まあ、マユを主人公にすると―― (パート1 710より)
1.子供だけど赤服。努力と才能と、周りのサポートで頑張る努力型の主人公という前作との差別化。
2.1.と付随して周りのキャラが主人公を面倒見ているので戦艦内の人間関係の描写が濃密になる。
3.種持ちとはいえ、決して天才ではないので時には失敗する。その挫折を乗り越えるクライシスと成長ドラマが主軸になる。
4.才能はあるとはいえ、子供。故に戦争というものを多角的に見えない。戦争の現実を直視することにより、視聴者にも問い掛けることができる。
5.戦争で家族を失った遺族側の視点で前作への問題提起。それにより改めて遺伝子操作やそれに伴う差別問題を浮き彫りにできる。
6.5.に並んで国家と国民の有り方、理想と現実。そして、享受できる平穏と犠牲となる存在、為政者の義務、前線で戦う兵士の悲哀などを生々しく描写できる。
7.死んだと思っていた兄との対面、思想の違いによる対立を生む戦争の悲劇。そして、マユという妹から一人の人間としての成長を描ける。
――こんな感じで激動の時代に巻き込まれた一人の人間とそれを取り巻く環境の変動を主軸にしたドラマが描けて面白いんだよね。
シンよりさらに人間的に未熟な分、周りの人間の意見を聞く――色々な視点・意見を知る――ことにより、
現実はそう単純なものではないってことが演出できるわけで。
第一話プロローグ
港に向かって走るアスカ一家。
あともう少しで避難船――そこに羽つきのMSが銃口をこっちに向ける。
「マユっ!!」とっさの判断で荷物を投げ捨て、マユを抱えて崖から飛び降りるシン。
落下、爆発、爆風、衝撃。藪を幾度も突き抜け、斜面を転げ落ちるシンとマユ。
「……うぅ」あちこち擦ったみたいだが、兄がかばってくれたおかげで身体は動く。
「――お父さん、お母さん!?」はっと見上げた崖の上の森は木々が薙ぎ倒され、轟々と燃える炎が両親の安否を物語っている。
「お兄ちゃん、お父さんが――お兄ちゃんっ!?」見れば、兄の身体は血だらけで――両足がなかった。
あのMSのビームライフルが掠り、そして転がりながらもマユをかばった結果だった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!」「……マユ、行くんだ……船に行く……んだ」「行けないよぉっ!!やだよ、お兄ちゃんを置いて行けないよぉ!!」
号泣するマユに困ったように力なく笑うシン。「マユ……お前……俺の携帯……欲しがってただろ……持って……行け……」懐から携帯を取り出すシン。
「そんなのいいよぉっ!!お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!」「大丈夫だ……俺も後でちゃんと行くから……お前の携帯に……掛けるから……」
涙でぐちゃぐちゃになりながらも携帯を手に、立ち上がるマユ。「お兄ちゃん、絶対だよっ!!約束破っちゃたら嫌いになっちゃうよっ!!」
かすかに、だけど確かに頷くシンを見て、駆け出すマユ。そして、森を抜けた先に見えた港。軍人さんがいる、あの人に頼んでお兄ちゃんを助けて貰おう。
――爆発、振り返れば背後の森が燃えている。あそこにはお兄ちゃんがまだいたのに。マユをかばってくれた大好きなお兄ちゃんがまだいたのに。
呆然と立ち尽すマユの手を引く軍人。しかし、マユの目は燃える森とその上空で銃を撃ち乱しているMSを捉えていた。
この先をみんなで考えましょう。
*この続きでも、可能です。
4様
単発設定小話 脇話「シンとネオ」
〜ガーティ・ルーのブリッジ〜
ネオ「フフン、まさかザフトもあんな隠し球をもっていたとはなぁ?」
イアン「・・・ふぅー。大佐・・・ずいぶんと楽しそうですな」
ネオ「む、イアンは失敬な奴だなぁ。おされ気味だったのに楽しい分けないじゃないか♪」
イアン「・・・これは失礼しました・・・・・・」
〜扉がスライドし、バイザーをかけた少年が入ってくる〜
シン「おい、おっさん!なんだよ、あのヒコーキは!?」
ネオ「おまえねぇ、いったろ?俺はネオ・ロアノーク、た・い・さ!」
シン「ああ、はいはい。で大佐よぉ。なんなんだよ!あのヒコーキは!」
ネオ「あれはなぁ、こっちの情報にもひっかからなかった機体なんだよ。だから答えとしては、わからん」
シン「はぁ?わからん〜?連合の情報網もたいしたことないよなぁ・・・あ〜ロゴスだっけか?」
ネオ「おい。いったいいことと悪いことがあるぞ。お前はもうちょっと言葉遣いを勉強しろ」
シン「わかったわかった。でもあんなんじゃステラたちもかわいそうだぜ?」
ネオ「まぁな。・・・まぁ幸いにして誰も死んでないし、きっちりと予定のMSは奪取できたわけだし。いいんじゃない?」
イアン「コホン、大佐も言葉遣いを学ばれたほうがよろしいかと・・・」
ネオ「・・・イアン・・・ほんっとにまじめだね」
シン「・・・無事っていってもよ・・・」
ネオ「なに?お前そんなに自分が戦えなくて悔しいの?」
シン「あったりまえだろ!訓練じゃ俺が一番だったじゃないか!なのになんで俺のMSがないんだよ!?」
ネオ「あるだろ?・・・まだ組み立て中だけど・・・・・」
シン「・・・大佐〜。組み立て中ってプラモデルじゃないんだからさ。なんで部品の状態で運んできたのかって聞いてんだよ」
ネオ「そこはお前、いろいろ事情ってもんがあるんだよ。いいじゃないか。組みあがれば連合最新のMSのできあがりだぜ?」
シン「オーブの間違いだろ?っけ、なんで俺があんな国の作ったMSなんかに・・・」
ネオ「贅沢いうんじゃないよ。確かにアストレイシリーズだけどさ」
シン「ったく。なんだっけ?個体名?」
ネオ「ああ、ええっとな。ん〜っと、アプレンティスだって・・・っぷ、くっくっく・・・はっはっはひ〜っひっひっひっひ」
シン「なんだよ、なんか意味ある言葉なのかよ?」
ネオ「っひっひひ〜ああ?ああ、意味な。見習いって意味だよ。。ぷっぷっぷ」
シン「ああ!ほんっとに嫌味な国だな!オーブは!」
ネオ「っひっひいや、だからオーブでもあるけど、っくっく・・・連合のMSでもあるんだって・・・」
シン「もうどっちでもいいよ!そんなの!いいよっどうせ俺は見習いだよっ!!」
〜ブリッジを退出するシン〜
イアン「大佐。心底楽しんでいらっしゃるようで・・・」
ネオ「ああ、でもな。あいつまだ自分の名前決まってないのにさぁ、自分の乗るMSが先に固有名もらってどうすんだよ。っぷっぷ」
イアン「ああ、彼の今の名は仮名でしたっけね」
ネオ「おいおいコード番号なんだから仮名にもならんだろう?ナンバー40な」
イアン「え、いやでもデータシートには”シン”と?大佐もシンとよんでいらっしゃるでしょう?」
ネオ「ああ、あれは仇名だよ。大昔にな数字を使って文章を作るって文化があってな。それにはめると40は”シン”と読むんだと」
イアン「いや、でもなんで仇名がデータシートに?」
ネオ「ああ、おれが書き換えた・・・とすると”シン”が固有名になるのかな?」
イアン「はぁそうですね・・・(もういいや・・・疲れるし・・・)」
ネオ「よし!あいつの名前はシンで決定な」
イアン「・・・はぁ」
完
>纏め人様
スレ立て乙です。
>単発屋様
乙です。
実に適当な大佐、酷いや。
>投票所管理人様
前スレでも書きましたが何故かゲン(PP戦記)の項目が消えました。
今、出てるのは自分が項目追加して投票されたものです。
何故消えたんですか?隻腕マユの時みたいな事故ですか?それとも全票が多重投稿だったとかですか?
>>6 ゲンについて
これは隻腕マユと同様の事故です。再度、得票数をメンテナンス致します。
今後はアンケート付のページのみを基準としてメンテナンスを行うように致します。
ご迷惑をおかけいたします。
ミスばっかだな・・・
誤:アンケート
正:コメント
ファントムペイン戦記書いてる者です。
13話目……種世界の年表見て思いついた話です……
書いてるうちに修正点とか見つかったりして時間食ってしまいました。
また長い話ですが、いつものようにお目汚しを……
10 :
1/25:2005/11/27(日) 06:19:53 ID:???
インド洋でファントムペインとミネルバが戦った2日後―
J・Pジョーンズは赤道連合管轄下、インド洋ベンガル湾南部に位置するアンダマン基地に停泊中であった。
地球連合軍第81独立機動軍―通称ファントムペインのメンバーも束の間の休息を取っていた。
そんな中、ゲン・アクサニスにネオ・ロアノークから艦の司令室への出頭命令が下された。
目下ファントムペインの任務はザフト軍新鋭戦艦ミネルバを撃沈させること―
当然、彼は追激戦の話になると思いつつ、司令室の扉を叩いた。
「おう、来たか」
軍においては上官と接する際には直立不動の敬礼を要求されるものだが、ネオはその限りではない。
挨拶など適当なままで、ゲンに早く入ってくるよう促した。ゲンも軽く敬礼し、ネオの座るデスクの前へ赴く。
形式ばった敬礼にこだわらない指揮官であるから、当然仕事も単刀直入に話を切り出してくる。
開口一番、彼はゲンに仕事―即ち次の任務を告げた。ゲンは対ミネルバの話しとばかり思っていたが……
上官の口からは、至極簡略な命令だけが下された。
「あー、ゲン。悪いんだが、お前これからカシミールに飛んでくれ」
「……は?」
「カシミールだよ、カシミール。知らない?」
「あ、いや、そうじゃなくて……」
「……ん?」
「俺たちの任務はミネルバ追撃でしょう?なんでカシミールなんかに行かなきゃならないんですか?」
「悪いけど……って断っただろ?ちょっと面倒な仕事がまわって来てな。
まずはこのままニューデリーに行ってある人物に会って欲しい。
で、数日間その人物の護衛をしつつ、カシミール地方まで行って欲しいんだ。分かった?」
「はぁ……」
「何だよ、そのやる気の無い返事は?一応これは命令だから拒否権は無いぞ。
まぁ、一人じゃ寂しいだろうからステラも付けてやる。輸送機にMk-Uとガイア積んだら出発だ」
「……ステラも?一体何なんですか?」
「つべこべ言わないの。詳しいことはその人物に聞いてくれ。ああ、あと、その人には粗相のないようにな」
「……了解」
本来話好きなこの指揮官が有無を言わさず命令だけを下すということは、それだけ火急の任務ということ。
また、彼一人ではなく、Mk-Uとガイアの2機を用いるということは、それだけ危険も伴うはずであった。
話の中からそれらのことを察したゲンは、渋々命令に従った。
司令室を出て、自室に戻る。
ネオの数日間という言葉から、おそらくそれだけの日数を要するのだろう。
ゲンは自室に戻るとバッグに日用品や衣類といった荷持を詰め、愛用の銃を2丁引っさげて部屋を出た。
思い起こせば、それらの銃は、かつてラクス・クライン誘拐の任務の際使った物であった。
ふとそれを思い出し、ゲンは苦笑した。
「暗殺、誘拐と来て……今度は護衛か?俺は便利屋かよ……全く」
悪態をつきつつ、彼は部屋の明かりを消し愛用のバイザーを暗視モードに切り替える。
昼間だが、外からの光が差し込まない彼の部屋では、それだけでバイザーの機能が確かめられる。
一通り望遠等の機能を確かめバイザーが正常に機能していることを確かめた後、彼は任務へと発った。
11 :
2/25:2005/11/27(日) 06:20:40 ID:???
部屋を出てMSデッキまで出ると、既にメンテナンスクルーがMk-Uとガイアの搬出作業を始めていた。
その光景を眺めつつ、艦の外まで出る。J・Pジョーンズからそう遠くないところに輸送機が見える。
恐らくはそれに乗ってニューデリーまで行くのだろう。そんなことを考えながら荷物を片手に向かう。
輸送機に近づくと人が見える。金色の髪の女性―
バイザーを望遠モードにするまでも無く、彼にはその人物が分かった。
これからの任務でゲンと行動を共にするファントムペインの女性パイロット―ステラ・ルーシェであった。
彼に気づくと手を振りながらこちらに向かってくる。
「おーい!ゲン!」
「ちょっと待てよー!」
ステラの姿が見えるのと同時に後からスティングとアウルが声を掛けてきた。
二人は先日のインド洋でのミネルバとの戦いで、精神的ストレスを受けていたが……
声を聞く限りはそれほど深刻な様子も無く、普段どおりに見え、ゲンもホッと胸をなでおろした。
「ネオからの届け物を持ってきたぜ。受け取れよ」
スティングはネオからの届け物―一つのケースをゲンに渡す。
ゲンがバッグを開けると、中からはディスク一枚と小型PCが一台、それと黒い衣類が一つ入っていた。
「ディスクは輸送機に乗ったら開けってさ」
「……わかった」
おそらくは今回の作戦の仔細がそのディスクの中に入っているのであろう。
急ぎの任務ながら、彼には上官の心遣いがそれとなく示されているのを見て安堵した。
そんなゲンを見たアウルは、不満げに文句を言う。
「なんで二人だけなんだかなぁ?俺も連れて行けっての」
「……お前まで一緒に来たら、J・Pジョーンズはどうなる?カオスとネオのウィンダムだけになるだろう?」
「ちぇっ……」
アウルは今回の任務から外されたことに若干苛立っていた。
しかし、それは無理も無い話しであった。彼は先日の戦闘で敵艦からの特攻を受けていたのだ。
一時はパニック状態に陥り、緊急施術を行なわねばならないほど精神的に追い詰められていた。
おそらくはその事実を考慮したうえで、今回の任務からネオが彼を外したのだろう―
それはゲンにも容易に想像できた。だから、ゲンはアウル納得できそうな理由を述べ彼を宥めた。
「仕方ないだろう、アウル。こっちは俺とアウルに任せて……二人で頑張って来いよ」
「ゲン、ステラに手を出すと後が怖いよ?」
見ればゲンの隣にステラが来ていた。そんな二人をスティングとアウルが改めて見送る。
何が怖いのかは分からないが、ゲンはアウルから妙な警告を受けてしまったが……
からかい半分での警告を受け流しつつ、二人は輸送機に向かっていった。
12 :
3/25:2005/11/27(日) 06:21:31 ID:???
「さてと、ネオからの任務の中身……見てみるか」
輸送機に乗り込んだゲンとステラは、機長に指示された席に座り発進を待っていた。
隣にいるステラは興味津々で、ゲンがディスクを小型PCに挿入するのを見ている。
ゲンはヘッドフォンを取り出しつつ、耳に当てる。彼らは特殊部隊ファントムペイン―
故に任務が外に漏れることは極力避けねばならず、友軍の中にいても機密保持には最新の注意を払う。
声が外に漏れないようにするのもそのための配慮であったが……
「ゲン、ステラも……聞きたい」
「……分かったよ、半分貸すからそれで聞いてくれ」
ステラの申し出で一つのヘッドフォンを二人で聞く羽目にもなった。
ともかく、ディスクが起動しネオの姿がモニターに現れ、彼の声も聞こえてきた。
『あー、二人とも聞いているか?こういう形での命令は最初で最後になると思うが……』
「ネオ!」
「ステラ……静かに。聞こえないよ」
ネオからの音声は全て録音済みのものなのだが、ステラは通信が繋がったと思い、声を掛ける。
苦笑しつつゲンはそれを嗜めるが、怒ることは無い。ステラ・ルーシェという少女はいつもこの調子なのだ。
普段は何処か気の抜けた様子で言動も子供っぽい―俗に言うところの、天然タイプの少女と言えた。
だが、戦闘では尋常ならざる力を発揮し、それ故少尉の肩書きでファントムペインに籍を置いていた。
そんなステラだが、今はその場にいないネオは構ってはくれない。画像と音声は淡々と進んだ。
『夜中に急な命令が入った。お前達にはこれからカシミールに向かって欲しい。
3日後に汎ムスリム会議がカシミールで開かれることになったんで、その手伝いが必要なんだ』
「ムスリム?……ったく、何でそんなところに」
「ゲン、ムス……って何?」
汎ムスリム会議―地球に存在するイスラム教国の連合体の総称である。
元は地球連合の一員であったが、先の大戦で親プラント国となり、領土にザフトの基地も点在していた。
ペルシャ湾にマハムール基地があるが、開戦の切欠となったユニウス落下事件以降は連合に組している。
ザフトの基地はあるが、連合の一員―なんとも奇妙ではあるが、これが汎ムスリム会議という国であった。
ゲンはPCのネオからのメッセージを一時停止し、そんな現実をステラに語って聞かせた。
「ふぅん……変なの……」
「……確かに変だけどな」
「ゲン、続き……」
「ああ、分かったよ」
ステラの感想は、まさしくゲン自身が思っていたことであったが……
彼もネオの命令―すなわち今回の任務の核心が知りたかったため、ステラに促され映像を再生させた。
13 :
4/25:2005/11/27(日) 06:22:29 ID:???
『まぁ、お前等も不可解に思うだろうな。
知っての通り、親プラント国だった汎ムスリム会議が、開戦後は連合の同盟条約に加盟している。
今度開かれる会議では、これからこの国に……完全に連合寄りになってもらう必要があるんだ。
で、そのために必要な人物を届けて欲しいんだ。つまりその要人の護衛……ってことだ』
ネオの言葉にゲンはようやく合点がいった。
今は領土にザフト基地を有する汎ムスリム会議を、今度の会議で完全に連合サイドに引き入れる―
そのために必要な人物とは……おそらくは国外にいても会議に影響力を及ぼす人物であろう。
連合寄りの政治家かもしれないが、兎も角その人物次第でプラントにも―ザフト軍にも影響を及ぼす。
あるいは、戦わずしてペルシャのマハムール基地からザフトを追い出せるかもしれない。
だが、仮にもこの間まで親プラント国であり、敵地とも言えた国に赴くのだ。楽な任務ではない。
だからMk-Uとガイアの2機を護衛に向かわせる必要もあったのだろう。
「ゲン、何すればいいの?」
「……つまりは、偉い人を護るんだ」
「……まも……る?」
「ああ」
「うん……分かった。ステラ、護る!」
理解したのかしていないのか、ステラはゲンが極めて簡潔に説明した言葉には納得したようだ。
退屈したのかステラはヘッドフォンから離れ、輸送機の窓のある方に外を見に行った。
周りを海に囲まれたアンダマン基地は、彼女にとっても物珍しかったのだろう。
赤道直下の南国の景色は、基地の殺風景さとは裏腹に輝いて見えた。
一人になったゲンは、更にネオの声に耳を傾ける。
『あ、あとゲン!ステラに手を出すなよ?二人とも若いから俺は心配なんだよ』
「……出しませんから……要らぬ心配ですよ」
『昔エクステンデッドの研究員で……
彼女に猥褻な行為をしたヤツがいたらしいだが……どうなったと思う?』
「どうなったんです?」
『……二度と研究が出来ない体になっちゃったそうだ』
「………」
まるでその場でネオと会話しているかのようにゲンは言葉を発していた。
映像の上官も、まるでゲンが反論するのを想定していたかのように言葉を続けた。
傍から見れば絶妙なタイミングで会話が成立していたのだが……ゲンは最後の言葉に少々寒気を覚える。
『まぁ、お前ならステラも大丈夫かもしれないが……やめとけよ?』
「……何もしませんよ」
緊張感のある命令だったのが、何故か窘められて上官からのメッセージは終わりを告げた。
映像が終了したところで、ゲンはそのメッセージが入ったディスクの中身を消去しておいた。
これも機密保持のため―なのだが、彼には任務よりも上官からの妙な警告で緊張感は失せてしまった。
舌打ちしつつゲンは、小型PCの電源を落とした。
14 :
5/25:2005/11/27(日) 06:26:09 ID:???
輸送機はそれから1時間後に出発した。ニューデリーまでの道のりに特に危険は無かった。
空港に着くと輸送機は人目を避ける為か格納庫に入り、そこで積荷―2機のMSの搬出作業を行なった。
MSをトレーラーに乗せ換えた後、インデラ・ガンディー空港からニューデリーまでは陸路で移動した。
またインドに着いてすぐ、ゲンはステラにネオから渡された黒い衣類を渡した。
「ゲン、これ何?」
「チャドルっていう服らしい。この地方じゃ着ない服だけど、厳格なイスラム教徒の女性は肌を隠す。
全身がほぼ隠れるから銃も隠せる……ステラに向いてる服だろ?ネオから渡されたんだ」
「ホント?なら……ネオからの贈り物……」
「……そうなるかな。カシミールはイスラム教が支配してるから、着く頃に着るといい」
ネオからの贈り物と思い、ステラは年頃の少女らしい笑顔を見せる。
黒のチャドルは、どうやら古い型のもののようで、ステラの全身どころか顔まで覆い隠すものであった。
イスラム教徒の女性でもここまで全身を隠すのは珍しいのだが……ネオの指示にステラは従った。
試着したステラは、顔と手の白さだけを残せば、ほぼ完全に素性を隠せそうな様子であった。
「ゲン……チャドル、ずれ落ちる……」
「口で端を押さえるんだよ」
最中、ステラはネオからの贈り物に悪戦苦闘していた。
チャドルは、たいていはテープなどでずれ落ちないようにするものだが……
流石のネオもそこまで配慮できなかったのだろう。仕方なくゲンは口で端を押さえる対処法を教えた。
今度こそステラは黒布に包まれ、イスラム圏内の女性に見える格好になってしまった。
だが、ここはまだインド―つまりはヒンドゥー教圏内であり、この国ではその格好は異様である。
そんなゲンのアドバイスにステラは渋々チャドルを脱ぎ、いつもの軍服姿になった。
空港を出た二人は、近郊のホテルの一室にまで案内された。ゲンはステラと共に部屋をノックする。
やがて、大柄なこの国の男と思しき褐色の肌の人物が、部屋から顔を出す。
彼はゲンとステラを訝しげに見るが……
「地球連合軍―大西洋連邦第81独立機動軍所属、ゲン・アクサニス中尉だ」
「ステラ・ルーシェ少尉……」
二人は、己の身分を明かすが、彼はそれに何の関心も示さない。
ただ、武器は持っているかとだけ問いただした。ゲンは愛用の2丁の拳銃を見せる。
そして、ステラも護身用に持ち込んだ一丁の拳銃を見せた。
男はゲンの持つ銃―ステラのものより一回り大きい2丁の拳銃を見て言った。
「フルオートマ2丁か……お前、その体で二つとも撃てるのか?」
「ああ」
「今までにそれで何人殺した?」
「ザフトの特殊部隊を……7人ばかり」
ザフトの特殊部隊と聞き、男の顔が一瞬変わる。
15 :
6/25:2005/11/27(日) 06:27:53 ID:???
「いいだろう……入れ」
それだけ言うと、男は二人を部屋に入れた。
ゲンの言葉に一瞬表情が変わった男も、すぐにもとの顔に戻っていた。
二人は誘われ部屋に入ったが、中には男と風貌の似た人間達が7、8名も銃を持ち控えていた。
ボディーガードなのだろうが、彼らの武装と人数に、要人警護の熱の入りようが分かった。
間もなく二人は一人の人物の前に案内された。
「お連れしました」
―ゲンとステラの目の前には一人の老人が座っていた。
年のころは7、80にもなろうか。褐色の肌は皺枯れ、髪も殆どない。
余命いくばくの無い老人には見えず、蓄えた髭と双眸に光る理知的な瞳が生気を放っていた。
ゲンとステラは先ほど男にしたのと同様に所属を明かし、敬礼した。
「……随分若いな」
二人を見るなり老人はそれだけ言った。
やがて二人を連れてきた男に何事か指示を出し、席を立った。男はゲンを問いただした。
「一緒に持ってきた機械人形は?」
「……MSなら、2機持ってきた」
「たった2機だと?」
「両方とも現行稼働している連合のどのMSよりも性能は優れている。
"敵"の数にもよるが、相手が中隊規模程度なら問題なく倒せる筈だ」
「………」
「不満か?」
「……いや、感謝する」
言葉とは裏腹にぶっきらぼうな感謝の言葉ではあったが、男はそれ以上問わなかった。
あるいは男にとってはゲンやステラの年齢と相まって不信感を抱いたのかもしれない。
兎も角男は更に言葉を続けた。
「これからお前達にはカシミールに着くまでの間、老師を護ってもらう」
「……老師って、さっきの老人か?」
「そうだ。お前たちには、主に機械人形相手の戦闘を想定している。
俺たちは……人間相手の白兵戦は出来るが、機械人形は扱えない。頼むぞ」
「構わないが……想定される敵ってのは?アンタ達は誰と戦うつもりなんだ?」
ゲンの問いに男は一呼吸置いてから言った。
「俺達が戦うのは反対派の過激派勢力だが、お前達の相手は……ザフトだ」
16 :
7/25:2005/11/27(日) 06:28:42 ID:???
老人とその護衛部隊は間もなくニューデリーを発った。老人の乗る車は複数の護衛の車に護られていた。
ゲンたちを案内した男は名乗らなかった。ただ、周囲の護衛の男達が"隊長"とだけ呼んでいた。
ゲンはその隊長と共に前衛役に就き、Mk-Uを乗せたトレーラーに隊長と共に乗り込んだ。
もう一人のMSパイロット、ステラは後衛としてもう一つのガイアを乗せたトレーラーに乗り込んでいた。
丁度老人の乗る車と護衛の乗る車を、2台の大型トレーラーが挟んだ形での出発となった。
なお、トレーラーにはMSメンテナンス要員として、J・Pジョーンズから数名のメカニックが乗り込んだ。
「まるで大名行列だな」
ゲンは、そんな光景を前衛のトレーラーの窓から身を乗り出しつつ呟いた。
彼の言葉どおり、街道の者達もゲンたちの車の列を何事かと見に来る有様であった。
やがてゲンは、隣の席に座る隊長と呼ばれる男に話しかけた。
「どうせなら、赤道連合に頼んで空から直接カシミールに乗り込んだらどうだ?」
「……そうしたいのは山々だが、それができない理由があるんだ。
昔、赤道連合の前身となった国が、ムスリム会議と衝突していてな……
やっかいな歴史的な背景があるから、表立って赤道連合に護衛を頼めなかったんだ」
「だから……大西洋連邦の俺たち二人だけが、護衛に就いたってことか?」
「……そうだ」
男は任務に差し支えない範囲でゲンに状況を語って聞かせた。
汎ムスリム会議は、2年前から親プラント国となり、ザフトに拠点を持たせるほどに親密であった。
しかし、ユニウスセブン落下事件で、ユニウスの破片が彼の国を襲ってもいたのだ。
親プラント国であっても、多数の国民を殺されてまでプラントに義理を尽くす必要は無い。
連合からの圧力もあったが、迷うことなく会議は大西洋連邦の提唱した同盟条約に参加した。
が、問題はここからである。即ち、国内にあるザフト基地の処遇に頭を悩ませていたのだ。
親プラント国となる見返りに、この国はコーディネーター国家プラントから多くの技術供与を受けてもいた。
恩と呼べるほどではないが、借りと言えるものがプラントに対してはあったのだ。
それ故、国内基地の処遇に頭を悩ませつつ、静観せざるを得なかったのだ。
「……で、会議にあの老師って爺さんを連れていって、何をやらせようっていうんだ?」
「お前たちは、何も聞かされてないのか?」
男は意外そうにゲンを見た後で、また差し支えない範囲で彼に老人の素性を語った。
元々汎ムスリム会議は、多くのイスラム教国の寄り合い所帯であった。
宗教は同じだが、民族はそれぞれに異なっていたため、建国初期には混乱もあったらしい。
近年ではそれも収まりつつあったが、プラントの出現とザフトの地球侵攻で再び混乱が発生した。
即ち、ザフトに協力するべきか、地球連合の一員として彼らに敵対するかが会議で争われたのだ。
宗教指導者の一人であった老師と呼ばれる人物は、その際後者を唱えるの派閥に属していたが……
最終的に前者を唱える派閥が決定権を握った。だが、それで事が終わったわけではない。
後者の派閥に属するものは、一夜にして反体派のレッテルを張られ、彼らは主張の変更を迫られた。
老人は、それでも主張を変えず、この国に居られなくなり大西洋連邦に亡命することになったのだ。
「頑固な爺さんなんだな……」
17 :
8/25:2005/11/27(日) 06:29:40 ID:???
そう呟くゲンの声は隣の男には聞こえなかった。更にゲンは男に質問した。
「あの老師はこれからどうするつもりなんだ?」
「会議に出て……ムスリムの世界からザフトを追い払ってもらうんだ」
「じゃあ、老師を狙ってくるってのは……」
「……プラント、いやザフトとともに連合と敵対したがる連中さ。
やつらは……大昔のしがらみに捉われて、未だに憎しみの連鎖の中に居る……厄介な連中だ」
はき捨てるように男は言った。
更に男の言葉では、その道中に老師を暗殺しようとする腹積もりだろうとのことであった。
男の一連の説明で、ゲンはこの地に自分とステラが呼ばれた理由、その背景を理解していた。
あの老人を護ることが、地球連合にとって多大な影響を及ぼすだろうことは、容易に想像できたからだ。
夕刻―一行は、第一の宿営地に到着した。
汎ムスリム会議領に程近いアムリットサル郊外の邸宅に一行は泊まることになった。
その夜、ゲンは老師に呼ばれ彼の部屋へと案内された。案内するのは隊長と呼ばれる男……
「……何で俺が呼ばれる?俺はMSの側に居たほうが良いんじゃないのか?」
「老師のご命令だ……従ってもらう」
部屋の外には警備の男もいたが、フリーパスでゲンは中に入れられた。
部屋の中には、絨毯の上に座る老人がいた。
「わざわざ、遠いところを呼び寄せて済まなかったな」
「……命令ですから」
老人は開口一番、ゲンに労をねぎらった。
確かにミネルバ追撃の任務を捨て置きこの地に赴くことには躊躇いがあったが……
それでも軍の命令は彼らにとっては絶対のものであり、異議を挟むことは許されなかった。
そんなゲンに老人は言葉を継いだ。
「一つ聞きたいことがあってな……
私の記憶する限り、大西洋連邦にお前さんのような若い士官、それも中尉と呼ばれる人間はいない。
だが、お前さんはその年齢で中尉を名乗り、一緒に来た娘さんも少尉を名乗っている。どういうことだ?」
「……士官学校を出ていれば、やがては尉官になる資格はありますが?」
「それはそうだが、出たての雛っ子にしては……お前さんからは只ならぬ気配を感じるが?
そう……もう何度も死線を潜り抜けてきた戦士のような気配すら漂っているように思えるよ」
フッとゲンは息をつく。
恐らく老人は自分達の素性―ただの軍人ではないことを看破したのだ。
嘘をついても無駄だ―そう思い、ゲンは自分達が対ザフト用に特殊訓練を積んだ部隊だと告げた。
「ふむ……」
18 :
9/25:2005/11/27(日) 06:31:26 ID:???
老人は、ゲンの言葉を聞いた後、深々とため息をついた。
彼はそれ以上問い詰めず、またゲンもそれ以上は語らなかった。
連合軍に所属するゲンの仕事は老人の護衛であり、老人が彼の上司であるわけではない。
老人からは任意で問いただされただけであるから、これ以上答える義務もまた存在しなかった。
「……なるほど。やはり普通の軍人ではなかったか」
「俺から只ならぬ気配を感じた……と仰いましたが、老師は元軍属か何かですか?」
「……何故そう思う?」
「ただの宗教指導者にしては……鋭い観察眼ですから」
「………」
ゲンは問い返した。
これという動機があったわけではないが、嘗て自分を一目見てその資質を看破した人間はいない。
勘にせよ必然にせよ、老人にも何らかの背景―軍に近いところにいたのではないかと推察したのだ。
老人は暫く黙ってから、漸く口を開いた。
「軍属……とは言えんが、あの頃は国中が戦っていた」
「……あの頃?」
「長い話になるが……聞くかね?」
「護衛の任務があるんですけど……」
「ここにいても護衛はできよう。休憩がてら、老人の話し相手になってくれんか?」
ゲンは内心舌打ちしていた。老人に捕まってしまったのだ。昔話を延々と聞かされる……
質問をした自分を悔やみつつ、長話に付き合う覚悟を固めた。
「この国、汎ムスリム会議はどうして出来たと思うね?」
「さぁ?」
「お前さんたち大西洋連邦と戦って出来た国だよ……知っていたかね?」
「……?」
大西洋連邦と戦って出来た国―?その最後の言葉にゲンは訝しがった。
彼の属する大西洋連邦がムスリム会議と戦ったという話をゲンは知らなかった。
おそらくゲンだけでなく、アウルやスティング、ステラが同じ事を言われても不思議に思うだろう。
「……初耳ですが」」
「この世界がコズミック・イラに変わる前の話だからのう……」
旧世紀の話か―ゲンが想定していた歴史は、あくまでもCEの年代に入ってからの歴史であった。
過去に世界規模の大戦があったことは知っていたが、詳しい知識があるわけではなかった。
しかし、その過去の歴史は彼の知らない話ではあった。同時にゲンは些かの興味を覚えつつあった。
「自分は知らない話でした。少し興味がわきましたが……手短にお願いします」
老人に釘を刺した上で、ゲンは話を聞く気になった。
19 :
10/25:2005/11/27(日) 06:34:27 ID:???
汎ムスリム会議―その歴史はAD年代、7世紀より始まっていた。
アラビアの商人ムハマンドが創始した宗教がイスラム教であり、ムスリムとは神に帰依する者達を言う。
旧世紀には、イスラム教国は複数存在したが、信条や部族間の争いが絶えず、国が纏まらなかった。
また、産油国と非産油国では経済的格差も相当にあり、その面でも行き違いは存在した。
そして、石油という旧世紀の最高の天然資源は常に利権が発生していた。
「この地域に嘗て湧いていた石油……
本来なら国を富み栄えさせる物だったろうが、それは即ち膨大な利益を生んだ。
そして、その利権の発生するところには常に大西洋連邦……あの頃はアメリカと呼ばれていたが……
まぁ、常にお前さんの国が干渉していてな。いろいろ厄介な事になったのだよ」
「……厄介なこととは?」
「昔の大西洋連邦は石油利権欲しさに兎角干渉してきてな……
ユーラシア諸国と一緒になって、やれユダヤの民人が抑圧されているだの、運河を作ってやるだの……
果ては民主主義がないだのと、とやかく介入して石油資源を確保したがったものだ」
「……どう介入したんです?」
「宗教的対立や民族的対立に乗じて介入してきたのさ。
アメリカと呼ばれたあの国と親しい国は利益を得、機嫌を損ねた国は滅ぼされもしたか……
つまり……石油を巡る昔の大西洋連邦やユーラシア連邦による利権争いで、ゴタゴタがあったんだよ」
しかし、旧世紀末に状況は一変する。石油資源の枯渇により、世界的な不況の波に各国は襲われた。
イスラム教国もその波に襲われたが、石油という最大の資源を失ったことで窮地に立たされた。
欧米各国が排他的経済ブロックを築く中、輸出資源の石油の喪失は経済力の喪失を意味した。
「で、どうなったと思うね?」
「……石油利権がなくなったのなら、そいつらも居なくなったんじゃないですか?」
「その通り。彼らは石油が湧かなくなると潮が引くように居なくなった。
ただ、連中が利権争いの最中に残したものだけは……その後もずっと尾を引いたがな」
「……それは?」
「残ったのは、彼らが干渉し煽った……宗教的対立と民族的対立だけだよ」
イスラム諸国は、石油という資源を失ったことで貧困に喘ぐこととなる。
国内的な批判をかわす狙いもあってか、イスラム各国の為政者は宗教的対立・民族的対立に乗った。
石油資源の枯渇を境に、イスラム諸国は再び内紛を繰り返す騒乱状態に陥った。
同時に、世界ではもう一つの騒乱が始まっていた。
石油資源に変わるエネルギーの発掘という問題が残っていたのだ。
「当時の地球の国々は、エネルギー問題の確保として鉱物資源のウランを頼った。
そして、そのウランを求めてまたあの国、大西洋連邦になる前のアメリカが覇権を求めたのだよ」
「……それが第三次世界大戦の引き金になったと?」
「そういうことだ」
まるで歴史の講義だな―
ゲンは当初こそ多少興味を抱いてはいたが、次第に世界史の授業を聞いているような気にもなった。
20 :
11/25:2005/11/27(日) 06:36:20 ID:???
第三次世界大戦は、同時に国家の統合・再編を促した。
アメリカ・カナダ・イギリスを中心とした大西洋連邦と、ロシアと欧州各国を統合したユーラシア連邦。
中国を中心にアジア各国を再編したアジア共和国、赤道周辺の各国の連合体となる赤道連合……
そしてあるときを境に、イスラム教国が連合した汎ムスリム会議も形成されることになる。
「だが、その統合の前に……悲劇が起きた」
「……悲劇?」
「最後の核が……使われたのだよ」
中央アジア戦線では、インドとパキスタンの戦争に発展していた。
カシミール地方はその戦争の最中、最後の核が使われた悲劇の地であった。
それが契機となり、戦争終結への機運が世界で高まり、国家の統合・再編への流れへと繋がったのだ。
「インドは赤道連合の中核となり、パキスタンと呼ばれた国は汎ムスリム会議に属したのだよ……」
「……今回貴方の護衛に赤道連合が関与しないのは、それが原因ってことですか?」
「うむ」
「けど、それはCEになる前……もう70年以上前の話じゃないですか?未だにそんなことを……」
「それが歴史というものだ。他国のお前さんには分からない話だろうが……
今もムスリム会議は大西洋連邦やユーラシア連邦に抑圧された過去の歴史が、尾を引いているのだよ」
赤道連合に属する旧インド領は、ヒンドゥー教徒が多数を占め、イスラム教徒は10%程度である。
創立当初から赤道連合は、最後の核の悲劇を教訓に両宗教の融和を推し進め、対立は緩和された。
だが、汎ムスリム会議との関係は、隣国ながら過去の戦争での負い目もあり頑なな外交関係であった。
故に今回の護衛にも、赤道連合は参加できないでいた。
「ふむ……些か喋りすぎたか」
「もう一つ質問させてください。
今の話だと、汎ムスリム会議は未だに大西洋連邦も快く思っていないってことになりますが……」
「そうだな」
「2年前の大戦でムスリム会議がザフトを受け入れた理由ってのは、昔の……恨み晴らし?」
「……石油がなくなって困窮した我々を、昔の大西洋連邦やユーラシア連邦は何もしてくれなかった。
煽られた対立はそのままで……悪戯に戦火を拡大させ、国を乱されたという想いがあったのさ。
今でも豊かではないこの国に様々な技術を持ったプラントが来た時、会議は彼らと手を組もうとした。
もう大西洋連邦やユーラシア連邦といった大国に……国を左右されたくなかったのだよ」
だが、プラントが何の見返りも要求しなかったわけではない。
ザフト軍の対ユーラシア戦線への足がかりとして、領土内にマハムール基地を建設されもした。
ジブラルタルやカーペンタリア基地と比べ規模は劣るものの、拠点を置かれたことに変わりはない。
先の大戦の最中、幾度かマハムール基地周辺では、ザフト軍と連合軍との戦闘もあった。
「武器を持って他所の国にやってくる者に……碌な連中はいない。
ザフトが拠点を持っている国々が、昔どんな国だったか知っているかね?」
やがて老人の話は、プラントとムスリム会議の関係にまで話が及んでいた。
21 :
12/25:2005/11/27(日) 06:37:46 ID:???
ザフトという単語が出てきたことで、老人の話に対するゲンの関心は一気に高まった。
老人の話から、今後ザフトと戦う上で何か役立つことが聞き出せるかもしれない。
そんなことを考えながら、先の老人の問いに答えた。
「……ユーラシア直近のジブラルタル、大洋州連合のあるカーペンタリア、アフリカ共同体がありますが」
「そう……ジブラルタルは兎も角、カーペンタリアのあるオーストラリアもアフリカも……
大西洋連邦やユーラシア連邦の植民地だった国だよ。植民地支配が終わっても、負の感情は残る。
武力による制圧が終わっても、経済的に富める国である支配国との格差は歴然としている。
国家の発言力が経済力と軍事力に比するなら、過去の歴史と相まって潜在的な劣等感が残るものだ」
「プラントは……いや、ザフトはそれを利用したと?」
「それもあるがもう一つ、オーストラリアと中央アフリカには……
戦争をする上で欠くことのできないものが眠っている……何か分かるかね?」
「……天然資源……ウラン?」
「……さっきまでの話をよく聞いていたな」
プラントが戦争をする上で欠くことのできないもの―それがウランであった。
ウランのほかにアルミニウム鉱石といった金属類を精製するための物質もまた必須である。
そんな鉱物資源確保の要請もあって、ザフトはオーストラリアやアフリカに拠点を置くことにしたのだ。
「大洋州連合やアフリカ共同体は親プラント国だが……
ザフトの拠点を置くことで、それらの国は嫌でも戦争に巻き込まれよう。
プラント政府は表向き親プラント国とは友好的に接してはいるが……その真意は別であって……
かつて大西洋やユーラシアに抑圧された者たちを取り込み……ナチュラル同士を争わせるつもりかもな」
「……ナチュラル同士を争わせる?」
「ナチュラルとコーディネーターの争い……先の大戦ではこの構図が成立していたが……
人数で劣るコーディネーターが真っ向から戦争をして、大西洋やユーラシアを制圧できるとは思えん。
制圧できない限り戦争の火種がプラントを襲う可能性は常にあるが、それを打開するにはどうする?
まずは、ナチュラルとコーディネーターの争いという図式から崩さねばならんだろう」
「そのためにプラントは……汎ムスリム会議を始めとした国々を利用したと?」
「私はそう思って二年前の会議でそれを訴えたが、案の定今の会議はザフトの拠点を持て余している」
老人は最後に、自分が会議に出席し、ザフトに撤退してもらうよう計らうつもりだと付け加えた。
そして、最後にゲンに言った。
「一つ覚えておくといい。戦争とは一面的には捉えられん。
戦争の影では様々な立場の、様々な者達の思惑が絡み合い、虚虚実実の駆け引きが行なわれる。
お前さんは軍人としては強いのだろうが……あくまでそういう連中に踊らされているに過ぎんのだよ」
「………」
「一つ聞いておきたい。お前さんは……何のために戦うのだ?祖国のためか?」
最後の問いにゲンは沈黙した。彼はソキウスである。
シン・アスカとしての記憶は抹消され、戦うことのみを義務付けられた存在……
戦う理由などは存在しなかった。生きることが戦うことと同義であり、彼は人であるが兵器でもあった。
22 :
13/25:2005/11/27(日) 06:39:02 ID:???
夜が明ける―太陽の光が東の空を薄っすらと照らし始めていた。
結局昨晩の老人の問いには答えないまま、ゲンは部屋を辞していた。
しかし、愛機ストライクMk-Uを乗せたトレーラーの中で、彼は一晩中その問いの答えを探していた。
ソキウスとなる前の記憶は消され、彼の戦う理由は忘却の彼方であった。ただ兵器として生きる"戦友"―
そんな彼は、見つかるはずも無い答えを一晩中考え、探し続けていた。
「俺は……何のために戦うんだ?」
国のためか―?だが、所属する国、大西洋連邦のために戦っているつもりはない。
ジブリールのためか―?彼は自分の主であり彼の命令に従ってはいるが、彼のために戦うわけではない。
ネオのためか―?彼は上官であるし現場の指揮官だが、彼のためというつもりもない。
では、何のために戦う―?
「……ゲン、おはよ……」
「ん……ステラ?もう起きてたのか?」
思考は僚友であるステラ・ルーシェの声で中断された。
まだ夜明だというのに、既に彼女は起きていたようだが……仮眠明けなのか、目をこすっていた。
「敵……来なかったね」
「まだ一日目だ。これから徐々にカシミールに近づく。
カシミールはムスリム会議の領土だから、近づけば近づくほど敵が来る可能性は高い。
会議が始まるまであと二日……頑張ろう」
「……うん!」
ステラの言うとおり、初日は敵の襲撃を受けなかった。
隊長が危惧していた反対勢力も仕掛けてこず、ザフトらしき影も見えなかった。
だが、これからムスリム会議領に近づくにつれ危険度は増す。まだ気は抜けないのだ。
そして、ゲンの予想は的中することとなる。
同刻、ペルシャ湾に位置するザフト軍ハマムール基地―
基地司令ヨヒアム・ラドルは一人の来客を迎えていた。
「朝早くに到着とは、ご苦労なことだな」
「……宇宙にいると、こっちの時間なんて分からないんだよ。まだ時差ぼけにはなってないけどね。
それより、ミネルバが昨日この基地に着いたらしいが……ローエングリンゲートをやるのかい?」
「ああ、そのつもりだ」
「それなら、持ってきた新型のテストも兼ねて、私もその任務に参加しようか?」
「いや、君には別の任務を受けてもらいたい。これは極秘任務で……君にしか出来ない任務だ」
改まった口調で、ラドルは目の前の女性士官に命令を下した。
「ヒルダ・ハーケン、"不屈の抹殺者"と共に……ストライクとガイアを討って貰いたい。
やつらはもうすぐ汎ムスリム会議の領内、カシミールに侵入してくる。そこを奴等の墓場にしてやれ」
23 :
14/25:2005/11/27(日) 06:40:17 ID:???
二日目の行程―
アムリットサルを発った一行は、赤道連合領から汎ムスリム会議領へと歩を進めた。
国境の検問を通過し、ラワールピンディを抜けノーザンエリアという地域に差し掛かった頃……
前日同様前方のトレーラーに乗るゲンに、同乗していた隊長が言った。
「注意しろ。連中が仕掛けてくる可能性が高いのは、ここからだ……」
「一つ聞いてもいいか?」
「何だ?」
「この先はギルギットって街だが……そこから先は何もない筈じゃないか?
俺はカシミールに行くとしか聞いちゃいないが……あんた達は一体何処を目指しているんだ?」
「……行けば分かる」
ゲンは道程を移動中も警戒は怠らなかったが、如何せん暇である。
手元にあった地図を何気なく眺めていたが、自分達の目的地が判然としないことに違和感を覚えた。
ネオからはカシミールとだけ言われたが、カシミール地方自体広く、目的地が何処か検討もつかなかった。
その地域で一番大きいはずのギルギットの街が目的地かと思っていたが、隊長の口ぶりだと違うらしい。
が、更に踏み込んで聞いてみたものの、隊長はハッキリとしたことは言わなかった。
不可解に思いながらも、彼は引き続き護衛の任務を継続した。
ギルギットの街に着いた頃には既に日が暮れていた。
だが、一行は街を素通りし、夜中にもかかわらず進行を止めなかった。
不思議に思ったゲンは、再び隊長を問いただした。
「街に泊まるんじゃないのか?
まさか、このまま……街灯もない道を夜通し進むって言うんじゃないだろうな?」
「あと少しだ。もうすぐ着く」
やがて、一行は小一時間ほど進んだ後、一軒の邸宅の前で歩みを止めた。
しかし、その邸宅は古ぼけていて、とても会議に出席する要人が泊まるところには見えなかった。
「本当にここか?まるで……ただの農家じゃないか?」
「……ここだ」
隊長は事実だけをゲンに伝えた。
先日泊まった邸宅とは比較にならないほど狭く、また粗末な家屋であった。
だが、舌打ちしても現実が変わるわけではない。すぐさま彼は自分の任務に取り掛かった。
トレーラーの軽合金製の扉を開け、積んであったストライクMk-Uの起動準備に取り掛かる。
休眠モードから戦闘ステータスに切り替え、機体に異常がないかを確かめた。
「問題なし……だが、敵が来るとすれば今夜……か」
再び機体を休眠モードに切り替え、機体を降りる。
明日開かれる会議までは臨戦態勢を取っておかなければならない。
トレーラーの扉を閉じると、同じく後方のトレーラーからステラが降りてきた。
異常なし……とだけステラは伝えた―が、互いにこの任務の山場が近づいていることを感じ取っていた。
24 :
15/25:2005/11/27(日) 06:41:28 ID:???
その頃―ゲン達の元に一機の輸送機が向かっていた。
ヒルダ・ハーケンは、既に新型MS"壮大なる不屈の抹殺者"―ドム・トルーパーの機上の人であった。
コクピットの中で、輸送機に同乗していたクルーから"敵"の動向を聞いていた。
『既に一行はギルギットの街を出ています。また、2台のトレーラーも確認されています。
ニューデリーを出てから積み替えた可能性もゼロではありませんが……おそらく中には……』
「ストライクとガイアが入ってる……ってことね。でも、パイロットってのは……所詮ナチュラルなんだろう?
ザフト相手に散々暴れた黒いストライクは兎も角、ガイアは……碌に戦闘もしていないんだ。
実質……ストライクを落とせば終わりさ」
『でも、実際ガイアの性能はかなりのものですぜ?元々、地上戦用に開発されたMSなんですから。
MA形態の機動力も……バクゥやラゴウの比じゃありません』
「だから……単騎とはいえドムで私が出てくることになったんだろう?」
Dauntless Obliterator Magnificent―"壮大なる不屈の抹殺者"
彼の機体はグフ・イグナイテッド同様、ザフト軍正式採用量産型MSのコンペティションに落選していた。
理由はコスト高と、ミラージュコロイドを応用した攻性フィールドがユニウス条約に抵触していたからである。
しかし、戦争が始まり、グフが正式採用に漕ぎ着けたのと同様、この機体も日の目を見ることになった。
そしてもう一つ、この機体にはユニウス条約で禁忌とされたものが搭載されていた。
『けど、気をつけてくださいよ?そのMSが直撃食らった日には……』
「……私を馬鹿にしているのか?」
『い、いえ、そういうわけでは……』
「ま、心配なのは分かるよ。素人同然のムスリムの連中との連係プレーをしなきゃならないんだからね。
戦争で一番やっかいなのは強大な敵より……足手纏いの味方さ。せいぜい気を付けるさ」
『お、お気をつけて……』
クルーはヒルダの機嫌を損ねたのかと冷や汗をかいた。
ヒルダ・ハーケン―ザフト創設以来、現役最古参のザフト・レッドにして隻眼の女性エースパイロット―
先の大戦では穏健派とされるクライン派に属してはいたが、元々ザフト創設時には派閥争いなどなかった。
パトリック・ザラとシーゲル・クラインの蜜月関係は続いており、派閥さえ存在しなかったと言える。
また、ザフトを創設したのはパトリック・ザラであるから、当初彼女はザラ派に近い存在であった。
後にクライン派に属することになるが……それまで彼女は幾多の激戦を潜り抜けてきた。
そんな彼女でさえ今度の任務は異常であると思えた。
先日、ムスリム会議の派閥争いの最中、ストライクがムスリムの領域に侵入してるとの情報が入った。
連合派の宗教指導者に同行しているらしいが、その人物はプラント派の会議の人間からは疎まれている。
歴史的背景から大西洋連邦やユーラシア連邦を嫌う者がムスリム世界には多くいたが……
一部過激派がその連合派の宗教指導者の暗殺を目論み、ザフトにも増援を要請して来たのだ。
だが、その要請とは暗殺の援護であり、あくまでも護衛のMSが起動してきた時のみ戦闘参加要請……
「……武装組織と連携してストライクとガイアを倒せって命令は、シンプルな作戦じゃないね……」
彼女は全てザフトがやればよいとも思ったが、プラントと汎ムスリム会議の関係も相当に微妙なのだ。
今回はマハムール基地の存在を黙認してくれている汎ムスリム会議の顔を立てることになった。
それがヒルダには不満であり、同時に一抹の不安を抱かせてもいた。
25 :
16/25:2005/11/27(日) 06:42:37 ID:???
「で、今日は何の用です?」
ゲンは悪態をつく。前日同様老師―あの老人から呼び出しを受けたのだ。
屈強な護衛の間を抜け、彼は老人の部屋に案内された。
「昨日の話しの……続きをしようと思ってな。
お前さんに何のために戦うのか、と聞いたら黙り込んでしまって……話が途中だったろう?」
「はぁ……」
律儀な老人だ―
そんなゲンの思いをよそに、彼は話の続きをした。
「第三次世界大戦の頃の話までしたか……あのあと、もう一つの騒乱があったのだよ。
あくまでも軍事的なものではなく、政治的な駆け引きだったが……」
「大西洋連邦のお出まし……ですか?」
「そう……世界再編を進める上で、局地的な紛争の火種は燻っていた。
一度なくなった連合……当時は国際連合とか言っていたが、まぁ地球連合の前身だな。
その連合で主導権を握るべく、連合軍を再編し、紛争がおきているところに入っていったのさ」
大西洋連邦は、建国当初からかつての世界の警察―アメリカの姿を目指した。
幸いカナダを併合したことで天然資源に事欠かなくもなり、再び嘗ての威勢を取戻そうとした。
ユーラシア連邦や赤道連合が小国の併合に手を焼いているのを助けると言う名目で、各国に軍を送った。
そして、まだ連合国家として成立していなかったイスラム教徒の諸国へも……
「当然、ムスリムの国々は反発したよ。石油があるときは手を差し伸べ……
なくなった途端に手のひらを返し、自分達の撒いた戦果の火種はそのままに帰ってしまった。
資源が枯渇し、一番苦しいときに助けてもくれなかった。だから皆反発してな」
「で、また戦争があったんですか?」
「世界大戦に比べれば、戦争と呼べるほどでもなかったが。なにせ皆して連合の侵入を拒んだんだからな。
おかげでムスリムの国々は一つになることが出来た。まぁ連中の思惑通りになったんだから……
結果的に、連中にとっても良かったのではないか?大西洋連邦はすぐに兵を引き上げたよ」
「……終わりですか?」
「うむ。あとは……明日話そう」
まだ明日も話があるのか―そう思い、ゲンがウンザリしつつ部屋を出ようとした時―
部屋の外から轟音が響き渡った。
「―何だ!?」
とっさにゲンは老人を庇いつつ、拳銃をホルスターから引き抜く。
「あれは、迫撃砲の音だな……」
「……ッ!来たか!」
老人の言葉にゲンは敵の存在を確信する。招かれざる客の来訪であった。
26 :
17/25:2005/11/27(日) 06:43:47 ID:???
老人の護衛と入れ替わり部屋を出たゲンは、屋敷の入り口の壁を盾に応戦していた隊長の元に向かった。
「敵は!?」
「数は分からんが……多いッ!支えきれるか分からん!」
「クソッ!」
サブマシンガンで応戦する護衛組みだが、その元に負傷した仲間が担ぎこまれる。
だが、負傷した仲間の発した言葉はゲンを驚愕させた。
「連合の……トレーラーに乗ってた嬢ちゃんが……」
「ステラッ!ステラがどうかしたのか!?」
「まだ……トレーラーに残って……」
その言葉を聞くや否や、ゲンは体調が止めるのも聞かず外へ飛び出した。
銃撃が邸宅を襲っていた―ゴーグルは暗視モードに切り替えているが、銃器の火ははっきりと見えた。
「ステラっ!無事かッ!?」
呼びかけるが、銃声に声はかき消され、彼の声が彼女に届いたのかさえ分からない。
だが、彼女が無事でいるかもわからないが、トレーラーの方向を凝視する。
(一か八かッ……!)
ゲンは意を決し地を蹴った―フルオートマの拳銃2丁を両の手に握り締め、敵中に躍り出る。
その前にストロボ光弾を放ち、目くらましで相手の銃撃を止めるのも忘れてはいない。
だが、そんな小手先の目くらましに動揺する相手でもなかった。
数秒の空白の後、戸外にでた彼を襲撃者から放たれる無数の弾丸が体を掠める―
が、ゲンも必死の思いでストライクのあるトレーラーの元に辿りつこうとした。
相手が人である限り、MSの敵ではない。敵がMSを有していなければ、ストライク一機で形勢は逆転する。
ステラの身も心配であったが、彼女を助けるためにも、敵の攻勢を止めねばならなかった。
だが、やっとのことでトレーラーの元にたどり着いた直後、彼の身を重砲が襲う―
爆音が彼の身を包む―
とっさに地に伏せたことで身の安全は保たれたが……
見ればトレーラーの軽合金の装甲は無残に穿たれている。
四肢が動くことを確認し、彼はその穴の中に身を投げた。
「トレーラーの扉を開ける手間を省いてくれて……助かったぜ!」
精一杯の強がりを言った後、彼はストライクによじ登るが……光が彼の元に向かってくる。
対戦車用ランチャー―人が放つものとしては最上級の火器が彼を襲う。
(……やばいッ!)
思わずゲンは目を閉じた―
27 :
18/25:2005/11/27(日) 06:45:00 ID:???
しかしそれはゲンの身を焦す事はなかった。直前に何かが彼の身を庇った。
死を覚悟し目を瞑ったが、覚悟していた衝撃が襲ってこないことで彼は眼を開けた。
目の前に大きな鉄の塊がある―MSの手―
「ステラっ!」
ガイアの手がとっさに彼の身を庇っていた。ガイアの眼がゆっくりと光を放つ。
こちらをモニター越しにステラがゲンを捉えていた。
『……ゲン!大丈夫!?』
「ああ、お陰さまでな……そっちは?」
手元の通信機からステラの声が聞こえる。
ゲンは慌てて通信を繋ぎ、礼を言いつつ彼女の身を案じた。
『怪我とかは……ない、大丈夫……でも……MS一機……北から来るッ!』
「所属、機種は?」
『分からない……連合でも、ザフトでもないみたい。ライブラリ……該当なし……!』
「チッ……テロリストの改造機か?それともまさか……俺もストライクを起動する!
相手の性能が分からないんだから……無理をするな!連携して一緒に倒すぞ!」
『うん!』
帰ってきた返事は元気であったが、敵の襲来にゲンは嫌な予感がした―その予感は的中することとなる。
もう一人の襲撃者―ヒルダ・ハーケンは、ガイアの起動を許した過激派連中の動きの鈍さを呪った。
「MSが……起動してるじゃないか!暗殺は失敗……これだから素人どもはッ!」
愛機ドム・トルーパーの中で悪態をつく。
汎ムスリム会議は、地域ごと、州ごとに軍を持っていたりもする。
だが、その錬度は近代戦を経験しているザフトや連合とは異なり、脆弱かつ旧式であった。
また、MS運用能力も持ち合わせていない。そのため彼女―ヒルダがこの場に呼ばれもしたのだが……
「コイツを実戦で使うのは始めてなんだ!手加減なんて出来ないから……
テロリストはテロリストとして死んでもらう!巻き込まれても……私を恨むなよ、ムスリムの!」
共闘する襲撃者がMS戦の犠牲になってもやむを得ない―ヒルダは腹をくくった。
ドムをホバリングさせ、機体を高速移動させる。ステラの乗るガイアに向かって―
「……速いッ!」
ステラはガイアのコクピットの中でドムの動きに瞠目する。
相手の機動力は、四足歩行タイプでもないのに、バクゥクラスの速力を持っていたからだ。
それでもステラは臆さず、臨戦態勢を取った。
「ゲンはまだ……動けない……だから、私がお前を倒す!」
28 :
19/25:2005/11/27(日) 06:46:33 ID:???
ステラはゲンから、ストライクが起動した後、連携して相手を倒すよう言われていた。
だが、相手の機動力は速く、彼が機体を起こし戦闘体制をとるまで攻撃を受けない保証もない。
故に彼女は単独でドムに立ち向かった。
MA形態となり後部にメインスラスターを有した1対の背部ビームブレイドを展開する。
これはバクゥのビームサーベル同様、高速で突撃しすれ違い様に敵機を切断する兵器―
ステラは、自機の性能を生かし先手を取り、初撃で勝負を決めるつもりであった。
しかし、彼女の誤算もまたここにあった。
即ち、ザフト軍エースのヒルダ・ハーケンはガイアの詳細なデータを有していたのだ。
ガイアのMA形態での攻撃―それはヒルダの想定の範囲内であった。
「フッ……MA形態かい?まるで犬だねぇ……可愛いよ……でもッ!」
ヒルダのドムはステラの狙いを知りつつ、敢えて直線的に機体を動かした。
だが、装備しているバズーカも構えず、備え付けのサーベルも引き抜かず……
体当たりでもしようかという勢いで機体を突っ込ませた。
そんな姿を見たステラは勝利を確信する。機体がぶつかる直前ですれ違えば勝負が決まるのだ。
機体のコンピュータに両機の相対速度を計算させ、完璧なタイミングですれ違う―筈だった。
「その手は……お見通しだよッ!」
すれ違う一瞬でドムは切り倒されず、逆にステラの乗るガイアを吹き飛ばした。
スクリーミングニンバス―胸部にある高エネルギー粒子発射口から高エネルギー粒子を放散する。
攻性の防御フィールドを展開したドムは、フィールドでMSを破壊する機能を持つが……
MA形態で速度がついていたため、外部装甲が破損しただけでガイアは吹き飛ばされた。
この場合、彼女にとっては幸運に違いなかったのだが……
「ステラああぁぁっ!!」
その光景はゲンの眼の前で繰り広げられた。ようやくストライクを起動させたものの……
眼前でステラの乗るガイアが吹き飛ばされるのを確認させる結果となった。
絶叫するゲンだが、それでも彼は冷静さまで失ってはいなかった。
目の前の光景が彼には不自然に感じられた。
―なぜガイアが陸戦で負ける―?
「……ステラのガイアを弾き飛ばした?
あのMSは……ザフトの最新鋭機……ガイア以上のパワーを持っているってのか?」
ガイアと同程度のパワーを持っている機体は存在しないではない。
同時期に建造されたアビスやカオスもそうであるし、連合製のストライクMk-Uも劣るものではない。
だが、それ以上となると、現行のあらゆるMSを調べてみてもあろう筈がなかった。
ユニウス条約がある以上、MSの運用はバッテリー機体のみに限られていたからだ。
そこまで考えてゲンは一つの考えに行き着いた。信じたくない……が、現状考えられる唯一の可能性―
「まさか……このMSは……!核動力で動いているとでも言うのかッ!?」
29 :
20/25:2005/11/27(日) 06:47:42 ID:???
ゲンが答えに行き着いたとき、ヒルダは僚機が損傷を受けても動かないストライクに舌を巻いた。
「仲間がやられたってのに、随分冷静だねぇ?ひょっとして、もうこの機体の秘密を見抜いたのかい?
だとしたら大したもの……と言いたいけど、仲間がやられても動揺しないのは……気に入らないねぇ」
ドム・トルーパーの秘密―それはNJC搭載の核動力MSであるということだ。
元々この機体の開発が始まったのはユニウス条約締結よりも前からであった。
高性能の量産機―というコンセプトを元に、多様なビーム兵器が盛り込まれてもいたが……
ユニウス条約締結で、機体の設計路線も変更せざるを得ず、路線変更前の試作体がこの一機―
つまり……
「"不屈の抹殺者"……その言葉の意味、身を以って味わえ!黒いストライクっ!」
名に違わぬ性能を有しているのがドム・トルーパー―
機上のヒルダが咆哮する―ガイアをそのままにストライクに向けて進路を取る―
「クッ……来たか!」
ゲンはMk-Uのライフルを放つが、ドムの高速ホバリングにより的を絞りきれない。
苦し紛れにゲンはストライクを飛翔させる―エールストライカーパックにより距離は取れたが……
「上に逃げればいいっていう考え方……甘いんだよッ!」
ヒルダはドムのギガランチャーを構える―
ギガランチャーは砲身上部が実体弾、下部がビームを発射する連装式構造を持つビームバズーカである。
故に通常のMSのバズーカとは比較にならぬほどの威力を持つが……ゲンがそれを知る由もない。
Mk-Uのシールドを構えつつ、上空から地表を滑るように疾走するドムを追う―
が、それもヒルダの計算の内であった。
火力に劣るMSが状況を打破するには、回避行動を取りつつ牽制攻撃を掛けるのが常套手段……
「空に飛んで盾を構えてライフルで牽制……芸がないねぇ?連合の!」
ヒルダはドムを跳躍させる―核動力のドムのバー二アは、あっという間にストライクとの距離を詰めた。
「なにっ!?」
ギガランチャーが火を噴く―回避しようと盾を構えたストライクの、その盾が爆散する。
Mk-Uの中でゲンは慄然とする―離脱しようにも盾の爆発の衝撃で姿勢制御も間々ならない。
一度着地したドムは、再び地を蹴り高度をとる―ヒルダはゲンを射程内に収めていた。
「掴まえたよ!トドメを……受けろッ!!」
だが、その攻撃は遮られる―通信が混線し、何者かの声がヒルダの耳に届いた。
『こっちも……掴まえたッ!落ちろッ!』
30 :
21/25:2005/11/27(日) 06:51:13 ID:???
ドムの背後に黒い機体―ガイアが迫っていた。
ステラは再びMA形態でビームブレイドを展開し、ガイアの四肢で大地を蹴った。
地母神―その名の通り、地上戦闘においてガイアほどの能力を発揮するMSはいない。
バッテリー機にも関わらず、核動力のドムと同程度の跳躍をみせる。
「チッ!しまった!」
ガイアに止めを刺さずにいたことを悔やむが、やむを得ず回避運動に入る。
しかし、振り向いたところで袈裟懸けにドムのバズーカを切り裂かれ、崩れるように地に下りる。
「クッ……!バズーカが……くそッ!」
ドムは凡そ重火器と呼べるものはギガランチャーしか有していない。
ほかはビームサーベルやスクリーミングニンバスといった近接用の武器しかないのだ。
ストライクもガイアもまだビームライフルを所持しており、2機のエース格相手に不利は自明。
不利を悟ったヒルダは舌打ちしつつ機体を滑らせ、後退し始めた。
「バズーカなしじゃ……退くしかないのか?癪だねぇ……!
けど、ストライクに気を取られてガイアに止めを刺さなかったのは……私のミスか……
やはり一人で出来ることには限界がある……ヒルベルトとマーズがいれば倒せたか?」
ヒルダは本来部隊長を務める隊長格である。
あくまでドムの地上でのテストのために地球に下りてきていたのだが……
本来彼女の側にいる仲間の名を挙げ、撤退を決意しながらも再戦への情熱を燃やしていた。
「それにしてもあの声……ガイアのパイロットは……女か?
連合の女性パイロット……"白鯨"や"乱れ桜"とは思えないくらい若い声だったが……誰だ?」
自機に傷を負わせた相手―ステラに思いをはせる。
連合の女性エース、ジェーン・ヒューストンやレナ・イメリアにしては随分と若い声―
ヒルダは離脱しつつ、ガイアのパイロットが何者であるのか訝しがった。
当のステラも逃げ始めた敵機に気づいていた。
「ゲン!あいつ……逃げるッ!」
「追わなくてもいい!あれは……核動力で動くMSだ。迂闊に撃破したら……この辺一帯火の海だ」
「……いいの?」
「仕方ないさ……今の俺たちには、あの老人の護衛が任務なんだ」
追おうとするステラにゲンは状況を説明する。核動力で動くMSを迂闊に破壊すれば……
その動力の崩壊で辺りは壊滅する。そうなれば、あの老人とその護衛の者達もただでは済まない。
だから追撃は断念したが、一方でゲンは不利と見るやすぐさま踵を返す相手の動きに瞠目していた。
パワーでストライクとガイアを圧倒する程の核動力のMS、そしてそれを操るパイロット―
「あの引き際は……鮮やかだな。パイロットの腕もかなりの物……やはりザフトか」
31 :
22/25:2005/11/27(日) 06:52:56 ID:???
ストライクのレーダーから謎の襲撃者―ドムが消えた後、ゲンはステラに声を掛けた。
「ステラ、怪我とかしてないか?派手に吹き飛ばされてたが……」
「……流血……してる」
その言葉にゲンは再び瞠目する―
「お、おい!大丈夫なのか?は、早く止血しないと……どこをやられたんだ!?」
「……唇……切った」
「………」
「あ……血……止まった」
「……そ、それは良かった……な」
尉官でありエース級の腕を持ってはいても、ステラは女の子。
彼女が先ほどの戦いで流血していると聞いて、思わずゲンはコクピットのシートから腰を浮かせたが……
幸か不幸か杞憂に終わり安堵するが、少女への怒りといったものは全くない。
彼女―ステラはいつもこの調子なのだから……
「これで、アウルとスティング、ステラ……3人に借りが出来ちまったな」
オーブでのラクス・クライン誘拐の際、ザフトのアッシュとの戦いでアウルに―
インド洋での戦いで、インパルスの猛攻にあった際はスティングに―
今日の戦いで、ストライクに乗り込む際の窮地をステラに―
「俺は……助けられてばかりだ」
やがてストライクとガイアは、老人達がいた邸宅に戻り機体を降りた。
襲撃者の姿は既に掻き消えていたが、邸宅も半壊しており、ゲンは目を疑った。
「老師!隊長!……やられちまったのか!?」
護るべきはずの人物を護れなかったのか―?
ソキウスとして任務こそを至上とするゲンにとっては、老人達の死は彼の敗北を意味していた。
愕然とするゲンだが、彼の隣に来ていたステラが声を上げる。
「あ、お爺ちゃんだ……」
「……え?」
その声に驚く―が、彼女の声は事実であった。
半壊した邸宅から、老人を筆頭にぞろぞろと護衛の者達が出てきていた。そして隊長も……
「襲撃者は機械人形同士の戦いが始まると消えちまったよ……お陰で助かったぜ。
かく言う俺たちも機械人形に潰されるのが怖くてな……避難用の地下室に逃げ込んでいたのさ」
32 :
23/25:2005/11/27(日) 06:55:15 ID:???
やがて老師もゲンとステラの元にやってきて声を掛ける。
「ご苦労だったな……二人とも怪我はないか?」
「一応、無事です」
「済まなかったな。我々の問題で手を煩わせて」
「……貴方方だけの問題じゃありませんよ、ザフトは……
襲撃してきた機械人形は一機だけでしたが、あれにはユニウス条約で禁止されてた核エンジンが……」
「……!」
老人はゲンの言葉に瞠目した。その言葉を聞くや、立ちくらみでもしたのか不意によろめきもした。
そんな老人を慌ててステラが支える……
「お爺ちゃん、大丈夫?」
「う……うむ。疲れたのか、眩暈がしてな。ありがとう。もう大丈夫だ」
「そう……良かった。さっきの戦闘で……怪我とかない?」
「お陰で、かすり傷一つ負わなんだ」
「良かった……ステラ、お爺ちゃんを護れたんだね?」
ステラの気遣いに老人は、不意に目を背ける。
老人には目の前の少女が機械人形―MSに乗って戦っている姿が信じられなかった。
10台半ばを過ぎたくらいの少女が、大人である護衛の人間も恐れる兵器を操り戦っているのだから……
「お嬢さんに……一つ頼みがある」
「……?」
「お嬢さんはその……機械人形で戦っていたのだろうが、これからも戦っていくのだろうが……
その力を……誰かを護るために使って欲しい。老い先短いオイボレの頼みだが、聞いてくれるか?」
「護る……分かった。ステラ、護る……ゲンやスティング、アウルやネオ……お爺ちゃんも」
そんな二人の些細なやり取りをゲンは見咎めた。ステラが老人の元を離れるや、彼を問い詰める。
「余計なことを吹き込まないでくれませんか?俺たちは……」
「―戦士だから、戦い以外の余計な感情を持たぬよう、訓練されている……と言いたいのか?」
「分かっているなら……」
「お前さんはそれで良いだろう。だが、あの少女はこれから先もずっと軍人として生きるのか?
どこかで銃を置き普通の暮らしに戻ったとき、ただ殺し殺される世界にいたことが足しになるかね?」
「………」
「軍人でも常に誰かを護れる者であろうとすれば、銃を置いた折には……得るものもあるのではないか?」
「……それは気休めです」
「ならお前が彼女を護り……彼女の代わりに殺し……彼女を死なせるな。
古い考えと思うだろうが、我々の国では女に銃を持たせたりはしない。戦いは男の仕事だからだ。
お前は強いのだろう?ならば……その力で、お前が彼女を護り、手を汚し、生き残れ……それが使命だ」
気休めであると一笑に付そうとしたが……
老人の言葉には有無を言わさぬ力強さが込められており、彼は反論する術を持たなかった。
33 :
24/25:2005/11/27(日) 06:57:52 ID:???
夜明け―日の出と共に、老人はゲンを伴い戸外へ出た。
暗殺の危険をゲンは指摘したが、老人は見せたいものがあるとだけ言った。
車に乗り、30分ほど進んだだろうか―突然、車がとまり、ゲンは車外に連れ出された。
停車したのは山の中腹であろうか、眼下には巨大な窪地が10数km余りに渡って広がっていた。
その窪地は自然に出来たものではない―
見た瞬間にゲンは悟った。何らか爆弾のようなものがこれを作ったのだ―と。
だが、このサイズの爆弾はただ一つしか思い当たらなかった。
「老師……まさかここは……」
「昔……ここにギルギットの街があった。よく見ておいてくれ、ゲン。これが戦争の果てにあるものだ。
ただ奪うだけの戦争が残した結末だよ……73年前の今日、ここで最後の核が使われたのだ。
大勢死んだ。この大穴が原因で、今も赤道連合とは相容れぬ仲だ。だから、お前とステラを呼んだ。
その大西洋連邦とも……昔の因縁でムスリムの国々とは、未だに関係が修復できておらん。
憎しみの連鎖だよ……それが今なお我々を結び付けぬ」
「………」
「ゲンよ、盟主にあったら伝えておいてくれ。私の言ったことを忘れないでくれ……とな」
護衛3日目―無事老師はギルギットの街で開かれた汎ムスリム会議に出席した。
予てからの言葉どおり、彼は会議で親プラント政策の転換を迫ったが……それだけに留まらなかった。
『……今日この日、私はプラントに対しザフト軍マハムール基地からの撤兵を求めるものであります。
ただし、この撤兵により、わが国にザフトに代わる如何なる軍隊の駐留を認めるものでもありません。
連合がザフトに代わり駐留を開始すれば、また要らぬ争いの火種になりましょう。
……ムスリム会議は現在連合の同盟条約に参加しておりますが、連合の駐留を認めてはなりません。
今日この地、カシミールで最後の核が使われましたが、二度とあのような悲劇を繰り返してはならない!
他国の争いに巻き込まれてきた我々の歴史……だから、自分達の国は自分達で護らねばなりません!』
この日を含め数日間会議が行なわれていたが、最終的にムスリム会議は以下のように決議した。
ひとつは、3ヶ月以内にマハムール基地からザフト軍の撤兵を要求するする事―
赤道連合を含めた地球連合各国の軍の駐留は、緊急時以外これを認めないこと―
最後に、今回の戦争において状況によっては連合各国とプラントとの仲介役を買って出ること―
予てより中立国であり、連合・プラント間の調停役であったオーブとスカンディナビア王国……
両国は開戦後も影ながら両国の調停に乗り出してもいたが、暫くの後もう一つの国がそれに加わった。
その会議の決定を聞いたロード・ジブリールは舌打ちしていた。
「……やってくれたな、老師!少々貴方を見くびっていたようだ……
あくまでこの戦争を止めようとするか……だが、この戦争は止めようとて止められるものではない!
人類が永遠に生きるためには……何としてもコーディネーターは滅ぼさねばならないのですよ!
殲滅戦にはするな……そう貴方は仰いましたが、奴等には滅びてもらわねばならない!
そのための切り札が、もうすぐここに届く……あのラクス・クラインがね」
34 :
25/25:2005/11/27(日) 07:00:23 ID:NJkVi4WN
ゲンは赤道連合にあるアンダマン基地のJ・Pジョーンズの元に戻っていた。
そして3日間の一部始終を、上司であるネオ・ロアノークに伝えていた。
報告が終わった後、ネオは意外そうに呟いた。
「ふ〜ん、あの爺さんが最後に中立を要求するとは……ねぇ」
「大佐、あの老人はどういう人なんですか?」
「……昔な、世界大戦のあと大西洋連邦が、あの辺りに軍を送ろうとしたんだが……反発食らってなぁ。
イスラム教国が総出で怒って、そのとき先頭に立って戦ってたのが……あの爺さんらしい。
元は宗教家だったらしいが、あの頃は世界中混乱してたらしいから……ね。
何だかんだであの爺さんも戦争に参加して、色んな悲哀を味わってきたんだろうなぁ。
今でこそ宗教指導者としての地位にあるが……昔はあの国は相当に大変だったらしいからな」
「そうなんですか……」
戦争経験のあった老人―
その言葉に、自分やステラのことを慮っていたのも、かつての自分と姿を重ねていたからかもしれない。
そんなことをゲンは考えていたが、やがてネオから話を振られる。
「ところで、爺さんからの質問の答えは見つかったのかい?
何のために戦うのか……か。まぁ、随分と哲学的な話にもなるが、見つかっていたら教えてくれないか?」
暫しの黙考の後、一呼吸おいてからゲンは答えた。
「俺はソキウスです。戦うことしか能がない人間……
けど、そんな俺をアウルやスティング、ステラには命を救ってもらったから……
だから、あいつらにはその貸しがあります。この戦争をあいつらと生き残って、それで……」
「……それで?」
「……それから先は、まだ考えていません。戦争が終わってから考えますよ」
ふぅと、一呼吸置いてから今度はネオが話し始めた。
「前から思ってたんだけど……お前、俺のことはホントどうでもいいんだな。
俺だって一緒に戦っているのにさ。いつもいつも、肝心なところで俺が出てこないじゃない?拗ねるよ?」
「だって大佐は……俺達ファントムペインの将でしょう?
佐官が、MSに乗って戦っている俺たちよりも前で戦うなんて、ありえませんよ。
大佐が死ぬときは俺達とっくに死んでいるでしょうし、俺達が生きてるなら大佐を死なせたりはしません」
ネオはその言葉に顔をしかめる。彼のように前線でMSに乗って戦う大佐クラスなどは滅多にいない。
無論、確かな腕があってのことではあったが、開戦したことで秘密部隊でもなくなったファントムペイン―
公に軍に増援などを求めることが出来る以上、彼が実際にMSに乗る機会は激減するはずであった。
インド洋の戦いでは、基地とJ・Pジョーンズの位置を知られまいとして前線で指揮を執っただけだ。
「ま、そりゃそうだけどさ、俺のこともちゃんと……護ってくれよな?」
護る―その最後のネオの言葉に、ゲンは曰く形容しがたい想いを抱いていた。
老人がゲンに送った言葉の意味を噛み締めながら……
ぐは……最後の最後でsage忘れたorz
後書きのようなものを少々……
一説にはインドも汎ムスリム会議に属するとの説もあるらしいですが、あえてインドは赤道連合にしました。
大多数がヒンドゥー教国のインドが、何故にイスラム圏に入るのか理解できなかったからですが……
今回はCE年表を中心に想像で色々書いて見ましたが、至らぬ点も多々あるかと思います。
お気づきの点などありましたら、後学のためご指摘いただけると幸いですm(__)m
PP戦記お疲れさまでした!・・・何かアニメ設定遵守の仮想戦記というのを忘れてしまうような
重厚な文面・・・脱帽です。
本編では宗教闘争とCE世界を繋げる要素が皆無だっただけに(もちろん意図的
でしょうが)、「戦争そのもの」が薄い印象だったのですが(只のドンパチに成り下がった)
こういう作品の存在があると違いますね。
浅学なもので、コメントに窮しますが、物凄い感銘を受けました。大変でしょうが、
これからも期待しております。
乙ですょ
PP乙です!
おじいちゃんいいキャラしてますねー。
寄り道的エピソードっぽいですがゲンにとってのある種のターニングポイントになりそうですしこの世界における政治的ファクターとしてはとても大きなものっぽいですね。
これが今後の物語にどれだけ大きな影響を与えるかすごく楽しみです。
おもしろいので指摘当はとくに見当たりません><
GJ!
>>PP作者
毎度毎度素人とは思えないな
素晴らしいです
毎回、主人公を中心にしつつ、脇を固めるキャラにしっかりと見せ場を与えてるところが実に堅実
ヒルダも歴戦のパイロットとしての貫禄十分、好敵手にふさわしい
今からステラとヒルダのリ・マッチが楽しみ
>>PP戦記作者様
歴史を含めた戦争背景の練り込みっぷりに脱帽です…
その描写をしながら、ゲンやステラたちへの提言や見せ場をキチンと用意できてるところがすごいです!
原作ではほとんど喋らなかったヒルダ姐さんですが、いい感じの登場の仕方で期待できます。
続きを期待してます!
>>PP戦記作者様超GJ!!
戦争が非常に濃く感じます(本編は激薄。水で10倍に薄めたカルピスくらい)
後、ステラ可愛い。
個人的にはここの作品の中で1番可愛いステラです…おじいちゃんってのがステラらしい。
44 :
通常の名無しさんの3倍:2005/11/27(日) 14:14:56 ID:yRw4IfZw
>>PP戦記作者様超超GJ!!
ウヒョー、やっぱ面白い!!
なんで戦うのか・・・・・
ゲンが悩みはじめて物語が加速し始めるんだすな、続きが早く読みたーい!!
i、 -.、
ヽ丶、_ }:',
_,,.. -‐  ̄:::::::: ̄::::L_
,. -''´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/ イ::::::::::::::::::: :: . . . :::::::::::::::::::ヽ
, '´ /:::::::::::::::::::::::.::.::::. :::::. ::::::::::::::::::::::ヽ
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/イ:::::: :: .:::::、:::::|-ヘ::::jl:::}::::::::::::::{゙ヽ::::::::::'、
/::: :: : .:i::::::i、ト、{彳T7}:イ::::::::::::::::V }:::::::::::ト、_
/:/: .: : : :::ト、:::'、`バ' ノノ'/:::::::::::::::::::V::::::::::i:ハ
//{ : ::: ::::::i:V \ヽ '´:::://:::ィ::::::::::::::i:::::::::/i{ ハァハァ
l/ .i :.::::::::::::トV入`` /イ/ }イ:::::::i:::!::::;::;{
l ';:::i;::::::::::`ヽソ' ☆☆ i{::::/|イ::/l/i
ヽ{ヽ:::i::::{::::ヽ マヽ Vr'".ニユ マユ・・・少しで良いんだ!!マユの顔をもう一度見たいんだ。
ヽ }:ハ::{';::、:::丶/゙}- /// '、_... -.´ ̄ ̄ ヽ
i' ``ヽト、:{j{ ! ̄` 7ソ/ , -‐'´: : /: : : : : : : :|
` ヽ|. | ',',',ヘ7/: : : : :/: : : : : : : : : :l
r 、 ∠`丶、ヽ--‐''7 ´「: : : rヘ:/: : : : / 二ヽ:/
____ ヽ.`丶、 ̄ `1 : / l: : :/ / ヽ : < -=ゝ _ノ{
'、 ̄ ̄ ̄(_` ー-- 、`丶、 `r 、 l/ |:/_ {//ヽ: :\く ト7
 ̄ ̄`}` -`、.、 ゙ヽ j-1 ! r― ∨. | / \: :`ーイ
゙T丶、_〉`‐- | r'> } {_ j-―_.ニ} } \ : /
゙r―‐'、 _, { ̄〉 /´/ ヽ V7 ´ ̄ 「 ∨
` ̄フ工二 -‐''´ : }∠ヶ'´ /∧ /: \ / /. /
PP戦記GJ!!
自分も駄文書いてますけど、メンド臭くて誤魔化して逃げたところに真正面から挑まれてしまいました。
しかもとんでもなく高いレベルで。これはもう諸手を上げて喝采を送る他ないじゃないですか!
いやはや、ファントムペイン作者様には毎度毎度やられっぱなしです。頑張ろう……
じっくり2時間かけて(オィオィ)吟味しながら読ませていただきました
>>39の言うとおりもう指摘なんて不要だなこりゃ
しかし完結まで随分長そうだなぁ(  ̄ー ̄)
もちろん俺は最後まで着いて行きますがな、次回も頑張ってください
ところで無粋な質問だけど、『マユが主人公』でいいんだよね作者しゃん?(・ω・)
PP戦記はゲンが主人公でしょ
もともとは、マユ種と並ぶ最古参の作品で、当初はあくまで短編の外伝みたいな扱いだったのが
人気出て長期連載作品になったという経緯があるからね
こう入っては御幣があるかもしれんが、例外中の例外的な作品だと思う
>>PP作者様、乙です!
宗教方面はまったくの範疇外なので、そういう描写が描かれていることに脱帽です。w
無知な自分が言うのもアレですが、ただ一つ気になったところですが、核動力搭載のMS
とはいえ、機体自身が核エンジンを暴走させない限り、外部からの破壊ではそれほど大規
模な爆発は起こらないと思ったところです。(それでも、辺りに放射能が撒き散らされる
はずですから、護衛の人間や汎ムスリム会議の老人は、ただでは済まないのですが……。
って、無粋な指摘ですかね? 失礼しました〜)
そこは核ミサイル撃って爆発する世界ですから
>>48 まだこのスレでは新参者だったからそこまで知らんかったよ
って過去ログ見れば分かるんだよなこれorz
スマソ、半年ROMってくる
突然ですが投下します。
また話が進まない……
PP戦記とくらべて自分の文才の無さに絶望wwwwworz
53 :
1/9:2005/11/27(日) 23:30:31 ID:???
南海特有の晴れ渡った空、青く透き通った海。
波を裂きながら進む灰色の艦隊……
海を進むその姿は威風堂々し、見るもの全てを畏怖させる力強さを持つ。
地球連合海軍、第七艦隊――
その艦隊を束ねる旗艦、大型空母「ヨークタウン」の艦橋に渋顔の男。
「司令、まもなく作戦領域に到達します」
「ああ、分かったよ。 艦長……」
司令と呼ばれた渋顔の男は顔を正面に向けたまま、背からかけられた声にこたえる。
「しかし、司令……本当にこの作戦はこれほどの戦力を必要とするのですか?」
彼は自身が所属する艦隊、旗艦を取り囲み進む艦艇達を艦橋から見渡す。
そこにはヨークタウンを含め
大型空母1、スペングラー級MS搭載型強襲揚陸艦3、大型揚陸艦1、それらを守る護衛艦が14隻。
この膨大な戦力、彼には到底これから行う作戦に必要だとは思えなかった。
なぜならば自分達が戦う相手はたったの1隻なのだから。
「それほど大切なのだ、あれは……MSが戦場を変えたように、あれも完成すれば戦場を塗り替える。
そのための実戦テストだ。 標的に選ばれたザフト艦には同情するがね」
司令は今まで前を向いたまま動かさなかった顔を横にそらし
ヨークタウンの左舷に寄り添って進む揚陸艦を見るとニヤリと笑った……
Gundam Seed Injustice 第3話『開戦』
54 :
2/9:2005/11/27(日) 23:31:50 ID:???
懐かしい潮の匂い。
オーブの人間には馴染みの匂い。
息苦しいミネルバ艦内から逃れ、甲板へとやってきたシンを出迎える海の香り……
シンはこの匂いが嫌いだった、もう自分には必要の無い過去ばかりを思い出すから。
この匂いと浮かんでくる思い出を打ち消すため、ジャケットの胸ポケットからタバコを取り出し、火をつける。
肺を満たすタバコの煙、ゆっくり空へと吐き出す。
「相変わらずマズイな……」
別にシンはタバコが好きな訳ではなく、普段から進んで吸う事もない。
ただ無性に吸いたくなる時がある。特にこんな時は……
シンはその手にタバコを持ったまま手すりに寄りかかる。
その瞳が見つめるのはかつての故郷、2年ぶりに復讐へと帰ってきたオノゴロ島……
それを見つめるシンの顔は昏く、どこか遠くを見ているかの様だった。
里帰り、もう少し何かを感じると思っていた。
怒り、悲しみ、呆れ、寂しさ……その何も感じなかった。
シンは軽い驚きを覚える。
この国が、自分にとってまったく意味の無いもの成っていたことに。
全ては過ぎ去り戻れない過去、唯一つやり残した事もしてしまった。
(オーブにはもう二度と『来ない』かも知れないな)
55 :
3/9:2005/11/27(日) 23:35:45 ID:???
シンはあえて『帰る』と言う言葉を使わなかった。オーブにはシンが帰るべき場所など無いのだから。
ただ思い残すのは家族の慰霊碑。
それから離れてしまっては自分と家族も離れてしまうことになるのか?
(いや……違うな……俺が生きていることに意味がある。 何時だってそうだった)
自分には慰霊碑など必要ない、家族は慰霊碑にいるわけではないとシンは思い直す。
なぜなら自分が生きている限り家族は常に自分のそばに、記憶の中にいるのだから。
そう思えるようになっただけでもオーブに来た事は間違ってはいなかった、でもやはりもう二度とオーブの土を踏む事は無いだろう……と。
なんだか体が軽くなった気がした。
シンはもう一度タバコを深く吸い込み、そして故郷の思い出と共に海へと投げ捨てた。
「シン・アスカさん、こんな場所にいらしたんですか」
突然背後から掛けられた言葉にシンは顔だけを向ける。
そこには赤い髪が特徴のルナマリア・ホークが満面の笑みで駆け寄ってくる。
ルナマリアは何を気に入ったのかシンに良く話しかけにくる。
「もう少しで出港ですよ。 それまでに配置に付かないと」
シンはルナマリアを無視し、またオノゴロの風景を見つめる。
「シン・アスカさん! 無視しないでくださいよ!」
ルナマリアはシンに並ぶと同じく手すりに寄りかかり、シンがルナマリアを無視した事に頬を膨らませる。
56 :
4/9:2005/11/27(日) 23:36:31 ID:???
「もう、ちゃんと聞いてるんですか!?」
「なぁあんた……フルネームで呼ぶのはやめてくれないか」
あまりのルナマリアの五月蝿さに、シンは視線を向けないが相手をしてやる。
「え? じゃあ何て呼べばいいんですか?」
「シンでいい」
「え〜と……シン?」
「ああ、それでいい」
「じゃあ私もルナマリアって呼んでください!」
嬉しそうなルナマリアの声、ルナマリアの顔を見ると満面の笑み。
付き合いが深いわけでもないシンには、それが素なのか作っているのかは分からない。
そんなシンにルナマリアは気安くなったのかさらに明るく話しかけ続ける。
「そう言えばシンって若いですけど、いったい幾つなんですか?」
「……16だ」
「え! シンって年下だったの!?」
シンとしては歳などどうでも良かった、だがそんな事で大袈裟に騒ぎたてるルナマリアに少しうんざりする。
そしてまだ何かを言っているルナマリアを無視し、振り返ると甲板から艦内へ続く扉へ歩いていく。
「ちょっ、ちょっとドコヘ行くの?」
「配置に付けって言ったのはあんただろ?」
「ま、まってよ! 私も行くから!」
ルナマリアは慌ててシンの後を追う。
自分に並んだルナマリアを横目で眺め、シンは考える。
監視か、それとも興味本位か……この女がなぜ自分に近づいてくるのかを。
どちらにしろ目の前の女は無防備すぎる。
あまり長生きできそうに無いな、とシンは思った……
57 :
5/9:2005/11/27(日) 23:37:21 ID:???
「先に言っておく……本当にすまない、タリア艦長」
ミネルバ、艦長室。
カガリは憔悴しきった顔でタリアに頭を下げる。
後ろに控える護衛のアスランも深い苦悩が見え隠れする。
「いえ、代表のお立場も分かりますから」
「そう言って貰えると助かる。 だが私は艦長に言わねばならない」
そこまで喋り一つ区切る。
これから話す言葉の非難の視線も、敵意も甘んじて受ける。
それは地球を救ってくれたミネルバとクルーに対する、カガリのせめてもの誠意だった。
「大西洋連邦を中心とする地球連合はプラントに宣戦布告した。 中立国として勧告する。
プラント所属ミネルバは即刻我が国より退去せよ」
「分かりましたわ、代表」
「……それでは私はこれで失礼する」
タリアはこの若く不器用な国家元首に微笑み、答える。
分かっていた。
オーブの立場も彼女の立場も、そしてその思いも。
戦争への流れはもう誰にも止められない。
それをわかっているが故タリアにはカガリを責める事は出来なかった。
58 :
6/9:2005/11/27(日) 23:37:51 ID:???
ミネルバ内の通路を保安部員に先導されながら歩く。
カガリは先ほど言った自分の言葉を嘲笑する。
(何が中立国だ! 実際は大西洋連邦の言いなりで同盟する事も時間の問題じゃないか!)
カガリは悔しかった、亡き父の遺志を裏切り理念を守れない事に。
そして自分に守り徹すその力が無い事に。
だからせめて筋だけは徹したかった、すれ違うミネルバクルーの冷ややかな視線を受けても……
クルー達の視線を耐えて歩いていたカガリは前方から歩いて来た人影を見て、思わず立ち止まってしまった。
それはザフト軍の中では見かけるはずは無かった。
――連合軍のジャケット着た少年。
普通ありえない光景、彼はザフト赤服のルナマリアと連れ立って歩いていた。
その彼は唖然とするカガリに、口元に冷笑を浮かべジャケットのポケットに手を入れたまま近づいてきた。
「オーブ代表首長、カガリ・ユラ・アスハ様がこんなところにいるとは驚きだな」
カガリに驚いて立ち止まっているルナマリアを意にもかえさず
唖然としたままのカガリに、久しぶりに会った知人に挨拶するかのように軽く話しかける。
59 :
7/9:2005/11/27(日) 23:38:14 ID:???
「連合軍がなぜ……?」
「連合じゃありませんよ。 俺はしがない傭兵でしてね。
今はザフトに雇われているだけです。 おっと、失礼ですが急いでるのでこれで……」
たったこれだけの会話、だがカガリは彼に言いようの無いものを感じた。
去っていく彼の背中を見ながら、それが何だったのかを考える。
と、視界の端に彼を鋭い表情で睨むアスランを見つけた。
「アスラン、どうした?」
前の保安部員に聞こえないように小声でアスランに尋ねる。
「気付かなかったか、あいつ……ポケットの中でずっと銃を握っていた…………」
アスランはそれだけ小声でささやくと護衛の顔に戻る。
「さあ、代表行きましょう」
それからミネルバから退艦するまで、アスランは険しい顔を崩さなかった。
カガリにはなぜ見ず知らずの傭兵からそんな事をされねばならないか全く分からない。
ただ、あの傭兵の顔は当分忘れられそうに無かった……
60 :
8/9:2005/11/27(日) 23:38:40 ID:???
「くくっ……」
待機モードの薄暗いコックピットにシンの忍び笑いが響く。
ミネルバは今オノゴロから離岸しオーブの領海外へ出るため航行している。
シンはオーブ領海から離れるまでの間、スクランブル要員としてMSで待機中だった。
「あの姫さん、以外に鈍いんだな……護衛の方は気が付いた見たいだが」
シンは別にカガリなんかに興味は無かった、ただ『アスハのお姫様』は嫌いだ。
無能な父親は責任を取らずに死に、その娘はただアスハというだけでまた無能な代表首長になった。
オーブへの思いを吹っ切ってもアスハへの嫌悪は消えない。
だから銃口を向けてやった、胸のうちにありったけの殺気をこめて。
それは特に意味があることではない、危険で趣味の悪い悪戯だ。
ただシンが残念だったのは本当に撃つわけにはいかないことだが……
その時、突然けたたましアラームが鳴り響く。
<コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! MSは至急追撃に上がってください!>
「連合か!? くそっ! 早すぎる!」
それは敵の襲撃を知らせる警報だ。
MS格納庫もとたんにMSスタッフが飛び出て騒がしくなる。
シンも急いでMSを立ち上げつつ毒付いた。
カーペンタリアまでの間に連合との戦闘があると思っていたがいくらなんでも早すぎる。
まだオーブの領海間際のはずだった。
<艦長、タリア・グラディスからミネルバ全クルーへ
本艦前方には空母4隻を含む地球軍艦隊が、後方には自国海域の警備が目的と思われるオーブ軍艦艇が展開中である。
地球軍は本艦の出港を知り、網を張っていたと思われ。 またオーブは後方のドアを閉めている。
我々には前方の地球軍艦隊突破の他に活路はない。
これより開始される戦闘はかつてないほどに厳しいものになると思われるが、本艦はなんとしてもこれを突破しなければならない。
このミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する>
61 :
9/9:2005/11/27(日) 23:39:34 ID:???
タリアの冷静で重い声、いくら虚勢を張った所でこの戦力差は跳ね返せるものではない。
(終わりだな……こんなに早くとは予想外だが、仕方ない)
シンも腹を決める。戦力差が大きすぎて依頼を達成できるとはとても思えない。
だからミネルバを見捨てる。
これからミネルバを出た後は状況を見て逃げ出す。
自分の生存を何よりも優先させると。
<アスカ、すぐに出てちょうだい。 後の二人もすぐに出します。>
タリアからの通信、それは指揮官らしく力強い言葉で指示を出す。
「わかった、出来るだけはやる」
<出来るだけ時間を稼いで。 戦果を期待するわ、お願いね……>
愛機であるジェットストライカー装備のダガーLをカタパルトへと移動させる。
<シン・アスカ、ダガーL発進スタンバイ。
発進シークエンス開始します。 ダガーL、カタパルトエンゲージ>
出撃するこの瞬間、いくら経験しても緊張する事に変わりない。
だがいくつもの依頼をこなし、共に死線をくぐってきたこの機体、今回もうまく切り抜けられる。
シンはそう自分に唱え、深く息を吐く。
頭が段々クリアーになり機体と体が一つになっていく。MS戦闘のいつもの感覚。
<ご武運を……ダガーL発進! どうぞ!>
「シン・アスカ! ダガーL、出るぞ!」
射出でかかる強力なG、シンは戦いの海へと飛び出した……
To be continued......
お目汚し失礼しました。
すみません、結局戦闘は次回へ……
インジャスティス作者様乙です!
こっちのシンはなんともカッコイイですね、ダーティーな感じで。
他にない雰囲気がいいですね。
そしてやっぱり、戦闘に入っていないのにダガーLがやたら強そうに見えてしまいますw
次回も期待してますよー!
なにこの滅茶苦茶強そうなダガーL。
……マジで展開読めねぇな。
連合側はまあ良い意味で読めるとして……オーブ沖海戦、このミネルバの布陣でどう切り抜けるんだろう?
インジャスティス次も期待してます ノシ
保守
インジャスティス作者様GJ!!
本当にこの作品は先が読めないですね…でもそこがいい。
ってか今投票所行って来たんだけど…やはりというかゲン強過ぎ。
一時削除されてた18票を引いたとしても4位だし…。
インジャスティスはこれまでにないマユ像が異質な雰囲気をかもしだしてる
あのシンを名乗ってるのが、過酷な経験の果てに生み出されたマユのもう一つの人格なのか、
それともマジにシンの亡霊が乗り移ってるのかw
>>67 アニメの方もゲンの設定で行けば良かった、と真剣に思う
ガンダム史上初の強化人間主人公ってことで話題になったかも知れんかったのに
マユはギルに拾われて我が家に来たわけだが。
なんたってある日突然義理の妹が出来たんだ。
俺は一体いつ自分がよくある恋愛ゲームの主人公になったのかと混乱したな。
まぁ、結局女の子が次々に登場するかと思いきやそれっきりだったしな、フラグは。
「ちょっと!!私は入ってないの?!」
「ルナマリア落ち着け!!」
俺も当時はまだまだガキだったからな、ギルを取られると持ってマユといろいろしたもんだ。
うん、あとでメイドさんが言うには『私のお姑さんよりすごかった』。
「うわ、女の子相手にそこまで・・。」
「やっぱレイってHG・・・?」
で、いい加減キレたマユに「正々堂々勝負しろ」って言われてな、負けた。
「「「「「「「負けたのかよ!!」」」」」」」」
お前等だってマユの肉弾戦の強さは並のザフト一般兵越えてるのは知ってるだろう?
いや、俺は当時マユを普通の女の子だと思って舐めて掛かって・・・・死んだ。
庭の木に吊るされて一晩放置。しかもその晩はしっかり雨だった。
流石の俺も死ぬかと思ったぞ。
「だって、レイ兄ちゃん本気で勝負って言うから・・・・。」
「マユ、お前の本気はどれくらいなんだ。」
『俺の中の「シン・アスカ」の記録によると・・・。』
「いわんでいい、いわんでいい。」
まぁ、そうして俺達はそれなりに仲良く共存してたわけだが。
『レイ兄ちゃん、お茶。三十秒以内に私の部屋に。』
『・・・・了解だ。』
「「「「「パシリじゃん!!」」」」」」
まぁ、こんなことがあって現在にいたるわけですよ、はっはっはっは。
『レイー、キャラが違う。キャラが。』
>>68 アニメだったらいくらゲンでもキラにボk(ry
>>70 負債はキラを愛してますからね。
監督と脚本をもっと良い人にするなら、
>>68の言うようにアニメで見たかった。
インジャスGJ!ここでミネルバ落ちたら世界はどう転がるんだろ?楽しみだw
そしてほのぼのGJ!
マユとレイの過去にワロタw吊さなれたってギルも助けられないほどマユは強かったのか(((;゚Д゚)))ザクグフゲルググ
うぇーい、皆・・久しぶり・・・ステラです。
今日は・・ステラ達の・・・近況を「ひでおれたー」・・・え?違う?
「びでおれたー」にしたので送ります・・・・・うぇぃっ!
まず・・・ここはステラ達より・・小さい子・・マユよりちょっと下くらい?
の子が多いです・・・、うぇい。
皆・・・けんきゅーじょの・・生き残りだったり・・・「はいきしょぶん」
されるところをテンのお友達が助けたりして・・・ここにきたそうです・・。
テンとまざーが・・みんなの面倒を見ています・・・あ、まざーを紹介します。
『どうも、始めまして。そして、お久しぶりです、お父様。』
まざーは・・・この建物の・・・管理こんぴゅーたーだそうです。
あと・・ハロの子供・・・っていってるけど・・・ほんと?
まざーと・・・・ハロ・・・・・・あんまり似てない・・。
ステラ達は・・・お薬をのんで・・・あとは特訓です・・・。
お薬は・・苦くて・・飲むとちょっと体が重くなるけど・・・こんじょーでカバーします・・。
はんしゃしんけーを鍛えるために・・ぴっちんぐましーんで
あちこちから打ち出されるごうそっきゅーを避けたりしたりしてます。
あと・・・マラソンも・・やりました。山の中で・・・・。
途中で・・アウルと・・ゲンが・・崖から落ちたり・・・パンダに襲われたりしました。
でも・・・パンダ可愛かった・・です・・うぇい。
がんばって・・はやくマユ達を守れるようになりたいです・・。
え・・・?何スティング・・?ゲンが・・とびら・・やぶる?
「マユーーーー!!」
ブチッ!
・・・・以上がステラ達から届いた手紙の内容だった。
まぁ、この手紙というのはゼロの私物として輸送班から届いた物なのだが。
「・・・ねぇ、とりあえずステラ達が元気なのはわかったけど全然その施設の様子がわからないんだけど・・。」
マユがゼロとシンハロの責任者二人に言う。
他の面々もうんうんとうなずき解説を求める。
『えーっと・・あ、俺が説明しちゃっていい?』
解説を始めようとするシンハロ、ゼロはこくりとうなずいた。
『えーっと、まずあの施設は一つの人格コンピューターが管理してるんだ。
俺が作った奴で・・・まぁ孤児院みたいなところだから「マザー」って名づけた。
いや、名前を「オカン」にしようとしたらむっちゃ怒られてさー。あ、話がずれた。
で、基本的には元々強化人間の研究所だった所を改造して作られてて
訓練所とかもこんな風になってる。』
自分自身を画面につなぎ、直接画像を見せる。
『基本的には数年かけて普通の「人間」に戻すのがコンセプトなんだけど・・。
ステラ達、けっこうつらいんじゃないかなー。』
「テンはドS。」
あっけらかんと語るシンハロとゼロ。
『それと治療薬・・・、あれはゼロの分野だったよな。』
話を振られて説明を開始するゼロ。
「あの薬は強化人間の体内にある強化薬の成分を新陳代謝を利用して排出する薬です。
本来は少しずつ使うものだけど・・、テンから来たレポートを見るとどうも運動量を増やして
それに合わせて薬の量も増やしてるみたいだ。
さっきから繰り返してるけど、かなり度を過ぎた・・異常な治療をしてるみたいだ。」
ゼロとシンハロの言葉にメンバーの顔が少し青ざめる。
「スティング・・・・。」
メイリンが泣きそうになりながらスティングの名前を呟く。
「・・・・・ねぇ?その『度が過ぎた特訓』のおかげでどれくらいでステラ達に会えるの?」
マユがシンハロに聞く。
『うーん・・・、ちょっと計算すると・・・・ジブラルタルでは合流できるかな。』
「そんなに早く?!」
シンハロの言葉にルナマリアの驚いた声が聞こえてきた。聞いたマユ本人も目を丸くしている。
『うん、連合の人たちも来るだろ?その時に紛れて合流する予定。
こっちに来る頃は全員あいつらマッチョになってるかもなー。』
冗談をいいながら笑うシンハロ。
『だからさ、スティング達を笑顔で迎えてやってくれよ、皆。あいつら
本当に頑張ってるからさ。』
シンハロは笑顔で言っているものの、そのスティング『達』には一人だけ含まれていない人物がいた。
それは・・・ゲン・ヘーアン。彼のオリジナル、シン・アスカだった。
単発設定小話「マユとユニウスセブン落下 その1」
〜ユニウスセブン落下を阻止すべく出撃するジュール隊〜
イザーク「くそうっ!この亡霊たちがっ!」
ディアッカ「まったくだぜ。こんなものいまさら落としてどうなるってんだよ!?」
シホ「隊長!ディアッカさん!ミネルバが応援に!」
イザーク「ミネルバだと!?ということはマユが?俺のために?」
シホ「もう!こんな非常事態にそんなことをいわないでくださいよ!きゃっ!?」
イザーク「シホー!油断してるとやられるぞ!?」
シホ「・・・(あんたのせいだろーが)」
ディアッカ「イザーク!メテオブレーカーがまだ足りない!」
イザーク「このキョシヌケがー!根性でなんとかしろ!」
ディアッカ「・・・グゥレイトゥ・・・」
シホ「はぁ、だめだ・・・。あの娘がくるとこの部隊は非常識事態になっちゃうわ・・・」
〜合流するミネルバチーム〜
マユ「・・・なんか異様な視線を感じるけど・・・・・・」
ルナマリア「マユ。ボギーワン連中もターゲットだけど、ユニウスの解体が最優先よ!」
マユ「了解!ルナ姉ちゃん・・・なんか私いや〜な視線を感じるんだけど・・・」
ルナマリア「ああ、イザーク・ジュールでしょ?どうせ。あのおかっぱむっつりなんだから。あんまり気にしちゃだめよ?」
マユ「うん」
〜そのころのアスラン〜
アスラン「くそ。まだ俺の前に立ちはだかるのか父上!」
ザラ派「貴様たちはわからんのか!パトリック・ザラの思想こそがプラントが生き残る道だということを?」
アスラン「まだ戦争がしたいか!?お前たちはっ!?」
〜次々に倒されてゆくザラ派たち〜
〜ガーティ・ルーでは〜
ネオ「やっと完成したな。お前の機体だ」
シン「ああ、やっと戦えるんだな・・・」
ネオ「まぁ期待せずにまってるぜ?俺はここで指揮せにゃならんからな」
シン「ふふん。ま、みとけよ。」
ネオ「システムの説明は・・・いらないな?」
シン「大佐のエグザスとほとんど一緒だろ?あのシステムは?」
ネオ「まあそうだがな。数は3倍だぜ?そのうえ小さいしな・・・」
シン「まかせとけって。らくしょーらくしょー。それよりも機体そのものの方が不安だぜ?」
ネオ「む、なんだよ?ここの整備連中を疑うのかよ?」
シン「いや、始動テストしてないんでしょ?」
ネオ「だーかーらー!お・ま・え・が、テストしてくんだよ!」
シン「ええ!?いきなり実戦テストすんの?」
ネオ「いいから、ほら。早くしないとユニウス堕ちちゃうぜ?」
シン「なんか・・・大佐って俺に対してすげー適当だよね?」
ネオ「なにいってんの。俺ほどお前のことを気にかけてる人間っていないぜ〜?さ、いったいった」
シン「へいへい。・・・システムっと、オールグリーン。・・・ん?あれ?こっちのシステム独立してんの?」
ネオ「ああ、そうそう。それな、後付だから独立してんだ。ちゃんと起動させておけよ?」
シン「ふーん・・・。システム起動っと。・・・よし、今度こそシステムオールグリーン。・・・・・・アプレンティス、シン出るぜ!」
ネオ「・・・シン、使いこなして見せろよ?オリジナルのドラグーンを・・・でないと、怖いものがお前を殺しにくるからな」
完 ・・・続きは次回?(単発になってないorz)
>ほのぼの
ステラの独白って文章におこすと軽くホラーだなw
「かゆうま」みたいな怖さを感じる
ジブラルタル再会で、色々とイベント起きるのが楽しみだ
同人アニメの筋にそうと、その前に自由討伐があるが、こっちではどう展開するやら
>単発設定小話
こっちのシンは本名なのね
記憶失ってるところは誰かさんと一緒だが
しかしシンがドラグーン使うってイマイチイメージが沸いてこないな
ほのぼの乙!シンハロはまあ確かにマユー!とか叫ぶ輩には会いたくないわなw
単発乙!シンは実験体みたいな感じか?でももしシンに空間把握能力があったらストフリともタイマンはれそうだ!
単発設定小話「マユとユニウスセブン落下 その2」
〜そして、ユニウス表層〜
マユ「・・・すごい。あれがヤキンの英雄達の戦いなの?・・・!?<キュピーン>・・・なに?この感じ?」
シン「っくっくっくっく。見つけたぜぃ?そのMSがインパルスだったとはなぁ!」
マユ「!?なにこのMS?・・・新型?敵・・・なの?」
シン「お前の相手は俺なんだよ!」
マユ「・・・速い!なにあの運動性?・・・ぱっとみはオーブのアストレイみたいだけど・・・えい、そこっ!」
シン「・・・遅い、遅いぞ!インパルス!本番はこれからだっ!いくぜ、散開!」
〜アプレンティスの背からじょうごの形をした物体が多数飛び出す〜
シン「はっはっはっはー!ほらほらほらほら!ドラグーンばっかおってると腹ががら空きだぞ!」
マユ「!下!?しまった。細かいのに気をとられすぎた?こんなものー!」
シン「!?避けた?・・・っち瞬発力はなかなかじゃないか?」
マユ「もう時間が!・・・あの片割れをもっと砕かないと。もう、邪魔しないでよー!」
シン「動きが、速くなった?でもなぁ、まだ見えるんだよ。お前の動きがさぁー!逃がしはしない!」
マユ「もう、もうもうもうもう!早く砕かないと取り返しがつかなくなっちゃうじゃないの!」
シン「目の反応に体がちゃんと反応するのがこんなに面白いとはなぁ!ほらほら!遅いんだよ!!」
マユ「ぐぅ・・・なによ、このビームの雨は!?でも早く、早く行かなきゃ。地上の人たちが!」
〜ユニウスセブンの片割れに着地するインパルス、追いかけるアプレンティス〜
マユ「うーっとメテオブレーカーは、、あそこね。・・・まだ追いかけてきてるわね」
シン「砕くのはぜんぜん構わないんだがなぁ・・・まだ俺のお相手をお願いしようか!」
マユ「っち、あなたを倒さないとこれを砕かせてもらえないってゆーの?」
シン「ドラグーンってゆーのは、まだまだこんなもんじゃないんだぜ!?」
マユ「こんなシステムを聞いたことがあるわ・・・確か確か確か・・・!ドラグーンシステム!?」
シン「気づいてからじゃ遅いんだって知っているか!―<ピキューン>―あたれー!!」
〜インパルスを蜂の巣にするドラグーン〜
マユ「きゃー!っつ、このままじゃインパルスがもたない!?」
〜一方的に攻撃を受けるインパルス〜
シン「しぶとい!早く落ちろよ!」
マユ「撤退する?・・・だめよマユ。ここで砕かないと!いっぱい人が死んでしまう」
シン「ほら!ほら!・・・!?」
〜突如停止するアプレンティス〜
マユ「?動きがとまった!・・・でもこんな状態じゃ・・メテオブレーカーがちゃんと使えない・・・」
シン「なんだぁ!?ドラグーンが?・・・システムダウン!?っちっちっちっち・・・完成してなかったのかよ!?」
マユ「・・・近くの仲間は!?・・・いない?時間がたちすぎた!?どうしよう、あのMSに手伝わせるしか・・・」
シン「機体は!?システム回復している?・・・ドラグーンの方だけがダウンしてるのか。くそっ!不良品よこしやがって!」
マユ「(すぅ〜)そこのMS!もう時間がありません!ユニウスの破砕作業をてつだっていただけませんか!?」
シン「はぁ!?オープン回線?・・・俺に手伝えってゆーのかよ!?」
マユ「聞こえますか!聞こえてますよね!?お願いです!このままじゃいっぱい、いっぱい人が死んじゃうわ!」
シン「・・・っち(カチ)、誰が手伝うかよ!ここでお前が死ねば、俺は次に行くだけだ!勝手に死んでろ!時間切れだ!」
マユ「!!?この声?・・・いや・・・・・・まさか。・・・お願いよー!このままじゃいっぱい人が・・・」
〜離脱するアプレンティス。立ち尽くすインパルス〜
マユ「どうしようどうしようどうしよう。・・・分離するしかないかな・・・よし!」
〜チェストフライヤー、レッグフライヤーを分離させメテオブレーカーに固定させる〜
マユ「これで・・・よし。ごめんねインパルス。でも今これを砕かないと今以上に混乱が生まれちゃうのよ」
〜ユニウスセブンの片割れを破砕し、そして星屑とともに落下するコアスプレンダー〜
完
保守
>シン「・・・っち(カチ)、誰が手伝うかよ!ここでお前が死ねば、俺は次に行くだけだ!勝手に死んでろ!時間切れだ!」
ま さ に 外 道 !!
なんだこのシンww酷すぎるぞwww記憶取り戻したとき首吊るぞwww
「・・・・・・・。」
マユの心は沈んでいた。ここはパイロット控え室である。
今、ミネルバはフリーダム討伐の指令を受けてフリーダムを追い詰めている。
しかし、ミネルバのクルーはあのMSのパイロットがアスランの親友だと言う事を知っている。
全員沈痛な面持ちだった。そして、とうとう出撃のアナウンスが掛かる。
しかし、その時格納庫から悲鳴が聞こえる。
「誰だ?!インパルスを動かしてるのは!」
「何でハッチが開いてるんだ!!」
マユはその声を聞いて急いでハッチの方向を見る。
今、ここにいない人物でインパルスを動かせるのは『一人』しかいない。
「シンハロ!!何やってるのよ?!皆!!あいつを・・・。」
マユがコアスプレンダーを止めるよう叫ぶが、他のMSは動き出さない。
「ちょっと!!どうなってるのよ・・・・?!」
「・・・ザクが・・起動しない・・?ハイネ!!」
「だめだ!!俺のグフも起動しない!セイバーははどうだ?!アスラン!!」
「こっちも無理だ!!」
MSのパイロット達の声が響く。一体もMSが起動しないらしい。
マユは考えた。おそらく、これは全てシンハロの仕業だろう。
「もう!何考えてんのよ!」
マユは力任せに壁を殴った。
『皆、マユ、ごめん。』
シンハロはコクピットの中で呟いた。
そして、ミネルバに通信をする。
『艦長、すみません。俺の独断で行動しました。これについての責任を全て俺にあります。
フリーダムは俺だけで倒させてください。もし俺が撃墜されてら全てのMSが
機動するよう設定してあります。勝手な行動、失礼します。』
そう書いた文章をミネルバに送る。これとは別にメイリンに自分の指示に従うよう指示する。
【なぁ、こんな事していいのか?特にお嬢さんには。】
そう『相棒』に聞かれる。
『・・・あのパイロットだけは俺が倒さなきゃいけないんだ・・・・。
あんな最低の!MSの力を自分の力だと思って!ちっともMSの事を考えないパイロットは!!』
シンハロの叫びを『相棒』は黙って聞く。
【まぁ・・・、確かにあのMS、前大戦の奴なのにあそこまで戦えるってのはスペック以上だしな。
見ててこっちが痛かったし。相当大天使の整備班は大変だったろうなぁ】
うんうん、という『相棒』。
『・・よし!見えた!!行くぞ!!フォースインパルス!!』
【あいよ!】
シンハロの言葉に、『フォースインパルス』は力強く答えた。
インパルスは目の前にいる青い死神に迫る。
あの機体の動きは十分知っている。あのパイロットは何を考えているか絶対胸部を狙わない。
『はっ!!誰も殺したくないか?!そんなに自分の手が汚れるのが嫌なのか?!
そんなんだったらMSになんか乗るなっつーの!』
シンハロは嘲笑しながらフリーダムに迫る。
フリーダムがこちらを向いてフルバースト攻撃を試みようとする。
だが、混戦状態ならともかく、一対一のこの戦いではこの動作は決定的な隙である。
ビームライフルを撃ち、それを防ぐためシールドを使用するフリーダム。
こうしておけばフルバーストは使用できない。
なおかつ、背を向ける事は自殺行為。逃げるにも逃げられない。
【ほらほらっ!どんどん行くぜ!】
『そんなに戦うのが怖いのか!あんたは!!』
機械ならではの一切のためらいのない正確な射撃でフリーダムを狙うインパルス。
確実にコクピットを狙う。しかしそれはパターン化した動きで、フリーダムも慣れてきた。
『バカが!わざとだっつーの!こっちはそっちの癖は十分研究してんだよ!』
フリーダムが回避する先、そこを予測しさらに始めに胸部を狙う風にフェイントし、Nジャマーキャンセラーのある頭部を狙う。
シンハロの予測どうり胸部の部分を防護したフリーダムは無防備な頭部をやられる。
フリーダムの色が灰色に染まっていく。
『なるほど、無くなるエネルギーを節約か!いい判断だけどな!!ごめんな!フォース!』
【うぉぉぉいっ!?ちょっとまて?!後で覚えてろよぉぉぉぉ!!】
『フォースインパルス』の叫びを無視してインパルスは分離、そしてチェストフライヤーと
レッグフライヤーをフリーダムにぶつける。
『メイリン!ソードシルエット!!』
シンハロの声に合わせて、曇天に生える赤い剣士が姿を現す。
背部の剣をつなぎ合わせて大剣にし、フリーダムに斬りかかる。
『ソード!!いけるな!!』
【無論だ!】
『ソードインパルス』に声をかけ、フリーダムを切り裂こうとする。
『・・・・・っ!ゴメン、あんたをこんな形でしか助けてやれなかった。』
これから破壊するMSに謝り、怨嗟をこめた言葉をそのパイロットにぶつける、
『あんたみたいな!!あんたみたいなMSを愛さないパイロットなんかに!!どんな意思があろうが!
どんなに正しかったとしても!どんな理由であったとしてもMSに乗る資格は無い!』
それは機械からの悲痛な叫び。戦場で主人を守れずに無残に目の前のMSにやられていった全てのMSの叫び。
『あんたなんかぁぁぁぁぁぁっ!!』
そう叫んで、シンハロはフリーダムを真っ二つにした。
貫かれてもー♪好きな人ー♪どうも、ほのぼのです。
いま後書きを書きながら地震に襲われてます。結構強いな・・・。
慣れないMS戦なんて書くもんじゃないね、とーさか。
同人アニメ以下の仕上がりになったらどうしようともうガクブルです。
あっちはアニメでずるいよ・・、こっちなんて映像はMADが限界だよ・・。
しかもマユの素材少ないよ・・・・・・話がそれましたね。
ちょっとまた忙しくなるのでしばらく投下はしないと思います。
でも、フリーダムを倒したのでそろそろジブラルタルです!
シンハロvsゲンをお楽しみに(え
大丈夫だよ、ほのマユ。
俺、これからも(作品を)読んでくから。
機械に心があるって設定、面白いなあ。
読んでてなんか新鮮な感じでした。
まぁ頭にNジャマーキャンセラーがあるのはドレッドノートなんだけどねフリーダムは頭こわれても平気だったし
>フリーダムは頭こわれても平気だったし
種のメンデル戦の時のことなら、近くに正義もいたしなぁ……
ドレッドノートと同じくアストレイによれば、NJC搭載機の近くでは同じくNJCの影響下に入って核エンジン使えるし
ほのぼの作者様GJ
シルエットごとに性格が違うってのが良いなー
ソードとか幻の魔女っ娘インパルスに合体するの嫌がりそうw
シンハロ対ゲンのマユを巡る壮絶な死闘期待してます。
自由のNJC、機関部に埋め込まれてる、って書いてあるね。(MGインストより)
・・・資料はオフィシャルファイルしか持っていないもので・・・。
今回はきちんと調べないで予測でかいた自分のミスです・・。
ガンプラは西川さんちのオレンジ達とゼロとスカイグラスパーのしか持ってない・・。
あとザクザクの奴(ぼそっ)
ほのぼの作者様乙&ドンマイ
てかそんなどーでもいい設定、いくらでも弄っていいってばさ
でも流石にこの状況ではほのぼのできんかぁ
妙にほのぼのしても確かに萎えるが
シンハロ、カッコヨス
ちょっと今から一票入れてくる
95 :
Hina:2005/12/03(土) 14:20:11 ID:???
ガンダムSEED MAYU‘S DESTINY
プロローグ「運命の始まり」
軍病院の一室、ベッドと機械だらけの部屋の中にベッドで眠る少年、シン=アスカと傍らで様子を伺う少女、マユ=アスカの姿があった。
いくつもの点滴と機械に繋がれた少年の瞳は開くこともなくただ機械の音だけがシンの命があることを証明している。
「私ね、インパルスってMSのテストパイロットに選ばれたの…」
「ミネルバは明日から2ヶ月の航海にね…」
マユは兄にしばらく会えない事を名残惜しんで面会にきたのだ、明日からはミネルバはテスト航海でしばらく帰ってこれない、今日の面会も艦長のタリア=グラディスに半ば強引に頼み込んでローテーションを変更してもらったのだ。
「ごめんね、お兄ちゃん、もし起きて私のこと知ったらきっと怒るよね」
まだまだ話しかけたいことは一杯あった。ミネルバの仲間のこと、あれから3年間の話、時間がいくらあっても足らないくらいなのだ、しかし無常にも時間がすぎてしまっている。病室の扉の前で
「またね、お兄ちゃん」
そう最後に話しかけて病院の出口に向かった
「ほら、あの子……」
「噂の最年少ザフトレッドよね……」
「お兄さんが、植物状態……」
周りが自分と兄の事をヒソヒソと喋っているのは聞こえたが無視して出口に向かう、そこには赤い軍服を着た少女がマユのことを待っていた
「ルナお姉ちゃん」
「あ、マユ」
「ごめんね、待たせちゃって」
「ううん、いいのよ…お別れはすんだの?」
「うん、帰ってきたらまた会えるし」
「今度は私も会わせてよ、お兄さんに」
「うん、いいよ」
「約束よ…さあ宿舎に帰りましょうメイリンがご飯作って待ってるよ」
「食べ過ぎると太るよ、ルナお姉ちゃん」
「コラー!そんなこと言わない!」
「アハハッ」
最後の日常は終わりを告げる、これが少女の長き物語の始まりである
96 :
Hina:2005/12/03(土) 14:22:47 ID:???
下手な文章で申し訳ないですが影響受けて書いてみました><
>>96 乙!なかなかよかった!
続きを期待してるぞ。
単発設定小話 脇話「ロゴスとブルーコスモス」
〜グラスを揺らし、猫の背をなでる男〜
ジブリール「さて、ここまでは我らのシナリオどおり。もう一押しするには・・・是非とも力をお貸しいただきたい」
〜複数のTV映像より〜
長老A「しかしザフト連中がうまいことユニウスセブンを砕いてくれたが、それでも被害は甚大だぞ?」
長老B「ふぉっふぉ、そこはほれ私が儲かる番ですなぁ」
長老C「人を助け、戦いを助け。ですかな?」
長老D「ふふ、ですな。いずれにせよ、我らは”助け”を与える立場ですからな」
〜うなずく長老たち〜
長老D「ジブリール、我らの意思は決まった。あとはお前たちの出来しだいだぞ?」
ジブリール「・・・ありがとうございます。かならずや世界をよりよき未来へ導いてみせましょうぞ」
長老D「アズラエルのような醜態をさらさぬようにな・・・忘れるなよ?その地位に後はないのだからな?」
ジブリール「わかっておりますよ。エクステンデットの技術も向上し、新たな技術もございます。お任せください」
長老D「ふん、まぁよかろう。ではな」
ジブリール「では、青き清浄なる世界の為に・・・」
〜映像がロゴス長老からネオへと切り替わる〜
ジブリール「やぁ、順調そうだな」
ネオ「大筋では順調ですがね・・・コード番号40のMSが少々・・・」
ジブリール「ああ。アプレンティスかね。どうかね、少しは使えるのかね?」
ネオ「思っていた以上の力をもってますね。ドラグーンをいきなり全展開で使ってくれましたよ」
ジブリール「ほほぉ、君でも10個が限界だったかな?」
ネオ「そうです。で、そのアプレンティスですがシステムが途中ダウンしてしまいましてね」
ジブリール「なに?・・・そうか。そいつはすまなかったな。オーブには苦言を入れておくよ」
〜突然響く呼び出し音〜
携帯「マユでーす。ごめんなさい、マユはいま電話に出ることができません。なにか・・・」
シン「ああっと。変なボタンおしたか?」
ネオ「・・・おい!ごそごそいらんことしてるんじゃない!暇ならシステムチェックしてこい!・・・ったく」
ジブリール「・・・コホン、大佐。今のが彼かね?」
ネオ「申し訳ありません。落ち着きのないやつでしてね」
ジブリール「かまわんよ。それぐらい余裕があったほうが面白いじゃないか?」
ネオ「・・・はい。話が途切れましたな。・・・そう・・・さて口調を変えさせていただいても?」
ジブリール「フフン、かまわんよ・・・・・・。」
ネオ「あとどれだけだ?あと何が足りない?」
ジブリール「君の記憶のかけら・・・もう少しさ。君がいなくなると思うと残念だがね」
ネオ「よくいうぜ。いいか、くだらないことしたら貴様のその首もらうからな!」
ジブリール「大丈夫さ、約束は守るよ。私はアズラエルほど敬虔ではないからね。・・・ではまたな」
〜途切れる通信〜
ネオ「くそっ!傍観者気取りか!アズラエルよりたちがわるい!」
〜扉が開く〜
ステラ「・・・?ネオ・・・怒ってる・・・・・・?」
ネオ「ああ、ステラか。別に怒ってないよ。・・・どした?眠れんか?」
ステラ「ううん。シンががんばってるから・・・ステラもがんばらなくちゃって・・・・・・」
ネオ「そうか〜。まぁシンなら大丈夫さ。・・・ステラはゆっくり休めよ?」
ステラ「・・・うん・・・・・・おやすみなさい・・・」
ネオ「おやすみ。ステラ達の記憶は今も昔も同じだろうな。・・・シンの記憶は?俺のように戻せられるのか?」
完
他常連職人&新人さん乙です。
Hinaさん、その冒頭はなかなか気になりますね。もっと先まで見たい感じが。
是非頑張って連載を続けて下さい。
さて、隻腕16話投下します。
あー、前回の予告からタイトルちょっとだけ変えます。まあ読みは一緒ですケド
『命の価値』→『生命(いのち)の価値』 に変更。小さなことですが。
温泉で羽根を伸ばすオーブ軍一行。しかしその頭上を、ミネルバが駆け抜けます。
ミネルバの狙いはロドニアのラボ。ちょうど再調整のために訪れていたステラたち。
眠りつづけるスティングとアウルを守るため、ステラは後輩を引き連れ出撃しますが、囚われの身に……
――初めて彼ら2人が顔を合わせたのは、十年ほど前のこと。プラントの宇宙港だった。
「久しぶりね〜、ギル坊。メンデル以来かしら? なんかもうすっかり立派になっちゃって」
「いい加減『ギル坊』はやめて下さい。バレル女史こそ、お変わりないようで。相変わらずお美しい」
「アハハ、ありがと。でもダメね〜、子供産んじゃうと。あちこち体型崩れてきちゃって」
そう言って笑う女性。肩の高さで切り揃えられた黒髪は、知的な美しさを感じさせて。
『ギル坊』と呼ばれた黒髪の青年の評する通り、とても子供がいるような年齢には見えない。
その「子供」は、笑う「母」の背後に隠れるように、スカートを握って身を硬くしていた。
サラサラの金髪。賢そうな目つき。整った顔。年齢で言えば、5歳くらいだろうか。
……確かに美形だ。しかし、瞳の色も髪の色も、顔のつくりをとってみても――「母」とは似ても似つかない。
「――で、こちらが例の?」
「ええそうよ。研究所が襲撃されたあの日あの時、私が持ち出した最後のサンプル。
ほらレイ、お兄さんにご挨拶なさい。これからお世話になるんだから」
「……レイ・ザ・バレルです。はじめまして」
「ギルバート・デュランダル、君のお母さんの昔の同僚だ。はじめまして」余剰
黒髪の青年は、しゃがんで少年と同じ高さに目線を合わせると、手を差し出した。
少年は促されるままに青年と握手をして――彼の微笑みに、心捕らわれた。
――「母」を乗せた地球往還シャトルが、宇宙港から出て行く。
その姿を、金髪の少年と黒髪の青年は、並んで見ている。
「……お母さんは、ボクのことが邪魔になったんだ」
「レイ?」
「バレル家は、古い家だから。ほんとうはお母さんがシングルマザーになるのも認めたくなかったんだ。
もし成功だったら役に立つ、って言って名前はくれたけど、『しっぱいさく』だからもういらないって」
「…………」
「コーディネーターにはなれたけど、長生きはできないんでしょう? だから」
「レイ!」
淡々と自分の立場を語る少年を、黒髪の青年はひっしと抱きしめる。
少年は、聡明すぎた。賢すぎた。そのように「創られて」しまっていた。
いったいどんな大人たちが、この少年の前であけすけに毒を吐いてしまったのだろう?
少年は知らなくても良いことまで知ってしまい、理解しなくても良いことまで理解してしまっていた。
そんな少年を抱きしめて――青年は、彼に誓う。
「……レイ、君は失敗作じゃない。いらない存在でもない。
君は未来に続く人類の歩みの中の、貴重な一歩なんだ。
私が、それを証明してみせよう。私が、君の次に続く未来を見せてあげよう。
だから――自分が無価値だなんて、言わないでくれ――」
――記憶の彼方から、少年は急速に引き戻される。
ザフト側の手に落ちたロドニアのラボ。放棄された研究所。
ミネルバに同乗していた、ザフトの歩兵や白衣の研究者がひっきりなしに出入りしている。
その研究所の入り口、夕陽に照らされた玄関ホールの片隅で――
パイロットスーツに身を包んだ金髪の青年が、立ち尽くしていた。
彼の目の前には1つの胸像。この種の「偉いヒト」の銅像にしては、比較的若い顔つき。
なんとはなしに、モデルとなった人物の尊大さや傲慢さを感じさせる像だった。
「う〜、嫌なモノ見ちゃったぁ。しばらくご飯食べられないかも……。
……あれ? レイ、どうしたの? レイも手伝い?」
廊下の1つから、両手で山ほどの書類を抱えて出てきたのは、青い顔をしたメイリン・ホーク。
研究所の資料を運び出す作業で人手が足りないため、ミネルバのブリッジクルー等も急遽応援に駆り出されたのだ。
いったいどんなものを見てしまったのか、見るからに気分が悪そうで。
そんな彼女は、玄関ホールで大きく深呼吸したところで、ちょっと尋常でないレイ・ザ・バレルの姿に気付く。
全てのものが真っ赤に染まるホールの中、その青年の横顔はちょっとした絵画のようでもあり。
「何見てるの? 銅像?」
「…………」
「あれ、この銅像って……レイ? ううん、ちょっと違う? でもなんか似てる。
え〜っと……『アル・ダ・フラガ』、って読むの? この研究所の――創設者?」
メイリンは両手に書類を抱えたまま、胸像の台座に刻まれた文字を読み上げる。
その名前に、レイの顔が、歪む。
「……のかッ……!?」
「れ、レイ!?」
「ギル……まさか……このことを、全部知ってたのかッ……!?」
それは――怒り。それは――困惑。それは――混乱。
いつも仮面のように感情を押し殺し、端整な顔を崩したことのないレイが見せた、剥きだしの感情。
メイリンは驚くしかない。
「つまりアレは……あいつらは、俺の兄弟、いや従兄弟みたいなものじゃないか……!!」
周囲をひっきりなしに出入りする人々も無視して。近くに立ちつくすメイリンも無視して。
レイは、金髪の青年は、その場に崩れるように膝をつく――
マユ ――隻腕の少女――
第十六話 『 生命(いのち)の価値 』
――ロドニアのラボを放棄し、大地を駆ける陸上輸送艇。周囲は急速に夕闇に包まれてゆく。
大質量を浮かべるホバークラフトが、大きな音を立てる。
その前後左右を固めるのは、カオス、アビス、ワイルドダガー、ダガーL。
「ミシェルも、アニーも……やられちまった……」
「クロスもケリオンも、腕は良かったはず。やはり実戦は違うか」
「ステラ……ヒック、ステラぁ……」
「俺たち、これからどうなるんだ?」
たて続けに4人の仲間を失い、自分たちの居場所を失い、頼りになる先輩の1人も捕らえられ……
思いもかけぬ犠牲に、彼らは消沈を隠せない。
しかし、彼らの思いを無にすることはできない。追っ手を気にしつつ、彼らはなおも進む。
と――
進行方向の上空に、いくつか光る点が現れる。空を飛ぶ航空MSの編隊。彼らは思わず足を止め、身構える。
このあたりに、戦闘態勢を整えた友軍はいないはず。MSのシルエットも見慣れぬもので。
よもやザフトに挟撃されたか、と、彼らの額に冷や汗が浮かぶ。
既に日も落ちたこの暗さでは、はっきりと判別がつきにくい。
が、ようやく個々のMSの姿がはっきり見える距離になって、彼らの緊張は安堵に変わる。
大半が見たことのない機体であるのは変わりなかったが、その先頭を飛ぶ機体には見覚えがあったのだ。
前進翼持つ可変MSとM1アストレイの編隊、桜色のエールストライク、翼広げたフリーダム。
そして――先頭に立つのは、紫色のウィンダム。
「――ネオだ! ネオが救援に来てくれたぞ!」
太陽の最後の光が窓から差し込む、ミネルバの廊下。青年が駆ける。
息を荒げて駆け込んだのは――ミネルバの、医務室。
「ルナッ! ルナはどうなったッ!?」
「あ、アスカさん。大きな声を出さないで」
髪を振り乱して叫ぶのは、シン・アスカ。パイロットスーツそのままの姿である。
ザクウォーリアからルナマリアを救出した彼は、そのまま救護班と一緒に医務室に向かおうとした。
しかし彼はインパルスのパイロットでもある。自分の機体をその場に放置しておくこともできない。
仕方なく、インパルスを艦に戻し、整備兵に後を託して――着替える間も惜しんで駆けつけたわけだ。
「今治療中です。診察した限りでは、深刻な怪我はないようです。
軽い打撲の他は、右前腕の骨と肋骨にヒビが入ってるくらいですかね、今のところ。
ただ頭を強く打ったようですから、安全を取ってしばらくは経過を観察する必要がありますけれど」
「じゃ……大丈夫なんだな?」
「……だいじょーぶよ……心配性なんだから……」
勢い込んで聞くシンに答えたのは、カーテン越しの声。彼は急いでカーテンを引き開ける。
「ルナッ!」
「……そんな顔、しないでよ。ったくアンタらしくもない」
「で、でもよ、だってさ……」
「約束したでしょ? 私は死なないって」
カーテンの向こう、ベッドに横たわっていたルナマリアは、泣きそうな顔のシンに向け挑発的に微笑む。
診察と治療の過程でパイロットスーツは脱がされたのか、裸の肩がシーツから覗く。
外に出した右手を、軍医にギプスで固められながら、ルナマリアは左手で隣のベッドを指す。
「まー、ちょっとヘマやっちゃったけどね……そこの子相手に」
「!!」
言われて初めて、シンはもう片方のベッドの相手に気付く。
全身を拘束バンドで束縛されつつ治療を受けていたのは――ベッドで目を閉じたままの、ステラ・ルーシェ。
その存在を認識した途端に、シンの表情が一変する。不安の表情から、激しい怒りへと。
「でも私だけのせいじゃないわよねー、2人がちゃんと足止めしてくれなかったから……」
「てめぇッ! よくもルナをッ!!」
「……え?」
ルナマリアがはッとして見てみれば――そこには、医療スタッフに取り押さえられるシンの姿。
3人がかりで組み付かれて制止され、なお彼らを振り回さんばかりの勢いで暴れ続ける。
拳を硬く握り締め、動けぬステラに殴り掛からんと――
「――どういうことだ! すぐに助けにいかないと!」
「……ご好意は有り難いのですが、しかしアスハ代表……」
荒野の真中、星空の下。輸送艇を囲むように降り立ったオーブ軍の真ん中で、カガリが声を荒げる。
困った表情で頭を掻くのは、初老の研究者。
ミネルバに襲われ、占拠された研究所。距離もそう遠くないし、襲撃からも時間が経ってない。
ならば今すぐ救援に向かうべき、と主張するカガリに、しかし研究者たちは良い顔をせず。
「ロアノーク大佐、なんとか言ってやって下さい。これは我々の問題だと」
「ん〜、連合軍の助けもすぐには来ないし、他所の派閥に首突っ込まれてもなぁ。しかし……オーブ軍も、なぁ」
「おいネオ、何が困ると言うんだ!? よほどタチの悪い実験でもしてるとでも言うのか?!」
「いや、そうは言わないけど、でもなぁ……」
研究者たちとカガリ、その双方に責められ、ネオも困り果てる。
正直な話、ネオはオーブ軍を信用している。下手な連合軍正規部隊より、よほど信頼している。
ただあの中にある「もの」を、この潔癖で融通の利かないお姫様が見てしまったら、いったいどうなることやら……
そんなネオに決断を促したのは、暗がりからの2つの声だった。
「……ったく、何やってんだよアンタらは。言い争いしてるヒマがあったら、さっさと動けよ」
「おいネオ、もういいんじゃねーの。みんなで戻ろうぜ」
「ステラのことが心配だ。アイツのことだから、簡単には死なないとは思うけどよ。
ダーボ、レイア、俺たちと操縦代われ。お前らにはその機体、まだ荷が重い」
「マユ、お姫さん、オーブのオッサンたち。手ェ貸してくれよ!」
それは――陸上輸送艇から出てきた、スティングとアウル。
輸送艇の中で続けられていた「再調整」、その過程を繰り上げて2人を起こしたのだった。
2人は寝覚めとも思えぬテキパキした態度で、場を仕切り、後輩たちに指示を飛ばす。
そんな彼らを、闇の中から冷たく観察する視線がひとつ。
防菌服に身を包んだ若き女性研究者、ロッティ・フォス。
「おかしな人たちですね、01 スティング・オークレー、03 アウル・ニーダ。
あなたたちも02と同じく、相当に変化していますよ。気付いているのですか?
原因はやはり――彼らでしょうか?」
彼女は周囲を見回す。
彼らを取り囲むように立つオーブ軍のMS。スティングたち3人がしばらく行動を共にしていた存在。
見上げれば、頭上には大きな存在感を感じさせるフリーダム。
そのコクピットからは、1人の少女が身を乗り出して、眼下のスティングたちを心配そうに見下ろしている……
「……ねえ、お姉ちゃん」
「何?」
「なんでお姉ちゃん、『あんなの』と付き合ってるの?」
シンの起こした騒ぎから、しばらく経ったミネルバ医務室。
彼の狼藉そのままに、破けたカーテンが空しく揺れる。ひっくり返り、大きく歪んだワゴンは打ち捨てられたまま。
姉のために衣類を持ってきてあげたメイリンは、心底不思議そうに問いかける。
結局シンは、数人がかりで医務室の外に連れ出されて、今は自室で謹慎中だ。ほとんど軟禁と言っても良い。
駆けつけたレイとアスランに諭され叱られて、ようやくなんとか落ち着きを取り戻した感じである。
普段のシンは、強気に好戦的に笑っているか、さもなくば口数少なく暗い目つきで座しているか……
そんな彼しか知らぬミネルバクルーにとって、この取り乱し方は一種の驚きだった。
「『あんなの』ってのは酷いわね。姉の恋人捕まえて」
「でも、傍から見てても分かんないんだもん。普段はアイツ、全然お姉ちゃんのこと心配すらしてないしさ」
そう、メイリンの言う通り、この2人の付き合いは外からは理解しにくい。
あまり人前ではベタベタしないし、2人が一緒にいる時でも、シンは普段通りつまらなそうな態度を崩さず。
戦場でも、平気でルナマリアを危険に晒し敵と戦わせ、特に庇う様子も見せない。
メイリンでなくても首を傾げるのは無理からぬことだった。
「ん〜、みんな誤解してるんじゃないかな……。彼って、ああ見えて臆病よ。ちょっと可愛いくらいにね」
「臆病!? あの暴走機関車が? 自分から喜んで危険に突っ込んでく、あのバーサーカーが?!」
「自分の身については、確かに無頓着ね。けど、『親しい人』を失うことには、とっても臆病」
ルナはメイリンから受け取った自分の服を着ながら、どこか楽しそうに語る。
ギプスに固められた右腕を、苦労しながら袖に通す。
「アイツが普段無愛想なのも、『特別な人』をあまり増やさないため、のつもりなんでしょうね。
戦争やってるわけだから、いつ誰が死ぬかも分からないし。かといって、後方に下がるのも性に合わないみたい。
『中立国に居たって戦争からは逃げられないんだ』『この地球圏で安全な場所なんかない』とか言ってたわね。
――そうそう、アイツがあたしの告白受けた時のセリフ、何だか分かる?」
「何て言ったの?」
アカデミーでも成績優秀、飛びぬけた存在だったシン。その憂い顔に惹かれて愛の告白をした娘は少なくない。
そんな中で何故ルナマリアだけが受け入れられたのか、メイリンも気になってはいたのだが……。
「それはね――『ルナなら、簡単には殺されない程度には強そうだから、別にいいか』だって。ひどいでしょ?
デートとか言って居残り特訓させられたし、卒業前には私が赤服取れなかったら別れる、とか言い出すし。
でもこれもそれも、アイツなりの優しさなのよね――アタシを死なせたくない、っていう」
「……なんか、聞けば余計にヒドい男にしか思えなくなったんだけど。
それを『優しさ』とか言えちゃう、お姉ちゃんの感性が心配だわ」
メイリンは溜息と共に肩をすくめる。恋する乙女の心理は、やはり身内でも理解し難いものがあるようで。
――その姉妹の会話を、カーテン越しに聞いていた者が1人。
先ほどシンに殺されそうになった、ステラ・ルーシェだった。
彼女も何箇所か骨折しており、処置は受けてはいたが身体は自由にならない。
さらにその上、彼女の抵抗を恐れてなのか、全身をベルトで拘束されているので……これはもう、全く動けない。
この絶対絶命の状況下にあって、しかし彼女の心は折れていなかった。
余計なことを語らぬよう沈黙を守り、じっと周囲を観察し。負傷したのを良いことに、意識朦朧を演じつつ。
ステラの脳裏によぎるのは、ガルナハンで虜囚の身になったマユのこと。
「ステラも……頑張るから……諦めないから……」
そんな彼女は、淡々と周囲を観察し、情報を得ようとしていた。
そして聞こえてきたのが、姉妹のあけすけな会話。
どうやら文脈からして、ステラのガイアを倒したインパルスのパイロットについての話のようで。
名前は直接出てこなかったが、その人柄や想いはよく分かる内容。
つられてステラは、仲間たちのことを想った。
ラボの厳しい訓練。最初の3人に選ばれたステラたち。
そしてその3人の中で、自然と仕切り役となり、残る2人を牽引してくれていたのは――
「スティング……!」
どこか、今盗み聞いてしまったルナマリアとその「恋人」に重なるものを感じ、彼女はちょっとだけ頬を染めた。
今まで全然そういう意識はなかったが、しかし、今は彼を思い出すだけで、元気が沸いてくる――!
――その、スティングは。
「見えた! ネオ、まだ連中はラボにいるぜ! ミネルバも着地したままだ!」
「1人で走り過ぎだぞ、スティング! カオス1機であいつら全員相手にするつもりか!」
ロドニアのラボに向け高速飛行するカオス、遅れてついてくる残りの面々。
空中での機動性ならともかく、最高速度ならカオスが1番。
その彼が本気で機体を急がせれば、残りの面々はついていけない。ましてや、光量の少ない夜間飛行なら尚更。
ピーキーなチューンナップがしてあるネオのウィンダムと、マユのフリーダムがなんとかついていける程度。
編隊を崩さないムラサメ隊とストライクルージュは少し遅れていたし、陸上輸送艇やアビス、M1は遥か後方だ。
そして、暗い夜空を最高速度ですっ飛ばせば、そのスラスター噴射が目立つのも明らかで。
カオスの接近を察知して、3つの影がミネルバから飛び出す。マユが叫ぶ。
「――ネオ、来たよ! セイバーに、インパルスに、白いザク!」
「だから言ったんだ、スティング! オーブの連中と一緒に奇襲かけるつもりが、これじゃ台無しだ!」
「うるせぇ! のんびりしてたら逃げられちまうだろうが!」
「……仕方ない、3対3だ、2人とも無理すんなよ! お姫様とムラサメ隊が追いついてくれるまではな!」
「……3対3だ、2人とも無理するな。ミネルバが撤退するまで時間を稼げばいい」
「シン、くれぐれも冷静にな。熱くなり過ぎるなよ」
「わかってるよ。でも2人して言わなくたって……」
「しかし、あの紫のはともかく、フリーダムもか……オーブ軍が来ているのか? こんなところまで?」
同じような会話を交わしながら、ミネルバ側の3機も出撃する。
シンのインパルスは、遠距離用のブラスト装備。レイのザクファントムは、いつも通りブレイズ装備。
「さっきとは立場が逆だ。奴らの速度に付き合う必要はない、遠距離から撃って近づけるなよ!」
「分かってるってば!」
アスランの細やかな指示に苛立ちを感じながらも、シンのブラストインパルスは射程ギリギリから砲撃をかける。
その太い閃光に、散るように回避する連合側の3機。すかさずそこにセイバーのビームが襲い掛かる。
一気に接近しようとしたカオスの眼前に、ブレイズウィザードから放たれたミサイルの壁が立ち塞がる。
激しい戦闘を開始した彼らの足元で、研究者たちは急いでラボの資料をミネルバに運び込む――
――振動が、ベッドから伝わる。棚の医薬品が、カタカタと音を立てる。
ミネルバが、攻撃されているのだ――おそらく、施設の救援に来た連合軍によって。
やってきた部隊の構成までは分からないが、そのくらいのことは医務室にいても分かる。
「痛ゥッ……! 状況はどうなってる、の?」
「ホークさん、まだ寝ていて下さい! カオスなどが来てるそうですが、迎撃が出てますから」
痛みに耐えつつ起き上がったルナマリアに、医療スタッフが慌てて声をかける。
確かに今ここでベッドを降りても、彼女にできることはない。ルナマリアはベッドの縁に腰掛け、溜息をつく。
と――ふと彼女は気配を感じて、カーテンの向こうに視線をやった。もう1人の怪我人の収容されている場所。
ルナマリアは立ち上がると、病室を仕切るカーテンを引き開ける。
そこには、身体を拘束されたまま、しかししっかり目覚めていた金髪の少女の姿――
彼女を見下ろし、ルナマリアは挑発的に微笑む。
「………!」
「なんか、アンタのお仲間が来てるみたいよ? 一度は見捨てて逃げたってのに」
「見捨てたわけじゃ……ない……」
「あら、ちゃんと喋れるんじゃない。ずっと黙り込んでたのに」
「…………」
「でも、さっきの様子ならウチの男どもが軽く蹴散らしてくれると思うけど? 残念だったわね」
「たぶん……乗ってる人が、違う……。スティングなら……」
「へえ、それがカオスのパイロットの名前? あの青い髪の方?」
「違う、もう1人の……」
「ああ、あっちか。ひょっとして――恋人?」
「ち、違……! まだ何も……!」
つい先ほどまで、殺し合いを演じていた女2人。ルナマリアの挑発に、いつしかステラも口が軽くなって。
ステラの年相応の女の子らしい態度に、ルナマリアもいつしか共感を覚え始めて――
――夜の闇を切り裂く、目にも眩しいフリーダムのフルバースト射撃。
その5条の閃光を、ぎりぎりで見切ってブラストインパルスが避ける。
いや、ビーム砲の射撃はきっちり避けながら、しかし片方の腰のレールガンは胸に直撃を受ける。
大袈裟な回避をしなかったのは、PS装甲への信頼と、そして――即座に反撃できる姿勢を崩さぬため。
「お返しだッ、セイランのガキがッ!」
「ッ!!」
激しい振動と乱れるモニター画面にも関わらず、フリーダムに向けインパルスは正確に反撃する。
両脇の下から覗く巨大なビーム砲、右手のビームライフル、そして両肩のレールガン。
3本のビームと2門の電磁砲弾。配置こそ違えど、フリーダムと同じ数、同等の火力。
避けきれない、と見たフリーダムは咄嗟に盾を構える。アンチビームシールドの表面で、ビーム粒子が弾ける。
大地に両足を踏ん張るインパルスと、低空を飛びまわるフリーダムの、激しい砲撃戦が続く。
その遥か上空、星々の間を縫うように、2つの流星が高速で走り回っていた。
セイバーとカオスだ。共に航空戦用のMA形態を取って、激しいドッグファイトを繰り広げていたのだ。
目まぐるしく位置を変えながら、互いを撃ち合う。こちらも、他を気にする余裕はない。
互いに一撃も直撃がないが、これは撃ち手の腕が悪いわけではない。避ける側がどちらも超一流なのだ。
元々この種の高速戦闘は直撃を当てづらいものだが、そのことを差し引いても驚異的な機体コントロール。
「……ッ! こいつァダーボには荷が重すぎるぜッ……! 交代して正解だッ!」
「こいつ、腕が全然違う! こっちが本来のパイロットかッ!」
互いのビームが、際どいところを掠める。フェイントを取り混ぜながら、位置を取り合う。
決め手のない、しかし一瞬たりとも気の抜けない戦いに、スティングとアスラン、双方の額に汗が滲む。
そして――
周囲に流れ弾が飛び交い、時に施設やミネルバにも着弾する激しい戦闘の中。
対照的に動きが止まっていたのは、残る2機の間。白いザクファントムと、紫のウィンダムだった。
と、言っても、2人ともサボっているわけではない。
「……ッ!」
「……ちッ!」
膠着状態だった。
ザクが少し銃口を動かせば、ウィンダムがそれを先読みして盾を構える。
ウィンダムが距離を詰めようと膝を曲げると、ザクが後ろに飛び下がるために膝を曲げる。
……つまりは、完全に互いのやりたい事を見通しあっている状態。撃っても無駄と分かるから、互いに撃てない。
実際の動きはほとんどなく、撃った弾も2、3発だったが、互いの手の読み合いが凄まじい密度で行われていた。
白いザクの中のレイも、ウィンダムの中のネオも、激しい緊張に脂汗を滲ませる。詰め将棋のような心理戦。
見えない稲妻が、2機の間に何度も往復する。他の2組の戦闘にも負けず劣らぬ、激戦だった。
と――その均衡を破ったのは、一本の通信。
『……なんだかなー。やはり俺たちは他人ではないようだな、白いボウズ君!』
「!!」
睨み合いのまま、ザクファントムに通信を送ってきたのは他ならぬ目の前の敵、紫のウィンダム。
奇妙な仮面を被った、連合の士官の姿が通信画面に映る。
『……他人ではない、だと? どういう意味だ』
『ほぉ、やはりその顔。そしてザフトに居るってことは、恐らく正真正銘のコーディネーター。
俺のカンは間違っちゃいなかったようだなァ、メンデルの兄弟!』
厳しい表情で通信を返したレイに、ネオは笑うように答える。仮面の下で唇が歪む。
それは――奈落のように暗く、深く、歪つな、微笑みとも呼べぬ笑み。
『いや『兄弟』ではなく、『お父さん』とでもお呼びしようかい? あるいは厳密に『叔父さん』とでも?』
『俺は……俺は俺だッ……! 俺は、レイ・ザ・バレルだッ……!』
『しかし年齢が合わんなァ。生き残った研究員か何かが、勝手に胚を持ち出して育てたか?
まあ、ジョージ・グレンにも次ぐ伝説の男の分身だ、トチ狂った奴がいてもおかしくないけどよ』
『貴様ッ……! 貴様は一体ッ……!?』
『ネオ・ロアノーク。ナチュラルだ。
おそらくはキミに不足しているのであろう『ある要素』を補うための、実験台だよ。
しかし、ひどい話だよな。俺とキミが両立しない、なんてなァ。
俺、キミ、そして『キラ・ヒビキ』。『夢のたった1人』に到達するための、3つの踏み台(ステップ)――
その3つの流れの統合がそもそも不可能、ってなァ、残酷じゃないか。生前のヒビキ博士が知ったら泣くよ』
ネオの言葉に、レイの顔が歪む。
フリーダムの撃った流れ弾が、ザクファントムの足元に着弾する。セイバーの流れ弾がウィンダムの腕を掠める。
しかし2機とも、互いに銃を向け合ったまま凍りついたように動かない。
『しかしどういう偶然かね、こうして俺たちが向かい合うのが、このロドニアのラボの前とは』
『……ッ!』
『お、その顔だと、研究所の中を覗いたな? 自己顕示欲むき出しの悪趣味な銅像があったろう。
そう――ココもまた、あの男のエゴが産んだ遺産の1つだよ。
己の『運命』さえも金で買えると思いあがった、あの男のな。
ここはアル・ダ・フラガでさえも早い段階で見捨てた、袋小路だ』
『……!』
『その遺産を『ブルーコスモス』は喜んで拾った。まあ気持ちは良く分かるさ、奴らには必要だったしな。
しかし、今さらザフトが漁りに来るってのは、どういう了見だ? 貴様らは何を狙ってる!?』
『それはッ……』
レイは一瞬言葉に迷い、しかしすぐに表情を引き締める。
強い意志で、はっきりと宣言する。均衡を破って、ザクファントムがビーム突撃銃のトリガーを引く。
『……それは、未来に繋がる人類の歴史のため、だッ!!』
「…………」
「……メイリン? メイリン! 各機に伝えて。離陸するわ。乗り遅れないように、と」
「え? あ、は、ハイ艦長!」
激戦に揺れるブリッジの中――メイリンは、急にタリアに指示を受けてはッとなった。
すぐさま、戦闘中の各MSに通信を送る。
見れば遠くには編隊を組んだムラサメ隊の姿。
研究員や歩兵の収容も終ったことだし、早くこの場を離れないとミネルバごと落とされてしまう。
艦長からの指示通り、撤退を各機に命じながら、しかしメイリンは別のことを考えていた――
――艦載MSの管制担当ゆえに、聞くつもりもなく盗み聞いてしまった、レイとネオの会話のことを。
オーブ軍の援軍が近づく。ミネルバが大地から浮き上がる。
3対3の戦いは膠着したまま、終結を迎えつつあった。
「……逃がさない!」
「やらせん!」
マユたち3人の狙いは、ミネルバの機関部への攻撃。彼らの足を止めれば、オーブ軍も加わって彼らの勝ちだ。
シンたち3人はそれを阻止しながら、ミネルバに合流する。
ブラストインパルスとブレイズザクファントムが、それぞれミネルバ後方の左右にある甲板に着地する。
着地しながら、なおも追いすがる敵に砲撃を加える。
加速を始めたミネルバに、フリーダムとウィンダムが迫る。
しかし今まで相手にしていた2機に加え、ミネルバそのものからも砲撃が加わる。
対空砲の弾幕に、無数の大型ミサイル。正面の主砲が使えずとも、圧倒的な攻撃力。
さらにそこに、ブラストシルエットとブレイズウィザードからのマイクロミサイルが加わって……
圧倒的な弾幕に、回避と迎撃だけで手一杯。完全に足を止められてしまう。
上空では、カオスとセイバーが神経を削るようなギリギリの空中戦を続けていたが、こちらも状況が変わる。
そのままの勢いで攻撃を続けるセイバー。対するカオスは、めっきり反撃が減っていた。
「くそッ、バッテリーが……!」
同じように動いていても、母艦から万全の状態で出てきたセイバーと、補給の機会のなかったカオスの差は大きい。
レッドアラームが点滅を始めたのを見て、スティングはやむ無く戦闘継続を諦める。
彼が少し間合いを離したその隙に、セイバーは身を捻り、ミネルバと共に飛び去っていく。
数発の流れ弾を受け、破壊されたラボの近くに立ち尽くす3機。
その背後に次々に着陸したムラサメ隊も、東に向け飛び去るミネルバを同じように見送る。
ミネルバは、全軍を通してみてもずば抜けた高速艦だ。本気で逃げに入れば、追うのは難しい。
激戦は不完全燃焼の感を残したまま、ミネルバの逃走で決着する――
――ラボを発ってから数時間。
ミネルバは、両陣営の勢力圏の間にある、一種の空白地帯にまで逃げ込んでいた。
ここまで来ればひとまず安心。艦は戦闘配備を意味するコンディションレッドを解除され、休息に入っていた。
整備担当者たちは流れ弾で受けた損傷の応急修理を開始し、ブリッジクルーも一息つく。
既に深夜と言ってもいい時間なだけに、仮眠を取り始める者も少なくない。
そんな状況の中、ブリッジの通信要員、艦載MSのオペレートを担当するメイリン・ホークは――
ミネルバの、とある小部屋を訪れていた。部屋の入り口には、『資料室』とある。
MSなど機械の整備関係の資料。様々な法規を記した本。歴史書。辞典類。
データの電子化が進んだザフトではあまり使われぬ、紙媒体による資料の類ではあったが……
しかし、紙媒体というのは、安全性が高い。電子機器にトラブルがあっても問題なく使える。
またネット上のデータと異なり更新頻度が低い代わりに、信頼性は高い。
まあ、普段なら――普通の調べ物であれば、電子データの検索で事足りてしまうのだが。
そんな、使用頻度の低い部屋でメイリンがページを繰っていたのは、人物名鑑。
古今東西の有名人、重要人物のプロフィールが簡単に記された分厚い本――
「あれ、メイリン。調べ物かい?」
「キャッ!? ……あ、アスランさん?! あーびっくりした」
目的の人物を探す途中で、急に声をかけられてメイリンは飛びあがる。
振り返ればそこにいたのはアスラン・ザラ。気の弱い笑みを浮かべ、メイリンを驚かせたことを謝る。
こんな部屋での調べ物、そうそう人が重なるものではない。メイリンが驚くのも仕方のないことだった。
「アスランさんは、何を調べに?」
「ああ、俺はちょっとある人について調べようと思って、って……」
言いかけて、アスランはメイリンの手にしている本に気付く。他ならぬお目当ての人物名鑑。
こんな艦上の小さな資料室では、1冊しか蔵書にない。
「あ、じゃあアスランさんお先にどうぞ!」
「いや、いいよメイリン。俺の方はそう急ぐ用事でもないし」
「え、でも悪いですよ」
「いいから、いいから」
お互い何度か譲り合う2人。
結局、既にページをめくりかけていたメイリンの方が先に調べることになって。
彼女が開いたのは――
「アル・ダ・フラガ。宇宙軍パイロット、実業家、投資家――」
――その頃、ラボでは。
「――なんだコレは! 一体お前らは、ここで何を研究していたんだ!」
「…………!」
懐中電灯が周囲を照らす暗い部屋に、カガリの怒鳴り声が響く。
マユは青い顔で口を押さえ、屈強なオーブ軍の士官たちも色を無くして。
ホルマリン漬けの胎児。明らかに人体の臓器の一部と分かるビン詰め。
マウスがベースなのだろうか、キメラのように奇怪な姿の実験動物が、重ねて並べられた檻の中に蠢いている。
辺りにはザフトの略奪の残滓か、書類が散乱し、割れたいくつかのサンプルが無惨な中身を晒している。
「……合法的スレスレな研究さ。昔はともかく、今は見た目ほど酷いことをしてるわけじゃない」
「ネオ!」
「ザフトの連中は手当たり次第に持ってっちまったらしーなぁ。せめてもうちょっと内容を吟味しろよ。
『レイ』とか言ってたっけ、あの白いボウズ君の上官は一体何をする気なんだか」
薄闇の中、ネオは肩をすくめる。
ミネルバを追い払った後――
カガリは、研究者たちの制止を振り切り、武装した部下たちを引き連れて半壊したラボの中に踏み込んだ。
「ザフト残存兵力の掃討、及び負傷者の救出」のためである。
あの状況で置いてきぼりの敵兵がいる可能性は低かったし、負傷者が残されている可能性も薄かったが……
しかし、もし居たとしたら放置はできない。カガリのことだ、本気でその可能性を心配していたのだろう。
そして踏み込んだ彼らが見てしまったモノが、ザフト兵でも負傷者でもなく、コレだった。
「ザフトの思惑も気になるがな。ネオ、私の質問に答えろ。
一体この施設は、何なんだ? ここで何の研究をしていたんだ?」
カガリは詰め寄る。ネオは仮面の下の顔色を変えもせず、投げやりに答える。
「ここかい? ここは、メンデルの兄弟みたいな施設だよ」
「メンデルの?!」
「一旦玄関ホールに戻って、見てみな。お姫様なら意味が分かるはずだ、あのクソオヤジの名前だけで。
そこまでは秘密でも何でもない。知名度は高くないけど、創設者の名前は一般にも公開されてるしね。
で、ココで何をしていたかと言うと――」
ネオは言葉を切って、親指で背後を指す。
正確には、ネオの背後に控えていた青年2人。スティングとアウル。
「アイツらを作ってた。
つまりは、『ナチュラルを後天的にコーディネーターと同等にする技術』……エクステンデッドの、開発さ」
>【アル・ダ・フラガ】
> 宇宙軍パイロット、実業家、投資家。
> 若い頃より文武両道の俊才として名を上げ、複数の陸上競技でオリンピック代表となる一方、
>学業の面でも優秀な成績を残している。
> 軍に入ってからはエースパイロットの1人に名を連ね、いくつかの小さな紛争で大きな戦果
>を上げてる。またMAの改良・開発にも関わり、彼の考案した『分離式砲塔』は後にメビウス・
>ゼロのガンバレルとして完成を見る。
> 軍を退いて後は実業家・投資家として活躍。没落した名門フラガ家を、彼一代で再興させた。
> ただし彼の多能多才ぶりは、人々にかのジョージ・グレンを思い出させずにはおかないもの
>だった。そのため『実はコーディネーターではないか』との噂が絶えず付きまとった。本人は
>疑惑を明確に否定し、また遺伝子の鑑定書も公開したものの、なお疑いの声は晴れなかった。
> 実業家としての頂点にあったまさにその時期に、自宅の失火に巻き込まれて焼死する。この
>火災はなお不明な点が多く、彼のことをコーディネーターだと思い込んだ『ブルーコスモス』
>による放火殺人だった、という説は根強い。
「……こういうヒトだったんですか。ネット上での評価が両極端だった理由も、なんか分かった気が」
「アル・ダ・フラガ……しかしメイリン、なんでキミがこの人のことを……?」
「あのロドニアのラボに、銅像があったんです。あそこの創設者だって」
ミネルバの資料室。メイリンとアスランは揃って一冊の人物名鑑を覗き込む。
2人の頭に、揃って同じ疑問が浮かぶ。「何故、この人があのラボを作ったんだろう?」
特に、カガリやキラを通して、メイリンよりも多くの知識を持っているアスランは……。
「……あたしはこれでいいです。アスランさんは、誰について調べるんですか?」
「ああ、そうだな、じゃあ……」
>【ギルバート・デュランダル】
> プラント最高評議会議長。生物学博士・医学博士。遺伝子工学研究者。
> 幼い頃よりコーディネーターの中でも優れた学力を示し、8歳で大学に進学、10歳で卒業、
>12歳で2つの博士号を獲得。その後5年ほどメンデルの研究所を転々としながら研究生活。
> やがてプラントに移り、移民審査局に入局。私的に研究を続ける一方、遺伝子工学の専門家
>として、プラントの移民審査(コーディネーターか否かの検査)を指揮する。また最高評議会
>のオブザーバーも務め、婚姻統制など様々な政策決定に関与した。
> 彼の専門は遺伝子工学、特に遺伝子診断・遺伝子検査。
「議長……ですか?」
「ああ。しかしまさか議長もメンデルに居たとはな。電子データ上では抹消されてたぞ、この部分。
しかもコレで行くと、13歳で既に一線の研究者。年で言えば、CE54年頃から……。
俺の生まれがCE55年で、『アイツ』も生まれ年は一緒だから……接点があってもおかしくないな……」
「……アスランさん、誰のことを言ってるんです?」
全く理解できない、といった顔のメイリン。
そんな彼女を無視して、アスランは考え込む。議長の真意を、じっと考える――
――同じ頃。
レイ・ザ・バレルは、暗いミネルバの廊下を歩いていた。
ルナマリアを見舞おうと医務室に向かいかけて――前方から近づく足音と声に、足を止める。
その内容に、素早く曲がり角の闇に身を潜め、彼らの話し声に耳を傾ける。
「……というわけで、基礎データの重要な部分が欠落しているのですよ。彼らが既に持ち出していたのでしょう」
「困りましたわね、時間がなかったとはいえ。欠落部分の復元、できそうですか?」
「もう少し詳しく検討しないことには。しかし幸い、生きたサンプルが入手できましたから……」
「ああ、あのサンプルね。……そうね、イザとなればアレを解剖(バラ)すという手があるかしら」
「というより、実際に解剖するのが一番早い方法かと。
苦労して基礎的な実験を再現するよりは、よほど実際に即したものが手にできますし」
「そうね。議長にはわたくしから言っておきますわ。あなたは準備を進めて下さい。
別にサンプルが死んでも構いません、彼女自身はいらないのですから。
ただ各種のデータだけは取り損ねることのないように」
「分かりました、ベリーニ主任」
それは、ミネルバに間借りしている、白衣の研究者たち。
主任と呼ばれ、またブリッジで指示を出していた金髪の娘が、恐るべき指示を出す。
ステラは死んでも良いから、解剖してデータを取れ――
その内容に、レイは身を震わせる。
研究者たちが通り過ぎてなお、彼の身体の震えは収まらず……それどころか、もはや立っていられなくなって。
壁に寄りかかるようにして、ズルズルと崩れ落ちる。
目を見開き、涙を流し。涎すら零して、過呼吸気味に荒い息をつきながら。
「……ダメだ、ダメだ、ダメだ……!
ギルは……ギルは決して、そんなコトは望みはしない……!」
レイの脳裏によぎるのは、最初の記憶。
初めてギルバート・デュランダルという男と会った、少年の日の記憶。
それは――彼が今、生きている理由そのもの。
「無価値な命なんて、ない……。いらない命なんて、ない……!
それがギルの教えだ、ギルの言葉だ……!
あいつらは……ギルの想いを、読み違えている……!」
レイは、祈るように、自分に言い聞かせるように何度も呟いて――
やがて、落ち着きを取り戻す。いつものクールな表情の彼に戻って、立ち上がる。
いや――いつも通りと呼ぶには、その目の奥に、少し狂信的な、壊れた炎を宿らせて――!
――ミネルバ、深夜。
艦の修復も一旦休止となり、明朝早くこの場から出発する、と宣言され――
そして数少ない夜勤の者以外は、ほとんど眠りについた艦の中。
1人の男が、医務室の扉の前に立った。
軽い音と共に扉が開き、赤い服を着た影が静かに滑り込む。
「……? あなたは、何を――ウグッ!」
「……!!」
揺れるカーテン。軽い打撃音、人が床に崩れ落ちる気配。
そして何やら、留め金を外す音――
「――何やってんのよ」
「!!」
ルナマリアは無造作にカーテンを開け放ち、その向こうにいた相手を半ば呆れた目で見やる。
彼女が眠っているとばかり思っていた侵入者は、バツの悪そうな顔で彼女を見上げる。
「とりあえずアタシ、もう既に怪我してるからさ――
殴る前に、せめて理由を聞かせて欲しいんだけど。事情によっちゃ、邪魔しないわよ?」
「…………」
「それにしても……まさか生真面目を絵に描いたようなアンタがこんなことするとはね、レイ」
そう、ステラのベッドサイドで、彼女を拘束するバンドを外そうとしていたのは。
金髪の青年、レイ・ザ・バレル。
その近くでは、夜勤の医療スタッフが、鋭い一発のパンチに意識を奪われて、倒れている。
ステラは何を考えているのか、そもそも起きているのかどうかも怪しい、ボーッとした表情。
レイはルナマリアの目を見つめると、小さく頷いた。
深夜のMS格納庫には、人の気配がほとんどない。
緊急事態にはすぐに動かせるよう、整備班の誰かが起きているはずだが……隣接する休憩室にでもいるのだろう。
そんな無人の空間に顔を覗かせたのは、3人の人影。
先頭はレイ。続いて医療用のパジャマ姿で松葉杖をついているステラ。最後に右手を首から吊り下げたルナマリア。
「よし、誰もいない……今のうちに、俺のザクファントムに」
「ステラ、声出さないでね。アタシらは見つかっても誤魔化し利くけど、アンタはシャレにならないんだから」
「うん……」
普段からは考えられぬほど積極的なレイ。捕虜とも思えぬほど従順に従うステラ。2人に協力的なルナマリア。
この奇妙な3人組が、戸口からザクファントムの足元に駆け出そうとした、その時――
「おい――お前ら、何やってんだ?」
「!!」
唐突に、頭上から声がかけられる。どこか投げやりな印象のある口調。
見上げれば――通常のMSとは別の扱いになる、インパルスの分離パーツ収納スペースの1つ。
コアスプレンダーの所に、シンの姿があった。
レイと同様、エリートの証である赤い制服に身を包んで――
「!! あ、あのね、その、これはね……」
「ひょっとして――そのガイアの女、向こうに返そうってんじゃないだろうな?」
「!!」
見事に言い当てられ、顔を強張らせるレイとルナマリア。身を硬くして成り行きを見守るステラ。
その様子を見て――シンはニヤリと笑う。
「――何故、とは聞かねーぜ。そんな野暮なこと、今聞いても仕方ない。
ただ1つだけ、俺の質問に答えろ」
「な、何よっ」
「もし、コイツを連合側に戻した後――コイツが再び、俺たちの『敵』になったとしたら。
レイ、ルナマリア。お前たちは一体、どうする?」
気味の悪い笑みを浮かべながら、底意地の悪い質問を投げかけるシン。
そんな彼を、キッと睨みながら――ルナマリアは、即答する。
「アタシは……戦うわ。
ステラとはなんかいい友達になれそうだし、ステラもそう思ってくれている、と勝手に思ってるけど――
それでもなお、この子がケンカ売るというのなら、あたしも容赦しないわ。今度はアタシが落としてやる」
「レイは?」
「俺は……このままミネルバに置いておきたくないだけだ。
この少女の身体を、あの研究者たちのオモチャにされたくないだけだ。
それさえ回避できるなら、後はどうなってもいい。
また敵になるなら、討つしかあるまい。その時には、躊躇する理由もない」
その2人の回答を聞いたシンは、底の知れない笑みを浮かべたまま――
「なら決まりだ。俺もお前らの話に、一口乗せてくれ」
「!! な、なんでアンタまで!?」
「なんだ、俺にだけ理由喋らせるつもりか? 悪いがそんな時間はない、帰ってきてからな!
それより――ソイツ、こっちに上げてくれ。レイのザクじゃ足が遅すぎる。
フォースインパルスで飛んでいった方が早い。準備手伝ってくれ。
あとゲート開閉のシステム奪取に、セイバーの足止めもだ! さっさと始めるぞ!」
何故か最後に加わったシンが、勝手にどんどん仕切ってゆく。
ステラを含めた3人は、その適切な指示に素早く従って――!
――翌朝。
世界が生まれ変わったかのような、爽やかで眩しい朝の光の中――
ロドニアのラボから東に十数キロの地点で、2機のMSが向き合っていた。
片方は、フォースシルエットを背負ったインパルス。
もう一方は――エールストライカーを背負った、薄桜色のストライク。
「1機で来い」とのインパルスからの通信を受けて執り行われる、非公式な捕虜返還。
「……まさか本当に1機で来るとはな。しかもお姫様が自らお出ましとはね」
「お前の言ってた通り、奇麗事は私のお家芸らしいからな。戦う気はない、という、お前を信用してのことだ」
「……ケッ! 本当に、とことんむかつく奴だな!」
コクピットハッチを開け、互いを直接視認する2人。
インパルスの手の平から、ストライクの手の平へ、ステラ・ルーシェの身柄が引き渡される。
見ればかなりの怪我が見られるが、どれも治療を受け、命には別状はないようだ。
ストライクの手の上で微笑むステラを確認してから、カガリはシンに問いかける。
「それより、インパルス。教えてくれ。何故お前は――お前たちは、彼女をこちらに戻す気になったんだ?」
「さてね、実はコレ、俺の発案でもねーからな。あの2人が何を考えていたかなんて、俺の知ったことじゃない。
ただ……これだけは約束してくれ」
「約束、だと?」
「ああ」
シンはそして、ぞっとするような凶悪な笑みを剥き出しにして、言い放つ。
「そいつを、ステラを――怪我が治ってからでいい、ステラを必ず――戦場に戻せ。
決して、戦争も争いも何もない、ぬるま湯のような甘ったるい世界には、解き放つなよ」
「お、お前ッ!?」
「そいつが戦場にいる限り、俺の敵だ。そして俺の敵なら、いずれまた倒す機会もあるだろうさ。
ベッドの上で縛られている女をただ殺したところで、俺は面白くもなんともないんでね――!」
シンは哄笑を上げる。哄笑を上げながら、フォースインパルスを飛び立たせる。
激しい風に目を細めたカガリとステラが気付いた時には、もう遥か遠くに飛び去っていて。
昇り始めた太陽に照らされた後姿を見ながら――カガリは、拳を硬く握り締めた。
血を吐くように、想いを吐き捨てる。
「お前は……お前らは、ザフトは、連合は、メンデルの連中は……
ヒトの命を、いったい何だと思っているんだッ……!!」
第十七話 『 破滅への船出 』 につづく
というわけで、今回の中心はレイ。今まで背景にしてしまったのは実に勿体無かったと反省しきりです。
普段は口数少ないから、SSだと相当意識しないと存在感消えてしまいます…… orz
・レイの幼少話
もうちょっと詳しい設定は伏せておきます。本編のままの部分あり、大幅に変えた部分あり。
・アル・ダ・フラガの過去、デュランダル議長の過去
かなり手を加えています。と言っても、TVアニメ本編で出てきた設定を、独自解釈で深く掘り下げただけ。
ひょっとしたら、各種媒体で発表されている細かい設定とは矛盾するところがあるかもしれません。
レイやネオの詳細も含め、諸悪の根源アル・ダ・フラガについては詳しく扱う1話をいずれ用意する予定。
しばらくは宙ぶらりんでお待ち下さい。
・カプ話
あまりカプ厨でもないのですが、しかしまあ全体を見渡して……ゴニョゴニョ
次2話で大きく話が展開する予定。年内には到達したいですね……
隻腕作者様乙です!
大胆な設定変更ですね…でもむしろ本編より違和感を感じないのがオドロキ
ステラを渡したときのシンの台詞が、見事に対極化されているのが良かったです!
どのキャラも見逃せない楽しい状況になってきましたね(*´Д`*)
隻腕キター!
イイね、イイね、いい流れだ!
レイのキャラがとてもいい形で作られてる!
恋愛ではなく歪な命として生まれた男故の命そのものへの価値観。
それとシンの台詞がすごいね。原作とは正反対の狂犬らしい台詞です。
ルナマリアとすでに結ばれている以上ステラフラグは絶対にたたないのは分かってましたがこういうフラグが立つとは!
続き、楽しみです。
>>隻腕作者様、GJ! 今回も面白かったー!
メンデルを介してのネオとレイの繋がり、デュランダルとレイの繋がり、
ここ見たかったポイントなんで、今後の展開が楽しみです!
(・・・そろそろキラも絡んでくる?・・・はないか・・・)
ステラ救出に動いてくれたのはレイでしたか
そしてステラ返還はシンだけども、出てくる言葉と向けられた相手が・・・シン、あんたって子はー
ルナマリアも大変なのを相手に選んじゃったなw
3対3は戦闘は似たもの同士のぶつかり合い燃えたッす! レイとネオは千日戦争ですねこりゃ
寒い今日ですが、上の人の顔文字借りましてこんな感じになりました(*´Д`*)
これからも楽しみにしています! 風邪などにはお気をつけて
隻腕GJ!
読んでいて種死の素材の良さに再度感嘆。それを見事に引き出す料理人の腕が
いかに大事かを見せられてまたも嘆息。ああ、こういう種が見たかったんだよ・・・。
シンのセリフは本編とは真逆ですが、本質は同じですね。
「生きていればまた会える」
それが戦場だとしても、こちらのシンに取っては嬉しいことなのでしょう。
本人はルナマリアを倒すほどの腕の持ち主を、無抵抗で殺すのはもったい
ないという程度のつもりでしょうけれど、憎しみも愛の裏返し。
気をつけてルナマリアー!w
乙です!アニメと大分展開変わって来ましたね!レイがまたいい味だしてる!最後はアニメと違った展開になりそうw秘密を知ったメイリンもどうなるww?続きワクテカしてます(・∀・)
age
レベル高いなあもう・・・・。毎回わくわくしながら読んでますよ。
カップルの行方にシン、そしてレイの心のありよう。原作とは違ったメンデルの兄弟達とネオの設定。
そして戦闘描写・・・・最高です。
今後の展開にマジで期待です。
単発設定小話「マユとレイ」
レイ「・・・マユ、こことここをひっかけてこうもってくるんだ・・・」
マユ「う〜ん、ここがこうだからこうして・・・こ、こう?」
レイ「違う。そこはそうして、こうやって・・・・・・マユ、やる気あるのか?」
マユ「あるよ〜。ただややこしすぎてうまく出来ないだけだよ・・・」
レイ「ゆっくりやっているだろう・・・なぜできない?」
マユ「う〜ん・・・もう一回教えて!」
レイ「・・・あと一回だけだぞ。次は俺の訓練につきあってもらうからな」
マユ「うん。じゃ、教えて」
レイ「・・・いいか?こことここが引っ掛かっているだろう」
マユ「うんうん」
レイ「この引っ掛かっているところを引っ張ってきて、こことここに引っ掛けるんだ」
マユ「こうやってこうするのね・・・きゃは、でっきたー!」
レイ「そうだ、それでいい。じゃもういいな?」
マユ「うん。これでメイリン姉ちゃんにも自慢できるもんね」
レイ「そうか、それはよかったな。さシュミレーターへいこうか・・・」
マユ「でもなんでレイってあやとりがこんなにうまいの?」
レイ「・・・そんなことはどうでもいだろう」
マユ「は〜い・・・(つまんないの)」
レイ「・・・!っち、マユ、俺の訓練はまた今度でいい。用事ができたから部屋へ戻る」
マユ「え?・・・あっレイ!・・・・・・いっちゃった・・・用事ってなんなのよ?」
完
127 :
運命の舞踏:2005/12/04(日) 18:34:29 ID:???
運命の舞踏5話投下しまっす
えらく長くなってしまった
隻腕さん乙でしたー
いやー、本編と随分違ったレイの行動に驚きました
これからの展開が楽しみです
続きを頑張ってください〜
128 :
1/18:2005/12/04(日) 18:35:26 ID:???
「……以上が、現在の進行状況です。 それでは、報告を終了します」
ガーティー・ルー内部にある士官部屋の一室。 薄暗い室内に、青年の声が響く。
壁面の半分を占める大型モニターの電源を落とせば、光源を失い闇に染まる周囲。
映像の消えたモニターの前に立っていた青年は、一つ息を付き、室内に置かれたパソコンデスクへと向かった。
照明のスイッチの前を素通りし、チェアに腰かけたケイは、真っ先にパソコンの電源スイッチへと手を伸ばす。
モニターが放つ微弱な灯りに照らされるなか、懐から探り出した一枚のディスク。
ディスクをパソコンの本体に食ませてから、傍らに置かれたヘッドフォンを装着した。
そして、待つ。 目を閉ざしながら。
耳をすますかのように、大事そうにヘッドフォンに手をあてがいながら。
「………ああ、ここにいた」
長い間を置いて、不意に零れたその呟き。
ヘッドフォンから流れてくるメロディに乗る、優しい少女の歌声に聞き入る彼の頬を、一筋の光が伝い落ちた。
モニターの灯りだけが光源の、薄暗い部屋の中に外の光が差し込んでくる。
閉ざした目を撫でるように当てられた光に気付き、ケイは目を開いた。
せっかく、愛しい歌声の中に沈み込んでいたというのに。 不機嫌そうな眼差しで来客のいる方を見やる。
…そこには、ドアの陰からこっそりと顔だけ覗かせて中の様子を伺う、仔猫のような娘がいた。
「なにか用事?ステラ」
「あのね…ネオが、寝ぼすけケイを呼んでこいって。 用事があるからさっさとブリッジに来やがれーって」
手招けば、トコトコと寄ってきたステラへと問いを投げると、彼女らしかぬ口調の返事が返ってくる。
きっと、彼女の上司が口走った内容をそのまま覚えてきて、素直に伝えてくれたのだろう。
寝ぼすけ、ということは自分は寝ていたらしい。時計を見て、五時間ほどの空白に気付き、理解する。
「ふぅん、そうか………ありがとう。 もう少ししたら行くよ」
なにやら手帳に文字を書き込みながら、目の前の少女へと微笑みと謝辞を向けるケイ。
表紙に『閻魔帳』と銘打たれたそれを閉じ、懐へしまいこんだ。
と、ステラが自分の方へと、好奇の視線を向けてきていることに気付く。
129 :
2/18:2005/12/04(日) 18:36:24 ID:???
「それ…音楽?」
ケイが問いかけの視線を投げかけると、彼女は質問を口にする。
彼が身に着けているヘッドフォンを、まじまじと見つめながら。
「うん、そうだよ。 僕の一番好きな歌」
少し考えてから、ケイはヘッドフォンを外し、差し出す。
それを受け取り、耳にかけるステラ。 音を待ちわびるように、目を閉じる。
「……これ…人の言葉? 聞いたことない音楽…」
「そう? ラクスの歌は地上でも有名なはずだけど…」
「歌? これ、歌って言うの?」
驚きの表情を見せる彼女。その顔には、感動の色も表れていて。
ケイはといえば、ステラの奇妙な言いようを不思議に思い、首を傾げていたが…ふと思い浮かぶ。
――彼女は『音楽』は知っていても『歌』は知らないのかもしれない。
ステラたち、エクステンデット2ndロットのメンテナンスにおいて、音楽が使われていることを彼は知っていた。
自室に戻る前、『揺りかご』の中で眠る彼らを見に行った時に、電子音で構成された微かな音楽を耳にしていたから。
精神状況を沈静化させ、悪い記憶を忘れさせるためには、音楽は優れた要素の一つだと、研究員から聞かされていた。
しかし、歌というものは総じて人の感情を込めて紡がれ、聞き手の心に語りかける言葉を有している。
兵器のパーツとして、余分な感情を生み出す要素をなるべく失くすために
ステラたちは人間の歌う歌ではなく、機械が紡ぐ無機質な音楽を聞かされてたのだろう。
すっかり気に入ったようで、ゆっくりと頭を揺らしながら歌に聞き入る少女を前に、彼は考えていた。
「…ほーしのー ふるばしょでー… あなたがー わらっていることをー…」
いつしか、踊るように身体をスイングさせながら、曲のサビの部分を小さな声で口ずさみ始める少女。
囁くように紡がれる、甘やかなかすれ声に、ケイはぼぅとしながら耳を傾けていたが
ふと、何かに気付き我に返ると、参ったような自嘲の笑みを浮かべた。
130 :
3/18:2005/12/04(日) 18:37:05 ID:???
「やぁ、おはよう大佐。 状況はどう?」
背後で生じた扉の開閉音と共に耳に飛び込んできた、のん気な調子の挨拶にネオは振り向いた。
無重力に身を任せ、こちらへと流れてくる軍服姿の青年を、しかめ面で思いっきり睨んでやる。
顔の上半分を覆う仮面のおかげで、相手に自分の表情を見られないことをいいことに。
通常のものとは異なる、特別仕立ての蒼灰色の軍服を着込んだケイは、やはりそれに気付かぬ様子で。
ネオの立つそばへと近づき、彼の前にあるコンソールの画面を横合いから覗き込む。
「追っ手との距離はそれなりに稼ぎました。
とはいえ、長丁場になれば相手の足の速さに追いつかれるかもしれませんが…
それよりも、これをご覧ください」
随分と遅れた登場ではあったが、それでも彼の来訪は助けの船だった。
ネオは手元のコンソールを操作し、正面モニターの一角に、映像のウィンドウを呼び出した。
「へぇ、友軍じゃないか」
画面に映し出された多数の戦艦、それらはどれもケイの見知ったもので。
「半端じゃない数ですよ。 これは軌道艦隊クラスの規模です。
…自分はこのような予定を聞いてはいないのですが、閣下はなにかご存知ではありませんか?」
行く手に展開された、大規模な艦隊。
ネオが知ることの出来るレベルの情報の中には、この存在に関する情報を見つけることはできなかった。
しかし、自分の上官であるかの青年ならなにかを知っているのではないかと思い、質問してみた。
問いかけられ、ケイは顎に手を当てながら思案の様子を見せる。
「ここ数日の予定には、こんなのなかったと思うけど……ん?」
と、なにか気にかかったものがあったのか、画面を睨みながら小さく唸る。
その視線の先は艦隊の中心部。 周囲の遠近感を狂わすほど、大柄な船体へと。
131 :
4/18:2005/12/04(日) 18:37:35 ID:???
「『ヴァリトラ』級…! そっか、予定が早まったんだ。
大佐、あれは新型MA部隊と新造艦の演習を行ってる艦隊だよ。予定より早く、月面から発ったみたいだね」
――ザフトとの戦争で、多大な戦力を削られた連合軍は
戦後直後から活発に、様々な兵器を開発し、その有用な運用方法などを研究し続けていた。
その中でも一際斬新で、有用だという評価を受けたのは、新しいコンセプトの元に作られたMAだった。
従来のMAの概念…高機動を重視した戦闘機のような用法と異なるそれは
戦艦の主砲にも匹敵する高い火力と、MSを上回る強固な装甲、防御に特化した構造を併せ持つ大型MA。
それを、敵の陣形を崩す突撃兵器として運用し、戦線を掻き回すことによって
味方MS部隊が円滑に戦闘を行えるよう、互いに綿密に連携して作戦を遂行する、という方法である。
今眼前に展開する艦隊は、それの有用性を実戦において確認するための演習を行うべく
月面に位置する連合軍基地より飛び立った艦隊であった。
「ほう。 そのような演習をここで行っているとは…
ザフトに見られても構わない、ということですかな? これは」
「だろうね。 軍事機密うんぬんよりも、相手への示威行動を重要視してるのかも。
わざわざ、当初行われる予定だった…基地近辺である月の裏側から、こちらへと場所を変えてまで、ね」
ネオの言葉に、一つ頷きながらそう答えていたケイ。
ふと、突然。 なにやら思いついたように片眉を跳ね上げる。
「…予定されていた演習には、たしかアウグスト閣下が観閲官として参加される予定だったね」
そう呟くケイの口元に、にまりと笑みが刻まれる。
意図を理解しかねる様子のネオを尻目に、通信オペレーターのそばへと歩み寄り、なにやら指示し始める。
「閣下、いかがなされましたか…?」
「あの艦隊に、ちょっと伝えたいことがあってね。 僕らの手伝いをしてもらおう」
尋ねるイアン・リー艦長の方を振り向きもせず、画面を注視しながらケイは答える。
通信オペレーターからインカムを借り、画面に映る士官といくつか言葉のやり取りを行い
「艦長。 最大戦速で艦を、指定するエリアまで進めて。
到着したら、全機関停止しミラージュコロイドを展開」
「?! は、はい…」
唐突にこちらを向いた青年が出した、突拍子な指示の内容に、リーは動揺の表情をあらわにする。
しかし、念を押すように自分を見つめ続ける紫の視線に押され、すぐさまブリッジ要員たちに指示を配り始めた。
「なぁるほど、そういう事ですか」
騒がしくなり始めたブリッジ内部で、命令を発した本人以外にその意図を理解した人間は一人しかいなかった。
仮面の下から覗く口の端を、ネオは愉快そうに吊り上げていた。
132 :
5/18:2005/12/04(日) 18:38:05 ID:???
一方、ほぼ同時刻。 大型空母『ヴァリトラ』艦橋内では。
演習艦隊の旗艦として据えられた、この新造艦の艦橋には演習を観に来た、多くの将校や貴人が集まっていた。
プログラム内容をほとんど消化し、終盤を迎えた今になると、
ほとんどの出席者が席を立ち、あちらこちらで輪を作り今回の演習内容について、歓談の華を咲かせている。
その集まりの中に加わり、艦に関する質問に答えていた艦隊司令の男。 彼の元に、オペレーターからの報告が届く。
「司令。 近辺を航行中の第81独立機動軍所属艦、ガーティー・ルーより通信です」
「ん? ガーティー・ルーだと…? 確かあれは新型機強奪作戦を遂行中のはずだが…内容は?」
将校たちとの談笑を中断し、司令席に戻った艦隊司令は通信オペレーターへと怪訝な声を投げかける。
「あの艦に乗艦されている、特殊作戦軍所属のケイ・サマエル少将ご自身からの通信です。
観閲官のアウグスト閣下に取り次いでほしいとの事です」
「アウグスト閣下に? 全く、なんなんだ一体…」
内容を聞き、あからさまに顔をしかめる艦隊司令。
それには、大勢の将官とお近づきになる機会だった、歓談の場を邪魔されたという不満もあったのだが
なによりも、自分の子どもより年下のくせに上官である彼の事を、好ましく思っていないという理由があった。
…とはいえ、彼の要請を断ることなど出来ようはずもなく。
荒々しく席から立ち上がると、軍服姿の人間が集まる輪へと再び足を運ぶ。
その中核あたりに立つ、多くの将校たちに取り巻かれた金髪の初老の軍人、彼の元へと近づき、そっと言葉をかける。
「お話中失礼します、アウグスト閣下」
「ん、なんだね?」
アウグストと呼ばれた老人は、周囲の者との話を中断し、振り向いた。
「近辺を航行中のガーティー・ルーより、特殊作戦軍所属ケイ・サマエル少将からの通信が入っております。
司令席までご足労願います」
「彼か…わかった、すぐ行こう」
艦隊司令と同様に、アウグストもまたケイの名を聞き、わずかに表情を変化させる。
もっとも、彼の場合はまるで子どもに対して見せるような、やれやれと言わんばかりの苦笑であったが。
司令席に座り、老人は傍らに立つ司令官を後ろへと下がらせる。
ゆるりとした動作で、コンソールを二三度叩けば、
少し間を置いて、眼前のモニターに茶髪の青年の姿が映し出される。
133 :
6/18:2005/12/04(日) 18:38:47 ID:???
『突然のお呼び出し、申し訳ありません。 アウグスト閣下』
「いいや、かまわんよ。 演習プログラムは大方終わったところだ」
画面の枠内に収められた、秀麗な容貌の青年は敬礼をしつつ謝罪する。
それに応え、鷹揚に頷きながら微笑をみせる、好々爺な印象を纏う老人。
「それよりもだ。
君が乗艦しているガーティー・ルーが遂行中の強奪作戦は上手くいったのかね?」
『若干のアクシデントがございましたが、予定されていた三機の奪取は成功いたしました』
「はは、それは重畳」
青年の報告を聞き、軽く笑い声を立てながら賞賛を送る。
そして、笑いをやめるとモニターへ向かって、ずいと身を乗り出し
「それで? この報告のためだけに私を呼び出したのではあるまい。
今度はなんのお願いかね?」
『あー……やっぱりバレてましたか』
「当然だ。これまで何度、君の頼みごとに付き合わされたことやら」
図星を付かれたのか、困ったように視線を反らす青年を見ながら、老人は軽く息をつく。
『その、対象の奪取には成功したものも…実は今、ザフトの艦に追いつかれそうなんです。
それで、式の邪魔になるのを承知の上で、お願いしたいのですが…
ザフト艦に対して、転進するよう要求していただけませんか? その間にこっちは、上手く隠れますので』
「ふむ、私たちを盾にしようというのかね」
『そんなまさか、そちらを危険には晒しませんよ。 ただ、隠れ蓑にさせていただくだけで』
画面内のケイは、低姿勢で説明するが…その内容はなかなかにワガママなもので。
どうやら、こちらが多数の艦を引き連れてるのをいいことに、その示威を借りて逃げる算段らしい。
その意図を理解し、苦笑いを見せたアウグスト。 仕方ないな、とため息混じりに呟き
「わかった。 艦隊司令に伝えておこう」
『ありがとうございます、アウグスト閣下。
この埋め合わせは必ず、戦果という形でお返しいたします。 …では、失礼します』
承諾を手に入れ、青年は敬礼をしながら感謝の言葉を口にする。
手短な挨拶と共にブラックアウトした通信画面を見たまま、苦笑いのまま老将は独り言つ。
「やれやれ、最近の若い者は人使いが荒いな。 もう少し老兵を大切にしたまえ」
そしてアウグストは席を立ち、これからの行動の指示をすべく
少し離れた場所で控える、艦隊司令を呼び寄せた。
134 :
7/18:2005/12/04(日) 18:39:23 ID:???
「ボギー1、加速を開始しました!」
ミネルバのブリッジ内に響いたバートの報告に、艦長席に座するタリアは眉をひそめた。
「この期に及んで加速…? どういうつもりなのかしら」
一時は速度を落とし、こちらへ攻勢に出そうな素振りを見せていた追跡対象が、突然加速を開始した。
その報をを聞き、タリアは思案するように目を伏せる。
相手もそれなりに足の速い艦だが、こちらの足に敵わないのは、これまでの追撃で明白だろうに。
こちらを振り切るためのルートでも見つけたか…あるいは彼らの目指す『ゴール地点』が間近なのか。
敵の意図を読むことが出来ず、すぐ出撃できるよう待機させているMS部隊を出すか出さないかで、彼女は悩んだ。
「え?ボギー1が加速…?」
出撃準備を整え、デッキに待機していたマユたちは、スピーカーを通して伝わってきたメイリンの通信を聞き
互いに顔を見合わせ、一様に首を傾げていた。
「だが、さして状況は変わらないだろう。 ミネルバの足なら、すぐに追いつける」
そう言ったのは、放送を聞くと同時にすぐさまモニターへと向かい、状況を確かめていたレイだ。
赤のパイロットスーツ姿の少女二人と、緑のパイロットスーツ姿の少年一人が立っている方へと向き直り、
「念のためもう一度、作戦の概要を確認する。
あの艦には複数のダガータイプと例のガンバレル装備のMA、そして強奪された三機が搭載されている。
だが次は、恐らく強奪機は出てこないだろう。
危険を冒してまで奪ったものだ。 破壊されては、元も子もないからな。
…例のMAが出てきたら、俺が押さえる。
マユとアゼルはダガータイプの排除、ルナは敵艦の停止に専念する。 これが今回の分担だ」
MS部隊のリーダーを務める彼は、面々の顔を見渡しながらそう伝えた。
135 :
8/18:2005/12/04(日) 18:39:55 ID:???
「…レイ兄ちゃん、あのザクが出てきたら?」
ぽつと口を開いたのは、マユ。 その顔は、不安で僅かにかげりを見せる。
強奪された三機を追って宇宙に出た際に、赤紫色のMAと共に襲いかかってきた一機のザク。
あの機体を操っていたパイロットの技量に翻弄されたアゼルもまた、同様に表情を暗くさせる。
二人がかりで相手しても、まるで歯が立たなかった…それどころか、遊ばれてるとさえ思えるものだった。
もし、再びあれと遭遇したら。 それを思うと、覚えた戦慄が蘇ってくる。
そんな様子を目にし、レイが答えようと口を開いた時、
ブリッジの回線と繋がったままになっていたモニターから、バートの声が聞こえた。
「ボギー1、レーダーからロスト! ミラージュコロイドを展開した模様!!」
「なんですって!? …熱源では捉えられる?」
「今は捉えれていますけど、敵艦は機関を停止した模様!
このままでは時間が経つにつれて捕捉が困難になっていきます…」
突然訪れた、思いもよらぬ報告に驚きの声を上げるタリア。
加速状態からミラージュコロイドを展開するという、予想の選択肢の中に含まれなかった事態に、彼女は歯噛みする。
最初の接近の際にも、推進剤を切り離して足止めをしてきた相手。 つくづく、奇抜な策を好む者だと感じた。
だが、敵の意図はある程度読めた。 最大まで加速した後、ミラージュコロイドを展開し、機関を停止。
となると、慣性航法で移動し、いずれは熱源レーダーでも探知出来ない状態にして艦の位置を見失わせる魂胆だろう。
視覚・電波的感知を不可能とさせるステルスシステム、ミラージュコロイドでは熱源までは隠せない。
しかし、機関を停止した状態では、やがて機関部は冷えていき、熱源レーダーにかかりにくくなってしまう。
いずれ敵艦の熱源は、周囲に点在するデブリの熱源に紛れてしまうだろう。
これは時間との勝負だ。 取るべき行動はただ一つに定められた。
「機関最大! 熱源で捉えられる間に敵を叩く! MS部隊は発進準備せよ!」
136 :
9/18:2005/12/04(日) 18:40:28 ID:???
加速を開始したミネルバの発進カタパルトから、三機のザクが順々に発進していく。
その後に続き、コアスプレンダーを先頭として、順々にパーツが射出された。
宙を走りながらそれらはドッキングし、黒と緑の色彩を纏うインパルスへと姿を変える。
先に出撃した三機と合流し、ボギー1からの攻撃を警戒しつつ、その距離を詰めていく
MS部隊の間に走る静かな緊張と同じく、
ミネルバのブリッジ内でも皆、固唾を飲んでその様子を見つめていた。
と、唐突に。 その重い空気が、索敵担当のバートの言葉によって破られる。
「前方に地球連合艦隊確認! アガメムノン級2、ネルソン級4!!」
「…っええ!? 地球軍っ!?」
その報告を聞き、アーサーが驚き、慌てた声を上げた。
無言のまま表情を鋭くさせたタリアは、即座に艦長席に据えられたモニターへと視線を動かす。
レーダーの捉えた情報を映し出す画面は、自艦と追跡対象が進む方向に、戦艦が存在することを示していた。
しかもそれは、小規模な群ではない。 索敵範囲内に入った戦艦が次々とレーダー上に表示されていく。
「艦隊の総数は約50隻。 巨大な熱源を有するアンノウンも2隻確認…
その他、機動兵器クラスのアンノウンも多数存在します!」
「き、軌道艦隊クラスじゃないですか! なんでこんな所なんかに!!」
「…私が聞きたいぐらいだわ、そんなのっ」
狼狽を隠さないアーサーを叱咤の視線で睨んでから、苦々しくタリアは呻く。
こんな大規模な艦隊に遭遇する事態は、彼女の軍人経験の中でもそうそうあるものでもなく。
ましてや、こちらはたった一隻の艦と少数のMSのみ。 想定し、対処できる事態の範疇を明らかに超えていた。
もちろんこんな状態では、ボギー1の追跡など出来たものではなく。
皆が騒然としてる間に、ボギー1の熱源は周囲のデブリや艦に紛れて、完全にロストしていた。
「まさか…こんな所を逃げ場に使うなんて」
呟くタリアの胸中には、憤りを超えて、茫然とした思いが渦巻いていた。
137 :
10/18:2005/12/04(日) 18:41:02 ID:???
「艦隊の光学映像、メインモニターに出します」
上ずり気味のメイリンの声と共に、正面の大画面に映し出された映像。ブリッジにいる者全員が絶句する。
投影されたのは艦隊の中心部。ライブラリに存在しなかった二つの巨大な物体が存在する位置。
そこに居座っているモノのスケールが、尋常ではないほど巨大だったのだ。
周囲に随伴している、連合の主力戦艦であるアガメムノン級母艦やネルソン級戦艦が
それの隣にいるだけで、小型艦艇に見えてくるほどのサイズの違い。
常識外れ、としか言えない巨大な戦艦らしきオブジェクトに、誰もが心奪われていた。
「…っ。 艦長! 前方の連合艦隊より通信が入っています」
ピピ、と響いた機械音に我に返ったメイリンは、タリアの方へと振り返り、そう告げる。
その言葉を受け、タリアは一度目を閉じ、深く息をついてから、繋げてと指示を出した。
それから少しの間を置いて、正面モニターの上部に、映像のウィンドウが開く。
『前方を航行中のザフト艦に告ぐ。 こちらは地球連合軍第3軌道艦隊所属フランクリン。
現在、我が艦隊はこの宙域で演習中である。 速やかに転進されたし』
画面上に現れた連合将校は高圧的な響きの声で、こちらの返答を待つ間もなく要求だけを突きつけてきた。
その、相手の一方的な態度に、タリアは抗議の声を上げる。
「待ってください! 本艦は現在、軍の新型機を強奪した所属不明艦を追跡中です。
追跡対象はそちらの宙域に進入しています。 ここで迂回していては逃走されてしまいます!」
『当方では、そのような闖入者は確認されていない』
「…敵艦はミラージュコロイドを使用して、貴艦隊の周辺を通過している最中と思われます。
追跡のためにも、通過を許可していただきたいのです」
『フン、確証もなしに演習中の宙域を通過させるわけにはいかないな。
それ以上進むようならば、こちらもそれ相応の対応をさせてもらう』
一方的に言い渡された、現宙域からの退去勧告。そして、破る場合は戦闘を辞さないと言わんばかりの態度。
それだけを伝えると、相手側は通信を切った。
映像が途切れ、ブリッジ内に生まれる暗い沈黙。
その中でタリアは、忌々しそうにシートの肘置きに拳を打ち下ろした。
138 :
11/18:2005/12/04(日) 18:41:40 ID:???
連合艦隊との遭遇の報を受けたデュランダル議長が、カガリと彼女の護衛と共にブリッジの扉を開いた。
そして、彼らは絶句する。 メインモニターに映し出された、威圧的な光景に。
「これは…っ」
呻き声を漏らしたのは白面の男。 信じられないものを見たかのように、その目は見開かれている。
これまで、月に駐留する連合軍は、頑なにその手の内を見せぬよう、
ザフトからは確認が困難な、月の裏側で軍事演習を繰り返していた。
それが今、ザフト勢力圏との境界線に近いこの宙域に突如として現れ、大々的な演習を行っている。
しかも。 艦隊の中央に堂々と鎮座している、二隻の巨大戦艦。
それはザフトの諜報部でも、建造計画の情報すら得ていなかったもので。
秘匿されていたはずの新造戦艦が、惜し気もなくここにさらけ出されているのだ。
つまりは、連合側としては見られても一向に構わない、という姿勢。
――これは明らかな挑発行為だ。
「彼らはやはり、再び戦争を起こしたいようだな…」
自らやプラント首脳陣が予想していた以上のペースで、力を取り戻しつつある連合軍。
その、好戦的に示威を振りかざす姿勢を目の当たりにしながら、デュランダルは眉根をひそめていた。
彼と同じようにカガリもまた、呆然とモニターに映る光景を見ていた。
「まさか、ここまでの行為に出るとは…っ」
大きな画面上に、所狭しとひしめく艦隊と機動兵器を目の当たりにし、彼女は戦慄を覚えていた。
その脳裏では危機感が、まるで警告灯のようにチカチカと瞬き続けている。
今の連合は、確実にかつての力を取り戻していた。 いや、もしかするとそれ以上に。
こうやって威嚇の行動を取るということは、もう準備を整えてるのかもしれない。
ならば、力の次に彼らが欲するものは『理由』の他にあるまい。
ザフトに対して開戦するに事足りる理由さえ手に入れば、彼らはすぐにでも動き出すだろう…周囲全てを巻き込んで。
そうなる前に、一刻も早く手を打たなければならない。
カガリは琥珀の瞳を鋭く眇めさせ、決意をあらわにした表情で正面を睨みすえていた。
139 :
12/18:2005/12/04(日) 18:42:48 ID:???
「なによ…あれっ」
ミネルバから先行して進んでいたマユたちも、同様の光景を目の当たりにしていた。
いや、むしろ距離が近い分、より迫力のあるものが見えていただろう。
彼女らの行く手には、連合軍の艦艇が所狭しとひしめいていた。
中央に2隻、見たこともないほど巨大な大型艦を置いて、その円周上に連合の主力戦艦が何十隻も存在している。
さらに、それらを守る機動兵器も、その規模に相応しいほどの数が展開されている。
主力MSであるダガーシリーズ。そして、それより三倍はあろうかという大きさのMAらしき物体が確認できた。
かつて、連合軍で主力として採用されていたメビウスに似たフォルムで、両脇から伸びる二本の長い砲身が一際目立つ。
大型艦の前に、まるで槍を連ねて並ぶ重騎兵のように隊列を組んでいたMAは、
やがて反転し、母艦らしき大型艦の両側面にある発進口へと入っていった。
『連合軍…あんなモノ作ってたなんて』
スピーカーを通して聞こえてきた、少女の声はルナマリアのもの。
あっけに取られたように、力なくポツリと呟かれる。
マユとルナマリア以外…二人の少年はどちらも口数の多いほうではなく、今も無言だったが。
彼らも、眼前の光景に気おされているらしい空気は、マユにも感じられていた。
皆、言葉少なに。 自分らがどう動くべきかも考えられずに、ただ佇むだけしか出来なかった。
『…MS部隊各機に通達。 本艦は転進し、現宙域を離脱します。
至急、本艦へ帰投して下さい』
「ええっ?! それじゃあ逃げられちゃうよ!」
ミネルバから発された、メイリンの伝達にマユは思わず声を上げた。
追跡対象であるボギー1は、先ほどまで熱源で捉えられていた移動経路から考察すれば、
正面に展開している連合軍艦隊のさなかを、通過していることは明白だった。
対象と同じルートを使わなければ、近辺にあるデブリベルトを避けて通るルートしか存在せず、大回りになってしまう。
そうなれば、相手との距離は大幅に開き、追いつくチャンスはほぼ完全に失われる。
『前方の連合艦隊が、退去勧告を出したようだな。 …当然のことだが』
静かに響くレイの声。
それを肯定するかのように、静止していた連合艦隊は微速ながらも前進しつつある。
艦隊の周囲で待機していたMS部隊はその更に前を行き、マユたちの行く手を阻むように陣形を形作る。
『命令だ、後退するぞ。 ここで事を荒立てるわけにはいかない』
戸惑う皆をピシャリと叩くように、強い語調で端的に述べると、速やかにレイは機体を反転させた。
『ン……そうね。 意地を張れるような相手じゃないわ』
『了解。 マユ、戻ろう』
ミネルバへと転進する彼に、ルナマリアとアゼルのザクも後に続く。
「うん…わかった」
渋々ながらの様子でマユも答え、機体をひるがえした。
去り際に、自分たちの行く手を阻んだ艦隊を鋭い眼差しで睨んだ。
おそらく…いや、絶対に。 追跡対象の戦艦を庇うかのように佇むそれらを。
140 :
13/18:2005/12/04(日) 18:43:31 ID:???
「おっきぃー……」
「うわー、なんだよこのでっかいのー…」
艦内通路に面した舷窓に、張り付くように見入っているのは少年少女たち。
金髪の少女は、ガラスに手を当てながらぽかぁんと口を開けっ放しで。
隣に立つ青髪の少年も、驚いたように何度も目をしばたかせてながら、食い入るように外を見ていた。
同じくそこに立つもう一人の少年、スティングの視線はむしろその二人の方を眺めていて。
目の前の光景にすっかり夢中になっている様子を見ながら、小さく笑みを零していた。
彼らの乗る艦、ガーティー・ルーは姿を隠し、慣性航法で進みながら
自分たちの同胞である、連合軍の艦隊の只中を抜けている最中であった。
軍歴の浅い彼らは、これほど多くの戦艦に囲まれたことがなかったから、というのもあっただろうが
なによりも、ちょうど今、真隣りに位置する巨大な艦艇に圧倒されていた。
単純に全長だけで考えれば、この艦の三倍はあるだろう。
しかも、まるで三角柱の図形モデルが飛んでるような、なんとも大雑把な形の戦艦で
全高は明らかにこちらの比率より上回る、ずんぐりとした印象のフォルムだった。
「でもいったい、何の役に立つんだ? こんなデカブツ…」
二人から視線を外し、異様な戦艦を見ていたスティングは、顔をしかめながら呟く。
見た感じ、武装は対空機関砲やミサイル発射管といった、防衛のための最低限のものしかないように見える。
巨砲を有するわけでもなく、機動性が高いわけでもなく、ただ図体が大きいだけの存在に思えたのだ。
「いいや? これにはちゃんとした役目があるんだよ」
パシュンと扉が開く音と共に、横手からかかった声に三人は振り向く。
「あ、ケイー」
通路の向こう側から歩いてくる茶髪の青年の姿に、ステラは間延びした声で名を呼んだ。
「1000m級 大型宇宙空母ヴァリトラ級1番艦ヴァリトラ。 前々から極秘で作ってた新造艦のうち一隻だよ」
「うち一隻って…あんなのが他にもあるのかよ」
「うん、もう一隻この演習に参加してるよ。 2番艦ティアマトがね」
スティングの呆れた声に頷きながら、ケイは三人が立つ舷窓へと歩み寄る。
窓を隙間なく埋め尽くす艦を指し示しながら、彼らに教える。 この向こうもう一隻いるんだよ、と。
141 :
14/18:2005/12/04(日) 18:44:06 ID:???
「これはね、従来の艦艇では多数運用できない…
いや、それどころか一機搭載するのも不可能な規格の新型兵器を運用する為にあるんだ。
これの火力そのものじゃなくて、搭載機が強大な戦力ってわけだね。 だから、空母」
「へぇ、規格外の新型ね…そんなスゴイヤツが作られるのか?」
「うん。近いうちにね」
説明を聞き、興をそそられたように目を丸めたスティングへと、青年は笑みを見せる。
「この艦も、ここまで来ればもう大丈夫だよ。
追手の敵艦は、艦隊が足止めしてくれた。 これでもう追いつけないから、任務完了だね」
「えー、なんだよー! せっかくあの合体やろーとか一つ眼のヤツらをやれると思ったのにさー」
つまらない、とばかりに不平を鳴らしたのはアウル。
常に好戦的な気質を持つ彼としては、相手を討ち取れなかったことが不満なようで。
「あはは、しとめれなかったのが悔しいのは僕も分かるけどね。
お土産に出来なかったのはまぁ、心残りだけど、任務優先」
「ちぇ、わかったよー。
あーあ! こんなんだったらさっさとやっときゃよかったなー」
アウルの言葉に同意を示しながらも、やんわりとたしなめるケイ。
渋々、といった感じに少年は頷いていたが、それはケイへの不満というよりは自分の行動に対する後悔かららしく。
三人の中では一番『ヤンチャ』な彼が素直に言う事を聞いていることに、スティングは少し驚いていた。
彼は同じラボ出身者や、上司のネオ、そして、自分らと同様に特殊作戦軍に所属する、
さる部隊の面子ぐらいにしか心を許すことがなかったはずだ。
…よくよく見てみれば、ステラの様子も彼に対しては少し違っていた。
ケイの顔を見るなり、先ほどまでかじりついていた舷窓から離れ、そばに駆け寄っている。
他人に対して愛想も見せない彼女なのだが、今は親しい者と一緒にいる時と同じように、表情を緩ませていた。
142 :
15/18:2005/12/04(日) 18:44:44 ID:???
「なーケイ、またシミュレートの相手してくれよ!」
「うん? いいよ。僕の仕事ももう終わったし、報告も完了したしね。
アルザッヘルまで暇だから、少し遊ぼうか」
「ぁ、ステラもー」
三人と彼との初対面は、確かに強い印象の残るもので。
どう見ても自分と同年齢か、少し上程度の年頃にしか見えないこの青年が、
自分たちの上司であるネオよりも、階級が上というだけでも十分にインパクトが強かった。
しかも、若くしてのその地位は決して飾りなどではなく
アーモリーワンへの移動中に、彼の有する数々の能力の片鱗をスティングは目の当たりにしてた。
まさに、非凡な存在といえるケイなのだが…それだけの事で、二人がこれほど短期間に懐くのだろうか?
納得いかず、思案し続けていたスティング。
ふと、自分の呼ぶ声を聞き、我に返る。
「いこーぜスティング! ケイが、一本でも取ったら何でもおごってくれるってよ!!」
「うん。酒保でなんでも好きなものを買ってあげよう」
「スティングー、早くー」
手を振りながら自分を呼ぶ、その姿を見ていると、一つの考えが脳裏に生まれて
スティングは、ああ、と納得した。
そうだ。 彼は、仲間以外の軍人たちとは違って
自分たちのことを『兵器』としてではなく『人間』として接してくれているのだ。
「…ああ、今行く!」
スティングは、自分を呼ぶ仲間たちへとニッと笑顔を見せ、彼らの元へと歩いていった。
143 :
16/18:2005/12/04(日) 18:46:06 ID:???
帰還してきたMSたちを収容したミネルバは反転し、演習宙域を離脱していった。
艦が加速していくにつれて、ブリッジ内に満たされていた重圧は晴れていったが、
代わりに、空しい虚脱感が流れ込んできて、クルーたちの疲労をさらに重いものへと変えていく。
「これでは、追跡は難しいな」
艦長席の斜め後方に位置する席に着く男、デュランダルはため息混じりにそう呟いた。
「申し訳ありません、議長」
「いや、仕方ないさ。 よもやこんな状況になるとは、誰も予想出来なかっただろう。
…それに、この場合は地球連合との関係の悪化を防ぐ方が、はるかに重要だ」
自分の方を振り向き、深く頭を垂れるタリアへと、首を振りながら彼はそう言った。
その後、第一種戦闘配備を解き、プラント本国から指定されたランデヴーポイントへと向かう途中
デュランダルたちとタリアは、ブリッジを出て艦長室へと向かった。
「あの妨害については、本国に戻り次第、正式に抗議するよ。
本来なら、このような事態にはもっと協力的になってもらわなければいけないからな」
艦長室へ向かう道中、デュランダルは前を先導するタリアへと、そう告げた。
そして、難しそうに眉根を寄せながら、顎元に手を当て小さく唸る。
「決め付けたくはないが、あの艦隊の行動を見ると疑ってしまうのだよ。
このたびの強奪事件は、地球連合軍の仕業ではないのかと」
「議長、数時間後にはプラント本国よりお迎えの艦が参ります。
それまで、ゆっくりお休みください」
疲れた表情のまま、なおも思案を巡らせてる様子のデュランダルへと
タリアはつとめて柔らかな声で、いたわりの言葉を口にした。
「すまんな…
それと、オーブ政府との連絡がついた。 姫をお迎えに、『クサナギ』が来るそうだ。
私を降ろした後、ミネルバは地球軌道へと向かってくれ」
「了解しました」
了解の言葉に、うむと頷いたデュランダルは、隣を歩いていたカガリの方を向く。
144 :
17/18:2005/12/04(日) 18:46:38 ID:???
「姫、このようなとんでもない騒動に巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。
国賓を乗せたままで作戦行動を取るなど、許されるような行為ではないのですが…」
「いや、気にしないでくれ。 現に何事も危険はなかったのだから、良いじゃないか。
私たちを守ってくれた、優秀な貴国の戦艦に感謝する。今の世界情勢の縮図を見せてくれたことにも」
「は…? それはどういう…」
「それよりもだ議長! その、姫と呼ぶのはやめてもらいたいな?
私はオーブを代表する氏族の一員、というだけで生まれながらに統治者として確約されていたわけじゃないからな。
第一、私は姫なんて可愛らしいガラじゃないからな。 聞いてると、むずがゆくてたまらん!」
意味深な響きを含んだ彼女の声に、白衣の男は怪訝そうな表情を見せ、問おうとしたが
カガリはそれを遮るように強い語調で、冗談めいた台詞を口にした。
その言葉と、快気に満ちた闊達な笑顔を前に、話をはぐらかされた男は苦笑しながら頷く。
そんなやり取りを聞きながら、カガリに付き従い歩いていたアスランはこみ上げる笑いを抑えるのに必死だったが。
ふと、カガリの瞳がじっと自分の顔を捉えているのに気付き、視線を合わす。
「オーブに戻ったら、やるべき事がたくさん出来た。
これからは忙しくなるな」
「そうですね…ですが、無理は禁物ですよ」
「分かってる。 けれど…今動かないと機会を逸する。そんな気がするんだ」
真剣な口調で、アスランの言葉にそう答える彼女。
燃える夕日を宿したような色彩の視線は、まだ定かに見えない自分の相手を見据えるように、遠く、鋭く。
そんなカガリの姿を前にしながら、アスランは無言のまま考えていた。
彼女は今、以前のようにMSを駆って戦うという方法ではなく、
政治家としての立場から、護るための闘いを始めようとしている。
――果たして、今の自分に彼女の力となることは出来るのだろうか。
かつてのザフトレッドであるアスランは、戦闘に関してしか力を持たぬ自分に、初めて苛立ちを感じていた。
145 :
18/18:2005/12/04(日) 18:47:17 ID:???
新型機強奪事件から数えること、三日目。
地球側に面する、プラント防衛ラインの端に位置する宙域に、6隻のナスカ級戦艦が航行している。
「ったくよー。本気でテストやる気なのかよ、お偉いさんは」
「アーモリーで新型機が強奪されたばっかりなのに…
新型システムの実験だなんて、よくもまぁやる気になったもんだ」
ナスカ級のうち一隻の格納庫内。
ジン、ゲイツといった現在の主流からは型遅れ気味のMSが、整然とハンガーに並べられてる中。
機体チェックを終え、休憩に入っている整備兵たちが詰所の周りに集まり、雑談に興じている。
休息中なのか、あるいは別の場所に詰めているのか。格納庫内にはパイロットらしき姿は見当たらない。
「なんでもさ。 すごい数の連合艦隊が、L4近辺で演習をしてたんだって。
しかも、近くにはこっちの戦艦がいたってのに、気にしないでよ!
で、上の人らは焦ってるらしいぜ?」
「うわーマジかよ! それで対抗して、システムのテストを急がせるってことか。
気張ってんなーホント」
一服のコーヒーを啜りながら、自分らの仕事に関する話題を広げている中。
その輪に入らず、一人いまだに仕事を続けていた整備兵は、彼らに背を向けながらジンのコクピットへ身を滑らす。
ちら、と。 僅かに視線を上げ、同僚たちがあさっての方向に顔を向けながら談笑している姿を確認して。
ツナギのポケットからそっと抜き出した、一枚のディスクをコンソールの横手にある挿入口へ押し込んだ。
コクピット正面のモニターに、ディスク内のプログラムが走り始めたことを示す文字列が表示されたのを見届けて
彼はにやりと、不敵な笑みを刻んだ。
「さぁ、連合の奴らに思い知らせてやれ『グレムリン』
…そして、今度こそナチュラルどもを叩き潰す戦争を起こすんだ」
146 :
あとがき:2005/12/04(日) 18:48:39 ID:???
アガメムノンを変換したら崇め無ノンと出て御利益なさそうだなぁと思った舞踏の人です。
今回の話はこれまでで一番長いかな…そのせいか、ちょっと文章にグダグダ感が出てしまった気がします(汗
ファントムペインサイドの部分とかは楽勝で書けるのですが、艦隊の状況描写とかに手こずりました…
女の子が小さな声で歌を口ずさむってのは可愛いもんですね。
本編のミーアの歌を聴いていてそう感じたので、ステラでやってみました。
そして相変わらずやりたい放題のケイと、自己主張の強いカガリ。止まりません!
アスランにも見習ってもらわなければ…
・ケイの階級について
位置づけは大西洋連邦軍特殊作戦軍所属で階級は少将です
通信を行なった老人、アウグストは直属の上司です
連合とかブルコスの内部事情なども書いていきたいのであの老人を含めた脇役が数人でます
・ヴァリトラ級大型空母
連合の船の名前って軍人や大統領などの名前から取られているのが多いのですが
大きい物と分かりやすいような名前にしたかったので竜の名前を使いました
次回よりユニウスセブン落としに変わる事件が始まります
早く書けるように努力します
舞踏の人乙!
今日は豊作だな。どれもおもしろくてパソコンの前でにやけっぱなしだ。
ケイとファントムペイン側も関係がだんだん見えてきて続きが気になる木。
カガリがMS乗りから政治家に転向したのもGJ
………ケイの閻魔帳が激しく気になるよ
『・・・・・艦長に怒られるかな?こりゃ。』
シンハロはインパルスのコクピットで呟いた。
冷却処理能力を超えた発熱によりコクピットの一部がデロリと溶けている。
自分が着ている服は特別製なので無事だがこれではマユは乗れないだろう。
【艦長どころではない、お嬢様にも皆にも、とにかく怒られるだろうな。
俺は所詮人と交わる事のない機械の身、お前の弁明をしてやることはできない。】
『ソードインパルス』の呆れた意思が伝わってくる。
そしてミネルバに着艦するインパルス。
シンハロがハッチを開けると蒸気が一気に外に出る。
そしてある程度シンハロは熱が収まると外に出てきた、するとその瞬間・・・。
「レヴォリューション・キィッッックッ!!」
仮面ライ○ーよろしく、ハイネがとび蹴りを食らわせてきた。
『ぐべらっ!!』
北斗の○のような悲鳴をあげて吹っ飛ぶシンハロ。
「トースッ!」
そのままレイにトスされて・・。
「アターック!!」
マユに壁に叩きつけられた。
「・・・っ!!」
「アスランさん!!」
アスランはフリーダムが撃墜されるのと同時に、何処かへ駆け出していた。
自分でもどこに行きたいのか解からない。ただ、悲しかった。
考えも変わってしまった。選んだ道も違えた。一緒に歩いてはいなかった。
昔の甘えん坊のキラは何処にもいなくなった。
それでも、親友だった。
「キラッ・・・・・!」
やりきれない気持ちがぐるぐると駆け巡る。
シンハロがやった行動は軍人としても正しい。キラも間違いなく敵だ。
でも、それでもキラとの思い出が駆け巡る。
桜の綺麗にさいた通り、ラスティ達を失ったあの日、オーブでの再開、そして戦い。
二人で駆け抜けた宇宙。全て捨てることは出来ない。割り切れない。
「アスラン!」
アキラが追いかけてきたらしい。どうやら全員で手分けしてアスランを探しているらしい。
そしてアスランにハンカチを手渡す。
「・・・・今は泣いて良いと思う。俺も・・、その気持ちは良くわかるから・・。」
アキラの言葉にはっとする。
彼の話、そしてミリアリアとキラの話を統合して、ほぼ間違いない。
何より、この間彼の看病をした時に部屋で見た写真。
二人の制服をきた少年が、卒業証書を入れる筒をもって腕を組んで校門の前で笑っている。
その少年は、アキラと茶色いウェーブの・・・・。
「アスラン?」
アキラが様子の変わったアスランを心配そうに見つめる。
「どうした・・・。」
「やめてくれ!!」
心配するアキラを振り払うアスラン。
「俺は・・、俺はキミに心配される資格は無い!無いんだ!!」
アスランは涙を流しながら叫ぶ。
「頼む・・、もう放っておいてくれ・・。頼む・・・・。」
ひたすら泣きながら訴えるアスランを困惑した目でみると、アキラは静かに去って言った。
そう、いつだって自分達は誰かの大切な人を奪ってる。それは彼だって例外じゃない。
でも、感情は止まらない。止めることはできない。
「キラ・・・・・。」
アスランは、たった少しの希望をこめて親友の名前を呟いた。
なんだかんだいって今日も書いちゃった、てへ。ほのぼのです。
最近アキラの奴の出番が多くなってちょっと困り気味です。
ハイネ隊は動かしやすさにランクがありまして、アキラ、ゼロ、グレイシアは結構
動かしやすいんですが、ジョー、キース、カルマは結構動かしにくい。
・・・・・まぁ、ジブラルタルで活躍してもらう予定ですので・・。
さて、アスランの葛藤を描いたところで次回はジブラルタルです。
どうなるスティングとメイリン?!
アウルとマユのガチンコ勝負!!勝敗はどっちに?!
ゲンvsシンハロ!!理想を抱いて溺死するのはどっちか?!
ハイネコンサートinジブラルタル!ハイネ隊はてんやわんや!
そしてどうなるアスラン?!脱走するか?!それとも辞表をだしてちゃんと退職するか?!
次回をお楽しみにー。
同人アニメではムカついてムカついてどうしようもなかった凸だが、このスレの作品群に出る凸はどれも好感持てるな
やっぱキャラの評価ってのは書く人次第なんだなあ、とあらためて痛感した
ほのぼの作者様乙です!
アスランの葛藤が上手く書けてたと思います…
こう、アニメ版のとは違う、感情的でがむしゃらな様子が良かったなと感じました。
そしてシンハロに対する三連攻撃ナイス!w
>>151 単に脚本家が凸に萌えてたから駄目になっただけ。
位置的にはおいしい場所にいるから調理の仕様によってはいくらでもいいキャラに化ける。
それだけここの職人さんたちの腕がいいってことだろうね。
作者の皆様方、本当にGJです。
このスレの影響で今日、1/100ソードインパルスを買ってしまいましたよ。
アニメを見ているときは殆ど欲しくなかったのに。
ただ負債の成績のプラスになるかと思うとアレですが。
〜人気キャラ投票 途中経過〜
・スレ8の方へ載せてますが、一応現行スレへも貼っておきます。
・投票は 2005年12月9日(金)23時59分まで
・投票所は
http://multianq.uic.to/mesganq.cgi?room=errand ・0票は項目だけ作成されたものです
■中間順位(2005/12/04 23:25)
順位 項目 得票数 得票率
1 ゲン・アクサニス(PP戦記) 40票 25.0%
2 ユウナ・ロマ・セイラン(隻腕) 25票 15.6%
3 マユ・アスカ(隻腕) 17票 10.6%
4 シン・アスカ(隻腕) 15票 9.4%
5 シンハロ(ほのぼの) 12票 7.5%
6 マユ・アスカ(マユ種) 10票 6.3%
7 カガリ・ユラ・アスハ(マユ戦記版) 8票 5.0%
8 ハイネ・ヴェステンフルス(ほのぼの) 5票 3.1%
9 マユ・アスカ(ほのぼの) 4票 2.5%
9 シン・アスカ(マユ)(Injustice版) 4票 2.5%
11 アレックス・ディノ(マユ戦記) 3票 1.9%
12 アウル・ニーダ(PP戦記) 2票 1.3%
12 ステラ・ルーシェ(PP戦記) 2票 1.3%
12 スティング・オークレー(PP戦記) 2票 1.3%
12 カガリ・ユラ・アスハ(しのはら) 2票 1.3%
12 老師(汎ムスリム会議)(PP戦記) 2票 1.3%
12 レイ・ザ・バレル(隻腕) 2票 1.3%
18 ロード・ジブリール(隻腕) 1票 0.6%
18 カガリ・ユラ・アスハ(隻腕) 1票 0.6%
18 キラ・ヤマト(マユ戦記) 1票 0.6%
18 ステラ・ルーシェ(ほのぼの) 1票 0.6%
18 アル・ダ・フラガ(隻腕) 1票 0.6%
23 ルナマリア・ホーク(マユ種) 0票 0.0%
23 レイ・ザ・バレル(マユ種) 0票 0.0%
23 メイリン・ホーク(マユ種) 0票 0.0%
23 ミーア・キャンベル(マユ種) 0票 0.0%
23 暗黒女帝カガリ・シーノハーラ(ほのぼの) 0票 0.0%
ソードの性格が渋すぎw
マユのこと「お嬢様」つってんのがツボった
愉快なフォース、侍気質のソード、さてブラストはどんな性格なんだろうか
なんとなくだが立ち位置は、
フォース→ルパン
ソード →五右衛門
ブラスト→次元
えっ?全然違う?失礼しました
ブラストは豪快な性格と見た。
何せトリガーハッピーだし。嬉しそうに武器の解説をしながらばかすか撃ちまくって敵がくだけていくのを見て悦に入る。
懐かしいなぁ……カルとブラの大冒険。
159 :
Hina:2005/12/05(月) 15:25:06 ID:???
隻腕様、運命の舞踏様、ほのぼの様乙です、私も書き始めたばかりですが他者様に
くらべ明らかに下手だなあと思いつつ書いています><
というわけで第一話です
ガンダムSEED MAYU‘S DESTINY
「お父さん!!お母さん!!!!!」
「マユ!!!そっちへいっちゃだめだー!!!!!」
小さい自分が両親を必死に追いかける、追いつけば助かると信じて・・・
しかし後一歩というところで両親はトマトを押しつぶしたようにグチャグチャになってマユの前で変わり果てる
「イッ・・・・イヤァァァァァァァァ!!!!」
「マユ、危ない伏せろおぉ!!!!!!!!」
第一話「崩壊した平和」
「ハァ・・・ハァ・・・ハァっ、最近見なくなったとおもったのに・・・また・・・」
夜中に目が覚めてしまった、夢の内容はいつも3年前のあの日の出来事、マユにとって忘れられない悪夢、蒼い翼のMSが放った流れ弾が両親を何度も焼き尽くし、兄は私をかばって大怪我を負う最悪の光景、マユにとって癒すことは絶対にできない心の傷跡
「マユ?・・・またあの夢を見たの?」
隣のベッドで寝ていたルナマリアが心配そうにマユのことを見ている、ずっと同室のおかげか最初の頃に比べると慣れっこになっているし夢の内容も知っている
「ルナお姉ちゃん、ゴメン、起こしちゃったね」
「もう慣れちゃったわよ、気にしなくていいからね、明日から・・・あ〜もう今日か、忙しくなるんだから寝ておかないと」
「うん」
「遅刻すると艦長に怒られるわよ」
「それは嫌だね、罰としてトイレ掃除1週間とか」
「ありえる」
二人は笑うと瞼を閉じる
「お休みなさい、お姉ちゃん」
「お休み、マユ」
睡魔はすぐに襲ってきて少女は深い眠りについた
L4コロニー中域の端の辺りミラージュコロイドでレーダーの網を潜り抜け
軍事コロニーアーモリーワンに近づく一隻の船があった
ブリッジで仮面の男、ネオ=ロアノークと副官イアン=リーがまもなくおこなわれる作戦について話し合いを始めていた
「ロアノーク大佐、まもなく作戦領域です」
「了解だ、あいつら大丈夫だと思うかリー?」
上官の不安そうな言動に全く動じず淡々と
「彼らはエクステンデッドです、並のコーディネーターでは敵うはずがありません」
「そうなんだけどさぁ、あいつら気まぐれだし、熱くなるとすぐ我忘れるしボケーっとしてるし」
「大佐、指揮を取る人間がそんな事でどうするのですか?」
リーは心の中でこの作戦が終わったら転属願いを出そうと誓った、優秀で人望があるのは確かなのだが、この男の下では頭痛が耐えないからだ。
「冗談だよ、冗談やつらは命令はちゃんとこなすし、臨機応変に対応できるから」
「今後、注意してください士気にかかわっ」
「了解、了解、時間まで少し休ませてもらうよ」
「わかりました」
リーの説教を聞き流しブリッジを後にする際に一言
「予想外の事は想定しておくべきだぜ、エグザスの準備もしておいてくれ」
「了解しました」
ミネルバ進水式3時間前、マユ、ルナマリア、メイリンの3人が集合場所に急いで走っていた
「マユー、メイリン、走らないと遅刻しちゃうわよ」
「もう、お姉ちゃんったら自分が寝坊したせいの癖にー!!!
「二人ともまってよぉぉ!!」
二人の足の速さに着いていけず遅れるマユ曲がり角を曲がろうとしたところで
「キャッ」
ドンっと背中を向けていた金髪の少女とぶつかってしまった
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「うん…ステラは平気・・・」
「おいおい、ステラ何してんだよ?」
連れらしき水色の髪と緑髪の青年が金髪の少女の事を心配して駆けてくる
「この子と・・・・・ぶつかったの・・・」
「前を見ずに歩いてるからだよバーロー」
水色の髪の少年が少女をしかる
「いえ、私が急いでて走っていたからです、ごめんなさい」
ペコリと頭をさげ謝る
「お嬢ちゃんも気をつけなよ、ここ危なくなるからな」
「???(危なくなるってどういうことかな?)」
緑髪の青年の意味不明のセリフに疑問を持つが時間がないことに気が付き
「じゃ、じゃあ私はこれで」
急いで駆けていった。
「おい、スティングいいのかよ?あんな事言っちゃって」
「俺たちの目的は新型のMSとザフトだぜ、あんな小さい子には関係ないだろ」
「そりゃ、そうだけどさぁ」
「スティング・・・アウル・・・時間ないよ・・・」
「あ〜!!ほんとだ!!俺たちも急ぐぞ」
「あいよ」
「・・・わかった」
ミネルバのメインブリッジ何とか着任時間に間に合った3人は軍服に着替えて艦長のタリア=グラディスに挨拶をしていた
「ルナマリア=ホーク、マユ=アスカ、メイリン=ホークの3名着任いたしました」
「ご苦労様、さっそくで悪いんだけど、ルナマリアはレイと遅れているザクの搬入の手伝いにマユはインパルスの調整、メイリンはオペレーター作業にはいって頂戴」
「了解です」
オペレーター席につくメイリンを残しマユとルナマリアはブリッジを出るそこでパイロットのレイ=ザ=バレルに出くわす
「あ、レイお兄ちゃん」
「レイちょうどよかった、私らのザクの搬入手伝ってこいってさ」
「了解」
クールで口数が少ないレイはそれ以外喋らない
「レイお兄ちゃんローテーション代わってくれてありがとね」
「気にするな、俺は気にしていない」
「あ、これ頼まれてた本ね」
「すまない、これが欲しかったのだ」
袋から中身を取り出し確認するタイトルは「世界の仮面図鑑」と書かれている
「この本面白いの?」
「ああ、世界中の仮面が載っている」
「ふぅ〜ん、レイにそんな趣味があったなんてね」
「な、、、なんだルナマリア、じ、時間がない急ぐぞ」
「了〜解」
笑いながらマユと別れてザクを取りにいこうとする二人だがその時
ドゴゴゴゴォォォォォォォォンンンン!!!!
突如の揺れにマユは耐え切れず尻餅をつく
「キャッ、いっいたーい」
「な、何?この揺れは」
「爆発か?」
メイリンからのアナウンスが響く
『新型MSが何者かにより強奪され暴れまわっていますパイロットは至急MSの発進準備に・・・繰り返すパイロットは至急』
「新型って、まさかガイア、カオス、アビス?」
「危ういな、あの3機は量産型MSでは歯が立たない、ルナマリア、ザクの発進準備をするぞ、マユは・・」
「私はインパルスで出るよ、あの3機相手じゃザクだときついよ」
「でも・・・マユは・・・」
テストパイロットと言いかけてルナマリアはマユの様子がおかしいことに気がつく
「な・・・なんで・・・また繰り返すの・・・」
怒り、他に何も見出せない程の怒りのオーラが見えたような気がした
「私先にいくね」
「あ、マユ!!」
走ってインパルスのほうに向かうマユを呼び止めたが聞こえなかったのか走り去っていく
「急ぐぞ、ルナマリア、マユを飛び出させるわけにはいかない」
「っ了解」
レイとルナマリアもザクで出撃しようと向かう
ミネルバのブリッジ
「マユが出るですって!?」
「はいインパルスならあの3機に対抗できるからと」
「っっあの子はテストパイロット・・・」
「艦長マユから通信です」
「メイリン、つないで」
「はっはい」
モニターにマユが写る
「艦長お願いです、出撃させてください」
「マユ、、、、」
しばらくタリアは考え込む、マユをテストパイロットにしたのは戦争をさせない為だったのに13歳の女の子を戦わせないようにする為だったのに運命とはどこまで残酷なのだろうか・・・意を決しタリアは支持をだす
「ルナマリアとレイをすぐに向かわせます絶対に無理をしないように、それから無茶はしないように」
「了解です」
『発進シークエンスを開始します、システムオールグリーン』
次々と発進準備を整え発進準備が整う
『コアスプレンダー発進どうぞ』
「マユ=アスカ、コアスプレンダーいきます!!」
戦闘機に続きチェストフライヤー、レッグフライヤー、ソードシルエットが射出される目指すは軍港、マユは胸に秘めた決意を胸に出撃した
「今度こそ・・・・守って見せる・・・もう・・・誰かが泣くのは見たくないの」
続く
165 :
Hina:2005/12/05(月) 15:34:19 ID:???
う・・・・番号振り間違えてるスミマセン
乙でした
皆さん、お久しぶりです。
以前自分が書いたマユ戦記をリライトして投下したいのですが、宜しいでしょうか…?
個人的には、どんどんカモンです
楽しみにしてます
Hina様続きキター!
仮面図鑑ワラタw
内容とは無縁のことだけど、
文と文の区切りはちゃんと「。」を使った方がいいかも。「、」だと、なんかダラダラした長文に見えて・・・
一文の長さを意識して短くするだけで、格段に読みやすい文章になりますよ。
内容はこの先を十分に期待させるものなので、今後も頑張って下さい
しのはらキター!
どんな形であれ職人の復帰は大歓迎。
『・・・・ジブラルタルかー。』
シンハロは格納庫で呟いた。
MSの移動の作業が急がれており、すでに量産期のカスタムであるハイネ隊のザクは
移動してしまった。
ちなみにシンハロがいるのはコアスプレンダーの中である。彼は暇だとここで大体MS達と
話をしている。ぶっちゃけ外で話してると皆に変な目で見られる。
【・・・・・・・・。】
『ブラスト。いい加減機嫌を直してくれよ。』
シンハロはフリーダムを倒した時から機嫌の悪い相棒に言った。
【旦那はあっしより、剣(けん)と力(りき)のやつのほうが使いやすいんでしょう?
そりゃあ、どうせあっしは遠距離ですよ。えぇ。使い勝手がわるいでさぁ。
でもね、旦那。あっしだってお嬢の役に立ちたいんです、解かりますか?
そうそう、それに何時も言ってるでしょう。あっしは横文字に弱いんです。
疾風(はやて)って呼んでくだせぇよ。】
『ブラストインパルス』・・・・、もとい疾風(はやて)の言葉が聞こえる。
こいつは絶対プラント出身じゃない、きっと幻の東アジアのガンダムに違いない。
この微妙なエセ江戸弁、一体何処で身に付けたのだろう?
第一、横文字に弱いってこいつ何歳だ?何時の機械だ?おまえ実は茶汲み人形か?
はてやエレキテルとかそこらへんか?
【おーい、そろそろ俺達も運び出されるぞ、いまセイバーが運ばれてる】
フォースの声が聞こえる。いけない、とシンハロは思い急いで外に出る。
『さて・・、待ってろよ・・・・。』
シンハロはマユと再開してるであろう『シン・アスカ』に言った。
「マユゥゥゥゥゥッ!会いたかったよぉぉぉぉっ!!」
「一撃必殺!!」
ヘリから飛び降りてきた兄に一撃食らわせるマユ。どうしても感動の再開には見えない。
「ぐはっ・・・・、マユの・・ツン・・・・デ・・・。」
「お兄ちゃん、私はツンデレじゃないよ、キルデレ?」
「Dead ore Love ?!」
マユとシンが何年ぶりとは思えない漫才を繰り広げている向こうでは、かなりの感動の再開が
繰り広げられていた。
「・・えーと、その・・ひさしぶりだな・・。」
スティングが恥ずかしそうにぼそぼそっっとメイリンに言う。
すると、メイリンはスティングに突然抱きついた。
「・・・・・ひさしぶり・・じゃないでしょ?」
「え・・・?」
メイリンに突然抱きつかれ目を丸くしながら思わず声をだすスティング。
「おかえり・・・、スティング。」
メイリンは目に涙を浮かべながら満開の笑顔でスティングを迎える。
「・・・ただいま、メイリン。」
スティングも微笑みながらメイリンを抱き返した。
「ルーナーちゃーーん!」
「スーーテーーーラーー!!」
女の子二人はがしっと抱きしめあう。
「元気だってたー?!大変だったでしょー?!」
「大丈夫・・。皆のために・、がんばった。」
「あーもー!ステラかわいいー!!」
年頃の女の子のノリで再開を喜び合うステラとルナマリア。
「・・・おい、おれ何?俺だけ一人?」
アウルは呆然と周りを見る。すると・・・。
「よぉ、一人だけあぶれちまったのか?アウル。」
聞き覚えのある声の方を向くと、顔に大きな傷のある連合の服をきたおっさんが立っていた。
「・・・おっさん、誰?」
「おっさんじゃない!!・・・お前らはこれがないと解からないのか?」
そう言って男が出したのは見覚えのある仮面ヘルメット。
「・・・・・・・・・・・・ネーーオーーーーー?!」
驚きのあまり大声をあげるアウル。
「おいおい、大声を出さないでくれよ。俺、いまネオ・ロアノークじゃないんだぜ?」
「は・・・・?」
ネオの言葉にアウルを意味不明、という顔をする。
『ネオ・ロアノークは死んだ事にした。彼を生かすために別の人間の戸籍を用意したんだ。』
ネオの後ろからザフトの赤服をきた青い髪の青年が来た。
「ハロ?!どういうことだよ?!」
アウルが意味不明、という顔をする。
『あー、この人、アウル達の『家族』なんだろ?だったら助けなきゃなぁ、って思って。
裏でいろいろ手回して、戦死者の戸籍でちょうど良いのがあってさ。
顔も似てるし、ちょうどMIAになってる。血液型も一緒。年齢も同じくらい。
しかも一度艦ごと連合を脱走して連合にはっきりした知り合いがいない。
そんなすばらしい条件が揃ってる奴がいたんで、それを渡したんだ。』
「と、いうわけで、今のおれは『ムウ・ラ・フラガ』。なんでもエンデミュオンの鷹って
ご大層な名前がついてるらしい。いやー、それにしてもどうなるかと思ったぜ。捕虜になった時は。」
はははははーと笑うネオ、もといムウ。
アウルはただ、遠くを見るしかできなかった
『さて、始めまして。ゲン・ヘーアンくん?』
シンハロはゲンにあいさつする。
「・・・・・あんた、誰だよ。」
ゲンは明らかに警戒してシンハロを見る。
『あぁ、自己紹介が遅れたね。俺は『シン・アスカ』、マユの兄だ。』
と、ゲン・・もといシンの導火線に火をつけた。
「はぁぁぁぁぁあぁぁっ?!シン・アスカはおれだっつーの!!」
ゲンがたまらず胸倉を掴む。
『あ、これ俺の免許。ね?ちゃんと書いてあるだろ?』
ゲンはその免許をばっと取り上げて見る。そこには年齢は違えど確かに自分の名前が
目の前の男の写真で載っていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ?!マユ!!こいつは誰なんだ?!」
「えーっと、話すと長くなりまして・・・・かくかくしかじか。」
「はぁ?!アンドロイド?!どこのSFだよ?!」
『ほら、証拠証拠。首がはずれるよー。』
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ギャイギャイとと騒ぐアスカ三人組。さらにエスカレートしていく。
「あんた!!マユと兄弟ってのに髪の色も目の色の全然似てないじゃないか!!」
『ふっ!甘いな小僧!!』
そう言うとみるみるうちにシンハロの髪が青からマユと同じ黒へと変わっていく。
「なぁっ!?何だとっ?!」
『ふはははははっ!!俺の髪はPS装甲の色が変わる原理を応用して
色が変えられるんだよ!!目の色もな!!』
高らかと勝ち誇った声をあげるシンハロ。
「何だ何だー、にぎやかだなー。」
見るとハイネがハイネ隊とアスランを引き連れて来ていた。
「何やってるんだ・・、あの二人。」
「あー、マユちゃんの取り合い?」
ばかだなー、とか面白いなー、とか勝手な感想を次々に口に出すハイネ隊。
「兄さん!!いい加減にしてください!!」
このままではらちがあかないと、二人を止めようとアキラは口調を変えて二人を叱咤する。
ピタッ、とシンとシンハロの動きが止まる。
「『あ・・・・・っ!あきはっ!!』」
ほぼ同じタイミングで何かに怯えたような声をだす二人。
アキラは眼鏡を取り、髪の毛を解く。
「いいですか?勝負をするというのならもっとキチンとした方法でしてください・・。」
中の人効果で正座をしてアキラの説教を聴くシンハロとシン。
「・・・その勝負、おれが仕切る!!」
ばばんっっと説教に割り込むハイネ。
「第一回!!ヴェステンフルスプロデュース!兄王者(アニキング)選手権だ!!」
ハイネはそう勝手に、高らかと宣言した。
その後、説教臭い性格になったアキラにシン達ともに説教されたのは言うまでもない。
なんだこのブラストの性格w
マジ吹いた
では投下 お目汚しします…
運命の歯車は誰もが持ってはいるが、実際にどう回るかわかる人間はいない。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY ーある少女の戦記ー
第0話
二つの人類…コーディネーターとナチュラル…の間に入った亀裂は埋まることなく、日を追うごとに深まっていった。
コーディネーターはナチュラルを劣等人種と見なし、ナチュラルはコーディネーターを人間扱いすらしないようになる。
多くの人間が持つ歯車が狂い始めた。
ごく普通の少女マユ・アスカでさえ、その例外でいることはできなかった・・・。
オーブ近海。
オノゴロ島にあるマスドライバー施設「カグヤ」には、難民と化したコーディネーターたちが押し寄せていた。
彼らは皆、宇宙に浮かぶコーディネーターのみが居住するコロニー国家群、プラントを目指していた。
だが、約束の地へと行ける人間は数少ない。
押し寄せる人数全員分を乗せられるシャトルはここにはないのだから。
「乗せてくれ!」
「子供だけでも!」
オーブの兵士たちは空に発砲して難民を抑えようとするが、彼らに構わずシャトルに人が乗り込んでいく。
そしてシャトルが一機、また一機とマスドライバーから射出されるたびに、彼らの顔に絶望にも似た表情が浮かんでは消えていく。
マユ・アスカにとって頼れるのは父親でも母親でもなく、実の兄シン・アスカだけ。
マユには両親がいない、ナチュラルに殺されたのだ。
コーディネーターで家族がいない人間というのは決して珍しくない。
「お兄ちゃん、私たち大丈夫かな?」
「大丈夫だよマユ。全然心配いらないから」
シンはそう言って頭を撫でてやる。
口ではこう言うが、実際のところ彼自身大丈夫かどうか全くわからないでいる。
「(俺たち、どこへ言っちゃうんだろう…)」
家族を失い、追い出されるように飛び出た日本。
オーブに受け入れられたはいいが、今度はプラントへの出国を命じられた。
オーブは地球で唯一コーディネーターの居住を許す国家で、事実コーディネーターが政治や工業の分野で活躍し、ナチュラルと仲良く暮らしている。
が、オーブは地球の国家である。
ナチュラルに支配された地球連合、それを牛耳るブルーコスモスが何らかの圧力をかけているのは素人のシンから見ても明らかなこと。
少しして、シンは考えるのをやめた。
今は自分、そしてマユをどうにかしてプラントに向かわせるかということだ。
シンの腕を掴むマユの手の力が強まる。
「お兄ちゃん」
「なんだマユ。お腹でも空いたか?」
「もし離れ離れになっても、マユのこと忘れないよね…」
「何言ってるんだよマユ。マユはお兄ちゃんと一緒にプラントへ行くんだ」
シンはまた頭を撫でてくれた。
嬉しい気持ちだが、今はなんだか不安な感じがする。
大好きな兄と、もう会えなくなってしまうのではないか?マユの胸中でそんな想いが芽生えた。
「次が最後のシャトルだ!」
それを聞いた、行き場のないコーディネーターが悲鳴に近い声を上げる。
無理もない、噂ではあるが、シャトルに乗り損ねた難民は地球軍に引き渡されるらしい。
「行こう、マユ!」
シンは人混みを掻き分けて、マユの手を引きながら進んだ。この際体裁など関係ないこと。
あと一歩のところでマユもろとも地球軍に拘束されたら、どんな目に遭うかわかったものではない!
「マユ、頑張れ!」
二人は必死で走る。天国行きの扉はあと少しで閉じるのだ。
「ダメだ!もうシャトルは満員だ!」
あと数メートルのところで、銃を持ったオーブ兵が前に立つ。
シンは兵士の後ろを見た。
シャトルへと通じる通路、その奥に希望がある!
マユの手を引っ張って通路へやり、自らは兵士に組み付く。
「早く行け!マユ」
「で、でも…」
「忘れない、俺、マユのこと忘れないから!」
マユは走り出す。振り返らずに。
ここから彼女、そしてシンの運命の歯車は回り始めた。
それが何を産み、何をもたらすのか、今の二人にはわからないこと。
第0話 終
久々に長文書いたら文章力落ちすぎorz…
投下終了です
ではノシ
しのはらタン乙、イイヨー
>>178 てか歌姫のなんたらってのは止めたのか?
しのはらさん、乙。
がんがってね。
183 :
通常の名無しさんの3倍:2005/12/05(月) 22:40:03 ID:5pn10U68
>>180 あれはこのスレを荒らしてしまう要因になってしまったからなぁ
だからこそしのはら氏もしばらく姿を隠していたんだろう(と思う)し
文章力はこれから戻せばいい事さ。でも今度はあんまり悪ノリしすぎるなよw
リライトと言うと、基本的にマユ戦記のバージョンアップ版(?)と考えていいんだろか
ともかくまた頑張ってくれ
ageるなよ俺orz
お詫びのsage
Hina様乙です!
どうやら仮面に造詣が深いらしいレイの様子に爆笑w
生存してて、なおかつ近くに居るシンの存在がこの後どう影響していくのかが気になりますね。
ほのぼの様乙!
今回は笑いどころがたくさんで楽しかったですw
ブラs…もとい疾風さんのキャラがツボ!ってか全シルエットどれも良いですな!
兄王者選手権が楽しみです。GJ!
しのはら様乙です!そしておかえりなさい!
出だしからして他と全然違う展開ってのが、先を期待させてくれますね。
続き期待してます!
職人様が増えて、スレも活気出てきそうで嬉しいなぁw
しのはらの新作、相変わらずプロット臭がするが。。。
まぁいきなり叩くのも何だし経過観察と行くか
文章力は前も今も大して変わってねぇぞw
このスレはプロットでもOKだったような気が…
ほのぼのお疲れさまっす!ブラストもとい疾風・・・主役メカの宿命だよねえ・・・
遠距離ドンパチより俺たちはチャンバラのほうが燃えるからw
ところで、こちらのインパルスは本体がシンハロ対応でシルエット同士で
会話してるの?むっちゃ気になるんですけど
しかし、アキラのトレース・オンを毎度タノしすぎw
シンハロVSゲンの兄王者楽しみにしてます。
しのはらさまおかえりなさ〜い!!待っていましたよ。
プロット見ると、マユのオーブ脱出+シンのネオへの馴れ初めですか?
すっごく期待していますので、また〜りとお願いします。
Hina様、お疲れです。しかし仮面図鑑とは・・・ネオとの伏線っすか?w
今までのマユと比べると内向的というかみんな詰め込んじゃうタイプと見た?
しのはらさん、お帰りなさい。
なんとも気になるオープニングですね。さてここからどう転がっていくのやら。
一応、過去の作品とは頭の中をリセットして読み直す作品なんですよね?
今度も最後まで書き切って頂けることを期待しています。
他職人の方々も、ご苦労様&GJです。
色んな切り口があって、見てて膝を打つことしきりです。みんな上手いなぁ……。
というわけで、続きです。
ロドニアのラボを巡る戦闘でミネルバの捕虜になったステラ。
その彼女を、レイ・ルナマリア・シンの3人が勝手に連合側に返却してしまいました。
ステラの受け渡しを終えたシンが帰ってきたところから、どうぞ。
アスラン・ザラは――目の前の光景が、にわかには信じられなかった。
シン1人で帰ってきたフォースインパルス。堂々と下りてくるシン。
すぐさま周囲を兵士に取り囲まれ、銃を向けられるが、抵抗の様子すら見せず。
不敵な笑みを浮かべたまま、従順に独房に向かう彼に、人垣を掻き分けたアスランが叫ぶ。
「シン! なんでこんなことを!」
「……? ああアスランさん。すいませんね、あなただけ除け者にした格好になってしまって」
「何故、お前たちは……こんなことをした! このままじゃ……!」
なおも叫ぶアスランに、シンは笑みを崩さずに言い切った。迷いのない口調。
「仲間の判断を疑うのに――理由が要りますか?」
――ミネルバの奥。
3つ並んだ鉄格子の小部屋の1つに、シンは入れられる。残る2つには、それぞれ先客の姿。
兵士たちが出て行くのを待って、彼は大きく溜息をつく。
「……悪いなシン。お前まで巻き込んでしまって」
「ご苦労様。で、ステラはちゃんと返してきたの?」
「オーブのアスハが出てきた。悔しいが、アイツなら良くしてくれるだろう」
隣りあう2つの房から声をかけてきたのは、レイとルナマリア。
2人とも抵抗もせずに捕まったのだろう、見たところ新しい傷はない。
「で、俺たちこれからどうなるわけ?」
「アタシに聞かれても分かんないわよ。まあレイがやるくらいなんだから、大丈夫だと思うけど」
「――普通に軍規を適用すれば、銃殺刑。情状酌量が認められても、重い刑は免れん」
「「ええッ!?」」
今回の件、言いだしっぺのレイの厳しい言葉に、思わず揃って声を上げる2人。
しかしレイはその端整な顔を崩すことなく。
「……心配するな。もし『普通に規則を適用すれば』の話だ。今回の件は、普通じゃない」
「普通じゃない、って……」
「今回は、俺たちに与えられた任務自体が、極秘のものだ。逃亡させた捕虜も、存在自体が秘されているはず。
普通の軍事裁判は、そもそも開かれもしないはずだ。それに何よりも……」
レイは天を見上げ、祈りの言葉を吐く。
「それに何より、議長はあのようなことは望んでいない。
議長は、分かってくれる」
――ディオキアの街。ザフトが徴用した、街一番のホテルの一室。
「……ふむ、事情は良く分かった。ミネルバにはひとまずこちらに帰るように伝えてくれ。
処分は彼らが戻ってからだ。それまでは緘口令を敷いて、この件について外部に漏らさぬように。
いいな?」
電話に向かって話していたのは、ガウン姿のギルバート・デュランダル。
窓の外には、活気づく朝の町。
寝覚めに入った予想外の一報に、しかし彼は動じることなく指示を飛ばす。
やがて、電話は切れて。
「………ふぅ。レイにも困ったモノだな。
少し、刷り込みが強すぎたか。元々私の専門外のこととはいえ、上手くいかないものだね」
受話器を置き、ソファに深々と沈み込む。
今回の事件、要するに「手に入らないだろう」と思っていたものが、予想通り手に入らなかっただけのこと。
彼の計画にとっては、ほとんど痛手と呼べるものではない。多少の遅れは想定の範囲内だ。
それよりも、ミネルバの戦力を消耗せずに、ラボの資料を持ち出せたことの方が遥かに大きい。
デュランダルの顔に、抑えきれない笑みが浮かぶ。
「フフフ……。これで、計画が進められる。
アル・ダ・フラガの失われた遺産。これがあれば、新たな世界が築ける。
『デスティニープラン』を実行段階に移し、全ての問題に決着をつけることができる――!」
マユ ――隻腕の少女――
第十七話 『 破滅への船出 』
「――不問に処す!?」
「まあ端的に言えば、そういうことね。議長はこの件について、正規の軍法会議を開きたくないそうよ」
ディオキアの港に到着した、ミネルバの艦長室。
タリアから聞かされた議長の処分に、アスランは思わず叫び声を上げる。タリアも不機嫌そうな表情を隠せない。
「要するに今回の件そのものが、極秘任務なわけだから。記録に残したくないと言っていたわね。
『捕虜が自分1人で脱走、インパルスが追いかけて再捕獲を試みるも残念ながら死亡してしまった』――
――ということで通すみたい」
「そんな! いくら何でも、無茶苦茶だ!」
アスランは叫ぶ。こんな不正な情報の改竄、そして軍規の無視。
いくら最高評議会議長でも、許される範囲をいささか超えている。
「ただ、流石に無罪放免ってのはマズい、ってことでね。非公式にだけど懲罰任務を与える、って言っていたわ」
「懲罰任務?」
「近く予定されている大規模攻撃の、先陣を切らされるそうよ――艦まるごと、連帯責任ってことで、ね」
『……なんで『バカンス』の最中に、そんなことやらなきゃいけないの! 何かあったらどうするのさ』
「見捨てられるわけがないだろう! 彼らはここまでの戦いで我々を守ってくれた、戦友なんだ。
それに、いいだろう。今回の件で、オーブ軍に犠牲は出ていない」
『そーゆー問題じゃないんだよ、カガリぃ』
遥か離れたスエズとオーブ。タケミカズチ艦上の執務室と、行政府の執務室。
電話越しに怒鳴りあっているのは、ユウナとカガリ。
互いに何かと忙しく、また時差もあるため、なかなかこうして直接会話もできない。
たまたまタイミングが合い、直通電話が繋がったが……しかしこの通り、いきなり2人は怒鳴りあいを始めて。
『こっちは全然芳しくないヨ。『彼』からも連絡はないし、交渉も全然進まない。
和平への道筋そのものがまるで見えてこない、ってのが本音でね』
「そうか……すまないな、無理をさせてしまって」
愚痴を漏らすユウナに、力なく笑うカガリ。彼がそこまで言うというのは、本当に八方塞りな状況なのだろう。
カガリは受話器を手にしたまま、天井を見上げる。遥か遠くを見据えた視線。
「やはり……ひとまず、戦争を終らせるしかないか」
『カガリ……』
「銃を向け合っていては、話し合いのしようがない――つまりは、そういうことだろう?
まずは、戦いを終らせる。そのために、私も戦おう。これまで以上に、戦おう」
それはカガリの信念。このオーブ軍派遣艦隊に参加した、彼女の目的。
「どちらの勝利であろうと、戦争が終わりさえすれば交渉はできる。
交渉ができれば、そこから共存の道を探ることもできよう。
オーブを焼かせないための努力は、ただオーブ1国のためだけではないんだ。
戦後にあるであろう交渉のステージ、その時に我々が発言力を維持し、共存への道を模索するために必要なんだ」
『カガリ……! そうだね、うん、そうだね!』
カガリの力強い言葉に、ユウナは励まされる。受話器越しにも、激しく頷く気配が感じ取れる。
そんな彼の様子に、カガリはちょっと苦笑して。
「だから……プラントがどんなに固くドアを閉ざしていても、諦めずにノックを続けてくれ、ユウナ。
例え今その扉が開かれなくても、私たちの気持ちを示しておくことが、きっと戦後に繋がるんだ」
『分かったよ、カガリ。諦めずに頑張ってみる。
カガリこそ――無理しないでくれよ。カガリが死んだら、元も子もないんだから』
「大丈夫、」
心底心配そうなユウナに、カガリは微笑む。自信に満ちた表情で、言い切った。
「私は、2年前の激戦も生き延びた、悪運の強い女だぞ? 今度の戦いも、きっと生き延びられるさ」
『……バカンス返上で頑張ってくれたのは嬉しいがね、なんともハンパなことをしてくれたものだ』
「まったくですな、ジブリール卿」
『特に、ノコノコと生体CPUを返しに来たという、インパルス。
どうしてその場で討たず、あっさり返してしまったのやら。
奴が我が軍にどれだけの損害をもたらしているのか、分かってるのかね?』
オーブ行政府、情報処理室。大西洋連邦、ワシントンの某所。
タケミカズチとほぼ逆の方角とも、ホットラインが結ばれていた。
通信画面越しに言葉を交わすのは、ロード・ジブリールと、ウナト・エマ・セイラン。
『ハンパと言えば、キミの息子もそうだぞ。
どうも聞いたところによると、今だにプラントと接触を取ろうとしていると言うじゃないか?』
「ハハハ、お恥ずかしい話で。わたくしは無駄だと申しておるのですが、諦めの悪いバカ息子で」
ジブリールの蛇のような視線に、ウナトは笑いながら頭を掻く。
笑いつつも、その広い額に脂汗を滲ませる。
「遅すぎる反抗期とでも言うのでしょうかね。私が止めろと言うと、ますますムキになりおって。
まあ、我らとプラントが手を結ぶなど有り得ませんので、ご安心を」
『当たり前だよ、ウナト。
大体ね、あんな未来のない連中と手を組んで、一体どんな展望があると言うのかね?』
ジブリールは哂う。実に不敵な笑みを浮かべる。
『2年前に奴らの歌姫が言った通り、子孫を残し得ぬコーディネーターに未来はないのだ。
ならば、未来のある我々ナチュラルの踏み台になってもらう他あるまい?
ナチュラルとコーディネーターのこの戦争、我々ナチュラルが最終的に勝利するのは、既に決まっている。
あとは、いかに早く、いかに少ない損害で戦争を終らせるか、というだけのことだ』
「全くもってその通りですな。流石ジブリール卿は先見の明をお持ちだ」
『ついてはそのために、ひとつキミにお願いしたいことがあるのだが』
手を揉むウナトに、ジブリールは軽い口調で、しかし恐るべき「お願い」を投げかける。
『軍の方でね、オーブの出したあの派遣艦隊、使い潰したいと言っているんだが……構わんかね?
どうもザフトの連中が大規模な攻勢を計画してるようでね。壁として使いたいのだそうだ』
「兵の消耗は、構いませんよ。そもそも派遣艦隊に志願した兵どもは、熱狂的なアスハ派でして。
命令よりも国よりも、アスハの娘が大事という困った連中です。あの娘もろとも消えて欲しいくらいですよ。
ただ……タケミカズチは、少し惜しいですな。アレには金がかかっている」
『ふむ。ではあの空母の代金として、モルゲンレーテの製品を買わせてもらおうか。少し値段に上乗せしてね。
巨大空母を再建できるくらいの金は、出させてみせると約束しよう』
「ありがとうございます。くれぐれも、中途半端にはなさらぬようお願いしますよ。特に、代表のお命については」
「……いったいどういうことなのですか、あの処分は!」
「そう怖い顔をしないでくれたまえ、アスラン。私も、どうするべきか悩んだのだがね」
ディオキアの街、古い伝統あるホテルのテラス。白い丸テーブルと白い2脚の椅子。
アスランは、議長との直接の面会を望み、偶然時間に余裕があった議長は、彼を迎え入れた。
会うなり彼が叫んだのは、ロドニアのラボの一件。特に、シンたち3人による、捕虜の解放。
「……あの処分だけではありません。あの任務そのものが、私には不可解です。
議長、一体あなたは何をやろうとしているのです? 何を企んでいるのです!」
「『企む』とは、随分な言い方だね。まるで私が悪いことをしようとしているみたいじゃないか」
アスランの剣幕に、議長は余裕たっぷりで。
椅子の1つにゆったり腰掛けながら、アスランにも身振りでもう1つの椅子を勧める。
アスランが憤然と腰掛けたのを待って、彼はゆっくりと口を開く。
「私がやろうとしているのはね――放り出されたままの、『宿題』だよ」
「宿題……ですか?」
「その通り。2年前の戦争の際、君たち『3隻の英雄』たちが中途半端に放り捨ててしまった、『宿題』だ」
デュランダルはそう言ってニヤリと笑う。思わぬ話の成り行きに、アスランは目をしばたかせる。
「あの時、確かに君たちは戦争を止めた。人類の破滅と、大量殺戮と、一部の権力者の暴走を止めた。
だが君たちは――ただ、目の前の争いを止めただけで、何も示しはしなかった。示そうともしなかった」
「それは――!」
「まあ、元々君たちは、寄り合い所帯だったからね。ザフト・連合両軍の脱走兵と、亡国の残党。
統一した政策やビジョンを要求するのは、確かに酷だったかもしれない。
だが、ビジョン無き君たちによってもたらされた休戦は、一体どういう結果になったかね?
一切の代案なき戦争介入は、一体どんな世界を生み出した?!」
「――!!」
「戦争は終れども、コーディネーターとナチュラル、この両者の間に横たわる問題は何も解決されず――
2年の平和は、ただ戦争の準備をしていただけで終ってしまった。
世界は、何も変わってはいない。あれだけ多くの犠牲を出して、なお何も」
議長の言葉に、アスランはうな垂れる。
そう、そのことは、彼にとって大いなる迷いとなっていた。まさに、彼の最も痛い部分であった。
2年前、あの頃も大いに悩んだ。父パトリックが間違っているのは分かる、しかし「ではどうすれば良いのか?」
その答えも持たず、しかし走り続けるしかなかった2年前。そして、何もできなかったこの2年間――
「ただ無心に『両者の融和を、共存を』と唱え続けるだけでは、何にもならない。
具体的にどうやってその融和を進め、どのような形での共存を図っていくのか。
説得力ある策を提示できねば、誰も矛を収めはしないよ」
「……確かに……その通り、です……」
「さらに2年前のラクス・クラインの演説で、余計な難題も加わってしまった。
『子孫を残せぬ我らコーディネーターが、どうやって未来に想いを繋いで行くのか』という問いだ。
あるいは、オーブの姫なら融和と共存だけを考えていれば良いのかもしれないが――
私はこれでも、コーディネーターを束ねるプラント最高評議会議長だからね。避けて通れない問題なのだよ」
遥か遠く、未来を見つめて語るデュランダル。
その確信に満ちた横顔に自分たちの敗北を感じつつも、なおアスランは抗弁する。
「でも議長――それらの問題が、ロドニアのあの施設と、一体どう繋がってくると言うのです!?
あなたはそれらに、どのような回答をすると言うのですか!?」
「アスラン君、」
勢い込んで問いをぶつけるアスランに、デュランダルは真正面から向き合う。彼の眼の中を、覗き込む。
覗き込みながら、また話題を大きく変える。
「私はね――君の能力を、高く評価しているのだよ。
君は、一兵士に終る人材ではない。過去に挙げた名声だけに価値があるわけでもない。
私は君に『本当の意味での同志』になって欲しいのだ。『本当の君』が欲しいのだ。
――くだらぬ取り引きに縛られた奴隷ではない、君自身の意志と能力が、ね」
「それは……!」
議長とアスランの取り引き。
「『アスラン・ザラ』の名と戦力を好きに使わせる代わりに、オーブを攻めることだけはしない」。
それを破棄し、改めて自分に従って欲しいと望むデュランダル――
「今はまだ発表はできない。技術的な問題もいくつか残っている。
けれども、既に青写真は出来上がっているのだ。成功の見込みは十分にあるのだ。
コーディネーターとナチュラルの、果てしのない争いに決着をつけ――
同時に、我らコーディネーターのアイデンティティを未来に繋ぐ『宿題の答え』。
私の考える人類の最終解答、『デスティニープラン』。
……私はね、アスラン。これを一緒に進めてくれる同志をこそ、必要としているのだよ」
「デスティニー……プラン……」
アスランは、計画名を反芻する。運命の計画。人類の最終解答。宿題の答え。
デュランダルは底知れぬ笑みを浮かべたまま、その計画の全貌を、ゆっくりと――!
「おーい、マリュー。キラはいるかー」
「あらアンディ、お久しぶり。ちょうど居るわよ、教授はちょっと出ちゃってるけど。さ、入って」
オーブの高級住宅地。表札に『加藤』とニホン語で書かれた一軒の屋敷。
豊かな胸を揺らし、マリュー・ラミアスはアンドリュー・バルドフェルドを招き入れた。
バルドフェルドも、勝手知ったる他人の家、とばかりに上がりこむ。日本式の玄関で靴を脱ぎ、スリッパを履いて。
ずかずかと上がりこんで、一室のドアを開ける。
部屋の中には――何やら複数のモニター画面を見比べながら、高速タイピングを続ける1人の青年。
「……あ、バルドフェルドさん」
「よぉ、少年。製作は進んでるかい?」
「ええ。本体の設計は既に上がっていて、工場で作り始めています。そっちはエリカさん任せですね。
それより、例の新型装甲の制御が難しくて。プログラム的に強引に押し切っちゃうつもりですけど」
「なんだ、キミの手にも余るのか、アレは」
「ま、こっちに専念できればいいんですけど……孤児院の子供たちも放ってはおけないですから。
今日は母にお願いして、任せてきちゃいましたけれどね」
「大変だねぇ、保父さんってのも」
「好きでやってることですから。苦労もある分、喜びもありますし。それで今日は、何の用で?」
「ああ――ちょっとこれから、スカンジナビアに発とうと思ってな。それで挨拶に」
「スカンジナビア?」
「オーブに留まっているより、少しでも現場に近い方が都合がいい。あの国なら色々と融通も利くしな」
バルドフェルドは頷く。どうにも要領を得ぬ会話だが、当事者たちはそれで意が通じ合うらしい。
特にそれ以上突っ込んで聞くこともなく、キラも頷く。
「そういえばマリューさんも、そろそろ出発するって言ってましたっけ」
「ええ。連合軍時代の古い知り合いを頼って、ヨーロッパの方から入るつもり。
あのパーツと武器、マユちゃんに届けてあげないとね。カガリさんとも直接会って話したいし。
アンディがスカンジナビアに入るなら、丁度いいわ。オーブから直接空輸しようかとも思ったのだけど。
私が渡りをつけるまで、あの追加パーツそっちで預かってて貰えるかしら?」
「構わないぜ、それくらいの無理は利くはずだしな。何せあそこには、クラインの……」
言いかけて、バルドフェルドは口を噤む。3人の間に、しばしの沈黙。
「……間に合うのかね、今回は。どうにも後手後手に回っちまってる」
「取り返しのつかない事態になる前に、何とかなれば良いのだけど……」
「大丈夫ですよ、きっと」
不安そうな色を隠せぬバルドフェルドとマリューに、キラは曖昧な笑みを浮かべて、頷いてみせる。
彼自身も、不安ではあったのだが……だからと言って、ここで歩みを止めるわけにもいかない。
「あの時にやり残した『宿題』、2年間かけてここまで解いてきたんですから。
ここまでのみんなの努力を無にしないためにも、僕たちは――!」
「お、アスラン。英雄殿のお帰り、か」
議長との面談を終え、ミネルバに戻ってきたアスランは、馴れ馴れしく声をかけられて目をしばたかせた。
艦の廊下で出くわしたのは、自信に満ちた笑みを浮かべた赤服の男と、それに従う3人の兵士。
「ハイネ隊長……それに、ハイネ隊のみなさん。どうして、ミネルバに」
「『ハイネ』でいいってば。いや俺たちさ、今日からミネルバに配属でさ。今みんなに挨拶してきたとこ」
「ミネルバに!?」
「なんか、次の作戦から一緒に参加しろ、ってよ。これからよろしく頼むぜ?」
そういってにこやかに笑うハイネ。背後の3人も、自信ありげに微笑む。
そんな彼らに、アスランは何か少し違和感を感じて……はッと、思い至る。
人数が、おかしい。おかしいと言うより、足りない。
「ハイネ隊長、それはそうとして……残りの隊のみなさんは? 確かあと3名いましたよね?
いや、今のミネルバに7機もMSを追加する余裕はなかったはずだから……隊を縮小したのですか?」
「ああ……あいつらは死んだよ。ガルナハンでな」
格納庫に、4機のMSが運び込まれる。
右肩がオレンジのザクウォーリアが3機。全身オレンジのグフイグナイテッドが、1機。
その搬入の様子を見下ろしながら、ハイネとアスランは会話を続ける。
「スエズ攻撃の先駆け、か……。懲罰任務ってのは、俺たちも同じさ。
楽にスエズに攻め込めるはずの拠点、ガルナハンを守りきれなかったんだから」
「ハイネ……」
「スエズを攻めるってことは……オーブの連中も出てくるかな。強いぜ、あいつらは」
「…………」
ハイネの言葉に、アスランの顔が歪む。
カーペンタリア湾での遭遇戦で、ストライクルージュと交わした会話が思い出される。
『もう、会いたくはないものだな。戦場では』『そうだな。会いたくはないな、カガリ・ユラ・アスハ』
それは――演技というオブラートに包みはしたものの、偽りのない彼の本音。
「アスランは、この2年オーブに居たんだってな。やっぱり戦いたくないか? オーブとは」
「…………」
格納庫では搬入が続く。MSを乗せて空を飛べる無人飛行機、グゥル。それが4機。
ハイネ隊のザク3機と、あとは、レイのザクファントム用……なのだろうか。ルナマリアはまだ戦力外だ。
「キースはさ」
「?」
「キースは、酒好きでどうしようもない奴だった。猫みたいな奴で、身が軽くて、勘が良くてさ。
ジョーは、女好きで、しょっちゅう女を連れ込んで……いやアレは普通のスケベとはちょっと違ったのかな?
カルマは、本当は結構な年なんだけど、見た目も中身もガキでさ。しょっちゅう規則を破って怒られてた」
「ハイネ……」
「どいつもこいつも、軍の組織とは折り合いの悪い連中でさ。俺の隊は、何故かそんな奴ばっかりだった。
けど、どいつもこいつも――本当は有能で、いい奴で、愛すべきバカたちだった。
部下を失うのはこれが初めてじゃないが……流石にあの3人を一度に失ったのは、キツイな」
「…………」
「カルマなんて、ああ見えて心理学の専門家だぜ。誰よりも群集心理とかを理解してた奴だ。
それがフリーダムに落とされて、熱狂した連合兵にコクピットから引きずり出されて、それで……
せめて、苦しませたくはなかったな、とか思っちまう」
どうしようもない程に醜く厳しい、戦争の一側面。
アスランは自問せずにはいられない。この被害、2年前のやり方次第では、回避できたのではないか、と。
すっかり暗くなってしまった2人。その空気を破ったのは、ハイネだった。
「けどよ――頼むアスラン、そんな顔しないでくれ。誰が悪いわけじゃない。
あいつら3人が殺されたからと言って、別にオーブを恨んでもいないしな」
「いや、しかし」
「戦争してるんだ。不幸は覚悟の上、だろ?
俺たちが倒してきたナチュラルたちにだって、同じような人生はあったはずだ。
むしろエースとして数多くの敵を葬ってきた俺たちは、こういう苦しみを何倍も生み出してきたんだ」
「…………」
「でも、戦わなきゃ終わらない。それを嫌だと言ってたら、何も変えられない。
だから――こんな戦争、さっさと戦ってさっさと終らせようぜ。目の前の戦いに集中しようぜ。
お前も、割り切れよ。でないと今度は――お前が死ぬぞ」
アスランの肩をポンと叩くと、ハイネは格納庫から出て行く。
その気配を背後に感じつつ、しかしアスランは動けない。セイバーを眺めながら、考え込む。
思い出してしまうのは、2年前の戦争で失ったクルーゼ隊の仲間たち。
「……割り切る、か………」
「あーあ、俺たちもスパ入りたかったなー」
「仕方ないよ。あんなミネルバがやってくるようなとこじゃ、安心して遊べないって」
スエズ基地の港に停泊する、タケミカズチ。
バカンスの予定は繰り上げられ、帰ってきた彼らはしかし相変わらず艦上の人。基地にはほとんど上陸せずに。
その巨大戦艦のデッキの1つで、マユとアウルが何をするともなく並んで座っていた。
揃って艦に背を預け、床に足を投げ出し、見るともなしに運河を眺める。だらけきった雰囲気の2人。
「じゃ、このタケミカズチのスパでいーや。一緒に行こうぜー」
「だーかーら、ここのはジャパニーズスタイルなの。一緒には入れないんだよ? スティングと行ったら?」
「スティングなー。なんか知らねーけど、ステラが戻ってきてから雰囲気が変でさー。声かけ辛いんだ」
「ステラ、一緒に戻れなかったしね……」
ザフトの捕虜から戻ってはきたものの、深く傷ついていたステラ。
すぐに前線に復帰するのは困難と判断され、彼女だけは治療が済むまでラボに留まることになった。
しばらくステラがファントムペインから脱落する――その事が決まってから、確かにスティングは機嫌が悪い。
マユたちも、そんな彼を心配しつつ……気がつけば、こうして彼抜きの2人きりになってしまっていた。
「……じゃあさ、全部終ってオーブに戻ったら、行こうよ温泉。4人で一緒に」
「本当!?」
「確か、諸島のどこかに混浴のとこがあったはずだから。水着着用だったかな? ちょっと今度調べておくね」
「……あー、でも、マユは戦争が終ればオーブに『戻れる』けど、俺たちは分かんないんだよなー」
目の前の運河を、コンテナを満載した輸送船が通る。地球連合の旗を掲げた民間船。
だらけきった格好の2人は、見るともなくその積荷を見る。コンテナに書かれているのは、会社名。
アクタイオン、モルゲンレーテ、大西洋運輸、モルゲンレーテ、モルゲンレーテ……
「戦争終ったら、アウルはどうするの?」
「どうしよっかな。故郷に帰っても誰もいねーし、行く場所なんてねーし。でも軍人続けるのはやだなー。
ログみたいな奴なら、軍に留まった方がいいんだろうけどなー。でも、他にできることなんてねーしなー」
「なら――オーブに来れば? オーブに来ちゃえば?!」
「…………」
「オーブなら、いろんな人いるから。コーディネーターも、ナチュラルも。いろんな人が、普通に暮らしてるから。
きっと、エクステンデッドでも大丈夫だよ。
お義父さんやユウナに頼めば、アウルたち3人くらい、ううん、ラボのみんなくらい、なんとかなるだろうし。
それにアウルたちって、MSの操縦できるでしょ?
だったら作業用MS使って、工事現場とか、宇宙港の荷物の積み下ろしとか。仕事はいくらでもあるからさ」
「あー、いいねー、そういう『普通の生活』……。俺たち、すっかり忘れちまってるもんな、そーゆーの……」
「……アウル?」
マユは、不思議そうにアウルの名を呼ぶ。
心底羨ましそうに呟いたアウルのその両目から、大粒の涙がこぼれて……マユには、その涙が理解できない。
できないが、しかし彼女はその意味を問うことはしなかった。ただ、黙ってアウルの頭を胸の中に抱きしめる。
「僕にもできるのかな、そういう普通の生活……こんな僕にも、さ……」
「できるよ、きっと。戦争が全部終れば、きっと、みんなで、ね……」
「戦争終ったら、シンはどうすんの?」
「なんだよルナは、唐突に」
ディオキアの街に停泊しているミネルバの甲板。
艦内からは、ハイネ隊の歓迎会の騒ぎがここまで聞こえてくる。
隊長を始めとする面々は、なかなか賑やかな連中らしい。アーサーの陽気な笑い声が聞こえてくる。
そんな宴会からこっそり逃げ出してきたのは、赤服を着たシンと、未だ右手を吊ったままのルナマリアだった。
2人は並んで暮れ行く街を眺めながら、静かな会話を交わす。
「そういうルナこそ、どうする気なんだ?」
「あたし? あたしは――そうね、軍で溜めたお金で、大学でも行くわ。何をやるかはまだ決めてないけど」
「なんだそりゃ?」
「もともと、そういうつもりだったしね――」
ディオキアの街は、海岸に沿った斜面に張り付くように広がった、坂の町だ。
夕陽を受けて、街は絵画のように美しい朱に染まる。陰影のくっきりした建物の数々。
「前に話したっけ? あたしの両親、いないって」
「確か、揃ってシャトルの事故で亡くなってるんだっけか。ブルコスか何かのテロか?」
「ううん、純粋に単純に不幸な事故。誰も恨むことできないような、そーゆー事故」
「…………」
「ただあの時は、途方に暮れたわねー。これからどーやって生きてこうか、って。
メイリンと2人、揃って進学して生活していくには、親の貯金と生命保険足しても、ちょっと無理っぽかったし」
「……それで、ザフトのアカデミーか」
「そ。試験は難しかったけど、学費かかんないし、在学中もお手当て出るしね。
どーせ、特にやりたいことがあったわけでもなかったから。
最初は、メイリンを学校に行かせる間だけ……って思ってたんだけど。
そしたら、あの子までザフトに入るって言い出して。どうしようか迷ってるうちに、こんなことになっちゃった」
「…………」
「ま、ここまで来ちゃったら、中途半端じゃ辞めないけどね。
でも戦争が終ったら、軍も辞めて、今までできなかったこと一杯やるって決めてるんだ。
だから――とりあえず大学でも行って、学生生活とか楽しんじゃおうかなー、って」
「…………」
「シンは? 何かやりたい事とか、ないの? 移民のアンタも、生きるために軍に入ったんでしょ?
戦争終る頃には、多少は好き勝手できるだけのお金も溜まってるだろうし……使い道とか、考えてない?」
ルナマリアの問いに、黙り込んでいたシンはさらに深く考え込む。
考えて、考えて――大きな溜息と共に、首を振る。
「……ダメだ、思いつかない。軍に居る以外の自分が、想像もできないな」
「じゃ、一緒に大学行く?」
「そうだな――もし全部終ったら、その時改めて考え直すさ」
――スエズ基地で、日が沈む。
タケミカズチの執務室で、カガリは1人、仕事をするでもなく、椅子に座っている。
差し込む夕陽の中、手の上で転がしていたのは――1つの指輪。
密使「アレックス・ディノ」出発時に受け取り、以来肌身離さず持ち歩く、誓いの指輪だった。
カーペンタリア近くで会ってから、直接会話はない。
この間のロドニアの時も、セイバーを遠くに確認はしたが、言葉を交わす余裕はなかった。
彼女にしては珍しい憂い顔で、カガリは手の中の指輪を弄ぶ。
「……ったく、何をしてるんだ、あのバカは。
私だって、女なんだぞ……。連絡の1つくらい……」
それが困難であることを重々承知の上で、彼女は呟く。呟かずにはいられない、といった風に。
その「バカ」とは対照的に、ユウナはこまめに連絡を送ってくる。それこそちょっと鬱陶しいくらいの頻度で。
お互いの都合が合うことは滅多にないから、先ほどのような直接対話は珍しいのだが、それでも。
カガリは机に突っ伏して、指輪を握り締める。カガリは彼女らしからぬ脱力しきった表情で、呟いた。
「まあ、いいや……。もし全部終ったら、その時改めて考え直せば、それで……」
――ディオキアの街にも、日が沈む。
夕陽に照らされたミネルバの甲板。シンとルナがいる位置からは逆の方。アスランは1人、物思いに耽っていた。
手の中に握り締めていたのは――首から下げられた、1つのお守り。
2年前カガリから貰い、以来肌身離さず持ち歩いていた、ハウメアの守り石だった。
彼の脳裏に、デュランダルが説明した『デスティニープラン』の詳細がよぎる。
2年前やり残した宿題、運命の計画、最終解答。
それは、ある意味で荒唐無稽で破天荒で、強引で無理やりで無茶苦茶な代物、ではあったのだが。
「それでも、ジョージ・グレンは、そしてコーディネーターは、世に受け入れられた。
ならば、議長のプランも、恐らくは……」
それと比するように脳裏に浮かぶのは、自分の歩んできた道。2年前の自分たち。この2年間の自分。
何もかも救いたくて、何もかも守りたくて、けれど、何もできなかったアスラン・ザラ――
ハウメアの守り石を握り締めた拳が、震える。
「すまない、カガリ……。俺は、議長に……。
もし全部の戦いが終ったら、その時、改めて君に、………」
すっかり日の落ちたディオキアの街。
街灯が灯り始めた街を見下ろしながら、デュランダルはなおホテルのテラスにいた。
「スエズ攻略戦……大事な戦いだ。
スエズを潰し、地中海とインド洋の交通を手にすれば、ザフト側の優勢は間違いない。
しかし現状では、決め手に欠けるね――何か、連合側を崩す一手が欲しいところだ」
彼は考える。手持ちのカードを、頭の中で並べる。
「……デスティニープランの発表は、まだ時期尚早だ。テストも重ねておきたいしね。
ミーアの言葉は……ふむ、積極的に活動させてはいるが、残念ながらまだ連合兵には通じまい。
やはり――あの名を利用するしかないか。
連合の裏にいる秘密結社『ロゴス』、その存在を――!」
――スエズを取り巻く情勢を、もう一度見直しておこう。
スエズ運河、そしてCEに入ってから運河の中ほどに作られたスエズ基地は、連合のものだ。
大西洋連邦が直接支配する、重要な飛び地である。
その周囲、中東一帯は、汎ムスリム会議の支配する地域。ただしこの国家、内部での反目がなお絶えない。
絶えないため、世が乱れればすぐにバラバラになって、親連合と親プラント、そして中立の各勢力に分裂してしまう。
大雑把に言って、紅海に面したあたりはおおむね連合寄り。そのままスエズまで連合の勢力圏が繋がる。
ペルシャ湾沿岸はプラント寄りで、ザフトのマハムール基地があるのもこの地域だ。
北アフリカは、前の大戦で連合が支配する土地となっていたが、戦争が再開されてからザフトが巻き返している。
しかし、エジプトあたりまではまだ連合勢力圏だ。ザフトは今、ジブラルタルの再奪還を目指し戦線を築いている。
ペルシャ湾沿岸から、死海、黒海にかけての一帯は、親プラント勢力となりザフトの勢力圏だ。
オーブから西に旅して来たミネルバも、ペルシャ湾から上陸して黒海沿岸のディオキアに向かっている。
しかしここからスエズに挑むには、再び連合の支配下に置かれたガルナハンを通る他はない。
ローエングリンゲートも再建され、ここは鉄壁の守りを取り戻している。
そして、スエズから地中海を挟んだヨーロッパは――連合の支配地域。
ただ、この地を巡る大西洋連邦とユーラシア連邦の争いにつけこんで、ザフト側がじわじわと勢力を広げていた。
黒海沿岸地域を起点に、東欧の国々を侵食するように、ゆっくりと。
今「ラクス・クライン」が積極的に巡業しているのもこのエリアだ。
ゆくゆくはザフトの勢力圏は北海にまで到達し、大西洋とユーラシアを完全に分断することだろう。
この連合2大勢力の分断作戦が成功すれば、ザフトはかなり戦いやすくなる。
このような状況下、ザフトがスエズの連合軍を叩き潰そうと思ったら、事実上取れるルートは1つしかない。
陸路は無理だ。ガルナハンのローエングリンゲートは依然強固だし、エジプトを丸々突破するのも困難。
紅海からも無理だ。スエズに届くまでに、紅海の両岸からの攻撃で叩き潰される。
となると、残された可能性は――
――大艦隊が、黒海を出て地中海を南下する。先頭に立つのは、美しいフォルムの戦艦ミネルバ。
後に続くのは、親プラントを表明した勢力から提供されザフトが徴用した、元連合海軍の戦艦や空母。
海面下には、MS運用のための潜水空母、ボズゴロフ級が何隻か。
地中海側からスエズ基地を叩き、この地域での連合の力を削ぐ。
同時に、スエズ運河を手に入れ、インド洋と地中海の間で戦力の融通ができるようにする。
この作戦は、地上での戦争の重要なターニングポイントになるものと思われた。
『改めて艦内の皆に伝える。今回の我々の任務は、後続の部隊のための突破口を作ることだ』
着々と戦闘準備を進め、緊張感高まる艦内に、ブリッジにいる艦長タリアの言葉が響き渡る。
『我々は地中海に出てくるであろう連合側の防衛隊を正面から叩き、その防衛ラインに穴を開ければ良い。
スエズ基地まで到達し、直接攻撃を加えるのは、我々の役目ではない。深追いは厳禁だ。
厳しい戦いになると思うが、皆の健闘を祈る』
その言葉に――
既にコクピットに待機しているシン、レイ、アスラン、ハイネ、ハイネ隊の面々が、深く頷く。
格納庫の整備班に混じっては、ルナマリアの姿も。右手はもう吊ってはいないが、まだギプスに固められたままだ。
今回彼女はMSでの出撃が困難と見なされて、整備の応援を命じられている。
緊急時には自機の整備をせねばならぬ関係上、ただの素人よりは整備関係のスキルを持っているためだ。
ハイネ隊のザクが装備する予定の各ウィザードを、チェックボードを持って最終確認していく。
ふと、彼女は視線を上げる。
そこには――コクピットハッチが破損したままの、赤いザクの姿。
今回の作戦、ハイネ隊などの受け入れもあって、修復が後回しになっていたものだった。
どうせそれに乗るはずのパイロットも負傷しているのだ。直さなくても誰も困りはしない。
ルナマリアは軽く溜息をつくと、再びチェック作業に戻った。
――大艦隊が、スエズ運河から地中海へと出ていく。
タケミカズチを中心とした、オーブからの派遣艦隊。J・Pジョーンズを始めとした連合軍の艦船も、ちらほらと。
海面下には、三叉の槍を両手に構えた水中用MS、フォビドゥン・ヴォーテクスの姿も何機か見える。
地中海を南下するザフト艦隊の姿は、連合サイドでも捉えていた。
そして防衛のために出されたのが、オーブ派遣艦隊。
この艦隊、狭い水路にいても邪魔なだけだ。戦闘が避けられないなら、先に広い場所に出しておいた方が良い。
『オーブ軍の諸君に伝える。私はカガリ・ユラ・アスハだ』
タケミカズチ他、オーブ艦隊の各艦内にカガリの声が響き渡る。
『我々はこれより、地中海を南下してくるザフト艦隊を迎え撃つ。防衛が目的だ、深追いする必要はない。
スエズ基地からも増援が出て来てくれることになっている。戦力としてはほぼ互角。
厳しい戦いになるかと思うが――皆の健闘を祈る』
カガリ自らの言葉に、士気の上がるオーブ軍兵士たち。
マユもパイロットスーツを着込み、タケミカズチのパイロット控え室で深く頷いた。
「――では議長、宜しいですか?」
「ああ、始めてくれたまえ」
戦闘を目前に控えた、緊張の中で――
なおディオキアにいるデュランダルは、目にも眩しいライトの下にいた。
周囲はセットが組まれたどこかのスタジオ。いくつものテレビカメラが彼を捉え、最高のアングルを探る。
スタッフが身振りで合図を出し、彼はカメラに向かって喋り出す。
「皆さん、私はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです。
我らプラントは現在、地球連合の皆さん、そして連合に味方する皆さんと戦争状態にあります。
そんな中、このようなメッセージをお送りするのは、ある意味非常識なことかもしれません。
ですがお願いです。全世界の皆さん、特に地球連合と行動を共にする皆さんにこそ、聞いて頂きたいのです――」
「カガリ様! デュランダル議長が!」
「何だ、こんな時に!?」
その放送は、ザフトを迎え撃たんと展開中のオーブ艦隊でも察知していた。
タケミカズチのブリッジで、カガリは、トダカは、アマギは、みな頭上のモニターを見上げる。
『私は今こそ皆さんに知って頂きたい。何故戦争が終わらぬのか。一体誰が悪いのか。
我らの本当の敵は、誰なのかということを』
その放送は、ミネルバたちザフト側の面々も聞いていた。
艦内に流れる放送に、誰もが耳を傾ける。
『わたくしたちは以前、申し上げました。
我らの敵は『ナチュラル』ではなく、『間違った連合の指導者』なのだと。
しかし、ではその指導者とは誰のことなのでしょう? 選挙で選ばれたコープランド大統領?
――いいえ、違います』
「ほぅ……ギルはとうとうそれを言うというのか。スエズ攻撃直前の、このタイミングで」
「なんだ、レイ? 知ってるのか?」
格納庫、白いザクファントムの中でレイはニヤリと笑う。
その笑みの意味の分からぬシンは、彼に問い掛けるが、返事はない。
代わりに、黙って聴いていろ、とばかりに唇に指を立てられ、シンは仕方なく続きを待つ。
その放送は――地球の裏側、ワシントンにも到達していた。
「止めろ! あの放送を止めるんだ!」
端整な顔を歪ませ、青筋を立てて怒鳴るのは、大西洋のメディア王ロード・ジブリール。
部下たちも慌てふためくが、しかし何一つ有効な手立てを打てずに。
『どういうことかねジブリール。情報操作はキミの担当だろう』
『何をしようというのだ、デュランダルは』
『これは、キミの責任問題にも――』
「ええい! ご老人方は黙っていて下さい!」
モニター越しに慌て、怒り、責め立てるロゴスの老人たちにも、ジブリールは怒鳴り返す。
その眼は血走り、一切の余裕を失って。
「責任を問うなら、あっさり通信網をジャックされた軍や情報部を責めて頂きましょうか!
何、奴ができるのは、根拠なき疑惑を垂れ流すだけです!
すぐにでも各メディアを使って反論の用意を! 市民の信、すぐにでも取り戻してお見せしましょう!」
ジブリールは怒りを剥き出しにしながらも、目の前の事態にすぐさま対処を始める。
デュランダルの演説の論理的飛躍のリストアップ。示されるだろう証拠を打ち消す疑問の用意。
ザフト側の非道を記録した映像データバンクの編集作業を開始し、プラントそのものの信用を落とさんと図る。
優秀なスタッフに反撃の準備を進めさせながら、しかしジブリールは緒戦の敗北を悟っていた。
「時間をかければ、反論も反撃もできるにしても――このタイミングはやられたな。
スエズ防衛戦には、とても間に合うものではない。スエズ防衛の要、借り物のオーブ軍が――!」
『見てください、この非道の数々を!
このようなことを、連合の民主的な政権が、議会が、民衆が、真に心から望んだと言うのでしょうか?
……否! わたくしたちも、あなた方がそこまで酷い存在であるとは思っておりません!』
議長の演説と共に流されたのは、地球上各地で繰り広げられた連合兵による暴虐の数々。
基地建造に駆り出され、重労働を強いられる現地住民。降伏したザフト兵を撃つ連合兵。
ガルナハンで行われた、連合兵によるレジスタンスへのリンチの様子も映る。
その映像を、ミネルバのブリッジで見ながら……メイリンは、ふとあることに気づく。
正確には、ある映像の欠落。手に入れたばかりの、あってしかるべき効果的な映像の欠如。
過激な映像ゆえに自主規制、ということはあるまい。同等にキツい絵は他にも出ている。
思わず彼女は、呟いた。
「……なんで、ロドニアの映像は出さないの……?」
『連合の背後にあって、人々の恐怖を煽る存在。
コーディネーターは化け物だと説いて、我らの和解を妨害する者たち。
連合においてもテロリストでしかないブルーコスモスが撲滅されぬのも、彼らが陰に援助しているからです』
デュランダルは、そこで一拍置いて、宣言する。
『そう、我らの真の敵の名は――『ロゴス』!
連合の議会を操り世論を操作し、世界を意のままに操らんとする、巨悪です!』
「ロゴス……!」
「ろごす、って? 何ソレ?」
「何だそりゃ、今どき古臭い陰謀論かよ?」
「そんな奴らがいたのか……?」
連合、ザフト、オーブ各陣営、誰もが皆、半信半疑。動揺するもの半分、疑うもの半分といった雰囲気。
あまりにも唐突過ぎる『敵』の認定。あまりにもいきなり過ぎるその名前。
聴衆の困惑をよそに、デュランダルの演説の映像は、またも切り替わる。
現れたのは、何人もの人の顔。
『彼らこそ我らの敵。本当の意味での、我らの敵であります。
逆に言えば――実際に前線で戦わされている連合側の兵士たちは、むしろ被害者。
その心の奥の恐怖を煽られ、他の選択肢を隠され、その手を無為に汚しているのです』
議長の演説は続く。しかし人々の視線は、その顔写真と名前のリストに釘づけになる。
引退した元大統領がいる。財界の大物と噂される老人がいる。大銀行の頭取がいる。
死の商人と言われるアズラエル財団の代表。軍閥の長。連合の大物議員。
確かにコイツらが手を組めば世界を牛耳れる、連合を影から動かせる、と思わせるに足る構成。
そして、その中に――
「……な、なぜ、我らがオーブの宰相が」
「ウナト・エマ・セイラン!?」
「昔からやけに連合寄りだと思ったら……売国奴が!」
「セイランというのはそういう連中だったのか!?」
リストの片隅にあったハゲ頭に、オーブ軍の中に動揺が走る。
当然だ。今回の艦隊派遣、そして連合との同盟。
その主な推進役となったのがウナトであり、セイラン家の一派だったのだ。
そして、セイラン家にとって目の上のタンコブだったカガリが艦隊司令となって、危険な最前線に立つ――
誰が見ても、その意味するところは明らかだった。
「だがセイランがそうだと言うなら……じゃあ、フリーダムも?!」
「まさか! いや、しかし……」
「しッ! お前ら、聞こえてるぞ!」
タケミカズチの、MSパイロット控え室。
周囲に囁き声が聞こえる中、その視線の集中を受けていたマユは。
義父の顔があることにも、もちろん心底驚かされたのだが――もう1つ、気になる顔を見つけていた。
中性的な顔。エキゾチックな服。冷たい眼差し。
スエズ基地で顔を会わせ言葉を交わした、ロード・ジブリール。
「お義父さんも……あの人も、ロゴスなの……?」
『だからわたくしは、心有る連合側の兵士諸君に訴えます。
あなた方が本当に仕えるべき国家、本当に守るべき国民の思いは、今の戦場にはない。
国がロゴスに牛耳られてしまっている今、そこに正義があるはずもないのです!
我々はあなたがたに求めます。一体何と戦うべきなのかを、一人一人が考えるように、と。
真に戦わねばならぬ者と戦うために、一旦その銃を下ろして、我々と共に歩もうではありませんか!』
議長の演説は続く。
どんな国でも、軍人はその任務が真に国民のためになると思うからこそ、戦えるのだ。
中には私利私欲や戦闘そのものの愉悦のために戦う者もいないではないが、それは少数派。
国が自分たちの正義を後押しし、国民が彼らを称えてくれて初めて、殺人や暴力を自己正当化できるのだ。
デュランダルの演説が直撃したのは、まさにその軍人の心理の根っこ。
そこを疑ったらとてもではないが戦えない、という、自分たちの正当性の根拠――
「――敵艦の接近を確認! ミネルバです!
他にも大小20隻ほどの艦艇が従っている模様!」
「!!!」
誰もが呆然としていたのだろうか、管制官の叫びに誰もがはッとする。
カガリたちは、急に現実に引き戻される。
「どうなされますか、カガリ様? 戦いますか、それとも……!」
「…………」
見るからに動揺したアマギ一尉の言葉に、カガリは即答せず。
両腕を組んだまま、遠くに見えてきたミネルバの姿を、睨みつける――
第十八話 『 散りゆく生命(いのち) 』 につづく
……いやビビりました。投下中、ちょっとPCが乱れて。途中間があいてすいません。
この季節は雷が鳴りまくるので色々と怖いです。はい。
・デスティニープラン
本編のあれからもう一歩発展させています。詳細は後ほど、劇中で。
・キラのやってること
まだ秘密です。……でもまあ、バレバレですかね?w
お読みの通り、設定変更する予定ですからあの機体。性能はほぼそのままに、生まれについては。
てか、本編設定に無理あり杉です
・ルナマリア、メイリン姉妹の両親
どうも彼女たち、本編見てても「姉妹以外の家族」の臭いが皆無なんですね。
裏切りの際もレクイエム発射の際も、全然両親を心配してません。ただお互いの心配だけ。
……ということで、両親は既にないのだろうと判断しました。
それも、ユニウスセブンのような象徴的な出来事で失ったわけでもないはず。連合への憎悪がないことを見ても。
で、こんな形にしてみました。
・ロゴス暴露
タイミングを少し前倒ししました。23話か28話か、という雰囲気のスエズ沖海戦の直前に。
今回は全然戦闘ありませんでしたが、次回、大戦闘の予定。ご期待下さい。
GJ!
リアルタイムで読ませてもらいました。次回を楽しみに待っています。頑張ってくださいね。
隻腕キター!
予想以上に早くて驚きました。色々。
作中にAAサイドの面々が知ることがなかったDプランをアスランが聞かされる、というのはとてもいい展開ですね。
それに「宿題」に取り掛かるキラ。
出てこないなー、と思ってたら色々頑張ってたんですねぇ。彼も。
これからきつそうな展開になりそうですけど続き、めちゃくちゃ楽しみです。
無理をせず頑張ってください。
すげえな・・・先が気になってしょうがないw
ゆっくりとお書きになってくださいませ。にしても切ないなあ、みんながみんなやりたいことや
夢やそれぞれ背負ってるものがあって、その「終わり」が片方に死をもたらすことしかないというのは・・・。
本当に上手くかけてると思います。超GJ!
『さー、ハイネ・ヴェステンフルスプロデュース!第一回兄王者選手権ただいま始まりだ!!』
わーーっとハイネの声に反応する観衆。ザフト、連合の制服がいりまじっている。
半分のザフト兵はハイネ目当て、それ以外は純粋に楽しみに来ている様だ。
『じゃあ、この勝負の説明を始めるぜ!キースよろしく!!』
ハイネの後ろのモニターに映像が映る・・・ただ、そこにいたのはキースではなくてカルマだった。
『・・・おーい、キースはどうした、キースは。』
『んっとねー、お酒取り上げてしばらくしたら動かなくなった。』
平然と語るカルマ。
『そっか、そろそろやばいな。』
『うん、俺もそう思う。』
日常茶飯事なのか平然と話し合うハイネとカルマ。
『じゃあ、ルールを説明するよー!まず、種目は三つ!
始めに!運動能力テストのためえーっと・・SASUK○?』
『違う!風雲ハイネ城だ!!』
『ハイネ、実は年サバ読んでない?若い子おいてけぼりだよ?』
『大丈夫だ!多分十八歳以上なら解かる!』
カルマは困ったような顔をする。
『いや、それくらいでもちょっと・・・あ、いけない!で、第一種目は要するにアスレチックで・・。
第二種目はMS戦!いやぁ、まさに連合VSザフトだね!で、第三種目はガチンコ勝負!
生身で殺しあえ!・・じゃなくてぶつかりあえ!!てゆーかほぼ身体しか使ってないね!』
カルマが解説を終える。そして、近くでゴージャスな椅子に座っていたマユに近づく。
『さて、今回の賞品である「マユ・アスカ」ちゃんに話を聞いてみまーす!
マユちゃん、コメントをどうぞ!』
『存分にやりあえ、それが青春だ。てゆーか共倒れしてくれたほうが嬉しい。』
『はい、予想通りのポイズンコメントありがとうございましたー!
じゃ、会場戻りまーす。』
そして、画面の映像はロゴに戻った。
「なぁ、風雲たけ○城ってなに?」
「俺が知るかよ、メイリンは知ってるか?」
「知らない、レイは?」
「ギルが昔SASU○Eをそう呼んでいた。何回訂正してもそう言うんだ、あのおっさん。」
「レイも反抗期よねぇ、あ、そっちのポップコーンちょーだい。」
「うぇい。」
ここは観客席、アウル、スティング、メイリン、レイ、ルナマリア、ステラがお菓子を食べながら
観戦していた。
「お。おーい、ビールいるか?」
そう言って近づいてきたのはジョーだ。・・・・どうやら飲み物などを販売してるらしい。
「ステラ・・・みせーねんだから・・・飲めない。」
「てゆーかハイネ隊こんな事までやってるの?」
ルナマリアとステラが言う。
「あー、まぁ全員ハイネのコンサートとかで慣れてるし。あ、ココアもあるけど?ステラ。」
「ココア!あったかいのがいい!」
ジョーの言葉にはしゃぐステラ。
「何杯いる?えーっと・・、メイリンとステラね・・。アウルとスティングはサイダー?
レイが紅茶で・・・ルナがビールね。」
ごそごそと缶の飲み物を用意するジョー。温かいのも冷たいのも両方そろえているらしい。
『それじゃあ!第一種目始めるぜ!!』
その間に、既に勝負は始まろうとしていた。
隻腕さん、ご苦労様です。
いよいよハイネ隊がミネルバに来て親としてはドキドキです・・・・。
しのはらさん!おかえりなさい!
また一読者として楽しみにしています!頑張って下さい!
さて、いよいよゲンVSシンハロ!
お楽しみに!
215 :
投票所の人:2005/12/06(火) 22:03:45 ID:???
【投票所からのご連絡】
スレ住人の皆様方、お疲れ様です。投票所管理人です。
人気キャラ投票の方は今週末で終了いたします。
特に荒れる様子もなく、皆様のご協力の賜物と存じます。
さて、アスラン・ザラへ投票していただいた方へ
作品名が未記入です。ご連絡いただければ修正いたしますのでご連絡願います。
隻腕作者様GJ!!
議長がええ感じで策士って感じしますな。
本編だとただ声のせいだけでラスボス言われてたけど。
ほのぼの作者様乙!!
レイ、ギルのことおっさん扱いかよwww
217 :
Hina:2005/12/06(火) 22:21:21 ID:???
隻椀様、ほのぼの様、しのはら様乙でした。
皆さんの作品個性があっていいですよね、私のは序盤は本編ベースですがその内オリジナル展開させるつもりです、遅筆なので更新おそいかもしれませんが、 生暖かく見守ってください。
隻腕さんマジ乙!いい感じにザフトと連合が拮抗してますね!つかギルはやっぱりレイを利用してるのか!ラストへの微妙な伏線ですな…
あと十六話さっき読んでみて思ったんだけどほんと何回読んでも飽きない…
じゃなくてレイは軍服でステラを助けにいったの?なんとなくあらかじめパイスーに着替えてる絵を想像したからさ
とにかくGJ!続き超期待してまつよ!!
隻腕お疲れ様です!物凄い急展開ですね!?スエズ攻防戦を前に、
放たれた議長のカードの一枚「ロゴス糾弾」そして、「デスティニープラン」への
布石・・・正面から説得され(一部隠されていますが、本編ほど露骨じゃないのが
GJ!)、かつての自分の戦いの答えを見出すアスラン、議長とは別でかつての「宿題」
に取り組むキラ・・・これですよ!!私たちはこの「葛藤」を本編で
見たかった;;「平和」を取り戻すため、「活動」を続けるユウナ、
「自分に出来る事」である指揮官を務めるカガリも良い味出していて・・・・
誰も死んで欲しくないよ(オヤジーズは例外w)
そんなマクロな視点から一変、シンとルナが、アウルが考える「戦後」、そして
・・・戦う「理由」を失いかけるマユ・・・続きが気になって仕方が無いですよ!
あ、あと、マリューさんがマユ(自由)に渡す予定の「装備」って・・・
大太刀?それとも物干し竿?(バスターランチャーみたいな)う〜ん気になります。
ともあれ、お疲れ様でした。第十八話 『 散りゆく生命(いのち) 』楽しみ
に待っております。
ほのぼの乙です!いや〜ついに始まるね兄王者(アニキング)!!
た0し城ネタわかるから全然OKっすよ!w
私的にはジ〇ラル〇ル海〇は外せないネタだと思うのですが・・・
隻腕様乙です!!
相変わらずの読み応えある内容ですね…モニター前で口開けっ放しで熱中してましたw
世界情勢の動きだけでなく、それぞれのキャラたちが思うことについても緻密に書かれてて、すごいと感じました。
Dプラン、キラが出した宿題の答え、どれもこれからの内容が気になります。
これからも頑張ってください! GJ!!!
ほのぼの様乙です!
確かにSASU○Eは風雲○けし城そのものですな…
辛うじて分かる年代なので、どんなエリアが出てくるかすごく楽しみですw
単発設定小話 脇話「キラとラクスとアスランとミーアと愉快な仲間たち」
〜空に流れる光を見つめる人影〜
ラクス「・・・嵐が・・・くるのですね?」
キラ「うん・・・・・・」
ラクス「・・・ところで、キラ?・・・・・・晩御飯の買出しのおつりなのですが・・・」
キラ「・・・うん」
ラクス「100円足りませんわ・・・また買い食いしましたわね?」
キラ「・・・・・・うん」
ラクス「・・・・・・キラ、素直に認めればいいってものではありませんわよ?」
キラ「・・・うん」
〜連合の核ミサイルと立ち向かう愉快な仲間たち〜
イザーク「ナチュラルの馬鹿者がぁ〜!」
ディアッカ「そうカッカッすんなよ、イザーク。ユニウスセブンの落下は確かにいきすぎだ」
イザーク「うるさい!先般のMS奪取事件といい、やつらは戦争をしたがっているんだぞ!?」
シホ「・・・隊長・・・僭越ながら・・・」
イザーク「なんだ、シホ?」
シホ「現在このジュール隊は私が仮預かりさせていただいております・・・」
イザーク「だからなんだ?」
シホ「・・・(っち)、私の指示でお二方は動いてください!勝手に連携しないの!!」
ディアッカ「まぁまぁ、シホ落ち着けって。肌が荒れるぜ?」
シホ「(カチン)もう!二人ともマユちゃんの一連の件でプロトタイプジンで処分中の身なんですから!」
イザーク「ふふんシホ、だからお前はまだまだなんだ。本当に強いやつってのは機体を選ばない!」
ディアッカ「うんうん、さすがイザークいいこという」
シホ「・・・じゃぁ・・・二人で連合のMS郡へつっこんできなさーい!」
〜イザークとディアッカにビームを連射するシホ〜
イザーク「うっひゃあ!シホ!やめろって、俺が悪かった!」
ディアッカ「ぐぁ、俺なんてイザークのとばっちりで処分うけたんだぜ?や、やめろって?」
シホ「いいからいけよ!ヤキンの英雄でしょ?ちったぁハイネ・ヴェステンフルスを見習いなさい!」
イザーク「んなこといってもぁ。あいつはザクファントムなんだぞ?」
シホ「だ・か・ら!プロトタイプジンになったのは自業自得でしょうが!」
〜プラントへ到着し、議長の面会を待つアスラン〜
アスラン「・・・くそ、なかなか面会させてもらえないな・・・・・・」
ミーア「あ〜!アスラン!」
アスラン「?・・・うぅん〜?・・・えぇ!?はぁ?・・・はい〜?」
〜アスランに抱きつくミーア〜
ミーア「ミーア・キャンベルよ。今は私がラクスなの」
アスラン「えぇ〜?」
ミーア「だめよ。ここではあなたはまだ私の婚約者なのだから・・・」
〜廊下の向こうから歩いてくる議長〜
議長「ん?アスラン君。ああ、君との面会の約束があったね。いやだいぶお待たせしてしまって申し訳ない」
アスラン「はぁ・・・いえ、はぃ」
議長「ん、どうしたね?」
アスラン「いぇ・・・なんでもありません・・・」
完
運命の少女
プロローグ
「叔父さん、叔母さんいってきまーす」
「おう!行ってらっしゃい」
「マユー!!MSに気をつけなさいよ!!あと知らない人にもついていかないようにね!!」
「ハーイ!!」
元気よく飛び出していく姪っ子を送り出して叔父ケンジと叔母ユキ夫婦はため息をつく。
「あの子がここに来てもう今日でちょうど2年たったのね」
「ああ、最初に来た頃は無口で絶対に笑わなかったのにな」
「仕方ないわよ、義兄さん達はあの子の目の前で死んでしまって、シンは・・・」
「行方不明扱いか・・・」
数少ない親戚を頼って姪であるマユがプラントに越してきてから二年、子供の居ない二人はマユを本当の娘の用に育ててきたのだ。
「ねえ、マユの事なんだけど・・・あなたさえよければ」
「養女にしたいんだろ、本人さえよければ俺はかまわないよ」
「ありがとう、あなた近いうちに話してみるわね」
「ああ、今晩は遅くなるかもしれないから無理だと思うけど時間をみて話そう」
「ええ」
にっこりと笑う、後に残酷な運命のいたずらが待ち受けていることもしらずに。
幼年学校への通い道
「ふふ、ユキ叔母さんも心配性なんだから」
過保護とまでは行かないが何かにつけて口うるさく言う叔母の悪口を言いつつもマユは本当は理解していた。両親や兄の分まで幸せになってほしいのだとそんな心遣いがマユには嬉しかった。そう思っていたとき
「マユちゃーん」
「あ、サクラちゃーん」
親友であるサクラが小走りで走ってくる。
「おそいよーサクラちゃん」
「ゴメンゴメン、準備に手間どって」
「先生にしかられちゃうよー」
「それはヤダー」
「いそごう、社会科見学で『ミネルバ』の進水式みにいくんだから」
「うん」
二人の少女は手を握って駆けていく。
この先に待ち受ける残酷な運命をマユ・アスカはまだ知らない。
オリジナルストーリー書いてみました。続く?
>隻腕作者
議長とレイの関係や、アスランと議長の関係は本編でももうちょっと弄って欲しいところでもあり、、、
今回の話も大変かゆいところに手が届いて良い感じだったと思います
しかし、隻腕は大がかりな改劇はないはずなのに、デティールを弄くるだけでここまで良くなるんだということに
素直に感心しておりますよ。がんばってください。楽しみにしてます
もしもキラじゃなくてフレイが主人公だったら
イヤスマン俺の脳内ではイヤゴニョゴニョ
>>224 いや、大掛かりな改劇だって。最初からフリーダム出てるしシンも暴れてるし。
隻腕の凄いところは、そうした大改造を基本的にオーブ側(つまりマユ)に
留めて、何気にミネルバ隊の状況は本編とあまり変えてないところなんだろうな。
『さて!まずは風雲ハイネ城の第一ステージ、柳・・じゃなくて虎神池です!』
カルマの声にわーっとなる会場。
ところどころに足場のある池の前には二人の『シン・アスカ』が火花を散らしながら立っていた。
「お前みたいな偽者に負けるかよ!」
『は、笑わせるな雑種。機械でも人間でもないもんがいきがんな。』
お互い普通は言わないであろう確実に心をえぐる言葉を言い合う。
『では!スタート!!』
ピーッと笛の音が鳴る。
このゲームのルールは、池にある足場を飛んでいきゴールに到達すると言う物だ。
しかし、これは攻撃ありというたけ○の世界よりイリ○の世界に近いルールなので
戦局は解からない。
お互い一歩も譲らず機械の四肢を利用して次々とゴールに向かう。
『この勝負どうなると思いますかー?アスランさん。』
いつの間にかカルマの隣にはアスランがいた。解説者、というテロップが浮かぶ。
『そうですね・・・、まずシンハロの方は頭の回転、運動能力ともに人間を超えているけれど
冷却の方に問題があって、あまり激しい運動をすると自動的にフリーズしてしまうんです。
あとやはりバッテリーです。最初から本気で行くとバッテリーが結構早くきれます。』
『そうですかー。じゃあムウさんはどうですかー?』
するとアスランとは反対側にムウ・・ネオがいた。やはり解説者らしい。
『そうだな・・、ゲンのやつはやっぱり機械だから多少の無茶はきくな。
ただ、あいつは熱しやすいからなぁ・・・。そこが問題だな。』
『はい、ありがとうございましたー。カメラ戻りまーす。』
また場面が池に変わる。そこはマトリックスよろしくの世界になっていた。
「おちろぉ!!」
シンがグレネード弾をハロに向かって投げる。
が、ハロはそれを懐に隠していたナイフをなげ、空中で爆発させる。
ハンデとしてゲンには重火器の類の使用が許されているのだ。
『アキラの借りた騎手短剣(要英訳)!!』
ハロが鎖の先に巨大な釘が付いた様な武器を振り回す。
だがゲンはすぐにその間合いを見抜き距離を取る。
が。
『かかったな!!』
「なっ?!」
ゲンが距離をとろうとして着地した岩場は突然沈んだ。ダミーの浮きだ。
『はーはっははははは!先に行かせてもらうぜ!!』
シンハロは笑いながらその隙に一気に飛ぶ。安全そうな岩場に着地した瞬間。
カチ。
『カチ?』
チュッドーーン!!!
「何をやってるのかね?!キミ達は!!お兄さん悲しい!」
なんか虎のストラップのついた竹刀を持って袴の姿のアキ・・・アイ隊長。
「貴様らそんなのでこの業界で生き残っていけると思っているのか!?
そんなんじゃあそこでふんぞりかえってる種界のしろいあくまロリっ子の思う壺だぞ!!」
なんかアキラの後ろに虎が見える。
「と、ゆーわけでたぶんハロには予想がついてると思うけど次は『たけのこでぽーん。』です。
がんばっちゃってくれたらお兄ちゃんうれしいなー。」
そう言って手を振るアキ・・・アイ隊長。
シンハロとシンの前にはクレーンに吊るされた巨大なたけのこがあった。
「・・・・・これってSASUK○じゃないのか?」
『あー、NARUT○かもね。』
まったくかみ合ってない会話をする両者。ハロのセリフは微妙に伏字になってない。
『それじゃ、スタートです!』
カルマの声を合図にたけのこにぶらさがる二人。
すると・・・・・・。
『うわぁぁぁぁぁぁ?!』
「か・・っ!!皮が剥ける?!」
捕まった所からするすると皮がむけていく。
『あのたけのこ、どうなってるんだ?』
解説のアスランが気になったのかカルマに聞く。
『あれはですねー、摩擦を利用して強力にくっつけてあるんですけど
人間くらいの重さならあっさりはがれちゃうようできてるんですよー。』
カルマが嬉々として解説をする。完璧に他人事である。
『くそっ!!』
シンハロが騎手短剣(要英訳)を突き刺して固定しようとすると・・・。
ぶんぶんと振り子のように揺れるたけのこ。
「『うわぁぁっぁぁあぁぁっぁっ!!』」
必死で捕まる二人。それでも何気に攻撃しあう。
こんな状況でも必死にお互いを蹴落とそうとしているのは流石である。
「アキ隊長のラジオはフレンチカンカン!
・・・・・・ごめんなさい、ちょっとマネしたかっただけです。
さて、いよいよ本家本元、ハイネ城への最終関門!『じぶりたる海峡』だ!!
まぁ、それなりに広くて新しい橋をボールを持って渡ってもらう!
橋はみっつあり、キミたちには真ん中を通ってもらう!
ここではモトネタだとバズーカだったり白いメイドさんが襲ったりしてくるがそれどころではない!
ハイネ隊のメンバーが全力をもって襲わせてもらうのでそこんとこYOROSIKU☆
あ、場所は移動しないから安心してね。
はい、とゆーわけでこれ。花札で勝負して全部集めると願いがかなう金のボール。別名ボーリングのボール。
では!がんばってくれたまえ!!」
虎の声と煙とともに床に消えていくアキ・・・・・アイ隊長。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
「ふん!ただのザフト一般兵くらい!」
自信満々のシンと糸色望なシンハロ。
『はい、とゆーわけで臨時に司会に代わりました。ムウ・ラ・フラガだ。
いやー、なんかつり橋をわたるみたいだけどさぁ、どうなのそこんとこ。』
『はぁ・・、ハイネ隊のメンバーは結構生身の戦闘は強いですけど・・・。』
アスラン、ネオの正体を疑っているのかスルーしてるのか気づいていないのか。
テンポ良く二人の会話は続く。
『あ、そろそろ始めたほうがよくないですか?』
アスランが話を戻す。
『お、そうだな。それじゃ!始め!!』
そして、笛の音が鳴った。
「敵は何処だ!!」
始めから敵を倒すつもりで走るシン。
反対にシンハロはまっすぐ橋を抜けることだけを目標にする。
「いっきまーす♪」
軽い声と共に投擲用のナイフがシンの前に刺さる。
右の橋を見ると少年がナイフを構えていた。
いまがチャンスとシンハロは進もうとするが、突然の衝撃に足を止める。
「・・ちっ。しとめ損ねたか。」
本気で狙っていたのか舌打ちをする美青年、ジョーだ。
カメラが撮影してるのが解かるととウィンクする。おそらく『お客』に向かってのサービスだろう。
「いくわよっ!!」
「・・・・・・束縛。」
真っ白い布と銀の鎖が横から飛来する、グレイシアとゼロだ。
あくまで二人の攻撃は束縛を目的とした物でそう危険ではないものの当たるときっと物凄く痛い。
『くそっ!マユのために!!』
「負けられるかぁぁぁあぁ!!」
---------その頃のマユ・アスカちゃん
「あー、ケーキ食べ放題だしジュース飲み放題、こりゃ天国だわ。
あ、お兄さーん。モンブランとロールケーキ。あ、ほうれん草のキッシュもー。」
232 :
通常の名無しさんの3倍:2005/12/07(水) 22:32:59 ID:FcDly2r3
age
単発設定小話 ある日の回顧録「シン」
・・・俺は記憶喪失だそうだ。
とはいっても特定の部分のみすっぽりとなくなっているらしい。
・・・断定でしかいえないのは俺には「喪失」という実感がないからだ。
知らないことはどこまでいっても知らない。
喪失しているもの・・・俗に言う「思い出」がぬけているそうだ。
自分の言うこと、人の言うことを理解できる。計算だってちゃんとできる。
そう、生きていくうえで困ることはない程度の教養は失われていない。でも「思い出」はない。
親の顔も、兄弟姉妹がいるのかも、そして自分の名前すら忘れている。
嬉しいこと、怒ったこと、哀しいこと、楽しいことを思い出せない・・・いや、思い出そうと思えるほど実感がない。
・・・気づくと俺は戦禍の真ん中に立っていた。空をたくさんのMSが飛び交い戦争をしていた。
「怖い」という感じはなかったらしい。それが当たり前のようにぼうっと眺めてた。
・・・次に気づいたときは、薄暗い建物のベッドで横になっていた。
俺はMSの戦いに巻き込まれ、吹き飛ばされて意識を失っていたそうだ。・・・そう施設の人は教えてくれた。
それからその施設で検査を長い間受けていた。「コーディネイター」が珍しいらしい。
記憶もなかったし、他に行く場所もなかったから俺はそこにやっかいになっていた。
その施設は地球連合のラボだったようだ。俺はそこでMSのパイロットにならないかと誘われた。
施設の人は、俺に「コーディネイター」であることを隠させた。まぁ当然といえば当然の処置だろう。
そこで1年間、通常の新兵たちと訓練に従事した。
その後は特殊訓練を施され「ファントムペイン」に配属された。
・・・・・・インパルスのパイロット「マユ・アスカ」。あいつは俺のことを知っているような口ぶりをする。
あいつは俺が名乗ってもいないのに俺の名前を口にした。「シン」と。
俺の名前といっても本当の名前は覚えていないから「偽名」、しかもコード番号を読み直した名のだが、
なぜあいつは俺を「シン」と呼んだ?
大方、同じ名前の「シン」という兄弟がいたのだろう。先般の戦争で家族を失ったやつはいくらでもいる。
・・・しかしあいつの名前「マユ」・・・俺がもっている唯一の記憶のかけら「携帯電話」の留守電メッセージも
「マユ」と名乗った。確かめればすぐに同じ人物かわかったのだろう。だがあの時1回なっただけで、
もうならなくなってしまった。もともと壊れていたし、偶然メッセージが流れただけだろう。
エンジニアにみてもらったがメモリーもクラッシュしなにもデータは引き出せなかったそうだ。
・・・それでよかったんだろう。
あいつの名前、あいつの顔、あいつの声を思い出すたびに背筋に寒気がはしる。
っく頭が、頭が痛い。あいつの雰囲気、あいつの感覚・・・くそ!嫌な感じだ。あいつは俺の邪魔をする。
・・・記憶や思い出なんかに興味はない。
そうさ、俺は、いま俺のやるべくことをやるだけだ。
完
>>231 良い!!
あと隻腕乙!!!!!!!!!!!この作品とPP戦記は有志を集って同人で作りたいくらいだ
235 :
投票所の人:2005/12/07(水) 23:26:05 ID:???
投票所管理人です。
人気投票期間もあと二日になりました。
さて、項目が作成されただけで「0」票のキャラが複数います。
このまま0票にするか、それとも1票にしておくか悩んでおります。
皆様のご意見頂戴いたしたく、宜しくお願い致します。
>>235 どうしたものかな
0だと寂しいことは寂しいな
いっそ最終的に全キャラ一票ずつ上積みとかはどうだろう?
項目作成について一票計算にすれば不平等感はなくなる筈・・・
最終的な判断は投票所管理人様にお任せしますが
>>235 全員底上げするなら1も0も同じ。0だけ+1するならなおのこと寂しいだろう。
0であったなら、その事実をバネに職人はそのキャラを磨いて輝かせる材料に
すれば良いだけのこと。
もちろん屑石として切り捨てても構わないが。
>>235 ありのままを出すべきでは?
そういう配慮を考えるのなら、そもそも人気投票自体
するべきではなかったと思う。
と、いうか人気投票している事じたい知らなかった・・・
>>235 項目だけ作られてるってのは、おそらく投票した本人はこれで票が入ったと思ってるんじゃないのかな…
自分的には1票入れてほしい。
動きがねぇ、職人様カモン
「はーはっはっはっはっは!よくここまで来たな!!」
ハイネの声が響く。
あの橋を渡りきったツインシンはナイフが刺さってたり頭がこげてたり
鎖をひちぎった後とかでもうボロボロである。
「・・・・・・・・・・・・・・・・なぁ、最後の最後だ。」
『あぁ、やっちまおうぜ。』
二人は今だけ協力することにした。
「この俺のところまでよく・・ぐぼあっ!!」
ハイネがセリフを言い終わる前に攻撃を始めるゲンとシンハロ。
「おっ!!お前ら!!人がセリフを言い終わる前に攻撃するな!!」
口から無意味に血を出しながら訴えるハイネ。
『うるさい!!先手必勝!』
だべしっ!
「おれさ、ガキのころポケモ○見ててなんでロケッ〇団が喋ってる間に
十万ボルトしないんだろう?ってずっと思ってたんだ。」
ずしゃっ!
『美形が頭と口端からしか血を出さないのってムカつくよね。』
ぼきっ!!
「あぁ、綺麗な顔にクリーンヒットさせて鼻血出したいよな。』
どごずっ!!
ぎめしょぐちゃべげっがちゃげしたいがーぐべあえべしいあいあはすたー。
『・・・ふぅ、ここまで原型を留めなくなったらいいか。』
「そうだな。」
ウサを晴らしたのか血塗れの爽やかな顔で笑いあう二人。
ジョジョに奇妙な友情が生まれてきたようだ。
『ハイネーーーーーッ!!』
同人アニメの時のように叫ぶアスラン。
『あちゃー、大丈夫かね?あれ?』
困ったような顔でムウは呟く。
『別に大丈夫だよー。』
『ハイネなら三十分で回復するわよねー。』
『だってきっと真っ二つになっても再生するぜ、ハイネなら。』
『ヤマタノオロチみたいだな。』
『ジャパニーズ・ヒュドラ?』
ハイネ隊の面々がマユの胸程度も心配してないので大丈夫なのだろう。
『次の競技いっちゃっていいよー。ハイネはこっちで処理するから。』
・・・・・処理と言う単語に一抹の不安を覚えながらもゲンとシンハロは次の
競技の会場へと向かうことにした。
「あ、そう言えばこの競技の結果はどうなんだよ。」
『んー。引き分けかなー?』
「『えぇぇぇえぇぇぇえぇぇっ?!』』
今回はスレ初頭から隻腕とPPの二大巨編が活発だなーw
えーとだな、意見の具申は荒れない程度なら禁止されてないよな?
新人らしいHina氏にいくつか。
・句読点と改行を上手く使いましょう
・擬音語使わない方が良さげ。「ドゴォォォン」とか書かずに「鼓膜が破れんばかりの轟音が〜」とかにしては?
・誤字が目立つので一度文章を推敲しましょう
あと、個人的な感覚ながら
台詞以外の文頭にスペースを入れると良いかと。……これはやらんでもいいか……。
Hina版は面白そうな要素が沢山感じられるのに、でも文章そのものを書き慣れてないっぽい雰囲気があるからなw
天性のシナリオセンスはあるっぽいけど経験不足って感じ?
一言二言言い添えたくなる気持ちは俺もわかるぞw
PPも最初の頃は台詞だけだったしな
書きながら上手くなってくれれば良しだろ
>>投票所管理人様へ
>さて、アスラン・ザラへ投票していただいた方へ
>作品名が未記入です。ご連絡いただければ修正いたしますのでご連絡願います。
まとめサイトにきたメールによると、ほのぼのアスランだそうです。
248 :
投票所の人:2005/12/09(金) 23:24:43 ID:???
纏め人様、いつもご苦労様です。
ご連絡ありがとうございます。
修正しておきます・・・締め切りまであと少しですが・・・・・・
249 :
投票所の人:2005/12/10(土) 00:13:08 ID:???
スレ住人の方々、お疲れ様です。投票所管理人です。
期日を過ぎましたので人気投票結果の発表です。
※0票はそのまま「0票」としました。・・・ノミネートされたってことでご勘弁を。
【第1回 もしシンじゃなくてマユが主人公だったら SSキャラ人気投票 結果発表】
順位 項目 得票数 投票率
1位 ゲン・アクサニス(PP戦記) 45票 22.4%
2位 ユウナ・ロマ・セイラン(隻腕) 27票 13.4%
3位 マユ・アスカ(隻腕) 20票 10.0%
4位 シン・アスカ(隻腕) 19票 9.5%
5位 マユ・アスカ(マユ種) 14票 7.0%
5位 カガリ・ユラ・アスハ(マユ戦記版) 14票 7.0%
7位 シンハロ(ほのぼの) 13票 6.5%
8位 マユ・アスカ(ほのぼの) 6票 3.0%
9位 ハイネ・ヴェステンフルス(ほのぼの) 5票 2.5%
10位 アレックス・ディノ(マユ戦記) 4票 2.0%
10位 シン・アスカ(マユ)(Injustice版) 4票 2.0%
12位 ステラ・ルーシェ(PP戦記) 3票 1.5%
12位 カガリ・ユラ・アスハ(しのはら) 3票 1.5%
14位 アウル・ニーダ(PP戦記) 2票 1.0%
14位 スティング・オークレー(PP戦記) 2票 1.0%
14位 老師(汎ムスリム会議)(PP戦記) 2票 1.0%
14位 レイ・ザ・バレル(隻腕) 2票 1.0%
14位 キラ・ヤマト(隻腕) 2票 1.0%
19位 メイリン・ホーク(マユ種) 1票 0.5%
19位 ロード・ジブリール(隻腕) 1票 0.5%
19位 カガリ・ユラ・アスハ(隻腕) 1票 0.5%
19位 キラ・ヤマト(マユ戦記) 1票 0.5%
19位 暗黒女帝カガリ・シーノハーラ(ほのぼの) 1票 0.5%
19位 ステラ・ルーシェ(ほのぼの) 1票 0.5%
19位 アル・ダ・フラガ(隻腕) 1票 0.5%
19位 ロード・ジブリール(PP戦記) 1票 0.5%
19位 メイリン・ホーク(ほのぼの) 1票 0.5%
19位 アキラ・アインズ(ほのぼの) 1票 0.5%
19位 レイ・ザ・バレル(ほのぼの) 1票 0.5%
19位 ジョー・ライン(ほのぼの) 1票 0.5%
19位 マユ・アスカ(影の少女) 1票 0.5%
19位 アスラン・ザラ(ほのぼの) 1票 0.5%
33位 ルナマリア・ホーク(マユ種) 0票 0.0%
33位 レイ・ザ・バレル(マユ種) 0票 0.0%
33位 ミーア・キャンベル(マユ種) 0票 0.0%
33位 ゼロ(ほのぼの) 0票 0.0%
とゆーような結果となりました。
1位がゲンで2位がユウナって・・・・・・まぁこんなこともありますか?ありますよね!?
最後に、至らぬ点もあったかと思いますがご協力いただきまして皆様に多大な感謝を。。。
>>投票所の人
お疲れ様でした。
また別の企画があったら参加させてもらいます
>5位 カガリ・ユラ・アスハ(マユ戦記版) 14票 7.0%
>12位 カガリ・ユラ・アスハ(しのはら) 3票 1.5%
これ被っているような気がします。
>>投票企画
もし次やるとしたら、作品の人気投票かな。
各キャラの出演作品集計すれば作品人気投票必要ないかも
やはり2作品中心に票が集まったな
前にも主張したけど、やるならエピソード単位の人気投票じゃないか?
>>218 ご指摘の件ですが、16話でステラの脱出作戦を開始した時のレイの格好は、赤い制服姿です。
文中にも、「赤い服を着た影が〜」の一文を入れておきましたしね。
なにせ舞台は地上です。生身でMSに乗ってもそのままハッチを開閉しても、死にはしません。
そしてパイロットスーツ姿で艦内を歩き回れば、それは余計な人目を引きます。見つかった時の言い訳も困難です。
そりゃ安全を考えればパイロットスーツの方が良いのでしょうが、あの時のレイは戦闘する気はありませんでしたし。
――そんなわけで、意識して私は軍服のままにさせていました。
冗長な解説になってしまいましたが、ご理解下さい。貴方のイメージするレイ像とズレてたら、ご免なさい。
さて、続きです。18話です。少し今回は長くなってしまいました。
以前ザフト軍がガルナハンルートで挑んで落とし損ねた連合軍の要所、スエズ基地。
この拠点を本格的に落とそうと、ミネルバを先頭としたザフト艦隊が地中海から迫ります。
迎え撃とうとしたオーブ軍は、デュランダル議長がタイミングを合わせたロゴス糾弾演説に、大いに揺れます。
さて、スエズを巡る戦いの行方は……?
『そう、我らの真の敵の名は――『ロゴス』!』
プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルによる、突然の演説。
あらゆるメディアを通じて発表され、一部では連合側の通信網までハイジャックして流されたそれは――
世界に困惑をもたらしていた。
「マジかよ、オイ!」
「言われてみりゃ、コイツらに有利な法案は必ず議会を通ってたよな」
「ロゴスを倒せ! 俺たちの手に政治を取り戻すんだ!」
「いやーしかしこれ本当かね? なんか『出来すぎている』感じがしなくねーか?」
議長の演説は、「そう考えれば色々と辻褄が合う」部分が多くあり、説得力のあるものではあったが……
同時に、冷静な目で見れば、証拠能力に欠け、またその宣言も唐突な感が拭いきれず。
常々「敵はナチュラルという種族そのものではない」と言っていた議長の論の、延長線上ではあるが、しかし。
世界の大半の者たちは、議長の真意が読みきれず――
その反応は、「困惑」というのがまさにぴったり来るものがあった。
もちろん、その演説は、宇宙で戦いを続けるザフトの兵士たちにも届いていた。
巨大宇宙空母ゴンドワナの重力ブロックでも、兵士たちはその話でもちきりで。
反応は――おおむね似たようなもの。
「これで敵が明確になった」と意気込む者半分、「で、どーすんのよ」と醒めた目をするもの半分。
そして――そんな噂に花を咲かせる兵士たちの間を、足音荒く歩いていたのは、白い軍服の銀髪の青年。
精鋭ジュール隊を預かる、イザーク・ジュールだった。
「ディアッカ! ディアッカはいるか!」
腐れ縁の仲間、最も信を置く部下の名を呼びながら、イザークは食堂に踏み込む。そこは彼らの平時の溜まり場だ。
食堂の壁面モニターにも議長の顔と演説が映っていて、多くの兵士はそれに釘付けで。
当のディアッカは……食堂の片隅で、ノートパソコンを広げて何やら熱心に打ち込んでいた。
イザークの接近に近づくと、慌ててパタンと閉じる。冷や汗を浮かべながら、わざとらしい笑い顔を作る。
「おう、居た居た。……って、こんな非常時に何をやっていたんだ、お前は?!」
「いやぁ、ちょっとミリィにラブレターをね♪」
「……お前、まだあのナチュラルの女に執着してるのか? 前にも振られたと言ってただろう!?」
「うん、だからコレ、8回目の愛の告白。イザークが相手でも、ちょっと見られたくはないな〜♪」
「誰が見るか、そんなものッ!!」
まるで懲りる様子もなく、にこやかに笑うディアッカに、イザークは呆れ半分・怒り半分で声を荒げる。
イザークについてきたシホも、毎度のやりとりに肩をすくめる。
「それでイザーク、わざわざ何の用?」
「……議長の演説は聞いたか?」
「ああ、さっきね。そこのモニターでも垂れ流されてたよ」
「これを受けて、連合側も何らかの動きを起こす可能性がある。あるいは兵士の亡命などが起こる可能性もある。
我が隊はそれらに備えて、独自に周辺宙域のパトロールを行うことにした。許可が取れ次第、すぐに動くからな。
ディアッカも――そんな遠くの女などに気を取られてないで、準備をしておけ!」
「はいはい。全く、イザーク隊長の真面目さには頭が下がりますねぇ」
まるっきりやる気のない態度で答えるディアッカに、しかしイザークは怒らない。
彼のこういう反応はいつものこと。それに、何だかんだ言ってもディアッカはちゃんと仕事してくれるのだ。
どうせイザークがいくら熱心に即時のパトロールを望んでも、上層部の許可が取れるまでは時間がかかるわけだし。
イザークはそれ以上何か言うことなく、他の隊員を探しにその場を立ち去る。
シホも、真意を探るような目つきでディアッカを数秒間観察した後、イザークの後を追って足早に去る。
「……ふぅ。さて、と」
――2人が遠くに行ってしまったことを確認すると、ディアッカはノートパソコンを再び開く。
中断していた文書の作成を、再開する。
彼の表情が、真面目なものになる。とてもではないが恋文を書いてるようには見えない、厳しい顔つきに。
「この分じゃ、9回目の『ラブレター』も近いうちに送らなきゃならねーなァ……」
画面に表示されていたのは、とても恋文などからは程遠い、固い文章。ほとんど報告書の類の文体。
テーマは「現在のザフト軍内部での『ラクス・クライン』の評判と評価について」。
彼の広く浅い交友関係で聞き集めた噂、そして食堂などで聞き耳を立てて収集した噂をまとめただけだが……
それでも、今現在のザフト内部の空気を、極めて適切に、分かり易く整理した優秀な報告書となっていた。
ディアッカは、ほとんど完成していたその報告書の最後に、一文を書き加える。
『なお、この報告書の執筆中に行われた『ロゴス』糾弾演説の影響については、次回の報告書にて報告予定』と。
それだけ書き加え、その報告書を電子メールで送って……ノートパソコンを閉じる。
閉じてから、ふと思い出してハッとする。
暗号化のし忘れや偽装、軍の検閲対策のこと――ではない。
それは心配しなくても、メールを中継してくれる『仲間』たちがなんとかしてれる。それよりも――
「……しまった。『ディアッカからミリアリアへ、愛を込めて』って書き添えるの、忘れてた」
マユ ――隻腕の少女――
第十八話 『 散りゆく生命(いのち) 』
目の前に迫る、ザフトの艦隊。先頭を行くのは、縁も深く、敵ながらも愛着ある万能戦艦、ミネルバ。
そして、彼らの足元を切り崩すような、デュランダルの演説――
ざわめくオーブ軍。そんな彼らの耳に飛び込んで来たのは――カガリ・ユラ・アスハの声だった。
『親愛なるオーブ軍の諸君。先ほどのデュランダル議長の演説、聞いたものと思う。
だが迷うな。議長の戯言は、目の前に迫る戦闘と、本質的には無関係なものだ!』
言葉の端に怒りを滲ませて、しかしカガリは、はっきりと言い切る。全軍に向けた放送で、言い切った。
『議長の語った『ロゴス』、その内容が真実であろうとなかろうと、この戦闘はもはや避け得ない!
議長も恐らくそれを分かっているだろう。
分かっていて……この戦いに、あの演説をぶつけたのだ! 動揺するであろう我らを、労少なくして討つために!
たとえ、彼の言葉が真実だったとしても――このようなやり方をする今のザフトに、正義などあろうはずがない!』
カガリはある意味、天性の将だった。
心理学や陰謀などには、はっきり言って疎い方だったが、しかしここは戦場。これは戦いの上での駆け引き。
一瞬にして、議長の思惑を見抜いてしまっていた。見抜いた上で、それを真正面から斬り捨てた。
『無論――我が国としても、調査はする。あの件について、独自に調査すると約束する。
特に我が国の宰相ウナト・エマ・セイランには、徹底的に問い糾し、真相を明らかにすることを誓おう!
だが、それもこれも、全てはこの戦いが終ってからだ!
真実を確かめる、そのためにも! 今は、目の前の敵の撃退に集中せよ!』
「おおう!」
「そうだ、カガリ様の言う通りだ!」
「デュランダルめ、ふざけやがって! こんなことで、我らオーブの精鋭が惑うと思ったか!」
「セイランも許せんが、それ以上にザフトは……!」
カガリの言葉の威力は、絶大だった。
揺らぎかけていた兵士たちの心も持ち直し、一時の動揺は怒りと戦意に置き換わる。
誰もが意気込んで、戦闘態勢を取る。先駆けのムラサメ隊が、出撃を開始する――
「――ふぅ。これでなんとか、持ちなおしてくれればいいが」
「ご苦労様です、カガリ様。お見事でした」
タケミカズチのブリッジにて。マイクを握っていたカガリは、溜息をつく。手の平にはじっとりと汗が滲んでいる。
労をねぎらったのは、艦長のトダカ。
カガリとて――今の議長の演説には、少なからず動揺していたのだ。
動揺しつつも、しかし、このまま戦ったら確実に負ける、多くの兵が死ぬと直感し――咄嗟にマイクを掴んだのだ。
「トダカ――率直に言って、お前は議長の演説、どう思った」
「……軍人の私が判断すべきことでは、ないのかもしれませんが……私が思うに、おそらくほぼ真実でしょう。
作り物の嘘なら、あのような嘘は選びません。少なくとも、我らを揺さぶるためだけに言う内容ではありません。
恣意的に真実の一部だけを開示しているのかもしれませんし、誇張もあるでしょうが、それでも」
「そうか……」
年を重ねたトダカの適切な分析に、カガリは小さな、ひきつったような笑みを浮かべて、頷いて。
カガリは、俯いたまま、身を翻す。
「あッ、カガリ様、どちらに!?」
「……私もルージュで出ておく。ああは言ったが、まだ兵の動揺が抜けてはいないだろうしな。
ザフトは……議長は、なりふり構わぬ覚悟で来ている。こちらもカードを出し惜しみしていては、勝てん。
艦の指揮と、艦隊の指揮……しばらく、頼む」
呟くような声で、トダカに後を託し、彼女はブリッジから出て行く。小さな音を立てて戸が開き、閉じる。
残されたトダカは……傍らに控えるアマギ一尉と、目を合わせた。
互いに厳しい顔つきで、しかし、言葉よりも深い覚悟を交わし、頷きあう。
「オーブ艦隊から、MSの発進を確認!」
「こちらもMSを出して頂戴。インパルス、セイバー、レイのザクファントムは前進して攻撃。
グフと、オレンジショルダー隊のザクは艦の近くに留まり、艦の防衛を!
オフェンス、ディフェンス共に、ミネルバの動きに気をつけて。その時に射線上にいたりしたら、死ぬわよ!」
ミネルバをはじめとしたザフト軍の側でも、戦闘態勢は整っていた。
タケミカズチからムラサメの第一陣が出てきたのを確認すると、ザフト側からもMSが次々と出てくる。
空中には主にバビとディン、海中にはゾノとグーン。
海面直下には、大きな2枚の円盤を背負ったザクの姿もある。強襲揚陸用装備のノクティルーカ・ウィザードだ。
ザクたちは、次々に海面に顔を出し。足裏のスキー板と背中の大型フィンで、海面を縦横に滑走し始める。
ミネルバからも、続々とMSが吐き出される。
MA形態で飛び出したセイバーは、身を捻りながら急速上昇、上空へ。
カタパルトで飛び出した白いザクは、空中で滞空して、後から射出されたグゥルの上に着地。低空を維持。
そして、次々と飛び出すパーツと合体したインパルスは、最後にブラストシルエットを背負って、海面に――
沈むか、と見えたブラストインパルスは、しかし海面上に留まる。シルエットが変形し、ホバー走行を実現する。
向き合う互いの艦隊から、無数のミサイルが吐き出される。
尾を引いて飛んでくるその死の矢にまるで怯むことなく、両軍のMSは前進を開始して――
スエズ沖海戦が、始まった。
「……っと、まだ出撃してなかったのか、マユ」
「あ……カガリ……」
更衣室を出て、タケミカズチのパイロット控え室に駆け込んだカガリは、思わず声を上げた。
ほとんどのパイロットが出撃し、あるいは自らの機体で出撃を待っている今、広い控え室にいるのはマユ1人。
浮かない顔で、椅子にちょこんと座り込んでいる。
「……デュランダル議長の演説、気にするな、ってわけにはいかないか」
「……うん……」
「しかし、今は戦うしかないぞ。気持ちを切り替えろ、でないと、死ぬのはお前だぞ」
カガリは自らのヘルメットを被りながら、マユに声をかける。
その凛々しい横顔は、少なくとも外から見た限りでは、何の迷いも感じさせない。
「マユ、お前が私に言ったんだぞ。『オーブのみんなを守るためなんだから、間違ってるはずはない』と。
ウナトが本当にロゴスかどうかは、別にして――ユウナも私も、そのために働いているのは確かだ。
それさえも疑っているのか、お前は?」
「それは……」
「もっと、しゃっきりしろ。温泉でのあの啖呵を、忘れたのか?
オーブのみんなを守るためにも、ここで私たちが死ぬわけにはいかないんだ。そうだろう?」
かつて温泉で、マユがカガリに言った言葉。その時とはまるで逆さまの立場。
カガリの励ましに、マユはようやく笑顔を浮かべる。それは、無理やり作ったようなひきつった笑顔ではあったが。
カガリはクシャクシャと、マユの髪を乱しながらマユの頭を撫でる。
「そうだ、その笑顔でいい。行って来いマユ、オーブの守護神フリーダム。
お前が居るだけで――我々に、幸運が微笑んでくれるんだ」
「うん! 行ってくる! カガリも――気をつけてね。ルージュで出るんでしょ?」
「私もバカじゃない、立場は弁えているさ。無茶はしないよ」
立ち上がったマユの背を、カガリは平手で叩く。フリーダムへ向けて走り出すマユを、そのまま見送る。
見送って、マユの姿が角を曲がって見えなくなるまで見送って――脱力する。
激しい自己嫌悪に、捉われる。
「……『オーブを守るため』、か。これでは私も議長のことを責められんな。
こんな詭弁であんな子を煽って、戦場に送り出そうっていうんだから……
私は……本当の、バカだ……」
そう、カガリは――自分のやっていることに、自覚があった。
自覚を持った上で、しかしオーブ軍の勝利のため、マユ自身の言葉を改めてマユの意識に呼び起こさせた。
自責と自嘲の笑みを浮かべたまま、カガリは、足取りも重くストライクルージュへと向かう……
互いの軍の第一陣が、ぶつかり合い、戦闘を開始する。
バビとディンの編隊に対して、オーブ軍からはムラサメが。
海上を滑走するノクティルーカザクに対しては、同じく2枚のフィンを背負ったM1アストレイの大群が。
それぞれに、向き合う。
空中の戦力は、ほぼ数も質も互角。
海面近くの戦いは、機体性能ではノクティルーカザクが上だったが、M1アストレイは数でそれに対抗する。
一瞥したところ、互いに決め手のない戦い。すぐに乱戦になる。
双方のエース級パイロットの活躍次第、といった雰囲気だが、しかしそれもほぼ均衡が取れている。
オーブ軍の動揺を狙った議長演説も、カガリの一喝に吹き飛んで、見たところさほどの影響はない。
むしろ、オーブ軍よりも、正規の連合兵の方が動揺している始末である。
しかし、この均衡が保たれ、長期戦が予想される戦場において、著しい不均衡を呈している空間があった。
それは――
「ナチュラルめ! 海の中は地上よりむしろ宇宙に近い環境! すなわち、我らコーディネーターの独壇場!
我らの力を、思い知れ!」
海中で、連合製水中用MS、フォビドゥン・ヴォーテクスが無数の魚雷に追い回される。
5機のグーンから放たれた魚雷の群れ、それを回避しようと大きく動いて……1機のゾノに、先回りされている。
慌てて三叉の槍を構えるが、既に遅い。
大きな手に胴体を鷲掴みにされ、ゼロ距離で放たれた掌のフォノンメーザー砲に撃ち抜かれる。
「弱い! 弱すぎるぞナチュラル! 『白鯨』のような歯ごたえのある奴はいないのか!?」
叫ぶのは、ゾノのパイロット、マーレ・ストロード。ザフトでは水中戦のエキスパートとして知られた人物である。
部下のグーンの魚雷で相手の動きを制限した戦術を見ても、個人技だけでなく指揮官としての才もあるようだった。
そう、海面より上では拮抗している戦場だが、海面より下では、ザフト側が圧倒的に優位。
単機の性能を比べればヴォーテクスの方がザフト系水陸両用機よりも勝っているのだが、しかし数が違い過ぎる。
海中からオーブ艦隊に迫り、その柔かな腹を下から噛み千切れば、ザフト側の勝利は間違いない。
マーレは、己の勝利を想像し、にんまりと笑みを浮かべる。
連合・オーブ側の海中には、今倒したヴォーテクスが、あと数機残っているだけ。これなら、間違いなく――
と――そんなマーレの想像は、突如海中に響き渡る爆発音に遮られる。
見れば、オーブの巡洋艦に迫りつつあった別のチームのグーン隊が、次々に撃破されていく。
その爆音の中心に居たのは――
「――アビス! アーモリーワンの、あの時の連中か!」
「――数だけ居たってなァ!」
圧倒的に数の差のあるザフト水中部隊に、アビスは単身飛び込んで行く。
グーンから放たれる超音速魚雷を、その進路と発射を先読みして回避し、逆に魚雷を打ち返して。
オーブ艦隊の海中の守りは、弱い。オーブ軍は未だ水陸両用MSを実用化できていないのだ。
オーブ系MSはその設計思想上、連合系・ザフト系MSと比べ根本的に装甲が薄いのだ。水圧に耐え切れない。
プロトタイプアストレイが水中用装備をつけて戦った先例はあるが、未だ量産レベルでは目途も立っていない。
自前の水中の守りを持たぬオーブ軍は、スエズ基地からフォビドゥンヴォーテクスの部隊を借りてはいたが……
しかし、そのヴォーテクス部隊は、そもそも数が少な過ぎた。敵のザフト水中部隊は軽く4倍以上いるのだ。
しかも開戦直前のデュランダル議長の演説で、みな浮き足立ってしまっている。これでは、勝てない。
1機でも艦隊の方に通してしまえば、艦が沈められる――そんな絶望的な海中の戦場を、アビスが単機駆ける。
一瞬でグーンの1部隊を壊滅させ、今度はヴォーテクスを葬ったばかりの、ゾノを中心とした部隊に向かう。
「あの艦隊はなァ……俺の、僕の国になってくれるかもしれない連中なんだ!
マユの大切な、仲間たちなんだ! お前らなんかに沈められて、たまるかよ!」
アビスは、突進する。魚雷を乱射するグーンたちにひるむことなく、水中とは思えぬ急スピードで――
「ナチュラルめ……アーモリーワンでの借りを、返してやる!
円輪陣、『垣網の計』だ! 奴がいかに速かろうと、俺たちほど水中戦の経験はあるまい!」
マーレは迫るアビスに、むしろ嬉々とした笑みを浮かべる。
因縁浅からぬ相手。恨みつのる相手。そして――知り尽くした、相手。
目の前の難敵アビス、しかしそのテストパイロットを務めていたのが、他ならぬマーレなのだ。
アーモリーワンでは、格納庫にいたところを襲撃され、MSに乗る間もなく撃たれてしまったのだが……
水中で縦に円形に並んだグーンたちが、標的を包み込むように魚雷を連続的に撃ち放つ。誘導をかけず、直線的に。
魚雷の弾幕の壁を避けたアビスは、自然と魚雷が形作る円錐の中に追い込まれる。
スピードはあるが方向転換や停止の困難なアビスMA形態では、直撃が嫌ならそうするしかない。
ちょうどそれは、魚の進路を遮るように配置した垣網で魚群を集める、定置網漁法の要領。
そして、その円錐の頂点に待ち構えるのは捕獲用の主網ではなく、必殺の態勢を整えた、隊長マーレのゾノ――
「PS装甲に耐圧を頼ってるから、装甲の出力バランスが崩れ兼ねない魚雷の直撃は、受けたくないよなァ!
でもって……コイツは、PS装甲でも防ぎづらいんだよなァ!」
マーレのゾノが、追い込まれたアビスに向けて両手を突き出す。フォノンメーザー砲が、発射される。
ビームのようにも見えるが、実際は水中でも使える超音波兵器。PS装甲は直接は破れないが――
水中で直撃を受ければ、センサーやカメラ、インテーク部など「装甲に覆われてない部分」が大ダメージを受ける。
しかし、今の状況から横に避けようとしても、魚雷の壁に突っ込むのは間違いなく。
まさに、必殺の布陣、必中の攻撃――
だが――アビスは、アウルは、その最強の布陣に対し、瞬時に対応してみせた。
容易には停止も方向転換もできぬMA形態から、MS形態に変形して水中で急ブレーキ。
すぐさま再びMA形態に戻って――しかし、その時にはその向きを180°逆側に向けていて。
距離を詰めた時の勢いそのままに、距離を開く。
この変形を生かした急ブレーキと方向転換は、マーレでも想像すらできぬ方法だった。だから対応が遅れた。
向かってくる者を仕留めるには最高の陣形、円輪陣。最高の戦術、垣網の計。
しかし遠ざかる者に対しては、それは単なる散発的な攻撃に過ぎない。
アビスはあっさりマーレの攻撃を回避した上に、遠ざかりながらも反撃をする。
MA形態では後方の敵しか狙えぬ実弾兵器、バインダー外部に突き出した計4門の速射砲が、海中で火を噴く。
「な、なんだとぉ!?」
マーレが驚く間もなく、部下のグーンが次々に撃ち抜かれる。撃ち抜かれて、ゾノの至近距離で爆発する。
爆発による轟音と泡のために、ソナー的にも視覚的にも、マーレはアビスの存在を見失う。
「どこだ!? どこに行った、奴は!?」
慌てふためくマーレの眼前に――泡を掻き分けるように、アビスが現れる。ツインアイがギラリとゾノを睨む。
遠ざかっていたはずなのに、いつのまに反転してきたのか。いつの間にこんな距離に近づいていたのか。
要するにアウルは、さっきと同じことをもう一度しただけなのだが、マーレには分からない。ただ、混乱する。
咄嗟に突き出したゾノの鉤爪は、紙一重のところで避けられて、お返しとばかりにアビスの槍が一閃する。
大きく胴体を切り裂かれ、動きを止めるゾノ。全ての機能を停止して、ゆっくり海底に沈んでゆく。
浸水の始まったたコクピットの中で、マーレは天を仰いで呪いの言葉を吐いた。
「……訳が、分からんッ……! これだから、ナチュラルは嫌いなんだッ……!」
「……ハァ、ハァ……。これで、半分ッ……!」
目の前のゾノが動きを止めたのを確認し、アウルは荒い息をつく。
急ブレーキに急加速。急な方向転換は、宇宙での機動と同じように、パイロットの身体にGによる負担をかける。
またソナーよりも速く飛んでくる超音速魚雷やフォノンメーザーの回避には、凄まじい集中力とカンが要求される。
強化されたアウルの身体でも、それは容易なことではない。
「まだだ、まだ3部隊ほど残ってる……。敵の潜水母艦も、叩かないと……!」
額に汗を滲ませて、アウルは自らの気力を奮い立たせて。
再びアビスをMA形態にすると、新たな敵を求め飛び出していった。
後には、無数のグーンとゾノの残骸が、ゆっくりと沈んで行くだけ……。
――アウルが孤軍奮闘する海の中。その上空でも、激闘は続いていた。
「敵のトンガリ頭、片手の武器を変えているぞ! 気をつけろ!」
「ビームライフル! カーペンタリア沖での反省か!」
本格的に量産態勢に入ったバビは、その装備を変えていた。対艦対要塞用バズーカ2門の片方を、ビームライフルに。
元々重爆撃機に近い性質を持つバビであるが、その攻撃力を落とさず対MS戦にも対応するための方策だろう。
勝手の違う相手に、ムラサメ隊も以前のようには容易には落とせない。戦闘が、膠着する。
ムラサメ隊の一隊を率いる馬場一尉は、正直、焦っていた。
敵の通常の艦艇は、さほど怖くはない。甘く見るつもりもないが、艦の攻撃力ならオーブも負けてはいない。
ただ問題はミネルバだ。より正確に言えば、ミネルバ艦首の陽電子砲タンホイザーだ。
あれを撃たれれば、防ぐ手はない。巨艦タケミカズチでさえも、一撃で沈みかねない威力。
だから一刻も早くミネルバを沈める、あるいはせめて、発射を妨害するため、プレッシャーを加えねばならぬのに……
と――焦る馬場一尉の頭上を、5色の光が駆け抜ける。続いて、4条の光と、無数のミサイルが撃ち放たれる。
その攻撃に、隊列を乱し、あるいは落ちていくバビの陣形を、2つの影が突破していく。
「フリーダム! カオス!」
「みんな、艦隊の守りはお願い! ミネルバは、あたしたちが!」
「後は頼むぜ、オーブのおっさんたち!」
速力と火力に優れた、2機のエースの突撃。確かに適任だ。
すぐに意を察したミネルバ隊は、彼らの突破を支援する。バビたちは2機を追うこともできない。
馬場一尉は、部下に檄を飛ばす。
「我らは我らの務めを果たす! 機さえあれば、我らもフリーダムに続くが……今は、この場を死守するぞ!」
そして馬場は、フリーダムを見送って――
自らの教え子、短期間にマンツーマンで軍規と戦術論を叩き込んだマユの背中に、目を細めた。
「……立派になったものだ、マユ・セイラン。適切な判断だ。もう、私が教えることもなさそうだな――」
バビの編隊を突破したフリーダムとカオスは、海上を滑走する別のザフト部隊の頭上を駆け抜ける。
大きなファンを2つ背負い、水上スキーのように滑るノクティルーカ・ザク隊。
海面から彼らを狙ってビームが撃たれるが、2人は相手にせずに回避だけして、ミネルバ目掛けて走り抜ける。
と、マユは視界の隅に見慣れた、忘れられない機体の姿を見る。
同じように海上を滑走する、ブラストインパルス。
しかしフリーダムはその相手をすることもなく、そのまま速度を落とさずに――
「インパルスは気になるけど……あたしは、あたしの務めを果たさなきゃ――」
「……フリーダムか。それにあっちは、カオスだな」
シンもまた、その姿を海上から見上げ、認識していた。表情を隠すハーフミラーバイザー越しに、その姿を確認する。
それがミネルバに行くことを認識しつつも、しかしシンも戻ろうとはしない。
「ミネルバの守りは、ハイネたちに任せたんだ。俺は、俺の敵を討つ。
そう、あの、オーブの艦隊を――!」
シンは呟くと、ブラストインパルスの2門の大砲を抱え込む。
海面を滑るように移動しながら、低空飛行で出てきたシュライク装備型M1アストレイの部隊に、襲い掛かる。
波を蹴立てて向こうからの攻撃を避けながら、正確な射撃で、1機ずつ、確実に――!
ノクティルーカ・ザクが、M1の数の前に苦戦する中、ただ1人シンだけが逆に押し返していた。
「……やあ、また会ったな、白いボウズ君。いや、レイ・ザ・バレルとか言ったっけな?」
「……ネオ・ロアノークッ……!」
混戦の中、惹かれあうようにばったり出くわしてしまったのは、白いザクと紫のウィンダム。
レイのザクファントムはグゥルに乗ってブレイズ装備。ネオのウィンダムは、相変わらずジェットストライカーだ。
「全く、『ギル坊』は何を考えてるんだ。あんなことを唐突に宣言するなんてなァ」
「……ギルのことを、その名で呼ぶなッ……!」
「名門バレル家の名を持つ者としては、構わんのかね? バレルの名もあったろう、公開されたリストの中には」
「……うるさい……」
「まあ君は、バレル家の中でも鬼子のような存在だろうしなァ。本家よりも母よりも、ギル坊の方が大事だと……」
「うるさいと言っている!」
ネオの飄々とした口調に、レイは珍しく激昂して。
エネルギーの温存も何も考えず、激しくビームを連射する。ネオのウィンダムは、慌てて避ける。
白いザクはビーム突撃銃のエネルギーパックに手をかけると、手つきも荒く交換する。
「おー、怖い怖い。あのエゴイストの分身が、こうも他人のために怒るなんて。
ギル坊め、随分と上手く飼い慣らしてるようじゃないか。一度会ってそのコツを伺いたいモンだねぇ」
「俺は……ギルに飼われているわけではない! 俺自身の意思で、ギルに従っているんだッ!」
レイはなおも激しい攻撃を重ねる。ビームトマホークを抜き放ち、グゥルごと体当たりするように斬りつける。
ネオのウィンダムの盾が、大きく切り裂かれる。
ウィンダムもまた、ビームサーベルを抜き、応戦して――
ロドニアのラボの時とは対照的に激しい戦いは、しかし今度も容易には決着はつきそうになかった。
マユとスティングは――ミネルバの眼前にまで迫っておきながら、苦戦していた。
相手は、これも因縁深い、オレンジショルダー隊。こうして戦うのもこれが3度目である。
1度目は、彼らの機体を奪っての急襲で――奇襲は上手く行ったが、機体の性能差でグフには歯が立たなかった。
2度目は、ガルナハンの攻防戦で――勝ったのはマユたちだが、数の暴力で押し切った感は否めず。
そして、この3度目の争いは――今度こそ互いの実力を如実に反映するものとなりそうだった。
「あのオレンジの奴に突っ込む! マユ、支援頼む!」
「了解!」
スティングの指示に、マユのフリーダムがフルバースト射撃。一箇所に固まっていたハイネ隊をまとめて撃つ。
その攻撃をハイネ隊は散らばって避けて――そうやって個別に分断しておいて、カオスがグフに襲い掛かる。
MA形態のまま足から4本のビームの刃を出し、すれ違いざまに斬りかかる。並の兵士は反応すらできぬ速度。
だが――ハイネもまた、並の兵士ではない。
フリーダムの射撃をかわし、態勢が崩れていたにも関わらず、ギリギリで刃を避ける。
カオスの胴体に蹴りを叩き込み、橙色のボディを噛み砕かんとしていたビームの顎を突き放す。
そのまま、逆に態勢の崩れたカオスに向け、右手から鞭が伸びて――
「喰らうかよ、そんなのッ!」
カオスのスティングも、また只者ではない。
即座にMS形態に変形、自由落下に転じつつ、腰からビームサーベルを抜き放ちざまに振りぬく。
カオスを捉えようとしていた鞭はすっぱりと切り落とされ、機体に届くことはない。
追い討ちとばかりに、鞭を出した姿勢のまま放たれた4連装ビーム砲の攻撃も、盾を構えて受けきる。
一方、敵を分散させたマユは、グゥルに乗ったザクウォーリアたちを無視して、ミネルバに攻撃しようとしていた。
だがオレンジショルダーの面々が、その攻撃を許さない。
ミネルバのブリッジに銃を向けたフリーダムの手足に、左右から飛んできたワイヤーが絡みつく。
量産されたザクの純正の武器ではない。おそらくは隊のメンバーが独自に使いやすいように改良した、改造武器。
左右から拘束され、フリーダムの動きが一瞬止まる。
「ゼロ、グレイシア、ナイスだ!」
「アキラ、頼んだわよ!」
動きを止めたフリーダムに、残る1機のザクが勢い良く襲い掛かる。
グゥルの上で、何やら派手な、巨大な剣を構え、動けぬフリーダムを斬り倒さんと――!
しかし、マユも易々と斬られるような相手ではない。
そしてフリーダムは、両手両足を封じてもなお封じきれるようなMSではない。
空中に磔にされたような姿勢のまま、その翼が、その腰のレールガンが、展開される。
左右の翼の中のビーム砲が、左右から拘束するザクへ。両腰のレールガンが、真正面から斬りかかるザクへ。
それぞれ狙いをつけて、火を噴く。
拘束していたザクたちはワイヤーを断ち切られてバランスを崩し、大剣を持ったザクはその巨大な剣を打ち砕かれる。
激戦は、なお続く。
「……まずいな、このままでは」
激しい戦いの続く戦場を後方から俯瞰しながら――カガリは、呟く。
エールストライカー装備の、ストライクルージュ。兵士たちから見える位置に立ち、しかし流石に前線には出ない。
将としての自分の役目を果たすため、僅かな護衛と共に後方に留まったまま。
冷静に、戦場を観察する。
「今は、拮抗しているが……向こうには温存している戦力がかなりあるようだしな。
スエズ基地攻撃用の戦力なんだろうが……アレをこちらに回されたら、ひとたまりもないぞ……!」
ミネルバや、第一線に並んだザフト艦艇からは、MSが出撃する姿が見えたのだが。
その後方、守られるように居並んだ艦船には、未だ何の動きもない。それらの艦にもMSが載っているはずなのに。
おそらくオーブ艦隊の作る壁に乱れが生じたら、増援を加えて一気にスエズ基地まで押し切るつもりなのだろう。
その敵軍の意図を見通していながら――カガリには、打てる良策がない。
「スエズからの増援はまだ来ないのか! いい加減来てくれても良い頃合だろう!」
『先ほどから何度も呼びかけているのですが、まるで返事がなく……』
「ええい! 基地司令は、無能者かッ!」
トダカの報告に、カガリは苛立ちを露わに怒鳴る。
本当なら、スエズ基地からジェットストライカー装備のダガーL部隊が出てきてくれることになっていた。
カガリの計算では、それらを加えれば、敵の増援が出てきても十分に渡り合える。上手く連携できれば撃退もできる。
だが、まるで連合軍には、やる気が見えない――というより、オーブ軍を見捨てようとしているようにしか――
「まさか――オーブ軍を突破した敵だけを基地で叩く、そういうつもりなのか!?
だがな、それは浅はかな計算だ! 実戦というものを、まるで理解していない!」
確かに、単純に数学的に計算するならば。
増援を出して互角なら、増援分を温存すれば突破してくる敵軍とは互角。基地の固定砲台も考えれば優位に立てる。
しかし――カガリが言う通り、それは机上の計算に過ぎない。実戦の「勢い」というものを、考慮に入れていない。
オーブ軍を破ればザフト側は勢いづくだろう。対する連合側は、守りに入った時点で気持ちが負けている。
思い出せばスエズの基地司令は、太り気味でいやらしい目つきの中年男だった。
実戦で鍛え上げられた軍人というより、事務的な業務と政治力でのし上がったような雰囲気の男。
戦場の空気をろくに知らず、数字だけを追って「合理的」な計算をしがちなエリートが、犯しやすそうな過ち。
あの基地司令なら、十分に有り得る。
「このままでは……! 仕方ない、危険を冒すぞ!
トダカ、全軍の指揮をお前に任せる。それから、『アレ』を射出しろ。エールでは攻撃力不足だ!」
『何をなさるおつもりです、カガリ様!』
「私も前に出る。前線に立つことで、士気を高める! そして私自身と、私の護衛部隊も戦力に追加する!
ザフト側も、指揮官の私を落とそうとして隊列が乱れるだろう。その隙を、他の隊に突かせる!」
『そんな、おやめ下さい! 万が一にでもカガリ様が落とされたら……』
「うるさい! なんとか均衡を保っている今、こちらから仕掛けねば、どうしようもなくなってしまうぞ!」
カガリの叫びに、トダカは沈黙する。
返答の代わりに飛んできたのは――タケミカズチから射出された、I.W.S.P.ストライカー。
エールストライカー同様、飛行のための翼を持つが、加えて2門のレールガンと2門の単装砲、2本の対艦刀を備える。
さらに一緒に飛んできた複合兵装、コンバインドシールドには、30ミリガドリング砲とビームブーメランも。
思いつく限りの武器を詰め込んだ、攻撃のことしか考えていない好戦的な装備だ。
ストライクルージュは空中でエールパックを排除すると、IWSPとドッキングする。
すぐさまカガリは右手に対艦刀を抜き放ち、天に掲げて大きく宣言する。
「我こそは、オーブの獅子とも謳われたウズミ・ナラ・アスハの娘、カガリ・ユラ・アスハ!
ザフトの兵どもよ、我が首取れるものなら取って見せよ!
勇敢なるオーブの兵よ、我が後に続け! 一気に押し切るぞ!」
勇ましい掛け声をかけ、ストライクルージュが突進する。護衛のムラサメ隊も、後に続く。
その勢いに、バビとディンの隊列が乱れ、突き破られ――戦場の空気が、大きく変わる――!
――カガリが名乗りを上げ、空中の戦況が変わりつつある、その頃。
海中でも、情勢が大きく変わりつつあった。
「……こいつで……最後だッ!」
アウルのアビスが、ザフトの潜水空母、ボズゴロフ級の横腹に、槍を突き入れる。
本来なら潜水艦相手に槍を使う必要もないのだが、残念ながら既に魚雷も速射砲も弾切れだ。
突き刺した槍を抜こうとして、アウルは舌打ちする。何やら奥で引っかかって、抜くことができない。
咄嗟に潜水空母を蹴って、その場を離れる。直後に爆発するボズゴロフ級。
「……ふぅ、ふぅ……これで、海中の敵は全て……」
流石に疲労の色を隠せないアウル。
残念ながらアビスの救援も間に合わず、フォビドゥン・ヴォーテクスの部隊は全滅させられてしまっていたが……
しかし同時に、アビスもまた、ザフト側の水中MS部隊を全滅させ、潜水母艦群も全て戦闘不能に追い込んでいた。
「へへへ……今日1日で、トリプルエース以上のスコアじゃねーかよ……すげーじゃん、俺って……」
ほとんど1人で全て倒したようなものである。しかもマーレのようなエースも入り混じった大部隊相手に、だ。
アウルが疲れているのも、当然だった。
「さて……もう弾も魚雷もねーし、そろそろ電池もヤバくなってきたし。
上はどうなったかな……補給して、出直してくるか……」
アウルはヘルメットを取って汗を拭うと、アビスをゆっくり浮上させ始めた。
「馬場一尉! ここはいい、お前たちはフリーダムの応援に!」
「これはカガリ様! ……分かりました! 我々はセイラン三尉の支援のため、ミネルバへ!」
「頼んだぞ!」
馬場一尉の隊が相手をしていた敵部隊を蹴散らし、カガリが叫ぶ。
一瞬驚いた馬場一尉は、しかしその場をカガリたちに任せて、ミネルバへと駆ける。
カガリの打った大博打は、どうやら上手く行っていた。
今までなら恐らく、馬場一尉の隊が突破を図ろうとしても、妨害する者がいただろう。
しかし多くの敵は、戦場でも目立つ薄桜色のストライクに釘付けで。
馬場一尉の隊は、敵の囲みを突破して、その向こうに見える敵艦へと向かう。
その分、カガリたちは集中砲火を受ける形になっていたが……
護衛のムラサメが次々に落とされていく中、カガリの中で何かが弾ける音が響く。
対艦刀の2刀流。バビのバズーカの砲弾を斬って捨て、身を捻ってビームを避け。
焦点の微妙に合わぬ目で敵を見据え、恐るべき正確さで打ち落とし、斬り捨ててゆく。
「どうした! 私はココだ! いくらでもかかってこい!
……自分の命が惜しくなければ、だがな!」
カガリの叫びと共に、ストライクルージュがビームブーメランを投げる。
円弧を描いて飛ぶその光の刃は、次々に空中のディンを切り裂き、撃墜して……
再び戻ってきたところを、ルージュが受け取ろうとした、その時。
彼らの頭上、さらに高い上空から、ビームライフルの一撃が放たれて……空中のブーメランを、撃墜した。
「……その辺で止めておくんだ、カガリ。
いや、オーブ首長国連合代表、カガリ・ユラ・アスハ!」
「お前は……アスラン・ザラ!」
そう、ビームの射線を追い、皆が見上げたそこにいたのは。
高々度から太陽を背に舞い降りてくる、血のように紅いMS。ZGMF−X23Sセイバー。
慌てて迎え撃とうとした護衛のムラサメの腕を、翼を打ち抜き、次々に無力化していく。
「邪魔をするな、アスラン! 私の邪魔をするというのなら、お前だって……!」
「邪魔だと? 俺が一体何の邪魔をしていると言うんだ、カガリ」
反射的に叫んだカガリに、アスランはしかし、対照的に静かな口調で問いかける。
その、一種異様な雰囲気に……カガリは思わず、言葉に詰まる。
「教えてくれ、カガリ。俺は一体、何の邪魔をしていると言うんだ」
「それは――この戦闘を、オーブ軍の戦いを――」
「何のための戦闘だ。何のための戦いだ。お前は、お前たちは――何を目指して戦っている!?」
「何を目指す、って……」
カガリには、突如現れたアスランが何を言いたいのか、咄嗟には分からない。彼には珍しい饒舌ぶり。
攻撃することも忘れて、呆然と通信画面の向こうの彼を見つめる。
「2年前もそうだった。俺たちは何を目指すのかも分からず、何をしたいのかも明確にせずに戦っていた。
ただひたすら、戦争を終らせることだけを目的に。そこから先の展望を、何一つ持つことなく」
「…………ッ!!」
「今だってそうだろう。お前は、この戦争を終らせてから考えれば良い、とでも思っているのだろうが……
だが、何を目指す。何を求める。戦後の世界で、どうやって融和と共存を実現するつもりなんだ!
果たして、俺が邪魔してしまうとマズいようなビジョンが、お前にあると言うのか!?」
アスランは叫ぶ。叫びながら、銃をカガリに向ける。
カガリは反射的にコンバインシールドを構えるが、その反応さえも読まれていて。
咄嗟に盾で上半身を、コクピットを覆ったルージュの、無防備に晒された両足が吹き飛ばされる。
「ま、待てアスランッ! 私の話をッ……」
「……俺は待ったんだ。2年もの間、何かが変わることを。カガリの手助けを通じて、世界を変えられる機会を。
だが、その結果はどうだッ! 何も変わりはしなかったッ、あれだけの犠牲を生んでおきながらッ!」
叫びながら距離を詰めたセイバーが、ビームサーベルを手に斬りかかる。
ルージュも咄嗟に対艦刀で応戦するが、哀しいかな、実体兵器はPS装甲の前には無力。セイバーは避けもしない。
両足を失い剣も弾かれ、バランスを失ったルージュに、セイバーのビームサーベルが振り下ろされる。
白獅子の紋章の描かれた左肩にビームサーベルが食い込み、複合シールドもろとも腕が吹き飛ばされる。
「親友同士が、敵味方に分かれて!
血を分けた父子が、銃を向けあい!
愛を誓い合った2人が、剣で斬りつけ合うような悲劇は……
……俺たちだけで、十分なんだッ! 俺を最後に、二度と起こさせては、いけないんだ!」
「待て、アスラン! お前は、根本的なところで勘違いを――」
「俺は変えてみせる! 今度こそ、戦争のない世界にみんなを導いてみせる!
――デュランダル議長の、『デスティニープラン』で!」
カガリの叫びは、アスランに届かず――アスランの中でも、何かが砕け散る音が響く。
セイバーの両手に握ったビームサーベルが、一瞬の間に何度も虚空を切り裂いて――
頭を、足を、腕を、翼を、砲塔を、切り飛ばされたストライクルージュが、成す術もなく落下を開始する。
「アスラぁぁぁンッ! お前はァぁぁぁッ!」
「……殺しは、しない。今すぐ、軍を引け。逃げに徹すれば、生き延びることはできるはずだ――」
醒めた目で、アスラン・ザラは落ちて行くカガリを見下ろして――
落下するルージュの胴体を、海面近くで1機のM1アストレイがキャッチした。
慌てて逃げ出すその後姿を、セイバーは撃とうともしない。ただ次の敵を探して、その場を飛び去る――
「艦長! 敵の一角が崩れます!」
「……アスランね。あのオーブの姫獅子を落としてくれるとは、予想以上の働きね」
その様子は、ミネルバの側での察知できていた。
正直なところ、タリアも他のクルーも、アスランがオーブ相手にここまでやるとは思ってもいなかったのだが……
「シンとレイは?」
「レイのザクファントムは、敵ウィンダムと交戦中。
ブラストインパルスは……どうやら水中のアビスと、交戦中の模様!」
「……わかったわ。セイバーの開けてくれた穴を、さらに抉じ開け、広げ、決着をつけましょう。
タンホイザー発射準備! アーサー、敵艦の位置を計算して、艦の姿勢を調整して頂戴。
メイリン、射線上の友軍MSに、退避勧告を。
目標、オーブ軍巨大空母、タケミカズチ! 一気に決着をつけるわよ!」
「はいッ!」
この機を逃がすまいと、ミネルバが動く。ミネルバ先端の装甲がゆっくりと開き、陽電子砲が展開する。
ストライクルージュの撃墜、それに動揺したオーブ軍からの攻撃が減ったのを見ての、タリアの決断。
タンホイザーは確かにミネルバで最大の攻撃力を誇る兵器だったが、装甲に覆われていないという欠点がある。
その起動は、見方を変えれば弱点をむき出しにすることと同義なのだ。
射程も特筆すべきほどの長さはないことから、ここまで温存せざるを得なかったのだが……
「……悪いわね、トダカ一佐。貴方には、恨みはないのだけれど」
『ええ。覚悟しております。……お気遣い、感謝いたしますわ』
『……その一言は余計ですよ。では、ご武運を』
タリアの脳裏に、オーブ沖で交わした言葉がよぎる。
互いに艦を預かる責任者として、確かに通じ合った心と心。しかし今は、敵同士。
胸の内に湧き上がる甘い感傷を、タリアは無言で握り潰した。
「タンホイザーを展開するの!?」
「……やらせるかよ!」
その光景を見たマユとスティングは、さらに苛烈な攻撃を加え始める。
残弾を気にすることなく、ミサイルを大量に吐き出すカオスの機動兵装ポッド。
バルカンまでも撃ちっ放しにする、フリーダムのフルバースト連射。
だがオレンジショルダーの面々は、冷静にそれらを受け止め、あるいは打ち落とす。
1機のザクが盾で止めきれず、脇腹から煙を上げて迷走を始めるが、残る3機は動じることなく己の任務に集中。
数は減れども、マユにもスティングにも、付け入る隙を与えない。
「グレイシアのザクが被弾!? こっちに戻ってこれるか?」
『無理のようです、グレイシアさんとの交信も途絶しています! グゥルはコントロールを失っている模様!』
ミネルバの格納庫で、メイリンとヨウランが画面越しに怒鳴りあう。
格納庫では、いつ艦載MSが戻ってきても大丈夫なように、消火や救護の態勢を整えていたが……
しかし肝心のMSが戻ってこれないのでは、どうしようもない。撃墜された仲間を心配しつつ、何もできない。
と、その時――整備班に加わっていたメンバーの1人が、艦内通信モニタのところに駆け寄る。
予めこのような事態も想定していたのか、既にパイロットスーツに着替えていて。
右袖だけが大きく肘のあたりまでまくり上げられ、ギプスに固められたままの腕が見えている。
「ねえメイリン、あたしが出るわ! あたしがグレイシアを拾ってくる!」
『お、お姉ちゃん!? で、でも、お姉ちゃんケガしてるし、ザクだって……!」
「戦闘はしないわ。ちょっと回収に出て戻るだけなら、大丈夫。彼女?を見捨てるわけにはいかないわ」
『……艦長、どうします? ……わ、分かりました。
ルナマリア機の出撃を、許可します。ただし回収後すぐに帰還するように。カタパルトは使わないでね』
「了解。お姉ちゃん、物分りのいい子は好きよ♪」
悩みつつも、メイリンは即座にタリアに判断を仰ぎ、タリアも即座に頷き、同意したのだった。
仲間を見捨てることはできない。ルナマリアの腕なら、現状でも回収作業くらいできるだろう、との判断。
ルナマリアは頷くと、右腕を手近な壁に叩きつけ、邪魔なギプスを叩き割る。
「ヴィーノ、あたしのザク、30秒で用意して! すぐに出るわよ!」
「タンホイザーを撃つのか!? 今落とされたのは……誰のザクだ!?」
「どっちを見ている、インパルス!」
その光景を海面近くから見ていたシンは、横から襲ってきた無数の光に、慌てて身をよじる。
見ればアビスが上半身だけを海面に出し、左右バインダー内の3連装ビーム砲を撃っている。
ギリギリで回避しつつ、反撃のビームを放つが、既にその時にはアビスは海の下。
「全く、鬱陶しい! 」
モグラ叩きのような際限のない戦いに、シンは苛立ちを隠せない。ミラー加工のバイザーの下で、舌打ちする。
敵が顔を隠したこの隙に、とばかりにオーブ艦隊に大砲を向けるが、その途端にまたアビスが攻撃を仕掛けてくる。
避けて反撃すれば、すぐにまた海中に逃げられる。この繰り返し。
海の中から直接攻撃されない分、まだなんとか持ってはいるが、これが延々続けばどうなるか分からない。
一方、攻撃を仕掛けるアウルの方も、焦っていた。
海中から攻撃できる武器は既になく、残された手段は、海面に顔を出してのビーム攻撃だけで……
そのエネルギーさえも、そろそろ危険域に到達しつつあった。アウル本人の体力と集中力も、いい加減限界に近い。
そう、アウルは補給を受けるために海面に顔を出した所で、艦隊に迫るインパルスを見つけてしまったのだ。
無視もできず、退くに退けず、膠着した戦いを強いられていたが、このままで良いとはアウルも思ってはいない。
大きく深呼吸をして――最後の賭けに出るチャンスを、海中から窺った。
――遠くにミネルバの姿が見える。
展開されるタンホイザー。こちらに向けられる砲口。
それを眺めながら……トダカは、自分たちの敗北を覚悟した。
「……カガリ様は?」
「ルージュを確保したM1が、先ほど着艦しました。これからコクピットをこじ開けるところです」
「……アマギ。後は頼む」
トダカはアマギを呼び、目と目を合わせて頷きあう。
黙ってブリッジから出てゆくアマギ。その動きに、他の兵士たちは首を傾げる。
「ど、どうなされたのですか?」
「ミネルバが狙うのは、おそらく本艦だ。
そしてあの巨砲を避ける機動力は、本艦にはない。発射の阻止も、どうやら間に合わん。
遺憾ながら、本艦を放棄する。総員――退艦!」
アマギとトダカの意図を尋ねた部下に、トダカは何も答えずに――その最終命令を、発した。
「総員退艦! ミネルバの陽電子砲の着弾の前に、総員退艦せよ! 急げ!」
陽電子砲のチャージが、行われる。
矢印のような形のミネルバの突端、タンホイザーの砲身が、気味の悪い光を放ち始める。
それらを眼前に見ていながら、マユとスティングは打つ手がない。
粘り強く奮戦するハイネ隊を前に、ミネルバ本体への有効打を加えられない。
と、フリーダムとグフが交錯し、互いに弾き飛ばしあったその時――
マユも、スティングも、ハイネも、ゼロも、アキラも。5人とも、その影に気づく。
ミネルバに向け飛んでくる、前進翼持つ3機の航空MAの姿……!
「タケミカズチには、カガリ様がいる! あの艦はオーブ軍の要でもある!
時間がない、すまんがお前たちの命をくれ! 『特別攻撃』をかけるぞ!」
「はい、馬場隊長!」
「おおッ! 国を出たその時より、ここが死に場との覚悟はあります!」
「ば、馬場一尉! それに馬場隊のみんな! 一体、何を!」
マユの叫びにも振り返らず、馬場率いるムラサメ隊はそのままミネルバに向けて突進する。
文字通り、そのまんま、身体ごと。全く減速することなく、突進する。
オレンジショルダー隊が慌ててビームを浴びせかけるが、一発二発被弾した程度では、彼らの勢いは止まりはしない。
「セイラン三尉、後は頼むぞ! 我らの意地と覚悟――とくと見よ!!」
そして、彼ら3機は、そのままミネルバに体当たりを敢行し、大きな爆発を――!
「な、何が起こったの!?」
「カ……カミカゼ・アタックです! ムラサメが3機、本艦に突っ込みました!」
「右舷カタパルトに被弾、火災発生!」
「左翼中央、及び右主砲基部に直撃です! 損害甚大の模様!」
「陽電子砲は? タンホイザーの損害は!?」
3つ続けての激しい振動に、ミネルバは文字通り揺れる。流石に予測すらできなかった、最悪の攻撃。
各部署から届く被害報告の中、タリアはそれでもまず真っ先にタンホイザーの安否を尋ねる。
「タンホイザーは……上部ハッチに歪みが出た他は、どうやら無事のようです! チャージ完了!」
「では、急ぎ姿勢を回復させて! 一瞬だけ安定すればいい! 回復次第、タンホイザー発射! 急いで!」
「は、はいッ!!」
タリアの指示に、副官のアーサーが大慌てで答える。
通常ならばここは、艦のダメージチェックと火災の消火が優先されるところであったが……今は、状況が違う。
この大ダメージでは、今すぐ撃たねばもう撃てるチャンスはないだろう。タリアの英断だった。
「もうちょっと、右エンジンの出力を上げて……よし! 安定した!
……タンホイザー、てぇッ!!」
慌しいアーサーの指示を受けて。
最初の予定から、十数秒遅れて――陽電子砲タンホイザーが、光の柱を、撃ち放つ。
その、太く、眩しく、破滅的な閃光は、ムラサメ隊の想いも何も、全て踏みにじりながら、タケミカズチへと――!
――タケミカズチの、がらんと人気の失せたブリッジで。
ただ1人残ったトダカは、死をもたらす閃光が迫るのを見ながら、制帽を被り直した。
心残りなことは少なくなかったが、しかし落ち着いた笑みさえ浮かべて。
「頼むぞ、みんな。いつかきっと、道を開いてくれ。
私と、今日この海に無念にも散った、皆のためにも…………!」
彼の呟きは、圧倒的なまでの光に飲み込まれて――
タケミカズチが、そのブリッジを中心に、ごっそりと削り取られる。
光が通り過ぎた後が、冗談か何かのように、円柱形に消滅していて――
一瞬遅れて、残された船体が、爆発を起こす。
炎に包まれる。脱出が遅れた兵士たちの、断末魔の悲鳴があちこちで上がる。
マユたちの私室のあった、居住区も。
マユたちが遊んだ、ゲームセンターのある厚生ブロックも。
マユを慕う店員たちが大勢いた、売店街も。
打ち捨てられた、ストライクルージュの残骸も。
全て、等しく炎と爆発に包まれて――そのまま、海の中へと沈んでゆく――!
「……やったか!」
ブラストインパルスのシンは、その光景に喝采を上げる。
喝采を上げつつ――彼は彼の仕事を果たさんと、残されたオーブ艦隊に迫る。
旗艦を失い動揺する巡洋艦に、そのビーム砲の狙いをつけて――
「……させねぇって言ってるだろッ!」
その足元、海面を割って飛び出したのは――MA形態のアビス。
真下から突き上げるように、インパルスに体当たりを仕掛ける。
砲撃態勢を取っていたインパルスは、その急な出現を避けきれない。交通事故のように、空中に弾き飛ばされる。
「なッ! しつこいんだよ、お前は!」
「これ以上、やらせてたまるかよッ!」
弾き飛ばされたその空中で、しかしシンは素早く、大砲の中から長い棒を取り出す。ビームジャベリンだ。
空中で姿勢を回復し、光る槍を構えて突き出すが、咄嗟にMS形態に変形したアビスはそれをギリギリでいなす。
突き出された槍を腕ごと小脇に抱え込むようにして、2機一緒にもつれ合って海面に落下する。
「くそッ、離せ!」
「離してたまるか、こっちはもう武器がないんだ!」
アウルは必死で叫んで、インパルスを抱えたままフットペダルを思い切り踏み込む。
コアスプレンダーの排除で逃げられぬよう、相手の背中にも片手を回し、しっかり押さえ込む
アビスの圧倒的な水中推力を活かし、インパルスもろとも海中深くへまっしぐらに潜っていく。
そう、歩く武器庫とも言われたアビスだったが、もはや弾がないのだ。ビームでさえも、もう撃てない。
残っているものと言ったら、その水中での推力と、構造的な対水圧性能だけだ。
アビスはその名の通りの深淵に引きずり込み、水中対策のないインパルスを水圧で圧壊させようと――!
「……冗談じゃない! そんなのに、付き合っていられるか!」
たまらず叫んだのは、シンだった。彼の中で、何かが割れ、砕け散る音が響く。再び到達した、限界を超えた世界。
手にしていたビームジャベリンの柄を手放し、背中からもブラストシルエットを排除する。
シルエット排除のはずみで、ブラストシルエットにも片手をかけていたアビスの束縛が、一瞬緩む。
その隙を見逃さず、インパルスは両手を自由にし、左右の腰からフォールディングレイザーを手に取って……
「沈みたいなら、1人で沈んでいけッ!」
両手のナイフをアビスの両腰サイド、水中用の主推進器の、ウォーターインテークに、叩き込む。
水の取り入れ口は、さすがにPS装甲に包まれてはいない。鋭いナイフの刃が、深々と突き入れられ、破壊する。
動きを止めたアビスを、インパルスは蹴り飛ばして離れる。1機虚しく、深淵へ沈んでゆくアビス。
「……マユッ!! 僕はッ……!!」
アウルの叫びは、暗い水中に響く爆音に遮られ――腹部の両脇で起こった爆発に、アビスのコクピットも――!
――水中のその惨劇は、マユには見えていない。気付いていない
気付いてはいなかったが――馬場一尉たちの特攻、そして轟沈するタケミカズチだけで、彼女には十分だった。
マユの目が、信じられない光景に、見開かれる。
馬場一尉。トダカ一佐。アマギ一尉。まるで娘のように可愛がってくれた、オーブ軍の軍人たち。
そして、姉のような存在であり、また将来の義姉として慕っていた、カガリ・ユラ・アスハ――
それら全てが、一瞬で、失われて――
マユの目の前が、真っ赤に染まる。
何故か重ね映しになるのは、2年前のオノゴロ島の悲劇。
バラバラになった父。バラバラになった母。そして、跡形も残さずに、閃光の中に消え去った兄――
マユの脳内に、何かが砕け散る音が、響き渡る。
動きを止めたフリーダム。
その姿に、相対していたオレンジショルダー隊が素早く動く。
ハイネ隊の1人、ゼロのザクウォーリアから放たれたワイヤーが、機動力の要であるフリーダムの両羽根を縛る。
動きを封じられたフリーダムに、アキラのザクウォーリアが、今度は標準装備のビームトマホークで斬りかかる。
だが、マユは――焦りの色も見せずに、ユラリと、動いた。
ゆっくりとした初動。ユラリ、というほか無い、微妙な動き。
翼を縛られたまま、全ての抵抗を辞めて自由落下。ビームトマホークは空振りし、ゼロのザクは逆に引っ張られる。
その機を逃さず、瞬時に両足のスラスターで急上昇。敵のトマホークの刃を利用して、ワイヤーを切断する。
敵の狙いを完全にズラしつつ、信じられぬほど適切な機体操作で、敵の武器さえも有効利用してみせる。
「な、何ッ!?」
「気を抜くな、アキラ!」
束縛から自由になったマユのフリーダムは、ユラリ、とビームサーベルを抜く。
スピーディな普段のフリーダムとは、むしろ対照的な静かな動き。
しかし、その見る者を惑わすような、武道の型を思い出させるような動きに、アキラはかえって反応できない。
蛇に睨まれた蛙のように、金縛りにあって――吸い込まれるように、ビームサーベルがコクピットに叩き込まれる。
「……アキラッ!」
思わず叫んだゼロも、ユラリ、と振り返ったフリーダムの剣を避けきれない。
コクピットへの直撃はかろうじて避けたが、肩から袈裟懸けに切り裂かれ――機能を停止して、海面に落下する。
「な……なんなんだ、お前は!」
MS同士の格闘戦に長けたエースであるハイネも、このフリーダムの剣技にはただ驚くしかない。
まるでその技は、達人の、それも悟りの域にまで達したような、究極レベルの達人が稀に見せる領域の――
――その、フリーダムの中。
マユは――悟りとは程遠い、激怒に染まった顔で、操縦桿を握っていた。
「よくも……よくも、みんなを!」
微妙に焦点の合わぬ、虚ろな瞳で。血の涙を流しながら。
目の前のオレンジ色のグフに、飛び蹴りを叩き込む。
怒りが先走りすぎて、かえって動きが遅くなっている状況。
それが絶妙な「呼吸と動きのズレ」を生み、揺らぎを生み、敵の対応を遅らせていた。
フリーダムの蹴りは吸い込まれるようにグフにヒットし、遥か遠くに蹴り飛ばす。
「あんたたちが……あんたたちさえ、居なければ……!」
ユラリ、と緩やかな、捉えどころのない動きで、フリーダムがフルバースト形態になる。
2門のビーム砲、2門のレールガン、1門のビームライフル。
そこだけが時間の流れが遅くなったような錯覚。ムラサメ特攻のダメージ深いミネルバは――動けない。
タリアが、アーサーが、メイリンが……その光景を確認しながらも、思わず凍りつく。
フリーダムは、ゆっくりとその5門の狙いをミネルバのブリッジに向ける。
ゆっくりと、ロックオンする。
ゆっくりと、引き金が引かれて、5本の光が、吸い込まれるように、ブリッジに――
「――させないわよ! そんなこと!」
突如、時間の流れを、元の感覚に引きずり戻したのは。
ブリッジの前に飛び出した、赤い影。1人の少女の叫び。
それは――ルナマリア・ホークの、ザクウォーリア。
気絶したグレイシアの機体を回収した直後、フリーダムの攻撃を見た彼女は、咄嗟に格納庫からジャンプして。
ウィザードもつけず、コクピットハッチも失われたまま、ブリッジの前に飛び出して――
その左肩の盾を、機体の前に翳す。
3本のビームが、そのアンチビームシールドに受け止められ、激しい火花を上げる。
高熱のビーム粒子が盾に散らされて、美しい花火のように周囲に飛び散る。
レールガンの弾丸が両足に直撃し、千切れ飛ぶ。ルナマリアのザクウォーリアは、そのまま海の上に落下していく。
それを受け止めたのは――いつの間に戻ってきていたのか、水中から飛び出したインパルスだった。
戦闘の過程で捨てたのか、その背にシルエットはない。
急な妨害に、マユは一瞬、追撃の機会を逃して。
舌打ち一つすると、改めてその銃をミネルバに向ける。
今度こそ、そのブリッジを打ち抜こうとして――
――フリーダムの身体が、急に後ろから、かっさらわれる。
MA形態のカオス。それが通り過ぎざまに、その足のクローでフリーダムを鷲掴みにしたのだ。
2機が寸前までいた空間を、雨のようなビームの嵐が通り抜ける。
ハイネ・ヴェステンフルスのグフイグナイテッドの両手のビーム砲だ。フリーダムを狙っていたのだ。
「何するのよ、スティング! 邪魔しないで! もうちょっとであいつらを!」
狙われていたことも気にせず、助けられたお礼も言わずに、マユは半狂乱になって泣き叫ぶ。
自分などどうなっても良い、討たれても敵を撃ちたかったのだ、仇を討ちたかったのだ、と言わんばかりの態度で。
そんな彼女に――スティングは感情を押し殺し、短く、呟く。
それは攻撃に参加しつつも、冷静に周囲を観察していたスティングだからこそ気づいた、残酷な事実。
「――アウルが、殺られた。インパルスに――殺られた」
「え――」
スティングの言葉に、マユは何を言われたのか全く理解できず、呆けた顔で。
そのまま、フリーダムを捕まえたままのカオスは、その戦場を、完全に敗北が決まった戦場を、飛び去った。
――ミネルバ、格納庫。混乱続くその一角に、赤いザクを抱えたインパルスが降り立つ。
「ルナ! ルナマリア、大丈夫か!」
インパルスのコクピットを開けながら、シンは叫ぶ。表情を隠すミラー加工のヘルメットを、脱ぎ捨てる。
叫びながら、ルナマリア機のコクピット、ハッチの欠けた奈落のような空間に、駆け寄る。
「あはは……シン、ご免ね……。また、あたし……ヘマやっちゃった、みたい」
「ルナッ……!!」
「び、ビームの、高熱の粒子が……ッ!?」
コクピットの中を覗き込んだシン、そしてその後ろから覗き込んだ救護班は……
みな、一様に言葉を失う。肉の焦げる、嫌な匂い。パイロットスーツの溶ける、嫌な匂い。
コクピットの中の彼女は――その胸から下が、激しく焼けただれていた。表面など、ほとんど抉られたような格好だ。
アンチビームシールドの表面で弾かれ散らされた、超高熱の粒子。
その中の1粒が、ほんの1粒が、運悪く、欠けたままのコクピットハッチから飛び込んで――
たった1枚の板がなかったせいで受けてしまった、致命的な損傷。
即死しなかったことが不思議なくらいの、どうしようもないような火傷。顔が傷ついていないのが、奇跡的だった。
「ごめんね、シン……。あたし……約束……守れな……。メイリンを、あの子を……お願い……」
「喋るなルナ! 今すぐ手当てしてやるから。約束だって、守れるから……!」
「ああ……。シンと一緒に、学校。行きたかった、な……」
「…………!!」
それを最期に、ルナマリアの首は、ガクリと折れて――
格納庫に、シンの声にならぬ絶叫が、響き渡った。
――スエズ沖海戦、決着。
旗艦タケミカズチを失ったオーブ艦隊は総崩れとなり、その全ての艦船が最終的には沈められた。
ザフト軍は、突破点を作った功労者、損害著しい戦艦ミネルバをその場に残したまま、スエズ基地を攻撃。
その勢いに基地の防衛隊も支えきれず、すぐに基地は陥落した。
基地指令は、早々にスエズ基地の放棄を決定、自らいち早く逃亡する。
しかしその命令が徹底していなかったため、連合兵たちは先の見えない抵抗を続け、無用の屍の山を築いた。
命からがら逃げ出すことに成功したオーブ軍と連合軍の残党は、エジプト方面に脱出して……
そこにいた連合軍に、救出された。
逃げ延びられたのは、ごく僅かだった。MSという足の速い乗り物に乗っていなかった者は、大方捕らえられた。
脱出しそこねた生存者の多くは、そのままザフトの捕虜となり、今やザフト軍の基地と化したスエズに、捕われた。
脱出できた兵、そして捕虜になった兵のリストの中には……
艦隊司令カガリ・ユラ・アスハ、そしてアマギ一尉たちの名前は、記されていなかった。
元より、死亡した兵士の遺体確認も困難極まる乱戦である。
最終的に連合軍は彼女たちを、他の撃墜が確実な兵士たちと合わせてMIA、『戦闘中行方不明』として処理した。
事実上の、戦死認定だった。
かくして、オーブ派遣艦隊は全滅し――スエズ基地はザフトの手に落ちて。
この戦争は、大きな転換点を迎えることになる。
勢いに乗ったザフト軍は、各地で攻勢を強め、地中海の入り口・ジブラルタルまでも、再びその手に収めて。
危機感を抱いた連合軍は、ある開発途中の新型兵器の実戦投入を、予定よりも前倒しにすることを決定した――
――そして、粉雪舞い散るベルリンに、血の雨が降る――
第十九話 『 凍てつく魂 』 につづく
・フォビドゥンヴォーテクス、ノクティルーカ・ザク
どちらもデスティニーMSV。前者は本編アニメにも顔を出しました。性能も外見もそのまんまです
・マーレ・ストロード
こいつのヘタレぶりは大好きですw
まあそれを差し引いても、貴重な水中戦のエキスパート、そしてアビスと因縁ある相手。
デストレイ本編のこの時期の展開はまだ分かりませんが、傷も治った頃と思い、登場させてみました。
・ハイネ隊の武装
ゼロとグレイシアはどちらもワイヤー系武装の使い手ということで、同じ拘束用ワイヤーを持たせました。
アキラは……正直書き手の自分は、彼の得意分野には疎いもので……特に元ネタはなく……
何やら当たったら特殊効果ありそうな大剣を。いかにもそれっぽく。
これら以外は、ごく普通のザクにグゥルという組み合わせです。
ともかくこれで、ハイネ隊の残りはゼロとグレイシアだけに……あ、ハイネ本人はまだ無傷か……。
以上。
次回、例の巨大MSが登場予定。鬱展開が続きますが、お付き合い下さい。では。
る、ルナーー Σ(゚д゚lll)ガーン
あいもかわらず息もつかせぬ展開。
そういえば、ハイネが死んでないのね…がんばれ
初めてリアルタイムで読みました…隻腕様乙です!
目から汗が出て途中なかなか読めませんでした。
アウルについて、作中で深く描写されていたこともあって、その死が余計に悲しく…
あの裸男祭りを開催してた、粋なオーブ軍人たちも居なくなったんだ、と思うと寂しいです(泣
本編でもあったシーンだというのに、それ以上に泣けました。
そして最後の…ルナの死亡? この後どうなっていくのかが気になります。
戦闘シーンは相変わらず、読みやすいテンポで引き込まれますね…
アニメ未登場の機体を交えて、その持ち味を生かした戦闘をさせるところがお見事!
アウルの、ギリギリの状態での戦闘も緊迫感が良く伝わってきました。
…しかし、これだけの大作を一週間以内に仕上げるとは。その執筆スピードとクオリティに驚愕です。
自分も見習わないとなぁ(;´Д⊂
1話丸ごと戦闘シーンだと読み終わってもまだ緊張が解けないな…
鼓動を高鳴らせつつ隻腕様乙!!
ユラリ…とキラと差別化された戦闘もさることながら
アスランとカガリの対峙も同人アニメとは違うと興奮してます。
アウルとルナの冥福をお祈り・゚・(ノД`)・゚・
今回兄妹同士での戦闘がなかった分、最愛の人の喪失の分、
兄妹の今後の戦いの激しさに戦々恐々しつつほんとに息もつく暇がない。
もいっかい隻腕様乙
隻腕様GJ……orz
いや、戦争ものゆえ仕方ないと分かってはいるのですが、次々と討ち、討たれて
いくのを見るしかできないのはツラい……。武運尽き散っていった方々の冥福を
祈るばかりです。
馬場、トダカ、アウルの退場は予想されたところですが……ルナマリアがこんな
ところで? ここまでのシンの唯一のブレーキ役だったルナを失って彼がますます
暴走しないか心配でなりません。
メイリンがどう動くかが鍵、なのでしょうか。
しかしこの兄妹、それぞれ恋人と大事な友達を殺しあったのか……。
天性の将器を見せたカガリですが、それをアスランに砕かれるのも切ない。
ウナトの高笑いとユウナの奮闘にも期待します。
最後に疑問だけ投げて。
マーレは無事に脱出できたのでしょうか?w
そして、ルナを失った以上、シンがデスティニーに乗り換えた後の
インパルスを誰が引き継ぐのか……まさかハイネ?!w
【馬鹿はインパルスが再起不能になる可能性をかんがえていない!】
ルナ…まさかここで…
ただただ呆然。いや勿論良い意味でですよ。
なんつーか、死なせ方が上手いですよね。
兄弟のそれぞれ大切な人が死に、カガリとアスランもついにこんな事に…。
ぬあー!先が気になる!一体どうなるんだ!
やっぱり事態を収拾させるのはユウナなのか!?ええいユウナ頑張れ。
とまあ、凄まじくミーハーな感想ですいません。
ともかくGOD JOB!乙!
どのキャラも本編の何倍も魅力があったんで死ぬってわかってても目から汗がだらだらと
ルナにはとても驚きました。この兄妹は大事なものを失ってばかりですな…。先の展開が気になって仕方がありません
ババァァァァァ!トダカァァァァァ!アウルゥゥゥゥ!ルナァァァァア!
お互いの大事なものを、奪い合うこれぞ戦争にしてガンダムの醍醐味。
ところで、隻腕は全何話くらいの予定でしょうか?
50話でしょうか?
隻腕作者様、乙そしてGJです!
これまでも面白かったけど、今回の戦闘が私は一番面白かったです!
アウルVSマーレのマッチメイクも燃えたし、マユスティVSハイネ隊も読みながら脳内で自然にアニメしてました
アウルは立ち位置がTV版のステラポジに近くなってきてたので・・・アウル死なないでーと思いながら読んでたのですが・・・あとルナは想像の範囲外でした・・・
283の方も言ってましたが現段階のシンの心のブレーキがなくなっちゃいましたね・・・アスランじゃ難しいだろうしな・・・そして今回でマユはシンを・・・
この状況で次回は巨大MSですか、とにかく楽しみにお待ちしています。
あと今回の後半の怒涛の展開に書き忘れましたが、ディアッカのポジもキター!でした!
嗚呼・・・アウルが。こっちの世界ではマユとくっつくというのを期待したんだけど
そんなに甘くはないなあ。ルナマリアも逝ってしまうし・・。
にしても、どっちの奴等にも思い入れがあるから読んでてつれーよ・・・。こ
れぞガンダムって感じ?
水中戦、空中戦の描写まことにお見事!
今後の展開に期待しております。乙でした。
マユとかシンの種割れ描写に個性があって好きだ。
シン=機械のように精密、無駄の無い完璧な動き
マユ=武道の達人の如く、捉えどころの無いトリッキーな動き
一言で表すと「ぎにゅうああああああああああ」
「・・・・・・・シンハロ、自害しろ。」
『なんでさ?!』
マユの唐突な命令につっこむシンハロ。
「うっさいなぁ!!主人より人気があるなんて許せないじゃない?!」
げしげしとシンハロを蹴るマユ。
「・・・・あれ?カルマたちは?」
アキラが何人かのメンバーがいないのを見て言う。
「あぁ、人気投票にノミネートもされなかった組は皆で自棄酒だとよ。
・・・・・はぁ、部屋に帰れねぇよ。」
ジョーがとほほ、と呟く。
ちなみにジョー、キース、カルマは無理やり布団をもちこんで二人部屋を
三人部屋として使用している。だからグレイシアは一人で部屋を使っている。
「あ!お姉ちゃん止めなきゃ・・。酒癖悪いから・・。」
勇敢にもメイリンは一人でその部屋へ向かった、全員メイリンの後姿に敬礼する。
『あのなぁっ!!俺だって僅差で抜かされたんだぞ!!あと少しで隻腕さんとこの
シンに追いつきそうな時もあったのに・・・・・。
しょせんオリジナルを越えるなど俺には無理な話だったか・・・。』
「ハロー、それ違う人違う人。」
アスランがびしっと突っ込む。
「うぇーい。スティング達みせーねんなのに・・、お酒だめ・・。」
「まぁ、世間一般のナチュラルの高校生は皆それくらいに普通にお酒飲むからいいんじゃないか?
俺も昔無理やりギルとラウに酒を飲まされた事もあったな、あの仮面野郎ども。」
ステラの疑問にいつのまにか過去の恨みを思い出したレイは笑顔に黒いオーラを漂わせている。
「・・・レイ、お前本当に議長のこと大事なのか?」
「えぇ、大事ですよ。そりゃあ西部劇のごとく馬で引きずって素っ裸で大気圏突入させて
そのまま毒蛇の海につっこんでそのあとなんの処置もせず放っておく程愛してます。」
・・・・腐った女の子が喜びそうな「愛してます」と言う言葉が帳消しになるほどの暗黒オーラ。
ハイネは言わなきゃ良かった、と後悔した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!」
それを見ていたゼロはだっと駆け出して部屋の外へ飛び出してしまった。
「・・・・・ゼロお兄ちゃん、そんなに一票も入らなかったのがショックだったのかな?」
マユが心配そうに呟く。
『いや、暗黒女帝 カガリ・シーノハーラに負けたのがショックだったんだろう。』
シンハロがぽつりと呟く。
すると、ステラは人気投票の結果一覧を見て解かったらしくぽんっと手を叩く。
「一人だけふるねーむじゃない!!」
「「「「「「「「あ。」」」」」」」
ルナの死亡フラグにはあえて目を背けてたのに〜!
ああう、同人版で都合よく生き残ったご都合の負債かこんな形で…!
携帯からチェキ!あとでパソコンで見なおそう…
3回読んだよ
1回目「え?wwアウルとルナ氏んだ?wwwちょwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwww」
2回目「え?本当に死んだのか?嘘だろ??」
3回目「 orz 」
||
∧||∧
( / ⌒ヽ 鬱だ氏のう・・・
| | |
∪ / ノ
| ||
∪∪
;
-━━-
>>295 氏ぬな氏ぬなw
とは言いつつもお前と心境は同じだったりするorz
||
∧||∧
( / ⌒ヽ という訳で便乗させてもらうわ…
| | |
∪ / ノ
| ||
∪∪
;
-━━-
同人アニメと違って人の死が重すぎる…。これが戦争なんだな…
二時創作の方が遥かに人の死を重いっつーのはさすが種死クオリティだなあ
アウルもトダカも、アニメの方は「あっそ」としか思えなかったから
隻腕は兄妹の殺し合いが楽しみになってきたw
ほのぼのの兄妹は別の意味で楽しいがww
先の読めない戦い。読んで手に汗握ったよ……隻腕GJ!
しかしこれで次は因縁の対決になるのか。兄妹で。
うわー、うわー!すっげぇ次楽しみ!
さり気に毒気満々のネオが魅力的だと思う。
隻腕読んだよ。
さらばルナマリア・ホーク、そして、アウル・ニーダ。
次辺りでは久しぶりにMADなシンが帰ってきそうだ。
んーむ、次々と死んでいくキャラたちを見て、
不覚にも「キラ、さっさと乱入しに来いよ!!そんで戦闘止めろよ!!」って思ってしまった・・・。
そーいえばマユは連合軍に救助されたのか?
カガリは行方不明、と書かれてるけど。
豚マリア死んだかwwwwざまぁwwwwww
マーレにはアビスインパルスでの再登場を。
はっ、シンの後にインパルスに乗るのはマーレ!?
これで、
シン「俺は彼を知らない。お前もルナを知らない」
マユ「おにいちゃん…!」
で許しあったら単なるギャグですね
単発設定小話 ある日の回顧録「マユ」
あの日、私は家族を失った。お別れのあいさつもできずに私は宇宙(そら)に上がった。
・・・プラントへ上がったオーブの避難民。私たちはそれぞれの状況に応じて区分けされた。
大人たちはそれぞれの経験を生かした職場を与えられ、子供たちもまたそれぞれの場所を与えられた。
プラントは私たちをオーブの住民ではなく、一プラントの住民として迎えてくれました。
それは当時の私にはわからなかったけど、すごく嬉しいことだったのでしょう。
・・・・・・唯一つ特殊な区分けをされたグループがありました。
戦争で家族を失った子供、身寄りのない子供、広い世界にたった一人取り残された子供。
戦災孤児たちは一旦施設に集められ、三ヵ月間通常とはことなるカリキュラムで教育を受けていたようです。
普通とは違うな?と思ったのはプラントの友達ができてからでした。
三ヵ月後、施設の子供たちはそれぞれの道を歩みだす。
いままで通りの学校へ通う子、専門の学校へ転校する子。・・・私はザフトの付属学校へ通うようになった。
きっとディステニープランの試用をしていたのだと今は思っています。
私の年でザフトの付属学校へ通う子供は異例だったみたい。
付属学校では一般教育、戦闘・戦術訓練、MS訓練などを受けていました。
・・・付属学校で一番の収穫。家族を奪ったMS、そしてそのパイロットの名前がわかったこと。
キラ・ヤマト・・・・・・。
自分でも信じられないんだけど、私は飛び級を重ね最年少でトップガン・・・赤服に任命され最新のMS
「インパルス」のパイロットになった。
そして再び戦争が始まった。
・・・まさかフリーダムが出てくるとは思わなかった。ヤキンの戦いで大破したと教えられていたから。
そうキラ・ヤマト。この戦争が始まってから、いつか出てくるだろうとは思ってはいたけどあんな身勝手な出方をするとは思いもよらなかった。・・・アスランさん、あなたはどっちの味方なの?
それにオーブのカガリ・ユラ・アスハ、あんな情けない国主に誰が慕うってゆうのよ!
私は二度とオーブには戻らない。・・・といいたいけど、あそこにはママとパパが眠っている。
この戦争が終わったら、今度はゆっくり会いに行くからね・・・。
今、私の心のほとんどを占めているのは兄「シン・アスカ」の行方だ。
あのアストレイに乗りドラグーンを操る連合のパイロット、おそらく兄に間違いない。
・・・でも何故?・・・私が口にするのはおこがましいけど兄は運動神経が悪い。
・・・・・・ナチュラルの運動能力の平均値よりも劣る兄がMSパイロットになれるだろうか?
ナチュラル用のOSでもあんなうまくMSが扱えるものだろうか?
あの仮面の男の言葉が頭に響く・・・「君はいまその被験者を目の前にしてるんだぜ」。
お兄ちゃん、あなたもエクステンデッドにされてしまったの?
私を覚えている?どこで暮らしていたの?何をしていたの?
そうそうあの時約束した私の携帯電話。見つけてくれたの?私は、私は・・・・・・。
完
隻腕では死者多数だけどキャラ的に死んでいるのが一人もいない。
こういうところが素晴らしい。
アニメにない登場人物の死が今後どういう展開を巻き起こしていくか激しく期待。
そして相変わらずなほのぼのマユデスに正直吹いたw
一気に和んだよ、GJ!
遅ればせながら隻腕乙!アウル…いいやつだったのに…この心に穴が空いたような気分…気付きばかなり感情移入してたんだなぁ。御冥福をお祈りしまつ・゜(ノД`)・。
ともあれシンとマユはお互いを憎みあう関係になってしまったわけで。種の中期キラアスのような関係ですな!ここからどうなるのか…そろそろキラがしゃしゃりでてくるのか?期待してますよ!もっかい乙!!
隻腕作者様GJ!!
2人の死は悲しいけど……キャラの活かしかたがマジ良かったんで良しとします。
ほのぼの乙!!
いつも思うんですが、
クオリティもさることながらめっちゃ執筆速度速いですよね!尊敬します!!
そして……御免よゼロ……君の項目追加したくせに票を入れず、
暗黒女帝カガリ・シノハーラに票入れたの漏れなんだ……。
オーブは負けちゃったけどアウルは功労者だね
3階級特進ってことで
つB
アウル萌
315 :
Hina:2005/12/12(月) 10:00:57 ID:???
隻腕様、投票所管理人様乙でした、文章の表現のすごさに圧倒されています。続きがきになりますね
168、243様、アドバイスありがとうございます、皆様のご意見を参考にしたいと思うので
いたらない部分があればドンドン言ってください、治せる箇所は治したいとおもってます
それでは第2話を投下させていただきます。
316 :
Hina:2005/12/12(月) 10:06:37 ID:???
ガンダムSEED MAYU‘S DESTINY
「第2話 強奪」
赤にまみれた格納庫の中央で金髪の少女はナイフを片手に立っていた。
別に殺したかったわけではないが、歯向かう者コーディネーターには慈悲のかけらも持ち合わせない、ただ殺さなければ自分が殺される、それだけである。
「ステラ!!」
「へぇこいつら皆お前が殺ったの?」
仲間のスティングとアウルがこちらに走ってくる、走ってきた方角を見るとやはりザフト兵が血まみれで倒れている。
「だって・・・ステラを・・・取り押さえようと・・・したから」
それ以上は興味を失ったのか3人は目的であるソレらを見上げる
「情報通りだな、新型G3機」
「セキュリティ甘すぎだぜ、ザフトってほんと間抜けだよな」
「いそがないと・・・・ネオ・・・・待ってる」
スティングはカオス、ステラはガイア、アウルはアビスと呼ばれたMSにそれぞれ乗り込みOSを起動させる。
「アウル、ステラ、邪魔な連中を叩き潰して脱出するぞ」
317 :
Hina:2005/12/12(月) 10:13:25 ID:???
周りの建物、MSを破壊し始める3機、最新鋭の機体に量産型MSでは歯が立たず次々と撃墜される。
爆発に巻き込まれまいと逃げ惑う民間人、対応に大慌てのザフト軍司令部ではプラント最高評議会議長ギルバート=デュランダルが陣頭指揮を取って立て直しをはかる。
「ミネルバからの応援はまだか!!!」
「今、連絡がはいりました、インパルス、遅れてザク.ウォーリアー2機が出撃したもようです」
「何!?インパルスのパイロットは誰か?」
「その・・・テストパイロットとのことですが・・・」
通信兵は言いづらそうに報告する、わずか13歳の少女がパイロットとして選抜されテストパイロットに選ばれたことはザフトの中では有名でほとんどの人間が知ってはいるが実戦に参加するという事態になるとは誰もが思わなかったからだ。
「あの娘を出したというのか・・・?やむを得ないか・・・我々はインパルスの支援、サポートにまわるぞ」
「りょ、了解です」
デュランダルは苦虫を噛み潰したような顔をし一瞬の躊躇を見せはしたものの即座に考えを切り替え新たな指示を出す。モニターには破壊を続ける3機に向かって飛来する4つの物体が移っている。
先頭を飛んでいる飛行機がカオスにミサイルで牽制する不意をつかれカオスは後退その隙に合体を始める4つの戦闘機は1つのMSになる、
かつて連合軍最強と呼ばれたGAT-X105ストライクの姿を模して作られたザフト、セカンドシリーズ最新鋭の機体インパルス、ソードシルエットと呼ばれる装備をつけ3機に襲い掛かる、2本の対艦刀エクスカリバーを合わせて一つにし、構えて、パイロットのマユ.アスカは叫ぶ.。
「また戦争をしたいの!!!!アナタたちは!!!!」
318 :
Hina:2005/12/12(月) 10:27:25 ID:???
今回はここまでです、う〜ん長文書けない自分が悔しい
次回は長くするつもりです
Hina様乙。まだこの辺は本編そのままって感じなのかな?
今回はちょっと行間開けすぎのような気もしなくもないw
隻腕、そういや感想で触れられてないけどIWSPルージュ出したんだな。
アスランにあっさり達磨にされたのは惜しいが、なんか嬉しいw
>隻腕
アウルも死んだルナも死んだオサーン達も死んだ
アヒャヒャヒャ(゚∀゚)ヒャヒャ( ゚∀)ヒャヒャヒャ( ゚)ヒャヒャ( )ヒャヒャ(゚ )ヒャヒャ(∀゚ )ヒャ
…皆良い奴だったのに…orz
両陣営満遍なくキャラが立っているので、良い意味でどっちにも感情移入できないっす。
この風、この肌触りこそ戦争よ…
>>318 空白は読みやすくするという点で効果的な演出だが、やりすぎると不自然かと。
多くても、行間にはさむ空白は1〜2行に納めるべし。
それと「!」の連発もあまり良くない。並べるなら多くて二つ。
「また戦争をしたいの、アナタたちは!」ぐらいでおk。
欲を言えば「!」もしくは「?」の後に文が続く場合、スペースを入れると読みやすい。
「何!? インパルスのパイロットは誰か?」
ここ重要↑
とはいえ命令でも懇願でもなく一個人の意見なので、スルーしても一向に構わない。
なるほど・・・
ネタはあるけどそれを文章に表す技術が無くてショボンヌな俺には目から鱗な情報ですあ
隻腕お疲れ様でした・・・重い・・・重過ぎる。
同人アニメなんて、足元にすら及んでねえ;;
前回の引きからアウルとトダカ一佐は想像できましたが、まさか、馬場一尉にルナ
まで・・・セイバーは自由の意趣返しでしたが、その姿に物凄く説得力が
ありました(同人版のはキラ万歳絵だったからな)
IWSPが1話限りだったのは「勿体無いな〜」と不謹慎でありますが
思ってしまいましたw
>>310様の仰るとおり、「キャラクター」が死んでる(背景化)しているのが
一人たりとも居ないのが凄いレベルです・・・私も見習いたい。
そして、マユの種割れ!!キラやシンの「ピンチ脱出」ではなく、「失ったが
故の怒りの境地」という所で、読んでて興奮に震えました。
本編と違い、ステラは戻ってきてくれましたが、アウルの戦死でオクレ兄さん
どうなってしまうのか・・・凄く心配。
しかし、物凄くペースが早いですね・・・
ほのぼの作者さまお疲れでした!隻腕が重い内容だっただけに、素晴らしい
気分転換になりましたwレイ、君キャラが美味し過ぎ(苦笑)
ゼロ、大丈夫だよ。次回があれば、君にも投票があるさw
最近になって隻腕読み始めたんだがおもろいな。
たくさんの奴がGJ言ってたのも分かる気がする。
まだ読んでる途中なので本スレに投下されてるのは飛ばしてたんだが・・・
ルナは死ぬのですか、アウルは死ぬのですか、そうですか。
だがそんな素敵展開を進める職人さん(;´Д`)ハァハァ
隻腕さん、貴方って方は・・・゜(ノД`)・。
キャラを生かす死に際の描写に胸が熱くなりました。
ほのぼのさんの会話の間、良いですよねー。キャラクターが生き生きとしていて
表情とか場面が浮かびます。
MAYU‘S DESTINY さんのこれからの展開も気になります。
行間が開いてるのはパッと見読みやすい気もしますよ。頑張ってくださいね。
他職人の皆様、いつも乙です。隻腕を書いている者です。
18話、予想以上の反響に、正直驚いています。
私自身も、大いに悩んだ回でしたし、あるいは袋叩きにされることも覚悟していた回ですから……。
ところで先日投下の18話、一箇所、致命的な書き間違いに気付きました。これでは意味が逆転してしまいます。
お手数ですがまとめ人様、まとめサイトでの修正を宜しくお願いします。orz
18話、09/24の中ほど、
>すぐに意を察したミネルバ隊は〜
↓
>すぐに意を察した馬場隊は〜
また16話、01/18の中ほど、セリフの後に「余剰」の2文字が消し忘れてあったりもします。
これも削除をお願いします。
見直しはしているハズなのですが、どうもなくなりませんねぇ、こういうミスは…… orz
他にも自分では気付きにくいだけで、沢山あるのでしょうね…… orz 本当にお目汚しスイマセン。
あと、皆様の感想、全て読ませて頂いています。
その多くについては今後の展開の都合もあり「ノーコメント」とさせてもらいますが、一つだけ。
>>287 ご質問の件ですが、隻腕マユの物語は、このあたりが大雑把に言ってちょうど折り返し点、と考えています。
具体的に数は数えていませんし、多少前後するかとも思いますが、目安としてはあと18話ほどかと。
ただ実はこれ、SSならではの嘘と言いますか……
この内容、アニメでやったとしたら、30分では収まらない回が結構あるんですよねw
だから、全体の「内容」のボリュームとしては、30分アニメ50話分に近いかと思います。
お金貰ってやっているプロなら、1話を30分に収まるよう整えたり、放映枠に合わせ話数を揃えたりするんでしょう。
総集編で話数を水増ししたり、1エピソードを2話に分けたりして。
けれど、なにぶん私も「遊び」で(いやある意味毎回真剣勝負ですが)やってることですので。
その辺はさりげなくスルーして下さいw
隻腕の最新話に触発されてまとめのやつ再読したが予告編の自由VSインパのダイジェストシーンの二人の叫びがよく理解できたよ……
熱く、そして哀しい激突が楽しみでつ。
……このスレってこんなに観客居たんだな。なんかそれが驚き
このスレとんでもなくなってきたな
1スレ目からずっと見続けてきたからなんか感慨深いなぁ
ところで隻腕かPP戦記、もしTVで放送したら毎週実況板が凄いことになるだろなw
いやホントどうでもいい妄想だが
ガルナハンでのマユとアウルのやり取りとかよかったよ
こんな描写、本編じゃ皆無なのよね……
隻腕お疲れ様です。とゆーか反響がすごくてそっちのほうに驚いたりして
Hina様乙です。
>>319さんの言う通り行間あけすぎかなぁと感じました。
行間は「間」と捉えるよりも「場面転換」と捉えたほうがいいかもと個人的感想をば。
でもでもこれからもがんばってほしいです。
>>327 そういや予告なんてあったんだよなぁ
遂に待ちわびたフリーダムVSインパルスも目前か…
歳とったなぁ俺も(  ̄ー ̄)
そいやスレ違いなんだが種死のOST4って出るんだろうか?
まだ現時点で収録されてない曲でここのSS読みたりしたいな
>>329 いい意味で盛り上がりそうだよな
てか今回の放送直後は多分新シャア板落ちるw 実況ヤメレって言ってるのにw
Hina殿乙!
長文は慣れだと思うのでこれからですな
単発屋殿のようにスパッと割り切るのもアリだとは思うがね
しかしカガリとアマギの心配する奴いないんだなw
いや俺もあまり心配してないけど、こういう消え方した後どうなるのか気になる
アスランにはいろんな意味で完敗してるし
自分で自分の道を模索してるだけカガリのほうが上だと思うけどね。
アスランはただ単に議長の言葉に全てを任せて考えるのをやめただけっぽい。
本編でもそうだったけどね?
でも迷いを捨てると強いんだ。アイツは。
本編そのままだと、カガリたちは「考え続けている」という態度を言い訳に、どこまでも回答を保留してた感じだったがなw
でもこのスレだとどうなるんだろう
迷いを捨てて人形と化したアスランの方が魅力を感じるのは何故だろうなwwwww
そういや凸は種死小説でも、セイバーに乗ったときに意識せず喜びを感じたらしい
性能の良い愛機との出会いに興奮せずにいられないのは、MS乗りの性であると
ここ読んだとき、こいつはMS乗りとしてしか生きられない奴なんだと思ったよ
340 :
通常の名無しさんの3倍:2005/12/13(火) 17:46:53 ID:C5ZdznI9
作品カモン
今は皆執筆中なんだろ
ちと作品が集中して投稿されてたからな
さて午後の仕事逝ってくるかノシ
>>339 性能が良いはずの愛機はその後、2年前の機体に達磨にされちゃったな
アルランカワイソスwww
「・・・・・・、つまんなーい。」
マユはそろそろ飽きていた。
自分の前においてあるモニターには自分の兄二人がMSで戦っている。
かたや黒い大剣を操るMS,かたや緑と白の砲撃用MS。
見たところシンハロが押しているようである。
黒いストライクが接近しようと絶妙な槍術でダメージを食らわせる。
が、どうも詰めが甘いらしく、装甲を確実にやられてたりする。
「うー、つまんないつまんない!!ケーキもあらかた食べちゃったし!!」
マユは足をバタバタと振る。
「・・・・そうだ♪えーっと、携帯携帯。」
マユはいいことを考え付いたのか、ニヤニヤと笑いながらポケットから携帯をだした。
【はぁー、結局ブラストの奴がいっちまったなー。】
ここは格納庫、そこの片隅で部分パーツ状態のフォースは呟いた。
【仕方があるまい、何せ同人アニメ後半の主人公のごとく活躍できないのだ、あいつは。
これくらい譲ってやった方がいいだろう。】
インパルスズはうらやましそうに話す。
【わうっ!二人ともがんばって!】
ネット中継を受信しながらはしゃぐのはガイアだ。
【うるさい・・、だまって。】
興味無さそうにガイアを黙らせようとするのはアビス。
【お前なぁ・・、少しはバカになれよ、バカに。】
【大人ぶりっ子はー。】
【かっこ悪いですのー。】
アビスをたしなめるはカオス。それに続く幼い少女の声は彼の兵装ポッドだ。
ちなみに左側の名前が『サチコ』で右側の名前が『ミチコ』だったりする。
【・・・・・・うぅ。】
会話にどうにか入ろうとして中々入れないのはセイバー。決して腹ペコな訳ではない。
彼はセカンドシリーズの中でも一機だけテスト時にいなかったこともあり、まだまだ
馴染めないらしい。だが、パイロットによき似て気軽な性格のハイネ隊ザクが取り持ってなんとか
やってきたのだ。が、彼らは別のところへ搬送されてしまい、今はちょっと困り気味である。
そんなMS達がつかの間の平和を味わってるなか、異変が一つ、
人っ子一人いない格納庫に、足音が響いた。
【ん・・・・?だれだ?】
そう思って音のほうをソードが見る(?)と・・。
【なっ!お嬢様!!】
【はぁっ?!ソードお前何行って・・・ってお嬢さん!!】
ソードとフォースが素っ頓狂な声をあげる。
確かに、そこには小さな女の子・・マユがいた。
【わう・・?マユ・・・なんでここに・・きゃうっ!!!】
マユはガイアに駆け寄るとガイアに搭乗する。
【・・・・・いーやな予感。】
アビスがぽつりと呟く。
【あぁぁぁぁぁぁっ!!とめなきゃ!!ってオクレがいねーから止めらんねぇっ!!】
【カオス様ー。】
【落ち着くですのー。】
完璧大慌てのカオス、兵装ポッドの方は落ち着きまくりである。
【わぅぅぅっ?!また・・ガイア・・ごうだつ?!】
そして、マユを乗せたガイアは格納庫を突き破ってしまった。
・・・・どうやらハイネ隊のザクのある格納庫へ行ったらしくそちらの方向から
悲鳴が聞こえてくる【俺のグゥルーーっ!!】という声はアキラザクのものだ。
グゥルに乗ってガイアinマユは空を駆けていった。
『このっ!!当たれ!!』
【てやんでぇ!!いい加減おちろってんだ!!】
シンハロと疾風は叫びながらケロベロスを放つ。
が、それを絶妙な操作で避けるストライク。
【きひひひひひひ。あたんねーよ、ぶあーかっ!!】
ストライクはバカにしたような笑いをする。
『くそっ!!あんの生意気な真っ黒・・・!さては復習者のサーヴァントだな!!』
【旦那、あっしはそう言う話はわからないんでさぁ。そう言うのはアキラザクに・・・。】
二人が会話をしていると、急に別の『声』が紛れ込んできた。
【わぅぅぅぅぅ・・・たーすーけーてー・・・・。】
びみょーにのほほんとしたわんこのような口調はガイアのものだ。
『・・・・・ガイア?!』
【旦那!!上からきますぜ!!】
疾風の声に反応し、咄嗟にビームをかわすブラストインパルス。
『・・・・つまんないからきちゃった♪』
かわいらしく、お茶目っぽく言いながら通信してきたのはマユだ。
何気にアキラの「俺のグゥルーーっ!!」って声が聞こえてきたりするが、マユは気にしない。。
【おじょーーうっ!!】
『きちゃったーーー?!全然お茶目じゃないぞー!!マユ!!』
ぶっちゃけあの攻撃はコクピットを確実に狙ってたりする。
【わぅぅぅぅぅぅー(泣)わぁぅぅぅぅぅー(泣)】
ガイアは困ってしまってわんわんわわーん状態らしく、大泣きしている。
『さぁ!!私のお兄ちゃんになりたくば我(わたし)の屍を越えていけ!!』
『いや、屍にしちゃったらだめだろ、マユ。』
『普通は我とかいてオレと読むんだろ?』
マユのセリフに珍しくシンが突っ込む。
『・・・・問答無用!!くらえっ!!』
『うわぁぁぁぁっ!!いきなり切りかかる奴があるか?!』
『ちょっ!!!うわぁぁぁあぁぁぁぁあっ!!』
こうして、暴虐天使アスカちゃんの幕は上がった。
7スレ目、>368、>369の続き
第三十四話
ベッドの上に拘束されたステラ、彼女の周りを複数人の医者と軍人が囲んでいる。医者は彼女がエクステンデッドであると断定した。軍人は宇宙にいる連中が研究材料として欲しがっていると洩らし、加えて、戦死していた方がまだマシだっただろうとも言った。
通気孔な中で息を潜め、全てを聴いていたマユは、声の方向を今にも噛み付きそうなくらい睨み付けた。
ミネルバは、かつてミネルバが中心となって攻略した陽電子砲を備えた元連合基地にいた。オレンジ・ショルダー隊共々、ボロボロのミネルバは一目散に逃げるしかなかった。奇しくもその頃、ザフト地上軍もまた戦線を後退させていた。
あの戦いから一週間が過ぎていた。
ここではラクスことミーアのラストコンサートが予定されていた。その効果なのか、日一日、怪我をおして続々と集まってくるザフトの軍人達。ミネルバからその様子を眺めるヒルダに、ルナは気軽に、レイは丁寧に挨拶をする。
二人に何をしているのかと訊かれて、負傷した仲間がこれだけ戻ってくることは宇宙じゃなかったと、ヒルダは答えた。逆にヒルダからデートかと訊かれて、二人はマユの見舞いと答えた。
ヒルダの脳裏に、血まみれのコックピットに沈んだマユの映像がありありと浮かぶ。そして、設備の整った病院に運ばれたことも思い出す。艦から降りられないヒルダは、マユによろしくの伝言を頼んだ。
一方、メイリンはマーズやヘルベルトと共に、賭けポーカーに熱くなるヴィーノとヨウランを捕まえて問答無用で連行する。前々から約束していた、マユへの見舞いにみんなで行くために。
町外れの、町人も軍人も眠る墓地で、マユとミーアとミリアリアは鉢合わせた。マユがコンサート直前にこんな所に居てよいのかと問うと、だからこそファンの眠るここを訪れた、とミーア。マユは、ミーアが自発的に死者を弔うなら世も末とからかい、ミーアに頭をはたかれた。
何気なく、ミリアリアはシャッターを切る。マユのことは記事にできないと知っていても、写真に収めておきたかった。
偶然は重なる。マユの名を呼びながら駆け寄ってきたコニールが抱きついた。その後、コニールは隣にいるのがラクスと気付いて驚き、緊張して硬くなった。ミーアもすぐさまラクスとして応対する。
マユは不意に、コニールとはそこまで打ち解けていなかったことを、コニール本人にぶつける。コニールは逡巡するが、その間に一人の中年男性がコニールに追いついた。彼はコニールの父親だった。
父親は結局、音信不通になっていただけで、この地区でザフトの占領統治が始まるとあっさり帰ってきたと説明された。それが何を意味するのか、マユはわかっていた。そして、コニールはマユと向き合い、あの時、マユが止めてくれたことを心から感謝した。
ミーアは「あの時」のことに興味を持ったようで、早速、コニールに訊いている。ミリアリアも興味津々で、ノートを開き、父親も巻き込んでその話のメモを取っていた。マユは、そんな四人の様子を一歩引いたところから眺める。
そのマユに小石が当たった。小石が飛んできた方向を見ると、茂みに隠れる人影を見た。すると、マユがそろそろ病院に帰ると言った。去り際のマユに、ミリアリアから憎しみで人を殺さないのくだりについて、コメントを求められた。
振り返ったマユはまぶしいくらいの笑顔を作って、自分の場合はみんな殺しても気が晴れそうにないからやらないだけ、そう答えた。
全員は呆気にとられて、結果、マユを無言で見送った。
レイ、ルナ、メイリン、ヴィーノ、ヨウランは、マユの病室で待ちぼうけをくっていた。マユからコンサートに行きたいと持ちかけてきただけに、一同釈然としなかった。その頃、同じ病院内で、捕虜が逃げ出したとかで少し騒ぎになっていた。
ミネルバでは、マユがインパルスの発進許可を貰っていた。発進前のコアスプレンダーに乗り込もうとするマユを、ヒルダは捉まえた。
改めて初めましての挨拶。ヒルダは戻った早々に働き始めるマユを褒めた。マユはそれを否定、見回りのついでに長らく触っていなかったインパルスを動かしたいので、無理に頼み込んだと答えた。
前の時はちゃんと話ができなかったから、機会を伺っていたとヒルダは言う。今もゆっくりできない、とマユは返す。ヒルダは肯定、ついでに、あの後でマユの連合スパイ疑惑が持ち上がったが、マユに限ってそれはないで片付けられたことを語った。マユは押し黙る。
ヒルダは続けて、あの時の脱出を引き合いに出しながら、マユならどうやって捕虜を逃がすのかを訊いてきた。落ち合う場所を決めて拘束を解いただけ、あとは自力でできるから、マユはそう言った。
少し間を置いて、ヒルダはマーズとヘルベルトが掛け替えのない仲間であることを話し、レイとルナを見て、彼らにとってマユという少女は掛け替えの無い仲間と想像し、こうしてちゃんと会える日を楽しみにしていたと語った。マユは、やはり黙っていた。
ヒルダは、何があっても仲間に銃口は向けたくないと語る。マユは同意する。そのヒルダは銃に手を掛けながら、その仲間を裏切るのはどういう時かと疑問を投げかける。マユは例え話として、言うことを聞かなければ核ミサイルを撃ち込むと脅されれば、と答えた。
そんな嘘を真に受ける奴はいないとヒルダが即答した後、マユは形見の携帯電話を手渡す。その画面には核ミサイルの画像が数点。
これこそブラフと断言するヒルダ、捕虜一人のために核一発という式が成り立たないからだ。普通はそうですよね、と返すマユの脳裏にはジブリールの姿がちらつく。でも、マユはそれには触れず、そんな脅しをしているのは死んだ筈の兄とだけ言った。
ヒルダは言葉を失った。それを見計らい、マユはそっと携帯電話を取り返し、捕虜が一人逃げ出すだけのことだし、こんなことは今回限りだから見逃して欲しいと頼み込む。ヒルダは何も言わず、この場を去った。マユはヒルダの背中に頭を下げた。
コアスプレンダーに乗り込むマユに、操縦席の奥で身を隠していたステラは心配そうな眼差しを向けるもマユはそれを冷たくあしらう。
そして、コアスプレンダーとフライヤーは飛び立った。
ヒルダ「こってりしぼってやるから無事に帰ってこいよ、お嬢ちゃん」
(゚∀゚)マユ種の新作きたーー!
ヒルダ姐さんが、良キャラになっている。ミーアもきたー。
ステラは、どうなるのだろうか。破壊は撃破しているし。
次回も期待してます。
マユ種乙。
これも脚本みたいな感じで味がある。
しかしこのスレは最終回終わってからまた盛り上がりだしたな。
アンチもうまいこといなくなったみたいだし。
しかしもうすぐ冬厨が・・・
>>351 あまり気にしないほうが良いのでは?あれはどうせ、DVDの販促PVだろうし。
どっちみち俺は観れないしw
マユ種、お疲れ様です!本編とは一味違うステラの返還劇、これからどうなるのか!?
このところ隻腕・ほのぼの・Hinaさん版と良作揃いで閲覧が楽しみです。
このところ寒いですが、身体に気をつけて。
353 :
運命の舞踏:2005/12/15(木) 12:18:00 ID:???
マユ種、ほのぼのさん乙です
6話投下しまっす
今回はアーモリーにケイが持ち込んだディスクの正体が明らかになります
354 :
1/19:2005/12/15(木) 12:22:39 ID:???
アーモリーワンで起きた、謎の部隊による新型機襲撃事件より、3日後。
地球方面における、プラント防衛圏の片隅の宙域で。
今まさに、ザフト軍の上層部から期待されている、とある兵器の実験テストが行われようとしていた。
――ナスカ級戦艦『ヘイスル』艦橋――
「報告します。 試験宙域内に不審な艦影、機影ともに存在は確認されません」
「…よし。 それでは開始するぞ。
艦内に通達。 本試験の第一段階を開始する。 『レギオン』システム起動!」
『レギオンシステム、起動を開始します!』
索敵担当のオペレーターからの報告を聞いた艦長は大きく頷き、高らかに指示の言葉を発する。
その言葉と同時に、あちこちから機械音や通信音声が生じ、騒がしくなるブリッジ内。
発された開始命令は即座にモビルスーツデッキにも伝わり、待機していた大勢のスタッフが慌しく動き始めた。
そこの一角を占める、いくつもの量子コンピューターを組み合わせた大きな機械に、モニターの灯が点る。
耳鳴りがするほどやかましい、読み込み音の多重奏。
やがて、それを跡形もなくかき消すほどの盛大な駆動音と、振動がデッキ内を満たしていく。
355 :
2/19:2005/12/15(木) 12:23:10 ID:???
―― 無人機動兵器統括システム『レギオン』
それは、ザフトにおいて戦時中に立案され、新たな戦争のスタイルの根幹として戦後開発されたシステムの通称。
本来なら人間を搭乗させ、操縦させることで運用するMSを
コンピューターを用いて、無人で操作することを目的としたシステムであった。
「まさか、予定通りにテストを行うことになるとはな。
私はてっきり、中止になるものだと思っていたのだが」
「恐らく、例の連合艦隊のせいでしょう。
あの演習で戦力を見せつけられ、本国は焦ってるようですから」
正面モニターを見ながらの艦長の言葉に応じたのは、隣に立つ研究員らしき白衣の男。
彼らの視線の先には、カタパルトから次々と飛び立っていく、ジン、ゲイツといったMSの姿があった。
『レギオン』…聖書に描かれる、無数の悪霊たちの集合体の名を冠したそのシステムは
無人のMSに、パイロットに代わる量子コンピューターを積み、
それらを母艦に搭載されたホストシステムで統括することにより、円滑な連携で作戦を遂行することを目的として開発された。
子機とも呼べる無人MSたちは、自らが収集した偵察内容や敵との遭遇、戦闘の内容といった全てのデータを
部隊全てのブレーン的役割を持つホストシステムへと送信し、それを仲介し全体で情報の共有を行うことが出来る。
また、作戦を遂行していくことによって、情報の蓄積、より有効な戦闘方法の模索を行う機能も存在し
多く場数を踏めば、人間のパイロットと同様に、戦闘能力の向上も期待できるという特性も有していた。
実際にMSを用いて、宇宙空間で動作テストなどを行う今回のテストの以前より
レギオンは入力されていた過去のエースパイロットたちの戦闘データを元に、
MSのシミュレーターシステムを利用し戦闘経験を重ね、自らの性能を磨いていた。
今回はそれを実機で行い、実際の戦闘で生じる不具合の有無を確かめる目的があった。
「このシステムが完成すれば、我らザフト軍の課題点が改善されるからな。
もはや、数において地球連合に負けていると評されることもなくなるだろうよ」
「ええ、ですからこれも、連合に対して我が軍の示威を見せつけるためにも、重要なテストですな」
彼らが語る課題点とは…プラントの人的資源の乏しさについてだった。
元々、地球と比べてはるかに人口の少ないプラントでは、それに比例して軍隊の規模も地球連合に比べ小さなもので。
正規の軍人だけでは人手が足らず、市民兵を募らねばならないほどの状況であった。
そして、先の戦争で多くの兵が戦死、あるいは負傷し退役していったため
2年が経過した今も兵の数は十分とは言えず、プラント上層部はその問題に頭を悩ませていた。
それを解決すべくこの、人の手に頼らず多くの兵器を運用するシステムが開発されたのだ。
356 :
3/19:2005/12/15(木) 12:23:49 ID:???
実用化の目処が立ち、運用テストを行うために彼らはこの宙域で待機していたのだが
いざ開始しようとしたその時に、プラント本国からアーモリーワンで起きた新型機強奪事件の報が飛び込んできた。
そのとばっちりを受け、機密に計画を進められていたレギオンのテストは待ったをかけられていたのだが。
だが、その翌日には上層部から急遽、実験を行うようにと命令が下された。
突然の中止命令撤回。 その背景には、デュランダル議長が遭遇したという連合の大艦隊があった。
月とL−4間の宙域で確認された、50隻もの戦艦からなる大艦隊の演習。
その中にはザフトの情報局でも存在を掴めていなかった新型MA。そして大型の新造空母が確認された。
ザフトにも、ゴンドワナ級宇宙空母と呼ばれる、同じく1000m越えの全長を誇る大型艦が1隻存在するが
今回の地球連合軍の演習で確認されたのは『2隻』。
連合には同規模の艦が複数存在するという事実が、プラント上層部を震撼させた。
相手が惜しげもなく切ってきたカードに焦った上層部は、対抗するようにこのシステムの演習を強行したのだろう。
「そう思えば、我らは歴史の重要な場面に立ち会えているのかもな。
…よし、頃合いだな。 レギオン部隊、第一陣に続き、第二陣を発進させろ」
艦長は感慨深げに、呟いた後、オペレーターへと指示を出す。
その指示を格納庫へと伝えようとしたオペレーター。 が、突然表情を引きつらせる。
「…っ?! 艦長! レギオンにエラーが発生したとの報告が!」
「な、なんだとっ!? 状況はどうなっている!」
思いもよらぬ報告に、驚き声を上げる艦長。 傍らに居た研究員も、弾かれたようにオペレーターの下へ駆け寄る。
「こちらの制御下を離れ、機体が勝手に動き出して発進していきます!
他の艦でも同様の状況が起きているとの事です!」
「ばッ…馬鹿な! そんな報告、今までのテストでは一度もなかったぞ!?
万全な状態で実機テストを行ったというのにっ…!」
「ええいっ、どうなっているのかねこれは!」
悲鳴を上げ、仰天し、他人に責を問う声が騒然としたブリッジ内を満たす。
突然のシステムエラー。 いや、むしろ『暴走』と呼ぶべきレベルの重大な障害。
想定の範囲からはるかに外れたアクシデントに、艦内全体が驚き慌てていた。
開発責任者が、ホストシステムの設置されている格納庫へと口角泡飛ばしながら通信しているさなか。
ヘイスルの横手を航行していた僚艦に、生じた爆発。
煙を上げる艦の発進口から、数機のMSが飛び出してくる。
そして、飛び立ったそれらは自らの母艦へと向き直り
迷うことなく、手にするビームライフルでその艦橋を撃ち抜いた。
357 :
4/19:2005/12/15(木) 12:24:34 ID:???
ヘイスルの格納庫内は、今まさに駆動音の喧騒に満たされ、混乱の只中であった。
システムの命の下、起動中だった機体が突然システムの制御下を離れ、突然勝手に動き出す。
ハンガー内で待機状態にあった残りの機体も、次々と起動し、自ら動き始める。
そんな騒動の中、技術者たちは実に無力で。
闊歩するMSに踏まれないよう、崩れ落ちてくる建材や機材の下敷きにならぬように逃げ回るしかなかった。
「な……なん、なんだよこれっ、は、話が違うぞぉ!」
格納庫の片隅。 資材の箱の陰で一人隠れて震えていた整備兵。
眼を真円に見開き、がちがちと震える歯を鳴らしながら、上ずった声で呻いている。
…自分が仕組んだはずのこの事態が、予定とは全く違う方向へ動いていることに、彼は恐怖していた。
そも、この騒動のきっかけは自分が試験機のうち、一機のジンに投入したディスク
その中に入っていたウィルスプログラム『グレムリン』の仕業だった。
これを託してきた、素性も知らぬ男の話によると、これは『レギオン』のコントロールを奪うためのウィルスで。
『レギオン』の実機演習中、宇宙に出た試験機をシステムコントロールから切り離し、離脱させ
月付近を巡回する、連合の哨戒艦隊を襲撃するように命令を書き換えるものだと聞いていた。
しかし、なんだこれは。
使われる部隊はほんの数機で、しかも演習の終盤に離脱していくというものだったはずだ。
それが、なんでなんだ。
待機中の機体まで稼動し、艦を破壊してまでも皆で飛び出そうとしているのだ。
358 :
5/19:2005/12/15(木) 12:25:10 ID:???
彼が得体の知れぬ男から『グレムリン』を受け取り、試験機に仕込んだのには理由があった。
彼は、旧ザラ派と呼ばれるプラント内部の強硬派閥を信望しており
連合と和平を結んだ、今の体制に大きな不満を抱いていた。
討つべき連合と馴れ合い、戦争で散っていった者たちの事を
記憶の片隅に追いやらんとしている今のプラントを心底憎んでいた。
だから、男から受け取った『グレムリン』を用いて、連合の艦隊をザフトの手によって襲撃させ
連合との戦火の火種を生み出し、再び戦争を起こしてやろうと目論んだのだ。
今度こそ、あの低能で憎らしいナチュラルたちを根絶やしにする戦争を、と。
しかし、今の事態は彼から伝えられていた筋書きとは全く異なるもので。
艦から発進して間もなく、母艦を潰していく『レギオン』の試験機によって、自身の生命も危険に晒されていた。
「…だ、騙しやがったなあの野郎ぉぉぉぉっっ!」
極限状態の恐怖を突き抜けて、込み上げてきた憤怒に、思わずその場から立ち上がって大声で叫んだ男。
その瞬間、ゲイツの手によって破壊されたハッチの損傷から生じた、急激な内圧変化によって
彼の身体は壁面の割れ目から、虚空へと吸い出されていった。
――突如、暴走した『レギオン』システム搭載機、計60機のMSは自らの母艦を破壊し、艦隊を壊滅させる。
そして、プラントから放たれた追撃部隊を振り切り、地球方面のデフリベルトへと逃げ込んだ。
ザフト上層部は、血眼になり暴走部隊の捜索を開始させるものも、障害物の多い宙域のため、捜索は難航することになる。
359 :
6/19:2005/12/15(木) 12:26:00 ID:???
それより過ぎること十二時間後。 地球連合軍月面基地『アルザッヘル』
前大戦で壊滅した、プトレマイオス基地に代わる、新たな地球連合軍の主要拠点として機能している基地である。
元々は中規模の基地であったが、拠点移設計画の対象に決定され、大幅に施設の規模を拡大させていた。
アーモリーワンより奪ってきた戦利品を搭載したガーティー・ルーは、長い逃亡の末
ようやっと、この基地のドックにて休息を取ることとなる。
ネオへ今後の指示を伝えた後、ガーティー・ルーから下船しその足ですぐさま地球行きの艦船に乗り込んだケイは
自室としてあてがわれた士官室の中で通信を行っていた。
「…ええ、先ほどアルザッヘルに着き、地球行きの便に乗りました。
そちらの方はいかがなもので?」
『今、出発の式典の真っ最中だ。 退屈なものだよ。
早く事が起きてくれないものかね?』
映像のない、音声のみの通信。
若い男らしき声の、通信相手はうんざりした様子であることが声色から伺えて。
そんな自分の主へと、ケイは続けて報告をする。
「工作員から報告がありました。 既に試験機は暴走し、地球方面へと逃走しデフリベルトに潜んでいるそうです。
そちらの式典が終わる頃には、予定ポイントで待ち構えてるでしょう…
あの、僕が頼みました例の件については大丈夫ですか?」
『君が指名してきた撮影班を兼ねた処理部隊か。 要望通り『黒き鉄風』を宇宙に上げたさ』
「ありがとうございます。
休暇中に召集したから、また恨まれるでしょうけどしょうがない。 彼らが一番適任ですから」
『まったく、君というやつは本当に人使いが荒いな。 それ相応の働きをするとはいえ』
くく、と聞こえてきた愉快そうな笑い声。 その響きには、若干の苦笑が混じっていたかもしれない。
360 :
7/19:2005/12/15(木) 12:26:42 ID:???
『君には感謝しているよ、ケイ。
ここまで上手く、事が運んだのは全て君の手腕があってこそだ』
「…まだほめるには早いですよ、ジブリールさん」
己の主、ブルーコスモスの盟主ロード・ジブリールの言葉に、小さく微笑みながら彼は言った。
「これからが肝心なんです。
彼らを屈服させ、恐怖のどん底に叩き落すという楽しい楽しい大仕事が待っているんですから」
『そうだな。 『グレムリン』はその始まりに過ぎない。
早く戻ってきたまえ、ケイ。 君にはご老人方に種明かしの説明をしてもらわねばならんからな』
「了解。 地球に降下次第、すぐに向かいます」
報告を終え、通信を切ったケイはインカムを外し、ふるると何度か頭を振った後、座席の背もたれに身を預ける。
物思いにふけるように、天井をぼんやりと見上げていた青年。
ふと、舷窓の向こうに広がる漆黒の空へと目をやる。
「さぁ、これから忙しくなるな」
呟かれた短い言葉は、期待、悦び、そして奥底に憎悪の感情を含んでいた。
361 :
8/19:2005/12/15(木) 12:27:29 ID:???
アルザッヘルでの一連のやり取りと、ほぼ同時刻。
プラント本国からの船と接触し、議長をそちらの船へと移動させたミネルバは、地球軌道へと進路を変えていた。
艦に乗っているオーブ代表、カガリ・ユラ・アスハを迎えに、宇宙へ上がってくるオーブの艦艇と合流する為に。
現在のところ、安全な宙域を航行しているため、半舷休息の敷かれた船内。
かの、半日前のレギオン試験機暴走事件はここにも伝わっており、クルーたちの話題の中心となっていた。
「強奪事件が起きたばっかりだってのに、今度は軍事機密の試験機が暴走?
まったく、悪いことは立て続けで起きるもんなのねぇ」
目を丸め、驚いたように声を上げているのはルナマリア。 お手上げを示すように、小さく肩をすくめてみせて。
彼女を含め、ミネルバクルーでも若い部類に入る兵たちは、レクルームに集まり雑談に興じていた。
最初は、初めての実戦の感想や仕事の大変さ、上司への愚痴などたわいもない話題ばかりだったのだが
その輪の中に、新たな話題を携えて飛び込んできたメイリンの話に、今は皆、驚きの様子を隠せない。
「…それで、どうなったの? その暴走した部隊って」
「うーん、話によると、地球方面のデフリベルトに逃げ込んだらしいの。
探索しにくい場所だから、移動したか潜伏してるかは分からないってことなんだよね。
…暴走した機体は、全てが艦を発進した後、その場の艦艇やMSの殲滅行動をとったことから、統制が取れてるらしいの。
今の所の見解としては、何らかの方法によってレギオンのシステムにウィルスが感染して
システムの命令を変更されたことが、今回の騒動の原因ってことらしいよ?」
「……うー、えーっと……つまりは?」
メイリンの長々とした説明に、面々は不思議そうに首を傾げたり、ゲンナリとしたり、あるいは隣同士顔を見合わせたり。
そんな中、一人うつむいて思案していたヨウランが顔を挙げ、質問とばかりに手を上げる。
362 :
9/19:2005/12/15(木) 12:28:07 ID:???
「ちょっと質問。
そのレギオンってシステムは…思うに戦艦の中に頭脳となるホストコンピューターがあるよな?
何十機もの無人機を操作するんだ。MSのコクピットに積める規模のコンピューターじゃろくに機能できないだろ。
それなのにどうして、母艦を沈めた状態でなおも、統制された動きをしているんだ?」
「ん、いいとこ気がついたねー!
その疑問なんだけどね。レギオンには、万が一母艦が破壊された時の為に、代理となる隊長機が存在するの。
どうやらそのウィルスによって、命令だけじゃなくて指揮権まで弄られたみたいね。
…とはいえ、隊長となるコンピューターの能力は流石にホストみたいにはいかないから。
自分で思考して命令を変更することや、敵と交戦した時に戦闘データを元に戦術を立てていく、ってことは出来ないって」
「…なるほどなぁ。 でも、バッテリーの消耗を考えると、もう稼動停止してるだろ。 安全なんじゃない?」
「ところがね。 どうも長期のテストを想定して、予備バッテリーも積んでたらしいのよ。
消費電力を最小限に抑える航行をしてたら、まだ十分に動ける可能性もあるから、軍も警戒してるみたい」
「しかし、逃げ込んだ場所は地球側のデフリ帯だろう。
あそこからではザフトの拠点も、地球連合の拠点も遠いからな。 襲撃を受けるという事態はないだろうな」
二人の独壇場と化していた、難解な会話の中に混ざってきたのは壁際で静かに聞いていたレイ。
とりあえず、危険性は低いという事実を端的に述べたので、クルーたちは安心したように表情を緩ませた。
「…けどさ、なんでメイリン姉ちゃんそんなに詳しく知ってるの?」
「軍の通信回線を拾ってたら、だいたい掴めてくるって」
にんまりと笑みを浮かべながらの言葉に、質問したマユははぁ、と相槌を打つばかりで。
そう言えば、彼女はアカデミーにいた頃、情報関連の科目でトップクラスだったということを思い出すのだ。
「…今の話、最初から聞かせてくれないか?」
突然、レクルームの中に飛び込んできた聞きなれぬ声。
振り向き見た、その先には入り口に立つカガリと、アレックスと名乗る随員が立っていた。
363 :
10/19:2005/12/15(木) 12:31:13 ID:???
「っ!」
「駄目、マユ」
カガリの姿を見て、敵意の表情を見せながら前に出ようとしたマユを、隣に立つアゼルが制す。
その様子を、金髪の娘は辛そうに目を細めて見ていたが、思いを切り替えるように、再びメイリンへと向く。
「頼む、教えてほしいんだ。 今がどういう状況なのか、差し支えのない程度でいいから」
「えっ…で、でも…」
真摯な意思のこもる琥珀の眼差しを受け、戸惑いを露わにしながら辺りへ視線を巡らすメイリン。
何せこれは、もう隠蔽できない状況になってるとはいえ、ザフトの重要な軍事機密であることは間違いなくて。
どこからどこまで、話しても差し支えがないのかが判断しきれなかったのだ。
どうしよう、と不安を隠せない顔で、メイリンは意見を求めるように面々を見渡していたが
皆、言いかねるように顔を反らす中、レイだけは真っ向からそれを受け、肯定するように力強く頷いた。
「…分かりました。 じゃあ、説明しますね」
さじ加減が重要な、大役を任された少女は一度深くため息をついてから、語り始めた。
暴走したシステムの概要。テスト中に発生したトラブルの原因と、その末に起きた艦隊全滅の訃報。
テストが行われた宙域の位置と、暴走機の群れが移動したルート。 そして予想される稼働時間。
それらの内容を、メイリンはゆっくりと、慎重に言葉を選びながら語った。
364 :
11/19:2005/12/15(木) 12:31:45 ID:???
「…と、言うわけで、予想される行動範囲を考えて、無人機が何か問題行動を起こすとは考えにくいそうです。
たとえ、ウィルスによってどこかの施設や拠点を襲うように命令を書き換えられていたとしても
そこに辿りつくまでに、稼動限界が来て動けなくなるだろうって見解です」
大体の事情の説明を終え、メイリンは肩の荷が下りたように疲れた表情を見せていたが
それを聞いてきた、当のカガリはといえば難しく顔をしかめながら、何やらブツブツと呟いていた。
「……月に向かわず、ダイレクトに地球方面へ向かっただと?
一体そこに何がある…何が……」
心ここにあらず、といった様子で思考の海から戻ってこない彼女を、隣に従う青年が心配そうに覗き込んでいたが…
「っ! 『セレネ』か!?」
突然、パッとはね上げられたその顔は、戦慄と恐怖の色に染まっていた。
彼女の様子を、理解しかねるように戸惑いの眼差しで見ている全員を尻目に、彼女は踵を返す。
「すぐに艦長に知らせなければ! 手遅れになる前に、少しでも手を打たないと!」
「ちょっ、手遅れって…なんなのよ一体!」
自分だけで何かを理解し、立ち去ろうとするカガリの背中へと、マユは大声で問いを投げかける。
彼女の言葉に振り向く娘。 その瞳に、爛々と輝く使命感の炎を宿しながら。
「…襲う対象なら、地球付近に『上がって』くる
私の予想通りなら、これは戦火を開く大惨事になるんだ!」
そうとだけ告げたカガリは、寸時惜しむように走り、レクルームを出て行く。
側に付いていた藍髪の青年もまた、彼女を追いかけて飛び出していった。
後に残されたマユたちは、ただ呆然とその背中を見送るだけだった。
365 :
12/19:2005/12/15(木) 12:32:22 ID:???
「カガリ、セレネってまさか……」
「そうだ、プラントでの会見の後、入港式典に向かう予定だったあの船団だ!」
船内の廊下を走る一組の男女。 藍髪の青年、アスランの声にカガリは、荒れた息のまま答えていた。
――彼女らの口にした『セレネ』とは。
月面に、地球各国の融資の元に建造された、新たな都市の名前。
先の戦争で多大な被害を受けた地域…ユーラシアや東アジアの難民や
その他、大西洋連邦などの国家からの希望者で、住人を構成する予定で建設されていた月面都市だった。
つい先日、完成したセレネへの移民船団。 カガリが思い当たった攻撃対象とは、それのことだ。
「私の記憶が確かなら…各地から打ち上げられる移民船は、一箇所に集まってから、一斉に月へ向かう予定だった
もし、もしもだ! それが機体を暴走させた人間の狙いならば、地球とプラントの関係は最悪になるッ!」
彼女は前もって、自分の参加する式典の案内状に目を通していたため、それを覚えていた。
合流地点の座標が、レギオンの予想行動範囲内に収まっていることに気付いたのも、そのおかげで。
そしてなによりも、彼女を突き動かしたのは直感だった。
カガリは知っていたからだ。 その結果を望む者がいることを。
世界の裏で暗躍する、戦争を生業とする死の商人たち…『ロゴス』の存在を。
366 :
13/19:2005/12/15(木) 12:32:51 ID:???
「代表? 何か御用で…」
「すまない、タリア艦長。 至急、通信で議長に取り次いでほしい。
どうしても伝えたいことがある…大変な事態に気付いたんだ!」
突然ブリッジに飛び込んできた、艦の貴賓を見て怪訝に思い、彼女へ声をかけたタリア。
しかし、全速力で走ってきたらしく紅潮した頬のまま、まくし立てるように話す彼女の勢いに圧され
只事ではない気配を感じ、それ以上質問をせずにすぐさま通信オペレーターへと指示を出した。
何言かの通信のやり取りの後、艦長席のモニターに映し出される白面の男。
『如何しましたか、代表? 緊急な要件と聞きましたが』
「突然すまない、デュランダル議長。
すぐにミネルバを、セレネの船団が集結するポイントへ向かわせてほしい。
出来ることなら、近辺にいるザフト軍もだ」
艦長席の背もたれに手をかけ、身を乗り出してモニターへと向かいあうカガリの言葉に
とっさに意味を飲み込めなかったのか、得心いかない表情で首を傾げるデュランダル。
「セレネ…まさか、代表っ」
ハッと表情を強張らせ、横にある娘の顔を見るタリア。
「…ああ、そのまさかだ。
移民船団の集結ポイントは、例の試作機が辿り着けるであろう範囲内なんだ。
逃げ込んだ方向も、その可能性を考えれば道理がつく。
もし、試験機がポイントに辿り着き、船団に攻撃なぞ行ったら…最悪の事態になる
幸い、この艦はかなり近い位置にいる。 なんとしてでも阻止しなければいけない!」
緊張をみなぎらせたその顔を凝視する、タリア、ブリッジ内のクルー、そして画面内の男。
…やがて、近寄ってきた仕官から耳打ちを受けたデュランダルは、深刻な表情で、深く頷いた。
『情報を元に試算させた結果、その可能性は否定できないものだと判明しました。
…分かりました、ミネルバをそちらへ向かわせましょう。 付近に部隊も、速やかに急行させます』
「感謝する、議長。 だがもう一つ、お願いしたいことがある。
月の連合軍にもこの報を伝えてはくれまいか。 セレネの船団にも護衛はいるが、そう多くはないのだ。
恐らく、一番早くそこへ辿り着けるのは、ミネルバか月からの艦だからな」
『む……それは…』
デュランダルの許可に、謝辞を述べながら力強い笑みを見せるカガリ。
しかし、彼女が続けざまに提案した内容には、デュランダルはあからさまに渋い顔を見せて、口ごもった。
367 :
14/19:2005/12/15(木) 12:33:22 ID:???
それも道理なことで。
今、彼らが問題としている『レギオン』は、対連合軍用に極秘裏に開発されたシステムで。
自らの切り札を相手に見られることで、その効力はいくらか削がれる可能性もある。
ましてや、あの試作機にはプラントの技術の粋が惜しげもなく詰め込まれている。
それがもし、連合に鹵獲されたりなどしたらそれこそ大事なのだ。
『しかし代表、あの試作機は我が軍が苦心して築き上げた、軍の重要機密兵器でありまして…』
「そのような事を言ってる場合か! もし、船団が攻撃されてみろっ…
それこそ、地球連合軍は嬉々としてこの理由に飛びつき、戦争を始めようとするぞ!」
なんとか言い包めようと伸ばされた、言の葉のツタを払うかのように、カガリは大声で叱咤を飛ばした。
周囲の者が面食らう中、彼女は娘らしかぬ鋭い眼光で、画面向こうの男を睨みすえていた。
『………仕方ないでしょう。 事態が事態です。
月艦隊と、船団の方へも我々からお話をいたしましょう』
長い沈黙の後、デュランダルは苦々しい表情で彼女の言葉に頷いた。
その、二人のやり取りを見ていた藍髪の青年。
伏せていた目を上げ、意を決したように口を開く。
「議長、自分からも無理を承知でお願いがあります。
自分に…この艦のMSをお貸しいただけないでしょうか」
「っ?! アレックス、お前っ…」
その思いがけない言葉に、一気に周囲の注目が青年へと注がれる。
隣に立つカガリは、驚きを隠さない表情のまま、とがめるようにそう言ったが
何も言うな、とばかりに静かに頭を振った彼は、なおも言葉を続ける。
「戦力は一機でも多いほうがいいはずです。
自分はMSでの戦闘経験もありますし、腕前もそう悪くはないと思います」
「っ……
アレックスさん、確かに今は一機でも戦力が欲しいというのは事実よ。
だけど…貴方のような他国の人間。 しかも、軍属でもない方には到底お貸しできないわ」
眉を跳ね上げ、不機嫌そうな低い声で応じたのは艦長のタリア。
立場上、艦の戦力管理については神経質にならざる終えないので、無理もない。
ましてや、よそ者に重要な作戦の一端を預けるほど、信頼も余裕もないのは当たり前であったろう。
しかし、彼はきっぱりと言ってのけた。 決定的な一言を。
「アレックス・ディノと言うのはオーブでの偽名です。
自分の本当の名は、アスラン・ザラ。 パトリック・ザラの息子です」
368 :
15/19:2005/12/15(木) 12:34:05 ID:???
――アスラン・ザラ。 かつてのザフトレッドであり、前議長であるパトリック・ザラの子息。
その名を聞いたクルーたちは、一気にざわめき始めた。 先ほどまで、息を詰めるように黙りこくっていたというのに。
『ふむ…
もしやとは思っていたが、やはりアスラン君だったか』
「オーブへ亡命する際に、名を変えました。
自分のことをご存知なのでしたら…議長、どうか自分を出撃させてください。
軍から離れているとはいえ、腕前はここのMSパイロットたちに負けない自信があります」
どうやら感づいていたらしいデュランダルは、思案するように顎元に手を当てながら呟く。
「もちろん、プラントへの他意はありません。
あくまで船団を守りたいという思いから、志願しています」
画面の向こうにいる男へと、凛とした姿勢を見せながらなおも自らの希望を口にするアスラン。
彼の姿を見て、その真摯さを感じ取ったカガリも、彼を弁護するように続いた。
「私からも頼む。 議長、艦長…」
「その熱意は分かったわ。 使える機体もある、だけど…」
二人から強く頼み込まれ、タリアは困り果てたように口ごもる。
例え、彼が過去の自軍の英雄だったとしても、十分な実力はあったとしても、そんな無理な要求は…――
『いいだろう、タリア。 私が許可しよう。 議長権限の特例としてね』
「っ!? 議長!」
369 :
16/19:2005/12/15(木) 12:34:42 ID:???
困惑していた彼女を救い上げた言葉は、大半の者が予想していた内容とは真逆だった。
肯定した議長へと、驚きを見せるタリア。
そんな彼女を落ち着かせるように、白面にやんわりと微笑を浮かべながらデュランダルは
『今、近辺の部隊にポイントへ向かうように指示を出したのだが、
すぐに向かえそうなのが、ジュール隊長が指揮するナスカ級二隻しか居らんのだよ。
それだけの部隊では、あの数の試験機相手に心もとない。 今は一機でも戦力が欲しい』
「ジュール隊…ジュールって、まさか」
「イザークか! それは心強いな!」
男の語る内容の中に出てきた、聞き覚えのある名前。
かつて、共に戦ったことのある人物の名前に、アスランとカガリは声を上げた。
アスランにいたっては、アカデミー時代の懐かしいライバルであり、戦友であった彼の名を聞き、
表情を明るくさせ、素直な喜びを見せていた。
『タリア。 彼の腕が確かなのは、君も聞き及んでいるだろう?
ここは一つ、ありがたく申し出を受けようじゃないか』
「…分かりました。 それが、議長の御意思であるのなら」
デュランダルの言葉に納得しつつも、己の感情や倫理観において納得できない彼女だったが、その決定に従う。
『では、ミネルバは至急、セレネの船団集結ポイントへ向かってくれ。
ジュール隊も急行させる。 途中で合流できることだろう』
「了解しました」
「ありがとうございます、議長」
「色々、無理を通してもらってすまない」
『いえいえ…こちらとしても、なんとしてでも避けたい事態でありますからな。
アスラン君。 君の熱意ある申し出に感謝する。
ザフトの英雄に数えられる君が、再び我らと共に戦ってくれるのだからな。 これほど心強いものはない。
その力で、なんとしてでも最悪の事態を阻止してくれ』
370 :
17/19:2005/12/15(木) 12:35:21 ID:???
議長との通信を終え、タリアからとりあえず問題のポイントに近づくまでは待機してください、と告げられ
二人は、新たな作戦を下され、慌しくなりはじめたブリッジから退出した。
ふ、と自然に漏れたのは緊張の緩んだ息か。 廊下の壁際を背に並ぶ二人。
「……お前なぁ、びっくりしたぞ」
ジロリ、隣の青年を呆れた横目で流し見るカガリ。
その視線に、ひるむように目を丸めた彼は、苦笑いながら話す。
「すまない。 あんな状況だったからな、相談してる余裕は無かったんだ」
「その場で思い立って、勢いで言ったのか。
まったく、お前はもっと思慮深いヤツだと思ってたんだがなぁ」
申し訳なさそうな様子の青年を見ながら、ふふと軽く笑い声を上げるカガリ。
先ほどまでの咎める態度から一転、愉快そうに。
「やっぱり、お前はMSパイロットが一番性に合っていたんだろうな。
守るべき対象と、鉄の手足を手に入れた途端に、随分と活き活きしてきたじゃないか」
「……否定しようがないな。 その通りだ。
人が死ぬかもしれないって時に、ただ見てるだけしか出来ないなんて…俺には耐えられない。
かと言って、俺がやれることなんてほんの少しもないんだ。 ただ、MSに乗ることだけで」
そう語るアスランの表情は、まるで泣き笑うかのように情けなく崩れていて。
彼の顔を、カガリはじっと見つめていたが、やがてぐしゃぐしゃと自分の頭を掻きながら、大仰に息をつく。
「無茶はするなよ」
「ああ、分かってる」
素っ気ないほど短い言葉。 その中に篭められた互いの万感。
言い交わした後、アスランはMSデッキへ行ってくると言い残し、カガリのそばを離れ、歩き去っていった。
壁に背を預けながら、その後姿を見送っていた彼女。
ふと、横手から向けられてくる視線の気配に気付き、そちらを見る。
「お前か。 そんなところに隠れていないで、出てきたらどうだ?」
投げかけられた言葉に、ビクリと身をすくませた視線の主。
やがて、観念したように通路の角から、そろりと顔を覗かせた。
371 :
18/19:2005/12/15(木) 12:36:39 ID:???
カガリを見ていた彼女、マユはレクルームから飛び出していった彼女らの言葉が気になって、ついてきていたのだ。
ブリッジに入った所までは確認していたのだが、その後に続いていいものかと考えあぐね、ずっと外で待っていた。
…しかも、何十分も経った後、ようやっと出てきた二人は、なんだかイイ雰囲気で言葉を交わしてたものだから
出るべきか、大人しく帰るべきか思案を巡らせていたその時に、カガリから声をかけられてしまった。
存在を見抜かれ、気まずそうな様子で出てきた少女を、無言で笑いながらカガリは手招く。
「もしかしたら、近いうちに戦闘が起きるかもしれない。 その時はよろしく頼む」
「……戦闘? 近いうちにって…何が起こるんですか?」
争いを予期したカガリの言葉に、そばに立つ少女は不安そうに尋ねる。
「私の予想が正しければ、暴走機体は月へ向かう地球からの移民船団を攻撃するかもしれない。
先ほど、議長にもその旨を伝え、阻止するためにミネルバを向かわせる許可を頂いた。
…こんな予想、外れていてくれたらありがたいんだがな」
カガリの語りは詳しい説明を省いてあったが、それでもその深刻さが伝わってくる内容で。
マユは固唾を呑んで、彼女の言葉に耳を傾ける。
「もしもだ。 仮に予想が当たっていて、船団が攻撃されようものならば…
再び、プラントと地球間で戦争が起きることは間違いないだろう」
「戦争……」
示された最悪の事態。 驚愕したマユは、一際強烈な衝撃を与えた単語を口にするだけで。
恐らく一切の誇張を含んでいないであろう、その話を語る娘の真剣な表情を見つめていた。
「大西洋連邦を中心とした、地球連合軍はすでに以前のレベル…いや、それ以上の力を有している。
そして、彼らのプラントへの憎悪もまた、風化していない。
彼らが望む戦争を起こすための要素は、あとは決定的な開戦理由のみだ。
民間人…しかも戦争で焼き出された難民を移住させる船団が、ザフトに攻撃されたりでもすれば…
もう、それは十分すぎる理由だろう?」
カガリの言葉の節々に、ちりばめられた連合の現状を示す内容。
マユはその全てに納得せざるおえなかった。
彼女の脳裏に蘇る、大規模な艦隊と二隻の超大型空母の映像。
ボギー1追撃戦の際に遭遇した、あれらから感じた印象が、まさにその通りだったからだ。
「そんなことだけは、絶対にやらせてはいけない…
だが、もう私は昔のようにMSで戦うわけにはいかないからな。 お前たちが頼りだ」
痛切さを含むカガリの言葉。 マユは、はいと答えながら深く頷きを返した。
372 :
19/19:2005/12/15(木) 12:37:18 ID:???
そのやり取りの後、二人の間に吹き込んでくる無言の空気。
お互いなにも語らず、ただ視線を合わすのみ。
そんな状況を先に破ったのは、呟くように小さなカガリの声だった。
「あの時、お前はアスハのせいで家族を失ったと言ってたな」
「…オノゴロを攻められたとき、皆で避難している途中に、MSの戦闘で巻き込まれたんです。
父と母は、身体の形も分からないぐらいにへし曲げられて、兄は右腕だけを残して姿を消してました…」
相手と真正面から向き合っているからだろうか。 あるいは、相手に対しての印象が変わったからなのだろうか。
以前、彼女へとがむしゃらに怒りをぶつけた時とは異なり、マユは静かな語調で語りはじめた。
「あの時…貴方たちがあんなに抵抗しなきゃ、みんな死ななかったのに。
あたしだけ残されるなんてことなかったのにっ…」
けれども、どうしても、
それを口にするたびに、あの瞬間を思い出すたびに、こみ上げてくる哀しみと怒り、嗚咽に言葉は乱れていく。
「私のっ…私の家族は、ウズミ・ナラ・アスハとあの青い翼のMS『フリーダム』に殺されたんです!」
悲鳴にも似た、慟哭交じりの少女の言葉。
涙をこらえるように顔をくしゃくしゃに引きつらせながらも、
目の縁に溜められたそれは、大きな雫となりほろほろと零れ落ちる。
そんな少女の言葉…特に、聞きなれていたMSの名を聞き、カガリは驚き目を丸める。
そして、連想して何かを思い出したのか…悲しげな表情を浮かべながら、口を開いた。
「確かに、あれは私たちの責任だ。
『カグヤ』の爆破による被害…いや、それだけじゃない。自分たちの力の無さが、それを招いた。
……だが、どうかお願いだ。父のことは責めないでくれ」
彼女の言葉の最後、震える声で紡がれたそれに、うつむいていたマユは彼女の顔を見た。
「父のやったこと全てを、肯定するわけじゃない。 昔、私もさんざん反発していたからな。
…確かに、お前には私たちを責める十分な権利がある。
責めならば私が受けよう。 だから、父を…故人を責めるのだけは勘弁してくれないか…」
悲しみに満ちた琥珀の瞳を、チラチラと光で揺らせているのは涙のせいなのだろうか。
マユが何か言おうと、口を開きかけたその時、遮るように警報が鳴り響いた。
『これより、本艦は暴走した試験機が現れると予想される、セレネ移民船団の集結ポイントへと急行する。
第二種戦闘配備、各員は所定の位置に着くように』
続いて、スピーカーから流れてきたタリアの声に、カガリは気を取り直すように一度頭を振ってみせた。
「早く戻ったほうがいいぞ。
ポイントまでの距離と、この艦の足を考えるとあまり余裕は無いだろうからな」
娘の促しにマユは大きく頷いて、MSデッキのある方向へと駆け出そうと踵を返した。
「…マユ!」
背中越しに投げかけられた呼びかけに振り向くと、
先ほどまでと打って変わって、凛とした表情を浮かべるカガリが、ニッと口の端を上げて笑っていた。
「無理はするな! お前とはまだ、話したいことが沢山あるからな!」
「…私だって、まだ言い足りないことがたくさんあるんだから!」
それは、受け取りようによっては憎まれ口であり、あるいは無事に帰還することを祈る言葉であり。
言葉を交わしたカガリは、相手の返答に満足するように笑った。
「その意気だ、死ぬなよ」
そう言い残し、カガリは再びブリッジへと入っていった。
閉ざされる自動ドアの向こうに、その後姿が隠されるまで見送っていたマユ。
パチン!と気合を入れるように両頬を軽く叩いてから、デッキへの道を走り出した。
「絶対に…戦争なんて起こさせない!」
374 :
あとがき:2005/12/15(木) 12:39:48 ID:???
数数え間違えてしまったorz
やっとアスランがしっかり動き始めてくれて安心した舞踏の人です。
以前、感想でも御指摘があった通り…自分でもちょっと情けないと思っていたのです。
そうは思っていても、脳内でしっかりキャラが動いてくれないと修正も出来ないものなのですが
今回は不器用ながらも自分なりに頑張ろうとしてる姿が書けたかなぁと思ってたり。
さてさて、これよりユニウスセブン落下事件とは違う展開になります。
ここからが、アニメの筋書きから離れて、舞踏独自の物語の始まりです。
今後の展開を見守っていただけるとこれ幸いにございます…
あ、それと。 ケイの閻魔帳には給料及びボーナス査定が記入してあります。
ネオの直属の上司となりますので、彼。 ネオはあとで悲鳴を上げることとなるでしょう(ぉ
お疲れ。
舞踏作者様GJ
すごい燃え展開です
舞踏スゴイな。MD開発に新規の移民団かw
初っ端からオリ展開ですっ飛ばしてるなw 今後どうなるのかまるで見えんw
ユニウス7落下ではない別展開か……いい感じだw
こういう展開はマジで予想できなかったです。
シナリオから大きく外れたオリ展開。大変でしょうがどうか頑張ってください。
379 :
Hina:2005/12/15(木) 16:09:00 ID:???
ほのぼの様、乙です
ブラスト・・・もとい疾風個人的に大好きです
舞踏様乙でした
燃えな展開に私も魅入られています、こんな風にかけたらなぁ
第2話はPCで書いた文をそのまま携帯から送ったからかなぁ猛省しています
現在執筆中の第3話はちょこっとオリジナル展開いれる予定です
え〜もうちょっとお待ちを(長文ほんとダメかも)
舞踏様乙です。
カガリが、カガリが名前負けせずに眩しい。
次のMS戦も楽しみにしています。
>>Hina様頑張れ
舞踏の人乙!本編と外れてるのにあまり違和感を感じないとこがスゴいな!
「ですとろーい!!あいあむちゃんぴおーん!!」
先ほどまで黒いストライクとブラストインパルスの戦っていた会場には・・・・・・。
マユinガイアがポーズをとりながらデンっと立っていた。
「はははは・・、どうすんのよ、これ。」
ボロボロの黒いストライクとブラストインパルス、そしてめちゃくちゃになった会場に呆然とするハイネ。
そのハイネをよそにゼロは被害総額の計算を始めているし、グレイシアは救護班の手配。
ジョーは整備班にストライクとインパルスのことを謝り倒してるし、カルマは議長に報告。
アキラは既にミネルバメンバー以外が避難した会場の後片付けに入っていた。
「よっと・・・。ふぅ・・。これでばか兄貴どもは成敗したか・・・。」
「成敗したかじゃない!!」
スパコーーンッと景気良く響くハリセンの音。
「いったぁ・・・・!何すんのよ三蔵・・じゃなくてレイ兄ちゃん!!」
「こっちのセリフだ!!マユ!!散々暴走して観客避難させなきゃいけない事態にしたのはどいつだ!!」
がぁっっと怒るレイ。
『うわぁ・、表面樹脂がボロボロ・・・、腕もフレームごと総交換かなぁ・・・。』
自分の状態を冷静に確認するシンハロ。微妙に紫電が腕から走っている。
「はい、これアンタの体。」
『お、サンキュー、ルナ。通信準備・・アクセス開始。』
ルナマリアからハロの体を渡され、そちらに移るシンハロ。
「ステラ!!どうしてマユにガイアを貸したりしたんだ!!」
スティングはステラを叱っていた。アウルはゲンの救出に向かっている。
「おい、そこまでしなくても・・・・。」
「ネオは黙っててくれ!!」
スティングおかん属性決定。ネオへたれ亭主決定。
「うぇーい・・。だって・・ゲンが・・・。」
「ゲンが?」
「ゲンが・・マユばっかりかまうから・・・・う・・・うぇ〜〜い!!」
そう言うとステラは泣きはじめてしまった・・・が。
「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!ごめんよステラぁぁぁあぁぁぁあぁぁっ!!」
キャプ翼風に言うならば、「アウルくんふっとばされたー!」。
ゲンは助けようとしたアウルをぶっとばしてステラの元に駆け寄り抱きつく。
「俺ってば自分のことばっか考えてステラのこと全然考えてなかった・・!ごめんよぉぉぉぉぉ!」
「うぇ・・・い・・ゲン・・・苦しい・・ギブ・・・ギブ・・・。」
ゲンが思いっきり抱きしめてるせいで、ステラの顔は真っ青だ。
「・・・いったい、これってどっちの勝ちなんだろう?」
メイリンは呟く。
「・・・・・・・レイの一人勝ち・・ってとこだな。」
はぁ、とアスランはため息をつき、マユ、シンハロ、さらにハイネを説教する
レイの姿を見た。
他職人の皆様、ご苦労様です。
読んで下さってる皆様、多大な感想ありがとうございました。
さて、続きです。
スエズ基地を巡る攻防で、オーブ艦隊は壊滅、アウルのアビスは倒され、カガリのストライクルージュも……。
対するミネルバの面々も、オレンジショルダー隊のザクは全て落とされ、ルナマリアも命を落とします。
双方共に深く傷ついた、その後のお話です……。
タケミカズチ轟沈、オーブ艦隊全滅、スエズ陥落、そしてカガリのMIA……。
その一報は、すぐに本国オーブにも届いた。
「ふざけるな! 探せ、カガリを探すんだよ! 行方不明なんて、そんな!」
「しかしユウナ様、もはやあの海域一帯はプラントの勢力圏に……」
「そんな言い訳、聞けるかッ! 連合軍は何をしている! あと、プラント側にも捜索要請だ! 早くッ!」
オーブ行政府、代表首長の執務室で。
ユウナは、余裕も何も全てかなぐり捨てて叫ぶ。公務の場では珍しい、感情剥き出しの顔。
もちろん彼の部下たちも、この状況を甘んじてなどいない。取り得る限りのルートを使い、各所に働きかける。
だがそれらの努力は、どう考えても絶望的で、実のある結果が得られるとはとても……。
そんな、あたふたと慌しい執務室に、悠然と入ってきた人影が1つ――
オーブ宰相、ウナト・エマ・セイラン。
「……騒ぐな、ユウナ。みっともない」
「父上!」
ウナトはユウナとは対照的に、余裕たっぷりの態度で、笑みさえ浮かべて息子をたしなめる。
「今回の件、実に不幸なことだな。送り出した時より覚悟はしていたが、こんな結果になるとは」
「何を……!」
「しかし、せめてスエズだけでも守りきって欲しかったものだな。大方、あの娘の采配ミスといったところか。
責任を追及しようにも、死んでしまったのでは仕方ないのォ」
「…………!!」
言葉とは裏腹に、ニヤケ顔を隠せぬウナト。ユウナは色を失って立ち上がる。
ウナトの態度は、誰がどう見ても……。
ユウナの中で、ある疑いが決定的なものになる。艦隊壊滅直前に飛び込んできた、1つの大疑惑。
「……父上。まさか貴方は、本当に、連合の……?!」
「ん? ああ、あのデュランダルのバカげた妄言のことか? あんなもの、言うだけならなんとでも言えるからなァ。
ただ、もしもだ。もし万が一、真実だとしても……我らがオーブは、連合と共に行くと決めたのだ。
あの名士の方々とお近づきになれたとしたら、実に素晴らしいことだと思わんかね?
それこそ――艦隊の1つや2つ、惜しくはないくらいだよ。
いやァ、アレが根も葉もない妄想に過ぎないのが残念なくらいだな、ハッハッハ!」
「…………」
わざとらしく笑うウナト。その態度は、もはや認めているようなものだ。
ウナト自身、ロゴスのメンバーだと。デュランダル議長の投げかけた疑惑が、真実だと。
そして今回のオーブ派遣艦隊全滅も、ロゴスのシナリオの内だということを……。
俯いたままのユウナの身体が、震える。その手が、机の上にあった「あるもの」を握り締める。
「……まぁこれで、いい加減バカな夢からも目が覚めたろう、ユウナ。
あんなバカ娘のことなど忘れ、これまで以上にオーブを繁栄させて行こうではないか。我らセイランの名の下に。
なぁに、気にすることはない。嫁なら良い娘を探してやる。あんな色気のない小娘よりも素晴らしい相手を、な。
そうだな――大西洋あたりの伝統ある良家のどこかから、誰か縁組の相手を探すとするか……」
「……父上」
「ん?」
1人ホクホクと今後のことを語っていたウナトは、ユウナの冷たい声にふと振り返る。
見上げて目にしたのは――凶刃のきらめき。
「なぁッ!!」
「あなただけは……あなただけはァァァ!!」
振り下ろされる手。
飛び散る鮮血。
その場に尻餅をつくウナトの身体。
ユウナは、その血走った目を見開き、凶器を手にしたまま――
「あなただけは……許せないィィィ!」
「な、なにを、ユウナ……!」
頭頂部から血を流し、腰を抜かして後ずさるウナトに、ユウナはなおもレターナイフを振り上げる。
紙を切るための道具とはいえ、逆手に握りしめ渾身の力で振り下ろせば、老人1人くらい軽く殺せる。
血のついた刃を振りかざし、本物の殺意を滲ませて、ユウナは実父にとどめを刺さんと――
「お、おやめ下さい、ユウナ様!」
「!! 離せ! こいつは、コイツだけはッ……!」
「だ、誰か! 誰か警備員を! 早く!」
ウナトに2撃目を加えんとしていたユウナは、その場にいた職員たちに羽交い絞めにされる。
どちらが正しいにせよ、彼らとて目の前で殺人を容認するわけにはいかない。ましてや、父殺しなど。
恐怖のあまり、腰を抜かしたまま失禁するウナト。数人がかりで組み付かれながら、なおも暴れるユウナ。
「カガリを……カガリを返せ! この人殺しがッ!
コイツだけは、この人だけは、ココで殺しておかないといけない人間なんだッ!」
「きゅ、救急車を! ウナト様のお手当てを!」
「――乱心! ユウナ様、御乱心!」
マユ ――隻腕の少女――
第十九話 『 凍てつく魂 』
――鉄条網を上部に抱く、無機質なフェンスに囲まれた空間。
その扉が押し開けられ、小銃を担いだ男たちが中に踏み込む。
「……大丈夫か! 助けに来たぞ!」
「あなた方は……?」
「ここに収容されているのは、ザフトの協力者の方々か? 誰か責任者かリーダーのような方は?」
スエズ基地の近くに作られていた、捕虜収容施設。
解放に来たザフトの歩兵たちを、みすぼらしい服を着せられた人々が呆然と見上げる。
この一角に収容されていたのは、今回の戦争を機に立ち上がった各地のレジスタンス。捕虜と言っても、微妙な立場。
守ってくれる者も、守ってくれる法もない彼らは、ある意味でザフトの正規兵よりも酷い扱いを受けていた。
ザフト兵の捕虜と違い捕虜交換の可能性もなく、連合の一大拠点であるスエズが落ちるとも思えず。
希望すら失い、正気さえ危うくなりかけていた者が少なくなかったのだ。
だから彼らは、解放されたのだ、という事実そのものがなかなか飲み込めず、ただただ呆然として。
ザフト兵に声をかけられた男も、無精髭がぼうぼうに伸びた顔で、言葉に詰まる。
「責任者と言われましても……。ここでは、あちこちの地域の者が一緒くたにされていますから」
「そうか――どうしたものかな。あなた自身はどちらの?」
「私は、ガルナハンで抵抗運動に参加していて、連合軍に」
「ガルナハン……ああ、ローエングリンゲートの」
「タンホイザーゲートが落ちた時に、逃げ遅れてしまって」
「で、ガルナハン地方の捕虜の、リーダー格の方は? 出身地別にまとまっていてくれるとやりやすいのですが」
ザフト兵たちも、この収容者たちの扱いは頭の痛いところである。
かなりの人数がいるから、とてもバラバラには処理できない。せめて地域ごとにまとめて扱いたいところであった。
「ああ、我々の組織の現在のリーダーは、連合に捕まらず脱出したはずですが……
今は亡き前リーダーの、娘さん。彼女が、この収容所に来てからは我々のまとめ役に。
まぁ、そのせいで連合の兵にも目をつけられ、酷いこともされていたようですが……。昨日も呼び出されて……」
「その娘はどこに?」
「確か……ああ、いたいた! ミス・コニール!」
無精髭の男は、壁際にもたれて座り込んでいる小柄な人影に声をかけたが、彼女は動こうとしない。
やむなく、兵士の方から彼女のところに歩み寄る。
そこに居たのは、まとめ役、と呼ぶには、あまりにも年若い少女だった。
「コニールさん……ですか?」
「………」
「ザフトです。助けに来ました。できれば、ガルナハンの皆さんを集めて頂けると有難いのですが……」
「………」
「……コニール、さん?」
声をかけられても、少女は虚ろな目のまま、虚空を見つめていて――。
明らかに、まともではなかった。
――以前の彼女を知っている者なら、その変わり様に驚いたことだろう。
後頭部にまとめ上げていた髪は、いまや乱れるままに肩にかかり。
への字に結ばれていた口元は、だらしなく開いて。
強気な視線を崩したことのなかった目には、意思の光が見えない。
その衣服は他の虜囚に比べても一際傷みが激しく、ところどころ破けてさえいて。
そこから覗く素肌には、痛々しくも生々しい傷跡も――
彼女が連合の兵士たちから「捕虜に対しては本来許されない」ような扱いを受けていたことは、一目瞭然だった。
その立場も、性格も、そして整った顔も。目立つ要素は山ほどある。
しかし、それにしたって、こんな少女に……。
「大丈夫ですか!? しっかりして下さい、今、救護班を呼びますから……」
「……ミネルバ、は?」
「は?」
「ミネルバは……来てるの?」
「あぁ――ミネルバなら、スエズ沖の海戦にも参加してたし、そろそろ入港しているはずですが――」
「……来て、くれたんだ……」
コニール・アルメタは、虚ろな表情で呟いて――
ザフトの兵は、彼女の言葉の意図が掴めず、首を傾げる。
コニールの目の端から、涙が一筋零れる。そのまま、彼女は壊れた表情のまま、笑い出す。
「アハハ……来て、くれたんだ……。
シンたちが、また、助けに来てくれたんだ……! アハ、アハハ……!」
困り果てるザフト兵を、まるきり無視したまま。
コニールは、心身に深い傷を負った少女は、涙を流しながら笑い続ける――
スエズ基地に、ミネルバが入港する。
――満身創痍とは、まさにこのことだ。ムラサメ3機の特攻と、フリーダムやカオスの攻撃によるダメージ。
外に出したまま、収納することもできなくなったタンホイザーからは、今なお一筋の煙が上がっている。
強引な砲撃によって、回路の一部が破損しているのだ。
「……よく、あんな状態で撃てたよなァ」
「陽電子砲を撃ったのは、カミカゼ喰らった直後だったらしいぜ」
「ミネルバの艦長、変なウワサもあったけど。でもこりゃ本物だな」
「変なウワサって?」
「なんか、新鋭戦艦の艦長の座を、寝技で取ったって。でもコレ見ちゃうと、やっぱ選ばれたのは実力なんだな」
「何を今さら! ユニウスセブンの時とローエングリンゲート突破で、みんなもう分かってるって」
先行して基地を制圧した者たちはミネルバを見上げ、感嘆する。ま、一部下世話な噂話も混じっているようだったが。
ミネルバの接岸した場所は、ちょうど以前タケミカズチが接岸していた場所だったが、そのことを知る者はいない。
その、ミネルバの格納庫の中では……整備兵たちが、傷ついた艦載MSを前に困り果てていた。
「インパルス、海水に浸かっちまったからなぁ。洗浄が大変だ」
「グフの方もスレイヤーウィップの交換しとかなきゃ。アレ、整備面倒なんだよなァ」
「それよりザクだよ。無傷なのが1機もない」
「とはいえ、すぐに動けるパイロットはレイだけだし、とりあえずそこから……」
言いかけて、さすがのヨウランも暗い顔になる。同じような会話を、スエズ戦の直前にもしたからだ。
あの時、寝る間も惜しんでルナマリアのザクも完璧な状態に仕上げておけば、おそらくは――
と、そんな整備兵たちのところに、歩いてくる人影が1つ。何かを片手にブラ下げた、シン・アスカだった。
今まで話していた話題が話題なだけに、思わず彼らは言葉を失って。
「……すまないな。インパルス、塩水まみれにしちまって」
「い、いや、仕方ないさ。あのアビスをついに倒せたことだけでも、すごい戦果だよ」
「ああ……。あれは敵が弱っていただけだから。自慢にもなりゃしない。
それより――忙しいところ悪いんだが、1つ追加で仕事を頼まれてくれないか?」
ヴィーノの必死の賞賛にも、シンはニコリともせず。彼は1つのヘルメットを差し出す。
MSパイロット用の、赤い、ヘルメット。見覚えのあるその色に、整備兵たちはみな息を飲む。
「それは……!」
「こいつを、俺に合わせて設定変えておいてくれないか? 頭のサイズ自体は、問題ないはずだ。
前に俺が使っていたヘルメットは、捨てておいてくれ」
そう、それは――ルナマリア・ホークが使っていた、彼女専用のパイロットスーツの、ヘルメットだった。
亡き彼女の遺品と共に戦う――そのシンの静かな覚悟に、彼らは圧倒される。差し出されたそれを、黙って受け取る。
「もう、ミラーバイザーで顔を隠す必要もない。
『シンの戦闘中の顔が怖い』って言ってた奴は、もう、居ないから……!」
「……艦を、降りる?」
「はい……。ダメでしょうか……?」
ミネルバ艦長タリア・グラディスは、艦長室を訪ねてきたメイリン・ホークの言葉に、眉を寄せた。
眼下の港では、ミネルバから続々運び出される黒い袋。
ムラサメのカミカゼ・アタックで犠牲になったクルーたちの、遺体だった。
「軍を辞めるのね?」
「はい……。あたしは、もう、戦えません……。姉が、あんなことになっちゃって……」
「…………」
いつも元気で明るく、ブリッジ要員のムードメーカーだったメイリン。
その彼女が、俯いて身を震わせている。さしものタリアも、かける言葉が見つからない。
「姉は……あたしと違って、優秀でした。運動も勉強も、よくできて。
同じ両親から生まれた第二世代なんだから、遺伝子的には条件変わらないハズなんですけど……なんでですかね」
「…………」
「スタイルだって、良かったんですよ。あの人あたしより筋肉ついてたのに、ウェストとかはあたしより細くて。
アカデミーに入ってからだって、なんだかんだ言ってあっさり赤服ですから。
あたしなんて、早々にパイロットの道は諦めて、通信科に鞍替えしなきゃいけなかったのに」
「…………」
「連合と戦う動機なんて、お姉ちゃんにもなかったはずなのに。
お姉ちゃんったら、あたしには学校行け、学校行けってうるさくて。あたし、勉強なんてできないのに。
お姉ちゃんって、やれば何でもできちゃう人だったから。だから、何にも執着なかったんですよ、きっと……
でも何も、あんな無理しなくたって……! せめて、自分の命くらい、もっと大事に……!」
問われもせずに、メイリンは姉の思い出を語り始め……やがて、堪えきれずに、泣き出してしまう。
タリアはそんな彼女を、優しく抱きしめる。ポンポン、と優しく背中を叩く。
「辛いわね……。艦のクルーも、大勢亡くなったし……。失ったものが、多すぎるわね……」
「…………」
「メイリンの除隊、私からも上層部に働きかけてみましょう。しばらくは修理のために動けないですしね。
その間に、補充人員を要請して、仕事の引継ぎをしてもらって……それからで、いいかしら?」
「はい……すいません……」
「貴女が謝ることはないわ。謝らねばならないのは、部下を守りきれなかった、私の方よ」
泣き続けるメイリンを抱いたまま、タリアは呟く。
それは、自分の子供のように愛しく思っていた亡きクルーたちの魂に向ける、誓いの言葉。
「貴方たちの犠牲は、無駄にはしないわ。早く終らせないとね、こんな戦争は……!」
その緊急番組は、世界中の街に流されていた。
艦隊壊滅のニュースで揺れるオーブの、街頭モニターでも――
『……本日の討論番組、ゲストをお招きしております。
デュランダル議長の主張の中でも、秘密結社『ロゴス』の一員と名指しされたお1人。
大西洋広域放送など数社のオーナーでいらっしゃる、ロード・ジブリールさんです』
『どうも、ロード・ジブリールだ』
『さてジブリールさん、まずはあの議長の演説、どうご覧になりましたか?』
『全くもってとんでもない話ですな。旧世紀の荒唐無稽な陰謀論を思い出させます。
『イルミナティ』や『フリーメーソン』、あるいは『ユダヤの見えざる帝国』などなど。
そして今度は、『ロゴス』……でしたか? 全く、バカらしい』
『は、はぁ』
ザフト兵たちが渋面で見上げる、スエズ基地の食堂のモニターでも――
『……しかし、作り話にしても、よくできている。私自身が当事者でなければ、作者を褒めたいくらいですよ。
デュランダル議長は政治家よりも小説家でも目指された方が良さそうですがね。いや、実に上手い』
『と、言いますと?』
『確かにあそこに並べられた面々は、政策など多くの面において近い意見を持つ者ばかりなのですよ。
実際、あの何人かとは、個人的な付き合いもあります。商業上の取り引きのある者もいます。
私も含め、議会にロビイストを送っているものも少なくないですしね。
ある意味では、我々が連合を動かしている、と言う表現も、間違ってはいないでしょう』
『で、でも、だとしたら、あれは真実と同じことになりはしませんか……?』
『……キミはバカか?』
『は!?』
雪の舞い散る、ヨーロッパのとある都市でも――
『あの議長の発言で問題なのは、『ロゴスが連合の全てを操っている』という部分だろう?!
確かに私はロビイストを使って働きかけてはいるがね、それらは法の範囲内だし、全てを操れているわけでもない。
法で許される行為さえも問題視し、疑惑でもって疑心暗鬼を煽る、議長の手口が分からんのかね?』
『はッ、はぁ……』
『あのリストに出ていたメンバーだってね、そりゃ大方の意見は一致しているが、対立している部分もあるのだ。
例えばアズラエル財団とは軍事予算の配分で意見を異にしているし、例の議員とはエネルギー問題で対立した。
しかしそういう対立した意見をぶつけ合い、議論をもって最善の策を探るのが民主主義だろうに。
それこそ、プラントの方が歪んでいるよ。評議会などを置いていても、あれは事実上議長の専制体制だろう!?』
『あ、あの、ちょっと、ジブリールさん……』
『奴らには未来がない。政治形態的にも、そして出生率の問題においてもだ。
この戦争の大元の根っこを探るならば、行き着くのはプラントという歪んだ社会の存在そのものだよ!』
『……あッ、すいません、そろそろこの辺で、一旦CMです。
CM終了後、ジブリールさんも交え、『ロゴス』疑惑について徹底討論を……』
――不意打ちのように殴りつけた、デュランダルのロゴス疑惑。
ジブリールたちは、そしてロゴスの側は、それに対して真正面から反撃を開始したのだった。
そして、その効果は、じわじわと、じわじわと――
「……ご苦労だったね、アスラン君。キミには辛い戦いをさせてしまったようだ」
「いえ……私自身が、選んだ道ですから」
今やザフトのものとなった、スエズ基地。
ザフトの手による修繕と改造の進むこの地に、今なお地上に滞在していたデュランダル議長が訪れていた。
かつて、マユとジブリールが対面したその部屋で、顔を合わせていたのは呼び出されたアスラン・ザラ。
「まったく、早くこんな戦争は終らせてしまいたいものだね。
そして、みんなが幸せに暮らせる、戦争のない世界を作らねば」
「はい……」
「ついては、アスラン君。キミに、渡したいものがある」
デュランダルは立ち上がると、小さなバッジのようなものを差し出した。
その意味を理解したアスランは、驚きを隠せない。
「これは……!」
「特務隊『フェイス』の証だよ。私からの信頼の証として、これを贈りたい。
これでキミは、ザフト内部でのかなりの裁量権を与えられ、自己の判断で自由に行動することができる」
「…………」
「キミが勲章や名誉のために戦っているわけでないことは、百も承知している。
だが軍という組織には、他に信頼や期待を形に現す手段がないのでね」
「…………」
「現在、キミが乗るに相応しい、ザフトの看板ともなりうるMSも、新たに建造中だ。
総合性能ではセイバーをも凌ぐであろう機体だよ。
キミには、これから先も頑張って欲しいのだ。一日でも早い、戦争の終結のために」
「…………」
「受け取って、もらえるね?」
「…………」
アスランは、しばらくその羽を模したマークを見つ、迷いの色を見せていた。
思い出されるのは、2年前の自分。父から特別任務を命じられ、ラクス・クラインに銃を向け――
そうした自分を完全否定し、ザフトに、父に銃を向けた自分自身。
耳に蘇るのは、ラクス・クラインの厳しい言葉。
『アスランが信じて戦うものは何ですか?!
いただいた勲章ですか? お父様の命令ですか?』
が、しかし……
アスランは、強い意志の篭った目で議長を見つめて。
「私が信じて戦うのは、私自身の信じる正義と未来です。
そして、それに最も近い位置にあるのが、議長、あなたの計画……。ならば。
アスラン・ザラ。つつしんでフェイスへの任命、お受け致します」
「……アスラン・ザラをフェイスに、ですか?」
「ああ。彼はもう、私を裏切ることもあるまい。ならば自由に動いてもらった方が良い。
それよりベリーニ、どうかねそちらの状況は?」
アスランと入れ替わりに部屋に入ってきたのは、縦ロールを揺らした金髪の娘。白衣姿。
そう、以前ミネルバに同乗してロドニアのラボに向かった研究者、ヘンリエッタ・ベリーニだった。
「丁度いい具合の『材料』が多数手に入りました。わざわざスエズにまで来た甲斐があったというものです。
早速、遺伝子検査を行い、適性のある候補を絞り込みます」
「いつ頃から第一陣の実験に取り掛かれそうかね?」
「サンプルたちも概ね協力的ですので、そうですね……1週間以内に、最初の報告ができるかと」
「早いね」
「ただし、成功率については未知数ですよ。失敗が多数でることも御覚悟願います」
「ふむ。その辺りは仕方ないね。キミたちも経験がないわけだから」
何やら恐るべき会話を、無造作に交わす2人。
その場を辞すベリーニを見送って、デュランダルは1人ニヤリと笑う。
「これで――『デスティニープラン』が本格的に始められるな。
ロゴス問題など、そのための時間稼ぎの一手に過ぎない。
せいぜい、ムキになって反論を続けていてくれたまえ、ジブリール……!」
修繕作業の進むミネルバ――から少し離れた、小さな広場。
運河を見渡せるそこは、以前マユとスティングたちが言葉を交わした場所だが、もちろんそれを知る者はいない。
「……そうか、アスランも今日からフェイスか。俺と一緒だな。
ま、フェイス特権なんて、持っててもほとんど使ったことなんてねーけどよ」
「ハイネは、どうでした? ゼロと、グレイシアの様子は」
「あいつらは――どちらも峠は越えたそうだが、まだ意識が戻らない。前線に復帰できるかどうかも怪しいな」
アスランは議長の所から、ハイネは病院から、それぞれミネルバに戻る途中で出くわした2人。
広場の片隅にあった自販機でコーヒーを買い、啜りながら、2人で運河を眺める。
戦いを恐れてなのか、運河を行く船はまだない。いずれ、親プラント勢力の商船が行き交うことになるのだろう。
「これで『ハイネ隊』も俺だけか……。グレイシアなんて2度目だぜ。あいつらに病院送りにされるのは」
「そういえば、3回も戦っているんでしたね。ミーアの誘拐騒ぎの時と、ガルナハンと」
「ガルナハンの時は、ゼロとグレイシアはまだ病院だった。治ったと思った途端に、これだものな」
ハイネの笑いには、しかし普段の彼の底抜けの明るさはなかった。無理もあるまい、とアスランも思う。
「……いい加減、終わりにしたいもんだな。こんなことは」
「全くです。こんな思いをするのは――俺たちが、最後でいい」
――ミネルバ、艦内。
居住ブロックの一室、暗い部屋の中で端末に向かう人物がいた。金髪の青年、レイ・ザ・バレルである。
「……ん? 何やってんだ、レイ?」
「ああ、シンか」
同室のシンが、部屋に帰ってくるなり不審な声を上げる。レイは、幾分柔らかい顔つきで答える。
「これまでの戦闘の、データ分析をしている」
「フリーダムか?」
「いや、ウィンダムの方だ。あの紫のやつさ」
レイの手元のモニターには、確かに赤紫色のウィンダムの戦闘中の映像が映っていた。
解析ソフトが分析を進め、その動きの特徴などを抽出していく。
「数値だけを見た限りでは、強くはあるが、そこまで苦戦する相手とも思えぬのだけどもな――
やはり、数値化しづらい乗り手同士の相性の問題か」
「相性?」
「どうもコイツとは、縁があるようでな。互いに手の内が予想できてしまって、千日手になってしまう」
「ふぅん……」
いまいち納得できないように頷いたシン。彼はモニタに顔を近づけ、解析されたデータを読む。
確かにエースの名に恥じぬ強敵ではあるが……それでも、延々膠着するような相手にも見えない。
「相性か。そういう意味じゃ、俺とフリーダムと似たようなものか」
「シンと……フリーダム?」
「互いに噛み合い過ぎるって言うか……レイとウィンダムみたいに、乗り手同士の問題かもな。
ソード装備で戦ったとしても、どうなることやら」
2人の頭の中に、これまでの戦いが浮かぶ。
フォース装備で戦った、カーペンタリア湾での短すぎる一戦。ブラスト装備で戦った、ロドニアのラボでの砲撃戦。
ソードシルエットで挑んだ戦いはないが、フリーダムの接近戦ならスエズ沖での対ハイネ隊戦が参考になる。
それらを踏まえた上で、シンは冷静に判断する。
かつて「狂犬」「狂戦士」などと呼ばれた彼には珍しい、冷え切った目で。相手を屠るための最善の策を探す。
「出来れば俺自身の手で討ちたい相手だが……悔しいが、1対1じゃ、決着つけられる気がしない。
誰かの援護が得られれば良いが、そんな戦力に余裕があるとは限らないしな――」
「――じゃあ、交換するか?」
「交換?」
「俺の敵、相性の合い過ぎるウィンダムと、シンの敵、相性の合い過ぎるフリーダムの交換だ。
あの2機が出てきたら、互いの相手を交換するんだ」
レイは真顔で提案する。シンも、真剣にその提案を検討する。
「う〜ん……俺がウィンダムを相手するのは、構わないぜ。
けれどレイ、大丈夫か? レイの腕は信頼しているけど、ザクでフリーダムを相手にするのは……」
「確かにな。機体性能という点では、少し厳しい相手だ。だが――」
「――なら、俺たちも仲間に加えてくれないか?」
レイの言葉は、廊下の方から聞こえてきた男の声に遮られた。
レイとシンがはッと振り返れば――戸が開き、入ってくる2人の赤服の男たち。アスランとハイネだった。
「――盗み聞きしてたんですか?!」
「聞かれて困る話だったのか? なら、もうちょっと小声でやれよ♪ 廊下まで聞こえてたぜ。
ウィンダムに、フリーダムか……俺も戦ったことあるけど、ありゃ強いよなァ。助けは多い方が良いだろ?」
シンの厳しい視線にも、ハイネは笑って肩をすくめるだけ。一方のアスランは、レイの端末の画面を覗き込む。
「確かにフリーダムの相手は、ザクファントムでは厳しいな。なら、俺が受け持とう」
「アスランが?」
「セイバーなら、速度も火力も、あれに対抗できるだけのスペックがある。
それに、フリーダムのパイロットとは、面識もあるしな。彼女には、聞いてみたいこともある」
アスランも真剣だ。思い出すのは、クサナギに乗っていたあの少女。
家出中にフリーダムに乗ることになったと言っていた、セイランの娘――
「代わりにと言ってはなんだが、カオスをなんとかしてくれないか? あの部隊が相手ならカオスもいるはずだ。
セイバーとカオスは、機体の特性が似過ぎている。どちらかのバッテリーが切れるまで、勝敗がつきそうにない」
「なるほど、カオスか。まともに戦ったことはなかったが、アレの機動兵装ポッドは『気になって』はいた」
「俺は? 俺のグフは、どれを相手にすればいい?」
「カオスは接近戦も侮れない。あの足のクローは強力でトリッキーだぜ。ありゃハイネが適任なんじゃねーの?」
話しながら、4人の考えがまとまってくる。4人ともアカデミーを1番2番で卒業した秀才揃いなのだ。
誰が誰を落とす、などということに拘らなければ、自然と全員が最適解に辿りつく。
4人の想いが、共通の因縁の相手を前に、一致する。
「じゃあ、まとめるぞ――次にもし、あの3機、フリーダム・カオス・ウィンダムと戦うことになったら、だ。
フリーダムを抑えるのは、俺のセイバー。カオスに対しては、前衛ハイネ、後衛レイの2人掛りで挑む。
ウィンダムは装備したストライカーパックを見た上で、シンのインパルスが対応する。必要なら装備を交換する。
各自、少なくとも倒されないよう場を持たせ、敵を倒した者は随時仲間の援護に加わる――ってとこか。
もしタリア艦長が文句をつけてきたとしても、大丈夫だ。俺とハイネの『フェイス特権』で押し切れる」
「……あれ? アスラン、いつのまにそんなモノを」
「なんだシン、気付かなかったのか? 見れば分かるじゃないか」
「議長がな。ついさっき、任命してくれたんだよ」
アスランの言葉に、ようやくシンはそのバッジに気がついて。その驚く様子が、ちょっと可笑しくて。
暗い部屋に、4人の笑い声が響く。
それは、痛みを堪えつつ、痛みを忘れるために絞り出したような、そんな笑いだったが――それでも、笑うのだった。
――街には、雪が舞っていた。
灰色の空の下、場違いに派手なピンク色の横断幕が、風になびく。
人気の絶えた通りの上に渡された横断幕には、『ラクス・クライン コンサート!』の文字。
と、唐突に、その横断幕が、閃光に引き裂かれる。ビーム兵器の射撃だ。
一瞬遅れて、流れ弾が着弾したビルが爆発し、激しい振動が伝わってくる。舞い散る粉塵。
途中で断ち切られた横断幕が、ユラユラと舞いながら、地面に落ちる。
白い雪の上に垂れ下がった、桃色の横断幕。
その横断幕を踏みつけたのは――急ぎ後退してきた、黒と紫のMSだった。
十字の形に切られたモノアイスリットの中で、紅い単眼が光る。肩に白抜きで刻まれた機体番号は「003」。
「……ちぃッ! ありゃ反則だろッ!」
ザフトの重MS・ドムトルーパーの中で毒づいていたのは、隻眼の女戦士、ヒルダ・ハーケン。
見る者にキツい印象を与えるその顔は、しかし今は隠しきれない焦りを滲ませている。
「マーズ! ヘルベルト! 聞こえていたら応答しな! おい!
……ったく、ラクス様のご無事も確認できないってのに!」
斜め上方から、ビームが降り注ぐ。雨のように、降り注ぐ。ヒルダは苛立ちながらも、慌てて避ける。
ドムトルーパーの足がホバーによって浮き上がり、滑るように後方に下がる。
後退しながら、その手に持ったバズーカ状の武器、2つの砲口を持つギガランチャーを構え、撃ち放つが……
その攻撃は、虚空で光る壁に遮られ、虚しく爆発する。
先ほどから何度やっても同じ結果。何をやっても傷つけられぬ相手。ヒルダは忌々しそうに舌打ちをする。
東欧の、伝統ある落ち着いた街並みの向こう。光の壁で身を守り、無数のビームを撃ち放っていたのは……
MSから見ても、見上げるような怪物。巨大な円盤から2本の脚が生えたようなシルエット――
GFAS−X1『デストロイ』。
連合が計画を前倒しして実戦投入した、巨大兵器だった。
ザフト側は――いささか、調子に乗りすぎていたのだ。
スエズ基地の攻略成功、そしてロゴス疑惑による連合側の動揺。
それにつけ込んで、一気に攻勢をかけたまでは良かったのだが。
連合側が反撃体勢を整え、ロゴス疑惑に対しても反論が始まると、当初の優位はすぐに消えうせて――
ここ、ヨーロッパでも。
ザフトは当初の計画通り、支配地域を拡大させ、大西洋連邦とユーラシア連邦の連携の分断を図ったのだが……
目先の勝利に酔い、支援を求めるレジスタンスの口車に乗って、戦線を拡大し過ぎてしまったのだった。
その勢力圏は黒海沿岸から東欧、そして北海沿岸にまで到達していたが、その分、戦線は延々伸びきって。
そして、そんな脆弱な態勢になってしまったザフトに、連合は東西から挟み撃ちにするように襲い掛かった。
元々、連合の体制に不満ある住民を抱えていた地域である。地元の人間の多くも、ザフトと共に抵抗した。
しかし、頑強な抵抗に、連合軍側は、街もろともその排除にかかって――!
ちょうど、ラクス・クラインがコンサートのために訪れていた、この街にも。
前線からは距離のある街だから、安全だろう――そんなザフト側の思い込みを嘲笑うように。
連合軍側は、ごく少数の部隊による急襲をかけて。
圧倒的な破壊力を誇る巨大な破壊神、デストロイを前に、街の防衛隊は一瞬にして総崩れになってしまった。
なおも生き残りが抵抗しているのか、あちこちで散発的な砲火が上がる。
ラクス直属の護衛隊長であるヒルダも、歌姫たちも見失い、仲間たちともはぐれて。ただ逃げるだけで精一杯。
しかしこのまま逃げ出してしまうわけにもいかない。彼女の立場上、最後の最後まで、諦めるわけには――
「ラクス様! ラクス様はどちらに!」
破壊されていく街の中を駆け、掠めただけで吹き飛びそうな強烈なビームを避けながら、ヒルダは叫ぶ。
街の建物は次々になぎ倒され、おそらく逃げ遅れた市民も犠牲になっているのだろうが、気にする余裕もない。
むしろ積極的にビルディングを盾にしながら、仲間を探して街を走る。
と――ヒルダは、ふと遠くに1機のMSを見つけ、一瞬動きを止めた。
すぐさま身を翻し、その、灰色の雪景色の中では一際目立つMSに駆け寄る。
「そこのザク! 誰が乗っている! ラクス様はご無事か!」
「あ……! ひ、ヒルダ、さん!」
「……ら、ラクス、様!?」
ピンク色の、式典用のザクウォーリア。派手なペイントの成された、コンサート用のMS。
必死に攻撃を避け続けるその機体に近づいたヒルダは、通信画面の向こうに映った相手に、目を丸くする。
画面の向こう、操縦桿を握っていたのは、他ならぬ護衛対象、ステージ衣装姿の歌姫ラクス・クライン――
「ま……まさかラクス様ご自身が乗っていられるのですか!?」
「り、リハーサル中に襲われて、と、咄嗟に、開いてたコクピットに……!
コンサートスタッフのみんなとも、はぐれちゃって、あたし、どうしたらいいか分からなくて……!
良かった、ヒルダさんに会えて……!」
「いや……それは良いのですが、しかし……」
まさか、ラクス自身にMSの操縦ができるとは思っていなかったヒルダは、言葉もない。
しかもこうして見た限りでは、少なくともその回避技術は正規のパイロット並。下手すればエース級と言ってもいい。
そうやって喋っている間にも、デストロイからの攻撃は次々に飛んでくるが、桃色のザクは的確に避けてゆく。
ビーム突撃銃を構え、飛んできた大型ミサイルさえ打ち落として見せる。これには流石のヒルダも、ただ唖然。
「ヒルダ隊長! こちらでしたか!」
「お前達! 生きてたか!」
やはり目立つ桃色のザクに引かれて来たのか、街の大通りの向こうからドムトルーパーが3機、近づいてきた。
肩に刻まれた番号は、それぞれ「005」「006」「008」。ヒルダの隊の者たちだ。
001、002は過去の戦いで戦死した前隊長のもので、永久欠番。003から009までの7機編成の部隊。
もっとも、当初からのオリジナルメンバーは今やヒルダを含めた3人だけで、後の4人は最近になって入った補充だ。
後から入ったとはいえ、その腕前もチームワークも、元からのメンバーに勝るとも劣らない。
「ロイは殺られました。マーズとヘルベルトは、脱出経路を確保するため、先に街外れの方に」
「分かった。ラクス様はコンサート用のザクに乗っていらっしゃる! 撤退を支援しろ!」
「はッ!」
短い会話だけで、彼らにとっては十分だった。何を差し置いてもラクス・クラインをこの場から脱出させるのだ。
すぐさま4機のドムは、桃色のザクを囲むようにして、街外れに向かって移動を開始する。
だが――敵である黒い怪物は、その撤退を許してはくれないようだった。
撃破され、火花を上げているバクゥの残骸を踏み潰し、彼らの方に向かって一歩踏み出す。
円盤状の上体が、大きく後方に向かって起き上がり、腰から下も回転して――
「な――変形する!?」
「も、モビルスーツだったのか!?」
そこに現れたのは――漆黒の、巨大MS。円盤状のパーツを背負った、恐るべき巨人。
ガンダムタイプのツインアイを赤く光らせて、無造作にその手を彼らに向ける。5本の指先に光る銃口。
先ほどまでよりも数は減ったが、正確さを増したビームが、彼らに向けて襲い掛かる。攻撃をしながら、歩み寄る。
重心が上がって足の長さも伸びて、歩行の速度も増したようだ。
素早く機体特性の変化を見て取ったヒルダは、改めて毒づく。
「さっきまでは強襲形態で、今度は対MS戦用ってことかい!?
くそッ、何があってもアタシらを殺す気かい! こっちにはラクス様も居るってのに!」
「……隊長! 我々は、アレに攻撃を仕掛けます! 隊長はラクス様をお守りして、ヘルベルトたちの所へ!」
「!!」
ドムトルーパー5番機の言葉に、ヒルダは顔色を変える。
この状況で、あの巨大MSへ攻撃を仕掛ける――そして、ヒルダたちに脱出を促す――
その意味の分からぬ、ヒルダではない。通常なら、素直に頷くことなど有り得ぬ提案。
だが、彼女たちには守らねばならないものがあった。自分の命より、仲間の命より大事な存在があった。
ヒルダは傍らの桃色のザクを一瞥すると、奥歯を噛み締め、頷いた。
「……分かった。
死ぬなとは言わないが、せめて無駄死にはしないでおくれよ! ラクス様のことは任せておきな!
先に地獄で待ってておくれ! アタシも、いずれソッチに行くからさ!」
「へへッ、そう簡単に死ぬつもりもありませんでさァ。気が早すぎますぜ」
「隊長の下につくことができて、楽しかったですよ」
「GOOD LUCK!」
「ちょ、ちょっと、みなさん!?」
「さぁ――ラクス様はこちらに!」
互いに笑いあうヒルダ隊の面々に、歌姫は信じられないといった表情を見せて。
そんな彼女の桃色のザクを、ヒルダのドムが引きずるようにして走りだす。今まで以上のスピード。
他の3機は、その場に留まって……足音も荒く迫り来る黒い巨体を見上げる。
「……さぁて、やりますか。一世一代の、鬼退治」
「あの光の防壁は、どーやらコッチの『ソリドゥス・フルゴール』と似たようなモンみたいだな」
「なら、決まりだ。かい潜ってその内側から叩けばいい。『ジェットストリームアタック』、行くぞ!」
残された3機のドムトルーパーが、目の前の巨人に向け、雪を蹴立てて一直線に突撃を開始する。
先頭の5番機の左腕に、光る板が出現する。ザフトが初めて実用化に漕ぎつけたビームシールドだ。
5号機は右手にビームサーベルを抜き、6号機と8号機はギガランチャーを構えて。真っ直ぐ突進する。
ドムトルーパーたちの胸元から、赤い霧のような、きらめく粒子が放出されて……
デストロイの攻撃を、赤く光る霧が拡散させる。霧を抜けたビームも、ビームシールドに止められドムには届かない。
攻性防御フィールド、スクリーミングニンバス。ビームシールド、ソリドゥス・フルゴール。
この2大防御兵器を使用して相手の攻撃を受け流しつつ、正面から突撃するジェットストリームアタック。
隊のオリジナルメンバー、ヒルダ・マーズ・ヘルベルトの3人が完成させた必勝戦術だ。
本来は移動しながら敵の隊列に突っ込み、撹乱するために使われるもの。しかし、今は。
「よぉし! あの化け物の攻撃も、なんとか防げるじゃねぇか!」
「このまま突っ込んで、股ぐらの真下からぶっ放すぞ!」
「デカブツの足、ぶった斬って転がしてやらぁ!」
デストロイの攻撃を凌いだことで、意気込む3人。3機はさらに速度を速め――
しかし、彼らの攻撃がデストロイに届くことはなかった。
縦一直線に並んだ3機、その真横から、不意に無数の閃光が襲い掛かったのだ。
咄嗟に陣形を崩し、散らばって回避する3人。空振りして、古い街並みに突き刺さる5条の光。
彼らは振り向いて、その姿を見る。
舞い散る雪の中、蒼い10枚の翼を広げた、死の天使――
オーブの守護神とも謳われた、白いMS。
ZGMF−X10A、フリーダム。
フリーダムの背後には、カオス、ウィンダム、そして4機のムラサメの姿もあった。
比較的接近戦に弱いデストロイにつけられた、最強の護衛。電撃的な急襲を可能にした、足の速い少数精鋭部隊――
「てめぇら! オーブの残党が、なんでこんなとこで!」
「畜生、あっちが先だ!」
「元々そのフリーダム、俺たちザフトのモンだァな。手の内は全部割れてるんだよ!」
思わぬ妨害にいきり立つヒルダ隊の3人だったが、そこは流石に腕の良いプロ集団。すぐに気持ちを切り替える。
どうやらあの護衛部隊を倒さないと、少なくとも数を減らさないと、デストロイには近づくこともできないらしい。
ならば、まずはこの護衛たちから――!
彼らは改めて狙いをフリーダムに定めると、ジェットストリームアタックの体勢に入る。
だが――そんな3機の素早い切り替えさえも、なお、今のフリーダムの前には遅過ぎるものだった。
突撃を開始した3機に向け、フリーダムの方から逆に突進する。防御フィールドを展開する間もなく、距離が詰まる。
「なッ! ちぃッ!」
先頭の5番機は、咄嗟に横薙ぎにビームサーベルを振るうが、フリーダムはフワリ、と上方に浮いて避けて。
ただ避けるだけでなく、同時に5番機の頭に足を乗せ、思いっきり大地に叩きつける。
5番機はヘッドスライディングのような格好で、雪の積もった道路の上に転がされ、滑らされる。
頭から大きな古いビルに突っ込んで、そのまま瓦礫の下敷きになる。
トドメとばかりに、ウィンダムとカオスが動けぬドムトルーパーをビームライフルで打ち抜く。
「つ、潰された!? …………?!」
慌てて小脇に抱えたギガランチャーを向けた、真ん中の6番機のパイロットは。
急に目の前のモニターがズレ、雪の混じった風がコクピット内に吹き込んでくる光景に、言葉を失う。
ユラリ、と振るわれたフリーダムのビームサーベルが、ギガランチャーの砲身ごと胴体を切り裂いたのだ。
斬られた瞬間には斬られたことすら分からない、伝説の達人のような剣さばき。
フリーダムがその脇を通過してからようやく、思い出したようにドムトルーパーの上半身がずり落ちて……
彼は、爆発の中に飲み込まれる。
「な……なんなんだ、お前はッ!」
叫びつつも、最後に残った8番機のパイロットは、肩に担いだギガランチャーをフリーダムの眼前に突きつける。
この距離この状況なら外しようがない。そう信じて、彼はビームと実弾、両方の引き金を同時に引いたのだが――
直前、フリーダムの左手がぬぅっ、と突き出され、ギガランチャーの砲口を鷲掴みにする。
そのまま発射されるギガランチャー。しかし、それはフリーダムを打ち砕くことはなかった。
下の発射口から放たれたビームは、砲身の向きを僅かに変えられ、フリーダムの頬を掠めるようにして空を切り。
上の丸い砲口、実体弾を放つはずの発射口は、PS装甲のフリーダムの左手に握られ、塞がれていて――
一瞬遅れて、ギガランチャーが暴発する。
肩に乗せていた武器が爆発して、ドムトルーパーの右腕と頭が、もぎ取られるように吹き飛ぶ。
そのままヨロヨロと、視界を失って数歩進んだドムトルーパーを……斜め上から放たれた1条の光が、貫き通す。
デストロイが、その大きな人差し指を向け、見下ろしていたのだ。ほんの、指一本。
3機のドムとフリーダムが交錯する間、わずか数秒。
ウィンダム・カオス・デストロイの支援はあったが、しかし無かったとしても無傷で倒せていたのは間違いない。
ヒルダ隊とて、決して弱くはない。むしろザフトの中でも腕の良い方だ。機体だって、ザクよりは数段パワーがある。
精鋭3人の訓練された連携攻撃を、真正面からほんの数秒で斬って捨てる――
――これが、今現在の、マユ・アスカ・セイランの、本気の実力だった。
フリーダムが、ふわりと浮かび上がって街の上空に上がる。巨大なデストロイと視点の高さを同じくする。
ウィンダムとカオスも、後に続く。
眼下に広がる、破壊された街。
泣き喚く子供の声が、子を探す母親の叫びが、雪と共に風に乗って微かに聞こえてくる。
デストロイの中で、厳しい目つきで操縦桿を握るステラ・ルーシェ。
ウィンダムの中で、腕を組むネオ・ロアノーク。
カオスの中で、仏頂面のスティング・オークレー。
そして、フリーダムの中で、今なお微妙に焦点の合わぬ目つきでいる、マユ・アスカ・セイラン――。
4人の間には、会話もない。4人が4人とも、感情を押し殺した表情で。
「……3機、いや4機、逃がしちまったな。追うか?」
「別に、いいんじゃない。恐怖を伝える者も、必要だよ」
「……そりゃ、そうだ」
ネオの言葉に、マユは冷たい答えを返す。あの明るかった少女と同一人物とは思えぬ素っ気無い態度。
彼女たちを遠巻きに取り巻くムラサメ隊の生き残りたちも、かけるべき言葉を見つけられない。
エジプトに脱出したオーブ軍の生き残り。結局そのまま戦える状態にあったのは、フリーダムも含め僅かに5機。
あとはスティングのカオスと、ネオのウィンダムだけ。
そして彼らは、連合側の一員として再編成され、怪我から回復しデストロイを与えられたステラと合流し――
――このような、厳しく、汚い戦場に放り込まれていた。ロクな支援も、与えられずに。
「さあ、行こう。一旦下がって補給を受けたら、次の街へ」
「あ、ああ」
「…………ハズはないよ……うん……」
「何か言ったか、マユ?」
「ううん、何でもない。急ごう。あたしたちが潰さなきゃいけない拠点は、まだ沢山あるんだから」
マユの独り言に、ネオは一瞬怪訝な表情をしたが、深く追求することもなく。
彼らはその場から身を翻し、戦闘の傷跡深い街を後にする。
街の制圧は彼らの仕事ではない。彼らの任務は、街に留まるザフト戦力を排除すること。ただ、それだけ。
彼らによる露払いが済むのを待って、連合の大部隊が後から来ることになっていた。
「……間違ってるハズはないよ。あたしは、間違ってないよ。
そうだよね、カガリ? カガリも、そう言ったよね?
オーブを守る、ためなんだから。オーブを焼かない、ためなんだから。
あたしが、頑張らないと……この力を、オーブに向けられないためにも……!」
マユは、虚ろな瞳のまま。自らの右腕、金属の腕との繋ぎ目を、握り締める。
少女の意識を責め苛む幻肢痛に、顔を歪める。
祈るように、自分に言い聞かせるように、口の中で呟き続けて。
もはやこの場にいないカガリに、確認を続ける……!
「……というわけで、我々はこれよりヨーロッパ戦線に向かいます。
敵は、問題の巨大MS。我々の作戦目的は、これの撃退、あるいは破壊です」
――スエズ基地。ようやく一通りの修理が済んだばかりの、ミネルバ。そのブリーフィングルーム。
ラクス・クラインのコンサートが襲撃され、街1つ壊滅させられたニュースは、彼らの下にも届いていた。
未だ確認は取れていないが、敵は同じようにプラント側についた街を次々に襲っているという。
敵の数はごく少ないにも関わらず、既に信じられぬほどのザフト部隊が壊滅させられていた。
1機の巨大兵器によって、戦局がひっくり返されそうとしている。ザフトとしては何としても阻止したい所だった。
「可能ならば現地の残存部隊とも連携したいところだけど……あまり期待しないでね。
あのヒルダ隊でさえも半分以上がやられて、逃げだすのが精一杯だったようだし。
ああ、あと、それから――
どうやら、巨大MSには、フリーダムとカオス、ウィンダムやムラサメも随伴しているみたい。護衛でしょうね」
「!!」
「みんな、作戦目標を勘違いしないようにね」
タリアが思い出したように付け足した言葉に、MSパイロットである男4人は緊張した顔を見合わせる。
シン、レイ、アスラン、ハイネ。彼らは互いに互いの顔を、見合わせ、頷きあう。
タリアはしかし、そんな様子には気がつかずに。部屋の後ろの方に座っていた一人の女性クルーに声をかける。
「それから――メイリン」
「……はい」
「貴女は、どうするの? まだ補充の通信要員は到着していないけれども、事情が事情だし、相手が相手だわ。
無理は言いません。艦を降りたいのなら、艦長の権限において認めてあげても――」
「いえ――やらせて下さい。あたしは、平気です」
タリアの言葉に、メイリンは健気に笑う。
笑って、艦長の気遣いに感謝の意を示す。
「最後の仕事として、やらせて下さい。あたしも、これだけは見届けたいですから。
なんだかこの戦いだけは、見届けなきゃいけないような気が、しますから――」
「……分かったわ。では引き続き、MSの管制を担当して頂戴。
では、解散。準備が整い次第、出発するわよ――!」
――かくしてミネルバは、スエズ運河から離水する。スエズ基地を、出発する。
一路、北を目指し、真っ直ぐに。
全ての因縁の決着を、つけるために――!
第二十話 『 交差する刃 』 につづく
推奨BGM:深海の孤独。デスティニーOSTU収録。17/18の辺りはこの曲で。
……いや、好きな曲をイメージしながら読んで貰ってよいのですけどねw 書きながら聴いていたものでつい。
・メイリンとルナマリア
メイリンって、自己評価が比較的低い人間だと思うのですよ。実態よりも自分を低く評価してしまうタイプ。
実際には、本編のアスラン脱走時の働きを見ても分かる通り、自分で言うほど「何もできない」わけではありません。
また一方で、姉にはない鋭い直感もあるのですが、これも自覚がないようで……。
一方ルナマリアは、ガリ勉タイプの秀才でもないし、体育会系の努力家でもない。ある意味、天才肌の性格です。
(まぁ彼女を上回る才能の人間が多くいるので「天才」という印象もないでしょうが……でも、一応赤服ですよ?)
こういうタイプの人間は、努力の結果何かを勝ち取る、という体験が希薄なので……
たまに天性のセンスでできないことにぶつかると、適切な努力の方法が分からず、いつまでも苦戦してしまいます。
例えば、拳銃射撃の練習。「下手なんですよ」とか言いながら、全然悲壮感がありません。努力も我流な雰囲気です。
沢山撃ってるうちにコツ掴めて来るかな〜? などと漫然と思いながら撃ち続けている、という感じでしょう。
で、ある日本当にヒョイッと出来るようになる、と。
・ドムトルーパー
PP戦記さんのところでは核エンジンのようですが、こちらでは普通のバッテリー機です。
プラモのインストでも本編の中でも、特に何も言及されていませんし。
単に生まれが純正ザフト製になっただけです。ビームシールドも、外して代わりを考えるのが面倒で、そのままに。
3番から9番までの7機のうち、7番は既に殺られています。4番ヘルベルト、9番マーズは今回未登場。
……初戦はもうちょっと活躍させたかったんですけどねぇ。南無。
・デストロイ1号機
性能はほぼそのままですが、1つだけ。
両腕を飛ばす攻撃だけは、まだしてません。腕に備えられた武装そのものは変わりありませんが。
・今回のマユ
最初から種割れです。ドム隊視点だったので描写挟めませんでしたが。
さて、次回、このままベルリン戦……の、予定なのですが。
少しここで、番外編を挟むことも考えています。まだちょっと悩んでいるのですけどね。
詳しくは、次回投下時に。
隻腕投下乙です
ユウナの描写にくるものを感じます
ほのぼの様、隻腕様、共にGJです
ほのぼの様
後のMS間の会話が気になってしかたがありませんw
隻腕様
ザフト勢、四人の会話がいいですね。
戦闘方面ですが……ドムを踏み台に!? 燃えましたw
その後のマユキック(MS戦でよくやるアレです)が出て感無量です。
誰が何と言おうが、自分的にはアレはキックです!!
しかし、コニールや、大切なものを失ってしまった者たちの姿を見ると戦争というものの悲しさを感じます。
マユ頑張れ! シン頑張れ! みんな頑張ってくれぇぇぇぇ!!
両作者様、これからもSS作り頑張ってください!
隻腕乙
マユが…マユが黒くなってしまった…
シンが成長しとる
隻腕キター!
でたー!踏み付け!やはりJSA破りには「踏み付け」こそが!
黒い三連星、赤い三騎士のトリプラーのときもそうだったしね!
それはともかく、マユ……強くなったけど黒くなったねぇ。コニールも……ちょっぴりダークっぽくてorzな展開だけど哀しいけどこれ戦争なのよね。
というわけで続き楽しみにしてます!
>>408 乙です。
いつの間にかスレ容量488KB……
それだけ大量の良質作品が投下されたからでしょうね。
それにしても、年内に二桁いけるとは思いませんでした。
これも作品を投下されてくださった各作者様のおかげです。
隻腕さん、毎度GJ!!
ジブリールがいいなあ。ちゃんと議長と論戦でもやり合ってるよ。
敵と味方が、五分と五分。そして、敵にも味方にも感情移入できるキャラがいる・・・。
最高だぜ
隻腕作者・・・、もうやめてくれぇぇ〜〜orz
||
∧||∧
( / ⌒ヽ 鬱だ氏のう…
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∪ / ノ
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∪∪
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>>412 なら君の理想のマユを俺たちにも見せてくれ! 吊る前にな。
実はまだ本格的な連載作品が無かった頃にチャレンジはしてみたんだよ
しかし絶望的なまでの文才の無さに挫折してな…
しかもその頃投下されたPP戦記と設定がかぶりまくってるわそっちの方が10000倍面白いときた
これじゃとても公開する気にはなれんぜorz
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∧||∧
( / ⌒ヽ スマソやっぱ吊るわ…
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∪ / ノ
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∪∪
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-━━-
ハハハハそんな俺のコニールに乱暴スル連合ハ俺のキキたんを乱暴した連邦モロトモわたしのアプサラスでシンデシマエ
隻腕のアスカ兄妹はハッピーエンドの予感…!
>>416 ||
∧||∧
( / ⌒ヽ ……またまたご冗談を
| | |
∪ / ノ
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∪∪
;
-━━-
ラストは良くて、兄か妹のどちらかが、どっちかの車椅子押してるとかそんな感じか
正直、こっからハッピーエンドは想像すらできん
死ぬな!生きる方が(ry
マユ・セイランとしてではなくマユ・アスカとして再会すればよろしい。
失ったもののこと考えりゃあっさり和解して欲しくはないな
でも二人とも幸せになってもらいたい
キャラが死んでこんな泣いたの久々だ…
マジハッピーエンドが想像付かない
映像で見たいよこの作品
まあ、コレが普通の戦争なんだわな。
燃えて欝って泣いて笑って萌えて。
どの作品も読み応えがあって良作ぞろい。
今スレも良スレですた。
作者の皆様方、纏め人さんいつも本当にありがとう。
まゆがくろくなったとかひとがたくさんしんじゃったとかいうけど
ぼくらのきらくんがよめほせいぜんかいでむてきのちからで
わるいやつらをみんなやっつけてくれてめでたしめでたし
あははははは
今ナラソノ嫁補正モ歓迎出来ソウナ俺ガイル
はっ!?
貴方がた!負債のぬるま湯につかりすぎて感性が貧弱になってますわよ!!
これくらいの悲劇はデフォなのが戦争系の物語でしょうが!!!・・・・・・・・・・・・・・・・orz
そうだそうだ!もしもマユ種をVやイデオンやザンボットの頃の御大が作っていたらどうなる!
全員死ぬかマユ以外全員死ぬかとかそんなんばっかだぞ!
白富野ならOK(`・ω・´)
隻腕のハイネ隊はVのシュラク隊の如く散っていくな。
ハイネが終盤まで生存してたらテラヤバスw
冷静になって数えてみろ。
死んだ人数はあの嫁補正アニメと大差ないぞ、現時点では
まあ人数上の誤差は全部オーブ艦隊が飲み込んでくれるわけだが
……キャラの重みが違うのか……orz
PP戦記も人が死に出したら大騒ぎになりそうだな
>隻腕作者様GJ!
ミーアがザクを、ミーアがザクを、うひょー!
激化する展開から目をそらしています・・・とりあえずマユがんばれ
次回も楽しみにしてまーす!
しかしなぁ、冷静に考えてみれば戦争ものでガンダムで敵も味方もばたばた
死んでくって当たり前の話だったのよね・・・・・・。
その当たり前のことを当たり前に実行した隻腕にこれだけの反応が出ちゃう
ってのは時代が変わったってことなんだろうけどさ・・・・・・。
何だか寂しいな。結局、時代を読みきっていたのは負債だったみたいでさ・・・・・・。
負債の同人版もバンバン人は死んでんだけどな
ただホントに死んでるだけでそれ以外の価値が無いだけで
>>434 何が言いたいのかよく分からんが
鬱展開に凹む奴はたくさんいても、キャラが死んだから許せんとか、そんな事言ってる奴は一人もいないだろ?
だいたい、確かに戦争物で人が死ぬのは当たり前だけど、だからって昔の読者がそれに対して平然としてたわけじゃないぞ
今と反応はそんなに違いはないさ
Zガンダムやイデオン、ダンバイン等をリアルタイムで見てきた俺が言うんだから間違いない
隻腕マユはまるで…殺人機械(キリングマシーン) だ!!
>>434 何言ってんだお前は? 欝になったってのは褒め言葉なんだよ
それだけ登場人物の死が重く受け止められたってことだからな。
そして重く受け止められるってことは、それだけそのキャラがちゃんと描写されてたってことよ
どうでもいいキャラがどうでもよくくたばった所で、あっそふーん。で終わりだよ
そういえば負債版種死でアウルが死んだときはフーンって思ったな
分盲なのかねぇ。
どう考えても隻腕で人が死んでもその死が物語の中で生きている、キャラが立って死んでいる、という意見が多いと思うが。
だれがいつ隻腕でキャラが死んだことで責めてるんだよ?
ルナマリアもアウルも死んでしまってカナシスと言ってるだけだろ。
アウルなんか原作では「あれ?死んだの?」程度の扱いだったし。(オクレ兄さんも……)
生きてるキャラの描写をきちんとしてたらそのキャラが死んだ時に印象が強くなるんだよ。
アウルが死んだときはむしろネタにされてたな
節約生活の取ったどーっ!に酷似してた所為でw
>>434 もしかして君は種とデス種しか見たことないんじゃないのか?
槍でグサ、だからなw
セリフネタ
アニメ
「まゆ・・・マユ・・・!」
「大丈夫・・・だからちょっとだけ会いにきた・・うん・・・いまは、ね・・・
でも・・・またあした・・うん!あした・・・ステラ・・・きのうをもらったの・・
だからわかるの、うれしいの・・だから・・・あした・・・あしたねっ・・・あした・・・」
ボンボン
「マユに会えて良かった。だから前を見て。明日を」
「そうだねステラ。私はまだ生きている。
生きている限りまた明日はやってくるよ。」
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みんな次も、マユの活躍見てください!
マユ「みなさんは、クリスマスの深夜はどうすごされますか?」
シン「寝る!」
シン「俺の住んでいる地域例のSP見放送なのよ」
マユ「そうですか」
マユ「メリークリスマス」
マユ「クリスマスは、ミネルバのみんなと過ごせますように」
マユ「次も」
ルナ「応援」
メイ「してね〜」
はい500
レイ「気にするな、俺はきにしない」
アーサー「まだ終わらないのですか?」
タリア「弾幕薄い!」