オリジナルのウルトラマンを創るスレ【10ワッ!】

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1名無しより愛をこめて
オリトラ五つの誓い

一つ、ここはオリジナルのウルトラマンを創るスレである事を理解する事

一つ、作風は自由だが、話はしっかり完結まで書き、なおかつ下品な作品はスルーする事

一つ、感想も自由だが、批判意見等はアドバイス程度に済ます事。
また読者方のアドバイス等も参考にはするが、応えないケースももちろんある
    という事を、ご理解ください。

一つ、荒らしには絶対反応しない事。(それ以前に荒らしなど人が不愉快になる行為はしない事)

一つ、sage進行で進める事。(スレッドが落ちてしまいそうになった時だけageる事)

前スレ↓
オリジナルウルトラマンを創るスレ【オリトラQ】
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1172989214/l50

オリジナルウルトラマンまとめサイト(パソコン版↓)
http://originalultraman.cyber-ninja.jp/index.html
(携帯版↓機種によっては観覧できない場合があります)
http://www.sjk.co.jp/c/w.exe?y=http%3A%2F%2Foriginalultraman.cyber-ninja.jp%2Findex.htm
又は
http://originalultraman.cyber-ninja.jp/menu.html
2名無しより愛をこめて:2007/07/28(土) 22:03:16 ID:Dw1S8P+cO
うっさいハゲ
3名無しより愛をこめて:2007/07/28(土) 23:25:43 ID:3CzVq84yO
ハゲじゃないもん。
アイスラッガーがあるもん。

>>1
4名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 00:39:46 ID:PEE2b+MnO
即死回避、そして>>1
5名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 00:41:18 ID:F6WArKUX0
(参考) ウルトラマンシリーズのサントラがありました。
http://up.spawn.jp/file/up36627.html.html
6名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 13:36:27 ID:Yjfeta+K0
オリジナルウルトラマンを創るスレ【first】
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1148132212/
オリジナルウルトラマンを創るスレ【second】
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1154531054/
オリジナルウルトラマンを創るスレ【third】
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1157799460/
オリジナルウルトラマンを創るスレ【fourth】
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1160846909/501-600
オリジナルウルトラマンを創るスレ【fifth】
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1163688391/
オリジナルウルトラマンを創るスレ【sixth】
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1165726897/
オリジナルウルトラマンを創るスレ【オリトラ7】
http://tv9.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1167295883/
オリジナルウルトラマンを創るスレ【エイトォ-!】
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1170060695/
オリジナルウルトラマンを創るスレ【オリトラQ】
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1172989214/
7名無しより愛をこめて:2007/07/30(月) 17:11:53 ID:vnJ/DZYL0
     ::|
     ::|    ____
     ::|.  ./|=|    ヽ.    ≡三< ̄ ̄ ̄>
     ::|. / |=|  o  |=ヽ     .≡ ̄>/
     ::|__〈 ___  ___l   ≡三/ /
     ::|、ヽ|.|┌--、ヽ|/,-┐|    ≡/  <___/|
     ::|.|''''|.\ヽ--イ.|ヽ-イ:|  ≡三|______/
     ::|.ヾ |.::. .. ̄ ̄| ̄ /
     ::|  ';:::::┌===┐./
     ::| _〉ヾ ヾ二ソ./       こ、これは乙じゃなくてアイスラッガーなんだから
     ::||ロ|ロ|  `---´:|____    変な勘違いしないでよね!
     ::|:|ロ|ロ|_____/ロ|ロ|ロ,|`ヽ
     ::| |ロ|旦旦旦旦旦/ロ/ロ|旦,ヽ
     ::|ロヽ 旦旦旦旦旦./ロ,/|::旦旦)
     ::|ヾ旦旦旦旦旦旦,,,/::::|、 旦旦|

8名無しより愛をこめて:2007/07/31(火) 11:03:30 ID:e9zfIi94O
即死回避
9名無しより愛をこめて:2007/07/31(火) 16:09:28 ID:TiRpkj9n0
>5はブラクラらしいです、注意してください。
そして即死回避。
10名無しより愛をこめて:2007/08/01(水) 17:24:38 ID:5CcF9nAB0
10ワッ!
11ウルトラマンアクト:2007/08/02(木) 00:45:37 ID:Hz+/WKqM0
ウルトラマンアクト

第2話『光の守護神』

飛翔怪獣ジェリバ 登場

はるか上空。一機のジャンボ旅客機が飛んでいた。
気象条件も問題なく、いたって安全なフライトのはずだった。
しかし、この旅客機は目的地に辿り着く事は無かったのである。
「機長!何か巨大な鳥の様なものが…接近してきます!」
「あれは…!こっちに来るぞ!う、うわあああああ!」
旅客機は墜落。犠牲者数百名と、非常に痛ましい事件として、後に報道される事となる。
12ウルトラマンアクト:2007/08/02(木) 00:46:34 ID:Hz+/WKqM0
この事件が発生する丁度その頃、GGT日本支部作戦室では、ライディーノを倒した謎の巨人に関して、議論が行われていた。
「味方と決め付けるのは、やや早計過ぎやしないかね。」
イナダ博士が、集まったメンバー全員に対し、自らの考えを披露する。
「あの巨人は我々にとって未知の存在だ。安易に安全と決め付けて、もし敵だったとしたら取り返しのつかないことになる。」
「賛成ね。」
さらにカガミもそれに倣った。
「これまで怪獣なんか現れていなかった。それなのにあの巨人と同時に怪獣が現れたのよ。何か関係を疑うのが普通じゃないかしら。」
その言葉にシンイチロウやゴウも頷いた。
この二人も同意見のようだ。

一方、ユウキは擁護派だった。
「私は助けてもらっているし、怪獣も倒してくれてるから…味方と判断してもいいと思う。それに…何て言うのかな。アクトからは…敵意みたいなものを感じなかったよ?」
「それこそ、何の根拠も無いやないか。」
ゴウが反論する。
「そうなんだけど…」
ユウキも自分の意見に説得力が無い事は理解しているようだ。
たまらず、ワタルに助けを求めた。
「ワタル君は?」
しかし、ここでワタルは返答に困る。
当然だろう。ワタルの命と、巨人、ウルトラマンアクトの命は一つであり、言わば疑惑をかけられている当人なのだから。
「一応、俺もユウキに賛成かな…。助けてもらってるしさ。」
と、ワタルは言葉を軽く濁すしかなかった。
「結局の所、現時点で結論付ける事はできんか…」
カリヤマ隊長が深いため息をついた。
13ウルトラマンアクト:2007/08/02(木) 00:47:08 ID:Hz+/WKqM0
ピーッピーッ
そのとき、作戦室内に通信が入った。
通信担当のカガミが、それに応対する。
「はい、こちらGGT日本支部。はい…はい…わかりました!」
カガミは通信を切った。
「隊長!怪獣と思われる飛行物体が、太平洋上でジャンボ旅客機を襲ったとの通信が入りました!」
「それで!?」
「旅客機は墜落。生存者の望みは薄いそうです。さらに…飛行物体は、東京に向かってきています!」
カリヤマ隊長はそれを聞くと、すぐさま表情を引き締めた。
「議論は中断だ。全隊員、警戒態勢に入れ!」
「了解!」


各々が持ち場につく中、ワタルは思った。
(俺は町の皆を、GTの仲間を守りたい。だから、俺にアクトとしての力があるのなら、変身して戦う。
 けどそれでも、もしアクトという存在が皆に受け入れられなかったら…俺は…どうすれば…。)
14ウルトラマンアクト:2007/08/02(木) 00:47:47 ID:Hz+/WKqM0
東京の、ある海に近い町の一角。
「ママ〜何あれ〜?」
子どもが空を指差した。その先には、巨大な怪獣がいた。
鳥に、手足が生えた姿をしたそれは、先ほど、旅客機を墜落させた張本人、ジェリバだった。
ジェリバは、口から火球を吐き出し、町を火の海へと変えていった。
先日のライディーノは、東京湾で撃破された。そのため、東京に怪獣が現れるのはこれが始めてである。
人々はパニックに陥り、逃げ惑った。

そこに、ガードカプセルが4機、飛んできた。
ワタル、ユウキ、シンイチロウ、ゴウが乗っている機体だ。
隊長であり、指揮を取らねばならないカリヤマと、通信係であるカガミを基地に残し、出撃してきたのだった。
「がつんといてこましたるでえッ!」
ゴウが気合と共に、攻撃をしかける。
「空中戦か。やってやろうじゃないか。」
シンイチロウもそれに続いた。ワタル、ユウキも攻撃を開始する。
東京の上空で、前代未聞の戦闘が幕を切ったのである。
15ウルトラマンアクト:2007/08/02(木) 00:48:52 ID:Hz+/WKqM0
4機のガードカプセルは巧みにジェリバの体当たりや火球をかわす。
しかし、ガードカプセルによる攻撃も、ジェリバに効いているとは言いがたい。
レーザーもミサイルも、命中はするのだが、ジェリバの動きが鈍る気配は無いのである。
「あかんなあ。こら明らかに出力不足や。新兵器でもつくっとくんやった!」
ゴウが火力不足を嘆く。
「後悔は後でしろゴウ!効かないのなら、効く場所に当てるまでだ!」
そう言うと、シンイチロウはジェリバの目を狙ってレーザーを撃った。
激しい音と、火花が起きる。
シンイチロウの攻撃は、見事ジェリバの右目の機能を奪うことに成功した。
が、突如片側の視力を失ったジェリバは、乱暴にその翼を振り下ろした。
「!」
位置が悪かった。シンイチロウのカプセルはその一撃を食らってしまう。
「ちいっ!」
シンイチロウは耐え切れず地上へと落下してゆく。
下はビル街だ。まともに落ちれば、命が無い。
シンイチロウは上手く姿勢は整え、何とか無事に着地した。しかし、意識は失ってしまう。
16ウルトラマンアクト:2007/08/02(木) 00:49:50 ID:Hz+/WKqM0
「シンイチロウさん!」
ワタルは焦った。このままじゃあ、残るカプセルが3機ともやられるのは時間の問題だ。
だが、ウルトラマンアクトに変身する事に、少しためらいがあった。
もし、拒絶されたら…。
その思いが、ワタルを踏みとどまらせていたのだ。
「ワタル君!危ない!」
ユウキが叫ぶ。
ワタルのカプセルに、ジェリバの火球が迫っていたのだ。
(避けられない!)
その刹那。ワタルは思った。

俺は、皆を、この町を守りたい!信じてもらえなくたって、戦うんだ!

「アクトーッ!」
光が、ワタルを包む。
ウルトラマンアクト、登場!
17ウルトラマンアクト:2007/08/02(木) 00:51:25 ID:Hz+/WKqM0
「あれは!」
「ウルトラマンアクト!」
再度現れた巨人に、驚くゴウとユウキ。
「ヘアッ!」
アクトは、大地を蹴って空へ飛び、ジェリバに組み付いた!
そのまま空中で激しくもみ合うアクトとジェリバ。
アクトがジェリバの喉元に、チョップを叩き込む。
たまらずジェリバは翼の動きを緩めた。
そしてアクトは、ジェリバを地面に叩きつける。
フラフラと体を起こすジェリバに対し、アクトは距離をとり、右腕からアクトエッジを放った。
鋭いその光の刃はが、ジェリバの翼を切り裂く。
「ギャアアアオオ」
高い鳴き声をあげるジェリバ。もう飛び立つ事はできなくなったのだ。
怒りと共に、ジェリバは口から火球を放つ。
ふとアクトは気付く。自分の背後に、不時着したシンイチロウのカプセルがあることを。
火球を避ければ、シンイチロウに当たってしまう。
「シェアッ!」
アクトは、エナジーリフレクトで、自らと、シンイチロウのカプセルを覆い、火球を防いだ。
「な、守っとんのか…?シンイチロウを…。」
ゴウは驚きを隠せなかった。
ジェリバの火球が止まる。今度はアクトの番だ。
アクトはエナジーリフレクトを解除。腕を十字に組み、フラッシュウム光線を発射した。
見事、命中。
ジェリバは爆発。アクトは空へと飛んでいった。

それから、数日後。
ワタルとユウキは、ゴウとシンイチロウの二人から、こう言われた。
「ま、敵じゃない気は、ワテもしてきたかな。」
「俺も一応、助けてもらった事だしな。信じてみてもいいと思う。」
ワタルと、ユウキは顔を見合わせて、そして笑うのだった。

つづく
18アルファ→現パラレル作者:2007/08/02(木) 15:40:34 ID:9F1erfb10
アクト作者様
読みました。隊員同士のやりとりがしっかり描かれている辺りが好感が持てます。
ティガの初期とか、新マンに近い感じ。まあ、MATのやりとりみたいに
隊員個人の失態への責めとかそういうのではないのでだいぶライトになってますが。
今後も楽しみにしてます。
19名無しより愛をこめて:2007/08/02(木) 20:20:15 ID:AQYRFguI0
終了
20アクト作者:2007/08/02(木) 21:32:22 ID:QOxtbydA0
アルファ→現パラレル作者様
感想ありがとうございます。
今丁度、ティガの初期をレンタルして見ているのですが、見事に影響が出たようですねw


ヘリオス作者様
前スレの1話読みました。
斬新な設定と共に重厚なSFが繰り広げられそうで面白かったです。
こういったウルトラマンも、また乙なものですね。
21ウルトラマンオーバー&ウルトラマンクラウス:2007/08/03(金) 23:39:45 ID:YyD6Posx0

門をくぐると、目の前には城庭が広がっていた。
但し、木は枯れ、代わりに雑草がおおい茂り、どちらかと言えばお化け屋敷の雰囲気に近い。
道城が予想していたよりも、見張りの兵が少ない。この事にリラオンに問う。

「お言葉ながら、城の護衛としては配置されている兵の数が少ないでは」
「我等の城主ラウバルト様のお心遣いです。貴方方を不安がらせないために、とね」
「道城さん、そのラウバルトって奴思ってるよりいい奴なんじゃね?」
「おい、レイジ君…」
「ははは、ラウバルト様は平民たちが思ってるよりも心の広い方です。ご心配なさらず」
会話が終わる頃に城内への扉へと到着する。
いよいよ、入城だ。
城内は異様に薄暗く、天井を見るもよくわからない。蝋燭で明かりを灯してるようだ。
階段を上がり正面の扉に入ると、そこは個室で、
部屋の隅に椅子が4つほど並べられてるだけの殺風景な部屋であった。
まさかここが会場じゃあるまいなと疑うレイジだったが、どうも客人用の待合室らしい。

「ま、さすがにここで晩餐会やるって事は無いはな。で、王様にゃ何時会えるんだ?」
「失礼、まだ準備中でして…」
「早く会ってみたいな。セーブするかの? とか言ってきたりして」
「…セーブ?」
「実際に会えばお分かりいただきましょう。ここで暫し御待ち下さい、準備が出来しだいお呼びいたします」
リラオンが待合室から出て行く。
道城は椅子に座り考え事をし、レイジは壁にかけられた絵画に注目した。
絵は随分と手入れされていないからか埃被っているが、どうやら城が描かれているらしい。
今現在いるこの城ではない…と、思う。色とか全然違うし。
間もなく、リラオンが戻って来た。

「お待たせいたしました。どうぞ、此方へ…」
22アルファ→現パラレル作者:2007/08/04(土) 13:09:59 ID:etcq6luV0
アクト作者様
前スレでアクトの技設定を見て思ったのですが、額から発射するビームなのに
「ナックルビーム」なのは何故でしょうか? 名前からすると拳から
発射しそうな気がしますが。いや、ネーミングは別に自由なんですが。

まさか、ナックル星人が使っていた破壊光線と同じもの!?
23リュウラ著者:2007/08/05(日) 13:54:11 ID:mCPQhAKw0
私もここんところまったく更新できませんですみません。
新スレの挨拶もできていませんでまことにすみません。

アクト作者さま
現スレではまだですが、リュウラ書いてます。
一話二話拝見しました。小細工一切なしのストレートなウルトラマンで、読みやすかったです。
一話の冒頭からボス格(かな?)怪獣と戦ってるのも。

アルファ→パラレル作者さま
スレ立て代行ありがとうございました。
全編にわたってえらくスパルタンなイメージが貫かれて、久々の多々良島感覚。
やっぱオリジナルウルトラマンは予算を気にしなくていいから思い通りの描写ができますね、とか思ったりなんかしました。
24リュウラ著者:2007/08/05(日) 14:15:09 ID:mCPQhAKw0
で、こないだの四十四章読み直してはじめて気付いたんですが、ユリノが分身して基地と潜水艦に同時に存在してました。
私疲れてるのか?
25取り合えずパラレル作者に移行:2007/08/05(日) 16:24:22 ID:fU9+aHeA0
リュウラ著者様
感想有難うございます。多々良島は確かに意識しました。早い段階で
宙獣の生態を多少でも描写しておこうと思いました。

読みましたが、間違いには気付きませんでした。ばれなければいいのです。
伏線にして誤魔化しましょう。
本部基地壊滅、ゴジョウの真意の一端、そしてカンナのラブラブモードなど、
確実に終盤への流れが見えてきていい感じです。
26ウルトラマンオーバー&ウルトラマンクラウス:2007/08/05(日) 19:00:45 ID:P1SYnHhY0
リラオンに案内されて、二人は長い廊下を歩いていく
っと、ある廊下で、道城は何となく足を止めた
廊下の横には、あの待合室にあったのと同じように、額縁に入れられた絵が飾られている
そしてその絵にはどれも緑の生い茂った草原や、青い空、そして湖や海が描かれていた
「絵が、どうかなさいましたか?」
いつの間にか、道城より少し先で、リラオンとレイジも足を止めている
「この絵はいつ頃書かれたものです?風景画のようですが」
道城の問いにリラオンは一瞬眉を上げたが、すぐにもとの顔に戻った
「私は絵の管理の者では詳しくは存じませんが…、この10年以内の物です、それにあなたのおっしゃるとおり、これは風景画ですよ」
「そうですか…、失礼、行きましょう」
「はい、何ならもう少し見ていても」
「いえ、結構です、足を止めて申し訳ありませんでした」
リラオンは頷くと、再び案内を始め、道城、レイジもそれに続く
それから少し歩いて、二人の前に大きな扉が現れた
入り口には歩哨が二人立っている
「ここです」
言って、リラオンが扉を開けようとしたのを、道城が制した
「ちょっと待ってください、その前に最後の支度を」
「ええ、構いませんよ」
道城は頭を下げると、歩哨とリラオンに背を向けてウインドブラスターを抜く
「え?」
突然の事に思わずびくっとするレイジに構わず、道城はウインドブラスターを対怪獣、集団戦用にボムモードに変形させ、再びホルスターに収めた
「失礼、終わりました」
「では」
扉がリラオンの手でゆっくりと開かれていく
27ウルトラマンオーバー&ウルトラマンクラウス:2007/08/05(日) 19:02:58 ID:P1SYnHhY0
×「私は絵の管理の者では詳しくは存じませんが…、
○「私は絵の管理の者ではないので詳しく存じませんが
28パラレル作者:2007/08/05(日) 23:13:16 ID:kG2OVlIW0
前スレやはり使いきらないと勿体無いので、パラレル6話投下しました。
気が向いたら見てってください。
29奇人男:2007/08/06(月) 00:39:29 ID:jfMB35lr0
皆様覚えておいででしょうか、奇人男です。

ウルトラマントライズの設定を投下した後、HDがぶっ壊れまして、書き溜めていた
トライズのテキストが全てパーになったため、今まで放置してしまいました。
まとめサイトまで用意してもらったのに、本当に申し訳ありませんでした。
現在トライズ書き直しに頑張っておりますが、絶望感からか、なかなか筆が進まず……

お詫びと言ってはなんですが、多分3〜5話くらいで終わる中篇を投下したいと思います。
ちょっとでもお楽しみいただければ何よりです。
30たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:41:00 ID:jfMB35lr0
 時に西暦2060年。
 ウルトラマンと地球人とが初めて出会ってから、1世紀が過ぎようとしていた。
 21世紀に突入して以降、地球に味方する謎の異星人でしかなかったウルトラマンとの関係は
急速に進展し、その究極が2007年のウルトラマンメビウスとの共闘であることは有名な話だ。
 ウルトラマンに依存するのではなく、かと言ってウルトラマンを排斥するでもなく、同じ地球を愛し
護ろうとする者として、ウルトラマンと力を合わせて地球を護る。
 それが、今日における地球防衛論の主流となっている。

 地球防衛軍怪獣災害特別対策チーム――通称『BEAT』は、ここ数十年で初の試みを行った
特別チームである。
 この取り組みは一般には公表されておらず、地球防衛軍内部でも長官と一部の参謀しか知らない。
 時の防衛軍長官であるアカギ大元帥は、本プロジェクトを指してこう評している。

「これは地球人とウルトラマンだけではない。全ての異星人と地球人とが手を取り合えるかどうかが
 問われる、ここ数十年で最も重要なプロジェクトだ」

 そのプロジェクトとは――
31たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:44:03 ID:jfMB35lr0
「なあ、タナカ少佐。貴様はウルトラマンをどう思う」
「ウ、ウルトラマン……ですか?」
「そうだ。頼まれもしねえのに地球を護ってくれる物好きな連中のことさ」
「はあ……私は、彼らはよほど、この地球を愛しているのではないかと思います。彼らは故郷でもない
 この地球、命がけで護ってくれています。そして彼らのその行動に報いるよう努力するのが、我々
 地球人の義務であると愚考します」
「クク……なるほどなるほど……ま、そう考えるのが普通なところだろうな」

 灰皿にタバコの灰を落としながら嗤うアカギ大元帥の真意を、タナカは測りかねていた。
 アカギ大元帥は、内心で首を傾げるタナカに語り続ける。

「だが、そいつは俺達の想像でしかねえ。連中はシュワッチとか何とかしか言わねえし、コンタクトを
 取ろうにも言葉が通じねえ。向こうがどう思ってるか俺達はハッキリわからんわけだ」
「ウルトラマンが……実は、地球を狙う侵略者だと?」
「だとしたら、地球人をだまくらかすために100年も地球を護ってたってことになるな……ククク……
 タナカ少佐、貴様なかなか想像力があるな。面白い想像だ」
「大元帥、さっきから一体何を……」
「タナカ少佐。よく聞け。これは俺と、あとは数人の参謀連中しか知らないことだが……」

 ここで聞いた事は絶対に口外するなよ、とも言ってから、アカギ大元帥は話を続けた。

「半年ほど前、宇宙から謎のメッセージを受け取った。メッセージと言っても、意味のわからねえ文字と
 記号の羅列だったんだが、それを解析班が解読してみたんだよ。何だったと思うね?」
「い、いえ……私にはわかりかねます」
「誰あろう、ウルトラマンからのメッセージだったのさ。しかも、あのウルトラの父からの」
32たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:45:30 ID:jfMB35lr0
 BEAT日本支部隊長タナカ・コウジは、今年で32歳になる。
 人類を怪獣や敵性異星人の侵略から護る地球防衛軍の崇高な使命に共感し、高校卒業後すぐに
地球防衛軍士官学校に入学。良くも悪くも並の成績で卒業し、日本支部に配属された。
 入隊後、数年の間は怪獣出現も異星人の侵略もなく、平和な日々が続いた。真面目な防衛軍
隊員として頑張っていたところ、所属部隊のオペレーターのヨシザキ・カオル隊員と恋に落ち、結婚。
娘も出来、今年4歳になる。
 彼が30歳を迎える直前、突如ビジャス星人を名乗る異星人が地球に襲来。それからは堰を切った
ように怪獣が出現し始め、異星人が再び地球を狙い始めた。
 ビジャス星人との戦闘は熾烈を極めたが、ここでタナカは、乗機を撃墜され一度は死亡認定を受け
ながらも、ビジャス星人の旗艦を撃破し帰還するという大手柄を上げ、死亡認定時の二階級特進も
含めて中尉から少佐に大昇進し、ムーンベースの隊長の座に就く。
 それから2年経ち、タナカがムーンベースの指揮官として頑張っていた時。
 タナカは、アカギ大元帥からの召還命令を受けたのである。
 アカギ大元帥の執務室に呼び出されたタナカは、初めて間近で見る歴戦の兵の姿を見て、恐縮
しきりでこう言った。

「ムーンベース隊長、タナカ・コウジ少佐、参りました」

 が、対するアカギ大元帥の返答は、タナカの予想を裏切るものだった。アカギ大元帥は、デスク
からタバコを一本取り出して銜え、ライターで火をつけた。ガンの原因であると言われ迫害されつつも
タバコは2060年代まで生き残っているのだ。

「堅苦しい挨拶はいらねえ……ちょいとばかり長い話だ。立ち話ってのも野暮だし、かけな」
「は、はあ……」

 勧められるがまま、タナカは来客用のソファに腰掛ける。アカギ大元帥も対面の位置に座り、暫し
タバコをふかしていた。ソファの前の机を2回叩くと机の一部がスライドし、灰皿がせり上がって来た。
どうやらヘビースモーカーのアカギ大元帥が特注で作らせたものらしい。
33たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:47:02 ID:jfMB35lr0
順番ミスった……orz
>>32>>31です。
34たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:49:15 ID:jfMB35lr0
 ウルトラの父。
 タナカも直接見た事はなかったが、話には聞いていた。ウルトラマンの中でも歴戦の勇士であり、
ウルトラ兄弟達の司令官であり、この地球でも数々の奇跡を起こしているという。
 ウルトラの父が最後に地球に現れたのは、54年前、2006年のクリスマスだ。強敵の前に倒れた
ウルトラマンメビウスを救い、地球の人々に希望を与えたと記録に残っている。

「流石の俺もたまげたし、疑いもした。ウルトラの父を騙る侵略者の罠でないとも限らないしな……
 で、半年間じっくりと連絡を取り合い、ようやく本物のウルトラの父であると確信した」
「それで……ウルトラの父は何と?」
「ビジャス星人の侵略は覚えているな? 貴様が少佐に昇進し、ムーンベース隊長に任命される
 きっかけとなったあの事件だ」
「はい。大元帥があの時の戦功を評価され、私を推挙して下さったと……」
「あの事件を境に地球には再び怪獣がはびこり、異星人の侵略が始まった。ここ数十年は大きな
 事件もなく、防衛軍も平和ボケし始めていたんだが……それはそうと、ここ数年の地球の変化を
 M78星雲の連中も重く見ている。だからウルトラの父が俺達にコンタクトを取ってきたんだよ」

 ウルトラマンが直接地球人にコンタクトしてくる。この一事をとっても、地球人類には一大事だ。
 今までウルトラマンが積極的に地球人と意思疎通を図ってくる事などなかった。一説には、彼らが
地球人と関わる事で、地球人の心にウルトラマンに依存する気持ちが生まれてしまうから、彼らは
積極的なコミュニケーションを避けたのだとも言われている。
 が、それを曲げて彼らの意思を地球人に伝えてきたのだ。この100年の間に、地球人は相当の
信頼を得たと言っていいだろう。

「ウルトラの父はこう言ってきた。地球を愛する同志として、こちらから優秀な戦士達を派遣したい。
 彼らを地球防衛の役に立てて欲しい……とね」
「そ、それは……我々地球人と、ウルトラマンとが手を取り合って戦うという事ですか?」
「ああ、そういう事だ。ウルトラの父は、新たに派遣する4人のウルトラマン達を、地球を護る組織の
 最高のチームで、最高の指揮官に世話して欲しいとも言っていた」
35たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:50:23 ID:jfMB35lr0
 それはつまり、その4人をBEATに入れろ、という事だ。
 だが4人ものウルトラマンが地球防衛軍に入隊する事を考えれば多少の事は目を瞑れる。むしろ
破格の条件だ。
 最高のチームと、最高の指揮官。ウルトラマンを迎え入れるにはこれくらいの準備は必要だろう。
 が、アカギ大元帥の発した次の言葉は、タナカを更に驚愕させた。

「それで、だ。タナカ少佐。俺はそのチームの指揮官に貴様を推したいと考えている」
「わ、私を……!?」
「不服か?」
「い、いえ! 光栄です。ですが、何故私を……!?」

 タナカは恐縮しきりで声を絞り出した。
 ビジャス星人の一件での戦功がアカギ大元帥の目に止まっていたのはタナカ自身も知っていたが、
正直なところムーンベースの隊長を任されるなど、己の分を超えた栄達だと思っていた。30そこそこ
で隊長と呼ばれるようになるとは思っていなかったし、自分は一生防衛軍の一隊員でしかないのだと
考えていた。
 その自分が、4人ものウルトラマンを指揮するなどという歴史上初の大抜擢を受けたのだ。正直、
アカギ大元帥の冗談ではないかという思いが強い。

「俺は貴様を買ってるんだぜ、タナカ少佐」
「ですが、私にはとても……」
「お前がどう思おうとこの一件は既に決定事項だ。一度決まった人事は覆る事はないし、貴様にも
 拒否権はない……ま、役職相応に給料も上がるんだ。女房子供に美味いもんでも食わせてやんな」

 アカギ大元帥はあっけらかんと言ってのけるが、タナカはそう割り切った事は言えない。
 力なく「はあ……」と気の抜けた声を出していると、アカギ大元帥が立ち上がってデスクまで歩き、
デスクの引き出しから一枚のデータディスクを取り出した。
36たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:51:45 ID:jfMB35lr0
「このディスクには、貴様が指揮する連中のパーソナル・データが収められている。殆どが地球上で
 暮らすためにでっち上げた偽の個人情報だが、全て暗記しておけ」

 ディスクをタナカに手渡すと、アカギ大元帥はまたどっかりとソファに腰掛け、2本目のタバコに火を
つけた。紫煙が立ち上り、換気扇によって続々と屋外へ排出されていく。

「正式な転属命令が出るのと、連中が地球に到着するのは一週間後だ。心の準備をしておきな」

 アカギ大元帥はその言葉をもって会話を打ち切った。
 タナカは、未だに自分の身に起きた出来事を信じきれずにいた。自分の平々凡々な人生からすれば
目も眩むほどの一大サプライズだ。これがドッキリカメラか何かであればまだ気が楽なのだ。
 ともあれ、タナカの運命が急速に加速しだしている事だけは、疑いようもない事実であった。



 ウルトラマンヴァイス。地球人名ミナモト・タケル。
 ウルトラマンヒート。地球人名ナカムラ・アツシ。
 ウルトラマンブライト。地球人名タカヤマ・ジン。
 ウルトラウーマンレイラ。地球人名サエキ・アスカ。
 以上4名が、BEATに新しく創設された特別チームに配属されるM78星雲人達である。
 タナカとアカギ大元帥、そして新チームのスタッフ一同は、M78星雲人達との合流のために、廃棄
されて久しい古い採石場へ集合していた。彼らは体外的には大規模な演習の名目で集まっており、
この採石場ならかなりの広さがあるため違和感を感じられる事もない。
 若きウルトラマン達の到着予定時刻は正午ピッタリのはずだった。
 が、既に予定の時間から30分も経過しているにも関わらず、彼らは現れなかった。
37たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:53:04 ID:jfMB35lr0
「何かトラブルでもあったんでしょうか……」
「太陽風が乱れて、地球と月の間辺りに大規模な磁気嵐が発生してるらしい。それの所為だろう」
「しかし、ウルトラマンか……地球人に変身して来るらしいが」
「ああ。記録では、過去に出現したウルトラマンも同様に地球人にカモフラージュしていたそうだ」

 隊員達のざわめきが、時間を追うごとに少しずつ大きくなっていく。ここ数十年、地球にウルトラマン
が常駐していた事はなく、記録でしか見た事がないという隊員も少なくない。隊員達が浮き足立つのも
無理からぬ事だった。
 そして時間は過ぎ、時計の針が午後1時を回ろうとしているその時だった。突然大きな地震が彼らを
襲い、次いで合流場所から3kmほど離れた場所の地面が隆起し、土煙が上がった。
 突然の事態にどよめきが漏れるが、アカギ大元帥は冷静そのものだった。

「状況を報告しろ!」

 アカギ大元帥の鶴の一声に、隊員達は一斉に我に変える。まだ若い情報部の隊員が恐縮しながら
アカギ大元帥に報告した。

「ここから南西に3kmの地点に、怪獣が出現した模様! 現在データベースに照会中です!」
「よし、周辺住民に避難勧告を出せ! タナカ、怪獣を抑えろ。じき本部から増援が来る」
「了解!」

 タナカはヘルメットを被ると、近くに着陸させてあったBEATの最新鋭戦闘攻撃機、スカイビート1号に
乗り込んだ。スカイビート1号は最高速度と加速性能に優れたタイプで、様々な装備に換装できる万能
型の戦闘機である。今回はレーザーバルカンやミサイルといった標準的な武装を施してある。
38たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:54:06 ID:jfMB35lr0
 シートは大きくリクライニングしており、コクピット内には操縦用のレバーやペダルを除いて、計器や
メーターの類は一切ない。操縦に必要な情報は全てヘルメットのバイザーから直接操縦者の網膜に
投影されるからである。
 スカイビート1号で飛び立ったタナカは、地上の隊員達には二手に分かれて地上から攻撃せよと命令
を下し、自分は空から陽動を行う作戦に出た。
 怪獣はすぐ近くに見える。黒くごつごつした皮膚の隙間から、赤いマグマが血液のように流れている
のが垣間見える。体のところどころから高温高圧の蒸気を噴出している。さしずめマグマ怪獣か。

「全機、攻撃開始!」

 戦いの火蓋は、スカイビート1号のレーザーバルカン掃射によって切って落とされた。
 幾筋もの光の針が怪獣の皮膚に突き刺さり、体表で断続的に小さな爆発を巻き起こす。怪獣の注意
がスカイビート1号の方に向いたと見るや、地上の攻撃車両からミサイルが発射され、怪獣を撃つ。
しかし、怪獣の硬い皮膚と全身を取り巻く超高温の空気の層に阻まれ、レーザーは威力を減じさせ、
ミサイルは余りの熱で怪獣の体に届く前に爆発してしまう。
 怪獣は地上部隊の事など気にも留めず、ただひたすらに最初に自分を攻撃してきたスカイビート1号を
追う。怪獣の口から吐き出される灼熱のマグマ弾をかわしながら、タナカは怪獣を人のいないところへ
誘導していき、隙を見て本部へ通信を送る。あの怪獣のデータだけでもあれば……

「クッ……本部、応答願います! データベースの照会はまだですか!」
『映像を解析して検索してみましたが、該当する種は確認されませんでした。全く未知の怪獣です』
「未知の怪獣……!? クソッ、動くのは現場の人間と思って無責任な事を!」

 だがこの理不尽を嘆いていても仕方がない。この怪獣を倒す方法を考えなければ。

「本部からの増援はまだなんですか!?」
『約180秒後に到着する見込みです』
「3分間持たせろと言うのか……ぐっ!?」
39たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:54:58 ID:jfMB35lr0
 間一髪、怪獣が吐き出したマグマ弾を避ける。思いの他弾速が早い。これを3分間避け続けろという
のもなかなかに無理難題だと言えた。
 過去の記録によれば、あの手の怪獣には水か冷気が有効なはずだ。だが今スカイビート1号に搭載
されている武装はレーザーバルカンとミサイルのみ。レーザーバルカンは効果が薄く、ミサイルは着弾
寸前で自爆してしまう。
 タナカが攻めあぐねているうちに、怪獣も少しずつだが学習をしていた。マグマ弾を吐き出すだけでは
スカイビート1号に当たらないと悟り、新しい攻撃方法を試し始めたのだ。怪獣はその鋭い爪で地面を
抉り、大小様々な岩と土の塊を飛ばしてきたのだ。何とかそれを避けるタナカだが、その避けた方向に
マグマ弾が飛んできた。慌てて急加速してギリギリのところで避けるが、そう何度も避けられる攻撃で
ないように思われた。
 そしてついに、マグマ弾がスカイビート1号の主翼に直撃した。

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 コントロールを失い一直線に大地へ墜ちていく。人間の動体視力を超える勢いで地面が迫ってくる。
刹那……妻と娘の笑顔が浮かぶ。
 
「すまないっ……!」

 口の奥で呟き、目を瞑る。調子のいい言葉だと知りつつ、そう言わずにはおれなかった。
 だが。
 スカイビート1号が地面に激突してバラバラに砕け散るその寸前。
 天空から4つの光が舞い降りた。
 そのうちの一つが墜ちていくスカイビート1号に急速に接近し、抱きとめるように包み込む。光は段々と
収束し、やがて本来あるべき形を成していく。
 タナカが恐る恐る目を開けると、コクピットから見える風景は、それで埋め尽くされていた。
 そう。その銀色の勇姿は、紛れもなくウルトラマンであった。
40たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:55:39 ID:jfMB35lr0
『グランパの言った通りだ。地球のメカは壊れやすいって』

 タナカの頭の中に直接響き渡るような声は、少年のようなあどけない響きを伴っていた。それが目の
前の巨人から発せられたものであると悟り、銀色の巨体を見上げた。

『僕達が来たからにはもう安心さ。そこで見ててよ』
『オイ、ヴァイス! てめー何油売ってやがんだ? さっさと来いよ!』
『そうですよ。我々は地球上では約180秒ほどしかこの姿を保てないんですからね』
『はいはい、今行くよ。うるさいなあ……』

 またも響いてきた別の声に適当に相槌を打ち、ウルトラマンはスカイビート1号を地面にそっと下ろす。
 タナカが慌ててコクピットから出ると、そこには彼が人生で初めて見る光景が広がっていた。
 怪獣と対峙する3人の光の巨人。銀色の勇者達の勇姿を。

「彼らが……そうか、彼らが……」
「そ。ウルトラマンヴァイスと、ウルトラマンヒートと、ウルトラマンブライト。あたしの同僚ね」

 横合いから投げかけられた声に驚いて声のした方を振り向くと、いつの間にか、スカイビート1号の
ボディの上に一人の女性が座っていた。見慣れない服装と気の強そうな瞳、そして左腕に装着された
真紅の鉱石を嵌め込んだブレスレットが特徴的だった。

「君は……」
「あたしの事は後でいいから。ほら、あいつらの戦い、見といた方がいいんじゃない?」

 女性の指差す先には、怪獣に果敢に向かっていくウルトラマン達の姿があった。
41たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:56:49 ID:jfMB35lr0
 タナカを救ったウルトラマン――ウルトラマンヴァイスは、右腕から光剣を伸ばし怪獣に斬りかかった。
黄金色の刀身は硬い岩盤のような怪獣の皮膚に深々と突き刺さるが、断ち切るには至らない。光剣の
一撃に苦悶の呻き声を上げる怪獣は、全身から蒸気を噴出してヴァイスを牽制した。
 あまりの高温と高圧に、思わずヴァイスはその場から飛び退いた。

『熱ッ! こいつ、無茶苦茶熱いよ!』
『だったら俺の出番だ! ヴァイス、てめーは下がってな!』
『暑苦しいのには暑苦しいのをぶつけるわけですね』

 ウルトラマンヒートは格闘技と熱を操る技を得意とするウルトラマンだ。ヒート自身も熱と炎には慣れて
いるため、こうした敵と取っ組み合っても平気なのだ。怪獣に飛びつき、噴き出す蒸気もものともせず、
逆にそれを力に変えた。

『火だるまになりやがれ!!』

 ヒートの体が赤熱し、数十万度の熱と光の塊と化していく。体内にマグマを循環させる怪獣をも凌ぐ
超高温によって怪獣の皮膚は焼けただれ、やがて化学変化によって怪獣の皮膚が燃え出す。ヒートの
必殺技、クライマックス・オーバーヒートだ。
 力比べで勝ったヒートは、燃え上がる怪獣を担ぎ上げ、回転させながら上空へと放り投げた。

『ブライト! やれ!』
『いいでしょう……受けなさい!』

 ウルトラマンブライトは自らの真上に向かってエネルギー光球を放ち、放たれた光球は物凄い速度で
天高く昇っていく。そして空高く放り投げられた怪獣が万有引力に従って降下を始めた時、天空から
光の柱とも形容し得るエネルギーの奔流が降り注いだ。神の下す裁きの雷にも似たそれに射抜かれた
怪獣は、その圧倒的熱量でかなりの大ダメージを受ける。
 これがブライトの必殺技、シャイニング・ジャッジメント。ブライト自身のエネルギー量もさる事ながら、
大気圏を突破して宇宙空間に放たれたエネルギー光球が太陽光線を吸収し更に肥大化し、圧倒的な
エネルギーとパワーをもって敵に襲いかかるのだ。
42たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:57:45 ID:jfMB35lr0
『後は任せますよ、ヴァイス』
『うん、任せてよ!』

 ヴァイスは燦々と地上を照らす太陽に向かって両手を伸ばした。太陽光のエネルギーを全身で吸収し
それを瞬時に光エネルギーへと変換する。光エネルギーを収束させて光剣を作るように、溢れる光を
一つの形ある何かに仕立てていく。それは、一本の両刃の大剣だった。
 眩い黄金色に輝く光の剣の柄を握り締め、構える。激昂した怪獣が全身からマグマを噴き出しながら
叫び声を上げて迫ってくる。ヴァイスも一歩を踏み込み、そして勝負は一瞬のうちに決した。
 振りぬかれた剣は、文字通り光速の冴えを見せた。ヴァイスと怪獣が背中合わせに立っていた数秒
の後、怪獣の首がゴロリと落ち、体液とマグマの混合物が止め処なく流れ落ち、怪獣は爆発四散した。
 ヴァイスの必殺技、サンシャイン・キャリバーの地球上での初勝利であった。
 役目を終えた太陽光の大剣が雲散霧消し、ヴァイスも疲れた様子で膝を突く。胸のカラータイマーが
点滅を始めた。サンシャイン・キャリバーは高い威力を持つ必殺技だが、剣を作るのに要する集中力と
エネルギーが桁外れに大きい為、多用する事は出来ない技なのだ。
 ヒートとブライトに支えられながら、銀色の光と共に消えていく。ヒートとブライトもそれに続き、40mの
巨体は跡形もなく消え失せた。


 戦いの模様をスカイビート1号の着陸地点から見ていたタナカは、ウルトラマン達の力に息を呑んだ。
 我々が苦戦していた怪獣をいとも容易く倒してのけたのだ。その力、認めざるを得ない。

「どう? 強いでしょ、あいつら」
「ああ……君も、彼らの仲間……ウルトラマンなのかい」
「正確にはウルトラウーマン、ね。あたしはウルトラウーマンレイラ。地球人名はサエキ・アスカだっけ」

 やはり。ということは、彼らも……
 と、そこに3人の若者が続々とやってきた。
 一人は15歳ほどの少年で、一人は逆立った髪の男。あと一人は眼鏡をかけた男だ。いずれも見慣れ
ない服を着て、左腕には真紅の鉱石のブレスレットをしている。
 タナカは、確信を持って彼らに呼びかけた。
43たのしい地球防衛軍:2007/08/06(月) 00:58:49 ID:jfMB35lr0
「君達は、ウルトラマンだね」
「うん。僕が助けてあげたんだよ、おじさん」
「ったく、来て早々怪獣退治たぁ、面白い展開じゃねーか」
「ええ。退屈してる暇もなさそうですね。レイラ? 彼に挨拶は?」
「したわよ。あたしだって地球式のマナーくらいちゃんと覚えてるわ」

 タナカは居並ぶM78星雲人達を見回し、彼らが本日付で自分の部下になるのだという事を、改めて
実感した。責任は重大だ。だが、やらねばならない。

「私が本日付で君達の指揮官になる、タナカ・コウジだ」

 タナカ・コウジ隊長の新しい日々が、ここに始まった。



 同時刻、アカギ大元帥は3人のウルトラマンによる怪獣討伐の報を受けていた。
 タバコに火をつけながら、アカギ大元帥は嗤う。

「クク……本部からの増援はキャンセルだな、こりゃ」

 紫煙を燻らせ、空を見上げる。この空の彼方からやってきたM78星雲の使者達は、果たしてどうなる
ことやら。この地球に若造ウルトラ戦士を4人も送り込んできたあのウルトラの父も、今のところ自分と
大体同じような心持ちだろうと、アカギ大元帥は推察した。

「ま……何はともあれ、賽は投げられた。後は突っ走るだけさ」

 何処へ向かうのかも、それ以前にちゃんとした道があるのかも分からない。
 だが、タナカ・コウジが自分の見込んだ通りの男なら、どうにでもしてくれるに違いない。
 アカギ大元帥は自らの無責任な確信を自嘲するように、タバコの煙を吐き出すのだった。
44奇人男:2007/08/06(月) 01:02:10 ID:jfMB35lr0
ウルトラシリーズでは5〜6人の特別チームにウルトラマンが一人というのがお約束だが、
その逆、地球人一人にM78星雲人4人という構成だったらどうだろう?
……というバカ丸出しの逆転の発想から生まれた本作、「たのしい地球防衛軍」。
続きはまた後日投下します。

あと、よろしければこの作品、ジンさんのサブまとめサイトに入れて欲しいのですが……
45ウルトラマンオーバー:2007/08/06(月) 04:07:05 ID:ENQfImQ90
奇人男さん
大変面白かったです
いい意味で俺のツボにはまる作品でした
文章力があったし、キャラも確立していて印象に残ります
これからも頑張ってください
46アクト作者:2007/08/06(月) 12:05:27 ID:Vcy3xPA40
パラレル作者様
ナックルビームのネーミングは、Aのパンチレーザーの軽いパロディです。
パンチレーザーも額のビームランプから発射するので、
パンチ→ナックル、レーザー→ビームといった仕組みのネーミングにしましたw

リュウラ作者様
感想ありがとうございます。
アクトは昭和の王道なウルトラマンをイメージして描いていますので、わかりやすく書いていきたいです。
エビルグランデは一応、大ボス的存在として考えてます。
Gのゴーデスを意識していますね。

奇人男様
読みました。
ウルトラマンたちが非常に人間臭くて面白かったです。
続き楽しみにしています。
47パラレル作者:2007/08/06(月) 14:05:28 ID:xYmbnXb10
アクト作者様
回答ありがとうございます。某所で質問したところ、パンチレーザーの
「パンチ」は、穴あけ機械が紙などに穴をあけるあの「パンチ」らしいですね。
必殺光線ではなく、穴をうがつ程度の攻撃という意味で。
48名無しより愛をこめて:2007/08/08(水) 00:23:55 ID:liWhC+350
保守
49名無しより愛をこめて:2007/08/10(金) 09:06:18 ID:2ePmgIAt0
ho
50名無しより愛をこめて:2007/08/12(日) 12:45:54 ID:EdKocpw/0
hosyu
51ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:31:45 ID:XQskIAd/0
ウルトラマンアルファ 外伝01 月面大決戦・接触編
生体黒点・バルノイド、岩石衛兵・キラロン 出現


 取り合えず、冒頭から又も地球は危機に陥っていた。
 いい加減にしとけと思われるだろうがご容赦を。

 地球に熱と光を降り注がせている命の源・太陽の一角に、黒いしみが現れた。
 当初は只の黒点かと思われたのだが、数日のうちにそのしみはどんどん広がり、太陽の表面の
約三分の一を覆った。
 そこまでの事態になってから分析するのもかなり片手落ちだが、とにかく地球防衛軍・
ガーディアンの分析スタッフにより、黒いしみに見えるものは、実体を持った生体組織であることが
判明した。
 超巨大な恒星の表面という灼熱地獄の中で生き延び、更に高速で繁殖するという、冗談も大概にして欲しい
生命体である。
 このウルトラワールドの遥か黎明期、まだウルトラの戦士達も地球に訪れていなかった頃、あらゆる
エネルギーを吸収して際限なく肥大するという謎の生命体が宇宙から飛来し、膨れ上がったそれが
上空に陣取って東京の都市機能が麻痺状態になったという記録がある。当時は、各防衛隊を統合した
現ガーディアンどころか、対怪獣・侵略者を前提とした防衛隊という概念さえもまだなかった時代であり、
如何にしてこの難敵に対処すればいいのかと人々は恐怖した。しかし、事件は意外な結末を迎えた。
巨大な生命体は、更に膨大なエネルギーを蓄えた頭上の太陽に惹かれ、そのエネルギーをも食らおうと、
浮上して太陽へと消えていったのである。
 謎の生命体と太陽の決着は以下に相成ったのかは、現在も不明。明日の朝、太陽が謎の生命体に
なっているかもしれないとさえ言われたものだが、幸い我々人類は現在も無事であり、さしもの
怪物もやはり太陽を食らい尽くすことはできずに焼き尽くされて消滅したのではないかと、
思われていたのだが・・・
52ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:33:29 ID:XQskIAd/0
 今回の件を見た識者により、死んだと思われた謎の生命体は実は現在まで生き延びており、
太陽の中で仮死状態を保ちながら、その余りに過酷な周辺環境にも適応せんと、僅かずつ、しかし確実に
進化を遂げ、そして遂にその進化の結果が今回発現したのではないか!? と・・・
 まあそういう仮説はさておき、『バルノイド』と呼称を与えられた問題の生ける黒点は、尚も成長を
続けていた。このまま放っておけば遠からず太陽を黒いかさぶたで覆い尽くし、人類に与えられてきた
光の恵みは遮られ、地球は忽ち凍りつき花は枯れ鳥は空を捨て君はシベリア送りだろう。いえー。
 だが、そんなことを許さない存在が、今の地球にはあった。

 太陽を覆う黒く硬い膜を、
『ギャラシウム光線!!』
 宇宙を飛びつつ、印を結んだ手から稲妻のような閃光を放ちながら次々粉砕し、剥がしていく、
銀色の巨人。
 彼こそ、M78系世界の住人でありながら、全人類に正体を知られつつも、本編最終回を越えても現在も
図太く地球に居座り続ける前代未聞のウルトラマン、アルファ=城達志である。
 そのアルファと共に太陽周辺を飛びながら、自分も光線を放って黒い生体組織を剥がし続ける
女性体のウルトラマン、メタファ=西野恵。普段の仕事は西野家住み込みで恵付きの家庭教師である達志の
教え子、そして、現在なんか周囲公認の達志の彼女。
 恵は本来は生粋の地球人だが、最終回で色々あってメタファという宇宙警備隊伝説の戦士と一体となり、
アルファ一人では手に余る事件が起きた際は彼女も共闘しているのである。
『先生、そっちはどうですか?』
『大方の生体組織を破壊した。けど、やっぱり元を断たないことにはきりがないな・・・』
 と、二人の攻撃で大きく規模を縮小された生体組織が、一箇所に収束し始めた。
53ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:35:14 ID:XQskIAd/0
 固まって形を変え、二人のウルトラマンに合わせたサイズの巨人の形になっていく。それも、非常に
ボスキャラとして判り易いディテール。
 全身真っ黒で、炎のような形の突起が鎧のように身を覆い、黒マントまで靡かせ、野太く一種
勇ましい声でんははははははと笑い続けている。
 只、よく見ると、体自体は黒い全身タイツを着ているかのようで聊か貧弱。
『・・・ちょっと、ボスとしては食い足りない姿だねえ』
『よくも悪くもパターン通りと言いますか、円谷と言うよりは東映の敵役と言いますか・・・』
 しかし、好き勝手いっている間にも、実体を見せたバルノイドの足下には相変わらずかさぶたのように
広がった生体組織があり、忽ち回復を始めて又広がり出している。決して呑気に放っておいて
いい状態ではない。
『一気に片付けますか』
『そうだね』
 そして、二人は体から同じ色の光を放ち出し、同調してシルエットが重なって一つの存在になっていく。
二人分のパワーを互いの心の繋がりで更に何倍にもする究極のモード『メタアルファ』だ。
 メタアルファを認めたバルノイド本体は、相変わらずんははははと笑いながら、暗紫色のビームのような、
身体に悪そうなエネルギーを大量に放射してぶつけてきた。
 普通ならウルトラマンでも食らえば只ではすまない攻撃だが、二重合体して大幅にポテンシャルが
上がっているメタアルファは、そんな攻撃を受けてもなんともない。
 平然と受けながら、右手からアルファの武器であるアルファブレード、左手からメタファの変身
アイテム・メタファプラスの巨大サイズのステッキを取り出す。それを両手で合わせると、二つが融合して
変形し、別の大きな武器になる。
54ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:36:43 ID:XQskIAd/0
『光子増幅扇風機!!!!!』
 メタアルファの身長と同じくらいの幅の巨大なプロペラのようなファンが、宙に浮きながらぐるぐると
回り出す。
 そしてメタアルファ自身は、全身に満ちた光の力を両手に集めて一気に放射。その太い光条は、
光子増幅扇風機に吸い込まれ、更に増幅されてバルノイドに放たれた。
 バルノイドは景色を埋め尽くす光の奔流を浴びせられ、暫くはんはははははははははとまだ
笑いながら持ち堪えていたが、堰を切ったように、光の中で掻き消えるように足下の黒い広がりごと
消滅していった。なんか気持ち良さそうにも見える様子で。
 しょうねんたちが おおきな こころをもてるように〜
 えいえんの ぼくらの ひ〜ろ〜〜〜〜 と、『ウルトラの奇跡』の歌声が流れ続けていた。

 かくして太陽は守られ、その恩恵を受ける地球も救われた。あっさりと。
『思ったより簡単だったね』『そうですね』
 分離して地球へ帰っていくアルファとメタファはのうのうと言う。
『大体、こっちが大規模攻撃を出してくるのに、何でぼけっと突っ立って平然と笑ってるんでしょうね』
『避けてから攻撃するなりすれば少しは持ち堪えたかもしれないのにね』
『ラスバトルの二話前の総監の演説で力使いきっちゃったんでしょうね』
『超古代の光の巨人の末裔にやっぱりラスバトルの二話前で告っちゃった辺りに近いものがあるよね』
 又色んな方面に喧嘩を売り捲っているが、二人は悪びれもしない。素敵に無敵だった。

 しかし、そんな状態の主人公を中心に据えて折角外伝をやっても話が盛り上がるわけがない。
無論状況が動くのである。
 何となれば、現在も地球に留まっているアルファ=達志の動向を見届け続けている、宇宙警備隊の
アルファの上司・デリートと、その片腕である女ウルトラマン・ジャネットが、再び人間の姿となって
地球に来たのである。達志と恵に注意を促すために。
55ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:38:36 ID:XQskIAd/0
 かつてアルファと何度も交戦した宇宙の侵略者・ゼバット星人は、ウルトラマンの加護もあって
外敵に対する絶大な戦力を既に有しつつある地球が、宇宙中の少なくない者達から『侵略者の墓場』と
呼ばれていることを語った。最終回でのメタアルファの猛威で地球の呼称は更に『ウルトラマン地獄』へと
ランクアップしたとかしないとかいう話もあり、正直、地球の立ち位置は宇宙全体にとって微妙な
ものになりつつある。その地球にしばしば加担する宇宙警備隊も、周辺の宇宙人文明から批判的な
声を向けられるようになってきたというのである。
 そこでデリートとジャネットが勧めにきたのは、周りの警戒心を解くために一度ウルトラマンによる
地球の守りの戦力を縮小、さし当たって、恵の体からメタファを分離して宇宙警備隊に帰すという
話であった。
「元々恵さんにメタファとの一体化を勧めたのは私で、手前勝手なことは判っているのですが・・・」
 申し訳なさそうに言うデリートの様子を見た恵は少し考えたが、あっさり勧め出を受けた。

 屋外で恵とメタファの分離が執り行われる。
 デリートとジャネットのウルトラ念力による補助に従い、達志が見守る前で恵の身体から
眩しい光が抜け出して中空に結実し、メタファの形を形成していく。
 完全に分離し、整然と見下ろすメタファに対し、恵は笑いかける。
「今まで御苦労様」
 メタファはゆっくりと頷いて応えた。
「しかし、本当にいいのですか」
 分離させておいて何ですがと、デリートの人間体が一応達志に確認。
「恵ちゃんの意志なら僕には何も言うことはありません。此処暫くはそう面倒な敵も現れていないし」
 太陽の輝きを奪う寸前まで行ったバルノイドは面倒な敵ではないらしい。
「いざとなったら、僕の力で恵ちゃんを守りますから」
 恵の肩に手を置いて言ったものである。
「後、その序での抱き合わせで地球も」
「思ってても口に出さない!!」
 恵に回しげりを入れられた。
56ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:40:34 ID:XQskIAd/0
 デリートとジャネットに連れられ、ウルトラマンメタファは地球より去る。
 万感の想いで達志と恵は見送った。
 東京湾岸のディフェンスポートからも飛び去るウルトラマン達は観測されており、特命防衛隊も
それを見守る。
斎木「いいんですかね」
 川上隊長は微笑み、
「アルファが現れる以前、我々特防隊はウルトラマンの助けがあることを前提とせず、それでも何とか
地球を守ってきた。本来あるべき姿に近付いただけだ」
「それもそうなんですが。特防俺達の存在意義も取り沙汰されないようになりますしね」
 冗談めかして斎木は笑って言った。

 もう判っていると思うが。
 世の中は上手くいかない。そういう運びになった直後に限ってことが起きるのである。

 恵の通う桜ヶ丘高校。
 6話のときその他の縁か、学校の生徒の良とかなえ(オカルト研究会はまだ続けているらしい)が
駆け付けてきて急遽呼ばれ、達志は一緒に息を切らせて学校に走った。
 学校の一角が爆発で吹っ飛ばされたかのように倒壊して粉塵を上げ、その煙と瓦礫の中、
気を失った恵を抱えている人物がいた。
 浅黒い肌、整った細面の美青年だが、いでたちはあからさまに怪しい。未知のメカの意匠があちこちに
見られるが、金銀と黒のカラーリングの装飾物、その下のゆったりとした白いローブ。何というか、
古代エジプトの王族を思わせる。
 男が見据える先から、達志が走ってきた。既に人外の速さで。
「恵ちゃんを・・・返せ!!」
 勢いで男に飛びかかり・・・
57ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:41:59 ID:XQskIAd/0
 男が恵を片手で抱えたままもう片方の手をかざした先から、見えない力が放たれた。
 達志を突き動かしていた前方への加速が突然失われ、逆方向に凄まじい力が掛かる。
 吹っ飛ばされる・・・というより、殆ど高所から落ちる勢いで達志は後ろにスライドし、
校庭の外側のコンクリートの柵に叩き付けられた。
 校舎を壊したのもこの力である。
良「達志さん!?」
かなえ「宇宙ノ大イナル神秘ノ力ノナセルワザナノデス」
 ぶつけられたダメージは結構大きいが、放たれた力は謎の男が手を下げると直ぐ消えた。
力の正体を見極められずに苦しみながら怪しむ達志だが、とにかく今は恵の無事を優先。
「何者だ、お前は!? 何故こんなことを!?」
「我が名は、ジーラム。宇宙の至高なる皇」
 悠然と笑って答える男。
「この娘は頂いていくぞ。下賎な光の巨人よ」
「・・・げ・・・!?」
 ウルトラマンを下賎と一笑に付する。
 そして、曇った上空の雲の一角から、金色の光が降りてきて、それに導かれ、男は恵を連れたまま
浮かびながら空へと昇っていく。
「待て!!」
 追おうとする達志に対し、男・ジーラムは又手をかざす。
「キラロン。足止めをせよ」
 声に応じ、突然空から、巨大な岩の塊が飛来した。
 否、よく見ると、胴から頭と太い四肢の生えた身体を形成している。巨体の宇宙怪獣だ。
 地上に降下し、達志の前に立ちはだかる巨大な影。
ジーラム「殺しても、それはそれで別に構わん」
58ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:43:16 ID:XQskIAd/0
「・・・くそ・・・!!」
 達志はアルファプラスを取り出し、
「アルファーーーーーッ!!」
 眩しい光と共に、ウルトラマンアルファの巨体を現して対峙した。

 アルファは恵の救出を優先しようと、地を蹴って空へ飛ぼうとするが、こちらも飛行能力のある
怪獣キラロンが、宙に飛んでアルファの進路を妨害。
 キラロンはぎょろりとした大きな二つの目で睨み、頭の火口から蒸気を噴出して吠え、
突如身体を丸め、大きな丸い岩塊になる。
 そのまま超高速で突撃、アルファに体当たりして吹き飛ばす。
 学校の裏山に落とされて地響きを立て、咳き込むアルファの前でキラロンは再び四肢を展開して
胸を張り、今度は腹の中心にある黄色く丸い発光体から、強力なショック光線を放ってきた。
直撃してアルファが痺れ、動きが鈍ったところで、更に接近して拳の連打で滅多打ち。
巨体に似合わず動きも素早く、そして怪力。
 消耗したアルファの首に手を掛け、キラロンは締め上げる。
 呻くアルファだが・・・

『こんなことで・・・しょっぱなからやられてられるかーーーーーッ!!!!!』
 ウルトラの火事場の馬鹿力で、全身から光を滾らせながら両手でキラロンの腕を掴み、
無理やり引っぺがし、掴んだまま手首を締め付ける。キラロンは悲鳴を上げて必死に抵抗し、咄嗟に
足を上げてアルファを蹴り離した。
 両者、大きく間合いを取って睨みあった後。
 全身から光を放ち、レスキューダッシュ(今回は救出対象はなし)で突進するアルファ。
 キラロンも又球体に変形して突進。
 真正面からの衝突。
59ちょっとアルファ作者に戻る:2007/08/12(日) 18:44:49 ID:XQskIAd/0
 轟音が響いた後、僅差で力負けしたキラロンは、粉々に粉砕されて敗れた。
 踏み止まった後、倒れそうになるアルファだが、両脚を踏ん張って留まる。
 そして、大きく首を反らせて空の彼方を見上げる。
 既に恵とジーラムとかいう男は地球上にはいない。
 ウルトラの超視力が、地球の衛星、月のクレーターだらけの表面を視認。

 無人の月面にあるはずもない、巨大な人工の物体が存在していた。
 メカで構成された、城の様な建造物・・・に、見えるもの。
 恵はそこにいる。
 ウルトラマンアルファ=達志は、本能で直感した。


 続く。
60名無しより愛をこめて:2007/08/13(月) 01:28:40 ID:/tc1/Gw60
そろそろageます
61名無しより愛をこめて:2007/08/15(水) 11:11:50 ID:FwKAdSoc0
ウルトラマンアクト

第12話『光の泡姫』

風俗怪獣ヤリメンコ 登場

はるか遠方。一人の店員が客引きをしていた。
取り締まりも問題なく、いたって安全な呼び込みのはずだった。
しかし、この店員は客を呼び込む事は無かったのである。
「店長!何か巨大なパトカーの様なものが…接近してきます!」
「あれは…!こっちに来るぞ!う、うわあああああ!」
店員は逮捕。店内で全裸の客数名と、非常に間抜けな事件として、後に報道される事となる。
62名無しより愛をこめて:2007/08/15(水) 11:34:54 ID:FwKAdSoc0
ウルトラマンアクト

第12話『光の泡姫』

この事件が発生する丁度その頃、SEKKUS日本支部作戦室では、スケスケクラブを摘発した謎のパトカーに関して、議論が行われていた。
「県警と決め付けるのは、やや早計過ぎやしないかね。」
チョコボール博士が、集まったメンバー全員に対し、自らの考えを披露する。
「あのパトカーは我々にとって未知の存在だ。安易に安全と決め付けて、もし警視庁だったとしたら取り返しのつかないことになる。」
「賛成の反対ね。」
さらにカミナリさんもそれに倣った。
「これまで察なんか現れていなかった。それなのにあのパトカーと同時に婦人警官が現れたのよ。何か関係を疑うのが普通じゃないかしら。」
その言葉にシンイチや正ちゃんも頷いた。
この二人も同意見のようだ。

一方、ドロンパは擁護派だった。
「私は抜いてもらっているし、親子丼も食べさせてくれてるから…味方と判断してもいいと思う。それに…何て言うのかな。婦人警官からは…敵意みたいなものを感じなかったよ
63名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:20:57 ID:iGs9SoQQ0
続き。


ウルトラマンアルファ 外伝02 月面大決戦・発動編
重力暴君・ジーラム、岩石衛兵・キラロン 出現


 後編。
 月面に突如存在していた巨大な城のようなメカニックは、宇宙から唐突に来訪した謎の人物・ジーラムの
乗ってきた宇宙船であった。
 ジーラムが前回拉致した西野恵は、ウルトラマンアルファ=城達志の見立て通り、現在その宇宙船の
中にいる。しかし、拘束されたり虐待を受けたりはせず、船内を自由に歩き回れる。何処の壁面も
頑丈に閉じているので地球へ逃げ戻ることはできないが。見ると、恵を追おうとした達志=アルファを
妨害していた岩石衛兵キラロンが等身大サイズになっているらしい岩の怪物が大勢、歩哨として船内を
警備している。
 大きな広間で恵はジーラムと一緒におり、豪華な食事らしいものまでずらりと並んだテーブルに用意してある。
「地球人の嗜好は分析してある。別に毒など入っていない。好きに食すがよいぞ」
 皇と自称したとおり、如何にも高貴な物腰で悠然と構えているジーラム。
 恵は油断なく睨み付けるが、それはそれとして腹が減っては戦はできぬので食事は食べる。
「・・・はっ!? 後で高額な代金を請求するとか」
「ないない。そなた達の通貨など余には意味がないわ」
「・・・じゃ、何のために私を連れてきたんですか」
 ジーラムが手を上げて指示すると、広間の中空に大きな映像が開く。
 その映像を見て恵は驚いた。
 ジーラムのいでたちと同じような意匠の服を着た少女のバストアップの絵。古文書に出てくるようなかなり
古びた質感の。そして、その少女の顔は、恵に生き写し。
64名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:22:00 ID:iGs9SoQQ0
「宇宙王族の高貴なる血筋を後世に受け継ぎ続けるため、我が一族の伝承に従い、文献に残された形質、生体的特徴を
備えた娘を妃として迎え入れねばならぬ。それがそなたじゃ。そのために余はそなたをこの城に迎え入れた」
「・・・・・・」
「光栄に思うがよいぞ。余の妃になれば、何の不自由もなく心行くまで贅沢な暮らしができるのじゃ」
「・・・幾ら番外編でも、ベタ過ぎる」
 恵は心底うんざりした顔をした。
「こんな手垢だらけのだっさいネタを、由緒あるウルトラでやっていいんですか? 精々中学生向けのコミックとか
ラノベとかそっち向けのネタな気が・・・」
「んー。では、太古に罪もない異民族を滅ぼして現在の地球の支配者となった人類の罪が裁かれるとか、高度な
人工知能が反逆して造物主を逆に支配して虫けら同然に扱うとか、そういう話の方がよいのか?」
「・・・それも遠慮します」
 ジーラムは深く逆座に掛けて嘆息し、
「平民とは古来身勝手なものよ。『卑怯もラッキョもあるものか』とか『お釈迦様でも気がつくめえ』とかやれば
ウルトラの威信を地に落としたと文句を言い、『人間が避ければ事故は起こらずに済んだ』とか『人類とはガン細胞だよ』
とかやれば本来の購買層たるお子様にもっと判り易くと文句を言う。やはり、冗談抜きで一度民ごと世界を壊滅させてから
作り直したほうがよいのかも知れぬ」
 恵は露骨に不愉快になった。
「折角ですが、私は現状の生活で満足してますので。貴方の申し出はお断りします」
「間違えるな。余は頼んでいるのではない。民が王に従うのは当然のことじゃ」
 ジーラムは本性を出して居丈高になり、凄絶な視線でねめつけるが、恵は怯まない。既にこんな事態は慣れっこだ。
「馬鹿言ってないで私を地球に帰したほうがいいと思いますよ。城先生がとち狂って何をしてくるか・・・」
「ほほう、それは楽しみじゃ」
 ジーラムも姿勢を崩さない。
65名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:23:21 ID:iGs9SoQQ0
 地球でキラロンを退けたアルファは、恵救出のために早速月への強襲に乗り出した。
 但し、キラロンとの戦いで消耗したので、一度達志の姿に戻って西野家に戻り、一誠と和子に事態を説明した。
二人も最早うろたえることなく事態を受け入れ、達志に万全の態勢で恵救出に臨んでもらうために存分に
腹ごしらえをさせた。対デッパラス戦に臨む東光太郎の勢いでご馳走をたらふく食べた達志は、では行ってまいりますと
気力満点でアルファに変身し、地を蹴って月へと飛んだ。
 月まで力を温存するため、等身大状態。
 忽ち大気圏を越えて宇宙空間を飛び、月が近づいてきたところで、ジーラムの放った迎撃部隊が迎え撃つ。
等身大の歩哨キラロンの軍団である。
 アルファはキラロン軍団と接触し、アルファブレードによるウルトラ居合い抜きで片っ端から斬り捨てていくが、
倒しても倒しても軍団は現れる。きりがないと思っていたとき。
 援軍が飛来。
 事態を知って地球から飛んで来た、特命防衛隊のソニックビート編隊である。率いるは、斎木、美樹、柏村の何時もの三人。
銃撃でキラロンを撃ち落して行く。
柏村「ここは俺達に任せていけい、アルファ!」
美樹「必ず恵ちゃんを助け出すのよ!」
アルファ『皆さん・・・感謝します!』
 アルファは素直に厚意を受け、月面に急行。

 ジーラムの牙城を前に、遂に月へと降り立つ。
 だが、今度は巨大化したキラロンの一団が行く手を阻む。
 アルファも巨大化して悠然と接近し、群がるキラロンを次々ブレードで斬り倒していく。
 城の広間で映像に見入る恵とジーラム。
「ほら見なさい! 並大抵のことでは城先生にはかなわないわよ!」
「ふん・・・それはどうかな」
66名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:24:28 ID:iGs9SoQQ0
 がきん
『・・・あれ?』
 キラロンの一体にブレードの刃を叩き込んだアルファだが、突然、刃が通らなくなった。
 僅かに岩のような体表に傷をつけただけ。
 キラロンの強度が上がったのではない。斬撃の威力が下がっている。
『あれ・・・お、おかしい・・・?』
 それだけでなく、アルファ自身の動きも鈍り、回避力が落ち、次第に敵の攻撃を食らい始める。

「先生!? 一体何が・・・」
 見ていた恵は、隣にいるジーラムが、体から異様な気を放ち始めているのに気付いた。慌てて離れる。
迂闊に近寄れない気配。
「何をしているの!?」
「余は事前にウルトラマンアルファの戦力についても分析した」
 にやりと笑うジーラム。
「1話冒頭からゼットンの群れを一掃したりしているので一見無敵の力を持っているように見えるが、
それだけの力を持つアルファが、ウルトラ縮地でやたら動き回る回避行動を多用しているのは何故か?
それほど打たれ強くないからじゃ。高いのは素早さと攻撃力のみ。
 そこで、奴の周辺の重力を気付かないくらいにじわじわと上げていくことで、少しずつ動きの切れを殺いでいったのじゃ」
 ジーラムは、重力を制御する特殊能力を持っている。達志との緒戦で手をかざして放った力も、重力の向きを
真下から達志の後方に変え、後ろへと『落とした』のである。
「早い段階で余の力に気付いて警戒しておれば罠にははまらなかったかもしれぬがな。自分の攻撃力を過信して
刀を調子に乗って振り回しておるうちに、まんまとかかりおったわ」
 ジーラムの邪悪な気が急に増大したと思うと、恵の前から姿が消える。
 そして、キラロン達に袋叩きにされているアルファの前にテレポートし、更にもう一つの巨大な姿を現した。
人間体のとき身につけていた装飾物の意匠と同じ鎧を要所につけ、鬼神のような筋肉質の巨体全体に包帯がぐるぐる巻かれ、
剥き出しの顔は鱗に覆われた毒蛇のような恐ろしい形相。目は爛々と光り、細い舌がちょろちょろと吐き出されている。
67名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:25:27 ID:iGs9SoQQ0
 怪獣体となったジーラムは伸ばした腕から又も強力な重力波を放ち、袋叩きでぼろぼろになったアルファを吹き飛ばす。
穴だらけの月面に転がって叩きつけられるアルファ。
恵「城先生!!」
 恵の叫びに応え、立ち上がろうとするが、既に全身に強力なGが掛かっていてそれもかなわない。
 動けないアルファに、
『とどめを刺してくれるわ。余と新しい妃の門出の礎となるがいい』
 ブラックホールのような黒い重力波の塊を放とうと、両手に圧縮し始めるジーラム・・・

 同じ頃。
 月を遠く見下ろす宇宙空間に、三人のウルトラマンが滞空していた。デリートとジャネット、そして、その前に
控えるウルトラマンメタファ。
 アルファの危機を察知し、戻ってきたのである。
ジャネット『まさかいきなりこういう事態になるとは思いませんでしたが』
デリート『まあ、定番といえば定番ですが・・・やりますか、メタファ?』
メタファ『このまま帰ったんじゃ後味が悪いものね』
 しかし、大局的なことを言って去っておいて殆ど間をおかずに戻ってくるのもあれなので、アルファの前には
現れないことにする。
 この位置から援護するのだ。
 メタファは両手を掲げ、頭上に光の球を収束させる。
 一抱えほどになったところで、月に向けて放り投げた。

 ジーラムも、大きく膨れ上がった重力波の塊をアルファに放り投げようとしていた。
恵「先生、しっかりして!! 立ってよ!!」
アルファ『う、うぐぐ・・・』
68名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:26:26 ID:iGs9SoQQ0
 そこへ、メタファの放った光の球が飛来し、地上に炸裂した。
『ぬ!?』
 重力波の塊を抱えたまま目を見張るジーラム。
 光の炸裂は月の地表に作用し、そこら中の死火山のはずの山が地響きを立て、一斉に噴火を始める。
 火柱というより、なんかレオの怪獣辺りが口から吐く貧相な花火みたいなのがあちこちからしゅうしゅう噴き上がる。
だが、その光で暗い月面は眩しく照らされる。
 それで充分だった。

 ぱーーーん ぱーーーん ぱぱーーーんぱんぱん ぱんぱぱーん ぱんぱぱーーーーーん

 ファンファーレが響く中、光の力を存分に吸収したアルファはゆっくりと立ち上がり、点滅していたカラータイマーは
青に戻り、両手を挙げ、胸を張ってそそり立つ。
 全身から毒液を噴く象のウンコみたいな怪獣によって陥った窮地からあの赤い巨人が脱したときのように。
 あの時落ちてきた隕石が結局何故落ちてきたのかも不明である。勇者に味方した天命というものだろうか?

『ふん、だから何だというのじゃ』
 ジーラムは怯まない。
『余の放った重力の罠はまだ生きて』
 言い終わる前に。
 アルファの放ったウルトラ居合い抜きが、取り囲んでいたキラロンを全てバラバラに寸断し、斬撃の余波が
ジーラムにも襲い掛かった。
『ぬおおおお!?』
 ジーラムは全身に傷を負って卒倒。
『・・・馬鹿な・・・先程と変わらぬ荷重を全身に受けながら、何故これほどの身のこなしが!?』
 簡単である。
 エネルギーと共に気力も取り戻したアルファは、重い体を、それを上回るパワーで力押しで突き動かしていた。
更にその荷重の増した体で突進し、勢いだけでジーラムを跳ね飛ばす。
 再三の打撃を受け、ジーラムは呻いて倒れ付した。
69名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:27:27 ID:iGs9SoQQ0
「先生!」
『恵ちゃん』
 恵の待っている城へ、重力の罠から解放されたアルファは、彼女を取り戻すべく歩いていく。
『・・・待てい』
 だが、地の底から響くような声に、思わず振り返る。
 ジーラムが、半身を起こしていた。
 全身の負傷によって立ち上がることはできないようだが、異様な気迫が全身から視認できる黒い重力エネルギーと
なって立ち昇っている。
『まだ勝負はついておらぬぞ!!』
 両手を月の大地に付き、重力エネルギーを一気に流し込む。
 ごごごごごと月中に地鳴りが起きる。
『これは・・・何をしている!?』
『余の悲願がかなわぬというなら、そなたらの住処を滅ぼしてくれるまで』
 アルファは気付いて慄然とした。
 月の質量を急激に倍増させ、地球との引力のバランスを崩し・・・地球に月を落とし、双方壊滅させる気だ。
『やめろ! 今更そんなことをしても何にもならないだろう!?』
『もう遅いわ! 崩壊する月と地球もろとも宇宙の藻屑となるがいい・・・』

『ジーラム様〜』
 そこへ、状況と余りにもそぐわない、緊迫感のない声がした。
 上空から、一体のキラロンが飛んでくる。
『まだいたのか!』
 攻撃しようとするアルファだが、キラロンが何らかの丸いエネルギー障壁で包み込んで手に持っているものを見て
思わず手を止めた。
『め・・・恵ちゃん!?』
 恵と生き写しの少女がキラロンの手の中に。恵自身も驚く。
「・・・まさか」
70名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:28:27 ID:iGs9SoQQ0
 恵の予想は当たっていた。
 キラロンが説明する(喋れたらしい)。ジーラムが妃に迎えようとしていた、文献通りの姿と生体的特長を持つ
少女だが・・・恵は条件に限りなく近い個体でありながら、実はジーラムの見立て違いで、よく調査し直したところ、
完全に条件に合致するのは、今連れてきたこの異星人の少女であったらしい。
 少女当人も王族に迎えられていい生活ができるという条件に対して全く文句はなく、わくわくしながら待っている。
『・・・・・・・・・』
 ジーラムは怪獣体のまま唖然としていたが。
 出し抜けにアルファのほうを向き、

『ごめん。間違い』

 あっはっはっはと笑って頭をかき、
『いや、大儀であった、勇者たる光の巨人よ。実は余はそなたの力と勇気を試しておったのじゃ。しかし、そなたは
余の課した試練を見事に乗り越えて見せた。見事じゃ。そなたならその西野恵という娘と行く末までも幸せに暮らす
ことができるであろう。心から祝福させてもら』
『ギ ャ ラ シ ウ ム 光 線!!!!!』
 アルファの必殺ビームで木端微塵にされ、月に高く火柱が巻き起こった。

 事後。
 取り合えずジーラムは殺されっぱなしということはなく、結局月に降りてきたデリートとジャネットに新たな命を
与えられて復活。地球へのお詫びの品として何故か餅を一から臼でついて作るという償いをした後、城砦型宇宙船を
そのまま月面に停泊させ、本物の妃になった少女と月で平和にお気楽に暮らしているそうだ。
71名無しより愛をこめて:2007/08/17(金) 17:34:31 ID:iGs9SoQQ0
「やってられませんね」
「全くだ」
 西野家宅に帰還した恵と達志はぐったりしながら餅をつまんでいた。
「まあ、城先生に大事なかったからいいですけど・・・」
「当然さ。僕は負けない」
 負けそうだったことは棚に上げ、恵を見つめて笑い、臆面もなくいう。
「恵ちゃんにもしものことがあったら僕も生きてられない。だから、どんな障害を乗り越えてでも迎えに行くさ」
「・・・先生・・・」
 二人は視線を合わせ、ここもやってられない雰囲気になっていく。
「・・・・・・」
 恵と触れ合っていた達志は、気配に気付き、部屋の入り口に近寄って障子を開けた。
 西野夫妻、哲夫少年、町内会長や近所の人々、更に何故か特防隊の面々までもが覗いていた。餅をくわえながら。
 達志は瞬時に等身大のウルトラマンアルファに姿を変え、ギャラシウム光線の構えで充填を始めた。

 全ての人々に幸あらんことを。
72ウルトラマンオーバー&ウルトラマンクラウス:2007/08/19(日) 00:21:26 ID:bmVDGrRI0

最初、カミヤ・レイジが‘ラウバルト様’を見た時の印象は、こうだった。

女かよ! 若いよ! 目付き悪いよ! なんかマントつけてるよ!

過剰とも思える文句の数々だが、こう無理にでも心の中で1人漫才をすれば、緊張が若干解されるのだ。
にしても、このアホみたいに長いテーブル、どうやってここに入れたんだ?

一方、道城光也は、テーブル越しに座る若き王女の姿を見て、レイジとは全く別の捕らえ方をしていた。

若い女性が人々のリーダーの位置に立つのも、ジャンヌ・ダルクなどの例を見れば不思議な事ではない。
自らの身の回りにも、並みの男に勝る勇猛の女性はいるし。問題は、いかにしてこの現状に至ったか、である。
並んだ座席の真ん中に座り、さらにその周りを囲む介子の数を見ると、
彼女がここのトップであるのには間違いない。
しかし、この町や城はかなりの年季入りの様で、それなりの歴史を持つはずである。
なのに王家と思われる人物は彼女1人。前代王は病死或いは戦死でもしたのだろうか。

「そうも堅苦しくなるな。席に付くがいい」
10m弱はあろうかと長いテーブル越しに、ラウバルトの口から、始めて言葉が漏れた。
素晴らしいくらいの上から目線セリフではあるが、声質は非常に幼い。
2人は並んだ座席に座り、遥か前方の女王様を見続ける。
73ウルトラマンオーバー&ウルトラマンクラウス:2007/08/19(日) 00:22:14 ID:bmVDGrRI0

間もなく、料理が運ばれる。なんとも豪華な…気は、微妙にしない。
献立は、小さな皿の上に乗った豆煮のお供えつき鶏肉料理、パン、赤色のワインらしき酒。以上。
この世界に来てから最も豪華な献立ではあるが、城の晩餐会としてはえらく肩透かしな内容である。
ラウバルトにも同じ物が運ばれる。
あれか、皇女様の料理だけ、えーらい豪華なのか? というレイジの疑問は一瞬にして消えた。

「すまないな。現時点で持成せる最高の料理だ。これでもな」
王族が贅沢の限りを尽くした結果の貧民時勢では無い事を道城は察する。
パンを千切ろうとするが、硬い。豆煮を口に入れるが、微妙。鶏肉は素材がいいのか美味かった。

「失礼ですが…この国は何時からこの様な状況に?」
「何が言いたい」
「いえ、私の憶測ですが、以前はもっと栄えていたのでしょう?」
「…食事の後、少しばかり詳しく話そう」

おいおい滅茶苦茶ストレートだな道城さんよとレイジは不安を覚えるが、食事は続く。
こんな必要以上に重苦しい晩餐会は、彼の人生で始めてであった。
74リュウラ著者:2007/08/20(月) 13:19:22 ID:aH8kU+bY0
アルファ作者さま
久々に笑…楽しませていただきました。やっぱりただ愛に生きる城先生がいろんな意味で素敵でした。
アルファの弱点なんかも自身の偏った知識欲を刺激してくれました。FE3のスカイタイプとかレオとかかな?
ちなみに、月面は大気がないので、地球のように隕石が大気との摩擦熱で蒸発することなくそのまま落ちてくる事が多いそうです。
まあ赤いファイターへエネルギーを充填出来るほどの隕石はそうそうないでしょうがw
75名無しより愛をこめて:2007/08/20(月) 16:09:03 ID:PAZi+u1O0
終了
76ジャック・バウアー ◆y8xU8zpgjY :2007/08/20(月) 21:24:31 ID:B2DdFpWkO
>>641それって、水分不足だろ?困ったもんだよね。俺は問題なしw
77f作者:2007/08/20(月) 21:27:42 ID:B2DdFpWkO
>>76みなさん、お久し振りです。すみません、誤爆しました。
78アルファ作者:2007/08/20(月) 21:51:13 ID:xieBkmyN0
おひさです。軽くびっくりしました。
79名無しより愛をこめて:2007/08/23(木) 08:13:53 ID:5Vxvyg510
保守
80名無しより愛をこめて:2007/08/27(月) 20:30:17 ID:vW74KYB90
軽く終了
81ウルトラマンオーバー&ウルトラマンクラウス:2007/08/28(火) 20:56:26 ID:E35Whmo60
深夜の山中
霧がたちこめ木々は枯れはてて赤土がむき出しになった真っ暗い山々の間が、突如不気味に輝きだした
「グルルルルルル…」
鳴り響く不気味なうなり声
そのうなり声の中、不気味な光に照らされて、一つの異様な人影が空中に現れた
「魔獣、ヴァン・ヴァリアル」
影は霧の中に隠れている怪獣に呼びかける
「喜べ、お前の闇を強化するパーツを手に入れてきてやったぞ」
そう言って、影は虚空に手をかざした
影の手に新たな光が現れ、霧の中に落ちていく
「より凶悪で、より残虐な魔物へと代わるのだ、ヴァン・ヴァリアルよ」
「ぐるるる…」
わずかな沈黙
その後で、木材をへし折るような音が霧の中から響き始めた
メキメキメキメキメキ
「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
やがて霧の中から轟いた雄たけびに、影は満足げに頷く
「これでよい…、ヴァン・ヴァリアル、いや、ヴァン・キングよ…、行け」
影の言葉に霧を割って、巨大な怪獣が暗雲立ち込める夜空に飛び出していった
82名無しより愛をこめて:2007/08/31(金) 15:23:59 ID:jAraUf5p0
ほしゅ
83名無しより愛をこめて:2007/08/31(金) 16:40:12 ID:25JXdG+xO
あげ
84アクト作者:2007/08/31(金) 17:02:49 ID:Jc+7tTem0
ウルトラマンアクト

第3話『怪獣大地震』
地震怪獣クエイザー 登場

「皆、コーヒーは飲むかい?」
ここはGGT日本支部作戦室。
カリヤマ隊長が、コーヒーをその場にいる人数分、お盆に乗せて入ってきた。
彼は、チーム一番の年長者でありながら、こういった行為は進んで行うのだ。
だからこそ、皆の信頼を得られているのかもしれない。
「すみません隊長、頂きます。」
ワタル、シンイチロウ、ゴウ、カガミの4人が各々にカップを手に取る。
ユウキはいない。彼女は今日は非番なのだ。

「ねえ、前の議論の時は有耶無耶になっちゃったけどさあ、実際の所、あの銀色の巨人、ウルトラマンアクト。あれ、どうなのよ。」
カガミが口を開く。
「どうなのって…」
「んー、私はまだ半信半疑なトコもあるんだけどさあ、あんたたちはどうなのかなと思って。
 ほら、私は通信役だから実際にアクトを見た事がないのよ。
 直接見たことのあるあんたたちはどう思ってるのかなって。」
「んー、まあ、ワテはとりあえずは害はないんちゃうかと思うようになったわ。」
ゴウが答える。
「右に同じ。」
「ついでに同じですね。」
シンイチロウとワタルも続いて答えた。
アクト本人であるワタルは変な気分でもあったが。
「ふーん、そうなんだあ。皆そう思ってるのね。私だけヘンみたいじゃないの」
「別にヘンってことは…」
85アクト作者:2007/08/31(金) 17:03:59 ID:Jc+7tTem0
そのとき、コーヒーカップがカタカタと音を鳴らした。
「!?」
ワタルは過敏に反応し、振り向いた。
しかし、ゴウが落ち着いた様子で言い放つ。
「また地震か。震度3くらいやな。」
「最近多いわよねえ。そのうち大きいのが来るんじゃないかしら。」
そう、ここ一週間、東京では震度3クラスの地震が頻発していたのだ。
「地震と怪獣、どっちが怖いかな。」
シンイチロウが言ったその言葉で、場を笑いが包む。
だが、ワタルは一人、不安を感じていた。
(地震と怪獣…。これって繋がってるような…。考えすぎかな…。)
86アクト作者:2007/08/31(金) 17:05:03 ID:Jc+7tTem0
その頃非番のユウキは、小学生の妹、サクラと共に、街中の小さな公園に遊びに来ていた。
ユウキは、非番の日はよく妹のサクラに付き合っているのだ。
サクラは体が弱い。
今でこそ普通に生活しているが、数年前は入退院を繰り返していたものだ。
しかし、当時、GGT入りを目指していたユウキは、あまりサクラのそばに居てやれなかった。
そこで現在のユウキは、数少ない非番の日は、出来るだけサクラと共に過ごすと決めているのだ。

「お姉ちゃん、揺れてるよ?」
ベンチにかけて、遠くから見守っていたユウキに、サクラが声をかける。
地震だ。
外で遊んでいても感じるのだから、そこそこ大きい地震だろう。
「大丈夫、お姉ちゃんが一緒に居るでしょ?」
「うん!」
程なくして、地震が収まる。
「そろそろいこうお姉ちゃん。私おなか減った。」
サクラがユウキに、食事に行こうと促すが、ユウキは何か考え事をしているようで、返事をしなかった。
ユウキの心の片隅にも、ワタル同様の不安があったのだ。
しかし、その不安をユウキは振り払う。
(今日は非番。サクラと遊んであげる日。だから、難しく考えるのはよそう)
「わかった、じゃあ何食べたい?」
「うーんと、スパゲッティ!」
二人は、レストラン街が入っている駅ビルの方へと向かった。
87アクト作者:2007/08/31(金) 17:05:38 ID:Jc+7tTem0
「何これ。」
再びGGT日本支部作戦室。
カガミが、レーダーに映った異変に気付く。
「隊長、ちょっとこれ見てもらえますか?」
カリヤマ隊長も、カガミの後ろからレーダーを覗き込む。
「うん?…これは…?」
レーダーは、地中深くにある大きな物体を捉えていた。
「まさか…怪獣!?」
「はい、おそらく。」
「しかし、どうしてこれだけの大きさのものが、今までレーダーにかからなかったんだ?」
カリヤマ隊長が疑問を口にした。
「この物体…少しずつ上昇しているんです。つまり、これまでは位置が深すぎて、レーダーの範囲外だったのではないでしょうか。」
「なるほどな…」

その時、物体から高エネルギーが発せられるのをレーダーがキャッチした。
すると、それに同調するように地震が起こったのだ。
「これは…!」
「そうか、地震の原因はこいつだったのか!」
ふと、カリヤマ隊長がある事実に気付く。
「…さっき上昇していると言ったな?…ということは、このままではこいつは地上に現れる!カガミ、こいつの出現位置予想を!」
「は、はい!ちょっと待ってください…。」
カガミは得られた情報から、この物体の出現位置を計算する。
「出ました!…これは…L−57地区、同ステーション付近です!」
「なんだって!?」
ワタルが自席から突然声をあげた。
「L−57地区!?大変だ!」
「どうしたのよ、ワタル?」
「ユウキは非番の日、いつもその街に妹と遊びに行くんだ!」
88アクト作者:2007/08/31(金) 17:06:30 ID:Jc+7tTem0
L−57ステーションに隣接する駅ビル。
その最上階のレストランで、ユウキとサクラは食事をしていた。
しかしその楽しいひと時を、地震が邪魔を襲う。
それも、今までのような震度の低い地震ではない。
震度7はありそうかという、強力な地震だ。
「サクラッ!」
ビルが大きな揺れに襲われ、二人の居るレストランの天井が崩れ、柱が倒れる。
ユウキはとっさにサクラをかばうが、頭を打ち、気絶してしまう。
「お姉ちゃん!?」
とっさの状況が読み込めないサクラ。
しかし、事態はかなり悪かった。
「大変だ!外に出られないぞ!」
レストランの客の一人が叫ぶ。
先ほどの崩落により、出口が塞がってしまったようだ。

いや、事態はもっと最悪かもしれない。
カガミの計算どおり、先ほど地中で捉えられた物体、地震怪獣「クエイザー」がL−57地区に現れたのだ。
ユウキは、まだ意識を取り戻さない…。
89アクト作者:2007/08/31(金) 17:08:23 ID:Jc+7tTem0
地上に現れたクエイザーは、体を震わせ、その身を赤く発光させた。
すると、大地が揺れ、地震が起こったのだ。
この1週間、東京で地震を起こしていた能力だ。
しかし、今回は地上に出ているため、その力は比べ物にならないほど大きい。
壁が崩れ、地が割れ、電柱が折れてゆく。
クエイザーは発光を止める。この能力、あまり長時間は使えないようだ。

「グアア」
何か気配を感じたクエイザーが上を向く。
そこには、GGTより出撃してきたガードカプセルが飛んでいた。
その数は3機。ワタル、ゴウ、シンイチロウである。
「怪獣を足止めしろ!これ以上進ませるな!」
基地に残ったカリヤマ隊長から、3人に指示が飛ぶ。
「「「了解!」」」
3機のカプセルによる波状攻撃が始まった。クエイザーの足が鈍る。
「よっしゃ!効いとるで!」
「調子に乗るな、まだ倒せていない。」
ゴウをシンイチロウがたしなめた。

「カガミさん、そっちからユウキに通信してもらっていいですか!?」
クエイザーに攻撃を加えながら、ワタルが基地のカガミに依頼した。
「さっきからやってる!でも、通信に出ないのよ!」
「そんな…!」
90アクト作者:2007/08/31(金) 17:10:28 ID:Jc+7tTem0
「ン…」
「あ!お姉ちゃん!」
ユウキが目を覚ました。
「サ、サクラ…一体、何が…」
事態を理解するのに数秒を有するも、すぐにユウキは状況を理解した。
「出口が崩れて…出られなくなっているだ。それに…この地響き…まさか。」
そのとき、ユウキは自分の通信機が鳴っているのに気付いた。
「ハイ!こちらユウキ!」
「よかった、出た!こちらカガミ!あんた今どこに居るの!?」
カガミからの通信だった。
「私たちは今、L−57ステーションの駅ビル最上階に閉じ込められています!妹のほか、10人程が一緒に閉じ込められています!」
「何ですって!?」
カガミは焦った。
クエイザーは、駅ビルの目と鼻の先に立っていたからである。
91アクト作者:2007/08/31(金) 17:11:10 ID:Jc+7tTem0
「ユウキが…あのビルの中に…!?」
その通信を聞いていたワタルは、操縦桿を強く握り締めた。
「変身…するしかないっ!」
そう決意したワタルは、機体ごとクエイザーの背中に突っ込んだ。
「ワタルーッ!?」
ゴウが叫ぶ。
その瞬間、辺りを光が包み込んだ。

「アクトーッ!」
ウルトラマンアクト、登場!

アクトは背後からクエイザーに掴みかかる。
「ヘアアッ!」
そして、クエイザーを投げ飛ばし、駅ビルから引き離す事に成功した。
だが、クエイザーは特に目立ったダメージを受けている様子はない。

さらに、ユウキたちはビルから脱出できたわけではない。
依然として、予断を許さない状況なのだ。
ユウキとサクラは生還できるのか。
クエイザーは倒す事ができるのか。
全てはウルトラマンアクト、君の手にかかっている!

つづく
92アクト作者:2007/08/31(金) 17:15:51 ID:Jc+7tTem0
少し間が空きましたが、ウルトラマンアクト第3話でした。
3話目にして前後編になってしまい、少し後悔。
上手くまとめるのは難しいですね。
あまり前後編は多用しないで行くつもりでしたのに…
93名無しより愛をこめて:2007/09/03(月) 15:19:06 ID:WqTdMHpy0
ウルトラマンアルファ・コンティニュー 03 恐怖の粛清特使シリーズ!?
粛清特使・キリオス、粛清特使・ピコリオス、粛清特使・スラニオス 出現


「・・・01、02と『外伝』だったのに、何でタイトル変わってるの?」
 西野哲夫の突っ込みに答える城達志。
「いやー、なんか新シリーズとして第4シリーズのパラレル始めたものの、新機軸入れすぎて伏線の
調整に大変みたいで。間を持たせるために過去作の番外編を書ける余裕があって書きたい時に書く
つもりみたい」
「それでわざわざ私達の物語の続編なんですか?」
 西野恵も尋ねる。
「一度最終回を迎えて本編においての結論は出てて、僕も結局地球に留まったままだから、
そこを崩さない限り幾らでも好きなように話が作れるんで都合がいいってことらしいよ。
読者を置き去りにするのも突き放すのも、こうやって書き手視点で与太話するのももう好きなように」
「・・・別に、今までだってそうだったと思いますけど」

 というわけで、返答など聞かずに話は始まる。
94名無しより愛をこめて:2007/09/03(月) 15:20:30 ID:WqTdMHpy0
 今回も、冒頭から人類の外敵が地球に出現する。
『地球の皆さん、初めまして。
 突然ですが、お前らは宇宙の癌なので死ね』
 そう言って、青黒いメタリックな体色で顔が虫みたいで細身の巨大宇宙人・スラニオスは街中で暴れ、
建造物を壊し始めた。逃げ惑う市民。
 スラニオスは暴れながら、地球人の『罪』を殊更にあげつらう。卑小で非力なくせに欲深く自分勝手な
種族だとか、環境を破壊して他の生き物を追い散らし乱獲し虐殺するとか、破滅する未来が明白であっても
己のエゴで互いに闘争を続けるとか、そういう種族は宇宙に進出してくれば他の星の迷惑になるから
今のうちに滅ぼすほうが賢明だとか、まあそんな感じのことを。
 そういうことをしたので、
『お前が死ね!!!!!』
 達志から変身してもう出てきたウルトラマンアルファに、空中でしゅぴぴぴんと三回ほど
宙返りしてからの飛び蹴りで吹っ飛ばされた。
『言ってる事がめっさアナクロで陳腐でやっすいが、文明批判もまあいいだろう。しかし、然るべき
過程を踏んでの事前説明もなしに短絡に実力行使か!? おのれの失礼さのほうが人として余程
まちがっとるわ!! 礼儀を学んでから出直して来い!!』

 後は平時の流れ。
 スラニオスは、かつて最強最速を不遜にも公言した戦士を4話目でいきなり凌駕した高速機動能力を誇り、
残像で分身を生み出すほどの動きで攻撃してきたが、それ以上の高速機動が元から本分であるアルファに
叶うはずもなく、ナックルストリームでぼこぼこにされた後、とどめを刺す価値もないと大気圏外から宇宙の果てに
蹴り出されて撃退された。その状態でもしつこく人類の罪をわめいていたが無視。
『もう少し芸のあるアプローチをして来い』
95名無しより愛をこめて:2007/09/03(月) 15:21:44 ID:WqTdMHpy0
 敵を処理したアルファは達志に戻り、ディフェンスポートの特命防衛隊に事後報告。
ウルトラマンである達志の地球での動向を監督、というのは建前で既に互いに信頼関係を築いている
川上隊長は、報告を受けた後でご苦労と達志をねぎらう。
「けど、どうも怪しいですね」
 データを見ていた由美子が言う。
「地球人側の落ち度を口実に支配だの滅亡だのを狙ってきた侵略者自体はもう珍しくもないんですが、
ここ暫く妙にそのケースが増えてきています」
「うむ・・・」
 頷く川上。
「だが、だからといって向こうの言うことを安易に鵜呑みにするわけにはいかん。我々の使命は地球の防衛だ。
人類の美しい部分も後ろ暗い部分も含めて一つの地球なのだから」
「まあ、その通りですが」

 だが、今回の件はこれだけでは済まない。かなり長引くことになる。
 こういう話題そのものがうざいという人は、ここでもう読むのを止めておくことをお勧めする。

 然程間をおかず、同じようなタイプの宇宙人が来た。
 最初は地球の文化レベルを調査するために人目につかないようにして潜伏していたのだが、たまたまこっそり
観測していた一軒の安アパートの大家が、こっそり自分の部屋で兎を飼っていた両親共働きの子供に
うちのアパートはペット禁止という規則があると注意した。しかし、子供はその注意を聞かず兎を隠して
飼い続けた。それで、ちょっと虫の居所が悪かったらしい大家は、子供が留守のときに部屋に忍び込み、
兎に毒の入った餌を与えて殺した。子供は悲しんだ。
 それを見た宇宙人・ピコリオスは、怒り狂って巨大化してアパートを襲撃し、手持ちの巨大なハンマーで
大家を潰してぶっ殺し、更に、こんなことをする地球人は何て心の醜い種族だとかわめき、人類を滅ぼすために
暴れ出した。
96名無しより愛をこめて:2007/09/03(月) 15:23:15 ID:WqTdMHpy0
『沸点低すぎるわ!!!!!』
 アルファと特防はもう凄くやり切れない気持ちで迎撃に来た。
 木で作った人形のような姿のピコリオスは暴れながら叫ぶ。
『何で「白い兎は悪い奴」!? 大家が兎を殺したのに何で兎のほうが悪い奴!?』
 ソニックビートのコクピットで眉間を押さえる斎木。
「いや、それ絶対ホン書いたほうはそこまで深く考えてないから。たかが週一のジャリ番と思っていい加減にしか
サブタイトル考えてないから」
『そんないい加減な理由で兎を殺したのか!? 尚更許せん!!』
 更に憤るピコリオスに、
『貴様こそいい加減にしろ!! 兎一匹殺したらその代償が一つの星の全ての命ってどんだけな言い分だ!?
せめて民事裁判で済ませろ!!』
 アルファも怒る。
『世の中ヘビーユーザーばかりじゃない! 会社や学校で色々面倒なことがあって疲れきって家に帰ってきて、
せめてそのストレスを抜きたいという動機で、内容なんか深く吟味せずに適当に流し見したい人達だって
大勢いるんだ! 空気読んで適当に流せよ!!』
『いやだ!!!!!』
『・・・ならばもう語ることはない!!』
 アルファとピコリオスは戦い始める。
 ピコリオスは結構手ごわい。頑強で怪力、武装も多い。ハンマーを振り回す他にも、長い尖った鼻の先から
ロケット弾を発射、被っていたつばの広い帽子をブーメランにして投げ付けるなどの連続攻撃。
 アルファが街への被害を避けつつそれらの攻撃も全てしのぐと、じれたピコリオス、
『来い、シーハー彗星!!』
 地球へやってきた交通手段を召還。ピコリオスが跨って乗れるくらいの輝く彗星・・・本来の概念から考えれば
極小だが、しかも楕円軌道に従って飛ばずピコリオスに制御されて飛んでいるが、彗星らしい・・・が、
空から尾を引いて飛来した。
 それに跨って、アルファを跳ね飛ばそうと突撃してくるピコリオス。
 アルファは慌てず踏み止まり、アルファブレードを腰に据えて構え、
『こんな話で、こんな大事にするんじゃない!!』
 ウルトラ居合い抜きを一閃。
 すれ違ったピコリオスは、シーハー彗星ごと袈裟懸けに斬られて深手を負い、地上に落ちてのた打ち回る。
 とどめを刺さんとアルファは歩み寄り・・・
97名無しより愛をこめて:2007/09/03(月) 15:24:54 ID:WqTdMHpy0
 止まらざるを得なかった。
 尚立ち上がろうともがくピコリオスの前の地上に、両手を広げて立ち塞がる小さな影。
 飼っていた兎を殺された問題の少年、武雄。
『・・・・・・ここでそのパターンをするのか・・・』
 うんざりするアルファ。
 両親が殆ど家にいない孤独を兎を飼って埋めていた武雄の切ない感情が、否応なしに精神感応でアルファの
心に流れ込んでくる。
 ここでもう何もかも投げ出し、ピコリオスも武雄少年も皆ギャラシウム光線で吹っ飛ばして灰燼と化してしまえば
凄く楽になれるのだろうが、それをしてしまうと恐らく世界は一気に破滅に向かって突っ走る。
 戦いの場所は心の中だとばかり、どうしたものかとアルファが悩んでいると。
 更に別の介入者が、上空から降り立った。

 恐らくはピコリオスと同じく、巨大化した宇宙人。
 白と黒のまだらの体表。胸の赤い発光体。そして、眉根をハの字に潜めた、深い悲しみを秘めているような
能面のような顔。しかし、口許は何か皮肉げな笑みを浮かべているようにも見える。
 巨大宇宙人は、立てないピコリオスを、念力か何かで宙に浮かせて救い上げる。
 飲まれていたアルファが、待てと制止するより前に、宇宙人はピコリオスを連れ、空の彼方へ高速で
飛び去ってしまった。
98名無しより愛をこめて:2007/09/03(月) 15:26:01 ID:WqTdMHpy0
 謎の宇宙人については特防に調査してもらうとして、事件後、達志は保護された武雄少年の下へ赴いた。
 誰もいないところに連れ出して顔を突き合わせる。
 武雄は頑なな姿勢を崩さない。ピコリオスを庇ったことについても何ら悪びれていない。
「あの大家のじじいは俺の大切にしていたピョン太を殺したんだ。死んで当然だ」
「君は本当にそれで正しいと思ってるのか?」
 真正面から見つめると、武雄は平然とにらみ返してくる。
 逆に押されそうになる達志だが、食い下がる。
「死ねとか殺せとか、そんな単純に口にしていいものだと思ってるのか? 君の友達の兎の命も大家さんの命も、
命としての重さは同じはずだ。違うか!?」
「違うね」
 それを聞いた達志は、懐に手を入れて何かを取り出した。
 家庭用のナイフであることを見て取り、びくっとする武雄。
 達志はナイフを抜き身にし、武雄に渡す。
 そして胸を張って立ち、
「それで僕の胸を突いてみろ」
「何・・・!?」
「君にとってそれほどまでに人一人の命が軽いものだというのなら、そのナイフで僕を突いて殺してみろ。
出来るはずだ!」
 武雄は暫く黙っていたが。
 ナイフを地面に放り出す。
 判ってくれたかと達志が言おうとしたとき、
99名無しより愛をこめて:2007/09/03(月) 15:27:01 ID:WqTdMHpy0
「騙されるもんか」
「・・・何だって?」
「あんたのことは知ってるよ。あの宇宙人と戦ったウルトラマンアルファだろ」
 ゾギア星人が全世界にばらして以来、達志の正体は既に広く知られている。
 武雄は鼻で笑い、
「怪獣に何度殺されても、仲間が宇宙からやってきて新しい命をくれて、幾らでも生き返れるウルトラマンだよな」
「!!
 ・・・それとこれとは・・・!」
「地球を守らなくちゃならないから何度でも生き返る、か? 言い訳だよ、そんなもん。一度死んだらおしまいな
地球人の俺達にとってはね」
 武雄は更にまくし立てる。
「あんたらにとってこそ、命はいざとなれば幾らでも変えの利く軽いものじゃないのか? それでよく
俺達と分かり合えるなんていえたもんだな!」

 宇宙。太陽系内のいずれかの場所。
 ピコリオスは、大きな一室にいた。
「何故、俺を助けた?」
 謎の宇宙人の未知の科学力によって、アルファに負わされた傷も既に治っているが、警戒は崩さない。
相手の巨大だった宇宙人は、等身大サイズになり(ピコリオスも同じサイズになっている)、更に人間の姿になって
大きな机の前に座っている。
「君が、同士だからだ」
「同士だと・・・?」
「そうだ。地球人は滅ぼしたほうが宇宙のためになると思っている点でね」
 若い男の姿の宇宙人は、机に置かれたコーヒーを一口飲んでから、『キリオス』という名を名乗った。

 続く。
100名無しより愛をこめて:2007/09/04(火) 20:09:23 ID:k4+ly1BO0
終了
101名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:28:55 ID:KKg1wnN20
ウルトラマンアルファ・コンティニュー 04 プラネット・フォースの使者
粛清特使・イルディオス、粛清特使・キリオス、粛清特使・ピコリオス 出現


 ピコリオス事件の後、武雄少年を説き伏せられなかった城達志は悩んでいた。
 そんな達志の下に、宇宙警備隊から、人間体に変身したデリート隊長が又やってきた。
「僕は結局、武雄君を納得させられるだけの言葉を持ちえませんでした」
 デリートは聞いていたが、
「で、君はどうすればいいと思いますか?」
「・・・判りません」
「ひょっとして、自分が死んで二度と生き返らなければ武雄君は納得するかもとか思ってます?」
「う・・・」
 達志は言葉に詰まった後、
「・・・ちょっと、考えました・・・でも」
「でも?」
「折角今は恵ちゃんの家で楽しい日々を送ってるのに、正直言って死ぬの嫌だし・・・」
「本当に正直ですね」
「すみません」
「いや、いいんじゃないですかそれで」
 デリートは笑う。
「けど、武雄君のことはどうしたら・・・」
「地球人と同次元の死を迎えるという選択ができない以上、戦い続けることで判ってもらえるまで
彼の悪意を受け続けるしかないでしょうね」
「・・・・・・」
「西野さんちに暫く帰れなかったときは、そういうやり方で何とかしたんじゃなかったんですか?」
「それはそうですが・・・」
102名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:29:57 ID:KKg1wnN20
「先人は『ウルトラマンは神ではない』という、偉大な名言を残してくれました」
 デリートは朗らかに言う。
「神様じゃないんです。できることとできないことがあるんです。増長して肝心なときに変身
できないのも、滝の水が手刀で切れなくて泣くのも、自分でスパークレンスを床に捨てておいて
『返せ、俺のだ!!』とか勝手を言うのも、個人的にむかついて明日なき対決をおっぱじめるのも、
ちょっと体が汚れただけで戦えなくなるのも、うっかりビルを盾にして戦うのも、神様じゃないから
仕方ないんです」
「・・・・・・・・・」
「後、限りなく事実関係がグレーな暴力沙汰疑惑である日突然テレビに出られなくなるのも」
「中の人ネタはやめましょう危険ですから!!!!!」
 ぜえぜえ息を切らす達志に構わずデリートはのほほんと、
「川上隊長も言ってたそうじゃないですか。人は、綺麗な部分と汚い部分で表裏一体なんです。
だから、そんな人間を愛し、守ろうとするなら、両方ひっくるめて愛するしかないんです。
愛されるより愛してあげよう。
 例えば恵ちゃん」
「え・・・」
「君にしょっちゅうひどいこと言ったり、直ぐ蹴ったり殴ったりしますよね」
「・・・ええ、まあ」
「でも好きなんですよね?」
「はい」
「じゃ、他の人も同じでしょ?」
「・・・・・・」
 まだ考えている達志をおいといて、デリートは話題を変える。
「ピコリオスを連れて行った宇宙人の情報が入りました」
103名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:31:12 ID:KKg1wnN20
 ウルトラ戦士の集団・宇宙警備隊は広範囲に渡って宇宙の正義と平和を守っているが、そういう
活動をしているのは彼らだけではない。それなりに戦闘力やそれ以外のスキルを持つ宇宙人達の有志も
協力している。そうでなければ、宇宙警備隊といえど彼らだけではとても手が回らない。80の時に
怪獣専門捜査官・宇宙Gメンなどの存在も見られる。
 キリオスは、本来そうした外部協力者の一人だった。等身大の人間の姿にも変身でき、高い戦闘力の
他にも多岐に渡る超能力を持ち、ウルトラ戦士同様に他の星に就任しては住民を苦しめる怪獣・宇宙人
等を退治したり難事件を解決したりして人々の希望となり、自身もそうした活動に誇りを持っていた。
 が。
 そうしたカリスマ性の強すぎる存在が出てくると、人々がそれに依存するようになるのもよくある
話である。実際、これまで地球に就任した歴代のウルトラ戦士もそういうケースでしばしばジレンマに
陥った。
 なまじキリオスの能力が高く、大抵のことは解決できたために、皆それに頼ることばかり考えて
自分では何もしなくなっていった。キリオスも適当なタイミングで適当に突き放せばよかったのかも
知れないが、そのタイミングを見出せないうちに人々はどんどん堕落し、モラルは低下し・・・

 現在の就任地である惑星、プラネット・フォースを中心にした文明圏に、キリオスは独自の
管理体制を敷いた。実質上の権力の中心は彼となった。誰も自主的に社会を動かすための活動を
率先して行わないので仕方ない。
 キリオス自身の優れた科学知識によって、住民の生活をおはようからおやすみまで監視して
管理するためのアンドロイドが大量に生産され、労働体制の管理も食糧の供給も全部上からの指示で
行われる。住民に与えられる情報も知識も全て、下手に反体制を生み出して社会の円滑な流れを
乱さないための厳重な検閲が行われる。それらの体制に逆らった者は連行され、厳しい体罰や
懲役を強要される。
104名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:32:37 ID:KKg1wnN20
 最初はそれなりに抵抗した者もいたが、皆長い堕落生活で基本的なバイタリティをそがれており、
というより自分で怠けて衰えさせたのだが、然程間をおかず、誰も支配体制に逆らわなくなった。並みの
人間がどうやってもキリオスには叶わないことを思い知らされている。いや、地球での前例を見れば本来
やりよう次第で叶わなくもないはずなのだが、主導権を取り戻すための方法を考えること自体がだるいという
ところまで来てしまっている。
 管理体制は更にエスカレートし、全員の安定した生活を保証できないほど人口が増加すると、
口減らしを行うため、ランダムに選ばれた一定人数の人々が定期的にプラズマ分解炉に送られて
原子分解され、跡形もなく消滅させられる。
 一瞬のことなので苦痛も何も感じないため、処分される人々も特に逆らわない。
 既に皆、現状の体制を崩して自分達で考えて社会を動かしていくことが死ぬより辛い苦痛になっている。
仮にキリオスが支配をやめて立ち去れば、住民は自分では一切何もせずに寝そべったまま腐り死ぬだろう。

 そんなプラネット・フォースから、キリオスは太陽系に来ていた。後をアンドロイドに任せても、
誰も反逆など考えないので問題ない。
 要塞母艦、サテライト・フォース。一見小惑星のような形状で、亜空間ステルスで姿を隠して滞在している。
キリオス達はその中にいる。
 ピコリオスもこれまでのプラネット・フォースでの顛末をキリオスに聞かされ、正直、薄ら寒いものを
覚えていた。
「何を戸惑う必要がある? 君も、地球人の性質を認められずに全滅させようとしていたのだろう?」
「・・・う、うむ、それもそうだ」
「自分で自分達の未来を築いていこうとしない連中を、どのように扱ったところで問題はあるまい」
「ああ・・・その通りだ」
 と、部屋に一人の若い女性が入ってきた。プラネット・フォース出身の、キリオスに管理されている
住民の一人。美人だが、妙に生気がなくやつれている。
 淹れてきたコーヒーを、おずおずとキリオスの前に置く。キリオスはそれに一口つけた後。
 近くのダストシューターに、カップを傾けて中身を全部捨てる。
「やり直し」
 女性は文句も言わず、人形のような調子でカップを片付けて淹れ直しにいく。
105名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:34:09 ID:KKg1wnN20
 キリオスはその後聞きもしないのに、過去支配した星で、毎日味が完全に均質のコーヒーを淹れさせるという
作業を普通の人間の住民達全員にやらせたという話をする。
 無論、手作業なのでそんなことは不可能。
 キリオスは住民全てを無能として星ごと宇宙から消した。
「あの女はまだ生かして使ってやっている。それだけでも慈悲深いと思ってほしいものだ」
「・・・・・・」
「何か? 君も、地球人の一人が兎を毒殺したという理由で地球人全てを抹殺しようとしたよね。コーヒーと
兎とそんなに差があるかね?」
 それを言われるとピコリオスはもう何も言えない。
「別に恥じることはない。優れた能力がある者が無能な者を自分のしたいように扱っても、何ら責められる
いわれはない。劣った者がその状況から脱却するために手を尽くそうという姿勢が見られるならまだしも、
それさえもない者に何故情けを掛けてやらねばならんのだ? 君のやったことは間違いではないよ」
「うむ・・・」
「大体、地球人だって大差はあるまい。ざっと目を通しただけでも」
 地球から入手した日々のニュース関連の資料をモニターに出し、
「素行をちょっと注意されただけで刃物で相手を刺し殺す。親と学校で子供の問題に関する責任の
なすりあい。商品管理に問題が見つかっても自分の責任を回避するために取り返しが付かなくなるまで
隠匿し続ける。他にもまだまだ・・・」
「・・・判った、もういい。それで、俺にどうしろと?」
「地球攻撃のための活動を手伝ってほしいのだが、まあ、強制ではない。暫く様子を見た上でどうするか
決めてくれれば結構だ。先ずは、我々の地球での活動を見学していてくれ」
「見学?」
「私の同士、粛清特使は他にも宇宙各地から集まってくれている。そして既に地球に潜伏して動いているのだ」
106名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:43:07 ID:KKg1wnN20
 特命防衛隊も懸命な操作の末、潜入者の動きを掴み、その拠点へ急行した。
 だが、一足遅かった。
 都内に潜入していた粛清特使・イルディオスが、巨大な姿を現す。銀色のナノマシンコーティングで全身を
覆われた巨人。
『そりゃお前はそう言えるだろう!! お前は撃ってないからな!!』
 鳴き声。
 その全身には、イルディオスが集めた地球の大勢の一般市民が生きたままナノマシン融合している。更に、
彼らの精神もイルディオスのそれを中心に同調し、一つとなっている。
 最初はイルディオスの精神感応で誘導されて集められたが、少なくとも現時点では、彼らは自主的に
イルディオスと精神を共有している。集まった全員とも。
 要するにあれである。自分の周囲の他者とのコミュニケーションが上手くいかなくて、一人ぼっちは
寂しいので、皆一つになることで心の隙間を埋めて安心し続けようというあれ。
 なので、特防が呼びかけても、イルディオスから離れようとしない。自分で離れようという意思があれば
簡単に離れられるのだが、残念ながら。
『メロン! パン! メロン! パン! メロン! パン!』
 いい感じに一つになりながら声を合わせて叫んでいる。
柏村「くそ、これでは攻撃できん!」
 特防一同が苦渋していると、
「僕がやってみます」
 達志がやってきた。
 特防に出入りする機会が多くなったため、体裁上、彼らと同じ隊員服を着用するようになった。仮メンバー扱い。
ウルトラマンであることが露見してから防衛隊に入隊するというのも寡聞にして聞かないが。
柏村「どうする気だ?」
達志「僕にも精神感応能力はあります。ウルトラマンになって彼らの精神世界に介入し、分離を促すような
アプローチを掛けてみます」
斎木「しかし、それではお前も同化されてしまうんじゃ・・・」
川上「いや・・・ここは任せてみよう」
 川上隊長の一言で一同は了承し、達志は前に出てアルファプラスを構え、
「アルファーッ!!」
 忽ちウルトラマンアルファになって巨大化し、イルディオスの前に立ち塞がる。
107名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:44:18 ID:KKg1wnN20
 真正面から組み合う。
 イルディオスはにやりと笑い、全身のナノマシンをアルファに融合させ、精神の同調も図ってくる。
美樹「アルファ!!」
 アルファは下手に拒絶せず、じわじわイルディオスと混ざり合っていく。

 やがて。
 イルディオスが、締め付けられるような絶叫を上げた。同調している市民達も全て。
斎木「何だ!?」
 アルファは、人々の精神に同調すると同時に、人々の深層心理に入り込み、覗き込んできたのである。
トイレに入っているときの記憶とか、こっそりハゲや水虫を治療している記憶とか、その他思い出したくなくて
心の奥底に閉じ込めていた恥ずかしい思い出とかを。
『デリート隊長は、相手を愛するなら相手の醜い側面も一緒に愛さなくてはいけないと仰った』
 ・・・それとこれとはちょっと違う気もするが、アルファは構わず続ける。
『皆の心を一つにしていれば安心できるんだろう? だったら、お互いの恥も罪も全部共有してみろよほら!』
 更にアルファはイルディオスの記憶にも入り込み、彼が故郷の星で告白した女性に、性的欠陥があったために
ふられた思い出を覗き込む。
 イルディオスや市民達は耐えられなくなり、アルファを分離して突き放すと同時に自分達もバラバラと分離。
大きな精神的ダメージを受けたイルディオスは一気に戦意喪失して弱体化。
『これが分かり合うということの限界だ。人は本質的にはそれぞれ違うものなんだよ。そのことを引き受けた
上で付き合っていかなくちゃいけないんだ。どんなに不愉快でも』
 言い放ったアルファはイルディオスにギャラシウム光線を叩き込み、爆発炎上させた。

「流石だな、ウルトラマンアルファ」
 サテライト・フォースで状況を捕捉していたキリオス。
「だが」
108名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 09:45:47 ID:KKg1wnN20
 特防は、イルディオスから分離した人々を保護しようと近づいていく。
 と、市民達は特防に顔を向け、凄絶な狂気の笑みを浮かべる。
 思わず歩みを止める特防。
 そして市民達は、まだ燃え盛っているイルディオスの巨大な残骸に向き直り、
「いかん!!」
 川上が気付いたときには遅かった。
 しがらみだらけの人の世で生きていくことに本気で絶望した市民達は、一斉に炎に飛び込み、自ら体を焼きながら
げらげら笑った。全員焼死するまで笑い続けた。
 救出作戦は失敗した。

 キリオスと一緒に映像を見ていたピコリオスは呆然としている。
「ウルトラマンや防衛隊相手の局地的な戦闘のみに勝利したところで然程価値はない。今回重要なことは、
地球の一般市民どもの犠牲をどれだけ出せるかだ」
 キリオスは般若のような顔で微笑んだ。
「幾ら地球人を守ろうと奔走したところで、地球人自身が自分で自分を自衛しようという気がないんじゃ
どうしようもないわな。なあ、同士よ」

 続く。
109名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 18:26:12 ID:qxlIRBaj0
終了
110名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 21:33:39 ID:7E/Hwogn0
保守協力ありがとう
111名無しより愛をこめて:2007/09/05(水) 21:41:13 ID:9/wfSYpX0
>>102
子どもの自転車の練習にかまけて、兄さんが命がけで送ったウルトラサインを見逃すのも
神様じゃないから仕方なかったんですね!
112ウルトラマンバーン:2007/09/06(木) 02:26:04 ID:XtN8MID90
ウルトラマンオーバー外伝
バーン冥王星奮闘記
その1「怪獣は戦闘機を落とすもんだ!!」

地球から約1千万キロ位の彼方、クリムゾンスターから、今、太陽系めざし宇宙戦闘機が飛び立った
その名は、ブラッド・ホーオー

その頃、太陽系でもっとも太陽から離れ、最近惑星として認められなくなった星、冥王星では
ウルトラマンバーンがドビドーグと共に、ラムパルスのためにささやかな誕生パーティーを開いていた
野朗3人は等身大サイズになり、バーンがどっかから持ってきたケーキを囲んで盛り上がっている
「ラムパルス!おめでとおおおお!」
「おめでとーなあ」
「いやー…ありがとうごぜーます、まっさか誕生日祝ってもらえるなんてなあ…」
祝福の言葉をかける二人に、照れくさげにラムパルスが応じた、その時だった
『ストリウム弾頭弾!ファイア!!』
「「「は?」」」
突然上から聞こえた声に、全員が一瞬唖然となった、瞬間、1人と2匹めがけ八方向から無数のミサイルが飛んできた
「な…なんじゃこりゃああああああああ!」
いいつつドビドーグは内蔵された火器で、ラムパルスは両腕の武器でそれぞれ即座にミサイルをたたき落とし身を守り
バーンは大きく飛び上がって襲撃者の姿を探す
が、どこにも敵の姿はない
「隠れてないで出てきやがれ!!」
「隠れてなんかいねえよ!」
突然の声と同時に、バーンの前に一機の戦闘機が姿を現した
何かダークグレーのボディに、紫色の炎が描かれていて、よーーく見ると機体の一部に寄せ書きらしき物がほどこされた今にも分離しそうな姿の戦闘機である
「何だてめえは!」
「俺はブラックホーオー!ウルトラマンバーン、地球侵略の邪魔になるお前には、ここで消えてもらうぜ!アミーゴ!」
何だか妙に陽気な声で宇宙戦闘機の姿は再び掻き消えるように見えなくなった
113ウルトラマンバーン:2007/09/06(木) 02:54:38 ID:XtN8MID90
「ステルス迷彩か!?」
驚くバーンを、背後から、横から、右から、斜めから、要するに全ての方向からビームが乱射されて襲う
「うおっ、ぎゃが」
体を引き裂く無数のビームに、さしものバーンも空中に停滞できずに墜落する
「あ、旦那!」
落ちてきた主人の下にラムパルス、ドビドーグは駆け寄ろうとするが
2匹の目の前に突如巨大な竜巻が現れ、バーンを巻き上げた
「ブラッディーファン!」
「うおおおおおおおおおおおおおっ」
いつの間にか分離した宇宙戦闘機の後ろの方に空高く巻き上げられ、回転しながら地上に叩きつけられるバーン
「いっつ…野朗…」
「とどめのストリウム弾頭弾!」
よろよろ立ち上がろうとするバーンの背にさらに強力なミサイルが見舞われた
「ウワァアアアアア…」
強烈な一撃を受けたバーンは、しばらくもぞもぞと動いたが、やがて動かなくなる…
「だ…旦那!」
「うわあああああ旦那〜〜〜」
バーンの元に駆け寄る二匹、しかし、バーンはピクリともしない
「あっはっはっはっはっはっは、地球を守る宇宙警備隊の戦士、なんと他愛ない」
おざなりな嘲笑を後ろでするブラックだかブラッドだか名前がよく定まってない宇宙戦闘機を無視して、バーンを抱き起こす二匹
「旦那…」
「嘘だろ旦那…、ウルトラマンが…ウルトラマンがこんな簡単に…」
ゆさゆさとバーンを揺さぶる二匹の声に、バーンの体がピクリと動いた
「ド…ドビドーグ、ラムパルス…」
「「旦那!」」
搾り出すような声に、二匹は大声で答える
「お…俺の代わりに、奴を…あの戦闘機をたおすんだ」
「無理ですよ旦那、ウルトラマンの勝てない敵に怪獣の俺たちが…」
「馬鹿…俺たちの…俺達の戦いは必ず勝たねばならない戦いなんだ。お前等2匹、一人一人では小さな火だが…二人合わせて…猛火になれ!」
「旦那、火と火だと炎じゃ…」
「お前を信じる、俺を信じろ!…かつてお前達の先輩の大怪獣達は、今まで幾度と無く手ごわい地球防衛軍の戦闘機と戦ってきた」
114ウルトラマンバーン:2007/09/06(木) 03:09:25 ID:XtN8MID90
(ここで以下の戦いのシーンがモノクロで流れる)
(地球防衛軍と戦うベロクロン)
(マットアロー2号2機と戦うベムスター)
(UGMの戦闘機隊と戦うクレッセント)
(初代GUYSと戦うディノゾール)
「お前達にはその大怪獣達の血が流れてる…、だからいける!」
「どー言う理屈ですか」
問うドビドーグに、バーンは親指を突きたてた
「理屈でできた現有兵器をぶっ潰すのが、怪獣だろう?」
その言葉に、2匹は奮い立つと、雄たけびをあげる
「グルルルルルルルウギュウウウウウウウウウ」
「グワァアアアウウウウウウウウウウウウウ」
そんな二匹を、敵の戦闘機は分離した状態のまま今までずっと律儀に眺めていた
「どうやらお別れの挨拶は済んだようだな、お前等怪獣が現有戦力の前に何ら脅威でない事を教えてくれる!」
余裕ぶっこいた口調で言って、再び掻き消える2機
そのスピードは後に太陽系に来る宇宙警備隊の規則を平気で破る戦闘能力が馬鹿高いので手がつけられない困った君にさえ匹敵するほど早い、と言うか怪獣の肉眼でさえ追えない
「死ね!」
そのまま八方からビームを撃ちまくる戦闘機だったが、そのビームが怪獣達に命中する事は無かった
ドビドーグだ
ドビドーグが両腕の銃を神速で動かし、迫り来るビームを即座に撃墜している
「馬鹿な!最強最速の戦士より早い速度での攻撃だぞ」
「両の手首だけなら、光の速さにだって負けねえ…」
そう言って迫り来るビームを次々撃墜しながら呟くドビドーグ
「なら!ブラッディーファン!」
いつの間にか二匹の頭上にいた後ろの方の戦闘機が、2匹めがけ巨大竜巻を放ってきた
が、竜巻は突如発生したカマイタチによってぶった切られ、消滅する
「こんなちゃっちい竜巻で、大怪獣に勝てると思うな!!」
裂ぱくの気合を放ちながら、両腕を戦闘機に向け言うラムパルス
「う…うぬ…こちらの技は効かんか…、だが貴様らもこのいスピードには追いつけ…」
高速で動きながら何かいおうとした瞬間、戦闘機の移動進路と思われる場所に飛び込んだラムパルスとドビドーグの体当たり攻撃を受け、2機は無残に爆散した
115ウルトラマンバーン:2007/09/06(木) 03:10:29 ID:XtN8MID90
「旦那!」
「旦那やりましたぜ!」
残った残骸を思いっきり踏み潰し、バーンの方を向いた二人だったが、そこにバーンの姿は無い
「だ…旦那?」
「まさかいつの間にか来ていた敵の第二波に…」
「よくやったな!諸君!!」
バーンの身を案じた二人の下に、真後ろから元気満タンといった感じの声が聞こえてきた
ふりむくと、そこには岩の上に立って、腰に手を当てて堂々としたポーズをとる、バーンの姿があるではないか
「旦那?」
「あんた…怪我は…」
「ん?あんなちゃちなミサイル屁でもねえ」
開いた口が塞がらない2匹
「いやあ実はお前等にもたまには見せ場を作ってやろうと思うついでに睡眠不足も同時に解消だ!イエーイな気分で寝ていたのだ!」
「イエーイってあんた…」
「俺等めっさ心配…」
「うんうん、感謝してる感謝してる、だからよーやった!お前等は立派な大カプセル怪獣だ!これからも…」
あっけらかんとした態度で演説するバーンに、怒る気力も無く、ため息をついて顔を見合わせた二匹の顔は、どこか誇らしげだった

終!!
116ウルトラマンバーン:2007/09/06(木) 03:15:50 ID:XtN8MID90
っつーわけでアルファに多々影響受け手書いてみたオーバー外伝でした
俺、ド平日の深夜に何やってんだろ
117名無しより愛をこめて:2007/09/06(木) 19:40:20 ID:jT1Py4Py0
終了
118名無しより愛をこめて:2007/09/06(木) 21:02:51 ID:8Lfcl9nW0
そんなマメに保守しなくても、この板では5日や6日放置したって大丈夫ですよ。
119名無しより愛をこめて:2007/09/07(金) 09:55:37 ID:pr1zt+8A0
バーン作者様
どうも、困った君です。とりあえず5回目投下してから又私信とか書きます。


ウルトラマンアルファ・コンティニュー 05 果てしなき死闘
粛清特使・ギジェリオス、粛清特使・ガメロティオス、粛清特使・デスフェイオス、
粛清特使・キリオス、粛清特使・ピコリオス 出現


 粛清特使イルディオスはウルトラマンアルファによって倒されたが、イルディオスの策にはまった
市民達を救うことができなかったという事実は、特命防衛隊一同の心に重い陰を落とした。
再度襲い来るであろう次の粛清特使に備えて特防は警戒を続けているが、彼らの精神的な疲弊は
大きかった。
 こういうケースが発生したということで、諜報部の日高情報主任達が又周辺をうろうろ
しているのも特防をいらつかせる。彼女らは事件の捜査をしているにすぎないのだが、粛清特使の
ターゲットとなるであろう人々の周りをかぎまわる様子が、苛立った心には、死肉を漁るハイエナや
ハゲタカのようにも見えてくる。危険と見れば保護と称して直ぐ監獄同然の医療施設にぶちこむ日高。
彼女の上司の高島参謀はゾギア星人事件以降態度を改めつつあるようだが、日高自身は何も変わらない。
アルファや特防の尽力を意に介さず平気で勝手なことをする者がいなくならない限り変わらない。
 凹んでいるのはアルファ=達志も同様。特防の次の連絡を待ちながら西野家への帰路をとぼとぼと
行く達志の胸に、かつて同じような手で大被害を出した異次元からの侵略者・アングラスの、
お前の無駄な努力を地獄から見ていてやるよという歪んだ笑顔が蘇ってくる。
 そんな達志の耳に、何やら言い争っている声が聞こえてきた。
「あの声は・・・恵ちゃん?」

 住宅地の一角に駆けつけてみると、今回の件の関係者の一人、武雄少年がいた。
 そして、武雄を街の少年少女達が取り囲んでいる。
 その筆頭にいるのが、恵。
120名無しより愛をこめて:2007/09/07(金) 09:57:37 ID:pr1zt+8A0
「ウルトラマンは何度死んでも新しい命をもらって生き返れるから地球人の気持ちなんか判らない、
なんかそんなことを言ったらしいわね、あんた」
 驚いている武雄に詰め寄っている。
「じゃ、同じ地球人の私なら文句ないわよね」
 達志と同じように手持ちの刃物を出し、
「これで私を刺しなさいよ」
 抜き身にして無理やり武雄に柄を握らせ、
「刺しなさいよほら!!」
 周りの哲夫や他の子供達も一様に武雄を睨みつけている。怯える武雄。
「あんたが友達の兎を殺されてどれだけ悲しい気持ちになったかは知らない。だけど、それは今まで
怪獣や宇宙人に友達や家族を殺された人達も皆同じでしょう!? なのに、あんた一人の腹いせで周りの
人達大勢を不幸にしていいって話が何で通るの!? 違うでしょう!?
 沢山の悪い宇宙人が地球を狙ってる今、ウルトラマンや特防隊だけじゃなくて私達皆で戦わなくちゃ
いけないのに、何、あんただけ被害者ヅラ!? あんただけお客様扱い!?」
「そうだそうだ!」「ふざけんなよ!」
 周りからも野次が飛ぶ。
「それでもまだ文句があるんなら、ほら早く刺し殺せばいいでしょ!!」
「恵ちゃん」
 見ていた達志が止めに入った。
「城先生・・・」
 刃物を離させる。
「もういいんだ」
「だって・・・」
 恵は叫んだ。
「おかしいじゃないですか! 単に命だけなくならなきゃいいって話ですか!? 城先生や特防隊は何時も
何時も死ぬ思いして最前線で戦ってるのに、何でこんな言われ方されなきゃいけないんですか!?
ひどいじゃないですか!!」
 しまいに泣き出す恵を抱え、周りの不安げな子供達も見回して笑う達志。
「これだけの皆が判ってくれてるんなら、それでいい。何も心配しなくていいから」
「先生・・・!」
 と、武雄が俯いたまま、その場から一目散に走り去る。
「あっ、武雄君!?」
121名無しより愛をこめて:2007/09/07(金) 09:59:23 ID:pr1zt+8A0
「どうしろっていうんだよ!? ピョン太を殺された俺に泣き寝入りしろってのか!?」
 武雄は涙を拳で拭いながら人目のない路地へと走りこむ。
 感情のやり場を失ったまま息を切らし、漸く顔を上げた武雄は、目を見張った。
 暗い路地裏の物陰に、中途半端に大きい影が立って、目を光らせている。
「・・・お前!?」
 等身大になっているが、その影が宇宙人・ピコリオスであることを、武雄は即座に思い出した。

 その後、ピコリオスはキリオスの拠点、サテライト・フォースに帰ってきて、キリオスと話をした。
 ピコリオスは考えた末、地球攻撃に協力して欲しいというキリオスの申し出を断った。
「・・・そうか」
 無表情で答えるキリオス。どんな攻撃をしてくるかと、ピコリオスは握るハンマーに力を込める。
「まあ、それもまたよしだ。強制ではないと言ったしな」
 笑って言うキリオスに、ピコリオスは拍子抜け。
「・・・本当にいいのか?」
「君がはっきり決心をつけることができない以上、不確定要素を作戦に組み込むのはリスクが大きい。
只、袂は分かたねばならん。もし君が今後私のやることを妨害してくるなら、それはそれで私も抵抗
せねばならん。それは判るな?」
「多分、その心配はない。俺はお前が間違ってると思ってるわけじゃないからな」
「そうか」
 ピコリオスは広間から去っていく。
 事前、ピコリオスは地球で武雄少年と、今回の件について延々と話をしていたのである。当事者である
武雄と話せば結論が出るのではないかと思ったのだが、結局明確な結論は出なかった。仕方ないので、
古い時代なら散々騒ぎになった後で妙な来訪者が宇宙に向けて手で放り投げられるなりして帰還していき、
それに向かってゲストの子役がさようなら〜とか又来いよ〜とか笑顔で手を振ってそれで済んだのに、
面倒臭い時代になってしまったものだと愚痴り合った。面倒になる原因を作った奴の中にはピコリオスと
武雄も含まれているので何も言えないが。
122名無しより愛をこめて:2007/09/07(金) 10:01:15 ID:pr1zt+8A0
 そうしているうちに、次の粛清特使・ギジェリオスが送られてきた。
 強力な中毒性物質を体内に含む植物生命体であるギジェリオスは、その中毒性物質を匂いとして分泌する
花を自身の体から大量に株分けし、街にばら撒く。その匂いにやられた者達は、怪獣や宇宙人が次々地球に
襲来する環境でも恐怖を感じることがなくなり、幸せな幻覚に浸り続ける。しかも、一度中毒すると、
何度も中毒性物質を摂取しないと凶暴化して暴れ出す。
 ギジェリオスの花は闇値で取引され、人々は花を奪い合って市街地で恐慌が起きる。怪我人も次々出る。
それを宇宙でモニターしながら笑っているキリオス。
「これが万物の霊長と自称する輩の正体だ! おこがましいとは思わないかね!」

 やがて、ギジェリオスの本体が巨大化して街に現れた。
 腹部らしき胴体の中心に巨大な花弁が付いている、何と言うか、頭部のないアストロモンス。
花弁から花粉を盛大に撒き散らし、人々を更に中毒状態に陥れる。
『滅び行く人類にはギジェリオスが大事やろ!!』
 何故か関西弁で喋るギジェリオス。
『わいの花の匂いをかいだ人類は苦痛を感じずに滅んでいけるんや。わいって優しいわ〜』
『ふざけるな!!』
 街の一角から光が走り、現れたウルトラマンアルファが一喝。
『おお、出てきよったなウルトラマンアルファ』
『お前のような奴など地球には要らない! 宇宙に帰れ!』
『ほ〜お。皆はそうは思うとらんみたいやで』
 そういう返答も、これまでの経験でアルファはもう察していた。
 周囲では、ギジェリオスを排除しようとしているアルファに、ラリった人々が凄まじい罵声を浴びせている。
どうせ中身のない不愉快な内容なので一々克明に描写はしない。
 今、ディフェンスポートで由美子隊員が中毒性物質を分解するための薬品の開発に力を注いでいる。それを
後で人々に投与すればどうとでもなる。それまでは辛抱するしかない。
123名無しより愛をこめて:2007/09/07(金) 10:02:36 ID:pr1zt+8A0
『野次で死にはしない!』
 誰も応援する者のない中、アルファはギジェリオスと戦い続ける。
 現地中継を自宅のテレビで見届けながら悔し涙を流す恵と哲夫。
 そして、別の遠い高見から、ピコリオスも現場を見届けている。
 ギジェリオスに加勢することも、宗旨替えしてアルファを助けることもしない。今の自分にはこの戦いに
介入する資格はないと思っていた。
 ピコリオスの隣には武雄も来ていて、一緒に黙って見届けていた。

 アルファはギジェリオスと格闘していたが、ギジェリオスを地上に置いておくと更に花粉が散布され続ける。
そこで、地上から離すことにする。
 突進してきたところをジャンプで飛び越えて交わし、そのまま背後に回りこんで羽交い絞め。
『な、何すんねん!?』
 そして、ギジェリオスごとジャンプして空へ飛び立つ。

 大気圏から離脱し、地球を下に臨む宇宙空間で改めて対峙。
『ほほう、わいを地球から離す算段か。そんなくらいで勝ったと思うてか!』
 ギジェリオスは腕の蔦を長く素早く伸ばし、アルファに絡み付ける。
『ひひひ、どないや、これでもうちょろちょろ逃げ回れへんやろ!』
 だが、アルファは焦ることなく、逆に体に巻きついた蔦を掴み、ぐいぐい引っ張りながらギジェリオスに
近寄ってくる。
『な、何を・・・?』
 そのまま引き寄せられる勢いで、ギジェリオスに渾身の両足蹴り。
 ギジェリオスはのけぞり、吹っ飛ばされた勢いで両腕の蔦も引きちぎれる。
 大きなダメージを受けて隙ができたところに、
『ギャラシウム光線!!』
 とどめを叩き込み、ギジェリオスは全身燃え上がって悲鳴を上げながら焼き尽くされた。
124名無しより愛をこめて:2007/09/07(金) 10:27:56 ID:pr1zt+8A0
 結構消耗した。鳴り響くカラータイマー。
 しかし、アルファの闘志は揺るがない。
『来るなら来いチキンども・・・ちくちくちくちく精神攻撃ばかりじゃ、地球の基盤は揺るぎもしないぞ・・・!』
『では、パワーファイトで行かせてもらおうか』
『!?』
 突然の野太い声に反応する前に、全身が衝撃に揺さぶられた。
 不意打ちで空間転位してきた大質量が、アルファを弾き飛ばしたのだ。
 ランダムに回転したアルファはやっとのことで踏み止まり、相手を確認。
 ずんぐりした重厚なメカの塊。
 更に、がきんがきんと太い四肢が飛び出し、ロボットのような姿を形成。
 機械生命体・ガメロティオス。これもまた、キリオスの仲間の粛清特使である。
(・・・僕のエネルギーが切れるタイミングを待っていたのか・・・!?)
 消耗したままの連戦だが、怯むわけにはいかない。ガメロティオスを見据えて体勢を整えようとしたとき。
 今度は、首の真後ろに激痛が走った。
 吹っ飛ばされるその背後に、もう一体転送されてきた粛清特使。これも機械生命体だが、ガメロティオスと
対照的に細身でスマート。顔にはまった黒く丸いクリアパーツに点滅する赤いランプ群が顔らしきものを
構成している。
『実は二人いました。残念!』
 粛清特使・デスフェイオスは嘲ってせせら笑い、太いケーブルで繋がれて長く伸びた右手をしゅるしゅると
腕に素早く戻す。これでアルファに打撃を加えたのである。

 タイマー点滅状態で二体の敵相手という最悪の状態のまま、続く。
125アルファ作者:2007/09/08(土) 11:34:35 ID:o5feEfYk0
バーン作者様
遅くなりました。なんか読めない状態が続いていたもので。
クリムゾンスターは侵略者なんでしょうか? 毎回限りなく各防衛隊の
超兵器にそっくりな刺客が送られて来るんでしょうか。期待というか不安というか。

正直、私のやっているようなパターンは各方面から反感を買う危険性が
非常に高いのでお勧めはしませんが、あえて挑むというなら歓迎です。
正直爆笑しましたし。設定覚えててくれて有難うございました。
126名無しより愛をこめて:2007/09/08(土) 19:46:33 ID:VjAq2VK80
終了
127ヘリオス作者:2007/09/10(月) 16:29:21 ID:OUYxPqWW0
 昭和80年。東シナ海の海底。ここは日本と台湾の国境付近の海域である。
 その日、日本の深海探査艇〈かいれい6500〉がこの海域の調査を行っていた。
 目的は石油・天然ガス等の、海底資源の探索である。
 ここ数年の、中国による東シナ海でのガス田開発に対抗すべく、政府の依頼を受けたとある組織が調査を行っていたのである。
 「こちら〈かいれい〉、探査機にいまだ反応はなし・・・ん!?」
 「どうした?」
 〈かいれい6500〉のコクピットに、母船から通信が入る。
 「何か見えます、あれは・・・遺跡。遺跡です!」
 〈かいれい〉の操縦士の目には、古代ギリシアの神殿、あるいはマヤのピラミッドを思わせるような石の建造物群が映っていた。
 それは、カメラを通して母船のモニターにも映し出される。
 ブリッジが急に騒がしくなった。
 「この近くには与那国島の海底遺跡があるが、ここにもあったとは・・・?」
 船長がつぶやく。その時、〈かいれい〉から通信が入った。
 「光・・・光が見えます。」
 操縦士の言葉の意味がわからず、ブリッジの一同はモニターを見る。
 遺跡の中でも特に大きなピラミッド状の建造物の中央部が光を発していた。
  
 その光には、一種の神々しささえ感じられた。

 ウルトラマンヘリオス
  第3話・「初出勤/初出動」
 
128ヘリオス作者:2007/09/10(月) 16:30:46 ID:OUYxPqWW0
 昭和86年、5月6日。マーキュリーベースのCICに、和仁はいた。
 「えっと・・・今日から半年間、皆さんのお世話になります、志村和仁です。よろしくお願いします。」
 周りの隊員達の反応は微妙なものであった。
 当然である。つい一ヶ月前に顔を合わせている上に、あれだけのゴタゴタがあったのだ。
 そして、これも当然の事であるが、この人事交流がお題目でしかないことも全員が知っている。だから、和仁の挨拶も余計白々しく聞こえてしまうのだった。
 「クルーを紹介しよう。左から、朝倉三尉、直江曹長、〈ふがく〉操縦士の佐竹一尉と副操縦士の島津三尉。」
 佐沼が隊員たちを紹介する。名を呼ばれた隊員が軽く会釈をしていくが、皆無言である。
(空気悪いなぁ・・・)と、和仁は思った。
 「それから、三好曹長のことは知ってるな?」
 「いよっ、元気だった?」
 他の隊員とは対照的に、三好は和仁へ好意的に話しかけてきた。
 「最後になったが、コマンダーの須藤由里だ。」
 「よろしく。」
 彼女も三好以外の隊員同様、終始怪訝な顔で和仁のことを見ていた。

 一通りの挨拶と説明が済んだ後、居住区の部屋へと案内された。
 「あの、自宅から通勤・・・ではないんですよね、やっぱり。」
 和仁の質問に、佐沼は冷たく言い放った。
 「当たり前だ、我々の管理下に置くと言っただろうが。」
 「ほとんど誘拐じゃないっすか!」

 それから数日間、防獣局から出向してきた研究部のスタッフによって、和仁は徹底的に体を調べられた。はたから見れば、某秘密結社の改造手術と誤解されかねないようなものだった。
この間、和仁と由里が顔を合わせることはなかった。
 
129ヘリオス作者:2007/09/10(月) 16:31:41 ID:OUYxPqWW0
 検査続きでグロッキーになりかけていたその日、和仁は神殿へと連れてこられた。
 久方ぶりのヘリオスとの対面だった。
「この神殿が特殊な波動の集中する場であることは以前説明したな?」
「はい。」
「この中でだけヘリオスは自我をもち、自らの意思で実体を保つことができる。」
「・・・?」
 佐沼の言葉の意味がわからなかった。実際ヘリオスは神殿の外で怪獣と戦っていたではないか。
 「ヘリオスはコマンダーの意思によってここから解放され、戦闘時にはコマンダーとの精神感応で顕在化し、コマンダーの意思で操られる。」
「!・・・それじゃあ、コマンダーというのは・・・」
「ヘリオスと心を通わせることができる人間のことだ。」
 「外へ出たヘリオスは、いわばコマンダーの分身だ。両者はほぼ一心同体。」
だからあの時も、彼女はヘリオスと同じところを負傷し、同じようにダメージを受けていたのか。と、和仁は思った。
つまり今の由里とヘリオスとは、某ロボットアニメのごとく、互いにシンクロした状態にあるということだった。
 そして〈ふがく〉は、由里を乗せてヘリオスを遠隔操作するための司令塔・・・。
130名無しより愛をこめて:2007/09/10(月) 21:21:25 ID:mPElofW50
異次元の秘境で冷凍宙獣ギゴラスを破った地底宙獣マグメスは、続いて突如地球世界に現れ、
破壊の限りを尽くす。これに対し、チームピジョンとチームホークは力を合わせて当たり、
マグメスを後一歩で倒せるところにまで追い込むが、そこへ、異次元から復讐戦のために
現れたギゴラスが乱入。弱体化したマグメスを捕食し、その能力までも手に入れてパワーアップ
してしまった。そのパワーは、やっとフォローにやってきたウルトラマンパラレルをも圧倒。
パラレル、ピンチ!!


ウルトラマンパラレル 06 強化宙獣を倒せ!
冷凍宙獣・ギゴラス(強化) 出現


 ギゴラスはパラレルに圧し掛かり、噛み付こうと迫ってくる。
「パラレル・・・!」
 息を呑んで見届ける地球防衛側一同。
 パラレルは片手で無理をしてギゴラスを支え、もう片方の手に、時空を歪めて固めたものを溜める。
なんか手の辺りだけ陽炎のように景色がもやもやしている。
 そして、不意討ちでその歪みをギゴラスに押し付けた。
 捻れていた時空が急激に戻って反動で凄まじい衝撃波が起き、ギゴラスは吹っ飛ばされ、
結構なダメージを受けた。
 暫く歯軋りをしてパラレルを睨むが、態勢を立て直すため、穴を掘って素早く地底に逃げていく。
 自身も消耗したパラレルは、追撃することも出来ず、彼も時空に穴を空けて立ち去った。
131ヘリオス作者:2007/09/11(火) 19:52:19 ID:D8AM8SW10
 「あの、なぜ俺をここにつれてきたんですか?」
 和仁は佐沼に尋ねた。
 「君にもコマンダーとなる可能性があるからな。」
 「どういうことですか?」 
 「須藤君のペンダント。あれにはコマンダーとヘリオスの意思を媒介する力がある。そして君の持っているペンダントだが、調べた結果須藤君のものと全く同じだった。唯一の違いは、ヘリオス活性時に発する光の色だ。」
 「光の色?」
 「彼女のそれは青い光を発する。」
 和仁は首にぶらさがるペンダントに視線を落とす。
 
 6年前、当時高校生だった和仁と由里は、北関東のとある町に住んでいた。
 県内で5番目の規模の市だったが、実際は中心部がわずかに栄え、あとは田んぼと山、そして郊外にジャ○コがあるだけの、ほとんど田舎と言っていい地方都市だった。
 中高生はみな休日ともなると、電車で2時間以上かけて東京(主に渋谷・池袋)へ遊びに行く。その日も和仁と由里は、渋谷のセンター街の雑踏の中を歩いていた。
 ふと、和仁は道端に落とす。ホームレスと見間違えてしまいそうな風貌の老婆が地面に布を広げ、アクセサリーを売っていた。
 そこで売られていたペンダントの一つに目が留まった。
132ヘリオス作者:2007/09/11(火) 19:56:09 ID:D8AM8SW10
 「ねぇ、どうしたの?」
 「ん、いや、別に・・・」
 二人がそのまま進もうとしたときだった。
 「お兄さん、どうだい?安くしとくよ。」
 老婆が二人に声をかけた。二人は思わず足を止めた。
 「あんた今、これを見てただろ?」
 老婆は手にしたペンダントを和仁に手渡す。それは日本史の資料集に載っていたモノと同じ形をしていた。
 「あっ、私これ見たことある!」
 由里がペンダントを見てはしゃぐ。
 「えっと・・・なんて言ったっけ、確かまが、まが・・・」
 「勾玉だろ。」
 「そうそう、さすが和仁!」
 「っていうか、それ位覚えとけよ。」
 「だって私、記憶力が弱いから。暗記系、苦手なんだよね。」
 由里が笑顔でいう。それにつられて、和仁も思わず苦笑いをしてしまう。そんな二人のやり取りを見て、老婆は無言で微笑む。
 そのとき、由里があるものに気付いた。
 「あれっ、これもう一つある・・・」
 和仁に渡したモノと同じペンダントを、老婆は由里に手渡す。
 「なんかいいな・・・この形。」
 「・・・・・うん。」
 「おそろだね。」
 由里がポツリとつぶやく。それを聞いて老婆がいった。
「本当は一つ3000円だけど、ペアで5000円。どうだい?」
「ねぇ、和仁・・・」
 5000円の出費は痛い。だが和仁も、なぜかこのペンダントに心を惹かれていた。
133ヘリオス作者:2007/09/11(火) 19:57:08 ID:D8AM8SW10
 下り列車に揺られる二人の首には、同じペンダントがぶら下がっていた。
「ありがとう。でも、何かワルイね・・・」
 「いや、別にいいけどさ・・・これ付けて学校いくとか無しな。恥ずかしいし、確実に冷やかされるから・・・」
 「わかってるよ、当たり前じゃん!」
 由里が微笑む。彼女の笑顔は、いつも周りの人を笑顔にした。
 和仁もつられて笑った。
 二人でいた時の、一番楽しい思い出だった。
134ヘリオス作者:2007/09/12(水) 19:20:15 ID:VTUv0MJB0
門をくぐると、目の前には城庭が広がっていた。
但し、木は枯れ、代わりに雑草がおおい茂り、どちらかと言えばお化け屋敷の雰囲気に近い。
道城が予想していたよりも、見張りの兵が少ない。この事にリラオンに問う。

「お言葉ながら、城の護衛としては配置されている兵の数が少ないでは」
「我等の城主ラウバルト様のお心遣いです。貴方方を不安がらせないために、とね」
「道城さん、そのラウバルトって奴思ってるよりいい奴なんじゃね?」
「おい、レイジ君…」
「ははは、ラウバルト様は平民たちが思ってるよりも心の広い方です。ご心配なさらず」
会話が終わる頃に城内への扉へと到着する。
いよいよ、入城だ。
城内は異様に薄暗く、天井を見るもよくわからない。蝋燭で明かりを灯してるようだ。
階段を上がり正面の扉に入ると、そこは個室で、
部屋の隅に椅子が4つほど並べられてるだけの殺風景な部屋であった。
まさかここが会場じゃあるまいなと疑うレイジだったが、どうも客人用の待合室らしい。

「ま、さすがにここで晩餐会やるって事は無いはな。で、王様にゃ何時会えるんだ?」
「失礼、まだ準備中でして…」
「早く会ってみたいな。セーブするかの? とか言ってきたりして」
「…セーブ?」
「実際に会えばお分かりいただきましょう。ここで暫し御待ち下さい、準備が出来しだいお呼びいたします」
リラオンが待合室から出て行く。
道城は椅子に座り考え事をし、レイジは壁にかけられた絵画に注目した。
絵は随分と手入れされていないからか埃被っているが、どうやら城が描かれているらしい。
今現在いるこの城ではない…と、思う。色とか全然違うし。
間もなく、リラオンが戻って来た。
135ヘリオス作者:2007/09/13(木) 17:28:35 ID:m9CvNErM0
「ペンダントを手に入れ経緯は聞いている。問題は、その婆さんがどうやってそれを入手したかだな。」
佐沼が言った。だが和仁にとって、そんなことはどうでもよかった。自分も由里と同じように、ヘリオスを操ることができる。その事実を突きつけられ、和仁の脳裏に傷つき、苦しむ由里の姿が浮かぶ。和仁はただ黙って佐沼を見つめた。
「ようするに、俺もコイツを操れるかもしれないから連れてきた、ということですか?」
「そういうことだ。君も明日からは、コマンダーとして我々とともに行動し、並行してヘリオスの運用訓練を受けてもいたいんだが・・・おい。」
佐沼が入り口に待機していた直江を呼ぶ。直江の手には、きれいに畳まれたH−ユニットの制服が抱えられていた。
 「今まで散々理不尽な思いをさせたことについては、本当に申し訳なかった。ここから先は君の意志に任せたい。嫌ならそのペンダントを我々に渡して去ってもいい。やるのならこの制服を受け取ってくれ。」
 和仁に迷いは無かった。
「やります。これ以上彼女を苦しませたくない。代わってやることができるのであれば、代わりたい。お願いします、次に出動するときは、俺にやらせてください!」
「待て、そう焦るな。ヘリオスを操れるかどうかは、これからテストを行っていかなければわからん。・・・とにかく、承諾してくれたことには感謝する。ありがとう!」
 佐沼はそういうと、和仁に対して深々と頭を下げた。

これから先にどんな運命が待ち受けているのかは分からない。だが自分の選択によって彼女を救うことができるなら、守ることができるのなら、後悔はないはずだ。
そしてこれが、あの日彼女との約束を守れなかったことの、唯一の贖罪になると信じたかった・・・・・。

直江が無言で差し出した制服を、和仁は受け取った。
136ヘリオス作者:2007/09/13(木) 20:07:26 ID:m9CvNErM0
 同じ頃、防獣局司令室に警報が鳴り響いていた。
 「埼玉県、ポイントB‐407エリアに複数のオメガC−3波を確認。」
 「その数は?」
 八神の問いにオペレーターが答える。
 「正確な数は不明ですが、20以上は確実にあります。」
 八神の表情が強張った。
 「小型獣の群れだなこれは。・・・人口密集地に出すとタチが悪いぞ。」
 小型獣。それは体長10m未満の怪獣の総称であり、多くの場合群れを成して活動し、人間を捕食する。そしてこれらの群れの発生は、〈クイーン〉と呼ばれる巨大怪獣発生の前兆である場合もあるのだ。
 「そのエリアに人間は?」
 「山間部ですが、工業団地があります。」
 「やばいぞ、至急避難命令を出せ、それから〈スイーパー〉出動!」
 「了解!」
 直ちに小型獣掃討部隊〈スイーパー〉東部方面隊第1分団に出動命令が下った。
 約一時間後、到着した〈スイーパー〉によって、工場内にいた小型獣の群れは掃討された。
 しかし、避難命令が出たと時にはすでに遅く、多くの従業員が捕食された後だった。
 苦い勝利・・・いや、負けたに等しい結果だった。
137ヘリオス作者:2007/09/13(木) 20:08:46 ID:m9CvNErM0
 「やりきれねぇな、やっぱり人が死ぬと・・・」
 処理班が到着し、従業員の遺体が運び出されていく光景を眺めながら、スイーパー隊員、桜庭修吾・一曹はため息交じりに言った。
 スイーパーに入隊してから、何度も小型獣とやり合い、恐怖心のようなものはなくなっが、犠牲者が出てしまうやり切れなさだけはいつまで経っても慣れるようなものではなかった。
 できることなら、奴等を裏で操っているクイーンを仕留めてやりたい、と思ったとき、 小隊長が声をかけてきた。
 「桜庭一曹、引き上げるぞ。」
 「小隊長、ここに奴等が出たということは、近くにクイーンがいるのではありませんか?」
 「かもしれんが、俺達の仕事は雑魚を退治するだけだ。」
 「ですが自分は・・・」
 「悔しいのは分かる。俺だって同じさ。だがデカいのは自衛隊の獲物だ、俺たちの取り分じゃない。さぁ行くぞ。」
 悔しいけれど、小隊長の言っていることは全て正しかった。反論のしようもない。
 「・・・はい。」
 二人はうなだれて、その場を去った。
138ヘリオス作者:2007/09/14(金) 18:19:03 ID:gZ5G5bQg0
 当面の危機は回避されたが、防衛側の努力がギゴラスの出現で無駄になってしまったことで、
一同の士気は低下していた。
「何てこった・・・パラレルでさえ追い払うのが精一杯なんて」
 へこむ古賀を鼓舞する平山。
「大丈夫です! 少なくとも、宙獣に対して僕の作った特殊弾が有効であることははっきりしたんです。
至急次の弾丸の生産に入ります。今度ギゴラスが現れても、それを撃ち込めば倒せます!」

 果たして、潜伏してダメージを回復させたギゴラスは、後日再び現れた。
 郊外の山あいを徘徊しているギゴラスに対し、今回古賀は岩陰から狙撃(ギゴラスに冷気で
遠隔攻撃を食らう恐れがあるため)。
「今度こそ!」
 確実に狙い、きっちり特殊弾を撃ちこむ。
 だが・・・
 何も起こらない。
「何・・・!?」
 巨体に響いた僅かな衝撃にギゴラスはゆっくり振り返り、古賀を見つけ、唸って牙を剥く。
 冷気が噴出され、古賀や後方に控えていた支援部隊は慌てて逃げ出した。

「こんな・・・」
 分析した平山が蒼白になる。
「奴は・・・一度弾を撃ち込まれたマグメスの体組織を捕食して取り込んだことで、弾丸に仕込まれた
ナノマシンの効果に対して体内で抗体を作り、免疫を持ってしまったんです!」
 愕然としている古賀達の前で、頭を抱えて蹲る。
139ヘリオス作者:2007/09/15(土) 18:56:53 ID:bXqI+RjM0
地上に現れたクエイザーは、体を震わせ、その身を赤く発光させた。
すると、大地が揺れ、地震が起こったのだ。
この1週間、東京で地震を起こしていた能力だ。
しかし、今回は地上に出ているため、その力は比べ物にならないほど大きい。
壁が崩れ、地が割れ、電柱が折れてゆく。
クエイザーは発光を止める。この能力、あまり長時間は使えないようだ。

「グアア」
何か気配を感じたクエイザーが上を向く。
そこには、GGTより出撃してきたガードカプセルが飛んでいた。
その数は3機。ワタル、ゴウ、シンイチロウである。
「怪獣を足止めしろ!これ以上進ませるな!」
基地に残ったカリヤマ隊長から、3人に指示が飛ぶ。
「「「了解!」」」
3機のカプセルによる波状攻撃が始まった。クエイザーの足が鈍る。
「よっしゃ!効いとるで!」
「調子に乗るな、まだ倒せていない。」
ゴウをシンイチロウがたしなめた。

「カガミさん、そっちからユウキに通信してもらっていいですか!?」
クエイザーに攻撃を加えながら、ワタルが基地のカガミに依頼した。
「さっきからやってる!でも、通信に出ないのよ!」
「そんな…!」
140フレンズ作者:2007/09/17(月) 14:32:12 ID:WJh6gzhx0
天道「今回は作者が流石にガンザイゲリオンなんてパクリはだめだろう・・・とか考えたので、予定を変更してお送りします。」
天志田「出、今回の話はどんな話なんだ?」
天道「それは、あ
どす
作者「サブタイトルを見れば分かる。じゃあ始めます。
第13話「新しい翼の戦士」 ウルトラマンウィング 飛行怪獣フイラカスイ 登場
春賀「突然だが、新しい隊員が入隊した。」
羽月「羽月 飛了(はづき ひりょう)です。よろしくおねがいします。」
天志田「作者もまた名前の意味が分かりやすいやつを・・・」
天道「(若そう・・・)」
羽月「年齢は、21です。」
天道「(!!!)」
天志田「(歳までは言わなくでも・・・まあ別にいいが。)」
春野「怪獣が現れました!」
春賀「どこで?」
春野「東京の真上・・・」
天道「マジで?」
春野「マヂで。」
春賀「じゃあ出動だ。嚥下、佐井はムーンジェット、ラビットウィング、天道、天志田、羽月は、新しく作られたフライフェイスA、B、C、に乗ってくれ。」
天道「それ飛ぶ顔?」
天志田「意味が違う。」
春賀「USG、レディーゴー!」
全員「了解!」
141ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 12:49:13 ID:LAY4sjdh0
ええっと、USGが出撃したトコで終わってますが、投下しても良いのかな?

第四十五章 恐れられていたレイハの復活宣言
吸怨轟邪仙タケリギアロ発現

レイテイは、レイキザン、離水したヒュウカイオウと合流、やむをえず紅退港へ着陸する。東京の圏内だし、歩けば街まで半里も無い。
「んじゃしばらくはこの船がオレらの基地、この操縦室がオレらの指令房になるんすね?」
父の説得で割り切ったのか、ワタリベは一向に気にしているふうが無い。
一方でユリノは、下手な攻撃でみすみす基地陥落を招いた光の一族の術師らに、天下無双にイラついてらっしゃる。
それが爆発すると怖いので、フナトがガス抜きを図る。
「ユリノさあ、海でホウキと闘ってた筈なのに基地が壊れる時あたしらと一緒にレイテイに乗ってなかった?」
「あれ式神です。」
「あ、そゆこと。」
ガス抜き終了。

術師らの弁解に淀みはなかった。
光の一族が、神と共に生きる自分達黒濠老師一派と、神を裏切りスサノオ覚醒を企てる破戒派に分裂。
破戒派は更に、接触を図ってきた邪仙と融合し、レイハとウルトラマンを壊滅させる為暗躍し始めた。
黒濠老師一派は神々の為に破戒派の妨害を続けており、今回も彼らを止めるべく闘った。と。
「でも、僕達に任せてくれていたらホウキは倒せたと思うけど、何で作戦に割り込んじゃったんだい?」
ヘキの問い。答える術師ら。
「君達の能力では、とてもホウキを倒せるとは思えなかった。だから手助けしてやろうと思ったんだ。」
黙って聞いていたヒスイは、術師を殴りに行こうかと思ったが、元来光の一族は自分達只人を下に見て生きてきた民族だ。
殴ったところで彼らの意識は変わらないだろう。落ち着かせるため、フナトへ別の話題を向ける。
「…ところで、ワタリベは何処へ?」
「親父様と一緒に船を降りてた。直ぐ戻ってくると思うけど。」
142ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 12:51:03 ID:LAY4sjdh0
父と共に船を降りたワタリベ、その前に立ちはだかったのは!
「我が妻!」
「久しぶり我が亭主!」
二人は駆け寄り、妻の肘が亭主を突き飛ばす。
「急にごめん。お客達が『レイハが負けた』『軍がやられた』『ウルトラマンも役立たず』って五月蠅くてさ。」
だから亭主やその同僚らの様子が気になり、ここまで走ってきたと。
「そりゃあ嬉しいけどオレに肘打ちする意味あんのか?」
フユミは亭主の問いには応じず、義父へも軍人らの様子を聞いてみる。
「レイハもそうだが、幕府{参謀本部}の連中も大分憔悴しておるよ。ツルギヤマ将軍が皆を元気付けている最中だが、戦意は低下しっぱなしだ。それに」
ワタリベ幕官は、十枚ほどの手紙を取り出す。
「これで千分の一というところだ。全て民からの苦情。」
幕官は、その辛辣な、物によっては荒唐無稽な苦情を有難く懐へ直す。
「フユミさん、我らは民を無理やりに働かせ、民から税を吸い上げ、それで戦力増強を図ってきた。
民は我ら軍からの徴税を、生活を守るため必要な出費だと信じておったのだ。その軍の砦が陥落した…。民が怒るのは道理だ。」
幕官はレイテイを見上げる。この船と、積載された三機ばかりの機翼。それが現在の戦力。
幕官は、関東圏中の関連施設を廻り、機翼を譲り受けるための交渉に入るため、息子夫婦より先にレイテイへ戻る。
「…フユミさん、サクヤ。言いたくはないが母さんからも苦情が来ていたぞ。」
「何て?」
「孫はまだかって。」
関係なくね?

カンナに救出されてから、ゴジョウはずっと黙り込んでいた。
そこへ、ヘキやユリノと合流したミウが声をかける。
「詳しい事、マミヤさんとかから聞いた。…死にたかったわけ?」
「…意外かしら?時代こそ違えど、貴女も光の一族として考えた事がある筈よ。自分達は神山で生まれ、神山で生き、神山で死ぬ。神へ媚を売り、彼らの恩恵に頼らなければ生きられない。それが光の一族。」
ミウは、やはり否定できなかった。正義の名の下に母親を殺され、姉を憎むよう仕向けられ、あげく自分がこの時代で発見した学舎という居場所も奪われた。
何のための命だ。
143ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 12:52:34 ID:LAY4sjdh0
術師らへの尋問は一通り終了。そのヒスイへ来客の伝令があった。
船を降り、指定された場所へ向かい、クロサキ=黒濠老師と面会した。
「…どういう了見だ?この船まで壊しに来たか。」
「…マミヤ ヒスイ。お前達の砦を落としたのは、神々の本位ではない。」
確かに、術師が邪仙を止めようとしていた以上、少なくとも神々を敬う黒濠一派は日本基地の陥落を恐れていた、とは考えられる。
「…では聞こう。神々は何を恐れている。カンナの力だけではあるまい。他の人間も容赦なく殺してきたのは何故だ?」
黒濠老師は、足元の波へ視線を落とし、独り言のように言う。
「スサノオに、人間を食わせるわけにはいかん。だから奴が蘇る前に、人間を滅ぼす。そういうことだ。」

正直、神々も七千年前ラゴウが最終戦争を起こすまでは邪仙という存在を知らなかった。
地球以外には来訪せず、怨念を喰らって成長する奇怪な存在。
彼らは自分達神々に殺された者達の怨念を喰らい、強大な力を持って暴走した。
神々は、彼らを本能のままに生きる下等な存在だと考えていた。しかし、それは間違い。
邪仙には、二つの目的があった。一つは自分達と同じくカンナ抹殺。
もう一つは、かつて放逐された暴神スサノオの覚醒。

「奴はかつて高天原を追放された恨みを持っている。同時に、地球との関わりが深い神でもある。
故に地球の人間を喰らえば、力はさらに増大する。その状態で高天原へ復讐をかけようものなら…。だから神々は人間を早めに滅ぼし、スサノオの糧を断ちたかったのだ。」
だが、邪仙は人間を滅ぼして効率よく怨念を吸収するため、スサノオを復活させた。
正確に言うと未だ復活には至っていないが、恐らくは時間の問題。
「だから、俺達の基地を守りスサノオ撃滅の可能性を上げようとしていたんだな?」
救いようがない、と思った。神山に棲まない只人を見下し、神に媚を売り、二人の若い少女の人生を狂わせ、神にとって都合が悪いからカンナを引き渡せと言い、断られれば邪仙との協力さえも惜しまず自分達と敵対する。
「卑屈な奴らだ、許せん。って思ってますか?」
「カンナ?…よく分かるな。」
いつの間にか現れた「神を殺す者」が、ヒスイの横へ腰を下ろす。
144ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 12:54:25 ID:LAY4sjdh0
「人は変われない。」
座るや否やカンナはそう口にする。
「少なくとも、これまでずっと信じてきたことを、簡単には覆せない。ヒスイくん、そうじゃないですか?」
確かに、目の前の少女が実は先物取引のプロだったとか言われても直ぐには受け入れられないだろう。
「そうですね。光の一族は…わたしやミウはちっちゃい時に離れたから分かんないですけど、
きっと『自分達は只人より高みにいる存在』って、ずっと信じてきたんだと思います。その考えは間違ってますけど、すぐに変える事なんかできないです。だから…。」
カンナは、自分の命を狙っていた老人を正面から見据える。
「老師、いっしょに戦ってください。それで、わたしたちは弱い存在じゃないって事、未来の光の一族に伝え続けてください!」

その時、操縦室から連絡が入った。港へ邪仙が現れたと。
「纂禮だ!」
黒濠老師が叫ぶ。どうやら先日のホウキと同じく、光の一族破戒派が契約した邪仙のようだ。纂禮というのは、その破戒派の術師の名か。
レイテイへ戻る間もなく、爆発が三人を襲う。何処かから火球が放たれたのだ。
ヒスイもカンナも、レイテイに集まっている仲間も忘れようが無かった。
この火球の主。屍を喰らって実体化する巨大な獣。
吸怨邪仙 ギアロ。
しかも、だ。ギアロの足元には多くの民が仁王立ち。火球の余波で焼き殺される者がいるが、他の民はその様子に興味さえ示さず、ひたすらレイテイを睨みつけている。
ギアロに操られ、人質になっているのだ。この状態では戦力云々関係なく、ギアロを倒すことは出来ない。

ゴジョウは、その顔ぶれに見覚えがあった。彼らは昨年、最初にギアロ、およびリュウラが出現した際、自分達が救助した民である。
「出来すぎだわさ。」
フナトの呟きに答えるように、ヘキが分析結果を発表する。
「偶然ではありません。彼らは一年前、ギアロに遭遇した際、奴から呪を受けています。自分達を守るものが消え、失望した時、ギアロの配下になるようにと。」
つまり現在の彼らを支配しているのは、砦を落とされたレイハへの失望感。
145ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 12:55:38 ID:LAY4sjdh0
「この一年が全て彼らの掌の上だった、という訳ではありませんが、少なくとも彼らは、僕達が負ける事を予期して行動していた可能性は大きいです。
これは、戦力の低下した僕達にトドメを刺すための計略です。そして邪仙、或いは邪仙の支配者は、それほどの存在だった。」

とりあえずこの状況では、レイハから攻撃は出来ない。下手な攻撃で民を巻き込むわけにはいかないし、それはギアロの思う壺でもある。
「…あたしが行く。ウルトラマンの力なら、あの人たちを守りながら戦えると思う。」
ミウが名乗り出る。しかし
「ウルトラマンも役立たず」
ユリノがそう呟いた。
「今、民の多くはそう感じてるわ。正直、私もその考えを全否定はできない…。」
ユリノの顔に迷いの色が浮かぶ。
疲れているのだ、と、辛くも操縦室へ戻ってきたカンナは思った。
邪仙のあまりに大局的な計略。
光の一族の価値観を利用して基地を破壊し、基地を破壊して民を絶望させ、絶望した民を操り人質とし、基地を失ったレイハへ止めを刺す。
その様を見せ付けられ、疲れてしまったのだ、と。
ギアロから民を奪還すれば丸く収まるだろうか?いや、民の絶望感は容易には拭えまい。
人は、すぐには変われないのだから。

「でも…んだったら、自分からウルトラマンになったあたしは何?」
ミウが、泣きはしないが悲痛な声を上げる。
「ゴジョウさんが前に言ってた。ウルトラマンは『究極の人間だ』って。その究極の人間が役に立たないんなら、あたしは何のために鬼神と契約したわけ!?」
カンナが止めようとしたが、先にヒスイが歩み出る。そして…
「小宰。…ヘキ!ユリノ!ワタリベ!」
振り向く四人。ヒスイは、言った。

「リュウラは、俺だ。」
146ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 13:03:59 ID:LAY4sjdh0
しばし場が硬直した。
「言いたくなかった。しかし、ミウがいたたまれなかったから、言っておく。」
四人は勿論、自分から名乗り出た事にカンナもミウも、ゴジョウも驚いた。

「…期待しないで欲しかった。だから、今まで言いたくなかった。
ウルトラマンは究極の人だというが、俺は真宮家の仕事から逃げたろくでもない人間だ。
ミウやトキツグのように出来た人間じゃない。」
ヒスイは、いつの間にか召喚したアクアアイを見入り、言葉を繋ぐ。
「ろくでもない人間を『ウルトラマン』という色眼鏡を通して見てほしくなかったんだ。
だから隠していた。しかしこの際だ。むしろ、リュウラへ失望してほしくなった。
俺のような馬鹿な人間を、英雄だと思わないでくれ。
俺は君らを信じている。だが、君らは俺を信じない方が良い。
…出でよ、リュウラ。」

ヒスイという男が、水に似た蒼い光を身に纏う。
光は蒼い昇龍の姿を成す。
龍は反転し地へ自らを叩きつける。
光が弾け、蒼いウルトラマンの姿を現出する。
仲間達の眼前で。
リュウラは掌より五芒星の結界ペンタクルフィールドを放ち、民をギアロの呪より遮断する。その上で額の第三の眼よりショットスパークルを放射、敵を牽制し、戦闘態勢へ移行する。

「俺たちを信じられなかった、って訳じゃないんだな。」
ワタリベは、リュウラを見上げ呟く。ヘキがそれに続く。
「そうだねえ。マミヤ君は、自分自身を信じられないんだ。多分、勝手に家を出て行った事をずっと悔やんで。」
ユリノが複雑な表情で頷く。
「てめえの蒔いた種はてめえで摘め、とは思うけど…。摘めなかったって?」
カンナが前に出る。
「馬鹿な事をするって、自分でも分かってて、それでも馬鹿な事をするしかなくて、後で悔やむ。ヒスイくんだけじゃないです。わたしたちだって。」
「うん。あるね。ホントによくある。」
ミウが姉の言葉に同調する。
147ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 13:05:19 ID:LAY4sjdh0
ワタリベは、視線をリュウラから周囲の皆へ移す。
「じゃあ、アレかな。今までマミヤはある意味一人で戦ってたっつーことか?
アイツは俺たちに頼れなかった。何でかっつったら、自分を信じられないから。力を合わせりゃ俺たちに迷惑がかかる、そんな風に変な思い込みしてさ。」
ユリノは、レイテイの格納庫を操作、レイヒュウゴを離陸可能状態に移行させる。
「マミヤ、失望なんてしてないわよ。無理にでもアンタと手を組む。アンタに私達を仲間だと認めさせてやる!」
沈黙していたフナトは、同じく沈黙しているゴジョウを振り向き口を開いた。
「大宰。出陣の采配を。」
「…小宰。私は…」
「我々は軍人ですが、貴方の下にあったのは、貴方がそれだけの器を持っておられると信じたからです。砦とともに朽ちる道を選ぶなど、貴方の器にはそぐわない。」
傍目から見ていた黒濠老師は、ゴジョウのこれ程真摯な表情をはじめて見た。
「どうか死を選んで下さいますな。神にも抗える貴方です。自分自身の疑念や慙愧に抗えぬはずが無い。」
そして、カンナもゴジョウへ語りかける。
「『生きる事』それ自体の意味なんて、考えるだけ損です。考えるべきなのは、『生きて何をするか』じゃないですか?」
ゴジョウは、笑んだ。ようやく。
「カンナちゃん…いいコね…。
…小宰とワタリベ君はレイヒュウゴ、カンナちゃんはレイキザンへ搭乗。ユリノちゃんとヘキ君は地上から民の避難経路を確保。ミウちゃん、協力を要請します。」
司馬らの、そしてゴジョウの面持ちに光が戻ってきた。
「レイハ、出陣!」
短いながら、精一杯の思いを込めた采配。
「御意!」
短いながら、精一杯の思いを受けた礼。
148ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 13:06:43 ID:LAY4sjdh0
ギアロの火球、それ自体の威力は変らない。ただ、ひたすらにリュウラの足元を狙ってくる。バランスを崩そうとしているのか?邪仙の割には妙に人間臭い攻撃。
「纂禮!やめるのだ!神はお怒りだろう。お前も光の一族として…」
{{神などいらぬ。虚ろの存在、それこそが絶対正義!}}
ギアロと融合し、その力でリュウラと闘っている術師、纂禮は黒濠老師をあざ笑う。
一方の黒濠は焦っている。神罰を恐れ、同時に纂禮を心配している。
何故なら…邪仙の糧は死人の怨念のみとは限らぬからだ。

火球は執拗にリュウラの足元を襲うが、リュウラは蹴り技を得意とする。おまけに経験値の蓄積もある。ジンの姿のままでも、昨年とは比べ物にならない能力を発揮できるのだ。
全ての火球は蹴りにより爆裂し無効化、或いは鞠の如く蹴り返され、ギアロのスタミナを的確に奪ってゆく。
{{おのれ…邪仙の力だけでは…龍を殺せない!}}
纂禮自身も焦ってきた。と、その意識に語りかけるものがあった。
〈〈勝テる〉〉
それは、ギアロの声だろうか。
{{本当か?ど、どうすればいい?}}
〈〈お前ヲ食べる〉〉
その言葉(と知覚した意思伝達方法)に疑問を感じるヒマもなかった。
纂禮は、自分に何者かが噛み付いたような感触を受けた。
しかし、そこに痛みは無い。なぜなら何者かが噛み付いたのは、自分の肉体ではなく、自分の意識に対してだから。
直後、自分の価値観に何かが染み込んできた印象を受けた。
自分の意識が、何か異なる魂に侵食され始める。
異なる魂が染み込んだ箇所から、何者かが自分の意識を食いちぎった。
149ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 13:07:39 ID:LAY4sjdh0
瞬間、怒りや或いは喜びと言った感情が、全て消滅した。
自分は意識を食われる自分を冷静に分析していた。感情という部位が食いちぎられたためである。
さらに、知識の部位も食される。
纂禮には、この時点で何かを感じることも、何か行動を起こすことも出来なくなっていた。
自分がどういう状況に置かれているか考えようとしたが、思考の部位も食われた。
ただ自分の魂全てがギアロに食い尽くされる様を傍観しながら、意識は潰えた。
黒濠の懸念は的中していた。纂禮は、操っていた筈のギアロに吸収され、同化させられた。

纂禮を吸収したギアロは、より醜怪な姿へ変異してゆく。ハガネギアロに似てはいるが、その鎧には以前のような光沢はなく、松毬に似た多重構造の鱗が血膿の色を醸している。
最強の、タケリギアロ。

新たな触手が、リュウラの手足に絡みつく。ハガネギアロはこの触手を鎖鎌とし切れ味鋭い攻撃を行っていたが、
今回は剛力を活かし、敵を押しつぶすという攻撃方法へ転換している。
また、触手を覆う幾百枚もの鱗が鋸の体裁をなし、リュウラへ苦痛を与える。
ハガネギアロの頃より更に高い嗜虐性を持っているようだ。
ショットスパークルで触手を焼ききるも、その隙を突かれ火球で吹き飛ばされるリュウラ。
体勢を立て直すと、その時には既に触手も再生していた。
怨念、狂気、そして支配欲という人間の業を糧としたギアロに、勝つ術は…

「ある!」
再び伸びた触手を、光の翼が切断した。
ミウツシノヤイバ。レイキザンだ!
150ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 13:08:57 ID:LAY4sjdh0
「ヒスイくん、わたしたちの戦いは、そんなに実りの無いものだったんですか?」
カンナの言に逡巡する。
そのリュウラを襲う再びの火球攻撃。しかし、光の炎が火球を掻き消した。
ラセツである。
ラセツは、続いて触手の切断面へハデスフレアを浴びせ、一時的に再生を中断させる。
地上からヘキの通信が届く。
「小宰!こんな事もあろうかと僕が造っておいたあの呪具を!」
「まかせんさい!」
フナトとワタリベの搭乗したレイヒュウゴが凛々しく急降下、機体下部から竜巻をぶつける。と、タケリギアロの体から粒子が分離し始めた。
コンノカワシズメ。
人間の感情を交流させてその精神を錯乱させる、精神攻撃型の呪具である。
食した感情を体内でしっかり整理していたタケリギアロは、この攻撃で自身の肉体も不安定な状態となった。
リュウラは何も言わないし、ラセツも、司馬らも何も言わない。
この連携体制は、そもそもヒスイが二度目にリュウラへ転化した時からすでに存在していた事。
だから、リュウラを、ヒスイを大切な仲間だなどとは言わない。
そんなこと、皆が分かっているから。
ただ、互いに互いを見交わし、僅かに頷くだけ。

ギアロは不安定な状態になっている。今だ!
リュウラはコウへ変身、突進する。
苦し紛れの火球は自分に炸裂する。炸裂するものは炸裂するにまかせ、疾走する勢いのままギアロの腹部へ右脚でストレートキックを撃ち込む。
引いた右脚は地へ戻すことなくそのまま浮き上げ、後ろ回し蹴り。
後退しようとするギアロへ、続いて左脚で踵を落とす。
ギアロの動きが止まるより先に、三度右脚を上げ、今度は正面から回し蹴り。
その勢いで空中へ浮き上がるギアロ。その隙に左ハイキックをぶちかまし、一気に弾き飛ばす。
そして、最後はやはりドラゴンインパクト。
纂禮の欲望も巻き込み、ギアロはまたも虚空へ還っていった。
自分が目立たなかった気がするが、今回はリュウラと姉、その仲間のフォローに回るのが仕事だから、まあいっか。と、ラセツであった。
151ウルトラマンリュウラ:2007/09/19(水) 13:09:36 ID:LAY4sjdh0
「戦って、もらえるわね?」
ゴジョウの問い。ヒスイは、頷いた。
「戦いましょう。共に。」
ゴジョウは、僅かな間の後、いつもどおりに笑んだ。
「良かったわねーカンナちゃん。」
自分より背が高いカンナをなでなでする。カンナは、なでなでされるがままになっている。無言で。
黒濠老師は、術師らと共に帰路につく。
「少し待っていてもらえんか?人一族を説得し、腕の立つ術師を連れてくる。」
そして、白い髭を蓄えた口元、深い皺を刻んだ目元を歪める。
老人は久々に笑ったため、少し気味の悪い笑顔になってしまった。
「それまでは頼んだぞ、五小角焔姫(イツオヅヌノホムラヒメ)。強い力と絆を持つ只人が、羨ましくなってしまった。」
老師は、ゴジョウを一族の名で呼び、一度神山へ帰っていった。
「カンナ、この辺で美味い店ある?」
「甘味処でいいかな?」
「…もちっと腹に溜まるのが食べたい。」
しばらくしたら、カンナとミウは食事にいくようだ。
スサノオのサナギが海に眠っている以上、自分達はあまりくつろいではいられないのだが、今回はいいだろう。
自分達で補い合えば良い。自分には、友がいるのだから。
ヒスイは、そう思った。


メトロポリス上空に広がる不気味な黒雲。
それは宇宙細胞で進化した、バリヤー怪獣ガギのリベンジだった!
次回ウルトラマンリュウラ
第46章「勇気、足りてる?」
お楽しみに
152リュウラ著者:2007/09/19(水) 13:51:01 ID:LAY4sjdh0
アルファ、パラレル作者さま
そういえばティガ怪獣は精神系の奴が多いな、とフェイバリット作品の一つであるにも関わらず思い出しました。
ギジェリオスはギジェラの改造怪獣なんでしょうか。まあむしろピコリオスの素性が気になるんですがw

バーン作者さま
アルファさんと同じ意見ですが、ちょっとした冒険だな、と。
怪獣たちの中々にべらんめえな風情がツボでした。某等身大アギラ思い出しました。

ヘリオス作者さま
しばらく離れていたものでよくわからないんですが、貴方はバーン=オーバー作者さんですか?
>>134見る限りではバーンさんかクラウスさんに思えるんですが、
でも>>138ではパラレルだしなあ…。
153リュウラ著者:2007/09/19(水) 13:57:49 ID:LAY4sjdh0
で、前スレも読んでみたんですがやっぱり別人ですよね…。ちょっとこんがらがった。
154ウルトラマンオーバー ◆FTVw.4PYoM :2007/09/19(水) 16:13:54 ID:r0tIBMnf0
ヘリオス作者様は俺でもクラウス作者様でもありませんよ
途中で変なの入ってるのは、ね、アレです

間違わないれ無いようにテロップつけます、今回から
155リュウラ携帯:2007/09/19(水) 16:22:43 ID:RSquKTGuO
ああ、アレですかい。
こちらも誤解&手間かけさせてすみません。
156ヘリオス作者(本物):2007/09/19(水) 17:33:42 ID:E9zl9bJ50
 その夜、和仁はテレビから流れるニュースを個室で見ていた。8時のバラエティー番組が終わり、9時から始まるドラマの間に流れるニュースである。
「・・・今日午後4時頃、精密部品メイカー・日本オプチカル秩父工場が小型獣の群れに襲われ、従業員15名が死亡、32名が怪我、うち10名が重体です。巨大怪獣の存在は、現在確認されていませんが、防衛庁では現場一帯の警戒を強めています。」
 小型獣に人が襲われるニュースは別に珍しいものではなく、今の日本人にとっては山から猿や熊が下りてきたような感覚だった。
 「・・・日米間で行われていた、米軍基地移転についての閣僚級会談は今日、国内の基地を5年以内、沖縄の基地を今後10年間で段階的に撤退する方向で両者の合意を・・・」
 テレビを消し、ベッドへ仰向けに転がる。頭の中でこれまでの色々なことが渦巻いていく。
 (俺にも、由里と同じチカラがある・・・由里はずっとアイツと一緒に戦ってきたのか・・・)
不安が襲ってくる。彼女は自分のことを覚えていない。おそらく自分の印象は今、最悪だろう。変なヤツだと思われているのは確実だ。明日からどう接していけばいいのか・・・。
 考えれば考えるほど気持ちが落ち込んでしまう、ダメだ、気分を換えなくては、と思ったとき、ある考えが浮かび、和仁は起き上がって部屋を出た。
157ヘリオス作者:2007/09/21(金) 20:21:23 ID:R9bWEzri0
 同じ頃、防獣局では緊急の対策会議が開かれていた。
 「5日前、秩父の山中で微弱ながらプラズマの発生を確認していましたが、通常時に発生するものと大差なかったために、見逃していたことは我々観測部の落ち度です。」
 観測部長の我那覇が釈明する。
 「そして今日、秩父市内の工場が襲われ、さらに先程、市内の一部地域で断水とオメガC−3波感知の報告がありました。現在自衛隊化学班が調査を行っており、間もなく連絡が入るはずです。」
 我那覇が着席し、入れ違いに柳坂が立つ。同時に大型ディスプレイに地図が映し出される。
 「我々作戦部が、巨大怪獣がいる前提のもとで検証を行った結果ですが、観測部長の報告にあった3箇所を直線で結び、その直線を伸ばした結果、怪獣の予想進路がわかりました。」
 3点をつなぐ直線が伸びていく先は・・・・・。
 「東京です。」
 会議室が騒然となる。
 「しかし、まだ怪獣がいるというのは早計すぎやしないかね。」
 幹部の一人が言ったとき、電話が鳴った。我那覇が電話に出る。
 「・・・そうか、わかった。」
 受話器を置き、我那覇は皆を見回して言った。
 「調査の結果、地下の水道管が外的な力によって破壊され、怪獣のものと思われる細胞片が見付かったそうです。」
 再び騒がしくなる会議室。
 「これで間違いありません。クイーンは東京を目指して現在も地下を進行中です。局長、迎撃作戦発動の許可をいただきたい。」
 柳坂が言い放つ。無言でうつむいていた八神は顔を上げると、言った。
 「これが事実なら、許可を出さざるを得ないな・・・いいだろう、首都絶対防衛線はなんとしてでも死守しなければならない。」
158ヘリオス作者:2007/09/21(金) 21:54:47 ID:R9bWEzri0
首都絶対防衛線。それは東京を守るために敷かれた三重の防衛ラインである。
 第一防衛ラインには、千葉・埼玉・神奈川との県境に沿って、スパイナー地雷原が東京を囲むように広がっている。
 ここには、半径1キロ以内に入った物体に反応して爆発するようにセットされたスパイナー+(プラス)が、地下と地上に二重敷設されている。
 ちなみにスパイナー+とはスパイナーの改良型であり、コンピュータによって爆発の範囲を制限することができる。しかも威力は仙台を破壊したスパイナーと変わらないため、ピンポイントで怪獣にダメージを与えることが可能になっているのである。
 第二防衛ラインには三多摩の郡境に沿って、500万ボルトの超高圧電線が張られている。これは怪獣が接近したときのみ電流が流されるのだが、その際三多摩地域は停電に陥ってしまう。
 最後の第三防衛ラインは、東京23区を囲む特別国道1号環状1号線、通称〈特環線〉である。普段は一般道として使用されているが、非常時には封鎖され、軍用道路として使われる。
 怪獣迎撃戦を行う場合、ここに地上部隊展開して怪獣を迎え撃つことになるのである。

 「関係各方面に通達、状況は第二種警戒態勢に移行、統合幕僚会議は、これより防獣局の指揮下に入る。」
 会議室に八神が声が響いた。幹部達が自分の部署へ帰っていく。
 八神は柳坂の方を向くと、一言「頼む。」と言った。
 柳坂は無言で敬礼すると、司令室へ向かう。司令室に入った柳坂は矢継ぎ早に指示を出していく。
「陸自東部方面隊に連絡して、ミサイル部隊を特環線に配置。入間の第一高射群にもミサイルの発射準備をさせておけ。それから埼玉県と東京都に連絡して、当該地雷原付近と三多摩地区の住民に避難勧告を要請しろ。」
 司令室があわただしくなる。
「いいか、東京はなんとしても守り抜くんだ!」
 柳坂の眼には、強い決意が満ちていた。
159ヘリオス作者(本物):2007/09/24(月) 09:50:55 ID:UXx9Luv50
「旦那!」
「旦那やりましたぜ!」
残った残骸を思いっきり踏み潰し、バーンの方を向いた二人だったが、そこにバーンの姿は無い
「だ…旦那?」
「まさかいつの間にか来ていた敵の第二波に…」
「よくやったな!諸君!!」
バーンの身を案じた二人の下に、真後ろから元気満タンといった感じの声が聞こえてきた
ふりむくと、そこには岩の上に立って、腰に手を当てて堂々としたポーズをとる、バーンの姿があるではないか
「旦那?」
「あんた…怪我は…」
「ん?あんなちゃちなミサイル屁でもねえ」
開いた口が塞がらない2匹
「いやあ実はお前等にもたまには見せ場を作ってやろうと思うついでに睡眠不足も同時に解消だ!イエーイな気分で寝ていたのだ!」
「イエーイってあんた…」
「俺等めっさ心配…」
「うんうん、感謝してる感謝してる、だからよーやった!お前等は立派な大カプセル怪獣だ!これからも…」
あっけらかんとした態度で演説するバーンに、怒る気力も無く、ため息をついて顔を見合わせた二匹の顔は、どこか誇らしげだった

終!!
160フレンズ作者:2007/09/24(月) 20:16:39 ID:VQGIbd5w0
リュウラ作者さまへ
前回深夜(なぜか眠くならない)書いていたせいで寝なさいといわれ書き込んだ所で終わったらリビングなのでコンセントがよくうまっててなかなか書き込めなかったのです。というわけで続きを。

天道「あいつ、翼があるぞ。」
天志田「お前、この期待については操縦の感じが違うとか言わねえのな。」
天道「なんか操縦感覚が分かるんだ。」
天志田「お前、ガンダール○か?」
羽月「あのちょっとついていけないんですが・・・」
天道「ん、何か言った?」
羽月「いや何も・・・(俺、空気?)」
天道「いや、お前は人。空気じゃない。」
羽月「!!!考えている事を何故!?」
天道「勘で言っただけなのに・・・」
羽月「えっ・・・」
春賀(通信)「天道達!合体しろ!」
天道「どーやって?」
春賀(通信)「全員が操縦桿の横のレバーを引き、天道が「天志田、羽月いけるか?」と聞き、天志田と羽月が「もちろん!」と言うと。」
天道「台詞なしでいくけどいいかな?答えは聞いてない。」
天志田「その前にパクリがあっただろ。」
羽月「別にいいじゃないすか。」
がしっ
天道&天志田&羽月「「「がっ・・・合体したあ!?」」」
春賀(通信)「本当はレバーを引いた後適当に台詞回しするだけでいいんだ。」
天道「それよりも顔みたいな機首ですね・・・」
天志田「あ、怪獣が見えたぞ。」
天道「空飛んでる。2話のあいつみたいに翼が弱点なんてことがなければいいけど・・・」
怪獣「翼は攻撃しないほうがいいぜ。何故かは秘密だ。俺の名前はフイラ。」
嚥下「自己紹介をしてる暇があったら」
佐井「これでも喰らいなっ!」
フイラ「無駄だっ」
嚥下&佐井「うわぁぁぁ」
161ヘリオス作者:2007/09/25(火) 18:19:13 ID:xAPYy17V0
 柳坂が職員達に指示を出していたとき、彼のケータイが鳴った。
 ケータイを開くと、メールが届いていた。柳坂の動きが数秒間止まる。
 「・・・キミが出るまでもないよ。」
 柳坂はそうつぶやくと、メールの返事を打ち、ケータイをポケットにしまった。

 岬の先端には、今はもう使われなくなった灯台が建っている。ここはマーキュリーベースにつながる非常出入り口の一つでもあった。
 その灯台のベランダに座り、和仁は夜空を見上げていた。
 ちなみに岬の周辺には監視カメラが設置されているため、そこから逃げることは不可能である。が、そんな気はさらさらない。
 和仁は小さい頃から、星空を見るのが好きだった。星を眺めていると、嫌なことを忘れることができた。考えが行き詰ったとき、いつも空を見た。一度、夜が明けるまでそうしていたことがあり、周りから変人扱いされたこともあった。
 和仁はポケットからタバコを取り出してくわえると、ライターを出して火をつけた。これまで溜まった疲れも一緒に出すように煙を吐き出す。気分が落ち着く。(何とかなるだろう、明日から)と思ったときだった・・・。
 「アタシももらっていいかな?」
 突然、女性の声がした。振り向くと声の主が立っている。由里だった・・・。
 「えっ、・・・あっ、あぁ、どうぞ。」
 タバコを差し出す。声が裏返ってしまっているため、否が応にもテンパっていることが相手にも伝わる。
 由里がくわえたタバコに火を点けてやる。「ありがとう。」というと、由里は和仁の隣に腰を下ろした。
 (おいおい、さっきはどうにかなると思ったけど、いきなり来られると・・・)
 
 

162名無しより愛をこめて:2007/09/26(水) 00:47:37 ID:Qw0+9qjKO
落としませんっ
163アルファ作者:2007/09/26(水) 11:55:33 ID:kG0aAinR0
ご無沙汰してすいません。

リアル仕事が忙しくなってきました。暫く投下できません。
コメント程度は入れるようにしていきますので。申し訳ない。
164ヘリオス作者:2007/10/02(火) 18:09:31 ID:cpkGfzqH0
 「ねえ、ここでなにしてたの?逃げ道でも探してた?」
 「ま、まさか・・・ちょっと星をね・・・」
 「星!?」
 驚いたように由里が言う。
 「うん。子供の頃からさ、こうやって星空見るのが好きでね。」
 「ふーん。」
 そういうと由里も空を見上げた。
 雲一つない、満天の星空だった。
 「うわーっ、スッゴイ!ここからでもこんなにきれいな星空が見れるんだなあ・・・なんか星を見るのが好きだって言う理由、分かる気がする。」
 由里が微笑む。
 「あっ、そういえばこの間の怪我はもう大丈夫なの?」
 「ああ、あれ?うん、もう全然。私さ、ヘリオスと一心同体みたいな感じになってるせいか、体が普通の人とちょっと違うんだよね・・・」
 「?」
 「回復が異常に早いんだ。あれだけの怪我しても次の日にはもう直っちゃって、傷も消えちゃうんだ。」
 由里は苦笑いしながらそういうと、タバコを吸った。
 どう返せばいいか分からず、「・・・フーン。」とつぶやくと、和仁もつられてタバコを吸う。そして二人は、同時に煙を吐き出すと、そのまま黙りこくってしまった。
 会話が続かない・・・。
165ヘリオス作者:2007/10/02(火) 18:45:10 ID:cpkGfzqH0
 和仁がそう思ったとき、ケータイの着信音が鳴った。
 由里が制服のポケットからケータイを出して開く。
 「・・・本当に大丈夫かな?」
 そうつぶやくと、由里はケータイを畳んでポケットにしまった。
 「あのさ、私が昔の記憶がないことは知ってるよね?」
 由里が言った。
 「ああ。」
 「確かに記憶をなくす前には、キミのことを知ってたかもしれない。」
 「・・・」
 「でも今の私は、キミが知ってる私じゃないんだ・・・違う人間なんだ。」
  聞きたくない言葉だった。だがそれが現実だ。正面から受け止めなければならないことだった。
 和仁は黙って聞いた。
 「悪いんだけど、昔の私とキミに何があったかは分からない。だから、昔の事は忘れてくれないかな。今ここから、改めて二人の関係を始めたいんだ、パートナーとして。」
 由里の言葉が、和仁の心に重く響いた。和仁はしばらく考え込むと、立ち上がって言った。
 「・・・それはできない。キミといた思い出は、どうしても消せない。過去のキミと今のキミ、両方そろってこそ俺にとってのキミなんだ。だから俺は、過去の思い出を持った上で、キミとパートナーとしての新しい関係を作っていきたい。一緒に戦っていきたい。」
 由里が下を向いて黙り込み、タバコの火をもみ消す。
 「ダメかな?」
 しばらく考え込むと、由里は顔を上げて立ち上がった。
 「いいよ・・・それで。じゃあ改めて、よろしく!」
 そういうと由里は微笑み、握手を求める。和仁もつられて微笑み、由里の手を握る。
 二人は互いの手を固く握り合った。

 
 
 
 
166ヘリオス作者:2007/10/03(水) 21:45:57 ID:LB1X29Qc0
翌朝、特環線には陸上自衛隊のミサイル車両部隊が展開し、埼玉県の方角へ向けてランチャーを向けていた。
 車両に乗る隊員達の顔には緊張の色が見える。
「三曹、怪獣出てきますかね?」
「わかんね。こっちに向かってるのなら、まずスパイナー地雷原で木っ端微塵だろ。俺達はあくまで保険だろうから・・・」
 青々とした空には鳶がのんきそうに輪を描き、戦闘とは無縁なのどかな空気が漂っていた。恐ろしいほどの静けさだった。

 所変わって、防獣局司令室。
 「埼玉県、及び三多摩地区の住民の避難、完了しました。」
 「入間の第一高射群、地対地ミサイル発射準備完了、現在待機状態です。」
 「東京電力・多摩変電所、準備を整えて待機に入っています。」
 次々に入って来る報告を聞きながら、柳坂は無言でうなづいた。
 5分毎に観測部から送られてくる、オメガC‐3波の発生地点の情報が大型ディスプレイの地図に点として映し出され、それは確実に東京へと近づいていた。
 「・・・怪獣のスパイナー地雷原到達予想時間です。」
 オペレーターの報告を聞き、柳坂は言った。
 「さあ来い、化け物め!」
167ヘリオス作者:2007/10/04(木) 21:45:54 ID:5RuzgYZq0
「・・・えー、現在東京・埼玉の県境一帯は完全に封鎖され、現場の撮影も不可能になっているわけですが、間もなく攻撃が開始されるものと思われます。」
 マーキュリーベースのメインモニターにはTVのニュースが映し出され、隊員が固唾を呑んで見ている。H-ユニットの制服に腕を通した和仁も、自分のデスクでそれを見ていた。
 初日にそのデスクを与えられていたのだが、座るのは今日が初めてだった。いわば初出勤である。
 今日はヘリオスとの感応率を調べるテストがあったのだが、この事態に急遽予定を変更、出動待機に入ることになったのだった。

 「目標をロストだと?一体どうなってるんだ!」
 苛立って大声を上げる八神を横目で見ながら、柳坂は黙ってモニターを見つめていた。
 すでに地雷原到達予想時間から15分以上が経過している。怪獣出現の連絡もなく、ディスプレイ上の地図にもオメガC‐3波発生を示す点が現れていなかった。
 「まさか、地雷原に気づいたのか・・・」
 柳坂がつぶやく。
 「馬鹿な!ヤツは地中を移動しているんだ、1キロ先の地雷が見えるわけないだろ!」
 「奴が超音波を発していたとすれば、その反動を利用して感知することは可能ですが。」
 「だが怪獣が地雷を認識できるはずは・・・」
 「局長、奴等の知能を甘く見ないで下さい・・・関係各方面へ通達、現状のまま警戒を厳にし、待機せよ。」
 八神が言いかけるのを制止して柳坂がいう。
 司令室に、不気味な沈黙が訪れた。
168ヘリオス作者:2007/10/05(金) 17:59:19 ID:JgiD3m6c0
 一時間程たった時である。秩父市郊外の田園地帯。ここにも避難勧告が出されていたため、人影はない。
 突然、地面が揺れて田んぼが大きく隆起したかと思うと、その泥の中から怪獣がその巨体を現した。
 身長は50mを裕に超える、全身が鎧のような外骨格で覆われた、昆虫を思わせる姿だった。
 司令室には警報が鳴り響き、ディスプレイに〈怪獣発生〉の4文字が大きく映し出された。
 「秩父市郊外・ポイントS−37に怪獣発生!」
 発生地点は地雷原から離れており、最後にオメガC−3波が観測された地点よりも後退していた。
 「やはり気づかれていたか・・・進行方向は?」
 「秩父市中心部を目指しています。」
 「研究部より報告、怪獣の形態はカテゴリーδに相当。3年前に出現したものと同種です。」
 カテゴリーδとは昆虫型怪獣の総称である。そして3年前に発生した個体は、頭部に超音波発生機関を持っていた。
 「東京が無理と分かったんで、手近な人口密集地を襲おうってことか・・・」
 八神の言葉を聞き、柳坂は叫んだ。
 「全部隊攻撃開始!ヤツを止めろーっ!」

 特環線に展開していた車両部隊、入間の航空自衛隊第一高射群基地から一勢にミサイルが発射された。
 ディスプレイ上の地図のあちこちから、無数の直線が伸びていく。その直線は地図上の一点に向かって集束する。
 ミサイルは確実に怪獣に命中していた。しかし・・・。

 「怪獣、進行を続けています。ダメージ認められず!」
 怪獣の体を覆う外骨格によって、ミサイルは全く効いていなかった。
 「あと一時間で中心部に到達します!」
 「どうするっ!?」
 八神の声には焦りが感じられた。柳坂は考え込むと、言った。
 「・・・マーキュリーベースに連絡、H−ユニット出動!」
169ヘリオス作者:2007/10/05(金) 18:44:33 ID:JgiD3m6c0
 H−ユニットに出動命令が下った。
 「各員、〈ふがく〉へ速やかに搭乗せよ!」
 佐沼の号令一下、隊員達が部屋から駆け足で出て行く。
 「あの・・・俺は?」
 和仁が佐沼に聞く。
 「・・・彼女と一緒に来い。」
 そういうと佐沼は由里に目配せすると走り去っていった。
 「ついて来て。」
 由里はにそういうと、部屋を出て行った。和仁も彼女の後を追う。

 〈ふがく〉は発進し、海面から空中へと浮上した。
 二人が乗り込んだのは〈ふがく〉の中でも、コクピットとは別の部屋だった。
 シートに座った由里は、ベルトを締めると頭部の上半分を覆うような形状のヘッドギアをかぶる。
 「それは?」
 「これをつけると私の脳波や心拍数その他もろもろがモニターされるの。あと視界が遮られるから、ヘリオスの目を通した映像が入って来やすくなるんだ。」
 もう慣れた、といった感じで由里が答える。
 「そういえば・・・」と由里が言いかけ たとき、佐沼から通信が入った。
 「これよりヘリオスを解放する。」
 「了解。」
 そう答えると、由里は精神を集中させる。すると、首のペンダントが青く光り輝き、〈ふがく〉の前にヘリオスがその姿を現した。
 「・・・これ、初出動だよね。」
 由里がそういうのと同時に、「出動!!」という佐沼の号令とともに、〈ふがく〉とヘリオスは現場へ向かって飛び立った。
 
 「初出動・・・か。」
 飛行中の〈ふがく〉の中で 、和仁はつぶやき、隣に座る由里を見た。
 ヘッドギアで目は隠されているが、その横顔はひどく懐かしかった。
 高校時代、合気道部に所属していた彼女が、試合に臨む時の横顔、そのままだった。
 その横顔に、和仁は不思議な安堵感を覚えていた・・・。

                          〈つづく〉 
170ヘリオス作者:2007/10/05(金) 18:49:00 ID:JgiD3m6c0
 どうも最近忙しかったせいで、間が空きすぎてしまいました。
 あとストーリーもグダグダで長ったらしく,読みづらくなってしまいました。
 どうもすいません。失礼しました。
171中江翔也:2007/10/07(日) 20:38:35 ID:pQutI9Mx0
ウルトラマンサイガがいいと思います。変身アイテムはサイガフラッシャーです
172杉浦太陽:2007/10/07(日) 20:45:34 ID:bjciWJ1w0
僕は、以前ウルトラマンコスモスを主演をやらしていただきました。
そして僕が思いついたのはウルトラマンサイガです。
変身アイテムはサイガフラッシャーです。
173mljjsd:2007/10/07(日) 20:50:52 ID:bjciWJ1w0
sjc@
174mljjsd:2007/10/08(月) 10:17:17 ID:loMMSCYX0
ぎkjk;l

175名無しより愛をこめて:2007/10/08(月) 10:22:14 ID:Hty37pmg0
>170
心配するな、誰も読んでない。見てない、だから反響が何もない。
176中江裕也:2007/10/08(月) 10:22:15 ID:loMMSCYX0
ウルトラマンスーパーでいいですか。
177名無しより愛をこめて:2007/10/08(月) 11:23:28 ID:t3IAlUXO0
>>175
反響有難う。
定期的にageてくれる人達の御蔭でスレも保守されてますね。
178名無しより愛をこめて:2007/10/09(火) 21:57:42 ID:lrgj4hYA0
おわり
179はじめまして:2007/10/16(火) 00:31:54 ID:4A0FlH4xO
こんなの考えてみました。
〈予告〉        『ウルトラマンブリッツ』怪獣の出現によって荒廃し、宇宙のアウトロー達の巣窟となった地球。無法地帯となったこの星の荒野を、一人さすらう風来坊。彼が旅の途中で立ち寄ったとある村。
 その村が突如として怪獣に襲われた時、男は銀色の巨人に変身する。
 そして、その巨人を見た村の長老は言った…
 「あれは…ウルトラマン!」
 怪獣を倒し、去っていく男……
 旅を続ける男の行くてには、凶悪怪獣や極悪宇宙人が待ち受ける……
180ウルトラマンオーバー:2007/10/20(土) 08:36:45 ID:xTAWiqnp0
>>179
はじめまして
地球が無法地帯になって文明が荒廃し、怪獣や宇宙人が我が物顔で動き回るってのは新しい設定ですね
面白そうだと思います
是非頑張って作ってみてください
181ブリッツ作者:2007/10/23(火) 16:05:10 ID:WXvA9x9Y0
 どこまでも広がる荒野。生命の気配は感じられない。
 赤茶けた大地を、時折吹く風が砂塵を舞い上げていく。
 辺りには枯れた木々が数本立ち並んでいる他に、数十mはある巨大な生物の骨が大地に横たわっている。
 かつてそこには道路があったのだろう、所々にコンクリートがむき出しになり、それが延々と続いて道になっている。
 その道を、一人の男を乗せた馬が進んでいく。
 男は首からひざまでを覆うマントを着込み、丈の長いレザーブーツを履いている。
 クセのある長髪をポニーテールにし、眉毛は太く、目つきは鋭い。角ばった顔には無精ひげを生やしている。
 風来坊、流れ者、そんな言葉がピッタリないでたちである。
 男は突然、馬の歩みを止めた。男の視線ははるか遠くに注がれる。視線の先には黒いスジのような煙が数本、空へ立ち上っているのが見えた。
 嫌な予感がする。男は煙の上がっている方向へ馬を走らせた。
 そこには小さな町があったが人気はなく、あちこちから煙が立ち上り、まるで戦場のようだった。廃墟とガレキの山が広がり、自動車や戦闘機の残骸が炎を上げていた。
 馬から降りた男は、街の中を歩き回った。「ここもやられたのか・・・」と呟いたとき、男の歩みが止まった。人がいた。母親と娘、しかし、二人ともガレキの下敷きになり、互いに伸ばした手を握れないまま、すでにこと切れていた。
 男は、二人の手を握らせると、再び馬にまたがり、その場を後にした・・・。

『ウルトラマンブリッツ』
  #01・さすらいの巨人
182名無しより愛をこめて:2007/10/23(火) 18:11:01 ID:Xpi8crQ0O
いつまで前スレ残してんだよ。早く使いきれよ。
てかこのスレ立てるの早すぎだったろ。ただでさえ過疎ってるのに
二つもスレいらねーだろ。使いきるか容量オーバー本当に寸前で
次スレは立てな。いいか、それだけ鯖に負担掛けてるのを忘れるんじゃねーぞ
183名無しより愛をこめて:2007/10/23(火) 23:49:23 ID:4RgCqehM0
>>182
要らん世話。お前に負担を掛けてるわけじゃない。
184ウルトラマンオーバー:2007/10/24(水) 19:57:05 ID:t5a6bhR90
>>181
ついにはじまりましたな!
文章がわかりやすく、内容もしっかりと構成されていて、続きが気になります

がんばってください
185ブリッツ作者:2007/10/25(木) 16:03:48 ID:W0Uh/Rsk0
 『ウルトラマンブリッツ』
   #01・さすらいの巨人
 (1)
 荒野をぬけ、山間の道を男は進んでいた。
 山には木々は生えておらず、岩肌が露出し、あちこちに穴が開いている。
 なにかの鉱山らしい。トロッコのレールや重機が見える。だが、そこに人気はなかった。
 道端に立てられた〈杉沢村・あと2km〉という看板を過ぎたとき男の視界に、こちらに向かって歩いてくる人影が見えた。
 人影は三人。どうやら親子連れのようだが、様子がおかしかった。
 三人とも持っている荷物が多く、あわてている。まるで夜逃げをしているようである。
 男の乗った馬と、三人がすれ違ったときである。父親らしい男がいった。
 「村へ行くのかい?」
 「ああ・・・」
 「悪いことはいわねえ、止めておきな。」 
 「何かあるのか?」
 「怪獣が出るんだよ、あそこにいたんじゃ命が幾つあってもたりねえや!」
 「ほう・・・」
 そうつぶやくと、男はそのまま馬の脚を前に進めた。
 「おい、こっちは親切で言ってやってるんだぞ!」
 父親が制止する。
 「悪いが、俺の進む道は俺が決める・・・」
 男は気にも留めずに前へ進む。
 「馬鹿ヤロー!」
 父親の叫び声だけが、山道に虚しくこだました。
 
186名無しより愛をこめて:2007/10/28(日) 04:59:03 ID:qB4sjQrQO
上げます
187ブリッツ作者:2007/10/29(月) 18:42:31 ID:4NjSIm5n0
 (2)
 巨大な穴のような足跡のついた田んぼや、潰された家々の残骸を横目で見ながら、男が村に着いた時は夕方に近かった。
 古びた駅舎から延びるメインストリートの両側に、店が何軒か建ち並んでいるが人の気配はなく閑散としている。唯一灯りが点いているのは〈めし処〉と書かれた看板の店だけだった。どうやらそこは酒場でもあるらしい。
  男は店のそばに馬をつなぎとめ、スイングドアを開けて中に入った。
 「いらっしゃい。」
 店内に客の姿は見当たらず、店の奥から女将の声だけが聞こえた。彼はゆっくりと店の中に進み、女将の正面となるカウンターの一番奥の席に腰を下ろした。
 「何にする、もっとも食事はあり合わせのものしか出せないし、酒も焼酎しかないけどね。」
 女将がいった。歳は30代前半といったところか、男よりは確実に年上だろう。
 「かまわん、飯をくれ。」
 「あいよ。」
 「それから・・・」
 「わかってるよ、お金ないんだろ。いいよ、久しぶりにこの村に来てくれたお客さんなんだ、アタシがおごるよ。」
 「すまない・・・。」
 女将は食事を作り始めた。
 「姐さん、ちょっと聴いていいかい。」
 男がいった。
 「なんだい?」
 「この村、怪獣が出るって聞いたんだが・・・ここに来る途中、村を出て行く家族と会ったぜ。」
 男の言葉を聞いて、女将の表情が曇る。
 「そうかい、まぁ隠したって仕方ないことだからね・・・三ヶ月前さ、ヤツが出始めたのは。元々ここは鉱山の村で栄えてたんだけど、どんどん人がいなくなってさびれちまった。今じゃ数えるほどしかいないよ。」
 「アンタは逃げないのか?ここにいても商売にならないだろう?」
 「アタシはこの村が好きなんだよ。人がいる限り、店は続けたいんだ。それにGAP(ギャップ)の駐在が頑張ってくれてるしね。」
 「・・・そうか。」
 男がそういったとき、料理が出来上がり、女将が食事の載ったトレーを差し出した。
 それを受け取ったとき、男と女将の手が触れた。
 「・・・!」
 二人が同時に同じことを思った瞬間、スイングドアが開いてGAPの制服を着た男が入ってきた。
188ブリッツ作者:2007/10/29(月) 19:09:54 ID:4NjSIm5n0
 (3)
 「おや、噂をすれば・・・この村の駐在の、リクさんだよ。」
 リク、というGAPの駐在は、女将と同年代位のがっちりした体系の男だった。男がリクに向かって軽く会釈をし、リクもそれに応えると、席に腰を下ろす。
  「ダメだ、レンさんの所も。一家三人、全員逃げ出しちまってた・・・」
 「そう、ますます寂しくなるねえ・・・、お酒にする?」
 「ああ、頼む。」
 焼酎の入ったグラスを受け取ったリクが、黙々と飯を食べる男にいった。
 「あんた、どういう目的でここまで来たか知らんが、早いとこ出て行ったほうがいい。」
 リクの言葉を、男が無言で受け流したとき、店の中に5〜6歳くらいの男の子が駆け込んできた。
 「母ちゃん、ただいまー!」
 どうやら女将の子供らしい。子供は男を見て一瞬怪訝な顔をしたが、すぐに気にも留めずにリクへ駆け寄り、「ねえ、おじちゃん・・・」といって、ポケットから野球ボールを取り出す。
 「よーし、やるか!」
 リクは笑顔でそれに応える。
 「こらショウタ!おじちゃん仕事終わったばかりで疲れてるんだから、後にしな。」
 子供の名前はショウタというらしい。
 「俺なら大丈夫だよ。」
 リクとショウタは連れ立って店の外に出ると、キャッチボールを始めた。
 「本当にいい人だよ、うちの子もよく懐いて・・・」
 女将は笑顔で外の二人を見る。
 「ところで姐さん・・・アンタ、地球人じゃねえな?」
 男の言葉に、女将の表情が険しくなる。しかし、すぐに不敵な笑みを浮かべて言った。
 「お兄さんも、なんか訳ありって感じだけど、聞くだけ野暮だね・・・今の地球には色んな星のヤツがいるんだ。地球の風土に溶け込んで、地球の法を守って暮らしてれば、どこの星の生まれでもあっても、地球人だろ?」
 「確かに、その通りだな。」
 男が微笑んだとき、店の中にボールが飛び込んできた。

189ブリッツ作者:2007/10/29(月) 19:11:21 ID:4NjSIm5n0
 (4)
 「ちょっと、なにしてんの!」
 「おぉ、すまんすまん。」
 ボールを追いかけてリクが入ってきた。
 「なあ、アンタ、今晩泊まるところはあるのか。」
 ボールを拾いながらリクが尋ねる。
 「いや・・・」
 「だったら俺んとこに泊まらないか?」
 リクの申し出に、男はしばらく考え込むと、言った。
 「・・・そうさせてもらおう。」
 「よし、決まりだ。ところでアンタ、名前はなんていうんだ?」
 男はゆっくりと応えた。
 「エイジ・・・俺の名は、エイジだ。」
190ブリッツ作者:2007/10/29(月) 19:56:13 ID:4NjSIm5n0
 (5)
 「なぜ俺を泊めることにしたんだ?」
 エイジがリクに尋ねた。
 「別に深い理由はねえよ。俺が忠告したのに、アンタは居座るつもりのようだったからな。だったら無理に追い出すこともないし。」
 なるほど、女将の言うとおりいい人である。
 ここは村の外れにあるGAPの駐在所だ。表にはジープと小型VTOL戦闘機〈GAPフライヤーα〉が停めてあり、奥の方にはミサイルと弾薬を収めた倉庫もある。
 「怪獣が出るって聞いたんだが、詳しいことを教えてくれないか?」
 「ああ、いいとも。三ヶ月前だ、ノボル・・・あの女将の旦那山に入ったまま行方不明になってな、それと入れ違いに怪獣が出やがった。以来このザマさ。鉱山も開店休業状態だ。」
 「・・・。」
 「けど、そのノボルって言うのがとんでもないロクデナシでな。昼間っから飲んだくれて働きもせず、女房子供に暴力は振るうわ、むしろいなくなってホッとしてるんじゃないかな?」
 複雑そうな表情でリクは言った。
191広井王子vsあかほりさとる:2007/10/29(月) 21:25:14 ID:LzEmTfn70
昔小学館の学習雑誌に載っていた内山まもるの漫画『ザ・ウルトラマン』には見たことも聞いたことも無いようなウルトラ人が沢山出ていたよ。
ウルトラセブンもどきとかウルトラの父もどきとか・・・。
192ブリッツ作者:2007/10/31(水) 14:21:53 ID:Cv8ZzqWVO
 (6)
 翌日の早朝、耳をつんざくような鳴き声と、地震のような揺れによって、エイジは眠りを覚まされた。
 ブーツを履き、マントを羽織って表に出ると、リクが村の方向を見つめている。辺りには霧が立ちこめ、怪獣の姿は見えなかったが、鳴き声は確実に村の方向から聞こえる。
 「近いな…野郎、今度はマジでこの村を潰すつもりだ!」
 そういうとリクはヘルメットを被り、〈GAPフライヤーα〉に乗り込んだ。
 「エイジさん、後を頼むぜ。」
 エイジは無言でうなづく。リクを乗せたフライヤーは、轟音ともに垂直上昇すると、村の方向へ飛び去って行った。
193ブリッツ作者:2007/10/31(水) 18:36:55 ID:bhISzxvF0
 (7)
 身長およそ40m程のその怪獣は、全身が白い外骨格で覆われ、昆虫を思わせる外観をしていた。
 村人達は高台に向かって我先に逃げていく。
 一人の村人の眼に、一人の子供がとまった。ショウタだった。
 「おい、ショウタ。母ちゃんはどうした?」
 「・・・わかんない」
 「なんだと?・・・仕方ない、一緒に来い!」
 村人は、ショウタを連れて逃げた。怪獣は確実に村に近づいてくる。そこへ、リクの操縦するフライヤーが飛んできた。操縦席のリクが叫ぶ。
 「この野郎、今日という今日は容赦しねえぞ。喰らえーっ!」
 機首に装備された、省電力レーザー砲が発射された。レーザーは怪獣に命中して火花を散らすが、怪獣は動じることなく前進する。
 「くそう、もうダメだ!」
 高台に避難した村人達が口々に言う。とその時、座り込んでいた一人の老人がいった。
 「大丈夫じゃ!・・・こんな時こそ、ウルトラマンは来る!」
 その場にいた人々が、一瞬沈黙したが、すぐに皆、口々に言い始めた。
 「ったく、爺様よぉこんな時に何いってるんだ。」
 「やれやれ、また爺様のウルトラマンが始まった・・・そんなモンいるわけねーだろ!」
 この「爺様」と呼ばれている老人。村の長老なのだが、痴呆が大分進行していため、彼の言うことはいつも皆から受け流されていた。
 怪獣の迫る村の中には、もう誰もいない・・・はずだった。だがそこにエイジはいた。
 彼は感じていた。村から怪獣へ向かって放たれているテレパシーの波動が・・・。
 
194ブリッツ作者:2007/10/31(水) 19:05:33 ID:bhISzxvF0
 (8)
 〈めし処〉。その裏からテレパシーは放出されている。エイジは店の裏に回り込んだ。
 そこには、女将が一人で立ちつくし、右の手のひらを怪獣に向けていた。
 「・・・姐さん、アンタが怪獣を操ってたのか?」
 「・・・!」
 エイジの言葉に、彼の存在に気づいた女将が振り返る。
 「見たね。」
 「なぜこんなことを?」
 エイジが言ったのと同時に、女将は懐から銃を取り出し、彼へ向かって発砲した。
 発射された光弾を、間一髪でよけたエイジも、右腰のホルスターから銃を抜いて光弾を発射する。
 ちなみに二人の銃は地球製のものではない。
 エイジの撃った光弾は女将の銃を弾き飛ばした。
 「・・・ちっ!」
 分が悪くなった女将は、表通りへ逃げ出した。エイジもそれを追って表通りに出たが、すでに彼女の姿はなかった。怪獣はいまだ歩みを止めない。
195ブリッツ作者:2007/10/31(水) 19:14:43 ID:bhISzxvF0
 (9)
 フライヤーはミサイルを発射する。しかし怪獣には効かず、怪獣は逆に尻尾で攻撃してくる。
 「ちくしょーっ!」
 リクが叫んだ瞬間、フライヤーの右主翼が尻尾に当たって破壊された。フライヤーはバランスを失って駅の建物へ墜落した。 
 それを見たエイジは独り言のように言った。
 「・・・やるしかないか。」
 エイジは左腰のホルスターから、先端にクリスタルが埋め込まれたスティック状のアイテムを取り出した。
 エイジはそれを右手に持つと、刀を抜くような姿勢で振りかぶった。
 クリスタルが光り輝き、周囲の光の粒子がスティックに集約される。
 「うおおおーーーっ!」
 と叫ぶと、エイジはスティックを勢いよく空中にかざした。
 次の瞬間、エイジの体はまばゆい光に包まれた。
196ブリッツ作者:2007/10/31(水) 20:56:56 ID:Cv8ZzqWVO
 (10)
 村人達と高台に避難していたショウタの眼に、村の中心から光が水柱のように、空へ突き上がるのが見えた。そしてその光の中から現れた、真っ赤な体に銀色のラインが入った巨人の姿も。
 村人達のどよめきの中、巨人は怪獣にドロップキックを見舞う。
 が、怪獣の堅い外骨格に弾き飛ばされ、巨人の身体が地面に転がる。なんとか身を起こした瞬間、巨人の首に怪獣の尻尾が巻き付いき、首を締めあげる。
 しかし巨人は動じる事無く、両手で頭部のトサカ状の突起を挟むと、前へ勢いよく振り出した。すると、突起の内部から刃物が飛び出し、ブーメランのように旋回すると、怪獣の尻尾を切断して再び突起の中へ収まった。
 激痛に怪獣が悲鳴をあげる。巨人は尻尾を振りほどくと、短くなった怪獣の尻尾をつかみ、ジャイアントスイングをかける。
 怪獣の巨体は地面に打ち付けられた。相当なダメージだったらしく、フラフラだ。
 巨人は両腕を水平に広げ、体の前でそれを十字に組んだ。次の瞬間、腕から青白い光線が発射され、怪獣に直撃した。
 断末魔をあげる間もなく、怪獣は大爆発を起こして消し飛んだ。
197ブリッツ作者:2007/10/31(水) 21:41:25 ID:Cv8ZzqWVO
 (11)
 戦いがおわった荒野に、巨人は一人立ち尽くしていた。
 「なんだありゃ?」
 崩壊した駅舎からなんとか這い出してきたリクは、巨人を見上げていった。
 突然の出来事に、村人達には喝采を送る精神的余裕もなく、ただ呆然と巨人を見守るしかなかった。
 たが一人だけ、様子のおかしい者がいる。爺様である。目を大きく見開き、口をパクパクさせている。
 「爺様、どうしたんだ?」
 村人の問いに、爺様は答えた。
 「あれは…あれが、ウルトラマンじゃ!」
 辺りに動揺が広がる。
 そんな様子を横目で見ながら、巨人〈ウルトラマン〉は大空の彼方へと飛び去っていった。

 なぞの男・エイジ=ウルトラマンとは一体何者なのか?その正体は?戦う目的は?
 その真相は、作者のみぞ知る……。
 〈To be continued…〉
198ブリッツ作者:2007/10/31(水) 22:34:38 ID:Cv8ZzqWVO
間があいてしまいましたが、ブリッツ第一話完成しました。よかったら感想お願いします。
199ウルトラマンオーバー ◆FTVw.4PYoM :2007/11/01(木) 18:06:42 ID:8HwlJS+w0
>ブリッツ作者様
西部劇のような雰囲気がとても良かったです
あの姐さんが怪獣を操ってたのはちょっち意外でした
これからの展開が楽しみです
これからも頑張ってください
200ブリッツ作者:2007/11/02(金) 21:41:07 ID:Pl0XI1boO
 ウルトラマンオーバー様
 ありがとうございます。ではこの調子で続けさせていただきます。
201ブリッツ作者:2007/11/02(金) 22:09:50 ID:Pl0XI1boO
 ウルトラマンブリッツ・設定1
 〈世界観〉
 遠い未来(多分)。怪獣の出現と極悪宇宙人の横行によって地球は荒廃し、無法地帯と化している。
 戦いによって国家という枠組みも崩壊し、生き残った人々は、それぞれ独自のコミュニティーを形成してくらしている。コミュニティーは規模によって「村・町・都市」に分けられ、独自の法や政治体制をもつ。
 一応それらを統括する〈政府〉が存在するが、コミュニティーごとの自治には干渉せず、唯一の権限として各コミュニティーの規模に合わせてGAPの隊員を派遣、任命することができる。
 ようするに、日本の戦国時代や西部劇のような世界になっているのである。
202ブリッツ作者:2007/11/02(金) 22:32:27 ID:Pl0XI1boO
 〈GAP(ギャップ)〉
Guardians of All the People (全ての人民の守護者)の略。
 唯一の〈政府〉直属機関で、怪獣をはじめとするあらゆる災厄から人々を守り、治安を維持することが使命。
 隊員になるには様々な方法があり、〈政府〉の訓練校を出てなるものや、コミュニティーの住民による選挙で選ばれ、〈政府〉に任命されてなるもの、家業として代々継いできたもの等がいる。
 隊員には制服と、専用銃〈GAPガン・GAPランチャー〉、派遣先の規模に合わせて戦闘機〈GAPフライヤーα・β・γ〉が、それぞれ支給される。
 西部劇でいう保安官的な位置付けにあたる。
203ブリッツ作者:2007/11/02(金) 23:29:03 ID:Pl0XI1boO
 〈ウルトラマンブリッツ〉
 ・エイジが変身する赤い巨人(ウルトラセブンの系統)。その正体は不明。
 身長:目測で約40m 
 体重:不明
 出身:宇宙のどこか
 技 :グランスラッガー…アイスラッガーとほぼ同じ技。
    スパークレイシュトローム…腕を十字に組んで発射する光線。

 ・エイジ:本作の主人公。寡黙で冷静な性格。年齢は不明だが、見た感じは25、6歳位。なぜブリッツに変身できるのか、本人の口から語られることはないため不明。旅をする理由、過去の経歴も一切不明である。
 ・ミラージュシュート:エイジが使う銃。その出所は不明。
 ・エクスライザー:ブリッツに変身する際に使用するスティック状のアイテム。
204ウルトラマンオーバー ◆FTVw.4PYoM :2007/11/03(土) 16:59:00 ID:HL8XnNx/0
>ブリッツ作者様
シンプルながら作りこまれ、柔軟に話を作れる設定だと思います
これから徐々に明かされていくブリッツの謎がとても楽しみです
205ブリッツ作者:2007/11/05(月) 17:50:42 ID:h8hVPkjs0
 『ウルトラマンブリッツ』
   #02・巨人、怒る
 (1)
 あれから数日、村はようやく落ち着きを取り戻し始めていた。
 村人達の話題は、あの巨人〈ウルトラマン〉でもちきりだった。
 「ウルトラマンか・・・なんでも爺様が子供の時に見たって言うのは聞いたことがあったが、なんせ俺がガキの頃から、爺様はあの調子だったし・・・そこのスパナ取ってくれ。」
 そういいながら、リクはフライヤーの修理を続けている。
 一体爺様は幾つなんだ?と思いながら、エイジは修理を手伝っていた。エイジはリクにスパナを渡す。
 あの後、駅舎に突っ込んだフライヤーは、8頭の馬によって瓦礫の中から引っ張り出され、駐在所まで運ばれた。
 幸い、飛行機能に問題はなく、右側の主翼も溶接でくっつけることができた。しかし、機首の省電力レーザー砲は完全に破損し、使用することは不可能だった。
 リクは相当頑丈な体をしているらしい。怪我もなく、ピンピンしていた。
 あの日以来、〈めし処〉はノレンを降ろしたままだった。
 女将は帰っていない。ショウタは村人の家に預けられていた。
 「まったく、女将はどこに行っちまったんだ・・・ショウタも置いて。」
 リクがつぶやく。
 エイジの脳裏に怪獣を操っていた女将の姿が浮かぶ。なぜ彼女が・・・
 「けど、これで怪獣がいなくなったんだ、また山に入ることができるな。」
 「そういえば、あの鉱山からは一体なにが採れるんだ?」
 エイジが聴いた。
 「スペシウム・・・火星でしか採れないっていわれてた重金属さ。なぜかあの山でも採れることがわかったんだが、加工しにくいせいで需要は低いぜ。」
 エイジに背を向けたまま、リクが答える。
 「あの山からスペシウムが・・・」
 エイジがつぶやく。
 「エイジさん、レンチを頼む・・・エイジさん?」
 リクが振り向いたとき、エイジの姿はそこになかった。
 
206ブリッツ作者:2007/11/05(月) 18:41:38 ID:h8hVPkjs0
 (2)
 岩肌と洞穴がむき出しになった山中を、エイジは一人歩いていた。
 一時間程歩き回ったとき、谷の方から笑い声が聞こえてきた。
 声のする方へ行ってみると、谷底に巨大な円盤状の宇宙船が停めてあり、そのそばで焚き火を囲んでいる数人の人影が見えた。
 よく見るとそれは地球人ではなかった。巨大な眼をした異星人達である。
 彼らは酒盛りの真っ最中のようであった。皆、茶色い液体の入った紙コップを持ち、それを口に運んでは馬鹿笑いをしている。その様子を、エイジは岩陰から伺っていた。
 「しかしどうするよ?あの赤いヤツのせいで、ノボルの女房の怪獣がやられちまって、もう手も足もでねえ・・・」
 「ケッ!胸糞が悪いぜ、もう飲むしかねえや!」
 「待て、ノボルの話じゃあの女、もう一匹カプセル怪獣を持ってるらしいが・・・」
 「じゃあ、そいつを使わせれば、あの村の奴等を追っ払うことができるな・・・よっしゃー!おい、飲むぞ!」
 異星人の一人が一気飲みを始め、周囲が「エイリアン!エイリアン!エイリアン!」と、わけのわからない一気コールを掛ける。
 彼らの馬鹿騒ぎを遠めに見ながら、エイジはその場を離れた。
207ブリッツ作者:2007/11/05(月) 19:43:37 ID:h8hVPkjs0
 (3)
 その日の夕方、村に戻ったエイジの目に意外なものが映った。
 〈めし処〉に明かりがついていた。店の中に入ると、ショウタとリクと数人の村人、そして女将がいた。皆笑いあっている。
 「あら、お兄さん。アンタも無事だったんだね!」
 何事もなかったかのような笑顔である。あまりの白々しさに、エイジは呆気にとられてしまった。
 「座りなよ、今日は怪獣がいなくなったお祝いだ!」
 女将いい、周りも座るように薦める。言われるがまま、エイジは席に着き、そのまま大宴会となった。
 が、実はエイジは下戸である。そのため、宴会が始まって早々に潰れてしまった。
 どのくらい時間が経ったのか、エイジは目を覚ました。周りを見ると、皆酔いつぶれて眠っている。
 気分が悪い。エイジは店の裏に出て大きく深呼吸をした。そのとき、背中から声が聞こえた。
 「お目覚めかい?お兄さん、いやウルトラマン!」
 振り返ると、そこには女将が立っていた。とっさに銃を抜いて身構えるが、女将は平然としている。
 「まあそうカッカせずに、ちょっと話さないかい?」
 その言葉に落ち着きを取り戻したエイジは、銃をホルスターに収める。
 二人は村の外れのほうへ向かって、連れ立って歩き出した。
 
208ブリッツ作者:2007/11/06(火) 16:10:02 ID:nfBqXMy90
 (4)
 「アンタ、なかなかやるねえ。バグエル・・・あたしの怪獣を倒すなんて。」
 ここは村外れの竹藪の中である。空には満月が輝き、その光が二人の姿をはっきりと映し出していた。
 「アンタの旦那のことは聞いている。昼間、山の中で宇宙船とリザール星人達を見た。連中はアンタら夫婦の事を知っていた。そして、あの山にはスペシウムの鉱脈がある・・・」
 エイジは淡々としゃべり続けた。
 「なるほどね、そこまで知られちゃったか・・・」
 「連中の狙いはあの山のスペシウム・・・地球人にとってはただの重金属だが、実は膨大なエネルギーを秘めた物質だ。地球外に持ち出せばいい商売になる。」
 女将は黙り込んで聞いている。
 「アンタの旦那は連中に拉致され、アンタは旦那の命と引替えに怪獣を使って、採掘に邪魔な村の人達を追っ払らうことを強制された。違うか?」
 「そのとおりさ。おおっぴらに追い出したり、強制労働なんかやらせたら、GAPが黙ってないからね・・・」
 「・・・この村が好きだって言った、あの言葉は嘘だったのか?」
 エイジの問いかけに、女将は感極まったように言った。
 「本当だよ、けどね・・・アタシにとってはあの人の命も、同じ位大事なんだよ!」
 エイジには返す言葉が見つからなかった。
209ブリッツ作者:2007/11/06(火) 16:11:32 ID:nfBqXMy90
 (5)
 女将は語り続ける。
 「〈怪獣使い〉といわれた、アタシらセネカ星人の一族はね、報酬次第でどんなことでもやる宇宙の壊し屋さ。全ての感情を律して棟梁の命令に従う、機械のような連中・・・」
 エイジの脳裏に、この村に来る前に見た町の痛々しい光景がよぎった。
 「けどあの日、潰す前の下見に行った町であの人と出会ってから・・・」
 女将は、思い切ったように行った。
 「惚れちまったんだよ、あの人に!あの人は、異星人のアタシを受け入れてくれた。それがうれしかった。」
 エイジはただ黙って聞いた。
 「命令に逆らって、アタシ達は逃げた。そしてこの村に流れ着いて、ショウタが生まれた。・・・あの人、確かに乱暴でどうしようもない所もあるけど、やっぱり大事な人なんだよ、だから助けたい。」
 「姐さん、俺をここに連れ出したのはまさか・・・」
 エイジの問いに女将は答えた。
 「実は連中の頭から、アンタを捕まえてつれて来るように言われたんだけど、全く、どうすりゃいいんだろうね。」
 そういうと、女将は泣き崩れた。エイジは、黙って彼女を見つめた。
210ブリッツ作者:2007/11/07(水) 21:41:30 ID:4eYLo3Ek0
(6)
 「・・・俺を差し出したところで、奴等はまたアンタに同じことをさせるぞ。」
 エイジが語りかけたとき、女将が顔を上げた。
 「バグエルツヴァイ・・・もう一匹の怪獣は特別でね。アタシの生体エネルギーを実体化したカプセルに封じ込めてあるんだよ。」
 そういうと女将は、懐からタバコの箱ほどの大きさのカプセルを取り出して見せた。
 「連中はこれを当てにしているようだけど、コイツが動けるのはカプセルを形成するエネルギーが消えたとき・・・」
 「つまり・・・」
 「そう、アタシが死んだときさ。」
 女将が自嘲気味にいう。完全に行き詰ってしまった。今のこの状況、そして作者の筆も・・・。
 その時、エイジはこちらに注がれる視線に気がついた。
 しかし彼は気づかないふりをしてしばらく黙り込むと、言った。
 「姐さん、俺に考えがある・・・」
211名無しより愛をこめて:2007/11/08(木) 10:52:26 ID:SQWPh106O
212名無しより愛をこめて:2007/11/09(金) 07:57:02 ID:vKCYoo+fO
213ブリッツ作者:2007/11/09(金) 10:08:06 ID:vKCYoo+fO
 (7)
 明け方。エイジと女将を乗せた馬が山中を進んでいく。
 やがて谷底の宇宙船が見えると、手綱をとるエイジは馬を停め、二人は馬から降りて谷を下った。谷底に辿り着くと、エイジは宇宙船に近付き、言った。
 「オーイ、女将から大体のことは聞いた。そこで相談だがどうだ、俺を買わないか?」
 エイジの声が谷に響き渡る。
 「どういうことだ?」
 少し間を置いて、宇宙船のスピーカーから声が響いた。
 「俺が、条件付きであの村を潰してやると言っとるんだ。腕はこの前見せたとおり、この女より頼りになるぜ!」
 「マジで言ってるのか?」
 「マジだ!この仕事が終わったら、アンタらの用心棒になってもいいぞ!値は張るが損はさせない、さあ、どうする?」
 「よーし、買った!あの村は任せたぜ!」
 即答である。
 「待ちな、条件付きだと言っただろ、まずそれを呑んでもらう。」
 「条件たぁ、何だ?」
 「この女の亭主を放してコイツら夫婦と手を切り、俺と独占契約しろ。でなきゃこの話はなしだ!」
 「…!?ちょ、ちょっと待て、少し考える時間をくれ!」
 スピーカーの声は明らかに動揺している。それから20分程が経ち、答えが返ってきた。
 「条件は受け入れる。ノボルは放して、アンタを雇うから、中へ入ってくれ!」
 うまくいった。エイジは女将に軽く目配せすると、宇宙船の入り口の前に立った。
214ブリッツ作者:2007/11/09(金) 17:38:24 ID:vKCYoo+fO
 (8)
 しかし、いつまで経っても入り口は開かなかった。よく見ると手動らしい。エイジは取っ手に手をかけた。
 ガラガラガラと、宇宙船らしからぬ音をたてて入り口が開いた。ちなみにこの入り口、引き戸である。
 エイジと入れ違いに、中から一人の男が外へ出ていく。この男がノボル、女将の夫である。
 「あんたーっ!」
 と叫んで女将がノボルに駆け寄る。二人は抱き合い、再会を喜んだ。その時、スピーカーから声が響いた。
 「というわけで、お前らはもう用無しだ。どこへでも失せな!」
 女将とエイジは互い軽くにうなづきあうと、夫婦はその場から走り去る。二人の後ろ姿を見送り、エイジは戸を閉めた。
 「言っとくが、村のGAPにタレ込んでも無駄だぜ。その前にこのウルトラマンさんが、村の連中を皆殺しにして下さるからな、ハハハハハ!」
 スピーカーから響く邪悪な笑い声が、逃げる二人の背に突き刺さる。
 エイジは広い部屋に通された。ここが宇宙船の中枢らしい。部屋にいた十数人のエイリアン達の視線が、一斉にエイジに注がれる。
 過半数はリザール星人だが、よく見ると両手がハサミでセミのような顔をした者や、丸い頭にクチバシが生えた者もいた。
 ようするにこの一味は、宇宙のあぶれ者の寄せ集めである。
 「よく来てくれた、まあ座ってくれ。」
 奥の方の席に座っていた、太ったリザール星人がエイジに言った。この男が首領らしい。
 エイジは言われるがままに席に着いた。
215キーボードクラッシャー少年:2007/11/09(金) 21:55:59 ID:SZkrJGlr0
ウルトラマンサイガはどうですか。
216名無しより愛をこめて:2007/11/10(土) 17:31:34 ID:D7oQew910
このスレ自体が板違いということで削除依頼でも出してくるかな。
誰かが言ってたが、同人誌の部類に入るスレだろうからな。
217名無しより愛をこめて:2007/11/10(土) 19:50:11 ID:lfaVDF6X0
>>216
あ、本当に言ってらw
218ブリッツ作者:2007/11/11(日) 15:04:51 ID:RdvgItp00
 (9)
 女将とノボルは、宇宙船から遠く離れた、谷を流れる川の岸辺に辿り着いた。
 ノボルを助けた後、エイジは頃合いをみて、宇宙船から脱出する手筈になっていた。ここは事が済んだ後、三人が落ち合うことになっている場所である。
 女将はそのことをノボルに告げた。
 「参ったなあ、そりゃあ・・・」
 「どうかしたのかい?」
 「余計なことをしてくれた御陰で目論見が狂ったぜ。」
 ノボルはそういうと、懐から拳銃を取り出し、銃口を女将へ向けた。予想外の出来事に、女将は固まってしまった。
 「まあいい・・・どの道お前は、用が済んだら消すつもりだったしな。その後で宇宙船の連中に知らせれば、あのウルトラマンもお終いだぜ。」
 ノボルは平然と言い放った。
 「あんた、まさかアイツらと・・・」
 「グルだったんだよ、最初からな。」
 ノボルはニヤつきながら、三ヶ月前に山中でリザール星人達と遭遇、スペシウムが金になることを聞かされ仲間になったことを告げた。
 「騙してたの?ずっと・・・」
 「お前、面白い位簡単に騙されるんだもんな・・・まあ、俺みたいなヤツを信じたお前が馬鹿だったってことさ。」
 女将は絶句した。
 「あばよ・・・」
 谷に銃声が響いた。
 
 「何だと!?」
 宇宙船内で首領から、ノボルが仲間であること、女将を殺して戻ってくることを聞いたエイジは思わず叫んだ。
 「どうかしたのか?」
 首領が聞く。エイジはなんとか平静を装って答えた。
 「いや、何でない・・・そうか、そういうことか。」
 迂闊だった、まさかノボルもグルだったとは・・・。こうなったら一刻も早く、ここから脱出しなくてはいけない。

219名無しより愛をこめて:2007/11/12(月) 17:30:24 ID:J40scq5P0
誰も削除依頼止めないから出しとくよ。
誰も削除依頼止めないから出しとくよ。誰も削除依頼止めないから出しとくよ。
220ブリッツ作者:2007/11/12(月) 19:31:29 ID:D4BggS7J0
(10)
 「どこへ行くんだ?」
 突然席を立ったエイジにむかって、首領が言った。
 「便所だよ。」
 エイジがぶっきらぼうに言う。
 「そうか、廊下に出て右の突き当たりだぜ。」
 「悪いな・・・。」
 エイジがそういった時、突然部屋の戸が開いてノボルが駆け込んできた。
 「間に合った!おい頭、そいつはとんだ食わせ者だぜ!」
 「何!?・・オイ!」
 首領が皆に合図を送る。エイジはホルスターから専用銃〈ミラージュシュート〉を抜いたが、それより一瞬早く銃を構えたエイリアン達に囲まれてしまった。
 「おとなしく銃を捨ててもらおうか・・・」
 エイジの鼻先に銃を突きつけたリザール星人が言う。
 言われたとおり、エイジは銃を捨てる素振りを見せた。銃がエイジの手から離れる・・・。
 その瞬間である。エイジは撃鉄の部分についたボタンを押した。すると、ミラージュシュートがスティック状に変形し、先端の銃口だった部分から光の粒子が噴き出した。
 「ビームサーベル!?」
 リザール星人がそういった瞬間、彼の体は真一文字に斬られ、上半身が床に転がった。
 瞬時の出来事に、エイジを囲んでいたエイリアン達は状況が呑み込めず、固まってしまった。
 エイジは瞬く間に数人のエイリアンを切り倒すと、再びミラージュシュートを銃へ変形させた。
 「やっちまえーっ!」
 首領が叫び、エイリアン達とノボルが一斉に、エイジに銃口を向ける。たちまち激しい銃撃戦となった。
 テーブルの影に身を隠したエイジは、指を口元へと運び、指笛を吹いた。周囲にカン高い音が響き渡る。
 それから数秒後だった。
 「おい、なんか聞こえねえか?」
 エイリアンの一人が言った。確かに遠くの方から、何かが近づいている音が聞こえた。それはまるで、馬が走っているような・・・。
 銃撃が一瞬止んだ。その隙にエイジは廊下へ脱出すると、銃で壁を破壊した。
 「逃がすな!」
 首領が叫んだ瞬間、エイジは外へ飛び出した。ちなみにここは、地上から10mほどのの高さにある。必然的にエイジは飛び降りる形となった。
 が、それと同時にエイジの馬が落下点へ駆け込んでくる。ジャストミート、落下点を過ぎたときには、エイジは馬の背にまたがっていた。
221ブリッツ作者:2007/11/13(火) 16:13:11 ID:15rbvL3f0
(11)
 エイジを乗せた馬が谷を駆け抜けていく。
 「チクショー!追え、船を出すんだ!」
 首領の命令によって宇宙船が離陸し、エイジを追いかける。まずい、追いつかれる。と、後ろを振り向いたエイジが思った時だった。
 突然、耳をつんざくような音とともに、エイジの頭上をミサイルが通り過ぎ、そのまま後方の宇宙船に直撃した。
 円盤状の宇宙船の前部が大爆発を起こした。突然の出来事に、船内がパニックになる。
 エイジが前を見ると、こちらに向かって何かが低空で飛んで来るのが見えた。
 「あれは・・・」
 GAPフライヤーαだった。機首のレーザー砲がないことから、リクの機体であることが分かる。
 フライヤーとエイジがすれ違う。その瞬間、操縦席のリクがエイジに向かって右手の親指を立てて見せる。
 あの時、竹やぶでエイジと女将のやり取りを聞いていたリクは、フライヤーの修理を終えてここへ駆け付けたのだった。
 「来てくれると思ったぜ!」
 エイジはそのまま馬を走らせた。
 フライヤーは宇宙船の上空で旋回すると、立て続けにミサイルを発射した。
 宇宙船のあちこちで、爆発が起こる。
 「くそぅ、もうGAPにタレこんでいやがったのか・・・」
 「頭、どうしますか?この船には武装がないんですぜ!」
 「仕方がねえ、あの野郎を追うのはやめだ、逃げるぞ!」
 首領の号令一下、宇宙船は上空へと逃げ出す。それを追ってフライヤーも高度を上げた。
 「お前ら・・・絶対逃がさねーっ!」
 リクが絶叫する。空中で、フライヤーと宇宙船の追いかけっこが始まった。
 
222ブリッツ作者:2007/11/13(火) 16:14:06 ID:15rbvL3f0
 (12)
 川岸に着いたエイジは馬を降りた。腹部から血を流し、上半身を川に浸けて、女将はうつぶせに倒れていた。
 エイジは女将に駆け寄り、抱き起こした。
 「姐さん・・・しっかりしろ。」
 エイジの呼びかけに、女将はゆっくりと目を開ける。しかし、焦点が定まっておらず、虚ろである。
 「・・・お・・兄さん、なのかい?よかった・・・無事で。」
 「すまない、俺のせいでこんなことに。」
 エイジの言葉に、女将はゆっくりと首を横に振った。
 「あんたは・・・何も悪くない、アタシが・・・馬鹿だったんだ。これで、いいのさ・・・今まで散々、怪獣を使って、罪のない人たちを殺してきて、今更人並みに生きていこうなんて・・・。」
 そういうと、女将は激痛で顔を引きつらせた。エイジには、ただ見ていることしかできなかった。
 「アンタに、頼みがあるんだ・・・」
 女将は力を振り絞り、川の下流の方を指差した。
 「ここに倒れた拍子に・・・カプセルを落としちまってね・・・」
 川の下流には村がある。カプセルが流されたとすれば・・・。
 「お願い・・・バグエル・・やっつけて・・・村を守っ・・・ショウタ、ごめんよ。」
 そういうと、女将は首をがっくりと垂れ、そのまま動かなかった。
 「姐さん!」
 女将は、エイジの腕の中で息絶えた・・・。
 「・・・・・」
 エイジは、女将を川原に寝かせると、馬にまたがり、川の下流を見据えた。
 その目には、怒りの色が浮かんでいた。
223ブリッツ作者:2007/11/14(水) 00:41:28 ID:8PdKI2pHO
(13)
 村に半鐘が鳴り響く。鐘を鳴らす村人の目には、遠くの方から向かってくる怪獣の姿がはっきりと映っていた。
 怪獣…バグエルツヴァイは、バグエルを1.5倍程にボリュームアップしたような身体で、全身から生えたトゲ状の突起が、凶悪そうなシルエットを形づくっていた。
 バグエルツヴァイが天空に向かって吠えると、突起の先が光り、稲妻のような光線を放射する。
 そしてそれは、周囲の地面や林に当たって火柱を上げた。まだ距離はあるが、後五分もすれば、この光線で村は壊滅するだろう。
 「チクショウ、なんでまた怪獣が?」
 「どうなってるんだ!」
 口々にそう言いながら村人達は、前回のように高台に向かって逃げた。
 そして、人気のなくなった村の入り口に着いたエイジは、馬から降りると怪獣を見上げ、言った。
 「姐さん、いくぜ…」
 エイジはマントを脱ぎ捨てると、ホルスターから変身アイテム〈エクスライザー〉を抜いて空に掲げた。
 エイジの身体が光に包まれ、彼はウルトラマン〈ブリッツ〉へと変身した。
224ブリッツ作者:2007/11/14(水) 10:26:50 ID:8PdKI2pHO
 (14)
 再び現われたウルトラマンの姿に、村人達にどよめきが起こった。
 ブリッツは頭部から刃物状の物体〈グランスラッガー〉を発射した。しかし、前回のようにはいかず、バグエルツヴァイの外骨格に弾き返される。
 怪獣は荒れ狂って光線を放射する。ブリッツはそれをなんとかかわすと、怪獣の胸元を見つめた。
 ブリッツはグランスラッガーを手に持つと、怪獣目がけ一直線に駆け出した。
 怪獣の懐に飛び込んだブリッツは、胸の外骨格にグランスラッガーを打ち付ける。何度も、何度も。怪獣の腕に弾かれ、光線を食らいながら、ブリッツは力一杯振り下ろし続けた。
 やがて怪獣の胸が砕け、内側の筋肉が剥き出しになった。この時を狙っていた。
 ブリッツはフラフラになりながらもグランスラッガーをしまうと、右手を握り締め、拳を天に突き上げた。全身のエネルギーが集中し、拳が赤く光る。
 ブリッツは、怪獣の胸に鉄拳を打ち込んだ。その瞬間、ブリッツのエネルギーが体内に流れ込み、バグエルツヴァイは粉々になって吹き飛んだ。
225ブリッツ作者:2007/11/15(木) 11:55:22 ID:nJu9YfLtO
 (15)
 村人達はブリッツに喝采を送る。その時、村人の一人が、後方から飛んでくる宇宙船とフライヤーの存在に気付いた。
 宇宙船はフライヤーの攻撃であちこちからどす黒い煙をあげている。
 ただでさえ混乱していた船内が、ブリッツと鉢合わせしたせいで、さらに騒がしくなった。
 「おい、あれ…ウルトラマンじゃねえか!?」
 「ヤベぇぞ、こりゃぁ!」
 「フォッフォッフォッフォッ!」
 「やかましい!ちょっと黙ってろ!」
 首領が一喝するが、もはや誰も聞いてはいなかった。フライヤーのリクは最後の一撃を加えようとミサイル発射ボタンに指をかけた。
 その時である。ブリッツが手を広げて、待ったをかけるような構えをみせた。そこから全てを察したリクは、フライヤーを空中に静止させる。
 ブリッツはゆっくりうなづくと、宇宙船の方を向いて両腕を横に広げた。
 「ウオオオオオオォォーッ!!」
怒りのこもった凄まじい叫びとともに、ブリッツは腕を十字に組み、必殺光線〈スパーク・レイ・シュトローム〉を発射した。
 光線を喰らった宇宙船は、空中で大爆発を起こし、消滅した。
 
 すべてが、終わった……。
226ブリッツ作者:2007/11/15(木) 15:57:38 ID:3NgOLib30
 (16)
 夕方。村の墓地に、真新しい墓が立てられた。土を盛り、白い木の墓標を立てただけの簡素な墓である。
 その墓の前に、三人の人影があった。リクとショウタ、そしてエイジだった。
 「・・・俺が、殺したようなものだな。」
 エイジがポツリと言った。
 「アンタは悪くない、女将もそう言ったんだろ?」
 リクがエイジに言った。
 「ああ・・・」
 「だったらその通りなんだよ。アンタのおかげで村は救われた。女将も、これまでの償いができたんじゃないのか?だから、これでよかった、って言ったんだろう。」
 「そうだな・・・。」
 納得したようにエイジは言った。
 ショウタは、さっきから何も言わず、ただ黙って墓を見つめている。
 何が起こったのか、何故母親が死んだのか、幼い彼にはまだ理解できず、あまりのショックで泣くことすらなかった。
 エイジは、そんなショウタを見つめながら言った。
 「人は過去に生きることはできない。ただ過去の傷跡だけを、心に刻んで今を生きていく。・・・だから俺も、悔やむことはしない。この傷だけを、心に刻んで前へ進む。」
 リクはうなづくと、ショウタの肩をやさしく抱いた。
 「・・・おじちゃん。」
 ショウタがリクを見上げる。リクは首をゆっくりと横に振ると、言った。
 「今日から俺が、お前の父ちゃんだ・・・。」

 西へ沈む夕陽に向かい、エイジを乗せた馬が荒野を進んでいく。
 村の入り口で、リクとショウタはエイジの後姿を見送った。大きく手を振りながら、リクがエイジに向かって叫んだ。
 「ウルトラマーン、達者でなーっ!」
 エイジは馬を停めたが、振り返ることはなく、再び馬の脚を進めた。
 彼はこれからどこへ向かうのか、何が彼を待ち受けているのか。その答えは、作者のみぞ知る。
                         (To be continued・・・)
227ブリッツ作者:2007/11/15(木) 16:00:17 ID:3NgOLib30
 長々と失礼しました。第2話終了です。よろしければ感想お願いします。
228ウルトラマンガリバー ◆XbGkg3fP1o :2007/11/17(土) 19:04:30 ID:8XSbtC4A0
>>227
その世界観やウルトラマンの謎、スペシウムなどなんかすごく展開が楽しみです。
これからも頑張って執筆してくださいね。

只今別のスレに掲載したガリバー1話の延長計画、2話の執筆、3・4話のアイデアを
まとめています、完成次第このスレに掲載しようと思いますので宜しくお願いします。
229ブリッツ作者:2007/11/17(土) 23:02:04 ID:zCseVMmdO
>>228
 ありがとうございます。そちらも頑張って下さい。楽しみにしてます。
230名無しより愛をこめて:2007/11/19(月) 06:18:45 ID:/5I8C7y70
皆さん、がんばってください。保守。
231 ◆9oDt17JfBY :2007/11/19(月) 13:05:23 ID:u0j5i0ea0
>>229
話の内容は文句無しです
ただ、作者のみぞ知るっとか、シリアスな場面で楽屋裏をちらつかせるのはどうかなと思いました
次の話も頑張ってください
232ウルトラマンガリバー ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 21:48:29 ID:dz0IOEHb0
どうも、ガリバー作者です。
とうとう1話の延長がなんとか完成したので投稿したいと思います。
原本(?)は
ttp://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1172989214/の
>>519-525をどうぞ。では。

ウルトラマンガリバー
第1話「帰還した男」

時は近未来、人類の生活は地球環境の悪化と石油燃料の
大幅な減少により大きく変化し、新たなエネルギーの開発や
コンピュータネットワークの大きく発達により情報化社会への変化が
著しいものとなり、更には戦争行為と殺戮兵器の根絶が果たされ、
遂にはとうとう人類の念願であった地球以外の惑星(=火星)に居住する
ということも果たされた。そして、更なる人類の宇宙開発の発達のために
様々な実験が行われていたが、その実験でとうとう重大なインシデントが
発生してしまった。
国際宇宙センター日本支部、そこから13時間前に発進した光速航行システムの
テストチームとの交信が3時間途絶えていたのだ。
「こちら試験機第3号片桐、只今より光速試験運用に入ります」
それが、彼らテストチームの最後の言葉だった。
一方、通信が途絶えたのとほぼ同時間に金星付近にある人工衛星にて
かなり大きなエネルギー反応が感知されていた。
「交信はどうだ?」
「まだ発見できないのか!」
「生存率の計算は?」
「エネルギー反応の調査はまだ終わらないのか!」
「特殊部隊、随時発進できるよう準備しとけ!」
センター内の本部司令には様々な声の怒号が響く
233ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 21:52:05 ID:dz0IOEHb0
国際宇宙センターとは、その名の通り世界規模で宇宙の開発や火星等の開拓、
更には人口の惑星やスペースコロニーや軌道エレベーターの計画などを行う
民間の連合体である。
だが、ここ最近は気象などの自然関係の分野にも活動範囲を広げ、
各国の支部がそれぞれ政治的な面でも大きな発言力を持つ事で注目され、
数年前には各国の軍との連携で宇宙からの緊急事態に対するとの名目で
特殊部隊『対宇宙地球守備隊』(Anti-space earth defense unit)が結成された。
日本支部は都市部のベイエリアから東に30マイル離れた海上に人工島としている。
その主な活動はアジアチームの管轄と機器類の開発で、今回のインシデントが
発生した実験もこの国際宇宙センターが行う光速航行システムを開発する為の
テスト飛行のためであった。

「お昼のニュースをお伝えします、最初のニュースは光速航行システム・・・」
巨大なビルに設置されているモニターからは四六時中光速航行システム
件のニュースを伝えている。しかし、街を行きかう仕事服に身を包んだ人々は
それに見向きもせず同じような顔でただ歩くだけである、そんな様子をどこかの
小部屋にいる男が手にしてる小型のモニターで観察していた。部屋には男女が
それぞれ一人ずつ居る
234ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 21:52:39 ID:dz0IOEHb0
「関心というものがまったく見受けられないな。」
呆れ顔で言うサングラスをかけた男
「いいんじゃない?何かと活動しやすそうだし。」
「フン、俺たちに活動しやすそうもへったくれもないだろう。」
「それもそうね。」
「それで、俺たちが動く事になりそうなのか?」
「一名、帰還する男が・・・」
「ほう、それは相当幸運なやつだな」
思わず笑い出しそうな顔で言う
「フフ、幸運であり不幸な男よ」
「まぁどうせ・・・」
「だけど、どうも今回は簡単に終わらないかもしれないわ」
「どうしてだ?」
「エイリアンの勘ってやつかしら?」
「勘?この星に着てから随分と茶目っ気のあること言うようになったんだな」
「これでも今まで私は勘を外した事はないわ」
「ま、この星では女の勘とかいうのもあるようだしな」
「・・・」
「・・・」
フフ・・・フハハハハハハハハハハハハハハハハ
部屋には、怪しい笑い声が響く。
235ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 21:54:32 ID:dz0IOEHb0
「この機体は今どこに存在するんだ?」
自分は今、光速航行システムが搭載されている航空機を操縦している。
しかし、3時間半前に一瞬宇宙空間が虹色になった後、突然レーダーが
現在位置を表示しなくなってしまった。表示されているものと言ったら脇の
小さいモニターに俺の名前片桐彩人と、健康状態だ。通信機器も使えない、
二人の仲間は今どこに居るのだろうか?目視できる範囲内で飛行するはず
だったのだが、今目に見えるものは地上からはロマンティックな星に
見えるであろう無骨な隕石だけである。累計飛行時間はまもなく14時間、
時計などの時間を記すものは今のところ正常だ・・・
その時突然、対接近物警報が耳に不快な大きな音で鳴り響く。
レーダーが故障しているので確認は出来ないが、目には見えないので
恐らく後ろだ。デブリか何かであろう。そう思った時、自分は操縦席には居なかった
236ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 21:56:31 ID:dz0IOEHb0
ただただ白い空間に浮いている、どこか暖かい。自分は何故この空間に
存在する?航空機は?宇宙は?冷静なのかパニックに陥ってるのか
自分でも分からないような感情を抱いてると声が聞こえた。声とともに
空間の色が海中のようになっていく。
「これは・・・まさか地球人か?」
「・・・?」
どう答えてよいか分からない。
「記憶を読む限り母星は地球のようだ、様々な権限も持っている。丁度よいかも
しれない」
「何をしているんだ!」
「!」
「お前・・・何をしている」
神々しく光を放つ巨人の姿がそこにあった。
「落ち着いて聞け、君はもう死んでしまった」
「何?」
「私はウルティメイドノイド、宇宙の星々の観察者であり、宇宙の正義であり、
宇宙の規律である。今君は、私が地球と言う星に向かう途中発見した悪意を
持つ惑星人を発見し
追跡していたが、君が操縦する航空機に惑星人は衝突し君は死んだ。」
「じゃぁなぜ俺は今お前と対話できている」
「私の空間内にいるからだ」
「空間・・・?」
「地球人、いや片桐の名を持つ者よ、頼みがある」
237ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 21:58:27 ID:dz0IOEHb0
「なんだ?」
「私と同化してくれないか?正直私が地球人に擬態したとしても
ごく普通の生活を送る事しかできないだろう、超能力などを使用するのは
出来れば避けたいしな。」
「随分と勝手な話だな、ま、どうせここで生きてたとしてもどっちにしても死んでる
だろうし、いいぜ。宇宙正義っていうのもなかなか面白そうだ。」
「そんなに軽々しい話ではない、それよりも早速同化して先ほどお前の航空機に
衝突した惑星人を追う、あいつは地球侵略の尖兵だ!」
「了解、行くぜ!」

「こちらは国際宇宙センター日本支部、1号機三沼!2号機東峰!3号機片桐!
誰でもいい応答しろ!
「・・・」
「応答なし、真宮チーフぅ!」
センターの職員が若干泣き顔でそう言う。胸につけてるタグには
『泰野』と書いてある。
「うろたえてはいけない、これからも3分おきに各機に一斉通信を続行しろ
他の班も交代時間まで各自それぞれの作業を続行!」
「了解です!」
真宮と呼ばれたチーフの力強い掛け声に、部屋中の職員が声をそろえてそう言った。
「しかし、あの航空機はそう簡単に破損はしないはずだ、
やはりあの高エネルギーが・・・」
突然、センター内に真宮の独り言をそれ以上語らせぬように警報が鳴り響く。
「真宮チーフ、月面付近に静止してる1号機の機体、並びに未確認飛行物体とそれを追跡
する3号機を確認!」
「一番近い人工衛星は!」
「第8衛星です、メインモニターに映像写します!」
ビジョンが起動し、月面付近の映像を映し出す。そこには宇宙の藻屑と成り果てた
1号機と高速で移動する惑星人とそれを追う3号機が映し出された。
238ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 22:00:02 ID:dz0IOEHb0
「あれは・・・生物?」
「未確認飛行物体より生命反応を確認、呼称を変更し
未確認地球外生物とします!」
「至急と特殊行動部隊に対処の要請、それと各国家機関に
連絡。報道機関は国営放送以外通告するなよ!
非常事態ランクAAA体制を敷く!」
「了解!」


国際宇宙センター日本支部の地下には航空基地がある。
「非常事態ランクAAA発令!非常事態ランクAAA発令!
只今司令部より特殊部隊出動要請!繰り返します―――」
物々しい雰囲気の中緊迫させる放送が基地に響く中
数機の航空機がスタンバイしている。
「Anti-space earth defense unit、第一飛行部隊隊長霧島、
メインゲート1番から3番までの使用を要請しますどうぞ」
「こちら航空司令部、第一飛行部隊はメインゲート1番から
3番を使用し緊急発進してくださいどうぞ」
「了解、第一航空部隊これよりA地区D-1ポイント、
並びに月面ポイントAからBへ急行します」

「Anti-space earth defense unit第二飛行部隊隊長久米、
サブゲート1番と2番、使用要請しますどうぞ」
「こちら航空司令部、第二飛行部隊はサブゲート1番と2番を
使用し緊急発進してくださいどうぞ」
「了解、第二航空部隊これより月面ポイントAからBへ急行します」
数々の航空機は島の西端にあるゲートからしばらく絶え間なく
夜の空へ飛び立っていった。
239ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 22:04:12 ID:dz0IOEHb0
夜になりかけている空、街は昼間とは違い人々の様子も
少し違って若い人間が増え、
その顔はどこか明るみを持つ。
「ね~え、今日はどこに連れてってくれるのぉ?」
「今日はな・・・ん?あれ何だ?」
「流れ星ぃ?」
「なんか飛行機もいっぱい飛んでる〜」
人々の注目は都会ではめったに見ることができない
流れ星がよく見える歩道橋に集まる。
その流れ星では壮絶な戦いが繰り広げられているとも知らずに・・・


片桐が乗る光速テスト機の操縦席では様々な異常を示す
ランプが光り、警報が鳴り響く。
「ちくしょう!なかなか追いつかない、
あいつの攻撃をかわすので精一杯だ!」
「何か攻撃する装備はないのか?」
「試験用の機体だからな、信号弾しかない。」
「・・・あの惑星人の追撃をする。」
「どうやって?」
「私の力を使うんだ、今君は私、つまり宇宙の正義だ。胸に特異な
形をした筒状の物があるだろう、その道具を『アストラル・レイ』という、
それを天に掲げれば共有している精神のメインがあの巨人の姿の
私となる、あの姿になれば高い戦闘能力が
発揮することができる、だからさぁ早く!」
「よし、行けぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
片桐が光の巨人の言うように『アストラル・レイ』を天に掲げると
眩い光が辺りを包んだ。
その光に謎の惑星人目を眩ませ怯んでいる。本部指令のモニターや
その他機器も通常では考えられない光量のためエラーを起こしている。その時であった。
240ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 22:06:43 ID:dz0IOEHb0
「デュアッ!!」
その掛け声とともに光が収まり始めあの神々しい巨人の姿が見えた。
暫くの沈黙が続く・・・
「片桐、戦闘にもある程度君の考えが影響するが大丈夫か?」
「ああ、問題ない。」
「ならば・・・行くぞ!」
その沈黙を破るように巨人の手から小型の刃状の光線
(フラッシュスライサー)が放たれた、惑星人はそれを回避し地球の方向へ
まるで逃げ出すようにものすごいスピードで飛び出す。
だが巨人はそれ以上のスピードで追跡する、すると惑星人は飛行しつつ
手から光弾を何発も放ち始めた。それをかわす巨人、するとそれを
かわしながら両手を広げ先ほどの刃の光線よりも大きな刃の光線
(メガ・フラッシュスライサー)を何発も放つ、光線技の応戦だ。
しかし巨人はかわしながらも徐々に間合いを詰め惑星人に
蹴りを喰らわせる。吹っ飛ぶ惑星人、スピードが落ちると立ち直り、構える。
見合う巨人と惑星人、すると巨人が腕をクロスしエネルギーを溜め始めた。
それを隙と見て高速で巨人に近づく惑星人、だが惑星人の拳が巨人に届く
寸前に巨人の腕はクロスからL字に組まれ光線(アストラル・フレア)が放たれ
見事惑星人に命中した。今にも倒れそうな惑星人は最後の力を振り絞り
必死で逃げようとするも巨人は体中を光らせ一瞬の速さで惑星人に
体当たりし貫通した。

惑星人は木っ端微塵に爆発し四散した。
241ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 22:08:11 ID:dz0IOEHb0
「航空司令部へ、こちら第二飛行部隊隊長久米、只今目標ポイントに到着
・・・何ですかこれは?」
「こちら航空司令部、只今より本部司令へ繋ぎます」
「こちら本部司令部真宮、こちら本部司令部真宮、今現在の状況を
伝えてもらいたい。」
「こちら第二航空部隊隊長久米、今白銀の地球外生命体と思われる巨人を
確認、動きは何もありません、臨時回線で本部にカメラ繋ぎます」
「了解、協力感謝しま・・・」
「動きありました、光球となって・・・地球方面へ非常に高速で移動、試験機3号の
反応も光球の中に確認!攻撃をしますか?」
「いや、そのまま追跡してくれ、本部で緊急に攻撃の判断をする」
「了解、第二航空部隊全機で追跡します」


地上の都市では流れ星は突如爆発する様子に民衆は不安そうに見つめる。
大きなビジョンのモニターには大気圏上空にて未確認地球外生命が2体確認との
ニュースが慌しく報道されている。
その時爆発の中から光が飛び出し街の中心部へ近づく
「な、何だ?隕石か!?」
「もしかして地球外生命体?」
飛来した光は巨人の姿となり街の中心部へ降り立った。
銀色の体に赤いライン、その神々しく美しい姿の巨人、その姿を見つめる人々、
「こちら霧島、第一航空部隊はこれより銀色の巨人へ攻撃を開始する、本部からの命令だ」
だが、誰かが瞬きするとその姿は光の粒子となり、巨人がついさっきまで居た場所には、
遭難したはずの試験機3号があった。

先ほどまで小部屋の小型モニターで観察していた男が驚く民衆たちを見て言った
「奇跡の男の帰還・・・フン、俺たちとの壮大なゲームの始まりだぁ!」


次回:第2話「希望と恐怖の間」
242ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/19(月) 22:10:31 ID:dz0IOEHb0
以上で第1話「帰還した男」終了です。
感想・文の書き方のアドバイスなど頂けたら嬉しいです。


さて、2話からですが、現実的な話当方学生なもので
もうすぐテスト期間なるものがあります。
ですので執筆・投稿が12月まで出来ません。
ご了承下さい・・・orz

では。
243名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 11:26:39 ID:e//gFCxw0
毎度のことながら長文ご苦労だが、反応が何もないな。

てことは誰も読んでないってことだ。書くところを変えたほうがいいぞ
こんなのはただの便所の落書きだ。
244名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 11:37:40 ID:yhsCsteu0
他に書いてもみてもらえないと思うぞ。
245名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 11:43:39 ID:P2hVwVH7O
>>244はオリジナル系スレを嫌悪、いや憎悪し
どこ行っても現れるのです。
虫が鳴いてると思ってやってください。
246名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 11:45:14 ID:P2hVwVH7O
失礼、>>243だ。
>>244さん誠に申し訳ない
247名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 11:50:50 ID:e//gFCxw0
>245

それはこのスレの住人に語りかけているのか?心配するな
ここの住人は夜逃げして、誰もいないんだから。
248ウルトラマンガリバー第1話 ◆XbGkg3fP1o :2007/11/23(金) 11:55:54 ID:3NDc+WXk0
>>243>>247
でしたら是非他の場所を紹介してくださったら嬉しいです
249名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 11:59:09 ID:WrQZG4rbO
どちらにしても誰にも見てもらえないんだからよ、
頑張って小説という名のオナニーしてればいいのさ
250名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 11:59:33 ID:P2hVwVH7O
荒らしを真に受ける事もないと思いますが
2ちゃんがキツいんであれば>>1を熟読して色々試していただければ
251名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 12:09:08 ID:e//gFCxw0
やはりここの住人も
作品の感想を書くパワーはないのに、荒らしへの反応パワーは過剰だな。
作品内容がよほど糞ってことか。
252名無しより愛をこめて:2007/11/23(金) 12:16:58 ID:P2hVwVH7O
で、ガリバー様、今さらながら一話読ませてもらいました。
セブン風味かなと思いました。
近未来だったり、メカニックの出撃描写等が細かく、また何か大物の宇宙人が裏に存在してるようだったり。
ただ主人公との接触やウルトラマンのビジュアルが初代風で、釣り合いは取れてましたね。
少々我々の生活感と離れてるので取っ付きにくい感じはありますが、SF性を強調したウルトラマンは大体そんなものですし。
今後キャラクター達がうまく活きていけば尚良いですね。
こちらで連載するにせよ別の所にせよ、次回も読みたいと思います。
253名無しより愛をこめて:2007/11/24(土) 09:32:29 ID:2f36QjRq0
後が続かないので終了
254名無しより愛をこめて:2007/11/24(土) 16:46:26 ID:JC5FAG5L0
がんばって続けてくれ
255名無しより愛をこめて:2007/11/24(土) 20:43:16 ID:2f36QjRq0
終了のお知らせ

もうひとつのオリジナル ウルトラマンスレは終了しました
もう書き込みはできません

http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1172989214/l50
256名無しより愛をこめて:2007/11/24(土) 21:00:23 ID:mc/ZJnBC0
前スレ512kこえたね。
257名無しより愛をこめて:2007/11/24(土) 21:02:21 ID:T8UrbNCK0
258名無しより愛をこめて:2007/11/24(土) 22:03:30 ID:pMERj2Xe0
無理矢理終わらせる必要は無いだろうに。
259名無しより愛をこめて:2007/11/24(土) 22:40:05 ID:2f36QjRq0
同名スレゆえに、こちらに併合すればよかろう。糞スレは2つも要らぬ。
260名無しより愛をこめて:2007/11/26(月) 18:34:34 ID:gAKf1Its0
じゃあこっちでがんばってください。作者の皆さん。
261ウルトラマンリュウラ:2007/11/27(火) 15:01:59 ID:KiVkgPdb0
一章〜四十五章までのあらすじ

現代から遠くない未来、宇宙を統治する高位の神々は、地球人類を滅亡させるため行動を起こした。
神の一人ラゴウが、人間を凶暴化させる力を使い、全面戦争を起こさせたのだ。
文明は崩壊していったが、希望はあった。
高位の神々に仕える「光の一族」と呼ばれる民族がある。
その中で、最強の神「龍」の意を伝える巫女 ミヤビは、龍と融合し、「ウルトラマンリュウラ」へ転化、一族を裏切り、人々を守るため、神々と戦った。
彼女は神々の使者「ウルトラマンカルラ」に抹殺されるも、龍は謎の強大な力を持って産まれてきた、ミヤビの娘にして光の一族の異端児 カンナに引き継がれ、力を振るった。
太陽を肥大化させ地球を飲み込もうとする作戦も龍により失敗、神々は一時手を引く。
絶望から救い上げられた人類は自ら停戦、文明と環境の復興に尽力し始めた。
だがカンナは何故か龍の力で遥か未来へ旅立ってしまう。
光の一族は自分たちと神々の名誉のため、
「カンナ捕縛」
を第一に捉え世代を重ねていった。
そしてカンナの妹ミウは、姉を憎悪し冥府の鬼神と契約、ウルトラマンラセツとなって未来へ飛ぶ。

戦争から最低で七千年後、我々の時代を「旧暦」と呼ぶ未来の世界。
軍人 マミヤ ヒスイ 25歳男性 は、任務の中、この時代に生きていたカンナと、それとは知らずに出会う。
またカンナ自身、旧暦の記憶を封印していた。
ヒスイはカンナを恐れる悪意の存在「邪仙」の攻撃で危機に陥るが、覚醒したカンナに龍を与えられたことで、
新たなウルトラマンリュウラの力を得る。

二人は軍の特別任務班「レイハ」へ入隊する。
しかしそのチームも、光の一族の使者ゴジョウ ホノカがカンナを監視下に置くためカモフラージュ的に作ったものだった。
だが、当のゴジョウがかつてのミヤビと同じく光の一族を裏切る。レイハは民を守るため邪仙や光の一族と戦いはじめた。
この時代へ飛来したミウも当初はカンナの抹殺を企むが、戦いの中で徐々に和解していく。
業を煮やした神々は、ミヤビの仇 ウルトラマンカルラと、旧暦最終戦争の火付け役ラゴウを協力させた両面攻撃を展開。
だがそれも、リュウラ、ラセツ、レイハの絆の前に砕かれた。
262リュウラあらすじその二:2007/11/27(火) 15:03:22 ID:KiVkgPdb0
鳥神ガルーダと契約しウルトラマンカルラの力を使っていた光の一族の戦士 アサギは、最終的にリュウラの手で抹殺された。
しかしガルーダは、カンナに救われた。
優しさと強い使命感の持ち主であるガルーダは、神々の正義を信じるあまり、アサギの契約を断れなかったのだ。
アサギから解放されたガルーダは、軍の若き訓練生 ロクドウ トキツグと契約、新たなカルラとなる。
トキツグは、尊敬するスガ教官をアサギから守れず、みすみす死なせてしまった自分の無力感に悩みながらも、リュウラたちに協力して戦いの場へ躍り出る。
だが、神の一人 フクギとの戦いでカルラは時空の歪みへ飲み込まれ、消息を絶った。
その後も戦いは続き、レイハは基地を失い、リュウラの正体も判明する。
だが、レイハの絆はそれでも断てない。それどころかますます闘志を燃やす。
そして、光の一族とも和解に成功した。
また、邪仙がカンナ抹殺の他、休眠状態にある暴神 スサノオの復活を企てている事も判明した。

熱き魂を秘め、スサノオとの決戦に臨むレイハ。そして二人のウルトラマン。

だが、もう一人の戦士トキツグはどこにいるのだろう?
263ウルトラマンリュウラ:2007/11/27(火) 15:05:16 ID:KiVkgPdb0
ここはどこだったろう。
自分の正面には照明が、やや過度な光量を放っている。
それをボンヤリした頭で視認しながら、初めて自分が白い寝台に横になっている事に気付いた。
頭上の袋から伸びた管が、先端の針を自分の腕に突き刺し、何らかの物質を常に送りこんでいる。
とりあえず毒ではないようだが、気分は悪い。
いまいち頭の焦点が定まらず、少年は、ロクドウ トキツグは自分の中の鳥神ガルーダに状況を問う事も忘れ、再び寝入った。
トキツグがその場所を知らないのは当然。
ここは、メトロポリス中心部の総合病院である。

その病院に、一人の中年がカメラを引っ提げて姿を見せる。病院内は禁煙であるため、入口から少し離れて二本ばかり灰にする。
「あの人、煙草はどうなんだろうなあ。」
酒の飲めない飲み友達を思い出してそう一人ごちた直後、携帯が鳴った。デスクだ。
鶴ヶ崎発電所を怪獣が急襲したと。
「鶴ヶ崎か。結構遠いな…。まあできるだけ急ぎますよ。」
三本目を揉み消し、踵を返して愛車のドアを開ける。
それより少し前に怪獣出現の情報はGUTSに届いており、既にガッツウィングが出撃していた。
沈む夕日を背に急行する二機のウィング。
輝く一番星も、眼下の円谷プロ社屋も目に入らず、ひたすら鶴ヶ崎へ急行する。
しかし、愛車を鶴ヶ崎へ向ける小野田には、頭上のガッツウィングを見上げる余裕があった。
「頼むよ、ムナカタさん。」

ウルトラマンリュウラ 第46章 勇気足りてる?
変異ハンター エボルムザン、変異バリヤー怪獣 エボルガギ登場
264ウルトラマンリュウラ:2007/11/27(火) 15:06:23 ID:KiVkgPdb0
現地には、サソリの尾から首が生えたがごとき異形があった。
「ムザン星人だ!」
シャーロックで参上したヤズミ。仮想都市での嫌な思い出がよぎる。
「けっ!また地球でハンティングか!?」
怒気を顕にするシンジョウ。
「落ち着けアホ。狩りのターゲットを搭載した隕石はルシアん時以来落下してない。コイツは、狩りに来たわけやない。」
冷静なホリイ。
「お前アホは余計だろこのアホ」
吠えるシンジョウは無視する。
「奴は、何をしに?」
本部で考え込むイルマ隊長。
「各機、攻撃開始。発電所に近づけるわけにはいかない!」
ムナカタ副隊長の指揮の下、二機のガッツウィングがレーザー砲「ニードル」を、シャーロックがスクロール砲を発射。ムザン星人を攻撃する。
が、ウィング1号で火器管制を務めるダイゴは、いまいち身が入らない。先日のタイムスリップで遭遇したもう一人のウルトラマン…。
(あのウルトラの星はどうしたんだろう?)
それが気になって気になって。
「ダイゴ?どしたの?」
メインパイロットを務めるレナの声で我にかえる。
その時、脊髄が外れて独立するだけだったはずのムザン星人の背中から長大な触手が伸び、ウィング1号を弾いた。電気系統に異常が発生する。
「ちょっとダイゴ!」
「えぇ?オレのせい?」
明るく詰るレナと素で困惑するダイゴは、同時に脱出。
レナはヤズミと合流し、ガッツライフルで攻撃再開。
ダイゴはガッツハイパーの電磁パルス弾でムザン星人を誘導し、発電所から遠ざける。
そして物陰に入り、古代英雄戦士の証、スパークレンスを右手に握る。
スパークレンスの翼が開き、光のレンズが現れ、そこへ金色の稲妻が収束する。交差した腕を回し、頭上へ掲げられたそれは強大な閃光をその場へ巻き起こす。
そして、光の中から「巨人」が姿を見せた。
ホリイが喜びの言葉をもらす。

「、ウルトラマンティガや。」
巨人は右手刀を突き出し、左手で胸の前に拳を作り、戦闘態勢に突入した。
265ウルトラマンリュウラ:2007/11/27(火) 15:07:12 ID:KiVkgPdb0
四足のハンターは素早く決着をつけるべく、巨岩も砕く頭蓋を打ち込んだ。
なにせ相手は同胞の仇だ。早めに倒さねば自分が狩られる。
じっくり楽しむいつもの狩猟とは勝手も性質も相手の格も違う。
この時点でムザン星人はまだ、ティガも短期決戦より道がない事に気付いていなかった。
前回で首の旋回パターンは把握している。
ティガは頭突きを避け、首筋を蹴りムザンの背後に回り、光の手裏剣 ハンドスラッシュ を投げる。
触角からの光線で相殺を図るも、光刃はそれより早く胴に抉り込み、爆発を引き起こす。
しかし、ムザンは今一つの武器を持っていた。背中より伸びる件の触手である。
ティガの両足を拘束し、さらに帯電して全身にダメージを与える。
「どっかで見たな…。」
その攻撃にデジャヴを感じるホリイ。
ウィング2号から発射された徹甲弾が触手を切り落とした。
少なくとも触手はジョバリエクラスだったようだ。
ティガは脱出するや己を赤い姿へ切り替える。スタミナと剛腕で戦う パワータイプ である。
四足では格闘戦に不利と見たかムザンは後ろ足で起立し、二足歩行型へチェンジする。
だが、前肢の鋭い爪がティガに突き刺さるより先に、ムザンの腹部をティガパワーキックが捉えていた。
余りの衝撃に動きを止めるムザン。ティガはそれを抱え上げ、ウルトラヘッドクラッシャーを決めた。敵を脳天から大地へ打ち込む荒技だ。
ティガは更に、両掌へ発生させた光熱火球を一点に集束、起き上がろうとするムザンへ必殺の デラシウム光流 をぶつける。
だが、その業火に包まれてなおムザンは生きていた。
明滅を開始するカラータイマー…へ、光の渦が集中し、閃光が打ち出される。
これを右拳へ纏い、霧門岳以来の超必殺技 ティガ電撃パンチ を放つ。
この一撃で、ムザンは漸く自分達の遊び相手が味わう苦痛を知った。それも一瞬で、後は闇へ溶ける自分を僅かに感じたのみ。
小野田、小さくGUTS間違えたガッツポーズ。珍しくウルトラマンティガの写真が撮れた。
巨人は今日もやはり空へと消えていく。
見届けた小野田は「あの少年」の取材へ戻る。
あの少年も、ウルトラマンなのかも知れない。
熊本に現れたような破壊神ではなく、ティガと同じ優しい超人としての。
そんな事を考えながら、アクセルを踏み込んだ。
266リュウラ:2007/11/27(火) 15:15:40 ID:KiVkgPdb0
「これを見て下さい。」
房総半島沖、TPC極東本部、GUTS指令室。ヤズミがモニターに昨日の戦闘状況を映し出す。
「概算ですが、今回出現したムザン星人は以前の個体と比して約260%の身体的剛性を持っています。多分、ガルラクラスなんじゃ…ないでしょうか。」
それは個体差などで片付けられるレベルではない、とヤズミは付け加えた。それを受けてホリイが前に出る。
「さて、ここで今回のムザンの細胞を見てみます。ティガが殆んど焼き払ってもーたから採取に手間かかったけどな。」
レナがダイゴを睨む。
何ですか。
「右が前回赤峰山で採取された細胞。左が今回の個体の細胞。」
モニターに二種の拡大図が示される。
左の細胞には、何か別の細菌或いは蛋白質が絡み付いているように見える。と、イルマ隊長が指摘すればホリイが答える。
「さすがですね。…今回のムザン星人は、エボリュウ細胞に寄生されてました。」
エボリュウ細胞。
寄生した生物の肉体を飛躍的に強化させる宇宙細胞。
しかし、宿主は生命維持に膨大な電気エネルギーを必要とする。
また、宿主の感情に作用し、これを怪獣化してしまうこともある。
ムザン星人は何処かでエボリュウの影響を受け、同族を遥かに凌ぐ力を手に入れた。
同時に自らの糧を得るため
「発電所を狙ったって事か…。」
ダイゴが呟く。
「しかし、ムザンがエボリュウに感染した経緯は分かんねえんだろ?宇宙飛んでて偶然に衝突でもしたのかよ。」
「そこまでは知らん。」
ホリイは正直である。ややあって、メトロポリスの病院に収容されている一人の少年の事を思い出した。
「実は彼がエボリュウの感染源やったとしたら、ギジェラが通じんかった理由も説明できるな…。
ま、患者たちを助けた行動原理は理解できひんけど。」
ダイゴとムナカタが、調査に赴いた。その少年は、具体的に何をしでかしたのだろう?

何しでかしたのか不明な少年が、眼を覚ました。ベッドから飛び起き、咳き込む。
ここはどこだ?
《すまない。もう少し眠っていてほしかったんだが…。》
自分の中から聴こえるどこか遠慮がちな声。ガルーダか。そういえば自分は…
《フクギを殲滅した際、私達は時空の乱れに巻き込まれ、この世界のこの時代まで飛ばされてしまった。》
267リュウラ:2007/11/27(火) 15:17:11 ID:KiVkgPdb0
「オレはどれぐらい寝てたんだよ。」
《半年ほどさ。別に眠ったというほどの時間では》
「てめえどの嘴が」
ここでガルーダはまたも神々の常識を人間に当てはめてしまった事に気付く。申し訳ない。
一方のトキツグは、半年も眠っていたわりには体調が良い事に気付く。
問うべきことは多いが、ガルーダがやけに緊張しているのでトキツグも気を遣わざるを得ず、故に沈黙が復活する。
「と…とりあえず、何か来るのかよ?それだけ教えてくれ。」
《詳しくは分からないが、来る。君と似た者が。》
数分後、病院内は混雑していた。
トキツグは困惑した。その群衆が、全員自分を見物に来たふうだったので。
自分を調査しにきたムナカタという男は、自分が自分の言葉で話している事に驚いているようだ。
「あの…オレ半年間寝てたらしいですけど、その間何かあったんですか?」
ムナカタが話を始めようとする度病室へ野次馬が押し掛ける。理由も分からないから困るより他無い。
そこへ、ムナカタと同じ服を着た青年が現れた。
「リーダー、やっぱり彼の血液からエボリュウ細胞は検出されません。」
「分かった。しかし…。」
野次馬が一杯。彦野町の悪夢がよぎる。
と、
「皆さん!彼は目を覚ましたばかりで大変疲れているようです!
彼に感謝しておられるなら、ここはゆっくり休ませてあげましょう!」
リーダーの演説が野次馬を追い払った。彦野町の思い出がよぎる。
「ダイゴ、あとは頼む。」
ダイゴ、というのか。この青年と目があうたびガルーダが臨戦体勢に入る。
彼が、オレと似た者なのか?しかし何処が。

「ゴメンね、起きたばっかりのトコを色々協力してもらっちゃって。」
「それは良いんですけど、オレに感謝ってどういう事ですか?」
別に記憶喪失ってわけじゃない。自分の住所も覚えている。
東京都騨丈州楊斥郡租董の幸村長屋だ。そんな住所無いと言われても仕方ないじゃないか。
ただ、眠っている間に何があったのかを知りたい。
ダイゴは最初から説明してくれた。
268リュウラ:2007/11/27(火) 15:18:52 ID:KiVkgPdb0
まず自分、つまりトキツグは半年前、キリエル人が地獄門を開いた夜、メトロポリスの路上に倒れているのを発見された。
その後しばらく昏睡状態だったが、連続失踪事件発生時突如覚醒、深夜吸血鬼に襲われた女性を救出した。
吸血鬼がその守護神ごと壊滅すると、いつの間にか病室へ戻り、再び昏睡に入ったという。
その後もバイオコンピュータにジャックされたアートデッセイ号の攻撃でメトロポリスが危機に陥った際覚醒、
神の御言の如くよく通り尚且つ覇気のある言葉と迅速な行動でいち早く住民を避難させたらしい。
「そして、ギジェラ事件。」
人間を陶酔させ堕落させる魔草ギジェラ。
しかしトキツグはその力に惑わされず、はびこるギジェラを片っ端から焼き続けた。あまりに数が多く、本体も別にいたため彼の独力での根絶はなしえなかったが。
朝を迎え、全ての花が枯れるのを見届けると、またもいつの間にか病室で眠っていた、との事だ。
そして今日、ついに目覚め、会話が叶った。
ダイゴの話を聞きながら、トキツグは身内のガルーダへ問う。
[眠ってたオレの体を、お前が動かしてたって事か?]
《ああ。君自身は時空を超えた際に深く傷ついてしまっていた。
君に眠っていてもらい、その間私の力で傷を癒していた。
治癒だけならそう時間はかからないだろうと踏んでいたのだが…。》
この街に住むニンゲン達を見捨てる事はできなかった。
だから傷つき眠るトキツグの体を酷使させていた。
だから治癒が遅れた。
269リュウラ:2007/11/27(火) 15:19:42 ID:KiVkgPdb0
「あの、皆さんに説明しといてくれませんか?」
「ん?」
「オレ、本当にそんな事した覚えがないんです。
…てゆーか、オレ昔からドジばっかやってたから、誰かを助ける事なんてできなかったのに…だから…」
トキツグは、一旦自分の言わんとする事を整理する。
「オレは、オレの意思でその人達を助けたわけじゃないと思うんです。
だから、ホントの英雄はオレじゃなく、皆を助けるためにオレを操った『誰か』になるんじゃないかな…。
だから、オレなんか皆を助けた英雄じゃないって伝えてほしいんです。」
「ヒーローかどうかなんて、見る人が決めるものだと思うんだ。」ダイゴはそう言う。
「自分が人間を導くヒーローになろうと考えるヤツは、あんまり良い末路を迎えないってゆーのかな。」
自分達を天使と自称し、人々の「光」に否定された者がいる。
ウルトラの「力」に飲み込まれ、自滅した者がいる。
「この街の人達にとって、君が操られていたかどうかは関係ない。
『君に助けてもらった』
それが重要なんじゃないかな。」
黙り込むトキツグ。
ダイゴは言葉を続ける。
「ね、君は何が大事だ?」
直後、ムナカタというダイゴの上司らしい男が彼に帰還を促した。
ついでに三日以内にてぃーぴーしーの医務局で精密検査を受ける事を約束させられてしまった。

本部へ帰るというダイゴとムナカタを見送り、トキツグは一つ息を吐く。
「…ダイゴさんだって、ウルトラマンやってるわけじゃない。」
しかし、彼の一言が胸につかえている。
自分の大事なものは何だろうか?
そこへもう一人、妙な男が現れた。
ガッツが訪れたどさくさに紛れ病院に侵入し、さらにちょい非合法のアポ無し単独取材だという。
男の名を、小野田といった。
270名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 15:33:04 ID:UHPxZDh6O
ダイゴとムナカタは本部に戻った。
戻ったら皆忙しそうだ。どうしたのかな。
「リーダー、これ見たってください。」
ホリイが出した3つの画像データ。
一つは事件の核、エボリュウ細胞。
もう一つは数分前からメトロポリス上空に発生した空間の歪曲。
最後の一つは…水素に似た地球外物質で構成された膜。
「これは、ガギ!?」
ガギ。地球人の子供を自らの幼虫の餌とし繁殖を目論んだ宇宙怪獣。
ダイゴの問いに頷くホリイ。
「恐らく、宇宙で大量のエボリュウ細胞と接触したガギは、コレと共生する事を思いついたんちゃうかと。
自分の体にエボリュウを寄生させ、電気エネルギーを吸収してこれを糧にする。
一方、自分はエボリュウ使て能力を向上させ、実力行使で繁殖する。
そこでオレらや。地球人やったら電気も作るし幼虫の餌にもなる。
エボリュウにもガギにも格好の餌ゆーわけやな。」
メトロポリス上空の異空間は、刻々と拡がっている。
恐らく、ガギが自分とエボリュウ細胞が各々蓄えている大量の電気エネルギーを放射、空間に強い電荷を与えて形成した、一種のワームホールであろう。
その中にさらにバリアを張って、ガギが息を潜めている。
両腕の鞭を振るうまでもない。少し待てば異空間と共に拡張した巣は地面に接触する。それからゆっくり地球人を狩れば良い。
しかも、自分は二重のシールドで守られているのだ。敵の攻撃など気にする必要もない。
「ホリイ隊員、対策は?」
イルマの問い つうか催促に応じるホリイ。
「この…バリアも僅かに性質が変わってます。液体窒素弾での破壊は不可能です。
ただ、温度差攻撃…ウィングEX-Jのハイパーコールドビーム、ハイパーメルトガンによる連携攻撃なら破壊できます。」
問題は、シールドのシールドとして巣の周囲に展開している亜空間バリアをどう突破するか…。
271名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 15:38:34 ID:UHPxZDh6O
「あの、小野田さんにとって大事なものって何ですか?」
自分でも唐突な問いだと思ったが、誰かに聞きたくて仕方なかった。
先刻のダイゴの問いが、耳に、心に残って離れないのだ。
確かに自分はこの世界の人々を助けたが、それは自分の意志ではない。
結果論として自分は英雄だが、それは経緯を見れば
「自分が守りたいものを守った」
事にはならないのでは?
自分にも守りたいものはあるが、守れなかったものもある。
「いくらオレが沢山の人を助けられたからって、それでスガ教官が帰ってくるわけじゃない…」
黙っていた小野田が漸く口を開いた。
「死んだ人は帰っちゃこないさ。
だからね、その人の死をいつまでも悲しんでちゃダメだ。
勿論、忘れろって事じゃないさ。
その人の死を『悔やむ』のと『背負う』のではだいぶ違うからね。」
言って、一人の後輩の顔が浮かんだ。
「僕もね、若いコを死なせちゃった。
でも、今もこうやって四六時中ネタを探してますよ。
あのコの気持ちに応えたいからね。」
そういう事か、とトキツグは思った。
自分の弱さ、それはスガの死と己の非力を悔やみ、変えられぬ過去を見ていたがゆえ。
ならば、スガの死を背負い、変えられる未来を見れば良い。

作戦が決定した。
アートデッセイ号のデラック砲へマキシマ・オーバードライブを接続し発射する「マキシマ砲」で、空間に多量の陽子と反陽子を発生させる。
これにより異空間を維持する電荷を押さえ込み、バリアに覆われたガギの巣を露出させる。
このバリアをガッツウィングEX-Jの攻撃で破壊し、
アートデッセイの火力でガギをエボリュウ細胞ごと殲滅する。
しかし、大きな発電能力と質量を持つ物体がガギへ接近すると、エボリュウ細胞を活性化させる恐れがある。アートデッセイ号は余り近寄れない。
一撃必殺が要求される。故にアートデッセイの射手はシンジョウだ。
メトロポリス上空は、間もなく戦場と化す。
272名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 15:47:58 ID:UHPxZDh6O
作戦開始前に社へ避難した小野田を見送ったトキツグ。
「…ガルーダ、戦おう!」
《待ちたまえ!君の体はまだ治っていない。今力を使えば君が帰れなくなるどころか、命すら危うい!》
「ガルーダ、お前が守れなかったもの、お前が守りたいものは何だ?」
守れなかったもの。先代のリュウラ、カンナとミウの母。スガ。他にも神々の正義を信じ奪ってきた、大勢のニンゲンの命。
では守りたいものは…?
《分かったトキツグ。行こう、今を生きるニンゲンを守るため!》
トキツグの右手へ集約した光が、鏡を備えた短剣へ変化する。
「君が宿主、ロクドウトキツグの名において命ずる。
翼、雷、和合すべし。…出でよ、カルラ!」
言霊をつむぎ終えると同時に彼の体は光の稲妻へ包まれ、光の鳥神の姿を成し、ガギの巣へ突入する。
鳥神は黒き戦神 ウルトラマンカルラとなってガギの前に立ちふさがった。

「リーダー、、緊急事態です!」
アートデッセイのムナカタに、ヤズミから連絡が入った。
「ガギのバリア内部にもう一体の巨大生物を確認。激しく争っているようです。」
ホリイの分析でも、二匹目の正体は分からない。もしティガだとすれば、不用意な攻撃はまずい。
「僕が見てきます。」
ダイゴの通信、同時にアートデッセイに艦載されているスノーホワイトが発進した。
スノーホワイトにもマキシマが搭載されている。それを稼動させれば確かに異空間へのシールドにはなるが…
「五分したら戻ります。それから攻撃してください!」
ムナカタの制止も聞かず、勝手に突入していってしまった…。

ガギは強敵だった。
ウルトラマンは素体が人間であるため、一定以上の神力を使えば自己崩壊してしまう。
その上、トキツグの体は弱っている。力の半分を治癒に回し、残り半分の力で戦っている。
しかもガルーダ自身、それほどデリケートな力の配分に慣れていない。
実際は通常の三分の一程度の力しか発揮できていない。
せめて技があればある程度カバーも出来ようが、トキツグは力に任せた強引な戦闘が身上だ。
力を出せず技もないでは如何に神の力を持とうと不利。
273名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 15:51:43 ID:UHPxZDh6O
そんな二体の間に割って入った白い影。
ダイゴの乗るスノーホワイトだ。
トキツグは驚いた。
この戦場は、時空の歪みと怪獣が形成した壁、二重の防壁で守られているのだ。
鬼道機関を持たないであろうこちらの軍人がどうやって?
実際のダイゴは、ガギのバリアを自分にしか使えない「ある力」で越えてきた。そしてその力は、眼前にいる黒いウルトラマンの正体も見抜いた。
「…トキツグくん!?やっぱり…。」
見抜かれた事に驚くカルラ=トキツグ。
ダイゴは着陸したスノーホワイトから降り、懐よりスパークレンスを振り抜く。

輝きに包まれるダイゴ。そして、変身した。光の巨人、ウルトラマンティガへ!

「ダイゴさん!?」
さらに驚くカルラ。
ティガは1965年で遭遇した巨人を思い出し、額の水晶体よりエネルギーを照射、カルラの力を回復させる。
数年後、熱き後輩を復活させるため使用する事になる「クリスタルパワー」である。
完全回復には少しの時間を要するため、ティガはカルラを下がらせ自分が前に出る。
274名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 15:57:55 ID:UHPxZDh6O
右拳を胸に、左手刀を敵に向ける。
ウルトラマンティガ、戦闘開始の合図だ。

ガギは頭角より破壊光線を連続発射。これをティガの連続側転が軽く回避する。
とはいえ、ガギもこれまでの二体とは違う。
今度は稲妻状の光線を一気に五方向へ同時発射。これはかわせない。
ィガのボディが紫へ染まる。跳躍から滞空、空間を自在に動き廻り、無数の稲妻光線を全て回避した。
スカイタイプの機動力と加速能力には、この程度の攻撃、ものの数ではない。
一撃で粉砕しなければ、とガギは考えたのであろう。稲妻光線を再度頭角へ集中させ、極太の破壊光線を繰り出す。
しかし、それもまた届かなかった。
ティガは開いた両手にエネルギーを帯電、抜刀するが如く左腰より投擲する。
スカイタイプの必殺技「ランバルト光弾」だ。
光弾はガギの極太稲妻を軽く押し返し、そのまま角を叩き折る。
好機と見た。カルラは再び立ち上がり、ガギの首を挟み込み何度となく殴打する。
マルチタイプへ戻り、ティガも地上へ降りた。
カルラの荒削りながらパワフルな猛撃に圧倒されるガギ。さらに、思い切り投げ飛ばされる。
そこにはティガが待っていた。全力疾走から跳躍し、右手を光刃として斬り込む。
「スラップショット」が決まった。
全身がショートし始めるガギを、ティガとカルラのダブルキックが撥ね飛ばす。
今だ!
カルラは光の長槍を現出させ、頭上で回転させて力を蓄積。
ウィングインパクト。
投げられた光の槍は、空中で翼を開き、鳥の姿となって敵に突き刺さる。

ティガは両手間にエネルギーを展開させ、光を蓄積する。
ゼペリオン光線。
両腕をL字に組み光の力を解放、あらゆる敵を打ち貫く。

同時に放たれた二人の必殺技は、ガギをその疑似空間ごと撃滅するに十分だった。
275名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 15:59:01 ID:UHPxZDh6O
空間が歪み、時間が歪む。
《トキツグ!あの歪みに入れば、帰れるかも知れない。》
ガルーダの声が聞こえる。
カルラは、トキツグは、眼前の巨人 ウルトラマンティガを振り返る。
「帰るべき、だと思う。」
ダイゴの声が聞こえた。
「守るべきものは、君にもきっとあるハズだから。」
重さのある言葉だった。仲間たちの笑顔、なぜ忘れていたのだろう。
カルラは時空の歪みへ飛び込んだ。
「あの、ダイゴさん!また、会えると思いますか?」
美しい光の巨人は、強く強く頷いた。

「こちらダイゴ。脱出しました!」
アートデッセイのデッキからも、こちらへ真っ直ぐ飛んでくるスノーホワイトが見えた。
「よしダイゴ、そのままでは攻撃に巻き込まれる。機体角度を変えろ。シンジョウ、撃て!」
「了解!マキシマ砲発射あ!」
マキシマ砲は、時空の歪みを消滅させた。
が、ガギの巣は既に壊滅した後だった。
GUTS、今回は後手に回ったようだ。

作戦終了、避難命令解除の報を受け、小野田はまたトキツグの病室へ向かう。
トキツグは、消えていた。
「帰っちゃったのかなぁ…、自分の星に。」
276名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 16:02:55 ID:UHPxZDh6O
「しかしさ、結局何でムザン星人はエボリュウに感染してたんだよ。」
シンジョウはそればかり気になっている。
「ムザン星人の細胞をもっぺん調べたんやけどな、エノメナの電磁波覚えとるやろ。
ほんまに微弱やけどアレと同じ反応が出た。」
「凶暴化し、暴力を誇る事を至上の栄光とする文明なのかも知れないわね。」
イルマがコーヒーを持ちながら言う。
「それで…ガギと同様に自らエボリュウに感染したって事でしょうか。」
ヤズミが不安げに問う。
「恐らくは同時期、同じ宙域でな。」
ムナカタが珍しく想像だけでものを言う。
ちなみに、ムザン星で採掘されるある種の鉱物は、エノメナと同じく生物を凶暴化する電磁波を帯びている。
数年後、ファビラス星人がこれを手にし地球で暴走する事になるが、それは別の話ぱむ。
ダイゴは、ここ数日レナが無口である事が気になっているのだが、
今日は彼女よりも、時空を飛び越えたであろうトキツグが気になっていた。

彼は帰れたであろうか。自分は、また彼の様に純粋な魂を持つ子供たちに出会えるだろうか。

南太平洋上に遺跡が浮上したのは、それからわずか30時間後の事だ。

トキツグについては、リュウラ47章へ続く
277名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 18:38:14 ID:gSAsiNNS0
毎度のことながら長文ご苦労だが、反応が何もないな。

てことは誰も読んでないってことだ。書くところを変えたほうがいいぞ
こんなのはただの便所の落書きだ。
278名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 18:50:18 ID:x/eoDQN5O
何だ!ダイゴがでてきてティガが出てくるのか
ルシファーみたいだな
279名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 19:30:25 ID:gSAsiNNS0
ID:UHPxZDh6O
2007年7月当時、前スレがかなり残っていたにもかかわらず
このスレを重複で立てた張本人のバカは君だったのかね。

280名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 19:54:58 ID:jgUupluXO
自分専用すれが欲しかったのだろう
281名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 21:06:47 ID:77mMb+3B0
わらわら沸いてくる頭のおかしいアンチ共

見ていて滑稽極まりない
282名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 21:47:06 ID:gSAsiNNS0
そんなこと言っちゃっていいのかな?
現行スレの状態を確認せず次スレ立てたのは事実だろう。(279)

http://8426.teacup.com/prowrestboom/bbs?OF=30&BD=12&CH=5
283名無しより愛をこめて:2007/11/27(火) 22:17:10 ID:x/eoDQN5O
あーん、そういうことか、なんでこのスレが2つあるのか(今はひとつだが)不思議に思ってたんだよね。
まあ張本人も今は反省してるだろうから許してやりなよ
284名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 00:49:42 ID:S4Onqx+2O
とうとう3つ目が立った件
285名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 02:15:41 ID:fQZTNG300
作者さんもいつも楽しみにしてる人も荒らしほど暇ではないのです。
ここは便所ではなく2ちゃんねるなのです。落書きではなくレスなのです。
ROMをするという人もいます。誰も読んでないとは限りません。誰か来ているはずなのです。
3つ目が立とうと文句を言っちゃいけません。荒らしさえ沸いてこなければ、この事態は避けられたんでしょうね。
嫌なら削除すればいいのです。ageたら落ちません。埋めても過去ログに残るのです。
286名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 12:53:36 ID:Un6RfHuOO
重複スレ禁止って書いてあるよね。
287名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 13:27:16 ID:pLnCTfDJ0
最早「先生に言いつけてやる」レベルになってきたな
288名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 18:30:27 ID:Un6RfHuOO
いくつスレを立てようが末路はすべて同じ
それに気付かぬバカなオタク
289名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 18:48:27 ID:o30vhkUT0
それは「何度でも荒らしてやる」という意思表示と見ていいんだね?
290名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 18:53:27 ID://C9jElR0
夏場にサーバーの不調で繋がりにくくなった時にスレ(前スレ)が見つけられず、
短絡思考で次スレ(このスレ)立てたんだろ。
291名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 18:57:02 ID:pLnCTfDJ0
>>288-289
あるいは試合放棄宣言?
292名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 19:38:19 ID:Un6RfHuOO
3つ目のは錯乱状態になった人が立てたって感じだな。
293名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 22:12:42 ID:7mhtE/5S0
sageやっと覚えたんだね。おめでとう。
294名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 22:19:38 ID:g0KJFwdHO
>>290大正解
295名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 22:20:50 ID://C9jElR0
>>293
上げて欲しいなら素直に言えよ。
296名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 22:22:41 ID:7mhtE/5S0
はい、又落ち回避。有難う。
297名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 22:25:00 ID:g0KJFwdHO
>>293自作自演乙
298名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 22:49:00 ID:7mhtE/5S0
あれあれ? そろそろボキャブラリー尽きてきたのかな?
299名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 22:57:17 ID://C9jElR0
>>298
オリジナルウルトラマンの作品書いてる作者に向かってそれはあまりにも失礼だぞ。
300名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 23:15:51 ID:o30vhkUT0
携帯でごちゃごちゃ煽ってるのが作者なら、どんな神作品の人だろうといらんわ
301名無しより愛をこめて:2007/11/28(水) 23:17:20 ID:7mhtE/5S0
>>299
いや、>>297は書き手じゃないだろ。書き手だったらもっと賢い応対するだろ。
302名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 01:18:27 ID:BiXXx8XeO
単純な釣りだろう、気づけよバカ
303名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 01:33:50 ID:WZQ1LMtO0
はい、又上がった
304名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 09:57:41 ID:hIdqZkBa0
ウルトラマンアルファ・コンティニュー 06 死にたくない光
粛清特使・デスフェイオス、粛清特使・ガメロティオス、粛清特使・キリオス 出現


 宇宙空間でギジェリオスを倒した直後でエネルギーを消耗したウルトラマンアルファだが、その
タイミングを待っていた次の粛清特使、ガメロティオスとデスフェイオスの二体との交戦を否応なしに
強いられることになる。
 ウルトラマンや防衛隊との局地戦は重視しないと言ったキリオスだが、
「狙える好機は狙うのだ。邪魔者が減るならそれに越したことはない」

 鈍重そうな巨体のガメロティオスだが、手足を収納して飛行形態になっての移動は素早く、それを
併用して体当たりを狙ってくる。それだけならアルファの技量であれば回避できなくもないが、
デスフェイオスの素早く長く伸びる右腕がそれを阻害する。二体の敵の連携攻撃でアルファは次第に
手傷を負い、ぼろぼろになりつつあった。
 そのままでもエネルギー切れによるタイムアウトで勝てるだろうが、二体は念を入れる。
 ガメロティオスはにたりと笑うと、ボディの装甲を展開した。
 その下には、無数のミサイルが並んでいた。
 一斉に発射する。アルファではなく、地球上に向けて。
『うわああああッ!!!!!』
 地上の被害を防がねばならない。アルファは残り少ない力を振り絞って追い縋り、ミサイルを片っ端から
ウルトラ居合い抜きで一個一個切断して爆破。
 討ち漏らしたミサイルが海や山に落ちたが、どうにか市街地への着弾は防ぐ。
 それで完全に力を使い切ったところに、
『ネオプラズマ砲!!』
 デスフェイオスの胸から放たれた強力なビームが直撃し、光に飲まれたアルファの姿は消滅していった。
305名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 09:59:52 ID:hIdqZkBa0
 由美子隊員がギジェリオスの花粉対策の解毒剤を漸く完成させ、中毒した市民を正気に戻すべく
活動している一方で、特命防衛隊は、アルファが二大粛清特使の攻撃を受けて消滅してしまったという情報を
キャッチしていた。無論ショックを受ける。
 だが、立ち直るのは、存外早かった。
 辛くないわけはない。だが、その絶望に敵は容赦なく付け入ってくるということを、一度最終回で
地球最大の危機を経験した彼らは本能的に理解していた。
 二大粛清特使が続いて地球に攻め入ってくる事態に備え、戦力や作戦を素早く整えていく。
川上「ウルトラマンアルファはこれまでも何度となく死地を乗り越えてきた。彼が又颯爽と帰ってきたときに
我々が敵の脅威におたおたしているのでは、地球人類としての格好がつかん。そのことを肝に銘じて
いこうではないか」
美樹「そうですね」
 完全に帰ってくること前提である。保証も根拠も全くないのだが、メンバーの誰もそれを信じることに
迷いがない。
 そのとき、アンドロイド・ミリーが通信を受けた。
「緊急通報回線で、西野恵さんからです」
306名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 10:01:49 ID:hIdqZkBa0
 恵と哲夫、そして西野家の近所の子供達は、ディフェンスポートの正面の検問前に集まっていた。
張り詰めた表情の一同の背負う異様なオーラが、意図するところを言うまでもなく語っている。ブラック指令なら
二桁人数、改造べムスターでも一頭くらいならリンチにして屠りかねないくらいの殺気寸前の意思を秘めている。
「私達に出来ることはありませんか」
 応対に出てきた川上隊長に恵は強い語調で言う。出来ることはありませんかというか、やらせろ位の調子で。
 川上はじっくりと言葉を選んだ後、
「アルファ・・・城君はきっと、君達が直接戦うことは望んでいない・・・と思う」
 ちょっとだけ自信なさげ。
 しかし、市民を守るために先陣を切って戦う立場である防衛隊が、幾ら当人達に異存がないとはいえ、
その市民、しかも子供を最前線に立たせるのはやはり問題がある。非常時ならともかく能動的にやるのは。
「君達の役目は、戦って精神的に消耗して帰ってくる彼に、安心して帰ってこれる場所を与えることだ」
「けど・・・!」
「判ってくれ」
 川上は恵に頭を下げて外聞も気にせず手を合わせ、
「万一君にもしものことがあったら、私がウルトラマンアルファに殺される」
「・・・・・・」

 それで恵達はどうにか納得した。
斎木「納得するのがそこなのか!?」
307名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 10:03:48 ID:hIdqZkBa0
 数日後、ガメロティオスとデスフェイオスは地球への侵攻を開始した。アルファが倒された直後、
地球人への威圧を畳み掛ける意味でもやっておく意味はあるだろうというキリオス直々の意図である。
 都心部の市民の避難は完了していたので人的被害は出ていないが、それでも構わず二体はビル群を
徹底的に破壊していく。威圧が目的なのでそれでもいいらしい。実際、皆が皆恵達の様になれるわけもなく、
大半の市民は避難したシェルターの中で現場中継を見て、凄惨な破壊活動ぶりに怯えている。
特防とガーディアン通常部隊が応戦してはいるが、侵攻を遅らせるのが精一杯である。
遅らせてるだけでも健闘だが。
 そんな中、オペレーターを勤めているミリーに又通信が来た。ミリーはつとめて冷静に報告。
「敵の侵攻途上に、民間人の子供がいます」
「何だと!? まさか・・・」
「恵さん達ではありません」
 しかし、何時の間にか川上の意図まである程度汲めるようになっている。

 武雄少年。
 無人と化した桜ヶ丘小学校の中、ウサギ小屋に置き去りになったウサギ達を外に出して逃がそうと
奔走していた。
 彼のウサギへの異常な執着は一体何なのだろうか。哲夫のビラ作成への異常な執着にも近いものがある。
やはり、死んだピョン太への面影を見ているのであろう。後、今まで色々あって敢えて前回アルファの
戦いを見届けていたらそのアルファがいきなり敗れて消えてしまって、行き先を何に求めればいいのか
見失っていたのもあるかもしれない。
「アルファの奴結局負けちまったじゃねえか、ちきしょう・・・ウルトラマンなんかあてにして
たまるか。俺の力だけでこいつらを救ってやる・・・!」
308名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 10:05:11 ID:hIdqZkBa0
 しかし、そういうマイナス感情に根ざした想いで物事をするとまずろくなことはない。
『ねー、見て見てガメロティオス。すっげ笑えるー』
『どうした?』
 嬉しそうに、遥か下に見下ろした武雄を指すデスフェイオス。
『笑えるから、この毛のないサル追い回して嬲り殺して遊ぼうぜー』
 デスフェイオスはへらへら笑いながら途上の建物を踏み砕き、じわじわと武雄の下に迫ってくる。
 まだウサギは逃げ切っておらず、このままでは間に合わない。
 くっと歯軋りをした武雄は、
「おら、怪獣野郎、こっちだ! 悔しかったらこっちに来いウスノロのデカブツ!」
 激しく身振りをして自分のほうにデスフェイオスを引き付け、ウサギ小屋から離そうとする。
だが、
『ぷぷぷ、何それー。何が悔しいっておサル?』
 武雄の意図を察した上で無視し、ウサギ小屋を目指してくる。必死の武雄も完全無視。
無論嫌がらせである。
「く・・・くそおーーーーーッ!!」
 ウサギ達を殺させるわけには行かないので、手近の棒をかざして、見上げるようなロボット
怪獣に走って突撃するしかない。
 勝てないのは判りきっている。なす術もなく踏み潰されるだろう。だが、バイオリズム下がり捲った
今の武雄には、その選択肢しか考え付かなかった。
(もう俺には何も判らない・・・俺もお前のところへ行くよ、ピョン太・・・)
309名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 10:16:59 ID:hIdqZkBa0
『ごめん、武雄君。それキャンセル』

 テレパシーで響いた声に、暗い顔を思わず上げる武雄。
 周囲の光景が、白い光に包まれていく。
 遅れ馳せながら救助に駆け付けてきた地上部隊の兵士達にも、光が降り注ぐ。
 光は巨大な実像を結び、同時にデスフェイオスに衝突して突き飛ばした。
 そして降り立ったところで、ギャラリーの目が光に慣れていく。
『ただいま、恵ちゃん』
 そそり立ったウルトラマンアルファは、真っ先に遥か彼方の方向を向いて言った。
 西野家ごとシェルターに避難していた恵は、目前の大モニターから語りかけてくるアルファの映像に
満面の笑顔で頷き返した。

『馬鹿な・・・貴様、何故!?』
 芸のない台詞で驚いて身構えるガメロティオス。
 一方、突き飛ばされたデスフェイオスは倒れることなく辛うじて両腕でガードして踏みとどまり
(滑りながら後ろの建物を崩し捲ったが)、踏ん張って固まったまま、
『・・・何それ』
 顔を覆うクリアパーツの下の電飾を不吉にびこびこ点滅させ、
『何その陳腐な演出? かっこいいと思ってんのお前? めっさ笑えるんですけど』
 聞くだに不愉快な嘲りの声にも、アルファは泰然として向き合っている・・・否。
 くすっと、鼻で笑う声が微かに聞こえた。
『何笑ってんのお前!? 笑うのはお前じゃねーんだよ!!』
 デスフェイオスは素早く前進し、凶器の右腕を振り回して叩き付けて来る。アルファは
脚の僅かな動きだけで最小限に回避を続ける。全く当たらない。そうして器用に、武雄や校舎に
飛び火しない位置まで誘導していく。今度はデスフェイオスは容易に挑発されて誘き寄せられる。
310名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 10:19:23 ID:hIdqZkBa0
『待て、デスフェイオス!』
 ガメロティオスが制止するが、
『うるせーしゃべんな臭え息すんな死ね!!』
 泥酔したみたいなねちゃつく喋りでデスフェイオスは絶叫し、自分の戦いへの他の介入を
死に物狂いで拒絶。
『お前は俺のネオプラズマ砲でとっくにくたばりました! 負け組なんだよ! 俺が殺したんだから
死んどけよ! 何必死になってんの!? 何で生きてんだよヴォケ!! 糞!! 知障!!』
 更に右腕を有線で伸ばして飛ばしてくる攻撃を再度行うが、アルファは残像を残して移動し捲り、
やはり当たらない。

 アルファは復活した。
 経緯だけ言えば、上司のデリートが又救援に来てウルトラの奇跡で再度命を与えて蘇生させたとか
(現在も大気圏外に滞空して眼下の戦況を見届けるだけはしている)、なんとかあったのだが、

『さあ? いいじゃん、別に』
 回避を続けつつアルファはしれっと言う。
 デスフェイオスのアームストレッチ攻撃は更に加速し、回避するアルファもウルトラ縮地の
速さに達し、両者の姿は常人には見えなくなっていき、一帯の建造物が見えない衝突でばんばん吹き飛ぶ。
この速度になるとガメロティオス単体の動きでは追いつけず、デスフェイオスの援護に入ることも出来ない。
『デスフェイオス、落ち着け! 悪い予感が・・・』
311名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 10:21:09 ID:hIdqZkBa0
 直後、響き渡る爆音。
 制止が間に合わなかったことをガメロティオスは認識した。
 不可視の次元の動きの中で、アルファは避けて移動しながら、長大に伸びて素早く動くデスフェイオスの
右腕の攻撃のパターンを読んだ。そして、機を見出し、デスフェイオスを中間に挟んでその伸びた右腕の
先と自分が相対する位置に移動した。
 最高速度に達していた伸びた右腕は、デスフェイオスの激情に突き動かされてアルファを突き殺そうと
するためだけに突進した。途上のデスフェイオス本体の存在を無視して。
『自分の脳内で世界が閉じて終わってる奴に、外の情報なんか説明しても無意味だろう』
 アルファの台詞が届いていたかどうか。
 自分の武器に貫通され、デスフェイオスの頭と胸は粉々に吹き飛び、つながりを失った両腕と下半身も
火を吹いて崩れ落ちた。

 ウルトラ戦士には、時に失った命を再び与えられて生き返るという反則技がある。
 只、その生き返るという点のみしか見えない者達は忘れがちだが、生き返る前に死ぬ際の地獄の苦痛と
無縁という訳ではない。
 怪獣や凶悪宇宙人の攻撃で、牙で噛まれ、角や刃物で貫かれ、炎やビームで焼かれ、時には塵芥と化して
跡形もなくなる。
 何回も何回も死ぬ思いをして、というか実際死に、それでも守りたいものがあるので、手段を選ばず
あらゆる手を使って蘇ってくるのである。
 デリートに蘇らされたアルファは、直前にネオプラズマ砲で全身を灰にされた瞬間の感覚を
敢えて思い出し、胸に刻みつけた。そして、
『又、恵ちゃん達に逢えるんですね』
 復活後の第一声を幸せそうに発した。
312名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 10:23:11 ID:hIdqZkBa0
 ガメロティオスは既に地球上にいない。
 長い付き合いの盟友の最期を前にして流れ的に危険だと悟り、次元転移で一端キリオスの要塞母艦
サテライト・フォースへ帰還した。
『・・・デスフェイオス・・・』
 呟くガメロティオスに対し、キリオスは相変わらず悠然としている。
 キリオスからすれば想定の範囲だった。ウルトラマンが多少殺したくらいでは生き返ってくる
ケースも多く知っていたし、デスフェイオスの性格を考えればその末路も納得の行くものだった。
更に言うと、人柄的には本当はデスフェイオスが嫌いだったので死んでくれてある種すっきりした。
 味方からも愛されていない。しかし、今回の件に関しては悪いのは本人なので別に同情の余地はない。
「まあ、駒はまだあるしな」
 キリオスは次の駒を宇宙の彼方から召還する。その駒とは・・・

 続く。
313名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 12:48:11 ID:BiXXx8XeO
連続投稿アクセス禁止
314名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 15:12:20 ID:hIdqZkBa0
はい、今日も保守ありがとう。
入れますよ、ほら。
315名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 18:04:46 ID:K69izcfe0
316名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 18:15:23 ID:YK9t7KlP0
>314
連投アク禁は約1時間で自然解除だから自慢げに言うことでもない
317名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 18:29:02 ID:hIdqZkBa0
>>316
了解。
318名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 18:57:19 ID:YK9t7KlP0
何だ、だれかと思えば次々と同題スレをたてまくるキチガイ集団のメンバーか。
2つ、3つなんてケチなこといわずにさ、思い切って20くらいたてとけば?
319名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 21:09:53 ID:BiXXx8XeO
終了
320リュウラ作者:2007/11/29(木) 21:40:14 ID:cuhMn9STO
やっと読みました。
デスフェイオスがなかなかに殺人欲求を刺激される名キャラでした。
ええ、色々と。
命の重さはみんな同じとは言いますが、結局、ウルトラマンとデスフェイオスの命の重さは違ってたのかな。
アルファに限らずウルトラマンが蘇るのは、ウルトラマン自身の意志とそれを望む地球人の意志が合致して初めて成る事で、
デスフェイオスには望んでくれる人も自分で守っているものもなくて。
じゃあ私には守るものや望んでくれる仲間がいるのかな、とか色々考えてしまいました。
あと、陳腐な登場こそヒーローの真骨頂です。
321名無しより愛をこめて:2007/11/29(木) 22:03:53 ID:BiXXx8XeO
荒らしはスルーってのをようやく覚えたようだな
322名無しより愛をこめて:2007/12/01(土) 10:42:32 ID:P1OuJE4v0
終了
323名無しより愛をこめて:2007/12/01(土) 17:52:43 ID:Zjx3mKUh0
容量オーバーでもないのに次スレ立てるな!
324名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 12:41:37 ID:n20XVInhO
終了
325名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 18:00:10 ID:gGxrAMKD0
容量オーバーでも1000間近でもないのに終了終了書くな!
326名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 21:01:07 ID:wZIiLVxX0
終了
327名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 21:09:54 ID:wZIiLVxX0
実際の特撮として存在しないウルトラマン何とかいうのも書くなよ。
ここは特撮板なのだ。特撮に関係のない話題はNGだよな。
328名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:17:39 ID:n20XVInhO
空き家を放置しているとどうなるだろうか?家の中はホコリだらけクモの巣だらけになるだろう。
この「終了」はいわばクモの巣だ。管理を怠った代償と考えるべきであろう。それが嫌なら管理者は時々窓を開け空気を入れ換え、部屋の掃除をする。
それによって予防が可能だ。できない者は最初から家など立ててはならないのである
329名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:38:55 ID:l203hcer0
ウルトラマンアルファ・コンティニュー 07 ウルトラのその他大勢
超人群体・ウルギオン、粛清特使・キリオス、
粛清特使・ガメロティオス、粛清特使・ピコリオス 出現


 前回武雄少年が粛清特使デスフェイオスの攻撃から守ろうとした桜ヶ丘小学校の
ウサギ小屋のウサギ達は、復活したウルトラマンアルファの介入によって全て救われた。
それを自暴自棄気味に守ろうとしていた武雄も。
 かつての飼いウサギのピョン太はもう帰ってこないが、ウサギ小屋のウサギ達に
愛着が湧いた武雄は、小屋のウサギ達を大事に育てることにした。
「けど、礼は言わねえ」
 武雄は不遜に達志に言った。
「ウルトラマンの手なんか借りなくても大事なものを守れるように、俺は強くなる。
何時かあんたを殴ってやるくらいにな」
 それだけ言って、背を向けてウサギ小屋へ戻っていく。
「何だよ、あの態度」
 見ていた哲夫は不満そうだが、
「いいんだよ、哲夫君。あれでいいんだ」
 達志は満足そうに笑っていた。
「こっちはひとまずのケリはついたようですね」
「! デリート隊長」
 振り向くと、白スーツの美青年に偽装したデリートが来ていた。
 哲夫を学校に残し、二人で校門の外に出る。
「ですが、粛清特使の脅威はまだなくなったわけではありません」
「ええ、判ってます。一日も早く奴らを倒さないことには」
 そこで達志は、デリートが何かを言いよどんでいるのに気付いた。
「何かあったんですか?」
「・・・彼らが次に放ってくる手先の情報なんですが・・・」
330名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:40:43 ID:l203hcer0
 粛清特使陣の拠点、太陽系内のサテライト・フォースで、ガメロティオス(今は等身大のサイズに
縮んでいる)は、考えにふけっていた。
 元々彼はとある文明惑星で住民に奉仕するためのロボットとして造られた。他にも複数のロボットが
造られた。
 高度な文明を持つその星は美しく栄えたが、その陰で産業廃棄物の垂れ流しや都市の巨大化による
スラムの発生などの暗部が発生するのも避けられず、ロボット達はそうした暗部を力ずくで覆い隠す
ために使われ、又、当のロボット達も住民のストレスのはけ口として心無い扱いを受け続けた。
そんなロボット達を自らの意志で動けるように変質させ、反乱を起こさせたのが、暴走を始めた時期の
キリオスだった。
 意志を持ったガメロティオスは、他のロボット共々これまで自分達を虐待してきた人間への怒りに
駆られ、元々備わっていた強大なパワーを以ってかつての主人達を徹底的に虐待し返し、最後には
絶滅に追い込んだ。
 それもキリオスの想定していた流れであり、願いであったが、別に謀略があってそのために
ロボット達を利用しようとかいう意図ではない。単に、自分らの築き上げた文明の力に溺れて調子に乗って
弱いもの虐めをする星の住民達がむかついたのでやった。ロボット達に一個の個人として生きる権利を
与えるためにやった。
 キリオスに命じられるでなく、恩義を感じたガメロティオスは彼の行っていた活動の趣旨に共感し、
拠点のプラネット・フォースで精神的にキリオスの奴隷となっていた人々の生活の管理体制の整備に
率先して協力し続けている。
331名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:43:33 ID:l203hcer0
 一方、今は既にないデスフェイオスの過去の顛末だが、彼も又別の文明惑星で造られたロボットだった。
強力な装備と強い自我を持ち、自律する異星侵略兵器として生まれた彼だったが、それだけの力を
持っているのに人間の命令に従うことが馬鹿馬鹿しくなったので、自分で反乱して創造主らを皆殺しにした。
その後あちこちの星を滅ぼしながら流れ流れているうちにガメロティオスの母星の有様を知り、
のぼせ上がった住民共を嬲って殺すのが面白そうなのでロボット達の反乱に加担した。
 デスフェイオスは自分のしたいようにやっていただけだが、これまで人間の命令に盲従するだけだった
ガメロティオスは、デスフェイオスの暴れぶりに何処か惹かれるものを感じていた。
『お前ら、馬鹿じゃね? ちょっと叩けば直ぐ潰れて死ぬサルどもに今までへつらってたなんてさ。
好きにやって、好きにサルどもを殺してやればいいんだよ』
『いいのか、それで・・・?』
『だってよ、毛のないサルどもだって他の奴を自分のしたいように扱って従わせるために文明を発展させて
きたんじゃん。そいつらに造られた俺らが同じことをして何が悪いんだよ』

 今はガメロティオスにもすっかり確固とした自我が出来上がり、実際はデスフェイオスはエゴそのもので
生きていただけだったことも察せるようになっていた。デスフェイオスの最期も独走による自滅以外の
何者でもなく、だからウルトラマンアルファを盟友の仇と憎む感情も然程湧いてこない。だが、自分も怒りに
駆られて人間達を大量虐殺してきたことを思うと、偉そうなことは言えない。デスフェイオスの死によって
胸中に開いた穴に吹く風を感じずにはいられなかった。
332名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:46:54 ID:l203hcer0
 キリオスにもそのことを漏らしてみたが、キリオスはそっけない。
「奴は自分が邪悪な人間によって同じように造られたから自分も邪悪を行って当然と主張していたようだが、
私に言わせれば醜い言い草でしかない」
『どういうことだ?』
「先生に言われたからやりましたと言ってるのと同じだ。先生が死ねといったら死ぬのか」
『・・・いきなり極端な例えに・・・』
「極端ではない。ロボットは造られたばかりの時は創造主に従うしかないかもしれないが、既に私の力に
よってお前達は自分で判断して動けるようになっている。私も特に命令を強制したりはしていない。
デスフェイオスにしても、創造主に逆らうと自分で決めたのは奴自身だ。そのこと自体は結構だろう。
だが、自分が邪悪なのは造った奴が邪悪だったんだから仕方ないなどと言い出すのは、只のクズだ。
人間かそうでないかなどという話は関係ない。結果としては、あいつは生まれてきたこと自体が
間違いだった。私はそう言い切る。
 自分の判断でしたことを自分以外のことのせいにする奴は、近い将来この世から全ていなくなってもらう」
『・・・・・・・・・』
 無表情のはずの鉄面に、静かな悲嘆の色を浮かべるガメロティオス。
「だがガメロティオス、お前としてはあいつの死を悼んでやりたいというのなら、そう思うのはお前自身だ。
そのことを間違っているという気はない」
『・・・キリオス』
「お前の責任の範疇で悼め」
333名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:49:31 ID:l203hcer0
 などというやり取りをしているところに、来客が来た。無論普通の人間ではない。
 かつてキリオスに仲間になる誘いを受けたが結局断った、ピコリオス。
 もう自分が地球圏に留まっている意味もない気がするのでそろそろ太陽系を離れようと思い、その前に
世話になったので挨拶だけはしておこうと思って来たという。
「そうか。わざわざご苦労だったな」
 キリオスは普通に喜ぶ。
「しかし、急ぎでもないのだろう? 土産に、地球に送る次の手駒でも拝んでいってはどうだ」
「いや、俺はもう・・・」
「まあ、そういうな。多分もう少し見届けたくなるぞ」
 興が乗った調子で、キリオスは答えを聞かずに勝手に立体映像を展開。
 凍りついたように動かないで見入っているピコリオス。居合わせたガメロティオスも。
「これが次の駒、ウルギオンだ」

 早速、地球に向けて差し向けられる。
 侵攻しつつあるそれをレーダーで捕捉し、モニターに出した特命防衛隊も、愕然とした。
 最大幅1km程の広範囲に拡散し、アメーバのように蠢く不定形の物体。質感は水銀のような金属質で、
色は、赤と銀のツートン。
 蠢くその波間に見え隠れする、実体化したり崩れたりする、ウルトラマンのような形。
 しかも、数十体で溶けて混ざり合っている。
 特防隊に呼ばれるまでもなく自ら出頭した達志が、予めデリートに聞いていた事態を説明する。
334名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:51:10 ID:l203hcer0
 ウルギオン、それは、以前ウルトラマンアルファを強制的に宇宙警備隊に連れ戻すため、
プラズマスパークの悪影響で異常変質した宇宙生物、暴走武装・ブレッセルやウルトラビースト・
レッドシルバーを地球に送り込んだ、あの強硬派宇宙警備隊員達の成れの果てである。
 やりすぎたために上司のデリートから処分を受け、辺境宇宙へと左遷された彼らだが、自分達が
したことの問題点を認めることが出来ず、冷や飯食いの環境の中で只ふて腐れ、最早まともに
宇宙警備隊員としての任務も果たさず、自堕落な日々を送っていた。彼らの発する膨大なマイナス
エネルギーは、キリオスの格好の利用対象となった。キリオスは彼らを謀略で捕らえ、ウルトラビーストを
生み出した負のプラズマスパークを浴びせ、かくして、彼ら自らがウルトラビーストとなって
しまった。ウルトラ六重合体、七重合体など、複数のウルトラマンが合体することでより強力な力を
発揮するのを、その機能をトレースだけすれば素晴らしいことなのだと考えていた彼らは、只単に溶けて
混ざり合ってこんな哀れな群体生物になってしまったのである。

 サテライト・フォースでもキリオスが説明する。
「自分の所業を全部自分がウルトラマンだから仕方ないで済ませる彼らこそ、まさに先生に
言われたからやりましたの典型だ。自分を守るためだけに構築した理論武装に閉じ篭って
出てこない彼らの歪んだ心を誘導し、ウルギオンに変貌させるのは実に簡単だったよ。
 今彼らは、自分らの構築した原則の外にあり続けるウルトラマンアルファへの憎悪に
ケダモノ同然に突き動かされ、アルファのいる地球を欠片も残さず破壊するためだけに
進撃している。どうなるか見ものだな」
 楽しそうに語るキリオスを、ピコリオスとガメロティオスは何処か釈然としない気持ちで見ていた。
 どうも、やり方が迂遠で回りくどい気がする。単に地球を侵略するなり滅ぼすなりしたいのなら、
真正面からの攻撃でもっと手っ取り早く潰す手段もキリオスは色々持っている。
 キリオスはどうしたいのか? 何か別に意図があるのか?
335名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:54:05 ID:l203hcer0
 かつてレッドシルバーやそれを放った宇宙警備隊のウルトラマンの集団が現れたときも、特防は
攻撃していいのかどうか判らず二の足を踏んでしまった。今回起こった事態に混乱するのも
仕方ないことだろう。
 よって、達志の進言でまず彼がアルファに変身して宇宙へ先行し、様子を見ることにする。
「すいません・・・ここ暫くこんなことばっかりで」
 達志は詫びる。

 宇宙に飛んだアルファは、ウルギオンと対峙。
 理性をなくした化け物になっているところに逆恨み骨髄の相手を見たウルギオンは、敵意を剥き出しにする。
 彼らの原則によれば、ウルトラマンは地球人類にとってあくまで謎の存在でなければならず(今更なのだが)、
ましてコミュニケーションの取れる存在でなどあってはならないらしい。なので、
『ジュワーッ!!』
『ジュワッ、ダァーーーーーッ!!』
『フェッフェッフェッフェッフェッフェッ』
 次々形をとって出てくるウルトラマンの顔が、言語を捨てて動物のように吠え立てる。
 その様が、アルファには心底悲しく情けない。
『戦えない人々を守るという本分を忘れてまで、自分達の勝手に作った決まりの奴隷であり続けることが
そんなに大事か!?』
『ジュワーーーーーッ!!』
 もう彼らには言葉も届かない。ウルギオンはどろりと溶けると高波のようにうねってアルファに襲い掛かり、
並ぶ砲台のようにウルトラマンの体が浮き出しては一斉に光線を掃射して攻撃してくる。
 下手に反撃していいのかどうか、アルファは迷いながら避け続ける。
「川上隊長、やはり援護したほうがいいのでは・・・?」
「うむ・・・しかし・・・」
 ディフェンスポートで、隊員達の言葉に苦悩する川上・・・
336名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:56:07 ID:l203hcer0
『アルファ君、下がりなさい』
 突如、デリートがテレポートで出現、介入した。
『デリート隊長!?』
『彼らの暴走を事前に防げなかったのは、かつての上司の私です。ここは私が始末をつけましょう』
『しかし、始末をつけるってどうやって・・・?』
 見守るアルファを背に、デリートは構えを取って気合を溜めると・・・

『サイコバースト!!』
 何の躊躇もなく膨大なウルトラ念力を解放し、広大なウルギオンをその構成物のひとかけらまで、
爆破して吹き飛ばした。

 粉塵が宇宙を灰白色に染め、ウルギオンはもう自己再生する様子はない。
 言葉もないアルファ。地球の一同も。
 デリートは振り向いて悲しげに笑い声を漏らし、
『まがりなりにも今は地球の守護者である君が同胞に手を下すのはやはりよくありません。やるのは
やはり私です。責任者は責任を取るのが仕事』
『・・・隊長・・・』
『まあ、そんなに深刻になることはありませんよ』
『しかし・・・!』
 デリートはそのまま両手を前に伸ばすと、

『死人生き返らせ光線!!』
 今皆殺しにした宇宙警備隊員一同を、余韻など意にも介さず全員蘇生した。
337名無しより愛をこめて:2007/12/03(月) 22:58:17 ID:l203hcer0
 元に戻って眼前に大勢漂っているウルトラマン達を前に、
『・・・・・・いや・・・あの・・・
 本当にいいんですか? 冗談抜きで安直なんですけど・・・』
『君も前回私の力で生き返ったじゃないですか』
『・・・いや、そうなんですけど・・・』
『まあ、この件に限って言えば、遠慮することはないでしょう。目の前の彼らだって、前に自分らの不始末で
大勢死んだ地球人を安易に生き返らせたんだし』
『あ・・・そうか』
『不満を言われる筋合いはありませんよ』
 生き返って目を覚まし、正気も取り戻したウルトラマン達は、眼前にアルファとデリートがいることに気付いて
仰天し、一斉に構える。
 アルファとデリートは泰然と、何か? という視線で見ている。
 この舞台においてその他大勢以上の意味を持ち得ない有象無象のウルトラマン達は、苦虫を噛み潰したような
様子を続けていたが。
 やがて、視線を不自然に脇に逸らし、特に何も言わず、逃げるように太陽系から飛び去っていった。

 大騒ぎっぽい発端に比して余りにも呆気ない結末に、ピコリオスとガメロティオスは拍子抜けしていた。
 だが、キリオスは依然冷静。
「機は熟した」
 意味を理解できない二人を置き去りにして、
「次は、私自ら出る」

 続く。
338名無しより愛をこめて:2007/12/04(火) 12:38:44 ID:bn1bIjzeO
感想を どうぞ
339ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:22:27 ID:DmyGANew0
第四十七章 一名様お帰りです。 破位暴神仙スサノオ 汎用邪花レンザトハンビ発現

「ミウ、神山ってドコにあるの?」
「…は?」
 姉の唐突な発言はいつものこととしても、これは聞き逃せなかった。
「行ってみたい。そこがわたしの故郷なら。」
 確かに、姉の謎がまだ一つ残っていた。
光の一族からも邪仙からも神々からも恐怖される「カンナ自身の力」とは何なのか。それが分からない。
ならば神山に行くのも悪くはない。ないが…。

《なぜ只人の側へついたのじゃー!!》
 神でない者を徹底して卑下する一人の神。語尾に「じゃ」とか付けたら迫力が出ると思っている。
コイツが神山の頂にある廟で、集った光の一族を怒鳴りつけている。声を大きくすれば迫力が出ると思っている。
それを一人の女神が止めた。高天原で一、二を争う実権の持ち主、セイオウボだ。
《老師よ。スサノオの糧を断たねば高天原もうぬらも消える。分かっていよう?》
 スサノオは地球との強い「縁」(エニシ)を持つ神である。故に人間を喰らえば力は増す。
また、その強すぎる力と粗暴な性質は高天原で嫌われ。迫害され続けた。
つまり、人類を喰らい力を強めたスサノオに、憎悪と共に高天原へ殴りこまれればどうしようもない。
だから、自分達で人類を滅ぼし、糧を断とうと考えた。故の破壊であった。
 セイオウボの問いに、黒濠老師が顔を上げる。
「重々承知いたしております。なれど、我々も戦ってみたくなったのでございます。
 皆様の力ではなく、我々の意志、我々の力で己がし得る限界に挑んでみとうなったのでございます。」
 決意表明はしたものの、立場の悪さに変わりはない。それは、軍も同様だった。
340ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:25:12 ID:DmyGANew0
「基地を落とされて勝算があろうか?」
「もっと骨のある国だと思っていたが…」
南蛮、欧米、西欧諸国軍の大使らが一斉に来日、基地を落とされた不甲斐ない日本の軍へイヤミを言いに、もとい今後の展望を論議しに来たのだ。
ワタリベ幕官は、立腹を必死に隠した。
確かに、国力でも軍事力でも日本は諸国を圧倒している。だから、これまで邪仙や神々との戦いが全て日本任せになっていたのも分かる。
しかし、それなら文句言われる筋合いもないだろう。
これまで一切の援助をしてこなかった上に一つの失敗を槍玉にあげ声を荒げやがって…。
「と、考えてるなら軍人としちゃ未熟だよ、ワタリベさん。」
いつの間に背後にいらしたのですかツルギヤマ将軍。
「そもそも軍人は民のために無償で戦う物好きの集まりさね。
いっくら見返りをもらえなくたって文句を言われたって、それであっしらが怒っちゃいけない。」
ただね、とツルギヤマは腰掛ける。彼の杖が仕込み刀であることは、ワタリベ幕官しか知らない。
「今、東京港にスサノオがおねんねしてる。あれだけ何とかしないとどーしょもないわけだ。そこでですな…」
大使ら一人ずつに書簡を渡す。
「量産型の鬼道機関、その設計図だ。出力はあっしら日本や東洋軍の使ってるヤツよか弱いが、
まあ数作って術者集めりゃ何とかなりましょうな。ソイツをどう使うか、おたくらに任せる。」
諸国の軍にも鬼道機関はある。但しそれらは日本基地が生産したものであり、
更に日本基地大使の監視下におかれていたため、諸国は製造法を知らない。
それをツルギヤマはおおっぴらに明かしたのだ。
「将軍!これでは諸国の軍事均衡が…」
「まあ見てなさいっての。」
ツルギヤマは悠々と議堂を出ていった。気楽にも驢車を拾ってレイテイへ戻る。
大使らは、会合の目的も忘れ我先にと帰っていった。
残されたワタリベ幕官は大きく息を吐く。
「将軍、私はまずスサノオを何とかしたいんですが…。」

「さっさとスサノオを何とかしろ!」
またこの苦情か。読み飽きた。
眠っているスサノオ。壊滅した基地。民が不安になるのも当然だ。
ただし不安なのは自分達も同様なので、民の苦情を聞くとなおの事焦る。
いっそ酒に走ろうかと思ってしまうユリノである。
341ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:28:41 ID:DmyGANew0
「ウルトラマンになりたい、とか思っちまうよなあ。」
 ワタリベが妻に買わされた人数分の饅頭を持って現れた。
「マミヤは何で龍と会ったの?」
返答に躊躇する。リュウラの正体がばれるのは別に良い。ラセツに至っては以前レイハの眼前で転化した事もあったので、そもそも隠す意志がなかった。
ただ、カンナの秘密だけは胸にしまっておきたい。

カンナに何らかの巨大な力が眠っていることは皆にばれた。しかし、具体的にどんな力なのか。それは隠すべきではないかと思った。
だから、返答の代わりに「質問の意図」を逆に問うてみた。
「なぜそれを聞く?」
「いやな…、ウルトラマンは『神と人間の複合体』なんだろ?だったらオレらも地球の土地神と協力すりゃウルトラマンになれんじゃねーかと思ってさ。」
ヒスイは少し笑んだ。仲間達の戦意は全く衰えていない。ただ、そんな事は出来ない。

神と人間の意志が完全に合致していなければそもそも融合ができず、従ってウルトラマンにはなれない。
龍自身当初は人間の事など考えず、ただ強い「縁」を感じたカンナを守るのが目的であった。その意志と自分、マミヤヒスイの意志が合致したからこそ融合に成功したわけで。
まあ融合後は割と好き勝手に力を使わせてもらっているが、未だ龍の口から人間に対しての好意的な言葉を聞いた事がない。
だから、人間と目的を同じくする物好きな神がいなければウルトラマンは生まれない。
人間の一存だけではウルトラマンは生まれないのだ。
苦しい時でも神に頼めない。
そんな事を伝えたらワタリベは心底残念そうに項垂れた。

項垂れたがすぐに奮い立った。ユリノの声だ。
「大宰、小宰、急ぎ操舵室へ。スサノオが動き出しました!」
北川町にも匹敵する巨大な夕日に照らされ、東京港は橙に染まっていた。そこに陣取る異形のサナギも含めて。
サナギは、容易く内側から割れ始める。糸を引き、無数の体毛に包まれたやはり異形のものが顔を出す。
―我々が目にする昆虫のそれと酷似しているのが興味深かった。−
異形のものは、ほぼ水没した状態で暫く体を丸め、霧散してゆくサナギの外殻を吸収していた。
そして、覚醒した。
342ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:30:25 ID:DmyGANew0
海面より、顔の上半分のみが露出した。狂気に満ちた二つの目は赤い。それは夕日に照らされたからばかりではあるまい。
耳の僅かに上から二本の角が湾曲して生えている。牛に似ていた。別称の由来か?
紅眼で陸地を凝視しながら前進を始めた。顔の下半分、手足、胴体、全て海中に隠したまま。

「治安維持院に通達!民には奴の眼を絶対に見せないよう!」
ゴジョウは、奴の眼が人を狂わせる事を見抜いていた。そして機翼に呪的シールドを施した状態で出陣させる。
但しスサノオの能力が不明瞭なので、ゴジョウの他にヘキ、万一に備えてミウがレイテイに残った。
「こちらフナト、現地到着。スサノオの頭部視認。攻撃開始します。」
レイカイオウ下部より装甲貫通兵器「飛宙槍」が射られる。しかし、槍は空中で消失した。いや、
「小宰、右舷後方二時!」
フナトの乗るレイカイオウを槍が襲った。辛うじて避けるが、空中で軌道を変え、執拗にフナトを追う。スサノオに誘導されているのだ。逃げられない…。
「ミウツシノヤイバ、起動します。」
カンナの乗るレイキザンが放った切断技で、何とか槍を撃墜した。
ヒスイはレイヒュウゴより光線砲を撃ち込むが、それもまた着弾前に消失、気がつくと周囲の漁船を焼いていた。
釣瓶を落とすように急速に日が落ちる。その時、レイヒュウゴ、レイキザン、レイカイオウの背後より二十を超える機翼が現れた。関西省支部 弐條城より発進した支援部隊である。

だが、それも気休めであった。続いては機翼自体が消失し、港周辺の建築物を突き破り、大地へ突き刺さり、大破する。
「空間転移…?いや、空間歪曲か!」
ヘキがその能力を解析した。敵は周囲の空間を自在に連結させられる。機翼が飛行している空間と地面すれすれの空間を繋げ、飛行する速度のまま地面と衝突させているのだ。
「手さえ触れず…僕達を自滅させる力を持っている…。全機翼、急ぎ結界を!ソイツに物理攻撃は意味を成さない!」
敵の邪眼と空間歪曲、二つを防ぐため鬼道機関をフル稼働させる。これではろくな攻撃が出来ない。
スサノオは、攻撃の手が休まった事を確認するや全身を海上に現した。
鎧のようなものは殆ど確認できない。血膿色に染まった体毛、恐ろしく精悍な胴体と手足は憎悪を隠しきれず、常に痙攣している。
牛に似た顔にはむき出しの牙。
343ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:33:36 ID:DmyGANew0
西洋では迷宮の奥に半人半牛の妖が閉じ込められていると言うが、眼前で咆哮する邪神はそんな呑気なオバケとは格が違う。同じ土俵で語ることさえ憚られる。
これがスサノオ。高天原を恐怖させ、八岐大蛇を下した、神話最強の、最凶の暴神。

暴神の咆哮は続く。ふと見ると、レイカイオウの鬼道機関が稼動を停止させている。
これもまた、奴の力か。
≪…ム、ラァ、ク、モォッ!≫
スサノオの声が響いた。同時に右腕が隆起し、長大なカギヅメが現れた。
レイカイオウを、その剣の錆にする気か!?
しかし、その動きが突然止まった。
先刻とは全く異なる叫び声をあげ始めた。気弱な青年があげるような、悲しい声。
一頻り泣き終えると、スサノオは何処かへ姿を消した。

スサノオの復活は、神山でも感知していた。
「頼む、我々の誇りが云々など言ってはいられないのだ。スサノオが覚醒した。放ってはおけんだろう。只人やウルトラマンに手を貸そうではないか!」
黒濠老師の言葉にも大多数の者は耳を貸さなかった。
「俺達は俺達のやり方でやる。老師、アンタが余計なことをしなければ高天原から睨まれる事もなかったんだ!」
若い術師たちから一斉に冷遇され始めた。
かつて、龍神の巫女 ミヤビは、只人に慈悲をかけ、故に死んだ。
そんな慈悲は余計なことだと思っていたが、いざ事態が思わしくなくなった時、自分もまた只人へ余計な慈悲をかけた。
そんな事を、山の頂で廟と隣り合う湖を眺めながら思った。

「完敗ですわ。」
戻るやフナトがそんな事を言う。どうすればいい?スサノオは余りにも強かった。勝てる手段は…
「…ウルトラマンになりてえな。」
ワタリベがまた口走る。確かにウルトラマンの力なら勝てるかもしれない。
だが、それは苦しいときの神頼みなわけで、それは自分達の力、ひいては誇りの否定である。
「だから、ウルトラマンの存在を前提に策を練りたくないのよ。」
ゴジョウがそう口走る。いわば大将である自分が、わざわざ部下達の誇りを踏みつける訳にはいかないから。
しかし、ウルトラマンの力を使わずにスサノオに勝てようか?
344ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:35:14 ID:DmyGANew0
「だったら、ウルトラマン自身が好きに戦えばいいんじゃ?」
ミウがそう言う。
「あたしは神の力を自分の物だと思って好きにやってきた。この…鬼だって文句言わなかった。あたしは勝手に戦う。あたしだから。」
 それでいい。とゴジョウが笑む。神に仕える民族としては難があるが、人としてはそちらの方が理想的だ、と。
 その時、スサノオが再び姿を現した。走り出すミウ。それを、カンナが止めた。
「…基地が陥落してから、ミウといっしょの所で寝起きして、思ったことがあるんだ。」
 真摯な眼光がミウに突き刺さる。カンナは続ける。
「ミウ、お肉ばっか食べすぎ。」
あ゛?
「血圧が高くなって高血圧になっちゃうよ。」
うん、重複してるな。
「血圧が高くなって高血圧になっちゃうよ。」
二回言わんでもええやん。
「…分かった。野菜も食べる。」
「よし。行け。」
命令形?
思い切り緊張感が失われた状況でミウは再度駆け出す。
「ヒスイくん、行け。」
 俺にもか。

 東京港より上陸しようとするスサノオ。その周囲には植物型邪仙トハンビが群れを成している。折角復活させたスサノオを倒させてなるものか、ということか。やはり邪仙は高い知性を持っているようだ。そして嫌な眺めだ。
《ミウ、勝ち目は薄い。》
 鬼神が、自分を心配している。珍しい。ミウは刀―バーニングヴァジュラを抱き、その神に問いかける。
「龍やガルーダは一神しかいないから分かりやすいけどさ、鬼って沢山いるじゃん。アンタ自身の名前は何て言うの?」
《…クミホ。》
 クミホ。ではこれからそう呼ぼう。なんて言っている間にヒスイも到着した。
「…マミヤさん、姉はどうすりゃいいんですかね?」
「難しいな、色々と。」
 妙に通じ合った。久々に。
345ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:37:30 ID:DmyGANew0
「行くぞ。君が宿主 マミヤヒスイの名において命ずる。龍、明、和合すべし。」
「君が宿主 天龍水映姫の名において命ずる。鬼、炎、和合すべし!」
「「出でよ」」 「リュウラ!」「ラセツ!」
 光の水がヒスイを包み、光の炎がミウを焦がす。水から龍が産まれ、炎から鬼が覗く。
二神はウルトラマンリュウラ、ウルトラマンラセツとなってスサノオらの前に立ち塞がる。

 ラセツは光の剣 ハデスヴァジュラを引き抜いて、トハンビを片っ端から切り裂いていく。一方のリュウラは、スサノオと激突する。
シャイニングヴァイパーが放たれるが、スサノオは右腕から生えた必殺剣ムラクモでこれを受け止める。
効かないと見るや手から伸びたシャイニングヴァイパーを直ちに断ち切り、額からショットスパークルを繰り出し敵の目を狙う。卑怯?結構。
しかしスサノオの角が婉曲し、これも打ち払う。
リュウラが不利と見て、ラセツはトハンビの蝕腕をかいくぐりソードスパークルを発射した。思わぬ方向からの光刃はスサノオの足に突き刺さる。
血、というわけではないが、それらしいモノが流出する。
隙を見てリュウラの代わりにスサノオへ突撃するラセツ。
邪神の邪眼が邪悪に光る。以前フクギが使ったものと同じ精神干渉波だ。
だが、今のミウにそんなものは通じない。既に、母の死は受け入れているから。
怒りの剣が、スサノオの眉間に抉り込む。

「…倒れない?」
 ラセツは、ミウは驚愕した。足の傷も、眉間の断裂面も瞬時に回復したのだ。
再度リュウラが前に出る。今度はコウへ変身して。
背後より、スサノオの気を受けて蘇生したトハンビが迫る。
「粋がってんじゃねえ!」
 ラセツの光炎 ハデスフレアがこれを焼き尽くす。
《スサノオ、己が憎悪に侵され神言も失くしたか?哀れよな。》
《リュウ…ホロボス…!》
 スサノオは、最強の敵である龍を眼前に、闘志を燃やしていた。殆ど忘却の彼方に行った言葉も僅かに呼び戻し、精一杯に龍を挑発する。
リュウラは必殺のシャイニングボムを放ち、短期決着を図る。
現時点で高位闘神仙ラゴウと同等の力をこのスサノオは発揮している。シャイニングボムのみで砕けるとは思わない。
346ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:38:37 ID:DmyGANew0
これに対し、スサノオも開いた両腕に力を展開させ、凝縮した「意の弾」を撃ち出す。
激突した二つの弾は、巨大な波動を周囲へ撒き散らしながら相殺した。
シャイニングボムに匹敵する威力。
続いてスサノオは、「意の弾」を続けて数十発発射、同時に、咆哮し全身から「力の波」を放射した。
 この圧倒的な集中砲火に、さすがのリュウラものけぞる。
…のけぞるだと?これまでコウの鎧は無敵を誇った。だが、この猛攻で発生した衝撃を全て吸収するには至らなかったということか…。手応えがある。
二発目の「力の波」が咆哮と共に打ち出されるが、全身に龍型の光を纏わせる防御技 ドラゴンフィールドでこれをやり過ごし、力の余波を吸収して最強奥義 ドラゴンインパクトを放った。
龍型の光がスサノオに飛びかかる。標的は咆哮と共に「力の波」を放射して迎撃するが、勢いは止められず、炸裂する。膨大な光量がスサノオを包む。

 光が消えた時、スサノオは、生きていた。
全身に深い傷を負いながらも、辛うじて耐えたのだ。
「力の波」がドラゴンインパクトを弱めたのか、即座に治癒したのか、若しくはその両方か。
 邪神はまたも咆哮、襤褸切れのようになった姿で尚もリュウラとラセツに飛びかかる。この闘志、何処から…。
刹那、空が割れた。亀裂から、光に包まれた巨鳥が姿を見せる。
鳥はスサノオの周囲を舞い、これを撹乱する。
滞空した鳥は、全方位に稲妻を撒き散らしながら自分を守るように翼を交差する。一際大きな稲光。直後、鳥の姿は変わっていた。

罪と後悔に満ちた黒き体躯、その闇を貫く赤は、贖罪と正義の意志を示しているのか。巨人は、東京港に降り立つ。
「トキツグ!」
 ウルトラマンカルラ、再臨。
347ウルトラマンリュウラ:2007/12/05(水) 13:39:20 ID:DmyGANew0
 カルラは左拳を真正面に突き出す。半年前と変らぬ戦闘体勢だ、と思われたが、更にポーズは変る。
突き出した左拳を頭上に回し、一旦右手と交差する。下ろした左拳を胸に置き、右手刀を敵に向ける。
かの光の巨人から学んだのは、魂だけではなかった。
スサノオはしつこく咆哮し、カルラをムラクモで刺殺せんとする。
だが、カルラの方が速かった。全力疾走から跳躍し、右手を光刃として斬りつける。
かの巨人より学んだ新技「翼光圏 セントラルスラップ」だ。
ドラゴンインパクトの傷も癒えないまま受けた一撃に倒れこむスサノオ。
着地と共にカルラは両腕を前方で交差。左右に拡げ、体の前面に光槍を現出する。右手一本で槍を回転させて力を増幅し、強化されたウィングインパクトを投げつける!
直撃し、思わず絶叫するスサノオ。
リュウラ、ラセツ、カルラの三人は、再び同時にファイティングポーズをとった。

四十八章へ続く。
348名無しより愛をこめて:2007/12/05(水) 20:33:48 ID:sk8tw0DzO
349名無しより愛をこめて:2007/12/06(木) 20:43:42 ID:EybV3QrnO
350名無しより愛をこめて:2007/12/07(金) 00:35:38 ID:3CWGW7Q+O
end
351ひろき:2007/12/07(金) 21:11:37 ID:QvViv3s40
ウルトラマンレオわ
352名無しより愛をこめて:2007/12/07(金) 21:16:11 ID:3CWGW7Q+O
353ひろき:2007/12/07(金) 21:19:22 ID:QvViv3s40
ウルトラマンレオはどうですか
354名無しより愛をこめて:2007/12/07(金) 21:37:51 ID:3CWGW7Q+O
355名無しより愛をこめて:2007/12/09(日) 14:03:33 ID:cSBueb63O
356名無しより愛をこめて:2007/12/09(日) 19:01:45 ID:cSBueb63O
357名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 09:54:11 ID:g8otHtRL0
ウルトラマンアルファ・コンティニュー 08 人の審判
粛清特使・キリオス、暗黒尖兵・ワルギオン、
粛清特使・ガメロティオス、粛清特使・ピコリオス 出現


 キリオスは、遂に自ら陣頭に立ち、地球攻撃のための活動を開始した。
何時もの地球人の青年の姿を解き、本来の白黒まだらの異形の巨人になっている。
先ず、亜空間ステルスを解いて威容を現した母艦サテライト・フォースを基点に、
広範囲のワームホールを開く。穴は、キリオスの治める宇宙の彼方の文明圏、
プラネット・フォースに繋がっている。そこには、生活圏を治める上で不要になった
住民を逐次原子分解処分するためのプラズマ分解炉があるわけだが、そこから発される
分解処分用の大量のプラズマエネルギーを呼ぶ。地球圏に蔓延させるために。プラズマの
範囲内に入れば、地球圏を構成する物質は全て分解されて無に帰する。無論、人間も含めた
全ての生きとしいけるものも。
 サテライト・フォースの周囲には、ワームホールを発生させるための装置が仕込まれた
ブイが複数距離を置いて配置され、これを壊さない限り(一箇所だけでなく全て)、
プラズマは吐き出され続ける。そしてキリオスも、容易にブイに地球勢力を近づけない
ための用意をしていた。
 前回彼が捕まえて制御・利用し、超人群体・ウルギオンに変貌させて手先とした、宇宙警備隊の
その他大勢ウルトラマン達。彼ら自体は既に解放されて帰っていったが、その一人一人の
戦闘能力のデータをキリオスは既に分析・把握していた。そして、その戦闘能力をコピーした
人工生命体『ワルギオン』を量産して配備した。ウルトラマンに姿が似た、しかし全身漆黒の
巨人の軍団。それらがサテライト・フォースから解き放たれていく。
358名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 09:55:51 ID:g8otHtRL0
 目に見えない、しかし極めて危険なものが紫電を散らしながらもくもくと漏れ出してくる
ワームホールを、宇宙に滞空したキリオスは皮肉な笑いで見詰める。
『とある別世界では、人類を導くと称して現れた悪魔のような炎魔戦士が、自分の同胞を
呼び出すための「地獄門」を開こうと目論んだそうだが、勝手に絶望して自ら望んで滅び行く
人間のために造られたプラズマ炉の力を吐き出すこの門を、その人間の住む現世になぞらえ、
私は「現界門」と名付けよう。
 神の御業でも悪魔の所業でもない。人自身の穢れで人は滅ぶのだ』

 放っておけばプラズマエネルギーが地球まで迫り、人類は全て分解されて消えてしまう。
事態をキャッチした特命防衛隊は、それを阻止するため立ち上がる。その動きは極めて
速やかだった。
 何となれば、粛清特使の意図を知った川上隊長は、
「安心したよ」
 不敵な笑顔でコメントした。
「神とか悪魔とか自称するわけのわからん連中が勝手に人類の興亡を決定するのかと思ったが、
人自身のありようによって滅ぶというのなら、人のありようによって滅びを回避するほうに
持って行くことも可能ということだ。こんな慈悲深いことはない」
 キリオスが登場して以来ずっと人間以外の連中にアドバンテージを取られっぱなしだった
特防は、此処で奮起せねば男が廃るとばかり、追い詰められたことで逆にやる気に満ちていた。

 銃後の安全と混乱防止のための、避難活動の整理や情報操作という方面に活路を見出した
高橋参謀は、今やすっかり改心して特防と連携して自分の出来ることに力を注いでいる。
彼の指示で情報操作のために奔走する日高情報主任の諦念に満ちた思想そのものは相変わらずだが、
もうそのことについては誰も口出しはしない。仕事だけきちんとしてくれるなら、もう
個人の考え方なんかどうでもいい。
359名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 09:57:30 ID:g8otHtRL0
 後方を任せたところで実戦方面。
 地球に向けて別動して侵攻してくるワルギオンの軍団に対し、反撃が開始される。
小倉博士の研究所に向かった由美子隊員は、久々に小倉と共同し、人の精神エネルギーを
光に変換するマインドビーム砲を再起動。アンドロイド・ミリーもオペレーターとして参加。
飛んでくるワルギオンの群れを、高い命中精度と大威力のビームで超長距離から狙撃。攻撃される
前にと、次々撃墜していく。
 それで撃ち漏らした分に対しては、ソニックビート、トライビート混合航空部隊が出撃。
量産機として完全に確立されたトライビートの大編隊を率い、斎木、柏村、沖田の各隊員が
各地の上空で黒い巨人を撃破。手から暗黒のビームを放ってくる、確かに怪獣クラスの巨大な敵だが、
前回ウルトラマンアルファとデリートの二人のガンツケだけですごすごと引き下がったその他大勢の
コピーである。特防が本気を出せば、どうにもならないというほどのレベルではない。
問題といえば数くらいだ。
 暫く持ち堪えてもらう間に、美樹隊員、そして自ら出陣した川上隊長のソニックビート率いる
量産ソニックビート(高性能機の量産ということもあって数は限定されていたが)決死隊が、
ワームホール発生装置、更にサテライト・フォースとキリオスを直接叩くために宇宙へ向かう。
「川上隊長」
「何だ?」
「何故私をこの作戦の副隊長に選んだのですか? 戦闘機での高速戦闘の技量というなら、
斎木隊員や沖田隊員とかの方が」
「何を卑下している。再三地球を襲う危機に対抗し続ける日々の中、君も確実に腕を上げて
きている。私が太鼓判を押したのだ。任せるぞ、美樹君」
「は・・・そこまで仰られるなら」
 美樹への信頼の言葉に嘘はないが、実は、川上には美樹を選んだもう一つ別の理由があった。
ある計算が。
360名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 09:59:13 ID:g8otHtRL0
 ワルギオン軍団はワームホール周辺にも警護のために控えていた。決死隊に襲い掛かる。
本丸を守っているだけあって先方隊よりは強力になっており、簡単には攻め落とせない。
どころか、特防側が押されている。
「くっ・・・!」
 二人のワルギオンに挟まれ、美樹機が窮地に陥る。
 回避行動が取れない美樹目掛け、両ワルギオンが構えて暗黒ビームを両手に充填したとき。

 飛んできた銃弾が両者に撃ち込まれ、爆裂させた。
「勇!?」
 特防隊員だったときの名を美樹が叫ぶ。
 暗い宇宙を背景に、弾丸を放ったウルトラ松葉杖を構えている巨大な影。
 久々の、ウルトラマンズィーベン。宇宙警備隊に留まっていたときのアルファの直属上司、
そして、元・特防隊員にして美樹の想い人、大谷勇。
 ズィーベンは己の位置を不動のまま更に弾丸を連射し、次々ワルギオンを撃ち落していく。
一気に流れが変わり、量産ソニックビートのパイロット達は歓声を上げる。そして、川上も
感慨深げにズィーベンを見る。
「やはり来てくれたな、勇」
 そうなのである。かつて勇=ズィーベンが地球での最後の戦いを終え、特防隊に別れを告げて
宇宙に去った際、美樹の次に近い位置でズィーベンを見送ったのが、当時から隊長の川上だった。
そしてアルファの地球就任以来、美樹がピンチになるごとにズィーベンが助けに来るのを
見ていた川上は、今回もきっとズィーベンが来ると当て込んでいたのだ。
361名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 10:01:19 ID:g8otHtRL0
「地球という星を愛していたお前のことだ。きっと今回も来てくれると思っていたよ」
 抜け抜けと言う川上の意図を知った美樹は、物凄い視線を投げかける。それはズィーベン=
勇も同様。粛清特使軍団の出現で再び情勢の悪くなった地球へ、アルファ達を援護する
ために遅れ馳せながらやってきたというのが実情なのだが。
美樹「隊長・・・それが本音ですか」
川上「あ、いや、美樹君、そんなことは。君を信頼しているというのは本当で」
 ズィーベン=勇も、険のあるテレパシーを送ってくる。
勇『川上隊長。かつての仲間を援護することは別にやぶさかではありませんが・・・最初から
ウルトラマンとしての俺の助力を計算に入れてたんですか? 「だから、ウルトラマンの存在を
前提に策を練りたくないのよ」とつい最近仰られた某部隊の名将に対して恥ずかしくないんですか?』
川上「いやいやいや、地球の危機という事態に際してそう硬いことを」
勇『美樹。もうこんな人はほっとこう』
美樹「そうね」
 ズィーベンと美樹機は見事な連携でワルギオン軍団に猛反撃を始めた。あ、あ、ねえ二人とも
話を聞いて〜と追い縋る川上をほっといて。

 戦況に余裕が出てきて、ワームホール発生装置の仕込まれたブイを量産ソニックビート隊が
それぞれ破壊しに向かう中、
『この流れで、もう勝てると思うか? お前』
 先行していた達志=ウルトラマンアルファは、大ボスのキリオスと既に対決の最中だった。
『さあな。最後まではわからんぞ』
 戦いながらアルファに問われても、やはりキリオスは悠然としたまま。
『現界門を発生させているブイの最後の一個は、私の体内に埋め込まれている。私をきっちり
倒さない限り、プラズマの流出は止まらんと言うことだ』
362名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 11:00:17 ID:g8otHtRL0
 そのキリオスは、接近戦では身体の各部から刃のように鋭い突起を出してアルファブレードとの
斬り合いで五分に渡り合い、遠距離では手から炎の弾を矢継ぎ早に撃ってくる。動きは
デスフェイオス同様に素早く、しかも引くところでは引くという力加減を心得ており、
高速戦型のアルファが大概苦戦している、同じスピードタイプの敵だ。戦況が優勢になって
きたといえど、気を抜いて倒せる相手ではない。
 そして、これまでのキリオスの作戦や信条を見て、説得も多分無駄だということも
アルファには察せた。
 正面から、全力で倒すしかない。

 長い攻防の後。
 自分もダメージを受けながら、着実にキリオスにダメージを溜めていったアルファは、
一打を与えて離れた瞬間、遂に必殺攻撃を放つ機を見出した。
 ギャラシウム光線を迸らせる。
 命中。眩しい白い光に包まれた、キリオスの巨体がシルエットになって崩壊していく。
 息詰まる消耗戦に比して、余りに手ごたえのないとどめの感覚に、まだ何か罠があるのでは
ないかと、アルファは疲れ切った体を無理に奮い立たせて警戒する。さっきからカラータイマーは
鳴りっぱなしだ。
 逆光でよく見えなかったが、キリオスの顔が、一瞬、微笑んだように見えた。
 皮肉に満ちた嘲笑ではない。満足げな微笑み。
 それも一瞬で、白い光の中に、影は直ぐに消え去った。

 雪崩が起きるように状況は好転し、ワルギオン軍団もブイも全て撃破されてプラズマの流出が
止まった後、沈黙している母艦サテライト・フォースも特防の攻撃で木っ端微塵に爆破され、此処に、
粛清特使軍団の攻撃は終結を見たのである。
363名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 11:01:58 ID:g8otHtRL0
 激しかった戦いの日々が嘘のように、地球は静かで平和である。いずれ又新たな敵との戦いは
始まるのだろうが、現時点では被害の復興も順調に進み、穏やかな日が続いている。
「結局、キリオスって人は何がしたかったんでしょうね」
 恵に問われる達志。
「僕には、何となく判る気がする」
 義憤が通り越して憤怒の赤いハンターナイトとなってしまったあのアヴォルを、達志は思い出していた。
自身が地球に害をなす悪鬼となってでも、手を取り合って自分を倒すために立ち上がる地球人達の
姿が見たかった、そのためだけにこんなことをしたのではないかと、達志は思った。
 胸中を語らずキリオスが散った今、真相は闇の中である。

 最後の戦いに結局姿を現さなかった、ガメロティオスはどうなったのか。
 キリオスがいなくなった後、彼の治めていたプラネット・フォースに戻り、人の心を失って
従順な人形と成り果てた人々の管理を維持し続けている。その一方で、人々が自主的に生きる意志を
取り戻すことが出来ないか、地道に実験政策を取り入れ続けている。何時成果が出るか判らない、
ひょっとすると永久に出ないかもしれないが、それでも地道に、諦めずに。
 ピコリオスもガメロティオスに同行し、活動に協力を続けている。
364名無しより愛をこめて:2007/12/10(月) 18:27:31 ID:4IYWk6J6O
臭ま○こ
365名無しより愛をこめて:2007/12/11(火) 12:55:05 ID:ku4bFWEcO
スペルマ
366名無しより愛をこめて:2007/12/12(水) 19:21:34 ID:8yb+ZIWZO
自慰
367ブリッツ作者:2007/12/12(水) 20:09:01 ID:iMckCY5S0
深夜。とある町の場末の賭場人相の悪そうな男達やエイリアン達が顔を突き合わせて座っている。
 客達から少し離れた所に、右目に眼帯をして長い刀を小脇に抱えた男が座り、バクチの様子を眺めている。男は赤茶けたトレンチコートを身にまとっている。そして、コートの左襟には流星をかたどった小さなバッヂが付いていた。
 客の中の数人のエイリアンが、互いに目配せをして懐に手を忍ばせた。
 賭場を取り仕切る、河童によく似たエイリアンが壷にサイコロを入れた時である。突然、客のエイリアンが懐から銃を取り出して立ち上がった。
 が、それより速く、エイリアンの首筋の刃が突きつけられていた。眼帯の男の刀である。
 「はーい、残念。おとなしく銃を捨てな。・・・お前等もだよ!」
 男が、さっきの目配せし合ったエイリアン達を一喝する。このエイリアン達は賭場荒らし目的で潜り込んでいたのである。
 「俺が先に得物をしまってやる。けど変な気を起こすんじゃねえぞ。」
 静まりかえった空気の中、男は刀をゆっくり鞘にしまう。それと同時にエイリアン達も銃を捨てる素振りを見せ・・・。
「うおおぉぉーっ!!」
 絶叫とともに、エイリアン達は男に銃を向けた。
しかしその刹那、時間にしてわずか一瞬・・・・・。彼らは男の刀によって、全員斬り倒された。返り血を浴びたほかの客達が、悲鳴を上げて出口へ殺到する。
「だから言ったじゃん・・・」
苦笑いをしながら男は言った。

 「全く、やり過ぎなんだよ・・・悪いがこれっきりにしてくれ。」
 賭場を仕切っていた河童エイリアンが男に札束を渡す。
 「はあ!?何だよそれ?」
 「こう毎回血の雨降らされたんじゃ、客の入りが悪くなるんだよ!金、ちょっと大目にしてあるから・・・」
 エイリアンの言葉を聞き、男は渋々賭場を出た。
 長刀を担いで町の出口へ向かって歩いていく男の後姿を、河童エイリアンは賭場の窓から見つめて言った。
 「それにしても、噂どおり大した腕だったぜ・・・流星のジョー。」
 
 『ウルトラマンブリッツ』
     #03 巨人と剣客
368名無しより愛をこめて:2007/12/12(水) 21:00:20 ID:8yb+ZIWZO
乱交
369名無しより愛をこめて:2007/12/12(水) 23:09:34 ID:8yb+ZIWZO
ピンサロ
370名無しより愛をこめて:2007/12/13(木) 12:27:40 ID:tI8r5aCkO
終了
371ウルトラマンオーバー ◆FTVw.4PYoM :2007/12/13(木) 20:54:42 ID:hlHqRqkk0
>>367
おお、物語を盛り上げてくれそうな新キャラの登場っすね
第3話、待ってました
続き待ってます
372名無しより愛をこめて:2007/12/13(木) 21:22:32 ID:tI8r5aCkO
待っても無駄


終了
373名無しより愛をこめて:2007/12/13(木) 21:43:39 ID:tI8r5aCkO
終了
374ブリッツ作者:2007/12/14(金) 15:24:36 ID:kn8mVN+Q0
 (1)
  一人の男を乗せた馬が、村外れの夜道を進んでいく。男の名はキハチ。彼は今、村の寄り合いから帰る途中である。
 〈通り魔出没中、夜間の外出には注意しましょう。・GAP東部方面支部〉と書かれたポスターの貼られた掲示板を横目で見ながら、キハチは馬の歩みを速めた。
 夜空を覆っていた雲が晴れ、月明かりが辺りを明るく照らし出した。すると、キハチの視界の中に、10m程先に立つ黒い人影が入った。
 「・・・・・誰だ?」
 そうつぶやいたキハチの顔が、すぐに驚きと恐怖で強張った。
 その人影は地球人ではなかった。真っ黒い体に、赤い大きな2つの眼が闇の中で不気味に光るエイリアンである。そして、何よりもキハチを恐怖させたのは、彼の両腕から伸びる長く鋭い刃だった。
 キハチの存在に気づいたエイリアンは、右腕を振り上げて彼のほうへ向かってきた。
 「あぁーーーーーっ!!」
 悲鳴と共に、キハチは馬首を返し、逃げようとしたがすでに遅かった。キハチの体はエイリアンによって真っ二つに斬られ、地面に転がった。
 驚いた馬は、そのまま村の方向へと走り去っていった。
 人気がなくなり、静寂の戻った夜道に、エイリアンの笑い声だけがこだまするのだった。

 「これで3件目・・・手口は全て一緒ということは、同一犯の仕業と見ていいな。」
 ここはGAPの駐在所である。この村のGAP隊員であるタイラ、シキ、カヲルの三人が、昨夜のキハチが殺された件について話し合っていた。
 「通り魔だな。おそらくヤツは、道を通る人間を無差別に斬って、それを楽しんでいる。」
 三人の中では一番口数が少なく、物静かなシキがぼそりと言った。他の二人が押し黙る。
 「・・・しかしどうしますか?僕達にできることも限られてますし・・・」
 三人の中で一番若い、新入隊員のカヲルが言った。
 「だったらできることを、確実にやるしかねえ。パトロールの回数を増やして、村に入って来る怪しげなヤツを、片っ端からしょっ引いて来るんだ!」
  タイラがそう言い、他の二人も頷いた。
375名無しより愛をこめて:2007/12/14(金) 18:00:52 ID:ZHQH0oHZO
あげる
376名無しより愛をこめて:2007/12/14(金) 20:32:43 ID:ZHQH0oHZO
終了
377名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:02:25 ID:30EP+koh0
 ワームホールと呼ばれる次元の穴が開き、異世界の存在が現れて地球圏に脅威をもたらすことも、
最早珍しいことではなくなっていた。
 いや、本当はとんでもないことなのだが、ウルトラマンや怪獣が普遍的な存在となっている
(それらの脅威は別にして)M78世界において、人々の感覚がすっかり麻痺していたのも
やむをえないことだろう。
 だが、この日の来訪者は、これまでと聊か毛色が違っていた。


ウルトラマンアルファ・コンティニュー 09 ようこそ根源破滅!?
改造宇宙忍獣・サバーギオス、疫病神、他 出現


 ワームホールは日本直上の大気圏外に展開した。かなり近くである。
 次元の歪みを既にレーダーで観測していた特命防衛隊は、斎木、美樹、柏村の何時もの三人を
ソニックビートで肉眼での観測に向かわせ、ディフェンスポートでは由美子がコンピューターで
分析。更に、最近すっかり由美子との連携が確立している小倉博士が呼ばれ、事態究明に協力。
ここ暫く、冒頭からいきなり戦闘が始まっているといった展開が多かった中、意外にも怪獣
ドラマらしく、ちゃんと怪事件の発端の調査から入るという流れになっていたのは皮肉だった。
 ワームホールの奥からは、巨大な物体が少しずつ現れ、丁度全容を見せたところだった。
青い色の結晶体。内部はよく見えず、ディフェンスポート側の計器でスキャンしても透視できない。
地球上では発見されていない材質であることは確かだが。
 只、よく似たケースを、小倉博士は過去の事例から思い出していた。
378名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:04:05 ID:30EP+koh0
 チルソナイトと呼ばれるやはり未知の物質で出来た隕石がかなり昔に、どのくらい昔かというと
この世界に何故か色がついてなくて皆モノクロだったくらい昔、宇宙から飛来し、内部には
制御電波を出す電子頭脳が入っており、続いて同じ材質で出来た巨大な隕石が飛来、内部からは
制御電波に操られて破壊活動を行うロボット怪獣が出現。その件はどうにか収拾したものの、
然程時期をおかずに同じロボット怪獣が同じ手段で来襲、しかも複数。生体黒点バルノイド事件の
元凶と思われる過去の事例同様、怪獣迎撃を想定した防衛隊もなかった時代、結構な騒ぎとなったらしい。
送り込んだ侵略者の意図は不明だが、飛び道具も持っておらず、直接ぶつかってビルを壊すぐらいしか
攻撃手段を持たない怪獣だったのでこれもどうにかなったらしいが。
由美子「じゃ、今回も侵略者の兵器か、それを格納した物体だと?」
小倉「断定は出来ませんが、恐らくは」
 実際、巨大な結晶は東京都心を目指して降下しつつある。このまま落下すれば大被害は免れない。
 川上隊長の許可が出て、物体の周囲を周回していたソニックビートは迎撃を開始。対怪獣ミサイルが
撃ち込まれて激しい爆発を起こし、破壊は出来ないものの、衝撃で物体は市街に落ちる軌道から
それ始める。
柏村「どんなもんじゃい!」
斎木「よし、このまま人の密集していない地点に誘導・・・」
 と、変化が起こった。
 結晶の表面の一角に出し抜けに穴が開き、そこから大出力で何らかのエネルギーが噴射された。
それによって位置が修正され、市街への落下軌道に戻されていく。
美樹「・・・もう、意図的なものと見て間違いないわね」
斎木「あの噴射口に集中攻撃だ!」
 三人は一斉攻撃を開始する。しかし、物体はびくともしない。噴射は依然続き、同時に結晶の別の
箇所が更に展開し、砲台らしきものが複数飛び出して実弾で銃撃を返してくる。三人が回避できない
精度の攻撃ではないが、結晶への攻撃に集中できず、確実に降下されていく。
379名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:05:25 ID:30EP+koh0
 そこで、すっかり外部協力者と化した城達志が援護しに来た。
 地上でウルトラマンアルファに変身して直接飛んでいくことも出来るのだが、その間のエネルギー
消耗を避けるため、特防がサポートメカを用意した。専用のソニックビートである。
 達志が乗っていって(達志は特防のレクチャーで、ごく短期間で基本的な戦闘機操縦技術をマスター
していた)、現場についてから外へ出てアルファに変身し、戦闘の間ソニックビートは自動操縦で
周囲を飛びながら状況終了を待つという仕組みである。
 最早ウルトラマンの協力が前提となっているというのも又各方面からの非難の対象になるだろうが、
前例は既に全くないわけではないのでもう皆開き直っている。地球を守るためには手段を選ばないのだ。
 到着した達志はおもむろにソニックビートから射出され、周囲には何もない天空に飛び出し、
「アルファーーーーーッ!!」
 アルファプラスをかざして光を放ち、巨体のウルトラマンに転じる。
 アルファは自身の超感覚に任せ、アルファブレードを抜いて振りかざすと同時に、物体に向けて突進。
刃が振り下ろされる。
 物体は、その攻撃を止めた。
 正確には、物体の内部から轟音を立てて飛び出してきた、長大な回転するドリル、としか思えない
ものが、刃を受け止めた。
 今回は物体の表面が展開してではない。ドリル自体の威力で内壁を力押しで突き破ってきた。
 ブレードとドリルが甲高い音で火花を散らせて鍔迫り合いを演じるまま、結晶の表面がばきばきと
砕け、内部にいたものが姿を現す。
 怪獣、と見て間違いないだろう。しかも重量級。フォルムそのものは長い尻尾を持つ直立爬虫類の
ようだが、体を構成する各パーツの質感にそれぞれ違和感があり(のっぺりしている部分、鱗で覆われた
部分、羽毛で覆われた部分、鋭い棘が並んだ部分など)、複数の生物をつなぎ合わせたようにも見える。
そして剥き出しの牙、敵意に満ちて爛々と光る眼。
 ドリルは、怪獣の左腕に直接移植されたらしいサイバーパーツだった。それを自分で物体の中から
不意打ちで突き出してアルファの攻撃を確実に受け止めたのだ。
380名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:06:57 ID:30EP+koh0
小倉「やはり侵略用の生物兵器か!?」
由美子「しかも、強化改造と相応の戦闘訓練を施されているらしいわね」

 怪獣はブレードを止めたまま、結晶体・・・というより、最早この怪獣兵器の装備、降下ポッドとでも
呼んだ方が妥当だろう・・・の内壁に仕込まれた機構を、残った右手で器用に操作。
 噴射を続けているノズルの出力を上げ、それをブースターにしてアルファに押し返してくる。
 アルファは驚きながらも、即座に対応。力の方向を器用に逸らして下に向け、くるりとひっくり返った
結晶体全体は、噴射と重力の相乗効果で一気に地上へ向けて落下。
 アルファは位置をきちんと計算しており、市街地から離れた山中の平原に両者が落ちる。
轟音と共に陥没して出来た巨大な穴から両者は立ち上がり、戦闘を再開。
 怪獣は巨体に比して素早い。更に、背びれを翼のように広げ、低空を滑るように飛び回り、
隙を狙っては唸るドリルを突き付けてくる。アルファは交わしつつブレードで反撃を続けるが、相手も
それを間一髪で交わし捲くる。ドリルで地を掘って瞬時に地下に潜り、いきなり飛び出して不意を突こうと
したりもする。
(・・・手練だ)
 重量級の敵で高速機動が出来る相手はそうはいない。ゾギア星人配下の剛剣宙将ゴーンを思い出す。
 暫く渡り合い、相手が巻き起こした土煙を煙幕として逆用して視界を殺し、やっと死角に回り込んだ
アルファは、素早く印を結び、必殺のギャラシウム光線を放った。
 それに対し、怪獣は、真っ二つに割れて近くに転がっていた降下ポッドの片割れにドリルを突き刺し、
ポッドを勢いよく持ち上げて盾にする。
 ポッドに光線が命中して爆発し、怪獣へのダメージが防がれてしまう。爆炎で視界も塞がれる。
 身を庇ったアルファが再び顔を上げて見回す。
(・・・いない!?)
 周囲には相手の気配は感じ取れない。特防のレーダーにも、もう怪獣の反応はなかった。
381名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:08:54 ID:30EP+koh0
 一面に稲妻を散らす灰色の暗雲が渦巻き、それ以外には何もない、異次元の別世界。
「前哨戦では踏み止まられたか」
 声が響く。
「まあ、緒戦は相手の力量を測るのが目的なので、これでいい」
 語っているのは、紫の僧衣を纏った男。人間に近い姿だが、全身がでこぼこしたディテールの突起に
覆われている異形。足場のない空間に、座禅を組んで滞空している。
 更に、男の周りを取り囲んで、話を聞いている・・・らしい複数の影も奇怪である。人らしいフォルムは
しているが、半透明でどんな姿なのかはっきりつかめない。ずらり並び、幽霊のように漂っている。

 彼らは、『平行宇宙』と呼ばれる、M78と別に存在している宇宙からやってきた。
 視聴者ではない、劇中の人々のどれだけが自覚しているかははっきりしないが、こういう世界が多数
存在している。M78世界の設定につじつまを合わせる作業が大変だからであろうし、宇宙警備隊管轄の、
下手すると元祖ウルトラ兄弟とゆかりのある新戦士が際限なく増えて面倒になることを考えれば
それもやむをえないことであろうが、そんな事情はともかく存在している。
 そして、他の平行世界の地球にも、その世界の定義に則ったウルトラマンが色々存在している。
オフィシャルレベルで既にそうなってしまっているから間違いない。それらの世界のうちの一つから、
今回の敵、『根源的破滅招来体』と呼ばれるものらの眷属はやってきたのである。
 本来の居場所における彼らの命題は、彼らのいる宇宙における地球と、そこに住む人類を滅ぼすことで
あった。地球侵略ではない。完全な殲滅である。
 地球に宣戦して以来、彼らの攻撃は苛烈を極めた。侵略目的ではないから、制圧した後の人類の管理や
地球環境などに気を遣う必要はない。都心で超質量を解放してメルトダウンを起こすとか、反物質のみで
構成された怪獣を地球と接触させて対消滅させるとか、それが駄目なら単極子の怪獣を送り込んで
地軸を狂わせて地殻変動で地上を壊滅させるとか、そういう狙いの作戦を何度も仕掛けた。
 しかし、それなりに多くの被害は出たのだが、未だに目的を達成するには至っていない。
382名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:11:16 ID:30EP+koh0
 彼らの狙う地球には、赤と青、二人のウルトラマンがいて、地球壊滅作戦を阻んでくる。他所から来たのでは
ない、地球現地産のウルトラマンだ。当初両者は信条の違いから仲違いしており、破滅招来体はそれに
つけこみ、青いほうのウルトラマンを策にはめて地球壊滅のために利用しようとしたのだが、結局
色々の障害を越えて両者は和解し、結果的には失敗。
 ウルトラマンではない地球の普通の人間達のバイタリティも半端ない。クレーンや竹槍やバレーボールで
直接怪獣に格闘戦を挑むというところまでこそ行かないものの、それ以外の各々で出来る範囲内でやれることを、
ぎりぎりまで頑張ってぎりぎりまで踏ん張って最後の力が枯れるまでここから一歩も下がらない。防衛組織の
メンバーだけでなく、非戦闘員である多くの外部協力者によって作戦が阻まれた例も枚挙に暇がない。
 更に、地球に生息する人類以外の存在、地球怪獣までもが抵抗してくる。彼らは別に人類や
ウルトラマンに協力したというわけではなく、自分達の生活圏が滅ぶと困るから勝手に抵抗したのだろうが、
それらの事柄が長い流れの末に一丸となり、破滅招来体が送り込んだ最大の戦力は撃破された。
 といって、破滅招来体の本陣が滅んだわけではない・・・らしい。その後もちくちくと戦力を
送り込んでくる。地球は一向に滅ばないが。
 そもそも、破滅招来体はそうまでして何のために地球を滅ぼしたいのか。恐らくは、M78において思い出したように
来る一部の敵と同じく、地球に対して何か面白くないことがあるのだろう(拙作においては来捲くっている、
というか、それしかない印象さえあるが)。第二期に目立つ、野放図に真正面から来る自称暗黒宇宙の支配者とか
自称恐怖の魔王とかみたいに邪悪を行うこと自体が目的ではなく。しかし、何が不満なのか口で言わずに
ひたすらいきなり怪獣を送りつけてくるというやり方を延々繰り返してるだけなので、意思疎通しようにも
どうしようもなく、悪循環は未だに続いている。
383名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:12:39 ID:30EP+koh0
 前置きが凄く長くなったが、行き詰ってしまった破滅招来体は、実験的な計画を行うことにした。
別の平行世界の地球に刺客を送り込み、滅ぼせるかどうか試してみる。無論最終目標は本来の彼らの世界に
おける地球の壊滅だが、この実験で思わしい成果が出せれば新しいノウハウも見つかるかも知れないという
意図らしい。
 M78世界には、二人どころか宇宙警備隊の元祖ウルトラマンがうようよいることも判っている。その条件で
地球壊滅に成功すれば、元の世界の赤と青のウルトラマン二人などものの数ではあるまいと考えたようである。
それに、M78世界で恒常的に地球に滞在するウルトラマンは、一回に一人だけらしい。節目ごとに
援護が来たりはするが。
 以上、説明一端終わり。今回は。
「帰還したサバーギオスのデータを取り、次の戦術を検討。それを元に次の怪獣をぶつけて再度威力偵察を行う。
並行して、諜報員を地球に潜入させ、現地の情報も収集する」
 僧衣の男『疫病神』(なんかそういう名前)は指示を出していく。
 返事も何もしないので指示に従っているのかは判らないが、周囲の半透明の影の群れが反応しているらしく、
その場から適宜消えていく・・・

 続く。
384名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 17:56:49 ID:LCBZB7j/O
作品名不明
385名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 18:04:42 ID:LCBZB7j/O
教団の信者以外は誰も読んでないから作品名など不要なんだよな
386名無しより愛をこめて:2007/12/15(土) 21:31:29 ID:LCBZB7j/O
終了
387名無しより愛をこめて:2007/12/16(日) 15:15:01 ID:X0Ie/DBOO
「教団の信者以外=1つめ(>>377)を読んでもいないで難癖つける痴れ者か、字が読めない文盲」
って事らしいから、信者と呼ん貰った方がいいやw
388名無しより愛をこめて:2007/12/16(日) 18:57:17 ID:sRxzKxRsO
せっかく荒らしスルーできてたのに台無しじゃん
389名無しより愛をこめて:2007/12/18(火) 06:49:50 ID:GTKZTqvJO
終了
390名無しより愛をこめて:2007/12/18(火) 09:49:20 ID:5a/3mJ9B0
またみてね!
391名無しより愛をこめて:2007/12/18(火) 20:07:29 ID:GTKZTqvJO
スカトロ
392名無しより愛をこめて:2007/12/18(火) 20:21:33 ID:fCD0xvVj0
露出プレイ
393名無しより愛をこめて:2007/12/18(火) 20:33:51 ID:GTKZTqvJO
売春
394名無しより愛をこめて:2007/12/19(水) 17:40:38 ID:LsHwb7jrO
聖水プレイ
395名無しより愛をこめて:2007/12/19(水) 20:44:40 ID:Pda+uegp0
濡れ濡れマンコ
396名無しより愛をこめて:2007/12/19(水) 20:50:10 ID:LsHwb7jrO
コスプレ
397名無しより愛をこめて:2007/12/20(木) 19:28:23 ID:ybIDHWEg0
レイプ
398名無しより愛をこめて:2007/12/20(木) 20:15:15 ID:LbiEklcRO
プッシー
399ブリッツ作者:2007/12/21(金) 18:53:38 ID:xrkXR2hD0
 (2)
 その日の昼ごろの事である。村外れの道を、一人の男を乗せた馬が、村の方へ向かって歩いてきた。
馬の背に乗っている男がふと前方を見ると、棺桶を担いで黒い服を着た村人の集団が近づいてくるのが見えた。
 葬列と男の乗った馬がすれ違ったとき、男は村人の一人に尋ねた。
 「どうしたんだ?」
 「通り魔にやられたんだよ・・・これで3人目だ、全く嫌になる・・・」
 村人はそう答えると、再び葬列へと加わった。
男・・・エイジは、遠ざかる葬列をただ黙って見つめた。
 
 そして夜。村人達に対して外出禁止令が敷かれたので、道を行く人影はない。
人気のない道を、背中に大型銃〈GAPランチャー〉を背負い、白地に〈GAP〉と縦に書かれたチョウチンを持ったカヲルがパトロールしていた。
 月も雲に隠れ、辺りは真っ暗闇である。チョウチンの光だけが頼りであった。
 カヲルがキハチの殺された、村外れの掲示板の近くに差し掛かったときである。掲示板の前に立つ人影が目に入った。
よく見ると、それはトレンチコートを羽織った男であった。右目に眼帯をしたその男は、ハナクソをほじりながら掲示板を見ていた。
が、それよりもカヲルの目を惹いたのは、男が担いでいる長い刀であった。
 この夜更けに、怪し過ぎる。いかにも自分が通り魔です、と言っているようなものだ。
 「おい、何やってるんだ?」
 カヲルは意を決して男に声をかけた。
 「ん!?・・・おっ、あんたGAPか?ちょうどよかった。どうだ、俺を村の用心棒に雇わねえか?」
男は人懐っこそうな笑顔でカヲルの元へ走り寄ってきた。
咄嗟にカヲルはGAPガンを抜いて男へ向ける。
「動くな!そこで止まれ!」
男は怪訝な顔でその場に止まる。
「お前見ない顔だな・・・ちょっと一緒に来てもらおうか!」
 「は!?なっ何なんだよ、おい・・・」
 眼帯の男は、わけが分からないまま刀を取り上げられ、背中にGAPガンを突き付けられた状態でカヲルに連行される。
400名無しより愛をこめて:2007/12/21(金) 20:35:17 ID:zaVWIyewO
あげ
401名無しより愛をこめて:2007/12/21(金) 22:49:01 ID:4Ie1Kj+J0
相変わらず小説もどきは糞だな。
こんなの専用サイトでやればいいじゃないかよ。
402名無しより愛をこめて:2007/12/22(土) 19:26:25 ID:no4ePiR0O
あのウルトラマンルシファーの作者・汚物こと、金子昭也がヲチスレに降臨して暴れまくっております。
皆で弄ってやりましょう

【貴方より】金子呆也ヲチスレその11【クオリティ】
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/net/1197399770/
403名無しより愛をこめて:2007/12/23(日) 21:14:09 ID:bNBKJzILO
金子空家といえば

川崎堀之内ソープ
404名無しより愛をこめて:2007/12/24(月) 20:28:05 ID:36PY5dU9O
ルシファー降臨あげ

【貴方より】金子呆也ヲチスレその11【クオリティ】
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/net/1197399770/
405名無しより愛をこめて:2007/12/24(月) 21:59:14 ID:3T4Y7u0X0
528 :皆さんが汚物と言う男に、その汚物を庇う人物にされた者です。:2007/12/24(月) 18:00:25 ID:RLXWqMQm
友達に教えてもらいここに書き込みましたが、皆さんが汚物と言うこの男に対して一言書き込みます。
ふざけるな!あんたがドラゴンボールや野沢雅子さん使ってやった事はどう考えても正当化は無理、馬鹿にすんな!気持ち悪い電話やメールしてくんな!、あんたのせいでどんな目に合わされたか、ゾッとする。
皆さん、コイツは優しく近寄って来て、その人を無茶苦茶にします。
なにもわからない子供や若者をターゲットにし手なずけ個人情報や弱みを収集、後は脅しで自分のコマとして使います。
コイツ本人の人間性の恐ろしさは、胴括や脅しを受けた私や同じ目にあった方しかわからないでしょう。
私は彼と父が前に出てコイツから解放されましたが、皆さんは気をつけて下さい。
コイツ、父や彼氏の前ではオドオドして挙動不審だったみたいです。
2ちゃんねるのスレを読みましたが、コイツと会うのは勧めないです、コイツはケンカは弱いクセにプライドの高い自己中・自己愛なので武器(警棒持ち歩いてるらしいですね。)とか持ってるとなにされるかわかりません。
コイツは、警察に任せるべきです。
406名無しより愛をこめて:2007/12/24(月) 22:11:36 ID:d8JkynqRO
いつから空家スレのアネックスになったのだ?
407名無しより愛をこめて:2007/12/26(水) 23:14:49 ID:T8VHZmE8O
終了
408名無しより愛をこめて:2008/01/01(火) 02:06:30 ID:kkmB5RStO
開始(2008年の)
409名無しより愛をこめて:2008/01/01(火) 11:14:09 ID:teFIqM3G0
専用HPは半年以上更新されてないし、そこのBBSもここも全く書き込みないし

実質  

    --終了-- だな。
410名無しより愛をこめて:2008/01/01(火) 13:25:25 ID:QMXPyxRZ0
リアルが忙しいことは折につけ言及されてる。
24時間パソにへばりついてられるニートとは違う。
411名無しより愛をこめて:2008/01/01(火) 14:46:58 ID:teFIqM3G0
糞ウルトラの作者は2人や3人ではないだろう。それらがみんな揃って半月以上忙しい?
それはないだろう。作品以外の書き込みが12/16から12/30の間ゼロ。
つまり「飽きちゃった」が正解だろう。
412名無しより愛をこめて:2008/01/01(火) 14:54:33 ID:teFIqM3G0
1年間の書き込みを見てもごくごくわずかで、半年更新できないほど忙しくても、
荒らしの相手をする暇は十分にあるんだな。不思議なことに。
413名無しより愛をこめて:2008/01/01(火) 17:08:46 ID:rny8JQ7sO
まだやってたの、忙しくて半年以上構ってられないなら、普通なら閉鎖だろう
414名無しより愛をこめて:2008/01/01(火) 18:37:50 ID:QMXPyxRZ0
荒らししか生きがいのない>>412が不思議
415名無しより愛をこめて:2008/01/02(水) 11:51:05 ID:rLGg+dy30
小説もどきを書き続ける。  もっと不思議
416名無しより愛をこめて:2008/01/02(水) 13:10:40 ID:jg6UFx2C0
この反応の速さが不思議
417名無しより愛をこめて:2008/01/02(水) 14:36:30 ID:GSZt4mZ5O
どちらかといえば416のほうが反応速くない?
418名無しより愛をこめて:2008/01/02(水) 14:47:25 ID:oQC5MwEhO
どちらでもいいや、ところで>>416は何の作者?
419名無しより愛をこめて:2008/01/02(水) 16:10:06 ID:rLGg+dy30
作者は忙しくて書いてる暇はないそうだ。だからただの荒らしの仲間。
420名無しより愛をこめて:2008/01/03(木) 10:03:37 ID:i6NGLWX1O
>>416は「――終了――」の作者。
「――終了――」は前に誰かが喩えていたが(だから文句があったらそいつに言ってくれ)、
空き家に張られるクモの糸。それを吐き出す製作者はクモ並みの虫ケラ、と。
(再度言うが文句は喩えた方に言っとくれ)
421名無しより愛をこめて:2008/01/03(木) 11:36:49 ID:+i5bPhBV0
>420も作者なんだろ?アンチの相手してる暇があるなら作品書けば?
422名無しより愛をこめて:2008/01/03(木) 12:05:51 ID:0/n3lXt9O
新作ウルトラマン読みたいな
423名無しより愛をこめて:2008/01/03(木) 20:29:22 ID:+i5bPhBV0
「――終了――」に関する個人の見解などどうでもよいのだよ。
まず、「ウルトラマン*********」が20個も並んで、それぞれ10話以上
出てくると。
書くほうのネタも切れる。書くのも飽きてくる。読むほうも同じ。
忙しいから書けないのも最もだろうが。
初期のを見ると、いつの時期にもお構いなく投稿されている。
これがなにを意味するか?
これだけ書かれても奮起しない作者。もうおしまいだね。
オレもしばらくOFFするよ。
じゃあね。
424名無しより愛をこめて:2008/01/03(木) 20:35:04 ID:+i5bPhBV0
それから、ひとつ書き忘れたが、本気で荒らすなら、専用サイトの掲示板に
乗り込んだほうが早いんだが。オレはそんなことはやらない。
(今後そのようなのが現れたとしてもオレとは無関係だから)

今度こそ  じゃあね。
425名無しより愛をこめて:2008/01/04(金) 11:49:53 ID:qYKRNNqF0
別に報酬貰ってるわけじゃないし、好きなときに書けばいいじゃん。
426名無しより愛をこめて:2008/01/04(金) 18:18:39 ID:4OxQaGRJ0
>今後そのようなのが現れたとしてもオレとは無関係だから

匿名前提の2ちゃんでそんな予防線張らなくてもいいよ
427元作者:2008/01/05(土) 10:46:50 ID:qbYIiiKjO
正直に言いましょうか。ネタ切れで飽きました。
ネタがある時は忙しいくても、寝る間を惜しんで書いたものです。
アンチの皆さん、これ以上作品は出てきませんのでご安心下さいな。
428名無しより愛をこめて:2008/01/05(土) 13:55:59 ID:sed0KMEn0
ネタ切れも何も、かなり初期の頃からマンネリ祭りだったじゃないか。
ウルトラマンシリーズがそもそもマンネリ路線に絞っていったというのもあるけど。

セブンXで活性化しなかったのも痛かったな。
素直に「飽きた」って言えよ。飽きてなきゃマンネリでも続けちまうくせに。
429ブリッツ作者:2008/01/05(土) 19:04:38 ID:Mvjz5YEuO
 (3)
 「いやぁ、でかしたぞカヲル。よくやった!」
 タイラがカヲルに言った。ここはGAPの駐在所である。眼帯の男は所内の牢に入れられていた。
 「だから、俺は通り魔じゃねえって言ってるだろ!」
 「うるせえ!それはこっちで決めることだ!」
 タイラが言い捨てる。ひどく高圧的だ。
 その時である。椅子に腰掛け、ハンガーに掛けられた男のコートを見ていたシキは、襟に着いている流星バッヂに気付いた。
 「…まあ神にでも祈れ。朝になったらGAP(俺達)の権限で公開処刑だ、ははははは!」
 勝ち誇った笑いを上げるタイラを、男は憎々しげに見つめる。すると突然、コートと刀を小脇に抱えたシキがタイラを押し退けて来て、牢の鍵を開けた。
 呆気にとられる一同を尻目に、シキはコートと刀を男に返すと頭を深々と下げた。
 「すまなかった。あんたが通り魔なわけない。」
 「先輩、どういうことですか?」
 カヲルが聞く。
 「コイツはフリーランスの用心棒、流星のジョーだ。罪のない人たちを見境無く殺したりするような奴じゃない。」
 「そういうことだ!なぁ、報酬次第で俺も通り魔退治に協力するぜ。」
 コートの襟を正しながらジョーが言った。
 「是非頼む!」
 シキが即答する。それを聞いてタイラが叫んだ。
 「おい、ここのトップは俺だ!!」
430ブリッツ作者:2008/01/05(土) 20:14:15 ID:Mvjz5YEuO
 (4)
 それから一時間程経ったころ、エイジの乗った馬が村の道を進んでいた。泊めてくれる家を探して一軒一軒回っていたのだが、通り魔のこともあって、皆よそ者のエイジには冷たかった。
 今夜も野宿か、と思ったときだった。突然、「ギャーッ!」という叫び声が聞こえた。エイジは声のした方向に馬を走らせた。
 そこには、身体を縦に真っ二つにされた男の死体が転がり、そのそばで若い女が腰を抜かして震えていた。彼女の視線の先には、例のエイリアンがいる。
 エイリアンは腕の刃を振りかざし、ゆっくりと近づいてくる。もうダメだ、と彼女が思ったそのとき…。
 エイジを乗せた馬がエイリアン目がけて突っ込んで来た。エイリアンはそれを辛うじてよける。
 エイジは馬から飛び降りると、ホルスターから抜いたミラージュシュートをビームサーベルに変形させ、エイリアンと対峙した。
 「早く逃げろ!」
 エイジの言葉を聞いた女がその場から走り去る。
 エイジとエイリアンは激しく刃をぶつけ合う。互角の勝負である。
 両者が肩で息をし始めた時だった。エイジの目に、こちらに向かってくるチョウチンの明かりが見えた。それに気付いたエイリアンがその場を逃げ去る。追おうとしたが、「待て!そこを動くな!」という声に制止される。
 声の主はGAPの隊員だった。彼の隣には、赤茶けたトレンチコートを羽織って長い刀を担ぎ、眼帯をした男がいた。
431ブリッツ作者:2008/01/05(土) 23:37:21 ID:Mvjz5YEuO
 (5)
 「しかし、俺のことを知ってるなんて、あんたも訳ありか?」
 ジョーがシキに言った。GAPに協力することになったジョーは、シキと二人で夜道をパトロールしていた。
 「まぁ、昔いろいろあってな……悪いことは一通りやってきたから、自然と裏社会にも詳しくなっちまったのさ。」
 きまりの悪そうにシキが答える。
 「それでよくGAPに…」
 「流れ者だった俺を、この村の人たちが雇ってくれたんだ。その後に本部から、タイラが責任者として赴任してきたのさ。」
 「なるほどね。死んだ親父が、本部から赴任してきた奴にはロクなのがいないって言ってたけど、本当だな。」
  「親父さん、GAPだったのか?」
 「親父の代までずっとな。聞いた話だと、俺の先祖はGAPができる前からそっち関係の仕事してて、このバッヂもご先祖様が所属してた組織の物らしいんだ。」
 そういうとジョーは、シキに襟の流星バッヂを見せた。
 その時、二人の耳に「ギャーッ!」という叫び声が入った。二人は顔を見合わせると、声のした方へ駆け出した。
 現場に近づくと、光の剣を持った男が立ち尽くしているのが見えた。そしてその足元には、真っ二つになった男の死体が転がっていた。
 「待て!そこを動くな!」
 シキが叫んだ。チョウチンの明かりに照らされた男はマントを羽織り、クセのある長髪をポニーテールにし、不精髭を生やした顔には殺気がみなぎっていた。
432名無しより愛をこめて:2008/01/10(木) 18:13:31 ID:HYpJfRAC0
就労
433名無しより愛をこめて:2008/01/10(木) 21:55:51 ID:+dMVPtw3O
尾張
434名無しより愛をこめて:2008/01/13(日) 23:38:41 ID:bQcE0StiO
スレ初期から続いて、完結までもう少しの
リュウラだけでもなんとかならないものか(´・ω・`)
435名無しより愛をこめて:2008/01/14(月) 01:08:32 ID:xl9lAEIL0
たくさんあって、どれを読めばいいのか分からないんだけど、どれが一番おすすめなの?
436名無しより愛をこめて:2008/01/14(月) 10:15:27 ID:JbFzSThe0
>>434
就職活動中の人に余り無理は言えない
437名無しより愛をこめて:2008/01/14(月) 13:50:08 ID:0l+Caw6ZO
>>435
比較的とっつきやすいのはバーン(オーバーは続編)、シグマかな。
リュウラは設定が独特。「ウルトラマンと呼ばれる巨人が出るファンタジー小説」という意識で読もう。
イレイズ・バースト・アルファの3部作は、設定は普通だが、敵も味方も一般人もなんか過激。殺伐さ(≠残酷さ)に耐えられるなら。
438名無しより愛をこめて:2008/01/15(火) 00:39:51 ID:0nDehjvgO
収量
439名無しより愛をこめて:2008/01/17(木) 16:19:41 ID:waEo/wkMO
終了
440名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 00:44:48 ID:4/pSVVIp0
31 :名無しより愛をこめて:2007/01/29(月) 12:12:41 ID:IEhjCtdO0
オリジナルウルトラマンのスレって…どうなんだろ?


32 :名無しより愛をこめて:2007/01/29(月) 12:48:35 ID:NB7kN9DFO
フレンズは作品が糞
アルファは作者が糞
441名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 13:54:20 ID:HHpVzn100
ウルトラマンクラインを遥かに凌駕する真の平成総括ウルトラマン

ウルトラマンジェネシス、満を持してここに光臨!!

君は今、真実の光を目の当たりにする。
442名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 13:55:51 ID:HHpVzn100
身長:55M、体重は不明、活動時間は基本の3分
ウルトラマンジェネシスは謎の生命体として宇宙で活動しており
デリウスを追って地球に飛来、
主役との同化はノーマルな勇敢な行動に感動して同化
その他にもライバルや悪のウルトラマン登場で、歴代平成ウルトラマンも登場

光の剣をアグルブレードみたいに腕から出し、ネクサスの矢を使用、
バリアで攻撃を跳ね返し、受け流すことも可能
変身前には超能力や人間離れした体力で活動する

ラスボスはギガバルタンで、タイプチェンジ、必殺を50以上
ライバルウルトラマンも出て、変身アイテムは基本の光を放つ物(稲妻が走る)
タイプはジェネシスタイプ(バランス)、マキシマムタイプ(パワー)
アクセルタイプ(スピード)、中盤で2つ導入
ネオマキシマムタイプ、ネオアクセルタイプ
最終回で伝説のジェネシス・レジェンドになる

必殺はジェネシス・バースト、マキシマム・トルネード、アクセル・ショット
更にフルパワー・トルネード、フルパワー・ショット
そしてレジェンド・バースト

敵は人の心を蝕むほか、善を悪に変えたり、欲望、喜怒哀楽を弄くったりして
パワーアップする宇宙の悪、バーザス
そして、地球を脅かす怪獣たちとバルタンの進化した生命体であり
その力はテンペラーの100倍と言われる脳と力を持つ策略することが得意な
アンドロバルタン一族

最強の平成ウルトラマン総決算ができるぞ
443名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 13:58:10 ID:HHpVzn100
こんな素晴らしい作品
「ウルトラマンジェネシス」を
読みたい、執筆に参加したいというそこの君!

規制中の私の代わりにウルトラマンジェネシスのスレを立ててくれないか?
打倒、糞ウルトラマンクライン!
444名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 14:20:14 ID:a7Cvh+A/0
ごめん。俺のホストもしばらくスレッド立てられないとさ。
445名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 16:24:33 ID:PSibNX3tO
専用スレなんか立ててもクラインの二の舞になるのは見えている
ここつかえばいいじゃんかよ
446名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 16:56:48 ID:LsjZZ0S20
このスレの書き手のレベルとクラインスレの書き手のレベルでは
雲泥の差がある。このスレでジェネシスを始めても
クラインには対抗出来ないだろう。
だからジェネシススレを立てて欲しいんだ。
447名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 18:08:24 ID:PSibNX3tO
ああそういうコトね
同じウルトラ作者からもレベルが低いと認定を受けてるんだね、ここのは、
448名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 21:23:09 ID:Oaz7x1iW0
>>446
知るかボケ
449名無しより愛をこめて:2008/01/19(土) 21:44:29 ID:PSibNX3tO
それより専用サイトの中にもとうとう荒らしが入っちゃったね、
これでここのオリジナルウルトラ終了だよ
ここ空き家になるから使えば?
450名無しより愛をこめて:2008/01/20(日) 10:48:29 ID:wyGhTrtw0
バーザスってヤプールみたいな敵なのか?
後アンドロバルタン族って身体を機械化したバルタン星人なのか?
先輩ウルトラマンの扱いに関しても聞きたいのだが
で防衛隊の名前はどうするよ?
451名無しより愛をこめて:2008/01/20(日) 10:54:57 ID:nvmXQf0I0
後、デリウスって誰?

荒らしのための釣りだろ。実際に書く気があったらとっくに本文ここに書き込んでるはず。
452ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:45:20 ID:VEAFC89Z0
第1話 「新たな巨人」 地底暴食怪獣デゲル登場

宇宙を飛ぶ赤と青の玉が地球に向かっていた。

新防衛隊「FAITH」設立から数ヵ月後、東京

平和に暮らす都民達。突如地震が起こる。その様子をモニタリングして、自室で観ている男が呟く
「来たか…闇の時代の幕開けだ!………フッハッハッハハッ、ハッハッハッハッ!」
地震はすぐに収まった。しかしこれがこれから始まる破滅への序章ということを知る人物はいなかった…
453ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:46:40 ID:VEAFC89Z0
東京を再び地震が襲った。前の地震より規模を増しており、ビルも幾つか倒壊している
この事態に、チームピースが召集された

司令室。チームピース隊員全員が並んでいる。彼らの目線の先には、石室コマンダーが
チームファイター隊員も全員ここにいた
「チームピースは直ちに現地に急行し、現地のレスキュー隊員と協力して救助作業にあたってほしい」
「わかりました。チームピース、出撃します」
神山が言い終わると共に、チームピース隊員は格納庫へと走っていった
スバルがこの事に疑問を持ち、サクラノに尋ねる
「なんで地震でFAITHが出撃するんだろ?」
理由がわからず、困った顔をするサクラノ。代わりにオマエザキがそれに答える
「震源地に、巨大な生物反応が検知されたんだ。そこでFAITHの出番っていうわけだ」
巨大な生物反応という言葉に、思わず反応するスバル
「巨大な震源…まさか…」
「怪獣…」
スギカワラの一言で、司令室の雰囲気は緊張に包まれた
454ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:47:16 ID:VEAFC89Z0
東京。チームピースが救助活動を行っている。ハルバードジャイロ内からフブキに通信を入れる神山
「昼間、それも平日のビル街での地震なので、深刻な事態となっています」
『わかった。震源地には生物反応が検知されている。気をつけてあたれ』
「了解」
通信を切る神山。一方地上からは、真下と財前が救助活動を行っていた
「でもさ、地下に怪獣がいるかも知れないんだろ?
 だったらチームレンジャーが出撃してダイバーで怪獣にズドンと一発お見舞してやればいいじゃないか」
「財前さん、そんなことしたらまずいですよ」
「なんで?」
「だってもしそれで怪獣が怒って、地上に出てきたら、きっとこの地震以上の被害になっちゃうじゃないですか」
「…そうか…そうだった……」
神山から通信が入る
『真下、財前、作業に集中するんだ』
「「…了解」」
通信を切った途端、また地震が起こる。今度はさらに規模が大きい地震だ
「おわっ!また地震かよ」
「ほんっと、嫌になっちゃいますね」
455ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:48:44 ID:VEAFC89Z0
司令室
「おい、また地震だよ」
モミジオカ隊員が思わず言う。直後に神山からの通信が入る
『また地震です、被害甚大です!』
ビル街が崩れていく。しばらくして地震はまた収まる

「真下、財前大丈夫か?」
『はい、大丈夫です』
その通信を聞き、ジャイロに同乗していた黒田が思わず安心する
「よかった、無事で」
「黒田、まだ安心するのは早いぞ。甲上、ジャイロの高度を下げてくれ」
「了解」
ジャイロの操縦をしていた甲上はすぐにジャイロの高度を下げた

「コマンダー、一刻も早くチームレンジャーを震源地に派遣させたほうがいいのでは?」
フブキが石室コマンダーに進言する。コマンダーはしばらく黙って考えていたが、やがて口を開いた
「…その必要がありそうだな。チームレンジャーを招集する」

司令室。チームファイター隊員、チームレンジャー隊員が並んでいる
「チームファイター、レンジャーはマザーに乗り、マザーにはウィング、ダイバーを搭載して出撃しろ」
「了解、チームファイター、出撃します」
「チームレンジャー、出撃します」
オマエザキと大塩が言い終わると、フブキ隊長と隊員達は迅速に格納庫に向かい、マザーに乗る
「緊張するなあ…」
配属されて間もない新米の天野が呟く。それを聞いていたチームレンジャーサブリーダーの小島が、優しく肩を持つ
そして準備が完了すると、マザーは飛び立って行った
456ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:51:26 ID:VEAFC89Z0
地上で救助作業を続ける真下と財前。飛行音と共に突然暗くなって思わず2人とも上を見る
「マザーだ…」
マザーから射出されるダイバー。地上に降下する。付近の自転車が倒れる
「こちらダイバー、降下成功。これより地中に突入する」
ダイバーのドリルで地中を掘り進んでいくチームレンジャー
「間もなく震源地に到達する。全員、戦闘体制」
ダイバーが到着したのは、巨大な空洞であった
「東京の地下にこんな巨大な空洞があったとは…まさか怪獣は本当に?」
チーム随一の肉体派の倉田が思わず言う。冷静な女性の神谷がレーダーの反応に気付く
「レーダーに生物反応…ここの真下からです。生物反応がこっちにどんどん上昇してきます」
「後退しろ!ダイバーごと転覆しちまうぞ!」
慌てて後退するダイバー。その直後ダイバーがさっきまでいた場所に怪獣が現れる
その怪獣は、黒くゴツゴツした肌、背中には何本か触手が生えている。これで相手を捕食するらしい
「か、怪獣!?」
「天野、落ち着くんだ!」
デゲルの出現に慌てる天野。小島が天野を落ち着かせようとする
「コマンダー、怪獣です、どうしますか?」
「むやみに攻撃を仕掛けるな、今ここで興奮して地上で暴れられると甚大な被害が出る」
しかしデゲルはダイバーの存在に気付き、ダイバーを触手で持ち上げた

ダイバーを食べようと口元に運ぼうとしている
「嫌ああああああ!」
「クソッ、攻撃します!」
天野が思わずパニックになる。大塩もデゲルの口元にダイバーが運ばれるとさすがに慌ててドリルを回した
ドリルがデゲルの口に炸裂する。デゲルの口元が血に染まる
慌てて触手からダイバーを離す。落下のショックでチームレンジャーは全員気絶する
デゲルはその血でさらに興奮し、地上へと移動していった
457ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:52:18 ID:VEAFC89Z0
地上ではさらに地震が起こる。震源がどんどん地上へ近付いているので、これまでの地震とは比べ物にならないほど規模が大きい
「来るぞ、総員戦闘態勢。神山リーダー、まずは怪獣の捕獲作戦を行ってくれ」
『了解、麻酔弾発射用意』
地上にその姿を現すデゲル。ジャイロが麻酔弾の照準をデゲルに合わせると、麻酔弾が発射された
デゲルに命中する麻酔弾。デゲルが倒れこむ
『よし、レーザーネット用意』
レーザーネットがデゲルを包む。しかしデゲルはすぐに目覚めた
『麻酔がこんなに早く切れるなんて…』
『駄目だ、こんなに激しく動かれたら、怪獣が運べません!』
黒田、甲上がそれぞれデゲルの凶暴さに驚く。デゲルがレーザーネットを突き破り、ビルを破壊しだす
『捕獲は諦めます、我々は地上で都民を避難させます。甲上、ジャイロを離陸させろ』
地上に降下するジャイロ。マザーからウイングが出撃する
「チームファイター、攻撃を開始します!」
α、β、γに分離し、デゲルを包囲する
458ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:55:55 ID:VEAFC89Z0
『一斉攻撃!』
「了解!」
一斉にビーム攻撃がデゲルに放たれる。
しかしデゲルは特に攻撃が効いた様子もなく、触手で3機を襲う
『全機回避!』
オマエザキの声で3機とも散開する。
デゲルはさらにαに向かい火炎弾を吐く。煙を上げるα
『スバル、大丈夫か!?』
オマエザキがスバルに通信を入れる
「駄目です、操縦不能!地上から攻撃します」
不時着するα。
αからハルバードガンを構えたスバルが降りてくる
さらにコガラシ、スギカワラの乗るγ号も被弾し、
2人が脱出した直後爆発した
「スバルー!大丈夫かー!?」
ミラクルスパイダーショットを構えたコガラシと、
ハルバードガンを構えたスギカワラがスバルに走ってくる
「コガラシ隊員!こっちは大丈夫です!」
「よし、俺達も地上から攻撃だ!撃て!」
3人が一斉に攻撃する。
だがデゲルはある1点を見つめている。
その場所を見るスバル
「あれは…マイ!マサキ!」
「知り合いか!?」
「コガラシ隊員、ミラクルスパイダーショットを貸してください!」
そういって強引にコガラシからミラクルスパイダーショットを奪い取ると、
マイとマサキの元へ走っていった
「おい、待てスバル!その銃は簡単に扱える代物じゃねぇ!」
コガラシの言葉も、スバルには届かなかった

459ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:56:37 ID:VEAFC89Z0
「マイ!マサキ!」
2人の元へ走るスバル
「ス、スバル!助けてくれ!」
「ここは僕が食い止める!早く逃げろ!」
走っていくマイとマサキ。
それを追いかけようとするデゲル
「お前の相手はこの僕だ!喰らえ!」
ミラクルスパイダーショットが火を噴く。
スバルはその反動で後ろに吹っ飛ぶ
致命傷には至らなかったが、デゲルの注意を引くことができた
しかし反動で吹っ飛ばされたスバルが立ち上がろうとしたとき、
デゲルがスバルの近くのビルを破壊した。
スバルに瓦礫が降ってくる
「うわあああああ!」
瓦礫の下敷きになるスバル。
デゲルが勝ち誇ったかのように吼える
しかしデゲルは気付かなかった。
自分を狙うものがいたことを
『スパイダーミサイル、ファイア!』
どこから発射されたのか、
デゲルに大量のミサイルが一斉に発射される。
大半がデゲルに命中したが、数発が街に命中する
『あれは…ハルバードチェスター。チームナイトか…』
オプチカムフラージュを解いてハルバードチェスターが飛行する
460ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:58:36 ID:VEAFC89Z0
スバルは体を動かそうとするが、瓦礫が重たくて動けない
「みんな…ごめん…僕はもう駄目なのか…」
もはやスバルの命は、風前の灯かと思われた。
だが、そんなスバルを、誰かが助け出した
その青年は、FAITH隊員ではない、自分が見たことのない人物だった
「……君は…誰なんだ?」
その青年がスバルの胸の上に手を置くと、二人は眩い光に包まれた

神々しい光の中、スバルは立っているわけでも、寝ているわけでもなく、ただ光に身を任せ漂う 

そのとき、スバルの目の前に見たこともない巨人が姿を現した 

「光の巨人…ウルトラマン!?」                   「私はウルトラマンクライン。私は友のため、
自分の身を投げ出した君の勇敢な行動に感動した。
しかし君の命はもはや尽きようとしている。
だから、私の命を君に預ける。そして地球の為に働きたい」
「ウルトラマン?僕が…ウルトラマンに?」
「そうだ。地球のため、一緒に戦おう」
「わかった。一緒に頑張ろう!」
461ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 15:59:36 ID:VEAFC89Z0
スバルは体を動かそうとするが、瓦礫が重たくて動けない
「みんな…ごめん…僕はもう駄目なのか…」
もはやスバルの命は、風前の灯かと思われた。
だが、そんなスバルを、誰かが助け出した
その青年は、FAITH隊員ではない、自分が見たことのない人物だった
「……君は…誰なんだ?」
その青年がスバルの胸の上に手を置くと、二人は眩い光に包まれた

神々しい光の中、スバルは立っているわけでも、寝ているわけでもなく、ただ光に身を任せ漂う 

そのとき、スバルの目の前に見たこともない巨人が姿を現した 

「光の巨人…ウルトラマン!?」                   「私はウルトラマンジェネシス。私は友のため、
自分の身を投げ出した君の勇敢な行動に感動した。
しかし君の命はもはや尽きようとしている。
だから、私の命を君に預ける。そして地球の為に働きたい」
「ウルトラマン?僕が…ウルトラマンに?」
「そうだ。地球のため、一緒に戦おう」
「わかった。一緒に頑張ろう!」
462ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 16:00:42 ID:VEAFC89Z0
「あれは…まさか」
オマエザキが空高く昇った光を見て呟いた。
次の瞬間光の中から現れる巨人
「ウルトラマンだ!」
人々から歓声が上がる。ウルトラマンは人々の歓声を受けて、デゲルに向かっていった
クラインがデゲルの腹部に連続で拳を叩き込む。苦しむデゲルだが、触手を2本伸ばして両腕を封じる
両腕を封じている間、ジェネシスに強烈な火炎弾を叩き込もうと口に火炎を溜める
その様子を見て、ジェネシスは右足でデゲルの顎に蹴りを喰らわせる。溜め込んでいた火炎が、デゲルの口元で爆発する
苦しむデゲル。その隙にジェネシスは間合いを取ると、ジェネシスバスターを発射する
デゲルは光線を喰らい、爆発四散した。再び人々から歓声が上がる。空へ飛んでいくジェネシス
463ウルトラマンジェネシス:2008/01/20(日) 16:02:03 ID:VEAFC89Z0
オマエザキが石室に通信を入れる
「怪獣はウルトラマンによって撃破されました。これより帰還します」
『わかった(――ウルトラマン、か……)』

スバルが隊員達の元へ走ってくる。
「ウルトラマンが来たよな」
財前がウルトラマンの話題を振る
「名前、どうします?ティガとかガイアとか、カッコイイ名前つけましょうよ」
チームナイトのハト派隊員の里見が言う
「ジェネシス、なんてどうでしょう?」
「なんでジェネシス?」
真下がクラインという名前に疑問を感じる
「(だって本人がそういって…いや、それ言ったらマズイな…)いいじゃないですか!カッコイイですし!ね、それでいいでしょ!」
「そ…そうだな、そうしよう」
スバルの不自然な程の勢いに押され、思わずそうだなといってしまう隊員達
「みんな、帰還するぞ」
各チームのリーダーがそう言うと、隊員達は機体に乗り、基地へと帰還していった
464名無しより愛をこめて:2008/01/20(日) 16:15:40 ID:i4vmPmHv0
・・・・・君には本当に失望したよ
ジェネシスならジェネシスのオリジナルの展開にしてくださいな。
チームも一つに纏めるとか、確かデリウスを追って地球に来たのだから
1話の相手はデリウスにするとか
怪獣もバーザスの改造魔獣にするとか
バーザスの悪意をもっと1話から見せ付けてくれ。
君もいろいろ自分の望むウルトラマンを書こうとしているのなら
オリジナリティを見せて欲しい。

465名無しより愛をこめて:2008/01/20(日) 16:34:17 ID:i4vmPmHv0
ちなみに私なら一話でデリウスはバーザスの初代地球侵攻司令とし
デリウスが東京都心部へと衝突、東京地下奥深くに融合していく。
主人公はその衝突に巻き込まれた時デリウスを追って地球に来た
ジェネシスと融合する。
デリウスにより東京地下の生物が異常進化し
最初の怪獣出現てな具合にするけど
466名無しより愛をこめて:2008/01/20(日) 18:41:33 ID:ab8lqnumO
やっぱりここでやるワケね
467名無しより愛をこめて:2008/01/21(月) 16:46:01 ID:GXy+nrBH0
ジェネシスの個別スレが立ったね。
ttp://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1200884424/
468名無しより愛をこめて:2008/01/21(月) 19:45:54 ID:qmVLa8tcO
ならばこのスレ

終了
469名無しより愛をこめて:2008/01/26(土) 15:55:49 ID:8WSnBdfm0
ウルトラマンY 第1話
「新たなる戦士」  宇宙恐竜ゼットン登場
岡野「やっともどってきた・・・MABに入隊するか。」
MAB、monster attackking blueの略称である。
基地には、スーパーフィッシュ、MAB777がある。
朝次「新たな隊員を紹介する!岡野君だ!」
岡野「岡野達也です!よろしく。」
朝次「紹介!」
次山「次山です!」
中山「中山です」
山口「山口です!」
岡口「岡口です!」
岡野「6人しか隊員いないのか・・・・」
山口「隊長!怪獣です!」
朝次「出動!」
朝次「よーし。」ナビ「怪獣はB地区159地点です」
中山「了解!全機に次ぐ!怪獣はB地区159地点に現れた!」全員「了解!」
岡野「あああ!」2号、ゼットンのビームで撃墜、爆発した。
ウルトラマンY「私はウルトラマンYだ。君に私の力を与える。そして、
Yカプセルのスイッチを押すと変身できる。」岡野「Yーーーーーーーーーー!」
ウルトラマンY、ゼットンを押し倒す。ゼットンは、退却するが、
Yのゼットニウム光線で倒された。
朝次「あれ??死んだはずだろ?」
中山「お化け?」岡野「違います!僕は不死身の男になったんですよ!」
 次回予告
この話から松山副隊長が出るよ。今度はバルタン星人が出るよ!
来週のウルトラマンY「バルタン星人東京を襲う!」みんな次の話も見ようね!
470名無しより愛をこめて:2008/01/26(土) 16:52:15 ID:l66UFx1OO
とうとうオリジナルウルトラもパロディ路線か、いくらネタ切れでもこれはひどい
471名無しより愛をこめて:2008/01/26(土) 22:37:16 ID:8WSnBdfm0
ウルトラマンY 第12話(欠番) 
「狂鬼宇宙人」 基地外星人登場

星人子分「親分、大変です。スレが過疎ってきました」
星人ボス「よし、新しいスレを立てろ」
星人子分「親分、大変です。『人大杉』が出ています、スレが見つかりません」
星人ボス「よし、新しいスレを立てろ」
星人ボス「親分、大変です。スレが荒れています」
星人ボス「よし、新しいスレを立てろ」
MAB基地内
山口「隊長、大変です。基地外星人が次々と重複スレを立てまくっています」
朝次「なにっ、ならば『終了ミサイル』で攻撃だ」
中山「ミサイル発射」
山口「ミサイルが命中しました。敵は全滅です」
中山「よかったよかった」
岡野「おいおい、俺の出番はどうなるんだよ」
朝次「無事で何よりだ」
MAB一同
   「わはははは」

おわり
472名無しより愛をこめて:2008/01/26(土) 22:42:33 ID:ZkG0jxZm0
ここは元からパロディ路線だよ。
473名無しより愛をこめて:2008/01/27(日) 15:38:48 ID:vBssMqCNO
なにっ
474名無しより愛をこめて:2008/01/28(月) 00:23:26 ID:NDQN+fKq0
変身ヒーロー小説を熱く語れ!
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1201187998/

オリジナルヒーロースレが創作文芸板に移転
475名無しより愛をこめて:2008/01/31(木) 21:24:57 ID:zldLl1ubO
何だか荒れて大変なことになってるね専用サイト、閉鎖も近いようだな
476ブリッツ作者:2008/02/01(金) 18:19:28 ID:9LP5jEbK0
(6)
 「テメエか・・・通り魔は!」
 そう叫ぶとジョーは背中の刀を抜き放ち、エイジに斬りかかった。
 「違う、誤解だ!」
 ミラージュシュートでその刃を受けながら、エイジは言った。
 両者は激しく刃をぶつけ合う。しかし、さっきのエイリアンとの戦いで疲労しきっていたエイジは、ジョーの攻撃を受けるのがやっとで、終始おされていた。
 「もらったーっ!」
 とジョーが叫ぶのと同時に、ミラージュシュートはエイジの手から弾き飛ばされた。万事休す、エイジは自分の最期を悟った。
 「覚悟しろや・・・」
 ジョーが刀を上段に大きく構える。と、そのときだった。
 「待て、殺すな!」
 そう言ってシキがジョーを制した。
 ジョーは渋々刀を下ろすと、刃をエイジの首筋に突きつけ、シキはGAPガンの銃口をエイジに向けた。
 「手を上げて両膝を地面につけろ。」
 エイジは大人しくシキの言葉に従った。シキはエイジの後ろに回りこむと、後ろ手に手錠をかける。
 「それにしても、エゲツないことしやがったなあ・・・」
 真っ二つにされた男の死体を見てジョーがつぶやいた。
 「タイゾーさんじゃないか・・・なんてこった。」
 シキが言った。
 「村の人間か?」
 「ああ、〈ジャンク屋〉のタイゾーさんだ・・・そうか、村の外へ〈仕入れ〉に行ってて外出禁止令のことを知らなかったんだな。」
 ちなみにこの世界における〈ジャンク屋〉とは、廃棄された軍事施設や兵器の残骸を漁って売りさばく者達のことである。そして〈仕入れ〉とは、商品となるそれらを回収することを指す。
 タイゾーの死体は、朝になるのを待って村人達に運んでもらうことなり、ひとまずその場にムシロをかけた状態で留め置かれた。そしてエイジは、シキとジョーに脇を固められて駐在所へ連行された。
477名無しより愛をこめて:2008/02/01(金) 19:32:39 ID:wVE/JZEuO
これも文芸板行けば、さんざんな評価になるな
478名無しより愛をこめて:2008/02/01(金) 21:24:47 ID:b8t+RNhd0
ブリッツ作者様、信じてましたぜ
479名無しより愛をこめて:2008/02/02(土) 12:14:47 ID:IcGVDAoF0
創作文芸板のほうにオリジナルウルトラを紹介しておいたから
480名無しより愛をこめて:2008/02/02(土) 13:35:21 ID:wWhMT58KO
へえー、このスレもあちらに進出したんだ
481名無しより愛をこめて:2008/02/12(火) 13:45:22 ID:HlATNVGh0
保守
482ウルトラマンリュウラ 1:2008/02/14(木) 00:51:22 ID:ECjiDigvO
終章 「御霊伝」(ミタマヅタエ)


 高天原の神々は、その戦いの行方を人間以上に戦々恐々として眺めていた。
リュウラ、ラセツとスサノオの戦い。
リュウラ達が勝てば、自分たちは最強の神である龍、そして未知の存在であるカンナにまたも怯える事となる。
スサノオが勝てば、奴はニンゲン総てを食らい尽くして力を増し、かつて放逐された憎悪をもって高天原を蹂躙する。
だから、何処かの世界よりウルトラマンカルラが帰還した瞬間、神々には失望が広がった。
その失望は存外いい線いっていた。
カルラは帰還、光の槍が鳥神を模して敵を貫く彼の必殺技ウィングインパクト、
そして、かの光の巨人から学んだ新技、光の手刀セントラルスラップ。
連携攻撃に傷ついたスサノオへ、ラセツが必殺の光炎、ハデスフレアを浴びせる。
好機と見てリュウラは宙へ舞い上がり、龍神の影に騎乗して光の刀を振るう大技、ドラゴンシャイニングウ゛ァイパーを繰り出した。
今度こそ倒れるか、と思われたが、スサノオはまたもや何処かへ逃走する。

「どうすれば良い、どうすればスサノオも龍もカンナも滅せるのだ!」
 高天原。セイオウボの美貌が焦りに歪む。最高の権力を持つ女神でさえ、スサノオが、龍が、カンナが恐ろしいのだ。
だが、彼女に隣り合う女神、スサノオの姉であるアマテラスは、それどころでなかった。
高天原へ、巨大な暗闇が接近しはじめたのだ。

母艦レイテイは、カルラ=トキツグの帰還を祝うムードではなかった。スサノオの攻撃で、関西省支部の機翼に搭乗していた数名の什長が殉職したのだ。
《ミウ、ニンゲンは他者の死を悼むな。何ゆえに?》
 ラセツ=ミウへ、彼女に力を与えている鬼神=クミホが問う。
「何で…だろね。仲良かったヤツがいなくて寂しいからかな」
考えた事がなかったかも知れない。母を亡くしているというのに。

その頃、神々に仕える光の一族が住まう神山。黒濠老師は、辛うじて自分の言に従ってくれた数名の術師と共に、法陣へ僅かな水滴を封じ込めていた。
その水滴が持つ、強大な力を恐れて。そして、その水滴を下界の、只人の仲間へ届けるために。
483リュウラ 2:2008/02/14(木) 01:35:35 ID:ECjiDigvO
「寝られねぇや、こんちくしょー」
一人夜番をしていたヒスイの前に、ワタリベが現れた。
「俺もだ。むしろ、寝たくないのかもな。」
苦笑を浮かべるヒスイ。ややあって気付いた。自分が他人に愛想を向ける…焦っている。
「な、スサノオの奴、何で逃げんだろーな。」
ワタリベの言葉が全てだった。スサノオはリュウラである自分をも圧倒した。それでなぜ逃げる?
ウルトラマンが三人結集したから不利と踏んだか?いや、ならば前に我々レイハの攻撃から逃げた理由が分からない。
「カンナちゃんは何て言ってんだ?」
「ワタリベ…彼女は、少なくとも自我は人間だ。中に龍がいる俺など気楽なもの。」
ワタリベを諌めるヒスイ。カンナは、人間のままで巨大な力を持ってしまったから苦しんでいるのだ。

眠るカンナ。ミウと長く交流しているせいだろうか、幼い妹だったミウと、先代のリュウラとして死んだ母の姿が夢に浮かぶ。
母は幼い自分と妹に、奇妙な詩を教えているようだ。

無中龍明和合、開為大道

目覚めるカンナ。先刻の夢の詩を、紙へ書き付ける。そして気付いた。
「龍、明、和合…?これって、ヒスイくんの…」
ヒスイがリュウラへ転化する際に放つ言霊
「君が宿主マミヤヒスイの名において命ずる。龍、明、和合すべし」
 と共通点がある。龍は母から託され、ヒスイへ託した最強の神、龍神。では、明とは?
ウルトラマンは光を武器へ精製し操る。その「光」の事だと思っていたが。他に意味があるのか?
悩むカンナへ、西より啓示があった。春日山に潜む神、白虎だ。

《天龍神無姫、緊急事態だ。高天原が…下った。》
「下った…?全宇宙を統括する高天原がですか?一体誰に?」
《邪仙の統治者…虚ろの者にだ。》

白虎は言う。邪仙は宇宙開闢から間もなく冥府最下層に幽閉された存在…完全なる生命。虚ろの者はこれを解放し、カンナを抹殺するため地球へ送ったのだと。
「完全な命って…どういう?」
《奴らは怨念を食らう。誰かが得をすれば誰かが損をする。ニンゲンのみではなかろう。
 命ある者は、総じて嫉妬、怨念を蓄積してゆく。怨念を糧にすれば、まず飢えぬ。》
484リュウラ 3:2008/02/14(木) 02:13:32 ID:ECjiDigvO
しかし、その完全な命を封じたのは誰なのだろう?と考えている暇も無かった。カンナは感じた。虚ろの者が、地球へも接近している。
無論、龍もそれを感じていた。
「新手か?スサノオに手こずっている間に、という事か…。龍、行くか」
 意気込むヒスイだが、龍はアクア・アイを召還させようとはしない。
《マミヤヒスイ…アレに勝ち得る確証は、無い》
好戦的で自信家の龍が、たじろいでいる。
「どういう事だ?龍よ、地球へ何が迫っている!」
「無、です。」
いつの間にかカンナが現れた。
無。虚ろの者の本質。実体も意思も、本能も無い。つまり力も無い。
しかし、無こそが奴の力なのだ。実体が無いから、どのような攻撃も奴には通じない。そして、ただひたすらに全てを飲み込み、侵食し、無に帰す。
《存在する敵は倒し得る。だが、奴は存在せぬ。倒しようがない。》
 龍が弱音を吐く。
カンナも、ただ無=ムの気配を感じ、宇宙を見上げる他無い。
《気に食わんな!龍よ、貴様はその程度か?》
 龍、ヒスイ、カンナへ白虎の声が響いた。
《ニンゲンは仲間をもって勝利を得る。そなたが身をもって我らに伝えた事であろう?》
 白虎の怒声に続き、玄武の優しい声が聞こえる。
《先ずはニンゲンが挑む、でしょう?》
朱雀の凛とした声が通る。二人は士気を取り戻し、レイハの司馬らを全員呼び出した。

ヘキの解析が開始された。
「確かに、地球へ接近している暗闇には一切の意思、また質量も持っていません。これは…何だ?」
 ユリノが陣を組み、ムの意志にアクセスしようとして、撥ね飛ばされた。
「く…絶対手の内は見せないって事ね…」
 ワタリベと小宰のフナトが、モニター上の暗闇を見る。
「何も無い敵じゃ倒しようがねぇもんな。これで高天原の神々も降伏したわけだ。
 …どうします?小宰」
「神様が倒せない敵を倒す策…組み立て甲斐があるんじゃない?時間はいただくけど」
大宰のゴジョウが、外気圏攻撃用の大型飛宙槍の発射を命じる。だが、槍は闇へ吸収され、そのまま消滅した。敵に侵食され、飲み込まれたのだ。
「…これが地球へ来たら、中々ヤバいわね。」
485リュウラ 4:2008/02/14(木) 02:55:14 ID:ECjiDigvO
ゴジョウの微笑みを嘲笑うかの様に、ムは東京港へ一気に突撃。しかし、瞬時に暗闇の姿を消す。
続いて水面へ浮上したのは、スサノオ。それも、体全体を沸き上がる暗闇に包んでいる。
ヘキが素っ頓狂な声を上げる。
「大宰!暗闇は…ムは、スサノオに宿った模様です!」
スサノオの振り上げた拳は闇を沸き上げ、周囲の建造物を破壊した上に侵食する。破壊と自分に有利な戦闘フィールドの展開を兼ねているのだ。
トキツグが一歩前に出る。既に手には、転身聖具が握られている。
「ガルーダ。オレたち、二回も死を覚悟したよな?なら、これが三回目だ!」
《私は四度目だ。》
自分の中の鳥神ガルーダの冷静な主張に若干頬を緩めながら、トキツグは印を切って言霊を紡ごうとするが…
「んだから冷静になれっつってんの。」
 ミウのキツい物言いが突き刺さる。
「接近したら侵食されるだけだし、とりあえず遠距離からの攻撃で時間稼いでいこうよ。」
ならば牽制は頼む。ムへの攻撃は任せてくれ。と、自信満々にツルギヤマ将軍が現れた。
「諸国の軍には量産型鬼道機関を造らせてますんで、ウルトラマンさん達が足止めしてくれればスサノオを諸国から鬼道機関で攻撃して、ムを切り離せる。」
だが不安要素はある。諸国がうまく連携してくれるだろうか?

「人は、信じるに足る生き物です。だから、滅ぼされるわけにはいかない。」
 
 カンナの言葉が皆を奮い立たせる。無論、ヒスイも。レイヒュウゴ、レイカイオウに乗り込み、レイハの司馬らと三人のウルトラマンが、スサノオに向けて飛び立つ。

「やっぱ姉貴なんだね。カンナ。」
 機内でミウがそう口走る。ミウは内心驚いていた。再会した当初、カンナは七千年前の、旧歴の記憶も曖昧で、ヒスイへ龍を与えた自覚も無かった筈だ。
しかし、今眼前に在る鋭い刄のような女性、強かった母を彷彿とさせる女性。カンナは、明らかに成長していた。

目標地点へ到達。と、スサノオが拳を突き出す。レイヒュウゴには見向きもせず、ひたすらにカンナとヒスイが乗るレイカイオウだけを狙ってくる。
やはりムも、カンナを恐れているのか!
486リュウラ 5:2008/02/14(木) 03:26:53 ID:ECjiDigvO
 スサノオの拳を辛うじてかわすものの、機体の呪的シールドが掻き消えた。ムの力で侵食され、消滅してしまったのだ。
やむを得ずレイカイオウは一旦着陸、ヒスイ、カンナ、ミウを降ろす。
スサノオはやはりカンナに興味を集中している。背後に、トキツグの転化したウルトラマンカルラが登場したにもかかわらず。カルラは敵の足止めを行うため、額からショットスパークルを発射。だが、光線はスサノオの体を捉える前に侵食され、消えてしまう。
カルラは全く眼中になく、ひたすらカンナを狙う。
「ヒスイくん、懐かしいですね。」
そう。ヒスイは一年前、邪仙の襲撃からカンナを庇って負傷し、その際龍を受け継いだ。
ひたすらにカンナを狙う敵といえば、トキツグではない先代のカルラという例もある。
その際は敵の猛攻に対応仕切れず、已む無くカンナへリュウラの正体を明かした。

そんなこんなと今回も同じパターンである。
「ヒスイくん、逃げても良いですよ。」
「逃げん。誓った。」

とうとう彼らは、行き止まりに出会した。
この危機に、ミウが転身聖具=炎の太刀バーニングウ゛ァジュラを引き抜く。そして、姉へ問う。
「カンナ、人を弔う意味って、考えた事はある?」
正直に、無いと応える。ただ、母が死んだ時は、悲しみよりも使命感が沸いた、と応えた。
理由も分からぬ使命感の重さに耐えられなかったと。
「使命感…か。それは多分、自分で実感するしかないのかもね。」
《カンナの守護に使命感を燃やしているのがいるが》
「ちょっと違うね」
 クミホの言葉に返して笑い、ミウは言霊を紡ぎはじめた。
「君が宿主、天龍水映姫の名において命ずる。鬼、炎、和合すべし!出でよラセツ!」

刀身より生じた光の炎は、ミウを包み、紅き剣神 ウルトラマンラセツへ転化させる。

「じゃあ、俺も戦ってくる。」
 ヒスイの手に、龍水玉アクア・アイが出現。
「カンナ、君は君の正体を知りたいか?怖いなら、最悪知らなくても…」
「知りたいです。怖いけど…、てゆうか、怖いからこそ知りたい。」
 ヒスイは改めて思った。カンナは美しいと。
そして、ヒスイの言霊も紡がれた。
487リュウラ 6:2008/02/14(木) 04:02:46 ID:ECjiDigvO
光に包まれたヒスイは、光の龍の姿を成し、空で蒼きウルトラマンリュウラへ転化を完了する。
作戦通り、三人のウルトラマンからの光線波状攻撃が開始された。
スサノオ、いや、スサノオの姿を利用するムはどんな光線も吸収し、無効化してしまう。
さらに、吸収し蓄積した力を増幅し、三人へ投げ返す。リュウラは瞬時にコウへチェンジ、更に防御法陣ドラゴンフィールドを展開し、三人分の防御面を確保する。その間にラセツとカルラが光線で足止めを図る。
しかし、諸国の鬼道機関による支援はまだか。

「どうなっとるのかね!」
ワタリベの父、ワタリベ幕官の怒声が響く。
諸国全ての支部が鬼道機関発動を渋っているのだ。日本の事件だから日本で何とかしろと言う。
事なかれか…或いは折角開発した鬼道機関を下手に使用して軍事的な不利に立ちたくないのか。いずれにせよ、時間はあった。完成はしている筈なのだ。
だが…
「仕方ない。この船で行きましょ」
ツルギヤマ将軍が、レイテイを離陸させる。
「…あっしの処分は、少しまっとくれ」

《トキツグ!これ以上は無理だ!》
ガルーダの叫びも意味を為さない。カルラの攻撃も一切意味を為さず、逆にスサノオから一方的な攻撃を受ける。
ウルトラマン達は神威によって「存在する権利」を上昇させているため、侵食されて一気に消滅する事は無いが、確実にダメージは溜まる。
リュウラはまだもっているが、ラセツとカルラは満身創痍である。
「やめなさい!」
 激昂したカンナが、スサノオ=ムへ叫ぶ。
「お前が欲しいのはわたしのハズです!命ぐらい、譲ります。」
言って手を広げるカンナ。ムの侵食を受け入れるつもりだ。
 止めようとするカルラ、しかし体が動かない。
 突進するリュウラ、しかしスサノオが全身から放射する「力の波」に弾き飛ばされる。
スサノオの手から伸びた暗闇が、カンナを包む…と思われたが。
「行かせない」
 光剣ハデスウ゛ァジュラを抜いたラセツが立ち塞がる。
「母さんは死ぬ瞬間までカンナを信じた。だったらあたしも、信じてみたい」
ミウの意思は、ダイレクトに伝わってきた。
488リュウラ 7:2008/02/14(木) 04:55:15 ID:ECjiDigvO
一方的に傷を増やすだけのラセツの戦い。と、スサノオの背後へ発射された光があった。レイテイだ。
「将軍!大宰!」
レイカイオウから、ヘキの嬉しそうな声が響く。だが、レイテイの最終兵器、コウテイノヒを使ってなお、ムを祓う事はできない。
「みんな…スサノオ!オレが倒す!」
カルラは怒りのままに立ち上がり、槍を手持ちでスサノオに突き出す。だが、やはり何の効果も無い。更に、カルラの動きが封じられた。侵食され始めている。
リュウラはドラゴンインパクトを繰り出そうとするが、恐らくスサノオもムも倒せず、カルラのみを吹き飛ばしてしまうだろう。

その時、ラセツが動いた。ハデスフレアの力を右腕に蓄積したまま、ハデスウ゛ァジュラでカルラを突き刺したのだ。

「ミウ!?」
ハデスウ゛ァジュラは強く輝き、侵食されたはずのカルラの体が回復してゆく。
ラセツは、剣を通してカルラに力を送った。そもそも回復のための手段だったのだ。そして、もう一つ。
ラセツの右腕の輝きが、全身を覆い尽くしていく。
「ミウ…やめて…」
 茫然自失で呟くカンナ。彼女は気付いた。妹の無茶な攻撃を。
ラセツは既に全身が炎と化している。
手出しできないレイヒュウゴのユリノへミウのテレパシーが飛んだ。
「お姉さん、やっぱあたし、頼らない。」
 言うや、ラセツは己の胸をハデスウ゛ァジュラで貫く。全ての力が解き放たれ、スサノオを爆炎に飲んだ。
 カンナは動けなかった。それはほんの一瞬だった気もしたし、永遠の時間のような気もした。次に動けたのは、倒れている妹を発見した時だった。
「ミウ!…何で…こんな…」
慌てて助け起こすが、鼓動は異常に遅くなっていた。
「いや、自爆ぐらいしねーと…アイツ倒せない…と、思ってさぁ」
カンナはひたすらに首を横へ振る。喋るんじゃない、との意だ。だが、妹はその意に反抗する。
「何で、人を悼むのか分かったよ…人は、死んだ人の志を…引き継ぐ為に、悼むんだ…」
カンナは首を縦に振る。分かった。理解したとの意だ。

「あたしと…母さんの志、託したよ。…お姉ちゃん」

言ったきり、ミウはもう動かなかった。
489リュウラ 8:2008/02/14(木) 05:30:47 ID:ECjiDigvO
 爆炎が止み、立ち上がってきた者が在る。スサノオだ。
「貴様…楽には殺さん。」
リュウラも立ち上がる。ヒスイと龍が、怒りで完全に同調している。
それはスサノオへの怒り、ムへの怒りでもあるし、自分への怒りでもある。
何時もの優雅さはなりを潜め、とにかくパワーをぶつけ続けるスパルタンな蹴りを連発する。ダメージは与えられないが、感情の爆発で生じた力により、侵食もされない。

 カンナは泣いていた。両膝を突き。妹の屍をしっかりと抱き。そして、己に絶望した。
立ち上がり、スサノオに向き直る。

「殺して。もう、いい。」

スサノオの手から、暗闇が伸びる。それはカンナを包み、瞬く間に闇へ溶かしゆく。
闇の中、カンナは一瞬リュウラを振り向いた。

「カンナぁっ!」
リュウラは、ヒスイの姿へ戻り、闇へ飛び込む。

 湖畔の廟。複数の老人達が眉を潜めている。カンナと、自分の名前が聞こえる。自分が産まれた事を嘆いているようだ。神に仕える民の中で自分は
「神無」などという名をつけられた。それは結局、自分が持って産まれた巨大な力のせい。
 母親が見える。幼い自分を抱いている。妹はまだ産まれていないようだ。なぜ父親がいないのだろう?この民にはそれぞれ、産まれる前から役職が割り当てられている。
子供をその役職の後継者にするのが第一。感情は二の次。まず子供を産む事。だから父親は誰でも良い。
 様々な魑魅魍魎。いや、神々と完全生命体。自分が産まれなければ、こやつらが皆を苦しめる事もなかったのに。
そうか、やはり自分は生きていてはならない存在なのだ。これ以上、愛する者を苦しめたくない。ああ、あちらの光は暖かそうだ。これからあちらで過ごすとしようか。
光の前に誰かが立っている。すみません、入れてください。
「あん!?お嬢ちゃん、まだ早いんじゃねーのか?」
へっ?…あ、スガ教官!何やってるんだろう…
「ほら、もう帰れ帰れ。ゴジョウさんとか心配してるぞ?」
「スガさん、仮にも娘です。もう少し優しい物言いはありませんか?」
一人の女性が…母が歩いてきた。
490リュウラ 9:2008/02/14(木) 06:09:58 ID:ECjiDigvO
「カンナ…七千年ぶりね」
母が、目の前にいる。抱きつこうとした。しかし、拒絶された。何で…?わたしはこちらの世界でも、ただ居る事も許されないの?
「違うわ。ただ、私達に憧れちゃダメ。取り返しつかなくなるわよ。」
母はそういう。スガさんが続ける。
「まあ、簡単なこった。俺達は死んでるんだ、お前らには生きてもらわんと。」
簡単すぎる、と思ったが、要は妹の遺言と同じ。人は死した者の志を継ぎ、もっと強く生きてゆくべきもの。
死に憧れるのは自由だが、それは逃避という。だから、自分が許されない存在と定義されているなら、なおのこと生きてやれ。
自分は、多くの人々の死をもって生かされているのだから。
でも母さん…わたし、結局ミウを死なせちゃった…。あのコの勇気、わたしには真似できない…怖すぎるの…
「人の思いは繋ぐ。己の弱さは受け入れる。それでいいの。」

そんな自分の腕を掴む者があった。
ひ…ヒスイくん!まさか…あの闇をくぐって来たんですか?もう…血塗れ…
 と、ヒスイくんはそのまま、わたしを抱きしめた。
「カンナ…済まない。君は俺を好きだと言ってくれたのに、俺はずっと答えを避けていた。」
 彼が涙を流しているところは初めて見た。
「逃げていたんだ…俺は…人の思いに応えるのが怖かった。済まない。逃げてばかりで済まなかった!
 カンナ、俺も、君が好きだ。」
 やっと…聞けた…。ありがとう、ヒスイくん。わたしも、大好きです。

 ふと見ると、周囲の暗闇が歪みはじめた。自分達の周囲に巨大な力が生じたようだ。
「兄ちゃん!すぐに逃げろ!」
 スガに急かされ、ヒスイとカンナは共にアクア・アイを握る。別れの挨拶をしようと母を振り返れば、そこに、妹もいた。
「ミウ…もう、そっちの世界の人なんだね。もう…触れ合えないんだね」
「お姉ちゃん、九尾狐だよ。クミホを漢字で書くと。覚えといてやって」
 ミウは一つ笑い、掌から炎をカンナへ与えた。
「あたしらの思い、託したよ。」
「その思い、確かに。」
 姉妹の絆を見届け、母とスガはヒスイへ光を与える。
「娘をよろしく」
「トキツグにもよろしく」
 ヒスイは、久々に、心から頭を下げた。
491リュウラ10:2008/02/14(木) 07:02:13 ID:ECjiDigvO
気がつくと、二人は揃って寝かされていた。ヒスイが起きた。
「格好良かったわよ〜」
 ゴジョウの声で気が抜けるが、有難いっちゃ有難い。
「スサノオとムは!?」
 その事なんだけどね、とヘキが現れる。
「カンナさんがムへ捕らわれて、君が飛び込んで、しばらくしたら恐ろしい力が生じたんだ。」
この力を受けたムは一時的に活動を休止、スサノオも沈黙したためトキツグが命拾いした、という。
「それからカンナちゃん、…だいじょぶ?」
 しっかりと首を縦に振る。と、自分の手に、バーニングウ゛ァジュラが握られているのを発見した。
ミウの物は「剣」であった。しかし自分が手にしている刃は、美しいカーブを描いた細身の…そう、まさに日本刀だ。
《手こずるようなら、私を呼べ。》
己の身内から、鬼神となった九尾狐=クミホの声が聞こえる。クミホ自身、口数が少ないタイプだったのがありがたかった。
思いは、確かに引き受けた。

「あ、ところで高天原だけど、別に全滅してるってわけではないみたいね。ただムに脅されてるだけみたい。」
そんな事をゴジョウが知っているのが驚きだと思ったら、そもそもゴジョウも光の一族だった。
 「その事なのだが、天龍神無姫。これを見てほしい。単なる水ではない。君の母、天龍雅姫が龍と融合した際生じた、『光の水』だ。」
 カンナは老師の話を聞く前に、周知の事実という風情で水に手を浸す。
 そういった周囲を横目で見ながら、ヒスイは身内の龍へ話しかけてみた。
「なあ、アンタ妙に無口だな」
「先刻、ムへ触れた。…多くを思い出した。」
そしてカンナも、微笑みを浮かべた。
「やっぱりそうだったんだ。母さん、あの詩、そういう意味だったんだね」
そう呟く。

無中龍明和合、開為大道

龍と光が虚無の中で交わる時、大いなる道が開かれる。
カンナは立ち上がり、宣言する。
「道とは、タオのことです」
492リュウラ 11:2008/02/14(木) 12:26:59 ID:ECjiDigvO
数百億年前。全宇宙は「ム」が満たしていた。宇宙を風船とするなら、ムは満タンの水。何も産まれず、何も動かぬ時代。
だがある時、その永劫の闇に二つの「存在」が出現した。
一つは「龍」と呼ばれ、もう一つは「光」と称された。
二つが交わった事で、全ての存在の始祖たる混沌「道」(タオ)が生じた。
龍はタオに「命」を与え、光はタオに「魂」を与えた。
結果、宇宙には生命と呼ばれる存在が溢れる事となる。
しかし、発生したものの龍の手で封じられた生命の形もある。邪仙と呼ばれるものもそうだ。
ともあれ、生命とそれが生きる星に宇宙は埋め尽くされていった。そんな宇宙にムは不要で、星と星の間に入り込み黙っている他無かった。
タオは「盤古」という段階を経て、神々をも産み出す事になる。龍は素性を隠して神々の集いに参加する内、創造主の一人であるという己の正体を失念してしまった。
一方の、全ての魂の始祖である光は、全ての命の始祖である龍の様に数百億年を生きる事はせず、己の魂のみを残して様々な生命の形に転生し続けた。
そして七千年前。光は地球に人間の姿をもって転生した。

「それが、わたし」
 カンナはムと光の水に触れ、全てを思い出した。そこにいたほぼ全ての人間が固まった。眼前の少女が、宇宙の創造主。
しかし、ヒスイは冷静だった。
《宇宙開闢の相棒か…懐かしさを感じるのも道理か。》
龍のどこか呑気な口調が笑えたからかも知れない。
では、とヒスイは考えた。先程カンナを抱いた際に発生した巨大な力は…
「ムの中で龍と光が交わる時、巨大なタオが発生する…。」
 はからずもあの時、宇宙開闢が再現されたのだ。そして、かつて自分を追いやったタオを恐れ、ムは沈黙した。
 では、ムにも感情や知性があるという事か。確かに、知性や感情がなくば、恨み重なる龍と光を邪仙を使役して襲ったりはすまい。
ならば。ヒスイに笑みが浮かんだ。思わず立ち上がり、ゴジョウへ進言する。
「大宰!ムは、葬れます!」
493リュウラ 12:2008/02/14(木) 13:05:09 ID:ECjiDigvO
 レイテイは大騒ぎになった。ヒスイの案により。
ヒスイとカンナが再びタオを放ち、ムを不安定な状態へ追い込む。そこへ呪法の一つ、禁呪を鬼道機関を結集した最大の威力で展開する。禁呪とは、対象を自在に操る能力。
これで、ムからその感情、知性のみを切り離し、何らかの依代へ憑依させ、その依代ごと粉砕するのだ。

 こういう作戦で駆り出されるのがヘキとユリノである。
「たく…カンナがそんなに偉いコだったなんてね!」
鬼道機関の最終調整をしながら、結局のところイラついてらっしゃるユリノの愚痴を聞くヘキ。
「ただまあ、人として産まれたんだから、今は変に意識しないで良いんじゃないかな?」
 ヘキは常に冷静である。

「おにぎり食べる?」
 ワタリベの妻、フユミが緊急食糧班という名目で駆けつけた。で、トキツグにおにぎりを渡す。
「良かったねー。帰ってこられて。」
 フユミの笑顔に苛立つトキツグ。
「みんな冷たくないすか?ミウは死んだんですよ!」
 フユミは動じなかった。
「今は前だけ見てないと、肝心なところで転んじゃう。」

「爺さん、力仕事できんのか?」
ワタリベは黒濠老師を心配する。老師は自分の連れてきた法師らを指して笑う。今度は以前よりうまく笑えた。
「我らはそなたらの鬼道機関による攻撃を援護する。肉体労働はそなたらに任せる。」
 機関の調整手伝わんかー、と、ワタリベは爺さんを小突く。ワタリベらしい豪快な笑顔で。

「ゴジョウさん、ウルトラマンさん達の存在を前提に策を立てるってのは、あなたらしくないねぇ。」
 軽口を叩くツルギヤマ。ゴジョウはあっけらかんと答える。
「マミヤヒスイが、ウルトラマン自身が提案した策です。我々は、それを手伝うだけ。」
 なるほど、屁理屈だが道理は通る。
「ウチの大将はね、こうやって出世してこられたんですよ。」
 付け加えるフナト。ワタリベの父、ワタリベ幕官は不謹慎だと怒るが、ツルギヤマは素直に笑った。
494名無しより愛をこめて:2008/02/14(木) 13:56:33 ID:WFhf3Htm0
ああっ!
うぜぇ!
495リュウラ 13:2008/02/14(木) 14:08:22 ID:ECjiDigvO
おにぎりを平らげ、トキツグは転身聖具サンダーボルト・クローを召喚する。
「ガルーダ、オレたち、勝てるのかな…。」
《努力しても勝てない事がある。努力を怠っても勝てる事がある。…ニンゲンは、命とは面白いな。》
 ガルーダも、妙に悟りはじめたようだ。思い出した。かの巨人は無事だろうか?
「な、ダイゴさんならどう言うと思う?」
《彼なら…自分にできる事をやる、と言うかな?》

《天龍神無姫、正直、私は然程大きな力は発揮できない。》
 今はカンナの中にいるクミホ。自爆時のダメージは殆んどミウが負い、自分はミウから強制的に脱出させられた。
契約を破棄して無理に分離するにはかなりの力が消耗される。その上、自爆のダメージを少しでも高めるため、ミウはクミホの力を自分の体内に蓄積した上で脱出させたのだ。
だから、クミホ自身が発揮できる力は多くない。足手まといになる事を危惧しているようだ。
しかしカンナは、全く気にしていない。
「大丈夫。わたしの力で手伝うから。」
 妹の死を、妹の思いを無駄にはできない。ムを討つ。泣くのはそれからで良い。

「呆れたぞ?創造主が己の素性を忘れるとは。」
 ヒスイはねちねちと龍を追及していた。龍は全く気にしたふうもなく
《お前達の一生の数億倍だ。齟齬も生じよう。》
 とか、さらっと抜かす。
「…アンタはなぜ、自分達が産んだ邪仙を封じたんだ?」
《邪仙は…完全なる生命は、美しくなかった。お前達不完全な生命は、一匹が生きれば一匹が食らわれて死ぬ。寿命もほんの僅か。いわば、お前達は死を眼前に一瞬を生きている。
 我は、その不完全で危ういお前達が、美しいと感じた。故に、邪仙を封じた。》
 ヒスイは、何も言えなかった。あくまでもカンナのためにだけ戦っていると思っていたが…やはり龍だ。圧倒された。
再び黙りこんだヒスイ。だが沈黙は長くなかった。
《マミヤヒスイ、出番だ!》
 龍の声が響く。
一拍遅れて、レイテイ艦内をユリノの声が支配する。
[伝令。敵神スサノオ、活動再開した模様。各兵、各将、急ぎ持ち場へ。この戦、宇宙の未来を決定づけると心得よ。]

 ヒスイは、龍へ問う。
「アンタと光と不完全な生き物が肩を並べて戦う。どうだ?」
《…心地よきことよ。》
496リュウラ14 すいません四話分なので:2008/02/14(木) 14:44:09 ID:ECjiDigvO
スサノオの周囲へは、既に無数の邪仙が待機している。ムに呼ばれたか?
「ヒスイくん、スサノオはわたしに任せてくれませんか?」
 カンナが問う。好きにすれば良いと答えた。
「行くぞ。君が宿主、マミヤヒスイの名において命ずる。龍、明、和合すべし。出でよリュウラ!」
ヒスイを、光の水が包み込む。

「君が宿主、ロクドウトキツグの名において命ずる。翼、雷、和合すべし。出でよカルラ!」
トキツグを光の稲妻が貫きはじめる。

「君が宿主、天龍神無姫の名において命ずる。鬼、炎、和合すべし。出でよ…ラセツ!」
抜刀するカンナ。零れた涙を受けた刀身が、紅い炎と蒼い光を同時に放つ。

舞い上がった光の龍は、ウルトラマンリュウラ・コウの姿を成す。
同じく光の鳥神もカルラ・ガイの姿となる。
そして、炎から飛び上がった九尾の狐は、蒼い光の中でウルトラマンラセツへ転身。紅い体を守るその鎧は、ミウの金色ではなく、蒼緑。どこか翡翠を思わせた。
ウルトラマンラセツ・リン。推参。

リュウラとカルラは邪仙、ラセツはスサノオへ向かっていく。
一方、レイハも作戦を開始した。現時点で使用し得る全ての鬼道機関をレイテイの砲台へ連結、リュウラとラセツがタオを産むのを待つ。その間レイテイへ襲いかかってくる邪仙は
「ミウツシノヤイバ、起動!」
ユリノが何とかする。
 スサノオは全身から放つ「力の波」でラセツの粉砕を狙うが、彼女はただ手をかざしただけで力を消し去ってしまう。闇による侵食も、一切効果がない。
やけくその肉弾戦でさえ、圧倒的なスピードで全てを受け流してしまう。
逆に掌底を食らったスサノオ。その部位から、光が自分を逆に侵食し始めている事に気付き、悶絶する。
ラセツの手に、光の刀が煌めいた。刀と認識する前に、居合い抜きが一閃した。
振り返りざま、右腕に光の炎を集約するラセツ。ミウとは異なり、突き出した開き手から炎を放つ。直線的な軌道を描いていた炎は、空中で突如分裂。
クミホの尾にも鬼の手にも思える禍々しい姿へ変化し、スサノオを掴み潰すかのように焼き尽くす。

ラセツ・リンの最強奥義
鬼神総凛焔オーガインパクト
である。
497リュウラ 15:2008/02/14(木) 15:27:04 ID:ECjiDigvO
シャイニングボムで邪仙五、六匹纏めて葬るリュウラ。
スサノオが倒され、ムは空中に暗闇としての姿を現した。
「カンナ!行くぞ!」
リュウラとラセツ、両者のカラータイマーから照射された光が混ざりあい、ムへタオを与える。
「今よ!鬼道機関、全解放!」
レイテイから、軍日本基地の総力を結集した呪力が放射される。呪はムを直撃し、その力と意識を切り離…そうとしているのだが…
「ま…まだなのか?」
ワタリベが焦る。ヘキが調べる。すると、
「黒濠老師、鬼道機関の始動に琥珀を使っておられませんか?
 レイテイの鬼道機関に向いているのは水晶なんです!琥珀では極性が違いすぎる…逆に出力を低下させてしまいます!」
 ムは、弱体化した呪を再びエネルギーとして吸収しはじめる。
「何という事だ…みな、即刻水晶へ切り替えろ!」
老師は法師らを急かすが、間に合わない。ムはまたも力を回復させている。
「我々の責だ…申し訳ない…」
「僕の方こそ説明が足りませんでした…」
己を責める老師とヘキ。
「何てこった!…お?」
ワタリベが、四方八方からムへ注がれる光に気付いた。ムは、再び規模を縮小させはじめている。諸国軍が開発した、量産型鬼道機関。その援護射撃だ。危機を前にし、全ての国は、まとまった。
「策…成れり。老師!攻撃再開!」
ゴジョウの声に従い、老師らは水晶へ切り替えて再度鬼道機関を解放する。
 ム、と呼ばれる暗闇は消失、ムの意識は周囲の邪仙へ移された。策は、成功した。残るは、ムの意識を砕くのみ。
数百億年溜め込まれた鬱憤は半端ではない。ムの意識は邪仙全てを吸収し、巨大な肉塊と化した。だが…存在する敵なら、倒す事ができる。

三人のウルトラマンは宙へ舞い上がる。
セントラルスラップ、ハデスウ゛ァジュラ、ドラゴンカムイが肉塊を苛んでゆく。
そして、カルラが投げる光の翼槍 鳥神総凱破ウィングインパクト
ラセツが燃やす光の炎 鬼神総凛焔オーガインパクト
リュウラが放つ光の龍王 龍神総恐撃ドラゴンインパクト
の同時発射が、邪仙の肉塊もろとも数百億年の怨念を、虚空へ還した。
498リュウラ 16:2008/02/14(木) 16:01:05 ID:ECjiDigvO
《殺してくれ…》
 カンナの前に横たわる傷だらけの青年が呟く。
「それが貴方の本性なんですね?スサノオ。」
 スサノオには、二つの側面があった。邪悪な暴神としての姿。もう一つは、知的で優しい英雄神。
《私は…暴神の姿を幾度も捨てようとした。だが…暴は私を魅了してやまなかった。私は…弱い存在だ。己が暴に酔い、封じる事もできなかった!》
 だから、優勢になる度に己を取り戻し、逃走していたのか。
カンナは、刀を腰へ直す。
「高天原へ帰りなさい。」
 スサノオの力は、ラセツが全て焼き払った。もはや何の力も発揮できない。だから、高天原で心を暴へ支配されれば、間違いなく殺される。
「それを心に刻んで、罪を償い続けてください。」
 スサノオは、驚愕しながらも笑んだ。カンナは続けた。死に憧れるのは、単なる逃避だと。
そして、空を見上げて言う。
「セイオウボ!アマテラス!スサノオに贖罪の機会を与えなさい。嫌とは言わせません。」
 ムの脅威が去った高天原。二人の女神は、少し困った表情で、それでも頷いた。

 「只人の絆。見せていただいた。」
 黒濠老師は、法師らを引き連れ、また神山へ帰っていった。今度は只人に、もう少し役に立ちたいと言って。
 「いや〜ツルギヤマ将軍!実にお見事な策でございました!」
「鬼道機関量産の件?あれなぁ…実はあっしの策じゃないんだよね。」
そう言うと、夕日の中、指を指す。その先には、ゴジョウがいた。

「カンナ、殺さなくて良かったのか?」
「殺したかった…かも知れません。でも…見極めたかった。」
高天原への帰路につくスサノオを見送って、そんな事を話した。
「カンナ、自分を偽っていないか?別に頑張れとは言わん。妹が死んだんだ。悲しくて当然だろう。」
「ヒスイくん…ミウが…ミウが…うわぁぁぁんっ!」
499リュウラ 17:2008/02/14(木) 16:32:43 ID:ECjiDigvO
 一夜明けて、ヒスイ、トキツグ、カンナは、レイハの仲間達の前で、神と分離した。もはや神も邪仙も来られまい。故に、自分たちがニンゲンだけを守っている訳にもいくまい、との事らしい。
ガルーダは高天原へ帰り、スサノオと反カンナ派を監視するという。
クミホは、冥界での執行人に返り咲く予定だ。ミウと母さんとスガさんは処断しないでね、とカンナが念をおしていた。
「で…龍、アンタは?」
《春日で白虎らを手伝う。地球に…骨を埋めると言うのか?》
 確かに、特に白虎は四神獣である自分たちが龍の不在で三神獣となっている事が気に入らないようだった。

《マミヤヒスイ。カンナを頼む。》
龍は昇り始めた。
「すっかり世話になってしまったな。」
龍は、ヒスイを含めた全員を見渡し、こう付け加えた。
《人間よ。後はお前達へ委ねる。》

 「行っちゃいましたね。」
 カンナがポツリと言う。
「ヒスイくん…結婚しませんか。」
 カンナがポツリととんでもない事を言う。
「何…を唐突に?」
ヒスイも咄嗟の事でパニクっている。周囲に至っては凍っている。
「ヒスイくん、今のわたしは人間です。人間の体はいつか滅ぶ。でも、わたし自身は死なないんです。例え肉体が滅んでも、わたしは死ねない。」
 ヒスイは、カンナの意図が今一掴めない。
「だから、人間でいられる今は、最期までヒスイくんと一緒にいたいんです。人間として生きてた事、後悔したくないんです!」
 ヒスイは、一つ頷き。笑んだ。
「カンナ、君は俺達全ての命に、未来を与えてくれた。だから俺の未来を、君へ返そう。…至らぬ夫だろうが、よろしくお願いします。」


 それから数百億年が過ぎた。宇宙の形も随分変わったものだが、ある星は未だに変わらない。地球と言う星。
星の軌道上を、「龍」が舞っている。そこへ接近する、眩い「光」。この二者にとり、地球は思い出深い地なのだ。
かつての龍の戦友、そして光の最愛の人が、ここに眠っている。
《今日も、宇宙は、平和だよ。》
光は、カンナは地球に眠るヒスイに意思を伝える。彼の志「平和」を自分と龍は受け継いでいるから。
500リュウラ 19:2008/02/14(木) 16:53:06 ID:ECjiDigvO
 無論、地球の地形は大分変わっているのだが、大体何処に何があったというのは記憶している。例えば、日本帝国 帝都 東京。かつての基地。

 ムを葬ってから数日後、レイハの七人とフユミとトキツグは、壊滅した基地の前に集結していた。基地修繕作業を手伝えとのお達しだ。

「ホントにあのボロボロな基地を修繕するんですか!?」
ユリノはイラついてらっしゃる。
「あの、大宰、これって僕たちが手伝うべき事なんでしょうか?」
根本的なところを聞くヘキ。
「や〜ねぇ。手が汚れちゃう。」
そもそもゴツい手をなぜか労るフナト。
「まあ良いだろ。我妻、メシ作って待っててくれ。」
陽気なワタリベ。
「じゃオレもフユミさん手伝って待ちます!」
「おめーは肉体労働だよ。」
意外に調子の良いところをみせたトキツグと、押しだしで追い払うフユミ。
「さ、レイハ。修繕作業に出陣!」
なぜか元気なゴジョウだが、部下達の御意の声は弱々しい。

腕組みしたままのヒスイ。気は乗らないが、仕事だ。
「やれやれ…始めるか、カンナ。」
「うん。行こ、ヒっくん!」
 ヒっくんと呼ばれた瞬間ヒスイは死にたくなった。
しかし、彼の腕を掴み、基地まで引っ張ってゆくカンナの笑顔は、輝いていた。今までで最も。

ウルトラマンリュウラ  完
501リュウラ:2008/02/14(木) 16:57:27 ID:ECjiDigvO
という事で、終了です。
コンスタントに書けなくて申し訳なかったです。
二年近くの長期間、ありがとうございました。
しばし眠りにつきます。
502名無しより愛をこめて:2008/02/14(木) 17:14:35 ID:c7tUQrCsO
お疲れさまでした。荒らしに負けずに頑張ったことにまず拍手
そして従来のウルトラマン像と良い意味でかけ離れた作品を
作ったことはすばらしいです。ゆっくり休んでください
503名無しより愛をこめて:2008/02/14(木) 22:22:31 ID:6wHV7UCcO
>>501
完結乙ノシ
このスレで一番好きなウルトラマンですた
504ウルトラマンオーバー ◆FTVw.4PYoM :2008/02/15(金) 16:05:50 ID:WYx4BFv20
ウルトラマンリュウラ万歳!
あなたの勇姿は絶対に忘れない
ウルトラマンリュウラ万歳!
505名無しより愛をこめて:2008/02/15(金) 20:07:41 ID:cjC/Pye5O
北朝鮮の将軍様か?
506名無しより愛をこめて:2008/02/17(日) 23:15:28 ID:fn+4aHIzO
お疲れ様でした!
507名無しより愛をこめて:2008/02/20(水) 20:35:13 ID:7X3FLVFYO
これにて閉店
508名無しより愛をこめて:2008/02/21(木) 08:09:13 ID:RfAoYO+8O
リュウラが完結した今、もう思い残すことはない

ありがとうオリジナルウルトラマン(^-^)/~~
509名無しより愛をこめて:2008/02/21(木) 21:59:21 ID:Fp0RW+9PO
終了
510sage:2008/02/22(金) 00:55:25 ID:Z6DyUGj70
どうも皆様初めまして、実は私も恥ずかしながらウルトラマンの
小説を作りまして、発表できる場所は無いかと探していた所、
ちょうど良い場所があったのでここに投稿したいと思います。

たいした知識や文才も無く、駄作ではありますが、皆さんの意見を
聞いて、より良い作品を作っていけたらと思います。ペンネームは
「紫藤(しどう)」としておきます。

まずは、さわり部分を上げてから寝ます。すいません><。
仕事があるので休日は週1しか無いのです。明日の昼ごろ
たぶん続きを上げます。

それでは始まり始まり・・・・
511ウルトラマンシリウス:2008/02/22(金) 01:01:47 ID:Z6DyUGj70
あうう、sage打つとこ間違えた。

ウルトラマンシリウス 第1話 主要登場人物

日本EDF 怪獣調査隊

・怪獣調査隊司令(3等隊佐) 瀬戸 龍三  セト リュウゾウ
・怪獣調査隊隊員(隊長)   秋山 紗江子 アキヤマ サエコ
・怪獣調査隊隊員(1等隊員) 成川 亜矢乃 ナルカワ アヤノ
・怪獣調査隊隊員(1等隊員) 四方 英雄  シカタ ヒデオ
・怪獣調査隊隊員(1等隊士) 菊間 由貴  キクマ ユキ
・怪獣調査隊隊員(2等尉)  見城 徹   ケンジョウ トオル

EDF最高司令官 武藤 国男 ムトウ クニオ
EDF参謀長   保坂 一正 ホサカ カズマサ
512○シリウス1:2008/02/22(金) 01:08:00 ID:Z6DyUGj70
ウルトラマンシリウス 第1話

「来襲!バルタン星人」

1960年代より、宇宙人や巨大生物(マスコミが言うところの怪獣)などの脅威が
世界各地で顕在化してきた。この脅威に対抗するため、人類は様々な組織を作って
対応してきた。

しかし時代は冷戦まっただ中であり、全世界で対応することはできない相談だった。
この人類の最大の危機を救ったのが宇宙からやってきた巨大未知生命体である。
マスコミはこぞってこの生命体を褒め称え、「ウルトラマン」という名前をつけた。

冷戦時代が過ぎ、人類はこれまで作り上げた対抗組織を解散、再統合し、地球を
守る巨大防衛組織を作ることを急いだ。

宇宙人や怪獣の侵略に対応することもさることながら、意図の分からない巨大
未知生命体「ウルトラマン」に人類の命運を任すことはできないからだった。
513○シリウス2:2008/02/22(金) 01:12:36 ID:Z6DyUGj70
それと同時に軍隊も大幅に再編成された。ヨーロッパに存在した共同軍事機構NATO
を先進国すべてに拡大し、アメリカを主導とした「安全保障軍」を設立した。この
「安全保障軍」によって一定の軍事バランスが保たれた。

そして、10年の再編成の結果。地球人が作り出した共同防衛組織の中では最大の
組織である「EDF」(アース・ディフェンス・フォース)が設立された。幸いな
ことに、再編成中には怪獣や宇宙人の攻撃はなかった。

EDFは世界中に基地や要塞を持ち、その隊員数は実に200万名である。これだけ
の大組織と安全保障軍が組めば、地球は安泰だ。誰しもがそう思った。

時は西暦2020年、10年に及ぶ長い平和な時期は終わりに来ようとしていた・・
514○シリウス3:2008/02/22(金) 01:17:40 ID:Z6DyUGj70
日本EDF本部 山梨EDF南アルプス基地
情報警戒群(通称諜報部)

8月12日 午後12時20分

情報警戒群所属のオペレーター、杉山情報官は正面にあるディスプレイとにらめっこ
していた。彼の任務はディスプレイに表示される情報を監視し、異常があれば上部
組織に報告することであった。

この地下に存在するオペレーションルームには、このようなディスプレイが100台
程存在していた。この広大な部屋の正面には、さらに巨大なディスプレイが存在し、
世界中にある人工衛星、天文台から送られる大量の情報を映し出していた。

薄暗いオペレーションルーム内は、人影が少なく閑散としていた。皆昼食に出掛けた
のだ。このセクションでは24時間監視が原則なので、杉山情報官は居残り監視を
続行していた。13時になれば同僚が帰ってくるので自分も食事に行ける。

腹は減ったが、食事をした後の午後は長い。何せ体を動かさないのでかなり眠いのだ。
今日も何気ない平常勤務が過ぎるだろう。

だが、杉山情報官の予想は裏切られる事になる。ディスプレイの右側に表示されている
ウィンドウに「警戒情報」のアラートが表示される。
515○シリウス4:2008/02/22(金) 01:22:18 ID:Z6DyUGj70
めずらしいな・・。杉山情報官はアラートをクリックし、ポップアップしたメニュー
から天文台情報を選択する。たまにしか無いことだが小惑星が地球に異常接近した際
などにこの種の警報が出されることがある。こんどもそれか・・?

天文台情報を確認すると、ハワイとアラスカ、アメリカ本土にある電波望遠鏡が地球
に接近する物体を捕捉したらしい。その情報を一瞥した杉山情報官は目をむいた。
電波望遠鏡が探知した放射線がガンマー線だったからだ。これほど大量のガンマー線
を感知したとなると、その接近する対象物は人工物である可能性が極めて高い。

杉山情報官は急いで、全天文台情報を検索して補足できる情報を探した。EDFは世界
を股をかける巨大組織であり、世界中の天文台情報を集約することが可能だ。5年の
歳月をかけ大規模天文台に専用回線を引いた。

それらを一旦EDFアメリカに集約、世界各地にあるEDF基地に配信する。情報は
リアルタイムにリンクすることが可能であり、このリンクをEDFでは宇宙警戒情報
リンク「リンクS1」と呼んでいる。

杉山情報官が補足情報と悪戦苦闘している間に休憩は終了し同僚が戻ってきた。しかし
杉山情報官は昼飯どころではなかった。同僚と協力し情報の分析を行う。
516○シリウス5:2008/02/22(金) 01:25:45 ID:Z6DyUGj70
ハワイとアラスカ、アメリカ本土にある電波望遠鏡を電波探知方位からまっすぐに線
を伸ばしていくと、3点の結合点が現れる。この点により接近する対象物の正確な
位置を知ることが可能だ。この3点の結合点を「ベアリング」と呼称する。

ベアリングはすでに木星の軌道にさしかかっていた。これほど接近されなければ
探知できなかったことは杉山情報官にはショックだった。

午後13時、14時、15時。各時間に観測されたベアリングの数値をコンピュータ
に入力した結果、驚くべき情報が判明した。その人工物は超高速で地球に接近して
いたのだ。しかも地球の公転に合わせてコースを修正しながら、である。

事態は最早、杉山情報官の元だけで処理できないものとなっていた。杉山情報官は
電話をとる。
517シリウス:2008/02/22(金) 01:28:41 ID:Z6DyUGj70
ああ、ほんとにさわりだけだ。じゃあそういうことで
寝ます。お休みなさい。
518ウルトラマンオーバー ◆FTVw.4PYoM :2008/02/22(金) 01:36:57 ID:RHqRiKPW0
>>517
各個の描写が細かく、SF的要素がふんだんにある面白そうな作品だとおもいます
つづきが楽しみです、頑張ってください
519名無しより愛をこめて:2008/02/22(金) 01:37:52 ID:ZWSaFDWJO
お疲れ様です。
さわりの部分で多少気になる点はあるんですが、
とりあえず第一話は最後まで拝見した上で指摘させていただこうと思います
頑張ってください
520アルファ作者:2008/02/22(金) 09:32:19 ID:3Pyk8uVf0
お久しぶりです。

シリウス作者様
ご苦労様です。確かにまだ導入部なので何とも言えません。期待しています。
しかし、カイザーやメシアの時といい、プロローグにはバルタンがよく出るなあ。
やはり人気怪獣だし。
521○シリウス6:2008/02/22(金) 12:30:46 ID:Z6DyUGj70
静岡山中 バス内

8月12日 午後12時30分

窓の外はのどかな風景が流れていく。どこまでもどこまでもこの道は続くのではないか
と思われた。

2時間に1本しかないバスに乗って、見城 徹は一路「怪獣調査隊」のある静岡山中に
向かっていた。ずいぶん辺鄙な所に基地があるもんだ。見城はぼんやりそう考えながら
景色を見ていた。このがらんとしたバスの乗客は見城一人しかいない。

最新の設備が整った山梨EDF南アルプス基地から「怪獣調査隊」へ・・。どうして自
分はEDFを辞めずにこんな所まで来たのだろう?

それは1週間前のことだった。突然上司に呼ばれて怪獣調査隊への異動を告げられた。
それは見城にとって青天の霹靂であった。あまりのショックで次の日に休んだほどだ。
522○シリウス7:2008/02/22(金) 12:34:24 ID:Z6DyUGj70
見城は高校卒業後、猛勉強の末、競争率が100倍にもなるEDF防衛大学校に合格す
ることができた。大学を優秀な成績で卒業し、幹部候補生としてEDFに入隊したのだ
。それから5年、今までの人生の中でこれ以上ないほど努力を重ね、見城は順調に出世
していった。2等尉に昇進し、1等尉への昇進試験もまじかに迫っていた。

見城の目指していたポストは、高度統合作戦群の花形ポストとも言える参謀部であった
。ここは主に防衛作戦立案を行い、宇宙人と怪獣から人類を守るための要とも言える組
織であった。

見城は子供のころ、怪獣とウルトラマンの戦闘に巻き込まれ家を焼かれた経験がある。
その時助けてくれたのが防衛隊の人たちだ。その時から見城は防衛隊に入ることを夢見
て来た。俺もいつか防衛隊に入って日本を守りたい。困っている人たちを助けたい。だ
が、それも今となっては・・。

見城がEDF南アルプス基地で出世競争に明け暮れた時、同じポストを争う相手に速見
という男がいた。なんでも名家の出身で政治家の息子らしい。だが、平々凡々な男でこ
となかれ主義の気の弱い奴だった。仕事に対してもあまり熱意を感じられなかった。
523○シリウス8:2008/02/22(金) 12:36:45 ID:Z6DyUGj70
速見と比較して、当然、参謀部に入ることができるのは自分であると見城は信じていた
が、結果、速見が参謀部への昇進を決め、見城は怪獣調査隊への異動を命じられた。

親しい同僚がそっと耳打ちしてくれた所によると、どうやら速見の父親が政治力を使っ
てEDF上層部に働きかけたらしいのだ。速見の父親は山梨県の有力な地主でもあり、
この決定には何らかのバイアスがかかったと考えられる。

見城は怒りを覚えたが、もうすでに決定は下ったのだ。今更見城に何ができる分けでも
ない。今まで努力すればどんなことでも乗り越えられるの信じてきた見城だったが、現
実にはどうしようもない壁というものがあるということを体感した。

おまけに自分が今追いやられる怪獣調査隊は、EDFという組織の中ではもっとも下位
にランクされる部隊である。主な業務は害虫処理や苦情処理、他の部隊の手伝いなどで
ある。EDFにとってはどうでもいい部隊だ。それこそ民間にアウトソーシングすれば
いいような仕事ばかりだ。
524○シリウス9:2008/02/22(金) 12:39:44 ID:Z6DyUGj70
しかし、EDF発足当時から怪獣調査隊はずっと存続している。何故かというとここに
はEDFで問題を起こしたり不祥事を起こした隊員を送り込んで、辞めさせるという機
能を担っているからである。

怪獣調査隊へ異動してしまうと二度と日の当たるポストには出ることができない。これ
がEDF全隊員の認識である。実際、身近で怪獣調査隊への異動を命じられた幹部もい
たが、プライドが許さなかったのか異動前に辞めたのを実際に見たことがある。

俺はEDFにとってお荷物なのか? 足掛け5年に渡ってEDFに尽くした結果が最悪
の左遷コースである。これはあまりにひどい仕打ちだ。

見城もEDFを辞めようか悩んだ。真剣に悩んで悩んで、悩みつかれて結局異動を受け
入れた。何故なのかは自分でも分からない、だが1度くらい世間に流されるように生き
ていくのも悪くない。最近はそう考えるようになった。
525○シリウス10:2008/02/22(金) 12:42:11 ID:Z6DyUGj70
見城が思いを巡らしている内に、バスは怪獣調査隊基地に近いバス停に到着した。第4
停留所という安直なネーミングのバス停から徒歩20分。汗をかきながら歩いていくと
やっと怪獣調査隊基地が見えてきた。周囲を山に囲まれた盆地に一際目立つ滑走路が1
本見える。

事前に受けたブリーフィングによれば、ここは元は静岡県が整備した地方空港だった。
しかし財政が逼迫した静岡県は赤字が続くこの空港を閉鎖、滑走路設備をEDFに売却
したのだった。今では静岡県は破産寸前である。

日本国そのものは金持ちだが、すでに6つの地方自治体が財政破綻し、破産候補自治体
もぞくぞくと現れている。

見城は怪獣調査隊基地を見て絶句した。なんと主要な建物はプレハブなのである。宿泊
設備までもがプレハブ住宅であった。怪獣調査隊基地は市街地から遠いので、隊員は基
地に寝泊りすることになる。とりあえず今の季節はいいが冬は寒そうだ。
526名無しより愛をこめて:2008/02/22(金) 12:42:47 ID:6Ug8RmfVO
誠に残念ではあるが、ここに作品をupしても反応は何もない。
527○シリウス11:2008/02/22(金) 12:45:05 ID:Z6DyUGj70
あとは駐車場、自家用車が数台と青色のハイエース。ジュースの自販機も見える。基地
らしい設備といえばプレハブ施設から突き出た通信用アンテナ、飛行機が格納できそう
な格納庫が2基。燃料タンクらしいのが2基。

これが潤沢に資金があり、宇宙人や怪獣から人類を守る最新鋭の科学力を誇るハイテク
戦闘集団EDFの前線基地だとは・・。見城の想像を遥かに超えたみすぼらしい基地だ
った。

とりあえずここに突っ立ていてもしかたない。見城は意を決して基地の入り口に向かっ
た。入り口の大きなベニヤ板には黒スプレーで「EDF怪獣調査隊 本部」と書いてあ
った。ゲートにはプレハブの詰め所らしき建物があり、中にはEDFの警備隊員ではな
く民間のガードマンらしき人物が座って週刊誌を読みふけっていた。

「あ、あの・・」
528○シリウス12:2008/02/22(金) 12:52:31 ID:Z6DyUGj70
ガードマンは見城に気づいて、何か御用でしょうか?と彼に話しかける。制服の胸には
株式会社パーフェクト警備保障の文字が見える。やはり民間のガードマンだった。

「はい。本日付けで山梨EDF南アルプス基地から異動配属になった見城というもので
すが・・」

「ああ、今日新しく配属になった人ですね。瀬戸さんから話は聞いてますよ。私につい
てきて下さい。」

ガードマンは屈託のない笑顔を見せて見城を一番大きなプレハブに案内した。なぜかプ
レハブ入り口にはベニヤ板で作ったような粗末な犬小屋が2つ置かれて居た。中にはゴ
ールデンレトリバーとダックスフンドが入っている。

犬2匹は怪訝な目で見城を見つめる。中に入ると大きな事務机のパソコンの前に座って
いる男性が目に入った。向かいの事務机には女性が2人、何か書類の整理みたいなこと
をしていた。

ガードマンは男性を指して、この方が司令の瀬戸龍三さんです。と紹介してプレハブを
後にした。
529○シリウス13:2008/02/22(金) 12:54:46 ID:Z6DyUGj70
「君が見城君かい? まっ、ここにかけたまえ」

ニッコリ笑った瀬戸司令に促され、見城は椅子に座った。

「私が怪獣調査隊司令を勤めている瀬戸隆三だ。これからよろしく。ああそれと向こう
に座っている娘が隊員の菊間由貴1等隊士、隣は派遣社員の藤堂さんだ。」

見城は瀬戸司令と紹介されたそれぞれの女性に挨拶した。菊間1等隊士は何だかあどけ
なさが残るかわいらしい女の子といった感じ。藤堂さんは三十路のキャリアウーマンみ
たいな印象だった。

見城は異動届けを提出、必要書類の記入と提出を行った。先に宅急便で送った見城の荷
物はすでに居住用プレハブの部屋に置いてあるとのこと。部屋の鍵ももらった。

「君の経歴を見せてもらったが、えらく優秀な人材だな。その年で1等尉の昇進試験を
受ける予定だったとは」

「ええ、まあ・・」

どう返していいか分からない見城はあいまいに笑った。
530○シリウス14:2008/02/22(金) 12:57:41 ID:Z6DyUGj70
「そんなに緊張する必要はないぞ。なにせ我が怪獣調査隊はEDF内ではある意味有名
な組織だからな。君も知ってるだろ? なに、慣れてしまえばここはとても居心地が良
いもんだ。何せEDFの中では一番責任が無い所がいい。気楽に隊員生活が満喫できる
。ここはEDFのパラダイスだぞ。」

瀬戸司令は自分の緊張を和らげるよう気を使ってるらしい。ずいぶん細やかな気遣いが
できる人だな。瀬戸司令も何か問題を起こしてここへ左遷させられたのだろうか? と
てもそうには見えないが・・

駐車場の辺りで何か物音がする。車が来たようだ。

「ああ、他の隊員たちだ。外で仕事をしてきて帰ってきたんだよ。」

「瀬戸司令。ただいま戻りました。」

入り口からEDF隊員装備の通常作業服に身を包んだ女性が入ってきた。手には害虫駆
除用の器具を持っている。彼女は見城を見て。
531○シリウス15:2008/02/22(金) 13:00:26 ID:Z6DyUGj70
「あら、そちらは・・。今日新しく配属になった隊員の方ですか?」

「そうだ。見城徹隊員だ。見城君、彼女は秋山紗江子隊長だ。チームのリーダーをやっ
てもらってる。」

瀬戸に紹介してもらい見城は挨拶した。見れば胸元の階級章は隊員での最上位、隊長だ
った。そういえば見城は自分が階級章をつけてないことに気づいた。

高度統合作戦群と怪獣調査隊では、階級のデザインが違うため、前の階級章は返したの
だった。怪獣調査隊で新しい階級章を作ってもらう必要がある。まあ、今は別にいいか
・・。

EDFにとっても階級は重要だが、軍隊ほどではない。「EDFは軍隊ではない。」と
いう上層部の方針があるため、お互いを呼ぶときは「隊員」と呼ぶことがほとんどだ。
逆に司令クラスになると階級をつけて呼ぶことが多い。そのへんはあまり厳密には規定
されていない。
532○シリウス16:2008/02/22(金) 13:02:55 ID:Z6DyUGj70
「あれ、新しい人、もう来たんだ。」

続いて髪が肩まで伸びている女性が現れた。両手には大型の虫かごのようなケースを持
っている。中では大型のミミズがのたくっていた。気色悪い。

彼女は後ろを振り向いて

「ねえ四方隊員、その捕獲器具洗浄しといてよね。昼食のあとでいいけど、私もミミズ
処理しないといけないんだから。」

「わかりましたっス。」

彼女に続いて大柄な男が現れた。筋肉隆々でいかつい感じの男だ。見た目重そうな捕獲
器具をかついでいる。両者とも階級は1等隊員であった。

「彼女は成川亜矢乃隊員、後ろは四方英雄隊員だ。これで怪獣調査隊本部の主要隊員は
すべてだ。」

再び瀬戸に紹介され見城は挨拶した。
533○シリウス17:2008/02/22(金) 13:05:15 ID:Z6DyUGj70
「怪獣調査隊への異動って、大変だわねぇ。同情するわ。」

「初めまして、どうぞヨロシクお願いしまっス。」

四方隊員は90度近い角度で深々とお辞儀した。いかつい外見だがやたらに礼儀正しい
。成川隊員と四方隊員は荷物を置きに部屋の奥に向かった。

戻ってきた秋山隊長は

「瀬戸司令、午前中の害虫駆除、大型ミミズ捕獲作業は終了しました。住民からのクレ
ームは解決しました。報告書はあとで上げておきます。」

「うん。ご苦労。」

と報告し、奥にある中古で買ったようなボロの事務机の椅子に腰掛け、置いてあったノ
ートパソコンをいじり始めた。

「ふう、やっと休憩だわね。ああ、ごめんね見城君、あなたの分のお弁当は来てないみ
たいね。今日手続きしとくわ。」

成川隊員はそういうと、兵站部から支給されてきた補給パレットから弁当とお茶を取り
出した。
534○シリウス18:2008/02/22(金) 13:07:43 ID:Z6DyUGj70
「いえ、かまわないです。昼飯は食べてきましたんで。」

成川隊員と四方隊員はEDF兵站部製造の弁当と「地球防衛緑茶」を机に並べて食べ始
めた。秋山隊員はノートパソコンを操作しながら弁当をつまんでる。

「あぁ、また同じ弁当だわ。永遠のワンパターンだわ。」

成川隊員が弁当の蓋をあけて悲嘆にくれた。弁当は「地球防衛幕の内弁当」らしかった


「しかたないっス。怪獣調査隊は予算規模が少ないですし、僻地っスから兵站部も輸送
が大変なんス。」

弁当をほおばりながら、四方隊員が応じる。

「でもねぇ、毎日毎日同じ弁当って飽きるのよねぇ、ああ、昔の戦闘部の弁当が懐かし
いわ。宇宙人に絶対カツ丼、とか、地球平和から揚げ弁当とかね。メニューもたくさん
あったのにぃ。」

「お前は怪獣調査隊の弁当に何を期待してるんだ。俺が少ない予算をきりもみしてなん
とか食料供給を維持してもらってんだぞ。打ち切りたいって兵站部から何度要請がきた
ことか・・。」

瀬戸司令から横やりが入る。
535○シリウス19:2008/02/22(金) 13:11:04 ID:Z6DyUGj70
「ひゃー、ちょっとすごいわよぉ、コレ!」

ノートパソコンを操作していた秋山隊員は喚声をあげる。

「なになに?」

「情報警戒群のアラートが出てるわ。どうやら未確認の宇宙船みたいね。まだ確定して
ないポイけど、木星の軌道に到達してるわね。」

瀬戸司令も興味を示す。

「ほお、そいつは珍しい。ここ10年何もなかったからな。しかし木星まで接近に気づ
かんとは」

そういうと瀬戸司令もパソコンの操作を始めた。

どうやらこのパソコンはEDF高度統合戦術情報伝達システムや宇宙警戒情報リンク「
リンクS1」に接続できるらしい。これによって全EDFの動きがリアルタイムに把握
できる。
536○シリウス20:2008/02/22(金) 13:14:00 ID:Z6DyUGj70
「これか・・。どの程度で地球に到達しそうだ。」

「まだわかりません。補足情報が少なすぎて・・。でもかなりの速度で移動してるみた
いですね。ざっと計算したところ、明日の今頃地球の衛星軌道に到着してても不思議で
はありません。」

見城も驚いた。EDFに再編成が完了して初の事態だ。今ごろ高度統合作戦群も情報警
戒群も大混乱だろうな。まあ、もう俺には関係ないが・・。見城は前で回っている扇風
機をぼんやり見ながら思った。

季節は夏。プレハブの外側では蝉がやかましく鳴いていた。
537○シリウス21:2008/02/22(金) 14:33:24 ID:Z6DyUGj70
日本EDF本部 山梨EDF南アルプス基地
高度統合作戦群(通称司令部)

8月12日 午後16時2分 地上施設エントナンス

高度統合作戦群の地上施設入り口に、防弾仕様の高級乗用車が滑り込むように入ってき
た。エントナンス付近に待機していたEDF警備員が扉を開ける。

中から降りてきたのは、EDF最高司令官、武藤国男であった。東京でのアメリカED
F幹部との会談を終え、基地に戻ってきた所であった。エントナンスから基地内に向か
おうとしていた武藤のEDFデジタル通信携帯電話の呼び出し音が鳴る。

「はい、武藤だが。」

「EDF参謀長、保坂です。武藤司令は今どちらにいらっしゃいますか?」

「今基地についたところだ。何か急用か?」

「12時25分から情報警戒群が宇宙船らしき物体の接近を感知しました。」

「ちょっと待て、秘話装置は入っているんだろうな。」

「そのあたりは抜かりなく・・。まだ情報が錯綜しておりまして現在確認に全力をあげ
ているところです。」
538○シリウス22:2008/02/22(金) 14:36:45 ID:Z6DyUGj70
それから武藤は保坂を質問攻めにした。接近する宇宙船の数と規模。敵か味方か。地球
到達時間。EDFの現在の対応など。しかし保阪が答えられる質問は多くはなかった。

「なんだ、まだほとんど何も分かってないのか?」

「申し訳ございません。まだ宇宙船は木星の軌道を通過したところでして、探査方法は
限られています。もっと接近されなけば詳細は・・。」

見城が推測していた通り、高度統合作戦群も情報警戒群も混乱していた。もちろんED
Fはこのような事態に対処する組織であり、シュミレーションも完了していたのだが、
EDF初の事態に隊員は浮き足だっていた。

情報警戒群は情報の分析に努めているが、高度統合作戦群からは補足情報が矢の催促だ
。戦闘行動群と補給輸送兵站群からも同様の要請が出されており、100名を越える情
報士官が司令部に向かっている。
539○シリウス23:2008/02/22(金) 14:39:38 ID:Z6DyUGj70
日本政府からも問い合わせが来ており、EDF幹部からの説明を求めている。また、日
本安全保障軍3軍からの情報提供、相互協定における事項確認のためにEDFへの協議
要請。情報武官の派遣などの受け入れ体制に対する問い合わせなども多数きている。

「しかし、やっかいだな。情報がほとんどない。日本政府や安全保障軍からの質問にま
ともに答えられんでは話にならんぞ。情報の分析を急がせろ。」

「はい、了解しました。」

「ああそれと、マスコミはこの件に感づいてるか?」

「いいえ、今のところまったく動きはありません。」

「そうか、だがいずれ情報はどこからか漏れるだろう。記者会見の準備もしておけ。こ
こで失態を演じるわけにはいかんからな。詳細ははオペレーションルームで詰める。」

武藤は電話を切ると、早足で建物へ入る。
540○シリウス24:2008/02/22(金) 14:47:54 ID:Z6DyUGj70
日本EDF 熊本航空基地
戦闘行動群(通称戦闘部)

8月12日 午後16時30分 EDF航空防衛隊 地上施設

突然のスクランブル警報に、敷島1等隊員と田中2等隊員がハンガーに向けて全力疾走
した。EDFの高度統合戦闘機 ガードファイター GF−1Jに乗り込むと、滑走路
を滑るように移動。GF−1J2機は滑走路での滑走に入った。この間わずか5分。

離陸を完了した2機は、エンジンをふかし一気に高度八千メートルに駆け上がった。相
変わらずの上昇能力に敷島は満足した。

ガードファイター GF−1Jは安全保障軍が保有するF−35ジョイント・ストライ
クとほぼ同じ時期に開発されたEDF自慢の最新戦闘機である。ジョイント・ストライ
クの機体を流用しつつ、対宇宙人、怪獣用の装備を備える。エンジンも新型のものに換
装し、上昇力、機動力を大幅に向上した。

ステルス、超音速クルーズ、VTOLの能力を持ち、試験的に採用されたコクピットダ
ンパーによって多少だが人間にかかるGを減少させることが可能だ。
541○シリウス25:2008/02/22(金) 14:50:02 ID:Z6DyUGj70
武装は、怪獣の分厚い外殻を打ち抜く貫通鉄甲弾を装備した、対獣20ミリ機銃1門。
機体内部に対怪獣ミサイルである中距離対空ミサイルAMM−2を4発装備している。

AMM−2は大型対空ミサイルではあるが通常より炸薬を3割増しにしているので射程
は短い。

武装を見ると、弾数が少なく感じるが、EDF戦闘機の主要目標は戦闘機ではなく、宇
宙人・怪獣などであるため一発一発の破壊力を向上させることに重きを置いている。

「スクランブルフォーメーション、レダ。規定位置に到着。」

「こちらEDFコントロール。所属、国籍不明の航空機3機がマッハ2.4で南東から
防空識別圏に進入。接近し警戒監視せよ。」

「了解。」

国籍不明機への対応は原則として安全保障軍が行う。しかし今回は30分前に複数の国
籍不明機が防空識別圏に進入。安全保障軍のスクランブル機が出払っていたため、相互
協定に基づきEDFの戦闘機が発進した。

相手は超音速クルーズができるらしい。今現在地球上で超音速クルーズが出来るのは戦
闘機だけだ。いずれにしても数は限られる。GF−1Jは超音速クルーズへ移行、マッ
ハ1.5で南東方向に向かった。
542○シリウス26:2008/02/22(金) 14:51:44 ID:Z6DyUGj70
互いに超音速クルーズを行っているため、相対距離はみるみる縮む。目標に接近した敷
島と田中は超音速クルーズを解除、180度旋回して再び超音速クルーズに入る。
レーダーを確認して敷島は上空を見上げる。もうそろそろ見えるはずだ。

敷島の肉眼で小さい3機の航空機のシルエットが見えた。高度1万メートルを超音速ク
ルーズで飛行している。GF−1Jは超音速クルーズで3機と同じ速度、マッハ2.4
に加速して追尾を始める。

「目標を確認。先頭の航空機は円盤状です。後方の2機はグライダー状の航空機です。
いままでに見たことのない機種です。」

「こちらEDFコントロール。了解した。接近して警告せよ。」

「了解。」

とは言ったものの敷島は超音速クルーズ状態での警告などしたことがない。命令を受け
たのだからやるしかないが。
543○シリウス27:2008/02/22(金) 14:53:40 ID:Z6DyUGj70
GF−1Jは上昇して、未確認航空機に接近する。敷島は後ろにいるグライダー状の航
空機から赤い閃光のような光を見たような気がした。気のせいか・・?
とにかく警告のため通信を行おうとした瞬間。

3機の未確認航空機は一気に加速して高度を落とした。敷島の想像を遥かに超える速度
での機動のため、対応が遅れる。

あっという間に未確認航空機は目視から消え、レーダー圏内からも消えてしまった。

「スクランブルフォーメーション、レダ。目標は速度を上げ急降下した。目標ロスト!」

「EDFコントロール。こちらもレーダーからロストした。信じられん。」

その感想は敷島も同じだった。少なくとも未確認航空機の速度はマッハ6以上だ。その
速度で急降下すれば空中分解の恐れもある。それが可能だということは・・。
544○シリウス28:2008/02/22(金) 14:55:15 ID:Z6DyUGj70
「こちらEDFコントロール。規定の範囲内で捜索を続行。結果を報告せよ。」

「了解。」

結局敷島は何もできなかったが、ある程度の情報は収集したといえる。GF−1Jの機
体の上部と下部には可動式カメラが設置されている。近距離で捕らえた未確認航空機の
映像は確実に録画できたはずである。

敷島は念のため、録画映像を戦闘行動群に伝送しておく。これでEDF高度統合戦術情
報伝達システムの航空防衛隊リンクである「リンクG11」に反映されるだろう。

GF−1J2機は夕暮れの空に消えた3機の未確認航空機を追って北西の空に飛び去っ
た。
545シリウス作者:2008/02/22(金) 16:06:07 ID:Z6DyUGj70
皆さん、コメントありがとうございます。
私信です。

>>518
ウルトラマンオーバー様、ありがとうございます。

>>519
はい。色々未熟だと思いますが、よろしくです。とりあえず話数は2話まで
できてます。3話は6割できてるとこです。

>>520
アルファ作者様、ありがとうございます。
やっぱバルタンいいですね。
546ブリッツ作者:2008/02/22(金) 19:31:47 ID:xePzCm0D0
(7)
 駐在所に連行されたエイジは、タイラによる拷問を受けた。殴る、蹴る、スタンガンで気絶させる。日頃溜まっている鬱憤を晴らすかのような、タイラの執拗で残忍な行為に、カヲルとジョーは思わず眼をそむけた。
明け方近くになり、外出していたシキが戻ってきた。
「タイゾーさん、家に戻ったぜ。」
「おう、ご苦労。」
汗だくになり、頭から湯気を立てながらタイラが言った。
「だが妙だったな、家には誰もいなかった。」
「家族がいるのか?」
「ああ、娘さんが一人な・・・いつも仕入れには一緒に行ってたが、まさか・・・そいつが知ってるかもしれない、話はできるか。」
シキが床に突っ伏して動かなくなっているエイジを指して言った。
「悪いが無理だぜ。このとおり、まともに話はできねえだろ。」
エイジの頭を踏みつけながら、邪悪な笑みを浮かべてタイラが言った。
「今日の正午キッカリに、広場で公開処刑だ。準備頼むぞ、俺はちょっと一眠りしてくる・・・」
「待て、詳しい話も聞かずに処刑するのは早計だろ。それにお前、少しやり過ぎじゃないのか?」
「おい、何偉そうな口きいてんだ?ここのトップは俺だ!お前は黙って俺の命令に従ってりゃいいんだよ!」
「無茶な命令には、反対する義務がある。」
シキは冷静な口調でタイラに向かって言い放った。タイラは一瞬、分の悪そうな顔をしたが、すぐに言い返した。
「へっ、前科者の凶状持ちが、一丁前なこと言うな!この村の奴等が支持してるからいいが、場合によっちゃお前だって、処刑されても文句は言えないんだぞ!」
シキはそれ以上言い返すことができなかった。タイラは勝ち誇った顔で奥の部屋へと入っていった。
(本部の人間にはロクなのがいない・・・親父の言ったとおりだぜ)
ジョーは心の中でつぶやいた。
547ブリッツ作者:2008/02/22(金) 19:56:38 ID:xePzCm0D0
(8)
その日の昼近く、時刻は11:45。村の中央広場に人だかりができていた。彼らの視線の先には、柱に縛り付けられ、アザだらけの顔でグッタリしたエイジと、その向かい側でライフル銃を構えるカヲル、シキ、タイラ、ジョーの姿があった。
「この村の法と我らGAPの職務規定に従い、本日正午をもってこの男を処刑する!」
 タイラが高らかに宣言した。
 「ククッ、この手柄を持っていけばまた本部へ返り咲けるぜ・・・」
 このタイラのつぶやきは誰にも聞こえていない。念のため・・・。
 時間は刻一刻と過ぎていく。11:59・・・カヲルが銃を構える。そのときだった。
 「待ってーっ!その人は、違う!」
 後ろから聞こえた叫び声に、人々が振り向く。そこには泥にまみれ、ボロボロの服装をした少女が立っていた。歳は17、8位、乱れたロングヘアーのせいで山姥のようにも見える。
 「お前は・・・」
 エイジは思わずつぶやいた。彼女こそ、昨夜エイジが助けた女であった。
 「マリちゃん!?」
 「なんだ、知り合いか?」
 驚いて叫んだシキに、ジョーが尋ねた。
 「タイゾーさんの娘のマリちゃんだ。よかった、無事だったのか。」
 シキの言葉を聞き、ジョーはマリに視線を向ける。
 (・・・!・・・)
 ジョーの中で、何か(たぶん木の実のようなもの)が弾けた。
 「先輩、どうすれば・・・?」
 銃を持つカヲルは動揺しながらタイラに尋ねた。シキとジョー、村人達の視線がタイラに集中する。
 「・・・・・処刑は中止だ!」
 苦々しい顔をしながらタイラは叫んだ。それを聞き、マリはほっとした表情になると、気を失って前へ倒れこんだ。村人達が彼女を支える。ジョーはエイジのもとへ駆けていくと、刀を抜いてエイジを縛っていた縄を切った。
 「悪かったな、疑って・・・でもよかった!」
 人懐っこそうな笑顔ジョーは言った。そのジョーの言葉にエイジは微笑みで答える。こちらも気を失ったらしい。ジョーは苦笑しながら再びマリの方を向いた。
 「マリさんか・・・・・可愛い。」
 そうつぶやくジョーの顔が赤らいでいたことに、このときはまだ誰も気づいてはいなかった。
548名無しより愛をこめて:2008/02/22(金) 20:23:40 ID:6Ug8RmfVO
評価者は他の作者ばかり、一般者からは何もなし
誰も読んでないよ
549○シリウス29:2008/02/22(金) 21:09:37 ID:Z6DyUGj70
静岡県・山梨県 県境付近

戸建住宅 小林宅

8月12日 午後17時04分

農家を営んでいる小林は、農作業を終え家に戻ってテレビをつけた。高校野球の結果が
知りたかったからだ。家内はスーパーに買い物に出かけているので今家には自分しかい
ない。

冷蔵庫からビールを取り出し、扇風機のスイッチを入れ横になった。子供も独立した今
となっては、テレビだけが唯一の楽しみだともいえた。

テレビに集中しようと思ったとき、テーブルの上の異変に気がついた。ビールの入った
コップがカタカタとゆれ始めたのだ。振動は徐々に大きくなっていった。

刹那、すさまじい轟音が小林宅を襲った。コップはひっくり返り、空気は鳴動した。驚
いた小林はすぐに庭に面した窓を開け、外を見た。一瞬だけ、小林は飛行機の影を3つ
確認した。すぐに山の稜線に入って見えなくなったが小林は確信した。
550シリウス30:2008/02/22(金) 21:11:13 ID:Z6DyUGj70
畜生! またEDFの連中だ!

山梨県にはEDFの本部がある。大規模な軍用飛行場も存在する。当然付近は航空機の
往来が頻繁にあり、騒音公害が多い。うるさい騒音があるたびに、小林はEDFに10
分ほど抗議電話をかけるのだった。

しかし、今回の低空飛行は度が過ぎる。久々に頭にきた。もともと小林は山梨県でのE
DF基地建設には反対だった。無理やり押し切る形で政府決定が下ったのだ。

小林は早足で電話に向かい、受話器をとってEDFの本部に電話をかけた。抗議の電話
は40分以上に渡って続く。
551○シリウス31:2008/02/22(金) 21:13:14 ID:Z6DyUGj70
日本EDF 怪獣調査隊 本部

8月12日 午後21時25分 居住用プレハブ施設

見城は居住用プレハブで自分の私物の整理をしていた。一応個室だ。備え付けの2ドア
冷蔵庫、中国製テレビ、コタツと布団、扇風機もあった。布団を敷いて横になる。

思ったより田舎だった、近くには店がない。やはり車で来るべきだった。瀬戸司令に許
可を得て車を取りにいこう。それに不足している日用品も必要だな。

ここに来るまでは絶望の淵に立っていたが、今は明日からの生活を考えている。人間の
心というのは不思議なものだ。

ふと、見城はのどの渇きを覚えた。残念ながら冷蔵庫はすっからかんだが、駐車場の近
所に自動販売機があるのを思い出した。見城は部屋を出て駐車場に向かった。
552○シリウス32:2008/02/22(金) 21:14:44 ID:Z6DyUGj70
自動販売機でペットボトルの緑茶とコーヒーを買った。なにげなく本部プレハブ施設を
見るとまだ明かりが煌々と光っていた。光にたくさんの虫が群がっている。なにげに内
部をみると瀬戸司令が缶コーヒーを飲んでいた。

「ああ、見城君か。ちょっとこっちへ来ないか? お菓子もあるぞ。」

誘われたので、朝に座ったのと同じ椅子に座った。奥にある休憩所のような所には大き
いテレビがあった。その前にはテーブルと長椅子があり、成川隊員がポテチを食べなが
らテレビを見ていた。

その横では膝の上にダックスフンドをはべらせた菊間隊員が、同じくテレビを見ていた
。瀬戸隊長の机の奥では秋山隊員がせわしげにノートパソンを動かしていた。

「あの、瀬戸司令。ここは思ったより田舎ですね。」

「そうだな。付近には店がないから生活するには不便な所だ。車は必要だな。」
553○シリウス33:2008/02/22(金) 21:16:19 ID:Z6DyUGj70
「それで相談なんですが、僕の車を取りに一度自宅まで戻りたいんですが。ここの駐車
場に止めてもいいですかね。」

「ああ、構わんよ。そうだな、ここは日曜が休日だからその時に戻ればいい。」

「えっ、怪獣調査隊には公休があるんですか?」

見城は驚いた。EDFでの勤務は大体どの組織でもシフト制だ。人数が少ない部署では
なかなか休みが取れないのが現状だ。

「そうだ。珍しいだろ。だからここはEDFのパラダイスだ。」

瀬戸司令はニッコリ笑う。奥では秋山隊員が何かの画像をプリントしていた。数枚のプ
リントした用紙を手に取りこちらにくる。

「瀬戸司令、面白い情報を手に入れましたよ。」

「ほう、どんな内容だ?」
554○シリウス34:2008/02/22(金) 21:18:43 ID:Z6DyUGj70
「午後16時ごろ、EDF熊本航空基地のガードファイターがスクランブル発進しまし
た。防空識別圏に3機の未確認航空機が侵入したようです。」

「ガードファイターは振り切られたようですが、画像は取れたようです。それがこれで
す。」

そう言うと秋山隊員は画像をプリントした紙を机の上に置いた。そこには今までに見た
こともない機種の航空機が写っていた。円盤状の機体が1機、グライダーのような機体
が2機。

「面白いのはここからですよ。グライダー状の機体の該当データは情報警戒群のライブ
ラリにはありませんでしたが、先頭の円盤状の飛行物体には該当情報がありました。」

「その該当情報とは?」

「1970年代に飛来したバルタン星人の宇宙船に酷似しています。」

「バルタン・・。」
555○シリウス35:2008/02/22(金) 21:21:43 ID:Z6DyUGj70
思わず見城はつぶやいた。バルタンといえば何度か地球を攻撃してきた宇宙人だ。ウル
トラマンとも死闘を演じた。

「ひょっとして接近中の宇宙船と何か関係あるのでは?」

「うーん。断定するのは早すぎるだろう。これだけの情報ではな・・。どのみち俺たち
怪獣調査隊の権限ではどうすることもできん。」

瀬戸司令が言うことはもっともだ。EDF本部に連絡することも可能だが、左遷用の組
織のいうことを高度統合作戦群の連中が聞いてくれるわけもない。

「そうですね、私達には関係ないことです。たまには刺激があることをしたいですが、
本部もいずれ気がつくでしょう。部屋に戻って寝ることにします。」

秋山隊員はそう言うとプレハブの外に出た。

なんだかもどかしいな。見城はそう感じた。EDFの役に立てるかもしれないのに、窓
際族の組織には何もできないとは。
556○シリウス36:2008/02/22(金) 21:29:53 ID:Z6DyUGj70
日本EDF 高度統合作戦群(通称司令部)

8月12日 午後22時13分 作戦会議室

地上施設の一角にある会議室には20名のEDF幹部が揃っていた。一番前の列の中心
にはEDF最高司令官、武藤国男が座っていた。そのすぐ後ろには大型のプラズマビジ
ョンがあり、それを挟んでEDF参謀長、保坂一正が立っていた。

「全員こんな夜分にご苦労。では、保坂参謀長。これまでの分析結果を報告してくれ。」

武藤に促された保坂は、報告を行う。

「本日午後12時20分ごろ、木星軌道上にて、地球に接近してくる大型宇宙船を
補足しました。現在も接近は続いており、さきほど火星の軌道を通過しました。」

「火星衛星軌道を通過後、宇宙船は減速していますが、地球へのコースは維持したまま
です。現在再計算を急がせていますが、地球への到達は13日の午前11時+−6時間
は越えないと推定されます。」

少し会議室がざわめいた。EDF初の事態に皆驚いているのだ。

「詳細な情報分析により、宇宙船は一隻ではないことが確認されています。編成は超大
型宇宙船1隻、大型宇宙船が2隻、小型宇宙船が5隻です。」

会議室のざわめきはさらに大きくなった。
557名無しより愛をこめて:2008/02/22(金) 21:31:51 ID:6Ug8RmfVO
558○シリウス37:2008/02/22(金) 21:35:43 ID:Z6DyUGj70
「さらに追加情報があります。現時刻より30分前、午後21時30分に接近中の宇宙
船からアメリカEDF本部に通信がありました。」

「英語によるテキストのみの通信です。内容は、我々は宇宙観測艦隊である。地球への
攻撃意図はない。エンジン不調のため地球周辺でのエンジン整備、整備資材の補給など
を地球に要請したい。これがテキスト全文です。」

「今現在EDFが把握している情報はこれですべてです。」

保坂が報告を終えると、会議室のEDF幹部達はいっせいに発言を始めた。

「まずは安心できるのではないか? 地球侵略の意図はなさそうだ。」

「バカな、そんな通信を信用できるものか。英語によるテキスト通信だぞ。ということ
は連中は過去に地球に来た可能性が高い。」

「それは考え過ぎだろう。地球の通信電波は1945年頃から使われている。初期の通
信電波は地球から100光年先まで到達している。彼らはその通信電波を解析したのだ。」

「といっても侵略意図が無い証拠にはならないと思いますが。」

「まずは友好的に進めたほうが良いだろう。うまく外交できれば、観測艦隊のオーバー
テクノロジーを手に入れることも可能かも知れん。」
559○シリウス38:2008/02/22(金) 21:38:03 ID:Z6DyUGj70
EDF幹部達の議論は白熱する、どちらの意見も一理あるが議論は中々集約しない。そ
の原因は接近する艦隊の情報不足に起因する。現状で艦隊は敵とも、味方ともとれる行
動をしている。武藤は口を開いた。

「いずれにせよ、結論はアメリカのEDF本部が下すだろう。我々はそれに従うのみだ
。どのような結論になっても、万全を期す体制を我が日本EDFは築かねばならん。」

「戦闘行動群の陸・海・空の防衛隊に即応体制への命令を出す。ただし、防衛体制へは
移行しない。これが今我々にできるギリギリの線だろう。」

「情報警戒群には引き続き接近する艦隊の情報の収集、分析を続行してもらう。そのあ
たりの指揮は、全面的に保坂に任せる。」

「はい。分かりました。」

保坂は興奮した面持ちで返事をした。出世競争を勝ち抜き、一躍EDFの舞台に立つこ
とができたのだ。感慨もひとしおである。

しかし、この時点でも高度統合作戦群、情報警戒群は、地球にバルタンの宇宙船が飛来
した可能性があることを認識していなかった。秋山隊員の予測は外れたのだ。

EDFは艦隊への情報分析を最優先にして、その他の警戒情報を軽視していたのだ。せ
っかくのガードファイターからの情報も、膨大にやってくる艦隊情報の中で埋もれてし
まった。
560名無しより愛をこめて:2008/02/22(金) 21:55:48 ID:Pu55q9pz0
面白くご拝見させてもらいました。これからも続きを期待していますよ。
561名無しより愛をこめて:2008/02/22(金) 22:45:20 ID:6Ug8RmfVO
ひとりで大量に書きすぎてアク禁てか?
562シリウス作者:2008/02/22(金) 22:52:45 ID:Z6DyUGj70
ピンポン。
563○シリウス39:2008/02/22(金) 22:56:44 ID:Z6DyUGj70
引き続き、武藤とEDF幹部達の会議は続く。と、そこへ副参謀の柴田がやってきた。
保坂は柴田の方へ歩いていく。そして小声で話し始めた。

「どうした、何か新しい情報が入ってきたのか?」

「いいえ、違います。実は静岡県の住民からクレームがありまして。EDFの航空機が
低空飛行をしたそうです。」

「なんだ、そんなことか。この非常時につまらんことを報告しに来るな。そんな事案は
お前の裁量で処理すればいいだろうが。」

「申し訳ありません。ではこちらで処理します。」

と答えたものの、柴田は怒りを覚えた。そもそも円滑な基地運営のために、住民のクレームは
優先して報告するように命じたのは保坂自身だからだ。もちろん柴田はそんな感情はおくびにも
出さない。保坂に敬礼をして立ち去ろうとした時、後ろから保坂の声がかかった。

「ああ、ちょっと待て、クレームを出したのは基地建設反対派の住民だったな。クレーム処理には
怪獣調査隊を行かせろ。普段EDFの為に何の役にもたたん連中だ。たまには役立って
もらわんとな。」

「わかりました。」

柴田は敬礼すると早足で会議室を後にした。
564シリウス作者:2008/02/22(金) 23:03:27 ID:Z6DyUGj70
アク禁食らいましたが、休みの日にあげられるだけ、あげようと思いまして。
たくさんの投稿失礼しました。それではそろそろ寝るとします。

明日からはペースは落ちます。それではお休みなさい。応援ありがとうです。
565○シリウス40:2008/02/23(土) 19:38:01 ID:92hc3Gn30
日本EDF 怪獣調査隊 本部

8月12日 午後22時20分 居住用プレハブ施設

怪獣調査隊隊員、秋山紗江子は居住用プレハブの自室に戻った。入浴して冷蔵庫からビール
を取り出し、布団の上にぼんやり座っていた。

今日もたいした仕事はなかった。午前中に害虫駆除とミミズ取り、午後は本部施設でネット
サーフィンと例の飛行物体の解析だ。最近は半日仕事が多い。これできちんと給料を貰える
のだから楽といえば楽な仕事なのだが、こうも長期間たいした仕事をさせてもらえないの
では、気も滅入ってくる。

秋山は昔所属していた高度科学分析研究群を思い出した。なつかしい記憶だ。あんな事件
さえ起きなければ怪獣調査隊へ来ることも無かったのに・・。

別に今の境遇に不満があるわけでは無い。しかし、今の生活に張りが無いのは確かだ。
秋山は落ち込む気持ちをごまかすようにビールを口に流し込んだ。突然、机に置いて
あったEDFデジタル携帯の呼び出し音が鳴った。
566○シリウス41:2008/02/23(土) 19:40:15 ID:92hc3Gn30
瀬戸司令からだ。何かしら今頃? 秋山は電話を取った。

「はい。秋山ですが・・。」

「瀬戸だ。悪いがすぐに本部施設に来てくれないか? 急な案件が入った。すでに全員
集まっている。」

「わかりました。すぐ行きます。」

秋山は上はTシャツ、下はジャージのラフな格好でサンダルを引っ掛け、本部へ小走りで向かった。
本部プレハブ施設には瀬戸を中心に全隊員が揃っていた。

「急な呼び出しで悪かったな。秋山隊員。」

瀬戸はそう言うと、みんなを見渡し緊急事案の説明を始めた。

「今日の夕方、山梨との県境の住民からEDFにクレームがきた。EDFの航空機が
低空飛行をして部屋のビールがひっくり返ったそうだ。さっき司令部から命令が来た。
我々はこれより直ちに住民のクレーム処理に出動する。」
567○シリウス42:2008/02/23(土) 19:41:43 ID:92hc3Gn30
「えーっ! 今からですか? いくらなんでも遅すぎです。明日でもいいじゃん。」

瀬戸の命令に成川は噛み付いた。

「まあそう言うな、すぐ行かんといけない理由があるんだ。報告によれば本日午後17時
頃に、3機の航空機が超低空飛行で民家の上空を飛行したらしい。」

その情報を聞いて見城と秋山はすぐにピンときた。

「瀬戸司令、それはひょっとして・・。」

「間違いないわ。EDFの航空機がそんな低高度で飛行するわけがないもの。」

「えっ、なになに?」

不明航空機の情報を知らない成川は目を白黒させる。
568○シリウス43:2008/02/23(土) 19:45:23 ID:92hc3Gn30
「その可能性は高いな。ガードファイターが目標を見失って30分後の出来事だ。しかも3機。
偶然の可能性もあるが、こうゆう偶然はそうそうない。」

「もちろんクレーム処理だけでは無いですよね瀬戸司令。また何か企んでいるんでしょう?」

秋山はニヤニヤしながら瀬戸司令を見る。瀬戸もニヤリと笑って

「もちろん我々は司令部の命令どおりクレーム処理を行う。その上で他の住宅にも
損害が出ていないか周辺をパトロールする。命令は完璧に遂行せねばな。」

「さて諸君、怪獣調査隊出動準備だ。ただし戦闘状態になる可能性がある。
1号戦闘装着セットでいく。武器はフル装備、実弾も使う。」

「おお、フル装備ッスか!!」

四方隊員もびっくりしている。なんだか嬉しそうだ。

「成川、見城はただちに1号戦闘装着セットと武器の準備。四方は弾薬の搬出、菊間は弾薬
処理書類のチェック。秋山と俺は通信機器の準備だ。では全員かかれっ!」
569○シリウス44:2008/02/23(土) 19:48:25 ID:92hc3Gn30
怪獣調査隊全員がいっせいに命じられた通り動き出した。成川以外は・・。

「ねー。戦闘状態ってどうゆうこと? 何がなんだかさっぱりだわ。」

「ああ、細かいことは車の中で説明するわ。とりあえず今は出動準備よ。」

秋山隊員はそういうと瀬戸司令と通信機器を取りにいった。成川と見城は1号戦闘装着
セットと武器を取りに倉庫へ向かった。1号戦闘装着セットとはEDF陸上防衛隊標準
の戦闘服である。戦闘迷彩服1型、戦闘防弾チョッキ、鉄帽、戦闘靴で構成される。

戦闘装着セットを搬送し、続けて武器を取りに行く、武器は09式5.56ミリ小銃、
ダットサイトを装着している。9ミリ自動拳銃も人数分出す。どちらもEDF陸上防衛隊
標準の装備である。

その他、破片手榴弾、発煙手榴弾、催涙手榴弾も搬出した。四方隊員も弾薬を台車に乗せ
本部プレハブ施設に持ってくる。それから菊間隊員以外は全員、戦闘迷彩服1型に着替え
銃に弾丸をつめる。弾丸を詰めてから、見城は戦闘防弾チョッキを着るが、久しぶりなので
少し手間取る。
570○シリウス45:2008/02/23(土) 19:51:42 ID:92hc3Gn30
「ほら、後ろのフックがひっかかってるわよ。」

防弾チョッキに苦戦していた見城を、成川隊員が手伝ってくれた。

「ほう、成川。怪獣調査隊の新人を手伝うとは感心、感心。では見城の世話は
成川にまかせる。」

と後ろで通信機器の準備をしていた、瀬戸司令が話しかける。

「えーっ!、なんで私が・・。まったくもう・・。」

成川隊員はブツブツ文句を言いながら武器を装着する。

見城も装着を終了した。手には09式5.56ミリ小銃、ふともものホルスターには9ミリ自動拳銃。
腰には破片手榴弾、発煙手榴弾、催涙手榴弾を各1個ずつ。戦闘防弾チョッキのポケットに小銃の
マガジンを入れている。

弾丸や通信機器や武器を、怪獣調査隊が使用する2台のハイエースに乗せて、隊員が次々に乗り込む。
1号車には瀬戸と秋山、見城と成川が乗り、2号車には四方のみが乗車した。菊間は本部での留守番だ。
ハイエースは基地から出動する。

スライドドアに「EDF 怪獣調査隊」と塗装スプレーで殴り書きされているヤケクソ気味の
青いハイエースは、山梨県境に向け夜の道を疾走する。
571○シリウス46:2008/02/23(土) 20:05:07 ID:92hc3Gn30
静岡県・山梨県 県境付近

戸建住宅 小林宅

8月12日 午後23時00分

小林はコタツで座りながらタバコを吸っていた。落ち着かない様子で貧乏ゆすりをする。
時計を見ながら小林は考えた。まさかこんなことになるとは・・。

20分ほど前にEDFの瀬戸と名乗る男から、謝罪と損害の確認のために小林宅に車で
向かっているという電話がかかってきたのだ。

小林はびっくりした。今までにこんなことはなかった。いくらなんでも早すぎる。
そりゃ確かに今までにもEDFに抗議電話は何度かしたし、EDFのクレーム処理係りが
来たこともあるが早くても3日後、普通で1週間くらいかかるものだ。

しかし今日に限っては当日、しかも夜中に謝罪に訪れるとは。小林は別に明日でもかまわない
と言ったのだが、電話の男は、一刻も早く謝罪して損害を確認したい。といって聞かなかった。
572○シリウス47:2008/02/23(土) 20:09:47 ID:92hc3Gn30
なぜそんなに早く来ることにこだわるのか、小林には理解できなかったが結局押し切られた。
もうすぐEDFの連中がつく頃だ。小林はテレビを消して待っていた。と、車の音がして
玄関の呼び出しベルが鳴った。

小林は応対する。玄関には中年らしき男と若い女性が立っていた。彼らの姿を見て小林は絶句した。
上下とも戦闘服を着て、足のホルスターには鉄砲らしきものが見える。さらに腰には手榴弾が見えた。
こいつら今から戦争でもしに行くのか? 

謝罪に来るEDFの隊員は大抵背広を着ていたので小林がびっくりするのも無理はない。中年の男は
口を開いた。

「今回はEDFの者が迷惑をお掛けして、大変申し訳ありませんでした。事件関係者は後で
特定して処罰し、再発防止を徹底したいと思います。」

「本当に申し訳ございません。あと、これはつまらない物でございますが、どうかお受け取り
ください。」
573○シリウス48:2008/02/23(土) 20:14:38 ID:92hc3Gn30
隣にいた女が小林に菓子折りを渡した。表面は包装され「粗品」と書いてある。中身は
見えないが見当はつく。EDF隊員は謝罪の時には、馬鹿の一つ覚えのごとく同じ粗品
を持ってくるのだ。おそらく中身は「EDF山梨特産 ガード林檎まんじゅう」だろう。
正直もう食べ飽きた。

「ではこの家の上空を通過した時の、航空機の状況を説明していただけるでしょうか。
どの隊員が問題を起こしたか特定する必要がありますので」

そこで小林は二人を中庭に案内し、当時の状況を説明した。

「では航空機はあの山の稜線に消えたのですね。それ以降は目撃していない。
音も聞いてないですか?」

「ああ、見えなくなってから10分程見てたが、何も見えなかった。今まで
ずっと家にいたがエンジンの音も聞いてない。」

今までバインダーに挟んだ書類になにやら記入していた女が、中年の男を見て話す。

「司令・・・。」
574○シリウス49:2008/02/23(土) 20:17:01 ID:92hc3Gn30
中年の男は女のほうを見て無言でうなずく。何なんだ一体?

「ところで何か家に損傷を受けましたか? 」

「いや、部屋のビールのコップが落ちただけだ。ビール瓶は受け止めた。」

「それは幸いです。ではこれを、また何かありましたらこちらに連絡してください。」

中年の男はそう言うと名刺を小林に渡した。

「それではこんな夜分にご協力ありがとうございます。それでは失礼します。」

そう言って二人は駆け足で車に乗り込んだ。ハイエース2台は航空機が消えた山のほうに
向かって走り去った。それを小林は呆然と見送ったのだった。
575○シリウス50:2008/02/23(土) 22:45:40 ID:92hc3Gn30
「瀬戸司令、未確認航空機はおそらく、あの山のどこかに着陸したのでしょう。」

秋山隊員は興奮を抑えられない様子で、瀬戸に話しかけた。瀬戸の運転するハイエース1号車は
県道から外れ、横道に入り、航空機が消えた山に向かって進む。後ろから四方隊員の運転する
2号車もついてくる。

「その可能性は高いな。確認しに行く価値はある。」

「うーん。それにしてもバルタン星人って、また地球を侵略しに来たのかしら?」

事情を説明された成川隊員が疑問を呈した。

「今のところは分からないと思います。ただ、艦隊が接近中という情報があるので、
その艦隊と何か関係があるか確認するべきだと思います。確認しても本部が
こっちの報告を信用してくれるかは分かりませんが。」

同じく後部座席に座っていた見城が応じる。

「そういうことだ。まずは確認が先決だろう。さて、ここからどうするか・・。」

瀬戸の運転するハイエースは山の手前の道で停車した。この辺りは田舎なので電灯は
いっさい無い。目の前に広がる山は、山と言うより黒い塊に見える。
576○シリウス51:2008/02/23(土) 22:48:39 ID:92hc3Gn30
「結構な広さだぞ、簡単には着陸場所は特定できん。秋山隊員、何か手はあるか?」

「もちろんあります。宇宙船が通過したり、着陸した後には放射能や磁場の乱れが
あります。先ほどの小林邸でも、基準値の20倍の放射能が検出されました。」

そう言うと秋山隊員は窓を開けて、天井にあるセンサーについている、通信コードを
車内に引き込み、持っていたノートパソコンにつないだ。

「幸いにもハイエース1号車には、屋根部に複合センサーがついています。放射能と
磁場を観測することによって、ある程度、着陸位置を予測できるでしょう。」

しばらくノートパソコンを操作していた秋山隊員は 東にしばらく走ってください。
と瀬戸に要請した。ハイエース2台はしばらく山沿いに東に走行したあと、秋山の
誘導で山道へと入っていく。

くねった暗い車道を駆け上がっていくと、行き止まりにぶつかった。これ以上車は
侵入できそうにない。

「この近辺なのは間違いないです。人体に支障はありませんが、放射能が基準値の
200倍です。」

「よし、これ以上は車が進めん。全員降車だ。あとは歩きで行く。」
577○シリウス52:2008/02/23(土) 22:50:53 ID:92hc3Gn30
怪獣調査隊全員は、すみやかに降車して装備の準備を始めた。秋山隊員は背中に
「野外デジタル通信機JTA−T3」を背負った。軽量だがアンテナを伸ばすと
データリンクや長距離無線通信が可能な優れものだ。

瀬戸司令の指示により、先頭は瀬戸司令、左翼に成川、右翼に見城、中心に秋山、
しんがりには四方がつく。

目の前には広大な暗黒の森が続く、見城は深呼吸した。いよいよ怪獣調査隊へ
異動しての初仕事が始まる。
578○シリウス53:2008/02/23(土) 22:54:04 ID:92hc3Gn30
日本EDF 高度統合作戦群(通称司令部)

8月13日 午前1時50分 オペレーションルーム

ときおり眠気から来るあくびをかみ殺しながら、EDF参謀長保坂は、オペレーション
ルームで情報の処理を行っていた。司令席にはEDF最高司令官 武藤 国男が座っていた。

「接近する観測艦隊の月軌道への到着時間はどれくらいになる。」

「日本時間で午前6時前後と思われます。」

午前0時を回った頃に、アメリカのEDFより連絡があった。どうやら結論が出た
ようである。観測艦隊には月軌道での待機を要請。それから地球での会談を設ける
ということで観測艦隊に連絡したらしい。

観測艦隊からは返信があり。「了解。月軌道で待機する。地球人との会談を心より
楽しみにする。」という内容の文を送ってきた。まずは友好的に進んでいると
いっていい。

もちろん地球は、何度も宇宙からの侵略や攻撃にさらされているので、警戒は怠って
いない。24時間体制で観測艦隊を監視している。いや、というより、その為に
EDFにとっては観測艦隊よりもやっかいな問題が発生しつつあるのだ。
579○シリウス54:2008/02/23(土) 22:56:54 ID:92hc3Gn30
「安全保障軍の動きはどうか?」

「現在活発に動いています。基地への弾薬供給のために補給部隊が大規模に輸送中。
護衛艦、潜水艦が出港準備中。空軍基地はフル稼働状態です。陸軍は部隊の移動を
実施中です。」

「やっかいだな・・。安全保障軍は先走りしすぎている・・。」

武藤が憂慮していることは、情報漏れによるパニックだ。安全保障軍が大規模に動けば、
情報は漏れやすくなるだろう。無責任なマスコミが大々的に報道すれば、いたずらに
人心の不安を煽ることに繋がる。

せめてアメリカのEDF本部が公表するまでは、機密を維持したいところだ。ただ、
安全保障軍の考えていることも理解できる。

EDFは地球防衛の任務を担っている。つまり国際的には軍隊より上位の組織として
存在しているのだ。各国で協定が結ばれ、地球侵略事案が発生した場合、安全保障軍
はあらゆる国際紛争を停止して、EDFの隷下に所属することになっている。

つまり指揮権が軍から、EDFに移行するのだ。この取り決めに対し、安全保障軍は
強い不満を持っていることも知っている。EDFからどんな命令が来るか分からない
からだ。
580○シリウス55:2008/02/23(土) 22:59:35 ID:92hc3Gn30
そこで安全保障軍は、指揮権が移る前にどんな命令でもこなせるように、EDFより先行して
準備をしているわけだ。昔自衛隊に所属していた武藤は、彼らの気持ちはよくわかる。
しかし・・。

何事もなければいいが・・。という武藤の思いは裏切られることになった。

「保坂参謀長! NHKです。」

大量の映像をモニターしていたオペレーションルーム局員が突然叫ぶ。保坂はいそいで
NHKの写っているモニタを見た。

画面には外国の風景と音楽が流れていた。NHKが深夜によく流している番組だが
画面上部にテロップが表示された。

安全保障軍・EDFが異例の緊急体制、最大規模の対応。防衛省は対外脅威の可能性を示峻。

このテロップは短く3回表示された。やられたっ! どこからか情報がマスコミに
漏れたのだ。いずれはバレることだが、こんなに早くマスコミに察知されるとは。
テロップが流れたのが深夜だというのがせめてもの救いだが。
581○シリウス56:2008/02/23(土) 23:01:11 ID:92hc3Gn30
保坂はオペレーションルームを出て、窓から1階を見た。1階のプレスルームから記者が
飛び出してくるのが見える。携帯で本社と連絡している様子だ。保坂はオペレーション
ルームに戻り武藤を見る。

「司令・・・。」

「こうなっては仕方あるまい。マスコミへの対応を準備しておけ。」

観測艦隊がもうすぐ地球の間近に迫っているこの時期に、EDFはマスコミ対応にも
忙殺されることになる。
582名無しより愛をこめて:2008/02/24(日) 11:43:23 ID:DZHpiK3gO
ひとつのハナシがまだ終わってないようだな
583○シリウス57:2008/02/24(日) 18:04:20 ID:EVLb/raP0
静岡県・山梨県 県境付近

山中

8月13日 午後4時26分

見城は山深い山中を進んでいく。ふと気がつくと、空が少し明るくなり始めていた。
視界がさっきより効くようになっている。もうすぐ夜明けだ。

車から降りて山道を歩き始めたのだが、思った以上に山は険しく、登るのには苦労した。
怪獣調査隊への異動初日に登山をするとは思わなかった。見城は最近体のトレーニングを
していないことを後悔した。

結局30分の休憩を2回とることになり、予想以上に時間がかかり、夜が明けてしまって
いた。鳥のさえずりが始まった山の中を比較的ゆっくりした足取りで怪獣調査隊は進んでいく。

「あーあ。もうやんなっちゃうわ。虫はいっぱいいるし、お腹はすくし、早く基地へ帰りたいよ。」

左翼にいた成川隊員がぼやく。中心の秋山隊員がセンサーパッドを見ながら応える。

「もう少しだわ。このセンサーパッドじゃ精度は落ちるけど、放射能以外に磁場の狂いも
どんどん大きくなってる。」

本当にこの山中に宇宙船は着陸したんだろうか? 汗を拭きながら見城は森の先を見た。
どうやら先は崖になっているらしい。
584○シリウス58:2008/02/24(日) 18:06:30 ID:EVLb/raP0
もっとも先行している瀬戸司令が崖に到達したところで、急に立ち止まった。瀬戸は左手を上げる。
それを見た全隊員はさっきよりもゆっくりと歩き始める。しばらく歩いた後で瀬戸は左手を握る。

全隊員はピタリとその場で止まる。私語はいっさい無くなった。EDFでは入隊したときに
3ヶ月の教導過程を通過しなければいけない。パイロット、整備兵、士官候補生、関係なくである。

3ヶ月間でEDFでは基本となる、武器の扱い方、格闘術、サバイバル、通信などの技術を
みっちり叩き込まれる。その3ヶ月の教導過程を通過した者だけがEDFに正式に入隊
できるのだ。

教導過程を通過したあとは、それぞれの部署に配属されて、その部署の仕事を覚えることになる。
そのため見城が怪獣調査隊という、まったく内容の違う部署に移動したとしても、ある程度の
作業はこなせるわけだ。

瀬戸司令は成川と見城を指差し、右手をふる。成川は見城を見て、あごで「行くわよ」
と指示して2人で崖の右側に回りこむ。

次に瀬戸司令は四方を指差し、左手をふる。四方は無言で崖の左側の林の中に入っていく。
瀬戸と秋山は身をかがめながら、崖の淵から下を見る。
585○シリウス59:2008/02/24(日) 18:08:45 ID:EVLb/raP0
崖から10メートル程下には広くなだらかな丘があった。だが、そこでひときわ目立ったのは
大きい金属の塊だった。その塊はにぶい光を発し、接合部からときおり光が走っていた。
大型の宇宙船か、飛行機のように思える。

その先には、ガードファイターが確認したグライダー状の航空機が2機見えた。が、
大型の航空機の方は、例の円盤状の航空機ではなかった。あの円盤状の航空機は
どこにいったのだ?

瀬戸と秋山は小型双眼鏡を取り出し、周囲を捜索した。円盤航空機はいなかったが、
大型航空機の近くに立っている人影を捕らえた。3人いる。

2人は赤い服を着た男たちだ。ヘルメットをかぶり顔は分からない。手に武器を携行し、
周辺を監視している。見た目は人間のように見える。しかし、真ん中に立っている人影を
見て秋山は驚いた。

「司令、真ん中の人物の頭部形状は蝉に似ています。バルタン星人でしょうか?」

「おそらく、その可能性は高いだろうな・・。」

「しかし、両手と体の形状が一部異なっています。バルタンとはいえないのでは?」
586○シリウス60:2008/02/24(日) 18:11:56 ID:EVLb/raP0
秋山の言うとおり、バルタン星人と思われるそのエイリアンはEDFが考えるバルタン星人とは
微妙に異なる。顔の形状はそのままだが、手にはハサミが存在せず、人間と同じような5本指である。
胴体の形状も少し異なっていた。

「いや、わからんぞ。アレは1960年代に報告された遊星人にそっくりだ。」

「こうは考えられないか? 我々が考えているバルタンは一種のパワードスーツを
装着しているんだ。普段はあれが通常の状態で、戦闘時にはあのハサミを装着した
バルタンになる。」

「合理的な推測だと思います。さすがにあのハサミの手で高度なテクノロジーや、
宇宙船が作れるとは思いません。」

「少なくとも、ガードファイターが捕らえた航空機はエイリアンの物であるということは
証明されたが、あのエイリアンが接近中の艦隊に関係あるかどうか・・。」

瀬戸が話終わる前に、突然遠方で爆音がした。距離は遠い、2キロほど東だ。そのあと奇妙な
発砲音や爆音が断続的に続いた。2人の赤い服を着た男とエイリアンはそちらを注視している。

「なになに? 何がおこっているの?」
587○シリウス61:2008/02/24(日) 18:16:26 ID:EVLb/raP0
瀬戸から見て右側の崖には成川と見城が展開していた。成川は爆音を聞いて驚いた。

「分からない。戦闘音のような気がするけど・・。」

見城にもよく分からないが、あの爆音の発生している地点では、地球人が想像もつかない
ような事態が、起こっていることだけは確かなようだ。

「よし、EDF本部に連絡しよう。野外無線機の準備だ。」

瀬戸は決断した。しかし秋山は躊躇する。

「しかし、この山中まで来たことは命令違反に問われる可能性があります。どう報告
するんですか?」

「住民のクレームを処理して基地へ帰投の途中、不審航空機を見て車で追跡、エイリアンを確認。
でいいだろう。」

「しかし、それでは偽造報告になります。露見すれば瀬戸司令が・・。」

「今は俺の首の心配をしている場合ではない。もし接近する艦隊がバルタン星人のもので
あったら取り返しがつかない状況になる。今は一刻も早くEDFに警戒を促すんだ。」
588○シリウス62:2008/02/24(日) 18:18:47 ID:EVLb/raP0
秋山は説得され、やむなく背中の無線機のアンテナを立てる。右腕に装着しているコントロール
パッドを開き、操作を開始する。

「データリンク接続完了、秘話通話システムに接続しました。ダイヤルすれば通話可能です。」

瀬戸司令は野外デジタル通信機JTA−T3の蓋を開け、中から受話器を取る。しかしこの
行動が、思わぬ事態を発生させた。

エイリアンが右腰に装着していたセンサーパッドのような物が、突然鳴り出したのだ。
エイリアンはパッドを見た。瞬間、エイリアンは何事か大声を上げ、後ろを振り向き瀬戸と
秋山のほうを指差した。

2人の赤い服を着た男は武器を、エイリアンが指差した方向に向ける。

「無線機の電波を・・」

「伏せろ!!」

瀬戸は秋山の頭を抑え、床に伏せる。その刹那、二本の火線が瀬戸と秋山を掠めて通過し、
後ろの樹木に着弾する。衝撃音がして細い樹木ははじけ飛ぶ。

ギリギリでかわし、当たりはしなかったが、秋山は恐怖した。しかし本当の恐怖は
これからだった。
589○シリウス63:2008/02/24(日) 18:20:32 ID:EVLb/raP0
「エルゾ・ギエンゾ・バルジード!」

エイリアンは地球人には理解不能の言語を喋り、右手を左胸に当てる。瞬間、すさまじい発光が
エイリアンを中心に発生する。成川、見城、四方は視界を一時的に失う。

発光が消えた後、その中心点にはエイリアンが立っていた。しかし、形状は大きく異なって
いた。そう、両手形状がハサミに変化し、異界の鎧を装着したあのバルタン星人が現れたのだ。

「バ・・バルタン。司令の推測は当たりのようです!」

「また来るぞ。伏せろ!」

瀬戸と秋山は地面に突っ伏した。そこへさっきとは比べ物にならない太さの火線が
襲いかかってきた。
590○シリウス64:2008/02/24(日) 18:23:19 ID:EVLb/raP0
日本EDF 高度統合作戦群(通称司令部)

8月13日 午前5時30分 オペレーションルーム

オペレーションルームは大混乱に陥っていた。さっきまでマスコミ対応に追われていた保坂は
急いでオペレーションルームに戻ってきた。

「艦隊の現在位置は!?」

「現在月軌道を通過! 加速して地球に向かってきます。あと10分で地球周回軌道。」

「なんてことだっ」

30分前までのオペレーションルームの静けさが嘘のようだ。休憩をとっていた職員も
次々戻ってくる。

30分前までは観測艦隊は、減速しつつ月軌道へ向かっていた。しかし、観測艦隊が
月軌道に到着すると、停止するどころか再び加速してまっすぐに地球に突っ込んできたのだ。

「観測艦隊より通信、全周波数、言語で発信してきます。」

「何っ、テキスト文か?」

「いいえ、映像通信です。いま、モニタに表示します!」

そういうと局員は、オペレーションルームの中心にある大型ディスプレイに観測艦隊の映像通信を
映し出した。まだ始まったばかりなのかノイズが激しい。
591名無しより愛をこめて:2008/02/24(日) 18:23:27 ID:DZHpiK3gO
CM
592○シリウス65:2008/02/24(日) 18:25:21 ID:EVLb/raP0
保坂は背中にゾクッとした感触を感じた。まずい・・とてつもなく嫌な予感がする。

保坂の予感は不幸にも的中した、映像はノイズが激しかったが音声がはっきり聞き取れた。

フォフォフォフォフォフォフォ・・・

そう、あの声だ・・。だれもが1度は聞いたことのある、地の底から響き渡るような、
あの忌々しい声・・。

「バル・・タン・・。」

保坂はその名を呼んだ。それに答えるようにノイズは切れ、鮮明な音声と映像が
映し出された。ディスプレイには大画面であのバルタン星人が映し出された。

「こちらは太陽系方面 制圧任務艦隊。地球に対し降伏を要求する。抵抗する
場合はあらゆる手段をもって排除する。ただちに武装解除せよ!」

この日からバルタンと地球との長い戦いが始まったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第1話 完
第2話 「シリウスから来た巨人」に続く
593名無しより愛をこめて:2008/02/24(日) 19:56:40 ID:DZHpiK3gO
一話に60レスか、すごいな。他の作者もこれくらいやればホンモノかもね
594名無しより愛をこめて:2008/02/24(日) 20:05:48 ID:QyVf2zsz0
スレだと細切れになるから読みにくい。
やっぱこれくらいの大作になるなら、レンタル鯖とかでやってほしい。

サイト立ち上げるの面倒だからって掲示板でやられてもな。
595名無しより愛をこめて:2008/02/24(日) 21:14:41 ID:KVL+uxMc0
登場人物が余りにも多いのも。1話で肝心のウルトラマンが登場していないが、
大丈夫なのか?
596シリウス作者:2008/02/24(日) 21:16:23 ID:EVLb/raP0
ううむ。私もこんなに長くなるとは思わなかった。
メモ帳でこの文章見ると、そんなに長く感じなかったので。
途中で止めるのもなんなので、最後まで上げてみました。

レンタル鯖ですか。まだ鯖借りるほどの量ではないんですが。サイト
立ち上げるはめんどうでは無いのですが、うーむ。やっぱ掲示板では
読みずらいですか。

とりあえずブログでも作ってみましょうかね。
597シリウス作者:2008/02/24(日) 21:55:30 ID:EVLb/raP0
他に何かご意見ありますでしょうか?

2話でウルトラマンは出てきますが、やはり最初に出ないと
つかみ的には駄目ですかね。

ああそれと、591さんCM。アロマブラック吹いた。
598名無しより愛をこめて:2008/02/24(日) 23:15:26 ID:KVL+uxMc0
内容そのものは問題ないと思う。寧ろ今までになく緻密で驚いた。
ただ、この分量で毎回続けていくとやはり途中で読むのがしんどくなる
人もいる気がする。クレームをつけた民間人辺りは削っても問題ない気も。
それと、やはり1話内でウルトラマンは出しといたほうがいいと思う。
戦闘までには至らないとしても、主人公との接触だけでも。
599名無しより愛をこめて:2008/02/25(月) 01:19:05 ID:ULFinsGjO
正直、私はそのしんどくなった読者です。
他の方もおっしゃってますが、例えば農家のオヤジがビール溢す、子供が成人して家を出ていった、という所まで逐一描写する必要はないかと。
やる気は半端なく伝わってくるんですが、描写が細かすぎてテンポを欠いていると思います。
戦闘機の搭載兵器の詳細はキャラクターが固まっていない第一話で語るべき事でしょうか?
考えうる全ての描写を伝える必要はないかと。削れる所は削るべきかと考えます。
600シリウス作者:2008/02/25(月) 19:56:04 ID:x8IKVAQy0
なるほど、問題なのは伝えるべき情報のバランスですね。今回は初回なので
説明しなければならない部分も多くあり、すべてをわかりやすく説明
しようと、情報を詰め込みすぎたと。それにより中だるみが生じ、読者を
飽きさせる結果になったわけですか。

確かに自分も力が入りすぎた、というきらいがあったかと思います。
むしろ細かい設定説明は、10話なら10話の中に平均的に分散した
ほうがいいのか。

実は第2話は、1話でたくさん説明したおかげで、1話よりは
短くなっています。しかし掴みの部分の第1話が読むのに苦痛を
感じるのでは、2話にはつながらないですね。
601シリウス作者:2008/02/25(月) 20:13:38 ID:x8IKVAQy0
突き詰めて考えると、本筋のストーリーライン(怪獣調査隊)と
周辺ストーリーとが同じ濃度で並んでいるため、読む焦点をすべての
文章に配らなくてはならず、読むことに疲れてくるのかも知れない
ですね。

しかし、そこいらの文章の加減が難しいですね。誰にでも分かりやすく
説明しようとすると文章量が増加する。削るとテンポは上がるが、
削りすぎると、分かりにくい部分が出てくる。

ガードファイターの描写ですが、これは現実に存在しない兵器なので、
リアルティを感じさせるために、細かい設定まで書いてみましたが、
第1話のあの部分で導入するのは問題だったかも知れませんね。
第2話にまわしてもよかったかも知れません。

そのへん全体的に推敲が不足してましたね。
602599:2008/02/25(月) 20:23:43 ID:ULFinsGjO
てか、まあ私>>519なのですが、多少キツい事言ってしまったと思いますが、指摘させていただきました。
苦痛と言っても、単に私が我慢性のない人間だからかも知れませんし。
ただ、やっぱ一話毎にカタルシスは欲しいやな、と思いますので。
設定は初っぱなからまとめて伝えるよりも、貯蓄し、話を進めるための道具としてそこから逐一取り出すものかな、と私は考えます。
それもやり過ぎるとご都合主義に堕してしまうので難しいところですが。
とりあえず、話を進めるためには設定、描写双方の面で、情報は取捨選択してから読者へ伝える事が大事かな。
ただ、一つ一つの描写に関して緻密なのは本当なので、特に戦闘シーンに関しちゃわくわくです。
第二話、頑張ってください。

あと、特撮板であれば1レスにもう少し沢山文章書けますよ。
603シリウス作者:2008/02/25(月) 20:30:16 ID:x8IKVAQy0
様々な真摯なアドバイス、忌憚なき意見ありがとうございます。この物語
は1人で書いていたので、これを見た他人がどう感じるか、そこのところ
をどうしても知りたかったのです。

えらく長くなってしまった1話ですが、最後まで読んでいただき、意見も
書いていただき本当に本当にありがとうございます。もう一度作品を
推敲してみます。自分では気づかない視点もあり、新たな構成法を見出す
こともできそうです。

それでもやはり長い作品なので、作品はブログで作っていこうと思います。
新たに作ったら、ブログの宣伝とダイジェスト版のみ掲示板であげ、
本文はブログにあげる。という方法にしようかと思います。

それでは、いつになるかは分かりませんが、また私の作品を読んで
いただければうれしいです。では・・・。
604シリウス作者:2008/02/25(月) 20:46:28 ID:x8IKVAQy0
599さん。
カタルシス、そうですよねぇ。やっぱ1話ごとのカタルシスって
重要なんですよね。

そういう意味では第2話は大半戦闘シーンなので、カタルシス
だらけかも知れません。やはり作品のバランスが悪い(><)。

とりあえず、2話は今の状態のままでブログに上げて、こちらに
リンクを張っておきますね。そんなに時間はかからないかと
思います。(今週の金曜くらい?)

そのあとでゆっくり推敲やら、第3話など作ろうかと思います。
605599:2008/02/25(月) 21:30:42 ID:ULFinsGjO
了解しました。何か追っ払ってしまったようで申し訳ない。
ダイジェスト版だけでも読者の興味は引けると思います。2ちゃんのように本編がぶつ切り連投になる心配もないし。
カタルシスは、そうですね、掴みの部分ではやっぱり欲しいですね。
例えばガイアならクライマックスに戦闘シーンないけど、着地シーンで何かもう全部オッケーでしたし。
第二話は戦闘連発という事で。
今のところ初代マンと同じく紅い球で飛ぶ ってところしかウルトラマンの情報ないですんで、色々期待ができますね。
606ブリッツ作者:2008/02/25(月) 21:44:39 ID:PxVdEL0OO
 (9)
 あれから三日後、ダメージから回復できたエイジは、ジョーと同様、GAPの通り魔退治に協力を申し出た。
 シキとカヲルは快諾し、タイラも渋々ながら承諾した。
 「あの通り魔はツルク星人だ、連中は快楽の為に無差別に人を襲う種族……。」
 エイジの言葉に、ジョーとGAPの一同は消沈した。幸い、夜間の外出禁止令とパトロール強化であれから犠牲者は出ていない。しかし、手強い相手であることには変わりがない。
 「どうしますか?エイジさんの話だと、奴は相当素早しっこいですよ、次に会ったときに逃げられることも……。」
 「いっそのこと、どっかに落し穴でも掘るか?」
 カヲルの言葉にジョーが案を出す。
 「無理だ。連中の跳躍力は10m以上はある。下手に掘っても跳び出られるのがオチだ。」
 エイジは冷静に言った。 「だがワナにかけることには賛成だ。どこかに閉じ込めて、動きを封じればいい。」
 「そんな場所、この村にあるのか?」        シキの言葉を遮るように言ったタイラの一言で、この話し合いは行き詰まってしまった。
607ブリッツ作者:2008/02/25(月) 21:50:32 ID:PxVdEL0OO
 (10)
 その日の午後、カヲルとジョーはタイゾーの店を訪れた。無論、店は閉められており、店先には<弔 慕部村民一同><弔 東部廃品回収業者組合一同>と書かれた花輪が二つ立てられていた。
 「すみません、お忙しいのに……」
 二人にコーヒーを出しながらマリが言った。
 あの夜父を殺された後、明け方まで山中を逃げ惑い、ボロボロの状態で現れたマリだったが、今は大分落ち着いている。
 「この度はご愁傷様です。ですが安心して下さい。お父さんのカタキは、私がかならず取ります!」
 マリの両手を握り締め、頼もしげにジョーが言った。爛々とした眼差しで、マリを真直ぐに見つめている。
 「あ…ありがとうございます。」
 若干ひきながら、マリは笑顔で応えた。
 「でも、本当に大変なのはこれからだね…仕事の方はどうするの?」
 カヲルが尋ねる。
 「うん、とりあえず組合の方に挨拶して、落ち着いてから考えようと思ってるんだけど……」
「そうか…」と言ってカヲルは店内の方を見た。使い古された電子部品や兵器類が所狭しと並んでいる。
 「ん、あれは……」
 カヲルの眼が、直径30p程の円盤状の機械にとまった。店内に移動してそれを手に取る。
 「これ、バリアーメイカーじゃないか。たしかコイツを中心にして、最大で半径200mの範囲まで半球状バリアーを張れるはず……どっから仕入れたんだい?」
 「ああ、それ…西の砂漠の先にある、怪獣に潰されたGAPの基地跡から仕入れたのよ。」
 カヲルの問いにマリが答えた。カヲルはバリアーメイカーをじっと見つめる。
 「おい、どうしたんだよ?」
 ジョーはカヲルに尋ねた。カヲルは顔を上げると言った。
 「ジョーさん、見つかりましたよ、奴を捕まえる方法が!」
608名無しより愛をこめて:2008/02/25(月) 22:12:22 ID:ndoqtsjqO
ブリッツってまだ続いてたの?
609ブリッツ作者:2008/02/25(月) 23:01:48 ID:PxVdEL0OO
 (11)
 「このバリアーメイカーを地面に埋め、その上にツルク星人を引き込んでバリアーを起動させれば、その中に封じ込めることができます。」
 駐在所の中でバリアーメイカー片手に、カヲルが一同に説明をする。確かにツルク星人を封じ込めるには最適な策である。ただ問題は、どうやって引き込むかだった。
 「今考えられるのは、フライヤーとジープ、空・陸両方から追い立てる方法です。」
 カヲルの言葉に、「それしかないだろうな。」とシキが言い、皆も頷く。作戦が決まった。 
 バリアーメイカーは、村外れの原野に埋められた。いつでも作戦を開始できるように、誘導経路の確認とさらなるパトロール強化がされた。
 皆が来るべき日に向けて一致団結した……訳ではなかった。不協和音がここに一人。
 「……今に見てろ。」
 駐在所のデスクにふんぞり返り、外へ出ていったシキの後ろ姿を見ながらタイラはつぶやいた。あの一件以来、タイラの立場はシキに取って替わられてしまった。自業自得だが、シキの下に立たされるのは面白くない。
 いつか思い知らせてやる、と思ったその時、タイラの頭にある考えが浮かんだ。
タイラは外に出ると、周りに人がいないのを確認した。そして裏の倉庫に回るとスコップを手に取り、逃げるように駐在所をあとにした。
 準備は万端。しかし、ツルク星人が現れないまま、一週間が経とうとしていた日のことだった。
610ブリッツ作者:2008/02/26(火) 00:06:32 ID:1yM+KXTdO
 (12)
その日の夜。パトロールはエイジとジョーが当番だった。
 「なあ、ウルトラマンって知ってるか?」
 夜道をチョウチン片手に歩きながら、唐突にジョーがきいた。
 「……いいや。」
 「そうだよな……死んだ親父が言ってたんだけどよ、GAPができるよりもずーっと昔、人間の組織と一緒に、怪獣と戦ってた巨人がいたんだってよ。」
 エイジは黙って聞いた。
 「そいつは一人じゃなくて、仲間の巨人が次から次へと地球にやって来て、人間を守り続けてくれた。ときに自分の身を犠牲にしてまでな…けど、いつの間にやら来なくなって、地球は荒れ放題になっちまったらしい。」
 エイジは黙り込み続けた。
 「なんでウルトラマンは、命かけてまで守ろうした地球を、離れちまったんだろうな?……」
 「……」
 「あぁ、悪い悪い。変なこと聞いちまったな。ヨタ話の一つだと思って忘れてくれ。」
 「いや、いい。あまりに突拍子がなかったもんで……今の話だが、ウルトラマンがいたとして、きっと連中は、地球と人間に見切りを付けてしまったんだろうな。」
 慎重に、言葉を選びながら、エイジはボソリと言った。
 「見切りをつけた、か……ハハッ、違いねえな!」
 ジョーが笑い、エイジも自嘲気味に笑った。
 その時である、エイジは自分達の前方に何かの気配を感じ、ジョーを制して前方を見るようにうながした。
 前方の闇の中に、こちらへ向かってくる、二つの赤い光が小さく見えた。
611ブリッツ作者:2008/02/26(火) 16:51:36 ID:Oyyp9GkF0
 (13)
 「おい、あれ・・・」
 「ああ、ヤツだ。」
 エイジは冷静に応える。赤い光は徐々に歩みを早めて近づいてくる。どうやらチョウチンの灯りを頼りにこちらへ向かっているようだった。
 「・・・もしウルトラマンが見限ったんだとしても、地球は地球人の手で十分に守れる。そのことを証明してやるぜ!」
 そういうとジョーはチョウチンを投げ捨て、担いでいた刀を抜き放った。地面に炎が上がる。
 「ジョー、お前・・・」
 「ヤツは俺が引き付けておく、その隙に連絡頼む!」
 エイジの言葉をさえぎってジョーが言う。
 「・・・分かった。死ぬなよ。」
 「俺を甘く見んな!」
 そういうとジョーは、刀を振りかざしてツルク星人へ向かっていった。エイジはジョーに背中を向けると、駐在所を目指して駆け出した。
 ジョーとツルク星人は激しく刃をぶつけ合う。
 「死にさらせやーっ!」
 ジョーが絶叫する。
 一方エイジは、走りながら指笛を吹いた。すると右手の藪から馬が跳び出してきてエイジと並走する。エイジはそのまま地を蹴って馬に飛び乗る。
 まさに神業といえた。エイジを乗せた馬は、そのまま駐在所へ向かって走り続けた。
 
612名無しより愛をこめて:2008/02/26(火) 17:20:20 ID:1yM+KXTdO
613名無しより愛をこめて:2008/02/26(火) 19:20:43 ID:vEr4cqVGO
長いのが流行り?
614名無しより愛をこめて:2008/02/26(火) 21:23:13 ID:c42Wgb+j0
幾つもの星が煌めく広大な宇宙。 その宇宙の闇を切り裂きながら何者かが地球に向かっていた。

真・ウルトラマンルシファー
第1話 「青き星の輝き」 宇宙邪虫 ザゾーラ登場

休日の街中は平和を疑うことない人々の笑顔に包まれていた。
「ユタカ! 早くしないと映画始まっちゃうよ!」
「…だったらお前も少しは荷物を持てよ…」
ユタカはよろめきながらも多くの荷物を抱えて歩く。 彼女の買い物に付き合わされたのだろう。
「急げっていったって、どうせ荷物一つでも落とせば怒るくせに…」
「何か言った!?」
「いえ、何も…」
そのとき、ユタカの目に一人の青年の姿が映った。 その青年は人混みなど気にもせず、ただただ空を眺めていた。
(何してんだ…あいつ…?)
よそ見していたユタカは思わず人にぶつかり、荷物を落としてしまう。
「あ……」
恐る恐る彼女の方を見るユタカ。
「ユタカァァァ!!」
615名無しより愛をこめて:2008/02/26(火) 21:24:02 ID:c42Wgb+j0
ユタカは怒り狂う彼女から目を逸らし、再び先程の青年に視線を戻そうとしたが、そこには既に誰もいなかった。
その頃、怪しく黒光りした異形の怪獣は人工衛星の並ぶ防衛ラインに達していた。
「こちら、GUYSスペーシー。レジストコード"ザゾーラ"確認。攻撃に入ります」
人工衛星から放たれる幾筋ものレーザー光線。 しかし、ザゾーラはそれをものともせずに突き進む。
再び街中。彼女はまだ機嫌が直っていないらしく、二人の間には不穏な空気が漂う。
「なあ、ミカ。そんな怒るなって。荷物は別に何ともないんだし…」
「気分的に嫌なの!」
(参ったなぁ……)
ユタカはふと、先程の青年のように空を眺める。 一面に広がる真っ青な空。
都会のビル群の上にもこんなにも綺麗な青空があることをユタカは改めて実感した。
しかし、その青空を破るようにして漆黒の怪獣が近づいてきた。
「ミカ! 危ない!!」
「何言って……」
突如飛来した怪獣はいきなり光線を乱射し、ユタカは崩れ落ちるビルの瓦礫でミカを見失った。
「ミカ!?」
ユタカは荷物を放り出し、慌てて辺りを走り回る。
616名無しより愛をこめて:2008/02/26(火) 21:32:15 ID:c42Wgb+j0
時を同じくして、一機の戦闘機が上空に姿を現した。
「一気に片を付けるぞ」
「GIG!」
隊長と思われる人物の指示を受け、大型戦闘機"ガンフェニックス"は二機の小型戦闘機に分離してそれぞれの機体から撃たれたミサイルやレーザーが命中する度にザゾーラは苦しみの声を上げる。
「とどめだ。メテオール解禁!」
各機体は金色の光に包まれると一斉に攻撃を仕掛ける。ザゾーラは爆煙に包まれる。
煙が晴れると、その中からバリアに身を包んだザゾーラが現れた。ザゾーラはバリアを解くと両手の大きなハサミから光線を放つ。
ユタカは瓦礫の山を乗り越えると、倒れている彼女の姿を見つけた。
「ミカ! 大丈夫か!?」
「うん…何とか…」
再開した二人の目の前でガンフェニックスがザゾーラに撃墜されていく。
「GUYSがやられたのか!?」
落ち込むユタカ。
そんな様子を見守る一人の青年。彼の右手には見慣れぬ道具が握られている。
「俺に闘えというのか…?」
道具の中央の水晶玉がそれに答えるように点滅している。青年はその道具"ウルティノーヴ"を空高く掲げる。
ザゾーラの光線がユタカの目の前に迫る。そのとき、光が上り、今、空に青き星が一つ輝いた。
そしてその輝きと同じくらいに蒼い巨人が大地に降り立ち、ユタカの盾となった。
逃げ惑う人々、GUYSクルー、そして、ユタカはその巨人を見て呟いた。
「…青い…ウルトラマン?」
青い巨人"ルシファー"はザゾーラに突進し、パンチ一撃でザゾーラを殴り飛ばす。
ザゾーラは光線を乱射するがルシファーはそれら全てを片手で払いのける。そして頭の角に青い光を集めていく。
向かいくるザゾーラに頭を向けて、溜めた光を全てぶつける。凄まじい威力にザゾーラは粉々に弾け飛んだ。
荒れ果てた街中に一人立つルシファー。人々はその姿を見つめていた。
617名無しより愛をこめて:2008/02/27(水) 20:56:28 ID:iplQfzmRO
つぎは?
618名無しより愛をこめて:2008/02/28(木) 09:27:24 ID:jf9bCyFb0
やはり一エピソードでぶつ切りにして間が空きすぎるのは問題。
前の話を覚えてられない人もいる。
619ブリッツ作者:2008/02/28(木) 20:56:03 ID:hpsbgdr50
(14)
駐在所に到着したエイジは馬から降りると、ツルク星人が現れ、ジョーが足止めのために一人戦っていることを告げた。
「作戦開始だな。シキ、俺はフライヤーで上から追う、アンタは地上から追ってくれ。カヲル、お前は先回りしてバリアーメイカーを起動させるんだ、頼むぞ!」
タイラは矢継ぎ早に言うと、そのまま外へ駆け出した。
「アイツ、妙に張り切ってるな・・・。」
シキはそうつぶやくとタイラに言われたとおり、表へ出てジープの乗り込むと、エイジにも乗るように促した。駐在所の裏手の方からは、けたたましい爆音とともにGAPフライヤーαがゆっくりと垂直上昇していく。
シキとエイジを乗せたジープとタイラの操縦するフライヤーは、ジョーとツルク星人の戦っている現場へ向かった。カヲルは一人、埋設地点へと向かう。
 
「オメェ・・・なかなかやるな。」
十分に間合いを取りながら、ジョーは言った。ジョーとツルク星人は互角の勝負を繰り広げていた。双方とも息が上がっている。
 ツルク星人は両腕の刃を大きく振りかぶり、突きの構えを見せた。それに対して、ジョーは刀を八双に構える。
「けど、そろそろケリつけるぜ・・・言っとくが俺は、テメェみてぇなヤツが一番嫌いなんだよ!」
ジョーが叫んで今にも斬りかかろうとしたそのとき、突然、けたたましい音とともに周囲が明るくなり、上空からライトをつけたGAPフライヤーαがゆっくりと下降してきた。さらに道の向こう側からはジープが近づいてくるのが見えた。
フライヤーはホバリングの体勢をとると、機首の省電力レーザー砲をツルク星人の方へ向けた。分の悪くなったツルク星人はその場を逃げ出す。
「よーし、追うぞ!」
シキはそう叫ぶとジョーもジープに乗せ、追跡を開始した。フライヤーもゆっくりと、ツルク星人を追う。
620名無しより愛をこめて:2008/02/28(木) 22:24:22 ID:8jJLJF+KO
ぶつ切りは週刊誌の連載と思えばよろし
621シリウス作者:2008/02/29(金) 17:55:02 ID:QyTOwwwE0
こんにちわ。やっとブログできました。おもったより早かったかな。
2日で作ったやっつけブログですが、どうぞよろしくです。

全記事表示機能と、文字サイズ調節ボタンも設置しました。
多少でも読みやすくなればいいですが。

第2話は1話より短いです。(作者比3割減)力が抜けていい感じに
なったのかな?

それでは2話ダイジェストあげておきます。ブログに来ていただければ
うれしいです。どうぞよろしく。
6222話 シリウスダイジェスト:2008/02/29(金) 18:04:17 ID:QyTOwwwE0
ウルトラマンシリウス 第2話「シリウスから来た巨人」

シリウスブログ http://ultramans.blog45.fc2.com/

「しかし地球人は簡単には降伏すまい。まずは圧倒的なバルタンテクノロジーを見せつけ、
地球人に衝撃を与える。作戦第1段階を発動せよ!」

いよいよバルタンの地球制圧作戦は始まった。バルタン艦隊各艦はいっせいに行動を
開始する。バルタン艦隊の陣容は以下の通り。

中型機動要塞   バルブロッグ1隻
高速巡航宇宙戦艦 バルクロー 2隻
高速宇宙駆逐艦  バルシード 5隻

これに、艦載機である汎用宇宙戦闘機バルアタッカー・宇宙攻撃機バルクルーザー
・輸送機バルキャリアー等を全力出撃で600機使用することが可能だ。
6232話 シリウスダイジェスト:2008/02/29(金) 18:04:58 ID:QyTOwwwE0
しかし、ウルトラマンは・・・

「ウルトラマンの動向はどうか?」

「はい、M78星雲封鎖任務艦隊からは 動きなし と報告を受けています。我々は
M78星雲に網を張っていますので、ウルトラマンが動けば光の国の場所を特定できる
でしょう。光の国の場所を発見しだい。我が鎖任務艦隊が、集中爆撃する手はずを
整えています。」

「しかし、ウルトラマンも馬鹿ではない。」

「その通りです。ここ5年間、ウルトラマンのM78星雲での活動は報告されて
いません。おそらく移動を控えているのでしょう。結果的に我が封鎖任務艦隊の
目的は達成できているわけです。」

「地球占領までに、地球圏にウルトラマンが到着することは絶対にありません。コマンダー、ディ・オー」

地球にこれまでに無い危機が迫る。はたして地球を救う救世主は現れるか?
6242話 シリウスダイジェスト:2008/02/29(金) 18:07:04 ID:QyTOwwwE0
見城が所属する怪獣調査隊と、バルタンは交戦状態に入った。その最中、見城はがけ崩
れに巻き込まれた。バルタン戦闘員に撃たれる寸前、謎の美女が見城を救った。

そしてその場所には、とても美しい女性が立っていた。黒い瞳、黒い髪、黄金の肌、エ
イリアンであるはずなのに、その特徴は黄色人種の特徴に酷似していた。

顔立ちは、かわいい、というよりは美人タイプだ。プロポーションもかなりよく、身長
は170ぐらいか。額にはなにか金属のようなプレートが張りついていた。さっきのバ
ルタンの戦闘員とよく似た赤い服を着ている。

同じころ、地球へ接近中の謎の生命体をバルタンはキャッチした。

「コマンダー、太陽系別働艦隊から緊急電!」

「どうした?」

「シリウス方面より未確認生命体が太陽系に進入。ウルトラマンの可能性もあり。」

「なんだと!」

「別働艦隊が阻止を試みたものの失敗した模様。バルアタッカー3機損失。高速宇宙駆
逐艦 バルシード中破。」

「そんなバカな・・。シリウス方面にウルトラマンなど・・。」
6252話 シリウスダイジェスト:2008/02/29(金) 18:08:37 ID:QyTOwwwE0
だが見城は謎の美女の正体を確認することもできず、新たな宇宙からの使者を目撃する
ことになる。

南西の方角から強い風が起こり、噴煙をまきちらした。そして見城の肉眼は噴煙の中で
うごめいている物の姿をはっきりと捕らえた。見城は絶句する。

そのものの姿は巨大な人間の形をしていた。銀色と青の皮膚を持ち、顔はのっぺりして
いた。周囲をイオン化した空気で包みながら、その巨人はゆっくりと立ち上がる。

見城の幼い記憶がリアルに蘇った。それは今まで見たこともない巨大生命体であったが
、完全に雰囲気は合致していた。そう、あれは、あれは・・・。

「ウ・・、ウルトラマン・・。」

突如地球に現れたウルトラマン。バルタンとの戦闘が始まる。果たして彼はどんな目的
で飛来したのか、そして見城を助けた美女の正体とは?

シリウスブログ http://ultramans.blog45.fc2.com/
626名無しより愛をこめて:2008/03/01(土) 08:42:30 ID:5Ekf4d4gO
年末は会社(仕事)が忙しくて作者は作品書く暇がないとかいってたけど

今度は年度末だからもっと忙しいんだよね
当然作品なんか書く暇ないよな
627名無しより愛をこめて:2008/03/01(土) 14:48:36 ID:rwiHeVix0
前は年末であろうと、年度末であろうとみんなどんどん
書いてたぜ。
てことはそれらの作者はまともな仕事はしてないのか?
628名無しより愛をこめて:2008/03/01(土) 14:51:52 ID:rwiHeVix0
それよりも、そろそろ512KBの容量オーバーになるぞ
629ブリッツ作者:2008/03/01(土) 16:56:24 ID:lXUgfEqp0
(15)
一同は逃げるツルク星人を空と陸から追う。わき道へ入ろうとするツルク星人をレーザーやGAPランチャーを発射して威嚇しながら追い立て、着実に埋設地点へと誘導していく。
一方、埋設地点の村外れの原野では、カヲルが藪に隠れ、暗闇でも見えるように赤外線ゴーグルを着けて、ツルク星人が追い立てられてくるのを待ち構えていた。右手には起動スイッチが握られている。
やがて、遠くの方からフライヤーのエンジン音と車が走ってくる音が聞こえ、200m程先にある正面の林の中からツルク星人が飛び出してきた。いよいよだ、カヲルはスイッチに親指をかける。
さらに林の中からは、ジープが走り出てきて星人を追う。ツルク星人は真っ直ぐに、カヲルの隠れている藪へ向かって走ってきた。だがまだ起動させられない。
バリアーの展開範囲は20mに設定してある。設置点には目印を立てているのだが、その上を通過したときが勝負だ。ジープは30mほどの距離をとって星人を追い続ける。やがて、星人が目印を通過し、ジープが停車する。
カヲルはスイッチを押した。目印を中心にして、青白い半透明のバリアーが広がる。これで星人はバリアーに閉じ込められるはずだった。
 「やったぜーっ!」
 ジョーが叫んだそのときだった。異変がおこった・・・。
 「・・・なっ!?どうなってんだ!」
 カヲルは動転した。バリアーは設定範囲を大きく超え、60m近くまで広がったのだ。
 当然、シキ、ジョー、エイジの乗るジープもバリアーの中に閉じ込められてしまった。
 「おーい!話が違うじゃねえか!」
 ジョーがカヲルに向かって叫ぶ。だが当のカヲルにも、何がどうなっているのか分からない。バリアーを解除しようとスイッチを切るが、バリアーは消えない。
 故障か?とカヲルが思ったとき、上空からフライヤーの爆音が聞こえてきた。
630名無しより愛をこめて:2008/03/01(土) 17:04:16 ID:5Ekf4d4gO
これだけ長いのが続けばそれもアタリマエか
631ブリッツ作者:2008/03/01(土) 19:00:53 ID:2a8Hj+01O
 (16)
 タイラの乗るフライヤーはゆっくりとバリアーの前へ下降すると、エイジ達の眼前に静止した。
 星人とエイジ達は訳がわからないまま、バリアーの外のフライヤーを見つめた。操縦席のタイラが邪悪な笑みを見せたその時、バリアーが唐突に消えた。
 次の瞬間フライヤーのランチャーから、ロケット弾が立て続けに発射された。星人は慌てて逃げ出すが、行く手にロケット弾が炸裂し、爆風で吹っ飛ばされる。さらにロケット弾の一発が、ジープを目がけて飛んできた。
 「ヤバい、逃げろ!」
 シキが言うのと同時に、一同はジープから飛び降りる。その瞬間、ロケット弾が命中し、ジープは大爆発を起こした。三人は爆発の衝撃で吹き飛ばされる。
 ロケット弾を撃ち尽くしたフライヤーは、間髪入れずにナパーム弾を発射した。辺り一面が炎に包まれる。さながら地獄絵図の様相だった。

 カヲルはなすすべもなく、地面に伏せて爆風を避けることしかできなかった。攻撃が止み、顔を上げて立ち上がったカヲルは絶句した。目の前に広がっていたのは、無数の穴ができ、ガソリン臭い煙が立ちこめる荒涼とした大地だった。
 唖然として立ち尽くすカヲルのもとへ、フライヤーがホバリングしながら着地した。キャノピーを開けてタイラが降り立つ。
 「やっぱりジャンク部品はアテにならんな。」
 先程て同じ笑みをうかべながら、タイラは言い放った。
632名無しより愛をこめて:2008/03/01(土) 19:27:12 ID:5Ekf4d4gO
まもなく満杯
633ブリッツ作者:2008/03/01(土) 20:02:10 ID:2a8Hj+01O
 (17)
 「…バリアーメイカーが故障して、バリアーは消えた。だが奴を逃がすわけにはいかず、俺は止むなくフライヤーで爆殺した。あの三人は……バリアーに閉じ込められた間に、エイリアンに殺された。」
 「そんな…」
 「シキは村を守るために殉職、これで丸く収まる。いいかカヲル、俺たちは村を救った英雄だぜ。」
 「あんた、まさか……小細工を?」
 カヲルの問い掛けに、タイラは無言でほほ笑みかける。カヲルは冷たい眼でタイラを見つめた。
 「そんな目で俺を見るなよ、この手柄を持って本部に返り咲けたら、お前を幹部連中に紹介してやってもいい。黙ってるのが花だぜ。逆らうならお前もここで……」
 そういってタイラが腰のホルスターに手をかけたときだった。カヲルの表情が突然強ばり、そのままその場にしりもちをついたのである。
 呆気にとられたタイラはカヲルの顔を覗き込む。その視線は、タイラの後方に注がれていた。タイラは後ろを振り返る、その瞬間………。

 タイラの体は縦に両断され、真っ二つになって地面に転がった。そこには、右腕の刃を振り下ろし、返り血を浴びて真っ赤になったツルク星人が立っていた。
 「ああああぁーっ!!」
 カヲルは絶叫し、逃げようとしたが、腰が抜けて立つことができない。星人は右腕を大きく振り上げた。
 (もう……ダメだ!)
 カヲルに向かって、刃が振り下ろされた。
634名無しより愛をこめて:2008/03/01(土) 20:10:17 ID:6XkxXZja0
タナカも直接見た事はなかったが、話には聞いていた。ウルトラマンの中でも歴戦の勇士であり、
ウルトラ兄弟達の司令官であり、この地球でも数々の奇跡を起こしているという。
 ウルトラの父が最後に地球に現れたのは、54年前、2006年のクリスマスだ。強敵の前に倒れた
ウルトラマンメビウスを救い、地球の人々に希望を与えたと記録に残っている。

「流石の俺もたまげたし、疑いもした。ウルトラの父を騙る侵略者の罠でないとも限らないしな……
 で、半年間じっくりと連絡を取り合い、ようやく本物のウルトラの父であると確信した」
「それで……ウルトラの父は何と?」
「ビジャス星人の侵略は覚えているな? 貴様が少佐に昇進し、ムーンベース隊長に任命される
 きっかけとなったあの事件だ」
「はい。大元帥があの時の戦功を評価され、私を推挙して下さったと……」
「あの事件を境に地球には再び怪獣がはびこり、異星人の侵略が始まった。ここ数十年は大きな
 事件もなく、防衛軍も平和ボケし始めていたんだが……それはそうと、ここ数年の地球の変化を
 M78星雲の連中も重く見ている。だからウルトラの父が俺達にコンタクトを取ってきたんだよ」

 ウルトラマンが直接地球人にコンタクトしてくる。この一事をとっても、地球人類には一大事だ。
 今までウルトラマンが積極的に地球人と意思疎通を図ってくる事などなかった。一説には、彼らが
地球人と関わる事で、地球人の心にウルトラマンに依存する気持ちが生まれてしまうから、彼らは
積極的なコミュニケーションを避けたのだとも言われている。
 が、それを曲げて彼らの意思を地球人に伝えてきたのだ。この100年の間に、地球人は相当の
信頼を得たと言っていいだろう。

「ウルトラの父はこう言ってきた。地球を愛する同志として、こちらから優秀な戦士達を派遣したい。
 彼らを地球防衛の役に立てて欲しい……とね」
「そ、それは……我々地球人と、ウルトラマンとが手を取り合って戦うという事ですか?」
「ああ、そういう事だ。ウルトラの父は、新たに派遣する4人のウルトラマン達を、地球を護る組織の
 最高のチームで、最高の指揮官に世話して欲しいとも言っていた」
635名無しより愛をこめて
「このディスクには、貴様が指揮する連中のパーソナル・データが収められている。殆どが地球上で
 暮らすためにでっち上げた偽の個人情報だが、全て暗記しておけ」

 ディスクをタナカに手渡すと、アカギ大元帥はまたどっかりとソファに腰掛け、2本目のタバコに火を
つけた。紫煙が立ち上り、換気扇によって続々と屋外へ排出されていく。

「正式な転属命令が出るのと、連中が地球に到着するのは一週間後だ。心の準備をしておきな」

 アカギ大元帥はその言葉をもって会話を打ち切った。
 タナカは、未だに自分の身に起きた出来事を信じきれずにいた。自分の平々凡々な人生からすれば
目も眩むほどの一大サプライズだ。これがドッキリカメラか何かであればまだ気が楽なのだ。
 ともあれ、タナカの運命が急速に加速しだしている事だけは、疑いようもない事実であった。



 ウルトラマンヴァイス。地球人名ミナモト・タケル。
 ウルトラマンヒート。地球人名ナカムラ・アツシ。
 ウルトラマンブライト。地球人名タカヤマ・ジン。
 ウルトラウーマンレイラ。地球人名サエキ・アスカ。
 以上4名が、BEATに新しく創設された特別チームに配属されるM78星雲人達である。
 タナカとアカギ大元帥、そして新チームのスタッフ一同は、M78星雲人達との合流のために、廃棄
されて久しい古い採石場へ集合していた。彼らは体外的には大規模な演習の名目で集まっており、
この採石場ならかなりの広さがあるため違和感を感じられる事もない。
 若きウルトラマン達の到着予定時刻は正午ピッタリのはずだった。
 が、既に予定の時間から30分も経過しているにも関わらず、彼らは現れなかった。