932 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2009/06/13(土) 17:40:27
「闇の左手」を読んだ。
ひとつ疑問があるので聞いてくれないか。
ストーリー終盤。
リレー衛星に宇宙船への覚醒信号を送ったあとは、
宇宙船がゲセンの惑星軌道上に到着するまでの八日から半月をとりあえずどこかで隠れしのぐとして、
それから先は「宇宙船の着陸準備がすでに整っている」という状況を武器に、
アルガーベンのもとにカルハイドのエクーメン加盟を交渉しに行くつもりだったのか?
それとも惑星軌道到着後すぐに宇宙船をカルハイドのどこかへ着陸させた上で、アルガーベンに交渉を持ちかけるつもりだったのか?
アイは、エストラーベンの被った汚名を正式に取り消させてから宇宙船を着陸させたかったみたいなことを、最終章のアルガーベンとの謁見シーンで言ってたから前者だと思う。
でもエストラーベンは、チベから降りかかるアイの命の危険を回避するために、話し合いなどせずにすぐにでも宇宙船をカルハイドへ呼び寄せて着陸させるべきだとしきりに主張していたから後者だよな。
新装版の文庫310ページで、エストラーベンはアイに対して「きみらの同胞をカルハイドへ呼びよせきみの使命をただちに達成すべきだ」と言ってるけど、惑星軌道上に呼ぶだけだったら「この星orゲセンへ呼びよせ〜」という言い方をするんじゃないかな。
「カルハイドへ呼びよせ〜」だと、カルハイド上空への降下か、あるいはその領土への着陸を示すようなニュアンスに取れてしまう。
しかし結局、発信機がないと軌道上の宇宙船へ着陸申請の連絡ができないことになる。軌道上に届くほど高出力な通信施設をもう一度借りるほどのお金は、もう二人の手元には残ってなかったはず。
覚醒信号を送ったあと、もしエストラーベンが死ななかった場合は、具体的にはどんな風にことを運ぶつもりだったんだ? そこのところがいまいち判然としないんだ……。
新参者が携帯から乱文・長文かつ理解力に乏しくてスマン。
スレを上げてしまった。
スマンorz
難しいなあ
そこまで考えて読んでなかったYO
>>932 自分はアイは結局エストラーベンの政治家の部分を信じきれなかったから、
そしてアルガーベンを初めとするゲセン人の性質を誤解してため、結局自分は殺されないだろう、
という希望的観測を持っていたから「話し合い」に持ち込もうとしてた、と思ってた。
だけど実際にはエストラーベンの「政治家」としてのゲセン人への気質に対する理解のほうが正しかったため、
つまり、そういう二者択一の選択を要求されること事態を嫌って、使者を殺す選択をする可能性があるがため、
アイを殺させないために亡命を選択し、それを手伝い、さらに「政治家」としての自身の責任を真っ当するために
殺されに行ったんだと思ってた。違ったのかな?
>>934 レスありがとう。
>>935 おぉ。物語を大局的にみていないと出てこない考察だな。感心した。確かにそう考えれば、アイが最後まで話し合いを続けようとしたことや、エストラーベンの最期にも納得がいく。
だけど俺が聞きたいのは、厳密にはそういうことではないんだ。
結局のところ二人は、
ゲセンの軌道上に待機している宇宙船を、カルハイドに着陸させる前にアルガーベンへ交渉をもちかけるつもりだったのか、
それとも着陸させてから(つまりカルハイドのエクーメン加盟を目に見える形で余儀なくさせた上で)交渉しようとしていたのか、
一体どっちだったんだろうということなんだ。
それについてのアイとエストラーベンの台詞には、曖昧なところやわずかな食い違いがあるような気がして、今ひとつはっきりしないんだよ。
でもよくよく考えてみたら、エストラーベンが死んだあと、「宇宙船がゲセンの軌道上にくる」ということをカルハイド側に話しただけで、チベは退場したんだよな。
だったら宇宙船を着陸させる前に交渉するつもりだったとしても、勝算は十分にあったということか。
エクーメンのサイドに立って考えると、別に今回の使者(アイ)の説得で加盟を促さなくてもいいんだよ。
そこに使者が居り、世代を跨って理解から始まる説得を行うのがエクーメン加盟の意義だから。
そういう観点は逆にゲセン人であるエストラーベンには理解できなかっただろうな。
ああ確かに。
アイの代でゲセンの加盟が叶わなかった場合も、エクーメンは次の使節を送ることになるんだよな。
しかし、使者を一度に1人しか送れないというエクーメンのルール、
不条理だよな。
使者に負担がかかるし、敵視されて殺された場合、責任は誰が取るんだろ?
それに使者が1人で突っ走って交渉がメチャメチャになる可能性だってあるし。
どう考えても、得な政策とは思えない。
>>939 他の短編では、例えば奴隷至上主義者の星とかはよく似た背景として、
アメリカの南北戦争期を模したような世界に投じられた使者の話があるんだが、あ、題名忘れた、
ここでは奴隷制に対して革命を起こした改革派に宇宙船を呼ぶよう強制されて奴隷のように屈する描写がある。
これは明らかに相手に対する嫌味で行った行為だったんだけど、こうすることでエクーメン使者の性格というものも
説明してる。
つまりさ、彼らはその世界に干渉できないし、してはならない、とされてるんだよ。善意であれ悪意であれ。
例としてタイムトラベルが挙げられるけど、その時代に派遣し、観察する行為そのものがその時代に多大な影響を与えてしまう。
エクーメンとしては、相手世界へエクーメン加盟の意義を理解してもらう行為は、
逆にエクーメン世界がその相手世界を理解する手段でなければならない。使者はそのための仲立ちなので、
グループではなく、個人でなければならないんじゃないかな?
実際、「言の葉の木」では物語終盤にこのエクーメン加盟の意義に対する重大な違反が発覚して、物語の辻褄が合って来るんだが
あ、ごめん、もしかしてネタバレしてしまったかな?まあともかく、一人称で描かれる形式であるハイリッシュユニバースでは
ある種のドキュメンタリーの解説者としての「使者」の存在を個人、としなければ物語が成り立たない、ってのもあると思うんだ。
> 奴隷至上主義者の星
『SFの殿堂 遙かなる地平1・2』ロバート・シルヴァーバーグ編
に収録された
「古い音楽と女奴隷たち」
かな?
これ持ってなくて図書館で読んだおぼえがある
>>941 たぶんそれだ。短編集だったから。
パッと観、入りもオチも弱いので、ル=グィン女史にしては珍しく失敗作なのかな、と読んだ当時は感じたんだが。
ハイニッシュ
ハインだから
うお!名作ついに復刊!?
表紙が新しくなってるね。
絶版のほうも持ってるけど、これも欲しくなるなあ。
ハイン宇宙について、もっと色々書いてほしかったなぁ。
せっかく壮大な世界を作り上げたのに。
ル・グィンはハイニッシュ・ユニヴァースについて多くを語ろうとしない。
そこが神秘的と見る人もいれば、物足りないと感じる人もいるんだよな。
神秘的でよかった読者だな。想像の余地があって、世界の奥行きを感じられる。
ストロスの「シンギュラリティ」世界が似てると思う
ん、俺も読んだ。うろおぼえだけど、
ハイニッシュ・ユニヴァースに通じるものがあったかもね
ただ違うとすれば、ストロスのほうは人類側が努力も意思も持たずに無理矢理転移させられた、
ということであるのに対して、ハイン人たちは、各惑星に独力で、しかもかなり強烈な意思と思想を持って入植しており、
このため、各惑星ごとにまったく違う文化圏や特殊能力ともいえる独自の機能
(言の葉の木では政治的な機能に長ける人種がいたし、ゲンリーアイには共感能力がある)
がそれぞれ育っている違いがあるようだ。
ハイン人って英雄的な人々だよなぁ
「所有せざる人々」の新装版が出たので読み返したら、
主人公のシェヴェックももちろんだけど、終盤で登場する
若いハイン人にも目を引かれた
「種族は古いが自分はまだ何もしていない」と新しいところへ
飛び込めるなんて・・・
過去の贖罪みたいなのが根底にあるとかじゃなかったっけ
ずいぶん長いこと読んでないから記憶が定かではないけど…
河出から新刊が出てるぞ
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309205281 ラウィーニア
アーシュラ・K・ル=グウィン 著
谷垣 暁美 訳
定価2,310円(本体2,200円)
ISBN 978-4-309-20528-1 ● Cコード 0097
○在庫あり
SF/ファンタジー界に君臨するル・グウィンの最高傑作、ついに登場!
英雄叙事詩『アエネーイス』に想を得て、古代イタリアの王女として生きた
一人の女性の数奇な運命を描いた、壮大な愛の物語
954 :
◆GacHaPR1Us :2009/11/18(水) 22:09:46
ゝ_i/ / // / | l / ! | l i 〉' ⌒⌒_/
「ミ| / /ィ'「´! ! l l 」___| l |l _,くミ 、_/ ̄´
〈 j | ハ{ ,l-ニ!、 | l | ,|=、|ヽ|l/! 'ヽ,-ァ
ヽ } j' {i'r':j! ,.=、ヾ!/ r'
| i' ,, ゞ=' i!-':i! i!' /
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/ト、 @/ ヽ_/ /`-/
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j @ l !(゚∀゚)l / /
気になるよね
パワー読み終わったら、買って読んでみよかな
といいつつ今はアオサギの眼の再読に寄り道してたりする
956 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2009/11/23(月) 00:49:59
ラヴィニアじゃなくてラウィーニアなの?
英語発音には特に一家言あるル=グィン母さんのことだから
なんか元ネタがあるんだろう
しかし、あの歳でこの執筆量はすごいな。
普通、作家って40代にもなると世の中について行けなくなって
クオリティはガタ落ち、50になれば事実上引退って感じなのにな。
それにしても、いかにもヨーロッパ然とした世界観を拒絶してたはずなのに
(少なくともデビュー当時はそんなでもなかったんだが、アースシー世界編み出した頃から…)
いきなりイタリアだなんて。
>>959 そんなこともないんじゃない
最初SFだからそう思えるだけで
そもそもはフランス文学向きの人でしょ?
なにが言いたいか分からないなあ
「唯一神を崇拝し神に愛されている自分たちが絶対正義」という前提は拒絶してたと思うけど
古代イタリアとは関係ないと思うし
気力は体力に繋がるっていうけど
この歳でも精力的って、なんかスポーツでもやってるのかな
食生活はヘルシーっぽいけど
元ネタ「アエネーイス」じゃないか
>>959の言っているのは何のことなんだ。さっぱり分からん
Rosemary Sutcliffとか読んでみたら?
いやーおもしろかった、堪能した。
訳もいい。
965 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2009/12/01(火) 16:10:06
ちょっと書店で読んだんだけど、なんか意欲が湧かなかった・・・。
実際の元ネタがあるとなんかすんなり読めないというか。
まあ全体を少し読んだだけなので評価は全く出来ませんが。
ここで知ったおかげで今日書店で入手できた、ありがとう
表紙絵は「闇の左手」でGJだった丹地さんだね。
ちょっと少女風味だけどいいのかな?
読むのが楽しみだ。
うーん、自分もなんでそう感じたのかよくわからなかったので
調べようとは思ってたんだが、結局投げやりになってしまってるな。
思うに、たしかアースシー「影との戦い」前後の作品に対する批評というか女史の発言だかを
どっかで読んでそう感じたんだろう。
「影との戦い」著作の基礎には、「偉大な魔法使いを青年期から書く」という
今では当たり前にすらなってしまった手法を試そうとしたところから始まってたはずなんだが、
アースシー諸世界を突き詰めるうちに、女史独特の「ユートピア」概念を突き詰める物語りになっていったんだと
自分は読んだんだが、その過程において、彼女の中にあった原始的インディアン文化への啓蒙という素地が
そのまま世界観に現われるようになっていき、その世界観が彼女の作品群のあらゆる「ユートピア」概念の
素地になっていった。
昨日、再度読み終えた「所有せざる人たち」でも中央集権的原始共産制へのアンチテーゼとして
「アナーキズム」を基礎に置いたのもその所為だ。
この概念はユーロッパ圏では、常にかなり批判される概念なので彼女の作品の中では
ユーロ圏並びに英語圏内にある「ユートピア」概念と乖離する要因になっていったんじゃないんだろうか?
女史自身は英語圏の人であり、そのファンタジーの基礎にある「剣と魔法」にもかなり理解がある人なので
やはり物語り自身の中には、ヨーロッパ圏の物語りを素材として捉えることが多いんだろうけど、
やはり、どこかで一歩引いてるように思う。そういうのが自分の中で
>>959のような印象を与えたんじゃないだろうか?
まったく説明になってないが
うん、なってないねw
自分が育ったアメリカの筋肉馬鹿な剣と魔法ファンタジーへのアンチテーゼじゃないの?
思索的なところはヨーロッパに通じるものがあると思うけどな
所有せざる人々の新装版文庫本
あれは昔のハードカバーの中身が全部入ってますか?
あの本がこの文庫一冊に?と思うと何だか信じられません
俺は昔から文庫本で読んでるので、ハードカバーで出たほうはみたことないんだ
ラウィーニア読んだ
まだローマすらできていない昔のイタリアが舞台なのに
生活している人々が目に浮かぶようだった
戦のシーンより、そういった生活描写がよかったな
ラウィーニア開いて読んでみようとちょっと先進んでから
「はっ!!?これはあかん!」と読むのを止めてた。
この本はまず先に図書館で
「アエネーイス」ウェルギリウス (著), 岡 道男 (翻訳), 高橋 宏幸 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/dp/4876981264 借りて読むことが先決だ、と読み出したんだが、これが手子摺る手子摺る。
この前の週に「マギノビオン・シャーロット・ゲスト版」
http://www.amazon.co.jpdp/4562037156/ref=pd_bxgy_b_img_b 挫折してたので、ちょっと問題だな、とか思ってたんだが、内容自体はなかなか面白いんだよな。
ただ、以前イーリアスでも手子摺ったのが、武将総閲覧の部分で、「そんなん知らんがな」とは思うんだが、
でもパスするには忍びないのでしゃーなく読み出すとこれが頭にも目にも入らない。
ただ、アエネーイスのに関しては、イリアムに比べて武将の数も少ないし、そもそも目的が非常に厭らしいので
とても人間味が出てて笑えてなんとか乗り切った。ああ、よかった…。
とか言ってられない。第8歌までですでに今週おわっちまったじゃないか。来週には返さんといかん。
どないしょ…
元ネタを知らずに読める機会を自ら手放すなんて、もったいない
ゲド戦記の映画を観て、原作に奥行を感じてル・グィンに
興味を持ちました。
英国文学と海外古典ミステリーと国内ミステリーばかり
読んでいるSF初心者ですが、どれから読んだらいいか
さっぱり分からない状態です。
粗筋を読んで「闇の左手」が気になっていますが
こちらは何かシリーズものでしょうか?
ル・グィンに手を出す上で「まずこれを読んでおけ」と
いうのがありましたら教えていただけると嬉しいです。
クレクレばかりですいません。
「闇の左手」「所有せざる人々」がSFではイチオシ。
スレ内を「オススメ」などで検索すると、
>>629などいろいろ見つかるのでそっちも見てみるといい。
なお、
>>629の時点で絶版とされている「所有せざる人々」は
最近復刊し、入手できるようになった。
『闇の左手』は確かに共通した世界観を持ったシリーズの一つですが
確固たるつながりがあるわけではないので『闇の左手』だけ読んで大丈夫です
『風の十二方位』は短編でいろんなエッセンス詰まっていてお勧めです
ゲドっぽいなら『ギフト』とかの西のはての年代記、というシリーズもいいと思います
(こっちは全3冊で上記と違って順番に読むのがお勧めです)
980 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2010/02/18(木) 22:14:44
>>977-979 どうもありがとうございます。
まずは「闇の左手」から…と思い、注文してきました。
遅くても月曜日には入荷する予定なので今から楽しみです。
それを読破したらお勧めいただいた他の作品にチャレンジ
したいと思います。
大袈裟ですが新しい扉の前に立っている気分です。
どうもありがとうございました。
o