スーパー戦隊 バトルロワイアル Part5

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1名無しより愛をこめて
当スレッドは、スーパー戦隊シリーズの登場人物でバトルロワイアルを行うという企画です。

※注意

・このスレはあくまで2次創作であり、本編作品等との関連性はありません。
 また、スレの性質上ネタバレを多く含んでいます。
・投下されるSSの中には、ヒーローの敗北、死亡等の残酷な描写が含まれたものもあります。
   
  
以上の点を注意して、閲覧して下さい。
なお、進行はsageでお願いします。



青き水の星、地球に刻まれた31の戦いの記憶。
今宵、その中から42人の戦士が選ばれた。
ロンの企みにより、宴に集められた彼らを待っているのは、
希望の明日か、絶望の明日か―――
その行方を知る者は、まだいない
2名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 15:50:56 ID:o9wMVkk10
まとめサイト
http://homepage3.nifty.com/w-end/index.htm

スーパー戦隊バトルロワイアルinしたらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/10886/

前スレ:スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part4
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1236865120/

前々スレ:スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1223702612/

前々々スレ:スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part2:ログ
http://homepage3.nifty.com/w-end/log2.htm

前々々々スレ:スーパー戦隊 バトルロワイヤル:ログ
http://homepage3.nifty.com/w-end/log1.htm

2chパロロワ事典@Wiki
http://www11.atwiki.jp/row/
3名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 15:52:51 ID:o9wMVkk10
【ジェットマン】1/1
グレイ○
【カーレンジャー】3/3
シグナルマン○/志乃原菜摘○/陣内恭介●
【メガレンジャー】3/3
並木瞬○/ネジブルー○/早川裕作○ 
【ギンガマン】2/2
剣将ブドー○/ブクラテス○
【ゴーゴーファイブ】3/3
巽マトイ●/ドロップ○/冥王ジルフィーザ○
【タイムレンジャー】3/3
浅見竜也○/シオン○/ドモン○
【ハリケンジャー】4/4
サーガイン●/シュリケンジャー○/日向おぼろ●/フラビージョ●
【アバレンジャー】1/1
仲代壬琴○
【デカレンジャー】4/4
江成仙一○/白鳥スワン(消滅)●/胡堂小梅●/ドギー・クルーガー●
【マジレンジャー】7/7
小津勇●/小津麗●/小津深雪●/スフィンクス●/ティターン●/バンキュリア●/ヒカル○
【ボウケンジャー】7/7
明石暁○/伊能真墨●/ガイ○/高丘映士○/西堀さくら○/間宮菜月●/最上蒼太○
【ゲキレンジャー】4/4
サンヨ●/真咲美希●/メレ○/理央○
 残り 24名

主催:ロン○
ジョーカー:ウルザード●
4名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 15:56:34 ID:o9wMVkk10
【ルール】

【スタート時の持ち物】
初期装備は怪人枠は武器装備有り戦隊側はスーツ有りで、変身アイテムを奪われたり、壊されたりしたら、変身不能になる(修理は可能)
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側からデイパックに入った以下の物を支給される。
「食料」 → 複数個のパン(丸2日分程度)
「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
「開催場所の地図」 → 禁止エリアを判別するための境界線と座標も記されている。
「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。
「ランダムアイテム」 → 変身アイテム以外のアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
「時計」 → 時間確認用
「筆記用具」 → ペンとメモ帳

【スタート】
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
MAPは縦軸A〜J、横軸1〜10で1辺の長さが5qとする。

【能力の制限について】
変身制限時間は10分。解除後2時間変身不可。意志あり支給品についても同様とする(会話は可能)

【放送】
放送は6時間ごとに行われる。放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」「残りの人数」
禁止エリアは一度の放送で3区画ずつ(2時間ごとに1区画ずつ)増えていく。
5名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 15:57:28 ID:o9wMVkk10
【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【書き手のルール】
・書く前に必ず予約すること。投下期限は1週間。
・申請すれば延長も可。ただし、最長3日。
・自己リレーは作品投下後、1週間は禁止。ただし、書き手が豊富な時はなるべく自重しましょう。
・作品投下後の予約は24時間禁止。
・明らかな矛盾点を指摘された場合は修正しましょう
6名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 16:03:00 ID:o9wMVkk10
【指摘・修正・予約に関して】
※指摘には特に制限はありません。矛盾等に気が付いたら議論スレで提起してください。
 また誤字脱字、軽微な間違いも教えて頂けるとありがたいです。
 ただし、悪意のある指摘は受け付けられません。
 指摘からの回答期間は1週間です。その間に回答をお願いします。
 (指摘の内容の辻褄を合わせられる、といった意見のある方も重ねてお願いいたします。)
※なお投下直後の作品が指摘を受けた時については、
 ・修正の見通し、何時までに完成などの回答が無く、ロワの進行を著しく妨げる場合
 ・修正に応じない、意見に耳を傾けない場合
 上記のような場合は破棄もやむなしという扱いを受けます。

※放送は一つの区切りです。
 一定のキャラだけを進ませる事は、他のキャラの行動、全体の進行に差し障ります。
 放送を跨ぐキャラの予約、放送後のキャラの予約は、キャラ全員が放送到達後、放送SSが投下された後にしてください。
7名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 16:03:51 ID:o9wMVkk10
【首輪と禁止エリア】
参加者は全員、ロンによって首輪を取り付けられている。
首輪は、三つの条件で命を奪う。
一つ目の条件は、首輪に過度の衝撃を与える事。衝撃を感知すれば、即座に作動する。
二つ目の条件は、禁止エリアに入る事。足を踏み入れれば、二十秒で作動する。
三つ目の条件は、主催に歯向かった場合、ロンの意思で作動する。

また、参加者には説明されないが、首輪には盗聴機能があり音声・会話は全て記録されている。

【書き手のルール】
・予約禁止事項
 ひとりリレーを防ぐため、投下した書き手は、投下終了から二十四時間一切予約禁止、投下作品に出たキャラは更に百二十時間禁止
・トリップ
 投下後、作品に対しての議論や修正要求等が起こる場合があります。
 書き手は必ずトリップをつけてください。
・トリップの付け方
 名前欄に#(半角)に続けて適当な文字列を入れて下さい。
 「◆NdQ0UM」(例)のように、文字列に対応したIDが表示されます。
・投下宣言
 投稿段階で被るのを防ぐため、投稿する前には 「投下します」 と宣言をして下さい。
 いったんリロードし、誰かと被っていないか確認することも忘れずに。
・キャラクターの参加時間軸
 このロワでは登場キャラクターがいつの時点から召集されたかは「そのキャラクターを最初に書いた人」にゆだねられます。
 最初に書く人は必ず時間軸をステータスにて明言してください。ステータスについては下記。
・ステータス
 投下の最後にその話しに登場したキャラクターの状態・持ち物・行動指針などを表すステータスを書いてください。
8名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 16:07:44 ID:o9wMVkk10
【キャラクター名】
【○○日目 現時刻】
【現在地】
【時間軸】:ここはキャラの登場時間軸。できるだけわかりやすく
【状態】:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
【道具】:(変身アイテム、ランタンやパソコン、治療道具・食料といった保有している道具はここ)
【思考・状況】(ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。複数可、書くときは優先順位の高い順に)

【基本ルール十ヶ条】
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
9名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 16:10:36 ID:o9wMVkk10
以上、テンプレ貼り終了。
毎度のことながら、テンプレ作成者様には、多大なる感謝を。
なお、>>6に関しては、議論スレ>>223氏のご意見を参照させて頂きました。
重ねて、多大なる感謝をば。
10名無しより愛をこめて:2009/08/27(木) 21:49:14 ID:b9pqBSKkO
乙です!
新しいルールの追加ありがとうございました。
いよいよ中盤ですね。
先が楽しみです!
11名無しより愛をこめて:2009/08/28(金) 12:17:35 ID:moFxnBlE0
パロロワ辞典の更新をして下さった方、ありがとうございました!
12名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:55:39 ID:hdkEV8P0O
そしてまとめ更新おーーーーーーつです!
いつもありがとうございます。
13 ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:06:44 ID:OUYIqDIY0
これより投下いたします。
14出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:07:33 ID:OUYIqDIY0
「遅い!遅すぎるぞ!!」
 ブクラテスは支給された時計を確認する。
 短針は3に近づき、長針は9を刺していた。
 ブクラテスがいるD7エリアが禁止エリアになるまで、およそ15分。
 そろそろ離脱すべき時間だ。だが、待ち人は未だ現れない。
「まったく、あの犬もさっさとどこかに行ってしまうし、いかん、いかんぞー」
 大声で愚痴を垂れ流すブクラテス。
 しかし、それは寂しさの裏返しであった。
 ここに来て早々、唯一の知り合いであるブドーに裏切られ、ブクラテスが信用できるのは自分ひとりだけになってしまった。
 姪のイリエスや、船長。この際、単純なサンバッシュでもいい。
 頼れる仲間の一人でもいれば、希望というものがあったのだろうが、ブクラテスには希望の一辺すら持つ余地はない。
 誰と組んだところで、所詮はインスタントチーム。いつ瓦解するか分からないのだから。
 その証拠に、竜也、菜月、マーフィーは自分より、名も知れない参加者を優先し、未だ誰一人として、ブクラテスの元には帰って来ない。
(まさか、まさか、あやつら、ワシを見捨てるつもりじゃあるまいな)
 竜也たちに不測の事態が起こった可能性より、自分が見捨てられた可能性を先に思いつく。
 それが今のブクラテスの心理状態を示していた。

―ピッ―

 だからだろうか。
「うん、探知機に反応が?反応は3つ。竜也たちめ、戻ってきおったか」
 ブクラテスが何の疑いもなく、その反応を竜也たちだと思ってしまったのは。
 禁止エリアとなる時が迫っているのに、こんな場所に他の誰かが来るわけないという固定観念もその一因かも知れない。
 結果として、ブクラテスはその反応に自ら近づいていき、そして――
「ひゃぁっ」
 ――捕獲された。
 強靭なロープでグルグル巻きにされ、ブクラテスは身動きを封じられる。
「ワシは殺し合いには乗っておらん、乗っておらんぞ!」
 命乞い代わりに、自分が殺し合いに乗っていないことを必死にアピールする。
「わかってるさ。禁止エリアになるまで、もう時間がないのに、こんな場所にいるぐらいだからな」
15出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:08:37 ID:OUYIqDIY0
 逆光で見えなかった襲撃者の顔が徐々に明らかになっていく。
 その顔には見覚えがある。ゲーム開始早々、ロンに詰め寄った男、明石暁だ。
「確か明石暁。お主まで、殺し合いに乗ったのか!」
「ああ、乗らせてもらった。但し、ロンに対して限定だがな」
「あっ?……うん??」
 何を言っているのかよく理解できないブクラテス。
「チーフ、そんな言い方じゃ、誤解を招きますよ。――ようするに私たちはロンを倒そうとしているわけです」
 即座に暁のフォローに入ったのは、西堀さくら。だが、ブクラテスにとっては初対面の相手。
 フォローが入ったが、殺し合いに乗ったという暁の言葉に純度100%の疑惑の眼差しを送っている。
「おぬし等、ふたりだけか?」
「ええ、そうですが」
「ふん、なら信用できんのぉ」
 彼らはふたりだというのに、探知機の反応は3つあった。つまり、彼らは死んだ参加者の首輪を持っているということになる。
 少なくとも彼らは1人の死に関与しているはずなのだ。問答無用で拘束したのも気に入らない。
 そんな奴を信用できるわけがないのだ。
「ふん!」
 ソッポを向くブクラテス。だが、暁もさくらもそんな態度を取られた場合の行動は織り込み済みだ。
「本来なら向き合って、ゆっくりとお互いを理解しあうべきですが、残念ですが緊急事態です。強硬手段をとらせていただきます」
 ブクラテスを拘束するロープの先端を持ち、動くように促すさくら。まるで、犯罪者を護送する警察のようだ。
「ええい、放せ。どこへ連れて行くつもりだ」
「禁止エリアの外です。いいのですか?このままここにいると、首輪が爆発しますよ」
「ぐぬぬっ!」
 そう言われては動かないわけにも行かない。さくらの言葉に渋々従う。
「さくら、後は頼む。俺はこのじーさんの仲間を探す。こいつを使ってな」
「ああっーーー!」
 何時の間に奪い取ったのやら、暁の手には首輪探知機が握られていた。
「こりゃ!返さんかい!!」
 ブクラテスが非難の声を上げるが、暁はそれを華麗に無視し、バリサンダーに飛び乗る。
「ミッションスタートだ!」
16出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:09:47 ID:OUYIqDIY0
 そして、指を高らかに鳴らすと、暁はその場から走り去っていった。



 おぼろを探すこと、約2時間。結果は思わしいものではなかった。
 おぼろはおろか、参加者の一人にすら遭遇しない。
 ならばと、捜索の手を広げたのがD7エリア。
 禁止エリアは誰しもが寄り付きたくない場所。だが、逆を言えば、禁止エリアになるまでは隠れるにはもってこいの場所だ。
 その予想自体が当たったわけではなかったが、ブクラテスを見つけることはできた。
 信頼するにはまだまだ情報が足りないが、未だ殺し合いに乗っていないのは確かだろう。
 それは彼が仲間だと勘違いし、自分たちの元へ近づいたことが証左だ。
「さて、じーさんの仲間はどこだ」
 手元の探知機を操作し、反応を確かめる暁。説明書は読まずとも、単純な作りのそれを扱うことなど朝飯前だ。
 たちまち、灯る3つの反応を見つけ、その場所へとバリサンダーを走らせる。
「ここか」
 多数の露店が並ぶ、広場。反応は3つともここからだ。
 暁はバリサンダーを停め、最も手近な反応へと近づく。
「おい、誰かいるのか!ここは直ぐに禁止エリアになる!脱出しなければ、危険だ!」
 声を張り上げ、自分の存在を主張する。
 未だに禁止エリアの、しかも中心近くにいるのだ。何か動けない理由があるに違いない。
 それが怪我や気絶の類ならいいが、もし殺し合いに疲れ、怯えている者なら、近づいた瞬間、ズブリとなりかねない。
 そうならないためにも、細心の注意は忘れずに、あくまで禁止エリアの危険性を前面にして、徐々に距離を詰めていく。
(あれは……気絶しているのか?)
 ようやく対象のひとりが視界に入った。そこにはがっしりとした体格のいい男が倒れ伏している。
 そして、彼の傍らには何故か血染めのきぐるみが転がっていた。
(見たところ、彼に怪我はないようだが……なら、あの血は誰の?)
 現状を確認しつつ、一歩を踏み出したその時、突如、銀色の影が暁に襲い掛かる。
 暁はそれを紙一重で避けると、アクセルラーを構え、銀色の影と対峙する。
(機械の犬?)
「ウゥゥゥゥッ!」
17出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:10:31 ID:OUYIqDIY0
 暁を威嚇するように唸り声を上げる銀色の犬。
 暁は蒼太から聞いた情報から、直ぐに犬がマーフィーだと思い当たった。
 探知機を横目で確認すれば、マーフィーからも首輪の反応が見て取れる。
「なるほど、支給品にも首輪は着けられているようだな。そうなると、残るひとつの反応は……」
「ウゥゥゥゥッ!」
 相変わらず、威嚇を続けるマーフィー。
 だが、暁の興味は探知機が映す残るひとつの反応に移っていた。
 男からもマーフィーからも血が流れている様子はない。
 ならば、残るもうひとつの反応がこの流れ出る血の主である可能性が高い。
(まだ、血は固まっていない。かなりの量だが、まだ手当てをすれば間に合うかも知れない)
 暁は方向を変えると、残る反応の方へと向かう。
 探知機とは便利なものだ。禁止エリアとなる時間が差し迫っている今、探知機がなければ探すことを諦めたかも知れない。
 しかし、探知機のおかげで暁は残るひとつの反応の持ち主をあっさりと見つけ出す。
「!」
 それが――
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 ――必ずしも幸運なこととは限らないが。



「なるほど、おぬし等、嬢ちゃんの仲間か。よく見れば、お前さんも、あの赤いのも、同じジャケットじゃな」
「赤いのじゃなくて、チーフです。しかし、ズバーンにも首輪が着けられているのですね。
 見た目じゃわかりませんが、マーフィーにも着けられている以上、間違いはないでしょう」
 一足早く禁止エリアを脱出したさくらとブクラテスは情報交換を行い、お互いの齟齬を解消していた。
 菜月がイマイチ頼りなかったので、菜月と同じ着衣のものは利用できるかどうか?マークが付いていたが、暁もさくらも菜月と違い、頼りになりそうなのは嬉しい誤算だ。
 一方のさくらも暁、蒼太に続いて、仲間である菜月と合流できるのは素直に嬉しかった。
「わかったら放してもらえんかのぉ。もうワシが敵じゃないとわかったじゃろう」
「駄目です。チーフの命令ですから」
 だが、未だにブクラテスはスコープショットのロープでグルグル巻きのままだ。
18出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:11:26 ID:OUYIqDIY0
 生身ではそれなりの実力を持つさくらとはいえ、誰がどんな武器を隠し持っているとも限らない。
 もし分かれるようなことがあったら、暁が戻ってくるまで、誰であろうと決して隙は見せないこと。
 それが暁からの指示だ。いざというときのボディガード代わりに聖剣ズバーンもさくらが持たされている。
「そう言わんと。傷に響くんじゃ」
「チーフの命令は絶対です」
 諦めず懇願の声を上げるが、取り付く島もない。
「まったく、この娘。チーフ、チーフと……」
 せめてもの仕返しなのか、聞こえるか聞こえないか微妙な声で愚痴を呟くブクラテス。
 そんなブクラテスをまったく気にすることもなく、さくらは時計を見て、暁を待つ。
(3時は過ぎたというのに、戻ってくる様子がありません。チーフが脱出できないわけありませんし、反対側に出てしまったかも知れませんね) 
 それから、根気よく待つこと数十分。ブクラテスの身体にロープの痕が刻まれた頃、さくらたちへと近づく足音が聞こえた。
 暁ならバイク音が聞こえるはず。さくらはのブクラテスを守るように立ち、ズバーンを構える。
 しかし、その構えもあっさりと崩れた。
 さくらの視線の先、その足音の主は彼女が待ち望んでいた明石暁だった。
 男を担ぎ、犬を連れ、こちらへと歩みを進めている。
「チーフ!」
 笑顔を浮かべ、暁へと近づくさくら。対して、暁は複雑な表情を浮かべた。
 その表情を見たさくらの笑顔は固まり、歩み寄ろうとした動きが鈍る。
 いつも自信に満ち溢れた暁がそんな表情を浮かべる原因はひとつしかない。
 ブクラテスから彼と一緒に行動していた人物のことは聞いた。
 浅見竜也。マーフィーK9。そして―――間宮菜月。
 だが、暁の周りに菜月の姿は見えない。
「チーフ……菜月は……菜月はどうしたんですか?」
 暁は少し驚いた顔をしたが、ブクラテスを見、直ぐに合点がいったようだ。
「菜月は彼らと一緒にいた。だが、もう……」
「そう……ですか」
 がっくりと肩を落とすさくら。その肩にポンと暁の手が置かれる。
「俺たちに悲しんでいる暇はない。ロンを倒し、真墨も菜月も生き返らせる。だから、いけるな、さくら」
「……はい」
 暁は菜月のディパックをさくらに渡すと、前へと歩き始めた。
19出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:12:58 ID:OUYIqDIY0
 竜也を抱え、ズンズンと歩いていく。
「嬢ちゃん、死におったか。しかし、あいつは死者を弔う時間すら与えんとは、まったく薄情な奴じゃのぉ」
 暁との合流により、ようやくグルグル巻きから解放されたブクラテスは早速憎まれ口を叩く。
 あわよくば、暁への不信を煽り、さくらを自分の手駒にしようという作戦だ。
 だが、さくらの表情には微塵にも不信の色は見られない。
「そんなことありません。チーフは何よりも仲間を大切に考えているお方です。
 わかりませんか?チーフが何故、バイクに乗っていないかを」
「そういえば、そうじゃのぉ。何でじゃ?」
「バイクでは、菜月と浅見さん、両方を運ぶのが難しいからです。
 チーフはバイクという移動手段を失っても、菜月を見捨てたくなかった。そういうことです」
 菜月を失ったことに悲しみは感じる。だが、暁がいる。
 暁がいる限り、さくらはどんな悲しみにも痛みにも耐えられる。
(暁さん……)
 さくらは口元にだけ微笑みを浮かべ、暁の後を追った。


【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。1時間30分程度、変身不能。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、首輪探知機
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。
第二行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
第三行動方針:仲間を探す。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※バリサンダーとおぼろの支給品、イカヅチ丸はD-7都市エリアに放置されました。
20出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:13:45 ID:OUYIqDIY0
【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。洗脳下での行動に罪悪感。
[装備]:アクセルラー(損壊、要修理)。聖剣ズバーン@轟轟戦隊ボウケンジャー。スコープショット(暁)@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:アクセルラー(黄)、スコープショット(菜月)、 未確認支給品(暁確認済)、竜也のペットボトル1本、基本支給品(菜月)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:明石暁と共に行動する。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
 ブクラテスとある程度の情報交換を行いました。

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:右腕切断 簡単な応急処置、消毒済み
[装備]:めがね、毒薬(効能?)
[道具]:タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:出来れば竜也に助けて貰いたい。
第二行動方針:暁とさくらの人物像の見極め
※首輪の制限を知りました。
※センと同じ着衣の者は利用できると考えています。
※さくらとある程度の情報交換を行いました。
21出会いと別れと ◆i1BeVxv./w :2009/09/01(火) 22:14:58 ID:OUYIqDIY0
【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:気絶中。
[装備]:Vコマンダー
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。ブクラテスは信用できない?センは?
第一行動方針:???
第二行動方針:???
※首輪の制限を知りました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。

【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:気絶している竜也を守る
22名無しより愛をこめて:2009/09/01(火) 22:19:35 ID:OUYIqDIY0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などありましたら、お願いします。
23名無しより愛をこめて:2009/09/02(水) 00:35:48 ID:rcOWmd3YO
>>22
投下GJです!
後々、不利になるかもしれないのに、バイクを捨てるとは……
仲間の死に挫けず、前に進もうとするチーフとさくらが頼もしくもあり、危うくもありました
チーフに依存しつつあるさくらは、もしチーフに何かあった時はどうなってしまうのでしょうか?
懸命に竜也を守ろうとするマーフィーがいじらしかったです。
どこか、物悲しさや虚ろさを感じさせる描写に引き込まれました。重ねてGJでした!

一点だけ質問が。
チーフが菜月を、連れてきてる描写はなかったと思うのですが、菜月の現在地は死亡時のままという解釈でよろしいでしょうか?
24名無しより愛をこめて:2009/09/02(水) 02:30:52 ID:r7slDh+kO
投下乙です。
暁さん……と、チーフを見つめるさくらがいじらしい!
だが半面それが菜月の死を受け止めきれないがゆえの自己防衛のように見えてせつなく思えました。
そして、あわよくばさくらを味方に!と必死なブクラテスも滑稽であり可哀相でもありW
本領発揮したチーフには、読んでいるこちらも引っ張られるようでした。
GJ!
25名無しより愛をこめて:2009/09/02(水) 19:45:28 ID:HrYLQ+BX0
いくら生き返る可能性があるとはいえ、菜月が死んだってのに
わずかに微笑んでいるさくらには危ういものを感じました。
恐らく無意識なんでしょうが、洗脳を解いたという前提でこれは結構危険な気も…
相手はたぶらかす天才ブクラテスですし。GJでした!
26 ◆i1BeVxv./w :2009/09/03(木) 20:14:16 ID:ZCnQzTuO0
早速のご感想ありがとうございます。

>>23
質問の回答ですが、以下の3点の描写より、菜月は禁止エリアにはいないと示したつもりです。

1.
>バイクでは、菜月と浅見さん、両方を運ぶのが難しいからです。チーフはバイクという移動手段を失っても、菜月を見捨てたくなかった。
⇒チーフはバイクを捨てて、両方を運ぶことを選んだ。≒禁止エリアから菜月は脱出させた。

2.
>アクセルラー(黄)、スコープショット(菜月)、 未確認支給品(暁確認済)、竜也のペットボトル1本、基本支給品(菜月)
⇒装備品(アクセルラー、スコープショット)を持ってきている。禁止エリア内で装備を奪取しようとするだろうか。≒装備を奪取できる時間はあった。or明石ならやりかねない。
⇒菜月の支給品から真墨の指輪がなくなっている。≒わざわざ指輪だけ持ってこない理由があった。

3.
>(3時は過ぎたというのに、戻ってくる様子がありません。チーフが脱出できないわけありませんし、反対側に出てしまったかも知れませんね) 
 それから、根気よく待つこと数十分。
>1時間30分程度、変身不能。
⇒明石は変身しなければならない事情があった(生身で二人の人間を運べなくもないが、時間的な制約からも変身して運んだと考えるのが妥当)。
 変身して脱出したにも関わらず、それなりの時間が掛かっていた。≒脱出後も何かやっていた。

ただし、これは状況証拠(1.はさくら視点での見解)ですので、実際、どのような経緯でここまで来たかは不明です。
なので、個人的には菜月は禁止エリアから脱出させたつもりで執筆いたしましたが、実は……な展開でも一向に構わないですし、後々、何かの伏線として、利用いただいても結構です。
筆者としては少々無責任ではありますが、お好きなように解釈いただければと思います。
ただ、ここで菜月がどうなったかを確定させて欲しいという要望があれば、描写の追加も吝かではありませんので、一言をいただきたいです。
2723:2009/09/03(木) 21:41:34 ID:PR0YEt2FO
>>26
ご回答ありがとうございました。
念の為確認しておきたかったのですが、納得いたしました。
自分も、解釈は後の書き手さんにお任せした方が面白そうだと思います。
若干、読み間違いなどがあったようで申し訳ありません。
早い回答ありがとうございました
28 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:01:09 ID:09oNa8B00
おそくなりました。ただいまより投下します。
29 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:02:00 ID:09oNa8B00
梢から疎らな太陽の光が零れる森の中、切り株の上に二人の異形が背を向け座っている。
一人は剣将ブドー。青き肌とその名に相応しい剣の使い手、元はバルバンの名高き幹部だった男。
もう一人は魔法猫スモーキー。そしてこちらもその名に相応しく魔術に足けた猫である。

二人の距離は僅か十数センチ、互いに背中合わせのまま会話はない。
息を潜め、真逆に位置する虚空を食い入るように見つめながら、二人は第二回放送を聞いていたのだった。

「ふっ、どうやら理央の手当は間に合ったらしい」
ブドーが理央の強運を祝すように言う。
「死者数は8名であったな」
その中にブドーの手に掛かった者はいない。少しばかりの悔しさのせいか語尾は下っている。
声こそ悪の幹部らしく低く落ち着いてはいた。だがまるで前線から外された老兵の呟きのようにブドーの声は哀愁を帯びている。

スモーキーはそれをちらっと見遣り森へ視線を戻し――

「ああああああああああ〜。腹減ったにゃぁあああああああ〜!!」

――本能の思うままに叫んだ。

ブドーの目に薄く冷たい光が走る。
そんなことはお構いなしにスモーキーは大声を張り上げた。
「何か食いてーニャー!」
死者の中に知己の者は無し。
放送がスモーキーに齎したのは安堵。そして安堵は空腹感を呼んだ。ゆえにそれが満たされるまでブドーに訴えるつもりなのだ。
スモーキーは支給品、一応今はブドーが持ち主であるからだ。
30 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:02:16 ID:09oNa8B00
正確に言うとスモーキーは理央との戦いのための人質。いわばダシだ。
ダシにされている以上空腹を満たすぐらいの欲求は訴える権利はあるだろうとスモーキーは切に、そして激しく訴え始めた。





「おい!腹が減ったニャ!!」
もう数分の間ブドーへ声をかけているが一向に食料を取り出そうとしない。
ブドーはスモーキーの様子に、ただ笑いを漏らすだけだ。
「聞いてんのかーーーーーーーー!」
血走った目を見開くスモーキー。
片手で耳元を押さえながら、ブドーはようやく訴えに答えた。
「……おまえの大声に獲物の一匹でも掛かると思ったが。うむ。まぁ、ご苦労であった」
ブドーが取り出したのは薄いペーパーに包まれた食料。
「お〜!」
スモーキーは目を輝かせ歓声を上げる。
「悪りぃニャー。おまえは食わないにゃ?」
多少強引に、もぎ取るようにブドーの手からライスバーガーを奪ったのはスモーキーなりの配慮である。
分け合おうなんていうニュアンスは間違っても感じさせないためだ。
遠慮なくビリビリと包み紙を半分ほどめくれば、香ばしいタレの香りが鼻腔を擽った。
こんがりとキツネ色に焼き上げられ、程よい照りと艶を放つライスプレートがサニーレタスと和風ダレを纏った牛肉を挟む。
口の中が先走って想像を広げた。みずみずしいサニーレタスの食感とジューシーな肉の味を。
「美味そうだニャー」
つい流れたヨダレを拭いているとブドーが口を添えた。
「うむ、ライスバーガーと言う。拙者も先程口にしたが、美味であった」
スモーキーは手を止め真面目な表情でブドーに向き合う。
31 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:02:50 ID:09oNa8B00
「……美味であった。(キリッ)だと?って何だそりゃ、ニャハ。怖ぇーツラして笑わせんじゃね〜!何マジで言ってんだ?ニャハハハハハハハハハ!」
ブドーの気配がにわかに淀んで行くのに気付かずスモーキーは笑い転げる。
「プギャー!ニャー、笑かしてくれるぜ。さて、じゃあ。いっただっくニャー」
「ていっ!」
ブドーが素早くスモーキーの手からライスバーガーを奪い取った。
「あっ!何するニャー!!」
スモーキーの批難に構わずブドーはすたすたと歩き出す。
数メートル離れたところで振り返り、半分包みの破られたライスバーガーを掌に乗せた。
「気が変わった。一向に獲物が表れぬので拙者は退屈しておったのだ。しかし思い帰せば貴様とて実力は中々のモノ。手合わせ願おうか」
「何!」
「何も人質と斬り合おうとは思っておらぬ」
ブドーはからかうようにライスバーガーを頭上高く掲げた。
「どうした、これが欲しいのであろう?欲しくば拙者の手より奪い取るがいい」
スモーキーは答えの代わりに爪を立てる。
その様子に満足したのかブドーは嘲笑を浮かべライスバーガーをポンと真上へ放り投げた。
「フシャーッ!」
スモーキーは切り株を足掛かりに、ぐんと膝を折り反動をつけて地面を蹴る。
腕を伸ばしライスバーガーをキャッチ仕掛けて――
「ニャッ!?」
――殺気を感じ、咄嗟に空中で身体をかわした。
シュッ、と紙を切るような軽い音。スモーキーのヒゲをブドーの拳が掠める。
腹に激痛が走る。
「ギャ!」
スモーキーの腹部を蹴ってブドーは木々の上へ跳躍した。
「追って来ぬならこれは拙者が頂く」
「待つニャー!」
32 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:03:23 ID:09oNa8B00
爪と牙を剥き出し追うスモーキー。
先を行くブドーはニヤリと笑い、手の上でライスバーガーをくるくると回した。





「くっそー!」
ぶるんっと首を振り、スモーキーは顔についた砂を払う。
「そうか、もういらぬのだな。ならば……」
「ちょっと待つニャーーーーー!よこせコラ!!」

追いかけっこを続けながら二人はもう砂漠まで来ていた。
スモーキーは追い。
ブドーは逃げる。
もう一時間にもなるだろうか。

不思議な気持ちがする。
スモーキーはこの追いかけっこを楽しんでいた。
ブドーも同じように見える。
淀んだ気配はもうブドーから消え去っていた。

息がかかるほど近づく。
だが寸前でかわされ、爪は宙を掻くばかり。
ブドーの動きはまるでねこじゃらしのよう。
不意に近づいては誘い、寄れば遠ざかり、否応なしに猫心を擽る。
砂が舞う。
その度にブドーはその手を天へ突き出す。ライスバーガーを守っているのだろう。

「ニギャー!」
「ハハハ!砂にまみれ、よい姿になったな。多少なりとも薄汚れた方が人質らしさは出るというモノ」
33 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:03:41 ID:09oNa8B00
「絶対絶対絶対!食ってやるニャ」
噛んだ砂を吐き出しながら、スモーキーは闘志を燃やす。

楽しかった。
このくだらない追いかけっこは。
同じように感じたのだろうか。二人に僅かな笑みが浮かんだ。
でもすべてに終わりは来るのだ。
オアシスはもうすぐそこにある。


ブドーは構える。
スモーキーは躊躇することなく突進した。
だが懐に入り込む寸前、ブドーに頭を抑えつけられた。
反動をつけてブドーはスモーキーの身体を飛び越し、ライスバーガーを空へ放り投げる。
そのままライスバーガーを掴んで距離を稼ぐつもりだ。
「さーせーるーかー!!」
スモーキーは腕を伸ばす。だが掴むのはライスバーガーではない。狙いはブドーの足。
「砂を噛むのはテメーの番だ!」
「ぬぅっ!」
ブドーは咄嗟に手を出し支えようとしたが下は砂地。
手は砂を滑り身体を支え切れなかった。結果ブドーはビタンと砂に叩きつけられて、スモーキーの言葉通り砂を噛んだ。

スモーキーは空をぐるりと見渡しライスバーガーを捜す。
「あそこか!」
太陽の横、空中に浮かぶ黒点。
サニーレタスを羽のようにはためかせライスバーガーが空を飛んで行く。
「うりゃー!」
後ろ足の爪をスパイクがわりにスモーキーは砂を蹴った。
着地点は20メートル先。
スモーキーは全力でその距離を詰める。
すぐに起き上がったブドーが後ろから追い上げてくるのが気配でわかった。
34 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:04:05 ID:09oNa8B00
ブドーは尋常ならざる疾駆で背後に迫る。

「猫のジャンプ力を舐めんにゃよ!届けーーーーー!!」
「拙者も見くびるな、むん!」

二人同時に跳躍する。
ぶつかり合う砂が高く舞い上がる。
砂に目をやられ、スモーキーは思わず目を閉じた。
期待と焦燥が弾けた一瞬。
たがその手には何かを掴んだ感触があった。





目を開けると落下の衝撃で原形を無くした元ライスバーガーが転在していた。
「にゃんだ?じゃあオレが握ってんのは……」
手元を見遣る。その先で複雑な表情のブドーが砂まみれでこちらを見ていた。
スモーキーが握っていたのはブドーの手だった。
「ニャニャニャニャニャ!!」
手を振りほどき、悔し紛れに砂を引っ掻いて撒き散らした。
そのはずだった。
なのにそう気分は悪くない。
なぜか最後には笑いが零れた。

「ま、しょーがないニャー。でも中々面白かったぜ。大将」
(どうせどこかでお山の大将やったたんだろ?敬意を込めてバカ大将とでも読んでやるニャー。ニャハ)

後ろで身体の砂を払うブドーの手が止まる。
「大将……」
ブドーはそれから何かを言いかけて軽く首を振った。
35 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:04:28 ID:09oNa8B00
言葉の続きを待つスモーキーに、ブドーはデイパックからもう一つライスバーガーを取り出した。
「理央との決戦、腹の虫で邪魔されては叶ぬ」
スモーキーは黙って受け取りしばらくそれを見つめていた。

「なぁ、オレがずーっと追いかけてやるからよ。続きやろうぜ」
言った後で何故そんなことを言っているのか解らなくなった。
ブドーは立ち上がりオアシスの方を向いている。スモーキーから表情は見えない。
「何ならオレのダンナや、さっきのシグナルマン。理央や黄色いのたちだって仲間に入れて」
混乱したまま、零れるままにスモーキーは話を続けた。

「やろうぜ。なぁ、あんたの気が変わるまで」
楽しかった。ブドーもそう感じていたはずだ。何も殺し合いなどしなくても勝負はつけられる。
ブドーが振り向いた。
怒っている様子はない。
「拙者が応じると思うか?いや、万が一拙者が応じたとしても理央やその仲間のセンが応じるとでも?」
何か諭すような言い方が癪に障った。
「理央は殺し合いに乗ってねーんだろ!だったら……」
「拙者が殺したのは二人に縁のある者」
そう、ブドーはすでに二人殺している。スモーキーもそれは聞いている。
「でもよ……」

何とも言えない嫌な思いがスモーキーの胸に込み上げる。
それを振り払うようにスモーキーはブドーを笑い飛ばした。
「ニャハハハハ!全くアンタはとんだバカ大将だにゃ。ロンの言葉にすっかり騙されてやんの!」
「騙されるだと?」
「あぁ、何でも願いを叶えてやるなんて出来るわけねーだろ!
魔法も使えねーくせに死んだ人間を生き返らせるとか。そんなの信じて殺し合いに乗っちまったんだろ?」

「くっくっくっくっく、はっはははははははははっ!!!」

応酬とばかりにブドーが笑う。
36 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:04:46 ID:09oNa8B00
笑いが大きくなるに連れ、地に落とした影が黒く不気味に色を増した。
「生き証人がここにいるではないか」
「あぁ!生き証人だぁ」
「左様、拙者は一度宿敵に討たれ命を絶っている。その時の記憶は忘れておらぬ。
おまえのダンナとやらに会ったら教えてやるがいい。おまえたちの仲間はすでに放送で呼ばれた者がいるのであろう?」
「そうだとしても!麗や皆はそんなの喜ばないにゃ。オレが許さないニャ!!」
「何故そうむきになる?ダンナとやらは殺し合いに乗っているのか」
「うるせー!もしダンナがそんなことやってたら、間違いはオレが直してやるにゃ」
ダンナは殺し合いになんか乗らない。言い切れないのが悔しかった。
「もしも、もしも、もしも絶対ありえねーけどそうならオレの手で引導を渡してやる。ダンナの手は汚させにゃい……」
メメの鏡で見た出来事がスモーキーの気掛かりだった。今すぐにでも確かめたかった。

「ダンナか……」
ブドーは呟き、スモーキーへ再びライスバーガーを差し出した。
「従者に引導を渡されるのはいかなものであろうか。拙者には解らぬが、あるいは幸せなのかもしれぬな」
スモーキーは一度突き返そうとした。だが思い直し半分をブドーへ差し出した。
「飯は一人で食うもんじゃねーニャ」
呆気に取られたような表情を一瞬浮かべ、ブドーは豪快な笑顔を立てた。
37 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:05:11 ID:09oNa8B00
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:E-9オアシス 1日目 日中
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。闇の力により戦闘力増幅。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー 
 手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン、闇の三ツ首竜@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:筆と短冊。サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー、予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)
 マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー、真墨の首輪、支給品一式(ブドー&バンキュリア)
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:理央の治療を待ち、決着をつける。(4時44分、C9エリアにて)
第二行動方針:理央の治療を待つ間、適当な獲物を狩り、実力を試す。
第三行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。
※闇の三ツ首竜により力が増幅しています。
38 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:05:25 ID:09oNa8B00
【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:E-9オアシス 日中
[状態]:健康。30分程度能力制限中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルを探す
第一行動方針:ブドーの猫質
第二行動方針:強い怒りと悲しみ。菜月を探し出す。ブドーに対し複雑な気持ち。
※落ちていたメメの鏡の破片(粉砕)によってヒカルがサーガインを刺したのを見ています。

39 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/05(土) 13:06:21 ID:09oNa8B00
以上です。
指摘感想誤字脱字、よろしくお願い致します。
40名無しより愛をこめて:2009/09/05(土) 19:16:45 ID:QpeNX5yZO
投下GJです!
あれ?人(猫)質と誘拐犯の筈なのになんか和むぞw
一転、迫る決闘、そしてヒカルの事に思いをはせるスモーキーには、切ないような気分になりました。
余談ですが、ライスバーガーの描写がすごく美味しそうで、食べたくなりましたw
41名無しより愛をこめて:2009/09/06(日) 14:53:30 ID:Skmhym930
GJ!
ライスバーガーを巡る一時の攻防。
それがシリアスでもあり、コミカルでもあり。
この一時がブドーにも清涼剤となりえたと思いますが、果たして行動にまで影響を与えることができるか?
今後の展開が楽しみです。

2点指摘ですが、
これは「シグナルマンも走れば・・・」でもミスしてましたが、スモーキーの一人称はオレ様です。
もうひとつは作品タイトルの付加をお願いします。
42 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/06(日) 17:38:56 ID:t2pV8qvoO
タイトル漏れorz
すみませんタイトルは「オアシスで昼食を」でした。
スモーキーの言い方&少し誤字等の修正を明日仮投下スレに投下致します。
お手数ですがよろしくお願いします。
43 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/06(日) 19:26:37 ID:A+lg4mTs0
仮投下スレに修正版投下致しました。
よろしくお願い致します。
44 ◆MGy4jd.pxY :2009/09/07(月) 02:19:51 ID:RyMiQJsuO
>>40、41

早速の感想ありがとうごさいました。
45 ◆i1BeVxv./w :2009/09/13(日) 23:56:55 ID:R4AMDSfN0
これより投下いたします
46炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/13(日) 23:57:44 ID:R4AMDSfN0
 シオンたち3人が首輪の解析を始め、直ぐにわかったことがひとつある。
「これ、メカじゃないわね」
 菜摘は首輪を上から、下から入念に観察する。
 金色の光を放つ首輪には龍の委託が彫り込まれているものの、繋ぎ目の類は一切見られない。
 それどころか、まるで芸術家が金属の塊からそのまま彫り出したかのように、わずかな歪みすらもなかった。
 更に1mm程度の厚さしかなく、重さが偏っている様子もない。
 内部に何かを仕込まれている可能性はほぼ0だろう。
「これでどうやって、私たちの能力を制限したりしてるのかしら?ただの輪っかにしか見えないけど……」
 メカに関してはそれなりに自信があったが、これでは腕を発揮しようがない。
「魔法かも知れねぇな」
 首輪をじっと見詰めていた裕作がボソリと呟く。
「魔法?」
「ああ。話しただろ、ヒカルって奴のこと。何でも、あいつは魔法使いらしいんだが、ロンも似たような者じゃないかと思ってな」
「魔法ねぇ」
 実在の有無は置いておいて、本当に魔法だとしたら、解析のしようがない。
 菜摘は頭を抱える。
「菜摘さん」
 そんな菜摘を見て取り、シオンが質問を投げかけた。
「菜摘さんは、もし時間移動を自由にできる人がいたとしたら、その人は魔法使いって思いますか?」
「?、それは……思うかも知れないわね」
「はい。でも、時間移動が可能な未来の人から見れば、それは魔法とは言えません。つまり――」
「発達した科学は魔法と見分けがつかないってことだな」
「……はい」
「俺もそれが言いたかったんだ。正直、俺も菜摘と同意見だ。ただの輪っかにしか見えねぇ。
 だけど、メカニックとしての意地がある。魔法だとしても、絶対に解析してやるさ」
 ふたつの首輪を見比べ、違いはないかを探る裕作。
 その姿を見て、菜摘の折れかけていた心が、また、真っ直ぐに持ち直す。
「そうね。私たちカーレンジャーのクルマジックパワーも魔法みたいなもんだけど、アクセルブレスやRVマシンの整備は出来るし、諦めるのはまだ早いわね」
 再度、首輪に視線を移し、解析に乗り出す菜摘。
 その耳にシオンの呟きが届いた。
47炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/13(日) 23:59:11 ID:R4AMDSfN0
「そうか、逆も有り得るんだ……」
 無意識の言葉だったのだろうが、その意味がわからず、菜摘は問い質そうと口を開く。
「シオ――」

「竜也ァァァーーーーーーーーーッ!シオーーーーーーンッ!!俺、ドモンはこの殺し合いに乗ったーーーーーーーーーッ!!!」

 突如として、菜摘の声を打ち消すほどの声がその場に轟いた。
「ドモンさん!?」
 その声に、名前に聞き覚えのあるシオンが驚きの声を上げる。

「俺が望むのは!愛する人にもう一度、家族をプレゼントする事ーーーッ!!だからっ、俺はおまえらを殺すっ!」
 
 裕作からドモンが殺し合いに乗ったことは聞いていたが、実際には信じられない話だった。
 いや、信じたくなかったというのが正しいだろう。

「おまえらとは仲間だった。だからっ!だからこそ、他の誰かに殺られちまう前にっ!俺の手で殺さなきゃならないっ!!」

 しかし、裕作の言葉を裏付けるように、ドモンは相次いで言葉を発していく。

「ここで待ってるぜ!俺はおまえらを殺すために!!ここで待っている!!早く来いっ。竜也アーーッ、シオーーーーーンッ!!!」

 始まりと同じように、自分ともう一人の名を呼ぶと、ドモンの宣誓は終わる。
 後には宣誓があったことなど嘘の様な静けさが場を支配した。
 シオンは考える。自分がどうするべきかを。
 ドモンは呼んでいた。自分と竜也を。
 鬼気迫る声、叶えたい願い、そして、自分たちを呼ぶ理由。
 ドモンが誰かに操られているとは考えにくい。本心からの言葉だろう。
 ならば、直ぐにドモンの元へ向かうべきだ。だが、今の自分には首輪を解析するという使命がある。
「シオン」
「裕作さん」
48炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:00:05 ID:R4AMDSfN0
 迷うシオンの肩に裕作の手が置かれる。
「行くんだろ」
 そして、掛けられたその言葉にシオンの迷いは吹き飛んだ。
「……はい!」
「よっしゃ、俺も一緒に行くぜ。口ではあんなこと言ってるが、お前が行けば止められる。
 俺はあいつと一回、戦ったが、あいつは腐っちゃいねぇ。俺は力で止めるしかなかったが、お前ならきっと……な」
 裕作は首輪を机に置くと、シオンと共に部屋を出て行こうとする。
「ちょっと待ってよ。私も行くわ!置いてけぼりはもうごめんよ」
「いや、菜摘はここでグレイとメレの帰りを待っていてくれ。首輪の解析も遅らせるわけにはいかねぇ。
 それに変身道具もふたつある。もし、誰かの襲撃を受けても逃げ切れるはずだ」
「そうだ」
 シオンは菜摘のクロノチェンジャーを借りると、何事か確認する。
「うん、改造済みです。このクロノチェンジャーなら、アクセルストップって技が使えます。
 3秒間、眼にも留まらぬスピードで移動できる技です」
「なるほど、それなら大抵の奴からは逃げられるな」
「……ぅぅ」
 菜摘は見るからに不満そうな表情を浮かべる。
「大丈夫さ。戦いに行くわけじゃないんだ。二人でパッと行って、パッと帰って来るさ」
 それで話は終わりとばかりに、裕作は外へと出て行った。
 シオンも一礼すると、裕作に続く。
 菜摘は渋々ながらも二人を見送るしかなかった。
(勘弁だぜ、菜摘。だが、連れて行くわけにはいかねぇんだ。あの声、少なくともこのエリア中に轟いた。
 危ねぇ奴らが近寄って来ないとも限らねぇからな)
 今から1時間前後は残ることより、進むことの方が危険性は高い。
 裕作はそう判断し、菜摘を残し、シオンに同行を申し出た。
 そして、彼の判断は間違いではないことがこの後、証明されることになる。



 同時刻、G6エリア、スタジアム中央。
49炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:01:14 ID:R4AMDSfN0
 ドモンは地面に寝っ転がり、鋭気を養っていた。
 やるだけのことはやった。後はシオンや竜也が声を聞き、駆けつけるのを待つだけだ。
(あいつらとは色々なことがあったよな)
 ドモンの脳裏に20世紀に来てからの様々な思い出が過ぎる。
 リュウヤ隊長と同じ顔の20世紀人竜也を勘違いして襲ったこと。
 格闘技はずぶの素人のシオンに戦い方を教えたこと。
 ホームシックに陥った自分を竜也が助けてくれたこと。
 そして、ヘルズゲート囚人ブラスター・マドウをみんなで打ち破ったこと。
「……ちっ」
 ドモンの瞳に液体が浮かび上がってくる。
(これから殺そうとしているのに何て様だよ)
 ドモンは半身を起こすと、瞳を拭う。
 未だ滲む視線の先、スタジアムの入り口に影が差したのが見えた。
(来たか。意外と早かったな)
 もう一度、瞳を拭い、来訪者の姿を確認するドモン。
 だが、その来訪者は、竜也でも、シオンでも、ましてや人間でもなかった。
「誰だ、お前」
「俺かい?俺はクエスター・ガイ様だ!」

 1時間前――

 シュリケンジャーの指示通り、砂漠を渡り、ガイはF9エリアを目指していた。
「なんで俺がこんなことしなきゃならねぇんだよ!」
 しかし、砂漠の暑さにあっさり音を上げ、腹立ち紛れにスタッグブレイカーを叩き付ける。
「止めだ止め。この糞暑い中、水なしで進んだんじゃ、辿り着く前に干上がっちまう」
 咽喉元過ぎればなんとやら、シュリケンジャーたちへの恐怖を忘れ、ガイは市街地へ進路を変えた。
「よくよく考えて見れば、ジルフィーザだっけか?死んでるかも知れねぇじゃねぇか。
 折角、辿り着いたのに死んでましたじゃあ、俺のナイスアイディアが達成できなくなっちまう。
 それより適当な人間狩って、禁止エリアやら何やら吐かせて、殺した方が手っ取り早いぜ」
 独り言を呟きながら、ガンガンと進んでいくガイ。
50炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:02:12 ID:Khky4Lvi0
 未だ傷は痛むが、何だかんだでシュリケンジャーから受けた応急手当は適切だ。
 捕まる前と比べると、大分楽になっている。
「へへっ、急がねぇとな。何処が禁止エリアだろうと、2時間は猶予があるはずだ。それまでに鴨を見つけねぇとな〜」
 足早に都市エリアを探索するガイ。
 30分でG7エリアに見切りを付け、G6エリアへと進んだ。
 G6エリアなら多少、勝手が分かる。不意討ちが前提のガイはそこを拠点に行動を起こすつもりだった。
 丁度その時だった、ガイがドモンの声を聞いたのは。
 ガイの顔がたちまち愉悦に歪む。
「はっはっ、やっぱりツキはまだ落ちちゃいねぇ。今行くぜ、ドモンちゃん♪へはっ!」
 そして、たまたまスタジアムの近くにいたガイは誰よりも先駆けて、ドモンの元へと辿り着いたのだ。
「お〜い、お前、ひでぇ有様だな〜」
「はっ、それはお互い様だろうが」
「へっ、違いねぇ」
 包帯とテーピングの違いはあるものの、身体の至るところに手当ての後があり、今までの戦いの軌跡を物語っている。
「どうだ〜、同じ傷物同士、俺と組まねぇか?俺も優勝を狙ってるんだが、この有様でよぉ〜。
 力を合わせて、そうだな〜、残り5人になるまで、なっ!」
 シュリケンジャーからの受け売りをそのまま、ドモンにぶつける。
 ガイの真意はともかく、それはドモンにとって、魅力的な提案ではあった。
 壬琴の脱出を阻止するためには一人でも多くのマーダーに壬琴の情報を流布する必要がある。
 それに参加者はまだまだ多い。本当に残り5人まで協力関係が築けるなら、協力者は欲しい。
「悪いが断る。俺は組むつもりはない!」
 しかし、ドモンは断った。
 ドモンの願いは深雪さんに幸せな家庭をプレゼントすること。
 それと志しを同じくする者となら別だが、眼の前の明らかに殺しを楽しみそうな輩に手伝ってもらうことはその願いを汚しているかのように思えたのだ。
「はっ!つまらねぇ奴だぜ。このガイ様が手助けしてやるって言ってるのによ」
(まあ、別にどっちでも良かったけどな。さーて、どうしたもんか)
 ガイとしてはドモンの返事はどうでもよかった。
51炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:03:20 ID:Khky4Lvi0
 こんなボロボロの奴など、組んだところで役に立つとは思えない。
 それより重要なのはドモンから禁止エリアを聞き出すことと、役に立つアイテムを奪うこと。
 見たところ、ドモンの装備は長刀と拡声器。あとはディパックに何が入っているかだ。
(普段なら力ずくで奪うところだが、変身できるかも知れねぇしな。仕方ねぇ、情報を引き出すだけにしとくか)
「まあ、組めねぇんじゃ仕方ねぇな。俺は退散するとするか。そうだ、ひとつ教えてくれねぇか。
 1回目の放送聞き忘れちまってなぁ。禁止エリアがどこかわからねぇか?」
「F4、G5、F6だ」
(ビンゴォ〜、馬鹿正直な奴はっ〜けん)
 1回目の放送はガイもしっかり聞いていた。それをわざわざドモンに聞いたのはドモンが正直に答えるかを確かめるためだ。
 宣誓の内容といい、ここでの態度といい、ガイはドモンを真正面からぶつかるタイプだと考えていた。
 そんな男なら嘘は吐かないと踏んでいたが、どうやら当たりだ。
 これならガイが本当に聞きそびれた禁止エリアを聞いても正直に答えることだろう。
「そうか、ありがとよ。礼に2回目の放送で言っていた禁止エリアでも教えてやろうか?知ってるかお前?」
(これで奴は知ってると答える。次に、俺はじゃあどこか言って見ろという。そして、奴は禁止エリアを答えるって寸法よ)
 内心、ほくそ笑み、ドモンの答えを待つガイ。だが、ドモンは一向に口を開かない。
 どうしたのかとドモンを見れば、その視線はガイの後ろを見つめていた。
「お前、こんなところで何をやっている」
「その声は……げぇっ!」
 ガイが振り向くと、そこには理央と共にいた黒装束の男の姿があった。
「てめぇ、なぜここに!」
「それはこっちの台詞だ。お前がここにいるということはジルフィーザの首は手に入れたのだろうな?」
「そ、それは……」
「ふん、使えない奴だ。まあいい。それなら、代わりにその男の首を取れ。それで命令に背いたことは許してやる」
「ぐっ、ぅぅっ」
 ガイはドモンと黒装束の男の顔を見比べる。 
 どちらもその実力の程はわからない。だが、黒装束の男には理央という仲間がいる。
52炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:04:37 ID:Khky4Lvi0
 今のところ、その姿は見えないが、どこかで観察しているに違いない。
(くっ、仕方ねぇ)
「とりゃ!」
 ガイはスタッグブレイカーを握り、ドモン目掛け薙ぎ払った。
 ドモンはその攻撃に機敏に反応すると、スウェーで避け、バックステップで距離を取る。
「てめぇ」
「悪ぃな。お前の方がどっちかっていうと弱そうなんでな!」
 スタッグブレイカーで次々と撃ち込まれる斬撃。
 だが、接近戦、それも武器が素手に近い爪との戦いということであれば、グラップラーであるドモンに分がある。
 ドモンはその一撃一撃を冷静に捌いて行く。
「ちっ、糞が!」
 ガイの怒りに任せた大振りの一撃。
 それはドモンにとって、チャンスにしかならない。
 素早く後ろに回りこみ、ドモンは鞘に入ったままの忍者刀でガイの背中を打ち付けた。
「げっ!」
 苦悶の声を上げ、大地へと突っ伏すガイ。
 追撃のため、ドモンは忍者刀を振り上げる。
「がっ!」
 しかし、悲鳴を上げたのはドモンだった。
 ドモンの左肩は爆ぜ、大量の血が流れ落ちる。
「敵はこちらにもいるということだ」
 黒装束の男の両手に握られたのは一対の銃剣グレイブラスター。その銃口からは一筋の煙が立っていた。
「へへ、助かっ――ぐぁ!」
 そして、その銃口が次に狙ったのはガイだった。
 ガイの装甲が容赦なく削られる。
「て、テメェ」
「あいつはお前を駒として利用したかったようだが、俺には理解できん。命令を聞かない駒など、さっさと排除するべきだ。
 それにどうもお前のことが気に入らんのでな」
 黒装束の男は右のグレイブラスターでドモンを狙い、左のグレイブラスターでガイを狙う。
 どうやら同時に始末するつもりらしい。
53炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:05:33 ID:Khky4Lvi0
(ちくしょー、ここまでかよ。いや、待て、何か方法があるはずだ)
 必死に脳を回転させるガイ。だが、無常にもその引き金は引かれた。
 発射される銃弾。
 人は死に直面したとき、動くものがゆっくり見えるという。
 ガイは確かに見えた。
 発射された銃弾が自分たちに届く寸前で――
「なっ!」
 ――弾かれる様を。
「こ、こりゃ」
「バリアだ。しかも、これはボルパルサーの」
 ドモンは忙しげに辺りを見渡す。その理由は直ぐにガイにもわかった。
 どこからか飛び降り、こちらを庇うようにドモンとガイの前に立つ緑色の戦士。
「シオン」
「お待たせしました、ドモンさん」
(こいつがシオンか。まあ、とにかくラッキーだぜ、こりゃ)
「おいおい、積もる話はあとにしてくれ。とりあえずあいつを何とかしなきゃだろ?」
 黒装束の男にシオンが変身したタイムグリーンを嗾けるガイ。
 ドモンはその態度に何か言おうと思ったが、今はシオンを殺すことよりも、黒装束の男を追い払うことが先決であることには違いない。
 ドモンも立ち上がり、黒装束の男に向けて構える。
「なんだ、高みの見物を決め込まねぇのか?」
「うるせぇ」
「しゃーねぇな、俺も手伝ってやるぜ。お前ら気をつけろよ。もう一人いるはずだからよ!」
(こいつを殺すしか、道はねぇみたいだしな。と、今の内に……)
「おい、ドモン。俺のこれと武器を交換しねぇか?イマイチ使いづらくってよ」
「………」
「おーい、聞いてんのかよ」
 ガイを無視するドモン。それを哀れに思ったのか、タイムグリーンは男から視線を逸らさぬまま、ディパックから取り出したホーンブレイカーをガイに投げ渡す。
「おっ、銃じゃねぇか。へへっ、サンキュー」
 タイムグリーン、ドモン、ガイの3人と対峙する黒装束の男。
 だが、彼に怯んだ様子は見て取れない。それどこか、どこかその状態を楽しんでいるかのようだった。
54炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:06:31 ID:Khky4Lvi0
「戦士ひとりと死に損ないふたりか。いいだろう、試すにはいい機会だ」
 彼はその腕に着けたクワガタ虫型のブレスに手を添えると、掛け声と共にボタンを押した。
「ゴウライ!シノビチェンジ!!」
 瞬く間にその身は濃紺のスーツに包まれる。
「牙忍クワガライジャー」
 名乗った後に3人それぞれの反応を確かめるクワガライジャー。
 だが、特に目立った反応は見られない。
(はずれか)
 クワガライジャーは一人で納得すると、グレイブラスターを再び構え、引き金を引いた。
「ボルパルサー」
 タイムグリーンはすかさずボルパルサーでクワガライジャーを包み込むバリアをつくり、銃弾を弾く。
「なるほど、それが先程のトリックの正体か」
「なら接近戦で行かせてもらう!」
 バリアが解けると同時にクワガライジャーは飛び込む。
 それを避けるため、ガイは左に、ドモンとタイムグリーンは右に跳んだ。
「ふっ、まずは貴様からか!」
 着地する寸前、クワガライジャーは一回転して態勢を入れ換えると、そのまま地面を蹴り、今度はガイ一人を目掛けて跳ぶ。
「げっ!」
 一方のガイは避けた直後で体勢が定まらず、回避運動が取れない。
 防御することも叶わず、ソードモードにしたグレイブラスターによる二連撃を背中に受ける。
 だが、それで終わらせるクワガライジャーではない。
 ガイをなます切りにするように三撃目、四撃目と次々に斬撃を撃ちこんで行く。
 身体に巻かれた包帯の欠片が宙に舞う。黒い装甲も剥ぎ取られ、赤に染まった地肌を見せた。
「させません!」
 後ろからクワガライジャーを切りつけようとするドモンとタイムグリーン。
 だが、その気配は察知されていた。
 ふたりに後ろを向けたまま、グレイブラスターで迫る刃を防御する。
「甘いな!」
 そして、クワガライジャーは二人の刃を跳ね上げると、振り向き様にドモンに蹴りを放ち、ドモンの身体を無理やりタイムグリーンへとぶつけた。
 咄嗟のことながら、ドモンを守ろうと、何とかその身を受け止めようとするタイムグリーン。
55炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:08:22 ID:Khky4Lvi0
 だが、戦いの最中に、相手から眼を逸らすなど、これ以上、狙いやすい相手もいない。
 銃口を向け、引き金に手を掛ける。
「喰らえ!」
 容赦なく、降り注ぐ銃弾の嵐。それでもタイムグリーンはドモンを守ろうと、その身を盾にする。
「シオン!」
「ふん、馬鹿な奴だ」
 クワガライジャーは攻撃の手を緩めない。
「俺を忘れてんじゃねぇ!」
 先程のお返しとばかりに、ホーンブレイカーを放つガイ。だが、それもクワガライジャーの想定の範囲内だった。
 それを弾こうと、右手のグレイブラスターをガイへ向ける。
「シルバーブレイザー!」
 しかし、その一撃はクワガライジャーも読み切れなかった。
 タイムグリーンを飛び越え、放たれるエネルギー光弾。
 クワガライジャーは抜群の反射神経で、その光弾は弾くが代わりにホーンブレイカーの一撃が背中を焼く。
「くっ、もう一人いたのか!」
 クワガライジャー目掛けて、駆けて来る銀色の男。
 ネジブルー戦の教訓から待機してもらっていた伏兵、早川裕作が変身したメガシルバーの勇姿だ。
 一瞬にして距離を詰めたメガシルバーの斬撃を、グレイブラスターを交差させてなんとか受け止める。
 だが、メガシルバーは素早くシルバーブレイザーをガンモードへと変形させた。
 受け止めていた刃が、突然なくなり、力の行き場をなくした両手は、まるで万歳をするかのように天高く上げられる。
「しまった」
 がら空きになった身体に放たれる無数の光弾にクワガライジャーは後退を余儀なくされる。
「悪いな。一気に決めさせてもらうぜ!ブレイザーインパクト!!!」
 後退していくクワガライジャーを追う様に突進していくメガシルバー。
 そして、シルバーブレイザーをソードモードに戻すと、それを一閃させた。
「とりゃ!」
「ぐがぁぁぁっ!!」
 必殺のブレイザーインパクトに、絶叫を上げるクワガライジャー。
 多量の火花を散らせ、地面へと崩れ落ちる。
「裕作さん!」
56炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:09:24 ID:Khky4Lvi0
「悪ぃな。耐え切れず、出て来ちまった」
「いえ、助かりました。ドモンさんも大丈夫ですか」
「………」 
「ドモンさん?」
 ドモンは自分が情けなかった。
 殺そうとしている相手は自分を命がけで守ろうとしている。
 しかもそこには一切の不信感さえ見られない。
 今更、ドモンは自分の進もうとしている道を変えるつもりはない。
 だが、もし一切の邪魔もなくシオンと対峙できたとして、自分は彼を殺すことができるだろうか?
 シオンが自分を憎み、罵倒し、挑みかかってくる男なら迷わずに済んだだろう。
 しかし、シオンは自分が刃を持って絆を断ち切っても、最後まで仲間を信じる男だ。
「……ちくしょう」
 自己嫌悪の沼に沈みいくドモンを見て、メガシルバーはハンドサインで下がらすようタイムグリーンに促した。
 戦いはまだ終わっていないのだ。
「はぁはぁ、貴様らぁぁぁっ!」
 ブレイザーインパクトを受けた傷を抑え、クワガライジャーが立ち上がる。
 素性が分からなかったため、裕作はある程度の手加減はしたつもりだったが、それでもしばらく昏倒させる程の攻撃はしたつもりだった。
(ちっ、足元もしっかりしてやがる。こりゃあ、本気を出さなきゃ厳しいかもな)
 メガシルバーはシルバーブレイザーを握りなおし、相手をにらみつける。
 対して、クワガライジャーは制限時間が残っているというのに、何故かその変身を解除した。
 一瞬、投降するつもりかと期待するが、向けられる強い殺意に、淡い期待は一瞬にして吹き飛ばされる。
 ネジレ獣と対峙した時にも感じない恐ろしいほどに強い殺意だ。
「やはり、こんなもの、ただの玩具よ」
 男はゴウライチェンジャーを投げ捨てると、その身に纏う黒装束も剥ぎ取る。
「なっ!」
 すると、その男のシルエットは激的な変化を遂げた。
 人間のそれから、猛々しい角と不気味な翼を携えた怪人の姿へと。
 緑の瞳に、鱗を備えた紅い皮膚。それは悪魔と呼ぶに相応しい姿であった。
57炎と共に消ゆる ◆i1BeVxv./w :2009/09/14(月) 00:11:29 ID:Khky4Lvi0
「我が名は龍冥王サラマンデス!一人残らず灰にしてくれるわ!!!」



「やれやれ、牽制だけでよかったのに、戦いに参加した挙句に正体まで晒しちゃうとは、本当に困ったお坊ちゃんだね」
 シュリケンジャーはメガシルバーたちに迫るサラマンデスを遠目で確認し、独り言ちた。
 シュリケンジャーたちがスタジアムに辿り着いたのは、実はドモンより先のことである。
 これから人が集まるであろうG6エリアの中心に位置し、バイクや自分たちが隠れやすいこの場所は拠点にするには丁度良かった。
 炎の騎馬を隠し、軽く休養を取り、さて、これから行動を興そうといったところでドモンが現れた。
 ドモンは願ってもない行動をしてくれた。G6エリア全体には確実に響き渡ったであろう宣誓の声。
 何人かは確実に釣れること間違いなしの行動だ。しかも、シュリケンジャーには一切被害は掛からない。
 だが、彼の誘いに乗って現れたのはガイ。
 そこで下手な行動を取らないよう牽制のためにサラマンデスを送り込んだのが、逆に無用な戦いを始める始末。
「シオンと銀色を引きずり出したからいいようなものの、折角の計画が台無しになるところだよ。
 まあ、ここまで来たんだ。お坊ちゃんの実力、見せてもらおうか」
 シュリケンジャーは新たな顔を用意して、自分の出番を待った。



「うわぁぁぁっ!!」
「あぁぁぁぁっ!!」
「げぇぇぇっ!!」
 炎が舞うスタジアムに、轟く悲鳴の三重奏。
 メガシルバー、タイムグリーン、ガイの3人は、サラマンデスが放つ強烈な火炎攻撃に苦戦していた。
「ちっ、これがこいつの本気ってわけか。こいつは応えるぜ」
「ドモンさんを避難させてて良かったです。スーツなしではとても耐えられません」
「俺も似たようなもんなんだけどよ。避難させてくれねぇかな」
 荒く息を吐く3人に対し、サラマンデスは先程の怒りが嘘のように極めて冷静な口調で、言葉を紡ぐ。
「ほぉ、おしゃべりとは随分と余裕のようだ。まだ、炎が足りんと見える」
 そう言って、サラマンデスは右の掌に火球を作り出す。
58炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:07:37 ID:sfd2iccl0
「くっ!」
「さて、誰から死にたい?」
 サラマンデスは改めて発揮する自分の力に酔っていた。
 ジルフィーザが生きていることに動揺を覚えたが、何も心配することはなかったのだ。
(そうだ、誕生の時にわかったではないか。今の自分はジルフィーザを遥かに超える力を持っていると。
 2時間の制限にさえ気をつけていれば、俺に敵などいない!)
「はっ!」
 サラマンデスが火球を放つ。
 怯むタイムグリーンとガイ。だが、メガシルバーは違った。
 シルバーブレイザーを構え、突進すると、火球に向けて、光弾を放つ。
 爆音を上げ、破裂する火球。
 その光と音に、皆の眼が一瞬眩む。それはサラマンデスとて、例外ではない。
 眼の眩んだサラマンデスに向けて、メガシルバーは斬撃を放とうとする。
「ふん、また小細工か」
 だが、サラマンデスも馬鹿ではない。
 サラマンデスはその翼で上空高く舞い上がる。そして、グレイブラスターで眼下にいるメガシルバーを狙い撃った。
 未だ眩む瞳のせいで、その狙いは正確ではないものの、無数に放たれる弾丸に、メガシルバーのスーツが削られていく。
 そして、途切れない攻撃はメガシルバーの反撃を許さない。
「はっはっはっはっ!」
 高らかに笑うサラマンデス。
「裕作さん」
 メガシルバーを守るため、タイムグリーンはボルパルサーでバリアを張る。
「駄目だ、シオン!」
 しかし、それはサラマンデスの狙い通りだった。
 確かにバリアを張れば、メガシルバーは守れる。が、その代償として、自分自身の防御はがら空きになる。
「馬鹿め」
 気付いた時には遅かった。放たれた火球がタイムグリーンに直撃する。その威力に解除される変身。
 そして、バリアが解けると同時に、サラマンデスは急降下し、シオンに気を取られたメガシルバーに蹴りを放った。
「ぐっ、シルバーブレイザー」
 攻撃を受けながらもシルバーブレイザーで反撃を試みようとするメガシルバー。
59炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:08:50 ID:sfd2iccl0
 しかし、引き金を引く直前、彼の手からシルバーブレイザーが消える。
 2分30秒。彼の制限時間が経過したのだ。
「ちっ、こんな時に」
 生身のまま、背中から地面へと叩きつけられる裕作。
 意識こそ保っているものの、直ぐに立ち上がることは叶わない。
 サラマンデスはその二人の様子を満足に見遣ると、残った最後の一人に眼を向けた。
「残るは貴様だけか。逃げなかったことだけは誉めてやる」
「へっ、冗談じゃねぇ。倒せる相手にどうして逃げるんだよ」
 サラマンデスに堂々とした態度で対峙するガイ。
「ほぉ、勝算があるというのか?」
「へっへ〜、これを見な!」
 ガイは自慢げに手元にある武器を見せる。
 それはホーンブレイカーにスタッグブレイカーを合体させた形態。
 ゴウライジャーの必殺武器、ダブルガジェットだ。
 ガイは持ち前の闘魂で、ホーンブレイカーとスタッグブレイカーが合体できる性質のものと見抜き、見事、合体を実現させたのだ。
「ふっ、何かと思えば。そんな武器を持ったところで、俺に勝てると思うのか」
「あたぼうよ。じゃあ、試してみようぜ。どっちが早く撃てるかだ」
(ふん、くだらんな)
 サラマンデスは嘲るような笑みを浮かべる。
 ダブルガジェットが強力な武器だったとしても、ガイは既に満身創痍。
 この状態で勝てるなど、あまりの実力差に気でも触れたとしか思えない。
(貴様と俺、どっちが早く動けると思う。今の貴様の動きは蚊でも止まりそうなほど鈍い。
 相打ち覚悟で攻撃するつもりか?
 それも無駄だ。我が炎なら狙いも乱雑になるが、貴様のこの銃なら正確に狙い撃てる。
 貴様が引き金を引くより先に、貴様の眉間と腕を貫いてくれるわ)
 先に動いたのはどっちだったのだろうか。それはわからない。
 だが、サラマンデスの予想通り、自らの武器の引き金を先に引いたのは彼だった。
60炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:09:19 ID:sfd2iccl0
(死ね)

――カチリ

「何!?」
 だが、銃は乾いた音を立てるだけで、銃弾を発射しようとはしなかった。
「ざぁ〜んねんでしたぁ!!!」
 ガイ自身が妙な行動を取っていれば、サラマンデスは瞬時に反応できていただろう。
 しかし、自分の手元で起こった異変に、サラマンデスは気を取られ、反応が遅れた。
 結果、ダブルガジェットから放たれた雷の光弾はサラマンデスへと直撃した。
「!!!」
 悲鳴すら発せず、吹き飛ばされ、スタジアムに叩きつけられるサラマンデス。
 そして、盛大な爆発が巻き起こる。
「へっへ〜、スゲェ威力だぜ。こいつはよ。しかし、一か八かの賭けだったが、旨くいったぜ。
 まあ、ガイ様のツキなら当然かも知れねぇがな」
 ガイは戦いの最中、ずっと疑問に思っていた。
 なぜ、グレイブラスターがサラマンデスが使えるのかを。
(拘束されたときはすっかり忘れてたが、グレイブラスターは俺が制限中は撃てねぇはずなんだよな。それをあいつはバカスカ撃ってる。
 まあ、ドモンと戦うためにちびっと本気を出してたから当然なんだが、じゃあ、本気を出さなかったら止まるのかはやってみなきゃわからなかったからな)
 10分という時間が立てば、供給が止まるのは当然だろ。
 だが、ずっと変身している状態の自分が自らの意思で能力を発揮するのを止めることができるかは賭けであった。
(あの青の姉ちゃんにいいのもらってから、常に身体動かすのに頑張ってるからな。
 イマイチ、制限の間隔が使めねぇ。まったく厄介なことを仕出かしてくれたぜ)
「さて〜」
 思考中も、ガイは歩みを続けていた。
 まだ、勝負は終わっていない。勝負は確実に相手を殺すまで続く。
「後で実は生きてましたじゃ、洒落にならねぇんでな」
 ガイの眼下には倒れ伏すサラマンデス。
 雷の破壊エネルギーに彼の胸は黒く焼け焦げていた。そんな中で、冥王であることを示す星だけが輝いている。
「けっ、気にいらねぇな。よーし、その星ごと心臓を抉りだすことにけって〜い!」
61炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:09:44 ID:sfd2iccl0
 右腕にスタッグブレイカーを握り、狙いをつける。
 後ろで、外野が何か言ってる気がしたが、全然聞こえな〜い。
「死にな」
 振り下ろされるスタッグブレイカー。
 その刃が胸の星に届こうとした直前、ガイの右腕が止められる。
「なっ、てめぇ、まだ!」
 サラマンデスはガイの腕を力強く握り固定すると、虚ろな眼でじっとその右腕を見ていた。
「くそっ、放しやがれ!」
 左腕に握ったホーンブレイカーの引き金を引き、至近距離から光弾を打ち込む。
 だが、サラマンデスは一向にその腕を放そうとしない。
「死後硬直か?しつけぇんだよ!さっさと成仏しやがれ!!」
「――した」
「あん?」
「思い出した……その右腕……お姉ちゃんを殺した………………黒い影……」
「何言って――」
「お姉ちゃんを殺したぁぁぁっ!!!!!」
 怒声と共に、サラマンデスの身体中から発せられる炎。
 右腕を捕まれたガイはその立ち昇る炎の奔流を身体全体に浴び、たちまち火達磨になる。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!放せぇぇ!!!放しやがれぇぇぇぇぇぇ!!!」
 ガイは懸命に振りほどこうとするが、右腕はまるで岩と化したかのようにピクリとも動かない。
 光弾を放ち続けていたホーンブレイカーも炎に屈し、もう動作を止めている。
「ちくしょぉぉぉ!!!このガイさまがこんなぁぁぁぁぁぁっ……ぁぁっ…ぁっ……っっ」
 やがて、獣のようなガイの咆哮も小さくなっていき、その身体と共に炎に溶けていった。
「ガイさんが……」
 ガイの死に唖然とするシオン。だが、呆けている暇はないのは明らかだった。
 サラマンデスから発せられた炎は対象を選ばず、全てを燃やし尽くそうと次から次に発せられている。
 その炎は火種を必要としないのか、砂上だと言うのに燃え盛り、コンクリートの壁にも引火していた。
 このスタジアムの全てが炎に包まれるのも時間の問題だろう。
「やばいぜこれは。とにかく逃げるぞ、シオン」
 痛む身体に鞭を打って、その場から逃げ出そうとする裕作とシオン。
62炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:10:06 ID:sfd2iccl0
 だが、不意にシオンの動きが鈍った。
「どうした!?」
「……先に行っててください」
 シオンの視線を追えば、そこにはドモンの姿があった。
「あいつ、逃げていなかったのか」
「元々、ここに来た理由はドモンさんに会うためです。僕はドモンさんと一緒に後を追います」
「シオン、俺も!」
「いえ、ここは二人だけで話をさせてください」
 そう言うと、シオンは踵を返し、ドモンの元へと走り出した。
 追おうとする裕作だが、それを遮るように、彼の前に炎が走る。
「くっ、無事でいろよ、シオン」
 裕作は断腸の思いで、一人スタジアムの外へと駆け出した。



 いくつかあるスタジアムの出口から、俺たち二人は炎が届かぬ場所まで逃げ出し、対峙していた。
 シオンはサラマンデスとかいう奴との戦いのせいでボロボロだった。
 変身能力も制限され、邪魔者もいない。殺すなら今が最大のチャンスだろう。
「ここまで来れば、大丈夫ですね」
「………」
「ドモンさんが殺し合いに乗ったって聞いた時はびっくりしました。最初は信じられませんでした。
 でも、ドモンさんの口から聞いて、ドモンさんは殺し合いに乗ったわけじゃなくて、どうしても叶えたい願いが出来たんだなってわかりました」
「………」
「ロンが本当に願いを叶える力を持っているのか、僕にはわかりません。でも、誰かの犠牲の上に成り立つ未来なんて、間違っています」
「そんなことはわかっている!」
 俺は忍者刀を抜くと、シオンの首に刃を向けた。
「だから、俺はお前を殺して、一歩を踏み出す」
「できませんよ、ドモンさんには」
「できる!」
「できません!だって、ドモンさんは僕や竜也さんを仲間だと思ってますから。ドモンさんは仲間を傷つけることが出来ない人ですから」
63炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:10:29 ID:sfd2iccl0
「………!」 
 そんなこと、今更言われなくてもわかってる。だから、俺はお前たちを殺そうとしたんだ。
 お前たちを殺せば、きっと俺はもう迷わなくなる。だから、だから……
「うぉぉぉぉぉっ!」
 俺は忍者刀を振り上げると、全ての力を込めて、振り下ろした。
「………」
 だが、抉られたのは、シオンの傍らの地面だけだった。
 どれだけ気合を入れたところで、どれだけ決意を固めたところで、どれだけ深雪さんの顔を思い描いたところで、結局、俺はシオンに刃を振り下ろすことはできない。
 俺の瞳に、また涙が浮かんだ。
「ドモンさん、僕たちと一緒に行きましょう。ドモンさんが愛する人に報いる方法が人を殺す以外にもきっとあるはずです」
 俺に差し出される手。
 正直、俺は迷っていた。その手を握るか、払うか。それがきっと分かれ道、留まるか進むか。
 払うべきだと俺は思う。だが、今更ながらに深雪さんがそれを望んでいるのかと俺は考える。
 望んでいようがいまいが、必ず願いを叶えると誓ったはずなのに。
「ドモン!シオン!」
 迷う俺に、更に追い打ちをかけるかのように、また、誰かが現れた。
 できれば、その顔は見たくねぇ。そいつの顔を見れば、より一層迷うのはわかりきっているからだ。
「竜也さん」
 予想通りの名前を呼び、シオンがその男の元へと駆け寄っていく。
「たつ、やさん?」
 だが、次に聞こえてきたのはシオンの驚愕に満ちた声。そして、ドサリと何かが落ちるような音。
 一体、何が起こったのかと思わず顔を上げると、竜也の前でシオンが倒れ伏していた。
 何だ?何が起こったんだ?
 倒れたまま、シオンはまったく動こうとしない。竜也も見下ろすだけで助け起こそうとする様子は見られない。
 そこで俺はようやく竜也の右手に握られたものに気付いた。
 竜也の右手には犀の角のように大きく反ったナイフが握られている。そして、その刀身からは赤い液体が垂れ落ちていた。
 まさか。
 過ぎる悪寒に、俺は急ぎシオンの元へ駆け寄ると、その身を助け起こす。
「うわぁっぁぁぁっぁぁぁ!!!」
 俺は眼を疑った。
64炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:10:51 ID:sfd2iccl0
 シオンの胸からは大量の血が流れ出て、服を真っ赤に染めていた。
 シオンのいつも柔和な顔は驚愕に固まり、信じられないようなものを見たかのように、眼が見開いている。
「シオン!おい、シオン!」
 俺は必死に名を呼ぶが、もう返事を返すわけがない。
 彼の胸にある傷は間違いなく急所に刻まれており、致命傷となる深さなのだから。
「竜也!お前、なんで!?」
 俺は感情のまま、竜也に言葉をぶつける。
 信じたくはなかったが、あの状況でシオンを刺したのは竜也しかありえない。
「なんでって、殺し合いに乗ったお前がいうことじゃないだろ。
 まあ、あえて言うなら、俺はお前の仲間で、シオンは仲間じゃないからさ」
「仲間じゃない?」
「仲間とは同じ目的に協力して挑む者のことだ。優勝を目指そうとしないシオンは仲間とは言えないだろ?」
 したり顔でそんなことを言う竜也に、沸々と怒りが沸いてくるのを感じる。
「なんだい、その顔は?俺はお前が絶対、出来ないことを代わりにやってやったんだ。
 いわば仲間として、障害を取り除いてやったわけだ。
 お前は"元"仲間を殺せないと先に進めないと思ってたようだけど、そんなことはない。
 適当な奴を殺して、数をこなしていけば、誰でも殺せるようになる。
 初めから殺しにくい相手を選んだのが、お前のミステイクなのさ」
 俺は竜也に気づかれぬよう忍者刀を手に取った。
 竜也の言っていることは、殺し合いに乗った俺にとって、正しいのかも知れない。
 だが――
「でぇぇぇい!!」
 俺は竜也の首を狙い、忍者刀を横薙ぎに奮った。
 しかし、竜也はあっさりとそれを避けると、俺の一撃は空を切る。
「殺る気になったのは結構だけど、いきなり俺を狙うなんて酷いじゃないか。仲間だろ?」
「違う。お前なんて仲間じゃねぇ。俺の仲間はシオンだ」
「はっ」
 竜也は鼻で笑うと、懐から緑色のボールを取り出す。
「天空シノビチェンジ」
「……ぐっ!」
65炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:11:15 ID:sfd2iccl0
 俺の腹に激痛が走った。
 意味不明の言葉を呟いたかと思うと、俺の視界から消えた竜也は、一瞬にして、俺の懐へと潜り込んでいた。
 いや、その姿は竜也じゃない。タイムレッドでもない。緑色のスーツを着たマーダー。
「残念だよ、ドモン」
「お前、その声、竜也じゃ……ぐぎっ」
 より一層深く刺しこまれた刃に、俺はようやく自分が刺されたのだと気付いた。
 心臓ではなく、腹なのは俺に苦しみを与えるためか?
「筋書きはこうかな。ドモンは戦いのドサクサに紛れ、元仲間であるシオンを殺すことに成功。
 だけど、罪の意識に苛まれ、結局は自害して果てた。いい筋書きだろ?シオンの名誉も君の名誉も守ることができる」
 俺の疑問に最悪の回答で答える緑色。
「ふ、ふざけるなぁぁぁ……っ!」
「ふざけてなんかいないさ。覚悟が足りないユーには似合いの最後だろ?所詮君はヒーローにも、マーダーにもなりきれない中途半端なFoolさ」
 俺の腹に刺し込まれた刃が更に深く刺し込まれたかと思うと、今度は横に進み始める。
 そういえば日本には切腹という文化があったのを思い出した。
 自らの不始末に責任を取るための自害方法だったけ?
 ははっ、俺にはお似合いかもな。こんな奴に無理矢理やらされなければ――
 そこで俺の意識は途切れた。なんとも締まらない最後だった。



「グッバイ!君の死は無駄にはしないよ」
 事切れた死体を前に、ミーは朗らかに別れの言葉を呟く。
 本当に残念だよドモン。お坊ちゃんの暴走でガイという手駒を失い、その代役にと思ったんだけど。
 でも仕方ないね。君は殺し合いをするには優しすぎた。
 任務のためなら、仲間も殺す。それぐらいの非情さがなければ、この戦いは勝ち残れない。
 香典代わりに、操獣刀は残しておくよ。言った通り、君たちの名誉のためにね。
「予定と若干違ったけど、結果オーライ。さて、お坊ちゃまの回収に行こうかな」
 首輪の効果でサラマンデスの暴走は治まったみたいだ。
 炎はスタジアムを焼きつくそうとしているけど、もう新たな火種は発生していない。
 今回のことで迂闊な行動がどういう結果を招くか、学習してくれるといいけどね。
66炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:11:33 ID:sfd2iccl0
 ミーは肩をすくめると、サラマンデスの元へと歩いて行った。

【クエスター・ガイ 死亡】
【シオン 死亡】
【ドモン 死亡】
残り21名


【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:健康。現在は竜也の顔です。シュリケンジャーに変身中。
[装備]:シュリケンボール、スワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャー
[道具]:SPD隊員服(セン)、クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー
 マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、何かの鍵、支給品一式×4(水なし)
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る
第一行動方針:サラマンデスの回収。
第二行動方針:扇動者となって、なるべく正面から戦わずに人数を減らす。
第三行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。 それがだめならアレの消滅を願う。
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・禁止エリアに入った時の首輪の効果を確かめました。
・炎の騎馬はスタジアムに隠してあります。
67炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:11:52 ID:sfd2iccl0
【名前】ドロップ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:26話、サラマンデス覚醒前
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:胸に大ダメージ。意識混濁中。サラマンデスに成長完了。2時間能力発揮不可能。
[装備]:なし
[道具]:メメの鏡の破片、虹の反物、グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー、支給品一式(ドロップ、ジルフィーザ)、
[思考]
基本行動方針:とりあえず優勝狙い
第一行動方針:シュリケンジャーと協力して、数減らし。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・禁止エリアに入った時の首輪の効果を確かめました。
※スタッグブレイカーとホーンブレイカーは破壊されました。ゴウライチェンジャーはスタジアムに放置しています。
 ゴウライチェンジャー他、ドロップの支給品が炎の影響を受けているかどうかはお任せします。

【名前】早川裕作@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第34話後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:右肩、腹部、左足を負傷。その他も体中に軽度の負傷。2時間変身不能。
[装備]:ケイタイザー
[道具]:なし
[思考]
第一行動方針:シオン、ドモンと合流する。
第二行動方針:瞬を元に戻す。(生物学、医学の知識のある者と接触したい)
第三行動方針:シオン、菜摘と首輪を解除する。
[備考]
2時間の制限に気づきました。ヒカルと情報交換を行いました。メガシルバーの変身制限時間は2分30秒のままです。
ヒカルがドモンを殺し合いを止めるように説得していると思っています。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。
裕作の支給品はメレが預かっています。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。
68炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:12:20 ID:sfd2iccl0
【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:軽い打撲、水中にいたため、そして全力疾走したので身体はかなり疲労しています。
[装備]:アクセルブレス 、クロノチェンジャー(タイムピンク)@未来戦隊タイムレンジャー、
[道具]:首輪(ドギー、深雪、アンキロ)、サーガインの死体(首輪付き)、基本支給品一式×2(仲代壬琴、小津勇)深雪の残したメモ。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。 ロンに負けない。
第一行動方針:首輪を解析する。
第二行動方針:H−4で映士と合流出来なければ3回目放送までにJ−6公園で待つ。
第三行動方針:仲間(シグナルマン)を探す。
備考:ダイノハープがないため、アバレブラック(菜摘の場合アバレーサー)への変身はできません。また、菜摘が変身できるほどのダイノガッツがあるかは不明です。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。首輪によって設けられた制限時間の情報も得ています。
※壬琴から情報を得ました。深雪のメモを読みました。
※禁止エリアでは首輪を外しても生存可能だと思っています。
※小津勇の食料、ペットボトルは長い年月を得たような状態なのを見ました。
※クロノチェンジャーの変身方法を知っています。
※変身制限に気が付きました。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと裕作から掻い摘んだ説明は受けました。

※下記の支給品はシオンたちの近くに放置されています。
 クロノチェンジャー、鬼の石@星獣戦隊ギンガマン、操獣刀@獣拳戦隊ゲキレンジャー、
 闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー、拡声器、基本支給品一式(サーガイン、シオン)


69炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:14:40 ID:sfd2iccl0
炎を共に消ゆる ◆i1BeVxv./w:2009/09/14(月) 00:26:39
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などあれば、お願いいたします。


__________________________________


以上代理投下終了!
投下に気付かず遅くなり申し訳ありませんでした。
まだ全部読破しておりませんが鳥肌が立ったぜ!
後ほどゆっくりと読んだ後、感想投下させて頂きます!GJでした!!
70炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/09/14(月) 08:15:56 ID:sfd2iccl0
満たされる…これが名無しの力か…:2009/09/14(月) 02:27:44
GJです!
ちゃんとした感想は代理投下した後にと思いますが
(というか今はまだ圧倒されて言葉が出てこなかったり)
ズシッと来る作品でした。
本当にGJです!

現在、PCにさわれないので、代理投下は、明日、させていただこうと思います。


__________________________________

感想も代理投下しておきます!
改めてGJ!
71名無しより愛をこめて:2009/09/14(月) 12:15:49 ID:9jQxKV+uO
この投下、何と言う燃料投下だ!
三者三様の無情なる死。
得にガイの死には鳥肌立ちました!
そしてドモンを信じいったシオン。
かなり涙を誘う展開の後、ついにドモンが……。
ドモンよく頑張ったよ、ドモン。
ドモンの悲しみと苦しみはきっと書き手たちが晴らしてくれるからゆっくり眠ってくれ。
最高でした!GJ!
72名無しより愛をこめて:2009/09/14(月) 14:42:49 ID:rhLtVyGP0
投下&代理投下GJ!です。

まずは、ドモン、お疲れ様。君はもう休んでいい。休んでいいんだ。
最後まで迷いの中にいたドモン。自分の信念を貫き通したシオン。
半ばで思いがけない死を遂げる事となった彼らの無念が伝わって、胸が重くなりました。
ここまで、体はボロボロ、心はノリノリでやってきたガイにも遂に終わりの時が。
麗を殺した報いで、というのが皮肉だなと感じました。
慢心ゆえに追い詰められ、ドロップであった頃の記憶ゆえに暴走したサラマンデス。
「お姉ちゃんを殺したぁぁぁっ!!!!!」 という彼の叫びが、なぜだか切なかったり。
そして何より、遂に自らの手でキルマークを刻んだシュリケンジャーの醒めた思考が恐ろしかったです。
任務の為に、ここまで非情になれるのが忍びなのかと。
彼の今後が、末恐ろしくかつ楽しみです。

それぞれの心理描写に引き込まれて、恐ろしいほどでした。
本当にGJ!です。


73名無しより愛をこめて:2009/09/14(月) 16:33:31 ID:Pc4Yk/SD0
よかったよ、ドモン。お前がシオンを殺さなくて。
お前は中途半端じゃなかった、仲間思いのイイ奴だよ、うん。
……シュリケンジャーてめぇぇぇぇぇ!!!
シオンは殺されたけど、竜也が悪いヤツだとは思ってないよな? そうだよな?
あれが竜也じゃないってわかってるよな?

そして、サラマンデスの怒り。コレはすごく良いと思います。
マーダーながら、なぜか憎めない……。

GJです!
74名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 08:41:32 ID:VrAi5usjO
投下本当に乙!GJでした。


そして月報用にここまでの分を集計しました。
集計人の方よろしくお願いいたします。

7月15日〜9月14日

戦隊ロワ状況
111話(+ 9)
生存者 21/42(- 5)
生存率 50

以上ですが実はしたらばにもう一作投下がありました。
今日中に投下になれば112話になるかと思います。
いつもありがとうございます。

75名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 10:58:35 ID:LJ7eSg6m0
集計GJ!です。
したらば投下あったんですね。読みにいかねば
76竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:18:20 ID:t517ykht0
ただいまより、浅見竜也の投下を行います。
77竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:20:54 ID:t517ykht0
 夢を見ていた。
 幸せな夢。
 だから、哀しい夢。

 いくつもの写真が飾られている部屋がある。額縁や写真立ては精巧にできていて、見るものの心を魅了する。
 その全てが、俺とその仲間の写真だった。

(これ……懐かしいな)

 あまり思い出したくないことだったが、今となって見ると、見ているだけで頬が緩んでしまう。それほど、その写真は可笑しく、懐かしかった。
 パワースプリッティの効果で、アヤセ、ドモン、ユウリとともに酔っ払ってしまった日。

(はは……ドモンが一番ひどいな……)

 童心に帰り、無邪気な笑顔で写真のドモンを笑う。上半身裸で、お腹に顔のラクガキをしている。腹芸というやつだろう。よくもまあ、何でもない日にこんな宴会のようなことをできたものだ。敵の作戦とはいえ、あの時は確かに楽しかった。

 仲間とは本当に何度も写真を撮った。
 共に戦う静観な顔立ちが好きだった。
 ぶつかり合っても仲間として戦ってきてくれたお前たちが好きだった。
 そして、何よりも

 無邪気な笑顔で笑う君が好きだった。

(シオン……ドモン……お前ら、特に仲良かったよな……)

 二人が肩を組んで笑いあう姿を思い出そうとすると、とても鮮明に思い出すことが出来る。この二人はまるで兄弟のようで、親しみやすい仲間だった。

(アヤセ……ユウリ……それに直人……少しツンツンしてたけど、お前たちも俺の親友だった……)

 いつもはツンツン。時にデレデレ。そんな仲間たち。
 アヤセが抱える悩みを時に一緒に背負った。ユウリの横顔には何度も見惚れた。直人も、考え方こそ違ったが、大晦日に見せたあの笑顔は忘れない。
78竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:22:02 ID:t517ykht0
(クリスマスの写真か……)

 そこには、クリスマスに撮った写真もいくつかあった。これは記憶に新しい。楽しかったな……あの時は色々あったけど、最高の仲間たちと過ごせた思い出は忘れない。

 常に危険と隣りあわせだったけど、あんな楽しい日々がずっと続くなら……俺はどんな苦労も厭わなかった。本当に大事な仲間だったから。
 だけど、頭の片隅にはいつも気になることがあった。
 アヤセの病気やロンダーズとの戦いで、この幸せが崩れてしまったらと思うと、気が気でなくなる。その晩を寝ずに過ごし、眠気を殺して陽気ぶる日もあった。

 仲間たちにも、笑顔でいて欲しかったから。
 ずっと、笑顔でいて欲しかったから。
 だから、俺は頑張れたんだと思う。どんなに辛くても、どんなに悲しくても、笑顔でいようとして。

 そのあとの夢で見たのは、幸せな日だった。

 タイムロボターに起こされ、起床。特に悩みもなく、すんなりと起きることが出来る朝。
 いつもと同じ貧相な朝飯。
 だけど、みんなで食べると美味しかった。ドモンがおかずを取ろうとしたり、アヤセがそれをかわしたり。
 それから、仕事。依頼は来なくても、道場の師範は日々の日課だ。子ども達に、拳を説く。そして、自分自身も心身ともに強くなる。
 昼飯。これもまた満腹になれる量はない。さすが、五人分。
79竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:23:04 ID:t517ykht0

「アヤセ、このたくわん貰いッ!」
「やめろ、俺のだ。食うなら竜也から貰え」
「……お前らまたかよ……って、俺のはやらないぞ!」
「三人とも、もう少し静かにしてちょうだい」
「「なんで俺たちまで!!」」

 そして、シオンがそんな様子を見て子供っぽく笑う。それぞれが背負っているものなんて忘れて。そんなもの、最初からなかったかのように。
 そんな何でもない日常なのに、お坊ちゃま暮らしよりずっと楽しかった。
 大学で自慢げにパーティに誘ってくる、会社の友好目当ての仲間なんかよりずっと……ずっと、素晴らしい仲間を持っていた。

「よお。相変わらず貧相な飯だな」
「あ……直人!」

 滝沢直人──彼も大学の同級生だった。だが、お坊ちゃまたちとは違い、庶民的な財力だったため、嫌気が差して大学を辞めている。
 そして、俺と再会して、彼はタイムファイヤーとなった。

「悪いけど、直人の分は……」
「もう食った。今日は依頼に来たんだ」
「……依頼?」
「この女の子が迷子になったらしくてな」

 直人の陰から、高校生ほどの女の子がひょいと出てくる。──間宮菜月ちゃんだ。

「菜月ちゃん……?」
「あ! 竜也さん! ちょっと道に迷っちゃって……」
「仕方がないなあ……アヤセ、車の準備頼む」

 不本意そうな顔をして、アヤセが車の鍵を探し始める。だが、こう見えて彼も悪い人間ではないのだ。
80名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 17:23:05 ID:VrAi5usjO
支援
81竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:25:09 ID:t517ykht0
 菜月ちゃんをサージェスまで送る途中、色々な人に会った。
 道を歩く老人(ブクラテス?)を背負ったお巡りさん(シグナルマン?)。
 腕を組んで歩くカップル(男が理央で女はメレ?)。
 不細工な顔で寝ている猫(スモーキー?)。

 そうだ……彼らは俺がどこかで出会ってきた人たちだ。
 どこで出会ったのかは……覚えてない。割と最近な気がするが……。

「なあアヤセ、サージェスってこの辺だよな?」
「ああ。あと3kmくらいだ」

 道の外を黒いラインの入った服を着た人が走っている。誰かを捜しているのか、キョロキョロと左右に首を回している。

「あ! 真墨だ!」
「……知り合い?」
「うん。ここで降ろして」

 言われたとおりに菜月ちゃんを降ろし、依頼はなんとか成功。「お世話になりました」と恥ずかしそうにお礼を言った後、菜月ちゃんを叱る真墨くん。
 そんな様子を見ながら、俺は笑ってしまう。

 俺には、大切な仲間がいた。
 そして、菜月ちゃんにも、大切な仲間がいた。

 ……どうして過去形なんだろう。
 一体何があったんだろう。
 俺の仲間は、こんなにも近くにいるというのに。

 世界が真っ白に包まれる。
 アヤセも、自分がいたはずの車も消え、真っ白な空間にただ立っている。
82名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 17:25:28 ID:LJ7eSg6m0
支援
83竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:26:04 ID:t517ykht0
 そうだ……これは夢だったんだ。
 菜月ちゃんは、いるはずがない。死んでしまったんだ。

「俺は……救うことができなかったんだ……菜月ちゃんを」

 自分の無力さに、涙が頬を伝う。幸せだったはずの世界は崩れ、一変して俺の目の前には、死に際の菜月ちゃんの顔がフラッシュバックする。
 そのギャップがあまりにも悲しかった。

こんな幸せな未来が掴みたかったのに。
こんな惨劇に遭遇したくなかったのに。

「……竜也さん」

不意に、菜月ちゃんの声がする。だが、顔は上げない。それが自分の夢であると、確信を持っていえるからだ。
夢は時に裏切る。
幸せな夢から覚めると、悲しい現実に直面する。それならば、最初から夢なんて見たくなかったのに。

「菜月は、竜也さんが菜月を救えなかったなんて思ってないよ。もし、竜也さんと会わなかったら……菜月は、きっともっと早く死んでたよ……だから、竜也さんと会えてよかった」

 笑顔で訴えかける健気さが、再び俺の顔を濡らす。自分より小さな女の子の前で泣いているなんて、情けない……なんて情けなんだよ……俺。
 本当なら、死ぬ未来なんて考えたくなかった。殺し合いという状況を忘れるほどの癒しを、菜月ちゃんはくれた。だから、そのお礼として生きてかえしてあげるつもりだった。それが一番の未来だった。

「ありがとう……竜也さん。真墨たちが待ってるから……行ってくるね」
84竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:28:06 ID:t517ykht0
 そうだ……これは夢だったんだ。
 菜月ちゃんは、いるはずがない。死んでしまったんだ。

「俺は……救うことができなかったんだ……菜月ちゃんを」

 自分の無力さに、涙が頬を伝う。幸せだったはずの世界は崩れ、一変して俺の目の前には、死に際の菜月ちゃんの顔がフラッシュバックする。
 そのギャップがあまりにも悲しかった。

こんな幸せな未来が掴みたかったのに。
こんな惨劇に遭遇したくなかったのに。

「……竜也さん」

不意に、菜月ちゃんの声がする。だが、顔は上げない。それが自分の夢であると、確信を持っていえるからだ。
夢は時に裏切る。
幸せな夢から覚めると、悲しい現実に直面する。それならば、最初から夢なんて見たくなかったのに。

「菜月は、竜也さんが菜月を救えなかったなんて思ってないよ。もし、竜也さんと会わなかったら……菜月は、きっともっと早く死んでたよ……だから、竜也さんと会えてよかった」

 笑顔で訴えかける健気さが、再び俺の顔を濡らす。自分より小さな女の子の前で泣いているなんて、情けない……なんて情けないんだよ……俺。
 本当なら、死ぬ未来なんて考えたくなかった。殺し合いという状況を忘れるほどの癒しを、菜月ちゃんはくれた。だから、そのお礼として生きてかえしてあげるつもりだった。それが一番の未来だった。

「ありがとう……竜也さん。真墨たちが待ってるから……行ってくるね」
85名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 17:28:10 ID:LJ7eSg6m0

86竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:28:52 ID:t517ykht0
 顔を上げる決意ができたとき、そこにいたのは直人だった。

「なあ、竜也。俺はどうやら運命とやらに勝てなかったらしい……」

 直人は寂しそうに呟く。菜月ちゃんとの段差が大きいが、これはこれで涙を誘ってくる。涙を止めることはできない。拭い続けることしかできないのだ。

「お前は、勝てよ」

 親友の口から出た、意外な言葉。「死ぬな」というアドバイス。
 俺は思わず口を開けて驚きながら、口に入る涙を舌で味わい続けた。

「ガラでもないこと言っちまったな……」

 直人は笑うと去っていく。

 入れ違いのように、俺の左右の位置に二人、男が立っている。

 この殺し合いに参加させられた、俺の仲間。
 かけがえのない、親友たち。

「……僕、ずっと独りぼっちでした。戦争で、同族を失って……。それでも、竜也さんたちがいてくれた。……だから、僕はもう独りぼっちじゃない。
 ずっと、ずっと欲しかったものが手に入ったんです! 天才なんて称号も、学者さんたちのお世辞も……本当は必要なかったんです! 本当に欲しかったのは……竜也さんたちみたいな、最高の仲間だったんです!
 だから……ありがとうございました。ずっと、仲間でいてくれて……僕、一生……っていうのも変ですけど、絶対忘れません!」

 シオンが抱え続けた悩み。絶え間ない孤独。それを、俺たちが解き放った。自覚はしている。それでも、シオンがそれを感謝していてくれたということを改めて実感し、涙が倍増する。

「……竜也。俺はまず、お前に謝らなきゃならない。すまん! 俺は殺し合いに乗っていた! お前を殺そうとした! でも、俺は気付いたんだ……シオンを殺そうとして、それなのに殺せなかったとき……。俺には、守るべきものが二つあったんだ。
 一つは、愛する者。もう一つが、仲間だったんだよ……俺は、そのうち一つしか気付いていなかった。だから、こんなとこに来ちまったんだな……」

 ドモンの口調は、どこか自虐的だ。シオンは、いつの間にかいない。
 ……俺はまだ、菜月ちゃんにも、直人にも、シオンにも、感謝の気持ちを伝えていなかった。だから、いなくなっていくことに後悔した。
87名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 17:30:27 ID:LJ7eSg6m0

88竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:30:33 ID:t517ykht0
「なあ、ドモン……」
「いいんだ、言わなくて。……俺たちはお前に充分礼を貰ったからな。
 ……なあ、竜也。男が守るべきものってなんだと思う?」
「え……?」
「お前は、全てを守れ。俺みたいに、ただ一つを守るために馬鹿な真似をしないでくれ。
 全てを守れ。……たとえ、守れなくたっていい。ただ、必死で守るために戦い続けろ。
 ユウリ、アヤセ、それからお前が出会ってきた人たち……その全てを。俺や、シオンみたいに守れなかったものがあったっていいんだ……それを、次に活かせばいい。
 俺みたいに、ヒーローにもマーダーにもなれない中途半端なヤツにはならないでくれよ。お前は、立派なヒーローになれるんだから。今からでも、全てを守れるはずなんだから。
 ……それで、俺みたいなバカだけど、お前にどうしても頼みたいことがあるんだ。
 アヤセかユウリに、『弟たちを頼む』って言っといてくれ。前にも言ったろ。……ああ、帰りたかったな〜……。あんな団欒を経験したからこそ、深雪さんに幸せな家庭をプレゼントしたい……なんて思ったのかもしれないな……」
「おい……ドモン!!」
「──ユウリに、言いたいこと言っとけ。そのために生きて帰るんだ。三人だけになっても、楽しく──」

 ドモンの姿は無い。
 俺は悟る。シオンとドモンは、……これが俺の悪い妄想でない限り、きっと、もう会えない。あの笑顔はもう間近では見られない。
 そして、ドモンはなぜか知らないようだが、俺の帰る場所には、ユウリもアヤセもタックもいない。未来へ送り返してしまったから。
 思わず、送り返したことを少し後悔してしまう。

 それからは、ずっと泣いた。仲間達への感謝の言葉を叫びながら、情けなく鼻水をたらして、子供のように泣いた。

 涙が枯れた時、俺は白い空間の中にただ立っていた。どれくらいの時間泣いていたのかはわからない。夢の中の時間間隔ではあまり短くなかったと記憶している。

 ドモン、シオン、菜月、直人……守れなかったものたちへ。
89竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:32:27 ID:t517ykht0
 ありがとう。

 本当に楽しい時間をありがとう。

 いつまでも忘れない。

 たとえ、時間が俺の記憶を引き裂こうとしても。

 俺は瞳をそらしてはいけない。仲間たちは死んだ。だが、これから守るべき命がある。
 何があっても、ドモンとの約束を果たす。絶対に、ヒーローとして戦い続ける。
 ロンの野望を打ち砕く。
 この場所で命を失った全ての参加者の無念をバネにして。

 できることなら、仲間達を生き返らせたい。だが、それは間違っている。

 生きている人たちだけでも、強く生きよう。そして、帰ろう。自分たちがいた場所へ。

 届いたか? みんな……。

 俺は戦う。何度も誓ってきたことだけど、今まで以上に強く誓う。

 俺は、これ以上、どんな犠牲も起こさせない。
90名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 17:36:24 ID:LJ7eSg6m0

91名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 17:44:49 ID:LJ7eSg6m0
ひょっとしてさるさん?
92竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 17:47:16 ID:t517ykht0
【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:気絶中。1時間程度変身不能
[装備]:Vコマンダー
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。ブクラテスは信用できない?センは?
第一行動方針:これ以上の犠牲は絶対に起こさせない。
第二行動方針:第一行動方針を絶対に貫く。
※首輪の制限を知りました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
93竜也のなく頃に・絆 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 18:05:05 ID:t517ykht0
Omake「ドモンの後悔」

 俺はとんでもないバカだ。
 簡単な話だったんだ……。
 簡単な話だったのに、意地張って、何がなんでも優勝しようとして……。
 仲間すらも手にかけようとしたんだ。俺って本当に最低だ。
 たった一つの一目惚れが、何度も同じ時を重ねた仲間すらも打ち破ってしまった。
 それだけ強い思いだったのか……。
 いや、違う。俺は気付いた。
 俺は何一つ、深雪さんのためにしてやることはできなかった。
 ほんと、中途半端な存在だ……。
 俺は、ロンにそそのかされて、バカやってしまった。
 本当は、今竜也に忠告したように生きたかった筈だ。

 俺は、ヒーローじゃなかった。マーダーでもなかった。
 俺は、マーダーじゃなくてヒーローに、なりたかった。

 ただのバカだよ……俺。

 だけど、そんな俺にも言うべき礼があるはずだ。

 ありがとう……みんな。
94 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 18:07:14 ID:t517ykht0
以上です。
さるさん規制のお陰で随分時間が掛かった……。

本スレ>>83は、したらば>>688さんの指摘したの修正点を修正してなかったので、まとめでは>>84を使ってください。

誤字、脱字、指摘、感想、修正点、問題点などありましたらお願いします。
95 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/15(火) 18:09:09 ID:t517ykht0
あと、もう一つ。
支援の方、ありがとうございました。
96名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 18:29:38 ID:4XeetPDOO
投下GJです。
どこか、タイムレンジャーの最終回を彷彿とさせる、思わずしんみりするような、しっとりしたいいお話でした。
97名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 21:06:16 ID:99yGurmS0
GJ!
ドモンとシオンの苦悩と想い。
夢という形ながら、それが竜也に伝わったことで、今後の竜也の行動に希望が持てました。
グッときます。
98名無しより愛をこめて:2009/09/15(火) 22:15:55 ID:VrAi5usjO
投下乙です。
亡くなった仲間の思いを継いだ竜也。
悲しみを乗り越えて立ち上がる竜也の今後が楽しみです。
物語と心情を深く掘り下げた良作でした。GJ!


ただ一点、ドモンの後悔についてですが。
竜也視点で亡くなったキャラを描くのは問題ないと思いますが、亡くなったキャラの心情を綴るのは死者スレにて投下された方が良いかと。
99名無しより愛をこめて:2009/09/16(水) 01:28:04 ID:gcD+ivGMO
まとめ氏更新お疲れ様でした。
100 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/16(水) 16:05:21 ID:xPrsP3mx0
まとめ氏更新乙です。今回はキャラ紹介にコメントが更新されてるんですね。
まとめの内容が見るたびに充実していて、読むほうとしても見心地がいいです。

>>99への返答ですが、
書いてあるとおり、オマケであって、今後のストーリーに関係はないものですので、確かに死者スレに投下してもいいかもしれません。
ですが、私個人としてはこういうネタを本編でやってみたかったので入れておきました。
ドモンは、今ロワの中でも特に、マーダーとヒーローとの間の葛藤に悩み苦しんだ存在です。
なので、死亡後でもその葛藤に最後の決着をつけさせたいと思い、その後悔を「本編として」投下しました。
反対する意見が大勢あるようであれば、オマケの部分は端折ってもらって結構です。
10199:2009/09/16(水) 17:35:52 ID:gcD+ivGMO
>>101
自分は少し出過ぎた意見を述べてしまったようですね。
指摘自体は個人的なものでしたので胸に留めておくべきだったと反省しております。
スレ汚し申し訳ありませんでした。
102 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/16(水) 17:59:49 ID:xPrsP3mx0
いえいえ。感想ありがとうございました。
103名無しより愛をこめて:2009/09/16(水) 19:40:55 ID:okHcsb2F0
自分も本編とは別のほうがいいかな、と思いました。
ドモンの死に様が結構好きなので。
104名無しより愛をこめて:2009/09/17(木) 01:05:18 ID:4CoMkb3VO
遅ればせながら自分も同意見、ですかね。
どちらかといえば、死者スレ向きであると思いますし、
個人的には、ない方が余韻がいいかな?と思います。
その場合、まとめ氏には、御面倒をおかけしてしまうことになってしまうかもですが。
105 ◆LwcaJhJVmo :2009/09/17(木) 19:04:20 ID:hweFo5yC0
了解しました。こちらもほんのオマケのつもりで書いたので、「ドモンの後悔」は未収録ということで構いません。
まとめさんには苦労をおかけしますが、皆様の意見を考えると、やはり「ドモンの後悔」の部分は未収録が得策かと。
ご迷惑をおかけしました。今後ともよろしくお願いします。
106名無しより愛をこめて:2009/09/19(土) 21:42:04 ID:CPin+d0F0
残り半分か。
支援MAD作りたいけど技術がない……。
107名無しより愛をこめて:2009/09/20(日) 23:21:05 ID:QO+VISzgO
>>106
自分がいるw
ロワのイメージにぴったりな曲を聞く度にこれで作れないかと、夢想します。
……まずは、フリーズばかりのPCをなんとかせねばなあ………
108あくまで一つの可能性 ◆SrWL62xs88Y7 :2009/09/22(火) 14:29:36 ID:IC1GQtQT0
ただ今より投下します。
109あくまで一つの可能性 ◆SrWL62xs88Y7 :2009/09/22(火) 14:41:33 ID:IC1GQtQT0
その女を視界に入れた時、マーフィーK9に搭載された人工知能はかつて無いほどのデータに置き換えられた感情の激流を処理しきれずに機能不全に陥ったように沈黙した。

『グゥゥ…グワアアアアアアアァァァァンンッッ!!!』

そして、それが“怒り”というカテゴリに属するものであることを認識した時、マーフィーは弾かれたように襲い掛かっていた。
犯人を前にした際にプログラミングされた合理的な行動とは程遠い、がむしゃらな攻撃。
本物の獣さながらに爪を、牙をむき出しにその怒りの対象へ処理しきれない感情をぶつけた。
「やめろっ! どうしたんだっ!? やめろっっっ!!!」
明石暁が必死に引き剥がしにかかるが、目の前の女は無抵抗なまま。
金属の爪に引っかかれても牙が当っても手で振り払おうともしない。
「いいんです、チーフ…いいんです……」
女…西堀さくらには自分へ向けられた憎悪の理由を知りすぎるほどに理解していた。
言葉を伴わない断罪にさくらはじっと己が身を晒し続けた。
「やめろっ! 何をするんだ、お前!?」
ようやく明石が暴れ狂うマーフィーを取り押さえ、さくらから無理やり引き剥がす。
項垂れたままのさくらと、腕の中で興奮する機械仕掛けの犬。
(あの犬…何かこの女に怨みごとがあるようじゃな…―)
そして、その様子をブクラテスだけが傍観していた。



110あくまで一つの可能性 ◆SrWL62xs88Y7 :2009/09/22(火) 14:42:42 ID:IC1GQtQT0
気絶した竜也に取り立てて命にかかわる大きな怪我はなく、明石たちは彼の回復を待って
から次の行動へ移ることに決めた。
「………近くに首輪探知機の反応は無い」
「加えて、先刻、わしが聞いた爆発音…この犬の飼い主と思しき女は死んだと見て間違いないだろうな……」
各々が寄せ合った情報のピースが合わさって、残酷な真実を形作る。
「マーフィーは…わたしをおぼろさんの仇と思ったようですね…」
マーフィーは止む無く、明石のスコープショットで拘束されていた。
しかし今はもう暴れる気配はなく、火の消えたように大人しくしていた。
その姿がいかにも憐れでさくらは胸が締め付けられる思いだった。
さくらが直接、おぼろに手を下したわけではない。
そうではないが、引き金を引いたのは彼女に間違いはなかった。
「まぁ、過ぎたことを悔やんでも仕方が無いがのぉ…」
「悔やんで済む話ではありませんし、忘れてしまえることでもないんです…」
さくらは沈痛な面持ちでこたえた。

「火元はロンだ…お前が責任を感じるのは分かるが、その責任を背負って今何が出来るかを考えろ。
落ち込むままは償いになどなりはしない…生き残ったものは前へ進むしかないんだからな……」

かつて、かけがえの無い仲間を失い、再び立ち上がった男の言葉は老年の賢者のそれよりも重たくさくらの心に響いた。
「はい…わかっています…ロンを倒し、皆を蘇らせる。謝るのは、その時です」
疲れた表情にわずかだが笑顔の日が差す。
また、これだ。
わずかな時間でもこの女が明石暁という男に深く傾倒しているのは理解できた。
それはいい。信頼関係が厚いのはこんな場では貴重だし、得難いものだ。
しかし、戦力としては―――・・・
111あくまで一つの可能性 ◆SrWL62xs88Y7 :2009/09/22(火) 14:43:43 ID:IC1GQtQT0
変身道具を失い、あまつさえ敵の傀儡だった女。
今だどんな火種を抱えているか知れないではないか。
いや、話の内容から察するに他の参加者の恨みを買っている可能性すらある。
相手にするのが組み伏せるのが容易なマーフィーだからよかったが、
話に聞くグレイやガイといった連中と事を構えることになったら…明石や竜也はよいかもしれないが、非力な自分は巻き込まれて死ぬ可能性がある。
(万難は排さねばな…しかし、どうやって――…)
その時だった。

「うぅ…ん―――…」

気絶したままの浅見達也が目覚めたのは。


112あくまで一つの可能性 ◆SrWL62xs88Y7 :2009/09/22(火) 14:46:32 ID:IC1GQtQT0



「そう…ですか…菜月ちゃんもあの人も……」
まどろみから引き戻された現実は、容赦なく達也の心をずたずたに引き裂いた。
「俺は…誰も守れなかった……!!」
力を得たと思った。
30世紀の未来の力で仲間とともに虐げられている人々を救う。
例え、どんな困難が立ちはだかろうとも。
あの日の決意が遠い過去のことに思えた。ここでは時間の流れが極端に早く感じられた。
出会いと別れが目まぐるしく目の前を過ぎ去っていって、自分はその激流に抗う術を持たない。
「…菜月の最期を看取っていただいたのがあなたの様な優しい方で、良かった。
あの子は身寄りがなかったから―――…」
できれば、真墨の死を知ることなく逝ってほしかったと思うのは残酷だろうか。
目の前の男はあって間もない少女の死に己の無力を恥じて涙を流している。
それだけでも、さくらは竜也を信じられる気がした。

―――………あの、ね、………チ、ーフ………―――

―――さくら、さ、んに………や、くそく、守れなくって………ごめん、ね……って―――

どんな思いで、自分の正体を知ることもなく死んでいったのだろう。
どんな思いで最後の言葉を遺したのだろう。
彼女は最期まで無垢なまま、間宮菜月のままであったということだけがわずかな救いだろうか。
明石暁は動かない。
竜也の途切れ途切れの語り口で菜月の最期を聞くその表情も、微動だにしない。
しかし彼の悲しみがわかるから、さくらは泣かない。
涙を流すことは彼らを救う決意を否定するように感じられたから。
また、会える。
悲しみを押しつぶすように希望を持てるのは、彼が居るから。
側に明石暁が居るからだ。
113あくまで一つの可能性 ◇SrWL62xs88Y7氏代理投下:2009/09/22(火) 22:04:47 ID:MdBCViu00
「…しかし、妙なことだのぉ・・・…」

ブクラテスは頬をなでながらそう独白した。
「…何ですか、いきなり」
さくらは不審の勘定を隔そうともせずにブクラテスを眺めた。
「あ、いや…お前さんがたの話だと、これまでに相当数の参加者が死んでおることになる。
そうじゃろ?」
「そんなこと、今更あなたに言われなくてもご丁寧に主催者が教えてくれますよ。…6時間おきにね」
竜也も揃って冷たい視線をブクラテスに投げかける。
「…フン。嫌われたもんじゃな。言っておくが、わしがお前さんに情報を伏せておったのは生き残るためじゃ。見ての通り、わしはか弱い年寄りでな。お前さんがたの様に颯爽と変身して戦うことなどできん。頼れるのは己が頭脳だけじゃ! 生きるための戦いなんじゃよっ!!」
「そのためにここで出会った仲間を危険に晒してもいいって言うのか!? あんたが自分の保身を図ったことで人が死ぬことだってあるんだぞ!!」
「他人の命の面倒まで見切れんわ! 甘ったれたことを言うな、若造が!!」
激昂してブクラテスが叫ぶのを尻目に明石は喧騒の中に言葉を投げかけた。

「情報の秘匿性を重んじるあんたがわざわざ明かしたい事柄ってのは興味があるな…それを俺たちに知らせることで得られるメリットについても、だが……」

明石の隙の無い鋭い視線とブクラテスの老獪な視線とが交差する。
お互いにお互いの心底を探らんと見詰め合う。
「…ふん、お前さんなら気付いておるんではないか? このゲームの矛盾にな」
ブクラテスの言葉に明石はそっと視線を伏せた。
「……あぁ」
「どういうことですか…?」
竜也が明石へ向き直る。
114あくまで一つの可能性 ◇SrWL62xs88Y7氏代理投下:2009/09/22(火) 22:06:04 ID:MdBCViu00
「なに、簡単なことじゃよ。集められた参加者の時間軸がバラけていることを思えばおのずと分かることよ」
「それって…」
「過去現在未来と集められた参加者の出身時間軸が不定なんだ。竜也さん…時間犯罪を手がけているあなた方タイムレンジャーなら、歴史上のタイムパラドクスがどんな危険をはらむか俺たちよりも肌で感じているでしょう」
「…!」
「しかし、参加者がこれだけ盛大に死んでいるにもかかわらず、パラドクスに巻き込まれたものは皆無じゃ…知りうる限りはな。この箱庭にそうした時間軸の歪みから保護する力があるのか…あるいは――…」


「それぞれが別々の“世界”から連れてこられたか……」
さくらが独白する。
それこそが、明石が死んだ仲間を蘇らせる可能性として考える根拠の一つでもある。
「……じゃが、それは同時に連れてこられた世界の破滅を意味しておる。
お前さんがたは自分が抜けた世界の末路を考えてみたことがあるか?」
ブクラテスは問いかけた。三者三様に自分が抜け落ちた後の世界を思う―
「つまりじゃ。仲間と思うておってもそいつはあくまで別の世界の自分の仲間。
逆を返せば死んでも影響は無いが、自分の死は己の世界全ての破滅を意味するものもおる。
この事実に突き当たる連中が増えていけば、自分の命だけではない…自分の世界を守るために
仲間も容赦なく手にかける輩がおるかも知れぬ。ロンも良く考えたものよ…不信の種を二重三重に仕込んでおる」
顎をさすりながらブクラテスは向き直る。
「…でも、俺は自分の世界を守るためでも人は殺せない…まして、仲間を――…」
竜也は苦悩の表情を浮かべながら言った。
「ふん…お前さんはそうかもしれんがな…相手がどう思うかは分からんて……」
「爺さん、これは事実ではなく推察だ。何もこれが確定事項なわけじぁあない。
あくまでも一つの可能性だ」
明石は随分前からこの推論に突き当たっていた。だから今更人に言われても衝撃も小さい。
ブクラテスも明石や竜也が揺らぐのを期待していたわけではなかった。
どうせ、この二人はあくまで戦う道を選ぶ。
それが勝利に通じるかは期待できないが、あくまでその姿勢を変えないだろう。
しかし――…
115あくまで一つの可能性 ◇SrWL62xs88Y7氏代理投下:2009/09/22(火) 22:07:02 ID:MdBCViu00
横目に睨んださくらは明らかに狼狽していた。
脳裏にクエスターもろとも自爆しようとした明石の姿がよぎる。
蒼太にとってはまだ見ぬ未来。明石にとっては過ぎ去った過去。
しかし、さくらにとっては紛れもなく現在進行形の今。クエスターを退けることはできた。
だがそれによって負った痛手から回復するには時間がかかるだろう。
何より、間隙を付いてネガティブが動き出したら――…今度こそ…

「さくら、大丈夫か?」

深い思考の世界から自分を現実に引き戻してくれたのは、他ならぬ明石だった。
「…ッ! すみません、ボーっとして……」
「いや、いいんだ。色々あったしな。少し休むといい」
「いえ。時間は有りません。少しでも同志を募り、ロンを打倒しましょう。全てはそこで明らかになるはずです」
そう言って、立ち上がる。
明石も頷いてそれに続いた。同じく竜也もそれに続く。
「やれやれ…今しばらくはお前さんがたについていこうかの…」
そして、ブクラテスも。

(とりあえず、種は蒔いてはみたが……芽を出すにはいま一つ、肥料が足らんわな……)

この世界のルールを把握すればするほど、ロンが自分達を生かす道など用意していないことが
分かっていたこととはいえ鮮明になっていく。
ならば、ロンすら出し抜く策が必要となる。
明石暁という絶対的なカリスマを中心に参加者の叡智を募れば、ロンを打倒する道も開けてくるかもしれない。賭けでは有るが、ロンの甘言に期待をもてない以上、現実的な施策といえる。
それだけ最初の空間で見せた明石のパフォーマンスは参加者の心に強烈な印象を残していた。
さくらを手駒にする算段も当初はあったが、これまでの経緯を知るにつれブクラテスはそれを誤りと思うようになっていった。
「神輿が汚れていては、誰も担ごうとはせんじゃろうからな…」
低く呟いたその言葉は誰に聞き取られることもなかった。
まっすぐに前だけを見据える日なたの者と、迷いや憂いを抱える者と。
近くて遠い距離を抱える者達の一行は、しかし、一つの結末へ向かって歩を進めていった。
116あくまで一つの可能性 ◇SrWL62xs88Y7氏代理投下:2009/09/22(火) 22:08:00 ID:MdBCViu00
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。1時間30分程度、変身不能。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、首輪探知機
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。
第二行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
第三行動方針:仲間を探す。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※バリサンダーとおぼろの支給品、イカヅチ丸はD-7都市エリアに放置されました。

【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。洗脳下での行動に罪悪感。
[装備]:アクセルラー(損壊、要修理)。聖剣ズバーン@轟轟戦隊ボウケンジャー。スコープショット(暁)@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:アクセルラー(黄)、スコープショット(菜月)、 未確認支給品(暁確認済)、竜也のペットボトル1本、基本支給品(菜月)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。明石暁と共に行動する。
第一行動方針: ブクラテスの言葉に揺れている。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
117あくまで一つの可能性 ◇SrWL62xs88Y7氏代理投下:2009/09/22(火) 22:08:54 ID:MdBCViu00

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:右腕切断 簡単な応急処置、消毒済み
[装備]:めがね、毒薬(効能?)
[道具]:タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:明石を油断できないが利用価値のある人物と判断。当面は提携の姿勢。
第二行動方針: 西堀さくらに不協和音。どうにかして排除したいが、表立っては無理と感じています。
※首輪の制限を知りました。
※センと同じ着衣の者は利用できると考えています。

【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:1時間程度変身不能
[装備]:Vコマンダー
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。明石やさくらと連携してロンを打倒。
第一行動方針:ブクラテスは信用できないと感じているが、殺しはしない。
※首輪の制限を知りました。 明石やさくらと情報交換を終えました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
118あくまで一つの可能性 ◇SrWL62xs88Y7氏代理投下:2009/09/22(火) 22:12:45 ID:MdBCViu00
【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:西堀さくらを怨んでいる
第一行動方針:???


────

以上、代理投下終了します。

119R-0109 ◆eVB8arcato :2009/09/23(水) 00:52:30 ID:g2vXWQEE0
どうも、こんばんは。遅れて申し訳ございません。
「バトルロワイアルパロディ企画スレ交流雑談所(以下交流所)」の方でラジオをしているR-0109と申します。
現在、交流所のほうで「第二回パロロワ企画巡回ラジオツアー」というのをやっていまして。
そこで来る9/26(土)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

交流所を知らない人のために交流所のアドレスも張っておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1243687397/ (したらば)
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html (日程表等)
120名無しより愛をこめて:2009/09/23(水) 09:05:32 ID:5uEoy9tBO
>>119
おお、ついに!楽しみにしております!
121名無しより愛をこめて:2009/09/23(水) 10:45:39 ID:bBktlaUUO
ついにラジオ!


お、音声は残してもらえるんですよね。
リアルタイムでは聞けないけど、実況スレは時間を見つけて参加させてもらいます。
楽しみにしています!

122名無しより愛をこめて:2009/09/23(水) 10:53:09 ID:bBktlaUUO
>>118
大事なことを遅くなり。
投下乙&代理投下乙でした。
またもや雲行きの怪しいさくらに若干の不安を抱きつつ、先の結末の想像を駆り立てる作品でした。ブクラテスが渋くて痺れました。
GJ!
123名無しより愛をこめて:2009/09/23(水) 13:32:05 ID:5uEoy9tBO
投下、代理投下乙です。
鳥が違うようですが、予約された方ですか?

一点指摘を。
竜也が達也になっている部分あります。
124 ◆tmHbmAQAXI :2009/09/23(水) 16:23:00 ID:EqSMtaSL0
代理投下していただいた方、感想を頂いた方ありがとうございました。
ご指摘については真に申し訳ありません。こちらのミスです。
また、予約についても同一人物です。
125名無しより愛をこめて:2009/09/25(金) 09:51:38 ID:fLdNQKAV0
投下乙です。
遅くなりましたが、一点疑問点が。
今作にて、ブクラテスが聞いた爆発音によって、おぼろの死を悟っていますが、前作「出会いと別れと」において、ブクラテスは禁止エリアになるまで15分を切ってもなお、竜也たちを待ち続けています。
もし、事前に爆発音などという物騒な音を聞いた場合、ブクラテスの性格上、何かあったと判断して、何らかのアクション(逃げる、禁止エリア予定地から出るなど)を取りそうな気がするのですが。
その点が、若干不自然かなと思いました。
ご回答よろしくお願いします。
126名無しより愛をこめて:2009/09/25(金) 18:13:56 ID:+0sa7Z5c0
前回の竜也の状態表が全然反映されてないなww
127名無しより愛をこめて:2009/09/25(金) 18:40:34 ID:5FVk9T2p0
>>126
確かにその通りですが、草は生やさない方がいいと思います。
128 ◆tmHbmAQAXI :2009/09/25(金) 21:01:18 ID:ErM7/Ug20
>>125
ブクラテスにおぼろの死亡原因である首輪の爆発音は位置関係から考えて聞こえていたものと思われます。
しかし、前回のSSにその言及はなくブクラテスは合流しています。
・おぼろの死はブクラテスの近接で起きた。
・ブクラテスは移動せずにさくらたちと合流した。
この2点が前提として出来上がったうえでの創作でした。
個人的見解としては、
“爆発音を聞いたがひとりになる不安との葛藤があった”
“個人行動をとるか、竜也の生存にかけるかを天秤にかけている最中にさくらたちが来訪した”
という風に補完して頂ければ幸いです。
ただ、私としては前SSとの絡みもありますし、そこはあまり描写をつめなかった箇所なのですが
以上の回答でも尚、SSに違和感を感じ、修正が必要でしたらその箇所は訂正します。
ただし、前提条件は私以前の作品で出来上がっているのでそこまでは介入できませんが…

>>126
前回のSSで竜也が決意を新たにしたことについてはブクラテスの言葉に迷いながらも、殺し合いを拒否するという
姿勢で示したつもりです。軽い気持ちでされたのかもしれませんが、指摘と揶揄を混同されてはいないでしょうか?
指摘には特に制限はありませんというのがルールです。
ですが、こうした冷やかしまがいにも書き手は対応をしなければならないのでしょうか?
指摘という行為を上からの目線で考えているのなら残念です。
129名無しより愛をこめて:2009/09/25(金) 21:51:48 ID:FaPJbKn7O
以降は議論スレにてお願いします。
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/otaku/10886/1209981208/
130R-0109 ◆eVB8arcato :2009/09/26(土) 20:58:56 ID:SAHwceKa0
131名無しより愛をこめて:2009/09/28(月) 18:44:45 ID:3gP7o6to0
支援絵を描きたいけど画力がない。
MADを作りたいけど技術がない。

好きなロワなんだけど。
132名無しより愛をこめて:2009/09/28(月) 19:00:56 ID:WeZxAddW0
>>好きなロワ
そう言ってもらえるだけで、泣くほど嬉しい
133名無しより愛をこめて:2009/09/28(月) 19:11:33 ID:J/4ej4MhO
え?俺なんかすでに号泣してるぜ。
134名無しより愛をこめて:2009/09/29(火) 02:25:39 ID:hUOsDNCQ0
そこまで言うと白々しい。
135133:2009/09/29(火) 16:26:19 ID:dwHaLLMU0
>>134
嬉しかったので、つい……。
不快に思われたのなら申し訳なかったです。

だけどさ、支援の言葉を貰えると正直気合いが入っちゃうんだぜ。
136名無しより愛をこめて:2009/10/02(金) 16:34:20 ID:ALpqecQ8O
気にするな>>135
たぶん>>134はツンデレなんだ
137名無しより愛をこめて:2009/10/02(金) 16:35:08 ID:ALpqecQ8O
うちのロワでツンデレっていったら誰だろう?
138名無しより愛をこめて:2009/10/03(土) 16:22:11 ID:c1IQy60o0
それは、つまり鬱を書きまくるのに実は熱い展開を書く書き手のこと?
それとも、参加者のこと?
139名無しより愛をこめて:2009/10/03(土) 17:57:55 ID:jsZb9hhnO
両方可w
140名無しより愛をこめて:2009/10/05(月) 00:59:32 ID:48SdSv7Q0
投下します
141 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:00:20 ID:48SdSv7Q0
その女を視界に入れた時、マーフィーK9に搭載された人工知能はかつて無いほどのデータに置き換えられた感情の激流を処理しきれずに機能不全に陥ったように沈黙した。

『グゥゥ…グワアアアアアアアァァァァンンッッ!!!』

そして、それが“怒り”というカテゴリに属するものであることを認識した時、マーフィーは弾かれたように襲い掛かっていた。
犯人を前にした際にプログラミングされた合理的な行動とは程遠い、がむしゃらな攻撃。
本物の獣さながらに爪を、牙をむき出しにその怒りの対象へ処理しきれない感情をぶつけた。
「やめろっ! どうしたんだっ!? やめろっっっ!!!」
明石暁が必死に引き剥がしにかかるが、目の前の女は無抵抗なまま。
金属の爪に引っかかれても牙が当っても手で振り払おうともしない。
「いいんです、チーフ…いいんです……」
女…西堀さくらには自分へ向けられた憎悪の理由を知りすぎるほどに理解していた。
言葉を伴わない断罪にさくらはじっと己が身を晒し続けた。
「やめろっ! 何をするんだ、お前!?」
ようやく明石が暴れ狂うマーフィーを取り押さえ、さくらから無理やり引き剥がす。
項垂れたままのさくらと、腕の中で興奮する機械仕掛けの犬。
(あの犬…何かこの女に怨みごとがあるようじゃな…―)

その時だった。

「うぅ…ん―――…」

気絶したままの浅見竜也が目覚めたのは。





142 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:01:37 ID:48SdSv7Q0
竜也に取り立てて命にかかわる大きな怪我はなく、
明石たちは互いの情報交換を終えてから次の行動へ移ることに決めた。

「そう…ですか…菜月ちゃんは貴方たちの仲間でしたか……」
まどろみから引き戻された現実は、容赦なく竜也の心をずたずたに引き裂いた。
「俺は…誰も守れなかった……!!」
力を得たと思った。
30世紀の未来の力で仲間とともに虐げられている人々を救う。
例え、どんな困難が立ちはだかろうとも。
あの日の決意が遠い過去のことに思えた。ここでは時間の流れが極端に早く感じられた。
出会いと別れが目まぐるしく目の前を過ぎ去っていって、自分はその激流に抗う術を持たない。
「…菜月の最期を看取っていただいたのがあなたの様な優しい方で、良かった。
あの子は身寄りがなかったから―――…」
できれば、真墨の死を知ることなく逝ってほしかったと思うのは残酷だろうか。
目の前の男はあって間もない少女の死に己の無力を恥じて涙を流している。
それだけでも、さくらは竜也を信じられる気がした。

―――………あの、ね、………チ、ーフ………―――

―――さくら、さ、んに………や、くそく、守れなくって………ごめん、ね……って―――

どんな思いで、自分の正体を知ることもなく死んでいったのだろう。
どんな思いで最後の言葉を遺したのだろう。
彼女は最期まで無垢なまま、間宮菜月のままであったということだけがわずかな救いだろうか。


143 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:03:14 ID:48SdSv7Q0
「………近くに首輪探知機の反応は無い…この犬の飼い主と思しき女は死んだと見るのが妥当じゃろうなぁ……」
ブクラテスはおぼろが死んだことを知らない。
首輪探知機には何の反応もなかったし、彼は爆発音を聞いてもいないのだ。
「まだ、分からないでしょう…証拠はないんだし。もしかしたら禁止エリアから避難しただけかもしれないじゃないですか。
俺たちとは距離を隔てているだけで生きているかもしれない」
「しかし、明石暁がわざわざ危険を犯してまでエリアを探索しても見つからなかったのじゃろう?
しかも竜也、お前さんの話によれば随分追い詰められていたようではないか……その犬…マーフィーとかいったか、そいつが一匹でふらふらしておったのも妙ではないか?」
「だからって……」
マーフィーは止む無く、明石のスコープショットで拘束されていた。
しかし今はもう暴れる気配はなく、火の消えたように大人しくしていた。
その姿がいかにも憐れでさくらは胸が締め付けられる思いだった。
「マーフィーは…わたしを仇と思ったようですね…」
さくらが直接、おぼろに手を下したわけではない。あれは操られての凶行だった。
しかし、引き金を引いたのは彼女に間違いはなかった。
「まぁ、過ぎたことを悔やんでも仕方が無いがのぉ…」
横目でさくらの反応を見やりながらブクラテスが白々しく呟いた。
ブクラテスにしてみれば、おぼろが死んでいようが死んでいようがいまいがどうでもよいことだ。
ただ、拘束された鬱憤晴らしを兼ねてさくらの反応が見たかった。
144 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:05:05 ID:48SdSv7Q0
悔やんで済む話ではありませんし、忘れてしまえることでもないんです…」
さくらは沈痛な面持ちでこたえた。

「火元はロンだ…お前が責任を感じるのは分かるが、その責任を背負って今何が出来るかを考えろ。 落ち込むままは償いになどなりはしない…生き残ったものは前へ進むしかないんだからな……」

かつて、かけがえの無い仲間を失い、再び立ち上がった男の言葉は老年の賢者のそれよりも重たくさくらの心に響いた。
「はい…わかっています…ロンを倒し、皆を蘇らせる。謝るのは、その時です」
疲れた表情にわずかだが笑顔の日が差す。
また、これだ。
わずかな時間でもこの女が明石暁という男に深く傾倒しているのは理解できた。
それはいい。信頼関係が厚いのはこんな場では貴重だし、得難いものだ。
しかし、戦力としては―――・・・


145 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:06:13 ID:48SdSv7Q0
変身道具を失い、あまつさえ敵の傀儡だった女。
今だどんな火種を抱えているか知れないではないか。いや、話の内容から察するに他の参加者の恨みを買っている可能性すらある。
相手にするのが組み伏せるのが容易なマーフィーだからよかったが、
話に聞くグレイやガイといった連中と事を構えることになったら…明石や竜也はよいかもしれないが、非力な自分は巻き込まれて死ぬ可能性がある。
(万難は排さねばな…しかし、どうやって――…)

明石暁は動かない。
竜也の途切れ途切れの語り口で菜月の最期を聞くその表情も、微動だにしない。 しかし彼の悲しみがわかるから、さくらは泣かない。
涙を流すことは彼らを救う決意を否定するように感じられたから。
また、会える。
悲しみを押しつぶすように希望を持てるのは、彼が居るから。 側に明石暁が居るからだ。

「…しかし、妙なことだのぉ・・・…」

ブクラテスは頬をなでながらそう独白した。
「…何ですか、いきなり」
さくらは不審の勘定を隔そうともせずにブクラテスを眺めた。
「あ、いや…お前さんがたの話だと、これまでに相当数の参加者が死んでおることになる。
そうじゃろ?」
「そんなこと、今更あなたに言われなくてもご丁寧に主催者が教えてくれますよ。…6時間おきにね」
竜也も揃って冷たい視線をブクラテスに投げかける。
「…フン。嫌われたもんじゃな。言っておくが、わしがお前さんに情報を伏せておったのは生き残るためじゃ。見ての通り、わしはか弱い年寄りでな。お前さんがたの様に颯爽と変身して戦うことなどできん。頼れるのは己が頭脳だけじゃ! 生きるための戦いなんじゃよっ!!」
「そのためにここで出会った仲間を危険に晒してもいいって言うのか!? あんたが自分の保身を図ったことで人が死ぬことだってあるんだぞ!!」
疲労も忘れ竜也は激昂してブクラテスに詰め寄った。
人は殺さない。それは彼の核であるし、今後迷うことはあっても壊れることはない。
しかし、それだけに仲間の死を黙認するが如きブクラテスの姿勢は許すことが出来なかった。
「他人の命の面倒まで見切れんわ! 甘ったれたことを言うな、若造が!!」
ブクラテスが叫ぶのを尻目に明石は喧騒の中に言葉を投げかけた。


146 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:07:11 ID:48SdSv7Q0

「情報の秘匿性を重んじるあんたがわざわざ明かしたい事柄ってのは興味があるな…それを俺たちに知らせることで得られるメリットについても、だが……」

明石の隙の無い鋭い視線とブクラテスの老獪な視線とが交差する。
お互いにお互いの心底を探らんと見詰め合う。
「…ふん、お前さんなら気付いておるんではないか? このゲームの矛盾にな」
ブクラテスの言葉に明石はそっと視線を伏せた。
「……あぁ」
「どういうことですか…?」
竜也が明石へ向き直る。

「なに、簡単なことじゃよ。集められた参加者の時間軸がバラけていることを思えばおのずと分かることよ」
「それって…」
「過去現在未来と集められた参加者の出身時間軸が不定なんだ。竜也さん…時間犯罪を手がけているあなた方タイムレンジャーなら、歴史上のタイムパラドクスがどんな危険をはらむか俺たちよりも肌で感じているでしょう」
明石はさくらから返却されたズバーンをさすりながら言った。
「…!」
「しかし、参加者がこれだけ盛大に死んでいるにもかかわらず、パラドクスに巻き込まれたものは皆無じゃ…知りうる限りはな。この箱庭にそうした時間軸の歪みから保護する力があるのか…あるいは――…」


147 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:08:28 ID:48SdSv7Q0
「それぞれが別々の“世界”から連れてこられたか……」
さくらが独白する。
それこそが、明石が死んだ仲間を蘇らせる可能性として考える根拠の一つでもある。
「……じゃが、それは同時に連れてこられた世界の破滅を意味しておる。
お前さんがたは自分が抜けた世界の末路を考えてみたことがあるか?」
ブクラテスは問いかけた。三者三様に自分が抜け落ちた後の世界を思う―
「つまりじゃ。仲間と思うておってもそいつはあくまで別の世界の自分の仲間。
逆を返せば死んでも影響は無いが、自分の死は己の世界全ての破滅を意味するものもおる。
この事実に突き当たる連中が増えていけば、自分の命だけではない…自分の世界を守るために
仲間も容赦なく手にかける輩がおるかも知れぬ。ロンも良く考えたものよ…不信の種を二重三重に仕込んでおる」
顎をさすりながらブクラテスは向き直る。
「…俺は自分の世界を守るためでも人は殺せない…まして、仲間を――…!!」
竜也は言った。
「ふん…お前さんはそうかもしれんがな…相手がどう思うかは分からんて……」
「爺さん、これは事実ではなく推察だ。何もこれが確定事項なわけじぁあない。
あくまでも一つの可能性だ」
明石は随分前からこの推論に突き当たっていた。だから今更人に言われても衝撃も小さい。
ブクラテスも明石や竜也が揺らぐのを期待していたわけではなかった。
どうせ、この二人はあくまで戦う道を選ぶ。
それが勝利に通じるかは期待できないが、あくまでその姿勢を変えないだろう。
しかし――…
横目に睨んださくらは明らかに狼狽していた。
脳裏にクエスターもろとも自爆しようとした明石の姿がよぎる。 蒼太にとってはまだ見ぬ未来。明石にとっては過ぎ去った過去。
しかし、さくらにとっては紛れもなく現在進行形の今。クエスターを退けることはできた。
だがそれによって負った痛手から回復するには時間がかかるだろう。 何より、間隙を付いてネガティブが動き出したら――…今度こそ…

「さくら、大丈夫か?」


148 ◆tmHbmAQAXI :2009/10/05(月) 01:09:14 ID:48SdSv7Q0
深い思考の世界から自分を現実に引き戻してくれたのは、他ならぬ明石だった。
「…ッ! すみません、ボーっとして……」
「いや、いいんだ。色々あったしな。少し休むといい」
「いえ。時間は有りません。少しでも同志を募り、ロンを打倒しましょう。全てはそこで明らかになるはずです」
そう言って、立ち上がる。
明石も頷いてそれに続いた。同じく竜也もそれに続く。
「やれやれ…今しばらくはお前さんがたについていこうかの…」
そして、ブクラテスも。

(とりあえず、種は蒔いてはみたが……芽を出すにはいま一つ、肥料が足らんわな……)

この世界のルールを把握すればするほど、ロンが自分達を生かす道など用意していないことが
分かっていたこととはいえ鮮明になっていく。
ならば、ロンすら出し抜く策が必要となる。
明石暁という絶対的なカリスマを中心に参加者の叡智を募れば、ロンを打倒する道も開けてくるかもしれない。賭けでは有るが、ロンの甘言に期待をもてない以上、現実的な施策といえる。
それだけ最初の空間で見せた明石のパフォーマンスは参加者の心に強烈な印象を残していた。
さくらを手駒にする算段も当初はあったが、これまでの経緯を知るにつれブクラテスはそれを誤りと思うようになっていった。
「神輿が汚れていては、誰も担ごうとはせんじゃろうからな…」
低く呟いたその言葉は誰に聞き取られることもなかった。
まっすぐに前だけを見据える日なたの者と、迷いや憂いを抱える者と。
近くて遠い距離を抱える者達の一行は、しかし、一つの結末へ向かって歩を進めていった。
149代理投下:2009/10/05(月) 14:20:04 ID:FrhGVXvu0
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。1時間30分程度、変身不能。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、首輪探知機、聖剣ズバーン、スコープショット
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。
第二行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
第三行動方針:仲間を探す。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※バリサンダーとおぼろの支給品、イカヅチ丸はD-7都市エリアに放置されました。

【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。洗脳下での行動に罪悪感。
[装備]:アクセルラー(損壊、要修理)。轟轟戦隊ボウケンジャー。スコープショット(菜月)@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:アクセルラー(黄)、未確認支給品(暁確認済)、竜也のペットボトル1本、基本支給品(菜月)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。明石暁と共に行動する。
第一行動方針: ブクラテスの言葉に揺れている。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
150代理投下:2009/10/05(月) 14:21:49 ID:FrhGVXvu0
【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:右腕切断 簡単な応急処置、消毒済み
[装備]:めがね、毒薬(効能?)
[道具]:タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:明石を油断できないが利用価値のある人物と判断。当面は提携の姿勢。
第二行動方針:西堀さくらに不協和音。どうにかして排除したいが、表立っては無理と感じています。
※首輪の制限を知りました。
※センと同じ着衣の者は利用できると考えています。

【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:1時間程度変身不能
[装備]:Vコマンダー
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。明石やさくらと連携してロンを打倒。
第一行動方針:これ以上の犠牲は絶対に起こさせない。
第二行動方針:第一行動方針を絶対に貫く。
※首輪の制限を知りました。 明石やさくらと情報交換を終えました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
※ブクラテスは信用できないと感じています。
151代理投下:2009/10/05(月) 14:23:06 ID:FrhGVXvu0
【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:西堀さくらを怨んでいる
第一行動方針:???



以上です
152明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:33:46 ID:GveAgEx00
本投下、代理投下乙です。
四人のやりとりが巧みで面白かったです。
マーフィーが思わぬ大化けをしそうで楽しみでもあります。

では、大変遅くなって申し訳ありません。
投下しようと思います。
153炎と共に消ゆる ◇i1BeVxv./wの代理投下:2009/10/05(月) 22:47:38 ID:GveAgEx00
銀色に輝くブーツが規則正しくアスファルトへリズムを刻んで行く。
澄み渡る青空と、白い波を湛えた深い紺碧の海を背景に、ボウケンシルバーはひたすら走って行く。
ボクはボウケンシルバーに背負われ、いつもより頭一つ高い位置で見える景色に目を奪われていた。
つい数十分前、ウメコを埋葬した時と同じ空だと言うのに。
その景色を余りにも清々しく、そして近く感じたのは、ボクの心に開いた虚無という穴を、決意が埋めたからだろうか。

ボクの決意。
禁断の魔法を使い、これまでの悲劇を修正する。それは、魔法使いとして、決して行ってはならない禁忌。
禁忌を破れば、報いである時の崩壊が世界に訪れる。
選択できる回避策はボクの死。
呪文を唱えた者、すなわちボクの死を持って世界の崩壊を止める。

今、ボクの中で描かれつつあるシナリオ。
悲劇が繰り返されぬよう。
ボクの死と修正された未来へ繋ぐシナリオを完成させるためには、もう少し情報と確信が必要だった。

すでにボク達はH5エリア中程まで来ていた。
別荘地が見える。続く道の傍らには段ボールが山積み。短い避暑か、一時の楽しみの残骸がもの悲しく残されていた。

そんなことを考えていたから。
だからといって、言い訳にはならないのだけれど。
はっと気が付いた時には、遅かったようだ。

「「うわっ」」

ボウケンシルバーの足は、変身が解除されたと同時に縺れた。
ボクとボウケンシルバー、いや、その時にはすでに映士だったか。
とにかく、二人とも共通して驚きの声を上げた。

景色は反転。
ボクは映士の背から横へ転げ落ちる。
154明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:49:42 ID:GveAgEx00
反転する視界の中、映士は球のように転がりながら段ボールの山へ突っ込んで行く。
その光景を前にボクは、半分は同情、半分は諦めからため息を漏らす。
軽い激突の音。
反射的に片目を閉じる。
開いている片方の目が、身体を張って段ボールの山へ見事なストライクを決めた映士を捕らえた。
さながらボーリングのピンのように段ボールが辺りへ弾け飛ぶ。

「痛っーーー、ったた!」

散らばった段ボールの隙間から映士の声が上がった。
もがくように空へ伸ばした手を掴み身体を引き起こすと、映士は水面から引き揚げられた魚のように身震いし、大きく息を吐きだした。
そして、一瞬だけ散らばった段ボールへ目をやってから、何事もなかったように立ち上がってボクへ笑顔を向けた。
「悪いな。ヒカル、勢いがつきすぎちまった。大丈夫か?」
「ボクはこの通り。キミこそ大丈夫かい?」
たとえ怪我をしていたとしても、映士を責める気になどならない。
一歩でも距離を稼ごうと、ギリギリまでボクを背負いながら突っ走ってくれたのだから。
陽の光は柔らかだが、走るには暑かっただろう。映士はこめかみから頬へ流れる汗を何度か拭った。
「フッ、俺様なら心配いらねぇぜ。まぁ、なんだ、俺様ぐらいになると、転び方もダイナミックってもんだ」
「確かに、随分と派手に転がっていたね」
ボクの言葉に笑いながら、映士はペットボトルの蓋を開けた。
喉へ流し込まれる水。音を鳴らす首筋にも、うっすらと汗が滲んでいる。
「さ、行こうぜ」
残り僅かなペットボトルの蓋をキュッと閉め、映士はまた走りだそうとした。
「おかげでかなり距離を縮められたよ。ありがとう」
まだ言えずにいた感謝の意を告げ、走ろうとする映士を引き止める。
「少し歩きながら話そう」
「あ?あぁ」
表し抜けしたような声が返ってくる。
不思議そうな表情を取る映士を横目に、ボクは自分を崩さずわざと緩やかなペースで歩き出す。
ボクの歩調に合わせるよう映士を促すためだ。

映士は疲れている。
155明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:50:16 ID:GveAgEx00
『少し休もう』
喉元まで出掛けた声を飲み込んだのは、先程ボクに向けられた笑顔に一点の曇りもなかったからだ。
ここでそんな提案をすれば、映士の好意を無駄にする。
そして、その一方で歴史の修正のために、映士からも情報を引き出したいという思いがあった。
歩きながらであれば、多少の沈黙は不自然にならない。
情報を整理する時間が取れる。

だが、話そうとは言ったものの、上手い切り出し方を見つけられずにいた。
修正のための情報を得る、そのことを心の何処かで優先している。そんな自分に対する軽い失望と罪悪感がボクの口を重くしていた。

「へぇ。……いい風が吹いて来たな」
海岸から吹く風に映士が目を細めた。
映士とボクの間を、風に靡いた前髪が遮る。
風は追い風で、ボク等の背を押してくれている。
少し肌寒いくらいの風だった。
だがその冷たさが、ボクの罪悪感を少しだけ和らげてくれた。





「簡単に言えば、俺様達の任務はプレシャスを回収して守ることだ。
ハザードレベルが高ければ高いほど、悪用しようとするヤツラが後を絶たないからな」

歩きながらボクは、映士のことを一から聞き直した。
仲間や任務、敵対するネガティブシンジケート。
プロボクサーになった翼と共に戦った時の魔神クロノス。
宿敵であるアシュとの因縁。ここに連れられる前に、迎えたはずだった終焉。

彼等、ボウケンジャーについては明石から聞いた話と、概ね同じだった。
現代の科学水準を遥かに越えた秘宝、それを悪から守る精鋭部隊。その秘宝が――
「プレシャスか……」
156明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:51:11 ID:GveAgEx00
「そうさ。だが、一纏めにプレシャスといっても色々あってな。新しいヤツから古いヤツ。武器もありゃ道具もある。
おっと、そうだ。例えばこいつも、プレシャスだ」
いいことを思いついたとばかりに、映士は立ち止まってデイパックから赤い何かを引っ張りだした。
「……葡萄のようだね。果物かい?」
「知恵の実。効果は読んで字の如し」
「それは凄い。食べた者の知的機能の著しい向上といったところかな」
「あぁ、プレシャスってのは確かに凄ぇ代物だが。すべてがプラスに働くとは限らないのさ。
得にこいつは禁断の果実と呼ばれるプレシャス。効果も凄ぇが代償もデカい」

再び歩き出し、映士がボクに聞かせたのは禁断の果実に手を伸ばした心優しいアクタガミの話だった。
ボクはその話に心を打たれつつ、反面、都合よく話題が展開できるとも思った。

「安易に使っちまえば、破滅しかねない。たまたま俺様の支給品だったから良かったがな。
知ってか知らずか、使った後の説明なんて書いてねぇ。もっとも、知っていたとしてもロンがご丁寧に書くわけはないだろうが……」
「……禁断の果実か。どこの世界にも、同じように禁断とされるモノはあるんだね」
「おい、何だよ。魔法使いに禁じられるとは、穏やかじゃねぇな」
「穏やかじゃない?そうだね。倫理にもとる行為でもあるから、代償は恐ろしいほど大きい。
絶対に破ってはならない禁忌なんだ。その呪文を唱えれば……」

ボクは嘘をつく。
修正されるとはいえ、現在、ここにいる者達へ、これ以上悲しみは残したくない。
希望だけを渡したい。

「魔法使いであった記憶も、魔法力も失ってしまう……」

アクタガミの話しぶりから、映士の人柄は掴めた。
禁断の呪文を唱えた後、ボクが自ら死を選ぶと知れば、映士はボクを気絶させてでも止めるだろう。
だからこの嘘は伏線なんだ。
もし誰かに、ボクが禁断の呪文を使うと悟られた時のための。

「ははっ。失礼、大げさだったかな。でも魔法力も、その記憶をも失えば、魔法使いとして生きる道は無くなる。
ボク等魔法使いにとっては『死』を宣告されるに等しい」
157明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:52:14 ID:GveAgEx00
やはり映士は直接的な死を連想していたのか。軽く息を吐いてから、険しくなっていた表情を緩めた。
「逆に考えれば、人としては生きれるんだろう?」
黙ったままボクは頷いた。伏線を見事に張ったと、映士の答えに満足していた。
何の呪文だ?
そう聞かれる前に話は切り上げた方がいい。
「話が逸れてしまったね。他にキミに聞いておいた方がいいことはあるかい?」
「いや。まぁ、ボウケンジャーについては大体そんなところだ」
「そうか……」

会話が途切れるとボク等の足は自然に速くなった。
ドモンがどうしているかが気になる。
映士もそのようで、やがて歩みは駆け足に近くなる。

大丈夫だろうか?
この問いかけはドモンだけでなく、映士にも当てはまる。
ボクの心配通り、映士の呼吸はすぐに乱れた。見るからに疲労困憊。気力で足を動かしているような状態だ。
広い通りを過ぎ、道が別れたのをきっかけに、ボクは足を止め自分も水分補給をするフリをして、ペットボトルを取り出し映士に進めた。
休憩のついでに。一歩深く、知りたい情報を引き出そうと映士に問いかける。

「なぁ、映士。キミは広間で、どの辺りに居たんだ?」

すべては、あの広間から……。
ボクはあの時、比較的早く目を覚ましていた。
周りにはまだ倒れたままの人達が数人いた。

「俺様が居たのは……」

近くにボクの知った人物はおらず、ボクは薄明かりの中で目を凝らし。
門の近く、そこで怯える麗を見付けた。
ボクが居た位置から麗の所までは距離があった。
158明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:52:52 ID:GveAgEx00
次々に目を覚ました人達に阻まれ、麗の姿が視界から途切れる。
麗へ駆け寄ろうとした時。人の間を縫って、深雪さんとブレイジェルが麗の元へ行こうとしているのが見えた。
僅かな安堵と得体の知れない何かを胸に、ボクも麗の元へ走った。

「俺が最初に目が覚めたところは……。門から向かって左手奥。広間の隅の辺りだった」

答えを聞いて、自分の想像以上に映士に期待していたと実感する。

「ならば、ボクたちは割と近い位置にいたんだね」
「そうか。くそ、気付かなかったな」
映士は悔しそうにクッと水を飲んで、行く先を手で示す。別荘地を抜け都市へ向かう道だ。
「いや、気付くも何も……」
歩きながら映士は何かを思い出そうとしていた。
「俺様が目覚めた時には人の足しか見えなかった。でも、足の隙間から見覚えあるスニーカーが見えたんだ」
「スニーカー?」
ボクが尋ねると、映士は寂しく笑った。
「真墨のヤツさ。真墨のところへ行こうと起き上がったら、ロンが現れてそっちに気を取られて……」
「……真墨。第一回放送の?」
「あぁ」
映士は目を伏せた。キリッと奥歯から悔しさが零れる。
「すまない」
ボクは、自分がやろうとしていることも映士に告げてもいない。
だけど。
「最初からキミと話していたら、どうだっただろうと思ったんだ」
「最初からって、広間でってことか?」
159明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:53:30 ID:GveAgEx00
「あぁ、キミだったらどうだ?もし広間でボクに、自分の知らない未来の話をされたら信じられるかい」

少しの間を置いて――

「俺様は、信じる」

――映士は歩調を速め、ボクを追い越し様に言った。

「ヒカル、おまえは俺様を知らないヒカルだ。だが俺様はおまえを知っている。いや、知っているどころか信用してる俺様なわけだ」
そのまま速度を上げて数メートル走るとこちらに振り返り、すっきりしない顔をしながら片手で頭を掻いた。
「ちっ、何を言ってるかわからねぇかもしれないが。とにかく、広間だろうがどこだろうが、おまえの言うことなら信じるってんだよ!」

曲がらない。揺るがない。
ボクの思いも、キミなら軽々と背負ってくれるような気がするよ。

「感謝する。なら前向きに、もう少し聞かせて欲しい。ロン打倒のためにキミの知っていることを」
「勿論だ!だが走りながらの方がいい。そうだろう」
「そうさせてもらおう。首輪は?何か解ったことはあるかい」
「解除の仕方はまだわからねぇ。俺様が知っているのは、首輪を外せば死ぬってことだけだ」

そして走りながら映士の語った情報はどれも有益だった。
菜摘が出会ったというアンキロベイルス。
あの仲代壬琴。二人との経緯。
時を遡るまでに首輪の解除法が見つからなくても。
広間へ遡ったボクがこの情報を映士に伝えるだけで、数人の命は失われずに済む。


ボクは、あの広間から歴史を修正しようと思っている。
広間以前ではダメだ。
ボクだけが助かっても、きっと誰かがボクの代わりになる。
もし、連れ去られる前の時点でロンを倒せたとしても、ボク以前にここへ連れて来られた者がいたら?
答えは、そう。
160明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:54:25 ID:GveAgEx00
あの広間で閉じ込められてしまうか。
もしくはロンの配下が戻らぬ主人の遺志を継いで、同じように殺し合いを始めるか。

すべてはあの場所から始まった。
やり直すのは、そこからだ。


前を走る映士の背中を見つめながら、ボクは心の中で語りかける。


まだ情報も足りない。
修正できると、言い切れるほど確かなモノじゃない。
だけどこれ以上、悲しみの連鎖が続くようなら、ボクは。

―ロージ・マネージ・マジ・ママルジ―

ボクは、その呪文を……。


その時は。
映士、キミにも託していいだろうか?
キミと麗、深雪さんとブレイジェル。
ここまでで得た情報だけでも、4人に伝えることが出来れば。
ドモンも、そして失われるべきではなかった命が救われるとボクは思う。

でも、残念ながら広間でボクが動ける時間は僅かしかない。
せめて映士と深雪さんに、伝えられればいいのだが。
161明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:55:00 ID:GveAgEx00
深雪さんが救われたなら、ドモンは苦しまない。
奪う首輪などないのだから。サーガインと刃を交える必要もなくなる。
彼等はやがて裕作や明石と出会い、曲がることなく正義の為に戦うだろう。

ウメコも同じだ。映士はすぐにウメコに出合っていた。
ドモンの時間は修正される。
ビビデビのことも予め解っていれば、ウメコは死と繋がらない。
アンキロベイルスの情報を持っていれば、菜摘も新しい友達を失うことはない。

悲しみの連鎖は、もう起こらない。

そして、ブレイジェルも……。

圧倒的優位を見せ付けるため、あの場に置いて『見せしめ』は必要不可欠だ。
ブレイジェルがロンを倒そうと刀を抜かなければ、ロンは他の誰かを代わりに殺したはずだ。
そう、見せしめは誰でも良かった。
ただ、最初に動いたのがブレイジェルだった。
ロンはブレイジェルの死を持ってあの場を制した。
意義を唱える者へは首輪の威力を、そしてすべての参加者の生殺与奪を握るのはロンだ、と。

だが、あの一瞬で、それが覆ったら?
そこで起こる死が『見せしめ』ではなく『布石』になるとしたら?

だから……。
だから、ボクは、禁忌を犯した代償をあの広間で支払う。
162明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:55:49 ID:GveAgEx00
ブレイジェルの変わりに、ボクがロンの前に進む。
ボクの死に場所はあの広間だ。
ただしボクは見せしめとして死ぬのではなく、未来への布石を打って死ぬんだ。

ロンの張り付いた嘲笑を、参加者全員の前で、ボクが剥がしてやる。





「ヒカル?」

いつの間にか映士と並んで走っていた。

「何でもない。首輪に付いて考えていたんだ。ほら、ボクは申し訳ないが……。
さっきまで迷っていたからね。首輪の解除法を見つけようなんて、これっぽっちも思い浮かばなかったから」

ボクは誤魔化すつもりで軽口を叩いた。
はずだった。

「ってことは、今は迷ってない。そういうことだな?」

ボクが繋ぐのは。明るい未来。

「……もうすべて決めたんだ。迷いはない」

そう答えたけれど。

だが本当はそう言われた時、ボクは一瞬だけ命を惜しんだ。

ボクを背負って走ってくれたボウケンシルバー。
映士と共にロンと戦いたかった、と……。
163明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 22:57:13 ID:GveAgEx00
【名前】ヒカル@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage35後
[現在地]:H-5海岸 1日目 日中
[状態]:左肩に銃創。胸に刺傷。共に応急処置済み。
[装備]:グリップフォン、シルバーマージフォン
[道具]:基本支給品一式×2(小津深雪、ヒカル)月間宇宙ランド(付録なし)@激走戦隊カーレンジャー
[思考]
基本方針:時間を戻し、歴史の修正を行う。(情報を映士、深雪へ伝える。世界の崩壊を止めるための死に場所は広間)
第一行動方針:歴史の修正を行うための準備をする(情報集め)
第二行動方針:深雪の首輪を奪おうとした裕作に不信感。
第三行動方針:冷静すぎる明石に微妙な気持ちを抱きました。
備考:サーガイン、裕作と情報交換を行いました。また、映士から情報を得ました。
 マジシャインの装甲(胸部)にひび割れ。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。

【名前】高丘映士@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:H-5海岸 1日目 日中
[状態]:何度も全力疾走をしたことによる極度の疲労。
[装備]:ゴーゴーチェンジャー
[道具]:ボウケンチップ、知恵の実、不明(確認済) 、基本支給品一式(映士、小梅)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:ヒカルと共にドモンを探す。
第二行動方針:仲間たちと合流。
第三行動方針:ガイと決着を着ける。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。 変身制限に気が付きました。
164明ルイ未来 ◆MGy4jd.pxY :2009/10/05(月) 23:00:47 ID:GveAgEx00
以上です。
誤字脱字矛盾等、指摘などよろしくお願いいたします。
解りにくい点があれば加筆修正致します。
色々教えてくださるとありがたいです。

最期に、遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。
165名無しより愛をこめて:2009/10/06(火) 01:23:14 ID:onhEbNm90
投下GJです!!
ああもう、切ないなあ………
自分以外の者の為の悲しい決意と、映士への嘘が胸に来ます。
頼むから自分の事も算段にいれてくれよ…ヒカル先生……
ヒカル先生の独白が哀しくもどこか穏やかで美しかったです。
お待ちしたかいがありました。面白かったです!GJ!!
166名無しより愛をこめて:2009/10/06(火) 20:46:10 ID:GBoLxof50
期せずしてどちらの作品も“時間”がテーマの作品になりましたね。
果たしてこれらがどう謎を解く鍵になるのか、楽しみです。
167名無しより愛をこめて:2009/10/07(水) 20:28:51 ID:acuUQ5/N0
遅ればせながら、感想をば。

あくまで一つの可能性>
洗脳が解かれたというのに、相変わらず碌な目にあっていないさくらが可哀想。
マーダーではないものの、策謀を張り巡らせそうなブクラテスはまさにステルス。
このチームの表はダブルレッドですが、どちらかというとこのチームの裏であるさくらとブクラテスが今後、どう動くかに注目したくなる作品でした。

明ルイ未来>
ヒカルの綴られる独白。
彼のロワに対する想い徒然が痛くわかる作品でした。
映士の信じきったスッキリとした様子が、逆にヒカルの複雑な心情を浮き彫りにしていると思います。
あと、ロージ・マネージ・マジ・ママルジの扱いについて、議論したいことがありますので、議論スレにて。
168名無しより愛をこめて:2009/10/12(月) 17:28:01 ID:/W7PEMxD0
ちょっと遅れたけど投下乙!
ヒカルがせつねえええ……
英士の信頼に信頼で応えて、でもだからこそ死にたくないと思ってしまってもいて。
単に時を遡るだけじゃなくて具体的に何をするのかの道筋を立てだしているのもすごいと思いました
169 ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:34:07 ID:tTvCh3VC0
これより投下いたします。
170NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:35:37 ID:tTvCh3VC0
ロンの打倒のために行動を共にすることにした竜也たちだったが、やはり戦力不足は否めなかった。
竜也も明石も当分の間、変身することが出来ない。ブクラテスは言うに及ばず。
さくらはアクセルラーが損壊していて、そもそも変身できない。
菜月のアクセルラーを使おうにも、アクセルラーは竜也たちのクロノチェンジャーと違い、装着者のDNA認証ロックがされているので他者には使えない。
これではロンの打倒どころか、当面の行動さえおぼつかない。
「修理、できるかもしれません」
ずいぶんと長い間、菜月の遺したアクセルラーに目を落としていたさくらが、口を開いた。
傍らには、壊れた彼女自身のアクセルラーを携えている。
竜也の目には、それはあまりにボロボロで直しようがないように見えたが、明石は当然のように頷く。
「そうか、菜月のアクセルラーか」
「はい。構造は同じですからほとんどの部品を流用できるはずです。それでもいくつか必要な工具や部品はありますが………」
「それなら、向こうの路地にホームセンターらしき建物があった。あそこで何か調達できるかもしれん」
「ただ、ここの箇所の電気回路に弊害が………おそらく問題ないと思いますが………」
「認証の…ロック…………………」
「……………………………………」
「……………………………………………」
「…………………………………」
「………………………………………」

(………途中から、なに話してるのかさっぱりだ………)
畑違いとはこういうことを言うのだろうと、竜也は頭を掻く。
こんな時、あいつがこの場にいてくれたら。機械全般が得意な仲間の顔が胸によぎる。
同時によみがえってきた夢の光景に、竜也は首を振った。
奇妙な現実感を帯びたあの夢。自分の杞憂や後悔が見せた夢であるならばそれでいい。
今はまだあの夢を信じたくはない。
次の放送まであと数時間、せめてその間だけでも仲間の生存を信じ続けるために。
背中を押してくれた菜月や直人には申し訳なかったけれど。
もっともそれも、『死なせてしまった』という竜也の後悔の見せた夢なのかもしれなかったが。

「………見さん。浅見さん?」
171名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:37:42 ID:6/+GrJ7DO


172NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:38:01 ID:tTvCh3VC0
いつの間に物思いに沈んでしまっていたのか。気が付けば、目の前にはさくらの姿。
「どうかされたんですか?」
「いや、ちょっと………」
まさか、会話に付いていけずに物思いにふけっていましたとも言えず、竜也は曖昧な笑みを浮かべた。
ふと、さくらの手元に目を落とすと、包み込むように握られた菜月のアクセルラーが目に入った。
「菜月ちゃんのアクセルラー、使うんだね」
「………ええ」
「……きっと。菜月ちゃんもそれを望んでると思うよ。なんて、今日会ったばっかりの俺がさくらさんに言うのも変な話だけど」
頭を掻いた竜也に、さくらがそっと首を振る。
「いえ、あの子ならきっとそう言ってくれたと思います。………あの子はそういう子でしたから」
静かに目を伏せたさくらの顔に、かげりが帯びた。
竜也はかける言葉を見つけられずに、ただ困ったように立ち尽くすことしかできなかった。
「さくら」
その沈黙を裂くように明石はさくらに声を掛ける。上げられたさくらの顔に先程までのかげりはない。
「頼みたいことがあるんだが」
「はい」

さくらが離れるのを見計らったように、ブクラテスが竜也に近付いてくる。
「おい、お主も見たじゃろ。どう思った」
「何が?」
竜也は、気色悪げに距離をとるが、そのたびにブクラテスがにじり寄ってくる。
「あのさくらとかいう、おなごじゃ。悄然にしていたかと思えば、明石とやらが一声掛けるだけで表情を変えおった」
「それが?」
「たった一声でじゃぞ?危ういとは思わんのか。もし、明石暁に何かあってみろ。あやつはワシらに牙を剥くかもしれんぞ………なんじゃ、その目は」
竜也の目が哀れみの色に染まっているのに気付いて、ブクラテスは不愉快そうに言葉を切った。
「……そうやって、周り全てを疑い続けるんですか?」
173名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:38:39 ID:6/+GrJ7DO

174NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:39:19 ID:tTvCh3VC0
生来の気質なのか、それとも、仲間に裏切られた経験がそうさせるのか。
ひたすら疑心に駆られ続けるその姿は、かつての自分にも重なって見えた。
自分以外の者を信じようとしないその頑なな態度に、片腕で必死に自分の腕を掴んでいた姿を思い起こす。
改めて、竜也の心にこの老人への哀れみが湧き上がった。
その態度が気に入らなかったのだろう、ブクラテスは不機嫌に鼻を鳴らす。
「ふんっ。もうよい。時がきたら、せいぜいこの老いぼれの忠告を聞かなかったことを悔やむがよいわ」
捨て台詞を吐いて離れていくブクラテスを竜也は止めなかった。

(菜月ちゃん、俺はどうすればいいんだろうね)
胸の中で語りかける彼女は変わらず笑顔で、けれど何も答えてはくれなかった。


 ◇


身の丈ほどに伸びた影が歩みに沿って静かに揺れる。
何もかも白日に曝せとばかりに煌々と輝いていた太陽は、今はもうその日差しに陰りを見せていた。
人気のない交差点に設えられた点滅信号は、行き交いもないというのに意味をなさない光滅を繰り返す。
傾いた日差しに焼かれ、さくらはかすかに目を眇めた。
腕にしたものを抱え直すと、疲労の色を見せぬ速さでただ黙々と足を進める。
目指す先までは、もう後わずかだった。


禁止エリアからわずかに外れた小さな住宅街。その一画のこじんまりとした家。
そこがチーフの選んだ家だった。
人の気配のない静かな廊下が、さくらの歩みに合わせて小さく軋んだ音を立てる。
つきあたりの扉を目にすると、無意識に下げていた顔を上げる。
175名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:39:40 ID:6/+GrJ7DO



176NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:40:59 ID:tTvCh3VC0
静かにノブに手をかけ、そっと押し開いた。

『そこ』に彼女は眠っていた。

本当にただ眠っている。それだけのようにしか見えなかった。
口元に浮かんだ微かな笑み。静かに閉じられた目蓋。あどけない穏やかなその横顔。
今にも起きあがり、『驚いた?』そんな風にはにかんだ笑みを浮かべて、問いかけてくるようにさえ思えた。
けれど、赤く染まった上下しない胸が、体温のない冷えた指先が、甘い考えを粉々に砕いていく。
「菜、月………」
掠れた呟きが意識せずにこぼれ落ちる。
手の中から、飾り気のない生成りのドレスがすり抜けていった。
きっと菜月なら、もっとフリルや飾りのついた華やかなかわいらしいものを好むだろう。
さくらにもそれは分かっていた。
けれど、時間もなにもかもないなかで、それはようやく見つけ出せてきた物だった。
己の血に染まった菜月。そのままではあまりにも不憫だからと。
それがせめてものチーフの願いだった。
汚すわけにはいかないと、慌てて拾い上げようとかがみ込む。
膝を落とすと、もう立ち上がることが出来なかった。
視界が熱さに歪む。
抑えても抑えても落ちてくる滴で汚してしまうことがないように、手にしたドレスを遠ざけた。
泣かないと誓ったはずだった。きっともう一度会えるからと。それまでは泣くわけにはいかないと。
でも駄目だった。
理屈や感情や合理とは別のところから、思いがあふれてくる。
あふれこぼれ落ちていく涙とともに、さくらの心にわだかまっていた思考が押し流されていく。
別の世界かどうかなんて関係ない。
この子は菜月だ。天真爛漫で少し危なっかしくて、過去のない不安を見せぬよう精一杯笑っていたあの菜月だ。
「菜月……、ごめん、なさい。私が、私がもっと……っ……私のせいで!!」
喉が空気で詰まったように、その先は言葉にならなかった。

無意識に考えることを避けていた。
177名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:41:25 ID:6/+GrJ7DO

178NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:42:53 ID:tTvCh3VC0
なぜ菜月が死なねばならなかったのかと。
自分たちがもっと早くあの場についていたのなら、間に合っていたのなら………違う。
そもそも、おぼろをたった一人で彷徨わせるはめに陥らせたのは誰だ?
菜月を手にかけるような状態にまで追い詰めたのは誰だ?
あの時、出会ったばかりの自分を彼女は親身になって介抱してくれた。
心配そうに。気遣わしげに。
(それなのに。それなのに、私は………!)

体温の失せた冷え切った手を、せめて暖めるように包み込んで。
声を上げることもなくただ静かに涙を流す。それが今のさくらに出来ることだった。

 
 ◇


「大丈夫かな?……」
ワゴンに盛られた部品や工具の山。その中に手を突っ込んでは、分からないなりに使えそうな物を物色していた竜也は、手を止めるとふと呟いた。
「何がだ?」
応える明石は手を止めることはない。竜也よりはるかに迷いのない動きと速さで山をより分けていく。
「彼女だよ。さくらさん。彼女一人に任せちゃったけど、やっぱり俺か……えっと」
「明石でいい」
「俺か明石さんが行くべきだったんじゃないかなって。やっぱり彼女一人で動くのは」
てきぱきと動かされていた明石の手が止まる。だが次の瞬間には、別のワゴンにその手が伸びていた。
「だが、俺たちが代わるわけにもいかないだろう」
「そりゃ、そうだけど………」
竜也の腕に今、Vコマンダーはない。
明石の頼みに応え、単身、菜月の元に向かうさくらに半ば押しつけるようにして託したのだ。
179名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:43:10 ID:6/+GrJ7DO


180NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:43:55 ID:tTvCh3VC0
既に10分という時間を使い切ってしまった竜也には、当分の間使い物にならないVコマンダーだが、幸か不幸か、アクセルラーが壊れてしまった為にさくらは長時間、変身していない。
使い慣れていないとはいえ、身を守るには充分すぎる装備といえた。
竜也自身も彼女の身の安全はそれほど心配していなかった。
実際に戦うところを見てはいないが、彼女の立ち居振る舞いには隙がなく、ある種の訓練を修めた者特有の動きをしていた。例えば、ユウリや直人のような。
彼女ならば、充分タイムファイヤーを使いこなせるだろう。
竜也の心配は別のところにある。
ブクラテスではないが、竜也も彼女に危うさを感じてはいたのだ。思い詰めていると言ってもいいかもしれない。
厳重に抑圧された感情。火のついた導火線。思い詰めた者は時にどんな行動を起こすか分からない。
「ただ、一人にして、大丈夫だったのかなって」
明石は振り向かない。その手はただ動き続けていく。
なんとなく声を掛けづらくなって、竜也もただ手を動かし続けた。
どれくらい、そうしていただろう。
「………けないだろう。このままじゃ、あいつは」
手はそのままに、明石がぼそりと呟いた。
「えっ?」
「おいっ」
作業に集中し始めていたせいで、聞きとれなかった竜也が聞き返そうとした声を遮るように、ブクラテスが不機嫌な声を上げる。
「ワシはくたびれた。少し休ませてもらうぞい」
「………そんなこと言って、さっきからほとんど何もしてないじゃないか」
「ワ・シ・は!怪我人じゃ!!片腕のない老いぼれをこき使って楽しいのか!おぬしらは!」
ぼそりと呟いた竜也の声を耳ざとく聞きとがめ、ブクラテスは目頭を吊り上げる。
「わかった、わかった。じゃあじーさんはもういいからどこかで座っていてくれ」
「ん」
うるさげに右手を耳に押し当て、もう片方の手をひらめかせた明石に、ブクラテスは残った腕を差し出す。
「ん?」
「首輪探知機じゃ!あれ無しに別行動なんぞ恐ろしくてよう出来んわい」
訝しんだ明石に苛立ったように、ブクラテスはがなり立てた。
「ああ、ほら。それ持って逃げるなよ」
「ふん。どうせ一人で行くとこなんかどこにもないわい」
最後のはどこか力なさげに響いた。去っていく後ろ姿もしょぼくれて見える。
181名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:44:11 ID:6/+GrJ7DO



182NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:46:20 ID:tTvCh3VC0
もっともトボトボと歩きながらも、『まったく最近の若いもんは』だの、『どうせ親にもあんな扱いなんじゃ』だの呟いているようだったが。
「扱いもなにもそんなかわいげのあるのじゃないからなあ。うちの親父」
「右に同じ」
竜也のこぼした呟きに、明石が顔を上げぬまま、頷いてみせる。
親に苦労するのは、案外どこも変わらないのかもしれないと竜也は、奇妙な同情心を覚えた。
「それで。他にも何かあるんじゃないのか?」
苦笑していた竜也の目を、いつの間にか顔を上げていた明石の視線が射抜く。
「こ煩いじーさんがいなくなったからな。話すなら今のうちだぞ」
重ねて促され、竜也は意を決したように口火を切る。
「ブクラテスさんの話。どこまで信用していいと思う?」
「一割だな。判断材料としてなら、考えるのも悪くはないが」
即座に言い切った。
「なぜ?」
「あのじーさんの言っていることは、根拠がない。全て状況からの推測だ。それだけならいくらでも可能性は考えられる。世界のことも彼女のことも、な」
「彼女?まさか!?」
掴んだままだった部品を、竜也は思わず強く握り締める。
「可能性は五分だと思うぞ。爆発音も聞いていない、首輪探知機にも反応がないじゃな」
「でも、エリアの中は探したんだろう?」
「あくまで首輪探知機でな。確かに反応はなかった。だが、これだけなら自殺する為に首輪を外したとも、エリアの外に出たとも考えられる。
 むしろ、後者の方が可能性があるかもしれないぞ。少なくとも俺の探した範囲に、首のない死体など無かった」
明石は首を軽く捻る。
「しかもあのじーさん。どうも注意を払っていたのは自分の周りだけみたいだからな。そうじゃなきゃ、俺たちとお前たちを誤認しはしないさ」
握り続けられた部品が、キシリと音を立ててひび割れた。
「マーフィーにしてもそうだな。じーさんはああ言っていたが、奴は警察犬だぞ。自殺を図ろうとする者をそのままにしておくとは思えない」
掌に鈍い痛みを感じ、握り締めていた部品を放すと、赤く血が滲んでいた。
「なんにしろ、どうとでも取れるってことさ。……おっと、これ以上はやめておくか。じーさんに聞かれて、ふて腐れられても困る」
そう言いながら、明石の指はまっすぐに首元を指していた。すなわち、首輪を。
「どっかで盗み聞きしてると?」
183名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:46:34 ID:6/+GrJ7DO


184NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:47:46 ID:tTvCh3VC0
「ああ、俺がじーさんなら絶好のチャンスと思うとこだな」
手は首元のままに頷く。
「どちらにしろ、俺は俺のプレシャスを取り戻す。ただそれだけだ」
『盗み聞きしている者』にもはっきり聞こえるよう、明石は声を張り上げた。
「俺も………もう、誰にも死んで欲しくない。そこに別の世界だなんだは関係ないんだ」
例え、シオンやドモンが別の世界の人間であったとしても、その世界のユウリやアヤセ、ホナミさんが悲しむことに変わりはない。
そんなのはもうたくさんだった。悲しむ人の姿なんてもう見たくはない。
だから、この殺し合いに抗おうと胸に刻む。せめて、悲しむ人を一人でも減らせるようにと。
おぼろに対しては複雑な気持ちはある。菜月ちゃんを手に掛けたことを許すことは出来ない。
それでも出来れば彼女に生きていて欲しかった。生きている、そう信じたかった。
彼女を亡くして悲しむ人もきっといる。だからこそ、竜也には彼女の命を奪えなかった。生きて償って欲しかった。
その気持ちは今も変わらない。
出来うるなら、殺し合いにのっている者も殺さず止めたい。たとえ、それが叶わないとしても。せめて。
(守りたい。助けを求める人だけは。俺の目の前でもう誰も死なせてたまるもんか!!)
それは竜也のまごうことなき本心であり、決意だった。


 ◇


(ふん、若造め。気付いておったか)
果たして、明石は気付いていたのかどうか。ブクラテスは本当に会話の聞こえるギリギリの範囲に潜んでいた。
(やはり、ワシを信用しておらなんだか。しかたない。別の手を考えるまでよ)
ブクラテスの手がデイバッグにのびる。そこには彼の『奥の手』が眠っていた。
185名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 20:47:58 ID:6/+GrJ7DO



186NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 20:48:29 ID:tTvCh3VC0
(全ては、運とタイミングよ。それを見定めねばのう)

―ピッ―

ディバッグに放り込んでいた首輪探知機から、布越しにくぐもった電子音が響く。
先程からこまめに見ていたがほとんど動きがないので安心していたが、そろそろ出て行く頃合かもしれない。
(ほおぅ……)
首輪探知機に目を落としたブクラテスは、胸中で呟いた。
(あやつめ。面白い方向に向かっておるわ)
ブクラテスの口元に意地の悪い笑みが浮かんだ。


 ◇


マーフィーK9の電子回路は、重大な問題を抱えていた。
短時間で発生した過大な情報に、情報処理を司る回路が負荷を訴え、回路の一部がショートしかけている。
このままにしておけば、電子回路全体に深刻なダメージを及ぼしかねない。
そして、この状況において、それはもっとも避けるべき事案の一つであった。
それゆえ、マーフィーK9は行動の一部停止を選択した。
すなわち回路に掛かる負荷を少しでも減らす為に眠るのである。
そうすれば、このエラーを訴え続ける情報の処理に少しでも専念できる。

―――その情報とは『憎悪』であった。

本来、マーフィーK9の人工知能に『人間に対する憎悪』などという感情はプログラミングされていない。
宇宙警察のロボット警察犬たる彼が怒りを覚えるのは『犯した罪』そして『罪を重ねようとする者』に対してであるべきなのだから。
だがあの時、マーフィーが牙を剥いたのは、もはや『犯罪者』ではない者だった。
罪を重ねようとしていたわけでもない。逃走を図っていたわけでもない。
187NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 21:00:18 ID:tTvCh3VC0
マーフィーにもそれはわかっていた。わかっていながら牙を剥くことを止められなかった。
マーフィーは『犯罪者』ではなく『彼女一個人』に憎悪を向けたのだ。
プログラミング外の感情。ロボットとしても警察犬としても持ち得てはいけない感情。
それゆえにマーフィーは混乱した。
混乱し続ける回路は休息を求める。
気が付けば、マーフィーの足は、彼女の元に向かっていた。あの、どこかウメコを思わせる少女の元へ。



彼女が眠る部屋まであと一歩。踏みだそうとしたマーフィーの足はそこで動きを止める。
「………ごめん、なさい。私が………」
扉越しに漏れ聞こえてきた女の声。それはマーフィーが憎悪を向けた西堀さくらのものだった。
情報処理に追われていたマーフィーには知るよしもなかったが、彼女もまた、明石暁の命令で菜月の元に来ていたのである。
「……私のせいで!!」
漏れ聞こえる声。マーフィーは、同じような声をかつて聞いたことがある。

『ごめんな…………ごめんな』

最上蒼太が死に瀕している時。間宮菜月を手に掛けてしまった時。日向おぼろ、彼女も同じように泣いていた。
自分を許せず、自分を責め立て、自分を憎んでいる声。悔悛と絶望をはらんだ声。
同じ響きを西堀さくらの声からも感じ取り、マーフィーK9はいっそうの混乱をきたした。
どうすればいいのかわからない。生み出されてしまったこの感情をどこに持って行けばいいのかわからない。
どれほどの時が過ぎたのだろう。扉が開かれ、西堀さくらが姿を現した。
彼女は、一瞬固まっているようだった。
それもそうだろう。さきほど自分に襲いかかったものが目の前にいたのだから。警戒してしかるべきだ。
やがて、彼女は膝を落とすと、マーフィーに目を合わせ、語りかけてきた。
「私を裁きに来たのですか?」
そんなつもりはもうなかった。そもそもジャッジメントの権利は自分たちに与えられていない。罪を裁くのはあくまでも宇宙最高裁判所の管轄だ。
いつまでたっても行動をおこさないマーフィーに焦れたのだろうか。
彼女は胸元をわずかに緩めると、その首筋をあらわにした。
「もし、そのつもりならここを。首輪には注意しなければいけませんが」
白い首筋には幾筋も血管がかよっている。なるほどそこならば噛み裂くのは容易だろう。
188名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 21:01:09 ID:6/+GrJ7DO

189NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 21:03:12 ID:tTvCh3VC0
けれどマーフィーは動かなかった。ただじっとさくらの目を見つめ続ける。
先に目を逸らしたのは、彼女の方だった。
「ありがとう………ごめんなさい」
そのまま、ゆっくりと膝を抱えて座り込む。
「ごめんなさい。本当はまだ死ねないんです………まだ、死ねない………」
その呟きにマーフィーは応えない。鳴き声一つ上げることなく、ただじっとうずくまっていた。
「あなたは私のことが憎いでしょうね………当然です。それでいいんです」
きっと彼女はそれでもかまわないのだろう。ただとうとうと話し続ける。
「誰も私を責めないんです。チーフも蒼太さんも私を許してくれました。菜月も………あの子もきっと私を許してしまう。そういう子でしたから………」
彼女の表情に深いかげりが帯びる。
「だからあなただけは………あなただけは、最後まで私を憎んでいて下さい」
深い後悔と罪の意識に苛まれた沈んだ声。その声を聞きながらマーフィーの電子回路の混乱はいっそう高まっていく。

憎めばいいのか、憎んでいいのか、許せばいいのか、許してはいけないのか。

その答えがどこにも見つからなくて。
190名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 21:03:24 ID:6/+GrJ7DO


191NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 21:03:53 ID:tTvCh3VC0
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。1時間程度変身不能。
[装備]:アクセルラー、聖剣ズバーン、スコープショット(暁)@轟轟戦隊ボウケンジャー。
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:アクセルラーの修理の為に必要な部品・工具を集める。
第二行動方針:仲間をこれ以上死なせない。その為に仲間を探す。
第三行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識


【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:健康。洗脳下での行動に罪悪感。
[装備]:スコープショット(菜月)@轟轟戦隊ボウケンジャー、Vコマンダー@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:アクセルラー(損壊、要修理)、アクセルラー(黄)@轟轟戦隊ボウケンジャー、未確認支給品(暁確認済)、基本支給品(菜月)、竜也のペットボトル1本、
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:明石たちと合流する。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
192名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 21:04:11 ID:6/+GrJ7DO



193NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 21:04:39 ID:tTvCh3VC0
【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:右腕切断 簡単な応急処置、消毒済み
[装備]:毒薬(効能?)
[道具]:タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック、首輪探知機
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:明石を油断できないが利用価値のある人物と判断。当面は提携の姿勢。
第二行動方針:信用をされていないことを確認。次の手を打つ?
※首輪の制限を知りました。
※センと同じ着衣の者は利用できると考えています。


【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:1時間程度変身不能
[装備]:
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。明石やさくらと連携してロンを打倒。
第一行動方針:これ以上の犠牲は絶対に起こさせない。
第二行動方針:出来れば殺し合いをしている者を止めたい。
※首輪の制限を知りました。 明石やさくらと情報交換を終えました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
※ブクラテスは信用できないと感じています。
※盗聴の可能性を認識
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識
194NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 21:05:58 ID:tTvCh3VC0
【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:E-7都市 1日目 午後
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。混乱により回路に負担が掛かっている状態。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:どうすればいいのかわからない
第一行動方針:眠ることにより、回路の負担を減らしたい
195NO WHERE ◆Z5wk4/jklI :2009/10/17(土) 21:07:09 ID:tTvCh3VC0
以上、投下終了です。

誤字脱字、指摘、ツッコミ、感想などありましたらよろしくお願いします。
196名無しより愛をこめて:2009/10/17(土) 23:47:05 ID:hb0T7/dlO
投下乙です。
ベールを脱ぐように様々な事実や思いが表わになって来ましたね。
そして表面では落ち着いているように見える面々の抱える爆弾が見え隠れして……。
その様子を綺麗で丁寧な描写がより引き立ていると感じました。

不確定なおぼろの死が起爆材なんじゃないかとひそかにほくそ笑んでいますw
GJでした!
197名無しより愛をこめて:2009/10/21(水) 10:27:00 ID:Z+WvNlgd0
age
198名無しより愛をこめて:2009/10/27(火) 23:32:43 ID:PbomGNIL0
お久しぶりです。
お久しぶりなのに少なくて申し訳ないのですが、煽り文5つ投下いたします。

036 桃色天然娘
ほんのひとときの安らかな時間。
  やがて来る運命を知らず、その微睡みは穏やかなままに。
037 Trolley problem
  汝 全を救う為に一を捨てるや?
  選んだ道を引き返すことは誰にも出来ない。その分岐点を選んだのはあなたなのだから。
038 嵐の前の邂逅
  嵐の前は静かだとは限らない。限らないけれど……
  今、嵐待つこの場を満たすのは、邂逅への喜びか、互いへの警戒か。
  その全てを吹き飛ばし、さあ、嵐が来る。
039 強き女、愛の女
  ただ心に望むのは、愛する者との邂逅。
  その思いの前に、時に全ての事柄はただちっぽけな存在になり果てる。
  そう、どうやって会うかなんて小さな問題なのだ!!……とりあえずは。
040 兄!起つ
  冥府の王たる者、冥府の神たる者と並び立つ。その刃はただ守るべき者のために。
199名無しより愛をこめて:2009/10/27(火) 23:35:09 ID:PbomGNIL0
本当に久しぶりすぎて、書き方を忘れたもよう。
稚拙な出来かもしれませんが、楽しんでもらえたら幸いですw
200名無しより愛をこめて:2009/10/27(火) 23:47:30 ID:XyoiG1TRO
GJ!
久しぶりの煽り文乙です。
読むとまとめサイト読み直したくなるなw
しかし懐かしいな。
201名無しより愛をこめて:2009/10/28(水) 00:12:10 ID:rmjvz5dHO
あげ
202名無しより愛をこめて:2009/11/01(日) 08:32:20 ID:3kVX7dAzO
まとめ更新乙です。
いつもありがとうございます。
203名無しより愛をこめて:2009/11/11(水) 02:48:11 ID:Qn81dUflO
どうも、携帯も規制されそうな雰囲気が漂ってるので今のうちに。

最近、一から読み直してるんですが、改めて読むと見方が変わったりすることがあって面白いです。
『ああ、この因縁が最終的にああいう形になるとは……』とか、
『あれ、ひょっとしてあの話、この話と重ね合わせされてる?』とか。

秋の夜長にじっくり読み返すのも、また乙なもの。

以上、このままだと最後の砦がしたらばになりそうな規制難民住民でした。

……長い?保守だけって味気ないやん?
204名無しより愛をこめて:2009/11/23(月) 17:38:44 ID:g8Rp2/SK0
そろそろ、何か話題が必要だな。

ずいぶん前に大神龍が出てきたけど、他にも他の世界のロンの知り合いはいるのかな。
205名無しより愛をこめて:2009/11/24(火) 11:11:43 ID:oywUqXZZ0
っユーゼス、荒木、大首領

いや、冗談だけどw
個人的には、アブレラと手を組んでたら面白いなと思う。
現戦隊になるけど、アクマロなんかは非常に仲良くなれそうだな、と。
三人仲良く話してたりしたら、絶対に居合わせたくないけどw
206 ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 04:24:09 ID:vBa5LUHm0
遅くなりましたが、これより投下を行います。
207コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 04:24:55 ID:vBa5LUHm0
 グレイとメレが壬琴を見つけ出すのに要した時はそう長いものではなかった。
 建物にでも篭もり、息を潜めていれば、捜索は困難なものになっていただろう。
 だが、壬琴はオープンカフェの椅子に堂々と腰掛け、酒を口にしながら珍妙な生物を弄んでいた。
「痛いデビ!痛いデビ!」
 心あるものなら、思わず胸を痛めるその悲鳴。
 だが、その悲鳴がグレイとメレを導いたのだから、何が幸いするかわからない。
「なにこれ?」
 メレが首を傾げ、珍妙な生物を突っつく。
「ぐぇっ、や、やめるデビ。ビビデビはビビデビビビ」
「ビビデビ?何それ?――えいっ!」
 メレの突っつきが続く。
 突っつきと云うと、ツンツンという擬音が思い浮かぶだろうが、メレの辞書に"容赦"という単語はない。
 先程からビビデビを突っつく指の効果音はズブ!とか、ブシュ!とか、グジュラ!とか。
 ダーツの鋭い痛みとは対称的な鈍い痛みにビビデビは空を飛んでなんとか逃れようとする。
「ちょっと〜、待ちなさいよ」
 しかし、逃げれば追いたくなるのが人情というもの。メレはビビデビに追撃を掛けようと――
「遊びはそれくらいにしておけ」
 したところで、グレイの嗜める声が掛けられた。
 メレとビビデビのやり取りを、ひねた微笑で眺めていた壬琴の表情も自然と引き締められる。
「壬琴、お前を連れ戻しに来た。私たちには医者が必要だ。一緒に来てもらおう」
「医者?ああ、そういえば、お前や一緒にいた男は怪我をしていたな。だが、俺が見てやる義理はないだろ。
 それに見たところ手当ては済んでいるようだったが……あの後、誰かが大怪我するようなことでもあったのか?」
 引き締められた顔が、再度、意味ありげに歪む。
 その口調。その表情。グレイは一瞬、自分と同じバイラムの幹部を思い出し、そして、壬琴が何を求めているのか理解した。
 ならば、彼を釣り上げる餌は極めて単純。
「次元虫という生物がいる。
 次元虫自体は脆弱な生物だが、宿主に寄生することでその対象を次元獣に変え、その名の通り"獣"として暴れまわる。
 この虫がある人間に寄生した」
「ほぉ、それで?」
208コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 04:26:12 ID:vBa5LUHm0
「その人間は氷に閉じ込められ仮死の状態になっている。通常、次元虫を取り除くことは不可能に近いだろう。
 だが、仮死状態の今なら、名うての外科医なら取り除くことが可能かも知れない」
「なるほど、それで俺の出番ってわけだ。用件はわかった。だが、俺に何のメリットがある?
 退治に協力しろって言うならまだしも、そんな奴はもう脱落したも同じだ。放っておけ」
 にべもなく、もう話は終わりと手を振る壬琴。
 だが、交渉はこれからだ。
「……何も交換条件がないわけではない。仲代壬琴、私とゲームをしよう」
「ゲームだと」
(――かかった)
 ゲームという言葉に興味を向けた壬琴に、内心ほくそ笑むグレイ。
「そのゲームに私が勝てば、私と一緒に行動し、次元虫を取り除くことに協力してもらう」
「俺が勝てば?」
「私はお前の部下になろう。好きなことを命じるといい」 
 両者の視線が交錯する。グレイの無機質な紅い眼を射抜くように壬琴は見詰める。
「ふっ、どうやらハッタリというわけじゃなさそうだな。いいぜ、そのゲーム載ってやる」
 椅子から立ち上がり、コートを翻す。
 ゲームの内容も聞かずに壬琴は載ることを承諾した。
 それはどんなゲームであろうとも自分が負けるわけはない。絶対の自信に溢れているが故の行動だ。
 しかし、グレイの提示したゲームは意外なものだった。
「ゲームは単純だ。コイントス。コインを弾き、裏か表かを当てる。ただそれだけのゲームだ」
 正直、拍子抜けもいいところだ。これからのお互いの行動を決めるのだ。
 それはこの場において、自らの命運を決めることに等しい。だというのに、そんな単純なゲームとは。
(いや、あまり馬鹿にしたものでもないか)
 このバトルロワイヤルが始まって、壬琴が最初に行った行動がコイントスだった。
 そして、その単純なゲームで、壬琴はこのバトルロワイヤルにおける自分の在り方を決めたのだ。
(そんな俺の行動を決めるんだ。これ以上ぴったりのゲームはないぜ)
 壬琴は懐から一枚のコインを取り出すと、グレイへと投げる。
「それを使いな。俺の運命を決めたコインだ。今回もそれを使って決めてやる」
 グレイはそのコインを眺めると、壬琴へと提示する。
「こちらが表、こちらが裏。私が投げて、お前が選ぶ。それでいいな」
209コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 04:27:28 ID:vBa5LUHm0
「ああ、それでいい。さっさと投げな」
 ピンッとコインを弾く音が鳴った。
 コインは、表と裏、その向きを空中で自在に変えながら昇っていき、やがて、最高点に達すと、放物線を描いてグレイの甲へと落下した。
「さあ、どちらだ?」
「裏だ」
「私は表」
 コインの向きを隠した手が離される。
 衆目に晒されたコインの向きは――
「表。私の勝ちだ」
「ちっ!」
「やった〜!やったじゃないのグレイ」
「壬琴様〜、不甲斐ないデビ」
 喜ぶメレとがっかりするビビデビ。明暗分かれる情景の中、グレイも壬琴もお互いから視線を逸らさずにいた。
「じゃあ、アンタはこれから私たちの奴隷としてしっかり働いてもらうわよ!って、な〜に?お互い見詰め合っちゃって」
「………そのコイン、見せてもらおうか」
「ちょっと、アンタ!イチャモンつける気!?大体、そのコインはアンタが用意して――」
 激昂するメレを意にも介さず、グレイは壬琴へとコインを弾く。
「やっぱりな。このコイン、俺のじゃない。確かに表は俺が渡したコインと同じ絵柄だ。だが、裏も表と同じ絵柄。
 つまり、両方表のコインってわけだ」
「なっ」
「大したもんだ。俺が指定したっていうのに、同じ絵柄のコインを用意するとはな。お前の特殊能力かなんかか?」
 物珍しげにコインを観察する壬琴に対し、グレイはあくまで淡々と語る。
「私にそのような力はない。たまたまお前が指定したコインを私も持っていた。それだけだ」
「たまたまねぇ」
「ビビィ〜、イカサマビビィ、販促デビィ〜。この勝負、壬琴様の勝ちビビ……ッッフゲェェェ!」
 揶揄するビビデビにメレの回し蹴りが飛ぶ。
「アンタは黙っときなさい。例えイカサマでも、勝ちは勝ち。アンタは私に従ってもらうわ!」
「はっ、わかってるさ」
「わ、わかればいいのよ」
210コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 04:29:04 ID:vBa5LUHm0
 イカサマで勝ったことに、内心、罪悪感を持っていたメレはあっさり自分の負けを認めた壬琴に、逆に怯む。
「み、壬琴様〜。本当にいいデビか!?」
「ルーレットと同じだ。優れたディーラーは出目を操作できる。
 グレイは確実に表が出るようにしただけ。裏と決めたのは俺だ。
 裏か表かを当てる。コイントスのルールには反しちゃいない」
 荷物を詰め込んだディパックを背負い、グレイを再度、真正面から見据える。
「中々、面白い奴だ。俺が裏を選ぶ自信があったってわけだ」
「お前に似た奴を私は何人か知っている。そして、そういう奴はとかく、裏を選びたがる」
「ふん、なるほどな。――こいつはもらっておく。いくぞ、ビビデビ」
 先行して進んでいく壬琴とそれを追うビビデビ。
「なによ、格好つけちゃって」
「我々も行くぞ。シオンが待っている」
「はいはい、わかったわよ」
(弱みに付け込んで操ってやろうと思ったけど、まあ、目的は達成できたみたいだし、いいわよね、ウフッ♪)
 そして、グレイとメレも目的を達するため、道程を急いだ。
 それから数分の後、彼らはスタジアムから立ち昇る煙を目撃する。



「ジーザス。結局、使えるのはこれだけか」
 サラマンデスの暴走の末、ほぼ廃墟と化したスタジアムの中央。
 シュリケンジャーは変身した姿のまま、燃え残った支給品の回収を行っていた。
 もっとも、その作業はものの数秒で終了した。
 サラマンデスが保有していた支給品の数々は、彼の近くにいたことが災いし、残らず炭へと姿を変えていた。
 唯一、使える状態で残っていたのは彼が不要と投げ捨てたゴウライチェンジャーただひとつ。
「まだまだ使い道のある支給品の消失に涙するべきか。処分する手間が省けたと笑うべきか」
 シュリケンジャーは愚痴を吐きながら、サラマンデスの処遇について、考えを巡らせる。
 今の彼は意識を失い、その能力も今は制限化に陥っている。つまり、今の彼を始末することは赤子の手を捻るようなものだ。
 同盟を結んだ手前、助けに来たが、所詮は有名無実。いつ破っても誰に責められる謂れはない。
「傷はそれなりに深そうだ。意識を取り戻しても使い物になるかどうか。ここはやはり……」
211コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 04:48:11 ID:vBa5LUHm0
 シュリケンジャーは腰に携えたシュリケンズバットに手を掛ける。
「!」
 そのとき、彼の研ぎ澄まされた五感が何かを検知した。
 シュリケンジャーは地に耳を着け、それを確認する。
(1、2、3、3人分の足音。こちらに近づいてきてるね)
 シュリケンジャーは空を見上げた。今でこそ、晴れ渡っているが、先ほどまでは濛々とした煙が空を覆っていた。
「ミーとしたことが。立ち昇る煙を見れば、声の届かない範囲にいた参加者も近づいてくるか」
 しかし、これはチャンスとも云える。サラマンデスを餌に利用できれば――
「フッ」
 シュリケンジャーは不適に笑うと、気配を消し、身を隠した。



「随分と派手にやったもんだ」
 スタジアムの有様に壬琴がボソリと呟く。
 何かの競技を執り行うために整備されていたであろうスタジアムはもうその面影を残してはいない。
 壁はボロボロに崩れ落ち、地面は煤に黒く染まり、そして、元が何であったかわからないほどに融解された物々。
「残念だぜ。もう少し早く来れれば、混ぜれたかも知れないっていうのにな」
 壬琴がこの殺し合いの場において、まともに戦ったのはドモンただ一人。
 既に死亡者が半数に届こうというのに、なんともお粗末な状況に嘆かずにはいられない。
「どうだメレ、見覚えはあるか」
「ないわね。まあ、私も一々一々、出て行く参加者を確認してたわけじゃないから断言できないけど、ネジブルーみたいに誰かの正体ってことじゃない?」
「それが妥当か」
 そんな壬琴から離れること数メートル。グレイとメレは倒れ伏していた"怪物"の観察をしていた。
 爬虫類のような鱗を身に纏った赤い怪物。胸に焼け焦げたかのような深い傷を負い、意識を失っていたが、息はある。
 この場にいて、この状況に無関係ということは有り得まい。
 問題はただひとつ。この怪物が敵なのか味方なのか。だが、それを確認する術はない。
「仕方あるまい」
 グレイは徐に、肩へと怪物を担ぎ上げた。
「おっ、連れていくのか」
212コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 05:03:27 ID:vBa5LUHm0
 その様に壬琴の視線がグレイへと向けられる。
「時間が惜しい。こいつが目覚めるのを待つ気はない」
「でも、大丈夫?もし、こいつが殺し合いに乗ってたら、意識を取り戻した途端、攻撃してくるかも」
「見たところ、変身する道具は持っていない。それにこの男がここで戦っていたのは明らかだ。短く見積もっても1時間は戦うことはできまい」
「それもそうね」
 グレイは踵を返し、調査は終わりとばかりに元来た道に戻ろうとする。
 だが、壬琴は別の方向に興味深げに視線を走らせていた。
 気付けば、彼の周りを飛んでいたビビデビの姿が見当たらない。
「ビビデビはどうした」
「他に何かないか、辺りを探らせている。それぐらいの時間はあるかと思ったんだが、お前、相当シオンとかいう奴に入れこんでいるみたいだな」
「ふっ、私は私でシオンには借りがある」
「そうかい。じゃあ、ビビデビを呼び戻すとするか」
「ビビィー!み〜こと様〜、見つけたデビ!」
 壬琴の声を遮るかのように、ビビデビの興奮した声が届く。
「おっと、思ったより早かったな。折角だ、行くとしようぜ」
 壬琴の誘導に従い、後に続くグレイとメレ。
 グレイは一刻も早くシオンと合流したかったのだが、何かを見つけたのなら仕方がない。
 ここに来た理由も、怪物を安易に殺さない理由も、シオンなら一人でも多くの参加者を助けたい。そう考えると思ったからだ。
 だが、ビビデビが見つけた"モノ"に辿り着いたグレイが目にしたのは残酷な現実だった。
「シオン……」
 真っ赤な血に濡れたコンクリートの床の上。
 倒れ伏す二人の男。その内の一人は髪を緑に染めた小柄な男性。
 その顔に見覚えがないわけがない。それはグレイがつい今しがた思い浮かべた人物、シオンに間違いなかった。
「ちょっと、なんでコイツがここにいるわけ!?」
 激昂するメレ。一方の壬琴は冷静に倒れ伏すもう一人の男へと近づく。
 グレイたちとは逆に、彼は壬琴が見覚えのある男だ。
「大方、ドモンの奴に呼び出されたってところだろうな。こいつを使って呼び出したんだろう」
 ドモンのディパックから拡声器を拾い上げ、グレイへと投げ渡す。
213コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 05:04:46 ID:vBa5LUHm0
「そして、シオンはまんまと誘きよされ、この結果ってわけだ」
「でも、拡声器を使ったのなら、なんで私たちには聞こえなかったのよ!」
「馬鹿か。その拡声器にはボリュームを調整するボタンがついてる。それでこのエリアにしか聞こえないように調整したんだろうよ」
 壬琴は憤るメレを嘲りながら、ドモンとシオンの死因を解明するべく、検死を始める。
「ドモンの死因も、シオンの死因も、ほとんど一緒だ。ドモンが握り締めていたナイフによる急所への一撃。大方、筋書きはこんなところだろう。
 ドモンはシオンを拡声器で呼び出し、ついでに呼び出した怪物と戦闘。なんとか怪物を退けた後、隙を見て、シオンを刺殺。
 だが、残念なことにドモンは罪の意識に苛まれ、そのまま自害と。シオンにとっても、ドモンにとっても、なんとも締まらない結末だ」
「………」
「おい、グレイ。さっきからダンマリだが、何か考え事か」
「特にない。ふたりから使える支給品を回収して、先を急ぐとしよう」
 グレイはシオンとドモンのディパックに入っていた支給品一式を自らのディパックへと移す。
 そして、シオンの腕に着けられているクロノチェンジャーにも手を掛けた。
(意外だな。随分、入れ込んでるように見えたんだが)
 半ば煽りに近い言葉を口にしているというのに、グレイの淡々とした対応に、壬琴は拍子抜けしてしまう。
(所詮は機械ってことか。人間や爆竜とかと違って、感情的な行動はとらないってことだな。ツマラン)
 グレイに抱いていた興味が急速に薄れていくのを感じる。
 壬琴はもう興味はないとばかりに、踵を返し、出口へと向かった。
「ビビィ〜」
 壬琴を追って、進むビビデビ。
「むぅ……」
 何か言いたげながらも、何も言わず、頬を膨らませるメレ。
「………」
 そして、その場にはグレイだけが残った。



(ったく、なんなのよ、アイツは)
 メレは原因の分からぬイライラに苛まれていた。
 シオンの死体を見つけてから、突如として始まったイライラだ。
(アイツは人の心配ばっかりして、自分のことより人を優先させて、それで殺されちゃあ、意味ないわ)
214コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 05:05:28 ID:vBa5LUHm0
 メレは壬琴の見立てを、特に疑いもせず、鵜呑みにしていた。
 シオンはきっとドモンを説得しようとして、刺されたのだろうと。
 ドモンがどういう男なのかは知るべくもないが、シオンが仲間に対してどういう態度を取るか、それは何故か理解できる。
(馬鹿な男。本当に馬鹿な男)
 シオンがいつか言った言葉をふと思い出す。

――人の命を奪うことも、自分の命を無駄にすることも絶対にしたくありません――

(確かにアンタは人の命を奪うことはしなかった。でも、結局、無駄死にじゃないの!)
 客観的に見れば、マヌケな参加者が死んだだけ。
 メレにとっては理央以外はその他大勢に過ぎない。誰が死のうが、誰が生きようがどうでもいいことのはずだ。
 それなのに、シオンの死はどうにもこうにも自分をイラつかせる。
 その理由がメレにはトンと見当がつかなかったが――
「………」
 メレが懐から取り出したのは、何時ぞやにシオンから貰った痛み止めの錠剤。
 既に生者とは云えない自分には無用の長物。だが、何故か今の今まで捨てずに取って置いたものだ。
「フン!」
 メレはその白い錠剤を口に入れると、ガリガリと齧る。
 薬だけあって、美味くもなんともないが、少しだけ、少しだけだが、胸の痞えが軽くなった気はした。
「グレイ、戻ったら、その怪物、徹底的に締め上げるわよ。ありとあらゆる方法でもって、洗い浚い吐いて貰うわ!」
 気勢を上げるメレ。だが、相変わらずグレイはダンマリ。
 グレイが無言なのはもういい加減慣れ始めていたが、今回は堪っていた鬱憤が爆発した。
「ちょっと、聞いてるの!」
 怒声を上げ、勢いよく振り向くメレ。だが、後ろには誰もいない。
「あれ?」
「ビビィ、あいつならついて来てないビビ〜」
「それを……それを早く言いなさいよ!!」
 メレの上段蹴りがビビデビに炸裂する。
215コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 05:06:32 ID:vBa5LUHm0
 それは完璧な八つ当たりだった。



 メレに蹴られた勢いのまま、壁に激突するビビデビ。
(み、壬琴様といい、この女といい、ネジブルーといい、自分に対する扱いが酷すぎるデビ)
 だが、ビビデビはめげない。なぜなら、今、ビビデビはとても機嫌がいいからだ。
(ビッビッビッ、ビビィ〜、大金星ビビィ〜)
 ビビデビは心の中で悪魔の笑みを浮かべていた。
 どういう経緯があったかは知らないが、ドモンはシオンと共にこの場にて死んだ。
 策略を授けたのはネジブルーだが、ドモンに彼からの言伝を囁き、死地へと送り込んだのは自分だ。
 つまり、ドモンとシオンが死んだ原因の何割かは自分にある。
 ビビデビはそれがとても誇らしかった。
(ビビビビビィ、思わず笑いたくなってしまうデビ)
 ロンとの約束は殺し合いを円滑に進ませ、誰かの優勝という形でこのバトルロワイヤルを終わらせること。
 既に残る参加者はほぼ半数。そして、ウメコの死に続き、シオンとドモンの死に自分は関わった。
 それは紛れもなく、成果と呼べるものだろう。
(ビビィ、もう直ぐデビ。壬琴様はこいつらに協力するようだけど、仲は悪そうだし、いくらでも付け込めそうデビ。とくに……)
 ビビデビは険しい顔をするメレに眼を向ける。
(この女、ドモンと同じでいかにも単細胞そうデビ。今度はこいつを誑かしてやるデビ〜)
 ビビデビは表面上は変わらず様子ながらも、気分を高揚させ、右へ左へと楽しげに浮いていた。



 どういうわけか歩みを止めているグレイをメレが呼びに行くのを待つ最中、壬琴は考えをまとめようとしていた。
 即ち、ドモンとシオン、二人の死を演出した何者かの目的だ。
 壬琴は気付いていた。
 ドモンが自らの死にも、シオンの死にも関わっていないことを。
(確かにありそうなことだ。仲間を殺した後、強い自責の念にかられ、自害する。実際、俺が言ったことに誰も疑いを持たねぇんだからな)
 だが、ドモンには無理だ。二人の傷はどちらも右手に握られたナイフで、強く刺されている。
216コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 05:16:08 ID:vBa5LUHm0
 右手がおしゃかのドモンに、あそこまでの傷をつけることは不可能。
 大体、本当に自害する気があるんなら、咽喉を掻っ切るか、長刀を使う方が現実的だ。それに今時、誰が切腹なんて自害方法を選ぶ。
 しかし、そんなことはドモンとシオンを殺した者も、百も承知だっただろう。
(単なる愉快犯の可能性が一番しっくり来るな。どんな些細なものでも支給品を置いていく犠牲を払ってまで、こんな三文芝居を演出するぐらいだ。
 それとも目的のものはもう手に入れたということか?まあ、なんにせよ、少しは面白くなってきたようだ)
 メレを伴い、戻ってくるグレイ。だが、壬琴の興味は既に彼の肩に担がれた怪物に移っている。
(こいつの口を割らせるのは当然として、ビビデビもドモンがどうの、ネジブルーがどうのと言っていたか。
 ふっ、グレイ、確かに協力はさせてもらう。だが、仕切るのはこの俺だ)
 壬琴は先導するかのように、彼らの数歩先を歩き始めた。



「ふぅ〜、ようやく行ったみたいだね」
 グレイたちが去って、たっぷり数十分後、シュリケンジャーはその身を起こす。
 疾うに変身は解け、その姿は"浅見竜也"の顔へと変わっていた。
「やれやれ、結局、結果はジーザスなままか」
 シュリケンジャーが何も行動を起こさずに見送ったのには理由がある。
「まさか、ロボットがいるとはミステイクだった。彼さえいなければ、色々やれることはあったのに」
 不意討ちするにしても、無害な参加者を装うにしても、グレイの存在はシュリケンジャーにとっては脅威だった。
 例えば、不意討ちする場合。まだ正面からの戦いは避けたいシュリケンジャーにとって、少なくとも最初の1人は他の誰にも気付かれずに始末を終えることが前提だ。
 だが、相手に気配を覚られない事に関しては朝飯前でも、機械仕掛けで動くロボットは気配などで、こちらの存在を判断しない。
 光化学、熱感知、赤外線、機械仕掛けの感覚器には、それに応じた対策が必要になってくる。
 生憎と持ち合わせがない上に、相手が何を用いてくるのか判断のしようもないのだ。
 それに加え、こちらは既に変身中の身。のんびりとグレイと他の参加者が距離を取るのは待っていられない。
217コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 08:54:00 ID:vBa5LUHm0
 ならばと、グレイが実際どういう機能を持っているのか、確認のためにも合流したいところだったが――
「できるわけないよね。この場において、変装しているなんてばれたら、それこそ命取りさ」
 魔法とも云うべき、シュリケンジャーの変装術だが、所詮は変装。骨格や生体反応までは誤魔化せない。
「まあ、自分でも心配しすぎな気もするけど……用心に越したことはない」
 ここは生き馬の目を抜く世界。油断した者から脱落していく。
 現にシオンは知り合いの顔に油断して、その命を落とした。
「後はサラマンデスがミーの存在を喋らないかだけど、流石に迂闊に喋る程、馬鹿じゃない……と、思いたいけどね」
 シュリケンジャーはそう自分を納得させると、炎の騎馬のハンドルを握った。


【名前】グレイ@鳥人戦隊ジェットマン
[時間軸]:49話(マリア死亡後)
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:健康。
[装備]:自らのパーツ全て
[道具]:遠距離射撃用ライフル(残弾数3発)、クロノチェンジャー(シオン)、鬼の石@星獣戦隊ギンガマン、
 操獣刀@獣拳戦隊ゲキレンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー、拡声器、ディパック+基本支給品一式×3(グレイ、サーガイン、シオン)
[思考]
基本行動方針:戦いを終わらせるためシオンと共闘
第一行動方針:自分の納得のいく形でシオンに借りを返す。
第二行動方針:壬琴を連れ帰る。
[備考]
2時間の制限と時間軸のずれを知っています。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。
218コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 08:54:45 ID:vBa5LUHm0
【メレ@獣拳戦隊ゲキレンジャー】
[時間軸]:修行その46 ロンにさらわれた直後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:鳩尾に打撲。左肩に深い刺し傷と掠り傷。両足に軽めの裂傷。理由不明のイライラ。30分程度変身不可。
[装備]:釵一本@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:ライフバード@救急戦隊ゴーゴーファイブ、芋羊羹、フェンダーソード@激走戦隊カーレンジャー
 火竜の鱗@轟轟戦隊ボウケンジャー、他一品、支給品一式×3(恭介、ドギー、裕作)
基本行動方針:理央様との合流。理央様に害を成す者は始末する。
第一行動方針:壬琴を菜摘たちの元に連れて行く。
第二行動方針:怪物(サラマンデス)から情報を聞き出す。
第二行動方針:青と白の鎧を身に纏った戦士(シグナルマン)とガイに復讐する。ガイの仲間(蒼太とおぼろ)を撃退する。
[備考]
リンリンシーの為、出血はありません。
2時間の制限と時間軸のずれの情報を得ました。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。
219コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 08:55:44 ID:vBa5LUHm0
【名前】仲代壬琴@爆竜戦隊アバレンジャー
[時間軸]:ファイナルアバレゲーム 死亡後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:精神的なダメージ極大、腹部、胸部、打撃によりダメージ(応急処置済)。タイムピンクに30分程度変身不可。酔っています。
[装備]:ダイノマインダー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、スコープショット
[道具]:ダイノコマンダー@爆竜戦隊アバレンジャー、キーボーン@特捜戦隊デカレンジャー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、両方表のコイン、基本支給品一式
[思考]
基本方針:コイン占いにより殺し合いには乗らないと決める。ロンを倒し、このゲームを破壊する。
第一行動方針:次元虫の解体手術を行うまで、グレイたちと行動。
第二行動方針:ドモンとシオンを殺害した人物に興味。
第三行動方針:不特定多数の参加者との命を懸けたサバイバルゲームを開始する。
第四行動方針:首輪の解析。
備考:ダイノハープがないため、アバレブラックへの変身はできません。
※ビビデビが知る情報のほとんどを得ました。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。首輪によって設けられた制限時間の情報も得ています。
※ドモンから情報を得ました。深雪のメモを読みました。
※禁止エリアでは首輪を外しても生存可能だと思っています。
※小津勇の食料、ペットボトルは長い年月を得たような状態です。
※クロノチェンジャーの変身方法を知っています。
220コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 08:57:40 ID:vBa5LUHm0
【名前】童鬼ドロップ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:26話、サラマンデス覚醒前
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:胸に大ダメージ。気絶中。サラマンデスに成長完了。1時間30分能力発揮不可能。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:とりあえず優勝狙い
第一行動方針:シュリケンジャーと協力して、数減らし。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・禁止エリアに入った時の首輪の効果を確かめました。

【名前】ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:星獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:ボロボロ。命には別状はない。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンに協力し、ネジレジアの復興。
第一行動方針:チャンスが来るまでおとなしくしておく。
第二行動方針:メレを誑かす。
221コイントス ◆i1BeVxv./w :2009/11/27(金) 08:58:59 ID:vBa5LUHm0
【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:健康。現在は竜也の顔です。1時間30分変身不可。
[装備]:シュリケンボール、ゴウライチェンジャー(クワガ)@忍風戦隊ハリケンジャー、
 炎の騎馬@忍風戦隊ハリケンジャー、スワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャー
[道具]:SPD隊員服(セン)、クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、
 マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、何かの鍵、支給品一式×4(水なし)
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る
第一行動方針:扇動者となって、なるべく正面から戦わずに人数を減らす。
第二行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。 それがだめならアレの消滅を願う。
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・禁止エリアに入った時の首輪の効果を確かめました。
222名無しより愛をこめて:2009/11/27(金) 17:00:00 ID:l5i+mmXb0
投下GJです!
コイントスのハードな空気に痺れました。
それにしても、やっぱり裏を選ぶのなw壬琴
前半のハードな空気が漂う中の、軽妙洒脱な掛け合いが読んでいて楽しかったです。
っていうか、メレヒデェwww>グジュラ!
無念の死を遂げたシオンですが、確かにメレの心に何かを残していたのだなとなんだかしんみりしました。
シュリケンジャー、そしてグレイが今何を考え、これから何を成すかが気になります。
シリアスさと、掛け合いの面白さのバランスが絶妙で面白かったです!GJ!!

……結果はともかくとして過程でビビデビが痛い目を見る気がしてならないw(主に身体的な意味で)






223名無しより愛をこめて:2009/11/28(土) 05:50:55 ID:+sHZDX4yO
GJ!
メレGJ!とくにグジュラは最高でした。
シオンから渡された薬を飲む場面が心に残りました。
そしてグレイと壬琴。
二人の駆け引きが凄い!
シュリケンジャーの虎視眈々と水面下で動く様子も、サラマンデスもどうなるか、など、読んでいて思わず「おぉ〜」と声を上げました。
面白かったです。
224名無しより愛をこめて:2009/12/04(金) 02:23:11 ID:rCcZQP2JO
まとめ更新乙です。
いつもありがとうございます!
225名無しより愛をこめて:2009/12/10(木) 19:35:02 ID:VQt+bRJL0
age
226 ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:22:06 ID:T5T9Cfo30
これより投下いたします。
227兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:23:28 ID:T5T9Cfo30
 砂漠の真ん中に位置するオアシスの生い茂る樹木の下、ジルフィーザは一人佇んでいた。
 弟の成長という喜びの絶頂から、成長した弟に裏切られる絶望に叩き落され、ジルフィーザは何をするでもなく、ただ虚空をじっと見詰めていた。
 どのくらいそうしていただろうか。突然、虚空から声が聞こえてくる。
 ロンによる定時放送だ。
「ロン……」
 今のジルフィーザにはロンが紡ぐ言葉は言語として理解できず、耳に入っては消えていく。
 だが、その残滓はジルフィーザの怒りを燻らせる。
「ロォォォォンっっ!」
 ジルフィーザは怒りに任せ、杖で地面を叩いた。
 制限が解けたのだろう、その一撃で多量の土塊が舞い上がる。
「そうか、貴様だな。貴様が我が弟を誑かした」
 ジルフィーザの脳裏に浮かぶのは成長した弟の凛々しき姿。
 だが、凛々しき姿を阻害するかのように首には下劣な首輪があった。
 人間の姿はあくまで借りのもの。成長すれば繭によって、成長した真なる身体に魂は移るはずだ。
 だというのに首輪が着けられていたということは何者かが成長した弟に首輪を着けたということ。
 そして、この何者かはロンしかいない。
「おのれぇ!このジルフィーザを、災魔一族をコケにしおって!!」
 治まらぬ怒りをぶつける様に、周りの木々に杖を奮い、次々と圧し折っていくジルフィーザ。
 ジルフィーザは改めて誓う。全ての元凶であるロンを抹殺することを。
「ウォォォォォッ!!」
 しかし、彼の苦しみは晴れない。それは――



「ったく、あのバカ大将はホント何考えてるかわからないニャー」
 スモーキーはバカ大将こと、ブドーへの愚痴を口にしながら、道を進む。
 ブドーが耳にすれば、斬られないまでもガンつけ位されそうだが、その心配はない。
228兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:24:27 ID:T5T9Cfo30
 何故なら、今、彼はひとりだからである。

――しばし、集中する時間が欲しい。半時程、辺りを偵察してくるが良い――

 ライスバーガーを食べ終えたブドーはそう言うと、スモーキーを放逐した。
 そもそもスモーキーがブドーと行動している理由は理央を確実にブドーの元へ向かわせるための人質、いやさ、猫質である。
 それを集中したいとの理由で自由にするとはどういう了見か。
(まあ、なんとなく理由はわかるんだけどニャ)
 ライスバーガーを巡っての追いかけっこ。殺し合い以外の決着方法。
 自惚れでなければ、ブドーはスモーキーの行動に、言葉に、惑っているのだ。
(もしかしたら、にゃんとかなるかも知れないニャー。オイラは今の内に何か大将を説得するための旨い方法を……)
「にゃ!?」
 考え事に夢中になったせいか、はたまた、ただのドジか。
 スモーキーは足元を踏み外し、ゴロゴロと坂を転げ落ちた。
 考え事もすっかり頭から弾けとび、咽喉を鳴らす小憎たらしい猫の顔だけがスモーキーの頭を埋め尽くす。
「ニャニャニャ!?」

―ドスン!―

 慣性によりただひたすらに続くと思われた回転。
 だが、障害物にぶつかり、どうにかその身体は制止した。
 眼を回しながらも、障害物を杖代わりに立ち上がり、転がった原因へと視線を向ける。
「うぉぉっ、なんにゃ、あれは!」
 スモーキーの視線の先には今まで歩いてきた緑溢れた地面とは異なり、削り取られた絶壁が広がっていた。
 右を見、左を見れば、スモーキーの位置から放射上に削られていることがわかる。まるでクレーターのようだ。
 深さはあまりないが、地面との境目は非常に急になっており、一歩、足を踏み外せば、落下は免れないだろう。
 そう、自分のように。
「一体、誰がこんニャ……」
 驚愕するスモーキー。
 そこでふと、スモーキーは自分を止めた障害物に気が移る。
229兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:25:44 ID:T5T9Cfo30
 適度に固く、適度に軟らかいこれはなんなのか。
 スモーキーは恐る恐る眼を向けた。
 それは丁度、振り返った障害物と眼が合うタイミングだった。
「なんだ、貴様は?」
「………」
 沈黙。
「にゃあああああっ〜〜〜〜〜!」
 そして、絹を裂くような悲鳴が響き渡った。



 腰を降ろし、座を正し、眼を閉じ、心を落ち着かせる。
 ブドーは一人、自らと向かい合う。
 スモーキーはブドーが自分の行動と言葉によって、惑っていると思っていたが、それは理由のほんの一部でしかない。
 ブドーが集中する時間を欲した真の理由。それはブドーが手にした闇の三ツ首竜。
(拙者の中で竜が暴れている。力を示せと喚いておるわ)
 その強大な力と比例する闇は、ブドーの中で大きく渦巻き全てを塗りつぶさんと鳴動している。
 この黒き闇はブドーが少しでも隙を見せれば、そこから侵食し、ブドーをブドーであったものに変えてしまうことだろう。
(不満なのだろうな。理央との決着に拘り、一向に他の者を斬ろうとしない拙者を。
 だが、今しばらく待つがよい。スモーキーの甘言に少々心を動かされたのは事実。
 しかし、拙者の目的はあくまでも戦うことだ。
 理央との戦いが拙者の敗北で終わればそれまでだが、拙者が勝利すれば、眼に映る全ての戦士を斬って捨ててくれるわ!
 それまではお主は拙者の力。拙者の供物であるがよいいいいいいいッッッ!!!!)
 鼓動が治まっていくのを感じる。
 どうやらブドーの叱責に闇の三ツ首竜はとりあえずの理解を示したらしい。
(厄介な『力』よ。だが、それほどの力ではないとあの理央に勝てぬのは事実)
 ゆっくりと眼を開け、ブドーは傍らのディパックから時計を取り出す。
(あと2時間半。出来れば、力を試して起きたかったが、まあ致し方なかろう。
 拙者の心を蝕むほどのものなのだ。試さずとも充分に力を発揮してくれることだろう)
 スッと立ち上がり、理央が来るまでの時間、さて何をしようかと考えるブドー。
230兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:26:34 ID:T5T9Cfo30
 茶器でもあれば、茶を点て、茶の湯を楽しみたいところだが、生憎と揃っているものは水しかない。
(ふむ。スモーキーが帰って来たら、句でも楽しむとするか。あの者がどのような句を詠むか、些か興味もある)
 ブドーはスモーキーが戻ってくることに一片の疑念も持たず、その帰りを待つ。
 彼の思いは裏切られることもなく、しばらくしてスモーキーはブドーの元へと帰還した。
 だが、その傍らには見覚えのない怪人の姿があった。
「スモーキー、その御仁はどなたかな?」
 当然の如く、ブドーはその怪人の仔細を尋ねる。
 事情を説明しようとしたスモーキーを遮り、その怪人が口を開く。
「我が名は災魔一族、大魔女グランディーヌの第一子、冥王ジルフィーザだ」
「ふむ、ジルフィーザ殿か。もう聞き及びのことかも知れぬが、拙者は剣将ブドー。元宇宙海賊バルバンの魔人だ」
「元?」
「裏切り者の汚名を着せられ、それっきりよ。まあ、拙者のことはどうでもよかろう。
 して、お主の目的はなんだ?殺し合いに乗っているというのであれば、相手をしてやらぬこともないが」
 理央との決戦の時間まで、2時間と少し。今なら戦っても辛うじて刻限までには制限は解除されるだろう。
「いかがかな?」
 ジルフィーザは少し間を置くと、回答を返す。
「止めておく。私の目的はロンとかいうふざけた男を殺し、元の世界に帰ることだ。
 わざわざ、これから戦いを控えている者と剣を交じわせる必要はない」
 ブドーの鋭い眼光がスモーキーを射抜き、スモーキーはその視線に明らかな怯えを見せる。
 しかし、今はスモーキーの口の軽さなど、どうでもいいことだ。
 ブドーはジルフィーザに向き直り、言葉を紡ぐ。
「左様か。ならば、拙者も戦う必要はないか」
 ジルフィーザはその回答を聞くと踵を返した。
 その背中は明確に別れを告げている。
 スモーキーもブドーの元へと駆け寄り、全てがジルフィーザの来る前に戻ったかのように思われた。
「だが、老婆心ながら、一言言わせてもらおう」
 ピタリとジルフィーザの動きが止まる。
「御主、そのままでは死ぬぞ。いや、そのようなことは理解した上で何かを為そうとしているのかな?」
「っ!!」
 振り向き様に杖に付いた刃をブドーへと奮うジルフィーザ。
231兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:32:14 ID:T5T9Cfo30
 ブドーはそれを予期していたかのようにいつの間にか取り出していたゲキセイバーでその一撃を受け流す。
 力のままに地面へとめり込む杖。
 威嚇するかのように激しく睨みつけるジルフィーザとは対照的にブドーは涼しげな表情のまま、言葉を継ぐ。
「図星か」
「ぬぉぉぉぉっ!」
 声を張り上げ、次々と大振りの斬撃を繰り出すジルフィーザ。
 ブドーはそれを器用にゲキセイバーを操り、最小限の動きで受け流していく。
「さて、それならば気になるのは何故そのような状況に陥ったか。見たところ、本来ならば拙者にも勝るとも劣らぬ腕の持ち主。
 それが如何にしてこのような有様に」
「黙れぇぇぇ!」
 ジルフィーザの渾身の一撃がブドーを捉える。
 ブドーはゲキセイバーを盾にダメージを抑えるものの、その威力は凄まじく、身体は宙に浮き、樹木へと叩き付けられた。
「大将っ!!」
 スモーキーの悲鳴が上がる。
 だが、ブドーは痛がる様子もなく、めり込んだ身体を起こし、地面へと降りる。
「貴様、最後の一撃はわざと受けたな。私が制限中なのを見越して。どこまで、どこまで私を愚弄するつもりだ!!」
「愚弄?そう思うということは御主に問題があるからではないのか。
 ……まあ、拙者の話を聞け。何の縁か、こうして裏切られた二人が顔を合わせたのだからな」
「………」
 ジルフィーザは相変わらず顔をしかめたままだったが、一向に戦おうとしないブドーに矛を収めた。



 集中の際と同じく、姿勢を正し、地面に座すブドー。
 それに合わせてか、ジルフィーザもブドーを正面に見据え、座を構える。
(なかなかシュールな光景だにゃー)
 威圧感バリバリの怪人二人が、何故か正座をして向かい合っているのだ。
 スモーキーの感想もある意味当然である。
「今はこのようなものしかないが」
「いただこう」
232兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:33:54 ID:T5T9Cfo30
 差し出されたペットボトルの水を受け取り、ゴクゴクと飲んで、咽喉を潤す。
 真毒で傷ひとつない状態に回復したとはいえ、水分を補給できるのは純粋にありがたいものだ。
「それでお前は私に何を言いたいのだ」
「ふっ、最初に言った通り、老婆心からの忠言よ。御主に何があったのかは大体理解できた。
 だが、その上で御主が選択した道は、果たして御主が臨む道なのか?」
「何が言いたい」
「……少し拙者の話をしよう。拙者は宇宙海賊バルバンの剣将として、ゼイハブ船長の下、この剣を奮っておった。
 だが、没落の日は突如として訪れた。何者かの姦計か、船長からの信頼は失われ、拙者は裏切り者として、バルバンから追われることになった。
 そして、最期は――」
 今でも鮮明に思い出すことが出来る脳裏に刻まれた記憶。
 ギンガの光を求め続け、後はただ戦うのみとギンガレッドに挑んだ。
「宿敵に敗れこそしたが、そのこと自体に悔いはない。全ては拙者の力不足ゆえのこと。
 だからこそ拙者はこの場で腕を磨き、最強を目指すことを幽世の目的とした。
 そして、2時間の後、拙者が超えるべき敵と認めた相手との戦いがある。その結果、拙者は再び敗れるやも知れん。
 しかし、そうなったとしても、無念ではあっても後悔はないと断言できよう」
「………」
「拙者は運良く、新たな命を得ることが出来た。御主も、もし死んだとしても再起の機会はあるやも知れん。
 しかし、死という事実は裏返らない。そのことを胆に銘じておくのだな。――持っていけ」
 ブドーはふたつあるディパックの内、ひとつを投げ渡した。
 バンキュリアから回収したものだ。支給品の数々もほぼそのまま入れてある。
「役立つこともあろう」
 ブドーはそれで話は終わりとばかりに空になったペットボトルを片付け始める。
「……感謝する」
 一方のジルフィーザもそれだけ告げると、ディパックを担ぎ、踵を返し歩き出す。
 今度はブドーも止めようとしない。
「おいおい、大将、いいのかニャ。オイラには大将が何を言いたかったのか、さっぱりだったがニャ」
「信じていた何かに裏切られた者は滅びの道を歩きたがるということだ。
 それは変えられぬだろうが、多少の関与はできる」
233兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:34:38 ID:T5T9Cfo30
「???」
 ブドーの説明も理解できず、ハテナ顔のスモーキー。
 ブドーはそれ以上、口を開かず、去っていくジルフィーザの背中を見送った。



(何をやっていたのだ私は)
 ジルフィーザの進行はほんの数時間前と比べると驚くほど軽い。
 ドロップの裏切りにまるで亀のような鈍さだった行動は見違える程に変わっていた。
(簡単なことではないか。あの裏切りがロンに誑かされたものだったにせよ、自発的なものだったにせよ、弟の間違いを諌め、正しき道を示すことこそが兄の務め)
 ドロップの残したわずかな言葉から推測すれば、おそらくドロップの時間の自分は彼に何も伝えることなく、死んでしまったのだろう。
 サラマンデスになった今ならいざ知らず、ドロップのままで自分を亡き者にできるとは流石に考えづらい。
 ならば、なぜ彼がジルフィーザを裏切ったかも多少の理解はできる。
 自分が死んだことにより舞い降りた冥王という大任に、彼なりに精一杯応えようとした結果だったのではないか。
 だが、幸か不幸か、ジルフィーザとドロップはこの場で出会った。
(ドロップが増長し、兄を超えようとするならば、より高い壁となってその眼前に立ちはだかってくれる!
 そして、教えてやるのだ。冥王としての貫目を!)
 勿論、この考えはジルフィーザの推測に過ぎない。だが、当人の想いを知るには当人に会わなければ分からないのもまた事実。
 ジルフィーザはドロップを追い、砂漠を駆け抜けて行った。
234兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:36:08 ID:T5T9Cfo30
【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:E-8砂漠 1日目 午後
[状態]:健康。
[装備]:杖
[道具]:一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)、サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー、真墨の首輪、支給品一式(バンキュリア)
[思考]
基本行動方針:ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップに会い、真意を問う。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。

【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:E-9オアシス 1日目 午後
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。闇の力により戦闘力増幅。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン、闇の三ツ首竜@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:筆と短冊。マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー、支給品一式(ペットボトル1本消費)
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:理央の治療を待ち、決着をつける。(4時44分、E9エリアにて)
第二行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。
※闇の三ツ首竜により力が増幅しています。
235兄として、武人として ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 13:37:13 ID:T5T9Cfo30
【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:E-9オアシス 1日目 午後
[状態]:健康。マジランプの中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルを探す
第一行動方針:ブドーの猫質
第二行動方針:強い怒りと悲しみ。菜月を探し出す。
※落ちていたメメの鏡の破片(粉砕)によってヒカルがサーガインを刺したのを見ています。
236 ◆i1BeVxv./w :2009/12/11(金) 18:10:04 ID:T5T9Cfo30
以上で投下終了です。
誤字、脱字、矛盾点など指摘事項、ご感想などありましたらよろしくお願いします。
237名無しより愛をこめて:2009/12/12(土) 19:12:46 ID:PZ1cdZtJO
GJ!
投下に気付かず申し訳ありませんでした!
武人として……。
もう胸にぐっと来た!
出先なのでこんなことしかかけませんが投下乙でした。
帰ってじっくり読み直すのが楽しみだ!
遅くなりましたがもう一度GJ!
238名無しより愛をこめて:2009/12/12(土) 20:16:07 ID:SFaeU2UuO
投下GJです!感想遅くなってすみません。
相変わらずの速筆お見それしました。
ブドーとジルフィーザ、2人の会話から伝わる気迫が渋く味わい深かったです。
正座して向き合っている2人は思い浮かべると確かにシュールでしたがw
心を静め、きたる対決の瞬間に備えるブドー、
ブドーの言葉により迷いを振り切ったジルフィーザ
2人の今後が楽しみです。GJでした!
239名無しより愛をこめて:2009/12/14(月) 04:16:27 ID:uNrkKPgmO
まとめ更新もお疲れ様でした。
いつもありがとうございます!
240名無しより愛をこめて:2009/12/24(木) 10:47:31 ID:qy9MaJWi0
メリークリスマス!ってことで保守。
241名無しより愛をこめて:2009/12/26(土) 19:11:49 ID:KlspTm7n0
メリークルマジッククリスマスというべきだろう。
一日遅れたけど。
242名無しより愛をこめて:2010/01/04(月) 14:46:13 ID:xpaF9pk90
遅ればせながらあけましておめでとう!
今年は完結なるか?書き手の皆さん頑張ってください!
243名無しより愛をこめて:2010/01/07(木) 09:15:53 ID:f6t7Bc0F0
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年が戦隊ロワにとって良き一年になりますように
244名無しより愛をこめて:2010/01/12(火) 16:52:46 ID:oAuP4D2L0
ものすごく遅くなりましたがマップのチーム動向追加ありがとうございます。
流石だ!まとめ氏
245名無しより愛をこめて:2010/01/18(月) 11:24:39 ID:lbBowdnn0
保守
246名無しより愛をこめて:2010/01/19(火) 02:57:04 ID:4k7Dehem0
予約来ないね…
247名無しより愛をこめて:2010/01/22(金) 13:20:56 ID:PNbCV9Ne0
規制とけたかな?

師走外道衆との戦いが延長戦に入っているので、もう少しだけ待って、とだけ
248名無しより愛をこめて:2010/01/23(土) 12:59:16 ID:r5OTNbGn0
ゴーオンジャーが始まる頃に始まったのに、もうシンケンジャーが終わる頃かぁ。
ゴセイジャーが終わる頃にはどれくらい進んでるのかなぁ・・・?
249名無しより愛をこめて:2010/01/23(土) 22:26:37 ID:miJ/AAEC0
ゴセイジャーが終わる頃にはなんとかメドがつくといいな。
まあ根気よく楽しんでいきましょう
250名無しより愛をこめて:2010/01/28(木) 00:02:29 ID:2xFr03kp0
お久しぶりです。
最近ようやくダブル規制のとけた煽り文作成者です。おのれ運営め!!
今度こそはと言っておきながら、年が明けてしまいました。
そしてまたしても短いですが、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。
251名無しより愛をこめて:2010/01/28(木) 00:03:20 ID:2xFr03kp0
041 ニアミス
逢いたい人も欲しい物もどれほど近くにあったとしても手にするのは難しい。
  ルーレットも運命もいつだって思い通りになどなりはしないのだから
042 Nightmare
  素直ないい子のぼうやにも、おひとよしな紳士様にも素敵な悪夢をプレゼント。
  返品はうけつけません♪だってワタシたち『ナイトメア』なんだもん♪
043 ウメコはどこへ消えた?
優しさや強がりが全てを救うとは限らない。
  響く悲劇への足音に、小悪魔はうす暗闇にほくそ笑んだ。
044 策略と疑問
  そうして道化師はまたしても踊りに興じる。
  繰り手が変わったことにさえ気付くこともなく。
045 ミッションスタート!最高のアイテムを追え!
  どれほど足が震えてもその手を離すことなどできない。
  どれほど拳が震えてもその手を取ることなどできない。
  どれほど心が震えても足を止めることなどできないのだから。
252名無しより愛をこめて:2010/01/28(木) 00:04:24 ID:2xFr03kp0
以上です。
いつもながら短いですが、ご寛恕頂けますよう……
253名無しより愛をこめて:2010/01/29(金) 08:02:32 ID:46HrUIRCO
うむ!これはまた燃える!!
いつもGJです。
254名無しより愛をこめて:2010/02/07(日) 19:03:24 ID:NAfdWej50
予約来たね!
新年一発目から死人が出るのか?
ロンは出るのかw
255 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:02:32 ID:TH5JFlG50
これより、投下いたします
256名無しより愛をこめて:2010/02/08(月) 21:03:06 ID:rW/MhxTN0
 
257さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:04:24 ID:TH5JFlG50
夜の闇を溶かして流し込んだように黒々とした設えの碁盤。
刻まれた目の上には、黒も白も石の姿はない。

―――――碁でも打たれてはいかがですか

碁盤の上に頬杖を突いたまま、宙を見やる主に退屈の匂いでも嗅ぎ取ったのか、虚空から低い女の声が響く。
「打とうにも相手がいないじゃないですか」
目線を動かさず軽いまばたき一つさえすることもなく、こともなげにロンはその声に応えた。
「姿をいただけましたら、すぐにでもお相手いたしますが」
女の声が落ち着いた低いものから、しなだれかかるような甘えた響きに変わると、じゃれかかる猫をあしらうようにロンは笑った。
「無駄なことをせずともその手にはノリませんよ。そもそも碁などはるか昔に打ちつくしましたよ。それこそ厭きるほどね……それに」
途切れた言葉の続きを促すように、女は口を閉ざした。
「碁など打たずとも、今まさしく対局のさなかじゃありませんか。私と『彼ら』と『彼ら』のね」

こらえきれぬような笑い声が零れだし、静寂に落ちては溶けて消えていく。


 ◆
258名無しより愛をこめて:2010/02/08(月) 21:06:01 ID:rW/MhxTN0
259さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:06:39 ID:TH5JFlG50


目の前の『そいつ』に拳を叩きこんだ時、脳内を占めていたのは苛立ちだった。
どうしようもない現状への苛立ち。
次から次へと奪われ、失われていく理不尽への苛立ち。
何もできなかった自分の無力への苛立ち。
苛立ちは焦燥へと変わり、胸を焦がしていく。
後ろめたさを感じなかったと言えば、嘘になるだろう。
それでも、振り下ろす拳を止めることが出来なかった。
誰にもぶつけようのない苛立ちを吐き出す相手が、振るわずに、振るえずにいた拳を振り下ろす相手が欲しかったのかもしれない。
ただ一心に振り上げ、振り下ろす。
拳に痛みを覚える頃には、『そいつ』にかつての姿は見る影もなく、絶え間なく抱え込んでいた物を吐き出していた。

「何をやっとるんじゃ。おぬしは」

呆れ果てたような聞き覚えのある声に、一瞬だけ身が固まる。
だが、見られたのならばしょうがない。目の前のそれを両手に引っ掴むとゆっくりと後ろへと振り向いた。

「お茶とコーヒー、どっちがいい?」


片腕がないというのはとかく不便だ。
特に失われたのが利き腕であればなおさら。
物を取ろうとついつい利き腕を差し伸ばそうとしては転ぶのはしょっちゅう。
ひとたび転べば片腕では一人で起き上がるのも一苦労。
そんな姿を間近で幾度も見ていたせいだろうか。
プルタブをもぎ取ったお茶入りの缶を竜也は、ブクラテスの前に差し出すことなく、その左腕に直接握らせた。
「おぬしも少しは気のきくようになったのう」
手渡されたそれを樽のような体で存外、器用に口元まで運ぶと、ブクラテスは憎まれ口を叩いた。
260さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:12:18 ID:TH5JFlG50
「そりゃどうも」
肩を竦め気のないような顔で、竜也は冷えた感触の伝わる缶を手の中で弄ぶ。
「それで、おぬしはあんなところで何をやっとったんじゃ」
「別に。見た通り、現地調達」
おどけるように竜也はまだ口をつけていない缶をひらひらとかざす。
「正義の味方とやらにしてはずいぶんとらしくない行動だったようじゃがの」
「……いらないなら返せよ」
ブクラテスはもうひとすすりすると、缶を逆さに振ってみせた。
わずかに雫が一滴。アスファルトに丸い模様を描いた。
「もう呑んだのか」
「あれっぽち足しにもならんわ」
呆れたように笑うと、竜也は手持ちの缶を自分の額に押し当て宙を仰いだ。
「何もすることがなかったから手持ち無沙汰で……いや、やつあたりかな。やっぱり」
「ふむ。おぬしも仲間外れは寂しいか」
「ははっ。違うって」
口から零れた笑い声は、自分で思っていたよりも乾いて響いた。
「無理もない。あのように隠し立てをされてはのう」
「だから別に隠し立てなんてされてないって。今だって勝手に俺が出てきただけなんだから」
別に追い出されたわけでもなければ、彼らを二人きりにしてやろうなどと思ったわけでもない。
帰ってきてからずっと俯き加減の顔で黙りこくったままのさくらと、それを許容する暁。
その二人の作り出す空気に息苦しさを覚え、ふらふらと外に出た。ただそれだけなのだ。
それともその息苦しさも仲間ではない者ゆえの疎外感のせいだったのだろうか。
竜也は首をわずかに振ると、手にした缶を一息に呷る。
わずかにぬるんだコーヒーは、口にするといつのまにか乾ききっていた喉にゆっくりと染み込んでいった。
その姿を横目に流し見て、ブクラテスはやれやれとため息を一つ。
ディバッグを引き寄せると、中からひと組のカードの束を取り出した。
「タロットカード、っていいよ。それはもう」
「いやいや、占うのはワシじゃない。おぬし自身じゃよ」
いぶかしむような顔の竜也の前で思わせぶりな顔をしてカードをシャッフルしていく。
「おぬしが何に苛立っておるのか知らんがのう。行く途がわからぬというのならカードに託すのも一興じゃって」
261名無しより愛をこめて:2010/02/08(月) 21:14:24 ID:rW/MhxTN0
262さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:16:32 ID:TH5JFlG50
重々しくもったいぶるような手つきで差し出されたカード。
「ほれ、とっととひかぬか」
促され、カードの端を一枚掴むとゆっくりとカードの束の中から引き抜いていく。
記されていた絵柄は、二頭立ての馬車、そしてそれに座する前だけを見つめた若い男の姿。

「大アルカナ 7番 戦車 じゃな。意味するところは前進、勝利といったところか。ほう、なかなか悪くないんじゃないかのう」
「何を言いたい……?」
「ワシに教えられるのはカードの意味までじゃ。カードが何を言いたいかまではワシにはわからぬ。おぬしが好きに読み解くが好かろうよ」
カードを日にかざすとそこだけ色濃く、影が落ちる。
しばらくの間、竜也は日よけのようにカードをかざしたまま、じっと見つめ続けていた。
その足元にはいつの間にかマーフィーが寄り添っていた。
そこだけ、切り取ったように動きの止まった一人と一匹。
いよいよ焦れたブクラテスが、咳ばらいをすると睥睨するようにマーフィーが顔をあげる。
「よし!ちょっと行ってこようかな」
「ほう、何をしにじゃ?」
「そうだなあ、さしあたり……」
竜也は周囲を見渡すと手近に転がっていた缶を拾い上げ、軽く振ってみせた。
「差し入れでもしに、かな」
「ふん、お人よしのおぬしらしいな」
散々待たされた結論のあっけのなさに拍子抜けするようにブクラテスは鼻を鳴らしてみせた。
立ち上がりブクラテスに背を向けたまま、竜也は呟くように問いかける。
「あの二人が隠し立てをしてるって言いましたよね」
「言ったのう。自慢じゃないがワシの目は確かじゃぞ。こと身の危険に関してはな」
愚者、死神、塔、さかさまの吊るされた男。タロットの絵札に目を落としたままブクラテスは応えた。
「それでもいいんだ。こんな場所で、こんな状況で誰にも打ち明けられないことの一つや二つ、誰だって抱え込む。それでも俺は信じてみたい。二人と一緒に戦っていけるって」
「それがおぬしの行く途ならば、カードの示しに従えばよかろうよ」
竜也は振り向くと、ブクラテスの顔をしげしげと見つめ返した。
「なんじゃ、おぬし」
「いや、まさかそういう言葉が出てくるとは思わなくって」
意外そうな面持ちの竜也にブクラテスは鼻を鳴らしてみせる。
263名無しより愛をこめて:2010/02/08(月) 21:17:33 ID:rW/MhxTN0
264さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:19:32 ID:TH5JFlG50
「うん、じゃあとりあえずマーフィー、ブクラテスさんを頼んだな。今度は置き去りにしてやるなよ」
やる気なさげな尻尾の一振りで返すマーフィー。
「とりあえずってなんじゃ!とりあえずって!!」
ブクラテスの抗議の声に手をひらりと一つひらめかせて、竜也は歩き去って行った。

「おぬしまで、何か言いたげじゃな」
黙って自分を見上げてくるマーフィーをひと睨みすると、興味があるのかないのか、昼寝する犬のように香箱を組んでマーフィーはうずくまる。
「ああいうやからは器用じゃないからのう。溜めこんで溜めこんで最後には溜めこめきれずに爆発するんじゃ。やっかいなことじゃて」
風が一吹き。ブクラテスの手元からカードを払い落していく。
「赤と出るか、黒と出るかはあくまであやつ次第じゃが……さてなあ。ワシはあやつの背を押したまでよ」
悪魔、月、さかさまの太陽。散らばったカードを不器用に拾い上げ整えながら、ブクラテスは嘯いた。


 ◆


碁盤の上にモノトーンの碁石がいくつもいくつも転がっている。
遠目から見れば、混ざりあったその色はまるで曇天のような灰色に見えるだろう。
しげしげと眺めてみれば、それぞれに濃淡の違いが見えてくるのだが。
碁盤の半ばまでは、既に深々とした深い黒。
白はと見れば、どれもこれもくすみ灰味がかって、もはや黒と判別のつかぬ物さえある。
その一つ。まだ確かに白を残しながら、ひどくくすんだ色の碁石を手に取り、掌の上で弄びながら、ロンは声しかせぬ女に語りかけた。
「目の前に花が咲いているとしたら、どうしますか」
「……わたくしなら刈り取ってロン様に献上いたしますが」

「ロン様ならいかがなさいますか」
沈黙に主人の不興を感じ取ったのか、取り繕うように女は二の句を継いだ。
「かつてどれほどいたぶっても枯れぬ花がありましたっけ。あれを思うさまにするのは楽しかった」
「それはどうなさったのですか」
「……思ったように咲いてくれなかったのでね。ぐしゃぐしゃに踏みつけて捨ててやりましたよ」
よくよく主人の不興を買うと、女は舌打ちしたい気にかられた。
「まあ、あれはあれで一興でしたがね」
265さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:20:57 ID:TH5JFlG50
「次はどのようになさるのですか」
今度こそ主人の興を損なわぬようにと、猫なで声で女は問いかけた。
「選ぶ花はよりどりみどり、ですが。そうですね。今度の花には毒を含ませてやりましたよ。自覚できず、次第に身を枯れさせていくような、ね」
手にしていた石を元の碁盤に放ると、他の石と混ざり合い、また一色の灰色となっていく。

 
 ◆


沈黙に耐えかねたのは、どちらだっただろうか。
いや、むしろ彼はよく耐えたと言っていいのかもしれない。
一人一人と姿を消し、いつのまにかさして狭くもないこの部屋の中に二人きりになっていたのだから。
耐えかねたのは、辛抱強く自分が語りかけるのを待ちつづけ、ついに振り向いた暁か。
振り向いた暁が口を開く前に無理やり、声を滑り込ませた自分か。
どちらにしろ、最初に口を開いたのはさくら自身だった。
「これを……預かって頂けますか」
手にしていたのは、血や泥にまみれたさくら自身のジャケット。
それは、自分のスコープショットが壊れ、アクセルラーも手にしていない今のさくらにとって、今やボウケンピンクである自分を証明する唯一の物だった。
「……どういう意味だ」
暁は手を差し出そうとはしない。その口調には困惑とたしなめるような響きがあった。
「……資格がないんです」
「あの事ならお前に責任は……」
「例え、どんな理由があったにしろ、私のやったことにかわりはないんです!」
慰める響きを持った暁の声をかぶりを振って否定する。
「私が!」
次第に声が大きくなっていく。それを自分でも抑えることが出来なかった。
「私が!菜月とおぼろさんを殺したんですから!!」
今度は彼がかぶりを振る番だった。伸ばされた腕を後ずさることで振り払う。
今は触れて欲しくなかった。今の自分に触れて欲しくなかった。
266名無しより愛をこめて:2010/02/08(月) 21:22:04 ID:rW/MhxTN0
267さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:22:40 ID:TH5JFlG50
全身で拒絶をあらわすさくらに、暁はそれでも手を伸ばし、一つ息を吐くと静かに下ろした。
「わかった……預かろう」
ホッと息を吐き、同時に居た堪れなくなったさくらはこの部屋から立ち去ろうと、握りしめていたジャケットを床に横たえる。
立ち上がろうとした眼前に不意に現れた影をさくらは反射的に受け止めた。
「受け取ったな」
悪戯めいた顔で暁は笑っていた。
「これは……」
「おおよその修理は終わっている。何箇所か俺には直せん部分があったがお前なら直せるだろう」
さくらの声をさえぎるように、今度は暁が声を滑り込ませる。
「直すか直さないか、使うか使わないかはお前の判断に委ねる。だがな」
笑顔を崩さぬまま、けれど、その目はじっとさくらの目を見据えていた。
「お前がどうしようと、どうあろうと、さくら、お前は俺のサブチーフだ。それは覚えていてくれ」
自分がどんな顔をしているのか、どんな表情をしているのかわからない。。
だから、顔をあげることは出来なかった。ただじっとアクセルラーを握りしめて、ただ立ちつくして。
一歩も進めない。一歩も退がれない。ただ立ちつくすことだけが、今のさくらに出来ることだった。


 ◆


古びたビルの一室。その重たい扉の前で竜也はただ足元にじっと目を落として立ちつくしていた。
鉄の扉の端から零れ落ちてきた彼女の声。
聞きたくなかった、知りたくなかった真実がそこにあった。

『私が!菜月とおぼろさんを殺したんですから!!』

目に映るのは、いつのまにかポケットから滑り落ちていた一枚のカード。さかさまになった戦車のカード。
ただそれだけが、身じろぎ一つ取れぬ竜也の目に映る世界のすべてだった。
268名無しより愛をこめて:2010/02/08(月) 21:23:26 ID:rW/MhxTN0
269さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:23:45 ID:TH5JFlG50
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。30分程度変身不能。
[装備]:アクセルラー、聖剣ズバーン、スコープショット(暁)ボウケンジャケット(さくら)@轟轟戦隊ボウケンジャー。
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。その為に仲間を探す。
第二行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識

【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。洗脳下での行動に罪悪感。動揺
[装備]:スコープショット(菜月)@轟轟戦隊ボウケンジャー、Vコマンダー@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:アクセルラー(要修理)、@轟轟戦隊ボウケンジャー、未確認支給品(暁確認済)、基本支給品(菜月)、竜也のペットボトル1本、
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
270さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI :2010/02/08(月) 21:25:11 ID:TH5JFlG50
【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:右腕切断 簡単な応急処置、消毒済み
[装備]:毒薬(効能?)
[道具]:タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック、首輪探知機
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:明石を油断できないが利用価値のある人物と判断。当面は提携の姿勢。
第二行動方針:信用をされていないことを確認。次の手を打つ?
※首輪の制限を知りました。
※センと同じ着衣の者は利用できると考えています。

【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。30分程度変身不能。動揺
[装備]:
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。ロンを倒す。
第一行動方針:これ以上の犠牲は絶対に起こさせない。
第二行動方針:出来れば殺し合いをしている者を止めたい。
※首輪の制限を知りました。 明石やさくらと情報交換を終えました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
※ブクラテスは信用できないと感じています。
※盗聴の可能性を認識
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識
271名無しより愛をこめて:2010/02/08(月) 21:26:54 ID:rW/MhxTN0
272代理:2010/02/08(月) 21:36:34 ID:rW/MhxTN0
721 名前: ◆Z5wk4/jklI 投稿日: 2010/02/08(月) 21:29:52 ID:???0
最後の最後でさるさんorz ご支援頂いた方ありがとうございました。


722 名前:さかさまの真実 ◆Z5wk4/jklI 投稿日: 2010/02/08(月) 21:31:35 ID:???0
【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。混乱により回路に負担が掛かっている状態。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:どうすればいいのかわからない
第一行動方針:眠ることにより、回路の負担を減らしたい

以上です。誤字脱字、矛盾、ツッコミ、感想などございましたらよろしくお願いします。
途中、ご支援いただいた方ありがとうございました。
273名無しより愛をこめて:2010/02/14(日) 23:46:34 ID:YZm5yVrI0
遅ればせながら、GJ!

もうマーダーはいないはずなのに、好転するどころかどんどん悪化していっているのが胃がきりきりして最高でした。
まったく良い未来が見えませんが、これからの展開を予測できる描写が今後の作品にどう生かされるのか非常に楽しみです。

それではこれより投下いたします。
274合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/14(日) 23:47:15 ID:YZm5yVrI0
 腕を組み、足を小刻みに鳴らす。
 先程からずっと、裕作はこの調子だ。
 それも仕方のないことだろうと、菜摘は裕作と同じく沈痛な面持ちで溜息を吐いた。
 菜摘は裕作からシオンたちの顛末を聞いた。
 ドモンとの合流。サラマンデスとの戦い。そして、説得のためにシオンは裕作と分かれたと。
 シオンならきっとドモンを説得できる。――そう言えるほど、裕作も菜摘も付き合いは深くない。
 結果、不安だけが二人を縛り付けていた。
 そんな重い空気に耐えられず、菜摘が口を開く。
「ねぇ、私たちも向かった方がいいんじゃないかしら?」
「……いや、俺たちが行くと、逆に刺激して説得が旨くいかないかも知れねぇ。特に俺は一度、ドモンと闘り合ってるからな。
 ここは大人しく、シオンの帰りを――」
 その時、裕作の言葉を遮るようにカツっと、何者かの足跡が聞こえた。
 用心深く耳を澄ませば、リノリウムの床を叩く足音は単独ではなく、幾人かで協奏曲を奏でている。
 噂をすれば影。シオンたちが戻ってきたのだろうかと希望を抱く一方で、襲撃者の可能性も視野に、二人は物陰に身を寄せ、息を潜める。
 程なくして、教室のドアが開いた。入ってきた男の姿を見て、菜摘はほっと胸を撫で下ろす。
「よぉ」
「壬琴!」
 壬琴を先頭に、ビビデビ、メレ、グレイがその場へと入ってくる。
 説得が成功したのだと喜ぶ菜摘。だが、それとは対照的に裕作は鋭い視線をグレイへと向けた。
「グレイ、その肩に背負っている奴は誰だ!」
 裕作には見覚えがある。ほんの数十分前に自分たちを苦しめた怪物、サラマンデスに違いない。
 突然の詰問にも、グレイは動じず淡々と応える。
「知らん。私はスタジアムに残されたこいつを拾ってきただけだ」
 グレイは肩からサラマンデスを下ろすと、無造作に床へと放り投げる。
「だが、裕作。お前の反応で大体の事情は呑み込めた。シオンとドモンを殺したのはこいつか?」
「な、何?」
「シオンとドモンを殺したのはこいつかと聞いている」
 その問いに裕作は耳を疑いたい気分だった。
 グレイがそんな質問する理由を察することが出来たからだ。
「まさか……」
275合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/14(日) 23:48:16 ID:YZm5yVrI0
「そうだ、シオンとドモンは死んだ。二人ともこのナイフで正面から刺されてな」
 グレイが取り出したのは赤い血がべっとりと付着したナイフ。
「ウワァァァァッァァァ」
 それを見た裕作は思わず、苦悶の声を上げた。頭を抱え、床へと突っ伏す。
「俺のせいだ。俺があの時、シオンに付いていてやれば」 
 炎が邪魔をしたとか、シオンに制止されたとかは言い訳にならない。
 殺し合いの場において、傷ついた仲間を放置してしまったこと。そこに裕作は激しい罪悪感を覚える。
「裕作、あなたのせいじゃない」
 状況を知る菜摘が慰めの声を掛ける。
 だが、グレイは関せず、もう一度、同じ質問を投げかける。
「シオンとドモンを殺したのはこいつか?」
「……たぶん……違う。シオンがドモンを説得するために俺と分かれたのはそいつと戦った後だ」
 苦境の中、声を絞り出す裕作。
 菜摘はグレイにこれ以上の詰問をやめるように懇願の眼差しを送る。
「………」
 グレイは無言のまま、踵を返すと、持っていたディパックを机へと置いた。
「私は人間の心が理解できない。お前達は自らの身を犠牲にしても他者を助けることがあれば、他者を犠牲にしても自らの保身を行うときもある。
 だから、ドモンがシオンを殺したとしても然して驚きはしない。
 ――だが、ドモンはシオンを殺していない。そうだな、仲代壬琴」
「ふん」
 笑みを浮かべ、壬琴が鼻で笑う。
「さあな、俺は意見を述べたまでだ。断言はしていない」
「私と違って、お前は人間というものを理解しているはずだ。当人に会ったのならなおさらな。
 単純な奴なら、ゲームの駒に利用することさえもわけはなかろう。
 ならば、お前なら断言できるはずだ。ドモンが本当にシオンを殺したかどうかを」
「はっ、人間の心が理解できない割りに随分と俺を理解してくれているようじゃねぇか」
「言ったはずだ。私はお前に似た奴を知っていると」
 グレイと壬琴の視線が交錯する。お互いに相手の価値を計るかのように。
 やがて、壬琴は口元を歪ませると、言葉を紡いだ。
276合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/14(日) 23:49:01 ID:YZm5yVrI0
「そうだな。あくまで俺の見立てだが、シオンを殺したのも、ドモンを殺したのも別の誰かだろ。
 あんなヘタレが、躊躇いもなく、仲間や自分自身を殺せるわけねぇ。
 殺傷痕や自殺方法を見ても矛盾があり過ぎる。十中八九、他の誰かの仕業だろうよ」
「ちょっと、アンタ、あの時はドモンがシオンを殺して、自害したって」
 すかさず抗議の声を上げるメレ。だが、壬琴はどこ吹く風。
「俺はよくある話の一例として言っただけだぜ。だから、ゲームの駒に利用できる単純な奴って言われるんだぜ」
「ちょっ、それってワタシのことだったの!!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐメレを放って、壬琴はグレイに近づく。
「やるじゃないか。期待外れと思っていたが、中々楽しめそうだ」
 壬琴は心からの称賛を与える。
 壬琴からすれば、ようやく自分の価値観で話せる相手。途中、散々に調子を狂わされただけに喜びも一入だ。
 しばらくは楽しみそうだとほくそ笑む壬琴。だが、グレイは壬琴を一瞥すると、外へと向かって歩き出した。
「おい、どこに行くつもりだ」
「知れたこと、私は私の目的を果たす。医者は用意した。次は患者を連れてくる」
「患者?ああ、次元虫に寄生された奴か。なんだ、いないのに俺を呼んだのか」
「次元獣の居所は検討がつく。だが、お前は放っておくとどこに行くかわからん」
「まあ、そうだが……一人で行くつもりか?」
「そうよ、グレイ。私たちも」
 同行を申し入れる菜摘。だが、グレイは首を振った。
「お前たちには首輪の解析とそいつの尋問という役目がある」
 グレイはサラマンデスを指す。
「そいつの制限はおよそ1時間強。それまでに仲間に引き込むなり、始末するなり、判断を下す必要がある。それは壬琴、メレ、お前たちが適任だろう」
「おい、俺が約束したのは次元虫を取り除くことだぜ」
「ならば、何もせずとも構わん。待っているだけでいい」
「へっ」
 どことなく納得しない顔ながらも、口を噤む壬琴。それに呼応するかのように菜摘たちも言葉を止めた。
 グレイは今度こそ、止まらずにその場所から去っていった。
 
277合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/14(日) 23:51:55 ID:YZm5yVrI0
 次元虫に寄生された男――並樹瞬のいる場所に検討はついている。
 その言葉に嘘はない。
 彼のいる場所はおそらくH6エリア付近のどこか。更に云うと、約2mの氷を隠すことができるどこかだ。
 ネジブルーがあれを持ったまま移動し続けるのは考えづらい。
 変身した状態ならまだしも、制限がかかった状態で持ったまま移動し続けるのは骨だ。
 更にもし戦闘ともなれば、動けない氷を守りながら戦うというリスクを負うことになる。
 ネジブルーが並樹瞬に執着しているならば、移動は最小限に留め、どこか眼につかないところに隠すのが打倒だろう。
 そこで襲撃者を恐れて守りに徹するか、容易には見つからないと攻めに転じるかは、ネジブルー次第だが、できればグレイはネジブルーがいることを願っていた。
(奴はドギーの仇。そして、戦いを終わらせようとするなら、遅かれ早かれ、奴との潰しあいは免れん)
 以前はチームの意見を尊重し、ネジブルーを活かした。だが、今度は自分一人。
 活かすか、殺すかの判断はグレイ次第だ。そして、グレイの判決は既に決している。
 グレイが一人で動いた理由のひとつがそれだ。
(海岸の端に赤い煉瓦の倉庫。怪しいのはあそこだ)
 グレイは壬琴を探し、そして、連れて帰る道すがら、スコープを使い、怪しい場所の探索は既に終えていた。
 知る由もないが、グレイの予想通り、並樹瞬はそこにいた。幸か不幸か、ネジブルーはいないが、後はそこに向かうだけでグレイは目的を達することができた。
 だが、グレイの向く方向は若干倉庫から外れていた。
「………」
 グレイは"それ"を何と形容すればいいのかわからない。
 それは人間でいうところの第六感や虫の知らせのようなものだったのだが、常に冷静に状況を分析し、その状況に応じて最適な行動をとるロボットのグレイにとっては未知の感覚だった。
 ただ何かに揺り動かされるようにグレイは、最適な道を外れ、別の道を歩き始めた。



「それにしても、まさか、こんなところで合流できるとは思っていなかった。これは幸先いいな」
 映士は傍ら男の背中を叩き、バンと小気味よい音を響かせる。
 叩かれた男はハハハッと愛想笑いを浮かべ、どことなく反応に困った様を見せる。
278合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/14(日) 23:55:09 ID:YZm5yVrI0
 そんな男と映士をヒカルは複雑そうな顔で見遣りつつ、無言のまま、彼らの後ろを歩く。
 この男とはシュリケンジャーのことである。
 だが、勿論、映士とヒカルは男をシュリケンジャーと認識して話しているわけではない。
 今のシュリケンジャーの顔は浅見竜也。名もそのまま名乗っていた。
(ふぅ〜、失敗したね〜)
 シュリケンジャーが彼らと行動を共にすることになってのは至極、単純な理由だった。
 単純なだけに、シュリケンジャーは自分の失敗に嫌悪感に似た後悔の念を覚える。
 彼の手が引く炎の騎馬の排気音、それに惹かれ、映士とヒカルはシュリケンジャーを見つけた。
 あとは接触を求める彼らに応じ、この有様だ。
(ロボットに用心するあまり、その後の注意が疎かになるなんて、我ながら笑えるね、HAHA)
 気分は中々にブルーだが、結果だけ見れば、そう悪いものでもない。
 映士とヒカル。話を聞けば、このふたりは殺し合いに乗っておらず、ドモンを探しつつ、他の仲間達と合流するために移動の最中という。
(ドモンを説得しようという彼らにとっては浅見竜也は渡りに船だったわけだ。そして、ドモンはもうこの世にはいない)
 竜也の知り合いはここで出会った者を除けば、もういないはず。
 ようするに本人にさえ出会わなければ、ボロを出す心配は極めて低い。利用するにしても、隙を突くにしても、この組み合わせは申し分ない。
 ひとつ気になることといえば、ヒカルの様子だ。
 出会ってから今まで、口を開き、情報を話したのはほとんどが映士だ。ヒカルは何か思いつめたような表情で一切しゃべろうとしない。
(まあ、こんな状況じゃあ仕方ないけど、ちょっと気になる……かな?)
 一向の歩みがピタリと止まる。
 並び立つ建物のひとつから降下し、彼らの眼前に突如として現れる黒影。
 それは強烈な威圧感を放ち、赤い瞳でこちらをじっと見詰めていた。
「なんだ、あいつは!?」
 突然、出現した相手に疑問と驚愕の声を上げる映士。ヒカルも緊張に身体を固くする。
 しかし、シュリケンジャーはその姿を確認すると、小さく舌打ちを漏らした。
(あれはスタジアムをうろついていたロボットじゃないか。なんで今更こいつがこんなところに?これじゃあ、わざわざ待った意味がない)
279合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/14(日) 23:56:02 ID:YZm5yVrI0
 立て続けのアクシデントに憤慨しながらも、シュリケンジャーはこれからの行動について、冷静に思考を巡らせる。
 映士とヒカルの反応を見る限り、グレイとの面識はないと考えてもいいだろう。そうなると逆もしかり。
 ならば、まずは相手の反応を見て、行動を決めるのが最善だろう。
「………」
「………」
「………」
「………おい!」
 場にいる全員が押し黙る中、最初に口を開いたのは映士だった。
「まあ、こんな状況だ。お互いどうしたって警戒しちまう。
 だが、はっきりさせておくぜ、俺様は殺し合いに乗っちゃいねぇ。今までもこれからもだ。
 ここにいるヒカルや竜也も同じだ。ロンの野郎の思い通りになるつもりはねぇ。
 お前はどっちだ。俺様たちの敵か?味方か?」
 映士は一切の小細工なしで自分の思いをぶつける。
「お前が浅見竜也か?」
 しかし、グレイの関心はただ一人に向いていた。
 紅い瞳が竜也に変装したシュリケンジャーを射抜く。
(こいつ、何か気付いているのか?)
 シュリケンジャーとしては気が気でない。その視線がシュリケンジャーに向けられているものなのか、竜也に向けられているものなのか。
 シュリケンジャーの握り手に汗がにじんだ。投げかけられた質問の意味を計りつつ、シュリケンジャーは言葉を返す。
「ああ、そうだが、俺がどうかしたのか」
「お前はこのエリアに何時からいた?」
(なるほど、そういうことか)
 その質問の意図は数時間前からこのエリアにいる者なら理解できる。
 グレイが知りたいのは竜也がドモンの呼び声を聞いたかどうか。
 ドモンの叫びはシオンと、そして、竜也を呼んでいた。
(ふぅー、さて、どう答えるべきか)
 正直に答えるなら、シュリケンジャーはドモンの叫びを聞いている。それどころか、ドモンとシオンを殺した張本人だ。
 しかし、竜也の姿で正直に答えるのは些か問題がある。
 竜也の姿で聞いたと言うのはドモンの元に向かったと答えるのと同義だ。
 だが、映士やヒカルにそのことは伝えていない。ドモンの元に向かいながら、何もなかったというのはあり得ない。
(ドモンとシオンを殺したのを竜也のせいにして逃げるのも手だけど、こいつはともかく、映士やヒカルは彼を殺そうとはしないだろうし、効果は薄いな)
280合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/14(日) 23:56:46 ID:YZm5yVrI0
 グレイにはスルーされたが、映士の宣言は彼の人と生りを知るには充分だった。
(ここは誤魔化す方をとるか)
「厳密にはわからないけど、ほんの30分ぐらい前かな。そんなに時間は経ってないと思うよ」
「………それならば、お前に見せたいものがある」
 グレイは踵を返すと、シュリケンジャーに付いて来るように促す。
(やっぱりそう来るか)
 その行動は予想通り。グレイはおそらくシオンとドモンの死体の前に竜也を連れて行くつもりだろう。
 仲間の死体を看取らせる。それ自体は何らおかしい行動ではない。
(とりあえず一難は去ったのかな?――まあ、死体を前に泣く準備だけはしておこうか)
 グレイの後を追うシュリケンジャー。訝しげな顔をしながらも映士たちもその後を追った。



 グレイの誘導した先は予想通り、崩壊したスタジアムだった。
 ボロボロになったスタジアムに映士とヒカルは驚きを隠せない。シュリケンジャーもそれに倣い、驚愕の表情を形作る。
「おい、一体ここで何があったんだ?」
「見ての通り、戦いだ」
「おっ、ようやく答えやがったか。じゃあ、これはお前がやったのか?」
「違う。私がここに辿り着いたときにはもう全てが終わっていた。だが、この戦いに関わったのは私の仲間だ」
 グレイは焼け野原になったグラウンドを突っ切り、ひとつの通路に向かう。
「こっちだ」
 グレイが進む道。シュリケンジャーには見覚えのある場所だ。
(どうやら決まりみたいだね)
「おい、こりゃあ」
「酷いな」
 先行していた映士たちから声が上がる。
 シュリケンジャーも言葉を発しようと口を開け――
「っ!」
 そのまま固まった。
 そこには、そこで何かあったと思わしき赤黒い血液痕こそあるものの、その血を流したと思わしき人の姿はなかった。
281合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:00:01 ID:YZm5yVrI0
「どうした?浅見竜也」
「い、いやぁ、びっくりしてね。こんなに大量の血の痕があるなんて」
「驚いたのはあるものがないからではないのか?」
 初めて対峙したときと同じようにグレイの視線がシュリケンジャーを射抜いた。
「確かにここにはシオンとドモンの死体があった。それは首輪共々消させてもらったが、何故、お前はここにあったことを知っている」
「酷い言いがかりだ。さっきも言った通り、大量の血に驚いただけだ。ここに何があったかなんて――」
 そこまで言って、シュリケンジャーは自分の失敗に気付く。
 グレイもその解答で疑惑を確信に変えたのか、明らかな敵意を向けていた。
 シュリケンジャーはグレイの言葉の後の部分に反応し、言葉にした。
 だが、もし本当に知らないのなら、前の部分、シオンとドモンの死体という部分に反応しなければならなかった。
 言葉の端々から全容は把握できなくても危機は察知したのだろう。映士たちもシュリケンジャーから距離を取り始める。
「シオンは真正面から刺されていた。警戒している相手からの攻撃とは思えない。シオンを殺したのは顔見知り。
 だが、ドモンではない。ならば、シオンが信頼しているもうひとり、竜也としか思えない」
(なるほど、こいつは竜也を疑っていたのか。それならミーに疑惑の視線を向けていたのも肯ける。なら――)
「そう、その通りだ。俺を相手に油断していたシオンを殺し、一緒にいたドモンも殺した。全て俺がやったんだ」
 グレイは自分の正体を見破ったわけではない。
 それならば竜也に全ての罪を擦り付けて、一時撤退し、後で適当な誰かに変装して、また合流すればいい。
 しかし、それが甘い考えであったことをシュリケンジャーは思い知る。
「シオンは竜也を信じていた」
「ああ、そうさ。だが、こんな場所で例え人見知りだろうと、人を信じるなんて甘い考えだね」
「その通りだ。だから、お前のような偽者にやられた」
「!」
「状況から考えれば、シオンを殺したのはドモンか竜也だと私は推理した。
 しかし、ドモンも竜也もシオンが信じた人物だ。シオンが信じた彼らが、シオンを殺すとは思えない。
 その矛盾がお前に会ったおかげで解決した。お前は人に化けることができる。そうだな?」
「ふふっ、ははっ、HAHAHA!」
282合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:01:27 ID:UEcfJdFd0
 シュリケンジャーの笑いが通路にこだまする。
(なるほど、これは最初からミーのミステイクだったわけだ。
 おそらくもっとも正しい判断は彼と会う前に竜也以外の顔になっておくこと。
 こうなってしまってはもうどうしようもない)
 彼の脳裏にふと浮かんだのは崖の上で追い詰められる犯人。2時間ドラマでありがちな光景だ。
 それが今の自分の状況にとてもよく似ていて、愉快な気持ちになった。
(まあ、でも精々悪あがきはさせてもらおうか)
「オーライ、それはノーコメントってことにしておくよ。自分の推理が正しいか否か、精々、疑心暗鬼にかられるがいいさ」
 シュリケンジャーは懐からゴウライチェンジャーを取り出すとそれ左手首に着ける。
 易々と逃げられるとは思っていない。シュリケンジャーが逃げようとすれば、グレイもヒカルも映士も彼を止めようとするだろう。
 ならば、取るべき選択肢はひとつ。力ずくで切り開く。
(使わせてもらうよ、一鍬)
「ゴウライ!シノビチェンジ!!」
 ゴウライチェンジャーのボタンを押す。すると、たちまちその姿は蒼いスーツへと包まれた。
「蒼天の霹靂、クワガライジャー!」
 しっかりと口上を決め、3人を挑発するシュリケンジャー。
「戦うつもりか?」
「逃がしてくれるんなら、そのつもりはないけどね。でも、そうはいかないんだろ?」
 シュリケンジャーはディパックからクエイクハンマーを取り出し構える。
(先手必勝!)
 グレイへ向けて、一歩目を踏み出すと同時に、それは降り注いだ。
「ぐわぁはっ!?」
 シュリケンジャーの身体を貫く、無数の黄金の矢。
 それは前方の3人しか目に入っていなかったシュリケンジャーにとって、完全なる不意討ちだった。
「くっ、馬鹿な。一体誰が」
「俺だよ」
 コンクリートの床を踏みしめ、ゆっくりと近づく純白の戦士。
 不意討ちという手段をとったというのに一切の呵責を持たずに威風堂々とその姿を顕にする。
「よぉ、お前たちにはこの姿は初めてか」
 その声にはグレイをはじめ、ヒカルも、そして、映士も聞き覚えがあった。
283合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:02:49 ID:YZm5yVrI0
「お前、壬琴か!」
「ああ、そうだ」
 爆竜トップゲイラーを模した白いアバレスーツの戦士。
 その場に現れたのは仲代壬琴が変身したアバレキラーだった。
「貴様、なぜここに?」
「話は後にしてもらうぜ。とりあえず、こいつは俺に任せてもらう」
 グレイへの問いにぞんざいに応えると、アバレキラーは大地を駆け、シュリケンジャーの首を掴んだ。
 そして、そのまま一直線に外へと向かって翔けて行く。
「くっ、放せ」
「いいぜ、ほら」
 あっさりと手を放すアバレキラー。
 だが、いつの間にやら、アバレキラーはかなりの高度まで空へと昇っていた。
 そこで手を放されたのだからシュリケンジャーはたまらない。
「うぉぉっ」
 真っ逆さまに落ちていき、勢いよく地面に叩きつけられる。
 変身していなければ、即死してもおかしくない衝撃がシュリケンジャーの全身を駆け巡った。
「ふっ、どうした、もう終わりか?」
 息も絶え絶えながら、立ち上がるシュリケンジャー。
「ふ、不意討ちばかりのくせに……よく言うね」
「お前に言われたくはないな。シオンやドモンを殺したときも不意討ちだったんだろ?その姿の本来の持ち主もそうなのか」
「一鍬を知っているのかい」
「そんな名前なのか。生憎と変身する前の名前は知らない。ただ、以前、そいつとカブトライジャーとかいう奴に痛い目にあわされてな。
 まあ、そのリベンジも兼ねてるってわけだ」
 アバレキラーが言っているのは、まだアバレキラーがエヴォリアンにいた頃。
 アバレンジャーと組んだ忍者達と戦った時の話だ。
「だが、あいつらと違って、お前は大したことはなさそうだ。ここいらでチェックメイトといこうか」
 ウイングペンタクトを伸ばし、シュリケンジャーへと迫る。
 満足に構えすら取れないシュリケンジャー。だが、アバレキラーは一切の容赦なく、ウイングペンタクトを振り下ろした。
「死ね」
284合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:05:02 ID:YZm5yVrI0
 ウイングペンタクトがクワガライジャーのスーツを切り裂き、その下の肉を容赦なく抉ろうする。
 だが、不思議なことにいくら下に進もうとも、肉の感触は一向にアバレキラーの腕に伝わってこない。
 それもそのはず、ウイングペンタクトが切り裂いたそのスーツの下には何もなかった。
「超忍法・空駆け!」
 抜け身の術で攻撃を逃れ、空からアバレキラーに迫るシュリケンジャー。
 クエイクハンマーを振りかぶり、その一撃に渾身の力を込める。
「超忍法・869号!!!」
「……残念だがそれも体験済みだ!」
 アバレキラーは振り下ろした体勢のままに、ウイングペンタクトの鵐目の部分をシュリケンジャーに向けた。爆竜トップゲイラーの頭を模したその塚から閃光が走る。
「がはっ」
 閃光を浴び、墜落するシュリケンジャー。だが、今度はそれだけでは済まされない。
「ふっ!はっ!たっ!」
 シュリケンジャーが落ちるより早く、アバレキラーは空中を縦横無尽に移動し、シュリケンジャーの身体をなます切りにしていく。
 そして、シュリケンジャーが地面にその身を横たわらせたときには、彼の姿は変身前のものに戻っていた。



「壬琴、なぜ貴様がここにいる」
 グレイは壬琴にもう一度、同じ問いをぶつける。
「お前との約束はお前と一緒に行動し、次元虫を取り除くことに協力することだろう。俺は約束を守っただけだぜ」
「ふん」
 壬琴は暴れたかっただけなのだろうと、グレイは察したが、そのことにどうこう言うつもりはない。
 屁理屈とはいえ、壬琴は嘘を言っておらず、助かったのは事実だ。
「それでイマイチ事情が飲み込めねぇが、まあ、それはおいおい説明してもらうとして、こいつはどうするつもりなんだ?」
 変身が解け、倒れ伏すシュリケンジャー。その顔は彼らが見ていた竜也の顔ではなく、その場にいる誰もが見覚えのないものだった。
「壬琴、息の根を止めていないということは、お前はこいつを生かすつもりか」
「まあ、それがここでの俺のルールだからな。それにどうも優勝派はそんなにいないようだ。なら、少しは生かしておかないとな」
 その理屈はグレイにはわからなくもないが、今この場においてはなんとも厄介な考えだとひとりごちる。
「お前たちはどう思う」
285合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:07:28 ID:UEcfJdFd0
 グレイは傍らの映士たちに声をかける。映士からしれみれば質問に質問を返された形だが、その問いに答えを返した。
「俺様は反対だ。事情を聞いてからでも遅くはねぇだろ」
「僕も映士の意見に賛同しておく」
「3対1か……」
 なんとも甘い。それがグレイの素直な感想だった。面子こそ違うが、ネジブルーの時は生かしたがために2人もの死者が出た。
 グレイは腕に備えられたハンドグレイザーをシュリケンジャーに向ける。
 3人が息を呑んだのがわかった。
 だが、グレイは引き金を引かなかった。
「どうした、やらないのか」
 壬琴が嘲り混じりに問いかける。
「私はこれから並樹瞬を探しに行く。そのためには力を温存するべきだ。――仲代壬琴。私に協力するなら、お前はそいつらと一緒に行け。私が連れてくる間に全滅でもされては敵わん」
 グレイは壬琴たちに背を向ける。本音を言えば、即刻撃ち殺したいところだが、壬琴がルールに従っているように、グレイもグレイなりのルールがある。
「それともうひとつ。遊ぶのは結構だが、遊び過ぎて本来の目的を見失わないことだ」
「ああ、一応覚えておくぜ」
 グレイは今度こそ、並樹瞬がいる場所への道を一直線に進む。
286合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:08:11 ID:UEcfJdFd0
【名前】グレイ@鳥人戦隊ジェットマン
[時間軸]:49話(マリア死亡後)
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:健康。
[装備]:自らのパーツ全て
[道具]:遠距離射撃用ライフル(残弾数3発)
[思考]
基本行動方針:戦いを終わらせるためシオンと共闘
第一行動方針:自分の納得のいく形でシオンに借りを返す。
第二行動方針:並樹瞬を探し、壬琴の元まで連れ帰る。
[備考]
2時間の制限と時間軸のずれを知っています。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。
回収した支給品(クロノチェンジャー(シオン)、鬼の石@星獣戦隊ギンガマン、操獣刀@獣拳戦隊ゲキレンジャー、
 闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー、拡声器、ディパック+基本支給品一式×3(グレイ、サーガイン、シオン))は菜摘たちの元に置いています。

【メレ@獣拳戦隊ゲキレンジャー】
[時間軸]:修行その46 ロンにさらわれた直後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:鳩尾に打撲。左肩に深い刺し傷と掠り傷。両足に軽めの裂傷。理由不明のイライラ。
[装備]:釵一本@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:ライフバード@救急戦隊ゴーゴーファイブ、芋羊羹、フェンダーソード@激走戦隊カーレンジャー
 火竜の鱗@轟轟戦隊ボウケンジャー、他一品、支給品一式×3(恭介、ドギー、裕作)
基本行動方針:理央様との合流。理央様に害を成す者は始末する。
第一行動方針:怪物(サラマンデス)から情報を聞き出す。
第二行動方針:青と白の鎧を身に纏った戦士(シグナルマン)とガイに復讐する。ガイの仲間(蒼太とおぼろ)を撃退する。
[備考]
リンリンシーの為、出血はありません。
2時間の制限と時間軸のずれの情報を得ました。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。
287合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:09:39 ID:UEcfJdFd0
【名前】仲代壬琴@爆竜戦隊アバレンジャー
[時間軸]:ファイナルアバレゲーム 死亡後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:腹部、胸部、打撃によりダメージ(応急処置済)。2時間アバレキラーへの変身不能。
[装備]:ダイノマインダー、ダブルゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、スコープショット
[道具]:ダイノコマンダー@爆竜戦隊アバレンジャー、キーボーン@特捜戦隊デカレンジャー、両方表のコイン、基本支給品一式
[思考]
基本方針:コイン占いにより殺し合いには乗らないと決める。ロンを倒し、このゲームを破壊する。
第一行動方針:次元虫の解体手術を行うまで、グレイたちと行動。
第二行動方針:シュリケンジャーに興味。
第三行動方針:不特定多数の参加者との命を懸けたサバイバルゲームを開始する。
第四行動方針:首輪の解析。
備考:ダイノハープがないため、アバレブラックへの変身はできません。
※ビビデビが知る情報のほとんどを得ました。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。首輪によって設けられた制限時間の情報も得ています。
※ドモンから情報を得ました。深雪のメモを読みました。
※禁止エリアでは首輪を外しても生存可能だと思っています。
※小津勇の食料、ペットボトルは長い年月を得たような状態です。
※クロノチェンジャーの変身方法を知っています。
288合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:10:34 ID:UEcfJdFd0
【名前】童鬼ドロップ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:26話、サラマンデス覚醒前
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:胸に大ダメージ。気絶中。サラマンデスに成長完了。1時間能力発揮不可能。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:とりあえず優勝狙い
第一行動方針:シュリケンジャーと協力して、数減らし。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・禁止エリアに入った時の首輪の効果を確かめました。

【名前】ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:星獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:ボロボロ。命には別状はない。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンに協力し、ネジレジアの復興。
第一行動方針:チャンスが来るまでおとなしくしておく。
第二行動方針:メレを誑かす。
289合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:11:46 ID:UEcfJdFd0
【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:健康。現在は素顔?です。2時間クワガライジャー、1時間シュリケンジャーへの変身不可。
[装備]:スワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャー
[道具]:なし
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る
第一行動方針:扇動者となって、なるべく正面から戦わずに人数を減らす。
第二行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。 それがだめならアレの消滅を願う。
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・禁止エリアに入った時の首輪の効果を確かめました。
・持っていた支給品一式(シュリケンボール、ゴウライチェンジャー(クワガ)@忍風戦隊ハリケンジャー、炎の騎馬@忍風戦隊ハリケンジャー、
 SPD隊員服(セン)、クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、何かの鍵、支給品一式×4(水なし) )は映士たちに回収されました。

【名前】ヒカル@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage35後
[現在地]:H-5海岸 1日目 日中
[状態]:左肩に銃創。胸に刺傷。共に応急処置済み。
[装備]:グリップフォン、シルバーマージフォン
[道具]:基本支給品一式×2(小津深雪、ヒカル)月間宇宙ランド(付録なし)@激走戦隊カーレンジャー
[思考]
基本方針:時間を戻し、歴史の修正を行う。(情報を映士、深雪へ伝える。世界の崩壊を止めるための死に場所は広間)
第一行動方針:歴史の修正を行うための準備をする(情報集め)
第二行動方針:深雪の首輪を奪おうとした裕作に不信感。
第三行動方針:冷静すぎる明石に微妙な気持ちを抱きました。
備考:サーガイン、裕作と情報交換を行いました。また、映士から情報を得ました。
 マジシャインの装甲(胸部)にひび割れ。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。
290合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:12:55 ID:UEcfJdFd0
【名前】高丘映士@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:H-5海岸 1日目 日中
[状態]:何度も全力疾走をしたことによる極度の疲労。
[装備]:ゴーゴーチェンジャー
[道具]:ボウケンチップ、知恵の実、不明(確認済) 、基本支給品一式(映士、小梅)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:仲代壬琴から今までの情報を得る。
第二行動方針:仲間たちと合流。
第三行動方針:ガイと決着を着ける。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。 変身制限に気が付きました。

【名前】早川裕作@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第34話後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:右肩、腹部、左足を負傷。その他も体中に軽度の負傷。シオンの死に罪悪感。1時間変身不能。
[装備]:ケイタイザー
[道具]:なし
[思考]
第一行動方針:瞬を元に戻す。
第二行動方針:菜摘と首輪を解除する。
[備考]
2時間の制限に気づきました。ヒカルと情報交換を行いました。メガシルバーの変身制限時間は2分30秒のままです。
ヒカルがドモンを殺し合いを止めるように説得していると思っています。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。
裕作の支給品はメレが預かっています。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。
291合流―そして…… ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 00:13:52 ID:UEcfJdFd0
【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:G-6都市 1日目 午後
[状態]:軽い打撲、水中にいたため、そして全力疾走したので身体はかなり疲労しています。
[装備]:アクセルブレス 、クロノチェンジャー(タイムピンク)@未来戦隊タイムレンジャー、
[道具]:首輪(ドギー、深雪、アンキロ)、サーガインの死体(首輪付き)、基本支給品一式×2(仲代壬琴、小津勇)深雪の残したメモ。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。 ロンに負けない。
第一行動方針:首輪を解析する。
第二行動方針:H−4で映士と合流出来なければ3回目放送までにJ−6公園で待つ。
第三行動方針:仲間(シグナルマン)を探す。
備考:
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。首輪によって設けられた制限時間の情報も得ています。
※壬琴から情報を得ました。深雪のメモを読みました。
※禁止エリアでは首輪を外しても生存可能だと思っています。
※小津勇の食料、ペットボトルは長い年月を得たような状態なのを見ました。
※クロノチェンジャーの変身方法を知っています。
※変身制限に気が付きました。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと裕作から掻い摘んだ説明は受けました。
292 ◆i1BeVxv./w :2010/02/15(月) 01:04:09 ID:UEcfJdFd0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点などの指摘事項、ご感想などあれば、よろしくお願いします。
293名無しより愛をこめて:2010/02/15(月) 14:33:52 ID:gw8yM2fV0
投下GJです!面白かった!!
シュリケンジャー落ちる!
扇動マーダーとして、不信の種を撒き散らしていた彼も、グレイと仲代先生相手では流石に分が悪かったか。
彼を生かした二人の選択が吉と出るか凶と出るか、今後の展開が気になってワクワクします。
冷静にシュリケンジャーを追い詰めていくグレイ、そして容赦のない仲代先生に痺れました。

294名無しより愛をこめて:2010/02/20(土) 03:12:01 ID:6cOCF4kUO
面白かったです!
そしてまとめ更新いつもありがとうございます。
295名無しより愛をこめて:2010/02/20(土) 22:16:01 ID:SgoBFT9CO
まとめ更新ありがとうございました!
いつもお疲れ様です!
296名無しより愛をこめて:2010/02/25(木) 16:07:24 ID:VPxWmSt10
297名無しより愛をこめて:2010/02/27(土) 21:20:10 ID:vyJ9WpOm0
竜也やチーフのチーム人気だなー
298名無しより愛をこめて:2010/02/27(土) 22:30:21 ID:vyJ9WpOm0
いつの間にか予約きてた
299 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:34:24 ID:7P4B86DL0
ただいまより投下いたします。
300Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:35:10 ID:7P4B86DL0
 ブドーを目指し歩む者とブドーの元から歩む者。
 その二組が出会ったのはある意味必然と言えた。



 D7エリア周辺の探索を空振りで終え、センたちはブドーとの待ち合わせ場所を目指し、砂漠を進んでいた。
 日が高い内の砂漠横断は中々に骨が折れる。
 照りつける太陽が、一面に広がる砂の鏡に反射し、天と地からその身を焼いていく。
 その劣悪な環境に、シグナルマンは息を乱し、センの歩みは鈍くなり、理央でさえも額に汗を滲ませていた。
「これは堪らんな」
「ちょっと厳しいですね。ブドーはここで体力が消耗することを見越して、場所をE9エリアに指定したんでしょうか?」
「さあな。だが、この程度で結果が変わることはない」
 その言葉に嘘はなかった。
 理央の中で滞留する臨気は苦境な環境になればなるほど膨れ上がり、爆発する瞬間を今か今かと待ち構えていた。
「セン、手加減はするつもりだ。アイツとの実力差ならば、それは問題ではない。
 だが、勝負自体は真剣にやる。その結果がどうなるかは保証しない」
「その時は俺が止めます」
 刑事として、ジャッジが下されていない人物のデリートを見逃すわけにはいかない。
 それが例え殺し合いの場であろうとも。
「本官も協力するぞ。任せてくれ。ハッハッハッ」
 自信満々に胸を叩くシグナルマン。空元気だと分かっていたが、その高笑いがまるで背中を叩いてくれているようで勇気が沸いてくる。
「ハッハッハッ………んんっ?」
「どうしました?」
「いや、なんか足音が聞こえたような」
 最初に異変に気付いたのはシグナルマンだった。
 能力の制限がかかるこの場において、地力の差が出た結果とでも言うべきか。
301Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:36:00 ID:7P4B86DL0
「おおっ、やはり聞こえるぞ」
 シグナルマンは音が聞こえる方へと注意を向ける。センと理央も同じ方向へと視線を向けた。
 そのとき、まるで彼の者の到来を告げるかのように一陣の風が吹いた。
 それは砂塵を巻き上げ、彼らの視界を妨げる。
「くぅ〜、何も見えないぞ」
 激しい砂嵐から身を守るため、三人が三人共、眼を瞑り、両腕で顔を覆う。
 そんな中、理央はその隙間から影を見た。
「……誰か来る」
 砂嵐のベールに包まれたその影は人型こそしていたものの、頭部と思わしき箇所からは角を生やし、非常に大きな風体をしていた。
「ブ、ブ、ブ、ブドーか?」
「いや、違う。だが、"怪人"であることは確かだ」
 やがて、凪ぎ、その姿がはっきりと両目で確認できるようになったとき、両者の距離は5mにも満たない距離まで接近を果たしていた。
 怪人の血のように赤い瞳と、理央たちの視線が交錯する。
 先に口を開いたのは怪人――ジルフィーザだった。
「貴様ら、どこへ行くつもりだ。この先には何もないはずだが」
 勿論、ジルフィーザは理央たちが向かう先に誰がいるのか知っている。
 関わらず敢えてその問いを投げかけるのは、理央たちがブドーの待ち受ける者たちか確かめるためだ。
「………」
 理央は視線でセンに判断を仰いだ。
 センもその合図に頷き、思案する。目の前の怪物がどんな意図を持って、質問を投げかけているのか。
 それを読みきり、言質をとることができれば、交渉事はそれだけで有利になる。
(ここは慎重に話を)
 が、
「本官たちはその先でブドーという男と待ち合わせをしているのだ!
 約束の時間までまだ少しある。誰もいなかったというなら、まだ到着していないのだろう」
「………」
302Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:36:42 ID:7P4B86DL0
「シグナルマンさん……」
 センの思惑など露知らず、真正直に応えるシグナルマン。
 流石のセンもこれには苦笑いを浮かべる。
 それはさておき。
「コホン。……シグナルマンさんが言った通り、俺達はブドーとの待ち合わせに向かっています。
 俺は江成仙一、センって呼ばれています。こちらは理央さん。そして、そちらがシグナルマンさんです」
「シグナルマン・ポリス・コバーンだ。よろしく」
 握手を求め、手を差し出すシグナルマン。
 だが、ジルフィーザはそれに応えず、低い声でジルフィーザという自分の名前を名乗るだけに留める。
 行き場をなくした手をしょんぼりとした眼で見詰める。
(まあ、それが普通だよね)
 幾人もの死者が出ているこんな状況で初対面の人間とフレンドリーに話すことなど有り得ない話だ。
 むしろシグナルマンの方が異常とも云えなくもない。
(でも、シグナルマンさんみたいな人が残っているのはなんだかホッとするけどね)
「それでジルフィーザさんは一体、こんなところで何を」
「弟の成長の手助けをしていた」
「弟?」
「そうだ。我が弟は魂のみの存在として、この場に参加していた。その姿のままでは弟は満足な力を持たぬ。
 だが、ロンの策略か、成長するための繭がオアシスに隠されておったのだ」
「なるほど、それでジルフィーザさんはここに。で、弟さんは」
「理由あって離れることになったために探しているところだ。赤い龍の姿をした男を見なかったか?」
 センは首を振り、続いて、理央とシグナルマンもそれに続く。
「そうか」
 ジルフィーザも特に期待していなかったためか、落胆した様子はない。
 センはそのやり取りの中で考えていた。
 どうやら、ジルフィーザは戦うつもりはないようだ。弟を探しているというのもおそらく真実だろう。
 そして、ロンには敵意を持っている。
 ならば、互いに別々の目的を持つ今は無理でも、後に共闘するのは可能かも知れない。
303Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:37:52 ID:7P4B86DL0
(あと、もうひとつ。彼が殺し合いに乗っていない確証があれば……)
 そこでふと、視線がジルフィーザの持つディパックに移った。
(あれ…は……?)
 その瞬間、センの脳裏で強烈なフラッシュバックが起こる。
 一見、全て同じように見えるディパック。だが、そのディパックにセンは確かな既視感を覚えた。
 そして、それと同時に傷を負った左肘が疼きを返す。
「ジルフィーザさん」
「なんだ」
「あなたが持っているディパック、見せてもらってもいいですか」
 しばし、センの意図が分からず、言葉に詰まるジルフィーザ。
 だが、特に渋るものでもないと、自らのディパックをセンに渡す。
「……やっぱり」
 ディパックに入っていたサイコマッシュとライフル銃、どちらも見覚えのあるモノだ。
 サイコマッシュは元々センの支給品。そして、センはそのライフル銃を使っていた参加者を知っている。
(これはあの二人組が持っていたディパックだ)
 黒のゴスロリファッションに身を包んだ二人組、ナイとメア。
 彼女らのどちらかと思わしき死体は確認したが、その死体はディパックを持っていなかった。
 生き残った片方が持って逃げたか、それとも彼女を殺した何者かが奪ったかのどちらかと思っていたが、そのディパックが今、センの眼の前にある。
(そうすると、あの二人組みを殺したのはジルフィーザなのか?確かに鋭利な刃物も持っているようだけど)
 ジルフィーザの手には鋭い刃がついた杖。あからさまな血液こそ付いていないが、それを奮えば、首を落とすことなど容易いだろう。
 そして、更にディパックの中を確認すれば、何かの説明が書かれた紙と、血の付いた首輪が発見された。
(これは首を落としたときに奪った首輪?いや、あの死体の首輪は俺が持っている。でも、逃げた片方を殺して首輪とディパックを奪った可能性も。
 でも、それなら俺たちにディパックを見せようとするだろうか?)
 センの脳内が疑問に埋め尽くされる。一体、眼の前の男は何者なのか。
 悩んだ末、センは一切の小細工なしにその疑問をぶつけた。
「ジルフィーザさん。これは何処で手に入れたものなんですか?」
「これは私のディパックだ。最初からな」
304Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:39:23 ID:7P4B86DL0
「嘘ですね。この中に入っているもの。俺には見覚えがあります。このディパックにもです。
 そして、この首輪。これは誰かを殺さなければ手に入らない。
 もし本当にあなたがこのディパックの持ち主なら、あなたは誰かを殺したと自供しているのと同じです」
 一息に詰め寄るセン。しかし、ジルフィーザに悪びれた様子はない。
「嘘?だとしたら、どうだというのだ。ここは殺し合いの場。裁判の場ではない。
 初対面の相手に全て本当のことを喋ると考えるのが間違っている。そうではないのか?」
 ジルフィーザは素早く杖を奮い、持ち手に引っ掛け、センの持つディパックを取り戻す。
「ふん。それとも果し合いも待ち合わせには違いないと、言葉遊びでもするつもりか」
 その言葉でセンはジルフィーザの意図と、彼が持つディパックの元の持ち主を知る。
 彼らが果し合いに向かっていると知っているのは彼らの仲間以外ではブドーのみ。
「お前、ブドーの仲間か?」
 杖を構えるジルフィーザに、センたちも臨戦態勢に入る。
「仲間ではない。だが、思わぬことで借りができた」
 ジルフィーザは値踏みするような眼をセンに向ける。続いて、シグナルマンに向け、そして、最後に理央を見た。
「お前が果し合いの相手か」
「………」
 理央から立ち昇る闘気を見切ったのだろう。ジルフィーザは見事にブドーの相手を言い当てる。
「お前は行くがいい。私は果し合いの邪魔をするつもりはない。私の目的は果し合いの邪魔者を排除することだけだ」
 そうはさせまいとセンはSPライセンスを取り出し、シグナルマンはシグナイザーを握った。
 だが、その行動を意外にも理央が遮る。
「よせ!」
「理央さん」
「無駄なことに力を使うな。元からブドーとは俺一人が戦うことになっていたはずだ。お前たちが居ようが居まいが大勢に影響はない」
「しかし……」
「要はお前達がいなくてもブドーを殺さなければいいのだろう。先程も言ったとおり保証はできない。だが、善処はする」
「ぐぬぬぅぅ」
 シグナルマンが呻き声を上げ、センも内心でまったく同じ声を上げる。
 理央とブドーとの決闘には、二人の警察官としてのリベンジも含まれている。
305Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:40:18 ID:7P4B86DL0
 二人としては是が非でも同行したい。だが、復讐に呑まれ、非合理的な行動を取るのは本末転倒もいいところだ。黙るしかない。
「ジルフィーザとかいったな。お前の目的も足止めなら、足止めさえできれば無理に戦う必要はないはず」
「………」
 理央は無言を肯定と受け取る。
 これで話はついた。
「セン、シグナルマン、お前達は街に戻れ。この暑さだ、ここに居ては待つだけで体力が削られる」
「しかし……」
「心配はいらん。必ず俺は戻ってくる」
 理央は少しだけ笑みを浮かべると、決闘の場所への歩みを再開する。
 その後姿はセンたちを拒絶しているようにも、任せろと言っているようにも見えた。



「来たか、思ったより早かったな」
 午後3時過ぎ。刻限より約1時間以上早く、理央とブドーの二人は対峙していた。
 ロンの思惑とは異なる結果になったわけだが、二人に何ら不満があるわけでもない。
 ただ己の力と力をぶつけ、決着を着けるのみ。
 それがこれから拳を交じらせる二人の共通した認識だった。
「剣将ブドー、参る」
 ブドーはゲキセイバーを握り、一直線に理央へと向かっていった。
306Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:41:20 ID:7P4B86DL0
【名前】江成仙一@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:Episode.12後
[現在地]:E-8砂漠 1日目 午後
[状態]:ネジシルバースーツを装着(メット未装着)。左肘複雑骨折、全身打撲(応急処置済)。
[装備]:ネジシルバースーツ。ネジブレイザー。SPライセンス。一つ目のライフル銃の説明書。真墨の首輪
[道具]:バンキュリアの首輪。
[思考]
基本行動方針:仲間たちと合流して脱出。
第一行動方針:ジルフィーザと共に街へ。そこで理央たちを待つ。
第二行動方針:ブドーを仲間に引き入れるため画策。連れ帰ってジャッジを下す。
第三行動方針:シュリケンジャーを危険視。
※首輪の制限を知りました。
※ネジシルバースーツは多少丈夫なだけで特殊な効果はありません。ただし、制限時間もありません。

【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:E-8砂漠 1日目 午後 
[状態]:ダメージ小。腹に打撲痕。未だ凹み気味。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(残数1個)、ウイングガントレッド@鳥人戦隊ジェットマン、メレの釵 、基本支給品一式
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:自分の無力さに強い怒りと悲しみ。
第二行動方針:ジルフィーザと共に街へ。そこでスモーキーたちを待つ。
第三行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第四行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。
※首輪の制限を知りました。
307Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:42:42 ID:7P4B86DL0
【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:E-8砂漠 1日目 午後
[状態]:健康。
[装備]:杖
[道具]:一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)、サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー、支給品一式(バンキュリア)
[思考]
基本行動方針:ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップに会い、真意を問う。
第二行動方針:ブドーへの借りを返すため、しばらく監視を兼ねて、センたちと行動。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。

【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:E-9オアシス 1日目 午後
[状態]:左胸に銃創。ロンへの強い怒り。幻気が浸食中。
[装備]:自在剣・機刃@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:メレと合流する。
第二行動方針:スモーキーを救い出す。ブドーと戦う。
第三行動方針:弱者を救ってやりたい。
※首輪の制限を知りました。
308Liar ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 18:43:36 ID:7P4B86DL0
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:E-9オアシス 1日目 午後
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。闇の力により戦闘力増幅。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン、闇の三ツ首竜@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:筆と短冊。マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー、支給品一式(ペットボトル1本消費)
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:理央と決着をつける。
第二行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。
※闇の三ツ首竜により力が増幅しています。
309 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:01:29 ID:7P4B86DL0
第一波投下終了。
続いて、第二波の投下をいたします。
310激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:03:04 ID:7P4B86DL0
 時間は少し遡る。
 ジルフィーザを見送ったブドーは座を組み、懐から筆と短冊を取り出した。
 理央を待つ間の時間つぶしに、句を詠もうと思い立ったのだ。
 さて、どんな句を詠んだものかと思案に耽っていると、スモーキーがおずおずと声を掛ける。
「なあ、大将」
「どうした。……おぬしも共に句を詠むか?」
「いや、それはいいニャ」
 スモーキーの拒絶の言葉に、ブドーは傍目にも分かる程に肩を落とす。
(いや、そこまでがっかりしにゃくても……)
 微妙に罪悪感を感じるが、それは脇に逸らし、スモーキーは本題へと入る。
「理央との決闘のことなんだけど」
「また、その話か。言ったはずだ。戦いを止めるつもりはない」
「そ、それはわかった。理央も、大将も、男。男なら時には殴り合いのひとつやふたつ仕方のないことニャ」
 腕を組み、うんうんと肯くスモーキー。
「でも、殺し合いは絶対許さないニャ!」
「それも言ったはずだ。拙者が応じたとしても理央やその仲間のセンが応じると……」
「オレ様が応じさせて見せる。あいつらが来たら、まずオレ様が話しをする。そして、大将を殺さないように約束させるニャ。
 だから、もし大将が勝っても、理央たちを殺さないと約束して欲しい」
「……もし、嫌だと言ったら?」
「もし、嫌だと言ったら――」
 ブドーを威嚇するように、爪を立て、歯をむき出しにする。
「まずはオレ様が大将の相手をしてやるニャ。もう決闘の時間まで2時間を切ってる。
 勝てないまでも、もし、大将に本気を出させれば、戦うことができなくなる」
「なるほどな。確かに今、襲われては決闘に差し障りがある……本当におぬしが拙者に本気を出させることができればの話だがな」
「ニャ!?」
 いつの間に抜いたのか、ゲキセイバーがスモーキーの鼻先に突きつけられていた。
(ま、まったく見えなかったニャ)
311激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:06:16 ID:7P4B86DL0
 だが、スモーキーもここまで言って引き下がるわけにはいかない。
 震えそうになる身体に喝をいれ、ブドーの瞳を直視し続ける。ブドーもその視線を真正面から受け止め、睨み続けた。
 その張り詰める空気に先に折れたのは、ブドーの方だった。
「よかろう。おぬしに免じようではないか」
「それじゃあ」
「ただし、勝負自体に手を抜くつもりはない。いや、あの理央が相手とならば、少しでも油断があれば負けるのは拙者となるだろう。
 お互いに真剣に戦った結果、互いの命がどうなるか、それは保証しない」
「その時は……オレ様が止めるニャ」
「止められるのならな」
 ゲキセイバーを納め、句を詠むために座する位置へと戻っていくブドー。
 ほっと、胸を撫で下ろすスモーキー。
 奇しくも彼らのやり取りは理央とセンとの間で行われたものと同質のものであった。



「ひとりか」
「不服か?」
「いや。拙者の目的はおぬしただ一人。この戦いに他の者は必要ない」
 理央とブドー、二人の間で激しい火花が飛び散る。
 理央が来る前は説得の弁を多様に考えていたスモーキーも、闘気のぶつかり合いに言葉を失っていた。
 もはや、二人の間に何者も入る余地はない。
「剣将ブドー、参る」
 ブドーはゲキセイバーを握り、一直線に理央へと向かっていった。
 双剣合身により一振りとなったゲキセイバーが理央の首筋を狙う。
「てぇぇぇい」
 だが、理央はそれを予期していたかのように、素早くブドーの外側に回りこむとそれをあっさりと避けた。
312激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:09:57 ID:7P4B86DL0
 ――つもりだった。
「なに!?」
 理央の首筋にすっと赤い一筋の線が引かれる。
 避けたつもりが、ブドーの一撃は理央を捉えていたのだ。
 続いて、横薙ぎにゲキセイバーが振るわれる。
 理央はそれを跳躍してかわすが、それと同時にブーツが引き裂かれた。
(違う。以前のブドーとは明らかに)
 危険を感じた理央は地面に着地すると、素早く後ろへと下がる。そして、首筋の傷に手を当てた。
(この鋭さ。なるほど、俺はこいつの一撃を確かにかわしていた。
 だが、奴の一撃があまりにも迅かったために、それが小規模ながらも旋風を起こし、俺の皮膚を切り裂いた。
 しかし、以前のこいつにはそこまでの力はなかったはず。奴が持つゲキセイバーにもそんな特性はなかったはずだ)
 首の傷にわずかながらも動揺を見せる理央を見遣り、ブドーはニヤリと笑う。
「理央、拙者を今までの拙者と思わぬことだ。言っておくが拙者はまだ、力を見せてはおらぬ」
「なに?」
「力を発揮しておれば、今の油断したおぬしなど、一刀で切り捨てることもできた。だが、それでは満足できぬのだ。
 拙者はおぬしを倒すために、ただそれだけのために、この力を手にした。
 故に貴様だけは拙者の全てを持って切り捨てねば気が済まん!本気を出せ、理央!本気で拙者と戦えぇぇぇい!」
 ブドーの気勢が木々を奮わせる。
「見違えたな。面白い。それでこそ倒し甲斐があるというものだ」
 理央は自らの認識を改めることにした。眼の前にいる相手は記憶にも残らぬ雑魚ではない。
 全力を尽くし、叩き潰すべき、強大なる壁。
「臨気鎧装」
 その言葉と共に、黄金の闘気に包まれた黒き鎧が理央の身に装着されていく。
 それは理央が本気で戦うことを決めた証。高みを目指した最強たる者の姿。
「猛きこと獅子の如く。強きことまた獅子の如く。剣を断ちし者。我が名は黒獅子リオ」
313激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:11:58 ID:7P4B86DL0
 黒獅子となった理央の背後から、ブドーを激しく威嚇するかのように黒き獅子の闘気が立ち昇る。
「フフッ、それでよい。それでこそ拙者もこの力を受け入れた甲斐があるというもの」
 ブドーは今まで身体の中に渦巻いていた闇の力を外へと向けて開放する。
 すると、彼より立ち昇った闘気は黒き三ツ首の龍を形作った。
 獅子と竜が互いの敵を認め、激しく咆哮する。
 その主たる理央とブドーはそれに同調するように身体中に力を漲らせていく。
「うぉぉぉぉぉっ!!!」
「ぬぅぅぅぅぅっ!!!」
 獅子対竜の戦いが、今、火花を切った。



 眼の前の敵を倒すべく、拳と剣が唸りを上げる。
 いや、倒すなど、生易しいものではない。お互いがお互いに、眼の前の敵を"殺す"べく、全力を尽くしている。
 二人の思考は今はただそれのみ。
 事前にセンやスモーキーと交わしていた約束など、片隅にあるのかさえ怪しい。
(こ、これを止めるのか?)
 そう独り言を呟こうとして、スモーキーは声が出ないことに気付く。
 そして、声どころか、身体がまるで石化でもしたかのように動かないことに気付いた。
 二人の闘気に気圧されているのだ。
(む、無理だ。こんな状態ニャのに、二人を止めるニャんて、絶対無理だ。せ、せめてダンナやシグナルマンがいれば……
 ちくしょー、なんでいないんだ。ダンナ、シグナルマン……)
314激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:13:15 ID:7P4B86DL0
 スモーキーは自分の無力さを嘆き、ただここにいないヒカルたちに怨みの言葉を紡ぐしかなかった。



「飛翔拳」
 羽根形の手裏剣へと形成された臨気が、次から次にブドーへと放たれる。
「甘いわ」
 ブドーはゲキセイバーを分離させると、一対になった剣でそれを次々と弾いていく。
 だが、それは理央の狙い通りだった。
(一対になった剣を使えば、複数の攻撃には対処できるようになる。だが、その分、強力な一撃には脆くなる!)
 理央は手裏剣を放ちつつ、ジリジリと間合いを詰めていた。
 そして、一跳びでブドーに届く位置まで接近するや否や、理央は大地を蹴った。
「リンギ・烈蹴拳!!」
 空中で体勢を整えた理央は臨気の込められた強烈な蹴りを放つ。
 その威力は、例えゲキセイバーで防御したとしても、それを破壊した上でブドーに勝敗を決する程のダメージを与えられるはずだ。
 勿論、当たればの話だが。
 ブドーはまるで羽毛のようにふわりと浮かび上がり、理央の蹴りは空を切る。
 ブドーは理央の狙いを見抜いていた。間合いを詰めていたのも承知の上。
 理央がジリジリと間合いと詰めている間、ブドーは手裏剣を弾きながら、少しずつ、ゲキセイバーの動きを直線から回転に変え、速度を増していた。
 後は理央が攻撃に転じる瞬間にあわせて、力を入れれば、薄く平たいゲキセイバーはプロペラのように揚力を得て、ブドーの身体を浮かび上がらせる。
「くっ、小細工を」
「では、小細工を存分に味わうがいい」
 ブドーは回転すると、手近な木を蹴り、理央へ向かって滑空していく。
 理央はそれを身を反らし避けるが、ブドーは飛んだ先の木を蹴ると反転し、再び、理央へと迫る。
(まさかゲキセイバーをここまで使いこなすとは)
 わずかな時間でゲキセイバーの特性を習得していたことに、理央は驚きを禁じ得ない。
 しかし、驚いてたのはほんの一瞬。理央は拳に臨気を込める。
315激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:16:17 ID:7P4B86DL0
「リンギ・雷剛弾!」
 立て続けに放たれる4発の破壊光弾。
 それはブドーの上下左右に放たれ、彼の動きをひとつの方向へと固定させる。
 そこに放たれる渾身の一撃。それは一直線にブドーを狙う。
「ふっ」
 だが、ブドーはまったく動じない。それどころか、口元には笑みすら浮かぶ。
「てぇぇぇい!」
 気合一閃。ブドーはゲキセイバーをひとつにすると、それを真正面から切り裂いた。
 切り裂かれた雷剛弾はふたつに分かれ、地面に接触すると大爆発を引き落とす。
 その爆発が土砂を舞い上がらせ、二人の視界を封じる。
 しかし、お互いにそれが治まるまで待つつもりはない。むしろ、これは好機。
 相手の気配を探り、感知した殺気に向かって、剣と拳を打ち込んだ。
 その一撃は、一方は相手の身を削り、一方は相手の胸を抉った。
 やがて土砂が治まり、二人の姿が晒される。
 一人は二本の足で大地を踏みしめ、一人は大地に膝をつく。
「ぐぅ」
 胸を抉られ、呻き声を上げるのは――理央の方だった。
「どうしたそこまでか!」
「リンギ・剛勇吼波!」
 理央から放たれた臨気が獅子を形作り、ゲキセイバーを振り上げたブドーに襲い掛かる。
 咄嗟に防御の体制をとるが、実体化した獅子から繰り出される強力な一撃にブドーは理央から後退させられる。
 しかし、それでもブドーの愉悦は変わらない。
「そうだ、そう来なくては。戦いはこれからだ」
 獅子の攻撃を防御しつつ、笑みを浮かべるブドー。
「ああっ、これからだ」
 対して、息をわずかに乱しつつ、立ち上がる理央。
 ブドーは気付いていなかったが、理央の傷は決して浅くなかった。
 万全の状態であったなら問題なかっただろう。
 だが、ブドーが傷つけた箇所は、偶然にも以前、狙撃された場所と同じ箇所であった。
316激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:18:46 ID:7P4B86DL0
 塞がりかけていた傷が、再びぱっくりと開き、血が染み出てくる。
(負けない。俺は負けない)
 自らを鼓舞して痛みに耐える。
 眼の前の敵は強い。だが、だからこそ、戦うことに意味がある。超えることに意味がある。
「うぉぉぉぉっ!!」
 身体中の臨気を極限にまで高め、身体中に漲らせる。
 痛みは薄れ、無尽蔵に力が湧き出てくる。
 現状はブドーが優勢。それは誰より理央が理解している。
 だが、勝てないとは思わない。
 いかなる手段を講じて、ブドーが強さを高めたか、理央にはわからない。
 しかし、こちらがどれだけ力を高めようと、それ以上の力を高め、対抗してきた激獣拳のように理央も諦めるつもりはない。
 相手が高めた分だけ、こちらも高める。ただひたすらに強く、激しく、高く。
「ふん!」
 獅子を切り捨てたブドーは、その身が震えるのを感じた。
 見れば、理央の身体は黄金の闘気に光り輝き、今までとは比べ物にならないほどの力を漲らせている。
「流石、流石だ、理央よ。それでこそ、拙者の最後の相手に相応しい!」
 もはや、この後のことなど、ブドーにはどうでもよかった。
(生涯において、最高にして、最強の相手が眼の前にいる。勝とうが負けようが、この戦いに終止符を打つことがこの世に再び生を享けた意味に相違ない)
「竜よ!拙者の身を、魂を、全てを喰らうがよい!!その代償として、今拙者に最上の力を与えよ!!!」
 一瞬、ブドーの身体が闇に包まれたかと思うと、その闇の全てはブドーの身体からゲキセイバーへと移動し、ゲキセイバーを闇色に染め上げる。
「いざ……勝負!」
 ブドーが駆ける。理央も、同じくして、大地を蹴った。
「ゲキセイバー残酷剣!!」
「リンギ・剛勇掌打!!」
 ふたつの力がぶつかり合う。
317激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:23:14 ID:7P4B86DL0
 衝撃が地面に流れ出し、大地を震撼させる。
 だが、その力の拮抗はとても長く、とても短かった。
 果たして勝負の決め手は何だったのか。
 単純な力の差か。
 この戦いに掛ける思いの差か。
 それとも今までの戦いの傷によるものか。
 しかし、結果は無常にも下された。
 ゲキセイバーは砕け散りながらも、その闇の刃は理央を切り裂いていた。



「拙者の……勝ちか……」
 ブドーは粉々になり、柄だけになったゲキセイバーを見遣る。
「拙者もこのようになることを覚悟していたが……」
 死を覚悟していたというのに、身体の調子はすこぶる良好だった。
 闇の力を剣だけに集中したことで、逆にその身を滅ぼすことが抑えたられたのかも知れない。
「よい勝負であった」
 ブドーは倒れ伏した理央を見下ろす。
 その身から臨気鎧装によって得られた黒色の鎧は消え失せ、人の身の白い肌が覗いている。
 ふと、ブドーの脳内に声が響いた。ブドーはその脳内に響いた声をそのまま口にする。
「コロセ…か」
 理央を切り裂いた刃に手応えはあった。
 だが、臨気を漲らせていた理央には勝負を決める一撃になったとしても、生命を断つ一撃にはなり得なかったのだろう。
 ブドーはゲキセイバーを投げ捨て、懐から手裏剣を取り出す。
 他の支給品はジルフィーザに譲渡したため、ブドーに残された武器はこれしかない。
 だが、これでも首でも掻っ切れば、それで終わる。
 コロセ、コロセと脳内には輪唱でもしているかのように、その言葉が延々と響く。
 ブドーとて、宇宙を渡り歩いた海賊のひとり。
318激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 19:25:43 ID:7P4B86DL0
 不用意に相手を生かす恐ろしさも知っていれば、一切の容赦なく命を断つ覚悟も持っている。
 更に言えば、今、理央がその命を脅かされているのも自分を仕留め損なったことに起因する。
(されど――)
 ブドーは理央に背を向けた。
 途端に脳内の声が大きくなるが、ブドーはそれを無視し、ディパックを手に取る。
(情けを掛けたわけではない。借りを返したわけではない。猫の懇願を聞いたわけではない。ただ――)
「待て!」
 ブドーが振り返ると、そこには理央が再び、立ち上がっていた。
 その顔には怒りが滲んでいる。
「勝負はついたと思ったが」
「ならば、なぜ、俺に止めを刺さない。お前は明らかに俺に止めを刺すのをやめた」
「……刺す必要を感じなかったからだ」
 ブドーの目的はいつの間にか優勝を目指すことから、理央を倒すことへと変わっていた。
 そのためなら、自らの命すら問わぬ程に。
 だからこそ、一撃に全てを賭けることができた。
 そして、理央を倒すという願いが叶えられた時、ブドーは新たな願いを叶えようとは思えなくなっていた。
 己の全てを賭けて叶えた願い。その願いが叶ったというのに、何故、直ぐに次の願いを叶えようと思おうか。
 しかも、その願いは叶った願いと比べてあまりにも魅力に欠ける。
 もはやブドーに戦う気はなかった。
 だが、言の葉と書いて、言葉。ブドーの真の意図など伝わらず、理央はその言葉を自分に対する嘲りととった。
 つまり、止めを刺す価値のない相手と。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
 まず理央の胸に宿ったのは絶望だった。
 自分の強さが通じず、相手にされないことに対する絶望。
 続いて、宿ったのは嫉妬。
 わずかな時間で自分を超えるほどの力を得たブドーに対する嫉妬。
 そして、最後は怒り。
 自分の弱さ、不甲斐なさに対しての激しい怒り。
 絶望。嫉妬。怒り。
 即ち、臨獣拳を究めるための三要素が理央に宿る。
319名無しより愛をこめて:2010/03/03(水) 20:08:35 ID:7P4B86DL0
 それは理央が一時は捨て去った感情。
 ロンに仕組まれたことを知り、激獣拳に与することで捨て去ったはずの感情。
 それが再び、理央に宿り、その身に宿る臨気を再び極限にまで高め始める。
 だが、首輪によって齎される制限がそれを許さない。
 高まる臨気を抑えようと、首輪を通して、多量の幻気が理央の身に降りかかる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」
 だが、幻気が理央をいくら痛めつけようとも、理央は臨気を高めることを止めようとしない。
 例え胸の傷から血が噴出そうとも、ゲキセイバーによる傷が痛もうとも、その痛みが薄れ行く意識を覚醒に導き、理央の絶望と嫉妬と怒りをより顕著なものへと変えていく。
 やがて、彼の身にある変化が起こった。
 傷からその身へと流れ入った幻気が、まるでかさぶたのように傷痕を塞ぐ手助けを始める。
 そして、体内に入った幻気は臨気と混じり合い、有象無象のものから、理央の幻気へと性質を変えていく。
 奇跡は起こった。
「幻気鎧装」
 黄金の鎧が空中で精製され、次々と理央の身体へと装着されていく。
「なっ!」
 その異変にブドーは言葉を失う。
 そこに猛き黒獅子の姿はなかった。そこにいたのは幻獣の王に相応しき、黄金の鎧を身に纏った獣の姿。
「強きこと、猛きこと、世界において無双の者、我が名は幻獣王リオ」
「幻獣王…リオ……」
 ブドーは我知らず、二歩、三歩と後ずさりをする。
 その姿は静かだった。黒獅子のときのように溢れ出さん程の闘気をまったく感じなかった。
 だというのに、ブドーは震えが止まらない。
 それは先程のように雌雄を決さんがための武者震いではない。眼前にいる敵に対しての恐怖に他ならない。
(理屈ではなく本能でわかっているのだ。この、幻獣王となった、今の理央の恐ろしさを)
 ブドーは身体の震えを気迫で抑え、手裏剣を手にする。
 だが、それが合図となった。
「なに!?」
320激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 20:10:00 ID:7P4B86DL0
 一瞬にして、眼と鼻の先まで間合いが詰められる。
「ゲンギ・破天荒!!!」
 無数の拳が雨のようにブドーの身体に降り注ぐ。
 ほぼ不意討ちとも云える攻撃にブドーは為す術もなく、大樹に叩き付けられる
「ぐふっ!」
 口から苦悶と共に血が流れ出す。
「メッキが剥がれたな。もうお前からは何の力も感じない」
「メ…ッキ?」
 ブドーは自らの掌をギュッと握る。
 制限はまだ掛かっていない。だが、その力はほんの数分前と比べると、衰えているように感じられた。
「まさか」
 何時の間にかブドーの脳裏に声は響かなくなっていた。
 それが一体、何を意味するのか。
「ふっ、どうやらこれはお前に愛想を尽かしたらしいな」
 理央の手に握られた燭台のような置物。
 それは紛れもなく、今までブドーに力を授けていた闇の三ツ首竜に相違なかった。
 何故とブドーは疑問に思ったが、直ぐにその回答に思い当たる。
(理央の言う通り、愛想を尽かしたのだろう。願いが叶った拙者にこの竜が欲する程の闇はない。さすれば、それも当然のこと)
 ブドーの回答はほとんど正解だったが、ひとつ、思い当たらなかったのは理央の闇の深さだった。
 ブドーの闇が薄れたからとはいえ、即座に他人に渡るようなものではない。
 理央の持つ闇がブドーの持つ闇より深く、濃いものだったからこそ、闇の三ツ首竜は理央の手に渡ったのだ。
(もはや、これまでか)
 消沈するブドーに対し、理央の精神は高揚する。
 幻気に加え、闇の三ツ首竜から齎される闇の力が理央の身に信じられぬほどの力を与えていた。
(この力があれば、この場にいるどの戦士も恐れるに足りん。もはやロンすらも問題ではない)
 ふと、センとの約束を思い出す。センはブドーを生かし、利用することを望んでいた。
(ふん、こいつを生かして何になる。俺はこの強さで弱い者を救う。――だから俺以外の強者は必要ない)
 増大していく力は思考を汚染する。
 強く握られる拳。ブドーは意識はあるものの、動こうとしない。
321激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 20:13:31 ID:7P4B86DL0
(最終的には理央の勝利か。所詮は仮初めの力。例え泡沫の夢でも、勝利を味わえたのだ。それでよかろう)
 もうブドーに思い残すことはなかった。
 ブドーは眼を閉じ、辞世の句を読む。

――仮初めの 命と力に 剣を振り 泡沫なれど 後悔はなし――

 後は拳が振り下ろされるのを待つのみ。
「ま、待つニャーーーーー!」
 覚悟を固めたブドーの耳を劈く制止の声。
 思わず眼を開ければ、理央も拳を振り上げたまま、その声の主に視線を移していた。
「スモーキー」
 鳥肌を立て、震えながらも、身体中の力を振り絞り、スモーキーは声を上げた。
 理央の視線がまるで刃のようにスモーキーに突き刺さる。
 それだけでスモーキーは粗相をしてしまいそうになるが、どうにか我慢し、言葉を紡ぐ。
「も、も、もう、け、け、け、決着は着いたニャ。大将は、ブドーはお前との決着が着いたら、一緒に行動してくれるって、オレ様と約束してくれたニャ。
 だ、だから、命を奪う必要はないんだニャ」
「おぬし……」
 ブドーを助けようと、精一杯、自分の思いを口にする。
 だが、理央はにべもない。
「黙って見ていろ」
 そう言い放つと、視線をブドーへと戻す。
(どうしようもないのか?オレ様は黙って見ているしかないのか?)
 ふとスモーキーの脳裏に誰かの姿が過ぎる。
 それはスモーキーがダンナと呼ぶ、天空聖者サンジェルこと、ヒカルの姿。
 メメの鏡で見た、ヒカルが何者かを刺す姿と今の理央がダブって見えた。
(オレ様は誓ったはずニャ。大間違いはオレ様が直してやるって)
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 咆哮を上げ、自分の身体に喝を入れる。
(勇気が魔法に変わるなら、今が勇気を出すときニャ!!)
 今まで、まるで石になっていたかのような身体に、力が漲っていくのを感じる。
322激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 20:15:06 ID:7P4B86DL0
「待ーーーーーてーーーーー!」
 理央の拳が振り下ろされる。
 しかし、その拳がブドーへと届くよりスモーキーの方が速かった。
 スモーキーはブドーを担ぎ上げ、理央の拳は大樹を圧し折るだけに留まる。
「貴様、邪魔をする気か」
「ああ、してやるニャ。お前が大将を殺そうっていうなら、お前のためにも、大将のためにも、邪魔して邪魔して邪魔しまくってやる!」
「ふっ、ならば……一緒に死ね」
「なっ!?」
 理央の掌から大きな、大きな光弾が浮かびあがる。理央は掌をスモーキーへと向けると、間髪居れず、それを放った。
 一瞬、辺りが眩き閃光に包まれる。
 そして、次の瞬間、オアシスだったその場所は荒野へと姿を変えていた。
「跡形もなく消え去ったか」
 理央はその光景を一瞥すると、踵を返す。
 邪魔者を排除した以上、もうここには用はない。
「ロン、待っているがいい。俺はお前とお前の甘言に乗った者たちの全てを叩き潰す。弱き者を救うためにな。
 そして、それを邪魔する者は誰であろうと容赦しない」
 変身を解き、本来の姿に戻ってもなお、彼の身体中に駆け巡った幻気と闇の力は留まり、渦巻き続ける。
 今、獅子と竜は完全に一体となっていた。



 真っ暗な空間。
 眼を開け、その光景を見たブドーは自分が二度目の死を迎えたのだと思った。
(しかし、スモーキーには可哀想なことをした)
 あのまま大人しくしていれば、少なくともあの場は生き延びることができただろう。
 それを自分を庇おうとしたばかりに共に黄泉へと旅立つことになった。
「拙者が言えた義理ではないが、安らかに眠るがよい」
「……大将、一体何を言ってるニャ」
 掛けられた声に振り向けば、そこには座り込むスモーキーの姿があった。
「おお、おぬしもこの場にいるということは、拙者と共に地獄行きということか?猫は見かけによらぬものだ」
323激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 20:21:43 ID:7P4B86DL0
「けっ、オレ様が死んだら、天国行きに決まってるだろ、一緒にするんじゃねぇ。
 あと、大将が何を勘違いしてるかしらニャいが、ここはマジランプの中だ」
「マジランプ?」
 ブドーがディパックを持っていたことが幸いした。
 理央が光弾を放った直後、スモーキーはブドーと共にマジランプへと退避したのだ。
「しばらくここで休めばいい。あいつが早く来たおかげで禁止エリアにニャるまで多少の時間があるはずだ」
「そうか、それは世話になったな。だが、助けてもらってなんだが、正直、拙者はもう死んでもよいと思っていた」
「ニャに?」
「結局は理央の勝利ではあるが、ほんの一時とはいえ、拙者は理央を倒すことができた。それで生き返った意義は果たしたと満足したのだ」
 淡々と語るブドーにスモーキーの沸点は一気に振り切れた。
 ブドーへと詰め寄り、衿を掴み取る。
「ふざけるニャ。そんな簡単に死ぬなんて言うんじゃねぇ!
 お前は命なんてその程度のものだって考えてるかも知れねぇが、命っていうのはそんな簡単に手放していいものじゃないんだ。
 大将は一度死んだっていうのに、そんなこともわからないのか!
 夢が叶ったからって何だニャ!夢を叶えれば、その命は無価値にでもなるっていうのか!
 違うだろ。オレ様は大将に生きていて欲しい。ここにいる皆と同じように大将の命も尊いと思った。だから、助けたんだ!!!だから……」
 スモーキーはそこで顔を伏せ、言葉を切った。
 ブドーはスモーキーの姿を見ながら、その言葉の意味を考えるが、正直に言えば、理解に苦しむ。
 長年、宇宙海賊として、ブドーはいくつもの命を奪ってきた。今更、命の尊さを語られても馬の耳に念仏だ。
「スモーキー、拙者は――」
 言葉を返そうとして、ブドーはスモーキーの異変に気付く。呼吸が尋常ではなく荒い。
 ブドーの衿を握る手の強さもどんどん弱まり、遂には掴んでいられなくなる。
 沈んでいくスモーキーの身体。
 露になった背中には真っ赤な血肉。
「スモーキー」
「……だから…だから……オレ様の分まで生きて欲しいニャ……」
「そうか、間に合わなかったのか」
「ちょっと、遅かったみ…たい……ニャ」
324激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 20:23:42 ID:7P4B86DL0
 ブドーは息も絶え絶えなスモーキーを見て、愚かだと感じていた。
 散々、命の尊さを説きながら、その結果、死んでもよいと言った男を救うために自らの命を落とそうとしている。
 なんとも不条理な話だ。
「……ったく、世話の焼ける大将のせいで……寿命が縮んじまった……
 大将………あとのことは頼んだぜ……オレ様の仲間たちを…………ダン…ナ……ヒカルを……頼……」
(ダンナ……)
 そこでスモーキーは事切れた。
 命を手放すと同時に彼の身体からは煙がくゆり始め、ゆっくりとその身を空間に溶け込ませていく。
 ブドーはスモーキーの身が完全に消えるまで瞬きもせず、ただじっと見詰めていた。



 マジランプから抜け出すと、空には夕焼けがかかろうとしていた。
 もう禁止エリアになるまで時間がない。
 命が惜しければ、早々に移動するべきだろう。
(命か)
 スモーキーに伝えることは叶わなかったが、やはりブドーには命の尊さを理解することはできなかった。
 星の数ほど無数にあり、剣を振るえばたちどころに消えてなくなるものに、価値を感じることなどできようはずもない。
 しかし、ブドーにも解ることはある。

――せめて、最後のご奉公!――

 散っていた配下の者たち。彼らは忠義の名の下に自らの命を惜しげもなく差し出した。
 スモーキーは彼らとは違い、自分の配下ではない。だが、自らの命をブドーに託したことは事実。
 ならば、その願いに報いることが生き残った者としての務め。
「拙者には目的がない。理央との戦いも決着が着いた。
 ならば……おぬしの願いを聞き届けるのもよかろう」
 攻撃の余波か、かすかに焼け焦げたマジランプ。
 ブドーはそれを拾うと、決闘の場を後にした。

【スモーキー 死亡】
残り21人
325激突!獅子vs竜 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 20:28:39 ID:7P4B86DL0
【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:E-9オアシス 1日目 夕方
[状態]:左胸に深い切り傷。残酷剣による中程度のダメージ。ロンへの強い怒り。
 幻気と闇により精神が侵食+戦闘力増幅。2時間の変身制限?
[装備]:自在剣・機刃@星獣戦隊ギンガマン、闇の三ツ首竜@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:メレと合流する。
第二行動方針:弱者を救ってやりたい。
※首輪の制限を知りました。

【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:E-9オアシス 1日目 夕方
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。全身打撲。2時間の能力制限
[装備]:手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。マジランプ@魔法戦隊マジレンジャー
[思考]
基本方針:スモーキーの願いに報いる。
第一行動方針:禁止エリアからの脱出。
第二行動方針:武器の調達。
※首輪の制限に気が付きました。
326 ◆i1BeVxv./w :2010/03/03(水) 20:31:00 ID:7P4B86DL0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点などの指摘事項、ご感想があれば、お願いします。

なお、黒獅子への変身解除後、幻獣王への変身を果たしておりますが、
ひとつの解釈として、臨気での変身と幻気での変身は別物と解釈いたしました。
ですが、文章中では特に記載しておりませんので、別案があれば、後々に補足していただければと思います。
327名無しより愛をこめて:2010/03/04(木) 00:53:22 ID:sVo7+iQAO
投下GJです!二作連続投下楽しませて頂きました!

ブドーと理央の死闘には燃え、砂塵の向こうから姿を現すジル兄には痺れました。
そして、スモーキーの死とそれを思うブドーには、胸にグッと来るものが。
種族を越え、立場も越えて友情というのはちょっと違うかもしれませんが、
いつの間にか絆を結んでいたのだなと。
そして俄かに暗雲たれ込めてきた感じを漂わせる理央。
彼の思考はまさしくロンの思い通りな気もしますが、果たしてこの先どうなるのか。
次の展開が楽しみです。
面白かったです。重ねてGJでした!
328名無しより愛をこめて:2010/03/04(木) 13:25:15 ID:TAe4ttQG0
なんという良作の津波!!
ブドー2度目の辞世の句が、スモーキーの死に様が、自分の胸にもグッと来ました。
投下乙でした。面白かったです!



329名無しより愛をこめて:2010/03/09(火) 16:39:59 ID:cZbtyBC+0
まとめ更新お疲れ様です。
いつもありがとうございます!!
330名無しより愛をこめて:2010/03/16(火) 14:01:22 ID:MWppIQ4c0
マジレンは完璧リーチ?
331名無しより愛をこめて:2010/03/17(水) 20:12:35 ID:HUCYaJnj0
一人・二人参戦の戦隊を除けばそうだね。
それにしても、スモーキーって支給品だから放送でその死は読み上げられることはないんだよね。
あれ程心配していたヒカルにその死どころか、ここにいた事さえ伝わらないのは、
彼の精神状態にはいいのだろうけど、ちと切ない
332名無しより愛をこめて:2010/03/18(木) 10:58:03 ID:5mPECKNp0
後々にスモーキーの参加、死を知る。

orz

たとえロンを倒してハッピーエンドを迎えたとしても……

うん、切ない。
だがオレははそんな展開が大好きだw
333名無しより愛をこめて:2010/03/20(土) 21:00:42 ID:yaYDLHaO0
スモーキーの死を最後の最後まで知らずにスモーキーのいる幸せな世界を思い描きながら死ぬエンドでもおk。
334 ◆hjAE94JkIU :2010/03/20(土) 21:37:34 ID:/iIVN9nN0
投下します
335超人の誤算  ◆hjAE94JkIU :2010/03/20(土) 21:40:37 ID:/iIVN9nN0
洛陽の景色は爛れた色をしている。
それは自身のすさんだ心の現われであることに思い至り、浅見竜也は始めて自分が憤っていることに気付いた。
確実に、何かが狂い始めていた。
「戻ろう…ブクラテスさんを一人にはしておけない」
確認するように口に出した。明石にもさくらにも顔を合わせられる自信がなかった。
思えば、あの二人の姿に自分とユウリを重ねていたのかもしれない。
特にさくらの生真面目さはユウリを彷彿とさせた。
(ユウリ…すべきことが分かっているのと、動き方が分かっているのとは別なんだな…)
無明の闇に語りかけても、答えは返っては来なかった。

 ◆

「おお! 思うたより早かったの。てっきり、もっと遅くなるものと…」
竜也を見とめた瞬間、擦り寄るように重たい身体を揺らしながらブクラテスが近づいてくる。
いっぱしの賢者のような口ぶりで自分を送り出したというのに、その実、彼は不安で仕方なかったのだろう。
「あぁ…別に俺の出る幕じゃなかったから……」
言葉少なに竜也は二人の話題を打ち切ろうとした。そんな竜也のそぶりにブクラテスは目を丸くして言った。
「ほ、じゃあお楽しみ中だったのじゃな?」
思わいがけぬブクラテスの言葉に、彼も二人の仲を邪推していた同類と悟る。
「なっ!? 違いますよ! そんな不謹慎なことになるわけないでしょ!!」
「なんじゃ、案外純情なんじゃな。わしはいいと思うぞ。どうせ、これが最後の逢瀬になるかもしれんのだ。
相手がいるなら今のうちに愛に酔うがよかろうよ。なに、ちゃんとわしを守って戦えさえすればいいのじゃ。その為には大抵のことには目をつぶるぞ、わしゃ」
口ぶりはまるで自分がこのグループの長であるかのように傲慢だが、どこか憎めない印象をかもしていた。
「あなたらしいというか、らしくないというか…」
呆れたような、感心したような複雑な気持ちで竜也は目の前の老人を見つめた。
竜也の口角が無意識に上がっていく。
余裕を持ってみてみれば、彼は狡猾でも脆弱な老人であることに間違いはないのだ。
336超人の誤算  ◆hjAE94JkIU :2010/03/20(土) 21:41:45 ID:/iIVN9nN0
ふと、目線をずらすと、マーフィーは出かけた時と同じ格好のまま寝そべっていた。
「ありがと、マーフィー。ブクラテスさんの世話を焼いてくれて」
「…………」
行く時と同じように、尻尾を立てて気だるげに振る。
「こんな人でもいなくなったら寂しいから」
「フン! どいつもこいつもわしを厄介者扱いか…じゃがな、わしはお前を離さんぞ。お前ほどのお人よしはそういるものではないからの」
「褒め言葉として受け取っておくよ、一応ね」


 ◆

明石暁は屈強な男だ。
暮れなずむ夕日を惜しいとは思わない。彼は信じているから。また、日が昇るのを。
この場の誰よりも先を行き、生殺与奪を握るロンですら迂闊に手を出せない。
彼は超人だった。
一個の人間としては過去に傷も持ち、弱さも持っている。
しかし、チームを率いるという立場と冒険を求めるという本能が満たされる
「チーフ」という肩書きを得た時、彼は常人には到達し得ない境地に至ったといえるだろう。
彼は誰よりも強く、誰よりも優しい。
しかし、それゆえに―
「さくら…俺はお前を信じてる」
口に出したのは確信の現れ。
弱く、傷つきやすい人の気持ちを理解するに至らない。
寄せられる好意を一律に信頼と認識し、なぜ傀儡となったさくらが自分を求めたかに彼は思い至っていなかった。
彼女は優秀で、強くて、信頼に足る『仲間』だから。
今も彼の歩みに迷いはない。
さくらは自分で考え、立ち上がることを確信していた。微塵も疑う気持ちなどない。
彼女に全幅の信頼を寄せていた。

彼女への気持ちは信頼だけ、だった。

337超人の誤算  ◆hjAE94JkIU :2010/03/20(土) 21:42:40 ID:/iIVN9nN0

 ◆

「おぉ、おかえり!」
「さくらはまだ戻ってないのか」

開口一番、明石の自分を無視して見せる態度にブクラテスはむっとした表情を隠さなかった。
「なんじゃい。口を開くなり女子のことか。妬けるのぉ…」
ふてくされるブクラテスを尻目に、明石は自分を見つめる竜也の視線に気付いていた。
「お帰りなさい、明石さん。さくらさんならまだですよ。一緒じゃなかったんですか?」
「あぁ。さっきは変なところを見せてすまなかった」
悪びれもせず、明石は言った。
「いいえ。でも明石さん、結構冷たい人なんですね。西堀さんを置き去りですか」
竜也の口調がとげを含む。
「さくらは自分で決断できる女だ。そして、必ず立ち上がる」
「そういうこと言ってるんじゃないんですよ。さくらさんも人間だって言ってるんです」
「? すまない、言ってることがよく分からないんだが…」
「別に、分からなくてもいいです。変なこといってごめんなさい」
竜也は自分でも形容しがたい憤りを感じて戸惑っていた。
すぐ近くにいるのに気付かないこの男の鈍感さを、自身を棚に上げて非難した。
明石暁には何一つ伝わっていなかったようだが。
「構わない。だが、さくらは来る。俺はそれを疑ってなんていない」
「だから、それはいいんですって」
竜也が苛立ちをかき消すように頭を振ったその時、僅かにマーフィーが動いた。
急に起き上がり、一つの方向を見つめる。
次いで全員の視線が扉へ集した。

「ただいま、かえりました」

西堀さくらがそこに佇んでいた。
338超人の誤算  ◆hjAE94JkIU :2010/03/20(土) 21:43:41 ID:/iIVN9nN0



「さくら。信じていたぞ」
明石は腕に持っていたジャケットを手渡そうとさくらへ近づいた。
「はい。ご心配をおかけして申し訳ありません。私はチーフと共にロンと戦います。そして菜月と真墨を蘇らせる」
「あぁ」
ピンクのボウケンジャケットに袖を通し、さくらは『サブチーフ』となっていく。
明石暁の言うとおりに事は運んだ。
これで、いい。
これで元通り。皆でロンと戦える。
だが、それを見つめる竜也の瞳にはその光景がどこか歪に思えて仕方なかった。
「確かに私のしたことは許されるものではありません。菜月やおぼろさんの死は私の責任です。
ですが、私はそれを背負って戦い続けていかなければならない…そう思います。チーフの仰るとおり、私はサブチーフですから」
自分の言葉の空虚さをさくらは感じていた。自分は正しいことの中に入る。
その確信があるのに、驚くほど空々しい。


「お前さん、本当にわしらと一緒に来る気か?」

竜也の気持ちを見透かしたように、ブクラテスが声を上げた。
「どういう…意味ですか?」
青ざめた顔でさくらが言う。
「言ったままの意味じゃよ。お前さんはわしらと行動を共にするつもりなのか?」
「ブクラテスさん!」
竜也が激昂した叫びを上げた。
「竜也! お前だって違和感を感じておろうが! わしゃなぁ…怖くて、怖くて、仕方ないんじゃ。わしは…この女が…この女が……怖い」
ブクラテスは急に十も老け込んだように力なく地面へへたり込んだ。肩を震わせて、頬の肉がプルプルと揺れた。
339代理:2010/03/21(日) 13:25:44 ID:FXfselx30
「爺さん、さくらは俺たちの仲間だ。それ以外のなんでもない!」
―それ以外のなんでもない!―
その言葉だけがさくらの胸を抉った。
「そうだ。ロンの洗脳は既に解けたって…さくらさんが仲間になってくれればきっと…!」
「甘い! 甘すぎるっ!! お前は何も分かっておらん、竜也。洗脳は解けた!? どうやってそんなことを判断する!? どうして、まだ機を窺っているだけだと思えない! 何を根拠に仲間だと言い切れる!!」
「ブクラテスさん、いい加減にしないと…」
「竜也! やめろっ!!」
言葉の先を察した明石が竜也を制止する。
「出て行くのはあんただ、ブクラテス!!!!」
竜也の怒号が響き渡った。





誰もが沈黙の中にいた。
竜也はまだ、自分の発した言葉の意味を解せずにただその場に立ち尽くしていた。
そして―彼が自身の内なる世界から帰還したとき、強烈に彼の意識を後悔が襲った。
「俺…なんてこと……」
目の前のブクラテスは茫然自失の様子で、表情なく前を見据えている。
呆けた様に、自分の生命線を切ってしまった事実を受け入れられないでいた。
「…竜、也…お前……わしを、見捨てるのか?」
つむいだ言葉は恐ろしいほど、覇気を感じさせなかった。
「竜也も本気じゃない。生きたいと願うなら、ロンを倒さなきゃ道は開けない。
自分に負けてしまえば、仲間は永遠に作れない」
明石の傍らでさくらは呆然と立ち尽くしていた。
ならば、自分のしたことは許されるのか―
ロンに操られて仲間を傷つけたのは、許されるのか。
誰も責めない。
誰も、責めてくれない。
340代理:2010/03/21(日) 13:27:48 ID:FXfselx30
「竜也…竜也…竜也……わしを…見捨てないでくれ!!!」
ふらふらと立ち上がり竜也へすがった。
これほど、弱い生き物はいないというほど弱弱しく。今にも事切れてしまいそうな、憐れな姿だった。
「竜也…どうしてわしを…お前、本当にわしを…」
「違うんだ、ブクラテスさん…俺は…!」
必死に取り繕うと竜也が言葉をつむぎかけた、その時だった。
やにわにブクラテスはさくらへ向き直ると、凄まじい勢いで彼女へ詰め寄った。
「わしは死にたくないんじゃ!! 死にたくないいい!!! 死にたくないんじゃ!! 
お前さん、ロンとどんな約束をした!? どうすればあやつは助けてくれる? どうすればここからだしてくれるんじゃ!? 知っておろうが、知っておろうが…わしにも、わしにも教えてくれ!!!!」
「!…私は…!!」
悲痛を通り越して悲惨だった。
さくらの足元にすがりつき、涙を流して懇願していた。
どこにも知恵ある賢者の面影はない。
「なぁ…誰を殺す手はずになっておる? わしか? わしなのか? 次はわしなのか!? 頼む! 何でもする、何でもするからわしを殺さないでくれっ!!!!」
畳み掛けるようにさくらに詰めより、押し倒さんばかりの勢いで叫んだ。
「ッッ!!…いい加減にしてくださいっっ!!」

思わず、さくらは両手でブクラテスを大きく突き飛ばしていた。
受身を取れず、大きく身体を地面へ打ち据える。
「うぅぅ…」
傷口が開いたのだろうか、しきりに右腕を押さえている。
「爺さん!」
「ブクラテスさん!」
思わず明石と竜也がブクラテスに駆け寄る。
「腕が…腕が…痛いぃぃいいい!!」
喉を絞るような叫びを上げてブクラテスはもんどりうって暴れた。
さくらのジャケットにも血の痕が残っている。
ハァハァと肩で大きく息をしながら、さくらはうずくまる老人を見据えていた。
341代理:2010/03/21(日) 13:29:04 ID:FXfselx30
「!」
その光景を目の当たりにしたマーフィーの視界に急にノイズが走り、忘れていた、封印していた気持ちが大きく頭をもたげてきた。

―――…ごめんな。うちはやっぱり一緒にいけんよ。だって………
弾かれたようにマーフィーのボディが躍動した。


――――だからあなただけは………あなただけは、最後まで私を憎んでいて下さい




「――――――----!!」
一閃。
とっさの事態に二人の挙動が遅れた。
ぼと、ぼとぼと、と耳障りな音を立てて床にちらばったそれが何であるか明石暁はすぐに分かった。
「ッッッッ!!」
西堀さくらの指が、なかった。
「さくらっっっ!!!!!!」
悲鳴のような声を上げて明石はさくらへ駆け寄った。惨劇を前にブクラテスは冷静に状況を分析していた。
(これは意外な結果になったわい…)
一つの賭けは概ね成功したといえる。竜也は今後、決して自分を見捨てはしないだろう。
要はやり方に緩急をつけることが大事なのだ。
罪悪感からくる後悔の念に支配された彼の心は最早、自由にはならない。
弱さも武器になりえる。こうしたお人よしの「本物の正義の味方」には、特に。
そして指を失った彼女は最早戦力以前の問題だ。
(さて、問題はこの後じゃな…)
樽学者ブクラテスは腕の痛みの中に冷徹な思考を持って、さらに次の一手を思案しながらひとりごちた。
342代理:2010/03/21(日) 13:30:00 ID:FXfselx30
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。30分程度変身不能。
[装備]:アクセルラー、聖剣ズバーン、スコープショット(暁)
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。その為に仲間を探す。
第二行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識

【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。洗脳下での行動に罪悪感。自分の気持ちが分からない。
[装備]:スコープショット(菜月)@轟轟戦隊ボウケンジャー、Vコマンダー@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:アクセルラー(要修理)、@轟轟戦隊ボウケンジャー、未確認支給品(暁確認済)、基本支給品(菜月)、竜也のペットボトル1本、
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※両手の指を失いました。
343代理:2010/03/21(日) 13:31:03 ID:FXfselx30
【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:右腕切断 簡単な応急処置、消毒済み
[装備]:毒薬(効能?)
[道具]:タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック、首輪探知機
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:明石を油断できないが利用価値のある人物と判断。当面は提携の姿勢。
第二行動方針:信用をされていないことを確認。次の手を打つ?
※首輪の制限を知りました。
※センと同じ着衣の者は利用できると考えています。

【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。30分程度変身不能。動揺
[装備]:
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。ロンを倒す。
第一行動方針:これ以上の犠牲は絶対に起こさせない。
第二行動方針:出来れば殺し合いをしている者を止めたい。
※首輪の制限を知りました。 明石やさくらと情報交換を終えました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
※ブクラテスは信用できないと感じています。
※盗聴の可能性を認識
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識
※明石暁に不満を感じています。
344代理:2010/03/21(日) 13:32:52 ID:FXfselx30
【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。30分程度変身不能。動揺
[装備]:
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。ロンを倒す。
第一行動方針:これ以上の犠牲は絶対に起こさせない。
第二行動方針:出来れば殺し合いをしている者を止めたい。
※首輪の制限を知りました。 明石やさくらと情報交換を終えました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
※ブクラテスは信用できないと感じています。
※盗聴の可能性を認識
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識
※明石暁に不満を感じています。

【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。混乱により回路に負担が掛かっている状態。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:どうすればいいのかわからない
※無意識的にさくらへ襲い掛かった状態です。

----

以上、代理投下終了です。
ところで、西堀さくらの状態表ですが指を失ったことについては「状態」の部分で書くべきかと思いましたが、とりあえず仮投下されたまま本投下しました。
345名無しより愛をこめて:2010/03/21(日) 22:52:21 ID:FXfselx30
すみません。竜也の状態表ダブってましたorz
346 ◆hjAE94JkIU :2010/03/22(月) 08:50:10 ID:p4Yl/YMg0
>西堀さくらの状態表ですが指を失ったことについては「状態」の部分で書くべき
ありゃ、そうですね…申し訳ないです。
代理投下ありがとうございました。
>すみません。竜也の状態表ダブってましたorz
お気になさらず。ご迷惑をおかけしてしまいました。
347名無しより愛をこめて:2010/03/22(月) 17:08:16 ID:5+IokWZY0
投下乙。
ギスギスした雰囲気になってきましたね。
竜也はとことん疑心暗鬼とかこういう空気に恵まれてるんだなぁ……。
指を失ったさくら、一時の激痛に見舞われるブクラテスの肉体的な痛みや竜也たちの精神的な痛みが伝わってきました。
さくらの登場回は大抵鬱になるけど、竜也もだんだん……。
GJです。
348 ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/24(水) 11:14:29 ID:hTmsDg850
ただいまより、並樹瞬、ロンを投下します。
349アイスフラワー ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/24(水) 11:15:34 ID:hTmsDg850
「『枯れぬ花』、ですか……」

 先ほどの自分の比喩と合致した表現のできるものが、この殺し合いには何人いるというのだろうか。流石に自らを『正義の味方』と言い切るだけはある。常人ならば命に替えて捨てる意地と正義をいつまでも張り続けるのが彼ら五色の花であった。

「『報告』通り。彼は僅かながら自分の意思を保っていたようですね」

 次元獣の本能に冒され続けているはずの参加者・並樹瞬。
 数時間前の首輪データによると、彼は「次元獣」とは違う意識を持っていたことが判明している。複数の参加者がいるゆえ、ここまで報告が遅れるのは仕方がないことではある。……が、腹立たしい。
 何故、どうして、こんなにも面白いデータが手に入ることがここまで遅れてしまうのか。

 瞬を連れて来た時間軸は彼がメガブルーとなってまだ間もない頃である。つまりは、彼はまだ青い果実。未熟で、これから成長する「はずだった」男。それを強引にもぎ取り、時間の流れに逆らってここに置いたのである。
 そんな彼が、次元獣としての意思を僅かな時間だけでも圧倒するだけの強い意志を持っているということが、ロンにとっては考え難いことなのであった。
 上手く事を運びたい「主催者」のロンとしては障害でしかない事実だが、正義と悪の対局を楽しみたい「傍観者」のロンとしては思わず頬が吊り上がる事実となり得る。

 一時は殺し合いに乗ろうとした男が、まだ平凡な高校生に等しい男が、経験も薄く「ヒーロー」に一歩足りないはずのこの男が、何を願ったかは知らないが次元獣の本能に抗おうと必死になっている。
 破壊衝動への反抗をしているのだ。本来ならば閉ざすはずの心を閉ざしていないのだ。常任離れしている。心が強い。完全には悪に染まらない。

「五色の戦士には『資質』でもあるのでしょうか」

 虚空から声だけが聞こえてくる。ひんやりとした暗闇の中から、女性の声が響いているのだ。どこから覗いているのか、並樹瞬のデータを盗み見ているようで、ロンの心情を察したかのような台詞を吐いた。
350アイスフラワー ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/24(水) 11:16:19 ID:hTmsDg850
「確かにそうですね。彼はデジタイザーを受け取って間もない。ヒーローになって一月も経たない少年ですから、簡単に闇に飲まれるのが自然でしょう。
 しかし、その闇に抗おうとしている。意識が途絶えてからも何度も何度も! まるで彼がメガブルーになるのは仕組まれていたことのようじゃないですか」
「メガブルーを招いたのは誤りでしょうか?」

 彼女はもしや『投票』と『会議』の結果である参加者選択に誤算があったのではないかとロンをおそれる。少しでも彼が怒っていれば、彼女がどんな目に遭うかはわからない。

「いえ、おそらく、『メガレンジャー』なら誰を呼んでも結果は同じだったでしょう。それに、ネジブルーを奮い立たせるのはメガブルーにしかできない事。彼を呼んだのは最良の判断ですよ」

 先ほど『報告』を行った者たちは闇の中で声だけを発する女性の存在に首をかしげていた。彼ら戦闘員兼調査員がこの場で声を発して喋ることはなく、ただジェスチャーで二人は意思疎通していた。

「彼もまた枯れない花のひとり……」
「その表現なら先ほど私が一人で呟きました」
「失礼ですがロン様。それ以上、どんな表現が相応しいのでしょうか?」
「割れぬ皿……では駄目でしょうか?」
「枯れぬ花ならば踏み潰すことができます。しかし、それでは崩すことができません」

 我ながら縁起の悪い表現を使ってしまったものだと思わず苦笑するロン。指摘などせずに『枯れぬ花』と言わせておけば、こんな自分にとってマイナスな表現を引き出すことはなかったのに……と考える。
 ロンの不興を買ったのは確かだが、彼女はあまり沈まなかった。

「余計なことをするのはいけませんね。『枯れぬ花』。その表現が一番適切です。どうも、私たち『邪悪な存在』は余計なことをしたり言ったりが作戦失敗やら不幸やらに繋がりやすい傾向にあるようですからね」
「そんな歴史は既にあなたが砕かれておられますよ。これだけの超人が次々と散っているのですから」

 その言葉はロンの意向にやや反している点がある。ロンの目的はただ超人を潰していくだけではない。ただ楽しむだけでもない。
351アイスフラワー ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/24(水) 11:17:25 ID:hTmsDg850
 誰かの優勝という形で終わらせるのがロンの望みである。そのために、『彼女』やビビデビを召喚しているのだ。勝ち上がるのは一人。正義なる者でも、邪悪なる者でも、外道に堕ちた正義でも……そんな優勝資格は求めない。
 たとえば明石暁のように、もし優勝すればロンに掴みかかろうとする可能性さえある者であっても、優勝者が彼のみなら構わない。ロンの望み通りゲームが終わることで、ロンの勝利となるのだから。

「とはいったものの、余計なことをして盛り上げてみたくなるのも悪ですよ。……『あれ』があればと思ってしまうんです、ついね」
「『あれ』とは?」
「彼ら五色の戦士の最終決戦──『巨大戦』ですよ。どっかのうるさいハエの趣向が感染したようですね……。あれがあれば最高だと思うんですが……」
「私は『至上』をロン様に献上したいと心より願っています」
「それならば、巨大戦で敗れ、絶望に浸るヒーローを見させてもらいましょう。最終決戦に相応しい敵も用意してあげてください」
「手配して参ります。……希望する兵器はありますか?」
「いえ。お好きに」

 彼女から気配というものが消えた。行動の早さは彼女を高く買ったロンを満足させるには充分であった。ロンの助手という格付けをするには充分すぎる能力を持っていたし、これといってロンを苛立たせることはなかった。

「私は並樹瞬の様子見といきますか」

─────

「よくこんな状態で意思を保てたものです」

 たとえメガレンジャーが見ても、これを並樹瞬だと判別できるものだろうか。醜い異形となり、氷の中に閉じ込められている。
 氷の間から僅かに見える目が中空を見上げているようで、そこに意識があるとは到底思えない。場所が場所であるため、下から肌寒さを感じるのではあるが、これは別の意味で鳥肌を立たせられる。
 この怪物が僅かでも心音を鳴らしていることさえ、通常は判別できないだろう。まるで街で暴れた怪物の死体を凍結させたアニメのようだ。

352アイスフラワー ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/24(水) 11:18:45 ID:hTmsDg850
「彼の生死は『彼を救おうとしている方々』に任せるとしましょう」

 何名かの参加者の望むとおり、彼を次元獣の呪縛から救い出すことも可能であった。だが、ロンがそんなことをするわけもなく、その倉庫から立ち去ろうとするロン。

 ──ロン、お前を必ず倒す

 不意に、殺気。
 ロンの背筋を一瞬だけ凍らせる殺気が、どこからともなく発された。
 想像はついている。
 これが、彼が保っている「僅かな意思」なのだ。いや、おそらく意思ですらない。本能的に発されたものだろう。ロンの姿が相当に憎たらしいのか。

 見れば、氷柱には先ほどまではついていなかったはずの小さな皹が入っていた。
 氷を砕くには足りない、本当に小さな皹である。これが彼の渾身の闘気の結晶なのだろう。だが、自分を救うには至っていない。

「私がここにいる間にどれだけの皹ができるか見守るのも悪くありませんが……ひとつだけ教えてあげましょう。いずれ、あなたを救おうとしている者が来ます。なので私は名残惜しくもここから退散しなければなりません」

 ロンの薄気味悪い笑顔の目と、先ほどまで中空を見上げていたはずの瞬の目が、同じように互いを見つめていた。
 通常なら軽いホラーになりかねない現象だが、ロンは流石に冷静であった。化け物には毎日のように会っている。人間を見ることのほうが珍しいくらいだ。
 今更、化物に睨まれただけで何だというのだ。

「……そうそう、あなたのために優勝までしようとしてくれている者もいましたね。あなたなら知っているでしょうが。……あなたのお友達はつくづくお優しい。羨ましい限りです。泣かせますね……クックックッ」

 無論、ロンの言っている意味は笑い泣きである。ただの皮肉ではない。
 そんな相手への笑いの反面、相手にこの言葉を理解する能力が備わっているかもわからないのにベラベラと喋っている自分にも苦笑していた。

「それでは……また、『人の姿で』会えることを祈って……」

─────
353アイスフラワー ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/24(水) 16:42:10 ID:hTmsDg850
 ロンの異変は左手に襲い掛かっていた。どこか冷たい左腕。まるで左腕が凍っていくようである。
 並樹瞬。彼が氷で連想したのは氷技を特技とするネジビザールではなく、その名前であった。
 ネジビザールはあの場にはいなかった。すると、自動的に左手の冷たさの正体は瞬となる。それ以外、あの場所にはいないのだから。
 ロンは自分の左手に何があったのか、腕をまくって確認した。
 すると、氷の破片が突き刺さっていて、その傷の周りを侵食していくようにどんどん腕が凍っていた。
 考えられる攻撃手段は、あの「皹」だ。
 自分の周りを覆う氷を弾丸としてロンに放ち、その結果あの皹が生まれた……それがロンの腕を凍らせていた原因なのではないだろうか。考え直すと、あの皹の箇所には「そこに氷があったような」小さな窪みが存在していたような気もする。
 人間の瞬ならばできないだろうが、先ほどあの場にいたのは次元獣の瞬。「人間」としての知能と「獣」としての能力を合体させた能力だったのだろう。
 先ほどの敵であったネジビザールには効かない技だと思ったからこそ、この技をロンにぶつけたのか。

「面白い……。ネジブルーがあそこまで執着するのも納得がいきますね。ここに来てから私にまともな攻撃ができた人物はあなただけですよ」

 ロンは呟き、左手に力を込めると自分の手を覆おうとしていた氷の膜を粉々に吹き飛ばした。


【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:H-6海岸 1日目 昼
[状態]:全身に打撲、傷あり。次元獣化。氷漬けにされ仮死状態。倉庫の中。
[装備]:デジタイザー
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:暴れる。
[備考]
瞬の支給品一式はH-7エリアに放置されています。
本能的に瞬の意思が現れることもあるようです。
氷柱に小さな皹が入りました。
354 ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/24(水) 16:43:13 ID:hTmsDg850
時間を置いたので自分で投下しました。
これで投下終了です。
指摘、修正要請、感想などお願いします。
355名無しより愛をこめて:2010/03/24(水) 16:57:20 ID:Mn/6NF/Z0
おっと、支援と代理投下が間に合わずに申し訳ありません。


お二方とも投下乙!
面白かったです。
両作ともすごく雰囲気が出てていいなと思いました。
GJ!
356 ◆Rw0gclw.Ew :2010/03/25(木) 00:31:22 ID:Tj8bPFls0
すみません。瞬の状態表に誤りがありましたので修正版を。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:H-6海岸 1日目 夕方
[状態]:全身に打撲、傷あり。次元獣化。氷漬けにされ仮死状態。倉庫の中。
[装備]:デジタイザー
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:暴れる。
[備考]
瞬の支給品一式はH-7エリアに放置されています。
本能的に瞬の意思が現れることもあるようです。
氷柱に小さな皹が入りました。
357 ◆LwcaJhJVmo :2010/03/25(木) 00:35:25 ID:Tj8bPFls0
重ね重ねすみません。
トリップを思い出しましたので、まとめ収録の際にはこちらのトリでお願いします。
358名無しより愛をこめて:2010/03/27(土) 11:43:30 ID:St3C6QSoQ
予約ラッシュキター!
359名無しより愛をこめて:2010/03/28(日) 12:11:26 ID:0u/FpMYe0
遅ればせながら、感想をば。

>超人の誤算
ブクラテスの狡猾さが際立った一本。
それぞれがノイズを抱えながらも前向きに進もうとしているのに、どうもうまくいかない面々。
どうにも不安要素が振り払えませんが、はてさて。

>アイスフラワー
氷漬けの上に次元獣化した瞬ですが、その意思は消えず、今後に期待が持てる展開。
また、それとは対照的に謎の女部下を携えて、まだまだ余裕綽々のロン。
今後の様々な事象が匂わされた展開を期待させる一本でした。

お二方とも面白かったです。
360名無しより愛をこめて:2010/03/28(日) 20:04:03 ID:q3vcFyXY0
自分流のSSタイトル元ネタ考察投下します。
間違ってるかもしれませんがその辺は大目に見てください。

サブタイに「○○と○○」の形式が多いのは忍風戦隊ハリケンジャーの影響と思われる。
002:赤と黒、003:災魔とニンジャ、011:献身と勘違い、017:太陽と不滅の牙、024:青い炎とレスキュー魂、044:策略と疑問、056:龍と悪魔の契約(?)

001:正義ノミカタ……炎神戦隊ゴーオンジャー 第1話「正義ノミカタ」
006:戦う交通安全リターンズ!……激走戦隊カーレンジャーのキャッチフレーズ「戦う交通安全」
008:危険な遊び……鳥人戦隊ジェットマン 第11話「危険な遊び」
009:ミッドナイト・ドッグファイト
 特捜戦隊デカレンジャー風サブタイトル(カタカナ統一)
 湾岸ミッドナイト 第10話「ドッグ・ファイト」
010:シオンの主義……未来戦隊タイムレンジャー 第21話「シオンの流儀」
013:地獄から来た恐竜野郎……激走戦隊カーレンジャー 第12話「宇宙から来た信号野郎」
014:オールド・ジェネレーションズ……特捜戦隊デカレンジャー風サブタイトル(カタカナ統一)
015:夢×命×未来……ハンター×ハンター風サブタイトル(○○×△△×□□)
018:阿修羅の如く……ドラマ「阿修羅のごとく」
021:ワイルドスワン・クールブレイン……特捜戦隊デカレンジャー 第47話「ワイルドハート・クールブレイン」
026:最期に見た夢……白い巨搭(韓国版) 第28話「最期に見た夢」
033:宇宙コギャルの憂鬱
 小説「涼宮ハルヒの憂鬱」
 未来戦隊タイムレンジャー 第9話「ドンの憂鬱」
034:未来はヒカルの手の中……逆境無頼カイジ オープニングテーマ「未来は僕らの手の中」(ブルーハーツのアレンジ)
036:桃色天然娘
 侍戦隊シンケンジャー風サブタイトル?(全部漢字・この時放送始まってたっけ?)
 検索するとエロサイトばっかり引っかかった……。
042:Nightmare……バンキュリアの分離名「ナイとメア」
043:ウメコはどこへ消えた?……書籍「チーズはどこへ消えた?」
361名無しより愛をこめて:2010/03/28(日) 20:07:24 ID:q3vcFyXY0
057:Chance or Death……救急戦隊ゴーゴーファイブ 挿入歌「Chance or Death」
063:仄暗い井戸の底から……ホラー映画「仄暗い水の底から」
064:ワシの占いは当たる……仮面ライダー龍騎の登場人物:手塚海之の口癖「俺の占いは当たる」
066:みどり色の罠……秘密戦隊ゴレンジャー風サブタイトル(色が入る)
078:不信なんてぶっ飛ばせ!……Xbox360のCMソング 「不景気なんてぶっ飛ばせ!」
079:『キラリ☆宝物』……ラブひな Again オープニングテーマ「『キラリ☆宝物』」
088:シグナルマンも走れば………諺「犬も歩けば棒に当たる」
090:死体は語る……小説「死体は語る」
097:誤解されやすい男!シグナルマン……東映版スパイダーマンの名乗り口調の一部「○○な男!スパイダーマン!」
101:冴えたやり方
 小説「たったひとつの冴えたやりかた」
 スパイラル〜推理の絆〜(アニメ) 第10話「たったひとつの冴えたやり方」
108:エリアの中心で、愛をさけぶ……小説「世界の中心で、愛をさけぶ」
112:竜也のなく頃に・絆……ゲーム「ひぐらしのなく頃に・絆」
114:明ルイ未来……化物語にこんな看板があったような……。

サクラチル、蜥蜴の尻尾切り、アイスフラワーなどは内容とかかっている。

以上、推測です。
同じ内容のものが載ってるサイトは私のサイトですので転載ではありません。
何か色々間違ってたりするかも。
362名無しより愛をこめて:2010/03/28(日) 21:20:22 ID:9n5T6U6Q0
さりげなく自サイトの宣伝とかないわ
363名無しより愛をこめて:2010/03/28(日) 21:26:18 ID:q3vcFyXY0
別に自サイトの名前を出しているわけでもないので宣伝のつもりはないのですが?
364 ◆LwcaJhJVmo :2010/03/31(水) 12:50:17 ID:nZY8lVmk0
理央以外全員予約されましたねww
驚きましたww

それでは剣将ブドーを投下します。
365新しい命 ◆LwcaJhJVmo :2010/03/31(水) 12:51:12 ID:nZY8lVmk0
「禁止エリアは免れたか……?」

 ブドーは既にオアシスのある地帯を抜け、何もない砂漠を彷徨っていた。
 オアシスからは随分と遠ざかったが、ここが禁止エリアを抜けているかはわからない。
 本来のブドーならば遠ざかった距離などを推測しておそらく自分がいる場所が禁止エリアであるかどうかなどは見抜けただろう。
 それができていないということは、今のブドーは同行者の死に多少なりとも動揺していることだろう。
 思えば、ブドーがここに来てから、同行者といえばただ一人。スモーキーのみであった。
 通常なら、動揺などしないはずである。誰かの死に悲しんだり、怒ったりする感情など、とうの昔──人が想像し切れぬほど以前に捨てているのだ。
 破壊対象の死には悲しむことはないし、仲間も死ぬ覚悟のある者のみだったから死に悲しみはしなかった。……少なくとも、ブドーの仲間は「巻き込まれて」死に近づけられた存在ではなかった。だから、死ぬ時に悲しみなど沸かず、ただ感謝の気持ちだけを念じた。
 ……かといって、今の気持ちは「悲しみ」というものではない。
 ただ心が曇っている。涙は出ないし、それが出る瞬間の感情でもない。もっとも、そんなものは忘れてしまったが。
 オアシスから砂漠に戻った、今の気持ちに似ているだろう。

 惜しい。

 死して惜しいと感じる存在なのだ。あの口うるさい猫のランプは。
 誰が殺し合いに乗っている存在の身を庇い死んだのか? ギンガマンが一度でもそんなことをしただろうか? ブドー自身を含む多くの仲間はギンガマンに庇われたか?
 ブドーの中では、スモーキーはギンガマン以上に、「その心」に溢れている。
 その心とはつまり、ブドーたちが捨てた心。正義感。
 しかし、何故その心を持つ者の死が惜しいと感じるのか。つまりは、それはギンガマンが敵であった根本的な理由だ。もしギンガマンにそれだけの正義感があったとして、ブドーはギンガマンを認めただろうか。

「ヒカル、か……」

 スモーキーが託した存在・ヒカル。それと同じ名前の男をブドーは知っている。
366新しい命 ◆LwcaJhJVmo :2010/03/31(水) 12:52:18 ID:nZY8lVmk0
 ギンガイエロー。ヒカル。
 おそらくは、スモーキーが言う彼もギンガイエローと差異はない存在だ。バルバンの敵になるなら殺さなければならない存在だ。
 合流しても意見に相違は生まれるだろうし、もしかすれば交戦しかねない。

(……だが、この命、拙者だけの命ではない!)

 スモーキーがいなければ、ブドーはこの場にいなかった。代わりにスモーキーがいるはずだった席に、ブドーが座っているだけだ。
 本来ならば、ここにいるのはブドーでなくてスモーキーかもしれない。
 それなら、ここにある命はブドーのものだけでない。スモーキーの命でもあるのだと考えていいだろう。
 スモーキーの望むとおりに動くのは、「スモーキーの命」の勝手だ。

 ならば、スモーキーが望むこととは──

 一つ。ブドーが生きること。
 これは既にブドーが自分自身の意思で決めている。

 二つ。殺し合いをしないこと。
 殺し合いを見ることを、スモーキーは望んでいなかった。

 三つ。ヒカルと合流すること。
 彼の知り合いであるヒカルとの合流は彼が最後に言い残したことの一つであった。
367新しい命 ◆LwcaJhJVmo :2010/03/31(水) 12:54:12 ID:nZY8lVmk0
 スモーキーの望みか、ブドーの望みか。
 ……といっても、今のブドーに望みはなかった。やるべきことは果たしたのだから。
 強いて言うなら、彼の望みは──

「いいだろう。すべて、おぬしの望むとおりにしよう」

 スモーキーの死を尊重すること。その意思を引き継ぐこと。それがブドーの望みであった。
 殺し合いはしない。ブドーなりの「正義感」で事を運ぶ。
 ロンを倒す。ヒカルと合流し、徒党を組む。
 そしてヒカルにスモーキーのことを伝える。
 他にもスモーキーの知り合いがいたら徒党を組む。
 あとは、生きる。優勝という形ではなく、ただ生きる。這っても生きる。

 一度目は死んで甦った。二度目は死ぬはずだった。ブドーがこうして立って歩いているのは奇跡だ。奇跡で命を保っている。
 今後もいつ死ぬかはわからない。これが殺し合いだからで、ブドーが怪人だからだ。
 理央も次に会えばブドーを襲うとも知れないし、ブドーの悪評は既にこのゲーム全体に染み渡っているかもしれない。
 墓場はいくらでもある。だが、そんな中でプライドを捨ててでも生き残るしかない。

(それが、友……いや、同行者の願いとあらば仕方があるまい)

 そう心の中で言いなおしている自分に苦笑する。
 「同行者」ならばその願いを聞く義理がどこにあるのだろう。
 やはり友と言いなおすこともできるが……やめた。
 その言葉はスモーキーにとっても、ブドーにとっても相応しくない。
368新しい命 ◆LwcaJhJVmo :2010/03/31(水) 12:54:58 ID:nZY8lVmk0
 スモーキーにとってブドーは「大将」だ。友でない。
 ブドーにとってスモーキーは「猫質」だ。友でない。
 それが彼らの中で最も安定した関係になるだろう。「友」などと一言で青臭い言葉にされてしまっては「悪」の剣将ブドーも顔を大きくして歩けない。
 だが、猫質にしてはブドーに何かを教えてくれた気がする。そして、ブドーはこれからする行動で何かを教えてもらえる気がする。

「バルバンは……あるいはギンガマンは……拙者の死で何か掴んだだろうか……。拙者は掴んだぞ…………。拙者の意思に収まらぬ何かを!」

 あるはずがない。バルバンが幹部一人の死で何かを掴むことなど。そして、ギンガマンも敵の死に何かを見出すことなどない。サンバッシュが死んだ時、バルバンはそうであった。部下たちの死でも、ブドーはただその死に礼儀を込めただけで、何も掴んではいなかった。

「……五時か。だが、首は跳ねていない。禁止エリアは回避したか」

 ブドーは時刻を確認した。ちょうど五時を少し過ぎたあたりだった。

「おぬしのもう一つの墓には花を添えられんな」

 スモーキーが死んだエリアは禁止エリアとなった。生きたいならもう立ち入ることはできない。
 スモーキーが死んだのはマジランプの中だが、マジランプの外にはあのオアシスがあったのだ。もうそこに入ることはできない。

「行くか。……拙者たちにはやるべきことがある……」

 戦いではなく協定を申し出るためというブドーらしからぬ目的がある。
 この体がブドーの命のみで体現されているものではなく、そこにスモーキーの命があるのなら、自分らしくなくても構わないだろう……そう思っているからだ。
 ブドーは砂漠の外にスモーキーの仲間を捜して歩き始めた。
369新しい命 ◆LwcaJhJVmo :2010/03/31(水) 12:55:44 ID:nZY8lVmk0
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:F-8砂漠 1日目 夕方
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。全身打撲。2時間の能力制限
[装備]:手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。マジランプ@魔法戦隊マジレンジャー
[思考]
基本方針:スモーキーの願いに報いる。
第一行動方針:生きる。殺し合いに乗らない。ヒカルと合流する。
第ニ行動方針:武器の調達。
※首輪の制限に気が付きました。

----

以上、投下終了です。
感想、修正点、問題点、指摘などありましたらお願いします。
370名無しより愛をこめて:2010/04/02(金) 17:02:13 ID:B377CjDB0
投下乙です。
ブドー、ヒカルと会えるだろうか。
ブドーがやるべき事をなせると信じてGJ!
371 ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:46:01 ID:UQYnyd3c0
すみません。
本当に申し訳ありません。
仮眠のつもりが寝てしまいました。
とはいえその時点で日付は変わっていたかと思います。
重ね重ね申し訳ありませんでした。

とりあえず投下を始めます。投下しきれない分は隙を見て空き時間か昼休みに。
ではよろしくお願いいたします
372Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:50:38 ID:UQYnyd3c0

Star where you lead me ――― 砂漠を照らす星


・本官、セン、同行者ジルフィーザ。
 理央へ、スモーキーならびにブドーを託し西へ。
 ルートは砂漠抜け、目的地の市街地へ向かう。

センを先頭にジルフィーザ、本官の順に進む。
時間帯にして一番暑い頃合いなのだろう。往路よりも、道のりがとても長いように思う。

時折センが問いかけるが、ジルフィーザは多くを語らず。
必要最低限な情報を交わしたのみ。(スモーキーの無事も確認)
本官はと言えば、得意分野にも関わらずなぜか上手く話題を提供出来ず、独り言に終わることも数回あり。
この時ばかりは砂漠の暑さがありがたかった。
(この件については目下猛省中である。誰も通らない日々を、長く送りつづけたせいだろうか?)
暑さもあって終始口数は少なく、しかし何事もなく砂漠を渡り切る。


・都市、着(出発地点より少し離れたF7に到着)小休憩。

久しぶりに足底に伝わるアスファルトの感触を踏み締め、一同、砂を払い、喉を潤す。
一息つくと誰からともなくオアシスを振り返る。
三者三様、様々な思いを胸に抱いていたと推察、立ち上る蜃気楼を暫時見つめた。
(ちなみに本官は、蜃気楼の向こうから雲を突き破る勢いで本官の元へ駆け寄って来るスモーキーと、
ブドーの肩を抱いたリオの姿を思い描き、今か今かと待ち望んだのだがその時点で姿を確認する事は叶わなかった)

そうしてオアシスへ思いを馳せていた時の事だ。ふと何気なく、本官はジルフィーザへ視線を移した。
ジルフィーザは常時、表情など読み取れない般若のような形相なのだが。
その時オアシスへ向けた眼差しには……。
373Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:51:48 ID:UQYnyd3c0
何といえばよいだろう。
そう、敬意というか謙虚というか、そういった思いが込められていたように感じられたのだ。


・数分後、ジルフィーザより弟さんを捜しに行くとの申し出。
 一応、同行を提案するも却下される。
 行く先は、おそらくF7並びにG7辺り?もしくはG6へ抜け海岸エリアを目指す?
 (なぜならば、E7付近に弟さんが居なかったのは、本官たちからの情報で明白であるゆえ)
 センから最後の質問(誘導尋問か?)

「もし、今、一つだけ願いが叶うとしたらジルフィーザさんは何を願いますか?」
「願いだと……?」
ジルフィーザが口を開きかけるも、

「フッ、願い「本官ならばもちろん無事スモーキーが帰ることを願う!」……わ」

本官、思わず力が入りつい本心を口にする。そのためジルフィーザと被り、言葉を聞き逃す。
しかしそこはセンがフォローしてくれているであろうから、問題ないだろう。
(本官からもつい言質を引き出すとはチーキュの捜査テクニックもたいしたものである)


・ジルフィーザと別れ、セン、シンキングタイム。
 本官もそれに倣い逆立ち。

特に何も思いつかない。よって体勢を直しセンを待つが……。
長考。
待ちきれずセンへ切り出す。

「セン、どうしたんだ?ジルフィーザのことか?」
本官の問いに逆立ちのまま答えるセン。
374Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:52:35 ID:UQYnyd3c0
「いや、とりあえず今のところはね。心配ないと思う」
「うむうむ、殺し合いよりも弟さんのことで精一杯だろうしなぁ」
「うん、その確信を持つためには話を聞く必要があった。それもあるからわざと迂回して歩いて来たんだ」
「それでか!長く感じた道のりに合点がいった。いや!気付いていたが、センが迷ったんじゃないかと思ったのだ。はははははっ」
あー良かった。もしや体力が衰えたか感覚器が狂ったのではないかと心配していたのだ。
ほっとしたところで、
「よーし、まだ来ないようだし、ここは一旦戻った方がいいんじゃないか?」
「それが正解かな……」
「菜月ちゃんたちも心配しているだろう。理央と別れてからでも、かなりの時間が経っているのだから」
時計を確認。ゆうに一時間以上は経っている。
「あぁ、解ってる」
という割りに厳しい表情のセン。
「シグナルマンさん、念のために聞くけど。まだ、姿は見えないよね?」
「あぁ、誰も通らない……」
砂漠へ目を凝らすが、それらしき人影など見えない。
センから諦めのようなため息が漏れる。
センの心配は理央が来ないからだったのだ。
迂回して来たのには、理央が追いつけるようにとの意味もあったのだろう。
しかし、理央は善処すると約束してくれた。仮に激闘の末、ブドーが命を落としてもスモーキーを連れて戻ってくるだろうし。
まさか理央がヤラレタ……。いや〜、そうだとしても死ぬ前にスモーキーの事をことづけるだろうし。
待て。先程、盗み聞きしたセンとジルフィーザの会話では、スモーキーがブドーを大将だとかなんだとか……。

……。………。…………。
まさか、いや、そんなことが……。ないない、そんなことは本官ではなくブドーに心を開くなど。
おそらく……。……。………。…………。(※注1)

そして熟考により本官はすべてを察し、
「そうだ!」
375Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:54:46 ID:UQYnyd3c0
閃いたのだ。
「まだ戦っていないんじゃないか!?」
「……それはありえない」
「だけど、ブドーが時間にキチンとしていたらどうだ?約束を守るならば時間も守るはずだ!」
「……」
「よく考えてみるんだ。悪人ではあるが、ブドーは一本の筋を通す男だろう」
そこを押していたのはセンだったはずなのだが。
センの杞憂だ。本官はそう判断していた。

「……遅い、か」

一言呟いてセンは逆立ちを止めた。
納得したようだ。やはり本官の考えが正しいのだ。きっと合流は次の放送前後だろう。

「よし、そうと解れば急いで戻ろう。菜月ちゃんを安心させてあげなければ!」

少なくとも、その時までは。
376Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:57:47 ID:UQYnyd3c0
もう二度と、菜月ちゃんとスモーキーに会えないだなどと、本官の頭の片隅にも無かったのである。
再び会えると本心から思っていたのだ。

そしてセンの呟いた『遅い』という一言。
本官がその呟きの本当の意味を知るのは、もう少し後の事である。
                                                             
                         
※注1:追記
 誰しも、慕い、慕われたいと欲する。
 そしてそれが叶わぬとは認めたくないものである。
 時にその内なる葛藤は感情揺さ振り、思考を束縛し、大切な真実をすり替えてしまう。
 この思いが本官自らの、プライドとエゴによる身勝手で一方通行な欲求だと……。
 そう気付くのも、まだ少し先の事であった。

                       [シグナルマン・ポリス・コバーン  心の日誌より 抜粋]

377Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:58:20 ID:UQYnyd3c0
【名前】江成仙一@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:Episode.12後
[現在地]:F-7都市 1日目 夕方
[状態]:ネジシルバースーツを装着(メット未装着)。左肘複雑骨折、全身打撲(応急処置済)。
[装備]:ネジシルバースーツ。ネジブレイザー。SPライセンス。一つ目のライフル銃の説明書。真墨の首輪
[道具]:バンキュリアの首輪。
[思考]
基本行動方針:仲間たちと合流して脱出。
第一行動方針:理央が戻らないことに対して悪い想像。
第二行動方針:ブドーを仲間に引き入れるため画策。連れ帰ってジャッジを下す。
第三行動方針:シュリケンジャーを危険視。 ジルフィーザについては今のところ
※首輪の制限を知りました。
※ネジシルバースーツは多少丈夫なだけで特殊な効果はありません。ただし、制限時間もありません。

【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:F-7都市 1日目 夕方 
[状態]:ダメージ小。腹に打撲痕。少し気もちが回復。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(残数1個)、ウイングガントレッド@鳥人戦隊ジェットマン、メレの釵 、基本支給品一式
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:自分の無力さに強い怒りと悲しみ。
第二行動方針:菜月たちのところへ、無事と経過を報告したい。そしてスモーキーたちを待つ。
第三行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第四行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。
※首輪の制限を知りました。
378Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 06:58:46 ID:UQYnyd3c0
【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:F-7都市 1日目 夕方 
[状態]:健康。
[装備]:杖
[道具]:一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)、サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー、支給品一式(バンキュリア)
[思考]
基本行動方針:ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップを捜す。
第二行動方針:ドロップに会い、真意を問う。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。


379Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:02:28 ID:UQYnyd3c0
Star where you lead me ――― 星に賢者は導かれ


「……さくらっ!」
「さくらさんッ!?」

声を遠く感じる。
声だけではなく、目に映る物も。
さくら視覚が鮮明に捕らえるのはマーフィーだけで駆け寄ってくる明石も竜也も、フィルターの向かうにいるように何故か不鮮明で。
そう、それはまるでクライマックスのようだ。
憎しみに支配されたロボットが、その感情に衝き動かされヒロインの命を奪う。
映画のワンシーンのように。
マーフィーとさくらだけ時の流れが変わってしまったかのように。


(……どうして?)

手から血が滴り落ちる。
マーフィーの口角が赤く染まっている。
転がった十本の指。それを凝視するさくらの視線を遮断するように明石のジャケットがさくらの手を包む。
行き場を失ったさくらの視線がマーフィーへ注がれた。

(違う……。違います。マーフィー、ここだと言ったじゃないですか)

振り絞るような遠吠え。
機械音と呼ぶには余りにも生々しい。
マーフィー中で噴出した痛みが、発する慟哭。
380Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:03:21 ID:UQYnyd3c0
憎しみと言うよりも、痛みを孕んだ唸り声を上げて。
再びマーフィーはさくらへ踊りかかった。

さくらは目を伏せず、真直ぐに。
さくらの首筋へマーフィーが歯牙を突き立てる瞬間を待っていた。

そして、
マーフィーの名を呼ぶ竜也の声。
明石がさくらを引き寄せ抱き留める。
抱き留めてくれた力強い腕。
その腕と自分が求めている物とのギャップがただ悲しかった。

(……いいんです)

虚ろな呟きは声にならない。
拳で明石を押し戻そうとする。

(おぼろさんや菜月……二人は私のせいで……)

明石の胸に押し当てた拳。血の滲む明石のジャケットに包まれた、拳。
足元には歪に引き千切られた指。

(だ……だから、マーフィーに……)

明石の肩越しに見える、竜也に阻まれたマーフィー。
知らなかった感情を、苦痛を植えつけられた可哀相なマーフィー。

(それぐらいの苦痛はっ……殺されたって仕方が……っ!)
「ヴアウーーーゥッ!ウウウヴゥゥゥゥッーーーー!!!!」

マーフィーの唸りが拒絶しているようで、見透かされているようでさくらは竦んだ。
381Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:09:24 ID:UQYnyd3c0
それぐらいの苦痛は、首を噛み千切られて殺されても当然なのだ……。
まるでそれを否定するように、マーフィーは踵を返しさくらから遠ざかる。
どんどん遠ざかる。どんどんどんどん。

「いや……マーフィー待って……」

指が無いのだ。
笑ってしまうくらい戦力としては問題外。

(私……。私……は……本当は……)

信頼できる仲間だからこそ、明石はさくらを見捨てない。
明石の足手まといなるくらいなら、信頼と言う名の枷で縛り付けてしまうぐらいなら……。

「しっかりしろ!さくら!!」

肩を掴む明石の腕が熱い。
たださくらを包みこむ揺るぎ無い信頼、それだけを感じるのが千切られた痛みよりもさくらを苦しめる。
もう何もできない。もう戦えない。もうやりたいことなんて見つけられない。

―――西堀さくらは、もう守られるだけのただのお人形!!!!

叫びだしたくても声が出せない!
382Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:10:41 ID:UQYnyd3c0
取り乱したくても取り乱せない!
狂いたくても狂えない!

だって全部私のせいなんですから。手を離してください。私は、私はもう……。

私はもう守られるだけのお人形なんですから!私はもう守られるだけのお人形なんですから!私はもう守られるだけのっ――――――――――――  


「ばかもーーーーん!!!!!!」


ブクラテスの声がした。

(もう私に、構わないで……)

そう、自分に構わず助けて欲しいと願う者を助けて、と。
さくらは身を震わせる。

「明石!それでは出血は止まらんぞ」
突然、ブクラテスはさくらの手を掴むと高く掲げた。
「えーい、竜也!おまえは何をしとるんじゃー!!」
呆気に取られた明石と竜也を叱り飛ばし、そして的確に傷ついたさくらへの処置を指示する。
誰よりも冷静にその場を観察し、かつ最適な時を見計らい、一瞬でその場を変えた。
383Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:17:37 ID:UQYnyd3c0
完璧なシナリオだった。
明石の目には安堵。竜也の目には感嘆。180度、ブクラテスを組み直す完璧なシナリオ。


さくらは、自分の血で汚れた樽学者を大きく目を見開いて、見ていた。


的確な指示だったとはいえあくまで出血が止まっただけだ。竜也を先導に4人は街灯に吊されたドラッグストアの看板を辿り足を早める。

しかし明石に肩を抱かれながら進むさくらの足が止まったのは、
『SWEETS PARADISE』
赤と白、そしてハートに彩られた場所だった。

広い店内で、明石と竜也が少し離れて座っていた。
明石に比べ達也はどことなく落ち着つかない。
「大丈夫ですかね」
ドラッグストアから調達して来た包帯を巻き取りながら明石へ問い掛けた。
「じーさんか?」
「何でブクラテスさんなんですか。さくらさんですよ」
さくらは手当てが終わると休憩を取るため厨房へ入って行った。
うろたえる竜也を諭し、傷ついた者同士、ワシなら気持ちも解るとブクラテスがついていったのだが。
「フッ、さくらなら心配ない。あいつは何度でも自分で這い上がってくる。そんなヤツだ」
そう断言すると明石はハート型のクッションを背にチェアに寝転んだ。
「果報は寝て待て、ですか?」
確信があるから余裕がなんだろうなと思いつつ。
384Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:19:13 ID:UQYnyd3c0
(だけど、ハートが似合わない人だ)
竜也は込み上げる笑いを噛み殺した。




「まぁ、なんじゃ、落ち着いたようじゃなあ」
「……はい」

伏し目がちに力無く頷く。
うっすらと目尻から瞳を満たす涙。

普通ならそうだろう。
しかし……。

あーむ、ぱく、モグモグモグモグ。

(なんじゃコイツはーーー!いやはや指を失い自暴自棄になったか、それとも狂ったか?
うーむ、しかしどちらも当て嵌まらん。コヤツ、どうみても……)

寛いでいる。
そう、どうみても……。
まるで自室で大人買いしたスイーツを味わうように、さくらは寛いでいるように見えるのだ。
瞳には至福の色さえ見受けられ、ブクラテスの手から指ごと囓られるのではあるまいかという勢いでシュークリームに齧り付く。
「……シェリンダでも、もう少しマシな食べ方をするじゃろうよ」
「ひかたがありまへん。あなたは片手れすし、私はこんな状態れすから」
385Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:22:12 ID:UQYnyd3c0
さらりと言ってのけ、モグモグと咀嚼に集中するさくら。
次に出たのは、
「ふ〜」
……呆れるブクラテスを尻目に感嘆の溜息を漏らし、ふっくらとしたチェリーピンクの唇の端に付いたクリームを器用に舌で舐め取った。
「慰め役を買ってでたのがワシでよかったのぅ。これでは100年の恋も醒め……」
「次!よろしいですか?」
さくらはブクラテスの言葉を遮り次の催促をする。

(仕方があるまい。ここは今しばらく辛抱じゃ。慰め役を買って出たのはワシじゃからな。しかし竜也を意思のままに操るためとはいえ……)

あの時は、まさにブクラテスに取っては千載一遇のチャンスだった。
そしてそのチャンスを逃さずしっかり掴んだ。
ブクラテスは老獪な樽学者から好々爺へ。
そう華麗なるクラスチェンジを遂げたまでは良かったが、踏み台に使ったさくらの行動がいまひとつ読み切れない。
(放心状態の内にコヤツを潰して置こうと思ったんじゃが、一応、正気は取り戻しているようじゃ。
あの場を煽りたてたワシ恨んでいてもおかしくないはずじゃが、その様子もない?わからん……。
わからんわい。そしてこの食欲もわからん!一体何を狙っておる?)

シュンシュンと音を立てはじめたティーポットから紅茶をついでやりながら、横目で無数に散らばったスイーツの包みを見る。
さくらは包帯を巻かれてどら〇モンのようになった両手の掌でカップを包み紅茶を啜った。

(いや……、気丈に振る舞っているだけかもしれん。少しカマを掛けて見るかのぅ)

ブクラテスはそっと奥の手をテーブルに置いた。

「その包みは……」
386Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:25:56 ID:UQYnyd3c0
「おお、おまえさん甘い物と言ったのでな。明石から預かったんじゃが」

嘘はついていない。
さくら両手のハンデをカバー出来る物はないかと竜也が全員の支給品を探した。
渡されたのは明石からだ。
一見この包みの中味はただのクッキー。
詳細にも菓子店の名とプレゼントのクッキーとあるだけ。
(ただの菓子なら食料とすればよかろう。それだけではあるまい)
ブクラテスの読みとおり。
袋の底に小箱に入った指輪があったのだ。
(明石から渡された袋に指輪、しかもエンゲージリングじゃ。一本たりとも指のないコヤツには何とも効果的な演出じゃわい。
もはや心の崩壊は目の前じゃな)

ブクラテスの思惑を知らず、さくらは不器用な手つきで袋を逆さまに振る。
「これ……」
クッキーと一緒に出てきた小さなケースにさくらは眉をひそめる。
「……開けて頂けますか?」
「うむ」
(おなごなら何が入っているかの想像はついているはずじゃ。しかしそれでも確かめたい、複雑なところか)
ブクラテスは親指と人差し指で小箱をこじ開けた。横目でさくらの顔を盗み見ながらだ。
「開けるぞ」
パコッと蓋が開き中の指輪が煌めく。
さくらの目が大きく見開く。
「え……!」
「す、すまん!まさかこんな物が……」
387Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:28:36 ID:UQYnyd3c0
「エンゲージリング、ですね」
「ぐっ、明石のヤツ。隠れてこのような物を用意して!ああ何と言うことじゃ。いかん、見てはいか…」
わざとらしいような気もしたが大げさに騒ぎ立てるブクラテス。だがさくらは、
「ハズレ……です」
「なんじゃと?」
さくらはうろたえるどころか淡々とした口調で続ける。
「ええ、いわゆるハズレ支給品です」
「こんな時に何じゃが、おそらく、それは明石がおまえさんに用意したものじゃろう……。運命は残酷じゃて」
「チーフから私へ指輪ですか?それはありえません」
さくらは紅茶のカップを置いてにっこりとブクラテスに微笑んだ。

「ですが着眼点は素晴らしいですね。さすが宇宙に名高い樽学者といったところでしょうか」

ブクラテスは慌てて、しかし誠意を込めたように否定する。
「着眼点?何のことじゃ。誤解せんでくれ」
さくらは聞こえぬふりで、記憶を手繰り寄せるように話を続けた。
「樽学者ブクラテス……。そう、船長の裏切りに船を終われた彼は、やがて出会った黒騎士を命懸けで救った。
……それがサージェスのデータの中でのあなたでした」
「……」
「しかしデータはあくまでもデータでしかない。数々の英雄たちがそうであるように英雄的行動と、その人の本質は必ずしも一致しない」
(やりすぎたか、ならば手を変えるだけじゃ)
「ワシが気に入らんか?本来その手ならば明石だけではなく竜也からも最優先で守られる立場じゃからな」
「別に糾弾するつもりはありません。むしろこの殺し合い……いいえ、ロンを倒し仲間を復活させるという大きなミッションにおいて失態続きだったのは私ですから」
「そうじゃのう。いいようにロンに操られ、仲間を死に追いやる結果を作ったのじゃからな。小娘も気の毒にな」
「菜月には同情して下さるんですか……」
「うむ。ワシをおじいちゃんと呼び、一度たりとも疑いの目を向けなかったのは小娘だけじゃ」
388Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:39:18 ID:UQYnyd3c0
さぁ、罪悪感に苛めと菜月の話を出したがさくらに怯む様子はない。
「菜月がもう少し強ければ、竜也さんではなくあの子を利用していましたか?」
しかし、それを責められたところでもうどうなるものでもないと半ば開き直りさくらへ告白する。
「確かにな、そのとおりじゃわい。ワシに取って都合の良い者を利用した。密かに駒としたのはおまえさんだけでは無いぞ」
「でしょうね」
「それでどうする。おまえさんが知ったところで竜也の罪悪感と、先程植え付けた信頼は消えんぞ。のぅ」
弱者の仮面は脱いだ。狡猾さを隠す必要もない。ブクラテスは舐めるようにさくらの顔を見下ろした。
「もう一度言いますが、糾弾するつもりはありません。私がお伺いしたいのは、その先です。つまり今後2手先3手先まで考えがおありですか?」
出し抜けに力強く積極的にさくらは考えを口にする。
「考えじゃと……」
「ありませんよね。あなたはここまでを、チーフはずっと先を、竜也さんは現状を……。
そして私に到っては何も見えていなかった。これが今の私たちです」
たじろぐのはブクラテスの方だった。目の前に座っているのはただの弱い女では無い。
「このままでロンを倒せるでしょうか。いえ、このままではロンに辿り着くことさえ困難では?」
(この女、ワシを見極めようとしておるのか?)
そう、老獪な樽学者ブクラテスが、今一度さくらに真価を値踏みされている。
「見てのとおり私はすでに戦力外、いっそ楽になれたらと、そう思いました。マーフィーが私を憎んでくれていれば、それが大義名分になりますし」
弱さも、狡さも、
「私の生い立ちや、もちろんロンに洗脳されたことも関係しているんでしょうけど」
そして辛さも、

「死ぬより怖いと思ったんです」

すべてをさらけ出したその言葉、ブクラテスは胸を衝かれたようにさくらの顔をじっと見つめた。
389Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:44:12 ID:UQYnyd3c0
「心は折れ、戦えず、守られるだけの……。そんな人形のような存在になるのが死ぬよりも怖かったんです」
さくらはブクラテスを真っ直ぐ見つめ、もう一度告げた。
先に眼をそらしブクラテスは溜息をついた。
「生きる術をワシから学んだ、か?」
「いえ、ただきっかけを頂いただけです。
傷ついた自分を人を操るための手段にするという発想は私にはありませんでした。
ある意味あなたの狡猾さは、ロンと対等に戦うためには必要です」
「ふん」
と腹を揺すらせ首を振る。だがブクラテスの表情に今までの狡猾さはない。
「ずいぶんと高くついたのう。老いぼれを動かす代償が」
「その代償に値すると思っています。その頭脳、誤った方向に使われているのは惜しい。そうですよね」
「……この樽学者に説教とは、全く対したおなごじゃわい。あの朴念仁は幸せ者じゃな」
さくらは肯定も否定もせず、クスッと小さく笑った。



「お待たせしました」
部屋に戻ったさくらとブクラテスは明らかに様子が違っていた。
特にさくらはうつろだった瞳に力が戻り、声も少し明瞭になったようだ。
「少しお話が……。まずマーフィーについてです。私以外に危害を加えるとは考えがたいですが、彼をこのまま苦痛に晒してはおけません。私、マーフィーを捜してきます」
竜也が無理だと言わんばかりに割って入る。
「何言ってるんだよ、さくらさん。その怪我じゃ」
「なので申し訳ありませんが竜也さん、手伝って頂けますか?」
さくらは毅然とした態度を崩さず告げる。
390Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 07:47:19 ID:UQYnyd3c0
「ロンに打ち勝てば彼の苦悩もなくなります。仲間を取り戻せばマーフィーの苦悩は」
問い掛けるように明石と竜也を見つめる。
その表情から汲み取った明石が力強く頷く。
「いいだろう。竜也頼む」
「では、チーフはブクラテスさんと修理を、説明はすでにしてあります」
「おいおい待て」
とブクラテスが割って入る。
「明石はおまえさんが連れて行け。どうも使いにくくて叶わん」
さくらは少し考え、
「ですが、アクセルラーの修理ですし。やはりチーフが適任では?」
ブクラテスが即座に否定する。
「ワシを誰だと思うておる?」
「誰ってブクラテスさん……」
追いてけぼりをくらった竜也は口ごもる。
明石が竜也の肩に手を置いて、
「腐っても樽学者、さすがだな」
と笑う。
「ふん、樽の中味は腐ったぐらいが丁度いいんじゃ。醸造されていい頃合いじゃわい」
「では、チーフ」
「よし、行くぞ!」

ブクラテスに笑顔を送り駆けていくさくらと、さくらを見つめるブクラテスの表情に。
「一体、どうしたんだよ。まぁ良いことなんだろうけど」
ぽつりと竜也が呟いた。


391Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 21:58:37 ID:UQYnyd3c0
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。30分程度変身不能。
[装備]:アクセルラー、聖剣ズバーン、スコープショット(暁)
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。その為に仲間を探す。
第二行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
第三行動方針:さくらと共にマーフィーを捜す。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識

【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:十指欠損、応急処置、消毒済み 。精神的な回復済み。
[装備]:スコープショット(菜月)@轟轟戦隊ボウケンジャー、Vコマンダー@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:@轟轟戦隊ボウケンジャー、婚約指輪の入ったクッキーの袋、基本支給品(菜月)、竜也のペットボトル1本。
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:ロンを倒し、仲間を生き返らせる。
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。蒼太から蒼太が今まで会った参加者の情報を得ました。
※ブクラテス、竜也と情報交換を終えています。
※両手の指を失いました。
※未確認支給品(暁確認済)は婚約指輪の入ったクッキーの袋でした(忍風戦隊ハリケンジャー 巻之13「ヒゲと婚約指輪」より)
392Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:00:47 ID:UQYnyd3c0
【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:右腕切断、応急処置、消毒済み
[装備]:毒薬(効能?)
[道具]:タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック、首輪探知機 、さくらのアクセルラー(要修理)、
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:さくらに協力。
第二行動方針:明石とアクセルラーの修理
※首輪の制限を知りました。
※センと同じ着衣の者は利用できると考えています。

【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:健康。良い意味で動揺
[装備]:
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す。ロンを倒す。
第一行動方針:これ以上の犠牲は絶対に起こさせない。
第二行動方針:出来れば殺し合いをしている者を止めたい。
※首輪の制限を知りました。 明石やさくらと情報交換を終えました。
※クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
※ブクラテスとさくらの様子にとまどい
※盗聴の可能性を認識
※首輪を通しての盗聴の可能性を認識
393Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:01:12 ID:UQYnyd3c0
【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:E-7都市 1日目 夕方
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。混乱により回路に負担が掛かっている状態。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:どうすればいいのかわからない
※無意識的にさくらへ襲い掛かった状態です。

394Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:03:50 ID:UQYnyd3c0
帰宅が遅くなり、投下遅れて申し訳ありませんでした。
出先のPCは規制中だったので……。
以降長いので代理投下をして頂くのも申し訳ないと思ってのことでしたが、
他に予約されている方がいるのに配慮のない行動でした。
お詫び申し上げます。

では続き投下します。
読んで頂ければ幸いです。
395Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:13:35 ID:UQYnyd3c0
Star where you lead me ――― The green star & Hygiene Charon in Pluto


マーフィーが駆けて行く。

―――なぁ、マーフィーちゃん。うちと一緒にシュリケンジャーを捜そう?
シュリケンジャーは、ホンマに信頼できる仲間やから。さくらさんみたいな事は絶対ない。うちが保証する ―――

時折ノイズの混じる回路の中をおぼろの声が駆け巡る。

―――…ごめんな。うちはやっぱり一緒にいけんよ。だって………

悲しい言葉を打ち消すように、ただひたすら駆けて行く。

行く先には黒煙。
だがそれはまだ見えない、エリアのずっと向こう。

そして、そこへ向かって同じように歩みを進める者、一人。





(う、うん……。あぁ、そうだミーは……捕まっちゃったんだっけ)
明かり取りの天窓から刺す太陽の光はオレンジ。伸びる影の長さから大体の時刻は割り出せる。
(ということは倒れてからそう時間はたって無いか………………)
ならば制限解除までこのまま寝て置くのも一つの手だとシュリケンジャーはまどろみ始める。
(と、待てよ、そうだ。倒れた時ミーは………………!!!!!!!!!)
怒りがすぐにシュリケンジャーを覚醒させた。
(ガッデム!それから素顔を晒してたってことだ!見張りは?素顔を見られたからにはすぐにでもっ)
サラマンデスと共に七色の布で縛られ床に寝かされている。
(随分重い布だね。ジーザス、一体何なんだ!)
396Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:15:08 ID:UQYnyd3c0
シュリケンジャーは知るよしも無いがそれは聖聖縛。
激気技でのみ顕在させうる聖なる布。不闘を誓う拳聖たちの激気で織り上げた布である。
(うーん。ミー一人の力では破るのは無理か。だけどお坊ちゃまはまだぐっすりお休みだ)
サラマンデスは随分夢見が悪いのか顔には苦痛が浮かんでいる。
状況を読むに連れて冷静さを取り戻す。
(オッケー、焦りは禁物。どうせ今回限りのお付き合いさ。最後には皆死んでもらうんだからね)
場所は独立した倉庫か。用具が盛りだくさんだ。さて……見張りは2人。そしてもう……一個?)
苛立ちを隠し切れず爪を噛んだり物に当たり散らすメレ。
そしてメレ当たられる頻度が抜群に高いビビデビ。
そして、シオンの死を悼み後悔の念を口に出す裕作。
(HAHAHA!人選ミスもいいところだね。これなら隙が出来るのも時間の問題さっ)
シュリケンジャーの読みとおりか、否か。メレが苛立ちの矛先を裕作にも向けるのに時間は掛からなかった。

「いつまでもうるっさいわね!グダグダ言ってる暇があんなら首輪解除してきなっ!」
ビビデビをバレーボールさながら裕作へアタック。
「おい、俺に八つ当たりかよ」
「こんな奴ら、アタシ一人で充分よ!」
跳ね返ったボール、いやビビデビを、すぐにでも出て行けと言わんばかりに、もう一度裕作へ叩き付ける。
「メレ!おまえまさか、壬琴の言ったとおり」
「アイツが何言おうと関係ないわ」
「まさか、意識のないヤツをわざわざ起こして意識が無くなるまで殴る気……痛てっ!」
メレは裕作を倉庫から叩きだし、重い扉を閉ざす。
「おい!待てよっ」
ドアを叩く裕作。怒りに肩で息をしながらメレが呟く。
「アイツ……!後で覚えてなさいよ」
「ビビ〜。それに壬琴様はそんな物好きはアイツぐらいだろうと笑ってたデビ〜……グェッ!!」
メレは無言でビビデビに回し蹴りを放つ。
397Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:15:54 ID:UQYnyd3c0
「メレ!開けろ、開けろって!」
裕作はドアを叩くがメレは聞かず、後ろ手で扉を締めシュリケンジャーたちを睨む。
「話を聞けばいいんでしょ?わかってるわよ!だからアタシ一人でいい。あんたも幻気喰らいたく無かったら、さっさと消えな!」
裕作は諦めたのか、
「また後で来るぜ」
そう言ったのを最後にドアを叩く音が止んだ。
(さぁて、チャンス到来)
コロコロと転がって来たビビデビとシュリケンジャーの目が合う。
ビビデビが声を上げないように、シュリケンジャーは飛び切りのスマイルでウインクを送った。





「まぁ、かい摘まんで言えばこんなところだ」
壬琴が言い終わると同時にヒカルと映士から溜息が漏れた。
壬琴の周りに、菜摘、ヒカル、映士が座り、囲んだデスクには集められた支給品が並んでいた。
「さて、もう構わないだろう。これは俺が預かるぜ」
壬琴が手を伸ばしたのは、小さな鍵。小津麗に支給されここに辿りついた用途不明の小さな鍵だ。
「……あ、もしかして」
思い当たった菜摘が声を上げた。
そう。これが無かったゆえに、別々に支給されたがゆえに……。
実際に菜摘が爆笑したのは壬琴の行動だったのだが、どちらにしろ壬琴に取っては苦い記憶。
「あぁそうだぜ!ダイノハープのキーだ。俺が預かるのに文句はないだろ?」
余計なことは言うなとばかりに菜摘に睨みを聞かせる。
そこへ。
「悪い。締め出されちまった」
398Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:19:03 ID:UQYnyd3c0
罰の悪い顔で裕作が部屋に入って来た。
「どういうこと?」
菜摘の隣に裕作は座り事情を話す。

「ふふっ、それで締め出されたの?」
「あぁ」
頭を掻く裕作に、ニヤリと笑う壬琴。映士は関心が無いのか足を投げ出して目を閉じていた。
ふと、菜摘はヒカルがやけに浮かない顔をしていると気付く。
声を掛けようとすると壬琴が立ち上がった。
「グレイが帰って来るまで俺は休憩させてもらうぜ。もう話すことも無いしな」
「あーっと。オッケーわかったわ」
次元虫を取り除くのはいくら天才外科医といえど簡単ではないだろう。
壬琴も無傷とは言えない。
異論を唱える者はいなかった。
「ボクも少し一人で考えたいことがあってね」
ヒカルも席を立ち部屋を後にした。
「ちょっとゴメン……すぐ戻るね」
菜摘はヒカルを追いかけ、部屋には裕作と映士が残った。

「ねぇ、ヒカル。ちょっといい?」
屋上へ続く階段で菜摘はヒカルを呼び止めた。
「ドモンのことも……。深雪さんのことも……。何て言っていいのか解らないけど……」
菜摘はそっとポケットからメモを取り出しヒカルに握らせる。
そして人差し指を口に当て、声に出さないで読んでとジェスチャーで伝えた。
ヒカルは一度メモに視線を落とした。そして黙って頷き、メモをポケットにしまった。
「あれで以外と壬琴が力になってくれると思うわ」
399Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:19:39 ID:UQYnyd3c0
そう告げて菜摘は階段を駆け下りた。







「アタシが気付かないとでも思ってんの?」

後ろ手に扉を閉めたまま、メレが低い声で呟く。
(ミーに言ってるのか?それともビビデビ?)
薄目のままシュリケンジャーは様子を覗う。
「いい?ホントのことを言いなさい。別にワタシはアイツらのことなんて何とも思っちゃいない。
どうせ即席で作った戦隊だもの。あんなカクシターズにこれ以上付きあってやる義理なんて……ないわ!」
メレは重い扉に内側から南京錠を掛けた。
「だからさっさと話すのよ。アンタたちは何なの?なんで?!」
メレはシュリケンジャーに駈け寄り髪を掴んで顔を上げさせる。
「なんでシオンを殺したのか言ってみな!そうしたら殺してあげるから!!!」
(思った通り激情型だね。そう来られればそうeasy☆)
シュリケンジャーはメレを見据え恭しく口を開いた。
「メレ様、ご無事で何より」
驚いたメレは思わず手を離す。
「何なの、アンタ」
400Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:21:44 ID:UQYnyd3c0
「驚かせてソーリー。ユーのハニー、理央は……ぐあっ!」
理央は……まで言うとメレの鉄拳が飛んできた。
「ったくどいつもこいつも、ワタシが理央様の名前を出せばコロッと騙されると思ってんの!!」
皆考えることは同じかと、シュリケンジャーは笑いを堪えながら。
「ち、違うよガール。理央はミーにとって言わば恩人だから、だからユーにはせめて最後に敬意を示したくて」
「理央様に恩ってどういうこと?」
訝ってはいるがやはりメレはメレ。こちらに乗ってきたようだ。
「この事は一方的にミーが恩を感じているに過ぎない。理央はミーの友人を、ここで殺された友人の敵を取ってくれたのさ」
「敵を?」
「聞いてくれるかい?捕まった以上ミーも覚悟は出来ている。理央に礼を言えないかわりに、せめてユーに聞いてもらいたい」
「……わかったわ。ただし話が終われば殺す。いいわね」
「オーケイ。落ち着いて最初から話そう」

まずは、最初に出合ったジルフィーザ。そしてスワンと出会ロンに姿を変えサンヨと組んだこと。
途中、いずれ対決するだろうブドーと接近。その後江成仙一に成り変わり理央に宇宙サソリを植え付け……。
ここまで話すとメレの鉄拳が飛んできた。
「もういい、アンタ死にな!」
「ノ〜!まだ続きがある。聞きたくないのかい?理央はユーの名を叫んでいたんだ!」
「ワタシを?理央様が、ワタシをですって」


────俺は…俺は死なないッッ!! メレェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


もう一度宇宙サソリの話を頭から、出合ったガイ、禁止エリアでのこと、サラマンデスとジルフィーザのことも。
推測される理央の居場所をさりげなく伝えるのも忘れずに。
そして物語は渦中のスタジアムへ。
401Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:25:30 ID:UQYnyd3c0
自らの見たすべての真実を克明に、その中に混ぜるほんの少しの偽り。

「筋書きはこうだよ。ミーはドモンに協力したのさ。しばらくは手を組んで優勝を目指すつもりでいたんだ。
ミーが浅見竜也に成りすましシオンを油断させたところでドモンが殺害。
しかし、やはり優勝目的とはいえドモンに元仲間を殺すことは出来なかった。
だからミーが代わってシオンを殺害した。だけど、ドモンは後悔したんだ。亡くなったシオンに縋り付いて号泣していた」
「それでアンタは邪魔になったドモンを殺したのね」
「いや、ドモンがミーに殺してくれと懇願したのさ。ミーはOKしたよ。
仲間も殺せず自分も殺せず、余りにもドモンが気の毒だったからね。
だから偽装したのさ。せめてドモンが覚悟の死を遂げたのだと、思ってもらえるようにね。
殺し合いに乗ったんだから、ミーは悪役で構わない。本当はね、ドモンのために誰にも言うつもりはなかった。
だけどこの口はもうすぐに閉ざされる。恩のある理央の一番近い人の手によってね。
もし聞いて貰えるなら、ドモンたちのことを黙っていて欲しい。ユーが黙っていてくれるならドモンやシオン、彼等の名誉は守ることができる」
「アンタはなんで殺し合いに乗ったのよ」
メレは立ち上がりシュリケンジャーに背を向けた。
「掛け替えの無い大切なモノを守るためさ。ユーなら、解るだろう」
モノでも、物でも、者でもいい。解釈はメレに任せるつもりだ。
「大切な者……」
「ユーならどうする理央が死んだら、理央のいる星が腐って行くとしたら」
「理央さまが死んだら……。私が生きている意味なんてないわ」
「ユーはこのまま彼等と共に戦隊を組んで戦うのかい?」
目を伏せたままのメレ。答えは無い。
「……そうか。このまま行けば、ユーと理央は闘うことになるね」
堪らずにメレはシュリケンジャーへ振り向く。
「どうしてワタシに?!話したところでアンタには何の徳にもならないじゃない」
「いいんだベイビー。ただ意図せぬところで作った貸を目に見える形で返すなんて恩着せがましいじゃないか」
唇をかみ締めるメレ。落ちるのは時間の問題だ。
402Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:26:48 ID:UQYnyd3c0
「メレ、ユーとは違う形で出会いたかった。ドモンとユーでは覚悟の度合いが違う。さぁ、話は終わりだ。殺ってくれ」
「覚悟は出来てるってわけね」
「グッバイ、メレ。検討を祈るよ。殺し合いに乗るにしても……。敢えて、違う道を選ぶとしてもね」







菜摘が階段を下ったところに裕作が立っていた。
壁を背にして菜摘を待っていたようだった。
「ヒカルは?」
「え、ヒカルは屋上に行ったけど」
「何か用事だったのか?」
「ううん。別に……」
口ごもる菜摘に裕作の視線はヒカルを捜すように階段をなぞった。
(ゴメン。裕作に隠し事とかそういうわけじゃないわよ。ロンに聞かれたくなかっただけなの)
菜摘は心の中であやまる。
「……あいつ、ショックだよな」
「うん。でも大丈夫、うん」
菜摘は一人納得したように頷きながら、裕作の背中を押した。
「あのな、菜摘。ヒカルとの話が済んでいるなら、俺もちょっといいか?」
「ええ、いいけど」
少し思いつめたように裕作は口元に手を当てた。
「シオンのクロノチェンジャーだけどな。おまえどう思う?浅見竜也に渡すのが一番だよな」
「ええ、それが一番でしょうね」
「それがいいってのは解るさ、だが……壊しちまおうかと思ってる」
「壊す!なんで!?」
驚く菜摘の肩を裕作は掴んだ。
403Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:27:28 ID:UQYnyd3c0
「理由はあるんだ。おまえにこんなこと言うのは……」
ここまでは決められた台詞を読むように話す裕作だったが中々続きを口に出来ないようだ。
「辛いことを思い出させるようで心苦しいが……」
裕作が口ごもる理由は、菜摘の仲間だった陣内恭介のことだろう。
恭介はタイムブルーに変身したネジブルーに惨殺された。
シオンのクロノチェンジャーが同じように殺し合いの道具にされるのが、きっと裕作は堪らないのだ。
菜摘にもその気持ちは痛いほど解る。
「解るよ。シオンのクロノチェンジャーを殺し合いの道具にしたくない、でしょう」
微笑んだまま、裕作の心を読むように菜摘が言うと、ホッとしたように裕作の手から力が抜ける。
「悪い。おまえに言わせるなんてな」
「ううん」
菜摘は軽く首を振る。 アイテムが揃うのは両刃の剣。有利にもなる代わりに、奪われれば……。
シオンの物だったからこそ。だからこそ裕作は殺し合いの道具にしたくなかったのだ。
「裕作の気持ち、みんな解ってくれるわ、大丈夫よ」
「ありがとな、ずっと考えてたんだ。だがどう伝えりゃいいか難しくてな。メレにも言おうとしてたんだが……」
「メレもツライのよ。泣き出さないだけメレは偉いよ」
「そうだな。メレに言われたよ。ウジウジしてる暇があるなら首輪解除しろって、さっさとしないと幻気食らわすってな」
「あははははっ、怖っ」
「なぁ、それで気がついたんだが……」

裕作は偶然にもそこで手掛かりを得たようだ。
「メレは俺達のように何かを使って変身するわけじゃない。アイツの変身、幻気充填は幻気を具現化した物だろう」
「そうか、この首輪も仕組みは一緒かも知れないのね。もしそうなら首輪解除はメレに協力してもらうべきだわ」
「あぁ、その上で科学の発達している世界のグレイの意見も聞いてみたい」
「うん、あとヒカルにも。シオンが言ってたの。発達した科学は魔法と見分けがつかない、そしてその逆もありうるって!」
解らなかったことが糸が解れるように見えてきた。
404Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:29:51 ID:UQYnyd3c0
駆けだしたい気分だった。
「戻ろう!」
菜摘と裕作は部屋へ急いだ。







「やるじゃないか」
「オーノー!聞いていたとは人が悪いね。メレを追いかけなくてもいいのかい?」

メレが出ていって数分後、倉庫の扉を開けたのは白いコートを着た男、仲代壬琴だった。
「俺は一人でやりたいようにやっているだけだぜ。メレを追いかけて祭に乗り遅れるのはごめんだ」
殺し合いを祭とは、さすがは何の躊躇も無く死ねと刃を振り下ろせる男だ、とシュリケンジャーは内心感心する。
「だけど、ユーは言われたことはないかい?遊びが過ぎて本来の目的を見失わないことだってね」
思い当たるのか壬琴は反発するように好戦的な口調で言った。
「悪いがゲームは存分に楽しませてもらうのが俺だからな、何ならおまえも乗ってみるか?」
壬琴は指でコインを弾く。
キンと煌きながらコインが回る。シュリケンジャーはそれを目で追いながら静かに言った。
「ゲームならユーがこの部屋に入って来た時から、もうとっくに始まっているよ 」
「何だと?」
「まっ、肝心のゲームマスターがまだ気がついていないようだけど……」
壬琴はサラマンデスに視線を向ける。
「そうだな。ソイツならおまえよりは面白そうだ。弱い奴に用はない」
また壬琴はコインを弾いた。シュリケンジャーは首を横にゆっくりと首を振った。
「フ〜、ユーは解っていないね。ユーの言う弱いヤツ。イエ〜ス、弱者ほど時に思い切った行動を起こすモノさ☆」
「あん?縛られてるおまえに何が出来る?目から光線でも出そうってのか」
405Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:36:41 ID:UQYnyd3c0
壬琴は気付いていないようだった。
先程から壬琴とシュリケンジャーの間でせわしなく視線を動かしている存在に。
「HAHAHAHA!強気だね。そうやっていつも誰かを見下してきたんだろう。
ま、そういうタイプに限って自分勝手にふらっと消えるものさ。そして誰も不思議に思わない」
眉をひそめ、コインを弾き、そこで壬琴は初めて気付く。
「ビビデビ?……おまえっ…………!」

「ビビッ。ビビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

コインは床へ落ちる

「あわわわわわわ、わわわわわわわわわわわわわわわ〜やってしまったデビーーー!!!!」
昏倒しそうになるビビデビへすかさず賞賛を送る。
「ブラボー!!!助けてくれると思っていたよ。メレが出ていった時からね。さぁこれを解いて!」
「ビビ〜!」
震える手で聖聖縛を解くビビデビ。
「随分辛い思いをしていたようだけど、もう大丈夫さ☆」
そう言ってビビデビを力いっぱい抱きしめた。
「うう、でもとっさのことで何処に飛ばしたか解らないデビ〜」
「オールライト大丈夫さ、きっと遠くに行ってしまったよ」

ビビデビを腕にシュリケンジャーはほくそ笑む。
まずラッキーだったのはメレが上手く乗ってくれたこと。
メレはシュリケンジャーの撒いた疑念を自ら確かめに向かった。
そして出て行く時、ビビデビに二人を禁止エリアに向けて飛ばすように命令した。
だがビビデビは考え倦ねいているようで実行に至らなかった。
まだメレが殺し合いに乗ったかどうかはさだかではない。
シュリケンジャーを自ら始末しなかった。だがビビデビに任せた。やはり揺れ動いているのは否めない。
406Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:37:28 ID:UQYnyd3c0
どちらにしても、理央とぶつかり合ってくれれば楽になるのだが。

「ビビデビ、きっとユーも殺し合いを加速させる支給品ってところだろう?違うかい」
(七海と同じようにね)
心の中で苦い笑いが込み上げた。
七海が参加者同士に疑念を抱かせる材料とされた時から、おそらく同じような支給品が紛れているだろうとは読んでいた。
「そうデビー!!うぅ、やっと本来の持ち主へ出会えたデビーーーー!」
「ユーは優勝へ導いてくれる天使。まさにエンジェルというわけだね」
さぁ、山は一つ乗り越えた。ここからがまさに暗躍の時。
「Get up!サラマンデス」
シュリケンジャーはサラマンデスを揺り起こす。
「さぁ、イッツァミラクル!ショータイムの始まりさ」







部屋に残された映士は退屈そうにアイテムを手に取っていた。
全員が部屋を出て、部屋に残ったのは映士一人。
当たり前の話だが、デスクには最初と同じ状態で支給品が並べられていた。
手持ち無沙汰になった映士が何気なしに一つ手に取ったところで怒鳴られる道理などない。

だから裕作とて、始めから声を荒げるつもりなど全くなかった。

ただ偶然それがシオンのクロノチェンジャーだった。
407Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:42:10 ID:UQYnyd3c0
そして裕作と映士とは、まだ数えるほども言葉を交わしていなかった。
「おまえ、何をしている?」
裕作の発した言葉には明らかな刺があった。
映士の手からシオンのクロノチェンジャーが滑り落ちる。
「まるで俺様が奪うような言い方だな」
映士の言葉にも刺が混じる。
最悪の言葉のキャッチボールだ。
菜摘はクロノチェンジャーを拾い二人の間に割って入った。
「止めなさいよ。二人とも、言い方ってものがあるでしょう」
「あぁ悪かった」
菜摘に諌められ、素直に両手を上げ謝る裕作。そうした上で。
「なぁあんた、俺の独断で悪いがそいつは殺し合いの道具に使って欲しく無い。頼む」
映士は一度、菜摘を見てから裕作へ目を合わせ、尋ねる。
「最初から使う気なんざさらさらないがな、理由は何だ?」
「持ち主の遺志を尊重したくてね」
「へぇ」
映士は馬鹿にしたように顎をしゃくりあげた。
「遺志とはねぇ。笑わせてくれるな」
「何の事だ?」
「惚けるなよ。安らかに眠った者を冒涜するような真似をしてるのはてめぇだろ!」
「映士!何言ってるのよ?」
止める菜摘。だが怒りに任せて映士は吐き捨てる。
「コイツは使わせないが死者の首を切り落とすとはな!!」
408Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:42:59 ID:UQYnyd3c0
裕作と菜摘の顔が強張る。

この時、3人は全く噛み合ってはいなかった。
映士は深雪を、
裕作はドギーを、
菜摘はサーガインを、
滑稽なほどにすべてバラバラのパーツで……。
だが歯車は絡み合い廻り始める。

「だが、あの首輪は託されたんだ!」
「託されただと?ずいぶん都合のいい解釈じゃねえか。ふざけんじゃねぇ!」
侮蔑を込めて映士が言い放つ。
「だって仕方ないじゃない。そうでしょう!?」
「菜摘!おまえ、本当にそう思って……」

映士の言葉は割れるガラスの粉砕音に掻き消された。
「なッ……!?」
ガラスの破片が部屋中に降り注ぐ。
窓を突き破った誰かが転がり込んで来たのだ。
勢いのままその人影はデスクを薙ぎ倒しその中で蹲った。
裕作が駆け寄る。
「おい!大丈夫か」
転がり込んで来たのは壬琴だった。
「……メレのヤロー!いい……度胸じゃ……ねぇか」
無理に起き上がろうとする壬琴を裕作が止める。
「何があった?」
409Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:43:19 ID:UQYnyd3c0
「ビビデビ……ガァッ…俺を飛ばし……」
そのまま壬琴は意識を失った。







断続的に発される爆発音。噴出した炎で窓ガラスが面白いほど割れて行く。
3方から立ち上った火の手は壁伝いに広がり勢いを増してやがて建物全体を飲み込むだろう。
鳴り響く非常ベルに混じって聞こえる声には動揺が覗える。

(オーケイ。いい具合に花火が上がった)

即席の発火装置にしてはすばらしい効果だった。
倉庫に眠っていたヒーター、アルコールランプにスプレー缶。
発火元には不自由しなかった。
事務室、印刷室、山ほどの用紙に窓を覆うカーテン。可燃物もまたしかり。

(地味〜な裏方作業だったけどね。お坊ちゃまの力は温存しておいてもらわないと)







「菜摘、壬琴とここに居てくれ」
410Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:44:27 ID:UQYnyd3c0
「映士?」
「待て、ヒカルを捜しに行くなら俺も行くぜ」
「ヒカルは俺様が捜しに行く。引っ込んでろ」
「何!」
「止めてよ!」
「……あぁ、そうだな。仲間割れしてる場合じゃないよな……。まさかメレがとは思うが、俺は向こうを見てくる」
「二人とも待ってよ。一人じゃ危ないわ!バラバラになったら……」
菜摘の忠告は非常ベルに掻き消される。睨み合った裕作と映士は反発する磁石のように左右に走り去った。
「バラバラになったら思うツボじゃない……」

ポツンと取り残された菜摘はアクセルキーを握りしめた。
せめて壬琴だけとは離れちゃいけない。部屋へ戻ろうと振り返った目の前に、
「ビビデビ!いつからそこに居たわけ?」
「ビビデビビ〜」
ビビデビが居たのだ。何が嬉しいのか満面の笑みを浮かべている。
「何笑ってんのよ。って言うか大丈夫?」
ふわふわしていたビビデビの動きがぴたりと止まる。
「……なにがデビか?」
「壬琴を飛ばしちゃったりしてさ」
菜摘の目には哀れみが浮かんでいた。
「うん、やっちゃったわね……。覚悟の上なんでしょうけど」
「ぐっ、まるで死に行く者を見るような目で見るなデビ!」ビビデビは手にした黄色のハンマーを構えた。
「ビビッ!これが何だか解るデビ?ビビデビはもうオマエらの言いなりにはならないデビッ!」
「きゃ……!!
ビビデビがクエイクハンマー叩きつけるとリノリウムの床が波立ったように揺れた。
「やっ止めなさよ!危ない!!」
「止めないデビ。ビビデビ様を虐げた報いを、今こそ受けるがいいデビ!」
411Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:45:43 ID:UQYnyd3c0
よろけながら菜摘が突っ込む。
「ちょっと!わたしがビビデビに何したっていうのよ!」
「ビビビビビ……オマエは……」
考えるビビデビ。
「うーーーー!止めようとしなかったデビ!」
「はぁ〜〜?自分のしたこと棚に上げてふざけんじゃないわよ!」
「ウルサイッウルサイデビ!ま〜だ自分の立場が解らないようデビッ。思い知らせてやるビビ!超忍法ビビデビ撃!」
クルクルと駒のように回転しながら菜摘を殴りつける。
「アアアッ!!」
弾かれた菜摘の身体は床に叩き付けられゴロゴロと転がった。
「くっ……!何とか、何とかしなきゃ」
額から流れる血を拭いビビデビの隙を狙う。
「ビビビビビ〜〜〜どうにもならないデビ!ビビデビ様の力思い知るがいい」
(それあんたの力でもなんでもないわよ、奪っちゃえばおしまいじゃない!!)
菜摘はツッコミの言葉を噛み殺す。
(今、ビビデビはMAXで増長してる。ここは、一発ガツンと……よし一か八かね)
「そろそろ留めデビッ!最後はフルスイングデビ!!超忍法ビビデビホームラン!!!」
クエイクハンマーを振り上げるビビデビ。

菜摘は驚いた顔でパッと横を向いた。

「あ、壬琴!」
「ビッ!」

ビビデビの背筋がピンと延び、瞬時に顔が青ざめた。
412Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:46:17 ID:UQYnyd3c0
アワアワと外を仰ぎ見るビビデビの隙を逃さず、菜摘はアクセルキーを掲げる。

「激走っ!」

その声と共にアクセルブレスへキーをオン。
「アクセルチェンジャー!」
唸るエンジン音に包まれ菜摘はイエローレーサーへ。
「戦う交通安全ッ、カーレンジャー!タアッ」
「だ、騙したデビ?オノレ〜〜!」
すかさずクエイクハンマーを構えるビビデビ。
だがイエローレーサーはスライディングで一瞬の内にビビデビへ肉薄する。

「バイブレード!フルパワーモード!!」

振り上げると同時にグリップを引きパワー全開。そのままビビデビ目掛けバイブレードを振り抜いた。
「グオエェ〜ッッ!!」
吹っ飛ばされたビビデビはピンボールさながら左右の壁に激突を繰り返す!
「グエッグエッグエッグエッ!」
「ヤアーーッ!」
イエローレーサーはダッシュ。
ビビデビを追い抜きざまにホルスターから銃を抜き放つ。
「オートブラスター!」

光弾がビビデビの後頭部へ着弾。
撃ち落とされたビビデビはイエローレーサーの前へ転がる。ボヨン。
「今ね!」
イエローレーサーの胸の高さ、まさに絶好の位置でビビデビのボディがバウンドした。
「ナックルボンバー!!!」
413Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:46:43 ID:UQYnyd3c0
電撃を帯びたパンチをビビデビの頭へ突き当てる。
「良いコの交通安全!廊下で野球なんて許さないわよ!!」
「オオオオマエだって廊下走ってるデビビビビビビーーー」
摩擦により白煙を立てながら廊下を滑るビビデビ。
「ギャアアアアアアアーーッ!」
叫び声と破壊音、ビビデビは防火壁を破壊して階段を転がって行った。


「さ〜て、どういうことか聞かせなさいよ!メレは?アイツらは何処なの?」
パキパキと指を鳴らしながらビビデビの前に立ちはだかるイエローレーサー。
「……言うわけないデビ!」
「あ、コラ!逃げるな」
スイーッと浮き上がるビビデビ。
イエローレーサーは慌てて足を掴もうとするが、ビビデビは割れた窓ガラスの隙間をゴキブリのように素早く擦り抜けた。
「ビビビビビ〜覚えてろ〜デビ〜〜」
浮上しながら捨て台詞を吐く。
「あんたもね!」
マスクの中でぺロッと舌を出して菜摘は壬琴の元へ引き返した。


ドアに嵌め込まれたガラスからデスクに手をついて立っている壬琴が見える。
「壬琴!良かった。気がついたのね」
「あぁ……」
壬琴はデスクに置きっぱなしだったアイテムをより分けている。
隣に並ぶと壬琴は露骨に怪訝な顔をした。
「あぁ、変身したのはビビデビが襲って来たからよ」
「アイツ……」
414Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:53:08 ID:UQYnyd3c0
苦々しく言うものの追いかけてボコボコにする訳でもないようだ。
何となくふに落ちないが気に止めはしなかった。
「クエイクハンマーを持っていたけど、他にも何か持って行ってない?」
「さぁな。俺は今気がついたんだぜ?」「そうか……まぁ、いいか」
(あれだけハデに戦ったのに気付か無かったんだ)
その時、イエローレーサーの変身が解けた。
「10分か、もしもの時はアレを使うしかないか」
「アレ?」
「アレってほら、それとほら一緒の…タイム……」
菜摘は言葉を濁した。
壬琴は惚けているのか気にしない様子でシオンのクロノチェンジャーをポケットに入れようとしていた。
「ねぇ、壬琴。シオンのクロノチェンジャーを使う気?」
「……?」
さっぱり話が読めないように壬琴は黙っている。
「それ。殺し合いの道具にしたくないって裕作が言っていたのよ」
「だから?」
「私も同意したの。壬琴もシオンと裕作の気持ちわかってくれるわよね」
「は?なんで俺が聞かなきゃならないんだ」
「壬琴いい加減にしないと怒るわよ。仲間じゃない!」
「ククッ」
壬琴は肩を揺すらせて笑っている。菜摘には笑いの意図が解らない。
「仲間だと?まぁ、あいつらはともかく、まさか俺とおまえが?」
「何言ってるのよ、まさかまだアバレーサーが気に入らないとかいうつもり?」
強気で返してみたが、凄く嫌な空気だ。
菜摘の足は無意識に後退りする。
415Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:53:38 ID:UQYnyd3c0
「アンキロベイルスを殺したおまえと俺がか?」
「え?」
耳を疑った。でも聞き間違いではなかった。胸倉を捕まれ――――
「ずっと、狙ってたんだぜ?誰にも疑われずにおまえを始末できるのをな。いつかこんな時が来るだろうってな!狙ってたんだよ!!」
――――そのまま壁へ力いっぱい押し付けられた。
「かはっ……」
菜摘は苦しげに咳込むが壬琴は押さえつける手を緩めない。
「もう一度聞くぜ!?アンキロベイルスを殺・し・た!オ・マ・エ・と!!なんで仲間なんだ」
「……!み…壬琴?!」
笑いを浮かべながら菜摘の首を締めて行く。
「で、息が何だって?」

菜摘の瞳に涙が浮かぶ。抵抗する気力さえ削がれたように、菜摘の腕がダラリと脱力していった。


「何で殺さないデビ?」
窓の外から覗き込んだビビデビが尋ねた。
「後々の事を考えればね。生かしておいたほうがいいだろ」
「壬琴さ……いや仲代壬琴とぶつけるためデビか?」
「そうさ。仲代壬琴にはヒールになってもらう。彼のキャラなら疑いを晴らそうなんて努力はしないだろうしね」
シュリケンジャーは壬琴の顔で笑った。
「OK.ユーももう一仕事だ」
「ビビッ」
軽く敬礼してシュリケンジャーの手から赤いツナギを受け取る。
「これを来てうろつけばイイデビ?」
「そうしたら後はミーが最後の仕上げと行くよ。終わったらメレを追ってくれ」
416Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 22:54:33 ID:UQYnyd3c0
「わかったデビ!シュリケンジャー様も頑張るデビ」
「サンキュー!ビビデビ。ユーは本当に良く働いてくれる」
菜摘のウィークポイントをシュリケンジャーに教えたのもビビデビだ。
ここまで来てスネに傷を持たない者などいない。
ビビデビとシュリケンジャーはニヤリと笑みを交わす。
「問題はお坊ちゃんさ。せめて言われたとおりに待機してるといいけど」
待機場所は始めに捕らえられていた倉庫の裏手の焼却炉。
お坊ちゃんに命じたのは待機なのだが。
「ま、ミーが点けた以外に火の手は上がっていないしね。オッケーだろう。大人しく待っていてくれた分、最後にはハデに動いてもらうさ」
「そうビビ〜」
「じゃあ、ビビデビ。再会とお互いの検討を祈って☆バイバーイ」
手を振ってシュリケンジャーは窓からスッと消え去った。
「……シュリケンジャー様も大変デビ〜。だけど〜」
赤いツナギを手にビビデビは倒れている菜摘を見て爆笑した。
「コイツい〜いキミデビ!」
予想以上に自分を痛め付けた菜摘。今は惨めにTシャツと下着姿で床に転がっている。
「ビビ〜!名案が浮かんだデビ〜〜」
ビビデビは後ろにあるロッカーへフワフワと飛んだ。鼻歌を歌いながらロッカーを物色しはじめる。
「ビビ〜あったデビ」
すぐに目当ての物は見つかった。
それをパサリ、と菜摘の上へ掛けた。
白衣に包まれた菜摘が大きな種に見えた。
「これでお坊ちゃまが失敗してもオッケーデビ。コイツの他に誰か生き残ったらビビビ〜。仲代壬琴はもっと疑われるデビ〜ビビデビビ〜」
大切な種に栄養を。これからどんな芽を出すのだろう。そして、どんな花を咲かせるのだろうか。







「くそっ、どこ行っちまったんだヒカル!」
417Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:01:53 ID:UQYnyd3c0
屋上にヒカルの姿が見えない。
しかし階下に居たようすも無かったのだ。
3方から上がる炎は勢いを増して行く。
先程聞こえた地鳴りのような音と粉砕音の発生源は、おそらく壬琴と菜摘の居る場所の近く。
焦りが映士の胸を衝く。
「一旦戻らねぇと!だが……」
映士はもう一度、辺りを捜索する。
給水塔の影、突き出た排気口、囲われたフェンスの裏まで、ぐるりと辿った。
「ヒカル、いねぇのか?ヒカル!」
誰もいない、否、視界の端、自分が通って来たドアの辺りで赤い物が動いた。
「誰だ!菜摘か?」
赤からまず連想したのは菜摘だ。
いや、菜摘ならば声を掛けるはずではないか?
「出てきやがれ!」
映士は大股でドアへ近づくが、去った後なのか見間違いだったのか誰の姿もない。
階段を駆け降りる音は聞こえないかと耳を澄ますが、非常ベルが邪魔をする。
「チッ、聞こえねぇか……。違う……誰の声だ!」
非常ベルに混じって微かな呻き声が聞こえた。
「ヒカルか!どこだ?」
「え、映士…かい?」
声は上から聞こえる。
「待ってろ!今行く」
ヒカルはドアの上、階段を囲う屋根の部分にいるようだ。
映士は壁に埋め込まれた鉄の梯子をよじ登った。
ヒカルが頭を押さえて倒れている。
「あの偽者ヤローにやられたのか?」
「解らない……。火の手が上がって、それが何か見極めようとしていたら、下で凄い音がしただろう。
戻ろうとしてドアを開けたら、誰かに殴りつけられて。非常ベルのせいで物音に気付かなかった」
「やった奴は見てねぇんだよな?」
「あぁ、すまない」
418Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:02:27 ID:UQYnyd3c0
映士はヒカルに肩を貸し身体を持ち上げる。
「……おいヒカル、ジャケットはどうした?」
「え?」
ヒカルは自分の身体へ視線を落とす。
「……奪われちまったようだな、くそっ。急いで戻るぜ」
「あぁ、アイツがボクに成り済ましている。菜摘が心配だ」
ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!映士は心の中で何度も吐き捨てた。
(もう菜摘は……。菜摘は殺されてるかもしれねぇ!)
あの時、映士には聞こえていたのだ。バラバラになるなという菜摘の声が。
映士は痛烈に後悔しながらヒカルと共に階段を駆け降りた。

「菜摘!」
駆け寄って呼吸を確かめる。まだ息がある。
白衣は被せてあるがツナギを脱がされている。
命があったことにはほっとしたが、その姿を見てすぐに怒りが勝った。
菜摘に掛けられた白衣、屋上で横切った赤い者の正体。そして奪われたヒカルのジャケット。
「あのヤローの仕業か!」
捕まえたはずの二人は?この炎はあいつらの?壬琴とメレは、ビビデビは?
「考えても仕方がねぇ!」
映士は窓からカーテンを引き千切ると菜摘の身体を包んだ。
「しばらくはこれで我慢してくれ菜摘。ヒカル、火が回る前に行くぜ」
菜摘を抱え階段を駆け下りる。
「ヒカル、菜摘と先に逃げてくれ。俺様は他のヤツを」
「解った。後何処かで落ち合おう」
「スタジアムに行っててくれ。たのむヒカル、絶対に離れるなよ。菜摘を起こしてすぐ逃げろ」
419名無しより愛をこめて:2010/04/05(月) 23:06:09 ID:SyXbGAWQQ
支援
420名無しより愛をこめて:2010/04/05(月) 23:14:58 ID:edOKI08S0
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421Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:16:22 ID:UQYnyd3c0
炎を突っ切って映士は、メレがいたはずの倉庫へ向かった。





「なぜ殺してしまわない?」
(オーノー!ビビデビと質問が同じとは。それじゃあ上に立てないぜ)
半ば飽きれつつもシュリケンジャーは答を返す。
「次が楽になるようにさ。彼らはね、自責の念というのが強いのさ。
すべての正義も信頼も無くなって、丸裸になればどうなると思う?」
「ふん回りくどいな……」
サラマンデスは言い捨てるとシュリケンジャーに背を向けた。
「ヘイ、サラマンデス、どこへ行くんだい?」
「知れたことだ。女は貴様の言うように泳がせるのもいいだろう。この期に残りを始末する」
「ン〜もしかしてリベンジかな。制限中だろう。持って行くといい」
クワガライジャーを渡しウインクした。
「フーゥ、全く対したお坊ちゃんだ。こういうのはお膳立てが大事なんだけどね……おっとサラマンデス、ウエイト」
去ろうとするサラマンデスをシュリケンジャーは呼びとめた。
こちらに近づいてくるのは、一度見たら忘れられないシルエット。
シュリケンジャーはサラマンデスに囁く。
「そっちの様子はミーが見に行こう。ユーにお客さんだよ」





倉庫までもう少し、走る裕作の前方から人影が見えた。
咄嗟に身を隠す裕作。気付かれぬように覗けば走って来たのはヒカルだった。
「おい、ヒカル?なんでここに……。おまえ屋上にいたんだろう……」
「あぁ、だけどメレが出て行くのが見えたからね。確かめに降りたんだが」
422Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:16:45 ID:UQYnyd3c0
「あいつ等は?」
「居なかった。たぶんこの炎もヤツらの仕業だ。他の皆は?」
裕作は一瞬どう答えるか躊躇った。

「映士はおまえを捜しに屋上へ行った。俺は倉庫の様子を確かめにね」
「なら戻ろう。壬琴や菜摘も部屋に?」
戻ろうとするヒカルの手を裕作が掴む。
「おまえ、ヒカルだよな」
「何を言ってるんだ。当たり前じゃないか」
ヒカルは手を振りほどく。必要以上に刺々しく感じるのは、もしかしたら変装を見抜かれないためでは無いだろうか。
「もしかして、あの変装の得意な男だと思っているのか?冗談じゃない!」
「証明できるか?」
「証明できるかだって?ふざけないでくれ。キミのほうこそ本当に裕作なのか?この炎の中一人で行動するのなんておかしいだろう」
牽制代わりにポケットのケイタイザーに手を掛けるが制限中なのが悔やまれる。
「ヒカル、もし本物なら聞かせてくれ。何でサーガインを殺したんだ?」
ヒカルの端正な顔が歪んだ。
「何故だと、キミも本物なら自分の胸に手を当てて聞いてみればいい!キミも同意したんだろう。深雪さんの遺体から首輪を奪うことに!
ボクとドモンがどれだけ苦しんだか解るのか?!」
「俺はそんなことは知らない!言うはずがないだろう」
「しらばっくれているのかどうかは、映士に聞いてみよう」
裕作は振り返る。そこには映士が立っていた。
「知らねぇか、さっきは自分で認めておいてどういうことだ」
「待ってくれ映士。話が噛みあって無い、そうだろう!」
映士に駆け寄る裕作。
「映士、ボクを信じてくれ!」
ヒカルも映士に訴える。
「裕作、下がってろよ。制限時間だろ」
映士はヒカルに向き合う。
「残念だったな。ヒカルはジャケットを奪われている。俺様はそのことを知っているのさ!」
423Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:21:41 ID:UQYnyd3c0
「なっ、映士待ってくれ!」
後ずさりするヒカル。
「往生際が悪いぜ!」
映士はブレスのキーを押す。

「 ゴーゴーチェンジャー、スタートアップ!」

眩い光に包まれ、映士はボウケンシルバーに変身した。
「偽者ヤローが!」
祐作を背に庇いながらボウケンシルバーはサガスナイパーの照準を定める。
「サガスナイパー!」
光線が逃げるヒカルの足元を浚って行く。
「くっ……。仕方ない」
ヒカルはグリップフォンを取り出す。

「ゴール・ゴル・ゴルディーロ!」

太陽のエレメントに包まれるヒカル。
「天空勇者マジシャイン!!」
そしてマジシャインへと姿を変える。
「なっ!変身したってことはこっちのヒカルが本物なのか」
驚いてサガスナイパーの剣先を下げる。
「魔法が使えなければマジシャインにはなれない。ボクは本物だ。信じてくれたかい!」
「ちくしょう、でも菜摘があぶねぇことに変わりはねぇ!」

事の顛末を訊ねる裕作とマジシャイン。
映士は菜摘をヒカルの偽者に渡して来たのだ。
「くそ、早く菜摘の所へ戻らねぇと!」
424Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:30:55 ID:UQYnyd3c0
そこへ、走り出す3人を呼び止める声がした。

「その必要はないぜ。菜摘なら無事だ。今の所はな、手を出さないでもらっているのさ」
「おまえ、壬琴!」
声を上げるボウケンシルバー。
「待て本物か?おまえ」
尋ねる裕作を笑い飛ばす壬琴。
「はははッ、俺が本物だろうが偽者だろうがどうだっていいだろう。一つ教えておいてろうか。俺は最初からゲームをしていたのさ」
「ゲーム?」
問い返すヒカル。
「あぁ、殺し合いには乗らない。俺が本当にそう思っていると、5人騙せるか。
5人騙せたら、今度は殺し合いにスカウトしてくるヤツに乗ってやろうってな。おまえらのおかげで目標オーバーだ。と言うわけさ、行くぜ!」

信じられないものを見るようだった。

「クロノチェンジャー!」

壬琴が嵌めていたのはクロノチェンジャー。壬琴の身体をグリーンの粒子が包んで行く。
「やめろ!」
裕作が叫ぶ。その前に出たのは映士だ。
「アイツは俺がやる。ヒカル頼む、もう一人のヤツから菜摘を」
「映士、しかし……」
「つべこべ言ってる時間はねぇ!ヒカル頼む」
マジシャインは頷いて菜摘の元へ走り去る。

怒りに震える裕作。
今ほど制限を無力に感じたことは無い。
425Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:38:43 ID:UQYnyd3c0
映士はタイムグリーンになった壬琴の前に立ちはだかる。

「安心しろ裕作、俺が必ず取り戻す!行くぜっ!!!!!」






「客だと、誰かと思えば」
サラマンデスは振り返る。
こちらに歩み寄る巨躯は忘れようがない忌まわしい兄の姿だ。
憎悪か憤怒か、身体に猛々しいオーラ纏いサラマンデスを凝視し歩み寄る。
「これはこれは兄上。まだこのサラマンデスに未練がおありですか?」
「未練か……。未練と言えば未練よな……」
「ふ、笑止。貴様が未練に思うは母上グランディーヌのことであろう!
一度は死に、ここでも屠られ……。まだなお、母上の寵愛を欲するとはどこまで貪欲なのだ」
憤りのままに兄と対峙するサラマンデス。
ジルフィーザは、ただ静かに問いかける。
「そこまでにこの冥王が疎ましいか?」
「疎ましいなど、そのような言葉では生ぬるいわ。消え失せろ、塵一つ存在を残さずにな」
ククク、ジルフィーザの肩が揺れ微かな声が漏れる。
「許せ、愚かだが愛しい弟よ。このジルフィーザ、母上のため、そして何より貴様自身のために……」
泣いているのか、笑っているのかジルフィーザ自身も気付かぬ声だった。
そして反転。

「サラマンデスッ!!!!この冥王ジルフィーザ。冥王の名にかけて貴様を叩き臥せてくれるわ!!」

地の底から、いやまさしく冥府から響く咆吼。
サラマンデスは刹那たじろぐも、すぐさまゴウライチェンジャーを構える。
426Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:41:09 ID:UQYnyd3c0
「笑わせるな!一度落ちた冥王に負けはせぬ!貴様など玩具相手で充分だ!!!ゴウライシノビチェンジ!!!」
サラマンデスは鍬形の装甲を身に纏い、腕を唸らせジルフィーザへ迫る。
「愚かな、シュリケンジャー如きの甘言に惑わされ破滅の道を進むか!」
「破滅の道を歩むのは貴様だ!タアアアアァァァァッーーーーーーーーーー!!!!」
叫びながら自らの腕を2つの刀と化しジルフィーザへ向かい真っ直ぐに飛んだ。そのまま両腕を引き構え即座に突き立てる。
「ハーハッハハハハァーーーーー!どうです兄上、これがあなたがくびり殺そうとした赤子だ!!貴様が疎み、恐れた、これがサラマンデスだァーーー!」
数歩後退しながらも、それを受けきり大音声で吼えるジルフィーザ。
「甘い!これしきの打撃が龍冥王とは片腹痛い。見るがいい!!」
ジルフィーザの掌より出現せし光球がサラマンデスへ急迫する。
咄嗟に身を翻し、僅かな動作で打撃を繰り出すサラマンデス。
ジルフィーザもまた寸前の間合いでサラマンデスへと槍を振るう。

「「ガアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァッーーーーーーー!!!!!!」

重なり合う二つの声と、躯を抉る鈍い音が不協和音を奏でた。







「サガスナイパー!」
逆袈裟に切り上げてくる切っ先を間一髪避けるタイムグリーン。
怒りはMAX、フルパワーで切り掛かってくるボウケンシルバーに思いの他、苦戦を強いられていた。
(待ったく、冥王ブラザーズのおかげで予定が狂った)
もとよりこちらの相手はサラマンデスにさせるはずだった。
そのサラマンデスは追ってきたジルフィーザと戦闘中。
427Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:44:54 ID:UQYnyd3c0
先程のジルフィーザの気迫ではサラマンデス一人では心許ない。
早く駆けつけてジルフィーザこそここで討つべきだと、焦りも祟って集中出来ずにいた。
そして焦りの元は制限からもきている。
タイムグリーンの変身解除後、シュリケンジャーになるまでは数分のタイムラグがあるのだ。
(たかが数分されど数分だからね)
加えて手負いの身。長引けば長引くほど敗北の可能性は高くなる。

「ヤアアアアーーーーーッ」

しかし思考に集中している暇は無い。
ボウケンシルバーは滑るように間合いを詰め、燕返しにサガスナイパーを振るう。
(くッ、中々やるね。パワーファイターかと思えば、スピードも鈍くない)
後方へ跳躍し攻撃を避ける。
(だけどタイムグリーンの方がスピードじゃ負けない。さぁ、メンタルはどうかな?)
さらに疾走して自らの距離まで間合いを取った。
「ハーーーーーーーーッ!タァーーーー!!」
低く構えた状態から地を這う蜘蛛の如く砂煙を上げボウケンシルバーへ近づき放つ。

「ベクターエンドビート9!」

ダブルベクターが、時計の9時を刺す。大振りに揺れる針がボウケンシルバーへ切り掛かる。
「そんなもんで俺様が倒れるかよッ!喰らいやがれ!!!」
ボウケンシルバーはサガスナイパーを引き構える。そして煌めきながら真っ直ぐ突き出されるは、鋭い打突。
428Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:55:19 ID:UQYnyd3c0
だが、

「何っ……!!」

驚愕の声を上げたのはボウケンシルバー。

「HAHAHAHA!掛かったね!」

仕掛けたのはシュリケンジャー。
でもシュリケンジャーが仕掛けたのは超忍法でも何でもない。

ただスーツの特性を生かしただけ。
タイムグリーンはボウケンシルバーよりスピードにおいて勝っているという特性を生かしただけだ。

功を成したのは、予め目くらましに立てた砂煙。
砂塵は辺りを渦く炎によって落ち着くこと無く漂っていた。

そして、間合いを計りながら掴んで置いた位置は……。
そう、今、声も無く白目を向いて倒れて行く裕作の居た位置だ。

「あ……、う、嘘だろ……」

茫然自失。予想通りに弱いメンタル。
音も無く背後に回り静かに放つ必殺は……。

「ボルパルサー」

文字通り、ぽっかり胸に穴が空いたボウケンシルバー。
「HAHAHAHAHAHA」
タイムグリーンは低く笑った。
429Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/05(月) 23:55:50 ID:UQYnyd3c0
その背後に、ゆらりと亡霊のような影と声。

「まだ……。終わりじゃ…ねぇ……」

ゆっくりと振りかぶり、シルバーブレイザーをタイムグリーンのマスクに突き立てたのは裕作。
だが悲しいかな、生身の力では傷をつけること叶わない。

「頼む……シオンの、シオンのスーツ……なんだよ」

そう言いながらもう一度マスクへシルバーブレイザーを突き立てた。
ずるり、それは涙を浮かべた裕作の身体が地に倒れ込む音。

「お坊ちゃんの様子を見に行かなきゃね」

溜息混じりに背を向けるシュリケンジャー。
亡霊はもう一人。背後へ忍び寄る。

「悪いが……俺様は……諦めが悪くてなぁああああああーーーー…………。やっぱ…無理か……」

ダブルベクターの切れ味は最高。
無言で薙ぎ払えはそれだけで終わりだった。
430名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 00:03:40 ID:Ck9tHIbD0
支援
431Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 00:07:43 ID:oNxO9olz0
残心を示すタイムグリーンも、最期に浮かべた映士の寂しげな笑いには、ジョークの一つも出てこなかった。







「一体どういうつもりだ!」
サラマンデスは怒声を発した。
二人の攻撃がぶつかり合うかと思われた瞬間。
ジルフィーザは槍を振るわずサラマンデスを受け止めるように両手を拡げた。
寸前でサラマンデスは攻撃の手を弛めたがジルフィーザの胸に両手の甲までが食い込んでいる。
それを抜こうとするサラマンデスの両腕をがっしりとジルフィーザが掴んでいるのだ。
まるで自らサラマンデスの両手を胸に突き刺すように、サラマンデスの両手を抱え込んでいる。

「サラマンデス……」

ジルフィーザの目に怒りは無い。ただ突き抜ける空のようだ。刹那そう感じたサラマンデスはそれを即座に否定する。
「何を謀る!ジルフィーザ」
ただ空のようなその双眸から何故か眼を離せずにいる。

「今、貫いたのはこのジルフィーザであり、おまえ自身だ。憎悪の中で生まれたサラマンデスはたった今死んだのだ。
ドロップ、この手でおまえの手を握らず、なぜ俺はおまえの首を絞めたのであろう……」
サラマンデスは思い出す。
「愚かだ…愚かな……」
かつて感じた愛おしいぬくもり、そっと置かれた兄の暖かな手を。
「この……愚かな兄と同じ道を辿るな。何が冥王か、何を持って王か……。母上の愛に目が眩み。何も映さぬ眼を持って何が王か……!」
胸を付くこの感情は何なのだ。認めるわけにはいかない。冥王は2人はいらないのだ。
432Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 00:22:00 ID:oNxO9olz0
「なっ、貴様」
「兄として男として道を示してやれず……。済まぬ。強くなったな弟よ」
頬を撫でる、兄の大きな手。
「花は土へ、雨は水へ、死者は死者へ還る。その前にドロップ、道を誤るおまえを、いや、もう一度この手で撫でてやりたかった」

本当は知っている。
知っているのだ。
幼い自分を撫でたその手を。

「兄……上…」

ジルフィーザの胸からそっと腕を引き抜く。ふと、気付く気配にサラマンデスは身構える。

「今更、兄弟仲良くお涙頂戴とは笑わせるねっ」
そこにはベクターハーレーを構えるシュリケンジャーがいた。
初動が遅れたサラマンデス目掛け間髪入れずに斬りかかって来た。
「おのれ!」
怒りを漲らせたジルフィーザが槍を構え、サラマンデスを突き放した。
「何をしている。退けィ!ドロップ」
「ヘイ、麗しい兄弟愛だね」
背後へ肉薄したタイムグリーンはジルフィーザの腕から槍を奪い取った。
「YA!」
そのままジルフィーザの太股へその槍を突き刺す。
「グワッ……!」
沈んで行く身体。
地へ張り付けるように槍を深く深く突き立てる。
433Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 00:28:17 ID:oNxO9olz0
「謀反を企てられるのは君主としてのユーに魅力が無かった。それは解ったみたいだね。そして……」
跳躍したタイムグリーンは、サラマンデスの背後に廻り背中へ手刀を振り下ろした。
「グアッッ!」
「君主を平気で裏切る真似は、忍としてのミーが許せない」
倒れるサラマンデスの耳元でゆっくりと囁いた。

「ヘイお坊ちゃま。ユーはここで死んだほうがいい。サイマ一族のためにもね☆」

言うや跳躍して一瞬で距離を取る。
「グッ、おのれ!我が弟を愚弄するか」怒りを表にしたのはサラマンデスでは無くジルフィーザだった。
「ビンゴだろうジルフィーザ!ユーたちでは一族を引っ張る力なんてない。さぁ、兄弟仲良く冥土で反省会でもするといい」
「弟には指一本触れさせぬ!」
「ホワイ?止められると思うかい」
ジルフィーザへ身体を向けた瞬間、タイムグリーンの頭が除ける。
ジルフィーザがライフルを構えタイムグリーンを狙い撃ったのだ。
「オーノー!ジルフィーザ。それは余りにも無茶な攻撃だ。」
軽く嘲りながらマスクの目元を指でパンッと弾く。
ジルフィーザは無言でもう一度引き金を弾く。
「ヘイ、冥王のプライドはどう……」
パンッ。軽い音がマスクを弾く。
「いらぬ。プライドなどいらぬわ」
ジルフィーザは倒れているサラマンデスに一度視線を落とした。退け、ジルフィーザの眼が言っている。
「なら望みどおりジルフィーザ、ユーから送ってあげるよ」タイムグリーンはツインベクターを構えた。
不意にサラマンデスへ振り返り、
「さぁどうするサラマンデス。ユーはまだ若いし、まだまだ可能性がある。ミーに付くならブラザーの命がある内に言うんだね」
怒りに拳を握りしめ炎柱を立ち上げながらサラマンデスが叫ぶ。
「ウワアアアアアアーーーー!」
434Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 00:33:31 ID:oNxO9olz0
「HAHAHAHA、なんてね☆いくらユーでもこれは嘘だって解るはずね。
どうやら制限が解けたみたいだけど。でもそんな炎!ミーには火遁の術ほど効かな……」

パンッ。
また同じように軽い音だった。
だが次にピシッと異質な音がマスク全体に走った。
サラマンデスの炎が迫っていた。
渦を巻き龍の如く眼前へ襲い掛かる炎の圧力でタイムグリーンのマスクは粉々に砕けた。
サラマンデスが叫ぶと同時にジルフィーザは最後の銃弾を放ったのだ。

「グアア………………ッッアアアーーーーーーッ!!!!」

炎がマスクの中の素顔を舐めるように広がり焼いていく。
「ン………グァアアアーーーー!ァオ……ノーーーー!」
のたうちまわりながらタイムグリーンは変身を解除した。
「ウ……グッ……」
呻き声を上げ立ち上がろうと膝を付いた。
ガクリと、体勢が崩れた時。
「……!?」

スルスルッ。

そうホットミルクに張った皮膜を、スプーンに絡めて剥ぎ取るように、むしろそれより滑らかに。
焼け爛れた皮膚がシュリケンジャーの頬から落ちる。
435Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 00:34:52 ID:oNxO9olz0
「…………」
シュリケンジャーは声も出さず地に流れた素顔を見つめ、やがて狂ったように笑い始めた。

「HAHAHAHAHA!!!!HAHAHAHAHAAAAAA!!!!!!!!ガッデム!背後は炎!前には冥王ブラザーズ!ミーは万事休すだ!」

シュリケンジャーの制限が解けるまで後たった数分だった。そして奇しくもゴウライチェンジャーはサラマンデスの手にある。
「だが敢えてサンキューと言っておくよ?素顔を晒して死なずに済むそれだけが救い……。このシュリケンジャー!引き際は自ら引くさ☆さらば」
シュリケンジャーは身を翻し炎の中へ飛び込む。
御前様と心で名を呼び命の尽きる時を迎えようとした。

だが一陣の風のように、炎を突き進む影が現れた。

悲しげな遠吠えを発し飛び込もうとしたシュリケンジャーを背に乗せ駆ける。
「兄上!あれは」
「ぬう、マーフィー!?」
驚愕の声をあげるジルフィーザ。
「マーフィー?ユーがミーを助けてくれたんだね」
マーフィーの首に抱き着いたシュリケンジャーは笑いながら懐に手を忍ばせた。
「うーん、やっぱりミーはまだ死ぬには早いようだ。ヘイマーフィーご褒美だ!」
シュリケンジャーは奪った支給品からキーボーンを取り出しポンと放り投げた。マーフィーはキーボーンをジャンピングキャッチ。
そして変形して行く。
「HAHAHAHA!」
眼窩が飛び出るほどシュリケンジャーは興奮した笑いを立てた。

「アイムラッキー!ユーアーグレイト!!」
バズーカへ変形したマーフィーはシュリケンジャーの腕へ。
436Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 00:40:20 ID:oNxO9olz0
「OKマーフィー!行くぜ、アイツらは悪者だ!GOー!!」

バズーカとなったマーフィーから光弾が発射される。
幾重もの光の触手が一斉に獲物目掛けて伸びて行くようだ。
「グアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
両手を限界まで広げ、ジルフィーザは身がすくむほどの雄叫びを上げた。
「あ、兄上ェーーーーーーーーッ!!!!」

サラマンデスの叫びとジルフィーザの雄叫びが重なる。
魂さえも震わせる炎の中の共鳴。
そして着弾と共に視界は真っ白に染まった。


「ミーもこの傷だし。一旦ここでグッバイさ。次に合う時はユーの知らない顔だけどね!」

真っ白な世界に、シュリケンジャーの声が韻を残した。




「……ウ……ウウググアアアアーーーーー!……何故?何故だ」

悲痛な叫びが反響する。

ジルフィーザの前に腹部に穴の開けられたサラマンデスが立っていた。
「め……冥王…今……しばらくの…お待ち……を」
話すのもままならぬサラマンデスは、ジルフィーザに突き立てられた槍を抜こうと手を伸ばした。
「何故……。何故だ、退けと言ったはず……」
437名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 00:44:23 ID:FGJ9msul0
SIEN
438Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 00:50:06 ID:oNxO9olz0
サラマンデスはただ首を横に振った。
槍を掴み、引き抜こうと力を入れるたび、サラマンデスの身体からは夥しい血液が飛び散った。
「何故だ。サラマンデスッ!」
それでも力任せに引き抜き、槍をジルフィーザへ握らせる。
ふらり、力尽きたかサラマンデスは前へ倒れ込んだ。
ジルフィーザが抱き起こそうとするもそれを片手で制す。
そしてそのままジルフィーザへ向かい跪いたのだ。

「とり急ぎご報告を……」

麗、美季、ティターン、そしてドロップのために命を落とした巽纏。
ジルフィーザと出会えた後からここまで。そしてシュリケンジャーの狙い。
知りうるすべてをつぶさに克明にサラマンデスは語り上げた。

全てを語り終え、ついにサラマンデスは崩折れる。
咄嗟に手を差し伸べるジルフィーザを再び制す。
「せめて、最期は誇り高きサイマ一族として、冥王にお仕えして逝かせて頂きたいのです」
明瞭な声ではっきりと告げる。
「貴様の忠義、確かに受け取った……」
「ありがたき幸せ」
そのまま目を閉じ逝くつもりだった。
「どうぞ、冥王。私に……構わず…。お進みくだ…さい」
「うむ……」
去りゆく兄の背中を見つめ、大きく息を吐く。
439Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 01:02:41 ID:oNxO9olz0
これが最期の言葉になるかもしれないと、サラマンデスは声を振り絞った。

「御武運…を……」

力の抜けていく身体を抱き留める腕がある。
「許せ、おまえの望むままに送ってやれぬ、この愚かな兄を……」
サラマンデスの肩をジルフィーザが抱き留める。
「死ぬなっ、死ぬな……。死なないでくれ!愛しい我が弟……ドロップッ!」


――――……見つけ…た。お兄……ちゃん。


ジルフィーザの腕の中で最期にサラマンデスは穏やかに、微笑んだ。


「ねぇ。お姉ちゃん、見える?これが兄上。ボクのお兄ちゃん…だよ……」


事切れる前だった。
誰にも聞こえないほどの、ほんの小さな声ではにかみながらドロップが呟いたのは。





【高丘映士    死亡】
【童鬼ドロップ   死亡】
【早川裕作    死亡】
残り18名
440名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 01:07:16 ID:FGJ9msul0
紫炎
441名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 01:09:18 ID:mhO9f3rG0
支援
442Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 01:09:40 ID:oNxO9olz0
【メレ@獣拳戦隊ゲキレンジャー】
[時間軸]:修行その46 ロンにさらわれた直後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:鳩尾に打撲。左肩に深い刺し傷と掠り傷。両足に軽めの裂傷。理由不明のイライラ。
[装備]:釵一本@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:ライフバード@救急戦隊ゴーゴーファイブ、芋羊羹、フェンダーソード@激走戦隊カーレンジャー
 火竜の鱗@轟轟戦隊ボウケンジャー、他一品、支給品一式×3(恭介、ドギー、裕作)
基本行動方針:理央様との合流。理央様に害を成す者は始末する。
第一行動方針:シュリケンジャーの話を頼りに理央の元へ。
第二行動方針:青と白の鎧を身に纏った戦士(シグナルマン)とガイに復讐する。ガイの仲間(蒼太とおぼろ)を撃退する。
[備考]
リンリンシーの為、出血はありません。
2時間の制限と時間軸のずれの情報を得ました。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。
443Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 01:09:58 ID:oNxO9olz0
【名前】仲代壬琴@爆竜戦隊アバレンジャー
[時間軸]:ファイナルアバレゲーム 死亡後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:腹部、胸部、打撃によりダメージ(応急処置済)。ビビデビにやられました飛行中です。
[装備]:ダイノマインダー、ダブルゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、スコープショット ダイノコマンダー@爆竜戦隊アバレンジャー
[道具]:なし
[思考]
基本方針:コイン占いにより殺し合いには乗らないと決める。ロンを倒し、このゲームを破壊する。
第一行動方針:次元虫の解体手術を行う予定でしたが……。
第二行動方針:不特定多数の参加者との命を懸けたサバイバルゲームを開始する。
第三行動方針: 首輪の解析。
備考:ダイノハープを見つけました(麗の鍵)アバレブラックへの変身が可能となります。
※ビビデビが知る情報のほとんどを得ました。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。首輪によって設けられた制限時間の情報も得ています。
※ドモンから情報を得ました。深雪のメモを読みました。
※禁止エリアでは首輪を外しても生存可能だと思っています。
※小津勇の食料、ペットボトルは長い年月を得たような状態です。
※クロノチェンジャーの変身方法を知っています。


444Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 01:11:16 ID:oNxO9olz0
【名前】ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:星獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:ボロボロ。命には別状はない。
[装備]:なし
[道具]:クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー
[思考]
基本行動方針:ロンに協力し、ネジレジアの復興。
第一行動方針:シュリケンジャーの配下として動く。
第二行動方針:メレを追う。

【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:健康。現在は素顔。 顔面全体重度の火傷。
[装備]:スワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャー 、シュリケンボール
[道具]:知恵の実、映士の不明支給品(確認済)マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、支給品一式×4(水なし)SPD隊員服(セン)
     キーボーン@特捜戦隊デカレンジャー、両方表のコイン
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る
第一行動方針:扇動者となって、なるべく正面から戦わずに人数を減らす。
第二行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。 それがだめならアレの消滅を願う。
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・禁止エリアに入った時の首輪の効果を確かめました。
・集められた支給品一式の内、炎の騎馬@忍風戦隊ハリケンジャー、はG6エリアに放置されています。
445Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 01:12:03 ID:oNxO9olz0
【名前】ヒカル@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage35後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:左肩に銃創。胸に刺傷。共に応急処置済み。
[装備]:グリップフォン、シルバーマージフォン
[道具]:基本支給品一式×2(小津深雪、ヒカル)月間宇宙ランド(付録なし)@激走戦隊カーレンジャー 深雪の残したメモ
[思考]
基本方針:時間を戻し、歴史の修正を行う。(情報を映士、深雪へ伝える。世界の崩壊を止めるための死に場所は広間)
第一行動方針:歴史の修正を行うための準備をする(情報集め)
第二行動方針:菜摘を捜す。
第三行動方針:冷静すぎる明石に微妙な気持ちを抱きました。
備考:サーガイン、裕作と情報交換を行いました。また、映士から情報を得ました。
 マジシャインの装甲(胸部)にひび割れ。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。


【名前】マーフィーK−9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:本調子ではないが、各種機能に支障なし。深い悲しみ。混乱により回路に負担が掛かっている状態。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:どうすればいいのかわからない
第一行動方針:眠ることにより、回路の負担を減らしたい
第二行動方針:シュリケンジャーついていく
446Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 01:13:06 ID:oNxO9olz0
【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:胸、太股に深い傷。ドロップを失い深い悲しみと怒り
[装備]:杖 、ゴウライチェンジャー(クワガ)@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、予備弾装(催涙弾5発)、サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー、真墨の首輪、支給品一式(バンキュリア)
[思考]
基本行動方針:ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップの死に深い悲しみ
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。

【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:軽い打撲、水中にいたため、そして全力疾走したので身体はかなり疲労しています。 Tシャツと下着姿。カーテンを纏った状態です。
[装備]:アクセルブレス 、クロノチェンジャー(タイムピンク)@未来戦隊タイムレンジャー、
[道具]:なし
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。 ロンに負けない。
第一行動方針:気絶中
第二行動方針:仲間(シグナルマン)を探す。
備考:
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。首輪によって設けられた制限時間の情報も得ています。
※壬琴から情報を得ました。深雪のメモを読みました。
※禁止エリアでは首輪を外しても生存可能だと思っています。
※小津勇の食料、ペットボトルは長い年月を得たような状態なのを見ました。
※クロノチェンジャーの変身方法を知っています。
※変身制限に気が付きました。
※菜摘の衣服はG6エリアで燃えたと思われます。首輪(ドギー、深雪、アンキロ)、サーガインの死体(首輪付き)はG6エリアに放置されています。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと裕作から掻い摘んだ説明は受けました。
447Star where you lead me ◆MGy4jd.pxY :2010/04/06(火) 01:16:07 ID:oNxO9olz0
以上で終了です。
途中支援ありがとうございました。ながらくスレの時間を止めてしまって申し訳ありませんでした。

おそらく設定の見落としなどあるかも知れません。
誤字脱字、指摘、感想よろしくお願い致します。

久々に書かせて頂いて、この予約期間充実の一言でした。
かさねてありがとうございました。
448名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 01:17:09 ID:mhO9f3rG0
投下乙
449名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 01:22:50 ID:Ck9tHIbD0
投下GJです!大作本当に堪能させていただきました。
正式な感想は明日改めてと思いますが、本当に面白かった!!
心からの感謝を込めて重ねてGJでした!!
450名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 01:25:06 ID:FGJ9msul0
一日待った甲斐のある話です
投下乙!!
時刻的にはかなり眠いので感想は後日
451名無しより愛をこめて:2010/04/06(火) 11:53:15 ID:GOMe4pPA0
投下GJでした!大作過ぎて感想だけで長文乙になりそうなので、小分けにさせていただこうかとw

>>砂漠を照らす星
本来非常にドシリアスな状況なのでしょうが、シグナルマンのボケボケっぷりがいいアクセントになって楽しく読めました。
逆立ちしているセンちゃんとシグナルマンは光景を思い浮かべるとなかなかシュールw
シグナルマンの目を通したジル兄のオアシスを望む眼差しの描写がとても印象的でした。
菜月とスモーキーに思いをはせるシグナルマン。彼がいつか知ることになることを思うと切なくなりました。

>>星に賢者は導かれ
西堀さくら。彼女の弱さと彼女の強さ。相反する二つの心情が印象的でした。
ロワ内では、どうしても弱さの出ることの多かった彼女ですが、こんなしなやかな強さも持っていたことを改めて思い出しました。
開き直った彼女は頼もしくて、どこか危うい。
そしてそんな姐さんと渡り合い、互いに値踏みしあった末に、彼女の排除への執着をやめたかに見えるブクラテス。
その姿にヒュウガといた頃の彼を思い起こされましたが、さて。
あえて竜也と残ったブクラテスの思惑は果たしてどこにあるのか。
彼らの行く末がどうなるのか、とても楽しみです。

後半分は帰宅後、書かせていただこうと思いますが、
本当に楽しませていただけました。
改めてGJです!






452青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 20:53:44 ID:wO9lMSKC0
 何もない、ただ只管広がるだけの広い荒野。
 そこに聳え立つ天にも届こうかという塔。
 数十分の間、不安定な砂利道をマシンハスキーで走り抜け、蒼太はようやくその麓へと辿り着いた。
 そして、この塔こそがクエスター・ガイとの決戦の場だ。
 ガイが持つ天空の花。それをこの叫びの塔で使えば、愛を凍らせ、殺し合いを躍進させることができるという。
 ここに来る最中、ガイの姿を見止めることは出来なかった。
 果たして、ガイは既に辿り着いているのか。それとも、先んじることが出来たのか。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
 口調は軽快に、だが、行動は慎重に、蒼太はマシンハスキーを隠し、塔を昇り始めた。



 映士とヒカルとの一戦から、約2時間。
 ネジブルーは海岸の探索を終えようとしていた。
 ドモンに映士にヒカル。
 倉庫を出て、わずかな時間で3人もの参加者に出会えた幸運に期待を寄せていたが、どうやらネジブルーの幸運はそこまでだったらしい。
 それからというもの歩けど歩けど、誰とも出会えなかった。
 もっとも、わずかながら収穫はあったのだから、これで不運というのは我侭が過ぎるというものだろう。
 鷹の頭部を模った熱風を放つ銃。
 道すがら見つけたロボットの躯の腰に携えてあったものだ。
「あのロボットが持ってたこの銃〜。このソニックメガホンとぴったり合うね〜。あとのひとつはクエイクハンマーだったかな〜?
 なんだかもう直ぐ会えそうな気がするよ〜」
 彼の支給品であるソニックメガホンの説明が書かれたメモには、ご丁寧にもドライガンとクエイクハンマーと連結させることによって、強力な武器になると書かれていた。
 そのためか、ネジブルーは半ば確信に近い勘でそれがドライガンだと見抜き、ソニックメガホンとの連結を成功させていた。
 そして、その勘はクエイクハンマーにも巡り会えると訴えている。
453青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 20:54:21 ID:wO9lMSKC0
「クエイクハンマーの持ち主はあいつらと違って面白い奴だといいね〜、メガブルーーーーー!」
 ネジブルーは周りも気にせず、雄叫びを上げながら、歩みを進めていった。



 塔の頂上を目指し、長い螺旋階段を昇る最中、蒼太はある確信に至った。
(まだここにガイは着いていないな)
 その根拠はこの長い螺旋階段そのもの。
 傷だらけのガイがこれを登り切るには相当骨が折れることだろう。
 もし彼がこの螺旋階段を登っているのなら、その痕跡は隠し切れるものではない。
 開いた傷から血や疲れから出る汗、吐瀉物などあってもいいはずだ。
 埃が溜まった階段に足跡ひとつないのもおかしい。
(そうとわかれば、頂上で待ち伏せといこうかな)
 蒼太の歩みが速まる。
 待ち伏せは何も気配を覚らせないことが脳じゃない。
 むしろ、誰かがいるということをあからさまに示し、必要以上に警戒させ、神経をすり減らさせるのも兵法のひとつ。
 10分という制限が課せられるこの場で、更に傷だらけで直接的な戦闘を避けたいガイには相当なプレッシャーになるはずだ。
 蒼太は走り、登り、階段に足跡を残していく。
 その動きは好調。どうやら、さくらに刺された傷は完全に塞がったようだ。
 程なくして、階段の終わりが蒼太の瞳に映る。
(さ〜て、到ちゃ――!)
 最後の一歩を踏み出そうとしたところで、蒼太は異変に気付き、咄嗟に壁にへばりつく。
(誰かいる?)
 ガイがいないことと気付いてからも、蒼太は警戒を怠った覚えはない。
 だが、論より証拠。何者かはこちらに背を向け、頂上の広間に立ち尽くしていた。
454青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 20:55:11 ID:wO9lMSKC0
「そんなところに隠れていないで、入ってきてはいかがですか?」
 届いたのは聞き覚えのある声。見るより先に聞くことでそこに誰がいるかを理解し、蒼太はその男の前に姿を現した。
「どうも。端から端への縦断の旅はいかがでしたか?」
「ロン、どうしてここに」
 質問に質問を返す蒼太に腹を立てるでもなく、バトルロワイヤルの主催者たるロンは顔を傾け、ニヤリと笑った。
「いえね、基本的に私は参加者の判断に口を挿むつもりはないのですが、あなたをここに留まらせるのはあまりにも勿体無いと思いまして」
「勿体無い?」
「ええ。このバトルロワイヤルを開始してからおよそ半日。そのたった半日の間に、私は様々なドラマを見てきました。
 ある者は喜び、ある者は怒り、ある者は哀しみ、ある者は楽しむ」
 そこで一旦、ロンは言葉を区切ると、眼を瞑り、今までの出来事を反芻していく。
 その恍惚たる表情に、蒼太はロンが心底、このバトルロワイヤルを楽しんでいることを確信する。
「そして、その最高のドラマは早くもクライマックスに向かって突き進んでいます。
 しかし、ただ一人、今のままではそのクライマックスに間に合わないかも知れない人が」
「それが僕だと」
「はい。あなたはガイを止めるために、ここに辿り着いた。ですが、その肝心のガイは天空の花を禁止エリアに捨て、その後、命を落としました」
「ガイが死んだ?」
「それはそれは壮絶な最後でしたよ。勝ったと思い、調子に乗ったのが敗因でしたね。彼は炎に焼かれ、跡形もなく消え去ってしまいました。
 彼が生きてここに辿り着いていれば、ここでまたひとつのドラマが生まれたのでしょうが、残念ながら、もう芽は潰えたと言っていいでしょう。
 ですから、私は主義を曲げてまで、忠言に来たのです」
 突然、蒼太の顔に笑みが浮かんだ。今の今まで神妙な顔つきをしていたというのに、突然の表情の変化にロンは疑問の声を上げる。
「何か?」
「主義を曲げて?それは嘘でしょ」
「ほぉ」
455青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 20:55:44 ID:wO9lMSKC0
「おそらく元々の知り合いを除けば、参加者で一番多くキミに接触しているのは僕。
 僕が今までのキミの言動から分析する限り、キミの主義を一言で表すなら、典型的な快楽主義者。
 キミが本当に自分の主義を曲げているなら、忠言に来ないのが正解。なぜなら、僕がここに留まるのはつまらないことだからね」
 そんな蒼太の言葉にロンはニヤリと笑みを浮かべた。
「ふふっ、やはり今のあなたとは気が合いそうだ。……失礼しました。私は自分の主義に従い、あなたに忠言に来ました。
 是非ともここからお戻りください。今、ここに向かっている者は誰一人としておりません。ここにいても何も面白いことはありませんよ。
 ――もっとも、最終的には蒼太さんの判断で動いていただいて結構です。
 蒼太さんが明石暁や西堀さくらといった邪魔な存在が消えるまで、高みの見物をなさるというなら、きっとそちらの方が面白いドラマになることでしょうから」
 ロンは今後の展開を思い描き、楽しそうに舌なめずりをすると、黄金の靄になり、その場から消え去った。
 頂上には蒼太だけが残される。
「気が合うか。それも撤回させたいね」
 どこか自重気味に呟き、蒼太は踵を返した。



 保冷倉庫の中、並樹瞬は意識が急速に覚醒していくのを感じた。
 一瞬、今までのことが夢だったのではないかと、淡い希望を抱くが、直ぐにそれは絶望へと変わった。
 直接意識に怒涛の如く流入していく破壊衝動。それは瞬を容赦のない現実へと引き戻していく。

――壊壊壊壊壊壊壊セェ!!――

(やめろ、やめてくれ……)
 思わず懇願の声を上げる瞬。
 何故、意識を取り戻してしまったのか、眠ったままでいれば、このような苦しみを味わうことはなかったというのに。
 だが、瞬の冷静な部分が疑問を呈した。
456青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 20:56:39 ID:wO9lMSKC0
 瞬はもう自分は目覚めないと思っていた。瞬の意識など、次元虫がもたらす破壊衝動の前には激流の中の枯葉に等しい。
 流されて、消えるだけだと思っていた。それが何故、今また意識を取り戻したのか。
(これは…?)
 気付けば、破壊衝動は治まらないまでも徐々に流れが緩やかになってきている。
 まるで何かに塞き止められたかのように。
 闇に包まれていた瞬の意識に光が差し込む。
 それが自らの眼から得られたものだと、気付いたとき、そこには紅い眼の男が立っていた。



 マシンハスキーに乗り、蒼太は道なき道をひた走る。
 得た情報はメモに書き留め、アクセルテクターの中に収めた。
 それなりの時間が経ったというのに、召喚される様子がないのはいいことなのか、悪いことなのか。
(まあ、ガイが脱落したってことは、僕らにとっての天敵はいなくなったってことだ。多少は安心していいとは思うけど)
 とはいえ、それが甘い考えということは重々承知している。
 蒼太を、暁を、さくらを脱落の手前まで追い込んだのは、決してガイのような天敵といえる存在ではない。
 疑念、不安、恐怖、人間ならば切り離すことができないそういったネガティブな感情が皆をここまで追い込んでいる。
(さくらさんはチーフと居る限り大丈夫だろうけど、チーフたちと合流する他の参加者たちが今もマトモな精神状態とは限らない。
 難しいなぁ。争わせるのは簡単なのに、協力し合うことはこんなにも困難だなんて)
「おっと!」
 蒼太はマシンハスキーのハンドルを切った。
 気付けば、禁止エリアの手前まで蒼太はバイクを進めていた。
 もう少しで突入するところだ。
「危ない危ない」
 禁止エリアに突入したからといって、直ぐに首輪が爆発するわけでもないのは確認済みだが、何度も確認したいものでもない。
457青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:01:48 ID:wO9lMSKC0
「さてと」
 蒼太は禁止エリアを前に逡巡する。暁たちからの連絡はないが、おそらく北に進めば、暁たちと合流できるはずだ。
 ロンの意味ありげな言葉も気になる。
 しかし、当面の蒼太の方針は疑心暗鬼を煽り、殺し合いに乗っている参加者の共倒れ。
 さくらもまだ顔をあわせづらいだろう。
「よし、決めた」
 ハンドルを南に向け、アクセルをかける。
 最終的には都市へ向かい、暁たちと合流する。だが、その前にちょっとした回り道。
 それは冒険者としての好奇心と云ってもよいかも知れない。
 蒼太は海岸を通るルートを選択した。



 海岸をしばらく捜索した結果、蒼太が辿り着いたのは赤い煉瓦の倉庫街だった。
 マシンハスキーを隠し、探索を始めると、塔のときと違い、そこには何者かが通った痕跡が確かにあった。
 何かを擦ったような壁の痕。整列された中で不自然に崩れた積荷。水溜りから水溜りへと真っ直ぐに引かれた水の線。
 あからさま過ぎて、嘆きの塔で蒼太が取ろうとしていた方法と同じく、誰かがわざと示しているのではないかと疑いたいほどだ。
 だが、もしそれが罠だとしても、蒼太としては臨むところである。
 多少の危険は進むためのカンフル剤にしかならない。
 残された痕跡に従い、蒼太は保冷倉庫の中へと入る。
 外とは違うひんやりとした冷気が蒼太の頬を撫でる。
 閉じ込められやしないかと内心、ヒヤヒヤしながら蒼太は進む。
「怪しいなぁ、あれ」
 いくらか進んだところで、何かを隠すように積み上げられた青いプラスチックの箱が眼に入る。
 まるで何かを隠していますと言わんばかりの光景だ。
458青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:04:31 ID:wO9lMSKC0
(そろそろか)
 蒼太はいつでも変身できるようにアクセルラーを握った。
 おそらくここが終着点。蒼太を導いた何者かが行動を起こすとしたら、このタイミングしかない。
(さて、どこから来る?)
 蒼太はより慎重にプラスチックの箱をひとつひとつ除けていく。
 すると、そこには―― 
「何もない?」
 拍子抜けのあまり、思ったことをそのまま口にする蒼太。
 そうそこには何もなかった。
 ただ白い壁が切れかけの蛍光灯に照らされているだけで、アイテムも、トラップも、モンスターが閉じ込められた氷柱もない。
 誰かが拍子抜けした隙を狙って行動するかと、周りの気配も探っているが、誰かが動く気配はない。
(僕の考えすぎだったのかな?それともロンのいたずらかなにか?)
 まったく意図の見えない仕掛けに蒼太は首を捻る。
 だが、いつまで悩んでも仕方がない。蒼太は気を取り直し、その場を移動することにする。
 丁度、その時だった。ギギギと重い扉の開く音がした。
 誰か来た。自分と同じ痕跡に惹かれた探索者か、それともその痕跡を残した誰かか。
 とりあえず様子を見るべく、手近な物陰へと姿を隠す。
 徐々にこちらへと近づいてくる足音。
 闖入者は迷いなく一直線に蒼太がいる場所へと向かう。
 やがて、闖入者がプラスチックの箱があった場所まで進み出でると、その姿が蒼太の瞳に映った。
(瞬くん?)
 その顔には見覚えがあった。
 F5エリアでティターンたちを追うために別れた並樹瞬の顔に違いない。
 違いないのだが、今の瞬の顔は怒りに酷く歪んでいた。 
(あの後、なにかあったのか?)
459青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:04:57 ID:wO9lMSKC0
 無事だったと安堵する一方で、今の瞬に不安を覚える。
 真咲美希に対する不信も、彼への不安をより一層顕著なものにしていた。
(何にせよ声を掛けなければ始まらないか)
 隠していた身を顕にし、声を掛けようと、軽く手を上げる。
「しゅ――」
「メガブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
 蒼太の声は瞬の突然の慟哭に阻まれる。
 一体どうしたのかと蒼太が呆気に取られていると、瞬は現れた蒼太の方を向き、殺意が込められた視線で彼を射抜く。
「貴様の仕業かぁい?」
 瞬が何を言っているのかはわからない。だが、その激しい殺意は蒼太の背筋を冷たくする。
 無意識の内に蒼太はアクセルラーを構えていた。
「なぜ答えないのかなぁ?貴様の仕業かって聞いているんだ!」
 地面を蹴り、蒼太に詰め寄ろうと瞬が駆ける。
 已むを得ないと、アクセルラーのタービンを回そうとした瞬間、蒼太は視界の片隅で何かが動くのを捉えた。
(あれは)
 蒼太は即座にタービンを回し、ボウケンブルーへと変身する。
 そして、サバイブレードを手にすると、瞬の後ろに回りこみ、それを振るう。
「はっ!」
 気合一閃。サバイブレードによって、弾かれた銃弾が地面へと転がる。
 離れた位置から何か行動を起こすなら、咄嗟に狙撃と判断したがビンゴだ。
 変身したことで強化された視覚が黒ずくめの男の手に握られたライフルを視認する。
 瞬の豹変は気になるが、今そこにある危機に対処する方が先だ。蒼太に今の今まで気配を感じさせなかった相手だ。只者ではない。
 作戦の失敗を悟り、逃げ出そうとする襲撃者。
「逃がすか」
460青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:05:21 ID:wO9lMSKC0
 蒼太は高く跳ぶと、襲撃者を追った。



 グレイは完璧なロボットだ。
 彼は一度決めた目的に対して、常に冷静な分析を行い、論理的な判断を下すことができる。
 彼の目的は戦いを終わらせるためシオンと共闘し、自分の納得のいく形でシオンに借りを返す。
 それはシオンが死んだ今でも変わっていない。
 だから、彼はシオンと進む道を同じくする参加者たちに協力し、時には自分の意思すらも曲げて行動している。
 並樹瞬捜索を続けていた彼は、予測通り保冷倉庫の中で氷漬けになった瞬を探し当てた。
 瞬を攫ったネジブルーの姿はない。おあつらえ向きに運ぶための台車も転がっている。
 後は瞬を仲代壬琴の元へ届けるだけでよかった。
 よかったのだが――グレイはその場に留まった。
 並樹瞬を別の保冷倉庫に隠し、あからさまな痕跡を演出し、狙撃に都合がいい位置へと姿を隠す。
 それは全てネジブルーを殺すためだった。
 勝算はあった。ネジブルーの並樹瞬に対する執着は尋常なものではない。
 彼が並樹瞬を奪われたことを知れば、必ず動揺し、隙を見せる。
 そこを狙撃すれば、ネジブルーとて一撃で葬ることができるはずだ。
 だが、危険な賭けでもある。
 狙撃に失敗すれば、彼との直接対決は避けられない。
 ネジブルーはネジビザールとタイムブルーというふたつの変身を保有している以上、最低でも一人、仲間と共に実行するべきだ。
 しかし、彼は単独で実行することを選択する。
 制限という括りはあるものの、相手は一人。そして、もうこれ以上、誰かの意見に左右されるのはご免だった。
 ドギーの仇を討つ為。殺すことを躊躇う同行者たちに代わって、手を汚すため。
461青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:05:40 ID:wO9lMSKC0
それは彼が完璧であるが故に持つプライドによって下した決断だった。


 
 高く積まれたコンテナに身を隠し、逃走するグレイ。
 スコープショットと機動力を発揮し、それを追う蒼太。
 小競り合いは数分続いたが、能力を発揮している者としていない者との差は歴然たる事実として表れ、非常口から外へ出たところで、グレイは追い詰められていた。
(黒づくめの男と思ったら、黒いロボットだったのか。確かグレイとか呼ばれていたかな)
 広間にて呼ばれていた名前を思い出す蒼太。
(そういえば、さくらさんがここで会った人物のひとりにグレイがいたはずだけど……)
 蒼太はさくらからグレイと接触したことは聞いていた。だが、彼とさくらとの間で何があったかまでは聞いていなかった。
 対してグレイはボウケンブルーの姿から、彼が西堀さくらの関係者ではないかと考えていたが、その確信は持てずにいた。
 並樹瞬の姿をした彼を守ったことから、殺し合いに乗ってはいないのかも知れないが、それも決定打としては浅い。
「………」
「………」
 互いに相手が敵か味方かの判断材料が足らず、出方を伺ったまま無言になる。
 だが、今の状況は対等ではない。既に変身中の蒼太には迅速な判断が求められる。
 そして、それに気付かない蒼太ではない。
 グレイが何者かを知るため、意を決して、口を開こうとする。
「――アクセルストップ」
 聞こえてきたのは蒼太とは別の声。その声が響き渡ると同時に一陣の青い風が、グレイの身体を切り裂いていく。
「グッ」
 身体中から火花を飛び散らせ、呻き声を上げるグレイ。
 グレイは負けじと虚空に向けて拳を繰り出す。しかし、その拳は空を切り、逆に鋭い回し蹴りがグレイの胸に撃ち込まれる。
 治まる風。すると、そこには蒼太とは別の青い戦士が立っていた。
462青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:09:05 ID:wO9lMSKC0
「追いついたよ〜、メガブルーを隠したのはお前だね」
(この声……)
 先ほどまでは並樹瞬の姿に騙され、声の違和感に気付かなかった。
 だが、こうして見知らぬ姿で声を聞くと、その声が誰なのか、蒼太ははっきりと気付く。
「お前、ネジブルーか」
「ヒャハ、そうだよ。もっともこの姿はタイムブルーって言うらしいけどね」
 ダブルベクターを構えながら、軽い口調で蒼太に返答するネジブルー。
 だが、その視線はグレイだけを捉えており、蒼太の方はチラリとも見ようとしない。
「さあ、さっさと白状しなよ。メガブルーの居場所をさぁ〜〜〜!」
「……奴は粉々に砕け散った」
「ハァ!?」
「あのような姿になっては生きているのが気の毒というものだ」
「ハハッ、嘘だろ?お前たちみたいな正義の味方がそんなことするわけがないじゃないか?」
「私は違う。あのとき、お前を生かしたのも、共闘関係にある者たちとの和を乱したくなかっただけだ。
 今の私に楔はない。お前さえ倒せれば……他はどうでもいい」
 ネジブルーの身体が震える。
 それは好敵手を殺された激しい怒りによるものだった。
 拳を強く握り締め、グレイを激しく睨みつけ、そして――
「………………………………………………………………………………………………………………ヒャハ!」
 笑った。
「ヒャハハハハハハハハハッ!ヒャハハハハハハハハハッ!ヒャアァァァァハハハハハハハハハァァァッ!!!」
「狂ったか」
「違うね〜、これは歓喜の笑いだよ。俺の大切な!大切な!!メガブルーを壊した奴をこれから殺せるんだ。楽しいだろぉ〜?」
 元より狂っているネジブルーだが、メガブルーを別の誰かに殺されたという衝撃は精神崩壊が起こってもおかしくないほどの衝撃だった。
 だが、この場では別だ。この場では優勝さえすればどんな望みも叶えてもらうことができる。
463青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:13:42 ID:wO9lMSKC0
 メガブルーを元に戻すという願いを、メガブルーを蘇らせるという願いに変えれば済むだけのことだ。
 その一点がネジブルーの崩壊を防ぎ、そして、口にした通り、大切なモノを壊した奴に復讐するというシチュエーションがネジブルーを高揚させた。
「粉々にしたって言ったね?なら、お前は塵にしてやるよ」
「………」
 グレイの戦闘回路が処理を始める。
 多少、紆余曲折はあったが、ネジブルーとの戦いはグレイにとって臨むところだ。
 狙撃で殺せれば、それに越したことはなかったが、やはり直接戦闘でケリは着けたい。
 高まる闘志。そこでグレイは思い出したかのように、ただひとつの不確定要素に眼を向けた。
「邪魔だ。失せろ」
 短くそう告げ、グレイはハンドグレイザーをネジブルーへと向ける。
 それが戦闘開始の合図。
 グレイとネジブルーは互いに武器を構え、眼前の敵へと攻撃を開始する。
(完璧に蚊帳の外ってわけか)
 ふたりはもう蒼太を見ていなかった。
 仮にも参加者のひとりを無視するのだ。このふたりに何か因縁があることは容易に想像がつく。
 確かに今の蒼太は情報不足。どっちの味方をするにも、どっちの敵になるにも情報が足りない。
 情報が足りない以上、静観を決め込むのがセオリーだが、失せろと言われて、素直に「はい、そうですか」と肯くのも癪だ。
(動くなら、変身している内だけど……)
 蒼太が悩んでいる間も時は刻まれていく。
「アクセルストップ!」
 グレイとネジブルーとの戦いはネジブルー有利で進んでいた。
 グレイギャノン、ハンドグレイザーといった遠距離戦用の装備を持つグレイはネジブルーと距離を開けようとする。
 だが、ネジブルーは間合いが開きそうになるとアクセルストップを使い、距離を詰める。
 それに加え、アクセルストップの尋常ならざるスピードに翻弄され、グレイのボディには次々とツインベクターによる傷痕が付けれていた。
「ヒャハハハハハッ!どうだい、膾切りにされる気分は?」
464青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:14:14 ID:wO9lMSKC0
 自らの優位に笑うネジブルー。だが、グレイは未だ冷静だった。
「確かに速い。だが、それだけだ。いくら傷を付けようとも、これぐらいで倒れる私ではない」
「ハッ、まあ、そうだね。じゃあ、終わりにしてあげるよ。ロボットは甚振り甲斐がないからねぇ」
 ネジブルーはツインベクターのボリュームレバーを操作し、出力を最大まで上げた。
 ツインベクターから溢れ出す破壊エネルギーが刀身に纏わりつき、ツインベクターを青く染める。
「ベクターエンド、ビィィィィィトエックス!アァァァァクセルストォォォォプ!!」
 ネジブルーの身体がツインベクターと共に消える。
(………!)
 だが、それこそがグレイの待っていた瞬間だった。
 グレイは大地を蹴り、力の限り、両腕をクロスさせた。
「グガッ!」
 確かな手応え、そして、同時に腕の中に浮かび上がるネジブルーの姿。
(ヒグッ……な、何故だ)
 心中で悲鳴を上げるネジブルー。
 アクセルストップの最中はクロノスーツの耐久力は極端に低下する。
 よって、今のネジブルーはグレイのベアハッグを変身前の状態で受けているに等しい。
 アクセルストップの継続時間は3秒。だが、このままでは3秒と経たず、背骨を圧し折られてしまう。
「ウォォォォッ!」
 ネジブルーの判断は早かった。
 クロノスーツを内部から引き裂き、ネジビザールの姿へと変態する。
 依然、グレイのベアハッグはネジブルーの肉体を強烈に締め付けるが、タイムブルーの姿の時と比べれば、幾分か楽だ。
「どういうことだよ。一体、お前、何をしたんだい?」
 グレイの攻撃に苦しみながらも、ネジブルーは疑問を解消するため、グレイに問いかける。
「私は機械だ。そして、アクセルストップのあらゆることは開発者のシオンから聞いてある。
 後はお前の動きを分析すれば、姿は見えなくても何処に居るかぐらいはわかる」
465青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:14:57 ID:wO9lMSKC0
 グレイとて無策でネジブルーに挑んでいるわけではない。
 10分vs20分。その差を埋めるためにこの時に至るまで幾通りもの戦闘プランを模索している。
 謂わばこの戦いはグレイの計算通りに進んでいると云ってもよい。
「はっ、なるほどねぇ。少し侮りすぎてたみたいだ。お前、面白いよぉ〜」
「………」
 無言のまま、更にグレイの力が強まる。
(どうやら、このまま圧し折るつもりみたいだね。まあ、確かにこの姿でもちょっとキツイかな。でも、そうはさせないよ〜)
 ネジビザールは身体に力を込める。すると、彼の身体からは白い冷気が吹き出し始める。
「何をする気だ」
「根競べさ〜。君が俺を殺すのが先か、俺が君を凍らすのが先かのね」
 たちまち、周りの気温は急激に下がり、グレイの身体には霜が降りる。
「正気か。私を凍らせたところで、この腕が外れるわけはない。一緒に氷像になるだけだ」
「そうだね。でも、流石に機能は停止するでしょ?その後、ゆっくり切り刻んでやるよ」
 ネジブルーの言う通りだった。
 この状況が続けば不利なのは先に制限が訪れるグレイの方だ。
 グレイが勝つには制限がかかる前にネジブルーに止めを刺すしかないのだが、ネジブルーのしぶとさはグレイの予想以上だった。
 接触していることも今となっては仇となっている。
(だが、それも想定していなかったわけではない!)
 グレイはハンドグレイザーを発砲する。
 発砲による熱がネジブルーの凍気を軽減し、右腕にわずかながらの自由を与える。
 背中に回される右腕。グレイギャノンを手に取り、至近距離からネジブルーを狙う。
「正気かい。この距離じゃあ、お前もただじゃ済まないよ?」
「ただでは済まん。だが、死ぬのはお前だけだ」
466青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:15:26 ID:wO9lMSKC0
 グレイの指が引き金にかかる。強まる凍気。そんな中、ふたりの運命を決める引き金は引かれた。



 蒼太が訪れた倉庫とはまた別の一戸。
 そこに並樹瞬は移されていた。
 グレイは砕いたと言っていたが、もちろんそれは挑発するための方便に過ぎない。
「グルルルルッ」
 獣となった瞬の低い唸り声が誰もいない倉庫に響く。
 瞬の氷は少しづつ、少しづつ融かされていた。
 グレイはここを離れる前にふたつのことをしていた。
 ひとつは瞬の氷を融かすため、彼の周りを囲むように火を焚いた。
 燃え上がる炎が少しずつ、氷を水へと変えていき、未だ脱出こそ叶わぬものの、次元獣は覚醒へと向かっていた。
 そして、もうひとつ。
 グレイはある命令を次元獣に下していた。
『私が戻らぬ場合は北へ向かえ。ただし、人間に危害は加えるな』
「グガォォォォ!!!」
 自由は近い。次元獣はグレイの命令を遂行すべく、高らかに吼えた。



 引き金を戻し、自分が起こした惨状を確認する。
 不意を突いたことが幸いし、彼らは物言わぬオブジェと化していた。
「ミッション、一応完了と」
 蒼太はぼそりと呟くと、自分の右手を見る。
467青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:16:08 ID:wO9lMSKC0
 変身が解けたため、今はもうないが、その手には先程までデュアルクラッシャーという武器が握られていた。
 制限時間ギリギリの決断。それが齎した結果に、蒼太はふぅと、軽く溜息を吐いた。
(最初は一応、気を配ってたみたいだけど、あそこまで激しい勝負になれば、そりゃあ周りを見ている余裕はないよね)
 グレイとネジブルー。
 ほんの数秒前まで激闘を演じていたふたりはその激闘の様を活き活きと残したまま、美術館に飾られる彫像のように身動ぎひとつせず固まっていた。
「デュアルクラッシャー、聞いてはいたけど、凄い威力だ」
 デュアルクラッシャーはヘッドを使い分けることで、2つの機能を擁するボウケンジャーの武器だ。
 ドリルヘッドでは全てを貫く必殺の武器となり、ミキサーヘッドでは敵を固める拘束ビームを放つ。
 最上蒼太が居た時間軸ではまだ実用化されていない装備であり、ボウケンブルーのアクセルスーツで召喚できるかは賭けだったが、問題なかったらしい。
 これもロンのいたずらという奴だろうか。
 今回、蒼太が使ったのはミキサーヘッドの方だ。お互いに相手だけしか見ていない状態で命中させるのは簡単だった。
 そして、やろうと思えば、ドリルヘッドでふたりを倒すことも可能だっただろう。だが、それは実行しない。
 なぜなら――
(ロンにこれ以上、気に入られたくはないからね)
 殺し合いに乗った彼らを倒すのはミッションの達成という目的のためには決して悪い判断ではない。
 だが、さくらという前例がある以上、彼らが本当に殺し合いに乗っているのかはわからない。
 何より、漁夫の利といえば聞こえはいいが、労せずして命を奪うのはますますロンの思う壺に思えた。
(彼らの言動を聞く限り、ネジブルーは瞬くんのために動いているようだし、グレイはどうもはっきりしないし……)
「ふぅ、まあ決断は後でもいいよね」
 どの道、こうなった以上、今の彼らを変身が解けた蒼太が破壊するのは不可能だ。
 彼らは動けはしないが、ちょっとやそっとの武装では傷ひとつ付けることはできない。加え、事情を知らない者がこれを見ても、彫像としか思わないだろう。
 とりあえずは安全だ。
「とにかくチーフたちと合流して、判断を仰ぐとするか」
468青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:17:23 ID:wO9lMSKC0
 蒼太はネジブルーたちをそのままにマシンハスキーの元へと戻っていった。



 蒼太がその場を去って数分後、金色の靄が彫像と化したグレイたちの前に現れる。
「おやおや、これは」
 人の形をとったロンは興味深げに彫像を観賞する。
 固められながらも、その彫像は躍動感に満ち溢れ、今にも動き出しそうであった。
 それもそのはずであろう機械であるグレイと無限の生命力を誇るネジブルーはこの状態であっても生きていた。
 ロンは彫像に手を当て、彼らの状態を探る。
「ふむ。お互い消耗していたがために今は固まったままですが、自力で抜け出すのにそんなに時間はかかりそうにないですね。
 何せ……制限がないのですから」
 首輪に視線を向ける。
 彼らの首輪はデュアルクラッシャーにより、完璧に機能を停止していた。
 ロンが干渉すれば爆発させることぐらいは出来るだろうが、それ以外は何の効力もない。
 元々、ロンがここに馳せ参じたのも、首輪の反応が突如として消えたからだ。
「しかし、困りました。これでは誰かが気付いてしまうかも知れません。
 おそらく拘束の効果がなくなれば、まるで一時停止のビデオを解除したかのように、首輪はその経過時間から再度、時を刻むことになるでしょう。
 その事に気付けば、首輪の解除など、存外簡単なことであることが分かるはずです。
 フフッ、誰か気付きますかね?」 
 その表情は愉悦に染まっており、微塵にも困った様子はなかった。
 むしろ、誰かに気付いて欲しい。そんな期待で満ち溢れていた。
「実に、実に面白い」
 ロンは歩を進め、蒼太が去っていた先を見詰める。
 もし、あのまま戦いが続けば、彼らは共倒れになっていただろう。
469青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:17:54 ID:wO9lMSKC0
 だが、蒼太が干渉したことで、その運命は上書きされた。
 それがどちらに幸運をもたらす結果になるかは分からないが、好戦的なふたりが共倒れになる展開より面白い展開になることは間違いない。
「やはりあなたをイかして正解でした」
 確かに蒼太の行動はその時点では犠牲者を増やさなかったかも知れない。
 優勝者を望む主催者という立場からすれば、忌むべき存在だろう。
 だが、積極的には動かず、傍観者として一歩引いた位置から参加者たちをかき乱す蒼太は、楽しみたい観客という立場からは好ましい存在だった。


【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3後
[現在地]:H-6海岸 1日目 夕方
[状態]:健康。2時間の能力制限中。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:マシンハスキー@特捜戦隊デカレンジャー、アクセルテクター@轟轟戦隊ボウケンジャー 、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:一旦チーフと合流
第二行動方針:目的を果たす為、ロンの出した条件を飲む
※首輪の制限と時間軸のずれを知っています。明石、さくらと情報交換を行いました。
470青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:18:19 ID:wO9lMSKC0
【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第41話(ネジビザールとして敗れた後)
[現在地]:H-6海岸 1日目 夕方
[状態]:グレイと共に彫像化。ネジビザールの状態で能力発揮中。全身に打撲、切り傷あり。背骨に深刻なダメージ。
[装備]:ネジトマホーク、クロノチェンジャー(青)@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、ドライガン@忍風戦隊ハリケンジャー、魔人マグダスの杖@星獣戦隊ギンガマン
 ディーソードベガ@特捜戦隊デカレンジャー、クロノチェンジャー(黄)@未来戦隊タイムレンジャー
 スフィンクスの首輪、3枚のメモ(杖の説明書、アイテムの隠し場所×2)、支給品一式×3(美希、スフィンクス、フラビ)
[思考]
基本行動方針:メガブルーを殺す
第一行動方針:並樹瞬を生き返らせ決着をつける。
第二行動方針:強敵との戦いを楽しむ。
[備考]
2時間の制限を知っています。詳細付名簿は保冷倉庫で破られました。
タイムブルーのクロノスーツは破損により、スーツとしての役割は期待出来ません。
471青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:19:48 ID:wO9lMSKC0
【名前】グレイ@鳥人戦隊ジェットマン
[時間軸]:49話(マリア死亡後)
[現在地]:H-6海岸 1日目 夕方
[状態]:ネジビザールと共に彫像化。能力発揮中。身体中に切傷。
[装備]:自らのパーツ全て
[道具]:遠距離射撃用ライフル(残弾数2発)
[思考]
基本行動方針:戦いを終わらせるためシオンと共闘
第一行動方針:ネジブルーを倒す。
第二行動方針:自分の納得のいく形でシオンに借りを返す。
第三行動方針:並樹瞬を探し、壬琴の元まで連れ帰る。
[備考]
2時間の制限と時間軸のずれを知っています。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと知っています。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:H-6海岸 1日目 夕方
[状態]:全身に打撲、傷あり。次元獣化。氷漬け(融けかけ)。倉庫の中。
[装備]:デジタイザー
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:グレイの命令に従い、北へ進む。人間に危害は加えない。
[備考]
本能的に瞬の意思が現れることもあるようです。

783 :青青青灰 ◆i1BeVxv./w:2010/04/07(水) 08:48:30 ID:???0
以上で投下終了です。
誤字、脱字、矛盾点などの指摘事項、ご感想などありましたら、よろしくお願いします。
_________________________________________________

投下乙です!以上代理投下終了です。
472青青青灰 ◇i1BeVxv./w氏の代理投下:2010/04/07(水) 21:23:50 ID:wO9lMSKC0
蒼太とロンが魅せる!
二人とも笑顔を浮かべた心理戦に引き込まれました。
そして同じくいやそれ以上に魅せてくれたのがグレイとネジブルー。
朝からテンション上がりましたw

「ベクターエンド、ビィィィィィトエックス!アァァァァクセルストォォォォプ!!」
この台詞凄く楽しそうで大好物です。

そしてあの結末とくれば、まさしく「実に、実に面白い」!
いよいよと言う感じになってきましたね、本当に投下乙でした。GJ!
473名無しより愛をこめて:2010/04/09(金) 21:00:15 ID:qiGpssuE0
投下GJです!感想遅くなって申し訳ありません。
ロンと対峙する蒼太さん。
この二人が対する時に流れる独特の空気がいい感じです。
そして血の沸くような激しいバトルには否応なく興奮しましたw
思わぬことで水入りすることになりましたが、果たして吉と出るか、凶と出るか。
我知らず場を引っかき回す蒼太さんには、ロンではありませんが、
「実に、実に面白い」と呟いてしまいそうw

>>472氏と同様ですが、本当にテンション上がりました!

474名無しより愛をこめて:2010/04/10(土) 14:27:13 ID:uNJk37ls0
>>「やはりあなたをイかして正解でした」

「イ」がカタカナってことはまさか
475名無しより愛をこめて:2010/04/23(金) 19:41:22 ID:Ar6Y0mS70
保守上げ
注目してるぞ
476名無しより愛をこめて:2010/04/23(金) 19:50:46 ID:f2/iy9RL0
放送はまだだっけ?
477名無しより愛をこめて:2010/04/24(土) 17:46:33 ID:Zwdyf4kd0
まとめさん、お忙しいのかな?
478名無しより愛をこめて:2010/04/26(月) 22:16:28 ID:hOr8TW5C0
予約来ないねぇ
479名無しより愛をこめて:2010/05/02(日) 22:46:59 ID:f8g9bcoi0
来ないねー
480名無しより愛をこめて:2010/05/08(土) 00:38:22 ID:grcpwdvX0
ロンは巨大戦を楽しみにしてるみたいだけど、何か出てほしいロボットってある?
481名無しより愛をこめて:2010/05/08(土) 01:47:13 ID:FGKqdLzh0
ブイレックスが出たら狂喜乱舞するw
時空間切り裂いて、現れないかなあw
482名無しより愛をこめて:2010/05/08(土) 15:54:29 ID:grcpwdvX0
呼び出すためのアイテムもあるし、一番無難そうだな
メインで出てくるロボが出て欲しい気もするけど

敵は問題なく出せそうだけど、ハリケン関係かダイタニクスがいいな
483名無しより愛をこめて:2010/05/09(日) 21:43:03 ID:zxaRtPJx0
無限龍は出てくるかも
謎の女性も巨大化したりして
484名無しより愛をこめて:2010/05/12(水) 19:44:53 ID:gQhKHK/X0
シンケンオーとかゴセイグレートとかがでても面白いかも。
485名無しより愛をこめて:2010/05/13(木) 00:09:45 ID:4wf+aHTX0
破壊者「通りすがりに来たぜ」

……シンケンいないし無理だな
いても無理だが
486名無しより愛をこめて:2010/05/13(木) 00:43:07 ID:MAjK/ZwL0
最終話で「モジカラを使うな!」っていいながら突撃してたんで
動かすこと自体はシンケンマルが刺さってればできるくさい。
まぁ、そこまでして出すかって感じはあるがw
487名無しより愛をこめて:2010/05/13(木) 00:48:38 ID:fm53SWPS0
天下無敵の浪速ロボ!!
……は無理だよね、うん、わかってる
488名無しより愛をこめて:2010/05/15(土) 13:12:56 ID:qaeSRMmX0
騎士で兄弟対決というとネオとルナを思い出すが、月の王国滅ぼした奴とかには触れるんだろうか?
あれって詳細な設定ないよね。
489名無しより愛をこめて:2010/05/20(木) 08:24:28 ID:xngnlnqi0
ようやく予約が来たな
490名無しより愛をこめて:2010/05/20(木) 16:21:28 ID:SaZNhWz00
ついに予約きたか……待ち侘びたぜ
まとめの更新はまだ来ないか
491What is the justice?  ◆MGy4jd.pxY :2010/05/26(水) 17:14:51 ID:6aSa47kK0
遅くなりました。投下いたします。
492What is the justice?  ◆MGy4jd.pxY :2010/05/26(水) 17:16:51 ID:6aSa47kK0
辺りを染める茜色は落ちる太陽のせいばかりではないだろう。
ヒカルと菜摘、二人の目指す先の建物からは軽い破裂音が響き、粉砕した窓からは遠目にもはっきりと炎が噴き出していた。

「大丈夫かい?」

ただ菜摘は頷き黙ったまま足を速める。
羽織ったヒカルのジャケットを胸の前でしっかり押えながら。
ジャケットの中は、ヒカルが菜摘を見つけた時と同じ格好。
薄汚れたカーテンで身を包んでいた。

数分ほど前、ヒカルは建物からさほど離れてはいない場所で菜摘を見つける。
衣服は剥ぎ取られ、倒れている菜摘を。
一瞬躊躇はしたが、ヒカルはそっとやさしく菜摘を抱き起こした。
悪夢から引き上げられたように菜摘は、悲嗚の交った泣き声を上げ目を醒ました。
壬琴の名を呼びながら、だ。
その一言で、菜摘と仲代壬琴に何かがあったのだ理解しうるには充分過ぎた。
喘ぐように大きく目を開き菜摘は取り乱し、やっとヒカルに気付きすがるような目を向ける。
ヒカルはその視線を正面から受け、軽く首を振った。

何故か。
否、虚脱、からなのか。菜摘は悲しげに、だが笑みを引き出し立ち上がった。
ヒカルはカーテンを切り裂き衣服代わりに身体に巻きつける菜摘を背で庇いながら辺りに注意を払った。
誰かが菜摘を見張っているだろう、そのはずだった……。
その誰か、とは。
スタジアムで捕らえたシュリケンジャーか、もしくは、菜摘が行動を共にしてきたメレかもしれない。
想像したくはなかったのだが。

しかし、いくら注意を向けても人の気配は感じられなかった。
493What is the justice?  ◆MGy4jd.pxY :2010/05/26(水) 17:18:00 ID:6aSa47kK0
背中越しにヒカルは尋ねる。

「歩けるかい?もしそうなら映士の元へ戻りたい。制限からいうと映士が圧倒的に不利だからね」

その一言で菜摘も理解してくれたのかそれ以上聞こうとはしない。
ヒカルにとって、菜摘が抱えこんだだろう思いを吐露せずに立ち上がってくれたのは幸いだった。
過ぎる不安を前に、その思いまでも受け止める余裕はヒカルにも無かったのだ。
ヒカルの変身はとうに解けている。
だが、ヒカルはサンジェルへの変身を残している。
映士は、そして裕作には、それがないのだ。
対して壬琴には、アバレキラー、アバレブラック、シオンのクロノチェンジャー。

「さぁ、急いでくいれないか?映士を……」

失うわけにはいかない。
最後の言葉を飲み込む。
そして、ヒカルはジャケットを脱ぐと菜摘に羽織らせた。
少し、自らの言葉に棘を感じていた。

菜摘の元に誰も居ないのであれば、自分は菜摘を捜す必要など無かったのでは?
これでもし、映士たちに何かあれば……。

心に暗雲を抱えながら、 ヒカルはそのまま菜摘と共に映士と裕作の元へ駆け戻った。


嫌ないい方だが、戻る道に生の気配は感じられない。
少し前まで近代的な建物であったはずのその場所は、今や見るも無惨に炎に撒かれ、まるで生きたまま荼毘に附されているかのようだ。
494What is the justice?  ◆MGy4jd.pxY :2010/05/26(水) 17:18:42 ID:6aSa47kK0
濛々と立ち上る黒煙はヒカルの胸の内を表すようで、身動き出来ず陽炎に揺らめく建物の姿は、まさにこの殺し合いの象徴にみえる。


「その向こうだ!」

聞こえるのは燃え盛る炎の渇いた音だけ。
映士の声も裕作の声も聞こえなかった。

それでも、ヒカルはどこかで望んでいた。
だけれど、ヒカルたちを待ちうけていたのは、最も望まない、あってはならない現実だった。

「映士…裕作……」

映士は胸にトンネルのような穴が開いており、裕作は身体を切り裂かれていた。
裕作の傷口からは、桃色の何かとクリーム色の脂肪に血液の鮮やか赤が身体に収まりきらずに盛り上がっていた。
目を見開いたまま映士は襲撃者を追うように手を伸ばした姿のまま息絶えていた。
菜摘は言葉を忘れたように呆然と立ち尽くしていた。
映士と同じく大きく目を見開いてはいたけれど、その目には現実は見えていなかった。


「は〜〜〜〜ぁぁ〜〜〜〜ははははや……はっ早く、早くぅ〜〜〜〜〜〜〜〜」

ヒカルが二人に近近付こうとした時だった。
菜摘が声を上げた。細く震える声で高く。
愕然とするヒカルなど目に入っていないかのように、菜摘は縺れる足でまず映士に駆け寄り、流れた血や肉を掻き集めた。

「き、傷っ傷を…やだ、塞がなきゃ……」

掻き集めたモノごと、包むように零れぬように菜摘は血だらけになりながら映士の身体を抱きしめた。

「ダメだ、落ち着くんだ、菜摘!」
495What is the justice?  ◆MGy4jd.pxY :2010/05/26(水) 17:19:23 ID:6aSa47kK0
「早く、早く治療しなきゃ!死んじゃうじゃない!!」
「もう死んでいるんだ!!!」

声は上擦っていた。言うと同時に涙が零れた。
ヒカルは力づくで菜摘を映士から引きはがした。
それでもヒカルの手をすり抜け菜摘は、今度は裕作の遺体へ駆け寄る。

「どうして?ほら、ヒカルも触ってみなさいよ!!まだ、こんなに暖かいのに。ちゃんと治療すれば絶対助かっ……」
「頼むから目を覚ましてくれ!!!」

ヒカルは菜摘の頬を思い切り叩いた。

「まだ近くにいるかもしれないんだ!キミがここで騒いでボクたちまで殺されたら映士たちは無駄死にだ」
「嫌、嫌よ……」

力なく何度も首を振り菜摘は映士の遺体へ縋り付く。

「映士は、映士と裕作は、シオンのクロノチェンジャーを取り返そうとしたんだ。こんな事に使って欲しく無いんだ、と」

菜摘の目から涙がこぼれ落ち、関を切ったようにわななきを上げた。


「どうしてぇ〜〜〜?どうして、こんな……。どうしてこんなことが出来るの?
私を殺さなかったのは同じ思いをさせるためなの?わざわざ見せ付けるためなの?」

映士の身体に付したまま、菜摘は肩を震わせ嗚咽を上げた。
ヒカルは掛ける言葉を見付けられず、ただ拳を握りしめていた。
496名無しより愛をこめて:2010/05/26(水) 17:33:50 ID:7erj+eQ50
支援
497代理:2010/05/27(木) 00:51:17 ID:+CvjeMBR0
そして。
急に嗚咽がやんだかと思うと、

「ねぇ〜〜〜〜。ヒカルぅ、正義って何?」

虚ろな瞳で菜摘は言った。

「菜摘?」
「ねぇ、正義って何なんだろう。映士たちにこんな事したヤツを殺してやりたいよ」
「やめてくれないか、映士たちがなんて思う」
「私たちが今までしてきた事の逆を考えれば、私たちは何なの?私たちって正義って言えるの?」

菜摘の剣幕に口ごもるヒカル。
正義とは、問われて明確な答がなぜか見付からない。
ただ掛ける言葉も無く、肩に手を置こうと菜摘に近づいた瞬間、ヒカルの足は止まった。
思わず振り返らずには居られないほどの恕気を背後に感じた。

「どうした。答えないのか?聞かせてもらおう人間よ、貴様等の言う正義とは、何だ……」

黄金色の体躯、悪魔のような翼と角を持った男、ジルフィーザは弟ドロップの亡骸を胸に抱えていた。
一瞬、逃げるか?否か?どちらを取るかと考えが脳裏を横切るが、力無く座り込んだままの菜摘をつれて逃げ切れるとも言い切れない。

「菜摘、下がっていてくれ。正義をボクにそれを聞いてどうする?満足できなければボクたちを殺すのか」
「満足?殺すだと?そのような言葉では生温いわ!!滅ぶがいい人間どもなど!弟の命の代償は星を丸ごと潰したとて到底足りぬわ!!!」

ジルフィーザが動く。
唸り声と共に振り上げた杖の先はヒカルの脇腹を狙う。
498代理:2010/05/27(木) 00:52:21 ID:+CvjeMBR0
一瞬の出来事だった。杖の先が直撃する直前、ヒカルはサンジェルに姿を変えとっさに呪文を詠唱する。

「プロミネンスシュート!」

視界全体を包むほどの光がジルフィーザへ向かって収束を始める。

「ジンライシノビチェンジ!!」

ゴウライチェンジャーを装着し距離をつめるジルフィーザ。
炎を背に二人は対峙して、そして……。



【名前】ヒカル@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage35後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:左肩に銃創。胸に刺傷。共に応急処置済み。 1時間半マジシャインに変身不能
[装備]:グリップフォン、シルバーマージフォン
[道具]:基本支給品一式×2(小津深雪、ヒカル)月間宇宙ランド(付録なし)@激走戦隊カーレンジャー 深雪の残したメモ
[思考]
基本方針:時間を戻し、歴史の修正を行う。(情報を映士、深雪へ伝える。世界の崩壊を止めるための死に場所は広間)
第一行動方針:歴史の修正を行うための準備をする(情報集め)
第二行動方針:菜摘を捜す。
第三行動方針:冷静すぎる明石に微妙な気持ちを抱きました。
備考:サーガイン、裕作と情報交換を行いました。また、映士から情報を得ました。
 マジシャインの装甲(胸部)にひび割れ。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。
499代理:2010/05/27(木) 00:54:23 ID:+CvjeMBR0
【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:胸、太股に深い傷。ドロップを失い深い悲しみと怒り 一時間半能力開放不可
[装備]:杖 、ゴウライチェンジャー(クワガ)@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、予備弾装(催涙弾5発)、サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー、真墨の首輪、支給品一式(バンキュリア)
[思考]
基本行動方針:ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップの死に深い悲しみ
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。

【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:G-6都市 1日目 夕方
[状態]:軽い打撲、水中にいたため、そして全力疾走したので身体はかなり疲労しています。 Tシャツと下着姿。カーテンを纏った状態です。 一時間程度イエローレーサーに変身出来ません。
[装備]:アクセルブレス 、クロノチェンジャー(タイムピンク)@未来戦隊タイムレンジャー、
[道具]:なし
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。 ロンに負けない。
第一行動方針:気絶中
第二行動方針:仲間(シグナルマン)を探す。
備考:
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。首輪によって設けられた制限時間の情報も得ています。
※壬琴から情報を得ました。深雪のメモを読みました。
※禁止エリアでは首輪を外しても生存可能だと思っています。
※小津勇の食料、ペットボトルは長い年月を得たような状態なのを見ました。
※クロノチェンジャーの変身方法を知っています。
※変身制限に気が付きました。
※菜摘の衣服はG6エリアで燃えたと思われます。首輪(ドギー、深雪、アンキロ)、サーガインの死体(首輪付き)はG6エリアに放置されています。
氷柱=メガブルー、並樹瞬だと裕作から掻い摘んだ説明は受けました。
500代理:2010/05/27(木) 01:05:31 ID:+CvjeMBR0
代理投下以上です。

投下乙です。
胃がキリキリと痛むような、菜摘の嘆き、ヒカルの思い、そしてジル兄の憤り。
短いながらも胸にずしりとくるものがありました。
それだけにイデが口惜しい。おのれ!!イデオンめ!!

トラブルがあったにもかかわらず濃縮されたこの鬱は流石のクォリティー。
三者の運命に募ります。
GJでした。
501代理
三者の運命に期待が、でしたw
脱字失礼いたします