第二回 天下一武道会

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1褐色のおじさん
「君は生き残ることができたら、明日はどっちだ!?」

前スレ 天下一武道会
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/shar/1035171094/
2褐色のおじさん:02/11/14 00:11 ID:/E4mDoCF
なりやまない拍手。過去スレ嫁!

819 名前:褐色のおじさん 投稿日:02/11/07 00:27 ID:2NeEfIgQ
>1に惜しみない拍手を送ろう。

820 名前:通常の名無しさんの3倍 投稿日:02/11/07 01:35 ID:???
ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち
ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちpちぱちぱちぱちあち
ぱちぱちぱちぱちぱちあpt

821 名前:通常の名無しさんの3倍 投稿日:02/11/07 01:57 ID:2u68cyuw
良スレ! 良スレ! 良スレ! 良スレ!
3通常の名無しさんの3倍:02/11/14 01:14 ID:???
ガンガレ
4通常の名無しさんの3倍:02/11/14 01:49 ID:???
ギレン閣下降臨━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
激しく期待上げ!!!!!!!!!!
5通常の名無しさんの3倍:02/11/14 01:56 ID:???
いけてる語!ランキング2002
おかしいですよ!カテジナさん!!1日24票!
http://www.pumpkinnet.to/ranking/words/
スレ汚しスマソ  |ミ サッ
6通常の名無しさんの3倍:02/11/14 02:23 ID:???
新スレおめ&>>1スレ立て乙。(前スレの)1さん応援してます!
7:02/11/14 03:23 ID:???
新スレ嬉しいです。「褐色のおじさん」様どうもありがとうございます。
スレタイも希望どおりで言うことなしです。ほんとに。


えと、この話は第一回天下一武道会から繋がってますので、未読の方はまずそちらからよんでくださいませ。
今日、明日中には前回の続きから話を載せますので、皆様マターリ御願いします。
それでは・・・
8ろうろん:02/11/14 16:59 ID:N0Q0FXYC
では、新スレでも最高で面白いのをお願いします!
頑張ってください
9ほげら〜:02/11/14 21:46 ID:G9OQ0E36
1さん、毎日楽しみに見てます。
新スレでも頑張ってください。
10958:02/11/15 12:41 ID:???
保守
11通常の名無しさんの3倍:02/11/15 14:49 ID:???
1さん、こっちまだ〜?
催促くんスマソ
12通常の名無しさんの3倍:02/11/15 15:02 ID:???
すいません・・
ちょっと前スレの作品書いていたものですから。
えーと、今日の夕方には八章に入ると思いますので・
すいませんがもう少しお待ちください。遅筆ですいません。
13通常の名無しさんの3倍:02/11/15 18:42 ID:???
第八章 「シャアの油断」



さてと・・・三十分もすればミライか誰かが艦長を呼びに行くだろう・・
それまでに済ませておかなければいかんな・・


ミーティングルームを出たシャアは血の付着した上着を丸めて隠してながら考えていた。
幸い下のシャツには血が付着してなくて助かった。白シャツだから目立っていただろう。
上着を途中にあったダストシュートに捨てる。使用した拳銃は腰にさす。
そしてまた歩きながら考える。
ブライト艦長を殺したのは仕方がなかった。
あのまま生かしておけば目的達成の邪魔になっていただろう。
それでも彼をできる限り、私は説得したのだ。ああいった短絡的行動に出た彼が愚かだったとしかいいようがない。
シャアはそう考えた。
この前トビアの追悼式があったのに今度は自分の追悼式か・・
忙しいな・・ブライト。そうシャアは皮肉に笑った。



シャアはズボンのポケットに手を入れた。カードキーを取り出す。
手に持ったカードキー・・艦長室のものだ。
このカードキーがあれば中に入れる。
これで後は艦長室で必要なデータを調べればいい。それで乗艦した目的の大部分は達成される。



14:02/11/15 18:46 ID:???



私は決して殺人狂ではない。しかし目的のためなら何人殺そうと厭わないのも事実だ。
アルテイシアが今の私を見たらなんていうかな・・、シャアはふと思った。
あんなに優しかった兄さんが何故・・というだろうか。
シャアはアルテイシアの顔を思い出した。
しかし彼の脳裏に浮かぶアルテイシアの姿はもはや以前ほど鮮明ではない。
そしてそれは過ぎ去った時が、僅かな時間ではないことを彼に伝えていた。



「すまんな・・アルテイシア。私はもはや優しかったお前の兄のキャスバル・レム・ダイクンではない。
そしてもちろんクワトロ・バジーナ大尉でもない。
赤い彗星、シャア・アズナブルなのだ。」


シャアは、そう自嘲気味に言うと、居住区へ繋がっているリフトグリップを掴んだ。

15:02/11/15 18:49 ID:???


運良く誰にも会わずに(クルーの少なさが幸いした)
最短時間で居住区まで戻ってくることができた。
フロアDまでたどり着く。
いったん自分の部屋・・D-3に入って着替えようと思ったが止めておいた。
万一アムロが目覚めていたら厄介なことになる。
ニュータイプの勘の鋭さは身をもって知っている・・用心に越したことはない。



先に艦長室のある居住区、フロアEに移動する。
移動するといってもすぐ隣の区間なのだが。


シャアはゆっくりと移動する。そして曲がり角で中を覗き込む。
こちらの区間にも人がいないようだ。
今日は特別警戒網がひかれているらしいから、忙しいのだろう。
素早く移動して、一番突き当たりにある艦長室の前につく。
辺りをざっと見渡して誰もいないのを確認するとカードキーを差込もうとした。
しかしドアはシャアが近づいただけで自動的に開いてしまった。

なんだ・・?ブライトの奴かなり無用心だな・・?ドアのロックを怠るとは・・。
シャアは首をかしげながらも部屋に入った。時間がないのだ。
ブライトが死んでいるのを発見される前に・・どうしても調べなければいけない。




16:02/11/15 19:00 ID:???


これは・・なんということだ・・・。


艦長室に足を踏み入れたシャアは驚いた。自分の眼を疑った。
部屋の中が散々荒らされていたのだ。
机の引出しは全てひっくり返されてる、ロッカーも、カバンも。ファイルも。
部屋の床には、足の踏み場もないほど様々な書類が散らばっていた。
まるで強盗にでも押しいられたごとく。
ひどい有様だな・・だれか先客がいたらしい。
せっかくカードキーまで手に入れたのに無駄骨だった。
そう思い、シャアは舌打ちした。
いらただしく、散乱している書類の山を踏みつける。




しかし犯人はあまり利口ではない、紙の資料を探すなど、な。
いまどき紙の書類に重要なデータが載っているわけがない。
こんなのは官僚主義のなごりに過ぎないのだから。
愚昧で蒙昧な連邦政府にはまだその慣習が残っているのかもしれんが、ブライトは艦の機密を書類に残すようなことはしないだろう。
足元の書類を一枚拾い上げる。
「サイコミュの共振について」
ブライト・・?サイコミュに興味があったのか?シャアは首を捻った。
もう一枚拾い上げる。
「脳波コントロールの干渉について」


17:02/11/15 19:07 ID:???



しかし、酷いな。部屋をぐるりと見渡して思う。
おそらく綺麗に片付いていたであろう部屋はもはや見る影もなかった。
この艦長室は士官室とちがい、二部屋ある。執務室と小さな寝室がついている。
内装も豪華だ。しかしここの主はもういない。
シャアは執務室には何も残っていないと判断した。

18:02/11/15 19:07 ID:???


シャアは荒らされていない寝室に入った。こちらは綺麗に片付いている。
寝るためだけの部屋なので、書類などは何もない。
ただコンピュータだけはあった。シャアはそれに近づく。
そしてベッドサイド・テーブルにあるコンピュータのキーを叩いた。
中のデータを起動させる。
ディスプレイにパスワードを求める表示が出た。
ははぁ・・なるほど。シャアはピンときた。
おそらくここに侵入した奴はこのロックを開けなかった。
だから室内をあらして何かないか探したんだろう。資料ならロックはかかってないからな。
所詮その程度の発想の人物なら、おそるに足らん。
それにしても・・パスワードか・・
シャアは少し迷ったが、こう打ちこんだ。


「   Hathaway    」


認識コード確認・・作動します・・と表示がでてモニターの画像が切り替わる。
やはりな・・ブライト・・・
シャアは自分の予想が当たっていたことに少しだけ哀しく思った。
息子の名前をいれていたブライトに。
ブライト・・貴様の目的は残念だが、かなえられん。
シャアは哀しげに言った。

19:02/11/15 19:09 ID:???


画面が起動し、ディスプレイに多量のデータが出てくる。
艦長クラスしかみれない極秘データだ。おそらく閲覧できるのはブライトとミライだけだろう。
さて、急がなければな・・
シャアはその中でももっとも重要なデータと思われるものを探す。
連邦との通信記録もあったが、今はこれはいらない。シャアは他のファイルを呼び出す。
航海予定表のデータを見つけた。これが欲しかったのだ。
画面をクリックして、データをプリント・アウトをする。
紙がきちんとプリントアウトされて出てくるのをシャアは黙って待っていた。
たちあがり腰に手をやる。プリンターの前でシャアは呟いた。


これでよし・・と。さて、あとはアムロ・レイを・・・

シャアは忙しく考える、今彼の思考回路はフル回転していた。
ブライト殺害のおかげで想定していた計画がかなり変更を余儀なくされている。立て直さなければならない。
幸いこういった事態は嫌というほどなれている。だが、考えるにはあまりにも時間がない。
運が悪ければそろそろブライトの死体が発見されてもおかしくない。
シャアは今更ながらブライトの性急過ぎた行動を非難した。
ええい・・完全な作戦にはならんとは・・


この時シャア・アズナブルが焦りの所為で、少し周りに対する注意力が鈍くなっていたのは否めない。
彼の背後に近づいている人影に気が付かないでいたのだから。
その人物の右手には刃渡り12センチはあるナイフが握られていた。
ナイフが 鈍く光った。

20:02/11/15 19:10 ID:???







とりあえずここまでです。遅くなってすいません。
いまから用事で外出しなければいけないので、続きはまた後日です。
それでは・・

21通常の名無しさんの3倍:02/11/15 19:13 ID:???
>>1

初めてリアルタイムだったよ。
22通常の名無しさんの3倍:02/11/15 21:51 ID:???
HSSAWAY
23通常の名無しさんの3倍:02/11/15 22:18 ID:???
後ろの正面だあああれ?
24通常の名無しさんの3倍:02/11/15 23:13 ID:OgDkzAmy
カムラン・ブルーム
25通常の名無しさんの3倍:02/11/15 23:26 ID:???
ミライっしょ?
ダークホースとしてはザビBrosか?
26通常の名無しさんの3倍:02/11/16 00:03 ID:???
>>1
今後はリクエストあっても「良く知らない」キャラは出さない
方がいいと思う
オールスター戦感覚、あるいはスレ住人へのファンサービスの
つもりなのかも知れないが、シャアやアムロなどに関する精緻
な表現と見比べると、物凄くおざなりな感が拭えない
つーか、これなら1st系列のキャラだけでも充分話を作れる
でしょ
27通常の名無しさんの3倍:02/11/16 01:03 ID:???
>>26
1さんを煽ってるように見えて実は誉めているに3000ハロ
28ガデム:02/11/16 01:42 ID:???
>>26
>「良く知らない」キャラは出さない
激しく同意!
29:02/11/16 04:10 ID:???
>>26
>>28
・・すいません。
うーん、確かに今読み返すとおざなりですね・・ご忠告身にしみます。
今後はよく知らないキャラは出さないようにします。
よく知らないのにだしたら、その方がリクエストしてくださった方にも失礼ですよね。
どうもご助言ありがとうございました!
30:02/11/16 14:26 ID:???

今日の夜に必ず更新しますので。
マターリみてください。
視点がまたカツに切り替わります。
ギレンとあの後どうなったのか?
時間軸としてはちょうどシャアがブライトと話している付近に当たります。
アムロは寝てます。
スレッガーは天井を見てます。その辺の時間軸です。
それでは次回 裏八章「ギレンの野望(とカツの目的)」をお待ちください。

31通常の名無しさんの3倍:02/11/16 19:11 ID:???
今日の夜のうpを楽しみにしてますYO!
32カンリニン:02/11/16 19:42 ID:A0navnEk
浮上・・・・
33通常の名無しさんの3倍:02/11/16 19:43 ID:???
>30
予告付きだ
34通常の名無しさんの3倍:02/11/16 23:41 ID:???
そろそろか?
35:02/11/16 23:45 ID:???



前略お袋様・・フラウ母さん。お久しぶりです。
さっそくですが僕、カツ・コバヤシは大変なことになってます。
艦内の生活も三週間が過ぎやっと慣れてきたところだったのですが大ハプニングです。



・・今、僕がいるのはギレンさん(ジオン軍総帥の!)の部屋です。
食事をしていたところを無理矢理拉致されるように連れてこられました。
スタンバ・ハロイ、ランバ・ラル、カテジナさんが何故かいました。
皆さん興奮しています。手には・・拳銃でしょうか?
総帥は僕を椅子に座らせると自分は簡易ステージみたいなところで演説を始めたのです。






  同八章          「ギレンの野望」







36通常の名無しさんの3倍:02/11/16 23:53 ID:???
 
37:02/11/16 23:56 ID:???


「おい、小僧。一体何をさっきからぶつぶついってるんだ?」
隣に座っているランバラルが、何事か呟いているカツに怪訝そうに声をかけた。
「えっいいや、なんでもありません」
そういい激しく首をふるカツを無気味に思いながらランバラルは
「まぁ・・いいがな、ほらこの書類に目を通せ」
そういって書類をカツに渡す。


「ホワイトベース乗っ取り作戦」




そうかかれている書類の表紙には、でかでかとジオンの紋章が載っている。
中を開く。
中にはこの艦の見取り図がのっている。
所々赤く印がつけられている。制圧ポイントと書かれている。
「おい、小僧、拳銃だ」
不思議そうに見取り図を眺めていたカツに拳銃をランバラルは渡した。
「え・・な・・なにをするんですか?こ、これで?」
カツは動揺した。拳銃?
「なんだ?何も聞いておらんのか?ゲリラ戦だ。これこそ軍人の真骨頂ではないか」
ランバラルはそういうと豪快に笑った。
ゲリラ戦?カツは震えた。ランバラルが本気でいっているのがわかった。
この壮年の軍人は、目が笑っていない。真剣そのものだ。



38:02/11/17 00:05 ID:???

「静かに、そろそろ総帥の演説が始まりますよ。敬礼を」


カテジナ・ルースがそういってランバラルに注意を促す。
「ん、そうか。始まるか。ガルマ様はまだ帰らんのか?」
ランバラルが姿勢を正す。


その直後、ギレンが部屋に戻ってきた。
服がいつもの私服でなく、ジオンの制服になっている。どこかで着替えてきたのだろう。
ランバラル以下全員(といっても三人だが)が慌てて立ち上がる。カツもそれに続く。
ギレン総帥は静かに前を横切ると壇上にむかった。
全員直立不動だ。

ギレンが壇上に上がる。(もっとも壇といってもたかが知れたものだが)
おそらく手作りだろう。この狭い士官室に初めからこんなものが置かれているわけがない。
ギレンが壇上に立つと室内の雰囲気が変わった。なんというか・・熱いのだ。
先程までと違い、汗が吹き出るほどに。
(室内の気温が一気に上がっている・・?)
カツは心臓が波打つのを感じた。
壇上のギレン総帥が、高々と手を挙げた。
演説が始まる。
カツは呆然とその演説を聞いた。正直頭がまだ事態の展開においつかない。
(嘘だろ・・こんなの・・だいたい僕はブライト艦長に用が・・)
カツの混乱を他所にギレンによる演説は続いている。
以下はその演説の全文である。



39通常の名無しさんの3倍:02/11/17 00:20 ID:???
リアルタイム応援sage
40:02/11/17 00:23 ID:???

「諸君!よくぞ集まった!ジオンの事を思う者がまだ多数存在していることを嬉しく思う!
諸君らを名誉あるジオン国民とすることを、ここにギレン・ザビの名の元に認める!
我々のこの航海も既に三週間経過しようとしている。
しかし、この航海の目的はなんなのだ?既に戦死者がでているのだ!少年が一人散った!
にもかかわらず艦長は説明をしたか?否!彼は説明責任を果たしていない!
連邦の犬であるブライトは目的を我々にひた隠そうとしている!何故か?
それはこの艦の目的が連邦政府の腐った企みがあることを暗に示している!考えてみたまえ!
一年戦争当時に比べて政治的に極度に安定している現在、特殊任務などを行なう必要性はないのだ!
にもかかわらずこの艦はある目的をもって出発している。その目的、動機はなんだ?
それは連邦がドス黒い欲望を持っているとしか考えられん!我々宇宙移民者に対してだ!
すなわち動機は地球上での自分らの利権を確保し、我々に奴隷のような抑圧を強いることだと断言できる!
現時点では、まだ我々にはこの艦の正確な目的はわかっていない。
だが!連邦政府の企みは我ら宇宙移民者にとってよい方向に進んだことはないのだ!もう一度言う!
この艦の目的は我々宇宙移民者にとってマイナスなことに違いない!私が断言する!
そしてそれを阻止するのは我々に課せられた使命である!
宇宙移民者の独立のために!これ以上愚鈍なる連邦の連中を野放しにはできん!
それゆえ宇宙移民者の代弁者たる私がこの艦を制圧する!
41:02/11/17 00:30 ID:???
諸君!もう一度思い出したまえ!
我々は地球を追われ、宇宙移民者にさせられた。
そして、一握りのエリートらが宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して60余年、
宇宙に住む我々が自由を要求して何度踏みにじられたか!
だが、我々は自由を獲得せねばならん!尊厳のために!
人類一人一人の自由のための戦いを神が見捨てるはずはない。
先の一年戦争の敗北は神が与えもうた試練だ!ならば我々はこれを乗り越えねばならん!
そう!ローマ帝国の迫害をうけたキリストのように!元老院の迫害をうけたシーザーのように!
カツ君!君の母親は生活に苦労している!
何故だ!? それは政府だ!腐りきった官僚、驕りきった賄賂だらけの政治が弱者を生み出しているからだ!
奴等は宇宙難民のために何も手を施しておらん!飢餓に苦しもうと!病魔に冒されようと!
奴等は入れ物さえ作っていれば我らには充分だと思い、挙げ句地球から我々を抑圧した!
そして彼らはそのことに気付かずに自らが宇宙移民に対して精一杯成し得たと勘違いをしている!これは万死に値する!!
あえていおう!奴等こそがアドルフ・ヒットラーの尻尾であると!
となると我々スペースノイドと蔑まされる人々はさしずめユダヤ人といったところか!
連邦に宇宙を!そしてコロニーを第二のアウシュビッツにさせてはならん!
立ち上がれ!国民!その右手に銃を!左手に誇りを携えて!
我々の意思があれば連邦などおそるに足らん!
アドルフ・ヒットラーは最後は自殺したのだ!腐敗しきった連邦の連中もその時が近い!
今日から奴等は枕を高くして寝ることはできん!死ぬまで!震えろ!地球のゴミどもよ!
ヒットラーの様に廃人になるがいい!
42:02/11/17 00:31 ID:???

新しい時代の覇権を選ばれた国民が得るは、歴史の必然である。
本当に宇宙と地球のことを考えられる国民たちが選ばれなければならない!
そして地球から宇宙を支配していると勘違いしている者にその資格はない!
このジオン!ジオン!ジオン国民だけがその資格を有するのだ!
先の一年戦争はそれを実行したが、惜しくも連邦の卑劣極まりない作戦により敗れた。
父グレート・デギンはその所為で散っていったのだ!連邦は犬畜生にも劣る!
ならば、我らは父のためにも、ジオンの栄光を信じ散っていった者のためにも、襟を正し、今一度たちあがりこの戦局を打開しなければならぬ。
現在地球連邦に対抗できる勢力は存在しておらん!宇宙移民は迫害され搾取される一方である!
そして奴隷にも劣る屈辱的な生活を迫られる我々は立ち上がる必要がある!
だが先の星の屑作戦は早計であった!無謀であった!
あれは戦争を理想の達成のための手段であることを忘れた、指導者のエゴであった!
そのおかげで我がジオンの残兵は散っていった。この所為で復活まで更に我々は潜伏を余儀なくされた!現在までだ!
だから、我々は強力な軍隊を再び1から作り出さなければならない!独立のために!
その手始めとしてこの艦を戴く!これは正義である!
かつて、ジオン・ダイクンは人類の革新は宇宙の民たる我々から始まると言った。
しかしながら地球連邦のモグラ共は、自分たちが人類の支配権を有すると増長し我々に抗戦する。
諸君の父も、子もその連邦の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!
カツ!貴様の父、ハヤトも結局は連邦に殺されたと考えてよいのだ!
この悲しみも怒りも忘れてはならない!
所詮地球に住む民は自分たちのことしか考えていないノミなのだ!カスだ!エボラウィルスだ!アンスラサクスだ!
我々は今、この連邦への怒りを結集し、手始めとしてこの新型艦を奪う!それをジオン再興への足がかりとする!
カツよ立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ!カツ!
我らジオン国国民こそ選ばれた民であることを忘れないでほしいのだ。
優良種である我らこそ人類を救い得るのである!
43:02/11/17 00:33 ID:???

そして!我々が神に祝福されていることを忘れてはならない!
今度こそ連邦の腐った連中、傲岸不遜な連中に鉛を撃ちこむのだ!
死んでいった友のために!母のために!父のために!同志のために!そしてジオンのために!
そのときこそ我々は宇宙に永遠の安定と永劫に渡る繁栄を手にすることができるだろう!
ジーク・ジオン! 」
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               _,..----、_
              / ,r ̄\!!;へ
             /〃/   、  , ;i
             i,__ i ‐=・ァj,ir=・゙)
             lk i.l  /',!゙i\ i
             ゙iヾ,.   ,..-ニ_ /
             Y ト、  ト-:=┘i
              l ! \__j'.l
              」-ゝr―‐==;十i      _,r--――、
             .ト、.j.!レ' ̄三! >ーr‐r‐r‐<  _,.r<"「 l_____
     ____,..r--r=ヾヽj,r―'"≦__ ̄ ̄r―'"\\ \r",.-、, \
    ∧   ト-'‐'"三へ>ト-‐'"~    ゙i  /       \\(_.人 ヽ._ ヽ
    レ'へ._ノi 「 \ ゙l //./",「 ̄/ / /       ヽ-ゝ. \   /
    レ'// .l l   ! ! i/./ ./  /  / /         ,(  \  ノハ
    レ'/  .! !   i ゙'!  ̄ ∠,  /  ヽ._        ,ター  '",〈 !
   /゙" ,r'" .l‐=ニ゙,「l ! 「 ̄!. /./   ー=='       .l.ト、. -‐'"/!.ト,
  /   .ト-  ゙ー―┘!└‐'='-‐"   ヽ._/   、     トミ、 ̄ ̄._ノノli\


ランバラル達「ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!」
44:02/11/17 00:39 ID:???




母さん・・なにやら大変なことになりそうです。逃げたいです。
けど逃げようとしたら撃ち殺されるでしょう。
このままじゃブライト艦長を裏切ることになりそうです。僕。
ジークジオンの大合唱の渦の中、カツは一人深い溜息をついた。



45:02/11/17 00:43 ID:???
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
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ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン  ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン! ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!
ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!

カツはもう一度深い、深い溜息をついた。
歓声は鳴り止みそうになかった。
事実この歓声はこの後10分間続いた。
46通常の名無しさんの3倍:02/11/17 00:51 ID:???
坊やはどこ・・・?
47:02/11/17 00:52 ID:???

(八章あとがき)
疲れました・・ここまでで裏八章は終わりです。総帥のありがたいお話でほぼ全部つぶれましたが。
えーと、次回9章はシャアのその後、ギレンのその後の行動、ならびに第二戦闘配備の警報がなるところを。
そして出番のなかったフォウ、ソシエ、ウッソの話も加える予定です。
シーマ、スレンダー組の動きも書けたらいいと思いますが。
それでは・・

48通常の名無しさんの3倍:02/11/17 00:55 ID:???
乙カレ様でした
演説でカツを連呼してるのに少しワロタ
>>46たぶん、漏れの予想も同じだ
49通常の名無しさんの3倍:02/11/17 01:00 ID:???
おお!カツがけっこう重要っぽいぞ!
    さ て ど う す る
50通常の名無しさんの3倍:02/11/17 01:13 ID:???
>>47
待てと言っただろう、スレンダー
51通常の名無しさんの3倍:02/11/17 01:18 ID:???
1さんはスレッガーが嫌いなのだろうか。
それとも、何かがあるのだろうか。いつも不思議だ。
52:02/11/17 01:19 ID:???
>>50
またミスっちゃいました「スレッガー」です。すいません。
これでおそらく5回は同じ間違いを・・(泣)


>>46
9章には出ますよ〜。今は・・

53通常の名無しさんの3倍:02/11/17 01:20 ID:???
スレンダーってザ区のパイロット?
54通常の名無しさんの3分の1:02/11/17 01:33 ID:???
>>53
アムロのガンダムのビームライフルにより、最初にあぼーんされた御方です。
55:02/11/17 01:46 ID:???
>>51
うーん、恨みはないんですが・・何故か間違っちゃうんですよね・・自分でも不思議です。
地球に残っている・・スレンダーの呪いかな・・


>>53
そうです、名台詞を残した軍人でした。いや、言われたほうですが。



あ、ソシエお嬢様とカテジナさんに乗せる機体をマターリ募集します。
宇宙世紀のモビルスーツで御願いします。(1st、Z,ZZ、逆シャア辺りで)
けどカプールは勘弁してください。宇宙戦ですので・・


それと次章でようやくハァハァなシーンが出てきます。
お待たせしてすいませんでした。
ウッソ・エヴィンですが、相手はもう決まってますのでご容赦ください。


いま少し書いてみたのですが、9章はおそらくかなり長くなりそうです。
どうかマターリお待ちくださいませ。
それでは・・・


56通常の名無しさんの3倍:02/11/17 08:22 ID:???
このスレはまだタプーリあるのですから、長さとか気にせずに書いてくださいな
楽しみにしてます。
57通常の名無しさんの3倍:02/11/17 10:03 ID:???
>>55
前から気になっていたんだけど、1さんはソシエお嬢様とキエルお嬢様を混同してないかな?
ソシエがあんな丁寧な口調で喋るかな
58通常の名無しさんの3倍:02/11/17 14:31 ID:???
>>57
確かに。。。
まあパラレルワールドな訳で、そこら辺はキニシナイということで。
59カンリニン:02/11/17 15:54 ID:FM5OJcSh
しかし・・・・ご苦労だ。
ギレンの演説は疲れるだろうな。書くの。
60通常の名無しさんの3倍:02/11/17 18:23 ID:???
機体
ソシエ:ギャバンボルジャーノン(ザクT)
カテ公:量産型キュベレィ
う〜ん、ありきたり過ぎてつまらないかなぁ?
61ろうろん:02/11/17 18:55 ID:qVJMhgme
>>1さん、これからも頑張れ
62通常の名無しさんの3倍:02/11/17 19:55 ID:???
ゲーマルク
63通常の名無しさんの3倍:02/11/17 20:51 ID:???
ジオ
64通常の名無しさんの3倍:02/11/17 21:00 ID:???
∀のカプルは宇宙でも活動できたんだよねそういえば。


ソシエ:メタス
カテジナ:αアジール
65通常の名無しさんの3倍:02/11/17 21:50 ID:???
宇宙戦でなきゃ、ソシエはヒップヘビー(プロペラ戦闘機)に乗せるんだがな・・・

しゃあないので、ソシエはジオングヘッド、カテジナはボールで。
66通常の名無しさんの3倍:02/11/17 22:15 ID:???
ドーベンウルフ
67通常の名無しさんの3倍:02/11/17 23:10 ID:???
ソシエ:メタス
カテジナ:ゴトラタン
68通常の名無しさんの3倍:02/11/17 23:22 ID:???
ジオとヤクトドーガ
69 :02/11/18 01:35 ID:???
どっちか旧ザク
70通常の名無しさんの3倍:02/11/18 01:42 ID:???
ソシエ=メタス
カテジナ=ゲーマルク(キャラとキャラ被り)
71:02/11/18 02:48 ID:???


>>57
そのとおりです。まるっきし勘違いしておりました。次章からは訂正しますです・・。すいません。


>>58
優しいフォロー有り難うございます。感謝です。





皆様、ありがとうございました。
ソシエとカテジナのモビルスーツは決まりました。
えーと、作品内で登場するのでマターリお待ちください。
次章はえーと、話の主役がころころ変わります。


最初はシャア・アズナブルのその後からです。
そろそろ前スレの六章の最後・・アムロ・レイとリンクする時間軸です。
それでは。


72:02/11/18 02:57 ID:???
第九章「錯綜する思惑」

艦長室に話は戻る。


「さて・・と」
シャアは艦長室の寝室で、プリントアウトした書類を確認していた。印刷漏れ、ミスはないか念入りに。
神経質と思われるかもしれないが、二度と艦長室に戻ってこれないのだ。ミスは許されない。
シャアが慎重になるのも無理はない。
ナイフを持った男はジリジリと背後から慎重にゆっくりと近づいてくる。シャアは気付かない。
オトコが静かにナイフを振り上げる。
しかしシャアは寸前のところで背後の気配に気が付いた。
この第六感は彼がニュータイプに覚醒しつつあることを示しているかもしれない。
ともあれ彼は振り向き、目の前にいた人物を視界に捉える。

「ガルマ!」
シャアはナイフを握り締め後ろにたっていた人物を見つけると、慌てて後退しながら叫んだ。
迂闊だった・・。私としたことが書類に気を取られていた。シャアは舌打ちした。
「勘が鋭いな!シャア!貴様も艦長室に忍び込んでくるとはな!・・」
第一撃をかわされたガルマが再びシャアに飛び掛る。
シャアが手に持っていた書類を投げつける。ガルマが左手でそれを払う。
その隙に寝室を飛び出したシャアは一先ず逃げようとした。が、床に散らばった書類に足を取られ、体勢が揺らいだ。
「シャア!」
ガルマが後をすかさず追いかける。
後ろから飛び掛りシャアに掴みかかる。
「チィィィィ!」
反応しきれないシャアが押し倒される。
倒れる最中近くにあった椅子に強く頭をぶつけたシャアは一瞬力が抜けた。
すかさずガルマが上に圧し掛かりマウントポジションを取る。
そしてナイフを素早くシャアの喉元にあてる。
73:02/11/18 03:03 ID:???

(く・・・これまでか・・エエィ・・あと少しというところで・・)
シャアは覚悟を決めた。
ガルマがナイフを軽く引くだけで頚動脈は切れる。お終いだ。


しかしガルマは馬乗りのままシャアにいった。
「何の目的があるかは知らんが・・シャア!命が惜しければ先程の書類の内容を教えろ!
そして・・・ジオン再興のためにもう一度協力してくれ!
お前が私・・・ザビ家に恨みを持っているのはわかる。だが、もはや時代は過ぎたのだ。
過去の事は忘れて、未来の為!宇宙移民者のために協力してくれ!
確かに私の父は、ジオン・ダイクンを謀殺した!しかしもはや済んだことだ!父は死んだ。
我々はいい友達だったろう?なぁ、そうだろう?シャア!ジオンに戻れ!
私はお前を殺したくはないのだ!」


ガルマがそうシャアを説得する。
彼は士官学校時代の学友を殺す気にはなれないらしい。
先程のように後ろを向いているときならともかく、こうして顔を突き合わすと情が湧いたのだろう。
相変わらずの甘ちゃんぶり、かわらんな・・シャアはガルマのためらいの表情を見ながら思った。
もし私が逆の立場なら不意をついて即殺すだろう。ためらわずに。それが軍人だ。
(ガルマ・・貴様は軍人には向いておらん。軍人は非情でなければつとまらんのだ)
シャアはそう心の中でガルマに語りかけた。

「どうなんだ!シャア!戻るのか、戻らないのか!」
ガルマが切羽詰った声で問い掛ける。
シャアは
「わかったよ、こうなった以上仕方がない・・・ジオンに戻り協力しよう。私たちは友達だからな・・ガルマ。」
とにこやかに微笑みながら言った。
だが、左手はさりげなく腰の拳銃のあたりに手を伸ばしていた。

74:02/11/18 03:07 ID:???
「シャア・・嬉しいよ。赤い彗星の君がいれば百人力だ」

ガルマがナイフを喉もとから外した。
そして立ち上がる。
倒れているシャアは
「すまんが手を貸してくれ。腰を強くうったらしい・・起きるのがきつい」
といって右手をガルマの方に挙げた。
「シャア・・訓練を怠けていたのか?この程度で」
笑いながらガルマがその手を握る。シャアは上体を起こしながら
「ところで、一つ聞きたいのだが、・・ギレン閣下はまだこの艦の目的に気がついていないのだな?」
「ああ、そうだ。それで私がこうして探し・・」
その瞬間銃声が響いた。


「な?シャ・・シャア?」」
ガルマは熱い塊を腹部に感じ、うずくまる。
銃弾は正確に肺を貫通しているようだ。呼吸ができない。ガルマは呻いた。
「オ・・オマエ・・何故・・」
ガルマが信じられないといって表情でシャアを見る。
シャアの顔はガルマの鮮血で血まみれだった。
シャアは握られている右手にガルマの注意を惹きつけておいてその隙に左手で拳銃を撃ったのだ。
ガルマの腹に二発立て続けに。至近距離で。
75:02/11/18 03:13 ID:???

「・・坊やだからさ」


鮮血を袖で拭いながらシャアが冷たくいった。そして握っていた右手を離す。
ガルマが床に転がる。立っていられない。力が抜ける。
「今更ジオンの再興が成し得るなど考えるのは貴様らザビ家の人間だけだ。連邦を倒す?そんな事ができるわけがなかろう?
そんな妄想に付き合うほど私はお人よしではない。そしてガルマ・・二度も私を信じるとは・・甘すぎるな・・。」
「シャア・・ァア:」
そう呻くガルマの口から血があふれでる。
「さらばだ、ガルマ・ザビ・・時機に兄もそちらにいくだろうから寂しくはなかろう?」
そういってシャアはガルマのナイフを拾い上げた。
ガルマはもう動けない。銃弾は肝臓を貫通していた。致命傷である。
「それに・・私には目的がある・・。貴様らの茶番に付き合っていられん。」


「シャア・・オマエは・・哀れな・・オト・・コだな・・」
ガルマが苦しげにそう声を絞り出す。
その声には確かに自分を裏切った怒りより、シャアに対する哀れみの色があった。
シャアはその言葉にかすかに動揺した。
(哀れだと?この私が?)
上体をかがませ、ガルマの耳元に近づいて問い掛ける。
「ガルマ!どういうことだ!何故私が哀れなのだ?」
しかしガルマはそのとき既に事切れていた。きつく目を見開いて死んでいる。完全に。
数分前からは想像もできない変わり果てた姿で。



76:02/11/18 03:18 ID:???

「死んだか・・」
シャアはじっとガルマの顔を眺めた。手を伸ばしガルマの瞳をそっと閉じる。


「・・見開いたままではあの世でキシリアに笑われるぞ・・
ガルマ・・もし・・今度巡りあえたなら・・・そのときは友になろう。
お互い縛られるものがない状態でな。でないと窮屈でいかん・・」


シャアはそうガルマの亡骸に呟くと、一瞬哀しげな表情を浮かべた。
目的のためとはいえ、だまし討ちはさすがに後味が悪い。シャアは少し自分が嫌いになった。溜息をつく。
そして一旦寝室に戻り、床に散らばったプリントアウトした書類を拾い上げる。
枚数がきちんとあることを確認するとシャアは、ガルマに最後の一瞥をくれて部屋を後にした。



(哀れ、か・・アルテイシア・・お前も・・私を哀れと思うか?)


しかしもちろんアルテイシアはここにいない。疑問の声は誰の耳にも届かないし、どれだけ待っても答えは返ってこない。
シャアは血だらけの自分の服をじっと眺める。多量の血痕が付着している。
が、シャアにはこれがブライトの血なのか、それともガルマのなのかもはや判らなかった。



77:02/11/18 03:25 ID:???


自問自答しながらもシャアは自室に戻っていった。
幸いまだ誰もフロアにはいなかった。もし見つかっていれば厄介なことになっただろう。なんせ血まみれなのだから。
自室の部屋の前にたどり着く。
立ち止まり呼吸を整える。拳銃に弾を込める。
ポケットから部屋のカードキーを取り出し、差し込む。


静かにドアが開く。
部屋の中は薄暗く、重い雰囲気が漂っていた。
アムロ・レイは考え事をしているらしく、部屋の隅でうずくまっていた。
その姿は陰鬱なマリオネットに思えた。傍目から見るとその姿には、まるで子供に捨てられた玩具のような脆さがある。
すぐにでも壊れそうな・・存在しているのが罪だといった姿だ。破壊されたがっているように見える。
アムロもこちらに気が付いたらしく、彼は顔を挙げた。その神経質な瞳でこちらを見る。
こちらをみて驚いたらしい。呆然としている。
その理由が自分に付着している大量の血痕であるのはシャアには、わかっている。
そのとき第二戦闘配備の警報がけたたましく鳴った。
それを無視してシャアは静かに部屋の中に入る。
アムロは何も言葉を発さない。こころここにあらずといった感じだ。ただ眼だけはこちらから外さない。

シャアの後ろで、ドアがゆっくりと閉まった。




さて・・それでは・・多少予定が狂ったが・・最後の仕上げといくか
シャアはそう感慨深げに呟いた。



78:02/11/18 03:33 ID:???


シャアは部屋をゆっくりと見回した。
そしてアムロ・レイを見る。ララァ・スンを見る。ララァ・スン?
そうこの場に、アムロの後ろに、ララァの姿が見えたのだ。はっきりと。彼の目には。鮮明に。
そして彼女はこちらに向けてそっと哀しげに微笑むと、アムロの背後の闇に紛れて消えた。蜻蛉のようにはかなく。
シャアはそれをみて、かすかに、微笑んだ。ララァ・・わかっているよ・・そう心の中で返事をする。
アムロ・レイに視線を戻す。
彼の姿もまた一年戦争時・・少年の頃のアムロ・レイにシャアには見える。
まだ彼はこちらをじっと見ていた。
シャアは唇を静かにひらくと、ゆっくりと言葉を発した。アムロに対して。




「今から私が喋ること・・よく聞いておくんだな・・アムロ・・」


そう・・・ここからの会話が全ての核心に迫るものであるのだ。
そして三十分間ののちに、アムロは全てを知ることになる。シャアの口から。
シャアの目的は、アムロには信じがたいものであった。
その後、この部屋に一発の銃声が響くことになる。




拳銃というのは素晴らしい。冷たく、重く、無機質である。そしておおむね無口だ。
引き金をひけば、全てを断ち切るのに相応しい音がなる。

79:02/11/18 03:37 ID:???




9章はこの後ギレンに視点が変わります。
それでは・・・

80通常の名無しさんの3倍:02/11/18 03:40 ID:???
おつかれっす!

ところで>>1さんは毎回手打ちで投稿してるんですか?
メモ帳か何かにあらかじめ書いてコピペしてないの?
投稿間隔が気になったもので。。。
81通常の名無しさんの3倍:02/11/18 03:41 ID:???
>>1
乙!!哀れガルマ・・・
違和感なく原作の台詞が用いられているのがいいですね。
82通常の名無しさんの3倍:02/11/18 18:12 ID:???
ギレン閣下、遂に降臨━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
激しく激しく期待上げぇぇぇ!!!!!!!!!!
83ろうろん:02/11/18 22:01 ID:hSUxZOpL
頑張れ!!>>1さん
84通常の名無しさんの3倍:02/11/19 01:39 ID:???
御疲れ様です。
面白くて仕方ないです。
頑張ってください。
85通常の名無しさんの3倍:02/11/19 18:32 ID:VXa1Aj1v
保守しておきます。
86通常の名無しさんの3倍:02/11/19 18:36 ID:???
保守だぁぁ!
87:02/11/20 01:54 ID:???


ギレンの演説から十分経過・・・。
「・・オン!ジークジオン!」
まだ続くのか・・?カツはなきたくなってきた。
やはりこの人達は狂っているよ・・そう思った。狂信的すぎる。
壇上のギレンが再び両手を挙げる。
ジークジオンの大合唱が漸くやんだ。カツはほっと息をついた。頭がいたい。
これ以上続いていたら、カミーユのベッドの横に寝ることになっていただろう。
「諸君。いまはその歓声はここまでにしておこう。後は上手くいった後にとっておかんとな・・それではこれより直ちに艦内制圧にかかる!」
ギレンが力強く宣言する。
「カテジナ、ランバラルはそれぞれモビルスーツの制圧ポイントへ!メカニックの協力者とも連携をとるのを忘れるな!
カツは私と一緒にこい!」
そう指示をだすギレン総帥にスタンバ・ハロイが声をかける。


「閣下!お待ちを・・まだガルマ様が帰ってきていませんが・・」
「そうだったな・・ガルマの奴・・遅いな?だが待てぬ、全ての物事にはタイミングというものが存在している!今が好機だ!
ガルマもあとから駆けつけるだろう。気にせず作戦開始しろ!」
ギレンは自ら拳銃を取り出すと、天井に向けって引き金を引いた。
「祝砲代わりだ。さぁ、行け諸君!ジオンのために!」
「はッ!ジークジオン!」
ランバラル、カテジナが部屋を退出する。すれ違いざまに
「カツ!ジオンのため頑張ろうぞ!」
と、ランバラルが力強くカツの肩を叩いていった。カテジナもウインクする。



痛ッ・・本気で・・?ちょっと・・。
僕はジオンにははいった覚えはないんですけど・・
カツは小声で愚痴った。無論誰にも聞こえないようにだが。
88:02/11/20 01:59 ID:???

カツは未だに混乱している。自分の立場に。いつのまにかジオンの一員になってる現況に。
ギレンが壇上から降りた。
そしてカツに声をかける。
「カツよ・・混乱しているのはわかる。君がブライトに恩義を感じているのもな。くだらん感情だと思うが・・
だが、カツよ・・お前は金が欲しいのだろう?それだけの理由で連邦に属しているのだろう?」
その声にカツは顔を挙げる。
確かに・・連邦に忠誠を誓った覚えはない。カツ・コバヤシはただお金が欲しいのだ。
フラウ母さんたちを楽にさせてあげたい。それがカツの乗艦理由である。
「この作戦が成功した暁には、それなりの恩賞を与えよう。連邦の安月給とは訳が違うぞ?」
ギレンはそう言ってカツに笑いかける。
「今の我々の戦力は乏しい・・クルーの中にも賛同者は多数いるのだが・パイロットの数がな・・
カツ・コバヤシよ?ジオンは君をパイロットして丁重に扱うことを約束しよう。・・もうモップ掛けは飽きたろう?」
この言葉がカツにとって決め手になった。
ドッグでのロランの顔を思い出した。確かに連邦の連中は気に食わない。
それにこのギレン・・FMVで馬鹿やっていた時とは違う。カツはそう感じた。

(なんというかオーラが漂っているんだよな。カリスマ性というか・・上手くいえないけど・・)


カツはギレンにいった。
「わかりました。全力でお手伝いさせていただきます。・・ギレン閣下」
「そうだ、それでいい。利口だな、カツ。それでは我々も出る。ブリッジの制圧に向かうのだ!ハロイ!ガルマを呼んでこい!艦長室にいるはずだ!」
「は・・それでは私はガルマ様を呼び次第、ブリッジに応援に参ります。」
トビアも敬礼して退出した。
その直後、艦内に警報が響き渡る。
「?敵襲か?急がねばな・・カツ!行くぞ。拳銃では弱いな・・この軍用ライフルを持っていろ。」
「ハイ!総帥!」
カツは大声で返事をした。ポケットのフロッピーの事はもう頭の中に残ってなかった。
89:02/11/20 02:06 ID:???

一方そのころ・・戦闘ブリッジでは・・


「先程発見した移動物質を再補足!やはり敵艦に違いありません。かなりのスピードでまっすぐこちらに向かってきます!」
「たしかなのね?ディスプレーに拡大表示急いで!」
ミライは焦っていた。
現在この艦にむけて、敵艦らしきものが接近しているのだ。前回ラフレシアを出した母艦かもしれない。
シャアと出て行ったブライトはいまだブリッジに戻ってきていない。
ゆえにミライが艦長代行をしていた。
(ブライト・・なにやっているの・・早くしないと・・・)
ミライはディスプレーを眺める。
ホワイトベースの戦闘ブリッジのディスプレー上に、CGによって自艦と敵艦のおおまかな位置が映し出された。
レーダーとレーザー測量、更に人為的な光学観測によって得たデーターだ。旧時代的なやり方ではあるが。
ミノフスキー粒子散布の状態ではこの方法、精度が限界である。


モニター上の映像・・敵艦が拡大される。
確かに戦艦である。レウルーラのような艦だ。
ミライは再び立体全空域ディスプレーを見つめる。
(どうすれば・・敵が近づいているのよ・・ブライト・・シャアとまだ話しているの?)
ミライはかすかな苛立ちを覚えた。
「誰か!ミーティングルームまで行ってきて!」
そう命令した。
90:02/11/20 02:09 ID:???

ミライは焦っている。だが、表面上はそれを顔には出さない。
艦長がいないいま、副艦長たる自分が動揺することは許されない。
それはブリッジに不安を与える。この状況でそうなれば事態は取り返しがつかなくなるだろう。
「敵艦!ミサイル射程距離圏に突入!」
「敵と思われる熱源の方向に迎撃ミサイル発射!並びにダミーを放出を急いで!」
「了解!ミサイル発射します!」
オペレーターが指示を実行する。
ホワイトベースの両脇の部分が開き、無数のミサイルが宇宙の闇に消えていった。


「第二戦闘配備を第一に切り替え!モビルスーツの出撃を急がせなさい!」
「そして艦砲射撃も同時に!一斉に叩く!」
ミライはそう指示を出しながら、未だに戻ってこないブライトに不安を感じ始めていた。
いくらなんでも遅すぎる。


(まさか・・戻ってこないんじゃなくて・・戻れない?)

「敵艦!モビルスーツを散開した模様!」思索中のミライの耳にクルーの声が入った。
「こちらはまだ出ないの?!モビルスーツ・デッキの連中は何やってんの!」
ついブライトの口調になるミライであった。
それを聞いて、クルーの一人は思わず吹き出した。
この緊張下の中でも笑えるのはやはりこの艦に乗っているパイロットを信頼しているからである。

白い悪魔アムロ・レイ、赤い彗星シャア・アズナブル、蒼い巨星ランバ・ラル、「スペシャル」のウッソ・エヴィン、etc・・
「ミライ副艦長!大丈夫ですよ!我がモビルスーツ部隊は最強ですから!」
そう自慢下にいうクルーにミライは激怒した。
「そういった過信が!彼らの負担になることが判らないの!トビアの事を忘れたわけではないでしょう!」
ミライの厳しい叱責が飛ぶ。
クルーは慌てて、申し訳ありません、と叫ぶと急いでモビルスーツ・デッキにコンタクトを取った。
91:02/11/20 02:13 ID:???


「ウッソ・エヴィンは出撃できるそうです!ただアムロさんたちがまだ・・」
「アムロが?一体何をやっているのかしら?部屋に内線を!」
「いや!待ってください!なにやら今デッキで銃声が?もしもしオクトバー?何があった!返事をしろ!」
「どうしたというの?報告しなさい!」
ミライがそう命令する。その直後、戦闘ブリッジのドアが開いた。
そして低いが良く通る声がブリッジに響く。




「ミライ副艦長どの・・実にご苦労。突然だがこの艦は今よりジオンのものになる。
艦長の役目はこれより私、ギレン・ザビが引き受ける。」
ブリッジにいた総員が一斉に声のした方をみる。
そこにはギレン・ザビ、カツ・コバヤシ、並びに数人のクルーが拳銃をこちらに向けて立っていた。



「おや?ブライトはどうした?まさか怖くなってトイレにでも逃げたのか?」
ギレンがクックックと笑いながらいった。

92:02/11/20 02:25 ID:MUeAVudF






ここまでがギレン、ならびにブリッジの動きです。
シャアとアムロは現在会話中です。
いまからモビルスーツ・デッキに舞台が移ります。
明日はまた家に帰れないので、あさってになります・・。本当にすいません。


次はウッソの視点です。いままで影が薄かったですが・・。
推薦してくれた人申し訳ありませんでした。



>>80
使ったり使わなかったりです。
勢いでブワーっと書くこともあれば、メモ帳使うときもあります。
勢いで書いた方が筆が進むんですが、間違いも多いので・・(スレンダーなど)

93通常の名無しさんの3倍:02/11/20 02:57 ID:???
1さん乙
ガンガレ。続き待つさ
94通常の名無しさんの3倍:02/11/20 03:27 ID:???
オツです。
さて寝よう。


ジープジオン
95通常の名無しさんの3倍:02/11/20 14:35 ID:???
>88
トビアが出てるけど、生きてたの?
96通常の名無しさんの3倍:02/11/20 14:53 ID:???
>>95
言うな。勢いで間違えたんだろ。スレンダー=スレッガーのように。
97通常の名無しさんの3倍:02/11/20 17:49 ID:???
スタンバハロイと間違えたのかな?
98カンリニン:02/11/20 19:37 ID:???
電話が止まってて、昨日は来れなかった。
・・・・しかし、おもしれぇな!畜生。
99通常の名無しさんの3倍:02/11/20 23:16 ID:???
1さんがんばって!!
100カンリニン:02/11/21 00:08 ID:Qkxw6ASB
6時間たったのでage
101通常の名無しさんの3倍:02/11/21 18:59 ID:???
落ちたら悲しいのでage
102通常の名無しさんの3倍:02/11/21 23:08 ID:???
リックドムあげ
103褐色のおじさん:02/11/21 23:42 ID:72SO/64U
そろそろかの?
104通常の名無しさんの3倍:02/11/22 13:16 ID:???
グラサンの司会
105通常の名無しさんの3倍:02/11/22 17:39 ID:???
ageラン・ハスラン
106:02/11/22 18:23 ID:???

モビルスーツ・デッキ。
そこで作業中のウッソはふと地球でのことを思い出していた。


彼・・ウッソ・エヴィンは以前ある戦争に参加したことがある。
もちろん彼個人の意見としてはそんな事はしたくなかった。
けれどそんな彼の意見を誰かが聞いてくれるわけでもなかった。
そんな子供の戯言で終わるようなら戦争など元々起きはしない。


その戦争は彼にとって、とても悲劇的で哀しい結末に終わった。
彼の仲間・・シュラク隊はほぼ全員死亡し、オデロといった友人も消えた。
両親でさえも戦争は彼から容赦なく奪っていった。


その圧倒的なまでの暴力性は普段彼が親しんでいた現実から著しく乖離したものであった。
不条理というに相応しい様々な出来事は当時13歳の少年には少々重すぎた。
彼の精神は中途半端なところで無理矢理ピリオドを打たれていた。
もう少し戦争が長引くか、カテジナ・ルーズとの接触が多ければ彼の精神も破綻していたかもしれない。
ガンダムを降りたウッソは表面上は普通に振舞っていた。以前と同じ様に。

107:02/11/22 18:24 ID:???


ウッソは自分にこう言い聞かせていた。


シャクティはなんとか助けることができたし、エンジェル・ハイロウも解放した。
シュラク隊のことは悲しかったけれど仕方がない。
その中で生き残ったマーベットには赤ちゃんが生まれているんだから。
赤ちゃんも今はもう1歳だ。元気に成長している。
僕たちの住んでいる場所カサレリアは平穏そのもので、冬の寒さが厳しいのを除けば、なに不自由ない。
これでいいじゃないか。もう昔のことは忘れるんだ。
そう自分に言い聞かせているウッソではあった。が、
そんな少年の元に届いた一通の手紙が彼の運命を変えることになる。

108:02/11/22 18:28 ID:???

一ヶ月前のこと、ウッソの住むカサレリアに来た手紙。差出人は不明。それにはカテジナのことが書かれていた。
それによるとカテジナはホワイトベースリベンジに乗艦予定だと記されていた。そしてその乗艦場所も。
その手紙を読んで彼はシャクティに内緒でこの艦に乗艦することを決意した。


マーベットには出発の前夜に全てを話した。
彼女はウッソの話をじっと聞き終えると、そう、と溜息をついていった。


「ウッソ・・よく聞いてね。これはシャクティに絶対あなたには言わないように、といわれていたんだけど・・。
もう・・二年ぐらい前・・私たちがここで暮らし始めて半年ほど経ったある日に、カテジナがここに偶然来たことがあるらしいのよ。
彼女は目が見えなくなっていたって。ウーイッグまでの道をシャクティに尋ねたらしいわ・・。
それでシャクティは彼女にワッパのオートコンパスをあげた。ウーイッグまでの・・.彼女は礼をいうとすぐに立ち去ったそうよ。
シャクティはそれを見送った。泣きながらね。彼女がそうした理由はわかる?ウッソ?
それは貴方のためよ。あなたがカテジナのその変わり果てた姿をみたら・・どうなっていたと思う?
だから今まで黙っていたって・・シャクティが貴方のいないときに泣きながら話してくれたわ。」


そういうとマーベットは呆然とする少年の頬を手のひらでそっと包み込んだ。
マーベットの手のひらからは微かにミルクの匂いがした。

109:02/11/22 18:34 ID:???

「いい?ウッソ?万が一、カテジナがそこに乗艦するとして、あなたは彼女にあって何がしたいの?
何をしてあげられるの?あなたに。
もはや彼女とは一度決着がついているのよ?それでも会いたいの?
貴方のその行動がシャクティの心に与える影響をよく考えて・・・。」
彼女はウッソの頬から手を離すと、膝に置いてある手を握った。
ウッソは彼女の温かいけれどちょっと硬い手の感触を感じた。
ウッソもマーベットの手を強く握り返した。


「・・・カテジナさんにあって何をしたいのかは正直わからないんです。けれどいかなくちゃならない気がするんです。
僕はもう一度彼女に会わなければいけない・・。
そうしないと結局は僕自身前に進めないと思うんです・・結果がどうであれ・・」
マーベットさんはそういう僕の瞳をまっすぐ見ながら確認するようにいう。
暖炉の火が2人を照らす。


「・・進めないのね?」
「ええ、進めません。・・・何もかも・・」
マーベットのいわんとすることはウッソにはよくわかった。
しかしウッソは、シャクティとカテジナを比べているわけではない。
これはウッソ自身の問題であり、区切りであるのだ。

110:02/11/22 18:38 ID:???


「わかったわ・・シャクティにはウッソは私の用事で急にしばらく出稼ぎにいってもらった事にしましょ・・苦しい理由だけどね」
「有り難うございます。マーベットさん。シャクティのこと・・よろしく頼みます」
ウッソはマーベットさんに深く頭を下げた。
そして彼女の家を後にした。
残ったマーベットは赤ん坊を寝かしつけると、寝室の窓を開け夜空を眺めた。
星が綺麗だった。カサレリアの夜空の星は瞬いていた。
冷たい風が身体を震わせる。マーベットは今は亡き夫に問い掛ける。
「あの子・・本当に強情で・・仕方ないわね・・オリファー」
そして夫の最後の言葉を思い出す。

「行かせんと言った!マーベット、俺たちの子供を頼んだぞ!」

オリファー・・ウッソもあたしたちの子供よね・・けれどあたしじゃ力不足かしら・・
マーベットはそう呟く。後ろで赤ん坊の泣き声が聞こえ慌てて窓を閉める。
胸の中で赤ん坊をあやしながら彼女はウッソの無事を願った。

       


そういうことで現在、彼・・ウッソ・エヴィンは宇宙にいる。




111:02/11/22 18:40 ID:???


「ッソ、ウッソ!・・どうかしたの?ボーっとしてるようだけど?」
「え・・うわ、ロラン!い、いや何でもないけど・・」


突然ロランの呼び声が聞こえた所為で声が裏返った。どうやらボーっとしていたらしい。
ロランの顔が目の前にあった。ウッソを怪訝そうに見ている。
「そう?それならいいんだけど・・」
ロランがそう言って首を傾げる。
彼・・ロラン・セアックとウッソは年が近いこともあって仲がいい。
ウッソより少し年上のロランは優しくて、気が付く好感の持てる人物である。
使用人をしていた癖らしく誰にでも基本的に敬語で話す。年下のウッソにも例外ではない。
「フォウさんがくれた飲み物持って来たよ・・冷たくて・・ウッソ?聞いてる?」
「・・・・・」


そういえばそれそろ畑の作物が取れる時機だな。シャクティ大丈夫かな・・
まぁマーベットさんたちが手伝ってくれるだろうけど・・シャクティ・・
宇宙からだと地球の些細なことでも気になるものだ。
ウッソは自分の思索に再び入り込んでいた。
112:02/11/22 18:43 ID:???

そんなウッソの顔をロランが心配そうに覗き込む。
そして彼の両肩を掴むと強く揺さぶった。
「ウッソ!しっかりしなよ?大丈夫?瞳の焦点があってないよ!」
「だ、大丈夫!大丈夫!ちょっと考え事していただけだから!」
ウッソが慌ててそう応える。


「本当に?・・はい、オレンジジュースのパック。フォウさんが配給にきてくださったんだ。
ちょっと休憩しようよ。もう6時間はぶっ続けだしね。・・ここ狭いからでない ?」
そういいつつ狭いコクピット内のシーツに身を沈めるロランからウッソはパックを受け取った。
ここはF91のコクピット内である。
ブライト艦長にこの機体をウッソ専用にすると言われたので、さっきまでずっと一人で調整していたのだ。


「そうだね。出ようか?」
そうロランに返事をしてコクピットから降りる。
F91の足元に降りて、一息ついて辺りを見渡す。
まだみんな忙しそうに整備していた。フォウがその間を動き、メカニックマンたちに飲み物の配給をしていた。
右手に持ったパックのオレンジジュースを飲む
冷たくて、おいしい。いつまにか汗をかいていたのでありがたかった。
パイロットスーツを着ているので動きにくい。脱ぎたかったがそんな事をしたら、後でこっぴどく叱られるだろう。
今日は特別警戒なのでパイロットスーツ着用が義務付けられているのだ。
真面目なウッソにはそれを破ることはできなかった。
とりあえずメットを外して横においた。ほんの少しだけ楽になった。
113:02/11/22 18:49 ID:???


「そういえばロランは何の作業していたの?」
疑問に思ったウッソは降りてきたロランに尋ねる。
「僕?僕はアストナージさんとサザビーのサイコミュの調整をしてたよ。上手くいかないみたいで・・」
ロランがそういい、難しいよね、と一人で納得する。


「サザビーってシャアさんの機体の?」
ウッソは聞いた。ウッソとシャアはあまり話す機会がない。シャアはいつもなにか考え事をしているので話しかけにくい。
しかしシャアにウッソはどことなく親しみを感じていた。理由はないけれど。
同じ相部屋のアムロさんは僕に優しいけどな・・ウッソはそう思う。しかし彼・・アムロも心に深いトラウマがあることを敏感なウッソは感じ取っていた。
そして安心した。アムロといえどやはり人の子である、と。
自分だけがそうではないと知ってウッソはホッとしたものだ。みな何かを背負っている。
(そういえばニューガンダムのサイコミュもなんか調子が悪いってメカニックさんがいっていたな・・?)
ウッソは作業中にメカニックがそうぼやいていたのを聞いたのを思い出した。


ロランがジュースを飲みながら応える。
「そうシャアさんの赤い奴。けど、ウッソ、ちょっと質問があるんだけど・・僕って女みたいかな?」
「え?」
突然ロランがこんな質問をする意図がわからないウッソはこの質問に首を捻った。
「いや・・そんなことないと思うけど・・?」
そう曖昧に返事をする。
そのときモビルスーツ・デッキのブロックに第二戦闘配備の警報が響いた。
114:02/11/22 18:54 ID:???


「敵襲?!」
ウッソは慌ててジュースを飲み干すと、ガンダムF91のコクピットに乗り込む。
慌ててジュースを飲んだ所為でムセて咳き込んだ。ちょっと焦ってしまった。
F91ガンダムを起動させると、360度ディスプレーにデッキの様子が映しだされる。
全視モニターと呼ばれているものだ。
これは数台のカメラの映像を、コンピュータが制御して、それを360度の画像として再現している。
その画面の右隅にロランが、慌ててクインマンサ(僕が前に使っていた)の元に走るのが見えた。
ブロック内が一気にあわただしくなった。
ウッソは宇宙への外壁のハッチが閉まっているのを確認すると
「ウッソ・エヴィン出ます。ハッチ開けてください!」
そうメカニックマンに声をかけた。
ノーマルスーツを着用しているアストナージさんがこちらに叫んでいる。
「ウッソ!出撃命令はまだ出ていない。待機だ。」
「けれど第二戦闘配備の警報が流れているじゃないですか?敵襲でしょ?」
「パイロットは勝手な推測しなくていい。少し待て。オクトバーが管制と連絡を取っている。そのまま待機だ。」
「わかりました・・。」


そう渋々返事をした。けど、そんな暇なんてあるのかな・・
実際敵襲だとしたら悠長なことしてるひまはないと思うんだけど・・。
一瞬の差が命取りとなるのが戦場の常だし・・
ウッソはそう思った。
「ん?おーい、ちょっと降りて来い。ウッソ。お前ヘルメットここに忘れてるぞ!」
アストナージが更に足元にきてウッソのメットを持って怒鳴った。
さっきデッキに下りたときに横に置いていたのをすっかり忘れていたのだ。

115:02/11/22 18:56 ID:???
「あ、スイマセン!今そちらに行きます。」
そういってハッチをあけてF91の足元、先程までロランといた場所、に降りる。
「迅速に行動するのはいいが、慎重にな」
アストナージがこちらの頭をかるく小突きながら説教する。
すいません、と返事をしながらメットをかぶる。
「それじゃあ戻ります」
ウッソはそういうとクレーンに乗った。



「残念だけど、戻れないよ、坊や」


キャット・デッキの方から聞き覚えのある女性の声がした。

「カテジナさん?」
ウッソはキャットデッキを見上げる。そこには数名のメカニック・クルーを引き連れたカテジナがいた。
全員、手にはマシンガンを持っている。
フォウがメカニックの一人に捕まっていた。
「どういうことだ!悪い冗談なら止めろ!」
アストナージが大声で怒鳴る。
「冗談じゃないよ・・今からこの艦は我々ジオンのものになるんだよ。」
カテジナはそういうと可笑しそうに笑った。
その笑顔を不覚にもウッソは美しいと感じた。呆然とその横顔を眺める。
「ジオンだと!」
アストナージが驚愕の声をあげる。
116通常の名無しさんの3倍:02/11/22 18:56 ID:???
ワクワク
117通常の名無しさんの3倍:02/11/22 18:59 ID:???
な、なんかウッソ死にそうな気配が……
ここまで期待させてくれる1さん、さすがです
118:02/11/22 19:00 ID:???


「本気で乗っ取る気なのか?そんなことができるわけないだろう!カテジナ!止めるんだ!」
アストナージはキャットデッキの方に流れていくとカテジナの肩を掴んだ。
「ギレンに騙されたのか?あいつの妄想に付き合うんじゃない!」
そしてそう説得する。
「うるさい!あたしにその油のついた汚い手で触るんじゃあないよ!」
アストナージの身体が一瞬大きく弾けとんだ。カテジナがアストナージの身体をマシンガンで撃ちぬいたのだ。
メットのバイザーが割れて、そして辺りに血が飛び散る。
その状況にモビルスーツ・デッキのメカニックたちが色めきたった。
アストナージの元に駆けつけようとしたロランや、メカニックたちはカテジナの取り巻きのメカニックたちの
牽制射撃をうけて動けなかった。
艦内の警報が第一戦闘配備に切り替わる音がした。



ウッソは呆然とその場に立ち尽くす。
アストナージの身体がぐったりとして動かない。その身体はゆっくりとプラットホームの方に流れていく。
カテジナが愉快そうにまた笑う。
その姿は、傍目から見ると狂っているように見える。
それでも彼女は美しかった。
少年の瞳にはそう映った。
119通常の名無しさんの3倍:02/11/22 19:02 ID:???
ア、アストナージが・・・
120:02/11/22 19:08 ID:???

「カテジナさん・・僕は・・あなたを・・」
カテジナの笑い声を聞きながら。
ウッソは呟く。
「・・あなたの事を・・本当に・・・」
その続きは掠れていて聞こえない。


ウッソはアストナージに渡してもらったヘルメットを眺める。それは母ミューラの最期を思い出させた。
ヘルメット・・頭部・・死・・戦争・・血・・重いヘルメット・・切断・・首・・


リステアの後ろのタイヤで潰された母親をウッソは脳裏に鮮明に思い出した。
それはあの日以来心の底に閉じ込めていたものであった。深く。鎖をつけて。重りをつけて。
母さんは・・僕を・・僕を・・実験に・・だけど・・
少年はヘルメットを落とした。これ以上持っていられなかった。



ウッソは知らずのうちに涙を流していた。
戦争の終結と共に無理矢理うったピリオドが実はカンマに過ぎないことに少年は気付く。
少年の精神は少しづつ壊れている。誰にも届かない悲鳴を立てている。崩れていく。
それを止めることは誰にもできない。





121通常の名無しさんの3倍:02/11/22 19:12 ID:???
カテ公キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
122:02/11/22 19:15 ID:???



遅くてすいません。おまたせしました。
ここまででやっと六章からの時間軸が一つにまとまりました。
ここで一つ区切ります。
続きはまた。
レス下さった皆様、ほんとに有り難うございます。励みにして頑張ります。
それでは・・




>>95
そうです。スタンバ・ハロイと間違えました。すいません・・ミスりまくりで・・
123通常の名無しさんの3倍:02/11/22 19:45 ID:???
もつかれ!ほんと、読ませるねぇ
124通常の名無しさんの3倍:02/11/22 23:20 ID:???
小説の途中に割り込むのはやめようよ…
125通常の名無しさんの3倍:02/11/22 23:45 ID:???
いいんじゃない?sageてるし
リアルタイム応援もオツなもんかと(^^;)
126通常の名無しさんの3倍:02/11/23 00:07 ID:???
え?え?ええぇ〜???
ウッソカミタンみたくなっちゃうの???
応援しながらsage
127カンリニン:02/11/23 00:16 ID:iLngn3ZQ
age
128通常の名無しさんの3倍:02/11/23 00:17 ID:???
omoroi
129通常の名無しさんの3倍:02/11/23 00:22 ID:???
>>126
シャクティへの愛でコッチの世界に踏みとどまる、を希望。

ストーリー的都合であぼーんするのは諦めるから、かみーゆにはならんといて。
130通常の名無しさんの3倍:02/11/23 00:50 ID:???
ヘルメットと母親の首を重ね合わせる描写力に感服。
131通常の名無しさんの3倍:02/11/23 01:00 ID:bf0tjehL
いいじゃん、カミーユでも。
ああ、こんなにわくわくするのは久しぶりだ…
この話が終わったら1氏を奢るOFFでもしたいぐらいだ…
132通常の名無しさんの3倍:02/11/23 01:01 ID:???
村田ってどうしてあんなに屁が臭いんだろう・・・
133カンリニン:02/11/23 16:15 ID:deoDvZcc
保守
134通常の名無しさんの3倍:02/11/23 20:41 ID:???
>>129
ストーリーに指図するな。
カエレ。
135通常の名無しさんの3倍:02/11/23 20:48 ID:???
>>134
閲覧者に指図するな。
カエレ。
136通常の名無しさんの3倍:02/11/23 21:09 ID:???
>>134>>135
お前ら、揃いも揃って消防ですか?
137通常の名無しさんの3倍:02/11/23 21:11 ID:???
今日見つけたけど、まじでおもしろい!
がんばってください!
138カンリニン:02/11/24 00:27 ID:lxxatkkK
セ〜ブ〜ディス〜ワ〜ルド〜
感じるよ〜♪
139:02/11/24 00:39 ID:???

やっと帰ってこれたのできてみたら、いつのまにか前スレが1000いってました。
書き込んでくれた皆様有り難うございました。嬉しいです。
このスレは第一回から繋がってますからね・・第一回が落ちると話がわかんなくなると思います。
残っているうちに完結させられればよかったのですが。うーん、力不足です。
シャア板のhtml化ってかなり遅いですからね・・。


さて本筋のほうですが。
今日はこの後の細かい流れを考えていたので続きはかけませんでした・・すいません・・。
明日にはこの続きをかきたいと思いますが・・
ウッソの結末を心配してくださっている人がいるようですね。
彼がどうなるかは・・もう少しお待ちください(笑)


>>137
見つけてくださって有り難うございます。
応援されるとほんとに励みになります。


>>カンリニンさん
いつもスレが落ち込んでいるとあげてくださって感謝してます。
その歌はなんの歌ですか?


140カンリニン:02/11/24 02:25 ID:???
>>1
あ・・・・あ(赤面)。いえいえ。
TMネットワークのキャロルのアルバムの中の
Carol (Carol's Theme II)じゃなかったかな?

ttp://www.cokky.ne.jp/tmn/Default.htm
141通常の名無しさんの3倍:02/11/24 14:02 ID:???
omoroi

シャア専用板でいちばんの楽しみ!!
毎日楽しみ〜!!!!!!個人的にはアムロのこれからが気になります。
142カンリニン:02/11/24 19:19 ID:4SaouGBc
定例保守
143通常の名無しさんの3倍:02/11/24 19:43 ID:???
レス番977までしかないけど前スレうpしといたよ。
祝福しろ(アナスイ)

http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Bass/7531/ten.html
144:02/11/24 20:08 ID:???

お待たせしてスイマセン。もう少しお待ちを・・。
9時半にはアップできると思いますので。



>>140
 下のリンクに見事にだまされました(泣)。そんな会社?あるんですね・・

 
>>141
  そんなに誉めていただいて恐縮です。
  アムロですか?お待ちくださいね・・彼らもそろそろ・・けど・・


>>143
おお・・これは・・有り難うございます・・感謝の言葉もありません。
ただ一ついえるのは・・「最高にハイってやつだ!」って感じです。本当に。
祝福します。ジョリーンと結婚できることを祈って・・






145:02/11/24 21:39 ID:???


ウッソ・エヴィンの精神がいかに常人より強くとも肉親の死というのは別物である。
それはむしろ精神が強いばかりに一般の人より感受性が高く、哀しみも大きかった。
繊細で多感な少年期に起きたあの出来事は悲劇と呼ぶに相応しいものであった。
ゆえに少年はその記憶に蓋をしてしまっていた。


無論、時折り母のことを思い出すことはあった。しかしそれは母親との会話など心に優しいものである。
いうならばそれは井戸の蓋をほんの少しずらす行為といえる。けっして底は覗かない。
決してあの瞬間を思い出そうとはしなかった。
あのことを考えると、よくわからなくなるのだ。本当に。
母が死んだ直後、敵に会うと頭がおかしくなりそうだった。自分がわからなくなる。精神が乖離していく。
人を憎く思う。それが怖かった。
だから・・だから・・
蓋をしたのだ。


けれどウッソはそれを二年ぶりに深く意識の深層から呼び起こされてしまった。
間接的にとはいえ因縁のカテジナ=ルースの手によって。
あのシーンが鮮明にリプレイされる。繰り返し。繰り返し。
精神が崩れていきそうだ。頭がいたい。イタイ。痛い。
少年は頭を抱える。涙が頬を伝っておちる。
そしてもっとも考えてはならなかったことを思い出す。




            僕があの時「シャクティ」じゃなく「母さん」を助けていれば。
               母さんは死ななくてすんだんじゃないのか?

146:02/11/24 21:45 ID:???

けど・・母さんはあの時・・笑って・・僕に・・

ウッソは頭を抑える。
アストナージの死、カテジナ・ルース、そして死者に渡されたヘルメット・・
この三つの要素が少年の中で交じり合い、鮮明なイメージとして蘇ったのだ。
それは少年の精神を強く揺さぶった。
あのとき手にした母ミゲルの確かな首の重さが。漂ってくる血の匂いが。空気が。


少年の足は小刻みに震えだす。
「あの時・・あと・・五分はやければ・・母さんは・・死なずに・・」
ウッソの感覚にリアルに再現される。
少年の鋭敏過ぎる感覚が仇になったのは皮肉である。
その感覚ゆえに少年は戦争に生き残り、またその感覚ゆえに終戦後もこれほどに苦しまねばならぬ。
これが運命の皮肉といわずしてなんといおうか?

ウッソは混乱の中
戦争中の僅かな休息のときに、母が自分にかわした言葉を思い出す。


 『あなたを生む前の夜。
 なんだろうね、こう、白いフワァとしたものが現れて、新しい子、ニュータイプを授けるっていう夢を見たのよ。』



母さん・・僕は・・ニュータイプになんて・・生まれたくなかった・・よ・・
そうウッソは呟く。


147:02/11/24 21:49 ID:???

ウッソは落としていたヘルメットをゆっくりと拾った。重みを確かめるようにそっと。
ドックに下りてきたカテジナの声が響く。
 

「さ〜て。邪魔な正義感ぶった奴は死んだ。ジオンに逆らいたい者は今の内にでてきなさい・・。
あたしが直々に殺してあげるからねぇ・・アハハハハハハ・・!」
そういいモビルスーツ・デッキのクルーたちを見渡す。
その声はあの頃と全く変わらない。


カテジナさん・・僕はあなたに会いに・・けれど貴方は・・貴方は・・
少しも変わってないんですね・・



それが何故か少年には酷く可笑しかった。
ウッソはカテジナの方にゆっくりと歩み寄る。
「なんだい?トチ狂ったのかい?坊や」
マシンガンがこちらに向けられる。足元に威嚇の射撃をする。
ウッソはその光景を他人事のように感じていた。ゆえに足は止まらない。
「この・・坊主が!」
カテジナが今度はウッソの身体に狙いを定める。
「ウッソ!」
慌てて近くに戻っていたロランがウッソを制止する。
「・・死にたいの・・?ウッソ・・駄目だよ。アストナージさんみたいに・・なっちゃうよ・・」




148:02/11/24 21:59 ID:???


ロランはウッソの肩を抱くようにすると泣きながらそう言う。
アストナージの死は彼にも少なからず衝撃を与えていたようだ。
ウッソはそのロランの顔をみて
「・・・シャ・・シャクティ・・?いやロラン・・か・・。」
と声をもらした。
そしてロランが自分を掴まえていることに気付く。


温かい。人の温かみをウッソは感じた。
もちろんパイロットスーツ越しだから直接的な温かみを感じたわけではない。
それは精神的なものだ。
エンジェル・ハイロウから出ていたのと同じ・・精神的なぬくもりを感じる。
・・それはウッソの張り詰めた精神を緩和させてくれた。


ロランの顔が・・同じ褐色の色であるシャクティを思い出させてくれたのも幸いであったといえる。
「ありがとう・・ロラン・・もう大丈夫・・」
そうまだこちらを見つめているロランにいう。
ウッソは少し下がる。F91の足元に再び戻る。


カテジナさんに・・近づくのは危険だ。
少なくとも今は・・。
149:02/11/24 22:03 ID:???


「なんだい・・友情ごっこなら他でやりな!」
カテジナはそういうとこちらに興味をなくしたのか、コンソールパネルに向かった。
そのとき後ろの方でかすかに音がした気がした。が、カテジナは無視した。
そして管制・・ブリッジと連絡をとるようにクルーの一人に指示をだした。



「ブリッジに連絡してモビルスーツを出していいのか指示を仰ぎなさい!」






そして場面は再びブリッジへと戻る。



150:02/11/24 22:09 ID:???

ブリッジではミライとギレンの会話が行なわれていた。


「ミライ艦長?今からこの艦の指揮はジオン公国総帥であるこのギレンが執る。
さぁそこをどいてくれたまえ。」
ギレンがミライの艦長席に近づき、当然だといわんばかりの表情でいった。
「こんなことをして・・上手くいくと思っているの?」
ミライがギレンを見つめる。ギレンの部下・・ジオンの残党であるクルーがこんなに紛れているとは思わなかった。
むろん乗艦してからジオンに洗脳されたのもいるだろう。
カツまでもギレンに洗脳されていたのはミライにとって意外であった。



「もちろんだとも。私の計画に失敗は存在しない。さぁ早くそこを渡すのだ。」
ミライがゆっくりと艦長席から立ち上がる。
「カツ・・あなた・・フラウが悲しむわよ・・こんなことをして・・・」
カツがその言葉に一瞬動揺をしたが、すぐに平静を取り戻すといった。
「ミライさん・・僕・・母さんが悲しんでも・・それで母さんたちの生活がよくなるなら・・かまいません」
ミライはこの言葉にカツの成長を見た気がした。
たとえそれが間違ったものであったとしてもそれはある種の驚嘆に値する。
「ホント・・オトコのコの成長の早さには驚かされるわ・・アムロを思い出す・・」
ギレンがそんな2人の会話を遮って言う。


「早くするんだ。第一戦闘配備・・敵が接近しているのだろう?私の指示がいる。
脆弱な連邦艦長どのはまだ帰ってきていなようだしな・・」



151:02/11/24 22:15 ID:???


ミライがキッっとギレンを睨んでいった。
「地球連邦を否定するのはもう止めなさい!あれはどうであれ個人の主権の確立の上にたった政府よ!
独裁を企むザビ家などもはや・・宇宙に住む人々の支持を受けれないのは明白です!あの戦争はもう終わったのよ。
いまさらジオンの再興など妄想を!
40億もの罪ない人々を殺戮したあなたが何を語る資格があるというの!」




ギレンが心外そうに肩をすくめる。
「あれは間引きだよ。ミライ副艦長。
人類のみが膨れ上がって地球上の他の生物を押さえつけるのは自然に対する冒涜であったのだ。
優良種たる我らが人類を管理し、コントロールしなければならない。それでこそ人類の永遠の繁栄は約束される。
そのための戦争。つまり正義だ。40億の死は自然への贖罪。当然の行為であるといえる。」

「詭弁を!大量殺人者が!」
ミライが強い口調でその独善的な思想を非難した。
「戦争とはそういうものだろう?」
そういうとギレンはミライの腕を掴んだ。
「・・さぁ、お話はこれまでだ・・」

そして無理矢理ミライを立ち上がらせる。





152:02/11/24 22:21 ID:???
そのとき一人のクルー・・先程ミライがミーティングルームにいかせた男・・・が息を切らせて走ってきた。


「ミライ艦長!大変です!艦長が・・・!」
そこでクルーはブリッジの異変に気付く。
ギレンがミライの腕を無理矢理掴んでおり、周りにはマシンガンを持ったクルーが油断なくあたりを囲んでいる
ギレンが続きを促す。
「・・どうした・・続けたまえ・・艦長がどうしたんだ?」
クルーは不安げにミライを見る。ミライは頷く。
「艦長が・・何者かに頭を撃たれて!死・・死んでいました!」
そのクルーの絶叫はブリッジ全体に響き渡った。


ブリッジを静寂が支配した。
ミライは怖れていたことが現実となり呆然とした。シャアの仕業に間違いない・・ブライト・・ミライは崩れ落ちた。
クルーたちも絶句した。ジオン兵となったものたちも動揺を隠せない。
一人、ギレンだけが大笑いした。
「これは手間が省けた・・誰がやったのかしらんが愉快だ・・・
おや?ミライ夫人?顔色が悪いな?気分でもすぐれないのか?」
そういって膝をついているミライに手をやる。ミライはそれを払う精神力は残ってなかった。


「おい、この傷心の女性をどこかにぶちこんでおけ・・丁重にな・・。」

153:02/11/24 22:31 ID:???


ギレンはようやく艦長席に座る。
「現状を報告せよ!」


その声にブライトの死で呆然としていたオペレーターは、びくり、と反応すると慌てた口調で報告した。
「現在、敵モビルスーツ十時の方向から接近中!数は八機!ミサイルは外れた模様!」
「ギレン閣下!モビルスーツ・ドッグを占拠したカテジナ・ルースが指示を仰いでいます。」
「占拠したか・・上々だ。よし、直ちにパイロットたちを出撃させろ!こちらにはミライがいることを伝えておけ。
諸君らがおとなしくしていれば彼女の生命は保証する・・とな。あとブライトの死も一緒にな。」


ギレンはモニターを見ながらそう指示をだした。
「りょ・・了解!」
オペレーターが返事をする。
もはやブリッジのクルーはギレンの命令どうりに動くようになっていた。
無理もない。艦長が殺害されたのだ。ジオンに対する戦意を喪失したのだろう。
クルーは掌握できたな・・ギレンは思った。
いいタイミングでブライトの死が伝わった。あれはどんな説得よりも効果があった。
あれによりブリッジ内の戦意が目にみえて萎えていった。
彼らは恐怖したのだ。


所詮愚昧にすぎない連中は、目前に死や金をちらつかせれば意のままに操ることができる。
無論のことだが、前者はこのクルー達であり、後者はカツである。
ギレンの冷徹な目が満足そうに細められた。
ディスプレーの映像を確認する。
敵のモビルスーツ部隊はもう少しで接触する。が、充分こちらの出撃は間に合うだろう。
154:02/11/24 22:42 ID:???
(・・それにしてもガルマ・・遅いな・・?)
ギレンは、ふと未だに姿をみせないガルマの事を気にした。ゆうに三十分は経ったはずだ。遅すぎる。

そのときオペレーターから感嘆の声がした。
「サザビーがもう出てきた!さすがに早いな!」


ギレンはその声につられて再びディスプレーをみた。
戦闘ブリッジのディスプレー上に重厚感のある機体が映し出されていた。MSN−04・・サザビーである。
その赤い機体は一回ゆっくりと旋回したかと思うと、戦闘ブリッジに近づいてきた。
モノアイが赤く揺らめく。


ギレンはそのとき不吉な感覚に襲われた。モノアイが自分を射抜いているような錯覚を覚えた。
「おかしいな・・?なんでこっちに近づいてくるんだ?敵は10時の方向なのに・・」
クルーの一人が不思議そうに首を傾げる。
「あのモビルスーツをこちらに近づけるな!」
ギレンはそう瞬時に命令を下した。
直感である。
ギレンの鋭敏な神経が何かを告げていた。この機体は危険である、と。
そのときスタンバ・ハロイが息せき切ってギレンの元にきた。彼は息を整えるのももどかしく激しく咳き込んだかと思うと
ギレンに向かってこう叫んだ。


「ギレン閣下!い・・一大事です・・ガ・・ガルマ様が何者かによって・・こ・・殺されております!艦長室で!」


ブリッジに接近してくるサザビーのモノアイが  鋭く光った。

155:02/11/24 22:46 ID:???



ここまででようやく第九章は終わりです。長かったです。
次章ははシーマとスレッガー達に視点が移ります。
それでは・・・
156通常の名無しさんの3倍:02/11/24 22:57 ID:???
いまさらながら
あえて言おう!良スレであると!
天下一の時から読んでました。
毎日楽しみにしてます!!
157通常の名無しさんの3倍:02/11/24 23:19 ID:???
おもしろい!!!!
どずる様も登場するんでふか??
アムロ気になる・・・(地球をすくった父性の塊…英雄)
1さんおつかれさまでした!!
158通常の名無しさんの3倍:02/11/25 00:17 ID:???
>>1よ、
さぞかし満足だろうな。お前はそ
んなにガンダムが好きなのか?
お前らもいったい何が面白いんだ?こんな
つまらないスレを見て、

159通常の名無しさんの3倍:02/11/25 01:01 ID:WLeEerpD
>>158黙ってろ
160通常の名無しさんの3倍:02/11/25 01:12 ID:???
>159
縦読み・・・メール欄・・・
161通常の名無しさんの3倍:02/11/25 01:13 ID:???
>>159
煽りにレスは禁物ですよ
162129:02/11/25 12:08 ID:???
軽く叩かれたけど、リクして良かった! 破綻なく纏める>>1さんの技量に恐れ入りました。
163ろうろん:02/11/25 12:39 ID:Vjcpsr2w
この後の話も期待してます!
164カンリニン:02/11/25 19:11 ID:vRqNgddk
保守・・・・保守・・・・保守
165通常の名無しさんの3倍:02/11/25 23:02 ID:luqTodWy
大気圏突入回避!!
166:02/11/26 03:26 ID:???


 第十章     「刻を駆ける少女」




「第一デッキ、第二デッキ、ハッチ開け!各モビルスーツ発進スタンバイ!」
通信兵からの連絡が飛ぶ中、ドックの中は発進準備に追われていた。
突然ドックに血だらけで現れたシャアがサザビーで出た直後のことである。
彼は当惑するデッキの人々に
「何をしている!?このままでは艦は落ちるぞ!ジオンだろうがなんだろうが一先ず協力するんだ!ハッチ開けろ!」
というやいなや出撃をしていった。
そのスピードは速くさすが赤い彗星であった。カテジナが口を出す暇もなかった。





だがシャアのいうことは真理である。
ジオンの艦内占拠に反抗する前に、ひとまず敵機を落とさなければお互い死んでしまうのだ。
そうなれば意味がない。
死ねばそこにいかに崇高な理想があろうが、連邦への忠誠があろうがなにも残らない。
艦の残骸がまた一つ宇宙に残るだけだ。
単純なことだがアストナージの死を目前でみた者たちは感傷に捕らわれ過ぎていたのだろう。
冷静に考えればここはギレンの命令どうり出撃するしかないのだ。





167:02/11/26 03:30 ID:???
 

必然、ロランや他のパイロットたちも出撃を迫られた。
「ロラン!あたしもでるわよ!」
ソシエがメタスに乗り込みながら、いまだウッソを心配そうに手当てをしている銀髪の少年に声をかけた。
「待ってください。ソシエお嬢さん!僕もすぐ乗り込みます!」
そう慌てていうと、ロランはウッソを背負ってドッグの隅のほうへよせておいた。
ウッソはあの後ひどい頭痛に襲われて、動けなくなっていたのでロランが手当てしていたのだ。
「ウッソ・・僕行くからここで休んでたほうがいいよ。いいね?」
そうウッソに言い残すとロランはクインマンサのほうに走っていった。




カテジナがドック全体に響く声でいう。
「もう一度いう!ミライはこちらにいるんだからね!変な気は起こさないように!ブライトは抵抗して死んだ!」
そういうと彼女自身もマシンに乗り込む。
彼女の機体はジ・オだ。巨体と鈍重に見えるフォルムとは裏腹に、機動性や運動性等は非常に高い。
「カテジナ!あまり無茶せんようにな」
いつのまにかランバラルが来ていた。カテジナのジ・オのそう忠告する。
カテジナは、ランバラルのほうをみて、軽く頷くとハッチを閉めた。
このドッグの事は百戦錬磨のランバラルにまかせて自分は戦場の指揮を執ろうというのだろう。
賢明である。アストナージを殺した彼女がいればメカニック達は動かない。



168:02/11/26 03:37 ID:???

フォウ・ムラサメも出撃することになった。
ランバラルはやむを得ずフォウに乗るように命令した。パイロットが中々集まってこないのだ。
アムロ・レイはこない、スレッガーやシーマも来ていない。
戦闘配備の指示が出ているのに来ていないというのは軍罰である。だが、いま彼らを呼びにいっている暇はなかった。
フォウの精神は依然不安定であったのでモビルスーツに乗せるのは若干不安が残る。
万が一発狂してこちらに攻撃をしてくるとも限らないのだから。
しかしそれでもこのまま敵に落とされるよりはましであろう。
ランバラルはそう判断した。自分はこの場所を離れるわけにはいかない。
フォウは、リックディアスに乗り込むとランバラルの心配をよそに、すぐに出撃していった。





無限の暗闇が支配する宇宙に出る。
辺りの闇に吸い込まれそうになる。この感覚・・フォウは呟いた。
上下の感覚が掴めなくなる、生理的不安。
宇宙空間というのはパイロットに人間の無力さを重い知らせてくれる。
どんなに科学が進もうとも人間はこの宇宙の中でノーマルスーツ無しには生きられないのだから。
そんな矮小な存在である人間がどうしてこれほど争わなければならないのか?哀れな程か弱いのに。
それでも貪欲なまでに人は戦いを求める。それは本質的衝動なのだろう。
それが旧時代から続いている人類の本能なのだということはわかっている。
現に自分の両親は一年戦争で死んで、自分は戦災孤児であった。
だけど。
フォウには人が何故これほど憎みあうのか、どうしてもわからなかった。
カミーユ・・あなたはどうして戦っていたの?
それは哀しい問いかけであった。
それがわかっていればカミーユは発狂しなかっただろう。
169:02/11/26 03:39 ID:???

既にこの空間にはロラン、ソシエ、カテジナがいた。
先に出たはずのサザビーの機体は既に見えなかった。おそらく遊撃にでたのだろう。
フォウはマルチディスプレーを拡大して、接近してくる敵のモビルスーツを確認した。
1・2・・7機のギラ・ドーガの姿が映し出された。



「さてと・・それじゃあいくよ!」
ソシエが威勢良くそう叫ぶ。メタスが変形する。
「お嬢さん!出過ぎは禁物ですよ!」
ロランが慌ててそう忠告する。
「わかっているわよ!いちいちウルサイんだから!」」
心外そうに言い返すソシエであった。彼女はいつまでも自分を過保護に扱うロランに少し苛立った。
(いつまでも・・子ども扱いして・・)
そう思うソシエの気持ちはロランにはわからない。


「あんたらあたしの足を引っ張るんじゃないよ!いくよ!」
カテジナの命令がとんだ。
メスタ、ジオ、クインマンサの三機のテールノズルが一瞬光ったかと思うと、ギラドーガのいる空域に消えていった。
フォウのリック・ディアスは動かなかった。あのギラ・ドーガ部隊は陽動に過ぎないと感じたからだ。本命は!
更にディスプレーを拡大する。戦闘空域をモニター上に映し出す。
ディスプレー上に無数に拡大された映像・・コンピュータグラフィック処理されたものがでてくる。
フォウはそれを確認する。
「・・いた?」
フォウはプレッシャーを放つ機体を見つけると、更に拡大した。
そこにはラフレシアの巨大な姿があった。
触手がなにかを求めているかのごとく揺らめく。
その蠢く触手は宇宙空間を彷徨う巨大な胎児のように見えた。
そしてそれを操っているパイロットはカミーユ・ビダンに違いない、とフォウは悟った。
直感だった。
170:02/11/26 03:42 ID:???



一方・・その頃。



スレッガーがベッドからむくりと起き上がる。
どうやらあれから30分は寝たようだ。戦闘配備の音が五月蝿い。
隣に寝ていたはずのシーマは既に起きていて服を着込んでいた。
そして手鏡を出すと、入念に化粧を始めた。
スレッガーも起き上がる。
「いいのかい・・そんなにゆっくりしててさ?敵襲らしいぜ?」
「ええ・・どうせ・・ね。それより女は手入れしなくちゃ外には出られないんだよ」
そういってシーマはこちらを見ると微笑んだ。
スレンダーはガムを噛みながら更にいった。



「聞き方間違えたな。あの艦・・あんたのだろ・・・行かなくていいのかい?」
「いくよ・・けどもう少し経ってからね。どうせいってもラフレシアがいる限り・・勝てないよ奴等は・・
なんせ乗っているのは・・あのカミーユ・ビダンだからねぇ・・・」
シーマはそう自信ありげにいうと再び化粧に戻った。

(どうせヘルメットしてバイザーしたら誰にもわからないじゃないの・・)

女ってのはわからないね・・そうスレンダーは呟いた。
そして彼もベッドから起き上がると服を着始めた。
ふと、天井を見上げる。
彼はその無機質さの中に死の影を捉えた気がした。

171:02/11/26 03:44 ID:???



あのモビルアーマーの中に確かに鼓動を感じる・・カミーユ・・どうして・・




フォウはラフレシアの中にカミーユの存在を確かに感知していた。
何故フォウがカミーユの存在を感知できたのか?それは愛ゆえだろうか。もしくは強化人間だからか?
どちらにせよ彼女がカミーユだとわかったのは事実である。
精神崩壊したはずのカミーユがどうしてこの宇宙に出てきているのかは、フォウにはわからなかった。

(彼はもう戦闘できる精神ではないはずなのに・・どうしてモビルスーツに・・)
フォウはラフレシアに近づくべく、リックディアスを動かした。
そしてそれは新たなる悲劇の始まりであった。

172:02/11/26 03:45 ID:???



「やっぱり・・カミーユ・・!」
フォウはその巨大なモビルアーマーに近づくとはっきりとわかった。
近くで見るとそれは威圧感を感じさせ、更に強い不快感を感じさせる機体であった。触手が・・いけない。
あれがフォウの精神を乱す。最近落ち着いているとはいえ、フォウの精神は常人のそれではやはりない。
湧き上がる嫌悪を我慢して、そのままラフレシアに近づこうとする。
カミーユ・・カミーユ・・
そう思った瞬間に、触手の一本が光ったように見えた。ビームの束がフォウの乗るリックディアスを狙い撃ちしたのだ。
「何故?カミーユ!私がわからないの?」
カミーユの能力はフォウを遥かに凌駕している。フォウにカミーユが感知できたのだ。カミーユに自分が感知できないわけがない。
そう思う隙有らばこそ、ビームの斉射がリックディアスを襲う!逃げる!
ビームを寸前で交わす。だがビーム束の周辺に拡散する粒子がリックディアスの機体を焼いた。
フォウは激しい頭痛を感じる。
強い思惟がフォウの中に入り込んでくる。
「カミーユ!どうして」
だがラフレシアの触手がうごめくばかりで、パイロットの姿は見えない。
173:02/11/26 03:50 ID:???

ラフレシア内部。
そこには確かにカミーユ・ビダンがいた。パイロットスーツを着てコクピットに座っている。
しかし眼は虚ろである。依然みせていた、あのシャア・アズナブルが人類の希望をみた、あの輝きはもはや存在していなかった。
病院で治療されていた彼はシーマによって拉致のような形で宇宙に連れてこられていた。
宇宙に戻ってきた所為で、まだ完全に癒えていなかったカミーユの精神は再び崩れ落ちてしまっていた。
その後、執拗な心理的刷り込みや、薬物投与など執拗な精神コントロールを受けたカミーユは操り人形と化していた。
シーマの意のままに動く最強のパイロットとして。
シーマはこの艦を強化カミーユの力試しとして利用したのだ。
トビアを倒しただけではテストは充分でない。
シャアや、アムロ・・そういったパイロットを倒さなければ。
シーマのその貪欲さは生まれついての気性であった。
そしてあわよくばギレンのようにホワイトベースを接収しようと思っていた。
先を越されたのは計算外だったのだが。


シーマ艦のブリッジにいる研究員がカミーユに指示をする。
「どうした?早く敵を落とせ!撃墜するんだ!早くしないとギラ・ドーガ部隊が危ない!」

「・・了解・・です。」
カミーユはそう返事をした。
174:02/11/26 03:51 ID:???

ラフレシアの触手が生物のように跳梁する。それは何か異形の物体にフォウには感じられる。
リックディアスの機体に無数の触手が絡まる。
そのまま巻きついたまま圧しつぶそうとする。ミシリ・・と機体が嫌な音を立て始める。
フォウはハッチをあけると機体をすて脱出した。
バー二アを吹かし、ラフレシアの中央部・・コクピットへと向かう。
その直後・・リックディアスは爆発した。
その爆風に巻き込まれながらもフォウは叫ぶ。
「カミーユ!!」













「フォ・・フォウ・・・・・」
カミーユが呟いた。
常人の精神はもう存在していないはずのカミーユが確かに。
その瞳は相変わらず虚ろである。カミーユの脳内には機械が埋め込まれていた。
研究員の言葉以外は反応しないはずである。
ゆえにフォウの言葉に反応できる理屈はなかった。だがカミーユは確かにそう呟いた。

「フォウ・?・フォウだって・・・」
カミーユはもう一度呟いた。その瞳にわずかに正気の色が戻る。
175:02/11/26 03:54 ID:???


「カミーユ!カミーユ!」
奇跡的に助かったフォウが爆風を利用して宇宙を泳ぐようにラフレシアの中心まで流れてきた。
ラフレシアは何故か微動だにしなかった。まったく動かない。
・・l混乱している・・カミーユ?・・
フォウの心の中に思惟が流れ込んでくる。それは奔流の様に激しい。
彼の思いが伝わる。それは距離や場所など関係のない次元の話なのだ。
ラフレシアのコクピット部分にフォウが取り付く。




カミーユはそのフォウの姿を視界に捉えた瞬間に正気に戻った。いや、正確には戻ったように見えた。
あくまで一時的なものである。時間にしてほんの10分程度であろう。
フォウとの精神の交じり合いはカミーユの脳にある種の刺激を与え、一時的にあの当時にたち戻ったのである。
無論、これは推測である。ただし、人間の意志が機械に隷属するだけではないことをカミーユはこの時証明した。
脳内に埋め込まれている機械にカミーユの精神は確かに打ち勝った。



「フォウ!」
カミーユはコクピットをあける。
もどかしく宇宙に出ると、フォウの身体を強く抱きしめる。
身体の境界線を越えるほど強く。強く。
176:02/11/26 03:56 ID:???


シーマ艦の研究員が驚いたようにいった。
「この被験者の精神力は凄い。計算上こんなことはありえないですよ!」
ラフレシアのコクピットに設置されたカメラにはもはやカミーユの姿は映っていない。
だが、ヘルメットの声が届いていた。
それをきいた別のクルーが研究員に不安げに聞いた。
「おい・・大丈夫なんだろうな・・?まさかこのまま・・2人で逃げるなんてことは・・」
「それは心配ないです。なぁに後少しでまた我々のコントロールが可能になりますよ」
そう自信たっぷりに言い返す。
「それならいいけどな・・しかしシーマ様・・遅いな・・」
不安げにクルーがそう呟いた。

177:02/11/26 03:58 ID:???


「フォウ・・」
「あぁ・・カミーユ」
2人は黙って抱きあう。
言葉は要らなかった。背中に回されている腕の強さだけで2人の思いは共有できる。
ラフレシアからふわり、と2人の身体は離れて宇宙空間を漂う。2人の後ろには星が輝いていた。
命の火を静かに燈すように。
「フォウ・・ホントにフォウなのか?・・フォウ・・」
五分もそのままでいただろうか。
カミーユはようやくフォウに確かめるように囁く。声が震えている。
「・・ええ・・そうよ・・カミーユ・・」
言葉を発すると2人を隔てているバイザーが振動で震えた。
フォウはバイザーを、パイロットスーツをもどかしく思う。もっと・・もっと・・カミーユを感じたかった。






2人は静かに流れるように宇宙を漂う。
遠くの方で光の輪が広がった。
カテジナ達がギラ・ドーガを撃破しているのだろう。
2人は抱き合いながら黙ってその生命の輝きをじっと眺める。
刻を越えた空間を2人は過ごす。それはフォウにとって人生で最も素晴らしい瞬間であった。


178:02/11/26 04:06 ID:???



2人はしっかりと抱き合ったまま光の輪を眺める。
たとえあの光がひとつ灯ると生命が失われているのを綺麗だと感じるのは歪んでいるといわれようとも。
いや・・人が死んでいるからこそ美しく感じるのかもしれない。
フォウの耳にカミーユの呟きが聞こえた。




「綺麗だなぁ・・大きな光がついたり消えたりしている・・」
そういうとカミーユは頭痛が酷くなってきたのか頭を抱える。意識が弾けとびそうな感覚にカミーユは吐き気を覚えた。
フォウはそんなカミーユを更に力を込めて抱きしめる。
「ファ・・・・もう・・駄目みたいだ・・・・」
ファはホンコンシティでのカミーユとのデートを思い出していた。
あの時と同じ別れを。
「・・頼める・・?・カミーユ・・」
「なに・・を・・」
「・・・・キスして・・」



179:02/11/26 04:06 ID:???



ここは宇宙空間である。
だが、フォウは躊躇わずに、メットのバイザーをあげた。カミーユも同じくバイザーをあげる。
そして2人は愛おしそうに、そっと唇を重ね合わせる。
「・・んッ・・」
フォウはカミーユの少し湿っているカミーユの唇の感触を感じた。
時間にすれば僅かなものだろう。しかしフォウにはそれが永遠に思えた。
そしてそのまま2人は動かなくなった。
死んだのである。
180:02/11/26 04:12 ID:???



真空が支配する、絶対零度の宇宙空間では人など瞬時に死んでしまう。
だが、それでも人は一瞬のために生きているのを忘れてはならない。
現在というのは今という時の連続した積み重ねによって生まれるものだ。
そこに連続性が存在しているというのなら最上の幸福を謳歌している時点でその連続性を断ち切りたいと思うのは当然ではないだろうか。
ただこの2人の行為が自殺であると断言するのはまた間違いであろう。安直な発想である。
肉体という強固な呪縛からのがれたのだ。
そして彼らの精神と知覚と思惟が時間を超え、空間を凌駕した領域に達したとしても不思議ではない。
宇宙の刻を駆けるために。2人で。ホンコンシティでの様に。
そう思いたい。
そうでなければ彼らの死になんの意味があろうか?




2人の身体はゆっくりと、宇宙の闇にまぎれて、流れていった。
ラフレシアの触手はそんなカミーユ達を追いかけるようにゆっくりと動いていた。

181:02/11/26 04:16 ID:???










シャア・アズナブルは拡大したディスプレーでその一部始終を見届けると、一言漏らした。
「決まり・・・か・・。」
シャアはそう確信した。
カミーユは死んだ。これでもはや決定した。


サザビーはシーマ艦に迫る。
途中に出てきた敵モビルスーツを、シャアはあっさりとなぎ払いながらシーマ艦に近づく。
そしてファンネルを射出する。ファンネルは一斉にレーザー攻撃をしながら突進して、艦に激突し自爆した。
そのレーザーの一つがブリッジを消滅させた。
シーマ艦の爆発する光の渦を眺めながらシャアは
「さて・・どう動く・・アムロ?」
モニターにホワイトベースの姿を映し出すとそう宿敵に問い掛けた。軽い優越感を持って。
そしてサザビーの踵を返すと、そのままどこかに消えていった。



物語の終焉は近づいていた。



182:02/11/26 04:20 ID:???




ーーーーーーーーーーーーーあとがきーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回は帰ってからいそいで書いたので不完全燃焼気味です。
ムム・・やはり毎日アップは難しい・・。もう4時だし・・疲れました。
朝早いのに・・。
けれどとりあえずこれで10章は終わりです。
全12章の物語もあと2章を残すのみとなりました。応援してくれた皆様ありがとうございます。
後僅かですので、最後まで見届けてくだされば嬉しいです。
では11章の予告をして今日は失礼を。おそらくこの章がクライマックスになるでしょう。
Vガンダム風にお届けします。
183次章予告:02/11/26 04:23 ID:???



ギレンの圧政の中、連邦の有志が立ち上がりミライの救出を図ろうとする。
ロラン、ソシエ、ハリーらが銃を持って立ち上がる。
迎え撃つランバラルらジオン兵。困惑するカツは何を思うか?
そして彼が取った行動とは?

ウッソ・エヴィンもまたカテジナとの決着をつけるべく動き出す。
シーマは?スレッガーは?消えたシャアの目的は?
拳銃を持ったギレンが吼える。
それぞれの思いが複雑に絡み合いながらこの物語は終焉に迎い一気に加速していく。
消えていく生命。流れる血。消滅する意思。広がる哀しみ。
この中でアムロ・レイはある決断を下すことのであった。


次回   第11章  「天使たちの昇天」       


                                        見てください!
184:02/11/26 04:30 ID:???


ということです。
今度はもう少し小刻みにアップすることになるかと思います。
一気に一章まるまるアップはきついので。
それでは・・・
185通常の名無しさんの3倍:02/11/26 04:31 ID:???
おつ。


おもれー・・・
186通常の名無しさんの3倍:02/11/26 04:34 ID:???
おつかれさまでした。
よい気分転換になりました。
187:02/11/26 04:48 ID:???
おお・・こんな時間に見てくださっている人がいたとは・・
どうもありがとうございます。
そういっていただけると嬉しいです。
明日の更新は・・難しいかもしれませんがマターリ見てください。

188通常の名無しさんの3倍:02/11/26 11:25 ID:???
いやもう、なんといってよいか・・・。
すばらしいの一言です!!
189ろうろん:02/11/26 12:40 ID:OgK8Zhvq
いやはや、もう次がどうなるかハラハラしてるっす。
190通常の名無しさんの3倍:02/11/26 13:51 ID:???
>>169
メスタ・・・・
>>1さん 無理をせずがんばってください
191通常の名無しさんの3倍:02/11/26 15:24 ID:???
>1
俺はアンタに神を見た!!
192通常の名無しさんの3倍:02/11/26 16:41 ID:???
すごいです。
頑張って下さい。
193通常の名無しさんの3倍:02/11/26 16:47 ID:???
>>omosiroiyo〜

すれっがーとすれんだーがごちゃごちゃしてまふが、
これはこれでなんか最終的にオチがあるのでは?と
思う漏れ!! ランバ・ラルの今後も気になる・・・
194カンリニン:02/11/26 18:48 ID:yf8Wy23J
南極条約に転載キボンヌ。
195通常の名無しさんの3倍:02/11/26 21:53 ID:???
凄い・・・・凄まじく凄いです
196通常の名無しさんの3倍:02/11/26 21:55 ID:???
あんまり持ち上げすぎると荒らしさんを召喚してしまうのではと思う今日この頃。
ほどほどにな。
197通常の名無しさんの3倍:02/11/26 22:14 ID:???
感動しますた。
フォウの話をリクしたので嬉しいデス。
非常に綺麗に結んでくれて、ありがとん
続きも楽しみにしてるす
198通常の名無しさんの3倍:02/11/27 00:04 ID:???
心中(という表現はふさわしくないが)の中でも特に美しい!
199カンリニン:02/11/27 01:13 ID:L5fZ6wrB
・・・・6時間以上もageられてない!
>>196
了解。
200通常の名無しさんの3倍:02/11/27 06:10 ID:???
>カンリニン
少しうざいよ。
HNもそうだし、dat逝きは最終書き込み時間によって決まるので保全の際にいちいちあげなくてもいいし。
まあ多くの目に触れさせたいがためにageてるのなら別だけど。
201通常の名無しさんの3倍:02/11/27 09:16 ID:???
前スレのログうぷした者ですが、
色々サイト内整理してディレクトリ変わっちゃったのでこっちになります。

http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Bass/7531/char/ten1.html

あと、まだ早いけど現段階でのこのスレのログもten2.htmlにあります。

じゃ、作者さんがむばって。
202通常の名無しさんの3倍:02/11/27 18:11 ID:???
>200
そうなの??最終書き込み新しくても落ちるのかと思ってた。
HNは勘弁してやれよ。

ちなみに漏れはカンリニンじゃないぞ。
自演とか言われそうだ
203:02/11/27 22:54 ID:???
>>193
スレッガーの奴は単なるミスです・・何故かいつもミスります。
オチ期待させてすいません・・。
ランバ・ラルですか?それは11章をお待ちくださいませ。


>>200
カンリニンさんはこのスレのためにして下さっていたのでそういう事はあまり・・
マターリいきましょう。


>>201
どうも有り難うございます。
ガンプラGIFアニメ 見せてもらいました。ザクの蹴りがかっこよかったです。



皆様レスありがとうございます。
11章は深夜か、明日の昼までにはアップします。
途中までですが。遅くてすいません。
それでは・・

 
204ほげら〜:02/11/28 01:48 ID:Fhw2mAIc
age
205カンリニン:02/11/28 02:14 ID:???
>>200
後者
206カンリニン:02/11/28 02:22 ID:???
「多くの目に触れさせたいがためにage」って事です。
207通常の名無しさんの3倍:02/11/28 13:31 ID:???
>>206
荒らしに見つかるからやめてください


きわめて丁寧な言葉でお願いしてみましたが、どうよ?
208:02/11/28 15:21 ID:???
すいません・・
今からアップしようと思ったのですが、急に外出しなければいけなくなってしまいまして・・
今夜に必ずアップしますので。ほんとに申し訳ありません。
遅くなるかもしれませんが・・・それでは・・
209202:02/11/28 17:51 ID:???
>>207
だからそんなにカッカすんなって

>>カンリニン
でも、おれも207に禿同だな
210通常の名無しさんの3倍:02/11/28 17:52 ID:???
>>1氏
  ∧_∧
 ( ´∀`) 正座して待つモナ
 (ろ と)
 と_)_)
211通常の名無しさんの3倍:02/11/28 17:54 ID:???
  ∧_∧
 (; ´Д`) ズレた…
 (ろ  と)
 と_)_)
212:02/11/28 18:33 ID:???


大変お待たせいたしました。
これより11章に入りたいと思います。

けれど、その前に現時点・・10章終了時点での乗艦した主要人物の状況をまとめておきます。
混乱されている方もいるかと思いますので。

213:02/11/28 18:33 ID:???

生存者リスト              


アムロ・レイ             
ウッソ・エヴィン          
                     
シャア・アズナブル  

       
ロラン・セアック         
ソシエ・ハイム
ハリー・オード           
ミライ・ノア
シーマ・ガラハウ
スレッガー・ロウ

ギレン・ザビ
ランバ・ラル
カツ・コバヤシ
スタンバ・ハロイ
カテジナ・ルース



スレンダー(地球にて待機中)

214:02/11/28 18:35 ID:???


 死亡者リスト


トビア・アロナクス(四章にでカミーユ・ビダンによりアムロを庇い死亡)
ブライト・ノア  (七章にてシャア・アズナブルに殺害さる)
ガルマ・ザビ   (八章にて同じくシャア・アズナブルに)
アストナージ   (九章にてカテジナ・ルースに射殺される)
フォウ・ムラサメ (十章にて・・分類上は自殺)



215:02/11/28 18:38 ID:???



ギレンが動き出しジオン公国再興を宣言した、同時期にシャアはサザビーに乗って何処かへ消えた。
これより物語は佳境を迎える。
この後、艦内で起こる悲劇を書き記すことに私は身を切り裂くような苦痛と、深き懺悔の念を覚える。
それはあまりに哀しい出来事であった。
激しいまでの意思の衝突。激突。
この狭い艦内の中はまるで世界の縮図のように、精神が、肉体が、思想が、信念が強く対立していく。
それは闘争という種類の性質につよく結びつかざるを得ないものである。
その中で人の意思などは圧倒的なまでの暴力性に押しつぶされ消滅してしまう。
この闘争は血を流さずに終わることなどありえないものだ。いや、血を流したとしても終わることはない。
ただ、刹那の間、闘争が停止するだけである。しかしその僅かの時間に平和を享受することで人は戦いの意味を見出すのだ。
それを愚かに思うのは傍観者の傲慢であろう。

人はこれまで無数の闘争を繰り広げてきた、海で、陸で、空で。人類が到達した至るところで。
戦闘空間を宇宙に変えたとしても、人がそれに適応するのに一世紀もかからなかった。
モビルスーツによって。戦艦によって。戦いは果てなく続く。
この艦内でもそれは同様である。
それを人類の適応能力の高さと見るか、愚かさとみるかは各人の判断に任せられる。
私は一人、ただ祈るだけである。
宇宙に。そして地球に。魂の救済を。
仮にその祈りの言葉が誰にも届かないにしても。



                 第十一章 「天使たちの昇天」


216:02/11/28 18:42 ID:???

艦内の生活は一ヶ月を経過しようとしていた。
つまりギレン率いるジオンの残党が艦内を支配して10日あまり経つことになる。


この艦は依然当初の予定どうりのルートをたどっていた。
当初、ギレンはこの艦を制圧したら、自分の隠れ蓑であるコロニーに戻る気であった。
だがカツの持っていたフロッピー(アストナージに艦長に渡すように頼まれたものだ)がそれを変更させた。
これを調べたギレンは即座に予定どうりに航海を続けることを決めた。
フロッピーの中のデータを食い入るように見つめていたギレンは感嘆の声と共にこう漏らした。
「素晴らしい・・連邦の技術力がここまで進んでいようとは・・・この発想は・・」
マウスを持つ手が震えた。声がこころなしか少し上擦っている。
彼はその時に航海の目的に気が付いたのである。
何故三ヶ月もの時間を宇宙を航海しなければならないのかという疑問も払拭した。
「成る程・・ブライト艦長よ。こういうことだったのか・・。」
ギレンはそう呟いていた。



「だが・・三ヶ月も・・かかるまい」
217:02/11/28 18:48 ID:???
ここで一ついっておかねばならないだろう。
ギレンは決して狂った男ではない。
極めて現実的な考えの持ち主である。
彼は自分の理想のために行動している。ただ、そのための犠牲を厭わないだけだ。
その点で彼はシャア・アズナブルと同質の男であるといえるだろう。
だが、ギレンは急進的過ぎた。それに冷徹すぎる。
それは彼の冷徹さはガルマの死を聞いても眉を少しひそめた程度であったということに表される。





しかし彼の考え。つまり宇宙にでた人々の選民思想は一年戦争当時、確かに民衆に受け入れられたのだ。
しかし、敗戦の所為でギレン・ザビは連邦により絶対悪に仕立て上げられた。
ギレンが、まさに第二次大戦におけるヒットラーの扱いになってしまったのは所詮民衆というのが結局の処、愚鈍であることに帰来する。
愚昧で蒙昧な民衆は、終わってみればその戦争をその時の状況、その大義などをなんら鑑みることなく単純な二元論に帰結させる。
悪か、正義か。
そのようなありもしない定義付けに躍起になって、それでいてその行為で過去から何かを学び取った気になっている。
それが大衆の本質である。たとえ個人個人は賢くとも、集合意思とは極めて愚かである、とギレンは断言する。
だから、ギレンは思う。
一握りのエリートが、指導者が、人類を導かなければ遅かれ早かれ人類は滅亡する。
人類には先導者が必要なのだ。

218:02/11/28 18:56 ID:???
その先導者が、ジオンでありザビ家でありジオン公国であるのだ。
断じて脆弱で腐りきった地球連邦などではない。
このジオンこそがそれを成し得る能力を有している。
ジオンが人類を導く。
そうでなければ宇宙に拡散し、醜いまでに肥大した人類に救いはない。


ニュータイプの存在をギレンは信じていないが、かりに存在しているとすればそれは自分の事であるとも思っていた。
人類の革新、新人類というのは自分のような思考の持ち主ではなければと。
これは自惚れではない。
事実ギレンほど人類の繁栄の行く末を考えたものはいないだろう。
人類の過去の資料を考慮すると、1960年から1990年にかけて世界人口が僅か30年あまりで30億人ほど増えている。
ここに彼が危惧するところはあった。
人類の増加に歯止めがかからないことだ。
加速的に膨張しすぎていた人類の数を減らさなければいけないのは明白であった。
人類の人減らしとジオンの独立・・その二つの目的を一気に解決する手段としておこなったものである。
先の一年戦争はその目的を充分に満たしていた。
ゆえに彼にとってそれは破綻の無い極めて常識的なものであった。倫理的問題などは彼の頭にはない。
その目的は彼にとって成し得なければならない当然の範疇のものである。
ジオンのため。
ひいてはきたるべき新時代のために。
そのためには歴史に汚名を残そうともギレンには躊躇はなかった。
219:02/11/28 18:59 ID:???


ギレンが一人ほくそえんでいたその頃。



作戦室では連邦兵士であり現在捕虜代表であるハリーとジオン兵士であるランバラルによる三度目の交渉が行なわれていた。
「だから・・何度も言っているように我々にミライ副艦長と話をさせて欲しい!」
ハリー・オードが立ち上がりながら机を叩く。ランバラルの前に詰め寄る。
途端にハリーの廻りを囲んでいるジオン兵が銃を向ける。
「残念ながらそれは許可できんな。共謀の怖れがある」
ランバラルはそういうとハリーに席につくように促す。
しかしハリーは座らない。ランバラルをじっと憎々しげに見つめる。
「若造!交渉の場で席を立つことの意味を知らないのか?いや、そこまで馬鹿ではあるまい?早く座れ。座らんか!」
そうランバラルが一喝する。
その声で、部屋が震えた、と錯覚するほどの勢いだ。
その迫力に気圧されたのかハリーは渋々と座る。
「とにかく!我々、捕虜としてはだ!ミライ服艦長に会わせてもらわん限りジオンに従うことはできん!」
そういうと再び机を手のひらで思い切り叩いた。
220:02/11/28 19:02 ID:???



ここで艦内の現在の状況を説明しておこう。


フォウの死んだあの戦闘の後、クルーのなかではジオンに恭順する者が続出した。
その理由はギレン・・ジオン公国が約束した金であったり、地位であったり、処刑の恐怖であったり様々だ。
ブライト艦長の死ももちろん連邦を裏切る要因になってはいた。信頼する者を失ったクルーは逃避する。


更に、先日に行なわれたシーマの処刑・・宇宙遊泳もクルーの恐怖を煽った。
シーマが処刑された理由はもちろん先の襲撃である。カテジナがギラ・ドーガの兵士を一人捕獲して自白させたのが決め手になった。
その結果である。彼女はスパイの罪で、宇宙遊泳という極めて残酷な処刑を受けた。
ノーマルスーツで宇宙の闇に投げ出される。
その恐怖は見ている者にも十二分に伝わった。
この公開処刑により、これまで恭順を拒否していたほとんどの者もジオンに恭順した。




221:02/11/28 19:06 ID:???

そしてギレンに恭順しなかった者たちは全員、資材部屋を整理した広い部屋に集められた。
集められていたのは
アムロ・レイ
ロラン・セアック
スレッガー・ロウ
ウッソ・エヴィン
ハリー・オード
ソシエ・ハイム
の6人のパイロット、ならびに数名のクルーとメカニック・マンである。
なおミライ・ヤシマは別の場所に一人で隔離されていた。
一緒にすると反抗の怖れがあるからである。
ブライトが死んだ今、彼女は連邦のリーダーなのだから。



ギレンは最初恭順せぬ者は全員処刑せよ、と命令を下していた。
だが、ランバラルはこれを制止した。
彼らパイロットは現在非常に貴重な存在であり、もしジオンに恭順すればその力は必ずや役立つであろうとランバラルは進言した。
ギレンもその考えを認めた。確かに彼らパイロット・・特にアムロ・レイを殺すのは惜しい。
ニュータイプとは思わないが、彼の卓越した戦闘能力を認めないわけにはいかなかった。ジオンの再興のために働いてもらえれば助けになるだろう。
それゆえジオンからランバラルによる捕虜の説得交渉が続いていた。
こちらからはハリーがその交渉の全てを引き受けていた。
前述はその様子である。
しかし、恭順の前に一先ずミライ副艦長との接触を願うハリーたちの主張は受けいられないでいた。
三度目の交渉もどうやら無駄に終わりそうであった。

222:02/11/28 19:09 ID:???



交渉の終わりにハリーに向けてランバラルはいった。
「状況は悪くなる一方だぞ。ギレン閣下の寛大さにも限度がある。・・それを忘れんようにな」
そう言って席を立った。
「傲慢な物言いだな・・。盗人が・・。」
ハリーもそう呟くと席をたつ。
結局、三度目の交渉も平行線に終わった

223:02/11/28 19:15 ID:???


ハリーは2人の兵士に付き添われて、ロランたちの待つ部屋に連行させられていた。
その途中、廊下を歩いていて、十字路の曲がり角に差し掛かったときだ。
突然、角からオクトバーが飛び出してきてハリーと激しく接触した。
ハリーは肩に激しい痛みを覚えた。
「ッつ!このジオンに尻尾を振った犬が!」
オクトバーを突き飛ばしながらハリーは怒鳴りつけた。
苛立ちを隠そうともしていなかった。交渉がまたも無意味に終わった所為かもしれない。




「尻尾を振った犬だって?冷静に状況を判断しろよ、ハリー中尉殿。誰だって死にたくないんだ。
あと前から言おうと思ったけどそのメガネ?似合ってないよ」
オクトバーは笑いながらいい、ハリーを指差した。
「貴様!」
ハリーがオクトバーに掴みかかる。オクトバーがその手を握リ捻る。今にも乱闘が始まりそうな雰囲気だ。
慌てて監視のジオン兵が止めに入った。
「やめんか!」
「ハリー殿!交渉が決裂して苛立つのはわかりますが、幼稚ですぞ!」
「オクトバー!貴様も早くドックで作業に戻れ!」
そういって2人を引き離す。
224:02/11/28 19:19 ID:???

「わかってますよ!ただいつまでも連邦にしがみついてるのが哀れでね!」
そういい残してオクトバーは通路の向こう側に去っていった。

残されたハリーも呼吸を整えると、自分の腕を掴んでいる呆れ顔のジオン兵に謝罪した。
「・・申し訳ない。」
そういうと再び部屋に戻るべくさっさと歩き始めた。
2人のジオン兵も顔を見合わせながらも慌ててついていく。



ハリーは訝しがっているジオン兵の様子を可笑しく思っていた。
彼の右手には小さなメモが握られていた。
オクトバーに渡されたそのメモにはこう記されていた。



        ”準備  全て完了 ”
225:02/11/28 19:25 ID:???


「いい加減にここから出たいわ!」
ソシエの声が部屋中に響いた。
ロランが慌ててソシエに近づいて耳打ちする。

「お嬢さん・・そんなに怒らないで下さい・・皆さん寝ていらっしゃいます・・静かにしましょう・・」
ロランがそう弱りきった声を出した。
「これが怒らずにいられないわよ!もう10日よ!ここに監禁されて!
あたしは女よ!こんなところで汗臭い男たちと一緒に放り込むだなんて!
女性にこんな扱いをするなんてジオンのやることはたかが知れてるわね!」
そういうとソシエはその可愛らしい頬を膨らませた。
ロランは溜息をついた。




ソシエがそう怒鳴りたくなるのも無理はない。
誰だって10日もこんなところにいたらストレスが溜まるのは当たり前である。
一応この部屋にはトイレとシャワーだけはついているが、その他には何もない。ガラクタが隅に転がっているような部屋だ。
あとは寝袋が人数分支給されているだけである。当然ひどく寒い。
ましてソシエは女性である。しかしジオンはそれをまったく考慮していない。
このデリカシーの無さは彼女を怒らせた。
それゆえロランに当り散らすのである。これはジオンの所為であって彼女に罪は無い。
もちろんストレス解消の道具にされるロランにとっては、たまったものではないが。
「ちょっと聞いてるの!ロラン!」
「き、聞いてます!だから髪引っ張るのやめてください!いたた!」

226:02/11/28 19:30 ID:???

そんな2人から少し奥に引っ込んだところにウッソ・エヴィンは座っていた。
ウッソはアムロ・レイの隣で壁に背中を持たれ掛けさせながら、目を瞑っていた。だが、寝ているわけではない。
少年はカテジナの事を考えているのである。




・・マーベットさんにも聞かれたけど、僕は本当に彼女に会って何がしたいのだろう?
何を伝えたかったのだろう?何を?
あの戦争から二年たった。この歳月は自分にとって決して短いものではなかった。
カサレリアに戻ってからの僕は、四季を身体で感じ、そこから何かを掴み取っていた。
暖かい春の息吹を、躍動する夏の生命の熱さを、秋の去り行く哀しみを、冬でも確かに感じる生命の鼓動を。
僕はこの二年で自分自身、大分成長したと思っている。心に残る・・戦争の爪痕も・・表面上は消えているはずだ。
二年は僕にとって長かった・・けれど・・その歳月は彼女を何一つ変えなかったのだろうか・・・
あの時アストナージさんを撃ったカテジナさんは確かに・・笑っていた!あの時と同じ様に。
僕は・・僕が・・彼女に話し掛けられることなんてあるのだろうか?
何も思いつかない。
・・カテジナさんにとってあの戦争は未だに終わってないということなの?それって!









「・・あんまり考えすぎない方がいい。死人に引っ張られるぞ」
ふいに隣から声が聞こえた。
ウッソはハッと身体を強張らせた。
その言葉は、隣に座るアムロ・レイが自分にいったのだと気付くのにウッソは数秒かかった
227:02/11/28 19:38 ID:???

「え・・アムロさん?ど、どういうことですか?」
ウッソは問い返す。その言葉の真意を。
「・・いや・・なんでもない」
「!?」
ウッソは怪訝に思った。
何故ならアムロ・レイはこの10日の間ほとんど言葉を発しなかったからである。
まるでギロチンを目前にして初めて自分の罪に気が付いた咎人のような顔でアムロはひたすら沈黙していた。
彼が臆したとは考えられない。アムロ・レイは歴戦の勇士である。それはありえない。
だが、喋らないのは事実だ。現にハリーが何度話し掛けてもアムロはうわの空だった。
その彼が、ふいに自分に向けて発した言葉である。なんでもないわけないじゃないか。
ウッソはそう思いながらも、無機質な部屋の造りを眺めていると、アムロの伝えたいことがうっすらとわかる気がした。






死者とは、つまりカテジナさんの事なのだろう。
そして引っ張られるとは、つまり・・・・死ぬということ?
ウッソはそう解釈した。
228:02/11/28 19:51 ID:???


ウッソはそっと横目でアムロを見た。
隣に座っている彼は、なにかを胸の内に押し込んでいるように思える。
もうアムロは先程の台詞を忘れたかのように、じっと前を見詰めていた。



アムロがこのように変貌したのは10日前の事である。それ以前は普通であったはずだ。
少なくともウッソの知る限りでは普通だった。
10日前に一体何があったのか。それが原因のはずである。
それはウッソでもわからなかった。
それに知りたくもなかった。
あのアムロが是ほど変わる理由を知るのはなにか怖い気がした。





ウッソはそれ以上カテジナやアムロ・・現在の事を考えるのは止める。
カサレリアに残した少女・・シャクティ・カレンの事を思う。
(シャクティ・・どうしてるかな・・)
ウッソは彼女の笑顔を思い浮かべようとした。
けれど、どれだけ努力しても、浮かんでくるのは何故か少女の泣き顔だった。
哀しそうな瞳、震える肩、か細い泣き声、そういった少女の姿が鮮明に浮かんでくる。
彼女は何かを訴えているように思えた。
胸の奥がチクリ、と痛んだ。
嫌な予感がした。


229:02/11/28 19:55 ID:???









ウッソの解釈は半分正解していたが、半分間違っていた。
アムロがきちんとウッソに忠告していれば数刻の後に、この少年の身におこる出来事を回避できたかもしれない。







230:02/11/28 19:58 ID:???


ひとまずここまで一区切りです。
まだ11章はかなり続きますが、とりあえず。
続きはまた明日の予定です。それでは・・。
231通常の名無しさんの3倍:02/11/28 20:04 ID:???
1さん乙!

初めてリアルタイムに見れたよ。
232通常の名無しさんの3倍:02/11/28 20:39 ID:???
(・∀・)ドキガムネムネ
233通常の名無しさんの3倍:02/11/28 20:55 ID:???
全部終わった頃に見に行こう、
と思いつつ実際には毎日来てしまうスレ
234通常の名無しさんの3倍:02/11/28 21:07 ID:???
>>233
漏れなんか張り付いちゃってるよ
235ろうろん:02/11/28 22:36 ID:md124MgW
本当におもしろいですね!
ウッソはどうなるんだろう・・・さらに期待。
236カンリニン:02/11/28 23:41 ID:???
>>207
丁寧にありがとう。いや、本当に。
それで、ここが悪いインターネットだってのを
忘れてたよ。ageるのはやめておこう。
でも、このスレを埋もらせるのはもったいないのだが。
良い手はないかな。
237通常の名無しさんの3倍:02/11/28 23:44 ID:???
うっそ〜〜〜!!!
どうなんねんーーーーーーーーーーーーー!!
心配しちゃうよーーーー!!

1さんお疲れさま!!
238通常の名無しさんの3倍:02/11/29 18:39 ID:???
>>236
定期的にageる必要はあるだろうね。
なにしろここはシャア板、二日ほどage忘れると底なし沼に沈んでしまう土地だよ。
239カンリニン:02/11/29 22:58 ID:???
>>238
んだ。だいたい12時間たったらでどうでしょ?
ってもうかなりの時間が流れてるけど。
240:02/11/29 23:48 ID:???



カツ・コバヤシはこの10日あまりの間、ずっとミライの警備をしていた。
現在ももちろんそうである。
ミライ・ノアが監禁されているのは捕虜を入れるために設置されているブロックの一室にある部屋である。
最重要捕虜を閉じ込めるために特別につくられた部屋で、まるで刑務所のような造りの厳重な扉が設置されている。


カツは今、ミライを監禁している部屋の、その扉の前で所在なげに立っていた。
一応、銃を持っている。右手にマシンガンと胸ポケットに拳銃を一丁。
誰かが、ミライ救出にくる可能性は零ではない。むしろかなり高いといえる。
ブライト亡き今、彼女が連邦のこの艦の「正式」な艦長であるからだ。
ゆえにランバラルの命令で、カツともう一人の兵士はここで警備をしていた。
カツは中にいるであろうミライのことを考えるとちょっと気持ちが沈んだ。
まさかブライト艦長が死んでいるとは思わなかった。
カツにとってブライト艦長は恩人である。そのブライトが死んだのはカツにもかなり衝撃だった。



(シャアさんが最後にブライト艦長と一緒にいたんだよな・・?)
これは艦内では噂になっている。シャアの失踪時に血だらけだったのもその所為だと。殺したのはシャアだと。
けれど、犯人がシャアであるとカツには思えなかった。動機が思いつかない。
じゃあ誰が殺したのかと言われれば返事には困るのだが。
カツはシャアに憧れに近いものを感じていた。
それはかつて子供の頃、ガンダムに乗るアムロ・レイにも抱いたものと同種のものであった。
彼が颯爽と敵を・・ジオンを倒す姿は幼い彼にとって憧れであった。
「ジオン」を倒す、その姿は。
241:02/11/29 23:55 ID:???


アムロさんはジオンを倒すために命をかけたんだよなぁ・・
カイさんもリュウさんも、セイラさんも。
そして・・父さんも・・母さんも・・みんな必死に・・命をかけて・・
それなのに僕はお金のためにジオンに入隊してしまった・・。


カツはそう思うと気が沈んだ。
あの少年の頃の憧憬を思い出したカツは現在の自分の行動に微かな疑問を感じ始めていた。


金のため・・母さん達のためにジオンに入った自分の行動がただしかったのかどうか。
(母さん・・僕、間違ってないよね・・)
そう育ての母であるフラウボウに問い掛ける。
(お金がいるんだから・・。楽をさせてあげたい・・)
そう呟いてカツは自分を納得させる。あくまで家族のためだと自分に言い聞かす。


しかしこれはカツの独善である。
フラウがジオンに入るように頼んだわけではないのだ。
しかしカツはそのことを努めて考えないようにしていた。頭を振ってその思考を散らす。
一緒にいた警備兵が怪訝そうにそんなカツの様子をみていた。




242:02/11/30 00:01 ID:???




ランバラルはギレンのいる艦長室を訪れてた。
交渉がまたも平行線に終わったと報告のためだ。
ランバラルは艦長室を眺める。
艦長室はもう綺麗に整理されていて、ここでガルマが死んでいたなど想像もつかない。
ガルマを殺したのはシャアである。ランバラルは自分がガルマの代わりにいけばよかったと後悔していた。
老兵が生き残っても仕方が無い。そう思う。
豪華なソファーに身をゆだね、パソコンを扱っていたギレンの前にランバラルは立った。
そしてギレンに交渉の結果を伝える。
残念ながらまたも交渉決裂だと。
ギレンはランバラルからの交渉報告を聞き終わると、こういった。





「もういい。いつまでも体制に依存している古い思考のパイロットなどジオン公国には必要ない。
 そのような連中は即刻処刑しろ。全員引きづり出して銃殺刑だ。」
243:02/11/30 00:10 ID:???

そう冷徹に言い捨てるともはや話はすんだとばかり、ギレンは再びパソコンのモニターをじっと眺めた。
ランバラルはしかし、とあくまで進言する。

「彼らはもう少しで恭順すると思いまする。後少し猶予を戴きたいのですが。」
「いや、もう充分だ。どうせ奴らはいらなくなる。モビルスーツ乗りなどな・・」
ギレンの言葉はランバラルには理解できないものだった。
彼は再度ギレンに進言する。
「閣下・・あと一度だけ彼らにチャンスを与えるわけにはいきませぬか?」
「くどい!このギレンに二言はないぞ。」
ギレンはランバラルを睨みつけると、即座に退出を命じた。
「・・わかりました・・・では準備が整い次第・・」
ランバラルは口惜しげにそういうと艦長室を後にした。


通路を歩きながら、ランバラルは捕虜のハリーたちを気の毒に思った。
彼らの気持ちも充分にわかるのだ。仮にもし自分が連邦の捕虜になっても恭順など決してしないだろう。
死を選ぶ。それが真の軍人であるとランバラルは定義していた。
それだけに誇り高い彼等を悼む。逆に、あっさりとジオンに寝返った者たちを内心ランバラルは軽蔑していた。
ふとアムロ・レイのことをランバラルは思った。
あの少年。いや、もう少年ではないか・・。
ハモンのお気に入りだったな。いい目をしている少年だった。
この艦に乗艦するときに成長した彼をみたとき、、思わずハッとしたものだ。その成長振りには目を見張った。
嬉しくもあった。自分に息子がいたらあのような成長をしてくれたらと思うほど。
だが、許せよ、少年。
ギレン閣下の命令だ。そしてわしは栄誉あるジオン公国軍人なのだ。
止むをえん。
そう自分に言い聞かせたランバラルの顔には、もう同情の色はなかった。
優れた軍人である彼は自分の感情に振り回されたりはしない。
閣下の命令を確実に遂行する。その点で彼はジオン最高の兵士であると言えた。

244:02/11/30 00:13 ID:???

再びアムロ達の部屋に視点は戻る。
「まったく!腹が立つわ!どーにも納得できない!」
「お嬢さん・・もうそろそろ・・・・・ハァ・・」
ソシエは未だにロランにこの扱いについて愚痴っていた。女というのは執念深いものである。
いや、逞しいというべきか。



「だいたいあのギレンって奴!陰険で暗そう!絶対女にもてないタイプよ!」
そう力強く断言するソシエであった。
そんなソシエの様子に、ロランは頭を抱えながらいった。
「お嬢さん。頼みますから少し静かにして・・・ケホン!ケホン!」
激しく咳き込む。
少し頭がボーっとする。風邪かも知れない。
この部屋はかなり冷える。
ロランは、そう思った。そういえば結構前から微かに頭も痛む。
しかし、少年は平気そうな振りを崩さない。自分の具合が悪いとわかれば彼女は酷く心配するだろう。
それは避けたかった。
それで、ロランは心配そうな顔でこちらを見ているソシエに元気良く言った。
「全然平気ですよ。ちょっとむせただけです。心配してくださってありがとうございます」
「そう?ホントに?それならいいんだけどね。んじゃちょっと愚痴はやめて、たまには真面目な話でもしましょうか。」
そういうソシエの顔には明らかな安堵の表情が浮かんでいた。
ロランは少し胸が痛んだ。
245:02/11/30 00:18 ID:???


「えーと、真面目な話・・ですか?」
「そうよ!真面目な話!」
そういうとソシエはアムロ・レイの方をチラッと視線をやった。
アムロ・レイは奥の方で壁に持たれかかって目を瞑っている。寝ているのかもしれない。
隣にいるウッソも沈黙している。
その奥にはこれまたシーマの処刑後、ちと独特の軽さがなくなったスレッガーが眠っていた。
ソシエはまたロランに視線を戻すと、尋ねた。


「アムロ・レイ・・・あの人はニュータイプとか言う存在らしいわよね?特殊な人間?能力者?
色々と、いわれているわよね。ニュータイプだから普通の人間・・オールドタイプっていうのかしら・・それとは違うって。
けど実際何が違うのかしら。あたしにはよくわからないのよ。
それが知りたいのよね。ニュータイプとオールドタイプの違いって何だろ?あたし、この艦に乗船してからずっと前から悩んでるのよ。
ねぇ、ロランはどう思う?
ニュータイプとオールドタイプってそんなに違いがあるのかな?」
そうこっそりと囁くようにロランに質問する。
246:02/11/30 00:21 ID:???

ロランはソシエの真剣な表情を見て、少し考えてゆっくりと唇を開いた。

「・・ニュータイプもオールドタイプも本質的にはそんなに大した変わりはないと僕は思います。認識力の違いなどあるんでしょうけど。
お嬢さん、僕は思うんですよ。人間・・人類全体ですけどそれは今・・変化の最中なんじゃないかって。」
小さく囁くような声・・まるで秘密を共有した子供たちがこっそりと話しているような声でソシエに答える。
けれど、ロランのその声には確かな確信が感じられた。
ソシエはそんなロランの言葉にちょっと驚きながらも続きを促した。
「変化・・・って?」
「それはですね、僕達はつまり・・」
そこまで話したときだった。





不意に扉が開いたかと思うと、交渉にいっていたハリー・オードの姿が現れた。
ロランはその姿を視界に捉えるやいなや、ソシエに
「ちょっと・・この続きは後でにしましょう。」
と、いうとスクッと立ち上がりハリーのもとに駆け寄った。
「ちょっとぉロラン!続きが気になるじゃない!」
そのロランの後姿にソシエの不機嫌な声がかけられた。
247:02/11/30 00:26 ID:???


ロランはソシエの声を無視してハリーに話し掛けた。


「お疲れ様です。どうでした?交渉の方は?」
「起きてたのか、ロラン?ちょっと待て。皆にまとめて伝えよう。
それにまだ扉の向こうでジオン兵が耳を尖らせているかもしれんからな。
ん、そうだ。すまんが寝ている人たちをみんな起こしてくれ」
ハリーがロランにそう答える。
「わかりました。」
返事をするとロランは部屋に散らばって寝ている人たちを起こし始めた。
クルーやメカニック達は泥のように深い眠りについていてロランは、起こすのに苦労した。


ハリーはその間、部屋全体を見渡した。
重い空気が、閉塞感が、この部屋全体に充満しているように感じる。
起き上がる彼らの顔にも疲労や、この後の不安の色が宿命的に染み付いているように思えた。
これ以上ここにいると危険だな・・ハリーはそう思った。
不安というのは伝染病の様に広がるものだ。そっと。だが、確実に。
248:02/11/30 00:30 ID:???

そして五分後・・。
部屋にいる全ての者の視線が自分に集まっているのを確認すると、ハリーはようやく結果を報告した。
「まず結果から言うと交渉は決裂した。残念ながら交渉はまたも平行線を辿った。ミライ艦長への接触は許可されなかった。」
その言葉を聞いて、部屋の皆に落胆の色が広がる。
このまま、この部屋でひたすら監禁か・・ひょっとしたらこのままずっと・・
そういう思考がよぎったのだろう。溜息が聞こえた。


「だが、諸君。諦めるのは早い!」
ハリーがその皆の失望を打ち消すように朗々と喋った。
「私がかねてより密に連絡を取っていたオクトバーより連絡が入った!オクトバーはわざとジオンに下ってもらっていた。
無論、内部で協力者を得るためだ。元々皆、連邦の軍人だ。できることならギレンよりミライに艦長に戻って欲しいと思っていた。仲間はすぐに増えた。
そして彼の報告によると、現時点で、ミライ奪還の準備は完了してるらしい!」



部屋の中からオオッという歓声があがった。
「ということは俺たちもようやく出番だな!」
そうメカニック・マンの一人が嬉しそうにいった。腕をまくって勢いよく言った。
ソシエも飛び上がって喜んだ。
「やった!これでこの部屋とオサラバできるのね!」
「お嬢さん、良かったですね!」
ロランはそういいながらも、頭痛が酷くなっているのを感じた。
そっと額に手をやる。微熱があるように思えた。
249:02/11/30 00:36 ID:???
ハリーの話は続く。
「おそらく、数刻後にオクトバー達がここに救出にくるはずだ。彼らは我々の警備の兵を倒してここのドアをあけるとドックに向かう。
陽動作戦だ。モビルスーツを奪うと見せかけて敵の目を欺く。そうすればジオンどもはドッグに一目散に向かうだろう。
その隙に、我々でミライ艦長を助け出すのだ。
ミライが戻ったことがわかれば士気が違う。大多数のクルーがジオンから戻ってくるだろう。
そうすれば艦内は我々が制圧できる。
・・元々は連邦の兵士たちだからな。できることなら殺したくは無い。
しかしもしも彼らが、投降しないで応戦してくるならば容赦するな。撃て。生き残るために。
そしてこの艦を取り戻すのだ。ジオンの野望は阻止せねばならない。
・・・話は以上だ。
オクトバーたちが救出にくるまで、皆、黙ってしっかり休んでいてくれ。おそらく激戦になる。」
そこまで一気に話し終わるとハリーもまた休息をとるために寝袋のある場所に戻った。
他の者もまた静かに休息に入った。室内を沈黙が支配する。
時折り誰かの咳払いがする以外は何ひとつ物音はしない。
皆、じっと時間が経過するのを待つ。静かに。ひたすらに。
まるで地獄に繋がれた鎖の呪縛から解き放たれるのを願うサタンのように。
鼓動だけが静かに時を刻んでいた。




そして数刻後。
激しい爆発音と共に、この部屋と通路とを隔てる厳重に施錠されていたドアが破壊された。
艦内の闘争劇は・・その悲劇の戯曲はついに幕を開けた。もはや誰にも止められない。
終焉までその幕が閉じることはない。






250:02/11/30 01:01 ID:???


今日はここまでです。
次回で11章は終わらせる予定です。
それぞれが、それぞれの結末にむけて加速的に動き出します。
アムロが、ウッソが、ギレンが、ロランが、ランバラルが。というかみんなですが。
なるべく早く更新したいと思いますが、ちょっと今週は忙しいのでどうなるかわかりません・・すいません。
それでは・・

>>239
カンリニンさんへ
その位であげてくださると嬉しいです。御願いします。
251通常の名無しさんの3倍:02/11/30 01:15 ID:???
>>250
乙。


俺らはネタを見せてもらう立場なんだから更新ができないからって謝らないでちょーだい。
おもれーよ
252通常の名無しさんの3倍:02/11/30 02:38 ID:???
>>250
了解した。お心遣い感謝します。
では、遠慮なく・・・・ageます。
253。・°°・(≧□≦)・°°・。:02/11/30 04:43 ID:???
1さん乙
無理しない程度に、かつガンガッテくだされ。
今度はいつ頃かな〜?PC起動後すぐ見に来るさw
254通常の名無しさんの3倍:02/11/30 12:04 ID:???
(゚ー゚*)ステキヨ1サン…☆
255ろうろん:02/11/30 12:38 ID:1MXEBo3Y
面白いっす!マジで!・・・皆、どうなるんでしょうか?
256通常の名無しさんの3倍:02/11/30 20:41 ID:???
戦いは続く
257通常の名無しさんの3倍:02/11/30 23:47 ID:???
約12時間age
258通常の名無しさんの3倍:02/12/01 12:06 ID:???
hosyu
259通常の名無しさんの3倍:02/12/01 13:52 ID:???
シャア板が600スレ越したら気をつければいいよ
それまでは保守は必要なし
260通常の名無しさんの3倍:02/12/01 20:22 ID:iOMMyUWK
>626
えぇ!?あれってまだ引き取り手がないの?
てっきり再オークションで買い手が決まったとばかり・・・
261通常の名無しさんの3倍:02/12/01 20:23 ID:???
>>260
「あれ」とは?(w
262通常の名無しさんの3倍:02/12/01 20:23 ID:???
誤爆ちゃんいっらしゃい
263通常の名無しさんの3倍:02/12/01 20:34 ID:???
しまった!!何か変だと思ったら誤爆してる・・・つД`)
>261
ちょっと前に話題になったガンダムPCの事です。
264通常の名無しさんの3倍:02/12/01 21:19 ID:???
PC-DIYのアレね。松村さんの造型だから買い手はつくと思ったんだが・・・・
265通常の名無しさんの3倍:02/12/01 22:04 ID:???
>264
スイマセン、買い手はついてたみたいです。代金の方も入金済みだそうなんですが、
何故か送り先の連絡をしてこないので、未だに引き取られていない
という事だったみたいです
266通常の名無しさんの3倍:02/12/01 23:50 ID:???
>>263
パソコンの筐体がガンダムという良い物でしたな。
267:02/12/02 05:38 ID:???

>>266
そりゃ・・凄い名品ですね。作るの大変そうですけど。かっこよさそう・・。





こんばんわ・・ていうかおはようございます。
次回はまだもう少しかかりそうです・・。
ストーリーは決まっているので、それを文章にするだけなんですが、なんせその時間が中々取れなくて・・(涙)
申し訳ありませんが、気長にノンビリ待ってくださると助かります・・。
それでは・・。




268ろうろん:02/12/02 15:40 ID:vUgyr8SS
では、のんびり待ってます〜
269通常の名無しさんの3倍:02/12/02 17:52 ID:???
100光年でも待ちますよ
270通常の名無しさんの3倍:02/12/02 17:52 ID:???
まぁ気長に作ってください。
こっちはマターリ待ってます。
271通常の名無しさんの3倍:02/12/02 19:03 ID:???
>1さん、あせらないでいいよ!ゆっくり考えて!
272通常の名無しさんの3倍:02/12/02 22:53 ID:???
>>1さん、焦るといい作品はできませんよ。ゆっくりじっくり書いてください
273通常の名無しさんの3倍:02/12/02 23:11 ID:???
君は感動の涙を見る
274通常の名無しさんの3倍:02/12/03 00:27 ID:???
ここはなんて居心地のいいスレなんだ・・・
275通常の名無しさんの3倍:02/12/03 01:54 ID:???
>269
長さの単位ですょ(゚Д゚
と一応つっこんでおきます

1サン、嫁に来てください
276通常の名無しさんの3倍:02/12/03 01:54 ID:???
ちょっと早いけどage
277ろうろん:02/12/03 15:29 ID:2hdb1zVr
>>1さんて女性なの?
>>275見ると?
278カツミン@祝!留年:02/12/03 15:31 ID:mRns9BIP
>>277
アホか。
279ろうろん:02/12/03 17:27 ID:2hdb1zVr
ううう・・・アホな発言してました・・・・
よく考えて発言します。
>>278さん>>1さん
280:02/12/04 02:08 ID:???


>>275
嫁は勘弁してください(笑)
いちおー男なものですから。

>>277
男ですよー。


皆様・・励ましのお言葉ありがとうございます。
マターリ待ってくださってホントに感謝です。
けれどあまり待っていただくのは恐縮なので。
とりあえず今から少しですが、書き上げたところを載せることにします。
281:02/12/04 02:17 ID:???



激しい爆発音が響いて、ハリーたちの部屋を隔離していたドアは粉みじんになった。
その爆音は、さながら開幕ベルの様に艦内に響いた。
舞台の緞帳は上がった。後はそれぞれが自分の役目を演ずるだけだ。



幕間はない。台本もない。観客も存在しない。
あるのは人の魂の、精神の衝突である。シンプルなまでの。
だがそれが人の根源である。
なにかを演じ、それに従っているのだ。
それぞれの日常が既に喜劇であり悲劇であり、愛憎劇である。
ただ、この艦内での劇はその規模が大きいだけだ。



かつて欧州の偉大な劇作家がいった言葉がある。


「人とは生まれついて生涯何かを演じている不自然な存在だ。
 ゆえに道化だろうが、独裁者であろうが大した違いは無い。」



282:02/12/04 02:19 ID:???


ドアが爆破された瞬間にハリーはすぐに動き出した。ドアの方向に走る。煙が充満していた。
今の爆発音を聞きつけて、すぐにジオン兵がくるだろう。ゆっくりしている時間は無かった。
ミライを奪取できなければこちらの数少ない人数では勝ち目は無い。
ただの捕虜の反乱だと思われてはいけないのだ。ミライを救出し、こちらにある正当性を強調しなければ失敗に終わるのは明白だった。
「ハリー中尉!こちらに置いてある袋の中に、拳銃など武器を置いておきますので!我々は陽動のためドックに向かいます」
オクトバーが室内にいるであろうハリーに呼びかける。煙の所為で何も見えないのだ。


「了解だ!無事を祈る!」
ハリーがオクトバーの声がした方向にそう答える。
「そちらも!ミライ艦長はどうやらブロックS・・特別捕虜室の一室にいる模様です!それでは!」
そういい残すとオクトバー達はドックへ向かう通路へ流れていった。



ハリーもぼっかりとあいた穴から、通路に出ながら部屋に残っている連中に叫ぶ。
「それでは我々はミライ艦長救出に向かう!拳銃はオクトバーの置いていった袋の中にある。各自一つ拾っていけ!死ぬなよ!」
そういい残すとハリーも部屋から消えた。
後に続いてスレッガーや他のメカニックマンたちも続く。
直ぐに通路で激しい銃撃戦の音が聞こえる。
ジオン兵達が今の爆音で集まってきたのであろう。通路には、監視をしていたジオン兵2人が死体で転がっていた。
ソシエもロランに、先にいくわよ、と言い残すと、矢のように走って出て行く。
残されたロランが慌てて
「ま、待ってくださいよ!お嬢さん!危険です!」
と、叫びながら急いでついていく。手にはしっかりと拳銃を握り締めている。
ロランは走りながら、軽く咳き込む。
頭痛と、微熱はまだ続いていた。

283:02/12/04 02:21 ID:???

「なんだ!今の爆発音は!」
ブリッジにいたランバラルがオペレーターに怒鳴る。
「わかりません!
「捕虜たちを閉じ込めている資材室のブロックの辺りから衝撃音が発生したと思われます。」
クルーのがそう報告する
「捕虜たちのいるブロックだと!」
ランバラルの眼が大きく見開く。
そしてにやり、と笑う。

こうでなくてはな。少年。
この位の気概はあると思っていた。
嬉しいぞ。血が騒ぐわ。


「ドックから緊急連絡!連邦の残党がなだれ込んできたようです!ただ今、銃撃戦を展開中!」
艦内モニターにドックの様子が映し出された。
ランバラルが立ち上がる。
「そうか!奴ら、モビルスーツを奪うつもりだな!断固阻止だ、兵をドッグに集中させろ!」


284:02/12/04 02:30 ID:???

ドアが爆発してから三分が経過した。
徐々に煙が部屋の空気調整パルプの中に吸い込まれていき、辺りがまたクリアに見え始めていた。
既に、部屋にはウッソ・エヴィンとアムロしか残っていなかった。



「・・君は・・ミライ艦長を救出にいかないのか・・?」
アムロが、まだ部屋に残っているウッソに向かって問い掛けた。
ここに残っていては危険だ、そう暗にウッソにしめす。
「・・・僕にはちょっと他に・・行くところがあるんです・・」
ウッソが少し躊躇した後にそう応える。
アムロは黙っている。
通路からは銃撃の音がかすかに聞こえてくる。
ウッソは更に続けていう。アムロに話すというよりも少年は自分に語っている。
辛そうな顔をしている。
カテジナ・ルースや母の最期の情景がウッソの脳裏には再現されているのだろう。
その戦争時のトラウマががウッソの精神を蝕んでいるのがアムロにはわかった。
もちろんカテジナや母親の死のことなどアムロは知らない。
ただわかるのだ。認識できる。この少年の苦痛が。
それはかつて自分にも覚えがある種類のものであるからだ。


285:02/12/04 02:34 ID:???

「終わりにしなきゃいけないことがあるんです。
そのためにこの艦に乗艦したんです・・。
今までずっと引き伸ばしてきたけど・・。もう終わりにしなきゃ。
これ以上は僕も彼女も・・限界でしょうから・・・・シャクティも待ってるし・・カルルや・・マーベットさんだって・・」

そこまでいうと、ウッソはゆっくりと立ち上がった。
アムロの目には、そういうウッソのその姿は非常に危ういものに見えた。
昔の自分をみるようだ。
しかしアムロはウッソを引き止める事はなかった。
彼はこのために乗艦してきたのだ。それを止めることはできないであろう。
アムロは直感的にそう判断した。
止めても無理なら敢えて警告することはない。

だからアムロは少年にこういった。
「君は・・君の決着をつけるといい。自分の信じるとおりに。艦のことは心配しなくていい」
そして手を差し伸べた。
ウッソはそのアムロの顔を見て、少し笑い、その手をしっかりと掴んだ。




アムロはその時この少年の手が思ったより小さくないことに気が付いた。

286:02/12/04 02:42 ID:???

「アムロさん・・一つ聞いてもいいですか?」
すこし間をおいてウッソが尋ねる。
アムロが黙って続きを促す。
「アムロさんも・・・何か・・決着をつけるんですか?」
アムロの顔を真っ直ぐ見て、ウッソは尋ねた。



決着。


アムロはその言葉を口に出して呟いてみた。
シャアとの?
それは簡単に決着というには、あまりに複雑に絡みすぎている。



シャアとの決着。



その極めて明確な言葉が、10日間に渡る葛藤を超えて、アムロの意識に新たな変化をもたらした。
”そうか・・僕は難しく考えすぎていたのかもしれない・・・”
物事は考えていたよりシンプルなのかもしれない。そう捉え直して見ると、意識が落ち着いてきた。
いや、落ち着いてきたというより、元に戻ったという方が適切かもしれない。シャアとあの会話をかわす前の。


やはりシャア・・それにララァの事がが絡んでくると自分は冷静に思考をできないのだろうとアムロは思った。
いらぬ危惧や、自己嫌悪に囚われて本質を離れてしまう。感情的・・感覚的に過ぎるのだろう。
それが仕方の無いことだとアムロは認めたくなかった。
287:02/12/04 02:50 ID:???


「アムロさん・・・?」
ウッソが戸惑いがちに声をかける。その言葉にアムロは漸く反応した。
「・・・そうだな。ウッソの顔を見てたら・・・やはりそうしなければいけない、そんな気がしてきたよ」

アムロの脳裏にシャア・アズナブルの顔が浮かんだ。
シャアの最後に勝ち誇った様にいった台詞。



『それがララァの・・ひいては私の望みなのだ』





10日前に血塗れで突然現れた彼がアムロに喋った内容。
アムロはあの時のことを思い出す。そして否定する。


”それは違う。お前は己のエゴにララァを利用しているんだ。”


アムロはそう断定しながらも、シャアへの嫉妬もかすかに感じた。
”それでも・・ララァを感じられるなら・・”
そうも思うのだ。だが、アムロにはそんな自分の感情を認める器量はなかった。
288:02/12/04 02:55 ID:???


「ところで・・・頭痛がしないか・・?ウッソ?」
「・・・ええ、少し・・。アムロさんも?」
アムロもゆっくりと頷く。そしてウッソには意味不明ともいえる言葉を発した。
「やはり・・か」
「え?」
ウッソにはこのアムロの台詞は理解できなかった。
「頭痛は最近から?」
「いえ・・10日程前からかすかにです。時折り軽く痛む程度ですけど。最近その間隔が狭くなってきているような気もします。」
「その頭痛の時には頭は妙に冴えて、余計なことまで思考してしまう・・」
「ッ・・!そうです。どうしてわかるのですか?」
だが、アムロはこれ以上この話題をしなかった。
「いや・・変なこと聞いてすまなかった」
そしてまた、黙り込んでしまった。


ウッソはそんな彼に微かな苛立ちを覚えた。
少年の純粋さは、こんなアムロを卑怯だと感じてしまう。


289:02/12/04 03:07 ID:???


いつのまにか外の銃撃の音がしなくなっていた。
アムロはそれに気がつくと、ウッソにいった。
「今なら、いけるみたいだ。だが、用心のため拳銃を持っていけよ。」
オクトバーの置いていった袋の中から拳銃一丁取り出すとウッソに投げてよこした。
「あ、ありがとうございます。アムロさんは・・?」
「僕のことなら気にしなくていい。僕も今からすることがある・・。」
そしてウッソに早く行くように促した。


(・・アムロさんの考えはよくわかんないけれど。とりあえず僕もいかなくちゃ・・・・)


ウッソはそう判断してドアに向かって歩く。粉々になったドアの残骸が足元に転がっている。空中にも飛散して漂っている。
そして通路の側に無造作に転がっている二つの死体。ジオン兵。苦悶の表情。更に銃弾の跡。硝煙の臭い。血の臭い。
それら全ての無残な姿はこの艦のこれからの結末を象徴している様に思えた。壊れ始めている。
もはや戻れない、と少年は痛切に感じた。いつからこんな風になってしまったのだろう?
最後に振り返って部屋に残っているアムロ・レイをみた。
彼は拳銃を握り締めてなにかを呟いていた。右手の親指をしきりに噛んでいる。
ウッソは何故か、アムロのその姿に、ふと父親のことを思い出した。
脳裏に浮かぶ父の顔は何故か酷くぼやけていた。
酷く気持ち悪かった。
290:02/12/04 03:17 ID:???




今回はここまでです。
次回はえーと・・ちょっとわかりませんが、木曜あたりじゃないかと思います。すいません。
思ったよりかなり11章は長くなりそうです。
今後はウッソの今後や、ロラン達ミライ救出組、迎え撃つランバラルの動き、ギレンに視点が動くつもりです。
見てくださっている皆様に感謝しつつ・・寝ます。
それでは・・
291通常の名無しさんの3倍:02/12/04 03:24 ID:???
>>1さん

今回もお疲れ様でした!
292通常の名無しさんの3倍:02/12/04 04:35 ID:???
>>1さん
応援してまっせ!
293。・°°・(≧□≦)・°°・。:02/12/04 14:48 ID:???
ぐわんがれ!!!
294通常の名無しさんの3倍:02/12/04 15:01 ID:???
もう!惚れるゾ☆
295通常の名無しさんの3倍:02/12/04 15:13 ID:???
>>294
俺なんてとっくに惚れてるね!
296通常の名無しさんの3倍:02/12/04 15:42 ID:???
>>1
しょうがない。俺が嫁に逝くか...
男だけどね。
297ろうろん:02/12/04 15:56 ID:n1bR4eph
応援してます!1さん!
あと馬鹿な発言して、本当」にすいませんっっ!!!!
298通常の名無しさんの3倍:02/12/04 19:38 ID:???
なんつー健全なスレだ。
ここが悪いインターネットというのもおかしくないな・・・・。
299通常の名無しさんの3倍:02/12/05 01:12 ID:???
>>298
あ、書き間違い。
「ここが悪いインターネットというのを忘れてもおかしくないな」でした。
300:02/12/05 04:29 ID:???
>>294 >>295
ほ、惚れられてしまった・・嬉しいです・・
けど、お気持ちだけで充分ですので・・

>>295
ええ?!
それもお気持ちだけで・・(笑)

>>297
気にしないでください。
いつも見てくださっていらっしゃるようで、ありがとうございます。

>>299
本当に。
ここを見てくださっている皆様がたは優しくて嬉しいです。


それでは11章の続きをご覧下さい。
ウッソの話からです。

301通常の名無しさんの3倍:02/12/05 04:35 ID:???
(;´Д`)ハァハァ
302:02/12/05 04:39 ID:???



アムロと別れて五分後。
ウッソは幸いにも誰にも会わずに居住区まで戻ってこれた。
やはりこのブロックにも現在、人はいないようだ。
皆、出ているらしい。


ハリーたちの作戦は思った以上に効果をあげているようだ。
確かにモビルスーツ・ドックの方で激しい精神の衝突を感じる。
それでもやはりウッソが誰にも会わずにここまでこれたのは奇跡に近い。
けれど、この居住区にカテジナがいるかウッソは一瞬不安になった。
ここにカテジナがいなければ探すのは不可能に近い。
(・・いや・・カテジナさんは・・いる)
そう感知できた。
確信をもってウッソは言えた。
ウッソは自分の部屋の前に立つ。
音もなくドアが開いた。ロックがかかっていない。
迷わず足を踏み入れた。
303:02/12/05 04:45 ID:???


室内は真っ暗だった。



(明かりがついてない・・?)
中は常についているはずの非常灯のライトさえ消えていた。



ゆえに室内は、ほぼ真っ暗だ。濃い闇が眼前に広がる。宇宙の闇とは違う人工的な闇。
それは人に本能的な恐怖を与えるものだ。
だが、ウッソは恐怖を感じない。
むしろここが母親の胎内のような安心感を覚えた。
胎内の暗さ。それは人が生まれでるために必ず体験するものだ。
この感覚を感じるのが、ここにカテジナが居る所為なのかどうかウッソには判断できない。

304:02/12/05 04:47 ID:???


「カテジナさん?」
ウッソはそう声を出してみた。
だが、返事はない。
ウッソは眼をこすり闇に慣れようとする。
この暗闇に眼が慣れるのに少し時間がかかった。
その場に立ち止まってじっと一点を見つめる。
しばらくするとぼんやりと部屋が浮かんで見えてきた。薄暗闇の室内をざっと
ベッドのあるらしい方向をじっと見つめる。
不意に微かに何かが動いた気がした。が、はっきりとは見えない。
(確かスイッチがこの辺に・・・)
ウッソは壁にあるスイッチを手探りで探した。



その時。



「ウッソ・・こっちよ・・。」
ベッドサイドからカテジナ・ルースの妖艶な声がした。
ウッソは反射的に声のした辺りをみる。
ようやく眼がなれてきたらしく、少しは見えるようになっていた。
「カ、カテジナさん・・!」
そこには何も身に付けていないカテジナの裸体がぼんやりと浮かんでみえた。


305:02/12/05 04:49 ID:???




「どうしたのウッソ?私の姿がもっとよく見たい?」
彼女はそう笑うと、ベッドサイドにある小さなライトをつけた。
ほのかな明かりの元にカテジナの身体が照らし出される。
その美しい姿にウッソは息を飲んだ。
ウッソはしばらく呆然とその姿を眺めた。持っていた拳銃を取り落とす。
「カ・・カテジナさん?」
ようやく声を絞り出す。状況が理解できない。




どうしてハダカなの?



けれどその姿は美しく、暗闇に浮かぶ姿は幻想的にすら見えた。
金色の髪が鮮やかに光に照らされる。すらっとした肢体がウッソの目に映し出される。
まるで子供の頃、母親に読んでもらった童話の世界から出てきた妖精のように思えた。
現実感がなかった。






306通常の名無しさんの3倍:02/12/05 04:50 ID:???
こんな時間にリアルタイム応援です。
307:02/12/05 04:52 ID:???



「カ、カテジナ・・さん?」
カテジナがゆっくりと近づいてきて混乱しているウッソの腕を掴む。ウッソはその手をじっと見つめる。
綺麗な手・・腕、そして肩から身体のすべてを少年はみる。
ふっくらとした乳房、くびれた腰、すらっとした肢体、そして彼女の陰毛・・。
そこまで見たときウッソは慌てて目をそらした。
「どうしたんだい・・フフフ・・坊や・・」
カテジナは手を伸ばすとウッソを強く引っ張った。体勢の崩れたウッソがカテジナの胸の中に倒れこむ。
「あ・・」
ウッソの顔が赤くなる。
そしてカテジナを慌てて突き放す。手に柔らかな感触が残った。
ウッソは動揺する。こんな感覚は初めてのものであり充分に理解できない。




「カ、カテジナさん!からかっているのなら止めてください!僕は・・大事な話が・・」
ウッソはそういうと下を向いて黙り込んでしまった。
これは恥ずかしいだけではない。
あのウーイッグのカテジナさんがハダカで眼の前にいるのだ。
その事実に、ウッソは何故か背徳的な感覚に襲われた。
こんなことあってはいけない、と。


308:02/12/05 04:53 ID:???


「どうしてハダカなんだろうって思ったんでしょう・・それはね・・今までマスタベーションをしていたからよ。
わかる?マスターベーション?わかるわよね?思春期の少年だものね・・?
だから、今ちょっと気だるいのよ・・フフフ・・」
彼女の囁くような声でカテジナはいった。
そのカテジナの台詞に更にウッソは顔を赤くした。
その様子を見てカテジナはクスクスと笑った。
「ウッソ・・昔・・ウーイッグの頃、時々あたしを盗み撮りをしていたわよね・・。
その写真はやっぱりマスタベーションに使っていたの?」
「え・・・。」
「別に使っていてもあたしは怒らないわよ・・だって気持ちいい事ですものね・・」


「そ・・そんなことに使ったことありません!僕は・・僕は・・」
そこでウッソは言葉に詰まった。


309:02/12/05 04:59 ID:???


「・・僕は・・ただの・・憧れで・・眺めるだけです・・」
それは事実である。確かに、ウッソは彼女の裸体を想像した事はあった。
この二年間の間にも何度か想像したことはあった。
けれどそれで終わりだ。
自分の性欲のために彼女を使うことはウッソは、罪悪であると思っていた。
その点で少年は潔癖であったといえる。
カテジナが更にクスクスと笑う。
そして真っ赤な少年の顔をそっと手のひらで包み込む。
「あ・・」
ウッソがビクリッと反応する。
カテジナの手のひらからは、マーベットとは違う独特の甘さが漂っていた。
「僕は・・あなたに話が・・」
ウッソはしどろもどろになりながらいった。
こんなカテジナをウッソは知らない。


それにマ、マスターベーションだって?カテジナさんはこんな事を口にする女性じゃないはず・・


少年は困惑している。目の前のカテジナの腰のふくよかなラインに知らず目をやりながらもそう思った。
ウッソにとって憧れの存在であるカテジナが裸で自分に卑猥な言葉を投げかけている。裸体で。
これは少年にとって嬉しいというより彼女に対して、生理的に不潔であると感じた。
これは極端ではある。
だが、幻想的な存在に思えた彼女が、突然に肉感を感じさせる淫猥な言葉を吐いたのが、少年には過敏な反応をもたらしたのだ。
しかし同時に性的な興奮をウッソが彼女に覚えるのは、思春期である以上仕方が無いといえるだろう。
310:02/12/05 05:03 ID:???


「止めてください・・そんな事を話すのは・・あなたはそんな人じゃないはずです」
少年は言葉を絞りだしてそうカテジナを非難する。
心臓の鼓動は早鐘の様に鳴っている。徐々に世界が歪んでいく。
この艦内がまるで二年前に戻った様だ。
あの天使の輪の上に。


カテジナが不思議そうにウッソにいう。
「どうして?人が生きていく上で性的な行為をするのは当然なことよ。それに気持ちいいじゃない?」
「それでも・・・あなたは言うべき人じゃありません・・・!僕は聞きたくない・・!」
これはウッソの押し付けである。
だが、少年にみればこれは当然なことであるのだ。
カテジナは彼にとってつまりそういう存在であるのだ。
ウッソにとって彼女は鑑賞するものであって、後はイメージの世界なのだ。
その中で彼女は上品につつましく暮らしていなければいけない。
決してこのような裸体を人に見せることはありえない、まして卑猥な行為をひけらかすなどあっちゃいけない。
少年期にありがちな幻想である。
憧れの存在のそういう部分は無いものとして考えてしまっていたのだ。
ゆえに彼女がそういう肉欲的な行為をしたということはウッソにとって衝撃として受け止められた。



311:02/12/05 05:05 ID:???

カテジナはそんなウッソの様子をみて、話題を変えた。
「ウッソ・・あなたがこの艦に乗艦してくれて嬉しいわ・・」
カテジナが、そんな呆然としているウッソの髪をかきあげながら、耳元に口をつけていった。
その唇の感触にウッソはゾクッと震える。唇がウッソの耳に触れた。
「あの手紙・・私が貴方に送ったのよ・・カサレリアにね」
そっと囁く。
ウッソは動けない。
右腕の辺りに彼女の胸があたるのを感じる。
弾力性のあるそれにウッソは、ひどく狼狽した。
312:02/12/05 05:09 ID:???


「ウーイッグに戻った私は絶望のどん底だった・・誰も頼れる人はいなかったし、眼も見えなかったからね・・
 それでも私はウーイッグを離れなかった。いや、離れられなかったというべきね・・。
 何故かしら?  やっぱり人は生まれ育った場所に帰るものなのかもね。
 そして生活をするために色んな事をしたわ・・。坊やにはいえないようなことも・・軽蔑されちゃうからね。」


ウッソはそこで漸く反応した。
「僕は・・貴方を・・軽蔑したりはしません・・目が見えなくなったのだってあの時・・僕と・・」
そう言ってウッソは唇を噛み締める。
こう話していると、あの時の光景がまざまざと蘇る。
圧倒的な暴力と恐怖と混乱と絶望が渦巻いた天使の輪の上を。
彼女の世界はあそこで一つの結末を迎えてしまったのだ。
その所為で彼女の世界が仮にそれをきっかけに暗闇に包まれてしまったとしたら・・。
その考えはウッソを傷つけた。


313:02/12/05 05:13 ID:???

「そのことを話すのはよしましょう。あれはしょうがなかったことよ。あの時はね。
・・それでそういった仕事で日々を暮らしていたあたしの前に、突然ギレン閣下があらわれたの。」
「・・ギレンさんが?」
カテジナはそこでウッソから離れるとベッドに腰掛けた。ウッソに隣に座るように促す。
ウッソは極力カテジナの身体をみないようにしながら隣に座る。
彼女のしなやかな肢体を感じながら。
「そう・・どうしてあたしを見つけたのかわからないけど・・それで眼も手術で見えるようにして戴いて。
だからギレン閣下に恩返ししなくちゃと思ってね。ウーイッグにいても仕方なかったし。
それでジオンに入隊した、というわけよ。」
そう淡々と話すカテジナの話を聞きながら、ようやく落ち着いてきたウッソは冷静に考えた。


このカテジナさんが・・本当にアストナージさんをためらいもなく撃ったのか?
どうも先程から、あの時のカテジナさんが違うような感じがする。狂気が感じられない。
性的リビドーを口に出したり、僕に優しくしたり、こんな打ち明け話をしたり、かと思うとアストナージさんを撃ったり。
彼女の行動には一貫性が感じられない。
ウッソはそう思う。
「どうして・・アストナージさんを撃ったんですか・・」
「あの時は・・あまり意識がなくて・・時々起こるのよ。最近精神が暴走するみたいに・・」
そうカテジナがさらりという。
「そんな・・それってもしかして・・」
ウッソの頭にある予感がよぎる。
それは決して認めたくない種類のものであった。
しかし確かめざるにはいられない。外れていることを祈りつつもウッソは口を開いた。


「カテジナさん・・もしかしてジオンの手で・・強化人間に・・・」
「そうよ・・私は強化手術を受けた。眼の手術と一緒にね。閣下がそうしろっておっしゃったから・・」
314:02/12/05 05:22 ID:???

「お・・おかしいですよ!そんな・・そんな・・嘘だといって下さい!カテジナさん!」
そういうウッソの顔をカテジナは愛しそうに撫でる。
「本当なのよ・・ウッソ・・・」
カテジナが微笑む。
「こんなことって・・こんなことって・・」
ウッソは目から涙が零れ落ちる。


どうしてカテジナさんはそんなことをするんですか。
ぼくはあなたがそんなことをすることなんて信じられません。
少年は彼女のこの自己犠牲的な行為の意味がわからない。眼だけを治してもらえばよかったはずだ。
「おかしい?けれど抜け殻である私は必要とされれば、なんだってするわ。」
そういうカテジナの言葉はウッソには自暴自棄に思えた。
「本当に必要とした人はいなくなってしまったし・・。それに、この強化手術だって私が志願したようなものだしね。」
強化人間手術というものは失敗がつきものだ。
万が一成功しても、しばらく経過してから突然狂う例も多々ある。
それを志願する彼女の気持ちはウッソにはわからなかった。
「おかしいですよ・・」
そう繰り返す。
「・・もうこの話は止めましょう。時は決して戻らないわ。どんなに悔やんでも。
・・あなたの母親が死んだように。戦争時代に不条理なことなど沢山あったでしょう。」
それは詭弁だ、と少年は思う。
だが、カテジナの行為を非難する資格は自分にはないのも十分わかっていた。
315:02/12/05 05:31 ID:???


カテジナは少年の頬を伝う涙を手のひらでそっと拭う。
「けれど、嬉しいわ。私のために泣いてくれて・・可愛いわね・・坊や・・」
そしてウッソに顔を近づける。ベッドが少し音を立ててきしむ。
「え?ちょ・・カ・・カテジナさん?」
ウッソは上ずった声をだした。カテジナの綺麗な顔が目前に迫る。
「目を瞑って・・ウッソ・・」
カテジナのひんやりとした手がウッソの両頬を包み込む。
そう間近で囁かれたウッソは思わずギュッと目を瞑った。
そしてウッソの唇にカテジナの唇が触れ・・・ることはなかった。
その代わりにウッソの耳に笑い声が響いてきた。
とても愉快そうな笑い声。
カテジナさん・・・?
ウッソは目をうっすらと開けようとした。その刹那・・



ズブゥゥゥ!



瞬間、ウッソの視界がグラリ、と揺らめいた。
「アハハハハハハ!・・・ホントに甘いんだよ!坊やぁ!!」
カテジナがベッドの下に隠していた小型ナイフで自分の脇腹を刺した事に気が付くのに少年は少し時間がかかった。
歪んだ視界で彼女を見る。
狂ったように笑う彼女の姿も、やはり美しく見えた。天使のように。
「アハハハハハハ!アハッアハッ!」
彼女の声が暗闇の世界のなかで、響き渡った。

316:02/12/05 05:34 ID:???





















地球・・カサレリア。
ようやくカルルを寝かしつけたシャクティは深い溜息をついていた。
最近走り回るようになったカルルは元気すぎて世話が焼ける。
無論、それは嬉しい事なのだけどウッソがいない今はシャクティは、ちょっと疲れを隠せない。
なにせ収穫の時期だ。どれだけ時間があっても足りない。その上カルルの世話もある。
ぐっすりと寝ているカルルにそっと毛布をかけると、シャクティは静かに立ち上がる。
そして玄関にかけてある上着を羽織ると、ドアをあけ外に出た。途端に冷たい風が吹き付ける。

317:02/12/05 05:40 ID:???

このカサレリアの冬は厳しい。
とにかくひどく寒いのだ。その季節は世界中がまるで消滅してしまったのではないかと錯覚する程に。
そしてシャクティは、その冬が間近に迫っているのを感じる。
彼女の頭上には銀色の月が静かに光っている。
シャクティはその月にどことなく陰鬱な雰囲気を感じた。いつもと違い胸がざわつくのを感じた。
シャクティは星を眺め、どこか出稼ぎにでているはずのウッソの事を思う。
そして静かに詠う。美しい歌声が夜空に響く。


 
「    星の向こうに 未来があると     若者達は夢のつばさを広げて  

  
       ひなげしの花を散らしながら         旅立っていく           」
  


シャクティ・カレンは詠い終わると一つ大きな息を吐いた。
そして踵を返すと、ゆっくりと家に戻っていった。
静かにドアを閉めて鍵をかける。こんな田舎で鍵は無意味に思えるが、シャクティの習慣になっていた。
ベッドでカルルがぐっすりと寝ているのを確認すると、少女は自分も寝るために隣のベッドに横になる。
窓から、夜空に輝く星を眺めながらシャクティはウッソのことを思いながら、日中の疲れからかすぐに深い眠りについた。
カサレリアの空に浮かぶ一際明るい星が煌いたのはその直後のことである。

318:02/12/05 05:42 ID:???








星の向こうに未来などありはしない。
あるのは闇だ。絶望的なまでにそれは深い。
その深淵の闇のふちでは、まさに一人の少年が闇に飲まれようとしていた。
その闇はあまりに深く巨大であり、少年がいかに手を伸ばしてもどこにも届かない。
虚空をおよぐその手はあまりにか細く何も掴むことはできない。








319:02/12/05 05:49 ID:???



ここで一区切り。
次回でこの物語におけるウッソ・カテジナ編は、終わります。
彼らの最後を見届けてくださいませ。
ウッソ、そしてカテジナをリクしてくださった人に深い感謝の気持ちを捧げつつ。
更新は明日の深夜の予定です。


>>306
こんな時間に見てくださってる人が居るなんて・・応援有難うございました。

320通常の名無しさんの3倍:02/12/05 05:54 ID:???
お疲れ様です。
なぜかだいたいリアルタイムでみています(笑
321。・°°・(≧□≦)・°°・。:02/12/05 06:21 ID:???
乙さんでつ。
み ん な 死 ん で い く ・ ・ ・

怖いけど観ちゃうんだな、これが。
ガンガレ。
322ほげら〜:02/12/05 07:39 ID:2drkG6P1
>ふっくらとした乳房、くびれた腰、すらっとした肢体、そして彼女の陰毛・・。
?…。陰毛?
ウッソ、そんなとこまでしっかり見んといて〜。
しかし、ここまでこった殺し方するなんて、
流石はガンダム中、最もキてる女性キャラ、カテジナだけありますな。
なんか妙にリアルだ。
323通常の名無しさんの3倍:02/12/05 10:11 ID:???
>>1さん乙です。
そういや、本編でもカテ公に刺されてたね。
あの時は助かったけど・・・。
324通常の名無しさんの3倍:02/12/05 10:26 ID:???
>>1さん乙

だんだん切なくなってきた
325ろうろん:02/12/05 16:15 ID:Veru5B3e
ウッソ、死んじゃったんか?・・・・なんか悲しいなあ。
>>1さん乙っす。
326通常の名無しさんの3倍:02/12/05 19:41 ID:???
いや、死んだような描写はあるけども死んだとは書かれてないんでない?

まあ、彼らの目的は○○の○○だろうから○○○るかもしれないけど…(激しく予想)
327通常の名無しさんの3倍:02/12/05 21:45 ID:???
>>326
そういうのやめようぜ

1さんが気ィ悪くするかもしれんし。

しかも、なんかカコワルイ。

静観すべし。
328通常の名無しさんの3倍:02/12/06 02:53 ID:???
ウッソ死んだの?うっそ〜ん…(すんまそ…、アポーンケテーイではまだしてない)
1さんお疲れ様。
329:02/12/06 16:39 ID:???


お待たせしました。予想以上に時間がかかってしまいました。すいません。
それではウッソ・カテジナ編の最終回です。
・・・みてください!



330:02/12/06 16:41 ID:???




少年は刺された瞬間に、頭の中で閃光がちらついたかと思う。
それは激しい爆発が脳内で起きたように感じた。
意識が瞬時に広がり拡散していくが、自分の存在が希薄になったわけではない。
無傷で、自分がいることは感じられる。
どうやら死んではいないらしい。




だが次の瞬間気が付くと、灰色の迷宮の世界の中に、少年は立っていた。
カテジナ・ルースのいたあの部屋ではない。脇腹を刺された傷さえない。
どんよりとした灰色の世界に少年はいた。
そして目の前には巨大な黒い塊が、少年を待ち構えていた。
大きさは・・ざっと3メートルはあると思われるスライム状の物体だ。
それが生き物の様にうごめく。
その塊は、巨大な暗闇となって、少年にゆっくりと近づいてくる。
その闇は意思を持っていて、少年の全てを激しく飲み込もうとする。喉の奥にくわえ込もうとする。


331:02/12/06 16:48 ID:???



少年は動けない。
蛇に睨まれた蛙のごとく、その口に飲まれるまで微動だにできない。
闇が少年を飲み込む。更に深い意識の奔流のなかに。
まるで、少年がくるのを待ち構えていたかのごとく。
少年は闇に手を伸ばす。
虚空をおよぐその手はなにも掴めない。闇の塊がその手も包み込む。



闇は生暖かい粘膜のようなもので少年をドロリ、と覆い被さるように包み込んでいく。ゆっくりとびっちりと身体に密着していく。
じっとりとした闇は少年の全てを貪ろうとする。精神も、肉体も、思考も嘆きも悲しみも。彼が生きてきて内在していたもの全てを。
少年は抵抗することができない。
闇のねっとりとした何かが、口の中にスルリ、と入ってきて少年の内部に入り込む。
その意思を持った闇のようなものは食道を通り抜け、胃の中に溜まっていく。質感はかんじるが、けして重くはない。
まるで少しお腹にたまるものを食べた後のような感覚に近い。
けれど、もちろんそうじゃない。この感覚は到底馴染めるものではない。


332:02/12/06 16:49 ID:???



その粘膜は、徐々にこの身体を溶かそうと躍動し始める。
次第に粘膜が熱を持ってくるのを少年は感じる。
どんどん熱くなってくる。
その熱が、少年を外側から内側から貪欲に、溶かしていく。骨も。皮膚も。血液さえも。
ジョブリ・・ジョブリ・・と音が聞こえた。少年の全てを飲み込んでいる音。
少年は、このまま飲み込まれて僕の全てが消化されれば、どんなに楽だろうとも思う。
気持ちいいのだ。この粘膜は母親の胎内のような安心感を与えてくれる。
この闇に同化できればきっともう悩むことは無くなる。
ああ・・僕は・・楽になれ・・る・・
少年は深い吐息をはいた。


333:02/12/06 16:51 ID:???



そのとき突然に灰色の世界が消え、カサレリアに場面が切り替わった。
静寂が支配するそこは地球の一部である。この宇宙から果てしなく遠い情景。
もうそこを旅立ってから何年も経過したように思える。
なのに、今そこに少年は立っていた。
ふいに少年は身体が動かせるようになる。闇は少年に依然絡み付いてるが動けないほどではない。
この場所のどこかからは生命力のようなあたたかい光が漏れているように感じる。
それがこの粘膜を弱らせている。
その光の発信源を少年は探し当てようとする。
だが、それはすぐにわかる。




少年の足は迷うことなく進み、一軒の家の前にて立ち止まる。
迷わず中に、はいる。
ドアに鍵はかかっていない。

334:02/12/06 16:53 ID:???


少年は寝室に向かう。
そこに、ベッドで静かに眠るシャクティの姿を感知する。
その姿は鮮やかに光りを放っていた。その光が少年の全身に降り注ぐ。
光が少年に絡み付いていた粘膜のゼリーを溶かしていく。
粘膜はうごめきながら、その暗黒性を消滅させ、また灰色の世界へと消えていった。


少年は再びベッドに寝ている少女に視線を戻す。
少女は穏やかに寝ていた。
だが、少年にはわかる。
この少女は、誰にもみえない涙を流している。
だれも訪れられない世界で。


335:02/12/06 16:56 ID:???


その小さな震える肩を抱いてやることができるのは君しか居ない。
そして頬をつたう涙をそっと拭えるのも。
君だけだ。


少女から放たれる光の粒子が少年にそれを伝える。
「シャクティ・・・・」
そういって少年は彼女の涙をそっと拭い、その少しささくれた手を握り締める。
「シャクティ・・・手が氷のようだよ・・?」
そう少女に囁く。
けれど、その言葉は、届いていないようだった。
少年はもどかしく思い、少女の顔に手を伸ばす。

336:02/12/06 16:57 ID:???









ウッソ・エヴィンはそこで意識を取り戻す。
「アハハハハ!」
カテジナの声が、密室の中で響き渡っている。意識が覚醒する。
突然刺されてショックで一瞬意識がとんでいたのだ。
それは時間にして、2,3秒であった。
痛みがウッソの意識の覚醒を更に促す。少年は右手で脇腹を抑えた。
肉体的な感覚が戻ると、痛みも影のようにそっと戻ってきた。
まだ・・動く。
その事実を理解する。
シャクティが泣いている。
その事実も理解する。
カテジナが目の前にいる気配に気がつくと瞬時に少年は動いていた。

337:02/12/06 17:00 ID:???

ウッソはカテジナの右手を渾身の力をもって捻る。
カテジナの手から、ポロっと、ナイフが落ちる。
生命への執着が本能的に少年を突き動かす。
いや、それは少年の生への執着心が彼を突き動かしたというよりは、別の何かによって動かされていた。
ナイフをすかさず拾い上げると、ウッソはそれを迷わず彼女の右胸に突き刺した。
ズブゥゥゥ!
鈍く確かに肉を切り裂く感触がウッソの五感に走る。
そしてナイフを引き抜くと更にもう一度、今度は腹部に、思い切り突き立てた。
それは一瞬の出来事であり、その行為をウッソが冷静に鑑みる事はなかった。
身体の動きが脳を経由せずに直接反応した。
ウッソの生きる意思がとらせたものである。

何故かカテジナは敢えてナイフを避けなかったように思えた。
カテジナがゆっくりとその場に崩れ落ちる。




        『  引き裂かれた 愛が   』




338:02/12/06 17:02 ID:???


「カテジナさん!」
ウッソはカテジナが倒れた姿を目の当たりにした瞬間叫んだ。
ナイフをほうり捨てる。
不思議ともう脇腹に痛みは感じなかった。
思ったより傷は浅かったのかもしれない。イキナリ刺されたことのショックが大きかっただけで。
仰向けに倒れたカテジナ・ルースはどこか穏やかな顔をしていた。
その表情は美しい天使のごとく。
そこには、もう狂ったような様子はない。
彼女の白い肌に血が流れていく姿は、倒錯的な感覚に少年を陥れた。
ウッソはその血に、肌に母親の最後をまたも投射してしまう。
また頭がズキッと痛む。
口から意図していない言葉が漏れる。
母さんがいけないんです・・僕を愛していなかったんでしょう?
戦争の道具に僕を利用した・・あなたは・・いえ父さんとあなたは僕を・・



『 それっきりおしまいになると思わず 』



339:02/12/06 17:08 ID:???


倒れているカテジナがそんなウッソの微かな呟きに反応した。
「ぼ・・坊や・・思春期の憧れと・・いうものはね・・母親の残像を見るものなのよ」
カテジナは優しく頬を撫でながら言った。
その手からは少年を刺した時に付着したと思われる血がついていて、匂いを放つ。

「エディプスコンプレックス・・ってわかる?
つまり幼児期の男の子は必然的にまでに、母親を自分のものに・・しようと・・願う。
そして成長した後も・・母親に似た女性に惹かれ・・・てしまう・・。
あなたの母親・・昔見たけど、どことなくあたしに似ていたわ・・・。その時思ったの・・よ。
あなたは私に母親の面影を追っていたのよ・・どこかで。」
少年は背徳感に襲われた理由に気が付いた。

僕はだからカテジナさんに恋をしたっていうこと?
僕はカテジナさんに母さんを投影していた?・・だから・・
けど・・僕はその母さん・・いやカテジナさんを・・この手で・・
ウッソは呆然と自分の右手を見る。その感触は生々しく残っている。
「坊や・・だからあなたは母を愛していたのよ・・だけど・・もうそれは・・やめなさい・・」




   『   一度、知った 愛は
         鍛えられ 次のもの さがす 力に   』


340:02/12/06 17:13 ID:???


次の言葉がウッソには質量のある具現化された事実として刻み込まれる。


「だって・・あなたは母親を今度はこの手で殺したことになるのよ・・。」


カテジナはそういうと、おかしくておかしくてたまらないといった風に笑った。だが、口から出るのは笑い声ではなく真っ赤な血液だ。
ゴボッとそれが口から勢いよくこぼれ出る。壊れたパイプのように。
それが彼女の死が間近であることを少年に伝える。
彼女は激しく咳き込むと、続けていった。


「けれど・・これで坊やは・・母親から本当に解放されるでしょう?」




     『  引き裂かれた 愛が   』



341:02/12/06 17:15 ID:???


「カテジナさん・・僕・・」
カテジナの言葉の意味を理解したウッソの目から大粒の涙が零れ落ちる。
少年の頭に母親ミューラ・ミゲルの顔が浮かぶ。
そしてカテジナ・ルースもその隣にうかびあがる。それはまったく別の次元の様に今までは捉えていた。
その二つの世界の境界線がウッソの中で消えて、淡いぼんやりとした線に変わる。
彼女が掠れた声でいう。
「荒療治だけど・・死者から解き放たれ・・るには・・・再び殺すしかないのよ・・」






  『   残すものなにもないなどと言わずに       』
342:02/12/06 17:20 ID:???


「お、おかしいですよ!どうしてカテジナさんがそれを僕にするんです!どうして!」
けれど、カテジナはその問いには答えない。
「ウッソ・・私のベッドの枕もとのバッグに・・あるものがあるわ・・それ返しといてね・・」
そういうとカテジナは最後の力を振り絞るようにウッソの目をじっと見た。
「私が乗艦した・・目的・・はね・・ウッソ・・あなたを殺すんじゃなく・・」
苦しげに息を吐くと更に続けていった。
「・・あなたに殺される・ことだったの・・クロノクルの様に・・」

「ッ!そんな!嘘でしょう!」
「フフ・・坊やには・・まだ・わから・・ない・・・わ」
「愛っていうのは・・ね。こういうものなの・・私の身体にはまだ残っているの・・
あの人の・・クロノクルのぬくもりが・・だから・・」
残っているうちに死にたかった。




 『  胸こがした 愛は
       抱きあったぬくもりを残し 今でも   』


  
343:02/12/06 17:22 ID:???

「罪滅ぼしじゃないけど・・坊やに殺されるために・・・二年・・間・・生きてきたのよ・・・」
カテジナは長かった、というように深い深い吐息を漏らす。
まさに彼女は死への階段を上り終えようとしていた。瞼がゆっくりと閉じられた。
「カテジナさん!カテジナさん?!」
カテジナ・ルースはもう何も喋らなかった。


 『   あれから八つ   季節はすぎて      』



「カテジナさん!起きてください!」
ウッソは彼女の口がまた開くのを願い何度も呼び掛ける。
それが無理だとしりつつも。
「起きて・・おきてください!おかしいですよ!貴方は!」
けれどカテジナの声はもう少年の耳には二度と届かない。




 『   あの唇       時代を越えて     』


344:02/12/06 17:24 ID:???




「僕はこんな事を望んでいたわけじゃあないんです!こんな!こんな!」
それは少年の嘆きであった。
頭の中で血塗れのヘルメットとナイフが交錯する。
それが一つに混ざる。
「母さんは母さんで!カテジナさんはカテジナさんでしょう!?
あなたを!あなたを!母さんにした覚えはありません!」
少年の瞳から涙が、一粒、二粒と零れ落ちる。
それがカテジナの純白の頬を濡らした。
喉の奥から、嗚咽が漏れてくる。
それは狂おしいまでの衝動だった。
少年は彼女に縋って泣いた。
涙がとまらなかった。






 『   過去のものより  あかあかと       』

345:02/12/06 17:26 ID:???



そのままどれくらい時がたったのだろうか。
少年はようやく泣き止む。
少年はカテジナの金髪の髪をかきあげる
そして、彼女の唇にそっと唇を重ね合わせた。
そうしなければ前に進めない気がしたから。彼女にわるいとおもいつつ。
カテジナの唇は血の味がした。けれど少年はそこにまだ彼女の意思のようなものを感じる。
それが自分の内部に入ってくる。それは先程遭遇した、あの粘膜のようなものとは少し違うように思えた。
そして、それは瞬く間に死の味へとすりかわる。冷たく硬質な感覚に少年は囚われる。
少年はそこで唇を離す。
そのキスから少年は自分の中に何かを受け取り、内在させていく。
そして思う。
あぁ、これが、僕のピリオドなのだと。少年期の。淡い初恋の。
そして母ミゲルとの。




 『   今のぼくに 生命つづく源  くれる    』



346:02/12/06 17:29 ID:???



ウッソはそっと立ち上がると、カテジナのベッドに近づいた。
そして枕もとにそっと、置いてある小さなバッグをみつけた。
中を確かめる。
その中にはこまごまとした化粧道具の他にワッパのコンパスが入っていた。
それを手にとる。ふいに、カサレリアのシャクティのことを思う。
僕は・・・君を・・
少年は再び喉の奥から漏れてくる嗚咽を押さえることができなかった。
そのままドサリ、とベッドに倒れこみ、枕を噛み締めて泣く。
今度は声は漏らさなかった。



「明日から・・明日からはあなたの事は忘れますから・・今日だけは泣いていいですよね・・カテジナさん・・」
シーツを握り締める手が、震えた。






 いくつもの愛かさねあわせて
         果てることないスペースライツに
    So,like a ・・・・・I,I,
       melting into the image of GALAXY with you




347:02/12/06 17:30 ID:???









シャクティは眼を覚ます。
まだ夜はあけていなかった。世界はまだその輪郭を取り戻していない。
窓から外を眺める。
雪が・・真白な雪が降り積もって月の銀色に照らされていた。
初雪が、秋の終わりをつげ冬の訪れを告げる。
そうして季節は移ろっていく。

冬になると訳もなく哀しくなりません?


少女の瞳から、幾筋か涙が流れて、冷え切った頬を伝った。
夜があけるまで少女は泣きつづける。
世界が新たな始まりをつげるまで。









348:02/12/06 17:34 ID:???








11章はまだ続きます。が、ここでこの少年の物語はほぼ終わりです。






349通常の名無しさんの3分の1:02/12/06 17:59 ID:???
1さんリアルタイムでキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
350通常の名無しさんの3倍:02/12/06 18:03 ID:???
下がりすぎなのでage
351通常の名無しさんの3倍:02/12/06 18:07 ID:???
なんか感動した
352通常の名無しさんの3倍:02/12/06 18:32 ID:???
綺麗だったね。
天使はウッソのことをさしてると思ったけれどカテジナさんだったのか。
353通常の名無しさんの3倍:02/12/06 20:45 ID:???
しまった…!Vを見てから1氏の作品を見るんだった…
知らずにここまで感動するんだから見たらなおさら…ッ!!!
354通常の名無しさんの3分の1:02/12/06 20:49 ID:???
>>353
同意。
355通常の名無しさんの3倍:02/12/06 20:50 ID:???
おれも正直Vあんまわからんけど感動したすげぇ
356通常の名無しさんの3倍:02/12/06 21:58 ID:???
V見てた漏れは「いくつもの愛かさねて」だけで泣ける。
357通常の名無しさんの3倍:02/12/06 23:46 ID:???
ワッパのコンパスって何?
358通常の名無しさんの3倍:02/12/07 00:13 ID:???
>>357
Vを借りて見ろ。
359:02/12/07 01:04 ID:???

>>357
ええとですね・・
説明してもいいのですが、それより>>358さんの仰るとおりVをみた方がいいかと思います。
是非みてください。面白いですから。




それにしても、あまり皆さんV見ていないのでしょうか?
だとするとこのウッソ編はほとんどわかんなかったでしょうね・・長いし・・。
「いくつもの愛かさねて」なんて絶対わかんないし。
スイマセン。
もっとわかりやすく表現できればよかったのですけど。どうしてもあの歌は入れたかったものですから。


この続きの11章からは、わかりやすいように予定よりちょっと話全体を短くしてまとめようかな、と思います。
今回の様にカサレリアの情景や彼らの因縁みたいな事前知識が必要な要素は、極力けずって。
そうすればあまりわからない、ということもないでしょうから。


えと、次のアップは早ければ日曜にはできるかな、と思います。
マターリお待ちください。
それでは、呼んでくださっている皆様に感謝しつつ。



360通常の名無しさんの3倍:02/12/07 01:09 ID:???
すみません・・・
そのVのLDボックスのことで質問があるんですが答えてください
今日それを見つけたんですが(表裏が黒い箱で表にガンダムが白線だけでが書かれている奴)
どうしてもファーストガンダムにしか見えない
しかし背表紙にVガンダムと書かれた黒いシールが貼ってある
偽造とは思えんが良く考えるとどうも腑に落ちない・・・
どなたか詳細を聞かせていただけませんか?
361通常の名無しさんの3倍:02/12/07 01:11 ID:???
ごめんなさい!
あげてしまいました
362:02/12/07 01:25 ID:???
>>360
ええと・・・すいません。
ちょっと私はLDボックスには詳しくないんです。ビデオでしか見てませんので。
それはなんでしょうね・・?きっと海賊版ではないでしょうか?
けれど、もし値段が安くてお手ごろなら買って確かめてみるのも一興ではないでしょうか?
ファーストだったら「Vと思って買った!」といって返品できると思いますし。
Vなら珍しくてラッキー、て感じで。
それか、店員さんにきけばわかるんじゃないかなと思います。
こんな返答ですいません・・。
363通常の名無しさんの3倍:02/12/07 01:42 ID:???
あ、神様どうもありがとうございます!
実は今日秋葉に行きまして中古屋で見つけたんです
ヤマ○ワです
ボックスの表紙にはガンダムと書いてあったんですがVは書かれていませんでした
しかし背表紙にはVのシールが・・・
店側が売値などを書いて貼った紙にはVガンダムと書いてあるんですが箱はどう見てもファーストガンダムなんです

ちなみに定価は5万でした・・・
364通常の名無しさんの3倍:02/12/07 01:45 ID:???
>>363
ちなみに定価は5万でした・・・
    ↓
ちなみに売値は5万でした・・・買えませんでした!w
365通常の名無しさんの3倍:02/12/07 01:47 ID:???
ところでVガンダムと言うのとファーストは似てるんですか?
わたし逆シャア以降は見てないんで・・・
366通常の名無しさんの3倍:02/12/07 01:47 ID:???
>>1
V好きだが感動したぞ
367:02/12/07 03:49 ID:???

>>365
むむ・・五万は高いですね・・
ファーストがVと似ているかですか?
似ているか、と聞かれたら似ていないでしょうね・・。ただ面白いのはどちらも同じですよ。



>>356
ありがとうございます。
そういってもらえると嬉しいです。本当に。
368通常の名無しさんの3倍:02/12/07 05:23 ID:???
まるで映像を見せられてているような……すごいです。頑張って下さい。
369通常の名無しさんの3倍:02/12/07 09:29 ID:???
古参モー板住人よ、
シアターと並ぶ作品ですな。
370通常の名無しさんの3倍:02/12/07 10:06 ID:???
読んでてさぶいぼが立ちました。凄いです。
371通常の名無しさんの3倍:02/12/07 11:38 ID:???
漏れはV知らんですが、お構いなくお続けになって下さい。
知ってる人を優先にしてあげて下さいな。
372通常の名無しさんの3倍:02/12/07 12:04 ID:???
>>371
同意。知らん人のせいで1の文章が変わるのはイクナイ
さ、漏れもVかりてこよー
373ろうろん:02/12/07 12:56 ID:licGzxR9
嗚呼・・・・もうハラハラしてます!
今後の展開に期待!!
374kanrinin:02/12/08 00:36 ID:dfWmPcx0
ウッソ・・・・最初はマジで死んだと思っちゃったage
375:02/12/08 15:05 ID:???


>>371  >>372
そうですね。おそらくファーストならばみんな知っているでしょうし・・
一応なるべくマニアックなところは出さないつもりですが・・ララァなどはどうしてもでちゃいますね。
この物語の核心の部分でもありますので。
その辺りは削らないでキチンと書かせて頂きます。


申し訳ありませんがもう少しお待ちください・・。
たくさんの感想ありがとうございます。
376通常の名無しさんの3倍:02/12/08 16:08 ID:???
>>kanrinin
いいタイミングで上げたぽいな。グッジョブ!
他にROMってたやつが消えてるよ・゚・(ノД`)・゚・ウワーン
377通常の名無しさんの3分の1:02/12/08 17:27 ID:???
深度503!
緊急浮上!
378通常の名無しさんの3倍:02/12/08 18:19 ID:???
スレの位置は関係ないって。
問題は最終書き込み時間。
379ろうろん:02/12/08 18:55 ID:ttZ/y4mq
>>1さん!
いつも素敵なお話をありがとうございます!
380通常の名無しさんの3倍:02/12/09 04:00 ID:???
う〜ん、すげぇ!!
途中まで、「原作から二年後の設定でこんなカテ公はないだろ」って思ってたけど、ここまで読んで納得。
むしろ手のひら返して、Vの後日談として富野が書いたんじゃね?と思えるくらい。
前スレのシャアといい今回のカテジナといい1氏はかなり深いとこまでヤシらのことを理解してるんだな、と思わせる圧倒的な説得力。
映像を容易に想像させる、1の描写のなんと素晴らしいことか!!
381通常の名無しさんの3倍:02/12/09 13:06 ID:???
保守age
382:02/12/09 15:43 ID:???
感想どうもありがとうございます。
保守してくれた方有難うございます。
ホント嬉しいです。

ウッソの話は終わりました。
次は少しだけ時間が戻ってランバラルと、ハリー達の動きです。
それでは・・







383:02/12/09 15:44 ID:???



「ドックに侵入した反乱者六名は鎮圧、反乱兵六名全員死亡。こちらは2名が腹部に銃弾をうけ、重症だそうです」
ドックから連絡が入り、それを通信兵がランバラルに伝えた。
軽く頷くと、ランバラルはブリッジで一人考える。
モニターの映像を眺めながら。




おかしい。
この反乱者の中には捕虜の姿が一人もいない。
しかし、捕虜を軟禁していた部屋には、誰も残っていなかったのは報告で確認した。
ドアが破壊されていて、誰も残っていなかったらしい。
では、あの少年たちはどこに消えた?

384:02/12/09 15:47 ID:???



ギレン閣下は現在ブリッジにいない。艦長室にいる。無論、ドアの前に護衛の兵士はつけているから安全面では問題はない。
捕虜の反乱を報告したランバラルはギレンに指揮権を委ねられていた。信頼されているとランバラルは思った。


ランバラルは確かに軍人としては一流である。
しかし戦略家としての能力は、それほどでもない。
あくまで第一線で戦闘するタイプの軍人だ。自分ならいかに行動するかで、敵の動きを推測する。
ゆえに自分の行動と照らし合わせると、捕虜の行動はモビルスーツを奪取する以外ないと思った。そしてそれは鎮圧した。
だが、そこに捕虜はいない。とすると・・彼らの向かうところは・・
そこでランバラルは己の失態に気が付いた。こんなミスを犯す自分に失望した。
「迂闊であった!目的はミライか!」
ランバラルはそう叫んだかと思うと、回線を艦内オールに切り替えた。



「総員に告ぐ!捕虜はSブロックに向かっているものと思われる。ミライ奪取が目的だ!
至急Sブロックに向かい、連邦の残党兵を始末せよ!」



艦長室のある居住ブロック以外の全域にそれは響いた。
この時、ハリーたちが部屋をでて15分が過ぎていた。
そしてハリー達はそのとき、まさしくSブロックにたどり着いていた。





385:02/12/09 15:48 ID:???



その少し前。十分前に時間は戻る。
ウッソがちょうどカテジナのいる部屋にはいったのと同じ時間だ。
ロランはソシエ、ハリー、その他メカニック・マン2人と共にミライの閉じ込められているブロックに向かっていた。
「この艦のクルーの絶対数が少ないのが幸いしたな。ドックの方に大多数は流れたようだ。」
ハリーが注意深く走りながらいった。
ロランも頷く。
確かに最初通路で見た以外は遭遇していない。予想以上に敵は騙されたみたいだ。
ギレンは切れ者だと聞いていたがそうでもないらしい。




「けれど、早くしなくちゃオクトバーさんたちが・・」
「・・そうだな。ん、ロラン、ここを右だ。」
十字路に来てハリーはそういって曲がった。
「お嬢さん!ここを右ですから」
後ろの方にいたソシエにそう呼びかける。
彼女はリフトグリップにまだあまり慣れていないらしく、もたついている。
「聞こえてるわよ!早く行きなさい!」
ソシエが不愉快そうにいう。
(こんな時まで・・子供扱いして・・)


386:02/12/09 15:51 ID:???


ソシエはロランになんとか近づくとそのサラッとした銀髪を引っ張った。
「痛い!・・・な、何をするんです、お嬢さん!」
そのロランの抗議を空気のごとくあっさりと無視すると、ソシエは言った。
「ねぇ・・覚えてないの?あたしずっと待っていたんだけど。」
「な、何をです。」
ロランはそんなソシエの静かな迫力に少し圧された。
まるで自分がとても悪いことをしたみたいだ。そう思う。




「何がって!ほら、さっき話していたあれよ!ニュータイプとオールドタイプの違い!
さっきロランいったでしょ、彼らの間には本質的には違いがないって。
あれの説明途中で終わってたじゃない!
ずーっと気になって待ってたんだけど。」
そういってジトっとロランを見る。ロランはたじろぐ。
「お、お嬢さん。今はミライ艦長を助けに行く途中で・・」
「いいじゃない!別に移動しながらでも話せるでしょう?」
それともあれはでまかせかしら、とロランに迫る。
無論、この会話の間も2人は移動している。
ハリー達が前の方にいるのを確認したロランは軽く溜息をつくとわかりました、といった。
「ジオン兵の皆さんもドックの方に騙されてるらしいので、少し喋っても大丈夫・・でしょう。それじゃ話します。」
けれど、辺りには充分注意してくださいよ、そうソシエに釘をさすのを忘れない。
ロランは不意にズキッと頭が痛むのを感じた。





387:02/12/09 15:55 ID:???




「僕は、こう思うんです。けど、これはあくまで僕個人の考えですよ?」
ロランはそう前置きすると話し出した。
「ニュータイプ・・。ニュータイプっていうのはオールドタイプとは確かに違うとおもいます。
認識力が、多少僕らより拡大しているといった具合に。しかし両者は本質的には変わらないんです。
いや、・・変わらないというより変えることができないといった方が正しいかもしれません。
ニュータイプは異端的な扱いをうけ、戦争の道具として扱われるからです。だから、彼らは変われない。
完全に覚醒できないんです。残念な事ですけど・・。
けれど、僕はそれでもいいと思うんです。
何故かというと、僕たち、人類というのはまだ変化の途中にいるからです。
意識のルネッサンスを迎えるまで、人は異端的に、無理矢理変革する必要はないと思うんです。」



ロランの声には、どことなく反論ができない説得力が含まれていた。
それは、まるで幼少期に子供が両親に諭される感覚に等しい。
ソシエは黙って頷く。
けれど、少しこのロランに違和感を感じる。
ロランってこんな饒舌に喋るのって何かおかしい・・・
そう思うのだ。

388:02/12/09 15:58 ID:???


ソシエはロランのいまの言葉を考えた。

「つまりロランの言うことは・・こういうこと?
ニュータイプというのは確かにオールドタイプとは違う。それは能力的には明らかだ。
にもかかわらず両者に本質的な違いはない。
ニュータイプはオールドタイプに足を引っ張られているから完全に覚醒はできない。
だから、本質的な部分ではお互い変わらない。ゆえに両者の違いは決定的でない。
けれど、それは仕方のないことである。
何故なら人はまだそんな急激な変革についていけないし、まだ早いからっていうこと?」



そこまで一息でソシエはいってしまう。
難しくて、ちょっと頭がくらくらしたが多分あっていると思った。
ロランはうなずく。
「そうです。ニュータイプと呼ばれている方には気の毒だと思うのですが。
彼らが・・完全に覚醒したら両者には決定的な格差が生まれます。
本質的な変化が訪れるんです。
そして、それは現段階では好ましくない結果になりうると思うんです。
だから早いんです。僕達は変化の途中なんですから。
これは、もう少し時間がいる問題です。」



389:02/12/09 16:00 ID:???


2人はいつのまにか立ち止まっていた。
変化の途中・・。
ソシエは、その言葉にロラン・セアックの希望が含まれているような気がした。
「さぁ、少し急ぎましょう。ハリーさん達はもうかなり前にいってますよ」
ソシエはロランの横顔を眺める。
少し胸がちくりと痛み、心がざわついた。



「ロラン・・前からこういう考えを持っていたの?」
ソシエが疑問に思って尋ねた。
「いえ、何か話してくると、こう頭の霧がはれていくように、口をついて言葉が出てくるんです。
 不思議ですけど。」
それはこの頭痛と何か関係があるかもしれない。
ロランは頭の片隅でふとそう思った。そしてその結びつきは正しい。

390:02/12/09 16:05 ID:???


ハリーたちはRブロックに来ていた。
そこを通過してまた通路に出る。
狭い一本道だ。
自動扉がある。この向こうがSブロックだ。
前を歩いていたハリーが振り返る。
「ここだ。オクトバーの情報によると、この先のSブロック。そのブロック内にミライはいる。
両脇に捕虜を入れる部屋があるが、それは無視してかまわない。
その一番奥にある特別警戒の部屋にミライはいるだろう。そこで我々は・・」
そこまでハリーが話したときに艦内にランバラルの声が響いた。



「艦内に告ぐ!捕虜はSブロックに向かっているものと思われる。ミライ奪取が目的だ!
至急Sブロックに向かい、連邦の残党兵を始末せよ!」
その声には硬質な意思が含まれている。断固たる意思だ。


ハリーがそれをきいて舌打ちした。やはり甘かった。
不十分な作戦であったので仕方のないことだが、失敗は失敗だ。
(どうする・・・?)
ハリーは思考する。
そのとき、ちょうどロランとソシエも到着した。

391:02/12/09 16:11 ID:???


ハリーはもう一度皆にいった。
「時間がない。もう少し時間が稼げると思ったのだが・・
思ったよりジオンの動きがいい。さてこれで我々がどうするかだ・・
降伏するか、このまま進むか・・。」
ロランが発言する。
「ミライ艦長を助けなければ、どの道、僕たちはいずれ処刑されます。
降伏しても無駄だと思います。もう僕らは危険分子ですから。進むしかありません。
けれど、全員行けば、ミライさんを警備しているジオン兵と今の放送で集まってくるジオン兵に挟み撃ちにされます。
ですから、僕がここで迫りくるジオン兵を防ぎますから、残りの皆さんはミライ艦長救出に行ってください。」
それはこの状況下では、一番よい作戦に思えた。
確かにRブロックとSブロックを繋ぐこの通路は細い一本道だ。ここで、迎撃すればジオン兵は中々近づけたものではない。
ハリーはロランの素早い判断力に感心した。
だが、同時にある事に気がついた。それは致命的だ。だが、彼はあえて無視した。
「・・・そうだな。それが、いい。ミライ艦長を奪取すればジオン兵は動揺する。
こちらにまた寝返るものも出てくるだろう。」
それでは、とハリーがざっと皆を見渡す。
「・・・・それじゃあ、ロラン。君には、ここで敵を食い止めてもらう。
残りの者は私と共にミライ艦長を救出する。いくぞ!」



そう素早くいうと、ハリーは扉をあけてSブロックの中に入っていった。
時間がない。
ミライ救出と、ジオン兵がドックから集まってくるのがどちらが早いかが明暗をわける。
メカニックマンの2人も素早くそれに続いた。
ソシエもその後につづこうとしたが、ロランに引き止められた。
「お嬢さん・・ちょっといいですか?」
392:02/12/09 16:13 ID:???



「なに?」
ソシエは腹ただしげにいった。
また気をつけてください、なんていったら引っ叩いてやろうと思った。
「ちょっと我慢してくださいね?」

そういいながらそっとソシエに近づくと、こつん、と額を合わせた。
まるで熱をはかるときに親が子供にするように。
そしてそっとソシエを抱きしめた。


393:02/12/09 16:16 ID:???


「ちょ、ちょっとロラン!なにするの!」
ソシエは動揺する。
ロランの額は自分より少し熱がある。あたたかい体温を感じた。
「お嬢さん・・よく聞いてくださいね」
彼の瞳にソシエは吸い込まれそうになる。
至近距離で見ると、彼のそのどことなくあどけない顔も男らしくみえる。
華奢だと思っていた身体も、きちんと筋肉がついていることがわかる。
前髪が少し額にかかっている。
ソシエは心臓の鼓動が少し早くなる。
視界にはロランの顔しかみえない。



ふいに世界に2人居ないような感覚に囚われる。無重力感がそれを肯定してくれる。
けれど、もちろんそんなことはない。
ここは宇宙で、あたしたちは艦の中に居る。
ジオンの兵士はきっと直ぐそこまで迫ってきているし、一刻も早くミライを助けなくちゃいけない。
このままだと危険だ。こんなことしてる場合じゃない。
そう知識は伝える。けれど、意識はそんなことを無視している。
このままでいたい、と思っている。
月がみえたらいいのに。
ソシエは何故かそう思う。



394:02/12/09 16:18 ID:???



「ええ・・ねぇ。お嬢さん、僕は思うんですけどね。人類は、きっと眠っているんです。」
「眠っている?」
「地球という揺り篭で眠ってるんです。暖かく柔らな何かが僕らを包み込んでくれています。
だから・・現在の僕らは安心して眠っている。それは惨めで、愚かな行為をしながら眠っている。
戦争がそうです。眠ってるんです。
ですから夢遊病なんですよ。僕らって。」
ロランが喋るたび吐息がソシエにかかる。



彼の声には敵が近づいているという焦燥感はなかった。その声はソシエを安心させる。
ロランの話している意味はわからない。けれど、それでいいと思った。
月がみえたらいい。
もう一度ソシエはそう思う。
そしてそこにいる自分達を思い浮かべる。




395:02/12/09 16:22 ID:???


こんな光景をソシエは想像する。
くっきりとした自分たちの輪郭のシルエットが大地に跡を残し、銀をふくんだ月光に白く照らしだされる。
美しい世界。
そこは地球の何処か暖かい気候の場所で、牧歌的な風景が広がっている。辺りは一面銀色にほのかに光っている。
聞こえてくるのは何処かで清流の水の流れる音だけで、それも微かな音だ。
太陽はなくて、月が支配するそんな世界。
月の光による魂の浄化を感じながら、ロランとそこにいたい。草原に身をゆだねて。
暴力も不条理もなく生命も死もなく、ゆえに哀しみも存在しえない。
月だけが照らし出すその世界で、草原の中、神の吐息のような風を感じながら2人でいたい。
とてもデリケートでガラス細工のような世界。そこにいたい。



もちろんその思考は現実的じゃない。他愛もない空想の世界というのはわかっている。
けれど、あたしはそこにいたい。
この無重力感はもう耐えられそうにない。
そんなことを考えながら、ソシエは急に涙がこみ上げてくるのを感じる。
泣きたい。
それはこの状況ですごく自然な感情の様に思える。
ロランの体温がいけない。
それが自分を弱くしている。


396:02/12/09 16:26 ID:???

「お嬢さん?」
ロランがそんなソシエの反応をみて優しく問い掛ける。
ソシエは反応しない。
ロランはそんなソシエのあたまに手をやると、髪を優しく梳いた。
「もちろんこれは、現実逃避としていっているわけじゃありません。
僕たちはこの艦に乗っていますし、今は一刻の猶予もないのは確かです。眠ってはいません。100パーセント起きてます。
けれど、お嬢さん。これだけは覚えていてください。抽象的なたとえですいませんが、僕らは・・」
そこにロランの声が突然響く。それは不思議なトーンに聞こえる。
目の前の唇がゆっくりと動き、中の赤い舌が見え隠れする。



「僕らは、 月の繭 なんです。」
「月の・・繭・・?」



言葉を反芻する。
そのロランの言葉はソシエの胸に深く浸透していく。まるで水が満ちている井戸に投げ入れた小石のようにゆっくりと。
水の中を泳ぐように動くそれが、井戸の底に達したとき、その言葉が具象的な意味を持ってこの少女の眼前に現れる。


397:02/12/09 16:28 ID:???


月の照らされる地上。その遥か彼方うえに広がる宇宙空間。
そこに浮かび漂っている銀色の繭。
なかには、ロランとソシエが背中を丸めて眠っている。生まれたままの姿でぐっすりと。
けれど性的なイメージをその光景はあたえない。
それは赤ん坊のような微笑ましい印象を受ける。
彼らはその繭の中で守られているが、その銀色の繭もまた守られていることに気付く。
月の光が2人を、太陽の圧倒的な暴力から、繭を守ってくれているのだ。
薄暗いその世界では、月だけが、彼らの味方のように輝いている。
その繭の中で、世界はその円を閉じて完結している。


そんなイメージがソシエの心を揺さぶる。
あたしが・・繭。
いえ・・これは私だけの範疇じゃない・・
これは全ての人のイメージなのだ。それがわかる。
398:02/12/09 16:31 ID:???




そう。君は繭なんだ。
暗闇の世界である宇宙の片隅ににひっそりと蒼く息づき、蝶になる日を待っている繭だ。
宇宙の中でかぼそく光る繭たるその存在。
繭を破るときに君は痛みをこらえなくてはならない。
その時に流される血は、必然的要素を含んでいて、避けることはできない。
胎内から銀色の繭が孵る、陣痛として生み出されるのは嘆きと哀しみ。
けれど、サナギは孵りやがて蝶となる。
流す血が多ければ多いほど美しく。
その羽は赤く無限に命をきらめかす。
命のともし火が、闇に揺らぎながらも宇宙をつつみこむ。
そして、そこに無限の思惟が存在することに君は気付く。



399:02/12/09 16:34 ID:???


それはロランが発した言葉ではない。ロランとソシエは額をくっつけたままだ。
彼の唇は動いていない。けれど、その声は決して幻聴ではない。
ロランはそこで、ゆっくりと額を離した。彼の体温が離れていく。
ソシエは急に身体が欠けたような感覚に襲われた。
欠落感。
影を無理矢理引き剥がされたような無力感も同時に感じる。
彼はゆっくりと微笑む。
「時間取らせてすいません。・・それじゃいってください。どうかお気をつけて」



そういうとロランは話は済んだとばかり、にっこりと微笑んだ。
ソシエはそんなロランに戸惑いながらも、反射的に頷く。
そしてハリーたちを追いかけるべく、すぐにハリーたちの下へ走る。
時間にすれば、僅かだったからハリーたちにはすぐ追いつくだろう。
そう考えながら、ソシエは額に手をやる。
そこはもう冷たく、自分の熱をかすかにその手に感じるだけだった。
ロランはそんな思考の切り替えのはやいソシエの後ろ姿を静かに見送る。
「お気をつけて・・」
そうロランは去っていく少女に呟いた。
400:02/12/09 16:36 ID:???










あの時 私は どうして 気がつかなかったんだろう。

ロランは拳銃を一つしか持っていなかった。
そして予備の弾薬はないのだ。














401:02/12/09 16:38 ID:???











------------------
今回は、ここまでです。それでは。
------------------

402通常の名無しさんの3分の1:02/12/09 16:58 ID:???
1さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
ロランシボーンの予感。
403通常の名無しさんの3倍:02/12/09 16:59 ID:???
またリアルタイムでみてました。
どうもシンクロしてるのか、、おつかれさまです
404通常の名無しさんの3倍:02/12/09 18:33 ID:???
ロランロランロラ〜〜〜〜〜〜ン!!!
405通常の名無しさんの3倍:02/12/09 20:29 ID:???
ロラン・・・・゚・(ノД`)・゚・。 ウワァァァン
406ろうろん:02/12/09 21:45 ID:rGb344qa
やばい・・・このまま行くとロランが・・・
生きて帰ってくるのか、それとも・・・
407通常の名無しさんの3倍:02/12/09 22:47 ID:???
ロォォォォラァァァァ………!!!



(;´Д`)ハァハァ
408kanrinin:02/12/10 00:31 ID:???
ローランローランローラン♪
ローランローランローラン♪

ローハード♪
409通常の名無しさんの3倍:02/12/10 01:32 ID:???
今日の話はくど過ぎて読む気が起きませんですた。
410通常の名無しさんの3倍:02/12/10 01:41 ID:???
omosiroi

1さんって物書きさんですか?
なんにせよ、ウッソ・カテジナ編は面白い内容でした。
ロラン・ソシエの会話も面白い内容でした…。
人は確信できるのか??目先の実現性、利益、好奇心、探究心を
克服し、ニュータイプとして歩めるのか????
411通常の名無しさんの3倍:02/12/10 09:17 ID:???
412kanrinin:02/12/10 18:02 ID:DTdgVnNt
>>376
お褒め頂き、感謝age
413ろうろん:02/12/10 23:36 ID:LA/pWoiC
>>410確かに>>1さんは物書きって思いますね。
これだけおもしろいの見せてくれるから
414通常の名無しさんの3倍:02/12/11 00:29 ID:???
しかも二、三日で一章を書き上げてるし……
>>1さん、貴方はプロですね?
415通常の名無しさんの3倍:02/12/11 01:20 ID:???
>>408
ハイヤー!!ビシッ!!
ってローハイドかよw

ウッソ・カテジナ編もよかったですが
カミーユとフォウのくだりでは泣きました。
悲しいけど二人が結ばれてよかった。。
416:02/12/11 04:27 ID:???
>>403
本気でシンクロしてそうですね。このまま最後までシンクロしたら凄い・・。


>>409
くどくてすいません・・
ロランとソシエの話は抽象的概念の話ばかりでつまんなかったかもしれません、反省。


>>410 >>414
いや、そんな、私は物書きなんて大それたものじゃありませんです(恐縮)
ただの一般人です。
書くのが早いのだけが取り柄です。


>>415
そう言ってもらえると・・
カミーユとフォウの結末に、何かを感じてくだされば私も嬉しいです。
みてくださって感謝です。



ロランが気になるところでお待たせしてスイマセン。
もう少しお待ちください。ちょっと昨日から、カゼ気味なものですので・・。
冷えますよね・・最近。



417通常の名無しさんの3倍:02/12/11 11:54 ID:???
>>1
くどくないですよ。全然。読む気しないとか言っておいて彼はしっかり読んでいるのですから。
それよりもお大事に。私たちは1氏の健康も心配なんですよ^^
( ´∀`)つ旦 アタタカクスルモナー
418通常の名無しさんの3倍:02/12/11 18:36 ID:???
宇宙漂流刑にされたシーマの話もして欲しいな。
たぶん重い話になるだろうけど・・・

保守age
419通常の名無しさんの3倍:02/12/11 19:23 ID:???
狂って「遠い記憶」とか歌いながら酸欠で良い夢見て死んでそう
420通常の名無しさんの3倍:02/12/12 10:08 ID:???
1さんの快復と次回の執筆への祈りを込めてホッシュミ・д・ミホシュ 。
421通常の名無しさんの3倍:02/12/12 16:36 ID:bZwxkfIq
age るぞー!
422:02/12/12 16:37 ID:???
心配してくださって有難うございます。
カゼはまだ治ってないですが(咳が・・・)、少しずつ快方にむかってます。
えと、もう次のはかきあげてるのですが、少し訂正して書き加えるので、おそらく明日には載せられるカナと思います。
11章もあと僅かです。それでは、待って下さっている方に感謝しつつ・・
423通常の名無しさんの3倍:02/12/12 19:49 ID:???
>>1は漏れらの先生みたいだからよ、心配するぜ!
無理しないでくれよな!
424ろうろん:02/12/12 22:43 ID:6b0SEJWf
いやいや>>1さん、
おもしろい話でこっちが感謝してるほどです!!
425。・°°・(≧□≦)・°°・。:02/12/12 23:40 ID:???
剥げしく期待!
426通常の名無しさんの3倍:02/12/13 01:31 ID:???
>>1さん
無理しないでいいよ
漏れはいつまででも待ってるぜ
>>ろうろん
なぁ、sage進行でいこうぜ
最近へばりついてたスレに荒らしっぽいのが来てんだわ
やっぱりここは悪いインターネットなんだからよ
427通常の名無しさんの3倍:02/12/13 01:43 ID:???
うひゃ〜ちょっと見てきたけどグチャグチャだね。
ここはマターリしてるから大丈夫だろうけど俺もsage賛成。
428通常の名無しさんの3倍:02/12/13 02:35 ID:???
良スレとはマターリしているものですよ。
sage賛成です。

429通常の名無しさんの3倍:02/12/13 03:15 ID:???
1さんの回復祈願!!
430通常の名無しさんの3倍:02/12/13 04:15 ID:???
>>419
鈴つけて復活したりしてw
431通常の名無しさんの3倍:02/12/13 12:03 ID:???
>>1回復祈願、昼age
432通常の名無しさんの3倍:02/12/13 19:05 ID:???
>>426
テム活躍スレ?

まあagesageに関わらずここみたいに職人へのマンセーレスばかりのスレは荒らされやすいよなぁ。
ってこういう発言が引き金になるんだけど。
とりあえず折れも作者マンセー。
433ろうろん:02/12/13 20:26 ID:ZlSssSjf
そうですか。
これから少し発言を控えさしてもらいます。
434通常の名無しさんの3倍:02/12/13 20:57 ID:???
>>ろうろん
別に発言するなとは言わないけど、メール欄にsageくらい入れましょう。
せっかくの良スレが荒らされたら嫌でしょ
435426:02/12/13 22:51 ID:???
>>ろうろん
おいおい、漏れは別に叩いてた訳じゃないぞ
sage進行で逝きゃいいだけジャン
お前の発言は1さんの燃料になってると思うぞ
436ろうろん:02/12/13 22:52 ID:???
確かにいやです・・・
気をつけます・・・・・・
437:02/12/13 23:40 ID:???

>>ろうろんさん
どうか遠慮なく書き込んでください。
ろうろんさんのレスをみてると、燃料になりますし。
感想のレス戴けると、それが批判であれ、お褒めの言葉であれホント嬉しくて励みになるのです。


皆様有難うございます。回復、だいぶしました。咳は相変わらず止まりませんけど。
某スレ、私もいま見てきましたけど、哀しいですね・・
私もあのスレ楽しみにしてたのに・・。
sage進行にして下さって本当に感謝です。マターりいきましょう。
さて。
それではお待たせしました。続きです、どうぞご覧下さい。






438通常の名無しさんの3倍:02/12/13 23:43 ID:???
来た!
>>436
気にせず
439:02/12/13 23:43 ID:???




ロランはソシエが去っていくのを見送ると、通路の扉にもたれ掛かって深い溜息をついた。
彼女に伝えたいことは全て伝えたつもりだ。
それをどう受け取るか、はお嬢さんが考えることだろう。



ロランは拳銃の重みを確かめるようにそっと右手で、腰にさしてあるそれを掴む。
その冷たい感触をロランは再確認する。てのひらに吸い付くような感覚を感じる。
ひっくり返してみたり、銃口を覗き込む。中は真っ暗で何もみえない。
ロランは考える。
この引き金を引くだけで、人間はあっという間に死んでしまんだ。
拳銃は、まるで裁判官の持つハンマーのような断定性をもっている。
それを使うのは、あまり気持ちのいいものではない。
けれど、自分が生きるためには使わざるを得ない。



そういうのって僕のエゴなのかな、ロランは考える。
そんな事をいったら全てが全てエゴでかたずけられてしまうけれど。
僕の思いも。みんなの願いも。



440:02/12/13 23:47 ID:???


エゴというのは絶対悪ではない。
けれど、それに気付くにはロランは若すぎる。


ロランはそこで軽く咳き込んだ。
喉に手を当てる。熱は少しずつ悪化しているようだ。
それにまだ寒い。
ノーマルスーツがあれば大分違うんだけどな・・・そう思う。
監禁されていた僕らにそんな余裕があるわけはなかった。
現在、ロランは淡い薄手のロングシャツとその下にTシャツ、それに継ぎはぎをした紺のズボンといった格好である。
出発前に、ソシエお嬢さんに「新しいズボン買いなさいよ!お給金なににつかってるの?」と嫌味いわれたけど。
この継ぎをあてたズボンは、僕の思い出がつまっているから捨てられない。
それにキチンと洗濯しているから汚れていない。


ロランは冷静に現在の状況を考える。
ジオン兵はきっとノーマルスーツ着用しているはずだ。銃も自動小銃など軍用のものだろう。
しかも一人や、2人ではない。いくら人数が少ないといってもまだ20人以上いるはずだ。
これはどう考えても分が悪かった。
常識で考えて、勝ち目があるはずがない。
だけど、ここの一本道ということを利用すれば、なんとか1,2分は時間を稼げるはずだ。
倒す必要はない。時間を稼ぐ。
それで充分だった。今は一分一秒でも長く、彼等を食い止める必要がある。それだけ希望も強くなる。
ロランは拳銃が小刻みに震えているのに気が付く。
いや、それは自分の手が微かに震えているのだ。



441:02/12/13 23:51 ID:???


僕は怖がっている。
死ぬことを。僕はイメージしている。
それは海に流れ出る激流の渦のようなものだ。
激しく渦巻いているそれは落ちてきたものを決して浮かび上がらせたりはしない。
その渦は貪欲に生命を飲み込み、意識は消失してしまうだろう。
意識の喪失。
その恐怖に足が竦む。気が付くと僕は膝までもう水に浸かっている。
這い上がろうとしても足は動かない。





そこまで考えたとき頭痛がまた少年を襲った。思わずロランはうずくまる。
今度は今までと違い、頭が割れそうなほどの痛みだ。痛みで、生理的な涙が出る。
まるで自分の中で誰かが暴れまわっているような不条理的な痛みにロランはうめいた。
そしてロランは声を聞く。男の声でも、女の声でもない。
え・・怖く・・ない・・・?
その囁きは、ロランの全身を一気に駆け抜ける。




442:02/12/13 23:55 ID:???



頭痛はまた波のように去っていった。
けれど動悸はおさまらない。ロランの心臓は激しく鐘をうっている。



落ち着いて深呼吸する。
息を吸って、吐く。また吸って、ゆっくりと吐く。身体の奥の恐怖と一緒に。
それを何度か繰り返す。その息遣いの中に生命の一片を知覚する。
心臓の鼓動はゆっくりと収まる。手の震えも収まってくる。
ロランはまた平静を取り戻す。






443:02/12/13 23:58 ID:???


その時お腹がかすかに鳴った。
ロランは、その音で、自分がお腹がすいていることに気が付いた。
ロランはそんな自分に少し驚いた。僕は、この状況で食欲を感じることができる。
それが彼を嬉しくさせた。
まだ人間的な感覚がしっかり残っていることが嬉しかったのだ。
僕の身体はまだ生きたがっている。
けれど、もちろん食べる物はないしそんな余裕もない。
だけど想像することはできる。
ロランは地球での昔の、なにげない日常を思い浮かべる。



キースの作ったパンが食べたいと思う。
熱々の焼きたてパンにバターをたっぷり塗って、かぶりつく。
甘く香ばしい焼きたてパンの独特の匂いが鼻腔をくすぐる。
もちろんハチミツをかけてもおいしいだろう。なにもつけずに食べてもおいしいけれど。
そしてそれを口の中にほう張りながら、新鮮な冷たいミルクを飲むんだ。
一杯目はいっきに、二杯目は自然の風味を楽しみながらゆっくりと。
あとクリームパンもいいな。甘いのが、好きなんだ。
もちろんお嬢さん達のために何個か包んでもらう。
そして食べ終わった後はキースと昔話をして笑って、僕は運転手で・・・



そこまで考えたとき、もう一度ぐぅ、とお腹が鳴った。
ロランは、可笑しかった。

444:02/12/14 00:02 ID:???


そんなとりとめもないことを考えながら、Sブロックの扉にもたれかかっている。
背中に感じる冷たい金属の感触が、ロランを現実に繋ぎとめる。



頭痛は治まった。
これは風邪の所為の頭痛とは種類が違うとロランは思う。
けど、あの痛みが何か大事なことを自分に伝えている。そんな気がする。
確かに何かをロランはきいた。
けれどそれが何かはわからない。
その声はあまりにか細く、小さくてどれだけ集中しても聞くことができない。
ロランは諦めて、20メートルはあるであろう細長い通路を眺める。
あの向こう側の扉が開くのを待つ。
もう時間からいっても、はいってくるはずだ。拳銃をもっていなくちゃ・・
そうロランが考え、ロランが腰の拳銃を再び手にしたときだった。
Rブロックのドアが、スッと開きジオン兵の姿が見えた。

445:02/12/14 00:04 ID:???



素早くロランは持っていた拳銃を撃ち放った。
拳銃から確かな振動が伝わり、音が響く。
それは狭窄的な視野を持った政治家のような断定感をやはり、ロランに与えた。
この感覚はどうあがいても好きになれそうにないと思う。
ジオン兵達が慌てて通路の影に隠れる。待ち伏せに気が付いたらしい。



ロランは叫ぶ。
「今のは警告です!ここは通させません!どうか退いてください!」
そう呼びかけた。
けれど、その声はなんだか誰にも届かないように思えた。
「僕らはミライ艦長を助けるんです!」
そう声を張って、もう一度、呼び掛ける。
その声に、向こうにいるジオン兵の何人かが微かに動揺したかにみえた。
けれど、それはやはり一瞬だ。


446:02/12/14 00:07 ID:???


チュン!
ジオン兵が撃った弾丸がロランの頬をかすめ、そこに一筋の傷を残す。褐色の肌に血が少しにじんだ。
ロランは通路の出っ張りを盾にして、弾丸をやり過ごす。
彼らは、一瞬迷ったが、やはりジオンにいたほうが安心だと判断したのだろう。弾丸がその返事というわけだ。

「こんな事では・・いつまでたっても僕らは目覚めませんよ!」
やるせなさで、ロランの目から涙が零れ落ちる。もちろんこんなに簡単に説得が上手くいくとは思わない。
けれど・・けれど・・


無性に哀しかった。
人とは、お互いにこれほど分かり合えないものなのだろうか。
けれど、ロラン・セアックは思う。
けれどそれが不完全な人間の現れなんだろうと思う。
不安定で、脆くて、おろかしい。
けれど、あたたかくて、いとおしくて、しかたがない。そんな存在。
月がそんな風に思って僕らを守ってくれているのをロランは認識できる。
もちろん現実として月が庇ってくれるわけではない。だけど。
それは象徴として確かに、僕らを、繭を保護している。
太陽から、その熱量から、残酷なまでの激しい光から。




銃撃戦はこうしてこの通路で、唐突に始まった。
そしてこの唐突に起きた銃撃戦は、やはり唐突に終わることになる。


447:02/12/14 00:10 ID:???











「シーマ・・仇は討ってやるからな・・」
スレッガーは、一人そんな思いを胸にブリッジへと向かっていた。
もちろん、彼女を処刑したギレンに復讐するためだ。
そのために彼はかつての戦友であるミライ奪還には加わらなかった。
それはハリー達にまかしておけばいい。俺にはオレのすることがある。
「俺はあいにく人の女を助けるよりは、自分の女のために動きたいんでね」
誰に説明するわけでもなく、スレッガーは呟いた。
リフトグリップを持つ手に力が入った。
気が付くと曲がり角に差し掛かっていた。
スレッガーはレールが途切れている2,3メートル前のところで減速する。
身体の慣性運動を殺しつつも方向のベクトルを乱さないで、次のグリップを掴んだ。

448:02/12/14 00:13 ID:???




それにしても・・どうして俺を一緒に処刑しなかったんだ?
再び次のグリップで身体を水平に移動させながらスレッガーは考える。
俺もシーマの計画の一員になる予定だったし、尋問されたとき素直にそう答えた。
だけど、宇宙漂流で処刑されたのはシーマだけだった。何故彼女だけなんだ?
そこにギレンのなにかしらの作為を感じるのだ。
もっとも考えても、あんな独裁的思考をもった人間の思考などわからないだろうが。
わかりたくもないがな、スレッガーは吐き捨てた。
天井をみる。仕官部屋と同じ様にやはり無機質でなんの印象もあたえないつくりだ。
けれど、スレッガーは天井が少しづつ有機的になってきていると感じた。
命を吸っている・・・?
いや、きのせいだよな・・
スレッガーはそう頭を振った。どうやら思ったよりナーバスになっているらしい。



449:02/12/14 00:16 ID:???


そんなことを考えているうちにスレッガーはブリッジについた。
誰にも会わなかった。こんなことは普通ありえない。
これはやはり艦内の統率が取れていないのが原因であろう、とスレッガーは思った。
それとも・・・これは罠か?


慎重に中を覗き込む。
幸いジオン兵の大部分は、まだドックの方にいるらしくここにはオペレーターが一人とランバラルしかいない。
となるとドックで兵を指揮しているのはスタンバ・ハロイか?それなら兵の鈍さも納得がいく。
ランバラルはモニターをみてなにか考えている。こちらにはまったく気がついていない。
彼らもまさかブリッジに敵がくるとは思ってないらしい。迂闊である。
ギレンがいない・・?
スレッガーはブリッジの中をざっと確認すると、その点に疑問に思った。
どうしていないんだ?
こんな反乱が起きているのにギレンがランバラルに指揮権を委ねているというのか?何故?



ランバラルが艦内マイクにさけんだ。
「総員に告ぐ!捕虜はSブロックに向かっているものと思われる。ミライ奪取が目的だ!
至急Sブロックに向かい、連邦の残党兵を始末せよ!」
気付かれたか・・スレッガーは舌打ちをして、ハリーたちを思った。
だが、ランバラルは、こちらには依然気がついていない。チャンスだ。
スレッガーはブリッジに踊り出た。

450:02/12/14 00:21 ID:???



スレッガーはブリッジに侵入するや否や、素早く拳銃を一発撃つ。
それは、ランバラルの命令を伝達していたオペレーターの背中を、正確に撃ちぬいた。
ランバラルがオペレーターをみて、一瞬目を見開き、その後振り返りスレッガーの姿を確認する。
彼は、既に腰から拳銃を抜いている。この辺の動きは流石に百戦錬磨なだけはあった。

451:02/12/14 00:23 ID:???


ランバラルはスレッガーがオペレーターを撃った時に己の迂闊さを恥じた。
こんなところまで敵の接近を許すとは!
無様だ、彼は思った。
長い戦歴の中で、ここまで自分が失態を犯したことがあっただろうか?
蒼い巨星といわれたころからもうかなりの時が過ぎている。
自分の戦場の勘というのは最早、大部分が損なわれていることを自覚した。
(蒼い巨星も地におちたもんだ・・・。)
そう呟くと、自嘲気味に笑った。実戦から離れている時間が長すぎたのだろう。
戦士としての精神は損なわれてなくとも、鋭敏な感覚はもはや自分にはないことを彼は悟った。
それは軍人にとって命取りになる。
452通常の名無しさんの3倍:02/12/14 00:23 ID:???
 
453:02/12/14 00:28 ID:???

スレッガーとランバラルは2人とも硬直した状態にはいった。
両者とも拳銃を相手の胸に照準をつけて、向かい合う。近い。
この距離では先に引き金に指をかけたほうが勝ちだ。かわせない。
スレッガーが口を開く。
「・・ギレンはどこか教えてくれれば、命は助けてやるぜぇ?」
あんた自身は中々の男だから殺すには惜しい、スレッガーは付け加えてそういった。
スレッガーは、ランバラルが自分達捕虜に好感を持っていることに気付いていた。
でなければ交渉があんなに開かれることはない。ギレンの性格からいって。
ランバラルが仲介したのだろう。それは容易に推察できた。
だから最初に彼を撃たなかったのだ。
スレッガーの標的はあくまでギレンである。



奴を探し出して、その何もかも悟ったような冷徹な目を恐怖に震わせてやる。
シーマが味わった以上の恐怖を与えてやる。
そして何故自分は処刑しなかったのか聞く必要もある。
スレッガーはそのためにこんな危険を冒したのだ。

454:02/12/14 00:34 ID:???



「・・ハハ、それはありがたいが自分はジオン公国の軍人だ。そして閣下に忠誠を誓っている。」
ランバラルがそう答えた。
そこには確固たる意思が込められていた。
「そうか・・。あんたならそういうと思ったよ。」
スレッガーが溜息交じりに、そういった。


「仕方ねえな。しらみつぶしに探すとするよ・・。」
その言葉が文字通り引き金となった。
2人は同時に動いた。同時に引き金を引き、刹那の瞬間にそれぞれの愛しい女性を思う。
ランバラルはハモンを、スレッガーはシーマを。
それはまさしく刹那だ。
だが、そのコンマの世界にランバラルはハモンと自分の間の子供が見えた気がした・・あれは・・あの・・少年?
違う!子供はいない!じゃあなんだ?あれは願望とでもいうのか!
それは・・・・・


意識がぶつかりあい、弾けた。


455:02/12/14 00:39 ID:???











ギレンは笑っていた。彼がこんなに愉快げに笑う姿などみたものは誰もいないだろう。
この場に誰かがいたら、奇妙におもうに違いない。彼はそんな風に自分の感情をだすことはないのだ。
しかし、彼がいる場所も、彼が笑うのと同じく奇妙であった。
なにせ部屋全体が灰色に塗り潰された部屋に彼はいた。
それはシルバーというよりは、どんよりとした陰鬱な灰色だ。



この部屋は何もかも閉鎖されている印象を与える。
閉塞感・・圧迫感をまるで部屋中に具現化して敷きつめているようだ。息苦しい。
壁の一面にはめ込まれた巨大ディスプレイが、何かのデータをはじき出している。
それ以外には何もない。暗いその部屋でディスプレーだけが明かりをはなっている。
いや、ほのかに部屋全体が光りを放っている。ごく微量だが、それでも感知できる光だ。
ここが、艦長室ではないのは確かだ。
ではいったいどこだ?


456:02/12/14 00:48 ID:???



その巨大モニターは艦内の様々な様子を映し出していた。
ドックや、ブリッジ、デッキにミーティングルーム・・。
その映像の中には、ロラン・セアックの姿が映っているものもある。






細長い通路がモニターに映っている。
ロランは、ぐったりと糸が切れたように床に腰をおろして、ドアにもたれ掛かっている。
彼がもたれ掛かっているドアの上の方には無数の弾痕があり、血液がべっとりと付着している。
ロランの白いシャツには、左胸の付近に真っ赤な染みが決定的に滲み出ていた。
もとが白いぶん、シャツは異質的な赤さを何重にも強調している。
彼はピクリとも動かない。俯いている彼のその瞼は、しっかりと閉じられている。
拳銃は彼の手のひらからこぼれて落ちている。




ロランの顔は傷がなくて、まるで遊びつかれて眠っている子供のように見えた。
ただ呼吸をしていないだけだ。






457:02/12/14 00:51 ID:???


更にその上にはブリッジの様子も映し出されている。
そこには三人の人間が倒れていた。彼らもまた微動だに動かない。
死んでいる。
その光景は、よくできた映画のワンシーンのような完結性をもっていた。
けれどこれは映画ではない。現実に起きている光景なのだ。
ただモニター越しで見ると、その現実性は乖離してしまっている。
地球の官僚が、真面目に宇宙に住む人類のことを考えるのと同じぐらいにそれは非現実的であった。




またその隣の映像には士官室の映像だ。
室内は暗く、ほのかにベッドサイドだけが明かりを燈していた。
少年が、床に横たわっている一人の女性に口づけている様がそこでは照らし出されていた。
暗闇の中で唯一揺らめくように浮かぶそれは、何か神聖な儀式のように思える。
まるで引き裂かれているその女性の胎内から、その少年が生まれたような。
けれど総体的にこの空間には、哀しみが質量をもって深く沈みこんでいる。
少年はそっと唇を離した。そして唇についた彼女の血を、舌を出して舐める。
そして少年は立ち上がると、ベッドの方に消えていった。
モニターは死んでしまった女性をずっと映し出している。






ギレンはそれらの映像を、中央に設置された椅子に座って満足そうに眺めていた。
物事は彼の思惑どうりに進行している。
458:02/12/14 00:53 ID:???









背後で誰かがこの部屋にはいってきた気配がした。
こちらに歩いてくる音がする。
ギレンはそれが誰かはわかっていた。だから振り向かなかった。
その人物はギレンの座っている椅子の真後ろまでくると、ピタッと立ち止まる。
モニターに目を見据えたまま、ギレンは背後にいる人物に愉快そうに語りかける。



「遅かったな・・・ニュータイプ?」
アムロ・レイは無言でギレンの後頭部に拳銃を突きつけた。












459:02/12/14 00:55 ID:???



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回で11章は終わります。それでは・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
460通常の名無しさんの3倍:02/12/14 01:01 ID:???
>>1さん乙!
あ〜、もう面白いなあ! なんでこんなに巧いんですかぁ?
461。・°°・(≧□≦)・°°・。:02/12/14 01:02 ID:???
なんとリアルタイム!
1さん乙。そして
み ん な 死 ん で い く の ね ・ ・ ・ 。
462通常の名無しさんの3倍:02/12/14 01:05 ID:???
乙〜
463ほげら〜:02/12/14 01:07 ID:???
初めてのリアルタイム。
なんかやっとアムロとギレンの時間がきたなぁ。
1さん、サンクス。
名古屋は死ぬほどさむいです。
といっても当節、沖縄以外では大抵全国どこでも寒いんだけどさ。
んじゃ、身体に気ぃつけてくださいよぉ。おやすみなさい。
464kanrinin:02/12/14 01:12 ID:???
スレッガーが素直にかっこいい!
と思ったけど今はsageるしかない。
今日は一人〜♪

465通常の名無しさんの3倍:02/12/14 01:27 ID:???
これがガルマといっしょにボケ役に回っていたギレンかw
466通常の名無しさんの3分の1:02/12/14 01:40 ID:???
スレッガーとランバ・ラル、相打ちか・・・・・・。ロランも死んだ・・・・・・。
そして、アムロとギレンの対決。

1さん、あなたは本当に上手い! 一体何者なのかと思うくらい。
次回も楽しみにしています。
467通常の名無しさんの3倍:02/12/14 02:00 ID:???
ロラン死んでしまったのは悲しい・・・。
ランバ・ラルはダイクン派ではなかったの・・・・。
等思いながらもめちゃ面白いですよ・・・。
お疲れ様です。
468409:02/12/14 03:16 ID:???
1さん、お疲れ様です!
前回の私の暴言をお許しください。
今回の話はとても楽しく読むことが出来ました。
数々の伏線がどのように収束していくのかこれからがとても楽しみです。
11章最終話楽しみに待ってます!
469通常の名無しさんの3倍:02/12/14 04:26 ID:???
>「遅かったな・・・ニュータイプ?」
>アムロ・レイは無言でギレンの後頭部に拳銃を突きつけた。


むちゃくちゃかっこいいんですけども。
あーしかしほんといいトコで止めるなあ(w

原作でアムロとギレンが対峙することってなかったよね?
470。・°°・(≧□≦)・°°・。:02/12/14 05:51 ID:???
そしていなくなったシャアは次に出てくるのか?
奴は一体何をやっているのやら・・・・・


気のせいか禿げの予感が・・・・・いや、気のせいだろう・・。
471通常の名無しさんの3倍:02/12/14 06:58 ID:???

た ま ら ん !
472通常の名無しさんの3倍:02/12/14 09:26 ID:???
うへぇ!面白すぎる!たまらん!
473ろうろん:02/12/14 10:49 ID:???
嗚呼、ロランもハリーもやられてしまった・・・・
そういえば最初の話では写真にはアムロ1人しか
写ってなかったからギレン死んでしまうのか・・・・?
このあとの展開に凄く期待してます、>>1さん
474通常の名無しさんの3倍:02/12/14 12:27 ID:???
>>473
>その報告書には2枚の写真が貼り付けられている。
>一枚目は報告書の最初のページに貼り付けてあり、二枚目は最後のページに貼り付けてある。
>一枚目のは・・・どこかのドッグの上だと推測される場所に、およそ二十人の人間が映っている。
>みな屈託なく笑っている。が、どこかに違和感を感じさせる・・そんな写真だ。
>最後のページにある二枚目の写真には・・一人しかうつっていない。
>その人物は笑っているが、どこか哀しげな印象を見る人に与える。

迂闊なり。特定はされてないぞ。
475:02/12/14 23:23 ID:???
>>463
有難うございます。あったかい沖縄にほんと住みたいです。
名古屋も寒いんですね・・春が待ち遠しいです。

>>467さん
>ランバ・ラルはダイクン派ではなかったの・・・・。
感想有難うございます。えーと、これは僕の説明不足でした。軽く補足です。。

派閥というのは、この新生ジオン公国にはありませんでした。
何故なら、初めからギレンによって再生した、新生ジオン公国ではダイクン派はまず存在できないからです。
仮に存在できても、新生ジオン公国という組織そのものが、まだ脆弱である以上、派閥間の対立は、ランバラルにとっても好ましくなかったのです。
かといってダンクン派でありつづけるためにジオンを抜けるという選択肢は、一年戦争時、ジオンのために死んでいった部下を考えるとランバラルにはできない行為でした。
ゆえに彼は、とりあえず派閥は抜きにして、ジオン公国のために尽くすという考えに至ったのです。
ですからランバラルはギレンというよりは・・ジオン公国それ自体に忠誠を誓っていた、というわけです。
そして一度忠誠を誓ったからには裏切らないのがランバラルという軍人であるから、スレッガーの提案をあんな風に断ったのです。

と、まあ、長いですが・・(汗)
ランバラルにはこういう裏事情があったと思ってくださると嬉しいです。
もっと11章の中で詳しく説明できればよかったのですが、どうもすいません。

>>468
暴言なんかじゃありませんよ?許すだなんてとんでもない。あの感想は、私にとっていい勉強になりました。本当に。
けど、今度はお褒めの言葉有難うございます(笑)。
>>469
確かないです。
ギレンは指導者の立場ですから、あの当時、一兵士であるアムロには対峙してません。
いいとこで止めてすいません(笑)。もう少しお待ちください。

皆様、沢山のレス有難うございます。嬉しいです。
ほんと励みになっています。こんなに沢山レスいただけて・・・
まだ次のは時間がかかりますが、マターりお待ちくださると助かります。それでは・・
476kanrinin:02/12/15 00:31 ID:Bi+1zuYT
本当にマズイ気がするのでage
477褐色のおじさん:02/12/15 00:39 ID:jvdUlVoS
マターリ待っているぞ
478通常の名無しさんの3分の1:02/12/15 00:44 ID:???
>>477
DAT落ち近かった>>476は兎も角、荒らし大量発生中の現在、ageるのは危険と思われ。
479通常の名無しさんの3倍:02/12/15 17:43 ID:???
テスト
480kanrinin:02/12/15 22:47 ID:1K3rDMVp
>>415
寒いギャグにつっこみ感謝age。
っていうか、12時間楽勝で過ぎたので。
481通常の名無しさんの3倍:02/12/15 22:52 ID:???
まだ、シャア板の総スレッド数が600近くないので保守しなくてもいいよ
600越したら圧縮始まるから、そんときになったらまた保守あげおながい
482通常の名無しさんの3倍:02/12/16 16:18 ID:???
こんにちは
ありがとう
さよなら
またあいましょう
483通常の名無しさんの3倍:02/12/16 22:08 ID:???
まったりと待ってみる
484ろうろん:02/12/17 00:02 ID:???
次の話まったり待ってます
485通常の名無しさんの3倍:02/12/17 01:42 ID:???
>>478
3/1さんハケーン 某スレの続きは書かないんですか?
486467:02/12/17 06:01 ID:???
くわしい解説ありがとうです。
487通常の名無しさんの3倍:02/12/17 12:35 ID:???
保守age
488通常の名無しさんの3倍:02/12/18 12:40 ID:???
下がり過ぎなので保全
489通常の名無しさんの3倍:02/12/18 18:44 ID:???
期待age
490通常の名無しさんの3倍:02/12/19 09:39 ID:???
保全
491通常の名無しさんの3倍:02/12/19 13:10 ID:???
>467
>>1さんの説明でも納得はいくが
それ以前にラルがダイクン派だって証拠はないよ
親父がダイクンの側近だったというだけ
セイラを「姫」と呼んだあたりは過去を引きずってる感じも
あるが
492通常の名無しさんの3倍:02/12/19 22:34 ID:???
保全
493通常の名無しさんの3倍:02/12/20 11:45 ID:???
保全age

ってもう1週間になるぞい
494ろうろん:02/12/20 13:11 ID:???
まあまあ>>493、マターリ待ちましょう
495通常の名無しさんの3倍:02/12/20 18:30 ID:ZDyRySHa

どうも皆様お久しぶりです。
一週間もお待たせして申し訳ありません。年末のせいか、色々立てこんでまして・・
えーと、次回は土曜か日曜にはアップしますのでどうかマターリお待ちくださいませ。
かなり長くなってしまいましたので時間がかかりまくってしまいました。


ところでかちゅーしゃで書き込みができなくなりましてちょっと困ってます。
クッキー確認とかでて・・おかしいなぁ。今までこんなことでなかったのに。
まぁ、どうでもいいことですけど。
それでは保守してくださった人に感謝しつつ。
496:02/12/20 18:35 ID:???
あ・・
やっぱり普通に書き込むの久しぶりなんで、つい、sage入れ忘れてしまいました・・
うーん、かちゅーしゃの有り難さが身に染みます。
497通常の名無しさんの3倍:02/12/20 18:37 ID:???
kage更新しました?
それと初めて板に書き込むときはクッキー確認とか出るけど
もういちど書き込み押したら書けますよ
498:02/12/20 19:04 ID:???
>>497さん

あ、本当だ・・(汗)
kageの更新全然してなかったからだったんですね・・確かに10月からしてませんでした。
更新したら、あっさりと書き込めるようになりました。どうも有難うございます。
これで心置きなくアップできます。よかった・・。
土、日のいずれかに11章最後までを。もう少しです。それでは・・。
499通常の名無しさんの3倍:02/12/20 20:48 ID:???
                ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                ( ・∀・)< 年賀状書きながら待ってるからな!
             _φ___⊂)__ \_______________
           /旦/三/ /|
        | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |
        |愛媛みかん|/
500通常の名無しさんの3倍:02/12/20 22:08 ID:???
楽しみにしてます500
501通常の名無しさんの3倍:02/12/21 09:02 ID:DgK9IcbC
保守ageしときます
502通常の名無しさんの3倍:02/12/21 18:04 ID:???
10時間くらいたったのでage
503通常の名無しさんの3倍:02/12/21 18:04 ID:3EHLSuws
agetenaisi///
504kanrinin:02/12/22 00:23 ID:???
そして、俺の出番は無かった(笑)
505通常の名無しさんの3倍:02/12/22 15:51 ID:???
hosyu
506通常の名無しさんの3倍:02/12/22 19:55 ID:???
ゆっくり待とう!
507通常の名無しさんの3倍:02/12/22 21:37 ID:???
そうしよう
508:02/12/23 01:31 ID:???








「遅かったな・・・ニュータイプ?」






「・・・・・・ギレン・ザビ・・一つききたい事がある」
灰色の薄暗い空間の中に、アムロの押し殺したような声が響きわたった。








509:02/12/23 01:33 ID:???





ギレンはアムロが拳銃を突きつけているのに一向に気にした様子は無い。
彼、ギレンの首は後ろから見ると、ひどく太い。


「何をそう焦る必要がある?ニュータイプ?もう貴様は遅かったのだ。」
ギレンは振り向きもしないでそう断定する。
「・・・ニュータイプなんて言葉で形容しなくても、僕にはアムロ・レイという名がある。」
アムロは苛立った。図星なのだ。
確かにアムロは焦っている。だけど、それはギレンにではない。自分自身にだ。
どうしてもっと早く知覚できなかったんだ?僕は自惚れていたのか?自分の能力に。
ギレンの思惟を、位置を把握できなかった。
アムロはギレンに拳銃を向けたまま、モニターをみる。そこにある死の残像を読み取る。
僕の所為だ。あの時・・僕が・・シャアを・・
アムロは呟く。
こんな惨劇は起こらなかった、と。少なくとも彼らは死なずに済んだのだと。



510:02/12/23 01:35 ID:???




ギレンは、それを聞き逃さなかった。その神経質そうな細い眉をひそめる。
「何を悔やんでいる?なんの存在価値の無いクズが何人死のうが関係ないだろう?」
これは彼の本心である。挑発とかいうものではない。彼は純粋にそう思っているのだ。
「もっとも、地球連邦のような、地球にしがみ付き汚染するだけで、優れた人間の存在を冒涜する連中などクズ以下だが。
それに悔やむ必要はない。これで、私の目的は叶う。奴らは死んでようやく私の役に立つのだ。」
アムロは何も喋らない。
ギレンはそんなことはまったく関係なしに喋りつづける。


「ニュータイプ・・貴様もとっくに気が付いていたのだろう?今更、後悔などするのは止めるんだな。」
ギレンは喉の奥をクックと鳴らして笑った。
「それにしてもこの艦にこんな秘密があったとはな。私もいささか驚いたぞ。そして感嘆した、その発想力にな。
まさかこんなことを現実に考えるものが連邦に存在していたというのは信じられないほどだ。」
その声は2人を取り巻く空間を震えさせ、灰色に歪む世界を更に極大化させた。
「常識ではあり得ぬよ・・私もカツのもっていたデータがなければ信じられなかっただろうな。」


511:02/12/23 01:38 ID:???



*****************************

私、ミライ・ノアが目覚めたとき、室内は暗闇に包まれていた。
まるで暗黒のカーテンで覆われているような錯覚を覚える。
ぼんやりとした頭で私は考える。
「真っ暗・・・?」。
どうして非常灯がついていない?


その瞬間、眠気が一気に覚めた。


私の周りに柔らかな暗闇が漂っている。
いや、真っ暗ではない。
先程は気が動転して気が付かなかったが、よくみると微かに周りが発光している。
発光?そう、発光しているのだ。壁が。
その光は、まるで深夜の月の様に、ほのかにひっそりと淡い銀色の明かりを燈している。
この部屋の四方の壁全てがぼんやりと浮き上がって空間を歪ませている。
蛍の様にそれは、発光している。
おかげで室内灯がついてなくとも、なんとか全体の様子はわかる。蜃気楼のようにおぼろげだけれど。
私はこの部屋全体に何処か異常がないか、身体を強張らせたまま探り当てようとする。
どうやら・・・何も変わったところはない。
少なくともざっと見た感じでは、この部屋は私が眠りにつく前となんら変わらない。
狭い部屋・・監禁室なのでそれはすぐにわかる。
誰かがこの部屋にいるという気配もない。
私を囲んでいる空気は相変わらず監禁室特有の硬質な世界を構築している。


512:02/12/23 01:42 ID:???




それなのに、まるで異世界のような幻想的な現象が目の前に起こっている。
私は光の蛍が舞い散る部屋に囚われている。まるでよくできた童話の一ページの様な。
私は混乱する。これは夢?それとも幻?
右手で頬を少しつねってみた。
それでも、もちろん目覚めないし、依然として壁はほのかに光っている。これは現実だ。
私を取り囲む壁は現実に発光しているし、そのおかげで私は真夜中の月に照らされた子供のように困惑している。





何が起こっているの・・?
突然、嫌な予感が鋭く背中を突き抜けて、私は身震いをする。
じっとりと汗をかく。
直感だ。これは昔感じていた感覚だ。いや、感性ともいえる。
一年戦争時、頻繁に感じていたけれで、戦争の終結とともに次第に薄れていったあの感性。
それが突然私に戻ってきたのだ。
だけど、嬉しくはない。
ただ、戻ってきたと認識できるだけだ。
だってブライトもハサウェイも死んでしまった今頃にそんな能力がなんの役にたつ?





513通常の名無しさんの3倍:02/12/23 01:43 ID:???
 
514:02/12/23 01:44 ID:???






そんなことを考えながら、もう一度部屋全体を眺める。
別世界のような情景は私をここに繋ぎとめようとしているかの如く魅力的であった。
ずっと眺めていたいと思う。
だけど、じっとこのままここにいるわけにもいかないだろう。何かが起きたに違いないのだから。
私は起き上がると、足元の感触をそっと確かめるように床に下ろした。床にも粒子は内在されている。
まるで月の上にたったような気分だ。光が淡くて、か細いからそう感じるのだろう。
足元に確かな感触を感じる。どうやら普通に歩けるようだ。
私は慎重に立ち上がる。



*************************************



515:02/12/23 01:48 ID:???




「艦の秘密・・なんのことだ?」
「フ・・・とぼけるか・・まぁいい。」
アムロは心の中でかすかに舌打ちした。
やはりギレンは把握している。
だが、一体どこまで把握している?それを確認しなければならない。




ギレンは朗々といった。
「サイド国家論。地球聖域論。ジオン・ダイクンが提唱したこの二つの思想は宇宙移民の心を激しくうった。」
彼の声には張りがあり、勢いがあり、また確信に満ちていてとても力強かった。
これは優れた指導者だけが持ち得る類の喉だ。世の中にはこういう声を持つものはそういない。
人を突き動かす何かを有している人物であり、死に向かわせることさえ可能なほどの抗えない強制力を有している。
アムロは黙ってギレンの台詞の続きを待つ。
「彼の思想の根底にあるのは、ニュータイプ論だ。」
そこまでいうと漸くギレンは椅子から立ち上がり、アムロの方に向き直った。





516:02/12/23 01:52 ID:???





「・・・それがどうしたというんだ。所詮、ザビ家のいいようにダイクンは使われた。」
アムロはギレンと視線を合わせず、そういいきった。
ジオン・ダイクン。


ギレンは心外そうな表情をした。もちろんポーズだ。
「惜しむらくは、ジオン・ダイクンは所詮アジテーターだったのだよ。」
そういってギレンは椅子についているコントロール・パネルを操作して、モニターにある映像を映し出す。
モニターには意思の強そうな目をした男が壇上で演説をしている様子が映し出された。
「これがそのプロバガンダのシーンだ」




演説。




517:02/12/23 01:57 ID:???



『人類は生活環境を拡大させる度に認識力を拡大していくという能力を有している!
その認識は、徒歩で移動し得る間で、国家というものを形成せしめたものだ。
無論最初は国家とは呼べない小さな組織だ。集落と呼んでもいい。だが、時はそんな組織を成長させ国家を生んだ!
この時人類は一つの飛躍を迎えたと言ってもよいだろう。
次に産業革命以後、急速に発展した文明により得た、拡大した移動力・・
これが旧時代の人類を新たな世界に導くことになった、容易に人を国家間の移動ができる事実!
結果、人類は国家の認識を超えたグローバルな世界観を獲得した。
そうこの時、人類は地球的視野、展望を獲得したのだ!それは更なる飛躍を人類に与える。
人類は己の欲望と叡智を肥大させ認識力を研鑚させてきたのだ。世界を拡大し、把握し、認知するたびに!
そして現在、宇宙という空間にまで人は翔んだのだ。その圧倒的な空間、暗黒性、虚無感は人を更なる次元へと超越せしめる!』




518:02/12/23 01:59 ID:???

『地球の重力から抗って我等は翔んだのだ!




宇宙!



この引力から離脱した人類を迎える新しき無重力の世界!
だが、この無限とも思える空域において人が本当に存在できるのか?勿論、それは肉体的なことではなく、精神においてだ!
考えてみたまえ。神が何故、人に己の脳細胞を半分以下しか使わせなかったのか?
それはこの宇宙空間において使用すべき部分だからではないか?
そう、これはそのために有史以前から神から人に与えられていたと考えるべきなのだ。来るべき時代のための遺産として!
決して潜在能力などというものではない。これは革新なのだ!人の!魂の!
諸君!目覚めよ!この宇宙という広大無比の世界を生活の媒体とする時、人は時空をも乗り越える力を抱かなければならないのだ!
広大な時空をも一つの認識域として捉え、それによって一つ一つの事象により深い洞察力と優しさを兼ね備える人類へと!


ニュータイプ!
それがニュータイプである!
宇宙の民としてこの先未来永劫生き抜かねばならない我々のあるべき姿なのだ!』
519:02/12/23 02:04 ID:???


******************************



ドアが開いている?
私は、部屋を動いてすぐにそれに気がついた。視界にドアの輪郭がぼんやり浮かんでいる。
いつもは厳重にロックされているはずが、今は半分開いているのだ。ぼんやりと半分開いたそれは何か不吉な印象を与えた。
それはとても不安定で、だけど冥界への扉のごとく一度くぐれば帰れないような錯覚を私に与えた。
扉には当然の様に光の粒子が無数にくっついていて淡い影を作り出していた。
粒子をそっと指で撫でるとそれは微かに震えると、すぐに飛散して消えた。
「あ・・」
その直後、頭が激しく痛み、私はその場でうずくまった。まるでキリで頭をえぐられたような痛みだ。
気が遠くなりそうな程、それは私の中を縦横無尽に蹂躙していった。
私は吐き気を覚えて、口元を抑えたまま、その痛みがどこかに消えるのを待つ。





数分後。
痛みはまた来たときと同様に、突然去っていった。
私は額にこびり付いた汗を袖で拭う。
なにが起きているか知れないが、このままここにいても仕方がない。そう判断した私は扉を開こうと手をかけた。
その時、扉が半開きの理由がわかった。
人間が・・カツが挟まっているのだ。


******************************

520通常の名無しさんの3倍:02/12/23 02:04 ID:???
 
521:02/12/23 02:10 ID:???





「これが・・ジオン・ダイクンの演説?」
アムロがこの若き革新家の姿をみて、そう呟いた。




「そうだ。・・・この演説は確かに何か人を惹きつけるものがあった。彼はまさにカリスマだった。
仏陀やキリストの再来とまでいわれるほどに。宇宙移民者の心を激しく揺さぶったのだ。そして惹きつけた。
民衆はこの思想に扇動された。口々に独立を叫ぶ。
そしてその力がジオン共和国建国の原動力となったのだ。父デギンと私はその為に尽力した。
正直、私はこの当時はニュータイプなどは理想に過ぎないと思っていた。」
ギレンはそこでいったん言葉を区切った。



「それより、私には、現実的である宇宙移民の独立が魅力的であった。可能性からいってな。
今もそれは変わらん。が、今ではニュータイプの存在を信じてもよいのではないかとも考えるようになったのだ。」
そこまでいうとギレンは、再びこちらを振り向く。
彼は、後ろのモニターの光の所為で輪郭だけが、黒く浮かんでいる。
黒く浮かび上がるそれは人間というより何か別の生物にみえた。





522:02/12/23 02:15 ID:???




「ニュータイプ・・お前は今まで何をしてきた?この人類のために・・革新的な能力を有していながら。
なにもしようとせず、ただ連邦政府のいいなりとして動いていた。考えることを放棄していたのではないか?」
それはかつてシャア・アズナブルにも言われたことであった。
アムロは何も答えない。



ギレンは少し遠くを見る表情になった。
「私は、人類は宇宙にもっと翔ぶべきだと思った。
無限といわれる宇宙がたかが200億人程度の我々人類の存在を疎ましく思うほど偏狭ではないと確信するのだ。
人は宇宙にもう少し己の存在を主張できるのではないか?それともそれは自惚れか?
いや、自惚れでは無い。人は確かに主張できるのだ。
ならば我々は、地球にいつまでも囚われるわけにはいかないのではないか?
モグラの様に土中にいるよりは、この宇宙にもっと生活空間を拡大し、全身で存在を示すべきなのだ。
宇宙にはそれだけのキャパシティがある。どうしてそれを使おうとしない?
既に人類はその次元に達しているとは思うだろう?」





523:02/12/23 02:19 ID:???




そこでギレンは更にモニターを切り替える。
2人の眼前には、今度は宇宙が広がった。外部カメラの映像だろう。星が輝いて見える。
アムロはモニターに目をとらわれた。久し振りに見る宇宙は、相変わらず深淵で果てしなく深く広い。
星がよくみえる。
大気が存在しない宇宙では、星をぼかすものは無く、それは透き通った光を放っている。宇宙でしか星はこうくっきりとは見えない。
遠くに煌く星の渦をみているといったい自分が何者なのかわからなくなる時がある。それは酷く頭を混乱させる。
アムロも例外ではない。だから宇宙で、星を眺めるのは好きではない。その感覚は時として死を想像させるからだ。
星というのは地球で見るから神秘的なのだ、とも思う。
宇宙ではそれはありふれた情景の一つとして視認されてしまうし、それは哀しすぎるからだ。
星というのはいつまでも人類の希望であって欲しいと思う。
例えそれが、実際にはただの鉱物であっても。




アムロは宇宙空間に広がる銀河の流れをみながら、それを不気味とも華麗とも思う。
宇宙は確かに胎動し、人類を包括的に包み込んでいる。遥か昔から現在にいたるまで。
ふと、鼓動が聞こえた気がしてアムロは首を振った。
軽い頭痛を覚える。
動悸が激しい、喉が酸素を求めて苦しげに呼吸を搾り出す。宇宙が迫ってくる感覚がする。
・・自分も引っ張られ始めている?まさか!





524:02/12/23 02:24 ID:???






「大量に人類を虐殺し、ニュータイプへの革新の可能性を奪った貴方が人類の未来を謳うなど・・・」
宇宙を視界に捉えながら、アムロはようやく、そう言葉をだす。


「ニュータイプなる存在が正しい人の進化の行く末であるのなら、私個人の斧などからは逃れてくれよう。
 たった一人の人間の手によって阻止される程度の革新ならば、それは革新とは呼べないのではないか?
進化というのはもっと圧倒的に人類を包み込むのでなければならない。
人類総体の脱皮というのはそういう絶対的なものでなければならぬ。私はそう解釈している・・」
ギレンは断定した。




525通常の名無しさんの3倍:02/12/23 02:27 ID:???
 
526:02/12/23 02:27 ID:???




******************************



「カ、カツ・・?」
足元にうずくまるように挟まっているカツを見る。
私は屈み込んでカツを抱き起こす。
薄暗闇でよくわからないが、身体をさわってみる。顔を撫でてみる。
ぬるり、としたものが手についた。べっとりと付着したそれの匂いをかいでみる。
「やっぱり・・・」
血液だ。
となるとカツは・・死んでいるのだろう。
脈をとってみる。
やはりうごいていない。死んでいる。



527:02/12/23 02:33 ID:???



普段の私ならば、ここで動揺して取り乱したかもしれないが、今は何故か落ち着いていた。
冷静だった。非情と思われるほどに淡々と事実を理解する。
少なくともカツとは一年戦争時からよく知っている。そのカツが死んだというのにどうしてこう落ち着いているのだろう?
汗もでないし、心臓は一定のリズムで静かに鼓動している。頭は正常に働いている。
カツが死んだというのに。


おそらくブライトの死が私の感覚を麻痺させてしまったのだろう。
そしてこの幻想的な部屋の中では何が起きても不思議ではないと感じてしまうのだ。
このよくできたファンタジーの世界では、人の死もその中では一つのオブジェの様に思える。
予定調和。現実感の喪失。ワンダーランド。



カツの死体をそのままに、私はその扉から通路に出る。
外がどうなっているか知りたい。




******************************


528:02/12/23 02:40 ID:???


「それに・・・・」
ギレンの声だけが、この部屋に響く。


「人の革新を・・翔ぶのを妨害するだけの下衆は地上に存在する価値はないと私は断ずる。
クズ共に崇高な理想のなにがわかる?大衆は常に愚かで醜く、目先の利益しかみていない。
先導者がいなければ奴等は何もできん。明日のことさえ考えていないだろう。これは誇張ではない。
それほど大衆というのは愚かだ。だれが、彼等を導く。この不安定な世界で。
地球連邦?内部が腐敗しきっているあの屑どもにはそんな能力は無い。
この宇宙に・・・人類の永遠の繁栄をもたらすのが私の目的だ。ジオン帝国を築くといったような馬鹿げたことは考えておらん。
私はヒトラーやアレキサンダーのような旧時代の権力者とは違う。
目的が叶えば私はいつでも隠居をしよう・・」



その声には偽りの色はない。これはギレンの本心なのだ。
よく聞こえわたる彼の声と、鋭くて澄み切った眼光は決してギレンが単なる独裁者ではないことを示している。
たんに権勢欲に凝り固まった俗物ではない。




529通常の名無しさんの3倍:02/12/23 02:44 ID:???
 
530:02/12/23 02:48 ID:???




ギレンはアムロに近づく。
「どうだ?私の・・同志になるというのは・・?」
「・・なに・・?」
「無論、ここにきたということは本当は知っているのだろう?この艦の秘密を?」
「・・」
「どうして知っているのかは知らんが・・この場所を知るのはブライトしかいないと私は思ったが。
まぁ、貴様はニュータイプであるのだから感知できても不思議ではない。
この場所に近づいてきているのをモニターで確認して私は愉快だったぐらいだ。
問題はそこではない。
人が本当にニュータイプへの革新ができるとするのならば、それを邪魔しているのは地球連邦に他ならぬという事だ。
奴らを滅ぼさねば、いつまでも人は愚鈍なままだ。
そして、この艦があれば、時間はかかるにせよ地球連邦を滅ぼすなど容易いという事実だ・・そうだろう?」
確信に満ちた声でギレンはいう。



アムロはこの言葉を聞いて、ようやく彼の把握の程度に気が付いた。
そして、微かに失望した。





531:02/12/23 02:50 ID:???



滅ぼす・・か・・。





やはり彼も独裁者なのだ。オールドタイプ的思考をする。
そこまで気がついたのならばもうひとつ発想を進めればいいのだが、そこにはたどり着かない。
ブライト・ノアと同じ到達点だ。そこでは駄目なのだ。そこは通過点に過ぎないのだから。
もっともそこにたどり着いたのはシャア・アズナブルだけである。
アムロは彼から全てをきいて知っている。この艦の秘密を、全て。





532:02/12/23 02:56 ID:???


**************************************************



通路には更に惨い光景が広がっている。



無論通路も依然として暗い。まるで宇宙の闇にほうりだされたような深い闇が支配している。
淡い光の粒子が辺りをほのかに照らしてなければまるで何も見えなかっただろう。
やはりここでも光の粒子は壁の中に組み込まれているように存在していた。光苔の様に。
おそらく艦内全てがこの光に覆われているのだろう。そんな気がした。





しかしその光の粒子が見えないところ・・・通路の所々に真っ黒な塊がある。
この通路にはまるで水溜りの様に、光の粒子が途切れてて塊が転がっている。
それはそこに何かがあるということを示している。
その暗闇の水溜まり・・それは人であるのは間違いない。
粒子の上に覆い被さっているので微妙な陰翳がそこにはある。
私は息を殺してその塊の一つに接近する。




533:02/12/23 03:02 ID:???



暗いので顔は見えない。この光はあらゆるものを全て霞みの様に照らしているのだ。ぼんやりと。
そこには実態というものが消えて、まるで残像であるかのごとく現実感を喪失させる。



腕をとって握ってみる。脈は無い。ぐったりとした肉体は少しまだ温かい。
"まだそんなに時間はたっていない?"
顔を触ってみる。やはりほのかに温かい。
そこで私はようやく、この男の顔に特徴的なレンズがつけられている事に気付いた。
「ハリー?」
それはハリー・オードだった。
先程のカツと違い、外傷はなさそうだ。だが、死んでいる。
「どうして・・?一体何が?」
ハリーが死んでいる?何が起きたの?
私はあらゆる可能性を考える。毒ガス?いや、違う。それはない。
それじゃあ一体?



その時、通路の少し向こうから、何か音がしているのに気が付いた。


534:02/12/23 03:08 ID:???




私は緊張した。誰かがこの通路にいるのかもしれない。
それがハリーやカツ、更にその他(まだ確認していないけれど)を殺したのかもしれない。
方法はわからないけれど。



私はその場でジッと息を殺して、気配を感知しようとする。
どうやら・・人の声のようだ。人がいる?
少し躊躇したが、私はその声のする方に近づいた。危険かもしれないが、ここにいても何も解決しないのだ。
これは手がかりになるかもしれない。
私はその声のする方へ近づく。
足元の塊は極力みないように、壁に手をついて。ゆっくりと。
この幻想的な通路を通って。



****************************************
535通常の名無しさんの3倍:02/12/23 03:09 ID:???
 
536:02/12/23 03:12 ID:???




「ニュータイプである貴様にも地球連邦の唱える絶対民主制、それによる議会至上性の弊害はわかっているだろう。
あのシステムでは内部が腐敗するのは明白なのだ。
凡俗どもは認めたがらんがな。
だが、それはジュリアス・シーザーの時代から変わらぬ真実だ。見せ掛けだけの民主主義とやらになんの救いがある?
政治家は自分の地位の安定だけを願い、抑圧された民のことなどなんら眼中に無い。
連邦が公式にニュータイプの存在を認めたか?認めていないだろう?
彼らは恐怖しているのだ。新人類の誕生により自分たちの利権が消滅してしまうことを。
保身だけを考える政治家どもは人類の革新など信じようとしないのだ。仮に信じたとしても公に認めることは無い。」
アムロの微かな態度の変化に気が付かず、ギレンは喋りつづける。



ギレンの声には自分の言葉による軽い陶酔感が含まれている。
この暗い灰色の世界でギレンは一人夢を見ている。20億人殺してもまだ覚めない。
アムロ・レイにはギレンのいっていることは理解できる。確かに現在の地球連邦政府ではダメだと思う。
けれどギレンの思考は理解できても、決して賛同はできない。


537:02/12/23 03:16 ID:???



「それに・・仮に貴様がこの艦を止めようとしても・・
もう誰にも止められぬ・・システムは起動したのだ。遅かったな・・」
ギレンは唇の端をかすかにあげて、そう言った。



アムロは言う。
「違う・・まだ・・遅くない。」
そこには暫定的に二つの意味が含まれている。
地球への意味と。この艦への意味と。
「遅くない・・?」
ギレンの声には微かな動揺を読み取れた。が、一瞬でそれはまた消える。




「・・フ、冗談はよせ。」



538:02/12/23 03:19 ID:???







そういうとギレンは、椅子についてある装置を少し操作した。
モニターの右隅に映っているロランの映像、それがモニターの中央に拡大表示される。
更にギレンが少し操作すると、少し遠目のアングルに切り替わる。
通路全体を映し出すアングルに切り替わった。




真っ暗な通路がほのかに光っている。淡い光をほのかに残しながら、そこに沢山の黒い影が見える。
それはジオン兵達が、倒れている姿であった。通路のちょうど中心付近だ。
彼らはぐったりと、思い思いに倒れて、重なり合っている。まるで月に眠る死人の様に。
誰も動かない。動けるわけが無いのだ。
だけど、彼らは死んでいるわけではない。飲み込まれているだけだ。
そしてそれはこの艦のシステムが最終段階に入りつつあることを教えている。この暗闇と光がそれを証明している。
ギレンはそれを確認し、先程のアムロの言葉を、戯言と断定した。




539:02/12/23 03:21 ID:???

*******************************





「ソシエ?」
私は泣き声のするところまで壁に沿って慎重に近づいて、その人影を見かけたとき思わず声を出していた。
それは間違いなくソシエである。
勿論ほぼ真っ暗の世界なので、はっきりと視認したわけではない。それほど彼女に接近はしていなかった。
ただ女性の泣き声が、私の耳に入った瞬間、ソシエだと直感的にわかっただけだ。
ソシエは膝を抱えて通路の隅にうずくまるようにして、泣いていた。



泣きながら、何かを呟いている。
私の呼びかけはどうやら聞こえなかったようだ。
540:02/12/23 03:31 ID:???


あたりに点在する光の粒は月の反射光の様に彼女を青白く照らしあげていた。
そしてそれは少女の哀しさを宿命的に染め上げていた。
ハッとするほどの美しさを、少女期独特の淡い儚さを。それは少女期にしかない性質の美しさである。
私は彼女のすぐ側まで行くとそこに屈み込み、彼女を覗き込むようにして、もう一度静かに声をかけた。



「ソシエ?」



その声は自分が出しているとは思えないほど、この空間に硬質に響いた。
ソシエはビクっと身体を震わせたかと思うと、しゃくりあげながらその顔を上げた。
そしてこちらを見て涙で濡れた瞳を大きく開く。
その中に驚きと、安堵が含まれているのが今の私には読み取れた。



541通常の名無しさんの3倍:02/12/23 03:33 ID:???
 
542:02/12/23 03:42 ID:???



「ミ、ミライさん・・・?」
「ソシエ・・どうしたの?一体何があったの?どうして泣いているの?」
私は彼女が正常な反応を返してくれたことにホッとしながら、そう矢継ぎ早に質問した。



「ミライさん・・ロランが・・ロランが・・死んじゃった・・・。ロランがぁ・・」




ソシエは私の質問には答えずそう声を絞り出すようにいい、私にしがみ付いた。
「ロランが・・私の・・所為で・・」
ソシエの瞳から大粒の涙がぽろぽろとこぼれる。
それはこの青白い淡い月のような光に照らし出されながらも、無重力の闇にそっと消えていった。
少女は悔恨の言葉を呟きながら私の胸に顔を埋めて泣いた。
私は、静かに少女の背中を撫でる。ガラス製のグラスを扱うようにそっと壊れないように。
少女の背中が小刻みに震えて、行きどころの無い哀しさで涙は洪水の様にあふれ出る。


543:02/12/23 03:56 ID:???



「そう・・ロランも・・」
私は呟く。
彼の銀髪を私は鮮明に思い出した。にっこりと微笑みを浮かべている様子と共に。
「・・・死んじゃ・・駄目・・じゃな・・い・・・・」
腕の中で、ソシエの掠れた泣き声だけが私の耳に届く。
それは少女の純粋な哀しみに彩られていて、私の麻痺した感情を直線的な刺激として激しく揺さぶる。
血液が10日ぶりに、私の心のなかを循環しだした気がする。



私はやっと本当に認識する。
あぁ、これはやっぱり現実なのだ。
ブライトの死も、この幻想的な世界も、ソシエの哀しみも、私たちを包み込む全ての要素は現実で、
この艦はそれを全て集積していく。まるで枯葉が静かに降り積もるように。






そう考えたとき、私は漸くこの現象の原因に思い当たった。






544:02/12/23 04:02 ID:???




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
とりあえず一旦ここで区切ります。連続投降補助してくださった方どうも有難うございます。
545通常の名無しさんの3倍:02/12/23 04:05 ID:???
>>1
乙〜。規制はどんな感じ? 適当に入れてたが
546通常の名無しさんの3倍:02/12/23 04:05 ID:???
深夜に長時間お疲れ様でした。
相変わらず綺麗で素晴らしい。
547:02/12/23 04:17 ID:???

>>545
おかげさまで大丈夫でした。感謝です。
規制には引っかからなくてホッとしました。


>>546
そういっていただけて嬉しいです。
ちょっとギレンとアムロの方は会話の内容が長くて複雑になりすぎたので、読みにくいかな?と心配でした。
かといって、あんまりギレンの口調を読みやすくするとギレンっぽくないので・・折り合いをつけるのがなかなか。



次でホントに11章が終わりです。こんな時間まで読んでくださって有難うございました。
それでは・・
548通常の名無しさんの3分の1:02/12/23 09:47 ID:???
1さん乙彼〜〜〜。
一体何が作動したんだ!? WBR!
549通常の名無しさんの3倍:02/12/23 11:35 ID:???
ああ〜!>>1様ああ!>>1様あああ、文体かーいいよーーー!かーいい〜!
550通常の名無しさんの3倍:02/12/23 14:14 ID:???
一応、ageておく。
551通常の名無しさんの3倍:02/12/23 16:52 ID:???
今回も楽しく読ませていただきました。
カツが扉を開けたところで何かが起きた?・・・ワクワク
552通常の名無しさんの3倍:02/12/23 21:06 ID:???
とうとう>>1ブリッジ大佐が現れたか・・・w

>>1さん
お疲れ様でした。ワクワクドキドキしながら読みました。
相変わらず引き込む力が、凄いです。
553通常の名無しさんの3倍:02/12/23 21:19 ID:???
1さん乙です!!!
続きが楽しみだぁ
554ろうろん:02/12/23 21:54 ID:???
話がすごく良かったです・・・
この文章を見てると何だかドキドキしてしまいますね。
展開がどうなるのかとか・・・
次の話も期待してます、>>1さん
555通常の名無しさんの3倍:02/12/24 12:31 ID:gekO/+Uj
やばいやばい、あと10個下がったら倉庫行きたっだよage
556通常の名無しさんの3倍:02/12/24 13:50 ID:???
datに落ちるスレは最終書きこみ時間順で決められるから
sageもageも関係無いのだが・・・これはちょっと沈みすぎだよな。
557通常の名無しさんの3倍:02/12/24 19:09 ID:???
ハリーの死は貞子かと思ったクリスマスの夜
558通常の名無しさんの3倍:02/12/24 20:11 ID:???
キングクリムゾン!!
559kanrinin:02/12/24 23:43 ID:???
冬休みに入ってしまいました。
age時が難しいですよね。
560通常の名無しさんの3倍:02/12/25 10:02 ID:???
sageで細々と保守ればいいかと。
1さんが来た時以外ageる必要もあんまりないし、なんといっても冬。
561通常の名無しさんの3倍:02/12/25 13:12 ID:JgPnmcDm
ガリクソン
562通常の名無しさんの3倍:02/12/25 14:25 ID:???
どんどん落ちていって、もう表示されなくなってもdatオチってしないもんなの?
563通常の名無しさんの3倍:02/12/25 17:14 ID:???
>>562
厳しいようだが、調べたり考えたりすればわかる。
564通常の名無しさんの3倍:02/12/25 21:03 ID:???
まあ確かにスレ一覧の最後にあるということは他のスレよりも最新書き込み率が低い可能性はあるけども、
このスレは基本はsageだからなぁ。
ageは>>1が書き込むときくらいでいいと思う。
565:02/12/25 22:03 ID:???





「ニュータイプ・・貴様どうするつもりだ?
このまま連邦の言いなりとして過ごすのか・・私と共に同志になるか・」
ギレンがアムロに結論を促す。
これ以上の説得は必要ない、と判断したからだ。くだらない戯言を聞いている暇はギレンにはない。
「その前に・・質問したい事が一つだけある。」
「なんだ?」
「あなたが現在"頭痛"がするかどうか。」
アムロはそれがさも重要なことのようにいった。




「頭痛だと?・・・質問の意図が判らんが、ないな。」
下らない質問だと思いながら、ギレンは即答した。




566:02/12/25 22:05 ID:???




「やはり、な・・」
アムロが溜息と共にそう漏らした。


「やはり?何がやはりだというのだ?」
ギレンが問い掛ける。


アムロはそれには答えず、もっていた拳銃を黙ってギレンに差し出した。
「何のつもりだ?」
彼はそれを受け取る。それは傍目からみると忠誠を誓った兵士の行為に見える。
拳銃を渡すということは中世でいうとナイトが王に剣を差し出すような意味合いを有している。
少なくともギレンはそう解釈した。それはそうだろう。
この状況で拳銃を渡すということはそうとしか解釈できないのだから。もしくは自殺志願者だ。
ギレンはその拳銃の感触を手にしっかり馴染ませると、アムロをみた。
だが、次のアムロの言葉はギレンの予想の範疇にないものであった。



567:02/12/25 22:06 ID:???




「・・・・それで自害するか、このまま飲み込まれるか、選んだらいい。」




アムロはひどく真面目な顔でいった。
「・・・。下らない冗談だな。」
ギレンは数秒黙ったあと、はき捨てるようにいった。


自害?私が?
この拳銃で?

どうしてそんなことをしなければならないというんだ?



****************************************
568:02/12/25 22:08 ID:???


ソシエはまだ泣き止まない。私は彼女の背中をそっと優しく叩く。
その度に彼女はまた堰を切ったように泣きじゃくる。
「・・死んでしまったら・・お・・終いじゃない・・ロラン・・」
泣けるだけ泣けばいい、と私は思う。少なくともその間は何も考えなくて済む。
けれど、その後この少女には何も残らないのかもしれない。


哀しみは人を簡単に壊してしまうのだから。その重みに人はときとして耐えられず、崩れ落ちる。
崩壊する。
見えないし、触れないけれど、哀しみという感情には、必ず質量があると私は信じている。
それは取り除くことも出来ないし、誰かが変わりに背負うことも出来ない。自分で背負うしかない。
私はソシエの髪をそっと撫でながら、そんなことを思った。



そういえば・・私はふと思う。
私が最後に泣いたのはいつだろう?
ブライトが死んだときにも私は泣かなかった。ハサウェイの時も。
もちろん胸が張り裂けるほど哀しかった。けれど、涙はでてこない。
どうして?


********************************
569:02/12/25 22:13 ID:???



「この男がニュータイプであるとはな・・くだらない茶番だった・・」
ギレンが拳銃を黙ってアムロレイに向ける。


「そうか・・それじゃ仕方ない・・」
乾いた声でアムロは言う。
そして撃つなら撃てというばかりにゆっくりとギレンに近づいてくる。


ギレンはニュータイプといわれるアムロに失望していた。
所詮こんなものかと思う。彼はジオン・ダイクンのいうニュータイプではない。
所詮、戦争という極限的状況がそういった妄想をつくリあげていったのだろう。
大衆というのは常にカリスマを求めるものだ。目の前の男は、大衆が作り上げた偶像に過ぎない。
真のニュータイプなどやはり存在していない。そう彼は判断した。
全てはこれからだ。
私が、導く。人類という種の永久の繁栄を。



ギレンは引き金に指をかけた。


570:02/12/25 22:16 ID:???



****************************



「ねぇ・・ミライさん・・」
あまりに突然にソシエは泣き止んだ。
そしてとてもとてもか細い声で、私に話し掛けてきた。
今にも消え入りそうな声だ。ささやかな声。
一瞬、自分に語りかけてきているとは気が付かないほどに。



「なに?」
私も彼女の耳元で囁くように返事をした。他の誰にも聞かれないように。
この灰色に重く濁った世界には私たちしかいないのだけれど。
私たちを取り巻く光は先程より少し強くなったように思う。
それが周りの闇と溶け合うように絡み合って私たちを包んでいる。


571:02/12/25 22:19 ID:???






「私、ロランのこと・・好きだったの・・」
「・・そう。」
「本当よ。それも多分ずっと前から・・」
「ずっと前から?」
「ええ、今ならわかるの。あぁ・・私、ロランが好きだったんだなぁ・・って」
ソシエはそういうとクスクス笑う。とても楽しそうに。



これは、よくない兆候だった。




****************************
572:02/12/25 22:25 ID:???



撃とうと指に力を入れた瞬間だった。
唐突にギレンは異様な感覚に襲われた。



「・・・ンン・・?な・・なんだ・・?」

ギレンはうめいた。
突然目の前がブラックアウトしたのだ。闇だ。
同時に地震が起きたように足元がふらつき、ギレンはよろめきながら膝をついた。
眩暈がする。吐き気も。なんなんだ?これは?
闇が彼を包み込む。
辺りは全てその闇にゆっくりと染まっていった。夕焼けが空を染めていくように。
元々薄暗かったが、今度は完全な闇だ。
突然、別の世界に入り込んでしまったような異質な闇がギレンを支配する。


573:02/12/25 22:32 ID:???




「これは・・一体・・」

落ち着いて辺りを見ようとする。
ギレンは目の前にいるであろうアムロ・レイを視界に捉えようとする。
だが、もはや彼の視界にはアムロの姿が入ることは無い。つい今までいたのに!
何も見えないのだ。
もう何も見ることはできない。ギレンはその場にうずくまったまま飲み込まれている。
ひどい寒気に襲われる。
ここはどこなんだ?
ギレンは何もない、何も見えない世界で一人叫ぶ。


私は今、
どこに
いるんだ?

574:02/12/25 22:33 ID:???















アムロは、その様子を哀しげに見る。無論彼は依然かわらず灰色の部屋にいた。
ギレンもいるのだが、彼は呻きながら、床に這いつくばっている。
何かを呟いているが、か細いのでまったく聞こえない。
が、アムロにはギレンが何を叫んでいるか理解できた。



アムロはギレンに自分の声が聞こえないと知りつつも、答えを教えてやる。
「逆流だよ・・思惟の・・」
もう助からない、あなたは飲み込まれる。
圧倒的な粘膜に。その貪欲な闇の前にはどんな存在も叶わない。

575:02/12/25 22:38 ID:???


******************************




ソシエはひとしきり笑うと、またポツリと話し出す。
私は止めようとも思ったが、やめた。
話す気力があるのなら話させた方がいいと思ったからだ。
その方が上手く自分の気持ちに整理がつくかもしれない。


ソシエは話す。
「あの後、ロランと別れた後、私やっぱりロランの所に戻ったの・・
そうね・・五分くらいたった後かしら。時計が無いから正確にはわからないけど。
大体そのくらい。
ハリーさん達がミライさんのいるブロックに突入する直前かな?
そして戻ったらちょうどロランとジオン兵の銃撃戦があってて・・
私の足音に気が付いたんでしょうね。ロランがこっちを振り向いて何か叫んだの。」


だんだんとソシエの声は大きくなっていく。
やはり、私は止めるべきだったのだ。
576通常の名無しさんの3倍:02/12/25 22:41 ID:???
連投規制回避レス
577:02/12/25 22:45 ID:???



「その声は銃声の所為でなにも聞こえなくて、あたしがもっと近づこうとしたら・・
ロランが
『危ないですよ!』 っていって、一瞬こっちに身を乗りだしたの・・
おそらく敵からみたら無防備だったと思うわ・・その姿は・・
・・一段と銃声が響いて・・
その瞬間に彼の胸元に赤い花びらが散って・・
私は動けなくて・・花びらが・・赤い血が・・彼の肌に・・」
ソシエの声は震えだした。



私はソシエの肩をしっかり掴んで揺さぶった。
この少女はいま絶望しているのだ。
誰かが救ってあげなければいけない。繋ぎ止めないといけない。
たとえ救われないことを彼女が願っていても。



578:02/12/25 22:48 ID:???


「もういいから!話すのを止めなさい!」
「その時は何が起こったか判らなかった・・ただ世界が止まったような・・音がなくなって・・
何も聞こえなくなって・・頭の中がキーンとして・・ひどく何か物事がスローになって・・
ロランが扉にもたれ掛かるようにズルズルと崩れ落ちていって・・扉に血が付着して・・
拳銃が手のひらから零れ落ちて・・私の所為で・・
お父さんが死んだとき・・ロランは・・私を・・慰めて・・
私はいつも・・我侭で・・彼を・・困らせて・・・バカにして・・
この艦に乗艦するのだって・・私が・・無理矢理・・・私・・ありがとうも・・いえなくて・・ああ・・
ああああああああああああああああああああぁぁぁっぁぁっぁぁぁ・・・・・・・」




絶叫。
それはまるで地獄で救いを求め叫ぶ罪人の様な悔恨。
嘆き。慟哭。絶望。
その全てが含まれた声。魂が震える。心が壊れる。助けを求めている。
けれど、決して誰にも届くことは無い。
私にはわかる。



私は彼女を繋ぎとめたいと思う。現実に。
だけど彼女を繋ぎとめることができる者は既にいない。



*************************************

579通常の名無しさんの3倍:02/12/25 22:52 ID:???
1さん最高
580:02/12/25 22:53 ID:???


ギレンは暗闇の中を這いつくばっている。




彼は阿鼻叫喚そのものの巨大な奔流に包まれている。思惟そのものに。そうこれは思惟なのだ。
その圧倒的な圧力はギレンの身体を歪ませ、四肢を容赦なく引き千切る。圧倒的に。
精神が粉々に砕かれていくような感覚がギレンの脳髄を貫く。抗うことなどできない。
思惟の形がまるで巨大な岩石の様にギレンの全身を打ち砕き、肋骨をへし折り、内臓をも抉り取るようであった。
ギレンは怯えた。彼はようやく自分を囲む世界に気が付いたのだ。
生まれて初めて恐怖を感じる。圧倒的な思惟の前に人はかくも無力であるのか、と。
胃液が逆流して、彼は激しく嘔吐をする。

私は自惚れていたのか?この思惟を・・扱えると・・


薄れていく意識の中、ギレンは反問する。
この結果を洞察できなかったのは私がやはり旧時代の思想にとらわれた人間だからか?
ギレンは再び激しく胃液を吐き出す。吐瀉物が彼の手を汚す。
最早アムロの存在はまったく感知できなかった。自分の肉体がまだあの艦にいるのかさえ判らない。
何も見えない。もう死んでしまったのではないかと思う。
別の世界に一人だけ投げ出された様に感じる。
誰もいない。光も音もない世界に。
いや、誰かがこちらを見ている。誰だ?
581:02/12/25 23:02 ID:???


ギレンはなんとか顔を上げる。これだけの動作でも激痛が走る。

ち、父上?

目の前にデギン・ザビがいた。暗闇にぽっかりと浮かんでいる。
杖を右手に持って、こちらを何の感情も篭っていない目で見下ろしている。
ギレンは這いつくばったまま動けない。体中の感覚が消えていく。


"貴様はヒトラーの尻尾だ"


デギン公王の言葉が幾重にも脳にリフレインする。
それは直接的にギレンの脳に届き、刺激を与える。ギレンは反論する。

違う。私は権力欲望型の人間ではない。ヒトラーなどとは・・
何故今更でてくるのだ!あなたは宇宙の塵に・・
そうか?私が貴方を殺したことを恨んでいるのか?
父親殺しの鬼畜として・・犬畜生にも劣る・・と・
だとしたらそれは間違いだ。ジオンを見捨てたのは貴方だ・・老いたあなたがの軟弱ゆえだ!
貴方は逃げたのだ・・人類の将来を決める闘争から・・
ジオン・ダイクンを裏切り、ザビ家を裏切り、ジオン公国を見捨てた。
軟弱ゆえに!惰弱ゆえに!和平交渉などと!
だから・・処罰したのだ・・私・・ギレンが・・
それが何故わからない!その気持ちがわからぬほど貴方は老いていたのか!



582:02/12/25 23:07 ID:???




そのときだった、突然デギンの体がどろどろと溶け出した。
それはまるで全身に硫酸をかけられた様に煙を出して、ぐにゃぐにゃととろけていった。
首の部分がまず溶けて、支える部分が無くなった頭がゴトリ、と地面に落ちた。
その後右腕が体液を出しながら溶けていき、すっかり骨しかなくなった。
左腕も根元からボトリ、ボトリと蒸発しながら溶けていった。
もの凄い異臭が辺りを漂う。
次に足も通常ではありえない方向に捻じ曲がりながら、どろどろと液状化していった。
そしてものの2,3分で全身がすっかり溶けてしまい、あとには真っ黒なスライム状の塊が残った。




ギレンは呆然とその光景を見る。
あまりの凄惨でグロテスクな姿に変わったデギンを。



583:02/12/25 23:13 ID:???



粘膜は僅かに震えながら、ゆっくりとその身体を動かす。
地面にゆっくりと這いつくばってギレンの方に近づいていく。
そして、ずるずると、ねっとりとギレンに覆い被さっていく。ゆっくりとびっちりと身体に隙間なく密着していく。
「な・・・なんだ・・止めろ!」
粘膜がギレンの身体全身を包んだ。どろりとした感触で、まだ生暖かい。
その粘膜は次第に熱をもってきてデギンと同じ様にギレンを溶かそうとする。
ギレンは抵抗するが、まるで動けない。まるで呪縛の様に。

ジョブリ。
ジョブリ。
ジョブリ。

粘膜はギレンの全身を弄る様に動き回り、彼のすべてを貪欲に飲み込んでいく。
夢も。野望も。理想も。存在すらも。

ジョブリ。
ジョブリ。
ジョブリ。





584:02/12/25 23:21 ID:???
*******************************


”これは夢なんです。私ソシエの悪い夢なんです。
こんなことは認められないんです。
夢なんです。
それは死体じゃありません。ロランの死体じゃありません。
よく似ているけど、違うんです。
止めてください。みないでください。ロランじゃありません。”



ソシエが虚ろな目でそんなことを呟く。
ソシエの精神は崩壊寸前であった。


「ソシエ!しっかりして!しっかり!」
私にはどうしようもできない。無力感が私に襲い掛かる。



”切なくて、苦しくて、もどかしい夢なんです。”

ソシエは止まらない。
585通常の名無しさんの3倍:02/12/25 23:24 ID:???
 
586:02/12/25 23:31 ID:???


その時、そんなソシエをいきなり辺りの無数の光が包み込む。
「え・・?」
それはあまりに唐突で私は上手く反応できなかった。
その光が私を弾き飛ばし、ソシエだけを優しく包み込んでいくのを呆然と見る。




その膜は彼女をすっぽりと覆ってしまうと、ポォォっと青白い光をともした。
それはとても幻想的で。天使の祝福の様に、その光景は神秘的で美しくて。私は知らず息をのんだ。
「ソシエ・・・?」


数分後・・
その膜の光が消えた。
私は、そのあいだじっとその場に座ってその光りを眺めていた。
光が消えた後、そこには卵型の膜に包まれたソシエがいた。
銀色の膜は透き通っていて、中の様子が覗くことができる。
私はフラフラと立ち上がって、目の前のその膜に手をやる。
その膜は、少し温かくとても柔らかい。けれどどれだけ強く押しても突き破れない。
ソシエはその中で眠っていた。
あれほど取り乱していたのが嘘であったみたいに、それは穏やかな顔している。
安心してぐっすりと眠っている、まるで母親に抱かれた赤ちゃんの様に。
涙の筋を頬に残して、彼女は眠っていた。





587:02/12/25 23:36 ID:???



私はもっとよく中を見たいと思う。けれど、神聖な感じがしてそれを躊躇させる。
なにかそれはいけないことであると、伝えている。
そして、この中にはソシエのほかにもう一つ意識を感じることができる。
私はそれを感じ取ろうとする。
誰かの断続的な意識が私の中に流れてくる。スライドの様に。



これは・・ロランの・・?

え?
繭?これは繭なの・・?
銀色の・・

心配ない?
それは一体・・・

精神的な・・眠り・・?・・





そこで突然私の意識も薄れていった。



*******************************
588:02/12/25 23:38 ID:???





アムロは、床でもがいていたギレンが動かなくなったのを確認すると、彼の手のひらから拳銃を拾い上げた。
もうギレンはぐったりとしていて何の意思も感じ取れない。
ほんの少しだけギレンに同情を覚える。
あなたには資格がなかった・・・アムロは呟く。




589通常の名無しさんの3倍:02/12/25 23:41 ID:???
予想と全然違う展開…すげぇや。
俺の感性では到底予想しきれない。
590:02/12/25 23:42 ID:???




アムロはギレンの脇を通り抜けて、中央に設置された椅子に座る。
そしてこの灰色に覆われた空間全体に流れる閉塞した空気を存分に吸い込む。
手のひらで顔を覆って、目を瞑る。意識を集中させる。


まだ、間に合う・・まだ・・
シャアの思いどうりにさせるわけにはいけないんだ。それは間違っている。


アムロは祈る。







591:02/12/25 23:51 ID:???






だが、アムロの耳には確かな少女の声が届く。かすかだけれど、はっきりと。
それは確かな質感を伴ってアムロの肺にまで到達する。呼吸が一瞬止まる。
心臓が早鐘の様に鼓動をうち始める。
その声にはには彼をあの当時へとたち戻らせる強制力を伴っている。
追い討ちの様に、アムロのもとに、もう一度声がきこえる。








「   ア  ム  ロ   」











592:02/12/25 23:53 ID:???














あぁ、遅かった。
けれど、どこかで僕もこの状況を望んでいたのかもしれない。
シャア・アズナブルと同じ様に。














593次回予告:02/12/25 23:56 ID:???





あのとき、僕らは宇宙で出会った。
それはあまりに唐突で、衝撃的な出会いだった。
始まりも、終わりも。
ほんの一瞬のことだったけど、ある要素をもった瞬間は時として永遠を越える事を知った。
あの当時、僕はとてもイノセントで、貴方の哀しみを理解できなかった。
取り返しのつかないことがあって僕たちは離れ離れになった。


そしてそれから現在に至るまで僕はあなたに会うのが怖かった。本当に。怖かった。
けれど今、僕の心は歓喜でうち震えている。
僕らが再びめぐりあえた事に。
無限の暗闇が僕らを包み込み、彗星が赤く輝くこの宇宙で。





最終章   「   めぐりあい宇宙   」







594:02/12/26 00:09 ID:???


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここで長かった11章は終わりました。
次からようやく最終章に入ります。
かなり、謎を残していますが、それは順をおって明らかになるのでお待ちくださいませ。
応援のカキコくれた皆様方や、感想のレスくれた皆様方、本当に有難うございました。
本当に励みにしてます。嬉しい。あと少しですので、最後までどうかお付き合い御願いします。
それでは・・・

595通常の名無しさんの3倍:02/12/26 00:10 ID:???
>1
何かもう・・・凄すぎて何も言えないです。
596通常の名無しさんの3倍:02/12/26 00:18 ID:???
>1さん乙!!!!!!!!!!!!!!!!!
最高の良スレにメリィクリスマス!!!!
597通常の名無しさんの3倍:02/12/26 00:23 ID:???
本当に素敵です。
現時点で最高の盛り上がりです。
ありがとう。>>1さん☆
598通常の名無しさんの3倍:02/12/26 02:31 ID:???
1さんお疲れ様です
思わず泣いてしまいますた。
続き、激しく楽しみにしています!

599通常の名無しさんの3倍:02/12/26 07:16 ID:???
今度時間があるときに1から読み直そうと思ってるんですが、その際に小説部分を抜粋してうpなんてしてもいいですかね?
600通常の名無しさんの3倍:02/12/26 12:32 ID:???
>>1さん、最高です。凄いとしかいえない
601通常の名無しさんの3倍:02/12/26 14:24 ID:???
>>599
神!!

ただし、1さんの了解が必要な罠
602ろうろん:02/12/26 21:13 ID:???
こうゆう展開になるとは思いませんでした・・・
すごいですね・・・>>1さん・・・・
次は最終章ですね、最後の話楽しみにしてます。
603kanrinin:02/12/27 01:16 ID:???
508か。
そろそろageかな?
604通常の名無しさんの3倍:02/12/27 05:06 ID:NClmTPw0
保全
605通常の名無しさんの3倍:02/12/27 16:44 ID:???
えっと今のうちに聞いておくと生存者は誰ですか?
606通常の名無しさんの3分の1:02/12/27 17:22 ID:???
冬厨警報

水差し厨が糞スレ乱立でDAT落ち攻撃を行うと宣言しました。
スレの位置には十分注意を。
607通常の名無しさんの3倍:02/12/27 19:57 ID:???
保全
608通常の名無しさんの3倍:02/12/27 20:00 ID:???
age協力
609通常の名無しさんの3倍:02/12/27 22:18 ID:???
1さん、乙!
610kanrinin:02/12/28 02:07 ID:???
>>606
(((( ;゚Д゚)))ガクガゥブルブル
611。・°°・(≧□≦)・°°・。:02/12/28 09:52 ID:???
age協力さ。
しかし自称大学生にもなっても、坊やは坊やなんだ・・・・・
と日本の将来を心配してみるテスト
612通常の名無しさんの3倍:02/12/28 16:22 ID:lbwTDW/n
も〜い〜くつね〜る〜と〜
和尚和尚
613通常の名無しさんの3倍:02/12/28 23:02 ID:???
別にageなくても書き込みさえあれば落ちん
下手に上げて別の冬厨を呼び込む必要はない
614通常の名無しさんの3倍:02/12/29 08:00 ID:???
保守しとよ
615通常の名無しさんの3倍:02/12/29 09:36 ID:4L8j2/m0
age揚げ
616通常の名無しさんの3倍:02/12/29 21:46 ID:???
保守
617:02/12/29 22:16 ID:???
>>598
そんな風に言ってくださると私としてもとても嬉しいです。励みになります。
最終章をお待ちくださいね。


>>599
え・・・ど、どうぞどうぞ(照れ)
ご自由になさってください。恐縮です・・

>>605
一章で乗艦した人物で、現在生き残っているというか、意識があるのは
アムロ
シャア
ミライ
ソシエ
ウッソ
の5人です。シャアは行方不明ですが。

感想を下さった皆様、お褒めの言葉を戴きまして有難うございます。
保守してくださっている皆様、まことに有難うございます。
申し訳ありませんが、最終章はもうしばらくお待ちくださいませ。
年末は色々と雑用が多くて、中々、ゆっくりと時間が取れないです・・
最後なので、私も納得のいく様に、推敲を重ねてかいていこうと思います。マターリお待ちください。

618通常の名無しさんの3倍:02/12/29 23:20 ID:???
マターリ待つよ。
来年になってもいい。
むしろ>>1氏のお年玉が頂けるなら
漏れ達はこれ以上ない幸せ者だ。
619通常の名無しさんの3倍:02/12/30 00:10 ID:???
年末警戒保守
620kanrinin:02/12/30 01:15 ID:???
待ちがいがあるスレですな。
621ほげら〜:02/12/30 10:49 ID:???
待つのもまた楽しみの一つ。
622通常の名無しさんの3倍:02/12/30 22:09 ID:???
保守
623通常の名無しさんの3倍:02/12/31 03:17 ID:???
半月ぶりくらいに見た
まったく予想もしてなかった展開になってるな....
624通常の名無しさんの3倍:02/12/31 13:05 ID:???
年内最終保守
あとは頼む
625通常の名無しさんの3倍:02/12/31 14:55 ID:gDOfUbl4
後を頼まれたが
後は頼む
626kanrinin:02/12/31 15:53 ID:???
手堅く、sage保守といこう。
627通常の名無しさんの3倍:02/12/31 18:36 ID:???
させるか!
628通常の名無しさんの3倍:03/01/01 01:02 ID:???
年頭第一保守
629通常の名無しさんの3倍:03/01/01 01:33 ID:j2ehhNb0
>>1さん!明けましておめでとうございます!!!
新しい年でも次の話を楽しみにしてます!!
630ろうろん:03/01/01 02:25 ID:???
新年早々sage忘れました・・・すいません・・・・
631kanrinin:03/01/01 14:01 ID:???
年始挨拶sage
632通常の名無しさんの3倍:03/01/01 14:14 ID:???
保守しようと思ったら先を越されていた。15分ほど保守
633:03/01/01 16:48 ID:???
皆様、新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしく御願いします。


それにしても本当早いですね。もう一年経ったとは思えません。
けど、私も元旦を迎えてやっと少し暇ができました。
初詣にも行きましたが、今年は末吉でした。微妙・・


えと、最終章の方はおそらく3日,遅くても4日にはアップするつもりです。
もう少しだけマターリお待ちください。
保守してくださってる方には本当に申し訳ありません・・
ある程度一気にまとめてアップしないと私の場合落ち着かないもので・・


というわけで(汗)、どうか今年も気長にお付き合いください。
それでは今年が皆様方にとってよい年でありますように・・




634通常の名無しさんの3倍:03/01/01 19:16 ID:???
気にするな、>>1さん
おれなんか大凶当てたぞ
逆に運いいかもと勝手に思い込んでるが
635通常の名無しさんの3倍:03/01/01 23:20 ID:???
デスクトップの模様替えしてたら禿しく失敗しますた。
>>1さんの悪い運はこっちで全部吸収しますたので
今年は良い年にして下さい。

Λ||Λ
636通常の名無しさんの3倍:03/01/02 01:01 ID:???
>>633
おみくじって引いたことないな
初詣なんて生まれてから一度も行ってないから
学生の頃は初詣に行ってくると称して遊んでたし
そんな本当に日本人かと疑うような俺でもつつがなく生きてる
ので1さんも気にせずに
637通常の名無しさんの3倍:03/01/02 06:54 ID:???
川崎大師に行って来ました
638通常の名無しさんの3倍:03/01/02 15:09 ID:???
sage保守しときます
639kanrinin:03/01/02 15:11 ID:???
500にまだなのか。
sageでいいよな。うん。
640通常の名無しさんの3倍:03/01/02 22:55 ID:???
kanrinin が可愛く見えてきた
641通常の名無しさんの3倍:03/01/03 00:37 ID:???
期待保守
今後12時間は保守の必要はありません
642通常の名無しさんの3倍:03/01/03 11:25 ID:???
保守
今後(以下略)
643通常の名無しさんの3倍:03/01/03 17:18 ID:???
保守
さがっTEL
644通常の名無しさんの3倍:03/01/03 18:40 ID:???
落ちかかってます。
よって保守
645通常の名無しさんの3倍:03/01/03 18:41 ID:???
下げても仕方がない…
すみませんが、あげさせていただきます。
646kanrinin:03/01/03 22:21 ID:???
500逝くと不安だよね。
647通常の名無しさんの3倍:03/01/04 01:47 ID:???
下がっててもレスがあれば落ちないんだってば
冬厨にスレ荒らされたいの?
648通常の名無しさんの3倍:03/01/04 12:19 ID:???
半日に一度、こまめな保守
649通常の名無しさんの3倍:03/01/04 19:30 ID:???
safw
650:03/01/04 21:15 ID:???




僕の心の中にはずっと細い雨が降っている。
それはまるで霧の様にひそやかで、まるで母親の子守唄に思える程に優しく降り注ぐ。
天から地面にまるで吸い込まれているように雨音さえまったく聞こえない。
気が付いたら髪が額にしっとりと張り付いているような、そんな種類の雨だ。
それはまるで幻の様に淡くほそい。
そして、僕はその雨の中を一人で歩いている。ゆっくりと。
歩いている最中でさえ、僕は雨に気が付かない。
けれど、その細い銀の雨は確実に僕を濡らす。



僕はその雨にうんざりしている。嫌になっている。もう何年降り続いているのかすら判らない。
わかっているのはこの雨は、”止まない”ということだけだ。それ以外は何もわからない。
長雨の所為で、河が氾濫したのか、気が付けば僕の足首の辺りまで水が来ている。そしてその水はまるで身を切る程に冷たい。
僕はその水を手のひらにすくう。溜まった水をちょっとだけ舐めてみる。そして、またすてる。
立ち止まってどんよりとした灰色の空を見上げる。雨が僕を穿つ。
このまま降りつづけたらいずれは僕を飲み込んでしまうんじゃないか、と思う。
透き通った水が、僕の膝まで侵食して、やがては胸のあたりまで、そして最後には頭の上まで来て僕を溺れさせる。
水が口から僕の中に入り、肺にまで流れ込んできて、呼吸ができなくなる。





651:03/01/04 21:21 ID:???



僕はそんな自分を想像して少し嫌になる。
同じ死ぬのならもっと楽に死にたいと思う。いや、こんなことを考えるのは止めよう。
僕はまた歩き出す。水を蹴るようにして歩く。


けれど一度考え出した思考というものは中々離れない。


僕は再び立ち止まる。また水をすくう。
ひょっとしたら既に僕は溺れているのかもしれない。この水に飲み込まれているのかもしれない。
ただ単に僕が、気が付いていないだけかもしれない。雨が降っていることにさえ気がつかないぐらいなのだから。
僕は右手を微かに動かしてみる。小指からゆっくりと一本ずつ折り曲げてみる。
まだ、動く。
次に左手のほうも同じ様にうごかしてみる。・・こっちもうごく。
僕は大きく深呼吸をする。酸素が僕の肺を満たし、また静かに出て行く。
そして、僕は呼吸と共に、溺れているかもしれないといった錯覚を振り払う。
大丈夫、まだ僕は溺れていない。


水はまだ膝までで、僕を飲み込むことはできない。



652:03/01/04 21:24 ID:???


そして僕はゆっくりと目を開く。
現実の世界。灰色に沈む空間が僕の眼前にはある。
そこには一人の少女の姿がある。その姿だけがまるで壁画の様に僕の目にくっきりと映りこむ。
彼女はこちらを黙って、じっと僕を見つめている。
その透き通ったエメラルドの宝石のような瞳の奥に僕が映っているのを感じる。
あの時と同じ様に。その瞳は、僕の心を激しく震わす。
ドクン。
心臓が激しく鼓動を打ち出し、血液を循環させる。
その血液の流れと共に、僕の止まっていた時間もまた動き出す。
そしてそれが止まることはもう、ない。






最終章  「  めぐりあい 宇宙  」









653:03/01/04 21:29 ID:???


アムロ・レイは知らず涙を流していた。
感情の糸が切れて、自分では涙を止めることができない。
思いが激流の様に溢れでて、その圧倒的な感情の渦をせきとめられない。
アムロの頬を、透きとおった涙の粒が濡らす。
彼は声を発しようとする。けれど、想いとは裏腹に声は少しも出てこない。
唇がこわばって、何も声がでない。
アムロは震える両手で自分の顔を覆い、初めてそこが濡れていることに気がついた。




アムロは目を擦る。
手の甲でごしごしと涙を拭う。少女の瞳に映る自分を見るために。それに泣き顔を見られるのは嫌だった。
全身の身体の震えをなんとか抑えて、右足をゆっくりと前に出す。
そして左足も。
一歩一歩彼女に近づいていく。彼女はギレンの倒れているところにいるのだ。
ようやく、彼女のぼんやりとした薄い輪郭の前に立つ。
目の前に少女の顔がある。彼女の息吹を間近で感じられる距離。
アムロは目の前の少女の瞳をじっと直視する。
その瞳は深い美しいエメラルド・グリーンであり、その奥には無限の空間が広がっている。
吸い込まれそうなほどその瞳は透明で、その上の長い睫毛が更に少女の魅力を引き立てている。
彼女は相変わらずアムロをその瞳におさめている。
アムロはそこで漸く声を漏らす。
「ラ・・・ララァ・・」


言葉が自分の耳にリフレインされる。少し掠れた声だ。
ララァ・・。
その言葉を発することによりアムロはその事実を再確認する。
654:03/01/04 21:30 ID:???




アムロはまるで大事な宝物でも扱うときの如く、そっと慎重にララァの肩に手を乗せようとした。
が、途中で思い直して止めた。
腕が中途半端なところでピタリ、と止まり、宙を漂う。



触るのが怖い。
彼女の存在を確認することは何か重要な意味を持っている。



655:03/01/04 21:36 ID:???



僕は、この少女自身と直接に接触したことはない。
ララァに触ったことは無い。これまで一度もない。
つまり彼女は僕にとって確実に知覚できるものでありながらも、あたかも実像を有していない存在のように思える。
彼女のことはほとんど何もしらないのだ。テラスで、道端で、宇宙で会った以外には。
けれど知覚はできる。彼女の思惟を捉えることも。一度も触ったこともないのにだ。


いや、触ったことがないからこそ、あの時、少年の僕は彼女と精神が一つの認識域として意識を共有できたのかもしれない。
具体的な肉体的なイメージが存在していなかったからこそゆえに、僕らはメンタル的にリアルに繋がれたのだと思う。
僕らはそういったものを超越しなければいけないのかもしれない。肉代などといったものから。
肉体という殻からを破り、精神を無限の宇宙へと広げるために。
僕、アムロはそう思う。根拠はない。
あくまで、なんとなくだ。


だから、僕がここで彼女を掴んでしまったら、その時の感覚と言ったものは消滅してしまうんじゃないかと不安に捕らわれる。
彼女を触ってしまうと、あの時のような意識の繋がりはなくなるかもしれない。僕たちはわかり合えなくなるかもしれない。
勿論、それは杞憂に過ぎないのかもしれない。自分自身、あまりに悲観的に過ぎるとも思う。
それぐらいで消えてしまう繋がりなどとは思っていないし、また簡単に消えるようなら意味は無い。
そう思う。
けれどそういった可能性が僕を躊躇わせる。
僕と彼女の間には薄く、目には見えないほど透明な壁があってそれが僕らをふれあわせまいとしている。
そしてその壁をつくっているのは僕なのだ。




656:03/01/04 21:38 ID:???




「ララァ・・」
結局、中途半端にララァに伸ばしていた手をゆっくりと引っ込める。
そして決まり悪そうに俯くと、靴の先で床でコツコツと蹴る。
乾いた音がこの空間に響き渡る。それはアムロに何故か孤立感を強く感じさせた。
孤立感。
薄く灰色に濁るこの空間に、その音だけが響く。
その反響音の後は、沈黙が再び空間を支配する。




657:03/01/04 21:53 ID:???


僕は一体ララァになんと話し掛ければいいんだ?
アムロは自問する。


それがアムロにはわからない。話したいことは・・話さなければならないことは沢山あったはずなのに。
アムロは完全にあの少年の当時にたち戻っている。あの不安定でイノセントでナイーブな少年時代。
ララァは相変わらずこちらをじっと見詰めている。
それがまたアムロを落ち着かなくさせる。


そこでアムロはある事に気が付く。ララァの目の前で手を振る。
反応は無い。まるで眠っているかのごとく。目は開けているのにだ。
どうやら・・まだ完全ではない?
だがすぐに、それも当然だと思い直す。
あの時のことは昨日の様に思えるけれど、実際にはもう遥か前のことなのだから。
・・僕のビームサーベルが貴方の意思を飲み込んでしまってから。




ララァの意識は、精神の波動はまだか細く淡い、まるで僕の心の中に静かに降りつづける雨の様に。
だが、時間の問題だろう。やがて彼女は覚醒するに違いない。
658:03/01/04 21:57 ID:???


となると、今すぐしなくてはいけないことは・・・

アムロはそこまで考えて、漸く今のうちに自分がしなければいけないことがある事に思い当たった。
ララァをそのままに、アムロは椅子に戻って、肘掛のところについてあるコンソールパネルを操作する。
壁一面のモニターに艦内の全体図が映し出される。艦内マップだ。
そこには四つの光がオレンジ色に点滅している。
アムロはその点滅の場所を確認する。
・・士官室の部屋番号D-5に一つ・・Rブロックの通路に二つ、そして・・ここに一つ。





659:03/01/04 22:02 ID:???


更にアムロはパネルを操作する。



士官室の映像をモニターの右上に大きく表示する。
そこにはウッソ・エヴィンがベッドに顔を埋めている姿が映し出されている。
どうやら今は落ち着いているようだ。もう泣いているような気配はない。
ただ、動かないでベッドに沈み込んでいるだけだ。
その姿は一見すると安らかに眠っている様に思える。
だけど、その背中には哀しみの影が絶望的なまでにべっとりと染み付いている。
アムロにはそれがはっきりと読み取れる。
少年の哀しみ。切慕。そしてある種の決意。
一つ小さな溜息を漏らす。彼をできることならもうしばらくそっとしておいてやりたかった。
けれど同情している暇はない。急がなくてはいけない。
アムロは呼びかける。



”ウッソ・・聞こえるな・・?・・今すぐに・・ドックに来るんだ・・”



その思惟はあっという間に空間を越え、士官室にいるウッソの心の領域にするりと入ってくる。
瞬間、ウッソの背中がピクっと震えた。





660:03/01/04 22:07 ID:???


「次は・・」
アムロは更にモニターを切り替える。
今度は左上にRブロックの通路を映し出す。倒れている散乱した人々たちの群れ。
そこの曲がり角の隅のほうに、ミライとソシエの姿を発見した。
真っ暗な中で蛍のような光が彼女たちをぼんやりと照らしている。
2人とも魂が抜けたかのように、床にぐったりと倒れていて、まったく動かない。


”ミライさん・・・ミライさん・・起きてください・・”

アムロはそう思惟を伝達する。それはア・バオア・クーの時と同じ様に彼女の耳に届くはずだ。
あの時とは彼らはあまりに変わってしまったのだけれど。
けれど、ミライは起きない。動かない。
アムロは根気強く何度も呼びかける。

”ミライさん・・ミライさん・・・”

ミライがようやく微かに身体を動かした。
アムロは更に彼女の魂を揺さぶるかのごとく激しく強い思惟を飛ばす。
戦場でならばプレッシャーとして感知される種類のものだ。それは人にある種の強制力を有する。
その直接の刺激を受け、モニター上のミライがようやく起き上がった。
どうやら意識は回復したようだった。淡い光では顔色まではわからないが。
アムロはホッとしてもう一度ミライに呼びかける


” ミライさん・・ドックの方に来てください・・ソシエも・・連れてきてください・・
     真っ暗?・・・大丈夫です・・あなたの感覚なら・・迷わずこれますから・・・・”

661:03/01/04 22:13 ID:???





「後は、と・・・」
アムロは独り言を言いながら、更にコンソールパネルを操作する。
巨大モニターに簡略化された宇宙図が表示され、更にオレンジの光点で現在の艦の位置が表示される。
それはシャアが言っていた最終目的地・・これはあくまで当初の計画上であるけれど。
そこにもうじきこの艦は到達しようとしていた。もう半日ほどでオレンジの光点がその最終目的地の部分に重なるだろう。
全ての始まりであり、終わりである地点。



”シャアは・・そこで僕と・・ララァを・・待っているんだ ”



そしてそこで彼はアムロにある決断を迫るだろう。そのために彼はこの艦に乗艦してきたのだから。
馬鹿げている、とアムロは思う。けれど、それがシャアである。シャアの純粋さである。
彼はそういう風にしか生きられないのだ。
シャアの軌道は途中で変わらない。文字通り、彗星の様に彼は赤く燃え尽きるまでその生き方を変えない。
だから・・貴様って男は・・
アムロは呟いた。その中に微かな羨望が含まれていることを彼は自覚する。




662:03/01/04 22:20 ID:???



その時ララァは・・どう・・思うかな・・・
アムロはその時のこの少女の反応を思うと、心が重くなる。
どちらにしてもそれはあまりに重い結末かもしれない。



そして、どこか哀しげにアムロをじっと見つめているララァを、アムロもある種の感情のこもった瞳で見る。
けれど、すぐに頭を振るとそんな思考を振り払う。とりあえず今はそれよりしなければいけないことがある。
アムロは、彼女に優しく語り掛ける。
「ララァ・・・行くよ・?」
そう言ってアムロは、ララァを安心させるようににっこりと微笑んで、扉を指差す。
ララァにその声は聞こえたらしく、彼女はゆっくりと頷くと、アムロの後を黙ってついてくる。
アムロはそんなララァにホッとしながら、心の中で呟く。




本当はここに残している方がいいのかもしれない。
けれど、僕は君を一人にしておきたくはないんだ。



663:03/01/04 22:23 ID:???



****************
とりあえず今回はここまでです。皆様、保守いつも有難うございます。感謝してます。
664通常の名無しさんの3倍:03/01/04 22:32 ID:???
おお!いつの間に!
新年早々お疲れ様です。
先が本当に楽しみです。でももうすぐ終わってしまうのか…
少し寂しいかもです。
では誰かに言われる前に…

ララァキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
665通常の名無しさんの3倍:03/01/04 22:36 ID:???
うおおおおおおお!!!!!どうなるんだ?
666通常の名無しさんの3倍:03/01/04 23:11 ID:???
や、初めて来ましたが、4時間ほど見入ってしまいましたよ。面白すぎ。

クソスレと 
  思って覗けば
     神 が 居 た     字余り
667通常の名無しさんの3倍:03/01/05 00:04 ID:???
あげ
668通常の名無しさんの3倍:03/01/05 00:06 ID:???
>>1さん、おまえ素敵だ!
669通常の名無しさんの3分の1:03/01/05 00:33 ID:???
>1さん
乙彼〜。
遂にクライマックス。期待して待っています。
670通常の名無しさんの3倍:03/01/05 03:13 ID:???
1回目を含めて、11月位?から2ヶ月位・・・?早いなあ
終わりを早く見たいんだけど、終わって欲しくないよーという
複雑な気持ち。
続き、楽しみにしてます。
671ろうろん:03/01/05 11:02 ID:???
いやあ、もうついにここまで来ましたか・・・・
本当に興味がかなり!持てるおもしろい文章ですね。
そろそろ最後期待してます!
672通常の名無しさんの3倍:03/01/05 18:31 ID:???
きたいしてまつ
673通常の名無しさんの3倍:03/01/05 22:52 ID:???
続きみてえ!からsage保守
674通常の名無しさんの3倍:03/01/06 01:15 ID:???
完結までスレを死守せん
675通常の名無しさんの3倍:03/01/06 11:09 ID:???
エロSSなら南極に保存できるが、こういうのは誰が有志がHP
に再録してくれるしかないのか
676通常の名無しさんの3倍:03/01/06 11:51 ID:???
サエグサ「スレが落ちそうです!」
ブライト「ようし、緊急浮上だ!」
677通常の名無しさんの3倍:03/01/06 14:03 ID:???
>>675
任せろ。
着々と保存化は進めておる。
678通常の名無しさんの3倍:03/01/06 18:53 ID:???
なんか寂しくなってきた
679山崎渉:03/01/07 02:55 ID:???
(^^)
680通常の名無しさんの3倍:03/01/07 23:47 ID:???
そろそろあげるよ。
681通常の名無しさんの3倍:03/01/08 02:09 ID:???
>>677
たのんます
682通常の名無しさんの3倍:03/01/08 06:18 ID:???
ho
683ペンギン村:03/01/08 14:41 ID:???
んちゃ、私ageレ
684通常の名無しさんの3倍:03/01/09 00:48 ID:???
>>683
キシリア閣下ハケーン
685:03/01/09 06:31 ID:???


ドック。
メカニックたちが作業をして、普段はモビルスーツが置かれている場所。
オイル臭く、機械の部品がいたるところに散乱しているところだ。まるでそこはマシンの巣であるかのように。



「凄い・・・」
ミライは息を飲んだ。
アムロからの指示を受けてから、はや二十分が経過した頃、ミライはようやくそこに着いていた。
いまだ眠っているソシエを背中に乗せている。

「ここがドック?」
ミライが手すりに寄りかかりながら、もう一度呟く。口にださないと信じられないといったように。



そこには一面に広がる銀白の世界が、ひっそりと構築されていた。
まるで雪が降り積もり、そこに三日月の光が降り注いでいるかのような美しい柔らかな世界がそこにはある。
あの通路にあったような光の粒子は、このドック内ではもう個々に球状にかたどっておらず、全てがくっついてひとつになっていた。
どうやら微かに発光しているらしい。
モビルスーツだけがその世界の中で硬質な存在としてあり、ただ一つ違和感を感じさせる。
それがなければここはまるで楽園のような場所に見る人には映るだろう。
通路の深い闇を辿って出てきたミライにはこれはまさに神秘的ともいえる空間であった。
彼女はドックの二階の通路の部分で立ち止まって、見下ろすように眺めているところだ。





686:03/01/09 06:40 ID:???



ゆっくりとキャットデッキからミライは降りた。後ろにソシエを背負っているので慎重にリフトを使う。
「それにしても・・・凄いわね・・」
ミライは嘆息した。
通路も凄かったけれど、ここの世界はなんと言うかその広大さの所為か、圧倒される。
さっきから色々、幻想的な光景を眺めてきたから多少のことでは驚かないつもりだけど、ここはまた今までとは別だ。
光が足元から私たちを照らしている事実。天井からも霧雨の様にそれは降り注ぐ。そして、それは人という存在の全てを鮮やかに照らし出す。
白い。
全てが。雪、もしくは肉を極限まで削ぎ落とした後の骨のような鮮やかな白の空間。
私もおそらくその中で白くなっているだろう。



リフトから降りて、ミライはそのまま歩く。
別に目的があるわけではない。アムロにはここに来てください、といわれただけだ。
ミライはざっと辺りを見渡す。モビルスーツの他には何もない。
どうやらアムロはまだ来ていないみたいだった。








687:03/01/09 06:58 ID:???



「アムロ・・いないわね。」
ミライは自分に確認するようにいった。広い空間に自分の声だけが響く。
念のため、もう一度辺りを見渡す。ふと、視界の隅のほうで何か動いた気がした。
誰か、人がいる。

ミライはその人影の方に歩く。
遠くて判らないというわけではないけれど、光がぼんやりと照らしあげている所為ではっきりとはわからない。
金色の髪だ。立ち止まってじっとしている。
金色?金色の髪?
シャア?!
ミライは一瞬身構える。
腰に手をやるがそこに拳銃はない。通路にあるのを拾っておけばよかった、とミライは悔やむ。


が、冷静にその人物をみればどうやら子供のようだ。体型でわかる。シャアにしては低すぎる。
金髪で・・子供となると・・

「ウッソ・・・?」

光に照らされている金髪の少年を見つけて問いかけた。が、返事は無い。
幻想的な中に一人、モビルスーツの足元に立っている彼の姿はどこか不安定に見える。
ミライは彼に近づく。






688:03/01/09 07:10 ID:???



「・・ウッソ・・」
ミライは彼の姿を間近で確認して、思わず息を飲む。




彼は白いTシャツを着ている。
けれど今そのTシャツは黒ずんだ血がべっとりと染み付いている。
涙で濡れた瞳。小刻みに震えている唇。脇腹をおさえている手。そこから覗く微かな赤。
彼の目は、モビルスーツをじっと見据えている。何か物思いに沈んでいる。足元にはバックが一つ置いてある。
こちらの声はまるで聞こえていないし、まったく気がついてもいないようだ。
その痛々しい姿は、ミライに少年に起きた出来事を容易に推測させる。



689:03/01/09 07:27 ID:???


この子もソシエと同じく何かを体験してきたのね・・。
ミライはそう思う。目の前のウッソと、背中のソシエが重なって見える。少年と少女の哀しみが前後から伝わってくる。ひしひしと。
そして、何も助けてあげられない自分に嫌気がさす。背中におぶっているソシエの体温を感じながらミライは強い無力感を感じる。



「あれ・・?ミライさん・・・?」
ウッソが漸くこちらに気がついたのか、不思議そうに声をかける。
「いつの間にこんな近くまで・・・・けど、よかった。助かったんですね・・」
心から安心したような口調でウッソはいった。
ミライはそんな少年の様子を痛々しく思う。この子はこんなときでも他人の心配をしている。


「なんとかね・・。ウッソの方も。・・・よくここまでこれたわね・・通路は暗くなかった?」
「ええ、部屋から外にでたら、そこも暗くてビックリしました。どこか艦の調子が悪いのかと思って。
けれど、ドックへの道筋は覚えていたので比較的簡単にここに着くことができたんです」
そういってウッソは辺りを見渡す。
「ここも・・ドックがこんな事になって驚きました。けど、何かとても綺麗ですね・・」


690:03/01/09 07:40 ID:???


「ええ。確かに綺麗ね。・・ウッソ、その脇腹の傷・・深いそうだけど・・大丈夫なの?」
「だ、大丈夫です。さっき一応簡単な手当てはしましたし、傷もそんなに深くなかったですから。出血ももう止まってます。」
そういいながらも左手は脇腹から動かさない。ミライは眉をひそめる。
「けど、・・痛そうよ。ちょっと見せてみなさい」

パシ!

その言葉と一緒に伸ばしてきたミライの手をウッソは反射的にはたいていた。
「ウッソ・・?」
「ゴ、ゴメンナサイ!けれど、今はちょっと触って欲しくないんです」
申し訳なさそうな顔をしながらもウッソは、はっきりと言った。そこに強い拒絶を感じる。



「そう・・あなたがそう言うのなら干渉はしないわ・・・本当に大丈夫なのね?」

ウッソは黙ってうなずく。
その様子を見てミライはとりあえず今は少年の好きにさせた方がいいだろうと判断する。
おそらく彼にとってこの傷は、ある種の意味を持っているのだろう。
それもかなり重要な要素として、彼に刻み込まれている。
肉体的にも。精神的にも。それはウッソにとって印として痕に残る。そして彼はそれを望んでいる。
ミライはそんなウッソの気持ちを察してまた哀しい気持ちになる。
どんな傷も、結局はただの傷に過ぎない。それに意味を賦与することは好ましいことではないのだ。


691 :03/01/09 07:45 ID:???
 
692:03/01/09 07:46 ID:???




そんなミライの気持ちをしってか知らずかウッソは、ミライが背中におぶさっている少女を心配そうにみる。


「ソシエさん・・大丈夫なんですか?」
「ええ、ちょっとさっきまで不安定だったんだけど、今は落ち着いて寝てるわ。・・大丈夫よ」
「それならいいんですけど・・」
ウッソはソシエから目を離さないで、そういった。


693:03/01/09 07:52 ID:???



「ミライさんもアムロさんの声を聞いてドックにきたんですか?」
「そうよ。ウッソもやはりそうなのね?」
「はい。突然アムロさんの思惟が僕の中に入ってきたような感覚がして・・」


ウッソがそう言いながら、ミライの顔を見る。
やはり、といったのが気になったのだ。ミライはどこか懐かしげな顔をしてその疑問に答える。


「・・昔、一年戦争があったときにもこんなことがあってね。アムロの声のおかげでホワイトベースの乗員は皆助かったの。
おそらく今回もそれとおなじかもしれないわ・・アムロはそういったことができる人なのよ・・」
「それじゃあ、この艦の他の皆さんも、少ししたらこのドックに集まってくるかもしれませんね」
ウッソが希望的観測を口にする。





それはない、と思う。



694:03/01/09 07:59 ID:???



「そういえばロランもいないみたいだし。皆さん一緒じゃなかったんですか?」
ウッソがそう質問する。


「それは・・・」


ミライは言いよどむ。先程、ドックにくる途中で見た光景を思い出す。
あの血の匂いと残ってた生命の残滓を思う。
ロランの姿ももちろん途中で見ることができた。そして彼は間違いなく・・死んでいた。
彼の瞼はしっかりと閉じられていた。辺りは薄暗く、ぼんやりとしていて、それが彼の死を具現化しているように思えた。
背中にいるソシエが目覚めるといけないからすぐにその場は離れたけれど。




695:03/01/09 08:24 ID:???



「ちょっと・・はぐれちゃってね・・それより、ウッソ。
あなた、私に気がつくまでじっとモビルスーツを見ていたわよね?いったい何を考えていたの?」
われながら苦しい話題逸らしだ、とミライは思う。けれど、今ここで、そういったことを彼に教えるのはあまりよい結果を残さないだろう。
ソシエもいつ起きるか判らないのだ。それにこの少年の精神もそんなに安定しているとは思えない。


ウッソは、けれどそんなミライの苦し紛れの質問にいたって真面目に答える。


「・・カサレリアのことを考えていたんです。ほら、ここって今、まるで冬の雪景色のようじゃありません?
そこに異質的な存在としてあるモビルスーツっていうのは僕にとっては懐かしいと感じられるものなんです。
カサレリアにもこういったものがあるんですよ。山のところにビクトリーガンダムを置いているんです。二機。
冬になるとそこら中が雪で覆い尽くされて、白くなる中で、これだけは何とか判るんです。半分だけ露出してて。
その姿を見ながら、僕は雪が全てを覆い尽くしてくれたらいいのにっていつも思っていたんです。」
そういってウッソは少し笑う。


「・・嫌な思い出と共に、雪がガンダムを全て覆ってくれればいいのに埋め尽くしてくれたらいいのにって。
けれど雪はモビルスーツを全て覆い尽くすまでは降りません。だから、冬になると僕は半分だけ埋まったモビルスーツの足元にたって眺めていたんです。
ガンダムは別に好きじゃなかったし、むしろ嫌いなぐらいだったんですけど見てると何故か落ち着いたんです。」
ウッソは目の前のモビルスーツを見上げる。F91。10日前、ここでロランとジュースを飲んで話していたことを思い出す。
一瞬目を瞑り、また開くと話を続ける。

「・・今、こうしてモビルスーツを眺めていると、あの時の僕自身やらシャクティ・・幼なじみです・・と暮らしていた日常のことをリアルに思い出させてくれて・・
だから、さっきはそういったことを考えていたんです」



696:03/01/09 08:53 ID:???



「そうだったの・・大丈夫。きっとカサレリアに帰れるわよ」
そうウッソに言いながらも気休めだ、とミライは思う。
帰れるわけがない。私たちは捕らわれているのだ。
この艦にある見えない触手に、しっかりと絡み取られている。束縛されている。
私たちはいわば・・胎内にいるのだから。それを私は感じている。



脱出はできない。それは直感であるけれど、間違いないように思えた。
それじゃあどうしてアムロはドックに私たちを呼んだのだろう?
ミライは再び思索に入り込む。




「脱出はできますよ。ミライさん」






突然、アムロの声がミライの背後から響いた。




697:03/01/09 09:03 ID:???



*******

ここまででまた、一区切りです。
このペースでいければ、あと4回ほどで完結予定です。最後までどうかお付き合いの程よろしく御願いします。


698通常の名無しさんの3倍:03/01/09 09:53 ID:ooDo0XsY
おもろいよーまじでほんとに
699通常の名無しさんの3倍:03/01/09 10:30 ID:???
1さんキタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(   )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!
ウッソ…・゚・(ノД`)・゚・。  
ミライさん大人や〜…ミライさんだって辛いはずなのに。

どうなってるのか、これからどうなっちゃうのか
激しく期待してます。






700通常の名無しさんの3倍:03/01/09 11:18 ID:???
ああ〜
ああ〜
言葉にできない〜
701通常の名無しさんの3倍:03/01/09 12:28 ID:???
>>1さん
何があんたを突き動かしてこんなもの(誉め言葉)を書かせて
いるんだよ
702ろうろん:03/01/09 16:19 ID:???
面白いですね〜あいからわず先の展開が読めなくて次の話を
早くみたいと思います。
う〜ん今生き残ってるのは・・・アムロ、ソシエ、ウッソ、ミライ、シャア?
だから・・・あの写真を見て考えると・・・MS戦でも始まるのかな?
703通常の名無しさんの3倍:03/01/09 17:05 ID:???
あ、たった今すごい事実に気付いてしまった。
いや、話の中の矛盾じゃなくて。
>>1氏はすげぇなぁ。漏れじゃこういったものは書けないよ。
704通常の名無しさんの3倍:03/01/09 18:38 ID:???
凄い・・・
705通常の名無しさんの3倍:03/01/10 00:08 ID:???
こんな良作は2chにはもったいないような気もしないでは
ないが
一般HPに置くと日昇(あと創痛)がうるさいので仕方ないな
706通常の名無しさんの3倍:03/01/10 02:41 ID:???
>>705
ログうpはまずいかねぇ?
707通常の名無しさんの3倍:03/01/10 11:43 ID:???
1さん、これだけは言わせてくれ


1さん最高!!

保守age
708通常の名無しさんの3倍:03/01/10 13:02 ID:???
パート1のログはVスレ保管庫にあるよ。
逃したやしはチェック。
709 :03/01/10 14:00 ID:???
ありがたやありがたや……
ttp://vgun2ch.tripod.co.jp/
710通常の名無しさんの3倍:03/01/11 01:35 ID:???
保守
711通常の名無しさんの3倍:03/01/11 13:47 ID:???
こんな時間に圧縮はないだろうが
万一に備えて保守
712通常の名無しさんの3倍:03/01/11 20:14 ID:???
age
713通常の名無しさんの3倍:03/01/11 20:16 ID:OlFQK+q+
sage
714通常の名無しさんの3倍:03/01/12 00:36 ID:???
週末保全
715通常の名無しさんの3倍:03/01/12 11:34 ID:???
age
716:03/01/12 18:00 ID:???



「アムロ・・?」
その声に、ミライは後ろをゆっくりと振り返る。
ウッソがそんなミライを疑わしげにみる。ウッソにはどうやら何も聞こえなかったらしい。






ドックの向こう側・・ミライがきた通路と反対の方向から、2人の人物がゆっくりとこちらに歩いてきている。
パイロットスーツを着込んだ男と、民族衣装のようなひらひらした服を着ている少女だ。
当然一人はアムロだと思う。確かに彼の声が聞こえたからだ。
正確には声ではなく思惟だが。

アムロは右手に何か大きい袋を持っている。
だが、もう一人の人物がミライには誰か判断できなかった。褐色の少女。
ミライはおかしい、と首を捻る。あんな目立つ少女がいたらすぐに気がつきはずだが、一度も見たこと無い。
あの少女は誰?







717:03/01/12 18:05 ID:???


「ミライさん。あれアムロさんですね。」
ウッソもミライに話し掛ける。
「そうだと思うわ。けど、もう一人の子が誰なのかわからないわね。あんな子、クルーにいたかしら?」
「さぁ・・ちょっと僕にはわかりません。けど、アムロさんと一緒ってことはそうなんじゃないですか?
ここは宇宙だから、外部の人間とは考えられませんし。そうとしか考えられないですけど。」
正論である。確かに艦内の人間としか考えられない。




「そうよね・・私の記憶ミスね。」
そういいながらも、ミライはどこか違和感を感じる。
私の中の何かがあの存在を激しく異質的に捉えている。
完全な光の中でこちらに進んでくる少女の姿を、どこか間違っていると感じる。






あの少女はここにいてはいけないもの存在だと。
禁忌的存在。




718:03/01/12 18:08 ID:???



だが、とりあえず二人が近づいてくるのを待つ。一、二分で来るだろう。
ミライはその間にソシエを降ろして、寝かせることにする。無論、無重力だから背負っていても重くはない。
けれど彼女を背中に乗せたまま喋れば、せっかくぐっすり眠っているのに起きるかもしれない。
それは避けたい。ソシエには今は、静かな眠りが必要なのだ。



ウッソがバックから厚手のシャツを出して、ミライに渡す。
ミライはそれを受け取ると、ソシエをゆっくりと起こしてそのシャツを着せた。
別にドックは寒くは無いが、確かに何かもう一枚ぐらい着せていた方がいい。暖かい方が落ち着くだろう。
ミライはウッソをしゃがみ込んだままみる。ウッソは立ったままなので必然的に見上げることになる。


「ありがとう。用意がいいわね。」
「そんなこと、ないですよ。ただ、ボクは部屋にいたからバックを持ってこれただけですから・・」
「あら、偶然でもそこに気が着くことが大事なのよ?女性に優しいことはいいことよ。」
「・・ボクは優しくなんてありませんよ。・・無我夢中だったとはいえ、ボクは取り返しのつかないことを
してしまったんですから」


そういってウッソは酷く暗い顔をする。ミライはその表情を見つめる。
どうやら今は、この子にはこういった会話は止めておいた方がいい、とミライは思う。
おそらくその脇腹の傷も何かそれに関係があるのだろう。哀しみの傷跡。
ミライは溜息をつく。いったいこの艦にはどれだけの哀しみが含まれているのかミライには判らない。



719:03/01/12 18:17 ID:???



「遅くなってすいません。二人とも無事にこれたんですね」


突然、上のほうからアムロの声がした。
いつのまにかアムロが隣まで来ていたらしい。
ミライはなんきなしに顔を上に挙げた。だが、ミライはアムロの顔を見て驚く。
別にアムロの顔が血塗れだとか、そういったことではない。アムロはいたって普通だ。
ただ一点を除いて。







若いのだ。
目の前のアムロ・レイの姿は、一年戦争の頃、あの少年兵の姿に立ち返っている。
戻っている。彼の瞳はあの頃のピュアさを内在し、彼の声も微かに高い。少年期特有の声。
隣に立っているウッソとあまり身長も変わっていない。肌の血色もいい。
乗艦してきたときアムロは確かに成長した姿だった。ミライは思う。
じゃあ私が見ている、今のこの姿はなんなの?


こんなこと、ありえない。
真っ白な空間に優しく包まれながら、ミライはポツリと呟く。
これは、なにか酷くよくできたジョークの様に思えた。

720:03/01/12 18:23 ID:???



アムロにはそんなミライの呟きがきこえなかったのか、はたまた無視したのか。
彼は二人に明るく話し掛ける。


「ちょっと食堂によって食べられるもの探してきてて。暗くてよくわからなくて手間どってしまいましたけど。
二人ともお腹すいてますよね?食欲ありますか?」


丁寧な口調。まるで病人をいたわる医者のようにアムロは話す。
彼は、右手に持っていたでっかい袋を軽くひろげて見せた。ミライは中を覗き込む。
中には固形食糧・・宇宙食のほかに、チョコレートや缶詰がはいっていた。
それとミネラルウォーターやジュースのパックといった飲料系も大量にはいっている。
そして袋に右手を突っ込むと、チョコとオレンジのパックをみっつ取り出してウッソとミライに一つずつ渡した。
ウッソとミライは困惑しながらも受け取る。
渡されるときミライはアムロの手をみた。やはり少し小さい。
アムロはそんなミライににっこりと微笑む。
けれど、その笑顔はどことなく不自然に感じられた。




721:03/01/12 18:25 ID:???


「ほら、どうしたんです?ミライさん、飲まないんですか?ウッソも?」
オレンジのパックを開けて、ストローをくわえながらアムロはいう。

その声に促されてウッソとミライもオレンジのパックを開ける。ストローを口にくわえ中の液体を飲む。
冷たくておいしい。
久しぶりに飲むオレンジは甘くて、身体の隅々まで染みとおる。
ミライは自分がこんなに喉が渇いていたことに気がついた。そう思うと、余計のどが張り付くようだ。
ゴクゴク、とパックを飲み干す。
そしてチョコレートを口に含む。
オレンジとは違った少し苦味のある甘さだ。ビターチョコレイト。
甘さとビター感が絶妙にマッチしている。
それをボリっと食べる。皆、無言で食べる。


五分後には三人とも食べ終わっていた。


「二人とも、もういらない?」
アムロが、二人に尋ねる。
ミライとウッソは頷く。確かにおいしいけれど、これ以上欲しいとは思わない。
「アムロ・・一体どういうことなの?あなたは全てわかっているんでしょう?」

ミライはたまらなくなって尋ねた。もう限界だった。


722:03/01/12 18:31 ID:???



「そうですね・・・どこから話したらいいのか・・。」
そういいながら、アムロはウッソの方を見る。
ウッソは何もわからないし、そもそもこの現象の重大性に何も気がついていないようだ。
おそらく彼は今は、自分のことでまだ一杯なのだろう。
それも当然のことだろうとアムロは思う。




「あの・・少女のことから説明してくれるかしら・・アムロ」
ミライが厳しい視線で、三人から少し離れた場所・・二十メートルはあるだろう・・でこちらをみている少女を指差していった。
少女は無表情でこちらをながめている。そこには何も感情は感じられない。




「ララァが・・・見えるんですね・・」
アムロが静かにいった。表情が変わった。
先程の明るさがまるで仮面の様にポロリと取れたようだ。
その下にあるのは・・哀しみと微かな絶望?




723:03/01/12 18:34 ID:???



「それとあなたが・・どうして一年戦争当時の姿に戻っているのかも・・」
ミライは更に続けていう。それと同時にララァという言葉をどこかで聞いたことがあるように思えた。
・・けれど、思い出せない。自分の頭は現在ほとんど働いていないようだ。
モビルスーツにもたれ掛かっているアムロを見つめる。
ミライは立ち上がる。


彼・・アムロの現在の身長はミライとほとんど変わらない。
ミライはそんなアムロの姿をみていると、自分が本当に正しい姿なのかわからなくなってくる。アムロの方が正常なのではないかと思える。
もしかしてここはホワイトベース・リベンジではなくて、ホワイトベースの艦内じゃないのかと思えてくる。
今は、実は一年戦争の最中で、私たちはジャブローに向かっているところではないのかと錯覚してしまいそうになる。
今までの私の日常は全て夢じゃないのかと。
一年戦争の最中にみた幻想。
いや、違う。
ミライは首を振る。
一年戦争は過去の話だ。そう思うのは逃避だ。現にブライトもカイもセイラもここにはいない。
ミライは目を擦る。光を遮断する。
辺りの眩しいまでの純粋な光が私を混乱させている。





724通常の名無しさんの3倍:03/01/12 18:44 ID:???
  
725:03/01/12 18:46 ID:???


アムロは答えない。が、微かに何かを呟いた。
「・・そうか・・僕が・・そう見えるんだ・・やっぱり強制的な・・」
ミライには彼の声は断片的にしか聞こえなかった。
彼はウッソの方をみる。そして言った。


「ウッソ、今から何が起こっても君は動かないでくれ。
僕とミライさんの話だから。そこで休んでおくといい。あまり動くと痛むだろうし。」
アムロはそう言って少し笑う。ウッソは困惑しながらも、ただ頷く。




そのウッソの返答を確認するとアムロは一瞬目を瞑った。
彼は少し躊躇ったかと思うと、その腰にさしてあった拳銃をゆっくりと取り出した。
鈍く光る拳銃。先程ギレンに突きつけたものだ。
アムロはそれをじっと眺める。
そして、その銃口をミライに向ける。
「アムロ・・・?」
ミライはその行為の意味を理解できない。


アムロは、ちらり、と向こうにいる少女を見る。が、すぐに視線をこちらに戻す。



726:03/01/12 18:50 ID:???


アムロは冷たく言い放つ。



「動かないで下さい・・。
もちろん僕は全てを知っています。それを教えるのは簡単です。
けれど、その前に、あなたの考えを聞かせてもらえませんか?ミライさん。
この艦の現象について、多少の検討はついているんでしょう?

ブライト艦長から一体どの程度まで、聞いていたのか。把握していたのか?
そしてその上で、この計画にあなたは賛成したのか?
それを聞かせてください。・・そのために僕はあなたを呼んだのですから。
そして、その返事如何では、僕はあなたをここで殺さなければいけないかもしれません。」



アムロは哀しそうに彼女に宣告する。
その言葉は嘘ではない。




727:03/01/12 18:58 ID:???



「え・・ア、アムロ・・あなた何処か思い違いをしているんじゃないかしら」
ミライはそう答える。だが、その声は微かに震えている。

「とぼけないで下さい!」
アムロは拳銃を撃つ。
弾丸がミライの頬をかすめる。血がミライの頬を濡らす。
アムロが言う。

「僕は・・シャアから全てを聞きました。
ブライトの計画を・・あなたも共犯なんでしょう?そうですよね?
それにしても驚きましたよ。僕は信じられませんでした。まさかありえないと思いましたよ。
一緒に死線をくぐった戦友をまさか、とね。
ねぇ、ミライさん?そう思いません。







   貴方達が 僕を呼んだ理由が、僕を殺すためだったなんて。   


                                                    」
 
                                      

728:03/01/12 19:06 ID:???




















*****************


ここで区切ります。
次回、ようやく八章のラスト(>>78)の続きに場面が移ります。
10日前の二人、仕官部屋でのアムロとシャアの会話です。長かったですが、ここが核心です。
シャアは一体何をいったのか。アムロは何を思ったのか。
クライマックスは目前です。



729通常の名無しさんの3倍:03/01/12 19:27 ID:???
>>1さん
キタ━━━━━(゜(゜∀(゜∀゜(☆∀☆)゜∀゜)∀゜)゜)━━━━━!!
730通常の名無しさんの3倍:03/01/12 19:28 ID:???
1さんほんっっとすばらしい!
731通常の名無しさんの3倍:03/01/12 19:35 ID:???
何て言っていいか言葉が見つからない…。厨だけどAAで表現      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※ ☆  .☆ ※  ※ ☆ ※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
  * ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※☆  .☆※  ※ ☆ ※ *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
えええええええ〜!!!!??て感じです。
続きが激しく気になる!!!いつも以上に!!
732kanrinin:03/01/12 21:33 ID:???
今まで、ずぅぅぅっと見てましたが。
これがどんな話なのか理解できません(w
俺が低脳だとつくづく思った(笑)。
733通常の名無しさんの3倍:03/01/12 22:06 ID:???
1さん乙!!!!!!!!!!!
どうなっちゃうんだ!!
734通常の名無しさんの3倍:03/01/12 22:28 ID:???
アムロ殺害計画キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
735通常の名無しさんの3倍:03/01/12 22:36 ID:???
マジ凄い!
736通常の名無しさんの3倍:03/01/12 23:19 ID:???
ホントすげっす!!!ああ続きが・・・!!
737ほげら〜:03/01/13 00:52 ID:glH0DJLm
うぉぉぉおぉ!すげぇ。
1さん、結構書くの大変だったに違いねぇ。
留年かかった再試の前に 
覗いてみたら神をみた。
738。・°°・(≧□≦)・°°・。:03/01/13 10:15 ID:???
乳タイプ抹殺計画でつか?
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
739通常の名無しさんの3倍:03/01/13 12:09 ID:???
続きが気になって氏にそうだ
マジで!!!
740ろうろん:03/01/13 12:21 ID:???
本当に面白いですね〜というかこんな展開になるなんて全然読めませんでした!
アムロ殺害がブライトの計画だなんて・・・なぜ?どうして?状態です。
続きがんばってください>>1さん!!
741通常の名無しさんの3分の1:03/01/13 17:21 ID:???
      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※ ☆  .☆ ※  ※ ☆ ※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
  * ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※☆  .☆※  ※ ☆ ※ *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
す、凄いですよ、1さん!
とりあえずキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━花火を。
まさか、こんな展開になるとは・・・・・・。
742通常の名無しさんの3倍:03/01/13 21:37 ID:???
ペレストロイカ
743通常の名無しさんの3倍:03/01/13 21:52 ID:???
大王イカ
744シーBOOK:03/01/14 00:38 ID:???
抵抗するんじゃない、ageっちゃえよ
745シーBOOK:03/01/14 00:39 ID:???
抵抗するんじゃない、ageっちゃえよ
746通常の名無しさんの3倍:03/01/14 17:05 ID:???
一応保守しとこ
>>737
亀レスだが、試験がんがれ。他人事とは思えんw
747通常の名無しさんの3倍:03/01/14 23:19 ID:5CkfxKAn
下がりすぎだと思われ・・緊急age↑
748通常の名無しさんの3倍:03/01/15 00:36 ID:???
>>747
スレ保全にageは不要
書き込みがあれは落ちないの
749:03/01/15 04:40 ID:???
>731 >>741
キター花火が二連発。綺麗です。
いつも待ってていただいて、どうも有難うございます。

>>732
どんな話かと言われると・・うーん・・
いや、カンリニンさんが低脳とかではなく、私の文章表現能力が不足しているんです。

>>735
そういってもらえると書くときの疲れがなくなります。本当に。

>>737
再試?・・が、頑張ってくださいね。
留年しちゃ大変ですから・・

>>738 >>739 
さて、どうでしょう・・もうしばらくマターリとお待ちください。
答えはもうすぐです。

>>740
アムロはミライを助けるためによんだ一年戦争とは違い、
ミライを殺害するために呼んだのです。無論、アムロが彼女を「黒」だと判断すればという条件つきですが。

>>746
保守してくれて助かりますです。



皆様、いつもたくさんのレス有難うございます。中々返事のレスができなくてすいません。
本編の方は申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。

750通常の名無しさんの3倍:03/01/15 10:39 ID:obYG8pi3
あがれ
751通常の名無しさんの3倍:03/01/15 20:36 ID:???
あんまり無駄レスはしたくないけど、
スレ保持数も減ったみたいなので保守
752通常の名無しさんの3倍:03/01/16 01:53 ID:???
ウザイ馬鹿降臨中。

保全しとく。
753山崎渉:03/01/16 07:39 ID:???
(^^)
754通常の名無しさんの3倍:03/01/16 15:02 ID:???
保守(・∀・)
755ぼるじょあ ◆yBEncckFOU :03/01/16 20:43 ID:???
(・3・) エェ〜保守しとくYO!!
756通常の名無しさんの3倍:03/01/16 21:23 ID:???
史上最高保守
757通常の名無しさんの3倍:03/01/16 21:24 ID:???
ageちまった・・・スマソ
758通常の名無しさんの3倍:03/01/17 02:33 ID:???
保守
759通常の名無しさんの3倍:03/01/17 12:34 ID:???
hosyu
760通常の名無しさんの3倍:03/01/17 12:48 ID:???
このスレ初めて覗いたけど
すげぇ・・・ふるえが来た
761通常の名無しさんの3倍:03/01/17 21:19 ID:???
保全
762通常の名無しさんの3倍:03/01/17 22:17 ID:???
ほしゆ
763通常の名無しさんの3倍:03/01/18 01:27 ID:???
次スレまでもつれ込むかな?
764通常の名無しさんの3倍:03/01/18 12:05 ID:???
スレ保守隊出動中
765通常の名無しさんの3倍:03/01/18 18:42 ID:???
内容とは関係ないけど、1さんって食事の場面物凄く
美味しそうに書かれますよね〜。
そゆ場面見るといつも何か食べたくなるのです。
と、下らないことを書きつつ
今日は大変危険な気がするのでこまめに ミ・д・ミ <ほっしゅほっしゅ
766通常の名無しさんの3倍:03/01/18 20:07 ID:???
前にもカキコしたがあんときはマジでクラッカー食いたくなった。
で、実際食ったもの。
保守

センターヤバイヨー
767kanrinin:03/01/18 21:58 ID:M+As9leA
すまんが、ここらでageさせてもらう。
下がりすぎと思うので。つーか、久しぶりな。
768通常の名無しさんの3倍:03/01/19 00:37 ID:???
保守
769通常の名無しさんの3倍:03/01/19 02:28 ID:???
>765-766
同意。
池波正太郎クラスの才能だと思う。

そして保守。
770通常の名無しさんの3倍:03/01/19 12:26 ID:???
>>769
鬼平犯科帳や必殺仕掛人読んだせいで和食党になった俺(W
771kanrinin:03/01/19 17:30 ID:2KoG2vSa
400以下は今危険ナリ。
772通常の名無しさんの3倍:03/01/19 18:42 ID:???
このスレ1000イクまでに終わるかな?
773:03/01/20 01:02 ID:???






「いや、僕を殺すため・・ていうのは変ですね。貴方たちの目的は他のところにあったのだから・・
結果として、といったところかな・・・」




アムロの声が、ガランとしたドックに響く。
その声はこの白く飽和されたドックの中で、ただ一つ確かな質量を持つ。
ミライは首を振る。



アムロの声は昔を思い出させる。
あの少年の声で。一年戦争の時の様に、私に語るのは卑怯だと思う。
哀しそうな目で彼女を見る。その瞳の前に、ミライは視線を逸らさざるをえない。
彼女は裁かれているような感覚に陥る。
いつの間に自分はこんなに弱くなったのだろう、とミライは思った。
・・強くなったつもりなのに。泣かなくなったのに。


774:03/01/20 01:03 ID:???



「私は、私は、止めたのよ!ブライトが・・
あの人がこれしか連邦を抑止する方法はない!っていうから・・」

それに、ミライは続ける。


「それに、私は彼から、すべてを聞いたわけではないのよ!
ただ、この艦を強奪して、時機がきたら、アムロを・・殺して・・
そうしたら、全ては上手くいく・・と聞いていただけなの!彼が教えてくれなかった!
だから、この今の艦の現象を見ても、ただブライトが言っていたシステムの稼動だとしか、わからない!」

声が、震えている。
「だから、私を責めないで・・」
それは、祈り。



アムロは何も言わない。ただミライをその瞳で見るだけだ。



775:03/01/20 01:08 ID:???


静寂が辺りを包みこむ。


それは先程までここを支配していた冬の朝のような柔らかな静寂ではなく、夜の月の様に、硬く重い沈黙として深く沈みこむ。
ウッソはそんな二人の光景を声もなく眺める。彼にはこの艦の全体象が見えていない。
だけど、今、何か重要な、とても大事な会話が起こっていることは理解できた。
だから、黙っている。
足元で寝ているソシエが微かに動いたのを感じる。意識が戻ったのかもしれない。
けれど、ウッソはこの二人から目が離せなかった。
少女から「ロ・・ラン・・」と呟いた声が聞こえた気がした。酷く哀しげなトーン。
それで、ウッソは、あぁ、ロランはもう死んでいるんだな、と悟った。


また、涙がこぼれそうになった。
けれど、もう泣かない。ボクはさっき誓ったんだ。ウッソは思う。
モビルスーツを見上げた。視界に入るF91の姿は、微かにぼやけている。




「貴方は・・病んでるんですね・・
けれど、それが母の愛ゆえだというのなら・・理解はできます・・」

そして、アムロは語り始める。シャアとの最後の邂逅を、全て。



776:03/01/20 01:14 ID:???

****************************************








士官室。








第二種戦闘配備の音が鳴り響いている。
アムロにはその戦闘配備の音がとても遠くで聞こえていたように思う。
遥か遠い世界の音として。
彼の頭の中では、別の音、運命の車輪が静かに回転している音が響いている。
馴染みのある、違和感のある血の匂い。それがねっとりと纏わりつく。


アムロはシャアを見ている。大量の血にまみれている。
血にまみれたシャアの目が、また自分を鋭く射抜いている。
そのとき彼は一瞬、部屋の後ろの方に視線を逸らす。そしてその空間にそっと微笑んだ。
まるで恋人にするかのように優しく、けれど憂いを込めて。

777:03/01/20 01:16 ID:???



シャアの視線がまたこちらに戻る。
彼の口蓋がゆっくりと開き言葉を発する。




「今から私が喋ること・・・よく聞いておくんだな・・アムロ・・」






そしてその言葉を聞いた瞬間に、頭の中の車輪の音さえもどこかに四散する。
警報の音も。何も聞こえなくなる。ガラス板でまるで自分とシャアだけを隔離した様に。
シャアの言葉以外は実体をもたなくなる。



778:03/01/20 01:18 ID:???


シャアは話す。


「まず最初にいっておくが・・
この艦が、連邦の特殊な任務を受けてある目的地に向かっているというのは、ブライトの嘘だ。
彼は・・正確には、ブライトとミライは、己の私怨のためだけに現在この艦を使っている。」

話しながら彼は、自分の顔に付着している血液を手の平で拭う。
「なんだと?突然何をいいだすんだ?」
アムロは困惑する。嘘だって?
帰ってくるなり一体何を言うんだ、と思う。



「まぁ、聞くんだな。質問があれば後で聞こう。もっともその時間があればの話だがな・・
つまりだ。この艦は現在、地球連邦の指揮によって動いているのではなく、ブライトの意思で動いているということだ」
シャアがもう一度噛み締めるようにいう。
彼は扉の壁を背にして立っている。
この部屋の明かりは非常灯の一つしかついておらず、とても暗い。彼はしかもその明かりを背にしている。
そのため、表情ははっきりとは見えない。



779:03/01/20 01:21 ID:???


「虚言は止めろ!なんだ?なんの根拠があってそんなことを言う?」
「根拠ならある。ブライト艦長の部屋にあるパソコンのデータを調べてみるんだな?
そこに連邦との通信記録がある。疑問ならば、それをみればいい・・・わかったら、今は私の話をきけ。
時間が無いのだ。
ブライトは連邦の許可なく出発した。これはいいな?そして、これは明らかな命令違反だ。
となると、当然ここで疑問がいくつか浮かんでくる・・
まずこの航海がブライトの私怨というのならば、一体その目的は何なのか?それが、まず第一の疑問。
それに、何故彼は、我々パイロットをここに集めたのか?それが第二の疑問。
まずはこの二つから説明していく。」


シャアは一方的に話を進める。
それを不愉快に思いながらも、アムロは何も言うことはできなかった。
室内の温度が微かに上がったような気がする。
むやみに喉が渇くので、右手にまだ握り締めていたボトルから水をグイッと飲む。
もうヌルイ。残りの四分の一ほど飲む。
まぁ、いい。本当かどうかはその後判断すればいい。
喉の奥に流し込みながら、そう思った。


シャアは喋る。
「まず彼の目的は、この艦をある地点に持っていくことだ。
だが、それはブライトが言っていたような三ヶ月もかかる遥か遠方の場所ではない。もっと近いところだ。
けれど、それにもかかわらず三ヶ月はかかる・・それも真実だ。が、それは後で説明する」


もっと近いところ?何処だ?


780:03/01/20 01:23 ID:???




「次に第二の疑問についてだが、これには二つの理由がある。
一つは、もちろん艦を守るための戦力としてモビルスーツを操縦させるため。
・・現に我々は既に一度、不審な艦からの攻撃を受けている。これが一つ。

もう一つは・・これが本当の理由だが、我々をこの艦のシステム稼動の材料として使うため、だ。」

「システム稼動?それは何だ?」


シャアはそこで一つ息をつく。
そしてアムロの顔をじっと見つめる。




「我々は道具なのだ。この艦が起動するための」
「道具・・だと?」
シャアは頷く。



781:03/01/20 01:25 ID:???



「駒といってもいい・・ニュアンスは同じだ。順を追って話そう。アムロ・・サイコフレームを知っているな?」
「サイコフレーム?ニューガンダムや、貴様のサザビーに使われているあの金属のことか?」
「そうだ。サイコミュ機能を持つチップを粒子レベルにまで分解加工し装甲板に直接組み込んだものを指している。
一般にニュータイプといわれるパイロットの思考や感情を直接MSのコントロール系に伝達することができる。」
それは知っている。


「そのサイコフレームがいったいどうしたというんだ?」
「これがこの艦のシステムの核として存在している。」
「核?」
アムロには理解できない。
サイコフレームがなんだって言うんだ?



「単刀直入に言う。
この艦の装甲は全てサイコフレームによって構築されている。
そしてこの艦は・・抽象的な言い方だが  ニュータイプ専用  の艦なのだ。」


782:03/01/20 01:28 ID:???

「ニュータイプの専用?サイコフレームによって構築されている、だと?」
「そうだ。例えば、この部屋の壁も、宇宙に接している外壁も通路の内壁にも全てサイコフレームが鋳込まれている。」
「バカな・・そんなことをして何の意味があるというんだ?それに何故それがニュータイプ専用の艦となる?
この艦にいる者の意思をつかうというのか?」


「我々の意思だけではない。
正確にはこの広大で無限といわれる宇宙に飛散している思惟をも、この艦は吸収することが出来る。
集めて一つにすることが出来る」
あの時のこと・・忘れたわけではあるまい、とシャアは片眉をあげて言う。


「宇宙は戦争により汚れすぎた。人も死にすぎた。宇宙で何億の人が既に死んでいったか判らない程にな。
・・この宇宙に死んでいった人類の意思が、魂が、拡散していないとは言い切れまい?
人の意思が死んでもなお存在するのならば・・現に我々はララァの存在を感知できるのだ。
そしてそれを支配すればいったいどういうことができるか・・
例えばカミーユ・ビダンはかつて人の意思を吸収したゼータガンダムを使い、奇跡に近い現象を起こしたことがある。
連邦の上層部がこのことを知っているとは思わんがな・・誰かが目撃して報告した可能性は充分に考えられる。
サイコミュ技術の発展は究極的にはそこにたどり着く。サイコ兵器の最終形として。」


カミーユ。
アムロはカミーユ・ビダンの名前が出たとき、ラフレシアの姿を思い出す。
あの触手を、中に胎動していたあの感覚を。




783:03/01/20 01:30 ID:???



シャアは続けて喋る。
「もっともカミーユは特殊な例だ。ゼータにはサイコミュとしての機能は搭載されていなかった。
それなのにああいった現象を起こせるのは本人の素質に帰依するだろう。あれを人為的に再現するのは不可能だ。
だが、思ったはずだ。連邦の奴らに中の誰かが考えたはずだ。
もしも永久に人の意思を内在させることができる艦をつくれば永遠に我々は安泰だと。
なにせその艦は攻撃を受けても、物理的に効かない。無敵だ・・1艦あればいいのだからな・・
コスト削減にもなる。動力は人の意思だ。素晴らしいとは思わんか?」





シャアはそういって愉快そうに笑う。が、目はすこしも笑っていない。
彼はそういった連邦政府の愚かさを嘲け笑っている。
心から軽蔑している。アムロにはそれがわかる。





784:03/01/20 01:36 ID:???


「永久に人の意思を内在だと?馬鹿馬鹿しい!ありえないぞ!」
アムロは否定する。けれど、頭の中で微かに思う、
もしもそれが事実だとするのならこの艦は現在、思惟を引き寄せていることになる。
それは死人によって構築される思惟だ。
艦の中に生の思惟を内在し、同時に死の思惟が、その意思がその周りを包括している。
ララァの意思も?ララァがここにいる?
だから、僕はあんな夢を見たのか?
いや、納得できない。
サイコフレームを使ったぐらいでそんなことが出来るとは思えない。


「そう。ありえない。非情に馬鹿げているともいえる。
だから、これはあくまでホワイトベースを試作機とした実験なのだよ。危険を伴う、な。
ブライトはそれを知ってなお志願したらしいがね・・。連邦はそんなブライトを評価した。
どうやら、滑稽なことに何を勘違いしたのか政府高官はそれが彼の懺悔の気持ちからきていると勘違いしたらしい。
息子ハサウェイがゲリラとして反政府運動をしたことの。
無論、実体は逆だ。彼はこの艦を使って地球連邦に復讐するつもりだったのだ。
息子の意思を継いでゲリラにでも参加するつもりだったのかもしれない。まぁ、今となってはどうでもいいことだ・・
艦の名前がホワイトベースなのは一年戦争の時、ニュータイプ部隊と呼ばれたことにあやかっているのだろう。」

それで出発が間近に迫った日、ブライトとゲリラの繋がりに気がついた一人の連邦政府高官は自宅にて撃ち殺された。
惨い姿だったらしい。ニュースによると、なんと銃弾は銃数発も打ち込まれていたらしいからな。
勿論、殺したのはブライトだ」

その言葉を聞いて、アムロは家を出るときテレビでそんなニュースをやっていた事を思い出した。
「もっともそのブライトも最早、同じ様に死んでいるがな・・」
シャアがそう最後に付け足した。
785:03/01/20 01:38 ID:???


アムロは耳を疑った。
「なに?今なんていった?艦長が・・死んでいる?」
「あぁ、まだ言ってなかったか・・彼は私が殺した。私に付着している血の一部は、ブライトのものだ。」
そう言ってシャアは自分の手を見る。
先程、拭った血は既に凝固していて、ただの物質となっていた。
アムロがそんなシャアの冷静な姿に激しい苛立ちを覚えた瞬間、跳んだ。
「貴様!」


殴った。
鈍い音がして、手に確かな感触が伝わってくる。
シャアが、倒れる。
アムロは更に彼の肩を掴み、引き起こす。そしてまた、殴る。


「何故殺した!」
「正当防衛だ。
最初は殺すつもりではなかった・・といっても信じないだろうな。
ただ、一ついえることは、私は貴様の命の恩人ということだ」
「なに?」
シャアはアムロの手を振り払うと、唇を拭いた。ゆっくりと起き上がる。
唇を切ったらしく、血がついていた。誰のものでもない自分の血液だ。
「恩人だと?」




786:03/01/20 01:43 ID:???

呼吸を整えると、シャアが言った。
「アムロ、出発の時を思う出せ。貴様は最後に艦長と共にきた。それは何故だ?」
「それは・・ブライト艦長が命令書をもって来て任務だといったからだ・・」
息も荒くアムロは言う。


「そのとき貴様は疑問に思わなかったのか?突然のブライトの来訪を。
先程述べたようにこのブライトの行動は、ある連邦政府高官に見破られ中止寸前にまで陥った。
そこでブライトはその高官の殺害という過激な行動に走った。
そうしなければ今頃、この艦は別の艦長により、順調に航海されていたのだろうからな。
高官を殺害した後、ブライトは焦った。もし、犯人が自分だとばれれば計画は水泡と化す。
その前に宇宙に行きたかった。
最早一刻の猶予も無かった。すぐに出発しなくてはいけない。
そしてそんな一分、一秒を争う最中、何故ブライトはわざわざ迎えにいってまで、貴様を宇宙に連れてきたのか?
優秀なパイロットが欲しかったというのは当てはまらない。
この艦には別にアムロ・レイがいなくとも優秀なパイロットは沢山集まっていたからな・・。
では、何故か?
それはこの艦のシステムの稼動にはどうしても貴様が必要だったからだ」


「必要だと?このシステムに・・」


787:03/01/20 01:50 ID:???


「そう。いかにサイコフレームがあろうと、それを使いこなすものがいなければそれは効果を発しない。
軸となる人物がいなくてはな。感応して初めてサイコフレームは意味を持ちえる。
その人物としてブライトが選んだのが、アムロ、貴様というわけだ。
連邦に飼いならされたニュータイプ・・それに貴様ならデータも充分にあるというわけだ。
能力的にも申し分ない。アムロならばこの思惟を共有できる。そう判断したのだ。
この宇宙に広がる幾億もの思惟を認識し、共有できるとな。
貴様は無意識の内に、その精神を共振させているのだ。それは誰にでもできるというわけではない。

しかしその結果、精神に与える負担は大きい。それは、まず頭痛という形を取って兆候として現れてくる。
頭の中に鋭い異物が入ってきたような痛みとして受け止められるはずだ。
幾千の人々の思惟の流れだ。それは濁流の様に激しい。
それは基本的には貴様との交流だが、その影響はこの艦にいる全ての人物に出る。
例えば、その他の乗員の中にも貴様とそのサイコフレームの共振の余波を受けて、
頭痛を感じとる奴もいるかもしれん。しかし、同時にそれは、その人物に精神の覚醒をうながしている。
だが、勿論想定されることだが、その思惟の干渉に耐えられない者もいる。
オールドタイプと呼ばれるものたちだ。彼らは自分の中に入ってくる思惟を分類識別する能力は無い。
そういった者たちはあるこの艦に溜まる思惟がある一定の線を越えたとき、飲み込まれることになる。
これは思惟の逆流だ。その中で彼らは死者の思惟のなかに内在されることになる。
つまり意識の消滅・・というわけだ。」


「・・だから、この艦はニュータイプ専用というわけか。」
「そうだ、それ以外のものはこの艦に存在できないはずだ・・理論上は、な」


788通常の名無しさんの3倍:03/01/20 01:52 ID:???
 
789:03/01/20 01:54 ID:???



「艦に集まる思惟が極限的状態になればこの艦は最終形態にはいる;
そしてその後、貴様がキールームに入れば・・システムは完全に起動すると言うわけだ・・
一度稼動すれば止めることは出来ない・・用済みだ。ブライトは・・貴様を殺していた。
突出して覚醒したニュータイプなど不要だからな。だから、アムロ。
私は感謝こそされ殴られるいわれはない。」
シャアが勝ち誇った様にいった。

嘘だ。
僕とブライトさんは・・ミライさんは・・
アムロは首を振る。
信じるな。シャアの言うことを間に受けてどうする。
所詮こいつは・・・・敵だ。
敵という表現をアムロは敢えて使った。それは彼がかなり追い詰められていることを示している。
味方と敵という二元論の軸をさそうとしている。
シャアがそんなアムロに追い討ちをかけるように言う。



「・・私は貴様を、ブライト達から助けるためにこの艦に乗艦したのだ。」





790:03/01/20 01:58 ID:???

***************************************














「やはり・・シャアがこの艦に乗艦した理由は・・貴方を助けるためだったのね・・」


ミライは嘆息する。
それは、あの作戦室のとき、アムロとシャアの会話を聞いたときから気がついていた。
アムロがミライの言葉を受けて返事をする。

「・・勿論彼の目的はそれだけではありませんが、それも理由の一つなのは間違いありません。
シャアは、僕を貴方たちに殺されるのは避けたかったみたいです。」
淡々とアムロは語る。

「彼にも目的があったんですよ。
それを第三者が邪魔するのは許さなかった・・それがブライト殺害の一因になったんでしょう。」

791:03/01/20 02:04 ID:???


ウッソはアムロの話を聞きながら、10日前ロランとドックで話していたことを思い出す。



”そういえばロランは何の作業していたの?”
”サザビーのサイコミュの調整をしてたよ。上手くいかないみたいで・・”


上手くいかないはずだ。アストナージさんたちが原因不明といってたけれど。
あれは他のサイコフレームとの干渉によるものだったんだ。
だから、調整しても上手くいくわけが無いんだ・・

そんなことを思っていると、足元のソシエがまた微かに動いた。
ウッソはソシエを見る。
彼女は寝ていた。先程の声は幻聴だったのだろうか、とウッソは思う。
が、その時彼女の瞳から涙が一筋零れ落ちた。
起きている?ウッソはそう思う。けれど、彼女は依然瞼を閉じている。
確かめる程の勇気は無かった。彼女は目覚めたくないのかもしれない。
彼女の額にかかっていた髪をそっと触る。
その柔らかなサラッとした感触は、カテジナの事をマタ思い出した。


が、そんなウッソの思考は、ミライの声により中断される。


792:03/01/20 02:07 ID:???


「そこで・・シャアとの会話は終わりなのかしら?」
ミライが俯いたまま話す。アムロと視線を合わせようとしない。
アムロは首を振る。

「いえ、まだです。今までのはいうならば、あなたとブライトのところです。
ミライさんが知りたいのはララァのことでしょう?」


そういうとアムロは相変わらずこちらを眺めているララァを確認した。
ミライも少女を見る。


そんなに背は高くない。
漆黒の髪を中央からわけて左右に束ねている。肌は黒人ではないが、鮮やかな褐色である。
それゆえ、尚のことエメラルドの瞳が神秘的に見える。
けれど、その瞳の奥には何もない。全ての存在はあの中では消滅しているかのようだ。
そして、緩やかなドレス。赤い唇。


美しい、とミライは思った。



793:03/01/20 02:10 ID:???


ミライはアムロに視線を戻すと、言った。
「そうよ・・あなたが私を殺すとしても、それを聞かせてからにしてちょうだい・・
私も知りたいのよ。この艦に起きていることを。
システム・・は既に稼動しているのね・・?」


「ええ・・貴方たちにララァが見えるということはそうなんでしょうね。
僕は先程キールームに入ってましたし、その所為で完全に稼動しているはずです。」
きっと外から見ればこの艦は全てが光に包まれているはずですよ、とアムロは続けた。

そして一瞬黙るとララァをもう一度いとおしげに見る。
ララァをみながら、アムロは話し出す。


「そして、ここまでがブライトさんや、ギレンの考えでは終着点です。
だけど、シャアはここからもう一つ思考を進めました。ここがポイントです。
この後の話がララァが貴方たちにもみえる理由です。」









***********************************
794通常の名無しさんの3倍:03/01/20 02:16 ID:???
 
795:03/01/20 02:16 ID:???


「僕を助けるためだと・・?」
「不思議そうだな・・確かに私は君と殺しあった。けれど、それは別に君が憎いからではなかっただろう。
一度は共に戦った事もある・・目的が同一であれば、我々は共存できる。」
「目的が同一・・?シャア。貴様の目的とはなんだ?」


「もうすぐわかる・・。まだ、説明は終わっていない。
この艦のシステムの意味は理解できたな?
君はサイコフレームにおける思惟の共鳴の触媒的な役割を果たしている。断続的な頭痛が始まるのはまだだろう。
しかし、この艦のコアとなっていること・・。
それは決してマイナスの要素だけではない。そのおかげで、君は完全に覚醒することができる。
ニュータイプへと。己の認識域を拡大することが出来る。」
シャアの口調が変わった。アムロを君、と呼んだ。
それはアムロと初めて遭遇したとき以来だ。
アムロはそれを疑問に思う。


「認識域の拡大?」

「そうだ。・・ブライトは気がついていなかったらしいが、この艦のシステムは敵の攻撃を無効化する・・
などといった陳腐な行為に使うことはないのだ。」

そこでシャアは一瞬、間を置く。
部屋の壁に何かの存在を見つけたかのように手を伸ばす。
が、もちろんその手は何も掴めない。
796:03/01/20 02:23 ID:???



「この艦にはやがて何万という思惟が集まってくるだろう。
それは圧倒的な力・・宇宙の渦だ。
その力は、暖かな光の粒子となり、この艦に溢れ出るだろう。薄いぼんやりとした発光球として。
その時が、この艦にある思惟が、ある程度飽和状態になっている証拠なのだ。」

シャアがこちらをみる。

「君はその思惟の全てを理解できる。飽和の始まりは同時に、君の覚醒の始まりという事だ。
君は自分の認識域を拡大し、他人に共有させることが出来る。自分の認識域に他者を入れることが出来る。
君とララァがなしえたこと。
人という種の真の覚醒。思惟の交感。
宇宙という広大な空間でも、人々が齟齬を生まない様にする次元の領域。
その世界を君は構築することが出来る。君の認識の中で。



極限的な理解と調和を生む場所を日常的に作り出すことが出来るのだ!



そうすれば人類は皆、覚醒することが出来る。人類の未来のあるべき姿へ進化できる」

アムロはシャアの言葉が微かに震えているのがわかった。
それは決して恐怖といった種の震えではない。


797:03/01/20 02:27 ID:???


「僕とララァがあの時、構成した空間を日常的に・・・
そんなことができるわけ・・」



「できるわけがないといいたいのか?
いや、出来る。現に君の意思は、精神派は他者に影響を及ぼし始めている。
ララァの姿を私にも見せるようになっている。
認識域の拡大は私にそういったビジョンを既に与えている。
ほら・・後ろにいるじゃあないか?」


アムロは慌てて後ろを向く、そこにはいつもと変わらぬ光景が広がっている。
「・・いないじゃないか!」


「君自身にはまだ見えない。なぜならばあくまでそれは君の深層意識化の現れだからな。
君はさっきまでララァの事を考えていたのだろう?
それが、私にいわば強迫的にララァの存在を思いこませている。認識させている、
君自身にララァが見えるようになるのは、覚醒しなければならない。その頃には強制力は今とは比較にならない。
私にララァが見えるのは私がララァという少女を知っているからだ。ララァという存在を共有していたからだ。
だから、現段階では私以外にララァが見えることは無い。
けれど、君の意思の力、つまり認識力が拡大していけば、ララァは誰の目にも見えるようになる。」



798:03/01/20 02:35 ID:???

「ちょっと待て!
それじゃ、まるで僕は第三者にに対しても、認識の強制を有する様になるというのか?」

「そうだ。
全ては認識だ。誤解をなくす極限的な世界の構築にはそれが不可欠なのだ。
そして・・
いずれ君が、望むにかかわらずララァがこの艦に・・生まれる。
それは君の深層心理下での願いだ。夢と同じだ。君が止めたいと思っても止めることは出来ない。」


シャアは言った。



・・君がララァを殺した。
だから、ララァを蘇らせるのも・・君だ。





アムロはこの男の思いは純粋に歪んでいることに気がついた。
ピュアな歪みが目の前の男にはある。
やるせなかった。


799:03/01/20 02:37 ID:???


シャアは断言する。


「私はララァがいればこの世界を正しいものへと導くことが出来る。
そう。そしてララァもそれを望んでいるはずだ。
彼女もこの世に未練があるはずだ!」



「それは貴様の独善だ・・」


アムロはそう非難する。だが、その言葉には力が無い。



800:03/01/20 02:40 ID:???



「独善かどうかはララァにあって見なければ判るまい?
が、もしも貴様がララァに会うのが怖いのならば・・」


シャアは拳銃を取り出すとアムロの目の前に放り投げた。
アムロはそれを見る。そして拾い上げる。
拳銃。そこに死人の残滓を感じる。ブライト・・いや、もう一人・・
これは、ガルマ・・?


シャアは言う。
「それを使っていい。今すぐ、命を断て。
そうすればララァに会うことは無い。
現時点で、君が死ねば、この艦は、幾千もの思惟を拘束しておくことは出来なくなる。
この艦は目的を達成できなくなる。私の目的もな・・」



そういうと、シャアは部屋に入ってどれくらいたったか考えた。
ここに入ってから既に二十五分は経過しただろう。
そろそろ潮時だ、シャアは判断する。


801:03/01/20 02:43 ID:???

シャアは追い討ちの様にアムロにいった。
「だが、アムロ。
我々は人類のために何かをしなければいかんのだ。
人を導く能力を有しておきながら、それを使おうとしないのは結局のところ、罪悪に等しい。
私は貴様が、私と共に、ララァと共に、この地球圏の魂を重力に縛り付けられた人類を解放する先駆者たらんことを期待する。」


「僕が、しなくても人類は変わっていける。
カミーユが・・彼の様な若い世代が、生きている限り。人の革新はこんな風に行なうべきじゃない・・」
アムロが拳銃に視線を落としたまま答える。
シャアは眉をひそめる。

「カミーユ?カミーユ・ビダンか?彼は精神崩壊している・・
その彼がどうしてここで会話に出てくる?」

「・・ラフレシアを操縦していたのはカミーユだ。
彼はあの機体に乗っている・・・おそらく間違いない。」


シャアは微かに驚いた表情をした。
「ほう?だとすると、彼は精神崩壊から立ち直ったというのか?
興味深いが、それが真実でもカミーユに期待するのはよくないな。それはアムロ、自己責任の回避に過ぎない。」
シャアは断定した。
その声にはアムロに対する侮蔑の色もあった。


802:03/01/20 02:50 ID:???

「わかっているさ・・」
アムロは自分の言動を恥じた。
どうかしている、と思った。

シャアが溜息を吐く。
「そこまでララァに会うのが嫌なのか、アムロ?
違うな。本心は会いたいけれど、彼女に会うのが怖いのだろう?怖れているのだろう?
私はトビアが死んだとき、君にいったな。
いつまでも一年戦争の時の少年兵のような感覚でいては困るとな。

よく考えろ。
あの時のあの終わり方が本当によかったか?
彼女を殺しておいて貴様はそれでいいと考えているのか?ララァが許してくれていると思うのか?
私はそんな結末はご免だ。たとえ、それが絵空事であっても可能性に賭けたいと思う。
我々はもう一度彼女に会うべきなのだ。」

シャアはそういうと先程アムロに殴られたときに落とした書類の束・・プリント・アウトした紙を拾い上げる。
そして書類に目をおとしたまま言う。
「・・本当はこの話はもう少し後に話すつもりだった。
大分予定が狂ったが、これも運命だろう。」




803:03/01/20 02:54 ID:???



シャアは書類の枚数を確認するとアムロの目を見つめた。
「アムロ。
一年戦争の時、ア・バオア・クーで私が貴様にいったこと覚えているか?」

アムロはその言葉にハッと顔を挙げた。
一年戦争・・

ア・バオア・クー。


そこで僕とシャアが交わした言葉?アムロは思い出す。
ガンダムから降りて、シャアと・・・格闘して・・
そのすぐ後に・・セイラさんが止めに来て。
そうだ。あの時シャアは・・



”   ジオン無きあとはニュータイプの時代だ。
    アムロ君がこの私の言うことがわかるのなら、私の同志になれ、ララァも喜ぶ ”


そうか。
アムロは息を飲んだ。
804:03/01/20 02:59 ID:???

「思い出したようだな・・
あの時の返事はまだ、聞いていない。最終目的地の目前で私は待つ。
最終目的地はここだ・・」

そういうとシャアは書類の中から数枚取り出すと、こちらに投げ渡した。
紙が床に散らばる。
アムロはそれに一瞬目をやると、シャアに戻す。


「この艦から・・降りるのか?」
「ミライ殿に恨まれて銃殺になるのはごめんだからな・・
それに私がここにいては駄目なのだ・・それではフェアではない・・」

最後の方は呟きに聞こえた。
フェア?



「いや、何でもない。
とにかく私はここを出る。ギレン達も何かしているようだしな・・。
それにいい加減、戦闘の方も気になるしな。この艦を壊されるわけにはいかん・・」
そう言って、シャアが扉に手をかける。

「まだだ!まだ話は終わっちゃいない!」
アムロはシャアの背中に拳銃を向ける。

805:03/01/20 03:03 ID:???




「・・撃てるのなら撃てばいい。」
振り返らずにシャアはいう。
「私の考えが間違っていると思うのならな・・
考えることを放棄し、ララァの魂をただ避けていただけの貴様に私は止められん。」
シャアが、冷たく言い放つ。



お前はいままで何をした?



「シャア!」
反射的に、アムロは引き金を引く。
銃声が室内に響く。



その直後、どさ、となにかが崩れ落ちる音が部屋に響く。
少しの空白の時間が生まれる。
そして、その空白に硝煙の匂いが混じる。



806:03/01/20 03:06 ID:???












「・・・いい返事を期待している。
ニュータイプの時代への萌芽。
それがララァの・・ひいては私の望みなのだ・・」




シャアの声が響く。
その言葉を残して、シャアは消えた。扉が開き、また閉まった。




アムロは膝をついている。シャアが扉をあけ去っていくのを呆然と見送る。
彼の撃った弾はシャアの脇を抜け、壁に備え付けてあるモニターに当たっていた。
故意に外したのか、銃口がぶれていたのか、アムロには判断できなかった。



807:03/01/20 03:09 ID:???




どれだけそこでそうしていたのだろう。
アムロはようやく意識を取り戻す。焦点が合う。艦内に響いている警報の音が遠くから戻ってくる。
現実の世界に帰ってきた感覚だ。先程までのどこか遠い世界ではない。
けれど、彼の思考の中では様々な思いが入り乱れていた。思考を整理し、咀嚼するには混乱しすぎている。
アムロは反問する。

ララァが生まれる?
僕が彼女を意識の奥底に幽閉している所為で?
そんなことが起こりうるのか?
たとえそれが彼女に血を与え、肉を授けるといったものでなく、精神的なモノだとしても。
首を振りながら、立ち上がる。



酷く喉が渇いていたし、何かべたついている。どうやらまた汗をじっとりとかいている様だ。
前髪が額にじっとりと張り付いている。アムロはまたシャツを脱ぐ。
備え付けのタオルを使い、身体を拭いた。けれど、拭いても拭いてもべっとりと何かが染み付いている。
諦めて、別のシャツを探して、着る。
そういえばシャアとあんなに長く話したこと、なかったな・・
アムロはそんなことを呟いた。





808:03/01/20 03:13 ID:???


幾分べたつきはなくなったが、酷く喉が渇いていた。
シャアとの会話の間、足元に置いていたミネラルウォーターを拾い上げる。。
それを持ったまま、ふらふらと歩くと、二段ベッドの下の段にドサリと、沈み込む。
下の段だから、シャアの寝る所だが、最早構うまい。彼はもう戻ってこない。
アムロは寝転んだまま、水をストローをくわえて飲む。
ヌルイのは相変わらずだ、けれど、、さっきと同じ水なのに、今度はそれは何故か血の味がした。
あるいは、それはシャアが残していったこの部屋に充満する彼の返り血の所為かもしれない。
それが自分を圧迫する。アムロはそのボトルを投げ捨てる。まるで透明な血液を飲んでいる気がしたからだ。
生理的な吐き気がアムロを襲う。目を瞑り、深呼吸をしてやり過ごそうとする。



が、吐き気はおさまらない。あの水は飲むべきではなかったのかも知れない。
いや、こみ上げてくる吐き気は自分自身にかもしれなかった。
駄目だ。
アムロは床に嘔吐する。体中のものを全て吐き出す。
さっき食べたと思われるクラッカーの塊やチョコの欠片と思われるものが出てくる。
頭が微かに痛んだ。



809:03/01/20 03:19 ID:???



数分後、アムロの胃の中は起きる前と変わらず空っぽになっていた。
クラッカーもチョコも全て吐き出してしまった。胃液すら全部出し尽くしたんじゃないカと思う。
アムロは再びベッドに戻る。

自分が惨めな存在に思えて、仕方が無かった。思いっきり叫びたい気分だった。
jけれど、何か叫ぼうとすると、口はまるで動かなかった。声が出ない。
それでも何か出そうとするがどうしても声は出てこなかった。
アムロは諦める。第一、叫んだところでなにfが変わるわけでもない。
ベッドからこの部屋を唯一照らしている非常灯を眺める。
それはぼんやりとしていて、今のアムロにはぴったりの様に思えた。


ふと床に目をやる。
シャアの渡したプリントが散らばっている。
ベッドから出て、吐瀉物を踏まないように動き、それを拾い上げる。
それjはこの艦の巡航コースがかかれていた。最終目的地を確認する。


「・・・・ここ、なのか・・・。」
そう微かに呟くと、、そのプリントを握りつぶした。




810:03/01/20 03:25 ID:???


そっと部屋を見渡す。
そこにはやはりララァの姿は無かった。
けれど、シャアがみつめていたであろう場所の前で、両腕を伸ばし、その空虚を胸に抱く。
ララァ、と呼びかけてみる。返事は勿論ない。
月に踊る小人の様に、彼の姿は傍目から見たら滑稽に思える。

その後、壁をさすってみた。
壁はやはり無機質だ。けれど、シャアの言葉を聞いた後ではどこか生命を感じる。
そして思う。




この艦が宇宙の思惟を捉えているというのなら、その内部のここは胎内だな。
アムロは認識する。

そして中で眠る僕らは胎児なのだと。



そう思った。






811通常の名無しさんの3倍:03/01/20 03:29 ID:???
_____________
812:03/01/20 03:31 ID:???
























〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここで回想は終わりです。
次回はウッソ視点で、アムロ達、ドックに戻ります。
あと、二回の予定です。それでは・・


813kanrinin:03/01/20 03:33 ID:???
>>1
まいりました。ここは本当に良いスレッドですね。
814通常の名無しさんの3倍:03/01/20 03:37 ID:???
人の意思を宿す宇宙船・・・第六文明人の遺跡?
815通常の名無しさんの3倍:03/01/20 06:53 ID:???
もし連邦が目的通りの航海をするとしても、アムロを乗せてたんですかね?
816通常の名無しさんの3倍:03/01/20 12:16 ID:???
前回のメタフィクションと違ってスケールが大きくなって来たな
817通常の名無しさんの3倍:03/01/20 12:21 ID:???
脱帽
818kanrinin:03/01/20 12:44 ID:cR+Fd8lw
age
819通常の名無しさんの3倍:03/01/20 14:02 ID:???
すげえすげえすげえすげえすげえ

どうしてくれるんだ この感情
820山崎渉:03/01/20 14:32 ID:???
(^^)エヘヘ
821通常の名無しさんの3倍:03/01/20 16:26 ID:???
 
822通常の名無しさんの3倍:03/01/20 17:59 ID:???
保守age
823811:03/01/20 18:54 ID:???
支援はいらなかったな・・・
スレ汚し&無駄遣いスマソ
824通常の名無しさんの3倍:03/01/20 19:12 ID:???
すごい!たまんねー!
825通常の名無しさんの3分の1:03/01/20 20:56 ID:???
      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※ ☆  .☆ ※  ※ ☆ ※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
  * ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※☆  .☆※  ※ ☆ ※ *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
あと2回ですか、楽しみに待っています。
826通常の名無しさんの3倍:03/01/20 22:33 ID:???
なんていうか、感動でなんとカキコしていいかわからん。
4,5回くらい書いて消したよ。
1さんありがとう。
827ほげら〜:03/01/20 22:52 ID:DLmArvuk
はっきり言って今まで読んだ小説のなかでもトップクラスと思います。
1さん、実は文筆業とか?
828通常の名無しさんの3倍:03/01/21 00:11 ID:???
あと二回、今スレに収まるか不安だな
しかし保守は必要と
829通常の名無しさんの3倍:03/01/21 12:22 ID:???
スレ数500越えてるよ
圧縮回避保守
830通常の名無しさんの3倍:03/01/21 20:09 ID:???
保守
831kanrinin:03/01/22 00:51 ID:HyoeP9Yq
良い時間帯なのでage
832 :03/01/22 10:33 ID:???
保守はsageでもできるから保守
833通常の名無しさんの3倍:03/01/22 12:05 ID:???
kanrininさん善意でageてんだろうけど
毎回ageるたびに>>832みたいな指摘されてんのに全く聞く耳もちゃしねえのはどーよ?
834832 :03/01/22 12:19 ID:???
別にkanrininを狙ってるわけじゃないぞ。
お気に入りスレが被るだけだ。
835通常の名無しさんの3倍:03/01/22 12:44 ID:???
>>833
保守だけが目的でなくageて知らしめたいんだろ。
別に今んとこageられて荒れるわけでもなし、そんなに気にすんなYO!
836通常の名無しさんの3倍:03/01/22 13:30 ID:???
>>835
この板がどんな場所かわかっとらんな
837通常の名無しさんの3倍:03/01/22 15:14 ID:???
感想と最低限の保守以外は控えよう。
838kanrinin:03/01/22 19:47 ID:???
>>836
すまん。元ゲーハー板所属なので、ここが平穏にしか思えんのだ。
長期休みでもないしな。
839通常の名無しさんの3倍:03/01/22 19:58 ID:???
>>838
いつもどういう基準でageてるの?
840kanrinin:03/01/22 20:04 ID:???
>>839
ageは平日で人がいない時間帯と400以下。
日、祝日と土曜日はsage保全の方向性で。
つーか、うかつに過去にageてた時もあったかも。
反省してます。
841kanrinin:03/01/22 20:25 ID:???
ある「ちょっと」した事に気が付いたので
以後、これからsageます。
842通常の名無しさんの3倍:03/01/23 00:39 ID:???
保守を兼ねて
>kanrinin氏
ここが平穏にしか見えんって
シャア板はれっきとした(?)隔離板だよ(W
843kanrinin:03/01/23 00:59 ID:???
>>842
おう、めったに読まないスレをちょろっと見たのですが。
正直、すまんかった。
でも・・・・それでも・・・・ゲーハー板よかは・・・・(;´д⊂
844通常の名無しさんの3倍:03/01/23 00:59 ID:???
hogo
845通常の名無しさんの3倍:03/01/23 12:18 ID:???
保守
846kanrinin:03/01/23 20:28 ID:???
ん。保守
847kanrinin:03/01/24 00:10 ID:???
保守
848通常の名無しさんの3倍:03/01/24 06:32 ID:???
朝保守
849通常の名無しさんの3倍:03/01/24 13:40 ID:???
昼保守
レス数も少ないので半日位は保守不要
850通常の名無しさんの3倍:03/01/24 20:17 ID:???
なにげに
851山崎渉:03/01/24 23:02 ID:???
(^^; 
852通常の名無しさんの3倍:03/01/25 01:01 ID:???
さあて保守....ん?
残りレスの少ないスレにまで迷惑な
853通常の名無しさんの3倍:03/01/25 08:59 ID:???
保守はsageでもできるから保守
854通常の名無しさんの3分の1:03/01/25 16:43 ID:???
400以下age保守。
855通常の名無しさんの3倍:03/01/25 20:10 ID:???
hosyu----
856通常の名無しさんの3倍:03/01/26 01:30 ID:???
週末深夜保守
857通常の名無しさんの3倍:03/01/26 12:22 ID:???
昼保守
858通常の名無しさんの3倍:03/01/26 19:36 ID:???
859通常の名無しさんの3倍:03/01/27 02:43 ID:???
保守
860kanrinin:03/01/27 03:12 ID:???
復活保守
861通常の名無しさんの3分の1:03/01/27 07:20 ID:???
400以下age保守。
862通常の名無しさんの3倍:03/01/27 10:55 ID:???
次スレいるかな
863通常の名無しさんの3倍:03/01/27 18:58 ID:???
1さんぷららだった気が…。
864通常の名無しさんの3倍:03/01/28 01:37 ID:???
保守
本日昼すぎまで保守不要
865通常の名無しさんの3倍:03/01/28 12:45 ID:???
3倍で保守
866kanrinin:03/01/28 19:12 ID:???
保守
867通常の名無しさんの3倍:03/01/28 23:23 ID:???
400以下age保守。
868通常の名無しさんの3倍:03/01/29 02:10 ID:???
1は投げたのか?
869通常の名無しさんの3倍:03/01/29 03:09 ID:???
aa

870通常の名無しさんの3倍:03/01/29 04:03 ID:???







「ーーこれがシャアとの会話の全てです」



アムロさんがゆっくりとそう言って、こちらの方を見た。
ミライさんは一言も喋らずに、その話を黙って聞いていた。
僕は、その話をガンダムの足元に座って持たれかかりながら聞いている。
ソシエは相変わらず僕の隣で寝ている。起きる気配はない。
先程聞こえたソシエの声は寝言だったのだろうと思った。
少女・・ララァは先程と全く変わりがない。
相変わらず何の感情も読み取れない。



いつのまにか手には汗をかいていた。酷くじっとりとして気持ち悪い。
シャツで無造作に拭った。








871:03/01/29 04:05 ID:???


再び沈黙がドックを包む。





僕は今度の沈黙はさっきの夜の月のような硬質さとは違うと感じた。
この沈黙にはさっきにはない何か粘膜の様にじっとりとしたものを含んでいると感じる。
ドロリとした沈黙。気がつくと足元まで絡みついていそうな重み。
僕は、微かな息苦しさを感じる。閉塞感。
僕は何か喋ってこの閉塞を打ち破ろうと試みる。けれど、喋れない。
何をはなしたらいいかわからない。言葉は出てこない。



諦めて、ドックを覆い尽くしている光の粒子を眺めることにする。
足元から出てくる光を見詰める。あんまり直視すると目が痛みそうなほどの光。
カサレリアの冬の早朝に、朝日に反射した雪の様に眩しい。
さっきより明るさが増していると思った。けれど、どこか優しさを感じられる。



「・・さっき質問をしましたけど、騙してすいません。初めから判っていたんです。」


その時、この沈黙を断ち切るように再びアムロさんの声が響きわたった。


872通常の名無しさんの3倍:03/01/29 04:14 ID:???


「・・・え?」
ミライさんが漸く反応する。顔を挙げてアムロさんを見る。




「僕はあなたが計画をほとんど知らないことは、知っていました。」
「・・知っていた?・・どうして?いえ、わかっていたなら何故あんな質問を?」
少し怒ったようにミライさんが言った。
確かに悪趣味だと、僕も思った。けれど何か理由があるのだろうとも同時に思う。
アムロさんは依然として彼女に拳銃の照準をあわせている。
そしてあいたほうの手で頬をポリポリと掻いた。

「どうしてか、といわれると困るんですが・・わかる、と言うことです。
ニュータイプの洞察力が人の認識域を読めると僕自身は解釈しています。
だから、あなたに会った瞬間にわかっていました。
判っていたのに何故あんな質問を、との疑問にはこう答えるしかありません。
あなたにそれが必要だったからです。
自分が計画を知らなかったと認識しなおすことが必要だったんです。」



アムロさんは淡々と続ける。
けれど、僕には彼のいうことがよくわからない。
知らなかったことを再確認させてどうなるというのだろう?



873:03/01/29 04:17 ID:???


「ミライさん、あなたにはブライトを止める義務があったのです。
知らなかったというのは貴方の言い訳です。
ブライトが貴方に計画の全容を伝えなかったのは、罪は自分だけが背負えばいい、と考えていたからだと知っていたからでしょう?
それがわからないあなたじゃない。じゃあ何故、ムリにでも計画を聞こうとしなかったのか?」

「それはブライトの意思を尊重して・・」

「建前です」
アムロはそう断罪する。

「ただ、あなたは罪を負いたくなかったのでしょう?
川の流れに身を任すようにその身を委ねて、なるようになって欲しかった。ブライトさんの暴走を黙認した。
それがどんな結末をもたらすか、薄々感づいていても、それ以上考えようとしなかった・・。
貴方は放棄したんですよ。自らの意思で知ることを。
そして、貴方達のその身勝手な想いのために、この艦は取り返しのつかない所まで来てしまいました。
沢山の人が死に、残ったものも深く傷ついています。・・取り返しのつかない程に。」


そういうと、アムロさんはこちらを見た。
僕とソシエの方を。


ミライさんもこちらの方をと見る。僕はその視線を感じる。
彼女と視線を合わせようとした。
けれど、その瞬間、ミライさんはサッと視線を逸らす。


874:03/01/29 04:20 ID:???



アムロさんはそんなミライさんの様子を冷たく見ている。
そして、口を開く。

「判りましたか?
貴方たちの行為の結果、どうなりました?
そこにいる少年や、少女の顔を見ればわかりますよね・・

残ったのは消えない痛みだけです。
哀しい思いをする人が増えただけです。しなくてもいい辛い思いを経験しただけです。
・・この艦の中でもこれだけの哀しみが内在するんです。
もしも貴方達が連邦に反抗すれば・・それは、この艦があれば可能ですが・・
哀しみが増えるだけです。貴方と同じ様に息子をなくす母親も多数出るでしょう。
それが貴方たちの目的だったんですか?そんなことのためにこの艦の皆は死んでいったんですか?」




きつい言い方だと思った。








875:03/01/29 04:23 ID:???


アムロさんはここで拳銃を下ろした。


「けれど、僕はここで貴方を殺しません。
・・初めから殺す気はなかったんです。そんなことをしても無意味ですから。
ただ、判って欲しかったんです。自分の冒した罪の重さを。
ここに乗らなければ死ななくて済んだんです。みんな。
ロランや、ハリー、スレッガーさんも、カツも・・」
そこで、アムロは唇を噛み締める。
僕はその姿に彼の悔恨を感じる。深い後悔と共に自責の念があの人を包んでいる。


ーーーアムロさんの所為じゃない。


そう思ったけれど、声は出なかった。
だってそんな言葉をあの人が聞きたいとは思えない。
じゃあなんていえばいいんだ?


僕にはわからなかった。






876:03/01/29 04:28 ID:???



僕の葛藤を他所に、ミライさんが最後の言葉に反応する。
カツ、の部分だ。
「ねぇ・・・カツはどうして死んでいたの?」
あの子だけは出血していた、とミライは続ける。

「他の人は外傷がなかったけれど、カツには血がべっとりとついてたわ・・?」



「カツは・・貴方を助けようとしたんです。
最後の最後で彼は気がついたんですよ。ジオンに所属していた自分の愚かさに。
・・優しいフラウがそんなこと望むわけない、とね。彼女の家族を殺したジオン入ることを望まないことを。
だって、血は繋がってはいないけど、それはカツにとっても家族な訳ですから。
家族を殺した軍に参加するなんて、フラウが悲しむだろうって。
彼はそこで連邦に戻ろうと決意したんです。
そして、手始めにミライを・・貴方を助けようとしたんです。
彼は、あなたの扉をあけようとした。一緒に監視中のジオン兵を殺して鍵を奪ってね。

・・タイミングが悪かったんですね。
その鍵を使い、貴方の扉を開けようとした瞬間、ちょうどなだれ込んできたハリーたちに勘違いされたんですよ。
ギレンに尻尾を振ったカツはミライを殺すつもりだ、とね。それは哀しい誤解でした。
慌てて、ハリーが引き金を引き、カツは・・・」


敢えてアムロさんはその先を言わなかった。



877:03/01/29 04:31 ID:???





僕はその話を聞いて脳裏にその光景をイメージする。
カツさんが扉を開ける。そして真っ暗の部屋の中にいるミライさんに声をかける。
が、ミライさんはどうやら心労の所為か寝ていて動かない。
そこで、カツさんは中に入ろうと身体を入れる。
その時、通路の端からハリーさん達が飛び出してくる。

一瞬の間隔をおいて、銃声が響く。


血がはじける。扉に血が飛び散る。
カツさんが扉に半身を入れたままゆっくりと倒れる。
ゆっくりと・・



ーーーそこで僕は想像を止める。









878:03/01/29 04:33 ID:???




「・・嘘・・」
ミライさんは呆然と呟く。



「ほんとです。」


アムロさんがそこで足元の食べ物の入った袋を拾い上げる。
そしてミライさんの目の前にまでゆっくりと近づいた。
彼はそこで軽く息を吐いて、天井を見上げた。


僕も釣られて、天井を見る。
そこも圧倒的に白く、まばゆい光に霞んでいる。


こころなしか光が接近しているように感じた。


879:03/01/29 04:36 ID:???



アムロさんは天井から視線を戻す。


「そしてその直後、艦内のシステムは目覚めてしまいました。
内部からの思惟の放出・・なにせちょうど同じタイミングで
ロラン、カテジナ、カツ、スレッガー、ランバ・ラル・・
といった人たちがその思惟を放出して死にました。これは稀有のタイミングです。」

そこで彼はこのドックを見渡す。


「・・その前にはオクトバーたちもこのドックで死にました。
その直接的影響を受け、この艦は覚醒したのです。予想外に早かったんです。
胎内からの思惟の放出は、この艦の外部に集まっていた思惟と激しく共振を起こしたんです。

まぁ、ギレンにとってみればその為に僕らの部屋の監視を甘くしていたのでしょうが・・
殺し合わせるために。この艦の覚醒を急がせるために。貴方を生かしていたのはそのためです。
貴方がいれば、僕らは脱走を企てる・・それを待っていたんですよ。
艦内が揉めればそれだけ、早く覚醒しますからね。
この艦は思惟を吸い上げます。ギレンは狡猾でした。
シーマを処刑してスレッガーを生かしていたのも、その彼の怒りや絶望をまた飲み込むからです。」




880:03/01/29 04:45 ID:???


そこでアムロさんは食料を詰めた袋をミライさんに渡す。

「ミライさん。貴方は生きなければいけません。」
「どうして・・・」
ミライさんの声は掠れていて、明瞭に聞き取れないほど小さかった。


「貴方には生きてこの艦の事を書き記す義務があるからです。
この艦の過ちを繰り返さないためにも、誰かが記さなければなりません。
人の思惟を集めることは悲劇しか生み出さない、ということを。それは人の領域を逸脱したものだと。
そして連邦にこの資料を送るのは貴方しかいません。」


「・・・・そう・・ね。」


そう短く呟いてミライさんは顔を覆った。
アムロさんは彼女から目を離さない。もう喋らなかった。
彼も黙っている。


勿論僕も黙っている。僕の割り込む余地はないから。


・・そこでまたこのドックは沈黙の泥の中に沈み込んでいった。



881:03/01/29 04:50 ID:???




・・



時間だけが静かに過ぎていく中で、僕は考えていた。



この艦はエンジェルハイロウに酷似している。
それはサイコミュ的機能の面からも、キーとなる人物を必要とするといった面からみても。
とても似ている。まるっきり一緒というわけではないけれど、ほぼ一緒のような気がする。


そう考えると、このドックの光は最後の戦闘の時に見たあの暖かな光に似ているかもしれない。
僕はドックを見渡す。光が僕らを包み込んでいる。
ここはエンジェルハイロウなんだ。
僕は確信する。
そして、それは僕にカテジナさんを思い出させた。



彼女とボクは二年間の果てにやはり天使の輪の上に戻ってきていたんだ。


そう気がついた。

882:03/01/29 04:54 ID:???







そうだ、僕は思う。
結局のところ、何も変わっていなかったんだ。
カテジナさんとボクはどこにも進んでいなかったんだと。


あの時とは場所は違うけれど。時間も大分過ぎてしまったけれど。
本質は同じだ。
この哀しみだけが降り積もり、後悔だけが重さを増していく世界に結局僕たちは戻ってくる運命だったんだ。
そう思うと、今までの自分というものはなんだったのだろうと思った。
決められたレールの上を必死に走っていただけなんじゃないか。



ここで彼女を僕が殺すことすら、運命だったんだ。
強くそう感じる。
同時に僕の心を虚脱感が包んだ。





883:03/01/29 04:55 ID:???




「・・それは違う」


「え?」
僕は思わず声を出す。口にだして喋ってたのかな、と僕は思った。
独り言が聞こえたのかもしれない。けれど、アムロさんとの距離は10メートルはある。
そう聞こえるとは思えなかった。
僕は当惑する。
アムロさんがそんな僕の疑問に答えるように説明する。

「・・今の僕にはわかるんだよ。ウッソ、君が何のためにここに来て、何を思ったか。そしてカテジナとの終わりも含めて・・わかる。
洞察力の拡大は、僕の意識に関係なく人の認識域に滑り込んでしまう。さっきミライさんにも言ったようにね。
ようするに、この艦の人間の考えていることは全て伝わるんだ。ひどく簡単にいうと。」


話しながら、彼は僕に近づいてきた。
僕は彼を見上げる。立ち上がる気にはなれなかった。
アムロさんが、僕の真正面まできて、床に座る。
彼はソシエの容態を一瞬確認する。
向かい合う形になった。


884:03/01/29 04:57 ID:???



アムロさんは言った。


「君は戻っていないよ。それに、立ち止まっていない。
・・ウッソ、君は自分の意志で前に進んだんだ。
この艦でのカテジナとの出会いと別れも君が前に進んだ結果、起きたことだ。」

僕は息を飲む。



「君は決着をつけたんだよ。」



アムロさんは更に僕の脇腹の部分・・Tシャツに真っ赤な血が染み出ているところを指差す。



「その傷と・・」
今度は、僕の唇を指差した。
「この唇がそれを証明しているだろう?」
「えっ・・・」
僕は、自分の顔が赤くなるのを自覚した。



885:03/01/29 05:01 ID:???


「・・え・・そんな・・ことまで・・わかるんですか・・」
しどろもどろにそう答える。
顔が熱い。
そんな僕の様子に少し微笑んで、アムロさんは言う。

「別に恥ずかしがることはない。
その行為が君にとって重要な意味を持つのなら、それは大切なことだ。母と初恋への決別としてね。
君はその行為によって彼女と母の違いを認識した。そして別れも。」


再び真剣な顔になる。


「ただ、ウッソ、自分を見失うな。足元をしっかりと見ろ。自分を支えてくれている人を思え。
それがしっかりできれば・・・・君は進んでいるよ。きちんと前にね。
たとえ君がどこにも進んでいないと錯覚したとしても。

それに・・この艦に乗艦したのは運命じゃない。君とカテジナの意思が生み出し、交錯した結果だ。
運命なんて言葉は、使うものじゃない。メビウスの輪は存在しない。そんな言葉で片付ける事ほど愚かな事はない」


「・・そうですね。」
僕は同意する。




886:03/01/29 05:05 ID:???





僕はカサレリアを思う。支えてくれた人のいる場所を強く思う。
そこで自分を待っている少女、シャクティを思う。
それだけで、心がゆっくりと温まるのを感じた。無性に会いたいと思った。
彼女は泣いている。
雪の降り積もる世界で、一人泣いている。あの時、僕がみた映像は幻じゃない。
あの時の彼女の哀しみを僕は胸に刻み込んでいる。


僕は彼女の涙で濡れたその頬を拭い、柔らかな笑顔を取り戻さなくてはいけない。
そしてそれは、きっと僕にしかできない。






887:03/01/29 05:12 ID:???


僕はそう思った。


「・・それでいい。」

といって、アムロさんが微笑んだ。
その笑顔はどこかあどけなくみえた。僕はどこか嬉しくなる。
目の前の彼は、口調は依然と変わらないが、外見は僕とそう変わらない年齢に思える。

僕は不思議に思って質問してみる。

「あの・・ボクらにララァさんが見えるのはアムロさんの潜在意識の具現化ですよね?
じゃあなんでアムロさんの姿も若くなっているんですか?」
「・・ララァは具現化といったものじゃないよ。
彼女は存在していない。あくまで、認識できるだけだよ。君の意識の中に僕の認識が干渉しているから。
同じ様に、僕の姿が少年の頃に見えるのも同じ理由と考えてもらっていい。」
同じ理由?

「ちょっと待って・・アムロ。ということは貴方は・・」
いつのまにか近づいていたミライさんがアムロさんにいいかける。

「・・・ミライさん、これは僕の問題です。
必要なことは全て話しました。余計な詮索は止めてください。・・そういうのって迷惑なんです」


背中を向けたまま、アムロさんは拒絶するようにいった。


888:03/01/29 05:17 ID:???




「さて、それじゃあ今からこの艦から脱出をする」
アムロさんが立ち上がりながら明るくそう言った。
そして、その内容は思ったより非常にシンプルなものだった。


「脱出は非常に簡単だ。
このドックにあるモビルスーツに乗って出る。それだけだ。
すぐ近くに降りれる場所はある。それに下駄を履いていけばかなりの長距離動けるだろう。
途中でエネルギー切れになることはまずない。」

そういいながらアムロさんはF91を見上げた。
「ここのコクピットにウッソとミライさん・・そしてソシエはメタス・・では辛いな、いや大丈夫か・・
いや、やっぱりミライさんはソシエと一緒にしよう・・。」


一人ごとの様にF91をみながらそう呟く。
僕も同じ様にモビルスーツを見上げるが、このまばゆい世界ではどうも異質的な感じがする。
まるで、現実的な重量感がない。



889:03/01/29 05:21 ID:???


そんなアムロさんに、ミライさんが詰め寄った。


「ちょっと・・アムロ。
この艦からそんな簡単に出れないでしょう?私たちは・・捕らわれているんだから」

ミライさんが疑問を漏らす。アムロさんが首を振りながら言った。


「どうしてそう思うんです?出れないと自分で思うこと・・それが捕らわれている証拠です。
それはあなたが自分の意識の深層でここから出たくないと思っているからです。
捕らわれているのはミライさん、貴方の心の方なんですよ。それではすぐに飲み込まれてしまいます。
大丈夫、出られると強く認識してください。」


「認識・・」
ミライさんは呟く。
「そう認識です。弱気であればミライさんも飲まれてしまいます。」
「・・私が飲み込まれる・・?」


ミライさんはまだ納得がいかないようだが、それ以上なにもいわなかった。







890:03/01/29 05:24 ID:???



そして彼は僕の方を見た。




「ウッソ、二人を頼んだぞ。」
「え・・?アムロさんも一緒に・・脱出しないんですか?」




「僕はここに残る」




アムロさんは当たり前のように言った。




891:03/01/29 05:29 ID:???



「そんな!どうしてなんです?」
僕は尋ねる。
「この艦からアムロさんが降りれば・・システムは途絶えるんじゃないんですか?」


アムロさんは答えない。

「アムロさん?」
もう一度呼びかける。が、返事はない。
僕は、まるで深い井戸の底に呼びかけているように感じた。
小石を投げ入れても、反響音さえも聞こえないようなそんな深い井戸に。
けれど、僕は呼びかけるのをやめない。やめるわけにはいかない。


「アムロさん!・・あなたは・・この艦を離れたくないんですか?」


アムロさんは答えない。
僕にはわからなかった。間違っていると思った。
こんなのおかしい。



892:03/01/29 05:33 ID:???


「もしかして・・シャアさんの理想・・、目的に、賛同したんですか・・?」
僕の声は掠れていた。








アムロさんがようやく口を開いた。



「・・・さぁ、どうかな・・」


そういって曖昧に微笑んだ。
それは卑怯だ。
この艦の秘密は教えてくれても、結局肝心なことは教えてくれない。
僕は俯く。





893:03/01/29 05:34 ID:???



アムロさんをここに残していくのは、おかしいと思った。
けれど、同時に僕にはアムロさんの足に鎖が巻き付いているのが見えるような気がした。
鎖?そう、鎖なんだ。
それは、アムロさんの足首から、あの少女に繋がっている。
重くて、硬い鉄の鎖が幾重にも彼の足に巻きついている。
それはみるからに硬そうで、どんな鋭い刃物を持ってしても切れそうにない。






894:03/01/29 05:39 ID:???


俯いている僕の様子に、困ったようにアムロさんが言った。

「ただ一ついえるのは・・ウッソ。
君は決着をつけている。自分の思いにピリオドをつけることができた。
例え哀しい結末だったとしても君は新しい世界に足を踏み入れることが出来る。創り出すことができる。
・・僕は決着をつけていない。まだ、終わっていないんだ。
そして、シャアともララァともその決着をつけるのは、今、ここでしかない。
・・それでわかるだろう?」
わからない。
わかりたくない。


僕は俯いたまま黙っている。
靴のつま先をじっと見詰める。靴には赤黒い血が付着していた。きっとカテジナさんのだろう。
アムロさんは溜息をついて、そんな僕からそっと離れるとミライさんを呼んだ。
そして僕から離れた場所でなにやらひっそりと話をしだした。
僕はまだ靴を見ている。



「・・無駄よ。あの人は残らないといけないのよ。」


突然、ソシエの声がした。

895:03/01/29 05:41 ID:???



「え・・ソシエ?起きたの?」
「耳元で貴方たちの話を聞いてて永遠と寝てるられるほど私は神経が太くないわよ。
アムロさんがシャアの話を始まる頃から起きてたわよ」
起きるタイミングが難しいかったわ、そんな憎まれ口を叩きながら、ソシエは上体を起こした。
そして一度大きく伸びをする。
僕はただそんなソシエを見ていた。
彼女の目は赤く充血している。やっぱり彼女は泣いていたんだ。



彼女はこちらの様子に気がついていないミライと低いトーンで話し込んでいるアムロさんのほうに顔をむける。
そして一瞬目を見開いて、ふう、と息を吐く。


「あの人は残らなくてはいけないのよ。」
「・それってどういう意味?」
僕は尋ねる。
今まで寝ていたソシエの方がなにやら僕より理解しているのは納得がいかない。
彼女は降り注ぐ光に眩しそうに目をひそめると、話を続けた。



896:03/01/29 05:44 ID:???



「あの人は・・完全に覚醒してるわ。
そして、ニュータイプの完全な覚醒は現段階では不幸な結果になる。
ロランが死ぬ前に話してくれたわ。個体としての覚醒はまだ早いって。」
「ロランが・・・?」
「そう。ロランがね。
異端的に変革するのは好ましいことではない。
そして、正しいことじゃない。彼はそう私に言ったわ。
それはきっと人類に好ましい結果を及ぼさないって。」
「だけど!」
僕は反論する。
「それじゃあソシエはアムロさんは自分を人類から”隔離”するために残るべきだっていうこと?そんなのおかしいよ!」
ソシエがこちらを見て溜息をつく。


「そんなことは一言もいっていないわ。ただ、アムロさんは残らざるをえないし、本人もそれを望んでいるのよ。
それを尊重するってこと。・・大体これは私たちの干渉することではないわ。
残る残らないは本人の自由・・でしょ?」
「・・それはそうだけど。」
渋々それに同意する。
確かにそうかもしれない。僕は余計なことをしているのかもしれない。
けれど。



897:03/01/29 05:47 ID:???




「それに会話を聞いていて気がついたんだけど・・シャア・アズナブルの理論には決定的な間違いがあるわ。
彼自身がそれに気がついているのかはわからないけれど。気がついてやっているとすれば・・彼はピエロかもしれない。
アムロさんはそれに気がついているのよ。彼の道化を理解した上で。」
「どうして・・そんなことまで・・」
ソシエはそこで袋からオレンジを取り出して、ストローをくわえる。
こくこくとジュースを飲む。


「どうしてわかるのかって?そうね・・うーん、どうしてかな?
ただ、さっき光の繭に包まれたとき、ロランに会えたの。いや、ロランだけじゃない。ほかにも沢山の人とあった気がする。
そしてさっき目覚めるまで長くいろんな話をした気がする。なにを話したかは全然おぼえてないんだけどね。
その所為かしら?頭に浮かんでくるの。色んな解釈が。自分でもとても不思議だけど。」


そんな曖昧な答えでは何一つわからなかった。
けれど、彼女は数時間前に監禁されていてロランに八つ当たりしてた時と比べると別人のように落ち着いている。
それもこの艦の影響なのだろうか。


僕は混乱する。手で顔を覆った。光をさえぎろうとする。
けれど、手のひらを透かして光が入ってくる。
この光は視覚にではなく、直接的に脳に入ってくる。




898:03/01/29 05:48 ID:???





「ほら、戻ってきたわよ。」
ソシエが小声で僕に言った。
僕はその声で顔をあげる。
アムロさんが僕の目の前にいつのまにか立っていた。



899:03/01/29 05:55 ID:???


「ソシエ、気がついたのか。よかった。どこか痛いところは無いか?」
「はい。大丈夫です。」
ソシエが明るい口調で言った。場違いなほど明るい声で。
「そうか・・それならいいが。」
「ソシエ・・よかった。」
ミライさんもホッとした様子でいう。


アムロさんが僕たち三人を見渡す。
「さて、それじゃあ今から僕がハッチを開ける。
そしたら君達は各自の整備していたモビルスーツに乗ってこの艦を離脱しろ。
ウッソはF91。ソシエはメタス。ミライさんはソシエのコクピットに狭いですが無理矢理乗ってください。
窮屈でしょうが、そんなに長時間かからないと思いますので、どうか我慢してください。」

そういうと、彼はソシエの方を見る。
「気がついたばかりなのに、すまないな。時間がないんだ。」
すまなさそうにアムロさんがいった。

「気にしないで下さい。私は平気です。それじゃあメスタに乗って離脱します。ミライさん・・行きましょ!」
言うが早いが、ソシエとミライさんはドックの一番奥にあるメスタに向かっていった。
僕は納得できなかった。その場に立ち止まる。



アムロさんが残る。僕たちはこの艦を出る。
それでいいのだろうか。
僕たちはそれでいいのかな?
900:03/01/29 05:56 ID:???









「いいんだよ。
君たちはもう充分に辛い思いをした。
後は僕とシャアの問題だ。」



「アムロさん・・」



僕はゆっくりと立ち上がる。
アムロさんは僕の肩にそっと手を置く。そんなに大きい手じゃない。
けれど、その手は肩越しにもとても温かく感じた。
添えられてる手に、安心感を覚える。




901:03/01/29 06:07 ID:???




「君と僕は似ているんだよな・・・
色んな意味でそう思うよ。けれど、僕は君に僕の過ちまで似て欲しくない。
幼なじみのその少女を大切にするんだ。
僕のようにはなるな。
僕は昔、ララァに対して取り返しのつかない事をしてしまった。
・・彼女を殺してしまったんだ。
その時から、僕とシャアの時間は止まった。
勿論、身体的には成長を続けていたよ。けれど、精神的には僕たちはそこでストップしてしまった。」


そう言ってアムロさんが後ろを振り返る。
少女ーーララァがいつのまにかアムロの後ろにそっと立っている。


「ララァは白鳥なんだよ。
彼女は空高く飛んで、地上を動いている僕とシャアを遠くから眺めている。
僕とシャアは彼女を捕まえようと必死に追いかけるけど、あまりに遠すぎてはっきりとは見えない。
彼女は僕たちが近づくとふっと消えてしまう。いや、僕たちが単に見失っていただけかもしれない。
彼女の方はじっと待っていたのかもしれない。
僕たちは戸惑う。そして、また探し始める。けれど、見つからなかった」

アムロさんはそこでそっと自嘲気味にわらった。



902:03/01/29 06:19 ID:???



「あの時、時間が止まってから今まで、僕とシャアはずっと止まった時間を動いていたんだ。
とても苦しかった。全身が石になったような錯覚を覚えるほどにね。
シャアも苦悩していた。ララァを探して彼は地球圏を彷徨っていた。
けれど、その長い時間を抜けて、ようやく僕らは今、彼女を捉えることが出来た。
そして、僕とシャアの時間は再び動き出した。
あの士官室で会話を始めたときからね」


そこで彼はいったん言葉を切った。


「僕とシャアは動き出すまでに、とても、とても長い時間がかかってしまった。
もう取り戻せない。戻ってこないかけがえのないものだ。
色んなものを失った。漠然と虚ろな日々を過ごした。

だけど、君は違う。
君はまだ始まったばかりだ。
これからの新しい時代を築く人間だ。カテジナのことは忘れることは出来ないだろうが、彼女に囚われるな。
それに、君には待っている少女がいるはずだよ。空を漂うララァと違い、土と共に暮らしている少女がね。
だから・・僕のことは気にしないで、早くF91に乗るんだ」



「・・けれど・・」
僕は、そう呟く。


903:03/01/29 06:22 ID:???




アムロさんがいう。


「僕はあの時君にいったな・・
考えすぎると死人に引っ張られるぞ、とね。」


「はい・・」
僕は思い出す。
あの時、死人を僕はカテジナさんと解釈した。
けれど、それは間違っていた。本当の意味はこの艦が集めている宇宙に拡散した人の意思のことだった。
おそらくアムロさんは考えすぎると思惟の渦に飲み込まれるといいたかったんだろう。
ハリーさん達のように。


904:03/01/29 06:27 ID:???





「考えすぎると思惟の渦に飲み込まれる・・そういうことでしょう?」
と、僕は聞いた。




アムロさんはゆっくりと首を振る。
そして、彼は言った。




「  死人とは僕だよ。  」







アムロさんの後ろの少女が、初めて、笑った。





905:03/01/29 06:31 ID:???




「もちろん僕は生きている。
けれど、同時にある意味では死人でもあるんだ。
だから、君は早くこの艦から逃げたほうがいい。」




僕は何も言えなくなった。
そんな台詞を言われて一体何がいえるだろう。
僕がもうちょっと大人ならば何か適切なことをいえたのかもしれない。
けれど、僕はその言葉を見つけるにはあまりに幼すぎた。あらゆる面で経験不足だった。
ロランがいたら何か適切な言葉をいってくれたかもしれないと思った。けれど、ロランはいない。
彼は死んだ。この艦で。
そしてアムロさんも・・死のうとしているのかもしれない。
それが彼の決着なのかもしれない。




僕は再び俯く。
混乱し、惑い、切なくなった。




906:03/01/29 06:33 ID:???



いつのまにか光の粒子が霧の様にドックの中に現れていた。
霧?そう、霧だ。
どうやら、その霧状の光は壁から放出されているらしい。飽和した思惟が大気中に飛散されだしたのかもしれない。
その霧はあっというまに僕とアムロさん、そして褐色の少女を優しく包み込む。
視界が朧になる。とても濃厚な霧だ。
全てが薄くなる。
輪郭がぼやけて、はっきりとした形を映し出さなくなる。
全てが滲んでくる。個体としても形状が朧になる。


907:03/01/29 06:36 ID:???


「僕とシャアの時間は動き出した。
けれど、それは君のそれとは違う。新しい世界の時間じゃない。
生命の躍動する世界じゃない。
古い、過去の世界だ。切り取られた過去の世界・・まるでモノトーンのような。
そこには僕とシャア、そして・・ララァしかいない。
そしてその世界は、もうすぐ終わる」



アムロさんの表情からは、諦念といった感情は感じられない。
ただ事実を述べているといった感じだ。





それだけにやるせなかった。
そんな台詞を吐くアムロさんを否定したかった。
けれど、僕は何もいえない。僕は単なるこの艦に乗り合わせただけの子供に過ぎない。
なにも言う資格はない。
いえるわけがない。




908:03/01/29 06:40 ID:???



時間が無い。
霧みたいなもののせいではっきりとは見えないが、どうやらソシエがメタスを起動させたらしい。
僕もそろそろF91に乗らなくちゃいけない。
もう僕にはどうしようもできないのだから。

カラカラに乾いた喉を湿らせようと唾液を飲み込む。
そして僕は喋る。

「最後に一つだけいいですか・・アムロさん。」
アムロさんが無言で先を促す。


「あなたとララァさんの写真・・・とらせてもらってもいいですか」。
「写真?」
「カメラが趣味なんです・・駄目ですか?」
そういって僕はバックから愛用している旧式のポラロイドカメラを取り出す。
こんなときに非常識な奴と思われるかもしれない。
けれど、僕はこの人たちの姿を撮っておきたかった。撮らなくちゃいけない気がした。

「・・駄目ですか?」


「いや、いいよ。・・どうぞ。」
意外にもあっさりとアムロさんは承諾してくれた。




909:03/01/29 06:45 ID:???



アムロさんに少し下がってもらい、ララァの隣に立ってもらう。
霧が濃いのが心配だったが、気にしないで撮ることにした。
時間が立てばたつほど撮りにくくなるだけだ。


「それじゃあ、撮ります。」
その言葉を聞いて、アムロさんが微笑んだ。
少女も微笑んだ気がした。


震える指で、シャッターを押す。
パシャ、と乾いた音がした。
その音を聞いたとき、僕は彼らの存在する世界をかすかだけど切り取った気がした。
そして僕は出てきた写真をバックに押し込むと、アムロさんにいった。




「 さようなら アムロさん 」


「あぁ、ウッソ 」


アムロさんはもう一度だけちょっと微笑んだ。



910:03/01/29 06:47 ID:???




























「ウッソ!ウッソ!聞こえてる?」
「・・うん」

911:03/01/29 06:48 ID:???




























「ちょっとウッソ?」
「・・なに?」
「しっかりしなさいよ?メタスのあとにちゃんと着いてきなさいよ?」
「・・うん」
912:03/01/29 06:51 ID:???









数刻後。
僕とソシエの操縦する二機のモビルスーツは宇宙にいた。
暗闇の支配する世界。だけど、あのドックの圧倒的なまでの光に比べると、逆に僕に落ち着きを与えてくれる。
もう、ホワイトベースの姿はどこにも見えない。あの艦は僕たちが離脱したあと、スピードを増して彼方に消えていった。
現在位置を確認する前に、僕にはすることがあった。ソシエの声を聞きながら僕はバックをあける。
そして、さっき撮った写真を見る。






写真の中のアムロさんは一人だった。






一人で笑っていた。


913:03/01/29 07:00 ID:???










認識はあくまで人に強制するモノだから当たり前のことだ。
あの少女は写真には写らない。当然だ。
けれど。


哀しかった。なにかやるせなかった。
僕は心の中で呟く。


一人じゃないか。アムロさんは一人じゃないか。



写真が急にぼやけたので自分が泣いていることに気がついた。
どうして涙が出るのかはわからない。宇宙に出て気が緩んだのかもしれない。
一粒、二粒と透明な涙がコクピットの中に飛散していく。
涙が、溢れ出して、止まらない。



914:03/01/29 07:01 ID:???





僕は背中を丸めて、顔を両手で覆う。
僕は血が出るほどに唇を噛み締めて、漏れそうになる声を押し殺す。
こぼれそうになる嗚咽を我慢する。
声をだしては駄目だ、と僕は涙で頬が濡れるのを感じながら思った。
僕は静かに泣かなければいけない。
そう思った。





誰にも聞こえないように、誰にも届かないように。








915:03/01/29 07:10 ID:???


























ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここで区切ります。そして次回で最終回です。
今まで有難うございました。
それと、今回は間隔があきすぎて、スイマセン。
ぷらら規制があって、書き込めなかったんです・・
916わーん:03/01/29 07:15 ID:P0HyMvWx
すごい!すごすぎ!

仕事なのに寝ないでよんでしまった
917通常の名無しさんの3倍:03/01/29 07:15 ID:???

     *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※ ☆  .☆ ※  ※ ☆ ※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
  * ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※☆  .☆※  ※ ☆ ※ *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
>>1さんすげーよー!
徹夜しててよかった(⊃AT)
918わーん:03/01/29 07:16 ID:???
あげてしまった
919通常の名無しさんの3倍:03/01/29 09:45 ID:???
相変わらずすごいですねぇ。
920通常の名無しさんの3倍:03/01/29 10:05 ID:???
1さんキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
規制がとけたみたいでよヨカタよ つД`)
最高2ヶ月の例があるいうからこのスレを思うとドキドキしてたYO
ラストも楽しみにしてます。
921通常の名無しさんの3倍:03/01/29 10:19 ID:???
アムローアムロー
悲しいよー寂しいよー切ないよー
ぷらら規制辛かったよー
1さん乙ー
1さん好き!
922通常の名無しさんの3倍:03/01/29 14:08 ID:jbRYY7cS
すげえ馴れ合いだな
キモ・・・(プ
923通常の名無しさんの3倍:03/01/29 14:11 ID:???
ここはキモいインターネットですね
924通常の名無しさんの3倍:03/01/29 17:37 ID:???
きもいかどうかはアレだけど、馴れ合ってはおらんよ。

そして
     キ        //   /::::://O/,|      /
      ュ     / |''''   |::::://O//|     /
      .ッ       \ |‐┐ |::://O/ ノ   ヾ、/
       :       |__」 |/ヾ. /    /
         ヽ /\  ヽ___ノ / . へ、,/    
        /  ×    /  { く  /
        く  /_ \   !、.ノ `ー''"
  /\        ''"  //
 | \/、/           ゙′
 |\ /|\ ̄
   \|
925通常の名無しさんの3倍:03/01/29 18:46 ID:???
感動しました。
待ってて、良かった。
926通常の名無しさんの3倍:03/01/29 22:31 ID:???
燃え上がるぞガンダム!
927通常の名無しさんの3倍:03/01/30 00:35 ID:???
保守して最終話アップして感想レスするには無駄なレス節約
してもレス数が足りないかも
次スレ立てを考えようか
928通常の名無しさんの3倍:03/01/30 00:51 ID:???
>>927
そうだね。1さんがゆっくりかけるように立てたほうがいいかも
929kanrinin:03/01/30 01:58 ID:???
エンディングは、Beyond the time希望。
メビウスなんてないらしいが(笑)
930通常の名無しさんの3倍:03/01/30 10:26 ID:???
>>929
20代後半組を泣かすよ
931通常の名無しさんの3倍:03/01/30 21:32 ID:???
カテジナ死亡時の「いくつもの愛をかさねて」も最高だったし
932通常の名無しさんの3倍:03/01/31 00:58 ID:???
保守
無理に早く、短くまとめられるより
余裕をもって書いてもらうためには新スレかなやっぱり
933通常の名無しさんの3倍:03/01/31 01:33 ID:7lN1ZzMe
age
934通常の名無しさんの3倍:03/01/31 01:53 ID:???
しばらく保守できる余裕を考えて、
新スレは建てよう…
と思ったけど、建てれなかった…
誰か立ててちょ
935通常の名無しさんの3倍:03/01/31 02:08 ID:???
で、新スレ建てるとき、
このスレとパート1のログをうpしたので貼ってもらえると幸いです
http://www.globetown.net/~fuck/char/log/
936通常の名無しさんの3倍:03/01/31 02:36 ID:???
「第三回 天下一武道会」でいいのかな・・・・
937kanrini:03/01/31 02:49 ID:???
つーか、第三回を1さんは書いて頂けるのでしょうか?
あ、>>936は僕です。
938通常の名無しさんの3倍:03/01/31 11:41 ID:???
現行のSSの最終話のためだけでも立てよう
939kanrinin:03/01/31 18:29 ID:???
建てたよ・・・・スレをシャア板で立てたよ・・・・。

次のスレは
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/shar/1044005101/l50
940ほげら〜:03/01/31 23:08 ID:QoNkW5Uk
新スレ
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
キタ━━━━(。∀。)━━━━!!!!!!
941通常の名無しさんの3倍:03/01/31 23:39 ID:???
ヤホーイ
942通常の名無しさんの3倍:03/02/01 00:19 ID:???
新スレ立ったけど無駄レスはやめよう。なるべく。
943通常の名無しさんの3倍:03/02/01 12:29 ID:???
職人さんが新スレ立ってるのに気づくまでは保守せんとな
944通常の名無しさんの3倍:03/02/01 21:36 ID:???
hosyu
945kanrini:03/02/02 00:34 ID:???
sage
946通常の名無しさんの3倍:03/02/02 06:12 ID:???
なんとも
947通常の名無しさんの3倍:03/02/02 12:36 ID:???
いやはや
948:03/02/02 15:17 ID:???



>>935

ログup有難うございます。



次スレ行って来ました。
久しぶりにネットに接続したので、次スレが出来てて驚きました。
皆様の親切に感謝いたします。
これで余裕を持って、最終話を練ることが出来ます。
正直、焦って話をなんとか短めにまとめようとしてたんで、本当嬉しいです。



949通常の名無しさんの3倍:03/02/03 01:36 ID:???
こっちは見せてもらう側だからね
そのくらい気を使ってもバチは当たらん、と自分が次スレ立てた
わけでもないのに言ってみる(つーか立てられなかった)
950通常の名無しさんの3倍:03/02/03 11:42 ID:???
>>1氏が移転を知ったが、無理に埋めることもないな
まったり消費していくか
951通常の名無しさんの3倍:03/02/03 13:58 ID:???
次スレで存在を知った人のために、
こっちのログも保守しておくべき
無理するこたぁないけど
952通常の名無しさんの3倍:03/02/04 00:07 ID:???
sl35r@-d(
953通常の名無しさんの3倍:03/02/04 12:32 ID:???
次回のGジェネのシナリオに推薦
954通常の名無しさんの3倍:03/02/04 17:40 ID:???
500いってるしあげとくか
955通常の名無しさんの3倍:03/02/04 18:32 ID:???
これマジで凄いんだけど…いい意味で予想裏切られまくり。
登場人物募集してこれだけできるなんて…1さんがニュータイプだよ。
956通常の名無しさんの3倍:03/02/05 00:02 ID:???
実はガンダム詳しくないのですが、それでももっとも続きが楽しみな神スレ
957通常の名無しさんの3倍:03/02/05 11:23 ID:???
>>956
ログ保存しときなさい
少なくともこのSSにキャラのでてる作品を全部みてからもう
一度読んでみることを勧める
958通常の名無しさんの3倍:03/02/05 13:58 ID:???
ふふふ
959kanrini:03/02/05 23:23 ID:???
保全致します
960通常の名無しさんの3倍:03/02/06 12:24 ID:???
そろそろみんな移動したかな
961通常の名無しさんの3倍:03/02/06 19:04 ID:???
age
962通常の名無しさんの3倍:03/02/06 19:11 ID:???
メ゙ヽ、\ ̄""" ̄--‐   、 \  /ゝ、\
=─‐\\‐  /─'''''ニ二\''' |レレゝゝ、\
 ̄く<<く >, ゙、/<三三二\ ̄\ゝゝゝゝゝゞ''ヽ、       
<〈__入 ゙、く彡三三三二ヽくゝ\メメメゝ、_ゝ、\     
くく<<<<<< ゙、 ゙、ミ三三二ニ─ゝゝゝゝゝ,,,,,,,、 '( ゙''ヽ、ヽ、   < あれ・・・?
くくくくくく彡‐ヽ ゙、ミ三三二ニ'''くくゝゝ_ゝゝ、\\_,>」ノ,   
く く く く く 彡゙、゙、三三二ニ‐くゝ、/ ,,,,,,,,メメゝヽ''''"ゝゞ丶、  
二─二二彡彡、゙、三三二==くメゝ/   ゙'ヽ、メゝゝゝゝゝゝゞ''ヽ-、,,,,,,_
‐'''" ̄ \彡彡ミ、゙、三二=''"く<メ/::      \''-、メメゝゝゝ_ゝ 、 ,,、ヽヽ
、  ,,,,- ゙彡//ヾ、三二= くゝ/:::....      \>∠レ-,-‐ニ二メヽ''ヽ ノ
 ゙ヽ、,,,-‐//_///,,、゙、三二=  ゙、 ""'''      ヽ>//レレヽ,,___  /
-,,,,,,-‐'''"""/////,,ヽ ゙、三二─ ゙ヽ.         //-ヘヘ,、 レレレレノ
''"      ,l|"////ノ,、\彡'''''‐-ニ,、 ::::::::::,,,,,,,,//    ゙ヽフ/|/| レ'
963通常の名無しさんの3倍:03/02/06 19:30 ID:???
>>962
シェンロン誤爆キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!

ついでにロランを生き返らせてやってくれ……。
964通常の名無しさんの3倍:03/02/07 02:16 ID:???
>>963
「ファンが泣き叫べばキャラが生き返るような安っぽい」(by田中○樹)作品ではありませんとマジレス
965通常の名無しさんの3倍:03/02/07 02:58 ID:ojOt67CS
大佐!ここに逝ってきました!
大佐のおっしゃる通りの面白いサイトでした!
まさか連邦が極秘でこんな面白いサイトを運営しているとは・・・
このままではジオンは壊滅ですっ!
連邦はあのようなサイトをどのように開発したのでしょうか?
よほどの開発者がいるとしか思えません。
大佐!我々はコッソリと遊ぶしか無いのでしょうか?
http://www.interq.or.jp/japan/tds/snj-tv/
966通常の名無しさんの3倍:03/02/07 12:39 ID:???
無理にシャア板にあわせようとしてるところが寒いぞ業者(W
967通常の名無しさんの3倍:03/02/07 18:29 ID:???
大佐ぁー!
968kanrini:03/02/08 02:01 ID:???
保全〜「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のサウンドトラックを聞きながら
969通常の名無しさんの3倍:03/02/08 13:15 ID:???
保守
970通常の名無しさんの3倍:03/02/08 18:00 ID:???
500以下age
971kanrini:03/02/09 01:22 ID:???
保全〜「薔薇は美しく散る」を聞きながら。
・・・・本当だから仕方ない。
972通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:26 ID:???
悟空
973通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:27 ID:???
クリリン
974通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:31 ID:???
ヤムチャ
975通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:32 ID:???
武天老師
976通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:33 ID:???
桃白白
977通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:35 ID:???
天津飯
978ヒイロ:03/02/09 01:35 ID:???
979ヒイロ:03/02/09 01:35 ID:???
ああ
980ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
あああ
981ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
ああああ
982ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
あああああ
983ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
ああああああ
984ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
あああああああ
985ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
ああああああああ
986通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:36 ID:???
わ〜いヒイロって厨が釣られたZO
987通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:36 ID:???
ヒイロよ寝ろ
988ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
989ヒイロ:03/02/09 01:36 ID:???
ああ
990ヒイロ:03/02/09 01:37 ID:???
あああ
991ヒイロ:03/02/09 01:37 ID:???
ああああ
992ヒイロ:03/02/09 01:37 ID:???
あああああ
993ヒイロ:03/02/09 01:37 ID:???
994通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:37 ID:???
どうせ1000はとれんよ
995ヒイロ:03/02/09 01:37 ID:???
ああ
996ヒイロ:03/02/09 01:37 ID:???
あああ
997通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:37 ID:???
はい999
998通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:37 ID:???
しいしいしい
999通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:37 ID:???
1000
1000通常の名無しさんの3倍:03/02/09 01:38 ID:???
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   `ヽ、      `''‐、_ 〃 / / / .:/.:;:ィ/ .:::/´Z-r‐‐'´__ノ!
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           , --、_∧  ヽ    二二彡 l l     //,-- 、   /   ゙ヽ、
          /  ..:..ヽ::.:  /`ヽ、   ̄ ̄  //     | /!::::|::::::`ヽ/       ゙ヽ、
       __/    ..:..ヽ::. |   `''- 、  //     /  .|:::::ヽ:::::::::::`ヽ、
    , -'´   |      ::.::.ヽ:|      `''ー、_____/    }ー----- 、:::::::゙ヽ、
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