損傷したミトコンドリアが分解されるメカニズムの一部を解明
ポイント
損傷ミトコンドリアを分解する品質管理システム(マイトファジー)は重要な生体防御機構。
ミトコンドリアに存在するアポトーシス抑制たんぱく質は、ミトコンドリアと一緒に分解されないことを発見。
パーキンソン病などマイトファジーの異常が原因と考えられる病気の解明に期待。
JST 課題達成型基礎研究の一環として、九州大学 生体防御医学研究所の白根 道子 准教授、中山 敬一 教授らは、
細胞の品質管理システムの1つで、損傷したミトコンドリアを除去する「マイトファジー(自食作用)注1)」のメカニズムの一部を
解明しました。
ミトコンドリアは、エネルギー産生を担う重要な細胞内小器官ですが、同時に有害な活性酸素も産出するため、損傷した
ミトコンドリアの蓄積は細胞に悪影響を及ぼします。そのため、正常な細胞では損傷したミトコンドリアだけを選択的に除去する
マイトファジーというシステムが働いていますが、ミトコンドリアが分解されるとミトコンドリアに存在するアポトーシス(細胞死)注2)
抑制たんぱく質まで消失するため、過剰にアポトーシスが起きる危険があります。細胞がマイトファジーの際にどのようにして
この危険を回避しているかは今まで謎でした。
本研究チームは、マウスの細胞を用いてマイトファジーで損傷したミトコンドリアを分解させた際に、ミトコンドリアに存在した
アポトーシス抑制たんぱく質「FKBP38注3)」が速やかに小胞体へと避難し、分解から免れることを見いだしました。
小胞体へ避難したFKBP38がアポトーシスを抑制することにより、細胞はマイトファジーの際にもアポトーシスを起こさずに
生存できることが分かりました。FKBP38を持たせないマウスの細胞でマイトファジーを起こさせると、FKBP38を持つ
正常の細胞に比べてアポトーシスが多く起こっていました。
近年、マイトファジーはパーキンソン病注4)の原因遺伝子の1つであるParkin注5)によって制御されていることが明らかにされ、
マイトファジーの異常による損傷ミトコンドリアの蓄積がパーキンソン病に関与すると報告されています。今後さらにマイトファジーの
仕組みが解明されることで、パーキンソン病などマイトファジーが関与すると考えられる病気の新規治療法確立が期待されます。
本研究成果は、2013年1月29日(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されます。
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▽記事引用元 科学技術振興機構(JST)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20130130/ Nature Communications 4,Article number:1410doi:10.1038/ncomms2400
Received 10 October 2012 Accepted 17 December 2012 Published 29 January 2013
Selective escape of proteins from the mitochondria during mitophagy
http://www.nature.com/ncomms/journal/v4/n1/abs/ncomms2400.html