米の経時的品質劣化のうち古米臭の発生は、米に含まれる脂質の酸化分解に
よって引き起こされます。したがって、この酸化分解に関与する酵素タンパク質が
含まれない米では、古米臭の原因となる成分が少なくなります。
農研機構作物研究所では、米脂質の酸化分解に関与する「リポキシゲナーゼ
(LOX)」を持たないイネの品種を簡易に選抜できるDNAマーカーを開発しました。
これにより、古米臭発生の少ないイネ品種の早期選抜が簡単な操作でできるようになり、
品種育成の効率化が期待されます。
本研究の一部は、農林水産省委託プロジェクト研究「需要拡大のための新形質水田
作物の開発」、「画期的新品種の創出等による次世代稲作技術構築のための基盤的
総合研究」および科学研究費補助金「コメの貯蔵性の改良のためのリポキシゲナーゼ
欠失遺伝子の同定とその利用」により実施しました。
(略)
貯蔵中の米の臭いは開封直後には比較的容易に感じることができますが、臭いの
成分はすぐに揮発してしまいます。したがって、古米臭の強さを嗅覚だけで判別する
のは難しく、古米臭の原因となる成分の代謝に関わっているLOX3そのものの有無を
評価するほうがより正確な評価が可能です。
これまでは、米のLOX3タンパク質に対する抗体を用いて、LOX3の有無を判別して
いましたが、この方法では米の収穫まで待つ必要があり、分析自体も大変な労力と
時間がかかりました。
そこで、簡易な選抜技術として、苗の葉1枚でLOX3遺伝子の有無を判別できるDNA
マーカーを用いた方法を2種類開発しました。
制限酵素処理によりDNAの塩基配列の違いを検出するCleaved Amplified Polymorphic
Sequence(CAPS)法と、一塩基の違いを点(ドット)のシグナルとして判定できるドット
ブロットSNP法です。
Daw DamのLOX3遺伝子は日本晴のものとわずか1塩基だけ異なり、そのためDaw
DamではLOX3タンパク質が作られないことが分かりました。
開発されたDNAマーカーを用いることでLOX3を持たないイネを容易に選抜することが
可能となりました。これによって、古米臭発生の少ないイネ品種の育成を効率的に
進めることができます。
(長文の為抜粋しました。詳細は以下のソースをご覧下さい)
ソース:
http://nics.naro.affrc.go.jp/press/press-30.html 画像:
http://nics.naro.affrc.go.jp/press/press/lox3zu1.jpg http://nics.naro.affrc.go.jp/press/press/lox3zu3.jpg 農業・食品産業技術総合研究機構プレスリリース 2008年7月29日