もしシンじゃなくてマユが主人公だったら14

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1通常の名無しさんの3倍
このスレは、機動戦士ガンダムSEED DESTINYの主人公がシンではなく妹のマユだったらという
二次創作SS小説そして妄想スレです。
必読事項↓
・マユ・アスカが主役で、運命キャラがメインです。
・概要抜粋型(短い)と小説型(長い)どちらでも可
・シリアス及びギャグ何でも可
・煽り荒らしは、スルーしましょう(重要)
・作者叩きは、禁止
・「○○イイ!○○○イラネ」などの特定職人マンセーはあまりよくないです。
意見がある人は各職人様にアンカーをつけてレスしてみましょう。
その際
「○○○の部分が、○○○のようにおかしい」
「○○○のような書き方は気をつけた方がいいと思う」
等、言いたいところをできるだけ「丁寧に」書いてレスして下さい。
誠意ある質問には必ず誠意ある返答がある筈です。
質問は見やすいようにコテハンをつけておいてもよいかもしれません。
より良い作品・スレ作りにご協力下さい。
「面白い」って意見も、ただ「乙」とか一言で済ませるんじゃなくて、「○がよかった」「○に感動した」とか書き込むと、
物書きにとっては何よりの応援になります。
その作品にのめり込んでるなら、その作品でキャラが起こした行動自体に対して、叫ぶのもいいと思います。

・職人常時募集中

避難所兼雑談所のアドレスは、過去ログ(パート2)にありますのでご自分で探索してください。

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もしシンじゃなくてマユが主人公だったら13
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1140881256/

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新キャラメインでDESTINY学園開校7
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【SS】新シャア板の職人相談室【イラスト】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1141485657/
まとめサイト兼過去ログ置き場
http://members.ld.infoseek.co.jp/rurukubo/mayukako.htm
2通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:04:09 ID:???
まあ、マユを主人公にすると―― (パート1 710より)

1.子供だけど赤服。努力と才能と、周りのサポートで頑張る努力型の主人公という前作との差別化。
2.1.と付随して周りのキャラが主人公を面倒見ているので戦艦内の人間関係の描写が濃密になる。
3.種持ちとはいえ、決して天才ではないので時には失敗する。その挫折を乗り越えるクライシスと成長ドラマが主軸になる。
4.才能はあるとはいえ、子供。故に戦争というものを多角的に見えない。戦争の現実を直視することにより、視聴者にも問い掛けることができる。
5.戦争で家族を失った遺族側の視点で前作への問題提起。それにより改めて遺伝子操作やそれに伴う差別問題を浮き彫りにできる。
6.5.に並んで国家と国民の有り方、理想と現実。そして、享受できる平穏と犠牲となる存在、為政者の義務、前線で戦う兵士の悲哀などを生々しく描写できる。
7.死んだと思っていた兄との対面、思想の違いによる対立を生む戦争の悲劇。そして、マユという妹から一人の人間としての成長を描ける。
――こんな感じで激動の時代に巻き込まれた一人の人間とそれを取り巻く環境の変動を主軸にしたドラマが描けて面白いんだよね。
シンよりさらに人間的に未熟な分、周りの人間の意見を聞く――色々な視点・意見を知る――ことにより、
現実はそう単純なものではないってことが演出できるわけで。
3通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:09:54 ID:???
新スレ乙!!
I&I&I作者様、ようこそ。そちらのマユも片腕がないようで……。
記憶喪失がどう物語に影響してくるのか、今後に期待ですね。


さて。大変お待たせ致しました。隻腕二十七話です。わざわざ新スレ立てして下さった>>1さんに感謝。
……こう間が空かないよう、書き溜め&小出しにするつもりだったのですけどね。上手く行かないものです。
すっかり忘れてらっしゃる方も少なくないと思いますが、再開させていただきます。


カーペンタリア攻略戦後、オーブにいる連合軍の排除のためにザフトが攻撃を開始。
連合軍との不協和音響くオーブ軍は、動きたくても動けぬ状況。
そこに突如現れた黄金のMS。再び立ち上がったキラ・ヤマトの駆るアカツキ。
ユウナも立ち直り、カガリもマユもそれぞれにオーブを目指しますが、果たして間に合うのでしょうか……?
5隻腕27話(01/17):2006/03/22(水) 22:11:02 ID:???
その朝は、少女にとってごく普通の朝になるはずだった。

「んあっ……ん〜、今日もいい天気!」

窓から差し込む朝の最初の光を受け、少女はベッドの上に起き上がる。
このところお天気続きで、海の見えるこの家には存分に太陽の光が入ってくる。
気持ちのよい目覚めに、少女は大きく伸びをした。

オーブの外では戦争続きで、オーブから派遣された艦隊も全滅したと聞いている。
クラスメートの中には、軍人のお父さんが帰ってこない子もいて、素直に可哀想だとは思った。
街に出ればオーブに駐留する連合兵の姿を目にすることも多くなってきている。
けれど少女にとって、未だ戦争は「外の世界のこと」で。
前の戦争の時には、少女の一家はオーブの中でも戦場にならずに済んだ島に居たので、これもまた実感が薄い。

いや、しばらく前に1度だけ、彼女の身近に「戦争」が迫ってきたことがあった。
ユニウスセブン落下事件の直前、オーブの宇宙港がテロリストのアッシュに襲われた時のこと。
家族で宇宙旅行に行こうとしていた少女の一家は、マスドライバーの上でシャトルの発進を待っていた。
しかし、いつまで待ってもシャトルは発進せず。
不審に思って外を見れば、両腕を無くしたアッシュが、シャトルごとマスドライバーを潰そうと降って来て――!

「……そういえば、『フリーダム』も倒されちゃったんだよね。あのお姉ちゃんも……」

嫌なことを思い出してしまい、少女の顔が曇る。
普段あまりニュースに関心のない彼女が、食い入るように見入ってしまったその速報。
モビルスーツの名前などほとんど知らない彼女だが、自由を意味するその名だけは忘れようにも忘れられない。
せっかくの気持ちのよい朝、思わず憂鬱な溜息が出る。
枕元にあったぬいぐるみ、SD化されたフェルト製の「フリーダム」を、ギュッと握る。それは少女の大切な宝物。

と――ふと少女は、窓の外、海の上に何やら光るものがあることに気付いた。
朝日を浴びて、何だか金色に光っている。
よくよく見てみれば、海の上に浮かんでいる影はそれだけではない。他にもいくつもの影が飛び回っている。
飛び回りながら、光る線が飛び交っている。時折、丸い爆発の炎も空に咲いたりして。

「え……!? あれ、何……!?」
「――大変よ! 起きて、起きて!」

少女が状況を理解するよりも先に、少女の部屋の戸が激しくノックされる。慌てふためく母親の声。
少女の返事を待つより早く、扉は向こうから開けられる。

「戦争が来るわよ! 避難しなきゃ! すぐに着替えなさい!」
「……戦争?」


              マユ ――隻腕の少女――

            第二十七話 『 集結する光 』
6隻腕27話(02/17):2006/03/22(水) 22:12:09 ID:???
たった1機のMSの出現が、戦いの行方を大きく変えようとしていた。

単機で飛び出した、黄金色に輝く目立つMS。当然ザフト側の攻撃はソレに集中するが……
弾速の遅いミサイルは、頭部の機関砲に撃ち落される。ビームは、弾き返される。
そして黄金のMSは、その手にしたビームライフルを連続して撃ち放つ。
威力はそのままに、速射性に優れたオーブ製新型ライフル『ヒャクライ』。
続けざまに放たれた雷のような閃光が、次々にザフトのMSの腕を、頭を貫き、無力化していく。

不思議と金色のMSの攻撃は、コクピットは撃っていない。
むしろ意識して外しているのか、一発くらい当たっても良さそうなものがまるで当たっていない。
センサーの集中する頭部か、武器を保持する腕か。バランスを取るのに重要な足か、飛行に不可欠な翼か。
その意図までは分からぬものの――撃たれた者は、戦闘の継続が困難な状況に陥って。
戦闘の継続を諦めて、母艦へと帰還する。あるいはコントロールを失い、フラフラと海面に落ちていく。
友軍機を見捨てるわけにも行かず、落ち行くバビを無傷のグフが拾い上げ、一緒に後方に戻る。
それが狙いとも思えぬが、しかしこの戦法、ただ撃ち殺すよりも多くの戦力を削っているのかもしれなかった。


たった1機のMSの出現は――しかしこのままでは、結局同じ結末へと向かうことになるのかもしれなかった。

確かに、金色のMSのいるその場所は、通れない。たった1機のMSとは思えぬ障壁となっている。
けれど、戦場は広い。ザフト軍は多い。
連合軍は相変わらず動こうとはせず、オーブ軍もやはり動けない。
オーブ本土からは、遠方から射程ギリギリの砲撃が放たれていたが、さほどの脅威にもなっていない。
アカツキが1部隊に足止めされている隙に、複数の部隊が大きく迂回してオーブに向かおうとする。

「くッ……! 彼らを行かせるわけにはッ……!」

キラは焦りの表情も露わに、奥歯を噛み締める。
たった1機で大軍を止めようという暴挙。最初っから無理のある話。にも関わらず、彼はなお諦めておらず。
アカツキの右遠方を突破しようとする部隊に、側面から牽制をかけようとして――

「――ッ!?」

突如、キラは殺気を感じて足を止める。咄嗟に構えた盾に、紙一重のタイミングで弾かれる光の刃。
フラッシュエッジ2、ビームブーメラン。弾かれてなおそれは回転を続け、自動制御で投擲した者の手元に戻る。

「ふぅん、イイ反応だ。機体性能頼りってワケじゃなさそうだなァ。少しは楽しめるか?」

――そこに居たのは、赤い翼を広げたMS。ふてぶてしい笑みを浮かべるシン。デスティニー。
さらに3つの影が宙を走り、アカツキをグルリと取り囲んで。

「多対1の戦いに慣れたパイロットのようだな。だが、我々4人なら」
「コイツは……この動きは、まさか!?」
「さすがオーブは悪趣味だな! この成金ヤロウ、叩き潰してやる!」

それはもちろん、レイのレジェンド。アスランの∞ジャスティス。コニールのガイアR。
ミネルバの精鋭4機が、アカツキ1機に狙いを定め――!
7隻腕27話(03/17):2006/03/22(水) 22:13:09 ID:???

「――ソガ一佐! 各部隊が前進の許可を求めています!」
「市民の避難、未だ完了していません! 一部で混乱が起きている模様!
 避難経路のいくつかが、展開した軍に遮られています!」
「クッ……!」

国防本部。その悲鳴飛び交う司令室の中で、ソガ一佐は苛立ちを噛み締めていた。
急に現れた「アカツキ」とかいう黄金のMS。カガリの「弟」との噂のある「キラ・ヤマト」の出現。
ソガ一佐程度のポジションでは、キラのことはあくまで噂であり、詳しい事情までは把握していない。
どうやらカガリの弟らしい、とか、フリーダムのパイロットだった、とか何とか。
それ以上のことは知らないし、またソガの職務上、知る必要もない事ではあったのだが。

「ユウナ殿のご命令……だと?!」

そんな命令、聞いてはいない。全ての情報が集まるはずのこの国防本部に、情報は届いていない。
アカツキについてもキラについても、軍に参加し前線に出てくるなど、カケラも聞いていない。

聞いてはないが――「アカツキ」というMSの名前だけなら、ソガは既に知っていた。
確かムラサメと新型量産機の座を争った……というより、採用試験に間に合わなかった幻のMSの開発名。
出てきた場所もモルゲンレーテの施設だから、おそらくテスト機を引っ張り出したのだろう、とは思うが。

「――どういう事ですかな、コレは」
「い、いや、どういう事と言われましても、我々にも……」

連合軍士官の上げたキツい声に、ソガは思わず口篭る。
国防本部に、主の如き態度で居座る連合の大佐――オーブに駐留する連合軍艦隊の、副官的存在である。
階級的にはソガと同等の地位ではあるのだが、事実上の発言力の差は言うまでもない。

「他ならぬ国家代表代理の名で、戦闘に関しては我ら連合軍に従うよう命令が出ていたはずですが……
 こんなことでは、貴国の信頼に関わりますな?」
「…………ッ!」
「見たところ、貴方がたもあの金色のMSを知らないようだ。
 ということは、何者かが代表代理の名を騙っているのでしょうな。
 その旨、周知徹底し、現場の混乱を抑えて頂かねば……」

どこか嫌味ったらしい大佐の言葉。俯くオーブ軍の士官たち。
命令さえ出てなければ、彼らは独自の判断で動けるのだ。連合軍士官さえ居なければ、自由に動けるのだ。
けれど、出された命令には逆らえない。逆らうわけにはいかない。少なくとも、ソガはそう考えていた
たとえ両手両足を縛られたとしても、その状況の範疇で努力する。それがソガの考える軍人像であった。
連合軍の連中に1つ2つ言い返すことはできるかもしれないが、彼らに逆らうわけには――
と、その時。急に扉が開き――

「――おいおい、何してんのさ。ちゃっちゃとMS出してちゃっちゃと防衛しちゃってよ。
 それとも何かな、妙な命令がボクの名前で出ちゃってるのかな――?」

どこか余裕さえ感じさせる、楽しげな雰囲気さえ感じさせる口調。
シャワーを浴び、髭はすっかり剃られ、髪は整えられ、以前のシャキッとした身なりを取り戻した青年。
背後に兵士を引き連れた代表首長代理ユウナ・ロマ・セイランが、自信に満ちた笑みを浮かべて――
8隻腕27話(04/17):2006/03/22(水) 22:14:05 ID:???

青い地球を見下ろす形で、白い影が空を駆ける。
巨大なロケット状のパーツに下半身を埋めた格好の、Sフリーダム。

それは、MSを単体で大気圏外に脱出させるための、大型ブースターだった。
連合軍が試作したが、結局コストや使い勝手などの問題で採用が見合わされ、破棄されたもの。
ジャンク屋が解体処分する寸前だったのを、ロウが話を聞きつけ、サイが買い取りに行ったのだった。
非連合系MSであるSフリーダムのためにジョイント部分を少し改造したが、それ以外はほとんど元のまま。

ブースターの全長は、一般的なMSの全長を遥かに超える。
MSはその突端にあるコネクタに両足を突っ込む形で固定され、ブースターユニットを制御するのだ。
MS用の追加装備としては爆発的な推力を誇るが、積載重量はMS1機が限界。しかも1回こっきりの使い捨て。
これだけ大掛かりな装置を使い、たった1機のMSを援護もなしに宇宙に上げて、どうしようというのか。
こんな状況でもなければ、確かに使い用のない欠陥兵器と言えよう。

『コイツで一旦宇宙まで出ちまう。宇宙でブースターを切り離し、大気圏突入しながらオーブに直接降りる。
 再突入の角度を定めるために、余計に地球を2周か3周はすることになるかな?
 ま、速度が速度だから、数周余計に回ったとしても、大して時間はかからない。
 面倒な連中がウジャウジャいる地上を行くより、よっぽど早いさ』

……とは、ロウの弁。
確かに遠回りだ。とんでもない遠回りだ。しかし、宇宙に出れば国境も戦線も空気抵抗もない。
誰にも邪魔されずに、オーブまで到達できる。
高緯度のスカンジナビアからオーブまで。一旦南半球の方に通り過ぎておいて、軌道を赤道近くに修正する。
修正しながら既に地球を2周して、マユの計算では、あと半周――

「大気圏再突入まで、あとちょっと……。そろそろ、減速とブースター切り離し準備を……」

オーブに降りるために、逆制動をかけるマユ。進行方向とは反対側に向かって、強いGがかかる。
パイロットスーツを着ずに飛び出してきた彼女の顔が、少し歪む。剥き出しの義手と義足が、少しだけ軋む。
それでもマユは、歯を喰いしばって前だけを見つめて――

「……?? あれは……?!」

そして、彼女は見た。遥か前方、減速したことで、ちょうど相対速度が同調することになった軌道上の存在。
マユと同様、今まさに地上に降りる準備を進める、無数の影。

それはあまりにもタチの悪い偶然。オーブ攻撃のために、地上へ降下しようとしているザフト軍の部隊だった。
数隻の戦艦がその腹の下に降下用ポッドをブラ下げている。ザフトの在庫を一掃する勢いで持ち出してきた物だ。
そして艦艇からはMSが次々と飛び出して、ちょうど今、そのポッドに乗り込もうとしている状況で――

マユは、下唇を噛んだ。この降下部隊、見過ごすわけにはいかない。彼らをオーブに行かせるわけにはいかない。
これだけの戦力が無防備な頭上から降ってきたら、オーブがどうなってしまうのか。考えただけでも恐ろしい。

「今彼らを止められるのは、あたしだけ……行くしかないッ……!」

彼女は大気圏再突入の作業を取りやめ、ザフト降下部隊と位置と速度を同調させる。
そしてそのままたった1機、恐るべき数の敵の中に、飛び込んでいく――!
9隻腕27話(05/17):2006/03/22(水) 22:15:12 ID:???
マユの足元でも、オーブへの道行きを急ぐ者たちがあった。
青い空、青いインド洋。輸送機が3機編隊を組み、赤道に沿う形で東に向かって駆ける。
それぞれMSを1機載せられる積載能力。輸送機としてはズバ抜けた速度。用意した「足」も凄いのだが……

「な……なんで『まっすぐ』行けるんだ!? どうしてこんな、スムーズに……!」
「それが『サーペントテール』の力です」

先頭を行く輸送機の、かなり広いコクピットブロック。浅黒い肌の女性・ロレッタが操縦桿を握る1機。
唖然とするアマギ一尉たちに、サーペントテールの少女・風花は小さな胸を張る。
アマギたちがあの街から動けなかったのは、どの道を選んでも進路上に連合やザフトが展開していたからだ。
どちらと遭遇しても面倒な立場。なんとか海上まで出られたとしても、パトロールなどと出くわす危険があった。
それなのにこの3機の輸送機の編隊は、最短の距離を最速で進みながら、何者にも遮られることなく――!

「リードの人脈と交渉で、開けられるところは開けてあります。
 ルキーニから買った情報で、この海域にいる双方の海上部隊の動きも把握しています」
「やれやれ、とんでもない力だな。正規軍も顔負けだ」
「今回の契約では何度戦っても報酬は同じですから。持てる力を最大限活かして、効率的にやってるだけです。
 以前劾が負けた時にも、同じような搬送をしましたしね。2度目ともなれば手際も良くなります」

カガリの呆れ混じりの賞賛に、風花は澄ました顔で答える。
そう、サーペントテールが「最強の傭兵」と謳われるのは、その直接の戦闘力のためだけではない。
この強力なサポートスタッフが「勝てる戦場」をお膳立てすることで、その最強神話を生み出しているのだ。

「とはいえ……我々の力でも、進路を確保できないエリアがありました」
「と、言うと?」
「見えてきました。もうすぐです」

風花の顔が引き締まる。見えてきたのは海峡の影。左右に陸地が広がり、狭い海路が正面に開いている。
同時に、輸送機のコクピットに通信が飛び込んでくる。厳しい口調の最終通告。

『こちらザフト・カーペンタリア基地。
 接近する民間航空機に告ぐ。この空域は許可の無い立ち入りが禁止されている。
 所属を名乗り、こちらの誘導に従うように。従わぬ場合、撃墜もありうる。警告は1度きりだ。
 繰り返す、接近する民間航空機に告ぐ……』
「だからって、従ってあげるわけにも、撃墜されてあげるわけにも行かないんですけどね」

ブチッ。風花の小さな手が通信機に伸び、ザフトの通信を途中で断ち切ってしまう。
そう――ここはカーペンタリア湾のすぐ北側。オーストラリア亜大陸とニューギニア島の間のトレス海峡付近。
インド洋からオーブに到達するには、確かに最短距離になる進路。
けれど同時に、ザフト最大の拠点、カーペンタリアの庭先で――!

「でも大丈夫。サーペントテールは、最強ですから。……そうでしょ、劾、イライジャ?」
『簡単に言ってくれるなよォ。ま、やれるだけやるけどさ』
『我々が進路を切り開き、そのまま足止めをする。ロレッタたちは構わず駆け抜ければいい』

随伴していた2機の航空機からの通信。優男とサングラスの男が、それぞれ風花の言葉に力強く頷く。
やがて2機の輸送機からMSが飛び出す。改造された専用のザクと、ブルーフレームセカンドL。
彼らはカガリたちの輸送機の進路上、雲霞の如く湧き出してきたMSの群に、臆することなく飛び込んで――!
10通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:15:47 ID:F93k/LWr
( ^ω^)age
11隻腕27話(06/17):2006/03/22(水) 22:16:07 ID:???

オーブ本土に迫るザフト軍を横目に見ながら。沖合いで、4対1の激しい戦闘が繰り広げられていた。

黄金のMSに突っ込む、∞ジャスティス。リフターの上に片膝ついて乗った格好。
その右手から放たれたビームライフルの射撃は、アカツキのヤタノカガミによって正確に跳ね返されるが……
反射さえも読んでいたアスランは、左手のビームシールドで受け止める。
受け止めつつ、動きの止まったアカツキに∞ジャスティスは突進して……
リフターのビームウィングが、アカツキを両断しようと迫る。仰け反るようにして紙一重でかわすアカツキ。

「この戦術は……機体だけじゃない、もしかしてッ!?」

キラは相手の正体に思い至り、驚きの声を上げる。がしかし、それ以上考えるヒマも与えられず。
∞ジャスティスは勢いのままに通り過ぎてしまったが、息つく間もなく赤い四足獣・ガイアRが襲い掛かる。
体勢の崩れたアカツキに、別の角度からビームブレードを広げて突進する。
だがアカツキは姿勢を立て直すよりも先に、素早くその右手だけを伸ばし……
なんと、ガイアRの鼻先を押さえてしまう。
そのまま押さえた手を支点にクルリと回転。体操の鞍馬のような動きで背後を取り、鋭い蹴りを放つ。
ガイアRは頭部のバルカンを放つ間もなく衝撃を受け、海面に叩き落される。海面に上がる、大きな水しぶき。

しかしアカツキのキラには、赤いガイアのダメージを確認する余裕もない。
黄金の機体の背後を取っていたレジェンドが、これまた瞬時に次の攻撃を仕掛ける。
円盤から伸びる6本の可動式の突起、それが全てアカツキを狙い、ビームのシャワーを浴びせ掛ける。
本数を数えるのもバカらしくなるような、高密度のビームの束。
キラの指がコンソールを走るが、しかし本数が多い。全てを反射させる余裕はない。別の設定にして受け流す。
ビームのシャワーはアカツキの周囲を「避ける」ように曲がり、斜めに海面に突き刺さる。

そして激しい水煙が舞い散る中、動きが止まったアカツキにデスティニーが肉薄する。
ビームサーベルの二刀流。両肩に装備されていたフラッシュエッジ2の、第二形態。
素早くアカツキも双刀型ビームソードを2つに分離し、こちらも二刀流で迎え撃つ。
唐竹、逆袈裟、突き、袈裟切り、逆胴――常人には視認することすら困難な速度で、双方の剣が駆け巡る。
その全てが、互いに止められる。デスティニーの左腕の小型シールド、アカツキの左手の盾。双方互角。
否、デスティニーには右手の甲のビームシールドもある分、アカツキよりも防御に余裕があるようで。
深刻なダメージこそないが、アカツキの側は何発か掠められ、その黄金の装甲に何筋かのコゲ跡が残る。
鬼神の如きデスティニー、その迫力に、アカツキは少しずつ陸地の方に押されていく。

「き……キミは一体ッ!?」
「ハーッハッハァ! なかなかヤルなぁ、お前ッ!!」

激しい剣戟の中、キラは驚き、シンは赤い目を見開いて笑う。
笑いながら……デスティニーの右手のサーベルが、すっぽ抜けるように遠くに飛んでいく。
一瞬、デスティニー側の操作ミスかと思ったキラだったが、しかし次の瞬間にはその意図に気付く。
いつの間にかブーメラン形態となって、大きく弧を描いてアカツキの背後から襲い来る光の刃。
咄嗟にキラは、逆手に持ち換えた右手のビームソードで叩き落とすが……
次の瞬間、背筋に悪寒が走る。いつの間に抜いていたのか、頭上に光る巨大な刃。
ブーメラン迎撃で隙の出来たアカツキに対し、空いた右手に巨大刀アロンダイトを握り締め、上段から。
この距離、この姿勢では――避けきれない。防ぎきれない。
連携もチームワークも何もなく、力任せに4連続で襲い掛かっただけのミネルバチームだったが。
ついにその刃が、アカツキの黄金の身体を捉える!
12隻腕27話(07/17):2006/03/22(水) 22:17:16 ID:???
空の上、軌道上でも、激しい戦いが繰り広げられていた。
ザフトの降下部隊のただ中に、単身飛び込んだマユのSフリーダム・ブースター。
それに対しザフトの側は……

「なんだ、アレは!?」
「熱紋照合、該当なし……光学映像分析、フリーダムの派生機と思われます。大型ブースター装備の模様!」
「ザフト側の識別信号なし。味方でないなら、敵だッ!」

いささか混乱しつつも、降下ポッドへのMSの乗り込みを一時中断し、この正体不明の存在を迎え撃つ。
ザクファントムが、グフイグナイテッドが、その手にした武器を乱入者に向け、容赦なく引き金を引く。
無数のビームが、巨大なブースターを備えた、速い、しかし見るからに動きの鈍い存在に襲い掛かる。
巨大な爆発が、巻き起こる。

だが、やったか、と彼らが思った、次の瞬間……爆発の中から、一筋のビームが飛び出して。
そのビームは彼らを掠め、彼らの後方、戦艦の下腹に吊り下げられた降下ポッドを何基もまとめて貫通し。

「なッ!?」
「降下ポッドが……! なんて射程と威力だッ!」

彼らが驚く間もなく、爆炎の中からMSが飛び出してくる。そう、撃たれたのは咄嗟に分離したブースターのみ。
現れたのは、フリーダムであって、フリーダムでないMS。
力強い印象の手足。金色に輝く関節。8枚の翼。
そして、その右手に握られている、ロングライフルは……

『はっきり言って、この『Sフリーダム』は、全般的に性能がダウンしちまっている。
 失われたザフト系の高級パーツを、オーブ系、アストレイ系MSのパーツで補ってるからな。
 前よりも整備や修理はラクになったはずだけど、数字上のスペックで言えば、確実に落ちてる。
 ただ、3箇所だけ……以前はなかった新機軸の武装を加えてあるんだ』
『マリューがマユの所に持っていこうとしてたのが、この3つの武器でね。
 高性能とはいえ2年前の旧式であるフリーダムを、今の技術で強化するモルゲンレーテの試作品。
 間違っても連合には渡したくないモノだったから、マリューもどう接触するか苦心してたらしいな』

ロウとバルドフェルドの説明が、マユの脳裏に蘇る。
3種類の新装備。1つはその8枚の翼。1つは前腕の装甲板。そして1つがこの、連結ライフル。
Sフリーダムは、降下部隊との距離を詰めながら、MSの身長ほどもあるロングライフルを連続して放つ。
長い射程。高い貫通力。精密な照準。ザフト側の作戦の要・降下ポッドが次々と破壊されていく。

『前の戦争でバスターを手に入れたモルゲンレーテが、連結砲の技術を流用して試作した新型ビームライフルさ。
 連結すれば、長射程・高威力のロングライフル。分離すれば、速射と取り回しに優れた2挺のライフルになる。
 ムラサメでの採用を狙って設計されたんだが……なにぶん、2挺拳銃を扱えるパイロットが居なくてなァ。
 倉庫の隅でホコリ被ってたのをマリューが見つけて、フリーダム用に再調整したんだ』

降下部隊との距離が近づく。降下を妨げられたMS部隊からの攻撃が、密度を増す。
マユはライフルを分離させて両手に持ち替えると、そのまま両腕を前に掲げる。
ザクが放ったビーム突撃銃の閃光が、Sフリーダムを捉えるかと思われた、次の瞬間……

「な……ビームシールドだと!?」
「あれは、ソリドゥス・フルゴール? それとも陽電子リフレクター?」
13隻腕27話(08/17):2006/03/22(水) 22:18:07 ID:???
前腕から広がる光の壁がSフリーダムを守る光景に、ザフトのパイロットたちから驚きの声が上がる。
そう、それはビームの盾。連合とザフト、それぞれ別の進化を遂げた、現時点で最先端の防御兵装――

『最先端の武器だから、当然モルゲンレーテも研究していたわけでね。
 大体、新しい技術が生まれる時ってのは、同じ時期にアチコチで同じような研究をしてるもんだ。
 コイツはその『オーブ製ビームシールド』の試作第1号。
 馬鹿みたいにエネルギー喰うから、今はフリーダム以外には使えないっていう代物だ。
 ……もっともその分、防御力は折り紙付きだがな』

バルドフェルドの言葉の通り、左腕に展開されたビームシールドは、降下部隊の攻撃を全て受け止めて。
2挺ライフルが、腹部ビーム砲が、両腰のレールガンが、逆にMS部隊に向けて乱射される。
腕を、頭を、足を吹き飛ばされ、MS部隊は次々に戦闘力を失っていく。

『ちなみに……性能低下が一番良く分かっちまうのが、この腰のレールガンさ。
 ゲイツRにも採用が検討されていた試作タイプが手に入ったんで、使ってみたんだけどよ。
 以前のフリーダムの3つ折り式に比べると、レールが短い分威力は低い。射程も短い。口径も小さい。
 ……ま、速射性と装弾数、整備性は良くなってるから、そうそう悲観したモンでもねェんだがな』

手数の多さでザフト側に立ち向かうSフリーダム。しかしそれでも、敵も素人ではない。
2機のグフイグナイテッドが、攻撃をかわしてSフリーダムの側面を取る。それぞれの手元から伸びる鞭。
Sフリーダムの右足が、左腕が、それぞれ赤く輝く鞭に絡め取られる。自由を奪われるマユ。
この機を逃さず、トドメを刺そうと襲い掛かるザクたちだったが――

『そして――最も強力な新型武装が、この翼だ。
 前の大戦でクサナギを含む3隻が最も苦戦した敵MSの武器を、オーブなりの解釈で再現したもの。
 と言っても、元の兵器は使う者を極端に選ぶ、使い勝手の極めて悪い代物だったんだが……
 研究の結果、その部分をある程度プログラム的に補うことが可能になった。
 最近になって『ある人物』が開発に参加したことで、一気に完成が早まってな』

片手片足を拘束されたSフリーダム、その8枚の翼が、弾ける。
光の尾を引いて射出された翼の一部。それぞれが独立した生き物のように宙を駆け、突端をザクやグフに向ける。
8枚の翼はそれぞれにビームを撃ち出し、ザフトのMSたちの手足を貫いてゆく。
Sフリーダムを拘束していた2機のグフも、それぞれに腕を撃ち抜かれ、Sフリーダムは自由を取り戻す。

かつてドラグーンに要求された、高度な空間認識能力。常人には不可能だった情報処理。
それを制御プログラムの方がある程度代行することで、より多くの者に使えるように仕立てたもの。
言ってみれば、従来型のドラグーンと自律行動ロボットとの中間のような存在だ。
従来型と比べるとその行動パターンはいささか自由度を失い、パターン化していたが……
しかし、エース級の敵を相手にするのでもなければ、これで十分。
それぞれのドラグーンが独立した生き物のように動き回り、グフやザクに襲い掛かる。。

……それでも、彼我の数の差は埋めがたいものだった。
Sフリーダムの新武装も、その最初の驚きが去ればやがて対応されてしまう。
前後左右から数で迫るザクとグフの群れ。密度を増す攻撃。次第に捌ききれなくなってきて。
はッと気付いたマユが振り返った時には、もう遅い。
ついにザクの1機が、Sフリーダムの無防備な背後を取り、ビームトマホークを振り上げて……!
14隻腕27話(09/17):2006/03/22(水) 22:19:02 ID:???

オーブ軍が、前進する。
遅まきながらも発せられた命令に従い、連合軍を置き去りにする格好で、前進して迎撃を始める。
動き出すのが遅かったせいもあって一部は陸地に到達されていたが、しかし多くは海上で。
シュライク装備型のM1が、ムラサメが、グフやバビたちと激しい空中戦を繰り広げる。
海中から迫る水陸両用機に、一部のムラサメがぶら下げていた大型対潜ミサイルが襲い掛かる。
我慢していたモノを解き放つようなその勢い。ザフトのMSたちは、圧倒される。

一方、連合軍の中にも、そのオーブ軍を支援するような形で動き出す者たちがいた。
ビルの陰から出て、海岸線から砲撃を開始するウィンダム部隊。山を降り、海上に飛び出すユークリッド。

「貴様ら! 命令に反するつもりか?!」
「オーブ軍が出ちまったからには、仕方ないでしょう?! 連携しないと」
「それに、このままここで戦って街を焼くのは、気分が良くないですしねぇ」
「貴様らッ……! こんなコーディと一緒に暮らしてる連中など、どうでも……」

勝手に動き、オーブ軍と共に戦いだした部下たちに、連合軍の隊長が怒鳴る。
先ほどムラサメ隊を馬鹿にし、嘲りの声を上げていた男だ。しかし、部下たちは……

「ソレですよ。いや、隊長がブルコスだろうが何を信じてようが構わんのですがね。
 ソレで目が曇っちまうようなら、コッチはタマランですよ。
 そもそもの作戦目的はザフトの撃退……連携取れなきゃ、勝てるモンも勝てんでしょうが」
「この土地はオーブの連中のモノですからね。普通に考えりゃ、連中に従って戦うのが一番効果的ですわ」

そう、連合軍の中でも、ガチガチのブルーコスモスシンパというのは、決して多くない。
ましてや、コーディネーターを認めている、というだけで、オーブのナチュラルまで憎むような奴というのは。
ただ多くはないが、組織の上層部に食い込んでおり、下に命令を下せる立場に居る。
居るのだが……しかしこのように、現場の兵は必ずしもそれを良しとしてはいなかったのだ。
彼らは軍人。真の意味での軍人。その本分は、力なき市民を守ること。

「後で軍法会議でも何でもして下さいや。営倉入りくらいは覚悟してまさァ。
 ま、それもこれも、この戦いの後に生き残っていれば、の話ですがね。
 隊長の偏見のままに依怙地張ってちゃ、生き残れるモンも生き残れませんわ」
「……ッ!!」

すっかり部下の信を失った格好の隊長機1機をその場に残し、ウィンダム隊は前進する。
そしてこんなやり取りが、この場のウィンダム隊だけでなく、連合軍のあちこちで見られて――
15隻腕27話(10/17):2006/03/22(水) 22:20:13 ID:???
「フゥ。なんとか間に合ったみたいだねェ。
 いやさ、現状把握と戦力確保に時間喰っちまってさ。父に気付かれないよう準備を進める必要があったから」

国防本部、動き出した戦場を俯瞰しながら溜息をついたのは、ユウナ・ロマ・セイラン。
彼の背後には武装したオーブ兵。率いるのはレドニル・キサカ一佐。
ちなみにキサカは軍服ではなく、タンクトップにバンダナを巻き、小銃や弾帯を肩から掛けたゲリラ兵スタイルだ。
かつてクサナギに乗っていた宇宙軍所属の兵を、ユウナが臨時に緊急招集したのだ。
ウナトの方でも、もしユウナが何らかの動きを起こせば察知できるように手を打ってはいたのだが。
宇宙軍の兵士を、地上で歩兵として利用する――そのユウナの発想自体が、一種の不意打ちだった。

「それで――父は今、どこに居るのかな?」
「防衛は連合の方々に任せる、と言い残し、シェルターへと入られた模様ですが」
「ふぅん……セイラン本邸の地下には、居なかったしなぁ。コイツは見つけるのが面倒そうだ。
 ジブリールの方はどうなってる?」
「我々はジブリール氏については把握していません。ただ恐らく、ウナト殿と行動を共にしているかと」

ユウナの問いにソガ一佐はスラスラと答える。
司令部の隅では、先ほどまで主人面をしていた連合の大佐が怒りに身を震わせていたが、眼中にない。

「――キサカ。ボクの方はもう大丈夫だろう。父も穴熊戦術を決め込んだらしい。
 キミはこのままクサナギの兵を率い、父とジブリール氏を見つけ出してくれ」
「了解だ。ここは任せたぞ」
「片方だけでも捕らえたら連絡をくれよ。ボク自ら問いただしたいこともあるからね」

ユウナの言葉にキサカは頷き、兵を引き連れ国防本部を飛び出していく。
キサカの表情こそ岩のように変わらぬが、どこか生き生きとしている。根っからの前線指揮官なのだろう。
そして、その場に残されたユウナたちは……

「しかし……ユウナ殿が押し込められていたとは、我ら一同まるで知りませんでした。
 カガリ様の不幸なニュースに、寝込まれたとは聞いてましたが……」
「まあね、それもあったのだがね。しかし絶望などしてられないよ。あんなニュースを聞いてしまえば」
「あんな……ニュース?」

ソガの嘆息に、ユウナは涼しい顔で微笑む。もったいぶってその事実を告げようとした、その時……
地の底から響くような声が、それを遮る。

「貴様ら……どこまでも我々を馬鹿にしくさりおって……!
 このちっぽけな国がどうなっても構わぬとでも言うのか……!? 吹けば飛ぶようなこんな国がッ……!」

それはすっかり無視されていた連合軍の大佐。連合側の指揮官。
憤怒の表情は、それが単なる脅しでないことを告げていて。
物凄い形相でユウナたちを睨みつけるが、しかしユウナはどこ吹く風。

「ん〜、でもさぁ、どーせ近いうちにキミたちとの関係も終わりだろうしねェ」
「なッ!?」
「キミたち、最初の約束破ってオーブに軍を進めたろう?
 ボクや父はともかく、あのどこまでも真っ直ぐなお姫様は、こーゆー裏切りを絶対に許せない人なんだなァ。
 彼女の無事が分かっちゃった以上――オーブと連合の関係は、『ここまで』ってことなのさ」
16隻腕27話(11/17):2006/03/22(水) 22:21:08 ID:???

ついにアカツキの身体を捉えた、アロンダイト――
しかし、斬り飛ばされたのは、その左腕だけで。
ゼロ距離で、アカツキの両脇の下から顔を覗かせたオオワシパックの大砲が火を噴く。
かろうじて左手の盾で受けたデスティニー、しかしその一撃で小型の実体盾は吹き飛ばされる。
弾き飛ばされるようにして距離が離れ、仕切りなおす形で向かい合う。

デスティニー。レジェンド。∞ジャスティス。
コニールのガイアRは未だ海に落ちたきりだったが、それでも3対1。
アカツキの側は左腕を半ばから失い、それと共に盾を失い。
一方のミネルバ側は、デスティニーが盾とフラッシュエッジ2を失っただけ。残る2機は全くの無傷。
キラの不利は、未だ変わらない。しかも――

「やはりあのビームの反射は、ゲシュマイディッヒ・パンツァーの応用だったようだな……
 ビームと発振機の距離が近い『ビームの刃』に対しては、力負けして無力化するのも同様だ。
 そして本数が多くなれば捌ききれないことから、おそらく自動処理ではなく、手動処理……
 反射だけでなく、受け流すこともできたのは予想外だったがな。
 それでも、反射や受け流しの最中は、動きが止まるのは重要な攻略ポイントだ」

レジェンドを駆るレイが、冷静に分析する。無敵にも思えるアカツキを、冷徹な観察で丸裸にする。
彼らとて無闇に攻撃を仕掛けていたわけではない。仮説を検証するための攻撃の数々だったのだ。
ネタさえ割れてしまえば、さほどの脅威ではない。ましてや盾を失った今、打つ手は色々と考えられる。
一方、∞ジャスティスのアスランは別のことで頭が一杯で。奥歯を噛み締めると、通信機に手を伸ばす。

「……その黄金のMS……乗っているのはキラ・ヤマトだな?」
「……!! やはり、アスラン?! アスラン・ザラなのか!?」

互いに名を呼び合う2人。どちらも気付いてはいたが、信じたくなかった邂逅。
2年間の時間を経て、改めて銃を向け合う。

「何故だ!? 何故お前が今頃になって、俺たちの邪魔をする!?」
「アスランこそ、何故!! 何故オーブに銃を向けるんだ!?」
「……そうやってこちらの質問には答えないんだな、お前たちは。
 いつもそうなんだ。答えを持たず、問題を先送りし、目の前の事態に場当たり的に挑むだけ……!」
「あ、アスラン……!?」

俯いて肩を震わせるアスラン。戦場の只中ということも忘れ、彼の意図が掴めず首を傾げるキラ。
だが次の瞬間、∞ジャスティスは凄まじい勢いでアカツキに襲い掛かる。
隙を狙っていたレジェンドやデスティニーが手を出すヒマもない。
右手にビームサーベル、左手の盾にビームブレードを出して、アカツキに斬りかかる。

「だが――俺は違う! もう答えを引き伸ばしたりしない!
 議長が『答え』を出したんだ! 2年前の『宿題』の答えを、出したんだ!
 カガリを泣かせることになっても、俺は立ち止まるわけには行かないんだッ!!」
「なっ……アスランッ!? それは違うッ!」

アスランの頑なな信念、それに疑問を投げかけんとするキラの叫びは、∞ジャスティスの鋭い蹴りに遮られる。
激闘が再開される。再び3対1。ただひたすらに、アカツキは防戦一方――
17隻腕27話(12/17):2006/03/22(水) 22:22:15 ID:???

青い地球を眼下に抱き。Sフリーダムの背後で、ザクウォーリアの1機がビームトマホークを振り上げる。
この距離この体勢では、かわしようがない――!

「やられるッ……!?」

思わず悲鳴を上げるマユ。だが、いくら待ってもその衝撃は襲ってこない。
見ればザクは、斧を振り上げた姿勢で固まっている――否、その腕を見えない「何か」に掴まれて……!

「――やれやれ、援護もないのに無茶をするものだな。だが、嫌いではないぞ。そういう勇敢な戦士は」

虚空から入る通信。何もなかったはずの空間から、滲み出るように出現する黒い影。
Sフリーダムの背後を取ったザクの、さらに背後を取っていたその影は――

「アストレイ・ゴールドフレーム<アマツ>……! ロンド・ミナ・サハク、オーブの影の軍神!?」
「ほぅ、良く知ってるな。義兄のユウナから聞いたか?
 セイランの娘だな? そのフリーダムはロウ・ギュールの手による改修と見た。
 我がプロト01の技術を転用した金色のフレーム……全く、いつの間に技術を盗まれていたのだろうな?」

ロンド・ミナ・サハクの唇の端が、どこか楽しげに吊り上げられる。
ギリギリとザクを締め上げていた巨大な牙、マガノイクタチが、とうとうザクの腕を食いちぎる。
片腕と引き換えに解放されたザクは、しかしピクリとも動けずに漂っていく。
バッテリー内のほぼ全エネルギーを吸い出されてしまったのだ。無力化兵器マガノイクタチの、特殊能力。

「な――ミラージュコロイド、だと!?」
「しかし、1機が2機になったところで!!」

突如現れた乱入者に、ザフト側のMS隊は一瞬驚いたものの。いきりたって、一斉に襲い掛かる。
がしかし、ミナの余裕は揺らぐことなく。

「話は後だ。援護しろ、セイランの娘」
「は、はいッ!」
「では――踊れ、ザフトの者どもよ! 我らの手の中で!」

突っ込んでくるグフとザクの群れに、逆に嬉々として飛び込んでいくミナ。
先ほど牙のように敵を捉えていた背部のパーツが、翼のように広がって……その中から、何かが射出される。
ワイヤー付きのスパイク。先端部をPS装甲に覆われた強固な銛、マガノシラホコ。
左右の翼から放たれて、変則的な軌道を描いて敵を襲う。次々に貫かれてゆくザクウォーリア。

攻撃のために動きが止まった隙を見逃さず、グフの1機が大胆にも正面から迫る。上段から振り下ろされる剣。
しかし、振り下ろされたビームソード・テンペストは、天に届かない。途中で止まってしまう。
僅かに下がって間合いを外した天が、その先端の実剣部分を片手で捕まえていたのだ。
指2本での真剣白刃取り。超人的な反射神経。グフ渾身の剣が、ピクリとも動かない。
お返しとばかりに天の左腕の巨大な鉤爪、ツムハノタチが振るわれて、一撃でグフをズタボロにしてしまう。

圧倒的な近接戦の強さを見せる天。ならばとばかりに、ザフトのMSたちは射撃で仕留めようと距離を開ける。
だが、そうやって下がった敵は、今度はSフリーダムが撃ち抜いていく。ドラグーンを含めた無数の火線。
近づけば天、距離を置けばSフリーダム。即席コンビとは思えぬ巧みな連携が彼らを圧倒する。
18隻腕27話(13/17):2006/03/22(水) 22:23:09 ID:???
さらに、戦闘続く宙域に、新手が現れる。遠方から接近してくる戦艦、その数2隻。
長距離から放たれた、太いビーム。イズモ級戦艦1番艦、イズモが搭載する陽電子砲の一撃。
それが、なおも降下ポッドを温存していたザフトの戦艦を、掠める。
閃光に飲み込まれ次々と弾ける降下ポッド。戦艦自体は中破程度の損傷だが、降下ポッドは全滅で。

そしてなおも接近する2つの戦艦から、いくつかの機影が飛び出す。
イズモからは、M1Aアストレイ、制式レイダー、ソードカラミティの3機が。
連合系の戦艦オルテュギアからは、ガンダムタイプのMSが1機と、少し時代遅れなMA・メビウスが10機。
それぞれ出撃して、ザフト側のMSに襲い掛かる――

「我が忠実なる僕・ソキウスの3人と、このために雇った傭兵部隊X。
 元々、ザフトの降下部隊は我々の手で食い止めるつもりだったのだよ。
 しかしフリーダム無しでは多少討ち漏らしていただろうな。感謝するぞ、セイランの娘よ」

ミナは手近な敵を蹴散らしながら、感謝の言葉を口にする。彼女には珍しい素直な言葉。
それぞれに高い個人技を見せるソキウスの3機。ドレッドノートHを中心に高度な連携を見せる傭兵部隊X。
戦闘は集団戦へと突入する。戦況は一気にひっくり返る。
余裕ができたところで、ミナは天をSフリーダムに寄せて。マユを庇うような姿勢で微笑む。

「セイランの娘、こやつらを止めるために来たのではないのだろう?
 ここは我らに任せよ。代わりに戦ってやる。急ぎオーブへ降りて……」
「お願いが、2つあります」
「……ほう? この私に、お願いとな?」

ミナの言葉を、マユは途中で遮った。
笑うような表情の、しかし眼だけは笑っていないミナの顔を、真正面から見据える。

「1つめ……その、『セイランの娘』というの、やめてもらえますか?
 私は、マユ・アスカです。セイラン家の養女としてではなく、マユ・アスカとして戻ってきたんです」
「ふむ。名門の名を捨てるか。ま、好きにするがいい。それも自由だろう」
「2つめ……できれば、できるだけ殺さないようにして貰えますか? 私の代わりに戦う、と言うのなら」

1つめの願いは軽く聞き流したミナだったが、2つめの願いには表情が変わる。目が細められる。
魂の底から凍りつくような、厳しい眼つき。前にも増した眼光でマユを射抜かんとする。

「戦っておいて殺したくない、か。これは笑わせてくれる。
 何故だ? 何故殺すな、と? 偽善ぶりたいだけの甘えならば聞かぬぞ?」
「いいえ――偽善とか、甘えとか、そういうつもりじゃないんです。
 殺さなければそれでいい、とも思ってませんし、他の人に要求するのが正しいかどうかも分かりません。
 ただ……」

ミナの視線に全く臆することなく、真っ向から見返して。マユはきっぱりと言い切る。

「ただ私は、『恐怖』をできる限り減らしたいだけなんです」
「……恐怖」
「恐れでもって敵を、人を縛る。それは簡単で効果的な方法でもあります。
 けれどそのやり方は、同時に怒りを生みます。憎悪を、復讐心を生みます。
 恐怖と怒りと憎悪に縛られたヒトは、暴走します。新たな憎悪の連鎖を生み出します」
19隻腕27話(14/17):2006/03/22(水) 22:24:23 ID:???
「…………」
「私も、一度それに囚われました。囚われて、同じように恐怖で他人を縛ろうとしました。
 けれど、それに気付いた今だからこそ、ここで止めたいんです。せめて減らしたいんです。
 命を助けることで、どの程度恐怖と憎悪を軽減できるかまでは、分かりませんが……」
「…………」

言葉を選びながら、それでも上手く語りきれない様子のマユ。
恐怖と、憎しみの連鎖――それは、簡単に答えの出る問題ではない。まだマユにも消化しきれていない。
消化しきれないながらも、当面の「手段」として見出した「できるだけ殺さない」という「方法」。
それは期せずして、かつてキラ・ヤマトが戦場に舞い戻る際に己に課したルールと、同じものだった。
不十分との自覚はある。甘いのかもしれぬとの自覚もある。だが、それでも――!

闇に生き、裏の仕事を重ね、汚い世界を沢山見てきたオーブの闇。サハク家の娘、ロンド・ミナ・サハク。
そんな彼女にとっては、バカバカしく聞こえるかもしれない、マユの綺麗事。
だがミナは、軽く笑った。鼻先で笑い飛ばしたのではなく――浮かんだのは、実に柔和な笑み。

「そうか、『恐怖』で人を支配するな、か。――我が愚弟にも聞かせておきたかったな、その言葉」
「??」

かつて、他ならぬゴールドフレーム天で戦場を駆けたミナの双子の弟、ロンド・ギナ・サハク。
連合もザフトも無差別に襲い、「この屍の山が我らオーブの強さを伝えるのだ」と笑っていた彼。
恐怖を利用し覇権を目指した彼は、しかしそれを良しとしない者たちの前に敗北し――
愛する弟の敗北と死がなければ、ミナもまた、今でも同じような過ちを繰り返していただろう。
――もちろんそんな過去は、マユの預かり知らぬことであったのだが。

「良かろう。我らもできるだけ殺さぬように務める……それでよいな、マユ?
 では急げ。そろそろ降下を始めないと、また余計に地球を回ることになるぞ」
「はい! ありがとうございます、ロンドさん!」

元気よく返事をすると、Sフリーダムは眼下の地球に向けて身を翻す。
その背を庇うように位置を取るゴールドフレーム天。マユを追おうとする敵の前に立ち塞がる。
ミナの口元が、苦笑に歪む。

「しかし、厳しい条件をつけてくれたものだな、マユ・アスカ――
 『恐怖』をなるべく与えるな、というなら、ミラージュコロイドも迂闊に使えんではないか。
 まあ、いい。アマツの力は、隠身だけではない。正々堂々、存分に戦ってやる。
 ……ソキウス! それに傭兵! マユの言葉、しかと聞いていたな?!」
『理解しました。戦闘パターンを修正します』
『冗談じゃない、と言いたいところだが……どうせ命令するんだな?』
「その通りだ、カナード・パルス。出来うる限り殺すなよ。マユの頼みだ」
『依頼主のご命令ならば仕方ありません。作戦途中での条件変更に伴う追加料金、しかと頂きますよ?』

ミナの言葉に、ソキウスが、カナードが、そして傭兵部隊Xのサポートスタッフ・メリオルが、返事をする。
ミナは頼りになる部下たちと共に、それでもなお数に勝るザフト部隊と真正面から向き合って。
地上に向かう流星と化したSフリーダムを横目に、ミナはニヤリと笑う。

「では――改めて踊れ! 我が手の中で!
 怒りに捕らわれることなく、恐怖に捕らわれることもなく――ただ無力を噛み締め、この場を諦めろ!」
20隻腕27話(15/17):2006/03/22(水) 22:25:35 ID:???

海岸線を中心に、激しい戦闘の続くオーブ攻防戦。その激戦区から、少し離れた海岸に、巨大な影が上陸する。
濡れそぼった赤いボディ。砂浜を踏みしめる4本の足。
アカツキに海中に叩き込まれた、ガイアRである。

「まったく、えらい目にあった……。コクピットの中まで塩水だらけだ」

コニールはぼやく。パイロットスーツのお陰で直接肌は濡れていないが、気分の良いものではない。
海中から上に出るその瞬間こそ、最も敵に狙われ易い無防備な瞬間。
だからコニールは、少し戦場から離れたところまで離れてから、上陸したわけだが。

「しかし、どーしたもんだか……ん?」

シンたちの所に戻り一緒に戦うか、それともこのまま手近な敵に襲い掛かるか。少し悩んだ彼女だが。
ふと、通信機から飛び込んでくる音声に気付く。
それは先ほどまで一緒に戦っていた、∞ジャスティスが誰かと交わす怒鳴りあい。
見上げれば、ここからも見える遠くの海上で、両者が激しくぶつかり合っている。

『……ガガッ……んでお前は分からないんだ!』
『だからって! ……ガガッ……が居るんだ! ごく市民に巻き添えを出して、何が正義だ!』
「こいつは……こいつらはッ!」

その内容に――その、ちょっと聞いただけでは何でもない会話に、コニールの怒りが沸騰する。
アスランと怒鳴りあっているのは、おそらくあの成金趣味のMSのパイロットだろう。オーブの者だろう。
文脈は良く分からぬが、市民の巻き添えが出る、とアスランを、ザフト側を非難している……
しかしそれこそ彼女には許しがたい言い草。端的に言ってしまえば、

「お前らが言うな……! お前らだけはソレを言うなッ……!
 ガルナハンを蹂躙した貴様らに、ソレを言う資格はないッ……!」

それはある意味、言いがかりに近い憎悪だったのかもしれない。難癖に近い憎しみだったのかもしれない。
ガルナハンの一件でも、オーブ軍はあくまで暴走する連合兵を止める立場だったのだ。
けれど、コニールの中では、あれは全てオーブ軍と……が悪いことで。

「なら、アンタらも無力を噛み締めろッ! そんなに守りたいというソレを、アンタらの目の前で……!」
『そうだ、コニール。それでいい。今の話、聞こえていたな?』

狂気の混じった表情でブツブツと呟くコニールに向けて、入る通信。
コニールの所属する隊員2名のMS部隊・アスカ隊の隊長。シン・アスカだった。
∞ジャスティスとアカツキの激しすぎる戦闘に、デスティニーも手出し出来ずに見守っていたのだが。
彼もまた壊れた笑顔のまま、恐るべき指令をコニールに出す。

『どっか適当に探して、オーブの一般市民を見つけ出せ。1人や2人、きっとその辺に居るだろう。
 見つ出して、奴に見える所で、奴に分かるように踏み潰せ。
 金色からの攻撃には気をつけろよ。そっちに気を取られた隙を見て、俺が背中から斬って捨てる』
「フフフ……! なるほどね。了解だ、シン!」

そして赤いガイアは、そのモノアイをギラリと光らせて……!
21隻腕27話(16/17):2006/03/22(水) 22:26:32 ID:???

オーブ首長国連合は、ザフト軍の攻撃を受けていた。
沖合いに居並ぶザフトの艦艇。襲いくるグフとバビ。迎撃するウィンダムとムラサメ。
閃光と爆発が飛び交い、あちこちに火の手が上がる。
オーブは、揺れていた。

そんな激しい混乱の中、山の中を駆ける家族の姿があった。
夫婦と少女。港に向かって駆けてゆく。
彼らが本来最初に向かうべきシェルターへの道は、連合軍の部隊が遮っていて。
父親は先導するように駆け、母親は幼い少女の手を引いて走る。

と、少女は木の根に足を取られかけ、たたらを踏む。
転倒こそしなかったものの、片手に大事に抱えていたぬいぐるみが、こぼれおちる。
斜面に沿って転がり落ちていく、フェルト製の2.5頭身MS。角と翼を持った白いボディ。

「あーッ! あたしのフリーダム!」
「そんなのいいから!」
「いやーッ! フリーダムーッ! ひーろーうーのー!」

駄々をこねて手を延ばす少女。引き止める母親。しかし短い腕を伸ばしたところで届くはずもなく。
駆け続けた一家の足が、一瞬止まる。山道の途中で、無防備な姿を晒す。

と――急に頭上が陰ったかと思う間もなく。
一家のすぐ近くに、大重量が着地する。激しい振動。踏み潰されて消える、フリーダムのぬいぐるみ。
見上げればそこには、巨大な赤い四足獣。怪獣映画のワンシーンのような、奇妙に現実味のない光景。
赤い獣は、ギラリとモノアイを輝かせると、その巨大な前足を、一家の頭上に振り上げて……!


「や……やめるんだッ!?」

キラは叫ぶ。脳裏に蘇る、守れなかった者たちの姿。撃ち抜かれるシャトル、撃ち抜かれる避難艇。
∞ジャスティスやレジェンドやデスティニーに背を向け、その手を伸ばすが――もう間に合わない。

「お……お前ら、何をッ!?」

無防備なアカツキの姿に追い討ちをかけることもせず、アスランは叫ぶ。叫ぶが、何もできない。
まさか、シンたちがこんな非道な作戦を平然と行うとは、アスランの想像を超えたことで。

「クハハッ……! 強いクセに、弱っちい奴らに引きずられやがってッ!」

背を向けたアカツキの姿に、シンは哂う。哄笑しながら振り上げるのは、自慢の対艦刀アロンダイト。
巨大な刃が、アカツキを一刀両断しようと迫る。

「ぬくぬくと戦争を知らずに生きてるというだけで、万死に値するッ!
 ガルナハンの恨み、その千分の一でも……思い知れッ!」

そしてコニールの暴走する憎悪の叫びのままに、その赤い前足が――!
22隻腕27話(17/17):2006/03/22(水) 22:27:26 ID:???

ガイアRが、その足を踏み下ろさんとした、まさにその時――
真上から降ってきた一本の光が、赤いガイアを貫く。
3本の足で立っていたガイア。その左の後ろ足を貫かれ、右前足を振り上げた姿勢のまま横倒しになる。
踏み潰されそうになっていた一家は、間一髪で難を逃れて。訳も分からぬまま、頭上を見上げる。

はるか上空、今まさに宇宙から舞い降りてきた、白い影。
フリーダムであって、フリーダムでないMS。
力強い手足。金色に輝く関節。8枚の翼。
その手にロングライフルをたずさえたまま、4本のシャープなアンテナの下、ツインアイが周囲を睥睨する。

「あッ……ああッ……! あれは……!」
「フリーダム……なのか……?!」

戦場の視線が、突如出現した1機に集中する。
オーブ兵が、ザフト兵が、連合兵が。
オーブの市民が、国防本部の者たちが、そして助けられた一家が。
ことごとくSフリーダムの姿を仰ぎ見る。

「ふ――フリー、ダム? で、でも、あれは……!」

そしてその出現に誰よりも衝撃を受けていたのが――デスティニーを駆るシン・アスカ。
目の前のアカツキ、その無防備な背中に剣を叩き込むことも忘れ、凍りつく。
シンの唇が震える。目が見開かれる。デスティニーの手から、力なくアロンダイトがこぼれ落ちる。

「あ……ああッ……あああああああッ! マユッ! マユなのかッ!?
 でもマユは、俺がこの手で……こ、この、手で…………うわぁぁぁあぁぁぁぁッ!!」

シンは頭を抱えて、大きな叫びを上げる。
それは強化の代償。封じられたはずのトラウマの暴走。
強化人間エクステンデッド、そのブロックワードに対する、過剰反応――!


全ての視線がSフリーダムに集中し、戦場の動きが止まった、その時。
この最高のタイミングで、別の方向、西の海上にも、新たな機影が現れて。
戦場の動きが止まっていることを見て取った彼女は、これ幸いと戦場の全員に向け通信を放つ。

『――オーブ軍、ザフト、連合軍、全軍に告ぐ。即刻、戦闘を停止せよ。
 私はカガリ・ユラ・アスハ。オーブ派遣艦隊の生き残りである。
 繰り返す、両軍即刻戦闘を停止せよ。私はカガリ・ユラ・アスハ――』

単機オーブに帰還した、見慣れぬ黄色いムラサメ。
画面の向こうには、誰もが見間違えようのない、カガリ本人の姿。
Sフリーダムの登場とのダブルパンチの衝撃に、戦場の誰もが、思わずその動きを止める――!


                      第二十八話 『 新たなる道 』 につづく

というわけで、マユとカガリが戻ってきたところで〆。オーブ攻防戦は3話に渡ることになります。
しかしすっかり悪役な役回りで、コニール&シンのファンには申し訳ないです……


・冒頭の少女
 2話終盤で名無しで出てきた「シャトルの中の女の子」再登場です。

・SDフリーダムのぬいぐるみ
 2.5頭身(BB戦士くらい)でフワフワのぬいぐるみは、ゲームセンターのクレーンゲームの賞品。
 2年前の戦争の時に活躍したMSがほぼ揃ったシリーズでしたが、最近のオーブではフリーダムだけが大人気。
 アッシュの襲撃事件の後、少女がなけなしのお小遣いを注ぎ込んで獲得した、大切な品物でした。
 ……本気でどうでもいい裏設定です。はい。

・Sフリーダム・ブースター
 本編で出てきたストライク・ブースターのブースター部分をSフリーダムに装備させました。
 あれってかなり汎用性ありそうな雰囲気ですからね。

・Sフリーダムの武装
 というわけで、マリューが運んでいたのはあの3つの武装です。
 型番とか厳密に考えるとちとおかしいんですが、そこは試作品ということで1つ。
 (前回アビスと同じ大砲、というネタを使っておいて矛盾した態度ではあるんですが)

・ゴールドフレーム天
 文中では天と呼んでますが、ツムハノタチがあることから分かる通り、俗に『天ミナ』と呼ばれる改修版です。
 なんでも天ミナは読者向けの通称で、劇中的には最後まで天のままだそうですから……。

・カガリ専用ムラサメ
 こちらもガイアR同様、バルドフェルド専用ムラサメ(通称トラサメ)そのままの外見。持ち主変更。
 いきなり出てきたこの機体の由来については、次回少し補足する予定。


次回はこれほど間を空けないようにするつもりですが……確約はちょっとできないですねぇ。
ま、間が空いても続けるつもりですので、気長にお待ち下さい。では。
24通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:39:20 ID:???
リアルタイム乙!!
25通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:44:53 ID:???
マユとキラは不殺かぁ(゚∀゚)

敵との戦闘中に乗機が武器を失ったらめちゃくちゃ恐怖すると思うんだけどなぁ。
むしろエグいやりかたな気が。
戦ってる味方に自分を助けてくれる余裕があるかわからんし、いつ敵に撃たれるかわからんし。
キラが戦闘力を奪った機体は、余裕のないオーブ軍や連合軍の機体が撃っちゃうこともないのかなぁ。
26通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:50:02 ID:???
うーむ、キラin暁がちょっと強すぎじゃね?というのが第一印象
コニールはともかく、シン・レイ・凸の凶悪トリオを相手に凌げるなんて原作でもそこまでは…

それにマユは不殺を決意したまではいいが、ただでさえ性能の劣るS自由で、そんなんでシンに勝てるのだろうか?
シンがマユの件で自滅してくれるくらいしか可能性は見いだせないな…
27通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:51:02 ID:???
隻腕たん、負債みたいなことはやめてくれよ…
負債と違って、シンやコニールの変化に説得力があるから
ああいう展開なのは別にかまわんのだがね。
オーブやそれに属する人間だけが正しくて、
ザフトや連合のブルコス将校はガチな糞野郎という展開は
本編だけでお腹いっぱいなんですよ、正直。
前々から思ってたんだけど、これからもこの展開が続くと、
隻腕の更新が苦痛になりそうなんで心を鬼にして言わせてもらうわ
28通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:57:08 ID:???
マユは不殺を始めちゃったかあ、実際宇宙で不殺されたらそのまま回収されずに宇宙を永遠に漂う羽目になる可能性があるだよなあ
29通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:57:14 ID:???
皆はどうあれ、俺は隻腕にGJと言わせてもらう。

戦闘のクォリティの高さもさる事ながら、外伝キャラも輝いてるのが嬉しかった。ミナ様ー!
30通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:02:07 ID:???
これは不殺も拾うことにしたのか隻腕作者、って言うべきか
書き手にとって茨の道だな

真価問われるのはマユよりもキラだな。
マユはできるだけ、と断ってるし、不十分との自覚もあるから。
キラが同レベルの考えしかなかったら萎える
31通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:03:31 ID:???
パイロットが、なぶり殺しにする気か!?とは思わないの?
32通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:03:35 ID:???
乙、とは思っている
しかし、この展開はちょっと納得いかないと思わなくもない
シン、コニの悪役化は話の都合ってことでまだわかるが
連合の扱いとか、マユの答えとかは、今までの話の流れから浮いているような気がしてならない
連合の扱いは、今まで仲間としてやってきた話はなんだったんだってことになるし
普通の人間から見ればコーディとかフリーダムってのは恐怖そのものとしか思えないだろうし
繰り返すけど、乙、とは思っている
33通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:05:02 ID:???
お前ら、これはラストのだいどんでん返しの布石なんだよ
34通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:06:27 ID:???
>>30
できるだけってのもね…
おいおいマユたん、そんな中途半端な気持ちで不殺するのかよって思えて
強い敵には不殺解除なアヌメ版キラを連想してしまうorz
35通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:14:49 ID:???
とりあえず、オーブを守る名も無き連合兵達には感動した。
36通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:17:06 ID:???
乙!
俺としてはカガリが連合との同盟をどうするかが気になる
そのまま切り捨てるのかそれとも他の方法で解決するのか・・…
37通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:17:29 ID:???
所詮マユは10代にすぎないんだからこんなもんだろ。
38通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:18:22 ID:???
>>35
しかし、やつらは連携が大事だといいながら、上の命令に逆らうことに矛盾を感じてないのだろうか
39通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:18:22 ID:???
>>35
こういうのがあるから、お前らちょっと待てと言いたくなるよな
色々言ってもそれさえも手のひらの上っぽい気がして
40通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:18:33 ID:???
>>1
乙!

隻腕作者様、乙&GJです。
皆の言う通り納得できない部分もありますが、この展開からどうなるのか楽しみです。
批判的な意見が多いですが、これも隻腕を楽しみにしていた人がたくさんいたという証拠です。
忙しい中大変でしょうが頑張ってください
41ほのぼのマユデス。マーレの日記:朝食:2006/03/22(水) 23:29:50 ID:???
さぁ、清清しい朝の始まりだ。昨日はとんでもなかったが今日はすばらしい日になるはずだ!
そんな期待を胸に食堂に言った俺を待っていたのは・・・・・・・乱闘だった。

「ベーコンエッグかえせぇぇぇぇぇぇっ!!」
「それくらいで怒んないでよ!!」

どこから出したのかナイフを投げつける幼い少年とそれを手に持ったフォーク一つで身軽に跳ね返す青年。
何故か他の奴らはそれを気にせず普通に食事を続けている。
「あ・・・いちごジャムある・・・・?」
「いや今きれてるからブルーベリーでがまんしろ。」
「醤油ないかな・・・。」
「えー、アスラン醤油派?俺塩コショウなんだけどなー。」
「アキラお兄ちゃんそうなの?私ソース、アスカの家もデュランダルの家も皆そうだよ。」
「議長もかよ!!」
なんかまるで軍人て言うよりサザ○さん一家みたいな会話をする。後ろでは乱闘。
・・・・・一人だけブルーな空気をかもしだす若い連合兵士を見つけ、隣に座る。
「・・・・・いつもこんなのなのか?」
ナチュラルに話しかけるのは不本意だがまともな神経をもってるのがこいつしかいなさそうなので話しかける。
「まだいいよ。前は酷かった。」
こいつはアウル・ニーダと言って、なんでも縁あってアビスの現パイロットだそうだ。
その酷かった前というのは・・・・。

ガイアのパイロットの楽しみにしていたプリンをフェイスのハイネ・ヴェステンフルスが食べてしまったらしい。
すると怒ったガイアのパイロットが切りかかってきたのでそのままMSに乗って逃走。
ガイアのパイロットもMSに乗って突撃。いそいで同じくフェイスのアスラン・ザラがセイバーで追いかけるも時は遅し。
後ろからグフ・イグナイテッドはまっぷたつ。空の浮かぶハイネ・ヴェステンフルスの影、流れるミーティア。
(読者の皆さんはアニメのあのシーンを想像してね。)

それでも生きてるは流石フェイス、といった所だろう。
「お前、よくこの環境で耐えられるな。」
思わず隣の少年に言う、
「慣れたさ、お前もじきになれるよ。」
その幼い外見に反して中年サラリーマンの哀愁を漂わせる少年。
なんというか・・、あれだ。ナチュラルとかコーディネイターとかここは越えている生き物の集まりだ。そう感じた。
あ、黒い連合服の男にフォークが刺さった。長い金髪が赤に染まる。


リーカとコートニーにでも手紙を書こうと思った。
42通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:33:51 ID:???
不殺し関連(作品の感想にあらず)
死を覚悟した手負いの敵は、恐い
自分の行為によって味方が、窮地に追いこまれる
最低これぐらいは、やっておかないと

まあ種世界は、歴代世界と違ってダルマ兵士もちゃんと回収されるでしょうし。(多分)
戦艦切っても、人が死なないらしいし(キラ様限定)


43通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:47:42 ID:???
うっかり前スレに書いちまった・・・。
こっちでもっかい。

隻腕乙。
これがアニメやったら、まず作画が追いつかんだろうけど素晴らしかった。
流石にマーレ様はデストローイされた直後にカーペンタリアまでは行けなかったか・・・。
そこが残念だが、レクイエム編(?)に期待。
あと、サイも登場したんだから、そろそろブルーコスモス真☆盟主のK様が登場してもいい頃じゃないか?
44通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:57:53 ID:QYQcspQn
アニメ版への憎悪に引きずられている人が多いような。
マユは無印種において三隻同盟と監督夫妻が投げ出した宿題にまだ取り掛かったばかり。
同じ道を志したからといって同様の結末になるわけではないと思うんですが(ていうか、普通だったらアレはねえよ…)。
一話を見ただけで総叩きになるのはどうかと。
個人的には茨の道を歩み始めたマユの覚悟、それがどういう未来を描くのか楽しみにさせてもらいます。
期待が多い分、大変でしょうが体に気をつけて頑張って下さい。

そしてここぞとばかりにやってくるニクイあんチクショウ。
ていうか、ほのぼのっていつの間にか(元から?)変人だらけになっていてあのマーレーですら一般人寄りに。
なんて恐ろしい空間だろう。
45通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:59:00 ID:???
ギャース、アゲチマッタ。
スマネエ。
46通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 00:10:39 ID:???
実際にはそれができるなら敵を撃破するより半壊させる方が効率がいいんだぞ。
死人は敵の手を拘束しないが、負傷者は最低3人は人手を拘束するともいうからな。



隻腕マユの不殺は彼女が闇の中で縋ろうとできる理想に過ぎないだろうが、
アカツキに乗ったキラは確信してやってるフシさえ見えて恐ろしいよ・・・。






ともあれ隻腕GJ。次の展開も期待している。
47通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 01:10:19 ID:???
アストレイネタで個人的に超困るのは、外観の知識がほとんど無いので
妄想に現れてた鮮明な映像に一気にもやがかかることだw
ミナやロウくらいならわかるんだけど、ときたの絵のままなんで
異種作品混合アニメみたいな映像になってそれも結構困ってる
48通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 01:12:24 ID:???
隻腕作者さんお疲れ様です!皆さんが喧喧囂囂いっているマユの「不殺」
はまあ「見守りたい」ですね。それにキラが意図的に行っている「不殺」には
人的資源の拘束という点では間違いなく効果があるのは事実。少なくても負債
脚本の「殺すのはNG」なんて低俗なレベルでの行為ではないことに充分説得力
あると俺は思う。マユに関しては遠征軍
(ガルナハンでのコニールの件、スエズでのミネルバとの交戦、
ベルリンでの自らの行為)の軌跡を振り返って
「ただ、いたずらに力を振るうのが誤り」というのを自覚して、
「力を以って何をなすべきか」を自問自答している真っ最中です。
その過程がミナに語った「恐怖を植え付けるのは止めて欲しい」では?最終的に
何処に向かうのかはその後の流れ次第でしょうから。
『恐怖』の具現者であるシンがいる以上、マユに求められるのはその対極。
それが「不殺」か「止むを得ない力の行使」であるかそれとも・・・今後の
マユの『覚悟』に期待したいところです。
Sフリーダムと天ミナの共闘、めっちゃ燃えました!!
更にカナードとドレッドノートΗも登場。次回はサーペントテールのブルーセカンド
とイライジャザクも出そうな予感が。

ともあれ改めてお疲れ様です!
49通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 01:19:25 ID:???
>>48
セカンドLとイライジャザク、既に出てるぞw
50通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 02:15:02 ID:???
>>49
今確認しましたw一行だけだったので、見落としが・・・これで運命アストレイから
あとはジェスとアウトフレームD、カイトとテスタメントか?
51通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 02:18:54 ID:???
隻腕キター!
久しぶりにきたのでごっつうれしいw
なんか結構批判的な意見も多いようですけど。
まぁ原作アニメのトラウマがそれだけ強いってことですねw
とりあえず、降下ぽっどで降下を開始するような高度で機体を損壊するってことはそのままおちてって死にそうな気がするが。
あと、キラ強すぎって言うけれど、ガイアが落下したあと、基本的にレジェンドは分析のために射撃で援護に徹してる程度。
攻めを行ってるのは伝説と隠者だけだけど、これも接近戦しかできないようじゃ直接攻撃できるときはタイマンになるから、かろうじて逃げ回ってる、という状況だと思うんだけど。
連合の兵士たちの独断もいい感じだと思うけどねぇ。
ブルコスシンパとそれ以外の空気の違いってのが描かれてて。
52通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 02:24:15 ID:???
隻腕、今回はゲストがDX!!
不殺については死種のときはぶうぶう言いましたが、無印のときはむしろ応援してたし、
そもそも最初に言い出したのはジャン・キャリーなので文句はないです。
皆殺しのシンと真逆を行けば否応なしに辿らなければならない道だし。

届かなかった手……というか、シャトルの少女(エルたん)のことは、
キラにとっての拭い去れないトラウマなんですよねぇ……
ここで二話のシャトルの少女を持ってきて、
キラにとっての悔恨の記憶と2年前マユの身に起きた悲劇を同時に再現したのは、
まさに構成の妙と言えるでしょう。
SDフリーダムテラモエス

シンもさることながらコニールたんの行く末が気になりますね。
彼女にも是非幸せをつかんでほしいんですが……マユとの和解の日はくるのか?

ではミリイとメイリンの行方を気にしつつ続きを待つです。
53通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 02:43:02 ID:???
てか
アスカ隊長クールだなー ますますの特攻ヤロウになってるかと思ってた

自分は「平和は恐怖と支配によってのみ保たれる」つー主義なので
シンサイドに期待です
54通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 02:48:02 ID:???
恐怖のまったくない世界なんて、ラクシズ教の支配する世界並みに不気味な気が
55通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 05:14:42 ID:???
地雷ってのは正に殺さないための兵器なのよね。
足1本吹っ飛ばして兵士としての性能を奪いつつ、その人間にかかる費用と手間はそのまま。
普通に殺すより相手の戦力を削げる。
アニメで「実はキラは↑なことを考えていたんだよ!」というネタとしてちょくちょく出てきた話題ではあるけど。

個人的には>>42辺りを回収しておけば大丈夫だろうと思う。
人は足を吹っ飛ばされれば戦えないけど、MSは武器や足がなくても戦えるからね。体当たり、最悪自爆でも。
そういった状況で相手の戦闘能力を奪わないという事から導かれる危険を知っていれば、自分がいかに愚かしい行為をしているか知れば話はとりあえず纏まるだろう。
自分のエゴに過ぎないことでもやると決めた某ピンクが隻腕世界には居ることだし。心配はしてない。


違和感があるのは現エクステンデッド連中(シンコニ)かなぁ。
エクステンデッドって、設定から察するに、むしろ感情を「押さえ込む」ための装置なんじゃないかと思うんだが。
現状の脳内麻薬全開の2人を見てると、エクステンデッドと言うよりはブーステッドのほうが近いみたいだけど。
56通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 06:28:14 ID:???
シンはマユとは相性最悪っぽいな、まともに戦えるんだろうか?
57通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 07:35:34 ID:???
隻腕さんの不殺は許せるというかこれからの展開しだい
負債の不殺はもうダメぽ、てか駄目

負債版の駄目なところを追わなければいけるんじゃね?

自分で書いといてなんだが文章よくわからんくなってきたから
とりあえず、マガノイクタチにEN吸われてくる ノシ
58通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 08:22:34 ID:???
隻腕はキラを今後どう扱うか、だな。

自分より若くて、
自分より傷ついて、
自分より大切な人を失ってきた少女が不殺の誓いを立てたことを
マユと再開したときにキラがどう受け止めるか…?

今後キラがある程度の範囲で出しゃばってくるのは明白だし、
いい意味で先輩っぽく振舞ってくれればと思う。

マユだって初めて自由に乗ったときの行動原理は
「オーブを守る」というシンプルなものだったしな。

最後に一言
負債アレルギーも度が過ぎると行き着く先は「復讐の歌(ry

59通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 08:45:33 ID:???
負債アレルギーというより、違和感では?
なんとなくだけど、選ぶ道を間違えているような……そんな感じ。
マユだけじゃなくて全体が……。
60通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 10:20:46 ID:???
>>51
俺もそう思った。4対1といってもオフェンスが運命と隠者(しかも運命は途中分析
してたみたいだし、隠者も攻め手に欠けてた)ガイアは短時間の飛行のみだから、直線的
な機動しか出来なかったから、キラにとっては郷しやすかっただろう。
しかし、まあエクステンデット組(シンコニ、オクレ兄さん)は物凄い性格変貌だな。
確かに「抑え込む」エクステンデットより「意図的に暴走させる」ブーステッドだ。
まあ、そちらのほうが「冷静な施行者」である議長、
「代行者」のレイ(確かにクローンというのはシンに見抜かれたが、それ以外は
勤めて冷静だし)との対比としては面白い。

>連合の兵士たちの独断もいい感じだと思うけどねぇ
負債版だとあまりにも突発的で「ただの裏切り狂信」だもんな(これでも一応好意的に解釈)
隻腕版だと流れが実に自然で、説得力が充分。オーブの将兵の『誇り』も
しっかり見え隠れしているし(実際隻腕カガリとユウナは立派な人徳者)、
このまま、デスティニープランの明確な目標に対して、反論できる「答え」を
マユ達が披露出来れば、正にアニメ種死への「完全勝利」になるな。
負債は結局種という財産の「丸捨て」だから・・・
61通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 10:44:03 ID:???
小難しい事は分からんので諸兄にお任せするが、とにかく燃えた。
賛否両論あるみたいだけど、エンターテインメントとしては上出来じゃないかな?
62通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 11:42:05 ID:???
エンターテイメントとしては一級
でも安っぽい戦争モノに成り下がってしまった気もする

違和感を感じている人が思うのはこういうことでは?

話の分かり易さが隻腕の売りだからこれも一つの選択
このまま終わるとも思えないので巻き返しに期待しつつ次回を待ちます
63通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 13:33:08 ID:???
アニメの空戦暁は2年前の型落ち機体だし(OSはストライクまんま)中身がカガリだからヘボいけど、
確か隻腕暁はつい最近まで頑張って作ってたんだろ?んならこのぐらい強くてもいいと思うが。
第一ザフト4人も「連携とかしてません」「連続攻撃とは言え一対一です」ってちゃんと書いてあるじゃないか。

しかし何か違和感は否めないね。>>62で正解だと思うけど。
64通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 14:41:21 ID:???
Sフリーダムが無印よりスペックダウンしてると言うのが秀逸。
性能頼りじゃないことを示す最速の手段。
65通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 16:38:25 ID:???
性能が落ちてるストフリマユVSトラウマ爆発運命シン
もしかしたらおもしろいカードかも知れんw
66通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 21:00:19 ID:???
よく考えたらエクステンデットっで誰にでもなれるわけじゃないんだよな
ある程度『強い体』じゃないと相乗効果がはかれない、みたいなところがあるんじゃないか?
そうでもなきゃエクステンデットが殆ど(つかたった三人だけ)出て来てない理由がつかないし
67通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 21:29:27 ID:???
隻腕は大好きだ!!

だが、マユよりは露骨に悪役振る舞いしてるシンとコニールの方を
応援したくなるなあ。ガルナハン辺りからマユ見るのが辛かった。

折角だから俺はシンとアスランを応援し続けるぜ。
68通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 21:50:04 ID:???
シンはマユが救ってくれると信じているが、問題はアスランだな。
隻腕においても間の悪さは一品なもんで、うっかり死にゃしないかヒヤヒヤもんだぜw
69通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 22:11:26 ID:???
そうか、不殺かー。
やっぱり戦ってる兵士自体は、嫌がおうにも恐怖を感じてしまうわけだから、中々難しそうだなあ。
アンチ恐怖関係は、カガリとかユウナが政治的手腕で示してくれるのだと思っておく。
それにしても、戦闘描写や物語の構成は何時も通りお見事です。
Sフリ登場シーンとか脳内で再生して脳汁出た。

そして、ここぞとばかりに現れたほのぼのGJ!
70通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 22:17:23 ID:???
━━━━━━━━━━祭り糸冬了━━━━━━━━━━
71通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 22:34:40 ID:???
時期が時期なので、そろそろ落ち着きましょう。
今日一日のテストは全て終了。しかし、どうやら結果的には問題ないものの実戦にはこの装備は向いていないらしい。
少し寂しい感じがした。あれほど憧れていたインパルスにようやく選ばれたと言うのに。
しかし議長が俺の腕を認めてくださったらしく、このまま通常のソード、フォース、ブラストで戦場に出れるらしい。
あと一日で地球生活も終わり。ぶっちゃけとっとと帰りたい。
おれはそんな事を考えながら基地の中を歩いていると向こうのほうからガキとナチュラルの女が歩いてきた。
ナチュラルの女は普段は子供みたいなくせにガイアのパイロットだ、まったくムカつく。
二人してコンビニの袋を抱えて笑いながら歩いている、まったく前をみて歩け・・・って!!くそっ!!

歩いている二人を突き飛ばす、向こうから迫ってくる車、居眠りをしていたらしく慌てふためく連合兵士。

まったく、俺はこれだからナチュラルは駄目なのだ。とっさに何も考えずに飛び出した、俺も俺だが。

そんなことをぼんやりと考えながら、俺の意識は千切れとんだ。




目を覚ますと、そこは白い部屋、どうやら医務室のようだ。
思考の確認、どうしてここにいるのか思い出す。自分の行動に少しの後悔と不思議な充実感。
「あら、起きたの?」
声の方を向くと、背の高い黒髪の女性がいた。
確か・・、ハイネ隊の一員だった。鎖を使うザクに乗っていた気がする。
「ごめんなさいね、今先生も他の人もちょっといないの。呼ぶから少し待っててね?」
彼女は微笑んでから廊下へ去っていく。

やばい、心臓がどきどきしてる。


   【サイコロを転がして偶数だったら14へ、奇数だったら14へ進め。】
73通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 00:27:54 ID:???
>>72
マーレお前……(;´д⊂)
負の方向のフラグばっかりたてやがって……
74通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 00:31:47 ID:???
ちょwwマーレおまwww
75通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 00:34:12 ID:???
>>72
マーレ様……うん、まあ期待通りの転がり方だ!(ぉ)
しかもさいころ、どっち振っても同じ結果じゃあないか…w

76通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 00:49:23 ID:???
マーレ、テラナカス
強く生きろよ。
77通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 01:24:00 ID:???
デストレイじゃ
ねんがんの ○○○○○を てにいれたぞ
ってな感じでマジで出世したのにな…
78通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 02:12:27 ID:???
どっちも14っておまwwww

たすけて誌的魔神!
79通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 02:54:34 ID:???
この「14」の意味を知ってる者がどれだけいるのだろう…
知ってると馬鹿受けなんだがw
80Injustice書いてる人:2006/03/24(金) 08:52:05 ID:???
お久しぶりです。
やっと4話の後編があがりました。なのでひっそりと投下

では

Gundam Seed Injustice 第4話『オーブ沖海戦(後編)』 へ
811/13:2006/03/24(金) 08:52:59 ID:???
ミネルバ艦長、タリア・グラディスは決して諦めない女だった。
今まで彼女は、自分自身が決めたことは常にやり通して来た。
努力を積み重ね、ザフト最新鋭宇宙戦艦の艦長を任されるまでになった。
子供の生まれにくいコーディネーターであっても自分の子供を持つ事を諦めなかった。
そして、傍目からは絶望的と思える今の戦況でも決して諦めない。

「艦対艦ミサイル、左舷甲板に直撃! B−2、B−3区画大破炎上!! さらに5発が接近、迎撃間に合いません!!」
「CIWS、2、4、10番被弾沈黙、ディスパール迎撃ミサイル残弾15、本艦迎撃能力74%にまで低下!」
「チャフ弾発射! 面舵20! ダメコン急で、ここが正念場よ!!」
「オーブ艦隊より入電! 『貴艦は我が国領海に侵入しつつあり、即刻進路を変更されたし、これは最終勧告である』以上!」
「艦長!」
「くッ! オーブ領海ギリギリまで寄せて、取り舵30。 今オーブにまで攻撃される訳にはいかないわ
最後の最後、死ぬときまで諦めないで! 諦めたら助かるものも助からない!」

タリアは部下達に激を飛ばす。
ブリッジに詰めるクルー達の焦りと悲愴感がタリアには手に取るようにわかる。
確かにミネルバが不利な事に偽りはない、しかし策が無い訳ではなかった。
いや、策と言えるほどのモノでは無いかもしれないが……。

「アーサー、まだ敵艦隊はタンホイザーの射程に届かないの!?」
「敵艦隊の攻撃は、我が艦の進路を巧みに誘導しています! このままではタンホイザーの射程距離まで近づけません!!」

タンホイザーで敵艦隊をなぎ払う。
それがミネルバの唯一取れる生存への方法だった。
しかし、連合艦隊とMS部隊による熾烈な攻撃に回避行動を取っているため、ミネルバは一向に連合艦隊を射程に捉えることができなかった。
――間に合わないかもしれない。
タリアの頭に不安が掠めたその時、策敵とレーダーを担当しているバート・ハイムが叫んだ。

822/13:2006/03/24(金) 08:53:48 ID:???

「艦長! 敵MS隊が引いていきます!」

タリアも慌ててモニターを見る。
確かにミネルバの周りを取り囲み五月蝿く飛び回っていたダガー達がゆっくりと離れていく。
ミネルバMS隊と交戦していた機体も同様だった。

「どういうことだ……?」

誰からとも無く困惑した声が聞こえる。
タリアも内心は困惑しつつも、部下の手前顔に出さず、指示を出す。

「まだ終わってないわ! バート、敵に変化は?」
「敵MS群は、我が艦の距離3000を保ちつつ包囲、攻撃を仕掛けてくる様子はありません。 連合艦隊からの攻撃も止んでいます。
 その他には……いや、待ってください!
前方12時方向、連合艦隊から新たに大型反応、ライブラリーに照合―――ありません正体不明! 光学映像、出ます!」

バートはモニターを切り替える。
一瞬、タリアを含むブリッジ全てのクルーが目を奪われた。
遠目でさえ分かるほどの巨体。
半球体の大きな胴体の四方から、本の太い足が突き出る。
ヤシガニを思わせるその奇怪な姿。
その機体はMSやMAと言った機動兵器と言うよりも小型艦艇と言ったほうが近い。

「あれは……」
「MA? デカイ!」
「あんなものに取り付かれたらミネルバは……」

敵艦よりせり上がって来るその機体を見ながら、タリアは舌打ちをした。
MSも艦隊もおまけでしかなかった。
連合軍の本命はこれだったのだ。
833/13:2006/03/24(金) 08:54:53 ID:???
タリアは苦虫を噛み潰したような顔を必死で隠し、MS官制のメイリンに振り返る。

「MS隊へ敵機警告! MSは全機生存しているわね!?」
「は、はい! MS3機、全機健在」

タリアは何かを決めるかのように目を瞑り、深く息をついた。
そして目を開く、そこには確固な意志を湛えた顔があった。

「アスカ機を敵MAの前面に、ザクとインパルスは距離をおいてアスカ機の援護、アスカ機以外は敵MAに接近させないで。
 一瞬でもいいわ、なんとしても敵MAの動きを止めさせてちょうだい」
「はい! アスカ機は敵MAの…………」

メイリンにそれだけを命じると、タリアは次にアーサーに振り返る。

「アーサー」
「はいっ」
「タンホイザーの照準を敵MAに、動きが止まったら連合艦隊もろとも焼き払って」
「ハッ? それでは他の機はともかく、アスカ機は巻き込まれて……」
「――ええ巻き込まれるわね。 でもそれが何?」

その言葉の冷たさに、思わずアーサーは息を飲んだ。

「たった一人の傭兵とミネルバ、優先すべきなのはどちらなのか……分からない訳ではないでしょ?」
「しかし……」
「――沈みたいの!?」
「はい! い……いいえ!」
「なら……あなたも覚悟を決めなさい」

タリアは押し黙ってしまったアーサーを無視し、タンホイザーの射程に敵連合艦隊を入れるため
操舵手、マリク・ヤードバーズに指示を出す。

「機関最大! 回避は考えなくていいわ、出来るだけ連合艦隊との距離を詰めて!」
「アイサー! 機関最大全速前進」

自分の考えに案の定うろたえたアーサーをタリアは横目でチラリと見る。
アーサーの言いたいことはもっともな事だ。誰だって最初から味方を犠牲にすること前提な作戦など賛成できないだろう。
でも主義、陣営関係ない傭兵なら……。
ザフト兵士ではない今回限りの味方。たとえ死んでも何処からも問題はでない。
艦長たる自分はミネルバを救うためなら喜んで生贄に差し出す。

しかし――
だがしかし、心のどこかでそんな自分を非難する声が聞こえる。
――――1人の人間を騙して、味方が後ろから撃つのか?
――――そんな女がどの面を下げて子供に会うのだ?

我ながら弱いと思う。だがある意味それが救いだった。
まだそう思えることが……しかしすべては言い訳に過ぎない。
思い悩むのも懺悔する事も全ては生き残った後、そう自分に言い聞かせタリア・グラディスは指揮を執る。
844/13:2006/03/24(金) 08:55:40 ID:???


<アスカ機は敵大型MAの進攻の阻止。 ザク、インパルスはアスカ機の援護。
 援護機は敵MAに近寄り過ぎないように注意してください>
<了解>
<ええ、わかったわ>
「ああ……了解だ」

メイリンから敵MAへの対処の指示、ルナマリアやレイは素直に返事を返す。
ただシンだけは内心、指示へ舌打ちを返した。
正体不明の敵MA。
ブリッジにとって、後腐れない傭兵はあのMAがどんな相手なのか探るための体の良い実験台なのだろう。
誰だって身内は可愛い。危険な任務にほぼ部外者の傭兵を使う事は、ある意味当然なのはシンにも分かっている。
しかし、それをあからさまに言われて気分の良いものではない。

「俺が奴の頭を抑える。 あんたらは両脇からヤッてくれ!」

シンはレイとルナマリアに一方的に指示を出すと返事を待たずに自機を敵MAへと飛ばす。

<了解した>
<あっ! ちょっと!>

レイとルナマリアもシンの後を追う。
目指すMAは海面数メートルを滑るように移動している。
見かけの鈍重な姿とは違い、そのスピードは速く彼らの距離は見る見る縮んでいく――
855/13:2006/03/24(金) 08:56:44 ID:???

その光景を、男もまた眺めている。
この世界で誰よりも待ち望んでいたその光景を――

「司令、ザムザザー……遂に、ですね」
「ああ」

モニターが、海上を力強く進むMAを映し出す。
その姿を連合艦隊司令長官である男はモニターを考え深げに見ている。
YMAF−X6BD「ザムザザー」
地球連合軍が開発した大型MA。
重火力重装甲、攻防兼ね備え機動兵器の一つの到達点に値する最新鋭機だった。

「身びいきかもしれんがね。 これからの主力はああいった新型のMAだと私は考えている。
 ザフトのまねして造った蚊トンボのような兵器じゃなく、ね」

司令も計画段階初期から関わり、技術部と共にザムザザーを造り上げた。
その性能には絶対の自信を持っている。
ザムザザーは絶対に落ちることはない、たとえ陽電子砲が直撃したとしても。

866/13:2006/03/24(金) 08:59:02 ID:???

距離をつめていくうちに、シンは改めて目標であるMAの大きさに驚愕した。
このMAの前では18メートルを超える自身のダガーLでさえ小さく感じる。

「大きい……だがなぁ!」

シンは向かってくるMAへビームカービンを撃ちこむ。
が、MAはその大きさにも関わらず鋭い機動性を見せ右へ機体をそらし避ける。
意表を付かれ、思わず動きが単調になったシンを今度は敵機両足のエネルギー砲、ガムザートフが襲う。
直撃寸前のところでシンもその光条を避けるが、このわずかな攻防で敵機はすぐ目の前まで迫っていた。
MAは左腕に収納していたクローを展開し、その鋭利な爪でシンのダガーLを引き裂こうと狙う。
シンは瞬時に横や後ろへ回避するのではなく、むしろMAの懐へ飛び込む事でクローをかわした。
高速でスレ違う両機。
MAの攻撃はまだ終わらない。
すれ違いざま、シンのダガーLへ追撃のイーゲルシュテインの火線が絡みつく。
シンはとっさにシールドでガードするも、全てを防ぎきることなど出来ない。
75ミリの大口径弾がダガーLの上で次々と弾け、緑の迷彩装甲に痛々しい弾痕を刻んでいく。

「ファック! なんて火力と機動力! 迂闊に近寄ったら蜂の巣だ!」

シンはMAの後方脚部からの砲撃を避けながら毒づく。
コックピットにアラームが鳴り響く、先ほどの被弾でどこかをやられたのだ。
シンがアラームに気を取られた隙にMAはシンを無視してミネルバに接近していく。

「――やられた!」

予想以上の攻撃力に防戦一方となり、MAの進行を抑える事が出来なかった。
シンはすぐに反転するとMAを追うが、このままでは追いつけそうに無い。
しかしシンから一歩遅れていたインパルスとザクがその様子を確認し素早MAを抑えにかかる。

<ミネルバには行かせないわ!>
<ルナマリア待て迂闊だぞ! 距離を取って攻撃するんだ!>
<ミネルバにはメイリンもいるのよ! 行かせない! 絶対に!!>

877/13:2006/03/24(金) 08:59:50 ID:???
レイの声が聞こえないのか、ルナマリアのザクは指示を無視して逆落としにMAへ襲い掛かる。

「あいつ、何を考えている?」

ルナマリアの突然の行動にシンは怪訝そうな顔をする。
あのMAをMS一機だけで止めることが出来ない事をルナマリアも分かったはずだ。
だがルナマリアはそんな事お構いなしで一人攻撃を仕掛けようとしている。
しかし……。

「まあ、頼んでもいないのに援護してくれるって言うんだ。 ありがたく援護してもらおうか……」

口元を軽くゆがめ、誰にとも無くつぶやくとシンはMAを追う。
ルナマリアが何を考えているかなど、シンにとってはどうでもいいことだ。
シンはただ『あれが作ってくれるはず』の機を逃さないようにするだけだった。


「ミネルバにはメイリンもいるのよ! 行かせない! 絶対に!!」

そう叫んだとき、ルナマリアは全てのことが吹き飛んでいた。
頭にあることは一つ。
――妹の、メイリンのいるミネルバを守る。
それだけだ。

<ルナマリア! 聞こえないのか!? ルナマリア!>
<お姉ちゃん!? 待って、ダメ!>
「ハァァァァ――――――!! 落ちろぉぉ!!!!」

もはやその瞳には敵MA以外入っていない。
ルナマリアはブレイズウィザードから大量のミサイルをMAに撃ち出しながら突貫する。
雲を引きながら飛ぶミサイル群は、目標にとどく前にMAのイーゲルシュテインの厚い壁に阻まれ次々と落とされて空に大輪の華を咲かせていく。
結局ミサイルがMAを捕らえる事は無かった。
それでもルナマリアは止まらない。
ルナマリアのザクはミサイルの爆煙を煙幕にしてMAに接近すると、ビームアックスを抜き切りかかる。

「もらったぁ!!」

――吹き飛び、宙を舞うザクの右腕。
ビームアックスの光も消え、海へと消えていく。
MAの単装砲が右肩を貫き、渾身の力を持って振り下ろすべき腕は、振り上げたまま根元から消えた。

「そんな!」

続いて襲ってくる追撃の一撃をルナマリアは何とか避ける。
だが彼女が出来たのはそこまでだった。
強い衝撃と突然地面が無くなった感覚。
妹の悲鳴と、なぜだかゆっくりと海が近づいて来るのを見た後、ルナマリアの意識は唐突に途切れた。
888/13:2006/03/24(金) 09:00:39 ID:???

視界の端、赤いMSが煙を吐いて落ちていく。

「期待通りの援護をありがとよッ」

聞こえるはずの無い相手に向い、シンは感謝の言葉をかける。
ルナマリアが時間を稼いだおかげで必殺の位置へ移動できた。そしてMAの隙さえも作ってくれた。
どんな人間でも敵機を撃ち落したその瞬間、少なからずそちらの方に意識が行ってしまう。
今、無謀な突撃をしてきた敵機を撃ち落したMAのパイロットもまた――
MAはルナマリア機を撃墜した後、油断したのか動きを緩めた。

シンはその隙を逃がさない。
MAの真後ろ、決して外すことのない一撃を撃ち込む。

「なっ!?」

シンの攻撃は確かにMAを捕らえたはずだった。
しかし、そのビームはMAの手前で見えない壁に阻まれたかのように弾き返された。
訳も分からないまま唖然とするシン。そこにさらなる災厄を告げる声が飛び込んだ。

<MS隊緊急回避! タンホイザー、てーッ!>

反射的に顔をミネルバに向けたシンの視界に、白い閃光が弾けた。
899/13:2006/03/24(金) 09:01:44 ID:???
「うっ…………俺は……どうなった?」

猛々しく鳴っているアラームの音でシンは目を覚ました。
シンは自分が見慣れた愛機のコックピットにいることを確認し、自分が生きていることをズキズキと疼く額の痛みで知った。

「あのビッチ、とんだ食わせ者だ!」 

出港の前に会った女艦長を思い浮かべる。
頼りなさそうに思えたがなかなかどうして、シンにMAの足止めを命じておいてシンごと躊躇無く焼き払おうとした。
シンはタリアの評価を改める。生き残るためにいくらでも冷酷になれる女だと。

「しかし……何で俺は生きているんだ? 確かに直撃したはず……」

タンホイザーが放たれてからシンが気付くまで1分に満たない僅かな時間。
タンホイザーが掠めた海から舞い上がった大量の水蒸気で、周りがどうなったか窺い知れない。

「クソッ左足がやられたか……ミネルバ! 官制! 聞こえるか!?」

機体損傷のチェックをしつつ、状況を知るためシンはミネルバを呼び続ける。
機体損傷は左半身が酷く、左足は膝から下が綺麗に無くなっていた。
サブスラスターを細やかに操作して何とか空中にとどまっているが重量バランスが崩れていて機体は非常に不安定だ。
しかし、本当に陽電子砲が直撃してこの程度で済むはずは無い。
『損傷』ですむ訳はないのだ、直撃すれば陽電子の対消滅によって文字どおり消えてしまうのだから。
9010/13:2006/03/24(金) 09:02:33 ID:???

「応答しろ! ミネルバ!」
<ガ……ッ……しろ!……ガガッ……>
「チッ、通信機もいかれたか?」

いくら呼びかけてもミネルバと通信がつながらない。
とその時。
風が吹き、周りを覆っていた蒸気が流れ次第に視界を覆っていた蒸気が晴れていく。
通信機を弄っていたシンは、自機のすぐ前に何かがいる事に気が付いた。

「こいつのおかげで助かったのか……」

それを見たとき、シンはなぜ自分が陽電子砲の直撃から助かったのか理解した。
シンと共に陽電子砲の光に飲み込まれたはずのMAが、何事も無かったかのように悠然と浮いている。
よく見ると、そのMAは薄い光の膜のようなものを機体の周りに展開していた。
光波防御帯。
シンもそういう兵器が連合軍にはあると噂で聞いた事があった。
MAがビームカービンの攻撃を弾いたのも、陽電子砲の直撃に耐えられたのも、このビーム、実弾兵器共に無効化する鉄壁の盾のおかげだ。
シンが助かったのもMAが陽電子砲の盾になったからだった。

MAはシンの見ている前で、ゆっくりとシンの方へと振り向く。
シンがとっさに操縦桿を引くのと同時に、ビームの光線が機体をかすめる。
先ほどまでシンをはがにもかけなかったMAが、今度は積極的に攻撃を仕掛けてきた。
シンは思うように動かない機体を必死に操縦する。
ビービービー……。
無機質に繰り返される電子音が、自身のダガーLの悲鳴を代弁する。
MAを振り切ろうとスラスターレバーを踏み込もうにも、踏み込んだ瞬間ギリギリ保っているバランスはいとも簡単に崩れる。
今はまだMAの攻撃をかわせていても、シンがビームの閃光に貫かれるのは時間の問題だった。
9111/13:2006/03/24(金) 09:04:22 ID:???

「クソッタレが! 俺みたいな小物をかまってないでミネルバに行きやがれ!」

ビームカービンを2発、3発と放つがMAは避けようともしない。
元より避ける必要など無いのだ、光波防御帯がある限りMAを傷つけることなど出来ないのだから。
案の定シンの放ったビームはMAを撃ちぬくこともなく手前で弾かれ、お返しに倍のビームがダガーLに殺到する。

4発は避け、1発シールドで防ぎ、最後の1発がダガーLの頭部を吹き飛ばした。
強い衝撃が襲いコックピットスクリーンが一瞬ブラックアウトして、すぐに補助カメラの映像に切り替わる。
また一段とアラームが五月蝿くなった。
満身創痍の機体に化け物みたいな敵MA、シンを包む強烈な死の予感。
だがシンの命運が尽きたわけではなかった。

止めを刺そうと接近してくるMAに、シンとMAの戦闘に気付き側面へ回り込んだインパルスがビームを撃ち込む。
撃破できなくとも気を引くには十分だった。その間にシンは体勢を立て直す事に成功した。
機を逃がしたMAはそのまま攻撃せずにすれ違い、一旦遠ざかっていく。
シンの窮地を救ったインパルスが近づき、接触回線を開いた。

<ザザッ……スカ……か? アスカ、無事か?>

モニターに映るレイ・ザ・バレルの涼しげな表情と、その物言いがシンの癇に障る。
この機体状況を見てそんなこと言うのかと。

「ああ見ての通り無事だよ、スカシ野郎」
<大丈夫そうだな。 時間が無い、手短に作戦を伝える>
「……何か考えがあるのか?」
<これから送る場所までMAを誘き出してくれ。お前が協力してくれればあのMAは確実に倒せる>

9212/13:2006/03/24(金) 09:05:24 ID:???

インパルスから現海域の地図と位置データーが送られてく。
本来ならば捨て駒にされた時点で、シンはザフトに協力する気など無い。
しかし連合軍に完全に包囲されている状況、しかも頭部と左足を失った機体で逃げれるわけもなく、まして連合軍に投降する気もなかった。
結局はミネルバと一蓮托生なのだ。分が悪い賭けだろうが何だろうがシンに取れる道は他に無かった。
それを分かっていてレイも話を振ってきたのだ。

「気に入らないが……お前に乗ってやるよ、ブレイク!」

シンの声と共に2機は散開する。旋回してきたMAが2機へと迫る。
MAはシンをターゲットに決めたのか、気を引くまでもなく食いついてくる。
それを見てシンは背を向け、おびえて逃げるようなふりをしてポイントへ誘導する。
いや、演技だけではなく必死に逃げる。

「くッ追いつかれる……ポイントまで持たない!」

機体が鈍い。
後ろからは強烈なビームを連射しながら迫るMAのプレッシャー。
ポイントまでの距離が恐ろしく遠く感じる。
MAとの距離が見る見る縮まっていく。

「こいつ……」

―――いたぶって楽しんでやがる。
シンはMAの機動を見て思わずつぶやいた。
MAはしとめるようと思えばいつでも出来るはずだ。だが必殺のタイミングが何度かあったにも関わらず攻撃をしてこない。
MAにしてみればミネルバとていつでも沈められるのだ、それをわざわざたいした戦力でもないMSを狙ってくるのは楽しんでいるからだ。
絶対強者の立場から逃げ回る哀れな弱者を見下ろしている。

(いいさ、その方が好都合だ)

ダガーLの腰からグレネードを2つ引き抜くと、爆発とMAの時機が合うように海へ投げ込む。
一瞬、爆破と同時に水柱が立ち上りMAへ目くらましとなる。追撃が僅かに緩んだ。
それで十分だった。シンはポイント上に到達した。
9313/13:2006/03/24(金) 09:07:22 ID:???

ザムザザーが装備する陽電子リフレクター。
機体上部を完全に被い、どんな攻撃をも通さない。
この鉄壁の盾にも一つだけ弱点があった。それは、リフレクターを展開していない場所は防御できない。
当たり前といえば当たり前の話。
ザムザザー唯一リフレクターを展開しない場所、陸上なら展開しなくても全く問題の無い場所。
機体腹部。
だが今回はそれが勝者と敗者を分けることになった。


海中から図ったかのように飛び出てきたインパルスが、ザムザザーの腹部にビームサーベルを突き刺した。



To be continued......
94Injustice書いてる人:2006/03/24(金) 09:10:38 ID:???
以上です。お目汚しすみませんでした。

ホントに今回は間が開いて……
次回は短編を日曜あたりに上げたいと……
遅筆ですが一回始めた事なので、何とか終わるまで続けたいと思います。
95通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 14:18:02 ID:???
>>94
アメリカ軍人臭いシンもなかなか。
空白の取り方が上手いね。一行七十文字とか突っ込まずに適当な所で
改行してくれると目の移動が少なくて助かるのだけれど。
96通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 14:25:00 ID:???
Injustice作者様乙です。
ルナ墜ちるの早いよルナ
97通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 14:25:20 ID:???
だってルナなんだぜ?
98通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 18:01:25 ID:???
ファックとビッチでリアルに吹いたWWW
99付き人 0/11:2006/03/24(金) 22:16:00 ID:???
歌姫の付き人第五話、投下します。
100付き人 0/11:2006/03/24(金) 22:17:09 ID:???
「おいおい、なんだよ? いいところだったのに」
ガーティー・ルーに帰艦したネオは、艦橋に入るなりリーに文句をつけた。

「なんであんなところで帰艦信号出すんだよ」
「一応、目的は達成してますよ」
「そりゃ機関に被弾してるみたいだから逃げ切れるだろーけどさ、うまくすれば沈められただろ?」
「はい、ですが戦闘の最中に重要情報を受信しまして」
「重要情報? ニューヨークに核ミサイルでも落とされたのか?」
「おそらく、そちらのほうがまだましです」

リーのその言葉に、ネオはピクリと眉を動かす。そのまま、リーから通信文の書かれた紙を受け取る。

「ユニウスセブンが……地球への落下軌道!? なるほど、こりゃあ重要だ。
 よし、至急進路変更、全速でユニウスセブンへ……」
「もう向かっております」
「……ご苦労。ああ、悪いが三人の最適化を一時中止するよう、メンテナンス室に伝えといてくれ。おそらくもう一働きしてもらうぞ」
「はい。どちらへ?」
「機体から降りてそのまま来たもんで、パイロットスーツがきつくてたまんなくってね。
 ちょっと着替えてくるからなんかあったらすぐに呼んでくれ。一応、ミネルバの動きからも目を離すなよ」
「は!」

艦をリーに任せ、艦橋を出る。実際、疲労は一息入れないとやりきれない程度にまで蓄積していた。
廊下を歩きながら戦闘を振り返り、自分一人で反省会。
敵がデブリ帯まで入ってくると決め付けていたのは自分のミス。少し思い上がっていたようだ、次からは自重しよう。
それはそれとして気になるのは、白いザクとやりあったときの妙な感覚。たしか前にもどこかで感じたことが、ええとあれは……

「!!!」

記憶を手繰り寄せようとしたところで、ギョッとして振り返る。背後に感じ取った気配は、白ザクに対するそれより数倍恐ろしいもの。
振り返ったその先には、青ざめた顔で恨めしそうにこちらを見つめる幽霊……ではなくガーティー・ルーの機体整備長。

「おい、どうした!?」
「どうしたじゃないですよ、大佐! またガンバレルを、それも今度は四基全部壊して帰ってきて!」
「え、あ、ああ、すまん」
「すまんですみますか、まったく。あれの設定、大変なんですからね!」
「……ごめんなさい。で、直る?」
「そりゃあ直りますよ、というか直して見せますよ。けどねえ……」

その後『大体パイロットって人種は整備員をなんだと』『近頃の若いもんはガンバレルに対する愛ってもんが』
『もともと量子通信システムとは』などの説教を十数分にわたり聞かされて、ふらふらになって自室に戻る。

「あー、怖かった。で、ええと、何しようとしてたんだっけ……ま、いっか。シャワーでも浴びよう」

襟元を緩めシャワー室に入る。同時にさっそく、ネオはユニウスセブンについて考え始めていた。

101付き人 2/11:2006/03/24(金) 22:18:05 ID:???


           歌姫の付き人

          第五話 かつて、農場だった場所


「あー、怖かった。あの艦長さん、鬼みたいな顔で怒鳴るんだもん」
「あ・た・り・ま・え・で・しょ!!!」

部屋に戻ってきたマユを、ミーアは怒鳴りつける。

「ほんとに、こっちがどれくらい心配してたと思ってんの! あんな危ないことして」
「えへへ」
「えへへ、じゃなーい!」

マユはザクに取り押さえられて帰艦したところをそのまますぐに艦長室に連行されて、今の今までお説教されていたところ……
に、してはいまいち反省の色がないようで、それがますますミーアの怒りを募らせる。

「もう、なんであんなことしたのよ?」
「なんでって……攻撃受けてこのままじゃ沈められちゃいそうで、それでなにか私にも出来ることないかなって思って……
 それで気付いたらインパルスでとび出してた」
「気付いたらとび出してたぁ!? あーもー、マユ! お願いだからもう少し考えるって行為を学んでよ!」
「はーい」

返事だけはいいものの、本当に分かっているのかどうかは少々不安。
さらに強く言おうとしたミーアに、だがマユのほうが先に口を開く。

「でもさ、考えてるだけで何もやらないでそれで結局後悔するのはもっといやだったから。
 けど……ミーアに心配かけたのは本当に悪かったと思ってる。だから、ごめんなさい」
「私はいいのよ、べつにいくら心配したって。それよりもマユは、もっと自分のこと心配しなさい!」

半分本気で呆れて言う。MSで戦場にとび出して、もしかしたら死ぬかもしれなかったのに、
それで一体どうしたら、自分の体より先に心配かけた相手のことを考えたり出来るのだろう?
なんだか怒るのも馬鹿らしくなって、そのままベットに座り込む。
もう終わってしまったことなのだし幸い怪我もなかったのだから、これ以上色々言ってもしょうがないのかもしれない。
そう思って、顔を上げて……自分を見下ろすマユに気付く。

「それでね、ミーア。私何もやらないで後悔するのって大嫌いなんだ」
「うん、知ってる」
「じゃあさあ、後悔しないように協力してくれる?」
「……え?」

なんか、いまいち話が見えないんだけどー。
102付き人 3/11:2006/03/24(金) 22:18:59 ID:???
「来週発表する新曲のプロモーション用ダンスの振り付け、まだミーア完璧に覚えきれてなかったでしょ?
 本番でとちるの見て後悔したくないんだ。と、いうわけで練習練習!」
「えー、今からー?」
「大丈夫、副長さんに聞いたら軍艦は丈夫にできてるから少し踊るくらいなら隣の部屋とかには響かないって言ってたし。
 じゃあさっそく、一番Aパートからいってみよー!」

強引に話をずらされたような、と、多少釈然としないものを感じながらも練習を開始する。
ダンスを見張るマユの目は非常に厳しく、少しでも手を抜こうものならばすぐに気付かれて注意される。
結果練習に集中しないわけにはいかなず、感じていた釈然としない思いなど忘れざるを得ないミーアであった。



「戦闘中の無線機の無断使用、混乱を利用したハッチの独断開閉、MSによる勝手な出撃……
 軍法第8条、11条、21条に違反」
「ですが、相手は軍人じゃありませんからねー」
「ええ、そうなのよ」

艦長室で溜息をついたタリアは、アーサーの入れた紅茶を受け取る。

「しかも結局この艦はアルファワンに助けられた形になっちゃったし、おまけにボギーワンには逃げられるし
……あら美味しい、これ地球産?」
「いえ、ヤヌアリウス8のものです。最近ではコロニーでもいい茶葉が採れるようになって。
艦長は真面目すぎるんですよ。もっと肩の力抜いたほうが、色々と楽ですよ」
「とはいっても、あなたは力抜きすぎよ」

睨むタリアの視線を受けて、アーサーは首をすくめてみせる。

「ごもっともです。あ、そうだ、アルファワンなんですけど、正式名称はインパルスだそうです。
 何でもラクス・クラインのコンサート用に開発された機体らしくて」
「コンサート用MS? しかもそれをあんな子供に操縦させて……一体議長は何を考えているのかしら」
「さあ? でも確かにパイロットは小さかったですね。案外縁故人事で、あの子は議長の隠し子だったり……
 あ、ちょっと、冗談ですよ」

――だからそんな、親の敵を見るような目で睨まないでください、いや、ほんと怖いですから。

うっかり地雷を踏んでしまったらしいアーサーは、話を変えるため慌てて周りを見回して、机の上の点灯したボタンに気付く。

「艦長、ブリッジから連絡です」
「分かったわ。メイリン? こちらタリア……そうよ……いいえ……なんですって!!」

通信にでたタリアの顔が、即座に変わる。何事かとたずねるアーサーに、微かに青ざめて答える。

「ユニウスセブンが動き出したそうよ、地球に向かって」
「ええぇー!」


103付き人 4/11:2006/03/24(金) 22:19:49 ID:???

メイリンが総司令部から受け取った情報は、瞬く間にミネルバ中に広がった。
軌道変更したユニウスセブン、それが向かっている地球、両者ともプラントの人間にとって無関係なものではない。
クルーの中にはユニウスセブンに親族が眠るものも、地球に肉親が駐留軍の一員として滞在しているものもいる。
動揺はみなの心に細波のように広がって、タリアも艦の進路をユニウスセブンに向ける一方で、あえてそれを抑えない。
いやむしろ、積極的に情報を公開する。艦長からの報告として司令部から知らされたすべてを、放送の形で艦内に流す。
その放送で、飛び交っていた噂が真実であることを知って、しかしそのことで逆にクルーの動揺は沈静化した。
漠然とした不安と比べ、たとえ大きくてもはっきりしている脅威ならば、人は対策を立てることが出来る。
機関部は被弾したエンジンの修復に努め、整備班はMSの整備と共に使用が予想されるスターシューター、
メテオブレーカーの点検作業を開始する。医療班はけが人の手当てに精を出し、厨房は戦闘糧食の用意を始める。
その中ですることのない、いや、そもそもはこの場にいないはずだった五名のものが、艦長室に呼び出される。
評議会代表は書類のまとめ作業を中断して、歌手とその付き人は踊りの練習を中断して、
国家代表は頭のたんこぶを気にしながら、その護衛は何か考え込んだ様子で、五人はそれぞれ艦長室へと向かう。
104付き人 5/11:2006/03/24(金) 22:21:47 ID:???
「先ほど報告したように、現在艦は軌道変更したユニウスセブンに向かっています」

彼等がそろったのを待って、タリアは言う。

「到着しだい、本艦は破砕作業に入ります」
「破砕というと、具体的にはどうするのだね?」
「MSでメテオブレーカーを打ち込んで、割ります。十等分もすれば大気圏内の空気摩擦で燃え尽きるはずですので。
本艦の他にもジュール隊がナスカ級二隻で現場に向かっていますから、彼等と共同すれば可能なはずです」
「分かった、任せよう。」
「私からも、よろしくお願いする」

二人の国家代表の言葉に、タリアは胸をなでおろす。
いくら方法がないとはいえ、遺産かつ墓標であるユニウスセブンを砕くのだ、一艦長の権限では難しい。
だがこの二人の賛同さえ得てしまえば、あとの言い訳はなんとでもつく。
一方そんなタリアの内心など露知らず、隅で控えていたマユは横から口を挟む。

「あの……パイロットスーツって貸してもらえませんか? MSでの作業なら、インパルスでもお手伝いできるはずです」
「マユ!」

その言葉に、ミーアが驚いて振り向く。だがカガリの横で話を聞いていたアスランも、彼女とは別の意味で驚いていた。
こんな子が、自分の意思で、作業の支援を申し出る? いや今だけじゃない、さっきの戦闘でも、この子は自分でとび出したのだ。
なのにそれに比べて、一体俺は何をしているのだ。
確かに俺は迷っている、何をやりたいのか、何をすべきなのか分からなくて。その答えを、前の戦争のときから見つけられなくて。
だが今は、俺の目の前には、確実に一つ出来る、そしてすべきことがある。それをするのに迷う時間も、迷わなきゃいけない理由もない。

「自分も、お願いします。ここに乗ってきたMSを使わせてもらえれば、作業支援を行えるはずです」
「アスランさん! しかしあなたもご存知でしょう、軍人でない人間にそう簡単に……」
「いいんじゃないのかね」

二人の要求を拒否しようとするタリア、しかしそこにデュランダルが助け舟を出す。

「もう今は、軍人だとか民間人だとかの区別をしている場合じゃああるまい。
あれが落ちたら人類の存続すら危うくなってしまう。人手は、一人でも多いほうがいいのだろう?
なら、許可は私が出そう。責任は取るよ」
「議長がそうおっしゃられるのなら……分かりました」
「議長!」
「落ち着きたまえ、ラクス。君がマユのことを心配するのは分かる。が、もう少し信頼もしてやっていいんじゃないかね。
 彼女は君が思っているよりもずっと強い」
「そうそう、心配しないで待ってて」

にっこりと笑って見せるマユにミーアは複雑な表情を浮かべるが、それでもコクリとうなずいてみせる。

「それでは、アーサー!」
「あ、はい。我が艦のパイロットを交えこれからブリーフィングを行うことになっていましたので、お二人はそちらに。
そこでメテオブレーカーの操作説明も行います」

アーサーに連れられてアスランとマユは退室する。部屋に残されたカガリとミーアは、二人を心配そうに見つめていた。
105付き人 6/11:2006/03/24(金) 22:22:50 ID:???


心配そうに見つめる整備員たちの視線を浴びながら、ネオのエグザスはガーティー・ルーから発進する。
機体が搭載した四基のガンバレルは、整備班が不眠不休の努力の末何とか新たに設置したもの。
ありがたくはあるのだが、万が一また壊したら何を言われるのかが非常に怖い。

「よーし、戦闘隊形つくるぞ! ステラが前衛、俺が真ん中、アウルが後衛だ。
 一番速く動けるスティングのカオスは遊撃として全体の支援に回ってくれ」
「戦闘隊形? おいネオ、これって単なる状況確認じゃなかったのか?」
「ん、スティングか? ああ、状況確認だ。だが敵がいるって状況だってありえないとは言い切れないだろ。
 指揮官って言うのは常に最悪の事態を想定しておくもんだ」
「なるほどね。お、見えてきたぜ」

蒼き星へと進路を変えた巨大な墓標が姿を現す……その後方に、長大な光の尾をなびかせながら。

「光、きれい……流れ星?」
「違うぞステラ、ありゃあ推進器の噴射炎だ。どうやら本当に最悪の事態みたいだな」
「最悪の事態……軌道変更は人為的なものだってことか」
「じゃああれのせいかよ、こいつが動き出したのは!」

近づくにつれ、ユニウスセブンに設置された巨大推進器が確認できる。

「あれさえ止めれば!」
「待てアウル! あんなものがあるってことは、設置した連中もまだ付近にいるかもしれん」
「そんなこと、言ってる場合かよ!」
「っち! スティング、アウルのフォロー頼む。ステラも行くぞ!」
「うん!」

推進器に向け四機が突っ込む。あれを壊して動かなくすれば、地球に向かうユニウスセブンも止められる……
だが、
106付き人 7/11:2006/03/24(金) 22:23:42 ID:???

『やらせは、せん!』

廃墟と化したそのコロニーから無数のビームが降り注ぐ。狙われたのは、突出していたアビス。
機体を捻り、辛くもかわしたアウルの前に、姿を現したのは無数のジン。宇宙用に再設計されたハイマニューバ、その後期タイプ。
半数は残骸の陰からビームライフルを撃ち続け、残りは四機に急接近しながら腰の斬機刀を抜き放つ。

「お前らが……こんなこと!」

アビスが放ったビーム砲が、近づく二機のジンを迎撃。一機は完全に破壊され、だが残りの一機は腕を失いつつ向かってくる。
MA形態でアビスに追いついたカオスがMSに変形し、その半壊したジンをビームサーベルで切り捨てる。
二機の撃墜、二名の死亡、しかし残りのジンのパイロットたちはそれを微塵も気にかける風もなく、
そのままネオたちに襲い掛かる。高速で突っ込むカオスをかわし、放たれるアビスのビーム砲をかいくぐり、
ガンバレルで撃ちぬかれた味方機にかまうことなく、頭部を失った機体でなおもカオスに突っ込んで……

「こいつら、出来るぞ」
「ちっくしょー!」
「あ、おい、アウル!」
逸ったアウルがアビスで突撃するが、ジン部隊はたくみにそれを交わして取り囲む。
正面の機体をビームランスで貫いた隙を突いて、背後で三機のジンが斬機刀を振りかぶる。
しかしその必殺の一振りは振り下ろされる直前に、虚空の宙から出現した六本のビームに貫かれる。
何もない、はずだったそこに浮かぶのは、二色六基、有線無線のガンバレル。

「アウル、お前は出すぎだ。離されると囲まれるぞ……っておい、ステラ!」

カオスとエグザスの二機がアビスの援護に回り、一機残される形となったステラのガイア。
それを目掛けてユニウスセブンからのビームは放たれ、回避してバランスを崩したところでさらに二機のジンが切りかかる。

「これくら……いで!」

一つをかわし一つをシールドで受け止め、しかしその反動で、ガイアはユニウスセブンの地表へと押し出される。

「ネオ、アウルは任せろ、ステラを頼む!」
「分かった!」

地面へと落ちてゆくガイア、それを追うジン、援護に走るエグザス。
ジンがビームライフルでガイアに狙いを定めるため直進機動、その隙をネオは逃すことなく、背後からリニアガンで打ち落とす。
地表への落下を続けていたガイアも衝突の寸前でMAに変形、その四肢でユニウスの地を蹴り廃墟に潜むジン部隊に迫る。
一方のアビスにも高速で飛び回るカオスがジンを近づけず、射撃に専念したアウルは一機また一機と敵を落とす。
一気に劣勢に断たされたジン部隊、だがそれが決定的な被害に繋がる直前で、彼等は素早く撤退する。
107付き人 8/11:2006/03/24(金) 22:24:41 ID:???
「よーし、このまま一気に……」
「調子に乗るなって言ってんだろーが!」
「そんなこと言ったって、このままじゃこれが地球に落ちちゃうんだぜ」

追撃をかけようとするアウルと、それを抑えるスティング。地表近くに下りていたネオとステラも、敵が退いたのを見てそこに合流。

「よし、いったん艦に戻るぞ」
「な、何言ってんだよ、ネオ! これ止めないと」
「あー、アウル、少し落ち着け。簡単に止めるって言うけど具体的にはどうするつもりだ?」
「そりゃあ、あの推進器ぶっ壊して……」
「出来るのか、俺たちだけで?」
「……難しい。数多いし、塹壕とかあったら……」
「そう、ステラはアウルと違って頭いいな。向こうも推進器は壊されたくないはずだから、その近くには陣地くらいつくってるはずだ。
 陣(ジン)に篭られたらジンといえど手強いぞ……っておい、なんだよその目は!」
「くだらねーこと言ってる場合じゃないだろ、じゃあ具体的にはどうするのさ、諦めるの?」
「陣地ごと吹き飛ばすのさ、ファントムペイン隊が誇る最大火力で」
「最大火力? アウルのビーム砲でか?」
「ハ・ズ・レ♪」

スティングの言葉に、ネオは思わせぶりに首を横に振る。右手を挙げ、自分たちが来た方向を指差してみせる。

「高エネルギー収束火線砲、二連装六基十二門でだ!」


108付き人 9/12:2006/03/24(金) 22:26:01 ID:???

ネオたちの戦闘がひと段落ついた頃、ミネルバでは機体の発進準備が整えられていた。
パイロット控え室では、これから機体に乗る者たちが最後の打ち合わせを行っている。

「メテオブレーカーの打ち込み予定位置はこのコンピューター画像に表示されている通りです。
 先陣を務める我々が一基ずつ打ち込み、まずこのA地区を分離。
 その後残りをジュール隊が四つに分断、その間に我々はミネルバから新たなメテオブレーカーを受け取って、
 この三つ目の破片をさらに分割、これで地球への影響はほぼ消失させることが出来ます」

レイの説明に、アスランが問う。

「ほぼ、というと、それでも被害を与える可能性は残るのか?」
「はい、20パーセントの確率で地表に到達する破片が発生します。ですが艦との往復時間を考えるとそれが限界です。
それ以上の作業を進めるとなるとユニウスセブンの大気圏突入前に艦に戻れなくなる可能性がありますから。
まさか機体が燃え尽きても作業を続けろ、というわけにもいかないでしょう?」
「それもそうだな……だがならば、艦へ戻る時間の節約は出来ないか?
 二基目のメテオブレーカーを艦で受け取るのではなくカタパルトで射出するとか」
「そうか! なるほど、検討させてみます」

アスランの提案にレイが同意、可能かどうかブリッジと格納庫に確認する。
その間、ルナマリアはブリーフィング中から黙りっぱなしだったマユに向かって話しかける。

「よろしくね、マユちゃん」
「……よろしくお願いします、今度はミサイル撃ってこないでくださいね」
「えっ! それは――」
「ルナ!」

マユの言葉に声を荒げるルナマリア、それをレイが押しとどめる。そのままマユのほうに向き直り、頭を下げる。

「確かにアーモリーワンで敵機と間違えたのは俺たちのミスだ、すまない。だからこれくらいで堪忍して欲しい」
「……ごめんなさい」

少々納得いかなそうな顔をしながらも、レイにつられるようにルナマリアも謝る。

「うーん、レイさんがそう言うんなら……でもこれからは、気をつけてくださいよ!」
「分かってるわよ……って、あなたたち知り合いなの?」
「ああ、議長との関係で時々うちに時々来るからな、ミ」
「ラクスと一緒にね!」

レイの声を遮るように、マユが言う。
そういえばレイは、議長の養子だ。ラクス・クラインの付き人と、面識があっても不思議じゃあない。
納得するルナマリアの傍らで、アスランもうなずく。
今の様子だとおそらく、レイもミーアという少女のことを知っているのだろう。ところで……
109付き人 10/12:2006/03/24(金) 22:26:49 ID:???
「俺もアーモリーワンで敵と間違われたんだが、何か一言ないのか?」
「ありません」
「ありませんね」
「ないと思います」
「なぜだ!」

三人に即座に否定され、声を荒げるアスラン。それにルナマリアは、すまし顔で答える。

「そりゃあか弱い女の子と前の戦争をしぶとく生き残った英雄の差でしょう」

『レイ、さっきの件艦長の許可が取れたよ。でもヨウランたちがブーブー言ってたから、後で一言いってあげてね。
 それと、機体の準備完了です。パイロットは機体に搭乗してください。
 頑張ってね、お姉ちゃん!』

艦内放送で、メイリンの声が流れる。ルナマリアはブリッジへ繋っているカメラに向け、右手を上げて応えてみせる。

「今の、妹さんですか?」
「ええ、メイリンっていうの」
「……なんかいいな、そういうの」

複雑な顔のアスランを放っておいて、マユとルナマリアは機体に向かう。

「マユ、あまり無理をするなよ」
「大丈夫ですよ!」
「ちょっとレイ、私は無理してもいいの?」
「当たり前だ、俺たちは軍人なんだからな」

二人を追い越して、レイが機体に乗り込む。

「あーあ、またブレイズか。ガナーがいいのに……」
『お姉ちゃん、馬鹿言ってないで。メテオブレーカーとオルトロス、同時に扱えるわけないでしょ。
 パイロット、全員搭乗しましたね? これより発進シークエンスを開始します!』

四機の機体が一基ずつ、メテオブレーカーを抱えカタパルトに乗る。
カタパルトは順々に作動して、機体を一機ずつ送り出す。

「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」
「アスラン・ザラ、出る!」
「マユ・アスカ、インパルス、いってきまーす!」
110付き人 11/12:2006/03/24(金) 22:27:52 ID:???

全ての機体の発進を終え、このあとどうなるかはもう彼等の働き次第。
あるものは祈るように、あるものは複雑な顔付きで、ミネルバクルーが機体を見送る。
一方機体がいなくなった格納庫では、整備員がぶうぶう文句を言いながら、メテオブレーカーをカタパルトにすえつけている。

と、その時、耳障りなアラームが、ブリッジ内に鳴り響く。

「なに?」
「右舷前方にレーダーに反応あり、数四……いえ、五! うち一つは大型です!」
「データベースに照合して!」
「はい、データベース照合! 大型反応に該当あり、これは……ボギーワンです!」
「てことはもしかして、残りは奪われた新型とあのMA?」
「と、見るべきでしょうね」

ごくりと唾を飲むアーサーの後ろで、タリアは帽子を目深にかぶりなおす。

「ブリッジ遮蔽、面舵20度! 対艦、対MS戦闘用意」



ユニウスセブンに向かうミネルバの存在は、当然ガーティー・ルー側からも探知されていた。

『大佐、あの艦です』
『はあ? あいつらこんなとこまで追いかけてきたのかよ?』
「いや、トレースされていたとは思えないな。大方奴らも軌道変更したユニウスセブンに気付いてやって来たんだろう」

ネオがエグザスの操縦桿を握ったまま、アウルに答える。

『で、どうするんだ?』
「そうだなー、多少任務の達成難度は上昇するかもしれんが、できれば現状での計画変更は避けたい。
 お前ら、できるか?」
『やらなかったら地球が危ないんだろ? なら決まってんじゃん!』
『ステラ……やる!』
『っち、しょーがねーなー』
「よし、なら予定変更はなしだ。このまま前進する。艦長、頼んだぜ!」
『お任せください』

ガーティー・ルーのブリッジで、イアン・リーはネオに応じる。
十二の鎌首をもたげたリバイアサンは、護衛に四機の機体を引き攣れて、生贄を求め突き進む。
その先にあるのは巨大な墓、あるいは平和のモニュメント、そして眼下の蒼い星に厄災をもたらす人類の脅威。


111付き人 12/12:2006/03/24(金) 22:28:41 ID:???

その人の手でつくり出された偽りの大地、ユニウスセブンの廃墟の中で、無数の人が、MSが動き蠢く。

「何機やられた?」
「十四機、ハラダ伍長の機体も含まれています」
「そうか、奴も逝ったか」

彼等のリーダー、サトーと呼ばれる中年の男は、ほんの数秒だけ目を閉じて、そしてそれをゆっくりと開ける。

「しばしの間だけ待っていろ、我らもすぐに追いつこう」 
「数え切れぬほどの同行者を連れて、ですよね」
「そのほとんどがナチュラルだということは、多少気に食わんがな」

その言葉に、部下たちが笑う。サトー自身もその狂相を歪ませると、そばに係留してある乗機に乗り来む。
モノアイが起動し、前部モニターが映像を映す。そこに表れる八機の機体、そして二隻の宇宙戦艦。

「やはり来るか、それもよい。だが我等の思い、やすやすと砕かれるほど軽くはないぞ!」

起動したMSたちが、武装を携え持ち場に着く。この悲劇の地が燃え尽きて、消え果るまで守り抜くため。
『平和』という名の偽りの下で、歪められている世界を正すため。



かつて農場だったその場所に、以前の面影はもう微塵もない。
かつて二十四万の人命が失われたそこは、今また更なる命を飲み込もうとしている。
それが何をもたらすのか、それが何を意味するのか、今の時点で知るものはいない。

ファントムペインがその地に向かう、備え付けられた推進器を破壊するために。
ザフト軍がその地に向かう、そこを砕き、割るために。
ジン部隊がその地で迎え撃つ。欺瞞に満ち溢れた世界を打破し、あるべき道へと正すために。

地球に向かうユニウスセブンで、人類の未来と行く末を賭けて、三つの力が激突する。
戦いの第二ラウンド、そしておそらく最後のラウンドが、今、幕を開ける!
112付き人 13/12:2006/03/24(金) 22:37:07 ID:???
以上です。

ファントムペイン隊を前面に押し出そうとしたら、ジン部隊がひどく弱くなってしまったような…… orz
それにしても、年下(マユ)相手のミーアの態度が難しい。アニメ版だと話し相手がアスランやら議長やらなんで。
メテオブレーカの大きさは……あまり考えないでください(オイ!
無重力空間なら重さがないから、MS一機で一つ運べるはず――です、きっと。
113通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 22:45:14 ID:???
生投下キテター。乙です。

全体的にカチョイー空気が漂ってて良い感じっす。
ネオが目立ってるのが中々珍しくて嬉しかったり。オヤジギャグ…。
そしてアスラン…(ノ∀`)
114通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 23:13:20 ID:???
付き人作者さん、乙です!しかし、アスランがここまで凹まされているのも
珍しい(もちろん良い意味でw)更に飄々としたアーサーがまたGJ紅茶に造詣
があるという設定も面白い・・・生真面目なタリアとの対比でミネルバの指揮も
上手く機能してくれそうですねwそして、ガーティ・ルーの整備長GJ!!
いかにも「年配の親父さん」(イメージ的にはパトの榊部長w)の様相が。
ミーアとマユの友情物語、これからも期待してます!
115通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 23:16:51 ID:???
付き人GJ!
アスランの扱いの軽さが何となく微笑ましいな。

こっちのマユには明るく元気に突っ走ってホスイ。
116通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 00:01:14 ID:???
マユがいい感じにGoing My Wayですな。
今までインパルスの中でワタワタしている印象しかないけど、今回はどうでしょうね?楽しみにしてます。
117通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 15:49:56 ID:???
>>112
無重力空間とは言えメテオブレーカーが大質量を持つことに変わりはない(重量と質量は別物)ので
それ自体に推進器をつけるか牽引するMSが強力な推力を持っていないと運べないのでは?
ミネルバからカタパルトでぶっ飛ばすなら慣性を利用できるのでたしかに有効ですが。

野暮な突っ込みすいません。
ファントムペインの連中、特にネオがいい味出してます。
118通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 20:03:16 ID:???
蛇足でもこういう知識は大切さ
鞄をもち、松葉杖をつき、よろよろと歩くマーレ。
この怪我ではとてもではないがMSを操縦できないと言う事で、テストは中止。
結局、この装備はなしでと、言う事になったのだ。最悪だ。
「はははは・・・・、俺の大活躍・・・・終わっちゃった。」
おもわずそんな言葉を呟く。もう気持ちは一刻もはやくプラントに帰りたかった。
鞄も重いし気持ちも重い。あぁ・・、空の青さが目にしみる。
「もう軍やめよーかなぁ、久々にばーちゃんにでも顔見せるかなぁ・・。」
「マーレ!」
突然、呼び止められる。後ろを振り返るとあのナチュラルの女がいた。
息を切らしながら走ってくる。
「おい、大丈夫・・・・」
「これ・・・・。」
ナチュラルの女はかわいらしくラッピングされた袋を差し出してきた。
「クッキー・・焼いたの。助けてくれたから・・・・お礼。」
渡された袋からは確かに軽い感触が感じられた。
そして、次の瞬間頬にやわらかい感触。
「・・・・・・・ななななななな!!」
それが頬にキスをされたと、理解するまで三秒掛かった。
「お前・・どこでっ・・こんなっ・・!」
「ネオと・・ジョーが・・・・男の人はこうするとうれしいって・・・・。」
あのナチュラルの親父と風紀を乱してるやつかっ!!変な入れ知恵しやがって!!
「・・もういいっ!とっとと行け!!」
「いいの・・・・?」
「いいから!」
「わかった・・・・・。」
そう言って手を振りながら去っていく。

まぁ、また地球に来てやってもいいかもしれない。

そんなことを思いながら、俺は再び松葉杖をついた。



------------オマケ、そのころのシン・アスカ
シン「スゥゥゥゥゥテェェェェラァァァァァア!」
アスラン「シン!どうしたんだ!!」
レイ「だめですアスラン!たぶん何か感じてバーサク状態になっているんです!マユ!」
マユ「いや、ぶっちゃけ私でも近づけんよ。あ、ハイネ兄ちゃん後ろ後ろー。」
ハイネ「げばはっ!!」
アスラン「ハイネー!」
アキラ「バーサク治すのって何使うっけ?金の針じゃなくて・・・。」
カルマ「乙女のキッスはかえるでしょ・・。なんでもなおし?」
シンハロ『ポーショ○で十分だろ。』
スティング「まて、その二リットルペットボトルに入った青い液体は何だ。」
シンハロ『・・・・・メガポーショ○。』
アウル「やめろぉぉぉぉ!ゲンーー逃げてーーー!」

120通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 03:13:41 ID:???
大きな不幸と、小さな幸せ。
よかったじゃないか。マーレ。

そして、シンになにがあったのやら。
121Injustice書いてる人:2006/03/26(日) 04:26:04 ID:???
>>95
ご指摘ありがとうございます。
確かに見難いですね、これからは気をつけたいと思います。


誰もいない、短編を投下するなら今のうち……
122隙間:2006/03/26(日) 04:28:00 ID:???
オーブ、オノゴロ島。
沖合で繰り広げられている戦闘を眺める2人。
彼方を閃光が輝き、聞きなれた戦場の轟音が、遠く離れた場所。
普段は静かで穏やかなこの浜辺にも聞こえてくる。

1人はピンクの長い髪の毛が特徴的で、その姿から浮世離れした雰囲気を感じさせる女。
その傍らに立つのは片目がつぶれ、顔の傷が歴戦の勇士を思わせる隻眼の男。
2人は何かをしゃべる訳でもなく、ただ漠然と沖の戦闘を見つめている。
その時、一段と眩い光が海上を照らした。

「おー、あれは陽電子砲だ、ザフトも連合も張り切ってるなァ」
「始まったのですね……」

男――
かつて『砂漠の虎』と呼ばれ連合軍に恐れられた元ザフト所属
アンドリュー・バルトフェルドはどこまでも飄然としている。
隣の女、『歌姫』ラクス・クラインは、同じく飄然とした表情を前に向けたまま
どこか疲れを滲ませつつ呟いた。

「予想していたことだろう?」
「ええ、そのために私達も準備を進めて来ました。 ただ……」
「ただ、早すぎるか?」
「はい、あと2年は持つと考えていました。 でも現実は……平和とは儚いモノですわ」
「平和は次の戦争の準備期間――か、その通りだな。 
ちょっと落ち着いたと思ったら、すぐ次の戦争だ」
「戦争への流れは1人2人、1国や2国がどうにかしようとして、どうにかなるモノではありませんもの」
「何にせよだ、これで俺たちも動かないといけなくなった訳だ。
まずは寝ている子供を起こさないとな」
「そうですわね。 彼は私達の守り神、最高最悪の切り札、唯一無二の存在、私の愛おしい人……
私の戦いに彼の目覚めは絶対、そのための準備は――――」

ラクスは後ろへと振り向く。
123隙間:2006/03/26(日) 04:29:07 ID:???

そこにはいつからいたのか男が1人。

「ラクス様、例の計画は全て順調に進んでいます」
「そうですか、主演はどちらに?」
「ザフト内のザラ派が食いついてきました」
「妥当なところですわね。 その他勢力の動向は?」
「プラント、ディランダル議長は一部の動きを掴んでいるようですが、積極的に抑える気は無いようです。
 これは正確な情報を入手していない、またザラ派との関係上深く探りを入れられないためと考えられます。
 まあ体の良い駒を手に入れて、ホンモノが邪魔になったのが本音でしょうが……
彼はクライン派、その立場上表立って行動するわけには行きませんから 
上手くいけば万々歳、罪はザラ派の諸君、と言ったところでしょうか。
 オーブ政府、セイラン家へはターミナルを使い、こちらから情報をリークして反応を試しました。
 彼らはプラントへ1つでもカードが欲しいのでしょう。
それに我々のスポンサーから圧力がかかったようです。
オーブ政府は動く気は無く、すべて黙殺する気です」

「計画を阻むものは何もありません、計画の詳しい内容はこちらに」

男はラクスに近づき、1冊のファイルを差し出した。
ラクスはそのファイルを受け取るとパラパラと軽く一読する。

「素晴らしいですわ。 これだけの計画をよくこの短時間で」
「これで舞台は整った訳だ。 後は役者が上がるだけだな、ラクス?」
「バルトフェルド隊長、あなたも人事ではありませんわ、しっかりと踊ってもらいます。 私の世界のために……」

ラクス、バルトフェルド。
2人とも和やかに会話しているようだが、その目は深い穴のように暗く冷たい。

「ああもちろんだ、もちろんだとも。 世界は今ここから生まれ変わる……」


To be continued......
124Injustice書いてる人:2006/03/26(日) 04:38:32 ID:???
以上です。
次の投下は私情により何時になるか分からないですorz
125通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 09:17:20 ID:???
アストレイでマーレ様がデスティニーインパルス1号機に搭乗なされたぞw
オチはもちろん……
126通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 09:24:30 ID:???
>>125
出世したなwまぁオチは大体想像付くがw
127通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 09:50:16 ID:???
>インジャスの人
これはインジャスの外伝?
有名なラクス暗殺事件=ラクス自作自演説かw

>>120
ステラがマーレにキスしたの察知してキレたんだろw
128通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 16:33:32 ID:???
>>127
> 有名なラクス暗殺事件=ラクス自作自演説かw

真珠湾だろう。
完全な自作自演じゃなく相手の仕込を逆用するタイプの陰謀。
議長もマティスの"一族"もその手の陰謀が得意だから、
ラクスを悪役にする場合には納得できる設定だな。
虎はもともと広告屋だからこう言う暗い面があってもおかしくないな。
129通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 22:05:57 ID:yLd69NXW
ここはage
130通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 22:42:18 ID:???
単発設定小話 「Current style」携帯電話編A

〜携帯のチェックを続けるマユ〜
マユ「・・・データはもとのまま・・・新規のデータは・・・ないかぁ。あ〜あ、お兄ちゃんがなにか入れてないかと
期待してたんだけど・・・。まぁいいや、後でもうちょっとチェックしよ。久しぶりにプラネタリウムみよっかな」
〜プラネタリウムモードを選択するマユ。部屋の天井に映し出される無数の光〜
マユ「・・・・・・やっぱり落ち着くわね。このプラネタリウムもお兄ちゃんと一緒によくみたっけ・・・・・・えっ?」
〜星の映像が途切れ、ヴィーノ達が見たメディカルスコアが映し出される〜
マユ「・・・なに、これ?体温、脈拍、脳波、体重、身長・・・なんなの?・・・3年前のデータ?・・・」
〜映像は「Current style」と映し出された〜
マユ「現在?・・・この数値・・・・・・私のだわ・・・・・・。なに?なんなの?ヴィーノ兄ちゃんのいたずらかしら?」
〜ヴィーノの部屋へ走るマユ〜
マユ「ヴィーノ兄ちゃん!入るわよ!」
ヴィーノ&ヨウラン「マユっ!・・・なんだ、どした?」
マユ「いたずらはやめてよっ!なんなのよ!体温とか身長とか体重とか体重とか・・・・」
〜腕を回しヴィーノをたたきはじめるマユ〜
ヴィーノ「痛っ!痛い痛い。マユ、やめろって!」
ヨウラン「・・・体温ってあのプラネタリウムの文字のことか、マユ?」
マユ「それ以外になにがあるってゆーのよ!ヨウラン兄ちゃんも一枚かんでんの?」
ヨウラン「違う違う。マユも知らないし、さっきその携帯電話のカタログも調べたけどやっぱりそんな機能は持っていない」
マユ「えっ!?」
ヴィーノ「それは、そのマユの携帯だけの・・・カスタマイズ機能なんだよ。どうやって記録をとっているのかは知らないけど」
マユ「記録・・・を取る?そんなのとってどうするのよ?」
ヨウラン「それはわからんないけど・・・問題はそこじゃなくてなんでマユがそれを持っていたかじゃねぇか?」
マユ「・・・・・・これは私が6歳の誕生日の時にパパから貰ったものよ」
ヴィーノ「う〜ん・・・正直俺たちじゃよくわかんない領域の問題だな」
ヨウラン「だな。なぁマユ。ここはひとつ」
マユ「ひとつ?」
ヨウラン「艦長にいってこい!」
マユ「艦長かぁ・・・ワンクッション置いてハイネ兄ちゃんじゃだめ?」
ヴィーノ&ヨウラン「どっちでもいいよっ!」
〜結局最後は軽いノリで厄介払いされ、部屋をだされたマユ〜
マユ「はぁ〜自分のことって他人に打ち明けずらいのよねぇ」

〜とぼとぼと廊下を歩くマユ。そこにロドニアの研究所の件について報告に向かうハイネとアーサーがやってくる〜
ハイネ「・・・・・・アーサー、いい加減にサラをどうにかしてやれよ」
アーサー「・・・・・・でも適合していないのは君も知っているだろう?」
ハイネ「そんなちっちぇこと、いいじゃねぇか?」
〜ハイネに声をかけるマユ〜
マユ「ハイネ兄ちゃん!ちょっといいかな?」
ハイネ「っと!?マユぅ。お前今非番だろ?なんでこんなとこにいる?」
マユ「ちょっと相談があるんだけど・・・」
ハイネ「相談事?う〜ん・・・マユの相談ならのってやるしかないなぁ。・・・アーサー。艦長への報告、立派に果たせよ?」
アーサー「ええぇぇぇええぇぇっ!?」

そのBへ続く。
131通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 23:30:48 ID:???
PP書いてる者です。21話目投下します。
1321/18:2006/03/26(日) 23:31:43 ID:???
プラントの首都アプリリウス・ワン――
最高評議会議長ギルバート・デュランダルは緊急招集の評議会で、評議員を前に異例の表明をしていた。

「私は明後日地球へ赴こうと思う。私の留守の間は皆さんにこのプラントをお任せしたい。頼めますか?」

突拍子もなく切り出されたのは、議長自らの地球行きの意思表示――
各評議員たちはその真意を諮りかね、口々に疑問を呈する。

「議長、今は戦時であり……非常時ですぞ? わざわざご自身で地球に赴かれることは……」
「だが、どうしてもユーラシア戦線の現地視察をしておきたいのだ。現地の状況把握と士気高揚、慰問も兼ねて」
「ユーラシアの各基地を視察なさると仰るのですか?」
「そうだ。プラントにいれば議長としての職務は出来よう。しかし、仮にも今回の戦争で国を率いているのは私。
 皆さんの総意や国防委員長以下委員会の面々との合議はあれど、私に判断を一任されることも少なくない。
 私は、何よりもまず戦地というものが今どうなっているか、把握しておく必要があると思うのだ」
「……だから、ご自身で最前線のユーラシアを視察なさりたいと?」

最後の質問に、デュランダルは力強く頷く。
歴史の浅いプラントといえども、過去の大戦では二人の指導者がプラントにいた。
シーゲル・クラインとパトリック・ザラの二人がそれであるが、その何れも地球の基地に赴いた験しはなかった。

まさに、前代未聞の話――
しかし、一方でデュランダルの言葉にも説得力はあった。過去の二人は地球の基地にまで赴いたことはない。
パトリックは国防委員長時代幾度か視察、陣頭指揮に赴いたことはあったが……
最高評議会議長になってからは最終決戦まで動くことはなかった。シーゲルは言うに及ばず。

「そう長くプラントを空にすることはない。黒海沿岸のディオキアから、ユーラシア西のジブラルタル基地まで……
 その間、国防のことはシュライバー委員長にお任せするとして、プラントの内政のことは皆さんにお任せしたい」
「どのくらいの間、視察なさるので?」
「そうだな……都合一週間ほどになるだろう。国を率いる者として、どうしてもやっておきたいのだ。頼めまいか?」

唐突な申し出ではあるが、たかが一週間ほどであればプラントの内政にさしたる悪影響はない筈――
また、先の大戦でプラントが勝ちきれなかったのは、トップの戦況の読違えという問題も無きにしも非ずであった。
何しろ、パトリックがヤキン・ドゥーエに赴くまで、プラントの最高指導者が戦地に赴くことはなかったのだから……
評議会の面々は、このような熟考を経てプラント最高評議会議長を地球に送り出すことを了承した。

かくして、ギルバート・デュランダルはユーラシア西側、黒海沿岸の都市ディオキアへ向かうこととなる。
1332/18:2006/03/26(日) 23:32:34 ID:???
プラント最高評議会終了後、デュランダルは議長室へと戻った。
彼が部屋に入るや、金髪の女性がデュランダルに応対する。前議長にして現外交顧問アイリーン・カナーバが。

「評議会の承諾は取れたの?」
「ああ。彼らとしても戦況の動向は気になるだろう。戦地故の危険は伴うが……行くしかあるまい」
「最高評議会議長自ら地球へ……それも戦地へ赴くだけの理由が、あるのね?」
「……やはり、君には敵わないな。分かるかね?」
「この時期に……貴方がユーラシアに赴かなければならない理由があるとすれば、一つだけでしょう?」

傍目には不明瞭なやり取りだが――デュランダルとカナーバの間には互いに意思の疎通が出来ていた。
戦況視察や兵士の激励や慰問は表向きの理由……デュランダルが地球に赴く目的は他にもあるらしい。

「そういえば、アンドリュー・バルトフェルドはどうしている? 先日会ったのだろう?」
「……彼にも思い当たることはあったようね。ラクスの話を……一応は信じたようよ」
「ふむ……で、ザフト復隊の話はどうなったね? 説得してみたのだろう?」
「返事は保留されたわ。今も……迷っているようよ。プラントのために戦う意思はあるようだけれど」
「それは重畳だ。彼も我々と共に戦う気になってくれれば、この上ない戦力になり得る」

話は、嘗て砂漠の虎と呼ばれた男アンドリュー・バルトフェルドに及ぶ。彼はラクス・クラインの側近だが……
カナーバからシーゲル・クラインの死に隠されたラクスの思惑を聞かされ、その心は揺れ動いていた。
今も監視付きの状態ではあるが、アプリリウスの某ホテルでこれからのことを考え続けていた。
自分がこれから何をすべきかを――

「彼の意向を尊重しよう。ラクスの側近とはいえ、迂闊にプラントを害する行動に出ることはあるまい」
「そうね……今の彼は、下手な真似はしないでしょう」

デュランダルは、バルトフェルドに無理強いすることはせず、彼が翻意するのを待つことにした。
カナーバも同意し、彼女は席を立とうとする。彼女の仕事――バルトフェルドについての報告は済んだのだ。
だが、席を辞して去ろうとしたとき、部屋の扉を叩く者がいた。

入りたまえ――そのデュランダルの言葉を聴き、扉を開け入ってきた一人の少女……
桃色のロングヘアに、清楚なワンピースに身を包んだ少女が――

「議長、私の準備は出来ております。いつでも地球に降りられますわ」

先ほどデュランダルとカナーバの話に上った人物、ラクス・クラインその人が部屋に入ってきたのだ。
1343/18:2006/03/26(日) 23:33:33 ID:???
突然の闖入者はラクス・クライン――が、デュランダルもカナーバも些かも驚くことなく、自然に応対する。

「おや、もう準備が出来たのかね? 出発は明後日だよ?」
「あら……先ほどマネージャーのタケダが、『いつでも行けるよう準備しとき!』と申しましたから……」
「随分と気の早い男だな。キング・タケダ氏には後でスケジュール表を送くっておくよ。君もそれに従えば良い」

デュランダルは目の前のラクス・クラインを訝しがることもなく、平然と会話をする。それはカナーバも同じ。

「あら、カナーバ様もいらしていたのですね。こんにちは」
「……貴女もデュランダルと一緒に地球に行くの?」
「はい。そろそろ初仕事があるから心の準備はしておけと、議長から言われておりましたの」

カナーバも目の前のラクスと会話する。
先日バルトフェルド相手にラクスのことを語っていた折垣間見せた、憎しみにも似た感情は表情に表れていない。
それどころかカナーバは、軽く少女の頭に手を伸ばし、少々乱れた彼女の髪の毛を整え始める。

「貴女、ここに来るまで走ってきたのね?」
「あ……わかります? 議長が休憩中って聞いたから、お目にかかるなら今しかないかなって……」
「コラ。前から言っているように、言葉遣いに気をつけなさい。地が出ているわよ」

少女の言葉遣いをたしなめるカナーバ――
だが、窘められた少女は少し頬を膨らませ、前最高評議会議長に抗弁する。

「気をつけていますよぉ! 毎日欠かさずラクス様のビデオはチェックしているし、立ち居振る舞いだって……」
「いいこと? 今は貴女がラクス・クラインなの。だから、そんなことは二度と口にしては駄目」
「ええっ? カナーバ様も議長も、私の秘密はご存知でしょう? 知っている人の前でも、いつも通りにするの?」
「そうよ。どこで他の者が聞き耳を立てているか、分かったものではないわ。だから気をつけなさい、ラクス」

不満顔ではあるが、納得したのかラクス・クラインは分かったと返事をする。

「分かったのなら、復習しましょう。ラクス様、貴女が地球に赴かれる理由とは何でしょう? お聞かせ願います」
「……私が地球へ赴くのは、前線兵士の慰問と戦死者の合同葬に出席するためですわ。
 決して、悪戯に戦意高揚のために前線に赴くのではありません。一日も早く平和が訪れることを祈っております」
「……些か鼻につくけど、本物ならそう言うでしょうし、そう行動するでしょうね。合格よ、地球でも頑張りなさい」

本物なら――カナーバのその一言は、少女がラクス本人ではなく、替え玉であることを示唆していた。
1354/18:2006/03/26(日) 23:34:38 ID:???
替え玉のラクス・クライン――
演じる少女はカナーバとデュランダルに再度挨拶をした後、部屋を辞した。
カナーバは、先ほどまでこの部屋を去るつもりでいたが、ラクスの登場で機を逸していた。
そんな彼女にデュランダルが声を掛ける。

「どうかね? 私たちのラクス・クラインの出来は?」
「……少々厳しいことを言ったのは、念には念を押すためよ。出来はかなりのものだと思うわ。
 私たちのように、ごく限られたものしかあの娘の正体は知らない。他の者には、恐らく気取られはしないでしょう」
「私からも注意を払うようにするが……それにしても、良いのかい?」
「……何が?」
「彼女はラクスではない。そのことを彼女自身が忘れるのは、拙いのではないか?」
「今更あの娘がミーア・キャンベルに戻る道はない……違う? 大体、あの娘を連れてきたのは貴方でしょう?」

ミーア・キャンベルという名の少女を連れてきたのは、ギルバート・デュランダルであった。
予てから平和を謳う歌姫、ラクス・クラインの不在はクライン派にとっても痛い事実であった。

本来は派閥の盟主としては打ってつけの人物であったラクス・クライン。だが、彼女には問題があった。
過去三隻同盟を率いプラントに敵対したこと、シーゲル殺害にラクスの関与があったのではという疑念……
これらは公にはなっていないがプラント内でも諸説飛び交い、本物はプラントを去りオーブに身を隠していた。

その代役として抜擢されたのがミーア・キャンベルであった。
当初の目的は声と年恰好の似ている少女にラクスの代役をしてもらい、プラント内の憶測を静めることにあった。
しかし、ミーアがラクスの代わりを演じられるようになった時期は、ユニウス・セブンの落下事件と重なってしまう。
かくして今日まで彼女は本来の役割を果たすことも出来ず、ただ本物になるべくレッスンを積み重ねていた。

過去を思い出しデュランダルは言葉に詰まるが、暫くの後再び口を開く。

「それはそうだが……私は彼女のアイデンティティまで奪おうとは思っていない」
「……ミーアの戸籍を処分した以上、実際は奪っているでしょう? それに……」

カナーバは、先ほどより厳しい口調で反論する。

「何度もの皮膚の移植手術にも、あの娘は耐えたわ。プラントのためになるのならと、ね。
 そうさせたのは貴方であり私。だから、私達は何としてでもあの娘を、ラクス・クラインにしなければならないのよ」

ある種の決意を秘めた瞳を湛えるカナーバ。デュランダルはその瞳に抗弁する気も失せ、押し黙る他なかった。
1365/18:2006/03/26(日) 23:35:35 ID:???
二日後――
最高評議会議長ギルバート・デュランダルは地球に降り立つ。ラクス・クラインと共に。
二人の赴いた先は、トルコ領黒海沿岸の都市ディオキア。彼の地には、ザフト軍艦ミネルバも到着していた。

そのミネルバ艦内、医務室から一人の女性兵士が運び出されようとしていた。
先日のガルナハンでの戦闘で脚を負傷し、以来療養を余儀なくされたヒルダ・ハーケンがそれであった。
ハイネ隊、及びヒルダ隊の隊員たちが、それを見送ろうとするが……

「大げさだねぇ、骨折の治療に本国に戻るだけだよ。早ければ、一ヶ月も掛からず戦線に復帰できるって話だ」
「そりゃ何よりです。留守の間はこのハイネ・ヴェステンフルスにお任せ下さい」
「悪いね。不出来な部下を押し付けるけど……頼んだよ、ハイネ」

マーズ・シメオンとヘルベルト・フォン・ラインハルトは、上官の言葉に仏頂面になる。
軍本部から下された命令書では、ヒルダ隊をハイネ隊と共にミネルバに配属する旨伝えられた。
つまり、ヒルダ不在の間この二名は、特務隊フェイス所属ハイネ・ヴェステンフルスの指揮下に入ることとなる。

やがて艦の外で待機していた運搬用の救急車にヒルダが乗せられようとするとき……
ルナマリアの側で控えていた一人の少女が、ヒルダの元へ駆け寄る。

「あ、あのっ……ヒルダ隊長!」
「マユかい? どうしたんだい?」
「あの……この間はすみません。隊長は私を庇って……そんな怪我をされて……」
「ん? ああ、ガルナハンで私が前衛を買って出たことかい? 気にしなくて良いよ、そんなこと」

ガルナハンでの戦いでヒルダは手傷を負った。ダガーLとゲルズ・ゲーの猛攻を受けたが故に。
戦術上フォーメーションでマユを庇う隊形で、ヒルダの駆るドムはマユの乗るインパルスの前に出た。
結果としてそれがヒルダの負傷を招くことになるのだが……マユはそれを気に病み、謝ろうとした。
が、ヒルダはそれを制し、優しく語り掛ける。

「隊長っていうのはね、隊員のために命を張ってこそ、隊長足りえるんだ。
 お前のような子供を戦場に駆りだして、何を偉そうなことをと思うかもしれないが……これが私の精一杯さ」
「なら、俺たちにももう少し優しく……・」
「――そこ! 帰ってきたらタダじゃおかないからな! 覚えておきな、マーズ!」

ヒルダの流儀――それでも、大人と子供の扱いは別である。マーズは失言に首をすくめる。
それでもマユは自分のことを慮ってくれるヒルダに感謝していて、敬礼しつつ救急車に運ばれる上官を見送った。
1376/18:2006/03/26(日) 23:36:27 ID:???
マユに倣う形でハイネ隊全員が敬礼していた。
そんな中、隊長であるハイネはヒルダの言葉を心の中で反芻していた。

「部下の為に命を張るのが、隊長である所以……か。良いこと言うぜ、先輩は」
「そうですね。俺も……そう思います」

ひとり言のつもりで口に出たハイネの思いは、隣にいたアスラン・ザラに聞かれ頷かれる。
彼もまた嘗てはザラ隊を率い、ザフトのMS小隊長として一世を風靡した男なのだ。

そんなアスランの言葉に、ハイネはあることを思い出し彼に耳打ちする。
今度は他に声が漏れないよう気をつけながら……

「アスラン、後で俺と一緒に来てくれ」
「……? 何かあるのですか?」
「上からの呼び出しだ。何でも……議長がここに来るらしい。御呼びだそうだ」
「議長が? 何のためにここへ?」
「さあな。ただ、俺とアスランは特別に呼ばれているって話だ。分かるな?」

特別に呼ばれる――アスランには意図は分からないが、プラントの最高指導者から呼ばれているのだ。
無視できる筈もなく、二人はすぐに身支度を整え地元ディオキアの三ツ星ホテルに向かうことになる。
そんな二人を目ざとくルナマリアが見咎め、尋ねる。

「あれ、隊長たち何処行くんですか?」
「仕事だ、仕事! ちょっと上から呼び出されたんでな」
「へぇ……アスランも、連れて行っちゃうんですか?」
「明日から休暇だろ、暇になったらいつでもこいつを連れまわして構わんが……今日は俺の手伝いだ。悪いな」
「そっか! じゃあ、そうします!」

内心舌打ちして応じたハイネだが、ルナマリアはそれ以上詮索することはなかった。ハイネはホッとする。
が、隣のアスランは、ルナマリアとハイネのやり取りに何やら背筋に悪寒が走り、おずおずとハイネに問う。

「……明日、俺は連れまわされるんですか?」
「年頃だからな、お前と遊びたいんだろ。受け入れるなり断るなり、好きにすれば良いさ」

アスランは連合最強のストライクを討った男。その繊細なマスクと相まって、プラントの女性から人気があった。
ルナマリアの誘いを受けるか断るか……議長との面談と共に、アスランの悩みの種は増えることになる。
1387/18:2006/03/26(日) 23:37:23 ID:???
ディオキアの古城をアレンジして作られたホテル――
その一室で、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは、笑顔でハイネとアスランを迎え入れた。

「骨休めをしているところを呼び出してしまって、すまないね」
「いえ、これも任務ですから」

ハイネは隊長らしく応える。その様子にデュランダルも満足げに頷く。

「今日は、君たちに私のボディー・ガードを頼みたいのだ」
「……ボディ・ガードですか? 専属のSPでは不都合なことでも?」
「いや、そうではないのだが……」

若干言葉を濁すデュランダル。ハイネはその表情から、ボディー・ガードの仕事は表向きの任務であることを悟る。
ハイネとアスランをわざわざ呼んだ理由は他にあるということか――襟を正しハイネは失言を詫びる。

「失礼しました。何処であろうとお供いたします」
「ありがとう。こう言っては難だが……プラントの明日を担う君たちに、見ておいてもらいたいものがあるのだ」

デュランダルがハイネとアスランに見せたいものとは何であろうか?
かくして、アスランも内心不可解に思いながら、デュランダルの側に護衛として付く事となる。
やがて、正午を知らせるチャイムが鳴る――鐘の音は朗々と古城に響き渡り、デュランダルが席を立つ。

「そろそろ行くとしようか。付いて来てくれたまえ」

議長に促され、二人のザフトレッドは彼の左右に付く。
プラント最高評議会議長以下ハイネとアスラン、更に官僚らしき者達を従えて……
一向はホテルの一室、広々とした会議室のような場所に向かった。

会議室には複数の男達がいた。テーブルに横一列に並んだ男達。多くは背広を着た中年、初老の者達……
デュランダルが部屋に入るや、男達は俄かにざわつき始める。

「おお! あれは……!」
「議長自ら……!」
「ほぉ……! これはこれは……」

そのざわめきが止んだ頃、一つの会議が始まった。やがて世界の趨勢を変える会議が――
1398/18:2006/03/26(日) 23:38:17 ID:???
アスランは奇妙な感覚に捉われていた。
何故自分がこの会議のような催しに連れて来られたのか? それに、この男達は何者であろうか?
答えを求めデュランダルの顔を見るが、彼は最早アスランを見ていない。
先ほどまでの柔和表情ではなく、政治家としての鉄面皮の顔になっていて……無表情に近い彼がそこにいた。

「プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルであります」

プラントの官僚の紹介に、先立って会議室に来た男達は一礼し、同じくデュランダルも返礼をする。
先立って部屋にいた男達の中で、会議室のテーブルの中央に座る男がデュランダルに話しかける。

「議長閣下自らおいでいただけるとは……」
「今日の交渉は、我々がユーラシア西側諸国の皆様に礼を尽くす立場でありますから、当然でしょう」
「これで我々も、心底安心できるというものです……閣下」
「それは結構。で、調印書は本物でしょうな?」
「勿論です。我々ユーラシア西側の国々は間もなく一斉に独立を果たし、各国は暫定政府を設けます」

アスランはこの時初めて気づいた。目の前に並ぶ男達――彼らの正体を。

(……こいつ等は、ユーラシア西側諸国の政治家達か? だが、一体プラント政府と何を話し合うというのだ?)

アスランの思いを他所に、会議は進められる。
先ほどの男が調印書らしきものを、プラントの官僚の一人に渡す。
アスランにはその中身は伺い知ることはできないが……好都合にも先の政治家が口を挟む。

「調印書にありますとおり、プラント政府が我々の独立の後ろ盾となっていただけるのなら……
 間もなく我々は連合国家となります。そう……名前は、新ヨーロッパ共同体とでもなりましょうか。
 それが済んだ暁には、我々は新たにプラント及び大洋州連合と同盟条約を結び、この戦争を終わらせます」
「それは、なによりの贈り物です。我々プラントのコーディネーターはナチュラルとの共生を望んでいます。
 そのためにはこの戦争を終わらせることが不可欠ですから。そうだ……私からも贈り物があります」
「ありがとうございます、閣下。で、それは一体?」

やがて、部屋に数名の男達がジェラルミンケースを複数抱えながら入ってくる。
ユーラシア西側の政治家達、彼らの目の前に一つずつ並べられたそれらの中には……
彼らがケースを開けるや、眩いばかりの金塊が姿を現す。その額は計り知れない――

「皆さんが万が一独立に失敗した場合、それをお使いになりプラントへ亡命してください。ほんの保険ですが、ね」
1409/18:2006/03/26(日) 23:39:30 ID:???
会議が終わるや、アスランはデュランダルに食って掛かる。ハイネが止めるのも聞かず……

「議長! 一体どういうことですか!? あんな……贈賄まがいのことをやって、どういうつもりですか!?」

相手がプラント議長であり、自分の復隊を認めミネルバに配属してくれた恩人であることも忘れ、語気を荒げる。
いや、恩人であるが故に、元来正義感の強いアスラン・ザラという男には認めがたい行為だったのかもしれない。
憤るアスランを見て、苦笑しながらデュランダルは宥め始める。

「贈賄ではないよ。言葉どおり、あれは保険だ」
「保険って……何のための保険なのですか!?」
「私と話していた男は、フランスのさる政治家だ。彼だけではない。皆ユーラシア西側の政治家だよ。
 フランスだけではない。ドイツ、イタリア、ベルギー、スペイン、オランダ、その他諸々……トルコもいたな」
「彼らは何をしようと言うのです?」
「先ほどの話のとおり、彼らにはユーラシア連邦から独立してもらう。そして、ユーラシア連邦は崩壊するのさ」

ユーラシア連邦崩壊の一手――デュランダルは事も無げに言い放つ。
その言葉に瞠目するアスランだが……彼に構わずデュランダルは話し続ける。

「地球連合の中にあって大西洋連邦と双璧を為す大国、ユーラシア連邦。
 だが、先の大戦で戦場となり疲弊したこの国では、最早戦争を望む声は数少ないという」
「……だから、彼らに――」
「――そう。独立をしてもらい、プラントの味方についてもらう。
 経済的に豊かなユーラシア西側諸国が味方に付けば、残るのは貧しい東側諸国だけ。ロシアは別だが。
 そうなれば、早晩ユーラシア連邦という巨大国家は消えて無くなる。連合の脅威も半減される筈だ」
「しかし、あの政治家達の母国の者達には、連合に属し戦う者達もいる筈です。彼らがこんな裏取引を知ったら!」
「あの政治家達も……ただでは済まないな。だから、そのための亡命資金だよ。万が一の、ね」

最初こそ苦笑しながらアスランに応対していたものの、既にデュランダルから笑みは消え……
真剣にプラントの若者アスラン・ザラと向き合う、政治家ギルバート・デュランダルがそこにいた。

「……君は、あの政治家達を俗物と思うかい?」
「今は……そう思います」
「今は……か。あまり感心はしないが、嫌いではないよ。そういう率直な返事は。だが、考えてもみたまえ。
 戦争は軍人がやることだが、戦争を始めるのも終わらせるのも政治家の仕事。これが……政治というものだ」

戦争の影で蠢く政治家達の影――アスランにはその影が、ひどく邪なものに思えて仕方がなかった。
14110/18:2006/03/26(日) 23:40:19 ID:???
正義感の強い若者に邪な現実を突きつけながら、デュランダルは言葉を続ける。

「だが、政治家には絶対にやってはいけないことがある。悪戯に楽観主義に陥ることだ。
 私は彼らが、新ヨーロッパ共同体が発足したとしても、戦争が終わるとは思っていないよ」
「……え?」
「彼らは、自分達が独立を果たせばコーディネーターとナチュラルの対立の図式は崩れ……
 すぐに平和が訪れると思っているようだが、恐らくそう上手くことは運ぶまい。戦争は続くぞ、アスラン」

目を瞬かせるアスランに、デュランダルは畳み掛けるように告げる。

「戦争が終わって欲しいとは思っていても、現実には簡単に終わるとは思えない。
 あの国が、大西洋連邦がそんな勝手を赦しておくとは思えないし、東の大国ロシアも動くだろう。
 それらの、分断されたユーラシアを取戻そうと動く者達が現れる筈だ。彼らを叩き、戦争を終わらせて欲しい」
「戦争は終わらずに……続くと?」
「私はそう読んでいる。下手をすれば……長引くかもしれない。覚悟しておいて欲しい。ハイネもな」
「はい、議長閣下……」

いつの間にかアスランの隣にいたハイネは、ただデュランダルの言葉に頷く。
更に彼は言葉を続ける。並んだアスランとハイネの肩を軽く叩きながら……

「アスランには何れ政治の道を目指し、ハイネには国防を担って欲しいと思っている。
 出来ればアスランが最高評議会を率い、ハイネには国防委員会を束ねて、ね。そのために二人を呼んだ」
「私たちに……現実を見ろと?」
「目を背けるのは簡単だ。しかし、背けていては見てこないものもある。今日の会議を俗っぽいと感じて構わない。
 だが、その裏には各国各人の、様々な思惑というものが介在するということだけは、覚えておいて欲しい」

デュランダルは意味深な言葉で、二人に語りかける。改めてアスランは先ほどの会議と、議長の言葉を比較する。
やがて彼は――ひとつの疑問に直面する。デュランダルの言葉に偽りがないとすれば……

「……議長のお話では、戦争が続くということですが、そうなるとユーラシア西側はこの先も戦場になるということ。
 しかし、あの政治家達、新ヨーロッパ共同体の連中は、独立して戦争が終わると思っている筈。これでは……」
「あの政治家達は、今日という日を……やがては後悔する事になるかもしれないな」

自嘲の笑みを浮かべながらデュランダルは呟く。

「アスラン……私は阿漕なことをやっている。そのことにも……どうか目を背けず、直視して欲しい」
14211/18:2006/03/26(日) 23:41:10 ID:???
アスランとハイネに、政治の舞台裏を見せ語った後……
デュランダルはアスランに部屋の外で待つように言いつけ、ハイネ一人を残し彼と密談を始める。

「アスランの様子はどうだ?」
「真面目に軍務に就いていますよ。今のところ不審な点は見受けられません。後ほど報告書を提出します」
「……彼が裏切る気配は?」
「ありません。それにしても議長、貴方は酷い人だ」

嘗てアスラン・ザラの行動監視と、彼が裏切った場合の処分を議長直々に命令されたハイネ。
二人きりになったところで、緋の戦士は口調を若干崩しデュランダルに対する。

「さっきは、アスランに将来のプラント評議会を背負え……なんて仰りながら、実際は疑っている」
「……可笑しいかい? あれは本心から思っていることだよ。ただ……彼は純粋すぎる嫌いがある。
 戦士としての資質は疑っていないが、純粋さゆえ裏切りの危険はまだある」
「だから、あの会議を見せることで……免疫をつけようとなさった?」

鷹揚にプラントの最高権力者は頷く。アスラン・ザラ――
先の大戦で連合最強と謳われたストライクを討った英雄、しかし最後の最後にプラントに刃を向ける。
父であるパトリック・ザラのジェネシス行使を思いとどまらせるべく……それが、唯一の彼の汚点であった。
パトリックの息子であるから、政治家になった場合には、抜群のネームバリューは生きてくる。だが……

「我々を裏切った過去は消せない。まだ彼に監視は付けることになるな」
「部下を疑うのは……あまり気持ちの良いものではありませんが」
「レイ・ザ・バレルにも因果は含めてある。何とか二人で上手くやってくれたまえ。
 今度の戦争が無事終わり、あの男がまだ生きていたら裏切りの罪は完全に消える。晴れて政界に迎えよう」
「それは構いませんが、俺は国防委員なんて真っ平ですよ。自由業が好きなものでしてね」

デュランダルの言葉どおり、レイもハイネ同様にアスランの監視を任されていた。
レッドとはいえ兵卒扱いのアスランは、同じくレッドの兵卒レイと同室であり……内々に監視されていたのだ。
国防委員になって欲しいといわれたハイネだが、彼はデュランダルの申し出をアッサリと拒絶する。

政治の舞台裏も察する能力のあるハイネは、先のデュランダルたちの会談などに疑問は挟まない。
軍人の戦闘行為ですら、政治家の取引行為の一端になってしまうことを、彼は熟知していたからだ。
先の大戦初期から活躍していたハイネなればこそ、軍人の酸いも甘いも知り尽くしている。

「未来の約束なんてどうでもいい。代わりに……戦争に勝てる材料を、もっと提供してもらえませんかね?」
14312/18:2006/03/26(日) 23:42:02 ID:???
ハイネの申し出にデュランダルは唸る。一応ハイネの国防委員会入りも、戦後のプランの一つではあったのだが。
あっさりと断られたばかりか、更なる戦力の増強を求められるとは……些か彼も予想外であったらしい。

「ふむ、戦争に勝てる材料……か。ミネルバにヒルダ隊を送っただけでは、足りないと?」
「ミネルバの頭数はかなり充実しています。が、問題は軍全体のことです。MSの増強は進んでいるのですか?」
「グフとザクの増産も急がせている。ドム・トルーパーの建造もね」
「あの……ヒルダ・ハーケンが乗っていた、ごっつい核エンジン搭載のMSを?」
「核を搭載していたのは初期型の2機だけだ。ヒルダが乗っていたのはそのうちの一機。
 まもなく正式ロールアウトされる3号機以下の機体には、核ではなくバッテリーを搭載してある」

ヒルダ・ハーケンが乗っていたドム。核エンジン搭載のその機体は、戦前から眠っていた初期型であった。
どうやら試作機であったらしい。正式に配備されるドムには、核ではなくバッテリーが搭載される計画――

「けど、どうせならドムも核エンジン搭載にして欲しかったですね。アレは、パワーが段違いだ」
「だが、扱いを間違えると厄介なのが核を積んだMSの困ったところだ。一部の者にだけ、用意してはいるがね」
「へぇ……ドムではないとすると、どんなMSを?」
「ラウ・ル・クルーゼが駆ったプロヴィデンス、アスラン・ザラが駆ったジャスティスの後継機を……」
「そりゃ凄い! 噂じゃ二つとも一騎当千の能力を持つって話でしたっけ? ジャスティスは、やはりアスランに?」
「そうだ。そして、もう一機用意してある。その機体には君が乗ってくれ」
「……何を用意して頂けるんです?」
「――フリーダムの後継機だ」

その言葉にハイネは瞠目する。先の大戦で最強と謳われたザフトのMSフリーダム――
ラクス・クラインに奪われ、キラ・ヤマトが駆り大戦を終結に導いた幻の機体。
しかし、ハイネには彼の機体には苦い思いもある。ザフトの戦勝を妨げたフリーダムには……

「……まさか! 議長は本気で自分に、あの忌まわしい機体に乗れと?」
「忌まわしい記憶は、断ち切って貰わねばならない。そのために、君にフリーダムの後継機を任せるのだ。
 連合も戦力を増強しているらしい。特に警戒すべきは、あの黒いストライクのパイロットたち。彼らを……潰せ」
「Genocider Enemy of Natural とかいう、あの男を……」
「君の乗るグフや、アスランのセイバーを相手にしても負けない者達……実に興味深いな」

デュランダルはファントムペインの存在を挙げ、殲滅対象として考えていることを示唆した。
やがて、彼は自分が挙げた人物の名を反芻し、笑いをかみ殺しながら言う。

「Genocider Enemy of Natural ……彼が今日の会議のことを知ったら、我々もタダでは済まないな」
14413/18:2006/03/26(日) 23:43:10 ID:???
その頃、デュランダルたちの話に上った人物、ファントムペインの黒いストライクを駆る男ゲン・アクサニスは――
ユーラシア連邦軍管轄、ロシア共和国管轄の黒海東岸に位置するノヴォロシースク基地にいた。

先日キラ・ヤマトとこの地に来たゲンは、先立って到着していたアウルやスティング、ステラと合流する。
ファントムペインのパイロット達とキラ、彼らはこれから母艦J・Pジョーンズとタケミカヅチに向かう筈……
なのだが、今まさに上官のネオと連絡を取っているゲンには、俄かに信じられない指令が下っていた。

「……俺たちに休暇を取れ?」
『そうだよ。ここのところずっと働き続けていただろう? そろそろ疲れが溜まっている頃かなと思ってさ』
「はぁ……そりゃ、疲れているといえば疲れていますが」
『これからまた連戦の日々が続くかもしれない。休めるときに休んでおけ。今がそのときだ』

下されたのは突然の休暇命令。ゲンだけでなく、ファントムペインの3人のエクステンデッドにも与えられた。
本来ならば喜ぶべきことなのだろうが、やっと本隊と合流でき、さあこれからミネルバと戦おう……と思った矢先。
出鼻を挫かれたような気もし、ゲンは素直には喜べなかった。が、ネオの言うことも道理である。

「……分かりました。この界隈でノンビリ休むことにします」
『あー、ちょっと待った。悪いんだが……休暇先を指定させてもらう。ディオキアへ向かってくれ』
「ディオキア? どうしてそんな所へ?」
『トルコの黒海沿岸の都市ディオキア。彼の地地は今ザフトの支配地域になっている。そこで――』
「――はぁ!? 何でわざわざ敵のいるところで休暇を取る必要があるんです?」
『話は最後まで聞いてくれよ。ちょっと頼みたいことがあってね……』

ディオキアは、先の大戦の最中には地球軍の拠点の一つであり、軍港もある街だった。
しかし、大戦で痛手を受けたユーラシア連邦は、国全体の経済が傾きつつあったため苦肉の策を採る。
即ち、各地域の軍事基地の削減である。重要拠点は残し、さほど要衝ではない地域の基地は削減対象となった。
経費節減のための基地の削減……これにより、ディオキアの基地から地球連合軍は去ることになる。

が、この政策は仇となった。今度の戦争が始まるや、ユーラシア軍は易々とザフトに基地を奪われたのだ。
これにより、黒海西側にザフトが進出する切欠となる。味方と思っていた地域が、行き成り敵になるのだ。
ユーラシア連邦軍は慌てふためいた。敵地となったからには、早急に軍偵を送り込まねばならない。

『……というわけで、お前にはその軍偵の皆さんのお手伝いをして欲しい。突然のことで人手不足らしくてね』
「繋ぎをつけろ……というわけですか。分かりました、やりますよ」

通信は傍受の危険を伴う為、敵地で迂闊に無線は使えない。ゲンは臨時の連絡役の任務を仰せつかったのだ。
14514/18:2006/03/26(日) 23:44:08 ID:???
敵地での休暇、そして軍偵の繋ぎ役……
束の間の休息と少し面倒な仕事を与えられたファントムペインの小隊長は、その指令を隊員たちに告げた。

「休暇かぁ……久しぶりで休めるね。カリフォルニアベース出てからこっち、休む暇なかったモンね!」
「ありがたいぜ。いい加減疲れていたところだ。敵地でも俺たちみたいな歳ならそう怪しまれないだろう」
「お休み……嬉しいな」

アウルは素直に喜びを言葉に表し、スティングはゲンの心配は杞憂になるだろうとフォローする。
ステラはただお休みを貰ったことを喜ぶだけ……三者三様だが、皆は休暇を貰ったことを肯定的に捉えていた。
ただ一人……この人物を除いては。

「あの……ボクはどうすればいいのかな?」

おずおずと手を伸ばす青年キラ・ヤマト――
彼はオーブ軍のユーラシア派兵部隊の一員であり、ファントムペインの者ではない。指揮系統が違うのだ。
自分には休暇を与えられているのか――そうキラは問うたのである。それに対し、ゲンは……

「キラについては俺たち大西洋連邦の方から命令する筋合いはないから、強制はしない。
 もしこの基地の辺りで休みたければ、そうして貰っても構わないよ。ただ、一応ディオキアへの手筈は――」

言いながらゲンは手元のファイルを取り出す。中からは5人分のユーラシア連邦政府発効の市民登録証が……
同行するか否かはキラ本人の意思次第。同行するなら、それも良し。それがゲンの示した回答であった。

「で、どうする? 俺たちに着いてくるか?」
「もし……邪魔でなければ、ボクも行ってもいいかな?」
「構わないよ。他に質問は?」
「じゃあ、俺から。この基地においてあるMSはどうする? フライングアーマーも4機分あるが……」
「休暇を終えたら一度休暇先からこの基地に戻る。その後、全員でクレタ沖に停泊してある艦隊に向かう。
 クレタ沖にはJ・Pジョーンズやタケミカヅチが待ってくれているからな。合流したら、また戦争だが――」

スティングから質問が飛び、ゲンは今後の予定を一通り話して聞かせる。
クレタ沖が合流ポイントであることを示唆し、一呼吸おいてから……

「とりあえずは、休暇を皆で楽しもう」

合流すれば再び戦争の日々が始まるのだ。今は休暇を楽しもう――皆同じ思いを胸に、ミーティングは終わった。
14615/18:2006/03/26(日) 23:45:03 ID:???
「何だよ、その湿気た面は? ほら、明日から休暇だろ? そんな暗い顔してないでパーッと明るくやろうぜ?」
「………」

同じ頃、ハイネはデュランダルとの面会を終え、外で待っていたアスランと合流する。
議長も戦力増強に余念がないことを確認したハイネは意気揚々であったが、アスランはというと……
顔を会わせても、すぐに物憂げに下を向くばかり。その様子にため息をつきながら、上官は部下の肩を叩く。

「だ・か・ら、そんな難しい顔するなよ。戦争では裏で色々と動きがあるものさ。余り気に病むなよ」
「……はぁ」
「あのな……議長がお前にあの会議を見せたのは、一重にお前を買っているからこそなんだ。
 気に入られているんだよ、お前は。羨ましい限りだぜ。またお前に最新型のMSが与えられるって話だし」

ハイネが何を話しかけても、ジャスティスの後継機の話を匂わせても、アスランは下を向いたまま……
この世の不幸を一身に受けているかのような青年の表情に、流石のハイネも辟易する。

「……よぉし! アスラン、俺の部屋に来い!」
「……え?」
「黙ってついてくればいいんだよ。上官命令だ、拒否は許さんぞ?」

ミネルバのハイネの私室、フェイスであり上級兵でもある彼には大きめの一人部屋が宛がわれていた。
このような一人部屋を宛がわれるのは、艦長のタリアや副長のアーサー、それに彼くらいのものである。
その部屋に、半ば無理やり連れ込まれたアスラン。部屋に入るなりハイネは、ごそごそと私物を漁りだす。

「……お! あったあった、これだ」
「お、お酒? ウィスキー……ですか?」
「おう。上物のスコッチだ。カーペンタリアに寄った時に買っておいたんだ。二本ある。一本は、お前が飲め」

自棄酒を勧められたアスラン――戸惑いながら彼は上官に抗弁する。

「……酔って紛らわせるものなら、とっくにやっていますよ」
「紛らわせるだけじゃダメ。忘れちまわないと! 今日の議長のことも会議のことも覚えておく。
 ただし、嫌な思い……これだけは、この休暇中に全部忘れちまわないといけない。休暇の意味がないだろう?
 いいか? そいつを一本空けるまで、帰ることは許さんからな? ……とりあえず、俺は氷の準備してくるわ」

ハイネは有無を言わさず、ロックで飲むつもりなのか氷の調達に部屋の外に出かけていった。
部屋に残されたアスランは困り顔ながらも……上官なりの気遣いに感謝し、自棄酒に溺れる覚悟を決めた。
14716/18:2006/03/26(日) 23:46:01 ID:???
それから数時間後――
世の中には下戸と言われる類の人間がいる。この類の者は、酒を飲むと変になる嫌いがある。

「だいたい、俺はねぇ……たいちょお! 聞いていますか?」
「ああ、聞いているよ」
「あれ……俺、いま何を話していましたっけ?」
「……おいおい、今話していた事も忘れちまったのか? お前のザフト復帰の理由を聞いていたんだよ」

ハイネは己の浅はかさを呪っていた。
目の前の男が酒に強いとは決して思わなかったが、まさかここまで弱いとは……
フェイスでありミネルバのMS隊の指揮官でもある戦術家にも、予想外のことはあるもの。
アスラン・ザラの下戸は、ザフトきっての戦術家の予想を遥かに超えていたのだ。

「おれは……悔しかったんれすよ! あのユニウスセブンで……何も出来なかった自分が!」
「それはさっき聞いたよ。ユニウスの粉砕にザクで出たものの、大気圏に突入できなかったんだろう?」
「そう! それ! おれは……ダメなヤツです。あんな小さな子が、ユニウスに残って破砕を続けていたのに……」

アスランは己の復隊の理由を上官に語っていたのだが、ところどころ呂律が怪しくなっていた。それでも……
マユがインパルスに乗りユニウスで破砕を続けたのに、ザクである自分は何も出来ず手をこまねいていた――
その事実が、後のアスランに大きな影響を及ぼしていたことを、彼は熱っぽく語っていたのだ。

「ヒック……だ、だからね、おれはザフトに戻ったんですよ」
「追放されていたのを議長に赦して貰って、良かったじゃないか。けど、それなら何故2年前軍を離れた?」
「……おれは、父の事が好きだった」
「ザラ議長のことだな?」
「……父は優しかった。母を血のバレンタインで、ユニウスセブンの悲劇で亡くすまでは。
 あれ以降、父は変わった。ユニウスを核で撃ったブルーコスモスの連中を、ナチュラルを心底憎み……」

話はパトリック・ザラに及ぶ。ハイネは何気なく離反の理由を探ろうとしただけなのだが……

「でも、俺は父に……大罪を犯して欲しくなかった。ジェネシスで地球を撃って、戦争に勝つ。
 けど、それはどんな独裁者でも犯した事のない悪行……俺は、父を愛していたから、そんなことは……」

言いながら、アスランはフラフラとハイネの部屋のベッドに突っ伏して……居眠りを始めてしまった。
酒を飲むと人は本来の姿を見せる――そんな話もあったか? そうハイネは思いながら……
アスランがプラントに戻ったのは本心からと悟る。そして、彼に対し僅かに残っていた疑念も消えたのだった。
14817/18:2006/03/26(日) 23:47:39 ID:???
深夜のトルコの国道を一台の大型トラックが疾走する――
ただ西へ西へとハイウェイを走るそのトラックには、運転席に5人の若い男女が乗っていた。
アナトリア半島を横断する高速道路は、旧世紀からトルコ共和国が誇る63000kmに及ぶ大道路網の一つ。
運転席に座る黒髪の少年は、サングラスにジャケット姿。あたかも深夜の長距離運転トラックを生業とする風情。
しかし、彼の本職はMSパイロットで特殊部隊の隊員……

「明日の朝にはディオキアに付けるな。こんなハイウェイがあるなんて、トルコ政府様様だぜ」
「そっか……良かったね」

ゲン・アクサニスはその声に驚く。運転している自分以外の者達は仮眠を取っていると思っていたからである。
運転しながら隣を見ると、アウルとステラはスティングに持たれかかって寝ている。声を掛けたのは残りの一人。

「キラ……起きていたのか? 休んでいて良いんだぞ? 一応もう休暇なんだから……」
「君だけに運転させておくのは、気が引けてね。疲れたら言ってよ、運転変わるから」
「あ、ああ。ありがとう」

トラックはユーラシア連邦に本拠を置く、とある運送会社のトラックである。
ゲンたちはある運送会社のバイトという扱い。戦争で人手が不足し、バイトで荷運びをしているというシナリオだ。
筋書きを書いたのは上官のネオであるが、偽装してザフト支配地域に入り込むのには好都合な話ではあった。
彼是数時間運転しているゲンは疲れていたが、ノフチーでの一件以来寝つきが悪かった。
それ故長距離運転の役を買って出ていたのだ。キラもどうやら寝付けない様子――理由は、恐らく同じであろう。

「この間の件を、気にしているんだな……あれ以来、眠れないのか?」
「寝てはいるから、大丈夫。今日はそれだけが原因じゃなくて、ちょっと嬉しくて……寝付けないんだ」
「嬉しい?」
「……うん」

意外なことに、キラの口からは嬉しいという言葉が飛び出した。ゲンは訝しく思う。
無理やりに戦場に引っ張り出された彼にとって、一帯何が嬉しいのだろうか? 不可解に思いゲンは問う。

「嬉しいって……何が嬉しいんだよ?」
「皆と一緒に入れることが。ボクは、連合に居たとき……ずっと疎外感を味わっていた。
 ヘリオポリスが襲撃されて、成り行きでアークエンジェルに乗って、以降ボクはストライクに乗って戦っていた。
 けれど、周りは皆ナチュラル……ナチュラルが嫌いとか、そういうのではないけれど、ずっと寂しかったんだ」

何が嬉しくて、何が寂しかったのか――訳が分からなくなったゲンは、ただ相手の話を聞くほかなくなった。
14918/18:2006/03/26(日) 23:48:46 ID:???
ゲンの想いを他所に、キラは話し続ける。己の過去を振り返りながら……

「あの頃はまだナチュラル用のOSもなくて、コーディネーターのボクがストライクで戦った。
 ムゥさんはメビウスで戦ってくれたけど、ザフトのMSはほとんどボクが相手をしていたんだ。
 だから、自分ひとりで抱え込んで、自分だけが戦っているつもりになっていた……馬鹿な話だよね」

アークエンジェルに乗り込み、ストライクでクルーゼ隊やバルトフェルド隊と戦っていた頃の話――
当然ゲンは仔細など知る由もなく、ムゥなどという固有名詞にも反応を示すことさえしなかった。

「けれど、相談しようにもコーディネーターのパイロットは周りに居なかった。友達は居たけど……
 友達って言うのは、ヘリオポリスから志願兵になった友達。友達はいた。だけど…皆ナチュラルだから。
 皆にとって、何処かボクは違う存在で……疎外感を感じていたんだ。いや、ひょっとすると……
 自分ひとりで戦争を抱え込んでいたから、皆がボクと違うと思っていると、思い込んでいたのかもしれない」

過去の告白というよりは、むしろ独白に近く――完全にキラの話はゲンを置き去りにしていた。

「あ……ごめん。一人で喋りすぎたね」
「いや、構わないよ。それで……さっきの話だが、どうして嬉しいんだ?」
「……ファントムペインの皆と会えた事が、嬉しかったんだ。それに、皆と一緒に休暇を過ごせることが」

何を言い出すのかと思えば、キラはゲン達と会えた事が嬉しいという。ゲンは益々訳が分からなくなった。
ゲンを始めとしたアウルやスティング、ステラと会えて、一帯何が嬉しいというのだろうか。

「ゲンも皆も……皆MSに乗って戦っている。それに、ごく自然にボクを受け入れてくれた。それが嬉しかったんだ」
「……オーブ軍では、受け入れられなかったのか?」
「ボクはカガリの弟という扱いだから士官学校も出ていないし、オーブを出る前に馬場隊長と少し会っただけ。
 周りは皆ボクより年上だし、ちゃんとやれるのか少し不安だったんだ。でも、ファントムペインの皆と会えて……」
「………」
「自分と同い年くらいの人たちと、同じ環境で過ごせている。確かに今は戦争で、皆大変だけど……
 戦争が終わったら、いつか皆でまた笑いあえるような日が来ることを……願っている。今日という日を――」

キラの最後の言葉でゲンは時計を見る。日付はとうに過ぎていた。もう休暇は始まっているのだ。
オーブの青年の話は青臭くもあり、少し前のゲンであれば一笑に付していただろう話。
しかし、今のゲンには明確な目標があった。ファントムペインの仲間たちとこの戦争を生き残るという目的が。
抱いた目的故、彼はいつかキラの言うような日が来ることを、心のどこかで願わずにはいられなかった。
そして、ファントムペインの物語はディオキアへと移る。束の間の休息、そして邂逅が待つ地へ――
150通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 23:51:55 ID:???
PP書いてる者です。ディオキア編は前後編に分けました。後編は後日。
今回の話の補足とかも、後編の話を投下した際の後書きで説明するつもりです。
では、おやすみなさい。
151通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 00:09:21 ID:???
PP戦記作者さん乙。アスランってやっぱ酒に弱かったんだなー。ゲンとキラの交流、以前名前だけ出てたミーアの登場とか注目すべき点が今回も多い。
ディオキアといえば、ステラはどうなるんだろ…。
152通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 00:44:11 ID:???
>>ファントムペイン作者様、乙です!
アスランとハイネのプラント双璧構想が魅力的でした、ゲン&ネオ、キラ&ムウという繋がりも楽しみですね!
あとはやっぱりステラはどうなるか気になります、ダイブするのかな?
後編を楽しみにお待ちしています
153通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 02:19:04 ID:???
PP作者さん乙でした。
議長の赤い人っぷりにちょいと反応しちまったw
政治面・軍事面の考察→説明お見事です。
後編楽しみにしてますねw
154通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 09:37:16 ID:???
PP乙です!
いやぁ。いいですなぁ。
キャラクターに血が通ってる、という印象があります。
特にキラがいい味出てますね。多感な少年、という感じで。原作のキラは何となくロボットでしたから。
155通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 12:41:10 ID:???
PPは相変わらず重厚で好きだ。

アスランはアレか。
「酒! 飲まずにはいられないッ!
 上官にまんまと乗せられる自分に嫌悪を感じている! クソッ!」
156通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 12:45:25 ID:???
PP作者様、お疲れ様です。
アニメでは省かれてしまう政治の舞台裏がじっくり書けるのは小説の醍醐味ですね。
一見汚いような裏取引も、国を焼かせないためにあらゆる手を尽くしているのなら
咎める事はできません。そのかわり、失敗したらいくら全力を尽くしたのであっても
「ゴメンナサイ」ではすまされない。「何としてでもあの娘をラクス・クラインに」
のところで議長とカナーバの覚悟と、2人にとってミーアがただの身代わりではない
ということが伝わってきました。

あとPPディオキア編では、マユはステラとアウル、どちらと出会うのか楽しみです。
予告からするとステラでしょうが、マユ×アウルも少し期待しています。


ところで古い話になりますが、以前PPのゲンが失ったのは四肢か両脚かが話題になったとき
「ほのぼの」ゲンも四肢無くて、「鋼錬」ファンのステラに「なんで錬成ができないの?!」
って詰め寄られてたなあと思ったんですが、それっきりこの件は作中でも話題になってませんよね。
「ほのぼの」でこの話題はきついのかなあ。
157通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 16:13:10 ID:???
>>155
それだと最終的に「俺はザフトをやめるぞ、キラ──────!!」になってしまいそうでマジ怖ェ…つーかこれだとアニメまんまだ
「あいすてぃるららぶりーめんばー♪あいすてぃるしーいえー♪」
ルナマリアはノリノリで歌いながら歩いていた。
昨日のイベントでは好きなカップリングの本が大量に手に入った。
それにコスプレもかっちょいい人がいっぱいいてそれはもうホクホクだった。
「やさしさにふるえーてー♪おわらないゆめとめたーじかーんー♪」
BLゲーのテーマソングなんぞ歌いながら廊下を歩いていると、ふと扉の中から聞こえる声。

『うん、じゃあ次は下だ。』
『えっ・・ちょっとまってください!自分でしますから!』
『そんなこと言ったってまだ慣れてないんだろう?』
『でっ・・でもっ・・・!!』

ルナマリアのアホ毛がピーンと反応する。そのまま高速で扉に張り付く。
(ここシンの部屋よね?何?!アス攻?!ありえないありえないぶっちゃけありえない!!アスランさんは受よ!
そうよハイネとかジョーとかネオのおっさんが相手でさぁ・・・・・【ここから先は自主規制させていただきます】。)
『・・・・・・・・・・・・・・・・・ルナ、何アホ毛反応させながら盗み聞きしてんの?』
「のうわっ!」
ルナマリアが驚いて後ろを見ると、そこにはシンハロが立っていた。なにやらダンボール箱を抱えている。
「いや、このなかでアスシンのめくるめくるベーコンレタスが・・・・。」
『はぁ?』
「し・・・・シンハロ!そう言うあんたこそシンの部屋なんかに何のようなのよ!」
『何って・・・届け物だよ、見るか?』
そう言ってシンハロが包みを開けると・・・・・・そこには人の腕が入っていた。
「・・って・・なんだ。これ・・・義手?」
『そ、俺に使われてる技術を流用した最新鋭の義手。本物の腕みたいだろ?』
そんなことを話しながらシンハロは部屋に入ろうとドアを開ける。
『二人ともー、頼まれてた奴持って来たぞー。』
「あぁ、シンハロ、すまない。そこに置いておいてくれ。」
部屋の中にいるアスランは何やら人の足の形をした物を弄っている。
「げぇぇぇっ?!ルナ!!なんでそこにいるんだよ!」
シンは真っ赤になって叫ぶ、いまのシン両足の義足をはずし、トランクス一丁だ。
「うるさいわねぇ、それくらいで叫ばないでよ。大体男子は教室で着替えるのが遅いのよ。
私が中学の頃は男子が着替えていてもおそかったら女子は強制的に教室に入ったわよ?!」
「こえーー!女子こえーー!!」
大急ぎでベッドの上の布団にくるまるシン。ラブコメみたいだ、性別は逆だが。
「・・・・・それにしても、義足義手って・・シン。あんたこんなに持ってたの?」
部屋中に転がったさまざまな義手や義足をみて感嘆するルナマリア。
「あ・・・あぁ。普段の私生活用の普通の腕に近い外観のやつとか、任務用にいろいろ組み込んであるやつとか、
んでもって組み込んである装備のよっても多少のパターンがあったりするから・・・・・つーかでてけよ。」
シンは布団のなかからもぞもぞと説明をする。ルナマリア何気に布団を剥ごうとしている。
「へぇ・・・ずいぶん今回も良い出来だな。前の奴よりモーターも良い奴だ。」
『まぁ、何せマユの攻撃をフルにくらいますからね。普通はこんなに早く消耗しませんよ。』
義手に目を輝かせるアスランと、ため息をつくシンハロ。
「やめろーー!この変態ーー!!」
「・・・・プールの時も思ったけどあんた肌白いわねー。」
セクハラされるシンとセクハラするルナ。
「足の方はまだなのか?」
『えぇ、ちょっとしたミスが見つかりまして・・・。あ、でも明日にはつくと思います。』
「そうか・・・・。」
真面目な会話をする二人。しかし、そうしてる間にもシンはいろいろとピンチだった。

「ひぃぃぃぃぃ!!アスラン!シンハロ!ボスケテ!!」
「いい加減大人しく向かれなさいよ!減るもんじゃないでしょ!」
「減る!色々な心の大切な部分が減る!いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

160通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 21:12:31 ID:???
阿漕な事をやっている議長に吹いたw
小ネタを散りばめながら、それに溺れたり引っ張られたりしないのが良いね



そして腐女子ルナマリアのアンテナでまた吹く俺ガイル
161通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 21:59:21 ID:???
ひそかに前スレでI and I and Iの第3話が更新されている。
感想はこちらで
162161:2006/03/27(月) 22:13:04 ID:???
ttp://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1140881256/566
今回はちょっと切ないお話でした。
このまま「戦わない主人公マユ(おっとヴィアか)」路線で行くかな?
こうやって戦場以外の地域や戦争が通り過ぎた場所を回っていくのもいいでしょう。

これからヴィアがどんな人と出会い、何を見るのかが楽しみです。
コニールとは会えるのかな?
そしてお兄ちゃんと再会できるのか?が気になるです。
163通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 22:49:22 ID:???
>ほのぼの
最近、チャンピオンでやってる「ダイモンズ」って漫画にハマってるせいか、今回の義手義足ネタが色んな意味でツボった
こっちのシンはゼスモスが使えてもおかしくないな
164通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 23:19:08 ID:???
>I and I and I
今回もいい感じでした!GJ!!
かつてAAメンバーが歩んできた道を振り返り、現在の状況を描いているところに丁寧さを感じますね。
記憶のないマユという、良い意味での部外者からの視点だから、見えてくるものもあるし…
続きが非常に楽しみです。もいちどGJ!!
165通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 07:13:49 ID:???
感想は向こうでいいだろ
ちょうど埋まるし
166通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 11:55:10 ID:???
そう思って向こうに投下したんジャマイカ
167通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 15:29:36 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃ おらおら
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
168通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 17:15:38 ID:???
>>167
汚らわしいぞッ!
169通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 19:17:57 ID:???
はいはいスルーしましょう。
170通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 20:25:59 ID:???
八シンスレだけじゃなくてこんなとこにも出張してんのか
171通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 20:53:33 ID:???
マユ・アスカの成分解析結果 :

マユ・アスカの66%は毒物で出来ています。
マユ・アスカの14%は保存料で出来ています。
マユ・アスカの9%は小麦粉で出来ています。
マユ・アスカの5%はスライムで出来ています。
マユ・アスカの4%は着色料で出来ています。
マユ・アスカの2%は苦労で出来ています。


マユ……
172通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 21:07:29 ID:???
>マユ・アスカの66%は毒物で出来ています

おるすばん(ry
173通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 21:31:05 ID:???
保存料→シンの思い出
着色料→職人の作品
苦労→色々いじられるから

言い得て妙だな
174通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 21:46:55 ID:???
ゲン・アクサニスの成分解析結果 :

ゲン・アクサニスの96%は嘘で出来ています。
ゲン・アクサニスの2%はやましさで出来ています。
ゲン・アクサニスの1%は宇宙の意思で出来ています。
ゲン・アクサニスの1%は苦労で出来ています。


ちょwwゲンwwwおまwwwww
175通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 22:05:01 ID:???
はずれてないといいきれない辺りが悲しいな、ゲンw
176通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 22:07:30 ID:???
>>174
はまりすぎwwwwwwww
177通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 22:09:07 ID:???
あれ?
前スレと結果が違うぞ
178通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 22:11:36 ID:???
前スレのは誤字>>174が正解
だからうけるwww
179通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 22:26:36 ID:???
180通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 23:51:58 ID:bNy3mpev
age
181493:2006/03/29(水) 00:01:50 ID:kG2Gv+cS
おっ!!!なるほどいいアイデア。
マユがMSに搭乗か。絵になるな。
そろそろ夕食時である。
ここ、ミネルバ&ムセイオンチームでは軍とは思えないようなアットホームな光景が見られる。
普段、彼らは基地の寮に入っているが寮というか、でっかい一軒家のようなつくりである。
まぁ、好きな風に丸々使えるのは良いがもちろんリスクはつく。
食堂も清掃員もこの寮にはついていないで自分達で必然的に料理も掃除、家事全般をしなくてはならないのだ。
何故こんな寮があるのか、議長の気まぐれとしかいいようがない。
「おい、ジョーの奴遅くないか?」
夕刊を見ながらネオが言う。
「・・・・・確か本屋行くって出てったよな?」
アスランがハロ(記念すべき300体目)をいじりながらハイネに話しを振る。
「まぁ、大丈夫だ。いきなり許可もなく外で遊んでくるような子にお父さんは育ては覚えは・・と、帰ってきたみたいだな。」
ハイネが言った通り、廊下を歩いてくる音が聞こえる。ガチャリ、とドアの開く音。
「ただいまー。」
「ジョーおかえ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
帰ってきたジョーを見た瞬間、ハイネの言葉が止まる。
ついでその場にいた全員が止まる。
さらに晩御飯をテーブルに運んでいた料理当番組の動きが止まる。
ただ、一人だけ平気なのはステラである。ステラはジョーが抱えているモノを見て、無邪気に言った。
「あー・・・v赤ちゃんだぁ・・・・・。」

次の瞬間、世界が爆発する。

「こんのどら息子ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「ひでぶっ!」
ハイネが思いっきりジョーの顔を殴る。
「ジョー!お父さんそんな子に育てた覚えないぞ!だからあれほどナチュラルには手を出すな、もしくはつけろと・・・・。」
「いや・・あの・・。」
ぼーぜんとするジョー。しかし、その場の混乱は収まらない。
「これが全てのギャルゲー主人公の将来の姿か・・・・。」
「誰の子なのよ?!あぁぁぁぁ、親権とか養育費とか・・・・。」
「母親が捨てたと言う事はおそらくこちらに親権は・・でも養育費となると・・。」
「ジョー、私がいなくなってる間に・・・・・。」
「・・・・いつだ。いついなくなった時だ。ジョー、黙ってお兄さんに話すんだ。
兄さんの知り合いに良い弁護士がいるんだ。だから・・・。」
「カルマが同様のあまりキャラが変わってるー?!」
昔から家族同然だったハイネ隊を筆頭に・・・・・・。
「スティング・・、あんたアレがあんたの将来だったら殺すわよ?」
「え・・あ・・!そんな義姉さん!僕とメイリンさんはそんな・・・・。」
「お姉ちゃん!!」
なんだかんだ行ってお姉ちゃんのルナマリアと汗だくのスティング。
「あかちゃん・・・・v」
「ステラ!そんな持ち方するな!」
赤ん坊に夢中なステラとそれをとがめるアウル。
「ふふふふ・・マユが生まれた時のことを思い出すなあ・・・・・。」
『あ、あまりに衝撃的な現実に逃避したぞ。』
「にーさーん。シンにーさーん。どこへいくのー?シーンにーさーーん。」
いつもの調子のアスカ兄妹(仮)。
「おーい、お前ら。落ち着け。」
「俺も明日の身かも・・・・。」
「・・・・・・ひと段落つくまで待つか。」
そして意外と落ち着いている、ニュータ○プ二人とアスランなのであった。

「拾ったぁ・・・・?!」

ようやく落ち着いたメンバーはジョーから話を聞いていた。
なんでもジョーがうっかり立ち読みをしてしまって遅くなってしまい、近道しようとおもって公園
を通ったらなんとベンチにこの赤ん坊が。
しばらく親と思わしき人を探したものの、公園周辺には人っ子一人いなかったそうだ。
なので仕方がなく、ここに連れて来たらしい。
「・・・・すみまんせんがお客様の中で赤ん坊の世話をしたことがある方はいらっしゃいますか?」
申し訳なさそうにジョーが言うと何人か手をちらほら上げる。全員安堵する。
「でも、おむつも粉ミルクもほにゅうびんも無いわよ?今晩だけだとしてもどうやって面倒見るつもり?」
むっっと怒った様子でグレイシアがジョーに詰め寄る。
ジョーは困った顔をしたまま顔を背ける。
「・・・・・どーするよ。買いに行くにもいまからじゃ外に出れないし・・。」
「でれるよ。」
ため息交じりのネオのセリフをさえぎってマユが言う。
「じつは町側の壁、私くらいの子じゃないと通れないくらいの小さい穴があいてるんだ。
だから私買ってくる!」
「おぉ、マユが主人公っぽい。」
「あぁ、だがこの手の主人公は町にいって猟奇殺人に巻き込まれるな。」
「何の話だ、おい。買ってくるつってんだろおっさん達。」
いった矢先に変なコメントをつけられ切れるマユ。
『俺も行く、あの姿でなら平気だろ。』
そう言ってシンハロはハロの体を取りに向かう。

こうして、ミネルバパイロッツ+αの、悩ましい数日間が始まった。
185通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 02:34:55 ID:???
単発設定小話 「DESTINY PLAN」携帯電話編B

〜レストルームで向かい合って座るマユとハイネ〜
マユ「これを見て欲しいの・・・」
ハイネ「・・・携帯電話?」
〜部屋の電気を消し、プラネタリウムモードを起動させるマユ〜
ハイネ「ほぉ〜・・・これはまた・・・きれいじゃないか。すごいなその携帯電話・・・」
マユ「それだけだったらよかったんだけど・・・」
ハイネ「・・・?ん、なんだ・・・・・・これは・・・・・・マユ・・・お前の身体情報なのか・・・?」
マユ「うん・・・。この電話ね、あの連合のエクステンデットが持っていた携帯電話なんだ・・・」
ハイネ「エクステンデットが?マユのものじゃないのか?」
マユ「これは私のもの・・・私のものだった携帯電話なの」
ハイネ「だった?」
マユ「この携帯ね・・・先の戦争でオーブから脱出するときに落としてなくしちゃったのよ。ううん、それだけじゃない。私が落としちゃったばかりに、お兄ちゃんはこれを拾ってこようとして死んじゃったのよ・・・」
ハイネ「・・・マユ・・・・・・もういい。俺はそれを知っている・・・わざわざ口にださなくてもいい・・・・・・」
マユ「違う、違うのよ。お兄ちゃんは生きていたの!連合のMSパイロットとして生きているのよ!」
ハイネ「・・・なんだって!?」
マユ「連合の・・・灰色のアストレイがいたでしょう。あのパイロットが私のお兄ちゃんよ」
ハイネ「あのパイロットがマユのお兄さんだって言うのか・・・でもなぜだ!?あいつらは限りなくブルーコスモス側の連中だぜ?コーディネイターを受け入れるはずがないだろう!?」
マユ「それは・・・わからないけど。でも間違いなく私のお兄ちゃんはあそこにいます!」
ハイネ「マユ・・・お前にお兄さんのことはわかったよ・・・。携帯電話の話に戻ろうか?」
マユ「!・・・そ、そうだね。・・・・・・今のデータだけならまだいいんだけど・・・もっと前のデータも残っているのよ?なんで?なんのためにそんな記録残す必要があるんだろう?」
ハイネ「・・・この携帯・・・親御さんからもらったのか?」
マユ「うん・・・」
ハイネ「子供の健康管理目的でつけた機能かもしれんしなぁ・・・」
マユ「でも、いままではこんなのでてこなかったのよ?・・・壊れていはいたけれど」
ハイネ「う〜ん。なぁマユ。この携帯預かってもいいか?それと艦長に一部始終話してもいいか?」
マユ「・・・・・・うん」
ハイネ「俺から艦長へ相談してみるよ・・・杞憂で終わればいんだがな」
マユ「・・・お願いね。ハイネ兄ちゃん・・・・・・」
ハイネ「おう!まかせとけって!?」
〜レストルームを出て自室に戻るマユ。携帯を手にし艦長室に向かうハイネ〜

〜艦長室に入るハイネ〜
ハイネ「すいません。遅れました」
タリア「あら。アーサーから報告書はもらったわよ?」
ハイネ「アスランもいるのか。まぁ、ちょうどいい。実はちょっと厄介ごとを見つけてしまいましてね」
アスラン「厄介ごと?」
ハイネ「ああ、まぁ杞憂で終わればいいんだがな。・・・この携帯電話を知っているか?」
アスラン「普通の携帯電話に見えるが・・・流行の型ではないみたいだな?」
タリア「あら、なつかしいわね。その携帯、私も昔もっていたわよ。プラネタリウムが映せるやつでしょ?」
ハイネ「そう。艦長の言うとおり。プラネタリウムを映すことがウリで10年以上前に発売されたものだ・・・」
アスラン「プラネタリウム・・・へぇ。すごいじゃないか」
ハイネ「まぁ、それはいいとして・・・。この携帯電話な、発売日に生まれた赤ん坊に無料で配布するキャンペーンをやっていたんだ」
タリア「そのキャンペーンなら私も覚えているわ。でもほんの少ししか該当者がいなかったのよね?」
ハイネ「そうなんですがね・・・艦長は・・・ディステニープランというものをご存知ですか?」

Cへ続く。
186通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 02:37:31 ID:???
この時間に投下ってのも凄いな
俺も人のこと言えんか、そろそろ寝よう…
187通常の名無しさんの3倍:2006/03/30(木) 02:24:37 ID:???
hosyu
188通常の名無しさんの3倍:2006/03/30(木) 23:01:12 ID:7Z0tJvGv
保守
189479:2006/03/31(金) 02:37:52 ID:???
今から投下します
190I and I and I(1/8):2006/03/31(金) 02:40:29 ID:???
コーディネイターだから、とか。
ナチュラルのくせに、とか。
そんなこと言うのはおかしいことかもしれません。
あの人が嫌い、とか。
あの人が好き、とか。
そんなことどうでもいい、とかも。
誰もが持ってる気持ちのはずだから。
でも、コーディネイターとかナチュラルとか、そんなことも言っていられない人達もいる。
ワタシ達が向かう場所は、危ないかもしれません。



〜I and I and I〜 第四話「それはちっぽけな何か」



マユ達の次の目的地は、ユーラシア連邦にあるガルナハン。
だが、現在マユ達は汎ムスリム会議にやって来ている。
それは何故かというと、マハムール基地に持っていく支援物資が届けられているからだ。
応接室に通され、サイ達は司令官のラドルと挨拶を交わす。
「まさかあの足付き…アークエンジェルのクルーの方とこうして会えるとはな」
「もう昔の話ですよ」
代表としてサイが手続きの書類に記入を行っている中、ミリアリアがラドルと話をしていた。
かつては敵だった者達と席を同じくする。
ラドルにとってそれは少々違和感を覚えるのものだった。
サイーブの時と同じで、それは誰でも抱く感情なのかもしれない。
191I and I and I(2/8):2006/03/31(金) 02:43:42 ID:???
「それはそれとして、物資の運搬に基地と人手を貸して頂いて感謝致します」
「いや、こちらもこういった活動に協力できて光栄だ」
いくら平時とはいえ、軍人ではない者が容易に基地を利用できるわけではない。
評議会やザフト上層部の穏健派、つまり旧クライン派の根回しがあるからこそだが。
それはラドルや他の士官も、感付いているところではある。
「それに、平和な時こそ、民間の者達に尽せることができる」
しかし、ラドルは嫌々で基地を貸しているわけではなかった。
戦争になってしまったら民間人に気を遣っている暇もない。
そして何より、戦争をしている自分達が民間人を傷付けてしまうかもしれない。
今だからできることであり、今しかできないことでもあった。
そうラドルは考えていた。
「それで、あの少女は?」
小脇に座っているマユを横目に、ラドルが呟いた。
出された砂糖とミルクの多いコーヒーを口にしながら、マユは一人じっとしている。
片腕だけのマユは、基地内でも兵士達の目を引いた。
「俺達の同行者ですよ。ヴィアは、右腕と記憶を、戦争で失いました」
今まで黙っていたカズイが、少し怒っているような口調で話に割り込んだ。
192I and I and I(3/8):2006/03/31(金) 02:46:10 ID:???
ラドルの言葉が気に食わなかったのか、表情も穏やかではない。
「あの、聞いていたより物資が多いんですけど…」
ピリピリとなりそうな空気だったが、サイの一言でそんな空気もミリアリア達の話も途切れる。
「あ、あぁ…それはカナーバ前議長や、第一線を退かれた方々など、プラントからの支援品だ」
「プラントから…」
「非プラント理事国があるように、プラントと友好的なナチュラルの国がある。
逆に、地球連合軍に参加しているコーディネイターがいることもまた事実。
結局は助けあっているのさ。それを具現化でかているのが、君達のオーブだ。
ナチュラルだコーディネイターだと騒ぐ以前に、我々は同じ人間だからな」
未だ両人種の差別は続いている。
ナチュラルはコーディネイターに嫉妬し、コーディネイターはナチュラルを蔑む。
しかし、大きな目で見れば、その感情は人が誰でも持つもの。
ラドルが言うように、結局は同じ人間ということなのかもしれない。
「プラントの気持ちとして、物資を無事にガルナハンへと届けてくれ」
「…わかりました、お預かりします」
ラドルから差し出された手をカズイは握る。
193I and I and I(4/8):2006/03/31(金) 02:49:29 ID:???
自分にも、コーディネイターに苦手意識を持っていた頃があった。
薄れてはいるが、今でもそれは残っている。
マユも、そんな苦手なコーディネイターの一人だ。
しかし、記憶障害のせいで本人はそれをあまり実感してはいないようである。
カズイの中にあるマユの印象は、弱々しく、守ってあげなくてはいけない存在だった。
コーディネイターと知らないままでも、今のままでもマユに対する扱いは変わらない。
ナチュラルとコーディネイターの差異など、実際にはないのだろうか。
平和だと思っていた日常から、訳もわからず戦争に巻き込まれた。
ザフトの攻撃に怯え震えた。
そして、逃げ出してしまった。
今と比べたら随分変わったと、カズイ自身も驚いている。

ジープからトラックへ乗りかえて、一行は一路ガルナハンへ向かっていた。
マハムール基地を出発し、国境を越え、数日を経ての到着を予定している。
カズイとサイが運転する、非常食と生活必需品が積み込まれた2台のトラック。
本当なら1台で済むはずだったが、プラントからの分が増えて2台となった。
「まぁヴィアとミリィを荷台に乗せるよりは良かったのかなぁ」
194I and I and I(5/8):2006/03/31(金) 02:52:37 ID:???
運転を任されたカズイは、隣に座るマユに聞こえるように言ってみる。
「プラントだけじゃなくて、マハムール基地からもコーヒーとか貰っちゃいましたからね」
笑ってマユも言った。
荷台には支援物資だけではなく、コーヒー豆が詰まった大きな麻袋がいくつもある。
マハムール基地の付近で栽培されているものを、ラドルが持たせてくれたのだった。
「でも美味いよな。あのコーヒー」
「途中でコーヒーメーカー買っちゃって、毎日飲んでますもんねぇ」
「へ、変かな…?」
「いーえっ。でもなんかバルトフェルドさんみたい」
「確かに…そうかも」
明るい雰囲気が二人を包んでいる。
まるで仲の良い兄と妹がじゃれあっているような光景だった。
今のマユは、兄がいることも知りはしない。
無意識の内にマユは、兄であるシンとの会話を、信頼しているカズイとの会話で再現していた。
和気あいあいと会話も続き、そろそろガルナハンが間近に迫っている。
通りすぎる家屋は、時たま倒壊しているものもあった。
前大戦時、アルテミス陥落などでユーラシアの連合内での地位は低くなる。
その汚名を返上しようと、ユーラシアは終戦した今でも躍起になっていた。
195I and I and I(6/8):2006/03/31(金) 02:56:27 ID:???
だがそのやり方は、ユーラシア各地で民衆の不信感を募らせている。
内乱が起きるかもしれない。
そんなユーラシア国内を、2台のトラックは走っている。
「そろそろガルナハンだな。現地の案内人を頼んであるんだけど…」
「あれじゃないですか?」
前を走るカズイ運転のトラックが、誰かを発見した。
クラクションを鳴らし、トラックを止めると少女が乗り込んでくる。
マユが真ん中に体を寄せて、少女がドアを閉めた。
「案内人のコニール・アルメタです、よろしく」
「子供…?」
コニールと名乗った少女を見て、カズイが不思議そうに呟く。
「怪しまれないためです。まぁ、甘くは見られたみたいですけど」
「いや、そんなことは…」
「とにかく行きましょう。一旦迂回してください」
カズイの言葉を遮って、淡々とコニールは続けた。
「直行できるルートには連合がいます」
だが、その淡々とした言葉の裏側にあるものを、カズイとマユはすぐに気付く。
重い詰めた表情をして、コニールがまた口を開いた。
「この辺は連合の圧力が強いんです…最近は、抵抗したら何されるか」
196I and I and I(7/8):2006/03/31(金) 02:58:32 ID:???
「その上、連合に参加していない他国からの支援物資が見付かったら…ってとこかな」
「援助してもらって、みんな喜んではいます。でも、連合は恐いから…」
「ユーラシアの連合が意地悪いのは知ってるから、気にしなくていいよ」
情勢が深刻なのはコニールの顔を見れば明らかだった。
そしてカズイは、アルテミスの一件の渦中にいた一人だ。
アークエンジェルクルーが大西洋連邦の人間だったとはいえ、監禁までされたことを覚えている。
思い出して、カズイは呆れてしまった。
「そんなに、大変なんだ…」
二人の会話を聞いていたマユがぼそっと呟く。
「そうさ。平和呆けしてそうなあんたにはわからないかもしれないけど」
流れる景色を見ながら、コニールが棘のある言い方をした。
「平和呆けなんて…してないです」
むっとして、マユは言い返す。
コニールがマユに顔を向けた。
その顔は、少々怒りを含んでいる。
「あたし達は必死に生きてるのに、あんたはまるで旅行みたいについてきてるじゃないか!」
自分も子供だが、相手も子供。
だから怒りが溢れるのだろうか。
そんなことを頭の片隅で考えながら、怒りに任せてマユの両腕を掴む。
197I and I and I(8/8):2006/03/31(金) 03:02:04 ID:???
「そんな奴のどこが平和呆けして…ないって……」
コニールの言葉が途切れた。
位置的に今まで目に入らなかったせいでわからなかった。
掴もうとしたマユの右腕の部分は、服だけしかない。
「ヴィアは平和呆けなんかしていない。戦争のせいで無くしてしまったものも…あるんだ」
唖然するコニールに、カズイが言葉をかけた
ゆっくりとコニールの手が離れる。
「ごめん…」
「うぅん。ワタシも、無神経なこと言ってごめんなさい」
戦争で無くしたといっても、マユは自分の身に何が起きたのかは覚えていない。
覚えていない。それこそが、失ったものの一つではあるが。
「…あ。そろそろ坑道が見えてくるはずですから探してください。
町のみんなもほとんど知らないから、連合にも気付かれないはずです。
トラックぐらいなら通れますけど、暗いから気を付けてください」
マユのことがショックだったのだろうか、力無くコニールが説明した。
荒れているユーラシア連邦。
まだ世界は、平和とは言い切れない。

198479:2006/03/31(金) 03:07:51 ID:???
なんだかデジャヴがしますが、それは気のせいです
運命キャラが出ましたが…メインを張った人達ではない
結構脇キャラが好きだったりします
もちろん、メインもみんな好きですよ、はい
なんてフォローをしつつ今回はこれにてお開き

追伸
まとめサイト管理人様、避難所の方にレスしてありますので見てもらえれば有難いです
199通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 09:59:24 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃ 保守だゴルァ
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
200通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 10:03:33 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃ 主人公は俺だ糞妹が
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
201通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 10:44:54 ID:???
駄文乙 氏ねよ
202通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 10:50:40 ID:???
厨房の作文以下
203通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 10:54:48 ID:???
>>1
204通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 10:56:20 ID:???
>>203
釣れた釣れた
205通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 11:07:42 ID:???
作家気取りの厨房がいるのはここでつか?
206通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 11:10:06 ID:???
春厨щ(゚Д゚щ)カモォォォン
207通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 13:35:35 ID:???
>>198
途中で言葉が途切れるコニールの様子が目に浮かぶようでいいな。
独特の雰囲気を大事に頑張れ。
208通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 14:39:18 ID:???
>>207
作者自演乙
209通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 14:42:47 ID:???
まぁ2ちゃんは歯に衣着せない奴等の集まりだからな
逆に言えばもっと修行して投下して賞賛のレスがついたら確実に成長してるって琴田品
がんがれ
210通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 14:43:00 ID:???
春厨(屮゚Д゚)屮 カモーン
211通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 14:46:36 ID:???
駄文しか投下できない職人は氏んでください^^
212通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 14:54:37 ID:9lcwNgYX
あんーなーに一緒だったのにー夕暮れはー)ry
213通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 14:55:23 ID:???
ぬるぽ(^-^)/
214通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 15:00:22 ID:???
( ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ
215通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 18:08:06 ID:???
春厨氏ね
216通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 18:12:06 ID:???
この時期、平日の昼間に誹謗中傷を書き込むのは春厨の証拠だな。
職人さん、スルーしてやって下さい。
217通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 18:18:36 ID:???
スルーしない人もいる罠
218通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 18:39:43 ID:???
>>199-217
自演乙
219通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 19:00:00 ID:???
>>207は違うだろカス
220通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 19:45:07 ID:???
このスレも随分と香ばしくなったなぁ・・・
これが春ということか・・・
221通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 19:58:23 ID:???
>>220
スレじゃなくて板全体がな
むしろ2ちゃん全体がな
限定すんな
222通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 20:43:10 ID:???
>>221
正確に言えば、「ネット全体」というべきでおま。
外部だってかなーり香ばしくなってるよ。
223通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 20:55:13 ID:???
人は人俺は俺
224通常の名無しさんの3倍:2006/03/31(金) 21:51:42 ID:???
イヒイッ……春厨イイイッ……
225通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 01:59:20 ID:???
3月32日
226通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 03:19:22 ID:???
あれ?今日ってエイプリルフールじゃないの?
227通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 03:47:34 ID:???
そういや中止になったんだっけか
228通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 09:15:03 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃ くたばれ荒らしども!
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
229通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 09:59:25 ID:???
32日かよ…まさか明日は4月1日に?
230通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 10:26:12 ID:???
春厨(屮゚Д゚)屮 カモーン
231通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 10:39:13 ID:???
なにより問題なのは住人の耐性の無さだな…
たった数レスの煽りでここまで伸びりゃそりゃ向こうも喜んで集まるわ。
232通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 10:49:01 ID:???
>>231
荒らし自演乙
233通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 11:42:18 ID:???
何でもかんでも春のせいにされて、春もいい迷惑だと思うんだ
234通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 13:48:54 ID:???
と、春厨が申しております

これでいいんだろ?
235通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 14:10:39 ID:???
気にするな。俺は気にしない。

とどこぞのHGも言ってる事だし、春厨や煽りと呼ばれてる奴の事など気にすんな。
236通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 14:37:51 ID:???
誰も気にしてないと思うけど
一部レスの時間が妙に近いし、春厨の自演だと思われ
237通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 15:31:15 ID:???
空気変わったなぁ…
238通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 15:47:24 ID:???
というか住人はみんな潜んでるだろ
ここ数日レスなんてろくに無かったんだから

投下されたのがどんな作品であってもたぶん喰い物にされてたよ
239通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 16:34:47 ID:???
新学期を前に心が不安定だとか
年度開始なのにまだ就職決まってないとかとか
240通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 18:15:36 ID:???
木の芽立ちのころは、心の病む人が多いんだよ

昔っから言われてるジンクスじゃあないかw
241通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 18:23:41 ID:???
春厨に呼応して春だなあ厨も続々沸いてきてるみたいだな。
相手しなきゃ>>202で止まってたってのを忘れるなよ。
242通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 18:28:58 ID:???
むしろ相手にしなかったら「このやろー俺をみやがれー」って感じで自演してるんじゃないの?
ID出ないから自演かもわからんが構ってるなんて確証もない
243通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 18:34:35 ID:???
さすがに30レス以上も自演続けるような暇人はいないと思うが、
まぁID非表示板で自演のなんのと言うだけ不毛か。
244通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 20:03:41 ID:???
自演乙厨
245通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 20:06:44 ID:???
お前等ツマンネ
246通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 21:38:49 ID:???
>>189
戦闘がなくても成り立つ、それがSSの利点。
カズイの成長ぶりがいいですな。
247通常の名無しさんの3倍:2006/04/02(日) 05:59:22 ID:???
叩きageの軍人
248通常の名無しさんの3倍:2006/04/02(日) 07:11:08 ID:???
久々に来たらお腹一杯楽しませて貰いました。皆様GJ

>隻腕氏
みんながいろいろ言う前は少し神懸かってたように思う。
あまり考えないで突っ走っちゃってください

>Injuctice氏
ハリウッド版種死?面白い方向性かも

>付き人氏
相変わらず素晴らしい。「頑張ってね、お姉ちゃん」に萌えた

>PP作者氏
アスランとキラが人間臭くて(・∀・)イイ!!

>I&I&I氏
丁寧で好き。でも長いのも読みたいです
249通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 01:01:20 ID:???
単発設定小話 「Coordinator」携帯電話編C

・・・続き
タリア「・・・ディスティニープラン・・・・・・それと、その携帯電話が何の関係があるっていうの?」
ハイネ「この携帯電話は、マユ・アスカのものです」
アスラン「マユの携帯電話だって?」
ハイネ「まぁ、この携帯についてはあとで説明しますが・・・艦長。その反応ですとご存知ですね?ディスティニープランを・・・」
タリア「・・・・・・えぇ。そういうあなたはどこまで知っているのかしら?身内とはいえ簡単には口にしたくないわね・・・」
アスラン「艦長!さっき知っていないといったじゃないですか!ディスティニープランだって?ハイネ、そのプランのことを知っているのか?」
タリア「迂闊に話すわけにはいかないでしょう?今はフェイスが3人そろっているんだもの。話すべきだと考えたのよ」
ハイネ「確かに1対1では話しづらいでしょうね。アスラン、簡単に説明するとな・・・次世代型コーディネイター計画ってとこだ」
アスラン「次世代型だって?」
タリア「っちょ、ちょっと待って!それホントにディスティニープランのことをいっているの?」
ハイネ「はっ?えっと、俺の独自調査と議長から聞かされたことなので間違いありませんが・・・?」
タリア「議長からですって?私が聞かされたのはそんなものじゃないわ」
ハイネ「じゃ艦長はどういうものだと伺っているのですか?」
〜ハイネに促されて自分の端末ファイルをひらくタリア〜
タリア「これを見て頂戴。簡単な概要説明書よ」
アスラン「っ・・・・・・これは・・・。確かにまったくちがう内容ですね。しかし・・・・・・この計画は・・・」
ハイネ「・・・・・・確かに俺が聞かされたものではない。なぜ議長は異なる二つのプランを?」
タリア「それは私が聞きたいわねぇ。まぁ私の持ちネタはこれだけだし、ハイネのプランの続きをきかせてもらえるかしら?」
ハイネ「ええ。・・・どこまで話しましたっけ?」
アスラン「その携帯電話の発売日に生まれた子供に配布されたってとこまでだ」
ハイネ「ああ、そうか。・・・じゃちょっと部屋の照明を落としてもいいですか?プラネタリウムを見ながら話しましょう」
〜三度作動するプラネタリウムモード。天井に無数の光が生まれた〜
アスラン「これがプラネタリウムモードか・・・へぇ、結構きれいに映るじゃないか」
ハイネ「もう少しすると文字がでてきますから・・・」
タリア「文字・・・?・・・・・・あら本当にでてきたわね」
ハイネ「まぁ体温と身長とか体重とか身体の状況に関する情報がでてくるわけですが・・・」
アスラン「こんな機能もあるのか?」
ハイネ「はは、まさか。もってるだけでどうやって持ち主の身体情報を取得するんだよ?」
タリア「このデータってこれじゃないとみれないわけ?」
ハイネ「・・・そもそも、この携帯にはそんな機能はありません。それにこのデータも特殊なコードを入力しないと見えないようになっています」
タリア「でもこの携帯電話にははいっているじゃないの」
ハイネ「だから報告に伺ったんですよ」
タリア「その心は?」
ハイネ「マユ・アスカは次世代コーディネイターの被験者である可能性があります」
タリア「・・・・・・となると・・・アスラン。さっあなたがわたしに言いかけたことと関係があるのかしら?」
〜タリアの瞳はアスランの瞳を追いかける〜
アスラン「・・・・・・断定はできませんが。ハイネのいっていることが本当のことであれば・・・わたしが言いかけたことはまさにそのことでしょう」
ハイネ「?アスラン・・・お前、なにを知っている?」
アスラン「マユと知り合ってから地球に残されているコーディネイターのデータをくまなく調べていたんだ」
タリア「あなた、オーブにもどってそんなことしていたの?」
アスラン「・・・マユだけじゃありませんが。・・・マユ・アスカ、彼女の遺伝子は通常施さない処置を受けている」

携帯電話編そのD「gene」へつづくっぽい。        
・・・はやいとこアウルを殺さんと先へすすまないなぁ。
250通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 08:23:28 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃ 春厨のせいで荒れてるじゃねぇか。荒らしは氏ねよ!
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
251通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 22:19:36 ID:???
スルー
252通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 00:54:43 ID:???
華麗にスルー
253通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 01:04:08 ID:???
今日の晩御飯何にする?

「カレーにするー!」
254通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 01:16:52 ID:???
2点
255通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 02:24:56 ID:???
え〜
256通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 09:36:24 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃ だから荒しはスルーしろって言ってるだろ
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
257通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 16:02:05 ID:???
スルーするー
258通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 03:13:48 ID:AoZ3I0pz

             ∧..∧
           . (´・ω・`)  < ジェバンニが一晩でやってくれました
           cく_>ycく__)
           (___,,_,,___,,_)  ∬
          彡※※※※ミ 旦
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   \ どっ!!  /   \ ワハハ! /
     \     /      \    ∞
 l|||||||||||||| ∩,,∩ ∩,,∩  ∩,,∩ ミ∩ハ∩彡
 (,    )(,,    )    ,,)(    )(    )
259通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 13:12:57 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃  そうだぞ。いい加減に反応するのやめるんだ!!
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
260通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 13:19:40 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃  荒し逝ってよし!!
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
261通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 14:00:58 ID:???
釣りか素か判断に迷うな
262通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 19:14:10 ID:???
間違いなく釣りだろ
263通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 20:29:00 ID:???
まあ、嵐は過ぎ去るのを待つのが得策だな
264通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 22:25:53 ID:???
待ってる間に吹き飛ばされないよう気をつけろ
265通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 23:56:22 ID:???
スレが吹き飛ばされても僕達はまた、スレを植えるよ
266通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 00:43:18 ID:???
>>261-265
自演乙。
267通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 02:15:16 ID:???
m9(^Д^)プギャー
268マユ種のひと:2006/04/06(木) 22:03:24 ID:???
前スレ>340、>341、>342よりの続き

第四十二話
 がらんとしたミネルバのブリッジ。ぼんやりとしているタリア。気の抜けきった上司に、体でも動かして気晴らしを勧めるアーサー。タリアはそれも悪くないというものの、一向にそうする素振りを見せなかった。そんな空虚なやり取りに乱入者が一人、カガリだった。
 突然のカガリ登場に、タリアもちゃんと驚いてみせた。カガリは、敗戦国としてオーブは一応ザフトの駐留は認めているが、その数少ない駐留軍の一つであるミネルバが、ここまでだらけているのはどうかと思う、と滔々と語った。
 それを言うためだけにわざわざ来たのか、とタリアは問う。カガリは否定し、視察がてら息抜きに来た、と返す。タリアは怪訝な表情をした。カガリは気にせず話し始める、自分の帰還の際に襲ってきたMSの正体がわかった、と。タリアはともかくアーサーの食いつきがいい。
 名前はデスティニー、前大戦中、ロゴス主導で造られた地球圏初のニュートロンジャマーキャンセラー搭載のMS。しかし、完成を前に大戦は終結。ところが、MSの性能限界を見極めるという目的で開発は続行。そうして完成したロゴス公認の「最強のMS」だ。
 アーサーは頷きながら、あの事件を計画したのはロゴスか、と問う。カガリは否定、デスティニーは乗りこなせる人材がいなかったこともあって、ロゴスの中では芸術品扱いだった。その芸術品を使いたがっていたのは、ブルーコスモスの新盟主だったと、ユウナの証言を述べる。
 カガリの説明は続く。あの事件のころには、ブルーコスモスはロゴスをかなり掌握していた。尤も、ロゴスとブルーコスモス有力者は多く重複し、連合への影響力が強いのはブルーコスモスの方で、今のところはロゴス不在で混乱という事態は避けられている。
 そうなると、デュランダル暗殺を誰がやったのかわからなくなる、と語ったのはタリア。カガリは肯定するも、アーサーはよく理解していないようで、タリアは解説、そこまで実権を握っていたのなら、ブルーコスモスは戦争継続よりも組織の地盤固めの方に腐心する、と。
 アーサーは怯えた声で、犯人はプラント、と口走る。なら、真贋は別にして暗殺者はすぐ捕まっている、そんなあからさまな火種を残す筈がない、なにせプラントは連合以上に戦争を続けたくはないのだから。ちなみにオーブでもない、とカガリは一言添える。
 アーサーは訳がわからなくなった。タリアもそうだった。何となく、戦争が始まろうとしている、カガリの言に、二人は息を飲む。
 ユニウスセブンのこと、デュランダルのこと、真相は曖昧でも手を上げる理由はある。しかし、落とし所はない。そして、それを収める人間もいない。泥沼化は目に見えているのに、突き進むしかない。まともな人間なら、絶望するしかない。
 カガリは、タリアに向き直る。腐るな、明日はどう転ぶかわからないのだから。

 ブリッジの外に控えるアレックス、久し振りにこうしていると自分を鑑みる。そんなアレックスに、切羽詰ったメイリンが駆け寄り、姉とレイが艦に残れるように取り成して欲しいと懇願してきた。
 確かに、その二人を連れて行くため、アレックスはミネルバに来た。だからこそ、ちゃんと説明する。二人は実績を買われて、取り返したガンダム三機の、地上でのデータ採集のためのパイロットに選ばれた。これは名誉なことだ。
269マユ種のひと:2006/04/06(木) 22:04:32 ID:???
 すると、メイリンは苦々しく言葉を紡ぐ。タリア艦長はフェイスの権限を剥奪された、ザクは機体も部品も全部持っていかれた、ヒルダ・マーズ・ヘルベルトは宇宙へ行った、マユも帰ってこない。明らかに自分達を……
 アレックスは右手でメイリンの口を押さえ、改めて言って聞かせる。プラントは開戦前、連合も充分に軍備が整っていないと見越し、大規模な戦争にならないと考えた。この機に乗じて、宇宙の連合勢力を少しでも排除しようと色気を出した。
 戦略に組み込まれなかった地上に与えられた指令は現状維持。ミーアやフェイスは、デュランダルがその権限の中で行える援助だった。この戦争の主戦場は宇宙であり、線引きのはっきりした地上では精々小競り合いが繰り返されるだけだ。
 はっきり言って、宇宙より地上の方が安全だ。ヒルダ達が新型MSのテストパイロットという本来の任務に戻った場合を除けば、ミネルバクルーは宇宙から遠ざけられた形になる。私見だが、マユが現状を受け入れた見返りが、ミネルバの今なのかもしれない。
 一通り語り終わってから、アレックスは手を離す。すると、メイリンは涙ながらに訴える、マユはどうなる、インパルスが他の人より上手に扱えるだけの、ただの女の子でしかないマユは、と。それには、アレックスは何も答えられなかった。

 格納庫。解体してあるインパルスを前に、ヴィーノとヨウランはあれこれ言い合っている。それを遠目に眺めるエイブス。そのエイブスに声を掛けるルナ、向き直ったエイブスはルナに軽い挨拶をし、その隣にいる女性に、ラクス役、ご苦労さんという言葉を送る。
 ミーアがインパルスを見たいというから案内した、とルナ。エイブスは了解して、今は修理中とも言った。最近、動かしたのかと尋ねるミーア。エイブスは否定、カガリを迎えに行って壊した分がまだ直らない。
 ミーアは不思議そうな顔をする。エイブスは弁明。インパルスは試作機で換えのパーツも少ない、ザクのパーツを流用したり何だりで騙し騙しやってきたが、あんな重大な欠陥を抱えた機体ではここいらが限界だろう。欠陥のことはルナも初耳である。
 エイブス曰く、脆い、装甲ではなく骨格が。原因の多くは合体機能にあるが、マユに言わせれば、これでも桁違いに良くなったのだそうだ。尤も、無傷で、しかも戦場で合体できるのはマユぐらい。マユはそんなに凄かったのか、とミーア。しかし、エイブスはそれも否定した。
 エイブスはあくまで仮説と断って。当時の開発者達は早急に結果を求めた。だから、マユがインパルスのために技術を磨くこと、インパルスをマユのために調整することに多いに力を注いだ。それは良き結果となって報われた。後はその繰り返し。
 ミーアは驚いた、それではザフト新型機開発ではなく、マユ専用機の開発ではないか、と。エイブスはあくまでも仮説と念を押した後、インパルスの修理を巡って意見を戦わせ、挙句、激しく白熱しつつあるヴィーノとヨウランを注意しに行く。
 そして、ルナとミーア。ルナは尋ねる、参考になりましたか、ラクス・クライン、と。はい、とても、と答える偽ミーアこと、ラクス。
270マユ種のひと:2006/04/06(木) 22:05:36 ID:???
 ルナから尋ねる、本当に宇宙へ。ラクスは答える、古い知り合いを訪ねに。戦争を止めるため、とルナ。できれば、ラクスは歯切れ悪く答える。遺言が公開されて、晴れて自由の身になれたのに、そうルナは呟く。死人だからこそ、自分は宇宙に行ける、ラクスは言い切った。

 甲板で佇む、レイとキラ。本来なら終わっていた戦争が、相手への恐怖や不安を動機に、戦争という外交手段ですらなく、ただの殺し合いになる。今の形は、ある意味で前大戦末期に近いのかもしれない、とキラは言う。
 前大戦はニュートロンジャマーキャンセラーのリークにより、核という抑止力の復活とエネルギー問題の解決、それに大規模降下作戦の失敗が契機だった。今の場合はもっとわかり易い、マユの言葉を真摯に受け止めればいいだけ。
 それを受け、レイは淡々と語る。あの日、マユが平和を訴えて以降、連合は「邪悪を浄化する正義の使者」から「巨悪を駆逐するための必要悪」へと方向転換し、プラントは「我々の手で過去の過ちを償うために」をスローガンに国民へ一致団結を呼び掛けている。
 両陣営は自らの正義を手放し、大儀のみを掲げた。そうして手放した正義、言い換えれば一時代の正義を、マユは背負わされることになった。そして慈しみ深いが故に敵として立ち塞がることを、心優しいが故に平和のために戦うことを、強制されている。
 戦争が劇場化している、とキラは嘆いた。言い得て妙、というのがレイの感想だった。劇場化という言葉に、キラはふと、クルーゼを思い出す。クローンである自分に存在意義を見出せなかった男、世界は滅びるべくして滅ぶと叫んだ男。
 もしも、彼が最悪の殺し合いを回避するために、自分から進んで悪役として立ち回っていたのなら、クルーゼは、プラントを裏切ってまでしたことが無意味に、ある意味で、世界に裏切られたことに……。
 キラの中で、マユとクルーゼが重なった。出生が原因の理不尽にして過酷な半生、故に全人類さえも抹殺し得る動機、そして、今まさに世界はマユを裏切ろうとしている。こうなると同型機に乗っていることすら事実の裏づけのように思えてくる。
 顔面蒼白のキラをレイは気遣う。平気と片付けるキラ、レイは追求せず、キラに別の質問をする、宇宙へ行くのは本当か、と。キラは頷く。レイは、マユの兄が生きており、敵に回っていることを告げた。キラは言葉も表情も無くし、レイは構わず話を続ける。
 マユの兄は、ガンダム強奪の指揮を任されたであろう程の人物で、宇宙でマユと戦う可能性は非常に高い。自分とルナは身動きがとれない。だから、マユを頼む。
 返答に詰まったキラ、その僅かな間に、レイを呼ぶルナの声が届いた。レイは改めてキラに、マユを頼むとだけいって、ルナの元に赴いた。
 一人残されたキラは、拳を、強く、強く、握った。

 レイがルナの元に来た頃には、自分等を見送る人達が、もう集まっていた。
 エイブスからは握手。ヴィーノ、ヨウランからはエールを貰う。感極まったアーサーからは体に気をつけるように、と。調子の戻ったタリアからは、二人で一緒なら大丈夫でしょう、と簡単に済ませる。また、ラクスとカガリもそれぞれに二人の無事を祈り、握手。
 最後に、アレックスに背中を押され、メイリンは二人の前に。どうしていいのかわからない。そんな妹に、ルナは、マユから預かった携帯電話を託した。

ルナ「縁結びの究極アイテム。何せ死んだと思った人とまで引き合わせてくれるんだから、ご利益は抜群よ。……まあ、ぶっちゃけ、今の私じゃ、ケータイ一つすら守りきれそうにないからさ。メイが、預かっといてくれる」
メイリン「お姉ちゃん。うん、わかった。だから、お姉ちゃんも無理しないでね。あと、レイ、お姉ちゃんを守ってね」
レイ「……ああ、約束する」
271隻腕27.5話『迷いの残り香』はじめに:2006/04/06(木) 22:08:39 ID:???

隻腕を書いている者です。
本来の予定では、次は28話『新たなる道』だったのですが……

27話と28話の間、27話の補足的な小エピソードを投下します。
28話の流れに上手くはまらず、さりとて独立した1話とするには内容も薄く……
当初、丸ごとカットしようかと思っていたのですが、やはり惜しく。
実験的にこういう形にしてみました。

本編アニメに対するアストレイの1話のようなポジションとしてお読み下さい。
時間軸としては、少し28話の方に食い込んでいます。


ちなみに今回、あとがきなし。28話はもうちょっと時間かかりそうです。では。
272隻腕27.5話(01/04):2006/04/06(木) 22:09:53 ID:???

             マユ ――隻腕の少女――

            第27.5話 『 迷いの残り香 』


軌道上の激闘は、終了した。
適当なところで戦闘を打ち切り、撤退したロンドたち。降下部隊の方も追い討ちをかける余裕もない。
そしてイズモとオルテュギアは、急ぎその場を離れた、わけではなく……
微妙な距離を開けたところでその場に留まり、艦載機を出してなにやら作業をしているようだった。

「……ミナ様、動けずに漂流していた敵兵の回収、終了しました。
 ザフト側が回収したものも含めれば、我々が確認できた漂流者はこれで全てです」
「ご苦労。予備の避難艇に乗せ、あちらの戦艦に向けて打ち出しておけ」
「了解しました」

イズモの一室、ゆったりとしたソファにくつろぐミナは、せっかく拾った捕虜の解放を指示する。
オーブ正規軍でもない彼らにとって、捕虜の扱いは確かに頭の痛い問題だ。
報告に来たフォー・ソキウスはミナに一礼すると、新たな命令を実行するために部屋を出て行った。
そして、ソキウスと入れ替わるように入ってきたのは……傭兵カナード・パルス。その表情に笑みはない。

「カナードとやらも、ご苦労だったな。傭兵部隊X、今後も贔屓にさせてもらうぞ」
「そう言われてもあまり嬉しくもないな。
 死人こそ出てないが、メビウスが4機もやられた。全く嫌な条件を追加してくれる」

極めて高い性能を誇るカスタムMS1機と、最弱とも揶揄されるMA10機のコンビネーション。
これはこれで、傭兵部隊の運営上それなりに合理的な構成なのだ。
メビウス隊のメンバーはMSを操縦できないナチュラルばかりだが、いずれもそれなりの腕利き。
10人もいれば1機や2機は被弾を免れないが、しかし致命的損傷を受ける前に機体を捨てて脱出してしまう。
時代遅れゆえ格安で手に入るメビウスだからこそできる戦術。他の機体ではとても採算が合わない。

と、言っても――戦闘の途中で依頼主が言い出した「敵を可能な限り殺すな」という追加条件。
これがために戦闘は長引き、4機もの損害を出してしまったのだ。負傷者も出ている。
カナードでなくても、不機嫌になろうというものだ。

「それにな、俺はこんな面倒な任務は性に合わん。もっと単純明快な方がいい」
「フフフ、しかしあのような戦いができる傭兵は、なかなか居ないのでな。
 それにメリオルとやらは案外乗り気のようだぞ? 厳しい追加料金を要求してはくれたがな。
 全く、大人しい顔をしてタフなマネージャーだ」

微笑むロンド・ミナ・サハク。カナードは小さく舌打ちする。
舌打ちして……その表情が、少し曇る。怒りよりも憂いに近い表情。彼らしくもない迷いの表情。
273隻腕27.5話(02/04):2006/04/06(木) 22:12:41 ID:???

「……どうした傭兵? 顔色が優れぬようだが」
「俺には……分からない。未だに分からない」
「何がだ?」
「殺す気もないのに戦うという、その根性が……分からん」

普段は自身たっぷりの態度を崩さぬカナード・パルス。しかし今の彼の顔には、苦汁が満ちている。
彼の目は、今さきほどの戦いだけでなく、過去のとある決闘にも向けられていて。

「あれから……いろんな戦場で戦った。様々な任務をこなした。
 だが分からない。今でも分からない。
 殺すつもりもなく、なお戦うというのは……何をどう考えれば、そんなことができる……?」
「ふむ」

ミナは静かに目を細める。
本来は付き合うまでもないカナードの悩み。けれどミナは彼の語りに付き合うつもりらしく。
しばし考えた後、ゆっくりと口を開く。

「――傭兵。『戦争をする』とは、どういうことだと思う? 戦争の本質は、何だ?」
「は!?」
「質問が突飛だったかな? では言い方を変えよう。
 何をどうすれば、戦いに勝ったことになる?」
「相手を殺したら勝ち、では――」
「違うな」

カナードの答えを、ミナはきっぱりと遮る。

「戦いは、相手の心を折った方が勝つのだ。相手を諦めさせた方が、勝者と呼ばれるのだ。
 相手が逃走するか、白旗を揚げるか、抵抗が不可能な状況に陥るか……」
「…………」
「殺人など、それを達成するための1つの手段に過ぎん。最も良く使われる手段ではあるがな。
 決して最終目標でも勝利条件でもないのだよ。
 敵を殺しなお勝負に負けた、などということも、過去に例が多い」
「…………!」

どこか楽しげなミナの言葉、表情が強張るカナード。そんな彼を横目に、ミナはワインのグラスを傾ける。
血のような赤い液体が、彼女の喉を潤す。

「しかし――稀に、戦いの目的が『敵を殺すこと』そのものになることがある。
 ときに傭兵、歴史はどれほど嗜んでいる?」
「一応、一通りは叩き込まれたが」
「ならばエスニック・クレンジング、民族浄化という言葉も知っていよう」

民族浄化。それは他民族の者を皆殺しにして自分たちの国を作ろう、という、過激な民族主義運動。
汚物を焼却するが如く他民族を「浄化」し、「民族的に清浄な」社会を作らんとする動き。
多くの民族や宗教が入り混じる国で、時折見られた大規模殺戮だ。
再構築戦争を経た現在、もはや個々の「民族」がそこまで過激な政争の種になることはなくなったが……
274隻腕27.5話(03/04):2006/04/06(木) 22:13:34 ID:???

「民族浄化運動においては、敵を殺すことそのものが目的と化す。
 そして――今現在のコーディネーターとナチュラルの戦争、これにも同じような性質がある」
「…………」
「ブルーコスモスのような、過激なナチュラル至上主義。
 パトリック・ザラとその信奉者のような、過激なコーディネーター至上主義。
 歴史を知っていれば、別に驚くにも値せん。むしろ実に分かりやすい連中と言える。
 異質なモノを受け入れられぬ、恐怖に踊る臆病者たちの過剰反応だ」

ミナの言葉に、カナードの拳が、きつく握り締められる。
カナード・パルス。スーパーコーディネーターの「失敗作」としてこの世に生を受けた存在。
世界のどこに行ったとしても、絶対的なマイノリティの地位を逃れられぬ運命。
そんな彼にとって、この民族主義的・人種的な偏見というのは、どこまで行っても共感できぬもの。
そして、長年彼を縛り、彼を苦しめてきたもの。
そんな彼を横目に見ながら、ミナはなおも言葉を紡ぐ。彼女にしては珍しい饒舌。

「ま、その上に連合とプラントの経済問題や各国の思惑が重なり、事態はもっと複雑になっているがな。
 とはいえ、戦いが避けられぬからとて、こっちまで向こうの流儀に付き合う義理もない。
 そういう意味では、マユの着目点はなかなか悪くないな。
 こちらにとっては殺しは目的でも手段でもない――なら、やらずとも良いわけだ」

楽しげなミナの言葉、しかしカナードは未だ納得しきれていない雰囲気で。

「そこまでは分かるが、しかし銃を向けておいて、殺す気がないと言われてもな。
 それに恐怖を減らすと言ったが、あのような戦い方ではかえってパニックに陥る者もいるだろうに」
「フフ、確かにな。だが、マユの覚悟はもう少し深いようだぞ?」
「……覚悟?」
「マユはな、『できる限り』殺したくない、と言っていたのだ。決して100%など望んでおらん。
 『殺人者になるやもしれぬ』覚悟はある。『手が滑って殺してしまう』可能性も覚悟の上だ。
 自分が撃った相手が、別の味方になぶり殺しにされる可能性も、気付いていないわけでもない。
 もちろん『敵に殺されるやもしれぬ』覚悟もある。味方の被害を増やす可能性も分かっているだろう。
 どこまで頑張っても、それらがゼロにはならぬことくらい、マユ自身しっかり理解しているよ。
 その上で――なお、死者を減らしたい、と思っているのだ。
 双方を殲滅戦に駆り立てるその感情を、減らし、無くしていきたいと思っているのだ」

ソファの上、ゆっくりくつろいだ様子で、歌うように言葉を紡ぐロンド・ミナ・サハク。
そんな彼女に、立ったままのカナードは疑いのまなざしを隠そうともせず。

「……本人でもないのに、よくそこまで語れるものだな」
「1度は私も考えたことだ。現実的に厳しいと、切り捨てかけたやり方だ。
 誰も死なぬ戦争。親しい者を戦いの中に失い、泣いた経験のある者なら、1度くらい夢想するさ。
 ――それにな、想いの強さなど、目を見れば大体分かるものだよ。目を見ればな」

並大抵の男でも失禁してもおかしくない程の、ミナの鋭い視線、それを真っ向から見返したマユ。
その方法論はまだ未熟だ。今先ほどミナたちが行っていた敵の回収、こういった手間まで考えていたかどうか。
けれどその覚悟と、根底にある想いは、確実に伝わっていた。
ミナの心を、短い刹那の間に確実に揺り動かしていた。
275隻腕27.5話(04/04):2006/04/06(木) 22:14:44 ID:???

しばらくそのまま黙り込んでいたカナード。やがてため息ひとつつくと、サッと身を翻して。
部屋を出ようとして、その戸口で足を止める。背を向けたまま、口を開く。

「……それでも、完全に納得できたわけじゃない。
 できたわけじゃないが――最後に1つだけ教えろ」
「何だ?」
「……何故、俺にこんな話をした?」

背を向けたままのカナードに、ミナも背を向けたまま。小さく含み笑いをして。

「なに、貴君はどこか我が愚弟を思い出させるものがあるのでな。放っておけんのだよ」
「……俺は貴様のような姉など、願い下げだがな。弟とやらも随分可哀想なヤツだ」
「フフフ、このロンド・ミナ・サハクを捕まえて随分な口の利き方だな。
 しかしカナードのそういう所も気に入っているのだぞ?」

どこまで本気か分からぬミナの言葉に、カナードは答えない。今度こそ部屋を出て行く。
その気配に、ミナは軽く肩を竦めて。

「――やれやれ、振られてしまったか。
 あの類い稀な胆力と、優れた戦闘力。そして未だ進む道を見出せずにいる魂。
 傭兵という地位に留めず、ソキウスに並ぶ我が片腕として迎えたかったのだがな――」


『――貴方はもう少し、他人の好意に対して素直になった方が良いと思いますよ』
「フン! あれが好意か?! 頭から喰われるかと思ったぞ!?
 それより、奴が言っていたのは、本当に……」

イズモからオルテュギアに戻るドレッドノートHの中。
何者かに語りかけられたカナードは、問い返そうとして相手が居ないことに気付く。
元より1人きりのコクピット。誰か他の者が居たはずもない。
けれど、確かに『彼』がいたその気配が、コクピットの中には満ちていて――
カナードは、何かに納得したように頷く。

「――全く、死んだというのにお節介な奴だ。
 確かにそうだな、ロンド・ミナ・サハク。
 殺したところで勝ったとは限らない――嫌というほど知っているよ、そのことはな。
 いいだろう。これからしばらく、お前の戦に付き合ってやる。お前の戦いを見届けてやる。
 あくまで、傭兵としての立場からな。それでいいだろう?」

かつての宿敵であり、無二の友であり、彼が最期を見取ったドレッドノートの元パイロット。
プレア・レヴェリーの幻に向け、カナード・パルスは小さく微笑んだ。

そして、これよりしばらくの間。
傭兵部隊Xの母艦・オルテュギアは、イズモと行動を共にすることになる――


                        第二十八話 『 新たなる道 』へ続く
276通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 22:18:29 ID:???
カナミナ!カナミナ!
277通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 22:51:13 ID:???
おー。なんだかとてもアストレイテイスト。
278通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 23:03:08 ID:???
残業で疲れ果てていたところになんて素晴らしい補給物資が。
これで明日も戦える。
作者さん達お疲れ様。
マユ種はクライマックスに向けたなんともいえない緊張感が、
隻腕は不殺というテーマにアストレイトキャラの過去と未来を絡めた語り方が面白かったです。
279通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 00:29:45 ID:???
カナードたん可愛いよカナードたん
280通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 00:32:29 ID:???
汚物は消毒だぁあああのAAが浮かんだのは俺だけじゃないはずwww

隻腕の作者さんもあんまり住民の意見全部反映させる必要はないと思うよ
全ての人に認められる作品なんかできっこないからね
281通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 01:09:51 ID:???
マユ種の人乙です
ミネルバは地上に居残りだが、パイロット達にはまだまだ出番があるようで少し安心。
キラとレイの会話に新鮮さを感じ、ホーク姉妹の別れに悶えました。

隻腕の人も乙です
プレア…(;´д⊂) こういう演出好きです 
282通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 01:54:48 ID:???
両者乙でした!
これからじっくり読みます!!
283通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 09:40:01 ID:???
284通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 10:12:38 ID:???
両者共にGJです、続き期待して待ってます
285通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 15:46:16 ID:???
>>280
禿銅。
自分の色をなくすくらいなら全部耳ふさいで最終回まで
突っ走った方が一億倍まし。

それは置いといて今回は面白かった。
外伝とか全然知らないから、それっぽい他作品のキャラが
脳内で喋ってるけどそれもまた良し
286通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 16:35:14 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃  だから荒しに反応するのやめるんだ!!
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
287通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 16:38:17 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃  スレ荒らすな春厨!!
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
288通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 16:41:34 ID:???
  ((_
〃´   `ヽ⊂⊃  おらおら!!
i .( (( ))ノ´⌒ヽ
W ´Д`ノ 从ノハ )
  ⊂彡☆))3<)ハ:.,∴
289通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 17:16:59 ID:???
潜伏してるこのスレの住人が協力してアホの削除依頼とアクセス禁止依頼すれば、それで済むんじゃないの?
削除人が動かないなら議論板で新シャアに関してのスレッド立てて訴えたり。
明らかにこいつやりすぎだろ。複数のスレッドに粘着してる。
290通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 18:58:47 ID:???
だからスルーしろと
荒しが欲しいのは反応そのものなんだから
荒しレスが100超えるぐらいになったら、纏めて削除依頼出せば良い

と、反応してる俺も連中のエサ
291通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 19:34:44 ID:???
初代と隻腕が一気に来て悶え死にそうな俺ガイル
292通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 20:20:15 ID:???
ヒント:NGワード
293通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 20:49:43 ID:???
NGワード設定したらすっきりした
294通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 20:56:59 ID:???
隻腕意外に批判意見が少ないなあ
命のやりとりに手心を加える
キラの傲慢そのものじゃないか

もっとも
>>双方を殲滅戦に駆り立てるその感情を、減らし、無くしていきたいと思っているのだ

この箇所は
「よく言ってくれた」心底そう思うのだが。
295通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 21:11:31 ID:???
>>294
まあ強者の傲慢だよな、命のやり取りで同じ土俵に立ってないからなあ
296舞踏の人:2006/04/07(金) 21:52:33 ID:???
運命の舞踏11話投下します

書きたい事が多く、65kb越えの長文になってしまいました…

297通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 21:53:48 ID:???
マユ種の新作キター
ミネルバ組が、健在で良かった。
次回も、期待しております。

PS(チラシの裏)
種は、自分の目の前で人が死ななきゃそれで良い世界。
人が死んでも、忘却の彼方。命のやりとり?なにそれ僕わかんなーい。
298舞踏11話 1/38:2006/04/07(金) 21:58:25 ID:???

月面の表側に位置する、大西洋連邦軍基地アルザッヘル。
その名の由来となったクレーターを丸ごと改造する形で作られた施設、その港内に3隻の黒い艦艇が入港する。
セレネ移民船団襲撃事件の鎮圧活動を終えた、シュヴァルツヴィントの旗艦ケルビムとその僚艦だ。
襲撃者であるザフト製の無人MS部隊を殲滅した彼らは、事後処理を他の部隊に任せ、この基地まで帰還してきた。



「……賑やかなもんだ。 セレネの事後処理もまだ終わってねえってのによ」

ケルビムの艦橋内。 肘掛に頬杖をつき、前面のコンソールに足を投げ出してシートに座る男が独り言つ。
顔面に気難しげな皺を何本も刻む彼、ラガーシュはメインモニターから望めるアルザッヘルの港を忌々しげに睨んでいた。
…そこは多数の艦艇と無数の機動兵器がひしめく、まさに戦場さながらの慌しさだった。

『ヴァリトラ、ティアマト、ヨルムンガンドは第4エリア上空にて艦載機の収容を開始』
『第3艦隊は7番エリアに入港してください』
『第6艦隊4分隊は第12中継拠点に移動』

反響伴い、あちらこちらから発されるアナウンスは艦橋にも伝わり聞こえてくる。
無秩序な騒音が頭に響くのか、不快そうな表情でラガーシュは頬杖ついたその手で片耳を塞ぐ。
アナウンスの声に従い、船は次々と入港し、次々と発進していく。
その中には、これまで軍内部でも存在を匿秘されていたヴァリトラ級大型空母の姿も見られた。

最高レベルの軍事機密だった艦が、今このタイミングで姿を現したということは
現状がいかに異常事態かということを、軍全体の動きが緊迫化しつつあるということを如実に示していた。
じっと正面を見据えるラガーシュのそばに付き従うように、隣に立つ女性は表情を曇らせながら、呟く。

「大佐…やはり、開戦するのでしょうか」
「恐らく、いや間違いなくそうだろうな。
 盟主殿もあのガキも、戦争をおっぱじめたくてしょうがなかったようだからな。
 上の連中にも、それを望む奴らは多いしな。きっとあの二人に焚きつけられたら、大喜びで賛同するだろうぜ。
 今頃、二人で祝杯でも上げてるだろうさ」

ケルビム艦長であり副官でもあるシャーナへと、ラガーシュは刺々とした嫌悪を含む語調で答えた。

二人が言葉を交わす最中も、続々と入港する艦艇は弾薬や機動兵器を腹一杯収納すると、いずこかに飛び立っていく。
それは、男が推測した未来を、どんな説明よりも納得させるような光景だった。

299舞踏11話 2/38:2006/04/07(金) 21:59:39 ID:???

やがて、管制官の指示を受けてケルビムもドックに収容される。
艦の補給とメンテナンス、そして激戦に参加した彼らに用意された、一時の休養を頂くためにクルーは全員下船する。
ケルビムとドックとの間に掛けられたタラップを降りてきたラガーシュを出迎えたのは、仮面を被った男だった。
ラガーシュと同じ黒い軍服と階級章を身につけた彼は、下船してきた同僚へと声をかけた。

「ご苦労さまです、ダンナ。 軌道上では大変な事態に巻き込まれたそうで」
「まぁな。 しかも結果が最悪とまではいかないものも、決して良かったとは言えねぇからな。
 …特に若ぇ連中にそれを気にしてるヤツが多いかな。やれることやったんだから、気にすんなっつーてんのによ」

ねぎらいの言葉に応じながら、参ったとばかりにバリバリと髪をかき回した男。
深々とため息をついた後、顔を上げて仮面の男、ネオ・ロアノークを見る。

「お前さんも相当苦労したようじゃないか。
 少将サマのワガママに、さぞ振り回されたんだろう?」
「ええ、まあ、お察しの通り……。
 ホント、あの人はワガママな上に唐突で、しかも身分をわきまえないスタンドプレーヤーですよ」

ネオは顔の上半分を丸々隠す仮面をつけているため、その表情は口元でしか判断できないが
苦労を語るその声を聞けば、どれだけ困らされたのかは大体予想ついた。
お互いさまだねぇ、とラガーシュは苦笑いしながらお互いの身に降りかかった不幸を嘆いた。

「で、その少将殿ですが、お姿が見えませんねぇ。
 先に戻ってきたウィルソンにも居られませんでしたし…もしかして、途中下車とか?」
「ああ、その通りだ! あのガキ、救援作業の指揮をほっぽり出して地球に降下しやがったよ!!」
「マジですか……現場に集まっていた人間では彼が指揮をとる立場でしょうに」

あからさまに不機嫌な様子で声を荒げた男へと、ネオもまた同じ思いから声を低めながらそう呻く。
彼らが語っているのは、共通の上官であるケイ・サマエル少将についてだ。


ネオがプラントの一基、アーモリーワンへと向かった際、艦に同乗してきたかの青年は
用事を済ませ、アルザッヘル基地へ帰還するなり、予定が詰まっているからと理由を付けて地球行きの足を確保した。
……連合軍主力戦艦、アガメムノン級に僚艦まで従えるという、時代錯誤な大名行列の如き振る舞いで。
その際、少将である彼はそれらの艦隊を率いる司令、という立場に据え置かれていた。 …そのはずだったのが

「指揮権はあとで到着する艦隊の司令に譲り、一刻も早く降りてこい、って言われたンだとよ。
 ワシントンからの指示だとか言ってたが、大方盟主殿の指示だろうよ。
 ……しかもあろうことか、救助作業中の俺らに、軌道上までシャトルの護衛をしろとかぬかしやがった」
300舞踏11話 3/38:2006/04/07(金) 22:01:24 ID:???

ふん、と鼻を鳴らして言葉を締めくくったラガーシュは、途中で足を止めていたタラップから降りた。
そして、ドックの出口へと向けてまっすぐ歩みを進めながら、隣を歩くネオへと話しかける。

「しかしまぁ、こっちの状況はなんともまた物々しいようだな」
「ええ、ご覧の通り上はヤル気満々ですよ? …ま、詳しくは後ほど、一杯やりながらでも」
「そうだな、やっと頂いた休息だ。 美味い酒でも飲んでなきゃやってらんねぇ」

見えない酒杯を仰ぐように、くいと手を動かす仕草を示す仮面の男へと、
若干疲れの影混じる顔を向けながらも、彼の提案に頷きラガーシュは歩き出す。

「ところでネオ、お前さんあの西側の区画で行なってる工事、何だか知ってるか?
 いまさら拡張工事する必要も無いと思うんだがな…」

ふと思い出した、入港時に目に入った工事現場について、ラガーシュは同僚へと問いかけてみる。
今でさえ十分規模の大きい基地だというのに、随分と大規模、そのうえ突貫工事の様相だったのが気になったのだ。

「あれですか…自分も詳細な内容は聞いていません。少将サマならご存知かも知れませんが。
 まっ、俺の予想では『竜』たちの巣穴じゃあないかと予想しているんですけどね?」

彼が口にした『竜』という言葉は、空想の幻獣ではなくとある船のことを指し示していた。
それはあの、つい先日開かれた連合軍による大規模演習でお披露目された、
新造大型空母『ヴァリトラ』級に付けられた、兵士たちの間における通り名だった。
現在運用されている三隻の空母…『ヴァリトラ』『ティアマト』『ヨルムンガンド』は
出典こそ異なるものも、どれも神話の中で語られる竜や蛇の名を冠していることは共通している。

彼の予想は、かの船の桁違いの巨大さを目の当たりにした経験からくるものだった。
1000m級…他の艦船と比較して三倍近くの全長を誇るあの艦を収容するには
新たに専用の区画を作らねば絶対に不可能だろうと考えてのことだ。
現にここで準備されていたMA部隊を収容すると3隻は建造されたドックのある月の裏側へと帰っていく。
開戦すれば、このアルザッヘルが戦争の中心になるだろう…だからここに彼らの巣穴を作る、それがネオの予想だった。
だが、ネオの言葉を聞いてもまだ引っかかるものがあるのか、ラガーシュはふむと唸る。

「それにしちゃあデカ過ぎる気もするんだがなぁ……。
 だが、詮索するのも無駄だな。所詮俺らは中間管理職、完成寸前まで正体を知ることは出来んだろうよ」
「まったくです。 …最近は特に、秘密主義の傾向が強まってきてますからねー」
「だなぁ。 それがあの若造が現れた頃からってのが、なんとも不気味で笑えねえ話だ」

どんな話題も、うら若き直属の上司に対する愚痴へと変化していく。
そのような状況にため息をつきながら、二人はドックと通用路を隔てる広いゲートをくぐっていった。
301舞踏11話 4/38:2006/04/07(金) 22:02:35 ID:???

ラガーシュたちがドックを後にしてから間もなく、ケルビムのクルーたちも皆、艦を降りてくる。
若者から壮年まで、様々な年齢層と人種の集まるその一団に混じりつつ、シンもタラップの上を歩いていた。
最低限の私物を纏めたバッグを肩にかける彼は、浮かない表情でうつむいている。

「どうした、シン」

不意に後方からかけられた声に、少年は顔を上げて振り向くと
そこには、ラフに軍服を着崩した若い男が立っていた。

「ヴァル兄……」

ケルビム艦長シャーナと共に、シュヴァルツヴィント隊の副官を務める男、ヴァルアス・リグヴェート少佐。
彼はシンにとっては上官であり戦場における師でもあり、そして兄のような存在の男だった。
一見眠たそうにも見える、気だるい面差しの彼は暗い表情を見せるシンへと告げる。

「随分と気にしてるようだが…あんま自分責めんな。
 あんなクソッタレな状況下じゃあ、なにが起きたって仕方ねえんだ」

乱暴で素っ気ない口調ながらも、その内容は落ち込んでいる少年をいたわるものだった。

ヴァルアスが語っているのは、先ほどの戦闘のこと。
無人機の襲撃を受ける移民船団を救うべく駆けつけた時、
シンの不注意により一隻の船が沈んだという結果についてだった。

実際、現場は所狭しとひしめく船団と、次々と生産されていくデブリによって混乱を極めた状況で
例え、船を救えなかったとしても誰も責められないシチュエーションだったと、彼は指摘したのだ。
しかしそれを聞いてもシンの憂いの表情は晴れることなく、それどころかよりしおらしくなってしまう。
302舞踏11話 5/38:2006/04/07(金) 22:03:30 ID:???

「……うん。
 でも、それでも…あの時ちゃんと仕留めておけば…って」
「アホが。 なに背負い込んでんだ」

足元ばかり見ていたシンの頭にごつ、と衝撃が伝わる。
驚き顔を上げると、小突いた拳を上げたまま、呆れ顔で自分を見下ろしているヴァルアスの姿が。
はあ、と大仰にため息をついて彼は言葉を続ける。

「反省することも罪悪を感じることも、それ自体は間違っちゃいねえけどな。
 …だが、悩み過ぎてっと前を見てられなくなって、とっさに動けなくなっちまうぜ」

それは慎重に言葉を選びながらの、ゆっくりと発された語り。
男は上手く言えたか自信がないのか、しかめ面で自らのくすんだ緑髪をわしわしと掻き回していた。
しかし、その言葉にシンの心は確かに動かされる。

このままずっとうつむき続けていたら…再び、あの移民船のように危険に晒される誰かがいたとしても
とっさに駆け寄ることが、助けの手を伸ばすのが遅れてしまうかもしれない、と。
だとしたら――もうそんなことは繰り返したくない。
そう思ったシンは、青年の顔を真っ直ぐ見ながら、頭を下げた。

「ありがと、ヴァル兄。 心配かけて、ゴメン」
「別にお前のためじゃねーよ。 チームの誰かが不調だったら、他の全員にしわ寄せがいくからな。
 …あと、手前にもしものことがあったら悲しむ人間がいるってことを自覚しな。 ちったあ自分を大切にしろっての」

意志の輝きが戻りつつある赤眼を認めた青年は、止めていた歩みを再開し、少年の脇を通り過ぎながらそう言った。

「……それはそうと。 お迎えが来てるようだぜ、シン?」
「え? 迎えって……」

告げられたシンは、いったい誰なんだろうと思いながら、視線で指し示された方向…ゲートの横を見た。
そこには、三人の軍服姿の人間が立っていた。 うち二人は自分と同じ青色纏う少年で、一人は桃色纏う少女。
――出迎えに来てくれた友人たちの姿を見て、シンの表情はパッと明るんだ。

「ぁ…ステラ!アウル!スティング!!」

彼らの名前を呼びながら、自分を追い越し駆け降りていく少年の背中を見やりながら
ポケットに仕舞っていたシガレットケースを取り出し、中の一本を咥えながら呟く。

「ったく、ガラにでもねぇ説教しちまったな」

火をつけた煙草の、最初の一口を肺の奥まで吸い込み、ゆっくりと吐き出した男の口元には、微かな苦笑いが刻まれていた。
303舞踏11話 6/38:2006/04/07(金) 22:05:43 ID:???

早足でタラップから降りたシンの姿を認めた少年少女たちは、まっすぐ走り寄ってくる彼を出迎える。
スティングが軽く手を挙げ、アウルが旗振るように大きく手を振る中
一人、走り出したステラは勢いをそのままにシンへと飛びついた。

「シン!」
「うわっととと、ス、ステラ!?」

飛び込んできた少女を受け止めた少年は、そのままぎゅうと抱きつかれて驚きの声を上げる。
突然受けた熱い歓迎に、戸惑うやら恥ずかしいやら、それでも嬉しいやらな心境で顔を赤く染めるシン。

「よう、シン! 久しぶりだな」
「のっけから見せつけてくれんじゃんー?」
「あ、うん、久しぶり………って、茶化すなよアウル!!」

言葉を投げかけながら歩み寄ってきた二人の少年へと、顔を向けたシンは
にまりと含みある笑いを浮かべるアウルの冷やかしに、抗議の声を上げた。
迎えた相手の困り顔の理由が分からないらしく、きょとんと目を丸めている原因の少女を
とりあえず身体から離れさせるべく前へと押しやり、心を鎮めようと大きく息をつく。
そんな彼へと、スティングが声をかけてきた。

「セレネの一件じゃあ大変だったらしいな、シュヴァルツヴィントは」
「……ああ、それか。
 ミッションの内容も厳しかったけど、それ以上に…酷い状況だった」

スティングの言葉に、先ほど自分が参加してきた戦闘の光景を思い出し、シンは表情を翳らす。
彼の表情の変化を認めたステラが、覗き込むように顔を近づけてくる。

「シン、元気ない。 どうしたの…?」

マゼンダ色の瞳をしぱしぱと瞬かせながら、心配そうな表情を浮かべて窺ってくる少女。
ここで、明るく笑いながら大丈夫だと言うことが出来れば、理想的だったろうが
心身ともに疲れきっていたシンにそれほどの余力は無く、
笑顔になりきれてない、半端に引きつった表情を浮かべることしか出来なかった。

「船が…たくさん沈んだんだ。
 大勢の人を乗せた船が、MSに襲われて……俺、守れなかった」
「船…壊れたの? 人、たくさん壊れちゃったの?」

ステラの瞳が、不安と恐怖の色に揺らめいたのを見て、シンは己の失言に気付く。
彼女の性質を考えれば、聞かせるべきでない内容を口にしてしまった自分を罵りながら、
なんとか上手い言い方はないものかと、頭をフル回転させながら言葉を探す。
304舞踏11話 7/38:2006/04/07(金) 22:06:48 ID:???

「みんな……『直す』の大変なの?」

うろたえるシンを前に、少女はじぃとその顔を見つめながら静かに首を傾ける。
その言葉に何か閃いたのか、シンは大きく頷くとまくし立てるように話しかけた。

「そ、そうなんだ! 時間はかかるけど…みんな大丈夫だっていう話だったよ!」
「だい…じょぶ……よかったぁ…」

ところどころ詰まる、ぎこちない喋りだったが、それでもステラは安心したらしく
恐れに強張る表情を解き、ふわと花開くような笑顔を見せた。

「ま、シンも俺たちもお疲れさまってことで! なんか軽く食べにいかね?
 これから寝るにしても、腹が減ってちゃ寝つけないもんな!」

ぽんとステラの肩に手を置きながら、景気付けのように大きな声で提案したのはアウル。
突然の大声に驚き、シンとステラが揃ってキョトンとする中、スティングも同意の声を上げる。

「悪くない提案だな。 ガーティー・ルーの食事はちっと味気なかったし、美味いもんでも食いにいくか。
 …ほら、ステラ。 お前こないだ、甘いのがどうのとか言ってたろう? ここならなんでもあるだろうさ」
「!? 行く、ケーキ食べたい!」

スティングの誘いの言葉に、きらきら輝かんばかりに表情明るませたステラは、大きく縦に頷いた。

「んじゃー決まりっと! 行こうぜ!」
「うん!!」
305舞踏11話 8/38:2006/04/07(金) 22:08:37 ID:???

促すアウルと共に、軽やかな足取りで歩き始めた少女に、先ほどの翳りはもう微塵も見えない。
笑顔浮かぶ彼女の横顔を見つめながら、安堵に表情を緩ませていたシン。
不意に、その背中が掌によって叩かれる。

「シン、お前嘘付けないタイプだろ」

少年の背中を叩いた人物、スティングは周りに聞こえないよう抑えた声で、ぼそりと呟いた。
え、と抜けた声を上げて彼の顔を見たシンは…やがて、彼が指摘してきた意味を理解し、うつむく。

「…ごめん」
「フォローしなれてないのは仕方ない。 俺らに比べれば、付き合いは短いしな?
 それに、ステラは仲間の言葉を疑う人間じゃないから、そうそうボロは出やしないだろうさ」

謝るシンの肩に手を置きながら、なだめるスティング。
そう言われ、シンは顔を上げはしたものも、やはりその表情は辛そうなもので。
唇を噛み、血の色引くほど手を握り締めたまま立ち尽くす彼を見て、スティングは小さくため息をついた。

「…ったく、生真面目だな。
 もう少し気楽に行こうぜ。 しばらくは一緒に行動することになるんだからな」
「え、そうなんだ?!」
「こっちで、俺らが奪ってきた新型機の解析を終わらせたら、キャリフォルニアベースまで行くんだとさ。
 それ以降の予定はまだ聞いてないが、以前のように『黒き鉄風』と『幻肢痛』の共同作戦もあるかもな?」
「そっか…皆が来るんだったら、賑やかになるな」

その話を聞き、喜びに表情を和らげたシンの横顔を見ながら、スティングは胸中でやれやれと呟いていた。
ステラやアウルと同じで、まったくもって世話の焼けるヤツだと思いながら。
だが、何事に対しても真摯な態度で向き合う少年のことを、好ましく思いながら。
嬉しそうな笑顔を浮かべながら、二人を追いかけよう、と提案する彼へと頷き返しながら
スティングは、気心知れた仲間たちがいるという、心地良い安堵感を感じていた。
306舞踏11話 9/38:2006/04/07(金) 22:09:55 ID:???

「なーなー、どこの店行くんだよー? 美味いトコじゃなきゃやだぜー?」
「あのな…ここに来たの初めてなんだよ俺も。 美味い店なんて知るか!」
「スティング、さっきケーキの並んでる店、見えたー」

レンタカーの中、後部座席につくステラとアウルと、運転席でハンドル握るスティングとのやりとりが響く。
元気に騒ぐ彼らの声を耳にしながら、助手席に座る俺は窓越しの風景を眺めていた。

月面クレーターの一つ、『アルザケール』に建造されたアルザッヘル基地は
数ある大西洋連邦軍基地の中でも指折りの、巨大な軍事拠点であった。
面積が広いこともさることながら、港の規模、配備されている兵器群も最大規模で
その中で居住する軍人も膨大なことから、基地の中はまるで一つの月面都市のような様相。
どんな大きな搬入車両も通れるように広く整備された道路に、その脇に立ち並ぶ居住施設に商業施設。
全体的に少々殺風景な点に目をつぶれば、確かにそれは都市そのものだったろう。

「…そも、何を食べに行くのか決めてるのか?」
「パスタはあとで食べられるだろうしなぁ……なあ、スシバーってあるかなぁ?」
「………地球の港じゃないんだから、あるわけないだろうが」
「ねえ、さっきのケーキのお店……」
「バーカ! メシ食べに行くのにデザートだけ食べてどうすんだよ!」
「…ぅー……」
「アウル、あんま贅沢言うな! …ほら、ステラも拗ねるな」

めいめいに好きな意見を述べる二人と、なんとかそれを取りまとめようと苦心する一人の声。
大変だな、と思いながらみんなの会話に耳を傾けているものも、自分もその輪に入るほどの気力はなかった。
……少々疲れが溜まっているみたいだ。
頭がヘリウム詰めたようにフワフワしてるし、霞がかったように五感がはっきりしない。

「――シン、眠そう?」
「おーい起きろよシンー。 勝手に決めちゃうぜー?」
「そっとしといてやれ。 疲れてるんだ、寝かせてやれ……」

ふと、自分の名を呼ばれた気がして、返事をしなければという考えが過ぎったが
頃合を見計らったかのように押し寄せてきた、眠気の波にさらわれた俺の意識は深く暗い場所まで堕ちていった。
ほんの二年間の記憶しか詰まっていない、ほころびだらけで傷まみれの魂の内へと――。
307舞踏11話 10/38:2006/04/07(金) 22:11:13 ID:???

――俺の頭に残る記憶の中で一番古いものは、炎と血と煙にくすんだ映像。
耳に飛び込んでくる音声は、鼓膜破らんばかりの轟音のみ。
……いや、それだけじゃない。 父さん、母さんと呼び叫ぶ声。
割れに割れ、かすれにかすれたその声は他ならぬ自分の叫び。
地に伏したまま、それでも少しでも進もうと荒地を這いずりながら、俺は家族を呼んでいた。

どうなったのか、何処へ行ったのかも知れない両親を。
そしてもう一つの単語。 家族内の立場を表す名詞ではない、誰かの名前。
しかし、誰かの名前を叫んでいたという事実しか記憶になく
肝心なその発音は辺りに満たされる爆音にかき消されていた。

頭の中を揺さぶるほどの爆風が、衝撃が断続的に襲いかかってくる中
とめどない涙流しながら、空仰ぎ叫んでいた俺の意識は、テレビの電源を切るようにフツンと途切れた。



それからどれ位経ったのか。 次に目覚めた時、俺が真っ先に目にしたのは、白天井だった。
内装も淡いトーンで統一されていて、清潔な印象を与えるその室内には、穏やかな静寂が満ちていた。

――ここは、何処だろう。

先ほどまでと全く正反対の状況を飲み込めず、戸惑いを覚えながら目を動かし、辺りを見回す。
機材や薬品棚の置かれた室内の様子からして、ここは医療施設…
そして、自分が寝ているのは病室用のベッドのようだった。

「……あら、目を覚ましたようね」

観察の眼差しを向けていた方の、反対側からかけられた声。
人がいたことに驚きながらそちらを見ると、そこにはベッドサイドの椅子に座っている女性の姿があった。

その人は二十歳過ぎぐらいの年齢だろうか。
豊かな質感を誇る腰までの金髪と色白の肌に、海のように深い碧眼の――絵画的な印象の美人。
手にしてた書物を閉じ、身を乗り出してこちらを覗き込んでくる柔和な笑顔は、まるで天使のようだった。
…先ほどまで、地獄の如き惨状に身を置いていたせいか余計にそう思えた。そして、自分は死んだのかもしれないと。

「あの……ここは天国ですか?」

辿り着いた予想を口にすると彼女は目をみはり、続いて笑い出した。

「この船は天国行きの便じゃないわよ。 貴方はちゃあんと生きてるわ」

クスクスとさえずるような笑い声を立てる彼女は、そう告げてきた。
しかし、どうにも実感が湧かない俺は応じる言葉も発せずに、ただただ呆然とすることしか出来なかった。
308舞踏11話 11/38:2006/04/07(金) 22:13:31 ID:???

「――ん? なんだシャーナ、こんな所にいたのか。 ドクターはどうした?」

カシュンという音と共に開閉されたドアの前に姿を見せた人物は、女の人の顔を見るなり怪訝そうに訊いてくる。
その人は、髪から瞳…纏う服まで全て黒尽くめの、壮年の男だった。
痩せた頬と釣り上がった切れ長目のせいか、気難しそうな印象を与える容貌の彼は
人を捜すように室内を見回し、やがてこちらへと視線を止める。

「ドクターは今、休息をとられてます。 その間、私がお留守番を」
「なるほどな……ま、既に安全海域に入っているし、大丈夫か」
「ええ、私がブリッジにいなくても差し支えはないでしょう」

彼女…シャーナと呼ばれた女性の返事に、ふむと頷いた男。 こちらのベッドサイドへと歩み寄ってくる。

「よう、起きたか坊主。 喋れるか?」

見下ろしながらかけられた言葉に、はいと言葉と頷きで答えておく。
そうか、と呟いた時、彼の眉目が僅かながらに緩んだように見えた。

「名前、言えるか?」

再びの問いかけに、もう一度はいと答えてから………俺は気付いた。
ナマエ…なまえ……自分の名前は………

「……シン、です」
「"sin(罪)"だぁ? そらまた妙な……ああいや、違うか。 東アジア圏にある名前だったか、確か」

男は一瞬顔をひそませたが、自らの勘違いを自問自答で解決させる。
第一印象では、人を寄せ付けなさそうな雰囲気を感じていたけど…意外と口数は多いようだった。
…いや、そんな事を推測している場合じゃない。 たった今気付いた事実を、話さなければならない。

「あのっ……俺どうかしちゃったらしくて……ファミリーネームが思い出せないんです。
 それどころか、なんでこんなに体中が痛いのかも覚えていないし、どういう経緯でここにいるのかも…」

それを聞いた男は、口を固く結んで難しそうな表情を作った。
傍にいるシャーナという女性が目を丸くさせ、そして困惑したように男の顔を見上げている。

「一体、何があったんですか? ここは何処なんですか? 俺は一体……」
「あー、まあ落ち着け。 順立てて説明してやるよ…もっとも、俺が知っている範囲に限るが」

自分の心に欠けているピースが数多くあることに気付いた不安から、まくし立てて話す俺を、彼はなだめてくる。

「まずは、場所についてだが…ここは大西洋連邦軍に所属する戦艦の、医務室だ。
 ついでに説明しとくが、俺はラガーシュ・イゾルデ。この艦の指揮官で階級は大佐だ」

名乗った男は、女性が部屋の隅から持ってきた椅子に腰かけ、こちらに目線を合わせながら説明を始めた。
309舞踏11話 12/38:2006/04/07(金) 22:16:02 ID:???

「お前をここに連れてきたのは俺の部下だ。
 任務遂行中、戦闘に巻き込まれて倒れているのを見つけ、助けたと報告を受けている」
「せん…とう……」
「ああ、オーブのオノゴロ島で起きた、大西洋連邦軍とオーブ軍との戦闘だ。
 ……お前、本当に何も覚えていないのか?」
「………オーブ……オノゴロ…」

まともに言葉を返せない俺に対して、ラガーシュさんは眉をひそめ、心配そうな視線を向ける。
俺は、彼の言ってることをよく理解出来ていなかった。

戦闘に巻き込まれた記憶はないし……挙げられた地名に対しても、ピンとこなかった。
いや、それだけじゃない。 何かを思い出そうとしても、頭の中が白濁したようにはっきりとしない。
辛うじて覚えていた名前以外、思い出せるものがないのだ。

「見たところ、お前はオーブの民間人のようだが…避難の際に戦闘に巻き込まれたんだろうな。
 だが、お前に家族がいたかどうかまでは知らんが…俺らが保護したのはお前だけだ」
「家族……?」

ぼんやりとしていた思考が突然、不安にざわめき立つ。 追い立てられるように、脅かされるように。
家族…家族のことなら思い出せそうな気がした。 一つの光明を見つけ、必死に記憶の糸を手繰り寄せる。
でも何故、こんなに鼓動が早鐘打つのだろう。 嫌な汗が、手に滲むのだろう。
310舞踏11話 13/38:2006/04/07(金) 22:17:42 ID:???

――その予感は、赤と黒に塗りたくられた風景という形で脳裏に閃いた。


「…父さんっ、母さんっ!!!」

気絶する直前の光景を思い出した俺は、その時と同じ叫びを上げながら上半身を起こした。
――起こしたつもりだったが、がくんと体勢を崩してしまい、再びベッドの上に倒れこむ結果となる。

「まだ動かないでっ! 貴方ひどい怪我してるのよ!!」

血相を変えて駆け寄ってきたシャーナさんは、そう言いながら包帯の巻かれた右腕の状態を確認してくる。
…ベッドに手を付いた瞬間感じた『足りない』ような違和感に不安を覚えながら、俺はおそるおそる己の右腕を見た。

――そこにあったのは、本来の半分足らずの寸法になった腕。

「…破片か何かで切断されたんだろう。
 発見された時には既に、肘から下が無かったそうだ」

渋面浮かべる男から、呻くような低い声で告げられた言葉。 けれど俺は、それに答えることが出来なかった。
欠損した腕の断面から伝わる痛みと、脳裏に蘇った地獄さながらの光景が頭中を埋め尽くし、暴風の如く掻き乱す。

「ぅ…ぁ………あああああぁぁぁあぁっっ!!!」

五体の一つを失い、家族と引き裂かれ、更には己の過去を思い出せない事実を理解した俺は
とめどなく涙を流しながら、悲嘆の叫びをあげた。
長い間、長い間。 泣き続け、疲れきって意識を失う直前まで……。
311舞踏11話 14/38:2006/04/07(金) 22:19:53 ID:???

――それから数日後、艦は大西洋連合軍の拠点の一つ、キャルフォルニアベースへと帰還する。
それを機に俺の病床は、艦の医務室から基地内にある医療施設へと移された。

まだ身体のあちこちが痛くてベッドから起き上がるのにも苦労したけれど
医師が言うには、あと三週間も経てば支障なく日常生活を送れる程度に回復するだろう、とのことだった。
……もっともそれは、右腕を除いての話なのだが。



安静にするようにと言い渡されていた俺は、日がな一日ベッドの上でぼんやりする生活を送っていた。
ラガーシュさんから色々と聞かされた直後は、そりゃあ落ち込んだりぐずったり、怯えるばかりの毎日だったんだけど
少し日が経つとそれも受容できてきたのか…あの時ほど心は荒れることはなくなった。
むしろ、生まれてこのかたの記憶を失い、頭の中がすっからかんになったせいか…何も考えないでいる時間が多くなってきた。


病室の窓から臨む、暑いくらいに太陽輝くキャルフォルニアの空をずっと眺めていたり
施設のそばに敷かれた道路を、忙しく行き交う軍人や車両をなんとなしに観察していることが多かった。

…時々、自分はこれからどうなるんだろう、と考えることはあったが
何の当ても無く、それどころか要望一つ頭に浮かばないので、結局途中で考えるのを止めてしまう。


――それこそ、生きているのか死んでいるのかよく分からない日々を、過ごしていた。
312舞踏11話 15/38:2006/04/07(金) 22:20:53 ID:???

多分、今日もそうなるだろうと思いながら、ぼうっと外を眺めていたある日。
訓練規定なのか、隊列組んで走る人々を、大変だなぁと思いながら見ていたその時。
病室のドアノブがカチャンと鳴り、開き戸がゆっくりと動いた。

軽く押されただけなのか、のろのろと開いていく入り口。
しかし、立つ人影は一向に見えない。
普通、ドアが開けばすぐに人が入ってくるはずなのに…と、
怪訝に思いながら俺は身をよじってそちらを見つめた。

……五秒、十秒と待っても、影一つ見えない事態に、何事だろうと首を傾げていたところで
ゆさゆさと揺れる、大きな花束が部屋に入ってきた。
しかも、小さな足を伴い、ひとりでに歩きながら。
あまりに奇妙な光景を見て、ぽかんと口を開け間抜けな顔になっている俺の前に歩み寄ってきた花束。
それが、まるでお辞儀をするように前へと傾いた時。
花束の後ろに隠れていた、幼い少女の顔が露わになった。

大きいとはいえ、花束を抱えただけで身体のほとんどが隠れてしまうほど小柄な彼女。
おそらく6、7歳…幼年学校に入ったばかりの年齢だろうか。
品の良いワンピースを着た彼女は、ボブカットの金髪と大きなライトブルーの瞳も相成って、人形のように可愛かった。

「こんにちわ、お兄ちゃん。 おけがは大丈夫?」
「あ…うん、大丈夫。 もうほとんど痛くないし」
「そっかあ、よかった。
 これ、お父さんからのおみまいの花束。 今かざるね」

見知らぬ少女は、俺の返事を聞くとにっこり微笑み、そして花束をベッドの上に置いてから、洗面台へと向かった。
ぱたぱたぱたと。小さな靴音奏でながら少女は、部屋の中を歩き回る。
戸棚から見つけた花瓶に水を入れ、花束をほどいて一本一本、見栄えを考えながら挿していく。
ハツカネズミのように、小さな身体でせわしく動き回る彼女の姿を見ていると、
今の今まで死んだように静まり返っていた胸中にいつしか、じんわりと心地良い暖かさが生まれてきた。

「…はい、ここにおいとくね」
「ああ、ありがと」

花を満載に飾り立てた花器を枕頭台に置いた少女へと謝辞を告げてから、
少し間を置いて、俺はさっきから疑問に思っていたことを口にする。
313舞踏11話 16/38:2006/04/07(金) 22:21:46 ID:???

「あの、君の名前は? お父さんって…もしかして俺を知っている人?」

その質問に、彼女は不思議そうな顔で首を傾けていたが、あ、と思い出したように声を上げる。

「お父さん、はなしてなかったんだ。
 私はミラフィ。 で、お父さんの名前はラガーシュっていうの」
「ラガーシュさん……あー、あの黒い軍服の人か!」

自分が目覚めた日、医務室を訪れた黒ずくめの男の名前を思い出した。どうやらこの子は、あの人の娘らしい。
…それにしても、全然似てない親子だなぁと思う。
明るいパステル調の色彩纏う少女と、髪も目も服装も総じて漆黒の男の組み合わせは、狙ったように対称的だったから。

「お兄ちゃんのことはね、お父さんがいろいろはなしてくれたよ。
 ヴァル兄ちゃんが助けてくれたってことや、みんなと同じ『コーディネーター』だってことも」
「コー…ディネーター?」
「うん、だから私とはんぶんいっしょ」
「……?」

話すのが楽しいのか、ミラフィと名乗った少女は調子良く話しかけてくるのだが
その中に出てきた単語を理解できず、話の意味を飲み込めない俺に構うことなく、彼女は話し続ける。

「……お兄ちゃん、もし行く場所がないんだったら、ここにいよ?
 ここにいれば、ぜったい安全なの。 お父さんとおじいちゃんが、みんな守ってくれるんだから」

朗らかな笑顔を消し、真剣そうな眼差しでこちらの顔を見上げながらの言葉。
じっと見つめてくるライトブルーの瞳に少し戸惑いを覚えつつ、少し考えてから俺は口を開いた。

「今はその…まだ分からない。 先のことなんて考えてないんだ。
 ここがどういう場所なのかもまだよく知らないし、他の場所がどんな感じなのかさえ、覚えてないから…」
314舞踏11話 17/38:2006/04/07(金) 22:23:29 ID:???

…我ながら情けない物言いだと思った。
紛れもない事実とはいえ、小さな女の子に対して弱音と言ってもいいほどの言葉を漏らしている自分に、嫌気が差す。
苦笑いしながらうつむく俺の顔を、彼女は首傾げながら覗き込んできていたが

「じゃあ、お兄ちゃんのおけがが良くなったら、あんないしてあげる!
 そうしたらきっと、ここにいたいって思うよ!」

ぱっと輝くように、明るい笑顔を見せながらミラフィはそう提案してきた。
ベッドサイドの椅子から身を乗り出し、リネンの上に両手を付きながらこちらに向けて笑いかけてくる。
…どうやらこの子は、年の割りに随分と世話焼きのようだった。
初対面の俺に対して向けてくる、無邪気な好意がとても嬉しく思えて、自然にこちらも笑顔になる。

「…ありがと、ミラフィちゃん。
 歩けるようになったら、案内よろしく」
「うん!」

その返答がよほど嬉しかったのかミラフィは大きく頷いて、ごきげんそうに身体を左右に揺らしている。

「ねえ、お兄ちゃん。 お名前、シンって言うんでしょ?
 その…ね、シンお兄ちゃんって呼んでも、いい?」

はにかみ混じりの笑顔浮かべながらの提案は、少女なりの親愛の証なのかもしれない。
そう考えた俺は、縦に頭を動かし、いいよと答えた。

「じゃあ…俺はミラフィって呼ばせてもらってもいいかな?」
「いいよ、シンお兄ちゃん」

彼女と最初に言葉を交わしたこの時間が、入院してから今までで一番心安らいだ時だった。
315舞踏11話 18/38:2006/04/07(金) 22:24:33 ID:???

「なんだ、早速打ち解けてるみたいじゃねーか」

ベッドサイドに座る少女と談笑している最中、不意に飛び込んできた男性の声。
二人揃って視線を注いだ先、病室の戸口に立つ黒尽くめの男はにやにやと笑いながらこちらを見返してくる。
お父さん、と声を上げるとミラフィは彼の元へと駆け寄り、じゃれつく子犬のように制服の裾にしがみ付く。

「あ、ラガーシュさん。 花束、ありがとうございます」

一週間ぶりに顔を合わせた恩人へと礼を述べると、彼はおう、と答えながら鷹揚に頷いた。

「もうちっと早く見舞いに来てやりたかったんだがな。
 帰還してすぐに軍部に呼び出されミーティングの嵐、デスクにはごまんと積まれた報告書…でもって、また出撃だ」

ベッド脇に置かれた椅子に腰かけたラガーシュさんは、苦笑交じりにそう話す。
その内容に、彼の膝の上に座ってぷらぷら足を揺らしていたミラフィは父親の顔を見上げ、不満の声を上げた。

「お父さん、また戦争行っちゃうの?! やーっと帰ってきたのに、いっしょにあそんでくれないの?」
「あー……すまねえなぁミラフィ。 遊園地に連れてってやる約束だったのによ」

ぷうと頬ふくらませ拗ねる娘を見て、ラガーシュさんは困り果てたように眉目を下げ、彼女へと謝る。
そして、つんと顔背けいよいよ本格的に不機嫌な様子となってきた娘を前に、うろたえたように唸り始める。

「…そうだシン! シンに遊んでもらえミラフィ!!
 今は安静にってことだから話ぐらいしか出来んが、歩けるようになったらいくらでも遊んでくれるぞきっと!」
「えっ、お、俺ですか?」
「おうそうだ、お前だ! 医者代の代わりだと思って引き受けてくれ!」

突然話を振られて驚く俺の方へと、がばりと頭を下げて彼は言うのだが
こちらを見る、睨みつけるような鋭い眼光と、その身に纏う殺気にも似た気迫は、お願いではなく明らかに命令だった。
……でもまぁ、その頼みを断る理由なんて一つも無いわけで。

「いいですよ。 むしろ、こちらこそお願いします。
 ここに来てずっと暇でしたし、一緒にいてすごく楽しいですから」

それは心からの本音だった。 少女がいると何故かすごく心が落ち着くし、そのうえ楽しい気分にさせられる。
そして、彼女と出会ったことで、死んだように止まっていた時間が動き始めたのだ。
自分を変えるきっかけをくれた子がそばにいてくれるなんて、願ってもないことだった。
うつむいていた彼女の顔がぱあっと花咲くように明るんでいくのを見ながら、俺はそう思っていた。
316舞踏11話 19/38:2006/04/07(金) 22:25:32 ID:???

「ほら、お兄ちゃんはやくはやくー!」
「こーらミラフィちゃん、シン君まだ歩きなれてないんだから、無理させちゃダメよー」

まるで弾み転がるボールのように元気良く前を走る少女へと、金髪の女性が呼びかける。
俺はといえば、長い病床生活で筋肉が衰え、ぐらつくような不安感を残す足で慎重に歩みを進めていた。


――あれから二週間経って、絶対安静の指示を解かれた俺は、約束通りミラフィに基地内を案内してもらっていた。
彼女だけではなく、以前看病してくれた女性士官、シャーナさんも一緒について来てくれている。
同じようにゆっくりとした歩調で、隣についてくれる彼女はリハビリし始めて間もない俺のことを気遣ってくれて
時々ぐらりと傾いてしまう身体を、すかさず支えてくれた。

そんなこんなで、助けられながら医療施設の玄関をくぐり外に出た俺たちは
とりあえず、手近に建っていたMS格納庫へと向かうことにする。


……踏み入ったそこは、まさに小さな戦場だった。
外から見た、建物の大きさとは裏腹に階層の存在しない、高さも奥行きもだだ広い空間。
むき出しの鉄骨や天井から垂れ下がるクレーンの鎖、そこらじゅうに散在する資材の箱と、剥き出しの中身。
据え置かれた巨大な機材の間を、忙しく動き回る人々、運搬用リフトも縦横無尽に走り回る。

そして、それらよりもっと強烈な印象を与えたのは、所狭しと並べられた巨大な鉄人形たち。
様々な形状のパターンがあるにせよ、それらは総じて真っ黒な塗装で統一されていた。

辺りに響く騒音がうるさいのか、嫌そうに顔をしかめながら両手でしっかりと耳栓をしているミラフィの横で
俺は我を忘れて、その無骨なオブジェに見入っていた。

…それはまあ、男子特有の憧れってヤツだったかもしれない。
老若関係なく男ってのは大抵、とてつもなく大きなものや未知の機械といったものに、トキメキを覚えるもんだろう。
あるいは、記憶を失う前の俺は、こういった機械や兵器に興味を持っていたのかもしれない…。


「やいやいてめぇ! 俺様の考えたエクセレントでエキサイティングな改造案が却下たあどういうこった!!?」
「馬鹿言ってんじゃねえ!! ダガーの腕にドリルアタッチメント付けるなんて誰が許すかボケェ!!」

一機のMSの足元で、パイロットらしき軍人とツナギ姿のメカニックがやかましい言い合いを繰り広げている。
おっかない光景に、面食らった表情で顔を見合す俺とミラフィを置いて、シャーナさんはそちらへと駆け寄っていった。

「あらあら、どうした騒ぎかしら?これは」
「ああっ艦長聞いてくださいよー!
 こいつ、俺の可愛い可愛いダガーちゃんの腕を工具にするつもりなんですよ!!」
「違ぁぁぁう!! ドリルだっつってんだろ!男のロマンを具現させた姿だぁっ!!
 姐さん、絶対ドリル役に立つっすよ!! なにとぞ改造の許可をください!!!」
「まあ、どうしたものかしら……個人機のカスタムまではこちらの関与することじゃないし…」

熱い主張繰り返す二人の間に挟まれ、困り顔で佇むシャーナさん。 恐らく、しばらくこちらへは帰ってこれないだろう…。
317舞踏11話 20/38:2006/04/07(金) 22:27:01 ID:???

さて、これからどうしたもんだろう、と思いながら頭巡らし周囲に視線を向けていると
資材のコンテナの陰から歩み出てきた、整備兵の一人と目が合った。
彼は俺の方を不思議そうな表情でじっと見ていたが、やがて足元にいる少女の姿に気付くと、こちらへ近づいてきた。

「やっ、お嬢さん! 見学に来たんですか?」
「ううん、今日はシンお兄ちゃんに基地の中を案内してるの」
「ああなるほど。 旦那が連れてきた怪我人って、あんただったんだ」

ミラフィへと話しかけていた彼は、彼女の視線に促され、俺の顔を見るとニッと笑顔浮かべながら声をかけてきた。
……驚いたことに彼は俺とほとんど変わらない年頃の、まだ幼さ残す少年だった。
どう見ても学生にしか見えず、まさか軍隊に所属しているとは思えないほど若い兵士だ。

「…おーい、おにーさーん?」
「っと、ゴメン! ちょっと考えてて……君みたいな若い兵士もいるんだなぁと思って」

思考中の俺の顔を覗き込み、首を傾げている少年へと慌てて返事をし、続けて自分の考えていた内容を述べる。
すると彼は、意外な言葉を聞いたかのように目を丸め、そしてあははと笑い声を上げた。

「ハハッ、確かに連合軍じゃあ俺みたいな若輩者は例外中の例外だな。
 でも、この部隊じゃあ珍しいことじゃないさ。 メンバーのほとんどがコーディネーターだからな」
「コーディネーター………」
「うん? どうかしたかい?」

再び耳にした、意味不明の単語に戸惑う俺に気付き、彼は声をかけてくる。
出会ったばかりの少年に、この疑問を言うべきか言わないべきかと迷ったが…いい機会だと思い、意を決して口開く。
318舞踏11話 21/38:2006/04/07(金) 22:29:57 ID:???

「俺…思い出せない事が多くて…その、コーディネーターってのがなんなのか、分からないんだ」

え、と驚きの声を上げて傍らのミラフィが俺の顔を見つめてくる。
最初はふんふんと相槌を打ちながら話を聞いていた整備兵の少年も、表情を固いものへと変え、押し黙る。
…彼らの反応が芳しくないことに気まずさを覚え、話さなければよかったと思いながら、俺は爪先へと視線を落した。

「……そいつぁマズイな。
 あんた、それ知ってなきゃ外で暮らしていけないぜ。 コーディネーターなんだからな」
「えっ、そうだったんだ?」

彼の指摘…俺がコーディネーターだという内容に驚き顔を上げて、相手の顔を凝視した。

「そりゃもう、一目見ただけで分かるさ!
 白子(アルビノ)でもないのに真紅の瞳をしてるなんて、『調整』しなきゃありえないぜ!」

それこそ、相手も俺の言葉が意外だったのかオーバーに両手を広げながら声を上げる。
けれど、俺は彼の話す内容がいまいち理解できなかった。『調整』とは一体どういう意味なんだろう?
頭を悩ませていた俺の顔は、よほど狼狽していたんだろう。
様子うかがうようにこちらを見つめていた少年は、やがてふっとため息をつき、
悩み続ける俺の背中をばしんと叩き、快活な声を上げた。

「しゃーねーなぁ、説明してやるよ! 俺、そんなに頭良くないから、かいつまんでだけどな」

そう言った少年の顔には、苦笑いの表情があった。
知識のない人間に対して物事を説明するのは面倒だろうし、彼がそんな顔をするのは当然の事だったろうが
何故か、その表情には嫌悪や煩わしさといった色は皆無で、むしろこちらを気遣うような優しいものだった。
319舞踏11話 22/38:2006/04/07(金) 22:31:48 ID:???

彼は語った。
『コーディネーター』とは受精卵の時点で、遺伝子操作を施された人間のことだと。
自然な形で生誕した『ナチュラル』と定義される人間と違い、身体面、頭脳面、健康面において遺伝子レベルでの調整を施され
超人的な身体能力と明晰な頭脳、病気に対して強い抵抗力を有した、優れた人類のことだと。


彼は呟いた。
遺伝子操作によって都合良く作られたコーディネーターを、自然の理に背く化物だと蔑むナチュラルと
彼らの抱く嫌悪と危機感により圧政を敷かれ、差別からの解放を、完全な形の独立を求めるコーディネーターとが
いつしか互いに争うようになったのだと。
互いに己の正義を主張し、相手の思想を――存在そのものすらも否定し、やがて両者の間に戦火が生じるほどになったと。
彼らの間の溝は途方もなく深く、六十年近く経った今でも互いの憎悪は弱まるどころか倍加、相乗の勢いで強まっていると。


彼は嘆いた。
コーディネーターの大半は宇宙に進出し、プラントと呼ばれる居住施設を建造し、そこで独自の国家を形成した。
それにより、コーディネーターは直接的な迫害に晒されることがなくなったが、それは宇宙に移り住んだ者に限った話で。
故郷を離れたくない者、プラントへの移住を許されないナチュラルの家族及びハーフコーディネーターを抱える者は
人口の大多数をナチュラルが占める地球に残るしかなく、より激しくなった迫害の矢面に立たされることになったと。
日常生活の上で周囲から差別を受けるどころではなく、コーディネーター撲滅を狙ったテロ行為も珍しくもないことだと。


――つまり、この星は自分にとって生活すること…それどころか生きることすら困難な場所だということを。
320舞踏11話 23/38:2006/04/07(金) 22:32:58 ID:???

彼の一連の言葉…突きつけられた辛い現実に、目の前が真っ暗になる思いだった。
目眩すら覚え、ただでさえ病床生活で萎えている脚がふらついたが
少年の語る内容を、悲しみに堪えるように固く口結び聞いているミラフィの、服の裾を掴んでくる感覚に、我に返る。
…まだ、絶望に心染めるには早い。 自分を取り巻く現状を、しっかり認識しなければいけない。
足元にいる少女の、健気な姿勢を見てそう思った俺は話し終えた少年へと、問いかけた。

「…状況は、だいたい飲み込めたよ。
 で、その上で聞きたいんだけど、ここの部隊にはコーディネーターが多いって言ってたけど…そういうの、大丈夫なの?」

そう、彼は先ほどこの基地にはコーディネーターが多数いると話していたはずだ。
そして、初めて会った時にミラフィは俺に対して、半分一緒だと語っていた。
ならば、彼らはこの状況下でどのように生きているのだろうか? それが気になって、聞いてみた。


「もちろん大丈夫さ! 『ここ』にいる限り、誰もが守ってもらえるのさ、ラガーシュ大佐のおかげで!!」

顔一杯に誇らしげな笑顔を見せながら、整備兵の少年は両手を広げてそう答えた。
…そう言えば、ミラフィも同じことを言っていたと思い、
隣の少女を見下ろすと、彼女もまた明るい表情でしきりに頷いている。

「ああ、アンタ医務室にいたし、この基地についてよく知らないかもな。
 ここはさ、キャルフォルニアベースの一角なんだけど、他のエリアからは独立した特別なエリアなのさ。
 隊に所属するコーディネーターは、みんなここで生活している。 自分たちの家族と一緒に、な」
321舞踏11話 24/38:2006/04/07(金) 22:34:23 ID:???

彼が言うには、このエリアはラガーシュさんの指揮する特殊部隊『シュヴァルツヴィント』専用のものだとのことだった。
兵器格納庫や兵舎といった軍基地としての機能の他に、商店や娯楽施設といった日常生活に関わるものも完備されており、
更に、兵士の家族を住まわすための住宅が数多く存在していた。

無論ここには、ナチュラル、コーディネーターに関わらず入居可能で、
基地内の施設を利用して、生活することを許されている。
そして、エリア外からの人間の出入りは最低限に制限されており、
セキュリティや治安維持に関しても常に注意が払われているとのことだった。


「ちなみに俺んちは両親がナチュラルで、妹と弟がコーディネーターなんだ。
 噂で、ここの部隊に入れば、家族が安全に暮らす場所がもらえるって聞いてさ。ソッコー駆け込んだわけよ!
 俺、まだ下っ端メカニックだけど、外での生活と比べりゃ信じられないほどの給料もらえるしさ、
 おまけに大佐は、親父やお袋にまで居住区内での仕事を斡旋してくれたんだぜ!!」

にんまりと白い歯覗かせながら、少年兵は心底嬉しそうに語ってくれた。
ここに来るまでに自分と家族が体験してきた、差別に苦しめられる生活と
今現在、軍の恩恵の元で平和に暮らしている生活を比較しながら説明していく。

「チビたちも前まではしょっちゅう虐められるもんだから、学校行けなかったんだけどよ。
 ここに来てようやっと、ちゃんと勉強の出来る環境が出来て、すっげー喜んでんだ。
 俺の先輩の奥さんが、学校の先生でさ。 ここに住んでる子供たちのために、小さい学校開いてくれてんだ」

彼が語ったのは、基地の大体の概要と自分と家族の暮らしぶりについてのみだったが
その内容だけでも、ここがコーディネーターにとってどういう場所なのかは、容易に想像ついた。
――ここは、コーディネーターとその理解者たちが寄り添い暮らす、平和なコミュニティなのだと。
322舞踏11話 25/38:2006/04/07(金) 22:36:04 ID:???

いつしか、商業区内の美味しいカフェやレストランについての話にまで飛躍した会話を
ミラフィを交え、三人で和気あいあいと楽しんでいる所へ、シャーナさんが戻ってきた。
ようやっと二人の兵士の言い争いから解放された女性は、すっかり疲れた様子だったが
打ち解けた俺たちの顔を見比べると、よしよしと言わんばかりに笑顔で頷いた。

「それじゃあ、邪魔になるといけないからそろそろ行きましょうか」
「はい、シャーナさん。
 …色々教えてくれてありがとう。 ここのことがよく分かった」
「いーってことよ、兄弟! またいつでも遊びに来な!!」

整備兵の少年へと、心からの礼を述べると彼は照れくさそうに笑いながら、ひらひらと手を振った。
そんな彼へと深くお辞儀をしてから、俺は二人と一緒にMS格納庫を後にした。



「さて、次はどこに行こうかしら……何かリクエストある? シン君」

陽の光降り注ぐ屋外へ出てから、こちらを振り返ったシャーナさんは、そう問いかけてきた。
行きたい場所……か。 聞かれて俺は、考え込んでしまう。

正直、病室を出るまでは適当に歩き回るだけでいいと考えていたのだけど
先ほどの少年の話を聞いてから、ちゃんと見たいと思うようになった。
コーディネーターたちの、ここでの暮らしぶりというのを自分の眼で確かめたかった。

…けれど。 それも大事なのだけど、もっと行きたい場所があった。 正確には、会いたい人がいた。

「あの、シャーナさん。 俺……俺を助けてくれた人に、会いたいです」

意を決してそう告げてから、俺はシャーナさんの顔を見た。
……なぜだろう。 なぜか彼女は心外そうな、しかもものすごく嫌そうな表情をしていた。
323舞踏11話 26/38:2006/04/07(金) 22:37:08 ID:???

それでも、シャーナさんはため息混じりにこちらの願いを聞き入れてくれて
格納庫の二つ隣にある兵舎へと、案内してくれた。

「ねえ。 あの人、ここにいるかしら?」
「ええ、いますよ艦長。 朝からずっと詰所に充電中っす」

入り口の受付にいた兵士からそう聞くと、彼女はまたなのね、とふくれっ面で呟いた。
そして、士官たちの個室のドアが立ち並ぶ廊下を歩き、やがて詰所と銘打たれたドアの前に着く。

――女性が扉に手をかけて、数秒の間。

「シン君。 これから会う相手に、あまり期待しちゃダメよ」

念を押された理由が分からず、え?と聞き返したものも、返ってくる言葉はなく
彼女の手によって開閉スイッチが押され、ドアが開かれた。



いくつかのソファーと娯楽用のTVモニター、カップベンダーと一鉢の観葉植物が置かれた室内。
ざっと見渡したところ、その中に動くものは一つもなく、詰所は無人かのように思われたが
ごがあ、と響いた大きないびきを聞いて、ソファーの上に寝ている人物の存在に気付いた。

「やっぱり、また寝てる」

四人掛けのソファーを一人で占領し、肘置きに足を投げ出し横たわっている男の傍に立ち
はあ、と深い深いため息をついたシャーナさんは、腰に両手を当てながらそう言った。
そっと覗き見ると、くすんだ緑色のぼさぼさ髪の、まだ若い男だった。
だらしなく軍服を着崩したまま寝入っている彼を見て、ミラフィがよく寝てるね、と言う。

「ええと……この人が?」
「そう、貴方を救助したパイロット。 ヴァルアス・リグヴェート少佐。
 この隊のMS部隊長で、立場的には私と同じラガーシュ大佐の副官ってところね」
「えらい人…なんですね」

日向で午睡をむさぼる野良猫のように、ぐてりと寝ている姿からはあまり想像しにくいことだが
きっとこれは疲れて休憩しているだけで、起きていればその肩書きに相応しい人物なのかもしれないと想像する。
……が、その想像すら否定するように、彼女は諦めきった表情で頭を振った。
324舞踏11話 27/38:2006/04/07(金) 22:39:33 ID:???

「とは言っても、中身は見ての通りのぐうたら人間よ。
 怠け者で居眠りの常習犯で、寝ぼすけで遅刻魔。勤務態度はもはや採点したくないほどひどいわ。
 そのうえ、礼儀知らずで態度や言葉遣いはなってない、気に入らなければ上官でも問答無用で殴る喧嘩っ早さ。
 自分が認めた、尊敬できるような人物の言葉でもない限り面倒事は聞き入れないしね…。
 さらにこれに、大飯喰らいの大酒飲み、一日2箱は軽いヘビースモーカーっていうオマケが付いてくるんだから」

つらつらと流麗に言い立て並べられた、彼の人となりについての語り。
そのあまりの多さに圧倒されながら、ヴァルアスさんに対して悪いとは思いながらも
俺は頭に浮かんだ感想を言わずにはいられなかった。

「ええっと……それってダメ人間ってヤツですか」
「そうね、その表現が的確だわ。 むしろ遠慮せずに、もう少しキツク言ってもいいかも。
 まぁ、元々ここの部隊は他所と違って規律も緩いから、無秩序かつ馬鹿騒ぎを愛する集団でね。
 古参の人たちほどいい加減な人が多くて、ダメ人間な傾向が強いんだけど…
 その中でも彼は別格。 キングオブダメ人間と呼ばれるぐらいの腐りっぷりよ」
「は、はあ……」

いや、それは言い過ぎなんじゃないだろうかと……人となりを知らないながらもそう思ってしまう。
…それ以前に、シャーナさんがここまで言う人だとは思わなかった。
最初会った時から先ほどの兵士の仲裁に至るまで、温和で優しい人だと思ってたのに…。
なんだか幻想を打ち砕かれたような、微妙な脱力感を感じていた。
そんな中、シャーナさんはソファーのそばに屈みこみ、彼の身体を揺すって起こしにかかっている。

「ほら、ヴァル起きなさい!」
「ヴァル兄ちゃんー、お姉ちゃんが起きなさいってー」

ミラフィも一緒になって、顔やら腹やらをぺしぺしぽふぽふと叩いて、彼を起こそうとしている。
ぐぅぐぅと鳴っていたいびきが止み、代わりにあーとか、うーとか呻き声が聞こえてくる。
…よほど寝起きの悪い人なんだろうか。 そう思いながら自分もそばに歩み寄り、様子を窺う。
やがて、ひくひくと震えていた瞼がゆっくりと開き、金色の瞳が現れる。
まだ意識が覚醒しきってないのか焦点合わない目で、
頭上から覗き込んでくるシャーナさんの顔を、じっと見つめていたヴァルアスさんは

――彼女の後頭部へと手を伸ばし、自分の顔に重ねるように引き寄せた。
325舞踏11話 28/38:2006/04/07(金) 22:40:37 ID:???

「えっ、ちょ、ちょっと!?」

色んな記憶が欠けているというのに不思議な話なんだけど
そんな俺でも、その動きにどのような結果が続くのかは、何故か理解できた。
…その、彼が俺たちの目の前で、シャーナさんにキスしようとしていることが。
見ちゃいけない。 そう思った俺は、一緒にいる少女のことが心配になり、そちらへと顔を向けたが
……おませな少女は、きゃっきゃと黄色い声を上げながら、眼前の光景に喜んでいた。

「っ……なにするのよこのバカぁぁぁっっ!!!」

少女へと気を取られている間に、女性の叫び声が室内に木霊する。続いて、ばちんという痛々しい音も。
がたん、がらがしゃん、などと盛大な音が伴ったのは予想外で驚いたが
ひっくり返ったソファー、その向こうに転げて壁に頭打っている男の姿を見たら、その理由は分かった。
ビンタ一つでこの威力とは、やっぱり彼女もコーディネーターだということなんだろうか。

「ったあ……いきなりなんなんだよ」

ぶつけた頭が痛いらしく、さすりながら顔を上げた男は、いかにも寝起きといった感じの掠れ声で呻いた。
そんな彼の前に仁王立ちになりながら、シャーナさんは怒りとその他の感情から顔を紅潮させている。

「それはこっちの台詞! 突然なにしてくるのよ!!」
「なにってそりゃ目覚めのキっ………いやなんでもない」

女性の問いかけに、彼は当然のように正直な答えを言おうとしたが、
向けられる視線がより苛烈なものに変化したのを見て、もごもごと口つぐむ。

「まったく、だからミラフィちゃんたちを連れてきたくなかったのよ。教育に悪いから」

大仰にため息ついたシャーナさんは、ちらりと流した視線で俺たちの方を見て、そう言った。
その視線を追って、初めてヴァルアスさんは俺たちの存在に気付いたようだった。
ほんのり赤く染まった頬を両手で包んでいる少女の姿を見ると、ニッと笑顔見せながら起き上がった。

「よう、ミラフィ。久しぶりだな。 ちゃんと学校いってっか?」
「うん!」

そばに駆け寄ってきた少女の身体を両手で抱き、頭上に掲げ上げる彼。
いつもの倍も高い視点まで持ち上げられた少女は、楽しそうに笑い声を上げていた。
再会のスキンシップをひとしきり済ませ、ミラフィを床に下ろした後
ヴァルアスさんは俺の方をじっと見て、言葉をかけてきた。
326舞踏11話 29/38:2006/04/07(金) 22:42:18 ID:???

「お前か。 歩ける程度には傷は治ったようだな?」
「はい、お陰さまで。 …今はまだ、リハビリ始めたばかりですけど」
「そうかい。 一度ぐらい見舞いに行ってやろうかと思ってたんだが、行けなくて悪かったな。
 こっちに戻ってから、すぐにアイスランドの軍本部に呼び出されててよ」
「いえ、いいんです。 俺こそ、すぐにでもお礼を言わなきゃいけない方ですよ。
 ……シャーナさんから、俺を助けてくれたのは貴方だと聞きました。 本当に、ありがとうございました」

感謝の意を篭めて、深く深くお辞儀をしたが、彼は眠そうな顔に皺寄せる。
そして、ふいと顔を反らし、まるでうっとおしがるようにヒラヒラと片手を振った。

「よせよ。別に俺は慈善家じゃあねえんだ。 ただ、気まぐれでお前を拾っただけだ」
「えっ…でも……」

突っぱねるような反応をされて、思わずどもってしまう。
ただ、お礼を言いたかっただけなのに、彼は面倒くさそうにしていたから…。

「軍需施設への突入任務までの待機中に、偶然見つけたんだよ。
 焼け野原の地面にぶっ倒れて、血ぃダラダラ流しながら這いずり回ってるお前をな。
 そりゃあブザマなもんだったぜ。 必死こいてもがいてたんだろうが、ナメクジにしか見えなかったからな」

そう言いながら、胸ポケットから取り出した箱から煙草を一本咥え抜いた男。
彼の意図が理解出来ず…言葉を発せない俺のそばで、ミラフィが怒った顔で何かを言おうとしていたが
シャーナさんは彼女の肩にそっと手を置き、それを止める。

「……情けねぇ姿だったけどよ。 でもま、誰よりも必死だった。
 手前の命が惜しいだけじゃなかったな、あれは。 誰かを身を心配して、捜し回っていた。
 あんまりに頑張ってるもんだから、少しだけ仏心を起こしたってワケ。 それがお前を拾った理由」

火の点ってない煙草を咥えたまま、彼はククッと喉鳴らし笑い声を立てた。
そして、再び俺の顔を見る……もうその顔には、不快感の色はない。
327舞踏11話 30/38:2006/04/07(金) 22:43:53 ID:???

「待機中とはいえ、大事な任務ほっぽりだして拾ってやったんだ。感謝しな?
 …まあ、結果的には俺らの方こそお前に感謝しなきゃいけなかったんだがな」
「えっ、それはどういうことですか…?」
「お前に命を救われたんだよ。
 回収している間に突入命令が下され、少々遅れて作戦対象に向かったんだがな…
 ところが、向かう先だったモルゲンレーテって軍需会社に爆弾が仕掛けられててよ。
 さて行くかって所で、木っ端微塵に吹っ飛んじまったワケ。
 …命令直後に突入してたら、全員巻き込まれてバラバラ焼死体になってたかもしんねぇ。だからお互い様だ」

語り終えたヴァルアスさんの口元に、ニィと不敵な笑みが刻まれる。
彼の話す内容は相当の毒舌ぶりだったけど…それでも、言葉の節々に隠れている彼の人格が分かったような気がした。
言い方は悪いけどフォローは入れているし、俺に気負わせないようにお互い様だと言っているように思えた。
…顔はまあ、堅気とは思えない凄みがあって怖い人だけど、案外気のいい人かもしれない。

とりあえず、礼は言えたところで…俺は意を決して、彼に尋ねることにした。
最初に目覚めた時から胸中に抱いていた、もやもやを。

「あの…俺を助けてくれた時、その場に俺以外誰もいませんでしたか?
 あと、その時誰かの名前を呼んでいませんでしたか、俺……」

気がかりだったのは、おそらく居たはずの自分の家族たち。
父と母、そしてもう一人居たはずの誰か……名前も顔も思い出せない彼らのことが、知りたかった。
一番最初に接触したと思われるヴァルアスさんなら、知っているかもしれないと思って……。

だが、難しそうに歪んだ彼の渋面が、なによりも真っ先に物語った。

「悪いがわかんねぇな。
 周囲には死体すらなかったし、お前が引いてた血の跡を見たところ、随分移動してたみたいだったしよ。
 それに、俺が拾った時、既にお前気ぃ失う寸前だったからな。 それらしい言葉は何も聞いてないぜ」
「そう…ですか。 ありがとうございます」

何も情報を得られなかったのは残念だったけど、既に諦めていたことだったので、それほど落胆はしなかった。

――ただ、自分が呼んでいた名前が分からなかったことは、不思議なぐらい悲しかったけれど。
328舞踏11話 31/38:2006/04/07(金) 22:45:37 ID:???

「ところでこっちも聞くが…お前今後の身の振りは考えてんのか?」

今度は相手側から投げかけられた問いに俺は顔を上げ…少しためらった。
それは、最近になって考えるようになった問題で、
つい先ほど整備兵の少年から考えさせられる内容を聞かされていたので、考えを整理しきれていなかったのだ。
まだ…明確な答えにまでは至っていない。

「…まだ考えてるところです。 以前のことはほとんど覚えてなくて、当てもありませんし…」
「だったら、自分の納得いく道が見つかるまではここに居な。
 軍人にならなくても一般人向けな、基地内の仕事があるしな。 大佐にかけあってやるよ」

そこまで言うと、彼は大あくびと共に再びソファーの上で横になり、目を閉じた。
やがて、高いびきが響き始めるまで三十秒もなかったろう。
…一方的に話を切り上げて寝に入ったヴァルアスさんを前に、呆然と立ち尽くしていると
隣に近づいてきたシャーナさんが、彼のそばにしゃがみこみ、口に咥えられたままの煙草をそっと抜き取った。
そういえばあの煙草は、取り出したものも火を点けられることはなかったことを思い出す。

「貴方の恩人はこんな人よ。 驚いたでしょ」
「いや、でも…悪い人じゃなさそうですし…俺のことを気にしてくれてたようですし」
「んー…まあね。 あいつは今はどうしてるんだ?って何度か聞かれたことがあるわ」

穏やかな笑みを浮かべながら、眠る彼の横顔を眺めている彼女を見て、ふと理解した。
どうやらこの二人は、親密な男女の間柄にあるようだと。

「ねえ、シン君。 彼の言うとおり、しばらくはここで暮らした方がいいわ」

シャーナさんは不意に表情を深刻そうなものに変えると、そう呟いた。

「貴方の故郷、オーブはコーディネーターに対してとても寛容な国だわ。
 けど、現在あそこは地球連合軍の占領下になってるの。今は危険地域よ…コーディネーターにとっては特に。
 ツテを頼りに帰るのはいいとしても、時間を置いて様子を見るべきだわ」

そう説明すると、シャーナさんは真っ直ぐこちらを見つめてきた。
まるで、俺の答えを待つように。 促すように。
それを受け……俺はゆっくり息を吐いた後、口を開く。

「すみません、今はまだ決断できるほどの情報もないし、度胸もありません。
 ……だけど俺、ここが好きだと思っているのは本当です。 覚えていない母国よりも、ずっとずっと。
 もう少し、時間を下さい。 ちゃんと考えなきゃいけない答えだと思うので」
329舞踏11話 32/38:2006/04/07(金) 22:46:55 ID:???

…その日は、あちらこちらに連れていこうとするミラフィに振り回され、随分と歩き回った。
初めて間もないリハビリの内容としては少々厳しいものだったような気もするけど、
それでも苦よりも楽しさの方が上回り、非常に充実したものだったと思う。

その夜。 疲れた身体をベッドに横たえ、間もなく眠りの縁へと沈んでいった俺は
一番古い記憶を再生した、モノクロームの悪夢の世界へと迷い込んだ。


それは不完全な情報によって作り出された、ノイズとブランクにまみれた映像。
ごうごうと、狂ったように吹き荒ぶ風が鼓膜を震わせる音。
単に立ち込める煙のせいで見えないのか…あるいは出血のショックで目が霞んでいるのか、はっきりとしない視界。
それだけじゃない。 その夢はただの映像だけではなく、感覚も伴っていた。

身体の上に降りかかってくる砂塵が、頬を打つ痛み。
漂う黒煙が、時折突風と共に襲いかかって来る熱波が目の表面を刺激する痛み。
地に伏せ、這いながらでも進もうとして掴んだ砂利が与えてくる、鋭利で冷たい痛み。
その場にあるもの全てがことごとく、俺の身体を苛み痛めつけてくるのだ。

地獄のような状況の中、俺はたった一人だった。
たった一人で、嘆きと絶望の只中でもがき苦しんでいた。

そばにいるべき人たちが誰もいない。何処へ行けばいいのか分からない。
走り出そうにもまともに身体が動かない。 手で砂利を掴み、足で地面を蹴ろうが芋虫程度も進めやしない。
孤独と焦燥と無力感……身体中を駆け巡る悲しい感情と激しい痛みに苛まれていた。

そんな中、俺はただひたすらに泣いていた。 叫んでいた。

何故、誰もいなくなってしまったのだと。
僕を今まで育ててくれた人たちは、愛してくれた人たちは一体何処へ行ってしまったのだと。
――大切な人たちを失ってしまった事実に対して、深い悲しみを感じていた。

何故、自分がこんな目に遭わなければならないのだと。
周りにいたであろう人、あったであろう物を無残に壊し尽くされなければならないのだと。
――世界をこんな姿に変えてしまった何者かに対して、激しい憤りを感じていた。

やるせない、行き場のない感情を抱えたまま、ただがむしゃらに荒地を這い進んでいたが
疲労からだろうか、それとも怪我のせいだろうか。 地を掴む手に、やがて力が入らなくなってくる。
視界が外周からだんだん暗くなっていき、轟音が遠くなっていくのを実感しながら
俺の意識はより深くより暗い、何もない場所まで沈み込んでいった。

――俺はこれから先、このような悪夢を何度となく見るようになる。
330舞踏11話 33/38:2006/04/07(金) 22:48:31 ID:???

…その後、毎日のように歩行のリハビリや、失った利き手を左手で代用する練習を重ねる日々。
右腕の切断面もきれいになり、痛みにうなされることもなくなったぐらいの頃。
夜になって、ラガーシュさんが俺の病室を訪れた。 珍しいことに、いつも足元にひっついている娘の姿はない。
ベッドサイドに置かれた椅子に腰を下ろすと、彼は軽い調子で話しかけてきた。

「よう、シン。 具合はどうだ?」
「歩き回る分にはもう不自由ないです。 左手で字を書くのも慣れましたし。
 早くここに慣れたいんで、昼間は基地内を散歩するようにしてます」
「そうかい。 変わった場所だろう?」
「軍隊の基地、って考えると不思議ですけど、すごくいい場所です。
 住んでる人たちも気さくで親切な人ばかりで…俺にも良くしてくれます」
「そりゃあよかった」

笑うように目を細めたラガーシュさんは、とても満足げで。
うんうんと相槌打つ彼へと、俺は一つ聞いてみた。

「あの、今日はミラフィは…?」
「ん? あー、今日は親父さんところに行ってるよ。
 最近ワシントンに詰めてて、家を空けていたからな。 久しぶりに帰ってきたんで喜んでたよ」
「親父さん……ミラフィのお祖父さんってことですか?」
「そうだ。 俺の義父で、更に言えば俺らシュヴァルツヴィントの直属の上司だ」
 
にまり、口の端上げて笑いの形を作りながら、膝の上に片肘立てて頬杖をつく。

「大西洋連邦軍の重鎮であり、『ブルーコスモス』の実力者の一人でな。
 俺らのような地球に残ったコーディネーターを集めて、隊の設立に尽力してくれた人だ。
 今、ここで安全に暮らせているのもあの人の後ろ盾があるからさ」
331舞踏11話 34/38:2006/04/07(金) 22:50:36 ID:???

俺は、彼の語った内容に驚いた。
『ブルーコスモス』という単語の意味は、ここの人たちとの会話の中で教えられている。
確か、コーディネーター排斥を掲げる団体で、テロ行為すら実行するほどの過激派集団のはずだ。

「何故…ブルーコスモスの人がコーディネーターを保護してるんですか?」
「ま、確かに妙な話かも知れんな…
 だが、なにもブルーコスモスのメンバー全員がコーディネーター撲滅を叫んでるわけじゃあないんだ。
 確かに遺伝子調整された人間を不自然なものとして否定しているが、
 コーディネート技術を完全に封印し、これ以上生まれないようにすれば、それでいいじゃないかって考えもある。
 ナチュラルとコーディネーターの融和を願う穏健派もいるってわけなんだよ」

ゆっくりと語られる彼の話の内容に驚きながら、俺はその話に聞き入っていた。

「殺さなくったって、いずれは消えていく運命なんだからな、コーディネーターは。
 現にプラントじゃあ、第二世代の生殖能力低下が見られ、第三世代がなかなか生まれてないっつー話だ。
 そして、ナチュラルと交わり続ければ、コーディネーターの能力も血が薄まると共に消えていくってコトらしい。
 何も好き好んで、人間同士で盛大に殺し合いたいヤツばっかりじゃあないってわけだよ」
「そう…だったんですか。
 本当に、来るんでしょうか。 ナチュラルもコーディネーターも関係なく、共存できる時代が…」
「ああ、来るともさ。
 もっとも、今のままじゃあダメだ。 互いに努力して、歩み寄らなけりゃあな」

ラガーシュは深く頷き、はっきりとした語調でそう言った。
その表情には、不敵に思えるほどの自信が表れていた。

「俺らは、シュヴァルツヴィントはその未来を信じてここにいる。
 軍に所属し、ナチュラルの盟友を助けるべく、常に戦場を駆け巡っている。 信頼を勝ち取るためにもな。
 …三日後には、部隊を編成してオーストラリアへ向けて出発する予定だ。 あっちもきな臭くなってるしな」
332舞踏11話 35/38:2006/04/07(金) 22:51:36 ID:???

そこまで語ると彼は言葉を切り、しばし黙り込んだ。
病室の窓の向こう、基地内の照明がぽつぽつと窺える夜の闇へと視線を向けている。
何か言うべきだろうかと、沈黙する空気の中考え込んでいると、彼は唐突に口を開いた。

「…あー、次戻ってくるのは、正直いつだか分からん。
 だからその前に、お前に一つ確認しとかなきゃならんことがある」
「? なんですか?」
「その、お前の身の振りについてだ。 すぐには考えられんだろうが、一応聞いておきたかった。
 今後どうしたい? やりたいことがあるのなら、俺は協力を惜しまんつもりだ」

問いかけ。 いつか訊かれるであろうと思っていた内容。
俺はしばし目を閉じて、胸中に抱いていた言葉の最終確認をしてから、それを口にした。

「俺、ここにいたいです。 昔のこと思い出せませんし、国に帰りたいとは思ってません。
 それよりも、ここのことが好きになりました。 この基地に暮らしている人たちのことが、好きなんです。
 …だからどうか、ここに置いてくれませんか? もちろん、皆の役に立つように働きます。給料はいりませんから」
「まがりなりにも軍の基地だぜ? それでもいいのか、お前さん」
「確かに俺は、戦争で色々失くしました…記憶も、右腕も、家族も。 …けど、それでもいいんです。
 家族を守るために戦ってるラガーシュさんたちを、ほんの少しでも手伝いたいんです。そして……」

――意を決して、伝える。
何度も夢で体験した、全てを失くした瞬間から感じた思いを。

「出来ることなら、俺も大切な人たちを守れるようになりたいんです。
 自分が受けたような、生命を脅かされる理不尽な暴力から守れる力が欲しいんです」

それが、俺の心の底からの願いだった。
とりあえず、自分の抱いていた考えは全て伝えられた。 そこで話を切ることにする。
…俺が話している間、難しい顔で無言を通していたラガーシュさんの反応が気になり、ちらと見ると
彼は懐から、銀色をした平べったい長方形の物体を取り出し、それに口付けて何かを呷り飲んでいた。
確か、あれはスキットルという物だったと思う。 ウィスキーとかを携帯するための……

「…まあ、そう願うのもアリ…なのかもな。
 分かった。この基地での居住を許可しよう。 書類も用意しといてある」

ぐいと制服の袖で口元拭うと、ラガーシュさんは手にしていた封筒から何枚かの書類を取り出した。
その全てをベッドを覆うリネンの上に広げ、俺の見やすい方向に置くと、ペンを差し出してくる。

「何はともあれまずは戸籍の登録からだな。とりあえず名前だけ書いとけ」
「あ、はい…」

彼に促され、ペンを手に取りながら…ふと思いだす。 自分がファーストネームしか覚えていないことを。
どう書けばいいのだろう…ファミリーネームの欄は空白でいいのか、でたらめに書くべきなのだろうか。
333舞踏11話 36/38:2006/04/07(金) 22:55:03 ID:???

「どうした、書く場所が分からんのか?」

書類を前に考え込んでいると、横手から伸びてきたラガーシュさんの指が、書面の一箇所をトントンと叩く。
別にそれが問題じゃあないのに…と思いながらも、示された場所へと視線を落した。

――そこで初めて、気が付いた。 既にファミリーネームの欄に記入されていた、『Isolde』という文字列に。

「…無いってのは面倒だろうからな。適当に付けといてやったよ。
 シン・イゾルデ、なかなか悪くねえ響きだろう?」

驚きのあまり、思わず顔を上げて男の顔を凝視すると
彼、ラガーシュ・イゾルデはしてやったりと言わんばかりの愉快げな笑みを浮かべていた。

「ここは、全員一つの家族みたいなもんさ。今更俺に家族が一人増えたからって、どうってこたぁねえ。
 ミラフィがよ、お前のことをすごく気に入っているんだ。 良ければ兄貴になってやってくれ」

その瞬間、崩れるように顔の筋肉が緩んでいくのを実感した。
半開きになった口からは、なかなか言葉が出てこない。 伝えたい感情は、胸に溢れているというのに。
目頭が熱くなってきたのに気付き、慌てて目を閉じたが間に合わず、こみ上げていたモノは瞼の外に零れ落ちた。

すごく嬉しかった。 彼は俺をこの場所に受け入れてくれただけではなく、自らの姓を与えてくれたことが。
素性の知れない上に、記憶も片腕も失っているこんな自分を、家族として迎えたいと言ってくれたことが。

「……あり…がとうございますっ……ラガーシュさん」

詰まりながら、やっとの思いで伝えた感謝の言葉。
堪えきれない嗚咽に肩を震わせる俺の頭を、彼は乱暴気味にわしゃわしゃとかき回しながら、笑い声を上げた。

「ははっ、他人行儀だなぁオイ。
 礼節きっちりしてんのはいいが、そのうち慣れろよ? 俺は親父なんだからな」


――それが、俺が新しい名前と家族を得た、今までで一番嬉しかった瞬間だった。
334舞踏11話 37/38:2006/04/07(金) 22:56:13 ID:???

「……ン…?………シンー?」
「………おおぉい! 起きろってばシーン!!」
「うわあっ?!!」

耳元ギリギリで叫ばれた呼び声に、眠りは一気に覚め、俺の意識は一気に現実へと引き戻された。
未だに残る余韻に、ビリビリと鼓膜が悲鳴を上げている耳を押さえながら声の方を見ると
首を揃えて顔を近づけて、まじまじとこちらを見てくるステラとアウルの顔が目に入った。
走っていたはずの車は、いつの間にか止まっている。 もう店に着いたのだろうか?

「たぁっく、いつまで寝てんだよー。
 お前が賛成してくれないもんだから、スティングに勝手に決められちゃったじゃん!」
「俺はお前たちの意見をなるべく汲むように、考慮したつもりだが?」
「だからってファミレスはねーよファミレスは! せっかくのオフなんだぜ?!」
「ふぁみれす……って、甘いお菓子ある?」
「ああ、あるぞ。 パフェもホットケーキもアップルパイも、色々あるぞ。
 生の魚は無いだろうがシーフード料理ぐらいならあるだろう。 …ほら、丸く収まったじゃねえか」
「…っくそー。 なんでこんな安っぽいランチなんだよー…」

朗々と説明するスティングの隣で、言い負かされた形のアウルが悔しげに唸り声を上げる。
ステラはと言えば、目当てのスイーツが食べられると聞いて、鼻歌が出るほどの喜びようを見せている。
…相変わらずの元気を見せる彼らを前にしながら、俺は先ほどの夢のことを思い返していた。

戦争によって、記憶と右腕を奪われた俺。
シュヴァルツヴィントに拾われ、家族と姓を得て新たな人生を歩み始めた俺。
家族と仲間たちに励まされ、支えてもらっていたからこそ、今この自分がいる。

失くした腕の代わりとなる、銀の腕をもらった。
忘れてしまった知識、これから必要な知識も、誰もが快く教えてくれた。
なによりも、この不甲斐ない新入りの俺を、皆が愛してくれた。
俺は、今持つ全てを与えてくれた皆に対して、なんとか報いたいと、力になりたいと思っていた。

――しかし、現実にはそう上手くいかなかった。
先日の戦闘でも仲間を助けるどころか、助けられる場面が多かった。
…あの民間船についてもそうだ。 自分の不注意のせいで、何百人もの命が失われた。
ヴァル兄はいつまでもクヨクヨ気に病むなと言っていたけど、やはり今思うとそう簡単には割り切れない事実だった。

幾度となく見た悪夢に苛まれながら、誰かを守れる人間になりたいと願っていた。
傷付き、命脅かされ、家族と引き裂かれ、号泣しながら地面に這いつくばっていた
あの日の自分を助けることが出来るような、そんな人間になりたいと願っていたのに。
……未だに自分は、ほとんど自分のことで手一杯の、無力な人間に過ぎない。
決意した瞬間を夢の中で目の当たりにしたことで、その事実が無性に悔しく思えてきた。
335舞踏11話 38/38:2006/04/07(金) 22:57:53 ID:???

セレネの時のように、無関係の人間を巻き添えに死なせたくない。
自分の周りにいる、大切な家族や親しい仲間、友人たちを失いたくない。
――もう、あの悪夢のように全てを失って泣き喚くだけの、無力な自分でいたくない。

胸中に渦巻いていた悔しさは、やがて決意へと姿を変えていく。
今よりももっと強くなりたい。
より大勢の人を助けるためにも。自分が得てきた思い出と、その中にいる人々を失わないためにも。
握り締めた右の拳が、キリと金属の軋む音を立てるのを耳にしながら、俺はそう思った。



…その右腕包む袖を、くいくいと引っ張ってくる白く華奢な手。
はたと我に返り顔を上げると、小首を傾けながらステラが自分の方をじっと見つめてきている。

「シン、具合悪いの? ずっとぼんやりしてる…」
「ああ、いや…うん、大丈夫だよステラ。 さっき少し寝て、元気出てきたから」
「…だったら、さっさと車から降りような? あんまりステラに心配かけるなよ?」

車のドアに手をかけながら車体に身を預けるスティングの、苦笑交じりの言葉に
俺はとっさにごめん、と謝りながら助手席から立ち上がった。
向こうの方から、うんざりした様子のアウルの呼び声が聞こえてくる。
もう既にファミレスの入り口に立ち、待ちわびている少年の方へと、俺たちは三人揃って歩いていった。

…難しく考えるのは、とりあえず一人の時にしよう。
今はとにかく、久しぶりの休息とステラたちとのランチを楽しんで、身体を休める時だろう。

336あとがき:2006/04/07(金) 23:00:20 ID:???

……長々しすぎてグッタリ気味の舞踏の人です(フラフラ
今回はシン主点のお話でございます。よって、弊害としてオリキャラも結構出没しています。
主張をなるべく抑えるようにしましたが、見苦しい箇所もあるかもしれませんが、ご容赦を…。

詳細が語られたシュヴァルツヴィントについてですが、書かれてない部分はまだたくさんあります。
パッと見はお気楽かつ天国のような場所ですが、色々と裏があるかも…? そのうち書く予定です。

そして、今回の主人公シン君。 舞踏版シンのテーマはずばり『甘ちゃん』です。
本編、そしてこのスレのゲンや隻腕様のシンとは大いに異なった性格となっております。

こんな性格にした理由ですが…家族と別れる前のシンは、どうも大人しくて内気っぽいなと推測したからです。
本編でマユの携帯に保存されている彼の写真を見れば、どれもキョトンとしてたり驚いてたりしてますしw
本来は内向的な性格で、本編ではあの事件をきっかけに斜に構えるようになったんじゃないのかなと思ってます。
ステラ絡みの時も、素直で大人しい雰囲気に変化してますし…あれが本来の姿かなというのが舞踏の人の想像です。
…もちろん、甘ちゃんな上に理想高い彼は、今後壁にぶつかりまくることでしょう。そりゃもう盛大に。
具体的には少将殿とか立ちふさがります(ぉ


設定補足

ラガーシュとネオ
階級的には同じですがラガーシュの方が先任で年齢も上なので
ネオの方が敬語気味です。彼らは酒飲み友達でもあります
会えば上司の少将殿の愚痴ばっかり言ってますw

ブルーコスモスについて
まぁ、全部が全部絶滅を叫んでいるわけでは無いと考えています
無論、保護する側も何かしらの下心を持っていたりもしますが



次回は本筋に戻り、開戦へと動く世界を書いていきます
世論を操作し、着々と準備を進める者達
そして、開戦を止めようとカガリも動き出します

337通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 23:01:13 ID:???
リアルタイム遭遇記念&舞踏GJ
シンがしおらしい少年になっててワロス(褒め言葉)

「サマエル」と言う名が「神の毒」を意味することは作者も承知の上で書いてるのだろうか…
あの男にこれほど似合う名も珍しいな……w
338通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 00:09:01 ID:???
やはりロボットの腕にドリルをつけたがるのは男子特有の憧れなのか!?
シンはステラの前だと一人称が僕だったし、こういう性格のシンにも期待
舞踏の人乙でした
339通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 07:04:03 ID:???
舞踏さん乙です!とりあえずシンのこれまでの経緯が明かされましたね!
あとはキラの過去かな?まあ大分色々あったんでしょうけど
そしてシンとマユはこれからどう交わるのか…これからの活躍に期待です

しかし緑の髪と金色の眼ってのはまさか…
340通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 09:37:53 ID:???
舞踏乙です。
甘ちゃんのシンですか……確かに、本編でも家族を失う前のシンってそんなイメージありますよね。
いい感じです。
続き、楽しみにしてます。
341通常の名無しさんの3倍:2006/04/09(日) 11:05:14 ID:CGzG/8tL
保守
342479:2006/04/09(日) 21:00:03 ID:???
投下致しまする
御三方の投下のあとで非常に(((゚д゚;)))ガクガクブルブルしております
343I and I and I(1/8):2006/04/09(日) 21:01:55 ID:???
流れる雲は形を変える。
時間が過ぎゆくと共に、忘れてしまうことがある。
でも、忘れてはいけないこともある。
忘れたくても、忘れられないことだってある。
ワタシにはわからない感覚。
何を忘れているのかもわからないワタシにとっては……
でもこの出来事で、ワタシはその大切さが少しだけわかった気がした。
無情にも時は過ぎて、人は新しい記憶を刻むけど、胸にしまって残ってるモノもあるから。
ワタシにもあるのかな?
あるよね。あるはず。……あってほしい。
でも、あったとしてもそれはワタシのじゃなくて、たぶんわたしの…なんだろうけど。



〜I and I and I〜 第五話「モビルアーマー乗りの少年」



坑道を抜けてガルナハンに着いたマユ達は、早速配給を始めた。
例の如く、ミリアリアは取材に出かけている。
「物資は充分ありますから、落ちついで並んでくださ〜い」
ガルナハンの住民に声をかけつつ、三人は作業にあたった。
食糧、生活必需品等々を配っていき、時に励まし、住民達の相談や愚痴を聞く。
ガルナハンの町は寂れていた。
前大戦の被害もあるが、ここ最近の連合による圧力の方が原因である。
344I and I and I(2/8):2006/04/09(日) 21:04:08 ID:???
建物はところどころ壊れており、住民にも活気はない。
「…はぁ」
マユの口から思わず溜息が出る。
住民達の愚痴やガルナハンの現状に、マユは憂鬱な気分になっていた。
「マユ、大丈夫か?」
「あ…はい」
心配してやってきたカズイに、マユは力なく笑って返した。
それが余計、カズイを心配させる。
「少し休んできなよ。後は俺達でできるから」
「…そうします」

マユは町から外れ、渓谷近くに散歩へ出た。
ごつごつとした岩肌と、立ち込む砂煙。
殺風景でどこか殺伐として、町の状態を表しているように感じる。
「マユ…だったっけ?」
不意に声をかけられ、マユは振り返った。
「コニール…さん」
「さんはいらない。あんま変わらないんだからさ」
笑いながらコニールはそう言う。
「あと、敬語も」
「そう?じゃあ、そうするね」
マユも笑って、そう返した。
コニールが先導するように歩きだし、マユがそれについていく。
少しだけ、コニールを冷たい空気が包んでいた。
そんな空気を察したマユは、ただ黙ってコニールの後に続く。
傾斜のある道を登り、着いたのは花が添えられた小高い丘だった。
345I and I and I(3/8):2006/04/09(日) 21:06:26 ID:???
「最近の紛争とか、前の戦争とかで、結構…死んじゃってる」
コニールの言葉を聞き、花が供え物なのだとマユはすぐに理解した。
「連合の中でユーラシア連邦の立場が危ないっていうのはわかるけど…
でも、だからって強制したり、拒否したら殺したりってのは許せない」
怒りや憎しみの入り混じった言葉。
コニールも誰か大切な人を亡くしたのか。
その言葉だけでは、どうなのかはわからない。
マユはただ、コニールの言葉を受け止めて、飲み込む。
二人が静かに佇む中、突然谷から風が吹き抜けた。
花が空に舞い上がる。
「あ…」
花を目で追っていったその先には、戦闘機が飛んでいた。
「どうかした?」
「…あそこ」
戦闘機がいた場所を指差す。
だがそこには、大きな雲が形を成しているだけで、他には何もなかった。
(まただ…)
アフリカでもあった二度目の感覚。
自分にしか見えない何か。
風を切る音もジェット音も聞こえなかった。
突然現れて、そして消えてしまった。
幻ではないが、確かに存在しているわけでもない。
マユは息を吐いて、もう一度見えないかと空を眺めていた。
346I and I and I(4/8):2006/04/09(日) 21:09:33 ID:???


その夜。
コニールの家にマユ達は泊まらせてもらえることになり、夕食後の団欒を楽しんでいた。
だが、マユが戦闘機を見たことをコニールが皆に話してしまう。
そのせいで、見た、いなかった、という口論のような状態になっていた。
「いたならなんでみんなは見てなかったのさ?」
「それは…私にしか見えなかったっていうか、その」
「はあ?それじゃいた説明にはならないだろ!」
「でも、確かに見たんだから!」
互いに譲らない。
やはりこの辺は子供なのだと、カズイ達は思った。
「でもマユには、不思議な力があるのかもしれないね」
カズイが口論を止めるように口を挟む。
「ジェネシスが撃たれた時も急に倒れちゃったりしたし、アフリカでもあったみたいだし」
「見えちゃう体質ってこと?」
まじまじとマユを見つつ、ミリアリアがカズイに訊いた。
「かもね。フラガ大尉がそうだったんだろ?よくは知らないけど」
「大尉は見えるというより感じてたらしいんだけど、似てるかもしれないな」
カズイの話にサイも同意し、マユの話は一応、信じてもらえることとなった。
一人を除いては。
「でもマユしか見えないんじゃ仕方ないよな」
「む〜…」
347I and I and I(5/8):2006/04/09(日) 21:11:57 ID:???
未だ半信半疑のコニールが呟く。
示せる証拠がないマユは唸るしかない。
「どんなモビルアーマーだったけわけ?その、色とか」
見かねたミリアリアが助け舟を出す。
「えっと…白と青かな。トリコロールカラーっていう感じの…」
マユの説明の途中、椅子が倒れ大きな音を立てた。
質問を投げかけたミリアリアが、驚いた表情して立ち上がっている。
「ご、ごめん。あたしもう寝るから。おやすみっ!」
慌ててそう告げると、ミリアリアは部屋を飛び出していった。
突然のことに静まり返る部屋の中。
「トール……」
廊下をとぼとぼと歩きながら、ミリアリアは大切な者の名をぽつりと漏らした。

翌日。
マユ達は残りの物資の配給を再開する。
あれから、ミリアリアとの会話は無い。
朝もミリアリアが先に出かけていたため、顔をあわせることもできなかった。
マユが見た戦闘機は、スカイグラスパー。
アークエンジェルが大気圏内で運用していたモビルアーマー。
ムウ、カガリ、そしてトールが乗っていた機体。
ミリアリアが部屋を出ていってた後、マユはカズイとサイから、トールの話を聞かされていた。
348I and I and I(6/8):2006/04/09(日) 21:13:58 ID:???
「孫がねえ…連合に連れていかれて、帰ってこないんだよ」
「それは、大変ですね…」
住民達の相談も家族や恋人を亡くしたという話が少なくない。
胸が強く締めつけられる。
自分に家族がいるのかはわからない。
だが、今のマユには、カズイ達がいる。
カズイ達がいなくなることを想像すると、とても苦しくなった。
「相談、いいかな?」
次の相談者がやってくる。
カズイ達と同じぐらいか少し年下の少年だ。
「はい。聞くだけしかできませんけど」
「いいよいいよ、それで」
苦笑すりマユにおちゃらけた感じで返すと、少年は話を始める。
「彼女を守ることができなかったんだ。本当に…本当に心から大切に思ってたのに。
彼女は別の男が気になってるみたいで、守れなかった俺より、ソイツがいいと思うんだ。
俺のこと気にしなくていいからって言いたくても言えなくて。…君から伝えてほしい」
少年は思いの全てをマユに話す。
最初は軽そうに見えた少年だが、マユは彼の彼女を思いやる気持ちを深く感じた。
だが、今初めて会った人物にこんな頼み事をされるのか、わけがわからない。
349I and I and I(7/8):2006/04/09(日) 21:16:47 ID:???
何故そんなことを言うのか訊こうと口を開いたその時、突如として銃声が鳴り響いた。
「連合が!連合が来たぞ!!」
住民の一人が逃げながら叫ぶ。
呆然とするマユが振り返ると、そこには先程の少年の姿はない。
一目散にマユの横を通り過ぎる住民達。
少年も逃げたのだろうか。
マユも逃げようとした刹那…
「キャッ!」
この騒ぎで人の声など掻き消されてしまうはずなのに声が聞こえた。
しかもその声は聞き覚えのある、ミリアリアの声であった。
思わずマユは走り出す。
何故か、走っていけばミリアリアがところに着く気がした。
「ミリアリアさん!!」
「マユ!?早く逃げなきゃ駄目よ!」
角を曲がるとミリアリアがいた。
「ミリアリアさんも早く!」
「立てないの…足くじいちゃったみたい…」
空笑いして、ミリアリアは言う。
「もういいよ。あたし、死んじゃっても」
「なに言って…」
「あたしも…トールに会いたいよ…」
座り込むミリアリアの腿に、水滴が落ちる。
うつむいているせいで表情こそわからないが、泣いているのだろう。
声もか細く、震えていた。
そんなミリアリアを見ながら、マユは口を開く。
350I and I and I(8/8):2006/04/09(日) 21:18:57 ID:???
「本当に大切な人だったのに、守ることができなかった」
不思議そうに顔を上げ、ミリアリアはマユを見る。
伝えてほしいといわれた相手。
それが誰なのかはわからない。
だが、マユはミリアリアに、彼と話した全てを伝えることにした。「彼女は、別の人が気になってるみたいだって」
連合の兵士らしき男が現れ、ライフルを構える。
マユは左腕を広げ、ミリアリアの前に立った。
ライフルから、銃弾が飛ぶ。
流れる沈黙……
マユの頬から血が流れ、綺麗な茶髪が宙を舞う。
「いたぞ!連合だ!!」
「チッ!!」
武装した住民がやってくると、男はその場から急いで立ち去った。
力が抜けたように、マユはぺたんと尻餅もつく。
「もう俺なんか気にしなくていいからって……そう、言ってましたよ」
笑って、最後にマユはそう告げた。
「馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!!マユも…あいつも…馬鹿なんだからっ」
泣きながらも、笑って、ミリアリアはマユの頭を撫でる。
誰からの伝言なのかは告げられていない。
しかし、ミリアリアにはわかる気がした。
空には、戦闘機のような形をした雲が一つ、二人を見守るように流れている。

351通常の名無しさんの3倍:2006/04/09(日) 21:21:28 ID:???
GJ!
352479:2006/04/09(日) 21:22:00 ID:???
I and I and Iはトルミリもディアミリも応援しています!

というわけで第五話投下完了です
それではまた
353通常の名無しさんの3倍:2006/04/09(日) 21:25:01 ID:???
>>342
新作キター!!待ってましたよ!!
何と言ったらいいのかな…この話は過去と現在を見つめた、巡礼の旅のようですね
死んでいった者と残された者とを繋いでいく、マユの旅がとても好きです
いつもながらGJです! 続き期待しています!!
354通常の名無しさんの3倍:2006/04/09(日) 23:21:08 ID:???
マユ→ヴィアの表現はもう無しでつか??
355通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 00:09:21 ID:???
単発設定小話 「gene」携帯電話編D

〜自室を出るマユ〜
マユ「・・・・・・やっぱり艦長には私から言ったほうがいいわよね?携帯電話のこと、お兄ちゃんのこと・・・・・・全部を」

〜室内は一寸沈黙した〜
タリア「・・・その処置が・・・・・・次世代タイプのコーディネイターってことかしらね?」
ハイネ「・・・・・・そうか。地球でそこまで調査できるなら・・・まどろっこしいことはやめるか・・・・・・」
アスラン「ハイネ・・・?」
ハイネ「さっき、マユが被験者の可能性があるっていったろ?」
アスラン「ああ」
ハイネ「あれ本当のことなんだよ。そして俺がここにやってきた本当の理由さ」
タリア「まってまって・・・。話を戻すようだけど、次世代タイプってゆうのはアレとどこが違うのかしら?」
ハイネ「アレ?」
タリア「スーパーコーディネイターのキラ・ヤマトとよ」
ハイネ「ああ。次世代タイプはそれとはまったく逆の考え方なんですよ・・・。遺伝子に不確定要素を作ったら、あとは普通に母体に戻して誕生する・・・」
タリア「不確定要素?」
ハイネ「キラ・ヤマトは完璧な調整がくずれることのないように人工子宮で誕生した。・・・人の夢、人の未来、その素晴らしき結果なんて誰かが言ってましたな」
アスラン「・・・・・・っ」
ハイネ「崩れることのない調整者・・・がキラ・ヤマトなわけですが、次世代タイプの場合は崩れることこそが目的なわけです」
タリア「!・・・それって、人工進化とでもいいたいの?」
ハイネ「ご名答です、艦長。まぁ、進化を促進するためのきっかけを作り、あくまで偶発性に頼ったものですが」
アスラン「人工進化だとっ?じゃあマユは実験の末に誕生させられたっていうのか!?」
〜目を丸くするアスラン〜
ハイネ「偶発性に頼った貧弱な計画だよ。まだマユがどうなったかなんて・・・だれにもわかりゃしない・・・・・・」

〜艦長室から漏れ聞こえる会話に、固まるマユ〜
マユ「・・・実験?・・・・・・人工進化ですって?・・・そんな、わたし、わたしそ、そんなの知らないっ!」
〜艦長室の扉から走り去るマユ〜

〜退室するアスランとハイネ〜
ハイネ「まだどうなるかわかんねぇしな。アスラン、マユには絶対言うんじゃないぞ?」
アスラン「ああ、わかってる。誰にも口外しないさ」
ハイネ「・・・じっさいのところな」
アスラン「なんだ?」
ハイネ「俺にはもうひとつのプラン。艦長がいってたあっちのプランのほうが危険に思えるぜ」
アスラン「・・・・・・ディスティニープランか」

〜医務室でベッドで寝ているステラの前に立つマユ〜
マユ「・・・・・・ねぇ?・・・わたしも、あなたと同じだって言うの?」

携帯電話編 完
356通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 00:14:34 ID:???
>>354
ヒント:避難所
357通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 06:41:01 ID:???
358通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 10:52:16 ID:3WrIZD+r
>>357
何やってんのお前
最悪だな
359通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 12:49:15 ID:DVNDKovo
>>357
最低最悪だ
空気読めなさすぎ
なんのために今まで…
責任とって絶対にレス削除してもらえ
それで済むってんじゃないが
360359:2006/04/10(月) 12:52:26 ID:???
ってこんな時にsage忘れるし
馬鹿と同罪だ
すいません俺もしばらくいなくなります…
361通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 13:03:22 ID:???
AAで埋めて流せばいいんジャマイカ?
362通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 15:39:19 ID:???
いや、SSで埋めて流すべきだ。

>>357
責任もってスレの趣旨に添った奴を一本投下してください。
20行x12レス程度を目安に。期限は1週間以内
363通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 15:58:02 ID:???
>>355
GJ!
シン出生の秘密&遺伝子の秘密も初種割のときに
匂わされつつ結局スルーだったんで、ここに
切り込んでくれてちょっとうれしいです
364通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 18:02:31 ID:???
転載
スターゲイザーの公式HP更新。
ファントムペインの設定が載ってたわ。


■ファントムペイン(Phantom Pain)
「ファントムペイン」は、ブルーコスモスの最高意思決定機関「ロゴス」に所属する不正規特殊部隊だ。この部隊は、ブルーコスモスが私的に編成した私兵集団である。
これまで、武力行使には地球連合軍に依存せざるをえなかったブルーコスモスが、自らの意思を直接に体現することを目的として生み出した武闘集団だ。
ファントムペインの組織の母体は地球連合軍の人員、機材によって構成されている。
地球連合軍上層部からは「ファントムペインから物資・人員の提供を求められた場合には、速やかにこれに応じること」との、非公式だが抗いがたい通達が発せられている。
そのおかげで、ファントムペインは行く先々で無制限の便宜の提供を受けることができる。しかし、この部隊に対して指揮権を持つのはロゴスと、ロゴスを代表した人物のみである。
またファントムペインの詳細について知る者は、連合軍内部でもごく少数の幹部のみである。

私兵集団であるファントムペインは、地球連合とザフトが締結した休戦条約に縛られることがない。
条約は、連合・ザフトの双方にNジャマーキャンセラーや核兵器、ミラージュコロイド、PS装甲などの装備を搭載した宇宙戦艦、核駆動モビルスーツの所有を禁じているが、
ファントムペインはそれを無視して、これらを搭載した艦船で作戦を遂行する。
また、ブルーコスモスの潤沢な資金を背景にしているので、その装備はもっとも先鋭的かつ贅沢である。


つまり、ラクシズ・オーブにおけるAAってことですね。
(転載終了)
転載もとでもこの設定たたかれまくり


365通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 18:12:58 ID:???
いつもの、かなり矛盾を含んだ後付け設定なので、気にする事はないっていうか無視して構わないんじゃ?
366通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 18:59:04 ID:???
じゃあアウルの言ってた第81独立機動群てのは、何?
嫁降板したらしいのに相変わらずとんでも設定だな種は
367通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 19:02:15 ID:???
表向きの部隊名じゃないの?
368付き人 0/20:2006/04/10(月) 19:56:43 ID:???
≫117
ご指摘ありがとうございます、その通りです……というか、重量と質量の区別忘れるなんて、何やってんだ、俺 orz
宇宙空間だと重力(地球の万有引力に引かれることでかかる力)はかからないけど質量はそのまま存在するから、
重い(質量の大きい)物は軽い(質量の小さい)物と比べると動きにくい(同じ大きさの力が加えられて動き出したとき
その移動速度が小さい)――で、よかったっけ? まあ、考えすぎるときりがなさそうなんで適当なところでやめときます。

といったところで歌姫の付き人 第六話、書き終わったんで投下します。
陣営複数で戦闘メインだと、どうしてもだらだらになってしまう……
369付き人 1/20:2006/04/10(月) 20:03:39 ID:???
「状況に変化発生! ユニウスセブンにアーモリーワンを襲撃した宇宙戦艦が出現!」

MS発進準備を進めていたウォルテールに、オペレーターの声が響く。

「奪われた新型三機らしき機影も確認されたとのことです!」

「どういうことだ?」
「さあ、俺に聞かれても」

考え込んだイザークに、ディアッカが律儀に応じる。イザークは彼をギロリと睨んでから指示を下す。

「ボルテールの五機を対MS戦闘用に武装変更して先行させろ、それで脅威を排除した後ルソーの六機で作業に当たる」
「おい、五機だけで大丈夫か? 相手は新型だぜ」
「だからといってユニウスをほっぽり出すわけにもいかんだろうが。
それに相手が新型だという理由だけで簡単に堕とされる様なやわな連中がうちにいるか?」
「そりゃまあ、いないわな。普段からあれだけ実戦並みの訓練やらされてりゃ、ヒヨッコだっていやでも上手くなるぜ」
「そういうことだ……ディアッカ、最低の場合でも足止めだけはやってくれ、やつらをルソーの機体には絶対に近づけるな」

最後の台詞は、ディアッカにしか聞き取れないよう小声で言う。ルソー隊の粉砕作業完遂の為なら多少の犠牲は容認する、という意味だ。

「イザーク隊長、ルソーより緊急の私信です」

再び、オペレーターの声。それにイザークが応じる前に、スクリーンにシホ・ハイネンホースの顔が表示される。

『隊長、私も対MS装備で出させてください』
「駄目だ!」

シホの具申を、イザークはにべもなく却下する。

『ですが、』
「お前にはメテオブレーカー設置の士気をとってもらわなばならん。地球の運命を左右させる重要な仕事だ。
ボルテールの機体が参加できなくなる分一機あたりの設置数は増えるんだ、戦闘などに関わらせる暇はない! いいな」
『……はい』
「機体を発進させたあとは、ボルテール、ルソーも随伴して前進する。そのほうがメテオブレーカを取りに戻る時間が省ける。
 いいか、今の俺たちの敵は新型じゃない、ユニウスセブンと時間だ。それを忘れるなよ」

そう言うと、通信を切る。チャンネルを回して格納庫に、自らのザクをスラッシュ装備で整備させる。

「なんだ、イザークも出るのか?」
「状況によってはだ。ここが落とされてはかなわんからな」

指揮官席に腰を下ろし、うんざりしたように呟く。

「前の戦争のときは楽だった、ただ戦ってさえいればよかったからな。
それが今じゃなんだ? 昇進するたびに面倒ごとが増えていく」
「それが、責任を背負うってことだろ」

ディアッカはそういうと、格納庫に向かう。ブリッジのメインモニターには、地球に向かうユニウスセブンが表示されていた。
370付き人 2/20:2006/04/10(月) 20:04:38 ID:???

      歌姫の付き人

    第六話  破砕作業


ボルテールとルソーがMSを発艦させようとしていたちょうどその頃、ユニウスセブンでは戦闘が開始されようとしていた。
四機のミネルバMS隊が右上方から向かってくるガーティー・ルーを警戒しつつ、砕くべき大地を目指して進む。
そこに、突如のアラーム音。ロックオンされたことを知らせるものだ。
慌てて機を反転させ、攻撃を逃れようとする。が、重い荷物をぶら下げていてはいつものようには動けない。
放たれたビームは狙いを誤らず、レイとアスランの運ぶメテオブレーカーを貫いた。

「またガンバレル?」
「違う、新手だ」

下方に向けられたレイの視線の先からは、六機のジンがビームライフルを手に上昇してくる。

「ルナ、マユを連れて破砕作業に」
「ええ、分かったわ。マユちゃん、行くわよ」
「え……え、あ、はい」

突然のビームに呆然としていたマユが、ルナマリアの声で何とか立ち直る。
そのまま二人はユニウスに向かい、メテオブレーカーを失った二機が彼等とジンの間に立ちふさがる。

「申し訳ありません、アスランさん。あのジンを引きつけるお手伝い、お願いできますか?」
「断る……ってわけにもいかないだろ、この状況じゃあ。武器は盾の裏についている斧だけか」
「いえ、ウィザードに搭載されている誘導ミサイルと腰部についたグレネードもあります。
 本来なら、加えてビーム突撃銃も携帯しているはずなのですが……」

残念ながら今回は、作業任務のためミネルバにおいてきてある。不完全な状態での戦闘にレイは顔を曇らせる。
逆に把握していなかった武装を知ったアスランは、感心したように頷く。

「初期のジンに比べればよっぽどの重武装だ。だが射撃系の武器は実戦で初めて扱うには不安が残るな。
 よし、前衛は俺がやるから援護を頼む」
「分かりました」

レイのザクがミサイルを発射、かわすため陣形を崩したジンに、ビームをかわしつつアスランが迫る。


371付き人 3/20:2006/04/10(月) 20:05:43 ID:???

「ありゃりゃ、どうなってんだ?」

エグザスのコクピットで、ネオが呟く。

「なあネオ、あいつらザフト同士でやりあってるぜ」
「仲間割れ?」
「なんにしろ俺たちには有利だな」

スティングの言葉を、リーがガーティー・ルーのブリッジで否定する。

「残念ながら、我々にもお目こぼしは無しのようです。右方向より接近するジン、数、およそ十。
全ミサイル発射管にスレッジハマー装填、面舵三十度、最大戦速!」
「よし、こっちも応戦準備だ。今回はアウル中心でいく。先頭はステラ、左を俺、右をスティングで固めるぞ。
 アウルはとにかく火力で敵を落とせ。他は敵をアウルに近づけるな。それと、今回の目的はガーティー・ルーの護衛だ。
 あまり艦から離れすぎるな、ただし近づきすぎて対空砲火に邪魔になってもだめだぞ!」
「ようは、たくさん敵をやっつけて艦を沈まないようにすりゃあいいんだろ」

アウルが作戦を豪快に要約し、素早く編隊を整える。そのまま敵に突き進み、アビスのビーム砲で先制する。
射撃を受けた一機のジンが爆散し、のこりが左右に分離する。右の五機がネオたちに向かい、彼等を囲むように散開する。
その隙に左の六機は二機ずつ三編隊に分かれ、三方向からガーティー・ルーを襲う。

「イーゲルシュテルン起動、下げ舵十五、面舵二十!」
「敵機、来ます!」
「一番から五番、照準正面の敵機、撃っ! 続いて左舷より迫る機体、二十番から二十五番!」

二つの編隊に五発ずつ、迎撃ミサイルが放たれる。四機のジンは、巧みな機動でそれをかわす。
ミサイルに内臓されたコンピューターが敵との再接近点を識別、そこで十の矢は自らの体を裂き、破片を真空中にばら撒く。
その一部は目標に到達したものの、決定的な戦果を上げるには至らない。
それでも回避行動を強制された彼等は一時的にとはいうものの、目標から大きく引き離される。
結果残ったジン二機編隊は、単独でガーティー・ルーに向かう。彼等を迎え撃つのは艦最後の防衛線、片弦八基のイーゲルシュテルン。
無数の弾丸が二機のジンに集中し、うち一機を早々に藻屑に変える。

「ジン一機、撃破。もう一機も反転……」
「いや、まだだ! 総員対ショック体勢!」

オペレーターの報告を、リーの緊迫した声が遮る。
撃破し残骸と化したはずのジン。手足を失い攻撃手段がないはずのそれは、だがしかしバーニアの推力でなおも突っ込んでくる。
更なるイーゲルシュタインの迎撃、艦直前で爆散させるも時既に遅し。
ばらばらになった機体の破片はそのまま慣性でガーティー・ルーに命中する。

「死兵か、こいつらは」

半ば青ざめていうリーの元に、ダメコン班からの被害報告。破片は全て第一装甲で受け止め、航行するぶんには支障は無し。
ただし右舷バルカンは八基中三機が大破して、対空能力は大きく低下。
そしてその右舷から、ミサイルをかわした先ほどのジンが、編隊を組みなおしてなおも迫る。

372付き人 4/20:2006/04/10(月) 20:06:42 ID:???

一方五機のジンに囲まれたネオたちも、予想以上の苦戦を強いられていた。
機体性能、操縦技術は共にこちらのほうが上、の、はずなのに、落とせない。巧みに距離を取り連携して、その場に縛り時間を稼ぐ。
敵を追い詰め兵装機動ポットを分離させたカオス、その背後から別のジンの攻撃。
カオスはMAに変形して離脱、カオスを狙ったジンを今度はガイアが追い詰め、背後からビームライフルを向ける。
だが、

『甘い!』

さらに別のジンがガイアに接近、斬機刀に切りつけられたビームライフルが爆発する。
そこをアビスがビーム砲で射撃、斬機刀ごとジンの右腕を奪い取り、アビスの背後を取ろうとした別のジンは
四基のガンバレルの弾幕で進路をふさがれ、さらにエグザス本体がビームソードで斬りかかるものの、
これは横転してかわされる。

間違いなく攻めているのはネオたちのほう。なのに、攻めきれない。あと一歩のところで取り逃がす。
両方の技量が一定以上であるため、必殺の一撃を打ち込む隙がどうしても見出せないのだ。

「あー、これじゃきりがないぜ!」

苛立ちと共にアウルが漏らす。その目に映るのは、他のジンに襲われて前進出来ずにいるガーティー・ルーの姿。

「ステラ、もっと前に出ろよ!」
「え、でも……」
「なんだよ、恐いのか?」
「!! 恐くなんか、ない!」

アウルがステラを急かして、二機が強引に前に出る。

373付き人 5/20:2006/04/10(月) 20:08:46 ID:???

「あの大馬鹿野郎!」

スティングが二人を追おうと慌てて反転、その隙を突こうと接近したジンを、ネオがエグザスで撃破する。

「すまねえ!」
「いいから、さっさと二人に追いつくぞ……後ろだ、スティング!」

二機を追おうとしたスティングが、気を抜いたほんの一瞬。そこに撃破したはずのジンが喰らいつく。
四肢がもげ、ジャンクに等しい状態にもかかわらず、背中のブーストを全力でふかし、カオスの進路に立ちふさがる。
374付き人 7/21:2006/04/10(月) 20:10:23 ID:???

「こいつ!」

カオスは慌てつつも相手の頭部にビームサーベルを突きつける、が、

『ぬるいわ!!』

ジンはかまわずカオスにしがみつき……そのまま爆発した。

「スティング!!」
「…あ……オか? くそったれ!」

爆発煙の中から、カオスが姿を現す。機動兵装ポットが一基失われたが、戦闘継続は十分可能な程度。
乱れが直った無線の声は、三人中では一番冷静なスティングとは思えないほど興奮している。

「アウルとステラは!?」
「ガーティー・ルーに向かった。完全に分断されたな。さっさと片付けて俺たちも追いつくぞ」
「ああ。それにしてもなんなんだ、この連中は?」

敵のジンはあと四機、そのうち二機がアウルたちを追って、残りの二機がネオたちの前に立ちふさがる。


375付き人 7/21:2006/04/10(月) 20:11:34 ID:???

ガーティー・ルーを中心に、繰り広げられる戦闘。放たれたビームが、破裂したミサイルが、漆黒の宇宙に光点を生み出す。
だが彼等の前方を進むユニウスセブンの大地でも、閃光は点滅を繰り返している。
アスランとレイが、ジンの猛攻を食い止めようと奮戦する。ミサイルを放ち、ビームを避け、ビームトマホークで斬りつける。
マユ・アスカの乗ったインパルスは、その後ろで必死にメテオブレーカー設置作業を進めていた。
周囲に、ジンから放たれたビームが着弾する。ユニウスの大地に弾痕を付け、土煙を舞い上がらせる。
思わず生じた悲鳴を強引に飲み込んで、震える手で操縦レバーを操作する。緊張で、作業はちっとも思うように進まない。

「設置……完了!」

無線から、ルナマリアの声が響く。

「マユちゃん、そっちはどう?」
「あ、はい! ちょっと待ってください」

ルナマリアが作業を終えたという事実が、マユの焦りを加速させた。

『何故、邪魔立てする?』

スピーカーから、ジンのパイロットの声が流れてくる。周波数が近かったのか、無線が混戦したらしい。

『歪められた世界、偽りの平和、そんなものに何の価値がある!』
「何の価値がある? 偽りには何の価値も無いとでも言うつもりか!?」

珍しく感情をあらわにしたレイの声が、そこにかぶさる。
レイはそのまま加速しながら直進、ライフルを構えたジンの腕をトマホークで斬り捨ててすばやく反転する。
腕から切断されたジンの右手は、しかし自らの最後の役目を果たす。
右手に握られたライフルからビームが発射されたのは、それが爆発するのとほぼ同時だった。

「きゃあ!」

放たれたビームはインパルスの右足を掠め、驚いたマユはレバーを思いっきり引いた。
インパルスが大きくバランスを崩し、大地に無様にしりもちをつく。慌てて立ち上がろうとするものの、緊張とあせりでうまくいかない。
今度はレバーを押しすぎて、頭から前のめりに倒れこむ。右足を掠めたジンのビームは機体にこそ損傷を与えられなかったものの、
マユの緊張の糸をぷっつりと断ち切ってしまっていた。
起き上がれずにいるインパルス、その周囲に更なる着弾。右肩と左足の装甲が欠け、湧き上がってくる死の恐怖。
息が詰まり、視野が狭窄する。貸してもらったパイロットスーツが湿度も気温も一定に保っているはずなのに、
寒さで全身に鳥肌が立つ。なのに、頭だけは妙に熱い。体が硬直し、動かせそうにな……
376付き人 8/21:2006/04/10(月) 20:12:31 ID:???

「しっかりしなさい!」

無線から飛び込んできたルナマリアの声で、マユはハッと顔を上がる。モニターの前に迫る赤いザク。
それはインパルスの直前で、歩みを……止めずに蹴飛ばした。

「ンィアギャ!」

言葉に出来ない衝撃がコクピットを襲い、中のマユが奇声を上げる。機体は二、三回転したあと大地に叩きつけられる。
舌を噛んで、涙が出た。それを拭こうとした右手は、パイロット用ヘルメットに阻まれる。思わず顔を赤く染め、叫ぶ。

「なにするんですか! ルナマリア、さ…ん……」

声は相手の機体を認識した途端、か細く途切れた。
蹴り飛ばされたマユの機体、それがもとあった場所には新たな弾痕が生じている。
蹴り飛ばしたザクの右足はそのビームの直撃を受け、膝の部分で切り離されていた。

「大丈夫、マユちゃん?」
「あ、はい……って、ルナマリアさんこそ右足!」
「え? ああ、これぐらいなら宇宙ではまだ動けるわ。壊れたのは機体で、本物の足がちぎれたわけじゃないのよ」
「あ、そっか」

ほっと、息をつく。いつの間にか、緊張は体から消えていた。

「二人とも、無事か!」

二機の隣に、アスランが降り立つ。ウィザードのミサイルを撃ち放ち、近づくジンを牽制する。

「ええ、何とか」
「平気です!」

作業を再開したインパルスを見て頷くと、アスランはミサイルをすり抜けたジンに向かって上昇する。
同時に、腰からハンドグレネードを取り出す。ジンも斬機刀を振りかぶる。
377付き人 9/21:2006/04/10(月) 20:13:27 ID:???

『我らが悲願、邪魔立てするならザフトといえども容赦せぬ!』
「悲願だと? これを落として、世界を壊して、それで一体何を願う?」
『壊すのではない、正すのだ、捻り歪められたこの世界をな!』

ジンの斬機刀を紙一重で避け、そのまますれ違う。
急旋回で振り返ったところで、交錯の瞬間に手放したグレネードがジンを巻き込んで爆発。
ぼろぼろになって落下するジン。しかしその中のパイロットは、勝ち誇った声で叫ぶ。

『我らが墓標、まだここで割らせるわけにはいかん!』

奇跡的に、アスランの側からすれば悪夢的に残った左腕。それが握ったライフルの、照準が向けられたのはインパルス。
引き金を弾く、その瞬間に、しかしそのジンは後方から放たれた高エネルギー砲に貫かれる。

「おーい、ミネルバ組、無事か?」
「ディアッカ?」
「へ? え、アスラン?」

オルトロスを放ったディアッカのザク、そして彼の指揮するゲイツ。
彼等が側面を突いたことで、優勢を誇っていたジン部隊は大きく崩れる。
さらにその後方からは、二隻のナスカ級、ボルテールとルソーがMSを発進させながら向かってくる。

『アスラン! 何故お前がここにいる!!』

ウォルテールで指揮を取っていたイザークの声が、無線に乗ってあたり一帯に響いた。



ジュール隊の乱入は、ユニウス中央に本陣を敷くサトーの下にももたらされた。
「二個小隊、ついて来い」
報告を聞いたサトーは周りの兵に命じると、自らのジンを発進させる。
「破砕作業の妨害、困難になりつつあります」
「動じるな!」
声を上ずらせる部下を、一喝する。
「案じるな、MSにコロニーは砕けん」
六機のジンを引きつれ、飛び立つ。向かった先は、二隻のナスカ級。
彼等が飛び立ったユニウスセブンはその瞬間も、刻一刻と地球に向けて進んでいた。

378付き人 10/21:2006/04/10(月) 20:14:21 ID:???


地球に向かうユニウスセブン。その軌道変更は、当然地球側にも報告されていた。
報告を受けた各国の軍は、撃退準備を開始する。軍事衛星は接触軌道を選択し、地上ミサイル基地は迎撃体制を整える。
だがしかし、そうしている間にも、ユニウスセブンの軌道のずれはさらに大きくなっていく。
来るはずの位置を通過せず、来ないはずの宙域を通り過ぎる。その誤差は、計算上は絶対にありえないほどのもの。
事実ユニウスセブンには、設置された推進機で絶えず加速が加えられていたのだが、
この時点でそれを知るものは地球上にはほとんどいない。
結果予測軌道に網を張った地球側の迎撃体制は、大半が空振り、無駄足に終わる。
大気圏突入前に接触できたのは、衛星、連合艦が共にゼロ、ザフト軍の艦が僅かに三。

刻々と変わる軌道の前に、各国の軍は落下地点の予想を放棄。
全ての地域に落下可能性があると仮定して、全基地で高高度到達可能なミサイルの発射準備を整える。
南国の島国オーブでも、もちろんそれは例外ではない。
オノゴロ島の国防本部で、対衛星、対弾道弾の両ミサイルが発射シークエンスの開始を急ぐ。

「だーかーら、発射準備は対弾道弾用を優先させてよ。目標はオーブおよびその近海に落下する破片!!」
「しかしユウナ様、それでは命中しても落下位置をずらすだけ、地球に落ちることに変わりはありません!」
「落下速度を落とせる可能性はあるんでしょ?」
「あくまで可能性です! それよりも高軌道で対衛星用を当てて砕けば、大気圏突入時の摩擦で燃やし尽くせます」

その国防本部で、本来の指揮官ソガ一佐とユウナと呼ばれた長髪巻き毛の青年が、つばを飛ばして言い争っている。

「そーいう面倒な仕事は大西洋連邦かユーラシアにでも任せておけばいいの。
オーブは島国なんだ、一個でも破片が落ちたら国家滅亡だよ。
僕らが守らなきゃいけないのはオーブ、地球全体の防衛は広大な国土を持ってる連中が勝手にやってくれるよ!」
「そのお言葉、大西洋連邦の市民たちを前にしても同じように言うことが御出来ですか?」
「まさか、政治に携わってるんだから時と場合に合わせて使う言葉くらいは選ぶさ。でも今はそんなこと気にしている場合じゃない。
大体、対高軌道衛星用ミサイルなんてものアメノミハシラに篭ってるサハク家に対するあてつけで開発された
五大氏族の勢力争いの産物なんだから、他国には存在自体秘匿されてるはずでしょ。
だから撃たなきゃ撃たないで、そんなもの持ってるなんてばれないよ」

ソガに対して畳み掛けるユウナ・エマ・セイランの後ろでは、護衛役の黒髪の少年が手持ち無沙汰な様子で立っている。
彼の眼部は灰色のバイザーで覆われて、その目に宿る感情は、ほとんど外部からは読み取れない。
言い争う二人に向けられていた少年の視線が不意にずれる。その先のテレビに映るのは、脂ぎった禿親父。
オーブ現宰相にしてユウナの父、ウナト・エマ・セイラン。
ユウナとの外的相似点は皆無だが、見るものが見ればそっくりだ、とは、セイラン家に使えるメイドたちの間での評判だ。
コホン、と咳払いを一つして、ウナトはおもむろに話し始める。その内容は、現在落下中のユニウスセブン。

『オーブ国民、ならびに地球でこの放送を聞いている全ての皆様に緊急かつ重要な報告があります』

379付き人 11/21:2006/04/10(月) 20:15:06 ID:???

その放送は、プラント全土に流される。
海岸近くに設立された資金繰りが少々不透明な孤児院も、その例外にはなりえない。

『既にご存知の方もお在りかと思いますが、現在ユニウスセブンがその軌道をはずれ、地球に向けて接近中です』

「はい、これは一体どのようなことなのでしょうか?」

放送内容を気にかけながら、部屋の主は受話器を握る。電話の向こうのどこかの相手に、穏やかながらも鋭い口調で話しかける。
その声、その姿は、ミネルバでマユを見送っていた少女と瓜二つ……いや、そう表現するのは語弊があるかもしれない。
なぜなら本来オリジナルなのは彼女のほう、ミネルバにいる少女のほうが彼女に似せてつくられたものなのだから。

「いいえ、聞いておりませんわ。ええ……分かりました。そちらがそのようにお考えならば、仕方がありませんわね。
では、次回からはこの話は白紙に戻すというという方向で。はい、また連絡いたしますわ。
それまでに今回の件の説明を……ええ、ではまた」

受話器を置き、そのまま厳しい表情で考え込む。彼女の足もとで、球状の機械が転がり跳ねる。

「ラクス、みんなで裏のシェルターに避難を……どうかしたの?」
「いいえ、何でもありませんわ。いきましょう、キラ」
「うん」

扉の向こうからかけられた声に、明るく応じる。机の上の小物入れを手に持ち、部屋の外に出る。
その顔にあった厳しさはいつの間に消え、代わりに穏やかな微笑が浮かんでいる。

「ほら、ハロもこちらへ」
『合点承知!!』

床をはねていたハロと呼ばれた機械も彼女の声に応じると、転がりながら部屋の外に。
その途中テーブルとぶつかって、その拍子に上に置かれていたリモコンが床へと落ちる。
床に落ちた衝撃でボタンが押され、新たに映し出されたのは外国放送。同じ事件について話す、大西洋連邦大統領の姿。

『我が大西洋連邦政府といたしましては、今回の件に関し非常事態宣言を発令する……』
380付き人 12/22:2006/04/10(月) 20:18:18 ID:???

『……発令すると共に、軍に対し被害を最小限に収めるための諸対策を講じるよう命じてあります』

同時刻、同内容の放送を、個人の地下シェルターで聞くものがいた。シェルターといっても、どこにでもある緊急避難専用のそれではない。
家具食料はもちろんのこと、大型コンピューター、通信機器その他C4ISRに必要な主要装備を完備しており、
中央の机の前に設けられた数十のモニターには、世界各地から寄せられた軍事や経済の重要情報が映し出されている。
新興財閥ジブリール財団会長の個人邸宅脇の地下。複数の最新レーダーと地対空、地対地ミサイルで守られたそこは、
その気になれば一国の軍中枢としての機能すら、余裕でこなすキャパシティーを持っている。

「モニター、Dの九番を」

そこの主、ロード・ジブリールの一声で、モニター中央の画面が即座に移り変わる。
大西洋連邦軍パナマ基地のミサイル発射準備進捗状況に変わり映し出されたのは、どこの村にも一人はいそうな初老の男性。
穏やかなカーブを描いて垂れ下がった両の目じりが、いかにも温和そうな雰囲気を醸し出している。

「お久しぶりです、ブルーノ・アズラエル様」
『うむ、久しぶりだな。こうしてさしで話すのは、馬鹿息子の葬儀の時以来か?』

アズラエルと呼ばれた老人が応じる。柔らかな口調だが、目は笑っていない。
ブルーノ・アズラエル。先の大戦で実子ムルタ・アズラエルを亡くした後急遽現役に復帰した男だが、
若かりし頃培った胆力は微塵も衰えていないようだ。
まあそうでなくては、曲者が集まる軍需産業複合体ロゴスの総裁など到底務まらないのだが。
381付き人 13/22:2006/04/10(月) 20:19:14 ID:???

『それで、今回の件はお前の仕込みなのか?』
「まさか! これでは下手をすれば戦争をする体力さえも残らない。さすがの私でも、もう少し手は選びますよ」
『なるほど、それもそうか』

まったく信用していない様子で、アズラエルは言う。ジブリールも表面上の笑顔でそれに応じる。
そのまま十数秒にらみ合い、モニター越しで視線がぶつかる。先に折れたのはアズラエルのほうだった。

『まあよい。こうなったからには我々としても手を打たねばならん。結果、労せずしてお前のプランは採用されるというわけだ。
 満足か?』
「満足など、滅相もない。私はただ我ら全ての繁栄のために……」
『心にもないことを言うな。確かに貴様は聡いかもしれん、が、誰もが貴様考えているほど愚かなわけではない。
 そのことだけは心しておけ』
「は、申し訳ございません」

一転して厳しい目つきになったアズラエルに、ジブリールは平身する。
それをなおしばらく睨みつけた後、アズラエルはようやく表情を緩める。

『被害が想定内に収まれば、次の集会でテュケープランは採用されよう。
その場合、貴様に剣の握り手の権限が与えられるよう根回しをしておく。
せいぜい、息子よりはましなところを見せてくれ』

そう言い放ち、アズラエルは通信回線を落とす。
ジブリールは通信が切れて暗転したモニターを見つめると、チチチと小さく舌を鳴らす。
どこからともなく表れた見事な毛並みの黒猫が、彼の膝にするりと飛び乗る。

「過去と地球に縛られた御老人はまだまだ元気がよろしいようで。
だがもうあなたたちの時代は終わるべきだ、コーディネーター共と一緒にね」

その猫の背を撫でながら、ジブリールは一人呟く。撫でられている猫が喉を鳴らし、気持ちよさげにニャアと鳴いた。



382付き人 14/22:2006/04/10(月) 20:19:58 ID:???

「オッケー、そこでチョイ右!」
「赤い色のザク、設置位置をもう100m右にずらしてください」
「これで……一個目打ち込み終わり!」
「そこの新型、作業はまだ終わりじゃないんですよ。さっさと次のメテオブレーカー取ってきてください」
「は、はい」

シホ・ハイネンホースの指示の下、破砕作業は進められる。新たに六機の機体が加わったことで、作業は大いにはかどった。
もちろん予定よりは遅れているし、それをさらに遅らせようとジン部隊は果敢に妨害を試みる。
だがアスランとレイ、ディアッカとその部下たちの活躍により、彼等は作業機に近づけないでいた。

『メテオブレーカー、射出します!』
「射出確認しました」
『機体との速度同調完了! 接触まで……三、二、一、接触!』
「接触成功! インパルス、メテオブレーカーキャッチ。再度ユニウスセブンに向かいます」

マユがミネルバからメテオブレーカーを受け取る。
その隣では、ユニウスぎりぎりまで近づいたウォルテールに、ゲイツが緊急着艦する。
そこで破砕機を受け取ったゲイツはバッテリー交換の暇さえ惜しみすぐに再び急発進。
さらにまた、別のゲイツがメテオブレーカーを取りに戻り……。

この分なら、最悪の事態は免れる。破砕作業に携わっていた誰もがそう思った。
ミネルバブリッジで作業を見守ることになった文民三人ですら、その例外ではなかった。
カガリは拳を握り締め、デュランダルは顔に微笑を取り戻し、
ミーアも無事に戻ってくるだろう親友の笑顔を想像して、大きな胸を撫で下ろした。
サトー等七機のジンが戦場に乱入したのは、まさにその瞬間だった。

レーダーをごまかすため行っていたユニウスセブンすれすれの超低空飛行を取りやめて、隙を見せた獲物に喰らいつく。
たちまち、二機のゲイツがビームに貫かれ、自らが発した爆炎に飲み込まれる。
戦術教本に載せたくなるくらいの、完璧と言うしかない奇襲。
爆発した機体、その光で、ミネルバはようやく彼等の存在に気付く。

「なんなの?」
「ポイント0428に新たな機体出現! 数は五、六……いえ、七機です!」
「そんな馬鹿な!」
「なんで気付かなかったの!?」
「すみません。機影がユニウスセブンの影に隠れて」

唇をかみ締めながらメイリンは答え、味方MSに現れた機体の位置を報告する。
それを受けたディアッカたち護衛隊は、敵と守るべき作業機との間に立ち塞がる。
新たに現れたジン部隊は、彼等に向かって殺到……しなかった。
383付き人 15/22:2006/04/10(月) 20:21:34 ID:???

「狙いは艦だ!」

アスランが叫ぶ。破砕作業に従事する機体を守ろうとしたザクとゲイツ、彼等をあざ笑うかのように、ジンはボルテールへと向かう。
応戦する機銃をかいくぐり、ビームライフルを放つ。砲塔、機関、そして艦橋。これ異常ないほど的確に、射撃は艦の急所を貫く。
一航過して、そのまま離脱。背後のウォルテールでは、艦体の所々で断続的な爆発が始まっている。

『もう一隻、征くぞ!!』

サトーの声で、ジンは反転する。二機ほどは被弾しているものの、戦闘に支障がありそうな様子はない。
最大加速を行いながら陣形を崩さない彼等の機動が、その技量の高さを表している。
そのまま、今度はルソーに向かう。ナスカ級二隻を沈めれば、邪魔をする艦はミネルバだけだ。
いくら新型でいくら性能が高くても、一隻では積んでいるメテオドライバーには限界がある。
そしてMSがいてもメテオドライバーがないならば、ユニウスセブンは砕けない。
狙いに気付いたアスランが、バーナーをふかし彼等に向かう。他の機体も、それに倣う。
が、間に合わない。

「くそ!」

操縦レバーを前方へと押し付けながら、呪詛の声をアスランが上げる。
ジンの腕が持ち上がり、目前に迫った新たな標的にビームライフルが向けられる。
その後方、ウォルテールの破壊されたカタパルトで何かが動いた。
384付き人 16/22:2006/04/10(月) 20:22:23 ID:???

『我らの悲願がこれでかなう!』 
『そして開かれる、新たなる人類の未来が!』
「ふざけるな!!!」

歓喜の声をあげルソーに襲い掛かるジン達を、遮ったのはイザークの怒声。
声と同時に、機関を被弾して速度を落としたボルテールから、くすんだ青色のザクが這うようにして現れる。
装備しているスラッシュウィザード、その両肩のガトリング砲が、ジンとルソーの間を裂く。
一機のジンが弾幕に飛び込み、四肢を引き裂かれて爆墜。残りは四方に散開して、ザクの攻撃から逃れる。
そこにようやく、アスランたち護衛の機体が追いついた。

「無事か、イザーク?」
「当たり前だ!」

ルソーから危機が去ったことを確認し、イザークは再びウォルテールの艦内に。
機関が爆発を始めた艦は、既に総員退避を始めている。その格納庫で、ザクは鉄の塊を引っ張り出す。

「アスラン、俺の艦はもうダメだ! メテオブレーカーは全て貴様にくれてやる、さっさとあれを叩き割れ!!」

引っ張り出したメテオブレーカーを、艦の外に放り出す。

「分かった、任せろ!」

アスランたちがそれを受け取り、ユニウスセブンへと反転する。
破砕機を抱えたザクとゲイツ、動きが鈍くなった機体の背後に、二機のジンが銃を向ける。

「この……中古のMSが!」

さらにその後ろに、イザークのジンが回りこむ。

「よくも俺の艦を!!」

一機をガトリング砲で破壊、もう一機は盾から取り出したビームトマホークの投擲で切断する。
残ったジン四機はルソーを諦め、守りの薄くなった作業機へと転進した。


385付き人 17/22:2006/04/10(月) 20:23:14 ID:???


「このー!」
MS形態に変更することで強引に方向転換し、ガイアがビーム突撃銃を放つ。
「これで、終わりだよ!」
ジンはガイアの攻撃回避のため姿勢を崩し、そこにアビスのビーム砲が殺到する。
手が捥げ足が千切れ、ついに胴体が爆発してようやくジンは動きを止めた。
相手を完全に破壊したことを確認して、アウルは大きく息をつく。
残っていた最後のジンが撤退すると同時に、二機のジンを始末したネオとスティングも戻ってきた。

「アウル、テメーなに勝手に行動してんだ! ステラものこのこ付いて行ってんじゃねーぞ!」
スティングが機体の中で目を吊り上らせて言った。
「ま、結果オーライってやつじゃん?」
「そういう問題じゃねーよ!」

「にしても、大分やられたな。リー、大丈夫か?」

言い争い始めた二人をひとまず置いておき、ネオはガーティー・ルーへの無線を入れる。
襲ってきたジンは何とか全機叩き落したものの、その過程で艦もかなりの被害を浴びていた。
特に戦闘開始早々にイーゲルシュタインを失った右舷はひどく、集中砲火を浴びた部分は装甲の破損が外部からもはっきりと分かる。

「心配ありません、大佐」
ブリッジからリーが答える。
「戦艦にとってはMS搭載ビームライフルの十発や二十発など、どうということはありません。
 主砲回路、オールグリーン。まだいけますよ」

事実であった。
イーゲルシュタインのほぼ全てとミサイル発射官の約半分を潰されたものの、発射不可能となった主砲はいまだ一門もなかった。
驚くというより呆れるしかないような頑丈さだった。

「艦長、前方より新たなMS、数約十!」

オペレーターが報告する。ネオが顔をしかめた。
主砲こそ健在なものの、先ほどまでの戦闘でガーティー・ルーの対MS戦闘力は大きく低下している。
四機の艦載機は皆健在ではあるものの、いずれも損傷は受けており、エネルギー残量も気にかかり始めていた。
今度の敵を耐え切れる保障は、どこにもなかった。

「直進すれば五分で主砲の有効射程圏内に目標を捕らえられます」
「……わかった、直進しろ。敵はこっちで引き受ける。守りきるぞ、お前ら!」
リーの言葉を受けしばし考えてから、ネオは言う。三人が頷き、ガーティー・ルーを取り囲むようにして散った。
386付き人 19/21:2006/04/10(月) 20:24:22 ID:???

その後の五分の戦闘は、ある種異様とも言えるものだった。
四機の機体が、ジンを迎撃する。そこを潜り抜けたジンが、ガーティー・ルーを攻撃する。
ガーティー・ルーはそれを避けようともせずに、ただただまっすぐ進み続けた。
艦の旋回性能が上がりMSに対しても有効な回避行動が取れるようになったコズミック・イラ七〇年代とは思えない、
どちらかといえばアフター・クリスチャン一九〇〇年代中盤、太平洋で繰り広げられていそうな類の戦いだった。
瞬く間に、ガーティー・ルーには無数のビームが集中する。
機体を操る四人には、それを見て息を呑む暇さえ許されない。そんな暇があれば一機でも余計にジンを落とすべきだったし、
それより何より余所見などすれば自身が撃墜されかななかった。

艦体に多大な傷を負いながら、それでもガーティー・ルーは耐え抜いた。
第二、第三砲塔がビームで貫通され使い物にならなくはなったものの、班員の決死のダメコン作業によって
誘爆という最悪の事態だけは回避していた(ただしその引き換えに、第二砲塔付近に配属されたものはほぼ全員が死亡していた)。
主火力の75パーセントはいまだ健在であった。

「ゴッドフリート撃ち方用意」

直進を始めてから308秒後に、リーが命じる。

「目標、ユニウスセブン中央巨大推進器。よく狙えよ」
「狙わなくても外しっこありませんよ、あれだけでかい的だ」

リーの言葉に、管制官の一人が応じる。確かに、目標の大きさは通常の戦艦の優に三倍はあった。

「そうか。なら一発でも外したら、今月貴様は減棒処分だ」
「え……いやー、そいつはご勘弁」

管制官のおどけた声に、ブリッジで笑い声が起きる。程よく空気が緩んだところで、リーは改めて命じる。

「撃ち方、始め!」

射撃可能な一、四、五、六番砲塔が、それぞれ一門ずつ高エネルギー砲を放つ。
四つのエネルギー砲は、微かに歪んだ正方形を形作って推進器の前後に落ちる。
撃ち一発は推進器本体に命中し、推力を十パーセントほど低下させた。
いくら目標が大きいとはいえ、初弾から夾叉である。ブリッジに上がった歓声は、ジンの放ったビームの命中音をかき消した。

「第二射より、斉射に移る」

命じたリーの視線の先、ブリッジメインモニターでは、ガイアの突撃砲を浴びたジンが一機砕けて墜ちた。

387付き人 20/22:2006/04/10(月) 20:25:58 ID:???

「何、あれ……ユニウスセブンを砲撃してる?」
三機目のメテオブレーカーを打ち込んだマユが、顔を上げて言った。

「ルナマリアさん、あれって……」
「分からないわ。でもとにかく今は、作業を続けるわよ。アスランさん!」
「ああ、頼む!」

アスランが、運んできたメテオブレーカーをマユたちに向け放る。マユとルナマリアがそれを受け取り、二人で設置作業に入る。

「そろそろ、割れるはずなんだけど……」

抑えきれなくなった焦りをにじませながら、ルナマリアが言う。
ユニウスセブン中央で大きな爆発が起こったのは、その時だった。


ガーティー・ルーの放った第四斉射、内推進器に命中したのは四発だった。
撃ち一発は既に破壊されていた部分に当たり、何の影響ももたらさなかった。
二発は推進器本体を貫き、推力を低下させることで地球への到達までの時間を増やした。
だが、もっとも大きな効果を上げたのは推進剤予備タンクを貫いた最後の一発だった。
その一発は、タンクの中に入っていた推進剤を誘爆させる。そこから広がった爆炎は、ユニウスセブンの四分の一を覆った。
既にメテオブレーカーを打ち込まれ脆くなっていたユニウスは、爆発に耐え切れず己のみを三つに裂く。
内二つは爆発の衝撃で地球落下起動から離脱、だが残りの一つは落下を継続した。



三つに割れたユニウスを前に、ガーティー・ルーで歓声が上がる。が、それはすぐに声にならない悲鳴に変わった。
ガイアを振り切った一機のジンのライフルが、まっすぐブリッジに向けて構えられていた。

「面舵五〇度、アップトリウム四〇度」
リーが命じるが、長時間直進を続けていた艦はすぐには進路を変えられない。
「この、邪魔だー!!」
別のジンを撃破したステラが急いで艦の救援に向かうが、間に合いそうにない。
引き金を引かれたライフルは製造者の意図通りの働きを示し、高温のビームを発射する。
ブリッジ目掛け直進するビーム、それは命中した物質を溶解、爆発させた。
思わず目を閉じたガーティー・ルーの管制官が、恐る恐る目を開ける。途端に、新たな爆発が生じた。
二つ目の爆発はガイアの突撃砲を浴びたジンのもの、一つ目はそのジンのビームを防いだエグザスのガンバレルのものだった。

「スティング、ステラ、アウル、帰還しろ! リー、ミラージュコロイド展開、後宙域を離脱する!」
「は!」

額に浮かんだ冷や汗を拭ったリーは頷くと、ネオの指示を実行に移す。

四機が着艦すると同時に、ガーティー・ルーは姿を消す。
あとに残された数機のジンもしばらくあたりを旋回し、やがて散っていった。


388付き人 21/22:2006/04/10(月) 20:26:50 ID:???

三つに割れたユニウスを見て、ミネルバブリッジで歓声が上がる。が、艦長タリアは厳しい表情を崩さない。
割れたのは、いい。だがあれではまだまだ不十分だ。そしてMSによる破砕作業は、高度的にそろそろ限界となりつつあった。

「ルソーより発光信号……MSへの帰還命令です!」

メイリンの報告に、頷く。

「こっちも引き上げさせるわ、発光信号用意! それと、内火艇の発進準備を」

後ろを振り向き、そこにいた三人に言う。

「ユニウスセブンはあと少しで大気圏への突入を開始します。MSによる破砕作業は、もう切り上げねばなりません。
本艦はユニウスと共に大気圏に突入し、限界まで艦主砲による破砕作業を行います」
「そんなことが可能なのかね?」
「スペック上は。ただし当然危険は伴います。ですから、皆様にはルソーにお移りいただきます。
 幸いジン部隊はユニウスへ引き上げたようですので、本艦の内火艇でなら大気圏突入前に移乗できます」
「分かった、そうさせてもらおう」
「いや、私は残る」

タリアの説明を聞いて、プラントの代表は縦に、オーブの代表は横にその首を振った。
389付き人 22/22:2006/04/10(月) 20:28:14 ID:???

「代表?」
「アスランがまだ戻らない以上、私だけが移るわけにはいかない」

驚いた顔を見せたデュランダルに、カガリは答える。さらに、彼の後ろに控えていたミーアに問う。

「お前も、そうではないのか」
「……え?」
「友達なんだろう、あのマユという子」
「ええ、でも……」

話を振られるとは思っていなかったミーアが、慌てて目を白黒させる。

「ラクス」

前に立っていたデュランダルが、振り返って彼女の名を呼んだ。
呼びかけられて、何とか平静を取り戻す。デュランダルの顔を見て、微かに頷いて言う。

「友達です。でも、だからここにいる訳にはまいりません」
「なに?」
「マユは今自分にやれることをやっています。だったら私もやるべきことをしっかりやらなきゃ、あの子に叱られてしまいます」
「……そしてお前のやるべきことはここにいることではない、そういうことか?」
「はい」

カガリに頷き、ミーアはタリアのほうに向き直る。頭を下げて、言う。

「どうか、あの子のことをよろしくお願いいたします」
「お任せください」

タリアは、一部の隙もない敬礼でそれに応じた。

ミーアとデュランダルがブリッジから去り、カガリは彼等を黙って見送った。


ミネルバから内火艇が発進する。カガリが、タリアがそれを見つめる。
二人が向けた視線の先で、内火艇はルソーへと登っていく。

ルソーに内火艇が収納される。デュランダルが、ミーアがそこから見下ろす。
二人が向けた視線の先で、ミネルバはユニウスセブンと共に降下していく。

ミネルバから、発光信号が放たれる。MS隊に帰艦を命じるものだ。
同時に艦首タンホイザーの発射準備、降下シークエンスフェイズ1への移行を並行して行う。
ユニウスセブンをめぐっての彼等の戦いは、まだ、終わってはいない。
390付き人 23/22:2006/04/10(月) 20:35:55 ID:???

……改行ミスしすぎだ!

とりあえず、名有りキャラ多数登場(大半は顔見せ程度ですが)。誰がどれくらい活躍するかはまだ分かりません。
イザークを出張らせすぎた分、マユとサトー一味が目立たなくなってしまったかも……。
マユとミーアはここでしばらくお別れです。
391通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 20:46:37 ID:???
>>390
GJ!・・・なんだが、目に付いた間違いが一つ。
×ハイネンホース
○ハーネンフース
392通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 22:18:32 ID:???
ハイネン……
何か犬福風のハイネを想像しちゃった
393通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 00:13:20 ID:???
>>357って何なんだ?
皆口を揃えて最悪って言ってるから開くのが恐い…。
394通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 00:38:01 ID:???
>>393
>>1の真ん中辺りにヒントがある
新しい場所作った方がいいのかね
パスやらなんやらも全部無駄だよ・・・ったく
395通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 00:54:04 ID:???
まだいいでしょ
何事もなかったように流そう
目立たないようにしてさ
しかし、嫌がらせ級に空気読めない奴がいるもんだ
396通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 01:07:05 ID:???
見たくないならNGワード登録して2chブラウザ側であぼんすりゃいいのに
それもしないでスレ潰しや職人叩きしてる香具師は厨って事でFAだね。

さて隻腕さんI3さん付き人さんと来たら
今度はマユ種さんとPP戦記さんあたりが気になるわけだが。
397通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 01:07:38 ID:???
>>付き人
ガデムさーーん!!
今回も良かったです。
戦闘シーンが分かりやすくて、シーンを想像しやすくていいっす。
398通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 01:11:38 ID:???
399通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 01:12:25 ID:???
>>390 揚げ足を取るようで申し訳ないのだが
     微妙な間違いが多いな
400通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 01:34:37 ID:???
単発設定小話 「マスターピース」

〜プラント、MS開発施設〜
デュランダル「ふむ、これが新しいMSかね?」
技術者A「はい。条約ぎりぎりの範囲で許される限りの技術を盛り込んだMSです」
デュランダル「例のシステムは?」
技術者B「もちろん実装しております。・・・ぶっつけ本番になってしまいますが」
デュランダル「それは・・・しかたないな」
〜微笑を浮かべる議長〜
技術者A「しかし、うまく機能するでしょうか?このシステムは技術とか運動能力とかそういうものではなく・・・ある種の精神力がキィなりますからねぇ」
デュランダル「そこは彼女に期待しようじゃないか。そのための大事な人材なのだからね」
技術者A「しかし、本当にドラグーンはいらないので?」
デュランダル「ハハ。そんな無粋なもの・・・必要ないだろう。彼女は、まだまどろっこしいのは好きじゃなさそうだし」
女「その幼さが、その純粋さが、危うさが必要なのでしょう?エモーショナルシステムは?」
〜背後から声をかけられる議長〜
デュランダル「君はなかなかするどいな。・・・彼女にはあってみてくれたかな?」
女「はい。スタジオで挨拶させていただきました。・・・・・・あれこそ本物のラクス・クラインでわね」
デュランダル「フフン。別に、笑ってくれてもかまわんよ?」
女「まさかっ。ラクス様の護衛ができるなんて、まっこと身に余る光栄です。そんな笑うだなんて」
デュランダル「そうか・・・重要な役目だ。よろしく頼むよ?」
女「はい、謹んで承ります。・・・・・・ところで議長?」
デュランダル「なにかね?」
女「新型は2機のはずだったのでは?一つは彼、もう一つは彼女ですわよね?」
デュランダル「ん、ああ。左端のMSか。あれはねインパルスの最終形態だ。こっちのMSの元となったやつさ」
〜翼を持つMSを横目で見る議長〜
技術者B「これこそインパルスの究極のシルエットです。・・・開発が遅れましてね。実戦には間に合わなかったのでここで試験台として役立ってもらっているんです」
女「ふーん、じゃ使えないことはないってことかしら?」
技術者C「・・・そりゃ、まぁそうですが。しかしですなぁ、こいつはエネルギー消費率がとんでもないもんですから、なにがおこるかわからん実戦で使うにはリスクが高すぎて・・・」
デュランダル「そうだったな。まぁ、それもこっちの2台では解消されているし、よい試験台たったよ。そうだな、使えるタイミングがきたら君が使うといい」
女「・・・本当ですか?」
デュランダル「エネルギーの問題はそれまでに解決しておこう」
〜技術者Cへ目配せする議長〜
技術者C「は、了解いたしました」
デュランダル「頼むよ」
女「・・・機体名称はもう決まっているのですか?」
デュランダル「まあね。・・・ディスティニーという」

401通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 14:13:15 ID:???
>>付き人氏
GJ!
マユの一生懸命な新兵ぶりが(・∀・)イイ!!

でもミーアとが離ればなれに…
二人の掛け合いがもっと見たかった
402通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 16:36:14 ID:???
ボルテールなのかヴォルテールなのかウォルテールなのかはっきりしてくれ
403通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 08:21:41 ID:???
                        〃´ ̄ヽ  ギャア!
             〃´=―≡ ̄`:∵l 从ノハ )´‘  
          _  i .( ((≡―=', ノ_ノ>Д(::))ハ
        ,“≡ ) W ゜Д゜r⌒)  (ノ/ / ̄   ガスッ!
      ″∴≡く / ∧   | y'⌒ ) (⌒ヽ )) ) i _,,_
     ″″    \/i .( ((|  / ‖ | | Д゜ W(、_ =  ̄=∞
              W ゜Д ー' |    |ヾノ  ∧∨≡ ̄≡ ̄

                        〃´ ̄ヽ  イダイ!
             〃´=―≡ ̄`:∵l 从ノハ )´‘  
          _  i .( ((≡―=', ノ_ノ>Д(::))ハ
        ,“≡ ) W ゜Д゜r⌒)  (ノ/ / ̄   ガスッ!
      ″∴≡く / ∧   | y'⌒ ) (⌒ヽ )) ) i _,,_
     ″″    \/i .( ((|  / ‖ | | Д゜ W(、_ =  ̄=∞
              W ゜Д ー' |    |ヾノ  ∧∨≡ ̄≡ ̄

                       〃´ ̄ヽ  グハッ!
             〃´=―≡ ̄`:∵l 从ノハ )´‘  
          _  i .( ((≡―=', ノ_ノ゜Д(::))ハ
        ,“≡ ) W ゜Д゜r⌒)  (ノ/ / ̄   ガスッ!
      ″∴≡く / ∧   | y'⌒ ) (⌒ヽ )) ) i _,,_
     ″″    \/i .( ((|  / ‖ | | Д゜ W(、_ =  ̄=∞
              W ゜Д ー' |    |ヾノ  ∧∨≡ ̄≡ ̄

                       〃´ ̄ヽ  ………
             〃´=―≡ ̄`:∵l 从ノハ )´‘  
          _  i .( ((≡―=', ノ_ノ。Д(::))ハ
        ,“≡ ) W ゜Д゜r⌒)  (ノ/ / ̄  ̄   ガスッ!
      ″∴≡く / ∧   | y'⌒ ) (⌒ヽ )) ) i _,,_
     ″″    \/i .( ((|  / ‖ | | Д゜ W(、_ =  ̄=∞
              W ゜Д ー' |    |ヾノ  ∧∨≡ ̄≡
404通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 10:15:14 ID:???
未だにマユの正確な年齢がわからない
CE70か71で8歳だったったか?
誰か詳細知ってたらプリーズ
405通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 10:43:59 ID:???
>>404
CE71の時点で八歳ですよ。ただ、それはあくまで基準で、作品ごとに差異があったような…。
406通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 11:38:57 ID:???
d
参考になりました

となると各作品のマユの年齢は10歳かそれより少し上になるのか
407通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 12:14:07 ID:???
年少パイロットはプルプルツーとかウッソの例があるから
あえて年を上げる必要はないんだけどね

I&Iみたいに戦わない(乗らない)マユもいることだし
408通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 18:02:53 ID:???
>>407
いや、やっぱり必要はありますぜ。
民間人が成り行きでパイロットになる場合は気にならないけど
士官学校へ入学し、軍人になると考えたら流石にどうかなと思う。

…まぁ、コーディネーターは15歳で成人だし、そこらへんは寛容かもしれないのだけど。
409通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 18:24:58 ID:???
特殊なパイロットなら、プルやプルツーのように十歳でもOKな前例がありますね。
コズミックイラではブーステッドマンやエクステンデッドになりますか。
410通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 22:18:23 ID:???
単発設定小話 「その名はムウ・ラ・フラガ」

〜ブリッジ内に漂う沈黙の空気〜
ネオ「・・・で、アウルは取り乱してお休み中。ステラはガイアで飛び出したっきり戻ってこないと?」
リー「敵に捕らえられたものと思われます・・・大佐」
〜帽子を深くかぶりなおすリー〜
ネオ「スティングはどうした?」
リー「きゃつも一緒に寝てますよ」
ネオ「・・・う〜ん・・・・・・っち」
シン「ここでの戦力低下は痛いぜ、大佐。オーブなんざ数だけで役に立たないからな」
ネオ「わかってる。・・・リー。このあとの対処法は?」
リー「マニュアルどおり。アウル、スティング両名の記憶操作を実施し、ステラの記憶を消します」
ネオ「うん」
リー「・・・より強力な操作が必要になってくるでしょう」
〜椅子に深く座りなおすネオ〜
ネオ「ふー。ったく・・・あまり気がすすまないな」
シン「俺にできることはない、な?」
ネオ「ああ。お前に今できることはない。俺につきあって疲れたろ?お前ももう寝とけ」
シン「ふ〜ん・・・まぁいいや。アプレンティスをちょっとメンテしてから休ませてもらうよ」
〜軽い敬礼をして、ブリッジを退出するシン〜
ネオ「・・・リー」
リー「なんですかな?」
ネオ「ちょっといいか?」
〜ブリッジを出て、ブリーフィングルームに移動するネオとリー〜
ネオ「なぁ。あいつらをどう思ってる?」
リー「あいつらとは、少尉たちのことですか?」
ネオ「ああ・・・・・・」
リー「ぱっと見た限りでは少年兵。・・・実際はドラッグとマインドコントロールで強化された人間ですからな・・・・・・」
ネオ「ふむ」
リー「本音を言わせていただければ、人としてどうかとは思っていますよ。・・・しかし、私はこの、ファントムペインの一員であるという事実。それはブルーコスモスの意思を第一に考えてますからね。コーディネイターを消滅させることができるのであれば目をつぶります」
ネオ「・・・そうか。・・・・・・でもお前、シンがコーディネイターってことは知っているんだろう?」
〜瞬きをするリー〜
リー「・・・ふふ、バレていましたか?少尉がコーディネイターってことも存じております。毒をもって毒を制すですよ」
ネオ「使えるものは使いたい。終わったら捨てればいいからな・・・」
リー「そういうことです。・・・なんだか尋問されているようで落ち着きませんな」
ネオ「ん、ああ、悪い悪い。そんな気をないんだがな・・・」
リー「・・・・・・どうですか?ブルーコスモスに属するとはこういうことです。人として見損ないましたか?」
ネオ「いや、お前がまっとうだってことがよくわかったよ」
リー「それはよかった。まだ艦を離れないでよさそうですね。・・・大佐は・・・・・・」
ネオ「ああ、おかげさまで薄っすらと戻ってきたよ。でもな、今の俺はまだネオ・ロアノークさ」
リー「気持ちもお変わりありませんか?」
ネオ「・・・・・・どうかな?変化はあるんじゃないか?どうだった、リー?」
リー「・・・あなたは優秀だ。われわれにはあなたが必要です。しかし、今お話をさせていただいた限りでは・・・」
ネオ「・・・・・・」
〜天井へ顔を向け、リーは話を続ける〜
リー「ここはあなたの居場所ではないと思います。・・・あなたは戻るべきかもしれません。エンデュミオンの鷹、ムウ・ラ・フラガに・・・・・・」

ジョーが拾ってきた赤ん坊のことをマユは議長に相談した。
すると、なんでもよくナチュラルの女性がここの基地とのコーディネイターと恋仲になることは少なくないらしい。
そーすると妊娠してもどうしようもなくなり、子供を捨てると、言ったケースは珍しくないらしい。
しかし遺伝子照合で親がわかるかも知れないので、と議長に言われてマユ達が預かる事になったのだ。
まぁ、あれである。きっと皆赤ん坊が来たからのほほーんとしてるんだろうほのぼのの連中、とか諸君は思っただろう。
現実は、こうである。ハイネとアスランはフェイスの任務で留守中、その時の様子である。
「・・・今日はバーチ○ファイター?それとも○ストブロンクス?」
「・・・・・エアガイ○かファイティング○イパーズがいい。あ、やっぱギルテ○ギア。」
二人でテレビの前で格闘ゲームを並べながら話すのはマユとアウル。
この二人、普段ならこんなゲーム真っ青のケンカをするのだが、うるさくするとものっそい怒られる。
鎖でぐるぐる巻きにされてなおかつバズーカ連発&釘バットと金属バットで滅多打ち、ってくらい。
と、いうわけで。仲良く格闘ゲームで決着をつける二人であった。もちろん音はナシですよ?格闘ゲームなんてうるさいもの。
「しーんーはーろー、またお気に入りのサイトが潰されたー(泣)」
ズリズリとシンハロに這い寄ってきたのは混沌じゃなくてルナマリア。
『・・・・・どーよ♪』
ぼそっと呟くシンハロ。
「ほら、もっともっと!同じ声優なんだからもっと・・せっかくだから!!」
『だが、実の所ぉ何も感じてなどいないぃ・・・・。』
「ちーがーう!私は71じゃないのー!29なのー!」
シンハロの反応にルナマリアはじたばたする。するとアキラが話しかける。
「なぁなぁ、それより最近の鰤市のアニメひどくね?世界観めちゃくちゃだよなー。」
『あぁ、弓兵っぽいのとかモ○ラっぽいのとかな。』
「私はベーコンレタスならなんでもいいわ。」
今、この三人もいろいろと大変である。エロゲの話題禁止、伏字徹底、エロなんてもって他。
何故か個人の部屋にあった同人誌、PCゲームまで強制倉庫行き。規制がかなり激しくなったのだ。
おかげでアキラは性格不安定だわルナマリアが発狂するはシンハロはMS倉庫に一時期引きこもるわで大変だったりする。
だが、むしろこれのおかげで良い影響も出てたりする。
「あかちゃん・・・・v」
「小さいよなぁ・・・・・・。」
すやすやと寝ている赤ん坊を見ているのはステラとシン。この二人は赤ん坊に癒されている。
「ねぇ、男の子と女の子どっちがいい?」
「えっ?!・・・・・どっちかといえば男かな。」
向こうでハートを散らしているのはスティングとメイリンのバカップル。将来設計早すぎですよあんたら。
バカップル度の拍車がかかり放出しているラブラブオーラが通常の三倍である。
「・・・・・ふっ。」
そんな様子を見てレイは微笑む。こいつは生命を大切にするやつなのだ。
「あいつの親、見つかるかな・・・・。」
ジョーは心配そうに呟く。自分の境遇と、拾ってきた事からの責任感からかかなり気を使っている。
「大丈夫よ、きっと議長が尽力してくださってるんですから。」
グレイシアがジョーに答える。元々孤児院出身で赤ん坊の世話を見ていた彼女(仮)は主に赤ん坊の世話をしている人物だった。

ちなみに、そのころのネオのおっさん+α
「くっそー・・・。何だよ存在自体がセクハラだから立ち入り禁止って・・。キース!水割りもう一杯!」
ぐでーんとしながらバーカウンターにつっぷすムウことネオ。
バーカウンターの向こうではキースがグラスを拭いている。
「おきゃくさぁーん、その辺にしておいたほうが・・・・。」
流石にネオの飲んでいる量を見て不安になったのか、キースは止める。
が、ネオははーやーくーとか良いながらだんだんとグラスを叩きつける。
キースに頼まれて手伝いに来ていたゼロはその衝撃で倒れそうになった大量のボトルを押さえる。
「まぁまぁ、若い子ばっかだから仕方が無いよ。」
「ちっくしょー・・・・、あ、なんか記憶蘇ってきた。あ、なんかボインのねーちゃんが・・・。」
カルマが慰めるが、ネオはそれでも酒をやめない。しかもこんなことで記憶を取り戻しかけているのであった。
413通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 00:02:24 ID:???
単発とほのぼので同時に記憶取り戻しかけてるネオにワロタwwwww
414通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 16:25:18 ID:???
>>409
一瞬、SF色を濃くして「機体の方を特別に」してはどうかと(義手を介して脳神経直結操縦とか)
思ったが、明らかにやりすぎなので一時の妄想に留めておいた。
415通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 16:31:38 ID:???
>>414
実はすでに既出
416通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 17:11:47 ID:???
>>414
詳しく
417通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 20:10:30 ID:???
PP書いてる者です。
前回ディオキア編は、前編後編に分けると書きましたが、長くなりそうなので前・中・後編に分けます。
というわけで22話目投下します。ディオキア中篇です。
4181/16:2006/04/13(木) 20:11:43 ID:???
ディオキアに向かって延びる国道の、街に入る道の少し手前――
そこに設けられた仮設の検問所の前で、一台の大型トラックが足止めを食っている。
検問所に詰めている者達は、宇宙の異国から来たザフト兵。トラックを降りた青い髪の少年が彼らに応対する。

「これがユーラシア連邦政府発効の市民登録証と、俺たちの勤めている貿易会社の証書だよ」
「確認させてもらう。その間にトラックの荷を改めさせてもらうぞ。あと……所持品のチェックも」
「いいけど……何も積んでないよ? 荷を今から取りに行くわけだし」
「チェックはさせてもらう。荷を改めるのに、誰か一人立ち会って欲しい。そっちの茶色の髪! 一緒に来てくれ」

青い髪の少年の後ろにいた茶色の髪の青年は、ザフト兵士に連れられトラックの後部へ向かう。
その間、トラックに残された三人の男女は、ただ成り行きを見守っていた。

「なあ、ゲン。アウルとキラに任せて大丈夫なのか?」
「仕方がないだろう。こういうのは人当たりのいい人間に任せるのが無難だよ。アウルの指示に従うさ」
「俺が心配なのはキラだよ。あの人に上手くやれるのか?」
「この間まで一般市民だったキラは、普通にやれば大丈夫さ。俺やお前みたいな匂いはしないだろうからな」

トラックの運転席に座っている男二人、ゲン・アクサニスとスティング・オークレーは言いあう。
ほんの数分前まで、彼らは如何にしてザフトが設けた検問所を潜り抜けるか思案しあっていた。
ザフトの検問所で、連合の特殊部隊の隊員たちが臨検を受ける。事態は容易ではない。
予想していなかった事態ではないが、現実に直面すると流石に誰もが緊張する。

その最中、アウルが妙案を思いつき全員に指示を出した。
即ち、目付きの悪い男二人はサングラスを掛け寝たふりをし、人当たりの良さそうな二人が応対する。
紅一点の少女は、愛想良く運転席から手を振り、ザフトの兵士達に警戒されないよう努める……
これらがアウルの考えた作戦であった。この作戦はすぐさま実行に移されることとなる。
目付きの悪い二人は狸寝入り。ステラ・ルーシェはニコニコとザフト兵に微笑みかけ、兵士たちも応じている。
キラ・ヤマトはトラックの後方で空の荷台をザフト兵に見せる。その間彼はごく自然に振舞っていた。アウルも――

「一つ聞くが……何でお前等みたいな若いのが、こんな仕事をしている? 学校とかないのか?」
「俺たちの家は貧しいから、戦争で奨学金が止まって学業もストップ。戦争で飛行機が使えないから……」
「今は人手不足の運送業の仕事に就いた……か。大変だな、お前等も」
「ま、ユニウスセブンが落ちて来なければ、こんなことにはならなかった筈……なんだよね」

暇つぶしに一人の兵士がアウルに問う。その答えは予め用意されたものだが、最後の一言に兵士は俯く。
やがて……彼は気が咎めたのか、アウル達のトラックにそれ以上の詮索はせず、所持品検査も無しに検問を通された。
4192/16:2006/04/13(木) 20:12:40 ID:???
大型のトラックは、検問所を通るやスピードを上げる。勢い良く走り出したのは、緊張からの解放のためか。
運転をするアウルは、検問所を潜り抜けたことを誇らしげに語る。隣に座るスティングに向かって――

「ほら、上手くいったでしょ? こういうのは人当たりのいいヤツがやれば、大丈夫なのさ」
「けどよ、"目付きの悪い二人はサングラス掛けて寝ていろ"っていうのは……酷いぜ?」
「事実じゃん。二人とも目付き鋭いし。それに、堅気じゃない匂いがするんだよね」
「堅気じゃねえ……か。そりゃ、確かにそうだけどよ」

少し反論してみるスティング。そんな彼をアウルは華麗に往なす。
アウルの言葉どおり、スティングは少し目付きが鋭いところがあり、それは自身が自覚しているところでもあった。
しかし、サングラスを掛けているもう一人の男は……何やら運転席のミラーと睨めっこを始める。

「なぁ、俺はそんなに目付きが悪いか?」
「スティングほど鋭くないけど、柔和な顔には程遠いよ。自覚ないの?」
「………」

ゲンはその言葉に口を噤む。そして、無理やりに笑顔を鏡に向け、笑う練習を始めた。
その様は、傍から見るとぎこちなく滑稽に映り、キラを含めた男3人は苦笑し始める。
ただ、ステラ・ルーシェだけは閉口し、一言……

「ゲン……変な顔しないで」
「………」
「……その顔、気持ち悪い」
「……分かった。もう止める。もうしない」

ゲンの人当たりの良さそうな顔の訓練は、こうして終わった。
少女の言葉に、ゲンは俯き落ち込む。気持ち悪いとまで言われてしまったことに、彼はショックを受けた。
口数少ないステラは、最低限のことしか話さない。つまり、彼女としては口を出さずにいられない問題だったのだ。
ただ、最後に一言のフォローは添えられる。意味深な一言を――

「ゲンは……そのままでいて。その方が……好き」

ゲンはその言葉を聴き、少し戸惑う素振りを見せたものの、次の瞬間には何事もなかったかのような顔。
が、アウルとスティングはステラの言葉の意味を感じ取る。キラも言葉に込められた意を察するが……
それなのにゲンは、敢えて無視しているかのように、ステラの顔を見ようともしない。
他の男3人は、互いに顔を見合わせ少しゲンを睨みつけるが、それにも彼は何ら反応を示さなかった。
4203/16:2006/04/13(木) 20:13:28 ID:???
ファントムペインがディオキアの街に入った頃――
ザフト軍艦ミネルバでは、ルナマリア・ホークが艦内を歩いていた。彼女は日ごろの軍服姿ではなく私服。
今日から二日の休暇を与えられたミネルバのクルーは、それぞれに思い思いの休日を過ごす。
彼女も同僚のアスラン・ザラを捕まえ、街へ繰り出そうかと思っていたのだ。だが……

「アスランならまだ帰ってはいない。隊長と飲みに行ったらしいが、それ以降連絡はない」

彼の部屋に行ったところ、意中の人物は不在。代わりに同室のレイ・ザ・バレルが応じた。
前日の夕方からハイネ・ヴェステンフルスに連れられ酒を飲みに行ったらしいが、帰っていないという。
それならばと、ルナマリアはハイネの部屋に向かう。アスランの所在を聞くために――

ハイネの部屋は、艦長のタリア・グラディスや副長アーサー・トラインの部屋の近くにある。
階級のない軍隊ザフトにおいて、独立の指揮権限を有するフェイスのハイネは、相応の扱いを受けていた。
即ち、艦長クラスの待遇を、である。ハイネの部屋に辿り着いたルナマリアは、早速ブザーで呼び出した。

「隊長、アスランは……こちらにお邪魔していますか?」
「お、ルナマリアか? 調度良いところに来てくれた。コイツを……引き取ってくれないか?」
「……はい?」

部屋から顔を出したハイネは、すぐさま踵を返しルナマリアを部屋に引っ張り込む。そこで彼女が見たものは……
ベッドにうつ伏せになっている物体。物体は人間、性別は男。彼女の意中の人アスラン・ザラその人であった。
顔色も優れない彼は、何やら苦しそうに呻いている。

「あ、アスラン!? どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもない。昨日から酒を飲んでいたのだが……ご覧のとおりだ」
「二日酔い……ですか?」
「頭がガンガンいってるらしい。そいつを連れて行ってくれ。俺は上から呼ばれて、出かけなきゃならんのだ」

ルナマリアがゆすっても、アスランは反応しない。頑健なコーディネーターでも二日酔いになるらしい。
やむを得ず腕を取り、抱えようとしたが、思いのほかアスランは重く……おまけに酒臭かった。

「ホラ、アスラン! しっかりして下さいよぉ!」
「……うぅ」

折角の休日を意中の人物と過ごそうとした彼女の目論見は潰えた。この様子では暫く彼は動けないだろう。
ルナマリアは計画を諦めつつ、この意中の酔っ払いを無理やりにベッドから起こそうとした。その時……
4214/16:2006/04/13(木) 20:14:29 ID:???
「失礼します。こちらにアスラン・ザラがお邪魔していませんか?」

部屋の戸外から女の声が聞こえてくる。凛とした声には何やら上品さすら漂う。
何処の者だろうか? おそらくは自分と同じ考えで、ここに足を運んだ者に違いあるまい――
内心ムッとしつつ、ルナマリアは振り返る。彼女が見たものは、長い桃色の髪の、黒衣に身を包んだ少女……

「え? 嘘? ラクス? ラクス・クライン……さま?」
「……あら? 貴女が抱えているのは……アスランではありませんか?」

互いに疑問形で言いあう少女。ルナマリアが眼にしたのは、行方不明と言われていたラクス・クラインその人。
見れば、ハイネはラクスに直立不動の敬礼をしている。驚きつつ、ルナマリアも敬礼しようとするが……

ドサッ――

部屋に響く物音。ルナマリアの支えを失ったアスランが、ベッドに崩れ落ちたのだ。
動揺して意中の人をベッドに落っことしてしまった少女は、慌てて彼を抱き起こそうとする。
しかし、その行動は目の前の少女に遮られる。

「それには及びませんわ。タケダさん、お願いします」
「仕様のないお人やなぁ……ほれ、しっかりしいや! アスランはん! アンタの婚約者が来とるのに!!」

ラクスの後ろに控えていた怪しげな言葉の中年男が、指示に従いアスランを抱える。
その男の言葉にもアスランは無反応で、ただ抱えられるままに部屋の外へ連れ出される。

「では、アスランは私の方でお預かりしますわ」
「宜しいのですか? 式典の時間が間もなく迫っておりますが……」
「介抱はタケダに任せます。ハイネ隊長も準備を急いでください。私もすぐに参りますから」

ラクスは一方的に言う。ハイネもそれを咎めず、逆に彼女と何やら打ち合わせを始める。式典、準備……
蚊帳の外のルナマリアは、訳が分からず上官と少女の顔をしげしげと見つめた。それに気づいたハイネが応える。

「知っているとは思うが、この方はラクス様。間もなく、今度の戦争で散った者達の合同葬儀が、この地で始まる。
 俺は今日一日、フェイスとしてラクス様や議長の側につくことになる。このことは他言無用だ。いいな?」

上官も一方的。ラクスはお忍びで合同葬儀に出席するためこの地に来たらしい。
が、部下はまだ動揺から立ち直っておらず、それだけ聞き取るのに精一杯。議長の存在ですら、上の空であった。
4225/16:2006/04/13(木) 20:15:16 ID:???
その頃――
ディオキアに入ったファントムペインの一行は、休暇の前に一仕事を始めていた。
件の軍偵との連絡役である。軍偵との繋ぎはディオキアの運送会社の一角で行なわれる予定であった。
ゲンはトラックに仲間を残し、一人運送会社の事務室に足を踏み入れる。
事務室には壮年の髭を蓄えた男が一人。無愛想な顔をゲンに向け、何用かと目で問う。

「バイコヌールの支店から来ました。出物の積み込みを始めます」
「……何を持っていくつもりだ?」
「地中海と黒海で採れた海産物、カスピ海の物も。あとは……パンケーキ、箱で20個」
「……二階に上がれ。まずは、事務手続きをやってもらう」

ゲンがバイコヌール基地で指示された通りに自己紹介をし、注文の品を告げると……
無愛想な髭男は、彼を先導しつつ運送会社の二階オフィスへと上がる。合言葉はゲンの最後の言葉――
殺風景な二階オフィスに上がると、髭男はラジオにスイッチを入れる。
程なくスピーカーから、かなり大きな音が聞こえ始めた。地元のFM局の流すロックミュージック。
それを聞きながら、男はゲンに目で合図する。これは、盗聴防止のための手段であると――
この髭男こそが、連合の軍偵であったのだ。ゲンと男は互いに距離を狭め、軍偵の繋ぎの任務が始まった。

「夜間行軍だったのだろう? 遠くから済まないな」
「これが仕事です。で、今回こちらで何か変わったことは?」
「何もなければ良かったのだが……ちょっと拙いことになっている。こいつを見てくれ」

軍偵の髭男は、ゲンに小型のカメラを渡す。デジタルカメラに記録された映像を、彼はただ流し見る。
写真に写っていたのは、男達の写真――どれも中年以上の男で、彼らの身なりは見るからに上物だ。
訝しげな表情で、ゲンが髭男に視線を向ける。この写真の仔細を聞くために。

「最後の写真……そいつの顔を知っているか?」
「……? いいえ、知りませんが」

ゲンが最後まで写真を見たところ、最後のそれには白人の男が映っていた。
この写真を二日酔いのアスラン・ザラが見たらどうなるだろうか。恐らくは、直に二日酔いから醒めたに違いない。
写真に写っていたのは、昨日デュランダルと交渉していたユーラシア西側諸国の政治家、その人であった。
髭男は眉間に皺を寄せながら、写真に写っている男達のことを説明する。

「そいつは、フランスの外務次官だ。最初のヤツはドイツの野党の中心人物、俗に言う影の内閣の外相。
 ここ数日、他にもイタリアやオランダ、ベルギー……各国の大物の官僚や政治家がディオキア入りしている」
4236/16:2006/04/13(木) 20:16:06 ID:???
ゲンが髭男と密談をしていた頃、トラックに残された4人は……
こちらは、軍偵同士の緊張感に包まれた2人とは、まったく別次元の話題で盛り上がっていた。

「だからさ、ゲンはああいうヤツなの。ステラはアイツのこと気に入っている筈なのだけどね……」
「で、先輩に相談してみたって訳。ああいうヤツは、どうすりゃ良いと思います?」

アウルとスティングはキラを掴まえて相談していた。内容は先ほどのゲンについてである。
ステラの好意を示す発言を素通りした鈍感さ、あるいは朴念仁さとでも言おうか。
話を聞いていたキラは、本来他人の色恋などには興味を示さない青年ではあったが……

「流石に、さっきのは酷いとボクも思うよ」
「でしょ! ムスリム会議に2人で行ったときも何事もなかったみたいだし。どうなってんの?」
「俺に聞くなよ。大体ステラに手を出すと後が怖いって言ったの、お前だろ?」
「そりゃ……ゲンだって男だから。無理やりは良くないって、警告したつもりだぜ?」
「あの研究員半殺しにしたの、実はアウルだって教えとけば良かったかな……」

キラもゲンの態度には閉口していた。アウルもそれに同調するが、スティングが口を挟む。
ムスリム会議でゲンにステラに手を出すなと警告したのは、他ならぬアウルだった。
その日、ネオもゲンに警告した内容――以前ステラに猥褻な行為をしたエクステンデッドの研究員がいた事実。
彼の男はそれが原因で研究すらマトモに出来ない体にされたのだが、それをやったのもどうやらアウルらしい。

「だってさ、女性を無理やり……なんて、最低じゃない?」
「そりゃそうだが、上の人たちがもみ消してくれたから良かったものの、お前も下手すりゃ処分されていたぞ?」

アウルの凶行をステラの正当防衛にしてくれたのは、研究所の上役達。お陰でアウルは事なきを得たのだ。
しかし、それは過去の話。今は、ゲンについての話だ。脱線しかけた話は再び線路に戻る。

「でも、ステラはゲンのことを本当に好きなの? それを確認しておかなきゃ。ステラは……どうなの?」
「………」

キラの問いにも彼女は無言。だが、少しだけ頬を赤らめ、最後にコクリと頷いた。
アウルやスティングは、ステラ同様研究所出身なので色恋沙汰には縁がなかった。ステラとも兄妹のような関係。
困り果てた男2人は、懇願するようにキラを見つめる。
キラは彼らの事情は知らないが、二人が困っていることは察した。少し口元を歪め、青年は動き出す――

「要するに、ゲンを炊き付ければ良いんだね? 分かった。出来るだけ……やってみるよ」
4247/16:2006/04/13(木) 20:16:55 ID:???
「これでも出来るだけ調べはした。が、分かっているのはこれだけだ」

軍偵の髭男はゲンに知っている限りのことを話した。
ユーラシア西側諸国の要人がこのディオキアに集まり、何事かの会合を開いたに相違ない。
あるいはディオキアがザフトに占領されていることから、プラントと何らかの政治的会合があったのかもしれない。
が、ここ数日ディオキア周辺のガードが固く、調べられたのはここまで。確証は得られず、写真だけが残った。

「こいつを上に届けてくれれば良い。あとは、上が判断することだ」
「分かった。でも……この写真に写っている政治家どもは何を考えている? 寝返ろうって言うのか?」
「あるいはそうかもしれない。が、俺達は確たる証拠だけを上に報告するのが仕事だ。詮索は不要だ」
「でも、中央政府には、フランスやドイツ出身の連中もいるだろう? 情報が漏れたりする危険性はないのか?」

ユーラシアは巨大な連邦国家故、各国の出身者が中央政府に集っている筈である。
万が一このことが漏れれば、ゲンたち軍偵の活躍は無に帰すことになりかねない。その危惧をゲンは指摘する。
しかし、髭男はゲンの心配を笑い飛ばす。

「お前さん、大西洋連邦から派遣されたらしいが……なるほど、事情を知らんわけだ。
 この国の諜報網はフランスやドイツが牛耳っている訳じゃない。あくまでロシア共和国が握っている。
 かく言う俺もロシアから派遣されている。旧世紀から続くカーゲーベーの諜報網は今も健在。
 分かるか? ユーラシアは今でも西と東で微妙に温度差があるのさ」

ゲンの心配は杞憂。即ち、諜報組織はロシアの管轄下にあったのだ。
髭男の話では、今のユーラシア連邦の情報機関は、フランスやドイツの情報機関とは別系統らしい。
とはいえ、情報機関出身ではないゲンは知らぬ事実。相変わらず訝しげな彼に、髭男は問う。

「お前は大西洋連邦中央情報局の、マティスのところのヤツだろう? そんなことも知らなかったのか?」
「……俺の本職はMSパイロットだ。諜報戦に長けているわけじゃない。今日は手伝いで来ただけだ」
「お前、その歳で……前線に出ているのか」

髭男の顔は少し暗くなり……やがて、何を思ったのか、部屋の冷蔵庫から箱を取り出し、ゲンに渡した。

「パンケーキは品切れでね。代わりのブツだ。中身はキャビア。カスピ海で採れた上物だ。
 全部やるよ。美味い物の一つも食わないで死ぬなんて、気の毒だからな」

男の言葉は皮肉ではない。MS戦が主流になって久しい昨今、生存率が一番低い職業はMSパイロットであった。
逆に軍偵は、正体が露見しない限り生存率が高い職業――対象的な軍人から、ゲンは思わぬ贈り物を貰った。
4258/16:2006/04/13(木) 20:17:51 ID:???
ミネルバのレストルーム。アスランを誘い損ねたルナマリアは、一人ぽつんと佇んでいた。
折角一緒に休日を過ごそうと思った相手は、二日酔いでノックアウト状態。

「……この後、どうしろっていうのよ」

お目当ての男性は、当分正気を取戻しそうにない。
それに、ラクス・クライン御付の人間に介抱されていては、手の出しようがない。
かといって、予定が無くなったとはいえ、このまま一日を無為に過ごしてしまうのも気が引ける。

「そういえば、メイリンはマユと出かける……って言っていたわね」

一番身近な人間、妹のメイリン・ホークと同室者のマユ・アスカを思い出す。
メイリンは午前中でオペレーターの任務が終わり、フリーになる。そこで、彼女はマユと出かける予定を立てた。
ヨウラン・ケントとヴィーノ・デュプレも誘ったらしいが、二人は新規にミネルバに配属されたバビの調整で居残り。
仕方なく、女2人で街に繰り出すことになったと、妹がぼやいているのをルナマリアは覚えていた。

「……わたしも、二人に混ざろうかな……」

ルナマリアが呟いていた頃――
艦橋では、メイリンが暇そうに通信席に座り、ボーッと計器類を眺めていた。
緊急事態が発生しても、ここはザフトの基地。基地には守備隊もいるわけで、ミネルバが動くことはまずない。
その安心感からか、少女もすっかり寛いでいた。だが……突如、目の前のモニターがメッセージを告げる。

「……え? 嘘? 緊急入電?」
「メイリン、どうかしたの?」
「あ、はい。艦長、ジブラルタル基地よりの入電です。これは……」

メイリンが取り次いだのは、先日アビーが取り次いだ内容の続き。
即ち、オーブ軍関連の情報であった。空母を含めた艦隊がスエズ運河を通過後地中海の地球軍基地に入港。
が、ジブラルタル基地には向かっていないとのこと。この情報で、近隣ザフト基地に警鐘を鳴らしているのだろう。
ミネルバクルーのマユの母国であり、本来ならば中立国であったはずのオーブ。
しかし、ユニウスセブンの落下で状況が変わり――彼の国は、今は敵国。

「……そう。マユには辛いわね」

艦長のタリア・グラディスはメイリンからの報を聞き、声を落した。
4269/16:2006/04/13(木) 20:18:44 ID:???
「けど、これは一大事ですよ。小国とはいえモルゲンレーテの高い技術力を擁しています。戦うことになったら!」

副長のアーサー・トラインは、実直な軍人らしく警戒を強める。
オーブは中立国であり、コーディネーターとナチュラルが共存する稀有な国家であった。
逆に、コーディネーターとナチュラルが共存しているということは、コーディネーターの兵士もいるということ。

「オーブは先の大戦でいち早くMSの量産に成功しています。
 今では大気圏内戦闘を想定した空中戦用可変型MS、ムラサメを導入しているとか!
 MSパイロットもナチュラルだけじゃない。もし腕利きのコーディネーターと戦うことになったら……」
「落ち着きなさい。まだ決まったわけではないでしょう?」
「けど……マユの例もあります。どんな稀有なパイロットがオーブにはいることか……そう思いませんか?」

副官は、タリアとは真逆の心配をする。タリアは虚を突かれた。
マユ・アスカはオーブ出身のコーディネーター。彼女の戦果はザフトの中でも眼を見張るものがあった。
ザフトがMS戦で有利に戦局を進められるのは、コーディネートされた人物が人口の大半を占めるが故。
少数とはいえ、同等の能力と技術力を有するオーブのコーディネーターパイロットは脅威――
アーサーは、その意味で警鐘を鳴らしているのだ。

「ヤキンを戦い抜いたバリー・ホーとかいう軍人もいるし……やっかいですよ、これは!」
「彼はナチュラルではなかったかしら。何れにせよ厄介なことになりそうだけど、命令が下ればやるしかないわね」

オーブは少数とはいえ脅威。アーサーのような判断は、おそらく上層部もするであろう。
その際、精鋭部隊として鳴らしているミネルバが矢面に立つ可能性は高い。
艦橋の空気が一気に重苦しくなる。長く続く沈黙……

やがて、沈黙は一人の少女の声によって破られる。

「やっぱり……オーブと戦うんですか?」
「決まりじゃないけど、そうなる可能性は高い……って、ええええ!? マユ……き、君は、いつからそこに!?」

意外な声の主に驚き、慌てふためくアーサー。
彼が驚愕するのも無理はない。話に上っていたマユ・アスカが、何故か艦橋にいたのだ。

「……メイリンを迎えにと思って、来たんです。一緒に出かける約束をしていたから」

気づけば時刻は正午を回っていた。不幸なことに、一番聞いて欲しくない人物に情報は伝わってしまったのだ。
42710/16:2006/04/13(木) 20:20:22 ID:???
「――失礼しました」

ペコリと頭を下げるや、マユは走って艦橋を後にした。
慌てて口を塞いでいるアーサーをタリアが睨みつけるが、後の祭り。
マユにとっては、同胞と戦う可能性が一気に高まったのだ。

「アーサー……!」
「も、申し訳ありません! 以後、気をつけますッ!」
「……聞かれてしまった以上は仕方ないけど、ホントに頼むわ。気をつけて頂戴」

インパルスのパイロットを務めるマユ。
年齢は13歳であり、まだ正規兵の身分ですらないのだが、特例でテストパイロットに抜擢された。
が、その直後に開戦。タリアは年齢を理由にマユの除隊申請をしてきたが、未だに認められず……
オーブ出国直後の連合艦隊との戦いで、華々しい戦果を挙げてしまったことが仇となっていた。
『貴重な戦力故、除隊は認められない』――これが一貫した上層部からの回答であった。

「……こういうときは、どうすれば良いのかしらね?」

タリアは呟き、オーブと戦うこと以上に、除隊させようとて適わない状況に頭を抱える。
しかし、彼女も生粋の軍人であり、指揮官。今は戦時であり状況を嘆いているときではない。
今後のためにも、心に傷を負った部下に助け舟をだそうとする。マユの心のケアをするべく――

「メイリン! 貴女は今日マユと出かけるつもりだったの?」
「は、はいっ! ゆ、夕刻までには戻るつもりです。ダメ……ですか?」
「……別に咎めている訳じゃないわ。ゆっくりしてきなさい」
「……え?」

オペレーター席を立ち、マユを慮り追いかけようと席を立つメイリンを、タリアは呼び止める。
その声にメイリンは一瞬硬直するが……次にタリアは優しげな声で話しかける。

「今日一日、ゆっくりしてきなさい。多少の門限違反は認めます。楽しんでらっしゃい」
「……宜しいのですか?」
「こんな気の滅入る話ばかりじゃ、貴女も疲れるでしょうし、マユはもっとショックでしょうね。
 私はこれから戦死者の合同葬儀に行かなきゃいけないから……こんなことしか言えないの。マユを宜しくね」

タリアは軍人の顔ではなく――慈愛に満ちた顔でメイリンに向かう。
声を掛けられた少女も、笑顔でそれに応じた。
42811/16:2006/04/13(木) 20:21:13 ID:???
ディオキアの陽が高く登り、街を照らす。既に時刻は昼近くになっていた。
ゲンが繋ぎをつけたことで、ディオキアにいたユーラシア連邦軍偵との連絡役の仕事は終わった。
これで晴れて全員休暇の身。いよいよファントムペインとキラは休暇を楽しむことが出来るのだ。
敵地であるものの、彼らは通常ならば地球連合各国では軍属に満たない年齢。
その分ザフトの警戒も緩む。また、仮初とはいえユーラシア連邦政府発効の市民登録証もある。
怪しまれる可能性も少ないし、正体が露見する危険もほとんどなかった。

全員が休暇に入る――筈であった。しかし、ゲンはキラに呼び止められる。

「どうしても聞いてもらいたい話があるんだ。少し、2人だけで話せないかな?」
「……何の用だ? 他の3人には聞かれたくない話か?」

ゲンの問いに、無言でキラは頷く。ゲンは、恐らくはラクス・クライン絡みの話であろうと想像する。
キラがファントムペインと行動しているのは、かつてゲンがラクスを攫ったからに他ならない。
他の3人には内密に、事を荒立てずに彼女の安否を確かめたいのだろう。

トラックから離れ、倉庫街に向かったゲンとキラ――
人気ない場所で、キラがゲンに話し始める。しかし、キラの第一声は、ゲンの予想とは全く見当違いの話であった。

「ゲン、君はステラのことを……どう思っているの?」
「……は?」

てっきりラクスの状況や安否を聞かれるものと思い、答えを用意していたゲン。
が、予期せぬ問いに、ただ一言疑問形で返す他なかった。戸惑うゲンを尻目に、キラは話を続ける。

「さっきの、ステラの話を聞いていた?」
「……ああ、俺の顔が変だって話か」
「その後。君はあの言葉を聞いて何も応えなかったのは照れ隠し? それとも無視を決め込んだの?」
「……その問いに、どういう意味がある?」
「答えて。大事な話なんだ。君にとっても、ボクにとっても」

キラの言葉と彼の瞳には、有無を言わせない迫力があり……その迫力に気圧され、ゲンは仕方なく答える。

「……両方だよ。それが、一体どうしたっていうんだ?」
「そう……なら、問題だね」
「……一体、どういうつもりだ? 何が問題なんだ?」
42912/16:2006/04/13(木) 20:22:05 ID:???
キラの意味不明な質問に付き合わされているゲンは、少しだけ声を荒げ問い返す。
キラは相変わらず厳しい視線をゲンに向け、その真意を語り始めた。

「照れ隠しだけなら、君はただのムッツリ助平ということで済んだ。
 けれど、彼女を無視をする意図があったというなら、その理由を教えて欲しい」
「……おい、ムッツリって――」
「――答えて。これは重要な話なんだ」

何が重要なのか、ゲンにはさっぱり分からなかったが、またしてもキラに阻まれる。今度は強い口調で。
この訳の分からない会話をさっさと終わらせよう――そう思ったゲンは、渋々己の意図を明かす。

「……無視したのは、仕方が無いだろう。俺達は戦争をやっているんだ」
「戦争をしていれば、ステラの気持ちは無視して良いの?」
「軍隊で仲間内の恋愛が、認められるわけがないだろう。そんなことも知らないのか?」
「休暇中くらいは別でしょ? 今日くらいは良いじゃない? 何故無視するの?」

問いには問いを――キラの論法は手強く、ゲンは抗弁する機会すら失った。次第に話はキラのペースで進む。

「あのなぁ……俺達は軍人だ。それに、俺は冷徹な兵器であることを求められるソキウスだ」
「それは、この間聞いた」
「なら、分かるだろう? 戦闘以外の余計な感情はなるべく持たないようにする。これが俺のやり方だ」
「……君の立場は分かった。けれど、それならステラの気持ちは無視しても良いの?」

人は嫌な問いをされると顔を顰めるもの。ゲンもこの時顔を顰め、キラを少し睨む。
が、ゲンはサングラスを掛けており、目線もサングラス越しである。相手は全く意に介せず話し続ける。

「ステラは女の子だ。君よりもずっと繊細な。彼女の立場に立って考えたことがあるの?」
「………」
「好意を寄せる人から無視され、それで心が傷つかないと思うの?」
「……でも、それは――」
「思い当たるなら、君は態度を改めるべきだ。違う?」

ステラも軍人である――そうゲンは反論しようとしたが、キラに阻まれる。
が、同時に、以前別の相手とステラ絡みでやり取りを思い出し、反論の石を挫かれた。
かつてムスリム会議領に赴いたとき、その地の実力者である老人から言われた言葉を。
軍人であり冷徹な兵器であろうとするゲンが、その老人から突きつけられた、ある言葉を――
43013/16:2006/04/13(木) 20:22:58 ID:???
『あの少女はこれから先もずっと軍人として生きるのか?
 どこかで銃を置き普通の暮らしに戻ったとき、ただ殺し殺される世界にいたことが足しになるかね?』

ゲンは、嘗て言われた言葉を思い起こす。ステラは軍人であり、エクステンデッド。
故に、彼女は余計な感情は持つべきではない――そうゲンは思っていた。
しかし、老人から突きつけられた言葉はもう一つの現実を示しており、ゲンは反論する術を持たなかった。
兵器であろうとする男は、それを否定された記憶を辿り沈黙を続ける。

暫くの後、沈黙をキラが破る。ゲンの目の覚めるような話題を振ることで――

「君は、これだけ言ってもまだ分からないの?」
「………」
「……そう。仕方ないね。なら……ボクがステラと付き合うよ」
「……はぁ!?」

ゲンはキラの言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げる。
全く訳がわからない。前後の言葉と何の脈略もないことを、キラが宣言したのだから。
今度はゲンが強い口調で詰問する。

「ちょっと待て!」
「待たないよ。ボクがステラと付き合う。そう決めたんだ。ちょっと、彼女に話してくる」
「だから、待てよ! 何で話がそういう方向に行ってるんだ!?」
「……だって、可哀相じゃない。ステラは好きな男の子に振り向いてもらえない。
 相手がとっても優秀な軍人さんだから。君は酷いよね。なら、ボクが慰めてあげるしかないじゃないか」
「ちょっ……おま……」
「全部君の招いたことだよ。大体、君がラクスを攫うのが悪いんだ」
「……へ?」
「ボクとラクスがどんな関係だったか、大体察しはついている筈だ。なら、今ボクがどんな気持ちか分からない?」
「……いや、それは……!」
「ブルーコスモスの盟主って人の命令なのは分かっている。けど、ボクだって寂しいんだ。
 君もその片棒を担いだんだから、同罪だよ。……それじゃ、ちょっとステラと話してくるから」

言うや、キラはゲンを無視してスタスタと歩き出す。トラックで待っているステラの元へ――
あまりの展開に、ゲンは言葉を失いその場で立ち尽くす。ただ一言だけ、搾り出すように言うのがやっとであった。

「……ぜ、全部……俺が、悪いのかよ?」
43114/16:2006/04/13(木) 20:23:53 ID:???
少しずつ遠ざかるキラを見ながら、ゲンの心の奥底に奇妙な感情が芽生える。
まず、ゲンは想像力を働かせ……この後ディオキアの街で過ごすステラとキラの姿を思い浮かべる。
笑顔で話しかけるキラ、愉しそうにそれに応えるステラの図――

(……何か……嫌だな)

キラは、おそらくラクス・クラインと親しげな仲、あるいは男女の仲なのかもしれない。
ゲンと比べて、相当に恋愛スキルは上の筈だ。何しろ、ゲンにはシン・アスカであった頃の恋愛経験しかない。
思春期に入ってから思いを寄せる女子が居ないではなかったが、告白などしたこともされたこともない。
経験値ゼロ。悲しいかな、これがゲン・アクサニスの現実であった。
比べて、キラにはラクスという女性が居た。相手はプラントの歌姫とまで呼ばれた女性。
彼女の心を射止めたであろうキラ・ヤマトという男には、相応の恋愛スキルがあったことは想像に難くない。
少なくとも、現時点でステラの取り合いになって、ゲンが太刀打ちできる相手ではなかった。

(……拙い……拙いな)

想像力を働かせるゲンには、最早悪いイメージしか沸いて来なかった。
ディオキアの街は海の近くの観光スポット。それなりに夜ともなれば、相当にロマンチックな雰囲気を醸し出す。
ステラとて、そう恋愛経験があるわけではない。乙女心が、そんな雰囲気に触発されてしまえば……
最後にゲンに思いついたのは、夜の街に消える二人の図――

「――!! 冗談じゃないッ!!」

そこまで思いついて、思いは口に出てしまった。ゲンは直ぐにキラを追いかけ走り出す。
トラックへ向かう道すがら、そう遠く離れていないところにいたキラに、ゲンは直ぐに追いつく。

「き、キラ! 待ってくれ、俺が悪かったッ!」
「……そう。反省したの?」
「……した。しました。十二分に。ラクスの件も、彼女が無事アンタのところに戻れるように、盟主に計らいますから」

保証などなかった。ただ、ゲンにはロード・ジブリールが下手にラクスを殺すことはないという確信はあった。
何せ彼は、コーディネーターであり、ソキウスであるゲンを生かしているのだ。使える人間は殺しますまい。
少なくとも、ラクスが大人しくしている限り、彼女に害を為すことはないだろう――
ゲンの安請け合いではあったが、キラは最後の言葉に飛びっきりの笑顔を見せ、ゲンに言った。

「なら、ボクも何もしないよ。約束する。ただし……今日は、これからボクの言うことを聞いてもらうよ? いいね?」
43215/16:2006/04/13(木) 20:24:53 ID:???
暫くの後、トラックの中で奇妙なやり取りが始まった。ゲンとステラを外において、男3人。
顔を寄せ合った3人。やがて茶色の髪の青年が、緑と青の髪の少年に話しかける。

「作戦は終了。見事にターゲットを補足しました」
「……マジで? どうやって、あの朴念仁を説き伏せたの?」
「一体、先輩はどんな手を使ったんですか?」
「……ちょっと、人間が持っている感情の一つに訴えかけたの。やっぱり、ゲンも人の子だよ」
「何それ? どういう感情?」
「先輩、分かり易くお願いします」
「……嫉妬って感情かな。ちょっとゲンには気の毒だったけど。
 それに、何となく……いや、かなり自分が嫌な人間になっていた気がするんだけど……」

キラはゲンとのやり取りを掻い摘んで二人に聞かせた。ゲンがソキウス、コーディネーターであることは伏せて。
ゲンの朴念仁ぶりの理由と、それを打ち破ったキラの作戦を、少しだけ得意げにキラは語った。

「……凄え! 俺たちには出来ないことを、平然とやってのけるなんて!」
「流石です、先輩。で、この後はどういう作戦を?」
「本当は2人だけにしたいんだけど……そうも行かないみたい。外の二人を、見てご覧」

キラに指差され、外で待つ2人を見るアウルとスティング。ゲンはステラと二人きりになったものの……
ステラに何か話しかけようとして、話しかけられず。ちょっと口を開いたかと思えば、また沈黙して……
経験地ゼロの男などこんなもの――という醜態を晒していたのだ。
男3人は同時にガクリとうな垂れる。アウルは天を仰ぎ、スティングは嘆く仕草を見せ、キラに問う。

「ありゃあ、ダメだ。二人きりにしても意味ないぜ?」
「かと言って、俺らがいたんじゃ変に気を使わせちまう。先輩、どうします?」
「……ゲンは、あの様子だと女の子と遊んだりした経験が、殆どないみたいだ。皆無かも。重症だね。
 もうショック療法は使えないから、今度は短時間でレクチャーするしかないね」
「「レクチャー??」」
「これからお昼前後の時間をかけて、ボクからゲンにアドバイスしようと思う。
 その間2人はステラと一緒にいてもらって……夕方以降は2人きりにしよう。どうかな?」
「俺は賛成」
「俺もだ。どのみち俺らじゃ碌な策もない。先輩にお任せします」

2人の言葉にキラは力強く頷く。こうして作戦は始まった。オペレーション『ゲン・アクサニス改造計画』……
ゲンの知らぬところで偶発的に始まったこの計画は、ファントムペインとキラが展開する恋の大作戦――!
43316/16:2006/04/13(木) 20:26:02 ID:???
対照的に、こちらの女性の表情は暗い。ミネルバのレストルームに佇むルナマリア。
外出の準備は出来たものの、当初の計画から大幅な変更を余儀なくされたのだから。
暫くの後、レストルームにやってきたのは彼女の妹。妹を見るや、ルナマリアは告げる。

「メイリン、あのさ……私も今日一日、貴女とマユにつきあうことにしたわ。よろしくね」
「……ちょっと、お姉ちゃん! それどころじゃないの!!」

なにやらメイリンは息を切らせている。走ってきたのだろうか?
慌しげに姉に向かう少女も、すでに着替えは済ませており準備万端のはずなのだが……

「マユが……いないのよ! ここに来なかった!?」
「来てないわよ。私、ずーっと、ここに居たんだから」
「どうしよう……ねえ、お姉ちゃん、どうしよう!!」
「落ち着きなさい。一体、何があったの? 最初から、順を追って話なさい」

少し冷静さを取り戻した妹は、姉に事の次第を話し出す。纏めるとこうだ。
オーブと戦う可能性が一層高まったことを知ったマユ。ブリッジを後にした彼女は、その後の姿が見えないのだ。
当初メイリンとは、マユは自室にいるだろうと思っていた。
が、任務を終え自室で着替えたメイリンが向かった部屋に、マユはいなかった。
それからメイリンは、少女が行きそうな心当たりのある場所は全て探した。
食堂、更衣室、格納庫、コアスプレンダーの操縦席……そして、このレストルーム。

「でも、何処にもいないのよ!!」
「落ち着きなさい。艦の退出記録を見れば、外に出たかどうかすぐに分かるでしょ?」

休暇中とはいえ、外に出るクルーの数は把握しておくのが常。
ミネルバクルーは、所定の手続きをして外出する必要があるのだ。ルナマリアは艦内のPCでそれを調べる。
基地から外に出た人の記録を当たっていたのだが……

………いた。
マユ・アスカは既に一時間近く前に艦を後にしていたのだ。

「ちょっと! 大変じゃない! あんな小さな女の子一人で、見知らぬ街に出たなんて!!」
「お、お姉ちゃん、落ち着いて!」
「落ち着いていられないわ! 探しに行くわよ! ホラ、貴女も急いで!!」

強引に姉に手を引っ張られたメイリン。ホーク姉妹は慌ててミネルバを後にした。
こちらはマユ・アスカ捜索隊……とでも言おうか。

かくして、ファントムペインとミネルバのクルーは出会いのときを迎える。
やがて始まるは、長い戦闘叙事詩の中のほんの些細な邂逅劇。
434通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 20:27:39 ID:???
PP書いてる者です。

春だからムラムラして書いた。後悔はしていない。
春だからね、恋もしなくちゃ……というわけで婚約者ハンターキラ様登場。
「やめてよね」は、果たしてあるのか?



……で、ここから真面目な話を。
前回シャア議長と話していた人たちは、早い話がイタリアの選挙の話と同じです。
巨大連邦国家を維持するユーラシア政府は中道左派。議長と話していたのは中道右派連合。
フランスだけはもともと右派勢力がそれになりに強いはず……ということで政府の人間を。
他はてきとーに。影の内閣くらいの認識です。('A`)メンドクサイハナシダ

来週は少し真面目な話になる……筈。
435通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 20:43:22 ID:???
>>414
なにそのブーツホルツ

ファントムペインがゲンとステラくっつけ隊になってるとことか、
ルナマリア公認で床とキスシーンぶちかますアスランとか。
PP戦記とは思えん、GJw
(いや、いつものもGJだが)
436通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 20:47:28 ID:???
今まで政治の薀蓄が続いただけに、このスパイスは効くな。
(見たことはないが)富野作品であるターンAの日常パートもまったりだと聞くし、これはこれで良いのではなかろうか。
本当にPPなのかどうか、いまだに疑わしいがなw
437通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 21:24:57 ID:???
やっぱりあの時エチャに来てたのはあなただと心の中で認定wwwww
438通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 21:53:13 ID:???
               . -―- . 
             /       ヽ
          //         ', 
            | { _____  |
        (⌒ヽ7´        ``ヒニ¨ヽ
        ヽ、..二二二二二二二. -r‐''
        /´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {.  ヽ
         `r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ )  (  , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
         {(,| `'''7、,. 、 ⌒  |/ニY {               \
           ヾ|   ^'^ ′-、 ,ノr')リ  ,ゝ、ー`――-'- ∠,_  ノ
           |   「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
    , ヘー‐- 、 l  | /^''⌒|  | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
  -‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ  !‐}__,..ノ  || /-‐ヽ|   -イ,__,.>‐  ハ }
 ''"//ヽー、  ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿!  , -===- 、  }くー- ..._
  //^\  ヾ-、 :| ハ   ̄ / ノ |.  { {ハ.  V'二'二ソ  ノ| |    `ヽ
,ノ   ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<.  /  |.  ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/    <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ  \ `丶、  |、   \\'ー--‐''"//
\___,/|  !  ::::::l、  \  \| \   \ヽ   / ノ

             スティング         アウル
439通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 22:37:09 ID:???
PP作者様へ
投下お疲れ様です。
>>364の、設定どう思われますか?
無視ですか? それとも反映されますか?
440通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 22:58:43 ID:???
乙!
さすがPP戦記とキラさん!
俺達にできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!
441通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 23:00:55 ID:???
>434
こんな風に成長したキラを見たかったw
最高だぜ、この話のキラはああああああ

超GJ!
442479:2006/04/13(木) 23:32:35 ID:???
I and I and I今から投下します
443I and I and I(1/7):2006/04/13(木) 23:34:45 ID:???
それは突然のことだった。
何故?どうして?
そう問いかけても、起こってしまったことは、もう元には戻せない。
私は、ただ空を見上げていた。
そこにはわたしが知っている人がいて、ワタシの知らない人がいる。
側には、ワタシの大切な人達がいる。
アナタにも、きっと大切な人がいる。
大切な人がいるのに、誰かの大切な人を、誰かが消し去った。



〜I and I and I〜 第六話「ブレイク・ザ・ワールド」



騒動も一旦は落ち着きを見せる。
私服を着て変装した連合兵が、度々威圧に現れるらしい。
支援物資が見付かることはなかったが、見付かっていたら町は危なかっただろう。
中立とはいえオーブと、そして水面下では敵対しているプラントからの物資なのだから。
長居はできぬ状況に、マユ達は町を出ることにした。
「気を付けて」
「コニールもね」
差し出された左手をマユは握り、二人は堅い握手を交す。
先程のようなことが度々あるというのだから、不安がない方がおかしい。
笑って見送る側も、笑って出発する側も、内心では揺らいでいる。
「ワタシ、絶対また会いにくるね!」
444I and I and I(2/7):2006/04/13(木) 23:37:40 ID:???
「うん。待ってる!また来てくれた時も、絶対ここにいるから!」
発進するトラックの窓から身を乗り出し、マユはコニールに向けて手を振り続けた。
コニールはコニールで、必死にトラックを追いかけ続ける。
やがて、トラックはコニールの視界から消えてしまった。
トラックのミラーにも、もうコニールの姿は映らない。
ゆっくりと席に戻ると、マユは潤んだ瞳を拭う。
「出会いもあれば、別れもある。でも、生きてさえいれば、また会えるよ」
運転していたサイが、静かにマユにそう言った。
眼鏡のレンズ越しに映る彼の双眸は、どこか哀しげだった。
「俺はもう会えないから。君みたいに、見えるわけでもないし」
「サイさんも……誰か?」
恐る恐る質問するマユに、サイは苦笑しつつ、返答するために口を開く。
「ミリィがトールを、トールがミリィを好きだったみたいに。俺にもいたんだ」
「好きな人が…?」
「色々なことがあって、時には凄く遠くに感じて…でも、ずっと好きだった」
懐かしむようなその言葉は、やはり哀しげで、そして淋しげで。
それきり会話もなくなり、車内に静寂が訪れた。
未だサイの表情には、憂いが残っている。
445I and I and I(3/7):2006/04/13(木) 23:39:41 ID:???
そんな横顔を見て、マユは心配になった。

だが、声をかけていいものか迷う。
「あのさ…」
すると、サイが先に声を発した。
「俺の側に…いてくれてるのかな」
「えっ?」
「その、見えるかなって…」
ぼそぼそとサイが呟く。
狭い車内だけあって、そんな呟きもはっきりと耳に届いてしまった。
見えると、そう言ってあげたかった。
しかし、マユの瞳には何も映らなかった。
気休めでも見えると一言、言ってしまえばサイは救われるのだろうか。
沈黙と言う名の間を置いて、マユははっきりと首を横に振る。
「そっか。やっぱりな…」
「…ごめんなさい」
「ヴィアが謝ることじゃないよ」
人を好きになること、愛すること。
マユにはわからないが、大切な存在を亡くすことに対する恐怖は理解できる。
家族と仲が良かったのかも、親しい友人がいたのかも、今のマユは覚えていない。
だが、ヴィアとして生き、記憶に刻んだものもある。
ヴィアとして知り合った人々がいる。
その者達がいなくなることを想像すると、マユは恐くて仕方がなかった。

出会いもあれば別れもある。
サイが言ったように、またマユに別れが訪れた。
446I and I and I(4/7):2006/04/13(木) 23:42:41 ID:???
「それじゃ、あたし行くから」
スーツケースを片手に、ミリアリアは別れの言葉を告げる。
カズイ達と同行していた取材が一旦の区切りをみせ、別行動を取ることになったためだ。
捻った足は痛みも退き、たいぶ楽になってきている。
「ヴィア、色々とありがとう」
「そんな、ワタシは何も…」
「そんなことないよ。ヴィアのお陰で、吹っ切れたから」
マユの頬にキスを落とすと、ミリアリアはウインクして笑った。
「宇宙で何かあったらしいし…サイ、カズイ、しっかりヴィアのこと守りなさいよ!」
そして、サイとカズイの背中をバンッと叩くと、清々しい顔でミリアリアは去っていった。
「…さて、俺達はどうするか」
「オーブに戻る?行く予定だった支援先、もう全部行っちゃったわけだし」
サイとカズイが話し合う中、マユの携帯電話がメールを受信した。足長お兄さん。アフリカから、何度かやりとりは続いている。
447I and I and I(5/7):2006/04/13(木) 23:45:37 ID:???
『件名/大変みたいだよ
 本文/こんにちは、ヴィアちゃん。
 まだメディアには公開されてないけど、ユニウスセブンが地球落下軌道に入ってるらしい。
 ザフトがどうにかするようだけど、遠い宇宙にいる彼等を信用できるとも限らない。
 心配だから避難勧告が出たら、安全な場所へ避難してね。』
携帯電話を持つマユの手が硬直した。
そのメールの内容が真実であることが判明するまで、そう時間はかからない。
ユニウスセブンの破砕、その破片の落下。
いわゆるブレイク・ザ・ワールドまで、秒読み段階である。

「ヴィア、大丈夫か!?」
「は、はい!平気です!」
カズイに手を引かれ、マユは山の斜面を登っていた。
マユ達は津波から逃れようと、高い場所へと避難を急ぐ。
オーブに帰国する前に、マユ達はこの事件に遭遇してしまった。
メール到着からさほどかからず、ユニウスセブン落下のニュースは瞬く間に世界に広がった。
ザフトが破砕作業を行っているらしいが、それでもその巨大なプラントの一部は地球に落下しつつある。
地球からでも、落下してくるユニウスセブンの姿を確認できるところまできていた。
448I and I and I(6/7):2006/04/13(木) 23:48:05 ID:???
「…え?」
マユが驚いたような声を上げ、空を見上げた。
「どうした?…ヴィア?」
「声が…また、声が聞こえる」
「声?…まさか、あの時の!?」
苦しみ蹲るマユを見て、カズイは一度目の出来事を思い出す。
「ヴィア!」
呼んでも返事はなく、マユはがくがくと震えている。
カズイはマユを背負うと、また歩きだした。
今は、自分達が生き延びなければならない。
多数の人々が核に焼かれ、吹き飛ばされ、死亡したユニウスセブン。
それが今度は地球の人々を殺そうとしている。
そして、その時が遂に訪れた。
赤道を中心とした世界の各地に、破壊しきれなかったユニウスセブンの破片が衝突する。
「ああああぁあぁああぁぁぁあああぁ!!」
声にならない絶叫が、辺りに響き渡った。
焦点の定まらない瞳、滲む涙、半開きになった口。
マユの中に、大量の人の断末魔が流れて込んでいた。
今の今まで生きていたはずなのに、一瞬にして奪われた命の、嘆き、悲しみ、苦しみ。
その全てがマユの中に渦巻く。
激しく震え続けた後、マユは事切れたように気を失ってしまった。

幸いマユ達のいた場所の被害は微々たるものだった。
449I and I and I(7/7):2006/04/13(木) 23:49:51 ID:???
しかし、死傷者が出なかったというわけではない。
マユ達が助かったのは運が良かった、それだけなのだ。
ゆっくりと、マユが目を覚ます。
「あの…ここは?」
「あ、起きたのか。ここは飛行機の中さ」
「飛行機…?」
サイの言葉を、マユは今一度口の中に含む。
状況の整理に戸惑っていると、別の席に座っていたカズイが顔を出した。
「無理言って帰国させてもらったんだ。オーブのことも気になるし、それに…」
途中で、カズイは言葉を詰まらせる。
それを見かねてサイが話を続けた。
「結局は落ちたんだ、コーディネイターの作ったプラントが。
連合、というかブルーコスモスがプラントに対してどう動くか」
「…帰れる内にって感じかな。このまま戦争になんてなったら、たまったもんじゃないからさ」
戦渦の中に身を置き続けた者。
やむをえず戦争に巻き込まれ嫌々戦った者。
それぞれの意見だった。
壊された世界は、穏やかな日々の終わりを告げる。
だが、波乱を含んだ運命は、まだ始まったばかり。

450479:2006/04/13(木) 23:51:54 ID:???
次回より本格的に種死のストーリーに突入です
マユは果たして、いつシンと会えるのか

それでは、また
451通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 23:58:59 ID:???
GJ!
452通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 04:05:43 ID:???
サイせつな杉
コニたんとシンが出会ったとき、片腕の少女の話をするのでしょうか?
453通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 15:00:58 ID:???
>>PP作者氏
GJ!
久々にキラさんらしいキラを見た

>>479
彼女の魂は今も…?
テラセツナス
454通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 16:28:12 ID:???
>>438
こら。そこ。同じ事思ったからってAA貼らないw

それはともかく、PPらしからぬイベントが巻き起こりそうでひっじょーに楽しみでつ。
次回、後編をマテ!
というのはちと酷かなぁ……
455通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 21:46:39 ID:B13p7JuS
マユが行く!
456通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 22:03:15 ID:???
スレ復活したか
良かった良かった
457通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 22:24:57 ID:???
シンステ萌えだが
ゲンステは萌えないな
458通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 22:26:12 ID:???
確かに。だがステゲンは萌えるので問題ない。
459通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 22:27:14 ID:???
単発設定小話 「再戦」クレタ沖海戦@

〜再びぶつかり合うミネルバと連合・オーブ同盟軍〜
タリア「っちぃ!そんなにわたしたちが憎いのかしらね!?あちらの方々はっ!」
メイリン「全MS、配置につきました!」
タリア「・・・さぁ、ここが本当の正念場よ!開戦の合図はこちらからしてあげましょう。タンホイザー、連合旗艦ボギーワンに照準!」
アーサー「タンホイザー照準」
タリア「水面ぎりぎりに行くわよ。・・・タンホイザー撃てぇー!!」
〜ガーティ・ルーでは〜
ブリッジ兵A「・・・!敵艦、熱源反応!・・・・・・本艦に照準!」
リー「なっ!?・・・回避行動!」
〜回避行動移るガーティ・ルー、艦の横を陽電子砲がかすめていく〜
ネオ「・・・っくっくっく。敵はこちらよりもやる気まんまんだねぇ。・・・オーブ軍の状況は?」
ブリッジ兵A「オーブ軍、全MS配置完了しています!」
ネオ「よぉし。こちらもいくぞ。敵艦及び敵MSを殲滅せよっ!!」
〜MSデッキでは〜
スティング「おい、アウル!今度はへますんじゃねぇぞ!?」
アウル「ああっ!?なにいってんだ!僕がへまなんかするかよっての!」
〜勢いよく海上へ飛び出す、カオスとアビス〜
シン「・・・・・・一時だけなら展開できるよな?・・・・・・やられっぱなしってのは嫌だからな。・・・アプレンティス、行くぞ!」
〜カオス、アビスに遅れて発進するアプレンティス〜
〜一方のオーブ軍〜
ユウナ「ほらほら、なにやってんだよぉう!?出遅れたらまたボクがあいつに怒鳴られるじゃないか!」
アマギ「・・・っく・・・・・・」
トダカ「全艦、甲種戦闘態勢!敵艦はたった1隻だ!前回のような失態はするんじゃないぞ!!」
ユウナ「そうそう。さっすが一佐はよくわかってるじゃないの」
トダカ「(・・・・・・また現れるのだろうか?カガリ様は・・・・・・)」
〜その頃のアークエンジェル〜
ラクス「キラ・・・・・・無理はしてはなりませんよ?・・・・・・私にはまだ時期尚早な気がしてなりません・・・・・・」
キラ「・・・・・・ラクス。無理はしないよ・・・でもね、止めれるなら、止められるチャンスが少しでもあるならやらなきゃいけないと思うんだ」
ラクス「・・・・・・」
キラ「大丈夫。ボクはまた、ここに戻ってくるから・・・ね?」
〜フリーダムのコックピットにもぐりこむキラ〜
バルトフェルド「キラ、ガンバレルは無理やりひっつけたおまけだからな。しかも重力圏だ。重荷だと思ったらすぐにはずすんだぞ?」
キラ「バルトフェルドさん。わかっています。そう感じたらすぐに破棄しますよ」
バルトフェルド「ああ?いかんいかん、まったく。最近の若いやつはなんでも使い捨てだと思ってやがる・・・」
キラ「え・・・?」
バルトフェルド「そいつは艦長の思い出の一部なんだからな。外すのはかまわんが、後でちゃんと回収するんだぞ?」
〜ブリッジで二人の会話を聞いているマリュー〜
マリュー「・・・いいのよ。キラ君?回収なんて考えなくていいから、自分のやることに集中してね?」
キラ「わかりました。でも・・・やっぱりはずしたら後でちゃんと回収しておきますよ!・・・フリーダム、いきます!」
〜フリーダム、ルージュ、トラサメの順で発進する〜

〜そして、再び三つ巴の戦いが始まる〜

完  クレタ沖回線Aへ続く。。。
460通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 23:11:07 ID:???
PP書いてる者です。種☆関係のご質問があったので返信を。

>>439
お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、拙作でPPは第81独立機動”軍”です。
本編では”群”ですが、群という組織は他の組織を簡単に動かせるほどの権力を持っていません。
ですが、本編ではネオさんが30機のウィンダムを使ったり、J・Pジョーンズやボナパルトを貰ったりしてます。
どう考えても群の権力では余りある。だから、敢えて”軍”にしました。
佐官に軍は動かせませんが、形式的にネオの上に将官クラスのボスがいれば、ネオの命令=ボスの命令。
なら、軍所属にした方が格好が付く筈……と思っていました。

……全部無駄骨です。本当にありがとうございました。
ロゴスはあくまでPPのスポンサーで、実質は連合の特殊部隊だと思っていたのに;-;
というわけで、今度からPPは第81独立機動”群”に戻して、設定どおりにいきます。
”軍”表記の過去は、なかった事にしてください(´・ω・`)

>>437
絵チャットのことでしょうか? なら、それは私じゃありません。私は絵を描けませぬ故。

>>457
作者も全く萌えません。休暇なのでキャラにほのぼのさせたかっただけなのですが……
私の技量ではこれが限界。勘弁してやって下さいm(__)m
461通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 23:15:14 ID:???
>>459
大気圏内にガーティ、フリーダムにガンバレル……
何か凄いことになってますね。次回楽しみにしています。
462ほのぼのマユデス。いきるってこと。:2006/04/14(金) 23:33:24 ID:???
「レイにーちゃーん?」
マユがレイを探しながら歩いている。すると、向こうのほうからアスランがやってきた。
「レイのやつ、夕飯を食べ終わってからいないんだ・・。」
アスランも仕事の方で用事があるらしく、ずっとレイを探していたらしい。
「そういえばシンハロもいないんだけどなぁ・・・。」
マユの呟きに、ルナマリアのアホ毛が反応した。



『おーい、レイ。こんな所で何やってんだよ。』
ここは屋根の上。空にはぽっかり満月が浮かんでいる。
そんなところに、レイはいた。
「ここまで来たの、先生が初めてだよ。」
『家庭教師のトラ○っておい、ネタが古いな。』
突っ込みながらシンハロはレイの隣に座る。
「チャレン○なんてさー、真面目なやつしかやんないんだよ。そもそも。大体はやらないでやめちゃうんだよ。」
『聞いてないから。そもそもレイ、お前は真面目にやるタイプの人間じゃなかったのか?』
「あぁ、あんなのアカデミー入ってからのキャラ作りだ。ギルに言われてたんでな。」
そう言って愉快そうに笑うレイ。
『・・・・・お前さ、こんな所で何やってたんだよ。』
シンハロが聞くと、レイは月を見上げた。その手には薬の入ったケースが。
「・・・・・生きるってどう言うことか、考えていた。」
『生きてるってなんだろー♪』
「生きてるってなぁにー♪っておい!真面目に聞け!」
そう言ってどこからともなく出した金属バットでシンハロ思いっきり殴る。メカだから死にはしない。ガゴンと凄い音がした。
「この間、あの赤ん坊を見ながら、ジョーと二人で話したんだ。」
シンハロは頭を抱えながらもレイの話に耳を傾ける。
「ジョーが言ったんだ。育てる気が無いなら生まなきゃいいのにって。俺は、それに反論した。
どんな命だって生きてみなきゃ解からない、だから、この子は生まれてきて良かったんだって。そうしたら、ケンカしてしまった。」
レイは自分の手の中にある薬のケースを見つめる。
463ほのぼのマユデス。いきるってこと。:2006/04/14(金) 23:35:24 ID:???
「ジョーの言う事も解かる。あいつはこれまでの人生で俺の何百倍も苦労したんだ。
生きるのを諦めたこと、生きるのが嫌になったこと、数え切れないくらいあるんだろうと思う。
でも、あいつ今が楽しいのにどうしてそう言うこと言うんだろうな。
生きていれば、未来がある。なのに、あいつはどうしてそれが解からないんだろう?」
レイは言い終わるとまた月を見上げた。
『・・・・・レイ・・・・・。』
「お前は俺がクローンだって知ってるんだろう?だからこんなことが話せるんだ。・・・マユ達には、とてもじゃないけど言えない。」
シンハロはおもわず、いや、だって猫人間とか不老人間とか偽ラクス様とか腐女子とかエクステンドッドとか不可能を可能にする男とかいるからそれくらい暴露しても「ふーん」ですむ気がする、という突っ込みをしそうになった。
「さて、そろそろ戻るか。愚痴ってても仕方が無い。精一杯楽しむしかないんだよな、結局。」
そう言ってレイは腰を上げて、伸びをする。
『レイ。』
「ん?」
シンハロは座ったままレイに話しかける。
『・・・・絶対俺がどうにかしてやる。お前はあと六十年は生きてもらわなきゃ、マユの人生に問題がでてくるからな。』
少しおどけながら、しかししっかりとレイを見つめて話すシンハロ。
「・・・・・・あんまり、期待しないで待ってるぞ。」
レイはそう言って、屋根から自室のベランダへと降りた。



ーーーーーーーーーーーそのころのルナマリアン。
「あぁぁぁぁぁっ?!らめぇっ!せっかくのネタなのにぃぃぃ!シンハロの相手はアキラじゃなきゃ・・・・・・・。
でもアキラだと・・でもレイだとだめなのぉぉぉぉぉぉ!思いつかないぃぃぃぃ!!」
ぶつぶつ言いながら、時々奇声をあげつつルナマリアは次回の新刊のネームを考えていた。

464単発屋:2006/04/14(金) 23:38:46 ID:???
!今気づいた。
ラクスは宇宙にいってたんだった・・・・・・。
キラとラクスの会話はカットでお頼み申し上げます。。。。orz
465通常の名無しさんの3倍:2006/04/15(土) 03:28:08 ID:???
なんかイイ話を展開しているレイとシンハロを他所にミサクラ空間を展開するルナと
こんな時間にこのSSを読んで爆笑している自分とではどっちが駄目人間だろう。

そして単発屋さん、正直な話あの御方にとって空間的な距離なんか関係無さs(ry
466通常の名無しさんの3倍:2006/04/15(土) 15:39:33 ID:???
>>462-463
ええ話や…

しかしレイの性格は原形を留めてないな
467単発屋:2006/04/15(土) 19:34:31 ID:???
!遅れて思い出した。
虎も宇宙へいったんだった・・・・・・。
・・・・・・飲みながら書くとだめだな。。
以下のとおり、アークエンジェルの部分は差し替えします。

〜その頃のアークエンジェル〜
カガリ「今度こそオーブ軍を撤退させないとな・・・」
キラ「うん、そうだね。カガリならきっとできるよ・・・」
カガリ「・・・お前、本当にそんなふうに思ってるのか?できるわけないと思ってるんだろ!?」
キラ「・・・カガリ、僕は今でも君がオーブの代表だと思ってるんだよ。オーブ軍の中にも僕とおなじ気持ちの人が多いはずさ。・・・僕にはできないけど、カガリにはそれができるじゃないか!」
カガリ「・・・キラ・・・・・・そうか、そうだな。・・・うん、お前にはできないからな。私しかできないからな」
キラ「そうだね・・・・・・」
カガリ「よし。いくぞ!」
〜発進するルージュ〜
マリュー「キラ君、うまくカガリさんをのせたわね」
キラ「はい。それじゃ、僕も行かないと」
〜遅れて発進するフリーダム〜

以上、差し替え版でした。・・・・・あ〜あ、なにやってだ俺は・・・・・・。


468479:2006/04/15(土) 22:44:13 ID:???
これから投下します
469I and I and I(1/7):2006/04/15(土) 22:46:15 ID:???
世界はまた、あの日々に逆戻り。
でも、ワタシは変わらない。
前の戦争のことは知っている。でも、その戦争がわたしに何をしたかは知らない。
記憶と片腕、それ以外にも失ったものがあるのだろうか。
ワタシは何も覚えていない。何も思い出せない。
わたしの記憶は何処にあるんだろう。
わたしを知っている人は、どこにいるんだろう。
わたしのことなどどうでもいいと思っていたのに、時たまワタシはそんなことを考える。



〜I and I and I〜 第七話「誰が待っているのかもわからないのに」



ユニウスセブンの破片が各地に激突し、世界は慟哭に包まれた。
マユ達はなんとかオーブへと帰国を果たし、それぞれの家路へと急ぐ。
サイと別れ、マユとカズイはマルキオハウスへと向かった。
だが、マルキオハウスは、津波によって跡形もなく押し流されしまっていた。
「ヴィアちゃん!カズイ君!」
二人が呆然と立ち尽していると、カリダが駆け付ける。
「良かった、無事だったんですね」
「あなた達もね…それより、ヴィアちゃん!家族が見付かったわよ!」
喜びと驚きの入り混じった顔で、カリダが言った。
470I and I and I(2/7):2006/04/15(土) 22:48:32 ID:???
不幸中の幸いとでもいうのだろうか。
マユの手を握り、自分のことのように嬉しそうにするカリダ。
その報告を聞いて、マユはまた呆然と立ち尽してしまっていた。

翌日、マユは家族を知る人物に早速会うことになった。
保護者代わりのカズイも同行し、着いたのは行政府。
受付で事の説明をすると、話が行き届いていたのか、すんなりと一室へ通される。
二人が入室すると、そこにはオーブ軍の制服を着た男が待っていた。
「カズイ・バスカークです。この子がそのマユ・アスカ。今はヴィアと名乗らせています」
「…初めまして」
「初めまして、トダカだ」
カズイはカリダから、ヴィアではない、マユの詳細を聞いていた。
そしてこの男、トダカがマユの家族の行方を知っている。
「にわかには信じられんが…確かにあの時の少女かもしれん」
「あの時?」
「オノゴロで彼女の兄、シン・アスカを保護した時のことだ」
オノゴロ島山中での戦闘による爆発で、シンはただ一人助かった。
あの場で血塗れになっていた家族の内、生存者がいるとは信じられないことだろう。
「生きていたとすれば、生死の判断を確認しなかった私の失態だな」
471I and I and I(3/7):2006/04/15(土) 22:50:44 ID:???
溜め息混じりにトダカが言う。
その顔は、申し訳なさに包まれていた。
「それで、ヴィアのお兄さんの行方は?」
「プラントへの移住は私が勧めたが、その後はな…。もう二年、音信不通だよ」
苦笑しつつ、トダカはそう話す。
この時でもう既に二年の月日が流れてしまっているのだ。
生活圏を宇宙にまで伸ばしたこの時代、行方不明の人間を捜すことなど不可能に近い。
「ワタシ、プラントに行きます」
しかし、マユは強い口調で、そう言った。
「無謀だよ…プラントだって、何億という人が暮らしているんだ」
「それにこの世界情勢で、シャトルの手配が簡単にできるはずもない」
「それでも、ワタシは会いに行かなきゃならないんです!」
二人の言葉を振り払うように、マユが声を張り上げる。
室内に余韻が響く。
「会わなくちゃいけない…!!」
会いたい、ではなかった。
マユはある決意を秘め、大声を上げてまで主張する。
マユという名前を聞いても、自分の名前という実感が持てない。
自分の素性を知れば知るほど、マユという自分が自分でないように思える。
472I and I and I(4/7):2006/04/15(土) 22:52:33 ID:???
そんな中で家族に再会しても、その相手を家族と、実の兄だとわかるのだろうか。
マユの決意は、賭けでもあった。
兄と再会して、何も思い出せなかったら、もうマユを引きずるのはやめようと。
自然に記憶が戻るまで、ずっとこのままヴィアでいようと。
そう心に強く決めていた。

さほど長くかからず、マユはすぐにプラントへ向かえることになる。
マユ達が帰国して間もなく、カガリとアレックスことアスランは、ザフト艦にて帰国した。
そのアスランが、帰国して早々プラントに向かうというのだ。
カガリもアスランも、マユのことは知っている。
マユの兄がプラントにいるとなれば、同行させないわけにもいかない。
だが、マユの兄がマユ達のすぐ側にいるということは誰も知る由はない。
シンが軍人になったことを、トダカは知らない。
シンがオーブに入港したザフト艦に乗っているということを、マユ達は知らない。
マユの兄がシンだということを、アスランとカガリは知らない。
ともかくマユの兄がプラントにいる、ということだけをアスランとカガリは聞いていた。
知らないづくしの偶然の結果、近くにいるというのにプラントへと発つ。
473I and I and I(5/7):2006/04/15(土) 22:54:17 ID:???
「それじゃあ、行ってきます」
「本当に一人で大丈夫か?」
相変わらずカズイの心配症は続いていた。
しかし、ただの心配ではないということを、マユは気付いていた。
「もう、ワタシのために、自分のしたいことを犠牲にしないでください」
「え……」
「カズイさん、本当に今までありがとうございました。ワタシは、一人で平気です」
深く頭を下げ、マユは言った。
マユに対するカズイの過保護ぶりは出会った頃から変わっていない。
それが鬱陶しかったわけではない。
ただマユには、単に優しくしているだけではないと感じていた。
「ヴィアは…俺が守ってあげなくちゃって、ずっと思ってた」
重い口調で、カズイが言葉を綴る。
「戦いから逃げた俺ができることだから。俺がしなきゃいけないことだから」
そう自分に枷を付け、納得してきたのだろうか。
自分にあわないことを無理にする必要はない。
その逆にあわないことをする勇気も時には必要になる。
「ワタシだけを見なくて大丈夫です。カズイさんがしたいことは、ワタシを守ることじゃない」
しかし、カズイのしていることは、アークエンジェルに乗っていた時と同じである。
474I and I and I(6/7):2006/04/15(土) 22:56:34 ID:???
あわないことをする勇気も時には必要になる。
「ワタシだけを見なくて大丈夫です。カズイさんがしたいことは、ワタシを守ることじゃない」
しかし、カズイのしていることは、アークエンジェルに乗っていた時と同じである。嫌々ではないにしろ、本意ではない。
マユはそれがわかっていた。
だから、カズイの負担になりたくはなかった。
「カズイさんのしたいことは、世界のどこかで困っている人に、手を差し延べてあげることでしょう?」
カズイのしたいことは、マユを守ることではない。
マユのような戦災被害者に、手を貸すことだ。
それが、戦う代わりにしようと、カズイが決めたことだった。
そのことを、カズイは今更ながらに思い出す。
「…無理は、しないで」
いつか言ったセリフを、曖昧な笑みに混ぜて、カズイは呟いてみた。
「はいっ!」
そんな呟きをしっかり聞き取って、マユはいつものように笑顔で返す。
マユはプラントへ向かい、カズイはサイと共に被災した各地の復興支援に向かう。
それぞれの道を、それぞれの足で。

マユとアスランと、オーブから数名のスタッフが、シャトルに乗り込む。
475I and I and I(7/7):2006/04/15(土) 22:58:10 ID:???
「ヴィア、これまで君と一緒にいることは余りなかったが、これからはよろしく頼む」
「はい、アレックスさん。それとも、アスランさん…ですか?」
悪戯するようにマユは笑って、アスランに訊いてみた。
少し複雑な顔をして、
「…どっちでもいいよ」
とアスランは答える。
マユとヴィア。
アスランとアレックス
互いに二つの名と二つの顔を持つ者。
解決するのか、決別するのか、その答えを出そうとするマユ。
迷い、悩み、その答えを探すアスラン。
そこに何が待っているのかもわからないのに、何も待っていないかもしれないのに。
二人は焦り、そして急ぎ、行き着く先の答えを見付けようとしていた。

『件名/足長お兄さんへ
 本文/少しの間、メールが届かなもしれないところを行くことになりました。
 ワタシ、ずっといろんなことを考えてたんです。
 考えても、答えは出ないまま、曖昧なままだった。
 でも今度は、その答えが出るかもしれない。
 だから行ってきます。
 また帰ってくるその日まで、お元気で』

476479:2006/04/15(土) 23:00:21 ID:???
これにてカズイ達との旅の記録は終了です
前回と今回で一話にまとめるはずだったのですが長くなったので分けました
それとミリアリアの話、サイの話、カズイの話と区別しておきたかったのもあります
今回の投下が早いのはそのせいです

そして次回より新章に突入します
構想を練るため、投下期間が空くと思いますがマターリ待っていてください
至らないところばかりですが、これからもI and I and Iをご贔屓に
477通常の名無しさんの3倍:2006/04/15(土) 23:06:00 ID:???
乙。やはりと言うか、すれ違うか・・・
種死本編でスポットライトの当たっていなかったキャラが中心になる斬新な構成に、
もし当たっていたらこういうことをしていたんじゃないか、という説得力を持った内容だったと思う。

次はプラントの話か。
多分あの人とか出てくるのかな?とか思ったりもするが、今言うのは止めておこう。創作のジャマになるかもしれんし。
ゆっくり待っているから、自分のペースで投下してくれ。
478通常の名無しさんの3倍:2006/04/15(土) 23:08:31 ID:???
単発設定小話 「再見」クレタ沖海戦A

〜インパルス、セイバーと対峙するカオスとアビス〜
スティング「っは、アウル!トリコロールがそっちへいったぞ!」
アウル「了解了解っと。ずっと空を飛んでいられるもんかよ!ほらほら」
〜アビスの猛襲を受けるインパルスとセイバー〜
マユ「こいつ・・・なに?勢いが全然前と違うっ」
アスラン「マユ!止まっていると的になるだけだぞ!動き回るんだっ」
マユ「はい!」
アウル「ふふん。海だけと思ってるな!?」
〜海上へ飛び出し、ランスを振り回しインパルスに襲い掛かるアビス〜
マユ「・・・このっ!」

〜ミネルバの護衛を勤めるレイとルナマリア〜
ルナマリア「えーい!もう!数だけは多いんだからっ!」
レイ「ルナマリア。そっちにもう2機、ムラサメがいったぞ!」
ルナマリア「このっこのっ!なんでザクの飛行ウィザード積んでないのよっ!」
レイ「・・・文句が多いぞ」
ルナマリア「そりゃね、文句も多くなるってもんよ!こんなことしかできないなんてさっ」
〜ミネルバにたかるハエを落とし続けるザクウォーリアとザクファントム〜
〜その頃ハイネは〜
ハイネ「またお前か!・・・また海に落とされにきたのかよ!」
シン「まずはお前だ!お前だろ!お前が頭なんだな!?」
〜グフとアプレンティスが海上で大立ち回りを始める〜
ハイネ「はん。俺に接近戦で勝てると思ってるのかよ!甘いぜっ!」
シン「・・・こいつは強い。だがな、次は次はとはいつまでもいってらんないんだよっ!」
ハイネ「機動力は五分・・・。戦力はこっちがちょい上回ってるな。グレーのアストレイ・・・お前、本当にマユのアニキなのか?」
シン「はっ!・・・っち、スキを見せてくれないねぇー!」
〜大立ち回りを続けるグフとアプレンティス〜
〜それに気づくマユ〜
マユ「・・・!灰色のアストレイ!・・・・・ハイネ兄ちゃんと戦っているの!?」

〜混戦模様の戦場に再び参上、はた迷惑なお姫様〜
カガリ「オーブ軍!戦闘を直ちに停止せよっ!私はオーブ連合首長国代表首長、カガリ・ユラ・アスハである!!」
キラ「・・・・・・カガリ」
〜各々の反応〜
タリア「また現れたわね。全クルーに告げる。カガリ・ユラ・アスハと名乗る一味は敵と認定。障害であれば取り除きなさいっ!」
ネオ「・・・・・・また出てきたのか」
ユウナ「えぇー!もうカガリィ〜。いったい僕の邪魔をどれだけすれば気がすむんだよぉう!」
トダカ「・・・(カガリさま!)」
〜アビスと交戦中のインパルス〜
マユ「!・・・また会えたわね。・・・キラ・ヤマトーー!!・・・<シュパーン>・・・・・・あなた、邪魔よ!」
アウル「うっ!なんだいきなり早くなった。・・・見失った?どこだ?・・・どこ?」
スティング「アウルー!!後ろだっ!!!」
アウル「え・・・・・・?」
〜次の瞬間、アビスは胴体を真っ二つにされ海面に激突。・・・・・・爆散した〜

479通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 11:14:42 ID:???
今保管庫にあったマユ種第一章読んでるんだけど第10話でガイアがカガリを誘拐しようとしたところがちょっとわからない。
何でガイアがカガリを誘拐しようとするの?普通に不味くない?
480通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 17:25:42 ID:???
クーデター起こしたセイラン家が、ファントムペインに協力依頼したんじゃなかったっけ?
そのあとでもミネルバを襲ったネオたちの目的がユウナの依頼によるカガリの殺害になってたし。
481通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 20:06:36 ID:???
そういやもうすぐ新スレの季節じゃない?
ほのぼのとか、単発とかみたいな短編ものならともかく、長編は投下しにくいでしょ。容量的に。
482通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 20:10:34 ID:???
立てても構わないと思うけど前回みたいに容量が微妙な希ガス
483通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 20:17:20 ID:???
職人さんからリクエストがあったら建てるということにしません?
484通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 22:55:53 ID:???
大丈夫いまの容量なら、いけますよ。
485通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 23:14:10 ID:???
早く立てすぎてもロクなことないしな
486通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 23:19:57 ID:???
age
487通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 00:07:22 ID:???
単発設定小話 「再燃」クレタ沖海戦B

ハイネ「!マユがやったのか!?・・・ああ?フリーダムだと!?・・・・・・マユー!そいつは後回しだっ!!」
シン「はん!よそ見してんじゃねぇぞ!お前も沈んでしまえ!!・・・散会!!」
〜グフの背面を無数の『点』が捉え、一斉にビームを射出する〜
ハイネ「がっ!?背面からだと?・・・なんだ?なにが起こった!?・・・なにっ」
シン「海に沈むのはお前のほうなんだっ!沈めぇーー!」
ハイネ「くそっ。沈んでたまるかよ!俺にはまだ、やることが・・・ウィップが?・・・動け!!なぜ動かん!?」
〜グフを切り結び海に落とすアプレンティス〜
シン「これで終わりだっ!」
〜アプレンティスの周りに無数の『点』が配置され、グフに向けて一斉にビームが放たれた〜
ハイネ「ドラ・・・グーンだとっ?そうか、さっきのも・・・なぜここで使え・・・・・」
〜海面で爆散するグフ〜
シン「よしっ。借りは返したぜ。・・・次は・・・・・・インパルス!いや・・・フリーダム、お前だ!」
〜フリーダムに向かうアプレンティス〜

〜ミネルバ〜
メイリン「!!グフ、信号ロスト!・・・応答もありません!」
タリア「なんですって!?ハイネが?・・・・・・まずいわね。アスランであの娘が止めれるかしら」
〜ミネルバ艦橋に構えているルナマリア〜
ルナマリア「そんな、ハイネがやられるなんて!」
レイ「ルナマリア!感傷は終わってからしろっ!油断して敵を近づけるなよ」
ルナマリア「そ、そうね・・・。ところで、あの頭の悪いお姫様・・・・・・なんか自軍?の邪魔してるわね?」
レイ「ん、ああ。おかげでこっちは敵が減ってありがたいことだ!」
ルナマリア「レイ!そっちに3機、ムラサメいったわよ!」

〜カガリたち〜
カガリ「えーい、止まれ!オーブ軍!戦闘を停止せよ!!」
キラ「カガリ!そんなに前にでちゃ危ないよ!」
〜そこにインパルが迫る〜
マユ「・・・・・フリーダム!」
キラ「なっ・・・・・・速い!?・・・あれはアスランのMS?」
〜インパルスを追いかけてセイバーもフリーダムへ迫る〜
アスラン「キラ!カガリ!やめろ!!・・・マユ!お前の今倒すべき相手はそいつじゃない!」
マユ「今度こそ、やっつけてやる!えーいっ!!」
キラ「アスラン・・・・・・」
マユ「?わたしの後ろ?・・・なめてるの?こいつわたしじゃなくてアスランさんのほうを見ている?」
〜インパルスに追いついたセイバー〜
アスラン「マユ!お前は船を沈めろ!!こいつらは俺がなんとかする!」
マユ「なんとかってなんですか!アスランさんも私からこいつを、わたしの仇を取り上げるっていうんですかっ!」
アスラン「まだ時期じゃないっていっているんだ。ハイネがやられた!ミネルバを脱出させるにはインパルスの力が必要だっていってるんだ!」
マユ「・・・・・・っく〜。あー、、もうっ!!わかりましたよ!いいですか!?そいつはわたしの、わたしの獲物ですからね!」
〜インパルスを切り返し、海面へ戻るマユ〜

〜セイバーとフリーダムが邂逅すると同時にアプレンティスが追いついた〜
シン「はんっ!前回と同じ組み合わせだな!お前らにも借りを返しにきてやったぜ!」

完    クレタ沖海戦Cへ続く
488通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 02:56:30 ID:???
つまんんね
489通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 08:41:43 ID:???
つまんんねってwww
490通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 12:58:12 ID:???
TSUMANNNE
      ^
491通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 17:49:04 ID:???
>>488-490
寝る前と通勤途中、そして昼休みにわざわざ書き込むとは……
お前よっぽど暇だろ?
492通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 18:59:48 ID:???
スルーしろよw
493通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 20:15:47 ID:???
そうだな
一人ぼっちの>>490がかわいそうだもんな…
494ほのぼのマユデス。しあわせってこと。:2006/04/17(月) 22:40:28 ID:???
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
あの、赤ん坊の両親が見つかった。
母親はザフト兵士と恋人でその間に子供が出来てしまったが、相手は宇宙に配属されてしまった。
そして困った彼女は悩んだ挙句子供を捨ててしまったらしい。
しかし、その恋人は宇宙から連絡を受けて速攻で帰ってきて(ジンで大気圏突入
さて、赤ん坊がいなくなり、ちょっと寂しくなったマユデスメンバー。
皆それぞれにいつものペースを取り戻しているものの、たった一人だけ元気を取り戻していない奴がいた。
「おーい、ジョー?どうしたんだよ?」
今日は皆休みの日。普段ならいつも三人一緒に出かけている所なのだが、何故かジョーだけ居間でだらけているのだった。
「・・なんか全てにおいてやる気が出ないんだよ。ほっといてくれハイネ。」
そう言ってミーアから借りた聖○士聖矢に顔を向けるジョー。
普段のジョーは今まで苦労したせいか、実年齢よりはるかに大人びている、が。
何か一度大きな打撃を受けると一気に精神年齢がさがり子供じみてくる。
「よーしよーし、何があったかおにーさんに話しなさい。」
そう言ってハイネはジョーの頭ぐりぐりなでながら隣に座る。
すると、ジョーは視線はマンガに向けたまま、話し始めた。
「レイとケンカした。」
ぽつりと言った。
「俺がさあの赤ん坊を見て育てる気がないなら産まなきゃいいっていったんだ。
そしてら、レイのやつがキレて生まれてくれば未来がある、だからこの子は生まれてきてよかったんだって。
それ聞いてさ俺もキレた。だって未来があるなんて、ラッキーな奴らが言うセリフなんだよ。
俺が育った町は荒れてて、大体ガキなんて運が無い奴、世渡りできない奴はすぐに死ぬんだ。
たとえ出来ても、NJの影響で皆死んだ。俺はコーディネイターだから死ななかったけど。
それからザフトが町に基地を作って、俺はザフトに保護された。オフクロが残した母子手帳・・だっけ?あれがあったから。
全部結局運なんだよなぁ・・、たまたま俺がコーディネイターで、母子手帳を馬鹿みたいに持ってたからここにいる。」
淡々と、しかし饒舌にジョーは話す。
「あいつはプラントで育ったからわからないんだ。プラントは・・・正直気持ち悪い。
綺麗な世界すぎて嫌いだ。汚れた部分が無さ過ぎる。」
それを聞いたハイネはなんとなく共感する。確かに自分も初めてプラントに来た時はしばらく変な感じがずっとしていた。
アキラも数日間眠れなかったと言っていたし、マユも似たようなことを言っていた。
「まぁ、でもさぁ。レイにも色々あるわけよ、きっと。だから今度ちゃんとあやまっとけ。」
「・・・・・ん。」
ハイネの言葉に短くジョーは答える。
吐き出したら少し楽になったのか、その顔は少し先ほどより明るい。
ハイネはそれを見て少しホッとし、紅茶でも入れてやるかと立ち上がった。


------そのころのレイ。
『はい!と言うわけで執事カフェに予約したから行くぜーー!』
「それは本当ですかシンハロ?!えぇい執事というからには六十過ぎのナイスなセバスチャンでしょうね?!」
「いぇーい!執事カフェよー!!なんかドイツっぽい名前のロマンスグレーがいっぱいなのよね?!」
「何で俺今日この面子と一緒なんだー?!」
オタク三人衆に囲まれ執事カフェに連行されていた。
495通常の名無しさんの3倍:2006/04/18(火) 00:12:47 ID:???
>>494
執事カフェww 行ってみたい
出生だとかプラントの側面だとか重いものやっててもきっちりオチてますなww
496通常の名無しさんの3倍:2006/04/18(火) 16:45:45 ID:???
>>491-493
……俺の目には

>>488が「つまんね」と煽ろうとして「つまんんね」とタイプミス

>>489-490が間違いを嘲弄

の流れに見えたのだが……。
497通常の名無しさんの3倍:2006/04/18(火) 16:51:54 ID:AP/l23hr
>>496
俺も同じ事思っていたけどスルーしようぜ?
498通常の名無しさんの3倍:2006/04/18(火) 20:36:02 ID:???
つまんんんんね
499通常の名無しさんの3倍:2006/04/18(火) 21:47:59 ID:???
>>496
そんんなつまんないことどうでもいいじゃない
500通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 02:15:31 ID:???
ここは賑やかでいいな…
501通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 05:18:33 ID:???
>>488=>>491-493

傷口を自分で広げる好例だな
502通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 13:01:30 ID:???
不穏なふいんき(←何故か変換できない)だな…
もう次スレ立てた方がいいんじゃない?
503通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 18:19:29 ID:???
雰囲気(ふんいき)だよ
504通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 18:21:43 ID:???
ふいんきはデフォだよ
2ちゃん特有の釣りの一種
505通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 20:21:30 ID:???
もう廃れてるけどな
506通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 20:29:28 ID:???
だから釣られる
507通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 20:34:43 ID:???
なんか最近俺ニュータイプな厨多いね バカのくせに何を根拠にんなこと言ってるんだ?不思議で仕方ないんだが
508通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 20:52:00 ID:???
別に誰もνtypeきどっちゃいねーよw
509通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 21:03:08 ID:???
まとめのひともう次スレ立てちゃってください
510はまじ役熱演!猿ガキを宜しくお願いします!:2006/04/19(水) 21:17:46 ID:+MTYF4TJ
誰か猿ガキの行方知りませんか?
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1129685306/
511通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 23:07:43 ID:???
4スレぶりぐらいに来て見たんだが何時の間にかつまんんねスレになってますね
512通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 00:20:38 ID:???
ごめんね
513通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 00:55:56 ID:???
そこは

「ごめんんね」

じゃね?
514通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 01:31:27 ID:???
こんんなやり取りでスレ埋めるつもりかお前ら
515通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 19:03:42 ID:???
507 :通常の名無しさんの3倍 [sage493だけど] :2006/04/19(水) 20:34:43 ID:???
なんか最近俺ニュータイプな厨多いね バカのくせに何を根拠にんなこと言ってるんだ?不思議で仕方ないんだが


ワォ!
間違って煽った恥ずかしさのあまり自分を差し置いて他人をバカ呼ばわりですわ!
516通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 19:13:12 ID:???
>>515
おまいさんもまぁ落ち着けよ。
517通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 19:41:47 ID:???
hosyu
518通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 19:46:14 ID:???
保守んね
519ほのぼのマユデス。SEEDの代償。:2006/04/21(金) 21:25:55 ID:???
「失礼します。」
アスランは議長の執務室に入っていく。
他のメンバーは休みなのだが、アスラン、そしてラクスとして活動を続けているミーアは違った。
「やぁアスランくん。すまないね、せっかくの休みだったのに。」
議長は机の上の書類から目を離してにこやかに話す。
「いえ、それより議長。自分に用があると聞いてきたのですが・・・。」
敬礼をし、議長に話すアスラン。すると、議長は神妙な顔つきをして話を始めた。
「あぁ、これは君と・・・・ご友人、キラ・ヤマト君に関わる事だ。」
その途端、アスランの顔色が変わる。議長は話を続ける。
「前大戦の時、君たちはジャスティスとフリーダム、さらにミーティアを操りすばらしい戦果を上げた。
しかし、私は気になったのだよ。君たちは確かに強いがそれでも他のエースで何とかなるレベルだった。
だが突然ナチュラルも、コーディネーターでさえ越える力を発揮する。それは何故か?」
アスランは黙って議長の言葉を聴いている。
「それは、SEEDと呼ばれる因子によるものだ。昔、とある学者が発表したものでね。
何でもさらなる、進化した人類だそうだ。
だが、アスラン君。疑問に思わないか?あんな突然、なんの代償もなく超人になれるかどうか。」
その瞬間、アスランの表情が変わった。なんともいえない、驚きと不安が入り混じった表情。
「議長・・・!それは・・・!」
「私は、シンハロにあるシステムを組み込むよう指示した。『擬似SEEDシステム』というものだ。
一時的に普段の機能の数倍の処理能力やボディのリミッターをはずす事の出来るシステム。
520ほのぼのマユデス。SEEDの代償。:2006/04/21(金) 21:27:33 ID:???
その結果、今までシンハロは二度そのシステムを発動し結果膨大な負担が彼に掛かることが判明した。
これは君たちにも言えることだ。いくらなんでも体が、脳がついていけないのだよ。
数回の発動ならともかく、君たちはシンハロとは違い、メンテはできない。つまり負担をかけすぎた脳は
廃棄処分行きというわけだ。
アスラン君、君は今までの戦闘結果から見てどうやら平常のようだが・・・・・キラ君、フリーダムは君から見てどうかね?」
そういわれて、アスランは考え込む。
おそらく今まで自分とキラがSEEDと呼ばれる現象を起していたのは前大戦末期。
それも感情が高ぶった時だ。そして、あのフリーダムの戦いぶりからして・・・・。
「議長、キラは!あいつはどうなるんですか?!」
無意識のうちにアスランの声は大きくなる。そして、議長は彼に告げた。
「あくまで理論上の話だが・・・・思考能力の低下、性格の大幅な変化。さらに幼児化などの精神的な変化がまず来る。
しかも今まで得た技術や知識はまったく消えない。もし彼がこの通りになっているとしたら・・・・。」
うつむく議長。それを聞いていたアスランは絶句するしかなかった。
「だって議長!あいつは普通の奴なんです・・普通の・・!」
そう、確かにキラ・ヤマトは普通の学生だった。
普通に友達とバカな話題で盛り上がって、課題に文句を言って、宿題もなかなかやらなくて・・・。
だが、それを奪ったのは誰だ?彼から普通の生活を奪ったのは?

彼が彼であるための要素を全て奪ったのは誰だ?

「あ・・・・、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アスランの頭の中でぐるぐると色々なことが浮かぶ。
戦争のせいで、自分は悪くない。そう思うのは簡単だ。
だが、それでいいのか?間違いなく自分は人殺しでしかも大勢の民間人を巻き込んだ。
キラの他にも、ミリアリア、サイ、その恋人たち、その友達、アキラ。
自分はなのに、相手が優しいから甘えていたのでは?その責任から逃げていたのでは?
マユでさえ憎しみを受けることを自覚しているのに、自分は甘えていた?
遠くから声が聞こえる、でも、何を言っているのか解からない。


アスランは、そのまま倒れこんだ。
521通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 22:17:59 ID:???
おお、シリアスだ。
522通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 00:36:01 ID:???
いまだかつてないほどほのぼのの続きが気になる
523通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 07:50:35 ID:???
今更住人に媚びてシリアス路線で来られても。
524通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 08:20:29 ID:???
媚びてないし>>523は住人じゃないから問題ないよ
525通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 12:30:32 ID:???
いまさらって…ほのぼの氏は以前にもシリアスな話を書いてたじゃあないか
それにマイペースな人だから媚売るようなことはしないっしょw
526通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 13:10:17 ID:???
ギャグもシリアスも一切の躊躇無くごちゃ混ぜ。
それがほのぼのデスマユクオリティ。
ていうか議長がさりげなく酷いことを言っていて吹いた。
いや事実そのまんまだけどさw
527通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 20:37:22 ID:???
とりあえず、
嫌な雰囲気を絶ち切ったほのぼの氏に拍手。
528通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 22:09:49 ID:???
てか、あのキラの壊れ方に理屈つけてくれたのが嬉しい
単なるキャラヘイトの暴走じゃないって分かったし
529通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 23:56:51 ID:???
流れの豚切りはほのぼの氏のお家芸だからな
しのはら云々の時も躊躇わず投下
自分のアンチが騒いでても投下
思い切りの良さに清々しささえ感じる
530通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 01:12:30 ID:???
単発設定小話 「再演」クレタ沖海戦C

〜つばぜり合いを続けるセイバーとフリーダム〜
キラ「・・・・・・アスラン!・・・君はまだっ」
アスラン「キラ!なぜまた!・・・なぜ出てきた!
キラ「まだ・・・僕にもカガリにもやることがある。僕は、僕はカガリを助けたい。それでも君が、まだわからないというなら!」
〜フリーダムの背後からオレンジ色のポッドが現れる〜
キラ「できるなら撃ちたくない・・・アスラン。撃たせないで!」
〜そんなことを呟きつつも、セイバーに向けて乱射するガンバレル〜
アスラン「ガンバレルだと!?・・・光学兵器に改良までしているのかっ!」
キラ「避けた?・・・やっぱり重力下では・・・動きが遅い!」
アスラン「セイバーの機動力のほうが上だなっ!」
〜フリーダム本体に突進するセイバー〜
キラ「!?アスラン!後ろだっ!」
アスラン「!?・・・灰色のアストレイ!」
〜セイバーの背に向けてビームを放つアプレンティス〜
シン「借りはきっちりと利子つけて返してやるよっ!堕ちろっー!」
キラ「アスラン!どいて!」
〜セイバーをひらりとかわし、アプレンティスの正面に構えるフリーダム〜
シン「っは!わざわざ前に出てくるとはな!そうだ!赤い雑魚なんか後でいいっ!まずお前からだっ!」
キラ「・・・!?なに?このざらざらする感覚!・・・君は!?」
〜ガンバレルで応戦するフリーダム〜
シン「そんなものー!ドラグーンのできそこないなんかいまさら引っ張り出してくんなよなっ!」
〜アプレンティスは周囲に配置したドラグーンでフリーダムのガンバレルを撃ち落す〜
キラ「なっ!ガンバレルが!?」
〜そこに割り込むセイバー〜
アスラン「キラ!大丈夫かっ!?」
シン「雑魚が五月蝿いんだよっ!」
〜フリーダムを切りつけるつもりだったサーベルを、割り込んできたセイバーに振り落とす〜
アスラン「なっ!?」
シン「フンっ!だるまになって海底で座禅でも組んでろ!」
キラ「アスランー!!・・・・・・君はっ君は一体・・・<シュパーン>・・・このぉー!!」
シン「そうそう!本気になってくれなきゃな!スーパーコーディネイターさんよっ!?」
〜種割れしたキラと対等に渡り合うシン〜
〜ミネルバ〜
メイリン「セイバー、信号消失!」
タリア「アスランまでやられたっていうの!?アーサー!状況報告!」
アーサー「グフ、セイバー信号消失!ザクは2機とも本艦艦橋にてオーブ軍へ応戦。インパルスは手薄になっている敵艦隊に近づいています!」
タリア「アークエンジェルの影響はあまりわたしたちには関係なさそうね。あの灰色のアストレイのおかげかしら?」
〜ガーティ・ルー〜
ネオ「・・・シンのやつ!倒す相手が違うだろ!」
リー「しかし・・・オーブ軍のなんと非力なことか。大佐。このあたりで・・・」
ネオ「ああ!そうだな!?スティングはどうなってる?」
ブリッジ兵「カオス、インパルスと交戦中!押されています!」
ネオ「・・・潮時だな。・・・・・・リー、撤退だ。オーブ軍は・・・・・・ほっとけ」

完  ・・・クレタ沖海戦Dへつづく
531舞踏の人:2006/04/23(日) 21:41:54 ID:???
運命の舞踏12話投下開始します
532舞踏12話 1/13:2006/04/23(日) 21:44:19 ID:???

新設された月面都市『セレネ』へと向かう地球からの移民船団を突如襲った災厄。
プラント製の無人MS部隊による、非武装の移民船団に対する攻撃行為。
先の戦争によって生まれた戦争難民たちを乗せた船舶のうち、半数以上が大破するほどの被害。
――『セレネの悪夢』と。 マスコミによって名付けられたその衝撃的な事件は
パニック映画の如き凄惨な映像を伴って、瞬く間に世界中へ伝わっていった。

この事件に対し、特に反響が大きかったのは大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国やアフリカ共同体に属する地域だった。
セレネへの移民予定者の9割方は、ユーラシアや東アジア、アフリカからの難民や、大西洋連邦からの移住希望者。
プラントとの戦争に巻き込まれた難民たちが、新天地へ向かう道中にプラント製のMSに攻撃されたのだから
当然のように、それらの国ではプラントに対して敵対感情が一気に沸点寸前にまで高まった。

船団の中で生き残った船に乗っていた報道陣が撮影した、間近で繰り広げられる破壊行動の映像。
命無き襲撃者たちを鎮圧した、大西洋連邦軍がマスメディアへと提供した戦闘記録。
惜しみなく、次々と公表されていく情報がその気運を加速させつつあった。



『昨日、大西洋連邦軍はセレネ移民船団を襲撃したMSが、全てザフト製であった事実を公表しました』

『本事件における犠牲者は、現在までに85721人確認されていますが、今後も増え続ける模様です…』

『――当局のインタビューに対し、原因等については現在調査段階で、
 詳細の発表を控えるとのコメントをプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル氏は……』

長き年月を釉薬のように丹念に塗り重ねた、セピア調に統一された一室のサロン。
薄暗く照明落された室内の所々に点在する光源。 それらはホログラフ投影されたニュース画面だった。
チャンネル、言語、国家。 映し出されるニュースは全て異なるものだったが、ただ一つの点において統一されていた。
――それは報道されている内容。 番組で取り扱われているのは『セレネの悪夢』に関する情報ばかりだった。
533舞踏12話 2/13:2006/04/23(日) 21:45:43 ID:???

電子機械が紡ぐ様々な言語が飛び交う中、ひそやかな笑い声が方々から立てられる。
俗っぽい大笑いとは無縁の、上品さ漂う微笑を隣人と交し合う彼らは、礼服姿の男たち。
その大半は白頭であったり、あるいは髭を蓄えた老年の紳士だった。

「ははは、これは滑稽だな諸君。 デュランダルの若造の、あの狼狽振りときたら」
「ここまで上手くことが運ぶとは、少々心配にすらなってきますな」
「これはまた良いビジネスチャンスですな。 忙しくなる」
「…ジブリール、本当に見事な手並みだったよ」

報道される事件に対しての歓喜、そして賞賛の言葉を綴る彼ら。
すっかり上機嫌な様子の客人たちに対して、サロンの主人は席を立つと優雅に一礼した。

「皆様からお褒めに預かり、光栄の至りにございます」

マオカラースーツを纏う、30代前半ぐらいの年頃の男は、室内の人々へと晴れやかな笑顔を向ける。
ロード・ジブリールと呼ばれるかの男は、この館の主にして今回の集会を主宰した人物だった。
今、彼の胸中は実に爽快なものだった。 心地良い達成感と、人々からの賞賛を受けての喜びに満ちていた。
――それもそのはず。 彼こそが、皆の褒め称えるこの大事件を企てた仕掛け人だったのだから。



「三ヶ月前に君が、ザフトの言い逃れを許さない完璧な開戦理由を作ると宣言した時には、正直無理だと思っていたよ。
 戦争を厭うこの世情、各国からの反論を抑えることも出来るはずがないと思っていたが…上手くやったものだよ」
「一体、どのような奇術を使ったのやら。 …それともあれは本当にザフトの仕業なのかね?」
「その経緯については、仕掛けた当人に種明かししてもらいましょうか……それでは、頼んだよ」

促され、壁を背に立つジブリールの陰から静かに歩み出てきたのは、軍服姿の人物。

「彼の名はケイ・サマエル。 大西洋連邦軍に所属する将官です。
 この計画において私の右腕として、仕掛けの考案と実行を担当してもらいました。
 此度の成功は、彼の手腕によってなされたことです」
「ほう、かような若者が……」

紹介を受け、深く一礼した人物を見て、老人たちの間にざわめきが起こる。 皆、一様に驚きの表情で。
それは、今回の仕掛け人と紹介された人物が、二十歳にも届かないほどのうら若い青年だったことによるだろう。
軍人というには線の細い、優男風の彼を前に、人々は顔を見合わせ囁きを交わす。
自分へと向けられる奇異の視線を…ケイと呼ばれた青年は気にした様子もなく、説明を開始した。
534舞踏12話 3/13:2006/04/23(日) 21:46:57 ID:???

「まずは、セレネ移民船団を襲撃したプラント製のMS部隊について説明いたします。
 あれはザフト軍が開発を進めていた、無人兵器統括システム『レギオン』のトライアル機です。
 MSの運用を、パイロットの操縦ではなくAIによる操作によって行うことを目標としたシステムです。
 これにより、彼らは地球連合に対して人的資源で劣っている面を改善しようと試みていたのです」

マホガニー製のデスクの上に置かれたモバイルを片手で操作し、資料映像をホログラフで投影しながら
ケイは映像を注視する老人たちを見回しながら、言葉を続ける。

「これらの情報は、半年前にはプラントの内通者たちより入手していました。
 その事実を知った我々はレギオン開発部門へと工作員を派遣し、システムプログラムを入手。
 それを元に、レギオンシステムに介入し命令内容の改竄を行うウィルス『グレムリン』を開発しました」
「なるほど…それを使い、あの事態を引き起こしたと?」
「御明察です」

続く言葉を待たずに推論を口にした老人の一人へと視線を向けながら、ニコリと笑顔を見せる。

「完成したウィルスは工作員を仲介して、レギオン開発部に所属する旧ザラ派信望者へと提供しました。
 これでレギオンシステムの命令内容を、月周辺の連合哨戒艦隊への攻撃に書き換えられると伝えた上で…。
 彼らとて、こちらとの戦争の口実を作りたかったのです。
 その点では僕たちと彼らは、立場は違えども同志と言えましょうか」
「ははは、なるほど確かにな」

おどけたように語られた後半の内容に、人々の間から笑い声が立ち起こる。
その様子を横目に、ケイはモバイルのキーを叩き、新たな映像を映し出す。

「…そして、ウィルスはレギオンシステムの試験当日に、トライアル機の一機に侵入。
 感染はそこからホストシステムへと進み、統括ネットワークを介して無人MS全機へと広がります。
 ホストシステムを掌握したウィルスは、全体への命令を書き換えました…母艦と護衛部隊への攻撃と。
 万が一、ホストコンピューターを調べられ、ウィルスの存在を知られてはいけませんからね。
 ホストコンピューターを積んだ母艦と護衛部隊を殲滅後、
 レギオンはウィルスによって命令変更された際に追加された、もう一つの命令の実行に移ります」
535舞踏12話 4/13:2006/04/23(日) 21:48:23 ID:???

ここからは、誰もが見飽きるほど目にした映像。
大小様々、何百隻もの船舶が航行する最中に飛び込んでくる、ザフト製のMS部隊の姿。
装甲を近接武器で斬りつけ、あるいは行く手を阻み隣接する船と針路をぶつけ合わそうとする。
抵抗の術を持たない民間船へと襲いかかる、無慈悲な機械人形たちが行う殺戮風景だった。

「命令変更不可能な状況を作り、完全にウィルスの支配下に置かれたレギオンはデブリ帯に身を隠し、
 静止軌道上まで移動し、宇宙に打ち上げられて間もないセレネ移民船団を攻撃するという命令を実行します」

更に切り替わる映像。 今度は先ほどよりしばらく経った後の結末…
船の破壊に回ろうとする無人MSを行動を阻み、撃破していく黒いウィンダムやGタイプの姿が映される。

「…ある程度、地球全体が一致団結するほどの『怒り』に足るほどの成果が上がったあとは
 こちら側があらかじめ事件現場近くまで呼び寄せていた処理部隊…
 何も知らない、ただ正義と使命感のまま立ち向かう彼らによって、レギオンは全て大破されました。
 これによってホストコンピューターと無人機のOSに感染していたウィルスは跡形もなく隠滅されたことになります。
 もちろん、ウィルスを持ち込んだ工作員はこの時以前にプラントから退去し
 直接的に関わった旧ザラ派の人間も、母艦と共に藻屑と消えています。
 つまりは…プラントが我々の関与を突き止めることはまず不可能。
 たとえ世論に対して自らの潔白を訴えようとも不明瞭な点が多く、人々を納得させることは難しいでしょう」
 
そこまで語るとケイは室内の面々を見渡し、以上です、と説明を締めくくる。
途端、老人たちから沸き起こる拍手と賞賛の声。

「いやいや、実に面白い。 痛快じゃあないか!」
「見事な計画だな。 君には策士としての才能があるよ」
「まったくだ。 君のような有望な若者が軍にいるとは。我々も安心できる」

降り注ぐようにかけられる賞賛の言葉を受け、青年は流麗な仕草で一礼をし、応じた。
536舞踏12話 5/13:2006/04/23(日) 21:50:03 ID:???

「お褒めに預かり、光栄です。
 …しかし、こう上手くいったから良かったものですが、実際には危ない綱渡りな作戦でした。
 もし、レギオンのテストが延期されたり、ディスクの到着が間に合わなかったら元も子もなかったので。
 一応それを想定し、プランBとして隠密行動可能なミラージュコロイド搭載戦艦を用い
 前大戦で鹵獲したザフト製MS部隊を静止軌道上まで運び、同様に船団を攻撃する計画も用意しておきました。
 しかし、こちらの手段をとる事態にならなくて良かったです。 こちらの関与が露呈する可能性が高かったので…」

謙遜するように淡く笑みながら語っていたケイ。
破壊活動の映像を繰り返し再生するホログラフへちらりと視線を流すと、表情を硬質なものへと変える。

「それに、このような悪しき兵器が存在することを僕は許せませんでしたから。
 人間の手に頼らずに人殺しをする機械人形なんて、卑怯極まりないですからね。
 …自分たちの手を汚さずに、戦争をするようなものだと思います」
「確かにのう。 彼奴らの美徳を疑うわ」
「実用化されたりでもすれば厄介だったが、このような事になってしまっては、さすがに開発を続けはせんだろう」
「こんな危険なものを開発中だったと知れ渡れば…大衆の心は、宇宙のバケモノどもへの憎悪に染め上げられるだろうな」

青年の静かな熱弁に、老人らは深く頷き、あるいは互いに予想を交わす。
そんな中、ケイの横に立っていたジブリールは前へと進み出ると、一際高らかな声を上げる。

「そう、皆様の仰る通りでございます!
 この痛ましい事件は、地球人類を束ねる、この上なく強固な絆となることでしょう。
 そして、皆の思いを我々が導き、憎きコーディネーターたちを屈服させるのです!」

宣言するような彼の熱入った言葉に、周囲からは拍手が飛んできたが
所々に見える、少し呆れたような笑いの表情は、彼らとジブリールの温度差を示していた。



青年からの経緯の説明が終わったあと、集まった人々はこれからの具体的な方策について話し合いを始める。

「さて、開戦は皆望んでいることなのだが……問題は、最終的にどう落し所をつけるかだ」
「私としては先の大戦のようなことは望みませんな…ムルタ坊やの掲げたような、コーディネーター撲滅は。
 彼らが住んでいるプラントに関しても、我々は多くの投資をしてきました。 あまり傷つけたくはないですな」
「そうじゃな、一番得するのはなるべく無傷で取り返すことじゃ。
 あるいは、彼らを再び『理事会』で支配し、我々の支配下に置くことかの」
「邪悪な者たちとはいえ、有している技術力は魅力的ですからな…せっかくの宝の山、潰すのは惜しい」
「確かにの……ジブリール、お主の意見してはどうだ?」

卓に両肘を立てながら、それぞれの意見に頷いていた老紳士の一人が、近くの席につく主催者へと問う。
537舞踏12話 6/13:2006/04/23(日) 21:51:47 ID:???

「…私としては、彼らから歯向かう術を全て奪い、再び地球連合の主要国で管理すべきだと考えております。
 あくまで我らが滅ぼすべきは『プラント』という枠組みのみです。
 結束の拠り所をなくし、なおかつそれをなるべく余計な禍根を残さぬように行うのが最良かと思います。
 圧力をかけるよりも、丁重に飼いならした方が役立つ者たちだということは、皆様も既にご存知のことでしょう」

紫のルージュが彩る薄い唇をついと吊り上げながら、
ブルーコスモスの現盟主、ロード・ジブリールは己の意志を語った。


それは、以前のブルーコスモスが掲げてきた理念とは大きくかけ離れたものだった。

最初のコーディネーター、ジョージ・グレンが語った自らの出生の告白、
六十年ほど前に世界を揺るがしたその出来事以来、コーディネーター排斥運動の中心的な組織だったブルーコスモス。
彼らがずっと掲げてきたのは、遺伝子操作という邪悪な技術の完全なる抹消であり
ひいては、それによって生み出されたコーディネーターをも滅ぼすということだった…世界を清浄にするために。

『不浄』なる者たちを排除すべく、彼らは歴史の舞台上で絶え間なく活動し続けた。
圧力団体らしくデモ行進や集会、マスコミを通しての訴えかけといった真っ当なものから
コーディネーターを目標とした暴動、テロ行為……疑惑のかかっている事件を含め、非合法な活動まで。
はてや、軍の上層部にまで同志を持つ彼らは、プラントとの戦争にも深く関係していると言われている。
もっともそれは、誰もが知っていて口に出さないような、公然の秘密であったのだが。

現に、先のブルーコスモス盟主だったムルタ・アズラエルは民間人であるにも関わらず、
地球連合軍の戦艦に搭乗し、プラント破壊を目的とした核武装部隊ピースメーカー隊を、自ら指揮するほどだった。
…だが、最終的にプラントへの核攻撃はザフトと第三者の手によって阻止され、
アズラエルを筆頭とした、ブルーコスモス内の強硬派軍人たちの大半は戦火に散る結末となる。
これにより、強硬派と穏健派のパワーバランスに大きな変化が生じたブルーコスモスは
結成当初よりずっと掲げ続けてきた看板を、新しく書き換えることとなる。

それが、先ほど現盟主の語った内容。 
コーディネーターを『撲滅』するのではなく、『管理』するという方針。
これが、現在穏健派が強硬派を上回りつつあるブルーコスモスが、総意といった形で示した新たな世界の図であった。
538舞踏12話 7/13:2006/04/23(日) 21:53:24 ID:???

それを聞き、周囲にいた老人たちの大半は満足げな表情を浮かべたり、頷きで肯定の意を示す。
……もっとも、中にはジブリールを侮蔑の視線で睨みつけ、
苦虫を噛み潰したような顔で唸る『強硬派』の人物も、幾人かはいたのだが。

しかし、サロンに集う人々の間における長老格と思われる、見事な髭を蓄えた人物は席を立つと
ぐるりと全体を見渡し、その通りだ、とはっきりとした声で言った。

「わしもジブリールの考えを支持しよう。 …異存はないかね?」

意見を聞こうという姿勢を示しながら、老人は面々の顔を見渡す。
先ほどジブリールの言葉に不愉快な様子を示していた者へも視線を合わしたのだが、
相手は気まずそうに目を逸らし、黙り込んでいた。

おそらくは、賛同の雰囲気が優勢なこの場で異を唱えても、無力と悟ったのか。
あるいは、穏健派が掲げる軟弱な方針に不満を感じながらも、半分は自分たちの望みと一致するので一時的に妥協したか。

――どちらにせよ、プラントを屈服させるための戦争を再び起こすことには間違いないのだから。
このサロンに集う人々の共通の願い。 それは自分たちに巨万の富をもたらす、戦争を起こさせることだった。

「各々異論はない様子じゃな。
 では、我々『ロゴス』はプラント再植民地化を最終目的とした戦争を起こすプランを承認する。
 詳細な計画立案は任せたぞ、ジブリール」
「はっ、必ずや皆様のご期待に応え、彼らを屈服させてご覧にいれます」

長老格が伝えた決議に、ジブリールは恭しく頭を垂れ、そう答えた。
539舞踏12話 8/13:2006/04/23(日) 21:56:19 ID:???

会議が終了し、人口密度が一気に一割以下まで低下したサロンの中
屋敷の玄関側に面した窓際で、ジブリールとケイは眼下の庭を見下ろしながら、言葉を交わしていた。

「……はあ、退屈な集まりでしたね。 おじいさんたちのお茶会になんて、混ざるんじゃなかった」
「君からの説明が必要だったのだから、仕方ないではないか。
 それに君は気に入らなかったようだが、向こうは大層君のことを買っていたよ?
 そのうち、大企業や有名貴族の御令嬢との縁談が舞い込んでくるやもしれないな」
「嫌ですよ絶対。 僕には心に決めた娘がいるんですから」

クク、と愉快そうに喉鳴らしながらの男の言葉に、青年はあからさまにつまらなさそうな表情で顔を背ける。
…そんな彼らのやり取りを聞きつけて、家具の陰からするりと音もなく歩み出てきた黒い姿。
一目散に足元へと駆け寄って、うなぁんと鳴いた黒猫を抱き上げると、ケイは再び口を開いた。

「しかし、こうもあっさりと開戦が決まるとは思いませんでした。
 あの人たち、国家や大企業の偉い人ばかりなんでしょう?
 自分の周りにも戦火が及ぶかもしれないとか、想像しないんでしょうか」
「直接自分の頭上に砲弾が落ちてくるか、あるいは自分の金庫が燃やされない限りは他人事のようなものだよ。
 それ以上に、多大なビジネスチャンスを与えてくれるのだからな。戦争結構、大歓迎…というわけさ」

後ろ手を組みながら窓辺に立つジブリールは、眼下に望む庭園の小道を歩く先ほどの老人たちへ
まるで醜いものでも見るような蔑みの眼差しを向けていた。
彼の言葉を受け、ケイもまた眉をひそめて不快そうな表情を浮かべる。

「……貴方も、その中の一人ですよね。ジブリールさん」
「ああ、そうだな。 …だが私は彼らとは違うよ。金勘定などにはさほど興味はない。
 それよりももっと重要なことがある…何としてでも果たしたい目標があるのだよ」
「コーディネーターの完全な管理、ですか?」
「その通りだ。 我が物顔で宇宙にいる、あのミュータントたちを上手く飼い殺すことが私の理想だ。
 歯向かうための牙を全て抜き、ナチュラルからの抑圧から保護すると見せかけて自由のない籠に閉じ込める。
 今度こそ、地球連合による完璧な管理体制を確立させるのだよ。 恐怖と抑圧に頼らない支配をな…」
「それを聞いて安心しました。
 ジブリールさんもあの人たちみたいに自分の商売しか考えない人だったら、ちょっと失望したでしょうね」

その顔に強い自信と、自らの考えに対する誇らしさをあらわにしながら語るジブリールの横顔を
腕の中でくつろぐ黒猫の喉を撫でつつ眺めていたケイは、眉目を緩めてにこりと笑顔を見せた。
540舞踏12話 9/13:2006/04/23(日) 21:57:55 ID:???

「ケイ。 我々はもっと柔軟であるべきなのだよ。
 ただ一つ、高潔な正義を掲げ、それを成すために邪魔なもの全てを否定し、なぎ払うだけだった昔のやり方では駄目だ。
 利用できるものは全て利用する。しかしただ馬車馬のように働かせ、使い捨てるような扱いでは組織に亀裂が生じる。
 彼らのように利潤のためだけに戦争を求める商売人だろうが、支配対象であるコーディネーターだろうがそれは一緒のこと」
「……『黒き鉄風』のように、ですか?」
「それだけじゃあないさ。 今回の作戦を裏から支えた功労者…対プラントの工作員たちもだ。
 かつてザフト軍であった彼らだからこそ、プラントの懐奥深くまで潜入することが出来た。
 彼らからもたらされた多くの有益な情報があったからこそ、我らは有利な状況で開戦にこぎつけられるのだよ」

――前大戦末期、自ら戦線に赴き軍を主導していた前盟主ムルタ・アズラエルと多くの強硬派たちが戦死した後。
強硬派に属する上級軍人、主要幹部を失い、ブルーコスモス内部は大いに混乱した。
戦争集結直後の不安定な時期に降りかかった危機的状況を打開すべく、後任として据えられたのがジブリール。
新たな盟主となった彼は、安定を失った組織内に大きな改革の風を起こす。

彼は前盟主が掲げていた理念…コーディネーターの殲滅を良しとせず
プラントの再植民地化、及びナチュラルによるコーディネーターの管理を主張する穏健派と手を組んだ。

そして、安定した地盤を手に入れたジブリールが次に実行したのは、地球にいるコーディネーターへの対策。
元々、一部の穏健派の手によって地球に残るコーディネーターやそのハーフの少数は、安全な場所に保護されていた。
彼らの中にはブルーコスモスの穏健派の動きに賛同し、軍人や技術職として従事する者が多くいた。

自分たちを迫害から救った穏健派に対する厚い忠義、そして類ない能力を発揮する彼らの存在を知ったジブリールは
同様に、地球で迫害から逃れながらひっそりと暮らすコーディネーターを探し出し、話をもちかける。
彼が目をつけたのは、ザフトから離脱した元駐留兵……地球で暮らす道を選んだ脱走兵だった。
541舞踏12話 10/13:2006/04/23(日) 22:02:50 ID:???

ユーラシア西部、オーストラリア、アフリカといったザフトの占領下にあった地域では
基地に駐留するザフト兵とナチュラルの現地人が恋仲となり、ハーフの子どもをもうけることも、そう珍しくはなかった。
しかし、そうはいっても『ナチュラル帰り』と呼ばれ蔑まれるハーフの存在がプラント社会で認められるはずもない。

妻子を母国へ連れて帰ることは絶対的に不可能という現実を前に、ザフト兵は保身のために妻子との関係を断ち切るか
あるいは自分の立場をかなぐり捨て、軍を脱走し妻子と共に地球で暮らすかの選択を余儀なくされた。

もちろん、脱走兵が国民として認められるはずもなく、国籍も福利・厚生といった国家の恩恵も受けれず
人里離れた場所で、ひっそりと隠れ住んでいた彼らを保護しようと申し出てきたのが、ジブリールだった。
彼は、妻子含めて安全な住居と十分な生活保護を約束し、その代わりに自分のために働いてほしいと求めてきた。

…元々、家族のために国を捨てた脱走兵たちは、ナチュラルとの関係を周囲に気付かれた時点で
自分たちの国家に深く根差す差別意識、選民思想の存在に気付き、嫌気が差している者も多かった。

脱走兵たちの協力を得たジブリールは、彼らから多くの情報を引き出し、
更には工作員としてプラントへ送り込み、ザフトの軍事機密や兵器開発事情など、貪欲なまでに情報を得ていった。

「古来から、戦争であろうと政治であろうと…物事全ての成否を左右したのは情報だよ。
 アズラエルは潔癖症のように彼らを忌み嫌い、近づこうとも利用しようともしなかった。
 だから、ジェネシスの存在をあらかじめ掴むことが出来ず、身を滅ぼしたのさ。
 戦いを有利に進めるためには正確な情報が必要。 正確な情報を得るためには、内通者が必要なのだ」

この持論を掲げ、彼は多くの工作員を送り情報を集め、それらを元に策謀を進めていった。
今回成功を収めた一大作戦についても同様で、彼らの密かな活動なくしては
プラントの風評を貶め、地球側が有利な状況で開戦することも実現できなかっただろう。
542舞踏12話 11/13:2006/04/23(日) 22:04:33 ID:???

「――さて。 今回の一件、本当にご苦労だった。
 君と手を組んで本当に良かったよ、ケイ・サマエル……いや、キラ・ヒビキ」

腕の中に身を預けくつろぐ黒猫の片手を、ちょいちょいと指先で動かしもてあそんでいた青年へと振り返り、
口元に笑み刻んだジブリールは、スーツの懐からシガレットケースほどの小箱を取り出した。
手の平に置かれたそれを見せ付けるように差し出され、キラと呼ばれた青年の片眉がひくと動く。

「どうやら、覚えているようだね」
「…忘れるはずないでしょう? それ一つで、貴方はどこにいようとも僕の命を消せるんですから」
「そうだな、当然だったな」

端麗な顔に微かな不快の色を映しながら、ため息混じりにそう漏らした青年。
彼の様子を愉快そうに見やりながら、くくと笑い声を零した男は小箱の蓋を開けた。

「確かそう…一年前だったな。
 私の部下になり、計画に協力したいと申し出てきた君の忠誠と覚悟を試すために身に着けてもらった物。
 もし、君が私に対して叛意を抱いたり、使えない存在だと思った場合は即座に処理できるようにした。
 しかしまぁ正直な話、君が躊躇いなく自分から付けた時は驚いたね。 超小型爆弾を仕込んだチョーカーを」
「思い出話は結構ですよ。 過去を振り返ることは、邪魔にしかならないと思っているんで」

ふるると首を横に振りながら、そう言ったキラの眼差しは氷片のように冷たく、鋭いもので。
小箱の中身…スイッチの配され小型のリモートコントロール装置に触れているジブリールを、無言のまま見据えていた。

「君の働きは本当に見事なものだったよ。 褒美をやらねばならんな」

そう言うとジブリールは、装置のスイッチの一つをカチリと押した。
543舞踏12話 12/13:2006/04/23(日) 22:06:43 ID:???

――だが、変わらず漂うのは静寂の空気。
爆発の音も硝煙もなく、サロンの中はまるで一枚の絵画のように僅かな変化もない。
室内で向き合う二人の男も、微動だにせず一言も発さず。

数秒の間を置いて、ただ一つ起きた異変は
カチ、と音と共に金具が外れ、するりと首筋から床へと滑り落ちた一本のチョーカー。
青年の首に巻かれていた爆弾付きの首輪は、その役目を行使することなく束縛を解いたのだった。


「……もう少し、慌てるとか怒るとかそういう人並みの反応は出来ないのかね、君は」

結局、騒ぐどころか一言も発さなかったキラを見やりながら、ジブリールは苦笑する。
そう言われた当人はというと、一年前からずっとチョーカーを付けっ放しだったことが気になるのか
首筋に跡や傷が付いていないか、指で触りながら確かめているという胆の強さ。
その姿を前に、苦笑から困惑へと男の表情が変わる頃、青年は顔を上げてニコリと笑った。

「自分の価値ぐらい、把握していますよ。
 貴方に役立たずと切り捨てられるほどの仕事はしていないはずですけど?」
「…本当にかわいげないな、君は。 賢すぎるのも問題だぞ」

いっそ無邪気ともいえる明るい笑顔と、正反対に憎らしいほど聡い言葉を発したキラを前に
ジブリールは一瞬呆気に取られ、そしてつまらなさそうに顔をしかめた。

「でも、いいんですか? これ外してから、僕が貴方に何もしないとは限りませんよ?」
「君が切り捨てられない自信を持っているように、私も君に反逆を企てられるような主じゃない自信があるからさ。
 目的を果たすためにも、私の後ろ盾はまだまだ必要だろう?」
「……仰るとおりです、盟主殿」

今度は立場が逆転し、余裕の笑顔を浮かべていたキラはジブリールの言葉に目を丸め、そして苦笑う。
その様子を見ながら、ジブリールはしてやったりと満足げな表情で頷いてみせた。

「まあ、お互いの能力も立場も必要とする間柄で、そして目指す目標も同じ道だ。
 これからは対等な同志として付き合っていこうじゃないか、ケイ・サマエル」
「……なるほど、そういうことですか。
 いいですよ、ジブリールさん。僕も貴方の考えには賛成ですし、目的を抜きにしても協力する価値はあると思ってます。
 一緒に付き合いましょう。 貴方の描く理想の世界を創る戦争に」

それは今までの、利用する側とされる側の立場からの脱却宣言。
相手を駒として使うのではなく、お互いの目的を果たすために尽力する、対等な立場の人間と見ることを意味していた。
その言葉を交わす彼らの表情には晴れやかな笑顔があり、やがて握手を交わしたのも、自然な流れだったろう。
544舞踏12話 13/13:2006/04/23(日) 22:07:59 ID:???

「あの、ジブリールさん。 忙しい時期に申し訳ないんですけど、一つお願いしたいことがあります」

その後、テーブルに着き二人で今後のプランについて意見を交わしていた最中、ケイはふと思い出したように口を開く。
手元の資料に視線を落していたジブリールは、その言葉に顔を上げ、内容を語るよう視線で促す。

「少しの間でいいですから、『彼女』の所に顔を出したいんです。
 これからは仕事も多くなって、容易に行けなくなるでしょうし…なんとかなりませんか?」

その言葉を受け、男は顎元に手を当て、ふむと唸る。
彼も自分同様、ブルーコスモス内では非常に忙しい立場にあり、スケジュールも詰まりに詰まっているのだが…

「…そうだな。これからの事態を考えれば心配だろう。 構わんよ、行ってきたまえ。
 ただし、寄り道は極力避けるように。 何分予定が詰まっている、あまりサボるとアウグストがうるさいぞ?」
「あー…そうだった。 この間大きな貸し作ったばかりだし、怒られるようなことはしたくないなぁ」

小言の多い上司のことを指摘され、ケイは苦笑しながら頭に手をやる。
そして、膝の上に寝転がっていた黒猫を抱き上げ、床に下ろしてから席を立った。

「それでは、お言葉に甘えて行ってきます。 出来るだけ早く帰りますから」
545あとがき:2006/04/23(日) 22:08:54 ID:???

今回は短めの内容でお送りいたします舞踏の人ですっ。
またもやマユちゃん出てきませんが…次回は、次回は必ず出てきますので!!(汗

とりあえず今回の内容はセレネの悪夢事件の振り返りと、舞踏におけるブルーコスモスの体制についてです。
ジブリんが本編とはえらく異なった考え方となってます。 あちらでは前任と同じで撲滅派でしたが…。
こう、もう少しクールに行きたいと思い、このような方向性となりました。

ユニウスセブン事件の変わりにセレネ事件を考えたのは連合側がある程度の準備を整えた上で起こす
連合側に有利な状態で挑む為の自作自演の開戦理由
そして被害にあった国とそうでない国の温度差を出す為にオリジナルの展開にもっていきました


それと、>>337様。 大当たりですw
サマエルという名は、天使の名前で探していた時に見つけました。
『神の毒』『死の天使』なんてフレーズを見て、これしかない!!と思い使いました。
神話によっては、サタンとも同一視されてるようで…なんとも彼らしい。
ちなみに余談ではありますが…『ケイ』というのはただKiraの頭文字を取っただけだったりします(ぉ


最後に、ふと思いついたNGシーンを。

「……もう少し、慌てるとか怒るとかそういう人並みの反応は出来ないのかね、君は」
「だって、爆発させるはずがないですから。
 ここにはちゃんと人質ならぬ猫質がいるんですよ?(ぬこ様抱えながら天使のスマイル)」
「……………賢すぎるのも問題だな。 君は外道か(ワナワナ)」

…お粗末さまでした。
546纏め人 ◆rw1maYUY1g :2006/04/23(日) 22:09:57 ID:???
新スレたてました。
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1145797262/

運命の舞踊作者様、投下お疲れ様良い形で新スレ移行です。
547通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 23:47:06 ID:???
舞踏作者様GJです。
キラのお相手はやはりあの方なのでしょうか?
それにしても、マユがどんどんミラコロ主人公にw
548通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 23:51:48 ID:???
やっぱ敵の首領が有能だと盛り上がるな。
原作のジブは……
549通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 20:52:22 ID:???
やはり敵役は「冷静」で「冷酷」で「有能」なのが一番だねぇ。
ジブがこんなに格好いいの、初めて見た。
舞踏、GJでした!
550通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 21:00:35 ID:???
正しく「敵役」だな、「悪役」じゃなく。
551通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 21:21:58 ID:???
テレビのジブは悪役どころかただの能無しに見えた。
552通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 23:28:19 ID:???
舞踏GJ!
冷酷で有能な盟主殿が素敵でした
彼とキラがこれよりどんな策謀を廻らすのか楽しみです!
553通常の名無しさんの3倍:2006/04/25(火) 12:25:00 ID:???
俺、初めてジブを応援したくなったぞ
554通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 22:32:38 ID:???
マユ・アスカが
555通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 22:33:52 ID:???
       ヾ  /    < 仮面ライダー555が >
       ,. -ヤ'''カー、   /Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Yヾ
 ー―ァ  /r⌒|:::|⌒ヾ
   _ノ オ{(  |0|  )} オオオォォォォ!!!!!
     __,ヽ,ヾ,_|V|,_ノ、/ ,r-,,=
    ,゛==ゝ_ViV_ノ~i/ 〃 `ー―-、
    /  /⌒`//´⌒c/^^^ ))))))))))
 ,,―イ  {ー''"~{ {~゛`ー`/'`'~/ー--―'
))   ,./ゝ_/∧ゝ_ノ  ノ
 ー''"  |ロ  ロ    |
 人,_,人,_,人,_,人,_,
< >>555ゲットだ!! >

556通常の名無しさんの3倍
              、
              i`、
              l |            __...........,,,,,,,,,,,_
       l `,     `|`、       _、''´:::::::::::::::::::::::::::::::::`''−.,_
.        l i     l  ヽ    , '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
.         l ト、    l   ヽ  /::::::::::::::::::::::: .:: .:: .::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ、,、 、
         ', l. ヽ  !     i./::::::::::: .:: : ..::::...:.:..:::::::: :: :::::::::::::::::::::::::::::::丶 {
          ', l   ` ヽ、   /::::::::::::::. .: ..::::::;:/!:;ィ::::::. . :: : :::::::::::::::::::::::::::',',
           ヽ      丶  リ::::::::::::::::::::::::/リ  '" ';::;:::..:: . .::::::::::::::::::::::::::::::l
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             ヽ     ゝ   l:::::::::::::l::;:/、f-r‐バ  `'、:::::;:イハ::/:.:: : ::::::::::l
              丶.._   ヽ/ミ三三彡ハ|   ̄ヾ     `´テ≡ミイ::::::::..:::::::::l:l
                ` ‐-/ミ三彡: :::l        ::::. ヒTリl'"l::::::::::::::::::/リヽ
                  /::::::::::::: :. :::!       '    ̄ハ. Y l l'ヽ::/!   ヽ
                  /::::::::::;:::::::..:.:.:ト、   f ̄`ヾ    l  !``ヾしリ/     \
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              リ ヽ::::l\::l::::l::::::|l:::l:lノ /  '',,                        ',
              ヽ!  ヽ:::lヽ:::l l:::l::::::l. ;.   '',,                          ,
                  !::ヽヽ:!ヽ! l.  i    '',,    -‐ ''''' ァ‐‐--  ....____       ,、'
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