むぞ?」
最後の念を押してくるカガリの言葉に、マユは固い表情でこくんと頷き、
それを見届けた娘は、厳重に閉ざされた扉を開ける。
「――この字は間違いないな。 戻ってきているのか、オーブに。
…キラの奴、こんなまわりくどい事してる暇があるなら、顔ぐらい見せてくれたっていいじゃないか」
机の上に置かれた白薔薇の花束、その隣に添えられていたメッセージカードを手にしながら
不機嫌そうな皺を眉間に刻むカガリは、怒りの篭った声色で唸る。
マユはと言えば――隣に立つ彼女の挙動よりも、目の前のベッドで横たわる人物の姿に釘付けになっていた。
「どうして……どうしてラクスさんが、ここに………」
「ああ。 ラクスは二年前からずっと、ここオーブで暮らしている。
プラントの方では、行方不明って扱いになってるんじゃないのか?」
「その逆ですよ! プラントじゃあもうすぐ復帰するって話題で持ちきりなんですよ!!
なのに、なんでオーブに……しかも病院に入院してるだなんて……」
「なんだと!! 一体どういうことだ!!?」
信じられない、とばかりに荒げた声で叫んだマユの言葉の内容に、
顔を跳ね上げたカガリもまた、驚愕の表情で大声を上げる。
よほど理解の範疇を超えていたのか――喰い入るように見つめてくる橙色の眼差しに、
マユは少したじろき、もう一度自分の記憶している話題の内容を確かめてから…説明しだした。
「ええと、復帰の話題が上がったのは――確か半年ぐらい前だと覚えてます。
それまでは、ラクスさんは休養のために活動休止中だって話だったんですけど…。
急に、近々芸能界に帰ってくる、って報道があったんです。 …私、ファンだったんですごく嬉しかったです」
「しかし……その情報、デマじゃないのか? 現にラクスはここにいるぞ」
「それはない…と思います。
デマだったら、復帰決定記念のベストアルバムなんて発売しないですよ」
「そんなことまで起きてるのかっ?!
……まさか、既に当人がメディアに姿を現してるなんてことはないよな?」
「まだ出てきてないはずです。
そんな映像があったら、見飽きるほど放送されてるでしょうし、新聞にも載るはずだし…」
知ってる限りの情報をマユが説明し終えると、カガリは渋面を見せながらううむ、と唸る。
腕を組み、片方の手を口元に当て、爪先でカツカツと神経質に、リノリウムの床を叩きながら。
「――あの、代表。 あたしからも質問、いいですか?
ラクスさん、なんで入院してるんですか? …どこか具合が悪いんですか?」
「ラクスが入院してるのは、テロに巻き込まれて負傷したせいだ。
……もう、一年近く目覚めてないんだよ。 怪我自体はもうとっくに治っているらしいんだがな」
先ほどまでとは打って変わって、悲しげな声色で力なく答えるカガリ。
ベッドの上で、氷漬けにされてるかのように身動き一つせず、
眠り続ける桃色髪の娘を、憐憫の眼差しで見つめていた。
「あの戦争が終わって間もない頃……ラクスは静養中だったキラを追って、オーブに来たんだ。
度重なる戦闘からきた心労で、精神が病んでしまったアイツを放っておけなくてな」
「…そうだったんですか。
メディアじゃそんな情報流れてなかったし、あたしてっきりプラントに居るんだと思ってました」
「そりゃ、プラント政府としてもそんな事実を公表する事なんて出来ないだろうな。
戦争を終結させた平和の歌姫、ラクス・クラインが好きな男を追って姿を消しました、なんて馬鹿な話はな」
それは、僅かながらに怒りの色が混じった言葉。
呆れたように頭を振り、ふっと大きく息を吐きながら、カガリは言った。
――口ぶりからして、友達同志の間柄に思えたラクスの事を快くない様子で語る彼女に、マユは反感を覚える。
そして気がつけば、マユは込み上げてきた感情を、そのまま大声に変えて発していた。
「――そんな言い方ってないですよ!
ラクスさんも女の子なんだから、好きな人が辛い時に、そばにいてあげたいはずです!
それを馬鹿な話だなんてっ……!!」
「……お前のように、普通の娘だったらそれも出来るだろう。
だがなマユ。 ラクスは自分の思想を掲げ、ザフトと連合の戦争行為を否定し、争いを止めさせたんだ。
しかも、平和的に仲裁したわけじゃない。 双方の戦力を、武力を持ってして削ぐ方法でな。
そのような方法を選んだからには、彼女は政治の場に留まるべきだったんだよ」
少女の苛烈な視線と叫びを前にしながらも、カガリはあくまで静かな調子で語る。
ただ、少し哀しげに、橙色の眼差しを細めて。
「誰かの思想を否定し、行動を止めさせたからには……代わりとなる、より良い考えを示すべきだ。
例え、到底解決出来ない困難な問題だとしても、模索する努力は尽くさなければならないと、私は考えている。
それが、世界の流れを止めた者の――ラクスが負わなければならなかった責務だ」
マユは、彼女の言葉の重さに思わず息を呑み、黙り込んだ。
カガリの意見は、ただの少女であるマユにとっては、酷く冷たく人情味のないものに思えたが、
しかし、心の片隅にはその意見に納得している自分もまた、存在していた。
マユは頭いっぱいに、想像を巡らす。
コーディネーターを憎むナチュラルの、ナチュラルを蔑むコーディネーターの目に、彼女はどのように映っただろうか。
戦争を止めようと叫んだ歌姫に、長引く争いの中疲れ果てた人々はどんな思いを抱き、寄せたのだろうか。
思い返せば、自分は彼女の事を素晴らしい歌を唄う、綺麗で優しそうな人としか認識してなかった。
戦場の只中で争いの無益さを叫び、人々の心を突き動かし、世界を平和へと導いた女神の如き人だと思っていた。
けれどラクスを歌姫や普通の女の子と見ないで……思想家と見なせば、カガリの言ってる事も納得がいった。
…彼女は確かに戦争を止めさせた。 けれどそれはただの時間稼ぎに過ぎず、解決ではなかった。
現に、争いの火種は一向に消えることなく、今まさに燃え上がりつつあるのだから。
「…とはいえ、私個人としてはラクスに感謝しているんだがな。
同じ指導者としては褒められたもんじゃないが――キラのことを愛してくれているからな。
あの子がいてくれたからこそ、キラの具合も良くなっていってた。 …あの日までは、だが」
あの日、とはラクスが負傷したテロ事件のことを指しているのだろうか。
病床の娘を見つめていたマユは、表情を曇らせながら小さく呟く。
「ラクスさんがこんな風になってるのに…その、キラさんって人はなんでここにいないんですか?」
「意図は分からん。 なにせ、予告もなく突然消えた上に、連絡一つないからな。
…ただ、テロに巻き込まれた際、ラクスを守ることが出来なかった自分を責めているだろうな。アイツの性格なら。
事件直後、私が駆けつけた時には既に抜け殻のような状態だったよ。 身動き一つせず、座り込んだままでな。
その後、私たちが事後処理と調査に奔走している間に、キラはオーブから姿を消した。
……思うに、アイツは復讐をするつもりなのかもしれないな。 テロを起こした者に対して…」
「ふく、しゅう……」
呆然と、マユは彼女の語った内容に含まれていた単語を、オウムのように復唱する。
――ようやく存在を掴む事の出来た、自分の家族を皆殺しにした仇は、
自分と同じように、争いの中で大切な人間を傷付けられていた。
そして、彼は憎しみの感情に捉われているのかもしれないとの、カガリの言葉。
顔も声も知らない相手のイメージ。 そのシルエットに、自分の姿がダブるように重なって映る。
幾度となく、彼女の夢の中に姿を現していた死の象徴。
家族を吹き飛ばし、ぐしゃぐしゃに叩き潰した青き翼の白天使。
その度に重ねて脳裏に焼き付けられ、より鮮明に、より巨大になっていく憎悪の対象。
マユがアカデミーに入学し、一流のMSパイロットになるべく、絶え間ない努力を重ねられていけたのは、
心の底から憎む対象が、復讐したいと思う対象があったからこそだろう。
しかし、それに乗っていた人間が、自分と同じような目に遭っているという事実を前に、マユの心は揺らぐ。
続く言葉が、思い浮かばない。
カガリも同じなのだろうか。 難しい顔のまま黙り込みつつも、所在なさげに天井を眺めている。
――なんだか、ココロがいっぱいいっぱいだ。
ふっと脳裏に浮かんだ言葉が、今のマユの思い全てだった。
ここの所続く事件の連続もあってか、物事や考えを消化しきれないまま、詰め込まれている気分。
浮かない表情で俯き続ける少女を心配そうに見ていたカガリは、ためらいがちに口を開く。
「それでマユ、私も少し聞きたいんだが…」
「――カガリ。 話し中すまないが、行政府から連絡だ」
紡がれかけた言葉は、廊下で待機していたアスランからの声に断ち切られる。
「ン……どうしたんだ?」
「大洋州連合から、連盟参加についての回答があったらしい。 戻ってきてほしいとユウナ様が」
「そうか、分かった。すぐに戻ると伝えておいてくれ。
――すまないがマユ。 急な用事が入った。 話の続きは次の機会でもいいか?」
「え、あ、はい。 御気になさらないで下さい。
――ここでの事は、誰にも話しません。絶対に。…ラクスさんには静かに療養していてもらいたいですから」
「ありがとう。 くれぐれもよろしく頼んだぞ。
…そうだ、アスラン。 私たちが行ってはマユの帰りの足がない。 送りの車を手配できるか?」
「いえっ、そこまでしていただかなくても大丈夫です! 友達に電話して、迎えに来てもらいますから」
カガリの申し出に首を振り、深々とお辞儀をしたマユは、
最後にもう一度、名残惜しそうに病室のベッドの方を見てから、失礼しましたと言い残して部屋を出て行った。
「…大丈夫か? カガリ」
マユが出て行った後、足早に廊下を歩いていく娘へと、アスランは背後から言葉をかける。
振り返った彼女は、笑顔を見せながら妙に明るい声を発した。
「心配性だな、アスランは。 私は悩んでなどいないぞ。
今は大切な時期なんだ。 あいつの自分勝手な行動なんかに、振り回されてたまるか!」
軽く怒ったように口を尖らせながらの言葉は、カガリが事態をあまり深刻に考えていない事を匂わせていて。
密やかに安堵の息を付いているアスランを尻目に、娘は更に言葉を続ける。
「第一だな、考えてみろ。 あいつ一人に一体何が出来るっていうんだ?
愛機のフリーダムすら置きっぱなしで、身一つで出て行ったんだからな。
たかが個人の力で、手紙に書いてるほどの大それた事なんて出来やしないさ!」
そう理由付けて、彼女は気楽な様子で笑い飛ばしていたが、
アスランはあからさまに顔を強張らせ、そして表情を暗く翳らせた。
――彼女はまだ、知らない。 キラとよく似た人物が、大西洋連邦軍で確認されていることを。
この情報だけは絶対に伝えてはいけない。 そう思いながらアスランは、喉まで出かかっていた真実を飲み込んだ。
「――うん、そう。 中央広場だよ? 標識あるはずだから分かると思う。
…ううん、遅くなっても構わないって。こっちが突然言い出したことだし。
それじゃ、よろしくね。 …うん、ありがと」
ピ、と通話終了ボタンを押し、携帯端末を閉じるとショルダーバックに押し込める。
それは昔から持っていた携帯電話とは違う物で、ザフトで支給されている通信機だった。
同僚のアゼルへと迎えを頼む連絡を終えたマユは、再び道路脇の歩道を歩き始めた。
丘の上に立つ病院へと続く、なだらかな坂道を下り方向へと足を進めながら、
マユは眼下に見える、オーブの街風景を眺めていた。
二年ぶりに見る景色は、大きく見れば以前と変わりないものだった。
時々抜け落ちたように更地が存在するものも、そこの街並みは懐かしさを感じるもので。
景色を眺めながら歩く少女の表情は、自然と優しくほころびはじめていた。
――ふと、自分の行く手に佇む人影に、視線が留まる。
電柱に背を預け、ぼうと辺りを眺めている一人の男。
黒いレザー製の装束に包まれた、細身の体躯。 そのシルエットにマユは直感を覚える。
そろり、足音を忍ばせながら近づけば視界に映る彼の顔。 濃い茶髪の、端正な容貌の青年。
「あれ……もしかして、ケイ?」
間違いない、と確信しながらも疑問形の声をかければ、振り向く相手。
マユを見るなり、紫水晶の瞳を丸めながらぽかんと口を開ける。
「え、マユちゃん…だよね?」
「当たりっ! よかったー、ケイも無事だったんだね!
アーモリーがあんな騒ぎになっちゃってたから、心配してたの」
彼女の直感は見事に当たっていた。
以前、アーモリーワンで出会った青年、ケイ・サマエルとの予期せぬ再会に、マユは嬉しそうな笑顔を浮かべる。
驚きの表情のまま、目の前の少女をまじまじと見ていたケイもまた、つられたように表情を和らげた。
「こんな所で会うなんて、奇遇だね。 …そっちも無事なようでなにより。
ホント、あの騒ぎには参ったよ。 仕事で行ってたのに、散々な結果になっちゃったからなあ」
「そっかー……大変だったねー。
あ、ねえ! もしかしてケイってオーブに住んでるの?」
「…ううん。 何度か滞在したことはあるけどね。
今日は用事があったから、仕事ついでに寄ったんだ」
彼の言葉にへえと相槌を打ちながら、マユは密かに驚きを覚えていた。
どうやらプラントや世界を股に駆ける職業らしい…まだ若いのに大きな仕事をしているのだろうかと。
背を預けていた電柱から離れ、マユのそばに近づいたケイは、周囲を見回しながら口を開く。
「そろそろ帰る予定だから、職場の人や友達にお土産でも買ってこうかと思ったんだけど…。
目当ての物が売ってるような店ってのがなかなか見つからなくて、参ってたんだ。
マユちゃん知らないかな? 上等なお酒とか扱ってる店…」
「それなら大丈夫! あたしこの町生まれだから、いろいろ知ってるよ!
確か、高そうな酒屋さんだったら、あっちへ歩いて三つ目の角を右に曲がれば、すぐにあるはず」
「ありがと。 早速行ってみるよ。
それと、生食用のツナブロックってどんな店に売ってるかな? 冷凍じゃなくて新鮮なのがいいんだけど…」
「えーっと……オサシミ?
大抵のスーパーで売ってるけど、お母さんはメインストリートのマーケットが新鮮で美味しいって言ってた」
「メインストリートのマーケットね…うん、分かった。
…ああ、ついでに教えてほしいんだけど…オススメのお菓子ってある? 女の子が好きそうなの」
「それなら『マダムヨーコ』かなぁ。 ふかふかのチーズケーキで、すっごく美味しいの!
お店はね、酒屋さんの一つ手前にある通りを少し歩いて左折したトコにあったと思う。
曲がらずにそのまま進んでいっても、焼き菓子が美味しい店があるよ。 ここもオススメ。
ああでも、公園前で売ってるアイスも人気あるんだよねー…久しぶりに食べたくなってきちゃった」
「あー、ええと、うん、なるほどね。
……ごめんマユちゃん。 もし、これから用事がないんだったら頼みたい事があるんだけど…」
得意分野な質問に、嬉々として答えだした少女のテンションの高さに圧されたかのように、
視線を外し、斜め上方向にさ迷わせていたケイは、戸惑い混じりの微笑みを見せながら言う。
その様子を見て、彼が頼もうとしている内容に気付いたマユは、明るい笑顔を浮かべて大きく頷いた。
「うん、いいよ。 待ち合わせもまだ先だし。
お土産探すぐらいの時間はあるから、一緒に行こうよ」
その後、ケイを連れて数件の商店を巡ったマユ。
必要だった土産の品々を確保した二人は、商店街の近くにある中央公園へと立ち寄った。
公園の中心にある、一際目立つ大きな噴水。 二人はそのそばに置かれたベンチに腰を下ろし、足を休める。
ふ、とリラックスしたように息をついてから、ケイは隣に座るマユへと笑顔を向けた。
「ああ、やっと全員分買えた。
人数多い上に、欲しそうな物もバラバラなもんだからさ。間に合わないかも、って思ってたんだ。
本当に助かったよ。 ありがと、マユちゃん」
「ううん、このぐらいだったらお安い御用だよっ。
むしろ、あたしの方こそお礼言わなきゃいけないのに。色々買ってくれたし…」
そう答えるマユの手には、つい先ほど買ったばかりのアイスクリームが握られている。
紙袋に入れて傍らに置いている焼き菓子と同様に、ケイが彼女に買ってあげたものだった。
「いいんだよ。 これはほんのお礼。
…キミって随分遠慮するタイプだね。 女の子なんだから、もっと甘えてもいいと思うなあ」
「うーん……たまにそう言われるんだけど、なかなか出来ないんだよね。性分なのかな」
二段重ねの上部に乗っかっているチョコミントをペロリと一舐めしながら、少女ははにかみ笑う。
「でも、ケイってホントお金持ちなんだねー……。
あそこで買ってたワイン、すっごく高くてビックリしたよ!」
「僕の上司がワインコレクターでさ。 土産ならとびきり良いやつを買って来い!って釘刺されてたんだ。
お金はまあ――大して使い道がないから溜まってくだけ。 そんな大層な身分じゃないよ」
「いいなあ羨ましい。 あたしもお給料もらってるけど、あれやこれや欲しくなっちゃうんだよねー。
あたしもそんな風に言えたらカッコイイのになあ……」
はふう、と大きな溜息をついてうなだれたマユを見て、吹き出した上に忍び笑いを洩らすケイ。
笑われた当人は口を尖らせたが、なかなか笑いを止めない青年を見ているうちに、
何か楽しい気分になってきて、いつの間にか自らも明るい笑い声を立てていた。
「――あれ、もしかして…マユちゃんってその年で働いてるんだ?」
ひとしきり笑い続け、ようやっと呼吸を整えたケイは、ふと思い出したように言う。
給料をもらってる、という言葉が引っかかったのだろう。 目の前の幼い少女を、驚きの眼差しで見つめる。
「あー…ほら、あたしコーディネーターだから。 プラントじゃ早くから働けるんだ」
「でも、まだ成人してないよね? 見た感じ、そう思ったんだけど」
首を傾けながら、更に問いを重ねてくるケイを、少し困った顔で見ていたマユは、
考え込むように中空を眺めてから、ゆっくりと口を開いた。
「あのね、ホントはあんまり言っちゃいけないんだけど……あたし、ザフトの軍人なの」
「えっ?! なんでそんな危ない仕事を……」
「でも、ずっとやりたいって願い続けていた仕事だったから。
戦後にさ、アカデミーの入学年齢制限がなくなったって聞いて、すぐ入学したの。
……だから、あたしまだ13歳なんだけど、ザフトに入隊できたんだ」
ぷらんぷらんと、互い違いに揺れるブランコのように足を動かしながら、少女は言う。
己の爪先に視線を落していた彼女は、気付かなかった。
自分を見つめてくる青年の顔に、氷で作られた仮面のように無機質な表情がちらりとよぎったことに。
「そっかあ…色々大変だろうね、その年じゃあ」
「うん。 子どもだからって特別扱いされるような場所じゃないからね。
――でも、友達も、ミネルバのみんなも優しくて大好き。 分け隔てなく接してくれるし」
頬にかかる栗色の髪の房を揺らしながら、顔を上げて笑顔を向けてきたマユ。
そんな彼女へと、ケイは柔らかく笑いかけながら、良かったねと言う。
「なるほど。 ここに入港してきたザフトの戦艦って、ミネルバって言うんだ。
所属が何処なのかが気になるなぁ。 管制官とか整備兵かな?」
「……ああっ!?
だ、ダメだよ、ミネルバだってこと、他の人に教えちゃ!
それと、所属はナイショだからね! 一応、軍事機密なんだから!!」
「はいはい。 誰にも言わないよ」
思わず機密に触れる内容を口にしてしまったマユは、困惑と焦りに顔を赤く染めながら、強く言う。
真剣な様子で睨みつけてくる、くりくりとした可愛らしい菫色の瞳を前にして、
ケイはクスクスと笑い声を零しながら、口外しないことを伝えた。
それからは、オーブの街並みや立ち寄った店についてなど、とりとめのない雑談を交わしていた二人だったが。
公園の入り口近くに停車した黒塗りの高級車と、降りてきたスーツ姿の人物にケイは気付き、お喋りを止める。
「ああ、もう迎えが来ちゃったみたい」
こちらへと近づいてくる男を眺めながら、心底残念そうな声で彼は呟いた。
溶けたアイスで湿気ったコーンを齧るポーズのまま、きょとんとした顔で見上げてくるマユへと、微笑みを向ける。
「ごめん。 もう帰らなきゃいけないみたい。
もっと色々話がしたかったんだけど、次の仕事のスケジュールが入ってるんだ」
「そっかあ…忙しいんだね、ケイのお仕事って」
「うーん、まあね。 あちこち飛び回らなきゃいけないのが大変かな。
地球だろうが宇宙だろうが、お構い無しで飛ばしていくもんだから、ゆっくり落ち着いてられないや」
「ホント、お疲れさま。 お仕事頑張ってきてね!」
立ち上がった青年に続いて、ぴょんと勢いづけてベンチから飛び上がった少女は、満面の笑顔を浮かべた。
彼女の仕草を、彼は驚いたように目を瞬かせながら見ていたが、
やがて、そよ風になびく草葉のようにふわりと表情を緩めて、笑った。
「そっちもお仕事大変だろうけど、身体には気をつけて。 …じゃあ、行ってくるね」
「うん、ケイもね。 それじゃ、またね!!」
「今日は本当に楽しかったよ。 バイバイ、マユちゃん」
別れの言葉と共に、踵を返したケイは、深々と頭を下げて出迎える男の方へと、歩き去っていく。
その後姿が車の中へと消えていくまで、マユは手を振り続けていたが、
車が発進していった後、ふと不思議そうな顔で呟く。
「ケイってホント何の仕事してんだろ…高級車に運転手付きなんて」
思い返せば、車のナンバーも見慣れない記号が書いてあった気がする。
謎の深まった青年のことを思い返しながら、マユは一人、首を傾げて唸るのであった。
――ヤラファス島郊外の空港へと続く道路を走る高級車。
幹線道路ということもあって、それなりに混雑しているのだが、
奇妙な事に、その車の周りには常に不自然な空間が空けられていた。
…皆、あまり関わりたくないのだ。
特に前後に位置する車のドライバーは、面倒な車と出会った己の不運を恨むか、過度に緊張していたことだろう。
万が一、『走る治外法権』の外ナンバー車との事故に巻き込まれでもしたら、
修理代も賠償も全額負担でこちら持ち、しかもテロ疑惑で警察に拘束される可能性すらあるのだから。
周りに構うことなく自分のペースで走り続ける黒塗りのサルーンの中、
広い後部座席で、足を組んでくつろぐうら若き青年は、深く深く溜息をつく。
物憂げに顰められた柳眉。 嘆くように伏せられた長い睫の下に隠れる、紫水晶の瞳。
「――酷い話だ。 結構気に入ってたのになあ」
「は? 閣下、何かお買い忘れの物でもございましたか?」
「いいや、そういうのじゃないから気にしないで。
それより、これからのスケジュールはどうなってるの?」
「はっ。 空港に到着後、すぐさまチャーター機にお乗りいただいて、
ワシントンで行われる幹部会議にご出席頂く予定です」
「…そう。ありがとう」
短い謝辞で会話を打ち切り、ケイは車窓の彼方へと視線を向ける。
視界の中を過ぎ去り行く、熱帯植物の街路樹をぼんやりと眺めながら、彼は小声で呟いた。
「ああ、本当に残念だ。 あんな良い子を討たなきゃならないなんて」
どこか弱々しい、掠れた声は誰に伝わることもなく、ただ彼の口の中で反響しただけだった。
「……そうか。 大洋州連合は連盟参加を辞退したとな」
「うん、結局は世界間戦争が開戦することについては、僕らと同じで否定派なんだけどさ。
…彼らにはほら、既に一蓮托生の相手がいるから。 迂闊な行動は出来ないんだよねえ」
「ああ。 それについては、もとより承知の上だ」
オーブ行政府内の、カガリの執務室。 苦笑交じりに説明するユウナへと、部屋の主は相槌を打つ。
病院にいたカガリが呼び戻された用件――
それは、大洋州連合から伝えられた、連盟参加を辞退する旨に関しての事だった。
プラントと、大西洋連邦を筆頭とする数カ国の地球国家の間で、争いの火蓋が切り落とされんとしている今。
双方どちらにも加担する事を良しとしない国家は、二勢力間の戦争に参加しない意志を出した上で、
もし、所属国家が戦争に巻き込まれた際は他の国家も共闘するという、国家連盟を作り始めていた。
その連盟に加わるオーブとしては、隣国である大洋州連合にも同盟に参加してほしい所だったのだが…。
「彼らはもとより親プラント国家だからな。 ましてや、カーペンタリアがあるんだ。
こちらの連盟への参加は、まずプラントが許さんだろうし、
我々との連携を図るよりも、既に協力関係を成立させているプラントの方が、彼らにとっても都合がいいだろう」
難しい顔で腕組みしながらも、彼女はそう言いながら深く頷く。
もし彼らがこちらの連盟に加わることになれば、連盟の性質上、ザフトのカーペンタリア基地の存在が危うくなるのだ。
補給や物資供給の停止はもちろんのこと、ザフトが間借りしている基地の敷地提供も打ち切らねばならない…
ようするに、カーペンタリア基地を丸ごと立ち退かせなければならないのだ。
ザフトとしても大洋州連邦としても、そのような事態は絶対に避けたいはずだ。
「…まあ、とりあえず何か動きがあったらまた報告するよ。
執務溜まってるから頑張ってねマイハニー♪ 大変だったらヘルプに行くから気軽に言ってくれたまえ」
ひらりと手を振って笑いながら、扉の向こうから顔を出すユウナへと、
カガリは嘆息混じりに言う。 何を要求されるか分からんからいらない、と。
コリをほぐすために首を左右に曲げてから、デスクにうず高く積まれた書類へと手を伸ばそうとしたカガリへ、
そばに立っていたアスランは、真剣な面持ちで声をかけた。
「カガリ、少し話したいことがある」
「うん? なんだ?」
「その…頼みごとがあるんだ」
彼の言葉に、今まで書類に落していた視線を上げ、彼へと向けるカガリ。
橙色の瞳が丸くなり、そして笑うように細められた。
「珍しいな、お前が何かを頼むなんて。 で、なんなんだ?」
興味津々な様子で、椅子を回転させて身体ごとアスランの方を向いた彼女は、楽しそうな声色で問う。
そんな姿を、ためらうような困り顔で見つめていたアスランだったが、そのまま言葉を続ける。
「…我ながら、悪いタイミングだと思う。 カガリが苦労してる時に言うべき事じゃない。
迷惑をかけてしまうだろうが……だけど、この機会を逃したくないんだ」
「なんだ、回りくどいなあ。 さっさと言ってしまえよ」
口ごもる彼へと、カガリは口を尖らせて話を続けるように促す。
それでもアスランは、暗い表情を見せながら、言いにくそうに視線を揺れ動かす。
――やがて、一度息を飲み込んでから、アスランは意を決したように口を開いた。
「カガリ、俺をプラントに行かせてくれないか」
―大西洋連邦首都 ワシントンD.C. 大統領官邸―
長き年月を経てもなお、変わらぬ姿で建ち続ける白く優美な建造物……
『ホワイトハウス』と呼ばれる官邸の中は、今まさに混乱を極めていた。
ほうぼうからの通信呼出音に振り回される者。 書類を抱えて疾走する者。
周囲の雑音に負けないように、怒号に近い音量で言葉を交わしてる者たち。
そんな状況下、大統領の執務室にも普段とは違い、大勢の人間が詰めかけていた。
「困ったものですね、オーブにも。
大勢の定まりつつあるこの期に及んで、開戦反対を掲げるなんて…二年前の事を懲りていないんでしょうか」
年季の入ったマホガニー製の執務机の前を、後ろ手組みながら横切り歩く人物が、独り言つように声を発してる。
スーツを隙なく着こなすその男は、三十代半ばぐらいと政治家としては若く見える白人の青年で。
丸眼鏡をかけた、神経質そうな細面に嘲笑を刻みながら、悠然と歩みを進めている。
そんな彼を、目線で追いながら苦々しい顔をする執務机の主、
大西洋連邦大統領ジョセフ・コープランドは呻くように低く、言葉を綴る。
「……だが、その声明にはスカンジナビア、赤道連合に南アメリカまでもが名を連ねている。
そのうえ、大洋州連合までもが同調の姿勢を示しているんだぞ。
他国も、冷静に対応するよう訴える彼らに耳を傾けつつあるという。 この状態で開戦するのは…」
「そのようなこと!! ……こちらさえ動き出せば、黙って付いてきますよ。
しかし、今の機を逃せばそれこそ、あの我が物顔のミュータントどもに準備を整えられてしまいます。
それでは、事をスマートに運ばせるのが難しくなることでしょう。 一刻も早く、こちらが動くべきです」
渋る言葉を口にしたコープランドへと、青年は机に手の平を叩きつけながら、身を乗り出す。
まるで毒蛇が鎌首もたげるように、わななく大統領へとするりと音無く顔を寄せ、
物騒な内容を、穏やかな囁き声で告げながら、彼は柔和な微笑を浮かべた。
ぐう、と首を締め上げられたかのような呻き声を上げて言葉を詰まらせるコープランドへと、
取り巻くように周囲に控えていた軍服姿の男たちも詰め寄り、めいめいに口を開く。
「補佐官殿の仰るとおりですぞ、大統領」
「たかが中立国どもの遠吠えでしょう。 気にすることは御座いますまい?」
「プラント側の準備が整う前に……どうか御決断を!」
「そっ、それは…それは分かっているが、しかし……」
「いいえ! 全くもって御解かりではございません!!
貴方がどう思おうが、既に『あの方々』は開戦する方向で決定を下されているのですよ。
――まさかその意味すら、お忘れになったわけではございませんよね?」
躊躇うように口篭ったコープランドへと、補佐官と呼ばれた青年が再び吼える。
到底、国政の長へと向けるようなものではない、猛禽の眼差しを突き立てながら、唇を薄い三日月に形作って。
その剣幕と台詞の内容に、見る間に顔面蒼白となったコープランドは絶望の表情で顔を伏せ、頭を抱え込んだ。
――ジーザス、と。 既に単語としか残されていない、形骸化した神の名を呟いて震える彼へ、
聞き分けのない子どもを言い聞かせるように、補佐官は慈悲溢れる声色で言葉をかけた。
「既に準備は整いつつあります。 あのゴミどもを我々の手で屈服させる、絶好のチャンスです。
――しかし。 もし、万が一、貴方がご決断出来ないようでしたら、その時は我々も別の手段を選ばざるおえません。
御身が平穏の為にも…青き清浄なる世界のためにも御指示を下さい。 ジョゼフ・コープランド大統領閣下」
277 :
あとがき:2006/09/08(金) 06:45:35 ID:???
なんだか今回は色々詰め込みすぎて自分でも腹一杯な舞踏の人ですっ。
新旧艦長のやりとりは、本編でもすごく大好きな場面だったので、ちょっといじっていれてみました。
大人な女性達の会話ってちょっと難しいですね……でも個人的には、こんな感じで良いかなと思いました。
そして再びカッコ悪いアスランですw どうも自分の中では、ドジ属性持ちのイメージのようです(ぉ
本編と同じ告白をしていますが……詳しくは次回にて。
今回は久しぶりに、マッタリほのぼのした場面が書けて、楽しかったです。
ここんところモヤモヤ抱えたマユばっかりでしたから。
あ、ちなみにマダムヨーコは自分の大好きなお菓子でございます。久々にデパ地下行きたい……。
ツナブロックはもちろんぬこ様への御土産です。 あの子は絶対良い物ばかり食べてそうだ…w
次回より開戦に向かいます
ジブリとケイの悪巧みが炸裂しますwww
278 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/08(金) 12:43:23 ID:1U3AVgNy
隻腕の続きキボンヌ。
無神経な奴だなお前
舞踏作者様乙です
艦長同士の会話に深いものを感じました
ケイの色々腹にため込んでるっぷりも好きです
久しぶりの舞踏乙です。
ケイがいい感じに壊れてますねー。
舞踏作者様乙&GJです。
ケイが何をやらかそうとしてるのか、激しく気になる。
今後の展開に期待
「神の毒」のイカレっぷりは半端じゃねえwwwww
マユがラクスを肯定的に捉えていたっていう設定が一番新鮮だけどな。大体、他の作品だと
マユはラクスが好きじゃないことが多いし。
>舞踏書き手さん
イイ感じに舞台が整いつつありますね。
役者も揃いだして大きな幕が上がる日も近いんでしょうか。
しかし、キラって扱いの難しい素材ながら料理の仕方によっては
味のあるキャラクターに仕上がるんですなあ。
書き手ごとに別物のキャラになっていて面白いです。
ケイはカガリにも容赦ないなー。
あのユニウスセブン落下事件が世界の均衡を打ち崩した。
混乱の中で連合はオーブに迫り半強制的に同盟関係の中に組み込んでしまった。
しかしオーブとしてはプラント側の意向を無視することが出来ない。確かにオーブを
守ってくれるには遠すぎたし、パトリック=ザラの様な「コーディネーター至上主義」
の懸念もある。そうは言ってもやはり無視できない存在ではあったのである。
板ばさみになった小国の苦悩だった。しかし黙っていてまた国を焼かれるわけ
にはいかない。
そこでオーブの首脳陣は一計を案じた。カガリをザフト側に亡命させて保険を
かけるというやり方である。これならば連合とザフトのどちらが勝利しても
二手に分かれた首脳陣のどちらか一方が戦犯になれば済むだろう。
ユウナ=ロマとの結婚式の際に突如乱入したフリーダム。拉致されたカガリ。
半ば遊覧船に改造されていたアークエンジェルを含む一部の船舶を利用した
コーディネーター市民の脱出。全ては計画通りだった。
アークエンジェルがカーペンタリアに逃げ込んだ後、ザフトに影響力の大きい
ラクス=クラインとバルドフェルトはカガリと共に留まった(ラクスが広報担当で
バルドフェルトがザフトとの交渉役といったところか)。
キラとアスランはそれぞれ宇宙・地上のザフト軍に軍事協力として派遣されていた。
しかし問題は尽きることがない。先日には小競り合いでザフトに協力した
オーブ軍の一部とアスランを含むミネルバが衝突して死者が出ており、今後も
大規模作戦が展開されるという情報がある。
そして今またキラも連合(厳密にはファントムペイン)と戦おうとしている。
彼はまだ敵の中にオーブから派遣されたマユ=アスカがいることを知らない。
「僕が行って、やっつける! 早くハッチ開けて」
キラは無意識に無線に向かって叫んでいた。
ハッチが開く。
フリーダムは死の天使さながらに翼を広げ、宇宙空間へと飛び出していった。
***
アラームが、鳴り響いている。
<敵襲…敵襲…これはフリーダム!?>
マユとソフィアは廊下に響くブリッジからの指示に従ってMS格納庫へと向かう。
何度も壁を蹴って宙を滑りながら途を急いだ。
マユのBアストレイは予備ミサイルポットを携えて艦の近くのデブリに身を隠し、
逆にソフィアのランスイルはサイレントランでデブリの中を進んで行く。
その意図は迂回してフリーダムの背後に回りこむことだ。
Bアストレイのミサイルによる「囮の」奇襲後にランスイルが不意打ちを狙う、
そういう作戦である。
すでにファントムペインの僚機もまた展開して防衛線を張っていた。
全てはソフィアの奇襲が成功するための布石である。
マユには正直なところそれほどの葛藤はなかった。
たしかにフリーダムはオーブのMSではある。しかしマユ本人はキラと面識がある
訳ではなかったし不可抗力とはいえ2年前の誤射で家族を奪った相手でさえあった。
要するにキラはマユにとって別に大事な人間でもなければ義理も無かった。
しかも彼女がファントムペインに協力するのはオーブ本国の指示なのだ。
<フリーダム接近…距離…>
マユは薄暗いコックピットの中、冷ややかな三白眼でレーダーを見つめていた。
片手はキーボードに添えられ、ミサイルの軌道を計算している。
もう、ソフィアはフリーダムの背後に回る頃だろうか。
ランスイルのサイレントランの速度とフリーダムの近づいてくる速度。
両者がすれ違ってからの距離が離れすぎてしまっても駄目なのだ。
<撃て!>
無線の指示で僚機たちが一斉にフリーダムを狙撃する。
フリーダムは踊るかのように舞いながら光の線をかいくぐる。
そしてフリーダムのフルバーストが炸裂する。幾筋ものビームが暗闇を照らし
僚機をめがけて走る。
マユはそのときすでにミサイルのスイッチを押していた。最初からフルバーストの
隙を突く作戦である。
次の瞬間、無数のミサイルがいくつもの軌道を描いてフリーダムめがけ殺到する。
そのときヘルメス艦内のブリッジで観戦していたサイの顔は一気に青ざめた。
別にマユがミサイルを撃ったからではない。
たしかに「撃ちすぎだ」くらいには感じたけれどもそれ自体たいした問題ではなかった。
実のところサイ自身はこんな奇襲が成功するとは思ってはいなかったし、場合によって
はヘルメスが拿捕されて終わりになるだろうとさえ内心では思っていた。
サイが驚愕したのは他でもない。
キラの放った数条のビームが問答無用で敵を大破させたからだった。
ブリッジから見えただけで十機近くのダガーが爆発し、原形をとどめなかった。
きっとファントムペインのパイロットたちは即死だっただろう。
普段のキラではない。そのことをもっとも強く感じたのはサイだった。
ざわめくブリッジ内で彼は胸騒ぎを押さえて成り行きを見守るしかないのか。
フリーダム周辺が眩いばかりの爆発の光に包まれる。マユのBアストレイが放った
ミサイルは命中したのだろうか。
(所詮は目くらましだな…)
サイは腕を組んだまま苦虫を噛み潰したような顔をする。
<ランスイル、ロスト!>
(ほらな…)
奇襲を仕掛けたソフィアのランスイルはあっさり撃破されてしまったらしかった。
そして次の瞬間、サイはすばやくオペレーターに近づくと無線をひったくっていた。
そして怒鳴る。
「マユ、前に出ろ! キャノンとミサイルポットは捨てろ、距離をとって
胸部ガトリングのみで応戦だ」
「武器を捨てろとは…」
ヘルメスの艦長が怪訝そうな顔でサイを見る。「敗北主義者め」とでも言いたげな
口調だった。しかしサイは冷静に答える。
「どのみちキャノンなどフリーダムには当たりません。少しでも目方を軽くしないと
的になりに行くようなものです。ガトリングで弾幕を張れば目くらましくらいにはなります。
そのすきに我々は撤退しましょう」
Bアストレイがオーブの機体であることはキラも図面で知っている。開発にも一部
関わったとも聞いていた。
下手に隠れているよりは前に出て素性を晒した方がマユが殺される確率は低くなるだろう。
それにマユは混血とはいえコーディネーターである。
ファントムペインの悪行の証人にもなるしザフトに保護されても悪いようにはされまい。
しかしマユはフリーダムを目掛け最大出力でキャノンを発射する。
そして躍り出るとショットガンを連射しながら突っ込んで行く。
弾切れになってようやく彼女はライフルを捨てた。しかし胸部ガトリングのトリガーは
引きっぱなしである。
<バカ野郎!>
無線からサイの声が聞こえてくるが知ったことではない。
マユはさっき聞いたソフィアの断末魔が耳から離れなかった。
盾を構えて散弾の雨を防いでいたフリーダムに向かって加速していくBアストレイ。
マユはそのままヒートマシェト(短剣)を引き抜いて斬りつけた。
フリーダムは身をそらせて刃をかわす。
反応からして明らかに躊躇している様子である。
「こォノォォ!!!」
マユはそう叫びながら踵でフリーダムのコックピットを蹴り飛ばす。
それは明らかに怒りからだった。確かにファントムペインはテロリストには違いない。
しかし死んだパイロットたちの中には優しくしてくれた人もいたし、
ソフィアのことも出会って一週間だったがかなり気にかけていたのである。
同じ船の中にいて情が移ることはまだ十五やそこらの少女には禁じえないことだった。
Bアストレイの胸部ガトリングが火を噴き、硬直したフリーダムの全身に火花が散る。
「よくも…」
マユはフリーダムの顔面に肘うちを食らわせた。Bアストレイは見た目のゴツさに似ず
元々武装を除けば軽量で俊敏な機体だった。武器を持ち運ぶ必要からパワーもそこそこはある。
フリーダムが一瞬吹き飛ぶかに見えた。
しかしマユの勝ちはそこまでたっだ。次の瞬間にはフリーダムのビームサーベルが
Bアストレイの両腕を切断していたからだ。
「くっ!」
引き金を引くマユ。しかし胸部ガトリングはカラカラと回転するばかりだ。
既に弾薬は尽きていた。
「弾切れ…きゃ!」
フリーダムが左手でBアストレイの肩を鷲づかみにする。そして右手をコックピットに
かけるとそのままキャノピーを引きちぎった。
「ぇ…ぁ…」
マユは色を失ってしまう。目の前に開いた宇宙に繋がる穴。そしてその向こうには
フリーダム。
(私、もう、終わりなの?)
マユの胸の中を諦めに似た気持ちがよぎる。しかしオーブで人質になっている弟のことが
脳裏を過ぎった。
「駄目!」
マユは激しく頭を振った。
「駄目! 諦めたら、絶対に!」
マユは無意識に操縦桿を引いていた。Bアストレイは身をひねり不意を突いて
フリーダムの肩辺りに回し蹴りが入る。
しかしそれが最後だった。無理に機体をよじったことでBアストレイの肩が引きちぎれ
爆発を起こしたからだ。それはコックピットには届かなかったがショックはどうしようもない。
背中から胸への貫くような衝撃。一瞬で目の前が暗くなる。
マユはそのまま気を失った。
***
「そうか」
デュランダルはヘルメス拿捕の知らせを受けていった言葉はそれだけだった。
彼は受話器を置くと何気に机の引き出しから一枚の写真を取り出した。
そこには彼自身のほかに二人の男が写っている。それは学生時代の写真だ。
二人の学友はクルーゼとアズラエル、両者とも前大戦の戦犯ということになっている故人。
しかし彼らの戦ってきた真の敵はロゴスと呼ばれる組織である。
その実態を把握することは困難を極め、クルーゼとアズラエルはいいように踊らされた
挙句に無残な死を遂げたのだったけれどもその志はまだ死んではいない。
先日のユニウスセブン落下事件にしても実行犯こそザフトの不平分子だったが
裏で糸を引いていたのがロゴスであることには疑念の余地が無かった。
ユニウスセブンは表向きは農業プラントだったがロゴスの息のかかった施設だったからだ。
アズラエルが核を打ち込んだのも理由の無いことではなかった。
「敵はとってやる」
デュランダルは目を細めてそう呟いた。<1部了>
単発設定小話 「終わりの始まり」二人のラクス編 終章
〜ミーアが自分の本当の姿を告白し、放送が終了したあとで〜
〜ミネルバ〜
〜自室で放送を見ていたレイ〜
レイ「くっくっく・・・はっはっはぁっ!・・・こいつは傑作だ。自分から破滅の道を選んだか!」
〜艦長室〜
タリア「・・・・・・この娘・・・オーブ難民だったのね」
〜大広間で放送を見ていたその他大勢〜
ヨウラン「あー??ミーア・キャンベル?・・・・・・偽者だって?」
ヴィーノ「ああ・・・確かにそういったな・・・・・・。でも、まぁ・・・なんとなく昔となんか違うなァとは・・・」
ヨウラン「お前も?」
〜マユとルナマリア〜
マユ「・・・・・・自分で名乗った・・・・・・え?」
ルナマリア「ちょっと・・・本当にマユの言ったとおりじゃない!?」
マユ「・・・でも・・・これじゃ・・・・・・」
ルナマリア「でも・・・確かに今頃でてきた本物よりは・・・ミーア?の方が私は好感持てるなぁ」
〜アークエンジェル〜
ムウ「・・・ありゃ。正体、自分で言っちゃったよあの娘・・・」
マリュー「・・・・・・オーブ難民・・・カガリさんたちに影響がなければいいのだけど・・・」
ムウ「影響はあるだろうな・・・まだどちらに傾くかはわからないがな」
マリュー「宇宙にあがるのも早まりそうね・・・・・・」
〜ブリッジを出るマリューとムウ〜
ムウ「・・・そうだな。(・・・・・・嬢ちゃんたちは大丈夫だと思うが・・・横槍が入るとどうかな?)」
マリュー「どうしました?」
ムウ「あ・・・?いや、なんでもない。(・・・横槍をなんとかするのが俺の役目だな・・・・・・シン!)」
〜放送が途切れたザフト側スタジオ〜
ミーア「・・・はっ・・・はは・・・へへへ・・・・・・ふ、ふふふふふっふ・・・・・・っくっくっくっく」
〜その場にしゃがみこみ笑い続けるミーア〜
タケダ「・・・ラクスはん。ようやったで。・・・・・・わてにはあんさんがラクス様なのに何も変わりはありまへんで・・・」
ミーア「・・・・・・タ・・・ケダさん」
〜その頃、ものすっごい形相のデュランダル〜
デュランダル「・・・・・・まったく・・・・・・ふむ。まぁいい、我々は次へ向かうだけだ・・・」
〜席を立つデュランダル〜
〜月面、ダイダロス基地〜
リー「・・・・・・ということだ。我々は再びスタンドアローンで挑むことになる」
シン「・・・ここの防衛はいいんだな?」
リー「われわれの目的は最初からわかりきっているだろう?・・・ここにはここの、我々には我々がなすべき役割がある」
スティング「そういうことだな・・・。シン、俺の演習につきあえよ?」
シン「・・・・・・エグザスに乗れ。あっちの方が練習になるだろう」
スティング「・・・・・・っち・・・わかったよ」
〜会議室を後にするシンとスティング〜
完
遅くなったが、単発乙。
前回から一気見してミーア&タケダに痺れたぜ
ムウもなんか企んでそうだな
月にはいまだにシンとオクレ兄さんが健在だし、同人アニメのようなワンサイドゲームにはならなさそうだ
議長がアズとクルーゼと学友とは意表を突かれた。
ここは巨大な会場にある倉庫の一室。
そこに謎の蠢く影が二つあった。
「くそっ・・・・!見事にやられたな。」
アキラが縄の中でもぐもぐと動く。
「あぁ・・もうっ!こんなんだったらもっと武器が隠しやすい服にするんだった!」
アキラと背中合わせになっているルナマリアも動く。
「最近俺こんなのばっかだよ?なぁ、トール。」
「アキラ、あんた何見えてるの?」
遠く彼方、むしろ異次元を見つめるアキラをルナマリアは本気で心配する。
「えー?晩御飯の買い物?今日トールんち何なの?」
「電波?!電波?!とうとうアンタ脳まで駄目になったの?!」
二人はぎゃーぎゃーと騒いでいると突然扉が開く。
「うるさいぞお前ら!!ったく、これだから腐女子は・・・。」
「うるさいわね!ロリコンよりは健全よ!!」
「俺はやおいオッケーってだけで好きなわけではない!!!愚弄するな!!」
分けのわからない反論をするルナマリアととりあえず性格を変えるアキラ。
「ふん・・、まぁ貴様らなんぞどうでもいい。ここで木っ端微塵になるのだからな・・・・。」
そう言って男は手に持っていたスーツケースを床に置く。
「 うわぁ、次元爆弾だー。ストーリー的にはありがちですね。」
「え?!私の人生これで終わり?!私はメイリンの花嫁姿をスティングの花婿姿を見るまで死ねないのよ?!」
「それどっち目当て?」
「片方は愛、片方は萌え。」
混乱しているのか冷静なのかよく解からない言葉が繰りひりげられる。
犯人は思わず固まっていたがしばらくすると正気に戻って去っていった。
「アキラとルナマリアが捕まった?!」
「うん・・、私はゼロが守ってくれたから大丈夫だったけど・・・二人は持っていた同人誌に気をとられていて・・・・。」
ずーんと重苦しい顔で話すメイリン。多分姉の情けなさの方が割合的に多いだろう。
「ゼロは?」
「他の皆を呼びに言ったよ。あと途中でスティング達にも会ってそっちはスタッフの人に知らせにいってる。」
ネオの質問にメイリンが答える。
「あとね、これ。」
そういってメイリンは小型の映像プレイヤーを渡す。
その中には犯人が数箇所に爆弾を仕掛けたこと。そしてその中のどれかに人質がいること。
制限時間は一時間半ということが伝えられた。
特にグループなどの犯行声明はしていない。
「戦闘になるなら俺、『着替えて』きてもいいか?」
シンが自分の腕を指差しながら言う。
「そうだなシン、早く変えてきてくれ。シンハロ、警備のカメラにアクセスは?」
『今やってる。ちょっと素人にしては妨害が手ごわいからちょっとまってくれ。』
いつの間にか復活したアスランが作戦を練る。
シンハロも既に行動を開始しているようだ。
「ステラ・・いつもどっちかっていうと爆弾は仕掛けるほうだったから・・・。」
「んー、俺達もかな。でもテロ対策もそこそこやったからなー。わかんないや。」
「・・・私、爆発物処理だけはだめだったわ・・・。つーか肉弾戦がナイフ限定って何?!せめて鉄パイプ!!」
ステラ、カルマ、ミーアがナチュラルに物騒な会話をする。すっごくいやな薔薇乙女だ。
「みんな!」
上から忍者のようにひとつの影が降り立った。キースである。
服は任務用の動きやすい服に着替えており小型通信機をつけている。
既に非難を開始していた周囲を避けるようにやってきたのだ。
「ハイネに連絡をして外のザフトや連合、中立国の軍に来てもらった。多分一時間くらいで非難は終了するよ。」
ゼロとジョーは外部との連絡を取っており、レイとスティングは軍服に着替え避難の方を担当しているらしい。
議長はアウルに引きずってもらって退避しているらしい。
『・・・・・・ん?ゼロのサポートか?これなら・・・!!はーっはっはっは!!この程度で俺を止められるとでも思ってるのかぁ?!』
シンハロがやけにハイなセリフを言う。おそらく電脳空間ではSFチックなエフェクトでシンハロは大活躍しているのだろう。
「シンハロはハンドルを握っても性格は変わらないけどこうなると敵を殲滅するまで戻ってこないよ。」
きっと今シンハロをモニターにつないだら映画真っ青の戦闘シーンが見れる、とマユは続ける。
「・・あ、アウル?議長・・・・・了解。議長の退避終了したってさ。」
通信機から通信が入ったらしくキースがみんなに伝える。
見ると向こうからシンも走ってきた。腕は擬態重視のものではなく戦闘用のいかにも機械らしいものに変わっている。
「・・・・目立つわねぇ。」
「仕方がないだろ!」
グレイシアの言葉にシンハロがすねたように怒る。
「・・・・それだと戦闘になった時敵に警戒されそうね・・・。」
ミーアの目が怪しく光る。
「・・・・・・・ミーアお姉ちゃん・・・・。」
「まさか・・・・・。」
ステラとマユがガクガクと震え始める。
「どれ着るぅ?!シンは乙女座だったけど、乙女座はハイネが誕生日一緒だからハイネに着せる予定なのよーv
スティングはかに座が似合うと思うし・・、アウルは不本意だけどペガサスね!」
「落ち着いてミーアお姉ちゃん!!版権的にやばいから!!あぁこの話が小説形式でよかった!」
マユが興奮するミーアを押さえつける。
「山羊座・・・・・・。」
ステラがぽつりと呟く。
「シン・・・義手だと・・そのまんまで瓶とか真っ二つにできるの・・・・。」
ステラが目を輝かせながら言う。
「しまったーーー!!昔忘年会でやったかくし芸ステラ覚えてたのかー?!」
「そんなことに義手使うなよ!!あれどうやったのかずっと俺考えてたぞ!!」
どうしようもない過去を暴露されてシンは衝撃を受ける。そしてネオに怒られる。
「・・・・・そうね、身長たりないけど何とか・・・・・・。よし、シンハロはこっちに戻ってきたら双子座よ。」
もうこうなったらミーアは止められない止まらない。声優イベントに来ているオタクよりも興奮している。
「シンハロー!逃げてー!早く逃げてー!」
『えーっと・・・?あと三つだけか。よし、あと五分くらいだなー。』
マユは必死に相棒に叫ぶが、まだ彼は電脳空間で作業中なのであった。
「・・・・ルナマリアどうにかなんない?赤服だろ。」
「アキラこそ性格変えれば?私爆弾系の授業はいつも寝てたから。」
「いや、たぶんそうすれば縄は千切れるけどそのあと体力が尽きて爆弾が解除できない。」
「爆弾解除できるキャラって何?もてあます?」
「ベホイ○。」
アキラとルナマリアが必死に抵抗するが、縄は一向にほどけない。
「嫌だ!!もしこれがエロゲだったらきっとエロシーンなのに!しかもルナマリアと一緒に臨終なんて!!」
「私だって嫌よ!こないだミーアに☆矢貸してもらったらすっごい萌えたのに!!蟹魚!!蟹魚!!山羊獅子!山羊獅子!」
最後くらい真面目にすればいいのに二人そろってマニアックな話題しか出てこない。
しかし残りはもう三十分くらいである。
「・・・・でも、これで死んだらトールの所いけるかな。」
アキラがぽつりとつぶやく。
「・・っ!あんた何言ってんのよ?!」
「でも、無理だな。トールは天国だけど俺は地獄だ。俺は罪無き民衆じゃなくなったから。」
ルナマリアを無視してアキラが続ける。その目はやはり遠い。
「ちょうどいいかもなぁ・・、最近死にたいってあんまり思わなくなってたから。」
「アキラ!あんた何さっきから・・・!もうほどけろこの縄!!」
ルナマリアが必死に縄を解こうとする。
こんな奴を死なせてたまるか。生かせて、死ぬほど長生きさせてやる。
アキラの言葉に怒ったルナマリアは必死に抜け出そうとする。
「もう・・っ!!こうなったら・・!!」
ルナマリアが何やら活躍しようとした瞬間、扉が突然壊れた。
「大丈夫、二人とも?!シンハロどいて!!」
『扉壊したの俺なのに!!』
マユがシンハロを押しやってルナマリアとアキラの所へ駆けつける。
マユの格好は金ぴかのトンファーを持ってる以外は先ほどと変わらないが
シンハロの格好がすごかった。
「えーっと、勇者王?英雄王?」
アキラが思わずつぶやく。
「違うわよ、よーくみなさい。いきなりマントを脱いで全裸の上からアンダー無しで鎧を着る男よ。」
ルナマリアがかなり難しいヒントを与えるがアキラは分かったらしい。
シンハロが肩を震わせている。
「あー、ミーアか。いいじゃん、俺なんて『アキラは似合わないから「るろうに」で!!』って言って着たくても
着せてくれなかったんだぜ?」
「かっこいいからいいじゃない。ミーアなんて蟹座なのよ?うらやましいのよあの子。」
必死にフォローするアキラとルナマリア。
しかし皆はシンハロのインパクトで、隅っこで勝手に爆弾をいじっているマユに気づかなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見事に焦げてるな。」
アフロだったり髪の毛がちれぢれになったりとにかく全体的に黒くなった四人組。
なぜかシンハロの着ている金ぴか鎧だけ無事である。
「つーか、着てても肌が出てる部分へのダメージは防げないのな、その鎧。」
「当たり前じゃない。」
犯人グループの引渡しを終えてきたネオが突っ込む。
ミーアはさも当然そうに答える。
『勘弁してよ・・。俺人間じゃないから勝手に直らないんだって・・。
はぁ・・、この体が治るまでしばらくまた丸っこい体で我慢しなきゃなんだから・・・・。』
シンハロがこげた肌をさすってため息をつく。
「・・やばい、この間自爆装置つけた。」
アスランが不穏な言葉をつぶやく。
『おい、今なんつった?』
「任務完了。」
『うそつけ!!』
ぎゃいぎゃいと騒ぐアスランとシンハロ。
「・・・・よし、じゃあハイネに対するお仕置きは皆で彩○国物語鑑賞会。ハイネだけ仲間はずれで。」
向こうではハイネ隊は仕事をさぼった隊長に対する処罰を決めていた。
ハイネの好きな声優が主人公のアニメをハイネ抜きで見る計画らしい。
「さらに各自ハイネの部屋にしのびこんでほーこたん関連グッズをこっそりルナマリアのBL関連グッズに変えておくように。」
さらに追い詰める。肉体的にではなく精神的に痛めつけるのがハイネ隊だ。
「んー・・・ステラ・・・つかれた・・・・。」
「スティングー腹減ったー。」
「・・・・・・シン、それ別にきちんと山羊の形にしなくてもいいんじゃないか?」
「やだ!!元に戻す!!!」
駄々をこねるアウルとステラ、ひたすらミーアに着せられた鎧を元の形に戻そうとするシン、そしてそれらをなだめるスティング。
「シン、ここはこうでこうだ。」
レイが的確に部品を組み立てていく。
「おぉっ!さすが蠍座!!」
「ちょっとまって?!蠍座は議長よ!!」
ミーアが二人の間に割って入りまた熱く語り始める。
もう空には星が輝き始めていた。
ーーーーーーーーーーーーーーマユの日記。
八月△日
今日はコミケに連れて行かれた。好きな本がいっぱい買えた。
シンハロとお兄ちゃんがミーアお姉ちゃんの餌食なってた。
爆弾が仕掛けられた。シンハロが変身。キャストオフはしてくれなかった。
爆弾の授業はよくわからなかったので触ってみたら爆発した。
爆発オチって今までの人生であんまりなかったなぁ、と思った。
ミーアは毎日コレクションに話しかけてるらしい、せめてぬいぐるみに話しかけろ。
ほのぼのです。
さて、ようやくコミケ終了。もう九月だよ。俺の夏休み、終わっちゃった。
そろそろ本編に戻りますがその前にまたひとつ話が入ります。
レイをそろそろクローズアップです。シンハロもクローズアップです。
ついでに死人も出ます。あ、別にだれかが死ぬってわけではなく、死人がでます。
マユももうちょっと活躍する予定。今回はオタクに出番とられっぱなしだったね。
それでは。
コスプレクイズの答えは避難所で。
いい加減ほのぼの作者は空気を読むことを覚えてくれ。
いっそのこと単独スレ立ててそこでやれ。
>>301 投下間隔は5時間以上空いてるし、内容も
>>1の必読事項に反していないように
見えます。
自分の趣味に合わないSSだから、排除しようとしているんですか?
それこそ必読事項に抵触するのではありませんか?
>>301 スクロール早めりゃいいだけ
スレの荒れを何度もぶったぎった功労者に出て行けとか言うのは忍びない
マユ種じゃないオレ種はよそでやって欲しい気持ちは痛いほど分かるが
読みたいのは読む。読みたくないのは読まない。
これ鉄則。
>>302 必読事項は作者に対する批評を禁止してはいないはずだが?
最近の氏の作品は、正直読み手が眉をひそめるほど悪乗りが過ぎて、自己満足の域に入ってしまっている。
今まで、スレが変な流れになりそうな時にそれを断ち切ったり、
シリアスな作品が多い中ほぼ唯一なギャグ作品を書き続けてることに文句はないけれど、
今一度後ろを振り返ってみてほしい。
>>306 少なくとも
>>301だけじゃ批評にはならないだろ
確かに最近のほのぼのは訳わからんが
俺はこのノリ好きだぞ
>>306 あんまり必死に作品批判してると、荒らしと変わらなくなるぞ。
>いきなりマントを脱いで全裸の上からアンダー無しで鎧を着る男
間違っちゃいないがかなり偏った説明だなw
単発設定小話 「鎮魂歌@」
〜月面ダイダロス基地、司令部〜
リー「司令、我々はそろそろ出発します。・・・本当にここの防衛にあたらなくていいのですな?」
司令「いまさらなにを言うかと思えば。・・・リー、盟主の命令を読んだろう。我々はもう連合の皮は脱ぎ捨てたはずだ」
リー「そうですが。我々の任務はガーティ・ルーと、お借りするデストロイだけで実行できます。少尉であれば・・・」
司令「・・・ダメだ。ミラージュコロイドで姿を隠せば歩みも遅くせざるをえんだろう。お前たちを守るためにも彼は必要なはず」
リー「ですが・・・」
司令「我々はここを離れられんが、お前たちは自由に動ける。・・・ここに万が一のことがあれば、お前たちがどうにかせねばならん」
リー「・・・ですから少尉を!」
〜椅子から立ち上がりリーに背を向ける司令〜
司令「リー・・・ファントムペインは盟主が何よりも目をかけていた部隊だ。・・・お前たちはただでさえ人員が欠けている。
そんな部隊から大事な戦力を借りることなどできるはずもない。・・・・・・行け。・・・青き清浄なる世界のために」
リー「・・・っく・・・青き清浄なる世界のために。・・・・・・これで・・・お別れです」
〜司令の背中に頭を下げ、退出するリー〜
司令「さて、我々は我々のなすべきことをしようか。・・・・・・諸君!」
〜司令部の壁面が突如スライドし、ダイダロス基地中枢部が姿を現す〜
司令「清く美しい世界を取り戻そうじゃないか。レクイエム起動!目標、プラント首都アプリリウス!!・・・青き清浄なる世界のために!」
〜ワッカの調査結果を聞き、分解に大急ぎのジュール隊〜
ディアッカ「まさかこれが兵器だとはねぇ・・・」
シホ「・・・これだけ大きいと分解にも、移動させるにも時間がかかりますね」
イザーク「つべこべいってないで手を動かせ!何時起動するかわからないんだからなっ!」
ディアッカ「へ〜いへい。しかし・・・ずいぶんと頑丈に作ってあんな、これ」
シホ「ディアッカさん、B区画をお願いできますか?あそこになにか装置の基部があるようです」
ディアッカ「はいよ・・・ん?・・・・・・ここのインゲージランプさっき光ってなかったよな?・・・んんん〜!」
シホ「・・・!?動き出した?」
〜ゆっくりと回転しだし位置を変えだすワッカ〜
ディアッカ「イザーク!!こいつ、動き出してんぞ!!」
イザーク「わかってる!おい!解体を急げ!!・・・各部報告!」
シホ「エネルギー反応・・・月の裏側から?・・・隊長!月面から超弩級のエネルギー反応!!」
イザーク「っくぁー!!MS部隊、そのワッカから離れろぉー!!艦隊射撃用意!!・・・撃てぇー!!」
〜絶叫するイザーク、ワッカから離脱するMS部隊〜
ディアッカ「・・・来るぞ!」
〜ワッカへ艦隊のビームが当たるト同時に、月からの光のスジがワッカの中心部を通過していく〜
〜光のスジはアプリリウスははずすものの、複数のプラントを切り裂いていった〜
〜その頃、思わず立ち上がり怒声を響かせる議長〜
デュランダル「何事だっ!?」
ザフト兵「・・・プラントが複数、月面から突如発射されたビームで落とされたようです!」
デュランダル「ええぃ!緊急招集をかけろ!・・・連合の月面基地、ダイダロスからに決まっている!」
ザフト兵「はっ!了解いたしました!」
〜机に握りこぶしをぶつける議長〜
デュランダル「ええいっ!忌々しい!!・・・主人がいなくなっても同じかっ、亡霊どもがっ!」
続 ・・・・・・「鎮魂歌A」へ続く。
単発乙! 軍人たちのやりとりがカッコよくていいねえ
ジブリールなしで動き始めたファントムペイン、どんな風になっていくやら…
単発設定小話 「鎮魂歌A」
〜プラントが破壊されたことを報じられた会議中のカガリたち〜
カガリ「・・・プラントが・・・・・・そんな・・・」
マリュー「・・・一体どこから?」
〜ざわつく会議室に一声が発せられる〜
ムウ「月の裏側さ。・・・いや表といったほうがいいのかな?」
ラクス「月面から・・・ですか?」
ムウ「そうだ。月面ダイダロス基地・・・連合の重要拠点のひとつさ。まぁ連合とはいっても、実質はブルーコスモスの本拠地だけど」
マリュー「ブルーコスモス・・・しかし、盟主のロード・ジブリールは先日の戦いで死んだはずでは?」
ムウ「盟主の死なんてあまり関係ないさ。連合にロゴス・・・俺自身もうっかりしていたが、やつらにとってはそれは単なる隠れ蓑にすぎん。
やっかいな連中をザフトもそしてオーブも本気にさせちまったみたいだなぁ」
カガリ「今まで本気じゃなかったっていうのか?」
ムウ「・・・思想はともかく、ブルーコスモスの本質はテロだ。奴らは恐れないし自分の命を犠牲にすることもいとわない連中だぜ。月の連中もいまさら
結果はわかってるはずさ。・・・けれどやめるわけにはいかない。・・・なぜなら」
カガリ「なぜなら?」
ムウ「青き清浄なる世界のために。・・・この言葉に尽きる」
〜ムウの言葉に静まる一同〜
マリュー「・・・宇宙へあがるのをもっと早めねばなりませんか?」
カガリ「うん、そうだな。準備を急がせよう。・・・わたしも宇宙へあがりたいのだけど・・・」
キラ「カガリ・・・」
カガリ「わかってる。私の命は私だけのものじゃないっていうのもな。・・・だから私は宇宙へは行かない」
キラ「うん。カガリはオーブで僕たちが帰ってこれる場所をしっかりと守ってもらわないと」
カガリ「まかせとけって。・・・だから私のアカツキは・・・・・・」
ムウ「俺が預からせてもらおうか。・・・信用してもらえるのならだけど」
カガリ「・・・信用しているさ。まぁ体裁はラミアス艦長を後見人させてもらうけどな」
ムウ「・・・・・・なんか納得いかんが・・・いいだろう」
カガリ「ん、じゃ会議はこの辺で。みんな準備を急いでくれ」
〜解散する会議〜
キラ「ムウさん!・・・まさかなにかを償おうなんて考えてないでしょうね!?」
ムウ「!・・・・・・まさか。ザフトも月の連中もぶっ飛ばして必ず勝ちをもぎ取ってやるぜ!」
キラ「でも、ネオ・ロアノークのときの部下がまだ生きているのでしょう?」
ムウ「ああ、わかってる。リーにスティング、そしてシン。みんな俺の大切な部下だった連中さ」
キラ「・・・一人でいくなんていわないですよね?」
ムウ「・・・・・・客観的にみればネオ・ロアノークのしてきたことはムウ・ラ・フラガには責任がないのかもしれない。けどな、俺にはそんなことは到底納得
できない。心のどこかでいまだに迷っているのさ。このままお前たちの仲間でいるべきか、それともネオ・ロアノークに戻るべきなのか・・・・・・。
お前たちには迷惑をかけたくはない。・・・・・・嬢ちゃんたちには内緒だぞ?」
キラ「迷惑だなんて・・・。ムウさん、ザフトのマユ・アスカという少女を知っていますか?」
ムウ「・・・知ってるもなにも、シンの妹さんだろ?」
キラ「前の戦いで僕は・・・アスランと殺し合いをしてしまいました。それでも十分悲しい出来事なのに・・・兄妹が敵同士になって戦うなんて・・・。僕は・・・僕は・・・・・・・」
ムウ「両方助けたいって?・・・・・・キラ、お前のその優しさは大事だけど、二兎追うもの一兎も得ずってな。妹のほうは
直接戦ったことないからわからんが、シンはお前やアスランでも簡単にはやられてくれないぞ?」
キラ「それでも・・・僕はでき限り殺し合いはさせたくない」
ムウ「そうか・・・・・・でも忘れないでくれ。お前だってカガリ同様にお前の命はもうお前だけのものじゃないんだぜ?」
キラ「えっ?」
ムウ「この後に及んでまた戦後は隠遁生活しようって考えてるんじゃないだろうな?そんなことは・・・もう許しちゃもらえんよ」
続 ・・・・・・「鎮魂歌B」へ続く
いや客観的に見てもムウはなんらかの責任は取らなきゃいけないんじゃなかろうか…
>>313 乙
ブルーコスモスに思い入れられる描写は珍しい。
>奴らは恐れないし自分の命を犠牲にすることもいとわない〜略〜
「青き清浄なる世界のために。・・・この言葉に尽きる」
指導者の指示では無く
理念を共有した仲間(同志)の心の家ですね。
この「ブルーコスモス」。
議長も第一話でいってたしね、「彼の言いたい事も解るがね、ブルーコスモスは組織と言うよりも、主義者の集まりだろ。だからテロは防げんよ」
自分は逃げている。ただそう感じていた。
走っているわけでもない。転がっているわけでもない。でも逃げていた。
つかまったら否定される。自分を否定される。新しい自分を植え付けられる。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだ、いやだ。もういやだ。
どこでもいい逃げなくちゃ。逃げなくちゃ。
疲れはない、ただそろそろ追いつかれそうだ。いやだ。
だけど、突然何かが自分を引っ張りあげた。
とつぜんギルとラウに呼ばれた。無視したら引っ張ってつれてかれた。
また二人の父はどこかへ行く。俺の頭をなでてどこかへ行く。
まぁ、いい。これで思いっきり野球ができる。
捨てられていた所を回収したグローブとバットをベッドの中から取り出す。
あぁ、そういえばピアノのレッスンがあった気がする。どうでもいいか。
堅苦しいスーツからTシャツとGパンに着替える。
ピアノよさよなら。野球よこんにちは。
ヨウランとヴィーノに電話をしよう。
今日は五人もやっつけた。スティングとステラに話す。
ステラは何人やっつけたか覚えてないらしい。やっぱ馬鹿だ。
スティングは三人だけだった。手加減できるやつは強いらしい。なんだそりゃ。
三人で話していると母さんがやってきた。母さんに今日の成果を話す。
すると母さんは笑ってほめてくれた。やっぱり母さんは話がわかる。
母さんが突然男の人に呼ばれた。もう行かなきゃ、と母さんがいう。
さびしい、と思うと顔にでているのか母さんは俺の名前を言って頭をなでてくれた。
おれはとってもしあわせだった。
父上が地球土産をくれた。それは子犬だった。
プラントではめったに犬なんてみない。動物なんて動物園でしかみられないのだ。
早速うれしくて名前をつけようとするが、そのまえに母上に止められた。
そうだ、そろそろ晩御飯だ。手を洗ってこなくては。
この子にもご飯をあげよう。何を食べさせたらいいのだろうか?
父上に相談しながら洗面所にむかった。
メイリンに名前を呼ばれる。普段なら幸せのはずなのだが今日は考え事をしていたので微妙だった。
それは「名前」についてだった。俺の名前は「スティング・オークレー」だ。
しかし、それは本当に俺の名前なのだろうか?俺の両親がつけてくれた名前はなんだったのだろうか?
そんなことを考えているとメイリンが怒ってしまった。ステラとは違う反応に対応にこまる。
あわてているとジョーが話しかけてきた。その場の空気がすこし和らぐ。
あぁ、俺は多分世界で一番幸せなのだと実感した。
ステラ、ネオと一緒。ゲンと一緒。
マユも一緒、みんな一緒。
一番うれしいのはゲンといるとき。ステラはゲンが好き。
ゲンもきっとステラが好き。だからしあわせ。
だけどゲン、最近ステラの知らない顔をする。
それはきっと「シン」。ゲンのほんとうの名前。
ステラはそれをしらない。マユだけ知ってる。
ステラ、すこしだけさびしい。
「・・・・・・・・・・・・・・ここどこ。」
マユはよくわからないところにいた。
どう表現すればいいかわからない。とりあえず回りがなんかうねうねとしている。
そしてところどころにいろいろな風景が消えては現れる。
「なんかこないだやったゲームに出てきそうな場面だなぁ・・・。」
感触としては無重力、いや体に圧力がかかるからどっちかと言うと水の中に近い。
どうしようもなくとりあえずクロールをしてみたりしたが進んでいるという感覚がない。
そもそも距離感がよくつかめない。
「・・シンハロー!!おにいちゃーん!!」
とりあえず呼んだらすぐきてくれそな二人を呼ぶ。
だが音は響くことなく吸い込まれる。
いけない、久々に一人ぼっちになったから不安になってきた・・・。
「あら、あんたこんな所で何してるの?」
突然聞こえてくる声。見ると目の前になにやら赤い光のようなものが現れた。
それは徐々に人の形をつくり最後には赤い髪の少女になった。
「あんた生きてる人間のくせに何やってんのよ?」
ピンクのマオカラーをきた少女がマユに問う。
マユは気がついたらこんな所にいたのでなんとも言いようがない。
しかしマユの少女のセリフの一点に気づく。
・・・・生きている人間?
「嘘?!私死んだ?!いつのまに?!昨日の晩御飯食べ過ぎた?!パスタすっごく美味しかったから?!」
「落ち着けきなさい。生きてる人間っていってるでしょ。」
見事なかかと落としがマユの脳天に命中する。
「すみませんでした。」
頭にたんこぶをつくり土下座するマユ。
そしてすぐに目を輝かせ顔をあげる。
「このかかと落としの腕前とタイミング、かなりの腕前と見ました!!師と呼ばせてください!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
マユの行動に一瞬あっけにとられる赤の少女。
だが次にはすました顔をして・・・・。
「ふ・・、いいわよ。ただしお姉さまと呼びなさい!」」
「ありがとうございます!!お姉さま!!ところでお名前は?!」
「フレイ・アルスターよ、よぉく胸に刻み込みなさい!!」
いまここにガンダム史上最悪最凶の師弟が誕生した。
ぎゃあああああああああああああ
珍しくシリアスな流れだと思ったらやばい
師弟誕生しちゃったああああああああ
321 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/13(水) 23:00:33 ID:IrAAh7Gh
ほのぼのにシリアスは似合わん・・・ただネタに走ればよい。
>>319 いや、これは・・・。
久々に良いなあ。続きを楽しみに待たせていただきます!
今のタイミングなら言える……
……好きだし、批判っぽいことは言いたくないが、
ぜんぜん単発でも小話でもない点について……
……いや、内容は好きですよ。これからもがんばってください。
最初は一場面を切り取って書いてる、文字通りの単発小話だったけどね
いつの間にか、ちゃんとした流れのある一本のストーリーになってた
いや、作者さんは最初からそのつもりで書いてたのかも知れんが
マユ「シンお兄ちゃん、起きて、朝だよ」
シン「後、10分」
マユ「今日、大事な会議があるんでしょう」
シン「♪♪♪♪♪♪♪」
マユ「んもう………!。そうだ、キラ様に造って貰ったあれがあった」
マユ「えーと、使用は一回に付き1本だけとキラ様は言っていたけど、そう簡単にシンお兄ちゃんは起きそうにないから100本纏めて使っちゃおう」
〈カラカラカラ〉
マユ「うんとよいしょとこれで配線を伸ばしてとシンお兄ちゃんの部屋から出来るだけ離れて物影からと…………後は、ボタンを押すだけ。」
マユ「シンお兄ちゃん、ダイナマイト型目覚ましクラッカー使うよ」
シン「シ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
マユ「うんもう、マユ、もう怒った(ポチ)」
〈ズドドドドドドッカンドガラジャグワシャンドッカンガシャン〉
マユ「ケホン、ケホン」
シン「ルナーーーー」
ルナ「チョット、シン、大事な会議(ギョ)」
シン「オハヨー」
ルナ「(パクパクパク)あ、あなた、その包帯だらけのかっこはなに?」
お茶を飲みながら。
マユ「やっぱり、キラ様が造ったダイナマイト型目覚ましクラッカーは効果があった。」
え〜と……唐突に何? 一発ネタの書き捨て?
>>322 ぜんぜん単発でも小話でもない点について……
A.いやまったくその通り。自分でも「今のタイトルのままでいいのか!?」と思っておりますよ。
>>323 いつの間にか、ちゃんとした流れのある一本のストーリーになってた
A.初期に、ある住人の方から『「全部繋がった話」作らんかな もちろんマユが主人公でなきゃ意味ない部分で。』
でと言われたことから、続けるなら「繋がった話」にせないかんかな?と思いまして。。。そのようにしております。
まあ「時系列でなくてもいいから」とは仰っておりましたが、出来の悪い脳みそでは飛び飛びに投下して
話をまとめる能力などないのでどうしても時系列で投下するようになってしまいました。
細かいところを補完する意味で、時系列を比較的無視したものも投下してますが、実質イレギュラーになってます。
タイトルはともかくとして、単発の台本形式と投下方法は簡単に差し替えが効くので展開を変えるのはスゴイ簡単なんですね。
(一通り投下し終えたら、「IF」のさらに「IF」でスレがある限り延々と投下してやろうなんて考えたり考えなかったり)
というところです。
さて「単発設定小話」もいよいよ最終章に突入しております。
広げた風呂敷をたたむのに必死ですが、ちゃんと終わらせられればとおもっちょります。
PS.
マユ種はシン(ネオ)が最後死んだ?ようですが、
シンは死んだ方がいいのか?生かしたままの方がいいのか?(なんか物騒だな)
あと記憶が戻った方がいいのか?戻らない方がいいのか?
ここだけ悩んでいるおりますよ。
325はどちらかというとお留守番スレ向けな気ガス
「お目覚めかい?元マスター。」
突然そういわれた。
とりあえず状況を整理しよう。俺は普通にベッドに入って普通に寝た。
で、目が覚めたらよくわからないファンタジーな混沌世界で自分そっくりな色黒男にモーニングコールされた。
「ドッペルゲンガー?!どうすれば・・・!はっ!そうか!!この場で倒せば・・っ?!」
「元マスター、一般にドッペルゲンガーと言われるものは自分の魂の一部が
抜け出たものという場合が多いんだ、殺したりしたら自分も死ぬぜ。
もしドッペルゲンガーに出会ってしまったら偉人になれ。偉人になったら死なないから。自殺とかは別だけどな。
そうそう、あと女性のドッペルゲンガーってのは今まで発見例がないらしい。」
「詳しいなぁ?!おい!!」
シンは思わず目の前の男につっこむ。
「知り合いにオカルトマニアがいるもんでね。・・いや、ありゃ無理やり詰め込まれてるのか。」
そうつぶやく男をシンは睨む。
「何なんだお前・・・・。俺をこんなところに連れてきたのはお前か・・・!」
シンがドスを聞かせた声で言うと男はすねたように言った。
「ひどいなぁ・・。俺助けにきたのに。あーあ、こんなのなら現MSのインパルストリオに来てもらうんだった。」
その言葉を聴いてシンは表情を変える。
「モビルスーツ・・・?」
「あ・・、言っちゃった。まぁいいか、この姿では始めまして元マスター、あんたの元愛機、ストライクMkU・・・。」
「嘘だ!!」
言った瞬間速攻で否定するシン。
「ひでぇ?!何でだよ?!」
「俺のストライクMkUはもっと忠誠心があって渋くて背が高くて威厳のある性格なんだ!お前みたいにおちゃらけた
性格なんかじゃない!!」
「お前が言うなよ!俺よりインパルスに乗り換えたくせに!!二人で過ごした日々を忘れて!!」
「気持ち悪いこと言うなよ!」
「事実だろ?!MSなんだから!第一MSの人格形成には多少利ともパイロットが影響するんだよ!!
だから俺がこうなったのもあんたのせいなんだよ!!」
「認められるか!!」
「だったらお前も別の世界のあんたみたいになれよ!こう・・でっかい実剣でも振り回してさぁ!!
かっこいいじゃん!!大体あんたも固有武器のひとつくらい持つべきなんだよ!メインキャラなんだから!!」
「ヌンチャクなら使えるぞ!!」
「お前それガキのころ親父にわがまま言って買ってもらって部屋の隅っこに放りっぱなしにしてただろ?!」
デスティニ−相手の余裕はどこに言ったか全力で口げんかをする一人と一機。
「あーあー!!こんなひどいならシンハロ助けに行こうかなー!!」
「んだとこらぁ?!てめぇ主人に絶対忠誠のMSなんだろ?!文句いわず助けろやぁ!!」
「うるせぇよ!粘着質な愛情の1%もMSに向けてないやつに言われたくねぇよ!!
あんなに簡単にインパルスに乗り換えられるなんて夢にも思ってなかったぜ?!読者もびっくりだぞ!!」
「うるさい!俺はマユの座ったシートに・・・!くそぉっ!!」
「・・・あー、もういいや。もうめんどっちぃや。助けてやるよ。」
一転して頭を掻きながらMkUは言う。どうやらこの争いは心底意味がないと思ったらしい。
「・・・・とりあえず、俺は何がなんだか解らないから説明してくれるか?」
シンが質問すると以外にもあっさりMkUは答えた。
「あぁ、ここはあんたの夢の中だがその夢がいろんな世界の狭間・・・あぁガキが考えるみたいな話だが、
つまりいろいろな世界の間みたいな所に夢の中で来ちまったんだな。
たぶん誰かが意図的にやったんだろうが・・・・・機械が言うセリフじゃねぇよ。だれかなんか伝説っぽい人物つれてこい。
まぁとにかく俺たちMSの精神は大体、体に入ってると暇だからこっちにいるんだ。だから俺は助けにきたんだよ。」
めんどいめんどいなー、とぶつぶつ文句をたれるMkU。
「でも・・、その前にほかの奴らも回収しないとなぁ・・・。」
「他の奴ら・・・・ステラもか?!」
「あんたそればっかなのね。まぁいいけど確かに皆迷ってる。それぞれ相棒が向かえにいったけどな。」
それを聞いてシンはさらにいぶかしげな顔をする。
「ネオはどうしたんだ?今お前はネオのMSだろ?」
そういうとMkUは顔をニヤニヤさせる。
「んー、今ごろ意識だけ昔の女の所だな。まぁ結構思い出してるらしいけど・・・・ところで元マスター、時間だ。」
そういうとどこからだしたのか片手にシルクハット、片手に杖を。
「さぁ、旅立とうか。ちょっくら長い旅になるぜ。バイト代は・・・・まぁ出世払いだな。」
そういってMkUはシルクハットを投げる。
次の瞬間、シルクハットから光があふれ出しシンはそれに飲み込まれた。
「ふーん、じゃああんたキラの友達のアスランの部下ってわけね。」
「はい、お姉さまは時々アスランお兄ちゃんがぶつぶつ言ってるキラって人の元カノなんですね?」
すいーっと飛ぶように二人は混沌とした世界を進んでいた。
フレイは自分の身の上話をマユの語る。
「えぇ、と言っても死んでしまったけどね。私が。まぁしばらくはキラの守護霊をしていたんだけど・・・・。」
「していたんだけど?」
「あの野郎、墓参りも忘れて他の女とくっつきやがった。」
フレイの顔が突然悪鬼のごとくに変わる。
「何よ私があんだけ守るっていったのに!!あんな天然二重人格胸無し女にだまされて!!
何?!髪型のバリエーション?!服のバリエーション?!金なら負けないわよ!!!
もう死になさい!!永遠に首輪をつけて(注:放送禁止なので音楽がながれます)してそのまま
(こどものこーろの夢は♪色あせ)でんでもって縛って(子供のこーろのゆめは♪色あせないらくがき)してやるわ!!」
「お姉さま、私ナチュラルだと中一なんですけど。スカート丈短くして先輩にナマイキって言われる年頃なんですけど。」
放送禁止用語を繰り返すフレイにマユは突っ込む。
「はあはあ・・・・、まぁそれはおいといて。キラの親友の部下なら助けてあげるわ。
ついてきなさい!!」
「はい!!」
そうして二人は混沌世界をさらに進んでいった。
「主殿ー?!なんでいないのですか?!ここを移動するにはコツをつかまなきゃだめなのに!!」
そのころ、マユを向かえにいったデスティニーはマユがいないので大混乱なのであった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「どうした?飲まぬのか?」
レイは大変混乱していた。マユたちよりも混乱していた。
気がつけば何やら夜の庭園にいた。
自分が見慣れた英国風のものではなく古代中国のような庭園である。
時間は夜で、月と星がよく見える。
そこのあずまやに自分は座っている。向かいにはこれまた奇妙な男だ。
豪奢な椅子にもたれかかっているのは、始皇帝でもなんでもないウェーブした長い金髪の男だ。
前をはだけさせたアロハシャツ、無駄なく筋肉のついた体にはタトゥーらしきものが大量に刻まれている。
全身はシルバーアクセサリーで飾られており顔はどことなく自分に似ている。
「まったく・・、愛想がないな。酒の席でさえこのざまでは議長殿も哀れよな。」
そう言って杯に入ったブランデーを飲み干す金髪の男。
「おい・・・。」
レイは疲れ果てて男を見る。
「ん?どうした?ブランデーは好かぬか?」
男はレイの様子にも気づかずに杯を揺らす。
「一気に突っ込ませてもらう。
ここはどこだ!
お前はだれだ!
その服はなんだ!
PTOを考えろ!なんで
アジアチックな陶器の杯なのにブランデーなんだ!
あとマユ達はどこだ!」
そうレイは一気にまくし立てる。
「ふむ、あまり洋酒は好まぬか?日本酒か?あぁ、果実酒のほうがよいか。まだまだ子供よな。」
「そうじゃないっ!!」
見当はずれな男の声にレイはバンッっと卓をたたく。
「まぁ答えてもよいのだが、答えては汝が混乱するだけよ。後でシンハロにでも聞くがよい。」
「シンハロ・・・?」
男の口から聞こえた友人の名前にレイはマユを潜める。
シンハロ、と言うのはあくまでも自分たちの間だけでの呼び名だ。
人間形態である時の彼は公的にはザフトの「シン・アスカ」として扱われる。
ゆえにこの男はそれなりにシンハロ関係・・おそらく開発者かそのあたりだと思われる。
「汝もつくづく思考が硬い。この状況に常識が通じるとでも?」
男のあきれた声も無視してレイは男をにらみ続ける。
「・・・・来たか。まったくご苦労だな。死してなお世界を憎むか。しかもその憎しみを次の世代に押し付けるとは・・・。」
男は不敵な笑みを浮かべるとレイの前に立つ。
「余から離れるなよ。むしろ離れられたら余が困るのだが・・・。」
そう言うと男は両手を顔の前でクロスさせる。
次の瞬間、男の両手に三つずつついていた指輪が銀色の軌跡を描いて突然夜闇の向こうへ飛び去った。
「・・・ちっ、二つ撃破されたか。」
そう言った後、同じようにピアス、そして腰につけていたチェーンが飛び去る。
しばらくするとそれらが戻ってきたが、数がいくつか減っていた。
それは宙に浮いたまま円を描くように男とレイを取り囲む。
そしてだんだんその姿がぶれて別の物体へと変わっていく。
「・・・・・ドラグーン?!」
レイが叫ぶと男が舌打ちする。
「ちっ・・・、出てきたらどうだ?!あんな性悪主人に付き合うとはご苦労なことだ!」
男が叫ぶと草を踏む音とともに一人の人型が現れた。
短い金髪の細身の青年で、その表情は長い前髪に隠れて見えない。
何やら自分をかばってくれている男とは対照的に黒いハイネックに黒いズボン、
ただ少しおかしいのは指の手の間には銀色のコインが挟まれている。
短い金髪の男が手を開くと、くるくると回転しながらコインが宙にあがる。
そしてそれも多少の形は違うもののドラグーンでに変わる。
「彼ヲ渡シテモラオウ。ますたーガ彼ニ用ガアル。」
片言の発音で対峙している男が話す。
「ふん、ずいぶんと忠実であるな、『兄上』。だが余もこの馬鹿主人を守らなければなのだ。
貴様のように本能で守るのではなく、こやつを守ると友と約束したのでな。」
そう言うと男が身に着けていたシルバーアクセサリーがすべて飛びドラグーンへと姿を変える。
「さぁ!余を殺めてみよ!貴様の忠誠が勝つか余の誇りが勝つか!勝負だプロヴィデンス!」
「若造ガ何ヲ語ルカ!レジェンド!!」
次の瞬間、ドラグーンを持つ二体のMSが激突した。
保守
最近全然読んでないけど、ここ4ヶ月くらいでこれは絶対読んどけ!ってのはある?
こればっかりは個人の嗜好の問題だから、まとめサイトで軽く流し読みしてみるのがいいよ。
単発設定小話 「鎮魂歌B」
〜再び宇宙、月に集結するザフト軍〜
アーサー「艦長!敵、増加してます。・・・デストロイ5機、ウインダム数十機他多数!」
タリア「よくもまぁこんなに浄化活動家がいたわね・・・」
アビー「・・・本部より通信。ふたまるまるまる時、艦隊一斉射撃!本艦が初発をとれとのことです」
タリア「そう・・・アビー、秒読み開始。全艦へ回線オープン。・・・こちらミネルバ、MS部隊発進準備、艦隊射撃後一気に駆け抜けなさい!」
アビー「了解・・・秒読み開始します。・・・・・・30秒前・・・20秒前・・・10秒前・・・54321」
タリア「ブルーコスモスを蹂躙せよ!!」
〜ザフト艦隊から一斉射撃が行われ、月面に開戦の光が走る〜
〜一斉射撃を受けるプルーコスモス陣営〜
司令「うむうむ・・・きゃつらも気合が入っておるな。デストロイ全機、返信してやれ!・・・レクイエムは?」
兵士A「エネルギー充填30%。・・・マルチポイントであれば2回連射できますよ」
〜得意げな顔をする兵士A〜
司令「はは・・・いい顔だ。よし、マルチポイント用意。15秒間隔で連射。その後は充填50%でいいぞ」
兵士A「・・・50%ですか?」
司令「こっちは威嚇だけでいい。・・・オーブへ照準しろ。盟主を見殺しにした裏切り者へお見舞いしてやれ」
兵士「はっ!・・・マルチポイント発射します!」
〜地中から複数の光の筋が立ち上り、月面にで折れ曲がってザフト艦隊へ向けて光が流れてゆく〜
〜ミネルバ〜
アーサー「!!艦長!レクイエムより反撃来ます!!」
タリア「あんな小回りもできるなんてね!回避運動!・・・艦隊散開、MS部隊を援護しなさい!」
〜回避運動をし、散らばるザフト艦隊。爆散する数機のナスカ級やらの戦艦〜
〜MS部隊〜
レイ「・・・マユ。デストロイをさっさと落とすぞ。雑魚にかまうな。ルナマリア!」
ルナマリア「わかってる。そっちは任せたわよ。私はコントロール室を制圧してくるわ」
マユ「うん!ルナ姉ちゃん、気をつけて!」
ルナマリア「まかせてよ!インパスルにもだいぶ慣れてきたからね!」
〜デストロイへまっすぐ向かうレジェンドとデスティニー。レクイエム発射口に近づくインパルス〜
〜開戦前にダイダロス基地から発進していたガーティ・ルー〜
スティング「・・・こっちは総力戦だな」
シン「ああ。落ちるのも時間の問題だな。・・・レクイエムそのものをザフトは狙っていないな」
スティング「・・・だな。あいつら乗っ取るつもりか」
シン「そりゃそうだろう・・・あんだけの威力見せられちゃな。デュランダルって奴も腹黒そうだしな。真面目に平和のことなんか考えちゃいないさ」
スティング「っくっく・・・じゃお前は平和なんてこと考えてんのかよ!?シン」
シン「まさか?・・・そんな先のことを俺たちが考えられるはずもないだろう?」
スティング「はは・・・そうだな。俺たちは一寸先のことで手一杯だな」
シン「そういうこった。・・・おら、訓練つきあってやっからもう行こうぜ」
スティング「はいはい」
〜MSデッキへ歩いていくシンとスティング〜
続 ・・・・・・「鎮魂歌C」へ続く。
hosyu
このスレのSSで最も凶悪なキャラって誰だろ
隻腕のシン、舞踏のケイあたりかな?
>>339 ほのぼのマyうわなにすんだやめドゴォォォ
342 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/18(月) 00:06:55 ID:mqmuA0n5
age
単発設定小話 「鎮魂歌C」
〜ブルーコスモスを圧倒するザフト軍〜
マユ「っつ・・・たぁー!レイ!ロケットパンチがそっちにいったわよ!」
レイ「わかってる。・・・<キュピィーン>ハァーッ!!」
〜レジェンドの援護を受け、デストロイを切り裂いていくデスティニー〜
〜司令部〜
デュランダル「うん・・・そうか。なるべく残しておいてくれよ。ああ、よろしく」
サラ「乗っ取るおつもりですか?」
デュランダル「ああ、あれは使えそうだからね。・・・さすがにこの要塞のネオジェネシスでも地上照射は難しいからね」
サラ「・・・いただきました新型MSの試験は滞りなく完了いたしましたわ」
デュランダル「アスランがフリーダムを回収してくれたおかげだね。安く済んだよ」
サラ「・・・・・・月面へは行かなくても?」
デュランダル「無用に混乱させたくないからね。ああ、そうだ。ダイダロスを制圧した後にラクス嬢をコペルニクスへ連れて行ってほしいのだがね」
サラ「コペルニクスですか?」
デュランダル「この戦争が終わるまで安全なところで過ごしていただこうと思ってね」
サラ「・・・了解、しました」
〜静かに答えるサラ〜
〜ダイダロス基地〜
司令「充填率は!?」
兵士A「48・・・49・・・50%いきましたっ!!」
司令「よし、ゲシュマイディッヒ・パンツァーの準備は完了しておるな?」
兵士A「はい!問題ありません」
司令「・・・目標、オーブ首都オロファト!・・・照射!!」
〜再び光を放つレクイエム〜
ルナマリア「!!しまった!間に合わない!?」
タリア「2発目っ!・・・・・・軌道が地球に向いている?」
〜レクイエムの光は青く光る地球へ刺さってゆく〜
〜ヤラファス島が天空からの光の刃で切り裂かれる〜
カガリ「空からだと!?ええい!一体どうなってる!?」
側近A「・・・月面からの攻撃のようです!」
カガリ「・・・月からだって!?」
〜宇宙へ向かい発射していたアークエンジェル〜
マリュー「あの光・・・」
ムウ「上昇中にしゃべんなよ?舌かむぜ」
キラ「!オーブが!!」
〜そのまま成層圏を突き抜けるアークエンジェル〜
〜ダイダロス基地、外郭〜
ザフト兵A「突入準備、完了しました!」
隊長「よし、合図で突入開始!敵を見たらためらわずに撃て!捕獲しようなんて考えるなよ!」
ザフト兵B「了解!」
隊長「突入!!・・・MS部隊なんかに手間かけさせるんじゃねえぞ!!」
〜ダイダロス基地に突入し白兵戦を仕掛けるザフト軍〜
続 ・・・・・・「鎮魂歌D」へ続く。
うおっ、オーブ直撃!? とんでもないことになってる……
カガリが無事ってことは、彼女はヤラファス島にはいなかったって事?
この状況下でオーブとAA組はどう動くのか……
大胆な展開GJです、単発氏。
単発設定小話 「鎮魂歌D」
〜白兵戦にもつれ込むダイダロス基地〜
ブルコス兵A「うぉあー!!うす汚い生き物がっ!!」
ザフト兵「たく、これだから馬鹿なナチュラルに塗る薬はないっていってんだよ!!」
〜銃撃戦はもちろん、ナイフやオノでの戦闘も行われている〜
〜ダイダロス中枢部〜
ブルコス兵B「敵、基地内部へ侵入!現在、AからD、UからWブロックにて戦闘が行われているようです!」
司令「ちぃっ!思っていたよりすばやいな。・・・レクイエム充填率は?」
ブルコス兵C「充填30%。フル充填まであと20分はかかります!」
司令「10分か・・・それまでここに侵入させるなよ!目標準備、今度こそ落としてくれる!!目標、プラント首都プリリウス!」
〜レクイエム発射口にたどり着くインパルス〜
ルナマリア「結構無防備なのね?・・・戦力を全部だしちゃってるからかしら?・・・っと、あれがコントロールルームね」
タリア「ルナマリア!聞こえて?」
ルナマリア「!?・・・艦長。はい、聞こえています」
タリア「3射目がくるわよ。急いで!」
ルナマリア「了解!・・・あ、やばい!」
〜発射口を覗き込むインパルス。発射口からは光が漏れ出している〜
ルナマリア「もうプラントは破壊させないわよ!ええいっ!!」
〜レクイエム発射口内のコントロールルームと思われるところを破壊してゆくインパルス〜
ルナマリア「これでどう!?・・・光が収束していく・・・・・・OKかしら!?」
〜ダイダロス基地中枢部〜
ブルコス兵士D「制御室が破壊されました!・・・バックアップに切り替えます!・・・10分ロスがでます!!」
司令「っく・・・発射口側まで敵のMSが来ているのか?ん・・・もういい。全員、白兵戦装備!一匹でも多く清浄なる世界へ導いてやるのだ!!」
兵士全員「了解っ!」
〜兵士全員が席を離れ、銃やナイフを手に持ち白兵戦に備えるブルコス兵〜
司令「こんなことなら自爆装置でもつけて置けばよかったかな?」
ブルコス兵D「はは、そうですね。自爆は奴らの十八番ですが、まぁ理由はあったわけですねぇ・・・」
司令「まったくだ。そんな野蛮なことをよく考え付いたもんだと思ってたんだがな。」
ブルコス兵E「司令。準備完了しました」
司令「・・・諸君。ここにいる我々はここで散るが、ブルーコスモスの命題が散るわけではない。・・・浄化活動を少しでも我々で進める。・・・後は次の者へバトンタッチすることとしよう」
ブルコス兵達「ハッ!」
司令「・・・青き清浄なる世界のために!!」
〜中枢部の入り口が破られスモーク弾が打ち込まれる〜
司令「汚れた奴らを浄化するのだっ!!」
〜続々と侵入してくるザフト兵、抵抗するブルコス兵〜
〜凄惨な戦闘が繰り広げられ、ついにダイダロス基地はザフトに奪取された〜
完 ・・・・・・次回より「真実の歌編」
念のため、今回「差別」的な表現が含まれておりますが、作品の背景上必要な表現として使用いたしました。
近い未来にコーディネイターのような人間が実際に誕生しても筆者はこのような「差別」はしないと述べておきます。
>>339 ケイはまだ序の口って感じがあるからなぁ
話が進んでくると更にヤバくなりそうだ
「・・・・・・・・?」
突然フレイが目の前で止まる。
「どうかした・・・っ?!」
マユがフレイに何事かと聞こうとした瞬間、周りの空気が変わる。
何もなかった空間に突然青白い炎が浮かび、それが人の顔を形作る。
「・・・・ちょっと、あんた何したのよ。」
「?」
フレイが脂汗を流しながらマユに聞く。
「こんだけの怨霊を集めるって・・・・・何人殺したのよ?」
「・・・・お姉さまは今まで食べたパンの数を覚えてますか?」
汗だくのフレイに対しマユの表情は無い。
「言ってなかったんですけど。自分軍人なんです。だからこの人達はきっと私が殺した人達です。」
マユが両手を構える、すると両手から炎が燃え上がりトンファーになる。
「まぁこの程度しか出てこないってのは意外ですね。もっと殺してるはずですから。」
マユは殺気を高める。まぁ相手は既に死んでいるから殺気も何もないのだが。
「・・・あんた達だって死ぬ覚悟で戦ったんでしょう?だったらもう出てくるな!!」
マユが狂犬のように叫ぶと炎が揺らぐ。
トンファーの構えを変えて敵に飛び掛ろうとした瞬間、フレイがマユを止める。
「お姉さま・・?」
「・・・・死人があんまり生きてる人にかかわるものじゃないわよ、あんたたち。」
フレイの体の下に緑に輝く魔方陣が浮かぶ。
そこから光でできた真紅の枝がフレイの体を包む。
そして枝は体をすべて包むと急速に光を失い、フレイの体が再び現れる。
フレイの服はローズのライダースーツになっておりジッパーはギリギリまであけてある。
手にはルーン文字の刻まれた杖が握られていた。
「マユ、あんたはここでぼけーっと・・・そうね、初代ポケモンいえるかなをソラで言えるまで動かないでね。」
「えぇっ?!ぴかちゅーかいりゅーやどらんぴじょんこんだっくこらったずばっとぎゃろっぷ・・・・・・。」
マユの闘気が散り、トンファーが霧散する。マユはその手で数をかぞえながら必死に言う。
その瞬間フレイは跳躍し浮かんでいた炎を杖で薙ぐ。
それは実態のない炎を通り過ぎるだけかと思ったが違った。
何やら黒く輝くルーン文字が炎を包み込み束縛する。
「『スキールニルの杖』。四つのルーンはいかなるモノも呪うわよ。地獄に落ちるより苦しみなさい。」
フレイは同じように他の炎にも呪いをつけていく。
横から迫る炎に一つ、上から迫る炎を横に交わしてまた一つ。
さらに上に跳躍して挟み撃ちにしようとした炎から逃げ距離をとる。
「あんた達の気持ちはそりゃあよくわかるわよ、けどね。
あの子はあの年であんた達と同じ人殺しになる覚悟をしたのよ?!
それに男としてあんな小さい女の子に手を出すのはマナー違反じゃない?!」
フレイのもう片方の手から先ほどと同じ赤い光の枝をだす。
それは今度は剣となりフレイの手に宿る。
「さんだーすめのくらげ・・・・あぁっ?!解らない!!お姉さま!別の奴じゃだめですか・・っ?!」
幼い頃、兄と競争して覚えた歌を必死に思い出すが思い出せないマユはフレイに向かって叫ぶ。
「そうね・・・じゃあメダロッ○のメダルのタイプを全部言いなさい!」
「えぇぇぇぇ?!カブト・・クワガタ・・ヒール・・。」
このままだとミ○四駆とかベイブレー○とかダンガ○とか言い出しそうな勢いである。
マユは必死に兄とどっちがカブトバージョンを買うかで争ったゲームの内容を思い出す。
フレイはマユから目を離すと持っていた剣を空中に放り投げる。
その剣は回転しながらマユに襲い掛かろうとしていた炎を切り裂いていく。
「成仏するなら今のうちよ、じゃないと切り裂かれるか呪われるか・・・・だったら恨みなんか忘れる方がいいわよね?」
にっこり微笑みながらフレイが炎達に言う。
すると炎は次々に消えたりぴゅーっと逃げ出したりしていった。
「ふん・・・、このフレイ様の弟子に手を出すからよ。」
ビシッと杖でポーズを決めるフレイ。
ガコッ!
しかし敵を倒してクルクルと飛んで戻ってきた剣のツカがあたった。
「・・・っ!ちょっと何なのよ!人がポーズ決めてるときには飛んでくるなっていつも言ってるでしょ!?」
すると剣は半回転する。そっぽを向いたつもりらしい。
「・・・かーっ!!あんたは何でいつもいつもナマイキなのよ!もう戻れ!!」
フレイが叫ぶと服も剣も杖も消え、服も元に戻る。
「ブラックカブト・・・・バード・・・・・あとは・・・・。」
「・・・・もういいわよ、つーかよく覚えてるわねあんた。」
律儀に思い出しそうとするマユにフレイはあきれるのであった。
フレイ以前にこっちが呆れる件について。
もはやガンダム関係ねー。
>>350 いちいち言うな
パロネタはいつものことだろうが
ほのぼのさん乙
ポケモン言えるかな懐かしすぎてワロタよww
メダロットて、みんだなお原作だったけ?
記憶のキャパが‥。
ほるまりんじゃね?
354 :
:2006/09/19(火) 12:38:47 ID:???
>>350 テンプレと>302〜308読んでみれ。
ほのぼのさん乙!フレイがマユをどう考えてるか、気になるところ。
355 :
264:2006/09/19(火) 18:25:06 ID:???
只今より投下します。更新が遅い、遅いよ!
――機動戦士ガンダムSEED Destiny 灼熱の咎、凍える枷――
PHASE7:灼熱の咎、凍える枷(後編)
356 :
1/12:2006/09/19(火) 18:27:23 ID:???
イアンは制帽を脱いで艦長席の傍らに掛け、ノーマルスーツの多層ジッパーを荒っぽく
首元まで引き上げた。
「総員! ヘルメットを着用しスーツの気密確認急げ! その後、第1、第2エリアを急速減圧!
ブリッジ遮蔽と同時にVRスクリーンを起動!」
「総員、ヘルメットを着用し……!」
オペレーターの声が続く。
漆黒の宇宙が、見えない。ブリッジの展望窓一杯に映るのはユニウスのコア・モジュール
と、相対速度によって暴風雨のように襲い掛かる岩塊と、パージされたユニウスの部品だ。
展望窓の両端から装甲シャッターが現れて窓を覆い隠し、正面にCGモデルで描画された映像が
浮かび上がる。
「操舵手! スピードを上げられんか!?」
「無理です! これ以上の加速はレールガンの一斉射撃を浴びるようなものですよ!」
「では当初の計算通りか。破壊作業には10分も割けん……!」
「艦長!!」
「何だッ!!」
次々と明らかになるバッドニュースが、自分達を嘲笑っているかのようだ。歯噛みしつつ、
ノーマルスーツの通信機に叫ぶイアン。
「ミネルバを本艦後方に確認! 距離200! MSを1機発進させました!
識別信号……インパルスです!」
『良いかい? シン。フォースインパルスはデブリの中で機敏に動けるけど、君に
ヒロイックな活躍は期待してない。連合のMS部隊の近くまで行って、其処にいたという
ポーズを取って欲しい』
ミネルバ副長アーサー=トラインの言葉に、シンが不機嫌顔で頷く。
「何度も言われなくたって分かってます。其処にいて、協力してるように振舞え、でしょ」
『そうだ。映像は逐一撮影する。この作戦後の事を考えなくてはいけない』
アーサーの言葉は尤もである。今回の事件は、不自然なほどザフトにとって不利な要素が
揃っていた。ユニウスセブンに潜伏していたのは旧式のザフトMSだし、それに混じって
いたのはアーモリーワンで強奪されたザフトの最新鋭機。極めつけに、コア・モジュールに
弾頭を仕掛けたのはザフトの作業班だ。
「いっそ、何もせずに引っ込んだ方がイメージダウンしないと思うんですけど? ミネルバには
まだ議長も……アスハも、乗ってるしさ」
『それは映像の加工編集でどうとでもなる。……あの御三方を脱出させ損ねたのは、
こっちのミスだけどね。とにかく、頼んだ』
「了解……行きます!」
フォースシルエットのノズルに光が集まり、加速。デブリを避けつつ、地球へ落ちていく
ユニウスセブンを追った。
357 :
2/12:2006/09/19(火) 18:28:36 ID:???
MAに変形し、正面の暴露面積を抑えたイージスMkUが、高エネルギーライフルの
照準器をユニウスセブンに向ける。機体各所から小刻みにスラスター光が噴き出し機体の向きが
調節され、スコープが淡く光った。
「ネオ、良いニュースと悪いニュースがあるが、どっちから聞きたい?」
『そんなレトロなフレーズ何処で覚えた? ……良いニュースから』
「ユニウスセブンの回転速度と角度、測定完了した。自動操縦に組み込めるぜ。あと、弾頭の
場所も解った。結構浅い。横腹に空けた50メートルの縦穴があるんだが、その奥の壁だ」
コンソールを叩いてデータをソロネに送信しつつ、スティングは淡々と報告する。
『良いじゃないか。あと7分無いが、いけるな。で、悪いニュースは?』
「その穴の入り口が崩れてる。あと……弾頭の具合が最高にヤバイ」
苦い表情と共に、スティングは赤いグリッドで囲まれたデータをメインモニターに映し出した。
「起爆コードが入って、カウントもゼロになってるのに、最終シークエンスで止まってやがる」
『要するに、下手に再起動させると、その瞬間にドカン……か』
「弾頭を開けてちゃんと整備できりゃ良いんだがな。そんな時間もない。で、穴の問題だが、
ブリッツのレーザーライフルなら衝撃も震動も無しで開通工事が出来る。良いか?」
『おう、許可する』
「どーも。……ステラ、作業開始」
ユニウスセブンに接近するブリッツMkU。右腕のトリケロスセカンドからレーザーライフル
の銃身を突き出させた。白色の光が崩れた穴の周囲に当たり、小さな火花と共に岩片を少しずつ
削っていく。
「マリアはステラの援護に入ってくれ。ブリッツの装甲は脆い」
『了解しました』
デュエルMkUがスラスターを小刻みに噴かしつつ傍らに寄り添い、頭部機銃で
飛んでくるデブリを散らし、シールドで防いだ。
『で、弾頭はどうするんだ?』
「あと5分切った。破壊して無理矢理起爆させるのが良い」
『レーザーでやらせるのか?』
「いや、B4は縦穴の側面に張り付いてる。直接は狙えねえ」
『グレネード?』
「慣性に任せるにはリスキー過ぎる。高出力ビームの爆発と熱量で……何笑ってんだネオ」
『ん? ふふ、流石はファントムペインの小隊長殿だな、ってさ。正直驚いてる』
「……エクステンデッドだぜ? 俺」
矢継ぎ早に質問されつつ小隊を指揮する胆力と冷静さは、やはり強化兵ならではだ。
この非常事態である。士官学校出たての青二才にリーダーは務まるまい。
『それでも、さ。で、誰を使う?』
358 :
3/12:2006/09/19(火) 18:30:16 ID:???
「それは……」
『スティング、デュエルのビームアサルトライフルは速射性と威力こそあれ、狙撃に向きません。
バスターが最適かと』
通信画面に現れたマリアの進言に、気後れしつつ頷くスティング。
「そう、だな。……アウル?」
『はいはい、だろうと思ったよ。オレの引き金に地球の命運が、みたいな?』
『アウル、健闘を祈ります』
『頑張って、アウル……』
「ハーネスから機体を起こせ。ユニウスのデータを送る。操縦モードをセミオートに!」
『やだやだ。貧乏クジも良いとこじゃん?』
ソロネの甲板からバスターMkUが離床する。バックパックから125mmキャノンと高収束火線ランチャーを
取り外し、腰に抱えさせた。
「ステラ、どうだ!」
スティングの呼びかけの後、崩れていた穴が溶けて開通した。
『終わった……けど、ライフルも使えなくなった。銃身が保たなくて……』
「だろうな。10秒以上の連続照射には、耐えられなかった筈だ」
たどたどしい口調で報告する少女に、スティングは頷いてみせる。
「帰艦できないが、後ろに下がってろ。マリアはステラに引き続き、アウルの援護! 俺は
観測を続ける」
MA形態のままユニウスに向かって前進する。地球は既に程近い。白い大気のうねりまで確認できた。
ブリッツMkUが制動を掛け、ユニウスセブンのコアから離脱。イージスに並んだ時、後方の
ミネルバから発艦したインパルスが2機を追い抜いた。
「ちょっ……おい、ザフトの!」
スティングは通信を繋ぎ、黒髪と赤眼のパイロットが見えた瞬間に抗議の声を上げる。
『シン=アスカだ。悪い。だけど……仕事なんだよ』
「ああ……ご苦労さん。大砲抱えたMSとユニウスの間に割り込むな。それ以外なら、
自由に格好つけろ」
『助かる』
スティングに礼を述べた後、シンは操縦桿を倒す。視界の中央にデュエルMkUとバスターMkUを
入れた後、相対的上方へ移動した。撮影の為、後ろでミネルバも動く。
通信が開き、銀髪に空色の瞳を持った女性がモニターに現れた。
「! ……えっと」
『どうしたのですか? シン。そこは危険です』
「……『仕事』、なんだ。なるべくそっちの邪魔はしないようにする」
『では、此方に。ユニウスには近づきますが、私が盾になれます』
タクティカルマップ上に光点が出現したポジションは、デュエルMkUとバスターMkUの真中。
359 :
4/12:2006/09/19(火) 18:31:40 ID:???
スティングが観測したユニウスセブンのデータを元に、ソロネとファントムペインのMS隊が
半自動操縦モードに入った。回転速度と角度を合わせ、ユニウスのコア・モジュールを中心に、
衛星の如く巡る。
シンの指先がキーボードを数回叩き、インパルスを彼らの『軸』に乗せた。
『その位置ならば、私達の作業を手伝っているように見えるでしょう』
「ああ……でも、何でここまでしてくれるんだ?」
『ザフトは現在友軍ですので、可能であれば援助しても軍規にふれません』
「そ、そうか」
淡々とした返答に身を引くシン。けれども同時に、奇妙な感覚に捉われた。
無意識のまま、視線が右脇へ移った。私物用のポケットに納まっている、焼け焦げた妹の
携帯電話へと。
「あの、アンタ……」
『マリアと、お呼び下さい』
間髪入れずに返って来た冷たい声は、まるで自分を拒絶するよう。それでも、シンは訊ねた。
「マリアとは……どこかで、会った気がするんだ」
『……!』
マリアの表情が強張ったのがモニター越しにも確認できた。
直後、通信モニターが故障したかと思うほどに画面が荒れた。
『おい格好つけて良いとは言ったがな! 誰がウチの隊員ナンパして良いっつった!』
「えっ、ち、違!!」
『思春期?思春期なの? うっわ、はずかし』
『この状況でよくもやるなあ、坊主』
『アスカ君、きみ、ザフトのエリートパイロットだろう? 不謹慎とは思わないかね』
『…………シン』
「違うって! 俺はただ……」
冷め切った三白眼を向けてくるステラにうろたえ、シンは大きく両手を振った。
『何をやってるんだ、シン!』
『シン、出過ぎるなと言ったろう……』
『アンタ馬鹿じゃないの!?』
「れ、レイ、ルナ……って何でみんなして聞いてるんだああぁ!?」
迂闊にも広域回線を使ってしまったシンの発言は、イージスMkUが一時的に形成したネットワークを
介してザフト、連合双方に筒抜けになっていた。両軍からの総ツッコミをまともに受け、
恥ずかしさに身悶えるシン。
『たく……ッ!!? ユニウス内部の温度、急激に上昇! 回避行動を!!』
コア・モジュールのあちこちから火柱が上がり、表面を駆け回って『炎上』したのは、まさに
その時だった。スティングの叫びと同時に高熱を纏ったデブリが四方八方に飛び散り、宇宙に
炎の華が咲き乱れる。
『まずい……回転がブレた上に……加速したぞッ!!』
360 :
5/12:2006/09/19(火) 18:32:43 ID:???
ソロネの前足部分が45度可動し、急速回頭。叩き付けてくる真紅の雨を掻い潜って、
ファントムペインのMS隊とインパルスを追いかけた。
『スティング! 何が起きた!』
「コア・モジュールには、ユニウスのサブ動力炉が入ってる。そのほっとかれた備蓄燃料に……」
『引火し、誘爆した? だが、どうやって!』
「知るか! それよりアウル!! 無事かぁ!?」
ネオに叫び返した後、スティングはバスターMkUに通信を入れる。
『機体はね! けど、今ので射撃データが無駄になった……あと2秒で揃ったのに!』
「縦穴の中は!」
『火の海だよ! 鎮火待てる!?』
「無理だ! 後110秒で限界点を超える! そうなったら……!!」
真空中だというのに、コア・モジュールのほぼ全体で猛火が荒れ狂っている。明らかに
自然現象ではない。放置された燃料ペレットを何者かが随所にセットし、時限装置か手動かで
点火させたのだ。
「弾頭のポジションは送ってある! ミスは……許されねえ!」
最も口にしたくなかった言葉を、歯軋りしつつ搾り出すスティング。隊員にミスをさせないのは、
本来隊長の義務だ。予め計算されつくした作戦で部下の負担を減らし、如何なる事態にも
動じないのがリーダーという物。そう考えるスティングにとって、『期待』するなど
もっての外だった。
『おっまかせ! 直ぐ済ませるよ!』
そのスティングの懊悩を知ってか知らずか、外見はまだ少年といって良いアウルは場にそぐわぬ
笑顔を浮かべる。バスターMkUの脚部が宙を蹴って反動を付け、ユニウスセブンに再接近
していった。
相対速度を合わせたバスターMkUがユニウス表面と向き合う。その両脇をインパルスと
デュエルMkUが固め、それぞれの火器で、シールドでデブリを食い止めた。
「そうそう、最後まで頼むよー?」
スリット状のプロテクターで護られたバスターMkUの額部センサーが輝く。125mmキャノンの尾部に
高出力火線ランチャーを接続し、長距離ビーム砲と化したそれを腰だめに構えた。
狙うは一点。燃え盛る炎によってFCSが追いきれない細い縦穴の最奥。
『後70秒だ、アウル!!』
そして、チャンスは一度。
361 :
6/12:2006/09/19(火) 18:33:51 ID:???
実際の所、『エクステンデッド』アウル=ニーダは任務の達成にそれほど意欲的でなかった。
彼の『後見人』がいるロドニアのラボには地下シェルターがあり、備蓄食料も充分。地球が駄目に
なれば、彼が最も気にしている『あの人』は真っ先に宇宙へ逃げ出せる。
『後50秒!』
「はーいはい」
生返事しつつアウルは照準を調整する。射撃データが飛ぶ前、モニターに映っていた座標データ
の『記憶』を頼りに、機体に構えさせた砲身を動かした。
ロックオンマーカーは働かない。視界など、勿論効かない。合理的に考えれば作戦は既に失敗
している。
『40秒!』
瞬きすらせず、見開いたままの瞳が炎を睨みつけた。トリガーに掛かった指が汗ばむ。
何故失敗を恐れているのだろう。自分にも理解できなかった。ただの兵器の自分は、作戦の
成否など気にする必要が無い。『あの人』がガッカリするからだろうか?
それはおかしい。現状は自分の『スペック』を超えている。自分に責任はない。
「んー、なんだろうなぁ」
『ハァ? 何だって?! ……あと30秒!』
自分を護る2機のMSの向こうに、視野一杯まで迫った地球が見えた。
『アウル……』
『アウル、猶予はあります。落ち着いてください』
『20びょ……おい、マリア!?』
『大丈夫ですスティング。アウルならば、やれます』
「あー…………そっか」
両目が、焼けるように痛む。炎と太陽、そして凍える宇宙空間が瞳に映り込み、視神経を焼く。
「嫌いじゃあ、無いからか」
口やかましいスティングが。ぼんやりしてこっちが苛立ってくるステラが。クールに見えて
意外なほど大雑把なマリアが。
「嫌いじゃあ、無いからだ」
『残り10秒! 8! 7……!』
既に、トリガーを引くだけである。それで全てが終わる。幾らでも失敗の言い訳は出来る。
目も痛い。熱い。疲れた。
しかし、目蓋は閉じない。
『5! 4! 3!』
「ッ!! 見……え、たぁっ!!」
炎が一瞬吹き払われ、開口部が曝け出された。スティングのカウントダウンを掻き消し、
少年は絶叫する。2ミリ未満、砲を傾けてターゲットロック、発射。
閃光が炎を噴き散らして暗がりに吸い込まれる。刹那、燃え盛るユニウスセブンの
コア・モジュール全体が震動し無数のヒビが入り、砕け散った。
362 :
7/12:2006/09/19(火) 18:36:08 ID:???
『起爆を確認! 繰り返す、起爆を確認!』
広域回線で伝えられた報告に、アウルは安堵の息と共に焼け付く双眸を閉じる。
『良くやった、アウル!』
「へ、オレ達エクステンデッドだよ? 性能通りの結果ってやつだって」
スティングの言葉に対し、高鳴っていた鼓動を鎮めつつ笑みを浮かべる。
別段、謙遜ではない。努力する姿を見られたくない、彼のポーズだ。
「引き金、引いただけだしさ。ま、良かったねえ、上手くいって」
他人事のように言うも、目の奥がまだ疼く。目蓋を閉じているのに、白と赤の光が瞬いていた。
突然、機内にアラームが響き渡り、アウルが霞む目を開けた。
コア・モジュールに仕掛けられた弾頭は、本来ユニウス最奥での使用を想定された物だ。
爆発によって飛散する破片は内部で跳ね回り、全体の崩壊を速める機能を持っていた。
既に外殻を失った今、破片を受け止める物は何も無い。そして、デブリの軌道予測データを
更新し終えられなかったインパルスとデュエルMkUは、バスターMkUの前方、そして
コア・モジュールの斜め前方でデブリを防御していた。
「やば」
亜音速で迫る、赤熱した破片。それを避ける余裕は、狙撃姿勢を取って大砲を抱えたままの
バスターMkUにはない。しかし、横合いから1機のMSが踊り出た。
『……!』
「ステラ!?」
イージスMkUの後方に控えていたブリッツMkUが両腕を広げ、正面面積を大きく取って
盾となる。まさに第六感だろう。爆発の直後から、飛び出す準備をしていたのだ。ステラの
反射神経と目の良さも寄与している。しかし、相手が悪かった。
PS装甲を持ったMSは実弾に対する高い防御を持つ。であるから、胸部装甲に直撃した1つ目は、
当然貫通する事は無かった。殆どへこみもしない。よって、運動エネルギーはほぼ直接コクピットに
注ぎ込まれる結果となった。
「ぁッ!!」
ショックアブゾーバーで殺しきれなかった衝撃にステラの身体が跳ねる。ベルトが食い込み、
小さく悲鳴が上がった。続いて2発、3発のデブリが迫った。
頭部に直撃し、ツインアイとメインセンサーが半分押し潰され、ブイアンテナが吹き飛ぶ。
仰け反り、機体が揺らいだ所で、右膝の裏に焼けたデブリが突き刺さった。火花と共に
引き千切れる。
とどめとばかりに、背部メインスラスター内部に小さなデブリ片が幾つも飛び込んだ。
2度目の爆発は、先程のショックから立ち直っていなかったステラの意識を完全に奪う。
二次災害を防ぐ為、スラスターが緊急停止。だがもう遅い。
バスターMkUを守る為に飛び出した速度を保ったまま、ブリッツMkUは『死んだ』。
363 :
8/12:2006/09/19(火) 18:37:44 ID:???
誰も、何も言えなかった。何も出来なかった。後一歩で全てが上手くいったはずなのに。
度重なるトラブルを全てクリアしたというのに。最後に押し寄せた偶然が何もかも台無しにした。
破損各部をスパークさせながら、頭部を失った機体が力無く腕を伸ばし、壊れた関節が脚を
僅かに開かせて、遠ざかっていく。その救助を命じる事は、指揮官として不可能であった。
1人と1機で済む犠牲を増やそうとする愚か者はいない。まして、新たな犠牲者に名乗りを
挙げる者など。
いない、筈だった。
『シン!? 戻れ!』
『マリア……何を!!』
最初に動いたのはインパルスだった。ノズルが焼け焦げたフォースインパルスの出力を全開し、
真っ青な『空』へ落ちていく。直後にデュエルMkUもスラスターを開き、青白い炎を纏って
インパルスを追った。
『シン、何をしている!』
「何って……連合に協力しろって言ったじゃないですか!」
空気の壁がない宇宙空間で、MSは際限無く加速する。既に速度計は
1100m/sを示していた。音速の約3倍である。
視覚と回避プログラムからの情報のみで、迫る――相対速度によって――デ
ブリを
最小限の動きでかわしつつブリッツMkUを追うシンは、アーサーに怒鳴った。
『フリだと言ったろう! 命令違反だぞ!』
「フリができるほど器用じゃないんです! あぁ、懲罰は受けますよ!」
言い捨て、通信を切った。
軍に入ったのは、『守る』力が欲しかったからだ。あの日、家族を失った時、自分に足りなかった
のは力だ。何を想っても、喚いても、力が無くては何も守れないのだ。
自分の家族を巻き込んで尚戦い続ける蒼き翼を持った巨人は、まだ幼かったシンに
その真実を焼き付けた。
だから、彼は力に走った。ザフトに入隊してからは手段を問わなかった。
どれほど周囲に疎まれようと、誰から後ろ指をさされようと。家族だった『モノ』が流した
紅に濡れて誓ったのだ。力を、手に入れる。誰も失わずに済む程の、自分の知る者全ての生死を
司れる程の力を。
今が『その時』なのだ。掻き集めた力を発揮する時なのだ。懲罰など、彼には何の意味も為さない。
彼を打ちのめす罰があるとすれば、それはただ一つ。『再度の喪失』である。
「待ってろ……今、助ける! ……!」
あと一歩で手が届く。その時、ブリッツMkUの機体背部で何かが光った。トリガーに指を掛ける。
同時に斜め後ろからビーム光が走り、正面に飛んできた、剥落したスラスターノズルを撃ち砕いた。
『援護します』
無感動なマリアの声が機内に響くと同時、回避プログラムが遅すぎるアラームを発した。
364 :
9/12:2006/09/19(火) 18:39:27 ID:???
ブリッツMkUから剥離したパーツをデュエルMkUが破壊し、インパルスの脇を抜ける。
すかさずインパルスが再加速し、ライフルを捨てて半壊したブリッツMkUを抱かかえた。
地球に背面を向け、急制動を掛ける。
『少しでも、減速させないと……!』
「シン。計算してみましたが、現状での制動は間に合いません。戦艦並の推力が必要となります」
『……ッ!』
久々に出会った兄は、記憶の中の姿よりずっと小さく見えた。ロドニアのラボで受けた強化手術
により、マリアの身長、体格はシンとほぼ同等。顔立ちなど、まるで兄妹の立場が逆転した
ようだ。銀髪に蒼の瞳。黒髪に紅の瞳。正反対の色が、モニターを通して交差する。
傍らに目をやる。ソロネからの通信コールが入り続けていた。スイッチを切る。
恐らく任務を終えて帰還した後、相応の処罰を受ける事だろう。殺処分辺りが妥当か、などと
推測した後、シンに呼びかけた。
「この速度と角度のまま突入すると、おそらく熱圏で3機とも爆発します。別の手段を
取るべきです」
『……突入コースの、再割り出しか? 大昔のスペースシャトルみたいに……』
「その通りです」
メインモニターに映る、球面を滑って行く曲線が描かれた画像データをインパルスに送信する。
すぐさま、インパルスはスラスターの角度を変えた。デュエルMkUもそれに倣う。
インパルスのフォースシルエットは伊達ではなかった。ブリッツMkUを抱えたまま、シールドと
ライフルを持っただけのデュエルMkUと同じのコースを維持する。真っ青な地球光が3機を照らし、
染めた。
「私が先に突入します。アンチビームシールドで、熱を抑えられるはずです」
『解った!』
その時、通信モニターのグリッドが別れ、2つ目のウィンドウが開いた。
『ここ、どこ……?』
『あ……ステラ、だよな?』
『MSが動かない……どう、して?』
意識が回復したステラが、接触回線を開いた。ひび割れたヘルメットの中で、薄っすら涙を滲ませて
いる。この場合、冷静になれと言う方が酷だろう。起きてみたらメインカメラが死に、スラスターは
動かず機体の操作も効かないのだから。
「ステラ、もし可能ならば、爆破ボルトを起動させて機体の四肢を切り離してください。
質量を減らさねばなりません」
『えっ……待って、消火器の泡だらけで……見えないから』
「急いで下さい。生死に関わる問題です」
何気ないマリアの言葉に、ステラの表情が強張った。
365 :
10/12:2006/09/19(火) 18:40:58 ID:???
『死ぬ、の……?』
「はい、失敗すれば全員死にます」
『みんな、死ぬ、の……?』
「はい、ステラも私もシンも死にます。ですから……」
『嫌……!』
ステラの瞳が恐怖に凍りつく。マリアから視線を逸らした。
「ステラ?」
『死にたくない……嫌っ!!』
「どうして……」
突如豹変した『仲間』に、マリアの口調が呆然としたものとなる。
「どうして……死ぬのが嫌なのですか? あなたも、私も、あれほど……」
『嫌! 死ぬのは嫌! 怖い……!』
『死なないよ』
突然割り込んだ、押し殺すもはっきりとしたシンの声が、ステラの言葉を断ち切る。
『ステラは死なない。死なせない。俺が、守るから……!』
目一杯気負ったその物言いにステラは泣き止み、不思議そうに目を瞬かせた。
『シン…………うん……』
その様子を見て、マリアの胸に暖かい物が広がっていく。彼は少しも変わっていなかった。
昔から、何でも頼み事を聞いてくれた。傍目で見れば安請け合いと思うほどに、何でも
受け入れてくれた。そしてそれは口から出任せではなくて、全てに必死で取り組むのだ。
失敗も多い。けれど最後の最後まで、全てが終わった後でなければ諦めない。
軍人としては辛い性格だろう。スマートでもない。基本的に余裕が無く、常に全力を尽くす。
今や自分の姿は変わり果ててしまっている。昔のように接する事は出来ないだろうし、
父と母の命を奪った自分を彼は憎んでいるだろう。もう自分は、守っては貰えまい。
だから、今度は。
「あと10秒で熱圏に突入します。ステラ、準備はよろしいですか?」
『大丈夫……!』
ブリッツMkUの四肢の継ぎ目に光が走り、パーツが脱落して胸部のみとなった。インパルスが
抱え直して姿勢制御する。それを確認した後、マリアは再度通信を入れる。
「……シン」
『え?』
大気の摩擦熱によって機体表面の温度が急速に上昇し、通信が効かなくなり始めた。
「貴方も、死なせません」
そう言った直後、通信が途絶する。デュエルMkUが構えたシールドが赤熱すると同時、
盾の放熱ダクトから青白い冷却剤が噴き出した。放熱する傍から加熱され、外に拡散できない
それが膜となって3機を包み込んだ。
大気圏に背中を向けたまま突入するインパルスのスラスター光を冷却剤の膜が受け、
3機の周囲がぼんやりと輝く。
光の繭を纏い、鋼鉄の人型達は灼熱の空へ墜ちていった。
366 :
11/12:2006/09/19(火) 18:42:21 ID:???
「インパルスと、シンの様子はどうかね?」
「順調です。……信じられませんが」
ミネルバ艦長タリア=グラディスは、突然ブリッジに上がりこんだプラントの最高責任者に
苦々しく言葉を返す。
ミネルバのVIPルームは仕様上、ブリッジのやりとりの一切をキャッチできる。無論、専用コードを
入力しなければならないという制約はあるが、そこでギルバート=デュランダル議長の特権が
動いた。更にこの緊急事態にのこのこブリッジにやってきて、インパルスのマシンステータスを
覗き見るのも、議長権限ゆえである。
「こういう事が罷り通るから、新型機を強奪されるとか、隙が出来るのよ……」
「聞こえているよ? 艦長」
「聞こえるように申し上げているのです、議長閣下」
半眼でデュランダルを睨んだ後、タリアは視線を正面へと戻す。
実際の所、シンは予想を遥かに超える神業をやってのけていた。
マッハ3で飛びながらデブリ群を抜けてMSを補足し、別の1機と連携を取りつつ、あろう事か
背面からの大気圏突入を敢行。抱えている機体を防御する為に必要とはいえ、ザフトレッド
だから、では到底納得できかねる芸当である。更に言えば、機体の受ける熱を最小限に
押さえる為、先行するMSとの軸線をぴったりと合わせて降下している。
熱圏で通信がろくに効かない中、恐らくリアカメラの映像のみを頼って、であった。
「どういう事かしら……大体彼は……」
「遺伝病疾患など、最低限の調整しか受けていないのに、かね?」
「ギル!」
思わず議長閣下をファーストネームで呼んでしまった後、タリアは再び視線を逸らす。
そんな彼女を愉しげに見遣った後、デュランダルは笑みを浮かべる。
「彼は言った。彼は求めた。何でも良い。何でもする。力が欲しい、と」
「……?」
デュランダルから飄々とした様子は消え、切れ長の瞳に冷たい光が走った。
「私はね、彼と『契約』を交わしたのだよ」
減速し、大気によって冷やされたデュエルMkUとインパルスが風を切って大気の希薄な夜空に
現れた。
ネイビーブルーの塗料は溶け落ち、インパルスはPS装甲が解除されて、焼け爛れた灰色の
機体を月光に曝け出す。眼下に臨む暗雲の中では時折稲光が走り、下が嵐である事を示していた。
『よし、此処まで来れば……ステラ、脱出できるぞ!』
『無理……』
『……は?』
『脱出装置……動かない、の。バックパックが、壊れて……』
次の瞬間、高熱で焦げて羽の曲がったフォースシルエットが咳き込むように推進剤を吐き出し、
発火して爆発した。
367 :
12/12:2006/09/19(火) 18:44:38 ID:???
『うわぁっ!?』
「シン、貴方は脱出を!」
『ステラが先だ、早く!!』
大気圏突入時の速度が落ち、高度をゆっくりと下げていた中で、デュエルMkUが
胸部だけとなったブリッツMkUを受け取って抱えるのを見届けた後、灰色の機体
表面に無数の火花が散った。ボディの限界が訪れたのだ。上半身と下半身に分離し、
黒ずんだ裂け目からパーツ片が散る。パワーを失ったインパルスが力なく落ちていく。
「……ッ!」
『シン……嫌ぁ!』
『この、高度ならっ!!』
刹那、インパルスの上半身からコクピットブロックが飛び出し、機首を突き出し翼を広げ、
戦闘機に変形する。チェストフライヤーとレッグフライヤーが雲間に消え、コアスプレンダーは
姿勢を立て直した。
『……何とか……なったな』
「何よりでした……。ところでシン、降下先はオーブ領…オノゴロ島です」
キーを叩いて地図を呼び出しつつ、マリアが告げる。その言葉にシンは眉を寄せた。
『オーブ……ふん、オーブか』
「私達はこのまま降下します。推進剤も、機体の耐久度も限界です。貴方は?」
『俺は……あ、ちょっと待ってくれ』
通信が一旦切れる。同時にソロネからの通信コールが再び入った。非常時も去り、繋ぐ。
見知った怪しい仮面がアップで現れた。
『おう、大丈夫かマリア。それに、ステラ? 状況を知らせろ』
『うん、大丈夫……』
「問題ありません。このままの降下コースを辿った場合、オノゴロ島に到達します。
よろしいでしょうか」
『よろしくない、ったって無理だろうなあ。了解した。ソロネもオノゴロに降りる。
あちこち無理させて、エンジンがガタガタでな』
「解りました。ではコースを維持します」
『OK。じゃ、地上で会おう』
ソロネとの通信が切れた後、シンがコールを入れてきた。
『俺もオノゴロに降りるよ。こいつの航続距離はたいした事ないし、本隊と合流しなきゃ』
「では、地上で」
『ああ……助かった、マリア』
「此方こそ」
通信を切った後、マリアはメインカメラを上へ向ける。
無数の細かなデブリが、頭上の熱圏で燃え尽きていく。そうでない物は浅い突入角によって、
軌道上から跳ね飛ばされていく。
長い尾を引いて降り注ぐ炎の雨を、マリアは何時までも見つめ続けていた。
新たなる戦争の火種は消えた。
誰もが、そう思っていたのだ。
乙
369 :
264:2006/09/19(火) 18:47:57 ID:???
投下終了です。戦闘シーン無いのに1話使ってしまいました。
あとマッハ3出すMSはやりすぎかなーと思ったんですが、大気圏突入時に
『熱そうな描写』が入る理由を調べまして、あのようになりました。
ストーリー的には一区切りつけましたので、皆様の反応を見て、続けるかどうかを
決めたいと思います。
俺は続けてほしい。GJだ!
371 :
:2006/09/19(火) 19:32:54 ID:???
GJ!続き、お願いします。
勇気を信じて進め!
マリア?タリア?ルナマリア?マリュー?
ご無沙汰しております、PP書いている者です。29話投下いたします。
375 :
1/20:2006/09/19(火) 21:58:58 ID:???
エジプト・アラブ共和国領アレクサンドリア――
アフリカ大陸北部、地中海に面したこの地には、今異国の軍隊が駐留していた。
遥か彼方の宇宙に国家を形成したプラントの軍、ザフト。
軍港と化したアレクサンドリアに、見慣れぬ一隻の軍艦があった。
威容を誇るその艦は、ザフト軍最新鋭戦艦ミネルバ――
そのミネルバを眺める男女が二人いた。白服の女性と作業着姿の壮年の男……
「……船体の補修作業は明日中に終わります。CIWSも、七割は稼働出来ます。ですが……」
「見れば分かるわ。タンホイザーの修復は……ここでは無理なのね?」
「はい。如何せん、ここは小規模な駐留軍の施設です。ミネルバが納まるドッグもありません。
実を申しますと、艦底の修理も……応急処置しか施せておりません」
「全てはジブラルタルに着いてからね。分かったわ、出来る範囲での修理を頼みます」
白服の女性――タリア・グラディスの言葉に、壮年の男――整備班長マッド・エイブスは敬礼を返す。
ダーダネルスの戦いから、すでに三日が過ぎていた。近隣のザフト軍基地に寄港したミネルバ。
しかし、連合が長らく拠点を置いているクレタ基地などとは違い、アレキサンドリアは急造の軍港。
スエズ攻略戦を前に集められた部隊が、急ごしらえで作ったものに過ぎない。
故に、ミネルバの完全な修理はここでは出来ず。船首の主砲、タンホイザーも無残な姿を晒していた。
大破したままのタンホイザーにもう一度視線をやり、タリアはエイブスに向き直る。
「陽電子砲整備クルーに……犠牲者が出ていたわね。整備班に、2名」
「ジェーン・オースティンとジョー・ライトです、艦長」
「そう、その2人。今夕、彼らを含めた犠牲者全員の仮葬を行なうわ。遺品の整理は?」
「すでに出来ております。葬儀には整備班からも、私と2人と親しかった者が出席します」
「頼むわ。ジェーンは19歳、ジョーは17歳……だったわね?」
「はい。2人とも、優秀なメカニックでした」
大破したタンホイザー。その原因となったのは、ストライクMk-U。
ミラージュコロイドで姿を隠した彼の機体。それに気づかなかったばかりに、犠牲は出た。
整備班からも2名が戦死。タリアは唇を噛み締め、エイブスも瞑目し、心の中で2人の冥福を祈った。
束の間、死者への祈りを捧げた後――タリアは呟いた。
「彼らの命は……連合の奴等の死で償わせてもらうわ」
「――! ハッ! 修理を、急ぎます」
タリアの言葉にエイブスは一瞬瞠目する。女性指揮官の言葉には、復讐心に近い激情が迸っていた。
376 :
2/20:2006/09/19(火) 21:59:51 ID:???
タリアとエイブス、2人が見上げるミネルバのブリッジでは……
本来タリアが座るはずのキャプテンシートには、金髪の青年がどっかと腰を下ろしていた。
モニターに広がるのは、友軍の白服男の映像――
「水中用MSでアビスと張り合えるMSはいないのか?」
『ハイネ……アビスは正真正銘、我が軍の技術の粋を集めて作られた機体だ。
グーンもアッシュも、とてもアレと張り合えるとは思えん』
「なら水中戦のスペシャリストを遣してくれ。
これまでの戦い、アビスに好き勝手やられているんだ。張り合えそうな者を見繕ってくれ、頼む!」
『……無理を言わないでくれ、ハイネ』
ハイネとやり取りする壮年の白服の男――彼は、ジブラルタル基地の指揮官クラス。
主に、水中戦を担当する作戦指揮官で、ボズゴロフ級潜水母艦を数隻も束ねている男であった。
先の戦いでは防御の手薄な水中から、幾度もアビスの放火を浴びたミネルバ。
それ故、ハイネはアビスへの対抗手段として、ジブラルタル基地からの増援を請うていたのだ。
しかし、友軍指揮官の顔色は冴えず。表情からも、否定的な回答が伺えた。
『送れるものなら、送ってやりたい。だが……
今回の戦いで、議長はプラントの自衛権の積極的行使に拘っておられる』
「下手に戦力を増強すれば、プラントが地球侵略の意思をもっていると思われかねない……か?」
『そう、中立国や親プラント国を刺激するのは避けたい。
ユニウスセブンの件で、それらの国々の心証も悪化しているのは否めん。
必要以上に戦力を地上に下ろすことで、関係が微妙な国と拗れたくないのだ』
自衛権の積極的行使――
ユニウスセブンの落下事件で、大西洋連邦を始めとした連合各国から宣戦布告を受けたプラント。
本来ならば、敵である地球連合の出鼻を挫くべく、大規模な派兵を検討しても良さそうなものであった。
しかし、そんなことをすれば、プラントに地球侵略の意思ありと受け取られかねない。
ただでさえ、ユニウスセブン落下事件で、地球の者達に害を為してしまったプラント。
図らずの出来事とはいえ、対応は慎重を要した。故に、必要最小限の派兵しか適わず。
『ジブラルタル基地もフランスに派兵した関係で、余剰戦力と呼べるモノはない。
フランスへの派兵は、彼の国の独立運動を助けるという大義名分があったが……
本国から、基地に対し直接の増援はない。ミネルバへの増援も、これ以上は見込めん。すまん』
うな垂れるハイネ。今更ながら水中最強のMSを敵に強奪されたことに、臍をかまざるを得なかった。
377 :
3/20:2006/09/19(火) 22:00:43 ID:???
『そういえば……妙な報告があった』
唐突に、ハイネと相対していた指揮官は声を挙げた。何事かとハイネも顔を上げる。
『いや、ミネルバへ送る補充物資の話だ。
その中に、あくまでもテスト用ではあるが……水中戦が出来る装備があったのだよ』
「装備? 水中戦用のMSじゃなくて、装備なのか? ザク用のウィザードか?」
『報告を受けたときは、私も最初はそれかと思ったのだが……ザクではない』
「……? なら、グフ用か? グフの水中用ウィザードなんて、聞いたことないぞ?」
『それが、グフでもない。ホラ、君のところで、テスト機を運用していただろう?』
「……! まさか――!?」
ハイネは声が上擦る。まさか――頭の片隅に置いていた可能性の一つは、現実のものとなる。
数分後、ハイネはブリーフィングルームに向かっていた。
数日後に、ジブラルタルからアレクサンドリアに届けられる補充物資。
その中に、ハイネが望んだものがあった。だが……
「俺は、またあの娘の手を借りなきゃならんのか……」
苦々しげに呟く。意中の人物が憎いのではない。むしろ、その逆――
本来ならば、隊長である己が危険なことを請け負わねばならない立場にある。
しかし、現実はそれを赦さなかった。ブリーフィングルームで待つ部下達。その中の一人に……
またしても、危険な任務を与えざるを得ない。その事実を、彼は苦々しく思っていたのだ。
ブリーフィングルームに入って早々、マユ・アスカに、ハイネは声を掛ける。
「テスト……ですか?」
「そうだ。インパルスの水中戦用のシルエットが、明朝アレクサンドリア基地に届けられる。
着き次第、整備班の連中と一緒に、水に潜ってくれ。実戦で使えるかどうか、テストして欲しいんだ」
「……分かりました。頑張ります」
居並ぶ部下たちの中、とりわけ歳若い少女――マユは、敬礼を解きながら、ハイネの言葉を聞いた。
少女は、3日前の激戦を経て疲労の色はまだ隠せない。
それでも、戦闘ではなく機体のテストであるという上官の言葉に、嫌な顔一つせず返事をする。
その光景にハイネは胸を痛めた。テストの結果が良好であれば、即実戦投入せざるを得ない。
どうしても、自分の言葉が彼女を騙しているように感じられ、ハイネは沈痛な面持になっていった。
378 :
4/20:2006/09/19(火) 22:02:37 ID:???
かくして、本格的なブリーフィングは始まった。とはいうものの、現状は待機命令のみ。
各自機体の調整に余念なきよう、型どおりの指示が下されただけであった。
ファントムペインとオーブ軍を相手にしながら、ミネルバMS隊の損傷は軽微。
インパルスは二組のチェストとレッグを失ったものの、コアスプレンダーは健在。
予備のチェストとレッグが一組ずつしかないのが痛いが、直ぐに戦線に戻れる状態。
グフはいずれも軽傷。バビは二機とも中破していたが、整備班の修理で明日には修復完了。
残るセイバーはほとんど無傷……
そのセイバーに思いを巡らせたハイネは、ある事実を思い出す。
セイバーのパイロット、アスラン・ザラ。
彼はダーダネルスの戦いで、敵と接触を試みていた。その真意は定かではないが……
予てより、最高評議会議長より下されていた密命があった。
目の前の青年、アスラン・ザラに対する処置を、ハイネは一任されたのだ。
知らず知らずのうちに、ハイネはアスランに視線を向ける。
何を考えているのか、相手は俯き加減。オーブと戦うことになってから、ずっとこの調子だったか。
いや、前よりも一層酷い。この世の終わりを見たかのような、虚な瞳。ふと、アスランは顔を上げる。
「隊長? どうかしましたか?」
「――!? い、いや、何でもない」
それでも上官の視線には気づいたのか。アスランから突如声を掛けられ、ハイネは瞠目する。
ハイネは考えていたのだ。議長から課された密命を、果たすか否か。
裏切りの兆候があれば、部下であるアスランを消さねばならない。それがハイネの隠された任務。
真意は兎も角、戦闘中敵と通じていた事実は事実。しかも、相手は嘗てのフリーダムのパイロット。
「ショーン! ゲイル! ちょっと来てくれ」
気は進まない。が、裏切りの可能性が僅かに芽生えたこともまた事実。密命は実行に移される。
彼は部屋を後にする直前に2人の古参部下を呼び、部屋を出たところで2人に何事か耳打ちした。
傍には見る者もなく、話の内容は伺い知ることは出来ない。しかし、部下達の顔色はサッと青ざめた。
「アスランを!? 何考えてるんですか、隊長!?」
「……どういうことです? まさか、隊長はアイツを…・・・」
顔色を失った2人の部下に、ハイネは再度耳打ちして何事かを話す。
ショーン・ポールとゲイル・ラッセルの2人の表情には、明らかに陰りが見えた。
ギルバート・デュランダルから課されたアスラン暗殺命令。そして、それは実行に移される――
379 :
5/20:2006/09/19(火) 22:03:29 ID:???
深夜のミネルバ――
アスランは、ハイネに突然呼び出された。MS格納庫に来るようにと。そして、若干の問答。
やがて突きつけられたのは、敵――キラ・ヤマトと通じていたという疑惑と、黒光りする銃身の先。
最後には、ハイネから残酷なまでの通告がなされた。
「アスラン・ザラ、お前を……我がハイネ隊の……
いや、ミネルバの、ザフトの最大脅威として――排除する。悪く思うな……」
アスランの背を、冷たいものが伝う。
何故自分が銃を突きつけられるのか、何故自分が疑われているのか――
疑問がアスランの脳裏を駆け巡り、思考はままならず。思いは口をついて出てくる。
「隊長! 何故!? どうしてこんなことをするんですか!?」
「……お前なら、もう分かっているだろう? 最初から、お前は試されていたのさ」
疑われていたのだ。復隊した直後から。いや、二年前からと言ったほうが良いだろう。
かつてプラントに刃を向けた者を、無条件で赦すほどプラントもザフトも、甘い組織ではなかったのだ。
だが、ハイネが独断でやっているとは思えなかった。
ハイネよりもっと上の、上層部の意向があってのことに違いない。アスランはそれを悟る。
「俺を……監視してたんですね? 上層部の意向ですか? まさか――」
「――お前なら、分かる筈だ。最初にお前をザフトに復隊させようとしたのは、誰だ?」
上層部の意向――それが最高評議会議長直々の下命であることを、ハイネは暗に告げる。
アスラン・ザラをザフトレッドに戻し、最新鋭MSセイバーを与え、最前線を戦うミネルバに復隊させた。
それらの指示は、全てプラントの最高権力者ギルバート・デュランダルから下されたものに他ならない。
そして、アスランが不穏な動きを見せた場合の保険――彼の抹殺を指示したのも。
「デュランダル議長……! そんな……議長は、俺を――!」
「――もう、問答はいいだろう。抜けよ、アスラン。
お前をブタのように殺したくはない。生きるための、最後のチャンスを……やろう」
ハイネはそう言って、自らが構えていた銃を下ろした。"お前も銃を抜け"という指示と共に。
抜くのは勿論、アスランの持つ銃のこと。軍人であれば、護身用に常日頃から銃を携行している。
アスランの腰のホルスターにも、ハイネの持つ銃と同じものがあった。
生きるための最後のチャンス――それは、互いに対等の条件で、殺しあうこと。
380 :
6/20:2006/09/19(火) 22:06:00 ID:???
「開始の合図はお前がやれ。抜き撃ちの速度が、勝敗の鍵だ」
ハイネはアスランに最後のチャンスを与えた。生き残りたければ、自分を殺せと。
戸惑うアスランを余所に、ハイネは自らの拳銃を腰のホルスターに納める。
準備は整った。後は、アスランが合図をするのを待つだけ……
とはいえ、この勝負に勝ったとしても、アスランにとっては明日なき道が待つのみ。
仮に勝ったとしても、脱走する以外の選択肢はない。愚図愚図と残っていれば、殺されるだけなのだ。
幸いにここはMS格納庫、脱走には好都合な場所。何しろ、直ぐ側にアスランの愛機があるのだから。
彼の背後には、セイバーの脚部が見える。
アスランの生きる道は唯一つ――ハイネを殺し、セイバーを奪い逃げるのみ。だが……
「俺には……俺には、隊長を殺すなんて出来ません!」
「なら、お前が死ぬだけだ。俺はお前を殺す。反逆の疑いで。
手元には、お前とキラ・ヤマトとの通信ログもある。証拠は、出揃っている」
「俺は、軍に……プラントに逆らうのが目的で、アイツと通信を繋いだわけじゃない!
かつての戦友と戦いたくなかっただけです! キラを……説得しようとしたんです!」
「フリーダムが、ザフトにどれだけの損害を与えたかは知っているだろう。
そのパイロットと通じた。弁解の余地などない。内通を疑われるだけの根拠は……十二分にある」
抗弁するアスランに、ハイネは一切耳を貸さない。最早、アスランに残された道は一つだけ。
それでも、アスランは最後の手段を選べずにいた。
「信じてもらえないのなら、俺を……俺を、殺してください」
「――!?」
アスランは銃を手に取る素振りも見せず、両の手を頭の後ろで組んでみせる。
そしてゆっくりと瞳を閉じ……最後の刻を待った。恰も、銃殺刑に処される軍人のように。
「俺がザフトに戻ったのは、プラントを護る――ただ、そのためだけです。その心に偽りはない。
疑われるのも、仕方ないのでしょうが……なら、せめて隊長が、俺の死に水を取ってください」
「それで……いいのか?」
無言で頷くアスラン。戦うことも、生きることも放棄し――彼は死を受け入れた。
同時に、閉じた瞳から雫が零れ落ちる。あまりに潔すぎる態度に、ハイネは呆気にとられた。
が、彼は目の前の光景に瞠目しながらも、腰から銃を再び抜き取る。撃鉄はすでに起されたまま――
やがて、格納庫に乾いた破裂音が木霊した。
381 :
7/20:2006/09/19(火) 22:07:21 ID:???
「……!?」
アスランは、己が死を覚悟していた。そして、銃声が鳴り響いて、自分は撃たれた筈……だった。
しかし、襲ってくる筈の痛みはない。死ぬときは痛みを感じないのか――?
そんなことさえ考える。だが、思考があるということは、今も生きていることに他ならない。
事態の推移を伺うべく、アスランは閉じていた目をゆっくりと開く。
目の前には、銃を構えたままのハイネ。銃口は、アスランに向けられたまま。だが……
硝煙の臭いは、ない。
「た、隊長!? 撃たなかったんですか……?」
「処刑は……なしだ」
「……は?」
「人手不足で困っているんだよ。セイバーのパイロットがいなくなったら、俺の隊はどうなる?」
「あ、あの……仰っている言葉の、意味がよく分かりませんが」
事態の推移は、アスランにとっては相変わらず不透明なまま。
発砲はされたが、硝煙の臭いはない……つまり、空砲だったのだ。
初めから、ハイネはアスランを殺す気はなかった。総合すると、この結論に辿り着く。
が、殺すか殺されるかの選択を迫られた者にとっては、驚きを隠せる筈がなかった。
「え……!? じゃあ、今までのやり取りは何だったんですか!?」
「本当に反逆の意思があるのかどうか、試したんだよ。まだ分からないのか?」
「わ……ッ! 分かるわけ、ないでしょう!?」
先ほどまで目に涙を浮かべていた青年は、今度は怒り出す。
殺すか殺されるかの選択が、自分を試すための手段だったと言われれば、憤るのも無理はない。
「俺が……涙まで浮かべて、死を受け入れた覚悟は……何だったんですか!?」
「知るか。勝手に泣いたのは、お前だろう」
「あ……! あんまりだ! 冗談にしても、酷すぎるッ!!」
「……冗談のつもりは、なかったんだがな?」
ハイネの顔は、終始笑ってはいなかった。一連のやり取りで、アスランを試しただけではない。
「また内通を疑われるようなことをすれば……今度こそ、俺はお前を殺さなきゃならない。
今日はお前を試すのと同時に……お前にも覚悟を決めておいて欲しかったんだ」
382 :
8/20:2006/09/19(火) 22:08:20 ID:???
ハイネは語る。いまだ、アスラン・ザラに対する疑念は、デュランダルでさえ抱いている。
常にザフトから監視される身のアスラン。迂闊な行動は死に直結する。その事実を伝えたかったのだ。
キラ・ヤマトに対しても、戦場で彼と出会えば戦うほか道はない。それがアスランの立ち位置――
「分かるだろう? お前には後がないんだ。次は……ないぞ?
お前は俺に死に水を取れと言ったが……裏切り者の死に水など、俺は取らんからな」
最後に念を押し、ハイネはその場を去る。ハイネはアスランを信じて、この場を収めたのだ。
本来なら殺されても不思議ではない事態――アスランは、生きながらえた安堵を覚えながらも……
その事実に、再び慄然とする。
キラと今度戦場で出会えば、戦わなければならない。そうしなければ、アスランが殺されるのだ。
説得など、最早不可能な事態……
「俺は……俺はどうすればいいんだ? キラ……ッ!!」
ここからそう遠くはない場所にいる旧友の名を叫ぶが、応える者はない。
アスランから遠ざかり、すでに声も聴こえぬ場所に移動したハイネ。
彼の耳元に、通信が入る。片耳に付けておいたイヤホンを通じて、部下の声が響く。
『隊長、本当に……これでいいんですか?』
「ああ。今のところ、反逆の意図はなさそうだ」
『今のところ……ですか。こっちは、引き金に指が掛かりっぱなしですよ。心臓に悪い』
「悪かったよ。二人とも、今夜はご苦労だったな」
ハイネが声を掛けるや、アスランの上方……MS整備ブロックの上層階から、人影が二つ蠢いた。
ショーンとゲイル、2人の部下の手には、それぞれ狙撃銃が握られていた。
もし――もし、アスランがハイネに銃を向けるようなことがあれば、2人の狙撃兵は行動に出ただろう。
アスランは今頃、上司の温情に感謝もしているだろうが……保険は、掛けられていたのだ。
心底信用されたために、処分を免れたわけではなかった。
「だがよ……命令とはいえ、身内を疑うってのは気分が悪い。反吐が出そうだぜ……」
ハイネの呟きは、誰に聞かれる事もなくアレクサンドリアの風に流された。
ミネルバの艦内はこの事件を知ることもなく、この夜の出来事の全ては闇に葬られた。
ただ、一人タリア・グラディス艦長を除いて――
383 :
9/20:2006/09/19(火) 22:09:17 ID:???
ハイネと同じくフェイスであり、ミネルバを預かる指揮官。
その人物に、今夜の顛末を報告しないわけにはいかなかった。
「独断専行がすぎるわね、ハイネ隊長」
「分かっていますが……アイツに、チャンスをやりたかったんです。
艦長としても、彼を殺すのは本意ではない筈だ」
深夜の艦長室――他者に気取られぬ場所で、ハイネは今夜の顛末の全てをタリアに話した。
呆れ顔で、タリアは窘める外なかった。
万が一にも、アスランがハイネに銃を向けていたら、今頃どうなっていだだろうか。
「格納庫での問答、人目につかなかったでしょうね?」
「整備班の連中には、皆して酒場に行かせました。俺のおごりで、労をねぎらう目的も兼ねてですが」
「そう……なら、いいけど。それにしても、格納庫でアスランを試すとは、よくやるわね」
「アイツが本気になれば、抜き撃ちで俺を殺すことなど造作もないでしょう。
セイバーが直ぐ近くにあり、いつでも脱走可能な状況で試すことに意義があったんです」
「本心を知るため……ね? でも、これで疑いが晴れたわけではないわよ?」
「分かっています。ですが、今回の件は、これで不問にしてやってください。お願いしますッ!」
ハイネは頭を深々と下げる。タリアとは地位的には同じだが、それを曲げて謙った。
反逆の疑いがある者を、敢えて庇っているのだ。頭を下げぬわけにはいかなかった。
ここまでされては、流石のタリアも受け入れぬわけにはいかない。
最後に、次はないわよ、と念を押すに留めた。
ハイネが去った後のミネルバ艦長室。
タリアは、今度は机に向かっていた。ハイネのおかげで、アスランの件は片付いた。
とはいえ、他にもやらねばならないことが山ほどあるのだ。
艦の修復は目処が付いたものの、対連合・オーブ相手にこの先も戦わねばならないのだ。
彼らは常にミネルバの先を読み、布陣を張ってくる。
ミネルバとしても作戦を立てぬわけには行かなかった。そんな中……
ふと、ハイネが置いていった報告書に眼がとまる。インパルスの試作シルエットの件――
「まさか、こんなものがあるとはね。あらゆる戦局に対応できる、万能型のインパルス……か」
使えるにしろ使えないにしろ……また、マユ・アスカに負担をかけることになる。
その事実もまた、ミネルバの指揮官の疲労を募らせた。
384 :
10/20:2006/09/19(火) 22:10:46 ID:???
同じ頃、ミネルバの居住ブロック――
アスランは自室に戻っていた。消灯された部屋で、ベッドに体を横たえてはいるが……
上官から突きつけられた現実に、頭は冴えており眠気など覚えられない。
「アスラン、眠れないのですか?」
突如、声を掛けられアスランはギョッとする。一般兵は大抵2人で一部屋を使うのが通常。
レッドではあるが一兵卒であるアスランにも、当然同室者はいた。
それが声の主――レイ・ザ・バレルである。
「オーブとの戦い以降、眠りが浅い様子。夜中に何度も寝返りをうっていますよ」
「……すまない。煩くて眠れなかったか?」
「それ程ではありません。ですが、割り切るべきは割り切らないと。貴方はエースなのですから」
後輩のレッドは先輩のレッドを諭す。レイに他意はないのだろうが、その言葉すら胸に突き刺さる。
エースなのだから、エースらしく敵を撃ち果たせ――アスランにはそう聴こえてしまった。
以降、彼は返事をすることもなく沈黙する。
そう、戦わねばならない。オーブとも、キラとも。そうしなければ、アスランが殺される。
軍を脱走したとて、行くあてなど何処にもない。正に四面楚歌……
ふと、キラの言葉を思い出す。ダーダネルスでの戦いで、束の間の連絡を取ったときのことを。
キラは言っていた。自分が戦場に出てきた理由……それは、ラクス・クラインがザフトに狙われたから。
護ったのは連合の部隊。ラクスは、その事件を機にブルーコスモス盟主に攫われた。
そして、ラクスの安全と返還を条件に、キラは戦場に戻ることを求められた。
短い間で得られた情報は、これらに集約された。アスランはこれらの情報を反芻し、思いをめぐらす。
(議長は俺を信用したわけではなかった。ラクスも狙われた。そういうこと、か……)
祖国を裏切った人間を、易々と赦す為政者などいる筈もない。
八方塞のアスランだが、ラクスも同じ。今は嘗ての婚約者の身を慮る他なかった。
と、同時に一つの疑問が浮かぶ。すなわち、何故ラクスが攫われたのかという疑問だ。
殺せば良いのだ。ラクスが手に余る人物であれば。事実、プラントはそうした。
しかし、連合のブルーコスモス盟主はそうしなかった。とすれば、そこには何らかの意図があるはず。
ブルーコスモス盟主の意図、デュランダルの思惑、そして自らが為すべきこと――
見つかる筈のない答えを捜しながら、アスランは自分を導いてくれた少女の名を呼ぶ。
「ラクス……俺はどうすれば良い? この先……どう動けば良いんだ?」
385 :
11/20:2006/09/19(火) 22:11:58 ID:???
ハイネとアスランのやり取りがあった翌日、大西洋連邦イギリス領イングランド――
現地時刻の早朝、ジブリール邸のラクス・クラインは館の主から呼び出しを受けていた。
部屋の子機からコールが鳴り響き、通じるや「朝食をご一緒に」という誘いを。
ラクスを誘拐したジブリール。だが、彼は彼女のプライバシーを尊重していた。
四六時中見張りをつけるわけでもなく、何かを聞き出そうと尋問するでもなく……
来客というフレーズがぴったり来るほど、丁重な持成しを受けていた。
そんな彼が呼び出すというのだから、相応の用件もあるのだろう。
早速にと、ラクスは食堂に足を運ぶ。
「早朝にも関わらず、御呼び立てして申し訳ありません」
「おはようございます、ロード」
「おっと、挨拶がまだでしたな。おはようございます、ラクス・クライン……」
テーブルを挟んで向かい合う格好で、2人は座る。そして、朝食が次々に運ばれ、会食が始まった。
いまだジブリールは用件を切り出してこない。ということは、用件は食事が済んだ後……
しばらく、淡々と食事が進む。やがて、軽食を終えた後、漸くに館の主が話始める。
「ラクス・クライン……貴女がオーブにいたころの、戸籍を調べさせてもらいました」
「戸籍……?」
「はい。カガリ・ユラ・アスハが、貴女のために用意した偽の戸籍です」
戦後オーブで過ごした二年間――ラクスは、ラクス・クラインとして過ごしたわけではなかった。
マルキオ孤児院で働き、キラたちと共に過ごす間はラクスであったが……
世を忍ぶ仮の姿、即ち偽の戸籍はきちんと用意してあった。オーブ代表カガリの手筈によって。
「調べによりますと、貴女は公にはマヘリア・ベルネスと名乗っていたそうですね?
戸籍の情報ですと、姉はマリア・ベルネス……あのマリュー・ラミアスということになっていますが」
「……ええ。マリューさんも私も、働いて税金は納めておりましたから」
「それは重畳。それと、孤児院の仕事と並行して、マルキオ導師の秘書も勤めておられたとか……」
「はい。そのとおりですわ」
「結構。では、貴女の秘書の経験を買って、お願いしたいことがあるのです」
改めて頼みたいことがあるというジブリール。真意を知る筈もないラクスは、視線で先を促した。
「貴女に……今一度、マヘリア・ベルネスに戻っていただきたいのです。私の秘書として……ね」
386 :
12/20:2006/09/19(火) 22:12:56 ID:???
数時間後、ジブリールとラクスは空にいた。
彼らが乗っているのは、高速の移動用シャトル。今日で言うところの、ジェット機である。
とはいえ、それはパブリックな移動手段ではなく、あくまでもジブリールの自家用ジェット。
ロゴスとして有り余る財を持つジブリール――彼ならではの移動手段といえよう。
さて、その機内の豪奢な椅子に座るのは、勿論ジブリールとラクス。
ジブリールはスーツに身を包んでいるのは、さして代わり映えはしないが……
何故か、ラクス・クラインも黒のスーツ姿。彼女の長い髪は結って上げてあり、後ろで束ねている。
おまけに、伊達眼鏡まで着用している。何処からどう見ても、秘書姿のラクスがいた。
「まさか……ロードの元で秘書の仕事をしようとは、思いも寄りませんでしたわ」
「労働は尊い、とても貴重だ。何もしなければ、体に脂肪がつくだけです」
「だから、貴方はロゴスでありながら、こうして表向きの仕事をなさろうと?」
「それもあります。ただ、今の地位は、何かと便利でもありましてね」
ジブリールとラクス。2人が機上の人となったのには理由があった。
ロゴスのメンバーでもあり、ブルーコスモスの盟主でもあるジブリール。
とはいえ、それらは裏の顔。彼にも、偽の戸籍があり、表の顔も用意されていた。
それは、大西洋連邦の金融界を牛耳る財界要人としての顔である。
今回は、その地位を利用して、大西洋連邦の首都で政界の要人と会うのだという。
「秘書として同行しろなどと、回りくどいやり方ですが……
是非、貴女にも会っていただきたい人物がいるのです。そこで、わざわざ御連れしました」
「私は、やはりラクス・クラインとして会わねばならない……のでしょうか?」
「はい。彼も、私が貴女を誘拐した事実は存じております。案じることはありませんよ」
彼――誰かは知らぬその男は、ラクスと会う必然があるらしい。
政界の要人といえども、上院下院それぞれ数百の政治家を有する大西洋連邦。
果たしてその人物とは何者なのか――?ラクスはその疑問を抱き、ロードに問うた。
「……貴女にこれから会っていただくのは、そう……"アンクル・サム"ですよ」
事も無げに言うジブリール。だが最後の言葉を聞いたラクスの双眸は、驚愕に見開かれていた。
ブルーコスモスの盟主に会うというだけでも、彼女としては度肝を抜かれていたのに……
今度は、大西洋連邦の最高権力者の元に連れて行かれるというのだ。
気圧のせいか、気分のせいかは分からないが……高度数千メートルで、ラクスは軽い眩暈を覚えた。
387 :
13/20:2006/09/19(火) 22:13:46 ID:???
ジブリールとラクスがはるか上空にいたころ……
ユーラシア連邦ギリシャ領クレタ基地から、大西洋連邦本土へと通信を繋ぐ者がいた。
J・Pジョーンズから長距離レーザー通信を繋ぐのは、仮面の男ネオ・ロアノーク大佐。
繋いだ先、モニターの向こうに現れた顔は、黒髪の女性――
『あら? 早朝に連絡を遣すなんて……珍しいわね、ロアノーク大佐』
「急ぎの用だ。大至急、調べてもらいたいことがある」
『それは、大西洋連邦中央情報局の人間として調べろ……ということかしら?』
「世界のすべての情報を牛耳る一族としても、だ。マティス……」
ネオは挨拶も無しにいきなり本題に入る。情報局のマティスへの、協力要請――
彼が聞き出したいのは、インパルスのパイロットについての詳細。
ゲンが、アーモリーワンで会う以前に会っていたと訴える、ユーリ・アマルフィの娘の消息。
そして、敵の白い新型MS――インパルスについて。
だが、返ってきた答えは、ネオを大いに落胆させるものであった。
『何処から掴んだ情報よ? ユーリ・アマルフィには、娘なんていないけど』
「――!? 本当なのか?」
『私が貴方に嘘をつく理由があって?
ユーリ・アマルフィには一人息子がいただけ。二コル・アマルフィって子よ。
先の大戦ではザフトレッドとして従軍。でも、キラ・ヤマトの駆るストライクに敗れ、戦死したわ』
「……確か、連合から強奪したブリッツのパイロットだったか」
『よく知っているわね。ユーリの家族構成は妻と長男の3人、娘はいない筈よ』
ユーリの娘と名乗ったインパルスのパイロット。だが、彼女は存在しない少女――
ただでさえ正体不明の敵エースは、更に謎めいた存在に感じられた。
「まさか……隠し子か?」
『インパルスのパイロットは女性なのね?
だとしたら、ミネルバの乗員にルナマリア・ホークという子がいるけど……この娘かしら?』
「歳は?」
『17歳。今年アカデミーを卒業したレッドらしいけど』
ネオは溜息をついて、首を横に振る。ゲンの話では、まだ歳若い少女らしい。
ということは、ルナマリアという少女がインパルスのパイロットである可能性は低い。
暗礁に乗り上げた敵のパイロットの素性探し――だが、端緒は思わぬところから……
388 :
14/20:2006/09/19(火) 22:14:45 ID:???
『そうそう、盟主からの言伝があったのを忘れていたわ。
戦局が落ち着き次第、一度ゲン・アクサニスをラボに送り、最適化を受けさせろ……ですって』
「……戦闘以外の記憶の抹消を、やれというのか?」
『戦局が落ち着いたか否かは、現場の判断に任せる……ということよ』
「今は無理だ。アイツ抜きでミネルバを落せるとは思えん」
マティスが伝えたのは、ジブリールから下されたゲンの記憶抹消指示。
仲間たちと交流を深めれば深めるほど、人に近づきつつある兵器を、盟主は憂いたのだ。
心情的には回避してやりたいネオであったが、命令である以上いつかは為さねばならぬ任務。
せいぜい、その時期を遅らせることくらいしか、今の彼には出来そうもなかった。
ふと、昨日のゲンとのやり取りがネオの頭に浮かぶ。
部屋に反吐を吐かれ、あやうく部下のブロックワードを言いそうになってしまったことを。
――ブロックワードは、実妹『マユ・アスカ』の名。
「……シン・アスカの妹って、今何処で何をしているんだ?」
『先の大戦後、オーブからプラントに渡ったのは知っているわね?
戦争が始まってから、現地の彼女の情報は入ってきていないけど……
開戦前の時点では、セプテンベル・シックスの幼年学校に通っていたという話よ』
「幼年学校……か。彼女は、今ごろどうしているのかねぇ……」
『軍管轄下の幼年学校だから、戦争があと何年も続けば、そのうち戦場に出てくるかも』
「――!?」
最後の単語を聞き――ネオは思わず椅子から腰を浮かせる。軍管轄の幼年学校、戦場……
「今、軍の幼年学校って言ったな? 彼女は、今もそこにいるのか?」
『開戦前の話よ。多分、今もそこにいるとは思うけど――』
「"多分"じゃダメだ! 今すぐ……調べてくれ! 本当に幼年学校にいるのかどうかを!」
『どうしたの? 急に血相を変えて……』
ネオの脳裏に、最悪の考えが過ぎる――
ゲンは、インパルスのパイロットを知っていたと話していた。アーモリーワンに赴く前から。
本当に少女と会った可能性があるとすれば、月で過ごした間か、若しくは……
「インパルスのパイロットは、オーブからプラントに渡ったコーディネーター……
ゲン・アクサニスがシン・アスカだったころの、知人か何かかと思っていた。
だが、ひょっとすると……インパルスのパイロットは、ヤツの実の妹かもしれない」
389 :
15/20:2006/09/19(火) 22:15:34 ID:???
突拍子もない話に、マティスは目を瞬かせる。本当にそんなことがあるのだろうか、と。
『ネオ? マユ・アスカは、記録ではまだ13歳。とても戦場に出てくる歳じゃないわ』
「ザフトの兵力は充実しているのか? 先の大戦で、ただでさえ大勢の若者が戦地で命を散らした。
それを補充するために、幼年学校の生徒を使ったりするとは考えられないか?」
『ミリタリーポリスや警察官の一部、退役軍人を予備役として召集しようとしているらしいけど……
MSのパイロットになるだなんて……幼年学校の生徒に出来る仕事じゃないわ。
優秀なるコーディネーターでさえ、パイロット適性のある人間なんて、そういないのよ?』
「ただの女の子ならそうだろうさ。でもな、仮にもゲン・アクサニスの妹だぞ?
一介のコーディネーターよりも、パイロット適性がある可能性は高い。違うか?」
マティスも、予てからゲンの存在は知っていた。最後のソキウス――
アーモリーワンで単身ユーリ・アマルフィを暗殺したこと、ユニウスセブン破砕作業での活躍……
ラクス・クライン誘拐、汎ムスリム会議での要人護衛、ガルナハン撤退戦、そしてなにより……
ノフチー共和国で、元サーカスのイワン・ザンボワーズを討ち取った手練。
適うなら、ゲンのようなコーディネーターは、是非とも手駒にしておきたいというのが本音だ。
『名馬の子が、必ずしも名馬に生まれてくる保障はない。血縁は往々にして当てにならない。
けど……もし彼女が目の前にいたら、サーカスのメンバーになる為のテストを受けさせたいところね』
「……マユ・アスカの所在、調べてもらえるか?」
『分かったわ。最優先で、やらせてもらいましょう』
最後に、クスッとマティスは笑っていた。
そう、最優先でマユ・アスカの所在を突き止めねばならない。マティスには強かな計算があった。
可能なら、自分の手の者に誘拐させ……彼女の持つ資質を試し、もしもゲン同様の能力があれば――
幼き少女を、己の手駒としてサーカスに迎え入れよう、と。
彼女の身柄を確保しておくことは、後々ジブリールに貸しを作ることになるやもしれぬ。
仮にサーカスの戦士に仕立て上げても、兄と同じ道を歩むのだ。盟主もそう怒ることはないだろう。
つまり、やっておいて損になることはない――
「……何か、可笑しいか?」
『いえ、素敵な話だと思ったのよ。マユ・アスカが兄同様の資質があるとしたら……ね』
「素敵だと? インパルスのパイロットがゲンの妹だとしたら、俺たちはババを引いたことになるぜ。
同様に資質があったとしたら……敵にゲンがいるようなものだ。間違いなく、最悪の事態だよ」
万が一にもそんなことはあるまい――ネオはそう思いたかったが、一抹の不安は拭えなかった。
390 :
16/20:2006/09/19(火) 22:17:05 ID:???
ネオが通信を繋ぐ空母J・Pジョーンズの隣、停泊するオーブ軍空母タケミカヅチの中。
軍服姿のキラ・ヤマト、彼の表情は冴えなかった。冴えないばかりか、彼の周囲には異臭が漂う。
一緒に歩いていたミリアリア・ハウも、彼から距離を置こうとする。そんな彼女に、キラは問う。
「そんなに、臭い?」
「自分では気づかないのね……相当酷いわよ。ニンニクが腐ってる感じの臭いがするわ」
二日酔いで頭はガンガン。おまけに胃をやられた青年は、それでも通常の任務をこなしていた。
愛機の整備を終えた後、取材に訪れた記者であり友人のミリアリアと会っていたのだが……
最悪なまでのコンディションは、包み隠すことは出来ず。
前日の自棄酒、飲み比べですっかり参っている青年は、友人の言葉に更に消沈した。
「今日の取材は、止めておくわ。臭いが移ってきそうだもの」
「ごめん。これからは、気をつけるよ」
「お酒も程ほどにしなさい。酩酊するまで飲むなんて……
アマギさんにも負ぶって貰ったんだから、ちゃんとお礼言わないとね?」
「……アマギさんに負ぶって貰った? あれは……ムゥさん? あれ? 嘘ッ?」
突如、キラは素っ頓狂な声を上げる。思い出したのだ。昨晩の出来事を。
酔うだけ酔って酒場を後にした。だが、その後誰かに背負われてタケミカヅチまで戻ったのだ。
あれはアマギだったか。いや、彼の前に、キラはある人物に背負われていた。その人物とは……
「ミリィ! 昨日、ムゥさん見なかった!?」
「ムゥさん? 何を言っているの? ムゥさんなら、ヤキンで……」
「違うよ! 昨日ボクを負ぶっていた人! アマギ一尉の前に!」
「あれは……連合の大佐の人でしょ?」
「その人だよ! あの人、ムゥさんじゃなかった?」
ムゥ・ラ・フラガ。嘗てキラたちと共に戦い、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で散った筈の男。
キラは、昨晩あの男の声を聞いた。自分を背負っていた連合の大佐――それは、ムゥの声だった。
キラはミリアリアに問う。アレはムゥその人ではなかったのかと。
だが、意に反しミリアリアは声を落とし言った。
「酔っていたのは分かるけどね、死んだ人が生き返るわけないじゃない。冗談も程ほどにしてよ」
ミリアリアはネオの顔も声も確認していなかった。ゆえに、彼女はキラを冷たくあしらっただけ……
391 :
17/20:2006/09/19(火) 22:18:26 ID:???
が、キラは納得出来なかった。確かに、ネオを見ていないミリアリアには、そう応える他ないだろう。
しかし、親しく接していたムゥの声を聞き違える筈はない。キラは意を決し、J・Pジョーンズに向かう。
別れ際、ミリアリアから渡された写真を持って。
それは、数日前撮影したキラとファントムペインのパイロットたちの集合写真だ。
J・Pジョーンズの軍人の一人を捕まえ、ゲン達を呼び出す。待合室で待たされること10分。
程なくして、彼らはやってきた。まず入ってきたのは、アウル、スティング、ステラの3人だ。
「キラ! よく来たじゃん! 酔いはさめた?」
「こら、アウル。先輩にタメ口利くなよ。お、この間の写真! わざわざ、ありがとうございます」
「よく撮れてる……さすが、ミリアリア」
キラは3人に写真を渡し、とりあえず来た目的は果たした。だが、それは表向きの用件に過ぎない。
本当は、どうしても確かめたいことがあったのだ。件の大佐が、ムゥ本人であるか否かを。
だが、相手は仮にも連合の将。一兵卒のキラが会いたいからと言って、会える相手ではない。
そこで、仲介者に頼ることにしたのだ。即ち、ファントムペインのパイロットの中で、一番顔が利く者。
アウルたちから少し遅れて、その人物は現れた。
「よぉ……昨日は悪かったな」
馴染みのバイザーも付けず、蒼い顔をして黒髪の少年が入ってきた。
前夜飲み比べをした相手、ゲンだ。二日酔いの頭痛に悩まされているのか、表情も冴えない。
キラもまだフラフラすることはあったが、ムゥのことを思い出したことで正気に返っていた。
突如、キラは強引にゲンを引っ張り、問答を始める。
「ゲン、ちょっと話があるんだけど?」
「昨日のことは謝る。頭がガンガンいってるんだ……説教は勘弁してくれ」
「そうじゃなくて! どうしても聞いてもらいたいことがあるんだ! お願いッ!」
「ラクスのことか? 勘弁してくれ、俺には何の権限もないんだ」
「違うって! 君たちの上官のことを、聞きたいんだ」
上官のこと、即ちネオ・ロアノーク大佐のこと。その問いに、漸くゲンも正気に返る。
他の3人も、何事であろうかと耳を欹てる。用件を察し、ゲンは改めてキラに問う。
「ネオのことか? いったい何を聞きたいんだ?」
そして、キラとゲンたちの質疑応答が始まった。
392 :
18/20:2006/09/19(火) 22:19:12 ID:???
まずキラが聞いたのは、ネオ・ロアノークという人物について。彼は一体何者であるのか。
余りに率直な問いに、アウルたちは応えに困る。
「ネオは何者かって言われても……ネオは、ネオだよ?」
「ネオ・ロアノーク、第81独立機動群の司令。ファントムペインの実質的な指揮官です、先輩」
「ネオは……仮面付けてる」
最後のステラの一言に、キラは敏感に反応する。仮面を付けている――
「仮面? 何でそんなもの付けているの?」
「噂の域を出ないが、何でも先の大戦で従軍して、偉い傷を負ったとかいう話だけど。
っていうか、お前昨日背負ってもらっただろ? 顔を見なかったのか?」
「酔っていたし、暗かったから見てないよ。そうなんだ……仮面を付けているんだ」
ゲンがフォローを入れる。傷を負い、仮面を付けている……一見常識外の話だ。
とはいえ、尤もらしい話ではある。だが、キラにとってそれは問題ではない。
ネオ・ロアノークには、顔を隠す理由があるのだ。
本当に傷を隠すことが理由にせよ、他の理由があるにせよ。
「じゃあ、次の質問。ロアノーク大佐は、どんな人? 彼に対する印象とか、何でもいいから教えて」
キラは次の質問に移る。改めてアウルたちは顔を見合わせ、応える。
「印象ねぇ……軽い感じのおっさんってとこ? あんまり軍人ぽくないよね」
「砕けた物言いをする人ですが、任務はキチンとこなしますよ。一応、尊敬する上司……かな?」
「ネオの命令は絶対……って、命令されてる」
最初のアウルと、次のスティングの応えにキラは敏感に反応する。
軽い感じ、砕けた物言い、的確に任務をこなす人物……益々ムゥに似ている。
声だけではなく仕草や日常も、ムゥ・ラ・フラガとネオ・ロアノークは通じるところがあった。
「じゃあ、最後の質問。君たちは、ムゥ・ラ・フラガって人を知っているかな?
ひょっとすると、ネオ・ロアノークって人は、ムゥ・ラ・フラガと同一人物……ってことはないかな?」
最後の最後、キラはどうしても聞きたかった本題に入る。
ムゥとネオは似ている。それまでの質問で得た感触から、本題を切り出すことにしたのだ。
393 :
19/20:2006/09/19(火) 22:21:55 ID:???
だが、答えはキラの期待したものとは縁遠いものであった。
「ムゥ? 誰それ?」
「エンディミュオンの鷹とか呼ばれた、エースパイロットのことだろ? 会ったことないけどな」
「……ムゥ? 知らない人……」
唯一、3人の中でスティングだけはムゥを知っていたようだ。だが、それは二つ名についてのみ。
キラが期待していた答えは、得ることは出来ず。最後、ゲンが訝しげにキラに問う。
「なぁ、キラ……こいつは一体どういうことだ? 何を聞きたいんだよ?」
「あ、うん。僕の知っているムゥ・ラ・フラガって人は、ネオって人とよく似ているんだ」
「でも、顔は見ていないのだろう?」
「声は聞いたよ。アレは……ムゥさんの声そっくりだった。
聞いていた話だと、ネオ・ロアノークって人は、ボクの知っているムゥさんと共通項が多い。
ムゥさんも、軽い感じだけど、的確に任務をこなすエースパイロットだったよ」
キラには確信に近いものがあるのか、ゲンの問いにも揺るがなかった。
単なる思い込みではない――あたかも、そう代弁するかのように、確信に満ちた表情であった。
とはいえ、上司の素性の詮索など、ゲンはしようと思ったことはなかった。
ましてや、他の3人などもっての外。上司が何者であるかなど、興味の対象外であったようだ。
現に、皆キョトンとキラを見ている。
「ま、ネオの素性なんて俺たちの知ったことじゃないけど」
「気にならないの?」
「気にしてどうなる? ネオがエンディミュオンの鷹だったとしても、別に驚かないし」
「パイロットとしての腕は、確かなの?」
「ああ、ウィンダムに乗っている。最も、最近は出撃しないけどな」
MSも乗りこなす佐官――最早、ネオはムゥであるとしか思えなかった。最後に、ゲンは唐突に問う。
「じゃあ、ネオがエンディミュオンの鷹だったとして……キラ、お前はどうしたいんだ?」
予想もしなかった問いに、キラは言葉に詰まる。
ムゥが生きているかもしれない――その事実を確かめたいという想いが、キラを動かしていた。
だが、仮にムゥとネオが同一人物であったとして、自分は何をするのだろう? 何をすべきだろう?
それらの疑問と共に、過去のムゥとの思い出と記憶が、奔流となってキラを襲った。
394 :
20/20:2006/09/19(火) 22:22:44 ID:???
キラがムゥの生存を確信したころ……大西洋連邦の首都、ワシントンを一台の車が疾駆していた。
黒塗りの車体は、大型のリムジン。後部席に座るのは、スーツ姿の男女。
やがて、その車はある白い建物の前に止まる。
すぐさま、黒服を着たSPらしき人物が車を囲み、車から出てきたスーツの男を護る。
「ガブリエル様、お待ちしておりました。申し訳ありませんが……」
「ボディ・チェックだろう? 早くしてくれ。それと、中に入るのは私の秘書もだ。彼女にも、頼む」
「承りました」
ガブリエルと呼ばれた男性と女性秘書は、手早くボディ・チェックを受けた後、白い建物に迎えられた。
広大な白い建物――それは、大西洋連邦の首都ワシントンにある、大西洋連邦の中枢。
かつてこの国がアメリカと呼ばれた頃から、世界を動かしていた施設。
建物の中をSPに囲まれ案内される二人の男女。
その道すがら、スーツの男は秘書に優しく語り掛ける。
「余り緊張なさいますな……貴女は、ゲストなのですから」
「秘書としての仕事をしにきたのですよ? それ以上のことは――」
「――ご冗談を。それ以上の仕事があるからこそ、ここの主が貴女を呼んだのです」
分厚い扉の前――そこまで来て、SPたちは離れる。
この扉の向こうにマヘリアを、ラクス・クラインを呼んだ張本人がいるのだ。
ラクスは息の詰まる思いで、その扉が開くのを待った。
暫くすると、中から一人の秘書官らしき男が出てきて、二人を招き入れる。
扉の向こう――中には、一人の男がいた。執務室に座りながら、二人を見て腰を上げる。
彼は自ら席を立ち、恭しく出迎えた。男の方、ガブリエル――いや、ジブリールに対してではない。
表向きは彼の秘書である女性、マヘリア――即ち、ラクス・クラインにである。
「ようこそ……ラクス・クライン! 貴女と会える日を、ずっと待ち望んでおりました」
「……お初にお目にかかります、ジョセフ・コープランド大統領」
地球連合の最高権力者と、嘗てはプラントの歌姫と呼ばれた女の会談――
人知れず始まったこの出会いは、やがて世界の趨勢を変える端緒。
ただ、型どおりの挨拶をし、握手を交わす2人を……
仲介者である男――ロード・ジブリールは薄ら笑いを浮かべ、見守っていた。
PP書いている者です。随分と更新が遅れ申し訳ありません。
せめて2週に一度くらいは投下たいのですが、私事で忙殺されておりまして……
暫くこの状態は続きそうです。月一投下になりそうですが、平にご容赦の程を。
容量ギリギリか。次スレ立てる必要があるな
乙
このスレも20の大台へあと少しだな
これも職人の皆様のおかげです
黒のスーツ・・・伊達眼鏡・・・秘書・・・ラクス・・・この組み合わせは、いいものだっ!
後がないアスランはいよいよキラとガチンコ勝負を避けられなくなってくるだろうし、ゲンマユ、ネオキラの進展も楽しみですね
PP作者様、GJ! 面白かった!
PP戦記(いい意味で)展開遅いな。
この密度はただもんじゃない。
相変わらずGJだ!
マリアはまだありふれた名ですが。
ま、マヘリアさん……っ?!
こんなところに小ネタを仕込むPP作者さんの遊び心にもGJを。
埋め
403 :
264:2006/09/20(水) 08:36:48 ID:???
ご意見有難うございました。空気を読んで、決断したいと思います。
待ってました、乙!
そうだよな、本来ならアスランはこれぐらい追い詰められた針のムシロのような状況で然るべきなんだよな
マユはマティスに目をつけられてしまったし、ミネルバサイドはかなりの緊張状態だ
アットホームなファントムペインとはまさに対称的
/ ̄ ̄ ̄\
/ ⌒ ⌒ ヽ ____
/ ( ●)(●) | /⌒l/⌒ ⌒\ /⌒ヽ __
| (__人__) } ノ /( ●) (●)\ /Θ Θ\ ,r'" `:、
__. }、. ` ⌒´ 、` /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ (""(_人_)"") r'.゙!'t、....ィ'!゙ヽ
(⌒ |_,,,| |r┬-| | \ し゛/ (___',='..'=,'___,)
""''''''ヽ_ | \ `ー'´ /⊂二´ `二⊃ r''''-、 r'、
, -‐、
lヽ;;;;ゝ
7´ヾ゙`ヽ ヾ
/ ̄ ̄\ ,ィ ,r ヽ l )
/ ヽ、_ \ l_/~´l l il
l⌒ヽ (>)(< ) .| ヽ l li
ヽ、 \(__人__) | l-‐---!
// \ (,|r┬-| |´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ/ ! l il
ヽ .| l | | |‐- 、ノイ
| l l|,, ___`ー' / ヽ、_`ス
ゝ____`ヽ_(  ̄ ゙̄ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ、 )
 ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
_,. -‐-‐- 、_
,ィ' , ' :::::::::~ヽ
,' ソ,' .::::::::::::::::\
/ i ,' ..::::::::::::::::::::::::::\
/ .::,' ...::::::::::::::::::::彡_ミ、_::\
/ ..::::,' ,.彡‐ '''^~´,...,__,,,....ニ=ァ、_
/.::::::::! / , 彡‐'~ニ ~゙¨^'''ー‐-_-__,,,..,,,__
/:::::/j/ , イ _,,.. -‐ ''"~´ __,,...二=―-
!/ // _,. -‐‐ '^~ :. :.ヽ__,,.. .-‐'''""~
/ / _ - ''::~. : :::::::: . :: . ::::. :. : ::::',
/ ,. ‐'".:::::::::::...:::. .::::::::::..::::;::l:::::::::::::::::',
/,. '"l::::::::::::::::::l::::从:::::::::::::i::::ハハ::::::::::::::;::!
/ '~,. '´l:i:::::::::::::::ハ/-‐';、:::::::/|/‐-_';;::::::;i::jリ
/ , ' lハ:::::::::::::トrィ"フト`ヽ/ イ'フj`1 /∨
/, ' ト:::::ヽ! ゞ-'' ,  ̄ l'':::::.!
/ " |: :::::::| , /:: : : |
〃 l::: : :::|ヽ、 rヘへ/l:::: ...::|
/ l';:.: .:::!::::r1丶、 /⌒ )ヾ::::..:丶
ノ::ヽ::::{:::::/ 〉 i/l 入::::::)\
(:::::::ヽlヽ ...,,,_ { {八 / `~' _ゝ
/ヽ;;;;;ノ ッヘヘ、 ∧ ヽ/| i _,,. -‐ "´ ',
_/'"´ ', ヾヽ‐彡ハ ∨/ ',
|j ', _,ゞく ハ \>‐―弋)/
| ,. -‐ナ"´ }ヽ_|_∧ \ 爻/
ヒi" _,lゝ/ノ ハ ⌒iノ !
l , '" ∨/i/ハ | |!
ヽ イ >ヘ_j_ハニミ\ ,'|!∧
ヽ `ミニ=iX/ \`]|コヰ` -イ!l〃 !
` ̄ ノ⌒\ \ 八jリ 〃/i
/ 弋 ヽ ヽ ̄ ̄`丶ノ,,,__
/ `>ヽ \ 、、,_,、 -tヘ、 ,,__
/ _,,..イハ⊥jl ヽ ヾ弋 〉 ハ _/レっ,_ / ̄ ~^'''''"~ ̄~^丶、
/ イ i ハ、、ゞ^ヽ ∨/|i ∨´ `丶、_,,,....,,ミ ヽ
/ ィ/ { j レ ―-ハ ', |! _ ノ \ ヾ〉 _,.ノ
_,,,. - '^"~ ̄/ /〃 ノ {,〆 ヽ ∨レ′ 丶、 マ¨~´
, - ^"~´‐-- = /ィ'⌒'ーく_/ハ / ヾ、 マ ',
, '"=ミ- __,,,,....,,,__ __彡イ ,. 彡~^> ⊥、 ',゙、 ヽ- .,_ |
'´ー‐'⌒ヽ 、,_三,.ィ'"´ // / ヽ ', ', \ ` 丶、 ノ
/ イi| ,' ', ', \ `゙ ‐ .,,__,,,.. -"
〃 j!l、 ト、 i ゙、 \
/ . : : : . : : : : : : : : : : : : : ̄`ヽ、
, ' . : : : : . : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
/ . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :}、
, ' . : : : { : : : : : : : : : : : : : : : : : : { i
/ / : . : :ハ i、 : : : : : ,{: l、 : : 、: : : : : : : '、{
j イ : :ヽ :{__ヽ{ ヽi : : : 八{ ヽ : }ヽ: : : : : : :ヽ
{ : : : トlr‐;弌、 ヽ : :{ ‐弋 ヽ/、 }l: : : : : : :',
ヽ、 : . : :', _{ニ'_}_ ヽ :{ 彳フテ、 }: : : : : ヽ }
ヽ : : : :', ヽト丶 ┴‐┴ / . : : : }lへ
ノ.', : : : l ' , ' . : : : /: : : ヽ
´フ . } , . : :人 ' /ィ . : : : :/: : : : :}
{ /}イ . :/: : :ヽ、 ヽニ=‐ _ / . : : : :, ': : : , /
ゝ{ /: /`フ-‐ '´ト、 ̄ _ '´/ イ/ヽ: : ノ}/
/ '´ _ _ノ、  ̄ / // ノ'"´ ′
_ .. -< ヾ } /'" ´ヽ、、 __ ,__
/ `ー\ \-、 ,/ /` 7 7 丶、
/ \ \ / /  ̄ / / ヽ
f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐f‐fぃ
| | |
| | |
| | |
_|_ r┴ 、
/_,ノ ._フヽ、|
. | ,二) |ーへ 〉
. |',. -イ てヽ j
ヽイ ト、ノ
| | |
| | |
| | |
| | |
| | |
| | |
,.-‐''"´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`丶、
'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ 今日も二人でおるすばんだね
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. ::::::::::ヽ
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :. :::::: :. ::::::::::::',
:: .::::::::::::::::: : :: .. :::: ..::: . :. .::::::::::::、::'、
:::. :::::::::::::;:::::::::. .:. ::::::::l、::::::::::..:. :::::::::::::ト、!
::::..::::l、::::ハト;::::::::::::;:::::::l_ヽ:::l!:;::::::::::::::::;:'" ̄ ̄`ヽ
::::::、::l,.ヽ!ミ、';::::::::ハ::::/f''_テリf!::::::::;:−''" ̄ ̄`''┴ -..,,_
::::::',〃 {,.-''} ヽ/ `´┴―'´l::/'" ̄ ̄`ヽ `ヽ、
::::::::ヽ"´ ̄ .:: ,.'´/::::::::::::::::O::j ,.-― 、 ヾ´
::::::::::;ゝ ', / ヽ、___,. ‐''´ ,'::O:::::::::ヽ `
:::::::::::ヽ ‐-- ‐'' ,' .... ‘ l:::::::::::::::::::',
:::::::::::::::`ヽ、 ´ ,.ィ ` ヽ:::::::::::::::::}
ゝ、::::::::::::::ヾヾ'' ー‐'' { ` ー‐ ''
`ヽ、::::::::::ヽ \ /ヽ
 ̄` 、`丶、__;>‐ァス''" ̄`ヽ、
_ \ ヽニフ'" ̄ ̄ ̄`''=r-;...,,,__
..`ヽ、 ヽ ' 、 l |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
` 、 ( | |
ー――- `ゝ、 {_ _,l_,!-- ....,,,_
__ - ァ‐''" ̄`ヾr‐r―‐''"´ ` ''−-..,,_
/ _ ‐  ̄ ゙ヽヾ\ `7‐- 、
/ / _,. -―――‐ゝ、 /:::::::::::::
/ / `''ー-、 /:::::::::::::::
l / /=、ll、',', l ト、 ヽ |
l l', l,ィミfト, ト! ヽl, >、 l l
`゙l ハ l、ヒイハヾヽ リィ≡ミY l !
. l' /, ト  ̄ ;:::: 、ヒ;7/ / !
lイ ,! 、  ̄〃/ /
/ ノ ヽ cっ フ´ /
ノ7 ,ィ ト、 _/ ,//
/ //イ/イ` ''"´/イィ //
. ,,, --l.//,- ' . >:`:,,,,,__
l / /=、ll、',', l ト、 ヽ |
l l', l,ィミfト, ト! ヽl, >、 l l
`゙l ハ l、ヒイハヾヽ リィ≡ミY l !
. l' /, ト  ̄ ;:::: 、ヒ;7/ / !
lイ ,! 、  ̄〃/ /
/ ノ ヽ ー- フ´ /
ノ7 ,ィ ト、 _/ ,//
/ //イ/イ` ''"´/イィ //
. ,,, --l.//,- ' . >:`:,,,,,__
l / /=、ll、',', l ト、 ヽ |
l l', l___ヽ, ト! ヽl, >、 l l
`゙l ハ l、ヒイハヾヽ リ__Y l !
. l' /, ト  ̄ ;:::: 、ヒ;7/ / !
lイ ,! 、  ̄〃/ /
/ ノ ヽ ヽー‐ク` フ´ /
ノ7 ,ィ ト、  ̄ _/ ,//
/ //イ/イ` ''"´/イィ //
. ,,, --l.//,- ' . >:`:,,,,,__