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http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20081016k0000m070150000c.html 記者の目:米国発金融危機 持続可能な経済を=笠原敏彦 毎日新聞 2008年10月16日 0時08分
(抜粋)
現在のグローバリゼーションは、「持続可能な資本主義」を導き得るのか。
米ウォール街発の金融危機が、特効薬のないウイルスのように世界へ広がった事態にそんな危惧(きぐ)を覚える。
米国が「自由」という理念で性急に進めてきた冷戦後の新たな世界システム構築は破綻(はたん)したとしか思えない。
イデオロギー論争はさておいても、すべての経済問題は市場が解決するという米国流「市場原理主義」の敗北は明らかである。
市場における「国家」の役割が問い直されることになったことで、米国が「市場開放」と「競争」を旗印に推進してきたグローバル化も調整期間に入ったととらえるべきだ。
米国では、高所得世帯の上位1%が総収入の20%強を占めるという甚だしい富の集中が起きている。
米国が発信源のグローバリズムは、この格差も世界へ輸出するのであり、ワーキングプアを構造的に抱え込んだ格差社会・日本はその先例だろう。
それにしても、米国でのマネーゲームは常軌を逸している。
ある米国の評論家が次のように語った。「ロケットに乗せてやるが、安全装置は外す(自己責任)というのが米国経済だ」。
米国が「自由」の理念で推進したグローバル化は、富の偏在化と食糧・原油高騰の中での資源ナショナリズムをもたらし、世界を急速に不安定化させている。
米国の「自由」はもろ刃の剣だ。その比類なき想像力を育てる社会環境は、IT(情報技術)産業のマイクロソフトやグーグルなどの革新性を生み、新たなフロンティアを切り開く「魔法のつえ」を世界にもたらす。
一方で、数学的手法を駆使した金融工学への過信を背景にした今回の金融危機は、秩序をぶち壊す「大量破壊兵器」を突き付けかねないことも示した。
米国発の金融危機という共通体験を踏まえ、日本を含む国際社会は、米国流グローバリズムの功罪を見極め、「市場主義経済」から「持続可能な経済」へ、国際社会を動かすパラダイム(支配的な枠組み)を転換するときだと考える。(外信部)