「話って何です?」
バイクを走らせながら、後ろのジョウキに向かってイッキが尋ねた。
「……お節介は重々承知のうえだ。お前、少し肩の力を抜いたらどうだ?」
「どういう意味です?」
「数年前、京都での戦いの後関西支部がどうなったかは俺もある程度知っている。お前、何もかも自分一人で背負い込もうとしているんじゃあないのか?分けて背負えばいい荷物を、無理矢理一人で背負っていやしないか?」
重いだろう?――ジョウキのその言葉に対し、イッキは何も言い返せなかった。
「無茶してるのが一目で分かったぜ。その様子だと何度も入院しているな?このままだと取り返しがつかなくなるぞ」
「……あなたに何が分かると言うのです?」
「真面目なんだな、お前。だがその真面目さが……」
イッキはバイクを路肩に寄せると停車させた。そしてジョウキに貸してあった予備のヘルメットを取り上げると。
「悪いけれど降りて下さい。ここからは一人で行きます」
ジョウキは何も言わず、だがどこか哀れみの籠もった視線をイッキに向けながら、バイクから降りた。
イッキはバイクのエンジンを吹かすと、矢のように走り去っていってしまった。
バイクを降り、現場の廃寺へと向かう途中、イッキはずっと自問自答していた。
ジョウキの言った事は事実だ。だが、イッキの力が必要とされている事もまた事実だ。世代交代が始まっているとは言え、まだ若い鬼達には経験も技術も備わっていない。嘗ての仲間達の抜けた穴を埋めるには程遠い。
綺羅星の如き精鋭が揃っていただけに、世代交代による戦力の低下は全国の猛士の中でも関西支部が一番酷かった。
(僕は……)
イッキは懐から一枚の写真を取り出すと、眺め始めた。それは、数年前に百物語をやった直後写したものだ。彼にとってお守りのようなものであり、大切な宝物でもある。独りで戦い始めて以来、このたった一枚の写真が彼の心の支えとなっていたのだ。
写真の中で、仲間達に囲まれたあの日の自分が笑っていた。もう、あの頃には戻れない。
そうこうしているうちに廃寺が見えてきた。着替えが入ったバッグの中に写真をしまって地面に置くと、音叉を鳴らし額に翳す。
落雷が彼の体を焼いた。紫電を払い飛ばし、壱鬼が姿を現す。
廃寺へと駆け出し、扉を蹴破る壱鬼。それと同時に、物凄い腐臭が堂内から漂ってきた。
光も射し込まぬ薄暗い堂内に、巨体が寝そべっていた。侵入者に気付き、巨体がゆっくりと起き上がる。それは、海豹の体に、牙こそ無いものの象の顔が付いた魔化魍だった。ヌッペッポウである。
ぶよぶよとした肉塊が、ゆっくりと、実にゆっくりと壱鬼に向かって腐臭を放ちながら近寄ってきた。ヌッペッポウに向かって壱鬼が鬼棒術・天火を放ち先制攻撃を仕掛けようとする。だが。
ヌッペッポウが顔の両脇に付いた大きな耳を、ばたばたと激しく動かしたのだ。それによって突風が起こり、壱鬼の手から音撃棒・霹靂が吹き飛ばされてしまう。
「あっ!」
慌てて「霹靂」を拾うべく外へと飛び出す壱鬼。こんなミスをするだなんて、いつもの自分らしくない。やはり先程のジョウキとの会話を引きずっているのか。
見ると、ヌッペッポウは堂の入り口からその半身を覗かせていた。再度「天火」を放とうと構える壱鬼を再び突風が襲う。
踏み止まった壱鬼が、「天火」をヌッペッポウの顔面に向けて放った。だがヌッペッポウは巨体に似合わぬ素早さで耳を動かし、顔面を覆うと壱鬼の攻撃を防いでみせた。
「ならば……!」
跳躍し、ヌッペッポウの背に取り付こうとする壱鬼。そのまま音撃鼓・万雷を貼り付けて音撃を決めようという寸法だ。嘗てのように体ごとぶつかって決める音撃は、万が一の事を考えると今の壱鬼には使えなかった。
しかしヌッペッポウは、長く伸びた鼻を巧みに動かすと、跳び掛かってきた壱鬼の体を弾き飛ばしてしまった。
「ぐっ!」
地面に強く体を打ちつけられた壱鬼に向かって、ヌッペッポウが鼻を伸ばして襲い掛かってきた。実はヌッペッポウの鼻に見える部分は口で、獲物の顔面に吸い付き食らうのだ。
やられた――そう思った壱鬼の目に信じられない出来事が飛び込んできた。
いつの間にか壱鬼はヌッペッポウの 側 面 に い た のだ。そして彼の傍らには。
「ジョウキさん……?」
「やれやれ……。久し振りに……実に数年振りに0.5秒だけ時を止められたぜ」
「ジョウキさん、どうして……」
「遅くなってすまない。それよりも標的を見失っている今がチャンスだぜ」
ジョウキの言う通り、ヌッペッポウは超高速移動した壱鬼の姿を見失い、動きを止めていた。
再度ヌッペッポウ目掛けて壱鬼が跳躍する。今度は無事背中に取り付き、「万雷」を貼り付ける事に成功した。
と、ヌッペッポウの口が背中まで伸び、壱鬼に襲い掛かってきた。だがしかし。
激しく体液を撒き散らしながら、ヌッペッポウの口が斬り落とされた。見ると、壱鬼の「霹靂」から雷の刃が伸びているではないか。鬼棒術・建雷だ。
「喰らえ!音撃打・電光石火!」
大きく展開した「万雷」に向かい、壱鬼が「霹靂」を叩き付けた。重い音が周囲に響き、清めの波動がヌッペッポウの全身に広がっていく。
目にも留まらぬ速さで「霹靂」を振るい、清めの音を奏でていく壱鬼。とどめと言わんばかりに、強く激しく二本の「霹靂」を同時に叩き込んだ。刹那、爆発。ヌッペッポウの体が塵芥へと変わる。
粉塵の中から現れた壱鬼に向かって、ジョウキが労いの言葉を掛けた。次いで。
「な。重い荷物を無理して一人で背負う必要なんか何処にもないだろう?」
ああ、そうだ――壱鬼が久しく忘れていた事。それは信頼から生まれるもの、即ち和。誰かと協力して戦うという事を、壱鬼はここ数年全くやっていなかった。
何かが分かってきたような気がしてきた壱鬼は、自然とジョウキに向かって頭を下げていた。
「有難う御座いましたっ!」
「ここ最近、イッキくん変わってきたわよね」
お茶を飲みながら、開発局長の南雲あかねが言った。テーブルを挟んで向かいの席に座り、同じくお茶を飲んでいた司書の京極も。
「確かに。肩の力が抜けたと言うか……」
ここ最近のイッキは、積極的に若い鬼と行動を共にし、実戦の中で彼等に色々な事を教えていた。
将来良いトレーナーになるわよ、とあかねが笑顔で言う。それには京極も同感だった。
「あと、人との出会いを大切にするよう若い子達に教えているようだけど、何かあったのかしら?」
「さあ……。別に間違った事を教えているわけでもなし、気にする事は無いでしょう」
何にでも興味を持っちゃう性分なのよねぇ、とお茶を飲みながらあかねが告げる。科学者の性なのだ。
彼らの傍を、若い鬼や新人スタッフが談笑しながら通り過ぎていく。
「時代は変わる……か」
何処か遠い目をするあかねに向かって、京極が「どうしました?」と尋ねた。
「そろそろ私も世代交代かな……って」
「そればかりはあなたが決める事です。僕に出来るのは、反対派を説得する事ぐらいです」
「ふふ……。京極くんはいつまで図書室の主をやっているのかしら。興味が沸いてきたわ」
そう。時代は変わる。嘗てコウキは謎の男女に対し、自分達の戦いは一通過点に過ぎないと告げた。そんな彼等の先――未来にあるのは、希望。あかねはそう信じていた。
空になった湯飲み茶碗が、テーブルの上に静かに置かれた。 了
今回登場したヌッペッポウは、
「響鬼探究」という本の新種妖怪大百科というコーナーに掲載されていた創作魔化魍です。
上記の本には昔の妖怪図鑑風のイラストが掲載されていたのですが、
読者プレゼントの栞セットに、動物図鑑風の写実的なイラストが新たに描かれており、
そこに載っていたヌッペッポウがあまりにも出来が良かったのでつい登場させてしまいました。
ちなみにこの本には、京極のモデルとなった作家先生による
「響鬼世界における民俗学者が採集した鬼にまつわる昔話」という体裁の短編小説みたいなものも載っています。
次回はアカツキが主役の話です。
「このホストでは、しばらくスレッドが立てられません」だってさ orz
誰か代りに立ててくらはい
スレ立てに行ってまいります。
478 :
477:2008/04/22(火) 23:58:28 ID:3qqMDF/H0
「新このホストでは、しばらくスレッドが立てられません。
またの機会にどうぞ。。。」だってさ orz
新・・・?
立ててきたら速攻で「うっさいハゲ」だってさ
お約束なのかね、あの台詞・・・
481 :
477:2008/04/23(水) 01:55:48 ID:qMIFzMoF0
>>479-480 スレ立て乙です。
今あと22KBあるんで、オーバーしそうだったら投下は新スレですかね。
「うっさいゴーオン黒」だったら見たことあります。
スレ埋めAA
、__,,
《:::;:::::ヾ三
|゚し゚ヽ:|三 ウワー
)日ノ 三
iイT ̄L 三
_,,-'' ̄/`ー' >:::\ 三
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 ̄`〜 三
『仮面ライダーカブト四十之巻・消し飛ぶ矢車』
前回
>>454-460のあらすじ
エロかっこいい黒い鬼が音撃管を肩に装着しました。
『あなたの背中を護りたい』 四之巻「重ねる調べ」
「クルメキのサポーターから連絡があった」
県道65号線を北上する4WD『蒼龍』の車中で、ハンドルを執る有志が後部座席のアイキに言った。
「今、ケガ人を病院に搬送中で、クルメキは一人で魔化魍退治に向かったそうだ。急ぐぜ。おそらく鬼が一人じゃ倒せねぇ相手だ」
有志はアクセルを踏み込んだ。
「ヌリカベとイッタンモメンですよね?(゜Д゜) くぅちゃんだったら大丈夫ですよ」
「『合体魔化魍』って知ってるか? 三年前に関東にあった事例じゃ、通常の音撃は通用しなかった。もし今回も『それ』だったとしたら、クルメキ一人じゃ勝ち目はねえ」
65号線を外れ、左に折れて『蒼龍』は西を目指した。
「太鼓か弦との音撃の重奏が必要だ。──舌噛むから、しばらく黙ってろよ」
更に有志はアクセルを踏み込み、車は猛スピードでヌリカベが向かったと思われる地点目指して爆走していった。
ヌリカベとイッタンモメンがその中で眠っていると思われる、巨大な繭を護るように、ヌリカベの童子と姫が立っていた。既に全身を暗い色の革のような硬い表皮で覆い、怪人形態である怪童子、妖姫に変化していた。
スリングで肩に掛けた音撃管『瞳宝』を左肩に構え、眩鬼は童子たちに向けて立て続けに空気弾をお見舞いした。が、何発かを掠めただけで致命傷には至らない。
その時、巨大な黒い繭を中から突き破る、青紫色の翼があった。
翼だけ見れば、それはイッタンモメンのものであったが、黒い繊維をかき分けてそのなかから出てきたのは、ヌリカベの巨木のような壁面状の体から、イッタンモメンの翼と尾を生やした、かけあわせの合体魔化魍『ナナシ』だった。
ナメクジのような二本の触角を持つ頭部から、気味の悪い咆哮があがる。
眩鬼が『瞳宝』の銃口をナナシに向けた時、突如、横合いから目に見えぬ圧力が攻めてきた。逆らいがたい見えない力に押しやられ、眩鬼は真横に吹っ飛んだ。
地面に倒れ、力が襲って来た方向を見ると、黒クグツが黒い手袋に包まれた掌をこちらに向けていた。
「影が薄すぎて、アンタのことを忘れてたわ」
眩鬼は倒れた姿勢から銃を向け、圧縮空気弾を黒クグツに向けて撃った。黒クグツの前方の空間が歪み、空気弾はその歪みに阻まれた。
怪童子と妖姫は眩鬼が起き上がる隙を与えず、腕を振り上げ飛びかかってきた。
『風裂断!』
そこに飛び込んで来た藍色の鬼が、風を纏った飛び蹴りと手刀を二体の怪人の胴に叩き込んだ。白い血液を散らしながら、怪童子と妖姫の上半身が滑り落ち、下半身と共にその場で消し飛んだ。
『くぅちゃん!』
愛鬼が眩鬼を振り返り声をかけた。
『恩に着るわ』
立ち上がった眩鬼が、肩に乗せた音撃管を展開させて上半身に装着した。
『あぃちん、ユージさんから聞いてるでしょ。合体魔化魍の攻略法は、音撃の重奏だって。ウチらで音撃の合わせ技、いくよ。黒クグツの妨害に気をつけて』
頷いて愛鬼はすぐにそこから動き出した。
肩に固定した『瞳宝』の砲身を向け、眩鬼がナナシの正面から鬼石を打ち込む。同時にナナシの後方に回った愛鬼がその背に飛び乗り、押し付けた音撃鼓『有実』を展開させた。
眩鬼がバックルから音撃鳴『瞋器(しんき)』を取り外して『瞳宝』の銃口に取り付けた。そして、通常より朝顔のスケールが小さい、スーザフォンのような形態になった『瞳宝』を構え、清めの音を吹き鳴らす。
『音撃射・励塵砲流!』
『音撃打・風雲究刻の型!』
愛鬼が一本の大型音撃棒『時東』を振りかぶり、巨大化した音撃鼓を打ち付け始める。
眩鬼の奏でる旋律と愛鬼の刻む律動が重なり、清めの音がナナシの体を包囲した。
しかし、音撃の重奏が始まって間もなくして、アイキの打撃が不可視の力に絡めとられて止まった。
気配を感じ、ナナシの背から地上を見ると、黒クグツがアイキに掌を向けて波動を送り、その動きを念縛していた。
その時、木の陰で、腕に巻いた鬼面の無い鬼弦を展開させた男が弦をつま弾いた。男の腰から下がっていた銀色の円盤が動き出し、『金色蛇』『銀朱大猿』『群青蟹』の各形態に変形して黒クグツに襲いかかる。
木陰から出てきた有志がアイキに向けて叫んだ。
「今だ、行け、アイキ!」
見えない縛めを解かれた愛鬼が音撃を再開し、清めの旋律と律動が体中に浸透したナナシの体は耐え切れず、砕け散った。
有志は、ナナシの欠片が降り注ぐ山間の野原をくまなく見渡したが、黒クグツは忽然と姿を消していた。周囲の樹々の中にも目を凝らしたが、あの黒づくめの姿はどこにもなかった。
欠片や砂煙、土埃などが完全に晴れた中から、例によって顔の変身を解除しないままの愛鬼と、顔だけでなく全身の変身を解除したクルメキが歩き出てきた。
目を丸くして固まっている有志に、愛鬼たちが近付いてきて言った。
『助かりましたぁ、ュージさん』
「皆さんお疲れーっス」
「『お疲れーっス』ってお前……」
上半身は装着型音撃管で覆い、下半身は装備帯とそれから吊り下げた装備で隠すのみという、このうえなく危ないクルメキの姿に、有志はそこから先の言葉を失った。
クルメキやアイキが使用している装備帯は、変身による質量の変化に伴いサイズが大きくなる。そのため、変身解除後は緩くなって体から離れるのが常だが、クルメキは装備帯の何か所かを音撃管から吊り下げて落下を止めていた。
「その……二人とも、『顔だけ変身解除』って知ってるか?」
実際には、全身の変身を解除するクルメキのやり方が最も早い疲労回復に繋がる方法ではあるが、有志の長いサポーター経験の中で、自ら人前で全て変身を解除した鬼を見たのは、これが初めてだった。
クルメキが設営していたキャンプに向かい、着替えのために二人の鬼がテントに入ってから一時間。先日の倍の時間を待たされた有志の前に、完璧にメイクを終え、互いの凝ったネイルアートを見せ合いながらアイキとクルメキが出てきた。
「くぅちゃんにネィルやってもらぃましたぁーヾ( ≧▽≦)ノ」
有志はウンザリしながら顔を背けて呟いた。
「馬鹿が二人に増えやがった……俺が何をしたってんだ……」
『蒼龍』に乗ってクルメキのサポーターが怪我人を運び込んだ病院に行き、そこでクルメキを降ろした後、有志とアイキは仙台に戻ることにした。
例によって帰る車中のアイキは、ケータイを手に、笑顔でなにやら打ち込んでいた。
「ュージさん、今日ァタシゎ、何体マカモーさんをやっつけたことになるんデスか?」
「二体が合体した魔化魍をやったんだから、クルメキとオマエで一体ずつだろ」
「ゎかりましたッッ(●>_<●)ノ」
日記を送信し終わると、アイキは更新した内容を表示して確認した。
zoo8年4月zб日(土)
、キょぅゎ、<ぅちゃωー⊂ぃっιょレニ合イ夲マヵモ─、ナωぉやっ⊃レナまιナニ。
<ぅちゃωー⊂ァ勺゙/τ″|匹ず⊃やっ⊃レナナニカゝら、ァ勺゙/ゎ⊇れτ″zs匹τ″すv
ケータイの画面を見て幸せそうに笑っているアイキをちらりと見やり、今日待たされたことに腹を立てながら、仏頂面で有志は車を走らせた。
昼下がり、穂村総合病院に着くと、有志は装備を預けるため院内の東北支部出張所に向かった。
「車の中で待ってりゃいいのに」
積み重なったディスクアニマルのケースを両手で抱えた有志が、隣を歩くアイキに言った。
「ァャ先生にネィルを見てもらぃたぃんですぅー(o´艸`)♪」
「どうせならケースひとつくらい持てよ」
4F奥の出張所に入ると、史子が一人の女性と向かい合ってお茶を飲んでいた。後ろ姿のその女性の背には、ウェーブのかかった長い黒髪が流れ落ちていた。
オス、と史子に声を掛けてから、有志は部屋の隅にケースを置いた。
「ユージ、こちら、アイキちゃんのお師匠さん。ホントは昨日で帰る予定だったんだけど、お弟子さんの顔が見たくて、一日滞在を延ばしたの」
席を立った、細身でTシャツにGパン姿の眼鏡の女性が、何も言わず回れ右をしていたアイキに近づき、背中から下がった毛皮の袋入りの音撃棒を握り上げた。
「ぴぃッッッ!」
おかしな悲鳴を上げたアイキの背後から、肩越しに低く凄みのある声でその黒縁眼鏡の女性──先代アイキ・赤坂女史は言った。
「師匠に何の挨拶もナシに、ドコ行くの?」
有志に向き直り、女史は打って変わって上品な面持ちになって言った。
「アイキがお世話になっています。この不肖の弟子を育てました、アンジェラ赤坂です」
彼女の旧姓は安芸といい、日本人とイタリア人のハーフということだった。
赤坂女史は10年ほど前、結婚を機に鬼を引退し、その後は猛士の総本山で後進の指導にあたってきた。関東支部最年長の鬼として名を馳せたサバキと同年代の弦の使い手で、太鼓や管も使いこなす凄腕の鬼だったらしい。
「どうなの? 今日で何体撃破した?」
「に、25体ですぅ」
小動物のように縮こまって震えながら、アイキは小さく答えた。
「相変わらずチャラチャラしてからに、タルんでるんじゃないの? 取り合えず腕立て一万回!」
この無茶な要求に、アイキは大人しく言うとおりにしてその場で腕立て伏せを始めた。
「ようやく目標の1/4だね」
腕組みをしてアイキを見下ろしながら、赤坂女史は言った。
「あの、目標ってのは、何のことスか?」
有志が訊くと、机についていた史子が女史に代わって答えた。
「こないだ話したシュウキくんのことで、アイキちゃん、お師匠さんに相談したんだって」
強くなったら俺の所に来い、とシュウキに言われ、アイキは赤坂女史に、どうしたら強くなれるかを相談した。
「『魔化魍を100体倒し終った後には、イヤでも強くなっているだろう』って言われて、アイキちゃん、それに向けて頑張ってるってワケ」
「そういうコト」
腕立てを続けるアイキの横にしゃがみ込んでその様子を見守りながら、赤坂女史はにこやかに言った。
「『それが出来たら、アメリカでもどこでも行っていい』って言ったら、このギャル鬼、急に張り切り出してね。いつまで続くことやら」
彼女の笑顔の奥に潜む超弩級のSさ加減に、有志の背筋は凍り付いた。
数日後、猛士東北支部から吉野の本部に、極秘の報告が入った。
「東北支部管轄内ニ『夜卿』出現セリ」と──。
⊃⊃″<。
490 :
名無しより愛をこめて:2008/04/26(土) 12:22:07 ID:BvadgkEhO
490
∧∧ ミ _
( ,,)┌─┴┴─┐
/ つ. ド ス ッ
〜′ /´ └─┬┬─┘
∪ ∪ ;;、`;。;`││
∧∧ _
(・∀・)┌─┴┴─┐
/ つ.あと10KB│
〜′ /´ └─┬┬─┘
∪ ∪ ││
今日から君も鬼だ
スレ埋めAA
ウワー
○ ≡
 ̄| ≡
| ̄ ≡
『消し飛ぶ矢車(携帯用)』
>上半身は装着型音撃管で覆い、下半身は装備帯とそれから吊り下げた装備で隠すのみという、このうえなく危ないクルメキの姿
で、鼻血でそうになったw有志よく絶句で済んだなww
個人的に猛士って、基本、男(もちろん、だけって訳じゃないけど)の組織って思い込みがあったから、このシリーズはとても新鮮。
>zoo8年4月zб日(土)
> 、キょぅゎ、<ぅちゃωー⊂ぃっιょレニ合イ夲マヵモ─、ナωぉやっ⊃レナまιナニ。
> <ぅちゃωー⊂ァ勺゙/τ″|匹ず⊃やっ⊃レナナニカゝら、ァ勺゙/ゎ⊇れτ″zs匹τ″すv
読めませんwwww次回で解答が出るのをまってますww
高鬼SS作者は 男性である
2006年当時 30代から40代 ではない
社会科学系の大学の卒業生 ではない
家庭を持つ 幼稚園児の父 ではない
>>494 回答案
今日はくぅちゃんとアタシで合体マカモーをやっつけました。
くぅちゃんとアタシで1匹ずつやっつけたから、アタシはこれで25匹ですv
作者さま、どうでしょう?
今月のSS投下量はすごかったと思う。
<今年に入ってからの投下数>
1月・・・2本
2月・・・1本
3月・・・0本
4月・・・10本
たまたま投下が重なったんだろうけど、平均すると3日に1本という計算に・・・すげ。
>>496 大体そんな感じです。あとは口調をギャル曽根風にすればできあがりです。
(アイキのセリフや顔文字は、ギャル曽根のブログを参考にしています)
正解は次回の冒頭に載っけます。次の投下は来月頭を予定しています。
DA年中行事作者は 金麦飲んでる
すごいな
実は俺、SSの他に鬼ビアも心待ちにしているんだ・・・・
『あなたの背中を護りたい』 チラシの裏
スレ埋め用に、SS中の技の名前や元ネタについて書いてみました。よろしければお読みください。
【技・装備の名前について】
・アイキの音撃打『風雲急告の型』
イメージキャラ・ギャル曽根のユニット「ギャルル」のシングル
「Boom Boom めっちゃマッチョ!」から。(聞こえた音を日本語っぽく変換)
・アイキの音撃棒『時東』音撃鼓『有実』
「ギャルル」のメンバー・ぁみみ(時東ぁみ)から。
・アイキの変身音叉『音藍』
宝石・アクアマリンの和名「藍玉」から。
【エピソードの元ネタ】
・二之巻「顧みる空」の車両部による変身音叉デコレーション
過去スレにあった変身鬼弦改造エピ(小ネタ)から。
見習い作者は 都内近郊在住
SS本文は必ず 4レスで終る
「1年C組の冒険」作者は 都内近郊在住
ペンネーム 海月なみ
スレ埋め用にもう1枚書きました。何枚書けば埋まるのかしら。
『あなたの背中を護りたい』 チラシの裏 2枚目
【技・装備の名前について】
・クルメキの音撃射『励塵砲流』
イメージキャラ・倖田來未のシングル「Crazy 4 U」から。
・クルメキの音撃管『瞳宝』音撃鳴『瞋器』
倖田來未とユニットを組んだ東方神起から。
・クルメキの変身鬼笛『音蝶』
ブラックパールの別名「黒蝶真珠」から。
・アイキがディスクアニマル・菖蒲猫に付けた名前『ルナ』『マミタス』
中川翔子の飼い猫「ルナ」「マミ(愛称マミタス)」から。
スレ埋めAA
ィ
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| l > 、 レ!─ 、 / /
| ∨ >'´::.::. : ヽ / /
| V /::.::.::.::.::.: : } /._ /
| /V {::.::.::.::.::.::.::. : .ノ| O/ ヽ
| / ∨ ヽ __ , ィ´,ノ /./ ::.l
| | ヽ | 「 ̄ ./ .l : ::.|
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. l.|__ -‐  ̄ .// ヽ \/ヽ `' 、//ヽノ
. |/ ── 、//、 ヘ /、 ヽ_ 7./
.__└ ´ ̄ ̄.ヽ/ \ V ヽ_ /_//
ヽ、__/_ ` ' 、 ヽ、 ヽ、 ∠//
`ヽ、 ィ= 、_` 、 ` 、 `' 、._/ //
ィ ─ヽ´ヽヽ ̄/  ̄`' 、 `/ ̄ .ヽ//
/ | \/、 ` ' 、 `
ィ===l \ ヽ `ヽ
『矢車変身体』
かつて2ch特撮!板に 裁鬼さんが主人公の
ラブストーリーを作るスレ が存在していた
【'∀`】愛で裁鬼を応援するスレ2戦目【'∀`】
にて 石割くんの勇姿が確認できる(以下転載)
151 :名無しより愛をこめて:2005/11/10(木) 20:00:58 ID:lhR7ZE+fO
助手席で眠っていたサバキを、石割が揺さ振った。
「当たりです、起きてください。」
瑠璃狼が発見した川原まで、松林を駆ける二人の前に、童子と姫が立ちふさがった。
「ここは僕が。……サバキさんはバケガニを。」
「悪いな。」
変身鬼弦を鳴らし、炎に包まれながら魔物の傍を駆け抜けていったサバキを見送ると、石割は身構えた。
「鬼か……」
童子の女声が問う。
「あの人はな。」
答えると同時に、石割は魔物達に向かっていった。
怪童子、妖姫へと変身するその身体に、違和感が走った。
石割の両手が、童子と姫の衣服を掴んでいた。戦闘形態時に首巻きへと変わるそれらも、魔物の身体の一部だった。
石割は両手に力を込め、衣服を引きちぎった。首筋から白い血を吹き出し、生皮を剥がされたかのように絶叫する魔物達。
石割は、取り出したサバイバルナイフで姫の左一の腕を木の幹に突き刺し、素早く童子の背後に回ると、その首を圧し折った。
152 :名無しより愛をこめて:2005/11/10(木) 20:15:07 ID:lhR7ZE+fO
息絶え爆発し、舞い散る木の葉となった童子の向こうでは、姫がナイフを抜こうと必死になっていた。
鋏状の右手では掴めず、人間態の力では歯が立たない。気付くと、目の前に石割が立っていた。
「あ……あぁ……」
怯える男声ごと、渾身の右ストレートがその頭を砕いた。
川原では、裁鬼がバケガニに苦戦していた。重なる疲労で思うように身体が動かない。
その時、石割の放ったディスク形態の茜鷹が、ボーリング球ほどのバケガニの目玉を切り裂いた。
素早くバケガニの腹に潜り込み、全身に力を込めて巨体を川に裏返した。
「裁鬼さん!今です!」
最大の武器である溶解液も、甲羅を浸した流れの早い川の水に四散していった。「音撃斬……閻魔裁き!」
153 :名無しより愛をこめて:2005/11/10(木) 20:35:19 ID:lhR7ZE+fO
顔の変身を解除したサバキに、石割は栄養ドリンクの瓶を渡しながら言った。
「先に戻っていて下さい。僕もすぐ戻りますから。」
川上は滝壺になっていた。黒のクグツが、計測杖に液体の入った試験官をセットした。
その時、茜鷹が滝壺に飛び込み、石割の合図で素早く彼の手に戻った。
「成程……最初はこんなサイズか。」
伊勢海老のようなアミキリの幼体を地面にボトリと落とし、踏み潰した。同時に小石を指で弾き飛ばし、童子と姫の素となる液体の入った試験官を割った。
洋館の男女に迫り来る恐怖を伝える間もなく、5分後の滝壺には、折られた計測杖が沈んでいた。
「お待たせしましたサバキさん。帰りましょう。」
「今回も助かったよ。だが次は俺一人でやるから、お前は休んでくれ。」
その時、携帯電話が鳴った。
「あ、どうも事務局長。……はい、足尾ですね……分かりました。」
サバキが、今日5本目の栄養ドリンクを飲み干した。
「サバキさん、次はヤマアラシです。」
十四の巻別巻「支える強者」 了
長文スマソ。
携帯からの書き込み、言葉のチョイス、二人のキャラ設定、そしてこの面白さ。
日付的に、メインストーリー投下開始前の裁鬼作者さんの実験作ってところか。
石割くん生身でもテラツヨス
新スレの方に書いた欧州編のキーワードについて
・ノートルダムの予言…ミシェル・ド・ノートルダムで調べると分かります。な、なんだってー!!
・鍵、雛鳥、指輪…打ち間違えたorz 本当は雌鳥でした。エロイムエッサイムとか言うやつです。
・真名…アルカード、ミラーカはそれぞれある吸血鬼のアナグラムです。有名なので書くまでもないとは思いますが。
なんか吸血鬼どもを利用してあの男女が何かやらかそうとしているので、
普段いがみ合ってるDMCとRPGが協力し、海外で活動中の先代刃鬼も乱入して三つ巴の戦いを繰り広げるという単純娯楽作品の予定です。
あの怖いおじさん達も登場させる予定w
ttp://guideline.livedoor.biz/archives/50853758.html まあ書く書かないで言ったら今のところ微妙なので、
欧州編はこのレスだけで終わりという可能性も充分あります。そこの所ご了承下さい。
「裁鬼が○○にやられたって報告が 二敗目」スレにて
裁鬼さんと一撃鬼の コントが確認できる(以下転載)
832 :名無しより愛をこめて:2006/10/06(金) 00:18:55 ID:XozYSfOtO
>>830 嘆いてた裁鬼さんの前に、キックだけで次々とバケネコやドロタボウを倒した石割くんが現われたって報告が!
「裁鬼さん、今日からは、アンタを兄さんと呼ぶ」
「石割だけだよな……どんなときも……? ……お前、まさか……鬼か? 鬼だったのか石割!?」
「サバキサンに……変身鬼弦をくれてやる。」
「あ!……ああ! …………ああああああ!!!」
「いいのかい? まだ重要な部品なんだけど……」
「構いませんよおやっさん。死にぞこなっても今尚、戦場に戻りたがってるんですからね…… 本人が!」
「まあ、一撃鬼君にいわれちゃねぇ。……で、そのサバキは?」
「戦いに行きましたよ。……かつての技で、幻を裁く……か、現実のヤツラに、叩き伏せられる……か。 ……無事に帰ってこれるか、賭けます?ヒビキさん?」
↑って、報告(?)が。
元ネタ ワカンネ
【鬼愛】裁鬼弾鬼鋭鬼を応援するスレ3戦目【現役】 にて
戦国時代の彼らを題材にした SS作成の話が進行していた
設定では 裁鬼は商人 弾鬼は忍者 鋭鬼は旅芸人だった