【今年も勝手に】劇場版仮面ライダー555【補完】

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1名無しより愛をこめて

【案内】
・ここは映画版 仮面ライダー555 スレです 。
 映画版のネタバレを含みますので要注意。
・いまひとつスッキリしない劇中・劇終後のエピソードなど、みんなで脳内補完していきましょう。
・載ったSSに不満があれば「自分ならここをもっと面白くしてやるぜ!」の心意気で前向きに。
2名無しより愛をこめて:03/08/17 18:25 ID:p/vAboEn
お前、バカだろ。
3名無しより愛をこめて:03/08/17 18:27 ID:WzCTyT0t
重複スレ立ててどうするおつもり?
41:03/08/17 18:30 ID:r3wRclb4
劇場版555の妄想ネタスレってすでにあった?
あったなら削除依頼出してくるが
5http://cgi.2chan.net/up/src/f15793.jpg:03/08/17 18:49 ID:K8Q/gof8
いや、落ちた
6名無しより愛をこめて:03/08/17 19:19 ID:F9paucwC
指先が触手のように伸びるレオは何オルフェノクだったんだろうね?
71:03/08/17 19:24 ID:keYkOtjr

とりあえずあの世界の続編を書く猛者はいないか?

本スレかなにかでレオがサイガになる迄の妄想していた方、お話キボンヌ

>>6
あの指で思わずミミズを想像してしまった俺(恥
81:03/08/17 19:41 ID:keYkOtjr

ライダー共闘スレの方で、
公開前から劇場版555のストーリーにつながるプレストーリーを書いておりましたが、
ネタバレの危険性を指摘されましたので、続きを是非こちらでやらせていただきたいのですが、
いかがでしょうか?前回迄のストーリーはこちらで。

【手を取り】ライダー共闘SSスレその5【戦え】
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1059983703/l50

【楽園の崩壊】
87-99,107-115,122-126,136-150
<151-153は今後大幅に修正加筆の予定
9名無しより愛をこめて:03/08/17 19:41 ID:rLe+upEE
木場さんの話書きたいねぇ。 色々妄想が膨らみやすいやすい人だし
10名無しより愛をこめて:03/08/17 20:03 ID:jLxGPClx
正直、真理の見た夢でいいょ
11名無しより愛をこめて:03/08/17 21:49 ID:RyhZAP5x
普通ライダーと言えば改造シーンからはじまる訳で、
普通の人として戦って来て、最後の最後で実は改造人間でしたっていうのは画期的だな
映画でバラさないでテレビ本編最終回でいきなりやったらある意味伝説だったなファイズも
12ヅャギ ◆ahr.9Uv.Sg :03/08/17 22:03 ID:DBnHmpEg
>>11
 劇場版とTV版はパラレルみたいですから、むしろ逆になるのでは。
 草加がオルフェノクで乾が特殊な人間だとか。
13名無しより愛をこめて:03/08/17 22:31 ID:mZ448U34
少なくとも、映画ではレオの攻撃(あれは使徒再生か?)を受け
適応出来ず死んだ草加はただの人間だったと言うわけか。
それとも既にオルフェノクだったとか?
14名無しより愛をこめて:03/08/17 22:36 ID:s3uMUglR
映画とは関係ないが本日放送で、草加は失敗作とか言ってたから、
遺伝子操作とかでベルトに適応出来るように生み出された人間、
みたいな線はどうだ?
15:03/08/17 22:41 ID:aRtmKVQy
スレ一発目のSSが映画本編とあまり関係なく変な話で申し訳ないんだが(汗
巧と木場が共存という答えを導き出す迄の苦悩や、
共存への試行錯誤なんてのも要素として入れておきたいんで

人間襲撃禁止令が出ているオルフェノクだが、闇に隠れて人知れず人間を襲う者もいた。
それがオルフェノクの本能とでも言うべきなのであろうか。
「お前っ!」「お前はもう人間は襲わないと、木場に約束したんじゃなかったのかっ!?」
ファイズは目の前にいるスネイルオルフェノクに向かって言う。
「すっ、すいませんっ!ファイズさんっ!!」
「、、俺も、、俺もわかってはいるんですっ、、」
「、、でも、、でも、、どうしても、、人間を襲いたくなって、しまうんです、、」
「、、我慢しようと思っても、人間を襲うことが頭から離れなくて、気が狂いそうになって、、」
「すっ、すいませんっ、すいませんっ!!ファイズさんっ!!」

スネイルオルフェノクはそもそもは人間を襲うことを畏れていた。
それは人を傷つけたり、殺したりするのはいけないことである、
という人間的倫理感に縛られていたのかもしれない。
彼はオルフェノクと化しても人間のモラルに囚われていたのかもしれなかった。
だがスマートブレイン社は、社命で強制的に無理矢理スネイルオルフェノクに人を襲わせた。
一度人を襲ったスネイルオルフェノクは人間を襲うことに目覚め、それに病みつきになってしまう。

一種の中毒でもあるかのように人間を襲うことを求めるスネイルオルフェノク、
そのスネイルオルフェノクを諭したのはホースオルフェノクこと木場勇治であった。
スネイルオルフェノクはホースオルフェノクこと木場勇治に、もう二度と人間は襲わないと約束したハズだった。
だが、木場が姿を消した後、スネイルオルフェノクは
人間を襲いたいという激しい衝動に駆られ、それに打ち勝つことが出来なかった。
しかし、それも人間襲撃直前、ファイズ巧によって阻止された所であった。
「すいませんっ、すいませんっ!!ファイズさんっ!!」
咆哮しながらファイズに謝るスネイルオルフェノク。
その姿を前に、ファイズこと巧はどうすべきか、悩んでいた。
こんな時、木場であればどうするであろうか?そう思わずにはいられなかった。

公園で遊んでいる子供達。やがて日が暮れはじめ、辺りは徐々に暗くなりつつあった。
遊んでいた子供達はやがてひとり、またひとり、家路へと帰って行く。
そして、すっかり日が沈んでしまった時間、公園にはまだ2人の子供が残っていた。
「タケちゃんはまだ一緒に遊んでくれるよね?」
「お母さんがね、仕事の帰り迎えに来てくれるから、それまでだったら平気だよ」
「ヨっちゃんはまだお家に帰らないの?」
「うっ、うん、、」「なんで?お家の人心配しないのっ?」
「・・・・・」小学生低学年くらいの年頃であろうか、ヨっちゃんはしばし黙っていた。
「ぼ、僕ね、、お家に帰るの、、コワイんだっ、、」ヨッちゃんはおもむろにそう言った。
「何で?」友達のタケちゃんは不思議そうに尋ねる。
「、、最近、お母さん、、様子が変なんだっ、、」
「以前はとっても優しかったのに、、最近ではいつも怒ってばかりで、、」
「、、僕を、、ぶったり、蹴ったり、するんだっ、、」
「それもずっと、、」事実ヨっちゃんの体は全身青痣だらけあった。
だが服に隠れたその痣を、まだ年端もいかない友達が気づく訳はなかった。

「嘘だよっ、そんなぁ。僕ヨっちゃんのお母さん知ってるけど、優しくて綺麗なお母さんじゃないかっ」
「だから、最近になってからなんだってばぁ、、」
「僕、、毎晩、、死んじゃうんじゃないかって、、思うぐらい、、ぶたれるんだよ」
「お、お母さん、、お母さん、、もしかして、、オルフェノクになっちゃったんじゃ、ないかなぁ、、」
「ヨッちゃんのお母さんがオルヘノクゥッ?」
「そんなことある訳ないよぉっ!オルヘノクなんて、滅多にいないってパパが言ってたもんっ」
「いや、きっと、そうだよ、、お母さん、オルフェノクになっちゃったんだよ、、」
「ヨっちゃんのお父さんは何て言ってるの?」
「お父さんは、仕事で、家にいないことが多いから、、まだ何も言ってないんだ、、」
「きっとヨっちゃんの思い過ごしだって」「あっ!お母さんだっ」
ヨっちゃんの友達も、お母さんのお迎えが来て、2人で帰って行ってしまった。
「、、、帰りたくないなぁ、、、」そう言って夜の公園にひとりで泣きべそをかくヨッちゃん。

それでもヨっちゃんは泣きべそをかきながら家に帰ることにした。
「洋太っ!!」「あんたいつまで遊んでいるのっ!!」母親はヨっちゃんを激しく叱った。
それはしつけであるとか、愛の鞭であるとか、そういったものを遥かに越えた暴力であった。
「おっ、お母さん!ごめんなさいっ!!」泣きながら謝り続けるヨっちゃん。
「あんたも家に帰って来ないっていうのっ!?お父さんみたいにっ!?」
「あんたがいい子じゃないからっ、お父さんが帰って来ないんでしょっ!?」
「お父さんがあんな女の所に入浸っているのも、全部、全部あんたのせいよっ!!」
母親は訳のわからないことを叫びながら、ひたすらヨっちゃんを虐待し続けた。
ヨっちゃんは今日こそ、自分は本当に死ぬ、そう感じた。

その時、子供を虐待し続ける母の背後に、物陰から忍び寄る影。
母親がその存在に気づき後ろを振り向いた瞬間、既にその影は母親を襲っていた。
ヨっちゃんはその光景に驚き、声を出すことさえも出来なかった。
やがてヨっちゃんの目の前で、砂となり崩れ落ちて行く母親。
「、、お、お母さんは、、オルフェノクじゃなかったんだ、、」
母親の死を目の前にした割には、意外な程に冷静な子供。
むしろオルフェノクの方が遥かに動揺していた。
「、、君、、す、す、すまなかったね、、」
「、、き、君の、、お母さんを殺してしまってっ、、、」
「ううん、いいんだよ」「ありがとう、オルフェノクさん」
「、、僕、お母さんに酷いことばかりされてたから」
「お母さんなんか死んじゃぇって思ってたんだ、ずっと、、」
母親の死を目の前にして冷静な子供は平然とそう言ってのけるのだった。

そこへ丁度クリーニングの配達に現れる巧。
「おっ、お前っ!またやったのかっ!?」巧は部屋に残っている砂を見て言う。
そうそのオルフェノクとはスネイルオルフェノクであった。
「すっ、すいませんっ!ファイズさんっ!!」
「、、お、俺は、、ダメな奴なんですっ、、」
「、、オルフェノクにも、人間にもなれないっ、、ダメな奴なんですっ、、」
「、、また、、また、やってしまったんです、、」
「、、オルフェノクの力が、、俺にそうしろって、、」
「、、木場さんの、ようにも生きられない、、ダメな奴なんです、、」
咆哮するスネイルオルフェノクを前にして、携帯を手にじっと握り締める巧。
毎回、激しく後悔はしているが、それでも人間を襲うことを止められないスネイルオルフェノク。
果たして彼をどうしたらいいのか?巧は思い悩む。
その時、スネイルオルフェノクから思いがけない言葉が飛び出す。
「、、ファイズさん、、俺を、俺を殺してくださいっ、、」
「、、人間を襲いたくないのに、、襲わずにはいられない、、」
「、、もう、そんな自分が嫌なんです、、」
「、、ファイズさん、、お願いです、、俺を、、俺を殺してくださいっ、、」
スネイルオルフェノクの言葉に唇を噛み締める巧。携帯を握る手にも力が込められる。

「待ってよっ!オルフェノクさんは僕を助けてくれたんだよっ!」
その時、スネイルオルフェノクを庇ったのは、母親を目の前で殺された子供本人であった。
「僕が、お母さんに酷いことされて、殺されそうになったから」
「オルフェノクさんは僕を助けてくれたんだよっ!」
母親を殺したハズのオルフェノクを庇う子供、
この子が今迄一体どれ程の虐待にあったのか、それは知る由もない。
「、、君、そんなこと言っちゃダメだっ、、」
「、、君のお母さんじゃないかっ、、」スネイルオルフェノクは子供に諭す。
「でも僕、お母さんが死ぬのを見て、これで助かったって思ったんだ」
「お母さんからいじめられる毎日がこれで終わるって、、」
「虐待かっ、、」巧はポツリと呟いた。
オルフェノクの中に木場のように人の心を持った者いれば、人間でも人間らしさを失った者も大勢いる。
巧の心の中で疑問がまた頭をもたげる。俺は誰を守る為に誰と戦うのだ?

「、、ファイズさん、、違うんですっ、、結果的には、この子を助けましたがっ、、」
「、、それでも、人間を襲ったのは、、俺の中のオルフェノクの欲望からですっ、、」
「、、ファイズさん、、お願いです、、俺を、、俺を殺してくださいっ、、」
巧はファイズフォンを開き、ボタンを押そうとする。
だが巧にはボタンを押すことは出来なかった。携帯を持つ手を下に下ろす巧。
「今回は、情状酌量ってやつだっ」
「お前が人間を襲うとするなら、俺は何度でもお前をぶちのめす」
「お前が人間を襲わなくなる迄なっ」
「、、ファイズさんっ、、」泣き崩れるスネイルオルフェノク。

だがその時、床が揺れ、そこから突如現れ奇襲をかけるエキセクタムオルフェノク。
手に持つ槍でスネイルオルフェノクの体を一突きにする。
どてっ腹に槍が突き刺さったスネイルオルフェノク。
「人間を狩るのは禁止されているハズだっ。上からの命令は絶対なんだよっ」
エキセクタムオルフェノクから投影される人間の姿はそう言い放つ。
「、、これで、これで、いいんです、、ファイズさん、、」
うめき声を上げながら青い炎を上げて砂と化していくスネイルオルフェノク。

「お前らっぁ」激しい怒りの衝動に駆られる巧。
「人間はなぁ、やり直しはいくらでも出来るんだよっ!!」
巧はファイズフォンのボタンを押す『standing by』
「変身っ!!」ファイズフォンを高く掲げベルトに装填『complete』
巧の体に赤いラインが走り、その姿はファイズへと変わっていく。
22名無しより愛をこめて:03/08/17 22:48 ID:aRtmKVQy
このスレはネタバレ含むので基本的にはsage推奨がいいか?
劇場版は今熱い話題だから、荒れそうでコワイんだが
23名無しより愛をこめて:03/08/18 15:19 ID:gF4+Kxzi
木場さんの話出来たんですけど出してもいい?
24名無しより愛をこめて:03/08/18 18:00 ID:pasSBVdE
>>23
全然いい!期待している
25名無しより愛をこめて:03/08/18 18:30 ID:Qt3KoFrs
とりあえず俺はオーガの話を考えている
2623・ではお言葉に甘えて:03/08/18 18:37 ID:PNPf64Wq
狭間に立つ者・1

(巧がオルフェノクかもしれない、って言われた時、あたしすごい嫌な気分になった・・・)

(いつ、あたし達の敵になるかもしれないし。信用できないのよね。・・・だからさぁ、早く死んでよ)


「海堂・・・・・・・・・結花・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・・・・
 俺は一体何をやってたんだァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!」

海堂も結花も殺され、僕はたった一人、スマートブレインに捕らえられた。
真っ白な部屋の中、白い拘束衣を着せられ、
死ぬこともできず、ただひたすらに、僕は生き地獄を味わい続けた。

信じていた人に裏切られた。
オルフェノクからも、人間からも忌み嫌われ、蔑まれても、それでも彼女は僕等を信じ続けてくれた。
園田真理さん。
でも、結局は彼女も、数多いる人間の中の一人だった。
あの水原という男と同じく、オルフェノクに対し不信感を抱いていた、人間の中の一人だった。
27狭間に立つ者・2:03/08/18 18:39 ID:PNPf64Wq
どうしてずっと信じていたんだろう。
結局、僕等は彼女達人間に、踊らされていただけだったじゃないか。
何を言っても信じてもらえず、何をしても疑われ、最後に起こした行動でこの様だ。
乾君も、他の人間達同様、僕達のことが信じられなかったのだろうか・・・。
同じ夢を抱いていると思っていた彼。
今、彼はファイズとして、人間の側に立ち、人間を守っている。
当たり前だ、彼も人間なのだから。
ならば、最早彼も信じることはできない。

そうなれば・・・・もう僕は・・・誰も・・・何も信じることができない・・・・・。
海堂・・・結花・・・・僕等はずっと・・・・何をしてきたんだろう・・・・・・・。
棘の道であることを承知で、君達は僕に付いてきてくれた・・・。辛い生き方だって、わかってたはずなのに・・・・。

何で・・・・何で君達が死ななくちゃいけなかったんだろう・・・・・・。


「それは全て、人間達のせいですよ」

突然、声が聞こえた。

「オルフェノクになれない未完成な人間は、我々オルフェノクを恐れ、裏切りという行為で、自らの保身を図った」
聞き覚えのある声だった。
スマートブレイン社長、村上狭児の声。
「愛を以って接し、愛あるが故に襲うという我々の行動を、彼ら未完成な人間達は理解できない。
 そして君も、そんな人間達を信じ、我々に刃向かってきましたが・・・その結果がこれです。
 結局、君の大切な仲間であった海堂直也も、長田結花も、彼らのせいで死ぬことになってしまった。
 オルフェノクと人間の共存など、不可能なのですよ」
28狭間に立つ者・3:03/08/18 18:40 ID:PNPf64Wq
オルフェノクと、人間の・・・・・・共存。
確かについさっきまで、僕はその理想を胸に生きてきた。
だが、その報いはあまりにも悲惨だった。
何故だ・・・どうしてこんなことになった・・・!?

「先程も言いましたが、人間のせいですよ」
僕の心を読んだかのように、再び村上の声が響く。

「オルフェノクになれない人間など、死んだほうがいい。
 そうでない人間には、生きて、人生を全うする価値があります。
 だからこそ、その為に我々が残った人間達を管理していく必要があるのです。
 帝王のベルトを使ってね」
「帝王の・・・・・ベルト・・・・・・・・人間を・・・・・・管理する・・・・」

不意に、部屋のドアが開き、誰かが入ってきた。
「はぁーい♪ 勇治くん」
スマートレディ、彼女が部屋に入ってきた。手に何か持っている。
「あらあら、ずいぶん部屋の中が散らかってますね〜。
 それにその顔。もしかして泣いてんですか〜? だったら、後でお姉さんが慰めてあげますね♪
 その前に、これ」
そう言うと、彼女は手に持っていた物を僕に差し出した。
ベルトだった。

「これは・・・・・・・・」
「それが帝王のベルトです。
 今のあなたには、そのベルト・・・オーガドライバーを装着する資格があります。
 無論、オルフェノクとして。
 しかし、ベルトを受け取らず、その部屋の中で生きていく・・・そんな選択もあります。
 仲間の死を悼みながらね。
 ですが、今のあなたなら、どうすることが一番良い選択なのか理解できていると、私は信じていますよ」
「社長もこう言ってますし、勇治くん、どうしますか?♪」
29狭間に立つ者・終:03/08/18 18:41 ID:PNPf64Wq
・・・僕は、オルフェノクと人間の共存のために、今まで戦ってきた。
そして、そんな僕のそばには、常に同じ先を見ていた信じるべき仲間達がいた。
海堂、結花、乾君、真里さん・・・・・。
だが、今の僕には、何も無い。
信じるものも、仲間も、夢も、何もかも失った。
残ったものは、人間への・・・・憎悪。

もう僕は何も信じない。
仲間も、そして人間達も。
愛なんか存在しない。
刃向かう人間は、誰であろうと殺す。
たとえそれがかつて信じていた仲間・・・乾君や真理さんであろうと。


僕は・・・・・オルフェノクとして生きていく。



「帝王のベルトを・・・・オーガドライバーを・・・・僕に渡せ・・・・・」 

30狭間に立つ者作者:03/08/18 18:44 ID:PNPf64Wq
というわけで短い話でした。
本当は、アリーナのバトルも木場さんの心情を妄想しつつ書きたかったんですが、
完全に興奮してたんでセリフをよく覚えてないんで断念しましたw
なんで、いずれまた参上するかもしれないです。

とりあえず、木場さんがプニを守るに至った感情の動きについては脳内で書きあがってるんですがw
31名無しより愛をこめて:03/08/18 19:46 ID:NFhM68pD
age
32名無しより愛をこめて:03/08/18 20:46 ID:ZiNWobFF
age
33名無しより愛をこめて:03/08/18 20:51 ID:IUjoFpCZ
ピープロ作品のライセンスについて

2003年5月15日をもちまして、
円谷クリエイティブでのピープロ作品のライセンス窓口業務を終了致します。
以後は、株式会社ピープロが直接にライセンス窓口となります。
今後共、同キャラクターをよろしくお願い致します

34名無しより愛をこめて:03/08/18 20:55 ID:3xrsWgjQ
漏れのようなSS嫌いだけど劇場版について盛り上がりたいヤシは
どうすれば・・・
35名無しより愛をこめて:03/08/18 20:56 ID:3xrsWgjQ
失礼、ちゃんとスレあったのね
ttp://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1061137752/
36名無しより愛をこめて:03/08/18 20:59 ID:IUjoFpCZ
ネタバレさんを見守るスレ
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1058249233/l50
37名無しより愛をこめて:03/08/18 21:13 ID:8+yAl1+Q
エラスモテリウムオルフェノクの激しい攻撃…。
発射された幾本もの輝く針が、愛しいあのひとを狙った。
とっさに自らの体を壁としてあのひとを守る。
針…しかし巨大なオルフェノクから放たれたそれは、
無残にも、鋭く太い槍として、その体に突き刺さっていった。
決定的な何かが、自分の中で壊れるのを感じる。
普段は決して、優しい言葉をかけてはくれなかったあのひとが、
駆け寄ってくる。その声が、自分だけにははっきりと聞こえる。

「オートバジンンーーーー!!
死ぬな!俺は本当のことを
まだお前に言っちゃいねえええ!!」




えーと、こういうのでいいんですか?
38名無しより愛をこめて:03/08/18 21:21 ID:3xrsWgjQ
>>37
(*´∀`)ハァハァ    ・・・・・・ハッ?!
39名無しより愛をこめて:03/08/18 21:24 ID:ZDyp/LbT
>>37
萌え萌え(・∀・)DA!
401:03/08/18 21:28 ID:LWX00LGt
>>37
全然いい!なんでもありな方がいいよね、とマジレス
41名無しより愛をこめて:03/08/18 21:30 ID:vMJE2Axw
劇場版に限るけど
「ファイズに変身できるのはオルフェノクだけ」っていう可能性は低くなった
42名無しより愛をこめて:03/08/18 21:35 ID:LWX00LGt
実は、大首領がオルフェノク因子のウィルスを巧に植付け、
巧はこの世ではじめて誕生したオルフェノクとなり、
巧を媒介にしてオルフェノク因子のウィルスが国中にばらまかれた。
その事実を知った巧は責任を感じ、その十字架を背負って、巧はファイズとなって戦う。
という昭和風な妄想ネタはどうだ?
43名無しより愛をこめて:03/08/18 21:42 ID:3xrsWgjQ
今回の映画は昭和リスペクトがたんまりでそういう妄想受け付けやすい
かもにぇ
44帝王・オーガ:03/08/18 23:20 ID:dU1BZVcw

真理の前に立ちはだかる巨躯エラスモテリウムオルフェノクが咆哮する。
エラスモテリウムオルフェノクから放たれる無数の光輝くニードル。
「真理ぃっっっっっ!!」
真理を庇いニードルに串刺しにされたのは、オーガではなく、赤いファイズ。
「巧っ!!巧っ!!」
再びその巨躯から放たれる無数の光輝くニードル。
ファイズは真理を守る為、仁王立ちでその光の輝きをすべて我が身に受け止める。
「巧っ!!巧っ!!」ファイズに背後からしがみ付き泣き叫ぶ真理。

「乾君っ!!」オーガこと木場勇治は手にするオーガストランザーを、巨大なエネルギーの柱の剣と化して、
フォトンブラッドの刃をエラスモテリウムオルフェノク目がけ振り降ろす。
エラスモテリウムオルフェノクの巨躯に巨大なエネルギーの剣が激突する。
周囲を激震させる程の衝撃、拮抗する巨躯と巨大剣。
オーガは渾身の力でフォトンブラッドの刃を振り切る。
その力に負け、巨体を横転させて転がるエラスモテリウムオルフェノク。
瀕死のファイズは最後の力を振り絞りブラスターを放つ。
光弾がエラスモテリウムオルフェノクを直撃し、その巨躯は砂と化して崩れ落ちて行く。

「乾君っ!!」変身を解除し、乾巧の下へ駆け寄る木場勇治。
「巧っ!!巧っ!!」「嘘でっしょっ!?」
大粒の涙をポロポロこぼしながら、巧にしがみ付いて泣き叫ぶ真理。
その姿を見て、木場の脳裏には真理の先程の言葉が思い浮かぶ。
『闇を切り裂き、光をもたらす』
『お前の期待に応えるのはキツイなぁ』
『巧なら出来るよ』『巧は巧だから』
木場はその時、自分が見た真理が本当の真理ではないと悟った。
「巧っ!!巧っ!!」「、、私の期待に、応えてくれるんじゃ、なかったのぉっ!?」
真理は巧を抱きかかえ必死に泣き叫ぶ。
45帝王・オーガ:03/08/18 23:21 ID:dU1BZVcw

巧の脇に愕然と膝を着き、崩れ落ちるように座り込む木場勇治。
「、、乾君、、すまない、、僕は、僕は、何て事をしてしまったんだっ!!」
人間を最後迄信じる事が出来ず、理想を諦めてしまった自分を木場は呪った。
「、、なぁっ、木場」「頼みがあるんだっ」
「、、俺の代わりに、こいつの期待に、応えてやってくれ、、」
「、、こいつの期待に、応えるのはキツイが、大丈夫、お前なら出来るっ、、」
「、、乾君、、」
「、、そして、理想を叶えてくれっ、、」
「、、俺の代わりにっ、、お前の理想は、俺の理想だっ、、」
そう言い目を閉じて、真理の腕の中で力なく崩れ落ちる巧。
「乾君っ!!」「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
木場と真理の絶叫がホール内にこだまする。

「社長、おめでとうございますっ、これで真の帝王の誕生ですねっ」
「これでオルフェノクの真の楽園は完成されます」
オーガの勝利に浮かれるスマートレディと首だけの村上社長。

ホール内の1万人のオルフェノクは帝王に祝福の歓声を送る。
だがやがてその歓声は、人間解放軍の象徴的存在・真理を殺せというコールに変わって行く。
「、、真理さん、すまない、、僕のせいで乾君を死なせてしまった、、」
「、、だけど、僕はこの償いをする、、」
俯きながらそう言う木場はオーガドライバーにオーガフォンを装填する
「…変身っ」オーガへと変身した木場。
オーガは右腰にセットされているオーガストランザーを手にし、ミッションメモリーをセットする。
フォトンブラッドの刃が無限に伸びる長剣と化す。
興奮しヒートアップしていく1万人のオルフェノクの歓声、真理を殺せというコールも最高潮に達する。
46帝王・オーガ:03/08/18 23:22 ID:dU1BZVcw

だがオーガはその巨大な剣を振りかざし、熱狂する1万人のオルフェノクがいる会場内の一角をぶった切った。
フォトンブラッドの刃は数百人のオルフェノクを一瞬のうちに葬り去った。
会場の壁が突き破られ、崩れ落ち、落下した瓦礫の下敷きとなるオルフェノク達。
それまでヒートアップしていた会場は、一瞬で静まり返る。

「いいかっ!!よく聞けっ!!」オーガが迫力溢れる大声を張上げ叫ぶ。
「今から俺がオルフェノクの王だっ!!」
「俺がこの力ですべてのオルフェノクを支配するっ!!」
「王の命令は絶対だっ!!」
「すべてのオルフェノクに命じるっ!!今から人間を襲うことを一切禁じるっ!!」
「もし命令に背いた者は、誰であろうとこの剣でぶった切るっ!!」

恐怖に怯える真理に、オルフェノクの王となったオーガ・木場勇治は言う。
「例え、力による支配でも、僕はオルフェノクから人間を守ってみせる、、それが僕の償い」
「乾君が夢見た理想が実現されるその日迄、僕は敢えて鬼神となろう」
「人間の心を持ったオルフェノクとして、オルフェノクを支配し、人間を守る鬼神(オウガ)となろう」
こうして木場勇治は真の鬼神(オウガ)となることを選んだ、亡き友との約束を果たす為。

「こういうことになったら、こうしろと上の方に言われてるんです」
スマートレディはスマートブレイン社長・村上狭児の首が入った生命維持装置を押して行く。
47:03/08/18 23:26 ID:dU1BZVcw
俺の中のオーガのイメージを増幅させて書いたらこうなった
48名無しより愛をこめて:03/08/19 03:04 ID:5AhsNBNa
>>47
ああ、これもいい。TVではありえない驚きを劇場版で!って路線だね。

SSじゃないけど…。
レオのSB社タトゥーは、彼がSB社製遺伝子改造人間
であることを表しているのだろう。
サイフェノクは、その失敗作。ふたりは兄弟のようなものだ
Ψ(サイ)=犀(サイ)の発想からなのだが。
49名無しより愛をこめて:03/08/19 03:37 ID:yrN0q0r4
>>48
上手い! メモリー一枚やっとくれっ!
50名無しより愛をこめて:03/08/19 15:24 ID:yJcz2ppa
手を取り合い、光溢れる外へと歩んでいく真理と巧。
「ねぇ・・・何処まで行くの?」
「さぁな、行けるとこまで行くさ」
そして・・・・・・・・


「タックーーーン!!あぁ、真理ちゃんも!良かった、二人とも無事だったんだぁ!」
「お前・・・・・、まさかずっと歩いてきたのか?」
「酷いよ、タックンったら!あんなとこで置いてけぼりにするなんてさ。」

あの後はこんな感じだったんじゃないだろうかと想像した。
51名無しより愛をこめて:03/08/19 15:52 ID:3jusN7jD
>>48
そのアイディアで稚文ながら書かせていただきます。
52名無しより愛をこめて:03/08/19 16:02 ID:MxM9Za+Y
キモイので終了。
53名無しより愛をこめて:03/08/19 16:12 ID:FaAZI8Y6
もうすこしスネーク海堂の最後、大切に活躍させてほしかった。無駄死にになってしまって勿体無いぞ。
結花の別れシーン、泣けるとこなのに泣けなかったのは残念。皆さんは(心で)泣けましたか。
回想シーンの真理と巧の手を繋ごうとする所は今までのいっしょにいた経過の重さが語られていたと思いますのでGOOD!
54名無しより愛をこめて:03/08/19 19:26 ID:wYNaYgjK
>>52
キッツいな〜、お前の期待に応えんのも
55名無しより愛をこめて:03/08/19 19:29 ID:wYNaYgjK
無粋な奴だとわかっちゃいるが
俺が一番気になったのは、オイオイお前らベルト忘れてるよっ

なので俺はこう妄想した
「酷いよ、タックンっ!僕がベルト拾っといたんだからねっ!」
56名無しより愛をこめて:03/08/19 19:56 ID:X6x9bnIO
【勝手に】石の森漫画原作【補完】

http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1061225223/l50
57赤い絆 1:03/08/19 23:14 ID:IcY/VocO
花形は焦っていた。真理がオルフェノクにさらわれ、雅人は足止めをくっている。
巧だけはなんとか真理救出に向かえたが、それが罠であることは花形には分かっていたのだ。
花形は真理と巧を助けるため、闇の牢獄を破り道無き道を急ぐ。
・・・だが、今花形は足を止めていた。花形の前には男が立っている。
自分を落とし入れ、闇につないだ男が。
「・・・村上。」
「あなたと話すのは何年振りでしょうか?お久しぶりです。花形前社長。」
村上は余裕の笑みで花形の前に立ちふさがっている。待ち伏せしていたのだ。
「あなたの行動はすべて分かっているんですよ。あなたは仮にもSBの社長だった男だ。SBを甘く見てはいけませんよ。」
「村上。ならば私がなにをしようとしているか知っているはずだ。・・・そこをどけ。」
花形は一歩踏み出すが、村上は微動だにしない
「花形さん。残念ですがそれは出来ません。それに・・・」
花形が村上の横を通りすぎようとした瞬間   ドシュッ
「グッ!?」
花形の胸にオルフェノクに変化した村上の手刃が突き刺さっていた。
「私がここに居るのは、あなたを始末するためなんですよ。」
                               続く
58赤い絆 2:03/08/19 23:15 ID:IcY/VocO
勢い良く花形の胸から手を引き抜くと、大量の血が流れ出た。
「くぅ!!わ、私を殺して、計画が実現すると思っているのか!!」
激昂する花形だが痛のせいか足元がおぼつかない。
「安心してください。もうあなたの手を借りなくても、問題無いレベルまできているんですよ。」
威圧的に花形に近づく村上
「あなたも、園田真理も、乾巧も、もう必要無いんですよ。」
「・・・それが、評議会の決定か。ふん、利用するだけして用がなくなったら始末する。セオリーどうりだな。」
花形の足にグッと力が込められる
「だが、私はここで止まるわけにはいかんッ!!!」
花形は一瞬で空中高く舞い上がり村上に襲い掛かる

「ふっ。下の下ですね。」
                                続く




59名無しより愛をこめて:03/08/19 23:18 ID:tZUuPJbp
>>14
要するにガノタ的に言うと
草:強化人間
犬:ニュータイプ
Kタロー:オールドタイプ
ってことだな?
60名無しより愛をこめて:03/08/20 22:12 ID:/gtYRRsy
>>57,58
あのシーンの同時間軸の話ですな
確かに映画で花形はどうなったのか?と俺も思いました
続き頑張ってください
61名無しより愛をこめて:03/08/20 22:16 ID:/gtYRRsy
キャライメージ的には
巧:アムロ
草加:シャア
Kタロー:ハヤト
真理:セイラ
木場:ララァ
なんだがな
62名無しより愛をこめて:03/08/20 22:48 ID:ZJsFL7lS
今年は去年よりはみんな納得のいった話だから、補完も少ないかな?
<まだ公開4日目だが

海堂メインの話をなんかやりたいんだが、どんなんがいいかなぁ
63名無しより愛をこめて:03/08/20 22:59 ID:csVnZ4dC
俺は
スマブレ地下処刑場から逃げだして、戦いながらファイズブラスターを入手し、
森の中で力尽きるたっくんストーリーを妄想してハァハァ…。

「俺は帰らなくちゃいけない、あいつの待つ所に!」


俺、キモー(゚Д゚)
64名無しより愛をこめて:03/08/21 00:26 ID:6kSScj0V
>>26-30は続かないの?
ていうか木場って「僕」じゃなくて「俺」じゃない?
65名無しより愛をこめて:03/08/21 01:32 ID:tfDdMITA
ライオトルーパー100人斬りを達成して力尽きる巧。
隊長フェノクにとどめを刺され、泥の中に倒れる亡骸。
引き上げるライオ隊。
雷鳴と豪雨の中、人狼復活。
泥に埋もれていたライオのベルトを拾い、スマブ社侵入。
555ギア奪取。
社長と対決し、死闘の末首チョパ。ブラスターゲッツ。
スマレディ揮下、追っ手にボコられながら逃走。
追い詰められ川に落ちドンブラーコ
靴屋の親父、「ウホッいい婿!」
66名無しより愛をこめて:03/08/21 07:55 ID:tfDdMITA
来週は鰤タン萌えですか!(*゜∀゜)ハァハァ
67名無しより愛をこめて:03/08/21 07:55 ID:tfDdMITA
_| ̄|○  誤爆
68名無しより愛をこめて:03/08/21 08:01 ID:tfDdMITA
説明しよう!

鰤といってもGGXXでもDiabloでもなく、小公子セディの(r
69名無しより愛をこめて:03/08/21 18:42 ID:F5z9YPbL
>>65に触発されてチマチマ書いてます。 その内出すかもしれないんでそれまで忘れてて下さい。 でも現在、アクセス規制喰らい中。
70赤い絆 3:03/08/21 23:27 ID:mLs3acF1
「うおぉぉぉぉッ!!!」
ズンッ!!
アクセルクリムゾンスマッシュがオルフェノクに炸裂した
オルフェノクは灰になって朽ちていく
これでSB社が誇る「ラッキークローバー」は事実上全滅したのだ
「はぁ、はぁ・・・。おい、大丈夫か?真理?」
鎖で縛られた真理に近寄るファイズ
少し疲労の色が見える
「う、うん。あたしは大丈夫。あっ!」
立ち上がろうとした真理だが文字どうり雁字搦めなので思うように動けず転んでしまった。
「おいおい。ったく、ちょっと待ってろ今はずしてやるから。」
真理に駆寄りいとも簡単に鎖を引き千切るファイズ
「ありがと。・・・・。」
「?。なんだよ?」
「ううん。なんか、嬉しいなって。」
はにかむ真理 少し照れている
「はぁ?何言ってんだ?熱でもあるんじゃないか?」
「もうっ!!何よ、こんな時くらい・・・」
ブォォォォォン・・・
突然数台のバイクが真理とファイズの前に現れた
「何だ、あんたら。」
すかさず身構えるファイズ
「乾巧・・・園田真理・・・確認した。―SBの命により、お前達を抹殺する。」
ブォン・・ブォォン・・・ブォン・・・・・・
「!!!!」
いつのまにか二人は完全に取り囲まれていた
どの方向を見ても敵がいる
「・・・変身」
一人の男がファイズのような姿に変わったのを合図に次々と変身していく
「・・・真理、離れるなよ。」
「・・うん。」
                              続く
71名無しより愛をこめて:03/08/22 00:46 ID:NseoD2oi
>>57
何で社長に首から下があるの?
72名無しより愛をこめて:03/08/22 02:09 ID:GmvK4F2z
>>71
顔から直接手と足が生えているのでは。
73名無しより愛をこめて:03/08/22 02:59 ID:mvsuddTR
>>44-47 恐れ酢だけど、
木場っちはどっちに転んでも、悪に徹しきれもしない代わり
正統派ヒーローにもなれない定めなのね、とちょっと切なくなった
74赤い絆 4:03/08/22 08:11 ID:yV/3qRoA
ドガッ
「ぐわっ!!」
花形の体が激しく地面に叩き付けられる
出血のせいか、手足の感覚が鈍くなっている
「あなたもあきらめの悪い人だ。あなたが何をしようと、もう手遅れなんですよ。」
「・・はぁはぁ。な、何だと?」
ふらつきながら立ち上がる花形
村上は悠然と歩きながら続ける
「我々が開発した地上最強の部隊。ライオトルーパーを乾巧と園田真理抹殺の為に出動させたんです。テストを兼ねてね。」
「バカな!!?あれが完成していたと・・・」
「・・・ファイズ、カイザ、デルタに変わる新たなベルトの開発にも着手しました。あなたが用済みだといった意味が分かりましたか?」
村上は右手を巨大なトゲのように変え、花形の目前に立った
「もうまもなく世界規模でオルフェノクが一斉に行動を開始します。あなた達が消えれば、我々に抵抗できるものはこの世に存在しなくなる!!」
ドシュ!!
「!ぐォッ!!」
巨大なトゲが花形の胸を貫いた
「もう誰にも止められない!地球はオルフェノクの物になるのだ!!」
「・・・・・させん」
「・・・何?」
「お前達の思いどうりにはさせん!!!」
花形が大きく両腕をひろげると、大量のエネルギーが両手に集まり青いエネルギー球が出現した
「何!!?まだそんな力が!!くっ!」
止めを刺そうとした村上だが、遅かった
「終わりだっ!!村上ぃぃッ!!!」
カッ
二人はまばゆい光に包まれた
巨大な爆発が起こり大地が揺れた
                          続く
75名無しより愛をこめて:03/08/22 08:31 ID:a63/YO67
>>69頑張ってね
でも、いま続いてる赤い絆と被らないの?
76名無しより愛をこめて:03/08/22 09:16 ID:qdxm/NeS
77【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 12:01 ID:EcQX2/xz

人間らしさを失い壊れた関係であった母子、そして最後迄人間であろうと苦悩していたスネイルオルフェノク。
真理と巧はスネイルオルフェノクの死を悲しむのであった。
いつもの部屋に揃う、巧、真理、圭太郎、草加。
巧はソファに寝転がり、真理はテーブルに肘をつき手を組み考え込んでいた。
「ねぇ、巧、やっぱオルフェノクが人間を襲うのは本能なのかな?
肉食動物が草食動物を餌として見る様に、オルフェノクは人間を獲物としてしか見られないのかな?」
立って壁に寄りかかっている草加が補足する。
「確かに肉食動物は草食動物を餌にするが、だが肉食動物は食べる分だけの草食動物しか襲わない。
オルフェノクのようにやたらに獲物を殺すようなことはしない。」
「それって余計に性質が悪いじゃないっ!」テーブルの圭太郎が口を挟む。

「…そんなことはないっ」巧は起き上がりながらぶっきらぼうにそう言い放った。
「どうして?どうして、巧はそんな風に言い切れるの?」
「ねぇ教えてよっ、その理由をっ」
「あたしだってそう思いたいよっ、オルフェノクと人間は共存出来るって。
だから巧がどうしてそう思うのか教えてよっ」
巧は木場のことを思い浮かべていた。
例え、もし仮に人間を襲うことがオルフェノクの本能であったとしても、
木場のように理性でそれを抑えることが出来る者もいる。
巧はその事が喉まで出そうになったが、グッと言葉を堪える。
木場がオルフェノクであることを真理は知らない。
その真理に木場がオルフェノクであることを言う訳にはいかなかった。
もしいつか真理が、木場がオルフェノクであるということを知ることになったとしても、
それは木場本人の口から真理に語られなければならないことである、巧はそう信じていた。
だから今の巧には真理に何も言えなかった。
「ねぇ巧っ、教えてよっ!」しつこく食い下がる真理。
「うるせぇんだよっ…ただそんな気がしただけだっ」
「何よそれっ!全然理由になってないじゃないっ、信じられないっ、最低っ!!」
いつも心の中では違うことを考えているのに、それを言い表せない不器用な巧。
真理もまたそんな巧の性分をわかっていながら、いつも言い合いになってしまうのだった。
78【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 12:16 ID:LdZmsXVy

一方その頃木場は往く当てもない放浪の旅に出ていた。
オルフェノクハンターに狙われ、海堂と結花と別れ、乾巧と別れ、ただ一人で旅を続ける木場勇治。
持つ物も持たず、着の身着のまま、何の準備も支度もないまま旅に出ることになった木場勇治。
それはまさしく往く当てもなく彷徨う放浪の旅であった。
旅の途中、木場はふと思う。自分が本当に一人きりになったのはどれぐらいぶりであろうか?
自分が本当に一人きりになったのはオルフェノクに覚醒した直後以来ではないだろうかと。
確かに自分がオルフェノクとなり、人間ではなくなって、木場は孤独を感じていたが、
だが自分の傍にはいつも海堂や結花がいてくれた。木場はひとりぼっちではなかった。
同じ境遇の彼らがいつも自分の傍にいてくれたからこそ、自分は人間の心を持ち続けていられたのだと、
木場は海堂や結花と離れて改めてそのことを実感せずにはいられなかった。

夜、泊まる所の当てもない木場は公園のベンチに座り、いつの間にかそのままそこで寝込んでしまう。
木場は誰かに話掛けられ揺り起こされたのを感じ、再び目を開ける。
木場が目を開けると目の前には白いコック服の男性が立っていた。
「兄ちゃん、何やってんだい?」「こんな所で寝てると風邪ひくぞ。これから台風が来るっていうし。」
「あっ、すいません、、往く当てがないもんで」
「往く当てがない?何でまた?」
「…あっ、旅をしててお金を無くしてしまったんです」
まさか自分がオルフェノクハンターに追われているなどとは言えず、返答に困った木場は適当な返事をする。
「そうかい、それは大変だな」「あんた良かったら家に来るかい?」
「えっ!?そんなご迷惑では」
「いいから、いいから、いい若い者がそんな事気にすんなよ」
木場は一晩の夜露を凌ぐ為、コック服の男性の家にお邪魔することとなる。
79【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 20:40 ID:idiWZfg5

その男性の名は野間茂久と言い、家族でビザハウスを経営していた。
木場は店舗の空き室に泊めてもらい一夜を過ごすことになる。
翌日、木場は泊めてもらったお礼にビザハウスの仕事を手伝わせてくれと申し出る。
はじめは一日手伝うだけのつもりであった木場だが、
「往く所がないなら、しばらくここに居てもいいんだぞ、あんたが良ければ」
という店長の優しい言葉に甘えさせてもらって、
しばらくビザハウスのバイトとして住み込みで働かせてもらうことになる。

そこには木場がまさしく理想とするような心暖かい人々と、憧れるような家族の団欒があった。
「木場さんが良く働いてくれるから、うちも助かるわ」と店長の奥さん・陽子さん。
「木場のお兄ちゃん!遊ぼうよ」「あたし大きくなったら木場のお兄ちゃんのお嫁さんになるっ」
とまだ幼い店長の娘さんの美佳ちゃん。
「家族とこの店は俺の誇りだからな」店長は木場に誇らしげにそう語っていた。
木場は店長の家族の絆と団欒を見て、人間らしい暖かさやぬくもりを感じ、心和ませていた。
この店長の家族とピザハウスは今の木場には、海堂と結花と一緒にいた時ぐらいに心安らぐ場所でもあった。
木場はこの家族の団欒を見て、人間と共に生きて行きたいという自分の願いは間違いではないと改めて思う。

木場がピザハウスに世話になるようになって早一週間が過ぎようとしていた。
すっかり木場はこのピザハウスと店長の家族が気に入っていた。
もしこのまま自分がオルフェノクであることを忘れ、
ここでこの人達と共に暮らして行けるなら、どんなに素晴らしいことであろうか、
木場はそんなささやかな幸福すら夢見るようになっていた。
だがそんな木場の願いも脆く儚く崩れ去った。
80【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 20:50 ID:mo95S60A

それは木場がピザの配達から帰って来た時のことであった。
ピザハウスの前に手に銃を持った武装した人間達が立っている。
木場はその武装した集団が何者かよく知っていた。
人間達が武装した集団・オルフェノクハンター、木場はそれを見た瞬間、
オルフェノクハンターが自分を追ってここまで来たものだと思った。
木場は建物の影に身を隠し、その様子を窺う。
自分がここに滞在したことで、この家族に迷惑をかけてしまったのではないか?
木場の脳裏には、そんな考えがよぎり、心の中はざわめいた。
オルフェノクハンターはピザハウスの中に押し入り、何やら叫んでいる。
店の中からは奥さんと娘さんの声が聞こえてくる。
木場は自分を探しに来たにしては様子が少し変だと感じはじめる。
オルフェノクハンター達は、誰かを取り押さえて店より出て来る。
その光景を見た木場の顔が一瞬にして青ざめる。
「まさかっ、店長っ!?」

オルフェノクハンターが取り押さえ連行しようとしていたのはピザハウスの店長こと野間茂久であった。
「あなたっ!!あなたっ!!」「これは何かの間違いですっ、夫がオルフェノクのハズがありませんっ!!」
「お父さんっ!!お父さんっ!!」奥さんと娘さんは取り乱し泣き叫ぶ。
「待ってくれっ!!俺は違うっ!!」店長も必死で抵抗を試みる。
オルフェノクハンターの若い隊員が一瞬そこでひるむ。
「水原っ!!貴様何をやっているっ!!」若い隊員に向かって隊長から渇が入る。
「うっ、うるさいっ!!」若いオルフェノクハンターの隊員は手に持つ銃の銃座で店長の顔を殴りつける。
この騒ぎで店の近所の人達もまた外へ出て来る。
「…野間さん所のご主人、オルフェノクだったんですってよぉっ」
「…ええっ!いい人そうなご主人だったのに、見かけに寄らないわねぇ」
「…うちなんかあそこのピザいつも食べてたのよぉっ!オルフェノクになったりしないかしらっ?」
聴力が優れている木場の耳に嫌がおうでも人々の様々な言葉が聞こえて来る。
オルフェノクハンター達は必要以上に店長を殴る蹴るし、店長を連行しようとする。
81【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 21:14 ID:JxatJxT6

木場はその光景を目の当たりにし、いてもたってもおられず飛び出す。
自分もまたオルフェノクハンターに狙われているにも関わらず。
「待ってくださいっ!!そんなに殴ることないじゃないですかっ!!」
「本当に、本当に店長はオルフェノクなんですかっ!?」木場は必死で店長を庇おうとする。
「誰だ貴様はっ!?」幸いオルフェノクハンターは木場の顔を知らないようであった。
それもそのはず、木場の顔を見たオルフェノクハンターはみな命を落としたのだから、
木場の顔がハッキリしられていないというのは不思議なことではなかった。
木場は店長の連行を阻止しようと必死になって食い下がる。
殴られ蹴られ倒れている店長、床に倒れこむように座る奥さん、奥さんにすがりつき泣いている娘さん、
木場にとっては心の痛む光景であった。
あまりにしつこい木場にオルフェノクハンターのひとりが銃座で木場を殴りつける。
「うるさいっ!!邪魔をすると貴様も連行するぞっ!!」殴られた木場の額からは血が滲む。
理不尽な暴力に対する怒りに、木場は激情しそうになる。
だが、木場は理性でそれを押し止め様と懸命に努力する。
今ここで自分がオルフェノクに変身してしまったら、店長や奥さん、娘さんに迷惑をかけることになる。
店長がオルフェノクでなくても、店長へのオルフェノクだという嫌疑は一層強くなるばかりではないか。
もちろん木場の心の中には、彼らに自分のオルフェノクとなった姿を見られたくはないという意識もあった。
冷静を保つ様に自らに言い聞かせ、その場は我慢して堪える木場。

やがてオルフェノクハンターは野間店長を拘束し、車両に乗せ連行して行く。
泣き崩れる奥さん、奥さんにすがりついて泣く娘さん。
「クソッ!!」木場はやり場のない憤りを拳に込めてコンクリの壁を叩きつける。
コンクリの壁にはヒビが入り、細かい破片がポロポロと崩れ落ちる。
82【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 21:39 ID:y2S4hbTR

「野宮博士が用意してくれた対オルフェノク用の特殊スパイラル弾、使うまでもなかったなっ」
オルフェノク容疑者を捕えて盛上がるオルフェノクハンターの車両。
オルフェノクハンター隊長は先程の若い隊員に向かって言う。
「水原、お前、オルフェノクははじめてかっ?」
「はっ、はいっ」若い隊員は緊張しながら答える。
「いいか、どんな時でもオルフェノクに容赦はするなっ、例えそれが人間の姿であってもだ」
「はっ、はいっ!隊長」

野間店長を乗せたオルフェノクハンターの車両は、そのままオルフェノク研究施設へと向かう。
だがその途中の道で、オルフェノクハンターの車両の前に姿を現す青年の姿があった。
車両は急ブレーキをかけて止まる「馬鹿野郎っ!!危ねえじゃねえかっ!!」運転手はその青年を怒鳴りつける。
「いくら容疑者でも、あれはやり過ぎなんじゃないかな…」
「なんだっ!!お前はっ!?」
その青年の顔にオルフェノクの顔がオーバーラップする。
「オッ、オルフェノクッ!?」運転手は突然の予想外のことに慌てふためく。
その青年こそ木場勇治は自らの意思でホースオルフェノクへと変身する。
運転手の声を聞いたオルフェノクハンター達は銃を手に次々と車両から飛び出して来る。
疾走態となり前脚を上げ、フロントガラスを突き破りながら車両の屋根へと飛び登るホースオルフェノク。
ホースオルフェノク目がけオルフェノクハンター達は手に持つ銃を乱射する。
これを軽くかわしながら、車両の後部へと降り立つホースオルフェノク。
木場の目的は当然ながら人間達を攻撃することではなかった。
連行された店長を救い出すことただそれだけだった。

野宮博士がつくったという対オルフェノク用の特殊スパイラル弾を
ホースオルフェノクに向け乱射するオルフェノクハンター達。
だが、その効果はあまり見られないようであった。
「なんだこりゃ?ちきしょうっ!!これじゃまだ通常弾の方がましってもんだぜっ!!」
オルフェノクハンター達は口々に声高に不満を洩らす。
83【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 22:30 ID:hD/58sCO

オルフェノクハンター達の銃弾を浴びながらも、
疾走態の前脚で車両後部ドアを何度も蹴飛ばすホースオルフェノク。
頑丈に造られているハズの車両ドアも、度重なる衝撃に凹み変形して行く。
力ずくで車両後部のドアをこじ開けたホースオルフェノク。
車両内部へと入り手に持つ剣で店長を拘束している拘束具を叩き切る。
身体の自由を取り戻した野間店長。
「店長、ここから逃げますよっ!」
「その声は木場君っ!?」「まさか、君がオルフェノクだなんてっ!!」
「今はそんなこと言っている場合じゃないでしょっ!」
ホースオルフェノクは店長を庇う様に車両から出て、
前脚を上げ、手にする剣を振り回し、オルフェノクハンター達を牽制する。
だが人間を殺したくはないと思う木場の手加減した攻撃では、
オルフェノクハンター達の動きを完全に止めることは出来なかった。
「こうなったら止むを得んっ、捕獲したオルフェノクの射殺を許可するっ!!」
オルフェノクハンターの隊長は隊員達にマイクを通じ伝える。
車両後部で包囲されてしまったホースオルフェノクと野間店長。
オルフェノクハンターの銃撃は容赦なく止む事は無い。
このままでは自分はともかく店長を守りきることは出来ない、木場がそう思った時であった。
野間店長の顔にオルフェノクの顔がオーバーラップする。
84赤い絆 5:03/08/22 22:43 ID:ztqz5K4H
「巧!!!」
ライオトル―パーの波状攻撃で吹っ飛ばされたファイズからベルトが外れた。変身が強制解除され、巧は敵の真っ只中で生身を晒す
「くっ、・・・真・・理・・・。」  「た、巧。」
お互いを求め、地べたを這いずりながら近づく二人
そんな二人にライオトルーパー部隊長の銃口が向けられた
「・・・止めだ。」
引き金にかけた指に力が込められ・・・  ピーピーピー
SB社からの緊急コールだ
「はっ。え?しかし・・・カイザが・・・分かりました。」
隊長はアクセレイガンをジャイロアタッカーに戻し部隊全員に通信を送った
「作戦中止!全員SB本社ビルへ急行せよ!!」
ブォォォォォォォォォン・・・・
隊長に続いて一斉に引き上げていくライオトルーパー部隊
だが、数人のは不満そうだった
「ちっ、もう少しなのによォ。」「おい。」
隊員の一人が真理を縛っていた鎖を見つけなにやら合図した「おっ。面白そうだな。よし!」
ふてくされていた隊員は鎖を受け取り嬉々として巧に向かっていった
「真理・・・」
「巧・・・」
互いに手を取りぎゅっと握り締めている二人
だが、突然巧の足元にライオトルーパーが現れ巧の両足を鎖で縛りつけた
「なっ!?」  「よし、行くぞー!!」
ブォォォォォォォン
「うわっ!!!」
二人の手が無残に引き離された
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ジャイロアタッカーに引きずられて巧が見えなくなっていく
「巧ーーーーーー!!!」
真理はありったけの声で叫んだが既に巧は見えない 「た・・・く・・み・・・・」
巧の名をつぶやきながら真理の意識は闇の中へと沈んでいった
                                続く
85【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 22:46 ID:YZCGzEyb

「店長っ!!店長は、いえ店長も、本当にオルフェノクだったんですね!?」
ドルフィンオルフェノクへと変身する野間店長。
「俺はオルフェノクであることをずっと隠して、人間として暮らして来たんだっ」
「奥さんや娘さんは?」木場の問いにドルフィンオルフェノクは首を横に振る。
「妻にも娘にも決して自分がオルフェノクであることを打明けなかった」
「今の幸せを壊したくはなかったからな」
「家族と幸せに暮らしたい、上手いピザをみんなに食べてもらって喜んで欲しい、
ただその一心で、今迄ずっとオルフェノクであることをひた隠しにして来た」
「だがそれもどうやらここ迄の様だな…」
「そんなことっ!」木場は何かを言いたげだった。
あの奥さんと娘さんなら、店長がオルフェノクであったとしても受け入れてくれるに違いない、
木場はそう思いたかった。だがそれは言葉に出して言うことはとても出来なかった。

その間もオルフェノクハンターの銃撃が止むことなく続く。
救いなのは今回のオルフェノクハンターの武器が、
オルフェノクに対してあまり効き目のない物であるということだった。
銃撃を浴びながらも車両より逃げ出すことに成功するホースオルフェノクとドルフィンオルフェノク。
手加減しながらもオルフェノクハンターを蹴散らし、退路をつくり出した2体のオルフェノクは、
駆けながらそのまま逃亡をはかろうとする。
その時、オルフェノクハンターの隊長が叫ぶ。
「待てっ!!貴様の妻と娘がどうなってもいいのかっ!?」
その言葉でドルフィンオルフェノクの動きがピタリと止まる。
「貴様が逃亡するというのなら、妻と娘に人質になってもらうしかないなぁっ」
オルフェノクハンターの隊長はそう言いながら、銃を手に構える。
隊員達も隊長に倣い銃を構える。
86【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 23:15 ID:Y7Mdh9xn

「ダメだっ!!行っちゃダメだっ、これは罠だっ!!」
ホースオルフェノクより投影される木場の姿は叫ぶ。
「…陽子…美佳…」ドルフィンオルフェノクに選択の余地などなかった。
愛する者に迷惑がかからない方法はただひとつしかない、例えそれが罠だとしても。
ドルフィンオルフェノクは歩を進めオルフェノクハンター達の元へと戻ろうとする。
「店長っ!!店長っ!!」店長を呼び続ける木場。
そんな木場に野間店長は最後の別れの一言。
「木場君、私はね、愛しているんだよ、家族を…」
ドルフィンオルフェノクは変身を解き、野間店長の姿に戻る。
オルフェノクハンター隊長の合図で、人間の姿に戻った店長に一斉射撃が浴びせられる。
いくらオルフェノクであるとはいえ、人間体で一斉射撃を受ければただで済むハズもなかった。
蜂の巣にされ、血飛沫を上げながらその場に倒れ込む野間店長。
倒れた店長の体から血が溢れ出し、辺り一面を血の海へと化していく。
店長に最早息がないのは誰の目にも一目瞭然であった。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」雄叫びを上げて疾走するホースオルフェノク。
気がつけばホースオルフェノクはその場に居たオルフェノクハンター達全員をなぎ倒していた。
腕を折られ悶絶する者、頭を打って泡を吹いて倒れている者もいた。
だが彼らの中に死者はいなかった。
木場は激情していたとはいえ、その最後の一線を踏み越えることはしなかった。
昔自分が人間を殺したという呪縛は、今尚木場の上に重くのしかかっていたし、
今又同じ過ちを繰り返す訳にはいかなかった。
スマートブレイン社と敵対し、海堂や結花と別離して迄、貫き通そうとする自分が選んだ道なのだから。

その場を立ち去ろうとするホースオルフェノクの背に衝撃が走る。
振り返るとそこには水原と呼ばれていた若きオルフェノクハンターが、
地面に尻を着き震えながら、それでも銃を放さずに、銃口を向けていた。
ホースオルフェノクは水原に向かって突っ込んで行き、前脚を上げ今にも踏み潰そうかという姿勢を取る。
頭を抱え縮こまり震える水原。だが、水原が再び頭を上げた時、もう既にホースオルフェノクの姿は何処にもなかった。
87赤い絆 6:03/08/22 23:26 ID:ztqz5K4H
ドガガガガガガッ
「ぐわぁぁぁぁぁっ」
フォトンバルカンの直撃を受け、オルフェノクは灰になった
だがかまわずその灰を踏みつけ、続々とオルフェノクが向かってくる
SB本社ビル前でサイドバッシャ―・バトルモードに乗ったカイザはさらにフォトンバルカンを連射した
「ちっ、雑魚がぞろぞろと。腐ってもSB本社か。」
カイザは既に数十体のオルフェノクを倒していたが数が多すぎてきりが無い
ラッキークローバーも村上も不在だとしった草加はこのチャンスにSB本社を叩き潰そうとしたのだが、計算が違った
オルフェノク一斉決起の為にSB本社には多くのオルフェノクが集まっていたのだ
「面倒だ!!」
カイザはオルフェノク集団の中央部に照準を合わせた
ピッ  ドシュ ドシュ ドシュ
サイドバッシャ―の左腕からエグザップバスターが放たれた
大量のミサイルがオルフェノクに降り注ぐ
ドガァァァァァァァンッ!!!
ほとんどのオルフェノクは吹き飛び、まともに動けるものはいなくなった
「ふっ、次は・・・。」
サイドバッシャ―は本社ビルへと向きを変え、エグザップバスター発射体制に入る
カイザの指が発射スイッチを押そうとした
「!!?」
ギン ギギン
突然の銃撃
とっさにサイドバッシャ―の右腕で防いだがエグザップバスターの発射は解除されてしまった
「間に合ったな。」
カイザの前にものすごい数のバイク騎兵が現れた。ライオトルーパー部隊だ
「なんだ、こいつらは!?」
隊長が行動開始を告げる「作戦開始!!攻撃目標カイザ及びサイドバッシャ―!!!」
ブォォォォォォォォォン!!
無数のライオトルーパーが一斉にカイザに襲い掛かる
「ちぃっ!!」
                           続く
88【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 23:56 ID:ZDe2LtwZ

店長が実際にオルフェノクであり、その死を目の前で見てしまった木場は、
奥さんや娘さんがいるピザハウスに帰ることも出来ずにいた。
店長のことを告げるべきか、告げないべきか、告げるとしたら一体何をどう言えばいいのか?
そんなことが木場の頭の中に浮かんでは消え、グルグルと回っていた。
だが、奥さんと娘さんの身を案じた木場は、とりあえず一度ピザハウスへ様子を見に行くことを決意する。

ピザハウスの店舗の前に立つ木場。
店舗にはシャッターが降ろされており、そのシャッターには既に「死ね!」だの
「オルフェノク野郎」だのといった心無い悪戯書きがなされていた。
裏口から店の中へと入って行く木場。店の中には奥さんとお昼寝中の美佳ちゃんの姿があった。
「…木場さん」奥さんは木場に気づく。「…すいません、勝手にいなくなってしまって」
「…警察から主人が死んだという連絡がありました」「!!」
木場の予想に反して奥さんはもう既に店長の死を知っていた。
木場は自らの口から悲報を伝えないで済んで少し気が楽になった。

「…主人はやはりオルフェノクだったそうです」「…そうですか」
「…そして途中で逃げようとして射殺されたそうです」「・・・」
「…でもこれで良かったんです」「!?」
「…あの子も父親がオルフェノクではあまりに可哀想過ぎます」
奥さんは美佳ちゃんの方を見ながらそう言うのだった。
「…オルフェノクとして生きていられるより、死んでもらった方が良かったのかもしれません」
その言葉に木場の胸は張り裂けそうになった。
店長が命を賭けて守ろうとした者の口からそんな言葉は聞きたくなかったというのが木場の心境であった。
89【楽園の崩壊】挿話2/家族の絆:03/08/22 23:57 ID:ZDe2LtwZ

「…もう私達はここには住めません」
「…主人がオルフェノクだったという事が、ご近所にも既に知られてしまいましたし」
「…あれ以来、嫌がらせが後を立ちませんし」
「…この子も、お前の父ちゃんオルフェノク、っていじめられたんですよ…」
「…ですので、この店を処分して私の実家に帰ろうかと思っています…」「…そうですか」

「…それよりも、私は主人がいつからオルフェノクだったのかが気がかりでなりません…」
「…もしかしたら、あの子にもオルフェノクの血が流れているんじゃないかと…」
木場は遂に居たたまれなくなって、その場を立った。
「すいません、今迄随分お世話になったのに、僕には何もしてあげることが出来なくて…
今迄本当にどうもありがとうございました…」木場はそう言って深々と頭を下げる。
それは木場の偽らざる感謝の気持ちの現われ。

ピザハウスを出て再び旅を続けることにした木場勇治、だが今の彼の心の中は悲しみで満ち溢れていた。
木場がその目で見た家族の絆は一体何だったのか?あれは夢か、それとも幻だったのか?
野間店長が命を賭けて迄守ろうとしたものは、一体何だったのか?木場は想いを巡らす。
だが店長は幸せだったのかもしれない、家族の幻想を壊すことなく終わることが出来たのだから、
それが唯一の救いであると、木場は自分に言い聞かせ、自分の心を慰める。
そして木場は再び往く当てのない放浪の旅を続ける。
90:03/08/23 00:03 ID:s8q0f4r3
こんな話ばっかですまないねぇ(汗
木場、放浪の旅ってシチュエーションは結構好きなんだが「俺の空」みたいで
91名無しより愛をこめて:03/08/23 01:35 ID:NBb6lRyO
>>90
はじめ映画の前日譚だと思って読んでたけど、
スネイル、ドルフィン、特殊スパイラル弾等、
むしろパラレルワールド?
まあ、あまり厳密な話をするとかえってつまらなくなるかな

ともかく「人間解放軍の前身=体制側のオルフェノクハンター」
っていう設定、(・∀・)イイっす!
92G4:03/08/23 07:58 ID:ZCyBnxdI
エラスモテリウムオルフェノクに覚醒したのってどんな人だったんだろう
もしかして芝浦とか?
9390:03/08/23 22:26 ID:s8q0f4r3
>>91
映画の前日譚のつもりで書いていますが、
ただアギトとか出ている段階で…汗

とりあえず野宮博士は、この頃からスパイラル弾の開発を行っていて、
映画に至ってまだなお失敗を繰り返しているというオチにしようかと(藁

ミナの父も意味付けされて何処かで出てくることになると思います
<名前がないのが困りもんですが

後、店長が倒れた後「青白い炎と共に砂になった」と脳内補完してください
すっかり書き忘れてたもんで(汗
94名無しより愛をこめて:03/08/23 22:41 ID:/K43ErKP
小説の方はどうだった?充分補完出来そうな内容だったのかな
それこそきっとパラレルワールドみたいな話なんだろうけど
9591:03/08/24 02:14 ID:VYOh6bO2
>>93
スネイルとドルフィンが、放映された分の人たちと
同一人物なのかと思ったのでそう書いたのでした
(木場とピザ屋の主人とは面識があるし、スネイルは
もう死んでるし、等。・・・細かくてすみません!)

あと、映画パンフや公式HPをみたら「野村博士」なんだけど、
聞き違い?
96名無しより愛をこめて:03/08/24 12:40 ID:O1THKIP2
大首領オルフェノク体(無論分身体のひとつ)というのも見てみたい。
自分としてはイーグルオフフェノクなんてどうかなあと思う。
97アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:35 ID:cG1572PK
クリムゾンウルフ

冷たく、鋭い風がふく荒地で、二人の若者が壮絶な数のライオトルーパーに囲まれていた
一人の名前は乾巧、もう一人の名前は園田真理
二人の周りで響くジャイロアタッカーのエンジン音、二人に突き刺さるライオトルーパー達の無機質な視線
冷たく、歪んだ雰囲気が二人を襲った
「巧・・・」 弱く、小さな声が真理の口から漏れた、目には涙が浮かび、恐怖で体が小刻みに震えている
「心配すンな・・・お前は俺が守る、必ずな」
真理を励ますように、巧は真理の肩を軽く叩き、瞳を見つめた
「・・・うん」
真理の心から、不安や恐怖が消えた
私には巧がついてる・・・大丈夫
そう思うと、不思議と心が安らいだ
「真理、離れてろ」
巧の表情が険しくなる
ライオトルーパー達の動きが変わった、一気に仕掛ける気だ
このままじゃ真理が巻き込まれる
「え?なんで?」
真理が問いかける、だがそれに答えてる暇は無い
一体のライオトルーパーが突っ込んできた!
「ッ!変身!!!」
555フォンを取り出し、馴れた手つきでコード555を入力する
そしてそれを天に向かって掲げ、ベルトに差し込んだ
まさに電光石火のスピードで555への変身を行った
しかし、それよりワンテンポ早く、ライオトルーパーが跨るジャイロアタッカーが突っ込んできた
オイオイ、戦いもせずに終りかよ・・・・・!?
555に変身した巧の背中に戦慄が走った。
だがそのとき、大量の銃声と共に、トルーパーの体から火花が飛び散った
「グアアァァァァァァ!!!」
絶叫しながら吹っ飛ぶライオトルーパー
98アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:36 ID:cG1572PK
彼の身体が地面に落ちたとき、そこにあったのはトルーパーの鎧と沢山の灰だけだった
「!?」 555が銃声のなった方向へ振り向く
そこにいたのは、ヒューマノイド形体に変形したオートバジンだった
「お前・・・」
仮面の下で巧が微笑む
そして、右手を軽く振ると、ライオトルーパー部隊を睨んだ
「・・・・・・」
無言のまま、555はトルーパー部隊に向かって突っ込んで行った
「巧ッ!!」
555の背中に向かって、真理は叫んだ
「待ってるから!!!私・・・待ってるから!!・・いつまでも・・いつまでも巧が帰ってくるの待ってるからぁッ!!!」
555は振り向かずに、サムズアップで応えた
数え切れないほどの敵
万に一つも無い勝てる可能性
それでも・・・オレは・・・
それでもオレは負けない! 勝って!!必ず真理の所へ帰ってみせる!!!!!
「うおおおおあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
少しでも弱気になった心を雄叫びで掻き消し、555は突っ走る
前から2台のジャイロアタッカー&ライオトルーパーが向かってきた
555は555フォンを抜き取り、ブラスター形体に変形させ、コード103を入力した
「シングルモード」
フォンブラスターが火を噴き、フォトンブラッドの弾丸が発射される
だがフォンブラスターの銃口は、トルーパーではなくジャイロアタッカーのエンジン部分に向いていた
弾丸が炸裂した瞬間、爆音と共に火を吹くエンジン
直後、二つのジャイロアタッカーが爆発し、乗っていた二人のライオトルーパーは爆炎に包まれ、青い炎をあげながら消滅した
青い炎と赤い炎が混ざり合った、幻想的な炎が上がった
2体撃破
しかし、555が2体のトルーパーを倒した隙に、9体のトルーパーが円陣を組み、555を取り囲んだ
アタッカーの疾走により巻き上げられた砂によって、砂の牢が作られる
「チッ・・・」
99アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:36 ID:cG1572PK
絶体絶命のピンチに、555は軽く舌打ちした
同じタイミングと動きでアクセレイガンを引き抜くトルーパー達
その動作は、全員、一寸の違いも無かった
「バーストモード」 555はフォンブラスターに、コード106を入力した
ちょうどその時だった、キィィンというジェット音と共に、再びオートバジンが飛来し、ガトリング砲を発射した
「うわぁぁぁぁぁ!!」 「ぐああああ!!!」 「ッッ!!」
3体のライオトルーパーがガトリング砲の衝撃でバランスを崩し、その場に崩れ落ちた
途端に円陣が崩れ、2体のトルーパーが倒れたトルーパーにぶつかり、転倒する
もがく5体のトルーパーに、オートバジンは容赦なくガトリング砲を浴びせた
砂煙が巻き上がり、その砂煙の中でトルーパー達は全身から灰を撒き散らしながら沈黙した
チームワークを一気に乱され、一瞬だけ戸惑う4体のトルーパー
その一瞬の隙に、555はブラスターを乱射した
光弾がトルーパーの装甲を貫き、その穴から青い炎が噴きだす
間も無くトルーパーの装着員が死亡し、4体のトルーパーも沈黙した
合計、9体撃破
「巧・・・・・」
ライオトルーパー達を倒していく555を見て、真理は安堵の溜息を吐く
もしかして・・・巧ならなんとかできるかもしれない、この状況を
そして、巧は全人類を救済する救世主になってくれる・・・・・・と、真理は思った
その思いが届いたのか、555とオートバジンは次々とライオトルーパー達を倒していった
格闘 フォンブラスター ガトリング砲 グランインパクト クリムゾンスマッシュ
まさに破竹の勢いで、555と一体のロボットは、迫り来るトルーパーの大群を倒していった
倒した数が38体を越えた時点で、555は何体の敵を倒したのか解らなくなった
中には、トルーパーから変身解除されても、オルフェノクとなって立ち向かう者もいた
だが、その力が通用する事も無く、青い炎をあげながら死んでいった
「・・・ッ・・・きっついなぁ・・・」
地面に膝をつき、息を切らしながら、555は左腕の555アクセルを見た
眼前から、更に凄まじい数のライオトルーパー部隊が疾走してくる
「決めっかな・・・・・一気に・・・・・」
ムクリと立ち上がり、555は隣に立っているオートバジンから555エッジを引き抜き、ミッションメモリーを挿入した
100アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:36 ID:cG1572PK
「レディ」
深紅の刃が出現する
555はグリップを何度か握り、出力をアルティメットに設定した
光の刃が凄まじいエネルギーを放出し、まるで炎のようになった
次に、555アクセルから赤色のミッションメモリーを引き抜き、555フォンに挿入した
「レディ」
胸の装甲が開き、フォトンストリームが一瞬にして美しい銀色に変わる
仮面ライダー555 アクセルフォームである
「・・・・・行くぜ・・・」
すでに、目の前にまで接近したライオトルーパーの軍団に向かって、巧はポツリと呟き
555アクセルのボタンを押した
表示された数字が10・・・20と増えていく
そして30になったところでボタンから指を離した
「スタートアップ」
奇怪な音を発しながら、アクセル555が異常放熱を開始した
555の周りに陽炎ができる
次の瞬間、555は残像を残して皆の目の前から消失(ロスト)した
ライオトルーパー部隊に戦慄が走った
「たッ!隊長!!」
トルーパーの一人が声を震わせながら隣にいる隊長を見た
その時、彼は自分の横を赤い稲妻が通ったのを感じた
「見た」のではなく「感じた」のである
もはや555のスピードは、トルーパー達の感覚を凌駕しているのだ
「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぎゃああああああははあぁぁぁぁぁぁぁl!!!」
トルーパー達の断末魔の叫び声が幾重にも重なる
555エッジの刃によって、彼らは切断されていった
いや、切断というよりも破断というべきか・・・・・
とにかく、555エッジは刃と呼ぶにはあまりにも粗く、強力な破壊力を持っていた
立った一振りで7体のトルーパーを砕く事もあった
101アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:37 ID:cG1572PK
「3・・・2・・・1・・・リフォメーション」
30秒が過ぎ、555のアクセルフォームが解除された
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ゼーゼーと苦しそうに呼吸をしながら、555は振り返った
そこには、大量の灰とライオトルーパーの残骸が転がっていた
さっきのアクセル攻撃によって、トルーパー部隊の数は、最初の5分の1にまで減ってしまった
部隊の残りはその場に立ち尽くし、固まってしまった
こんな奴に勝てるのか?
いや、それよりも俺たちは生きて帰れるのか?
恐怖が絶頂まで達し、トルーパーの一人が絶叫した
「ばっ・・・・・・化け物ぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
そして彼は、あまりの恐怖に耐え切れず「うわぁぁぁぁぁぁあああ!!!」と悲鳴をあげながら逃げ出した
・・・・・・・だが、彼の前に謎の白い影が天空から降り立った
「サッ・・・・サイガ・・・・・・・・」
自分の前に立つ、白き体に蒼のフォトンストリームを持つ存在を彼はサイガとよんだ
サイガ・・・仮面ライダー315・・・天と地の二本ある帝王のベルトのうち、天のベルトを使って変身したライダーである
その雰囲気、まさに帝王と呼ぶに相応しいオーラを315は持っていた
「You are blocking the way . Please step aside .」
315のアッパーが彼を天高く吹っ飛ばした
目の前の障害を取り除き、315は555に向かって歩き出した
「You are great!!」
軽く首を傾けながら、315は555に向かって賞賛の拍手を送った
「Come on . Fist&fist .」
315は背中に背負ったフライングアタッカーを外し、555を指差すと、親指を立てて自分の胸を軽く突いた
「かかって来い」というアクションだ
「いいぜ・・・・・やってやるよ」
苦笑しながらも、555は555エッジからミッションメモリーを引き抜き、放り投げた
ミッションメモリーをフォンに戻し、右手を振る
さっきあれだけ無理をしたのに、全身にはまだ充分すぎる余力が残っている
巧には自信と勝機があった
102アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:39 ID:cG1572PK
「Very good .」
仮面の下でレオはニヤリと笑った
帝王のベルトはお前のベルトを遥かに凌駕する性能をもっている、勝てるわけ無いだろ?
レオにも、絶対的な自信と勝機があった
「サイガ!サイガ!サイガ!サイガ!サイガ!サイガ!サイガ!」
残ったトルーパー達が、いつの間にか555と315を円形に取り囲み、歓声をあげた
その異様な光景を見つめ、真理は呟いた
「・・・何が起こってるの?」
その声は、形容しがたい不安で震えていた
「Thanks!!」
歓声に応えるように、315は両手を広げた
トルーパー達のボルテージが更にヒートアップする
だがその隙を、555は見逃さなかった
「オラァァァァァァァッ!!!!!」
「!」
555のとび蹴りが315に放たれた
しかし、315は555の足の裏に蹴りを放ち、跳ね返した
「フッ・・・」
レオが鼻で笑った
不意打ちか?・・・甘いんだよ・・・実力の差を思い知らせてやる
「ハァッ!!」
かけ声と共に、315の攻撃が始まった
疾く、そして強い
凄まじい猛攻に、555は防御に必死で一切攻撃できなかった
「ガハアッ!!」
315の手刀が、555の腹に突き刺さった、強烈な激痛に体を丸める
軽く地面を蹴り、315は555の背中に乗って、「やれやれ」というアクションをした
「ッ!!手前ェ!!!!」
明らかな挑発に、巧の頭に血が上った
即座に555ショットを取り出してミッションメモリーを挿入し、自分の上に乗った315を振り下ろした
美しい弧を描いて、315が着地する
103アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:39 ID:cG1572PK
「ラァァァァァァッ!!!」
拳を振りかぶりながら、555は555フォンのEnterボタンを押した 「イクシードチャージ」
フォトンストリームを通して右手に大量のフォトンブラッドがチャージされる
「フン・・・」
大きいモーションの555とは対照的に、315は拳だけをわずかに動かして、555ショットにスカイインパクトを打ち込んだ
グランインパクト対スカイインパクト
強力なエネルギーをもった二つの拳がぶつかり合い、二人の拳の周りが衝撃で歪んで見えた
「グゥッ!!」
突如、凄まじい衝撃が555の腹に刺さり、555の体が吹っ飛んだ
蹴りが・・・否、コバルトスマッシュが放たれたのだった
555の胸にΨの文字が浮かび上がり、消えていった
幸い、変身は解除されなかったが、その身体には、もはや戦えないほどのダメージが残った
「ッ・・ちっきしょう・・・!!」
全身を震わせながら、555は地面をたたいた
「・・・・・・・」
315は既に555への興味を失っていた
つまらなさそうに「フウ」と溜息を吐き、さっき置いたフライングアタッカーに向かって歩みだした
その途中に555が倒れていたが、315は気にせずに555を踏みつけていった
「グアァッ!!」
巧が悲鳴をあげる
しかし、555の悲鳴を、た315は全く気にする様子も無く
フライングアタッカーを背負い、天空に向かって飛翔した
「Catch you latter .」
「ま・・・待て・・・」
去ろうとする315に向かって、555は届くはずのない手を伸ばした
その姿をみて、315は人差し指と中指を立てて軽く振る「じゃあね」というアクションをして青空に消えた
「クッ!・・・ちっきしょぉぉぉぉッ!!!」
悔しさと怒りが込み上げ、地面を殴りつける
だが、いまの555力では地面に穴一つ空けられなかった
104アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:40 ID:cG1572PK
「!」
自分に向けられる狂気を感じ、555が周りのライオトルーパー達を見た
そこにいる全員が、仮面の上からでも解る冷たい視線を視線を向けていた
この後、戦う力を失った555に、ライオトルーパー達による壮絶な私刑が待っていた
殴り、蹴られ、アクセレイガンで撃たれ、斬られる
中には、わざわざ変身を解き、オルフェノクに変身して555を嬲る者もいた
オートバジンは強制的にバイク形体に変形させられ、戦えない
「うああああっ!!」
ベルトを弾かれ、変身をとかれた巧の身体が地面に叩きつけられる
目の前に真理が倒れていた
「ま・・・真理」
「巧ぃ・・・・」
二人の手が、水溜りの上で交わる
それを引き裂くように、ライオトルーパーが巧の足に鎖を巻きつけ、引きずって行った
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「巧ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
自分からどんどん離れていく巧の名前を、真理は叫んだ
だが、その姿はあっと言う間に見えなくなってしまった
「嘘・・・・嘘でしょ?・・・巧・・・」
瞳から大粒の涙が頬を伝って水溜りの中に落ちた
「巧ッ!!巧ッ!!!・・・・・・・・・・・・・・・イヤアァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
咽が裂けるくらいに真理は叫んだ
「・・・ゴメンな・・・真理・・・」
引きずられながら、巧は泣いていた
身体の痛みではない、心の痛みがあまりにもつらくて・・・
「約束・・・・・守ってやれなかった・・・・・ゴメンな・・・ゴメンな・・・・・」
何度も何度も、巧は真理に謝り続けた
「グッ!」
転がっていた岩が巧の頭にぶつかった
意識が朦朧として、どんどん離れていく
気絶寸前になりながらも、巧は呟いた
「・・・・・・・・真理・・・・・・・・」
105アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:41 ID:cG1572PK
「・・・・・・・・・巧・・・・・・・・・」
真理の瞳から、涙が止め処なく流れる
その真理を見下しながら、ライオトルーパー達が変身を解いて近寄ってきた
「なによあんた達ぃ!!」
涙が溢れる瞳で、歩いてきた男達を睨んだ
全員の顔が下卑た笑顔で歪んでいた
それを見て、真理は全てを悟った

・・・・・・・・・・輪姦される・・・・・・・・・・・

それを悟っても、不思議と恐怖とか、そういった感情は無かった
巧のいない世界なんて・・・もうどうでもよかった・・・・・・どうせなら死んでもよかった
「・・・巧・・・」
一人の男が、真理の服に手を掛けた、だが真理に抵抗する素振りは無かった
真理には抵抗する力も、気力も・・・・・・残ってはいなかったのだから
だが、真理の諦めも、男達の欲望も、全て断ち斬るように、一筋の閃光が真理の上に乗った男の首を斬った
あまりにも疾すぎる斬撃の為、血が出るのが遅れた
その隙に、男の首を斬った者は、男の身体を蹴り飛ばした
倒れた死体が、青い炎をあげながら灰になる
「・・・・木場さん?」
真理の目の前にはホースオルフェノク(激情体)が立っていた
その後ろにはクレインオルフェノク(激情体)、スネークオルフェノク、仮面ライダー913がいた
「・・・真理さん・・」
木場は変身を解き、真理を抱き上げた

「木場さん・・・・・巧が・・・巧がぁぁぁぁぁ!!!・・・・・うわああああああああ!!!!!」
木場の胸の中で、真理は再び泣いた
悲しみを包み込むように、木場は真理の身体を強く抱きしめた
106アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:43 ID:cG1572PK
「クッ!!総員!変身せよ」
隊員の一人が叫んだ
その顔は恐怖に引きつり、血の気が引いて真っ青になっていた
・・・・・目の前に最強のオルフェノク達と戦士がいる
木場勇治、長田結花 ある例外を除いて、この世に存在するオルフェノクの中で最強の力を持つ二人のオリジナルオルフェノク
海道直弥 コピーでありながら、並みのオリジナルオルフェノクの力を凌駕するオルフェノク
そして、555に次ぐ913のベルトを持つ仮面ライダー913
これだけの大群をもってしても勝てる気がしない・・・それでも逃げられない
「「「「「「うおおおおおおおおおあああああ!!!」」」」」
変身したライオトルーパー部隊が一斉に突っ込んできた
陣形も作戦も無い、倒す為の戦い、生きるための戦い
「・・・・・」
クレインオルフェノクが無言のままライオトルーパー部隊の前に立ちふさがった
大きく息を吸い込み、口から高周波を放った
それによって、大半のトルーパーが灰と化した

数分後・・・この荒地にはトルーパーの鎧の残骸と大量の灰が積もるだけだった
4人は、一刻も早くこの場所から離れようとした
だが、真理は巧が連れて行かれた方角を虚ろな瞳で見つめたまま、動かなかった
107アリエス ◆ev9DCO8ZVA :03/08/24 18:44 ID:cG1572PK
「真理さん!?」
真理の肩を木場が掴んだ
「放してよ・・・木場さん」
「・・・・・・ここにいたら、いずれまた奴らが来る!早く逃・・・」
木場の言葉を遮るように、真理が弱々しく口を開いた
「だって・・・・・もう、生きててもしょうがないんだもん・・・・・巧がいないのに・・・生きててもしょうがないんだもん・・・」
「!!」
「キャッ!!」
木場が、真理の頬を平手打ちで叩いた
「・・・・生きてるよ・・・乾くんは生きてるよ!!!」
木場が叫んだ、その目から、涙がこぼれた
「どうして・・・・そんなことが言えるの?」
「それは!!・・・・・それは・・」
言葉に詰る
確かに、奴らに捕まったんだから生きて帰るはずが無い
・・・・でも
「だって・・・乾くんは・・・・・乾くんは乾くんだから!!!」
答えになっていなかった
だが、木場にはそれ以上の台詞が思いつかなかった
「うっ・・・・・うわああああああああああああああ!!!」
全身の水分を出すほどの勢いで、真理は泣いた

続く
108名無しより愛をこめて:03/08/24 23:25 ID:kba83tIV
>>97-107
カコイイ!
10990:03/08/25 00:22 ID:KdNm0Td1
>>95
大いなる勘違い(汗
野村博士でした

おっアリエスさんだ、サイガいい感じですね。
俺も何処かで出したいけど、英語でセリフ考えるなんて目眩しそう(汗
110名無しより愛をこめて:03/08/25 00:32 ID:zq6AwkqH
555のノベライズ買いに行ったけど、あれで1200円は高くね?
内容も2時間もあれば充分読破出来そうだしさ
隣にあった公式アルバムみたいのがほぼフルカラーで700円ぐらいだったから余計にそう感じたよ。
111名無しより愛をこめて:03/08/25 00:38 ID:ld/qeaFg
な、何故誰もバジン様について触れないのデスカ
112名無しより愛をこめて:03/08/25 00:46 ID:RIp2i7OG
置いてきぼりになった後、ライオトルーパー(ライダーのまま)の死体を発見し、
ちょっとライダースーツを装備してカイザ気分に浸るKタロー。
113名無しより愛をこめて:03/08/25 00:51 ID:8GhrwwX6
すみませんがどなたか劇場版で草加が着けてたペンダントが
どこのメーカーか知ってますか?
114名無しより愛をこめて:03/08/25 01:14 ID:wZXF5roo
>>113
メーカーって(w
木場のホースシューくらいならどこかのかと思えなくもないが、
他のはオリジナルかマイナードメスってとこじゃないか?
11569:03/08/25 01:18 ID:Ah4HJc6i
みんなバトルシーンカコよすぎですよ・・・
というか、ファイズ対ライオは飽和状態になってますね。別の話書いてみよう。
とりあえず、ミナパパがただのDQNではなくどーしようもなくてああしたという風に解釈してみまつ。
116名無しより愛をこめて:03/08/26 02:15 ID:qOF2uZ94
>>115
複数個の補完があっていいと思うから、
先に自分なりの補完設定書いちゃっていい?

オレは、「手負いの記憶喪失オルフェノクを拾ったが、いいやつなので
殺すにしのびなく、周りの人間の目をごまかすために
ニセの記憶を植え付けて生かす道を選んだ」という
別の理由があったと想像してみた。
ミナの性格が云々、というのは、実は「どんな記憶を植えるか」
という選択を迫られたときにくっつけた二次的な理由。
ミナは隆=オルフェという事実自体知らされていず、
記憶操作の本当の理由も伏せられていた。

・・・でもまあ、あの編集長なら記憶操作くらい平気でやりそう、
ってとこで補完は済んでしまう気もする(w
11791:03/08/27 18:48 ID:v5HHrhDd
俺もアクセス規制で続きがうp出来ない(汗
118:03/08/27 23:40 ID:Eg9bUZhQ
ごめん俺、90だった
119【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/27 23:41 ID:Eg9bUZhQ

人間とオルフェノクの間での和平交渉の末、和睦が正式に決まり、
オルフェノク(スマートブレイン社)は人間襲撃禁止令を強いた。
だがそれでも一部のオルフェノクには隠れて人間を襲う者達も居た。
一方、人間サイドでも新種迎撃隊やオルフェノクハンターに対して、
オルフェノクを攻撃することを禁じる命令を下した。
これによりオルフェノクハンターはその活動を一時凍結されることとなった。

人間を襲うことを強制しないどころか、禁止したスマートブレイン社。
オルフェノクの仲間の元に戻るようにという提案され、海堂と結花は、木場とは別の道を選んだ。
木場が人間を最後迄信じ、人間と共に生きようとしたのに対し、
海堂と結花は現在の人間の荒んだ心に疑念を感じ、人間を襲わないのであれば、
という前提付きでスマートブレイン社の庇護の元に還っていた。

スマートブレインから新しい住処・超高級マンションの一室を提供された海堂と結花、
以前と変わらぬ生活を送っていたが、ただひとつ以前と大きく違っていたことは木場がいないということであった。
自分達がオルフェノクに覚醒して以来、常に3人一緒だった木場と海堂と結花。
だが今はいつもと変わらぬ風景に木場だけがいなかった。
木場がいなくなって、海堂も結花も心にぽっかり大きな穴が空いたようでもあった。
だが海堂は決してそのことを口にしようとはしなかったし、
結花もまた海堂の気持ちを汲んで木場の話は極力避けて来た。
そんな海堂と結花の木場のいない生活が送られていた。
120【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/27 23:43 ID:Eg9bUZhQ

高級ソファに座り、ぼうっと呆けている海堂と結花、
部屋の中には気だるいマッタリとした空気が流れていた。
「…海堂さん、なんだか浮かない顔してますね」結花は呆けながら海堂に話かけた。
「ばっか、俺のこの端正な顔のどこが浮かない顔だっていうんだよっ?」海堂もまた呆けながら答える。
結花が返事も返す気力がないことを悟ると、海堂は自ら返事を変えた。
「…まぁ、なんだな、強いて言えば、平和ボケだな」
「そう言えば、3人で暮らしてから、いろいろありましたもんね」
結花の口から突いて出る何気ない言葉。結花は言い終わった後に、自分で言っておきながら少しハッとする。
極力木場の話はしないように結花なりに今迄努めて来たからだ。
だが結花が心配した以上に、海堂の反応は普通であった。
「木場と一緒にいるとトラブルには事欠かなかったらからな」
実は海堂もそろそろ木場の話をしたくなっていた頃合だったのだ。

「木場さん、どうしてますかね?」結花は表情に少し暗い影を落とす。
「はんっ、どうせまた余計な事に首突っ込んで、
人間に裏切られて、それでも僕は人間を信じる、とか言ってんじゃねぇの?」海堂の予想は見事に当っていた。
「…なんだ?ほら…木場がいないと寂しいとか?」海堂は結花の顔を覗き込む。
「ずっと3人一緒でしたからね…家族みたいなもんじゃないですか」結花は俯き加減でそう言った。
「…ふーん、家族ねぇ」海堂は口を尖らせて首を縦に何度も揺らす。
「…ちゅーかっ、なんだなっ、ここで暇こいててもしょうがねぇし、久しぶりにどっか出かけてみっか?」
「そうですねっ」結花は暗い顔から一転して、
その長い髪を揺らしながら、大きな瞳を真ん丸く見開いて、笑顔で海堂に頷いた。
121【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/27 23:44 ID:Eg9bUZhQ

一見ごく平穏な昼下がり、海堂と結花は繁華街へと出てショッピングなどを楽しむ。
店の試着室で洋服を試着してみる結花、暇そうに結花のショッピングに付き合う海堂。
「海堂さん…どうですか?」試着室のカーテンが開いて、夏らしいワンピースに身を包んだ結花が現れる。
海堂はそれを見て一瞬ドキッとしたが、それを悟られまいと、
わざとソッポを向いて、手で顎を触りながら口を尖らせている。
「…まぁ、この際なんでもいいんじゃねぇか」海堂は素っ気なさそうにそう返事をしておいた。
「海堂さん、ひどいっ!」結花は頬っぺたを膨らませて海堂の態度に腹を立てる。
その表情を見た海堂はやれやれというポーズで
「…ちゅーか、まぁ、お前にしては似合ってんじゃないかっ?」そう素っ気なさそうに返事をする。
「あーっ!海堂さん、また酷いこと言ったっ!!」結花は頬っぺたをさらに膨らませてふくれてみせる。
その様子を見た海堂は面倒臭そうなポーズで言う。
「…やっぱ、こういう時はあれか?良く似合うとか、素敵だ、とか言わないとダメなんかっ?」
「もうっ海堂さんなんか知りませんっ!!」
結花はそう言い、試着室のカーテンをピッシャっと閉める。
首を捻りながら困った顔をする海堂は、試着室の前に行き、ボソボソと言う。
「ちゅーか、それがいいんじゃねぇか、まぁ、夏だしな …」
海堂がフォローに必死になっているのを聞いて、試着室の中の結花は声を押し殺しながらクスクスと笑う。


スマートブレイン本社前のオープンテラスのカフェで、白い丸テーブルを囲んでお茶をする海堂と結花。
昼下がりの麗らかな一時、そのこには多くの人々が集い和んでいた。
仲の良さそうなカップル、仕事途中に休憩しているサラリーマン風の人々。
一見するとそこは何の変哲もない街並み、人々の風景であったが、
ただひとつ大きく普通と異なるのは、そこに集う人々のほとんどが実はオルフェノクだということであった。
そうここはオルフェノクのみが知る、オルフェノクの為の憩いの場でもあった。
ごく稀に何も知らずに人間が紛れ込んでくる事もあるが、
そういった場合を除けば、ここに来るのはオルフェノクばかりであった。
122【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/27 23:45 ID:Eg9bUZhQ

テーブルで仲良さそうに話し込んでいるカップル、
彼らも傍から見ればごく普通の人間のカップルだが、その話の内容はオルフェノクの会話そのものだった。
「あたしさぁ、オルフェノクになって人間襲うのが、ちょー楽しかったのぉ」
「だのに、なんで今になって人間を襲うなとか言っちゃうわけ?」
茶髪の可愛らしい少女は手にしたジュースを呑みながら平然と言う。
「本とだよなぁ、オルフェノクが人間襲っちゃダメなんて、有り得なくねぇ」
同席している若い茶髪の少年も頷く。
ジュラフオルフェノクの少女とロングホーンオルフェノクの少年の愚痴話は続く。

白い丸テーブルでコーヒーを飲む海堂と結花。
そのカップルの話を小耳に挟んだ海堂は、その話を皮肉るかのように言う。
「ちゅーかなんだな、今迄人間を襲うことはなかったが、
いざ人間を襲うな、と言われたら、人間襲ってみたくなってきたな…」
結花は海堂のその言葉を聞いてクスクスと笑う。
以前の結花であれば、海堂のその突拍子もい発言を聞けば、
それがブラックユーモアであるともわからず、その真意がわからずオロオロするだけであっただろう。
だが今の結花には海堂のそのセリフが、海堂のポーズであることもわかっている。
それは木場も含め、3人で暮らした月日が結花を変えつつあったということでもあった。
だからこそ結花にしてみれば、海堂のそのセリフにクスクス笑うことが出来たのだ。

「…何が可笑しいんだよ?」
「海堂さんは、いつも心にも無いことばかり言うから。
いい意味で口先だけなんですよね、海堂さんの言う事って」そう言ってまたクスクス笑う結花。
「…なんだよ、おめえ、わかったような事言いやがって
…ちゅーか、ムカツクんだよ、そういう態度が」
結花は大きな丸い目を見開いてあらあらという顔をしてみせる。
海堂は拗ねたような顔でそっぽを向いている。
123【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/27 23:46 ID:Eg9bUZhQ

「…でもよ、おめえも結構変わったよな?」
拗ねながらもフォローするあたりが海堂らしくもあった。
その海堂の言葉に結花は笑顔で頷いた。
「そうですね、以前の私なら、そんなこと言われたら、きっとオロオロしちゃってますよね」
「私、人間だった頃からずっとそうだったんです…」
「いつも誰かが、私のことを怒っていたり、憎んでいたり、笑っていたりしているんじゃないかって、
勝手にそう思い込んでいたんです、ずっと、ずっと…」
「だから誰にも嫌われたくないって思ってて、人の顔色見てばかりいたんです」
「他人と接する時はいつも必要以上にオロオロしちゃったり、不安気だったり、人の顔色ばかり気にしたり…
でもそういう態度って余計に人を不快にさせるみたいで、だから私、本当にみんなに嫌われちゃったりして…」
結花は人間であった頃の過去を思い出したのか、顔を曇らせ少し悲しい顔をする。
結花のその顔を見た海堂は胸がせつなくなるのを感じた。

いつもは嘘のポーズで気取っているが、真実を前にすると熱くなってしまう、それが海堂でもあった。
「でもよ、おめえは変わったんだろ? 今は昔のおめえじゃねぇじゃねえか」
「はいっ」結花は海堂が自分を励まそうとしているのを感じ、嬉しくなって笑顔をこぼした。
「これもきっと、海堂さんと木場さんのおかげなんです…
3人で一緒にいると私すごく自然体で居られたんです…」
「その時はじめてわかったんです…人の顔色はそんなに気にしなくてもいいんだなって。
だって自然体でいても、私のことを受け入れてくれて、
私の事仲間だって思ってくれる人達がいるんですもの…」
「それに気づいたら私…何も考えないで私のままでいればいいのかなって…そう思えるようになったんです」
海堂は結花のその言葉を横にソッポを向いたまま聞いていた。
それは悪びれている訳でも何でもなく、実は人情家でもある海堂が、
結花の言葉に感動して思わず涙目になってしまったことを気づかれたくなかったからであった。
「い、いいんじゃねぇのか、そんならそんで。俺も憎まれ口の利き甲斐があるってもんだしよ。」
それはあまり器用ではない男の精一杯の励ましでもあった。
「はいっ」涙目になっていた結花は、海堂の言葉に涙をこぼしながら笑顔で答えた。
124【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/27 23:48 ID:Eg9bUZhQ

「俺と木場とおめえ、3人が一緒に居たことには意味があったってことか」
海堂はその言葉を噛み締めるように呟いた。
「はいっ」「少なくとも私にはとっても大きな意味がありました」
結花もまたその言葉を噛み締めるように返事をした。
「…だから木場さんがいなくなってしまって、寂しいんです」
「…家族みたいなもんだかんなぁ」今度は海堂が先程の結花のセリフと同じことを言った。

(まだまだ続く)
125名無しより愛をこめて:03/08/28 13:38 ID:6kQbiB1b
>>119-124
なんか読みふけってしまった。
この場は何ごともなく過ぎて欲しい、などとマジ願ったりして
126【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/29 23:12 ID:DTP5vngo

海堂と結花の間に、しばし無言の時間が流れる。
だがそれは気まずい空気ではなく、むしろお互いが心の何処かで通じ合っているような、
言葉に出さずともわかり合えるような、そんな信頼感が生み出す心地良い緩やかな空気であった。
海堂がふと結花の方を見ると、結花もまた海堂の方を見ていた。
目と目が合った海堂と結花。この空気の中で改めて間近で互いの目を見るのは何処か気恥ずかしかった。
結花の大きく見開かれた瞳に、海堂は照れ笑いを浮かべ、さりげなく目線を反らす。
結花もはにかむように顔をやや俯き加減にし、照れたように笑顔を浮かべる。
海堂と結花、2人の間にとてもゆったりと穏やかな心地良い風が吹いていた。

ポンッ、、ポン、、ポン、そんな音をたてて海堂の足下にサッカーボールが弾みながら転がって来る。
海堂はそのサッカーボールを手に取ると、小学生ぐらいの男の子がボールを取りに走り寄って来る。
「ほれっ」海堂はその子供にボールを手渡す。「ありがとうっ」
海堂はその子供を見て、人間の子供であると直感した。
まだ子供のオルフェノクは少ない時代、いくらここがオルフェノクの集う場であったとしても、
ここに子供のオルフェノクがいるとは考えられなかった。
むしろここに迷い込んだ人間の子供と考える方が自然であった。
「坊主、この辺は危ないから早く行った方がいいぞ」
「なんでぇ?」ボールを受け取った子供は尋ねる。
「なんでって、おめ … ここはコワイお化けが出るんだよ」
子供にオルフェノクと言った所でわかるハズもなく、海堂は適当に話をつくった。
「こんな昼間からお化けなんているわけないじゃんっ! 変なお兄ちゃん」子供は思った事は直ぐ口にする。
「なんだっ、可愛気のねぇガキだなっ、ちゅーか人の言う事は素直に聞けっつうのっ」
127【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/29 23:13 ID:DTP5vngo

結花は海堂と子供のやり取りを微笑ましく眺めていた。
『海堂さんは、いつも口じゃ何だかんだ言ってるけど、やっぱり人間が大好きなんだ』
結花はそう思わずにはいられなかった。大体音楽を愛するような男が人間を愛していない訳がない。
多くの芸術は第三者がいてはじめて成立するものであるし、そのテーマのほとんどが人間を題材にしているのだから。
結花は思う『私は、人間を襲うのは嫌だけど、人間が好きか?って言えばどうなのかな』
『…好きだけど嫌い…嫌いだけど好き…』結花の心は複雑に揺れ動いた。
結花には過去にあったいじめや家庭環境が原因で、人間を信じきれない部分がまだ残っていた。
結花が人間を好きになれる程に、彼女の周囲にはいい人間がいなかったのだ。

海堂は子供相手にムキになって言い合いをしている、いやそれもまた海堂にすれば楽しいのかもしれない。
「…ちゃーんっ!!」子供の母親が子供を呼んで探している。
「あっ、いけないっ、お母さんが呼んでるっ」「じゃあね、変なお兄ちゃんっ!」
子供はそう言い、海堂に手を振りその場を去って行く。
「気をつけろよっ!坊主」「… ちゅーかっ変なお兄ちゃんじゃないっつうのっ」
海堂は文句を言いつつも子供に手を振ってみせる。
結花はそんな海堂を見つめていた。結花には海堂のこうした性格が羨ましくもあった。
「やれやれ、最近のガキは生意気だっつうのっ」「なあぁっ?」海堂は結花の方を振り返り同意を求める。
考え事をしていた結花は、突然の振りに戸惑いながらも笑顔をつくってみせる。
128:03/08/29 23:18 ID:DTP5vngo
アクセス規制も解けたようなので頑張ります
今回は結花が主役になりつつありますね
125さんの期待に応えられるといいのですが
129【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/29 23:27 ID:DTP5vngo

その二人の前に今度は一人の中年男性が近寄って来る。
その男は海堂もよく知る人物、海堂が以前通っていた音楽院の教授ことオウルオルフェノクであった。
「海堂君、戻って来たのですね」海堂が以前通っていた音楽院の教授、
昔「クラシックギター界の若き天才」と呼ばれた海堂の才能を妬み、海堂の手をギターが弾けないものにした張本人。
だが海堂はその事実を知らない、知るのはただ教授がオルフェノクだという事実だけ。
教授もまた音楽を愛していたが、だが彼は人間を襲った。
否、彼の場合、音楽を愛し過ぎてしまったのかもしれない、執り付かれる程に。

そして結花は海堂の手を潰したのがこの教授である事を知っていた。結花は教授のことを睨む様な目で見る。
だが、彼女は海堂に身近な人間に裏切られって海堂の夢が潰えたことを知って欲しくはなかった。
海堂が深く傷つくであろうから。それは彼女の海堂に対する思いやりでもあった。

さらに二人の前にもう一人サラリーマン風の男が近寄って来る。
「あなた達ですか、スマートブレインを裏切っておきながら、
今更オルフェノクの仲間の元に戻って来たという厚顔無恥な方々は」
サラリーマン風の男ことシーキュカンバーオルフェノクはその外見とは裏腹にキツイ言葉で罵倒する。
「なんだとっ!」熱くなりやすい海堂は席から立ち上がる。
「一体誰だ、おめえ?」海堂はサラリーマン風の男に向かって言う。
「申し遅れましたが、私、こういう者でございます、以後お見知りおきを」
サラリーマン風の男は二人に喧嘩を売るような事を言っておきながら、丁寧に名刺を渡し挨拶する。
おそらく人間のサラリーマンとしての癖が抜け切らないのであろう。
素に戻って名刺を受け取ってしまう海堂。
「ちゅーか、名刺なんてどうでもいいっつーのっ!」ふと我に返った海堂は名刺を投げ捨てる。
130【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/30 01:14 ID:SyOnSloK

「あなた達がスマートブレインに、いやオルフェノクの仲間の元に戻って来たと言っても、
私達もはいそうですかと、あなた達を信じる訳にはいかないのです」教授は涼しげな顔でそう切り出した。
「みんなこう思っているはずです、あなた達は信頼出来るのか?とね」
サラリーマン風の男は教授の言葉にもっともらしく頷いた。
「そこで、ここはひとつ、私達の目の前で人間を襲ってみせてもらうというのはどうでしょう?」
教授は嫌な薄ら笑みを浮かべて海堂と結花に向かって言う。
「先程の人間の子供なんていいんじゃないですかね?」

「ふざけんなっ!!」海堂は額に青筋を立てて怒りを露にする。
「俺達は人間を襲わなくていいって約束で戻って来てやったんだっ」
「俺はなぁ、木場のように人間とオルフェノクの共存だなんて、
出来るかどうかもわからないような奇麗事を言うつもりはねぇよ」
「だけどな、嫌なもんは嫌なんだよっ!俺達にとって人間を襲うのは嫌なことだっ。
嫌な事をやるのは嫌だし、嫌な事を強制されるのはもっと嫌なんだよっ」
海堂は教授とサラリーマン風の男を前にそう啖呵を切る。
「相変わらずですね、海堂君は」恩師である教授にそう言われて、その先を言いそびれる海堂。
「ちゅーか、スマートブレインは人間を襲うことを禁止してるんじゃねえのかっての?」
「オルフェノクに人間を襲うなというのが土台無理な話です」
教授は涼しげな顔でそう言ってのけるのであった。
131【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/30 01:15 ID:SyOnSloK

「ではこんなのはどうですかね?」横からサラリーマン風の男が口を挟む。
「私達はこれからあの人間の母子を襲います。あなた達はそれを阻止してください。
このスマートブレインの敷地を無事にあの母子が出られれば、あなた達の勝ちです。
私達も今日の所は大人しく引き下がりましょう。
私達が敷地内であの母子を殺せば私達の勝ちです。ですがあなた達には何の罰もありません。
あの母子が目の前で死ぬということ以外はね」サラリーマン風の男はそう言って海堂達を嘲笑う。
「私達を止めるということは、必然的に私達と戦うということになるでしょう。
このゲームに参加するもしないも、あなた達の自由ですよ。
でもあなた達が参加しなくても、私達はあの母子を殺しますがね」
そう言うと声を上げて高らかに笑うサラリーマン風の男。
「チッ、下衆がっ」海堂は否応無くそのゲームに参加せざるを得なかった。
132【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/30 01:16 ID:SyOnSloK

結花はその会話を黙って聞いていたが、心の中では違う事に考えがいっていた。
結花の心の中で思いを巡らす。

私、この人達は嫌いだ。同じオルフェノクなのに。
同じオルフェノクでも木場さんは優しい。優しすぎるくらいに。
海堂さんもオルフェノクだけどとっても優しい。口は悪いけど、本当はとっても優しい心の持ち主だ。
ああ、そうか、そんな簡単な事だったんだ…
オルフェノクの中でも、嫌な人もいれば、優しい人もいる。
人間だってきっとそうに違いない。
でも私は優しい人間の人を知らない、出会った事がない…
私は誰かに好かれようと頑張って来た。
だけどみんないつも私のことを、いじめて、無視して、仲間外れにしていた。
誰も私の期待に応えてはくれなかった。私は裏切られ続けて来た…

その時、結花の脳裏に彼らの姿が浮かぶ。

乾さんは優しい。私がオルフェノクだってことをずっと誰にも言わず黙っいてくれる。
あの人はちょっと海堂さんに似ている。ぶっきらぼうで口は悪いけど本当は優しい。
真理さんだって、啓太郎さんだって私に親切にしてくれる。
私は彼らを信頼してもいいの?彼らは優しい人達なの?
いつか私のことを裏切ったりしない?
私のことをいじめたり、無視したり、仲間外れにしたりしない?
私は人間を好きになりたい。誰か一人でもいい、私の期待に応えて欲しい。
誰か今の私を助けて…

結花は思いを巡らすうちにまるで幼子のように怯えきってしまっていた。
133【楽園の崩壊】夢のかけら:03/08/30 01:18 ID:SyOnSloK

「結花、心配すんなっ、おめえは俺が守ってやる」

それは海堂が、戦いを前に結花の様子がおかしいのを気遣って言った言葉だった。
だが、その言葉は今の結花の心理状態にシンクロして、彼女の心に響いた。
結花にとってその言葉は自分を救ってくれる唯一の声であるかのように思えた。
結花は海堂の顔を見て大粒の涙をポロポロと溢す。
「はいっ」涙しながら結花はそう言うのが精一杯だった。
海堂は戦いを前に結花が情緒不安定である程度にしか思っていなかった。
結花のその涙を真意を海堂が知ろうはずもなかった。

(まだまだ続きます)
134ハァハァ:03/08/30 03:47 ID:kp4PF0rR
>>132-133
(;;´Д`)ユカタソ・・・クジケルナ・・・・・・
135【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/01 22:42 ID:fqclBlTT

「それではゲームを、はじめましょうか」サラリーマン風の男は不敵な笑みを口元に浮かべる。
「海堂君、準備はいいですか?」涼しげな顔の教授。
「ああ、いつでもこいやっ」海堂は身構える。
3者3様それぞれの顔にオルフェノクの顔がオーバーラップされる。
次の瞬間、スネイルオルフェノク、オウルオルフェノク、シーキュカンバーオルフェノクの戦いがはじまる。
岩塊をも粉砕する鋭い鉤爪でスネイルオルフェノクに襲い掛かるオウルオルフェノク。
スネイルオルフェノクは自在に伸びる腕をオウルオルフェノクの腕に絡ませてこれを防ぐ。
シーキュカンバーオルフェノクはコンクリートを溶かすほどのゲル状溶解液を投げつけて翻弄。
これを咄嗟に避けたスネイル、だがゲル状溶解液はコンクリの壁に当り、これを一瞬にして溶かす。
その威力を見たスネイル「こんなもん当ったら解けちまうなっ」

長田結花はこの戦いを前に固まって身動きが取れなくなっていた。
心理的に不安定は結花はオルフェノクに変身出来なかった。
いや、変身することを自ら拒んだと言うべきであろうか。

ダメ… 私、今オルフェノクに変身したら、もう二度と人間に戻れなくなる…そんな気がする
海堂さん、ごめんなさい… 私… 戦えない

今オルフェノクになったら、人間としての理性を喪失し、
心身共にオルフェノクとなり、二度と人間の心に戻れないのではないか、結花はそう感じていた。
結花は自らオルフェノクに変身することを畏れ、変身することを拒んだのだ。
目の前で必死になって母子を救おうとする海堂、それなのに自分は変身して戦うことを拒んでいる、
その罪悪感がより一層結花の情緒不安定に拍車をかける。
結花は心理的なマイナスの連鎖を起こし、自分でもどうしていいのかわからなくなっていた。
136【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/01 22:43 ID:fqclBlTT

さらにスネイル、オウル、シーキュカンバーの戦いを面白そうに観戦する野次馬達、
当然そのすべてがオルフェノクであった。
「おうおう、何か面白そうなことやってるねっ」
「あー、俺も参加させてもらえば良かったよっ」
「人間襲えなくなってからときめくことないしねぇ」
「おらっ、いけいけっ!裏切り者なんざぶっ殺せっ!!」
ジュラフオルフェノクの少女とロングホーンオルフェノクの少年をはじめ、
その場のほとんどのオルフェノクが、海堂・スネイルオルフェノクを罵り、罵声を浴びせ、野次る。

その野次馬の罵声に結花は恐れおののいた。結花の脳裏にまたしても忌まわしい過去が甦る。
同級生達に罵られ、酷い仕打ちを受け、いじめられ続けた日々。
それどころか両親や妹までもが自分の事を罵り蔑んだ。
結花は耳を塞ぎ、叫ぶ「イヤァァァッ!!」
興奮しながら涙を流す結花「…海堂さん、ごめんなさい… 私… 戦えない…」
そう言って結花はその場に崩れ落ちる。
137【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/02 00:08 ID:4I+TWT1t

シーキュカンバーオルフェノクのゲル状溶解液をかわすスネイルオルフェノク、
その背後からオウルオルフェノクの鉤爪が襲い掛かる。
これをまともに喰らったスネイルは仰け反り、
オウルオルフェノクはスネイルオルフェノクを容赦なく何度も打ちつける。
オウルオルフェノクとシーキュカンバーオルフェノク、
2体のオルフェノクを相手に傷つきボロボロとなるスネイルオルフェノク。
「これでは母子を救う前にあなたが死んでしまいますね」
「もっとも、一度既に死んでいますがね」そう言い笑うサラリーマン風の男の影。

崩れ落ち、結花の前に転がり倒れるスネイルオルフェノク。
力尽きたのか再び人間の姿に戻る海堂。
そしてその傷ついた海堂の姿を涙ながらに見つめる結花。
「…海堂さん…」結花は心の中で自分のせいで海堂が傷ついたと自らを責めていた。
そんな結花の方を振り返り、うすら笑いを浮かべて見せる海堂。
傷ついた体で立ち上がろうとする海堂、その時、海堂は結花に向かって言葉をかける。
「俺は確かにあの母子を救いたい…
んだが、お前のことだって救ってやりてぇと思ってる…
結花、お前が嫌なら戦わなくていいんだ…お前の気の済むようにするさ」
海堂はそう言い立ち上がると、再びスネイルオルフェノクの姿となり、
2体のオルフェノクに立ち向かって行く。
その海堂の後ろ姿をじっと見つめている結花。
138【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/02 00:09 ID:4I+TWT1t

海堂が結花にかけた言葉が、優しく暖かいぬくもりをもって、結花の心に染み渡って行く。
その言葉のぬくもりが結花を心地良い場所へと誘い、
結花の心の中のぬくもりと暖かさ、そして優しさを呼び起こすかのようでもあった。

ああ、そうなんだ…
私、今迄自分のことばかり考えていた…
自分のことに精一杯で、人のことなんて考える余裕もなかった…
私がもっと変わらなきゃ、誰も私の期待になんて応えてはくれない…
今は海堂さんが優しくしてくれていても、
海堂さんにだっていつかきっと愛想を尽かされてしまう…
私は…もっともっと変わらなきゃ…

あの母子を救えなかったら…
海堂さん、きっと悲しむだろうな…いっぱい傷つくだろうな…
139【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/02 00:13 ID:4I+TWT1t

結花がそう感じた時、結花の中で何かが音を立てて弾けた。
結花の目は力強く輝き、何かを決意したようでもあった。
それまでの弱々しい姿がまるで嘘であったかのように、結花は一瞬にして豹変する。
凛々しく立つ少女、その背中には巨大な、白く輝く美しい翼が現れる。
それはオルフェノクの力がオーラとして結花の体から放出されただけであったが、
その輝きは大きな翼を広げた天使のようでもあった。
白く輝く翼から撒き散らされる光の粒子が結花の体を包み込む。
そして光の粒子が結晶化をはじめ、光輝く結花の体はクレインオルフェノクの姿へと変わって行く。
輝く巨大な翼をはためかせ凛々しく立つクレインオルフェノク。

「海堂さん、心配かけてごめんなさい…私、もう大丈夫…」
スネークオルフェノク・海堂の背中を見つめるクレインオルフェノクこと結花。
結花にはこの背中が自分の希望でもあるかのようにも感じた。
きっとこの背中についていけば、その先には優しさと暖かなぬくもりに満ち溢れた世界があるのではないかと。
「結花、」振り返るスネークオルフェノク・海堂に、クレインオルフェノク・結花は力強く言う。
「私も…戦いますっ!!」

(まだ半分にも達してません)
140:03/09/02 00:15 ID:4I+TWT1t
うわぁぁ、やってもうた
>>135-137
スネイルじゃなくてスネークです
最近どうも不調(汗
141【楽園の崩壊】夢のかけら :03/09/03 00:04 ID:RK0/9sYF

溜めをつくって身構えるクレインオルフェノク。
次の瞬間、クレインオルフェノクは空を裂き飛翔する。
飛翔態となり高速で低空飛行するクレインオルフェノク、地上1m程度の高さで、
スネークオルフェノク、オウルオルフェノク、シーキュカンバーオルフェノクの戦闘に突撃する。
クレインオルフェノクはオウルオルフェノクに激突寸前、高度を上げ、
その脚でオウルオルフェノクをわしづかみにすると、そのまま垂直に上昇して行く。
「海堂さん、こっちは任せてっ」クレインオルフェノクから投影される結花が言う。
クレインオルフェノクは脚でわしづかみにしたオウルオルフェノクを、
スマートブレイン社ビルの高層階の壁に激突させ、自らは脚を離して激突寸前に急旋回し進路を変える。
猛スピードで壁に激突したオウルオルフェノクは、そのまま高層より地上に落下して行く。
地上が真近に迫った所でオウルオルフェノクは体勢を立て直し、
オウルオルフェノクもまた飛翔態へとその姿を変える。
地上激突寸前で、飛行に成功したオウルオルフェノク、そのまま低空ギリギリを滑走する。

オウルオルフェノクはそのまま人間の母子を目指した。
2対2となった今、スネークをいたぶるよりも、
人間の母子を殺してこのゲームに勝利する事を優先させるべき、そう判断したのだ。
その目論見に気づいたクレインオルフェノクは、猛スピードでオウルオルフェノクを追撃する。
ビルの壁沿いに急降下して行くクレインオルフェノク、翼が空を切り裂く音と振動。
オウルオルフェノクの位置を再度確認したクレインオルフェノクは、オウルオルフェノク目がけ接近して行く。
「フクロウが私に勝てる訳ないわ」
クレインオルフェノクはオウルオルフェノクに並走するように飛行し、その脚でオウルオルフェノクを蹴り飛ばす。
飛行中に体勢を崩したオウルオルフェノクは、そのまま地上に2度、3度地面に体を擦り、
そのまま転げ回りながら地上に激突する。
142【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/03 00:05 ID:RK0/9sYF

オウルオルフェノクが飛翔態から通常の形態に戻り立ち上がると、
目の前には既にクレインオルフェノクが立ちはだかっていた。
凛々しく立つクレインオルフェノク、それに対峙するオウルオルフェノク。

「私は人間を殺したくない。そして今は出来ればオルフェノクも殺したくはない。
だがあなただけは殺すことに何のためらいもない」

それは海堂の無念を知る結花だからこそ出た言葉であった。

「人は死ぬよりも生きている方がツライこともある。私はそのことを知っている。
 …だから、あなただけは許さない」

結花もまた死ぬよりもツライ生を送って来たという忌まわしい過去がある、
状況は違えど海堂の苦しみは結花には充分過ぎる程に理解出来たし、
海堂の心の傷を他人事であるとは決して思えなかった。
この点で海堂と結花には通じるものがあった。
死ぬよりも生きている方がツライことを、2人は経験して来たのだから。
それ故、結花は、醜い嫉妬心から海堂の夢を奪った教授ことオウルオルフェノクを許す事は出来なかった。

オウルオルフェノクは口から激しい刺激臭の神経系毒ガスを吐き出す。
これを素早い動きでかわすクレインオルフェノク、
その高速の動きは残像効果を生み出し、オウルオルフェノクを幻惑する。
その動きについていけないオウルオルフェノク、そこへクレインオルフェノクは口部から超高周波を発する。
143【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/03 00:06 ID:RK0/9sYF

(時間やや戻り)
「海堂さん、こっちは任せてっ」精神的に復活を果たしたクレインオルフェノクの姿をした結花は、
そう言いながらオウルオルフェノクを脚にわしづかみにし飛び去って行った。
「へっ、こっちもへたってらんねぇな」傷ついていた海堂ことスネークオルフェノクだが、
結花が立ち直ったことに喜び、自らもまた気力を取り戻していた。
多少の肉体的なダメージは、気力が充実すれば充分にカヴァー出来る、
海堂のような調子に乗りやすい男であれば、それは尚更のことであった。

シーキュガンバーオルフェノクのゲル状溶解液を、蛇のような動きで体をくねらせかわす海堂。
トリッキーな動きで相手に接近したスネークオルフェノクは、
シーキュガンバーオルフェノクのその拳を思いっきり叩き込む。
だが軟質構造の身体を持ち、敵のいかなる攻撃も受け流す柔軟性を備えるシーキュガンバーオルフェノクに、その拳は通じなかった。
防御性に優れ、命中率は悪いが当ると痛い攻撃を持つシーキュガンバーオルフェノク。
スネークオルフェノクは2度3度とシーキュガンバーオルフェノクを殴りつけるが、その打撃は一向に効いている様子はなかった。
「なら、こんなのはどうだっつうの!?」
スネークオルフェノクはその伸縮自在の腕をシーキュガンバーオルフェノクの全身に絡みつかせ、
シーキュガンバーオルフェノクを締め上げる。
だがナマコの特質を備えたシーキュガンバーオルフェノクの表面は特殊な液体を発しヌルヌルしだし、
スネークオルフェノクの腕による締め上げもただ滑るばかりであった。

体を滑らせて締め上げから逃れたシーキュガンバーオルフェノク、
ゲル状溶解液を投げスネークオルフェノクを牽制しながら、走り移動する。
シーキュガンバーオルフェノクもまた人間の母子を目指すのであった。
追跡能力に優れたスネークオルフェノクは、垂直な壁をも登る特殊能力を活かし、
ビルの側面を壁走りしながらシーキュガンバーオルフェノクの後を追う。
144【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/03 00:07 ID:RK0/9sYF

クレインオルフェノク、スネークオルフェノク、オウルオルフェノク、シーキュガンバーオルフェノク、
4体のオルフェノクが人間の母子を目指して集まろうとしていた。
オルフェノクの姿を見た人間の母子は悲鳴を上げ逃げ惑う。
だがその場で悲鳴を上げているのはその母子だけであった。
それもそのハズ、ここは人知れずオルフェノク達が集う場所、
人にして人在らざる者達が身を潜める非日常の空間であるのだから。
ここでは人間達こそが異人であり、人間の母子はオルフェノクの巣に迷いこんだ哀れな子羊にしか過ぎなかった。

オウルオルフェノクは恐怖する人間の母子に向け、口から激しい刺激臭の神経系毒ガスを吐き出す。
飛翔態と化したクレインオルフェノクはその翼で突風を起こし、風向きを変え、これを防ぐ。
シーキュガンバーオルフェノクがゲル状の溶解液を人間の母子に向かって投げつける。
母子の前に身を呈し、自らの体をその盾とするスネークオルフェノク。
ゲル状の溶解液がスネークオルフェノクのボディに当ろうかという瞬間、
クレインオルフェノクより投げ出された白い丸テーブルが、
スネークオルフェノクの代わりにゲル状の溶解液を浴びて溶け朽ちる。
「すまねぇ、結花」そう言うスネークオルフェノクに力強く頷くクレインオルフェノク。

人間の母子がスマートブレイン社の敷地より抜け出すのに後わずか数メートル。
「おめえら、早く逃げろっ!!」スネークオルフェノクは人間の母子に向かって叫ぶ。

(まだ続きます)
145:03/09/03 03:47 ID:XRF+awEI
ヤバイ…もう寝ないと仕事に差し支えるのに、止まらない…。
めちゃめちゃ続き期待してます!!
146名無しより愛をこめて:03/09/03 22:55 ID:oveT9XBy
SSウザイよ。他所でやれよ。
せっかく見てきたし、スレタイに吊られて来てみりゃ、なにこれ。キモッ。
それとも他にまともな補完スレがあるのかな?
147武上純希:03/09/03 23:08 ID:LM66ebmk
>>140
最近どうも不調って、ずっとだろうがw
148名無しより愛をこめて:03/09/03 23:33 ID:eksbC+Hf
夏休みは終わったのにどうして夏厨が紛れ込んでるんだ?
149名無しより愛をこめて:03/09/04 06:43 ID:kK8/4DRf
>>146
去年の龍騎映画のときから補完SSスレはこのタイトルなんだよ。
映画関係はスレ乱立だが普通の補完スレなら一つづつ巡って
好みの所に住み付けばよろし。
↓とか。
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1058703199/
150名無しより愛をこめて:03/09/04 18:56 ID:lUz1AOZV
>>146
へー、きみ
151名無しより愛をこめて:03/09/08 23:38 ID:NOZIf1Sn
保守。
鶴と蛇気になりすぎ。
152【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/10 23:59 ID:hybWx5Tf

人間の母子に残された僅か数メートル。
だがそれは海堂と結花にとっては、とてつもなく長く感じられた数メートルでもあった。
数メートル先の数段の階段を降り切れば、そこはもう一般公道、スマートブレイン社の敷地内ではない。
その僅か数メートルを巡って、スネークオルフェノク、クレインオルフェノク、
オウルオルフェノク、シーキュガンバーオルフェノク、4体のオルフェノクの攻防が続く。
人間の母子に迫ろうとするオウルオルフェノクとシーキュガンバーオルフェノク。
これを防ぎ母子を守りきろうとするスネークオルフェノクとクレインオルフェノク。
海堂と結花は最早、自らの身を呈して、自らの身を賭して、母子を守ることに必死であった。

シーキュガンバーオルフェノクのゲル状溶解液が、スネークオルフェノクのボディをかすめる。
スネークオルフェノクのボディがシューっという音と共に煙を上げながら変色し、黒くただれて行く。
「グッ」短い唸り声を上げるスネークオルフェノク、だが幸い致命傷には至っていない。
スネークオルフェノクは腕を伸ばし、シーキュガンバーオルフェノクに絡みつかせて、その動きを止める。
そのままシーキュガンバーオルフェノク背後から羽交い絞めにしたスネークオルフェノク、
「打撃がダメならこれはどうだ、っつうのっ!」
スネークオルフェノクは羽交い絞めにしたシーキュガンバーオルフェノクに、自らの牙を突き立てる。
敵の攻撃も受け流す柔軟性を備えるシーキュガンバーオルフェノク、
だがスネークオルフェノクの牙がその肩口に突き刺さり、
多少なりともダメージを受けたのか、低い唸り声を上げる。
軟質構造の身体を右往左往させながら必死になって逃れようとするシーキュガンバーオルフェノク。
スネークオルフェノクは残り数メートル、何としてでもシーキュガンバーオルフェノクを放さない、
決死の覚悟で望んでいた。それは海堂の執念でもあった。
153【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/10 23:59 ID:hybWx5Tf

オウルオルフェノクの周囲を高速で飛び周り翻弄するクレインオルフェノク、
その素早い動きは残像を生み出し、オウルオルフェノクを幻惑する。
クレインオルフェノクの動きを捉えないないオウルオルフェノク、
上から下から、左右から、そして背後から、飛び交うクレインオルフェノクの攻めを防ぐのが精一杯であった。
クレインオルフェノクの攻めは威力こそ低いが、小刻みな連打でオウルオルフェノクを小突き回す。
ヒットアンドアウェイ、接近しては軽打を放ち、また離脱する、これをひたすら繰り返すクレインオルフェノク。
そのクレインオルフェノクの攻撃がオウルオルフェノクを苛立たせる。
攻撃は最大の防御とでもいわんばかりのクレインオルフェノク、
その絶え間なく休む事のない攻めは、オウルオルフェノクに人間の母子を気にする暇さえ与えない。
だが、クレインオルフェノクも動きを全く止めずに、攻め続けるというのはかなりの体力を消耗していた。
それでも結花は動き続けた、攻めることを止めようとはしなかった。
それもまた結花の覚悟、そして執念でもあった。

4体のオルフェノクに怯え恐怖しながら逃げ惑う人間の母子。
母子は数段の階段を降りて行く、スマートブレインの敷地外はもう後数歩であった。
脚をもつれさせながら慌てる母親は、階段で脚を捻って倒れる。
「キャッ!!」短い悲鳴と共に倒れこむ音が聞こえる。倒れた母親に駆け寄る男の子。
母子の動きはそこで完全に止まってしまう、だが母子が佇んでいる場所は階段を降り切った一般公道、
つまりスマートブレイン社の敷地外であった。
154【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 00:21 ID:sFMRCc7P

「っしゃぁっ!!」ゲームの終了を確信するスネークオルフェノクこと海堂。
その時、一瞬出来たスネークオルフェノクの隙、その隙をついてシーキュガンバーオルフェノクは
スネークオルフェノクを突き飛ばし、人間の母子向かって突進して行く。
「なっ!?」一瞬の隙を突かれたスネークオルフェノクは、
シーキュガンバーオルフェノクの突進を阻止することが出来ない。
シーキュガンバーオルフェノクはゲル状溶解液を人間の母子目がけ投げようとする。
そこへクレインオルフェノクが、シーキュガンバーオルフェノク目がけ真横から体当りを喰らわす。
体当りで弾き飛ばされるシーキュガンバーオルフェノク。
「てめえらっ!騙しやがったのかっ!?」スネークオルフェノクは敵に向かって叫ぶ。
「確かに我々はゲームに負けました。
ですが、我々の面子に賭けて、あの人間にはここで死んでもらいますよ」
シーキュガンバーオルフェノクから投影されるサラリーマン風の男の姿がそう言い放つ。

海堂にしても、結花にしても、教授とサラリーマン風の男が約束を守らないのではないか?と思わなかった訳ではなかった。
だが彼らは、人間の母子がスマートブレイン社の敷地の外へ出る迄の間、
全力を尽くし、心血を注ぎ込まなくてはならなかった。
状況的にそれ以外に人間の母子を救う方法は有り得なかったのだ。
先の事を考えて体力等を温存しながら戦う余裕は彼らには無かった。
延長戦は彼らにとってはじめから考えてはならないものだったのだ。
だが無情にも教授とサラリーマン風の男は彼らに戦いの継続という現実を突き付けた。
彼ら2人にとってこの先の戦いは非常に厳しいものとなると言わざるを得なかった。
155【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 00:43 ID:sFMRCc7P

と、その時であった。サッカーボールがスネークオルフェノクに勢い良くぶつかり、
跳ね返り、2度3度とバウンドしながら転がって行く。
スネークオルフェノクがボールが投げられた方を振り返ると、
人間の男の子が倒れた母を庇う様に立っていた。
「お化けめっ、どっか行っちゃえっ!」人間の男の子は恐怖に震えながら、懸命に母を庇おうとしていた。
スネークオルフェノクは立ち止まったまま動かなかった。
いやスネークオルフェノクだけでなく、その場にいたクレインオルフェノク、
シーキュガンバーオルフェノク、オウルオルフェノク、すべて動きが止まっていた。
動きが止まった4体のオルフェノクの間に沈黙が流れる。

やがてオウルオルフェノクが人間の姿に戻る。そしてシーキュガンバーオルフェノクも人間の姿に戻る。
「いいでしょう、あの人間の母子は見逃してあげましょう。
私達はゲームには負けましたが、もっと本質的な部分であなた達に勝ちましたから。」
教授は人間の姿に戻った海堂と結花に向かってそう言った。
「オルフェノクが人間を受け入れられないように、人間もまたオルフェノクを受け入れられないのですよ。
例えそれが、人間を守ろうとするオルフェノクであろうともです。
そうそれは論理的なものではなく、きっと生理的なものなのでしょう。理屈ではない、それ故に尚更性質が悪い。
海堂君、どんなに君が頑張った所で、所詮はこんなものなのです。」
教授は勝ち誇ったように口元に笑みを浮かべて、海堂に諭す。

「そうですね、あの人間の母子が生き残った方が、この2人の哀れさと惨めさが引き立つというものですね」
「私もさっきのアレを見てなんだかスッキリしました。あの人間達を殺さなくても充分に満足、お腹いっぱいですね」
サラリーマン風の男は、海堂と結花を嘲笑うかのように、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
156【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 01:16 ID:sFMRCc7P

そう言い残し、スッキリとした表情でその場から立ち去って行く教授とサラリーマン風の男。
俯き加減で無言で立ち尽くす海堂、その海堂を見つめている結花。
結花は海堂が深く傷ついているのを感じた。
海堂の傷ついている姿に、その胸を痛め、言い様の無いせつなさを感じていた。
「コワイお化けってのは、俺達のことかっ」海堂はそう言うと、傷ついた体を引きずるように、
重い足取りで歩きはじめ、結花の目の前を横切って行く。
結花はせつない表情を浮かべ、潤んだ瞳で海堂を見つめていた。
結花に背を向けて歩く海堂の背中は深い悲しみに満ち、哀愁すら感じさせた。

こんな時、以前の結花なら歯痒く思いながらも、何も出来ずにただ海堂を見つめるだけであっただろう。
だが、今の結花は以前とはほんの少しだけ違っていた。
結花は唇を噛み締め、決意したように頷くと、海堂の悲しい背中に走り寄って行く。
そして海堂の横に立つと、海堂の肩にそっと手を置く。
「海堂さん、私は知ってますから」結花は一度目線を下に落とし伏せ目がちに言う。
そしてそのクリッとした目を大きく見開いて、潤んだ瞳で海堂の目を直視する。
「海堂さんが立派だったてこと、私はちゃんと知ってますから」
結花のその言葉は、海堂の傷ついた心を優しさで覆い尽くす母親のようでもあった。
少なくともこの時の結花は母性に満ち溢れていた。
157【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 01:31 ID:sFMRCc7P

そんな結花の目を見つめ返す海堂。だが直にその目線を外し目を細める。
「…よせよ…余計に惨めになっちまうだろっ…」
海堂はそう呟くと、再び結花に背を向けて歩きはじめる。
まるで傷ついた重い体を引きずっているかのように。

海堂は結花に背を向けたまま、結花に向かって手を一度振ってみせる
「…ありがとなっ」今の海堂にはそれが精一杯であった。
だが結花にはその事がちゃんとわかっていた。
結花は海堂の心が深く傷ついていると感じていた。

現在の結花は、怯えた幼女のようでもあり、恋する乙女でもあり、大人の女のようでもあり、
母親のようでもある、そうした様々な側面を内包していた。
それはまた結花が変わりつつある、心の成長の証でもあった。
だが結花が、今の状況から完全に脱し、精神的に成長するには今暫くの時が必要であった。

(実はまだまだあるんです)
158【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 02:04 ID:sFMRCc7P

住処である高級マンションに帰って来た海堂と結花。
海堂はグダァっとソファに座り、何処か遠くを見るかのように、一点を見つめたまま動かなかった。
そんな海堂をそっとして置いてあげる結花、結花は海堂が深く傷ついていると感じていた。

結花は今回の事をきっかけに、海堂が徐々に人間を信じられなくなって行ったりしないかと案じていた。
人間を信じきれていない結花がそう思うのは変な話ではあるが、
それでも結花は海堂には人間の事を好きでいて欲しかった。
自分がそうではないから、余計に海堂にはそうであって欲しかったのかもしれない。

2人で外出した際、人間の男の子と楽しそうに話す海堂を見て、
−結花はそうした海堂を羨ましく感じていたが−結花は海堂のそういう所が好きでもあった。
また、羨ましいと感じたという事は、自分もそうなりたいと心の何処かで思っているということでもあり、
つまり海堂の人間との接し方は、結花の理想でもあるということでもあった。
だから、結花は海堂にはいつまでも人間の事を好きでいて欲しかった。

ソファに座り呆けている海堂の前に立つ結花「海堂さんっ」
愛らしい笑顔を浮かべる結花は、両手を後ろに隠し、手に何かを持っているようだった。
「…あんだよっ」海堂は呆けたまま返事だけする。
「じゃ〜んっ!」結花は手に隠し持っていた物を海堂の目の前に差し出す。
海堂はつい釣られて目線を結花が差し出した物にうつす。
結花が差し出した物、それは一本のクラシックギターであった。
159【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 03:04 ID:sFMRCc7P

「あんだよっ、今更こんなもん持ち出して」海堂はやる気なさそうに言い放つ。
「隣の部屋に置いてあったんですよ」結花は目をパチクリさせながら言う。
「海堂さん、いつか私に聞かせてくれた曲、また聞かせてください」
「俺はなぁ、もうギターとは決別したんだ、っつうのっ」海堂は怪訝そうな顔をしてみせる。
「たまにはいいじゃないですか」
「それにな、どうせまた途中で手が止まっちまう…」
確かに海堂にとってギターを弾くということは、ツライ過去を思い出させることにも繋がることであった。
だが、結花は敢えてそれに挑んだ。
音楽を愛し、ギターを愛する海堂であれば、海堂が人間を嫌いになるはずがない、
海堂は人間を好きでいてくれるに違いない、結花には何故かそう思えてならなかった。
「いいんです、途中で止まっても、例え上手く弾けなくても」
「私、海堂さんが弾くギターが聞きたいんです。海堂さんの優しいギターの音色が好きなんです。」
「海堂さん、お願いです、私の為にあの曲を弾いてください」結花は合掌して海堂に頼み込む。
「ダメ、ですかっ?」

「・・・・・」気乗りしない海堂は顔をしかめる。
「ほらっ、ギターを弾いている時の海堂さんて格好いいじゃないですかぁ」
「もう痺れちゃいますよね」「女の子ならみんなきっと惚れちゃいますよね」
結花は海堂をおだてて乗せようという作戦に打って出た。
「そ、そうかっ?」「いやいや、まぁそれ程でも、あるんだけどよ」
元々調子に乗りやすい海堂は、結花におだてられて段々その気になって来る。
「そうですよ、もう海堂さん最高って感じですよぉ」結花は海堂に合わせてダメ押しする。
「…ちっ、しょうがねぇなぁ、じゃぁおめえの為に弾いてやるからよ」
海堂は有頂天な顔で、恩着せがましく念を押して言った。
「ええ、私の為に、お願いします」結花は笑顔で頷いた。
160【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 03:29 ID:sFMRCc7P

"Four Divertimentos,op."
'n 1,Andantino Grazioso

ソファーに2人並んで座り、クラシックギターを弾く海堂、その横で聞いている結花。
海堂は穏やかな顔でクラシックギターを弾く。
海堂の指がギターの弦の上を舞い、優しい音色を奏でる。
結花もまた穏やかな顔でそれに聞き入っていた。
午後の穏やかな日差しが差込、部屋の開いた窓からは穏やかな風が
カーテンを揺らしながら流れ込み、結花の黒く長い髪を微かになびかせた。
なびいた結花の髪が海堂の頬をくすぐり、海堂の顔から笑顔が零れた。
それを見た結花もまた目尻を下げて笑顔を零す。
爽やかな楽曲が優しい音色で部屋の中に流れ、
奏でる者も聞く者も笑顔を零す、そこは全く穏やかな空間であった。
まるで今迄の喧騒のすべてが嘘であるかのように、
今この時、この空間だけは全くの異質な海堂と結花2人だけの世界となったのだった。
161【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 03:51 ID:sFMRCc7P

やがて海堂がギターを弾き終わると、この部屋にひとりの訪問者がやって来た。
結花はこの非現実的な空間の余韻を引きずりながら、玄関の訪問者を出迎えた。
訪問者は海堂のことを先輩と慕う小林義雄(ラビットオルフェノク)であった。
「先輩が戻って来てくれて、俺ホンと嬉しいです」
小林義雄はオルフェノクに覚醒した直後に海堂と出会い、
オルフェノクとは何であるか、その力の使い方などを海堂に教わったのだ。
それ以来、小林は海堂のことを先輩と慕い続けていた。
木場と結花にとって戸田英一がオルフェノクの師であるように、
小林にとっては海堂こそがオルフェノクの師であった。
「まぁ、なんだっ、こっち側も俺らにとっちゃ、居心地がいい場所じゃないみたいだけどよ」
海堂はそのことを実感していた、それは結花もまた然りであった。
「大丈夫ですよ、先輩。オルフェノクと人間は同盟を結んだんですよ。
オルフェノクと人間のこれからの敵はアギトです。」
「TVでもずっとそればっかりなんですよ」
小林はそう言いながら部屋のTVのリモコンを手に取り、TVのスイッチを入れた。

TVの画面からは、人間・オルフェノク対アギトの小競り合いの模様が流され続けていた。
既に人間・オルフェノクとアギト達の戦いは小規模な衝突を繰り返していた。
TV画面の中で、戦っている人間とオルフェノクとアギト。
TVのニュースにしては随分と過激な戦闘シーン迄もが平然と流されている。
種族間戦争が行われるという時代がそうさせているのだろうか、
人々も戦争というもの慣らされて来ているのかもしれなかった。
TVの中で大勢の人間達が傷つき、大勢のアギト達が傷ついていた。
その映像を見ていた海堂はTVの音を消して、手に持っていたギターを再び弾きはじめた。
162【楽園の崩壊】夢のかけら:03/09/11 04:03 ID:sFMRCc7P

『夢のかけら』

その何処か物悲しい旋律は今の海堂の心境そのものであった。
海堂の弾く楽曲に合わせるかのようにTVから流れる戦争の映像。
大勢の人間達が傷つき、大勢のアギト達が傷つき、それでも尚戦い続ける者達の姿。
海堂は悲しいような、せつないような面持ちでギターを奏で続ける。

結花はギターを弾く海堂を見つめ、再び海堂が深く傷ついていると感じていた。
木場がいなくなった海堂と結花だけの時間。
それは2人にとって辛いものだったかもしれないが、
だが木場のいない時間は、海堂と結花の心の距離を確実に近づけっていた。
今迄、その性格から何事に対しても自信を持てなかったが結花だが、
はじめて自信を持って言えるようになったことがひとつだけあった。
それは結花の女としての確信でもあった。
『この世界の中で、海堂さんのことを一番よく知っている女は私だ』と。

結花が一途に見守る中、海堂は『夢のかけら』をひたすら弾き続ける。
何処か物悲しく、せつないギターの音色がいつまでも響き渡っていた。

(この回はこれで終了。次回『ライオトルーパー隊隊長』に続く)
163:03/09/11 04:06 ID:sFMRCc7P
当初軽く流して終わりにするつもりだったのに、
いつの間にやらシリーズ最長になってしまった。
みなさんの期待に応えられているといいんだが
164名無しより愛をこめて:03/09/12 21:14 ID:qlGlzuwT
>>163
がんがれ。
165【シューティングスター】前編:03/09/15 14:44 ID:Tu/dooJc
世界は、オルフェノクに支配されていた。

人類がオルフェノクに対抗する手段は、「ファイズ」と「カイザ」以外に有効なものはなかった。

そして、ファイズは行方不明、カイザも、今日倒れた・・・物語はここから始まる。

サイガがカイザを倒し、オルフェノク三人組とサイガの戦闘の後地・・・
そこには草加雅人と呼ばれた人間の亡骸の灰が彼の服と共にあった。
生きていたころ、人は彼に頼っていた。彼は嫌われていたが、頼られてはいた。
だが、その灰にまみれたロングコートの近くには誰もいなかった。
しかし突然、灰が一箇所に集まり、人型を形成した。
『再生』
以前カイザが倒したオルフェノク・・・クロコダイルオルフェノクの能力
サイガ=レオに使徒再生されて死んだ数時間後、草加雅人はその能力により蘇った。
「残る命はもうなし・・・まったく、一番くだらない方法で殺されるとはね、全く冗談じゃない」
草加雅人はその能力を持っていながら、オルフェノクの姿になることは出来ない。
そして、再生したものの、カイザギアは既に彼の手にはなく、彼に残されたのは
中破して打ち捨てられたサイドバッシャーだけだった。
「さて、どうするかな・・・」
サイドバッシャーはなんとかビークルモードに戻すことが出来た。
なんとか走行することはできるだろう。
「とりあえずここにはいられない・・・真理にあんな醜態をさらしておいて」
草加雅人は拳を握り締める。
「あの帝王のベルト・・・」
サイドバッシャーを荒野に隠し、別のバイクで街に出る。
「しょうがない、奴等のところに行くか・・・」
166【シューティングスター】前編:03/09/15 14:45 ID:Tu/dooJc
市街地は沸いていた。帝王のベルトのサイガが自分達を殺せる存在、カイザを葬ったからだ。
歓声に沸く街、しかし静かな場所もある。例えば路地裏から入ることが出来る地下のバー
薄暗い店内、そこには数人の男女がいた。
「カイザが死んだ・・・か」
テレビに向かい、酒の入ったグラスを傾けているのは眼鏡の青年、西田清高
「そんな・・・草加君が死んだなんて」
放送を見て震えている少女、木村沙耶
「あいつは真理に執着しすぎたんだよ」
ヘッドホンで音楽を聴きながら折り紙を折っている青年、澤田亜希
「よく言うぜ、お前だって真理に執着してたくせによ」
澤田にちゃちを入れた男、徳本恭介
「でもこれで私達の仲間は真理を入れて9人・・・もう最初の半分くらいしかいないじゃない」
そういった女は阿部里奈
「どうかな」
その場にいた男で口を開いた最後の男、新井賢
「どういうことだ?」
西田が扉の近くに座る新井に問う
「奴が死んだかどうかってことだよ」
と、その瞬間音を立てて店の扉が開かれる。
「やあ」
その扉から顔を出したのは草加雅人だ
「この場所を知っているのは、ここにいるメンバー意外じゃお前だけだ」
「新井君、足音が聞こえたってわけね・・・残り10人に訂正と」
ここは『BAR・シューティングスター』園田真理はその存在を知らない
167【シューティングスター】前編:03/09/15 14:46 ID:Tu/dooJc
「残り10人・・・三原と大田はどうした?」
コートを脱ぎ、胸に穴の開いたシャツを着替え、それから雅人は以前よりも人数が減っていることを指摘した
「あの二人は死んだよ」
澤田の一言に、その場の全員が沈黙する。
「・・・・そうか」
死因は聞かない。『オルフェノクに殺された』の一言が返答で帰ってくることが見えているからだ
「雅人、お前はどうするつもりだ?」
西田が聞いてくる。
「俺はあの帝王のベルト・・・」
「サイガよ」
「サイガか・・・そう、俺はサイガに借りを返す必要がある。あいつは俺を見下した・・・これは許せることじゃない」
と、そこで徳本が雅人が何も持っていないことに気付く。
「雅人、カイザギアはどうした?」
「カイザギアは解放軍が回収した・・・取りに行くことは出来ない」
新井が立ち上がり、雅人の肩を叩く
「つまり今のお前はただの人間・・・てことか?」
「そうだ・・・皆、頼みがある」
『・・・頼みがある』雅人のその言葉に全員が驚いたような顔をした。
「あれを・・・デルタギアを俺に貸してくれ」
168【シューティングスター】前編:03/09/15 14:47 ID:Tu/dooJc
「駄目だな」
右手にデルタギアを持った澤田が言う。
「これを渡したら、草加・・・お前はすぐに戦いに行くだろう」
「・・・・ああ」
「そういえば雅人、サイドバッシャーはどうした?」
西田がもう一つ気付いたように言う。
「あれは壊れている、一応解放軍のアジトから離れた場所に隠してきたが」
西田は沙耶と里奈に目をやる。二人とも頷いた。
「回収して来い、直してやる」
「・・・できるのか?」
「当然だ」
そのやり取りの後、新井が皆の意見をまとめる。
「とりあえず明日になったらサイドバッシャーの回収だな、草加と澤田で行ってくれ」

翌日、雅人と澤田はバイクを走らせていた。
「草加・・・」
バイクで走りながら、澤田が雅人に話しかける。
「なんだ?」
「真理は・・・大丈夫か?」
「多分な・・・」
「お前、やっぱり嫌われてたな」
「なんだと?」
「真理が好きだったのは、弱弱しいいじめられっこのマー君だったんだってことだよ」
「いじめてた当人が言うことじゃないな」
「ファイズは、結局死んだんだろ」
「乾巧か・・・あいつは死んだ。だが真理はあいつが生きてると、救世主だと言ってはばからない」
「それは、真理らしいな」
そして、サイドバッシャーが隠してある場所に到着する。
169【シューティングスター】前編:03/09/15 14:49 ID:Tu/dooJc

「草加、だれかいる」
そこには、数人の男がいた。
「おい、何をしている?」
雅人のその言葉に、男が数人振り向く。男達は、全員同じ服を着ていた。
「(スマートブレインのライオトルーパー部隊!?何故こんなところに?)」
一人の男が代表して喋る。
「俺達はこの試作型のサイドバッシャーを見つけて、持ち帰ろうとしてるんだよ。
何しろカイザに持ってかれたこの試作型には、実物がないと再現不能な技術が入ってるんでな」
と、作業を再開する。
「どうする、草加?」
小声で話を始める雅人と澤田
「まずいな・・・これでは回収できない」
「・・・使うか?」
澤田はリュックからデルタドライバーを出す。
「相手は・・・6人か・・・やってやろうじゃないか」
ベルトを装着する。
そして、近くに落ちていた鉄パイプを握り、作業中の男達に向かい走り出す。
「・・・・・・ハァ!!」
そして、鉄パイプの一撃がライオトルーパー部隊の男の一人を昏倒させる。
「なっ、貴様」
残りの五人が雅人を包囲する。
「変身!」
そして、5体のライオトルーパーに変身する。
だが雅人は慌てない。鉄パイプをライオトルーパーの一人に投げつけると、コートのポケットから
デルタドライバーを取り出す。
「変身!!」
170【シューティングスター】前編:03/09/15 14:51 ID:Tu/dooJc
「ファイア!!」
そしてガンモードで一気に3体のライオトルーパーを攻撃する。
「なっ!?」
赤い炎と共に、攻撃を受けたライオトルーパーが消滅する。
もう一人は立ち上がり、オルフェノクに姿を変えるものの、かなり消耗している。
「馬鹿な・・・あんな奴は知らないぞ!」
残りの2人は当然驚いている。
「まさか・・・」
そしてそのうちの一人はライオトルーパー部隊に流れていたある噂を思い出した。
『赤い炎の悪魔』の噂を
「ハァ!!」
それを思い出しているうちに、デルタのキックがオルフェノクに姿を変えた男を葬る。
「このぉ!!」
デルタに殴りかかるライオトルーパー。
だが、ローコストの量産型が実験を重ねられた初期型に適うはずもない。
その上、今デルタになっている男、草加雅人は世界で最も多くのライオトルーパーを葬った男だ。
そのスペックは知り尽くしている。
「所詮ジャイロアタッカーがなければ・・・ファイア!」
殴りかかってきたライオトルーパーの攻撃を難なく回避し、そして近くに止めてあるライオトルーパー専用の
マシン、ジャイロアタッカーをガンモードでグリップ部分を狙撃し、破壊する。
「おのれ!!」
ジャイロアタッカーに走ろうとした男も、デルタに襲い掛かる。だが・・・
171【シューティングスター】前編:03/09/15 14:54 ID:Tu/dooJc
「おっと」
そのキックが放たれた瞬間に、先程殴りかかってきたライオトルーパーの首根っこを掴み盾にする。
「グハァ!」
味方のキックを受け、たまらず変身が解けるライオトルーパー
「終わりだ!」
そのライオトルーパーがオルフェノクになる前に、その首を踏みつける。
骨の折れる鈍い音、そして赤い炎と共にライダー部隊の男は消滅する。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
全ての仲間が敗れ、自暴自棄になって突撃してくるライオトルーパー
「フン!!」
デルタはその突撃が当たる前に、ライオトルーパーの腹部に向け蹴りを打ち込む。
「ぐ・・・あ・・・」
そして消滅するライオトルーパー
「ふぅ・・・」
変身をとこうとしたデルタ・・・しかし
「後ろ、まだ生きている!」
澤田の声が響く。そこには先程鉄パイプで昏倒させた男がオルフェノクの姿で立っていた。
そしてデルタを羽交い絞めにするオルフェノク。
「くっ・・・なかなか強い力のオルフェノクだな・・・だが!」
腰に何とか手を伸ばし、銃口を後ろに向ける。
「チャージ・・・!」
白いフォトンブラッドが腰に周り、発射される。後ろに突き飛ばされるオルフェノク。
その目前には、白いエネルギーの塊が・・・
「ハァァァァァァ!!!!」
両足でオルフェノクを蹴りつけるそして、大きな三角を描き、オルフェノクは破壊される。
「終わったみたいだな・・・」
「ああ」
デルタから変身をとく雅人。
「さて、サイドバッシャーを回収するとするか」
                      <前編終わり>
172:03/09/15 19:33 ID:Tu/dooJc
「チャージ」じゃなくて「チャック」だし
「デルタムーバー」くらい調べろ、俺
まぁ話事態が無茶ってのは言わない方向で・・・
173名無しより愛をこめて:03/09/16 00:29 ID:dWTrgBdY
うああ、草加かっこええ。。
流星塾生がみんな生きててちゃんと「仲間」なのも嬉しいです。
本編のやるせなさが癒されますた。
後編、楽しみにしています。
174名無しより愛をこめて:03/09/17 20:24 ID:6Ckla1Bc
もっというと「チャック」でなくて「チェック」かも・・・。
激しく続きに期待。
175【シューティングスター】中編:03/09/17 23:11 ID:I9h79CwY
「それで、サイドバッシャーをどうやって人目につかないように修理するのかな?」
市街地から少し離れた場所までサイドバッシャーを牽引する。
「心配はない、これを使おう」
澤田が取り出したのは小さな円柱状の塊だ。
「ペンキか?」
「違う、ペンキよりももっといいものさ、とりあえず塗るぞ、
 流石にサイドバッシャーは有名すぎる・・・その金縁のバイクは」
「そうだな・・・けど、真っ黒にするのは勿体無いかもしれないな」
澤田は小さく笑うと塗料の塊を半分にして渡した。
「そうだったな、お前は自分の物が壊されたりすると、すぐに怒ったっな」
澤田はその塊を近くに落ちていた薄い皿のような金属片に入れ、そこに持ってきた水を入れる。
「・・そうだったかな」
雅人もそれに従う。
「今でも覚えてるよ、僕がお前の作った花瓶を恭介たちとの取っ組み合いで割ったとき、
僕が始めてお前が怒ったところを見たときだよ・・・いつも弱気だったお前が、僕達のこと
睨んでさ・・・それから増田先生に怒られて必死になって直したっけ・・・」
澤田が持ってきていたヘラで、二人でサイドバッシャーの色のついた部分を塗り始める。
「懐かしいことを思い出させるな、君は」
かすかに微笑み、また黙々とサイドバッシャーに色を塗り続ける。
そして数時間後・・・
「やっと塗り終わったか」
サイドバッシャーは真っ黒だ。もとから色が黒かったが、完全に真っ黒である。
「で、なんで真っ黒なんだ?」
雅人が問う。確かに真っ黒にしても目立つことには変わりはない。
「・・・そういえば最近実戦配備されてないから忘れているのか?」
と、ここで雅人も思い出したらしい。
「そうだな、量産型のサイドバッシャーは黒塗りだったな・・・」
だが、雅人は更に思い出した。
「ちょっと待て、量産型はビークルモードには変形できないはずだぞ」
だが、澤田はさらにリュックから物を取り出す。
「これ着ろ」
それは先程倒した男達も着ていた服、ライオトルーパー部隊の隊員服だ。
176【シューティングスター】中編:03/09/17 23:12 ID:I9h79CwY
「なるほど・・・」
よく見たら自分達が乗ってきたバイクも、少しカラーリングが変更されているが
ジャイロアタッカーのカラーリングを変えたものだった。
「ワイヤーはあるのか?」
澤田はバイクに無理矢理後付けしたと思われるトランクからワイヤーを取り出す。
「用意は大丈夫だ、心配することなんてない」

数分後、未だにサイガの勝利に沸く街を、半壊のサイドバッシャーを牽引する2台のジャイロアタッカーがいた。
「目立つな」
小声で呟く雅人。隣の澤田が何とか聞こえるくらいだ。
確かに目立っている。街の人達・・・オルフェノク達ががヒソヒソと何かを言っているようだ。
「気にするな・・・それよりも、そこのビルだ」
十数分走った末、澤田が示唆した場所はとある廃ビルだった。
「ここの地下ならバーの近くに繋がってる道もある、ここで直す」

そして、再びシューティングスターに集まる面々
「ねぇ草加君」
夕食タイム、街のほうは物資が多いので、それなりな物を食べられている。
雅人も実は肉を食べるのはしばらくぶりだ。
「・・・なにかな?」
口の中に物を入れたまま喋るのは無作法なので、しっかりと飲み込んでから応対する
「カイザギアはどうするの?」
「そうだな・・・」
雅人は考える。サイドバッシャーの機能を十二分に発揮するには、デルタでは駄目だ。
やはり、カイザである必要がある。
「なんとか取ってこれないものかな・・・けど」
177【シューティングスター】中編:03/09/17 23:12 ID:I9h79CwY
言葉を詰まらせる雅人。
「間違いなく難しい」
唯一装着者であった草加雅人を失ったとはいえ、カイザのベルトは厳重に保存されている。
それがスマートブレインの手に渡れば、オルフェノクを守り、人間を傷つけることは想像に難くないからだ。
「とりあえず、解放軍の場所に行ってみる必要があるな」
そう切り出したのは徳本恭介だ。
「そうだな・・・俺と恭介で行こう」
昨日もそうだったが、話をまとめるのはこのメンバーだと新井の役割になっていた。
「俺と恭介で解放軍のところでカイザギアを・・・西田達はサイドバッシャーの修理を頼む」
「ああ」「わかった」「そうね」・・・と、それぞれが頷く。
「雅人、お前はどうする?」
恭介が聞いてきた。確かに今の割り振りには雅人は入っていない。
「俺はここに残らせてもらうよ。面が割れすぎているからな。それで、デルタギアはどうする?」
デルタギアは誰にでも装着でき、変身することが出来る。
この場合、解放軍への道中と、修理場所の廃ビルとどちらが危険かということだ。
「・・・デルタギアは君達が持っていったほうがいい」
澤田の意見、確かに廃ビルが見つかる確率は低い。
「そうするか・・・さて、明日は早いから早めに寝たほうがよさそうだな」
夕食も終わり、いち早く毛布を取り出す西田。
「新井、恭介・・・」
同じく自分の定位置に戻ろうとする二人に雅人は声を掛けた。
「ついでだ・・・ついででいいんだが、取ってきて欲しいものがある。俺の私物で・・・」
178【シューティングスター】中編:03/09/17 23:13 ID:I9h79CwY
翌日、天候は晴れ。朝早く恭介と新井を送り出し、残った五人はサイドバッシャーの修理を始めた。
「雅人、部品を買ってきてくれ」
修理のメインを担当するのはメンバーで一番機械に強い西田だ。
「場所は?」
西田は一番暇そうな・・・というか、雅人は少し不器用な所があるのであまり役に立たないから
暇にしている雅人にお使いを頼んだんだ。
しかし、彼はこの街の構造をよく知らない
「じゃあ、私も一緒に行ってくればいいかな?」
そう提案したのは沙耶だ。
「そうだな、じゃあ頼む」

「なぁ恭介・・・」
「なんだ?」
「ついてないと思わないか?」
恭介と新井が着いたそのとき、解放軍は戦っていた。
「ああ、ついてない」
しかし、その混乱はカイザギアを入手するのには好都合だった。
「お・・・おい」
戦況を判断する二人・・・おかしい、間違いなく解放軍の攻撃力が違う。
「あれは・・・ファイズ?」
そして気付いた。解放軍の戦線に、ファイズがいることを・・・
そしてファイズが、ライオトルーパーと戦っていることを・・・・・・
「生きていたらしいな」
「まぁ、雅人も生きてたしな・・・」
雅人から貰った地図で、重要なものがある場所、解放軍のアジトの場所は割れている。
「よし、行くぞ」
と、アジトに入ろうとした瞬間だった。アジトから出てくる影が一つ。
「なっ、あの男、カイザドライバーを・・・!」
その影、菊池啓太郎は、持った携帯電話にコードをインプットする。
9・・1・・・3・・・Enter!!
『Standing by!』
179【シューティングスター】中編:03/09/17 23:14 ID:I9h79CwY
暗く透き通った電子音が響く
「変身!!!!」
『Complete!!』
啓太郎がカイザに変身する。
「うおおぉぉぉぉ!!!」
そして、仲間を襲うオルフェノクを倒しに向かう。それを、二人は驚きの表情と共に見ていた。
「おいおい・・カイザのベルトの適応者がいたのかよ」
「まずいな、これじゃあ回収するのは辛いぜ・・・」
だが、二人に待っていたのはそれ以上に微妙な結果だった。
カイザギアが・・・・灰になった
「・・・・・」
「・・・・・・・」
「どうする?」
と、そこで叫び声が聞こえた。
「真理ーーーーーーーー!!」
その声は、確かにそう叫んだ。
『真理!?』
二人にとっても決して関係のない名前ではない名前。
「お・・おい新井、あれ!」
恭介が上空を指差す。
「あれは・・・サイガ!持っているのは・・・真理?」
180【シューティングスター】中編:03/09/17 23:16 ID:I9h79CwY
同時刻、廃ビルで西田と里奈と澤田は雅人と沙耶を待っていた。
「パーツ待ちか・・・」
「遅いわね・・・」
「遅いな」
残っているメンバー・・・西田、里奈、澤田
と、そこで地下室の扉が開く音がした。
「遅かったじゃな・・・・・」
扉から現れた人間に向かう里奈、だが、入ってきた人物は3人だ。
「里奈、離れろ!!」
澤田が叫ぶ、そしてそれと同時に走り出す。
入ってきた人物の中には雅人も沙耶もおらず、3人ともスーツの中年男だった。
「くくっ、噂は本当だったとはな・・・オリジナルのサイドッシャー」
男の一人が薄笑いを浮かべる。
そして、それと同時に姿を変える。灰色と白の姿、オルフェノクの姿へ
「お前達が何者だかは知らないが・・・」
「これを回収すれば、私達の地位は上がるな」
どうやら三人はスマートブレインの社員らしい。残りの二人もオルフェノクへと姿を変える。
そして、そのうちの一人が最も近くにいた里奈の目前へジャンプする。
「えっ・・・」
里奈が驚きの声を上げると同時に、オルフェノクは彼女の体にその拳を叩きつける。
「里奈!!」
壁に叩きつけられた里奈を見て、西田が叫ぶ。
181【シューティングスター】中編:03/09/17 23:16 ID:I9h79CwY
さらに、里奈を吹き飛ばしたオルフェノクは、次の獲物に澤田を選んだようだ。
「次はお前が死ね」
ジャンプからのオルフェノクの拳が澤田に迫る。
だが、澤田はその拳を自らの手で押さえつける。
「・・・仲間を傷つける奴は・・・許さない!!」
手を押さえつける姿が強くなる。そして、澤田の顔に模様が浮かび上がる・・・・
中心に黒い円・・・そしてその周りに黒いライン・・・
「抵抗するか・・・なっ・・・強い!?」
手を押さえつける力は更に強くなる。たまらず殴る手を引いたオルフェノク、だが澤田はそれを見逃さない。
そのオルフェノクの引いた腕を掴むと、そのままそのオルフェノクを投げ飛ばした。
埃だらけの床に、オルフェノクが叩きつけられ、煙が舞い起こる。
そして、その煙の中に立っている影は一つの白い影・・・スパイダーオルフェノクだ。
「貴様・・・!」
投げられたオルフェノクは立ち上がりスパイダーオルフェノクに殴りかかる。
だが、それを鮮やかにかわすとスパイダーオルフェノクの逆襲が始まった。
目の前のオルフェノクをローキックで蹴りつける。さらに少し後退したその肩を掴んで膝蹴り
そして、膝蹴りで前のめりになった背中に肘打ち・・・・オルフェノクを完全に圧倒している。
「とどめ・・・!」
何もない場所から巨大な八方手裏剣を取り出す。
そしてそれを肘打ちを受け、立っているのがなんとかなオルフェノクに突き刺す。
「う・・・お・・・」
青い炎と共に崩れ落ちるオルフェノク。
「さて・・・」
手裏剣を持ち、残りの二人のオルフェノクに迫るスパイダーオルフェノク。だが、二人のオルフェノクは
仲間の死を気にしていない。
「これで手柄を分ける人数が減りましたな」
「全く持ってその通りだ」
182【シューティングスター】中編:03/09/17 23:18 ID:I9h79CwY
それどころか、仲間の死を幸運に思っている。
「西田・・・里奈はどうだ?」
スパイダーオルフェノクになった澤田は、自分が戦っている間に西田が里奈を介抱していたことを確認する。
「生きてはいるが・・・危険な状態だ」
「そうか・・・」
再び振り返り、オルフェノク達の方を向くスパイダーオルフェノク。
「ん?」
だが、オルフェノクの二人は自分の後ろのほうから足音がすることに気が付いた。
「くくっ・・・」
そして、開いている扉から雅人と沙耶が姿を現した瞬間、二人を捕らえた。
「なんだと?」
「オルフェノク!?」
オルフェノクに捕らえられ、身動きが取れない雅人と沙耶。
「さて、この二人の命が惜しければ、あれを渡してもらおうか・・・」
オルフェノク達は目の前のオルフェノク・・・スパイダーオルフェノクが自分達よりも強いことに気が付いた。
ならば、戦わずに目的を達成できればよい。
「オルフェノクが・・・三体・・・だと」
雅人は捕らえられながらも、状況を確認する。
「澤田は・・・」
西田に介抱されている里奈・・・澤田がいない。
だが、沙耶が冷静に雅人に言う。
「草加君、澤田君は・・・あのオルフェノクよ・・・」
と、動きを封じられながらも、なんとかスパイダーオルフェノクを指差す。
「なっ・・・」
澤田がオルフェノクだったということに驚く雅人
「草加・・・沙耶!!」
だが、オルフェノクの影が澤田の姿をして、自分達の名を叫べば現実だと分かる。
「草加君・・・オルフェノクのだれもが人間の敵ってわけじゃ・・・」
「分かっている・・・」
雅人は解放軍のアジトを訪れていた三人のオルフェノクを思い出していた。
信用はしていなかった・・・だが、確かにあの三人は今まで自分が戦ってきたオルフェノクとは違った。
そして何より、真理は彼等を信じていた。
183【シューティングスター】中編:03/09/17 23:19 ID:I9h79CwY
と、そこで隣で捕まっている沙耶が話しかけてきた。
「草加君・・私達、仲間よね」
「・・・何故こんな時に」
「仲間よね」
「・・・当たり前だろう」
その言葉を聞いた次の瞬間、沙耶の顔に模様が現れる。
そして、次の瞬間に雅人は自分を捕らえていたオルフェノクの手がないことに気が付く。
「!?」
すかさず澤田・・・らしいオルフェノクの方に下がる。
「・・・沙耶?」
沙耶を探す。だが、沙耶の姿はない。
しかし、先程まで自分達を捕らえていたオルフェノクの両腕が消えていることに気が付く。
「あ・・・が・・」 「う・・ぐ・・・」
両腕を失い悶えるオルフェノク達、そして、二人のオルフェノクは更に青い炎を上げ消滅する。
「沙耶・・・」
澤田が呟く。
炎を上げるオルフェノクの後ろに、さらに新たなオルフェノクが立っていた。
両手に鋭いナイフを持った女性型のオルフェノク・・・
「沙耶・・・も、オルフェノクなのか?」
確認したかった・・・が、否定して欲しくもあった。
「ああ・・・俺と沙耶はオルフェノクだ・・・オリジナルのな」
「そのことは・・・」
「悪いな・・・君以外は皆知っている」
澤田がオルフェノクから元の姿に戻る。
そして、女性型のオルフェノクも近くにやってきて、沙耶の姿に戻る。
「・・・草加君、ごめん」
謝られた。雅人は対応に困ったが、とりあえず返答をしておいた。
「君が謝ることじゃない」
・・・と。
184【シューティングスター】中編:03/09/17 23:20 ID:I9h79CwY
オルフェノクを撃退し、修理が再会される。だが、里奈の負傷で作業効率がダウンしていた・・・・
しかし、雅人が皆の力になろうと頑張った。いや、頑張ること、手を動かすことで、
澤田が、沙耶がオルフェノクだったということを忘れようとしているのかもしれなかった。
「とりあえず今日はここまでだな」
西田の提案を受け、一同はシューティングスターに戻る。
そこでは、傷ついた里奈が眠っていた。
「新井たちも帰ってきたみたいだな」
澤田はオルフェノクなので聴覚が強化されている。バイクの音が聞こえたらしい。
そして、勢い良くドアが開けられるらしい。
「おかえりなさい」
恭介と新井は汗だくだ。よほど急いできたらしい。
「雅人・・・カイザギアだ」
と、袋を投げて渡す。
「なにかな・・・これは?」
その袋に入っていたのは・・・灰
「カイザギアは灰になった・・・なんでかは知らないけどな・・・それよりだ!」
新井の切迫した声
「ファイズが生きていた・・・だが、真理が・・・サイガにさらわれた」
雅人の表情が険しくなる。
「・・・なんだと?」
                <中編終わり>
185:03/09/17 23:24 ID:I9h79CwY
今回は戦闘が少ない・・・その上無駄に台詞が長い。
木村さんをオルフェノクにしました。
理由は、本編で彼女が死ぬ時燃えたからなんですけどね。
リンクスオルフェノクか、ワイルドキャットオルフェノクあたりに
しようかなとか思ってます・・・猫舌だから。
次は後編 ・・・終わらないかも
>>174
チャック・・・?あ、チャックになってる。チャックだよ・・・
186:03/09/18 07:27 ID:use7lfFW
って、またチャックになってる・・・チェックです。御免なさい
187名無しより愛をこめて:03/09/20 16:54 ID:MWVFyC9n
保守
188名無しより愛をこめて:03/09/20 17:47 ID:3aiEMe+f
続きキボンヌ
189名無しより愛をこめて:03/09/20 18:42 ID:W0dtv840
イイねー

和平交渉の末、人間とオルフェノクの間で和睦が正式に決まり、
これを受けた人間サイドでは新種迎撃部隊やオルフェノクハンターに対して、
オルフェノクを攻撃することを禁じる命令を下した。
これによりオルフェノクハンターはその活動を一時凍結されることとなった。

一方、人間・オルフェノクの同盟軍とアギト達との衝突が、小規模ながら各地で頻繁に発生するようになり、
人間・オルフェノク同盟軍とアギトによる種族間の争いが、
今後そう遠くない将来、大きな全面戦争へと発展していくであろう兆候を見せはじめていた。

そんな折、氷川・小沢・尾室のGユニットメンバーは、
来るべきアギトとの全面戦争に備え、Gシリーズ数千体による合同演習に明け暮れていた。
スマートブレイン社の協力により、資金面、設備面、技術面での援助を受けた政府は、
対アギト迎撃の兵器として既にGシリーズの大量生産に踏み切っていた。

そしてもうひとつ、スマートブレイン社から提供されたのが、
ライオトルーパーなる未知なる強化スーツであった。
これがいかなるもので、どのような能力を秘めたものなのか、
政府研究筋はその分析を急務として推し進めたが、その多くが未だ謎に包まれたままでもあった。
と同時に政府は関係各機関、いやそれどころか、一般公募、学徒に至る迄、
このライオトルーパーの装着員となる人々を募っていた。
ライオトルーパーを装着するには、少なからず適正があり、
誰もがライオトルーパーを装着出来るというものではなかった。
その為、装着適正がある人間を短時間で大量に探し出すことが、急務として進められていた。

「氷川君、調子はどう?」警察・自衛隊の大掛かりな合同演習も休憩時間に入り、
Gトレーラーに戻って来たG3-Xに向かって小沢澄子は言う。
G3-Xのマスクを脇に抱え、汗を流し息を切らせている氷川は、
尾室より手渡されたタオルで溢れる汗を拭う。
「ダメですね、やはり自分には部隊を指揮するのは向いてないように思えます…」
数千体のGシリーズ部隊結成にあたり、氷川のG3−Xはその大隊長に任命されており、
生真面目な氷川は自分の与えられた役割の大きさに重圧を感じていた。

「まぁ、大分良くなって来ているとは思うのだけれど」
そんな氷川を気遣うように小沢はよく冷えたスポーツドリンクのボトルを手渡した。
「氷川さんは、今迄単独戦闘ばかりでしたからね」
「集団戦闘にはまだ慣れてないだけですよ」尾室もまた氷川をフォローする。
確かに今迄氷川に要求されて来たものは、
単体でも戦局を変え得るだけの能力を持つG3−Xを、対新種迎撃兵器として使用し、
単独で新種を各個撃破していくという役割であった。
だが今ここへ来て氷川に要求されているのは、大規模な数でフォーメーションを組み、
的確かつ迅速に集団を動かす指揮力・統率力といった類の能力であった。
その役割の大きな違いに氷川が戸惑うのも無理らしからぬこととも言えた。

G3−Xのスーツのまま顔だけ出し、ボトルでスポーツドリンクを飲む氷川。
装着員候補生だった頃は、スーツを装着して物を上手くつかむことも出来なかった、そんな頃もあった。
小沢は氷川のその姿を見ながらそんなことを思い出していた。
「氷川君、あなた性格的には集団行動には向いていると思うわ」
「あなたのその生真面目な性格は、スタンドプレイ向きというよりは、
規律を乱さない、一糸乱さぬ統制された動き向きだもの」小沢澄子は半分氷川の性格をからかうように言う。
小沢のその発言を真顔で聞き入る氷川、やはり生真面目な性格なのは間違いないようだ。

「問題は、大隊長としての指揮能力や統率力ね」冗談の通じない氷川に、仕方なく小沢は真面目に話しをする。
「その辺は自分でも不安を感じます」氷川は自らの率直な感想を述べる。
「まぁ、とにかく自信を持つことね。自分の判断、決断が絶対正しいという自信、信念を持つことね。
信念の無い者に人はついていったりしないものよ」
小沢はそこでふと今迄のことを思い出す。
氷川はこれでも頑固で意固地な部分も持ち合わせている。
彼が一度決めた事は、小沢が何言っても聞き入れない時もあった。
「でも氷川君も意外と頑固な所があるから、案外向いているかもしれないわね」
小沢は再び氷川をからかうように笑みを浮かべて言った。
「はぁ、そうでしょうか?」相変わらず真面目に聞き入っている氷川、やはり冗談は通じてはいないようだ。

「ところで小沢さん、ライオトルーパー隊はとうとう合同演習には現れませんでしたね」
G3−Xのスーツを脱いだ氷川が、小沢と尾室の所に戻って来た。
「ああ、あれね。装着員探しでまだ演習どころじゃないもの」
データをチェックしていた小沢は、氷川の言葉にその手を止める。
「そんなんで、大丈夫なんですかね?」小沢の横に座る尾室も興味津々といった様子だ。
「ライオトルーパーは、特殊な適正がないと装着出来ないと聞いていますが?」
「そうね、スマートブレイン社からの資料や、
研究機関のデータを私も見せてもらったけど、適正と呼ぶにはかなり特殊過ぎるわね」

新たなる強化スーツ・ライオトルーパーに興味津々の氷川と尾室、その2人の様子を見た小沢は解説をはじめる。
「それには、体内の分泌物の数値が幾つ以上とか、特定の因子の数が幾つ以上とか、
もっともらしいことが書いてあったけど、そうした事細かな適正をすべてクリアした人だけが装着出来る代物らしいわ」
「だけど、そうした数値が最終的に何を意味するものなのかはわからないのよ。
SB社はもっともらしい事を言って上手く逃げたようだけどね」
「適正と言っても、身体能力や運動能力などではなく、人間の生体的構造が問題なようなのよね」
「だからどんなに若くて素晴らしい身体能力の持ち主でも適正がなければ装着員にはなれないし、
逆に子供でも年寄りでも、適性さえあれば装着員になれるのよ」
「まぁ結局のところ…」
「結局のところ?」氷川と尾室は息を呑んで小沢の続く言葉を待つ。
「…私にも良くわからないわね」小沢の意外な一言に肩透かしをくらう氷川と尾室。
「上の人達はSB社の説明に上手く騙されちゃったようだけど、
私に言わせてもらえれば、よくあんな素性の知れない物、導入すると決定したものね」
その道のスペシャリストでもある小沢がわからないのであれば、
それは本当に不可解な物であろうと、氷川も尾室もそう納得せざるを得なかった。
「ライオトルーパー、その適正、そしてスマートブレイン社 …」
「おそらくきっと何かあるわね …」小沢澄子はそう呟いた、それは彼女の直感でもあった。
194:03/09/20 23:56 ID:MWVFyC9n
まだまだ続きます
前フリなのに長くなってゴメソ
195いつも楽しみにしています:03/09/22 21:08 ID:dKgPrAgX
>>194
ただ、ちょっと疑問。「オルフェノクにしか装着できない強化服」
というものが、この世界でそれほど意外だったり秘密にされねば
ならないものだったりするのか?(もしスマートブレイン社と
オルフェノク勢力との関係がある程度知られているとしたら、なおさら)

もしそれが「人間とオルフェノクとの勢力均衡を壊すから」
秘密にされるべきなのだとしたら、そんなものを
堂々と人間側にさらすのはちょっとうかつなような・・・

作り手に直接このテの疑問を伝える経験って
あんまりないので書いてみました。おゆるしを
196名無しより愛をこめて:03/09/25 07:53 ID:NRn8plhq
保守がてら流れ星待ち。
かっこいい草加(;´Д`)ハァハァ
197【シューティングスター】後編:03/09/25 21:56 ID:N4C/JSAB
オルフェノクで構成された社会を覆しかねない存在・・・復活した「ファイズ」
以前はそれに「カイザ」も加わっていたが、それは既に倒れたと認識されている。
ファイズが生きていたことにオルフェノク達は一瞬恐怖した。
だが、それは一瞬だ
今の自分達には、「帝王」が付いている。
「サイガ」そう呼ばれている天空を駆ける戦士。それはまさにオルフェノク達の憧れの的だった。
そして、そのサイガの活躍により、解放軍の中心人物、園田真理は捕らえられた。
明後日、公開処刑行われるということだ。
だが、公開処刑はあくまで口実だ。それはオルフェノク達にも分かっている。
園田真理は、いわば「餌」だ。ファイズという魚を・・・なかなか針に掛からず、
針にかかってもその針が付いた糸を自ら引きちぎるような魚を。
明後日・・・その日をオルフェノク達は心待ちにしていた。
自分達を脅かす存在が消え、完全に、オルフェノクの、オルフェノクによる、オルフェノクだけの社会が始まるのだから。
198【シューティングスター】後編:03/09/25 21:58 ID:N4C/JSAB
BAR クローバー
メンバーもテレビから流れるそのニュースを見ていた。
「明日中・・・そう、明日中だ」
真理を助けたい・・・そこにいる全てのメンバーに共通してあることだ。
「明日中に、サイドバッシャーを修理しないと」
真理と、今ここにいるメンバー・・・そして、今はもうこの世にいないメンバー達
彼等は、幼いころ同じ人間に育てられた。
「そうだな、真理まで失ったら・・・そろそろ本当に父さんに顔向けできない」
彼等を育てた人物、そして彼等が"父さん"と慕っている人物・・・花形。
ファイズ、カイザ、デルタの三つのベルトと、その周辺デバイス。
それ等は、メンバーに分けて送られた。
カイザギアも、雅人が受け取った時にはベルトとカイザフォンだけだった。
だが、ここにいるメンバーでは西田がサイドバッシャーの本体を、恭介がサイドカーを。
そして、既にこの世を去ったメンバー、犬飼がカイザショットを、新道がカイザポインターを
高宮がカイザブレイガンを送られた。
メンバーは、カイザに適応できるのが雅人だけだと分かると、カイザのデバイスを彼に集めた。
だが、ファイズギアは違った。
ファイズギアは、最初からファイズショットとファイズポインター・・・そしてオートバジン。
カイザでは別々に送られたデバイスが、ファイズを送られた人物・・・真理には一度に送られた。
だが、真理はファイズに適応できなかった。
ファイズに適応したのはその当時真理の仲間だった男、乾巧。
「ファイズは来る・・・よな」
不安そうに呟く恭介
「来なかったら・・・笑いものだよ・・・真理が」
澤田も呟く。
199【シューティングスター】後編:03/09/25 22:00 ID:N4C/JSAB
澤田は真理を好いていた。できれば真理もここに一緒にいて欲しかったが、メンバーがそろった時既に
真理は解放軍の中心的存在になっていた。
それでも、澤田は真理の力になりたかった。
カイザとして、真理の近くで戦うことに決めた草加に、澤田は自分に送られてきた物を預けた。
ファイズアクセル・・・ファイズにはこれで真理を守って欲しかった。
オルフェノクである自分が、まだ人間でいられるのも、真理のためだった。
もし自分がオルフェノクとなり、人間を襲ったら真理はどうするか、どう思うか・・・
それを考えることで、澤田は自分を抑える術を手にしていた。
「でも・・私達だけでも・・・やらないと」
沙耶には、デルタギアが送られてきた。
デルタギアは、誰にでも適応できた。
だから沙耶は、ここのメンバーの力として、デルタギアと共に残った。
だが、デルタギアは危険な道具だった。
一度や二度の変身なら大丈夫だが、五度六度と変身を重ねるごとに、変身者の精神は犯されていった。
デルタギアは誰にでも「力」を与えるが、精神が脆弱な人間には・・・いや、よほど精神が強い人間でなければ
その精神を破壊してしまう道具だった。
河内勇樹・・・デルタギアの力で命を失ったメンバーがいる。
だが、沙耶と澤田はデルタギアの影響を受けなかった・・・オルフェノクだからだろうか・・・いや、雅人も影響はない。
しかし、そんなことを今考えても仕方がなかった。
いま重要なのは、友人の・・・仲間の・・・園田真理という人間を救えるかどうか・・だ。
「だが、いくらサイドバッシャーがあっても、カイザギアが・・・これじゃあ」
新井は雅人の目の前のボウルの中に入っている灰を見た。
カイザギア(だったもの)・・・可能な限りは拾い集めてきたはずだ。
だが、こんな灰があっても、どうすることも出来ない・・・そう、できない。
200【シューティングスター】後編:03/09/25 22:02 ID:N4C/JSAB
「ねぇ・・・」
そこに、そばで横になっていた里奈が声をかけてきた。
「里奈!」
「気が付いたのか・・・よかった」
オルフェノクに襲われたものの、どうやら助かったようだ。
「草加・・・君、私が父さんに送られてきたもの・・・使えないかな?」
里奈は、恭介にその"送られてきたもの"を出してくるように頼む。
そして数分後、恭介が缶を持ってくる。かなり大きく、変わった形の缶だ。
「それは・・・?」
銀色の缶、「緊急用」とラベルが貼ってある。開けてみると、中身は液体と・・・・
「これは・・・ベルト?」
そこにはベルトがあった。チューブで繋がれたベルトだ。
皆でそれを覗き込む
「デルタギアに近い形だな・・・」
「これ・・付けられのか?」
それぞれのコメント・・・他のベルトと違い、明らかに怪しいベルトだ。
「里奈・・・これだけなのか?」
頷く里奈。
雅人は思った。「説明書くらい付けてくれ・・・・父さん」と。
「ちょっと待てよ・・これ」
西田が缶きりで切った蓋の裏にラベルが張ってあることに気付く。
「これ・・・先生の字じゃないか?」
先生・・・育てた花形とは他に、教育をした男がいる。
増田・・・皆からは先生と呼ばれている。
「住所・・・か、これ?」
そこには、住所が書かれていた。
「行ってみるか・・・?」
当然、全員が頷いた。
201【シューティングスター】後編:03/09/25 22:23 ID:N4C/JSAB
日の出前、バーから出たメンバーは目的地に向かって急いでいた。
「街中を通り過ぎられれば直ぐだってのによ」
「しょうがないわ・・・これじゃあ」
増田先生が示した住所に向かうメンバーは二人。
新井と沙耶だ。
デルタギアは持ってきていない。
沙耶はオルフェノクだ。それも使徒再生で蘇ったのではない。オリジナルのオルフェノクだ。
新井は人間だが、一度デルタになったので、余力・・・自らの手からプラズマを発することができ、
もしオルフェノクに襲われたとしても、なんとかやっていけるだろう。
「皆は大丈夫かな・・・・」
沙耶が不安そうに呟く。
「大丈夫だ・・・澤田も・・・草加もいるだろ」
澤田もオリジナルのオルフェノクだ。さらに、昨日のような事態も考えられるので、
デルタギアを雅人に預けてある。
「今日中に帰って来れなければならない場所だ・・・急ごう」
増田のメッセージに希望を託し、あの缶と灰となったカイザギアを乗せ、バイクが走る・・・
202【シューティングスター】後編:03/09/25 22:23 ID:N4C/JSAB
そして、日はまた昇る。園田真理の処刑時刻まで・・・あと30時間
「もう少しだ・・・もう少しで完成だ」
額の汗をぬぐう西田。機械に強い西田は修理の監督として、休まずに作業を続けている。
「清高、少しは休めよ」
「そうもいかない・・・終わったらゆっくりと休ませて貰うさ」
だが、もう少しといっても、難しい場所は残っている。今日一日で終わればたいしたものだ・・・というくらいに。
「もうひと頑張り・・しないと」

日はもうかなり昇った。午前十一時前後・・・真理の処刑まであと25時間。
「ここね」
沙耶と新井が目的地に到着する。
そこは、街から離れた薄汚い小屋だ。
「ごめんください・・・っと」
扉を開け、小屋に入る・・・と、二人が入った次の瞬間、突然扉にシャッターが降り、二人を閉じ込める。
「なっ・・・?」
だが、新井と沙耶が更におどいたのはそれからだった。
突然、近くに置いてあった人形から声がした。
「沙耶・・・賢・・・良く来た・・・」
それは、花形の声だった。
「父さん・・・?」
新井がそう呟くと同時に、二人の立っていた地面が口を開けた。
「へ・・・?」
落ちながら唖然とする二人。
しかし、落ちた・・・と思ったが、二人は立っていた。真っ白な部屋だ。
「ここは・・・何処?」
周りを見渡す。そして、沙耶は自分達の知っている男に出会った。
「先生!」
「・・・久しぶりだな、新井、木村」
増田は、厳しくも穏やかな口調で二人を出迎えた。
203【シューティングスター】後編:03/09/25 22:24 ID:N4C/JSAB
「なるほど・・・それでこの場所に」
事情を聞き、住所のメモが書かれたフタを見せられた増田。
あのメモは彼が書いたものを、花形が勝手に貼り付けて送ったらしい。
「しかし・・・もう・・・いない奴が多いのか・・・」
誰と誰と誰が死んだ・・・という話を聞き、落ち込む増田。
だが、時間がないことを更に説明すると、増田は隣の部屋に二人を案内する。
「ここは?」
真っ暗な部屋、だが、増田が明かりをつけると、部屋の様子が分かる。
「実験・・・室?」
沙耶の感想はそれだった。正に実験室。
「確かに私も、ベルトの作成に関わっていた」
増田は白衣に着替え、さらに二人も着替えさせる。
「もう関わりたくないと思っていたが・・・他でもない、君等の頼みなら・・・」
新井たちが持ってきたベルトのようなものと灰を両手に持つ。
「やろうじゃないか。これがあれば、カイザのベルトは修復できる」

時計は午後三時を回った。真理の処刑まで、あと22時間
「新井たち・・・どうだろうかな?」
サイドバッシャーの修理は、四人が協力したことにより滞りなく進んでいる。
だが、まだ時間が足りない。

そして、午後七時 真理の処刑まであと18時間
「・・・誰か来る・・・」
澤田が何かを察知したようだ。
「数は?」
すかさず聞く雅人
「・・・・新井たちじゃない・・・少なくとも50人くらいいる」
50人という言葉が四人を震撼させる。
「ライオトルーパー部隊だろうね」
雅人がデルタギアを持ち、立ち上がる。
「狭いところで戦えば・・・数の差なら」
「すると・・・階段か」
204【シューティングスター】後編:03/09/25 22:25 ID:N4C/JSAB
階段の扉を開ける。
そこには、数十人の男がいた。ライオトルーパー部隊の制服を着ている。
「いっぱいいる・・・な」
「ああ・・・」
ライオトルーパー部隊の先頭の男が叫ぶ。
「総員・・・変身!!」
50人近いライオトルーパー部隊員が一斉に変身する。
「澤田・・・やるか?」
「当然・・・」
雅人はデルタムーバーを顔の横に持ってくる。
「変身!!」
雅人の体に青白いフォトンブラッドが走り、雅人がデルタに変身する。
そして、同時に澤田がスパイダーオルフェノクへと変化する。
「地の利では・・・こっちが勝ってる・・・ファイア!!」
階段としては広いが、50人が自由に動ける空間ではない。
そして、遠距離からの攻撃は味方を撃つ可能性が高く使えない。
恐らく彼等は、階段の扉の先の地下室に一気に突入する予定だったのだろう。
だが、突入の直前に二人の男が扉を塞いでしまった。
それも、ただの男なら殺せばいい・・・だが、この男は・・・
「ぐおぉぉぉぉ!!」
ファイズでも、カイザでもない敵の放ったフォトンブラッド弾が、ライオトルーパーを吹き飛ばす。
そして、吹き飛ばされたライオトルーパーはオルフェノクに戻れず、深紅の炎と共に消滅する。
そう、目の前の男がただの男ならばどれほど良かったものか・・・
目の前の男は、ライオトルーパー部隊に流れる景気の悪い噂・・・『赤い炎の悪魔』なのだから・・・
「はっ!!」
そして、もう一人の男・・・裏切り者のオルフェノクも手ごわい・・・
天井を、壁を自由自在に動き回り、確実にこちらの急所を着いて来る。
「セイッ!!」
八方手裏剣が次々とライオトルーパーを消滅させていく。
205【シューティングスター】後編:03/09/25 22:26 ID:N4C/JSAB
「い・・一時撤退!!!」
十人ほどやられた後、部隊長らしいライオトルーパーが叫び、それに従い全員が引く。
「どうする・・・澤田?」
「追いかけるか?・・・一次撤退と言っていた」
「なら・・・行くぞ!」
走り出すデルタ。そしてそれを追いかけるスパイダーオルフェノク
だが・・・
「しまっ・・・た」
ビルから出ると、近くの道路には立ち入り禁止の看板・・そして、100体以上のライオトルーパーがいた・・・
「総員・・・攻撃開始!」

同時刻、沙耶と新井は急いで戻ろうとしていた。
増田のいた廃屋を出たのが午後3時過ぎ
二人は増田が言っていたことを思い出していた・・・
「私にはベルトを作り出す力はない・・・だが、直すことは出来た・・・」
修復したカイザギア・・・デバイスは予備が置いてあった。
「どうやら私は、花形さんには本当に勝てないな・・・」
そして、増田はまた何かあったら来いと言った。
「(先生・・・恩にきりますよ・・・!)」
そして、増田はもう一つ伝えていた。
「8321・・・だ」
8・・・3・・・2・・・1
それがなんの事だかは、二人には分からない。
だが、とりあえず早く戻りたかった。
206【シューティングスター】後編:03/09/25 22:27 ID:N4C/JSAB
雅人がデルタになってからおよそ20分経過した。
「くっ・・・!」
「澤田・・・まだ動けるか・・・?」
「結構・・・辛いかも」
数の差は明確。だが、善戦はしていると思う。
「(まだだ・・・まだ・・・死ぬわけにはいかない・・・俺は・・・真理を・・・真理を)」
ライオトルーパーの群れに飛び込むデルタ。
「はああぁぁぁぁぁ!!」
そして、目の前の一体を殴りつけると、デルタムーバーを引き抜く。
「チェック!!」
『Exceed charge!!』
「そこかッ!!」
そして、デルタムーバーからフォトンブラッドのエネルギーをライオトルーパーの
密集している場所に打ち込む。
「ぜぃやぁぁぁ!!!!」
そして集約したフォトンブラッドのエネルギーの中心に向け、両足で蹴りを打ち込む。
「ぐっ」「なっ!」「ハゴッ!」「ぐぅ・・」「馬鹿な・・・」「まだ・・・」
約十体のオルフェノクを一気に貫き、着地する。
貫かれたオルフェノクは深紅の炎で消滅する。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
だが、そろそろ限界が訪れる・・・と、そのときだった。
一つの影が、デルタの目の前に現れる。
「(白い体・・・オルフェノク・・・?)」
そのオルフェノクは近くのライオトルーパーを次々と手に持ったナイフで切り裂く。
「・・・沙耶か?」
ライオトルーパーを近づかせないまま、沙耶が手に持った物を雅人に投げる。
「草加君・・・これ!」
投げられたのはカイザギアだ
「修復できたのか!?」
オルフェノクの状態の沙耶が頷く。
207【シューティングスター】後編:03/09/25 22:28 ID:N4C/JSAB
「・・・ベルトを交換する。悪い・・・少し守ってくれ」
再び沙耶は頷く。
そして、デルタの変身をとき、デルタギアを置くと、カイザのベルトを装着する。
9・・・・1・・・3・・Enter!!
『Standing by』
雅人にとっては聞き慣れた、暗く重い声が響く。
「変身!!」
『Complete!』
カイザフォンをベルトに装着。同時に金色のフォトンブラッドが雅人の体を走る。
「さて・・・」
襟を直す仕草・・・これをやるのも久しぶりだ。
「(武器は全てそろっているな・・・よし!)」
確認する、ブレイガン、ショット、ポインター・・・完全装備だ。
『Ready!!』
走りながらミッションメモリーを抜き、カイザブレイガンにセットする。
金色のフォトンブラットが刃を構成し、同時に近くのライオトルーパーを切り倒す。
「そこを・・・どけ!!」
金色の刃は問答無用でライオトルーパーを次々と切り刻む。
「!!」
そして背後から襲ってくるオルフェノクをカイザブレイガンのガンモードで迎撃する。
「ハッ!!」
それにさらに沙耶も続く。
「澤田・・・囲まれているな・・・ならば!」
ミッションメモリーをブレイガンからカイザショットに映す。
『Exceed charge!!』
「死にたくなければ・・・退け!!」
正に必殺の拳を構えて走る。
流石のライオトルーパー部隊も命は惜しい輩は退くしかない。
そして、命知らずはこの戦いの最初で既に消えている。
結局カイザは逃げ遅れた1体を粉々に粉砕し、スパイダーオルフェノクの前に立つ。
208【シューティングスター】後編:03/09/25 22:28 ID:N4C/JSAB
「・・・カイザ・・・修復が成功したみたいだな」
スパイダーオルフェノクはかなり疲労した状態だ。
だが、カイザは左腕に持っているものをスパイダーオルフェノクに渡す。
「デルタギア・・・使えってことか?」
残るライオトルーパーは60体前後・・・
「変身!」
迷うことなくデルタに変身する澤田。そして、カイザの後ろの沙耶も合流する。
「澤田君、草加君、先生からの伝言・・・3821・・・だって」
「何のことだか分からないな・・・3821・・・?」
ふと雅人は思いついた。
「まさか・・・」
ベルトからカイザフォンを抜くと、言われたとおりのコードを入れてみる。
・・・
・・・・
・・・・・
数秒の沈黙
次の瞬間だった。
爆音を上げ、隣のビルの壁が粉々になる。
その場の全員が登場したものに驚愕する。
「なっ・・・これは!?」
ビルの壁を突き破って登場したもの・・・それは巨大なバイク
SB−VXO ジェットスライガー
「超絶」という言葉がこれほどふさわしいマシンもそうそうないだろう。
「なるほど・・・乗れということか!」
そういえばそうだった。
初めてサイドバッシャーを連結した時も、サイドバッシャーはカイザの危機にバトルモードで現れた。
209【シューティングスター】後編:03/09/25 22:29 ID:N4C/JSAB
「これは・・・まさか」
デルタもデルタムーバーを引き抜く。
「物は試しか・・・Three eight two one!」
・・・物は試してみるものだった。
「来たのか!?」
さっきとは別方向の隣の廃ビルの壁を突き破り、二台目のジェットスライガーが登場する。
「これは・・・勝ったか?」
ジェットスライガーに乗り込むデルタ。
すると、このマシンの使用方法がデルタギアを通じて伝わってくる。
そしてそれはカイザも同じらしい。
二人は全く同じ動作を取った。

数十秒後。残りの六十体近いライオトルーパーは、2台のジェットスライガーの放った攻撃・・・・
「容赦のないミサイル攻撃」を受け、全滅した。

翌日・・・午前8時半
「行くか・・・」
修理が終わったサイドバッシャーに乗る雅人
「そうだな」
サイドカーの部分には澤田が乗っている。
「いいの?二人だけで」
雅人は昨晩のミサイル攻撃により廃墟になった当りを見回す。
元から使われていなかった区画だが、あれだけの破壊があれば何か動きがあってもおかしくない。
「ああ、沙耶、君は皆を頼む」
無言で頷く沙耶。他のメンバーも黙っているが、これは昨日の内に決めたことだ。
『雅人と澤田だけで行く・・・カイザとデルタだけで行く』ということは。
210【シューティングスター】後編:03/09/25 22:29 ID:N4C/JSAB
「そういえば雅人!」
恭介が鞄から物を一つ取り出す。
それは、雅人が恭介と新井に解放軍のアジトから持ってきて欲しい雅人の「私物」だった。
「これだろ」
恭介が雅人に渡したもの・・・それは黒い仮面だった。
「ああ、これでいい」
とりあえず仮面をコートのポケットに入れる雅人。
「ありがとう・・・じゃあ、また会おう」
サイドバッシャーを発進させる雅人。
残されたメンバー達は祈った・・・二人の無事を

「草加」
市街地のはずれを走るサイドバッシャー
隣に座っている澤田が声を掛けてきた。
「なにかな?」
「その仮面・・・はなんだ?」
やはり気になっていたらしい。その質問に雅人は答える。
「真理が企画した、仮面舞踏会・・・俺があいつにやられた日の夜に予定してあったんだよ」
『あいつ』とはサイガのことだ。
「へぇ・・・行くつもりだったのか?」
「あいつに・・・真理に寂しい思いをさせるわけにはいかないだろう・・・」
「・・・そうだな」
サイドバッシャーは走る。
向かう先は隣の市街地にある闘技場
そこで真理の処刑が行われる。

タイムリミット・・・真理の処刑まで、あと5時間
                    <後編終わり>
211:03/09/25 22:34 ID:N4C/JSAB
後編で終わりだと思ってたら、終わらなかった。
説明が多いってのが原因だけど・・・
しかし、今になって前編で三原を死んだってことにしたことを後悔するとは。
即死すると思ったのに・・・
というわけで次は<完結編>。
<完結編(前)>とかになるかもしんないけど。
とりあえず今回は「チェック」になってて良かった。
212名無しより愛をこめて:03/09/26 10:07 ID:8hWbO60K
草加いいね
つづき激しくキボンヌ
213名無しより愛をこめて:03/09/26 23:07 ID:bQA3XvG+
激しく(・∀・)イイ!
文の読みやすさと内容の面白さが凄く良いです。。
完結編頑張って下さい!!
214名無しより愛をこめて:03/09/27 20:36 ID:ou5Dp6hQ
Ageつつ楽園の崩壊待ち
215194:03/09/28 23:45 ID:ENguj6jW
すいません、またしてもアクセス規制中でした
<うちのエリアはそんなんばっかだな(汗

>>195
現状をまとめますと

・人間はスマートブレイン社とオルフェノクの関係を全く知らない
・SB社はオルフェノクとの関係をギリギリ迄隠したい
・村上は人間として(オルフェノクであることは隠して)政府に接触、SB社の技術、資金、物資等の提供を行っている
・オルフェノクの代表は琢磨と影山冴子ということになっている
・敵対種であるアギトを倒す為に、人間の力を利用するべく、SB社もオルフェノクも人間に接触しているが、
それは全く別の存在が偶然同時期に接触して来たと、人間達は思わされている

で、今後SB社とオルフェノクの関係を突き詰めるのがGユニットの役割だったりします
SB社がライオを人間達へ提供したのは、ライオトルーパー隊結成する為の実験的試み、
といいますか、話の続きで大体わかっていただけるかと思います

他スレからの続きなのでわかりづらい所があるかもしれないですが、申し訳ないです

後、今回のメインは実は水原です

水原は落胆していた。
人間とオルフェノクの間で和睦が成立し、水原が属していたオルフェノクハンターが、
事実上活動を凍結されたというのがその理由のひとつであった。

水原は今でこそ銃弾飛び交う戦場で命を賭して戦っているが、
実はその生まれは良家の子息、お坊ちゃんであった。
水原家はその昔豪商として隆盛し、その後、大財閥として経済界に多大なる功績を残して来た一族。
毎日戦いに明け暮れる日々を送っていながら、
水原が何処か洗練された雰囲気を漂わせ、品性を感じさせるのはその所以であろうか。

そして水原家は大財閥であると同時に、代々一族のみなが憂国の士でもあった。
幕末には尊皇攘夷論に傾倒し、戦中・戦後は軍国主義を盲信し、
この国の為に尽力する事を一族の義務と課して来た。
それは見方によっては排他的であったり、封建的であったりするのだが、
水原家ではそれが至極当然のこととして受け継がれて来ていた。
水原の祖父も父もそうした一族の家訓に忠実な人柄であった。
水原はそうした家庭環境の中で育って来たのだ。

この国に人間以外の新種が発見され、認めざるを得ない事実として認知されるようになった時、
これを執拗な迄に迫害した人間の中に、水原の祖父や父の存在もあった。
最初にこの国にアギトの存在が報じられた時、水原の祖父はその存在を決して許さないと豪語し、
豊潤なる資金を出し惜しみなく注ぎ込んで『新種迎撃部隊』その組織誕生を影で画策し、尽力して来たと言う。
この国を動かすだけの大財閥だけのことはあり、政治面でのコネクションにも非常に強く、
首相であろうとも水原家の人間には頭が上がらないという程である、
『新種迎撃部隊』設立も彼らにすればそれ程困難ではなかった。
もちろん新種の存在を脅威と感じた民衆、世論の後押しが追い風となっていたのは言うまでもないことだが。

そしてこの国にオルフェノクの存在が認知されるようになった時、
『オルフェノクハンター』を設立したのが水原の父であった。

水原の祖父も父も一族のその使命感に燃え、
アギトやオルフェノクといった新種の存在を認めず、人間の敵として目の仇にし、
彼らを抹殺しようと必死になってあらゆる策を労した。
以前、沢村雪菜が乾巧に語った、アギトが人間により差別され、迫害され、
虐げられ、貶められて来た、というのはまさにこの頃の出来事であった。
だがやがて、その数が少なく抵抗する術の無かったアギトは、自らを守る事を目的とし、
やがて沢村雪菜の下に集い、集団と化し、アギトを組織化して行くようになった。

新種否定派、その中でも強硬派であった水原の祖父と父は、アギトやオルフェノクといった新種に
酷い仕打ちを幾度となく繰り返していた為、新種に相当に深い怨みを抱かれていた。
そして今度は逆に彼らがアギトやオルフェノクに、
新種を迫害する者達の旗頭として、目の仇とされるようになっていった。

それは水原が高校3年生の夏休みのこと。
その日はその年の最高気温と言われた程に暑い日であり、また水原の誕生日でもあった。
大学進学を控え夏期講習に行っていた水原が、お迎えの車に乗って家へと戻って来た時。
車が屋敷の前の大きな門を潜り中へ入ると、鼻をつんざく様な異臭が漂って来る。
それは水原が今迄嗅いだ事もないような独特の匂い。
水原はその異変に気づき車を降りて屋敷へ向かって駆け出す。
途中の庭には身辺警護にあたっていた筈のSP達・数十人の血塗れとなった亡骸が山のように積み上がり、
本来であればこの上なく美しい庭の周囲一面を血の海へと変えていた。
その異様な光景を目撃した水原はその場で嘔吐する。
水原が嗅ぎ取った匂いというのは、血とあまりの熱さに早々に腐って行く人間達の屍骸の匂いであった。

あまりの衝撃に目眩を起こしながらも、父母・祖父の身を案じて、水原が屋敷の中に入って行くと、
やはり屋敷の中も辺り一面が血の海と化しており、
血の海の中にお手伝いである女性達の屍骸が十数体転がっていた。
水原は血の海の中を先へ進むが、血に足を滑らせて転倒し、自らもまた血に塗れてしまう。
階段を這うようにして登り、やっとの思いで2階に辿り着いた水原、
だが2階の部屋には血に塗れた無惨な父と母の姿があった。最早、息がない事は一目瞭然であった。
更に別室には胸を一突きされ絶命した祖父の姿があった。
水原は悲しみよりも何よりも、そのあまりに衝撃的な光景を目にして、発狂せんばかりに雄叫びを上げた。

普段であれば、一分一秒ですら無駄に出来ない程に忙しく、
決して父母、祖父、みなが家に揃うことはないのだが、その日は水原の誕生日であり、
誕生日を祝うパーティーを開く為に、みなが家に揃っていた事が、逆に災いとなった。
水原の誕生パーティーに招かれていた多くの親類縁者もまた皆殺しにされていた。

絶叫し血塗れになりながら転げ回る水原。
そしてその水原に忍び寄るひとつの影。その影の主は未だ屋敷に潜んでいたアギトであった。
興奮してその気配にすら気づかない水原、一体のアギトは背後より水原に襲い掛かる。
突然背後からアギトに捕まれた水原は、何が起ったのかすら理解出来ないまま、
必死の抵抗を試みるが、その人智を越えた力の前に成す術もない。
自分もまた一族の者同様に死ぬのだと水原が覚悟した時、アギトの手の力がふと抜けて水原の体は自由になる。
咳き込みながらその場に倒れ込む水原。朦朧とする意識の中で水原が見たものは、
武装した人間がアギトに立ち向かって行く姿であった。

その武装兵は水原を襲っていたアギトを銃座で力の限り殴りつけると、
振り返ったアギトに向かい即座に銃を構え、発砲した。
人を超越した力を持つアギトに人間の通常兵器が効く筈もないが、
それでもアギトをひるませるぐらいのことは出来た。
ひるんだアギトに武装兵は臆する事無く、銃を連射し続けた。
そして武装兵の仲間が数人駆けつけ、アギトに向かって集中砲火を浴びせる。
アギトは武装兵の一人に向かって突進する。その間も武装兵による銃撃は止む事は無い。
アギトはその場の武装兵を薙ぎ倒すと、その場から逃げて行くのであった。

この水原を救った武装兵こそが、現在の『オルフェノクハンター』の隊長・高岩(仮名)であった。
高岩は丁度この日、『オルフェノクハンター』の創設者である水原の父に、
至急の連絡事項があり、部下数名を引き連れて水原の屋敷を訪れたのだ。
水原はアギトの襲撃の際に高岩(仮名)隊長に助けられていたのだった。

この惨殺事件は、その手口から見て人間の犯行でないことは一目瞭然であり、
死後、砂化していない事からオルフェノクの手によるものではなく、
やはりその場に居たアギトの手によるものであるとされた。
それは長年の間虐げられて来たアギトが、怒りと憎しみに暮れ、積年の怨みを晴らす為に行った復讐であったのであろう。

その後水原は一族の無念を晴らす為、大学進学を放り出し、
仇である新種を自らの手で倒すべく、祖父が創設に大きく関わった『新種迎撃部隊』へと志願した。
通常であれば高校出の若者が『新種迎撃部隊』に入隊することはまず不可能であるが、
そこは大財閥のコネ(分家の親戚筋を頼った)と高岩(仮名)隊長の口利きもあり、
まずは『オルフェノクハンター』に所属して高岩(仮名)隊長の元で
修練を積むということで、特別に入隊が認められたのであった。
水原にとっては高岩(仮名)隊長は命の恩人でもあり、
家族を亡くした彼にとって兄のような存在でもあった。
父が創設して、命の恩人である高岩(仮名)隊長が率いる『オルフェノクハンター』が、
その活動を凍結された事は水原にとって無念な事に他ならなかった。

そしてもうひとつ水原を落胆させている原因があった。
『オルフェノクハンター』がその活動を凍結され、事実上職務を無くした、
そのメンバーの全員が『ライオトルーパー隊』の適正検査を受けていた。
水原にとってもこれは、父母、そして祖父の仇であるアギトに復讐するまたとないチャンスだと思っていた。
しかも『ライオトルーパー隊』はキャリアなどに関わらず、
適正さえあれば子供であろうと年寄りであろうと、
誰でも装着員になれるというもっぱらの噂だ、水原にはまたとない機会であった。

水原は他のメンバーと一緒に『ライオトルーパー隊』の適正検査を受けに行っていた。
その検査はおよそ思いつく限りのほとんどの検査を一日で行うという強行スケジュールであった。
内診、尿検査、血液検査にはじまり、レントゲン、心電図、CTスキャン等々、
挙句の果てには内視鏡迄あるという念の入れよう。
内視鏡は流石に適正には関係が無いのではと、水原は思いながらも検査を受けていた。
そして検査の最後に1本のベルトが用意されている部屋へ招かれて、
SB社の専属の医者に「そのベルトを装着して見てください」と言われた。
水原は言われるがままにそのベルトを着けて見たが、何ら変化は見られなかった。
SB社専属の医者は「検査はこれで終了です、結果は後日お知らせ致します」とだけ言った。

その数日後、水原の元に合否の結果が知らされた。水原は当然『不適合』であった。
水原はアギトへの復讐のチャンスを逸して、すっかり落胆してしまっていた。
だが水原だけでなく『オルフェノクハンター』のメンバー全員、ほとんどが不適合という結果でもあった。
『オルフェノクハンター』で唯一の『適合者』は隊長である高岩(仮名)だけだった。
高岩(仮名)隊長は今迄の『オルフェノクハンター』隊長としての実績を買われ、
『ライオトルーパー隊』の隊長に就任することがほぼ決定していた。

その事を知った水原はまるで我が事のように喜び、高岩(仮名)隊長の下へお祝いを言いに行くのだった。
「隊長、『ライオトルーパー隊』隊長就任、おめでとうございます」
高岩(仮名)隊長を兄のように慕い、尊敬していた水原は純粋に嬉しかった。
「水原か、ありがとう」不意に声を掛けられた高岩(仮名)隊長は振り返る。
「隊長、頑張ってください、俺の分までアギトの奴らを…」口惜しそうな顔でアギトの名を口にする水原。
「水原、お前はこれからどうするつもりだ?」
「もちろん、何らかのカタチででもアギトと戦って行くつもりです」
「アギトは俺にとって、憎っき家族の仇ですから」
「そうか、ならばGシリーズ部隊の方にまだ若干の空きがあるようだから、俺が頼んでみよう」
「装着員になれるとは限らないが、後方支援もまた立派な役目だ」
「ですが、Gシリーズ部隊の方はキャリアが必要なのでは?」
「何、今は何処も人手不足だからな。少しでも実戦経験のあるお前なら大丈夫だろう。」
「隊長、ありがとうございますっ!」
「お前のお父上も、お爺様も、この国を、人間を愛した立派な方だった…
お前もお父上や、お爺様に恥じないよう頑張るんだぞ」
「はいっ!」

水原は高岩(仮名)隊長を慕い、尊敬していた。
だが水原はまだ知らなかった、いや知ろう筈がなかった。
高岩(仮名)隊長がこの後、ライオンオルフェノクに覚醒して、
『スマートブレイン社』の『ライオトルーパー隊』隊長として人間の脅威となるということを。

すべてはSB社とオルフェノクサイドの思惑通りであった。
人間の中からオルフェノク因子を持つ者を予め選んで、
ライオトルーパー隊を結成、ライオトルーパー隊の実験を兼ねつつ、
ライオトルーパー隊運用の磐石な体制を築く事がその本来の目的であった。
適性検査も本来であれば、最後のベルトの装着だけで済むのだが、
人間の目を欺く為に、敢えて様々な検査を課してしたのだった。

そして彼らをオルフェノクとして目覚めさせてから、
『人間側のライオトルーパー隊』としてではなく、
『SB社・オルフェノク側のライオトルーパー隊』として、
活用しようというのがSB社・オルフェノク側の目論みであった。


この後、ライオトルーパー隊に選ばれた者達は、
訓練の名の下にSB社の地下室で数週間に及び行われた強化合宿に参加させられた。
それは選ばれた者とSB社の人間以外は、例え誰であろうと中には入れないという決まりであった。
従って人間達にはそこで果たして何が行われていたのか、誰も知り得なかった。
そしてライオトルーパー隊に選ばれた者達が、その合宿から帰って来てから後は、
以前とはまるで別人のようであったとも言う。
224:03/09/29 00:01 ID:qmjYiE51
わかりずらかったらゴメンナサイ
とりあえずこの回はここで終了
<ライオンオルフェノクの話はまた後日出ます

次回は『闇の系譜』(3人の黒幕の話)か、
『スマートブレイン入社式』(バタフライオルフェノクの話)のどちらかを考えております
<この辺話の順番はあまり重要ではないのでどっちになるかは気分次第(汗
225195:03/09/29 18:19 ID:TejvV2oJ
>>215
ていねいなレスありがとうございます。続き楽しみです
226名無しより愛をこめて:03/10/01 02:09 ID:8nTWaZlG
227【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:46 ID:OUHF4hof
街が見えたころ、雅人と澤田は自分達の前に立ちふさがるものを発見した。
「澤田・・・」
雅人はカイザフォンを手に取った。
「ああ」
同じく澤田もデルタムーバーを持っている。
「どうやら・・・」
雅人はカイザフォンに番号を入力する。9・・・・1・・・3・・Enter!!
『Standing By!』
「全力で通らなきゃならなそうだな」
そして、同時に
『変身!!』
カイザ・・・そしてデルタ
立ちふさがるもの・・・ライオトルーパー精鋭部隊      
「騎兵150・・・サイドバッシャーの量産型が3・・・か」
戦いが始まる・・・真理の処刑まであと1時間弱
「まず、大幅に減らす!澤田、ジェットスライガーを呼ぶぞ!」
「ああ! Three Eight Two One !」
デルタは音声で、カイザはコードを入力する。
「来たぞ!」
砂塵を巻き上げジェットスライガーが後方から迫る。飛び乗る二人のライダー
「いくぞ!」
そして突撃。
228【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:47 ID:OUHF4hof
ライオトルーパーを次々と轢く。
轢かれたライオトルーパーでダメージが浅いものはオルフェノクになるが、そんなことをいちいち気にしては
いられない。
「ミサイルを発射するぞ!」
通信する。同じ返事が返ってくる。
衝撃音が、叫び声が、断末魔が、ミサイルが発射された方向から上がる。
「60は減ったか」
「いや・・・その半分はオルフェノクになっている!」
ライオトルーパーの黒の影に、オルフェノクの白い影がだんだん混じってくる。
「次を撃つぞ、澤田!」
「分かっている」
背中合わせの二台のジェットスライガーは、軸回転を続けることで攻撃を拡散している。
だが、その動きは単調と言えないかといえば単調だ。
精鋭部隊がそれに気付かないはずがない。
「突撃!!」
第2のミサイルの発射と同時に、行動隊長らしき男が号令を出す。
そしてその号令にあわせ、数人のライオトルーパーがジェットスライガーのミサイル発射口に飛び込んでくる。
「なっ・・・!」「正気か!」
カイザもデルタも驚く。そんなことをすれば、当然死ぬ。
だが、ライオトルーパーにはライオトルーパーの意地が、信念がある。
「オルフェノクの世界のために!!」
「オルフェノク・・・スマートブレイン・・ばんざぁぁぁい!」
特攻だ。
そして、その命はジェットスライガーのミサイル発射口を破壊する。
「ちぃっ!」
デルタが舌打ちする。
まだ半分も倒せていない。サイドバッシャーの量産型もある。
229【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:47 ID:OUHF4hof
「澤田!!」
相考えていたとき、カイザ・・・雅人から通信が入る。
「タイヤもやられた、こっちのジェットスライガーを自爆させる!」
確かにカイザの乗ったジェットスライガーの前輪が破壊されている。
「分かった、こっちは無事だ、いったん下がるぞ」
言うのと同時に操作し、ジェットスライガーをホバリングで後退させる。
「よし・・・自爆可能だと気付けたのは成功だったな・・・」
自爆のプログラムをセットし、車体に乗る。
「カウントダウン開始・・・引き付けなければな!」
カイザブレイガンを右手、そしてカイザフォンを引き抜き、バーストモードにする。
「さぁ・・来い!」
群がるライオトルーパー。
だが、二丁の銃が接近戦を許させない。
「くっ・・狙え!!」
それに気付いた行動隊長が、攻撃方法を変更させる。射撃主体に。
だが、相手の攻撃方法が変わったと同時に、カイザが車体から飛び降りた。
そして、空中でカイザショットを装備、ミッションメモリーをセット・・・・
『Exceed Charge!!』
「さて・・・行け!」
グランインパクトが、ジェットスライガーの車体の脇に命中する。
ジェットスライガーは地面に平行に飛んで行く
「なっ!」
当然驚くライオトルーパーの部隊。
あの質量が目の前に飛んできたのだから・・・まぁ驚くだろう
「回避・・・いや、盾になれ!!」
行動隊長が指令を出す。
最初に回避を命令したのは被害を減らすためだ。
だが、次に盾になることを命令したのは、猛スピードで向かってくるジェットスライガーの目標が分かったからだ。
230【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:48 ID:OUHF4hof
「"砲台"を守れ!!」
砲台・・・量産型のサイドバッシャーがジェットスライガーの向かう先にあった。
だが、重複した命令は、指令系統を混乱させるだけに過ぎなかった。
「駄目です、間に合いません!!」
隊長の補佐役が叫ぶ。
それと同時にジェットスライガーが内蔵したミサイルと共に爆散する音が響いた。
そして、ライオトルーパー部隊にとっての最悪の結果が訪れた。
二つ目の命令で量産型の盾になろうとしたライオトルーパーは全員消滅。
更に、目標になったサイドバッシャーの1体が大破、1体が中破した。
「よし・・・!」
囲まれている状況は相変わらずだが、最大の脅威を半減できたことで、勝ち目が見えてきた。
まだ時間はある・・・
『Ready!!』
自分の武器で最も汎用性が高い武器、カイザブレイガンのブレードを展開する。
「どうした・・・怖いのか!」
ライオトルーパーを挑発するカイザ
「あいつ・・・よくやるよ」
一度下がったデルタは、ジェットスライガーの体当たり攻撃で地道に敵を減らしている。
「時間は・・・あと40分・・・と動き出したか」
無事だったサイドバッシャーが行動を開始する。
「ミサイルが飛んでくるのは・・・こっちだよな」
サイドバッシャーの拡散ミサイルは、広範囲攻撃には最適だが、自軍が多い場合にはあまり有効でない。
自軍を巻き込む可能性が高いからだ。
だが、少ない相手が大きいとしたらどうだろうか・・・有効か?
有効だろう・・・量産型がミサイルを発射する。
「くっ・・・・」
急旋回して回避するジェットスライガー
だが、ミサイルは更に拡散し、その巨大なバイクを狙う。
「真理の命が掛かってるんだ・・・僕だって草加くらいのコト・・・」
231【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:49 ID:OUHF4hof
ミサイルの追撃を抑えつつ、少しバトルフィールドから離れる。
そして、ミサイルを少し引き離したところで、方向を転換する。
「しっかり避けろよ・・・草加」
そう呟き、デルタはジェットスライガーをバトルフィールドに突撃させる。
・・・・・時速1300Km・・・最高速度に迫るスピードに加速する。
「くっ・・・」
凄まじいG。そして、ミサイルはそのスピードから成る衝撃波で爆発していく。
「澤田!?」
ライオトルーパーを切り倒していたカイザも、それに気が付く
「無茶をする!」
ライオトルーパーを盾にし、衝撃波をやり過ごす。
ジェットスライガーの最終目標地にいるのは当然量産型サイドバッシャー
「そろそろ・・・脱出しないとな」
そして、脱出できる限界の速度で、デルタも脱出する。
「駄目だ・・・機体を破棄する!」
当然一番驚いたのは量産型に搭乗していたライオトルーパーだ。
思わず機体から飛び降りる・・・だが、間に合わない。
ジェットスライガーの特攻は成功・・・
量産型サイドバッシャーが爆砕し、最大の脅威はほぼ去ったと言ってもいいだろう。
そして、残るライオトルーパーの数も30を切った。
だが、時間は待ってはくれない。
真理の処刑まで、あと30分
今から全速で何とかな時間だ。
「草加・・・行け!!」
232【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:50 ID:OUHF4hof
そう判断したデルタがカイザに叫ぶ
「ここは任せろ!!」
カイザはライオトルーパーを倒しながら考える・・・そして
「悪いな・・・任せたぞ」
サイドバッシャーがあるところまで一気に走る。
この戦闘でサイドバッシャーを使わなかったのは、真理のためだ。
真理を助ける時に、また破壊されているわけにはいかない。
「草加・・・真理を頼むぞ・・・ファイア!!」
デルタムーバーのガンモードでオルフェノクとなったライオトルーパーを打ちながら、デルタは呟いた。
真理の処刑まで、あと25分

闘技場・・・
「ここか・・・」
カイザの姿では目立つ。今は雅人の姿だ
そして、雅人は目撃する。闘技場の中央に走りこんできたバイクを
そのバイクを駆り、そして蘇ったベルトを駆る者を
『こんなところで、お前を死なせはしない!!変身!!』
乾巧・・・そして、ファイズ
「ファイズ・・・やはり来ていたか」
その姿を確認し、闘技場の1Fに向かう。
巨大なオルフェノクはあのファイズが相手をすればいい。
「真理は・・・必ず助ける・・・・・約束だからな」
233【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:51 ID:OUHF4hof
暗闇でチャンスを待つ。
オートバジンが破壊される。
だが、ファイズはオルフェノクの目を攻撃し、必殺のクリムゾンスマッシュを放とうとしている。
「勝ったか・・・?」
だが、空中からの邪魔者がそれを妨げる。
「サイガ・・・帝王のベルト」
そして、サイガとファイズの戦いが始まったが、それはここからでは見えない。
「真理・・・」
真理はSB社の手のものに追われている。助けなければ。
暗闇を走り、真理を追いかけている男達をカイザフォンで後ろから撃つ。
「貴様・・・」
当然だがオルフェノクだ。
だが、こんな奴等に構ってはいられない。
「変身!」
『Complete!!』
『Exceed Charge!』
「はあっ!」
グランインパクトでオルフェノクを1体粉砕する。
「くっ!」
オルフェノクが、カイザのほうではなく、真理が逃げたほうに走る。
「真理っ!!」
カイザもそれを追いかける。
そして、真理を発見し、それにその爪を向けたオルフェノクを粉砕する。
真理の前に立つカイザ
234【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:52 ID:OUHF4hof
「カイ・・ザ」
真理の前で消滅したはずのベルト
「真理・・・」
カイザが・・・雅人が手を差し伸べる。
だが、その手は虚空を掴む。
真理は、既に走り出していた。
「巧!!」
闘技場に帰ってきたファイズに、刀を手渡すために。
一人残されるカイザ・・・そして決着の瞬間
『Exceed Charge!!』
サイガの胴体部に行き着いたファイズエッジの出力がアルティメットになる。
「・・・・・・」
無言で崩れ落ちるサイガ
新たなる存在・・・
『オーガ!!』『オーガ!!』『オーガ!!』『オーガ!!』
沸き起こるオーガコール
そして木場勇二が変身するもう一つの帝王のベルト、オーガ
乾巧がオルフェノクであったこと・・・

そして・・・

『真理・・・おい真理・・・!』
『なんだっけかなぁ・・・救世主は何をやするんだ・・・闇を切り裂きぃ?』
『光を・・・もたらす』
『聞こえねーよ!!』
『闇を切り裂き、光をもたらすのよ!』
『きっつぃなぁ・・・おまえの期待に答えんのは』
『出来るよ・・・巧だもん・・だって、巧は・・巧だから!』
235【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:55 ID:OUHF4hof
カイザは・・雅人はその場に立っているのは辛かった。
「俺は・・・」
目の前では、ファイズが深紅の姿に変わり、オーガと戦っている。
雅人は考えていた。
何故自分の世界の中心に園田真理がいたのか・・・
いや、何故自分が再会した園田真理に惹かれたのか・・・
幼いころの思い出・・・いや、それもあるが、それは違う・・・
そして、今、雅人はそれに気が付いた。
『自分が真理に惹かれていたのは、真理が、1人の人物を見続けていたからだと』
つまり、自分が愛した真理は『乾巧を愛した園田真理』だったということに。
雅人は、自分の出した回答の悲しさに、立っていることすら辛かった。
目の前では、ついにファイズとオーガが互いの力をぶつけ合っている。
その凄まじい光をまぶしく感じながら、雅人はその場に腰を下ろした
「俺は・・・・・・俺は・・・」
そして、ファイズとオーガの決着。
「諦める・・・のか」
真理は、雅人の世界の中心だった。
解放軍にいたのも、真理のため。
無謀な攻撃を仕掛けた仲間を助けに言ったのも、真理のため
真理のため・・・真理のため・・・全ては真理のため
・・・こんな俺じゃ駄目だったのか・・・
「ハハ・・・ハハッ・・ハハハハッ」
何か・・可笑しくなってしまった。
闘技場では、巨大オルフェノクの消滅・・・・そして、オーガ、木場勇二の消滅。
「クッ・・・ハハッ・・・・・ハハハハ」
雅人は泣いていた。
『どけ、俺の通る道だ』
真理と巧が、その場から去っても、まだ雅人は1人泣いていた。
236【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:56 ID:OUHF4hof
時間は少し戻る。

「さて、あとはお前だけだな・・・」
赤い炎が荒野を染めている。
「そのようだな・・・」
デルタの前にいるライオトルーパーは、行動隊長のライオトルーパーだ。
「まさか、我々精鋭部隊が、たった二人にここまでやられるとはな・・・」
「すぐに、全滅するとはに変わるさ・・・」
デルタムーバーを抜くデルタ。
「ファイア!」
だが、その攻撃は回避される。
「遅い!!」
隊長を勤める者は、当然優れてなければならない。
「兄は死んだ・・・隊長が・・・負けるわけにはいかんのだよ!相手がたとえ・・・」
前回の襲撃でライオトルーパー部隊の隊長は死んだ。
ライオンオルフェノク・・・この隊長の兄は
「紅い炎の悪魔であっても!」
ジャイロアタッカーを駆っての攻撃を仕掛ける。
「・・・・・・チェック」
『Exceed Charge!!』
だがデルタはその攻撃が自分に命中する寸前に、フォトンブラッドのエネルギー弾を発射する。
「なっ!!」
そしてそれはジャイロアタッカーのボディに命中し、展開される。
「ハァァァァァァ!!」
両手で地面を蹴り、低空からの蹴りがそのエネルギーの中心を貫く。
「しまった!」
だが、その攻撃はライオトルーパーを貫いていない。
「何!!!」
そして、ジャイロアタッカーが爆発した直後、デルタを銃撃が襲う。
「ハハ・・・ハハハハハ!!」
237【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:57 ID:OUHF4hof
先程中破したサイドバッシャーのフォトンブラッド弾を離脱してオルフェノクの状態となった
行動隊長が操っている。
「くっ・・・まだだ!!」
そのサイドバッシャーに向けてジャンプするデルタ。
「読めている!!」
1発しかないが、ミサイルが発射されデルタに迫る。
「があっ・・・」
そしてそれがデルタに命中・・・空中で爆煙が上がる。
そして、投げ出されるデルタギア。
「私の勝ちだな・・・!!」
地面に落ちたデルタギアを見て、勝ち誇る行動隊長。
だが・・・
「いや、お前の負けだ・・・!」
その声で振り向いた行動隊長の腹部には、巨大な八方手裏剣が突き刺さっていた。
そして、振り向いた視線の先には、八方手裏剣を持つスパイダーオルフェノクの姿があった。
炎を上げる行動隊長。
「何故・・・オルフェノクの・・・貴様が・・・」
「そんなことは知らない・・・僕は僕だ・・・」
「馬鹿な・・男だ」
そして、消滅する行動隊長。
スパイダーオルフェノクは澤田の姿に戻り、デルタギアを拾う。
「さて・・・真理はどうなったかな・・・草加」
街のほうを見る。
街は、紅い光で輝いていた。
238【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:57 ID:OUHF4hof
雅人は闘技場から出た。
既に闘技場にいたオルフェノク達も去り、既に周りには誰も見えない。
「・・・澤田」
雅人は、カイザフォンに番号を入れる。
解放軍は携帯電話を持っていないが、仲間達は携帯電話を1つだけ持っている。そしてそれは今澤田の手にある。
『草加・・・真理はどうなった』
「ファイズが・・・助けた」
『・・・そうか』
「真理は・・・ファイズと共に・・・」
『・・・・そうか・・・それで、お前はどうする?』
「俺は・・・」
闘技場の出口近くで話す雅人。
その目の前に、見たことのある影が立っていた。
「なっ・・・お前は・・・」
その影に雅人は驚くしかなかった。
『どうした・・・?』
「俺は・・・・・・一緒には戻れん」
通話を切り、目の前の男と対峙する。
目の前の男は黒いノースリーブを上に・・・灰色のハーフパンツを下に身に着けていた。
「貴様・・・・」
目の前の男は今の雅人と同じくベルトを装着していた。
銀と・・・青のベルト
帝王の・・・「天」のベルト
「珍しいモノを見つけた」
雅人が普段喋らない言葉でその男は喋る。
239【シューティングスター】完結編:03/10/01 22:59 ID:OUHF4hof
「君はもういないはずだぞ・・・タダの人間」
だが、雅人はその言葉を理解できる。
「僕のプライドの為に、あの二人は生かしてはおけない・・・だけど、その前に・・・・」
手に持っていたモノ・・・帝王のベルトの中心・・・サイガフォンを展開し、ボタンを押す。
3・・・・1・・・5・・Enter
『Standing by!』
相手のその動きに、雅人もカイザフォンのボタンを押す。
9・・・・1・・・3・・Enter
『Standing by!』
先程のそれよりも暗い声が響く。
そして、目の前の男が一度サイガフォンを投げると同時に、手首を捻る。
「変身!!」「ヘンシン!!」
『Complete!!』
雅人の声と、男・・・レオの声
そして、カイザフォンとサイガフォンの音声は、全く同時に二人を変身させた。
「リターンマッチと・・・いこうじゃないか」
低い声で雅人は呟く。
自分自身の・・・仇を取るために。
240【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:00 ID:OUHF4hof
「同じ方法で殺してあげよう」
フライングアタッカーを背負ったサイガが空中からカイザに迫る。
「同じ手段が通用すると思っているのか?」
サイガが使っている言葉と同じ言葉を使い、カイザが動く。
『Ready!』
カイザブレイガンのブレードを展開する。
「くっ!」
そして、ガンモードでサイガを射撃する。
「近づかせないということか?・・・無駄だ!」
フライングアタッカーを変形し、ブースターライフルモードにする。
「ファイア!」
引き金を引き、その弾はカイザを狙う。
「その程度・・・読めている!!」
カイザブレイガンのブレードが、その弾を弾く。
そして、さらにブレイガンからのエネルギー弾がサイガを狙う。
「なかなかやるようだね!」
アクロバット飛行でエネルギー弾を回避し、サイガがカイザに接近する。
「近づくか・・・」
ミッションメモリーをカイザショットに付け替える。
『Exceed Charge!』
「所詮旧型だよ!」
『Exceed Charge!!』
迫り来るサイガも、空中でエクシードチャージをする。
サイガの腕に、凄まじい速さでエネルギーが収束する。
「くっ・・!!」
ぶつかり合う拳と拳。
「互角なはずがないだろう!」
『Exceed Charge!』
サイガが空いた左手でもう一度エクシードチャージする。
今度は左腕にエネルギーが収束する。
241【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:00 ID:OUHF4hof
「そらっ!!」
「チィッ!!」
咄嗟にカイザショットを破棄するカイザ。
次の瞬間、カイザショットが左手の拳で粉々に粉砕される。
「やはり接近戦は分が悪い・・・!」
だが、サイガは接近戦で勝負を付けることを望んでいるらしい。
『Exceed Charge!』
今度はトンファーエッジにフォトンブラッドを収束させてきた。
『Ready』
刃物に素手で立ち向かうわけにもいかない。
咄嗟にカイザブレイガンを引き抜く。
刃と刃がぶつかり合う。
「君は何でここにいる?ニンゲン!」
サイガが話しかけてきた。
「どうして生きている!死んだだろう!僕が殺しただろう!」
蒼い刃と黄の刃が火花を散らす。
「貴様こそ・・・何故生きている!」
「僕は・・・選ばれたんだ!!」
左の刃がカイザを狙う。すかさずそれを避けるカイザ。
「帝王のベルトの装着者だよ・・・あんなにあっけなく死ぬはずがないだろう!」
もう一度左の刃を振るう。
『Exceed Charge!』
だが、その刃が当たる前にカイザはブレードの出力をアルティメットにする。
242【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:01 ID:OUHF4hof
この出力ならば、蒼い刃を突き破れる筈だ。
だが、サイガはすかさず上空に逃げる。
「そんな前みたいな手段じゃやられない!!」
「前・・・だと?」
「そうだ!僕は前みたいに胴を斬られて・・・」
おかしい・・・
死んでいない。やられたのは映像か身代わりだった・・・?
いや、それならば「胴を斬られた」という表現はおかしい・・・?
ならば、生きていた・・・?
いや、灰になったのを見た・・・
雅人は考える
ならば目の前のサイガはなんだ?
「僕は・・・選ばれたんだ・・・帝王なんだ・・・木場勇二なんかとは違う!」
オーガのことも知っているような口ぶりだ
だが、そんなことなど既にどうでも良いのかもしれない。
今は敵を倒す・・・それだけだ!
「チッ・・・」
空中でブースターライフルを連射するサイガ。
それをブレイガンで弾くカイザ。
『Exceed Charge!』
真上!?
一瞬目を放した隙に、真上から不吉な声が聞こえた。
「青い太陽!?」
空中に青い塊が形成されている。
「しまった!」
恐らくサイガの攻撃で最も威力のある攻撃だ・・・これに当たるわけにはいかない。
だが、避けられる距離ではない。
「こうするしか・・・ない!」
素早くカイザポインターを抜き取り、足にセットする。
そして、倒立の状態からベルトのキーを押す。
243【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:02 ID:OUHF4hof
『Exceed Charge!』
カイザポインターからフォトンブラッドが放たれる。
青いエネルギーと黄のエネルギーが再び衝突する。
だが、出力が高いフォトンブラッドの色は、青だ。
黄色のフォトンブラッドは突き破られる。
そして、青い閃光が地に付き刺さる。
「なにっ?」
サイガは手ごたえが無かったことに気が付く。
相手は、下から自分に向けてキックを放ったはずなのにだ。
だが、サイガは上空から迫り来る影に考えるのを中止し、身を引いた。
「これは!?」
自分の上空から迫るもの・・・それは巨大な機械だった。
サイガは当然それを知っている。
先日壊したばかりだ
そして、その機械の腕がサイガの背中に命中する。
その機械・・・サイドバッシャーに乗っているのは、当然カイザだ。
そう、カイザはカイザポインターからエネルギーを放った。
だが、蹴りにはいかず、サイドバッシャーを変形させ、サイガの上までジャンプさせたのだ。
予想通り、放ったフォトンブラッドは時間稼ぎの役割をし、そしてこのサイガに一撃を食らわせた。
「味な真似を・・・また壊してやる!」
空中に飛ぶサイガ
「直すのは骨が折れる・・・そうさせるか!」
ブースターライフルを避けるため、移動しながら攻撃するサイドバッシャー。
今度はミサイルではなく、右手のフォトンブラッド弾を連射する。
「なら・・・」
サイガが飛来する。おそらくカイザ本体を狙いにだろう。
だが、今のサイドバッシャーは前回と違って動いている。
カイザの方でサイガの接近ルートを調整することなど容易だった。
「そこだ!!」
カイザブレイガンとフォンブラスターで迎撃する。
244【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:04 ID:OUHF4hof
「ぐっ・・・」
サイガに命中・・・飛行速度が少し落ちる。
「舐めるなぁl!!」
だが、再び加速するサイガ
「僕は・・・僕はぁぁぁ!!」
『Exceed Charge!!』
サイガの両腕に同時にエネルギーが走る。
思わずサイドバッシャーを後退させるカイザ。
だが、サイガは更に加速をかけると、サイドバッシャー上のカイザの体を掴んだ。
「ぐっ!!」
サイガにがっちりと捕まえられ、浮遊するカイザ
「勝った・・僕の勝ちだ・・・僕は帝王だ・・・帝王が負けるはずがないんだ」
呟くサイガ。
雅人は考えた。
真理は・・・ファイズを・・・乾巧を選んだ。
俺は、どうすればいい・・・?
気付いてはいけないことに気付いた俺は、これからどうやって生きていけばいい?
何をすればいい?
そして・・・思う
どうやって生きているかなど知らないが、この哀れな男を連れて行ってやるのが
俺の最後の役目になるというのも・・・悪くないかもしれない・・・・と
カイザはカイザフォンを抜くと、あるコードを入力する。
両腕をがっちりと掴まれているので、ファイズがやったように顔を撃つ事はできない。
さらに、一瞬で上昇したので、今離されたら少し困る。
「何をした?」
それに気付いたサイガがカイザに問いかける。
現在上空1000Mを超えたあたりだ。
「すぐに分かる・・・・」
「負け惜しみだ!」
そしてサイガが降下を始める。
245【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:04 ID:OUHF4hof
「終わった・・な」
カイザが呟く。
地上が目視できる状態になった
待っていたのは・・・サイドバッシャーから放たれたミサイルの嵐だった。
「じ・・自分ごと!」
降下を中断しようとするが、もう間に合わない。
ミサイルが一気にサイガとカイザに向かう。
「さようならだ・・・一緒に逝ってやる・・・!」
これだけのミサイルを受ければ、サイガでも間違えなく消滅する。
そんな量のミサイルだ。
雅人は考える
これで終わり・・・
皆・・・さようならだ・・・
俺は救世主になれないばかりか・・・こんなところで終わるんだ・・・・
でも・・・・それでいい
俺は救世主じゃない・・・真理の隣にいるべきは救世主なんだ・・・
真理・・・・
真理・・
真理・・
「真理ィィィィ!!!!」
気が付いたら、雅人は・・カイザは叫んでいた。
真理・・・
諦められない・・・
俺は・・・・俺は・・・・・
まだ死ぬわけにはいかない!!
「やっぱり・・・お前は1人で地獄に落ちろ!!」
腰に手を回す。
そしてカイザブレイガンを掴み、サイガの腕を撃つ。
「!!」
サイガの腕の掴む力が緩む。
「はあっ!!」
246【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:05 ID:OUHF4hof
腕を引き剥がし、そのまま腕を掴むと、サイガのボディを駆け上がる。
「セェェイ!!!」
そして、そのままサイガのボディを蹴り飛ばす。
ミサイルの照準はサイガにセットしてあり、カイザは空中に浮遊する。
「ア・・・あ・・・あぁぁぁぁぁl!!」
自分に向けられたミサイルで半狂乱になるサイガ
そして次の瞬間にそれらはサイガに命中する。
だが、爆円の中に影がある。
「僕を・・・僕を・!!!」
煙に男の上半身が移る。
レオのオルフェノクの姿・・・獅子の体に、大きな翼を持つオルフェノク。
そしてそれは羽ばたき、カイザに向けて突進をしてくる。
「それが正体か!」
カイザはブレイガンにミッションメモリーをセットする。
『Ready!!』
そして、更にカイザフォンのボタンを押す。
『Exceed Charge!!』
「ハッ!!」
落下しながらも、発射さらたミサイルを次々と足場にし、レオのオルフェオクに飛びつく。
「今度こそ・・・お別れだ!」
オルフェノクの頭を掴むと、その額にフォトンブラッドの弾を撃ち込む。
「ア・・・ガ・・・」
オルフェノクの体に金色のラインが網目に敷き詰められる。
「ハァァァァァ!!!」
オルフェノクの背中を上にし、そこに乗る。
「ハアッ!!!!」
そして、両手でカイザブレイガンを握ると、その刃を真下に振りぬく。
零距離でエネルギーが構成され、オルフェノクの体を貫く。
そして、次の瞬間、カイザは地上に立っていた。
その上から、灰が落ちてくる。
247【シューティングスター】完結編:03/10/01 23:08 ID:OUHF4hof
「真理・・・俺は・・・」
その灰を握り締め、数秒・・・雅人はサイドバッシャーに乗り込む。
その時、雅人は、黒い仮面を付けていた。

その後、地上がどうなったかは分からない。
人類がオルフェノクと共存できたのか・・・・木場勇二という男の夢はかなったのか?
それは、誰も知らない。
だが、一組の男女の旅の話は救世主伝説に次ぐ、新たな伝説になった。

その伝説に幾度か登場する「黒仮面」
それが、その男の行く末であったことは言うまでも無い。

シューティングスター End
248:03/10/01 23:17 ID:OUHF4hof
正直思った。長すぎるって。
言い訳 1 レオの一人称が「僕」なのは訳が「僕」だったから
    2 レオのオルフェノク・・・想像動物です。
    3 レオが生きてた理由。量産型ってことで。
当初、書きたかったのはサイガVsカイザだけだった。
映画で大好きな草加カイザが速攻で死んだのが悔しくて。
それで草加の復活話を書こうと思って・・・
気が付いたらライオトルーパーを虐殺する話になってて。
流星塾生とかデルタとかスライガーとか、思いつきで出し放題。
しょうもないな・・・自分
ここまで読んでくださった方、有難うございました。
249名無しより愛をこめて:03/10/01 23:50 ID:f/7hWGwo
お疲れ様でした!
913VS315の戦闘は息を詰めて見守りますた。
こんなにかっこいい草加が拝めて幸せです。
流星塾生もみんないちいちかっこよくて。
楽しかったです。ありがとうございました。
250名無しより愛をこめて:03/10/02 00:05 ID:fJ4P7Vw6
 乙〜。
 草加は影ながら真理を守っていくんでしょうか。
 忍ぶ恋って格好いいけど哀しい。
251名無しより愛をこめて:03/10/02 00:22 ID:apQoZnIj
>248
一気に読んでしまった。
武器の細かい切換や、スライガーにグラパクとか、小技が利いてるよ!
最後の空中戦は圧巻。
で、仮面オチにちょっとジ〜ン。
アリガd!
252名無しより愛をこめて:03/10/02 03:28 ID:dqKOu7yw
>>248
手に汗にぎりますた。乙
253名無しより愛をこめて:03/10/06 12:08 ID:Vs0SIhow
>>248
自分は真理を好きな草加が好きだからすごく良かった。
それにしても草加かっこいいな。流星塾生も味があって(・∀・)イイ!!
お疲れさまでした。
254名無しより愛をこめて:03/10/08 23:27 ID:4/zAlCBd
サル
255名無しより愛をこめて:03/10/12 19:35 ID:zLxIfiHb
保守
256名無しより愛をこめて:03/10/17 04:38 ID:WIDHuLoo
保守ついでに
新作とか続きまだぁ?
257【黒仮面伝説】:03/10/17 19:58 ID:AJZz34lH
道を歩くマントをつけた一組の男女が見える。
そして、その道の彼方の崖に、大型のバイクが見える。
そして、その横に一人の男がいる。
その手には、金色と銀色で構成された双眼鏡が握られている。

「今日はこの辺で休むか」
マントの男、乾巧は辺りを見回した。
「そうだね・・・あそこなんていいんじゃない?」
マントの女、園田真理は比較的無事な家屋を指差した。
スマートブレインによる、オルフェノクの世界・・・
その世界は、光と闇が明確な世界だった。
その世界が構成される際に、多くの都市が滅びた。
光ある都市に人(オルフェノク)は集まり、闇が深い廃墟は、無人のまま放置されている。
そして、この世界は、人の心の中の光と闇も明確だった。
その心は・・・闇
人間はオルフェノクになることで力を得た。
だが、同時に自己を制御する力を失った者も少なくなかった。
オルフェノクは、気付いていない・・・自分達は、そこまで強い存在でないことに
灰色の世界・・・滅びの足音が響く世界
だが、そんな世界だからこそ、人の心の光は力強く輝いていた。
一人の男がいた・・・その名は「木場勇二」。夢を持ち、それを失えなかった男
彼が夢見た「人間とオルフェノクが共存する世界」
その夢を託された男、乾巧
彼の中の光は、その夢を託された五年前から変わっていない。
乾巧、二十三歳 園田真理、二十一歳
オルフェノクである巧と、人間である真理の旅
それは、木場勇二の夢を体現した旅
「光の叙事詩」という伝説となった旅
258【黒仮面伝説】:03/10/17 20:01 ID:AJZz34lH
双眼鏡を持った男は、そんな二人を見ていた。
「ふあ〜あ・・・」
と、彼の横においてあるバイク・・・彼のバイクは、サイドカーだ。
そのサイドの部分で寝ていた人間が目を覚ました。
傍で立っている男よりも、幾分か若く見える・・・青年といった年齢の男だ。
「あ・・おはよう」
「これから夜だ・・・全く」
目を覚ました青年の挨拶を受け流す双眼鏡の男
「ねぇ・・相変わらず?」
「ああ、相変わらずだ」
青年は、男の横に立つと、彼方の火を見る。
うっすらとしか見えない・・・・人間の目には
だが、青年は人間ではない。オルフェノクだ
オルフェノク・・・既に人類に取って代わり存在する種族
だが、隣にいる男は「人間」の範疇だ。
ここにも、木場勇二の夢があった。
男・・人間・・・その名は、草加雅人
青年・・オルフェノク・・・その名は、北崎
二人の心は、光と闇が共存している。輝く「闇」・・・その心を持った二人の男
草加雅人の「オルフェノクを殺し続けた過去」
北崎の「人間を殺し続けた過去」
正反対の過去を持ちながら、二人は共に旅を続ける。
この旅は、巧と真理の旅の「影」。その強い光から生まれた、強い影の旅
青年は、「死地」と「自分」を探している。
男は、「心」「終点」を探している。
259:03/10/17 20:05 ID:AJZz34lH
多分、短いのの不定期連載になりそう。
前回の話(流星)と比べて、キャラが減ってます。
多分地味な話になると思いますが、長い目で宜しくお願いします。
>>249-253
感想有難うございました。
260名無しより愛をこめて:03/10/17 20:46 ID:i4BEWK5o
>259
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!ザキ
261名無しより愛をこめて:03/10/17 21:59 ID:X2hcx7uF
サガリスギ
262楽園さん:03/10/19 02:01 ID:VoHOCoe/
凄く忙しくて続きが中々出せない、ゴメソ
構想ばかりはどんどんトンでもない方へ広がり続けているのだが(汗

「持ち主を探す3本のベルトの話」
というテーマでTV・映画とは全く違った雰囲気のファイズの話とか面白そう、と思った
既に手を広げ過ぎているので漏れには取組めないんだが、
このスレでそういうのもありかと思う、個人的意見としては
263名無しより愛をこめて:03/10/22 09:42 ID:kHSB2Rl7
>>262
おおお、まってます!!!
264名無しより愛をこめて:03/10/23 20:47 ID:fek5Nqtd
保守age
265天駆ける白き戦士:03/10/24 23:07 ID:2Zl6ur7x
その出来事から10年前…

ここはアメリカのスラム街
「パァーン、パァーン…」
そこに響いた二つの乾いた音…それは銃声だった。
「フン、舐めた真似しやがって…!」
黒い服を着た男はその銃弾の先を冷たい目で見た。
その先には二人の少年が倒れている。
「アニキ、いいんですかい?」
「いいさ、俺たち組織の金を奪ったガキどもだ。こうなって当然だ。」
アニキと呼ばれた男ともう一人の男はどうやらマフィアに属する男のようだ。
「こんなところじゃあ誰が死んだって気にしないだろうよ。」
「確かにそうですが…」
「しかもこいつらは孤児だ。泣くのはこいつらの世話をしている教会の連中だけさ。」
銃弾を放った男は細く笑みを浮かべながら、もう一人の男を連れてその場を去ろうとしていた。
撃たれた二人の少年のうち、一人は脳を撃たれ、もう一人は心臓を撃ち抜かれていた。
誰がどう見ても、その状況から二人の存命など望む事はできないだろう。

唯一の例外を除いては…
266天駆ける白き戦士:03/10/24 23:08 ID:2Zl6ur7x
マフィアの二人は何かの気配に気が付いた。
その気配の先は先程、自分が銃を放った場所だ。
「!」
二人はその方向を見て驚く。
心臓を打ち抜かれた少年が立ち上がっていたのだ。
その顔には黒き模様が浮かび上がっていた。
そして、姿が人間から異形のものへと変わっていった。
「ばっ…化け物…!」
二人は銃をその異形のものへと向け、数多くの銃弾を放つ。
その銃弾は異形のものへと浴びせられるが、全く効いていないようだ。
やがて銃弾は無くなり、二人は逃げるしか手がなくなってしまった。
しかし、彼らは袋小路へと追い詰められてしまった。
「くっ、来るなぁ!」
二人はその異形のものへナイフを向けるが、それは威嚇にも何ならず、ただの悪あがきだ。
異形なるものは自分の左手の人差し指を彼らに向けた。
その人差し指は異常に伸び、二人の心臓を貫いた。
「グハァ…」
「うぐっ…」
二人はその場に倒れ込むと、やがて灰と化していった。
その光景を見ると、異形なるものは人へと姿を戻す。
「…僕は…」
異形なるものから人の姿に戻した彼は自分の手を見つめて、そう言った。
彼の名前は…レオ…
10年後、“帝王のベルト”のひとつである天のベルトを巻く男だ…
267天駆ける白き戦士:03/10/24 23:13 ID:2Zl6ur7x
このスレの>>51でつ。
ようやくまとまってきたので書いてみました。
しかしレオのオルフェノク態が思いつかない…
とりあえず、サイを考えていたんだけど
北崎の登場と【シューティングスター】を読んだら
グリフォンでもいいかなぁと思ってしまったのだが…
268名無しより愛をこめて:03/10/26 22:58 ID:iDbmtCVS
新作だよっ!
269名無しより愛をこめて:03/10/27 13:07 ID:xEjZPpjI
シューティングスター読んだがマジで凄いな
270天駆ける白き戦士:03/10/27 22:59 ID:KCgQXuud
レオは自分が撃たれた現場へと戻っていく。
もう一人の様子が気になったのだろう。
その現場に戻ると、彼はまだ倒れていた。
いや、倒れているというよりかは死んでいるとの表現の方が正しいようだ。
頭から流れるおびただしい血の量を見ると、レオも彼の命はないと思っていた。
だがレオは、それをわかりつつも彼を介抱しようとする。
銃痕からは脳こそ出ていなかったが、彼の顔は血まみれになっており、脈も止まっていた。
「…」
レオは沈黙した。
自分の手で彼の死を確認したのだ。
しかし、突如として彼の目が開き、瞳が銀色に輝く。
「!」
レオは思わず、跳ね上がった。

死者がよみがえる…
自分もそうだったのだが、目の前でそれを体験させられると、やはり驚くようだ。
レオは先ほど灰化させた二人のマフィアの反応を改めて理解した。

目を開いた彼の顔には、黒き模様がかかっている。
レオはすぐさま実感した。
彼も自分と同じ存在になったのだと…
「兄さん…!」
レオは彼のことを兄さんと呼んだ。
271天駆ける白き戦士:03/10/27 23:00 ID:KCgQXuud
彼はレオの兄で、名前はライノ。
彼らは双子で、とある名家の出身であった。
一族は元々、香港に住んでいて、代々貿易の仕事で莫大な富を得ていた。
さらなる市場拡大のため、祖父の時代にアメリカに移住した。
父はその会社を受け継ぎ、レオとライノは絶頂の時に生まれる。
しかし、長きに渡って築き上げたものほど崩れる時は一瞬だ。
世界的な不況に、拡大しすぎた事業が収拾がつかなくなり、やがて貿易会社は倒産。
一家は離散、会社経営に携わっていた一族は没落し、それ以外の親類は蜘蛛の子を散らすかのごとく彼らから逃げいていった。
もちろん、彼らに引き取り手などいるはずもなく、施設に入らざるを得なくなってしまった。
その施設は劣悪なもので、彼らだけではなくそこにいる子供全員がは奴隷同然に働かされた。
年増の行かない女、いや女の子は売春を強要された。
やがて彼らは2年ほど前にその施設を脱走し、このスラム街で生きてきた。
生活費はこのスラム街に隣接する観光地域の観光客から盗み、時には今回のように危険なお金も手にすることもあった。

「…」
目覚めた兄、ライノはレオに視線を向ける。
「兄さん…」
「…」
レオが呼びかけても、ライノは目線動かすだけで言葉を発しない。
やがてレオはライノの肩に腕を回し、その場を去った。
272【黒仮面伝説】:03/10/27 23:18 ID:+7c68ihl
「真理ィィ!!」
乾巧が叫んでいる。
目の前のオルフェノクが、真理の体を掴み、その手に持った灰色の刃を
彼女の首に突きつけているからだ。
「ハァ・・・なんでこんなことになるかな・・・」
そしてその状況を数メートル上の廃墟から眺めている雅人・・・いや、カイザ
「不甲斐ない・・・まぁ、そんなものか」
カイザはブレイガンとフォンブラスターを抜き、構える。
「(相手のオルフェノクは10人くらいか・・・)」
事件の発端は寝場所を探す巧と真理に突然10人の男女が絡んできたことだ。
どうやら彼等は巧たちを自分達の存在を脅かすものと認識したらしい。
「(乾め・・・そういうところが嫌いなんだよ・・・)」
つい挑発的な態度を取ってしまうのは・・いや、巧には自分のその態度が人に
喧嘩を売っていると解釈されることを認識し忘れていることが多い。
そして、もののはずみで巧は真理を人質に取られた状態でオルフェノク10体に
囲まれている。
「まったく・・・」
北崎はサイドバッシャーで寝ている。結局寝たのか・・・と雅人は思うが、
もういつものことだ。北崎はほとんど起きていない。
別に寝る必要性は無いのだが・・・
273【黒仮面伝説】:03/10/27 23:28 ID:+7c68ihl
雅人は両手の銃の銃口をオルフェノク達と巧と真理がいるところに向ける。
「殺す必要も・・無いな」
そして二つの銃口が火を吹く。
だが、その殆どはオルフェノクにも、巧みにも、当然真理にも当たっていない。
余計な動きをして当たったオルフェノクもいたが、致命傷にはならないだろう。
「なんだぁ・・・まぁいい!!」
巧みが体に力を込める。
そして、白い風に変わる。
「ぐはっ」「ぐおおっ」「えっ?」「あ?」「ん!?」
次々と倒れていくオルフェノク達
「真理っ!」
そして白い影は真理を押さえつけていたオルフェノクの武器を空中に飛ばすと、
その体にパンチを食らわし、真理を取り戻す。
その手は、白と灰色の、オルフェノクの手。
「巧・・・」
ウルフオルフェノク・・・乾巧の姿・・・
「(やはり・・・忌々しいな)」
理由は無い。あえて言えば「嫉妬」なのだが、真理を大事に傍に置く巧を、
雅人は羨ましいと思っている。
「まったく・・・殺そうと思えばすぐに殺せただろうに・・・」
巧は一人も殺していない。全員気絶している。
「以前のあいつだったら・・・」
と、ここまで考えて、気付いた。
雅人も、誰も殺していないということに。
「威嚇射撃なんて・・・使わないと思っていたが」
だが、真理と巧を影から追うようになってから、威嚇射撃は大いに役に立った。
姿を見せるわけにはいかない。
274【黒仮面伝説】:03/10/27 23:32 ID:+7c68ihl
その条件の中、真理を見守るには銃を使うしかなかった。
幸いカイザには二週類の銃があり、それを使いこなしていた。
確かに乾巧・・・ファイズは強い。
オルフェノクの姿も間違いなく強い・・・
だが、今日のような事態は初めてでない。
雅人は自分が選んだ道が辛くは無いが面倒臭い道であることを認識している。
そして、その道を行ける自分に安堵している・・・・
275:03/10/27 23:34 ID:+7c68ihl
書きたいことが良く分からない文章・・・意味不明

説明したかったことは
「雅人は巧と真理を見守り(尾行し)ながら不慮の事態に備えてますよ」
ってことなんだが。

続きはいつだろう? もう少し張り合いのある文章を目指します。
276天駆ける白き戦士:03/10/29 00:02 ID:YHzrwobt
それから5年の時が流れた。
彼らはまだスラム街で生活していた。
あの一件以来、自分から異形なものへと変わることを極力、抑えた。
たまに訪れる殺人衝動と破壊衝動と共に変わってしてしまうこともあったが必死に抑えた。
やがて、レオは人として生きて行こうとし、あの力を忌むようになってきた。
兄ライノはあの一件以来5年も、一度として口を開くことはない。
以前はレオと共に活発に行動していたが、今は一日中、横になっている事が多い。
起きている時も、常に虚ろな表情で、その目線はどこを見ているのかわからなかった。
脳を撃たれた後遺症であろうか。
医者に見せたいところだが、そんなお金はない。
この世でたった一人の肉親、兄が生きていればそれでいいとレオは思うようになっていた。
苦労はしているが、何一つ変わることのない生活…
それが自分に対しての幸せなのだろうかと思っていた。
しかしそれが突如として崩れる日がやってくる事を、当時のレオは知る由はなった…
277天駆ける白き戦士:03/10/29 00:08 ID:YHzrwobt
ある夜、レオは生活費を稼ぐため、兄を寝床に残し、一人で観光地域に来ていた。
今月はある程度、お金に余裕があったが、何かに惹かれるように、観光地域に赴いた。
そして人気のない夜道を出歩いている人間を発見する。
ちゃんとスーツを来ているあたり、ビジネス好きの日本人だろう。
レオは日本人に激しい嫌悪感を持っていた。
それもそうだ、父の会社に止めを刺したのは、日本の企業である『スマートブレイン』だった。
さらによく見ると、その日本人が持っているカバンには『スマートブレイン』のロゴが入っている。
レオは嫌悪感を通り過ぎて、それまで抑えていた殺人衝動を呼び起こさせた。
「……!」
レオはその殺人衝動に飲み込まれた。
その姿を異形なるものへと変えていった。
「がああぁぁぁぁ!」
レオは叫びながら、その日本人を襲った。
しかし、その日本人はレオの襲撃に気づくと、余裕を持ってその攻撃をかわした。
「おっと、あぶないですね。」
行動に余裕があると、言葉にも余裕が現れる。
その日本人は、その襲撃を知っていたかのような素振りだ。
「がぁ!」
レオはさらなる怒りを覚え、その感情に流されるまま右腕の突起物で突こうとした。
『ガキィン!』
激しい金属音があたりに鳴り響く。
レオは手ごたえを感じた。
レオはその先に、串刺しになっている日本人の姿を想像していた。
が、それは想像のままで終わる。
現実は、その先に自分の攻撃を受け止めている日本人の姿があった。
「僕の攻撃が…!」
異形なるものの影がレオの姿に変わり、そう叫ぶ。
278天駆ける白き戦士:03/10/29 00:09 ID:YHzrwobt
「なかなかいい攻撃をしますね…ですが甘い。」
日本人はその突起物を、握力だけで破壊した。
「ッ!」
レオは驚いた。
レオが驚くのも無理はない。
先ほどの攻撃は、分厚い鉄板でさえ貫くことができ、かなりの硬度を持つ。
それが人間の握力の前に破壊されたのだ。
レオは恐怖を覚えつつ思った。
『こんな人間がいるとは…!』
「うわぁぁぁ!」
今度は左手で殴ろうとするが、それも素手によって簡単に受け止められてしまう。
「攻撃力だけなら、上の上…しかし」
その日本人は言葉を続けながら、レオと同じく異形なる物へと変身していった。
「いとも簡単に感情に流されるようでは、オルフェノクとしての力は無駄になる。下の下ですね。」
「あ…あ…」
レオは完全に恐怖に飲み込まれた。
日本人が変身した姿は、レオより品疎なように見えたが、神々しさがあった。
「同じオルフェノクですが、私に襲い掛かった罪は重い…お別れです。」
日本人はレオにそういうと、頭に手をかざし、頭から真紅のバラを発射した。
そのバラはレオに触れると、爆発する。
「ぐわぁぁぁ!」
至近距離でのその攻撃はあまりにも強烈だ。
そしてレオは、あまりのダメージのため、人間へと戻された。
279天駆ける白き戦士:03/10/29 00:16 ID:YHzrwobt
「ハァ…ハァ…」
レオのダメージは激しく、肩で息をし、咳き込んでは血反吐を吐いていた。
そんなレオの姿を見て、日本人は少々驚いているようだった
「まさか、あの距離で私の攻撃を受けきるとは…」
日本人は変身をとき、人間の姿へと戻る。
「…ここまでの人材をここで殺すのはもったいない…」
日本人はレオに近づき、手を差し伸べた。
「私と一緒に来ませんか?」
レオはその人間態の姿でもその神々しさを感じた。
それはレオの感情から嫌悪感と恐怖感を消し去るほどだ。
その日本人の胸にはネームプレートがつけられて、レオはそこから日本人の名前を確認する。
『SMARTBRAIN Kyoji Murakami』
その日本人は、当時はまだスマートブレインの一社員であった村上峡児だった。
レオは差し伸べられた村上の手を握った。
村上は口だけで笑う。
「これから楽しくなりますよ。」
レオはその言葉の意味がわからなかった。
しかし、今までの生活が終わりを迎えたことを感じ取る事はできた。
そして、もう人間として生きていく事はできない事も…
280名無しより愛をこめて:03/10/29 09:23 ID:tZdilViV
なんで、お前のオナニー語りをここに書くんだ?
オナニーは自分のサイトでやれよ
281:03/10/29 23:27 ID:QeFxwzi0
捻りのない煽りw
282名無しより愛をこめて:03/11/01 07:36 ID:sgctRM/n
またアギトVSオルフェノクの話をキボン
283 :03/11/06 01:24 ID:uQ+/TaLd
284名無しより愛をこめて:03/11/06 09:41 ID:YRvJi9wA
>>282
自分に援護射撃ごくろうさん
285名無しより愛をこめて:03/11/06 16:11 ID:rRLodiDs
終了ですか?
286楽園作者:03/11/06 21:31 ID:ACash/kt
>>284
282 は俺じゃないぞ
現在多忙につき、時間がある時ボチボチとやらせてもらいます
どぞよろしく
287名無しより愛をこめて:03/11/08 19:25 ID:jOLtlWoV
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│☆☆☆☆☆☆☆―将軍様の胸の心の愛―☆☆☆☆☆☆☆│
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│☆                             ξ~⌒~、~⌒,~ヽ .☆│
│☆  明日PM 3:00 開演 場所 平壌   .(6ξ--―●-●| ..☆│
│☆                 来ないやつは拉致.ヽ     ) ‥ ) ☆│
│☆                             \  ー=_ノ. ☆│
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288名無しより愛をこめて:03/11/12 22:16 ID:GRe3ojXP
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│☆☆☆☆☆☆☆―おいらの胸の心の愛 ―☆☆☆☆☆☆☆│
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│☆                             ▼▼▼▼    ☆│
│☆    本日 PM 3:00 開演   場所 空地      ・__・    ☆│
│☆             来ないやつは殺す    〇      ☆│
│☆                            3      .☆│
│☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆│
└─────────────────────────┘
289286:03/11/16 23:04 ID:iiDUtldt
TV版も佳境ですね

映画のその後の話で、
巧が今度はオルフェノクを守る為に戦う、
という所迄構想は出来ているんですが …
SS書く時間が全然ねぇ(涙
290 :03/11/20 01:20 ID:xFZlQXCH
291名無しより愛をこめて:03/11/22 23:04 ID:dNQWlMGG
こんな話はどうだ?

『彷徨えるベルト(仮題)』
これは遥か太古の昔より、ただひたすら自らの主を探し続けて来たベルトの物語である。
人々は古より自らの強さを競い、その力を誇示するかのように
ベルトを腰に巻いて来た、古代ギリシアの時代より。
古の人々は知っていたのだ、ベルトに選ばれた者のみが装着出来る、
人に究極の力をもたらすベルトが存在する事を。
古の人々はそのベルトに焦がれて、力ある者の象徴としてベルトを巻くようになったと謂う。
そのベルトは遥か太古の昔より、その時代に合わせて姿形を変え、
自らの真の主を探し、悠久の時を渡り続ける。
果たしてそのベルトの真の主は現れるのか?
これは時を越えて存在し続けるベルト、それに関わった様々な時代の人々の挿話であり、
ベルトこそがこの物語の真の主人公である…


短編で紡ぐ真の主を探すベルトの話
一人でやるのはしんどいから、みんなで短編出し合って
リレー小説とか連作みたいな感じでやるとか
292名無しより愛をこめて:03/11/29 00:16 ID:/3qJJFfT
保守age
293オルフェノクvsアギト:03/12/02 22:08 ID:Beu5gFRN
TVもこんな話になるのかなぁと思って書いていたのですが、
本当にこんな話になって来ました…
<SB社が資金援助とか
こちらも南雅彦を書き足さなくては
という訳で再びちょっとずつupしていく予定
294282:03/12/04 21:32 ID:gfNlmc1b
>>293
おおっ。楽しみです。

ヨハネの黙示録1章17・18節
わたしは彼を見たとき、その足もとに倒れて死人のようになった。
すると、彼は右手をわたしの上において言った、
「恐れるな。わたしは初めであり、終りであり、
また、生きている者である。わたしは死んだことはあるが、
見よ、世々限りなく生きている者である。
そして、死と黄泉との鍵を持っている。

295282:03/12/04 23:04 ID:oEZEEgZj
ワクワク、ワクワク。

ヨハネの黙示録22章10-13節
またわたしに言った、
「この書の預言の言葉を封じてはならない。
時が近づいているからである。
不義な者は更に不義を行い、
汚れた者は更に汚れたことを行い、
義なる者は更に義を行い、
聖なる者は更に聖なることを行うままにさせよ。」
「見よ、わたしはすぐに来る。
報いを携えてきて、
それぞれのしわざに応じて報いよう。
わたしはアルファであり、オメガである。
最初の者であり、最後の者である。
初めであり。終わりである。
296 :03/12/05 01:42 ID:wwXxZCy/
297【楽園の崩壊】南雅彦:03/12/11 23:15 ID:mrWzdsyd

スマートブレイン本社最上階にある社長室、そこへ向かう一人の男の姿があった。
着ている制服から、その男は警視庁の上層部の人間らしき事が伺える。
社長室へと繋がる通路、透明なドアの前に立つスマートレディがその男を出迎える。
「お待ちしておりまわしたわっ」スレンダーなボディに
水色のコスプレのような衣装を着たスマートレディは高い明るい声で男笑顔を投げかけた。
「これはこれは、かのスマートレディさんに出迎えて頂けるとは光栄ですな」
その男は穏やかな声でそう応えた。だがその声は力強く、何処か存在感のある声であった。
男はスマートレディに案内されて社長室へと赴く。

社長室ではスマートブレイン社社長の村上が待っていた。
「南さん、お待ちしてましたよ」村上社長はその男の事を南と呼んだ。
「村上さん、どうもご無沙汰しております」
「さっ、どうぞこちらにお掛けになってください」村上は南を社長室のソファに座らせた。

「我々も以前からスマートブレインには協力をして頂いておりました」
「何せ新種対策本部が設立されて以来、資金援助をして頂いていますからね」
警視庁上層部の南雅彦、彼は新種対策本部の実質的統括責任者であった。
彼は新種への対策を立てるには、まず新種を研究する必要があるとし、その資金集めに奔走していた。
南雅彦という人物、新種対策本部、そしてその研究に目を着けた村上は、その資金を出資する事を自ら申し出た。
その見返りは当然、その研究内容、そこから得られた新種のデータを提供する事であった。
298【楽園の崩壊】南雅彦:03/12/11 23:15 ID:mrWzdsyd

「いえいえ、そのおかげで我々も貴重なデータを得る事が出来ましたよ」
「我がスマートブレインでは新種から得られたデータを、新薬などの商品開発に利用する事を検討しています。
これが成功すれば、あなた達に資金援助した以上の額を回収する事が出来るでしょう。
まさにお互い持ちつ持たれつという事です、お気になさらずに」
村上はスマ−トブレイン社が資金援助する表向きをそう語っていた。
だがその真意はもっと別の所にあった。
人間達が新種である、アギトやオルフェノクに対してどのような対策を立てるのか、それを知りたかったのである。

「それに加えて先達てのスマートブレインの英断ですからね」
「我々としても申し訳ないというものです」
それは、Gシリーズの量産化の為の資金援助、技術提携、工場・生産ラインの貸し出し、ライオトルーパーの提供、
と言った政府へのスマートブレインの援助の事を意味していた。
当然、それは村上いやオルフェノクからすれば、この三種の戦いの覇者となる為の周到な準備であったのだが。
だがスマートブレインとオルフェノクの関係を知らない人間にとっては、
スマートブレインにはそれなりの計算があると裏を読んだとしても、それなりの敬意を表すなければならなかった。

「そこでです、今日は我々は村上さんにお土産をお持ちしたんですよ」
南はそう言うと村上の前にファイルを差し出した。
「ほうっ、それは楽しみですね」「これは、拝見してもよろしいのですか?」
「ええっ、もちろんですとも」南がそう言うと村上はそのファイル化された資料を速読しはじめた。
それはとても人間技とは思えない速さであった。
「これは驚きですな、やはりスマートブレイン程の企業の社長になられるという方だ。
そうした才も必要であるのでしょうな」南はそう感心してみせた。
「いえ、そんなものではありませんよ。これは私の癖のようなものです。どうかお気になさらずに」
299【楽園の崩壊】南雅彦:03/12/11 23:17 ID:mrWzdsyd

ぶ厚いファイルを瞬時に読み終えた村上。
「つまり、官公庁及びそれに関する者、出入りの業者に至る迄すべての者が
スマートブレインを単独指定企業として優遇してくださると言うのですね?
そして、現在官公庁に申請中の我社のすべての製品をノーチェックで認可してくださると。
我社の為に一部規制も緩和してくださる、という事で宜しいのですかね?」
村上はそこに書かれていた内容を簡潔にまとめ、南に確かめた。
「ええ、仰せの通りです」

「これはこれは、流石は警視庁きってのエリートと言われる南さんです。
お見事です、まさに上の上のお土産ですね。」村上は南に対して敬意を表した。
「いえいえ、大した事はありませんよ。我々も以前からお世話になっていまたからね。
政府の上の人間に掛け合って、この要綱を至急にまとめさせたんです。」
「あなた方の援助にかかる費用の10分の1にも達しないでしょうが、
これによりスマートブレインの来期の利益は2倍以上にはなるでしょう。
あなた方の仕事も随分とやり易くなる筈だ。」南は笑いながらそう応えた。
300:03/12/11 23:20 ID:mrWzdsyd
南雅彦ってGユニットの上司にあたる事になるね
んで本当の津上翔一なんかとの関係もありそうだし、
何気にこの話じゃ、もの凄く重要な人物になるのではないだろうか
<TVじゃあれだったが
30152:03/12/12 23:34 ID:VMpvkVGN

「その後の成果はいかがです、何か新しい事でもわかりましたか?」村上は南に向かって改めて尋ねる。
「いえいえ、目新しいデータは今の所はありません」
南は新種対策本部の統括責任者として、スマートブレイン社出資の下、
アギト・オルフェノクと言った新種を研究する機関を設立し、研究を続けて来た。
今尚アギトやオルフェノクを捕獲しては生体実験を繰り返し、貴重なデータを取り続けている。
それはアギトやオルフェノクと言った新種を人と認めるならば、
間違いなく非人道的な実験ではあったが、アギトやオルフェノクを人として認めようとする者は少なかった。
その一方で南はアギト迫害にも大きく加担していた。
アギトが人間により差別され、迫害され、虐げられ、貶められて来たという過去、
その人間側の先導者の中に南の姿もあった。
そして何より『新種迎撃部隊』は南が統括する新種対策本部の直轄でもある。
南はアギトやオルフェノクと言った新種と呼ばれる者達に対し、異常な迄の敵愾心を抱き、
決して人間以外の種を認めようとはしない人間達の一人であったのだ。

「しかし、アギトとオルフェノクの存在は非常に面白い」南は薄ら笑いを浮かべてそう言った。
「元は同じ人間という種でありながら、その進んだ方向性は全く異なっている。
いや、むしろ真逆であると言ってもいいかもしれない。」
「そして、彼らが本当に人間と言う種の進化であるならば、その変わり様はあまりにも唐突だ」
「長い年月を経て人間が進化して行くと言うのならそれもまだわかる」
「『進化論』であったとしても、あの変わり様は有得ない、むしろ滑稽ですらある」
「まるで、何か大きな力がそこに介在して、人間を無理矢理進化させたとしか思えない」
南のその言葉に村上は反応した「神の見えざる手、ですか…」
「いえ、そうとは言いませんが、私はそこに何かの意志を感じずにはいられないのですよ」
「それは我々の想像を遥かに越えた、人智外の者の意志であるのかもしれません」
南は自らの話を嘲笑するかのようにそう言った。
302:03/12/12 23:36 ID:VMpvkVGN
↑【楽園の崩壊】南雅彦
名前欄間違えた
303【楽園の崩壊】南雅彦:03/12/13 00:02 ID:zYj5z8Yv

「今我々は一時的にオルフェノクと休戦協定を結びましたが、それは仮初めのものです」
「ええっ、もちろん、そうでしょう…」村上は南の言葉に静かに頷いてみせた。
「我々が今最も脅威とするのはアギトです」
「アギトのその戦闘能力は人間にとって脅威以外の何物でもありません」
「過ぎたる力を持つ者は、その存在が既に脅威なのです」
「ええっ、まさにおっしゃる通りです…」
「アギトはただでさえ高いポテンシャルを秘めているのに、さらにその力は進化し続けている」
「今はまだ我々の力でその数を抑える事が出来ていますが、アギトの数がこれ以上増えるようであれば、
いずれ人間はアギトに対して力で対抗する事が出来なくなるでしょう…」
「だが、オルフェノクは違う」
「オルフェノクもまた我々人間より肉体的には優っていますが、人間の力で勝てない相手ではありません」
「数の優位でも人間の方が遥かに上、いざとなれば物量作戦で対抗出来る相手です」

「私もその意見には全く同感です」村上は南の言葉に賛同してみせた。
「人間が新種に優っているもの、それは数の優位です」
「その数の優位を戦いで維持する為にも、人間には力となる武器が必要なのです」
「それがGシリーズの量産化であり、ライオトルーパーの大部隊なのです」
村上は南の主張とスマートブレインの援助を上手く繋ぎ、南に同調してみせた。
304【楽園の崩壊】南雅彦:03/12/13 00:08 ID:zYj5z8Yv

「私の考えを理解して頂ける方がいるとは、嬉しい限りですね」
村上が笑顔を浮かべてそう言うと、今度は南が頷いた。
「我々は今後もスマートブレインと良い関係を築き、維持して行きたいと考えています」
「ええっ、是非とも共に歩んで行きたいものです」
村上は南に手を差し伸べ、南はその手を強く握った。

それを社長室にあるカメラを通して、モニタールームで見ていたスマートレディは笑う。
「まるで狐さんと狸さんの化かし合いみたいね、きゃはっ」


スマートブレインの社屋を出た南雅彦は、その空に高くそびえ立つビルを見上げる。
「スマートブレインが裏で何かを企んでいるのはわかっている…」
「だが、今は利用出来るものは何でも利用させてもらう、例えそれが両刃の剣であろうともだ」
「最後に勝つのはこの私だよ…」
南雅彦はそう呟くと迎えに来た車に乗り、スマートブレイン社を後にする…
305:03/12/13 00:10 ID:zYj5z8Yv
このお話は次の話と繋がっています
次のお話ではかなりの謎が明らかになります(予定)
306【楽園の崩壊】黒歴史:03/12/13 13:29 ID:zYj5z8Yv

スマートブレイン社最上階にある社長室、
その社長室の奥には厳重なセキュリティに管理された秘密の部屋があった。
その部屋は無論普通の社員などが入れる筈も無く、
IDコード入力、指紋識別、音声識別、網膜識別、それらの厳重なるセキュリティを通り、
この部屋に入れるのはただ二人のみ。村上社長とスマートレディだけである。

村上はその部屋の中央に座していた。村上を囲むように空に浮かぶ3つのポリゴン、
そして其々のポリゴンに投影される3人の老人達の顔。
「村上よ、その後の状況はどうなっている?」
村上の真正面に位置するポリゴンに映し出された老人の顔は問うた。
「はいっ、進捗状況は、報告書としてデータをお送りした通り、順調に進んでおります」
「我々オルフェノクは、アギトのように高い戦闘能力を持たず、人間のように数が多い訳でもありません」
「その中でオルフェノクが生き残る為には、この3種の生存を賭けた戦いの主導権を握らなくてはなりません。
様々なる種を蒔き、それが花開き、すべてがリンクする時、それがオルフェノクという種の勝利の時です」

「人間達への戦力の提供、それもまたその一つに過ぎぬと言うのだな」老人の中の一人が問う。
「ええっ、全くその通りです」
「しかし、これはまた随分と大判振舞いをしたものだな。通常であれば天文学的な数字にも登るであろう。」
「はいっ、しかしながら、この世界の覇権を買うには安いものかと思われますが」村上は自信を持ってそう言った。
「まあよい、我々にすれば金の価値などどうにでもなるというもの。
これぐらいの金額の補填などはいくらでも出来る」また別の老人がそう語った。
307【楽園の崩壊】黒歴史:03/12/13 13:58 ID:zYj5z8Yv

村上の正面に位置する老人の顔は語りはじめる
「古の昔、そうそれは人類が生まれて間もない頃だと謂う者もあれば、
生命が誕生したばかりの頃であったと謂う者もいる。
いずれにせよ、太古の昔、『闇の力』と『光の力』による争いがあった。
その争いは、昼夜を問わず繰り広げられ、何年、何十年、何百年、と謂う長きに渡り続けられた。
その戦いの中、『闇の力』と『光の力』は互いに深く傷つき、
死中を決する事の出来ない双方は、互いに苛立ちを覚えはじめた。
そして、『闇の力』は自らの力を、この世界に誕生したばかりの生命・人間に、
『オルフェノクの記号』として刻み込んだのだ。」
「これを知った『光の力』は、人間達の中の『オルフェノクの記号』、
すなわち『闇の力』が覚醒した時に、人間がその力に対抗する事が出来るように、
自らの力を『アギトの種』として人々の中に植えつけたのだ…」

「すなわち、アギトとは、人間の闇の進化であるオルフェノクから
人間達を守る為に存在する、人間の光の進化なのだ。」

「オルフェノクの大量覚醒を事前に感じ取ったアギトの種は、オルフェノクより早くアギトとして覚醒した。
だがそれがアギトと人間にとっては不幸であったと言ってもいいだろう。
愚かな人間たちはその事を知らず、アギトの力を脅威と感じ、これを排斥しようとして来た。
本来、自分達を守ってくれる筈であった者達を迫害し、敵にまわし、今まさに絶滅させようとしているのだ。
まさに、愚かなり、人間どもっ」

「村上よ、人間達にこの事実を決して知られてはならぬ。
人間とアギトが結びつけば、オルフェノクに勝ち目は無い。
あくまでも人間とアギトは戦い続けなければならぬのだ、その本来辿るべき筈であった道筋と正反対になっ」
老人はそこ迄語ると大きな笑い声を上げた。部屋には老人達の笑い声が響く。
「はいっ、充分に承知しております」村上は老人達の笑い声の中、そう答えた。
308【楽園の崩壊】黒歴史:03/12/13 14:20 ID:zYj5z8Yv

老人達の笑いが止むと、定期報告は次の議題『帝王のベルト』の件へと移った。
「村上よ、お主から出されていた、『帝王のベルト』の企画、承認しよう」
「はっ、ありがとうございます」
「従来の3本のベルトにより収集されたデータを基に、
『帝王』の名にふさわしいベルトをつくってご覧にいれましょう」村上は自信満々にそう応えた。

「承認はされたが、幾つか聞いておきたい事がある」
「『帝王のベルト』は今度の種の覇権を賭けた戦いには使かわぬつもりか?」
「はいっ、今からでは開発が間に合わぬというのもありますが、
『帝王のベルト』はオルフェノクが
この世界の覇者となりし後に必要となると想定されて立案されたモノです。
オルフェノクが種として生き残った世界、そこで絶対的な力によりオルフェノクを統制する、
その為には『帝王のベルト』が必要なのです。」
「もちろん、開発が間に合い、状況が我々に不利なようであれば、投入も検討致しますが、
おそらく、その頃には既に雌雄が決しているのではないかと思われます。
どの種が生き残り、どの種とどの種が滅んでいるかの…」
309【楽園の崩壊】黒歴史:03/12/13 14:53 ID:zYj5z8Yv

「天と地、2本のベルト、その装着員はいかがするつもりだ?」
「はいっ、現在目ぼしい人材を探しておりますが…」
「私はタイプの異なる2人にそのベルトを渡したいと考えております」
「一人は、オルフェノクの中のオルフェノク。
非常に優れた戦闘能力を持ち、揺るがぬオルフェノクとしての心を持ち、
人間やアギトを抹殺する事に何ら疑問を持たぬ、まさに完璧なオルフェノク」

「してもう一人とは?」
「オルフェノクとして優れた戦闘能力を持ちながら、
オルフェノク以外の何かをプラスアルファとして持つ者です」
「何故、そのような人選をっ?」
「私は最近考えるようになりました…
オルフェノクとして純粋な者には限界があるのではないか、と」
「オルフェノクとして純粋な者にとって、人間を殺す事は当たり前の事です。
それは人間が生きる為に、動物や魚を獲って食べるのに等しい行為です。
だがそれだけでは、それ以上でもそれ以下でもありません。」
「例えば、オルフェノクでありながら人間に近い心を持った者がいたとして、
その者が人間に裏切られ、酷い仕打ちを受け、人間に絶望した時、
人間に対して激しい怒りと、深い憎しみが生まれます。
そうした怒りや憎しみこそが、強い力となるのではないかと…」
「そうしたオルフェノクでありながら、オルフェノクではない何かを持った者、
確かに、その者はオルフェノクとして見れば不完全ですが、
そうした者の方が、完璧なオルフェノクよりも遥かに強い力を得る事が出来るのではないか、
私は最近その事が気になってならないのです…」
310【楽園の崩壊】黒歴史:03/12/13 15:18 ID:zYj5z8Yv

「かっ、仮面ライダーっ…」
村上がそこ迄話した時、老人の中の一人がそう言った。
その言葉を聞き、ざわめく老人達。
「確かに、それは仮面ライダーのようでもあるっ…」
「仮面ライダー… 昔、別組織で実験を行っていたという改造人間の話ですか?」
村上はいぶしかげに仮面ライダーについて尋ねる。

そして、老人の一人が再び語りはじめる。
「我らは昔、ある組織を結し、今と同じく
この世界の覇者となるべき者達を誕生させようとしていた…」
「我らは実験を重ね、改造人間なる者を生み出した」
「だがその中の一人は、改造人間でありながら、人としての心を持ち続け、我らに仇を為した」
「我らは改造人間を刺客として送り、裏切り者を処分しようとしたが、
改造人間は裏切り者に叶う事は無かった、ほとんど変わらない能力を兼ね備えていると云うのに」
「我らはそこで、何故裏切り者に勝てぬのかを考え続けた」
「そこで出された結論、それは今、村上、お前が言った事と同じであったのだよ」
「改造人間でありながら、それ以外の何かを持つ者…」
「それ故に我らは幾度と無く苦渋を味合わされて来たのだ…」
311【楽園の崩壊】黒歴史:03/12/13 15:18 ID:zYj5z8Yv

「仮面ライダーですか… その話は何度も伺いましたよ」
「ですが、それも既に過去の歴史の中に埋もれ去った者達に過ぎません」
村上はそう言って薄ら笑いを浮かべた。
「だが、お前の言う事は、仮面ライダーと同じ事であろう?」
「考え方は同じかもしれません、だが、仮面ライダーが人の心の持つ光、正の部分をその力としたように、
私は人の心の持つ闇、負の部分をその力と変えようと言うのです」

村上がそう言うと、村上の正面に位置する老人は反応した。
「確かに、人の心の持つ闇は深い。人の心の持つ光より遥かにだ。」
「よかろう、人選もすべてお前に任せよう。
だが、村上よ、失敗したその時は… わかっておろうな?」
「はいっ、十分に心得ております」村上は顔をこわばらせながらそう応えた。
312:03/12/13 15:39 ID:zYj5z8Yv
この回はこれで終了
この辺はほとんど映画後の話の伏線
映画後の話は、闇の力&アンノウンvs巧&オルフェノクとなる予定
<変わるかもしれんけど
313名無しより愛をこめて:03/12/14 04:36 ID:qju8BFR/
いやー!グレィトっすね。
次回巧がどれだけかっこよいのか期待してます。
個人的には今後スマレがどうなるのかが凄く楽しみです。
314:03/12/14 20:51 ID:pRlbpfxx

何か誤解があったらゴメンなさいよ
巧は次の回出て来ませんので、申し訳ない

この話はこういう感じになっている…らしいぜっ

『楽園の崩壊』(映画の前日談)
オルフェノク、アギトと呼ばれる新種と人間の戦い。
3種による三つ巴の戦いの末、アギトは絶滅し、人間も絶滅寸前迄追い込まれる。

『仮面ライダー555/パラダイスロスト』

『最後の楽園』(映画の後日談)
闇の力&アンノウンvs巧&オルフェノクの戦い。
315:03/12/14 21:04 ID:pRlbpfxx

『最後の楽園』(映画の後日談)予告

警視庁の地下シェルターにて生き延びていたGユニットのメンバー。
このオルフェノクが支配する世界に疑問を抱く小沢澄子は、
この世界の真相を知る為に、この島国の外の世界との交信を試みる。
だが、それは悉くスマートブレインのシステムにより阻まれる事となる。
SB社の幾重にも張り巡らせたネットのセキュリティを潜り抜けようとトライする小沢。

一方、オルフェノクの王となった巧は、真理・啓太郎らと共に人間とオルフェノクとの共存を目指す。
だが、その前に現れる『闇の力』、彼はアンノウンを使ってオルフェノクを襲撃する。
『闇の力』はこの世界を見て失望し、オルフェノクから『オルフェノクの記号』を消し去り、
オルフェノクの存在を無かった事にしようとするのだった。
人間が一度死んでオルフェノクになった者達にとって、
『オルフェノクの記号』を消される事、それは完全なる死を意味していた。
その事実を知って苦悩する巧、だが巧は決意する、今度はオルフェノクの為に戦う事を。
オルフェノク軍団を率いて、『闇の力』とアンノウン軍団と戦う巧。

その頃、永い眠りより目覚める最後の生残りのアギト達。
彼らが深い眠りに就いている間に、その一族は滅び去って逝ってしまった。
彼らの名は、沢木和也、木野薫、葦原涼。
彼らは苦悩する、アギトという種を滅亡に追いやったオルフェノクの為に戦うか否か。
巧はその事を承知の上で彼らにアギトの力を貸して欲しいと頼む。

そしてSB社のネットセキュリティをすべて突破した小沢澄子が突き止めたこの世界の真相とは…
316:03/12/14 21:06 ID:pRlbpfxx
(中略)

すべての戦いは終息した。
そして巧と真理、啓太郎に別離の時が訪れた。
「啓太郎、真理の事は頼んだぜっ」「たっくん!!」
真理と啓太郎を乗せた船は汽笛を鳴らせて波止場を後にする。
「巧っ!!巧っ!!」巧の名を呼び続ける真理。
巧は真理と啓太郎が乗る船に背を向けると一人歩き出す。
巧の帰る場所は、オルフェノクの最後の楽園 …

(完全なる終幕)

多分ここ迄辿り着くのに一年以上はかかると思う(汗
気長に待っていただければ…
317名無しより愛をこめて:03/12/14 21:27 ID:EGyo38Q+
>>315
沢木「和」也?
ちゅーか他スレに誤爆したよ・・・

それはともかくまだまだ先は長そうですが頑張ってください。
318:03/12/14 21:36 ID:pRlbpfxx
俺もリアルタイムで他スレ見てたよ
>>沢木「和」也
沢木哲也ですた、スマソ 多分他所スレで書いていた長文SSの影響で
『滝和也』と混同したんだろうと思われ(汗

些細なミスがこの上なく多いのですが、とにかく頑張ります
319名無しより愛をこめて:03/12/14 22:18 ID:iIyrqXdo
>>310の「かっ、仮面ライダーっ…」のくだりにぐっときた
320名無しより愛をこめて:03/12/16 10:16 ID:4QTI9Ncz
ところでパラダイスロストの時、真魚ちゃんはどこにいたのだろう。彼女がいないとアギトの面子は仲間になりそうにないのだが…(゜ο゜)そうか、警視庁か!
321:03/12/16 21:36 ID:2756Q8ow
真魚ちゃんとか他のアギトキャラ
全部スルーしようかと思ってたんだけど、ダメかな(汗
沢木哲也、木野薫、葦原涼の3人も
いきなりはじめから仲間で出そうと思ってたんだけど(汗
322名無しより愛をこめて:03/12/16 23:34 ID:VMArMwQ9
続報期待あげ
323:03/12/17 22:22 ID:/FpPT3pf
せっかくなので上で紹介いただいたヨハネの黙示録の一節を使わせて頂きますね
324【楽園の崩壊】潜みし者:03/12/17 22:48 ID:/FpPT3pf

無限の如く広がる深き闇の中、乾巧はただ一人其処に在る。
誰もいない闇、だが巧には闇への恐怖は全く無く、
不思議な事に、何故か心落着き、何処か懐かしい、そんな感情さえ抱いていた。

その闇の中に浮かび上がる一つの影。
その姿形はハッキリとは見えず、ただ人の姿をしたような影としか認識出来なかった。
巧と向かい合う影は微動だにせず、闇に光る眼で巧をじっと見つめていた。
「…久し振りだな…」しばらくして影はそう言葉を発した。
「誰だっ、お前っ?」巧は影にそう答えた。
その人影に巧は覚えは無かった。
いや正確には何処かで見たような気がするが、全く思い出せないというのが正しかった。

「俺を覚えていないのか?」影は少し驚いたようにそう言った。
「… まぁ、いいさ… いずれお前は俺を思い出す、否が応でもな…」
巧を皮肉るかのような言い方をする影。
「それはお前にとって幸福な事なのか、不幸な事なのか、それは俺にもわからないが…」
「どういう事だっ?もったいぶんないよっ!」
その回りくどい発言に少し苛立ちを覚える巧。
325【楽園の崩壊】潜みし者:03/12/17 22:50 ID:/FpPT3pf

その言葉の意味を理解しようとする巧に、影はさらに一節を続けて朗じた。
「この書の預言の言葉を封じてはならない。
時が近づいているからである。
不義な者は更に不義を行い、
汚れた者は更に汚れたことを行い、
義なる者は更に義を行い、
聖なる者は更に聖なることを行うままにさせよ。」
「見よ、わたしはすぐに来る。
報いを携えてきて、
それぞれのしわざに応じて報いよう。
わたしはアルファであり、オメガである。
最初の者であり、最後の者である。
初めであり。終わりである。」

「俺はこの一節にまさに当てはまる者…」
「そしてこの一節はこれから起る未来…」
眉間に皺を寄せる巧「だから何が言いたいんだっ?回りくどいにも程があるぜっ」
「俺はお前の業… そして俺は…
アルファであり、オメガである。
最初の者であり、最後の者である。
初めであり。終わりである。」
影はその一文を再び繰り返した、まるで強調するかのように。
326【楽園の崩壊】潜みし者:03/12/17 22:52 ID:/FpPT3pf

「お前がすべてを思い出した時、俺は再びお前に会えるだろう…」
「それが俺とお前の関係であり、お前の業なのだから…」
影はそう言い残すと、闇に同化しその姿を消して行った。

「ちょっと待てよっ!!おいっ!!」
巧は手を伸ばして影を呼び、その影を追おうとする。
だが其処に在るのは無限の如く広がる深き闇のみ。


巧はそこで目を醒ました。
ベッドの上で汗を掻き、呼吸を荒げている巧。
「うなされていたようだけど、どうしたの?たっくん」
巧がうなされている声を聞き、夜中だというのに心配して様子を見に来た啓太郎。
巧は上半身を起こし、そのままベッドの上で茫然としている。
「…いや、何でもないっ、変な夢を見ただけだっ」
そう言った巧だが、巧の目には何故か涙が浮かんでいた…。
それは影が何者であるか覚えていない巧が、
自らの悲しい運命(さが)に直感的に反応したからなのかもしれない…。
327:03/12/17 22:57 ID:/FpPT3pf
壮大な話にする為敢えて、巧、記憶が無かった案と○○案採用
<パラダイスロストで最初記憶喪失なのも、
もしかしたら自ら記憶を封印したのかもしれない、と言ってみるテスト
328名無しより愛をこめて:03/12/21 01:33 ID:+MuTxybN
今後が楽しみー

いよいよ今日からあたしも晴れてスマートブレインの社員だ。
この就職難の時代に、こんな大企業に入れるなんて自分でも思っていなかった。
特に女子の就職はそれこそ大変だったから。
そりゃ大学だって有名大学だし、自分なりに英検受けたり、資格取ったり、頑張って来たつもりだ。
だけど正直こんなにいい会社に入れるなんて夢にも思っていなかった。
大学であたしより成績が良い人だって、
もっと苦しんでランクが下の会社で我慢しているだっていっぱいいる。
それを思うとあたしは超ラッキーだったのかもしれない。
でもこの際ラッキーでも何でも良い、あたしは
今をときめくスマートブレインの社員というステータスを手に入れる事が出来たのだから。
とにかく、入れさえすれば、後は必死になって頑張ればなんとかなる…んじゃないかな。
仕事バリバリやってキャリア積んで、仕事に生きるのもいいかもしれない。
社内でいい男性(ヒト)と知り合って寿退社というのも悪くない。
今日これから、あたしは新しい世界に飛び出す。
その先には無限の可能性があるように思える。
そう思えるのもすべてスマートブレインという会社に入れたからかもしれない…
330名無しより愛をこめて:03/12/27 00:26 ID:bPPa3ocB
続きがみたい!!!!!
331名無しより愛をこめて:03/12/27 04:28 ID:hoIfNXrc
>>329
スマレ?
スマレってただのオルフェノクでもないような気がするので
そのへんの設定も楽しみ
332名無しより愛をこめて:03/12/28 17:58 ID:Z8niH92H
>>331
バタフライオルフェノクの人の話だったと思う。
予定表通りなら。
333名無しより愛をこめて:04/01/01 01:07 ID:w5eQSmxE
デルタ
334楽園作者
みなさま今年もよろしくです

TV555もいよいよ大詰めですね
TVの方が気になってお話が進みません、すいません
出来ることならTVのオルフェの王(蝿?)も出したいとか、
犬、草、馬、鶴、蛇、四葉、社長、山羊が総員変身して共闘してオルフェの王と戦うとか、
555、913、333、315、000の五連発ライダーキック、
なんてのもいいかもなどと考えると全然先に進めません、すいません(汗