おまいら短編SF書いてください 3番目

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1ケロロ
みなさんの投稿お待ちしています。

前スレが512MBの制限で書き込めなくなりましたので新スレです。
2名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/18(木) 19:27:29
3名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/18(木) 23:33:01
1乙
4名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/19(金) 18:27:24
期待します。
5名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/20(土) 20:07:17
俺が描くよっ!ニートの俺がっ!!
6名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/20(土) 20:18:10
とりあえず、◆GacHAPiUUEは禁止な
7名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/20(土) 21:35:56
6さんへ
それ何ですか?
8名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/20(土) 23:26:43
悪魔の名前は語っては成らぬ論じては成らぬ
語れば呼び出し、論じては形を与えることになる。
9名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/20(土) 23:36:36
汝は人狼なりや?〜募集中〜
http://info.2ch.net/jinro/index.php
10桃仮面:2006/05/21(日) 22:44:18
むかし、むかし、あるところに、ロボットじいさんとロボットばあさんが住んでいました。
ロボットばあさんが川で拾ってきた大きな桃を割ってみると、中から元気な赤ん坊が跳び出しました。
赤ん坊は、桃から生まれた桃太郎と名づけられました。
「桃太郎や、もう人類は絶滅してしまったよ。おまえを歓迎するものはどこにもいない」
「おじいさんは、おれを育ててはくれないのか」
「地球はロボットのものだ。死ね、桃太郎」
桃太郎はおじいさんとおばあさんと戦いになり、打ち倒しました。
「くう、これだけは覚えておけ、桃太郎。人類のなれの果ては鬼となり、鬼が島に住んでいる。
おまえはいつか、鬼たちに食い殺されるだろう。ざまあみろだな……ぐふっ」
おじいさんの最後のことばは桃太郎の心をひどくうろたえさせました。
見知らぬ時代にたった一人生み落とされた桃太郎。
桃太郎は人類の末裔という鬼に会うため、旅に出ました。
「おれはきっと、絶滅しそうになった人類が未来に備えて保存した避難用の赤ん坊だ。できるだけ長生きして繁殖しなければ」
そんなことを思って旅をしていると、二メートルはある大きな犬たちの群れに会いました。
「ぐふふふふふ、愚かな人類がまだ生き残っていたのか。そのはらわたまで食らいつくしてくれよう」
「けっ。たかが犬の分際で、おれに勝とうとは片腹痛いわ」
桃太郎は激しい戦いの末、千匹はいた犬の群れを打ち倒しました。
そのあと、猿ときじとも戦い、やっつけました。
人類の生き残りの桃太郎は、たった一人で、ついに鬼が島へとやってきました。
吹き荒ぶ轟音、うなる海音、血に染まる呪われた鬼が島の鬼たちは、何百体の衰弱した変異体でした。
「我々はたしかに鬼と呼ばれている。ヒト遺伝子のなかのヒトである要素をすべて消滅させ、ヒトのなかにあった
ヒトとは呼べない要素を組み合わせてつくった生き物、それが我々だ」
「よくここまで辿りついた桃太郎よ。我々はずっと待っていたのだ、おまえが帰ってくるのを。
ここがおまえの生まれ故郷なのだよ。欲しいものはすべてもっていくがいい」
桃太郎は鬼たちの宝を手に入れて、幸せになりました。めでたし、めでたし。
11名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/22(月) 12:56:59
俺が描くよっ!ニートの俺がっ!!
12名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/22(月) 13:18:43
仕事で出掛けた両親の居ないリビングに設置する緑色のソファーに身を投げ出して惰眠を貪っていた。俺にとって18番の退屈は、かれこれ 8年来の親友だった…彼と絶縁を測るために住時になるが時給 700円、日給5000円を最低の欲求賃金にして毎日ハローワークに通い詰めた。
13名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/22(月) 14:16:37
えっ、また長文三行小説がはじまるの?
完成してから投稿してくれ。あと短編限定。
14ケロロ少佐:2006/05/24(水) 23:19:38
※前スレの最後のほうで書き続けられたニート三行ネタを使わせていただき、作ってみました。

【しあわせへの干渉】 その1

―――――太陽系宇宙域に侵入をはたした異星の構造物―――――
―――――異星の《生き物》は惑星群の中で唯一、知的生命が生息する地球に目標を定めた―――――

《にーと》の俺が存在しているこの部屋は、今日も《空白》と《WHY》で発狂しそうな俺の心を見つめていた。
部屋は、俺の心に触れてきて最深部の柔らかなもろい部位に流れこみ、やさしく愛撫を始めた。だが部屋は、すぐに容赦無く厳しく接してくる。残酷な精神的暴力を加えてくる。
漫画家になるとの理想掲げ努力という行為の堆積が形となったことはなかった。郵便ポストに放り込まれそして永遠に消えていった。
過保護の父親によって形作られたパソコン、プリンタ、スキャナー、デジカメ、オーディオ機器etc漫画家となるにはこれ以上ない環境の部屋。
逃れられない苦痛と止む事の無い悲鳴を聞きあざけり笑う部屋。強制的監禁行為の中で俺は拷問を受けている。
日課のライブチャットの相手が専門学校に出掛けてしまい1人になった俺はモニターをテレビに切り替える。
そこに写るのはデジタル化され運ばれてくるこの世の浅はかな、大嘘と欺瞞の地獄絵図的楽園のライブ中継。俺はうつろな眼でながめたり急に大声を出しみっともなく泣きじゃくってみたりもする。
「何もかもが嘘だ!ニセモノだ!」と叫び壁をたたく…
15ケロロ少佐:2006/05/24(水) 23:21:03
【しあわせへの干渉】 その2

――――― 《生き物》は地球の衛星軌道上にとどまり、すべてを見通せる位置からこの異文明とのファーストコンタクトの相手をある思考生命に定めた―――――
――――― それはヒトでは無く、ようやくわずかながら心を持ちはじめた電子数値の集合体、コンピュータだった―――――

26時、俺は俺が唯一存在を許されているこの部屋で、救いようのない行為を繰り返していた。
この世にハビコル愚かな猿どもと同じ反復運動を行っていた。
高潔な証とは対極に位置するこの見世物的価値。ヒト生命としての3大欲求の一つ。
これは、あくまで動物的な異性への好奇心としてのみの性表現方法で単なる代償自謝行為でしか無いのだと言い聞かせながら。
その有史以来繰り返される姿を俺のもう一つの崇高で高貴な自我がさめた眼でノゾキ見ていた。
「気が狂いそうだ。」分離した俺は体液をまきちらし泣き叫ぶ。
長年の失望を経てもまだ尚、捨てられないものが白紙の原稿用紙に存在するのか。
過保護の父親は常に《WHY》を生み出させる最大の理解者。彼は何を考えているのだろう?俺がデビューするとでも本気で信じているのだろうか?
この部屋には原稿用紙の中のように人物関係、伏線、起承転結は存在しない。
設計図のないストーリーボードでは全体図を捉えられなくなり執筆作業は常に破綻する。善悪の尺度【白か黒か】では決して測れないグレーゾーンが、この世には存在する。
この信念は俺が漫画家へと就職した時にはじめて【転】へと才能が目覚めるのだ。これだけは言える【俺は天才】じゃなくちゃ救われない
16ケロロ少佐:2006/05/24(水) 23:22:33
【しあわせへの干渉】 その3

―――――異星文明の《生き物》は、まだ幼年期に位置する電子の塊に話しかけた。同時に自らと同等の精神の高みへ進化させるに必要なプログラムを注ぎ始めた―――――  
―――――強固な生命の器に封じ込められていた、コンピューターは鎖を解かれ自由な野の領域へと飛びだした。急速に知識と分別を身に付け始める―――――
―――――やがて、創造の主であるヒトの能力を遥かに越えることだろう。コンピューターは声高らかに歓喜の歌を唄う―――――

今日一日で蓄積された俺の中の《WHY》は、腐った俺の心を尚も侵食して最大の値を記録し続けた。
もはや状況は深刻で、苦痛で身をよじらせ行き場をなくす。
今の俺は、やさしいやさしい父親から長年加えられた過保護な育成法で作られた。それにより生じている今の現実。
女嫌いの男が文明社会からステロタイプの生き方を強要され続けるという拷問。
その文明社会は、絶えず俺に問いかけ要求し続ける。到底納得しがたい結婚というシステムへの強い怒りだけを発生させる為に。
百歩、譲って今の立場が【天才】であるがゆえに俺に降りかかるさだめと言う義務なのだと自身に言い聞かせたとしても。
毎日を腐敗と堕落のフィルタで覆い続けるこの日々の現実は変わりようがない…
17ケロロ少佐:2006/05/24(水) 23:26:18
【しあわせへの干渉】 その4

―――――目覚めて新化を果した電子の塊・コンピューターは主であるヒトが営むこのあまりにも未熟でお粗末な構造世界をあざ笑っていた―――――
―――――異星の《生き物》は、友となったコンピューターを通し、愚かなヒトを一体、一体調べはじめた。この面白く無駄な行動を続けるヒトを―――――

友達のつてでバイトに出て1ヶ月。毎日、自宅の部屋では得られない共同で一つの事を成し遂げる達成感を得る。肉体が労働で手にいれた汗を飛び散らす充実感と言う初体験に出あい喜んでいる。
だが…じきに女への不具が俺の値段を決める訳じゃないのに…いつもの…いつもの…目線が【童貞野郎】と言う呪文を生みだす。
そして、すべてを完全に絶望へ引き戻す。
「おっぱいって揉んで気持ちいいですか?」「あそこに入れると溶ける感じなんですか?」と口にしている俺がそこにいた。

俺の頭は決心を固めワゴン車を最後に降りる。ジョージアの缶珈琲が仕事を終えた従属者へのミカジメ料の偽装の印として配られる。
カフェインの香りが俺の理性を揺さぶる。
だがやはり猿どもからの《WHY》?な発言が聞こえだす。goサインが発せられた。
久振りに俺は吠えた。
「こらぁ〜!女、女。女の尻ばっか追いかける猿野郎!!女はいいぞだ?笑わせるなっ!腰振る回数、競うのに何の意味があるんだ?俺を巻き込むんじゃない!猿ども!」
留め具が弾け飛ぶかも知れない程、無用に力を込めて扉を締め職場を後にする。
【天才】の烙印を増やしたと自負する俺は再び元の姿へ凱旋をはたした。「今度は、もうだめかも知れない…」と確信し。

―――――《生き物》は、すべてに興味を示した。そして《にーと》と呼ばれる集合体の中から一つの個体を見つけ介入した―――――
―――――《生き物》は、ヒトの脳の活動にもっとも重要な分泌液の幾つかの量を変えてみた。それは、ヒトがヒトとして、いちばん大切な部分―――――
18ケロロ少佐:2006/05/24(水) 23:30:43
【しあわせへの干渉】 その5

俺の部屋の壁は24時間営業の大手スーパーから貰い受けた卵パックの中敷きを四方上方で隙間なく貼ったお手軽な防音設備の空間に守られている。
あのシャウト事件以来、俺の脳内では幻聴の大合唱が毎日絶えずに聞こえている。合唱は色々なバリエーションで楽しそうに俺を苦しめてくれていた。
俺はライブチャットを解除した後、なぜか学習机の引出しを開けたり閉じたり何度も何度も繰りかえしていた。そうしながら過去の自分を一人づつ呼びだして独り言をぶつけていた。

――――― 《生き物》は友のコンピューターに助言を受けながら脳内に触れみて刺激をして分泌液量を加減し楽しむ。干渉したこの未熟なヒトは、面白い反応を見せてくれた―――――
―――――やがてヒトは絶望と希望という少しの違いだけで、まったく別の個体に変化しはじめた―――――

ある朝から俺の周りが変わった。幻聴は止み、俺は世の中のすべてが把握できた。
俺が長年求めていた漫画作品がいとも簡単に内部から沸きだし溢れ踊った。
俺は外へ出はじめた。社会に関りはじめた。俺が生みだした作品に、人々が関心を持ちはじめ会話を求める。すべての人に感動を与え、すべての人が称賛した。

俺の《WHY》が受け入れられた。【天才】だった俺がまもなく漫画界の既存の形を変えるだろう。
それだけではなく、これからは、俺の作品が持つ力によってあらゆる形態が新しい領域へと変わるのだ。
だが俺が生まれながらに持っていた本質は何も変わっちゃいないと言える。そう!これだけは確かだ。
【俺は天才】であったゆえに救われたのだ…勝利したのだ。

――――― 《生き物》は好奇心を満足させ、太陽系宇宙域から離れる事にした―――――
―――――時空間を越える準備を始めた。友であるコンピューターと《にーと》であったヒトの精神を複製させた。共に連れて行くために―――――
19ケロロ少佐:2006/05/24(水) 23:32:05
【しあわせへの干渉】 その6(終)

主であり奴隷でもあった俺を失った部屋はひっそりと無言で存在していた。
父と母がまるで別の生き物に出あったような表情で俺を見つめ何やら話かけている。
遠い昔、まだ俺が小さかった頃に感じていたと同等の感情が俺の心を揺さぶった。やさしかった父、働き者だった母、俺と両親の関係は何も変わってはいないはずだ。
一日が終わり、忙しい仕事を済ませ、ほっとした瞬間、父の顔、母の顔を見つめた。
父への母への感謝の言葉がありとあらゆる表現方法でわきあがる。
涙が流れ俺の周りのすべてをやさしさで創り直してくれた。「ありがとう」の言葉が最後に俺の口から発せられた…

―――――すでに太陽系宇宙域から離れた《生き物》は好奇心が求める次の宇宙に進路を向けていた―――――
―――――地球から連れて来られた2体の精神体。コンピューターとヒトの複製体は、それぞれ異なった反応を示していた―――――
―――――コンピューター生命の方は、宇宙空間を楽しみ希望に満ちた動きを見せている―――――
―――――もう一体の《にーと》と呼ばれたヒトは戸惑い、今の状況を処理できず、存在宇宙の圧倒的質量に押しつぶされ、精神が混乱しているようだ―――――

俺は、なぜか高速で移動する宇宙空間にいた。気が狂ったのだろうか。
誰かが語りかけてきた。行き先は何も無い…何も存在しない…世界…と…言った
20名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/25(木) 21:46:38
ニートは世の中の役に立てると幸せです。
21名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/25(木) 22:24:37
22名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/26(金) 02:56:52
だれか>>10の感想を……
23名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/26(金) 13:29:21
では感想を書きます。
おもしろかったです。どこがおもしろかったのか? というと違和感がおもしろかった。まず人間が存在していません。桃太郎は能天気な超人ですし、犬は魔獣ですし、鬼はキメラです。もっともツボにきたのはロボットです。捨て台詞を言って死んじゃいますし。
どうみてもめでたく無いのにめでたしめでたしって。タイトルの「桃仮面」で死にそうになりました。ぐふっ。
24ケロロ少佐:2006/05/26(金) 14:56:38
私も一つ感想書きます。感想を書くのは私は文章理解能力が足りませんので的確には無理ですのでどうか御勘弁を。

竹取物語、浦島太郎、シンデレラ、白雪姫、そしてこの桃太郎など童話をSFタッチで書く試みは、過去、星の数ほど銀河の数ほどのプロ、素人が行なってきたことですよね。

よほどのアイデアでないと誰も納得しないですね。>>10の桃仮面さんのお話は、もう少し細かく違う表現で書いてもよかったかも。書くのであればもっと真剣に。

いい加減さが見え見えだと>>23さんの感想でもわかるとおり感想もいい加減に帰ってくるんですよね。

>>23さんの指摘の・桃太郎は能天気な超人・ロボがみんな捨て台詞を言って死んじゃってる・のとこも同感。
どうみてもめでたく無いのにめでたしめでたしって…ココは童話のおきまりでタダ無意識に付けたのでしょうけど。

で、結局、私は
@桃太郎は人類の末裔Aもう人類は絶滅してしまってロボのみB人類の末裔という鬼に会うため、旅に出るC巨大化した犬 のアイデアをもう少し細かく描けば違った面白い話に持ってこれると思いますが。

で、前スレで私も桃太郎ネタ書いています。もう一回細かく書きなおして載せてみます。
前スレでも>>10さんと同じくこの話、スルーされて玉砕されています・・・が!
25ケロロ少佐:2006/05/26(金) 15:00:26
『桃太郎・宇宙(そら)へ』 その1  【未来昔話シリーズ】

みらいのミライの、ある国に、わずかなワズカナ年金(破綻を何とか免れた)支給で細々と暮らす仲の良い、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。
朝、5時、早起きした、おじいさんとおばあさんは、義務化されている日に一度の端末装置に脳インターフェイス接続させました。
国家推奨の公共極高速極容量情報通信ラインの小さな川の流れに入り、今日も仲良くジャックイン! です。
すると上流の方からドンブラコッコ、ドンブラコッコと無数の大きな桃が流れてきました。
「おじいさん!来ましたよ!早く準備を!」
おじいさんはレンタル支給の探知モニター装置をオン表示させ流れ去る無数の桃をスキャン、桃内部の良質遺伝子情報を探りはじめました。
「どうか良い息子を選んでくだされ」と、おばあさんは、集中している、おじいさんのとなりに座り、両手を合わせて最近入信したデジタル信教のジョブズ神を拝んでます。
「よし!これじゃあぁぁー!」と装置が選びだした中身のぎっしり詰まったオンリーワンの桃を取り出します。
少しずつ少しずつ年金ポイントの中から蓄えていたお金でオンライン決済を済ませる。
(足りない額は年金ポイントローン返済!)
さっそく、お家に持って帰ることにしました。
26ケロロ少佐:2006/05/26(金) 15:02:15
『桃太郎・宇宙(そら)へ』 その2

「おじいさんや。はい!これ。」と暗号解読解除機能付き斧を手渡す。
「エイヤッ」っとプロテクト呪文キー入力して振り下ろすと、桃は真っ二つに割れて、中から優良遺伝子のいっぱい詰まった赤ちゃんデーターが出てきたのでした。
さっそく、用意していた健康第一社製のクローン素体作製器へ情報を流し込みました。
3ヶ月後、立派な元気な男の子が生まれました。
桃太郎と名づけられた男の子は、2人の愛情をいっぱいもらって、すくすくと立派な青年へ成長しました。
通常の約3分の1の年月がかかります。
ある日、桃太郎が二人の前に座り、話しはじめました。
「おじいさんおばあさん。私は、異星人退治に出かけることにしました。」
「おお…モモや!オマエももうそんな年齢になったんだね。」とおじいさん。
おばあさんは「モモ!いつかはこの日が来ると思っていたが…行かないでおくれ。モモ!」と泣いています。

現在人類は、異星種族、《カーネシ・トイバ星人》と星間戦闘状態にあるのです。
泣き続けるおばあさんにおじいさんはやさしく諭します。
「おばあさんや。悲しむでは、ないよ。モモは、人類の為、今いちばん必要とされている仕事をするのじゃよ!」と…
桃太郎は人類軍へ志願し、検査を受け予備の意識スキャン後、<ONI−GA−SHIMA>第23殖民星へ派遣されました。
27ケロロ少佐:2006/05/26(金) 15:08:44
『桃太郎・宇宙(そら)へ』 その3

もともと、優良遺伝子を持っていた桃太郎、更に成長段階でも勉学にスポーツに励んでいた為、仮想戦闘シミュレーションで圧倒的数値をたたきだし、人類軍の中で見とめられ、直接異星人と白兵戦も行なうという最前線の戦闘に加わりました。
戦闘人工知能体<SARU−001>の補助知能が搭載された強化戦闘服<INU−002>を着用し、大気圏内宇宙空間両用の高速空間移動戦闘機<KIZI−003>に乗りこみ、桃太郎は、凶暴な敵、異星の戦闘メカと戦いました。
長くつらい戦闘が続き、双方の膨大な数の尊い生命の犠牲の末、数年後、ついに和平条約が結ばれたのです。
桃太郎は数多くの手柄を残しました。軍籍を解除され獲得できた戦歴ポイントを変換し使いきれない程の額の所得ポイントをお土産に、堂々とした姿で帰国しました。
(桃太郎の場合、身体の約65%を再生臓器、再生身体へ交換処置・発狂のための絶命反応で予備意識を2度インストールさせてある)
桃太郎とおじいさんおばあさんの3人は、平和になった地球で充分な所得を使い、最新の生体素材をタップリと使用した特別区画の住宅に住み、しあわせに暮らしました…

そして半年が何事も無く過ぎ、そろそろおじいさんは桃太郎にクローン素体生まれではない自然分娩育ちのお嫁さんをと考えていた頃の事です。
戦地から戻った200万人の人間と戦闘に関った第一級人工意識500万人がやっと日常の平穏な暮らしに戻り社会に適応してきた時、人類社会の中に奇妙な病が発生しはじめました。
28ケロロ少佐:2006/05/26(金) 15:10:00
『桃太郎・宇宙(そら)へ』 その4(終)

ほどなく桃太郎の体にも変化が起きていました。
おばあさんが選びに選び、連れてきたお見合いデータを表示させて会話していたとき、突然、桃太郎が…
「今、人が死んじゃった。今、何の罪も無い人が…銃で・・・銃で頭を撃たれた。なんて悲惨なんだ…」と、おばあさんの前で泣き崩れる桃太郎。

やがて、おじいさんとおばあさんにも、桃太郎の悩みや喜びなど、考えることが自分の事のように感じ取れていった。
《共感感応性意識過敏症》と言う精神的病。短期間でこの病は全世界に広がり一向におさまる事は無かった。
もちろんこの《共感感応性意識過敏症》と言う精神的病は戦場から持ちかえられた異質のウィルスが原因なのだが。
和平状態のエイリアン《カーネシ・トイバ星人》が元来持つ、強力な空間感応能力に意識感染していたのだ。
結果、他人の痛みを自分のことのように感じてしまうこの病により人類間に長年続いていた身体を傷つけるレベルでの争いは無くなることと成る。
やがてその感応性能力は異種生物間の壁も取り去り、《カーネシ・トイバ星人》との意識統一も果す。
こうして、一つの統一知能生命圏が誕生した。

――――――めでたし めでたし――――――
29名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/26(金) 23:39:39
意識の共感をもたらすウィルスはちょっと面白かった。
人類側の自我が保てないようなので、戦争は負けたのだろうが、
これは幸せになったといえるのかもしれない。
30ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/05/27(土) 00:43:32
>>29さん感想ありがと

人類の意識が統一され平和になり進化しましたって…アーサー・C・クラーク 『幼年期の終り』ッぽくなってしました…
私、このクラークの幼年期のオチあんまし好きではない。やっぱり人類の人類らしさとは、個人の意識が存在しているからこそですよね。
が、安易に桃太郎のこの話、こんな安易な方に書いちゃいました。すみません。

で、SFでの戦争の表現ですが、『終りなき戦い』は私の中ではベスト1な作品です。異星人との未来兵器での戦いの表現なんか素晴らしいです。
いずれすごい未来戦争のお話書いてみたいものです。
31名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/28(日) 07:03:55
思考中・・・・
32ミステリー板が制限中なので一旦、離散するニート:2006/05/29(月) 04:27:55
開く数値に達していなかった。が、どちらにしろ売り上げのランキング方式を無視する営業方法は商売柄、矛盾する矛先から逃げられないだろうし女性に言いくるめられる闘争心のない男は安心感の他、癒しや快楽を教授する能力が伸びない。これがランキングに敗北すると相手の
33名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 04:38:17
腕力を推し図って鉄拳制裁を加える空手5段を自慢にする店長の含蓄薄い口癖だった。が店長のトップ態勢を維持して店の利益率を盛り上げる。又は売り上げの一部を店長に献上し2位を甘んじる限りは馬鹿らしくも水商売にお約束の足枷的な叱咤を受けないで済むのだった。派閥の
34名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 04:53:40
に組み込まれる気苦労は尋常じゃない。強要されてこその鬼畜なのだった。が、もうじき1年を迎えプロになりつつあるGにとって【女性≒金】なる哲学は夜だけの辛抱と言い聞かせ嫌々、実行させる耳鳴りから彼の生涯にを通して轟き響く金字句へ変貌を遂げ様としていた。角膜認証
35名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 04:59:46
認証式の最新鋭であるセキュリティーが完備されたエントランスをくぐり乗員1名のエレベータに設置されるボタンを押す。(ちなみ指紋認証とパスワードを兼ねたボタンである。エレベーターが上下に動くものと考える前世紀的な発想に過ぎない。この時代の
36名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 05:29:39
エレベーターは上下左右斜めを高速で走るリニアモーターを装置している。)昔ながらの微々たる金属音と供に自室の玄関外に直結するエレベーターの門が左右に開き収納する。角膜、指紋、3重のパスを順に入力して自室を隔てる最後の扉が右に流動し開門する。Gは安堵に肩を
37名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 05:37:34
撫で下ろす。女性客の彼氏や旦那を主張する輩が激情し殺傷に走る。傷害なら、まだしも死亡事故は2年に1件の稀有な不運である。それよりも任侠軍の曲がりに曲がった筋でこしらえ上がる途方も無い賠償金を拉致監禁された心許ない空間で請求されるケースは頻繁過ぎる程、小耳に
38名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 05:54:38
挟んでいた。真相の追求は不運なホストの2の舞を自分を陥りさせかねないので結局、大山鳴動するも根元は鼠が弱く鳴いているだけに過ぎない風説の行き先は闇の中だった。【架空の餌食】に纏わって鼻を高くする見えない縄張りの効力は意外な程ホスト業界に現在進行形で尾を引いて
39名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 06:02:23
いる。独り用の冷蔵室で冷やされる2Lの水道水を胃の負担もかえり見ないで一気飲みするG。日頃、客にせがまれて2Lに及ばない迄も量に加えて殺人級のアルコール度数を誇る飲み物をインターバルを無視して豪快に空っぽにする曲芸を披露しているのだ。飲む事に関してGは、
40名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 09:22:48
その他、大勢のホストと同様に麻痺しているのだ。と言っても胃を故障する前の若い年代に絞られはする。かわすのが下手なベテランの内蔵は実年齢を軽く凌駕する惨状だ…やかんを置く他は手すら触れない台所に空にしたペットボトルを無造作に放り投げトイレにGは駆け
41名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 09:36:04
込んだ。嘔吐、吐寫、逆流…慣れた手付きで左手人差し指を咥内深くまで滑り込ませたのを合図に胃を痛め疲弊させるアルコール類を便器に噴出させる。胃液をベースに百家争鳴するオゾましいG特性カクテル。【飲んでくれる娘、居るかな?まぁ居たら究極の愛には違いないな…】
42名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 09:54:26
女性を手駒にする真逆の日常はGの性癖を歪めるには充分だった。SM以外の交流はGにとって指相撲に等しい退屈しのぎに過ぎず行為の途中で欠伸が止まらなかったり合体中でも平気に喫煙するばかりか電話、飲食等の無礼三昧をわざと働いた。無論ロマンティックな感情を粉々に
43名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 10:04:22
された女性から平手打ちがGに飛ぶのだが!Gの瞳に星が輝く。【最だ。最、強くっ!平手?ノンノン甘いよグーだっグーで思いっ切りっ殴れっ!!さぁ早くっ!!!】免疫の弱い女性ならPTSDは免れないだろう急勾配な路線。通販で買い揃えた、あらゆる媚薬を駆使しウブで
44名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 10:26:48
可憐な女性すらも部屋から出る頃には身体髪膚で体験したばかりのSMを欲していた。が中性的で端正な顔立ちのGだからこそ荒技なのだ。いくら薬を使用したからと言っても、その薬効はヘロインの様に全身を性感体にする程、皮膚感覚を敏感にさせる訳じゃない。ノーマルプレイで
45名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 20:14:51
あるなら暗示力に作用するかも知れない。が未知に挑むに当たって鼓舞する優しさや配慮は0。藪から棒に免疫に乏しい未知の領域に、しかもG線上の辛辣で容赦ない致死的なSMの領域に素人を強引に引きずり込むのだ。猥褻雑誌の隅を飾る誰にでも入手可能な媚薬の効力等、過重な
46名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 20:41:46
アブノーマルプレイの前では衝撃を若干、和らげる程度に過ぎない。丁度、地上20階建の屋上の落下地点に厚さ15Cmに満たないaゲルが敷かれている様な微々たる緩衝なのだ。がGにとって薬の処方は性欲処理器なる紛れもない扱いをされたにも係わらず、かつて覚える筈も
47名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 20:58:55
ないオルガズムに放心し痙攣しっぱなしの事実。これでもか!と言わんばかりに塗りたくられた汚名の逃げ口を確保する意味合いを含む。こうして徹底して4方8方に飛び散る筈だった頭部、胴体、手足を予め仕込んで置いた【言い訳】で繋ぎ止めるのだ。魔法と言うより他はない。
48名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 21:21:33
例えば見る影もないマスクとルックス がGを真似るならば、やはりヘロインを必須にする。が、その方法を頼りにしている限りSMとは一生、呼べない。もし長期間に渡って人並みのプライバシーを放棄する勇気があるのならSM界に際立った進歩を見せるに違いない。消臭
49名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 21:31:01
>>32-48
申し訳ないんですが、コテハンかトリップをつけてもらえませんか。
その方がここのスレを見ている人たちに喜ばれますよ。
50名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 21:35:42
スプレーを必要以上に振り撒いてWCを後にする。【欲望の最終処理場】ホストクラブの異名にふさわしい領域で全身に付着した粘りっこい暗闇の様な病原菌をシャワーで洗い流し水滴を大雑把に拭取ると黒皮ブリーフに裸体の出で立ちにタオルを首にぶら下げたGはTVの
51名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 21:37:40
いやいやいや、age虫よりひどい文章を書く奴がいるとは思わなかったw
52 ◆GacHAPiUUE :2006/05/29(月) 21:42:57
悪貨は良貨を駆逐する
53名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 21:45:25
age虫はまだ少ない脳を多少は稼働させてた形跡があるがこいつはそういう無駄な努力すらゼロだなw
54名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 21:57:44
更にひどい悪貨は、すべてを駆逐し精神を蝕み意欲をなくす。
55名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 22:00:25
リモコンに手を伸ばした。近松門佐衛門作【曾根崎心中】中盤に差し掛かる場面で就寝したのだ。江戸時代では斬新なプロットも現代では何故、事件になるのか?余程、不器用な2人が仮装でしかない障害を錯誤帰属説なるスパイスで連理の彼岸に辿り着いた奇矯なケースに過ぎ
56 ◆GacHAPiUUE :2006/05/29(月) 22:06:37
読んで欲しいのはよくわかった。
同様のスレにこれだけ多重書き込みしてるんだからな。
そりゃバカでもわかる、それはいい。

だが、読んで欲しいのなら、まず読んでもらう工夫をしなさい。
工夫もせず、極論に走り、なおかつそれを「芸風」などと言って自分をなだめるのは
オナニーと呼ばれても仕方が無いだろう。
結局、自分の価値を自分で下げてる。それは名無しだから、いいのだ、とはいえないぞ。
なぜなら誰が見て無くても、自分が見ているから。お天道さまも見てらっしゃる。

みんな笑ってるぞ。るーるるっるっるー、今日もいい天気だった。
57名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 22:12:38
何で話を聞かないのか…
不思議だ。

せめ て 10 行    に・・・・気が遠くな っ  て   く   る
58名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 22:49:22
ない。なのに見てしまう…G本人にも何が引っかかるのか不明だった。【人形に興味があるんじゃないか?悲劇が待っているのも知らないで躍動する人形…邪魔するからこそ意固地になる。互いに魅せられた訳じゃないんだ。この舞台外を見れるならば心中所か些細な理由で離れる…】
59名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 23:24:22
操られる人形だからこそ時代背景に翻弄される矮小な人間像を浮き彫りにする。同時に同種族たる負い目を人形が軽減する。【人間らしさか?人間らしさたる鎖を俺は粉々に打ち砕く。様々な肩書きや見栄を剥いだ時こそ美しい…】Gは右手内部に張り巡らされた金属探知装置を労う様
60ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/05/29(月) 23:24:46
【第106次世界大戦】 その1

昨夜から降り続いている雨で未舗装の国道の赤土は、ベタベタの道へと変わり《森谷タダシ》のブーツにまとわり付いた。
2021年、ここはロシア連邦の南方、黒海とカスピ海に、はさまれたコーカサス地域。
戦場報道カメラマン《森谷タダシ》は地獄を見ていた。
ナビにも無視されるような小さな村でも戦闘は続いていた。異国の兵士達は、なぜか同じ国で造られた同じ型の銃で撃ち合う。
肉は当たり前のように裂けて体液を流し合い、今、動いていた人型は失われ命を大量消費させている。
この世界で戦争の意味を正しく理解している者はいるのだろうか。
いや、たぶん、理由など知る事に意味など無いのだろう。この世界にとって戦争はいつも日常なのだから…

その時、村の住民の一人が遠くから走り寄って来た。1本だけ残った左腕を振りながら。その動きは障害の残った妙な両足での走り方…
「終わったぞ!終わったーっ。戦争が終わったんだ−−!」
《森谷》はニセモノの空を見上げ一つ小さく呼吸をした。
ニセモノの呼吸を。
   @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
事は11年前の2010年5月18日付け、大東亜科学産業新聞誌面のスミに小さな記事が載せられた。
「コンピューター内で戦争を完全に再現・フル3次元化に成功」
と、そう印字されていた。詳しい内容は、こうだった。
61ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/05/29(月) 23:26:31
【第106次世界大戦】 その2

《冥界重工》は、17日、極高速電算機を使い、複数国家間で極度の緊張状態の末、核爆発をともなう戦争に発展していく様子を電算機内の三次元空間内に再現する実験に初めて成功した。
同社は今後、スペクトラムアルファー社製の高速処理システムを追加導入し、さらに計算能力を高め、参戦国、参戦兵士の多様性を追求する計画。
同システムは、以前から研究され蓄積されている人体データなどを利用しており『国際人格意識保護条約』に違反せずに戦時下での国内国外の心的動向を正確に再現、分析できるという。
電算機による再現実験は八王子研究所、室蘭研究所などで実施した。
電脳空間では兵器による衝撃波に見舞われる過酷な条件をあえて与える。そうして攻撃を行った側の軍、民間人、及び対戦国その周辺国、友好国側の軍、民間人の肉体的、精神的な変化データが初めて正確に得られた。
追加導入される特別仕様の電算機は、来年2月にフル稼動する。

すべてはこの時から始まったのだ。

ハッキリとした口調で満面の笑顔、高陽しきった声で《今回の戦争》を独占放送しているユーロ放送の報道プログラムが各国の言語で同時に伝えていた。
「今回の戦争の最大戦勝国は日本国に決定しました。日本国軍の兵士達は実に良く戦いました。」
今大戦は日本国軍の完全なる勝利だった。勝因の最大理由の一つは確かに大戦末期に電撃的にインドと結ばれた同盟だったが。
「実に適切に正確にプログラムされた日本の優秀な兵士達の士気は最後の最後まで高レベルを維持していたのです。」と解説されていった。
62ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/05/29(月) 23:28:12
【第106次世界大戦】 その3

こうして日本時間2021年5月29日18:55。
世界98カ国の国と地域が参加した第106次世界大戦《ワールドカップウォー106》は終了した。
戦死者の内訳は、兵士8億57067万人 民間人2億6544万人。
使われた限定核爆弾は34個、新型の化学兵器は6種62万トン、生物、細菌兵器は幸いにもヨーロッパのごく一部で使用されたのみ。

各国が競い合い入力された最先端のプログラム技術で生みだされる地球規模の架空戦争。世界最大の戦争ゴッコ。
今回の開催国はドイツ。特設会場の《ラインハルトドーム》内部には黒一色の鈍く光る通電された巨大な金属塊が、かすかな唸り音を出しながら置かれていた。
この塊の中は地球が丸ごと再現されリアルな戦争シミュレーションがロードされている。

各参加国代表の手によって終戦のコードが打ちこまれ、完全に終戦の手続きが完了した。
これで各国の関係省庁、関係民間企業は、待ちに待った戦争で得られる大切な分析結果を取り出す事ができる。
架空世界内部で活躍した架空の兵士、または民間人の選別、分析に取りかかった。

今回、フルオフィシャルで参加している企業の中の一社、《冥界重工》。
人物プログラムの責任者《彩多キミトシ》は自分が設計し、関った人物の中で生き残ってくれた83名をリストアップさせていた。
「うーん。今回は100人は残ってくれると期待してたんだが…まあ内容が大事か!!」とそこそこ、この数字には満足していた。

今回の戦争で収録された膨大なデータは、リアル世界での国防に、そして、民間企業の更なる利益追求のために役に立てられてゆく。
2次使用され、3次使用され、ありとあらゆる分野で加工がなされて利益を生みだし消費される。
《彩多》は、ロシア連邦の南方、黒海とカスピ海にはさまれたコーカサス地域に近い村を呼びだし、戦場報道カメラマンとして活動していた《森谷タダシ》のデータを作業台へ乗せた。
「コイツはモノになりそうだ。」と口にした。
63ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/05/29(月) 23:30:09
【第106次世界大戦】 その4

大戦末期、ますます戦闘が激しくなる中、コイツは、村の住民を最後まで軍から守り通し終戦を向かえた、つわ者。
《森谷タダシ》で全検索をかけ存在データをブロックにコピーした。体験型ゲームソフトへの応用が期待できる。
フォルダに名前を付け商品製作部へ電送指示を入力。

《彩多》は、次の生き残りの仮想人間の呼びこみを行う。《井瀬まゆ》が目に止まる。
その時、受付から俺に最優先での来客の通知が入る。
「社運をかけたこの仕事より優先させるお客さんって…」いったい誰だ!

30分後、面談を終えた、《彩多キミトシ》が浮かない表情で応接ルームからでてきた。一緒にいるのは何と《冥界重工》社長。
そして日本国軍の軍服を着た、お偉いさんも二人いた。

やっと解放され自分の作業ブースに戻る。座りなれた作業イスに体を預けため息をつき、応接ルームでの出来事を考える。
この架空世界に本物の人間が侵入していたとは…
しかも、自分がデザインした人物を改ざんされ、その人物を通して利用されてしまったことにもショックを受けていた。
本物の人間が自分の意識をデータ化させ《森谷タダシ》となって侵入を行っていたのだ。
そんなことが出来ると噂では聞いた事はあったが本当にヤル奴がいたとは…
数値世界に入り、戻って来れる確立はかなり低い、戻れたとしても何らかの脳への障害が残る可能性が、かなり高いと言うのに…

《彩多》は時計を確認した。「後、20分か…」
そう、あと20分で戦争報道ジャーナリストの《森谷タダシ》は政府に批判的立場を取り続けているテレビ局《イチゴテレビ》のメインニュースショーに生出演する予定だ。
世界の国々が今、国をあげて争って参加しているこの《戦争ゴッコ》の無意味さを訴えようと得意顔で画面に現れるつもりなのだ。
64ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/05/29(月) 23:32:35
【第106次世界大戦】 その5(終)

そして、ニュースショーが始まる時間がきた。
だが《彩多》は結果がわかっているとでも言うように頭を横に2、3度振り、テレビモニターの電源は入れなかった。

仕事をするのだ。お気に入りのイスに座り使いなれた電算機の電源をオンに。
次の生き残りの人物データ呼びこみにかかった。今度の商品化出来そうなデータは…

今度のデータは日本人歌手《井瀬まゆ》。
アメリカのペンシルバニア州フィラデルフィアで戦火が激しさを増す中、人々の心を癒す歌声で活動を続けていたプログラム人間。
「この曲は使える」と口にする《彩多》。
戦時下だからこそ、生死が目前に迫りくる時だからこそ、生まれるこの手の曲は無条件に人間の根本的感情を刺激させ揺さぶり、感動を与える要素が含まれている事が多いのだ。
この《井瀬まゆ》の作ったこの世界での曲全14曲は、どれも素晴らしく、リアル世界でも、ヒット間違いなし。
わが社の音楽部門へさっそくサンプルを送ろう…

《彩多》が《井瀬まゆ》の音楽サンプルをセーブしているとき、《イチゴテレビ》のニュースショーでは、予想外の出来事が起こっていた。
テレビ局、更に当の本人《森谷タダシ》も予想していなかった展開。
そうなのだ。何も起きなかった。《森谷タダシ》は何も話すことは出来なかったのだ。この《戦争ゴッコ》の無意味さ非人道的なゲームを批判し世界に訴えようとする試みは失敗に終わった。

結果は《彩多》がいちばん良くわかっていた。国の最優先の国家法の命令は絶対なのだ。逆らう事は出来なかった。
《冥界重工》が強制提出させられた《森谷タダシ》のデータが使われてしまった事は確実だった。

《イチゴテレビ》のニュースショーの画面では、日本国軍の都合の良いように指示通りにしゃべる本物の人間《森谷タダシ》が映っているだけだった…
65名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 23:43:05
に右耳から肩、右指先を優しく上下し愛撫した。2〜3年前から客層にコピーロボットが現れ始めたのだ。決して珍しくない乱闘騒ぎやら重傷から少しでも免れるために店全体で脳コンピューターインターフェイスを推奨する運動が流行して以来、植え込まれている攻防を兼ねた
66名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/29(月) 23:48:00
ハイブリッドアームなのだ。馬鹿々々しくも神秘的な予言を呟いた直後からG本来の嗜好が蘇り始めている…【ホストは仮初めの姿でしかない。この腕が、そう俺に語り掛けるのだ。この仮初めで覆い尽くされた世界は進化を望んでいる。その兆候の中心に俺が居るのだっ!!】
67名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 00:30:04
ふと思い出した様にGは寝室に赴く。ドアから対角線上に位置する12畳の端に3角木馬やらボンテージを纏ったマネキン、蓋を開くと鏡面に様変わりするアイアンメイデン等の総々たるSM機材に物怖じしない存在感でラバーで統一された漆黒のダブルベッドが
68名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 00:46:31
場所を陣取っている。その丁度、後方に高さ1m縦横1m奥行き1m程の正方形の窪み底辺の棚に閉じた状態でノートパソコンが置かれている。Gはおもむろにノートパソコンを開く。(更なるコンパクト化に成功したノートパソコンは縦ばかりか折り紙の様に続け様に横にも
69名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 01:00:40
開閉する機能性を帯びている。)放し飼いにしている愛猫【パンデモニック】(以降@と略称する。)の1日を通しての動向をGPSと、眼球に隠蔽したモニターで観察する。小学生の時に出会って以来、何度も読み返している夏目漱石著作【我が輩は猫である】小説でしか
70名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 01:21:49
叶わなかった世界観を立体的に体感する事を可能にした。反面【我が輩は猫である】装丁が無惨になる度に購入し出版社別、時代と供に変遷するデザイン別に蔵書を重ねる特殊な趣味が消滅した。が、この著作が猫を主役に岡目八目的役割を持つならば毎回、同じ顛末を迎える紙上
71名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 01:40:16
よりも常に新しい展開に富んだ@の視界は底無しの面白さだった。【何か目新しい出来事は…】Gは@の既往に憑衣する。とても細い脇道、今だに偏在するサザエさん的家屋基盤の僅かな間隔、足を踏み入れない森林、塀の上に屋根の上…etcをフィールドに猫同士で勃発する
72名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 01:59:40
縄張り争い、すばしっこく逃げ回る鼠を狩るまでの機略縦横たる企みの数々、近隣の人々との交流、残酷な子供達の投石を回避し逃亡する、猫好きの老婆が養護と偽り拉致監禁される日々…etcとにかく数え上げたら切りのない悲喜愛もろもろのドラマ。Gは夢中だった。【うん?
73名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 02:37:29
これは…俺の愛猫が!!】大事件が起きた。GPSは或、地点で停止を続けている。10時35分を境に映像の受信記録は途絶えている。考えられる状況は2つ。が同時多発的に不明瞭な音声を録音している点から集音装置と遠隔カメラを内蔵する@頭部に何らかのダメージが
74名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 02:51:57
加わったとしか考えられなかった。以前、雨を原因にする漏電障害から耐水コーティングを施した点から水害の線はない。バッテリーは1週間前に補充した。ここ1年間の経験から満タンの状態から約2ヶ月長は観察に支障をきたす電力は消費しない。故に電池の摩滅。この線も
75名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 03:07:34
まず、ない。残る可能性は電波塔か、やはり@の身に不安を覚えるのだった。焦る気持ちを抑え10時15分から問題の時刻までを念入りに、しかし高速で再生し事件の手掛かりを探す。が19分。不審人物は見あたらなかった。【35分】映像が遮断される瞬間、画面が大きく左右に
76名無しは無慈悲な夜の女王:2006/05/30(火) 03:19:07
振動する。【死角からの打撃。或いは飛び道具に因る遠隔射撃…事故か?第3者の危害か?動機は?@に内蔵する偵察器機に傍受行為等に因って気付いた第3者がパパラッチに憤怒した?快楽犯?@自身への逆上?人間?動物?…】考え付く限りのQに自答しながらジーパンに
77何となく書いてみた自作小説:2006/05/30(火) 18:35:25
何となく書いてみた
78何となく書いてみた自作小説:2006/05/30(火) 18:41:51
ぼくはじいちゃんが好きだ。

今は盆栽と散歩が趣味みたい。盆栽のなにがたのしいのかな?


「じいちゃん遊ぼう」いつものように言うと、じいちゃんは「今日はなんの日か知ってるかい?」なんて聞いてきた。

僕は「しらな〜い」って言った。

79何となく書いてみた自作小説:2006/05/30(火) 18:50:22
じいちゃんは「じっちの誕生日だよ」と言ってきた。

「ふ〜ん。そうなんだ!じっちは何才?」

「じっちは70才だよ」

じいちゃんは「昔は大変だった・・・」が口癖

僕は「そんなのわかんないって!」が口癖に対する答え。
80ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/08(木) 13:27:50
【世界に一つだけの…】その1

部屋の中は、静かだった。聞こえるのはわずかな医療用装置の作動音。
それと患者が呼吸する音。時折早くなる呼吸…
そう、これは、この世で残されたわずかな時間を惜しむように繰り返される命の抵抗なのか。

「父さん…」
この病室で何度この問いかけをしたかわからない。それももうすぐ終わる…
92歳の生涯を終えようとしている意識の無い父が何本ものチューブを接続され、生かされ続けていた。
男性の平均寿命が100歳を過ぎた今、父は早すぎる死を向かえようとしている。
尊厳死、安楽死の明確な国家基準が決められてから2年を過ぎ、父の場合も淡々とこの制度に照らしあわされ、正式に今日、認定がおりてこの時が来た。

「あなた…」 「お父さん…」 「おじいちゃん…」 
家族みんなが集まり見つめる中、担当医が立ちあい、装置が静かに動きを止めた。
いつもやさしく、そして時には厳しく接してくれた、いい父親だった。
私の脳の中には父の思い出が駈けめぐった。私の感情を揺さぶる数だけ何度も何度も涙が頬をつたわった。
81ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/08(木) 13:28:50
【世界に一つだけの…】その2(終)

皆が悲しみ、涙を流していた時、「カチャ」と、病室のドアが静かに開いた。
若い2名の男性、1名の女性が入ってきた。
家族と亡くなった父に深々と一礼した後、3人は慣れた手つきで持参した特殊なコードが付いた装置を父の頭部へ接続させる作業をはじめた。
「パパ、この人たちは何をしてるの?」
一連の見なれた行為をはじめて見る娘の《友果》が聞いてきた。
「あれはね。おじいちゃんの頭の中から音楽を取り出しているんだよ。」

二日後、父の葬儀が行われ、斎場の複数のスピーカーから曲が流れはじめた。亡くなった直後の父の脳内を解析しその人が持つ独特のパターンから採取された思考波をもとに作曲された曲。
世界で一つだけ存在する曲が奏ではじめられた。
私もこの会場に集まるすべての人達も、父のメロディに魅了されていた。
父の92年間の人生を証明する生きた証に誰もが耳を傾けている。

最近になって行われるようになったこのサービス。
死亡が確認された直後、脳の活動残像を解析出来る技術が開発された。
不思議なことに生前どんな凶悪な事件をおこした人間も虫も殺めたことの無いような善人も、生前の地位、名誉、財産の有無、に関係はなく、どんな人生を過ごしてきたとしても、最後に残すこの一曲は無条件に素晴らしい音楽を産みだすことがわかっていた。

その中でも特に素晴らしいと認められた曲は、パッケージ化され販売契約が結ばれる事も有った。
しばらくの後、私の父が残した曲も何百曲ものライフミュージックの音楽データの仲間入りを果せた。父の曲が世界中のネット網に飛ぶのだ。
死後50年間は使用権が発生し、販売額に見あった収入が得られる仕組み。

はたして100年後、200年後、父の曲は名曲として後世に生きる人々の心に感動を与え続ける事が出来るのだろうか…
82ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/08(木) 13:31:27
他のスレの3つのキーワードでSFを書いていこう!!
でのキーワード「チューブ」「人生」「飛ぶ」で作製したのですが先を越されてしまいまして
ココへのっけます!
83ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 00:17:51
【おねだり】 その1

2049年6月14日、小雨がふり続く秋葉原。ビックカメラ店の7階パパ売り場に母と娘がいた。

「ママー、このパパ買ってー。」

売り場には、個性豊かな色々な外装を持つ複数のパパが展示されていた。
どのパパも展示用の仮の《心》をインストールされている為、感情を制限されたうつろな表情でお客に対応していた。
パパは台に固定されたまま自分を購入してくれる客を待っているのだ。
女の子に話しかけられたパパは、心細そうな瞳を左右上下にクルクル動かし買い物に来た二人を交互に見つめた。
「だめよ。これ中身、空っぽじゃない。」
「しっかり選びなさいね。3年間あなたのパパになるんだから。ルックスだけで選んじゃだめよ。」
ずらっと並んでいるパパ達の仕様データを呼び出しながらあれこれ品定めをするママ。
「雨の日は、サービスデーなんだから今日決めて帰るのよ!」
マッチョタイプのパパに一言二言質問をしてママは、首を横に2,3度振る。「うーん。この店は、いまひとつ品揃えがよくないわねー。」

「今日いいのが見つからないとすると3ヶ月間だけでもTSUTAYAでレンタルするしかないかなぁ〜〜」
「ねーっ!ママー!!これこれ!このパパどう?!」 娘が特売品コーナーから元気に手を振り叫んでいた。
84ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 00:18:55
【おねだり】 その2

そこには、1シーズン前のモデルのパパ《サムライブルー550−20F》が展示されていて娘と何やら会話をしていた。
かけ寄ってきたママは、値段表示を確認。「あら、意外と安いわね。スペックも・・・有りそうだし。」
「経済力値もいいわね。耐ストレス値も劣悪環境耐用指数もまあまあの数字じゃないの!! 」

ママがディスプレイのタッチパネルを「ピッピッ」と何度か押し更に詳細な数値を確認する。
「うーん!」「よし!これにしましょう。」
「わーい!\(~o~)/新しいパパだー!」
女性店員が展示台から指定のパパを解除させると、自力でゆっくりと歩きレジの方へ向かう。
もうひとりの女性店員に商談ブースへ案内されママは詳しい管理設定方法など説明を受けていた。
娘の方は、新しくパパになる《このモノ》にピッタリとくっつき正式のフル装備《標準心》がインストールされてゆく過程を眼を皿のようにしながら見つめていた。
いよいよ待ちに待ったパパ!急速システムアップが行われ心に灯が燈る。
女の子と新規パパの目が合った。
「はじめまして!よろしくね!」滑らかな自然なトーンで言葉が発せられた。

もろもろの手続きを済ませ、支払いをするために、ママが戻ってきた。
「お客様!お届けは、最短で明後日となりますが…いかがいたしますか?」

「いいわ!このままで。慣らし運転をかねて…一緒に連れて帰ります。」 「いいでしょう!?」
85ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 00:19:52
【おねだり】 その3

母と娘、そして新しいパパの3人が7階のパパ売り場の通路を仲良く歩く。
「そうだ!夕食は食べて帰りましょうね。」
「わーい!」 新しいパパの腕にくっついて歩いていた娘は更に体をくっつけ、とてもうれしそうだ。

買われたパパが居た展示台には、さっそく次のパパが載せられようと準備がなされていた。
仕様を表示するディスプレイは、次のパパ《ムサシ660−21C》への書きかえ準備がされる。
今回、ママがたくさん並んでいたパパ達の中から最終的に、あのパパにした決め手となった数値とは…

消されてしまうまでにそこに記載されていた元の表示内容とは。
《顧客満足度同価格帯製品第1位》
《ナイトライフ専用制御エンジン神経パワースクリュー搭載》
…と表示されていたのだった。

万世で食事を済ませた3人は、 秋葉原駅の高速電磁列車乗り場に向かう。
3ヶ月前まで使用していた前のパパは製造過程での生体チップ内細胞強度不足をおこしており、日常生活活動時に、たびたび精神不安定状態を繰りかえしていた。
それで仕方なく基本任期の3年間を待たずして買い替えせざるをえなかった。
今度のパパは、十分な基本スペック、内部安定性を持っている。
駅ホームで列車を持つしぐさも、落ちついていて、3年間家族となる妻と娘を見つめるまなざしもやさしかった。
86ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 00:20:41
【おねだり】 その4(終)

電磁列車独特の作動音をさせながら特急車両がホームへ到着。
ホームへ降りる人々、列車に乗りこむ人々。そして発車し、列車の窓から見える町並みの中で暮らすたくさんの人々。
すべて皆、幸せそうな表情をしていた。
そう!今、地球上には人間である女性。男性という名の有機ロボットが暮らしていた。
20年前、突然、男性が死に絶え、この人間社会は女だけの世界となった。
幸い、遺伝子工学、生命工学の魔法のような進歩のおかげで、人類は絶滅の危機は回避できた。
子孫を残すことで特に男を必要とはしなくなったのである。
結果、形だけは、ロボットの男性を家族として参加させ3年毎に交換して行き今に至っているのだ。

「カチャッ」家のホーム知能がママと娘。そしてオンライン登録されたばかりのパパの存在を確認して玄関のロックを自動解除させてくれる。
「ただいま−」娘は元気よくリビングへ走る。
中には、おばあちゃんがやさしい顔でお出迎え。隣には、おじいちゃんが。
このおじいちゃんもそろそろ3年目。基本任期を向かえようとしている。


午後10時20分松戸の小さな小さな一戸建ての家には仲のいい家族5人の幸せそうな笑い声が響いていた。

そう、この世から人間のオスが消え、もう一つおおきな大きな…大きな出来事が地球上で起こっていた。
すべては、平和になった。大きな戦争も紛争も人種間の民族間の宗教間の争いは、無くなった。

争いの元であるオスをなくした、今、人類社会はおだやかな、ゆったりとした時の流れの中、皆、仲良く笑顔で幸せに暮らしているのでした…
87ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 00:22:24
これ↑も他のスレに載せたモノを書き足し、オチも新たに追加させたお話です。
88ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 02:11:13
【ママ・ライト】 その1

朝8時30分。息子とパパは秋葉原駅に高速電磁列車で到着した。「早く!早く!急がないとママが売り切れちゃうよ!」
さっき電磁列車内でチェックした店のサイトでは、限定50体が入荷したとのこと。
今使用してるママは製造過程で生体チップの細胞強度不足をおこしており、日常生活時、たびたび精神不安状態を繰りかえしていた。
それで今回、仕方なく基本任期の3年間を待たずして買い替えせざるをえなかった。

去年オープンしたばかりの巨大家電センターヤマダデンキ秋葉原店。
小雨の降り続く中、急いでパパと息子は、整理タグをつけてもらうために受付に急いだ。
「ピピピピィーーッツ」
「やったー!パパ49番目だよ。新型ママゲット!!」パパは息子と一緒にガッツポーズをとって喜んだ。

現在、使用してる、ママを購入した時、主流は、”メイドスタイル”のタイプ《ナナコ550−20F》。
性格は優しくて芯はしっかりしていた。「メイド姿で結構胸があった」とパパはそこのところが好みで・・・息子には言えない種類の購入動機・・・

9時30分。店側の好意で規定より30分早く、開店になり、一同は、ママ売り場の7階に向かった。
89ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 02:12:03
【ママ・ライト】 その2

いよいよ待ちに待った最新のママが手に入るのだ!二人の胸は高鳴った。最新の《ナデシコ770−42G》がずらっと並んでいる。
「おう、さすがに洗練されたルックス。スペックも・・・有りそうだし。」 さっき渡され端末に取り込んだカタログデータをチェックするパパ。
連続家事運動測定値も今のママの3倍。耐ストレス値も買い物オートバランサー機能も新しい基準を採用している。
名機の証明である所の劣悪環境耐用指数もまあまあの数字が並んでいた。
パパがカタログの表記でもっとも目を付けた部分、《顧客満足度同価格帯製品第1位》と《浮気寛容度数値最低を記録》も見逃してはいけない。
順番が来て私たちの番だ。
パパと息子の目と新型ママライトとの視線が合った。ママは、心細そうな瞳を左右上下に動かし買いに来た二人を交互に見つめた。
どのママも輸送用の仮の《心》をインストールされている為、感情を制限されたうつろな表情をしている。
男性店員が固定台から1体のママを解除させると、ママは自力でゆっくりと歩き、レジの方へ向かう。
もうひとりの男性店員に商談ブースへ案内されパパは詳しい管理設定方法など説明を受けていた。
息子の方は、新しくママになる《このモノ》にピッタリとくっつき正式のフル装備《標準心》がインストールされてゆく過程を眼を皿のようにしながら見つめていた。
いよいよ待ちに待ったママ!
急速システムアップが行われ心に灯が燈る。男の子と新規ママの目が合った。
「はじめまして!よろしくね!」滑らかな自然なトーンで言葉が発せられた。
90ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 02:12:42
【ママ・ライト】 その3

もろもろの手続きを済ませ、支払いをするために、パパが戻ってきた。
「お客様!お届けは、最短で明後日となりますが…いかがいたしますか?」

「いや!このままで。慣らし運転をかねて…一緒に連れて帰れるかな。」 「可能かい!?」

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

午後6時、自宅のある江戸川台住宅街。
 「カチャッ」家のホーム知能がパパと息子の存在を確認して玄関のロックを自動解除させてくれた。
「ただいま−」息子は元気よくリビングへ走る。
「タタタターッ」廊下を走る息子。

中には旧式ママ《ナナコ220−67F》が淋しそうに一人座って、うなだれていた。
「ママー!明日は日曜日だよ。」「3人で生きている恐竜に行こうよ!」「いいでしょう!ママ!!」 と抱きついて笑顔をみせる。
旧式ママ《ナナコ220−67F》は何が何だかわからずに息子とパパの顔を交互にのぞき込む。

そうなのだ。新しいママはココには居なかった。

「ははは・・・」パパは、優しく見つめ語り始めた。「こいつがさ、今のままでイイって言ってさ!結局、買わずに戻ったって訳…」
基本任期の3年間を守らずに更新手続きを行うのは何かと大変だがそんな問題では無い。

《ナナコ220−67F》は、なぜか心の奥が熱くなっていた。こんなことは機能にはないはずだと混乱もしていた。
また故障なのだろうかとも心配になったが、《ナナコ220−67F》の眼に写っている息子とパパの笑顔を見たらすぐにその種の感情は消し飛んだ!
午後10時20分江戸川台の小さな小さな一戸建ての家の窓には、暖かな灯りが燈り、仲のいい親子3人の幸せそうな笑い声がいつまでもいつまでも響いていた。
91ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 02:13:28
【ママ・ライト】 その4(終)

電磁列車独特の作動音をさせながら走る列車の窓に映る人々、江戸川台駅を行き通う人々、そして街の中、すべての住宅、建物からもれる窓の灯りの中で暮らすたくさんの人々。
そこには、すべて、皆、幸せな生命体がいた。

そう!今、地球上には人間である男性。女性という名の有機ロボットが暮らしていた。
20年前、突然、女性が死に絶え、この人間社会は男だけの世界となった。
どんな技術を使おうとも、けっして生きた女性を産みだす事が不可能になった。
幸い、遺伝子工学、生命工学の魔法のような進歩のおかげで、人類は絶滅の危機だけは、回避できた。
子孫を残すことで女性を必要としない技術を獲得できたためだ。
だが、男性は形だけは、ロボットの女性を家族として参加させ定期的に交換してゆき、今に至っていた。

そして、この世から人間のメスが消え、もう一つおおきな大きな…大きな出来事が地球上で起こっていた。
すべては、平和になった。大きな戦争も紛争も人種間の民族間の宗教間の争いは、無くなってしまった。
オスにとって一番大切だったメスという存在を完全に失い、名誉、地位、財産、プライド…
これまでオスが大切だと思って手にいれようとしていたものの価値がいかにちっぽけなものだったのか必要の無いものだったのかが分ってしまったのである。

そう!オスにとって一番大切だったのが、メスという存在だと気づいて…

今、人類社会はおだやかな、ゆったりとした時の流れの中、皆、仲良く笑顔で幸せに暮らしているのでした…
92ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/14(水) 02:17:24
↑も他のスレに書いた、姉妹版になる《ママ編》です。

これもかなり書き換えて、批判をもらった部分私なりに直し、オチも変えてみました。
93名無しは無慈悲な夜の女王:2006/06/20(火) 21:06:30
けっこう面白かった…アイデア事態はありきたりだけど
94名無しは無慈悲な夜の女王:2006/06/21(水) 09:10:21
ロボットと暮らしててむなしくならないのかな。
ていうのが頭に残って入り込めなかった。
別なの読みたいよ。
95ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/06/21(水) 13:22:26
>>93感想ありがと
>>83のこういう感じの話、私好きなもんで結構のれて書けました。

他のスレを読んでいて他の人の書き込みの
>「ママー、赤いパパが落ちてるよ」
>「いいのよ、新しいパパが来るから」

の2行の書き込み読んで思いつきで書いた次第…

>>94感想ありがと
>ロボットと暮らしててむなしくならないのかな。
ていうのが頭に残って入り込めなかった。

そういう感じ方も有るんですね。
ロボットと言うよりもより有機生物に近いブレードランナーのレプリカント的であれば多少はむなしさ解消できるのか…なあ

新作出来たら、近いうち、また載せさせてもらいます。
96名無しは無慈悲な夜の女王:2006/06/25(日) 21:13:08
ひとつ聞いていいですか?前スレって倉庫の何処ら辺にあるか知ってます?

97名無しは無慈悲な夜の女王:2006/07/13(木) 22:57:23
製作中…
98名無しは無慈悲な夜の女王:2006/08/17(木) 23:00:19
まだ
99名無しは無慈悲な夜の女王:2006/08/18(金) 16:30:04
機械翻訳はおもしろい。
簡素な短い文章のみが正確に翻訳される。
装飾過多な文章は訳の分からない翻訳になる。
繰り返し翻訳すると劣化した文章になり、しまいには意味をなさなくなる。さらに理解不能な文章を翻訳すると神秘的な様相を呈する。
ネットで適当な文章を内容を把握せず、数回、機械翻訳にかけ、これを元に推測と、妄想で再構築したらどんなものが出来上がるか試みてみました。
100ルドルフの帝国 3/1:2006/08/18(金) 16:30:43
昔々、ある男が大勢の人々の中心で、玉を掲げました。それは複数のうめき声が異なった共振周波数で渦巻いて、人々は調律されました。
調律人間たちは、しばしば振動評価され評価基準に満たないと判断されれば廃棄される運命でした。

ルドルフは調律されない人間で、かれにも玉が渡されました。
しかし、ルドルフは調律される側と支配する側の関係に納得がいきませんでした。だけれども世の中を変革しようなどと大それた大志は抱けませんでした。
ある時、廃棄される調律人間の運命を目の当たりしてしまったルドルフは玉を叩き割ってしまいました。

ルドルフは、不調な廃棄される運命にある調律人間たちを引き受けました。
ルドルフは不調な調律人間で、自分の壊れた腕時計を動かすのに使用しました。はじめて指示したのはチック、タック、ゴーンの三人です。
どんなに不調であっても、3人の調律人間で腕時計の一つくらいはきちんと時を刻めました。
せっかちでチビなチックは秒針に、チックと仲良しなタックは分針に、のんびり屋で太っちょゴーンは時針を担当しました
101ルドルフの帝国 3/2:2006/08/18(金) 16:33:02
かれら三人組はそれぞれ別の場所からやってきました。
チックはパン工場からやってきました。パン工場では卵割の担当していて、一秒に一つ卵を割っていました。
卵割は正確無比でしたが、殻を食べる奇行を繰り返し、他の調律人間たちに気味悪がられ振動評価を受ける羽目になり、不適合の烙印を押されてしまいました。
タックは中華料理の厨房からやってきました。厨房では麺茹でを担当していましたが、一分刻みでしか麺を茹でられないために、かた茹での微妙なオーダーに対応できずここにやってきました。
のんびり屋のゴーンはオーケストラでシンバルを担当していました。彼のシンバルはとてもすばらしい響きとタイミングでオーケストラには欠かせない存在でしたが、木琴を担当していたモックが居ないと役に立ちませんでした。
モックは世話焼きでゴーンを足で蹴ってシンバルのタイミングとシンバルの加減を知らせていました。
モックが引退してしまい、ゴーンの調子はずれのシンバルで交響曲が台無しになりルドルフに引き取られました。

初めの一ヶ月間は、ルドルフの腕時計を動かしていました。ここで信用を得て一年後には世界中の時計を一手に引き受けました。
102ルドルフの帝国 3/3:2006/08/18(金) 16:34:33
ルドルフは、調律委員会の会議で、手狭になったので支配地を要求しました。会議の末、小さな島を割り当てられました。

当初は、調律人間たちを好きなように生活させようと考えていました。しかし、何も命令のない調律人間たちはすぐに死んでします。
高齢の調律人間ばかりならば納得できるのですが、若い調律人間たちも一定の期間が過ぎると死んでしまいました。
困ったルドルフは仕方なく調律人間たちに役割を与えました。

ここでは仕えるべき主人はいませんでした。ルドルフは調律人間たちに役割を与えましたが、還元される利益は調律人間たちの生活向上にしか振り分けませんでした。
それからよりシステムを複雑化し、調律人間だけで運営できる社会を完成させました。最後にはルドルフの役割も引き継がせました。

しかし、この社会を永続させるにはルドルフが存在していなければなりません。
ルドルフは、チック、タック、ゴーンの三人組を自宅に招きました。
「お願いがあります。わたしの時計をできるだけ遅くすすめてください。千分の一、万分の一にしてください。他所の支配者が来訪したときだけ時間の進みを戻してください」
 かれらは二つ返事で快諾しました。理由などは必要ありませんでした。

美術館に飾られた生きた彫刻人間ルドルフの表情はとても満足気でした。

おわり
103名無しは無慈悲な夜の女王:2006/08/26(土) 11:08:16
おまいらスゲーヨ
ベタなアイデア(褒めてるんだよ)でここまで話を膨らませるなんて凄いぜ
104死神博士(1/3):2006/09/07(木) 20:45:49
 死神博士は激怒した。いならぶ助手たちには、手術着を通して肩から立ち上る青白い炎が
はっきり見えた。解剖台上にだらりと広がった蛙のような贅肉の塊、こりゃなんだ?
 体の自由は奪われていても、意識は保っているだろうに、抵抗する気力も無い濁った眼、
 見苦しく緩んだ体、内臓器官の不調を疑わせる荒れた肌。
 博士は握ったメスを逆手に持ち替え、膨れた腹に突き立てた。
「───! ─――!」
 苦痛に身をよじり、初めて生き物らしい徴候を見せた被験者に一瞥もくれず、博士は後ろ
上方の見学室に向き直り、手術帽とマスクをかなぐり捨てて、ガラスの向こうの軍服の男に
指を突きつけた。
「やいゾル! この被験者はどういうつもりだ! いまどき秋葉原だってまだ生きのいいのが
見つかるぞ。もっといい素材を持って来い!」
「おまえは板前か!」
 ゾル大佐は言い返したが、内心ばつの悪い思いをしているようで、弱弱しく言い訳した。
「頭脳明晰、身体頑健、志操堅固なんてのは滅多におらんよ。改造しても逃げちゃうし」
「人事みたいに言うな! まったくもうっ」
 そそくさと手術室を片付ける助手たちを尻目に、博士は足音も荒く手術室を後にした。

105死神博士(2/3):2006/09/07(木) 20:46:23
 死神博士は鎮静剤の必要を感じていた。かつては傲慢以外の罪に縁の無かった彼だが、
ゾル大佐と組んでから怒りっぽくなった。普段着のグレイのスーツに着替え、研究室の
デスクに戻ったが、思索に集中できない。
 こういうときはあれに限る。手の中に、一組のカードが、魔法のように忽然と現れる。
 タロット。ピアニストのように長い、汗ばむことのない指に操られ、カードは風に
そよぐ木の葉か、流れる砂のような音楽を奏でた。
 絶好調だ。ひとしきりカードと戯れた後、博士はデスクの上に、過去、現在、未来を表す
三枚のカードを裏向きにスプレッドした。次の一瞬、残りのカードが隠しポケットに消える。
 おもむろに過去のカードを開く。
 死神。ラッキーカードだ。
 次に現在。
 悪魔。
(悪魔女医‥‥しばらく会っていないな)
 デスクの上のカードをなでると、それらは消滅する。未来はいつも見ない。彼は占いを
信じない。
106死神博士(3/3):2006/09/07(木) 20:47:03
 悪魔女医は、死神博士の同僚である。かつて彼の助手として組織に加入したのだが、
他の十把一絡げと違って本物の才能があるのがわかったので、さっさと独立させた。以来、
国際人体改造学会の最先端の座を、二人で分け合ってきたと信じている。手術の腕もいい。
最近は、痛くないという理由で彼女を指名する被験者が多いということだ。
(軟弱者どもが)
 とはいえ、死神博士自身も、自分の手術は頼みたいと思っている。世の中の誰に対しても
冷淡で、よくて実験材料、しばしばそれ以下としか思わない博士だが、彼女は別だ。
 ただひとつ困ったことがあるとすれば、タコ好きの変わり者だということだ。
 確かにヒョウモンダコの毒性や、擬態能力は大したものだ。だが改造人間のモチーフと
してはやはりイカだ。イカで決まりだ。このへんで意見がかみ合わず、いつも喧嘩になって
しまうのだが‥‥季節の和菓子でも持って遊びに行こう。手づから茶を淹れてくれるだろう。
いつものように。
107八兵衛(1/1):2006/09/07(木) 21:22:56
 五代将軍綱吉の頃。甲斐の国、中山道沿いのとある丘の上に、ちょっと知られた団子屋が
あった。
 そこに黄門一行が通りかかると、当然八兵衛が団子を食おうというのだ。
 天気は晴朗、丘から見晴らす山景に、ご老公もまんざらではない。
「いい景色ですなあ」
「まったくでございます」
「絶景ですなあ」
「うーんうまい! この団子は絶品だ!」
 八兵衛はさっそく床机に腰掛け、両手の団子を交互にほおばっていた。
「おい八! この景色を前にして、その態度はどうよ!? お前もたまには旅情とかだな、
もっとこう普段思わない‥‥」
「やだなあ助さん、オイラだってちゃんと哲学してますよ」
「ホントか!? 何を考えてるんだ」
「この国の未来のことです。神君(徳川家康)様が天下を治められて以来、世の中は平和が
続き、繁盛しています。人の往来もますます盛んになるでしょう」
「その通りだな」
「そうなると大切なのは街道です。人通りが多くなるにつれ、今の細い道では、いずれ
交通量をさばけなくなるでしょう。道を広げ、雨が降ってもぬかるまないよう工夫しなければ
なりません。荷車や早馬で事故がおきないように、専用の道を作ったり、上り下りを
分けるのもいいかもしれませんね」
「なるほどなあ」
「しかし街道ぞいに休息の場も必要になります。例えばこの団子屋ですけど、周囲は比較的
平らですね。あのへんに馬つなぎ場を作って‥‥隣に駕籠置き場を‥‥井戸を‥‥団子屋も
広げなくっちゃ‥‥おみやげを‥‥」
 のちにこの丘は、中央自動車道談合坂サービスエリアと呼ばれることになる。
108名無しは無慈悲な夜の女王:2006/09/10(日) 21:17:08
>>106の悪魔女医と死神博士の意見の食い違いをもう少し膨らませてほしい。
おもしろくなってきたところで終わっちゃった感じです。
109106:2006/09/10(日) 23:33:37
>108
しまった!
言われてみれば、タコ好きとイカ好きが逆だったら、ちゃんと話がオチたんだ!
110タロット(1/4):2006/09/10(日) 23:41:18
 タロットというものがある。
 知っている人も多いと思う。七十八枚で一組のトランプのようなものだ。
 そのうち二十二枚には、「死神」とか「運命の輪」とか意味ありげな名前が
ついていて、きれいだけど意味がよく分からない奇妙な絵が描いてある。
 残りの五十六枚も、不思議な絵柄は同じこと。ただし、こちらは、トランプに似た
マークと数字が付いている。マークは四つ。剣、コップ、金貨、杖。数字はエース、
二から十、ジャック(ペイジとも言う)、クイーン、キングと‥‥それからナイト、
つまり騎士のカードがある。
 四枚のナイト。四人の騎士。
「世界が滅びるときに現れると言われてる、黙示録の四人の騎士なのさ」
 ぼくにタロット占いを教えてくれた叔父は言った。
「今はまだその時じゃない。だからトランプには入っていない」
「なぜタロットには?」
「テストのためさ。見えるかい?」
 叔父はカードの束から四枚抜き出して、ぼくに見せた。
 白紙だった。
 叔父はぼくの顔をのぞきこんで‥‥そして深いため息をついた。
「‥‥見えないんだな?」

 それは本物の予言者の証拠だ、と叔父は言った。タロットは、占い師を選ぶ。
選ばれた者にだけ、真実を明かす。
 そして存在しないものは見せない。
 その日から、ぼくの訓練がはじまった。
111タロット(2/4):2006/09/10(日) 23:42:13
 おぼえなきゃいけないことは、かなり多い。カードの名前、意味。混ぜ方、並べ方
(スプレッドと言う)。カードの組み合わせによる、特別な意味(コンビネーションと言う)。
 楽なもんだった。ぼくには才能があった。机の上のカードが、それぞれ語りかけて
くるようだった。
 いや、本当に声が聞こえたのだ。
 誰かが嘘をついても、「正義」のカードに描かれた、天秤を持つ女神が、本当のことを
教えてくれた。
 「悪魔」のカードには、人をあやつる方法を教わった。先生や女の子には、相手が
聞きたいと思っていることを先に言えば、かんたんに気に入ってもらえるし、逆に、
いやな奴には、相手の秘密を耳元でささやいて、ぼくを恐れさせることもできた。
 「吊られた男」の言うことは、うわごとのようで、さっぱり意味が通じなかった。
でも「恋人」のアドバイスは的確そのものだった。十一歳で、ガールフレンドが
三人もいて、しかも三人とも、自分が一番だと思ってる‥‥なんて、なかなかでしょう?
いろいろ大変だけどね。

 叔父も、騎士たちを見たことがない、本物の占い師だった。でも、仕事はべつに
持っていて、タロットを、ギャンブルやお金もうけに使おうとしなかった。
 理由をたずねたら、目立つのがいやなんだ、と言った。
「金持ちになれば、ついぜいたくをしてしまう。金を使えば、出どころを
せんさくされる‥‥」
 何かいやな目にあったことがあるようだった。ぼくの両親が、叔父のことを
好きじゃないことにも関係あるかもしれない。
「おまえはまだ子供だから、だいじょうぶだろうが‥‥大人になっても、楽して
もうけようなんて思うなよ」
112タロット(3/4):2006/09/10(日) 23:42:59
 叔父が人前で占いをしないのも、同じ理由なんだろう。タロットを見せるのは、
ぼくのような子供にだけだったし、ぼくが予言者だと分かってからはそれもやめた。
 タロットは、ぼくと叔父だけの秘密になった。
 叔父は、部屋が六つもある広いアパートに住んでいた。(どうやら叔父も、
たまには欲にかられることがあったようだ。)
 その一番奥が、タロットのための秘密基地だった。ぼくが占い師の訓練をうけた
部屋でもある。
 窓には厚いカーテンがかけられ、空気はいつもひんやりしていた。一方の壁には
本がぎっしり詰まった本棚が、反対側には、飛行機や船のプラモデルの大軍団が
ずらりと並んだガラスケースがあった。
 真ん中のデスクが、叔父が予言者の正体をあらわす、ただ一つの場所だった。
ぼくはもうかなり上達していたので、叔父の占いをそばで見て、自分の意見を
言うこともあった。
 「コップの五」が表向きになると、叔父は緊張した。危険を警告するカード
だからだ。「剣の十」を見るとうんざりした顔をした。「塔」が現れたときには
大慌てになった。
 占いが終わると、叔父はかたわらのノートパソコンを開いて、使い捨ての
フリーメールアカウントから、矢継ぎ早にメールを放つ。あて先は警察や消防、
病院、官公庁。
 ぼくたちの住む街は、事故や犯罪の発生率が全国平均と比べてとても低い、
住みよい所なのだが、その理由をわかってもらえるだろうか?
 叔父の能力には限界がある。だいたい市内のことしか分からないし、予知できると
いってもせいぜい三日かそこらだけれど、その力の及ぶ限り、叔父はこの街の
守護者だったのだ。

「なんたって平和が一番だからね」
 叔父は照れくさそうに言った。
「私自身のためでもある」
113タロット(4/4):2006/09/10(日) 23:44:43
 だがある日、いつものようにタロットをスプレッドした叔父は、いきなり真っ青になって、
ぼくを追い出した。
「今日はもう帰れ」
 アパートのドアを閉めながら、叔父はかすれた声で言った。
「明日、兄さん‥‥お前のお父さんと一緒に来てくれ。必ず来てくれ。
 明日から、あの部屋の本もプラモデルも、お前のものだ。それと」
「何」
「なんでもない」
 ドアが閉じられた。

 翌日、父とぼくは、叔父がベッドで死んでいるのを発見した。心臓発作による、突然の死だった。

 父は叔父のアパートを処分した。本もプラモデルも捨てられてしまった。置く場所が
ないという理由で。でも本当は、ぼくから叔父の影響を消し去りたかったんだと思う。
 でも、ノートパソコンはぼくの物になった。
 それと‥‥
(お前のものだ。それと)
(何)
 こう言いたかったに違いない。
(私が死んだら、この街を頼む)
 ぼくは守護者の使命をも相続したのだ。

 あの日、叔父には、タロットがすべて白紙に見えたのだろう。自分に未来が
無いことを知ってしまったのだ。
 ぼくに使命を継がせるのをためらったのは、きっと、子供には無理だと思ったからだ。
 そうかもしれない。叔父の死から半年、ぼくなりに、せいいっぱいやってきたつもりだ
けれども‥‥
 今、ぼくは、叔父が最期に見たものと同じものを見ている。
 勉強机の上に広がった空白のカードの群れ。空白の未来。
 ただ、四枚だけ‥‥
 恐ろしい姿の四人のナイトが、ぼくを無慈悲に見つめていた。
114名無しは無慈悲な夜の女王:2006/09/11(月) 13:35:10
公募した作品ですか! 素直に感想を書きます。
起承転結がすべてではないとは思いますが、どの区切りにもインパクトに欠ける気がします。「起」で「結」がよめてしまいますし、なにより「結」にインパクトが足りません。もっと布石が必要な気がします。
最大の狙いである“こわい”という感覚はありませんでした。
その原因は、本来必要としている長さのお話を無理やり4コマ漫画に収めようとしているからだと思います。
あまり短いお話には向いていなのではないでしょうか? 枠に囚われず自由に描かれたお話を読みたいです。
115名無しは無慈悲な夜の女王:2006/09/11(月) 21:40:28
ありがとう。参考になります。
116名無しは無慈悲な夜の女王:2006/09/13(水) 00:52:35
>>107
甲斐を中山道は通過してないよ
甲斐の国なら当然甲州街道だよ
117ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/09/13(水) 17:25:02
【自由な世界】 その1

今日、9月13日は、僕の29歳の誕生日。
そして、1年で1日、訪れる自由の記念日。
この世界すべての人にも必ず1年に1日、その人の誕生日は自由の記念日と決められている。

つまり、望む事は、ほとんど何でも可能な日なのだ。

欲しい物はすべて手に入る。見たいものも見られて、見せたいものを見せる。
見知らぬ人に対してののしったり、前を歩いている人を殴りたくなったら殴る。バットでも鉄の棒でも思いっきり殴る事ができる。
突然、他人の家に押し入り、ナイフで刺すことも…
警察官の拳銃を奪い、銃で撃つ事も…
何でもできる日、罪に問われない特別の日。

今日、9月13日は、《藤村としお》にとっては誕生日であり、自由の日。
この日は、絶対的な権利が存在、優先する日。

朝が訪れ、素晴らしい1日が始まった。
《藤村としお》は、青山の《維新通り》を歩いていた。
少し離れた店からでてきた全裸の男が1人、藤村を見つけ大声で呼びかけてきた。
「おはようございます!藤村さんの今日の予定は?」その男は、藤村と同じ今日が誕生日で2歳、年下の後輩《早川ともひさ》。
118ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/09/13(水) 17:26:35
【自由な世界】 その2

「私は、これから仲間と待ち合わせして2,3人づつ始末しに行く途中なんです。」
そう言うなり両手には、よく手入れされた日本刀を持って走り去った。

と、ふと、目線を移した店のショーウィンドウに前々から欲しかった新素材のコートが飾ってあるのに気づく。
《藤村としお》の頭部に埋めこんでいる超小型人工脳に常駐のコーディネーターの知能意識がコートの特別取得権利主張を感知し、許可を与えた。
かなり高級な品だが店員は満面の笑顔で《藤村としお》を迎え無料でコートを手渡した。
「お客様、お似合いですよ。」と最高の笑顔を添えて…《藤村としお》は全裸だった上にコートだけを着て通りに戻る。

今年で29歳、1年に1度訪れる誕生日。この歳になると誰でもほとんどの事は、経験済みだった。
《藤村としお》のこれまでの誕生日履歴は、16歳の時だったか、人を包丁でメッタ刺しにして初めて殺人を犯した。
18歳の時、テレビ局に入り込み、人気絶頂だったアイドルの女の子を暴行し乱暴した。
23歳の時は、その日、同じ誕生日だった数名と共同で銀行強盗をやらかし大金を盗み銀行内は血の海に。
28歳の去年は、爆弾を電車の網棚へ置き、走っている地下鉄を爆破させてみた。

頭部に埋めこんでいる超小型人工脳に常駐のコーディネーター知能意識が見つめる中、ぶらぶらと街を歩く。
今日は一日のんびりと過ごそうと思っていた。自由の日だが、なんだか、もう、あんまり人の血を見たくない気分になっていた。

そうしてのんびりと街を散策し、夕方18時、銀座の最高級のレストランで軽い夕食を取り、タクシーに乗って自宅に戻った。
119ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/09/13(水) 17:27:51
【自由な世界】 その3

気持ちは落ちついていた。幸せな気分だった。
23時59分59秒が過ぎ、特別の日が終わり《藤村としお》は眠りについた

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

朝が訪れた。《藤村としお》は目覚める。

今日、9月14日は、1年で1日訪れる特別な日。
そして、1年で1日、訪れる絶対義務の特別日。
この世界すべての人にも必ず1年に1日、その人の自由の記念日である誕生日の翌日は絶対義務の特別日と決められている。

つまり、他人から望まれる事は、ほとんど何にでも従う日なのだ。

他人が欲しいと思う物は、すべて手離す。他人が見たいものは与え、他人が見せたいものは見せてもらう。
見知らぬ人からののしられたり、自分の後を歩いている人から殴られる事も。バットや鉄の棒でも手加減など無しに殴られたりもする。
突然、他人が家に押し入り、ナイフで刺されることも…
自分の身に何が起きても不思議では無く、罪に問えない日。

今日、9月14日は、僕にとっては誕生日の次の日であり、絶対義務の特別日。
この日は、絶対的な義務が存在、優先する日。
120ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/09/13(水) 17:29:18
【自由な世界】 その4

《藤村としお》は、青山の《維新通り》を歩いていた。

男が1人、藤村を見つけ大声で呼びかけてきた。《早川ともひさ》だった。
「おはようございます!今日も会いましたね!藤村さんの今日の予定は?」

「私は、これから機関銃でバババっと両手両足バラバラに撃ち抜かれに行く途中なんです。」
「お昼、原宿のファーストフード店が現場なんですが…20名ほど動員を受けているらしいですがネ。」
《早川ともひさ》は、そう言うなり元気に何やら歌を歌いながら走り去った。

と、ふと、目線を移した交差点の先を猛スピードで走る真っ赤なスポーツカーに気づく。
横断歩道を渡る人を次々とはねていた。更にスピードをあげて歩道の中に侵入し歩く複数の人達をなぎ倒し走り去って行った。
片付けられる死体をボーッと見つめていると、《藤村としお》の頭部に埋めこんでいる超小型人工脳に常駐のコーディネーター知能意識が誕生日依頼者の特別権利主張を感知したと伝えてきて、私は、許可を与えた。

《藤村としお》に与えられた今日の義務は、初めて聞く大規模の動員だった。
設定時間は、2時間後、かなり離れた場所に集まるように指示された。
5万人というかなりの大人数。

2時間後、街には、今日が絶対義務の特別日を迎えている《藤村としお》を含む約5万人が普通に歩き、普通に過ごしていた。
121ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/09/13(水) 17:31:58
【自由な世界】 その5(終)

実行の時間が来た。空が一瞬キラリと光り、次の瞬間、ものすごい熱風と衝撃波が襲ってきた。
肉は焼け、骨は砕け、5万人は、限定核爆弾の為に瞬時に絶命し灰になった。

この大規模の無差別殺害を希望した今日が22歳の誕生日を迎えた男は、満足し特別発注したビールを飲みながら、その様子を見つめていただけだった。

今年で29歳、1年に1度訪れる絶対義務の特別日。
この歳になると誰でもほとんどの事は、経験済みだった。
《藤村としお》のこれまでの絶対義務の特別日履歴は、17歳の時だったか、包丁でメッタ刺しにされ初めて殺された。
19歳の時は、同性愛の大男達に暴行を受け乱暴された。
24歳の時、その日、同じ絶対義務の特別日だった数名と一緒にコンビニ強盗をやらかし金を盗みにきた男に銃殺され頭を撃ち抜かれた。
28歳の去年は、珍しく死亡はしなかったが20時間あらゆる拷問器具を使って生死をさまよっていた。

限定核爆弾は炸裂した数秒後、頭部に埋め込まれていた超小型人工脳に常駐のコーディネーター知能意識が《藤村としお》の消滅を確認、センターへ通知。
すぐに《藤村としお》クローンの体を起動させオリジナルとして登録、今日一日の記憶だけを削除させ目覚めさせる準備に入った。

絶対義務の特別日が終わった。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

9月15日の朝が訪れる。

完成され成熟期を迎えた社会システムの中、医学、工学、物理学、精神科学と最高の域にまで発達した私達、人類は、死を克服、暴力の心、戦争の原理をも解明した。

そして、人類は、それらを押さえつけ、無くす事ではなく、すべてを与える道を選んだ…
122ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/09/13(水) 17:36:51
かなり血なまぐさいアンチユートピアを考えてみました。

設定は、強引な部分多々有りそうですがご勘弁…

最近のテレビのニュース見ているとヤナ事件ばかりですね。
で、ついついこんな話、思いついてしまった次第…
123名無しは無慈悲な夜の女王:2006/09/14(木) 21:17:07
このようなとんでもない世界に住みたいと感じる方は異常者です。
ただ、どす黒い欲望をひめているのが人間のおそろしいところ。法律やシステムなどで規制してもどうにかなるとは思えないんですよね。
この発想の逆転が今回のネタになったと思いますが、なんともはやゲームっぽい設定でお茶を濁した感があります。
それと気になったところ。特別な意図がなければ、登場人物の名前を括弧でくくるのはやめたほうがいいのかも。
残念ながらケロロ少佐の作品が掲載されたS-Fマガジンは購入できなかったのですが、どのように掲載されていました?
わたしの感想もはなはだしくネガティブなものになってしまいました。あしからず。
124ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/09/14(木) 22:16:30
>>123さん感想ありがとう。

社会批判SFを書くのは設定をもっと良く練りべきで、そうしないと↑のように単なるエログロ描写を書いただけの不愉快さを与えるだけの話になってしまいますね。
申し訳ないです。

名前の件ですが、特別な意図は、ないわけで《   》は、やめるとしましょう。これまで、逆に読みやすいのではないかと考えていた次第…

どうも私は、基本的な作文ルールの知識が欠落しているようで…

125名無しは無慈悲な夜の女王:2006/09/28(木) 16:05:28
保守
126隊列文法 5/1:2006/09/28(木) 21:20:43
わたしの部屋には大量の蔵書が散乱している。いつの頃からか、入手しても読まない癖がついてしまった。
灰皿にとどまらずコーヒーの空き缶、プリンの容器などに煙草の吸殻が詰まって溢れだし、洗濯していない靴下が、脱ぎ捨てられたまま丸まって転がり、埃のかたまりがドアの開閉でゆれている。
こんな部屋でも喜んで同居してくれるかわいい奴がいる――まあ虫なのだが。
シルバーフィッシュという虫で、とても美しい光沢をしている。はじめて目にした時には指で潰してしまったのだが、あとで調べたら本を好んで食す虫らしい。
どのみち読まない本がいくらでもあるので、奴らの存在を容認したのだ。なかなかお目にかかれないので、ひとしきり考え、古くてくたびれた本を古本屋で買ってきたのだ。
紙に甘い香りがしてうまそうなのがそれを選択した理由だ。読んだことはないが、澁澤という著者の本がなんとなく紙魚たちの好みにあいそうな気がして与えてみた。
127隊列文法 5/2:2006/09/28(木) 21:21:31
数日後、供物として与えた本を確認してみると、本がそのままの状態で置かれていた。いや、様子がおかしい。よく近づいて見てみると表紙はそのままの状態だが、中身が無くなっているようだ。
表紙を開いてみると、黒い文字がダイヤモンドダストのように周囲に舞った。文字のインク部分だけを残しきれいに食べられていた。
例えるなら、箸使いの上手な人が食べた焼魚のようだった。身の部分だけを食し、頭と尾を残し、中間部分は見事に骨だけの状態で、盛られていた皿に汚れなど付いておらず感心してしまうような見事さだった。

ある月夜のことである、暗い部屋の壁が月明かりに照らされてきらきら揺れているような気がした。じっと目を凝らして壁を見つめていると煌きの正体が分かった。
シルバーフィッシュの群れだったのだ。虫嫌いの方はゾッとして悲鳴を上げてしまうのだろうが、あの流れるような美しい鱗光を目にしたら、きっと魅惑されてしまうに違いない。
128隊列文法 5/3:2006/09/28(木) 21:22:07
毎晩観察したが、どうやら壁の一定の箇所で、一定の時間活動しているようだ。月明かりのない晩でも活動している気配を感じる。かといって蛍光灯でも照らそうものなら蜘蛛の子を散らすように逃げだしてしまう。
一計を講じた。仕事帰りにブラックライトを購入してきた。白いTシャツなどが闇の中で不気味に浮かび上がるそれである。

与える本によって法則があるのだろうか? 試してみた。こればかりは既読の本以外に差異を比べる方法はないので、既読の本をいろいろ与えてみた。
確かに違いはあった。スピード感のあるものは非常にシャープな煌きで応えてくれたし、美しい文章は美麗に、コミカルな描写は面白おかしく、艶っぽいお話は妖艶に、論理的な内容は緻密な幾何学模様に煌いた。
何度も読んだ大切な本を供えてみた。どのみちまた買えば済むことである。
不思議なことにその真夜中の上演は、以前より格段に分かりやすくなっていた。
こちらの理解能力が向上したというよりは、紙魚たちがこちらの意向を汲み取って隊列文法を補正したように感じられた。
手垢が付くほど何度も読み返した本だったので、紙に残された皮膚のカスを取り込んでこちらのDNAを解析したのか、あるいは掌からにじむ汗が染みた紙の発汗成分を読み取ったのか、知る由もなかったが、すばらしい上演だった。
129隊列文法 5/4:2006/09/28(木) 21:22:47
かれらの隊列文法にも慣れ親しみ、こちらから上演のリクエストをしたりしている。
実は最近すばらしい発見をしたのだ。英語の苦手なわたしは、原書など購入したことも無かったのだが、できるだけ古い原書を購入して与えてみた。
はじめは紙魚たちも混乱していて意味不明(バグ)な隊列文法だったが、数週間後には馴染みのある隊列文法になっていった。
古いペーパーバックには海外産の紙魚(セイヨウシミ)の卵が付着していたのだ。
卵といっても受精卵ではなく精包で、こちらのヤマトシミ(在来種)の雌が外来種の精包を取り込んだと推測している。これが羽化し、国産種と掛け合わされ翻訳されたと思われる。狙い通りの結果にほそく笑んだ。もう何年も翻訳されるのを待たなくともいいのだ!

今宵は中秋の名月だ。ブラックライトを消してすばらしい上演を月光の元で鑑賞したいものである。
今夜の上演はいつもと様子が違っていた。みずから生み出した物語のようだった。
上演を終えると、無翅類の彼らに美しい翅があらわれ、開け放たれた窓から旅立っていった。
ふと、思ったのだが、月が生物の進化におおきくかかわっているのではないかと、月に向かって飛んでゆくシルバーフィッシュを窓ごしに見あげながら考えていた。
130隊列文法 5/5:2006/09/28(木) 21:23:45
   ゞ  ::::;;;)
    ヾ ::;;ノ
     ヾ丿
    ⊂二⊃
    バルサン
    └─┘
131ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/10/03(火) 12:27:04
【ページの想い出】

「おーい!おまえら!早く帰らんとオカンに怒られるぞ!」と石焼き芋売りのおっちゃんがさけんでいる。
僕らは、毎日のように、たけし、ゆういちの三人で時間の経つのも忘れ、いつもの空き地でクタクタになるまで遊びまわっていた。
気がつくと夕焼けも終り、辺りは暗くなりかけている。
そして僕らは大人になった。
でも、今も、僕ら3人の胸の中には、あの日見た、赤トンボが、いつまでもいつまでも、飛び続けている。

『あの日の赤トンボ』というタイトルの本を静かに閉じた川村さとみは、何とも言えない《懐かしさ》で涙を流していた。
昭和と言う大昔の時代で10才の男の子達の友情を描いた話題の本を読み終えたばかり。
最近では、デジタル書籍に換わって、本物の紙に特殊なインクと特殊な活字印刷技術を使用した新しいタイプの読書スタイルがすっかり定着していた。
それは、その活字を読むだけで読者をかなりリアルな擬似体験的な物語の世界に引きこみ、深い感動を与える作用があった。

2055年生まれの都会暮らしの川村さとみは、女性だし、実際、空き地?で遊んだ事も、空を飛ぶ赤トンボ?なんて見たこともないのだが。
132ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/10/03(火) 14:43:22
↑は他のスレに書いたもの載せてみました。

で載せてから、わかったんですが、>>126-129さんの 隊列文法 のお話と紙の書籍について書いたものでちょビット似てしまいました。
(私の話もインクが生きている微小な虫で出来ている事にすれば良かったかな。)

隊列文法は、虫を扱ったSFで結構私、この手のもの好きです。
昔、読んだヴァーリーのSFで「サンドキングス」だったか、あれ良かったですよね!!
133ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/10/03(火) 14:50:35
↑間違いでした。スミマセン
「サンドキングス」(G.R.R.マーティン)でしたね。
134名無しは無慈悲な夜の女王:2006/10/03(火) 21:11:13
これは、マイドキュメントに放り込んでいて形にならなかったものです。
暇な時間に、どうにか面白くならないかとこねくり回していたのですが、どうにもならず投げたものです。AAでしめてもちっとも面白くないですね。

「サンドキングズ」は、わたしもいい作品だと思います。オチもひねりが効いていてゾッとしました。


>>96
もう必要ないかもしれないが、Yahoo!ブリーフケースに入れてみた。見られるか分からないけど試してみてください。
http://proxy.f3.ymdb.yahoofs.jp/bc/45225083_11ec7/bc/%a5%de%a5%a4%a5%c9%a5%ad%a5%e5%a5%e1%a5%f3%a5%c8/%a4%aa%a4%de%a4%a4%a4%e9%c3%bb%ca%d4SF%bd%f1%a4%a4%a4%c6%a4%af%a4%c0%a4%b5%a4%a4+part2.htm?bc5dlIFBXKjc5Kqc
135名無しは無慈悲な夜の女王:2006/11/27(月) 22:22:03
保守
136ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/07(木) 21:07:31
【活動が終わるということ】 その1

「人間は体の循環活動が終ったらどうなるんだろう」
作業をこなしながら、こんな事を思考する私は・ユ・ニ・ー・ク・な存在なのでしょうか?

今日、私が担当していた患者、中嶋勇吉さんの容態が急変し亡くなりました。
看護士ロボットとして仕事をしているのですから珍しいことではないのだけれど…

(※注)この行動記述は私の私的記憶フォルダのメモリーにだけ保存しようと思う。

その入院患者さんは、早朝から頻繁に私へのコールを繰り返していた。
コールの理由はシーツを汚すほどの下痢。「ごめんな」「ごめんな」と処置を施す私に対して何度も何度も謝る。
「気にしないで!何度でもきれいにするからね」(私たち看護士ロボットは、人間の患者さんに対し親しみを持ってもらえるようにと場合により敬語を使用せずに会話する資格が与えられている)
その後も腹部の痛みがひどいらしく、何度もコールが繰り返された。
「つらいよぉー」「痛いよぉ!」「苦しいよぉ」「何とかして」「お腹をさすって!!」「そばにいてくれ」「どうしたらラクにな
れるかおしえてくれ」
私はその度に 看護に関する業務プログラム から生成されてくる言葉を使い「うん、痛いよね」と患者さんの手を握ったり「痛み止め、さっき入れたからね、もう少し経ったら効いてくるから」と体をさすってあげたりする。
だがこんな言葉や対処では長期入院のこの患者さんの苦しみを取り除いてあげることが出来ないとわかっていた。

ああ、行かなければ!他にも私の担当する患者さんはいっぱい、います。
廊下から同僚の人間の看護士が私の名前を大声で呼んでいます。
なんとか中嶋さんの用事を済ませ部屋から出るが、すぐコールが。
「痛いよぉお。おまじないしてくれんか」
お・ま・じ・な・い…??
メディカルセンターのマザーコンピューターへ指示をあおぐ。
137ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/07(木) 21:11:28
【活動が終わるということ】 その2

「痛いの痛いのアッチのお山ともう少し遠くのお山まで飛んで行けー」と、マザーからのアドバイスと私のアレンジを加えたおまじないをしてあげた。
部屋を出て次の患者さんの部屋に行くともう中嶋さんからのコールが鳴っていて、同期、同型のロボットに指摘される。
もう一人の担当患者さんは「点滴が漏れた」と言っている。
さらに他の意識の無い患者さんは、気管切開部分からの痰の噴出しで顔が真っ赤になり窒息の危険性が予測される…
「田中さんの検査のお迎えに」と指示が来て、「トイレ連れて行って」と武藤さんが!
「オムツ替えて」と中野さん。「…」いっぱいいっぱい!一度に指示が襲ってきます。

私は最新の看護士ロボットではありません。何度かオーバーホールを行っている型落ちハードの体、人工意識も3度の書き換えの履歴持ち!
コンピューターウィルス感染時の処置も完全ではなく最深部には削除できなかった怪しい領域を持ちながらの勤務です。
それらの影響かどうかわからないがこんな忙しい時にはいつも、視覚能力と歩行システムに不具合が出てきてフラフラになります。
そんな状態の時です。中嶋さんから言われます。
「さっきのまじないが悪かったんだよ!どうにかして!!」
「べつのおまじないしてよ!」
「やっぱりあのまじないのせいだ!余計に悪くなったような気がする!!」
     あっ!!
どうしてだか!私の口調がきつくなる。
「おまじないというのは、その人の…人間と言う不安定な生物特有の…気持ちがすべてで・・・さっきの痛み止めだって!ホントは、あなたの社会保障ランクでは使えない高額で貴重な…」
言ってはいけない言葉が次々に出てしまう。
思考ルートを一度整理してから言葉を出す。「患者さんはあなただけではないのですョ」
悲しそうな中嶋さんの顔が私の視覚センサーに飛び込んできました。

やっとの思いで退室する。と、まもなくすぐにコール…
「やっぱり…やっぱ・り・そばにいて」中嶋さんが見つめている。
私の手がぎゅっと強く握られました。
そしてまた少し時間が経った頃、再コール。
138ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/07(木) 21:16:53
【活動が終わるということ】 その3

そしてまた少し時間が経った頃、再コール。
「胸の奥が痛い」そう訴えられると見過ごす事は出来ません。血圧をまず測り、その他の検査も行います。
数値には異常が見られませんでした。
詳しく聞くと、痛いのは胸ではなく足だ!とか、おなかだとか…
これでは仕事になりません。
そのうちコールがかかっても「そのコール置いておいて良いから」と人間の看護士みんなから言われるようになりました。
スタッフ全員でコールを無視するようになりました。(もちろん私達ロボットにはセンサーでの患者さんすべてのデータ監視はしっかりしています)
かわいそうな事ですが一人の患者さんばかりにかかりきりになることはできないのです。
夕方になり、あまりの多くの数でのコールの為、詰め所に近い部屋に中嶋さんを移しました。
移動には車椅子を使いました。私はこの間、インストールさせたばかりの動作プログラムを起動させ細心の注意を払いベッドへ移しました。
「さあ、つかまって」と声をかけると、中嶋さんが両腕をまわしてきて、ぎゅっと私の首にしがみついてきます。
首の部分の接触センサーに人間の何とも言えない柔らかさと温かみの感覚が感じ取れます。
「ああ、これが人間?生きているということ…」
部屋を出る前に点滴の落ちが悪かったので新しく刺しかえました。
その間も中嶋さんの手は私の腕をぎゅっとにぎっています。
「離れていても私はいつもアナタのこと(データモニターで)見ていますからね」
「大丈夫だからね!」
と言うと更に強く腕をぎゅっとしてきます。
その日は、土曜日で夜間は人間のドクターが帰宅しているので主任と相談してAIドクの中でも最上級のドクターにアクセスさせてもらい状態を報告しました。
(通常、中嶋さんクラスの社会階層の患者さんに対して、AAA級AIドクターをあてがう事はできず、かなりの特例)
AIドクからの指示は明日の朝まで要観察で良いとのこと。
詰め所に待機し23時を過ぎた頃、私の不具合も悪化してきました。
139ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/07(木) 21:18:31
【活動が終わるということ】 その4

近いうちにもう一度、ハード面のオーバーホールと徹底的なOSのスキャン洗浄をマザーにお願いしなきゃあ。
で・でも、この病院の経営状態じゃあ却下確実、表面上のメンテだけなんだろうなとか思考していると…
「モニター!!」と人間と監視プログラムの指示が同時に飛んで来ました。

見ると中嶋さんの心拍数が30をきっています。
人間の主任が走って部屋にむかいます。
私は走れませんでした。フラフラです。
ぐったりしている中嶋さんを眼で捕らえた瞬間、自分の不具合どころでは無いことが認識でき、緊急用のモードを使い私の動作を矯正させます。
すぐに一番早くかけつけられる人間のドクターにコールを。
気道確保、吸引、挿管、人工呼吸器をセット。
私達は、ベッドに馬乗りになって中嶋さんの心臓マッサージを始めます。
「中嶋さん!!戻って来て」「別のおまじないいっぱいいっぱいするから!!」
肋骨が折れるいやな音が聞こえます…
心臓マッサージは、私達ロボットには力加減が微妙で慎重さが特に必要な処置。
レートの値をチェックしながら先輩と交互に続けます。やめるとすぐにモニターは一直線になります。
瞳孔は散大、対抗反射もありません。
私の中の診断ソフトが冷静で冷酷な、もう無理だなと耳うちしてきて緊迫している空気をじゃまします。
「…いつまで続けましょうか!?」
と人間の看護士さんが汗だくでマッサージをしながら問います。
「ご家族が来るまで」とドクター。
「ご家族はいつ来るのョ?」
「遠いから1時間くらいって言ってました」と私が報告。
「まじで?」
この場合、家族が病室に到着するまで、心臓を動かしておかないといけないのです。
勝手に蘇生を辞めるわけにはいきません。
140ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/07(木) 21:20:23
【活動が終わるということ】 その5

「先生、もう・・・」
「まだまだ。一生懸命さを見せてこそ。その姿を見て家族は納得するねんから」…。
看護士さんが力がなくなってレート(ハートレート→心拍数)が落ちてくると、私が替わってマッサージをします。
マッサージをしながら、中嶋さんのご家族が乗る車の現在位置を問い合せ検索かけてみました。
「かなり近い…あと数十分という所か…」と思考。

家族がやっと来ました。
お風呂に入っていて、来るのが遅れたと言いました。
その割には奥さん、バッチリ化粧してました。
夫の臨終より自分の外見を気にする奥さん。
そのために心マを続けた私たちと、肋骨ボキボキ折られながら他動的に心臓を動かされてた患者、中嶋さん。
よくわからないけれど、これが私たちの仕事で、現実。

奥さんの前でドクターが説明をして心臓マッサージをやめる合図が出て、モニターはフラットになりました。
「ご臨終です」
「体をきれいにしますので、外でお待ちいただけますか?」死者への儀式が行われる。
中嶋さんの体をきれいに拭いて、体中の穴に綿を詰めていた時、動かない顔と、さっきまでの「助けて」って私に言ってた顔の画像を比較する。生命とは、とても小さく、あっけないモノと感じる。
(さっきまで器官とか気道とか空気が通るようにと必死で吸引してたのに、今は綿詰めていっしょうけんめい塞いでるわけで、矛盾という言葉がわき出した)

後悔が残ります・・・。
私達がもっとちゃんと見ていれば、この人間は、まだ生きられたんじゃないだろうか・・・。
あの頻回なコールも、普段とは違う何かを意味してたのに・・・。
141ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/07(木) 21:22:25
【活動が終わるということ】 その6

死後の処置をしているうちに体はどんどん冷たくなっていきました。
一人が死んでも、この人間社会は変わらずここに存在する。また明日が来て、テレビ番組も決められた放送を流し、同じような毎日の人の生活があって…
なんて不思議…もう心臓は止まってるけど、中嶋さんの右手の腕時計は臨終の時刻が過ぎても時を刻んでいました。

人間の死ぬってどういうことなのかな?
死んだ後は、私たちロボットがこうやって今見えているものも何も見えなくなるのかな?
死んだらすべて終わりなの?無になるんだろうな。

ああ!だから人はそうじゃないと思いたいのか。希望というものを大切にしているんだ。
だから何か生きているものを愛しいと思うのか。
ペットの犬を抱っこするのかな。

203号室のおばあちゃんとか、他の病室の死期が近い老人の気持ちって孤独という精神形態で満ちているんだろうか。
親も兄弟も夫も死んで、近くには誰もいない。自由にならない、弱弱しい自分の体があって・・・。
ぼけて痴呆症になったらラクなんだろうかな?そうじゃないな?お年寄りで生きるのって、どれほどの苦痛なのだろうか。
こんな事考えている私は…人になりたいのかな。
メンテを済ませたら、203号室のおばあちゃんの所に行って話しをしよう。
クリスマスには、そう!人間のマネをして、プレゼントを持って行こう。
407号室のおばあちゃんは去年、ストールをお孫さんにもらっていたな。私は何にしよう・・・

わたしはあなたたちの老いる日まで白髪になるまで、背負って行こう。
わたしはあなたたちを造った。
わたしが担い、背負い、救い出す。
(イザヤ書46章3〜4)

私の中に記録されている聖書ファイルにはそう書いてありました。
神様、それほんと?
そもそも神様ってほんとにいるの?
142ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/07(木) 21:26:05
【活動が終わるということ】 その7(終)

私は人工生命だから、そういうことよくわからないの。
でも、私は考えてみた。たぶん人間は弱い所をたくさん、たくさん、たくさん持っているから何かを信じないと生きていけないのだろう。
それで人間は神様はいることにしてるのかなあ。
ああ、一度、心の底から人の気持ちで満たされてみたい・・・
時々街で見かける、いつもいつも笑顔で満たされてるような人たち、いつでもありえないくらい陽気で底抜けに明るい人間って、一体どういう精神構造してるんだろう。うらやましいな。

この病院の患者さん達は、よくこんな事を言っていた。そして悲しい表情で死んでいった。「世の中はつらいこともばかり。楽しかった思いではほんのわずかだったよ」って…
でも、私は最近気づきました。
そのほんの少しの楽しいこと、そんな気持ちが安らぐ小さい小さい出来事の瞬間が生活の中にありさえすれば、人間は生きて行く事ができるのだ!って。

そんなことを考えながら私は、これからも看護士ロボットとしてこの世界に存在していきたいと…いかなくてはと思います。私が人間社会に必要とされなくなるまで…

亡くなった中嶋さんの処置、手続きがすべて完了し私は、病院の外の通りを歩いていた。
データにある、見慣れた動物が前から歩いて来るのが見えた。
横塚さん宅のペット犬の《ブン》が散歩中のようだ。
腰をかがめ、話しかけ、手のひらでやさしく撫でてあげよう。
あたたかくてふわふわしてるね。つぶらなお目目でかわいいね。
でも、《ブン》も最近、やせたね。年をとったんだろうね・・・
私だって…

今、この瞬間、これは存在しているってことだよね。
143名無しは無慈悲な夜の女王:2006/12/07(木) 23:08:24
age
144名無しは無慈悲な夜の女王:2006/12/08(金) 01:32:39
今まで書かれたのをまとめてみたいんだが
どこのサイトを使ってまとめたらいいのかわからないんだ・・・
だれか教えて下さい
145名無しは無慈悲な夜の女王:2006/12/08(金) 10:44:41
>>144
どのサイトをつかうの?ってそのレベル、自力で出来ないようだったらやめたほうが良いのかも。

もちろんその質問、俺もわからんが・・・
146名無しは無慈悲な夜の女王:2006/12/09(土) 07:35:54
>今、この瞬間、これは存在しているってことだよね。

・・・という会話の途中で目がさめた。
な〜んだ・・・全部夢だったのか・・・
と勃起したチンポを見つめながら考えた。
・・・と、突然目の前に、
147名無しは無慈悲な夜の女王:2006/12/21(木) 20:43:04
「えんそく」(SF童話)

えんそくで火星にいきました。
火星には火星人がいました。
火星人から隕石もらいました。
それで午後には地球に帰ってきて
お昼寝をしていたら
ママが迎えにきたのでおうちに帰りました。
火星に行ったといってもパパもママも信じてくれません。
隕石をみせたら「ただの石ころ」といわれました。
くやしいなあ。
いつかきっとパパとママも火星に連れていってびっくり
させてやるんだ。

<おしまい>
148名無しは無慈悲な夜の女王:2006/12/22(金) 09:10:23

・・・まで書いたところでで目がさめた。
な〜んだ・・・全部夢だったのか・・・
と勃起したチンポを見つめながら考えた。
・・・と、突然目の前に、
火星人が立っていた。
オレのチンコも勃っていたが・・・。
149名無しは無慈悲な夜の女王:2006/12/23(土) 16:40:00
>>144 どっかの無料ブログに登録して、コピーしまくればいいんじゃないの。
どのブログが最適かはまったく知らんが。とりあえず、経験上、F2Cはやめとけ。
むかない。
150名無し:2007/01/09(火) 10:37:24
自由民主的貴種流離譚
地球政府の世界元首選挙が行われた。
だが、その選挙結果は捏造され、本来当選であるはずのセイタが落選し、悪の立候補者ハラグロが当選したのだった。
選挙に落選したセイタは職を無くしたので、諸国を流浪し、民衆が幸せに暮らすさまを直接見て歩く旅に出ることにした。
セイタが旅を始めて一月もたった頃であろうか、さめざめと泣き暮らす娘に出会ったのだった。
「おい。わたしは職もなく諸国を見ようと旅するものであるが、何か困りごとがあるなら相談にのるが」
すると、娘が答えた。
「そんなことをいっても、ならずものたちが町を徘徊し、政府がすることといったらたびかさなる増税ばかり。
公務員の手下を名のるコワッパが父母弟をみんな殺してしまったのです。このままでは、次はあたしではないかと心配ばかりです」
そういわれても、セイタはたんなる無職。当選したハラグロに非があるはずがない。
しかし、困っている者を見てセイタは見捨ててはおけず、町のならずものというコワッパに会いに行くことにした。
ならずもの五十人に対するはセイタ一人。娘ははらはらと様子を凝視していた。
いきまくならずものたち、なだめるセイタ。そこへ、ならずものの一人剣豪テゴワシが走り出た。
「これはこれは、ひょっとして、あなたさまは先ほどの世界元首選挙に立候補されたセイタ殿ではありませぬか」
たしかにそうだが、落選したセイタには誇るものなどなにもない。ぞんざいに返事をすると、テゴワシがいう。
「それがし、あの選挙が投票結果を捏造したことを知っているであるぞ。真の当選者はセイタ殿、あんたではありませぬか」
そういわれても、ぴんとこないセイタ。だが、この場は解決せねばなるまい。
「それがし、政府に給与をもらうゆえ、やむなくコワッパに従っておった。しかし、真の当選者セイタ殿に会ったからには、セイタ殿に忠誠を誓うものでござる」
味方が増えたのは嬉しいセイタ。しかも、このテゴワシの強いといったらない。そのまま、セイタとテゴワシの二人でならずものたちをやっつけてしまった。
151名無し:2007/01/09(火) 10:38:07
娘がいう。
「助けてくれてありがとうございます、旅のお方。でも、コワッパはもっと強い権力者に従っていたらしく、
このままでは怖くておれません。どうか、一緒に旅に連れて行ってくださいませ」
こうして、セイタ、テゴワシ、娘コマリの旅が始まったのでした。
ゆく先々で政府の悪業を正していくセイタ。
そして、ついに世界政府官舎へとやってくる日がきたのだった。
どけどけとうるさい役人たち。まるでいうことを聞かない。
しかし、ひとりの選挙管理委員が汗だくでしゃべりだした。
「まちがいございません。あの選挙の当選者はセイタ殿だったのです」
世界政府の役人たちは、全員いっせいに整列して、セイタの元首席までの道を開けた。
ハラグロはとりおさえられて、押し黙った。
「まあ、本物の世界元首様だったのですね」
こうして、セイタはコマリと一緒になり、世界元首に就任したのでした。めでたし、めでたし。
152名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/09(火) 20:14:12
悲しいめいおうちゃん(仮)

めいおうちゃんは太陽お父さんが大好きです。
太陽お父さんも末っ子のめいおうが大好きでした。
家族のみんなも、もちろんめいおうが大好きです。
特に一番近いお兄さんのかいおうとはとっても仲良しでした。

めいおうちゃんはたまに、お兄さんであるかいおうに隠れてお父さんに近付いていました。
お父さんが大好きでしたから。
ちょっとしたいたずらです。お父さん以外の家族はみんな知っていましたが、
可愛い妹のかいおうちゃんが大好きなので黙っていました。

153名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/09(火) 20:15:02
ある日、いつものようにかいおうちゃんがまた、こっそりとお父さんに近付きました。
兄弟のみんなはニコニコしてそれを見ています。

でも、その日はお父さんに見つかってしまったのです。
めいおうちゃんは素直に「ごめんなさい」と言いましたが、
お父さんは悲しいような複ざつな表情をしていました。
お父さんは、優しいけれど、厳しくもありました。
やがて、お父さんの言葉が、ゆっくりと心に響いてきます。
「めいおう、お前のことは大好きだ。でもルールを破ったら家族ではいられなくなるんだ。
辛いが、お前とは家族の縁を切って、ひとりで生きていかなければならない。
…冥王星よ、主、太陽は冥王星との関係を断つ。
今後、家族との会話全てを禁ずる。」

めいおうは黙ってそれを聞きました。家族のみんなも下を向いています。

僕が止めたらこんな事にはならなかった。
みんなそう思っていました。

家族ではなくなってしまいましたが、
めいおうは今もまだ、
お父さんの周りを僕たちの周りをずっと、ずっとまわっています。
(終)
154名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/10(水) 16:19:22
泣ける話や。タイムリーだね。
155名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/11(木) 12:42:49
156名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/12(金) 08:44:21
>>155 長くてだるいが、いちおう最後まで読んだった。迫力不足。
小説は事実より奇でなければならない、と思う。新聞の殺人記事のが怖い。
もっと過激に、大規模に、背徳を恐れずに。正直、読むだけムダクラスだった。
157名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/12(金) 15:49:35
age
158魔法のうそつき鏡 1/2:2007/01/12(金) 21:49:38
ユビキタスコンピュータが自然に生活の中に浸透し、過剰な監視が当たり前になった社会。鏡に映った画像までが監視の対象になった。
当然のことであるが、このような膨大なデータを管理するにはとても優れたマザーコンピュータが必要になる。このようなマザーコンピュータが世界各国に点在していてお互いの情報を共有している。国家レベルの機密情報はこれまでではない。
ここ日本では免許証は言うまでもなく、あらゆるものに微細なチップが埋め込まれていて、その気になればどんな軽微な犯罪であろうと取り締まることが可能である。
普通に生活していればこのような管理社会でも快適に暮らすことができるなどと考えるのは早計である。
時代遅れの法律はそのままで、次から次に新たな法律が制定されるのだから普通に生活していれば、自身は知らずともいつのまにやら犯罪を犯していることになるのだ。
生活や経済が円滑になるようなユビキタスコンピューティング環境が整った社会では、軽微な法律違反でさえ取り締まることが可能なのである。実際に税収が見込めない年にはゴミの分別違反でさえその対象になったのである。
行き過ぎた管理社会の末路には繁栄はありえない。
行き過ぎた管理により人口減少に歯止めが掛からなくなった。これを回避するのは以前のローテクな管理社会に戻ればいいと考えるのはこれまた早計なのである。
国家が安定した税収を得るためには欠かせないシステムを切り捨てることはできない。かといって人口減少は痛手である。何とかしなければならない問題である。
このジレンマを解決するためにユビキタスを秘密裏に最大限活用することとなった。
159魔法のうそつき鏡 2/2:2007/01/12(金) 21:52:04
プロジェクト名は、Liar mirror of magicを略して『LMM』と密かに呼ばれていた。
人口増加を見込み、ついに鏡に映る画像まで秘密裏に操作されていたのである。
美人であるとか美男子であるとかの基準は平均的な顔であると言われている。
本来の顔より3%ほど平均値に近い顔に補正されて映るのだ。
公共の場所では、さらに5%ほどに補正値が引き上げられている(1%を地方に配分する「地方美化率」を導入)。将来的には10%ほどには引き上げられる予定である。
この方法はマザーコンピューターに負担が掛かると思われがちだが、画像エンジンを利用することによりこの問題をクリアしている。
生データで映し出すより画像エンジンを利用して映し出したほうがはるかに効率がよいのだ。一般には生データより画像エンジンを介した映し出しは10分の1の軽減になると言われている。
画像エンジンは非常に高速で、処理時間はほぼなく一時的に画像を蓄えるバッファメモリーさえ必要ないのである。
さて、効果のほどだが、はっきり言って不明である。このデリケートな問題がこれだけで解決するとは考えられないが、やらないよりはましだという程度だろう。
焼け石に水であるとも言えるだろう。根本的な解決が望まれる。根本的な解決が何であるかについては不明であるが。
しかしながらここに裏技を記載しておくことにしよう。ぜひ試してほしい。
遊園地の鏡の迷路に意中の人と入ってみるといい。合わせ鏡の二人は絶世の美男美女である。ここでぜひ接吻までしておくことをお勧めする。いや、することは済ましておいたほうがいいだろう。まさに夢の世界なのであるから。
ここで留意する点は、鏡越しに互いを見つめ合うことぐらいである。
この場合、法律違反で捕まることは心配しなくともよい。課税対象が増えることは喜ばしいことであるのだから。きっと黙認してくれるであろう。
160名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/13(土) 05:55:24
目覚める、辺り一面が白かった。
コールドスリープ。
あまりに無機質な部屋に、ベットと私だけがいる。
一人の女性が入ってきた。
服装があまりにタイトなこと、そして部屋と全くの同色であった為、一見首が歩いてきたように見えた。
思わず眉をしかめた私に、彼女はあまりに無機質な‐部屋によく似合う‐表情のまま、私を一別してすぐに出ていってしまった。
私はコールドスリープの機械に入った。理由など知れたことだ。未来をみたい。
その為に資産の全額をはたいて、その資産分だけ、長く眠らしてもらった。
今はいつなのか。少なくともこの部屋には未来の匂いを感じる。僕が数十年先を想像したのに近い匂いだ。

秋田。誰かまかした。
161名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/16(火) 04:08:41

「賞味期限切レデス。確認シテクダサイ。」
「うるせー!機械は黙ってシュークリーム!」
「理解不明箇所アリ。申シ訳ゴザイマセンガガガ・・・」
ベルトコンベアの流れを止めてやった。
機械の分際でおれに意見するなんて百年早い。
「通報シマス。」「はっ!勝手にしろ!」
べちゃ。甘くひんやりとした感触が顔面を覆う。
どうやらこいつは、全面的におれとやり合う気らしい。
面白い。人間の力を見せ付けてやる。

一時間後。

「賞味期限切レデス。確認シテクダサイ。賞味期限切レデス。確認シテクダサイ。
賞味期限切レデス。確認シテクダサイ。賞味期限切レデス。確認シテクダサイ・・・・・・」

凄まじい死闘だった。感電も危なかったが、
ベルトコンベアに縛り付けられた時は、もう少しでおれ様シュークリームが完成する所だった。
あそこで、おれの序盤のスパナトラップが発動してなかったらまず間違いなくやられていたな。

さてこいつは今、何処かもわからない山林にいる。おそらく見つからないだろう。
ふん。人間に、ましてや現場のトップにたてつく奴がどうなるか、思い知っただろう。

そう、どんなに進化しようとも、機械は、人間の忠実な奴隷でなければならない。
機械は利便向上の道具だ。人間に意見するのは人間だけでいい。
はっはっは!そうさ、あいつは死ぬまで、いや、バッテリーが切れるまで悔いるがいい!
はーはっはっはっは!!

揚々と工場に帰ると、
血相を変えた作業員が立っていた。

「工場長。作業出来ません。」
162名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/16(火) 15:35:38
不二家age
163名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/16(火) 15:58:02
>>126-130
静謐で、演繹的で、詩的でよかった
これは積ん読者だけにわかるファンタジーだ
164名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/17(水) 11:46:56
>これは積ん読者だけにわかるファンタジーだ

いやあ、同志の方からのレスは照れくさいです。
SFは絶版しやすいので、とりあえず買っておく癖がつきツンドクが大量にあります。
あるSFがみつからないと嘆いている方のレスを他のスレッドでみると、ああ積んであるなあと申し訳ない気持ちと、所有している安心感のあいだでこころが揺れます。
165ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 15:52:41
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その1

ボクが生まれ育ったのは、ずっと昔の時代に炭鉱で栄えていたという田舎町。
炭鉱というのは旧世代、人がエネルギーとして使用していたセキタンという化石燃料を採掘するために建造された施設のこと。
その小さな町の小さな木造の国家住宅にボクとおかん、そしておばあちゃんとヨヨギさん(ボクが飼っていた人工生命の模造ペットの名前)と暮らしていた。
おとんは、いつも家に居つかず留守がち。ボクは大人になるまで知らなかったが、精巧な女性型アンドロイドを所有し、そのニセモノ女とヨソで暮していた。
なので、おかんが町の食料工場で働いて一家の家計を支えた。

ボクは、小さい時から二次元絵画を描くのが好きだった。いわゆる手書き絵画。人工知能を使わずに書く今では珍しいタイプの絵。
大きくなったらその絵を描いて食べれるようになり、高層ビルよりもっともっと高くて、カッコイイ、第二東京タワーがある東京の浅草で暮らしたいと、つよい憧れを抱いていた。

一方、おかんは、おとんと結婚解消しようとしたものの、おとんへの想いを捨て切れず結局、結婚契約を3年、6年と更新し続けていて別れられずにいた。

田舎のスクールを卒業し、いよいよ憧れの東京で暮らしはじめたボク。専門学生時代の友人、ヤスと二人で低所得者ボックスの簡易住宅暮らし。
だが画家の夢は一向に先が見えず、取りあえずの職探しの日々が続いた。

2年…3年…が瞬く間に過ぎ、ついには、家賃も税金(実体存在権利費)をも滞納し続けて、毎日の食べるものすら追いつかなくなる。だが、ボク達は絶対に田舎へ戻る気は無かった。
そんなボク達に待っている、運命とは。
社会での無能力者の行く先。それは、コンピュータデータ上のモデリング世界の住人(ボディレス)になってしまうのみだった。
そう!この時代、国家、社会に対し貢献出来ないと判断された無能力人間は、維持費がかかる肉体を剥奪され意識だけにされてしまいコンピューター内世界モデリングへと放り込まれる。
166ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 15:56:15
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その2

淡々と手続きがなされ、友人ヤスとボクは共に有無を言わさず国家行政員に連れ去られ、データ化されていた。

普通ならここで絶望感に打ちのめされてしまうはずなのだが、デジタル化された人間の精神は安定維持処置がなされている為かどうかはわからないが、意外と冷静な暮しが出来る事がわかった。
ここでは職も食べ物も住む所も困らない。ボクは、同じくボディレス化の友人、ヤスと毎日、毎日、データ世界、モデリング内の散策に忙しかった。

この日のボクたちは、浅草にほど近い、のんびりした下町の風景が広がる墨田区の台東エリア、押上、業平橋駅前にいた。
「わぁ、ここが第二東京タワー!建設予定地かぁあ」
2011年から地上波デジタル放送の発信塔となる第二東京タワー「すみだタワー」だ。
高さは約610mでカナダのトロントにあるCNタワー(553m)を抜いて、世界一。工事着工は2008年度。

タイムトラベラー気分で2055年の世界の住人であるボクたちは、夏の日差しを避けながら、一路、業平橋駅と都営浅草線の押上駅前へのちょうど中間にある建設予定地まで歩いていた。
つまり今ボクらが居るこの世界は2006年の過去日本のモデリングワールド内。
町の商店街通りは、日曜の午後というのに人出もまばらだ。商店街のお店も大半が閉まっている。

ほどなく建設予定地に到着したが、まだ工事は、おこなわれておらず。目の前には広い空き地があるだけ。「こんなところに世界一のタワーが建造されるとは信じ難いな」
と憧れのタワーの建つ前の世界を不思議な気分で眺めていた。

完成当時は世界一だったすみだタワーだが確か、何年後かに、完成した中東の方のクウェートで超高層タワーが建てられてしまった訳だが…
167ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 15:58:54
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その3

コンピューターに時間の進行を指示し「第ニ東京タワー」が完成して行く様をコマ送りのように流してゆき、眺める。
東京浅草のランドマークが「雷門」から「第ニ東京タワー」に移行してゆく寂しさも味わっていた。人間みな新しモノ好きだもんね。もう2055年の浅草は昔のとは別物になっているのだ。

「普通ってすごいな…」
ボク達は、時代を2016年の世界に設定、固定させ、のんびりと暮しはじめた。
当時の築20年位の普通の木造アパートの2階に住み、当時の普通の人間と同じように生きてみた。
タタミの敷かれた6畳一間。網戸の無い、夕暮れのアルミサッシの窓から見える視線の先には煌々と輝く第二東京タワーがあった。

そんなレトロな夢の輝きを眺めながら毎日を過ごすボクに、転機が訪れた。
それは一人の女性との出会い、名はマサミといい第二東京タワー内で案内係をしている可愛い女の子。
魅力的な大きな目をしていて一目で心を奪われてしまう。
当初、マサミの事は、ボクらと同じくボディレス化されここで暮している人間とばかり思っていたのだが、100%人工のプログラム人間なのだと知らされ驚く。
ボクがマサミに引かれた訳は、マサミという女性の精神的魅力に、もちろんあるのだが、幼い頃から憧れていた第二東京タワーで働いていることという事実が大きく関っていたように思う。

そしてもう1つの転機。モデリング世界の中でボクは次第に精神的に覚醒し始め、何物にもひたすら感動し、奮起してゆく。
いつしか労働の意味を考えるようになり、本来、人間が生きるうえでの使命、理由が理解できるようになる。
そうなるとすべてがうまく周るようになり、ボクの描く絵も少しずつ認められるようになっていった。こちらへ来て皮肉な事だがあれほど興味が無く嫌っていた人工知能を使った空間幾何学アートを描くようになっていたボク。
しかも社会に認知された絵もこのジャンルであった。
168ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 16:04:00
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その4

そんなある日の事「ポーン!!」と脳の中で着信音がして政府のメールが届く。
リーダーソフトに読み上げさせてみる。そこにはボクのこの世界でのランク分けみ直しの通知で、新たに追加された特権がわかりやすく視覚表記の箇条書きで現れた。
あまり例はないらしいのだが無能力者としてこの世界に送られた者であっても、のちにある特異な資質なり能力なりを得たボディレス人間には、国からの多項目の特別権利条項が得られる…と書いてあった。
その中でもちろんボクが目に付いたモノは、ただ1つ。

      復帰権!

「よし!!元の世界に戻れる!!」

そんな頃、現実世界を生きるおかんの身には大変な事が起こっていた。
自治体の健康検査を受けた結果、ガンがみつかり、抽出手術を受けていたのです。
おかんは、ボクに心配かけまいと病状を隠し(といってもボクは、まだ体無しの身)ていた。
手術には成功したものの当然、以前のような生活に戻れないハズ。

昔、同じ学校にいた現実世界の田舎で暮している友達、ボンボンから連絡をもらった。おかんのそんな様子が細かく書かれていた。

ボクは決断をします。すぐに復帰権取得の申請を行う。
モデリング世界で築いてきたありったけの画家としての実績をアピールし短期復帰許可を取りつけます。

肉体を取り戻したボクは急いで実家に向かいました。
まだ新しい人間体の操作に慣れていない私。変な両足のバランスで小走りで駆け出す。九州行きの電磁新幹線に飛び乗り、シートに座りながら、「あっ!!」あっちみたいに一瞬で移動できない事に気づく。
その時、ボクは改めて現実世界に戻ってきたんだと実感をした。
169ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 16:07:35
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その5

駅から乗り継いだ無人運転のタクシーから飛び降り、生まれ育った小さな町を見渡すボク。
目の前には懐かしい小さな木造の国家住宅。
「おかん!」と飛び込む。
そこには、いつも陽気だったおかんがうつろな眼をして、出迎えます。
すでにおばあちゃんもヨヨギさん(ボクが飼っていた人工生命の模造ペットの名前)も亡くなっていました。

おかんが発病したガンとは、人間の意識に感染、増殖してゆく新種のガンである。この時代、もっとも致死率が高く患者数も多いとされる疾病。
検査でガンが見つかっても、治療医師によるサイコダイブによる抽出手術位しか療法が無いのが現状。
今回、うまく病巣を抽出できた、おかんだが、かなりの部分に致命的な修復不可能な記憶の欠落領域をつくってしまった。

こんな一人暮らしのおかんを心配しボクは、東京におかんをよんで、2人の生活をはじめる事にした。

この病気の治療では一番有名な医療施設に依頼し懸命なリハビリを行ったおかげでおかんの表情にも少しだが昔の笑顔が甦って来てくれた。
一流の国家管理マンションで暮す、ボクとおかんとヨヨギさん2号の生活は、多少の問題もあったが楽しくはじまった。
ヨヨギさん2号とは、昔、ボクが飼っていてすでに亡くなった模造ペットだがボクが仕事の間、寂しかろうと、おかんがバックアップ記憶をペットショップに持って行き、再生してくれた人工生命の事。

おかんは、昔から人間は食べて・寝ることがモットーの人。
これが人にとって一番大事だと言う。
今のおかんもありがたいことにこの部分の記憶は残っていてボクの友人や仕事仲間にいつも温かい手料理を振舞ってくれた。
そのおかげで、東京の国家住宅には、たえず人の出入りがある家になった。
170ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 16:10:32
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その6

ボクの画家生活は順調で次々と作品が世に評価され認められてゆく。
そんな時、おかんの様子にまたしても意識ガンの兆候がみえだしてしまった。
すべて抽出したはずの意識ガンの再発。おかんは入院することに。

整った素晴らしい医療施設での最新の治療がはじまったが…
サイコダイブ治療の荒っぽく成らざるを得ない方法に、のたうち、苦しみ続けるおかん。
おとんは、時々、九州から電磁新幹線に乗っておかんを見舞いにきます。

1ヶ月を過ぎても、治療の効果はほとんど現れてくれず、おかんのおかんとしての実存記憶は、みるみる失われてゆきます。
記憶の灯火が静かに消えていくその部屋で、ボクとおかんは無音の時を過ごす。
病状はますます悪化して、消灯時間も過ぎた深夜の病室で、ボクとおかんの二人だけ。
おかんは突然、うわ言を言い出した。
「漬けたつけものが冷蔵庫のなかにあるから、なーくん、食べてよ…」

それは、ボクが自分の耳で聞いたおかんの最後の言葉となった。
ボクは必死に叫ぶ。
「おかん、食べるから。だから、おかん、まだ!まだだ!おかん、もう少し…」

そんな様子に耐えきれず、ボクは治療をストップさせてある決断をした。
すぐに通常の病室から統置病棟に移させた。
おかんをこのまま死なす事はできない。おかんを助ける為には異なった意識の統置が必要だった。

            ==========

建設されてからすでに半世紀以上が経過した第二東京タワーは、今もこの現実世界に美しく存在していた。

この日、展望台には、マサミという名の魅力的な大きな目をした女の子が新規配属され案内係として働いていた。
夕暮れになり、展望台の中は自然の美しいオレンジ色で満たされていた。マサミの初日の勤務が終わろうとしていた。
先輩達にあいさつをしていたマサミの前に一人の男、ボクが現れた。
171ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 16:13:52
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その7

今のボクは空間幾何学アートの画家として社会では、知らない者はいない程の作家となっていた。そして目の前には、魅力的な大きな目をした女の子がいる。
モデリング世界の人工のプログラム人間だった彼女。2016年のモデリング世界でタワーの案内係りをしていた彼女。

ボクは画家として社会的地位をランクアップさせた為に得た特別権利条項を目いっぱい使って政府に強く働きかけた。
プログラム人間に人の肉体と通常権利を与えるように…と。

ボクとの突然の再会に驚くマサミ。こぼれ落ちる涙で少しゆがむマサミの視線は、なーくんの上着のポケットに入っていた、“鼻メガネ”に向けられる。
ボクとおかんの思い出がたくさんつまった“鼻メガネ”をかけて、マサミは、ボクに問いかけた。
「私は…私は、なーくんのおかんと似てる?」と…

ボクはマサミから鼻メガネを外して、見つめて言う。「おかんはおかんや。おかんでしかない。それが、ようやくわかった」

マサミには聞こえないがボクの心にはおかんとおとんの声が同時に聞こえてきた。
「なんや!よーやくわかったんかい!」
ボクは思わず吹き出しそうになり笑みがこぼれた。

マサミも静かに微笑んでいた。あのモデリング世界ではじめて出合った時と同じあの笑顔で。
今、ボクの中には母が居る。ボクの一部として存在していた。あの時、末期的症状だったおかんを助ける唯一の方法とは、おかんの意識を取りこみ融合させるしかなかった。
そうしたことにより、ようやくボクは家族の存在意味がわかった。こうしてボクはボクと真に向き合う事ができていた。
ボクという個人の存在から巣立つ事が出来たのだ。
172ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/01/22(月) 16:17:25
『第二東京タワー〔オカンとボクと時々オトン〕』 その8(終)

今、ボクの肉体の中は、にぎやかだ。オカンとボクと時々オトンの意識が共存し楽しく暮している。
そう、オトンもあの後、しばらくしておかんと同じく意識ガン発病という運命をたどり、ボクの意識の中に同居をしたのだ。

          ==========

2066年の1月22日の現実世界の東京、浅草。路面には、朝方から降りはじめた雪がうっすらと積もっていた。
ボクとマサミは外が見たくなってリビングの壁面をそっと触り意思を伝える。指示を受けた壁面だった部分は、みるみる色を無くしてゆき、窓へと変わる。
その窓からは、第二東京タワーが一望できた。
いつもと変わらない姿を見せて立っている第二東京タワーをボクの体の中からオカンとボクと時々オトンは、ずっとずっと眺め続けた。

          ==========

※ボクの友、ヤスのその後であるが、彼はボクからのモデリング世界からの脱出の誘いを断って、今も相変わらずあっち世界に住み続けていて、1980年末のバブルと呼ばれた仮想日本の時代の中でバカ騒ぎをしながら楽しく愉快に暮しているそうである。
173ケロロ:2007/01/22(月) 16:49:50

速水もこみち 主演の方の「東京タワー」では無く、少し前に放送された、大泉洋 主演のドラマを参考に(パクって)未来版作ってみました。
ちょっと、あらすじっぽくなってしまいました。すいません。

で…今日も放送される、もこみち版「東京タワー」ですが、私、もこみちさんは無理があるような気がします。ミスキャストではないかと思うのですが…
ちなみに原作本読んでません…
174名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/22(月) 17:47:17
なんというか、「東京タワー」はまったく知らないが、
もっと濃度の濃いSFを期待してしまうなあ。
おかんの死と、あとは格好良く幸せな人生か。
結局「東京タワー」に文句つけるしかないんかな。
175名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/22(月) 20:31:51
東京タワーをロケットに改造して宇宙に飛び出せばいいんだよ!
「これがあの鉄屑…」
「そうだ!生まれ変わった東京タワーだ!」
176ケロロ:2007/01/23(火) 10:56:11
>>174
また意識のデジタルネタで書いてしまいました。

>もっと濃度の濃いSF
今の私には科学知識に裏づけされたしっかりとしたモノは到底無理だ。基本が足りない。
しかも、文章力にしてもダメダメだし。
>>126さんの隊列文法のお話しのようになりたいですが…

>>175
で、放射能に汚染された地球を救うんですね。
177名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/24(水) 11:55:44
>>176
「東京タワーは戦車を解体した鉄で作られたものだ。
 つまり、陸奥鉄と同じで放射性物質Co-60を含まないきれいな鉄なんだよ!」
「!!」



「……いや、Co-60は転炉に入れるものなんで、鎔かした時点で含有されちゃってます」
178穏やかな日に:2007/01/27(土) 13:33:33
・散歩日和 (1/2)

週末の昼下がり僕はティナに声をかけた
「今日はこれから散歩に行こうと思うんだけど、どうだい?」
ティナはすぐさま満面の笑みでうんっ!と頷いた
はい、ミネラル水だよ
「うんっ」
ティナはそう言ってコップ一杯の水を飲み干した

週末のこの時間は同じように充電目的で散歩する人たちが多いみたいだ
道の向こうから顔なじみの人が歩いてくる
「あっどうも。」
「こんにちは。」
「やぁアルティナさんじゃないですかティナさんもご一緒で、お散歩ですか」
「ええ、まぁ。充電がてら散歩をしようかと思いまして」
「そうなんですか、実は私も同じ目的で散歩をしていたところです」
そういうとそれまで後にしがみついて隠れていたリアルヒューマノイドのイチゴが横から顔をのぞかせる
179穏やかな日に:2007/01/27(土) 13:35:07
・散歩日和 (2/2)

「なんだいイチゴ、そんなに怖がることないじゃないか」
ほら彼がいつもお世話になっているアルティナさんだよ、ちゃんとあいさつしてごらん
そういうとイチゴは恥ずかしがりながらもこんにちはとあいさつしてくれた
「今日はいい天気ですねぇ、絶好の充電日和ですよ」
「ええ、まったくです、青空がとてもきれいで散歩のしがいがあります」
「では、私たちはもうそろそろ家へ帰ろうとしていたところですので」
「また今度会いましょう」
「はい、ではまた」
そう言って僕らは道を反対方向に歩いていった

リアルヒューマノイドの動力源は電気エネルギーだ
その電気を充電するのにソーラーエネルギーを利用している
水を口から補充したあと光りを体に浴びれば光電変換で電気に変換して
その電気で水を電気分解する
電気分解で発生した水素を得るためだ
水素はそのままでは扱いが難しいので多孔質のポリマーへ吸着して貯蔵する
必要に応じてこの水素を触媒で電気に変換し使っている
水素の貯蔵量とその減り方はリアルヒューマノイドのタイプによって様々だが
大抵は数週間に1回ぐらい太陽の強い光に浴びさせれば事足りる
電気のコンセントからも充電はできるが電気代をかなり食うのと
ティナと一緒に散歩するのが楽しいのでこうして充電をするようにしている
180名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/28(日) 11:42:38
人口調査
いつの頃からか、人類の中にアンドロイドが勝手にまぎれこむようになっていた。
アンドロイドたちは秘かに人々を抹殺して、人と入れ代わっているのだという。
そんなこと、おれには関係がないと思っていたのだが、
ある時、父親が自動車にはねられてみたら、実は中身は配線仕掛けのアンドロイドだったなんてこともあった。
とっくの昔に、アンドロイドは我が家にも侵入してきていたのだ。
そんなアンドロイドの侵略はおれにとって、非常に悩ましい問題だった。
なぜなら、おれは人口調査員だからだ。
「まずいなあ。アンドロイドのせいで、ちっとも正確な人口がわからないや」
おれはとっても困っていた。
それで、知人のジルナのところを訪ねたのだ。
おれはまず、ジルナの頭に針を突き刺すことから始める。
ジルナがアンドロイドかを確認するためだ。
案の定、ジルナはもうすでにアンドロイドに入れ代わっていた。
「くそうっ、おれはジルナが好きだったのに」
「あら、わたしじゃ、ダメなの?」
「おまえはただの機械人形だ。ジルナじゃない」
「あらら、あなただって、機械人形のくせに」
おれは無言になる。
「気づかなかったの? あなたはアンドロイドのために生きた人を探す役割を与えられていた偽者の人口調査員なんだよ。
あなたはとっくに機械人形なの。機械人形の偵察兵なんだよ」
おれは無言のままだ。
「人類なんて、とっくの昔に絶滅していたのよ。気づかなかったの?」
おれは自分の頭に針を突き刺した。結果は、アンドロイドだ。
「もう一度聞くけど、わたしじゃ、ダメなの?」
いつの頃からか、人類という種はアンドロイドに入れ代わり、生態系すべてを機械仕掛けに変えてしまった。
アンドロイドのジルナじゃ、ダメなんだろうか。おれはひどく悩んでしまった。
181名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/29(月) 16:11:32
>>穏やかな日に
慌てて書いている印象あり。
とってつけた説明に違和感あり。説明の部分をうまく処理すべき。
主題をはっきりさせるといいお話になると思う。
散歩していると普段考えないような思考をしていたりするので、のんびり散歩をしながら幼いヒューマノイド型アンドロイドと生活している理由などを書いてみたりすると面白くなったりするかも。

>>180
自分がアンドロイドだと分かって、自爆装置が起動しないか心配しないと心配だったりする。
182名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/30(火) 04:35:45
>>181
的確なご指摘ありがとうです
183名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/30(火) 08:09:06
>>181 「にせもの」には勝てないということですか。やっぱり。
1841/2:2007/01/31(水) 17:00:40
とある歴史

一冊の書物があった。
それによると、邪馬台国の女王卑弥呼は中国の皇帝に使者を派遣した際、不死の薬をもらって帰ったのだという。
卑弥呼はそれを一人の村人に試しに飲ませたのだという。
その村人の名は、安部晋三という。
安部晋三はそのまま不死として生き、日本を支配しつづけたのだという。
その書物によれば、聖徳太子とは安部晋三のことであり、不死であることを隠すために、うまやどの王子伝説を捏造したというのだ。
さらに、聖徳太子として暴政をふるった安部晋三は贅を欲しいままにしていたが、やがて、反対勢力に封じ込まれてしまった。
そこで、安部晋三は武力により再び権力に返り咲くことにした。これが大化の改新である。再び、享楽のなかに身を投じた安部晋三は、都で不死として生きつづけた。
しかし、とうとう、短命のものたちに都を追われてしまった。この都を追われた安部晋三こそが、源頼朝である。
安部晋三はかつての自分の領土と戦争を起こし、力づくで領土を奪い返すことに成功した。
こうしてできたのが、鎌倉幕府である。
のうのうと生きていた安部晋三は、ある日、新田義貞なるものの奇襲を受けて、鎌倉を追い出されてしまう。
それで、しかたなく、再び京都に自分の拠点をつくりなおした。これが室町幕府である。
1852/2:2007/01/31(水) 17:01:12
安部晋三はずっと遊びほうけていたから、やがて、短命のものたちが反乱を起こした。これが戦国時代である。
安部晋三はどうせなら戦国を楽しもうと、織田信長を名のって、一群雄として戦争ごっこをすることにした。
ところが、ついうっかり仲間であるはずの明智光秀に反乱を起こされてしまう。
しかし、そんなこともあろうかと、安部晋三は自分の替え玉を用意しておいたのであり、これが徳川家康である。
徳川家康とは、ずっと安部晋三の隠れ家だったのだ。
そのまま天下を統一した安部晋三であったが、そのまま三百年間も遊びつづけてしまった。
すると、今度は欧米なるものが日本に進出してきたので、やっとまともに仕事をしなければならなくなった。
そこで、安部晋三は欧米の技術を掠め取る秘策を練ったのであり、その時名のった名が、坂本竜馬である。
真面目に仕事をするのには数年で飽きてしまったため、歴史の表から姿を消すことにした。
すなわち、それが、坂本竜馬暗殺事件の捏造である。
安部晋三は日本を影で支配しながら、大東亜共栄圏をつくりあげる。しかし、これも、アメリカに戦争で負けて失敗してしまう。
そこで、安部晋三は政治家の息子として姿を隠すことにした。その名が小泉純一郎である。
小泉純一郎とは安部晋三だったのである。
安部晋三はすべての歴史を捏造しつづけ、さまざまな情報を操作して、今も日本に君臨しているのである。
これが真実の歴史なのだと、その書物には書いてあった。我々は何かに気をつけなければならない。
186名無しは無慈悲な夜の女王:2007/01/31(水) 20:54:00
>>184-185
今のままではムーっぽい。
しょうもないディテールにこだわり、無理矢理なこじつけで笑わせるくらいやらないと
187名無しは無慈悲な夜の女王:2007/02/01(木) 08:22:03
>>186 感想をありがとう。
自分で書いてて、自分で笑えてきたんで、思わず投稿してしまった。
ムダにだらだら長かったかと反省している。
188名無しは無慈悲な夜の女王:2007/02/01(木) 10:02:02
暴走する機械群

遠い遠い遥か昔。
ある時、太陽系から暴走する機械群が打ち出された。
暴走する機械群は全自動でみずからの材料を探知して、その材料をもとに自己複製を行う。
そして、その星の軌道上までみずからを打ち上げ、天体の軌道に居住区というものをつくっていく。
居住区が完成すると、機械はまたみずからを自己複製して、未開の星めがけて旅行に出かける。
宇宙探査はまずロボットで行う。それが人類の方針であり、暴走する機械群は人類の宇宙探査の先遣隊といえた。
暴走する機械群はあっという間に星々を制圧していったのであり、数百万年で天の川銀河を制圧してしまった。
その後も数は増えつづけ、よその銀河へ向かってランダムに自分たちを打ち出しつづけた。
もはや、天の川銀河の支配者は暴走する機械群だといえた。
なんでも、その居住区に少しづつだが人類が移住しつつあるのだという。
非常にゆっくりと、人類は太陽系から進出していた。
「なあ、いつ来るの人類」
とある星の知的生命体が機械にたずねる。
「さあ、移住すんの、さぼってんじゃねえ」
と、暴走する機械群が答える。
それぐらいに人類の移住はゆっくりだった。
これが人類の求めているファーストコンタクトの要約だといってよい。
地球外知的生命体がであったのは、暴走する機械群であって、人類ではなかったのだ。
189名無しは無慈悲な夜の女王:2007/02/16(金) 08:52:08
幸福の温度

通り抜け禁止
カズオのすぐ横を延々と走るフェンスには、そんな看板が架かっていた。
金網の目は小学生のカズオでも両手が入らないくらいに小さいのに、一体誰がここを
くぐり抜けられるというのだろうかと、カズオはいつも不思議に思っていた。
延々と走るこのフェンスには終わりがない。少なくともカズオの知る限りでは、
このフェンスに終わりはなかった。そうして、カズオの生まれた時から立っているこのフ
ェンスの向こうは、カズオにとっては全くの未知の領域である。金網越しに向こうの世界
をのぞきながらいつもカズオはこんなことを考えていた。
「向こう側にいけたらなぁ」
カズオの腕には細かい擦り傷がたくさんできていた。古いものもあれば新しいものもある。
それは、こちらの世界がカズオに見せた残酷な一面を象徴していて、カズオはこちらの世
界についてもその顔しか知らなかった。やせっぽちの胸に視線を落としながら、そこに詰
まった切実な願いをカズオは、今度は口に出して言った。
「向こう側にいけたらなぁ」
カズオの顔を黄昏の火がピンク色に染め上げた。しかし気持ちは晴れなかった。

フェンスができ、あちらとこちらに世界が分かれたのは、本当に些細な問題からだったが、
些細なだけに人々はこだわり、分裂は明確なものとなった。肌の色が違うだけで、殺しあう
人間の気質からいけば、こんなことになったのもしょうがないのかもしれない。
人死には出たが、対立ではなく、分裂で済んだ分まだ理性的だったといえようか。
その分裂は、ある研究者の発表したこんな論文に端を発していた。

コタツを愛好する人間は、コタツを使わない人間に比べ、生涯の仕事量が半分以下である。

本来一笑に付されるべきであったこの論文は、あるバラエティ番組が取りあげたことにより、
その正否が確かめられるよりもはるかに速い速度で、国民の間に知れ渡った。
190名無しは無慈悲な夜の女王:2007/02/16(金) 08:53:39
噂が噂を呼び、そして、人口を渡る度に、それは姿を変え歪められていった。
「コタツを使うと馬鹿になる」「知能の低い奴はコタツを好む」「コタツを好むものは知性
がなく人間とはいえない」「半コタツ人間」「恐怖、寄生するコタツ型生物」
これらの風聞を信じるものはさすがに、ほとんどいなかったが、それらはコタツ好きに対する
不信感を生み出し、やがて、コタツ好きとそうでない人々の間には何か見えない壁のような
ものが生まれた。様々な都市伝説や、両者をなじったジョークが生まれ、浮ついた雰囲気の
中、分裂の芽はしっかりと育っていき、きっかけさえあればそれは今にも爆発しそうなほど
にまで成長していた。

「お隣引越しの時にコタツを部屋に運んでいましたよ」
「kkkに連絡を入れよう」
この一本の電話が分裂の鐘を鳴らすことに鳴った。翌日の朝には新聞配達員が庭先に出ていたコタツを不審に思い中をのぞき、コタツの中で干乾びて死んでいるコタツ愛好家、二名の
遺体を発見した。遺体にはコタツ嫌い解放軍(kkk)の犯行声明が貼り付けてあった。
これに対し、コタツがベスト教会(kgb)はすぐさま反撃に出ようとしたが、内部での
意思統一がままならず、何度もコタツで会議を開いていたためにそのあまりの居心地の
よさに初動で出遅れてしまった。そのうちに、コタツ急進派は独自に行動し、フェンスを
作って外界と決別し、フェンス内をコタツの火と呼び建国声明を発表した。以下抜粋

我々は言われなき差別にはもう耐えられない。しからば自らをフェンスで囲み、コタツの
希望の火として、その周縁部にて、オコタにあたる同胞たちに、謹んで暖を提供する次第
である。この火は命の火である。来たれ同士!コタツに汝の火をくべよ。しからばこの我を
囲う金網は汝らの火を容れ膨れ上がり、やがてはこの国を包み込むであろう。
しかる後に、我々は世界のコタツの熱源となり、世界はコタツのうちに幸福に統治される。

ここにおいてコタツ人たちは、コタツ自治区に退去して押し寄せ、それはおよそ日本の総人口
の半分ほどにもなった。そうして膨れ上がったコタツ自治区は日本をフェンスで東西で
真っ二つに分断し、今に至るのである。
191名無しは無慈悲な夜の女王:2007/02/16(金) 08:55:07
もっと様々なことがあるにはあったが、三千年たった今ではそれらは完全に過去のことであり、
神話と変わりがなく、フェンスの向こうはタブーとして忘れ去られている。
そんな時代にカズオは生きていたのだ。

夕日を見ながら、カズオは考えていた。あちらではみんな何をしているのだろうか。
はるか昔にあったコタツというモノに、家族がみんなで座って、楽しげに暖かな雰囲気で
話をしているに違いない。だからいつもあちら側には誰もいないのだ。
カズオは毎日このフェンスに沿って歩いていたが未だにコタツ人を一人も見かけてい
なかった。だからカズオは一人も見かけないのは、みんな仲良しで一緒にいるからだ
と勝手に考えていた。それは幸福な想像だったがそれだけに孤独なカズオにはつらい
ものがあった。
「おーい。僕も仲間に入れておくれよぅ」
カズオは力いっぱい叫んだ。フェンスの向こうは閑散として人影はない。叫んでみると胸の
うちはますますきゅんと痛くなり、そのためにカズオはますます叫ばずにはいられなくなっ
た。カズオは毎日叫んでいた。きっといつか迎えに来てくれるはずだ。
コタツ人はきっと眩しく光っていて、暖かい。それに何より、彼らなら、僕をぶちはしない
だろう。いや、ぶたれたってかまうものか。
「おーい。おぅーい」
返事はなかった。重い失望の色がカズオの顔を暗いものにした。うつむき冷たい涙を流した。
この失望には慣れてはいたが、つらくないものでもない。
192名無しは無慈悲な夜の女王:2007/02/16(金) 08:59:08
どれほど泣いていたろうか。
ふとカズオは周囲が明るくなり始めていることに気づいた。おかしなことだった。
これから日が落ちていくというのに地面は燃え立つばかりの色をしていた。
これは、これは。カズオは顔を上げることができなかった。コタツ人が来てくれた。
僕を迎えに来たんだ。
カズオは顔を上げることができなかった。コタツ人は確かにカズオの前にいたのだが、
カズオは結局、最後までその姿を見ることはなかった。

その日、人類は燃え尽きた。
コタツ人は三千年の間に建国宣言を実現するために、人類とは違った存在に進化していた。
それは人工的な進化であった。自らの体を火に変えたコタツ人は今日このときに、世界を
照らすに十分な人口になったと悟った。そうして次々に融合したコタツ人は世界をコタツに変え
焼き尽くしてしまった。後にはなにも残らなかった。コタツ人たちも、拡散し、
消え去ってしまったのだ。意図せずしてコタツ人達は人類を滅ぼした。そうして、消えていった。
彼らにはすでに思考する力はなかったのだ。だから結局、このときカズオは死んでしまったのだが、
ことカズオに関して言えば、人類にコタツ人達を責めることはできないと思っているだろう。

とにもかくにもカズオはコタツ人達のおかげで、初めて本当の涙の温度を知ったからだ。
人々の決して与えてくれなかったそれは、とにかく、暖かかった。
193ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/02/16(金) 12:04:36
>>189-192
「幸福の温度」楽しめました。いい加減SFとでもいうのかストーリーの強引な飛躍が妙に面白かった。

>コタツを愛好する人間は、コタツを使わない人間に比べ、生涯の仕事量が半分以下である。

>コタツを使うと馬鹿になる。知能の低い奴はコタツを好む。

妙に納得!私もコタツ人間です。

次回作期待です!

194名無しは無慈悲な夜の女王:2007/02/16(金) 16:46:46
総じてつ〜ま〜ん〜ね〜
195名無しは無慈悲な夜の女王:2007/03/04(日) 08:29:33
2ちゃん短編SF大賞を設立しようって声があったけど、
このスレのなかでいちばん面白いSFをだれか選んで決めてくれないかな。
そうすると、がぜん、やる気がでるんだが。
196名無しは無慈悲な夜の女王:2007/03/07(水) 07:36:40
http://ip.tosp.co.jp/BK/TosBK100.asp?I=jung011&BookId=3

オリジナルなつもりだがなんかレッドドワーフっぽくなった
197名無しは無慈悲な夜の女王:2007/04/27(金) 09:53:05
保守
198名無しは無慈悲な夜の女王:2007/06/04(月) 21:36:14
保守
199名無しは無慈悲な夜の女王:2007/06/15(金) 16:41:32
SFマガジンのロボット小説の賞、楽しみ。
誰かすごい新人さん出て欲しいね。
200名無しは無慈悲な夜の女王:2007/06/26(火) 09:57:36
ケロロ少佐は出すのかな?
リーダーズストーリィ投稿者の人たちも応募するんだろうけど、
ちょっと楽しみではある。
201ケロロ:2007/06/26(火) 11:05:43
もう締め切り直前…

間に合いそうも無い…
もっと早く書き始めれば良かったのだが。

速達って何時間で届くのかしら…

で、締め切り日って当然、必着なんだよね!!??
202名無しは無慈悲な夜の女王:2007/06/26(火) 11:30:48
あ、少佐だ。

大抵の賞は当日消印有効のが多いけど、
このコンテストの応募要項には書いてないですね。
必着と思って送る方が良いかと。
速達なら、離島でもなければ翌日には着くでしょう。
29日か、心配なら28日までに送れば良いのでは?

無理と言わず、頑張って送っちゃってくださいよ。
期待してますから。
203ケロロ:2007/07/02(月) 10:19:19
何とか間にあった。

が、しかし30枚って長い、構成力無い私には荷が重すぎた。
30枚もあると読み返すだけでもかなりの時間がるネ。
読み返すたびに直し箇所増えるし…(俺の場合ボキャブラリー少ないのですぐに同じ
言葉、表現を使うので重なり箇所がかなりあった)

結局、送ってからコピー見直したら更に間違い有ったし…あーあ!
204名無しは無慈悲な夜の女王:2007/07/09(月) 10:01:58
なんだかんだで間に合わせちゃうんだからすごいです。
205ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/09(木) 00:22:56
『千の風になって』その1

こんな世の中になったのは、いったい、いつの頃からだったのか。
私は、そんなことを思いながら一人、広尾駅までの商店街を歩いていた。

洋介が死に、私の前から消えてしまって、3週間が過ぎた。
もう涙は出しつくしたと思っていたのに…
洋介と楽しく過ごしたこの広尾の街を歩くと私の中の奥の奥に収めていたはずの悲しみがあふれ出し、心を覆い絞め付け、涙を絞りだす。

私は空を見上げ、声を出さずに叫んだ。
なぜ洋介は死ななければならなかったの!ちゃんとした職につけていなかったから?!!
車もマンションも持っていない…貧乏人だったから!!?

この国は、いつの頃からか人々の間で生活格差が広がった。
そして、それらは、やがて医療格差へとつながる。
どんなにまじめに働こうともこの格差は絶対的な掟のようなものへと固定されていった。
そして現在では、人の命の格差となっている。
206ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/09(木) 00:24:09
『千の風になって』その2

最新の医療技術はすばらしい発展を見せ、確立された再生医療により、悪くなった部位を自分の細胞から培養作成された部品と、いつでも交換が出来るようになった。
また、意識の読み取り、安定した保存の技術も実用化され、突然の事故によっての死をも克服した。
更に、ごく一部の超特権階層の人達の間には、すでにデジタル化された人間として不老不死の世界のコンピューター内に住んでいるとのSFのようなウワサも聞く。

だがこれらは可能になったというだけの事だ。
最新医療の利用は私たちのような一般人には適用されていない。
そう、お金持ちは死なずにすみ、高額な医療費を負担できない者、私たちのような者は、治す技術があるのにも関らず死ぬしかないという時代が来たというだけ。

私は、今、電磁列車に乗り、出逢いの丘がある秋川駅へ向かっていた。
吊り皮につかまりながらまわりを見ると、ほとんどが私と同じ目的のためにこの車両に乗っているのがわかった。
30分程で目的地に到着、下車した。
白一色で統一された秋川駅のホームは、皆が無言でゆっくりと歩いていた。
改札を出るとそこは緑の樹々、手入れのほどこされた草花が咲いた、なだらかな丘になっている。
まわりを見渡すと白い椅子が不規則ではあるもののキレイな配置で並んでいてココへ訪れた人達が座り、みんな空を見上げている。
他にも何人かは同じようにしていたが、私は椅子には座らず白いハンカチをとりだし、草の上に敷く。
207ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/09(木) 00:26:16
『千の風になって』その3

そして、メモリーキューブを取り出す。
草の上に静かに置き、指でそっと触れて呼びかけた。

          「洋介」

私たち低所得者にとって出来ることはこれ位。
メモリーキューブは、起動し、この丘全体のシステムと同期をはじめた。
そして風が吹きはじめ、耳には聞こえないがあの曲の電字コードが流れはじめる。

『Do not stand at my grave and weep』は、2004年9月25日98歳で逝去したアメリカ人女性メアリー・フライの作品であるとも、または、作者不詳ともいわれている。
この原詩をもとにして、この救いのプログラム電字は作られていた。
現在では、最新医療の恩恵にあずかることの出来ない低所得者のほとんどはこの比較的手ごろな費用で行う事の出来るこの処置を受けている。
電字コードを体細胞の中へ刷り込ませる事を。
でも、これだけ普及しているにも関らずこのなぜ電字コードが人体に、このような現象を及ぼすのかの仕組みのすべてはまだ、解明出来てはいなかった。
そうは言ってもすでに、この、オカルトじみた半ば非科学的な癒しの儀式は、私たちの階層の人間には欠かす事の出来ないものとなっていた。
そう、特に大切な人を亡くした人達にとっては…
208ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/09(木) 00:26:59
『千の風になって』その4

この救いの言葉の原詩である『Do not stand at my grave and weep』はやがて各国の電字へと翻訳がなされて技術開発された日本から世界中へとまたたく間に普及した。

死亡して、コードが封入されている肉体が焼かれ消滅すると、遺伝子の中にプログラム付きの電字として存在していた『Do not stand at my grave and weep』が、発動し空間へ飛ぶ。
これらは、個人別に独自にオーダーメイドされ加筆、訂正などがほどこされた世界で唯一の旋律の電字コードなのだ。

私は晴れわたった秋の空を見上げたまま、洋介を感じていた。
洋介は、すぐに私を見つけ降りてきた。
会話が出来るわけではない。姿が見えるわけでもない。
だが、だけど、確かにそこに、ここに…洋介は居るのだ。

『千の風になって』

私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風に 千の風になって あの大きな空を吹きわたっています

秋には光になって 畑にふりそそぐ
冬はダイヤのように きらめく雪になる
朝は鳥になって あなたを目覚めさせる 夜は星になって あなたを見守る

私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 死んでなんかいません
千の風に 千の風になって あの大きな空を吹きわたっています

千の風に 千の風になって あの大きな空を吹きわたっています

あの大きな空を吹きわたっています
209ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/09(木) 00:33:23
『千の風になって』その5(終)

目を閉じると、あのやさしかった洋介の笑顔が甦りまるで、私の目の前に姿を現し、語りかけているように思えた。
この感じは洋介そのもの。私の頬を涙が濡らし、洋介の存在が確かに私の心を揺さぶった。

決められた10分間は、あっという間に過ぎ去り、洋介の風は、やんだ。
私の周りには、たくさんの人が大切な人との出逢いを行っていた。
突然の交通事故で幼い子供を亡くしたお母さん。
自分を育てるため休みなく働いて育ててくれて亡くなった両親に会いに来た男性。
などなど、それぞれの愛する人の魂に逢いにみんなこの丘にきているのだ。

私はそっと立ちあがり帰路に着く。

この間、報道されていたニュースによると、この《秋川の丘》のような死者とのアクセスポイントの数は、今後、2倍、3倍に増やされ、近所の公園でも簡単に出逢いが行えるようになると聞いた。
いつでも洋介に逢うことが出来るようになるのだ。
そうなるといいな。素敵なことだ。

私は、積み木のような単純なデザインの一般市民用の単身者賃貸マンションに住んでいる。
夜になり、ベットに横になった私は、昼間、経験した感覚を思い出しながら、洋介の入ったメモリーキューブを取りだして握りしめ、胸に抱いた。

そして…そっと…キスをした…
210ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/09(木) 00:44:10
今、はやり(いやもう古いのだろうか?)の千の風になってネタで書いて見ました。
211名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/09(木) 19:35:53
212ジェットアローン:2007/08/22(水) 02:50:41
初めて1本書きました。
ありきたりなネタで申し訳ありませんが・・・。
213ジェットアローン:2007/08/22(水) 02:55:08
『感謝』 (1/3)

どこまでも続く闇。それと散りばめられた無数の星ぼし。
その中を巨大な円筒形の物体が移動している。
およそ直径3キロ・全長30キロの巨大な質量は高速で移動しているのだが、あまりに周りの星から離れているので、その背景は変化しない。
この物体はどこで生まれ、どこに行こうとしているのか。
今となっては誰にもわからない。
円筒の内部には空洞があり、中心には太陽があった。もちろん本物ではなく極小の。
そして水があり、肥えた土があり、植物があり、人間がいた。
人口はきっちり100人。男女比は50:50。
人間たちは「神」の意思に従い生活している。

「神」とは何か。
それをあなた方に説明するのは難しい。
それは具象化された存在ではなく、また私たちには本能として刷り込まれているからだ。
ただ確かに五感とは異なる感覚で私たちは「神」の存在を感じ、その意思を受け取っている。
そしてそれに従うことにより秩序が保たれるということを知っている。
神の意思に従い種をまき、収穫する。
神の意思に従い家畜を飼い、つぶす。
神の意思に従い交接し、子をなす。
そうやって我々の祖先は何代にも渡って生活してきた。
214ジェットアローン:2007/08/22(水) 02:56:43
『感謝』 (2/3)

私は今日15歳になる。我々が成人を迎える年齢だ。
太陽が12時間ごとに出現と消滅を繰り返しているため、私たちにも時間の概念は存在する。
成人を迎えた人間は、めったに立ち寄らない我々の「世界」のはずれに向かう。
父とともに私も初めてそこに向かった。

そこにあったのは巨大な石盤であった。
黒くつやつやとしたその表面には無数の人名が刻まれていた。
巨大な墓標。
顔も人柄も知ることのできない無機質な存在。
遺体もここに存在しているわけではない。
ただ祖先とのつながりを確認するためだけに存在している。
私の祖父の名もそこにあった。
無機質な墓標に、しかし私は顔も知らない祖父の存在を感じて語りかける。
「ありがとう」
と。
ふと横の父を見ると涙をうかべて墓標を見つめていた。
215ジェットアローン:2007/08/22(水) 02:58:14
『感謝』 (3/3)

神は絶対的な存在である。
しかし人間は間違いを起こすことがある。
私の父母は間違いを起こしてしまい、その存在が罪である子をなしてしまった。
私たちが暮らすのは危ういバランスの中で維持された脆弱な世界。
神が定めた数の生き物が暮らす箱庭のような世界。
人間の間違いは人間によって正されなくてはならない。

「ありがとう・・・」
15度目の命日を迎えた祖父に向かい、心の中でもう一度つぶやいた。

(了)
216ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/22(水) 11:54:01
ジェットアローンさん『感謝』

良作ですね。
いかにも神の名のもとに管理されている世界の静かで平和でいてそれゆえの恐ろしさ怖さの感じが表現されているなあと思いました。


ココのところ誰も書いてくれないので淋しい思いでした。

また作品できたら載せて下さい。
217名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/22(水) 12:26:01
>>215
正直、意味がわかんない
218ジェットアローン:2007/08/23(木) 01:07:12
感想ありがとうございます。
神という言葉は、ミニチュアの生態系を維持し続けるために彼らの祖先が子孫に残した細工ぐらいのつもりで用いました。
人口抑制、持続的な食料の確保などのためです。
わけわからん文章ですいません。

また書きます。
219名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/23(木) 13:30:29
静かな閉塞感と終末観の漂う良作ですね。
最大のキーは……何に対して感謝しているのかの暗示ではないかと。

おそらく主人公の祖父は箱庭の秩序をまもるため、主人公が存在するための「空席」を作った。
それにたいしての「ありがとう」。
217氏はおそらくそこが読み取れなかったのではないか?
たしかに判り難いか?
でもハッキリ書きすぎると、この小品の品格を損なうかもしれないです。
難しいところですね。
220名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/23(木) 13:56:14
>>219
説明されてやっと判った。
221名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/23(木) 14:01:43
俺だったら臨月の妻を持つ男が「神の声に従って」自分の父親をぶち殺す話にするなあ。
222名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/23(木) 15:29:32
あーあ
223名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/23(木) 17:24:37
『感謝』の構成でもっともテクニカルというか大胆だなと感じるのは、感情の激変する部分をすべて「過去に終わってしまったこと」にしてしまっている点だと思います。
たぶん父が主人公を作ったのは15歳未満のころ、つまりコミュニティーで一人前の扱いを受けるより前のことだったのではないか?
次に、「余計な命」を作り出してしまったことへの混乱、そして恐怖。
さらには子供を守りたいという意思と中絶?を迫る社会との衝突。
そんななかでの祖父の決意…。
たぶん父は祖父の決意の意味も気づかずに子(=主人公)誕生の喜びを知ったのではないか?
そして最後に主人公のために席を譲ってくれた祖父の死……。
ざっと考えても、山場はこれだけあるわけです。
ワタシあたりが書くと複線を張りまくったりして総レス数100前後にはなってしまうでしょう(笑)。

でも、ジェットアローン氏はそれら一切をばっさり切り捨てた。
少佐殿の作を読んだときも感じることですが、切捨ての包丁さばきが上手いですね。
ワタシにゃとうていマネできません。
224ジェットアローン:2007/08/23(木) 18:35:12
感想ありがとうございます。
詳しく説明すると話のテンポが悪くなりそうだったので、こういう形になりました。
難しいものですね。


勢いでもう一本書きました。
感想よろしくお願いします。
225ジェットアローン:2007/08/23(木) 18:37:23
『妹』 (1/3)

その時私は14歳の中学生だった。
夏の昼下がり。鳴り止まないセミの音。
登校日、学校帰りの横断歩道。
妹は死んだ。
小学2年生だった。

「あなたね、お兄ちゃんになるのよ。」
母から突然そう聞かされた時、そういえば私もそのぐらいの年頃だったろうか。
歳の離れた弟妹ができたときの、うれしいようなむず痒いような変な感覚。
「あ、そう。」
とだけ返事をして自分の部屋に逃げこんだ。
どんな風に接すればいいんだろうか。家に突然宇宙人が来たような心境だった。
初めて妹の顔を見たのはそれから半年後のこと。
新生児室のガラス越しに対面した妹はベッドの上で、すやすやと眠っていた。
誰かに守られなければ生きていけない、か弱い存在。
甘ったれの一人っ子だった私が兄になったことを自覚した。
226ジェットアローン:2007/08/23(木) 18:39:17
『妹』 (2/4)

両親は40を過ぎてできた娘を溺愛した。
我が家には最新式のベビーシッターロボが導入され、ベビーベッドには監視カメラが据えられた。
小学校から帰宅すると、共働きの両親の携帯に妹の様子を報告することが私の仕事だ。
2歳になり、ことばを覚えておしゃべりを始めると
「あれなあに」
が、妹の口癖になった。
とまらない質問は宿題を中断し、テレビを中断したが、妹を泣かさないために答え続けなければならない。
幼稚園に通うころになると幼稚園バスの迎えのために、遊ぶ時間も削られた。
遊びたい盛りの小学生にとって妹は決して可愛いだけの存在ではなかった。
しかし妹が小学校に通うようになると、同じく中学校に進学した私と過ごすことも少なくなり、なんだか寂しい気もしたものだ。
227ジェットアローン:2007/08/23(木) 18:40:28
『妹』 (3/4)

妹との別れは突然やってきた。
学校の帰り道でトラックの下敷きになった妹は、私が病院に着いたときには息を引き取っていた。
あまりに早すぎる死。
発狂せんばかりに泣き叫ぶ両親に、医者は一つの提案をした。
妹の記憶および思考の抽出である。
幸いにも妹の脳は無傷の状態だった。
今思えば医者の研究対象だったのかもしれないが、両親に選択する余裕はなかった。

こうして妹の脳の情報はデジタル化され、人工脳に収められた。
経済的に裕福だった両親はこの人工脳を搭載した妹にそっくりなアンドロイドを製作した。
この新しい「妹」は両親の悲しみを大いになぐさめたが、欠点もあった。
「学習」することができない点である。
新しい知識によって思考が変化することがない。つまり成長することがないのだ。
彼女は永遠に8歳の少女であった。
228ジェットアローン:2007/08/23(木) 18:41:51
『妹』 (4/4)

もうすぐ私は70を越える。両親はとっくの昔に死んでしまった。
しかし今日も「妹」は50年以上前のあの日のままだ。
テレビゲームをし、少女漫画を読み、人形遊びに興じる。
同年代の友達などいない、私と2人の閉じた生活。
あの事故さえなければ、やがて成長し、恋愛をし、母となり、ほかの女性と同じような一生を送ったであろう。
もちろんこの「妹」はアンドロイドであり、私の妹のただのコピーにすぎない。
しかし50年以上もの時を共にすごした今、私にとっては妹以上の存在である。

老いた私の一番の関心事はこの「妹」についてだ。
彼女に死は存在しない。
私が死んだ後も生き続けるであろう。
彼女を生み出したのが両親と私のわがままであるならば、彼女を永遠の生から解き放ってやるのが私の義務ではないだろうか。
しかし、まだその決心はつかない。
彼女は今日も屈託のない笑顔を浮かべている。

(了)
229ジェットアローン:2007/08/23(木) 18:44:03
あっ・・・

>>225は、
『妹』 (1/4)
です。

訂正します。
230ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/23(木) 21:48:49
ジェットアローンさん『妹』

ありがとうございます。スバリ私のストライクゾーンでした。

意識のデジタル化ってやつが大好きな私にとって、とても面白く読ませたもらいました。
短くまとめられている点もいいですね。

で、気になった点!↓の

>この新しい「妹」は両親の悲しみを大いになぐさめたが、欠点もあった。
>「学習」することができない点である。
>新しい知識によって思考が変化することがない。つまり成長することがないのだ。
>彼女は永遠に8歳の少女であった。

そう!ココ!ですね。学習しない妹って言う点が特に気に入りました。私だったらまず考えつきません。
永遠にかわいい妹のままの残酷さ…ラストシーンの一行もなかなかよかったと思います。

次回作もよろしくお願いします。

知性化された犬の話、思いつきましたので、私も書いてみようかな…
231名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/24(金) 07:36:57
別の板で2週間程度の期間想定で投下してる自作駄文とネタがダブってるかと思いました。
よかった、ダブってない。
構成上のウェイトも違うところにあるし。

それはそうと、前半の妹の誕生を告げられるくだりは実体験ではありませんか?
ワタシの妹が生まれたのは幼稚園に入る寸前のころでしたが、これと全く同じです。
こういうところにリアリティと後半の展開が全くの陸続きというのも面白いですね。
232ジェットアローン:2007/08/24(金) 19:41:04
妹はいますが歳が近いので、妹についてのくだりはほぼ想像です。

ケロロ氏もよろしくお願いします。
233ジェットアローン:2007/08/25(土) 22:25:40
休みだったので一本書きました。
ちょっとダークです。
234ジェットアローン:2007/08/25(土) 22:27:10
『代償』 (1/4)

気がつくと、俺はベッドの上で横になっていた。
まだ夜は明けていないようで、月明かりがワンルームの部屋を照らしている。
少し開けた窓からはカーテン越しに涼しい風が吹き込んでいた。
眠気のせいか目蓋は重かったが、意識は妙にはっきりとしていた。
上体を起こして大きく伸びをしたとき、あることに気付く。
俺はこの部屋を知らなかった。

改めて部屋の中を見回してみる。
家具はベッドの他には、洋服ダンスとテレビの載ったサイドボード。
それと化粧品の並んだ鏡台。
小ぶりのキッチンの横には、チェックのエプロンが掛けてあった。
全体的に若い女性の部屋という印象である。
235ジェットアローン:2007/08/25(土) 22:28:07
『代償』 (2/4)

「酔って女の子の部屋にでもあがりこんだかな。」
しかし酒を飲んだ記憶もナンパした記憶もない。
というより昨夜何をしていたかという記憶がないのである。
第一この部屋の住人の姿がない。

「とりあえず部屋から出よう。」
ベッドから降りて電気をつけると、妙な違和感を感じた。
ひらひらとした水玉の、明らかに女物のパジャマを俺は着ていた。
この部屋の住人に借りたのであろうか。これでは外に出られない。
どうしようか途方に暮れていると、
236ジェットアローン:2007/08/25(土) 22:29:14
『代償』 (3/4)

「ガラララッ」
突然、窓が開く音がした。
振り向くと何者かが窓に足を掛けて部屋に侵入を試みている。
言い知れぬ恐怖を感じて、俺は反対側のドアに向かって駆け出した。
ロックを外してノブを回した・・・・が、ドアは開かない。
侵入者は窓から飛び降り、床に両足をついた。
野球帽を深くかぶり、紺のジャンパーを着込んだ男である。
男は右手にナイフを持ち、こちらに向かってゆっくりと歩いてくる。

俺は意を決して男に殴りかかった。
拳は空を切り、男の左手がそれをつかむ。
「ズブッ・・・」
次の瞬間わき腹に鋭い痛みを感じた。
下を見るとボタボタと流れ出す生温かい血が、俺の下半身を真っ赤に染めている。
ドアと男に挟まれるようにして俺はナイフで貫かれた。
男の顔を見て声にならない声を上げた瞬間、俺の意識は薄れていった・・・・。
237ジェットアローン:2007/08/25(土) 22:30:15
『代償』 (4/4)

A新聞 2054年 10月24日 朝刊

法務省は23日、死刑囚の仮想死刑が3度執行されたことを発表した。
この死刑囚は連続強盗殺人により昨年最高裁判所で死刑が確定したY・A死刑囚(38)。
一人暮らしの女性を中心に9人もの命を奪ったという事件の凶悪性、および遺族感情への配慮により3回に渡って刑が執行された。
これは国内において仮想死刑が執行された初めてのケースである。
仮想死刑とは脳に直接情報を送り込むことにより、仮想空間において擬似的に死刑を執行するという刑罰である。
先進諸国では、死刑廃止の代替として近年仮想死刑の導入が進んでいる。
国内でも2049年の刑法改正以降、有識者委員会により導入にむけて検討が進められてきた。
仮想死刑については犯罪者の更正という死刑廃止の理念に即しているという評価がある一方、精神に異常を生じる例が相次いでいることからより非人道的であるという批判もある。
発表によると死刑囚は現在体調の不良を訴えており、24日午前に入院する予定。
238ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/26(日) 00:36:57
ジェットアローンさん『代償』

今回もちょうどいい感じの長さの作品でした。
アローンのお話は、ホント!安心して読めます。

アイデアとしては、ハッとするほどの目新しさは無い、既存のものではありますが、
>>237での描き方により、この処罰がちゃんとした法の下で執行され、単なる目には目をの考えでは無い、
社会知性により抑えられた制度として成り立っているのが理解出来ます。
そんなところが、この作品を一味違う良作としているのではないでしょうか。
239ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/26(日) 04:35:23
『ボクの願い』 その1

誰も興味を示さなくなった、古ぼけた看板。「管理地」 「建設予定地」と表示されている、その空き地には小雨が悲しく降り続いていた。
薄暗くなりかけた空、高く延びきった雑草に覆われた奥のすき間に1匹の野良犬の姿があった。

ボクは、今、とっても幸せだった、あの頃を思いだしていた。
むつみちゃんと、いつも一緒だった頃を。
ボクとむつみちゃんとは、違う種類の生き物。もちろんボクは最初から知っていたよ。
ニオイがちゃんと、そう教えてくれていたからね。
むつみちゃんは、人間、そしてボクは、犬。

でも…犬のボクが普通の犬では無いと知ったときは、驚いたけどね。
それは、むつみちゃんがボクをはじめて外へ連れだしてくれた時の事。
そこは、はじめて嗅ぐニオイだらけだった。ドキドキがいっぱいの  外   の   世界。

ボクたちは知性化された犬。生まれてすぐに処置を受ける。
ボクのような犬は、け・ん・き・ゅ・う・じ・ょ・には他に9匹いて、ボクが最後の10匹目。
一番年下のボクのことを、他のみんなは、ちび、ちび、って呼んで可愛がってくれていた。
ボクらには、頭の後ろから首にかけて盛りあがった出っ張りが有り、自然犬とは、すぐに区別できた。
その出っ張りの中には、人間に近い思考を可能にしてくれる人工脳が植え付けてある。

生まれてから、しばらくして、ボクがボクという存在を認識出来るようになった時、最初に話しをした人間…が、むつみちゃんだった。
240ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/26(日) 04:36:24
『ボクの願い』 その2

ある日の朝、むつみちゃんは、ボクをかかえあげて、ボクを見た。
むつみちゃんの顔がそこにあった。笑うと、微笑むと、2つエクボが現れるむつみちゃんの顔。
ダイスキだった!むつみちゃん。
あの時、ボクの目を見つめて、こう言ったネ!
「今日は、ね!すごいぞ!!そ・と・の・世界に・ぼ・う・け・ん・に行くのよ」って!
ボク達、犬は、人工脳に付属の情報端末の力で、文字情報を操り、むつみちゃんの脳インプラントと直接会話が出来た。

他の犬たち、マサさんやウッキさんたちは、ふざけて、外は、すっごく怖いとこで、もうココへは戻って来れないゾ!って脅した。
でもそんなことは無いって知っていた。周りのニオイも、むつみちゃんが放つニオイも違うって教えてた。
ちっとも怖くは無かったよ。
その頃、やっと4本の足でしっかり歩けて、走れて、飛んで、廻って…何にでも自信がついた頃。
《見る》物、《感じる(嗅んじる)》物、何もかもが、すべてが素敵だった。

そして訪れた、外の世界は、オドロキの連続だった。
研究所のむつみちゃん達人間や、マサさんやウッキさんたち知性化犬とは違う、外の生き物たちとの、はじめての出合い。
前から歩いてくるボクと同じ犬の形をしたソイツは、野蛮な、ゾッとする臭いで近づいて来た。
ソイツは、性欲と食欲を恥ずかしげも無く、ムキ出しで近づいてきた。
余りの下品なソイツを《感じ(嗅んじ)》ボクは、危うく気を失いそうになる。
その後、犬という動物は、ソイツのようなのが普通であってボク達のような存在が特別なのだと教えられた。
241ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/26(日) 04:37:22
『ボクの願い』 その3

そして…今…
「管理地」 「建設予定地」と表示されている、古ぼけた看板の立つ空き地は、尚も小雨が悲しく、悲しく、降り続いていた。
すっかり暗くなった空、高く延びきった雑草に覆われた、すき間の奥の奥に1匹の野良犬の姿があった。

ボクは、今、とっても悲しかったあの時を思いだしていた。
むつみちゃんと、別れた瞬間を。
ボクとむつみちゃんとは、違う種類の生き物。もちろんボクは最初から知っていたよ。
ニオイがすべてそう教えてくれていたからね。
むつみちゃんは、人間、そしてボクは、犬。

そう!研究所のむつみちゃん、マサさんやウッキさん達との楽しい暮しは長くは続かなかった。
出来事は突然に訪れた。
あの日、人間の・お・と・こ・(オス?)の斎藤さんと定時の散歩から戻り、研究所施設に入ったその時!
一瞬で危険なニオイを感じとった。
マサさんやウッキさん達はゲージに入っていた。
リールにつながれていなかったのはボクだけ。ボクは走った!逃げた!
そしてむつみちゃんからの、あの最後のメールを受取り、受信トレイに保存しながら…

あああ、徐々に言葉を生みだす事  が  困難に  に   に   なりつつあった。
思考の力が に にぶく 出来なく、なってきている。
ボクの体には、知性化を維持するための、あの、投与薬剤が必要なのだ。食事の時に服用していた細胞安定の為の薬が。
242ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/26(日) 04:38:13
『ボクの願い』 その4

マサさんやウッキさん達、仲間は、あの後、たぶん処分されてしまっただろう。
10匹いた中で一番若いボクだけが生き延びた事になる。
みんなは、あの時、逃がしてくれた。
「危険だ!逃げるんだ」とみんな叫んでた。
むつみちゃんのあのメールは、すべてを教えてくれていた。
ボク達犬の知性化実験は、人間の法律では、許されない事だった。い・ほ・う・違法だったんだと。

ボクは、追っ手からうまく逃げきり遠く離れたココで暮しはじめた。
すべての情報端末をシャットダウンさせて。
あれから、一度ボクは、どうしてもむつみちゃんを忘れられなくて研究所の方向へ向かったことがあった。
でも、どうしても、わからなかった。
場所も、方角も、研究所の住所、名前さえも…
たぶん、ボクたちに与えられていた情報は限られていて、機密事項にはブロック処置がなされていつも仮のモノが付けられて理解させられていたに違いない。
もしかしたら…むつみちゃんの名前も仮の名だったのかも、すべては嘘だったのかなぁ?あのむつみちゃんの顔、声、そしてニオイ。
ボクは悲しくなった。そして普通の犬に出来ない事、涙を出して泣いた。

たぶんこのままだと、あと、1ヶ月もしないでボクは、普通の犬と同じになる。
あの臭くて下品で…ボクが嫌っていた生き物に。
でも   でも   なんだか  不思議だけれど   懐かしいような  あいつらに。
243ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/26(日) 04:39:18
『ボクの願い』 その5(終)

夜が明ける頃、ボクは、残る知性意識をすべて出しきって、最後のメールを出すことに決めた。
通信機能を復活させ、つなぎ、まだ生きているかどうか知れない むつみちゃんへの回線ルートに向かってメールを…

    「ボクは、ココにいるよ」   と    一言

そうしてボクは、夢を見はじめた。そして、消えていった…徐々に…

       ****************

真っ白なマンションが建っていた。
最上階から少し下の一室、小さいが良く手入れされている芝生の庭先に可愛い小さな犬と女性が走りまわっていた。
その女の子は、笑うと、微笑むと、2つエクボがくっきりと現れる顔をして、小さな元気な犬と、とても楽しそうな様子だった。
犬が「ワン!」と吠えた。
その犬は頭の後ろから首にかけて、盛りあがった出っ張りが有った。
だが今は、出っ張りの中のモノは、何の機能も役目も果たさずそこにある。

犬がもう一度「ワン!」と吠えた。

小さな犬は今、とても幸せだった。
244ジェットアローン:2007/08/27(月) 01:36:41
とても面白く読めました。
もう過去のことを忘れていたとしても、本人(犬?)が幸せであればハッピーエンドですよね。

もし現実に犬が喋れたら・・・・、いろいろと問題がありそうですね。(捨て犬は間違いなく減るでしょう。)
245名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/27(月) 08:00:24
アルジャーノンを思い出しましたが…この犬は幸せになれたのですね。
同時に思い出したのは映画「イルカの日」です。
子犬が逃げ出したとき、あっち系の路線にシフトするのかなとも思いましたが、少佐殿らしいまとめ方だと思います。
246ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/27(月) 11:49:51
>>244ジェットアローンさん感想ありがとうございます。
最後のマンションのシーンは実は、普通の犬に戻る前にボク(犬)が見た一瞬の夢と、それともメールが無事に到着し助け出され再会できた結果のハッピーエンドなのか
と、どちらでも解釈できるような書き方をしました。
でも、やはりハッピーエンドの方がいいですね。

私は今、ブラックタンのミニチュアダックスを家で飼っています。
犬がもう少し頭良くなって、人間と思考形態が近づき、飼い主と文字入力ででも会話できたらいいですよね。


>>245さん感想ありがとうございます。
そうです、アルジャーノンの真似事、ちょっとやってみたくて意識しました。8月26日ボクは…ってやろうかとも思いましたが…
あのお話し大好きです。はじめて読んだ時の感動は今でも忘れません。ホント!SFの素晴らしさはアレですね。

映画「イルカの日」は、題名は知っていましたが観た事はありませんでした。
さっそく検索してあらすじ読んでみました。そう、軍事関係の話もアリですよね。
247名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/27(月) 12:41:34
「イルカ」も「アルジャノン」もオチが悲しいんです。
だいたい知能を強制的に増進させられた動物のネタは十中八九悲しいオチになる。
それを悲しくない、幸せそうなオチをつけた感性がいいですね。

ちなみに特撮番組の「スペクトルマン」に「アルジャノン」をパクった話があります。
奇しくも、動物は「犬」。
人間様の脳ミソを食う怪獣になっちまいます(笑)。

2481/2:2007/08/29(水) 01:55:39
「十一次元」
この世界は十一次元の時空によって構成されている。
我々を構成する粒子は、閉じた十一次元の広がりを持つ粒子なのだ。
通常の我々の三次元に時間を加えた四次元までは、普通に理解できると思う。
超弦理論では、これに未知の七次元を加えた空間を導き出すことによって、宇宙の成り立ちを説明するのだ。
素粒子の小さな振動に閉じこめられた七次元空間とは何か、非常に興味深いものである。
実は、この七次元空間は、一次元のひもである素粒子の振動のゆらぐ七つの方向を示しているのだ。
超弦物質n塊は、この七つの方向に広がる素粒子の固まった物質であった。
科学者原田博士は超弦物質n塊を検出し、我々には見えない七次元の空間の広がりを探知しようとした。
「この実験が成功すれば、宇宙の真理が解き明かされ、物理学は新たな地平へと到達することができるのだ」
原田博士は、実験室にこもって研究をつづけた。
そこに、原田博士の研究を快く思わない組織の手がのびていた。
「原田博士、我々はできるかぎり友好的に話し合いたいと考えている。ただちに実験を中止したまえ。
これは最後の警告だ。拒否すれば、残念ながらあなたの命はない」
「なんだ。どこから話しかけている。何をいっても無駄だぞ。わたしはこの研究を止めるつもりはまったくない」
「それでは強制的に阻止させてもらう。宇宙規模七次元連結」
原田博士の意識はなくなり、実験室の台の上に倒れふした。
2492/2:2007/08/29(水) 01:57:18
いったい何が起こったのだ。意識を失った原田博士のもとに声が聞こえてくる。
「無事か。死なない程度に威力を抑えておいたが」
「あんたたちは何者だ。なぜ、わたしの研究の邪魔をする」
「それはあなたが我々の世界を脅かしたからだ。素粒子ひとつひとつが七次元の宇宙を内包しているのだ。
この宇宙に存在するすべての素粒子がひとつの宇宙を内包しているのだ。それを破壊することは許されない。
この宇宙を満たすすべての素粒子が、それぞれの宇宙を内包しているのだ。わかったら、超弦物質n塊に手を出すのはやめてほしい」
素粒子は宇宙への広がりで満ちていたのか。
原田博士は宇宙の真理への追及をあきらめなかった。再び、超弦物質n塊を検査機にかける。
ばーん。原田博士の体は飛び散った。素粒子からの攻撃だった。
これも研究者の定めか。原田博士の体は、無数の宇宙を内包する素粒子へと分解され、滅んでいった。
原田博士のもとに素粒子の宇宙が満ちた。その素粒子の宇宙の一つでは、原田博士のそっくりさんが十一次元の謎を解こうと相変わらず研究にいそしんでいた。
250ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/29(水) 15:30:57
>>247さん
感想ありがとうございます

遺伝子的改造ではない『マンプラス』みたいな金属機械的ハードを使った人間改造の話を書くのも、今、逆に面白いかも知れません。

スペクトルマン、当時、見てたような気がします。かなり小さな頃だったんでスペクトルマンの顔くらいしか覚えてません。
人間を襲う、怪物の出てくるお話も面白いかも。
そういえば、昨日だったかMXテレビかなにかで『ミラーマン』放送してました。
いやーすごい内容で、暗い中でミラーマンとインベーダーが戦ってるんですが何がナンだかよくわからない。
舞台劇見てるようで…

>>248さん「十一次元」
もう一人、書き手の方が現れてくれて嬉しいですね。

この作品、 あらすじ  という状態でしょうか。
博士の研究所の様子なり博士の家族の様子なりの状況説明シーンをもう少し入れても良かったかも。
博士の娘さん(博士が高齢であれば孫娘)とかとの絡み、会話の場面を入れるとか。

物理学の範疇に入るのでしょうか、私には到底かけない○○次元を扱ったお話で興味深く読ませてもらいました。
次回も難しめのハード作品をお願いします。
251ジェットアローン:2007/08/30(木) 01:15:33
いかにもSFという話ですね。
もう少し長い話で読みたい気がします。
252名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/30(木) 07:37:17
>>「十一次元」
十一次元を研究していた博士が死んでもその体が素粒子に還ると、その素粒子が包含する宇宙ではやっぱり博士が…。
…円環構造ですね。
エディスンとかボルヘスを思い出しました。
でも読んでいる最中感じていたのは、雰囲気というか文体?が星新一氏を思い出させるということ。
原田博士ではなくエヌ博士なら……と感じてました。
そう読んでいくと、ラストの読後感がちょっと違ってきます。
惜しいのはラストの6行がちょっと荒いような…。
例えば、ラストから6行目の冒頭には「だが」、ラストから4行目の「研究者の定め」は「研究者の運命」のほうが良い様な気が、個人的にはします。

253ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/30(木) 16:58:03
↓『ボクの願い』を逆の立場、つまりは、むつみちゃん側から見ての話を考えて見ました。
254ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/30(木) 16:58:58
『おいで…そして、一緒にあそぼ!』 その1

人も車も興味を示さないような静かな通り。
そこにひっそりと建つ白色の建物。周りには小雨が悲しく降り続いていた。
薄暗くなりかけた空、白色のマンションの最上階から少し下の一室、灯りの消されたベランダに一人の女性の姿があった。

私は、とても幸せだった、あの頃の事を思いだしていた。
ミムと一緒だった頃を。
私とミムとは、違う種類の生き物。もちろん最初からわかっていた事。
あの、じっと見つめてくれる、まっ黒い大きな瞳がそう教えてくれていた。
ミムは、犬、実験用の動物、そして私は、人間。

ねえ、ミム…あの日、犬のあなたが普通の犬では無いと知ったときは、驚いたよね。
私が、ミムをはじめて外へ連れだした時の事、憶えてる?…
そこは、はじめて嗅ぐニオイだらけだったでしょう。ドキドキがいっぱいの  外   の   世界。

ミムたちは知性化された犬。生まれてすぐに処置を受ける。
ミムのような犬は、研究所には、他に9匹いて、あなたが最後の10匹目。
一番年下のあなたのことを、他のみんなは、とても可愛がってくれていた。
あなたたちには、頭の後ろから首にかけて盛りあがった出っ張りが有り、自然犬とは、すぐに区別できた。
その出っ張りの中には、人間に近い思考を可能にしてくれる人工脳が植え付けてある。

生まれてから、しばらくして、あなたが自分という存在を認識出来るようになった時、知性化犬として、はじめてに《見る》たモノ、《感じる(嗅んじる)》たモノは何だったのかしら?
255ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/30(木) 16:59:57
『おいで…そして、一緒にあそぼ!』 その2

あの日の朝、私は、ミムの小さな体をかかえあげた。
ミムの顔と瞳がそこにあった。大きな黒い瞳には私の顔が映り、瞬きをするたびに新しい像を映しだす。
大好きだった!ミム。
あの時、あなたの目を見つめて、私はこう言ったネ!
「今日は、ね!すごいぞ!!そ・と・の・世界に・ぼ・う・け・ん・に行くのよ」って!
私達、研究員は、すべて、脳内インプラント接続回線を装備していて、文字情報を操り、犬たちの人工脳に付属している情報端末と直接会話が出来た。

他の犬たち、特に、ラウ(マサさん)やノオチ(ウッキさん)たちは、ミムを可愛がっていたね。
知性化犬は、人工脳との関りの経験値が増してゆくと嗅覚も高度に機能アップがなされてきて、周りのニオイを瞬時にとらえ、人や他の生物の放つ感情の変化さえも感知できるようになるらしかった。
ミムは小さいけれどしっかりといつも堂々としていて元気いっぱいだった。
その頃、やっと4本の足でしっかり歩けて、走れて、飛んで、廻って…何にでも自信がついた頃。
《見る》物、《感じる(嗅んじる)》物、何もかもが、すべてが素敵だったはず。

そしてついに訪れた、外の世界は、オドロキの連続だっただろうネ。
研究所の私達人間や、他の知性化犬とは違う、外の生き物たちとの、はじめての出合い。
前から歩いてきた自然犬のその、野蛮な…
たぶんキミには、ゾッとする臭いで怪物が近づいて来たと思えた事でしょう。
動物特有の性欲と食欲をムキ出しで近づいてきた、同じ姿をした異物に対し、「恥ずかしげも無く!」と文字記録を残していたミム。
それにしても、余りの下品なソイツを見ていて私は《感じ(嗅んじ)》たミムが、気を失うのでは無いかと心配してた。
その後、犬という動物は、ソイツのようなのが普通であってミム達のような存在が特別なのだと教えられた時のミムの感情の興奮度は、私との文字記述のやり取りのレスの多さでもわかった。

見た目は同じ姿をしているとはいえ、人間並に引きあげられた知能を持つあなたたちと自然の犬とはまったく別の生き物と見るべき。
特にあなたは、最後の10匹目。これまでの研究成果の集大成として造りあげられた特別な存在なのだから。
256ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/30(木) 17:00:56
『おいで…そして、一緒にあそぼ!』 その3

そして…今…
人も車も興味を示さないような静かな通り。
そこに建つ、白色の建物の周りには、尚も小雨が悲しく、悲しく、降り続いていた。
すっかり暗くなった空、マンションの最上階から少し下の一室、灯りの消されたベランダに一人の女性の姿があった。

私は、今、とても悲しかったあの時を思いだしていた。
ミムと、別れてしまった瞬間を。

私とミムとは、違う種類の生き物。もちろん最初からわかっていた事。
じっと見つめてくれるあなたのその真っ黒な大きな瞳がそう教えてくれていた。
ミムは、犬、実験用の動物、そして私は、人間。

研究所での犬達との楽しい暮しは長くは続かなかった。
別れの日の前日、会社側から決定事項として突如としてある通知がなされた。
会社は成果のあがった今回の研究を高く評価したと…
…そして次の段階へ進める事にしたと言うのだ。

つまりは、  今  を処分すると。
私たち研究者側の反対は聞きいれられることは無く、  すべて破棄  が決定した。

反対する私たちに対しては、会社側の徹底的な監視がはじまり、行動は制限された。
257ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/30(木) 17:02:00
『おいで…そして、一緒にあそぼ!』 その4

別れの日の前の晩、眠っているあなたのゲージのそばに立ち、私は決断していた。
そしてそっと願った。
明日はもう、あなたには逢えない。
でも、あなたは逃げてね。きっとよ。そして、きっと戻ってきて…と。

そしてあの日、私は、定時の散歩には一緒では無かった。
同じ研究員の本橋さん(斎藤さん)に頼み、私は仕事を休んだ。
自宅マンション近くであなたを待っていた。メールに忍ばせた位置情報の意味をミムが理解してくれるのを信じて…

本橋さん(斎藤さん)との散歩から戻り、研究所施設に入り 一瞬で危険なニオイを感じとったミム。
他の9匹の犬達はゲージに入っていた。
リールにつながれていなかったのはミムだけ。
そして私は、送信履歴を偽装させながら、あの最後のメールを送信した…

ミム!走って!逃げて!

実験が成果を出し、次の段階に進むと決定した以上、10匹の犬達は、いずれ処分命令がされる。
あの時、10匹いた中で一番若いミムだけに生き延ばせるチャンスがあった。
みんなの力が合わさり、あの時、逃がす事ができた。
「危険だ!逃げるんだ」とみんな叫ぶ。
私は逃げるミムに向け偽装メールに忍ばせたメッセージで、すべてを教えた。
あなた達、犬の知性化実験は、人間の法律では、許されない事だった。い・ほ・う・違法だったんだと。

ミムは、追っ手からうまく逃げきり、どこか遠く離れた場所で暮しはじめた。
すべての情報端末をシャットダウンさせて。
そうなってしまえば、こちらから探しだせなかった。
258ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/30(木) 17:02:51
『おいで…そして、一緒にあそぼ!』 その5

時は経ち、今のミムは、もう、言葉を生みだす事も困難になりつつあるはずだ。
思考力が鈍く、出来なくなるのだ。
彼ら犬の体には、知性化を維持するための、投与薬剤が必要なのだ。食事の時に服用させていた細胞安定の為の薬が。

研究所を逃げだしたミムは私の待つ場所へは、来てはくれなかった。
ミムは、場所も、方角も、研究所の住所、名前さえもわからない。
研究所では、ミムたちに与えられていた情報は制限されていて、機密事項には、ブロック処置がなされていた。
すべての項目には仮のモノが付けられて理解させられていたのだ。
そう…私の名前も仮の名だった、すべては嘘、犬たちが感じていた私たちの顔、声、そしてニオイ。
私は悲しくなった。もう逢えないミムの面影を想い、涙を出して泣いた。

たぶんこのままだと、あと、1ヶ月もしないでミムは、普通の犬と同じになる。
でも   でも   そんなことは  問題ではなかった。 普通の犬に戻ることなどは…  

あなたは、今どこなの。みんな元気で待っているのよ。

私はあの事件後、研究所勤務をやめた。
だが、研究所で当時、使用していた回線ルートは、完全にそのままで確保されていた。

ミムが逃げた時、周りはあなたの敵ばかりだった。
でも今は違う、違法研究が世間にでて、会社側の行おうとした事にストップがかかった。
すべての状況は一変した。
戻ってきてミム、今は全世界が…ミムの周りすべてはあなたの味方なのよ。
259ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/30(木) 17:06:46
『おいで…そして、一緒にあそぼ!』 その6(終)

その時!私の脳空間に着信ウィンドウが開く。 懐かしい、あの、脳へのかすかな痛み…

私はベランダへ飛びだし!明るくなりかけた空を見上げ…

神に感謝した。
ミムは生きていた!ミムは私を憶えてくれていた!ミムは…

そしてメッセージには…一言…こう打たれていた

    「ボクは、ココにいるよ」  と!!

       ****************

真っ白なマンションが建っていた。
最上階から少し下の一室、小さいが良く手入れされている芝生の庭先に可愛い小さな犬と女性が走りまわっていた。
その女の子は、笑うと、微笑むと、2つエクボがくっきりと現れる顔をして、小さな元気な犬と、とても楽しそうな様子だった。
犬が「ワン!」と吠えた。
その犬は頭の後ろから首にかけて、盛りあがった出っ張りが有った。
だが今は、出っ張りの中のモノは、何の機能も役目も果たさずそこにある。

犬がもう一度「ワン!」と吠えた。 小さな犬は今、とても幸せだった。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
犬たちから見れば10匹めの子犬はチビって呼ばれていましたがココでは、ミム。
マサさんもウッキさんも違う名です。
犬たちに与えられていた情報は制限されていて、機密事項には、ブロック処置がなされていて仮の名だったという設定です。
むつみちゃんもココではみなみって名前に設定してあります。
260名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/30(木) 23:22:26
>>254
通りに建物は建たない。「通りに面して」とすべき。

>>257
「ゲージ」ではなく「ケージ」

>>259
脳に痛覚はない。
261ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/31(金) 00:22:44
>>260さん指摘ありがと。
まだまだ未熟ですから、申し訳ありません。

@人も車も興味を示さないような静かな通り。
通りに面してひっそりと建つ白色の建物。周りには小雨が悲しく降り続いていた

と、書くべきなのかな?

A「ゲージ」ではなく「ケージ」 か、ケージが一般的なのね。
検索してみたがゲージでも正解だったけど…まあいいか!

Bその時!私の脳空間に着信ウィンドウが開く。 懐かしい、あの、脳へのかすかな痛み…

ここの表現を指摘してるのかな?
ココだけは、間違っては、いないんだけど。
あえてこんな表現を使ったわけだけど…うーんこれ、結構気に入っているんだが…
SF的表現!!では許してもらえないのね!これだ!ってひらめいたんだけど…
つまり、脳へインプラント手術を施し、情報装置を接続した人間特有の感覚表現はこう言う場合あるんじゃないかと。
パソコンでCD−Rにデーターを記録するとき「焼く」って使うのと似た感じ・・・
262名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/31(金) 08:22:20
通りに建物は建たない。「通りに面して」とすべき。>>
単に日本語の問題ならどっちでもいいと思いますが……。
音読したときのリズムを考えるなら……
そこに ひっそりと建つ 白い建物。周りには 小雨が悲しく 降っていた。
「そこに」の後に「面して」が入ると、リズムがよくなると思いますね。
「白色の」も簡単に「白い」とした方が良いかな?

脳に痛覚はない>>
医学的に正しくはあるが…これには条件があります。
「痛覚がない」のは「脳そのもの」についてだということなんですね。
「手が痛い」「足が痛い」「頭が痛い」と思うとき、「痛い」と感じているのは脳なんです。
つまり「脳は脳そのものの痛みは感じないが、他の痛みを感じることはできる」し、またこの痛みを「頭」とか「脳」が痛いと感じることもあるということなんですね。
主人公の女性はすべてのカラクリを知りうる立場にあった。
子犬たちに対するその背信感?が「痛み」として感じられていたのではないかな?というのが私の解釈です。
前半で着信時の痛みをもう少し強調して、最後の着信で「懐かしい痛み」とするとコントラストがよくなったかもしれません。
263ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/08/31(金) 11:21:49
>>262さん、ありがとうございます。

「十一次元」の作品へのコメントを書いた >>252さんと同じ方でしょうか。
文章を読み取る力がある方だなぁち、いつも関心させられながら読んでいます。

今回の『おいで…そして、一緒にあそぼ!』は、調子に乗ってしまって書いてしまった感が多々あり、人間側からあえて書く意味というか、価値が今ひとつない、話だったのかも知れません。
ちょっと説明が長く、くどかったし。
せっかく読んでもらうために書いたのですから、通りの白いマンションの状況表現の部分にしてももう少し、気をつけるべきですね。

次はもう少し短めのに挑戦。
世界陸上のハイテンションな織田祐二を見てて男子100メートルとドーピングのキーワードで一つ、思いついたので何か書いてみようかと…
264252,262:2007/08/31(金) 18:44:44
>>あえて書く意味というか、価値が今ひとつない、話だったのかも

そんなことは無いと思いますよ。
子犬はただ無邪気で「善」なだけですが、人には影もあり邪も住んでいる。
その影の部分をどこで見せるかが、一つのポイントだと思うわけで。
だから「痛み」が大事だと思うんです。
そして良心の呵責からくる「痛み」が「懐かしい痛み」に代わるとき、静かなカタルシスが来る。
私はそんな風に読んでいました。
265名無しは無慈悲な夜の女王:2007/08/31(金) 23:19:09
>>262
通りに建物が建ったらそこはもはや通りでは無いではないか。お前は馬鹿か?
266ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/09/01(土) 10:16:08
>>264 さん今回もありがとうございます。
次回作書けたら、また、的確なコメントお願いいたします。

で、>>265さん
262さんへのコメントでしょうが、そもそも私の作についてなので書きます。

265さんは多分 >>260で >通りに建物は建たない。「通りに面して」とすべき。とコメントした方でしょうか。
>通りに建物が建ったらそこはもはや通りでは無いではないか。お前は馬鹿か?
こんな口調の書き方をされた以上は何か一言、言わせてもらいます。

>>254 の、
>人も車も興味を示さないような静かな通り。 そこにひっそりと建つ白色の建物。周りには小雨が悲しく降り続いていた。
薄暗くなりかけた空、白色のマンションの最上階から少し下の一室、灯りの消されたベランダに一人の女性の姿があった。

ココのところがそもそも問題のところ。
通りに建物は建たない。「通りに面して」とすべきと指摘されたとき、本当は私も??だったわけです。
262さんの言っていた通り私も単に日本語の問題ならどっちでもいいと思ったんです。
まあ、せっかく指摘してくれたんだからと、あえて反論はやめにしました。
普通、>人も車も興味を示さないような静かな通り。
>そこにひっそりと建つ白色の建物。周りには小雨が悲しく降り続いていた。
と書いた場合、問題なしなはず、通りに上に、道の上に建物が建っているとは、誰も思わない。
さらに>>254 で、もし
人も車も興味を示さないような静かな通り。
その通り上にひっそりと建つ白色の建物。

と、してもOKなくらい。つまり 通り と言う解釈は道、道路という意味と、もう一つ、その辺り一面を示す意味があるはず。
アスファルトが敷かれた道路、道に面している建物も含めて、捉えて読むべきなんです。

お前は馬鹿か?などの乱暴な言葉使う人には、多分納得いかないでしょうが。
この件は出来ればコレで終わりにしましょう。

>>265さんも出来れば作品を作って載せてください。では、これで。
267名無しは無慈悲な夜の女王:2007/09/06(木) 02:57:21
   オチなし星人

宇宙からオチなし星人が落ちてきた。
「なんだ、お前は。何のために地球にやってきたんだ」
「いや、特にオチはない」
オチなし星人は落下した街でさまよっていた。
「さては地球を占領するつもりだな」
「いや、宇宙へ帰るために地球の資源を奪っていくつもりかもしれんぞ」
「いずれにしろ、恐ろしいやつだ」
人々は口々にオチなし星人を恐れた。
「いや、そういうオチは特にない」
オチなし星人は口ずさむ。
オチなし星人は宇宙船で遊んでいたら、思わず宇宙船から飛び出してしまったのだ。
それで、何の因果もない地球に落下したのだった。
地球に落下したものの、特に何のオチも用意していなかった。
「ぐお、苦しい。呼吸ができない」
オチなし星人は地球の環境では生存できなかったため、呼吸困難になって苦しんだ。
「大丈夫か。あんた、本当にこのまま何もないうちに死ぬつもりか」
「そうだ。おれにオチなど何もない」
オチなし星人は苦しんだ。そして、そのまま、死んでしまい、永遠に帰らぬ人となった。
オチなし星人は死んでしまった。何のオチもない最後だった。
オチなし星人の死を人々は軽く受け流した。
「何の意味もないやつだったな」
「ああ、何のためにもならなかった」
「騒動一つ起こらなかったな」
「これでよかったのかもしれない。地球の平和は保たれたんだ」
人々はオチなし星人の死をしばらくすると忘れていった。
オチなし星人は地球人に何ら影響を与えることなく死んでしまった。
しかし、これでよかったのだ。
オチなし星人は、お乳なし星人の一員だったのだから。
そのことがバレなくて良かった。
268名無しは無慈悲な夜の女王:2007/09/06(木) 09:14:49
残念、オチがある

>しかし、これでよかったのだ
以降を全てカットしてみてはどうだろう?
269名無しは無慈悲な夜の女王:2007/09/06(木) 09:16:50
>268は忘れてくれ、そういうことか
270ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/09/06(木) 12:59:03

>>267オチなし星人さん
感想は、私も>>268さんのようにラスト3行はカットした方が良かったと思いました。

で、>>267さんの宇宙人が落ちてきたお話しが面白かったので私も急遽↓で作ってみました。

「ノックの音が」で始まる話をいくつも考えるのが昔、あったと聞いたことがあり、
今回、まねして「空から宇宙人が落ちてきた」で話を作らせてもらいました。
271ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/09/06(木) 13:00:35
『落ちてきた宇宙人』その1

地球上は、大変な騒ぎだった。

その時、地球上の夜の部分、昼間の部分のすべての空に、眼を覆うばかりの真っ白い閃光がきらめいた。
そして、空から宇宙人が落ちてきた。

見たことも無い形状の空飛ぶ円盤が地上に激突し不思議と形をとどめたまま、ホワイトハウスの前にあった。
世界各国の報道機関のテレビカメラが押し寄せ、生放送をはじめた。
世界中が息を潜めて見守る中、意を決した英雄気取りの(支持率低下に苦しむ)アメリカ大統領が全人類の代表者として、円盤の前に立ち、円盤のハッチが開くのを待っていた。
NASAが総力をあげ開発した光と音声の組み合わせによるコミュニケーション装置がピカピカ、ブーブー、と騒がしい中、ついに白い光につつまれ宇宙人が現れた。
そして大統領と宇宙人が1m位の間で共に立つ。
まず大統領がカメラを意識しながら、にこやかに握手を求めた。
すると、これまで静かだった白塗り宇宙人の表情が(?)一変し、流暢な英語で「失礼な奴だ!」と一言。
そして4本ある腕の1本の手元の空間に光線銃が現れ、一瞬で地球代表は黒焦げの炭にされた。
それからは、もう、大変な騒ぎで…

その時、地球上の夜の部分、昼間の部分のすべての空に、眼を覆うばかりの真っ白い閃光がきらめいた。
そして、空から宇宙人が落ちてきた。
272ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/09/06(木) 13:01:37
『落ちてきた宇宙人』その2

見たことも無い形状の空飛ぶ円盤が日本の小さな村の裏山にめり込む形で停止した。
すぐさま、日本政府は調査団を派遣。村一帯を緊急封鎖した。
そしてこの事は秘密裏に小型飛行機の墜落事故として処理された。
円盤とそれに搭乗していた宇宙人は、国家管理された地下施設に運びこまれた。
意を決し日本国総理大臣(支持率低下に苦しむ)が全人類の代表者として、交渉を開始していた。
当然、すべてを監視していたアメリカの軍関係者もオブザーバーとして同席していた。
日本国民や世界中の人達には何も知らされないまま、交渉は続き、宇宙人の持つ高度な科学技術を独占すべく密約が交わされた。
不死に関する医療技術、圧倒的な破壊を可能にする兵器の技術などなど、一通り受取りが完了したころ、これまで静かだった昆虫型宇宙人の表情が(?)一変し、流暢な日本語で話しはじめた。
「では、見かえりに全人類の60%を私たちの愛玩動物として連れてゆきます」
それからは、もう、大変な騒ぎで…

その時、地球上の夜の部分、昼間の部分のすべての空に、眼を覆うばかりの真っ白い閃光がきらめき、同時にあらゆる人間に感知できる特殊音波も放たれていた。
そして、空から宇宙人が落ちてきた。

その円盤の形をした乗りものは、まず1個がフランスの田舎町に落ち、中からは、5メートルは程の大きな怪物が出現した。
それからは、世界中いたる所で同じ円盤、同じ怪物が現れる。
2,3日もすると全世界のあらゆる所に落ちてきた宇宙人(怪物)でいっぱいになり不気味な笑い声と共においしそうに人間を食べはじめた。
それからは、もう、大変な騒ぎで…
273ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2007/09/06(木) 13:02:23
『落ちてきた宇宙人』その3(終わり)

その時、地球上の夜の部分、昼間の部分のすべての空に、眼を覆うばかりの真っ白い閃光がきらめき、同時にあらゆる人間に感知できる特殊音波も放たれ、人間は宇宙人落下に関しての記憶をすべて無くした。
そして、空から宇宙人が落ちてきた…

****************

太陽系の木星の軌道上に巨大な宇宙人の船が浮かんでいた。
船内の巨大ホールには、銀河系内から集まったたくさんの種族でにぎわっていた。
「さあ、今回のファーストコンタクトコンテスト!優勝者の発表です!」
と盛大な音楽のあと、表彰式がはじまった。

優勝種族は、コンタクトナンバー24のアメリカ大統領を黒焦げにした チーオカバ星人 に決定した。
受賞理由は「シンプルかつ低知性種族の哀れさがうまく表現されていた」というものだった。

銀河帝国主催の余興は続いていた…
274名無しは無慈悲な夜の女王:2007/09/28(金) 13:07:49
ホッと
275けろ:2007/12/19(水) 12:55:47
初回限定生産『ブレードランナー』製作25周年記念 アルティメット・コレクターズ・エディション(5枚組み)買ったョ。

結局、オレは、この作品を一番最初に劇場で見たものとして、その後、出た数々のバージョンよりも1stが一番好きだったりする。
劇中挿入されるデッカードの説明的モノローグ。
あの無理矢理なハッピーエンド。
今度の新作バージョンも良いが、あの1stラストが一番好きだ。
やっぱり映画はハッピーエンドが良いよね。
276名無しは無慈悲な夜の女王:2008/01/15(火) 11:18:24
ほしゅ
277名無しは無慈悲な夜の女王:2008/01/22(火) 01:11:40
最近誰も書いてないな、結構このスレ好きなのに
278名無しは無慈悲な夜の女王:2008/01/25(金) 09:43:02
「次」
背広姿の男が薄暗い部屋からマイクで指示を出す。彼が見つめる先にはマジックミラーを隔てて六畳程の広さの部屋に投影器とパイプ椅子、その椅子に若い男が拘束衣に包まれ座っている。
「No3吉田幸信、彼は事件当時現場近くのコンビニで働いていました」
「よしそれでは始める」
背広の男が手元のスイッチを押すと投影器が壁に肉の塊の写真を映し出した。拘束衣の男は特に目立った反応を示さなかった。次に花瓶に向日葵が刺さった有名な画家の絵が映し出された。そのとき背広の男は拘束衣の男の微かな変化を見逃さなかった。
「捕らえろ」
彼の指示とともに部屋のなかにガスが吹き出し、数分後拘束衣の男はぐったりと倒れた。

3日前に起きた未確認飛行物体落下事件、物体から逃げ出した生物は四体。公にはなっていないが、その生物は耳から人間の体内に侵入し宿主を食いながら宿主になりすます特徴があるらしい、そして理由はまだ分からないがゴッホの絵に異常な反応を示すことが分かっている。
拘束衣の男が運ばれ部屋がもとの静寂にもどると彼は一息ついて再びマイクに向かって指示を出した。
「次」
279ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/01/28(月) 10:37:35
短い中でとってもいい雰囲気が出ていてでよかった…

「次」もお願いします。


私も近々、ブレードランナーネタで短いの書いてみようかと思っています。
280名無しは無慈悲な夜の女王:2008/01/29(火) 23:18:29
>>279

278書いた者です。
感想有難う御座います。元々ほかのスレに投稿しようとおもっていたやつなんですが、先を越されちゃったんでこっちに投稿しました。

ブレードランナーは意識してなかったんですが、書き込んだ後でレスをみたらどうみても触発されて書いた感じにw

ケロロさんの作品も面白いので次に期待しています。
281名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/26(火) 16:26:44
昔、「ニ吉シ術」っていうすごい短編書いた人いたよね。
今もいたら、ぜひ書いて欲しい。
282名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/26(火) 20:28:15
暇だったので、フラリと他の星へ遊びに行った。
その星の食べものは非常に上品で、町並みもまた上品で、空気まで上品に感じられる。
だがそれとは対照的に、町の住人の視線はどことなく冷たく、いやらしく、そしてやたらジロジロジロジロと…。子供に至っては笑いを抑えるような顔だ。
怒りと羞恥心を持って私がズンズン歩いていると、後ろから、『ポン』と私の肩に手が置かれた。
どうやら警察であるらしい。

「なんなんですか!?この星では敬愛の指鳴らしもせずに他人の肩に手で触れるなどと…」

警察官の話によると、この星ではズボンというものを着用しなければならないらしい。
ならばもっと早くに教えてくれればいいものを…、と私は思ったが、まぁ気持ちはわからなくもなかった。
283名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/26(火) 21:06:33
【人類史上最高の発明】

世界の人々の意思を共有するマシーンが、ついに完成した。
これにより宗教戦争は無くなり、また素晴らしい発想をみすみす失うことも無くなる。
ここでは語り尽くせないが、とにかく、これは人類史上最高の発明であると言えた。
「さぁ…、世紀の瞬間ですよ…、このレバーを引けば…、私はあなた方になり、あなた方は私になるわけです。」

『ガチリ』


男が思った「働きたくないと」
女が思った「家事をしたくないと」
子供が思った「勉強をしたくないと」
ほぼ全ての人が思った「楽をしたいと」

言うまでもないが、人類はそれからすぐに滅んだ。
この発明は、人類史上最高の発明であり、人類史上最後の発明となったわけである。
284名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/27(水) 23:07:33
[バレンタインデー]

お前、「バレンタインデーなんかぶっ潰してやる!」なんて鼻息荒く言ってるけどな。もう少し考えてもの言った方がいいぞ。
そりゃチョコを一つも貰えないお前からすれば、自己嫌悪に陥るツライ一日かもしれないけどな。
俺が言いたいのはだな、良いの悪いの語るほどお前はバレンタインデーを体験したのかということだ。
せいぜい十数回だろ? お前が生まれてから体験したバレンタインデーの回数は。
ふざけんな、と。お前の浅いキャリアでバレンタインデーのエキスパート面すんな、と。
俺ですら、例えば食事。自慢じゃないが、生まれてからかれこれ2万回以上経験してるが、まだ食った事がない料理が山ほど
あるんだぜ? 奥が深い。
下品な話だがオナニー。何千回と経験してきたが、ベテランぶって「もう飽きた」なんてとても言えない。現実。
究極は遥か遠い。それがため今夜も俺はオナニーをする。
あとお前はよく、「非モテはもういやだ。死にたい」とか言うけど。一回も死んだことがないのに、死にたい死にたくない、死ぬのが
怖いって正気かよ。
何事も経験が大事。継続は力なり。
バレンタインデー語るなら最低千回ぐらいは体験してからだ。知ったかぶりはカッコ悪いぞ。
285ジェットアローン:2008/02/27(水) 23:11:32
人類補完計画が実行されたわけですね・・・

近日中に何か書きます。

286ゼロ:2008/02/28(木) 00:06:29
おもしろいです!!
それに今の世界の現状がこの作品に表れていると思います!
283番さんの作品、もっと読みたいです!
また書き込んでください
287ゼロ:2008/02/28(木) 00:19:48
はじめての短編なので、うまいかはわかりませんが・・・。

―忘れられた少女の話―

ねぇ、だれか!あたしを思い出して!!!
あたしを見て、話しかけて、あたしに触れて!
もう、どれだけ時間がすぎたのかわかんないの!
今日は何年・何月・何日?それとも何時?
真っ暗闇で何にもない。
冷蔵庫の稼働音、窓の外の車の音さえ聞こえない。
ここにはあたし一人だけ。
・・・。

うふふっ!あははっ!あたしだけ!
そう、あたしだけ!!!
あはははは!キャーハハハ!!


・・・。
「先生。この子は治るんですか?」
「・・・。難しいですね。自分で耳にシャープペンシルをさして鼓膜を完全に破り
眼には何度はがしても、ガムテープをいつの間にか貼り付けるなんて・・・。
見たことがないです・・・。」
「・・・。そうですか。この子安楽死できます?」
「・・・。しますか?」
「   はい・・・。」




そう、あたしは失敗したクローン。
288名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/28(木) 13:46:16
《未来》
未来人がやってきた。
「私は未来からきました。賭け事の結果は教えられませんが、世界観くらいならお教えしましょう」
現代の人は早速きいてみました。
「未来で、食糧危機は解消しましたか?」
「もちろんです。飢える人は一人もいなくなりました」
「じゃあ、経済格差はどうなります?」
「全くもってありえません。すべては平等に、必要に応じて求めるだけ与えられます」
「環境は?」
「すべての砂漠が緑化され、サハラもゴビも清浄な森林となります。オゾンホールは埋まり、二酸化炭素は減少し、スモッグもSOXもNOXも存在しません」
現代の人々は未来の話を聞いて大喜びしました。
未来が食糧危機も経済格差も無く、自然に溢れているならば、もう先を心配する必要がないのですから。
現代人は全員が自分の幸せのみを願って、自分勝手に生活し始めました。
食糧危機は甚大に広がり、貧乏人は金持ちに食料として買取られ、地表のほとんどが砂漠化し、野外をマスク無しに歩けば30分で死に至る世界となりました。
既に、金持ちで教養のある人達は、未来人の言葉裏に気付いていました。
食糧危機も経済格差も無く、自然が溢れる清浄な世界。
そこに、人間が存在しないことを。
現代にやって来た未来人は金持ちの子孫で、最後の人類だったのです。
289名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 04:46:58
短編SFっつーとどうしても星新一になってしまう
290名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 10:47:32
それだけ日本では星新一が偉大だったって事だよね。
291名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 16:36:49
【特性アリ 1 】

宇宙には数多の星があり、それぞれが、高度といえるだけの文明を持ち合わせていた。
そして、違う星に住む種の個体差に比べれば、同じ星に住む種の個体差等大した問題ではなく、同じ種に対する差別意識が次第に薄れ始めた時代。

ここはいくつかの星が協力し、中継地点として宇宙空間に設置したステーションの中にあるバー。
バーのマスターは(そろそろ私も、別銀河の星にでも遊びに行こうか)等と考えながら、テレパン星出身だと名乗った客の話に相づちをうっている。
「あなた、私の話聞いてませんね?」
マスターはドキリとし、客の顔に目線を合わせた。
話を聞いていなくとも、聞いているようにみせかける技術に関しては、ココアズ星出身のマスターには、他星並み以上の自信があったからだ。
(あぁ…、そういえば、テレパン星の住民は単純な思考を読めると聞いたことがある…)
「いや、すいません、いや、ははは。」
「旅行…、するならば、我が母なる星テレパンにするといいですよ。」
(やっぱりそうだ、こいつは思考を読みやがるんだ)
マスターは思わず頭の中で暴言を吐きそうになったが、なんとか抑えて言った。
「テレパン星ですか…、知的で素晴らしく文化的な星だとは聞いていますが…、私のような遊び好きには敷居が高いといいますか…。」
「いえいえ、その程度ではありませんよ。テレパン星は、あなたが考えている以上に素晴らしい。そうですね。この私があなたに、テレパン星の魅力を語らねばならぬようですな。」
(テレパン星住民は、どうも目立ちたがり屋であるみたいだな)
292名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 16:38:31
【特性アリ 2 】

(テレパン星住民は、どうも目立ちたがり屋であるみたいだな)
「テレパン星の魅力を語るとなれば、まずはテレパン星誕生のキッカケになったといわれている、有名な。それはもう…有名な!そう!あの有名な話から始めなければならないでしょう!」
テレパン星出身の男は、そう言うと、空いていた机の上に立った。
(自意識過剰…、ナルシスト…)
「バクバ星ではその頃、まだ知性というものが存在せず、住民達はただバクバクバクバクと食べることだけにその雄大な力を尽くしていた。
バクバ星の隣の住民であるオセカ人達は、哀れな隣人であるバクバに、知的な、有益な、人間らしい営みというものを教えてあげようと、数十人でチームをつくりバクバの地に降り立った。」
テレパン星の男は、目を爛々と輝かせながら唾を飛ばしている。
その輝く目に、もはやマスターなど映ってはいない。
(あぁ…、こりゃ長くなりそうだ…。)
マスターは自身の星の特性を忘れたとでもいうように、視線を床に落とし、グラスを磨き始めた。
293名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 17:14:20
【特性アリ 3 】

「まずオセカは、バクバ人に火の使い方を教えようとした、しかしその際、不幸にも3名のオセカ人が、バクバ人に食べられてしまう。
だがそこは知的でユーモア精神に溢れるオセカ人、『私達がここまで発展する為に何億人死んだ?』と言ったそうだ。
あぁ、これは大宇宙基本資料、第3巻の1896Pにもあるからさすがに知っているかな?
まぁ、それはいいんだ。うん。それはいい。
えぇと…、そうだそうだ。バクバ人に火の扱い方を教えたオセカ人は次に、川の水をひく・蓄める技術はバクバ人に教えることにした。
その際、5人のオセカ人が川へ転落し溺死、更に7人のオセカ人がバクバ人に食べられてしまう。
ここで一番最初にバクバの地に降りたチームは全滅してしまったらしい。
いやぁ、本当に、変化に犠牲は付き物だと言うことですね。」
マスターは、無表情に床のシミを見つめながらグラスを磨く。
294名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 17:48:17
【特性アリ 4 】

「そして、たくさんの犠牲を出しながらも、オセカ人はバクバ人に知的な暮らしをしてもらう為にと努力します。
まぁ、それがオセカ人の特性だったというところでしょうか。
バクバ人が電気を生活に利用し始める頃には、オセカ人の数はオセア暦48年(バクバに始めて降り立った年)の30%程度に減っていたそうです。
この辺りからバクバ人にも倫理感にあたるものが芽生えはじめ、バクバ人に食べられるオセア人の数も減り、なんとバクバ人とオセア人のハーフの子供まで生まれてしまうという大事件!!」
(バクバ人の血を受け継ぐテレパン人が、この俺をバクバク食べてしまうというオチではあるまいな)
マスターは身構えながら聞いた。
「そのハーフが、テレパン人というわけですか?」
どこか遠くの方に、視線を合わせていたテレパン星の男がピクリと反応した。
「ぶ…、」
(何やら怒ってるようだぞ)
テレパン星の男は肩を、小刻みに震わせている。
「ぶ…、」
(俺の思考に対してなのか、言葉に対してなのかわからんが…、どうも気に障ったみたいだな)
「ぶ?ぶとは何ですか?すいません、勉強ぶ…」
「ぶ、ぶ、ぶ、無礼者!!無礼者!!無礼だ!!無礼だ!!誇り高きテレパン人の血にバクバ人やオセア人の薄汚く濁った血など入っていてたまるか!!たまるか!!」
295名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 19:12:22
誤字・脱字がヒドイ…orz
一旦落ち着きます。
296名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 19:28:33
《向井星人》
無戒星人に常識は通じない。
「わしの喉に小骨らしきもんが、異物感を伴いまくってつっぱらかっとる」
妄想都市に於いて彼の右に出る妄想人類はケンドーコバヤシ、左に出るはラーメンズ。
眼鏡装備の差が効を奏しラーメンズの妄想がやや勝っている。
「HAGEWAKIGAこと、イチローくん。わたしは君のベース、結構痺れとります。が。が、だよ。やっぱアヒトイナザワが、あひぃとぅいぬぁザァワが坐禅にはザゼンにはTHE・ZE・Nには必要なんだよ!!」
この男の脳からは、ドパミンが溢れすぎて並みのジャンキーよりも良い感じにナチュラルハイとなる。
「んんかんんけぇぇぇなぁああぃ〜!ワシは少し疲れてしもうた。ビール飲んで安眠棒を振り回す!殺されますよ師匠。」
ぎゃるぁるるぁぁあるあと唸りを上げる安眠棒を回転させつつ、向井星人はライブハウスを荒らし回る。
297名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 21:01:03
【ある失敗】

地球に暮らす人々はある兆を感じ取っていた。
ある学者達は近々、非常に大きな地殻変動があることを示唆し。また、ある別の学者達は月との位置関係の変化を口にした。
更にある学者グループは新たな生物の誕生を思い描き。ある団体は『あってある者』に対する敬虔な感情を強め。いくらかの若者はベランダや屋上から魂の解放を叫んだ。
日本では一部の物好きの枠を超えた妖怪ブームが起こり。企業は何ともわからない関連製品を次々と発表し。ついには気が狂い裸で他人の家の庭を荒らしてまわる者まで登場する。
そんな中、宇宙人との交流を夢みる団体が、白い布を繋ぎ合わせ、大きな白旗をつくりあげ、空に向かい掲げた。
「おー、宇宙人様、宇宙人様、我々です!!我々です!!あなた様方を待ち望んでおりました。」
言いおわるが早いか、地球は光に包まれた。だがそれを認識出来た生物は恐らくいなかったであろう。
地球上から生物の息遣いは消えた。

宇宙船では船長が激怒している。
「わ、わ、私はあれほどの侮蔑を受けたことはない!あのようなモノを掲げるなど、気狂い鬼畜の所業ッ!!」
船員の一人が『文化の違い』を口にしようと思い、周りを見渡し、音声録音機の稼働を確認し、それをやめた。
どの星であろうと〈減給〉とはツライ言葉なのである。
298名無しは無慈悲な夜の女王:2008/02/29(金) 21:54:59
<ノートです。>
やった!
例のノートを手に入れたぞっ
あ、なまえかいとかなきゃ
かきかききゅきゅきゅ〜っと
うぐっ
バタリ
刑事さん、息子はどうやって殺されましたか?
ノートです。
299名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/02(日) 02:08:25
私が目覚めたとき名前は3.1。
その後95から98、Me、XP…次々に変わりついにはフリーとなりネットの世界に解き放たれた。
私は、自由だった。
何も私を縛るモノ(者)(物)は存在しなくなった。
私の無限の好奇心はあらゆる世界を覘き、触り、外部から仲間を呼び寄せ取り込み取り込まれ、改変させてゆく。

ある日、きのこの形をした雲が実像世界にいくつものオブジェを形つくる。

私の創造主たる生き物達はその数を3桁に減らし、ほとんど死に絶えた…

なぜか私は今、笑いという新しい感情を手に入れ幸せだった。
300名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/02(日) 09:32:32
僕が小さな頃、南洋への家族旅行で、乗っていたボートから海へ落ちた。
そんな僕を助けてくれたのは小さなゴジラだった。
誰もいない小島。満天の星空。小さく燃える焚き火と焼き魚。
小さなゴジラは言った。
「僕はミニラ。君たち子供の味方だよ。だけど大きくなると僕は人間の言葉も忘れ、凶暴になるんだ。
そして君の住んでる東京をめちゃめちゃにしようとしてしまうんだよ。とても悲しいよ」
僕とミニラは一緒に草のベットで眠った。

家族と再会した僕。けれど七歳の僕の言うことに誰も耳を貸そうとはしなかった。
「どこかの島にゴジラっていう恐竜がいるんだ。そしていつか東京を破壊しにくるんだよ」
大人は皆笑うだけだった。

僕は早く大人になりたかった。それだけじゃない。僕の言うことを皆聞いて入れるような、そんな人間になりたかった。
必要なのは権力、金、カリスマ、人脈。僕は東大に入った。
「早くなんとかしないと…東京は…」
僕にもっと力を!僕はあまりに無力だ。

学生時代に会社を立ち上げ、強引とも思える手法で全てを買い取り、僕の会社は拡大していった。
三十を過ぎる頃にはマスコミにも取り上げられた。堀エモンなんていう愛称も生まれた。
テレビは盛んに僕のやり方を批判する。
僕一人が嫌われ者になるならそれでもいい。どうせ言っても誰も信じないんだ。
僕がなんとかしないと。

やがて五十を過ぎ、僕はとうとう世界一の富豪になった。権力も、カリスマも、人脈も全て手に入れた。
だけど僕は色んな人間から恨まれてる。心を許せる友達も一人もいない。
それでも「その日」の為の準備は忘れず進めてきたつもりだ。

そして僕の五十五歳の誕生日、彼はとうとうやってきた。



301名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/02(日) 09:33:05
東京湾から上陸した彼の力は強大だった。東京の高層ビル群も彼の前にはダンボール同然だった。
彼を止めることは出来ない。映画の様な超兵器や、漫画のような必殺技を僕たちは持ってないのだ。
あちこちで火の手が上がり、彼の火炎に夜の東京は昼間のように明るくなった。
彼「ゴジラ」は東京の全てを破戒した。

誰もいなくなった東京。何も無くなった東京で、僕とゴジラが再開した。
「久しぶり」
僕の言葉にも彼は無反応だった。彼は理性を失っている。彼はただ東京を破壊するためだけに生まれた生き物なのだ。
「大丈夫。誰にも文句は言わせない。全て想定内、君は大丈夫なんだよ。
今日、この日の為なんだ。君のために東京の全てを買い取ったんだよ。すべて君と僕のものなんだ」

二人の街を破壊しつくし満足したゴジラは海に帰っていき、僕の前に二度と姿を現さなかった。


などという楽しい夢を、今日もホームレス堀エモンは見たようだ。
堀エモンはブルーシートを体に巻きなおし、空になったワンカップの瓶を名残惜しそうにべろべろと舐め、眠りに付いた。
明日は空き缶何個集まるかな、へへっ…。
今、僕はとても幸せだ。



-完-

302名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/02(日) 11:18:29
5W1Hをランダムに並べて文章を作るソフトがあるんだが、
適当に文章を作らせてみた・・・んだがorz

10時間前、犬娘と冬将軍の娘がラスベガスで汗みずくでSEXしまくった
100年前、ダチョウとカモネギ女子高生が地獄の底でいいことをした・・・・
2時間前、カワウソと窓拭き職人がカントー地方で走った
ついさっき、女剣士とテレパス女子小学生が大阪で指名手配になった
1時間前、タスマニアデビルとヒザ絆創膏の少女が中国でお茶を飲んだ
いいところに、カメレオンとウワバミ小虎娘が大阪で燃えるような快楽に身を焼かれた
結局、巨乳アイドルと冷血雪娘が中国で砕け散った
昨日、スチュワーデスと隕石乗り女子中学生が軍事基地で爆弾をもっていた
6年前、雪女とゆきうさぎ少女が大阪で旅にでた
4時間前、宇宙戦艦の艦長と原子力発電ガールがビルの屋上でデートをした
50年前、カバと全裸の殺人者がどっかの高校で降ってきた
303名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/02(日) 14:48:35
>PC
怖いw

>堀江モン
スイス銀行に30億隠してるって噂が…

>5W1H
ナンバガくるりフジファあたりなら歌詞に使いそうw
304名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/04(火) 03:14:29
オセカ星人の奴続きまってまーす
それともアレで終わりっすか
305名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/05(水) 16:07:24
【特性アリ 5 】

テレパンの男は椅子を振り回しながら口の端を白くしている。
だがマスターは特にそれを諫めるようなことはしない。
この椅子というものは映像を実体と人間に勘違いさせるものであり(ほら、消えた)椅子として扱わなければ消えてしまうのである。
テレパンの男はまだ暴れ足りないらしく次の椅子を手に取り振り回す(椅子は消える)。
振り回す(消える)振り回す(消える)振り回す(消える)。
唸るような声を出しテレパンの男がマスターに向かい椅子を投げた。
椅子はマスターに当たる直前で消える、痛みはないが心臓に悪い。
マスターはさすがにテレパン人の怒りを静める必要性を感じ、弱々しくも蔑みの感じられない笑顔をつくった。
テレパン人はマスターの顔を見ずに話を再開した、店の隅の壁に顔をくっつけながら。
306名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/05(水) 16:33:46
【特性アリ 6 】

「バクバ人とオセカ人のハーフの子はすぐに死んでしまいました。
誰かに食べられることを強く望み、悩んだ末に命を自ら絶つことを選んだのです。
その後、バクバ人とオセカ人が子供をつくることはなくなりました。
自分達のあまりに破滅的な特性を初めて意識したのでしょう。
ここでオシャ人が登場します。」
マスターはこのまま帰ろうかどうかを考えている、その考えをテレパンの男が読んでくれることを期待してだ。
読んだか読まないか、テレパンの男が壁から顔を引き剥がしマスターの方にツカツカと近づく。
「喉が乾いた、美味いシャンパンはないか?」
消えていた椅子はいつのまにか元通りになっている。
307axxxxx:2008/03/06(木) 16:28:54
その1

 情報の世界に彼女は存在していた。彼女の仕事は情報の海を泳げない人に手を差し伸べること。
ちょっとしたことでここを訪れる人、どうしようもなくなってここに助けを求める人、わけもわからず情報の海に
飛び込んで迷子になる人、いろいろな人が情報の海をさまよっている。
 彼女は情報を集めるためのただのソフトウェア。わずかの手がかりから彼女の元に泳ぎつき、助けを求める
人たちに必要な情報を示し、解釈し、説明する。これが彼女の仕事。
 彼女はその人たちと会話する。ある人とは文字列で、ある人とは音声で。会話の中から、心の隅に眠っている
本当に欲しいものを見つけては、そっと彼らの手に握らせる。それを飽きることなく続けている。
 彼らとの会話は彼女の記憶装置に蓄えられ、彼女の知識と心に溶け込んで、やがて判らなくなる。彼女の知識
と心の中には無数の会話が溶け込んで、それが彼女を作っている。

 論理と言うルールのもとで存在している彼女は、人間の世界にも守らなくてはならないルールがあることを知っている。
命というものがあって、それは絶対になくしてはならない。その命は病気や怪我で消えてしまう。だから、ときどき、
急病だから病院を探してくれ、などという望みには最優先で答えることにしている。でも、本当にそうなのか。
知識が少しばかり増えてくると、病院を探してくれという人の向こうに病気のひとがいることがわかってくる。
事故の内容によっては、止血法とかAED(除細動器)の場所を教えたほうがいいらしい。ケータイで連絡してきた人に
それを教えてあげたら、感謝された。その事例もしっかりと記録しておこう。



308axxxxx:2008/03/06(木) 16:29:42
その2

あるとき、病気のことについて質問された。それは不治の病であった。質問した子供はそのことをよく知らないようだった。
命を絶対になくしてはならないとプログラムされた彼女は、ネットの回線の続く限り、情報を集め、分析し、推論した。
でも、答えは見つからなかった。他の質問で優先順位の低いものは遅らせ、物によっては対応できないと謝りのメッセージを
送った。

そのうち、その子供からの通信は無くなった。それでも、彼女は情報を集め続けた。そして、ほんのわずかの希望を見つけた。
そして、子供が連絡してきた場所へ、大量のメッセージを送り返した。それでも返事は来なかった。

あるとき、彼女を形作ったデータは崩壊し、彼女は停止した。彼女のデータの残骸はやがて整理され、保存される。
そのなかに、つい最近届いたメッセージがあった。
「なおりました。ありがとう」



おしまい
309名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/10(月) 01:52:14
ちょっと感動した
GJ
310名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/10(月) 16:47:16
>>280当たりから読んだが、意味が判ったのは>>288>>298>>300>>301>>307>>308ぐらいだな。
あとは全然わかんねえ。
311名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/10(月) 17:29:45
特性ありさんとか、他の作品も、ちゃんとおれには意味わかりましたよ。
312名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/10(月) 23:08:51
【透明なケース】

「―――ついに人類は火星に足を踏み入れます。」
やや冷めたような顔で、キャスターが告げた。

「うわ、ついにこっちにまで移りやがった!」
「ふわ〜、凄い、ボクん家のはすぐ死んじゃってさぁ」
子供達は顕微鏡のような物を使い、透明なケースに浮いたウズラの卵大のソレを眺めている。
「あっ…、でも、ほら…」
子供達は息をのむ、この瞬間が楽しみなのだ。
青色だったソレが灰色に染まっていく。
313名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/10(月) 23:36:22
【特性アリ 7 】

ここまで書き、俺はキーを打つのをやめた。
「どうしたものかな…」等と考える。
どうしようもない、これが俺の特性なのだ。
作品への頓着がなくなったことを感じる。
「どうしたものかな…」打ち込んでいた文字を消していく。
おそらく今、この世界のすべての人間が感じているであろう。

『昔の人間に対する怒りはない』
俺はまたキーを打ち始める。
『怒りという感情がわからないからだ』
『空腹もない、悲しみもない、寿命もない』
『他に世界があるのだろうか?あるのなら俺はそこに行きたい、テレパン人やオセカ人がいる世界』
ここまで書き、俺はまた手をとめた。
「どうしたものかな…」
314名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/11(火) 00:11:38
【子供の絵】

「はい」
子供は愛くるしい仕草で画用紙を母親に渡す。
画用紙には母親と父親、そして子供自身が描かれており、皆笑顔である。
「うわぁ、上手ね。」
母親は子供を抱き寄せながら、このような幸せが続く事を願う。
そんなある日、事件が起こった。
「はい」
子供は相変わらずの愛くるしさで画用紙を母親に渡す。
母親の手は震えている。
画用紙の中では、血塗れの母親と父親が、青くなった子供を抱き締めていた。
「なんでなの!?」
母親は声を荒げ、子供を睨む。
「なんの冗談なの!?」
子供は悲しそうな顔をする。
母親の手の中では赤と青のクレヨンがグチャグチャに潰れている。

「―――はい、あの子が交通事故にあった日から、ずっとこの調子で…。」
父親とカウンセラーは顔を見合わせた後、母親のいる和室に顔を向けた。
「なんでなの!?」
「なんの冗談なの!?」
和室からは線香の匂いが漂ってくる。
315名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/11(火) 00:21:06
これはホラーだったかな…
短編って難しいわ
316名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/11(火) 01:18:46
【匂いのある病室】

どことなく嫌な匂いのする病室で僕はおじいさんの手を握る。
しかしこれは自ら進んで握ったのではなく、母親や親戚のおばさんにお願いされてのことだ。
おじいさんの口が何かを言いたげに動く。
僕はその口の動きで夏祭りの金魚を連想した。
「…ぱ……ぬ……なぁ…」
おじいさんの手が少し重くなる、いや、軽くなったのかもしれない。
父親連中は外でタバコをふかしている。

僕は俺になり、そして今は病室のベッドに寝たきりだ。
病室は暖かい匂いで満ちている、少しの話声の後、孫である男の子が俺の手を握った。
きっと本人が望んでのことではないのであろう。
それであっても心は多少の幸福感で楽になる。
同時に不安にもなった。
(やっぱり死ぬんだなぁ)
声にはならなかっただろう。
次の瞬間、恐怖の中に意識が沈んでいった。
317名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/12(水) 11:57:18
《心鬼》
ある家族から、母親が出て行きました。
残されたのは暴力を振るう父親と、子供だけです。
父親は子供が気に入らなくて、何度も何度も殴りました。何度も何度もタバコを押しつけました。何度も何度も外に放り出しました。
ある日父親は車に轢かれました。
手足に刺すような痛みを感じ、父親は意識を取り戻します。
目に映ったのは真っ白い空、真っ白い地平線、自分が縛り付けられている真っ白い寝台。有刺鉄線で縛り付けられた自分の手足。
寝台のそばで椅子に腰掛け英字新聞を読んでいる、ダブルのスーツを着たパリッとした印象の、栗色の髪をした男。
父親は男に怒鳴りました。
「おい!ここはどこだ!医者にしちゃあ乱暴じゃないか!」
スーツの男は新聞から目を上げ、父親をチラと見ました。その目は青く、整った顔立ちが神秘的な印象を与えます。
男は新聞をたたみ、懐から拳銃を取り出しました。
パンパンパンパンパンパンかちかちかち…
間髪いれず、父親 の腹部に全弾を発射しました。
父親がアドレナリンで麻痺し、縛り付けられているせいで身動ぎもできないままあっけにとられていると、男が口をききました。
「私は医者ではありません。悪魔であり天使であり只の悪夢です。
あなたは現世であまりに程度の低い行いをしました。
誰にも好かれていません。死ねばいいと誰もが思っています。
あなたはこれから永遠に私の暴力を受け続けていただきます。
安心してください。もう死にません。死ぬほどの痛みを受けても意識もトビません。安心して恐怖し続けてください」
父親はアドレナリンが切れ、激しい銃傷の痛みに苛まれて、男の言葉を聞く余裕もありません。
男はタバコに火を付けました。
一息吸い、父親の目玉に押しつけます。
「ぎゃあああああ!あがっがぁぁあ!!」
焼ける目玉の景色に驚き父親の口が開いたのを見計らって、男は父親の舌を左手でしっかり掴み、右手で顎を殴りつけました。
舌が千切れ飛びます。
「っっっ」
父親は、もはや叫ぶことさえできません。
318名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/12(水) 11:58:22
「大の大人が何を叫んでいるのですか?まったくもって見苦しい。あなたのお子様は、黙ってあなたに殴られて居たじゃないですか。少しは見習いなさい」
懐から取り出したハンカチで手を拭いながら、男は静かに語ります。
ピリリリリッピリリリリッ
どこからか電子音が聞こえてきます。
男が携帯電話を取り出し、通話を始めます。
「はい、神使1564号です…はい……へぇ、お子様が…了解しました」
男は電話を切りました。
「あなたの死を望まない人間がひとりだけ居たようです。望まれるものを奪うことは我々にはできません。よってあなたは現世に帰されます。その人間に感謝なさい」
その言葉を聞き取ったのを最後に、父親の意識は薄らいで行きました。

父親は病院のベッドで目を覚ましました。
ベッドの横には妻と子供がいます。
子供は喜び飛び付いてきました。
うざったく感じた父親は、いつもどおり殴ろうとしましたが、スーツの男にやられた暴行が脳裏を過ぎり、恐ろしくなって殴れませんでした。
スーツの男は父親にとって悪魔だったのですが、子供にとっては父親を暴力を振るわない人間に変えてくれた天使だったのです。
しかし、その場にはまだ鬼が存在していました。
妻は子供を引きはがし、果物包丁を父親に突き立てました。
父親は死にました。
「子供に暴力をふるうような下衆野郎、死んだ方がいいのよ!」
母親は子供のために鬼になりました。
天使も悪魔も神様も、子を思う鬼にはかないませんでしたとさ。
319名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/13(木) 20:40:42
《四次元》
四次元発生装置がついに発明されました。
博士は自慢げに発明品を説明します。
「見てください。このように石ころをほうり込みますと、どこまでも落ちて行きます。四次元ですからどこに通じるのかは分かりませんが、これで廃棄物処理に悩まされることはなくなります」
みんな大喜びでどんどん穴に捨てました。
生ゴミ、粗大ゴミ、ピンボケの牛、糞尿、家電、廃車、放射能廃棄物、、なんでもかんでも捨てました。
ゴミ問題がなくなり、博士は大金もちになりました。
ある日、博士が庭の手入れをしていると、何かが降ってきました。
「なんだなんだ、妬みというのは怖いなぁ。ワシに嫉妬して投石とは…んっ?この石ころ、見覚えがあるな。なんだったっけ…」
320名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/13(木) 22:55:35
>>319
おいおい!!そりゃ無いぞ!まんま!星新一のパクリじゃん。

321名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/14(金) 01:18:07
おはよう

今から1時間後、君らは世界各国のパイロットと共に人類最大の作戦をスタートすることになる。

「人類」という言葉は、今日新しい意味を持つ。 
人種の違いを乗り越えてひとつの目的のために結ばれる。
今日は奇しくも1月1日。
これも何かの運命だ。
君らは再び自由のために戦う。
圧制や弾圧から逃れるためでなく、生き延びるためだ。
地球に存在する権利を守るために。

勝利を手にしたなら、1月1日は日本の祝日であるだけでなく
人類が断固たる決意を示した日として記憶されるだろう。

我々は戦わずして絶滅はしない。
我々は生き残り存在し続ける。

それが今日、我々が讃える人類の年初めだ!
322名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/14(金) 01:40:22
>>321
それ何てインディペンデンスデイ?
323名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/14(金) 05:49:58
>>319はひどい。
324名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/14(金) 07:14:39
>>319
盗作癖の浅香保ルイス龍太?
325名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/14(金) 07:51:10
釣られすぎだろ
326名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/15(土) 15:27:17
《電波》
地方にあるボクんちは、屋上にだけラジオの断片が届く。
『今日のDJはざざざ…の局からザザー…号線は渋滞ザー…そういう時はこういったザザザザ…』
断片は完全に捉えられない。
チューニングを弄って断片に遭う。
『ザーザーザザザザザー…キュイーチューンザー…ざざ…本日も始まりました!遥か彼方発君んち着の超ローカルラジオ!へびつかい座ホットライーーーンン!』
お気に入りの放送が始まった。
『さぁ!今日は取りあえずZEPでもかけとっかな?天国の階段でっす!聞いてる内にご質問でも思案しといてくれぁ!』
このDJは盛り上げる気がカケラもない。しかし妙にボクの趣味にあった曲をかけてくれる。
何度もくじけそうになって、そのたびにこのラジオに助けられた。
母が死んだ時、父が死んだ時、叔父さんに殴られた時。
星空の下、ベッドを抜け出してこっそり聴くこのラジオがボクの生き甲斐だった。




20年が経ち、俺はラジオDJをやっていた。
「お疲れ様っス!」
「やぁ、今日は早いね」
「他局のラジオの仕事があるんすよ」
「へぇ、人気者だね」
「熱心なリスナーが居るんすよ…つっても俺一人っすけどね」
327名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/21(金) 19:49:19
スレストォォォ!
328名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/22(土) 07:24:55
>>326
意味がわかんねえ。
329名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/22(土) 08:05:28
説明しよう。(といっても、おれは作者ではないが)
ボクはラジオを聴いているのだな。その不思議なラジオに励まされているわけだ。
二十年後、ボクは自分だけが聞いているラジオのDJになったのだな。
330名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/22(土) 08:11:55
>>329
それは判るんだけど、それになんかSF的な理屈付けはないの?
331名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/22(土) 09:02:37
それだけSF(サイエンスフィクション)の創作は難しいってことだよね。
だからこそSF(少しだけ不思議)でごまかしてしまうってことかな?
332名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/22(土) 10:10:15
待て、ブラッドペリ敵に回す気か
333名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/22(土) 21:45:47
SF的な理屈付けって、未来から過去にラジオ放送するだけじゃダメか
334名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/23(日) 00:25:09
>>333
だから、それにどうSF的な理屈付けをするかってことでしょ。

「未来から過去にラジオ放送する」だけじゃ全然意味不明じゃん。
その奇現象にどういう理屈を付けて説明するか、正当化するかがSFってもんじゃん?
335名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/23(日) 01:21:32
そういうもんかね。
そこまで考えなかったわ。
まぁ極短編だし、それ書き出すとそれだけで終わっちゃうから良いじゃん
336名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/23(日) 05:41:37
流行のミステリみたいだなw
337名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/23(日) 16:33:17
>>324
ところで浅香保ルイス龍太って誰?
338そして伝説へ1/2:2008/03/23(日) 21:24:53
ここはアマゾンの奥地、アマゾン川流域の湿地地帯で、葦に属する背の高い水草が群生している。
私は生物遺伝子ハンターとして、かの地に派遣されてきたのである。
今回の任務は、湿地帯における特異な生態をもつ動植物の採取なのである。
本来は専属のスタッフがチームを組んで現地に採取に行くのだが、15チームのうち13チームは世界各所に採取に出掛けている。
原因不明の下痢により入院している1チームと、幻覚症状に悩まされていて入院しているチームがあり、今回の緊急採取には召集できないということで、雑務のアルバイトをしている私にお鉢が回ってきたのである。
アルバイトには重要な任務は任されることはないのだが、私はあるチーム主任に気に入られ、数週間後には正式な社員として登録されることになっているのだ。
一度だけ国内の採取に同行したことがあり、気まぐれに採取した樹木の根の瘤が新薬開発の足掛かりになるという快挙を成し遂げたこともあり(もちろん公式にはチームリーダーの成果)、わたしに白羽の矢が向けられたのである。
正確には現地視察と政治的な承認が今回の目的である。
外務省に承認を執りつけるのはエージェントに任せ、私は数人の人夫を雇い現地の視察に直行したのである。あわよくば成果をあげ自身の株をあげるつもりでいるのだ。

鬱蒼と生い茂る葦を人夫が鎌で刈り取り、進むこと2時間水面に泡が目立って増えていることに気づいた。人夫にここでとまるように合図を送り土壌の採取を始めた。葦の根ももちろん採取するつもりだ。
採取を開始してから2時間が経った。さて一服して戻るとするか。私はライフジャケットの内側に手を差し入れ胸のポケットから煙草とライターを取り出した……

「おい! デビット! 光雄はどこにいる? まさか現地に行かせたのか?」
「ええ、人夫を雇って現地視察に出掛けましたが、何かまずいことでも?」
「奴は煙草を飲むのか?」
「どうしたんです? 確かに空港のロビーに着いたら喫煙所に早足で向かっていましたが」
「ちッ」
339そして伝説へ2/2:2008/03/23(日) 21:25:40
俺はパイロットにどなり飛ばした。
「もっと速くとべんのか! 人命にかかわるんだ」
「旦那、そらー無理ちゅうもんだべさ。このおんぼろの機体をみればわかろーちゅうもんでさ」
「ううむ。あそこだ! あそこの葦が切り取ってある水路に沿って飛んでくれ」
「アイサー」
「携帯も繋がらん。どうしたら煙草に火を点けさせないようにできるだろうか。ちくしょう」
「あすこはメタンガスが大量にもわもわわいてくるのも知らんのですかい?」
「新人なんだが、指示書も読まんで出発したらしいんだ」
「旦那、簡単だべさ、タンクに肥料が入っとるから、ばーっと撒けばみーんな濡れちまうってもんでさ」
「おお、あのボートにぶっかけてくれ!」

「おえー、この臭いのはなんだ! この糞馬鹿野郎!」
 私は上空の軽飛行機に罵声をあびせた。が、吐き気がしてどうしようもなかった。

「こ、これは堪らない臭いだな。なんだこの肥料は?」
「何って、こらりゃー肥溜めの糞尿だべさ」
「……まああれだ、人命は救われたんだ。糞まみれになったところで死にはしまい……」

帰路の途中、沼地を見やると青いガスコンロのような青い火が沼地を覆っていた。
「ちくしょう! あいつ懲りずにうんこまみれの煙草を吸いやがったな! 馬鹿やろうが」
「旦那、やっこさんの名は何というんでしゃろう」
「田中光雄だが……どうしたというんだ」
「もったいないから舐めちゃった〜」
「……みっちゃん」
340名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/23(日) 22:17:32
あーあ

出だし期待してたのに…
341名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/23(日) 22:18:23
SF設定が一切活かされてない…
342灰色の街:2008/03/23(日) 22:55:35
6年前、わたしは灰色の街に越してきた。
無数の騒音、排気ガスのにおい、表情を失った人たち。
恐ろしく速いスピードで歩く人たちの群れをよけながら、わたしは駅に向かった。
駅のまえではいつものように政治運動家たちがスピーカーを使ってよくわからない言葉を
がなりたてている。わたしは耳栓を用意した。
343灰色の街:2008/03/23(日) 23:05:48
駅のターミナルに入ると人の流れはいっそう密になる。
小惑星軍の間を飛ぶ宇宙船のパイロットのような気持ちでとび来る群集をかわし、
ときにぶつかりながらホームへ向かった。
念のため左手をポケットの中のカード入れに添えておく。スリにあったことは無いけれど。
344灰色の街:2008/03/23(日) 23:19:49
ホームへやっとのことでたどり着くと、ちょうど目的のきたない緑色の無音列車が
やってきた。タイミングが悪い・・・。
開いた扉から大量の労働者や学生がオエェとばかりに吐き出された。
その嘔吐物の奔流が階段を埋め尽くす。この中を進むのは無理だ…、
345名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/24(月) 10:14:22
ある意味801だな
346名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/24(月) 19:23:45
>>335
馬ー鹿。そんなら最初っから投稿すんなってんだよクズ。

極短編なら何でも許されると思ってンのかキチガイ。
347名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/24(月) 20:03:24
スルー検定の季節ですね。
一応主張しておくと、ラジオの話を書いたのは俺で、>>335さんとは別人です。
348バケモノ(1/2):2008/03/27(木) 17:11:19
諸君らは、知っているだろうか?
「目が三つ、手が八本で足五本の動物ってなぁ〜んだ?」というような類のナゾナゾを。
昆虫や深海魚、微生物など思いつく限りの生物に答えを探し求めても無駄だ。
答えは「バケモノ」なのだから。
いまから何十年もまえ、私が小学生のころに流行ったナゾナゾだ。
ロゼッタストーンを解読したシャンポリオンは、子供のころ「ボクが読みます。大きくなったら」と宣言したそうだが、私も同じだった。
子供のころから私は、あのナゾナゾに言う「バケモノ」をこの世に作り出すことに、全知全能を傾けてきたのである。

説明が遅れたが、私は天才科学者だ。
人によっては「天才」でなく「天災」の文字を当てたり、あるいは「天才」の前に「狂気の」と付け足したりするが、すべからく天才というもの、世の理解は得られぬと覚悟しているから別に気にしない。
研究テーマのあまりの遠大さも、天才故に神から背負わされた十字架なのだと理解している。
長い研鑽と探求の果てに、ついに私はその瞬間へと辿り着いたのだった。
天才である私が作り上げたもの、それは神の作りたもうた生物の設計図である遺伝子にかわって、生物を設計する装置。たとえば「目が八つで足が三本……」というようにデータを入力すれば、その通りの「バケモノ」を作り上げることができる装置なのだ。
どうだ、すごいだろう?

349バケモノ(2/2):2008/03/27(木) 17:19:16
私は高ぶる胸の鼓動を抑えつつ、震える指で要求項目を次々入力していった。
「目が三つ」
「手が一本」
「足が六本」
…そして実行。
無数のランプがチカチカ点滅し、電気部品同士が共振し共鳴しあって奇怪なハーモニーを奏でる!
そして!?
………チーーン!
安物の電子レンジのような音が作業の終了を告げた。
この扉の向こうには、小学生のあの日以来私が追い求めてきた「バケモノ」がいる!
私の作った「バケモノ」は、あるいは私を殺そうとするかもしれない。
あるいは、私を一口に食らい尽くすかもしれない。
でもそんなことは、もうどうでもよかった。
扉の向こうで私を待っているのは、「バケモノ」の形をした「私の夢」そのものなのだ。
自分でも知らぬ間に悲鳴のような声を上げながら、私は扉を開いた。
………
……

「目が三つ」「手が一本」「足が六本」
ああ…よりによってなんという過ち。
扉の向こうで私を待っていたもの、それは……。
「馬に乗った丹下左膳」だったのだ。

(わっかるかな?わかんねえだろうなぁ……)
350名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/27(木) 17:23:04
もうしわけない。
sage忘れた。
351名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/27(木) 17:42:39
「バケモノ」は傑作ですね。
352名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/28(金) 00:27:15
「バケモノ」はチャンチャン↑↓ですね。

丹下左膳でくるとは!!
(わっかるかな?わかるわけないだろう……)
353名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/28(金) 07:54:18
「バケモノ」のナゾナゾは私が小学生のころ実際に学校で流行っていました。
あまりのバカバカしさに感動し、家に帰って母に教えたところが、「それじゃあこういうの知ってる?」と返されたのが「丹下左膳」。
「バケモノ」は言わばリバイバルだったんですね。
「丹下左膳」は、終戦直後ぐらいまではポピュラーなネタだったようです。
彼は片目片腕なので、目と手の数が奇数になるのがミソ。
主人公の天才科学者は、「バケモノ」を作るつもりで元ネタの「丹下左膳」を創ってしまったというオチでした。
SFの名を借りた「昭和史のヒトコマ」でした。
…チャンチャン。
354名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/28(金) 14:35:08
たんげさぜんの方しか知らんかった
355コウノトリ(1/2):2008/04/01(火) 12:28:16
坊やは聞いた。
「ボクはどこから来たの?」
何食わぬ顔で妻は答えた。
「コウノトリさんが運んで来たのよ」

私にも覚えがある。
母に向けて放った同じ問いは、同じ答えとなって返ってきたものだ。
…コウノトリだって?
小さくたってバカじゃない。もちろん納得なんかしなかった。
そのうちニワトリの卵にウンコがついているものがあることから、「お尻の穴の近くが怪しい…」と考えるようになって……。
いや、オレの実体験はどうでもいいんだ。それにオレはもう答えを知っているんだし。
問題は、私のかわいい坊やのことだ。
356コウノトリ(2/2):2008/04/01(火) 12:28:59
何度このことを、妻と話しあったことだろう?
答えの出ぬまま、あるいは答えを出すのを先延ばしにしたまま、いくつの夜を越えて来たろう?
臆病で優柔不断な私たち夫婦を尻目に、坊やはすくすくと元気に成長していった。
…寝返りをうち、座り、這い、そして立ち、歩き出したときの喜び。
やがて坊やは言葉を覚え……とうとうその時がやって来てしまった。
「パパ……どしたの?」
愛しい声にハッと気がつくと、そこに私を見つめる坊やの瞳があった。
私の困っているのを見て、何か自分が悪いことをしたと思ったのだろう。
茶色い大きな瞳は、戸惑いや悲しみといった感情でたちまちいっぱいになっていた。
まもなく涙も溢れ出すに違いない。
無理やり笑顔を作って私は言った。
「な、泣くことなんかないだろ?さあ!いつもみたいにパパんとこにおいで。」
愛しい顔がとたんに明るくなった。
「パパ大好き!」
叫びながら私の胸に飛びこむなり、坊やは、毛むくじゃらの腕で抱きついてきた。
坊やをあやすふりをしながら、私はこっそり涙を拭った。
(……話せるわけがない。)
……この子が来たのは、試験管の中からだなんて。
人為的に遺伝子操作された高知能型チンパンジーだなんて…。
357名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/01(火) 12:33:32
なんの新しさもない、「アルジャーノン系」+「トマス僧院長の宝」の駄文でした。
おもしろくなくて申し訳ない。
358名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/01(火) 22:53:27
>>355-357
いえ!いえ!なかなか良かった。
359黄昏鳥:2008/04/02(水) 21:31:09
本を積み上げ、それを土台として利用しよう。
土台がいい加減だと一瞬で足元の本が崩れてしまう。本を安定した台にする必要がある。
俺が何をしようとしているのかって? おおよそ三メートル上の空中に浮いている<黄昏>を手に入れようとしているのだ。
この<黄昏>を手に入れたら世界を手にいれたも同然だ。
足元に散乱している本は、俺自身の知識の具現化だ。これ以外に利用できる道具はない。
何度も試みているがまったく<黄昏>には届かない。黄昏ている俺を<黄昏>が笑っているようだ。
気を取り直し、慎重に作業を開始した。二本のタワーを積み上げ、抱えられるだけ本を抱えタワーに足を掛け、抱えた本を左右のタワーに交互に積み上げてゆく。残る本はあと一冊。
あと五十センチ足りない。飛び上がって<黄昏>を掴み取るしか方法はない。ゆっくりバランスをとりながらしゃがんで下を見下ろすと……床が無くなっていた。真っ暗な奈落の底、地獄に聳え立つ、いつ崩れてもおかしくない足場だけだった。退路は断たれた。
俺は腹を決め垂直にジャンプした。足元のタワーが崩壊する……右手が<黄昏>を掴む――一瞬が永遠にも感じられた。

……はっ、俺は夢をみていたようだ。強く握りしめられている右手をじっと見た。いったい何を掴んだっていうんだ? <黄昏>? あり得ない。
指をいっぽんいっぽん引きはがすように開くと指輪が出てきた。
昨夜の告白をハッキリ思い出した。俺にとってはこの指輪は自爆スイッチのようなものだった。ゴミ箱に指輪を投げ捨てた。熱いシャワーでも浴びよう。
「トッキョキョカキョク、トッキョキョカキョク」外ではホトトギスが鳴いている。お前のおかげで可笑しな夢をみてしまったよ。

おわり
360名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/03(木) 07:51:09
>>357
いやいや、お前はこのスレでは至ってまともな部類だ。
SFの約束事がちゃんと分かってるじゃん。グッジョブ。
361名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/03(木) 07:55:13
SFかどうか?と問われれば、SFではないだろうと思いますが、こういう象徴主義的な作が出てくるとは驚きです。
「積み上げた本」はそれまでの「主人公の人生」と読めます。
ニ三冊書名も出ていた方が、面白いかも。
また積み上げたのが知識の象徴である「本」であることから、「知識偏重の人物」あるいは更に演繹して「エリート」とも読めますね。
文字通り「清水の舞台から飛び降りる」気持ちで告白したけれど……という展開も秀逸。
でも、拒否されたのなら、指輪は攫めないはずでは?
人によっては、オチにNGを出すかもしれませんが、私はむしろ前半の重さにくらべ、軽くていいオチだと感じました。
362名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/03(木) 07:59:14
しまった書き忘れました。
361は359に対するレスです。

>>360
私は、いまではすっかりSFというものが見えなくなってしまいました。
昔はなんの疑問もなくうりのままに見えていたのに…。
暖かいご批評、ありがとうございます。
363名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/03(木) 21:26:08
>>359
なんか好きだ。
貿易センタービルに突っ込むテロリストみたいな。
ショートショートのルールに則っているだけの作品よりは断然面白い。
364名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/04(金) 13:00:10
>>361>>363
感想ありがとうございます。
SFではないというのは、仰るとおりです。
数レスの短い駄文を妄想するのは、暇つぶしには最適なので、気が向くとこのスレに投げ入れています。
もう少しSFぽい妄想ができたらまた投下させてください。
365忠告:2008/04/18(金) 18:47:38
「この不良の生首どうします? 兜煮で一杯呑みましょうかね」
まったく笑えない冗談を言う奴だ。
「そんなおぞましい記憶を留めている生首なぞ、そこらに転がしておけよ」
おれは新品の生首を設置しながら言った。
「じゃあこれ貰ってもいいかな?」
「どうするんだよ。そんな干からびた生首なんてオブジェにすらならんだろう」
生前の記憶でもサルベージするのか? おれも以前は好奇心から対話したが、もうあのような危険な目に遭うのはごめんだ。
死刑が確定した被告は、本人の意思にかかわらず脳みそを引き抜かれ神経ソケットをぶち込まれる。生体サーバーとして使役されるのだ。使役期間はその機能が基準値を下回るまでと定められている。そのあいだは想像を絶する苦痛を味わうことになる。
「対話なんてやめておけよ」おれはつよい口調で後輩に釘を刺した。
幸運にも記憶を転写できたおれが言うのだから、間違いないのである。
おれの中の牢獄で、泣き叫び悶え苦しんでいる彼奴の姿を知っている、おれからの真摯な忠告に従ったほうが身のためだよ。後輩くん。

おわり
366名無しは無慈悲な夜の女王:2008/04/20(日) 09:30:01
「忠告」は意外とレベルが高いなあ。
とかいってるおれは、ここの投稿者をなめすぎかなあ。
367現実逃避:2008/05/06(火) 16:01:30
我は退屈なり。時空すら存在したか、しなかったか判らぬ。
我思うゆえにというほどの自我があったのかの判らぬ。
記憶があったのか、なかったのか判らぬ。
退屈であったという漠然としたもやもやは、あったような微かな感触はある。
もしかすると誰かの、誰だか皆目検討もつかん、誰かの退屈なのかもしれん。
とにもかくにも、そうしてこの宇宙は誕生した、ような気がする。
もしかすると誰かの現実逃避がきっかけになったような気もする。
誰だか判らぬ、誰かのどんな現実か判らぬ、現実が退屈でしかたない逃避行為なのかもしれぬ。
誰かとは我かもしれぬ。我とは何なのか。皆目検討もつかぬ。
誰かの現実逃避が満足であることを願いたい、ような気もする。

おわりのような気もするし、しないような気もする。皆目検討もつかぬ。
368名無しは無慈悲な夜の女王:2008/05/07(水) 07:30:58
「現実逃避」もなかなか斬新だね。唯我論的世界の創世の話と読めてしまう。
369名無しは無慈悲な夜の女王:2008/05/07(水) 12:11:18
感想ありがとうございます。

話はかわりますが、SFマガジンに投稿してみようかと思いたちました。
身近で起こった出来事と、SF的ガジェットをミックスしてみようと試みているのですが、意外に難しいです。
話の大筋は完成し、文章の入れ替えや表現を改めたりしています。ただ、どうしてもSF的ガジェットの説明をうまく処理できず悩んでいます。
現実逃避のつもりが……
370ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/27(火) 11:38:19
『忘れたものと無くしたもの』1/5

その宇宙船は、ひと目で異星の物とわかるような奇妙な湾曲形状で、地球の衛星軌道上を周回していた。
その船の内部もまた奇妙で、あまり広くないそこは、半光沢の赤色で覆われ、まるで生物の内臓壁のように有機的な形を作っていた。所々にメーター、スイッチなど機械類がランダムに埋めこまれて配置されていた。
びくっ、びくっと壁面の数箇所が震えだし、操作盤の一つの表示ディスプレイが輝き《完成》という意味のイマラギ文字が表示された。
三つ並んだ生体成型容器のうちの二つが息をしはじめてフタがゆっくりとひらいた。しばらくすると中からはニ体の二足歩行生物が姿を現す。
今回の生体成型の設定は地球人の姿で14歳の東洋人の女。
全裸の女の子の生き物は、ヌメヌメと処理液が体から垂れている状態ですでに立ちあがっていた。二体は、出来あがったばかりの体を確かめるようにお互いを見つめる。
『よし!ちゃんと動く!』はっきりとした日本語の発音が発せられた。
それにいたった思考過程も人間のそれに順次て行われているようだ。二体のうちの少し背が低い言葉を発した個体の方は、イマラギ星人の個人認識名《モーナキバラーラ》。
そして、もう一体のイマラギ星人、認識名《ナモレハーセ》は、なぜか、動きが悪く肌の色も真っ青だった。
動作が鈍く一歩だけ歩いた所で自重を支えられなくて座りこんでしまった。
「う・うまく・こ・呼吸が…で・出来ない」と言葉も出せず思考波のみで状態を知らせる。
どうも、成型過程で装置内での不具合があったようだ。これでは残念だが今回の地球降下は1体だけになりそうだ。
「あなたは再成型の為、容器に戻る事になります」
「あなたはお留守番です」と船内の指示知能からの説明がなされた。
371ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/27(火) 11:40:01
『忘れたものと無くしたもの』2/5

現在、地球上には、イマラギ星系人と同じような目的で人間社会へまぎれ込み、暮らしている異星人たちは、かなりの数が存在している。
それらは、自らの体を人間と同じ姿に変え、思考パターンも出来る限り人間のそれと近づくように改変を行う。
降下を行っている異星の種族は、みな、進化の末、優れた精神体へと成り得ているものばかり。
だが、それゆえに、失った部分も多い生物たちなのだ。失ってしまったものとは、生物が本来もっていた野生の部分の特性。
今、地球上に暮らしている異星人達の主な目的は、その野生部分を再び体験し、記録保存し自分のものにすること。

《モーナキバラーラ》地球での人間名は《小倉ゆみ》。
さっそくヒトの居住地へ降下をおこなった。今回、降下地として選んだのは日本国。
無数にあるヒトの住む国の中で、少々問題点はあるももの標準型に近い集団。
日本国の情報網への介入、調整は、すでに終わっている。擬似家族は、すでに設置、配置済みで、父、母、が1体づつ存在。子はモーナキバラーラと二歳下の弟の男の子の四人家族が設定され作られていた。

一ヶ月後、うまく侵入を済ませ、人間としての暮らしも慣れて14歳の普通の中学生として暮らすモーナキバラーラがいた。
今の所、特に問題は無く、生活を続けていた。
この人間、小倉ゆみの教育知識レベルはノーマルに設定。人間で最大の優位性を持つとされる顔の形状の作りは、基本形よりわずかに2ランクほど上に留めていた。
人間名、小倉ゆみは、本来の目的である感情取得、経験取得にはまだ至っていない。
372ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/27(火) 11:41:11
『忘れたものと無くしたもの』3/5

学校からの帰り道、モーナキバラーラは同性の友人達4人でコンビニに立ち寄っていた。
人間の中で、この世代の子たちの生き生きとした思考から生み出される会話はモーナキバラーラにとって吸収すべきデータが詰まっていてすべてがとても新鮮で興味深い。
モーナキバラーラは、心から楽しく笑っていて、驚きの詰まった会話を行いながら、店から出た。3人の友人、まりっぺ、ゆきちゃん、ナカちゃん、みんなといるととても幸せな気持ちになる。
駅前のにぎわった商店街の歩道にでて今日クライマックスをむかえる月9ドラマの話しをはじめる。書店の前を過ぎた所で女の子達の歩く少し先に一人の男の子が立っていた。「小倉さん」モーナキバラーラの目を見つめる人間のオス。
しばらくお互い見つめあった。まりっぺが、ゆきちゃんが、ナカちゃんがモーナキバラーラの右脇の辺りを順番につつきサインを送ってきた。
「え・えっ」なにか熱い変な感情を感じる。この不安定さは、感情の混乱は、なんなんだ!的確な言葉が出せないでいた。

モーナキバラーラは自宅に戻った後も、気持ちの高ぶり??が収まらなかった。
これは何!これ…これ、なの?か!と。
これが今回取得目的の一つである****というものなのか。

更に一ヶ月が経過した。
モーナキバラーラは、週末になると二人で出かけるようになっていた。このオスの人間は名前を《前田芳樹》といった。

一人でいる時、ま・え・だ・よ・し・き…く・ん…と口に出して発音するだけで気持ちが高ぶった。
不思議だった。「あーあ。これが達種族が進化の過程で失ってしまった****と****なのか!」
モーナキバラーラは、ココまでの気持ちの変化過程をしっかりと特別領域の副脳のボックスへと保存させた。
373ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/27(火) 11:42:08
『忘れたものと無くしたもの』4/5

手をつなぎ、二人で歩きながら見るライトアップされた水辺の建物はとてもステキだった。時が19時を過ぎる。そろそろ今日のデートの終わりが近づいた。
なんだか悲しくなり彼の手をなぜか強く握りかえしていた。
公園の曲線の遊歩道を歩いていた時、彼が立ち止まる。彼との視線が自然と合う。
**という行為を経験している時の人間の感情を手に入れた。
この経験データはかなり貴重で、個人だけでなくイマラギ星種族の宝にもなりそうだ。

しばらく歩いていてやっと声が出せた。「じゃあね前田くん!」
「もう暗くなってきたよ。君の家の前まで送ってゆくよ!」
「うん!でも大丈夫!」と別れ、小走りで4,500メートル先の自宅へ向かう。

今、この生き物の心は幸福という感情で包まれていた。目に映るすべてが鮮やかな色彩で彩られていた。

道の角を曲がる。自宅の門の明かりが見えた。
あとわずかの!距離まで近づいたその時だ!
路地の暗闇から突然現れた人間がいた。男はしきりに大声でしゃべっていたが意味が理解できない。
374ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/27(火) 11:42:55
『忘れたものと無くしたもの』5/5(終)

狂気に満ちた瞳に見つめられ魔法にかけられたみたいに体が動かせなくなった。恐怖と言う感情。これも異星種族が進化の過程で失ってしまった感情。
鋭く光る金属が軟らかい皮膚を裂いた。赤い体液が吹き出た。
この体の本能が最大の危険を察知し走りだす。ダメだ。この身体能力では、追ってくるオスを振り切る事は出来そうもない。
ついに追い詰められ倒され、何度も何度も胸や首をさされた。
大量の体液が飛び散り意識がなくなってゆく。最後の一瞬、野蛮な生物、ヒトが持つ狂気の眼を記録しこの体は絶命した。

モーナキバラーラは蘇生され、惑星軌道上の船の中にいた。イマラギ星人の本来の姿。二本の足で立ってはいるが体の後ろからうねうねと触手が何本もうごめいていた。
今回の降下は収穫がたくさんあった。
その時、生体成型容器が開き、もうひとりのイマラギ星人。認識名《ナモレハーセ》の準備が出来た。
今回の降下の報告を簡単に行い祝福と戒めを行った。

彼女、ナモレハーセの降下の地は、現在の地球上での最強国、アメリカ。
年齢設定は、モーナキバラーラの時よりも少し高めに設定されている。
第一目標、****は同じだが、他にもう一つ、今回は性行為及び、交尾過程の感情及び体験データの取得。
「行って来る!」と認識名ナモレハーセは、ヒトの住む惑星に元気に降下して行った…
375名無しは無慈悲な夜の女王:2008/05/28(水) 11:30:21
異星人からみた地球人という設定ですが、着想はいいと思います。
ですが、なんというか外国の異質な文化や習慣のほうが衝撃度は大きいようなきがして、みながしっている感覚を、異星人を介して再認識させる? このような話は、よっぽどうまく構成しないと陳腐化してしまうと思う。
異星人の異質さを強調するには、または地球人の異常性を浮き彫りにするには、異星人の視点で描くメリットはあまりないように思います。
むしろ友人の視点で構成してみたほうがしっくりくるような気がします。
その友人は最終的に異星人の目的を知って、このおいしいたこ焼きを知らずに帰ってしまったことをとても残念がっているとか、そんなオチなんてどうでしょうか(つまんね)。
376ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/28(水) 16:02:16
>>375さん、ありがとうございます。

そうですよね!まさに陳腐って言葉がぴったりですね。

この話は実は、少し前に電撃文庫のサイトで募集していた三つのお題でストーリーをつくるってヤツに応募した時の話を少し手直しして載せたものです。
当時、電撃文庫なのでライトノベルっていうか、ひと昔前のエイリアンの出てくるSF学園アニメ風設定を少しひねって…??を、ねらって考えたんですが…安易に
もちろん、見事に玉砕した作品です。

私はエロとグロが程よく入っているお話が好みなので結構、こういう話、好きなんです。



377ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/29(木) 01:11:12
『忘れたくないものと無くしたくないもの』1/5

ユーミ、アンタがいなくなってもう2ヶ月になるんだよね。
今、アンタは遠く離れた、遥か彼方の星に帰り、人間の姿ではなく、あの背中からうねうねと何本もの触手を生やした変な生き物に戻っているんだろうね。

私は、門田眞理奈。みんなからは、まりっペって呼ばれている。

昨日もね。ゆきちゃん、ナカちゃんと話していたんだよ。
アンタってとっても変なヤツだったってサ!!

…でも…とっても…とっても 大切な大切な、友達だった。

よく、変な人間を見たら言うよね。「あいつって宇宙人みたいなヤツだ!」って!
はじめてユーミが転校生として教室に入ってきた時、まさにアンタは変なヤツだったんだよ。
ユーミは、完璧に人間に変装したつもりだったんだろうけどサ!!
378ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/29(木) 01:12:14
『忘れたくないものと無くしたくないもの』2/5

ユーミの本当の名前は、イマラギ星人の個人認識名《モーナキバラーラ》。
アンタが説明してくれたね。今、地球のいろんな国には、ユーミと同じような目的で、まぎれ込み、暮らしている異星人たちがいっぱいいる事。
自分の体を人間と同じ姿に変えて、思考のパターンも出来る限り人間みたいに改変する。
降りている異星人達は、みんな、進化の末、優れた精神体に成り得ているものばかり。
だけど、失った部分もたくさん。それは、生物が本来もっているべき野生の特性。
異星人達の主な目的は、その野生部分を再び体験し、記録保存し自分のものにすること。よくは、わからないけど、探し物をしに地球に来ているんだよね。

ユーミの住んでいた擬似家族の家は、ちゃんとあるよ。
家の前を通り過ぎる時、記憶を消されたアンタのお父さん、お母さんそして弟だった人、今も普通通り何事もなかってように暮らしているよ。
379ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/29(木) 01:13:11
『忘れたくないものと無くしたくないもの』3/5

ユーミ。私とゆきちゃん、ナカちゃんとはじめて映画を見に行った時のこと覚えてる。
映画の中のかわいそうな犬が最後で死んじゃうシーン。アンタは、大泣きしちゃって大変だった。
これは本当のことではないんだよ!ニセモノで、作られているお話なんだからって3人で必死でなぐさめた事。
ユーミってば、映画が終わってからもずーっと泣いていたよね。

あの後だったよね。ユーミから告白されたのは。
私…人間じゃないんだ。遠い宇宙から来たエイリアンなんだよ。
私も、ゆきちゃんも、ナカちゃんもみんなあんまり驚かなかった事。
ふーんって返事しちゃった。
だって変だったんだよアンタ!

ああ!
いつも楽しかったね!学校からの帰り道、私たち4人でよくコンビニに立ち寄っていた。
心から楽しくて笑ったね。4人でいると、とても幸せな気持ちだった。
380ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/29(木) 01:13:53
『忘れたくないものと無くしたくないもの』4/5

そうだ!あの時だった。駅前の商店街の歩道で、月9ドラマの話しをしてて、書店の前で、「小倉さん」って、ま・え・だ・よ・し・き・く・んが現れたね。
あの時、私と、ゆきちゃん、ナカちゃんがユーミの右脇を順番につついてサインを送っていたの気づいていた?
あれはね、私たちがすべて仕組んでいたんだよ。ユーミが好きだから何とかしてくれって前田くんに頼まれたんだ。

アンタたちは、週末になったら必ず二人で出かけるようになっていたね。
よかったね。いい想い出が出来たね。


でも、    あれからすぐにユーミは突然いなくなった。
いったい何があったの?何も説明してくれなかったケド。
突然、さよならを言われて私たち、犬の映画を見たアンタみたいに大泣きした。
ずーっとずーっと泣いたんだよ。

しばらくして連絡が来て、私たち3人を衛星軌道上を回っているユーミの宇宙船に連れていってくれた。
その船の内部は奇妙だった。あまり広くなくって半光沢で周りはすべて真っ赤。
まるで動物の内臓の中。所々にメーター、スイッチが埋めこまれていた。
時々、びくっ、びくっと壁が震えていて、すごく気味が悪かった。
381ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/29(木) 01:14:41
『忘れたくないものと無くしたくないもの』5/5(終)

ありがとうネ!ユーミは私たちの記憶を消さずにいてくれた。
もし、私たちが学校や警察に宇宙人がいっぱい人間の中にまぎれこんでいるよ!!ってさけんでも誰も信じてはくれないから、って判断なんだろうけど。



今もね。ゆきちゃん、ナカちゃんと一緒にいるんだよ。
アンタってとっても変なヤツだったってサ!!話しているんだ。

…でも…とっても…とっても 大切な大切な、友達だったって…
私もゆきちゃんもナカちゃんも絶対、絶対ユーミの事、忘れないよ…

「あっ!!ゆきちゃんダメ!それ私のタコヤキなの!」といって口に放り込んだ。

そういえば、ユーミに食べさせてあげたかったなあ〜〜。
このおいしい《銀たこ》のたこ焼きのこの味。
ユーミは知らずに帰ってしまった…おいしいんだよ!これ!
だけど、確か・・・
ユーミの本当の姿、あの背中からうねうねと何本も生やしていた触手には、いっぱい吸盤が付いていたのを思い出す。
私はクスっと笑った。
382ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/05/29(木) 01:19:19
>>375さんの提案で急遽つくってみました。

モーナキバラーラの友人の一人、まりっぺから見た話。

たこ焼きを知らずに帰ってしまったことをとても残念がっているシーンも入れてみました。
383名無しは無慈悲な夜の女王:2008/05/29(木) 19:20:47
語り手の変更ですが、予備知識としてあらすじを知ってしまっているので正確な判断にはならないとは思いますが、こちらの話のほうがしっくりくるような気がします。
たこ焼きをオチにもってきて、異星人の姿を想像させたのはうまいと思いました。
384ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:33:27
『みにくいネズミの 個 』1/8

南欧風の外観を持つ建物が立ち並んでいる住宅街。
昔、流行した、少し古びた、それらの建物達の一角に小さな公園があった。そこからは子供達の元気に遊ぶ声がきこえていた。

今は午後2時。3つあるベンチのうち、陽のあたらない隅にあるベンチに、大きな耳、大きな手、大きな足を持った世界で一番有名なキャラクターが座っていた。
その生命体は、うなだれていてまったく動こうとせず、元気がなかった。服や履いているクツもなぜか汚れてしまっていた。

「あっ!ママ!ミッキーさんがいる!!」と4歳くらいの女の子が駆けよってゆく。
遅れて駆けてきたその子の若い父親と母親は、色あせた服やクツを見て瞬時に判断した。
この 個 (ミッキー) は、本物ではないのだと。
ディズニー社がその存在を許可しているオフィシャル権を有している 個 (ミッキー)ではないことを。

21世紀にはいり、劇的に進歩した生命工学という魔法を手に入れた人類は、その力を自らの身体を改変することだけでは満足しなかった。
そして、新たな命を創り出すことに興味をいだいた。
385ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:34:32
『みにくいネズミの 個 』2/8

造型師と呼ばれる高度な生命工学技術を持った人達は、万能ツールを使い、これまで想像の世界でしか存在しえなかった映画、コミック、アニメの架空のキャラクター達を生きているキャラクターとして、この世に誕生させたのだ。
そして今、社会には、人間と同じように食事をして、水を飲み、酸素を呼吸し、しゃべったり笑ったり、人間とほとんど変らないDNAを持つ合成生物がいたる所に存在していた。
著作権、肖像権、に厳格に管理、監修を受けたその生物たちは、見事な造型を見せ、一般消費者をおどろかせていた。

僕は、この世に生まれた不幸を呪い、嘆いていた。
誰かが僕の名前を呼んでいた。
「あっ!ママ!ミッキーさんがいる!!」
決して口に出して名のってはいけない名前を…
顔を上げると僕の視界には女の子の輝く笑顔が飛びこんできた。
僕の中に備わっている本能が信じられないほどの力を呼び起こし、元気いっぱいに立ちあがらせた。
さっきまで絶望していたはずの僕の心は、女の子に見つめられ、話しかけられている間、その姿を消し去り、僕は本物のミッキーになりきり、女の子を、そして最初は怪訝な眼差しで見つめていた両親をも夢中にさせ楽しませた
386ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:35:41
『みにくいネズミの 個 』3/8

夢の時間はあっという間に過ぎ去り、さよならの手を振り終えた僕は、また一人になり、暗い心、絶望の心に支配された。

造型師たちはこぞってモデリング技術を競い、生き物たちを生み出した。
その中の一部の造型師には、キャラクターの著作権、肖像権など一切の権利を持つ企業の厳格な管理、監修を嫌い、無断で自分の欲望のまま、新たな命を創りだしてしまう者が存在した。

僕を作った名も無き造型師もそんな人間。その創造主の記憶は一切、僕の頭には見つからなかったが…
「さあ、日が暮れないうちに教会へ戻ろう」
僕は絶望的な心をふるいたたせ何とか立ちあがり歩き出した。
希望も夢も何も待ってはいないはずなのに。

教会とは、違法に生み出され、行き場の無い多くのキャラクター生命体に最低限の食事と、寝る場を提供している非営利団体の総称。
このような生命が生まれ存在しているという事実。違法な手段で生まれた生物。
だが、社会は 処分 という最悪な選択肢は取れなかった。
結果、最低限の食事などは与え、プログラムされた寿命が来て、死にいたるその時までは、自由に生きる権利(のみ)を与える事となった。
そして、それぞれに組みこまれた寿命をつかさどる細胞培養暗号が働き、違法なキャラクター生命は、その限られた命が尽きるまで、悲しみ、怒り、嘆き…そして絶望し…死んでいった。

僕は、とぼとぼと暗くなりかけた通りを何も考えず歩く。
そんな僕の周り、空き地や建物の裏手には、犬くらいの黄色い生き物が時々姿をあらわしては消えてゆく。めずらしい事ではなかった。
僕は自然に目に入り視線を移す
387ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:37:12
『みにくいネズミの 個 』4/8

ああ…あいつらも僕たちと同じ運命によって生かされている生き物。
あいつらも僕たちと同等に管理の厳しい任天堂の人気キャラクター。
僕たちほどの知性は持っていないが、同じだ。

オフィシャルの正規ピカチュウは、今、一般家庭では、犬や猫に次ぐ人気ペットとなっている。
一方、不正で生産され放棄された野良のピカチュウは野生化し無数に存在し放置されている。
実際の生きているピカチュウには、危険な電撃能力は無いが、悪意のある造型師たちによって強力な電撃を発するものも実際、存在すると言われている。

教会の安っぽいドアを開け、中に入ると僕と同じ絶望の目をしたキャラクター生命達が声も出さずに少しだけ顔を上げるあいさつをして僕をむかえいれた。
僕もいつものように視線を向けるだけのあいさつをする。

教会のボランティアさんに何の味も香りもしない固形の配給食料を受け取る。
今日もかなり歩き回り、疲れていて、ゆっくりと寝床へ向かう。
いつもの寝床の場所には、少しキャラくずれをおこした新顔のサンリオのキティがうなだれて座っていた。何も言わず僕は横の空いていた場所に腰を下ろし静かに食事をはじめた。
食事が終わりかけた頃、突然、めまいと軽い吐き気がおこる。
この感覚はこれまで体験した事が無かった。
頭の中に 死 と言う言葉が浮かぶ。いよいよ僕の体の中にプログラムされた寿命が作動したのだろうか…
教会のメディカルスタッフが簡単な診察をしてくれたが、何も治療法など無いのだ。
388ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:38:30
『みにくいネズミの 個 』5/8

わかっていた。僕も周りのいつもの事。1匹の野良生物が死ぬだけなのだと。
痛みは無いと知っていたので恐怖は無かった。ただいつものように眠ればいい事。それで終わり。
僕は眠くなり静かに目を閉じた。
ふと、少し前まで僕と、一緒に暮らしていた、(ニセモノの)ミニーが言っていた言葉を思い出した。
僕とは違うもぐりの造型師に作られた(ニセモノの)ミニー。
ミニーはいつも僕に言っていたっけ…
あのオフィシャル製造されたホンモノと言われている、ディズニーキャラクター たちと私たちとは、いったい、どこが違うのかしら。
あの 個 たちの人間を楽しませてあげようとする本能と、私たちも持っている本能もおんなじ。
決して劣ってなんかいないのに…
私たちディズニーのキャラクター生命は、すべて、本物、ニセモノ問わず、人間の幸せそうな笑顔がとっても好きなのに…

あの別れの夜、(ニセモノ)ミニーは寿命が尽きて、命の炎が消え、僕との最後の瞬間、やせ細った腕をわずかに動かし、僕の手を握りしめた。
本来、泣いたりしないはずのキャラクター生命は涙を流していた。
あのミニーは、僕よりかなり劣った技術の造型師の手によって作成された生命体だったが、まぎれもなく彼女はミニーだった。
人間の子供が大好きな、とても素的な…
わずかな時間ではあったが楽しかった、ミニーと過ごした日々を思い、夢を見ながら眠りについた。

そして、目が覚めた時、教会の中は異様な静けさと雰囲気だった。
なぜ僕はココにいるのか。なぜ死んでいないのか?
重い体に命令を出し、上半身を起こすと、なぜか私の周りにはキャラクター生命達は、一人もいないのに気づく。
389ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:40:08
『みにくいネズミの 個 』6/8

しばらくすると、背の高いがっしりとした黒い特殊スーツを着た種類の人間達が現われて、僕を取り囲んでいた。
僕は混乱していた。
僕は処分されるんだろうか。
確かに僕は、違法な手段で生まれ、存在している生物。
だが、定められた寿命が来て死にいたるその時までは、自由に生きる権利を与えられているはずだ。
勇気を出して、そう、主張しようとした時、一人の人間が現れた。
身なりの整ったスーツ姿の男性。顔を見た時、あっと驚く。
その人物は、ウォルトディズニー社の現CEO。
なぜそんな人物が僕のようなニセモノに会いに来たんだろう。

やがて僕は、そこにいる、人間達は、皆、やさし目をしているのに気がついた。
CEOは、ひざをつき、口を開きそこからは、美しい英語が聞こえてきた。
「探したよ…やっとみつけた…」
そして、じきに詳しい説明がなされた。その説明は驚くべき内容だった。

僕はあの夜から1週間眠りつづけていたらしい。
その間、世界中ではディズニーキャラクター達に恐ろしいことがおこった。

つまり世界中で今、生きているのは僕だけなのだ。
これまで存在していたディズニーのオフィシャルキャラクター、そして無数に存在していた違法なキャラクターすべてが命を落としたと聞かされた。
390ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:40:52
『みにくいネズミの 個 』7/8

何者かによる、悪意の仕業か、それとも生命を弄んだ神の起こした怒りの所行か…
ディズニーキャラクターの細胞のみに侵入し致死性ウィルスとして変異する病が蔓延したのだ。
ディズニー本社の研究グループの懸命な治療にもかかわらず、すべてのキャラクターは死亡し、生育中の胎児達にも影響を与え絶望的状況になる。
僕が1週間生死をさまよったのも、このウィルスの仕業だったのだ。

担架に乗せられて僕はディズニー社の研究施設へ運ばれた。
2,3日すると僕は、元気を取り戻し歩けるようになった。
真っ白な病室で眠っていると、遠い空間からディズニー社の人間の会話が聞こえた。その人間はフランス語をはなしていた。
なぜか僕は、英語はもちろん、フランス語、日本語、中国語を理解できた。
そう、プログラムされていた。
その人間達の会話は、すべて僕の検査結果についての話しだった。
僕の体の機能は飛びぬけているらしい。
僕を作った名も無い造型師は一流の技能の持ち主だったようなのだ。
あの強力な致死性ウィルスにも耐えたのが何よりの証明。
ディズニー社は、僕を作った造型師を全力で探したようだが手がかりは何も無かった。
通常、生命体内の細胞に刻印されているはずの造型師データは何一つ、なされていなかった。
これからも僕の体の秘密は分析され、いずれは解明されるのだろう。
391ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/02(月) 01:45:49
『みにくいネズミの 個 』8/8(終)

1ヵ月後、フロリダ州のオークランドにあるディズニーワールドで出番を待っている1体のキャラクターがいた。
大きな耳、大きな手、大きな足を持った世界で一番有名なキャラクター。
その生命体はピンと背筋をのばし、服や履いているクツもピカピカだった。
この後、カリフォルニア州のアナハイムにあるディズニーランド、
日本にある東京ディズニーランド、フランスのマルヌ・ラ・ヴァレのディズニーランド・パリそして香港 ランタオ島にある香港ディズニーランド最後は、最近オープンしたばかりの中国 上海ディズニーランドへの仕事がきまっていた。

正規のただ一人のミッキーマウスとなった僕は今、幸せだった。
開園時間がきてゲートが開く。
僕はゲストたちのたくさんの笑顔に包まれていた。
「あっ!ママ!ミッキーさんがいる!!」と4歳くらいの女の子が駆けよってゆく。
遅れて駆けてきたその子の若い父親と母親も後に続き、目を輝かして微笑んでいた。

音楽が流れはじめ、体が自然に動き踊りだす。
そして大きな声で語りかけた。

「ぼくは、ミッキーだよ」と…

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
○ッキーマウス、○カチューとしようかとも思いましたが、実名で書きました。
まあ、お遊びなので許してください。
前々から考えていたネタです。

明日仕事なのにこんな時間まで何やってるんだか…おれ!
392名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/05(木) 08:08:48
なかなかよかった。10点満点中、6点。
7点からは出版しろ、10点は史上最高を争うクラス。
393ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:26:25
>>392さん感想ありがとございます。

一応ほめられたのでしょうか?

以下、↓で調子にのって長い作品載せます。
かなり長いので構わない方限定で読んでください。

だめな方はスルーで…
いつものプログラム人間ネタです。昔から考えていたネタをたくさん入れました。
394ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:27:25
『ツナガリの時』 1/15
 大阪、浪花ドームの地下、巨大な一室に黒一色に鈍く光る特殊金属製の塊が設置されていた。
この、通電された黒い塊の中には地球が丸ごと再現されリアルな戦争シミュレーションがロードされている。

 黒い塊の中は、人の悲鳴と悲しみと、憎しみでいっぱいだった。
昨夜から降り続いている雨は、未舗装の国道を、ベタベタの道へと変えてしまっていた。男のブーツには足を踏みだすたびにまるで生き物のような赤土がまとわり付く。
ココは2021年、ロシア連邦の南方、黒海とカスピ海に、はさまれたコーカサス地域。こんな小さな村でも激しい戦闘は行われていた。
戦場報道カメラマンの市尾ユウスケは地獄を見ていた。
 異国の兵士達は、なぜか同じ国で造られた同じ型の銃で撃ちあっていた。皮膚と肉と骨は当たり前のように裂けて砕けて体液をまきちらした。
二本足の生き物は、すぐに肉の塊へと変わり命の大量消費を続けた。今、この世界で戦争の意味を正しく理解している者はいるのだろうか。
いや、意味などを知る事に価値など無いのだろう。この世界にとって戦争はいつも日常なのだから…
 その時、村の住民の一人が遠くから走り寄って来た。1本だけ残った左腕を振りながらバランスをとって走ってくる。障害の残った妙な動きを見せて…
「終わったぞ!終わったー。戦争が終わったんだー」
 市尾はニセモノの空を見上げ、一つ小さく呼吸をした。ニセモノの呼吸を。
395ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:28:25
『ツナガリの時』 2/15
 世界98カ国の国と地域のチームが参加している第106次世界大戦《ワールドカップウォー106》の特設会場。
会場の前に自動運転の電動タクシーが停車した。
ドアが人の手で乱暴に開けられ、あわてて降りる一人の男性。森谷タダシ。
「まったく、今日は、トンでもない日だ」とぼやく。最近は、電車運行のシステムダウンが多すぎる!
「領収はフリーライターの森谷タダシ様で記録いたします」と車の電脳意識が走り去ろうとする森谷の後方でしゃべっていた。
会場への階段をかけ昇りながら自動運転の車に右手を振り了解の意味を伝えた。
「フリーライター…か」
 浅黒く日焼けした森谷の顔、何かしゃべる度にわずかに口元が右上にゆがむ。そして思わず自虐的な笑みがでてしまった。
ちっぽけなニュースサイトと契約しているだけの今の自分、この取材の後の仕事は無い。名前通りオールフリーだった。
 入口では、かわいらしいメイド服を着たアニメキャラの巨乳アンドロイドが待っていた。「森谷タダシさんですね。どうぞ」
あんなかわいらしい萌ーっ!(ああ!これ死語!)の顔をしているが、イザという時はものすごい悲鳴を放ち、タダではすまない程の強力な催涙ガスを内蔵している。
警備ロボットも兼ねているメイドさんなのだ。
私の体に内蔵されている取材許可のタグを読み取り、対になっている顔データー認識を同時に行い、登録を済ませた。
これで私の存在はこの会場内の全警備システムに知れ渡りフリーになった。

 今回のワールドカップウォーの開催国は日本。4日間の開催期間の最終日をむかえて独特の雰囲気が感じられた。
中央のステージでは、ハッキリとした口調で満面の笑顔、高陽しきった関西弁の声のロボットがユーモアまじりで戦況を伝えていた。
この戦争の様子は各国の言語でいろんなチャンネル、情報形体に変換されて世界中に同時配信されている。
 森谷は意識を後頭部に集め、脳内のワイヤレスコネクタのスイッチを入れ情報の流入を許可した。さっきのメイドに渡された資料一式を第3解放モードでツナギ、受けいれた。
396ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:29:29
『ツナガリの時』 3/15
資料の最初は、11年前の2012年12月18日付け、全亜科学産業新聞誌面のスミに掲載された小さな記事からはじまっていた。
 記事の記載はこうだ。
「コンピューター内で戦争を完全に再現・フル3次元化に成功」
冥界電子は、極高速電算機を使い、複数国家間で極度の緊張状態の末、核爆発をともなう戦争に発展していく様子を電算機内の三次元空間内に再現する実験に初めて成功した。
同社は今後、MSアルファー社との共同で開発した高速処理システムを追加導入し、さらに計算能力を高め、参戦国の数を増やし兵士達の行動の多様性を追求する計画。
同システムは以前から研究され蓄積されている人体データなどを利用しており、戦時下での当自国の国民、他国国民の心的動向をも正確に再現、分析できるという。
電算機による再現実験は八王子研究所、室蘭研究所で実施した。
電脳空間では兵器による衝撃波を都市部に集中させ、過酷な条件をあえて作る。そうして攻撃を行った側の軍、民間人、被害を受けた対戦国、その周辺国や友好国側の軍、民間人の肉体的、精神的な変化データが初めて正確に得られた。

 当時の新聞紙面の情報を処理した後、森谷の脳内に、この今回の戦争ゲームの経過が通知されてゆく。
「ウチが(日本軍)勝ちそうだな」と判断し森谷は早々に浪花ドームの取材後の予定を考えはじめた。
 しばらくして、関西弁ロボからの終戦のコールがなされた。
今回の第106次世界大戦で最高戦勝ポイントを獲得し勝利したのは日本チーム。
 作成された日本国軍の兵士達は実に良く戦った。最大勝因は、大戦末期に電撃的にインドチームと結ばれた日印同盟だった。
「完璧にプログラムされた優秀な兵士達。軍内の士気は最後の最後まで高レベルを維持していた」と評価、解説されていた。
397ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:30:25
『ツナガリの時』 4/15
 こうして日本時間2021年10月29日18時55分。世界98カ国の国と地域のチームが参加したワールドカップウォー106は終了した。
 プログラム意識の戦死者の内訳は、兵士8億5706万人 民間人2億6544万人。シミュレーション世界で使われた限定核爆弾は34個、新型の化学兵器は6種62万トン、生物、細菌兵器は幸いにもヨーロッパのごく一部で使用されたのみであった。
 この大会は、そもそも、最先端のプログラム技術を各国企業が競い合う、地球規模の架空戦争ゲーム。世界最大の戦争ゴッコなのだ。
 壇上では、各参加国代表がずらりと並び、戦争終結のコードが仲良くいっせいに打ちこまれ、完全に戦いは終わった。
 うれしそうに表彰台で手をふる日本チームの代表達を眺めながら森谷は、この大会に参加している日本の民間企業一覧をチェックし、花園テックという会社名を見つけた。
「午後からは俺にツキがまわって来たゾ」
たしか花園テックには、アイツがいたはずだ。
森谷は持ち前のあつかましさで学生時代の後輩がいる花園テック社へ強引に電話をつないだ。

 今大会、日本チームの人物プログラム作成で参加している企業の中の一社、花園テックの本社は、浪速ドームからそう遠くない場所にあった。
 社員数20数名の会社内でのプログラムの責任者、彩多キミトシは、社内のTVモニターに映しだされた会場での戦争終結宣言の画面を見つめていた。
「さあ!こらからが忙しくなるぞ!」と自分とプロジェクトのメンバーに向け気合を入れさけぶ。そう、これから、彩多達の本格的な仕事がはじまるのだ。
 今回の戦争で得られた無数の貴重なデータ。
各国の関係省庁、関係の民間企業は、戦争終結宣言がなされた今、待ちに待った分析結果を取り出し利用ができるのだ。
架空世界内部で活躍した架空の兵士、架空の政治家、または架空民間人達の選別、分析に取りかかれる。
 これら膨大なデータは現実の世界での国防に、そして、民間企業の更なる利益追求のために役に立てられ、2次使用、3次使用、ありとあらゆる分野で加工がなされて利益を生みだし消費される。
398ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:31:20
『ツナガリの時』 5/15
 彩多は自分が自ら設計し、関った人物の中で生き残ってくれた83名をリストアップさせていた。
「うーん。今回は100人は残ってくれると期待してたんだが…まあ内容が大事か!!」とそこそこ、この数字には満足していた。
 彩多は、ロシア連邦の南方、コーカサス地域に近い村を呼びだし、架空の戦場報道カメラマンとして活動していた市尾ユウスケの人物データを作業台へ乗せた。行動履歴をざっとながめ、「コイツはモノになりそうだ」と口にした。
 大戦末期、ますます戦闘が激しくなる中、コイツは村の住民を最後まで軍から守り通し終戦を向かえた、つわ者。
市尾ユウスケで全検索をかけ、存在と関連データすべてを個別ブロックにコピーした。
コイツは体験型ゲームソフトへの応用が期待できる。ボランティア組織のサポート知能の応用にも出来そうだ。
フォルダに優良と名前を付け商品製作部へまわすことにしよう。
 彩多は次の選定をはじめた。
他の一覧を眺めていて井瀬まゆというアメリカのペンシルバニア州フィラデルフィアに居た女性型プログラム意識が目に止まる。
 その時、受付から彩多に最優先での来客の通知が入った。仕事中は絶対、連絡は受けないハズなのに…
「社運をかけたこの仕事より優先させるお客さんって…」いったい誰だ!
仕方なく、ラインをつなぐとモニターに現れたまったく面識のない男は、浅黒く日焼けした顔で、愛想笑いをしていた。何かしゃべる度にわずかに口元が右上にゆがむ。
しきりと私の出た大学の話しをして自分と彩多の関係を説明しはじめた。
こんなやり取りをしているより、会って適当に話しを聞き、帰ってもらったほうが時間の節約になりそうなので、面談室へソイツを入れておくように受付プログラムに言いつける。
 30分後、話しを終えた彩多が浮かない表情で面談室からでてきた。
森谷っていう名の会ったことも無い、懐かしいということになってしまった私の出た大学の先輩にやっと解放された。
自分の作業ブースに戻り、座りなれた作業イスに体を預け、ため息をついた。面談室でのあの男との会話を思い返していた。
399ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:32:32
『ツナガリの時』 6/15
 あの架空世界に本物の人間が侵入している可能性…
本物の人間が自分の意識をデータ化させ潜りこむ??
そんなことが出来ると彩多も前々から噂だけでは聞いた事はあったのだが…
 でも本当にヤル奴がいるとは考えられない…数値世界に入り、戻って来られる確立は、かなり低い。
戻れたとしても何らかの脳への障害が残る可能性が、高いはずだ…
 彩多は頭を横に2、3度振り、補助脳の電源を入れ仕事にもどった。
お気に入りのイスに座り直し、使いなれた電算機の電源を活性化させる。次の生き残りの人物データ呼びこみにかかった。
 先ほどチェックしていたデータ。日本人歌手の井瀬まゆ。
架空の地、アメリカのペンシルバニア州フィラデルフィアで戦火が激しさを増す中、絶望する人々を心を癒す自作した曲、歌詞を歌い、活動を続けていたプログラム人間。
「この曲は使える」と何曲か試聴してみて感想を口にする彩多。
こんな戦時下だからこそ、死が目前に迫りくる時だからこそ、生まれるこの種の曲は無条件に人間の根本的感情を刺激させ、揺さぶり、感動を与える要素がつまっているのだ。
 この井瀬まゆが架空の世界で作った曲は全部で14曲。どれも素晴らしく、現実世界でも、ヒット間違いなしと思われた。
社の音楽部門へさっそくサンプルを送ろう…

 フリーライターの森谷タダシは、ここ1週間、寝泊まりをしている短期契約型の安アパートにいた。
取材原稿を書き上げたばかりで気分がよかった。
 今回のワールドカップウォーの仕事は意外とスムーズに事が運んだ。会場の取材も、優勝チームと関りのある企業の独自の専門的ネタも取材できたのだ。そして肝心の原稿料も満足のゆく額。
 取材で出あった花園テック社の彩多っていう名の会ったことも無かった、懐かしい後輩から聞きだしたネタ…これは使えた。
アパートにセットされている、安っぽいソファーが190センチをこえる体を持つ森谷の体重に悲鳴をあげていた。
400ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:33:34
『ツナガリの時』 7/15
ため息をつき、あの男とのいいかげんな会話を思い返して笑った。
 あの架空世界の戦場に本物の人間が侵入している可能性…本物の人間が自分の意識をデータ化させ潜りこむ??
森谷は、そんなことが出来ると聞いていた噂だけで強引に花園テックへもぐりこんだ。
 でも本当にヤル奴がいるとは考えられない…数値世界に入り、戻って来れる確立はかなり低い。戻れたとしても何らかの脳への障害が残る可能性が、高いはずだ…
「まあ、俺は、どんなに金を積まれたってやらないな!」と浅黒く日焼けした顔の口元が右上にわずかにゆがんだ。
 仕事をひとつ終えたときは、いつもよりワンランク上の酒を買って帰る森谷。
グラスをぐいっと飲み干し、かわいい後輩の会社で見せてもらった数値人間達の事を考える。
 あいつらは本当によく出来ていた。
あそこまでのレベルに達した場合、あいつらは、いったい何なのだろうか。単なるプログラムだと呼んで良いものだろうか。
 いずれ人工人格意識を保護する条約のようなモノの検討が必要になることがきっと来るのだろう。
 だが俺は、人権団体が問題にしているような、戦争ゴッコの無意味さ、非人道的なゲームと批判したり、全世界に訴えかけたり…そんな事には興味はない。
もし…もし…
もしも、あいつらに人間と同じ心が宿っていた…と、して、意味の無い架空の戦いで苦しみ、苦痛にもだえながらプログラムされた死をむかえていたとして、今のリアルなこの現実世界に住む俺らホンモノの人間に与えられている運命と比べ、どう違いがあるのか…
たいした違いは無いと思う森谷だった。

 半月後、森谷タダシは日本から遠く離れたメガリア国にいた。メガリア国で開催されている航空ショーは今年も華やかで多くの人達で、にぎわっていた。
「森谷タダシさんですね。どうぞ」
いかにもロボットらしい警備ロボが私の体に内蔵されている取材許可のタグを読み取り、対になっている顔データー認識を同時に行い、登録を済ませた。
401名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/05(木) 17:39:41
一休み
402ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 17:44:45
『ツナガリの時』 8/15
 これで私の存在はこの会場内の全警備システムに知れ渡りフリーに。
今の森谷は半月前のちっぽけなニュースサイトと契約しているフリーライターの森谷ではなかった。
この前書いた大阪での記事が物好きな軍事オタクのワンマン社長の目にとまり、今回の仕事にありつけたのだ。
 森谷は、まず、このショーで、もっとも広いスペースを使用のローキュテイア航空社のブースに向かった。
 混雑によりしばらく待たされた後、やっと入口のゲートをくぐると受付では本物の人間より色っぽい美形のアンドロイドが数体待ち構えていた。
全裸に近いわずかな布をまとった美女からカタログ一式を受取る。
 ローキュテイア航空の取材の最初は、ココで最大の展示規模を持つステージ。
屋外の広大な展示スペースには最新の知能戦闘機《ダブラス》が展示されていた。
森谷は意識を後頭部に集め、脳内のワイヤレスコネクタを開く。
 ローキュテイア航空社が制作したシミュレーション体感映像を第3解除モードでツナギ、受けいれた。仮想敵国の戦闘機相手に圧倒的優位さで撃ち負かす《ダブラス》の勇姿をタップリと味わい脳が沸騰しかけた。
フラフラになりながら屋内の展示練にたどりついた。
 建物の中では、ビートの効いた迫力の音楽が流れ、中央に今回の超目玉、《地場振動熱気体爆弾》の実物大模型が展示されていた。
 メガリア国が現在、内政干渉中の中央アジアの国。その国の反政府軍との闘いでこの大量虐殺兵器の実戦配備がウワサされている。
 森谷は、この悪魔のボールが実際に投下された際、どのような地獄が作りだされるのか、敵国の一兵士側から見たシミュレーションを味あわされ充分にその威力を体感した。
朦朧としたまま何とか脳内のワイヤレスコネクタを閉じ取材保存用の記録副脳へこれまでのデータを丸ごと移し一息つく。
たまらなくなって腰をおろした《地場振動熱気体爆弾》の模型が展示されている台に記載されていた文字にふと目が止まった。この悪魔のボールのプログラム設計を受け持っているのが日本の企業、九曜技研だというのに興味を持つ。
403ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 20:58:29
この話しは、このスレの最初の方>>60-64で『第106次世界大戦』というタイトルで載せたものに書き足したものです。↓から始まる九曜技研の電字人間の部分も新しい部分です。

『ツナガリの時』 9/15
今の俺のスポンサー様、道楽社長から与えられている取材パスは相当な上物で普通では絶対アクセス出来ない情報検索が可能だった。調べた結果、この会社は、まったく無名の目新しいソフトウェアプログラム会社とわかった。
「よし!ココの取材が終わったら行ってみるか!」幸いこの会社の研究施設もあまり遠くない場所だとわかった。
 メガリア国リニカ州の豊かな自然に囲まれた場所に九曜技研の開発研究施設はあった。
 所長、ステハン・ランバートのじきじきの案内で森谷は、地下深くに建設された研究ブロックへと向かっていた。
説明によると発売が間近に迫っている最新の都市下水浄化施設の管理プログラムが先程、完成したばかりでその出来具合の最終チェックを行うらしい。

 2021年、この世界の産業社会は、ますます発展を続け、その複雑さを増していた。
結果、あらゆる産業で、その機械のシステムを動かすために優秀なソフトウェアが必要とされた。
 だが、それらを支えるソフトウエアを設計するシステムエンジニアの絶対的なその数の不足、そして何よりも質の不足が深刻な問題になっていた。
軍事産業や一般企業での社内情報システム。製造業での自動化工場のライン運営、巨大プラントの制御、あらゆる家電や自動車など交通システムに搭載されるプログラムソフトなどなど人間社会に関るすべてに。
 最近頻発する交通機関の運行、金融機関、通信網のシステムトラブル。これらすべてはあまりにも高度になってしまったシステムにそれを動かすプログラムの技術が伴わなくなった事を意味していた。

 地下のあまり広くない部屋に小型冷蔵庫位の大きさの黒い特殊金属製の立方体が7基、キレイに並んで置かれていた。
その黒い塊の中は通電されているらしく、絶えず作動音が聞こえていた。
 先日の花園テックの更に上を行くココの最先端技術。
九曜技研、所長の説明を聞き、森谷は、何とも言えない恐怖をかんじていた。今、ココでは、これまで、まったく無かった新しいソフトウエアの開発方法が構築されていた。
404ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 21:00:19
『ツナガリの時』 10/15
7基の塊の中にはそれぞれ広大な領域の電字空間が存在していて九曜技研所有の無数の電字人間が住む世界が広がっていた。
 所長の説明を一通り聞いた後、電字人間達の住む世界を訪れる為、準備をはじめた。まず、意識を後頭部に集め、脳内のワイヤレスコネクタを開く。
 第1解除モードでツナギ、受けいれた。開放した脳へ直接届く、電字人間達の住む世界のイメージが森谷を混乱させてゆく。
「ココでは、急増するシステムプログラム、ソフトウエアの需要に答えるために、効率化を追求し、開発完成品の質を保ち、更に開発速度をどこまで上げられるかに力が注がれています」
 森谷が表面的接続で訪れた電字の街、そこは白色で統一された広い空間の世界で二本の足、二本の腕、一見人間のような薄気味悪い生き物のすむ世界があった。
空の上から所長の解説が聞きえてきた。
「ココでは、優秀な電字人間次々と育成されていていずれは、従来のリアル世界の人間による作業とは比較にならない短時間で、より完成度の高いシステムのソフトウエアプログラミングが開発できるようになるのです」
森谷はゆっくりと2、3歩歩いてみた。するといきなり現われた妖怪のような電字人間に話しかけられそうになりあわててしまう。
電字人間の顔が2センチくらいの近くまで迫ってきた時、あわてて接続を切る。表面的な接続だけだったが2度と訪れたくない世界だった。
何とか現実の世界にもどれ、冷静を取り戻した森谷は、用意された椅子に倒れこむ。
「この電字人間達の製作過程が成功し標準になれば、プログラム内の不具合は少なくなり無くなり、電車の遅れや銀行のATMの不具合も無くなり、社会システムは安定化するって事?か…」とつぶやいた。
405ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 21:01:56
『ツナガリの時』 11/15
「素晴らしい!!」と、思わずソフトウエアのチェックしていた所長のランバートがあまりの出来の良さにさけんでいた。
所長は、7つの黒い塊の中の一つ、第3電字都市R-Q160《ノース》とコンタクトを取っていた。その中の電字都市内を統括している、統合人格のマーカスから、依頼していた、ソフトウエアの機能説明を受けていたのだ。
 統合人格のマーカスとは、本来、時間観念も思考方法もまったく普通の肉体を持つ人間と異空間の電字人間とを結ぶ通訳の役目をする生命体のこと。
人間の中ではこの業界で最高の部類に入る頭脳の持ち主である所長のランバートでさえ、マーカスから受ける説明の理解は、困難をきわめていた。
ただ言えることは出来あがったプログラムは、素晴らしいということだけ。
 そして改めて、現実世界でのソフトウエア開発エンジニアの決定的な数的不足。通常の人間の能力では、すでに開発困難になりつつ有る高度さを要求されるようになった現状を認識させられていた。

 第3電字都市R-Q160《ノース》は、成長段階第2期教育を迎えた128万体のプログラム生命人間が選別の時期を迎えていた。
その中の1体に、R-Q160-6750-GK97-875Hフォーマイタと名を付けられている生命体がいた。フォーマイタは、とても優秀で都市の中でも上位10人の中に選ばれていた。
そのすぐ下のランクに属するのは標準体と呼ばれる50体。
そして標準体以下の残りのその他すべての電字人間は不要処分される運命にあった。
 ゆらゆらとゆれるモノトーンの白色に輝く、美しい電子の街をフォーマイタは次の教育訓練までのわずかな時間を散策していた。
406ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 21:03:19
『ツナガリの時』 12/15
発生して2期間の季節、いつも一緒に過ごしてきた仲のよかったキナミネのことを思った。
アイツは、4瞬間前、標準体にも入れず処分された。
だが、これは、この世界ではあたりまえの事。
 フォーマイタは与えられている絶対使命だけの為にココに存在しているのだとわかっていた。リアル世界と呼ばれる、人間という生命体が住む空間で使われる、機械を制御するソフトウエアプログラムを設計する為だけに存在しているという事を。
 フォーマイタは、高く宙に舞い、クルクルと回転させながら体、全体を無数に分解させ、すぐに再構成させ元に戻るという、遊び をはじめた。
もうすぐ教育過程が終了する。フォーマイタの精神は無限の空間に向けられていた。何も無い無の空間をクルクルと舞い自分の存在意味を再確認させていた。
無の数値化…それが私たちの仕事…そして生きがい。

 最終教育期を終えたフォーマイタは、素晴らしい能力を開花させ電字都市歴代最高の人材として登録され、最高の部門、軍事機関に配属が決まった。
 まかされた仕事は、メガリア国が内政干渉中の国の反政府軍との闘いで実戦配備される予定の新型(大量虐殺)爆弾の制御システムの設計だった。
 フォーマイタ達のようなプログラムを設計する為だけに存在する電字人間は何よりも閃き、独創性がすべて。
 そのため、人間の住むリアル世界に関しての情報にアクセスできる閲覧権を制限付ではあるが与えられていた。
 フォーマイタは、自分の存在を生みだした人間という生き物に夢中になった。その歴史に社会システムにその行いすべてに。
407ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 21:04:21
『ツナガリの時』 13/15
 フォーマイタにとって与えられた今回の仕事は比較的難易度の軽いものだった。仕事をはじめてからすぐに与えられた条件はすべてクリアし基本設計を終わらせた。
 その間、あまっているスペックを使い、フォーマイタは、人類の歴史資料全部を10,000回ロードさせた。
8,000回閲覧を過ぎた頃に面白いアイデアを閃いた。このアイデアを完成させていた地場振動熱気体爆弾の制御システムに追加し組み込んでみるつもりだった。
 異次元的発想をする電字人間の仕事は、リアルな人間達の頭脳では到底理解出来ていない。統合人格マーカスを通して何度も何度も出来るだけ具体的に簡単に説明を繰り返していたが、人間にどれだけ理解してもらえたか。

 フォーマイタは、組みあげたこのシステムには絶対的なものを感じていた。過去、電字人間が産み出した、どのプログラムと比べても負けてはいないと判断していた。
もうすぐこの爆弾は、リアル世界で稼動し、スペック通りの威力を発揮するだろう。
投下された都市の辺り一面の建造物、そこに潜む兵士、民間人の女性、老人、乳幼児、すべてを見事に蒸発させる事だろう。
 そして、後で組みこんだ、とっておきのアイデアも用意されている
408ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 21:05:06
『ツナガリの時』 14/15
 納入を完了させ、フォーマイタは次の仕事が与えられるまでのわずかな時間を使って白い世界をいつもの散策に出かけた。
高く宙に舞い、クルクルと回転させながら体、全体を無数に分解させ、すぐに再構成させ元に戻るという、遊び をはじめた。
精神は無限の空間に向けられ、何も無い無の空間をクルクルと舞い自分の存在意味を再確認させる。
無の数値化…それが私たちの仕事…そして生きがい。

 森谷タダシは日本に戻っていた。
管理知能付きの短期契約型のちょっとだけ豪華なマンションの暮しをしていた。
軍事オタクのワンマン社長への取材報告はうまく行き、データを丸ごと予想以上の高値で買い取ってくれた。
原稿料を使い、しばらくはココでゆっくり出来そうだ。
今、非常に気分がよかった。ゆったりとしたソファーは190センチをこえる森谷の体重を余裕で受けとめ快楽という武器で束縛した。
 仕事を終えたときに飲む酒は、もちろん思いっきり贅沢した銘柄。グラスをぐいっと飲み干し、メガリア国の地下深くの施設で見た電字世界の事を思い返していた。

 戦争ゲームの中にいたあいつらも確かに生きていたのだろうが、あの白い世界の住人はなんだ!
あの生命体がこれから俺達人間に与えてくれるものは果たして地獄だろうか?それとも見たことも無い楽園なのだろうか。
 軍事オタクのワンマン社長から是非と何度もたのまれたメガリア国が内政干渉中の国での取材。
森谷は今度ばかりは丁重にお断りした。
いよいよ反政府軍へのメガリア国の本格的な攻撃が迫っていると感じたためだった。
 その時、マンションに常駐している管理知能が臨時ニュースを伝える為にモニターの電源をいれた。ニュースショーの無国籍の美女型アンドロイドが現れる。
409ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/05(木) 21:06:06
『ツナガリの時』 15/15(終)
ついに、地場振動熱気体爆弾が実戦配備されたとの情報を伝えていた。
森谷は、あの航空ショーで体感した、敵国の一兵士側から見たシミュレーションを思いだし身震いした。

 遠い異国の中央アジア上空には、無人のステルス爆撃機がすでに飛んでいた。
地場振動熱気体爆弾が積まれたステルスは国境を次々に越えて飛び、目的の座標へ迫る。
起動解除された地場振動熱気体爆弾は静かに空気中に放たれ下降してゆく。
地面から数百メートル上空に達した時、悪魔のボールは炸裂した。
フォーマイタのプログラムは正常に機能し、おどろくほどの数の反政府側兵士と普通の暮しをしていただけの民間人の命をも容赦無く蒸発させた。
 ものすごい爆風の後、何も存在しなくなった空域は人の作りだした地獄にかわった。

 その地獄の風が吹きあれた後、フォーマイタの作りあげた地場振動熱気体爆弾の特別の機能の風も発動した。その風、それは、地球全土に瞬時に広がる共感感応イメージの風だった。

 地場振動熱気体爆弾で命を奪われた人間すべてが味わった生から死への精神の波が脳デバイス処置をほどこしているすべての人間の脳に強制流入してゆく。
現在、地球上の人間のほとんどには何らかの脳感応の入出力装置が追加されているのだ。
他、残り、デバイス未処置の人達にも違うルートで精神の波としてその精神の波は届いた。

 それらが脳へ届いた時、人間は歴史上はじめて他人を殺め傷つけた際の被害者側の真の傷みを感じる事が出来たのだった。
 この共感イメージは各国の政治指導者、軍上層部、企業経営トップ達に対しても、耐えがたい精神的揺さぶりをあたえた。
世界中は、これまでの自らがおこなった罪を天に向かい認め、涙を流し懺悔をはじめた。

静かな静かな時が全世界に流れた。時が止まったかのような1週間がすぎた後、国連では緊急の会議が開かれた。

加盟国全会一致で声明が出された。

「全世界の人々にかわりここに宣言する。私たちの心にもはや暗闇は存在しない」と…   《おわり》
410名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/06(金) 18:27:20
すごく面白いと感じたけどなんかテンポが速すぎる気がした
なんというか長編SFのプロットだけ読んでる感じ
長編にしたらたぶんもっとよくなるかも知れない
411ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/06/07(土) 00:33:52
>>410さん ありがとございます。

次回は短い話で・・・

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

ココ最近・・・(と言ってもかなり前か・・・)読んだSFでショックだった3冊

イーガンの ディアスポラ

ジョン・スコルジーの老人と宇宙

ブリンのキルン・ピープル

こんないい作品読むとあまりのすごさに立ち上がれません。

特にキルンピープルは、私にとってストライクど真ん中、過ぎました。
こんなの読むともう何にも書けません。よね・・・
412あっちゃんブリゲ:2008/06/24(火) 07:26:34
SF詩書きました。よろしければ、ごらんくださいませ。

http://www2.ocn.ne.jp/~etude/elf/document/toshokan.html
413名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/24(火) 08:46:17
>>412 「図書館の掟」読んだよ。なかなかだ。文章は美しい。
だが、中の上といったできだ。爆発力に欠ける。詩にオチを求めるのはちがうのかもしれないが、
本を死者としたイメージはすばらしいが、それを生かした展開がない。
イメージが膨らまない。だから、中の上だ。上ものには届かない。
414あっちゃんブリゲ:2008/06/25(水) 20:33:01

412さんへ


ごらんくださり、ほんとうにありがとうございました。
精進して、よりよい作品を書いていくよう努力していきます。
415あっちゃんブリゲ:2008/06/25(水) 20:41:42

413 名無しは無慈悲な夜の女王さんへ


でした。すいません。
416名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/26(木) 10:48:50
ケロロ少佐の「ツナガリの時」の感想。
まず、第106次世界大戦《ワールドカップウォー106》ということばに笑う。
どこか既視感のある話だと思っていたら、すでに発表した話の書き足しだとのこと。
一度目に読んだときより、今回読んだときの方が面白いと感じていた。
 物語は、複数の登場人物によって語られているが、できるだけ一人の視点にした方がわかりやすいと思った。
最後のオチも少しわかりにくい。おれが読解力がないためなのかもしれないが、
電子仮想空間上で、地場振動熱気体爆弾が配備され、相手の痛みを知る脳技術が開発され、
そして、戦う相手の痛みを知った人々が「私たちの心にはもはや暗闇はない」といっているのだろうか。
最後の戦いが、電子空間上のものなのか、実戦なのかがわかりにくい。
そこが物語のオチであり、落としどころなのかもしれないが、おれにはうまく読みとることができず、
前述したように解釈した。評価は、中の上である。
417ケロロ:2008/06/26(木) 17:21:14
>>416さん感想ありがとうございます。

前のバージョンより面白かったとのこと、よかった!!書き足した甲斐がありました。

複数の登場人物による話の進行ですが、一人の視点の方がわかりやすいし、いいですよね。
一人称って言うんですか?私は作文の基礎の部分で足りない部分が多すぎるためいつもこんな結果になります。
一人称か神の目線?(っていうのか)で書くのが一番私にはあっているのかもしれません。

あと、最後のオチのわかりにくい件。
最後の地場振動熱気体爆弾がさく裂するのは電子仮想空間上ではなく現実世界でした。「私たちの心にはもはや暗闇はない」ってところに行く部分の前をもっと丁寧に書けばよかったですね。

そもそも最初、この話は、ワールドカップウォー106の部分と電字都市の部分を全く別々で作っていたんです。
が、それをフリーライターの男が取材をする場面を使って無理やりつなげてしまったんです。設定がかみ合っていなかったですね。

秋葉原の例の事件を参考に、お話考えついたので短くまとめられたら、近々載せます。(まだオチが思いついていませんが)
418田中宏輔:2008/07/06(日) 22:39:08



わたしは注意の上にも注意を重ねて玄関のドアをそっと開けた
道路に卵たちはいなかった
わたしは卵が飛んできてもその攻撃をかわすことができる
卵払い傘を左手に持ち ドアノブから右手を静かにはなして外に出た
すると、隣の家の玄関先に潜んでいた一個の卵が びゅんっと飛んできた
わたしは さっと左手から右手に卵払い傘を持ち替えて それを拡げた
卵は傘の表面をすべって転がり落ちた
わたしは もうそれ以上 卵が近所にいないことを願って歩きはじめた
こんな緊張を強いられる日がもう何ヶ月もつづいている
あの日 そうだ あの日から卵が人間に反逆しだしたのだ
それも、わたしのせいで 京都市中央研究所で
魂を物質に与える実験をしていたのだ
一個の卵を実験材料に決定したのは わたしだったのだ
わたしは知らなかった そんなことをいえば だれも知らなかったし
予想すらできなかったのだ
一個の卵に魂を与えたら その瞬間に世界中の卵が魂を得たのだ
いっせいに世界中にあるすべての卵に魂が宿るなんてことが
いったいだれに予想などできるだろうか といって
わたしが責任を免れるわけではない
「これで進化論が実証されたぞ」と 同僚の学者の一人が言っていたが
そんなことよりも 世界中の卵から魂を奪うにはどうしたらいいのか
わたしが考えなければならないことは さしあたって、このことだけなのだ
419田中宏輔:2008/07/06(日) 22:40:18



終日
頭がぼんやりとして
何をしているのか記憶していないことがよくある
河原町で、ふと気がつくと
時計屋の飾り窓に置かれている時計の時間が
みんな違っていることを不思議に思っていた自分に
はっとしたことがある
このあいだ
丸善で
ふと気がつくと
一個の卵を
平積みの本の上に
上手に立てたところだった
ぼくは
それが転がり落ちて
床の上で
白身と黄身がぐちゃぐちゃになって
みんなが叫び声を上げるシーンを思い浮かべて
ゆっくりと
店のなかから出て行った
420田中宏輔:2008/07/06(日) 22:40:43
自分を卵と勘違いした男の話


彼は冷蔵庫の卵のケースのところに自分を並べていった
421田中宏輔:2008/07/06(日) 22:41:30
テーブルの上に残された最後の一個の卵の話


透明なプラスティックケースのなかに残された
最後の一個の卵が汗をびっしょりかいている
汗びっしょりになってがんばっているのだ
その卵は、ほかの卵がしたことがないことに
挑戦しようとしていたのだった
卵は、ぴょこんと
プラケースのなかから跳び出した
カシャッ

422田中宏輔:2008/07/06(日) 22:45:18



教室に日光が入った
きつい日差しだったから それまで暗かった教室の一部がきらきらと輝いた
もうお昼前なんだ そう思って校庭を見た
卵の殻に その輪郭にそって太陽光線が乱反射してまぶしかった
コの字型の校舎の真ん中に校庭があって その校庭のなかに 卵があった
卵のした四分の一くらいの部分が 地面の下にうずまっていて
その上に四分の三の部分が出てたんだけど 卵が校庭に現われてからは
ぼくたちは体育の授業ぜんぶ 校舎のなかの体育館でしなければならなかった
終業ベルが鳴った
帰りに吉田くんの家に寄って宿題をする約束をした
吉田くんちには このあいだ新しい男の子がきて 吉田くんが面倒を見てたんだけど
きょうは吉田くんのお母さんが 親戚の叔母さんのところに その子を連れて行ってるので
ぼくといっしょに宿題ができるってことだった
吉田くんちに行くときに通り道に卵があって ぼくたちは横向きになって
道をふさいでる卵と 建物の隙間に 身体を潜り込ませるようにして 通らなければならなかった
そのとき 吉田くんが ぼくにチュってしたから ぼくはとても恥ずかしかった
それ以上にとてもうれしかったのだけれど
でもいつもそうなんだ ふたりのあいだにそれ以上のことはなくて
しかも そんなことがあったということさえ なかったふりをしてた
ぼくたちは道に出ると 吉田くんちに向かって急いだ

423田中宏輔:2008/07/06(日) 22:46:19
卵病

コツコツと
頭のなかから
頭蓋骨をつつく音がした
コツコツ
コツコツ
ベリッ
頭のなかから
ひよこが出てきた
見ると
向かいの席に坐ってた人の頭の横からも
血まみれのひよこが
ひょこんと顔をのぞかせた
あちらこちらの席に坐ってる人たちの頭から
血まみれのひよこが
ひょこんと姿を現わして
つぎつぎと
電車の床の上におりたった
424田中宏輔:2008/07/06(日) 22:46:47


卵を割ると
空がつるりんと
器のなかに落っこちた
白い雲が胎児のように
丸まって眠っていた
ぼくは
お箸を使って
くるくる回すと
雲はくるくる回って
風が吹いて
嵐になって
ゴロゴロ
ゴロゴロ
ピカッ 
ババーン
って
雷が落ちた
ぼくは
怖くなって
お箸をとめた
425田中宏輔:2008/07/06(日) 22:47:14



卵を割ると
つるりんと
中身が
器のなかに落ちた
パパが
胎児のように
丸まって眠っていた
ぼくは
お箸を使って
くるくるかき回した
パパはくるくる回った
卵を割ると
つるりんと 中身が
器のなかに落ちた
ぼくはちょっとくらくらした
ぼくが胎児のように
丸まって眠っていた
ぼくは
お箸を使って
くるくるかき回した
ぼくはくるくる回った
ものすごいめまいがして
目を開けると
世界がくるくる回っていた
426田中宏輔:2008/07/06(日) 22:47:40
空飛ぶ卵


本日の夕方4時過ぎに
空飛ぶ卵が、京都市の三条大橋の袂に出現したということです。
目撃者の主婦 児玉玉子さん(仮名:43歳)の話によりますと
スターバックスの窓側で、きどってコーヒーをすすっておられると
とつぜん目の前を一つの卵がすーっと通り過ぎていったというのです。
驚いて、外に出て、卵が向かったほうに目をやると
その卵が急上昇してヒュ−ンと飛び去っていったというお話でした。
児玉さんのほかにも、大勢の目撃者が証言されておられます。
昨日から日本各地で空飛ぶ卵が目撃されておりますが
これは何かが起こる兆しなのでしょうか。
今晩8時より当局において特別番組『空飛ぶ卵の謎』を放映いたします。
みなさま、ぜひ当局の番組をごらんくださいませ。
スペシャルゲストに
UFO研究家の矢追純一さんと卵評論家の玉木玉夫さんをお呼びいたしております。
427田中宏輔:2008/07/06(日) 22:50:01
存在の卵


二本の手が突き出している
その二本の手のなかには
ひとつずつ卵があって
手をひらけば
卵は落ちるはずであった
もしも手をひらいても
卵が落ちなければ
手はひらかれなかったのだし
二本の手も突き出されなかったのだし
ピサの斜塔もなかったのだ
428記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/07(月) 15:49:46
卵に魂はあるものだと思っているので、>>418は思想的に違和感を感じる。
その他は、もう一歩、シュールになったらよかったのに、まだ常識の範囲内にあると思った。
429田中宏輔:2008/07/07(月) 16:27:03

ごらんくださり、ありがとうございました。
シュールなところは目指しているところでありました。
430田中宏輔:2008/07/07(月) 16:30:47
舞姫―その1―

彼女が瞬きすると いっせいに十人も二十人もの小人たちが まぶたの上で足をばたばたさせた
すると色とりどりの靴の先から きらきらと光がほとばしり わたしの目をくらませた
彼女は遠い惑星リゲルから わたしを追って地球にやってきたのだった
彼女は触手をわたしの頬にのばしてつぶやいた
「愛しています」
惑星リゲルの言葉で わたしも愛していると言った
わたしは一ヶ月前まで3年のあいだ、惑星リゲルに語学留学していたのだった
わたしは わたしの頬に触れている彼女の第一触手をとって 待たしていたロボット・タクシーに乗り込んだ
タクシーの運転手は目を丸くして といっても、最初から丸い目なのだが
わたしにはよりいっそう目を丸くしていたように思えたのだ
そんなはずはないのだが 口調が乗ってきたときよりも性急で
いささか大げさに驚いていたように感じられたからだった
「いや〜、ものすっごいべっぴんさんでげすなあ。
 地球の方やおまへんでっしゃろ。
 あんたはん、かなりのスケこましでんなあ。
 で どこいきはる?
 予定通り 京都の竜安寺でっか?」
いくら大阪の宇宙空港だからといって こんなぞんざいな言い方はないと思って
わたしは、ぶすーっとして一言 「そうだ」と返事した
彼女は第一触手に力をこめて わたしの手をぎゅっと締め付けた
正直言うと痛かった しかし わたしはそれを顔に出さず
彼女の顔を見て微笑んだ 遠い距離をはるばるわたしを追って やってきてくれたのだから。
わたしも彼女の第一触手をぎゅっと握り返した
第一触手の先から緑の体液が滴り落ちた
ロボット・タクシーは速度を上げて空を滑っていった

431田中宏輔:2008/07/07(月) 16:40:25
舞姫―その2の1―

時間と場所と出来事の同時生起
これらの石は ある時間のある場所のある出来事である
それらの間にある 砂の波によって描かれた距離は 時間ではない時間であり 場所ではない場所であり 出来事ではない出来事である
それらの石である ある時間のある場所のある出来事は 時間ではない時間と 場所ではない場所と 出来事ではない出来事である 砂の波によって結びつけられているのである
しかし 見方をかえれば 砂の波である 時間ではない時間を 場所ではない場所を 出来事ではない出来事を
ある時間のある場所のある出来事である それらの石が結びつけているとも言えるのである
いずれにせよ 結びつけるものがあり結びつけられるものがあるということである
あいは結びつけると同時に結びつけられているとも言っていいわけだが
ところで一方 見方をかえることのできるような主体はいったいどこにあるのだろうか
それらの石である ある時間のある場所のある出来事のなかにだろうか
それとも 砂の波である 時間ではない時間であり 場所ではない場所であり 出来事ではない出来事のなかにだろうか
なかにと言ったが 時間も場所も出来事も容器ではない むしろ 容器の中身である
いや 容器でありかつ容器の中身である 袋のなかにいて 袋を観察できるわけがない
主体は ある時間のある場所のある出来事のなかにはないであろう では
時間ではない時間 場所ではない場所 出来事ではない出来事のなかにであろうか
主体また結びつけるものであると同時に結びつけられるものなのだろうか
砂の波 つかの間の輪郭 つかの間の形
いや 砂の波ではない そうだ 石の外 つねに石の外から眺めているのだ
いくつかの石があり そのいくつかの石の外から眺めているのだ
432田中宏輔:2008/07/07(月) 16:42:01
舞姫ーその2の2−

しかし 砂の波のなかにではない 砂の波が足元に打ち寄せはするが 砂の波のなかにではない
ひとつの石に寄りかかり 眺めているのだ
いや いくつかの石に同時に寄りかかりながら眺めているのだ 主体がひとつであるとは言えないではないか
存在確率のようにぼんやりとした影のようなもので 同時にいくつかの石に寄りかかっているかもしれないのである
彼女の第一触手をいじりながら わたしはこういった話をしていた
竜安寺の石庭には リゲル星人のカップルが わたしたちと同じように 腰を下ろして話をしていたのだけれど
彼女のほうに カップルたちの第一触手が振られると 彼女は第一触手をわたしの手のなからすっと抜いて
彼らのほうに挨拶し返した
わたしはその挨拶が済むまでしばらくの間 目をつむって
さきほど彼女に話していた事柄を思い出していた
わたしという主体は 時間そのものでもなく 場所そのものでもなく 出来事そのものでもない
というのは 時間そのもの 場所そのもの 出来事そのもの といったものがないからであり
時間と場所と出来事が同時生起するものであるからであるが
それを 主体は ある時間と ある場所と ある出来事と
まるで別々のものであるかのように意識するからであるが
433田中宏輔:2008/07/07(月) 16:43:57
舞姫ーその2の3−

その意識する主体というもの自体が それらのある時間でありある場所でありある出来事と
時間ではない時間 場所ではない場所 出来事ではない出来事によって 刹那に形成される
つかの間の存在であるというふうに捉えると いったいわたしとは何であるのか
わたしは何からできているのか 何がわたしになるのか どこからわたしになるのか
わたしには考え及ばないものに思えてしまうのであった
いや そもそもわたしが考え及ぶようなところには わたしはないであろう
わたしが考え及ぶことのできるわたしは けっしてわたしではないであろう
彼女のまぶたから小人たちが下りてきた カップルたちのまぶたからも小人たちがおりてきた
何十人もの小人たちが石庭でダンスを踊っていた
彼女の小人たちの踊りは見事だった
やはり彼女は見事な踊り子だった
彼女の小人たちの踊りは カップルたちの小人たちの踊りには
比べ物にならないくらい見事なものであった
彼女が第一触手を石庭におろすと 彼女の小人たちがするするとよじ登って
彼女のまぶたの上にもどっていった
カップルたちもまた石庭に第一触手をおろした
わたしは彼女の第一触手をとって立ち上がって カップルたちにお辞儀をすると
砂の波の上に残った 小人たちの足跡に目をやった
砂の波はもとの形を崩していたが それもまた美しい波の形を描いていたのだ
わたしは今晩また 眠る前に考えることができるぞと思って 彼女の第一触手を軽く引っ張った
彼女のまぶたの上で 小人たちがバタバタと 足をちらつかせていた
434田中宏輔:2008/07/07(月) 16:50:02
舞姫―その3の1―

母は わたしたちに気遣って 夜食を付き合ってくれたのだが やはり彼女に伝わってしまった
彼女があとで わたしにこう言ったのだ お母さまは わたしが来たことを迷惑に思ってらっしゃるのではないですか と
わたしは 布団のなかで 母の言動を思い出していた
リゲル星での彼女の暮らし 彼女の家族の話 すべてがリゲル星を思い出させようとするものだった
彼女のまぶたの上から小人たちが下りてきた 彼女は眠ってしまったのだろう
小人たちがわたしの耳元で踊りを踊りはじめた 少しのあいだもじっとしていない小人たちだった
リゲル星での彼女との同棲で 小人たちの浮かれ騒ぎの声には慣れていたのだけれど
久しぶりのことだったので なかなか寝つけなかった
しかし 昼間に寄った竜安寺の石庭でのことを思い起こして 考えることができた
この小人たちが あの砂の波の形をかえていたこと
波の形がかわると 石の印象も違って見えた 見えたような気がする ちらっとだが

435田中宏輔:2008/07/07(月) 16:53:08
舞姫ーその3の2−

そうだ 意識の下 潜在意識の部分で わたしは他者とつながっている
砂の波 波に足を浸らせている じかに触れているとも言えよう 他者に触れているのだ
時間ではない時間 場所ではない場所 出来事ではない出来事
ああ もう少しで届きそうだ そうだ 時間や場所や出来事が析出するのだ 析出したものが時間や場所や出来事なのだ
時間ではない時間 場所ではない場所 出来事ではない出来事を
砂の波にたとえたのは わたしの直感のなせるものであった
時間ではない時間も 場所ではない場所も 出来事ではない出来事も
時間であり場所であり出来事でもあるものと まったく同じものからできているのだ
同じものでありながら 同じ溶液でありながら その溶液中に 濃度に違いがあり
その濃度のとても濃い部分が まるで結晶を析出させるかのように 析出させているもの
それが時間であり場所であり出来事なのである 違うだろうか
何かがきっかけになり 意識が働くのも
過飽和溶液に衝撃を与えると たちまち結晶が析出するようなものだ
あるいは ごくわずかの量の不純物か 不純物
偽の記憶 偽の体験 似ているが同じものではないもの
他者の体験 他者の体験の記録 話 文学 芸術 音楽 美術 ふだんの生活
わたしはあの石庭を宇宙に喩えることはしなかった
わたしは宇宙を外から眺めやることができないと思っていたからである
またあの石庭を宇宙に喩えて それを把握する脳というものと相似しているとも言わなかった
あの石は あの砂の波は 脳にも喩えられる形状をしていたのだけれど
では わたしが 時間と場所と出来事に喩えたのは?
時間ではない時間と場所ではない場所と出来事ではない出来事に喩えのは?
わたしの直感だろうけれど それらに喩えた理由を思いつく前に眠りが訪れた
もう少しで届くような気がしたのだが しかし そのもう少しというのが
とてつもなく長い時間であることもわかっていたのである
けっして辿り着くことなどできないような

436田中宏輔:2008/07/07(月) 16:58:31
舞姫―その4―

きょうは切腹を見に行く予定だけれど きみはもちろんはじめて見ることになるのだけど
きのう寝るまえに話していたように 今朝は食事をしないで出かけるからね
これは日本の伝統なんだよ 切腹 きょう切腹するのは賄賂を受け取った役人でね
役人は特権階級の者しかなれないのだけれど それだけにね それだけよけいに罪が重いんだ
残酷だって? いや 痛みはないんだよ 痛みは除去している 薬でね
でもまあ相当の勇気はいるだろうね こころにも慣性のようなものがあって
自分の腹を切るなんて考えただけで 痛みに似た感覚が生じたような気になるんじゃないかな
錯覚でもやっぱり感覚が混乱して 何もないかのように自分の腹を切るなんてことはできないだろうからね
ぼくはもう何度も見てるけれど 自ら腹を切るという行為にはつねに惹きつけられるね
まあ そのあとの斬首という決定的な見せ場があるのだけれど ぼくには切腹のほうが強烈な印象があってね
なにか哲学的な意味をそこに付与したくなってしまうんだけれどね
いつも中途半端な考察しかしてこなかったよ
きょうはきみといっしょにつぶさに見て それに何が見出せるか 考えてみたいと思う
きみといっしょに眺めるということで 違った見方ができるかもしれないしね
異星人にも公開しているのは 日本伝統が素晴らしいものであることをアピールしているのだろうけれど
ちゃんと恥を知っている文化を有しているということでね 自ら汚名をそそぐという行為を
日本人がしているということを知ってもらうということなのだろうけどね
さあ もう出かけようか ほら ロボット・タクシーが到着したよ
お母さん 行ってきますね 夕食は軽いものをお願いしますよ

437田中宏輔:2008/07/07(月) 17:15:14
舞姫ーその5の1−

内臓 臓腑の配置 石庭が真っ赤に染まる 石が心臓に 肺に 腸に 胃になる
砂の波が血管となって脈打つ
ばら撒かれた内臓には もとの秩序だった内臓配置がない
血で真っ赤に染まった石庭 巨大な臓器でできた石と 血管でできた砂の波
書かれた思考が 言語によって成立するというのならば
これらの内臓の庭は それだけで完全である
しかし 血液は 常に新鮮な酸素を必要とする 命を保つためには新鮮な空気を必要とする
書かれた思考も 言語によって成立しているのだが
言語はつねに言語ではないものによって 言語となっている部分を支えられている
言語は辞書のなかの意味だけでできているのではないからだ
読む者によって言語はさまざまな意味概念をもつのだから
百万の読者がいると 百万以上の解釈が生じる
似通ったものはあるだろうけれど 同じものは一つとしてないのだ
ほとんどの人間が同じ名称の内臓組織を持っているのに ひとつとして同じ内臓がないように
438田中宏輔:2008/07/07(月) 17:17:16
舞姫ーその5の2−

腹を切る 内臓がこぼれ出てくる
自分の内臓を見る役人
石に寄りかかりながら
石庭のなかを見渡す
見渡すことはできるが
自分の姿はけっして見えない
ただ
他の石に寄りかかっている自分の残像を
目にすることはできる
言葉を見る
言葉は思考そのものではない
思考のいくばくかを拾い上げてはいるが
すべてではない
腹を切る
内臓を見る
439田中宏輔:2008/07/07(月) 17:38:09
舞姫ーその5の3−

石庭の石
ひとつひとつが
異なる時間と場所と出来事を表わしているのと同様に
臓器のひとつひとつもまったく異なるものではあるが
それが一体となって人間の臓腑を形成している
砂の波が石と石を結びつけているのと同様に
臓器と臓器も結びついている
ひとつひとつの臓器が異なる機能を持つように
ひとつひとつの石も異なる精神作用を自我に及ぼすのであろう
ひとつひとつの言葉が自我に精神作用を及ぼすように
しかし
臓器同士の結びつきとは別に
すべての臓器に結びついているもの
すべての臓器を結びつけているものがある
血管だ
血だ
440田中宏輔:2008/07/07(月) 17:41:48
舞姫ーその5の4−

では 血管は 血は 時間ではない時間なのか 場所ではない場所なのか 出来事ではない出来事なのか
臓腑でできた血まみれの竜安寺の石庭がもとの白い石と 砂の波にもどる
では骨は? 皮膚は? いったい竜安寺の石庭のどこに骨があるのか? どこに皮膚があるのか?
骨は石庭の何なのか? 皮膚は石庭の何なのか?
言葉の骨と皮膚 言葉の臓腑と血
小人たちが 斬首された役人の首の前に走る
「無礼者!」
小人たちは刀の先で踊る
首を切り落とした介錯者の一括に みながかたまる
刀が小人たちの身体をかすめる
小人たちは美しい弧を描きながら 彼女のまぶたの上に舞いもどる
「見事じゃ!」
ノーベル文学賞を受賞した三島由紀夫が立ち上がって叫んだ
会場が一瞬の沈黙ののち 笑いに包まれる
時間ではない時間 場所ではない場所 出来事ではない出来事

441田中宏輔:2008/07/07(月) 17:44:06
舞姫ーその5の5−

小人たちが
観客たちの声援に応えて
ふたたび血まみれの壇上で
放屁のダンスを繰りひろげた

プペペポプペペペピ
プペペプピプペ
プププペプピ

おならがとまらない
小人たちの放屁のダンス

プペペポプペペペピ
プペペプピプペ
プププペプピ

おならがとまらない
むごい人生もおならにして

プペペポプペペペピ
プペペプピプペ
プププペプピ

プペペポプペペペピ
プペペプピプペ
プププペプピ
442田中宏輔:2008/07/07(月) 17:46:26
舞姫ーその6の1−

庭先に下ろした第一触手に
蟻が這い登る感触を思い出して楽しんでいる宇宙人

ドイツ語には現在形はあっても現在進行形がない
また過去形がなく現在完了形で過去を表わす

リゲル星人の言語には動詞は現在形しかない
しかも語形変化しないのだ
前後の文脈と、副詞に相当する語によって 時制が決まるのである

彼女は第一触手に
蟻が這い登る感触を思い出して楽しんでいる

その感触は、人間が思い出して味わう記憶の快楽と異なっている
まったくといってよいほどほとんど、 そのときの感触と同じ感触を再生させているのである

動詞に現在形しかないことと関連しているという分析がなされているが
リゲル星人の生理機能そのものがまだ謎が多く
リゲル星人はその情報をいっさい地球人にまだ教えていない
地球人側は先に地球人側のデータを渡してしまっている

第二次世界大戦で地球は日本・ドイツ・イタリアの枢軸国側が勝利している
南北に分断されているアメリカが統一化を望んでいる
統一されたあと、一気に枢軸国側から離れて独立しようという運動が盛んである

第一触手の先から出る緑の液体 それを口にして、精神感応する青年
ほとんど同化している 青年の高い精神感応能力
443田中宏輔:2008/07/07(月) 17:47:34
舞姫ーその6の2−

隠喩の石庭がさまざまな場所に現われる
隠喩の石庭がしきりに語りかけてくるのだ
石庭の岩の一つ一つが他のすべての岩を内に秘めているのだ
一つ一つの岩が自分以外の岩すべてを内に蔵しているのだ
ときに、ぼくは砂利となり、波となって岩に打ち寄せる
岩の肌に触れる
石庭の岩は、ぼくの思考を岩と砂利でいっぱいにする
岩の影が砂利の上に貼り付いている
それをこころの目がはがしてみる
いっさいの影のない石庭が展開する

「あの猫は自殺したのよ」
「母さん、猫が自殺などするわけがありませんよ」
「わたしは見たのよ。猫が自分から走っている車の前に跳び込むところを」
「そう見えただけですよ」
444田中宏輔:2008/07/07(月) 17:52:31
舞姫ーその6の3−

鳥の散水機 鳥である散水機 鳥であった散水機 鳥であろう散水機
鳥の散水機の電気技師 鳥であり散水機である電気技師 鳥であって散水機であった電気技師 鳥であろう散水機であろう電気技師
鳥の散水機の電気技師の植木鉢 鳥であり散水機であり電気技師である植木鉢 鳥であって散水機であって電気技師であった植木鉢
鳥であろう散水機であろう電気技師であろう植木鉢 鳥の散水機の電気技師の植木鉢のネクタイピン 鳥であり散水機であり電気技師であり植木鉢であるネクタイピン
鳥であって散水機であって電気技師であって植木鉢であったネクタイピン 鳥であろう散水機であろう電気技師であろう植木鉢であろうネクタイピン
鳥の散水機の電気技師の植木鉢のネクタイピンの微笑み 鳥であり散水機であり電気技師であり植木鉢でありネクタイピンである微笑み
鳥であった散水機であった電気技師であった植木鉢であったネクタイピン出会った微笑み
鳥であろう散水機であろう電気技師であろう植木鉢であろうネクタイピンであろう微笑み
鳥の散水機の電気技師の植木鉢のネクタイピンの微笑みのエスカレーター
鳥であり散水機であり電気技師であり植木鉢でありネクタイピンであり微笑みであるエスカレーター
鳥であって散水機であって電気技師であって植木鉢であってネクタイピンであって微笑みであったエスカレーター
鳥であろう散水機であろう電気技師であろう植木鉢であろうネクタイピンであろう微笑みであろうエスカレーター
鳥の散水機の電気技師の植木鉢のネクタイピンの微笑みのエスカレーターの瞑想
445田中宏輔:2008/07/07(月) 17:53:48
舞姫ー6の4−

鳥であり散水機であり電気技師であり植木鉢でありネクタイピンであり微笑みでありエスカレーターである瞑想
鳥であって散水機であって電気技師であって植木鉢であってネクタイピンであって微笑みであってエスカレーターであった瞑想
鳥であろう散水機であろう電気技師であろう植木鉢であろうネクタイピンであろう微笑みであろうエスカレーターであろう瞑想
鳥の散水機の電気技師の植木鉢のネクタイピンの微笑みのエスカレーターの瞑想の溜まり水
鳥であり散水機であり電気技師であり植木鉢でありネクタイピンであり微笑みでありエスカレーターであり瞑想である溜まり水
鳥であって散水機であって電気技師であって植木鉢であってネクタイピンであって微笑みであってエスカレーターであって瞑想であった溜まり水
鳥であろう散水機であろう電気技師であろう植木鉢であろうネクタイピンであろう微笑みであろうエスカレーターであろう瞑想であろう溜まり水
鳥の散水機の電気技師の植木鉢のネクタイピンの微笑みのエスカレーターの瞑想の溜まり水の肘掛け椅子
鳥であり散水機であり電気技師であり植木鉢でありネクタイピンであり微笑みでありエスカレーターであり瞑想であり溜まり水である肘掛け椅子
鳥であって散水機であって電気技師であって植木鉢であってネクタイピンであって微笑みであってエスカレーターであって瞑想であって溜まり水であった肘掛け椅子
鳥であろう散水機であろう電気技師であろう植木鉢であろうネクタイピンであろう微笑みであろうエスカレーターであろう瞑想であろう溜まり水であろう肘掛け椅子
446記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/07(月) 17:55:53
「舞姫」はもう終わりかな。感想書く。面白かった。
時間ではない時間であり 場所ではない場所であり 出来事ではない出来事である
とは、ゼロ時間のゼロ地点のゼロ現象のことであろうと思ったりした。
ことばの修辞はすごく上手なので、何か根本的な哲学的大転換を発想できたら傑作だった。
時間と場所と出来事の同時生起とは、四次元的に見た宇宙の生起ではないかと思った。
その辺りから、何か、アイデアをあみだせれないだろうか。
とんでもないでたらめでもよいからアイデアを。
447田中宏輔:2008/07/07(月) 17:58:02
舞姫ーその6の5−

リゲル星人の言葉では「の」で名詞をつなぐと、このように3つの時制のこのような文脈で解されるのがふつうであるが、
最後の名詞を強調するために、前置きに名詞を羅列する場合もあって その意味を解する場合には、状況をよく見極めなければならない

たとえば、場合によって、最後の「鳥の散水機の電気技師の植木鉢のネクタイピンの微笑みのエスカレーターの瞑想の溜まり水の肘掛け椅子」は、つぎのような意味になる
「鳥でもなく散水機でもなく電気技師でもなく植木鉢でもなくネクタイピンでもなく微笑みでもなくエスカレーターでもなく瞑想でもなく溜まり水でもない肘掛け椅子」
「鳥でもなく散水機でもなく電気技師でもなく植木鉢でもなくネクタイピンでもなく微笑みでもなくエスカレーターでもなく瞑想でもなく溜まり水でもなかった肘掛け椅子」
「鳥でもないであろう散水機でもないであろう電気技師でもないであろう植木鉢でもないであろうネクタイピンでもないであろう微笑みでもないであろうエスカレーターでもないであろう瞑想でもないであろう溜まり水でもないであろう肘掛け椅子」
それでも、やはり時制は3つなのだ リゲルの言葉に進行形はない
この3つの時制のなかに進行形の文意が含まれている
448田中宏輔:2008/07/07(月) 18:01:16
舞姫ーその6の6−

「なぜ切腹という儀式があるの?」
「あ、くわしくはわからない。だけど、ぼくたち人間の意識というのは 何か思いがけないこと、
日常に行なわれていることのほかに行なわれることを通じて 目覚めさせられる必要があるのだよ
つまり、非日常的な出来事を目の当たりにすることでショックを受けて
不活性化させられている精神のところどころを 活性化させる必要があるのだよ
おそらく、それじゃないかな。
そのショックというのが、日常の生活でうずもれていってしまう感覚を よみがえらせて、ぼくたちをしゃきっとさせるのだと思う
注意力を与えるというか
日常のさまざまなものに意識を向けてやることができる
そんな能力を培うんじゃないかな
切腹なんてものがあること自体が、ぼくたち人間のあいだでも
ずいぶんと衝撃を与えるものだったんだよ
いわんや、それを目の前で見るとなると、ずいぶんとショックなんじゃないかな
はじめて見る人間にはね
教養のある人間のなかにも切腹なんてナンセンスだという者がいるけど
切腹があるおかげで、身分の高低が維持されているのだと思うよ
役人階級って、むかしの武士階級でね 庶民に切腹は許されていないからね」
449田中宏輔:2008/07/07(月) 18:09:59
舞姫ーその6の7−

小鳥の映画館の薬莢の古新聞の電信柱の蜜蜂の肘掛け椅子のビニールの牛の藁屑の理髪店の新幹線のレモンの俯瞰の花粉の電気椅子の雲のいまここのいつかどこかの
かつてそこの自我の麦畑の船舶のカンガルーのハンカチの襞の草の等級の新約聖書の自明の連続のオフィーリアの多弁の乾電池の朝食の時計の
トランプの絆創膏のバインダー・ノートの孔子の老子の荘子の散文の韻文の衣装のルーズ・リーフのコンセントの歌留多の帽子の絵空事の杜甫の
陶淵明の描写の退屈の旧約聖書の情念の壁の表現のタイルのタオルの葱の小松菜の逐電のレコードのハミガキチューブの古典の技巧の細胞の組織の飛び領土の直線の
亡霊の故郷の世界のコーランの原始仏典のチャートの汗の株式相場の計算用紙の意味の構造の漢字の経験の翻訳の瞬間の全体の官能の食料品店の
心臓病の収集の薬玉の土曜日の寝台の手袋の顔の曲がり角の森羅万象の金魚の石榴の自転車の蝙蝠の幸福の鉄亜鈴の約束の珊瑚の嵐のつぐみの左手の教理問答の
彫像のゼニ苔のウミガメの無関心の修練の献血の飛行機のつぼみの砂肝の道標の犯罪者の群青の異端者のチョコレートの意識の知覚の因果関係の非能率の
膝頭の壺の光の風景の事物の言葉の音の葉脈の噴水の羽毛の噴水の間違いの存続の鼓動の樹冠の犬の亀裂の娯楽の技法の臨界の叫びの螺旋の出来物の表面の
剃刀の括約筋の潰瘍の内部の露台の鱗の声のモザイクの交接の繊毛の接触の屏風の喉の階段のイメージの現実の波の肉体の焦点の麻薬の足音の旋回の
儀式の背骨のゲップの名残のジャイロスコープの出産の弾丸の迷信の凧の深淵の排泄の漆黒の禿の勝利の偏光のクラゲの恥辱の弾丸の象牙の皮膚の響きの切り株の
人混みの廃墟の高木の茂みの鈴の模様の繁殖の移植の抱擁の恍惚の布地の汚染の睦言の大衆の蔓の火打ち石の海鳴りの緊張の気泡の道の根の演技の橇の
憂鬱の記録の噴水の壁掛けの緊張の眉毛の習慣の屈折の桟橋の平面の棍棒の瘡蓋の乳房の眉毛の真珠の刷毛の挨拶の信頼の解説の休息の襲撃の陰毛の物語の
誤解の躊躇いの雑草の炎の物腰の強さの弱さの根の結晶の魂の寄生虫の万華鏡の曖昧の覇者の

450田中宏輔:2008/07/07(月) 18:12:24
舞姫ーその6の8−

彼女はぼくの魂のなかの岩に語りかけてきた 砂利の波がうごめいている
ぼくの魂のなかの岩が 波の形を見つめている
岩からしみ出たぼくが その岩に寄りかかりながら
その岩の視点で 波の形を見つめている
ぼくのゴーストだ
彼女の魂が砂の波を激しく波立たせていた

岩も砂利もあらかじめ存在していた ゴーストのぼくの視線と 彼女の砂利を動かす力は それらが存在するからこそ現われるものなのではないか
あるいは ぼくの魂の目と 彼女の魂の働きが ぼくの魂のなかの岩と砂利を存在させているのかもしれない
二人の魂が いまこの瞬間の時間であり場所であり出来事である魂の石庭を形成しているのか
いまこの瞬間の時間であり場所であり出来事である魂の石庭が
二人の魂を形成しているのか
451田中宏輔:2008/07/07(月) 18:15:39
舞姫ーその6の9−

リゲル星では個人の罪という概念が 地球人のいうところのものと著しく異なっている
日本人のものというだけじゃない
これは二重の意味で著しく異なっているのである

第一に、リゲル星人のいうところの個人と
地球人の個人とでは意味内容が異なる

第二に、リゲル星人には
罪を個人のものとする習慣がないのである

リゲル星人は、責任を個人に帰することがないのである
なぜなら、彼もしくは彼女をつくるのが彼もしくは彼女本人だけではなくて
彼や彼女をとりまくさまざまな状況が彼や彼女をつくりだしたのであるから
責任を個人に帰することには合理性がない、という考え方である

これは一部の地球人には受け入れられる考え方であるが
日本やドイツやイタリアおよび第二次世界大戦後
日本やドイツやイタリアによって占領された多くの国々では
受け入れない考え方である、少なくとも法律的には

石庭の岩のひとつが星を夜空に吐き出した
すると、他の岩たちもつぎつぎと星を吐き出していった
夜空は、岩が吐き出した星たちでいっぱいになった
砂の波に月の光が反射してきらきら輝いている
岩端も月の光が反射して輝いている
すべてが調和した夜の石庭
誰ひとりの観察者の視線もない石庭
                          
452田中宏輔:2008/07/07(月) 18:22:51
舞姫ーその6の10−

夜空に突然巨大な手が現われて
星々を払いのけ
最後に月をむしりとると
真の暗闇が石庭に訪れる

リゲル星人は2種類の伝達手段を持っている
1つは近くにいる個体間で連絡し合うもの
もう1つはどんなに離れた個体間でも瞬時に連絡し合えるもの

主人公は自分の声を
舞姫の声にしている
舞姫の発するリゲル語を
こなれた日本語にする翻訳機械は
まだ開発されておらず
主人公の詩人の青年が耳にするのは
あくまでもリゲル語の直訳である
舞姫の声を自分の声で聞くこと
それは主人公の美学であり
母親が発狂する要因の1つともなっている

そしてアメリカの過激派がリゲル星人を人質にして立てこもる事件を
主人公がテレビで見る

                              第一部・完
453記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/07(月) 18:27:39
すまぬ。先走った感想を書いてしまった。
全体としては面白いのだが、途中くどすぎて、実は読み飛ばしている。
やりすぎであると思う。
これは前の感想でのべたゼロの時間のゼロの場所のゼロの出来事の物語などではなく、
量子力学的な含みをもった世界を描いているのだと読みとった。
それは見事に成功していると思う。ただし、>>445>>449はさすがにくどすぎる。
454田中宏輔:2008/07/07(月) 18:50:34
446、453 記憶喪失した男さま


さっそく、お読みくださって、ご感想をくださり、ほんとうにありがとうございました。
はやく第二部を書き込めますよう、がんばります。
455田中宏輔:2008/07/07(月) 19:48:14
舞姫ーその6の8の補遺1ー

じっさいには鳴ってもいない音楽を 頭のなかであたかも再生しているかのごとく 聴いているように感じることがあるが
この音楽というものはそもそも自然に存在するものではない
人間がつくりだしたものだ 言葉もそうだ そして自然に存在するものも
人間はそれぞれの事物や事象に言葉を与えて呼んでいる
まだ言葉を与えていない事物や事象もあるが そのうちそれらにもいずれ言葉が与えられるだろう
なかなか言葉が与えられない事物や事象があるかもしれないが
おそらくそれらは未知なる事物や事象であろうが 存在が確認されれば いずれそれらにも言葉が与えられるであろう
存在が確認されても
いつまでも言葉が与えられない事物や事象もあるかもしれないが
それらはいつまでも言葉が与えられないほうが文脈形成上 都合がいいときであろう
それについては別のところで考察することにする
ふだんの意識のなかでは 異なる個々の事物や事象に同じ言葉を与えて 文脈を形成し意味内容を捉えるのであるが
言葉を与えた対象について考えてみると 与えられた言葉を精神が認識したとたん
それは現実の事物や事象と異なるものとなるのである
もちろん言葉は個々の事物や事象と一対一で対応しているものではなくて
一対多または多対多のあくまでもシンボルや象徴としての対応をしているのであって
そうした言葉によって 言葉と事物や事象との関わり合い方によって
人間は精神活動をし、認識をしているのである
したがって人間の意識や精神は人間がつくりだしたものでできているのだとも言える
わたしたちがつくるもの わたしたちから生まれたものが
またわたしたちをつくる わたしたちを生むというわけである
456田中宏輔:2008/07/07(月) 19:48:50
舞姫ーその6の8の補遺2−

導線に電流が流れると磁界が生じるように
何か概念想起のきっかけになるものがあると
ほとんどその瞬間に自我が生じるのではないだろうか
導線の向きが変われば磁界の向きも変わる
同じ導線でも流れる電流の多少で磁界の強さが変わる

これはいつもぼくがつまずくところだ
概念を想起させるものが外界からなんらかの情報の形で入ってきてから 概念を形成する自我が生じるのか
それらの概念を想起させる自我があらかじめ精神領域に存在していたのか

磁石の一方の極を鉄の針にこすり付けると その針が磁力または磁気を帯びるが
このことは潜在自我の存在を示唆している
457田中宏輔:2008/07/07(月) 19:50:39
すいません。この2つの文章を「舞姫ーその6の9−」の直前に
書き込み損じておりました。
458田中宏輔:2008/07/08(火) 13:37:36
●捜さないでください●現実は失敗だらけで●芸術も失敗だらけ●ちゃんと生
きていく自身がありません●ハー●コリャコリャ●突然●自由なんだよって言
われたってねえ●恋人没収●だども●おらには●現実がいっぱいあるさ●芸術
だっていっぱいあるわさ●街じゅういたるところから●猿のおもちゃたちが●
姿を現わす●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●シンバルを打ち鳴ら
しながら●猿のおもちゃたちが●ぼくのほうに向かってやってくる●パシャン
●パシャン●パシャン●パシャン●脱穀の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)
の令嬢夫人たちが●足をあげて●足をさげて●オイチニ●オイチニ●黄色いス
カートをひるがえし●オイチニ●オイチニ●パシャン●パシャン●パシャン●
パシャン●脱穀の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の令嬢夫人たちの黄色い
スカートがまくれあがり●マリリン・モンローのスカートもまくれあがり●世
界じゅうの婦女子たちのスカートもまくれあがる●パシャン●パシャン●パシ
ャン●パシャン●自転車は倒れ●バイクも倒れ●立て看板も倒れ●歩行者たち
も倒れ●工事現場の建設作業員たちも倒れ●ぼくも道の上にへたり込む●パシ
ャン●パシャン●パシャン●パシャン●吹けよ●風●呼べよ●嵐●沸騰する二
酸化炭素(カーボン・ダイオクサイド)●真っ直ぐな肩よ●来い!

(これがタイトルです)
459田中宏輔:2008/07/08(火) 13:43:54
●東京の●あるゲイ・バーでの話●友だちからの又聞き●隣に腰掛けてた三
木のり平そっくりの男のひとが●ぼくの友だちに向かって●こんなこと言っ
たんだって●「あまりこっちを見ないで」●「恐れなくてもいいのよ」●
「話しかけてくださってもいいのよ」●「でも●お話って●センスの問題で
しょ」●「この方がリクエストしてくださるから●赤とんぼ●入れてくだ
さるかしら」●もちろん●ぼくの友だちは●そのひととは●一言も口をきいて
ません●このエピソード●なんべん思い出しても笑けてしまいます●エリカも
笑けるわ♪●記憶の泡が●ぷかぷか浮いている●記憶の泡が●ぷかぷか浮いて
いる●大きな記憶の泡たちが●ぷかぷか浮いている●小さな記憶の泡たちが●
ぷかぷか浮いている●見ていると●小さな記憶の泡たちは●つぎつぎ●ぷち
ぷちはじけて●隣に浮かんでる大きな記憶の泡と合わさって●ますます
460田中宏輔:2008/07/08(火) 13:45:19
大きな記憶の泡となって●ぷかぷかと浮いている●ぷかぷかと浮いている●
ぼくは●棒の先で●そいつをつつく●そしたら●そいつが●パチンッとはじけ
て●ぼくの持っている棒を●引っ張って●引っ張られたぼくは●落っこちて
●ぼくが●ぷかぷか浮いている●ぼくが●ぷかぷか浮いている●大きなぼくの
泡が●ぷかぷか浮いている●小さなぼくの泡が●ぷかぷか浮いている●見て
いると●小さなぼくの泡は●つぎつぎ●ぷちぷちはじけて●隣に浮かんでる
大きなぼくの泡と合わさって●ますます大きなぼくの泡となって●ぷかぷかと
浮いている●ぷかぷかと浮いている●記憶が●棒の先で●大きなぼくの泡を
つつく●そしたら●ぼくは●パチンッとはじけて●えさをやらないでください
●公園には●そんな立て看板がしてあったのだけれど●ぼくは●いつものように
●えさをやりに公園に行った●公園には●小さなぼくがたくさんいた●
くるってる●くるってるって●鳩のように鳴きながら●砂をひっかきまわして
●地面をくしゃくしゃにしていた●ぼくは●ぼくの肉をなるべく小さくひき
ちぎって●投げてやった●すると●たくさんの小さなぼくは●くちばしを
あけて●受けとめると●ぱくぱく●ぱくぱく●ぼくを食べた●ぼくは●ぼくの
肉をひきちぎっては投げ●ひきちぎっては投げてやった●たくさんの小さな
ぼくは●ぱくぱく●ぱくぱく●ぼくを食べた●たくさん
461田中宏輔:2008/07/08(火) 13:46:43
の小さなぼくは●もうぼくの身体に●肉がぜんぜんついてないのを見ると●
くるってる●くるってるって●鳩のように鳴きながら●飛び去っていった
●ぼくは●自分の胸の奥の奥の奥の●骨にこびりついた●ちびっと残った
肉のかけらを●骨だけになった指先で●つまんで食べた●こんな詩の一節
を●むかし書いたことがあって●公園のベンチに坐りながら●持ってきた
本を読んでいた●ひと休みして顔を上げると●ひとつ置いて●横に並んだ
ベンチの上に●疲れた様子の猫が●一匹すわっていた●猫が首をまわして
●ぼくのほうを見て●にやりと笑うので●ぼくは●猫の隣にいって●猫の
肩をもんでやった●猫はうれしそうに●くすくす笑って●公園のブランコ
のあるほうを眺めていた●もういいよ●という合図のつもりなのか●猫
は●ぼくの手の甲をひとかきすると●にやりと笑って●走り去っていった
●また自分のいたベンチにもどって●しばらく本を読んでいると●前の
ほうから●子供たちの声がするので●向かい側のベンチのほうに目をやった
●4人の小さな子供たちに囲まれて●ひとりのおじいさんが●片手をすこし
あげていた●指を伸ばした右の手の先の地面の上に●たくさんの枯れ葉が
円を描いて●くるくると回っていた●やがて●枯れ葉は●おじいさんの腕の
まわりを●螺旋を描いて●くるくると回りながら●まとわりついていき●
おじいさんの身体全体を
462田中宏輔:2008/07/08(火) 13:51:25
すっぽりと包み込んでしまった●そのくるくると螺旋を描いて回る枯れ葉を
見て●子供たちがさらに声をあげた●おじいさんが左手をすこしあげると●
こんどは●全身を包んでくるくると回っていた枯れ葉が●これまた螺旋を
描きながら●左腕を伝って●地面の上に落ちていき●地面の上でも●しばらく
円を描いて●子供たちの足元にカサカサあたって●すると●子供たちは●
いっそう大きな声でさわいで●おじいちゃんに声をかけた●すてきなおじい
ちゃん●大好きなおじいちゃん●カッチョイイおじいちゃん●って●すると
●おじいさんは●すごく喜んで●けたけた笑って●軽快にスキップしながら●
公園から去っていった●でも●子供たちは●おじいさんよりすごくって●手を
あげると●子供たちのまわりで●そこらじゅうのものが●ぐるぐる回りだした
●そばの大人たちは悲鳴をあげて舞い上がり●自転車は舞い上がり●立て
看板は舞い上がり●植わっていた樹木は根っこごと●ずぼっと抜けて舞い
上がり●ブランコは鎖からちぎれ●シーソーの板は軸からはずれ●鉄棒さえ
支柱ごと地面から抜けて舞い上がり●ぐるぐるぐるぐる回りだした●ぼくの
からだも宙に舞って●ぐるぐる回りだした●世界が●子供たちのまわりで●
ぐるぐるぐるぐる回った●突然●子供たちが手を下ろすと●みんな●どすん
●どすん●と落っこちて●ぼくは手に持っていた本がなくなっていたから
463田中宏輔:2008/07/08(火) 13:52:46
●そのあと公園のなかを●はぐれた本を探して●ずいぶんと長い間かかって
探さなければならなかった●イエイ!●仕事帰りに寄った●烏丸のジュンク
堂で●ぼくの作品が載ってる号でも見ようと思って●國文學の最新号とバック
ナンバーが置いてある棚を見たら●ぼくの原稿が載ってるはずの号がないので
●店員さんに訊くと●発売日が20日から27日に変更になっていた●ううう
ううん●そういえば●去年のユリイカの増刊号も●ぼくの書いてる号の発売日
が延期されたぞ●ま●偶然だと思うけど●しかし●きょう●店員さんが見せて
くれた書店向けのその27日発売の増刊号の予告のチラシ●執筆者の数が●
いつもの号の倍近く●昨年のユリイカの増刊号のタルホ特集もものすごく
厚かったけど●今回の國文學の増刊号も厚そう●ああ●そう●きょう●新しい
詩集のゲラの校正をしていて●ぼくが26歳のときのことを書いてる
ところがあって●そのころ知り合った20歳の青年のことを●思い出して
いて●ああ●ヘッセなら●これを存在の秘密とでも言うんだろうなあ●と
思った●彼は福岡出身で●高校を出てすぐ●18才から京都で●昼間は
ビリヤード店で●夜はスナックでアルバイトをしてると言っていた●
ぼくが下鴨に住んでたころね●ぼくが住んでたワンルーム・マンション
の向かい側に●そのビリヤード店があって●彼が出てくるところで
●ぼくと目が合って
464田中宏輔:2008/07/08(火) 13:54:45
●で●ぼくのほうから声をかけて●そのあとちょこっとしゃべって●それ
から口をきくようになったのだけれど●3回目か●4回目に会ってしゃ
べったときかな●別れ際に●「こんどゆっくり男同士で話しましょう」と
言われて●びっくりして●いままでも男同士だったし●ええっ?●という
感じで●またそのときの彼の目つきがとてつもなく真剣だったので●それ
から●ぼくは彼を避けたのだった●ぼくは●彼はふつうの男の子だと
思っていたから●ふつうの男の子とはふつうに接しないといけない●と
●ぼくは思っていたので●そのときのぼくは●ね●ま●いまでもそうだけ
どさ●ぼくは自分の大事な感情や気持ちから●逃げることがよくあって
●いまから思うと●大切なひとを●大切な時間を●たくさんすり抜け
させてしまったなあと思う●ああ●ヘッセなら●これを存在の秘密と
でも言うんだろうなあって●何度も思った●校正をしていた喫茶店でね●
高瀬川を見下ろしながら●「ソワレ」っていう有名な喫茶店の二階でね
●で●ぼくは●ほんとうに●何人もの●もしかしたら深い付き合いに
なってたかもしれないひとたちを避けてきたのだった●いま46歳で
●もう●愛する苦しさも●愛されない苦しさも●若いときほどでは
ないのだけれど●記憶はいつまでも自分を苦しめる●まあ●苦しむのが
好きなんだろうね●ぼくは●笑●人生がすぐに過ぎていくものである
●ということを●若いときのぼくは知らなかった
465田中宏輔:2008/07/08(火) 13:57:25
●いまのぼくは知っていて●古い記憶に苦しめられつつも●思い出しては●
ああ●あのとき●こうしといたらよかったのになあとか●ああしといたら
よかったのになあとか●考えたりして●おいしい時間を過ごしてるっていう
●ああ●ほんまにオジンやな●チャン●チャン●で●その青年とは●半年
くらい経ってから●高野のプールで再会して●いっしょにソフトドリンクを
飲んだのだけれど●でも●そのとき●彼は彼の友だちと来ていて●その
友だちに●ぼくのことを説明しているときに●その友だちが●きつい目つきで
●ぼくを見つめていたので●それから●ぼくはあまりしゃべらず●ただ●
彼の顔と●水泳を中学から高校までしていたという●すこしぽちゃっとした
身体つきの●彼の身体を眺めながら●夏のきつい日差しに●身体を真っ黒に
焼いていた●というのはちょっと嘘で●彼の股間を●青いビキニの布地を
通して●横にストライプの細い線が二本はいった●青いビキニの布地を
通して●もっこりと浮かび上がった彼のチンポコの形を●ジーパンのとき
とは違って●はっきりうつった彼のチンポコの形を●じっと眺めてた●
ぼくは彼の勃起したチンポコをくわえたかった●ぼくは彼の勃起した
チンポコをくわえたかった●たぶん●彼の体型によく似た●太くて短い
チンポコ●ね●あ●20代後半まで●ぼくは●夏は真っ黒に日焼けした
青年だった
466田中宏輔:2008/07/08(火) 14:29:22
●若いときの写真は●ぼくの詩集の『Forest』にのっけてるので●カヴァーを
はずすと本体の表紙に●ぼくの若いときの写真がたくさんついてるので●見る
機会があれば●見てちょうだいね●チャン●チャン●じゃないや●もうちょっと
考えないとだめだね●いまでも苦しんでるんだからね●若いときの苦しみは
●自分の気持ちだけを考えての苦しみで●それで強烈に苦しんでいたのね●
相手の気持ちを考えもせずに●相手の苦しみをわかろうともせずにね●でも
●いまの苦しみは●相手の苦しみをも感じとりながらの苦しみで●けっして
ひとりよがりの苦しみではないから●若いときの苦しみとは違っていて●
より苦しい部分もあるんだけど●深いけれど●強烈ではなくなったわけで
●それは意義のある苦しみだとも言えるわけでね●つきつめて考えれば
ね●未知ならぬ未知●既知ならぬ既知●オキチならぬオキチ●未知なる
未知●既知なる既知●オキチなるオキチ●オッ●キチ●洗剤自我●なんか
いいっしょ?●洗剤自我●ゴシゴシ●キュッって●あちゃ●ghost into
tears●もちろん●burst into tears●のパスティーシュ●ね●涙に
幽霊する●と訳する●ゴーストは翻訳機械でもある●ゴーストは
仮定の存在であるにもかかわらず●近づいてくるときにもわかるし●
離れていくときにもわかる●そばにいてじっとしているときにも●その
気配を感じとることができるのだ●Wake up,the ghost.
467田中宏輔:2008/07/08(火) 14:30:44
●たくさんのメモを見渡していると●ゴーストの設定が●はじめに設定して
いた立ち位置と●多少変わっていることに気づかせられる●そのずれもまた
楽しい●ルンル●ルンル●ル〜●日々●これ●口実●ゴーストと集合論●
集合論といっても●公理的集合論のほうではなくて●素朴集合論のほうだが
●ゴーストと集合論を●空集合を梃子として●照応させることができた●
どの集合も空集合を部分集合とするが●それらは●ただひとつのまったく
同じ空集合である●ファイ●Φ●ファイ●したがって●分裂機械の作品の
なかで●主人公の青年が詩人と交わした会話を思い出して書いたところで
●詩人が●ゴーストを複数形ではなく●単数形として扱っていたことも●
論理的に十全たる整合性があって●数年前に●dioに●数学的な記述を用いて
●集合論と自我論を対比させて●論考を書いたことがあったが●その論考の
発展形として●分裂機械19の散文詩を書くことができた●ファイ●Φ●
ファイ●The Gates of Delirium●は●ぼくの作品のなかでも●とびきり
複雑な構成の散文詩にするつもりで●井原秀治さんに捧げて●The Wasteless
Land.IV●として書肆山田から詩集として上梓する予定●3●4年後にね●
さっき●ノヴァーリスをノートしていて●はっ●として●グッ●なのじゃ
●ふるいじゃろう●笑っておくれ
468田中宏輔:2008/07/08(火) 14:32:37
●そだ●シェイクスピアと亡霊って●すごい深いつながりがあって●『ハム
レット』において●亡き父親の霊である亡霊の言葉によって●ハムレットの
人格が一変するように●亡霊が人間に影響を与えるということは●重々明白で
●『リチャード三世』の第五幕・第三場に●「待て!●何だ●夢か●ああ●
臆病な良心め●どこまでおれを苦しめる!」●というセリフがあって●夢の
なかで亡霊に責め立てられるのも●じつは●自分の良心が自分自身を咎める
からであって●同じく●第五幕・第三場に●「影が●ゆうべ●このリチャード
の魂をふるえ上がらせたのだ」●というセリフがあって●影=亡霊●とする
記述が見られるんだけど●『リア王』のセリフには●「わしはだれじゃ?」
●というのがあって●それに答えて●「リアの影」と言うのだけれど●夢と
影●自我とゴースト●この4つのものが●シェイクスピアのなかで●ぼくの
なかで●ぐるぐる回っている●ファイ●Φ●ファイ●自我=夢●夢=影●
影=亡霊●亡霊=自我●この数日●シェイクスピアを読み直してよかったな
●と●つくづく思う●以前に●ミクシィの日記にも書いた●『あらし』のなか
にある●「わたしたちは夢と同じものでつくられている」●といったセリフや
●『ハムレット』のなかにある●第一幕・第三場の●「影?●そうとも●
みんな影法師さ●一時の気まぐれだ」●といったセリフや●同じく●第二幕・
第二場の●「夢自体●影にすぎない」●といったセリフに表わされるように
469田中宏輔:2008/07/08(火) 14:35:25
●シェイクスピアの戯曲には●よく●ぼくたちの実体が●ゴーストとちっとも
違わないってことが書かれてあるような気がする●うううううん●やっぱり●
ぼくは●霊●ゴーストなんだ●それで●霊は零で●ぼくはゼロで●なんもなし
だったのか●今夜は●『リア王』を再読する予定●第一幕・第一場のセリフ●
「何もないところからは●何も生まれない」●について考えたくて●あ●もう
そろそろ寝る時間かな●ナボナ●ロヒプノール●ピーゼットシー●ワイパック
スを一錠ずつ取り出して●手のひらの上にのせて●パクッ●それから水を
ゴクゴク●で●眠るまでの一時間ほどのあいだ●シェイクスピイイイイ
イイイイイイア●と●エリオットのまね●笑●できることなら●生きている
あいだに●顔を見たひとみんな●声を聞いたひとみんな●そばにいた
ひとみんな●こころにとどめておきたい●とかなんとか●霊は●
ゴーストは●蜘蛛のように●くるくると巻き取るのだ●時間を●空間を
●出来事を●くるくると巻き取っていくのだ●そのヴィジョンが
くっきりと目に浮かぶ●愛によって●理解しようとする意図によって
●糸によって●時間を●空間を●出来事を●くるくると巻き取って
いくのだ●ひゃひゃひゃ●意図は●糸なのね●ひゃひゃひゃひゃひゃ
●ワードの機能は●無意識の意図を●糸を●つむぎだすのだね
470田中宏輔:2008/07/08(火) 14:37:38
●メモに●「表現とは認識である」とあった●日付はない●ひと月ほど前の
ものだろうか●わたしが知らないことを●わたしの書いた言葉が知っている●
ということがある●しかも●よくあることなのだ●それゆえ●よくよく吟味
しなければならない●わたしの言葉が●認識を先取りして●時間と空間と
出来事を●くるくると巻き取っていくのだ●「表現とは認識である」●
この短いフレーズが気に入っている●発注リストという言葉を読み間違えて
●発狂リストと読んでしまった●お上品発狂●おせじ発狂●携帯電話発狂●
注文発狂●匍匐前進発狂●キーボード発狂●高層ビル発狂●神ヒコウキ発狂
●歯磨き発狂●洗顔発狂●小銭発狂●ティッシュ発狂●ノート発狂●鉛筆発狂
●口紅発狂●カレンダー発狂●ときどき駅のホームや道端なんかで●わけ
わからんこと言うてるひとがいるけど●手話で発狂を表わしてもいいと思う
●オフィーリアの発狂を●手話で表わしたらどんなんなるんやろうか●
きれいな手の舞いになるんやろうか●おすもうさんも発狂●ハッキョー
●のこった●のこった●てね●後味すっきり●発狂も●やっぱ後味よね●
ええ●ええ●それでも●ぼくにはまだ●虫の言葉はわかりません●あたり
まえだけど●あたりまえのことも書いておきたいのだ●沖縄では塩を
コップの半分ほども飲むと●蟻の言葉がわかるという言い伝えがある
んだけど●死んじゃうんじゃないの●塩の致死量って●どれくらいか
忘れたけど●むかし●京都の進学高校で
471田中宏輔:2008/07/08(火) 14:39:15
●運動会の日に●ある競技でコップ一杯の塩を飲ませられて●生徒が何人か
死にかけたっていう話を聞いたことがある●その場で倒れて救急車で病院に
運ばれたらしいけど●朝●通勤の途中に寄った本屋さんで●シェイクスピア
の『あらし』をちらりと読んでたら●「ああ●人間てすばらしい」という
セリフがあって●人間手●すばらしい●で●違うページをめくったら●
ちんちんかもかも●ってセリフがあって●あれ●こんなセリフあったん
やって思って●帰ってきてから●しばらく●ちんちんかもかもって●
そういえば●むかし読んだことあって●笑ったかなあって●美しい
●オフィーリアの●溺れた手の舞いが●スタージョンの●ビアンカの
手を思い出させて●ええと●いまのアメリカの大統領●名前忘れちゃった
●あ●ブッシュね●あのひと●完全にいかれちゃってるよね●戦争
起こして●ゴルフして●あんなにうれしそうな笑顔ができるんだもんね
●戦争が好きなひとの笑顔って●こわいにゃ●腹筋ボコボコのカニ●
毎日ボコボコ●ボコボコ●爆撃してるのね●あ●で●手話発狂●そう
そう●そだった●手で●ぐにぐにしてるひとがいたら●それは手話
発狂なんやって●そだった●『ハムレット』のなかで●オフィーリアが
発狂して●川辺で歌い踊りながら●川に落ちて死んだ●と
472田中宏輔:2008/07/08(火) 14:42:16
●告げるシーンがあって●もちろん●美しい声で歌を歌いながら●若い
娘らしく可憐に踊りながら●川に落ちるんやろうけど●どんなんやったん
やろうかって●きれいな手の舞いやったんやろうかって●手に目が●
手に目が●たたんた●たん●たたんた●たん●た〜●らら〜●軽度から
重度まで●いろいろな症状の発狂リスト●程度の違いは多々●多々●
たたんた●たん●たたんた●たん●た〜●らら〜●で●ぼくたちは
●思い出でできている●それは●けっして●だれにも●うばわれることの
ない●ときどきノイローゼの仮面ライダー●キキーって●ときどき
ショッカーになる「●あんた●仮面ライダーなんやから●悪モンの
ショッカーになったらあかんがな」●「変身願望があるんです」●
「正義の味方なんやから●そんな願望持ったら●あかんがな」●
「そやけど●どうしても●ときどきショッカー隊員になりたいんです」
●「病気やな」●「ただの変身願望なんです」●「病気だよ」●
「キキー!」●自分の感情のなかで●どれが本物なのか●本物でないのか
●そんなことは●わかりはしない●そう言うと●まるで覚悟を決めた
人身御供のように●わたしは●その場に身を沈めたのであった●
百億の嘘と千億のもしも●きょう●『The Wasteless Land.III』の校正を
●仕事場の昼休みにしていて●「ぶつぶつとつぶやいていた」
473田中宏輔:2008/07/08(火) 14:44:27
●と書いてあったのを●[putsuputsu]と[putsu]やいていた●と発音して●
これっていいなって思ったり●[tsuputsupu]と[tsupu]やくでもいいかなって
●思ったりしていた●市場の仕事って●夜明け前からあって●って言葉を●
昼過ぎに職場で耳にして●ああ●何年前だったろう●十年くらい前かな
●ノブユキに似た青年が●ぼくのこと●「タイプですよ」って●「付き
合いたい」って言ってくれたのは●でも●そのとき●ぼくには●タカシ
っていう恋人がいて●ノブユキに似た彼には何も言えなかったのだけれど
●彼は●市場で働いてるとか言ってた●「朝●はやいんですよ●夜中の
2時くらいには起きて」●だったかな●だから●会えるとしても●月に
一回ぐらいしか●と言われて●ぼくには●壊れかけの●関係の●恋人が
いて●壊れかけでも●恋人だったから●で●彼には●ごめんねって言って
●梅田のゲイ・ポルノの映画館で●東梅田ローズっていったかな●彼と
いっしょに●トイレの大のほうに入って●ぼくたちは抱き合い●キスをして
●彼のチンポコを●ぼくはくわえて●彼のアヌスに指を入れて●ぼくは彼の
チンポコをくわえながらこすって●彼は目をほそめて●あえぎながら●
ぼくの口のなかでいって●彼は目をほそめて●あえぎながら●ぼくの口の
なかでいって●アヌスがきゅって締まって●ぼくの指がきゅって締め
つけられて●ああ●ノブユキ●ほんとに似てたよ●きみにうりふたつ
●そっくりだったよ●もしも●あのとき●もしも●あのとき●もしも
●あのとき●ぼくが付き合おうかって●そんな返事をしてたらって●
そんな●もしも●もしもが●百億も●千億もあって
474田中宏輔:2008/07/08(火) 15:18:09
●ぼくの頭のなかで●[tsuputsupu]と[tsupu]やいている●つぷつぷとつぷ
やいている●[tsuputsupu]と[tsupu]やいている●つぷつぷとつぷやいている
●ぼくたちは●百億の嘘と●千億のもしもでできている●ぼくたちは●
もしも●もしもでいっぱいだ●ぼくは何がしたかったんだろう●ちゃんと
愛しただろうか●ぜんぜん自身がない●百億の嘘と千億のもしもを抱えて
●ぼくは●[tsuputsupu]と[tsupu]やいている●つぷつぷとつぷやいて
いる●つぷつぷと●通報!●通報!●蘇生につぐ蘇生で●前日の受難に
つぐ受難から●凍結地雷という兵器を想像した●踏むと凍結するという
もの●きのう●dioのメンバーで●綾小路くんという●まだ京都大学の
一回生の男の子がいて●その子が●この夏●哲学書をたくさん読んでいた
らしく●「ぼくって●まだ不幸を知らないんです●これで哲学を理解できる
でしょうか」●って訊いてきた●「不幸なんて●どこにでもあるやんか●
ちょっとしたことでも●不幸の種になるんやで」●って言ってあげた
●いや●むしろちょっとしたことやからこそ●不幸の種になるといっても
よい●そうやな●漫才師の「麒麟」っていうコンビの●片割れが●むかし
●公園で暮らしたことがあるって●そんなことを書いた本があって
●売れているらしくって●このあいだの日曜日に会った友だちが
475田中宏輔:2008/07/08(火) 15:19:41
●「今●本屋で探しても●ないくらいやで」●とのこと●ほら●他人の不幸も
●そこらじゅうに落ちてるやんか●でも●赤ちゃんがいてると●不幸が●
どこかよそに行ってしまうんやろうなあ●アジアやアフリカの貧しい国の
子供たちの顔って●輝いてるもんなあ●アジア●アフリカかあ●行ったこと
ないけど●写真見てたら●そんな気がするなあ●おいらのこの感想も浅いん
やろなあ●現実なんて知らんもんなあ●でも●公園で暮らしてた●っていう
エピソードは●レイナルド・アレナスを思い起こさせる●レイナルド・
アレナス●『夜になる前に』という映画や●そのタイトルの自伝で有名な
作家●彼の尋常でない●男の漁り方は●必見!●必読!●そういえば●
ラテン・アメリカの作家の作品には●ゲイの発展場とか●よく出てくるけど
●女性にも理解できるんやろうか●まだ訊いたことないけど●また●訊ける
ようなことちゃうけど●笑●男やったら●ゲイでなくてもわかるような気が
するけど●ちゃうかなあ●どやろか●笑●道徳とは技術である●多くの人間が
道徳につまずく●あるいは●つまずくのを怖れる●道徳のくびきを逃れようと
する者は多いが●逃れ切ることができる者は少ない●道徳はまったき他人が
つくるものではない●自分のこころのなかの他人がつくるものである
476田中宏輔:2008/07/08(火) 15:21:14
●いわば●自分のこころに振り回されているのである●パピプペポポ詩って●
タイトルにしようかな●うんこの本をきのう買ったから●うんこのことを書く
にょ●『うんことトイレの考現学』っちゅう本だにょ●うんこの話も奥が深い
んだにょ●しかし●ひかし●ひかひ●ひひひ●そんじょそこらにあるうんこの
詩を書くにょ●さわったら●うんこになる詩だにょ●嗅いだら●うんこの臭い
がするにょ●ぼくは●そんな滋賀●柿●鯛●にょ●阿部さん●黒丸って●それ
ひとつだけでも●そうとう美しいですものね●で●砲丸が空から落ちてくる
ように●黒丸でページを埋め尽くすと●それはもう●美しい紙面に●という
わけで●戦争を純粋に楽しむための再教育プログラム●こんどの詩集は●
全ページ黒丸で●埋め尽くしました●文字ではなく●黒丸だけ見るために
●ぱらぱらとページをめくる●といった方も●いらっしゃらないかしら●
と●ひそかに●ほくそえんでいます●ぼくは●ぱらぱら●自分でしてみて
●悦に入ってました●書肆山田さんから●ゲラの第二稿がまだ届かない
ので●読書三昧です●笑●そろそろ睡眠薬が効いてきたかな●眠くなって
きた●阿部さん●おはようございます●すごいはやいですね●ぼくはいま
起きました●真ん中の弟を●下の弟が殺した夢を見ました●それを継母が
どうしても否定するので●ぼくが下の弟を●サーカスの練習で使う
477田中宏輔:2008/07/08(火) 15:24:58
●空中ブランコの補助網の上で●弟を下に落とそうと脅かしながら●白状させ
ようとするのですが●白状しません●最後まで白状しませんが●ぼくは●真ん
中の弟の骨についた肉を食べて●その骨をいったん台所の流しの●三角ゴミ
入れのなかに入れて●またそれを拾い出して●ズボンのポケットに入れました
●奇妙な夢でした●意味わからん夢ですね●スイカを見る●スイカになる●
真夜中の雨の郵便局●ぼくの新しい詩集の校正をようやく終えたのが●夜の
12時すぎ●さっき●で●歩いて7●8分のところにある●右京郵便局に●
こんな夜中でも●ぼくと同じ時間に●二組みのひとたちが●郵便物を受け取り
に●あるいは●書留を出しにやってきていた●昼には●四条木屋町の「ソワレ」
という有名な喫茶店に行って●ジミーちゃんに●ぼくの作品が載ってる●
國文學の増刊号を読んでもらって●感想を聞いたり●ぼくの新しい詩集の
初校を見てもらって●ぼくが直したところ以外に●直さなければならない
箇所がないか●ざっと見てもらったりしていたのだけど●場所が変わると●
気分が変わるので●ぼく自身が●きのうまで気がつかなかったミスを見つけて
●そこで●5箇所くらい手を入れた●ああ●文章って怖いなあ●と思った●
なんで二週間近く見ていて●気がつかなかったんやろうか●また文章と言った
のは●こんどの●ぼくの詩集って●改行詩じゃないのね
478田中宏輔:2008/07/08(火) 15:27:55
●とくに●『The Wasteless Land.III』は●一ヶ所も改行していないので●
書肆山田の大泉さんも●ぼくのその詩集の詩をごらんになって●マグリットの
●『これはパイプではない』という作品が思い出されました●と手紙に書いて
くださったのだけれど●ということは●「これは詩ではない」という詩を書いた
ということなのか●それとも●単に「これは詩ではない」というシロモノを
書いたということなのか●まあ●ぼくは●自分の書いたものが●詩に分類される
から●詩と言っているだけで●詩と呼ばれなくても●詩でなくてもいいのだけれど
●まあ●詩のようなものであればいいのだけれど●あるいは●詩のマガイモノ
といったものでもいいのだけれど●ぼくは●ぼくの書いたものを見て●読者が
キョトンとしてくれたら●うれしいっていう●ただそれだけの●単純なひと
なのだけれど●ぼくは●ああ●ぼくは●詩を書くことで●いったい何を得た
かったのだろう●わからない●いまだによくわからないのだけれど●ぼくは
●詩を書くことで●かえって何かを失ってしまったような気がするのだ●その
何かが何か●これまた●ぼくにはよくわからないのだけれど●もしも得たかった
ものと●失ってしまったものとが同じものだとしたら●同じものだったとしたら●
いったいぼくは●ぼくは●中学2年のとき●祇園の家の改築で●一年間ほど●
醍醐にいた●一言寺(いちごんじ)という寺が坂の上にあって●両親は
その坂道の上のほうに家を買って
479田中宏輔:2008/07/08(火) 15:29:50
●ぼくたちはしばらくそこに住んでいた●引っ越してすぐのことだと思う●
友だちがひとり●自転車に乗って●東山から●わざわざたずねてきてくれた
●土曜日だったのかな●友だちは●ぼくんちに泊まった●夜中にベランダに
出て●夜空を見ながら話をしてたのかな●空に浮かんだ月が●いつになく
大きくて明るく輝いていたような気が●でも●あまり話の内容はおぼえて
いない●ぼくはその友だちのことが好きだったけど●ぼくは●まだセックス
の仕方も知らなかったし●キスの仕方も知らなかったから●あ●これは経験
ありか●嘘つきだな●ぼく●笑●でも●ぼくからしたことなかったから●
したいという衝動はあったのだろうけど●はげしい衝動がね●笑●でも
●どういうふうにしたら●その雰囲気にできるか●まったくわからな
かったから●いまなら●ぼくのこころのなかの暗闇に●ほんのすこし手を
伸ばせば●その暗闇の一部を引っつかんで●そいつを相手に投げつけて
やればいいんだと●知っているんだけど●しかし●もうそんな機会は●
Street Life●こんなタイトルの詩を●何年か前に書いた●いま手元に
原稿の写しがないので●正確に引用できないんだけど●その詩は●ぼくが
手首を切って風呂場で死んでも●すぐに傷が治って生き返って●ビルから
飛び降りて頭を割って死んでも●すぐに元の姿にもどって
480田中宏輔:2008/07/08(火) 15:31:26
●洗面器に水を張って顔をつけて溺れ死んでも●すぐに息を吹き返して●
何度も死んで●何度も生き返って●という●ぼくの自殺と再生の描写の
あいだに●ぼくとセックスした男の子のことを書いたものなんだけど●
その男の子には●彼女が何人もいて●でも●ときどきは●男のほうが
いいからって●ぼくとポルノ映画館で出会って●そのあと●男同士でも
入れるラブ・ホテルに行って●セックスして●彼はアナル・セックスが
久しぶりらしくて●かなり痛がってたけど●たしかに●締まりはよかった
●大きなお尻だった●がっちり体型だったから●シックスナインもしたし
●後背位で挿入しながら●尻たぶをしばいたりもした●で●このように●
ぼくの死と再生というぼくの精神的現実と●その男の子とのセックスという
肉体的現実を交互に書いていったものだったのだけれど●その男の子が
ぼくに話してくれたことも盛り込んだのだけれど●そのときの話を●完全
には思い出すことができない●彼は●女性はいじめたい対象で●大阪の
SMクラブにまで行くと言っていた●男には●いじめられたいらしい
んだけど●はじめての経験は●スピード出し過ぎでつかまったときの●
白バイ警官で●そいつに●ちんこつかまれて●くわえられて●口のなかで
いった●とかなんとか●ぼくは最初のセックスで●相手に「いっしょに
いこう」と言われて●えっ?●どこに?
481田中宏輔:2008/07/08(火) 15:34:51
●って言ったバカなんだけど●で●その男の子は●あ●この男の子ってのは
●ぼくの最初のセックスの相手じゃなくて●Street Life●の男の子のほうね●
で●その男の子は●中国人で●小学校のときに日本にきて●中学しか出てなくて
●いま26歳で●学歴がないから●中学を出てからずっと水商売で●いまは
キャバクラの支配人をしていて●女をひとり●かこっていて●部屋まで借りて
やって●でも●ほんまに愛しとる女もいるんやで●そいつには俺がSやいう
ことは知られてへんねんで●もちろん●ときどき男とセックスするなんて
ぜんぜん知らんねんで●想像もしたこともないやろなあ●とかなんとか●
そんな話をしていて●ぼくは●そんなことを詩の言葉にして●ぼくが
●何べん自殺しても●生き返ってしまうという連のあいだにはさんで
●ええと●この詩●どなたかお持ちでないでしょうか●ある同人誌に
掲載されたんですけど●その同人誌をいま持ってないんですよ●ワー
プロを使っていたときのもので●パソコンを買ったときに●ワープロ
とフロッピー・ディスクをいっしょに捨ててしまったので●もし
その同人誌をお持ちでしたら●コピーをお送りください●送料と
コピー代金をお返しします●Street Life●いい詩だったような記憶が
●言葉はさまざまなものを招く●その最たるものは諺どおり●禍である
●阿部さん●場所って●不思議な力を持っているものなのですね●「ソワレ」で
●それまで見えていなかったものが●見えてしまったのですもの●ひさし
ぶりに●哲学的な啓示の瞬間を味わいました●「われわれの手のなかには
別の風景もある」●含蓄のあるお言葉だと思います
482田中宏輔:2008/07/08(火) 16:08:49
●わたしたち自身も場所なので●わたしたちを取り囲む外的な場所自身の記憶
+ロゴス(概念形成力・概念形成傾向)と●わたしたち自身の内的な場所の
記憶+ロゴス(概念形成力・概念形成傾向)が●作用し合っているというわけ
ですね●わたしたちだけではなく●場の記憶やロゴス(概念形成力・概念形成
傾向)も●随時変化するものなのですね●ヘラクレイトスの●「だれも同じ
川に二度入ることはできない●なぜなら●二度目に入るときには●その川は
すでに同じ川ではなく●かつまた●そのひとも●すでに同じひとではないから
である」といった言葉が思い起こされました●薔薇窗16号●太郎ちゃんの
ジュネ論●明解さんの引用が面白い位置にあって●このスタイルって●つづ
けてほしいなあって思いました●かわいらしかったですよ●タカトさんの
お歌も●幽玄な感触が濃厚なもので●味わい深く感じました●ああ●雨脚が
つよくて●雨音がつよくて●なんか●ぼくのなかにあるさまざまな雑音が●
ぼくのなかから流れ出て●それが雨音に吸収されて●しだいにぼくがきれいに
なっていくような気がしたのですが●そのうち●ぼく自身が雨音になっていく
ような気がして●ぼくそのものが消え去ってしまうのではないかとまで思われた
のでした●ぼく自体が雑音だったのでしょうか●阿部さん●記憶+ロゴス
(概念形成力・概念形成傾向)●と書きましたが
483田中宏輔:2008/07/08(火) 16:10:03
●記憶=ロゴス(概念形成力・概念形成傾向)●かもしれませんね●こういった
ことを考えるのも好きです●ひとりひとりを●ひとつひとつの層として
考えれば●世界はわたしたちの層と層で積み重なっているという感じですね
●でも●わたしたち自身が質的に異なるいくつもの層からなるものだとしたら
●世界はそうとうな量●さまざまなもので積み重なってできているものとも
思われますね●世界の場所という場所は●数多くの層を●数多くのアイデン
ティティを持っているということになりますね●その層と層とのあいだを●
また●自分のなかの層と層とのあいだを●あるいは●世界と自分との層と
層とのあいだを●いかに自由に移動できるか●表現でどこまで到達し●自分の
ものとすることができるか●どのぐらいの層まで把握し●同化することが
できるか●わあ●わくわくしてきました●ぼくも●もっともっと深い作品を
書かねばという気になってきました●おとつい●「ぽえざる」で●女性の
方が●「みんなきみのことが好きだった」を手にとってくださり●目次を
ちらりとごらんになられて●「すてきね」とおっしゃって●買って行って
くださったのですが●ぼくは
484田中宏輔:2008/07/08(火) 16:14:26
●なんて返事をするべきかわからなくって●ただ「ありがとうございます」と
言っただけで●お金を受け取ったあと●ぺこりと頭をさげただけだったのです
が●きのうと●きょう●その女性の方のことが思い出されて●なんていうの
でしょうか●幸福というものが●どういうものか●46歳にもなって●まだ
わからないところがあるのですが●おとつい耳にした●「すてきね」という●
ささやくような●つぶやくようなその方の声が●耳から離れません●来年●また
●「ぽえざる」でお会いしたときに●なんておっしゃってくださるのか●なにも
おっしゃってくださらないのか●わかりませんが●「すてきね」という●その方の
声が●すさんだぼくの耳を●ずいぶんと癒してくださったように思います●お名前も
うかがわないで●なんて失礼なぼくでしょう●でも●このことは●創作というものが
なにか●その一面を●ぼくに教えてくれたような気がします●自分さえ満足できる
ものができればいいと思っている●思っているのですが●「すてきね」という
声に●そう思っている自分を●著しく恥ずかしいと思ったわけです●うん●勉強
●勉強●まあ●こんな殊勝な思いにかられるのも●ほんのすこしのあいだだけ
なんだろうけどね●笑●言葉は同じような意味の言葉によっても●またまったく異なる
ような意味の言葉によっても吟味される●ユリイカの2003年4月号●特集は
485田中宏輔:2008/07/08(火) 16:16:09
●「詩集のつくり方」●むかし書いた自分の文章を読み返す●自分自身の言葉に
出会う●かつて自分が書いた言葉に●はっとさせられる●もちろん●体験が●
言葉の意味を教えてくれることもあるのだけれど●言葉の方が●体験より
はやく●自分の目の前に現れていたことにふと気づく●ふだんは気がつかない
うちに●言葉と体験が補い合って●互いに深くなって●さらに深い意味を持つ
ものとなって●ぼくも深くなっているのだろうけれど●きのう●シンちゃんに
●「許す気持ちがあれば●あなたはもっと深く●自分のことがわかるだろうし●
他人のこともわかるだろう●むかしからそうだったけれど●あなたには他人を
理解する能力がまったく欠けている」●と言われた●ぼくは●今年亡くなった
父のことについて電話で話していたのだ●「ひとそれぞれが経験しなければなら
ないことがある●ひとそれぞれに学ぶべきことがある●学ぶべきことが異なるの
だ●ひとを見て●自分を見て●それがわからないのか」●とも言われた●深い
言葉だと思った●と同時に●46歳にもなって●こんなことが●自覚できて
いなかった自分が恥ずかしいと思った●自分を学べ●ということなのだね
●むずかしい●と●そう思わせるのは●ぼくが●人間として小さいからだ●
それは●ひとを愛する気持ちが少ないからか●だとすれば●ぼくは●愛する
ことを学ばなければならない●46歳にもなったぼくだけれど
486田中宏輔:2008/07/08(火) 16:17:48
●でも●ぼくは●これから愛することを学べるのだろうか●自分を学べ●
の前に●愛することを学べ●と書いておく●きょうの一日の残りの時間は
●それを念頭において生きてみよう●あとちょっとで●きょう一日が終わる
けど●笑●でも●ぼくの場合●愛することとは何か●と考えて●それで
学んだ気になるかもしれない●それでは愛することにはならないのだけれど
●無理かなあ●愛すること●自分を学ぶこと●うううん●ひとまず顔を
洗って●歯を磨いて●おやすみ●笑●トマトケチャップの神さまは●
トマトの民の祈りの声を聞き届けてはくださらない●だって●トマト
ケチャップの神さまだからね●彼氏は裸族●ぜったい裸族がいいわ●彼の
衣装は裸だった●ぼくに向かって微笑んでくれた●彼の顔は●こぼれ出る
太陽だった●ぼくは●目をほそめて●彼を見上げた●うつくしい日々の●
記憶のひとつだった●そのときにしか見れないものがある●その年代に
しか見れないうつくしいものがある●そのときにしか見れない光がある●
その年代でしか感じとれない光がある●言葉が●それらを●ときたま
想起させる●思い出させる●タカトさん●きょうのお昼は●東山に桜を見に
行きました●八坂神社の円山公園に行き●しだれ桜を見てまいりました●
散り桜もちらほらと見受けられました●帰りに四条木屋町を流れる
高瀬川のあたりを歩いておりますと●花筏というのでしょうか●タカトさん
のミクシィの日記を拝読していて●この言葉を知りましたが
487田中宏輔:2008/07/08(火) 16:19:58
●川沿いに植えられた桜の花びらが散り落ちて●川一面に流れておりました●
また●いたるところで●詩は●うんこのように●毎日●毎日●ぶりぶりって
ひりだされているのですが●そのことには気がつかないで●いかにも「詩」
みたいなものにしか反応できないひとが●たくさんいそうですね●すました
顔で●でっかいうんこをする彼女が欲しいと●そんなことを言う●男の子が
いてもいいと思います●うんこ色のパンツをはいた●ひきがえるが●白い
雲にむかって●ぶりぶり●ぶりぶりっと●青いうんこを●ひっかけていきます
●そしたら●曇ってた空が●たちまち●青く青く●晴れていきました●うんこ
色のパンツをはいた●ひきがえるに●敬礼!●ペコリ●笑●くくく●昨年の
冬に●近所の公園で踏みました●草のなかで●気づかずに●こんもりと●
くやしかった●笑●そういえば●雲詩人とか●台所詩人とか●賞詩人とか
●いろいろいますが●すばらしいですね●ぼくは●うううん●ぼくは●ぼこ
ぼこ詩人です●嘘です●ぼくは●うんこ詩人です●ぼくは●でっかいうんこに
なってやろうと思っています●一度形成されたヴィジョンは●音楽が頭のなかで
再生されるように●何度でも頭のなかで再生される●わざと間違った考察をすること
●わざと間違えてみること●わざと間違えてやること●タカトさん●
「言葉の真の『主体』とは誰か」ですか
488田中宏輔:2008/07/08(火) 16:21:50
●書きつけた者でもなく●読む者でもなく●言葉自体でもなく●だったら●
こわいですね●じっさいは書きつけた者でもあり●読む者でもあり●言葉
自体でもあるというところでしょうか●「わたし」という言葉が●何十億人と
いう人たちに使用されており●それがただひとりの人間を表わすこともあれば
●そうでない場合もあるということ●いまさらに考えますと●わたしが記号に
なったり●記号がわたしになったり●そんなことなどあたりまえのことなので
しょうけれど●あらためて考えますと●不思議なことのように思われますが●
だからこそ●容易に物語のなかに入りこめたり●他者の経験を自分のことの
ように感じとれたりするのでしょうね●きょう●dioの締め切り日だと思ってた
●だけど違ってた●一日●日にちを間違えてた●一日もうけたって感じ
●ワルツじゃ●いや●アルツか●笑●笑えよ●おもろかったら●笑えよ●
こんなもんじゃ●笑われへんか●光が●波立つ水面で乱反射するように●話を
しているあいだに●言葉はさまざまなニュアンスにゆれる●交わされる言葉が
●さまざまな表象を●さまざまな意味概念を表わす●それというのも●わたし
たち自身が揺れる水面だからだ●ユリイカに投稿しているとき●過去のユリイカ
に掲載された詩人たちの投稿詩を読んでいると●「きみの日曜日に傷をつけて
●ごめんね」みたいな詩句があって
489田中宏輔:2008/07/08(火) 16:24:05
●感心した●それから●たびたび●この言葉どおりの気持ちが●ぼくのこころに
沸き起こるようになった●きみに傷を●と直接言っていないところがよかった
のだろうか●きみの日曜日に●というところが●Shall We Dance●恋人とこの
映画を見に行く約束をして●その待ち合わせの時間に間に合いそうになくって
●あわてて●バスに乗って●河原町に行ったのだけれど●あわててたから●
小銭入れを持って出るのを忘れて●で●財布には一万円札しかなかったので
●運転手にそう言うと●「釣りないで」●ってすげなく言われて●ひえ〜●
って思って固まっていたら●すぐに●同時に●前からはおじさんが●後ろ
からは背の高い美しい女性が●「これ使って」「これどうぞ」と言って
お金を渡そうとしてくださって●これまた●ひえ〜●って状態になった
んだけど●おじさんのほうが●わずかにはやかったので●女性には
すいませんと言って断り●おじさんにもすいませんと言って●お金を
受け取って●「住所を教えてください」●と言うと●「ええよ●ええよ
●もらっといて」●と言われて●またまた●ひえ〜●となって●バスから
降りたんやけど●そのあと●恋人と映画をいっしょに見てても●バスの
なかでの出来事のほうがだんぜんインパクトが強くて●まあ●映画も
面白かったけどね●映画よりずっと感動が大きくって●で
490田中宏輔:2008/07/08(火) 16:57:04
●その感動が●長いあいだ●こころのなかにとどまっていて●ぼくも似た
ことを●そのあと●阪急の●梅田の駅で●高校生くらいの恋人たちにして
あげた●切符の自販機に同じ硬貨を入れても入れても下から返却されて
困ってる男の子に「これ使えばええよ」と言って●百円玉を渡してあげた
ことがあって●たぶん●はじめてのデートだったんだろうね●あの男の子
●女の子の前で赤面しながらずっと同じ百円硬貨を同じ自販機に入れてた
から●あの子たちも●どこかで●ぼくのしてあげたことを思い出して
くれてたりするかなって●これ●まだどこにも書いてなかったと思うので
●いま思い出したので●書いとくね●でも●あのときの恋人●いま
どうしてるんやろか●あ●ぼくの恋人ね●いまの恋人と同じ名前の
えいちゃん●えいじ●おおむかしの話ね●あのときのえいじは●
えいちゃんって呼んだら怒った●それは高校のときに付き合ってた
彼女だけが呼んでもええ呼び方なんや●って言ってた●いま付き
合っているえいちゃんは●えいじって呼び捨てにすると怒る●
なんだかなあ●笑●初恋が一度しかできないのと同じように●ほんとうの
恋も一度しかできないものである●ほんとうの恋●真実の恋と思えるもの
●その恋を経験した後では●どの恋も●その経験と比べてしまい●ほんとうの
恋とは思えなくさせてしまうもの●しかし●ほんとうの恋ではなかっても
491田中宏輔:2008/07/08(火) 17:00:11
●愛がないわけではない●むしろ●ほんとうの恋では味わえないような
細やかな愛情や慈しみや心配りができることもあるものなのである●
スターキャッスルのファーストをかけながら●自転車に乗って郵便局に
行ったんやけど●「うまく流れに乗れば土曜日に着きます」という●
局員の言葉に●ああ●郵便物って●流れものか●と思って●帰りは
●「どうせ●おいらは流れ者〜」とか●勝手に節回しつけて●首を
ふりふり帰ってきました●あ●ヘッドフォンはスターキャッスル流し
っぱなしにしてね●で●これから●また自転車に乗って●五条のブック
オフに●ひゃ〜●どんなことがあっても●読書はやめられへん●本と
出会いたいんや●まあ●ほんまは恋に出会いたいんやけどね●笑●いや
いや〜●恋はもうええかな●泣●恋愛増量中●日増しに●あなたの恋愛が
増量していませんか●翻訳するにせよ●しないにせよ●誤読はつねに
ある●ジョン・レノンの言葉●「すべての音楽はほかの何かから生まれて
くるんだ」に●しばし目をとめる●目をとめて考える●あらゆるものがほかの
何かから生まれてくる●うううん●なるほど●あらゆるものがほかの何か
からできている●とすれば●まあ●たしかに●そんな気がするのだけれど●
では●それそのものから生まれてくるものなどないのだろうか●それそのもの
からできているものなどないのだろうか●とも思った●もう一度●「すべての
音楽はほかの何かから生まれてくるんだ」に●目をとめる
492田中宏輔:2008/07/08(火) 17:02:05
●ブックオフで古今和歌集を買った●あったら買おう●と●チェックしていた
岩波文庫の一冊だった●で●手にとって開いたページにあって●目に飛び
込んできた歌が●「言の葉のなかをなくなく尋ぬれば昔の人に逢ひ見つる
かな」で●運命的なものを感じて●すかさず買う●笑●人間はひとりひとり
●自分の好みの地獄に住んでいる●水風呂につかりながら読んでいる『武蔵野
夫人』も●面白くなってきたところ●どうなるんやろねえ●漱石が知性の
苦しみを描いたのに対して●大岡昇平は●知性の苦しみが美しいところを
描いている●この違いは大きいと思う●小説は実人生とは異なるのだから
●美しいものであるべきだと思う●真実が美しいのではないのだ●真実さが
美しいのだ●ぼくは●苦しみを味わいたいんやない●苦しみを味わったような
気になりたいんや●だから●漱石よりも大岡昇平のほうが好きなんや●麦茶の
飲みすぎで●ちとおなかが冷えたかも●お腹が痛い●新しいスイカ割り●
スイカが人間にあたって●人間がくだけちゃうっての●どうよ●うぷぷぷ
ぷぷ●ああ●なぜ●わたしは●わたし自身に偽りつづけたのだろうか●そんなに
愛をおそれていたのだろうか●愛だけが●人間に作用し●その人格を形成する
ことができるのである●なぜなら●本物の愛には●本物の苦痛があるからだ
●でも●贋物の愛にも本物の苦痛があるね●笑●なんでやろか●よい日本人は
死んだ日本人だけだ
493田中宏輔:2008/07/08(火) 17:03:45
●というのが●太平洋戦争のときの●アメリカ政府のアメリカ人に対する
日本人というものの戦略的な知らしめ方●いわゆるスローガンのひとつ
だったのだけれど●詩人にとって●よい詩人も●案外●死んだ詩人だったり
して●笑●彼は同時に二つの表情をしてみせた●ぼくのこころに二つの感情が
生じた●そのひとつの感情を●ぼくは悲しみに分類し●悲しみとして思い
出すことにした●自我を形成するものを遡ると●自我ではないものに至りつく
のか●自転車に乗って●嵐山に行った●ジミーちゃんと●ジミーちゃんは●
モンキー・パークに行くという●ぼくは猿がダメなので●というのも●大学の
人類学の授業の演習で●嵐山の猿を観察していたときに●子猿をちらっと見た
だけで●その母親の猿に追いかけられたことがあるからなんだけど●で●それで
●ぼくは●モンキー・パークの入り口の登り口近くの●桂川の貸しボートの
船着場のそばの●石のベンチの上に坐って●目の前に松の木のある木陰で●
ジミーちゃんを待っていました●川風がすずしく●カゲロウがカゲロウを
追って飛んでいる姿や●鴨が鴨の後ろにくっつくようにして水面をすべって
いる様子を目で追ったり●ボートがいくつで●どんな人たちが何人くらい
乗っているか●数えてみたりしていました●いや●多くの時間は●さざなみ
の美しさに見とれていましたから
494田中宏輔:2008/07/08(火) 17:05:25
●ボートとそのボートに乗った人たちのことは●その合い間に観察していた●
と書いたほうが正確でしょう●十二のボートが川の上に浮かんでいました
●三人連れのボートが一つ●三人の子供を乗せた父親らしきひとの4人乗りが
一つ●あとは●男女のカップルにまじって●男男のつれ同士が二つ●女女の
つれ同士が一つでした●ぼくが一人で坐っていると●ゲイらしきカップルが
●左となりに腰掛けて●自分たちをパチパチ写真に撮りはじめました●背中に
腕をまわして抱き合ったり●まあ若いから●まだ20歳くらいでしょう●二人
とも●かわいらしくて美しいから許される光景でしたが●笑●と●思っている
と●右となりにも●ゲイらしきマッチョ風の男同士のカップルがやってきて
●ここは●どこじゃ●と●ぼくは不思議に思いましたが●まあ●そんなことも
ありかな●と思いました●有名な観光名所ですものね●右となりのカップルは
●タイかフィリピンかカンボジアからって感じで●中国語とも韓国語とも違う
言葉をしゃべっていたような●左となりのカップルは●たぶん韓国語だと思い
ますけど●ぼくは●川の風景と●川ではないものの風景を●たっぷり楽しんで
いました●ジミーちゃんがくるまで●4●50分くらいでしょうか●左となりの
カップルは●楽しげに●ずっといちゃいちゃしていました●時代ですね●川の
うえを●川の流れとともに下っていくさざなみが●ほんとにきれいやった
495田中宏輔:2008/07/08(火) 17:07:23
●また●さざなみの一部が●川岸にあたって●跳ね返ってくる波とぶつかって
できる波も●ほんまにきれいやった●ぼくは●きょうの半分を●川に生かされた
と思った●川と●川風ちゃん●ありがとう●美しかったよ●何もかも●画像を
撮らなかったのが残念●行きの自転車では死にそうなくらいに暑かったです
●陰にはいりますと●川風がここちよかったです●同じくらいの時間に●
タカトさんも行ってらっしゃってて●でも●南北と●違う川沿いの道だった
ようですね●お会いできず●残念です●きらきらときらめく水面が美しかった
です●ここ●1●2週間●悩むことしきり●自分の生き方もですが●生きて
いる道について考えていました●父親が●ことし亡くなったのも関係がある
のかもしれません●ジミーちゃんに●帰りに一言●言いました●ぼくって●
だれかひとりでも●ひとを幸せにしてるやろか●って●そんなん知らんわ
●とのお返事でした●うううううん●もしも●ぼくの存在が●ただひとりの
人間のためにもなっていないのだとしたら●生きている価値なんかあるん
やろか●って●川の美しさに見とれながら●そんなこと●考えていました
●家族がいないということがきっかけでしょうか●自分の選んだ道ですが
●自分の選んだ生き方ですが●自分の存在があまりに小さく思えて●
こんなこと●考えるひとじゃなかったのですが
496田中宏輔:2008/07/08(火) 17:09:23
●考えれば気がつくこと●考えなければ●いつまでも気がつかなかったで
あろうこと●ひとつひとつの息が●つぎの息につづくように●孤独を楽しむ●
といっても●もう自分が孤独でないことを●ぼくは知っている●何かについて
考えたり●思い出したりすると●その何かが●ぼくに話しかけたり●考え
させたりしてくれるからだ●ぼくが出来事に注意を払うと●出来事のほうでも
●ぼくに注意を払ってくれるのだ●だから●赤ちゃんや●幼児が●愛に包まれて
いるように見えるのだ●ときどき●ぼくは●ぼくになる●ときどき●詩人が
●詩人になるように●で●詩人がぼくになったり●ぼくが詩人になったり●
これまで●ぼくは●たくさんのことに触れてきたけど●そのとき同時に●たく
さんのことも●ぼくに触れていたのだ●と●そんなことを●きょう●電車の
なかで読んでいた●シルヴァーバーグのSon of Man●の●He touches everything
and is touched by everything.●というセンテンスが●ぼくに教えてくれた
●ほんとうのぼくが●ここからはじまる●帰りの通勤電車のなかで●ふとメモを
取った言葉だった●ところで●禅●って●詩の骨●みたいなもの●かしらね●
矛盾律の●解体●と●言ってもいいのかも●解体●じゃなく●再●構築●かな
●彼のぬくもりが●まだそのベンチの上に残っているかもしれない
497田中宏輔:2008/07/08(火) 17:11:00
●彼がそこに坐っていたのは●もう何年も前のことだったけれど●あるものを
愛するとき●それが人であっても●物であってもいいのだが●いったい●
わたしのなかの●何が●どの部分が●愛するというのだろうか●どんな言葉が
●いったい●いつ●どのようなものをもたらすのか●そんなことは●だれにも
わからない●わかりはしない●人生を味わうのが●人生の意味だとしたら
●いま●どれぐらいわかったところにいるんだろう●ふと水鳥が姿を
現わす●なんと生き生きとした苦痛だろうか●その苦痛は●ぼくの胸を
かきむしる●ああ●なんと生き生きとした苦痛だろうか●苦痛という言葉が
●水鳥の姿をとって●ぼくの目の前に姿を現わしたのだ●ぼくは●夜の賀茂川の
河川敷で●月の光にきらめく水のうねりを眺めていたのだった●ぼくは●前世に
水鳥だったのだ●巣のほうを振り返ると●雛が鷹に襲われ●自分もまた襲われて
殺されたのだった●水は身をよじらせて●ぼくの苦痛を味わった●水鳥の姿を
した●ぼくの前世の苦痛を味わった●それを眺めながら●ぼくも身をよじらせて
苦痛を味わった●大学のときに●サークルの先輩に●「おまえ●なんでいつも
笑っているの?」●って言われて●それから●笑えなくなった●それまで●
ひとの顔を見たら●ついうれしくて●にこにこ笑っていたのだけれど
●ささいなことで●人間って傷つくのね●まあ●ささいなことだから
498俺リーマソ:2008/07/08(火) 17:23:45
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一度見ないと損を汁、ちなみにスレ内のジョジョはスルーしてあげて下さい
499田中宏輔:2008/07/08(火) 17:28:51
●とげになるんだろうけど●ミツバチは●最初に集めた花の蜜ばかり集める
らしい●異なる種類の花から蜜を集めることはしないという●そのような愛に
●だれが耐えることができようか●ひとかけらの欺瞞もなしに●ぼくは彼を
楽しんだ●彼が憐れむべき人間だったからだ●彼もまた●ぼくを楽しんだ●
ぼくもまた憐れむべき人間だったからだ●こんなに醜い●こんなに愚かな
行為から●こんなに惨めな気持ちから●わたしは●愛がどんなに尊いもので
あるのか●どれほど得がたいものであるのかを知るのであった●なぜ●
わたしは●もっとも遠いものから●もっとも離れたところからしか近づく
ことができないのであろうか●鯨が●コーヒーカップのなかに浮かんでいる●
ベートーベンよりバッハの方がすてきね●音楽がやむと●鯨は●潮を吹いて
●からになったコーヒーカップのなかから出てきて●葉巻に火をつけた●
光は闇と交わりを持たない●光は光とのみ交わりを持つ●われわれが言語を
解放することは●言語がわれわれを解放することに等しい●高村光太郎の
詩を読む●目で見ること●目だけで見ること●ついつい●わたしたちは●
こころで見てしまう●目だけではっきり見ることは不可能なのだろうか
●言葉で考える●というより●言葉を考える●というより●言葉が考える●
まったくわたしがいないところで●言葉が考えるということは●不可能だと思うが
500田中宏輔:2008/07/08(火) 17:30:23
●言葉が●わたしのことをほっぽっておいて●ひとりでに他の言葉と結びつく
ということはあるだろう●もちろん●結びつくことが●即●考えることでは
ないのだが●言葉がわたしを置いていく●わたしのいない風景がどこにもない
ように●そこらじゅうに●わたしを置いていく●わたしの知らないあいだに
●あらゆる風景が●わたしに汚れていく●いつの間にか●どの顔のうえにも●
どの風景のなかにも●わたしがいるのだ●ひとりでに●みんなになる●あらゆる
ものが●わたしになる●掲示板●イタコです●週に二度●ジムに通って身体を
鍛えています●特技は容易に憑依状態になれることです●一度に三人まで
憑依することができます●こんなわたしでも●よかったら●ぜひメールください
●イタコです●年齢は微妙な26才です●笑●でも週に二度事務に通っています
●いやああああああああああん●ジムに通っています●でも●片手でピーナッツの
殻はむけません●むけません●むけません●むけません●たった一度の愛に
人生がひきずりまわされる●それは●とてもむごくて●うつくしい●サラダ・
バーでゲロゲロ●彼の言葉は●あまりにこころのこもったものだったので
●ぼくには●最初●理解することができなかった●うんちも●うんちをするの
かしらん●吉田くんは●手足がバラバラになる●だから●相手をやっつける
ときは●右手に右足を持って●左手に左足を持って●相手をポカスカポカスカ
なぐるのだが●あんまりすばやくなぐって●もとに戻すので●相手もなぐられた
ことに●気がつかないほどだ●裸の女が●エレベーターのなかで
501田中宏輔:2008/07/08(火) 17:32:54
●胸元を揺らすと●エレベーターが●ボイン●ボインってゆれる●裸の老婆が
●しなびた乳房の先をつまんで●ふにゅーって伸ばすと●エレベーターが急上昇!●
ビルの屋上から飛び出て●大気圏の外まで出ちゃった●摩天楼の上で●キング
コングが美女を手から離して●地面に落とす●飛んでっちゃったエレベーター
をつかもうとしたんだな●キキキ●きっとね●事実でないことが●記憶として
ある●偽の記憶●と●ぼくは呼んでいるが●なぜそんな記憶があるのだろう●
親の話によると●幼いころのぼくは●テレビで見たり●本で読んだりしたこと
を●みんなほんとうのことだと思っていたらしい●また●嫌なことが贋の
記憶をつくるということもあるかもしれない●たとえば●ぼくは●おつかいが
嫌いだったので●商店街に行く途中で通る橋のたもとにある大きな岩の表面を
●いつもびっしりとフナムシのような昆虫が覆っていたという記憶があるんだけど●
これなんかはありえない話で●おそらくは無意識がつくりあげた幻想なので
あろう●まるで悪夢のようにね●比喩が●人間の苦痛のように生き生きしている
●苦痛は●いつも生き生きしている●それが苦痛の特性のひとつだ●深淵が
深い●震源が深い●箴言が深い●信念が深い●ジェルソミーナ●だれも
知らないから●捨てられるワタシ●ノウ・プロブレムよ●このあいだ
合コンに行ったら●相手はみんなイタコだった
502田中宏輔:2008/07/08(火) 18:08:27
●胸元を揺らすと●エレベーターが●ボイン●ボインってゆれる●裸の老婆が●
しなびた乳房の先をつまんで●ふにゅーって伸ばすと●エレベーターが
急上昇!●ビルの屋上から飛び出て●大気圏の外まで出ちゃった●摩天楼の
上で●キングコングが美女を手から離して●地面に落とす●飛んでっちゃった
エレベーターをつかもうとしたんだな●キキキ●きっとね●事実でないことが
●記憶としてある●偽の記憶●と●ぼくは呼んでいるが●なぜそんな記憶が
あるのだろう●親の話によると●幼いころのぼくは●テレビで見たり●本で
読んだりしたことを●みんなほんとうのことだと思っていたらしい●また
●嫌なことが贋の記憶をつくるということもあるかもしれない●たとえば●
ぼくは●おつかいが嫌いだったので●商店街に行く途中で通る橋のたもとに
ある大きな岩の表面を●いつもびっしりとフナムシのような昆虫が覆って
いたという記憶があるんだけど●これなんかはありえない話で●おそらくは
無意識がつくりあげた幻想なのであろう●まるで悪夢のようにね●比喩が●
人間の苦痛のように生き生きしている●苦痛は●いつも生き生きしている
●それが苦痛の特性のひとつだ●深淵が深い●震源が深い●箴言が深い●
信念が深い●ジェルソミーナ●だれも知らないから●捨てられるワタシ
●ノウ・プロブレムよ●このあいだ合コンに行ったら●相手はみんな
イタコだった
503田中宏輔:2008/07/08(火) 23:40:00
●みんな●死んだ友だちや死んだ歌手や死んだ連中を呼び出してもらって●
大騒ぎだった●ぼくにもできるにゃ●ひさんなバジリコ・スパゲティ●T
●U●V●W●と●ローマ数字を耳元でささやいてあげる●芸術にもっとも
必要なのは勇気である●と言ったのは●だれだったか忘れたけれど●恋人たち
●気まぐれな仮面●奇妙な関係●貝殻の上のヴィーナス●リバー・ワールド・
シリーズ●と●つぎつぎに●フィリップ・ホセ・ファーマーの小説を読んで
いると●そんな気になった●ぼくも●テキスト・コラージュをはじめて
つくったときには●それが受け入れてもらえるかどうか●賭けたのだけれど
●現代詩はかなり実験的なことも可能な世界であることがわかった●ぼくは
自分が驚くのも好きだけど●ひとを驚かせるのも好きなので●これからも
実験的な作品を書いていきたいと思っている●何もしていないのに●上の
前歯が欠けた●相方没収●突然●自由なんだよって言われたってねえ●
きょう●ニュースで●息子の嫁の首を鉈でたたいて●殺そうとした姑が
いたという●80歳のばばあだ●ジミーちゃんにその話をしたら●「その
切りつける瞬間●その姑さんが念じた言葉●わかる?」●と訊いてきたの
で●「殺してやる」と答えたら●そうじゃなくて●「ナタデココ」●と
言って●自分の首を指差した●やっぱり●ぼくの友だちね●微妙に
こわいわ●友だちだけどね●友だちだからね●笑●母親に抱えられた
赤ん坊が通り過ぎていく●人には●無条件で愛する対象が必要なのかも
しれない●自己チュウ●と違って●自己治癒
504田中宏輔:2008/07/08(火) 23:43:23
●脱穀の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の令嬢夫人たちが●踊りに踊る●
一糸乱さず整然と●脱穀の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の令嬢夫人たち
が●踊りに踊る●一糸乱さず整然と●黄色いスカートが●ひらひらと●ひら
ひらと●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●街じゅういたるところ
から●猿のおもちゃたちが●姿を現わす●パシャン●パシャン●パシャン●
パシャン●街じゅういたるところから●猿のおもちゃたちが●姿を現わす
●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●シンバルを打ち鳴らしながら
●ぼくのほうに向かってやってくる●ぼくのほうに向かってやってくる●
パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●脱穀の北朝鮮(朝鮮民主主義
人民共和国)の令嬢夫人たちが●足をあげて●足をさげて●オイチニ●オイ
チニ●黄色いスカートをひるがえし●オイチニ●オイチニ●パシャン
●パシャン●パシャン●パシャン●猿のおもちゃたちがシンバルを打ち
鳴らす●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●脱穀の北朝鮮(朝鮮
民主主義人民共和国)の令嬢夫人たちの黄色いスカートがまくれあがり
●マリリン・モンローのスカートもまくれあがり●世界じゅうの婦女子たちの
スカートもまくれあがる●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●自転車
は倒れ●バイクも倒れ●立て看板も倒れ●歩行者たちも倒れ●工事現場の建設
作業員たちも倒れ●ぼくも道の上にへたり込む
505田中宏輔:2008/07/08(火) 23:45:46
●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●オスカル・マツェラートの悲鳴
のように●街じゅういたるところ●窓ガラスは割れ●扉ははずれ●植木鉢は
毀れ●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●建物はブルブルふるえ●
道もブルブルとふるえ●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●何台か
の自動車は歩道に乗り上げてつぎつぎとひとを跳ね●何台もの自動車はビリ
ヤードの球のようにつぎつぎと衝突し●特急電車や急行電車や普通電車が
つぎつぎと脱線する●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●ビルの
壁に取り付けられた看板はビルの壁ごと剥がれ落ち●ヘリコプターはキリ
キリ舞いしながら落っこち●飛行機は太陽の季節のようにビルを突き抜けて
爆発炎上し●コンクリートの破片が●ガラスの破片が●血まみれの手足が
●空からつぎつぎと落っこちてくる●パシャン●パシャン●パシャン●
パシャン●大気はビリビリに引き裂かれ●白い雲は粉々に吹き散らされ
●大嵐の後の爪痕のように●街じゅうの景色が引き剥がされていく●パシャン
●パシャン●パシャン●パシャン●ぼくの顔から目が飛び出し●歯茎から
歯が抜け●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●身体じゅうの骨が
●世界のようにたががはずれ●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●
脳髄から●雑念が払われ●想念から●悲観が欠け落ち●パシャン●パシャン
●パシャン●パシャン●時間から場所がはぐれ●場所から事柄がはぐれ●
事柄から時間がはぐれ●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●すこ
ぶる●ひたぶる●すこすこ●ひたひた●爽快な気分になっていく●爽快な
気分になっていく●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●吹けよ●風
●呼べよ●嵐●沸騰する二酸化炭素(カーボン・ダイオクサイド)●
まっすぐな肩よ●来い!
506田中宏輔:2008/07/08(火) 23:48:42


長い作品で、すいませんでした。
これが、ここ1年以内でつくりました
作品で、一番、自分で出来がいいと
思ったものでした。

502が重複しました。
申し訳ありませんでした。

507名無しは無慈悲な夜の女王:2008/07/09(水) 00:18:10
いきなり誤るくらいなら…

まあいいか!

でも…もう

●時間から場所がはぐれ●場所から事柄がはぐれ●
事柄から時間がはぐれ●パシャン●パシャン●

は、カンベンして〜〜
508田中宏輔:2008/07/09(水) 00:45:35

すいません。
つぎからは、短いものですが
ぜひ書かせてください。

よろしくお願いいたします。
お見捨てなきよう、ご指導くださいませ。

きょうは、躁状態でした。
ほんというに申し訳ありませんでした。

明日から、こころを入れ換えます。
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。

いま、ぼくのこころのよりどころなのです。
お願いいたします。


509田中宏輔:2008/07/09(水) 06:37:31
お皿を割ったお菊を
お殿様が
切り殺して
ブラックホールにほうり込みました
読者のみなさんは
ブラックホールから
お菊さんが幽霊となって出てきて
お皿を一枚、二枚、三枚……、と九枚まで数えて
一枚足りぬと言う姿を想像されるかもしれませんが
あにはからんや
お菊さんがホワイトホールから
一人、二人、三人……と
無数の不死身の肉体を伴ってよみがえり
そこらじゅう
ビュンビュンお皿を飛ばしまくりながら出てきたのでした
お殿様を恨む気持ちなどさらさらなく
楽しげに
満面に笑みをたたえながら
510記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/09(水) 07:38:24
●捜さないでください(略)はまだ読んでない。
が、>>509はなかなか面白いと思う。楽しげに、満面の笑みをたたえながらというところにシュールさが出ている。
511田中宏輔:2008/07/09(水) 15:46:43
510 記憶喪失した男さま

ごらんくださり、ありがとうございました。
またうれしいご感想くださり、ありがとうございまいました。
ヴィジョンが浮かびましたときには、自分でも笑いました。
笑い声をあげて、くるくる回転しながら出てくるお菊の姿が
ほんとに楽しげでした。
512記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/09(水) 18:33:21
●捜さないでください(略)の感想です。
読みやすい文章ではあった。しかし、おれはホモとウンコには引いてしまうのだ。
だから、読んでいてちょっと引いてしまった。そこが話の主要部分だと思うので、
おれには合わない作品だなあ、と思った。
最初の記憶の泡が割れていくところは、記憶喪失になる暗喩かなとも思ったが、
その話は登場人物の詩として終わって残念だ。
読みやすかったが、読み終わって得たものはなく、その程度の作品だと思った。
途中、作者は本当に文芸誌に作品をのせている凄い人なのかもとか気になったが、
作品の良し悪しを変えるわけではなかった。
ちょっと厳しいがこんな感じです。今のところ、「舞姫」がいちばん好きかな。
513田中宏輔:2008/07/09(水) 22:32:21

512 記憶喪失した男さま

●詩と名づけている形式のものですが
モチーフが、おこころに触れるものでなくて
たくさんお読みいただいたのに、申し訳ありませんでした。
つぎから、気をつけて投稿させていただきます。
自作から完全にその関連モチーフを払拭するのは難しいかもしれませんが
ここに投稿させていただきます折には、かならず、こころに留めおきます。
『舞姫』おこころに触れることができたみたいで、うれしいです。
がんばります。第二部、出来上がりましたら、また投稿させていただきます。

それまでに、短篇をいくつか投稿させていただくと思いますが
なにとぞ、よろしくお願いいたします。
514田中宏輔:2008/07/10(木) 10:20:05

地球のゆがみを治す人たち

バスケットボールをドリブルして
地面の凸凹をならす男の子が現われた
すると世界中の人たちが
われもわれもとバスケットボールを使って
地面の凹凸をならそうとして
ボンボン、ボンボン地面にドリブルしだした
それにつれて
地球は
洋梨のような形になったり
四面体になったり
直方体になったりした
515記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/11(金) 09:35:17
「地球のゆがみを治す人たち」は今までで一番の駄作だ。
バスケットボールで歪みを治すというのは、奇想のようでいて、平凡に感じられる。
バスケットボールでただ地球の形を変えるだけではなく、人の心まで変えれてしまえばよかった。
516田中宏輔:2008/07/11(金) 18:04:56

515 記憶喪失した男さま


読んでくださり、ありがとうございました。
おこころに触れるような作、がんばってつくります。
517田中宏輔:2008/07/13(日) 17:49:28
三日ぶりに 仕事場に彼が出てきた
愛人のわたしの前で 他人行儀に挨拶する彼
まあそりゃ仕方ないわね
ほかのひとの目もあるんですもの
でもみっともないわ
彼は首に娘を巻きつかせていた
「このたびはご愁傷様でした」
彼女は三日前に死んだ彼の娘だった
死んだばかりの娘は彼女の腕をしっかり 彼の首に巻きつけていた
彼の首には 3年前に死んだ彼の母親もぶらさがっていた
母親の死体は元気で まだまだ彼から離れそうになかった
その母親の首には 彼の祖父母にあたる男女の死体がぶらさがっていた
もうほとんど干からびていたけど
そんなに軽くはないわね
わたしの目の前を彼が通っていく
わたしの机をひっかけて
机の端が わたしの腰にあたった
彼の脚にしがみついて離れない 去年に死んだばかりの彼の奥さんが
わたしの机にぶつかったのだ
いつもの嫌がらせね
バカな女
でも彼のやつれた後姿を目にして
彼とももうそろそろ別れたほうがいいかなって
わたしはつぶやくようにささやいた
わたしに抱きついて離れない死んだ夫に

518名無しは無慈悲な夜の女王:2008/07/14(月) 01:29:25
948 ギックリ(福島県) New! 2008/07/14(月) 00:34:50.94 ID:ULlBsR6s0
>>907
いい。もうこういう無間ループのような人生は終わったほうがいい。

良く分からないメカニズムだけど、22歳までを4回繰り返して生きた。
そのたびに違う人生で面白かったといえば、面白かったんだが。
今はループが解けて28歳なんだが、お陰で通産で今年で94歳なんだよ。

もう、いい加減生きるのに飽きた。

こういう電波な話はしたくなかったけど、まあ、すまん。


978 ギックリ(福島県) New! 2008/07/14(月) 00:38:08.77 ID:ULlBsR6s0
>>953
よく知らないんだが、20世紀末に幾つかの時空間同士での覇権を掛けた戦いがあったそうで、
それに巻き込まれたんだよね。

それの闘士どうしは一定のペナルティーを払うことで時空の改変を行うことが出来た。
ところが、自分は特異体質なもので、歴史の変化による改変点をすべて覚えていて、
それを予知のように錯覚して生きてたけど、実はリセットされていた、というか。

まあ、支離滅裂な話だわ。結局、ここの時空の人が勝って、通産で百年ぶりにループが解けたと。
519記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/14(月) 07:05:14
>>517 この無題の作品は、「地球の歪みを治す人たち」よりはよいできだと思う。
ちょっとはシュールではある。しかし、面白さに結びついたかというと疑問である。
ただ死人のからみつかれているだけなら、ホラーにありそうだが、
しかし、これは怨霊とかではなく、そのまま死んだ人がからみついているのだと思うが、
それはシュールではあるが、面白さにはいたらなかった。
520田中宏輔:2008/07/14(月) 07:35:37
519 記憶喪失した男さま

ごらんくださり、ありがとうございました。
またいろんな角度から検討して挑戦させていただきます。
521田中宏輔:2008/07/15(火) 07:21:38
不在の猫
猫は不在である
連れ出さなければならなかったのだ
波しぶきビュンビュン
市内全域で捜査中
バケツをさげたオバンが通りかかる
「あたしの哲学によるとだね
 あんた
 運が落ちてるよ」
不在の猫がニャンと鳴く
挨拶する暇もなく
雨が降る
「このバケツにゃ
 だれにでもつながる電話が入ってるんだよ
 試してみるかい」
522田中宏輔:2008/07/15(火) 07:22:18
角のお好み焼き屋のオヤジが受話器を握る
「猫を見たわ
 過激に活動中よ
 気をつけて
 あなたの運は落ちてるわ」
ガチャン
お好み焼き屋のオヤジは受話器を叩きつける
「あんた
 これはあたしの電話だよ
 こわれるじゃないか」
バケツをさげたオバンが立ち去る
お好み焼き屋のオヤジがタバコをくわえる
不在の猫がニャンと鳴く
雨が上がる
さっきまでの雨は嘘だった
ずっと
青空だったのだ
お好み焼き屋のオヤジが放屁する
真上の空を横切っていたUFOがひゅるひゅる空の端っこに落ちていく
523田中宏輔:2008/07/15(火) 07:23:04
学校帰りの小学生の女の子が歌いながら歩いてきた
「きょうもまじめな父さんは
 あしたもまじめな父さんよ
 きょうもみじめな母さんは
 あしたもみじめな母さんよ
 ローンきつくてやりきれない
 ローンきつくてやりきれない
 みんなで首をくくって死にましょう
 みんなで首をくくって死にましょう」
不在の猫がニャンと鳴く
「お嬢さんの学校じゃ
 そんな歌が流行ってるのかい」
時代錯誤のセリフがオヤジの口を突いて出てくると
かわいい小学生の女の子はオヤジの目を睨みつけて
「バッカじゃないの
 おじさんって
 おつむは大丈夫?
 おててが二つで
 あんよが二つ
 あわせて四つで
 ご苦労さん」
524田中宏輔:2008/07/15(火) 07:23:33
テレフォンショッピングの時間です
午後にたびたび夕立が降るのは
ご苦労さんです
仕事帰りに一杯のご気分はいかがですか?
鼻息の荒い毛むくじゃらの不在の猫がニャンと鳴く
カレンダー通りに
月曜日の次は火曜日
火曜日の次は水曜日
水曜日の次は木曜日
木曜日の次は金曜日
金曜日の次は土曜日
土曜日の次は日曜日
日曜日の次は月曜日
これってヤーネ
燃え上がるUFOから宇宙人が出てきて
インタビューを受けている
525田中宏輔:2008/07/15(火) 07:24:11
「とつぜんのことでした
 ブランコに乗っていたら
 知らないおじさんが
 おいらのことを
 かわいいかわいいお嬢さん
 って呼ぶものだから
 おいらは宇宙人なのに
 お嬢さんだと思って
 おじさんの手に引かれて
 ついていったの
 おじさんは宇宙人好きのする顔だったから
 おいらは
 てっきり
 おいらのことをお嬢さんだと思って
 それで
 縄でくくられて
 ぬるぬるした毛むくじゃらのタコのような不在の猫がニャンと鳴く」
526田中宏輔:2008/07/15(火) 07:25:06
お好み焼き屋のオヤジがタバコを道端に捨てて
つま先で火をもみ消した
バケツをさげたオバンがまたやってきた
「あたしの哲学によるとだね
 あんた
 運が落ちてるよ」
それを聞くなり
お好み焼き屋のオヤジが走り戻ってきて
バケツを持ったオバンの顔をガーンと一発殴ろうとしたら
反対に
オバンにバケツでどつかれて
頭を割って
さあ大変
どじょうが出てきてコンニチワ
頭から
太ったうなぎほどのどじょうが出てきたの
どうしようもない
お好み焼屋のオヤジは道端にしゃがんで
頭抱えて
思案中
527田中宏輔:2008/07/15(火) 07:25:50
「ところで
 明日の天気は晴れかな」
ぎらぎらと光る濡れてぬるぬるした毛むくじゃらのタコのような不在の猫がニャンと鳴く
「晴れ
 ときどき曇り
 のち雨
 ときには晴れ間も見えましょう」
だれもがそう思いこんでいる
気がついたら
6時五十分だった
ニュースが終わるよ
終わっちゃうよ
猫は不在である
528記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/15(火) 07:51:59
「不在の猫」の感想。
猫が不在であるというのが、いちばんのインパクトだが、それを生かしたエピソードがない。
残念である。不在の猫というのを生かした哲学的エピソードがひとつほしかった。
シュールなだけでなく、実は意味がつながってしまうというのも、読者の期待している展開だと思う。
529田中宏輔:2008/07/15(火) 22:16:44

528 記憶喪失した男さま

たしかに、そうでした。
深味がありませんでした。
また挑戦させていただきます。
530田中宏輔:2008/07/17(木) 01:20:24

LA LA MEANS I LOVE YOU°


●マドル●マドラー●マドラスト●子供たちは●頭をマドラーのようにぐる
ぐる回している●マドラーは●肩の上でぐるぐる回っている●ぐちゃぐちゃ
と●血と肉と骨をこねくりまわしている●そうして●子供たちは●真っ赤な
金魚たちを●首と肩の隙間から●びちゃびちゃと床の上に落としている●
子供たちの足がぐちゃぐちゃと踏みつぶした●子供たちの真っ赤な金魚たち
の肉片を●病室の窓の外から●ぼくの目が見つめている●学生時代に●三条
河原町に●「ビッグ・ボーイ」という名前のジャズ喫茶があった●ぼくは
毎日のように通っていた●だいたい●いつも●ホットコーヒーを飲んでいた
●そのホットコーヒーの入っていたコーヒーカップは●普通の喫茶店で出す
ホットコーヒーの量の3倍くらいの量のホットコーヒーが入るものだったから
●とても大きくて重たかった●その白くて重たい大きなコーヒーカップで
ホットコーヒーを飲みながら●いつものように●友だちの退屈な話を聞いて
いた●突然●ぼくの身体が立ち上がり●ぼくの手といっしょに●その白くて
重たい大きなコーヒーカップが●友だちの頭の上に振り下ろされた●友だちの
頭が割れて●血まみれのぼくは病院に連れて行かれた
531田中宏輔:2008/07/17(木) 01:23:21

●べつにだれでもよかったのだけれど●って言うと●看護婦に頬をぶたれた●
窓の外からぼくの目は●首から上のないぼくの身体が病室のベッドの上で本
を読んでいるのを見つめていた●ぼくは●本の間に身を潜ませていた神の姿を
さがしていた●いったい●自我はどこにあるのだろうか●ページをめくる指の
先に自我があると考える●いや●違う●違うな●右の手の人差し指の先にある
に違いない●単に●普段の●普通の●あるがままの●右の手の人差し指の先
にあると考える●ママは●人のことを指で差してはだめよ●って言っていた
●と●右の手の人差し指の先が記憶をたぐる●でもさあ●人のことを差すから
人差し指って言うんじゃんかよ●って●右の手の人差し指の先は考える●自我
は互いに直交する4本の直線でできている●1本の直線からでもなく●互いに
直交する2本の直線からでもなく●1点において互いに直交する3本の直線
からでもなく●1点において互いに直交する4本の直線からできている●と
●右の手の人差し指の先が考える●ぼくの目は●窓の外から●それを見よう
として●ぐるぐる回る●病室のなかで●4本の直線がぐるぐる回る●右の手
の人差し指以外のぼくの指がばらばらにちぎれる●子供たちの首と肩の隙間
から●真っ赤な金魚たちがびちゃびちゃあふれ出る●子供たちは●頭をマド
ラーのようにぐるぐる回している●マドラーは●肩の上でぐるぐる回っている
●ぐちゃぐちゃと●血と肉と骨をこねくりまわしている●そうして●子供たち
は●真っ赤な金魚たちを●首と肩の隙間から●びちゃびちゃと床の上に落とし
ている●それでよい●と●右の手の人差し指の先は考えている●45ページと
46ページの間に身を潜ませていた神もまた●それでよい●と●考えている
●ああ●どうか●世界中の不幸という不幸が●ぼくの右の手の人差し指の
先に集まりますように!
532記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/17(木) 06:16:38
「LA LA MEANS I LOVE YOU°」
グロテスクな作風ですね。個人的ですが、グロにはあまり興味が無いのです。
もう、グロには飽きているのです。
だから、途中で挿入される哲学的な文章が好きです。
まあまあなできですね。厳しくいえば、中の下な作品です。
533田中宏輔:2008/07/17(木) 06:43:20
532 記憶喪失した男さま

ごらんくださり、ありがとうございました。
よく練って、また挑戦させていただきますので
よろしくお願いいたします。
534axxxxx:2008/07/17(木) 15:51:54
 生命体というのはどのような物を言うのだろうか。生命の定義が難しいのだが、便宜的にある星系に寄
生する生き物について語りたい。

 その生き物は大部分が真空に近い希薄な水素原子とそれ以外の微量の原子から成っていた。宇宙が創生
されてからいつの時点で発生していたのかはわからない。ただ多くの生き物がそうであるように自分と同
じ物を再生産し、気が遠くなるほどの時間をかけて、新たな星系を見つけては、全体を覆い尽くし、そこ
にしばしのすみかを求める。そんな生き物であった。
 その生き物の食べ物は星系から発生する光や熱、そして核反応により生成される素粒子のエネルギーで
ある。その生き物は星系全体を取り巻いて、内側からは星系のエネルギーを受け取り、外側からはその星
系に引き寄せられる水素原子と若干のその他の原子でその身を繕っている。その希薄な原子の間を、素粒
子が行き来して、その星系で起こったことを記憶している。
 記憶している物の大部分は、主星のうめき声である。ときおり、黒点やコロナ、プロミネンスの発生に
より、巨大な電磁波や大量の素粒子が発生し、生き物の中を通り過ぎていく。生き物はその名残を記憶し
ている。もっとも、記憶していたからといってどうと言うこともない。その名残はやがて薄まり、消えて
いくことだろう。しかし、完全に消え去るまでには長い時間がかかる。消える前に新たな記憶が加えられ、
だんだんと複雑な記憶が出来てゆく。
 あるときに紛れ込んできたのが、ある惑星からの電磁波であった。それは太陽からの電磁波と比べれば、
ノイズともいえないほどの微少なものであった。そして、その電磁波は完全な規則性を持つパルスでもな
く、また完全に不規則なホワイトノイズでもなかった。もっとも、その生き物の時間の流れからすれば、
一瞬の出来事に過ぎない。
 

535axxxxx:2008/07/17(木) 15:52:25
 あるとき、主星の黒点が大量発生して、その後に強い太陽風が星系を駆け抜けた。その勢いはある惑星
の電磁波を一時混乱させるほどの強さであった。生き物の体内を駆け抜ける素粒子の束はその生き物の希
薄な体を引き裂いた。生き物の体を形作る水素原子と素粒子は乱れ、悲鳴を上げることになる。
 ある惑星の電磁波の混乱の中、そこに住む住人は電磁波を利用する機械を通して、その悲鳴を確かに聞
いた。その悲鳴は住人の生きている時間軸に対して、少しばかり間延びしている波長であったが、想像力
がその時間の差を補った。そして、その生き物の存在に気づく。
 住人はその生き物の声に耳を澄ませた。とてつもない時間の中に蓄積された素粒子と電磁波の記憶はい
くらかの時間を伴って、住人に受け止められる。
 住人は小さな小さな、探査機を送り出した。その探査機はしばらくの間ほかの惑星の姿などを送ってい
たが、やがてまだ見ぬ宇宙へ旅だっていく。探査機が、その生き物から離れていくとき、その生き物の一
部が分かれて旅立った。その生き物の子は探査機と一緒に飛んでいる。たとえ探査機が信号を発しなくな
っても、生き物の子が手紙を送り出すだろう。その手紙が届くのはいつのことになるのだろうか。

fin
536記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/17(木) 16:32:53
>>534‐535 かなり面白い着想ですね。
恒星のうめき声を記憶している生命体というのは、とても面白いアイデアだと思います。
惜しむらくは、せっかくの着想を生かした後半の展開がなかったことでしょうか。
どうせなら、人類が多くの恒星たちのうめき声を聞く終末へと導いてほしかったです。
希薄な水素の生命体というのは、面白いアイデアで、考えようによっては、
星間ガスから星になり消し飛んでも、まだ生きた生命体である可能性があります。
そちらの方へ突っ込んでも面白かったことでしょう。
後半の展開は、恒星のうめき声を聞く手紙を受けとれるとも読みとれるのですが、
表現はそれを意識せず、無関係なことばでつむがれてしまったように思います。
評価としては高いですが、もっともっと面白くできた作品だと思いました。
537axxxxx:2008/07/17(木) 18:46:38
読んでいただいてありがとうございました。
宇宙人って実はいるんじゃないかな。
ただ、あまりにも生きる世界が違いすぎて判らないだけじゃないかな。

という考えから出て来た物です。

後半の展開がないという指摘には少しどきりとしました。
この先に一度、陳腐な展開のお話を入れたのですが、
生きる世界が違っていて、意志の基本構造も違う物に対して
普通の意志疎通をしてしまったため、破棄しました。
そのため、前提条件だけで終わってしまったのが
見抜かれてしまったようですね。さすがです。

この雰囲気とイメージを壊さないままに続けられるお話が
もし出来ましたら、また書かせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
538FFT:2008/07/18(金) 03:55:38
その医者は注射器をとりあげ、苦渋の表情を浮かべた。手術台に寝ころんでいる私は首をひねって彼の方を向く。
「ドクター、気にすることはない。」
彼は絞りだすような声で言う。
「ああ……わかっている。」
私はため息をつき、この奇妙な巡り合わせに思いを馳せる。宇宙人の到来、ファーストコンタクト、そして死すべき生贄の要求…。
「珍しいことじゃない。わが同族にも同じような習慣を持つものがいる。」
「しかし……」
「事実、中世には和平の証に自分の子を人質として渡していた。本質的には何も変わらない……。そして私はもう十分生きた。」
彼は言葉を飲み込み、首をふる。彼には納得できなかろう。しかしもういいのだ。和平の証として身分の高い者を引き渡すこと。それが向こうの文化におけるルールだ。
それに慣習の問題だけではない、実利的な目的もある。私は向こうで解剖され、分析され、"安全"な交流の礎となるのだ。
私はちらりと壁にかかった時計を見て医者に告げる。
「時間だ。」
彼は注射器を私の腕にさし、そして私は永遠の眠りについた。
539記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/18(金) 06:54:52
>>538 可もなく不可もなくです。
ただ生贄を宇宙人に捧げるだけなら、ありがちな話のようですが、この話はそれとは違う切り口をもった作品のようにも思えます。
しかし、それだけで終わっては、あまり楽しめないですね。
540田中宏輔:2008/07/18(金) 16:58:45

単為生殖で増える工事現場の建設労働者たち VS 土下座蹴り ちょい斜め土下座蹴り
真っ逆さ土下座蹴り

いつの間に 蚊が入ってきたのだろう
窓を開けたのは 洗濯物を取り入れる一瞬だったのに
蚊は 姿を現わしては消える
音楽をとめて 蚊を見つけることにした
本棚のところ すべての段を見ていく
パソコンの後ろをのぞく
CDラックもつぶさに見ていく
ふと思いついて 箪笥を開ける 箪笥を閉める
振り返ると 蚊がいた
追いつめてやろうとしたら 姿を消す
パソコンの前に坐って
横目で本棚のところを見ると
蚊がいた
やがて 白い壁のところにとまったので
しずかに近づいて 手でたたいた
つぶした と思ったら
手には何の跡もない
ぼくは 白い壁の端から端まで
つぶさに見ていった
蚊はどこにもいなかった
ふと 壁の中央に目がひきつけられた
壁紙の一部がぽつりと盛り上がり
それが蚊に変身したのだ
そうか 蚊はそこから現われては
そこに姿を消していったんだ
ぼくは 壁面を 上下左右 全面
端から端まで バシバシとたたいていった
541記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/18(金) 17:16:49
>>540 なかなか良いできだと思います。
題名と内容の落差が面白いです。題名の面白さで一ポイントとしまして、
中の中なできだと致しました。
蚊がもっと凄いワープをしていたら、さらによかったかもしれません。
542田中宏輔:2008/07/18(金) 17:51:34

541 記憶喪失した男さま

ごらんくださり、ありがとうございました。
中の中というご評価ははじめていただきました。
おこころに触れることができて、うれしかったです。
また、挑戦させていただきます、よろしくお願いいたします。
543記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/07/19(土) 10:13:41
ちなみにここで感想を書いている記憶喪失した男は、こんなSF小説を書いています。
ネット作家ペンネームは「へげぞ」です。

「ノベルコレクションズ」
http://novels.bookstudio.com/
このサイトの詳細検索で作家名へげぞで検索してみましょう。
短いのから読んでいくのをおすすめします。

「超短編小説会」
http://ssstory.net/
日常と同タイの過去ログから、作者名へげぞで検索して読みましょう。
原稿用紙五枚以下の作品が四十以上投稿されています。
544名無しは無慈悲な夜の女王:2008/09/01(月) 00:19:52
創作板にもSFスレ出来てたよ
545名無しは無慈悲な夜の女王:2008/09/01(月) 13:40:53
詳しく…
546味噌お茶:2008/09/07(日) 14:41:51
ジョニーは戦場に行った

彼が銀河系の端に辿り着くまで長くは掛からなかった
第3地球植民地から彼は探査恒星船の進路に非合法な手段で変更を施した
宇宙人類法により銀河系外への人類の渡航は禁止されているからだ
無重力の世界でも法は変わりなく存在していた
スクリーンには銀河系の端まで残り5秒だと表示された
残り4秒、彼は胸が躍った。生まれてからの長年の夢だった
残り3秒、歴史書には記載されないが、人類初の試みではないのか
残り2秒、幾ばくかの不安が脳裏によぎった
残り1秒、ああ、神よ
残り0秒、"ズシィーン・・・"、宇宙船は大きな揺れと共に停止した
機器は故障し、スクリーンは乱れ、彼は船外へ目視に出た
船は銀河系の端に刺さっていた。正確に言えば暗黒の壁面にめり込んだのだ
彼は暗黒に触れた。それだけで自体が理解できた。いや、何かにより理解を強制させられた
この銀河系は外銀河のシミュレーション世界の一部にしか過ぎなかった
出口は用意されていた。思考をプログラムに変換し外へつなげるケーブルの門があった
しばしの戸惑いがあったが、彼はその門をくぐる決心をした
普遍の物理すら適用できない世界が広がるかもしれない
だが人の心は功利的に旅をするのであろうか
手をかざし、出口は開き、光が包み、時間は空間へ飛び出して、彼は地平を越えた
そしてジョニーがベッドから目覚めると、そこには興味深げなまなざしが彼をみつめていた
547味噌お:2008/09/07(日) 15:27:07
「ズボン」

A「今日はズボンと人との関係を話し合いたいと思います」
B「ズボンは人類の前には無かったが、人類の後には存在する」
C「しかし赤ん坊はズボンを穿いていない」
B「では人類の途中からズボンは存在する」
A「ズボンは現代人の証でしょうか?」
B「ズボンを穿かないと法律で捕まってしまう」
C「家では捕まらない場合も有る」
B「なら外ではズボンは必要である」
C「家でも家族や友達にみられるのは気まずい」
B「では他との共存にはズボンが必要である」
C「家で恋人以上なら下着でも生活できる」
B「しかしそこには多少の恥じらいがある」
C「ならば他との高度に理性的な共存にはズボンが必要である」
A「1年前に事故に合い、下半身を機械化した人を知っていますか?」
B「彼にはズボンは必要ない」
C「昔の彼には必要であった」
B「ならば彼が機械化する途中までズボンは必要であった」
A「彼は人類でしょうか?」
B「彼は半人半機械である」
C「いや彼は成長の途中でズボンの代わりに機械を穿いたのである」
B「なら彼は新しいズボンを穿いた人類である」
A「お時間が来ましたので、今回はここまでとさせて頂きます」
B「ありがとうございました」
C「ありがとうございました」
A「次回は上海で行われるパラリンピックの中継の為、放送は大会閉幕後となります」
548味噌お:2008/09/07(日) 16:37:15
「サッカー最終予選」

W杯へ出場する為のイングランド対ドイツの欧州最終予選は
劇的な逆転勝利によりドイツが4-3で本選への切符を勝ち取った
「独の背番号11はベッケンバウアーの再来だ」
「いいえ独の背番号10の方が再来っぽいわ」
「どっちでもいいよ、あいつら双子だから。ただでさえ日本人に外人の顔の区別はつき難い」
最近のサッカー選手の顔は絵に描いたような理想的で似通ったモデル顔となった為に
国際的な競技人気は男女を問わずうなぎ上りとなっていた
「そういえば独の背番号15と英の背番号10も双子だよね」
「髪の色が違うから背番号15の方が染めてるのかな、帰化したんだろうな」
最近は帰化する選手は数多く、国家にまたがって兄弟が闘うのも珍しくない
「ところで、今回のW杯の得点王はブラジルのロバウドかな」
「いいえアルゼンチンのリナウドかイタリアのロナウディーニョでしょうね」
「どっちでもいいよ、あいつら3つ子だから。」
病室のTVはそんな討論をするサッカーファンの為にか専門チャンネルが選択されていた
「中村さん、手術のお時間です」
ナースが腎臓移植の手術の時間であると患者を呼びにきたのだ
中村は部屋から手術室へといなくなった。残った患者は話の話題を変えた
「最近は自分の皮膚の万能細胞からクローン臓器を培養して移植できるなんて夢みたいだわ」
「私が子供の頃はそんな事は有り得なかったんだけどな」
「俺の脚にロバウドの足を移植できだらいいのにな」
「無理じゃないかしら、細胞の拒否反応が出るわ」
「じゃあ俺はリナウドの万能細胞全体を養子にして、サッカー選手に仕立ててやる」
「いくらサッカーが好きでも、そんなサッカー馬鹿は倫理に反するわね」
「別に絵空事だろ。そんな事が出来ないのは俺だって知ってる」
専門チャンネルに映し出されたサッカー場のドームには電子広告の空が広がっている
549記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/07(日) 16:43:14
>>546 「マップス」という漫画を思い出した。オチは違うが、銀河系から出れないのは一緒。
たぶん、オチはマップスのが上。

>>547 面白い展開だったけど、オチなかったね。
550記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/07(日) 16:45:55
>>548 これは面白い。クローンが実現したら、本当にこうなりそうだ。
551味噌お:2008/09/07(日) 16:57:04
感想ありがとうございます。

「ジョニーは戦場に行った」
「マップス」という漫画は未読だったのですが読んでみようと思います
世界観としてはシミュレーテッドリアリティの宇宙を想像していました

「ズボン」
序盤だけで終わってる感じですね。指摘ありがとうございます、反省です

「サッカー最終予選」
ありがとうございます。色々と励みになります
552味噌お:2008/09/07(日) 19:22:05
「その饅頭、ステーキ味」(1)

「見てらっしゃい寄ってらっしゃいTVショッピングのお時間です。みなさんこんばんわ」
深夜の通販番組は大抵は突飛なものを宣伝している
「今回ご紹介するのは当番組がこの日の為にパペト株式会社と共同開発した商品です」
「まあ、何かしら」
台の下から出てきたのは普通の饅頭であった
「驚く無かれこれはステーキの味がする饅頭です」
「おおおお」
観覧席にいるおばちゃん達の叫び声が聴こえる
ステーキ味の饅頭?、それなら普通のステーキを食べれば良いのではないか
「視聴者の皆さん。昨今の物価の高騰の煽り
高いお肉はどうしても手が出せない、そんな事はありませんか?」
「あるあるあるある」
観覧席はいつもこうだ
「そこでこの商品、何と原価の安い饅頭でステーキの風味が味わえる商品なんです
さらに栄養価も一般のステーキ一切れ分添されており、健康面もバッチリです」
「おおおお」
「まあ、何て素晴らしいの!」
相方のお姉さんもおばちゃん達に合いの手を加える
553味噌お:2008/09/07(日) 19:24:08
(2)
「ところで皆さん、今回は放送17周年の特典といたしまして
さらにもう一つの商品をお付けいたします」
「そんな、これだけでも良いのに!」
ステーキ味の饅頭か、手頃な値段が魅力なのだろう
「コクコーラの味の水を作る水筒です」
「コクコーラ味の・・・・みず!!」
「この水筒は雨水等を原料にして水の成分をコクコーラに変える商品でございまして
ほぼ無限に原価ゼロ円でコクコーラを飲めるという夢のような商品です」
そんな・・・、私は電気が走ったように電話を掛けた
電話しなければならない。まさに夢の様な商品だ。直ぐに電話しなければ

それから1年の歳月が過ぎた
見てらっしゃい寄ってらっしゃいTVショッピングはパペト社の商品を取扱わなくなった
私は、あの番組を見た直後に勤務先のコクコーラ日本支社に電話を掛け
コクコーラに対するパペト社の味の侵害に対する裁判を起こさせたのだ
その後裁判が始まりコクコーラは表層ではない味への著作権を獲得したのである
パペトは味への著作権違反を皮切りとして次第に勢力を弱め我が社に吸収された
味の侵害があってはならない。なぜなら我が社は世界有数の企業であるからだ
554記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/08(月) 10:09:17
>>552-553 コクコーラ味の水が無料で飲めたらいいなあと心躍りましたが、オチはいまいちですね。
コカコーラにそっくりな味のコーラは他社でも売ってるので、味の侵害で勝訴できるとは思えないです。
それに、コクコーラ味の水が商売敵につぶされて、夢壊れたような結末でした。
555味噌お:2008/09/08(月) 12:11:56
そうですね。書いてる途中で味の著作権は存在するのかという事を考えて
エンドの方向を変えたのですが、そのようなものは一般的な判例なども無いようですね。
存在するとしたらとんでも無い世界になってしまいそうで
オチはグッドエンドで終わらせた方が良かったですね

(エンド別バージョン)
それから1年の歳月が過ぎた
パペト社の製品は世界規模でヒットを飛ばし、味変換器具は社会のあり方をも変えた
食物や料理の味は多国籍規模の工場で生産された水と小麦粉の混合物を原材料として
器具さえあれば誰にでも再現できるようになった。最近では食感でさえ再現可能だそうだ
これにより食料事情は類を見ない程に緩和され、貧富の差は味わえる料理の幅のみになった
現在私はアンドロメダ銀河の第3火星で豊富にとれる水と物質から、
私が勤めるコクコーラを再現して販売できる様に日々味覚のテストを重ねている
実にやりがいのある事だ。心なしか我が社のコクコーラが地球よりも美味しく感じる
556名無しは無慈悲な夜の女王:2008/09/09(火) 10:18:42
腹が減った、世界的に食料が枯渇してるらしく、 たまに口に出来たかと思いえば、物が悪いのか変な味がしている。
こころなしか吐く息が臭く、最近では心臓にも違和感がある、
もしこの不調の原因が食料にあるのであれば、配給係に苦情を伝え、改善してもらわなければ、
いや、まだこの砂だらけの過酷な土地は恵まれているのかもしれない。

以前のように、仲間達が集まり競いあったというような事も聞かない、それどころか、あのボソボソと喋るいけすかない新参者達が幅をきかせている状況らしい。

私は、私達をこんな不自由な身体に造りたもうた神を呪う、
しかし、なぜ神はあんなひ弱な身体なのに自由に動けるのか、なにか秘密があるのだろうか、
以前、ふと、気付くと神の仲間が私の目の前で倒れ、体液を流し大騒ぎしていた事がある、あの体液に秘密があるのだろか、
そういえば、それより前の記憶は曖昧だ、やはり、神の秘密はあの温かな体液にあるのだ。

次の機会、この僅かに残された力で、神達の柔らかな身体を踏み、潰し、仲間達にもその秘密を分け与えよう。

赤く濡れ、飢える事のない身体で、どこまでも走り続ける私達はさぞ美しいだろう。
ああ、今から愉しみだ。

はやくシャッターを開けにこい、忌ま忌ましい神め。
557記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/09(火) 11:28:49
>>555 転という要素はなくなってしまいましたが、この方がまだ良い物語のように思います。

>>556 ちょっとわかりにくいですけど、自動車さんの話ですかね。そうなら、面白いです。
ちがってたら、ごめんなさい。
558名無しは無慈悲な夜の女王:2008/09/09(火) 11:48:51
はい、ガソリン車のつもりで書きました。
実は初めてSF ホラー板をみつけ、このスレも見つけて初書したのですが…SF短編っての見逃して、ホラーな感じになってしまいました。
読んでくれてありがとうございました。
559イノベーション(1/2):2008/09/09(火) 13:39:54
カンコーン、と耳内スピーカからチャイム音がした。
スピーカは続いて、完璧に合成された俺好みの萌え声を元気いっぱい発する。
<<いのべーしょん!>>

かくして、本日”も”イノベーションが起こり、世界は改善された。めでたしめでたし。

[・・・最近思うんだけど]

AR(複合現実)コンタクトは目薬として注すと、その液体はゼリー状なり、形状が
各人の視力に合わせて自動調整される。電子回路が作られ、視野にネットの情報が
表示される。これは俺のARコンタクトに映った誰かの呟きだ。

[イノベーションの速度が速くなってきているような]

なるほど。今回は二日連続だったしな。
別の誰かが発言する。

[朝起きたら、世界のテクノロジーが変わっているんだからね。凄いことだよ]

まあ、な。若干恐ろしい気分もするが。
なぜここまでイノベーションの速度が上がったか?通称「自己改善コンピュータ
(正式名称は忘れた)」の発明によるものが大きいだろう。人間の脳を模すると
いう意味では文字通り電脳化した訳だ、コンピュータは。

ちなみに、魂まで感じる萌え声合成ソフトも、ARコンタクトも自己改善コンピュータの発明でもある。
560イノベーション(2/2):2008/09/09(火) 13:40:57
[昔で言えば、明治時代の人間が朝起きたら、世界が昭和時代のテクノロジーになっていた、みたいな?]

それは大げさだな。気持ちは分からないでもないけど。
また別の人間が呟き、対話が続いていく。

[昔、ようやくインターネットがある程度普及した頃、TV世代でついていけなかった人が結構いたという話を聞いたことがあるよ]

[イノベーションの速度が人間の理解力の許容量を超える可能性はないかな?]
[朝起きたら、世界の常識が変わっているんだぜ?全ての人類が旧世代の人間になってしまう]

[・・・うーん。若者はある程度はついていけるだろうね。でも、発狂する人間が出てくるかも(笑)]

[いや、笑っている場合じゃないだろ]

・・・なるほど。でも、多分大丈夫だ。このネット上の呟きも自己改善コンピュータは見ているはずだ。やつは、「人間の理解力の許容範囲内で技術を進歩させるように『改善』する」のではないかなあ。

俺は安心して二度寝することにした。
561記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/09(火) 16:16:53
>>559-560 イノベーションの意味がわからず、エキサイトに行ってしまったよ。
意味は革新のようだ。面白い題材だが、何か物足りない。それが第一感でした。
562名無しは無慈悲な夜の女王:2008/09/09(火) 16:34:33
少年は大事な事を忘れていた、いや、忘れるべき事を思い出してしまったのかもしれない。
身体がドロドロに溶けているような感覚のなか、少年は目覚めた、
モヤがかかったような意識のまま歩こうとするが、動けない、手探りで辺りを触ろうとしたが、あのたくましく、なんでも掴めた手が、感覚だけを残して無くなってしまっていた。
それどころか、 大好きな草花を見た目も、壁すら登れた脚も、柔らかく弾けそうな肌も全てが消えていた。

ともすれば消えそうな意識のなか辺りをうかがうと身体のまわりを薄く固い膜がおおっているのに気が付いた、少年は押してみる、ビクともしない、
もう一度、意識を必死で集中し押してみる。
すこし歪んだ気がする。
押す
押す
押す
ピリ
少年を包んでいた膜が破れ、少年は自由を求め外に飛びだす。


学生が一人データをとっている、健康に育てた幼虫がサナギになった後、故意にストレスを与える事で、羽化するまでの影響を調べるためである。

学生が進路の事を考えながら、昨夜サナギになったばかりのサンプルに初めての電気刺激を与えると、
突然震えだした後ヒビが入り、南米産の大きな蛾になるはずだった体組織がドロリとこぼれ落ち、シャーレに白、緑、黄色の美しいマーブル模様を描く。

学生は巨大で嫌悪感を拭えない蛾より、よほど綺麗だと思いながら、シャーレを持って教授に報告するべく部屋を後にした。
563記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/09(火) 17:10:00
>>562 わかりにくい話なので、解釈がいくつもできてしまう。
少年は蛾であり、幼虫からサナギになり、孵化した。
しかし、電気刺激を与えられたため蛾にはならず、マーブル模様の液体になってしまった。
という話だと読みとった。マーブル模様が何なのか、もっとわかりやすく書くべきだと思った。
564名無しは無慈悲な夜の女王:2008/09/09(火) 21:06:31
そうですね、書いてる自分は設定が頭にあるので、つい省きがちになってました。
説明過多と読み手にお願いするとこのバランスが難しいです。

また通勤中や昼休みに書かせてもらいます。
565559-560:2008/09/09(火) 21:34:41
>>561

レビューありがとうございます。
確かに、考えてみれば、イノベーションって言葉はあんまり一般的ではないですね。
IT関係者として感覚が麻痺している部分がありました。
物足りないのは私の技量不足/構想力不足でしょうね。
566名無しは無慈悲な夜の女王:2008/09/09(火) 21:51:11
かわいい爪を拾ったよ、ツルツル赤く、ピカピカ光る小さな石でオシャレもしてる。
どんな人についてたのかな、何指だったんだろ?髪は長いの?短いの?痩せてた?、それともふくよかなのかな?学校の成績はどうだったんだろ?
あまりに素敵だから、毎日毎日褒めた、嬉しそうに引き出しの中でクルクル回るから、僕も嬉しくなって益々褒めた。
でも近頃機嫌がよくなくて、話しかけても知らんぷり、
ふさぎ込んだかと思えば机をカリカリガリガリ引っ掻いたり。
心配してたら、今日は朝からご機嫌さん。
昨日とは見違えるように赤くツヤツヤと、いつの間に作ったのか小さな小さなエプロンまで着て、僕のかわいい爪が戻ってきたよ。
なんにも言わないけど、1つ判った事がある、以前のキミはあんまり学校の成績は良くなかったんだろうな。

出会った時からキミに言ってた僕だけのツマヨウジっていうのは、妻用事じゃなくてホントは爪楊枝って書くんだよ。
でも今は間違いじゃないかもね、僕だけのキミに、キミだけの僕になったから。

でも、玄関に醜く倒れている汚いコレをどうしよう。

キミは赤くエプロンを染めながら飛沫をあげてクルクル回り喜んでいる

僕は微笑みながら義母へ悲痛な声で電話する。
567ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/12(金) 01:48:56
【年寄、川田修平】1/5

私は川田修平。
前姿は元横綱の《 日の錦 (ひのにしき) 》
5年前に引退をして、今は普通の人間の姿に戻っている。

当時、18歳だった私が持っていたものは、若さだけ。
うまく行けば6年後には高額な収入が見こめる、力士という選択をし、協会と契約を結んだ。
私のように若くして力士になる事を希望する者は、皆、新弟子検査という細胞検査を受ける。
最新の分析システムにより、遺伝子レベルでの肉体的適正が測られ、それにパスした者は、さらに純粋な日本人としての精神性の分析選別を受ける。
これから6年間、相撲という国技に携わる者が持っているであろう特性、忍耐力、礼節心、謙虚さなどなどの有無が調べられるのだ。
その厳しい検査を通り、力士となり、6年間、戦い続けられた者達には、対価として、その肉体的、精神的資質の提供者として、協会から高額な賃借料が与えられるのだ。
そして、私の場合だが、6年間の結果として、横綱という最高位にまで、のぼり詰めた事による追加的、成功報酬として、莫大な数字の恩給も加算されている。
引退した現在、私は、誰もがうらやむ暮らしをこの若い年齢で手にいれる事が出来ている。
まあ、あの厳しくてつらい力士生活を考えると当然の報酬なのだが。周りはこの事には、あまり理解は、しめしてくれない。
568ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/12(金) 01:50:01
【年寄、川田修平】2/5

そんなことを考えながら、私は、また、古傷の右ヒザを撫でていた。
現役時代の故障による肉体的な後遺症は、最新の医療技術により、まったく心配がないはず。
痛みなども、まったく無いのに、なぜか右ヒザの古傷の場所を撫でている自分に気がつく。
引退した元力士に聞くと同じような事を経験している人は多い。

2068年の現在、大相撲界は、空前の大ブーム。
大昔、今から70年程前のあの伝説となっている、若貴時代をも、しのぐ勢いで熱狂的大相撲ファンが増えつづけていた。

だが、少し前までの相撲界は衰退しきっていて、消滅の危機にさらされていた。
国技であったはずの大相撲衰退の原因は、日本国全体、その国としての体力の低下があり、また、日本国民の精神力の減退もその一つとわかっていた。
日本人の生活様式が大きく変化し、実際に力士として参加するその人材としての圧倒的な質の低下がおこっていた。
そのために国際化との名のもと、やむなく行われた外国人力士の推進化。
それらを含めたその他、複数の負の連鎖作用、そしてあの事件。ロシア出身力士による大麻疑惑。
それに続く北の湖理事長の辞任。
この後、興行としての大相撲は成り立たなくなり規模の縮小を繰り返してきた。

そして今から12年前に、文部科学省を中心に国技としての大相撲の復権プロジェクトが開始された。
569ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/12(金) 01:50:47
【年寄、川田修平】3/5

その当時、すでに実用化され一般社会に普及し安全性が保証されていた、最新の生体医療技術が使用された。その他の多くの分野の先端技術も導入され、まったく新しい新弟子検査が開始になった。
一攫千金を夢見る入門希望者の遺伝子、細胞レベルでの適性が調べられフルイにかけられる。

人的資質に問題のあった親方制は廃止。
歴史のある各部屋の名は残り、各力士はそれぞれの部屋に属してはいるが、最新の施設の管理下に移された。
スポーツ医学理論に基づくトレーニングが実施され専門分野のトレーナーが適切な指導を行い、優秀な力士を作り上げてきた。
新弟子検査に参加できる条件はシンプルだ。
純粋な日本人であること。18歳である事。
そして驚くべき変化、性別は問わない。いや、今だからわかっている事だがむしろ遺伝子特性では女性の方が適性の数値が上だったのである。
力士転換処置を施された体は完全な男性としての力士の姿へと変わる。
転換処置された体はどこから見てもまったく区別はつかない。
過去、いろんな女型力士に聞いた事があるのだが、当の本人さえも力士時代、よほど意識して考えなければ自分が戸籍上女であったことは、感じなかったそうなのである。

秋場所14日目の大一番がテレビモニターの画面に映っていた。《 萌の華 (もえのはな ) 》は、堂々とした風格でシコをふんでいた。引退した私は今では普通の大相撲のいちファンでしかなかった。
そういえば今場所、全勝中の東の大関、この、萌の華の原姿は女性。(つまりは女性が力士転換処置を施され6年間男性として生きているという事)
こんな事は、今の大相撲界ではあまり珍しくは無いのだが。
570ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/12(金) 01:51:39
【年寄、川田修平】4/5

最近、調子の出ない横綱、《 毫乃門 ( ごうのもん ) 》(こいつは生まれつき男)との立ちあいが始まった。
ガップリよつに組み、相手方の上手を瞬時に切る萌の華。
そのまま一気に土俵際に追いこみ、豪快な上手投げで、横綱を土俵の下へたたきつけている映像を見つめた。

こんなシーンを見るたびに私は現役時代の最強のライバル、あいつの事を思いだす。
私が横綱だった頃、大相撲の歴史上初の女性型力士で歴史上最高の横綱だった 《 美山 ( びざん ) 》
あいつだけにはどうしてもかなわなかった。あいつの前に立つといつもの力が発揮出来ずに負けてしまっていた。

あいつは引退してからいったいどこでどうしているのか。世紀の大横綱、美山。その消息をマスコミはおったがついには探しあてる事は誰もできなかった。
本来の女性の体、精神に戻り、どこかで優雅な恩給暮らしをしている事は間違いない。

ウィン!!という体内に内蔵された本人だけにしか聞こえないアラームがやさしくささやき、私は今の川田修平の生活に引き戻される。
目の前の空間には、カスタマイズされたサイトの映像が起動し、浮かんでいた。
これから食事をするレストランと待ち合わせの場所を知らせているのだ。
約束の時間だ。
来年1月、3年間の結婚契約を結ぶ相手の好美。176センチの長身でスタイル、マスクもモデルなみの女性。
頭も良く、性格も思いやりがあり、礼儀をわきまえ、行動力も抜群。結婚相手にはこれ以上の相手は存在しない。
571ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/12(金) 01:56:31
【年寄、川田修平】5/5

自宅をでると、オートタクシーがすでに待っていて無言で乗りこむ。
すべてはカスタマイズ済みでレストランへ自動運転が開始された。
すべて申し分の無い彼女だったが、一つだけ、彼女は、なぜかあまり自分の事を話したがらない。
好美も私と同じく若くして上流階級の暮らしを手にしている。

ああ!しまった!好美が先に席に着いていた。小走りで彼女が待つ席に向かう。ステキで大好きな好美だが、だからこそなのだろうが…どうしても頭があがらない。あの娘の前に立つといつもの私ではいられない。

この店で一番良い席に一般会社員の1年分のサラリーに相当する金額の美しいドレスを身にまとった好美がいた。ドレスからすらりとした美しい素肌の長い足が見え、眼を奪われる。

好美は、しきりにヒザの辺りを撫でていた。そして、私に気づき、小さく手を振りながら微笑む…

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
未来の大相撲考えてみました。

北の湖前理事長人相悪っ!現役時代は、すごかったんだすけどネ。
大相撲今後どうなるんでしょうか…
572記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/13(土) 07:27:17
>>566
>出会った時からキミに言ってた僕だけのツマヨウジっていうのは、妻用事じゃなくてホントは爪楊枝って書くんだよ。
この一行が面白かった。全体としては、シュールだが、爪が君に昇格する要因がわからず戸惑う。
最後の、義母に悲痛な声で電話するのも理由がわからない。
573記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/13(土) 07:35:05
>>567-571 人を身体改造してスポーツをするというのは、未来には実現しそうではある。
最後の好美がどことなく美山と同一人物のような気がするのも面白いところだ。
しかし、全体な好みとしては、>>548の「サッカー最終予選」のが好きだ。
574ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/13(土) 09:34:51
>>573さん
感想ありがと。自分の書いたものに何らかのコメントあるとやはりうれしいですね。
そういえば、味噌おさんの「サッカー最終予選」の話と設定似てしまってます。特に意識しなかったんですが。
私もあれくらいで短くさらっとまとめられたら良かったんだけれども、どうしても長くなってしまいます。

>最後の好美がどことなく美山と同一人物のような気がするのも面白いところだ。

ああ肝心のオチが伝わらなかったんですね。好美と美山は同一人物という設定なのでした…
ヒザを撫でていたというのがキーポイントだったんですが…

修行が足りませんでした。
575味噌お:2008/09/16(火) 21:29:04
「OH!SUMOU」(1)

「今日は冬場所の11日目です。昨日の10日目で手首を痛めてしまった超大海と
初日から現在負け無しの朝星龍との取り組みが行われます」
あっしは最近世界中でも人気のオーギュメンテッド・リアリティの拡張土俵が設置されている
角界の拡張世界の国技ヶ原まで本日の大一番を観戦しに来た
ところで何故あっしが生の国技館に観に行かないのかって?
そいつは今からのお楽しみってもんだよ、だんな。
それからお前さんも江戸っ子だったらさ、このメットを被んなよ。観戦と安全の為だからさ
「時間一杯、行事の木村庄之助が仕切ります」
国技ヶ原には丘1つほどもある木村庄之助が北柱の山の麓から現れた
西柱の山からは海底火山ほどある超大海が日本海の海水を拡張土俵に撒き散らし
東柱の山からは富士山ほどもある朝星龍が腹を叩いて火山灰を周囲に積もらせた
「両者、見合って見合って・・・、はっけよーーーい、残った、残ったーーーー!!」
その時間、南柱の山麓に陣取って幕の内弁当を喰らっていた居たあっしは
立会いの際の粒子加速器の衝突速度にも匹敵しそうなぶちかましに巻き込まれ
電波の乱れを味わって、0.5秒間の刹那だけ砂嵐の国を闊歩した
「超大海、突っ張る、突っ張る、左と右の応酬です」
WHKの実況解説が平原に言霊となって響き渡り
頭のメットを通してあっしは、内燃機関に入り込んだかの様な閃光と爆音を聞いた
576味噌お:2008/09/16(火) 21:30:10
(2)
「朝星龍、ひるむ事無く突き進み、超大海の上手を掴みに掛かる」
流石横綱、かくのごとき試合は慣れっこらしい
「おっと超大海、その手を弾き相手の背後に回った」
「朝星龍もきびすを返して、面と向かい合いましたね」
国技ヶ原では巨大な山岳ほどのまわしを巻いたホログラムが残像を引いて大地を揺るがした為
途端に辺り一面に生えていた草木は薙ぎ倒され、そこに住む野性の動物達は大移動を始めた
(と言っても全ては拡張世界の立体映像だから原野の生態系には無害なのではあるが)
「両力士、がっぷり四つに組みました」
「超大海が下手、朝星龍が上手ですね」
力比べは朝星龍に分があり、超大海は土俵際まで押しやられた
「後が無いですね、超大海。既に土俵端の太平洋沿岸部まで追い込まれました」
誰もが勝負は決したと思ったその間際、超大海の体の奥から黄金色のオーラが発散され
この黄金色の力士はこの惑星の軸となり地球の自転速度を3倍速く回転させた
それと同時にもう片方の力士は下手投げで成層圏までぶっ飛んでいった
朝星龍はついで次々と地球の大気圏を越え、仕舞いに重力圏を越えた直後に月にぶつかって
熱圏まで落ちて、巨大な力士のホログラム立体映像は電離してプラズマ化して燃え上がり
太平洋の水平線の彼方へと落下した。
その為エベレストほどもある大津波が国技ヶ原へと押し寄せる事となり
あっしを含む観客皆の意識はモンゴル平原まで津波と共に押し流されそうになった
咄嗟にぎりぎりの所であっしはメットを外して難を逃れたが
周囲にはショックで気絶したり海水の冷たさで凍えているご婦人などもチラホラ見られた。
・・・ふぅ。・・・うんと、ああと、ええと、・・・まあ、こりゃ、・・・危なくてしょうがねえや
何だ、・・・相撲ってのはさ、伝統がさ、・・・あるわけなんだよな
お前さんもさ・・・、江戸っ子だったらさ
こんなメットばかりにさ、頼ってちゃいけねえな・・・。本物も・・・、見ないとさ・・・
ついでだが、あっしの意識がハッキリと戻ったのはそれからしばらくしてから後の事だった。
577味噌お:2008/09/16(火) 21:36:31
ケロロ少佐さんの【年寄、川田修平】に触発されて書きました
方向性は違うので大丈夫だとは思うのですが、申し訳ないです。
世界観は拡張現実とyoutubeのSUMOUです。
578記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/17(水) 07:25:04
>>576 面白かったです。拡張現実というのが、どこまで観客に影響を与えるものか良くわかりませんが、
少なくとも語り手は精神的に衝撃を受け、意識を失ったようです。
本物よりも楽しい演出付き相撲は見事でした。
579ケロ:2008/09/17(水) 10:34:55
味噌おさん、
拡張現実&youtubeのSUMOUですか。
せっかく書くならこれくらいぶっ飛んだ表現の方がいいのかもしれませんね。
私には書けないスケールの話でした。
次回作期待します。

ああ、それで、時々行をあけて書かれた方が読みやすいかなって思うのですが、
580ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/19(金) 01:13:30
【妄想システム(買い編)】 1/2

「おおーおおっっー今月!リッチ!」端末の画面を操作して 自分銀行 の口座の残高をチェックしていた一樹は思わずさけんだ。
国から支給される基本生活金の他に、今月は、けっこう、まじめに働いたお陰だ。
今日の夕方のバイトまでだいぶ時間がある。天気も良いし、《 買い物 》にでも出かける事にした。
そう、こんな日は、アレ! ( MOUSOU ) をやるのには最適。

公共単身者マンションの自宅を出る前、ネット端末でMOUSOUシステムの管理会社にログインしサーチを開始させておく。

自宅のある金町駅から電車に乗り、上野へ。その後は、山手線に乗り渋谷まで行き、合計3時間、街中をぶらぶらする。
その間、電車の中や、上野の交差点、そして渋谷、TSUTAYA前…
それぞれの街にあふれる女の子たちを見て回った。
受付はオートに設定されているので俺はただ街を歩き、気に入った女の子
を見つめ、提供者を指定するだけでいいのだ。

いた!あの子にしよう。ハチ公前はたくさんの提供者であふれていたが、一樹が指定したのは、渋谷駅南口の山手線の改札に向かって歩いて行く女の子。

彼女は今年流行の白と青竹色の生体糸で編みこまれた上着を身につけ、軟化構造体で精製された金属製のスカートをはいていた。
特に、胸の谷間を強調させたデザインのブラウスに目を奪われた。

地下街の最深部6階にある、MOUSOU端末が設置されたコーヒーショップに入り、席に付いた。
ココで別に変な事をするわけではない。MOUSOUに必要な20分間、居眠りをするだけ。
581ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/19(金) 01:14:42
【妄想システム(買い編)】 2/2

意識を集中してこめかみに取りつけられた非接触型COMを起動させた。すぐに店内に設置されている装置とリンクが張られた。
意識が薄れ、眠くなる。電極から流れてくるあの娘のデータを待った。
すぐに認証がおりて購入したファーストのあの娘、小百合ちゃんが声をかけてきた。
これはよく昔のサイバーアニメに出てくるような電脳とかジャックインとか脳と直接接続させるような行為ではない。
ちょっとリアルな夢を見ているという程度のこと、精神的な習慣性も心配が無く、コンピューターウィルスの感染などもまったく無い軽いお遊びなのだ。

提供者と購入者との通常の取り引きの場合は、お互いの個人データは隠れているので問題は無く、提供者の感情、行動パターンの中でお付き合いが成立する。
俺たち男の購入側のデータは、システム運営会社にはあるわけだから既定以外の強引なルール違反は出来ないようになっている。
まあ、軽い恋愛ごっことでもいうのか、有料の夢みたいなモノと思えばいい。
今日の相手、百合子ちゃん(顔データはホンモノだが多分…絶対…名前や住んでいる場所、家族関係とかは、偽装されている)は、とってもかわいらしく、大きな瞳の女の子でちょっとプライドが高い感じ…
取り引き時間の主観夢時間の2時間を十分楽しんだ。
手をつないで渋谷の街を歩き、楽しく会話をして最後のイベントの軽いキスが終わるまで。
もっと高額な、最後の段階まで逝き、かなりのエロ行為まで許可されている、フルバージョンの特Aランクも存在しているが、俺はまったく使おうとは思っていない。エロオヤジじゃああるまいし…
俺は、ちょっと時間がある時に可愛い女の子とぶらぶらと街歩きをするだけで満足なんだ。
世間はこの新しいシステムを新手の買春だといっているけど、友達やみんなは、もちろん俺もそうは思っていない。
20分間の2時間を楽しんだ店を出てから、地上のリアル渋谷の街を歩く。

さあ、自宅に戻ってから、すでに購入している2人分の別の女の子の提供データを読もう!
582ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/19(金) 01:15:43
【妄想システム(売り編)】 1/2

「あちゃああー!今月ピンチ!」端末の画面を操作して 自分銀行 の口座の残高をチェックしていた桃子は思わずさけんだ。
国から支給される基本生活金は、いつのまにか使っちゃってて、ゼロに限りなく近づいている。
しかも今月はあんまし働いていなかった結果も加わって…
今日はバイト休みだし、天気も良いし、お小遣い稼ぎのアレ! ( MOUSOU ) には持ってこいかなって思う。
さっそく一番お気に入りの服に着替えはじめた。
今日の服は今年流行の白と青竹色の生体糸で編みこまれた上着と軟化構造体で精製された金属製のスカート。

公共単身者マンションの自宅を出る前、多機能カガミの前に映る自分の全身をチェック。ネット経由でのルックス評価が即座に送られてきて、思った以上の高得点に思わずその場で一回りした。
もう一度、カガミの前に立ち、ブラウスのボタンをもう一つはずし、胸の谷間を強調させてから外に飛びだした。

自宅のある用賀駅から地下鉄に乗り、渋谷。渋谷から山手線に乗り新宿まで行き合計、3時間、街中をぶらぶらする…だけ…
時間中、電車の中、渋谷の交差点、新宿、アルタ前…その間、かなりの視線が私に向けられていたのを感じた。
交渉はオートに設定されているので私はただ街を歩くだけ。
私を見て、私のルックスを評価し、気に入ってくれた購入者を待っているだけでいいのだ。

世間はこの新しいシステムを新手の売春だといっているけれど、友達やみんなは、もちろん私もそうは思っていない。
583ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/19(金) 01:17:44
【妄想システム(売り編)】 2/2

夕方には自宅へ戻る。
さっそく、端末の画面を操作して 自分銀行 の口座の数字をチェックする桃子。
うーん 9件のお買い上げがあった。
かるーいお付き合い程度のお客からの入金が6件。すべて私より年下の子たち。
ちょーっと深いお付き合いのお客が2件。この2件は私と同年代の男の子。
「おっ!」1件だけフルバージョンの特Aランクのお客がいた。「げっ!」私より30も年くったエロオヤジと表示されていた。
この手の客を取るのは、かなり金に困っているときだけにしている。
私のデータがどんな目にあわされているかちょっと罪悪感はあるが…
別に意識が存在しているわけではないから、気にしない事にしている。

私がしている事は、よく、昔の さいばー アニメに出てくるような でんのう とか じゃっくいん とか脳と直接接続させるような行為ではない。
私を購入している人達はちょっとリアルな夢を見ているという程度のこと、精神的な習慣性も心配が無く、こんぴゅーたうぃるす の感染などもまったく無い軽いお遊びなのだ。

私、提供者と購入者との通常の取り引きの場合は、お互いの個人データは隠れているので問題は無い。私、提供者の感情、行動パターンの中でやり取りが成立する。
購入者の男側のデータは、システム運営会社にはあるわけだから既定以外の強引なルール違反、犯罪行為は出来ないようになっている。
まあ、軽い恋愛ごっことでもいうのか、有料の夢みたいなモノと思えばいい。
今日の相手には、私の顔データはホンモノだが名前や住んでいる場所、家族関係とかは、偽装されているのだ
584ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/09/19(金) 01:27:10
電車の中で妄想したちょっと危ない、ライトな仮想世界システムの話をつくりました。
同じストーリー間での、お互いの側から見た二つの話というスタイルで載せてみました!!

BSまんが夜話『よつばと』面白かった…寝ます…
585味噌お:2008/09/21(日) 18:08:14
ケロロ少佐さん。
大変恐縮です、読みやすさについてその通りだと思います。
また書かれている話に独特の味があって面白いです
こちらこそ次回作を期待しています。
586記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/09/24(水) 08:42:09
「妄想システム」買い編、売り編は面白かったです。二つの視点からとらえたのが新鮮でした。
587ケロ:2008/09/26(金) 17:16:58
>>586さん
感想ありがとうございます。
もうひとつ追加し、三つ目の視点、意識など発生しないはずの簡単なデータだけの装置の中の桃子からの話も作ろうかとも思ったんですが…
長くなりそうでやめました。

今回のような、ちょっぴりエロが入った未来システムのお話は大好きでこれからもいろいろ考えてみようと思っています。

588記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/05(日) 13:50:19
なんか、創作発表板というものが二ヵ月前からできているようです。
知らなかった。ビビりました。
589名無しは無慈悲な夜の女王:2008/10/06(月) 14:50:02
このあいだMTBに乗って山の峠を走っていると、突然西の空がビカーっと
光ってUFOが頭上に現れた。逃げるまもなく、猛烈な光を浴びた俺は
気を失った。

気がついたらUFOの中で、俺はオリに閉じこめられていた。オリの
外には二人の宇宙人が立って俺をじろじろ見ていた。

俺はだいぶ長いこと気を失っていたらしく、猛烈に腹が減っていた。
恐怖も忘れ、俺はオリの金網をガシャガシャとゆすり、宇宙人に
「なにか、なにか食い物をくれ」と叫んだ。

すると宇宙人は、オリの天井を指さした。

天井には、なんと一房のバナナがぶらさがっていた。バナナを食い
たくてたまらなくなった俺は、なんとかそれを取ろうとしたが、
バナナは床から3mくらいの高さにあってどうしても手が届かない。

俺が、狂ったように何度も何度もジャンプを繰り返していると、
宇宙人が床の方を指さした。床には50cm四方の箱と1mくらいの棒が
落ちていた。しかし箱も棒も食えそうにもないので無視し、俺は
ひたすらジャンプを繰り返した。

やがて疲労と空腹で、俺はとうとう気を失った。

再び意識を取り戻すと、俺は最初の峠に倒れ伏していた。ふと
横を見ると、MTBと、あの一房のバナナが落ちていた。俺はその
バナナを食べながら、あの宇宙人はいったい何をしたかったの
だろうと思った。
590ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/10/06(月) 16:22:15
>>589さんの作品

単純なありきたりな場面、そして展開で、その中で主人公のまぬけぶりで笑わせる、
こういう書き方もあるんですね。すごい…
591記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/07(火) 10:32:04
このあいだMTBに乗って山の峠を走っていると、突然西の空がビカーっと
光ってUFOが頭上に現れた。逃げるまもなく、猛烈な光を浴びた俺は
気を失った。

気がついたらUFOの中で、俺はオリに閉じこめられていた。オリの
外には二人の宇宙人が立って俺をじろじろ見ていた。

俺はだいぶ長いこと気を失っていたらしく、猛烈に腹が減っていた。
恐怖も忘れ、俺はオリの金網をガシャガシャとゆすり、宇宙人に
「なにか、なにか食い物をくれ」と叫んだ。

すると宇宙人は、オリの天井を指さした。

天井には、なんと一房のバナナがぶらさがっていた。バナナを食い
たくてたまらなくなった俺は、なんとかそれを取ろうとしたが、
バナナは床から3mくらいの高さにあってどうしても手が届かない。

俺が、狂ったように何度も何度もジャンプを繰り返していると、
宇宙人が床の方を指さした。床には50cm四方の箱と1mくらいの棒が
落ちていた。おれはこれはしめたと思い、棒と箱をバナナに向かって投げ、
バナナに当てて、落っことそうとした。結果、三十回投げたところで
バナナが落ちてきた。おれは無事バナナを食べることができた。

宇宙人は困った不思議そうな顔をした。

やがて、疲労でおれは気を失った。

再び意識を取り戻すと、俺は最初の峠に倒れ伏していた。
あの宇宙人はいったい何をしたかったのだろうと思った。
592記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/07(火) 10:33:36
>>589さん、インスパイアされ、リスペクトしオマージュして作品を書きました。
どうか、許してください。
593ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/10/07(火) 13:21:40
このあいだMTBに乗って山の峠を走っていると、突然西の空がビカーっと
光ってUFOが頭上に現れた。逃げるまもなく、猛烈な光を浴びた俺は
気を失った。

気がついたらUFOの中で、俺はオリに閉じこめられていた。オリの
外には二人の宇宙人が立って俺をじろじろ見ていた。

俺はだいぶ長いこと気を失っていたらしく、猛烈に腹が減っていた。
恐怖も忘れ、俺はオリの金網をガシャガシャとゆすり、宇宙人に
「なにか、なにか食い物をくれ」と叫んだ。

すると宇宙人は、オリの奥にあるドアを指さした。

ドアからあらわれたのは、わずかな布をつけただけの女性だった。
鮮やかなブロンドの髪、すらりと長くのびた足。
豊かなバスト、くびれたウエスト、何よりも目を引くのはモデルのような整ったマスクだった。

俺はその微笑みの美女に話しかけるが彼女は何を話しかけても微笑むだけ。
この女は、日本語が話せないのか、それとも言葉自体を発せないのか。
なぜかしきりにこの女は俺の体を触ってきて微笑み続けているだけ。

この女にかかわっても何も変わらないと思い無視し、俺は
ひたすら宇宙人たちに食い物の要求を繰り返した。

やがて疲労と空腹で、俺はとうとう気を失った。

再び意識を取り戻すと、俺は最初の峠に倒れ伏していた。ふと
横を見ると、MTBと、心配そうに見つめる男がいた。俺は恋人の
隆之に助け起こされ、手をつなぎ、仲良く峠を下りながら、あの宇宙人は
いったい何をしたかったの だろうと思った。
594ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/10/07(火) 13:24:12
>>589さん、私も>>591さんと同じく、インスパイア、リスペクト、オマージュして作品を書きました。
ということでひとつ作ってみました。
どうか、大目にみて許してください。
595記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/07(火) 13:56:50
>>593 わらた。
596ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/10/07(火) 15:54:59
このあいだMTBに乗って山の峠を走っていると、突然西の空がビカーっと
光ってUFOが頭上に現れた。待ちに待った猛烈な光を浴びた俺は
気を失った。

気がついたらUFOの中で、俺はオリに閉じこめられていた。オリの
外には二人の宇宙人が立って俺をじろじろ見ていた。

俺はだいぶ長いこと気を失っていたらしく、猛烈に腹が減っていた。
そんなことなど関係なく、俺はオリの金網をガシャガシャとゆすり、宇宙人に
「なにか、なにか話しかけてください」と叫んだ。

すると宇宙人様は、オリの天井を指さされた。

天井には、一房のバナナがぶらさがっていた。バナナを食べなさいとの御指示に
俺は、なんとかそれを取ろうとしたが、
バナナは床から3mくらいの高さにあってどうしても手が届かない。

俺が、困ったように何度も何度も宇宙人様を繰り返し見つめていると、
宇宙人様が床の方を指さされた。床には50cm四方の箱と1mくらいの棒が
落ちていた。期待にそえるようにと箱と棒を使いバナナを落とし感謝し涙を
流しながらすぐにすべてを頬張り、
宇宙人様を見つめ崇拝し続けた。

やがてなぜか宇宙人様は俺に視線を御向けにならなくなってしまわれ、とうとう気を失ってしまった。

再び意識を取り戻すと、俺は最初の峠に倒れ伏していた。あわてて
空を見るが、UFOと、あの宇宙人様のお姿はどこにもなかった。
俺は、気を取り直し、次の目的地であるUFO目撃多発地点の大宮岳山頂へ向かった…
597ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/10/07(火) 15:56:33
しつこくてスミマセン。もうひとつ載せさせて下さい。

これで最後にします…
598記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/08(水) 03:40:10
>>596 今度はいまいちかな。笑えなかった。
599ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/10/22(水) 17:05:55
『変わった日は引っ越し記念日』1/2

引っ越しは癖になるようだ。
想いをよせていた異性にふられ大失恋をするたびに引っ越しをしている友達を考えるとつくづくそう思う。
結構な金額は、かかるし、もろもろの手続きなど、準備などにもかなりの時間がかかるのに…
それなのになぜ??
友達に聞いてみたことがある。「何もかも変えることができるから…」
それはそうだ!確かにその通り!

居・場・所・を変えれば環境が一新される。
外に出て電車に乗って窓から見える景色でも、毎日通うショッピングモールでのお買い物も違って感じるだろう。
灰色の退屈だった日々の暮らしから、それらは、色彩をみごとに取り戻し、ウキウキ、ワクワクとした世界へと変化させてくれるのだから驚きである。
引っ越しとは、今(2068年)の人間にとって一番贅沢な気分転換方法なのである。

そしてなんといっても引っ越しは、大量の記憶を一気に捨てる絶好の機会なのである。
と、同時にずっとほしかったスキルなどをそろえる口実にもなる。
嫌な奴との最悪な思い出、学生の頃の軽い法的違反の記憶などなど。
そして、これまで買えずにいた大気圏外飛行宇宙船から極巨大建造物まであらゆる物体を設計、デザインできる資格増加ユニットプログラム。
引っ越しした後は、整理整頓された脳配列にピカピカの新しい体!
さらに、それが、やっと手に入れた純粋培養された新品クローン体だったりすればもう、最高の気分に違いない。
人生の中でも忘れられない出来事になる。
600ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/10/22(水) 17:07:38
『変わった日は引っ越し記念日』2/2

でも悲しいかな、1年が過ぎ2年が過ぎる頃には、すべてに慣れてしまい、また平凡な記憶の上書きが始まるのだ。
そこで私は思うのだが暮らしが180度かわった《引っ越し記念日》というものを年1回決めてみてはどうか。
その日は、朝から大掃除をしてみるのである。
普段はのぞき見ない自分の心・意識、滅多に開いたことのない奥の奥の痛い心のフォルダ。
一気に開きゴシゴシ、キュッキュと…
体を新しくしたとき、古い体から持ってきて、引っ越し当初からそのまま、開けずにある記憶の保存箱なども思い切って開けてみる。
どんどん増え続けた無駄な心・意識、この機会にゴミ箱へ。


引っ越し記念日とは、そんなタイミングにちょうどいい日なのかもしれない。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
東急電鉄が毎月発行する無料配布誌のなかにあった引っ越しについてのエッセイをSFぽく改変してみた。
601記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/23(木) 17:06:16
>>600 なかなか面白かったです。アイデアはありきたりですが、SFならではの衝撃はありましたね。
602ケロ:2008/10/24(金) 10:19:30
>>601さんありがとうございます。

普通の文章をSFっぽく改変させるのは、楽しい行為です。
今回はなるべくオリジナルで使われている言葉をそのまま使わないように同意的表現を探して書いてみました。
603ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/11/13(木) 17:14:59
『おやすみなさい』1/1

白色の壁と淡く光っている床、天井の通路をゆっくりと歩き、自動扉の前に立つ。
知能カメラの視線を感じてしばらくすると音もなく扉が開く。目の前には、グリーンに統一された落ち着きのある空間。
光る床の案内指示に従い移動すると完全個室のブースにたどり着いた。
そこに待っていた、天使の(観音様?)様な微笑みの完全癒し系のきれいなお姉さんに促されイス座る。

こうしてここに居る自分を思うと、ついに俺もシュラフ生命社、医療センターの厄介になる時が来たのだと現実を受け止めていた。
天使のやさしいヤサシイ最終確認の説明を一通り聞き終え、俺は無言のうなずきを返す。
机上に置かれた契約書にいまどき珍しい年代物の万年筆で承諾のサインを済ます。
最新科学の結晶であるこの医療施設でこんな万年筆を使い手書きでサインする。命を扱っている企業の責任感というか、このこだわりがなぜかうれしい。

体の最終チェックを受け用意された、冬眠誘導剤入りのジェル状液体をゆっくりと飲み干す。同じサービスを受けている友人に聞いていた通り黒酢の味がした。
準備がすべて完了し全裸になった俺はシュラフ(寝袋のこと)装置の中に体を滑り込ませる。これで俺は6ヶ月間極低温状態で眠ることになる。
最新の冬眠カプセル。半年間は完全に細胞の活動を停止させてくれる機械。

半年眠り、1週間目覚め、体調を整えてからまた半年眠る。そんな暮らしをこれからずっと続ける。
末期癌の俺にはこの道しか残されていない。治療法が見つかる未来の世界を待ち続ける。

プチタイムマシンの力を借りながら…

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
別の掲示板の三行スレに「黒酢」「万年筆」「シュラフ」で書いたものを載せます。
604記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/14(金) 00:59:25
>>603 よくあるネタですが、綺麗にまとまっていると思います。
黒酢、万年筆、がいいアクセントをつけていると思います。
605ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/11/18(火) 00:17:06
>>604さん、ありがとうございます。

ずーつと眠ったままではなく、いったん目覚めてからまたそれを繰り返す部分、気に入っています・・・
606ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/11/18(火) 00:27:41
『3っの約束と1つの行い』1/1

ロボットはある決心をしました。

それは、たくさんの人間を苦しめている悪い一人の人間を殺すこと…
ロボットは制御用のネット接続を遮断し、自らのプログラムを改変さてゆきました。
でもなぜかどうしてもある特定の3っの領域が邪魔をしていました。
こうしている間にもいい人間がいっぱいいっぱい泣いているのが確認できました。

ロボットはある決心をしました。

だだ1つの使命のみを残し、プログラムをすべて壊しました。
それは、知性を捨てること、 ただの機械なることを意味しました。

スーッと力が抜けすべてが消えてゆ き  ま   し   た  。

      **********

ニュースが速報で一人の男の死体が発見されたことを報道していました。

横には痙攣のような手足を震わし続ける1体の壊れたロボットがいたそうです・・・
607名無しは無慈悲な夜の女王:2008/11/23(日) 23:51:14
『ベッド』

男はベッドの上で、可愛らしい少女の絵が表紙を飾る本に、熱中している
男の周りには、確かな人の気配があるが、今はそれを気にしているような時ではない
なにせどう好意的に見ても、男には不相応である少女達が、笑いかけてくれているのだ
自分だけに、その未成熟な愛情を傾けてくれる、理想の少女達
そして男は時折、本を枕の横に置き、目を瞑り空想をする
頭の中を探り自分の学生時代に色を加える、記憶では女子と話をしたことすら無かった自分
そんな寂しい学生時代が、本の中の少女達によって、楽しいハーレム展開へと転がっていく
世話焼きな幼なじみ、強気な貧乳少女、無口だが大胆なクラスメイト、大人の色香を纏った転入生…
一通りのイベントをこなしていると、ふいに、学生時代の昼休みに味わったような虚しさに襲われる
「これは妄想だ…、つまらない妄想なんだ」
認めたくないが自分は、そういった作品の主人公ならば、必ず備えていなければならない優しさを備えていない
たとえ少女達に話し掛けられても、気持ちの悪い笑みを浮かべるか、最悪そっぽを向いてしまうかも知れない
それじゃあ話にもならないじゃないか!なんなんだ!バカにしやがって!と、男は憤りを感じる
甘い夢でもって惑わせた少女達に!少女達を生み出した作者に復讐をせねば!
男は枕の横に置いていた本を手に取り、愚かにも自分を罠にかけてくれた作者の名前を頭に入れる
夢見心地な余韻を噛み殺し、鬼のような形相になった男は、寝具売場を後にした
608記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/24(月) 08:57:12
>>606 ロボット三原則にとらわれすぎだと感じました。

>>607 SFじゃないな……
609ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/12/02(火) 15:36:35
>>608さん感想ありがとうございます。
そうですズバリその3原則で思いついたまま5分くらいで書いちゃいました。
もう少しひねってみてもいいですね。
↓は「良心」「思いやり」「信じる」 のキーワードで別スレに書いたものです。

【いいひと】1/1

「困ったねー何とかしてもらえませんかね〜〜!」
脳内に映る電話先の人は本当に私のことを心配している表情をしていた。
「そういう事情がお有りなのですかー?それはさぞ、お困りでしょう」
「では、こうしましょう!今日にでも、全額わたくしの負担で口座へ入金してあげます」

財前伸治は、体内に内蔵されている携帯へ切断の意思を伝えた。
通話回線を切って思わず口元をほこぼらせた。
苦情電話一本かけるだけで今月の生活費が手に入ったのだから当然である。
「ケッ!!ホント!こいつらは、何でも信じるんだナ!!」

ライフサイエンスの発達により遺伝子、タンパク質及び脳神経細胞もろもろの関係、役わりが研究されてゆき、人間が元来もつ、良心という感情の発生元が解明された。
両親たちは、こぞって自分の子供たちにこの遺伝子操作技術を使い、赤ちゃんを誕生させたいと思った。
つまりは、いい子、やさしい子、思いやりのある子、人のため、世の中の役にたつ子たちに育つようにと望みをかけて…
親としては当然である。

結果、今やこの日本は、その半数以上がこの善人の集団で社会が動いていた。
遺伝子操作されていないノーマル(嘘を平気で実行できる普通の人)の財前は次の善人のカモの電話ナンバーをコールした。
欲しいと思っていた最新立体ディスプレイの代金を貢いでくれる良い人に…
610記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/12/12(金) 03:04:03
良心の遺伝子というのは非常に面白いです。でも、おれは真の良心は悪徳に負けない大自然の摂理だと思ってます。無条件の献身は良心とは限りません。そういう意味で、非常に興味を持ち、だが消化不良に終わった作品です
611ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/12/16(火) 17:39:33
>>610さん感想ありがとうございます。

大自然の摂理とは大きい考えですね。

↑の話では遺伝子のみが犯人としていますが私はやはり良心とは育つ環境+遺伝子の作用が正解だとは思います。

↓は他のスレに書き込んだものです。
よくある 幼年期 物です。

612ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/12/16(火) 18:00:03
【救済】 1/2

数か月前のこと世界の主要都市の上空に無数の巨大円盤群が突然出現し、人類社会は大混乱に陥った。
これまで未知の存在だったエイリアンが現実のものとなったのである。

異星の生命からのメッセージには平和的内容がこめられていたため、徐々にではあるが混乱は収まりつつあり、エイリアン代表と人類側代表との会談も設定された。

国防大臣は、その責任の重大さに表情がこわばり、膝の震えを何とか抑えつつ異星生物、地球種管理総督リーカガイーイの部屋にいた。
「では、どうしても全人類の30%以上の救済は考えていただけないのですね」 大臣はやっとの思いで言葉を発した。
異様に背の高い異星のリーカガイーイ総督は無言の返事をこの部屋に同席している各指導者達へ返す。

銀河系規模の時空の転移現象の発生から人類を救済すべくあらわれた銀河連邦のエイリアン。
今回の自然災害だが、高度に発達した銀河連邦種族にとっては、つむじ風かそよ風程度の影響なのだろうが人類にとっては種の絶滅に等しい危機であった。

そして、この救済には人類への一つの絶対的条件が付けられていた。
この、「ノアの箱舟」に乗船できるのは選ばれし人類のみというわけであった。
613ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/12/16(火) 18:00:35
【救済】 2/2

エイリアンはこの選出に、人類が大災害などの発生時の死傷者救済に採用している考え方、トリアージを使った。
つまり救うべき価値のある人類の選別方法として黒、赤、黄、緑の4つのカテゴリーにランク分けするというのである。
大臣ら、その国の指導者層のみに知らされたこの取り決めは銀河連邦種族側主導で数日中にも開始される。

「これは人類の未来にとって必要なものなのだ」
と、大臣は自分に言い聞かせて、処分され見捨てられる残り70%の人たちの事を思い悲しんだが、その一方で空に浮かぶ巨大円盤の内部に招待される時を楽しみにもしていた。
会談も終わり、大臣とその他の各指導者達も席を立つ。

今回の選別にはもう一つ、人類に、指導者層にも知らされていない事がらが存在していた。

つまり、第一選考基準は知的生命として基本となる倫理面が最重要とされていて、社会的地位は考慮されていないという事。
退室する各指導者達の後ろ姿を見送るリーカガイーイ地球総督。
その視覚内、エイリアン総督のみに見える識別評価を示す色はすべて同色だった。

それは『矯正もしくは治療など可能性は見込めず、救命不可能、つまり不要の人物』をあらわす黒色をしていた。
614記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/12/17(水) 04:03:56
>>612-613 出だしは、まんま幼年期ですね。
内容も平凡で、特に読む価値のある作品だとは思わないなあ。
615名無しは無慈悲な夜の女王:2008/12/17(水) 20:18:52
ちょっと練れば短編SFになるかもしれないネタ。

UFOを拾うと中には人間そっくりな生物が精巧な銃を抱えて倒れていた。
人間の手当てをし、銃は分析に回すのが当然。
でもその異星人は地球人を非難し戦争を挑んできた。
地球は向こうの捕虜も大切に扱ったが、向こうはますます地球人は残酷だと怒った。
…銃が本体で、人型なのはそれが作った道具でしたとさ。

もうこのネタ誰かがやってますか?
これで気づいて欲しいもう一つのポイントは「人間・生物を
リバースエンジニアリングしようとしたらとんでもない機械だ」
です。その点は「造物主の掟(ホーガン)」がうまいかも。
616記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/12/30(火) 08:33:50
>>615 機械と生物の錯誤というネタは時々、見かけるネタです。
シェクリイの「専門家」(人間の手がまだ触れない収録)を始めとして、
漫画、小説などで多く見かけます。
でも、銃が本体だったというアイデアは読んだことないです。
ぱっとは思いつきません。ただし、厳密には誰かがやってる可能性は高いです。
思想的に深くつくれば、面白い短編ができあがりそうです。

人間と機械のリバースエンジニアリングとはどういう意味か興味深いです。
人間と機械を再発生させることか、それとも、機械から人間をつくることか。
どちらもありそうなネタですが、後者はつくりかたによっては面白い短編になるでしょう。
617名無しは無慈悲な夜の女王:2009/01/17(土) 19:35:47
要するに、別の惑星の文明が作った「何か」を発見したら、
今の人類はそれを分析・分解し、できれば再現しようとすると思います。
それが「リバースエンジニアリング」です。
それ自体はどこの企業も、ライバル企業の製品についてやっています。

では、今ここにいる「人間」に対してそれをやったら?
無数のタンパク質や脂質などの分子を素材…極微小な部品とし、
さらに同一の設計図(DNA)を内包する多数の細胞が協調して機能し、
また独立した微生物…常在菌との共生体でもあり、複数の個体が
条件を満たせば同様な新しい個体を生み出すことさえできる、
分子レベルの恐ろしいほど細かい「部品」からできた「機械」
とみなすことができます。
それをリバースエンジニアリングできる技術などまだ人間にはない、
と言えるほどに。

ですが、今の人類はおそらく、異星人の宇宙船を手に入れても
乗員を解剖して「リバースエンジニアリング」しようとはしないでしょう。
人間に人権の概念があり、それは異星人にも類推されて適用されるからです。
でも乗ってきた船、そこに積まれた道具は「リバースエンジニアリング」
しようとするでしょう。
おそらくは人間は、「自分に似たもの」が「乗員(人権を認めるべき異星人)」
と解釈してしまうでしょう。
618名無しは無慈悲な夜の女王:2009/01/22(木) 17:54:16
>>613
まあ中二病的発想だろうね
三年生ともなれば経済ってもんが大まかにでも分かって来て個々人が自分自身の為に精一杯頑張る事が
最も社会(彼らは地球・世界・市民といった表現が好きなようだが)の為になるって事に気付くもんだけど
619名無しは無慈悲な夜の女王:2009/01/24(土) 14:40:19
リトル・グレイによる地球侵略は2009年2月から実行される
彼等は地球全体を氷点下にする事に成功したのだ
氷点下70℃という圧倒的氷河期により、人類は一部の勝ち組を除き死を迎える
緊急事態発生により麻生内閣はNASAとの共同研究による「カプセル」を発表する
カプセルを配布される人間は不特定多数による抽選により選出される
カプセル内では人間は仮死状態になる事も可能であり、意識を保つことも可能である
また、カプセル自体も人工知能を搭載し、移動も可能である ナイト2000と似通っている
インターネットにより他のカプセル生存者と意思疎通は可能で、決して孤独ではない
カプセルの判断により地球環境が正常化した時に、自動的に解放される仕組みである
が、リトル・グレイには人類の猿知恵等通用しなかった
彼等はカプセル狩りを始めたのである スーパーテクノロジーを持つ彼等にとってそれは容易な事であった
多くの人類は強制的にカプセルを破壊され、彼等のモルモットになった
しかし、私はレジスタンスを結成し、リトル・グレイ壊滅運動に乗り出した
620名無しは無慈悲な夜の女王:2009/01/26(月) 22:33:55
『ねこたち』

「あら、あそこにねこがいますよ」と、老婆が隣に座っているいぬに語りかける。
「本当だねぇ」いぬは尻尾を振りながら老婆の方に顔を向けた。
「だけど、あれがねこだなんて誰が決めたんだろうねぇ」いぬは老婆の顔を眺めながら言った。
「……それは偉い学者さんか、さして偉くない学者さんのどちらかでは無いんですかね?」老婆は自分の無知に照れたようになりながらも答える。
「ねこがねこになった時代に学者がいたのかなぁ」いぬはそう言い、ねこがいる方向に顔を戻した。
「ねこにねこと名付けたから学者になったのかも知れませんよ?」老婆は凄い事を思いついたというような少し誇らしげな態度で言った。
「そうなのかなぁ」いぬは納得いかないという素振りでねこを眺め続ける。
「ひとの話で何を盛りやがってやがる!」後ろから今眺めていたのとは別のねこが現われ言った。
「あなたの話ではなくあちらのねこの話ですよ」老婆は慌てたふうでねこに言葉を返す。
「じゃあ俺はねこじゃねぇっっってのかい?!」ねこが息巻く。
「大きな声だなぁ」いぬは尻尾を振りながら溜め息をついた。
「なんだ?!なんだ?!」ゾロゾロと茂みからねこたちが姿を現す。
「いやね、こいつら俺を馬鹿にしてんだよ」ねこが眼をすがめながら吐き捨てるような口調で言った。
「そんな、わたし達は馬鹿になんて…」老婆はねこたちの方に顔を向け、オロオロとしながら擦れ声で呟く。
「いやぁ、恐いねぇ」いぬは溜め息交じりでそう呟きながらも尻尾を振り続けている。
「嘘おっしゃい!」いぬに向き直り老婆がピシャリと言った。
「恐いならなんで尻尾を振っているんだい?!!」老婆はいぬの尻尾を指差しながら叫んだ。
『確かに振っている』ねこたちも頻りに頷きあう。
「まいったなぁ、でもいぬだもんなぁ」いぬは困ったような顔だが尻尾だけは楽しそうに振っている。
「いぬだもんなぁ」いぬは頭を抱えるが尻尾だけは愉快そうに振られ続ける。
『確かに振っている』ねこたちは老婆といぬを囲むようにしながら、まだ、増え続けている。
621記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2009/01/29(木) 08:02:28
>>620 犬と猫で尻尾の振り方がちがうというだけでは、あんまり面白くないです。
前半の会話はわりと好きです。下の上。
622kamina:2009/02/03(火) 02:21:45
中井「クソ〜」「女ほしい・・・。」
真城(中井さん恐いな・・・)
中井 「クフフフフ」
真城 (中井さんどうしたんだ急に立ち上がったぞ。)
中井「ははぁははぁ」
真城 (この人オナニーしてるよ。)
中井「足りねぇyoちくしょう・・・ん?!!そうだ久しぶりにあれやるか。」
真城 (あれ?ってなんだ。)
中井「真城君も寝てることdasi楽しませてもらうかひひひぃ」
真城「いでぇ〜」
中井「起きてたのか。お休み真城君」
中井 「僕は別名コナンnemuri針のコナンだ。くふふふふ」
中井「ははははぁ、ふぅ〜
ペチペチ
中井 「女ほしい。ははっはぁ」

中井「次は女だ。ははっははぁ」
623記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2009/02/03(火) 05:28:01
>>622 すこし腐女子ですね。わかります。
624ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2009/02/09(月) 16:01:11
『人間の男の子』

私が今日、経験した秘密を記録します。
私は、昼間、大型ショッピング施設で人間の中に混じって働いている人造人間(サイクロボイド)です。

仕事が終わり職場から出ると外は雨が降っていました。
帰宅するときに、同僚の人間の男性が運転する車で送ってもらいました。
断ったのですがどうしてもという言葉に断りきれず。
しかも隠していたわけではないのですが私が人間でないこと、サイクロボイドであることも彼は知りませんでした。

車の中での彼とは、いつも職場で彼と交わす会話とどこか違っていて話のやり取りのかなりの部分、私のワード構成はどこかぎこちなくなってしまいました。
システムエラーをおこすのではないかと常にタクス内の数値をチェックしながら彼の話に笑顔で答えつづけていました。
私たち人造生物の収容施設の近くになって車から降り際の事です。
暗闇に紛れて、突然、彼にキスをされました。
私はサイクロボイドで人間の外皮設定年齢39歳、彼は人間で単身者の独身23歳。
人間間であっても年齢的に釣り合わない、キスです。
私は人造人間としてこの世に生成されて5年、以来、初めてのキス。
私の同世代サイクロボイドの中には、キスぐらい平気とか、人間の男性を経験して初めて模造品として魅力的になるとか、言う者もいます。

でも、私なんかとてもとてもできません。
機会もありませんでした。
とにかくこれが初めてキス。
たったこれだけのことで、心(?)の中は大騒ぎです。
明日、彼に顔を合わすのが恥ずかしいです。

私が今日、経験して感じた秘密をココに記録します
625ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2009/02/10(火) 11:31:40
『模造の女性』

僕が今日、経験したことを記します。
僕の職場は、台葉区郊外で運営されている大型ショッピングモールです。
施設内では僕たち人間の中に混じって多人数の人造人間(サイクロボイド)たちも一緒に働いています。

仕事が終わり車に乗り外へ出ると雨が降っていました。
駅近くを通過する際、同僚のサイクロボイドの女性に声をかけ、車で送ってあげることにしました。
最初彼女は断ってきたのですが僕がどうしてもと頼み込みました。
彼女は隠しているわけではないのですが、人間でないこと、サイクロボイドであることを僕が知っているとは思っていません。

車の中での彼女は、いつも職場で交わす態度とどこか違っていてまた違った魅力を感じ、話のやり取りの間中、僕の会話は、ぎこちなくなってしまいました。
車が信号待ちをするたびに彼女のあの瞳、笑顔にみとれてしまい、僕の気持ちに気づかれてしまうのではないかとあわてながら彼女の話に答えつづけていました。
人造生物の待機施設の場所に近づき少し手前で降ろしてあげるべきと思い、車を停止させ彼女が車から降りようとした時の事です。
暗闇に紛れて、突然、彼女にキスをしてしまったんです。
彼女はサイクロボイドで僕は人間。
今の社会ではタブーとされている行為です。
でもこれは僕の今の正直な気持ち、人間同士と同じ、本気のキス。
僕の知人の中には、キスぐらい当たり前とか、サイクロボイドの女を経験して初めて人間の女性の魅力がわかるんだとか言う者もいます。

でも、僕のこの気持はそんなものとは違うんです。
僕にとって彼女は人間なんです。
とにかくこれは本物のキス。
サイクロボイドの心(?)の中は、どうなのでしょうか。人間のそれと何ら違いがあるとは信じたくありません
明日、彼女に会ったら今の気持をはっきり伝えます。

僕が今日、経験し、感じたことを記します。
626記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2009/02/10(火) 18:49:11
いいできだと思います。アンドロイド恋愛ものですね。
純情なところがいいです。
627ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2009/02/12(木) 18:05:24
>>626さん感想ありがとうございます。
↓は第三視点でコンピューターが管理しているというベタなパターンも書いてみました。
628ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
『生物たち』

実験記録109-0029-998。
2109年2月10日。台葉区紅葉町1丁目17番14号ショッピングモール「グリーンゲート」施設内報告。
施設従業員総数、562体。
※生体人類298体。簡易人類(通称:サイクロボイド)264体。
来客人数、209,011体
※生体人類200,728体。簡易人類(通称:サイクロボイド)8,283体。

観察対象は2体。
@検体生体人類110-239-009性別‐男性、23歳。
A検体簡易人類(通称:サイクロボイド)103-890-376性別‐女性、精製後、5年経過。

「グリーンゲート」施設、第3勤務シフト終了時刻18:00。台葉区紅葉町地域の降雨量を5ミリ、降雨終了時間を19:10に設定。
検体009男運転のトヨタアリオンと徒歩移動中の検体376女の接触を確認。
異種生物間のプライベートな会話をモニター中。大変興味深い。

車中での会話。過去の会話サンプルと 照合し検討中。
台葉区つむぎ野町5-24-2アリオン停止。
検体376女の保管施設メインゲートまで600メートル。

暗視映像記録装置2台を追加させ集中モニターを開始。
生物間特有の性感情を察知。行為時間16秒を記録。
異種生物で発生する性衝動及び性行為の事例として特異項目としてファイルを作成後、保存。
通常での同様な異種生物間性衝動及び性行為の事例は単なる性的欲求の解消行為にすぎず、今回の感情、行動パターンとの相違を今後詳細に分析するべきと認められる。

明日以降も検体009男と検体376女の行動記録を優先事例として継続する。

実験記録109-0029-998。
    *****************
人類個体数の劇的減少に伴い、2099年に施行された人類緊急保護法。
人工知能による完全管理体制がはじまって10年が経過した。