糸状菌由来の免疫回避機能性素材を用いた新規医療用ナノ粒子の開発
国立大学法人東北大学 未来科学技術共同センター(NICHe)・阿部 敬悦 教授、原子分子材料科学高等
研究機構・阿尻雅文 教授、医学系研究科・川上和義 教授、加齢医学研究所・福本学 教授らの共同研究
により、以下の新規医療用ナノ粒子の開発に成功しましたので発表いたします。
1 研究成果の要約
簡単に言うと、「体内に投与したナノ粒子を、白血球等につかまらず、効率よく目標の臓器・器官に届ける事が
出来るようになった」という内容です。ナノ粒子の表面を免疫系に見付からない(ステルス)物質でコーティングする
事で、白血球等に感知されないようにしました。
ナノ粒子はMRI やDDS など医療分野への応用が図られていますが、血中に投与したナノ粒子が細網内皮系に
おいてマクロファージにより捕捉され、標的組織へ送達できないことが課題です。この課題に対して以下の開発を
行い、新規医療用ナノ粒子を開発いたしました。
(1) 我々は、発酵・醸造に使用される黄麹菌Aspergillus oryzae の産生する界面活性蛋白質hydrophobin
(RolA) に関して、高分子ポリマーの分解促進因子としての研究を行ってきました(参考資料1)。一方、ある種の
糸状菌のhydrophobin が人の免疫応答回避(ステルス)能を有することが示されました(参考資料2)。
(2)以上の背景から、酸化鉄ナノ粒子(参考資料3)を、安全な黄麹菌hydrophobin RolA で被覆してステルス
能と水溶性を賦与した新規ステルスナノ粒子の開発を行いました。
(3)RolA 被覆粒子による動物細胞を用いた免疫応答評価試験の結果、樹状細胞はサイトカイン(注.免疫
反応の結果出てくる細胞間情報伝達性タンパク質)を産生しないこと、マクロファージによる貪食が回避されたこと
から、ステルス能が確認されました(参考資料4)。
(4)同被覆粒子の各pH でのゼータ電位を測定した結果、中性付近では大きな負電荷を帯びており、血中でも
高い分散性(注.血中で凝集すると免疫系に見付かりやすい)を有することが予想され、in vivoにおける医療用
ナノ粒子としての可能性が示されました。
(以下略)
国立大学法人東北大学未来科学技術共同研究センター(NICHe)プレスリリース 平成25年5月10日
http://www.niche.tohoku.ac.jp/?page_id=1418 http://www.niche.tohoku.ac.jp/wp-content/uploads/2013/05/30ab6ca7eb12bd8d2e6daffad8373144.pdf 関連ニュース
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水虫って偉いな。